プログレCDレビュー 
PROGRESSIVE ROCK CD REVIEW 2018 by 緑川 とうせい

★2018年に聴いたプログレ(フォーク/トラッド・その他含む)CDレビュー
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*メタル最新レビュー *注目の新譜コーナー


12/7
今年もプログレ300枚達成♪(300)


Gryphon 「Raindances - The Transatlantic Recordings 1973-1975」
イギリスの古楽ロックバンド、グリフォンのアンソロジー。2018年作
Disc1には、1973年作「GRYPHON」、1974年作「MIDNIGHT MUSHRUMPS/真夜中の饗宴」
Disc2には、1974年作「Red Queen to Gryphon Three/女王失格」、1975年作「Raindance」を
それぞれのリマスター音源を収録。初期グリフォンの作品が通して楽しめるお得な再発盤です。
1stは、リコーダーやマンドリン、ハープシコードが典雅に鳴り響く、アコースティックな中世古楽。
2ndではシンセを加えて、古楽とロックを大胆に融合、19分におよぶタイトル組曲はじつに優雅な聴き心地。
3rdは、躍動感あるアンサンブルを強め、シンフォニックロックとしても味わえる。バンドを代表する傑作。
4thになると、古楽色がやや薄れ、シンセを前に出したキャッチーなプログレとしても楽しめる。
リマスターにより音質も向上していて、バンドの入門用にもうってつけの2枚組ですね。
優雅度・・9 プログレ度・・8 古楽度・・9 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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Seventh Wave 「Things to Come」
イギリスのプログレポップ、セヴンス・ウェイヴの1974年作
SECOND HANDのケン・エリオットとキーラン・オコナーによるユニットで、
美麗なシンセアレンジをスタイリッシュなアレンジで昇華した、モダンなシンフォニックロックサウンド。
ポップな味わいのハイトーンヴォーカルやコーラスなどは、QUEENあたりにも通じる感触で、
キャッチーかつクラシカルな優雅さに包まれている。楽曲は2~4分前後と短めながら、
インストパートも含めてコンパクトに仕上げられたモダンなセンスは、当時としては新鮮だったろう。
なにより、ムーグやクラヴィネット、メロトロンなどの厚みのあるシンセアレンジは、シンフォ好きにはたまらない。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 スタイリッシュ度・・8 総合・・8
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Kino 「Radio Voltaire」
イギリスのプログレバンド、キノの2018年作
IT BITESのジョン・ミッチェル、ジョン・ベック、MARILLIONのピート・トレワバスによるユニツトで、
この名義では13年ぶりとなる2作目。本作ではドラムに、Steven Wilson BANDのクレイグ・ブランネルが参加、
メロウなギターワークに美しいシンセを重ね、マイルドな歌声を乗せてゆったりと聴かせる、
モダンなスタイリッシュ性とシンフォニックな感触を同居させた、叙情的なサウンドを展開。
しっとりとしたバラード、キャッチーなメロディックロックなども、ポストプログレ的な精細さと
ゆったりとした優雅さを溶け込ませた作風でじっくり楽しめる。前作に比べると肩の力が抜けた、
大人の味わいが強まったという雰囲気ながら、アルバムを通して流れを感じさせる構成はさすが。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 スタイリッシュ度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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ESP 2.0「22 LAYERS OF SUNLIGHT」
イギリスのプログレユニット、ESPの2018年作
BRAM STORKERのトニー・ロウを中心にしたプロジェクトの2作目で、ドラムは前作に引き続きBIG COUNTRYのマーク・ブルゼジキ、
ヴォーカルにはLOTUS EATERSのピーター・コイルが参加。サウンドは、オールド英国色を感じさせた前作から、
うっすらとしたシンセにマイルドなヴォーカルを乗せた、優美なポストプログレ路線へと若干変化している。
随所にオルガンによるオールドな感触も残していて、古き良き英国ロックをモダンに深化させたような聴き心地。
メロウなギターにオルガンが重なる大人の味わいに包まれた、シンフォニックロックとしても楽しめる好作品だ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 英国度・・8 総合・・8
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AUSTRALIAN PINK FLOYD SHOW 「Everything Under The Sun」
オーストラリアのピンク・フロイド・トリビュートバンドによるライブ。2017年
男女4人のシンガーにツインギター、シンセ、サックス奏者を含む編成で、2016年ドイツでのステージをCD2枚に収録。
1st収録の“Astronomy Domine”で幕を開け、14分を超える“Shine On You Crazy Diamond”、“Wish You Were Here”、
そしてもちろん名作「The Dark Side of the Moon」や「The Wall」からのナンバーもたっぷり演奏、
厚みのあるシンセにメロウなギターワークで、ピンク・フロイドへのリスペクトが伝わってくる王道のカヴァーが素晴らしい。
「鬱」「おせっかい」といったアルバムからのナンバーも含め、ラストは「The Wall」からの2曲の大曲で締めくくる。
ディープなフロイドファンも納得するレベルの演奏と表現力、そして雄大なスケール感に包まれた見事なライブ作品です。
ライブ演奏・・9 壮大度・・9 フロイ度・・9 総合・・8
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WESERBERGLAND「Sehr Kosmisch Ganz Progisch」
ノルウェーのプログレバンド、ウェザーベルグランドの2017年作
WHITE WILLOWのケティル・ヴェストラム・エイナーセンを中心に、同バンドのヤコブ・ホルム・ルポ、マティアス・オルソン、
WOBBLERのラーズ・フレデリク・フロイスリーらが参加、エレクトロなシンセを、アナログ感あるドラムに乗せ、
涼やかな叙情に包まれたインストサウンドを聴かせる。TANGERINE DREAMなど、ジャーマンロック的でもある
スペイシーな感触もありつつ、メロウなフレージングを奏でるギターや、清涼感のある美しいシンセの重ね、
やわらかにフルートが鳴り響くあたりは、やはり北欧らしい聴き心地。躍動感のあるマティアス・オルソンのドラムも
アンサンブルの屋台骨になっていて、12分、15分という大曲を、適度にフリーキーかつ軽妙に構築してゆく。
NEKROMONKYPIXIE NINJAなどに通じるところもありつつ、より美麗なシンセサウンドが楽しめる逸品です。
キーボー度・・8 プログレ度・・8 北欧度・・8 総合・・8
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PROGELAND 「Gate to Fulfilled Fantasies」
フィンランドのプログレバンド、プロゲランドの2014年作
オルガンを含むシンセにハード寄りのギターと、マイルドなヴォーカルを乗せた、オールドな味わいのサウンド。
Uriah HeepBlack Bonzoあたりに通じる、70'sブリティッシュルーツのヴィンテージなロックを、
北欧らしい涼やかなフログレ感触で包み込んだという雰囲気で楽しめる。楽曲におけるメロディや展開に、
さほど盛り上がりはないので、プログレやシンフォニックロックとしてはやや物足りなさもあるが、
渋めの叙情で聴かせる大人のヴィンテージ・ハードとして、のんびり鑑賞するのがよいかと。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 古き良き度・・8 総合・・7.5
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IMAGIN'ARIA 「Progetto T.I.'A.」
イタリアのプログレバンド、イマジン・エリアの2006年作
90年代から活動する中堅バンドで、ツインギターにうっすらとしたシンセと、イタリア語のヴォーカルを乗せた、
ハードプログレを聴かせる。シンフォニックな要素は希薄ながら、二本のギターによる重厚なハードさとともに、
翳りを帯びたコンセプトアルバム風のシアトリカル性と、イタリアらしい混沌とした空気感を描いてゆく。
全体的にギターが主導なので、シンフォニックに盛り上がるような部分はあまりないのだが、
随所にツインギターの重ねによる叙情的なフレーズも覗かせる。一方ではエレクトロなナンバーや
モダンな硬質感も含んで、悪く言えばとりとめのない、良く言えばミステリアスな味わいの作品だ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 イタリア度・・8 総合・・7
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Albion 「Remake」
ポーランドのシンフォニックロック、アルビオンの2006年作
1994年のデビュー作、1995年の2作目をCD2枚にカップリング。やわらかな女性ヴォーカルの歌声に、
美しいシンセアとメロウなギターを乗せた清涼感のあるサウンドで、初期のQUIDAMにも通じる優美な聴き心地。
紅一点、Anna嬢の歌声は、トレイシー・ヒッチング(Landmarq)などにも通じるハスキーな魅力があって、
楽曲をコケティッシュに彩っている。叙情的な泣きのギターフレーズも随所に彩りを放ち、
東欧らしいアンニュイな湿り気は、まさにシンフォニックロックの王道といった趣である。
2作目になると、翳りを帯びたメロウな作風が強まり、ゆったりとしたやや地味な作風になる。
方向性に迷ったのか、バンドはこの後いったん消滅するが、10年後にまた復活をとげる。
シンフォニック度・・8 美麗度・・9 女性Vo度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Lisa LaRue 2KX 「Fast and Blue」
アメリカの女性シンセ奏者、リサ・ラルーのプロジェクト。2011年作
前作2K9名義に続き、ASIAにも参加したジョン・ペイン、Pete Bardens'MIRAGEに参加した、スティーヴ・アダムスらをはじめ、
ゲストには、リョウ・オクモト(SPOCK'S BEARD)、マイケル・サドラー(SAGA)、マキシ・ニル嬢(元Visions of Atlantis)などが参加。
美麗なシンセワークにメロウなギターを重ね、緩急ある展開とプログレらしいきらびやかなインストパートで、
のっけから18分におよぶ大曲を構築してゆく。クラシカルなチェロの音色にアコースティックギターが絡む優雅な小曲や、
続く12分のインストナンバーでは、ProgMetal的なテクニカルなところも覗かせる。ジョン・ペインの歌声を乗せた
プログレハード風のナンバーなども含めて、なかなか聴きどころの多い力作といえるだろう。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 優美度・・8 総合・・7.5
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Nagakanaya 「L'1classable」
フランスのプログレ・ポップ、ナガカナヤの2011年作
フランス語の女性ヴォーカルを乗せた、70年代ルーツのフレンチポップの感触に
プログレやサイケの香りをまぶしたアレンジで聴かせる、キャッチーなサウンド。
ポップな歌ものながら、ピアノやオルガン、サックスやフルートなども加えたアレンジは
フレンチ・プログレが好きなリスナーにも十分楽しめるだろう。楽曲は3~4分台とシンプルで、
シャンソン風から、ヴァイオリンとギターが重なるシンフォニックハード風のナンバーなど、
ジャケの魔女感に比べ、けっこう幅広いサウンドが詰まっている。
キャッチー度・・8 フレンチ度・・9 女性Vo度・・7 総合・・7.5
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Roedelius 「Jardin Au Fou」
ドイツのシンセ奏者、ハンス・ヨアヒム・ローデリウスの1978年作/邦題「愚者の庭」
クラスター、ハルモニアで活動したシンセ奏者で、本作は2作目のソロ作品。
エレクトロなシンセを重ねたアンビエントなサウンドで、優雅なピアノの旋律などを含め、
ゆったりと落ち着いた作風。2~4分台を中心にした楽曲は単なるBGMのようでもあるが、
デジタルな音の中にも、どこか郷愁を含んだ叙情が感じ取れ、やわらかなフルートの音色など、
人間的な温かさに包まれた繊細な味わいがある。曲によってはシンフォニックな幻想性にも浸れます。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 アンビエント度・・8 総合・・7.5
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11/23
南米系プログレ!(288)
過去作レビューページはこちら


Petrus Castrus 「Mestre」
ポルトガルのプログレバンド、ペトラス・カストラスの1973/2007年作
TANTRAなどとともに、70年代初頭のポルトガル・プログレシーンを彩ったバンド。
デビュー作の再発盤で、やわらかなピアノにオルガンが鳴り響き、ポルトガル語のマイルドな歌声を乗せ、
ゆったりとした叙情美に包まれたサウンド。70'sブリティッシュロック的でもあるブルージーな味わいと、
キャッチーな感触も覗かせつつ、コンパクトな歌ものを主体にした優雅なアートロック風味の聴き心地だ。
派手さはないが、アコースティックな素朴さと、ラテン系らしいおおらかな暖かみに包まれた好作品。
Disc2には2000~2005年の音源を収録。優美な叙情とともに、シンフォニックなサウンドが楽しめる。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 叙情度・・8 総合・・7.5
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Desequilibrios
ブラジルのプログレバンド、デセクイリブリオスの1993年作
南米を代表するシンセ奏者の一人、Fabio Ribeiro(BLEZQI ZATSAZ)が在籍したバンドで、
プログレらしいきらびやかなシンセワークにポルトガル語のヴォーカルを乗せ、
ほどよくテクニカルな展開力で構築する、わりと正統派のシンフォニックロック。
随所にハードエッジなギターも覗かせつつ、南米らしいおおらかな叙情が同居していて、
変則リズムを含んだ展開と、いくぶん怪しくエキセントリックなセンスも面白い。
優美な牧歌性とダイナミックな壮麗さが合わさったシンフォプログレが楽しめる力作。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・8 南米度・・8 総合・・7.5
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Wejah 「Senda」
ブラジルのプログレバンド、ウェジャーの1996年作
ギター、ベース、ドラム、シンセの4人編成で、やわらかなシンセワークに、
適度にメロディックなギターを乗せた、オールインストのシンフォニックロック。
歌の無いインストで、劇的な盛り上がりがない分、単長な感触もあるのだが、
CAMELのような優美な耳心地でゆったりと楽しめる。Quaterna Requiemあたりに比べると、
もう少し濃い目の泣きが欲しい気もするが、この煮え切らなさが南米マイナー系シンフォの魅力でもあるかも。
シンフォニック度・・7 プログレ度・・7 優美度・・9 総合・・7.5

Asa de Luz
ブラジルのプログレバンド、アサ・デ・ラズの1996年作
エレピを含むやわらかなシンセに、ポルトガル語のジェントルなヴォーカルを乗せ、
南米らしい優雅な叙情に包まれた、繊細なシンフォニックロックサウンド。
泣きのフレーズを奏でるギターに、壮麗なシンセアレンジのセンスもよろしく、
SAGRADOをややマイナーにした味わいで楽しめる。90年代の南米シンフォとしてはレベルの高い作品だが、
楽曲は3~5分程度で、全32分というのがやや物足りないか。2作目となる1998年作も見事な出来です。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 繊細度・・9 総合・・8

Chronos Mundi 「Luz & Trevas」
ブラジルのプログレバンド、クロノス・ムンディの1998年作
オルガンを含む美しいシンセにメロウな味わいのギターを乗せ、
軽妙なアンサンブルで聴かせる、王道のシンフォニックロックサウンド。
メリハリのある構築力と、いくぶん唐突ながらドラマティックな展開力で、
10分を超える組曲も、美麗なシンセアレンジとともに優雅な味わいで楽しめる。
やわらかなヴォーカルも加わった南米らしい繊細な耳心地の良さに、
ときにハードシンフォ的な感触も覗かせる。なかなかの力作です。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・8 優雅度・・8 総合・・7.5
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Vlad 「O Quinto Sol」
ブラジルのプログレバンド、ヴラッドの1999年作
フルートが鳴り響き、アコースティックギターにシンセが重なり、ポルトガル語のヴォーカルで聴かせる、
牧歌的な叙情に包まれたサウンド。オルガンやエレキギターが加わると、オールドなロック感触が出てきて、
素朴なバンジョーの音色など、哀愁を含んだフォルクローレ風味のシンフォニックロックが楽しめる。
全体的にはキャッチーな耳心地で、安定した演奏力とともに、曲によってはPFMのような雰囲気もあり、
適度なテクニカル性とアコースティックな要素も同居した好作品です。ボーナスも含め全17曲、たっぷり70分。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 南米度・・8 総合・・8

La Dieta de Worms
アルゼンチンのプログレバンド、ラ・ディエタ・デ・ワームスの1996年作
シンセを含む4人編成で、適度にハードなギターとオルガンを含むシンセに、
スペイン語のヴォーカルを乗せて、キャッチーな優雅さに包まれたサウンド。
メロウなギターフレーズにシンセが重なる爽快なシンフォニック性はよい感じで、
楽曲は3分前後と比較的コンパクト。フォルクローレ的なやわらかな叙情も含んだ耳心地の良さと
アルゼンチンらしい垢抜けないマイナー臭さが同居した、マニア好みの味わいの好作品。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 南米度・・8 総合・・7.5

Habitat 「Baul Repleto de Sugerencias」
アルゼンチンのシンフォニックロック、ハビタットの2001年作
やわらかなシンセにスペイン語のマイルドなヴォーカルを乗せ、南米らしいやわらかな叙情に包まれたシンフォニックロック。
クラシカルギター、12弦ギターのつまびきに、たおやかなピアノが重なる、アコースティカルな繊細さが耳に心地よい。
ギターやドラムはゲストなので、あくまで歌とシンセがメインながら、美しいシンセと優しげなヴォーカルにうっとりと聴き入れる。
途中で入るインタビュー音源は正直余計だが、自主制作らしい素朴で暖かみのある好作品である。
シンフォニック度・・7 プログレ度・・7 繊細度・・8 総合・・7.5
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Nimbus 「El Aguila」
チリのプログレバンド、ニンブスの2004年作
やわらかなシンセにフルート、ギターを重ねた、フュージョン的でもある優雅なサウンド。
1~4分前後の小曲を連ねた、全23曲という構成で、インストを中心にしつつ、
スペイン語のヴォーカルを乗せた牧歌的な味わいもあって、マイナー臭い辺境感と
軽妙なアンサンブルが合わさったという聴き心地。1曲が短いので、展開する前に終わってしまうという、
物足りなさも感じさせつつ、この淡白な煮え切らなさがあるいは個性なのかも。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 優雅度・・8 総合・・7

Sinestesia 「El Folklore Obscuro」
メキシコのプログレバンド、シネステシアの2006年
哀愁を感じさせるアコースティックギターで幕を開け、ヘヴィなギターにシンセが重なり、
スペイン語の歌声を乗せた、妖しいフォルクローレ風のハードプログレが広がってゆく。
シアトリカルに歌い上げるヴォーカルに、クラシカルなピアノにストリングスも加わって、
まるで、「DEVIL DOLLのメキシコ版」か、というような濃密な世界観に圧倒されつつ
ときにメロウなギターフレーズや美しい女性ヴォーカルとともに、オペラティックな優雅さも覗かせる。
ラスト曲などは、シンフォニックなアヴァンメタルというべき聴き心地で、じつに妖しすぎる異色作だ。
ドラマティック度・・8 シアトリカル度・・8 妖しく優雅度・・9 総合・・8

Cronico 「Delirium Room」
メキシコのプログレバンド、クロニコの2007年作
オルガンを含むやわらかなシンセに、変則リズムを含んだ軽妙なアンサンブルと、
スペイン語の女性ヴォーカルを乗せた、優美な聴き心地のシンフォプログレ。
リズムチェンジによるテクニカルな味わいとメロディックな叙情性に包まれて、
女性声入りの美しさは、初期のQUIDAMあたりに通じる雰囲気もある。
8分、9分という大曲も、翳りを帯びた空気感と優雅な構築性でじっくりと楽しめる。なかなかの好作品。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 優美度・・8 総合・・7.5

William Gray 「Living Fossils」
ブラジルのハードプログレ、ウィリアム・グレイの2006年作
シンフォニックなアレンジにハード寄りのギターを重ね、英語のヴォーカルを乗せた
プログレメタル風味もあるシンフォニックハード。ストリングスによる壮麗なアレンジや、
オルガンが鳴り響くオールドなテイストが同居しつつ、小曲を挟んだコンセプト的な流れで、
ドラマティックに世界観を構築してゆくセンスは、なかなかスタイリッシュな感触である。
一方ではメロウなギターやピアノを乗せて、ゆったりと聴かせる叙情パートも多く、
インスト主体で派手さはないが、モダンなシンフォニックロックとしてもじっくり楽しめる力作だ。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 モダンシンフォ度・・8 総合・・7.5
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11/16
ロンリー・ロボット素晴らしい!(276)


QUATERMASS
ブリティッシュロックバンド、クォーターマスの1970/2013年作
2013年のリミックスによる新バージョンで、ジャケのプテラノドンも一部カラーになっている。
ギターレスのトリオ編成でオルガンが鳴り響き、ハードロック寄りのヴォーカルを乗せたスタイルながら、
プログレ、アートロック的な混沌とした空気感にも包まれたサウンドで、新たなリミックスにより
ベースとドラムの迫力がぐっと増している。クラシカルなハープシコードにストリングスが重なる
叙情ナンバーなども含め、70年代初頭のアルバムとしては聴きごたえのある傑作だろう。
2013年盤は、ボーナスにシングル曲やライブ音源を収録、5.1chのサラウンド音源収録のDVD付き。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 リミックス度・・9 総合・・8
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THE SEA WITHIN
The Flower Kingsのロイネ・ストルトに、Pain Of Salvationのダニエル・ギルデンロウ、
ベースはヨナス・レインゴールド、ドラムにマルコ・ミンネマン、シンセはトム・ブリスリンという、
名だたるメンバーが集結したスーパーバンド、シー・ウィズインの2018年作
ダニエルのヴォーカルでロイネがギターをとるという、ファンにはまさに夢のようなコラボである。
近年のPoSのようなオールドスタイルのロック感触に、翳りを帯びた叙情を加えたサウンドで、
ほどよくテクニカルなアンサンブルを聴かせる。ブルージーでメロウなロイネのギターに酔いしれつつ、
存在感のあるヨナスのベースや、トム・ブリスリンの繊細なシンセワークも随所に効いている。
北欧版MARILLIONというような、プログレ感のあるウェットなメロディックとしても楽しめる逸品だ。
ジョン・アンダーソン、ケイシー・マクファーソン(Flying Colors)、ジョーダン・ルーデスらがゲスト参加。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 叙情度・・8 総合・・8
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LONELY ROBOT「THE BIG DREAM」
イギリスのシンフォニックロック、ロンリー・ロボットの2017年作
IT BITESなどで活躍するジョン・ミッチェルによるプロジェクトの2作目。ドラムはFROST*のクライグ・ブランデルで、
それ以外のギター、ベース、シンセはジョン・ミッチェルが手掛けている。美しいシンセに映画的なナレーションを乗せ
SF的なコンセプトストーリーとともに、適度にハードエッジなモダンなシンフォニックロックを展開。
キャッチーな歌メロが加わると、IT BITESに接近したような感触で、メロウなギターワークと
プログレらしいシンセアレンジも耳心地良い。前作に比べると、楽曲におけるメロディのフックと
ダイナミックな緩急とが感じられ、繊細さな美意識と泣きの叙情美がぐっと際立っている。
厚みのある音作りも素晴らしく、スタイリッシュな英国シンフォニックロックの傑作といえる。
ドラマティック度・・8 モダンシンフォ度・・9 叙情度・・9 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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CITIZEN CAIN'S STEWART BELL 「THE ANTECHAMBER OF BEING (PART 2)」
イギリスのプログレバンド、CITIZEN CAINのシンセ奏者、ステュアート・ベルによるソロ。2017年作
前作の続編となるコンセプト作品で、美しいシンセアレンジにシアトリカルなヴォーカルを乗せ、
ミステリアスな空気感に包まれたシンフォニックロックを展開。10分を超える組曲を主体に、
初期のMARILLIONあたりにも通じる、オールドなポンプロック色も感じさせつつ、
ドラマティックな展開力は、PALLASなど英国らしいハードシンフォの感触でも楽しめる。
ゲストによる女性ヴォーカルも加わった、男女Voのロックオペラ的な雰囲気もあり、
曲が長い分、気が短い方には向かないが、優雅で濃密なシンフォニックロックが味わえる。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 英国度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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ELOY 「The Vision,The Sword And The Pyre Part 1」
ドイツのプログレバンド、エロイの2017年作
1971年のデビューのベテランで、スタジオ作としては2009年以来となる18作目となる。
ジャンヌ・ダルクをテーマに、百年戦争時代のフランスを舞台にした壮大なコンセプト作の1作目。
シンフォニックなアレンジに包まれて、ときにケルティックなテイストも含んだ叙情性で、
ベテランらしいオールドなロックテイストも覗かせつつ、じっくりとドラマを描いてゆく。
女性コーラスなどを含んだ優美な聴き心地に、初期のようなサイケな浮遊感もあって、
この煮え切らなさがエロイというべきか。ともかく、シンフォニックロックとしての大作です。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 壮大度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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SARIS 「UNTIL WE HAVE FACES」
ドイツのプログレハード、サリスの2014年作
80年代から活動するベテランで、本作は復活後の2作目となる。
シンフォニックなアレンジと適度にハードなギターに、男女ヴォーカルの歌声を乗せた、
PALLASあたりにも通じるプログレハードサウンド。楽曲自体はわりとシンプルな感触であるが、
壮麗でドラマティックな空気に包まれた聴き心地は、ハードなシンフォニックロックとして楽しめる。
一方では、キャッチーなノリのナンバーでは、音の分厚いメロディアスハード的でもあり、
メタル、プログレ両方のリスナーに対応。ラストは14分の、きらびやかなプログレハード大曲。
メロディック度・・8 プログレハー度・・8 新鮮度・・7 総合・・7.5
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FREQUENCY DRIFT「Ghosts...」
ドイツのシンフォニックロック、フリークエンシー・ドリフトの2011年作
3作目となる本作は、過去2作のようなコンセプト的なドラマ性を感じさせるイントロから始まり、
やわらかなシンセにメロウなギター、美しい女性ヴォーカルを乗せた、ゆるやかな叙情に包まれたサウンド。
ヴァイオリンやフルート、ハープも加えた優雅さと、翳りを帯びたアンニュイな空気が同居したところは、
北欧のバンドのような涼やかな雰囲気である。10分前後の大曲を主体にした大作志向であるが、
楽曲の展開力という点では、次作以降に比べるとやや物足りなさも。その分、メランコリックな味わいと
雰囲気モノとしての空気感はよく伝わってくる。女性声の薄暗系シンフォが好きな方はいかが。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 叙情度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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SEVEN STEPS TO THE GREEN DOOR 「The Puzzle」
ドイツのプログレバンド、セブン・ステップス・トゥ・ザ・グリーン・ドアの2008年作
男女3人のヴォーカルを含む8人編成で、モタンなシンセアレンジにキャッチーなメロデイで聴かせる、
スタイリッシュなハードプログレ。オルタナ的でもあるキレ味と、エモーショナルなヴォーカルが同居した
繊細な叙情は、同郷のSYLVANなどにも通じる感触で、新時代のプログレ・メロディックロックというサウンドだ。
IT BITESなどを思わせる歌メロのキャッチーさと、ほどよくハードなギターにきらびやかなシンセで、
シンフォニックな優雅さと厚みのあるアンサンブルを構築するところは、デビュー作にしてすでに完成度が高い。
女性ヴォーカルのしっとりとした叙情や、サックスが鳴り響く大人の哀愁を感じさせるナンバーも含む、全73分の力作だ。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 スタイリッシュ度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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REFORM 「Reveries of Reform」
スウェーデンのプログレバンド、リフォームの2011年作
CD2枚組で、エレピを含むやわらかなシンセにメロウなギターを乗せて、カンタベリー的な優雅さを感じさせる、
インストのシンフォニックロック。北欧らしい涼やかな叙情美に包まれたやわらかなメロディが心地よく、
CAMELをアンビエントなジャズロック寄りにしたという雰囲気もある。北欧を代表するシンセ奏者、
RALPH LUNDSTENがアレンジを務めていて、軽妙なアンサンブルと幻想的な空気が絶妙に同居。
ロイネ・スルトばりのギターフレーズもよろしく、まさに「カンタベリーな北欧シンフォ」というべき逸品です。
メロディック度・・8 優雅度・・9 北欧度・・9 総合・・8
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GREYFEATHER
アメリカのプログレバンド、グレイフィーザーの2017年作
FARPOINT、LITTLE ATLAS、ILUVATAR、IZZのメンバーが集ったユニットで、
うっすらとしたシンセにオールドなテイストのギター、枯れた味わいのヴォーカルを乗せた、
古き良き感触のメロディックロックというサウンド。プログレ的な感触は薄めで、
ブルージーなギターを乗せた、70年代ブリティッシュロックの香りも感じさせる。
LITTLE ATLASのシンセ奏者によるオルガンやピアノを含む鍵盤ワークはよい感じだが、
全体的には歌ものとしては地味な聴き心地で、楽曲ごとの魅力はやや薄いか。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 楽曲・・7 総合・・7
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Gwendal 「Live In Getxo」
フランスのケルトロック、ウェンダルのライブ。2016年作
70年代から活動するベテランで、本作は2015年のスペイン、バスク州でのライブを収録。
エレキギターやドラムというロックなアンサンブルに、艶やかなヴァイオリンとやわらかなフルートの音色を重ねた
優雅なケルティックロックを聴かせる。ゲストによるイーリアンパイプやアコーディオンなどの牧歌的な味わいを含め、
本格派のケルトサウンドをロックに絶妙に融合させた軽妙なアンサンブルは、さすがベテランの風格である。
ほどよくシンセによる味付けもあるので、プログレ方面のリスナーにも楽しめるだろう。80分におよぶ優美なライブ作品です。
ライブ演奏・・8 ケルティック度・・8 優雅度・・9 総合・・8
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Gaspar Almos 「The Lagend of Lake Saint Anna」
ハンガリーのトラッドロック、KORMORANのヴァイオリン奏者、ガスパー・アルモスの2010年作
語りによるコンセプト的なイントロから始まり、艶やかなストリングスを含むオーケストレイテッドな優雅さで
クラシカルなシンフォニーを描き出す。ドラムにギターとシンセアレンジも加わったシンフォニックロック風味と
民俗的なトラッド要素が合わさると、コルモランのインストバージョンという趣でも楽しめる。
全体的はあくまで優雅な聴き心地であるが、8分を超えるナンバーではプログレ的な展開力も垣間見せる。
クラシカル度・・8 ロック度・・7 優雅度・・9 総合・・7.5



10/20
プログレの秋深し(264)


