プログレCDレビュー 
PROGRESSIVE ROCK CD REVIEW 2018 by 緑川 とうせい

★2017年に聴いたプログレ(フォーク/トラッド・その他含む)CDレビュー
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2/17
トラッド、ケルト、フォーク♪(54)


FLORENCE + THE MACHINE「How Big, How Blue, How Beautiful」
イギリスの女性Voポップロック、フローレンス・アンド・ザ・マシーンの2015年作
KATE BUSHのセンスと、QUEENのような華麗さを同居させ、一躍英国女性アーティストのトップへと躍り出た彼女、
3作目となる本作は、のっけから軽快なポップフィーリングに包まれた感触ながら、どこか倦怠を含んだ彼女の歌声は
いかにも英国らしいウェットな表現力を匂わせる。モダンなシンセアレンジにブラスやストリングスなども加えた
厚みのある音作りとオーケストラルなスケール感には、単なる歌ものという以上に楽曲そのものへのこだわりが感じられる。
しっとりとしたバラードナンバーなども含め、普遍的なポップロックの聴きやすさの中に、アーティスティックなセンスを覗かせる、
さりげないクオリティの高さは3作目にしてすでに円熟の域。いうなれば自然体の彼女を表現したような好作品です。
メロディアス度・・8 ポップロック度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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AnnaMy 「Woodpecker」
イギリスのフォークユニット、アナミーの2013年作
女性シンガー、アンナ・ミステン嬢をフロントに、アコースティックギターのつまびきに
優しい女性ヴォーカルを乗せた、英国らしい素朴な叙情を聴かせるフォークサウンド。
しっとりとした落ち着いた味わいに加え、ドラムにオルガン、エレキギターを加えた
程よいロック感触もありつつ、物寂しい空気感に包まれた幻想的な味わいも感じさせる。
英国アシッドフォークとしてのほのかな翳りを含んだ、耳心地のよさに包まれた逸品です。
ドラマティック度・・7 英国度・・8 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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Anna Shannon 「Over Land」
イギリスの女性シンガー、アンナ・シャノンの2010年作
自身の奏でるアコースティックギターに、ハスキーな女性ヴォーカルを乗せ、
ケルトテイストのある、素朴で牧歌的なフォークサウンドを聴かせる。
美しすぎない歌声には、良い意味で年季を感じさせる落ち着いた味わいがあり、
ジヤケのようなイングランドの田舎の優しい空気に包まれるような感触だ。
曲によっては、フルートやヴァイオリンの音色も加わって、優美な叙情に包まれる。
しっかりと土臭さを感じさせつつ、神秘的なケルトの味わいをまぶした作品です。
アコースティック度・・8 ケルティック度・・8 女性Vo度・・7 総合・・7.5
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Stone Angel 「Circle of Leaves」
イギリスのフォークバンド、ストーン・エンジェルの2007年作
1975年に1作を残して消え、その後、2000年に25年ぶりとなる復活作を出し、本作は復活後の3作目となる。
うっすらとしたシンセアレンジに、美しい女性ヴォーカルの歌声に、英国らしい湿り気を帯びた空気感に包まれた
幻想的なフォークサウンド。フルートやリコーダーのやわらかな音色に、アコースティックギターが絡む
素朴な牧歌性を残しながらも、ドラムの入った適度なフォークロック風味もあって初心者にも聴きやすい、
マイルドな男性ヴォーカルも加わった、男女声の古き良き伝統的な英国フォークとしても楽しめ、
アコーディオンやダルシマーなど、中世風味のトラッド要素も含んだ、優雅な味わいの好作品だ。
アコースティック度・・8 素朴で優雅度・・9 英国度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Kathryn Williams 「The Quickening」
イギリスの女性SSW、キャスリン・ウィリアムスの2009年作
アコースティックギターの旋律にマリンバが響き、やわらかな女性ヴォーカルを乗せたフォークサウンド。
英国らしい翳りを帯びた空気感に、マンドリン、バンジョー、アコーディオン、ハーディ・ガーディなどが、
素朴な彩りを添える。いくぶんかすれた彼女の歌声は耳に優しく、アコースティックサウンドによくマッチしていて、
ときにドラムやエレキも加わった聴きやすさとともに、ブリティッシュ・フォークルーツの牧歌的な叙情が味わえる。
アコースティック度・・8 素朴な叙情度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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Kathryn Williams 「Crown Electric」
イギリスの女性SSW、キャスリン・ウィリアムスの2013年作
アコースティックギターに、やわらかな歌声を乗せた、フォーク&カントリー調の素朴なサウンドに
優雅なチェロが鳴り響き、物悲しい叙情性も含ませた、しっとりとした聴き心地。