Galahad 「Seas of Change」
イギリスのシンフォニックロック、ガラハドの2018年作
80年代後半にデビュー、初期のポンプロック路線から、2000年代後半にはドラマティックなシンフォニックハードへと進化、
2012年作ではデジタリィでモダンな作風で賛否を呼んだが、本作ではなんと、本編が42分全1曲という構成で、
本格派のシンフォニックロックへと回帰している。英国のEU離脱による世界をテーマにしたコンセプトアルバムで、
美しいシンセアレンジにやわらかなフルート、ピアノにナレーションを重ねたイントロから、壮麗なスケール感とともに
ドラマティックなシンフォニックロックを展開。バンドに復帰したリー・エイブラハムのメロウなギターフレーズに、
スチュアート・ニコルソンのマイルドなヴォーカルを乗せて、英国らしいウェットな湿り気に包まれた優雅な叙情を描いてゆく。
即効的な盛り上がりは薄いが、じっくりと鑑賞しながら、英国の誇りに包まれた本格派シンフォニックロックが味わえる力作だ。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 壮大度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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KAIPA DA CAPO 「Live in Stockholm」
スウェーデンのプログレバンド、カイパ・ダ・カーポのライブ。2017年作
復活KAIPAとは別に、ロイネ・ストルトが70年代の古き良きサウンドを再現するべく結成したバンドで、
オリジナルメンバーである、トーマス・エリクソン、インジマー・ベルグマンに、ロイネの弟、マイケル・ストルトも参加。
さらにはシンセにラレ・ラーションを迎えた編成での、2017年ストックホルムでのライブを収録している。
のっけから2nd収録の大曲“Skent Bedrar”で、往年のカイパファンはたまらない。ロイネのメロウなギターと
オルガンを含むシンセに、渋い味わいのマイケルの歌声が重なり、湿り気を帯びたかつての空気感を再現してゆく。
2016年作「Darskapens Monotoni」からのナンバーも、違和感なくオールドなセットリストに溶け込んでいる。
ラレの美しいピアノソロ、シンセソロなどもアクセントになっていて、古さと新しさを融合させたライブが楽しめる。
ライブ演奏・・8 ドラマティック度・・8 カイパ度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Andrea Orlando 「Dalla Vita Autentica」
イタリアのミュージシャン、アンドレア・オルランドの2017年作
HOSTSONATENLA COSCIENZA DI ZENOCURVA DI LESMOなどにも参加するドラマーのソロ作品で、
LA MASCHERA DI CERRAFINISTERREARIESDAALUBI MINORCURVA DI LESMOなどのメンバーが参加、、
美麗なシンセにメロディックなギター、イタリア語のヴォーカルを乗せた、王道のシンフォニックロックを聴かせる。
マスケーラ・ディ・チェラのアレッサンドロの歌声は、ヴィンテージな暑苦しさをかもしだしているが、
サウンド自体はスタイリッシュで優雅な聴き心地。ドラマーでありつつも、自身で奏でるオルガンやメロトロンによる
古き良きシンフォプログレのテイストもよろしく、ARIESのシモーネ嬢の歌うやわらか叙情ナンバーなども魅力的だ。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 イタリア度・・8 総合・・8
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JANE GETTER PREMONITION「ON」
アメリカの女性ギタリスト、ジェーン・ゲッターによるユニットの2015年作
ジャズロックシーンで活躍する技巧派の女性ギタリストで、夫であるシンセ奏者、アダム・ホルツマンとのコンビで
フランク・ザッパやアラン・ホールズワースのバンドで活躍した、チャド・ワッカーマンをドラムに、
THE ARISTCRATSのブライアン・ベラーをベースに迎え、優雅な叙情性とテクニカルな構築性が合わさった、
フュージョンロックを聴かせる。やわらかなシンセアレンジに男女ヴォーカルを乗せた、しっとりとした薄暗い叙情美は
プログレ寄りの聴き心地であるが、TESTAMENTのアレックス・スコルニックが参加していることもあってか、
ギターサウンドには適度にハードエッジな感触もあって、メタル方面のリスナーにも楽しめるかもしれない。
GONG/Steven Wilson BANDのテオ・トラヴィスの奏でるフルート、サックス入りのナンバーも美しい。
ドラマティック度・・7 薄暗度・・8 優雅度・・9 総合・・8
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Aranis 「Smells Like Aranis」
ベルギーのチェンバーロック、アラニスの2017年作
母国の先輩である、UNVERS ZEROPRESENTを受け継ぐ、本格派のチェンバーロックバンド。
今作はなんと、オルタナの代名詞、NIRVANAのカヴァーを中心にしたアルバムで、
ヴァイオリン、ピアノ、フルート、アコーディオン、ベースという編成で、ロックナンバーを大胆にアレンジ、
代表曲“Smells Like Teen Spirit”をはじめ、わりと違和感なくクラシカルなチェンバーに料理している。
ギターやドラムが入らないので、元曲を知らなければなんのカヴァーなのか気づかないかもしれない。
デヴィッド・ボウイのカヴァーや、オリジナルの室内楽ナンバーを織り込んで、自然な流れで自分たちの作品にしている。
ロック度・・1 チェンバー度・・8 スリリング度・・7 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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PRESENT 「Certitudes」
ベルギーのチェンバーロック、プレザンの1998年作
5作目となる本作は、重たいベースとギターにピアノが絡み、怪しげなヴォーカルを乗せた
ミステリアスな緊張感に包まれたサウンドを聴かせる。変拍子を含んだアンサンブルは、
ときに優雅でもあり、MAGMAあたりに通じるジャズロック的な感触も覗かせる。
クラシカルなピアノに緊迫感あるギターを重ねた、スリリングなリフレインなど、
10分を超えるナンバーを中心に、じっくりとダークな空気を描き出す作風だ。
暗黒性は抑え目なので、曲は長いがわりと聴きやすい一枚かもしれない。
チェンバー度・・8 スリリング度・・9 優雅度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Yogi Lang 「No Decoder」
ドイツのポストプログレ、RPWLのヴォーカル、ヨギ・ラングのソロ作品。2010年作
メンバーに英国のセッションミュージシャンを迎え、うっすらとしたシンセアレンジにメロウなギター
マイルドなヴォーカルを乗せ、RPWL同様に繊細な翳りに包まれた叙情を聴かせるサウンド。
オルガンが鳴る牧歌的な歌ものナンバーなども含めて、PINK FLOYDルーツのゆったりとした浮遊感に、
自身の奏でるプログレらしいシンセワークも随所に光っている。スリリングな展開というのはあまりないが、
美しいシンセにやわらかなヴォーカルと、ヴァイオリンやサックスなども加えた、優美な叙情性に包まれた好作品。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 叙情度・・8 総合・・7.5
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Patrick Moraz 「Future Memories I and II」
スイス出身のキーボーディスト、パトリック・モラーツのライブ音源。2007年作
YESにも参加したことで知名度を高めた鍵盤奏者であるが、本作は1979年と1982年に制作されたTV用ライブの音源で、
キーボードのみで録音された優美でアンビエントなシンセサウンドを演奏している。クラシカルなテイストを含みつつも、
どこかキャッチーな雰囲気を感じさせるのが特徴で、そこがエマーソンやウェイクマンとはまた違った魅力だろう。
シンセの重ねによるスペイシーな感触は、Klaus Schulzeなどにも通じる味わいながら、アヴァンギャルドであっても
決してダークにはならないところがわりと聴きやすい。デジタルシンセの魅力を十分に活かしたクリアな美しさと、
エレクトロなポップ性とともに硬質なスケール感を描く、彩り豊かなシンセミュージックが楽しめます。
クラシカル度・・7 プログレ度・・6 キーボー度・・9 総合・・7.5
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Patrick Moraz/Syrinx 「Coexistence」
スイス出身のキーボーディスト、パトリック・モラーツと、パンパイプ奏者、シリンクスによる1980年作
エレピを含むきらびやかなシンセアレンジに、やわらかなパンパイプの音色のが合わさり、
随所にゲストによるギターとドラムを加えたアンサンブルで、優雅なインストサウンド聴かせる。
パンパイプがメインメロディを奏でる、フォルクローレ的な素朴な叙情性と、デジタルなシンセサウンドが
コントラストになっていて、モラーツのシンセが前に出すぎないところも作品のバランスとなっている。
シンフォニックなシンセが美しいパートと、しっとりとしたアコースティカル性が融合したやわらかな聴き心地で、
派手さはないもののゆったりと楽しめる内容である。アルバム後半の18分の組曲ナンバーもじつに優美です。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 優雅度・・8 総合・・7.5
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La Femme Verte 「Small Distortions」
ベルギー人のシンセ奏者を中心にしたプロジェクト、ラ・フェメ・ベルテの2010年作
ローリング・ストーンズやナイン・インチ・ネイルズ、ルー・リード、ペット・ショップ・ボーイズ、デペッシュ・モードなどのカヴァー集で、
なんといっても、All About Eveのジュリアンヌ・リーガンが参加しているのが目玉だろう。
エレクトロなシンセと打ち込みのアレンジで、けだるげな彼女の歌声と男性ヴォーカルが絡むストーンズのカヴァーや、
しっとりとしたモダンなアンビエントサウンドを聴かせるNINのカヴァーはなかなか魅力的。ジュリアンヌは11曲中の5曲に参加、
その他に2人の女性ヴォーカルが参加していて、男性ヴォーカルメインの曲や、よく知らないカヴァー曲などは、
正直、どうということもないので、アンビエントポップとしては中庸の作品か。どうせなら全曲ジュリアンヌに歌って欲しかった。
ドラマティック度・・6 ロック度・・3 アンビエント度・・8 総合・・7
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バテン・カイトスII ~始まりの翼と神々の嗣子 オリジナルサウンドトラック
日本のシンセ奏者や、桜庭統によるゲームサントラ作品。2006年作
同タイトルの続編で、前作も桜庭サウンドがたっぷり楽しめる好内容だったが、今回はCD3枚組。
桜庭氏の娘が歌うヴォーカルナンバーで幕を開け、ヴァイオリンを含むストリングスアレンジと
シンセの重ねによるオーケストラルなシンフォニック性に包まれた壮麗な世界観が広がってゆく。
バトルシーンでのノリのよいナンバーでは、オルガンにヴァイオリンが絡むプログレな感触も健在。
ゲーム自体は未体験なので、ダンサブルな4つ打ちビートのナンバーなどは場違いにも感じるが、
ギターの入ったハードロック調のナンバーからしっとりとしたピアノ曲まで、幅の広い曲調が楽しめる。
さすがに曲が多いのでCD3枚聴くのは大変だが、サントラとしてのクオリティはさすがです。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 壮麗度・・8 総合・・7.5
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9/30
PFM、エニド、VDGG、タイフォン!(253)


PFM [Emotional Tattoos」
イタリアのプログレバンド、ブレミアータ・フォルネリア・マルコーニの2017年作
FABRIZIO DE ANDREのカヴァーやオーケストラとの共演作を挟み、オリジナルアルバムとしては2007年以来となる作品で、
フランコ・ムッシーダが抜けて、フランツ・ディ・チョッチョ、パトリック・ジヴァスを中心に若手メンバーを含む7人編成となった。
やわらかなシンセにメロウなギター、ディ・チョッチョの枯れた味わいのヴォーカルを乗せた、ゆったりと叙情的なサウンドで
しっかりとプログレ的な味わいも残した聴き心地。ヴァイオリンやオーケストラルなアレンジを加えた優美なシンフォニック性と
大人の哀愁を感じさせるベテランらしいテイストがバランスよく合わさり、すんなりと自然な耳心地で楽しめる。
存在感のあるジヴァスのベースや、随所にメロディックなフレーズを奏でるギターなど、演奏面でのレベルの高さもさすがで、
かつての“Calebration”を思わせる軽快なナンバーにもニヤリ。ムッシーダ不在を感じさせない好作品だ。
英語とイタリア語それぞれを収録した2枚組仕様で、やはりイタリア語による響きが似合いますね。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 優雅度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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THE ENID 「RESURGENCY」
イギリスのシンフォニックロック、エニドの2017年作
バンドの創始者である、ロバート・ジョン・ゴドフリーが引退し、新たにトリオ編成となっての新作。
2010年作「JOURNEY's END」、2012年作「INVICTA」、2016年作「DUST」の楽曲を再録音したアルバムで、
のっけからハード寄りのギターにオルガンが鳴り響き、一味違ったプログレハードなエニドかと思いきや、
壮麗なオーケストレーションのアレンジも重なって来て、優雅なクラシカル性はしっかりと継承している。
これまでにないモダンなアレンジも加えた作風には、往年のファンには賛否があるだろうが、
ジェイソン・ダッカーの流麗なギターフレーズは、かつてのステファン・スチュアートを思わせ、
しっかりとその美意識を受け継いでいる。ゴドフリーが去ってのちの新たなエニドを作り出そうという、
若きメンバーの意気込みは評価したい。固定観念を捨てれば、素晴らしいシンフォニックロック作品だ。
クラシカル度・・8 優雅度・・9 新生エニ度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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VAN DER GRAAF GENERATOR 「DO NOT DISTURB」
イギリスのプログレバンド、ヴァン・ダー・グラフ・ジェネレーターの2016年作
2005年に28年ぶりに復活し、本作は復活後5作目となる。ピーター・ハミル、ヒュー・バントン、ガイ・エヴァンスのトリオ編成で、
前作「ALT」は即興的な味わいの小品であったが、本作もハミルの味わいのあるヴォーカルを主体にゆったりと聴かせつつ、
やわらかなオルガンの音色やピアノを乗せた優雅なアンサンブルが楽しめる。楽曲は5~7分前後を主体に、
シンプル過ぎず複雑すぎず、随所にリズムチェンジを含むプログレ的な展開力も健在で、かつてを思わせる屈折感のある
知的なアレンジセンスも光っている。即興的なジャズ風のパートなど、聴き手に媚びないアーティスティックな姿勢など、
ここにきてぐっとVDGGらしさが戻ってきた。優雅さと屈折したセンスの同居…まさに大人のプログレというべき逸品です。
ドラマティック度・・7 大人のプログレ度・・9 優雅度・・9 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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VAN DER GRAAF GENERATOR 「Live In Concert At Metropolis Studios, London」
イギリスのプログレバンド、ヴァン・ダー・グラフ・ジェネレーターのライブ。2012年作
2010年、TV放送用に収録されたロンドン、メトロポリス・スタジオでのライブを2CD+DVDに収録。
ピーター・ハミル、ヒュー・バントン、ガイ・エヴァンスのトリオ編成で、オルガン、ピアノが鳴り響き、
ハミルの独特の歌声を乗せた優雅な演奏は、まさに往年のVDGGを思わせる生々しいサウンド。
2008年作「TRISECTOR」からのナンバーを中心に、過去作からの楽曲も演奏していて、
“Lemmings”でのでスリリングなアンサンブルは素晴らしい。ときに優しく、ときにダーティにガナリ立てる、
ヴォーカルのキレっぷりもいいですね。DVD映像では、シンセからギターに持ち替えながら熱唱する
ハミル先生のお姿がとても恰好よいです。音質も良好、ファンなら必携のライブ作品ですな。
ライブ演奏・・9 プログレ度・・8 優雅度・・8 総合・・8
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Tai Phong 「Live in Japan」
フランスのプログレバンド、タイ・フォンのライブ作。2016年作
2014年に14年ぶりの復活作を発表し、その年、ついに念願の日本公演を実現。その来日公演を2CDに収録。
オリジナルメンバーは、カーン・マイのみとなったが、新たに女性ヴォーカルを含んだ編成で、
新作からのナンバーに、過去作品からの楽曲もたっぷりと披露。名曲“Goin' Away”、“Sister Jane”なども
ハスキーな女性ヴォーカルによって、新鮮な味わいになっている。演奏の方は、正直スリリングな部分が薄く、
曲によってはプログレとしては物足りなさもあるのだが、その分ゆったりとした叙情性に包まれた聴き心地。
Disc2では、2nd収録“When It's The Season(憧憬と失意の季節)”も披露。個人的にタイフォン最高の名曲だ。
ボーナスCDには、日本盤未収録曲5曲入り。ライブ映像を収録したDVD付きのバージョンもある
ライブ演奏・・7 タイフォン度・・7 名曲度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Knight Area 「Hyperlive」
オランダのシンフォニックロック、ナイトエリアのライブ作。2015年作
2004年にデビュー、メタル寄りのハードさを含んだサウンドで、高品質な作品を作り続けるバンド。
本作は2015年ポーランドでのライブで、2014年作「Hyperdrive」をほぼ全曲を再現したステージをCD+DVDに収録。
ハードエッジなギターにきらびやかなシンセを重ね、伸びやかなヴォーカルを乗せたハードシンフォニックサウンドで、
パワフルなドラムも含めて安定した演奏で、美麗なプログレメタルとしても楽しめるような聴き心地。
ゆったりとしたナンバーでの叙情的なギターフレーズも心地よく、泣きの盛り上がりでアルバムの楽曲を締めくくる。
過去作のナンバーによる16分のメドレーも含めて、初めてこのバンドを聴く方にも存分に楽しめる内容だ。
シンフォハー度・・8 プログレ度・・7 ライブ演奏・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Flamborough Head 「Shreds of Evidence - Obscure Live Tracks and Other Rarities」
オランダのシンフォニックロック、フラムボロウ・ヘッドの2017年作
1998年にデビュー、2013年までに6作を発表。いまや蘭シンフォを代表する存在となったバンド。
本作は過去のオムニバス提供曲や未発のライブ音源をまとめたコンピレーション作品。
女性ヴォーカルの歌声にメロウなギターと美麗なシンセで聴かせる、やわらかなシンフォニックロックで、
The Moody BluesThe Flower Kingsのカヴァーもじつに優雅な仕上がり。
躍動的なライブ音源や、「The Divine Comedy」3部作収録曲をまとめて聴けるのも嬉しい。
全75分、正規アルバムとは別に、バこのンドの歩みを俯瞰できるコンピ作です。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 優雅度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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NO NAME 「4」
ルクセンブルクのプログレバンド、ノー・ネームの2008年作
シンセに女性Bを含む5人編成で、きらびやかなシンセワークにメロディックなギターで、
往年の90年代シンフォを後継するような、王道のシンフォニックロックを聴かせる。
PENDRAGONPALLASなどにも通じる泣きの叙情と、随所にリズムチェンジを含んだ展開力とともに
ドラマティックな世界観を描いてゆく。優美で繊細なシンセアレンジとメロディのフックも魅力的で、
ポンプロックルーツのキャッチー要素もあり、マイルドなヴォーカルもなかなか耳心地よい。
多くのシンフォ好きの胸を打つシンフォ傑作。バンドはのちにTNNE(THE NO NAME EXPERIENCE)と改名。
シンフォニック度・・8 ドラマティック度・・8 叙情度・・8 総合・・8
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MAR ASSOMBRADO 「CANCOES DO FAROL」
ブラジルのシンフォニックロック、マー・アソンブラドの2017年作
美麗なシンセにアコースティックギターのつまびきとやわらかなフルートが重なり、
ポルトガル語による語りを乗せたイントロ曲から、繊細で優雅な美意識に包まれる。
2曲目以降も妖しくフルートが鳴り響き、きらびやかなシンセとともにゆったりとした叙情を描きつつ、
アコースティックパートを盛り込んだ、南米らしいやわらかなシンフォニックロックを聴かせる。インストパートをメインにしつつ、
随所にマイルドなヴォーカルを乗せ、ときにトランペットやヴァイオリンも加えた、耳心地のよい優美な叙情性が楽しめる。
ドラマティックな盛り上がりという点では物足りなさもあるが、今後の成長次第では素晴らしい傑作を作りそう。
ドラマティック度・・7 優美度・・8 叙情度・・8 総合・・7.5

Ananke 「Malachity」
ポーランドのプログレバンド、アナケの2010年作
ABRAXASのヴォーカルとシンセを中心にしたバンドで、薄暗さを含んだモダンな空気感に、
シアトリカルな母国語のヴォーカルを乗せた、ゴシック風味のシンフォニックロックを聴かせる。
メロウなギターに美しいシンセと独特の味のあるヴォーカルで、東欧らしい翳りを描くサウンドは、
やはりかつてのABRAXASに通じる感触で、メランコリックなポリッシュロックが楽しめる。
全体的には、しっとりとした歌ものメインの作風だが、オルガンを使ったプログレ的な部分もあり、
繊細な叙情性をほどよくスタイリッシュに仕上げたという、ゆったりと耳心地の良い好作品です。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 叙情度・・8 総合・・8
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Vespero 「Azmari - Abyssinian」
ロシアのサイケプログレ、ヴェスペロのライブ作。2016年作
シンセにヴァイオリン、サックス奏者を含む7人編成のステージで、スペイシーなシンセにヴァイオリンが鳴り響き、
グルーヴィなベースとドラムによるアッパーなリズムとともに、のっけから17分のサイケ大曲を展開。
ノリのあるサイケロックとしては、Ozric Tentaclesにも通じるが、こちらはもっとフリーで先の読めない展開と
ミステリアスな気配を漂わせる。一方では、優美なヴァイオリンとシンセが重なるシンフォニックな質感も覗かせ、
オールインストであるが、厚みのあるアンサンプルで、妖しいスケール感に包まれた濃密なサウンドを聴かせる。
ドラマティック度・・7 サイケ度・・8 妖しげ度・・8 総合・・8
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Brett Kull 「The Last of the Curlews」
アメリカのプログレバンド、ECHOLYNのギタリスト、ブレット・カールのソロ。2008年作
軽妙で優雅なプログレを聴かせるエコリンとはやや趣を異にし、本作は叙情的なギターフレーズと
うっすらとしたシンセアレンジに、ジェントルなヴォーカルを乗せたゆったりとしたメロディックロック。
メロウなギターによる繊細な泣きの叙情は、ドイツのSYLVANあたりにも通じる感触もあり、
3~4分前後の歌ものナンバーにアコースティックを含んだ、わりとシンプルで素朴な聴き心地。
プログレ的な展開はあまりないが、美しいシンセやギターフレーズなどにはさすがのセンスを感じさせる。
メロディック度・・8 プログレ度・・6 叙情度・・8 総合・・7.5 
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Discipline 「Chaos Out Of Order」
アメリカのプログレバンド、ディシプリンの1988/2013年作
当時カセットのみの自主制作で発表された音源を、2013年にCD化したもので、
美しいシンセにリーダーであるマシュウ・パーメンターの独特のヴォーカルを乗せた、
シアトリカルかつ繊細な味わいは、まさにピータ・ハミルのVDGGを思わせる。
アコースティックな牧歌性に、ヴァイオリンも鳴り響き、優雅な歌もの感触の中にも、
知的なアレンジや展開を覗かせるところは、すでに非凡なセンスが光っている。
正規アルバムではないので音質はそれなりだが、バンドのプロトタイプとして十分に楽しめる内容だ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 優雅度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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9/14
9月のプログレ(240)


I Am The Manic Whale 「Gathering The Waters」
イギリスのプログレバンド、アイ・アム・ザ・マニック・ホエールの2017年作
前作は、IT BITESあたりを思わせるメロディアスな傑作であったが、2作目となる本作は
オルガンが鳴り響くヴィンテージなロック感触で始まりつつ、キャッチーな歌メロを乗せた爽快なフックは、
TRANSATLANTICにも通じる聴き心地。11分、13分、18分という大曲も、優雅なメロディアス性とともに、
決してクドすぎない軽やかでスタイリッシュな感触だ。シンセに重なるギターの叙情的なフレージングもよろしく、
演奏力、アレンジセンスともに隙がない。英国産の正統派プログレでは、BIG BIG TRAIN以来の逸材といえる。
古き良きプログレ性を継承しつつも、軽妙な構築センスを融合させた、全68分の高品質傑作だ。
メロディック度・・9 プログレ度・・8 優雅度・・9 総合・・8.5
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DAMANEK 「On Track」
イギリス、ドイツ、オーストラリアのメンバーによるプログレユニット、ダマネクの2017年作
The Tangentのガイ・マニング中心に、MASCHINE、SEVEN STEPS TO THE GREEN DOOR、SOURTHERN EMPIRE
といった、各国のメンバーが集結したユニットで、適度に硬質感のあるハードさとオルガンを含むきらびやかなシンセに
マイルドなヴォーカルを乗せたモダンなシンフォニックロックを聴かせる。IT BITESのキャッチーな部分と、
MARILLIONの翳りある叙情を合わせたという感触に、ピアノ、サックスが鳴り響く大人の哀愁も感じさせる。
歌もの的な聴きやすさを前に出しつつ、環境破壊をテーマにした雄大なスケール感をスタイリッシュなセンスで包み込んだ、
モダンプログレの好作品である。ルーク・マシン(Maschine)、ニック・マグナス、Phideauxなどがゲスト参加。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 大人の叙情度・・8 総合・・8
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Mantra Vega 「The Illusion’s Reckoning」
イギリスのシンフォニックロック、マントラ・ヴェガの2016年作
Mostly Autumnのヘザー・フィンドレイをフロントにしたバンドで、モストリー・オータムのギター、ドラムも参加、
アコースティックギターを用いた牧歌的な感触に、やわらかな女性ヴォーカルと美しいシンセを加えた、
繊細で優美なシンフォニックロック。当然ながら、Mostly Autumnに通じる優雅な聴き心地であるが、
ヘザーさんの歌声をより前に出した作風で、やわらかなリコーダーの音色も含んだしっとりとしたフォークロック色に、
ときにギターを重ねた音の厚みや、メロトロンやオルガンを含むプログレらしいシンセアレンジも覗かせる。
魅力的な歌声とシンフォニックな美しさに包まれた、ラストの10分におよぶタイトル曲にはウットリとなる。
トロイ・ドノックリー(Nightwish)、イレーネ・ヤンセン、アルイエン・ルカッセンなどがゲスト参加。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8
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Kim Seviour 「Recovery Is Learning」
イギリスの女性シンガー、キム・セイヴィアーの2017年作
TOUCHSTONEのシンガーのソロで、ジョン・ミッチェル(It Bites)が全面プロデュース、演奏も手掛けている。
美麗なシンセアレンジに、伸びやかでフェミニンな女性ヴォーカルを乗せたメロディックロックで、
適度なプログレ感をシンフォニックに包み込んだという聴き心地。男女Voだったタッチストーンに比べると、
彼女の歌声の魅力がダイレクトに感じられ、楽曲は4~5分とわりとシンプルながら、
壮麗な音の厚みとキュートでコケティッシュな女性ヴォーカルにぐぐっと引き込まれます。
随所にメロウなギターソロも含んだ楽曲アレンジのセンスはさすがジョン・ミッチェル。
KARNATAKALANDMARQなどが好きな方にもお薦めの、フィメール・シンフォニックロックの傑作です。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 女性Vo度・・9 総合・・8
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TUSMORKE 「Hinsides」
ノルウェーのプログレバンド、タスメルケの2017年作
2012年にデビュー、本作は4作目となる。のっけからヴィンテージなシンセにフルートが鳴り響き、
母国語のヴォーカルを乗せたノリの良さで、OSANNAのような妖しく濃密なサウンドを展開。
北欧らしい薄暗さと土着性を、ダークな祝祭感覚で包み込んだという、おどろおどろしさがたまらない。
オルガンやムーグシンセの音色も、どこか恐ろしげで、ジャケのイメージのようなドゥーミィや闇を感じさせつつ、
プログレとしてキャッチーなノリを溶け込ませるセンスが素晴らしい。黒死病をテーマにした20分を超える大曲では、
悲しみと哀愁を乗せた空気感に、激しく展開する緩急ある構築性に引き込まれる。これまでよりもさらに一歩踏み込んだ傑作だ。
ドラマティック度・・8 ヴィンテージ度・・8 妖しさ度・・9 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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Tusmorke 「Bydyra」
ノルウェーのプログレバンド、タスメルケの2017年作
早くも5作目となる本作は、地元オスロの児童用ミュージカルとして作られた音源で、
フルートが鳴り響き、母国語のヴォーカルに、ミニムーグやメロトロン、ピアノなどを加えた、
オールドなプログレ風味に、児童コーラスが重なるという、サイケな幻想性を描くサウンド。
楽曲は2~4分前後と短めなので、ドラマティックな展開力というものは希薄だながら、
歌ものの小曲を連ねて、ひとつの物語を描くような世界観は感じられ、これはこれで楽しめる。
彼ららしいヴィンテージなロック感覚を、童話的な世界観で表現したという異色の力作だ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 ヴィンテージ度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Arabs in Aspic 「Syndenes Magi」
ノルウェーのプログレバンド、アラブス・イン・アスピックの2017年作
妖しいジャケもいい感じだが、のっけからメロトロンが鳴り響き、ハード寄りのギターを乗せて
クリムゾン的な緊張感とサイケな浮遊感を同居させた、ヴィンテージなサウンドを聴かせる。
オルガンをバックにブルージーなギターを重ねた、古き良き70年代英国ロック風味に、
どことなく、グレッグ・レイクを思わせるマイルドなヴォーカルの味わいも確信犯的だ。
12分、9分、20分という全3曲で、ラストの大曲の後半はさすがに長尺感があるが、
のんびりとしたサイケ感が楽しめる方には、ヴィンテージプログレの力作となるだろう。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 ヴィンテージ度・・9 総合・・8
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HIMMELLEGEME 「Myth of Earth」
ノルウェーのポストプログレ、ヒメレジェムの2017年作
二本のギターにうっすらとしたシンセを重ね、マイルドヴォーカルを乗せた繊細な叙情で、
スペイシーな空間性を描くようなサウンド。ツインギターの重ねはときにメタリックな重厚さもあって、
北欧らしい涼やかな感触とミステリアスな空気感が、モダンな味わいになっているところが個性的。
歌もの的なパートでも、PINK FLOYDのような浮遊感に包まれていて、なかなか幻想的な聴き心地。
ラストは10分の大曲で、メロウなギターを乗せた繊細な美しさと、ランドスケープ的なスケール感も描き出す。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 スペイシー度・・8 総合・・8
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Pixie Ninja 「Ultrasound」
ノルウェーのモダンプログレ、ピクシィ・ニンジャの2017年作
ANGLAGARDのマティアス・オルソンが参加、スペイシーなシンセの重ねによる
ランドスケープ的な空間性に、シーケンサー的なエレクトロなアレンジを加えたサウンドで、
テクノ風の聴き心地の中にも、NECROMONKYにも通じるモダンで知的なセンスを感じさせる。
アナログなドラムにフルートが鳴り響き、メロトロンが加わると、一気に北欧プログレの感触が強まって、
オールインストながら、クリムゾンばりのミステリアスな緊張感を描き出して、思わずにんまりである。
美しいピアノの小曲や、薄暗い叙情とプログレらしい展開力で聴かせる11分の大曲など、
モダンとレトロが同居した、これぞ北欧の新時代プログレというべき逸品です。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 北欧度・・8 総合・・8
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Suburban Savages 「Kore Wa!」
ノルウェーのアヴァンプログレ、サバーバン・サヴェージの2017年作
PANZERPAPPAのメンバーを中心にしたバンドできらびやかなシンセとギターに、マイルドなヴォーカルと
やわらかなフルートの音色を乗せた、軽やかな優雅さに包まれたサウンドで、随所にほどよい屈折感を覗かせる。
デジタリィなシンセをあえて古めかしいエレクトロ性で表現するところは、NECROMONKYあたりのセンスにも通じるか。
ジャケのイメージのようなとぼけた可愛らしさと適度なアヴァンギャルド性を同居させつつ、難解にはならないところが個性的で、
いわば肩の力を抜いたアヴァンロックというところ。この手にしてはダークな空間性やインパクトのある展開はやや希薄なので、
濃密さの点では物足りなさもあるが、ディープになり過ぎないところが逆にモダンな味わいだともいえる。
ドラマティック度・・7 アヴァンギャル度・・7 優雅度・・8 総合・・7.5
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Il Balletto Di Bronzo 「Cuma 2016 DC」
イタリアのプログレバンド、イル・バレット・ディ・ブロンゾの2016年作
オリジナルメンバーのマルコ・セシオーニとリノ・アジェロによる、もうひとつのイルバレというべき復活作。
どっしりとしたリズムにオールドな味わいのギターとイタリア語のヴォーカルを乗せた、
初期のイルバレを継承するロックサウンドで、ほどよい叙情を含んだ濃密な聴き心地。
楽曲は3~4分前後とわりとシンプルで、プログレというよりはハードロック寄りの作風であるが、
随所にシンセによる味付けや女性コーラスも加えた優雅なアレンジも覗かせ、モダンな演奏力で
オールドなイタリアンロックを再現したという作風である。ジャンニ・レオーネがゲスト参加。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 イタリア度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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La Bocca Della Verita 「Avenoth」
イタリアのプログレバンド、ボッカ・デッラ・ヴァーティアの2016年作
2人の鍵盤奏者を含む6人編成で、コンセプト的なイントロから、オルガンやメロトロンを含むシンセに
メロウなギターにイタリア語のヴォーカルを乗せ、優美な叙情に包まれたシンフォニックロックを展開する。
アコースティカルな繊細さとオルガンなどのオールドなプログレ感に、GENESISルーツの幻想的な味わいをまぶし
ツインキーボードによる厚みのあるシンフォニック性と、イタリアンプログレの混沌とした香りが合わさった作風だ。
18分におよぶ組曲も、ゆったりとした耳心地の良さから、インストパートではいくぶん屈折感のある展開も覗かせる。
アルバム後半も10分前後の大曲多数で、少々長すぎる気もするが、ともかく全79分のシンフォプログレ大作です。
シンフォニック度・・8 優美度・・8 イタリア度・・8 総合・・8
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Struttura & Forma「One of Us」
イタリアのプログレバンド、ストルトゥラ&フォルマの2017年作
70年代に結成されながら作品を残さぬまま消えたバンドの復活のデビュー作で、
ツインギターの5人編成に、ARTI & MESTIERIのペッペ・クロヴェラのメロトロンを加え、
ハード寄りのギターを乗せたテクニカルなアンサンブルにたっぷりとメロトロンが鳴り響く、
フュージョンプログレ的な1曲目から、英語のヴォーカルを乗せた2曲目以降は、
泣きのギターとメロトロンによる叙情豊かなシンフォニックハードという聴き心地になる。
EL&P“Lucky Man”のカヴァーも優美な仕上がりで、歌ものやギターインスト的なナンバーまで、
とにかく全曲メロトロン鳴りまくり。ジャケの地味さが惜しいが、掘り出し物的な逸品です。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 メロトロン度・・9 総合・・8
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Yleclipse 「Prime Substance」
イタリアのシンフォニックロック、イルクリプスの2002年作
ファンタジックなジャケからして微笑ましいが、サウンドの方もやわらかなシンセアレンジに
英語とイタリア語のマイルドなヴォーカルを乗せて、優美な叙情を描くシンフォニックロック。
メロウなギターフレーズによる泣きの叙情もよい感じで、初期Marillionに通じる幻想性を、
繊細な優雅さで包み込んだという聴き心地は、同郷のCAPあたりにも近いだろう。モダンさとは無縁の、
90年代のマイナー感覚とともに、英国ポンプロックをルーツにした、王道のシンフォニックロック好作品。
メロディック度・・8 優美度・・9 イタリア度・・7 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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Claudio Baglioni 「Acustico - Sogno Di Una Notte Di Note」
イタリアのシンガー、クラウディオ・バリオーニのライブ。2000年作
イタリアを代表する、カンタゥトーレの一人、2000年のイタリアツアーからの音源を2CDに収録、
ベース、ギター、シンセによるシンプルな演奏をバックに、渋みのあるイタリア語の歌声を乗せて
ゆったりと聴かせるサウンドで、アコースティックな素朴さとともに、大人の哀愁を感じさせる。
イタリアらしいクラシカルな優雅さや、軽やかなAOR風味からジャズ的な味わいなどもあり、
ときに情感的に歌い上げるところは、さすが一流のベテラン・カンタゥトーレというところ。
派手さはないがじわじわと楽しめる作風で、2CDで合計152分にも及ぶライブ作品です。
ライブ演奏・・8 プログレ度・・5 イタリア度・・8 総合・・7.5
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8/31
プログレの晩夏(225)