本作では、ストリングスによる美しいアレンジや、わりとキャッチーなナンバーなども含め、
アルバムとしてのメリハリもあって、ドラムにエレキも加えたフォークロックとしての味わいもよいですね。
翳りを帯びた英国フォークルーツのサウンドに、現代的なセンスをまぶしたという好作品。
ドラマティック度・・8 優雅な叙情度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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Cecile Corbel「Songbook Vol.3」
フランス、ブルターニュ出身のハープ奏者/シンガー、セシル・コルベルの2008年作
フランス語によるキュートな歌声と、美しいハープの音色、ヴァイオリンやチェロ、フルートなども加わった
繊細で優雅なケルティックサウンドを聴かせる。アコースティックが主体ながら、
どことなくコンテンポラリーな雰囲気がただようのは、若手アーティストのセンスだろう。
しっとりとした幻想的な空気感は、中世やケルトのロマンを現在に蘇らせたようだ。
曲によってはエレキギターやドラムも加わったりと、トラッドにとらわれないアレンジも楽しい。
アコースティック度・・8 ケルティック度・・8 優雅で繊細度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Cecile Corbel「Songbook Vol.4」
フランス、ブルターニュ出身のハープ奏者/シンガー、セシル・コルベルの2013年作
少女めいたコケティッシュな歌声とハープのつまびきを乗せた、優美なサウンドはそのままに、
今作ではドラムの入ったケルトロック的なナンバーで始まり、ストリングスアレンジを加えての
しっとりとした叙情や、うっすらとしたシンセにハープが美しく響くアンビエントなナンバーなど、
ややコンテンポラリーな雰囲気を強めた作風だ。もちろんトラッド的なアコースティック感触も残していて、
伝統とモダンのバランスのとれたサウンドは、ケルト初心者にも楽しめるだろう。
アコースティック度・・8 ケルティック度・・8 優雅で繊細度・・9 総合・・8
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SEIVA
ポルトガルのトラッドユニット、セイヴァの2015年作
パーカッションのリズムに母国語の女性ヴォーカルを乗せ、アコースティックギターにバクパイプの音色も加わり、
ケルトとバルカンの中間のような、土着的なトラッドサウンドを聴かせる。技巧的なギターとリズミカルな躍動感は、
スパニッシュ系のトラッドにも通じる感触で、素朴でありながらも情熱的な聴き心地が楽しめる。
民族的なガイタ(バグパイプ)の音色もよいアクセントどころか、曲によっては主役になって大活躍。
歌声にエフェクトのかかったラジカルトラッド風味も含めて、伝統と先鋭を同居させた好作品です。
アコースティック度・・9 トラッ度・・9 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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Lauren Edman 「It's Always the Quiet One」
アメリカのSSW、ローレン・エドマンの2012年作
エレクトロなシンセに、美しい女性ヴォーカルを乗せた、フィメールポップというサウンドながら、
ピアノをバックにしっとりとした歌声を聴かせる、クラシカルでコンテンポラリーな味わいもある。
打ち込みによるモダンなアレンジと、フォークルーツの素朴な味わいが融合した自然体の聴き心地に
やわらかな女性声による耳心地のよさで、ゆったりと鑑賞できる、わりと癒し系寄りの作風でもある。
濃密さやインパクトは薄いものの、フォーク寄りのフィメールポップとして普通に楽しめる。
ドラマティック度・・7 しっとり度・・8 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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Isabelle Boulay 「Nos Lendemains」
カナダの女性シンガー、イザベル・ブーレイの2008年作
ケベック州のアーティストで、アコースティックギター、ピアノなどのシンプルなアレンジに、
フランス語による艶めいた彼女の歌声を乗せた、シャンソン的な味わいのサウンド。
古き良きポップロックの空気感と、しっとりとした大人の雰囲気に包まれた聴き心地で、
派手さや新鮮さはないものの、アダルトな歌声とともに、どこかなつかしいような安心感が魅力。
楽曲も3分前後のゆったりとしたバラードナンバーが中心で、フランス語の優雅な響きが
疲れた耳にも優しく響く。大人歌声が楽しめる、フレンチな味わいの女性シンガー作品です。
メロディック度・・7 ゆったり安心度・・8 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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Linde Nijland 「I Am Here」
オランダの女性SSW、リンデ・ニルランドの2014年作
アコースティックギターのつまびきにアコーディオンの音色、美しい女性ヴォーカルを乗せたトラッド寄りのサウンド。
マンドリン、シターンの素朴な音色で聴かせる、Renaissanceの名曲“Ocean Gypsy”カヴァーもしっとりと美しい。
牧歌的なバンジョーに艶やかなフィドルが絡む、カントリー風味にフォーク&トラッドの空気感が合わさって、
全体的にシンプルな音数ながら、彼女の美声をよく引き立てている。優しい素朴さに包まれた逸品です。
アコースティック度・・9 素朴な叙情度・・9 女性Vo度・・9 総合・・8
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DEW-Worship 「Release your power : Worship, Welfare & Impartation」
オランダのケルティック・ロック、デュー・ワーシップの2007年作
2006年オランダでのライブを収録した作品で、フルート、ホイッスルの音色に、美しい女性ヴォーカル、
うっすらとしたシンセにエレキギターを乗せた、優雅なケルトロックというサウンドで始まりつつ、
語りの掛け合いを乗せたシアトリカルなナンバーもあったり、タイトルのようにスピリチュアルで、
宗教的なストーリー性を描くような、演劇的なライブステージであったのかもしれない。
テンション高めの演奏で盛り上がってゆくところは、MAGAMAなどにも通じる空気感で、
軽快なドラムにピアノが鳴り響く、ジャズロック風味もあったり、わりととりとめがない。
ラストは、艶やかなヴァイオリンにピアノ、女性ヴォーカルを乗せ、しっとりと優美に締めくくる。
ドラマティック度・・7 ケルティック度・・7 女性Vo度・・7 総合・・7
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まだまだチェンバーにジャズロック!(41)


QUINTESSENCE 「Spirits from Another Time」
イギリスのサイケロック、クインテセンスの2016年作
1969年に結成、HAWKWINDとともに70年代の英国サイケロックを代表するバンドで、
本作は1969~71年の作品から選曲された、シングル曲や未発曲を含む、CD2枚組のベスト。
アコースティックギターにシタール、フルートの音色が重なり、詠唱的な感じのヴォーカルを乗せた、
ユルめのサイケロックサウンド。スペイシーなホークウインドに比べて、こちらは東洋的な神秘性を感じさせ、
11分を超える大曲なども、盛り上がり過ぎず、あくまでオリエンタルなサイケ感をゆったりと描いている。
適度にアッパーでありながら、70年代初頭のおおらかな空気感のサイケロックが楽しめます。
ドラマティック度・・7 サイケ度・・9 ユル度・・8 総合・・7.5
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Karda Estra 「Mondo Profondo/New Worlds」
イギリスのチェンバーロック、カルダ・エストラの2013年作
ギター、ベース、シンセを操るマルチミュージシャン、Richard Wilemanによるソロユニットで、
本作は2013年のミニアルバムと、2011年作のカップリングCD。不協和音を含んだピアノが鳴り響き、
艶やかなストリングスが包み込む。ドラムのリズムに乗む重々しいベースが不穏な緊張感をかもしだす、
まさに王道のチェンバーロックが楽しめる。一方では、女性声のスキャットにメロウなギターが加わった、
シンフォニックロック的な優美さや、オーボエの音色に繊細なピアノが絡むクラシカルな聴き心地にもウットリ。
2011年作の方は、うっすらとしたシンセにサウンドスケープ的なギターによる、クールなアンビエント感触と、
オーボエやクラネットによる優雅なチェンバー色が合わさった、わりとモダンなアレンジでじっくりと楽しめる。
クラシカル度・・8 チェンバー度・・9 優雅で不穏度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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FLAIRCK 「The Lady's Back」
オランダの技巧派アコースティックユニット、フレアークの2014年作
1978年にデビュー、その超絶技巧というべき軽やかなアコースティック・アンサンブルで、
通好みのプログレファンも虜にするこのバンド。本作は2014年オランダでのライブを収録。
オリジナルのフルート奏者、PETER WEEKERSが復帰し、アコースティックギター、女性ヴァイオリン、
ベースという編成で、過去作品のナンバーを再現。パンパイプやサンポーニャ、ティンホイッスルといった
多彩な笛を優雅に吹き鳴らし、技巧的なアコースティックギターに艶やかなヴァイオリンが合わさった
見事なアンサンブルは、4人編成であっても圧倒的な存在感である。名曲“East West Express”、
“Sofia”といった初期のナンバーも含めた素晴らしい演奏が堪能できる。フレアーク健在である。
アコースティック度・・10 テクニカル度・・9 優雅度・・9 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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MICHAEL RIESSLER「MOMENTUM MOBILE」
ドイツ出身のサックス&クラリネット奏者、ミヒャエル・リースラーの1994年作
ハーモニカ、バレルオルガン、ベ-ス、ドラムというメンバー編成での、1993年ドイツのライブ音源を収録。
テクニカルなドラムとベースが、スリリングなグルーブを生み出し、手回しオルガンによる素朴な音色に、