THE SAMURAI OF PROG 「ARCHIVIARUM」
フィンランドのミュージシャンを中心にしたプログレユニット、サムライ・オブ・プログの2018年作
過去作用マテリアルと新曲4曲から構成されたアルバムで、LATTE E MIELEのオリヴィエロ・ラカーニーナ、
MUSEO ROSEMBACHのステファノ・ガリフィをはじめ、LA TORRE DELL'ALCHIMISTAのミケーレ・ムッティ、
TAPROBANのステファノ・ヴィカレーリといったイタリア人脈に、ECHOLYN、PRESTO BALLETT、Michelle Young、
元UNITOPIA、NEXUS、SENOGUL、SOUTHERN EMPIREと、世界各国のバンドから多数のメンバーが参加。
オルガンにヴァイオリン、フルートが鳴り響く優美なインストナンバーから叙情的な歌ものまで、
ほどよいヴィンテージ感とともに大人のプログレが楽しめる。CAMELの名曲“Ice”のカヴァーは
サックスが鳴り響く大人の叙情に包まれた仕上がり。ラストはDavid Bowie“Heroes”のカヴァー。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 大人の叙情度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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TABULA RASA
フィンランドのプログレバンド、タブラ・ラサの1975年作
1曲目はロックなギターにやわらかなフルート、母国語のヴォーカルを乗せた、
どことなくイタリアンロック的なノリで、わりと軽快な聴き心地。2曲目はぐっとメロウな叙情で、
KAIPADICEあたりと比べると、洗練されていないマイナーな感触を残しながら、
それが牧歌的な味わいにもなっている。女性コーラスの加わった優雅な3曲目なども白眉。
フルートの活躍するパートも多く、CAMELにも通じる軽やかさとシャジーなギターが合わさった、
6曲目のインストナンバーも魅力的だ、次作「月の優美な罠と舞踏/EKKEDIEN TANSSI」も同様の好作品。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 北欧度・・8 総合・・7.5
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KANT FREUD KAFKA 「Onirico」
スペインのシンフォニックロック、カント・フロイト・カフカの2017年作
マルチプレイヤー、Javi Herreraによるプロジェクトで、前作はクラシカルな優雅さが際立った好作であったが、
今作も優美なピアノにムーグシンセが重なり、やわらかなオーボエの音色とメロウなギターがゆったりと奏でる、
繊細な美意識に包まれたシンフォニックロックを展開。静かな叙情パートから、ドラムを加えたロックのダイナミズムで、
メリハリに富んだ展開美を聴かせる。クラシック的な構築性という点では、KOTEBELあたりにも通じるだろう。
ヴァイオリンやチェロのストリングスとピアノのつまびきに、男女ヴォーカルを乗せたアリアのような小曲から、
11分におよぶプログレ大曲もスパニッシュな味わいを含みつつ、あくまで優雅でクラシカルな味わいだ。
クラシカル度・・9 プログレ度・・8 優雅度・・9 総合・・8
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TAI PHONG 「RETURN OF THE SAMURAI」
フランスのプログレバンド、タイ・フォンの2014年作
2000年作「Sun」以来となる14年ぶり、5枚目のアルバムで、CDR仕様での自主制作リリース。
オリジナルメンバーは、カーン・マイのみとなったが、かつてを思わせる繊細なメロディアス性は健在で、
新たに加入した女性ヴォーカルの美しい歌声を乗せた、シンフォニックでキャッチーなサウンド。
叙情的な泣きのギターに美麗なシンセを加えた厚みのあるアレンジに、紅一点、Sylvine嬢の伸びやかな歌声も魅力的。
カーン・マイがヴォーカルをとるナンバーは、かつてのタイ・フォンを思わせる感触で、どこかなつかしい聴き心地。
ややポップ寄りのナンバーもありつつ、しっとりとした美しさに包まれた好作品である。2014年には待望の来日公演を実現。
伝説のバンドの復活に感涙するファンも多いはず。なお日本盤では、4曲がカットされた全8曲の仕様となっている。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 タイ・フォン度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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NEMO 「Si Partie II-L'homme Ideal」
フランスのシンフォニックロック、ネモの2007年作
2002年にデビュー、本作は6作目となる。前作から続くコンセプト作の続編で、
美麗なシンセアレンジにハード寄りのギターとマイルドなフランス語のヴォーカルを乗せた、
シンフォニックロックサウンド。キャッチーなノリの良さを含んだプログレハード風味の味わいや、
女性声も加えてじっくりと聴かせる10分の大曲など、緩急に富んだ流れの中で、
フランスのバンドらしいシアトリカルなドラマ性を感じさせる作風だ。オルガン用いた
古き良きプログレテイストも覗かせつつ、ドラマティックなシンフォニックハードを描く力作。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 シンフォハー度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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Hoggwash 「Spellbound」
イギリス&ウクライナのシンフォニックロック、ホグワシュの2013年作
英国のミュージシャン、Will MackieとKARFAGENのAntony Kaluginを中心にしたユニットで、
オルガンを含むシンセワークにメロディックなギターを重ねた優雅なシンフォニックロック。
マイルドなヴォーカルハーモニーはキャッチーなやわらかさで、ときにポップな要素も感じさせつつ、
泣きのギターフレーズと美麗なシンセは、あくまでしっとりとした叙情に包まれている。
メロディックな歌ものナンバーがメインながら、8分、9分という大曲では、KARFAGENにも通じる
美麗なシンフォニックロックが楽しめる。繊細でメロウな味わいのシンフォ好作だ。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 優雅度・・8 総合・・8
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Martigan 「Distant Monsters」
ドイツのプログレバンド、マーティガンの2015年作
90年代から地道に活動するバンドで、本作は4作目。メロウなギターに美しいシンセ、
かすれた味わいのヴォーカルを乗せた、わりと王道のシンフォニックロックを聴かせる。
10分を超える大曲も多いが、派手な盛り上がりよりは、じっくりとメロウな叙情を描く感じで、
初期Marillionなど、GENESISルーツの90年代のポンプロックのような雰囲気も感じさせる。
泣きのフレーズを奏でるギターもなかなかで、全体的にこれという新鮮味はないものの、
落ち着いた大人の味わいの、古き良きシンフォプログレとしてゆったりと楽しめる。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 叙情度・・8 総合・・7.5
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Siena Root 「A Dream of Lasting Peace」
スウェーデンのヴィンテージロック、シエナ・ルートの2017年作
2004年にデビューしてから6作目、ブルージーなオールドロック色を強めた前作から
本作もオルガンが鳴り響きブルージーなギターを乗せた、いかにも70年代的ブリティッシュロックの作風で
アナログな録音も含めて、とても現代の作品とは思えない。楽曲は3~4分前後のシンプルな聴き心地で、
ジェントルなヴォーカルにオルガンやピアノがやわらかに重なり、わりとキャッチーなサウンドが楽しめる。
まるで、LED ZEPPELINがオルガンロック化したようなという感じもあり、思わずにんまり。
やりすぎなまでの古き良きヴィンテージ感に浸れます。70's英国ロックファンは必聴かと。
ドラマティック度・・7 サイケ度・7 ヴィンテージ度・・10 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Goat 「Requiem」
スウェーデンのサイケロック、ゴートの2017年作
2012年にデビュー、トライバルなサイケロックを聴かせる異色のバンド。3作目となる本作は、
より牧歌的なフォークロックへと傾倒し、アコースティックギターにリコーダーの音色が鳴り響き、
妖しい女性ヴォーカルの歌声を乗せた、いわば民俗的なアシッドフォークというべき聴き心地。
神秘的な土着色が薄れたというわけではなく、わりと聴きやすくなったサイケフォークの中にも、
秘教的な空気感は残っていて、むしろ前作以上にフリーキーかつ濃密な土着性が内包されている。
曲によっては、Amon Dullなどクラウトロックに通じるようなドラッギーな酩酊感覚も含んでいて、
プログレ方面のリスナーにも十分アピールするだろう。深化した民族サイケフォークの傑作だ。
ドラマティック度・・7 妖しさ度・・8 サイケフォーク度・・9 総合・・8
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JOSE MARIA BLANC 「LA HERENCIA DE PABLO」
アルゼンチンのミュージシャン、ホセ・マリア・ブランの2018年作
「パブロの遺産」というタイトル通り、パブロ・エル・エンテラドールのヴォーカリストによる後継作品。
1983年の1st、1998年の「2」どちらもが南米シンフォニックロックの傑作として名高いが、
本作もそれを受け継いだもので、やわらかなシンセにメロウなギターを乗せて、
南米らしい叙情豊かなサウンドを聴かせる。スペイン語のヴォーカルを乗せた優美な味わいは、
かつてのパプロにいくぶん大人の哀愁を加えた感触で、派手さはないがじっくりと聴き入れる好作品です。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 叙情と哀愁度・・9 総合・・8
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FLOR DE LOTO「MEDUSA」
ペルーのハードプログレ、フロール・デ・ロトのライブ。2015年作
2005年にデビュー、ハードエッジなプログレとフォルクローレを融合した濃密な作風で、マニアに人気のこのバンド。
本作は2014年アルゼンチンでのライブを収録したCD+DVD。ハード寄りのツインギターにオルガンを含むシンセと、
ケーナやサンポーニャが鳴り響き、スペイン語のヴォーカルを乗せた濃厚なシンフォニック・ハードロックを聴かせる。
土着的なメロディを含んだ感触はフォークメタル的でもあるが、もっと牧歌的な「フォルクローレロック」というべき、
おおらかな哀愁の叙情を感じさせ、ギターのフレージングには70年代英国HRからの影響も感じられ、
オールドなメタルリスナーでもわりと楽しめるかと。女性ヴォーカルも加わった優雅なナンバーもありつつ、
ラストは10分を超える大曲でドラマティックに締めくくる。全70分、じつに濃密なライブが味わえます。
ライブ演奏・・8 フォルクローレロック度・・9 濃密度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Ismo De Las Fauces
アルゼンチンのプログレバンド、イスモ・デ・ラス・ファウセスの2015年作
VADE RETROのシンセ奏者によるバンドで、エレピやムーグを含むやわらかなシンセに、
スペイン語のヴォーカルを乗せ、ゆったりとした優雅で繊細な叙情を聴かせるサウンド。
古き良きロック感触のギターも加わって、ジャズやタンゴの要素も感じさせる大人のセンスに
南米らしいおおらかな味わいと、優しい哀愁の空気に包まれた耳心地の良さが光る。
全体的に派手な展開というものはないのだが、じっくりと鑑賞できる好作品です。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 南米度・・8 総合・・8
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ALGARAVIA 「BREVE E INTERMINAVEL」
ブラジルのプログレバンド、アルガラヴィアの1996年作
軽妙なリズムに2本のギターが有機的に絡み、ジャズロック的な優雅なテクニカル性に
ミステリアスな空気感が合わさった、個性的なサウンドを展開してゆく。
随所にヘタウマなヴォーカルも加わるが、あくまでインストパートがメインで、
10分前後の大曲も、とぼけた偏屈さと甘すぎない程度のメロディで、スリリングに構築する。
得体の知れない怪しさをかもしだす、ヘンテコなプログレ・ジャズロックに興味があればぜひ。
メロディック度・・7 プログレ度・・8 偏屈で軽妙度・・8 総合・・7.5

ATOMO PERMANENTE 「Projecao」
ブラジルのプログレバンド、アトモ・ペルマネンテの1994年作
メロディックなギターに美しいシンセが絡み、南米らしい繊細な叙情美のシンフォニックロック。
ポトルガル語のヴォーカルを乗せた軽快な疾走感のハードプログレ寄りのナンバーから、12弦ギターのつまびきや、
サックスの音色を乗せた大人の哀愁を描くインストナンバーなど、やわらかな聴き心地の中に、
知的な構築センスも覗かせる。とくにメロウな泣きのギターと、優美なシンセワークが魅力的で、
ときにハードロック的なギターも顔を出すが、濃密になり過ぎず、ゆったりとした叙情に包まれた好作品といえる。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 叙情度・・8 総合・・7.5
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Estructura
ヴェネズエラのプログレバンド、エストラクトゥラの1980年作
女性Voに女性Gを含む7人編成で、前作も大変な力作であったが、2作目となる本作は3~5分前後の小曲が主体で、
やわらかなピアノの音色に、スペイン語による美しい女性ヴォーカルを乗せ、優美なシンフォニックロックを聴かせる。
叙情的なツインギターにムーグやクラヴィネットのプログレらしいシンセが絡み、安定した演奏力とともに、
ときにジャズロック的でもある優雅で躍動感あるアンサンブルを描いている。サウンドのマイナー臭さはほとんどなく、
南米らしい繊細な叙情美には雄大なスケール感すら覚える。インストパートの説得力と魅力的な女性声も素晴らしい。
マイルドな男性ヴォーカル曲もあります。この時期の南米の作品としては、PABLOBACAMARTEにも並ぶレベルだと思う。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 叙情度・・9 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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8/18
暑中お見舞いはプログレで(210)


Marillion 「Marbles In The Park」
イギリスのメロディックロック、マリリオンのライブ。2017年作
2004年作「Marbles」を曲順通りに完全再現した、2015年オランダでの公演を2CDに収録。
うっすらとしたシンセに、メロウなギターとスティーヴ・ホガースの表現豊かな歌声を乗せ、
哀愁の叙情に包まれたサウンドを描きだす。スティーヴ・ロザリーの泣きのギターフレーズに、
ピート・トレワヴァスのベースの存在感もなにげに際立っていて、キャリアのあるバンドらしい確かな演奏力で
ときにアルバム以上の躍動感とともに、繊細なコンセプト作品を見事にライブで再現してゆく。
ラストに向けてのゆるやかな盛り上がりはやはり感動的。エモーショナルなホガースの歌声も素晴らしい。
ドラマティック度・・8 ライブ演奏・・8 叙情度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Anathema 「The Optimist」
イギリスのメランコリックロック、アナシマの2017年作
1993年にデビュー、初期のゴシックメタル路線から、4作目以降は浮遊感をまとったポストプログレ路線へと変化を遂げ
いまやプログレ方面からも人気のこのバンド。本作は2001年作「A Fine Day To Exit」のジャケのイメージから構想された、
「楽観主義者」旅路を描くというコンセプト作品。映画的なSEから幕を開け、モダンなビート感にロック的なギターを乗せ、
マイルドなヴォーカルとともに、いつになく軽快なノリで始まりつつ、しっとりとしたピアノに女性ヴォーカルで聴かせる、
繊細な叙情にうっとりとなる。シンセとシーケンサーによるリフレインで不思議なトリップ感をかもしだすナンバーや、
トレモロのギターリフが哀愁の叙情を描くパートなど、ゆったりとした作風の中にも、メリハリのある流れで楽しめる。
ストリングスを含んだシンフォニックなテイストも美しい。コンセプチュアルなポストプログレに浸れる力作だ。
ドラマティック度・・8 叙情度・・8 繊細度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Kate Bush 「Before the Dawn」
イギリスの女性シンガー、ケイト・ブッシュのライブ作。2016年作
ジャンルを超えて愛される英国の元祖歌姫、1979年以来となる、じつに35年ぶりのライブということで
チケットはじつに15分で完売したという。その2014年ロンドンでの公演をCD3枚に収録。
実際にはミュージカル的な舞台演劇であったようだが、音楽部分のみを取り出した内容で、
過去作品からのナンバーも、やわらかな彼女の歌声とともに、新たなアレンジで蘇っている。
ときにかつてを思わせるキュートな歌いまわしも覗かせつつ、大人になったケイトの魅力とともに、
じっくりとライブの空気感が味わえる。Disc2以降は、いくぶん演劇的な空気が強くなり、
こうなると映像とともに鑑賞したい気もするが、たとえミュージカル風味の作風であっても、
その歌声でひとつの世界を描けるのは素晴らしい。CD3枚、2時間半のケイト・ブッシュ劇場です。
ドラマティック度・・8 ライブ演奏・・8 ケイトの歌声度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Kate Bush 「Director's Cut」
イギリスの女性シンガー、ケイト・ブッシュの2011年作
1989年作「Sensual World」、1993年作「Red Shones」から本人が楽曲を選び再録音した作品。
音数を絞ったわりとシンプルなアレンジで、ケイトの歌声をメインにしたアダルトな雰囲気で、
かつてのキュートさから、落ち着いた大人の艶を身にまとった、やわらかな歌唱が楽しめる。
元々がポップ作品であったので、いわば大人のポップロックに生まれ変わったというべきか。
そんな中、エモーショナルな歌声を響かせる「Top Of The City」あたりのナンバーは聴きどころ。
ドラマティック度・・7 ポップ度・・8 ケイトの歌声度・・8 総合・・7.5
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GPS 「Two Seasons : Live In Japan Volume I」
ジョン・ぺイン、ガスリー・ゴーヴァン、ジェイ・シェレンに、SPOCK'S BEARDの奥本亮を加えた編成で、
2006年に唯一のアルバムを残したバンドのライブ作。2012年作
2007年の来日公演を2CD+DVDに収録。アルバム「WINDOW TO THE SOUL」からのナンバーを中心に、
各メンバーのソロパートやASIAのナンバーも披露。枯れた味わいのジョン・ペインの歌声に、
ガスリーの巧みなギターと奥本亮のプログレなシンセワークで、キャッチーなプログレ・ハードロックを聴かせる。
哀愁漂うアコースティックなナンバーも含めて、大人の渋みを感じさせる味わいで、
オフィシャル・ブートレグということもあり、加工されていない生々しいライブサウンドが楽しめる。
ライブ演奏・・8 音質・・7 プログレハー度・・8 総合・・7.5
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EYE 2 EYE 「Light Bearer」
フランスのシンフォニックロック、アイ・トゥ・アイの2017年作
2nd「After All...」は叙情豊かに王道のシンフォニックロックを聴かせる傑作であったが、
4作目となる本作は、コンセプト的なイントロで幕を開け、美麗なシンセにメロウなギター、
情感豊かに歌い上げるヴォーカルを乗せて、ドラマティックなサウンドを描いてゆく。
ときに女性ヴォーカルの歌声や、ヴァイオリン、チェロなどのストリングスも加わって、
クラシカルな優雅さに包まれた壮麗なシンフォニックロックが楽しめる。長めの曲が多いので
スリリングな展開には欠けるのだが、ヨーロピアンな翳りを含んだ叙情性にじっくりと浸れる。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 壮麗度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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CHILDREN IN PARADISE 「Esyllt」
フランスのシンフォニックロック、チルドレン・イン・パラダイスの2011年作
美しい女性ヴォーカルの歌声に、うっすらとしたシンセに優美なピアノを重ね、
ゴシック的な薄暗さも含んだ、翳りのあるシンフォニックロックを聴かせる。
メロウなギターのトーンにアンニュイな倦怠を感じさせる女性声も含めて、
Paatosあたりに通じる部分もある。ときにホイッスルやイーリアン・パイプの音色など、
ケルティックなテイストも覗かせつつ、幻想的な空気感をしっとりと描いてゆく。
派手な展開というのはないものの、繊細な耳心地で味わえる好作品だ。
ドラマティック度・・7 しっとり優美度・・9 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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ELECTRIK GEM 「Radiopolic Projekt」
フランスのラジカル・トラッドロック、エレクトリック・ジェムの2012年作
3人の女性ヴォーカルに、トロンボーン、クラリネット、アコーディオンなども含む、総勢14名のビッグバンドで
女性ヴォーカルの歌声に、トロンボーンやクラリネットの音色が絡み、トラッド的な土着感とキャッチーなノリを合わせた、
VARTTINAあたりを思わせるスタイルで、そこにギターやドラムも加えてロックアレンジされたサウンドを聴かせる。
パーカッションのリズムに女性声で聴かせる、アコースティック主体のバルカントラッド寄りのナンバーもあったり、
ガドゥルカ(縦型フィドル)が鳴り響く、中近東的なノリも含めて、変則リズムを含む巧みなアンサンブルで表現してゆく。
ロックアレンジが加わるとかなりハードな耳心地ながら、トラッド部分にしっかりと説得力があるので、絶妙の融合と言ってよいかと。
トラッ度・・8 ロック度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8
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CHRIS「Making Sense」
オランダのミュージシャン、クリスティアン・ブラインのソロ。2010年作
SKY ARCHITECT、The Black Kodexでも活動するマルチミュージシャン、2作目のソロ作品で、
美しいシンセアレンジにやわらかなヴォーカルを乗せ、叙情的なギターワークとともに、
繊細な美意識に包まれた、シンフォニックロックを聴かせる。QUEENからの影響も感じさせる、
キャッチーなメロディと優雅な展開美で、リリカルなプログレハード風としても楽しめる。
10分前後の大曲もあくまでメロディアスな感触で、メロウな泣きのギターも含めてじつに優美な耳心地。
ヴォーカルパートにもう少し表現力がつけば、さらに素晴らしい作品を作りそう。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 優雅度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Schizofrantik 「Ripping Heartaches」
ドイツのアヴァンロック、スキゾフランティクの2017年作
Panzerballettのアルティン・マイアーホーファーを中心に結成されたバンドで、本作がすでに6作目となる。
メタリックなギターにツーバスのドラムと不穏なシンセワークで、変則則リズムを含むテクニカル性と、
アヴァンギャルドな展開力で聴かせるサウンドは、メタル化したMATS/MORGANというような感触もある。
モダンなヘヴィネスとリズムはDjent的でもあり、あるいはプログレ化したMESHUGGAHともいうべきか。
一方では叙情的なヴォーカルナンバーもあったり、押すだけでない幅の広いセンスとプログレらしさも感じさせる。
ラスト曲での軽妙なテクニカル性と、とぼけた味わいは、アヴァンプログレ好きにはにんまりだろう。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・8 アヴァンギャル度・・8 総合・・8
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LOST WORLD BAND 「Of Things And Being」
ロシアのシンフォニックロック、ロスト・ワールド・バンドの2017年作
2003年にデビュー、LOST WORLD時代から数えての通算5作目となるアルバムで、
のっけから4部構成の組曲で始まる。艶やかなヴァイオリンとシンセが絡み、軽快なアンサンブルとともに、
優雅なクラシカル性に包まれたインストサウンドが広がってゆく。やわらかなフルートにヴァイオリンの音色に
ときにハードエッジなギターも切り込みながら、テクニカルな変則拍子を含む知的な構築性で、
チェンバーロック的でもあるアプローチをシンフォニックロック風に昇華したという聴き心地。
偏屈気味のほどよいアヴァンギャルド性も含めて、玄人好みの作品に仕上がっている。
クラシカル度・・9 プログレ度・・8 優雅で軽妙度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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FIVE-STOREY ENSEMBLE 「Night En Face」
ベラルーシのプログレバンド、ファイヴ・ストレイ・アンサンブルの2017年作
解散したRATIONAL DIETのメンバーにより結成されたバンドで、前作は素晴らしい傑作であったが、
2作目となる本作は、繊細なピアノのつまびきから始まり、ヴァイオリン、チェロというストリングスが絡み、
優雅な美しさの中にも不穏な緊張感を覗かせる。そこにバスーンやオーボエの音色が加わり、
重いベースの響きとともに、UNIVERS ZEROルーツのダークなチェンバーロックが広がってゆく。
クラシカルなピアノの旋律に、サックスやクラリネットなどが不協和音的に重なるスリリングな空気感。
ギターやドラムがないのでロック的な部分はほとんどないが、アコースティック主体のアンサンブルで
ここまでの音の強度を描けるのは素晴らしい。まさにチェンバーロックの魅力が凝縮された傑作だ。
クラシカル度・・9 チェンバー度・・9 優雅でスリリング度・・9 総合・・8.5
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MILLENIUM 「REINCARNATIONS」
ポーランドのプログレバンド、ミレニウムの2002年作
1999年にデビュー、本作は3作目で、美しいシンセアレンジにメロウなギターとマイルドなヴォーカルを乗せ、
東欧らしい翳りのあるゆったりとした叙情美に包まれた、正統派のシンフォニックロック・サウンド。
キャッチーな歌メロと繊細な耳心地は、のちのポストプログレ的な雰囲気も漂わせていて、
曲によっては、Marillionのようなモダンな哀愁のメロディックロックとしても楽しめる。
スリリングな展開というのはあまりないので、ドラマティックな部分での物足りなさはあるが、
随所に聴かせる泣きのギターフレーズとともに、ラストの15分の大曲までゆるやかな叙情美に浸れます。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 叙情度・・8 総合・・8
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MILLENIUM 「INTERDEAD」
ポーランドのプログレバンド、ミレニウムの2005年作
5作目となる本作は、「インターデッド」というタイトルやジャケからも、IT社会への警鐘を感じさせる。
SF的なSEで幕を開け、モダンなリズムにサックスが鳴り響きつつ、マイルドなヴォーカルを乗せた、
叙情ロックという雰囲気はこれまで通り。歌もの色が増していくぶんシンプルにはなっているが、
メロウなギターフレーズを奏でる、シンフォニックロックとしての味わいもしっかりと残している。
演奏力と表現力あるヴォーカルの歌声も含めて、Marillionなどのレベルにも匹敵するクオリティで、
2パートに分かれたラストナンバーでは、ギターとサックスによる泣きの哀愁を聴かせる前半から、
女性コーラスも加えたエモーショナルな歌声とともに、余韻を残しながらコンセプト的に幕を閉じる。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 叙情度・・8 総合・・8
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7/20
猛暑はプログレで乗り越えよ(196)


OSANNA 「Pape Satan Aleppe」
イタリアのプログレバンド、オザンナのライブ。2016年作
混沌たるイタリアらしさを体現する伝説のバンドの、2016年のイタリア公演を収録。
2015年作「PALEPOLITANA」からのナンバーを中心に、初期作からのナンバーも披露。
ドネラ・デル・モナコ(OPUS AVANTRA)なども参加、イタリア語の男女ヴォーカルに、ヴァイオリン、フルートが鳴り響き、
メロトロンやオルガンを含む厚みのあるシンセを重ねて祝祭的なノリとともにわりとキャッチーなサウンドを展開。
後半は、BANCO、PFM、AREAのイタリアンプログレのメドレーに、ジェ二ー・ソレンティ(SAINT JUST)が歌う、
兄Alan Sorrenti のカヴァーもよいですね。ラスト2曲フランチェス・グッチーニ、ピノ・ダニエレのカヴァーはイタリア人向けか。
ライブ演奏・・8 プログレ度・・7 イタリア度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Pooh 「Opera Seconda」
イタリアンロックのベテラン、プーの2012年作
本作はオーケストラとの共演によるセルフカヴァーアルバムで、70年代後半から80年代のナンバーを中心にリアレンジ、
優雅なオーケストラをバックに、メロウなギターとイタリア語のジェントルな歌声を乗せ、キャッチーでありながら
壮麗でシンフォニックなサウンドを聴かせる。演奏にしろ歌唱にしろ、ベテランらしい情熱的な表現力が素晴らしく、
オーケストラとともに優美な高揚感を描き出す。プログレ的な味わいは薄いものの、心地よいメロディアス性と
これぞイタリアという盛り上がりに包まれた、「歌ものシンフォニーロック」としての素晴らしさが詰まった傑作だ。
シンフォニック度・・9 メロディック度・・9 イタリア度・・9 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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La Nuova Raccomandata Con Ricevuta Di Ritorno 「Live in Elba」
イタリアのプログレバンド、ヌオーヴァ・ラコマンダータ・コン・リチヴィータ・デ・リトルノのライブ。2015年作
オリジナルメンバー、ルチアーノ・レゴーリを中心に2010年に復活したバンドの、2013年のイタリア公演を収録したライブCD。
サックス&フルート奏者に、女性Voを含んだ7人編成でのステージで、ハード寄りのギターに美しいシンセ、
レゴーリのイタリア語の歌声を乗せた重厚なサウンドを聴かせる。随所に女性ヴォーカルも加わった優美な感触と
やわらかなフルートの音色などアコースティックな大人の叙情性を含む、シンフォニックロックとしての味わいも覗かせる。
2010年復活作「空飛ぶ画家」からのナンバーに、1972年の名作「水晶の世界」からも披露。何故かLed Zeppelinのカヴァーも。
往年のファンはもちろん、イタリアンロックを聴き始めた若いリスナーにもお薦めできる素晴らしいライブ作品です。
ライブ演奏・・8 プログレ度・・7 イタリア度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Il Rovescio Della Medaglia 「汚染された世界2013~ライヴ・アット・クラブ・チッタ」
イタリアのプログレバンド、ロベッショ・デッラ・メダーリャのライブ。2013年作
2013年の来日公演を収録したオフィシャル・ブートレッグ。5人のメンバーを基本に、日本人のストリングス隊を加え、
1973年の名作「汚染された世界」を完全再現したステージを披露。適度にハードなギターにオルガン、ムーグを含むシンセ、
艶やかなヴァイオリンが鳴り響くクラシカルな優雅さとともに、かつてのイタリアンロックの壮麗なダイナミズムが広がる。
ヴォーカルのマイクがいくぶんこもり気味であるが、むしろ手を加えないライブ音源ならではの臨場感に包まれている。
細かな部分での粗さは置いておき、40年の時を経て日本の地で名作が再現されたという感動を閉じ込めた1枚であろう。
ライブ演奏・・8 音質・・7 名作再現度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Stormy Six - Moni Ovadia「BENVENUTI NEL GHETTO」
イタリアのチェンバー・アヴァンロック、ストルミィ・シックスのライブ作。2013年作
ワルシャワ・ゲットー蜂起70周年を記念したプロジェクトとして、2013年に行われたライブを収録したCD+DVD。
ユダヤ系歌手、モニ・オバディアを招いてのステージで、YUGENのフランチェスコ・ザーゴをギタリストに迎えた編成。
物悲しいヴァイオリンの音色に、ジェントルなヴォーカルを乗せた、ゆったりとした大人の味わいのアンサンブルに、
民俗的な空気感を加えた聴き心地。かつてのようなアヴァンギャルドなテクニカル性は薄いので、これという派手さはなく
プログレとして聴くには物足りなさはあるが、その確かな演奏力はさすが。CDでは楽曲のみなので44分ほどながら、
DVDではザーゴ氏の語りとともに歴史的な映像も加えた90分を超える内容で、本ライブの意義が視覚的にも理解できる。。
ライブ演奏・・8 ライブ映像・・8 プログレ度・・7 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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Il Castello De Atrante 「Capitolo 8: Live」
イタリアのプログレバンド、カステッロ・ディ・アトランテのライブ。2014年作
1992年にデビュー、イタリアのネオプログレを牽引してきたバンドの2012年のライブをCD+DVDに収録。
美しいシンセにヴァイオリンの音色と、メロウなギターによる優美なシンフォニックロックで、
イタリア語によるヘタウマのヴォーカルも含めて、幻想のロマンを感じさせるやわらかな叙情性と
ゆったりとしたほどよいB級の味わいもこのバンドの魅力。ほとんどが10分前後の大曲なので、
この手の優雅系シンフォが苦手な方には向かないが、90年代ルーツのイタリアンシンフォ好きはにんまりです。
ライブ演奏・・7 プログレ度・・7 イタリア度・・9 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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HOSTSONATEN「Alive in Theatre」
イタリアのシンフォニックロック、ホストソナテンのライブ。2013年作
ファビオ・ズッファンティ率いるバンドで、本作は2012年作「老水夫の歌」(The Rime of the Ancient Mariner)を
劇場用オペラとして公演したステージをCD+DVDに収録。元アルバムもロマンにあふれた素晴らしい傑作であったが、
ライブにおいても、やわらかなフルートに美麗なシンセワーク、叙情的なギターを重ねた、優美なシンフォニックロックを再現。
シアトリカルに歌い上げる英語のヴォーカルとともに、演劇的なドラマ性に包まれた濃密な空気感が広がってゆく。
艶やかなヴァイオリンにピアノも美しく、ラスト曲では「海鳥」役の女性ヴォーカルも加わって、壮麗なシンフォニックオペラを完成させる。
派手な衣装に身を包んだアクターたちが、生バンドをバックに前衛的な踊りや演技を繰り広げるDVDの映像も必見です。
ドラマティック度・・9 ライブ映像・・8 ライブ演奏・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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The Watch 「Seven」
イタリアのプログレバンド、ウォッチの2017年作
The Night Watchの名で90年代から活動するバンドで、2001年からThe Watchに改名してからの7作目となる。
メロウなギターに美しいシンセアレンジ、P.ガブリエル似のヴォーカルを乗せた、GENESISを思わせる
シンフォニックロックサウンドは本作でも健在。むしろ、ますます古き良き感触を強めて、ジェネシス化が進んだような…
と思ったら、ゲストに当のスティーヴ・ハケットが参加している。メロトロンもたっぷりと鳴り響きつつ、
わりとキャッチーな中期GENESIS的なナンバーやアコースティックによる小曲などもあったりと、
コテコテになりすぎないスタイリッシュなセンスもさすが。もはや新鮮味はないが優美な聴き心地の好作品です。
シンフォニック度・・7 プログレ度・・7 GENESIS度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Conqueror 「Un'altra Verita」
イタリアのプログレバンド、コンカラーのライブ。2015年作
2014年イタリア公演のライブを収録したCD+DVD。女性Key&Voを含む4人編成で、
軽妙なアンサンブルにイタリア語による女性ヴォーカルを乗せた、優雅なシンフォニックロックを聴かせる。
程よくハードなギターに美しいシンセを重ねたインストパートは、随所に泣きの叙情も垣間見せつつ、
優美な女性声パートにつながってゆく。2014年作「Stems」からのナンバーを中心に、
メロウなギターにオルガンの音色を含んだ古き良きプログレ感触も覗かせながら、
やはり若手バンドらしいスタイリッシュなセンスを感じさせるのもこのバンドの魅力だろう。
ライブ演奏・・8 プログレ度・・7 イタリア度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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QUANAH PARKER 「Suite Degli Animali Fantastici」
イタリアのプログレバンド、クアナ・パーカーの2015年作
結成は80年代ながら作品を残さないまま解散、2005年になって復活したというバンド。
やわらかなシンセアレンジに、しっとりとした女性ヴォーカルの歌声を乗せた叙情的なサウンド。
流麗なギターを乗せたインストパートとクラシカルな繊細さも感じさせる軽妙なアンサンブルで、
紅一点、エリザベータ嬢の歌声は、イタリア語による語りから、コケティッシュなスキャットまでこなし、
サウンドにシアトリカルな空気感も加えている。楽曲的には濃密に盛り上がる部分はさほどないので、
案外さらりと聴けてしまうのだが、優雅なジャズロック風味のシンフォとしてもそれなりに楽しめる。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 優雅度・・8 総合・・7.5
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Soul Enema 「Of Clans And Clones And Clowns」
イスラエルのプログレバンド、ソウル・エネマの2017年作
女性Voにシンセを含む5人編成で、前作はテクニカルなハードシンフォニックの傑作だったが、
7年ぶりとなる本作も、女性ヴォーカルの歌声に、適度にハードなギターときらびやかなシンセを乗せ、
軽妙な展開力とともに、ときにアラビックな旋律を含む民族色を融合したサウンドを聴かせる。
優雅で知的なアンサンブルは、曲によってはシンフォニックなジャズロック的でもあったり、
程よくエキセントリックなセンスも覗かせたり、レベルの高い演奏で辺境臭さも感じさせない。
3パートに分かれた20分を超える組曲も素晴らしい。優雅で軽妙な女性声プログレの傑作である。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 優雅で軽妙度・・9 総合・・8
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SPECIAL PROVIDENCE「Will」
ハンガリーのプログレ・フュージョンロック、スペシャル・プロヴィデンスの2017年作
世界最高レベルの傑作となった前作に続き、5作目となる本作も、ギター、シンセ、ベース、ドラムの4人編成で
テクニカルなフュージョンプログレが炸裂する。ソリッドなドラムとベースに、ハードエッジなギターと
美麗なシンセワークを乗せたサウンドは、PLANET Xのようなメタルフュージョン的な硬質感で、
ときにアラン・ホールズワースを思わせるような流麗なギターフレーズがなかなか素晴らしい。
オールインストであるが、確かなテクニックあるメンバーたちのスリリングな演奏は世界レベル。
今作は全体的にもハード寄りのサウンドなので、テクニカルメタル系のリスナにも楽しめるだろう。
メロディック度・・7 テクニカル度・・9 軽妙度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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LEVIN/MINNEMANN/RUDESS「LMR」
トニー・レヴィン、マルコ・ミンネマン、ジョーダン・ルーデスによるユニットの2013年作
この凄腕メンバーで、どんな超絶技巧が繰り出されるのかと興味津々であるが、
エフェクトの効いたレヴィンのスティックベースに、ルーデスの華麗なシンセが合わさり、
テクニカルなリズムの中にも、随所にシンフォニックですらあるメロディックな感触も覗かせる。
楽し気に叩きまくるミンネマンの軽やかなドラムもさすがで、トリオによるアンサンブルながら、
それぞれが己のセンスを十二分に発揮していて、厚みを感じさせるサウンドが素晴らしい。
ジャズロック、フュージョンロック的な要素もありつつ、じっくりとメロウに聴かせるパートなど、
単なる技巧のみに陥らないところが、さすが一流のミュージシャンたちである。
メロディック度・・7 テクニカル度・・8 アンサンブル度・・8 総合・・8
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7/7
七夕はプログレで(183)


ROBERT REED 「SANCTUARY」
イギリスのミュージシャン、ロバート・リードの2014年作
MAGENTAのシンセ奏者でもあるミュージシャンで、本作はMike Oldfieldへのオマージュを込めて作り上げた作品。
ピアノ、ギター、ベース、マンドリン、シンセ、リコーダー、マリンバ、さらにはチューブラーベルズまで、一人で演奏し、
2パートに分かれた全38分の大曲を描いてゆく。アコースティックギターのつまびきにリコーダーの音色が重なり、
叙情的なエレキギターのフレーズとともに、ケルティックな味わいも含んだ繊細にして優美なサウンドは、
まさにマイク・オールドフィールドそのもの。オリジナルティ云々を超越した、敬愛を感じさせるオマージュといえるだろう。
ドラマティック度・・8 優美度・・9 オールドフィール度・・9 総合・・8
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ROBERT REED 「SANCTUARY LIVE」
イギリスのミュージシャン、ロバート・リードのライブ作。2017年作
Mike Oldfieldへのオマージュ作品「SANCTUARY」のI & II をライブで再現したCD+DVD。
自身のギター&シンセに、二人のギター、ベース、ドラム、シンセ、ピアノ、マリンバ&ヴィブラフォン、
女性Voにコーラス隊も加えた大編成で、それぞれ20分前後の優美な大曲を構築してゆく。
「I」のパート2は簡略バージョンだが、それ以外は完全なライブ再現で、メロウなギターフレーズに
アコースティックを取り混ぜた、ケルトロック的でもある優雅な楽曲をじっくりと聴かせてくれる。
ライブならではの躍動感というものはさほどないが、丁寧に楽曲を再現した好ライブ作品だ。
DVDの方では、MAGENTAのクリスティーナ・ブースらも含む大所帯でのステージ映像を楽しめる。
ライブ演奏・・8 優美度・・9 オールドフィール度・・9 総合・・8
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Les Penning「Belerion」
イギリスのミュージシャン、レス・ペニングのプロジェクト。2016年作
Mike Oldfieldの名作「オマドーン」にも参加したリコーダー奏者と、MAGENTAのロバート・リードに、
TRICKSTARのフィル・ベイツが参加、アコースティックギターのつまびきに素朴なリコーダーの音色が重なり、
うっすらとしたシンセとともに、英国フォーク的な牧歌性とケルティックな味わい包まれたサウンド。
アコースティック主体ながら、ときにエレキギターの旋律は初期のマイク・オールドフィールド的な感触で、
2~3分前後の小曲を連ねた、中世音楽のような繊細で優雅なインストサウンドが楽しめる。
プログレファンはもちろん、ケルトやトラッドが好きな方にも薦められる耳心地の良い好作品だ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 素朴で優雅度・・9 総合・・8
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MAGENTA 「Live at Real World」
イギリスのシンフォニックロック、マジェンタのライブ。2010年作
アコースティック編成にストリングスを加えた、2009年のスタジオライブを収録した2CD+DVD。
アコースティックギターのつまびきに、優雅なピアノとオーボエが重なり、女性ヴォーカルの歌声を乗せ
しっとりと聴かせるサウンドは、キャッチーなバンドの楽曲になかなかマッチしていて、じつに耳心地よい。
アコースティックアレンジによりクリスティーナの美しい歌声が引き立ったことで、RENAISSANCEあたりにも通じる
クラシカルで優美な雰囲気に包まれていて、アルバムバージョンとはまた違った魅力が引き出されている。
DVDではセクシーなドレスのクリスティーナの姿をはじめ、アットホームな雰囲気のスタジオライブの映像が楽しめる。
ライブ演奏・・8 しっとり優美度・・9 女性Vo度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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TOUCHSTONE「Live Inside Out」
イギリスのシンフォニックハード、タッチストーンのライブ。2014年作
2008年にデビュー、男女Voのハードシンフォ系バンドとして2013年までに4枚のアルバムを発表、
本作は2作めのライブ作品となる。CD+2DVDで、2枚のDVDにはそれぞれ別会場でのライブを収録。
いくぶんメタリックなギターとツーバスのドラムによるヘヴィな質感と、浮遊感のある女性ヴォーカルを乗せて、
ときにゴシックメタル的な感触も含んだようなサウンドは、プログレよりはむしろメタル系リスナーに受けそうな気がする。
紅一点、キム嬢の歌声は、あやうい音程も含めて正直ヘタウマなのだが、フェミニンな味わいがあってわりと嫌いではない。
音質的にはややラウドで、CDの音だけだとさほど面白くはないので、DVDの映像を鑑賞するのをお薦めします。
ライブ演奏・・7 わりとハー度・・8 女性Vo度・・7 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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JUDY DYBLE 「Enchanted Garden」
英国のフォークシンガー、ジュディ・ダイブルの2004年作
Fairport Conventionのオリジナルシンガーである彼女の、じつに34年ぶりとなる復活作。
ファンタジックなジャケのイメージ通り、幻想的な味わいのアシッド・フォークロックで、
アコースティックギターにうっすらとしたシンセが重なり、ゆるやかなサイケ的でもある浮遊感とともに、
かつてと変わらぬジュディの伸びやかな歌声が楽しめる。フルート、サックスなども加えた英国らしい牧歌性に
エレキギターも使ったロック色はSPRIGUNSなどにも通じる感触ながら、曲によってはニューエイジ風味の
モダンなアレンジも取り入れていて、ゆったりとした女性声アンビエント的にも味わえる。
ドラマティック度・・7 英国度・・8 女性Vo度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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Deluge Grander 「Oceanarium」
アメリカのプログレバンド、デリュージ・グランダーの2017年作
過去2作はミステリアスなスケール感に包まれた素晴らしい傑作であったが、3作目はレアな自主流通で
本作は4作目になるらしい。オールドな味わいのギターにメロトロンを含むヴィンテージなシンセワークで、
70年代ルーツの聴き心地をかもしだし、オールインストによるサウンドは軽妙な味わいながらも
ほどよくメロディックなフレーズを盛り込んだシンフォ色とともに、ミステリアスなドラマ性を描いてゆく。
ストリングスやブラスも加えたチェンバーロック的な優雅さやアコースティックを用いたゆったりとした叙情も含みつつ、
とぼけた味わいの知的な展開力はECHOLYNなどにも通じるが、こちらはより大作志向のスケール感に包まれる。
10分を超える大曲多数の全79分で、さすがに長尺感はあるのだが、プログレ好事家はチェックすべき力作です。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 壮大度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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BENT KNEE 「Land Animal」
アメリカのアヴァンロック、ベント・ニーの2017年作
前作はKATE BUSHがチェンバーロック化したような個性的な好作であったが、続く本作も、
女性Vo&Key、女性Bに、ヴァイオリン奏者を含む編成で、キュートな女性ヴォーカルの歌声を中心に、
とぼけた味わいのレコメン系サウンドを融合、美しいシンセやヴァイオリンを加えたアレンジとともに、
エキセントリックなアヴァンロックを聴かせる。シンセ&ヴォーカルのコートニー嬢の歌声も表現力十分で、
ときにエモーショナルな情感を加えて、グルーヴィな演奏とともにサウンドに躍動感を加えている。
曲によっては、チェンバーロック的なクラシカルでスリリングな空気感にも包まれつつ、あくまでキュートで
どこかオシャレですらあるセンスは、プログレ、ポップ、レコメンの垣根を超えて評価されるべき内容だ。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 女性Vo度・・9 総合・・8.5
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KLO PELGAG 「L'Alchimie Des Monstres」
カナダの女性SSW、クロ・ペルガグの2014年作
ケベック州出身の女性アーティストで、アコースティックギターにフランス語による歌声を乗せ、
クラリネットやバスーン、ヴァイオリンなどを加えたチェンバーロック色を加えた個性的なサウンド。
アコースティックを主体にした優雅な耳心地と、エキセントリックなセンスが合わさって、
ほどよいアヴァンギャルド性も含みつつも、わりとキャッチーな歌ものである点では、
Joanna Newsomなどにも通じる雰囲気もあるかも。フランス語による優雅な歌声に、
クラシカルなピアノ、ヴァイオリンが鳴り響く、サロン系チェンバーの流れでも楽しめます。
チェンバー度・・8 優雅度・・9 女性Vo度・・8 総合・・8
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HELIOPOLIS 「EPIC AT THE MAJESTIC」
アメリカのプログレバンド、ヘリオポリスのライブ。2016年作
シンセを含む5人編成で、2014年作「City of the Sun」を曲順通りに完全再現したライブステージ。
古き良き味わいのシンセワークに、ほどよくヘヴィなギターと手数の多いドラムで
軽妙アンサンブルのシンフォニックロックを聴かせる。アメリカのバンドらしいキャッチーな歌メロや
コーラスハーモニーとともに、ECHOLYNNEAL MORSEあたりを思わせるメロディックな味わいで、
各メンバーのしっかりとした演奏力も含めてバンドとしてのレベルも高い。濃密すぎない軽快なセンスで、
18分を超えるラストの大曲まで、本格派のアメリカンプログレが味わえる見事なライブ作品だ。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 ライブ演奏・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Evership
アメリカのプログレバンド、エヴァーシップの2016年作
美麗なシンセアレンジに、適度にハードなギターと伸びやかなヴォーカルを乗せ、
キャッチーなメロディとドラマティックな展開力で聴かせる、シンフォニックなプログレハードサウンド。
オルガンやムーグを含んだシンセに、ヴァイオリンが鳴り響く、KANSASにも通じる叙情性に包まれて
10分を超える大曲を構築する。どの曲も長いので長尺感はあるのだが、あくまでメロディを前に出した
やわらかな聴き心地で、スタイリッシュになり切らない、おおらかなシンフォが楽しめる方にはもってこい。
アコースティックギターによるしっとりとしたパートから、じっくりと盛り上げる後半の大曲などは、
TRANSATLANTICMOON SAFARIあたりを思わせる。アメリカらしいキャッチーなシンフォ力作です。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 おおらかな叙情度・・9 総合・・8
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GIANNOTTI 「The Great Unknown」
アメリカのプログレミュージシャン、ジアノッティの2014年作
CANNATAなどにも参加したマルチミュージシャン、ロバート・ジアノッティのソロ作品で、
美麗なシンセアレンジにメロウなギターを乗せ、やわらかなフルートも鳴り響く
牧歌的なシンフォニックロック。マイルドなヴォーカルはややヘタウマな感じであるが、
マンドラのつまびきなどアコースティックな叙情性とともに、ときにプログレハード風味のノリや、
女性ヴォーカルによるトラッドロック的なラスト曲まで、ゆったりと優雅なサウンドが楽しめる。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 叙情度・・8 総合・・7.5
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HIRSH GARDNER 「MY BRAIN NEEDS A HOLIDAY」
NEW ENGLANDのハーシュ・ガードナーのソロ。2017年作
伝説のプログレハードバンドとして3枚のアルバムを残して消えたニュー・イングランドのドラマーで、
ソロとしては2002年以来、15年ぶりとなるアルバム。サウンドはキャッチーなポップ性を含んだメロディックロックで、
これという新鮮味はないのだが、ゲストによるテクニカルなギターソロや、美しいシンセアレンジも覗かせて、
かつてのNEW ENFLANDに通じるような叙情性もある。ラスト2曲は、TAI PHONG「シスター・ジェーン」、
PROCOL HARUM「青い影」のカヴァーで、枯れた味わいのヴォーカルとともにしっとりと楽しめる。
Disc2には、2002年のソロ「Wasteland for Broken Hearts」のリマスター音源を収録。
キャッチー度・・8 プログレハー度・・7 新鮮度・・7 総合・・7.5
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SAGA 「The Human Condition」
カナダのプログレハード、サーガの2009年作
フロントを務めていたマイケル・サドラーが脱退し、新ヴォーカルを迎えてのアルバムで、
ファンの間では賛否のある作品ながら、サウンドの方はきらびやかなシンセワークととともに
キャッチーなメロディとプログレ的な知的なアレンジで聴かせるクオリティの高さが光っている。
ロブ・モラッティのヴォーカルも違和感なくサウンドにマッチしていて、むしろこれまでのサーガの作風を
モダンなプログレハードへと進化させている。サドラー不在を感じさせない好作品であるが、
長年のファンには評価が得られず、モラッティは本作のみで脱退、次作から再びサドラーが復帰することになる。
メロディック度・・8 キャッチー度・・8 プログレハー度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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6/23
ポーランドのメタルとプログレ特集ページ作りました!こちら(169)


Isildurs Bane「Off The Radar」
スウェーデンのプログレバンド、イシルドゥルス・バーネの2017年作
1984年にデビュー、初期の優雅なシンフォニック路線から、チェンバーロック色を取り入れながら独自に深化をとげ、
孤高の北欧プログレ作品を構築してきたこのバンド、2005年以降はぷっつりと音沙汰がなかったが、
2016年にMarillionのスティーヴ・ホガースとの共演作を発表、それに続く純粋なバンド名義のアルバムである。
艶やかなストリングスにシンセが重なり、軽やかなマリンバの音色など、チェンバー・ジャズロック的なサウンドを、
モダンなアレンジで包み込んだという作風で、空間的なスケール感を構築するこのバンドらしい聴き心地である。
エレクトロなシンセの重ねは、フィンランドのXLなどにも通じる感触で、ほどよく実験的でありつつ
モダンなシンフォニック性とアカデミックな重厚さが同居している。新たなイシルドゥルスの深化の始まりだ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 チェンバー&エレクトロ度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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GOSTA BERLINGS SAGA 「Sersophane」
スウェーデンのプログレバンド、イエスタ・ベルリング・サーガの2017年作
シンフォニックとチェンバーロックを融合させたようなセンス抜群のサウンドで、本作が4作目となる。
どっしりとしたベースとドラムのリズムに、ムーグシンセやメロトロン、そしてアナログ感あるギターを乗せて、
ANEKDOTENのような北欧らしい空気感に、KING CRIMSONの緊張感を加えたようなサウンドを描き出す。
オールインストであるが、甘すぎない程度の叙情性と、リフレインするフレーズのサイケな浮遊感も含んで、
玄人好みの味わいがディープなファンを楽しませる。アルバム後半の15分の大曲もスリリングな迫力に引き込まれる。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 知的センス度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Gungfly 「On Her Journey to the Sun」
スウェーデンのプログレバンド、BEARDFISHのリカルド・ソーブロムによるプロジェクト、ギャングフライの2017年作
Big Big Trainでも活躍するマルチミュージシャンで、やわらかなシンセにジェントルなヴォーカル、
渋みのあるギターワークとともに、しっとりとした叙情を含んだヴィンテージなサウンドを聴かせる。
オルガンやメロトロンなどの古き良きプログレ感触と、随所に泣きのギターフレーズや、サイケ的な浮遊感も覗かせつつ、
やはりBEARDFISHを思わせる、ほどよく屈折した知的な雰囲気に包まれながら、10分を超える大曲を構築してゆく。
軽妙で優雅な味わいのナンバーもよい味わいで、彼のミュージャンとしてのセンスが散りばめられた傑作といえる出来だ。
Disc2は、2009年作「PLEASE BE QUIET」、2011年作「LAMENTATIONS」からの14曲を収録したベスト的な内容。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 優雅でヴィンテージ度・・9 総合・・8
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PAIDARION Finlandia Project 「Two Worlds Encounter」
フィンランドのシンフォニックロック、パイダリオンの2016年作
2009年にデビューし、本作は3作目。前作「Behind the Curtains」は優雅なる好作品であったが、
本作ではドラムとベース以外のメンバーがゲスト扱いとなった、いわばプロジェクト的なユニットらしい。
シンセにはロバート・ウェッブが参加し、ENGLANDのカヴァーや未発曲なども演奏していて、
バンドの過去曲の再録や、オーストラリアのWINDCHASEのカヴァーなどもマニア好み。
ハスキーな女性ヴォーカルの歌声に、やわらかなギターとメロトロンを含むシンセも美しく
どの曲も優美なアレンジで、シンフォニックロック好きにはとても楽しめる逸品です。
メロディック度・・8 フログレ度・・7 優美度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Retrospective 「Re:Search」
ポーランドのプログレバンド、レトロスペクティブの2017年作
ヘヴィなギターを乗せた、Riversideあたりにも通じる空気感とオルタナ風味の硬質感に、
エモーショナルなヴォーカルで聴かせる、モダンなハードプログレというようなサウンド。、
とき美しいシンセに女性ヴォーカルも加わって、メランコリックな叙情をかもしだすところは、
やはりポーランドのバンドらしい。楽曲は4~5分前後が主体で、わりとシンプルな聴き心地なので
プログレ的な展開力という点ではやや物足りないか。もう少しシンフォニックな壮麗さがあれば。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 モダン度・・8 総合・・7.5
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Roger Waters 「The Wall」
PINK FLOYDのロジャー・ウォーターズのライブ作品。2015年作
2010~2013年にかけて行なわれた「The Wall Live」ツアーのライブ音源をCD2枚に収録。
1975年の名作「ザ・ウォール」の完全再現で、トリプルギターにツインキーボードの編成で、
多数のコーラスを含む厚みのあるサウンドで、かつての名作を再アレンジしている。
やわらかなオルガンにメロウなギター、自身の渋みのあるヴォーカルにコーラス隊や、
ときにストリングスも加えた壮大なドラマ性は、時代を超えるダイナミックな味わいである。
同DVDの映像からは、反戦主義と共産主義への傾倒という彼の思想が強くにじみ出ているらしいが、
CDで音のみを聴くには、歴史的名作の壮麗な再現という素直な楽しみ方が出来るだろう。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 ライブ演奏・・8 総合・・8
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MARILLION 「SOMEWHERE ELSE」
イギリスの叙情ロックバンド、マリリオンの2007年作
前作「Marbles」は繊細な叙情ロックでありながらもプログレらしさを含んだ傑作であったが、
通算14作目の本作は、さらに自然体のほどよいユルさに包まれた、メロウなサウンドを聴かせる。
裏声も巧みに使うスティーブ・ホガースの歌声は、いまやバンドの世界観を体現する表現力で、
今作では、キャッチーといってもよいやわらかな繊細さで楽しめる。スティーブ・ロザリーのギターも
ここぞと泣きのフレーズを織り込んで、じっくりと楽曲を盛り上げる。全体的には派手さはないものの、
キャリアのあるバンドしかかもしだせない「繊細な存在感」というべき空間性が素晴らしい好作品。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 叙情度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Cosmograf 「Capacitor」
イギリスのシンフォニックロック、コスモグラフの2014年作
マルチミュージシャン、Robin Armstrongのソロプロジェクトで、適度にハードなギターを乗せたモダンな感触と
オルガンなどを含むプログレらしいシンセアレンジで、コンセプトアルバム的なシリアスな空気感を描いてゆく。
マイルドなヴォーカルを乗せた、翳りのある叙情性はARENAあたりにも通じる重厚な感触で、
メロウなギターにシンフォニックなシンセが重なったドラマティックな聴き心地が楽しめる。
オルガンが鳴り響くゆったりとしたナンバーも耳心地よく、Marillionばりの泣きの叙情とともに、
薄暗くウェットな空気感をストーリー的な流れでじっくりと味わえる、モダンシンフォの力作である。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 重厚度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Regal Worm 「Neither Use Nor Ornament」
イギリスのプログレバンド、リーガル・ワームの2014年作
マルチミュージシャン、Jarrod Goslingによるユニットで、前作は「現代版GENTLE GIANT」というような見事な傑作だったが、
続く本作は、のっけから18分の大曲で、とぼけた味わいの軽妙なサウンドに、マイルドな歌声を乗せた繊細な叙情も覗かせる。
メロトロンも含む美しいシンセアレンジに、難解にならない程度の変拍子リズムで、フルートによるゆったりとしたパートなど、
先の読めない展開力には知的なセンスを感じさせる。曲によっては、MAGMAのようなコーラスを乗せた妖しさも含んでいて、
それでいてコロコロとしたどこかコミカルな味わいもあったりと、一筋縄ではいかない。不思議なセンスのアヴァンなプログレ作品。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 軽妙度・・8 総合・・8
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KARDA ESTRA 「Time and Stars」
イギリスのクラシカル・チェンバーロック、カルダ・エストラの2016年作
マルチミュージシャン、Richard Wilemanによるソロユニットで、本作は「The Stars and The Stars」、
「Foture Sounds」という2つのパートに分けられたアルバム。やわらかなクラリネットにピアノ、シンセが絡み、
暗すぎないダークさとクラシカルな優雅さに包まれた、耳心地の良いチェンバーロックサウンド。
女性ヴォーカルも加わったやわらかな美しさと、今作ではアコースティックギターによる繊細さとともに、
ほの暗い翳りを含んだ優美な叙情にうっとりと浸れる。後半にはドラムを加えたロック色も覗かせつつ、
UNIVERS ZEROのようなミステリアスな空気感も楽しめる。これぞチェンバーロックという作品。
クラシカル度・・8 チェンバー度・・8 優雅度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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GUAPO 「ELIXIRS」
イギリスのアヴァンプログレ、グアポの2008年作
結成は90年代というキャリアのあるバンドで、エレピを含むシンセに、サウンドスケープ的なギター、
ヴァイオリンが不穏に鳴り響く、緊張感のある静寂を描く、チェンバーロック風味のサウンドを聴かせる。
オールインストながら、アヴァンギャルドな即興性と知的な構築センスが合わさり、ほのかなダークさと
先の読めないスリリングな空気感に包まれて、10分を超える大曲を巧みな演奏でじっくりと描いてゆく。
テクニカルな変則リズムと、生々しいアンサンブルの緊張感は、UNIVERS ZEROにも通じるが、
アンビエントな浮遊感や女性スキャットを乗せたArt Bearsのような雰囲気もあったりして面白い。
ラスト曲での原初的な怪ししい空気感などは、Third Ear Bandをも思わせる。異色の力作だ、
アヴァンギャル度・・8 プログレ度・・8 ダークな緊張感・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Art Zoyd 「Le Mariage Du Ciel Et De L'Enfer」
フランスのチェンバーロック、アール・ゾイの1985年作、邦題は「天国と地獄の結婚」
バレエ団との共演のために作られた作品であるが、不穏な笑い声から、緊張感あるベースにピアノ、
サックス、ヴァイオリンを加えたダークなアンサンブルは、まさしくチェンバーロックである。
クラシカルな要素が前に出ていてロック色こそ薄いものの、ゴシック的ともいうべきヨーロピアンな翳りと
クラシックの持つ優雅なダイナミスムを随所に感じさせるという、これぞ暗黒チェンバーの聴き心地である。
クラシカル度・・8 チェンバー度・・9 ダーク度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Forgas Band Phenomena 「Soleil 12」
フランスのジャズロック、フォーガス・バンド・フェノメナの2005年作
マルチミュージシャン、Patrick Forgasを中心にしたユニットで、ヴァイオリン、サックス×2、トランペットを含む8人編成でのライブ作品。
やわらかなシンセにヴァイオリンやサックスの音色を乗せ、カンタベリー的でもある軽妙なアンサンブルと、
ヨーロピアンな叙情性を含んだ優雅なジャズロックサウンド。ライブ音源とは思えぬ確かな演奏力と共に、
変拍子を含むテクニカルなプログレ性とヴァイオリン、トランペットによるチェンバーロック的な感触が合わさり、
34分におよぶ大曲を構築してゆく。National Health的な軽やかさに、Mahavishnu Orchestraのフランス版という感じでも楽しめる。
ラストは18分の大曲で、全70分。カンタベリー系ファンにお薦めの優雅系ジャズロックの傑作です。
カンタベ度・・8 プログレ度・・7 優雅度・・9 総合・・8
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Forgas Band Phenomena 「L'Axe du Fou: Axis of Madness」
フランスのジャズロック、フォーガス・バンド・フェノメナの2009年作
ヴァイオリン、サックス、トランペットを含む7人編成で、本作も軽やかなアンサンブルのジャズロックを聴かせる。
女性奏者の奏でる艶やかなヴァイオリンに、トランペット、サックスが絡み、チェンバーロック色もあるスリリングな空気感とともに
10分を超える大曲を優雅に演奏する。カッチリとしすぎていないフリーキーなおおらかさが曲の長さにもつながっていて、
起承転結をを求めるリスナーには退屈かもしれないが、カンタベリー的なプログレ・ジャズロックを味わうにはうってつけでもある。
やわらかなエレピに、サックスとヴァイオリンが重なり、ロック寄りのギターフレーズも加わった厚みのあるサウンドが楽しめる。
カンタベ度・・8 プログレ度・・7 優雅度・・9 総合・・8
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6/8
世界の女性シンガー特集♪(155)


Faun 「Buch Der Balladen」
ドイツのゴシック古楽トラッド・フォーク、ファウンの2009年作
本作は全編アコースティックによるアルバムで、アコースティックギターやハープのつまびきに、
美しい女性ヴォーカルのドイツ語の歌声を乗せ、しっとりと聴かせる幻想的なネオフォークサウンド。
ブズーキやニッケルハルパなどの素朴な音色が、本格派の古楽トラッドとしての空気感を描き、
ケルティックに鳴り響くホイッスルやバグパイプといった、アコースティックサウンドの説得力とともに
中世を思わせる世界観に浸ることができる。美しい本のような作りのデジブック仕様もGoodです。
アコースティック度・・9 幻想度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Faun 「Luna」
ドイツのゴシック古楽トラッド・フォーク、ファウンの2014年作
2001年のデビューから、古楽を取り入れたネオフォークにモダンなアレンジを取り込んだスタイルで、
独自の作品を作り続けるバンド。8作目となる本作も、ドイツ語による美しい女性ヴォーカルに男性声が絡み、
ブズーキやサズ、ニッケルハルパなどを使った古楽テイストに、シンセによる味付けを加えたシンフォニック性で、
幻想的な中世トラッドフォーク聴かせる。楽曲は3~4分前後中心で、壮大なドラマ性というのは感じないものの、
キャリアのあるバンドらしいアコースティックの説得力で、しっかりと世界観を描けるのは素晴らしい。
中世フォーク度・・9 幻想度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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Kelli Ali 「Rocking Horse」
イギリスの女性シンガー、ケリー・アリの2008年作
やわらかなフルートにアコースティックギター、バンジョーによる牧歌的な演奏に
キュートな女性ヴォーカルでしっとりと聴かせる、優しく優美なサウンド。
古き良き英国フォークの優雅な叙情性と、KATA BUSH的な幻想性も含んだ世界観と
随所にオルガンやストリングス加えた、プログレ/アシッドフォーク寄りの感触もある。
少し舌足らずな彼女の歌声も魅力的で、のどかに心癒されるような好作品です。
アコースティック度・・8 優雅度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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Elise Caron 「Eurydice Bis」
フランスの女性シンガー、イリース・キャノンの2006年作
やわらかなピアノに、フランス語による美しい女性ヴォーカルを乗せて、しっとりと優雅に聴かせるサウンド。
Michael Riesslerのアルバムにも参加している彼女だけあって、語りを含んだエキセントリックな表現力は
ダグマー・クラウゼにも通じるような魅力があって、クラリネットも加わるとチェンバーロック的な味わいになる。
バックはピアノがメインなので、音数的にはシンプルなのだが、変拍子入りのスリリングな部分などは、
プログレファンにも十分楽しめるだろう。繊細さの中にもフランスらしい優雅な毒気を覗かせる、
クラシック、ジャズ、シャンソンの要素も含んだ、アーティスティックな女性ヴォーカル作品である。
クラシカル度・・8 フレンチ度・・9 女性Vo度・・9 総合・・8
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QNTAL 「Qntal III」
ドイツのエレクトロ・トラッド、クンタルの2004年作
デジタルなシンセアレンジに、美しい女性ヴォーカルの歌声、アコースティックギターに素朴なサズの響きで、
幻想的な味わいの、モダンでシンフォニックな古楽トラッドサウンドを聴かせる。打ち込みによるリズムが加わると、
Deleriumあたりに通じるポップな味わいにもなるが、こちらの方がより妖しく土着的な空気感が強い。
ときにヘヴィなギターが入ったメタリックな感触や、フィドルが鳴り響くアップテンポのナンバーもあって、
トラッド要素とデジタルなビート感が上手く融合されている。ヴォーカルは曲によってフランス語、ドイツ語を使い分けていて、
艶めいた女性声の魅力が活かされたサウンド。全70分、エレクトロなケルトミュージックが楽しめる好作品。
ドラマティック度・・7 エレクトロトラッ度・・8 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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QNTAL 「IV-Ozymandias」
クンタルの2005年作
艶めいた美しさの女性ヴォーカルをフロントに、エレクトロなシンセアレンジで聴かせる、
モダンなケルト・トラッドサウンドは本作も同様。シーケンサーのデジタルビートに乗る、
しっとりとした妖しい歌声というミスマッチが、良い具合に融合されているのがこのバンドの個性だろう。
デジタルな感触でありながら、ミステリアスな空気感が感じられるのは、アレンジのセンスの良さか。
トラッド色の薄いポップ寄りのナンバーもあるので、古楽とは無縁のリスナーにも普通に楽しめそう。
また、今作ではほとんどの曲がフランス語で歌われているので、土着性よりも優雅さが前に出ている。
ドラマティック度・・7 エレクトロトラッ度・・8 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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QNTAL「Qntal V: Silver Swan」
クンタルの2006年作
英語、フランス語、ドイツ語による美しい女性ヴォーカルを乗せ、エレクトロなシンセアレンジに、
フィドルやシャルマイ(ドイツの木管楽器)が、ケルティックな旋律を奏でる、優美なモダントラッドサウンド。
古楽としての世界観をデジタルに再現しながらも、本作では幻想的な味わいが強まっていて、
トラッド的な土着性をシンフォニックなアレンジで包み込んだ雰囲気は、FAUNなどにも通じるかもしれない。
アコースティック楽器にの音色と、艶めいた女性声の魅力がサウンドの強度と説得力を高めていて、
デジタルなアレンジもポップすぎないところがGOOD。これまでの最高傑作というべき内容だ。
ドラマティック度・・8 エレクトロトラッ度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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Fleur 「Trilogy」
ウクライナのクラシカル・ゴシック、フルールの2007年作
1st「Prikosnovenie」、2nd「Magic」、3rd「Siyanie」を収録したCD3枚組。
アコースティックギターにフルートの音色、美しい女性ヴォーカルの歌声を乗せた、
しっとりとした聴き心地で、とくに1作目は、のちの作品に比べて素朴な優しさに包まれている。
2作目も1stの延長上ながら、いくぶんスタイリッシュなアレンジで、艶やかなヴァイオリンを乗せた優雅なクラシカル性とともに
ほのかなポップ性とメランコリックな翳りが融合した、絶品のサウンドを聴かせる。3作目はさらにロック&ポップ色を増しつつ、
クラシカルな美しさと幻想性をしっかり残している。現在は入手困難な3作をまとめて楽しめる、お得な3枚組です。
クラシカル度・・8 優雅度・・9 女性Vo度・・9 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら

Fleur 「Euphoria」
ウクライナのクラシカル・ゴシックポップ、フルールの2008年作
前作はいくぶんデジタルなアレンジも取り入れた作風であったが、5作目となる本作は
やわらかなフルートにピアノ、しっとりとした女性声を乗せた、クラシカルな優雅さに包まれている。
適度にモダンなシンセアレンジを含んだキャッチーなポップ感と、倦怠の翳りを同居させたサウンドは、
よりスタイリッシュな感触になり、ストリングスも含んだ厚みのあるアレンジも素晴らしい。
クラシカル度・・8 優雅でポップ度・・8 女性Vo度・・9 総合・・8

Fleur 「Almost a'live/Heart」
フルールの2008年作
デビュー前のデモ曲10曲と、ライブ録音11曲からなる2枚組アルバム。
Disc1は2000年にレコーディングされた音源で、アコースティックギターにやわらかなフルートの音色、
母国語によるしっとりとした歌声を乗せた優美なサウンド。クラシカルなピアノにストリングスが絡む、
優雅にして幻想的な聴き心地に、東欧らしいほの暗い翳りも含んでいて、すでにその空気感も完成されている。
Disc2は2001年のライブ音源で、アコギにチェロ、フルート、そして美しい女性声による演奏にうっとりと浸れます。
クラシカル度・・8 優雅な幻想度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8

OLYA & MONSTER (Оля и Монстр)
ウクライナのアンビエント・ポップ、オリヤ・アンド・モンスターの2007年作
Fleurのメンバーによるユニットで、エフェクトのかかったドラムに、エレクトロなシンセアレンジと
母国語の女性ヴォーカルを乗せた、モダンなアンビエント・ポップというサウンド。
ドラムやギターも含めてロック色がほどよくあるので、わりとキャッチーな感触で楽しめ、
美しい女性声の魅力とともに、優美な大人のアンビエントナンバーから、曲によってはストリングスも加わって
後期のMOONLIGHT(ポーランド)のような、エレクトロなゴシックという感じでも聴ける。
ドラマティック度・・7 ゴシックポップ度・・8 女性Vo度・・9 総合・・8

Tina Karol (Тіна Кароль)「 Nochenka」
ウクライナの女性シンガー、ティナ・カーロリの2006年作
アコースティックギターのつまびきに、母国語のしっとりとした歌声を乗せた1曲目から、
シンセやストリングスを加えた優美なナンバー、打ち込みによるポップなナンバーまで
ウクライナ語による独特の響きも含めて、情感豊かな美しい歌声を堪能できる。
全30分で、うち3曲がカラオケVer、1曲がリミックスの英語Verという、実質ミニアルバム。
メロディック度・・8 ポップ度・・8 女性Vo度・・8 総合・・7
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Linda (Линда) 「AleAda(АЛЕАДА)」
ロシアの女性シンガー、リンダの2006年作
オーケストラルなシンセアレンジにロシア語によるキュートな歌声を乗せたポップロック。
モダンなポップ性の一方で、ヴァイオリンにアコースティックギターなども含んだ叙情性もあって、
単なるロシアンポップという以上に、アーティスティックなセンスも感じさせる。
デジタルなビート感に包まれたポップナンバーでも、彼女の艶めいた歌声は魅力的で
曲によってはストリングスアレンジとともに、耽美なゴスロック的なナンバーもあって、
わりと楽しめて聴けてしまう。個人的にはシンフォニックなゴス路線をもっと期待。
メロディック度・・8 ポップ度・・8 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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Cathy Claret
フランス出身の女性シンガー、キャシー・クラレの1990年作
アコースティックギターのつまびきに、フランス語によるコケティッシュな歌声を乗せ、
しっとりと聴かせる。バックの演奏はシンプルなのだが、スパニッシュ風のギターも加わったりと
わりとラテンの感触が前に出て、キュートで物憂げなヴォーカルとのコントラストになっている。
曲によってはほどよくポップなアレンジや、ジプシー的な無国籍感も含んでいて、
単なるフレンチポップや、アコースティックな歌ものという以上に不思議な味わいがある。
アコースティック度・・8 ラテン度・・8 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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5/25
ジャパニーズ・プログレ!(141)


KENNEDY「Triangle Motion」
日本のプログレバンド、ケネディの2015年作
DADAの泉陸奥彦を中心に結成、スタジオ作としては1986年「Twinkling Nasa」以来となる29年ぶりとなる復活作。
きらびやかなシンセに、手数の多いドラムとメロディックなギターを乗せ、テクニカルなアンサンブルを描く
スタイリッシュなインストサウンド。マイナー臭さのないダイナミックな演奏は、まさしくあのケネディの音である。
大人のジャズロック風味や、スケール感のあるシンフォニックロックナンバーなど、オールインストながらも
ドラマ性を感じさせる構築センスはさすが。DADAのリメイクナンバーなども美麗な味わいで楽しめる。
ダダやケネディのファンはもちろん必聴だが、初めて聴く若いリスナーにもお薦めしたい出来である。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 スタイリッシュ度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Interpose+ 「Memories In The Wind (風の記憶) 」
日本のプログレバンド、インターポーズの2015年作
2007年作以来、8年ぶりとなる3作目で、メンバーは若干替わっているが、
サウンドの方はこれまで通り、日本語歌詞の女性ヴォーカルを乗せた、
どこかなつかしい歌謡ロックの香りを漂わせるシンフォニックロック。
あるがさゆり嬢のアンニュイな歌声はどこか昭和の空気を感じさせ、
オルガンやムーグを含むシンセなど、プログレらしいレトロなヴィンテージ感とともに、
ジャズロック的でもある軽妙で優雅な聴き心地もある。全体的に派手さはないが、
やわらかな叙情に包まれてじっくりと楽しめる、大人の歌謡プログレという趣の好作品。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 昭和度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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KENSO 「内ナル声ニ回帰セヨ」
日本のプログレバンド、ケンソーの2014年作
名実ともに日本を代表するプログレバンドとして、すでに40年にわたって活動を続けるこのバンド。
1980年の自主制作のデビュー作から数えて、10作目となる本作は、意味ありげなアルバムタイトルや
曲名などからも、古き良きプログレへと回帰したようなケンソーサウンドが楽しめる逸品である。
流麗なギターにやわらかなシンセを重ね、軽妙なアンサンブルの中に日本的な叙情美を宿した、
これぞケンソー!というべき聴き心地で、とぼけた味わいの大人の余裕と確かな技巧が合わさり、
フュージョンとは異なるドラマ性のあるインストで優雅なサウンドを描き出す。さすがの傑作です。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 ケンソー度・・9 総合・・8.5
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KENSO 「Live '92」
日本のプログレバンド、ケンソーのライブ。1993年作
1992年という、名作「夢の丘」発表の翌年のステージで、まさにバンド絶頂期のライブ音源である。
「スパルタ」、「夢の丘」、「II」からのナンバーを中心に、ライブらしいアレンジを加えての躍動的な演奏が味わえる。
ツインキーボードによる美しく空間的なサウンドと、確かなテクニックのリズム隊の生み出す軽妙なアンサンブルと
優雅な聴き心地は、まさにケンソーの真骨頂。ときにジャズロック風味の即興性を軽やかに挿入しつつ、
清水氏のギターワークも流麗にして巧みなフレーズを奏でていて、楽しげに楽曲を構築してゆく。
全75分、プログレ云々を超えた一流バンドの演奏がたっぷりと味わえる、必聴のライブ作品だ。
ライブ演奏・・9 プログレ度・・8 優雅で軽妙度・・9 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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NOVELA「From The Mystic World」
日本のプログレハードロックバンド、ノヴェラのライブ作。1984年作
1984年、中野サンプラザでのステージをCD2枚に収録した、まさにノヴェラの集大成的なライブアルバムで、
個人的にも、ノヴェラを好きになるきっかけとなった思い入れのある作品だ。開演を告げるブザーの音で幕を開け、美麗なシンセによるイントロから
軽快なリズムが加わって、五十嵐氏の独特のハイトーンを乗せた、1曲目、「ドント・ストップ」は、まさにノヴェラ節というべき好曲。
続く「ディヴァイン・コメディー」から「調べの森」、「怒りの矢を放て」というドラマテイックな流れは、スタジオ盤以上の迫力で、
若き西田竜一のドラムは、技巧と勢い合わさった素晴らしいプレイを聴かせてくれる。「夢の絵の具」、「サンクトゥス」、「ロマンス・プロムナード」でしっとりとしつつ、
Disc2に入ると、永川敏郎氏のきらびやかなシンセワークが楽しめる「キーボード・トリオ」、「最終戦争伝説」からの気に入りのナンバー「出発」、
「永遠の輝き」、「シークレット・ラヴ」とキャッチーなナンバーでたたみかけ、感動的な泣きの名曲「黎明」へと続いてゆく。アンコールナンバー4曲も含めて、
CD2枚全18曲のステージを体感するように味わえる。スタジオ盤を聴いてぴんとこなかった方でも、本作を聴けば、このバンドの素晴らしさが理解できるだろう。
ライブ演奏・・9 ロマン度・・9 ノヴェラの集大成度・・10 総合・・9
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中島優貴「幻想組曲:やまとなでしこ」
元ヘヴィメタル・アーミー~イースタン・オービットの中島優貴のソロ。1984年作
小野小町、卑弥呼といった日本の歴史上の女性たちをそれぞれテーマにした10曲を収録。
美しいシンセを中心にしたインスト作品で、ベースに鳴瀬喜博、渡辺健、ドラムに樋口宗孝が参加、
いかにもシンセサイザーという音色で、ほどよくデジタルな感触に包まれた優雅なサウンドを聴かせる。
プログレ的な展開というのはあまりないので、あくまで耳心地の良いシンセミュージック、
あるいはしっとりとしたフュージョンとして楽しむのがよいかと。ちなみに歌無しなのに全曲歌詞付きです。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 キーボー度・・8 総合・・7.5
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HAPPY FAMILY 「Minimal Gods」
日本のプログレロック、ハッピー・ファミリーの2014年作
1987年にデビュー、1997年作を最後に活動休止するも、ここに14年ぶりとなる復活作が完成。
ギター、ベース、ドラム、シンセという4人編成で、マスロック的な迫力ある生々しいアンサンブルと、
プログレらしい変則リズムに知的な構築センスが融合した、有機的なインストサウンドを聴かせる。
ときにクリムゾンを思わせる重厚な硬質感とともに、アヴァンロックとしてのとぼけた味わいも感じさせ、
ライブ感のある躍動的な演奏でたたみかける。玄人好みのプログレ・マスロックの逸品です。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 アンサンブル度・・8 総合・・8
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Acoustic Asturias 「Birds Eyes View」
大山曜によるアストゥーリアスのアコースティックユニット、2004年作
全5曲のミニアルバムで、艶やかなヴァイオリンにクラリネット、ピアノ、ガットギターによる、
繊細にして優雅なアンサンブルを描く、アコースティックサウンド。
クラシカルな美しさと技巧的な演奏は、チェンバーロック的でもあるが、
あくまで優美な聴き心地で、室内楽風のBGMとしてもうっとりと鑑賞できる。
プログレ/ロック色はあまりないものの、高い演奏力で楽しめるアコースティック作品。
アコースティック度・・9 プログレ度・・7 優雅度・・9 総合・・8
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Acoustic Asturias 「Marching Grass On The Hill」
アコースティック・アストゥーリアスの、2006年作
大山曜によるアストゥーリアスのアコースティックユニットのフルアルバム。
ガットギター、ピアノ、ヴァイオリン、クラリネット&リコーダーの4人編成で、
優美なアコースティックサウンドを展開。クラシカルなピアノにヴァイオリンが絡む、
美しくも繊細な作風でしっとりと聴き入れる。前作よりもさらにクラシック寄りの感触ながら、
今回は女性ヴォーカルの加わったナンバーもあり、アルバムの中でアクセントになっている。
優雅さの中にも躍動的なアンサンブルを描く、巧みな演奏陣も素晴らしい。
アコースティック度・・9 プログレ度・・7 優雅度・・9 総合・・8
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Acoustic Asturias 「Legend of Gold Wind」
アコースティック・アストゥーリアスの2011年作
3作目の本作も、ガットギター、ピアノ、ヴァイオリン、クラリネット&リコーダーの4人編成で、
やわらかなピアノが鳴り響き、艶やかにヴァイオリンが重なる、じつに優雅なサウンド。
牧歌的なリコーダーの音色など、中世の古楽やトラッド的な要素も含んだ素朴さを、
スタイリッシュに仕上げるところはさすがのセンス。技巧的なアンサンブルは流麗で、
プログレ的な引っ掛かりがない分、BGMにもなってしまうのだが、格調高く鑑賞できる逸品だ。
アコースティック度・・9 プログレ度・・7 優雅度・・9 総合・・8
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Lu7 「Efflorescence」
日本のプログレユニット、エルユーセブンの2006年作
キーボードの梅垣ルナとギターの栗原務によるインスト・ユニットで、本作は2003年作の再発盤。
ベースには永井敏己、バカバン鈴木がゲスト参加。打ち込みのリズムの上に、きらびやかなシンセとメロウなギターを乗せた、
優雅なフュージョン・ロック。オールインストながら、クラシカルな旋律を奏でるシンセの美しさと、叙情豊かなギターフレージングで、
歌心を感じさせる聴き心地で、やわらかな耳心地のサウンドが楽しめる。ゲストによるベースの存在感もさすがで、
モダンなアンサンブルによる大人の味わいと、各パートの表現力が単なるBGM以上の幻想的な世界観をかもしだす。
シンセもギターも確かなセンスと技巧を感じさせる、優雅でメロディアスなフュージョン・プログレの好作品です。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 優雅度・・9 総合・・8
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Lu7 「Azurite Dance」
エルユーセブンの2014年作
キーボードの梅垣ルナとギターの栗原務によるインスト・ユニットで、2003年にデビュー。
4作目となる本作も、スラップの効いたベースにメロディックなギターの旋律を乗せた、
優雅なフュージョンロックを聴かせる。美麗なシンセワークがシンフォニックなテイストを加え、
ときにKENSOのようなテクニカルなアンサンブルで、軽やかなインストサウンドを描いてゆく。
やわらかなエレピを乗せたジャズロック的な感触に、ときにプログレ的なとぼけた展開も覗かせつつ、
あくまで優雅な聴き心地。12分におよぶ大曲も巧みな演奏力でスリリングに楽しめる。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 優雅度・・9 総合・・8
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FLAT122「Kagerou」
日本のプログレバンド、フラット・ワンツーツーの2009年作
ギター、シンセ、ドラムというベースレスのトリオ編成で、クラシックの手法を取り入れたサウンドを構築するバンド。
2作目となる本作は、なにやら運動会のSEから始まり、それに続くのはクラシカルなピアノの小曲、
3曲目からドラムとギターも加わって、変則リズムを含む巧みなインストのアンサンブルを聴かせる。
本作では、ギターのフレーズが前に出る部分が多く、よりプログレ、ロックとしてのダイナミズムと、
ややラウドな音質も含めてアヴァンロックとしての勢いも感じさせる。ゲストによるアコーディオン、
女性ヴォーカルを迎えての優雅なナンバーなど、今作では楽曲の多様性も増した印象だ。
12分の大曲も、叙情性が前に出ていていて聴きやすいのだが、続く10分のタイトル曲では、
スリリングなチェンバーロックが炸裂していて、前作のファンも留飲を下げるだろう。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 チェンバー度・・7 総合・・8
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桜庭統「Tales of Series Battle Arrang Tracks」
RPG「テイルズ・オブ」シリーズのバトル曲を桜庭統がアレンジしたアルバム。2008年作
ゲーム界で活躍するプログレアーティスト、ゲームについてはまったく知らないので音だけのレビューを。
オルガンやムーグシンセをたっぷりと使った、いかにもプログレらしいシンセサウンドを中心に、
ドラムやベースもわりと生音に近い音色なので、バンド演奏的に楽しめる作風である。
オールインストのBGMになりがちながら、全体的にもノリのよいナンバーが主体なので、
きらびやかなシンセの重ねとともに、キーボードプログレ寄りのサウンドとして鑑賞できる。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 キーボー度・・8 総合・・8
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桜庭統「Tales of Series Battle Arrang Tracks 2」
RPG「テイルズ・オブ」シリーズのバトル曲を桜庭統がアレンジしたアルバム。2011年作
第二弾となる本作は、のっけからギターを加えたハードロック風のアレンジで、ドラムもツーバスという、
わりと激しめのサウンドを聴かせる。演奏的にも生音に近いので、これでヴォーカルが入ったら、
普通にハードロック、メタルのリスナーにも楽しめそうである。もちろんシンセアレンジも入るが、
前作でのキーボードプログレ的な感触はやや薄れていて、鍵盤ワーク的には物足りないかも。
オルガン弾きまくりのラスト曲は、桜庭氏のさすがの面目躍如といったところだが。
ドラマティック度・・7 ハードロック度・・8 キーボー度・・7 総合・・7.5
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小川真澄 「Asterisk」
日本の女性シンセ奏者、おがわますみの2010年作
ギター、ベース、ドラム、シンセという編成で、美しいシンセワークで聴かせるフュージョン風味のサウンド。
真澄嬢のシンセワークは、ピアノからオルガンやムーグなども使ったプログレらしさも覗かせ、
優雅なクラシカル性とリズムチェンジを含む軽やかなインストサウンドを描いてゆく。
軽やかなジャズロック的なナンバーから、ときにKENSOなどを思わせるテクニカルなパートまで、
オールインストながらなかなか飽きさせない。優雅で軽妙なアンサンブルが楽しめる好作品。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 優雅度・・8 総合・・8

Bandvivil「Junaokissei」
日本のプログレ・アヴァンロック、バンドビビルの2004年作
ギター、べース、ドラムのトリオ編成で、フリーキーにギターが鳴り響くガレージロックに
テクニカルなアンサンブルを融合させた、インスト・アヴァンロックというべきサウンド。
ややラウドな音質がいかにも自主制作っぽいが、それが生々しいライブ感となっていて、
即興的で迫力のあるトリオ・アンサンブルでたたみかける。変拍子リズムによるプログレらしさや
オールドスタイルのロックなリフと随所にメロディアスなフレーズも奏でるギターのセンスもなかなかで、
緊張感と浮遊感を同居させた聴き心地が面白い。アルバムよりもむしろライブが楽しそうなバンドである。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 生々しい度・・8 総合・・7.5
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4/27
GWはプログレで♪(124)


DEC BURKE 「Book of Secrets」
イギリスのミュージシャン、デック・バークの2016年作
FROST*のギタリストで、ヴォーカル、シンセもこなすマルチプレイヤー。ソロとしては三作目で、
メロウなギターによる導入部から、美しいシンセアレンジにマイルドなヴォーカルを乗せ、
適度にハード寄りのモダンなメロディックロックが広がってゆく。楽曲自体も4~5分前後で、
キャッチーなノリの良さとハードエッジの硬質感が合わさったサウンドは、一聴してプログレらしさは希薄だが、
きらびやかなシンセアレンジや随所に奏でるギターのフレージングのセンスなどはさすが。
ベースにクリストファー・ギルデンロウ、ドラムにはスティーヴ・ヒュージスが参加している。
メロディック度・・7 プログレ度・・8 モダン度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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Josh & Co.LTD「Transylvania Part 1- The Count Demands It」
Mostly Autumnのブライアン・ジョシュによるプロジェクトの2016年作
ドラキュラ伝説をテーマにしたコンセプト作で、語りによるイントロから、アコースティックギターの素朴な感触に
ブルージーなエレキギターとジェントルなヴォーカルを乗せた、フォークロック風味のサウンドが広がってゆく。
Mostly Autumnのオリビア嬢も参加して、その美しい歌声に、シンフォニックなアレンジや、
現Nightwishのトロイ・ドノクリーによるバグパイプやホイッスルがケルティックな感触も加え
時にハードロック寄りのギターも覗かせつつ、ストーリー的な流れとともに進行してゆく。
楽曲ごとのインパクトや盛り上がりという点ではやや物足りないが、2作目に期待というところか。
ドラマティック・・8 プログレ度・・7 楽曲・・7 総合・・7.5
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RED JASPER「777」
イギリスのシンフォニックロック、レッド・ジェスパーの2016年作
結成は80年代で、1997年にいったん解散するも2015年に復活、本作は復活後2作目となる。、
うっすらとしたシンセにマイルドなヴォーカルを乗せた、ポンプロック風味のキャッチーなサウンドで、
初期のPALLASPENDRAGONのような、英国らしい優雅な叙情性に包まれた聴き心地。
80年代に回帰したようなやわらかな感触と、コンセプト的でもある全体の雰囲気は良いのだが、
1曲ごとの魅力という点では前作には及ばないか。どこかなつかしさも感じる英国シンフォ作品です。
メロディック度・・7 プログレ度・・7 英国度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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Tim Bowness 「Abandoned Dancehall Dreams」
イギリスのミュージシャン、ティム・ボウネスの2014年作
NO-MANHenry Foolでも活躍するミュージシャンで、ほどよくプログレ感のあるシンセアレンジに
やわらかなヴォーカルを乗せて、しっとりと聴かせる繊細なポストプログレサウンド。
アコースティックギターによる素朴な叙情性と、シンセの重ねによる美しさが合わさって、
メロウなギターの旋律とともに耳心地の良い味わいで、ときにストリングスアレンジも加えた
シンフォニックな感触も楽しめる。限定盤のDisc2には、別ミックスや未発曲などを収録。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 繊細度・・8 総合・・8
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Sky Architect「Nomad」
オランダのプログレバンド、スカイ・アーキテクトの2017年作
ツインギターにシンセの5人組で、ドラムを務めるのはマルチミュージシャンのCHRISことクリスティアン・ブライン。
4作目となる本作も、オルガンを含むシンセに適度にハードなギターを乗せ、変拍子入りのテクニカル性と
マイルドなヴォーカルの叙情性で聴かせる、高品質なプログレサウンド。ポストプログレ的でもある繊細さと、
オルガンが鳴り響くやわらかな感触が合わさって、メリハリのあるリズムチェンジとともに構築される楽曲は、
ProgMetalのリスナーでも楽しめるくらいのスタイリッシュな聴き心地である。9分、11分という大曲も、
派手さはないが大人の叙情性とともにじっくりと構築される、モダンでクールなセンスが光る。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 スタイリッシュ度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Sylvium 「Waiting for the Noise」
オランダのシンフォニックロック、シルヴィウムの2015年作
モダンなシンセアレンジとツインギターによるハード寄りの感触に、マイルドなヴォーカルを乗せた
繊細なシンフォニックロックとしての側面を同居させ、Marillionのような翳りのある叙情性も含んだ作風。
メロウなギターのフレージングも含めたモダンなハードシンフォという点では、むしろ英国のバンド的でもあり、
ARENAなどにも通じる聴き心地。一方ではエレクトロなアレンジやオルタナ的な感触も覗かせて、
薄暗系のメロディックロックという括りでも聴けるかと。新鮮味はさほどないが、なかなか高品質な一枚。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 叙情度・・8 総合・・8
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Il Rumore Bianco 「Antropocene」
イタリアのプログレバンド、イル・ルモーレ・ビアンコの2016年作
いくぶんハードなギターに、ピアノやオルガン、イタリア語のヴォーカルを乗せて、
モダンなスタイリッシュ性と古き良きイタリアンロックを融合させたというサウンド。
タイトなアンサンブルの中にも、イタリアらしい混沌としたミステリアスな味わいも残していて、
優雅なピアノにサックスが重なるジャズロック風味や、しっとりとした叙情を描くパートもあったり、
楽曲ごとのアレンジセンスもなかなかのもの。まさに新世代のイタリアンプログレというべき好作品。
メロディック度・・7 プログレ度・・8 イタリア度・・8 総合・・8
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MACROSCREAM
イタリアのプログレバンド、マクロスクリームの2016年作
本作は2作目で、オルガン、ムーグシンセ、ヴァイオリンの音色が絡み、イタリア語のヴォーカルを乗せ
テクニカルな変拍子を含んだ軽妙なアンサンブルで聴かせる、叙情的なプログレサウンド。
前作はいくぶんごちゃごちゃとした作風だったが、各楽器が邪魔をしないアレンジの良さと
音を詰め込みすぎないスタイリッシュな感触が強まっていて、じつに知的で優雅な聴き心地である。
軽やかなピアノを乗せたジャズロック的な感触や、先の読めないエキセントリックな展開力が同居して、
結果として非常にプログレッシブ。ムーグシンセとヴァイオリンの絡みなどはPFMのようである。なかなかの傑作。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 優雅度・・9 総合・・8
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Malibran 「Straniero / Rare & Unreleased」
イタリアのプログレバンド、マリブランの2016年作
デビューは1990年というキャリアのあるバンドで、本作は2001年~2011年までの未発音源やカヴァーを収録。
やわらかなシンセにフルート、メロウなギターを乗せた13分の大曲から、アコースティックなナンバーまで、
正規アルバムでのマイナー臭さがよい意味での牧歌性となっていて、イタリアンな叙情がたっぷりである。
Banco、King Crimson「風に語りて」、Genesis、Jethro Tull、Peter、Hamill、Traffic などのカヴァーも、
アコースティック主体のやわらかな仕上がりで、原曲の雰囲気を残しつつしっとりと聴かせる。全15曲77分。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 優美度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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GOAD 「THE SILENT MOONCHILD」
イタリアンロックバンド、ゴードの2015年作
結成は70年代というベテランバンドで、オルガンが鳴り響き、フルートにサックスが絡み、
シアトリカルな英語のヴォーカルを乗せた、魔女めいた妖しさに包まれた濃密なサウンド。
いかにもBlack Widowレーベルらしい作風であるが、美しいシンセによるシンフォニックロック性も覗かせつつ、
コンセプト的なストーリーの流れとともにじっくりと味わえる。楽曲ごとの展開力という点ではやや物足りないが、
ゲストによる女性声も加わったり、ヴァイオリンも鳴り響き、厚みのあるサウンドとともに、
幻想的な世界観を生み出す濃密なドラマ性というのは、やはりイタリアのバンドらしい。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 イタリア度・・8 総合・・7.5
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Qantum 「Le Passage」
フランスのプログレバンド、クァンタムの2016年作
美麗なシンセにメロウなギターが重なり、フランス語によるマイルドな歌声を乗せた、
ANGE影響下にあるシンフォニックロック。リズムチェンジによるドラマティックな展開力と、
シアトリカルな空気感に包まれた、いかにもフランスのバンドらしい優雅な聴き心地。
ヴォーカルの野暮ったさが好みを分けるかもしれないが、クラシカルなシンセワークに、
ときにフルートの音色も加わったやわらかな叙情は耳に優しく、プログレらしい変則リズムも含め
どことなく90年代の香りを残したローカルな味わいもまた魅力。ANGEVersaillesなど、
フレンチ・シンフォの濃密な優雅さが好きな方にはお薦めの逸品です。
ドラマティック度・・8 フレンチ度・・9 優雅度・・9 総合・・8
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Riviere「Heal」
フランスのプログレ・ポストロック、リヴィエーレの2016年作
うっすらとしたシンセアレンジに、存在感あるベースと適度にハードなギターを乗せて、
モダンな硬質感と繊細な叙情性を同居させ、ProgMetal的な感触も含んだサウンド。
マイルドなヴォーカルを乗せたエモーショナルな聴き心地とやわらかな浮遊感も含めて、
ドイツのSYLVANをメタル寄りにしたという雰囲気もあり、プログレなエモロックとしても楽しめる。
2本のギターが複雑に絡む厚みのあるアレンジや、リズム面でのテクニカルなセンスにも
知的な構築性を感じさせる。スタイリッシュなプログレ風モダンロックの好作品。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 モダン度・・8 総合・・8
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KATAYA 「Voyager」
フィンランドのプログレバンド、カタヤの2010年作
2008年にデビュー、2作目となる本作は、組曲方式の3つのパートに分かれた作品で、
オルガンやメロトロンを含むやわらかなシンセに適度なハードさのギターワーク、
随所にアコースティックなパートも入りつつ、メロウな叙情を描くインストサウンド。
中盤には、ジェントルな歌声の入ったナンバーやぽポストプログレ的な繊細なインストなど、
派手さはないものの総じて耳心地の良い作風で、涼やかな北欧らしさと、大人の叙情をじっくりと味わえる。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 叙情度・・8 総合・・8
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VA/ DECAMERON: TEN DAYS IN 100 NOVELLAS Part III
フィンランドのプログレファンジン「COLOSSUS」による企画プロジェクト。ボッカチオの「デカメロン」をテーマにした3作目。2016年作
イギリスからは、元ENGLANDの Robert Webb、WILLOWGLASS、イタリアからはLATTE E MIELE、IL TEMPIO DELLE CLESSIDRE、
TAPROBAN、 IL CASTELLO DI ATLANTE、オランダのTRION、北欧のAGENESIS、D'ACCORD、アメリカのCIRRUS BAY、CASTLE CANYON、
オーストラリアのUPF、南米のNEXUS、JINETES NEGROS、日本からはINTERPOSE+、STELLA LEE JONES、と世界各国のバンドが参加。
それぞれが優美なプログレらしさに包まれたシンフォニックロックを展開する。Disc1では、トリオンやウィローグラスのやわらかな叙情美に、
ヴァイオリンが鳴り響く、ステラ・リー・ジョーンズも白眉。Disc2では、オルガン鳴り響く古き良きプログレ感触のラッテ・エ・ミエーレ、
女性ヴォーカルの日本語歌詞を乗せた、どこかなつかしい情感のインターポーズ、Disc3では、カナダのREBEL WHEELのクールな構築センスや、
ダッコルドのヴィンテージな雰囲気や、イタリアのPHOENIX AGAINのメロウな叙情性、Disc4では、しっとりと優雅なCIRRUS BAYもよろしいですな。
デカメロンについてはよく知らなくても、CD4枚、合計280分に及ぶ、濃密かつ優雅なシンフォプログレが味わえます。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 優雅度・・8 総合・・7.5
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Three Winters 「Chroma」
ノルウェーのエレクトロ・プログレ、スリー・ウインターズの2014年作
WOBBLERのラーズ・フレドリック・フロイスリーを中心としたユニットで、
打ち込みのリズムに、シンセの重ねによるエレクトロなサウンドを聴かせる。
デジタルビートによるテクノ風味のスタイルなのだが、ムーグやメロトロンなどの音色は、
けっこうプログレ的な味わいで、単なるエレクトロなシンセミュージックというだけではない、
ほのかなシンフォ要素も覗かせる。オールインストながらもわりと楽しめる一枚だ。
ドラマティック度・・6 プログレ度・・7 エレクトロ度・・8 総合・・7.5
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4/6
フォーク&トラッドの女性シンガーもの(109)


JUDY DYBLE & ANDY LEWIS 「Summer Dancing」
英国の女性シンガー、ジュディ・ダイブルとSSWのアンディ・レヴィスのユニット。2017年作
初期FAIRPORT CONVENTIONTRADER HORNなどに参加した女性シンガーで、
本作はアコースティックギターにシンセアレンジ、ベース、ドラムを加えた叙情的なフォークロック。
ジュディのやわらかな歌声の魅力は歳を経ても健在で、英国らしい牧歌的な空気感と
ユルめのサイケ感触も含んだサウンドによくマッチしている。楽曲は2~3分前後が主体で
シンプルな聴き心地であるが、60~70年代を思わせるおおらかな雰囲気にのんびりと浸れる。
どこかくぐもったような音質もよい感じで、優雅なピアノやメロトロンのようなシンセも加わって、
プログレファンもにんまりだ。ジュディの魅力が存分に活かされたアシッド・フォークの傑作です。
古き良きフォークロック度・・9 英国度・・9 女性Vo度・・8 総合・・8
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ELIN KAVEN 「Eamiritni - Rimeborn」
スウェーデンの女性シンガー、エリン・カヴェンの2015年作
うっすらとしたシンセにアコースティックギターのつまびき、母国語よる女性ヴォーカルを乗せて、
しっとりと聴かせるネオフォーク/トラッドサウンド。フィドルが鳴り響く北欧らしいトラッド感触を、
優雅で幻想的な空気感に包み込み、モダンなアレンジで仕立て上げたという作風は、
サーミ語による独特の歌唱も(ヨイク)含めて、ラップランドのラジカルトラッドという趣であろうか。
ときにエレキギターも加わったりと、打ち込みを含めた聴きやすいアレンジセンスとともに、
プログレリスナー向きの北欧トラッドポップとしても楽しめる。
幻想度・・8 北欧トラッ度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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Jenny Hval「Apocalypse, Girl」
ノルウェーの女性SSW、ジェニー・ヒヴァルの2015年作
2011年作の出来が素晴らしかったので期待したが、本作はジャケの感じからしてサイケな雰囲気。
なにやら妖しい語りによるイントロから始まり、少女めいた囁きのようなキュートな歌声を乗せ、
浮遊感のあるシンセアレンジと、エキセントリックな空気感に包まれたサウンドを展開。
向こう側に倦怠の闇を匂わせる、危うくけだるげな狂気が、スリリングに漂ってくるような、
いわば、ケイト・ブッシュを暗黒寄りに包み込んだというような、アーティスティックなセンスが素晴らしい。
ラストの10分におよアヴァンギャルドなナンバーまで、単なる女性声サイケポップの域を超えた異色作。
ドラマティック度・・8 倦怠の狂気度・・9 女性Vo度・・9 総合・・8.5
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Huldrelokkk 「I Levende Live」
ノルウェー、スウェーデン、デンマークのメンバーによる、女性トラッドユニット、ハルドレロクの2015年作
フィドルやニッケルハルパを操る女性3人のユニットで、本作は2013~14年のドイツでのライブを収録。
艶やかなフィドルと素朴なニッケルハルパの音色、アコースティックギターによるアンサンブルで、
メンバーそれぞれの母国のトラッドをベースにしたナンバーを聴かせる。派手な衣装のメンバーに反して
サウンドはしごく素朴なアコースティック系トラッドで、新鮮さやスリリングな部分というのはさほどないが、
母国語による女性ヴォーカルを乗せた、北欧らしい涼やかな叙情が楽しめる。
アコースティック度・・9 トラッ度・・9 女性Vo度・・7 総合・・7.5
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Annbjorg Lien「Waltz With Me」
ノルウェーの女性アーティスト、アンビヨルグ・リエンの2008年作
フィドル奏者でありシンガーでもあるミュージシャンで、本作はゲストのフィドル、ヴィオラ、チェロ奏者を迎えたカルテット編成。
艶やかなフィドルの重なりに、アコースティックギターが重なり、北欧らしい涼やかな空気感のトラッドを演奏。
ノルウェー語による男女ヴォーカルの歌声が牧歌的な味わいをかもしだしつつ、ライブ録音ならではの躍動感と、
素朴な優しさに包まれた演奏が楽しめる。伝統的なフォーク、トラッドに根差したアコースティック演奏ということで、
ロック色やプログレ寄りのテイストはほとんどないが、その分、フィドラーとしての彼女の実力が感じ取れる。
アコースティック度・・9 トラッ度・・9 北欧度・・8 総合・・7.5
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Eivor
フェロー諸島出身の女性シンガー、アイヴォール・ポルスドッティルの2004年作
2000年にデビュー、フェロー諸島の伝統的なトラッドを現代的に蘇らせるシンガーで、
本作はアコースティックギターのつまびきに、美しい歌声を乗せた素朴な聴き心地。
フェロー語の歌声を乗せたトラッドナンバーに、英語歌詞によるキャッチーなカントリーソング風味もあり、
彼女の美声をのんびりと楽しめる内容だ。基本的にはアコギ一本のシンプルな音数なので、
コンテンポラリーなトラッドを求めるリスナーにに物足りないが、彼女の歌声にゆったりと浸れます。
アコースティック度・・9 トラッ度・・7 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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Eivor 「Room」
フェロー諸島出身の女性シンガー、アイヴォール・ポルスドッティルの2012年作
今作は全曲英語歌詞によるナンバーで、モダンなアレンジを取り入れたアンビエントな作風。
彼女の美しい歌声を乗せたしっとりとした聴き心地で、うっすらとしたシンセアレンジとともに、
涼やかな北の空気が感じられる。適度にキャッチーなポップ性もあるので、わりとメジャー寄りの作りなのだが、
やはりどこかにトラッド的な土着性を含んだ哀愁が感じられるのが、単なるアンビエントポップと異なるところ。
表現力ある歌声も含めて、むしろKATE BUSHなどのファンにもアピールする内容かもしれない。
キャッチー度・・8 トラッ度・・6 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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Eivor 「AT THE HEART OF A SELKIE」
フェロー諸島出身の女性シンガー、アイヴォールをフロントにしたプロジェクトの2016年作
フェロー諸島に伝わる、セルキー(あざらし女)の神話をテーマにした作品で、
The Danish Radio Big Band、The Danish National Vocal Ensembleがバックを務める。
北欧トラッド的な涼やかな空気感と、フェロー語の女性ヴォーカルを乗せたしっとりとした作風に、
男女混声コーラスによる厳かで神秘的な味わいも加えた聴き心地だ。
ブラスの音色があざらしの鳴き声にも聞こえたり、海を感じさせるSEなども含んだ、
神話のストーリーを、寒々しく土着的なトラッドと融合させたサウンドが鑑賞できる。
トラッ度・・8 涼やか度・・8 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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Gudrid Hansdottir 「Love is Dead」
フェロー諸島の女性シンガー、グドリッド・ハンスドティアの2007年作
アコースティックギターにシンセを重ね、やわらかな女性ヴォーカルを乗せたフォークロックで
ポップな感触に包まれたサウンドながら、どこかサイケがかったような浮遊感も含めて、
ユルめのアシッド・フォーク的な味わいもある。オルガンやシンセによる素朴な叙情と
艶めいた歌声の魅力が合わさって、レトロさとモダンを行き来するような空気感も面白い。
単なるフィメールポップという以上に、北欧的でエキセントリックなセンスが楽しめる好作品。
ドラマティック度・・7 妖しさ度・・8 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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Gudrid Hansdottir 「Sky Is Opening」
フェロー諸島の女性シンガー、グドリッド・ハンスドティアの2011年作
本作は、古き良き味わいのギターにやわらかな女性ヴォーカルを乗せた、どこか70年代を思わせる
ソフトなフォークロックというサウンド。メロトロンのようなシンセやヴァイオリンを含んだアレンジに、
伸びやか女性声を乗せたナンバーなどは、Renaissenceのような美しい聴き心地である。
しっりとしとしたバラードや、オールドなポップロック調のナンバーまでキャッチーな作風であるが、
ヴァイオリンにギターが重なり、翳りを含んだ叙情に包まれたナンバーはうっとりとなる素晴らしさ。
フォークロック度・・8 古き良き度・・8 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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Olof Arnalds 「Vid Og Vid」
アイスランドの女性アーティスト、オルロフ・アルナルズの2007年作
アコースティックギターのつまびきに母国語のやわらかな歌声を乗せた、素朴なフォークサウンド。
アコギの弾き語りで音数が少ない分、シンプルな味わいで、暖かみのある彼女の歌声がよく活きていて、
北欧らしい土着的な空気感に包まれた、伝統的なトラッド、フォークをゆったりと楽しめる。
のちの作品では、この素朴な路線を守りつつ、コンテンポラリーな味付けが加わってゆく。
アコースティック度・・9 素朴度・・9 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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Harriet ja Kapypojat 「siiville」
フィンランドの女性シンガー、ハリエット・ヤ・カピィポヤトの2014年作
ストリングスによる壮麗なアレンジに、フィンランド語の女性ヴォーカルを乗せ、ハードなドラムやギターが加わった
適度にモダンなロック感触を含んだサウンドで、キャッチーな感触とフィンランド的な土着性が融合した
シンフォニックなハードポップというか、女性声の北欧ハードロックとしても楽しめる作風だ。
クラシカルなストリングスにピアノによる優美な聴き心地に包まれて、ゆったりとしたバラード曲なども含む、
北欧らしい涼やかな叙情も覗かせつつ、フィメールロックとしての艶めいた歌声の魅力もある。
メロディック度・・8 フィンラン度・・8 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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Islaja 「Meritie」
フィンランドのフリーフォーク系アーティスト、イスラヤの2004年作
二本のアコースティックギターに、即興的な女性ヴォーカルを絡ませた浮遊感のあるサウンドで、
ノイズ混じりの宅録のようなチープな感触も含めて、いかにもマイナーな自主制作感に包まれている。
スキャット的な女性声が重なり、ときにフィドルが適当に鳴り響いたり、曲なのか即興なのかよく分からない、
サイケ的でもあるアヴァンギャルド性と妖しげな土着感は、ときに魔女めいていて呪術的ですらある。
単に北欧アシッド・フォークという以上にミステリアスな空気感で、ある意味とても怖くて楽しめます。
アコースティック度・・8 アヴァンギャル度・・8 妖しげ度・・9 総合・・7.5
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Marja Mattlar 「tuli」
フィンランドの女性アーティスト、マーヤ・マターの2003年作
アコースティックギターに、うっすらとしたシンセアレンジ、フィンランド語のヴォーカルを乗せた、
ゆったりと叙情的なトラッドサウンド。艶やかなストリングスにピアノも加わったクラシカルな優雅さに
素朴な母国語ヴォーカルの味わいが合わさって、土着的なサウンドをコンテンポラリーに仕立てている。
繊細なカンテレの音色や、やわらかなアコーディオンなども随所にアクセントになっている。
北欧らしい本格派のトラッドをベースに、ヴァイオリンやピアノなどで美しく味付けされた作品。
ラスト曲は、何故かエレキギターが加わったフォークメタル風味というのは意外でした。
アコースティック度・・8 北欧トラッ度・・8 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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3/24
そろそろ桜の季節(95)


NECROMANDUS
ブリティッシュロックバンド、ネクロマンドゥスの2017年作
1972年にレコーディングした唯一の音源を残して消えた、伝説の英国ハードロックバンド、
本作はなんと、35年ぶりとなる正規作品である。サウンドは、往年のBLACK SABBATHに通じる
翳りを含んだヴィンテージなハードロックで、新作と知らなければ当時の発掘音源と勘違いしそう。
うっすらとオルガンが鳴り、古き良き感触のギターと、ジェントルなヴォーカルで聴かせる
なつかしさたっぷりの味わいににんまりである。ブルージーな渋さと英国らしい叙情性も覗かせつつ、
わりとキャッチーーなナンバーなどもあって、案外幅広い曲調が楽しめる。価値ある復活作だ。
ドラマティック度・・7 古き良き度・・9 英国ハー度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Henry Cow 「Late」
イギリスのチェンバーロック、ヘンリー・カウのライブ音源。
結成40周年を記念して発売された2009年のボックスセットから、未発ライブの単独CD化。
1978年のイタリアでのライブと、同年のイギリス「Rock in Opposition Festival」でのライブ音源を収録。
1978年作「WESTERN CULTURE」時期のライブで、フレッド・フリス、ティム・ホジキンソン、クリス・カトラー、
リンゼイ・クーパーの四人に加え、女性ベース&チェロのジョージィ・ボーンが参加した5人編成でのステージ。
サックスやバスーンが鳴り響き、ギターにヴァイオリンが絡む即興的なチェンバーロックを演奏。
メインは17分に及ぶその名も「RIO」という即興曲か。媚びの無い硬派でフリーキーな聴き心地は、
初心者にはややきついかもはれない。全体的にも全35分とやや短いが、バンドのファンであればぜひ。
ライブ演奏・・8 チェンバー度・・9 音質・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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COS 「Postaeolian Train Robbery」
ベルギーのチェンバー・ジャズロック、コスの1974年
1974~83年までに5枚のアルバムを残したバンドで、存在感のあるベースを乗せたリズムに
優雅なエレピ、フルート、オーボエなどを加えた、チェンバー寄りのジャズロックサウンド。
コケティッシュな女性ヴォーカルが加わると、ZAOMAGMAのような妖しいテイストも感じさせ、
軽妙なアヴァンギャルド性に包まれた聴き心地。キュートな女性声を乗せたポップな小曲もあったり、
逆にギターがフリーキーに弾きまくるアグレッシブなジャズロックパートもあったりと、なかなか面白い。
ボーナスには前身バンドCLASSROOMの1973~74年の音源を収録。こちらもキュートなジャズロック。
ドラマティック度・・7 ジャズロック度・・8 アヴァンギャル度・・7 総合・・7.5
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Univers Zero 「Relaps: Archives 1984 - 1986」
ベルギーのチェンバーロック、ユニヴェル・ゼロのライブ音源。2008年作
1984年作「UZED」発表後から、1986年作「HEATWAVE」発表後までの間のライブ音源を収録。
サックスにクラリネットが鳴り響き、うねるようなベースとテクニカルなリズムによるスリリングなアンサンブルは、
まさに初期の暗黒路線と「UZED」でのテクニカル路線の融合という、バンドの完成系ともいう聴き心地。
1985年以降の音源は、ギターにツインキーボードの7人編成となり、より厚みのあるスケール感で
ヴァイオリンやクラリネットによるクラシカルな優雅さを含んだ、ミステリアスなチェンバーロックを描いてゆくく。
80年代後期のユニヴェル・ゼロ最盛期の迫力あるライブ演奏が味わえる。ファンは必聴作である。
ライブ演奏・・9 スリリング度・・9 暗黒度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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PRESENT 「No.6」
ベルギーのチェンバーロック、プレザンの1999年作
タイトル通り6作目となるアルバムで、重いベースにギター、ピアノ、チェロの音色が重なり、
スリリングな緊迫感を描き出す、ダークなチェンバーロック・サウンドは健在だ。
変則リズムを叩き出すドラムのキレもよく、エッジの効いたギターが鳴り響きつつ、
クラシカルなアヴァンギャルド性を重厚なアンサンブルで表現するサウンドは説得力十分。
インダストリアルな小曲も挟みつつ、16分、19分という組曲構成の大曲を中心に、
攻撃的なまでの迫力でたたみかける、ヘヴィなチェンバーロックが堪能できる。。
チェンバー度・・9 スリリング度・・9 重厚度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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FINNEGANS WAKE「Blue」
ベルギーのチェンバーロック、フィネガンズ・ウェイクの2008年作
結成は90年代というキャリアのあるバンドで、本作は5作目のアルバム。
優雅なピアノに、やわらかなシンセとヴァイオリンが絡み、軽妙なアンサンブルとともに、
わりとヘヴィなギターが加わった、スリリングでアヴァンギャルドなセンスも感じさせる。
女性ヴォーカルが加わると、ART BEARSにも通じるような妖しい雰囲気にもなり、
チェロやフルートが不穏に鳴り響く、ほどよくダークでクラシカルなチェンバーロック感触を、
ときにKENSOのような、軽やかでとぼけた味わいとともに描き出す。玄人好みの傑作。
チェンバー度・・9 スリリング度・・8 優雅度・・9 総合・・8
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CAPTAIN CHEESEBEARD 「SYMPHONY FOR AUTO-HORN」
ベルギーのプログレ・ジャズロック、キャプテン・チーズビアードの2016年作
UNIVERS ZEROのピエール・シュヴァリエも参加、二人のシンセ奏者に女性Voを含む編成で、
スペースロック的なサイケ感と軽快なジャズロックサウンドが融合した、アッパーなノリの良さで聴かせる。
トランペット、トロンボーン、サックスといったブラスが鳴り響き、男女ヴォーカルの歌声を乗せた
ゴージャスな味わいとファニーな楽しさで、ソフトなアヴァンギャルド性も含んだジャズロックを展開する。
エレピを乗せたカンタベリー風味の優雅さや、ゆったりとした大人のジャズ風味も覗かせる、玄人好みの逸品。
軽妙度・・8 プログレ度・・7 愉快なジャズロ度・・9 総合・・8
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PROMENADE 「Noi Al Dir Di Noi」
イタリアのプログレ・ジャズロック、プロムナードの2016年作
若手の4人組で、軽やかなピアノにサックスが鳴り響き、変則リズムのテクニカルなアンサンブルで、
華麗なジャズロックサウンドを展開する。技巧的にたたみかけるせわしない曲調ながらも、
優雅なメロディアス性が前に出ているので、決して難解ではなく、イタリアらしい陽性のノリに包まれている。
一方では、イタリア語のヴォーカルを乗せ、ストリングスなども加えた繊細な叙情性はPFMのようでもあり、
やわらかなエレピにサックス、ヴァイオリンを加えたカンタベリー的でもある優美なサウンドを描いてゆく。
1曲目のテクニカルなテンションに圧倒されるが、全体的にはじっくりと味わえる叙情的なジャズロック作品である。
メロディック度・・8 テクニカル度・・9 優雅なジャズロ度・・9 総合・・8
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Sailor Free 「Spiritual Revolution」
イタリアのプログレバンド、セイラー・フリーの2012年作
1994年作以来となる18年ぶりのアルバムで、トールキンの「シルマリルの物語」をコンセプトにした作品。
メロトロンやムーグを含むシンセにピアノ、適度にハードなギターを乗せたオールドロックの感触に、
フルートやフィドルの音色を含む、素朴なトラッド風味も感じさせる。ヴォーカルは英語なので
イタリア的な雰囲気は薄めで、楽曲自体はわりとシンプルなのでプログレ的な展開力というよりは、、
むしろサイケハードというようなノリと浮遊感もある。全体的には盛り上がりどころの少なさや、
楽曲そのもののインパクトの弱さから、どうに中途半端な印象なのが惜しい。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 楽曲・・7 総合・・7
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Scherzoo 「02」
フランスのチェンバー・ジャズロック、スケルズーの2012年作
マルチ・ミュージシャンFrancois Thollotを中心にしたバンドの2作目で、サックスが鳴り響きやわらかなエレピを乗せて、
クリムゾン的な硬質感と優雅さを同居させたアンサンブルで、スリリングなチェンバー・ジャズロックを描き出す。
リズム面での遊びや、展開力の面白さは前作以上で、トロ氏の標榜する軽妙かつ芸術的なサウンドは完成の域に近づいた。
ダーク過ぎない程度に、UNIVERS ZERO風味も感じられ、ベースとギターの存在感がサックスと対峙することで、
とぼけた味わいと緊迫感の同居という、絶妙のバランス感覚を生み出している。さらに今作ではエレピのみならず、
オルガンなども含むシンセアレンジも曲によってマッチしていて、よりプログレ感をかもしだしている。
チェンバー・ジャズロック度・・8 スリリング度・・8 優雅で軽妙度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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YACINE SYNAPSAS「Akala Wa Chariba」
フランスのミュージシャン、ヤシン・シナプサスの2016年作
優雅なエレピの音色に朗々としたヴォーカルを乗せ、ロック的なギターがかき鳴らされる。
先の読めないアヴァンギャルド性と、サロン系チェンバーのとぼけた味わいが同居した作風で、
歌いまわしにはどこかアラビックな中近東色も感じさせる。14分、16分という大曲でも、
構築性とは無縁の即興的な感性で、フリーなリズムと歌声を連ねてゆく。悪く言うと自己満足感に包まれた異色作だ。
ドラマティック度・・6 プログレ度・・7 アヴァンギャル度・・8 総合・・7


MURDER IN THE CATHEDRAL 「Afraid of」
フランスのサイケロック、マーダー・イン・ザ・カテドラルの1999年作
かつてアナログ限定で500枚のみ流通していた幻のバンドの音源が、2007年にCD化された。
メロディックなギターの旋律にヘタウマなヴォーカルを乗せ、ややフォークロック的でもある
おおらかな牧歌性に包まれたサウンド。叙情的でユルめの浮遊感は、なかなか耳心地が良く、
70~80年代を引きずったようなオールドな味わいは、90年代では見向きもされなかったことだろう。
歌の入らないインスト曲もけっこうあって、奔放に弾き鳴らされるギターのセンスの良さとともに、
サイケロックとしての自由な空気感が楽しめる。ボーナスに1998年の1stを全曲収録。こちらもレアですな。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 ユルめの叙情度・・8 総合・・7.5
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FRANCIS BERTHELOT 「L'inaccessible」
フランスの小説家、フランシス・ベルセロットによるプロジェクト。2015年作
中世の作曲家の生涯を描いた同名小説を、独自のオーケストラサウンドで描いたコンセプト作品。
基本的には打ち込みによるシンセとデジタルなオーケストラアレンジを駆使した作風で、
クラシカルな優雅さと映画サントラ的なイメージが合わさった聴き心地。ロック色はないので、
どうしてもBGMになってしまいそうなのだが、ほのかにドラマ性を感じさせる雰囲気はあって、
シンセの重ねによるシンフォニックなサントラという風には味わえる。全72分の力作。
クラシカル度・・8 プログレ度・・6 優雅度・・8 総合・・7
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FULANO 「Animal en Extincion」
チリのアヴァン・ジャズロック、フラノの2016年作
CONGRESOのメンバーを中心に1987年にデビュー、1997年までに4枚のアルバムを残すも、2003年にシンセ奏者が死去、
バンドは解散状態となっていたが、ここにきて19年ぶりとなる5作目を発表。「絶滅動物」というタイトルの本作は、
やわらかなフルートにピアノ、サックスを乗せた、優雅なアンサンブルから、リズムチェンジを含むアヴァンギャルドな展開力に
チェンバーロック的でもあるスリリングな空気感をまとわせた、個性的なプログレ・ジャズロックを聴かせてくれる。
スペイン語による女性ヴォーカルも妖しく、そして美しく、ときにMAGMAを聴いているかのようなスケール感にも包まれる。
ザッパをルーツにした軽妙な意外性と、南米らしいやわらかな叙情が合わさった、まさにアヴァン・ジャズロックの力作。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 優雅で軽妙度・・9 総合・・8
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PROCOSMIAN FANNYFIDDLERS 「Return Of The Sweaty Owl」
ノルウェーのアヴァン・プログレ、プロコスミアン・ファニーフィドラーズの2003年作
ヘンタイ過ぎてのけぞった2001年作から、本作ではヴァイオリン、女性シンセ奏者を含む6人編成となり、
優雅なフルートの音色にアコースティックギター、美しい女性ヴォーカルを乗せてしっとりと始まりつつ、
変拍子にリズムチェンジを含むプログレ的な展開力とともに、のっけから20分の大曲を描いてゆく。
北欧らしい涼やかな叙情のシンセアレンジも含めて、マイナー臭くなったANGLAGARDという雰囲気もあり、
シアトリカルなドラマ性とともに妖しい垢抜けなさもかえっておもしろい。女性声の北欧アヴァン・プログレとして楽しめる力作だ、
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 北欧度・・9 総合・・8



3/3
ひな祭りはプログレで♪(78)


CIRCA 「LIVE」
イギリスのプログレハード、サーカのライブ。2016年作
元Yesのビリー・シャーウッド、トニー・ケイ、アラン・ホワイトらによるバンドで、本作は2007年のデビュー直後のライブから、
アメリカツアーのステージを2CDに収録。アラン・ホワイトの軽やかなドラムに、存在感あるビリー・シャーウッドのベース、
トニー・ケイのシンセとともに、初期のYESを思わせるようなキャッチーなプログレハードサウンドを聴かせる。
オルガンを含む古き良きプログレの感触と、枯れた味わいのヴォーカルによる、大人の味わいの叙情性は、
目新しさはないものの安心して楽しめる。そして、Disc2の目玉は、YESの歴史を振り返るような40分のメドレー。
1969年のデビュー作から1999年までのナンバーから抜粋した演奏を披露してくれ、往年のファンは感激だろう。
音質的にはややラウドながら、イエス関連のファンはチェックすべきライブですね。Disc2だけでも必聴かと。
ライブ演奏・・8 Yes度・・8 音質・・7 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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MESSENGER 「Illusory Blues」
イギリスのプログレバンド、メッセンジャーの2014年作
Vo&G、B、Drという三人編成で、やわらかなギターのつまびきに、マイルドなヴォーカルを乗せ、
フルートが優美に鳴り響く、繊細な叙情性に包まれたサウンドで、ポストプログレ的なモダンさと、
オルガンなどのヴィンテージな感触が融合したサウンド。ゲストによるヴァイオンなども加えた優雅な美しさと、
フォーク的でもある素朴さが英国らしい味わいとなっていて、曲によってはシンフォニックに盛り上がる場面や、
オールドな70年代ロックテイストもあったりして、全体的に派手さはないが、ゆったりと楽しめる内容だ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 繊細で素朴度・・9 総合・・7.5
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STEVEN WILSON 「Hand.Cannot.Erase」
PORCUPINE TREEのスティーヴン・ウィルソンのソロ。2015年作
2013年の傑作「レイヴンは歌わない」に続く本作は、孤独死を遂げた女性の人生を描くコンセプト作。
うっすらとしたシンセアレンジに叙情的なギターを乗せ、キャッチーなメロディアス性も含んだ
軽快なProgMetal風のパートから、やわらかなヴォーカルパートまで、メリハリのある展開力で構築される、
いつになくダイナミックな聴き心地。ポストプログレらしい繊細で物悲しい味わいに、
プログレ的シンセにメロウなギター鳴り響くインストナンバーなど、楽曲ごとの巧みアレンジセンスも見事。
ニック・ベッグスをはじめ、THE ARISTOCRATSのガスリー・ゴーヴァン、マルコ・ミンネマン
GONGのテオ・トラヴィスらが参加。アーティストとしての豊かな才能が詰め込まれた傑作である。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 叙情度・・8 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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STEVEN WILSON 「INSURGENTES」
PORCUPINE TREEのスティーヴン・ウィルソンのソロ。2009年作
本作がソロデビュー作で、うっすらとしたシンセに、マイルドなヴォーカルを乗せた、
のちにいうポストプログレ的な物悲しい味わいの叙情ロックサウンドはすでに確立されている。
ギターには適度にメタリックなヘヴイさもあり、オルタナ的でもある硬質感を残している。
一方ではエレクトロなアレンジを加えたモダンさや、クリムゾンばりのスリリングなナンバー、
ゲストによるフルートやクラリネット、ピアノなどの音色によるやわらかな味わいなど、
楽曲ごとの面白さもある。PORCUPINE TREE~KING CRIMSONのギャビン・ハリソン、
トニー・レヴィン、DREAM THEATERのジョーダン・ルーデス、GONGのテオ・トラヴィスらが参加。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 叙情度・・8 総合・・8
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ARPIA 「Racconto D'inverno」
イタリアのプログレ・フォークロック、アルピアの2009年作
アコースティックギターの上に、イタリア語のマイルドな男性ヴォーカルと美しい女性ヴォーカルを乗せ、
ゴシック・フォーク的な薄暗い叙情に包まれたサウンド。ほとんどが1~3分前後の小曲で、
エレキギターは入らないので、プログレ的ではないかといえば決してそうでもなく、
ベースとドラムの生み出すアンサンブルやリズムチェンジを含む感触は十分イタリアンロック的だし、
シンセの加わったシンフォニックなナンバーもある。う少し女性声をメインにした曲が多いと嬉しいのだが。
ともかくアコースティックを主体にした、プログレ寄りのイタリアン・フォークロック好作品です。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 イタリア度・・8 総合・・7.5
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THE PSYCHEDELIC ENSEMBLE 「The Sunstone」
アメリカのシンフォニックロック、サイケデリック・アンサンブルの2014年作
ジャケからしていかにもB級シンフォっぽいのたが、美麗なシンセアレンジにオーケストレーションも含む
優雅なシンフォニック性に、マイルドなヴォーカルを乗せたメロディックなやわらかさに包まれたサウンド。
基本的に、ギター、ベース、シンセ、ヴォーカル、ドラムとすべてを一人でやっているソロ作品なのだが、
ゲストによる女性ヴォーカルを乗せた妖しいナンバーや、ストリングスも加わったクラシカル性と、
軽妙なリズムで聴かせるインストナンバーなど、シンフォプログレとしての聴きどころもたっぷり。
良くも悪くも独りシンフォとしてのマイナー臭さは感じられるのだが、そこも含めて楽しめるマニアはどうぞ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 優雅度・・8 総合・・7.5
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STYX「Grand Illusion/Pieces of Eight Live」
アメリカのプログレハード、スティクスのライブ作品。2012年作
代表作として名高い1977年作と、1978年作を完全再現したライブを、2CDに収録。
Disc1は「大いなる幻影」の再現で、バンドの人気を確実なものとした最大の出世作ということで、
楽曲的にはプログレハードとしての聴き心地の良さが際立っている。キャッチーなヴォーカルハーモニーと
美麗なシンセアレンジ、トミー・ショウとジェイムス・ヤングのツインギターとともに、アルバムを再現してゆく。
音質はややラウドながら、ベテランらしい味わいのある演奏力も含めて、往年のファンにはたまらないだろう。
Disc2「古代への追想」も、よりキャッチーなハードポップ感を強めた作風で、各メンバーのパートごとの充実も光る佳曲揃い。
4人がコーラスをとる厚みのあるハーモニーとともに、全盛期の最高作というべき2作品の完全再現にじっくり耳を傾けたい。
ライブ演奏・・8 アルバム再現度・・8 音質・・7 総合・・8
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SEVEN SIDE DIAMOND「Enigma」
ブラジルのプログレバンド、セヴン・サイド・ダイヤモンドの2011年作
シンセを含む5人編成で、ドラマティックな雰囲気のイントロから、ProgMetal的なハードさを含んだ
テクニカルなアンサンブルとシンセによる美麗なアレンジに、キャッチーなヴォーカルメロディを乗せた
壮麗なシンフォニックハードを聴かせる。ギターはわりとメタル寄りだが、シンセの方はオルガンや
ムーグなどの音色を含むプログレ寄りの感触なので、メタル、プログレどちらの耳でも楽しめる。
一方、やわらかな歌メロは、QUEENなどからの影響も感じさせ、サウンドに優雅さを加えている。
後半は13パートに分かれた34分の組曲で、優美なシンフォニック性とキャッチーな軽快さに、
ドラマティックな構築力が合わさった、メリハリのある展開で聴かせる。シンフォニックハードの力作。
ドラマティック度・・8 壮麗度・・8 構築度・・8 総合・・8
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CRISALIDA「Solar」
チリのハードプログレ(メタル)、クリサリダの2012年作
2006年にデビューしてから、本作は3作目となる。メタリックなギターにシンセが重なり、
スペイン語の女性ヴォーカルを乗せた、しっとりとした叙情性が合わさったサウンドで
いわば、メタリックなシンフォニックハードという聴き心地。やや微妙だった前作に比べ、
楽曲におけるダイナミックなスケール感や、女性ヴォーカルの表現力も増していて、
全体的にもぐっとレベルアップしたという印象だ。南米らしい優雅な叙情とメタル寄りの重厚さを同居させた
バランスのよいアレンジで構築された、女性声ハード・シンフォプログレ(メタル)の力作である。
ドラマティック度・・8 重厚度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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ARCHANGELICA 「Tomorrow Starts Today」
ポーランドのハードプログレ、アーチャンゲリカの2016年作
女性Vo、女性Bを含む5人編成で、いくぶんメタル寄りのギターとうっすらとしたシンセに
伸びやかな女性ヴォーカルを乗せた、タイトでモダンな感触のハードプログレを聴かせる。
ポーランドらしいメランコリックな味わいと、しっとりとした浮遊感に包まれて、美しい歌声が
響き渡るところは、かつてのThe Gatheringのアネク・ヴァン・ガースバーゲンなどを思わせる。
8分、9分という大曲も、プログレというよりはメランコリック・ロックという趣ではあるが、
同郷のLOONYPARKあたりと同様、女性声ハードシンフォとしても楽しめる好作だ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8
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Gazpacho 「FIREBIRD」
ノルウェーのポストプログレ、ガスパチョの2005年作
3作目となるアルバムの2016年再発盤。うっすらとしたシンセに包まれて、メロウなギターと
マイルドなヴォーカルを乗せた、薄暗系のポストプログレは、本作の時点で完成されたといえる。
前作でのMarillion的なスタイルから、北欧らしい涼やかで物悲しい空気感をまとわせ、
厚みのあるシンセアレンジやヴォーカルの表現力も含めて、ひとつモダンに推し進めたという感触。
アコースティックパートから、わりとハード寄りのギターや、女性コーラスを加えたパートなど
メリハリある構築センスも光っている。2パートに分かれた優美なナンバー「Orion」をはじめ、
楽曲ごとの魅力も十分。バンドとしては初期の傑作というべきアルバムだろう。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 薄暗度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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2/24
イタリアにスペイン、ドイツのプログレ♪(67)


MALIBRAN 「Le Porte Del Silenzio」
イタリアのプログレバンド、マリブランの1993/2016年作
デビューは80年代というキャリアのあるバンドで、本作は2ndアルバムを新たにリミックスした再発盤。
シンセにフルート奏者を含む6人編成で、美しいシンセワークにフルートが鳴り響き、しっとりとした叙情性と
適度に軽快さもあるメリハリのあるアンサンブルで聴かせる、90年代らしい王道のシンフォニックロック。
イタリア語のヴォーカルが加わると、やはりB級っぽさが現れて、長めの楽曲もときおり退屈になったりするのだが、
ロマンの香りを含んだ幻想性というのはこのバンドの持ち味で、後半の27分におよぶ長大な組曲も含めて、
B級シンフォとしての捨てがたい魅力がある。再発盤のボーナスには1991~93年までのライブ音源を収録。
ドラマティック度・・8 B級シンフォ度・・8 イタリア度・・8 総合・・7.5
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PANDORA 「TEN YEARS LIKE IN A MAGIC DREAM」
イタリアのプログレバンド、パンドラの2016年作
2008年にデビュー、過去3作も濃密なイタリアンプログレを描く傑作だったが、4作目となる本作は、
バンドの結成から10年を総括するような内容で、ムーグシンセにメロトロンが鳴り響き、
適度にハードなギターも加わった、美麗なシンフォニック性と重厚さを同居させたサウンドを展開。
イタリア語のジェントルな男性ヴォーカルにときに女性ヴォーカルも絡んで、やわらかなピアノに
ゲストによるヴァイオリンやフルート、きらびやかなシンセワークが合わさって、いつも以上に優雅な聴き心地である。
アルバム後半には、Banco、Genesis、Marillion、Yes、EL&Pのカヴァーを収録。女性声のマリリオン、ELPもよいですね。
Bancoのビットリオ・ノチェンツィ、元VdGGのデヴィッド・ジャクソンらがゲスト参加。プログレ愛に満ちた全76分です。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 イタリア度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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CHERRY FIVE 「Il Pozzo Dei Giganti」
イタリアのプログレバンド、チェリー・ファイヴの2015年作
GOBLINの前身バンドとしても知られ、1975年に唯一のアルバムを残したバンドが、40年ぶりに復活。
かつてのアルバムは英手歌詞のヴォーカルを乗せた、軽快やジャズック風味のサウンドであったが、
本作はのっけから24分の大曲で、オルガンにムーグを含むヴィンテージなシンセに、イタリア語のヴォーカルを乗せた、
ミステリアスなシンフォニックロックという聴き心地。メロディックなギターに、きらびやかなシンセワークを乗せ、
リズムチェンジを含んだ展開力で、METAMORFOSIなどにも通じる往年のイタリアンプログレの濃密な味わいだ。
かつてのような優雅で軽妙なアンサンブルも覗かせつつ、オールドなプログレ感触に包まれた力作に仕上がっている。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 イタリア度・・9 総合・・8
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ERRATA CORRIGE 「Siegfried Il Drago E Altre Storie」
イタリアのプログレバンド、エラータ・コリージの2015年作
オリジナルメンバーが集結し、1976年作をリメイクした作品で、アコースティックギターにやわらかなフルート、
サックスが鳴り響き、イタリア語による優しい歌声を乗せた、繊細な叙情美に包まれたサウンド。
メロトロンを含むシンセにクラシカルなピアノ、メロウなギターによるリリカルな美しさとともに、
古き良きイタリアンロックの素朴さを残しつつも、よりシンフォニックな優雅さが際立っている。
ジャケの美しさも含めて、幻想的な味わいをそのまま新鮮に蘇らせたという点でも、素晴らしい作品となった。
DVDには、本作のスタジオライブを収録。往年のイタリアンロックファンには歓喜のリメイクだろう。
ドラマティック度・・8 優美な叙情度・・10 イタリア度・・9 総合・・8.5
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IL BABAU E I MALEDETTI CRETINI 「Il Cuore Rivelatore」
イタリアのプログレバンド、イル・ババウ・アンド・マレデッティ・クレティニの2016年作
エドガー・アラン・ポー「THE TELL-TALE HEART(告げ口心臓)」をコンセプトにした作品で、
イタリア語の語りを乗せたイントロ曲から、シアトリカルなドラマ性に包まれた空気感で、
その後も、セリフのような演劇的な歌声を乗せた、一種のサントラ的なサウンドが続く。
プログレというよりは、聴く小説というような作風なので、イタリア語が分からないと少しつらいのだが、
スリリングな世界観は伝わってくる。2~4分前後の小曲を連ねた、全29分という短めの作品です。
ドラマティック度・・7 フログレ度・・7 イタリア度・・8 総合・・7
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OLD ROCK CITY ORCHESTRA 「Back to Heart」
イタリアのプログレバンド、オールド・ロック・シティ・オーケストラの2015年作
コケティッシュな女性ヴォーカルの歌声を乗せ、ほどよくサイケな浮遊感を漂わせたサウンドで、
ヴァイオリンが鳴り響くクラシカルな優雅さと、レトロなヴィンテージロックが合わさったという聴き心地。
2~4分前後の小曲を主体にした、わりとシンプル作風で、歌詞は英語なのでイタリアらしさは希薄ながら、
オルガンを含むシンセや70年代感触たっぷりのギターも含めて、ユルめの女性声サイケロックとしても楽しめる。
プログレとして聴くには物足りなさもあるが、ラストは9分の大曲で、しっとりと優美なシンフォニック性も覗かせる。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 ヴィンテージ度・・8 総合・・7.5
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Entity 「Il Falso Centro」
イタリアのプログレバンド、エンティティの2013年作
やわらかなピアノによるイントロ曲から、テクニカルなリズムに、ムーグやオルガンを含むシンセワークと、
メロディックなギター、イタリア語によるマイルドなヴォーカルを加えたサウンドで、古き良きプログレ感触と、
優美なシンフォニック性を同居させた作風。16分の大曲などは、わりともったりとした展開なのがB級シンフォらしく、
叙情的で耳心地はよいのだが、長尺ぎみのアレンジがときおり退屈に聴こえてしまうのが惜しい。
曲によっては適度にハードな質感もあったしてり、テクニカルなシンフォハードとしても楽しめるところも。
クラシカルなピアノや美麗なシンセアにはセンスを感じるので、楽曲とアレンジの質を高めてゆけばいいバンドになりそう。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 優雅な叙情度・・8 総合・・7.5
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KOTEBEL 「Live at Prog-Resiste 2013」
スペインのシンフォニックロック、コテベルのライブ。2016年作
1999年にデビュー、クラシカルな美意識を追及したサウンドで見事な傑作を作り続けるこのバンド、
本作は2013年ベルギーでのライブを2CDに収録。2003年作「FRAGMENTS OF LIGHT」からのナンバーで幕を開け、
女性シンセ奏者を含むツインキーボードによるシンフォニック性と、変拍子を多用した巧みなアンサンブルで、
クラシカルな美意識に包まれた格調高いインストサウンドを構築。濃密でありながら流麗な美しさという点では、
THE ENIDANGLAGARDが合体したような感触か。2011年作「Concerto for Piano & Electric Ensemble」からの
43分におよぶ長大な組曲の再現も圧巻で、クラシカル化したクリムゾンというべきスリリングで優美なサウンドに聴き惚れる。
Disc2には、2009年作「Ouroboros」からのナンバーに、ボーナストラックとして、2007年、2011年のライブ音源も収録。
クラシカル度・・9 プログレ度・・8 ライブ演奏・・8 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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KOTEBEL 「COSMOLOGY」
スペインのシンフォニックロック、コテベルの2017年作
ライブ作品を挟んで、7作目となるスタジオアルバムで、美しいフルートの音色にツインキーボードが重なり、
壮麗なシンフォニック性に包まれつつ、今作ではタイトルのようなスペイシーなミステリアス性も感じさせる。
ときに日本のKENSOにも通じる軽妙なアンサンブルで、起伏に富んだ構築力と知的なセンスで、
優雅なインストサウンドを描いてゆく。ハイライトである32分を超えるタイトル組曲も、従来のクラシカルな優美さに
フルートが鳴り響く繊細な叙情性も含ませながら、どことなく日本的な情感を匂わせているのが特徴的だ。
クリムゾン的でもある緻密なアンサンブルを、シンフォニックロックとしての端麗な味わいに溶け込ませる作風は、
まさに円熟の域にまで到達している。オールインストでここまでの構築性を描けるバンドというのはなかなかいない。
クラシカル度・・8 プログレ度・・8 優雅な叙情度・・9 総合・・8
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Grobschnitt 「The International Story」
ドイツのプログレバンド、グロープシュニットのライブ作品。2006年
1972年デビュー、クラウトロックを代表するバンドの、1973年~83年までのライブ音源をCD2枚に収録。
エロック氏の手数の多いドラムに、オルガンを含むシンセとメロウなギターを乗せ、シンフォニックロック的な叙情に、
シアトリカルなヴォーカルを乗せて、とぼけた演劇性をまぶした濃密な空気感というのは、このバンドならではの聴き心地。
Disc1の53分におよぶ「ソーラー・ミュージック組曲」を演奏、サイケ的でもある浮遊感に包まれた壮大な大曲だ。
Disc2には、1977年作「Rockpommel's Land」からのナンバーを含め、優美なシンフォニック性に包まれたサウンドが楽しめる。
リマスターの鬼、エロック氏だけあって音質も抜群。2CDで合計160分弱、まさにバンドの歴史を俯瞰するようなライブ作品です。
ドラマティック度・・8 ライブ演奏・・8 濃密度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Zara-Thustra 「Best of」
ドイツのシンフォニックロック、ツァラ・トゥストラのベストアルバム。2015年作
1982~88年にかけて4枚のアルバムを残したバンドで、本作には1985年の3作目までから16曲を収録。
優美なシンセアレンジに、ドイツ語による歌声を乗せた、キャッチーなプログレハード的なサウンドで、
ヨーロピアンなロマンティシズムを感じさせる空気感は、ANYONE'S DAUGHTERなどを思わせる雰囲気もある。
ASIAやダウンズ期のYESにも通じるスタイリッシュなポップ性も含んでいるが、どこか翳りを含んだウェットな質感は、
ヨーロッパのバンドならではだろう。曲によっては、サックス、ホルンなどのブラスを加えたアレンジも面白い。
正規アルバムはどれも未CD化なので、このベストアルバムでの音源はとても貴重だろう。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 ゲルマン度・・8 総合・・8
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APERCO 「THE BATTLE」
イスラエルのプログレバンド、アペルコの2016年作
美しいシンセとオーケストレーションによるイントロから、フルートがやわらかに鳴り響き、
CAMELを思わせるような優美なインストパートが広がってゆく。叙情的な泣きのギターに
ジェントルなヴォーカルも加わって、70年代英国ルーツの素朴な牧歌性に包まれたサウンドを描く。
11分の大曲も、メロトロンなどのうっすらとしたシンセにピアノによる繊細なシンフォニック性に加え、
サイケロック的な怪しげな浮遊感も覗かせる。ムーグシンセ鳴り響くキャッチーなノリのナンバーなど、
古き良きプログレへの敬愛をうかがわせる作風には、なかなか好感が持てる。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 繊細度・・8 総合・・8
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TELERGY 「HYPATIA」
アメリカのシンフォニックロック、テレルジィの2015年作
マルチミュージシャン、Robert McClungによるプロジェクトで、本作はキリスト教徒の暴徒に襲われて殺されたという、
古代ギリシアの女性哲学者、ヒュパティアをテーマにした作品。やわらかなフルートなヴァイオリンなどのストリングスを含む、
オーケストラルなアレンジで、スケール感のあるシンフォニックロックを描いてゆく。適度にメタリックでハードなギターワークに、
ヴァイオリンが鳴り響き、男女混声コーラスを乗せた、壮大で優美なサウンドが楽しめる。やわらかなフルートやハープの音色に
クラリネット、オーボエなどのクラシカルな叙情美も含んだ、繊細さとハードさのメリハリのある展開力もなかなかのもの。
曲間に物語的な語りやセリフを挿入しながら、ドラマ性を感じさせる構成で描かれる、全63分の力作だ。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 壮大度・・8 総合・・7.5
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2/17
トラッド、ケルト、フォーク♪(54)


FLORENCE + THE MACHINE「How Big, How Blue, How Beautiful」
イギリスの女性Voポップロック、フローレンス・アンド・ザ・マシーンの2015年作
KATE BUSHのセンスと、QUEENのような華麗さを同居させ、一躍英国女性アーティストのトップへと躍り出た彼女、
3作目となる本作は、のっけから軽快なポップフィーリングに包まれた感触ながら、どこか倦怠を含んだ彼女の歌声は
いかにも英国らしいウェットな表現力を匂わせる。モダンなシンセアレンジにブラスやストリングスなども加えた
厚みのある音作りとオーケストラルなスケール感には、単なる歌ものという以上に楽曲そのものへのこだわりが感じられる。
しっとりとしたバラードナンバーなども含め、普遍的なポップロックの聴きやすさの中に、アーティスティックなセンスを覗かせる、
さりげないクオリティの高さは3作目にしてすでに円熟の域。いうなれば自然体の彼女を表現したような好作品です。
メロディアス度・・8 ポップロック度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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AnnaMy 「Woodpecker」
イギリスのフォークユニット、アナミーの2013年作
女性シンガー、アンナ・ミステン嬢をフロントに、アコースティックギターのつまびきに
優しい女性ヴォーカルを乗せた、英国らしい素朴な叙情を聴かせるフォークサウンド。
しっとりとした落ち着いた味わいに加え、ドラムにオルガン、エレキギターを加えた
程よいロック感触もありつつ、物寂しい空気感に包まれた幻想的な味わいも感じさせる。
英国アシッドフォークとしてのほのかな翳りを含んだ、耳心地のよさに包まれた逸品です。
ドラマティック度・・7 英国度・・8 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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Anna Shannon 「Over Land」
イギリスの女性シンガー、アンナ・シャノンの2010年作
自身の奏でるアコースティックギターに、ハスキーな女性ヴォーカルを乗せ、
ケルトテイストのある、素朴で牧歌的なフォークサウンドを聴かせる。
美しすぎない歌声には、良い意味で年季を感じさせる落ち着いた味わいがあり、
ジヤケのようなイングランドの田舎の優しい空気に包まれるような感触だ。
曲によっては、フルートやヴァイオリンの音色も加わって、優美な叙情に包まれる。
しっかりと土臭さを感じさせつつ、神秘的なケルトの味わいをまぶした作品です。
アコースティック度・・8 ケルティック度・・8 女性Vo度・・7 総合・・7.5
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Stone Angel 「Circle of Leaves」
イギリスのフォークバンド、ストーン・エンジェルの2007年作
1975年に1作を残して消え、その後、2000年に25年ぶりとなる復活作を出し、本作は復活後の3作目となる。
うっすらとしたシンセアレンジに、美しい女性ヴォーカルの歌声に、英国らしい湿り気を帯びた空気感に包まれた
幻想的なフォークサウンド。フルートやリコーダーのやわらかな音色に、アコースティックギターが絡む
素朴な牧歌性を残しながらも、ドラムの入った適度なフォークロック風味もあって初心者にも聴きやすい、
マイルドな男性ヴォーカルも加わった、男女声の古き良き伝統的な英国フォークとしても楽しめ、
アコーディオンやダルシマーなど、中世風味のトラッド要素も含んだ、優雅な味わいの好作品だ。
アコースティック度・・8 素朴で優雅度・・9 英国度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Kathryn Williams 「The Quickening」
イギリスの女性SSW、キャスリン・ウィリアムスの2009年作
アコースティックギターの旋律にマリンバが響き、やわらかな女性ヴォーカルを乗せたフォークサウンド。
英国らしい翳りを帯びた空気感に、マンドリン、バンジョー、アコーディオン、ハーディ・ガーディなどが、
素朴な彩りを添える。いくぶんかすれた彼女の歌声は耳に優しく、アコースティックサウンドによくマッチしていて、
ときにドラムやエレキも加わった聴きやすさとともに、ブリティッシュ・フォークルーツの牧歌的な叙情が味わえる。
アコースティック度・・8 素朴な叙情度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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Kathryn Williams 「Crown Electric」
イギリスの女性SSW、キャスリン・ウィリアムスの2013年作
アコースティックギターに、やわらかな歌声を乗せた、フォーク&カントリー調の素朴なサウンドに
優雅なチェロが鳴り響き、物悲しい叙情性も含ませた、しっとりとした聴き心地。
本作では、ストリングスによる美しいアレンジや、わりとキャッチーなナンバーなども含め、
アルバムとしてのメリハリもあって、ドラムにエレキも加えたフォークロックとしての味わいもよいですね。
翳りを帯びた英国フォークルーツのサウンドに、現代的なセンスをまぶしたという好作品。
ドラマティック度・・8 優雅な叙情度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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Cecile Corbel「Songbook Vol.3」
フランス、ブルターニュ出身のハープ奏者/シンガー、セシル・コルベルの2008年作
フランス語によるキュートな歌声と、美しいハープの音色、ヴァイオリンやチェロ、フルートなども加わった
繊細で優雅なケルティックサウンドを聴かせる。アコースティックが主体ながら、
どことなくコンテンポラリーな雰囲気がただようのは、若手アーティストのセンスだろう。
しっとりとした幻想的な空気感は、中世やケルトのロマンを現在に蘇らせたようだ。
曲によってはエレキギターやドラムも加わったりと、トラッドにとらわれないアレンジも楽しい。
アコースティック度・・8 ケルティック度・・8 優雅で繊細度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Cecile Corbel「Songbook Vol.4」
フランス、ブルターニュ出身のハープ奏者/シンガー、セシル・コルベルの2013年作
少女めいたコケティッシュな歌声とハープのつまびきを乗せた、優美なサウンドはそのままに、
今作ではドラムの入ったケルトロック的なナンバーで始まり、ストリングスアレンジを加えての
しっとりとした叙情や、うっすらとしたシンセにハープが美しく響くアンビエントなナンバーなど、
ややコンテンポラリーな雰囲気を強めた作風だ。もちろんトラッド的なアコースティック感触も残していて、
伝統とモダンのバランスのとれたサウンドは、ケルト初心者にも楽しめるだろう。
アコースティック度・・8 ケルティック度・・8 優雅で繊細度・・9 総合・・8
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SEIVA
ポルトガルのトラッドユニット、セイヴァの2015年作
パーカッションのリズムに母国語の女性ヴォーカルを乗せ、アコースティックギターにバクパイプの音色も加わり、
ケルトとバルカンの中間のような、土着的なトラッドサウンドを聴かせる。技巧的なギターとリズミカルな躍動感は、
スパニッシュ系のトラッドにも通じる感触で、素朴でありながらも情熱的な聴き心地が楽しめる。
民族的なガイタ(バグパイプ)の音色もよいアクセントどころか、曲によっては主役になって大活躍。
歌声にエフェクトのかかったラジカルトラッド風味も含めて、伝統と先鋭を同居させた好作品です。
アコースティック度・・9 トラッ度・・9 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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Lauren Edman 「It's Always the Quiet One」
アメリカのSSW、ローレン・エドマンの2012年作
エレクトロなシンセに、美しい女性ヴォーカルを乗せた、フィメールポップというサウンドながら、
ピアノをバックにしっとりとした歌声を聴かせる、クラシカルでコンテンポラリーな味わいもある。
打ち込みによるモダンなアレンジと、フォークルーツの素朴な味わいが融合した自然体の聴き心地に
やわらかな女性声による耳心地のよさで、ゆったりと鑑賞できる、わりと癒し系寄りの作風でもある。
濃密さやインパクトは薄いものの、フォーク寄りのフィメールポップとして普通に楽しめる。
ドラマティック度・・7 しっとり度・・8 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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Isabelle Boulay 「Nos Lendemains」
カナダの女性シンガー、イザベル・ブーレイの2008年作
ケベック州のアーティストで、アコースティックギター、ピアノなどのシンプルなアレンジに、
フランス語による艶めいた彼女の歌声を乗せた、シャンソン的な味わいのサウンド。
古き良きポップロックの空気感と、しっとりとした大人の雰囲気に包まれた聴き心地で、
派手さや新鮮さはないものの、アダルトな歌声とともに、どこかなつかしいような安心感が魅力。
楽曲も3分前後のゆったりとしたバラードナンバーが中心で、フランス語の優雅な響きが
疲れた耳にも優しく響く。大人歌声が楽しめる、フレンチな味わいの女性シンガー作品です。
メロディック度・・7 ゆったり安心度・・8 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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Linde Nijland 「I Am Here」
オランダの女性SSW、リンデ・ニルランドの2014年作
アコースティックギターのつまびきにアコーディオンの音色、美しい女性ヴォーカルを乗せたトラッド寄りのサウンド。
マンドリン、シターンの素朴な音色で聴かせる、Renaissanceの名曲“Ocean Gypsy”カヴァーもしっとりと美しい。
牧歌的なバンジョーに艶やかなフィドルが絡む、カントリー風味にフォーク&トラッドの空気感が合わさって、
全体的にシンプルな音数ながら、彼女の美声をよく引き立てている。優しい素朴さに包まれた逸品です。
アコースティック度・・9 素朴な叙情度・・9 女性Vo度・・9 総合・・8
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DEW-Worship 「Release your power : Worship, Welfare & Impartation」
オランダのケルティック・ロック、デュー・ワーシップの2007年作
2006年オランダでのライブを収録した作品で、フルート、ホイッスルの音色に、美しい女性ヴォーカル、
うっすらとしたシンセにエレキギターを乗せた、優雅なケルトロックというサウンドで始まりつつ、
語りの掛け合いを乗せたシアトリカルなナンバーもあったり、タイトルのようにスピリチュアルで、
宗教的なストーリー性を描くような、演劇的なライブステージであったのかもしれない。
テンション高めの演奏で盛り上がってゆくところは、MAGAMAなどにも通じる空気感で、
軽快なドラムにピアノが鳴り響く、ジャズロック風味もあったり、わりととりとめがない。
ラストは、艶やかなヴァイオリンにピアノ、女性ヴォーカルを乗せ、しっとりと優美に締めくくる。
ドラマティック度・・7 ケルティック度・・7 女性Vo度・・7 総合・・7
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まだまだチェンバーにジャズロック!(41)


QUINTESSENCE 「Spirits from Another Time」
イギリスのサイケロック、クインテセンスの2016年作
1969年に結成、HAWKWINDとともに70年代の英国サイケロックを代表するバンドで、
本作は1969~71年の作品から選曲された、シングル曲や未発曲を含む、CD2枚組のベスト。
アコースティックギターにシタール、フルートの音色が重なり、詠唱的な感じのヴォーカルを乗せた、
ユルめのサイケロックサウンド。スペイシーなホークウインドに比べて、こちらは東洋的な神秘性を感じさせ、
11分を超える大曲なども、盛り上がり過ぎず、あくまでオリエンタルなサイケ感をゆったりと描いている。
適度にアッパーでありながら、70年代初頭のおおらかな空気感のサイケロックが楽しめます。
ドラマティック度・・7 サイケ度・・9 ユル度・・8 総合・・7.5
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Karda Estra 「Mondo Profondo/New Worlds」
イギリスのチェンバーロック、カルダ・エストラの2013年作
ギター、ベース、シンセを操るマルチミュージシャン、Richard Wilemanによるソロユニットで、
本作は2013年のミニアルバムと、2011年作のカップリングCD。不協和音を含んだピアノが鳴り響き、
艶やかなストリングスが包み込む。ドラムのリズムに乗む重々しいベースが不穏な緊張感をかもしだす、
まさに王道のチェンバーロックが楽しめる。一方では、女性声のスキャットにメロウなギターが加わった、
シンフォニックロック的な優美さや、オーボエの音色に繊細なピアノが絡むクラシカルな聴き心地にもウットリ。
2011年作の方は、うっすらとしたシンセにサウンドスケープ的なギターによる、クールなアンビエント感触と、
オーボエやクラネットによる優雅なチェンバー色が合わさった、わりとモダンなアレンジでじっくりと楽しめる。
クラシカル度・・8 チェンバー度・・9 優雅で不穏度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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FLAIRCK 「The Lady's Back」
オランダの技巧派アコースティックユニット、フレアークの2014年作
1978年にデビュー、その超絶技巧というべき軽やかなアコースティック・アンサンブルで、
通好みのプログレファンも虜にするこのバンド。本作は2014年オランダでのライブを収録。
オリジナルのフルート奏者、PETER WEEKERSが復帰し、アコースティックギター、女性ヴァイオリン、
ベースという編成で、過去作品のナンバーを再現。パンパイプやサンポーニャ、ティンホイッスルといった
多彩な笛を優雅に吹き鳴らし、技巧的なアコースティックギターに艶やかなヴァイオリンが合わさった
見事なアンサンブルは、4人編成であっても圧倒的な存在感である。名曲“East West Express”、
“Sofia”といった初期のナンバーも含めた素晴らしい演奏が堪能できる。フレアーク健在である。
アコースティック度・・10 テクニカル度・・9 優雅度・・9 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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MICHAEL RIESSLER「MOMENTUM MOBILE」
ドイツ出身のサックス&クラリネット奏者、ミヒャエル・リースラーの1994年作
ハーモニカ、バレルオルガン、ベ-ス、ドラムというメンバー編成での、1993年ドイツのライブ音源を収録。
テクニカルなドラムとベースが、スリリングなグルーブを生み出し、手回しオルガンによる素朴な音色に、
サックスやクラリネットがフリーキーに重なる技巧的なアンサンブルで、アーティスティックなジャズロックを聴かせる。
ときにゆったりとした叙情的な味わいもかもしだしつつ、トランペット、トロンボーン、チューバというブラスに、
ヴァイオリン、ビオラ、チェロのストリングスも加えて、クラシカルなチェンバー風味の優雅さも含んだ聴き心地。
一糸乱れぬ演奏はライブとは思えないほどで、とぼけた大人の味わいも含んだアヴァン・ジャズロックが楽しめる。
テクニカル度・・9 ジャズロック度・・8 スリリング度・・9 総合・・8
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MICHAEL RIESSLER「ORANGE」
ドイツ出身のサックス&クラリネット奏者、ミヒャエル・リースラーの2000年作
L'Orchestre National de Jazz Parisにも参加していたミュージシャンで、ソプラニーノ(リコーダー)の素朴な音色に
技巧的なクラリネットが絡み、女性声のスキャットを乗せた、ミニマムなフリージャズ的サウンドを聴かせる。
基本は、クラリネットとリコーダーが綿井ながら、曲によってはアコーディオンやパイプオルガンが加わり、
女性声を前に出したナンバーなどもあって、エキセントリックなチェンバー、アヴァン・ジャズ的にも楽しめる。
オールアコースティックなので、チェンバー・ジャズロック的な名作「HONIG UND ASCHE」のような怒涛の迫力はないのだが、
スリリングな演奏には、クラリネット奏者としての彼の才能がしっかりと感じられる。Elise Caronの表現力ある女性声も素晴らしい。
スリリング度・・8 フリージャズ度・・8 アヴァン・チェンバー度・・8 総合・・8
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MICHAEL RIESSLER「Big Circle」
ドイツ出身のサックス&クラリネット奏者、ミヒャエル・リースラーの2011年作
サックス、トランペット、トロンボーンがけたたましく鳴り響く、冒頭の迫力から圧倒されるが、
技巧的なドラムとベースによるジャズロック的なアンサンブルに、素朴なバレルオルガンの音色が重なり、
クラリネットがフリーキーに響き渡る。厚みのあるブラスセクションとテクニカルなリズムのバトルという様相から、
バレルオルガンとクラリネットによるシンプルな音数による優雅な技巧ナンバーまで、どれも圧巻の演奏である。
随所にアヴァンギャルドなチェンバーロック風味も覗かせるところは、やはりプログレリスナー向きのアーティスト。
テクニカル度・・9 ジャズロック度・・8 スリリング度・・9 総合・・8
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MICHEL AUMONT 「Le Grant Orchestre Armorigene」
フランスのクラリネット奏者、ミシェル・オーモンの2012年作
ピアノ、ヴァイオリン、チューバ、ヴィエレ・ア・ルー(ハーディ・ガーディ)、ドラムを含む7人編成で、
ブルターニュ地方のトラッドをモチーフにした楽曲を、ジャズオーケストラの編成で演奏。
軽やかなドラムの上に、チューバの低音とヴァイオリンが鳴り響き、優美なピアノの旋律に、
エレクトリック・ヴィエレ・ア・ルーも加わって、素朴なブルターニュの空気感に包まれた
技巧的なジャズロックが楽しめる。土着的なトラッド感触を軽妙に表現するという点では、
FLAIRCKにも通じるスタイルだろう。ジャズ、クラシック、トラッドの要素を絶妙に溶け込ませた傑作だ。
テクニカル度・・9 トラッド・ジャズ度・・8 優雅度・・9 総合・・8.5
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SETNA 「Guerison」
フランスのプログレバンド、セトナの2013年作
2007年作に続く2作目で、やよらかなエレピの音色に重たいベースを乗せた優雅なアンサンブルに、
中性的な男性ヴォーカルが妖しく歌声を響きかせる。MAGMAをルーツにしたジャズロックながら、
オルガンなどを加えたカンタベリーなテイストが合わさった感触には、どこか素朴な牧歌性も感じさせる。
シンセの重ねによるシンフォニックなパートや、12弦ギターによる繊細な叙情性も含んで、
26分の大曲もメリハリある流れでじっくりと構築してゆく。哀愁のギターフレーズにエレピが重なる辺りは、
単なるマグマ系とは異なる優美なプログレ・ジャズロックという趣だが、ときにフリーキーにドラムが叩かれる、
おどろおどろしさも覗かせる。いわば「カンタベリーなマグマ」というべき優雅で叙情的な好作品。
ドラマティック度・・8 優雅度・・8 マグマ度・・8 総合・・8
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Simon Steensland 「Led Circus」
スウェーデンのマルチミュージシャン、サイモン・スティーンスランドの1999年作
本作は、のっけから16分を超える大曲で、モルガン・オーギュレンの叩きだすドラムに
コロコロとしたマリンバの響きにサックスやリコーダーを加え、怪しげなヴォーカルを乗せた、
まさにMATS/MORGANをダークにしたような、異色のアヴァンロックを聴かせる。
とぼけた味わいの中にも、音の塊が押し寄せる緊迫感と得体の知れないスケール感を描く
アーティスティックなセンスというのは、北欧のチェンバー/アヴァンロックの中でも屈指であろう。
変則リズムによるテクニカルなダークさは、チェンバー化したMESHUGGAHのようでもある。
ラストの18分の大曲もまた物凄い。マッツ・エーベリーなどもゲスト参加。必聴の傑作です。
ドラマティック度・・8 アヴァンギャル度・・9 スリリング度・・9 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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DAAU 「Tub Gurnard Goodness」
ベルギーのチェンバーロック、Die Anarchistische Abendunterhaltungの2004年作
クラリネット、チェロ、アコーディオン、ヴァイオリンという4人編成で、不穏なチェロの音色に
クラリネット、ヴァイオリンの響きが重なり、スリリングな空気を優雅な音で表現するサウンドは、
ロック色を排したUNIVERS ZEROという雰囲気もある。ストリングスの強弱によるダイナミクスが
迫りくるような緊迫感を描き出し、ダークなクラシカル性が耳心地よくもおどろおどろしい。
一方では、アコーディオンとクラリネットが前に出た、とぼけた味わいと哀愁も感じさせ、
アコースティック主体ながら、メリハリのある聴き心地で飽きさせない。曲によってはドラムも入って
女性ヴォーカルを乗せたジャズやタンゴ風味のナンバーもあったりする。本格派チェンバーの好作品。
スリリング度・・8 チェンバー度・・9 ロック度・・3 総合・・8
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DAAU 「HINEININTERPRETIERUNG」
ベルギーのチェンバーロック、Die Anarchistische Abendunterhaltungの2017年作
アコーディオン、クラリネット、ベース、ドラムの4人編成を基本に、ヴァイオリン、チェロ、フルート、
複数のヴォーカルなど多数のゲストを加えてのアルバムで、クラリネットとアコーディオンを中心とした牧歌的なナンバーから、
落ち着いた歌声を乗せたわりとモダンなアンビエント調のナンバーなど、幅の広いアレンジのサウンドが楽しめる。
艶やかなヴァイオリンやフルートによる優美なクラシック性も耳心地よく、アコースティックを主体にした
ミニマムなアンサンブルを中心に、ドラムが入ったロック色も取り入れつつ、チェンバーロックとしての優雅さと、
適度に薄暗い自然体の味わいには、バンドとしての成熟を感じさせる。まさに大人のためのチェンバーミュージックである。
スリリング度・・8 チェンバー度・・9 ロック度・・5 総合・・8
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Vezhlivy Otkaz 「Geese And Swans」
ロシアのチェンバーロック、ヴェジリヴィ・アトカズの2010年作
トランペットにヴァイオリンがけたたましく鳴り響き、繊細なピアノが絡みつつ、
偏屈なアヴァンギャルド性と哀愁の情緒が交差する、硬質なチェンバーロック。
スリリングでアカデミックなシリアス性は、Henry Cowにも通じる感触で、
変拍子リズムに乗せるクラシカルなピアノは優雅なれど、母国語による男性ヴォーカルはどこか偏屈な印象。
ゆったりとしたピアノにヴァイオリンが絡む、ジャズタッチのアダルトな味わいも覗かせる。玄人好みのチェンバー作品だ。
ドラマティック度・・7 チェンバー度・・8 アヴァンギャル度・・7 総合・・8
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BPM&M「XtraKcts & ArtifaKcts」
パット・マステロットとプロジェクトXのプロデューサー、ビル・マニヨンによるユニット。2001年作
ロバート・フリップ、トニー・レヴィンらが参加、エレクトロニクスを駆使したテクノ的なサウンドは、
デジタルにインダストリアル化したクリムゾンというべき作風で、アレンジ面での方向性は異なるが、
フリップの遺伝子は確実に受け継いでいる。くぐもったベースのみがリフレインするパートなど、
適度にアヴァンギャルドな部分もあって、単なるクリムゾン系と思って聴くと肩透かしだろうが、
無機質なビート感に、トニー・レヴィンのベースとフリップのギター音が重なると、いかにもそれらしくなる。
ロック色、プログレ色はあまりないのだが、むしろエレクトロなトリップミュージック的にも楽しめるかもしれない。
ドラマティック度・・6 プログレ度・・7 インダストリアル度・・8 総合・・7.5
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FLIGHT 「Incredible Journey」
アメリカのジャズロックバンド、フライトの1976年作
おそらくは初のCD化で本作は2作目となる。きらびやかなシンセに適度にハード寄りのギター、
ジャズタッチのピアノにサックスやトランペットなどのブラスが鳴り響く、軽やかなフュージョン・ジャズロック。
ファンキーな味わいのヴォーカルがポップな感触をかもしだしているが、バックの演奏は相当テクニカル。
手数の多いドラムとうねるベースが、躍動的なアンサンブルを作り出し、プログレ的でもあるリズムチェンジや
唐突な展開力も含んだエキセントリックなセンスも素晴らしい。厚みのある音の塊が突き抜けてゆく爽快さで、
マハヴィシュヌとはまた違ったスタイルでの、プログレッシブなジャズロックの最高峰というべき傑作だ。
メロディック度・・8 ジャズ&フュージョンロック度・・9 テクニカル度・・9 総合・・8.5
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チェンバー&アヴァンロック!(27)
「チェンバーロック特集」ページはこちら


Karda Estra 「Infernal Spheres」
イギリスのクラシカル・チェンバーロック、カルダ・エストラの2017年作
ギター、ベース、シンセを操るマルチミュージシャン、Richard Wilemanによるソロユニットで
ミステリアスなシンセに、ギターやクラリネット、オーボエ、トロンボーンなどを使用した、
クラシカルなチェンバーロックは本作も同様。アコースティックギターにオーボエが重なる
物悲しくもミステリアスな空気感というのは、いかにも王道のチェンバーミュージックらしい。
美しいストリングスや、シンセの重ねにノイジーなギターを加えたアレンジなど、空間的なスケール感と
スリリングな緊張感の同居も、さすがキャリアのあるミュージシャンである。一方では、ドラムの加わったナンバーは
わりとキャッチーで、女性スキャットも入ったり、サロン系チェンバーのノリもある。いつになく多様な印象の逸品だ。
クラシカル度・・8 チェンバー度・・9 ミステリアス度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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GUAPO 「Black Oni」
イギリスのアヴァンプログレ、グアポの2004年作
結成は90年代という、なにげにキャリアのあるバンドで、本作は鬼をテーマにしたコンセプト作。
ノイジーでヘヴィなギターが鳴り響き、美しいシンセを絡ませながら、不穏な空気感を躍動的に描く、
いわゆる「MAGMA/Zeuhl系」の作風に、暗黒性をたっぷりとまぶした重厚なサウンドを展開する。
ジャズロック、チェンバーロックというカテゴライズ不要な、凶暴なダークさとスリリングな緊張感が、
聴き手をじわじわと包み込む。UNIVERS ZEROをよりハードにしたという感触もあるが、
シンセのメロデイはときに優美ですらあって、メタル寄りのリスナーにも楽しめるかもしれない。
5パートに分かれた、44分のオールインストだが、最後まで張詰めた緊張感で飽きさせない。
ドラマティック度・・8 アヴァンギャル度・・8 暗黒度・・9 総合・・8
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GUAPO 「History Of The Visitation」
グアポの2013年作
7作目となる本作は、のっけから26分の組曲で幕を開ける。サックスやトランペット、バスーン、ヴァイオリンなどが鳴り響き
うっすらとシンセが重なる不穏な空気感のイントロから、ギター、ベース、ドラム、シンセによる四人編成による
シンプルなアンサンブルへ移行する極端なギャップも含めて、聴き手に先を読ませないセンスは見事。
メロウなギターフレーズにシンセを重ねた優雅な叙情性も覗かせつつ、徐々にハードなヘヴィさと躍動感で、
アッパーなノリを強めながらサウンド盛り上げてゆく。適度なアヴァンギャルド性は決して難解過ぎず、
案外チェンバー/アヴァンロック初心者にも楽しめるだろう。DVDには2006年、2007年のライブ映像を収録。
ドラマティック度・・7 アヴァンギャル度・・7 暗黒度・・8 総合・・8
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GUAPO 「OBSCURE KNOWLEDGE」
グアポの2015年作
今作も25分の大曲で幕を開け、オルガンを含むシンセに、優雅なギタープレイを乗せた軽妙なアンサンブルで、
むしろメロディックなプログレ寄りの聴き心地も感じさせつつ、ときにノイジーなギターと反復するシンセによる
トリップ感と、レコメン系としての偏屈なアレンジを自然に溶け込ませている。本作ではタークさは控えめに、
ときに叙情的なギターフレーズも覗かせつつ、適度な緊張感のある展開力とともに壮大に大曲を描いてゆく。
もはやチェンバーロックというよりは、ミステリアスなプログレとして楽しむ方がよいかもしれないが、
湿り気のあるギターメロディにシンセが絡むあたりは、ダークなシンフォ系としても鑑賞可能だろう。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 ミステリアス度・・8 総合・・8
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Poil 「Brossaklitt」
フランスのアヴァンロック、ポアルの2014年作
2008年にデビューしたフレンチ・アヴァンロックの新鋭。本作は3作目となる。ジャケからしてすでにカオスだが、
サウンドの方も、アヴァンギャルドの極地。重ためのドラムがフリーキーなリズムを叩き出し、
シンセとギターが螺旋のように絡みつく。怪しげなヴォーカルとコーラスが加わって、
おちゃらけと毒気が混じり合った異様な感触は、「ダークになったサムラ」というべきか。
テンションの高さとスリリングな緊張感と、それを笑い飛ばすような脱力感を同居させた無茶なサウンドは、
完全なヘンタイで、その迫力には圧倒される。曲によってはデジタルなテクノ的アプローチもあったりとなんでもあり。
崩壊しそうでしっかりと構築されているという不思議なセンスは見事。ホイリー・コーンも真っ青の傑作です。
ドラマティック度・・7 アヴァンギャル度・・10 ヘンタイ度・・10 総合・・8.5
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Vak 「Aedividea」
フランスのチェンバー・ジャズロック、ヴァクの2015年作
シンセにフルート奏者を含む編成で、躍動的なドラムと存在感あるベースを軸にしたアンサンブルに、
女性声のスキャットにエレピを含むシンセを重ねた、MAGMAルーツのアヴァン・ジャズロック。
程よいダークさと軽妙な優雅さのバランスで、いかにも「Zeuhl系」を地でゆくようなサウンドを聴かせる。
フルートによる叙情性やヘヴイでありながらも空間的なアプローチには、クリムゾン的な雰囲気も漂わせるが、
結局はマグマへと回帰するような作風は、やはり同郷の偉大な存在への憧れが強いのだろう。
10分前後の大曲も多いが、わりあいゆったりとした叙情パートも多いので、聴き疲れせずに楽しめる。
一方では、アヴァン・プログレ的なスリリングなナンバーもあり、バランスのとれた高品質な作品といえる。
ドラマティック度・・8 マグマ度・・8 ミステリアス度・・7 総合・・8
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CAMEMBERT 「Schnoergl Attahk」
フランスのチェンバー・ジャズロック、カマンベールの2011年作
プラグが貫通したカマンベールチーズのジャケからしておちゃらけているが、なにやらスペイシーなイントロから、
トランペット、トロンボーンが鳴り響き、コロコロとしたマリンバの響きにギターを加え、軽妙なアンサンブルが広がる。
優雅なテクニカル性ととぼけた味わいに、ときおりスペイシーなスケール感が加わるところが面白く、
美しいハープの音色など、やわらかでメロディック味わいが前に出ているので難解な印象はない。
オールインストなので聞き流してしまいがちだが、しっかりとしたアンサンブルとほどよいヒネくれ方もあって、
MAGMAのような緊張感はないが、ディープなリスナーでも楽しく聴ける。チェンバー・ジャズロックの好作品だ。
ドラマティック度・・7 ジャズロック度・・8 優雅なおとぼけ度・・9 総合・・8
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Angel Ontalva 「Tierra Quemada」
スペインのチェンバーロック、OCTOBER EQUUSのギタリスト、エンジェル・オンタルヴァのソロ。2015年作
軽やかなリズムに乗せる、ベースとギターに、美しいシンセアレンジを加えた優雅なインストサウンドで、
サックス、クラリネットの音色による、チェンバーロックらしい聴き心地は、さすが現代R.I.Oの申し子である。
ベースに重なるチェロの響きが、シリアスな重厚さを描きつつも、全体的にはダークさは控えめで、
シンセやメロディかの音色など哀愁を含んだ叙情性が前に出ている。一方で、エレピを乗せた優雅な質感は
カンタベリー的でもあって、ジャズロック寄りの耳でも楽しめるだろう。全体的には小曲主体なので、
わりとあっさりと聴き通せるが、ラストは9分近い大曲で、メロウなギターも鳴り響き、叙情豊かに締めくくる。
ドラマティック度・・7 チェンバー度・・8 哀愁の叙情度・・8 総合・・8
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Thinking Plague「In This Life」
アメリカのチェンバーロック、シンキング・プレイグの1989年作
Henry Cowのサウンド受け継ぐ、アメリカきってのレコメン系バンド。アルバム25周年記念のリマスター再発盤。
変則リズムによるアンサンブルに、クラリネットやヴァイオリンが鳴り響き、浮遊感のある女性ヴォーカルを乗せた、
アヴァンギャルドでキュートなサウンドは、ダグマー・クラウゼのいた頃の、ヘンリー・カウを思わせる。
のちの作風に比べれば、もっとミニマムで、プリミティブ、ようするに雰囲気モノとしての作風が強いのだが、
女性声の妖しさも含めて、70年代の香りを残しているという点では、Art Bearsなどのファンでも楽しめそう。
タブラによるリズムが鳴り響くところは、Third Ear Bandあたりも思わせる。ほどよいサイケ感も含んだ異色作である。
ドラマティック度・・7 チェンバー度・・8 アヴァンギャル度・・8 総合・・8
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Thinking Plague「Hoping Against Hope」
シンキング・プレイグの2017年作
前作「衰退と滅亡」は見事な傑作だったが、「一縷の望み」と題された6年ぶりとなる本作も、
変則リズムのアンサンブルに、クラリネット、フルート、サックス、ピアノの優雅な音色に、
女性ヴォーカルの歌声を乗せた、Art Bearsをルーツにした妖しくも美しいチェンバーサウンドを聴かせる。
優雅なアヴァンギャルド性とテクニカルな構築センスのバランスもよろしく、程よい緊張感が耳心地よい。
クラリネットがリードをとりながら、変拍子でたたみかけるナンバーは、これぞチェンバーロックという味わいで、
シリアスなダークさは、UNIVERS ZEROに通じるところもある。キャリアのあるバンドならではの堂々とした空気感と
重厚な音の説得力というのもさすがである。いうなれば現在形の正統派チェンバーロックの力作である。
ドラマティック度・・8 チェンバー度・・9 アヴァンギャル度・・8 総合・・8
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Combat Astronomy 「Time Distort Nine」
アメリカのアヴァンロック、コンバット・アストロノミーの2014年作
MAGMAルーツの所謂「Zeuhl系」の妖しさにインダストリアルなメタル質感を加えた独自のサウンドを聴かせるバンド。
本作はCD2枚組の大作で、のっけから17分、21分という大曲を聴かせる。重たいドラムにノイジーなギターを乗せ、
メロトロンやオルガンなどのシンセに、トランペット、サックスといったブラスをサンプリングで加えたデジタルなアレンジで、
モダンなチェンバーメタルというべきサウンドを描き出す。硬質なギターリフにる無機質で不穏な空気感は、
結果として、Meshuggahなどにも通じるような無機質なおどろおどろしさを感じさせる。一方では残響音が延々と鳴り響く、
ドローン的なナンバーや、男女声の語りを乗せた怪しげなインダストリアルロックなど、実験的な作風は良くも悪くも愛想がなく、
アヴァンギャルドなメタルを好む方なども含め、まさにディープな音楽リスナーに向けた異色作といえるだろう。
ドラマティック度・・7 チェンバーメタル度・・8 無機質な闇度・・9 総合・・8
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The Book Of Knots 「Traineater」
アメリカのアヴァンロック、ブック・オブ・ノッツの2007年作
Sleepytime Gorilla Museumのメンバーを含むバンドで、サウンドの方は、ノイジーなギターに
シアトリカルな歌声を乗せた、ドゥーミィなポストロックという雰囲気で始まるが、フリーキーなサウンドに
ハスキーで中性的な女性ヴォーカルを乗せた感触は、Art Bearsなどをルーツにしたレコメン系の趣。
アコースティックギターや、ピアノ、ヴァイオリンなどの優雅な叙情性を含みつつ、とぼけたような偏屈さと
アヴァンギャルドなセンスはチェンバーロック系のリスナーも唸らせるだろう。ストーリー的な流れの中に、
モダンなヘヴィネスも垣間見せつつ、ポストロック的なスケール感も内包した、まさに異色のアヴァンロック作品だ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 アヴァンギャル度・・8 総合・・8
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Doctor Nerve 「Every Screaming Ear」
アメリカのアヴァンロック、ドクター・ナーヴのライブ作。1997年作
1984年にデビュー、アメリカのレコメン系を代表するバンドのひとつである。
本作は、1992年のドイツ、オランダ、アメリカでのライブ音源を中心に収録。
躍動的なドラムとベースに、トランペット、サックスが吹き鳴らされ、テンション高いアンサンブルで、
チェンバーでジャジーなアヴァンロックを描き出す。変則リズムのテクニカル性も含めてさすがの演奏力です。
即興的なアヴァンギャルド性はフリージャズに通じる部分もあり、オールインストなのでブラスが鳴り響く奔放なBGMとしても楽しめる。
ライブ演奏・・8 テクニカル度・・8 アヴァンギャル度・・8 総合・・8
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SALES DE BANO 「HORROR VACUI」
アルゼンチンのチェンバーロック、サレス・デ・バノの2016年作
FACTOR BURZACOにも参加するベースを中心にしたバンドで、うるさすぎないドラムとベースによる
ミニマムなアンサンブルにエレピが重なり、サックス、トランペット、フルートなどがゆるやかに鳴らされる、
チェンバーなアヴァンロック。HENRY COWなどにも通じるスリリングな緊張感を、
カンタベリー的な優雅さで包み込んだという聴き心地で、ロック的な部分での重厚さは希薄であるが、
ブラスが鳴り響くとぼけた味わいとシリアスな空気が同居した、フリーキーなチェンバーサウンドが楽しめる。
ドラマティック度・・7 チェンバー度・・8 優雅度・・8 総合・・8



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本年もプログレでよろしくお願い致します(13)


THE TANGENT「THE SLOW RUST OF FORGOTTEN MACHINERY」
イギリスのプログレバンド、タンジェントの2017年作
マルチプレイヤーのアンディ・ティリソンを中心に2003年にデビュー、本作はすでに9作目となる。
シンセ&ドラムのアンディ・ティリソンを中心に、ギターにルーク・マシン、ベースにヨナス・レインゴールド、
さらに女性Voにサックス&フルート奏者を加えての編成で、マイルドなヴォーカルに美しいシンセを乗せた、
カンタベリー的な優雅なアンサンブルに、繊細なシンフォニック風味が合わさったサウンドを聴かせてくれる。
やわらかな女性ヴォーカルに、フルートの音色も加わった優美な雰囲気に、軽妙なテクニカル性を含んだ展開美で、
10分を超える大曲をコンセプト的なスケール感で描くのはさすがのセンスである。随所にオルガンが鳴り響く、
古き良きプログレ質感も覗かせつつあくまで優雅な聴き心地。レトロとモダンのバランスも絶妙な、全79分の力作です。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 優雅度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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MARILLION 「F.E.A.R」
イギリスのメロディックロック、マリリオンの2016年作
1983年にデビュー、初期のポンプロック路線からしだいに深みを増したメロウなサウンドへと移行、
いまでいうポストプログレの先駆けというべき繊細な叙情美をまといながら、いまや世界的な評価も取り戻した。
通算18作目の本作は、人間の存在意義をテーマにしたコンセプト作品で、タイトルは「FUCK EVERYONE AND RUN」の略。
組曲構成の大曲3曲を軸に、スティーヴ・ホガースのマイルドな歌声に、いつになくシンフォニックなアレンジとともに、
うっとりとするような繊細な叙情美のサウンドが広がってゆく。スティーブ・ロザリーのギターも随所に泣きのフレーズを奏で、
じわじわと盛り上げてゆく感触は、いわばポストプログレとシンフォニックロックを融合させたような聴き心地である。
コンセプトアルバムとしては「BRAVE」、「MARBLES」にも通じる、スケール感のあるドラマティックな流れで楽しめる傑作です。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 繊細な叙情度・・9 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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THE MUTE GODS 「Do Nothing Till You Hear From Me」
Steven Wilson
バンドやIONALIFESIGNSにも参加するベース奏者、ニック・ベッグスと
Steve Hackett Bandのシンセ奏者、ロジャー・キングによるユニット、ミュート・ゴッズの2016年作
ドラムにはマルコ・ミネマンが参加、適度にモダンでソリッドな硬質感と、キャッチーな歌もの感に、
シンフォニックなシンセアレンジを加えた聴き心地。ニック・ベッグスのマイルドな歌声は、
80年代ルーツの爽快なポップ性も感じさせ、全体としてはモダンなメロディックロックでありながらも、
さすがの実力者たち、ミンネマンのドラムとベッグスのベースもじつによい仕事をしているし、
ロジャー・キングのシンセが美しく彩る、繊細なプログレらしさもしっかりと融合されている。
KINOPocupine Treeあたりが好きな方にもお薦めの、英国モダンプログレの好作品だ。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 モダン度・・8 総合・・8
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THE MUTE GODS 「Tardigrades Will Inherit the Earth」
イギリスのプログレユニット、ミュート・ゴッズの2017年作
2作目となる本作も、ニック・ベッグス、ロジャー・キング、マルコ・ミンネマンのトリオ編成で、
メタリックといってもよいハードなギターに、マイルドなヴォーカルとシンセアレンジを乗せた、
重厚でモダンなサウンドを聴かせる。ヘヴィな硬質感と英国らしい翳りある空気感とともに、
前作よりもややダークな味わいが強まってはいるが、8分、9分という大曲ではキャッチーで繊細な叙情も覗かせる。
ヴォーカル、ギター、ベース、スティックをこなすニック・ベッグスのマルチなセンスと、
ロジャー・キングの美しいシンセが絶妙に融合し、ミンネマンのドラムもいつになく激しく、
曲によってはProgMetalファンなどにも対応する。スタイリッシュな英国ハードプログレの力作だ。
メロディック度・・7 プログレ度・・7 モダン度・・9 総合・・8
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ESP 「Invisible Din」
イギリスのプログレユニット、ESPの2016年作
BRAM STORKERのトニー・ロウと、BIG COUNTRYのマーク・ブルゼジキによるユニットで、
メロトロンやムーグ、オルガンを含む古き良きシンセとメロウなギターに、やわらかなヴォーカルを乗せ、
ゆったりとした叙情を描くシンフォニックロックサウンド。キャッチーな繊細さで聴かせる歌もの的なプログレハード色もありつつ、
元VDGGのデヴィッド・ジャクソンのサックスが大人の哀愁をかもしだす。曲によってはオールドなブリティッシュロック色も覗かせ、
英国らしい湿り気に包まれた優美な空気感は、ギター、ベース、シンセにヴォーカルもこなすトニー・ロウの
マルチな才能とアレンジセンスによるものだろう。ラスト2曲ではデヴィッド・クロスのヴァイオリンも美しい。
LANDMARQのスティーヴ・ジー、LIFESIGNSのジョン・ヤングなど多数のゲストが参加している。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 英国の叙情度・・9 総合・・8
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GANDALF'S FIST 「THE CLOCKWORK FABLE」
イギリスのプログレバンド、ガンダルフズ・フィストの2016年作
ファンタジーストーリーに基づいたコンセプチュアルなハードシンフォニックロックを得意とするこのバンド、
本作はなんとCD3枚組で、配役ごとに男女ヴォーカルやコーラスを配置した壮大なストーリーを感じさせる
ロックオペラ大作となっている。映画のようなナレーションで幕を開け、やわらかなシンセアレンジと、
美しい女性ヴォーカルを乗せ、ケルティックなメロディを含んだ叙情性とともに、優美なシンフォニックロックを描く。
オルガンやメロトロンなど古き良きプログレの感触を覗かせつつ、ストーリーを語るナレーションを随所に挿入しながら、
AYREON
ばりのファンタジックなロックオペラを展開してゆく。当のアンソニー・ルカッセンもゲスト参加しています。
CD3枚、3時間超はさすがに通しで聴くのは大変なのだが、バンドとしては渾身の力作というのは間違いない。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 壮大度・・8 総合・・7.5
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KONCHORDAT 「Rise to the Order」
イギリスのシンフォニックロック、コンコルダットの2016年作
前作はPENDRAGONなどを思わせる王道のシンフォニックロックであったが、3作目となる本作は
これまでになくモダンなヘヴィさが加わった感触で、どことなくニック・バレットを思わせるヴォーカルを乗せ、
これまでのシンフォニックなアレンジとモダンな歌もの感が合わさったという聴き心地。
かといって、王道のシンフォ色が失ったわけではなく、むしろ近年のPENDRAGONPALLASなどにも通じる
適度に翳りを含んだハードシンフォニックとして楽しめる。プログレらしいきらびやかなシンセとともに
ときにキャッチーなメロディも覗かせつつ、どっしりとしと重厚さでもって、7~9分前後の楽曲を構築する。
ペンドラ&パラスのファンにもうってつけな、英国らしい大人のシンフォニックロック力作だ。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 英国度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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DRIFTING SUN 「Safe Asylum」
イギリスのシンフォニックロック、ドリフティング・サンの2016年作
90年代から活動するキャリアのあるバンドで、美しいシンセアレンジにマイルドなヴォーカル、
メロウなギターで聴かせる、正統派のシンフォニックロック。ヨーロピアンな湿り気を感じさせる泣きの叙情に、
適度にマイナー臭さを含んだ垢抜けない雰囲気も、この手のシンフォ好きにはむしろ嬉しいかもしれない。
10分を超える大曲も、あくまで叙情とメロディ重視で、派手さはないが優雅な耳心地の良さで楽しめる。
フルートやストリングスを含む優美なアレンジのナンバーなど、叙情派のシンフォファンはチェックです。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 マイナーシンフォ度・・8 総合・・7.5
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THE VICAR 「Songbook #1」
イギリスのミュージシャン、デヴィッド・シングルトンによるプロジェクト、ヴィカー2013年作の
KING CRIMSONのDGMレコードのプロデューサーで、ロバート・フリップの片腕としても知られるミュージシャン。
本作は自身の息子が手掛けるコミックとの連動作品で、音楽プロデューサー「ザ・ヴィカー」の冒険を描いたコンセプト作。
キャシー・スティーヴンス、トニー・レヴィン、スティーヴ・シドウェル、チャス・ディッキー、セオ・トラヴィスといったメンバーが参加、
QUEENNを思わせるキャッチーなコーラスハーモニーに艶やかなヴァイオリンが鳴り響き、優雅なクラシカル性と、
モダンなポップセンスを合わせたサウンドを描く。無名ながら、参加したヴォーカリストたちの表現力も見事だ。
ドラムやエレキギターなどは入らないのでロック的な質感は薄いのだが、ストリングスやフルート、クラリネット、オーボエ、
トロンボーン、ピアノといった、室内楽的な優雅さに包まれた聴き心地で、むしろチェンバー的なポストプログレとしても楽しめる。
クラシカル度・・8 プログレ度・・7 優雅度・・8 総合・・8
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WILLOWGLASS 「Book of Hours」
イギリスのシンフォニックロック、ウィローグラスの2008年作
マルチプレイヤーのアンドリュー・マーシャルとドラマーによる二人組ユニットで、
1作目はいくぶんマイナー臭さのある牧歌的なシンフォであったが、本作はのっけからムーグにメロトロンを含む
きらびやかなシンセの重ねにメロウなギターを乗せた、優雅なシンフォニックロック・サウンドが広がってゆく。
10分を超える大曲も、メロディのフックとプログレらしさに包まれたシンセワークで、にんまりしながら楽しめる。
アコースティックギターやフォーキーなリコーダーなど、英国らしい牧歌的な味わいの繊細な叙情も含んだ、
耳心地の良いインストシンフォ作品。ドン・キホーテをイメージさせるジャケも、微笑ましくてよいですね。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・8 叙情度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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POSTO BLOCCO 19 「Motivi Di Sempre」
イタリアのプログレバンド、ポスト・ブロッコ19の2014年作
結成は70年代というバンドで、本作は30年ぶりに復活しての初のアルバムとなる。
オルガンやムーグを含んだきらびやかなシンセークに、ブルージーな哀愁を感じさせるギター、
イタリア語の歌声を乗せた、70年代を思わせる古き良き感触のイタリアンプログレを聴かせる。
女性ヴォーカルにフルートも鳴り響く、やわらかな叙情性のシンフォニックロックナンバーなど、
イタリアらしい繊細な美しさも魅力的で、元ACQUA FRAGILE、MANGALA VALISのベルナルド・ランゼッティを
ヴォーカルに迎えてのボーナストラックも聴きどころ。全35分というのがやや物足りないが、なかなかの好作です。
ドラマティック度・・8 古き良き度・・9 イタリア度・・9 総合・・7.5
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LAZULI 「En Avant Doute」
フランスのポストプログレ、ラズリの2006年作
やわらかなフランス語の歌声に、モダンなシンセやストリングスによるアレンジを乗せて、
薄暗い叙情を描く、ポーキュパイン系サウンドのフランス版という雰囲気という聴き心地。
メロディックロックとしてのキャッチーなノリも含みつつ、ポップとまではいかないという絶妙さと
フランス語のヴォーカルが優雅な味わいになっていて、新しさはないのにどこか新鮮な感じの作風である。
ベースに聴こえるのはレオーデという独自の楽器で、ウォーギターを使用していたりと個性的な編成も面白い。
精細な叙情と適度にハードなダイナミズムを同居させた、モダン系ポストプログレの好作品。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 叙情度・・8 総合・・7.5
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ANGE 「Le Tour de La Question」
フレンチプログレを代表するバンド、アンジュのライブ作品。
2005年作「?」ツアーでのライブステージを収録したCD+DVD。トリスタン・デカンをシンセに迎えての6人編成で、
ややハード寄りのギターに美しいシンセアレンジ、そしてクリスチャン・デカンのフランス語の歌声を乗せた、
濃密なシンフォニックロックが繰り広げられる。シアトリカルな語りを含む、クリスチャン・デカンの歌声は
衰え知らずの存在感で、これぞアンジュという世界観を描き出す。息子のトリスタンのシンセワークも美しく、
女性コーラスも加わった優雅な空気感と、ここぞと盛り上げる泣きのギターとともに、緩急のある楽曲展開で聴かせる。
ドラマティックな演劇性をシンフォニックロックに融合した、ベテランバンドらしい説得力あるサウンドはさすがで、
過去のナンバーも厚みのある演奏で生き生きと蘇る。DVDのステージ映像では、シンセやギターも弾きながら歌う
デカン御大の堂々たるお姿や、妖艶な女性コーラスも含めたシアトリカルなステージが楽しめる。ファン必携のライブ作品です。
シンフォニック度・・8 ライブ演奏・・8 フレンチ度・・10 総合・・・8.5 過去作のレビューはこちら
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