サックスやクラリネットがフリーキーに重なる技巧的なアンサンブルで、アーティスティックなジャズロックを聴かせる。
ときにゆったりとした叙情的な味わいもかもしだしつつ、トランペット、トロンボーン、チューバというブラスに、
ヴァイオリン、ビオラ、チェロのストリングスも加えて、クラシカルなチェンバー風味の優雅さも含んだ聴き心地。
一糸乱れぬ演奏はライブとは思えないほどで、とぼけた大人の味わいも含んだアヴァン・ジャズロックが楽しめる。
テクニカル度・・9 ジャズロック度・・8 スリリング度・・9 総合・・8
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MICHAEL RIESSLER「ORANGE」
ドイツ出身のサックス&クラリネット奏者、ミヒャエル・リースラーの2000年作
L'Orchestre National de Jazz Parisにも参加していたミュージシャンで、ソプラニーノ(リコーダー)の素朴な音色に
技巧的なクラリネットが絡み、女性声のスキャットを乗せた、ミニマムなフリージャズ的サウンドを聴かせる。
基本は、クラリネットとリコーダーが綿井ながら、曲によってはアコーディオンやパイプオルガンが加わり、
女性声を前に出したナンバーなどもあって、エキセントリックなチェンバー、アヴァン・ジャズ的にも楽しめる。
オールアコースティックなので、チェンバー・ジャズロック的な名作「HONIG UND ASCHE」のような怒涛の迫力はないのだが、
スリリングな演奏には、クラリネット奏者としての彼の才能がしっかりと感じられる。Elise Caronの表現力ある女性声も素晴らしい。
スリリング度・・8 フリージャズ度・・8 アヴァン・チェンバー度・・8 総合・・8
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MICHAEL RIESSLER「Big Circle」
ドイツ出身のサックス&クラリネット奏者、ミヒャエル・リースラーの2011年作
サックス、トランペット、トロンボーンがけたたましく鳴り響く、冒頭の迫力から圧倒されるが、
技巧的なドラムとベースによるジャズロック的なアンサンブルに、素朴なバレルオルガンの音色が重なり、
クラリネットがフリーキーに響き渡る。厚みのあるブラスセクションとテクニカルなリズムのバトルという様相から、
バレルオルガンとクラリネットによるシンプルな音数による優雅な技巧ナンバーまで、どれも圧巻の演奏である。
随所にアヴァンギャルドなチェンバーロック風味も覗かせるところは、やはりプログレリスナー向きのアーティスト。
テクニカル度・・9 ジャズロック度・・8 スリリング度・・9 総合・・8
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MICHEL AUMONT 「Le Grant Orchestre Armorigene」
フランスのクラリネット奏者、ミシェル・オーモンの2012年作
ピアノ、ヴァイオリン、チューバ、ヴィエレ・ア・ルー(ハーディ・ガーディ)、ドラムを含む7人編成で、
ブルターニュ地方のトラッドをモチーフにした楽曲を、ジャズオーケストラの編成で演奏。
軽やかなドラムの上に、チューバの低音とヴァイオリンが鳴り響き、優美なピアノの旋律に、
エレクトリック・ヴィエレ・ア・ルーも加わって、素朴なブルターニュの空気感に包まれた
技巧的なジャズロックが楽しめる。土着的なトラッド感触を軽妙に表現するという点では、
FLAIRCKにも通じるスタイルだろう。ジャズ、クラシック、トラッドの要素を絶妙に溶け込ませた傑作だ。
テクニカル度・・9 トラッド・ジャズ度・・8 優雅度・・9 総合・・8.5
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SETNA 「Guerison」
フランスのプログレバンド、セトナの2013年作
2007年作に続く2作目で、やよらかなエレピの音色に重たいベースを乗せた優雅なアンサンブルに、
中性的な男性ヴォーカルが妖しく歌声を響きかせる。MAGMAをルーツにしたジャズロックながら、
オルガンなどを加えたカンタベリーなテイストが合わさった感触には、どこか素朴な牧歌性も感じさせる。
シンセの重ねによるシンフォニックなパートや、12弦ギターによる繊細な叙情性も含んで、
26分の大曲もメリハリある流れでじっくりと構築してゆく。哀愁のギターフレーズにエレピが重なる辺りは、
単なるマグマ系とは異なる優美なプログレ・ジャズロックという趣だが、ときにフリーキーにドラムが叩かれる、
おどろおどろしさも覗かせる。いわば「カンタベリーなマグマ」というべき優雅で叙情的な好作品。
ドラマティック度・・8 優雅度・・8 マグマ度・・8 総合・・8
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Simon Steensland 「Led Circus」
スウェーデンのマルチミュージシャン、サイモン・スティーンスランドの1999年作
本作は、のっけから16分を超える大曲で、モルガン・オーギュレンの叩きだすドラムに
コロコロとしたマリンバの響きにサックスやリコーダーを加え、怪しげなヴォーカルを乗せた、
まさにMATS/MORGANをダークにしたような、異色のアヴァンロックを聴かせる。
とぼけた味わいの中にも、音の塊が押し寄せる緊迫感と得体の知れないスケール感を描く
アーティスティックなセンスというのは、北欧のチェンバー/アヴァンロックの中でも屈指であろう。
変則リズムによるテクニカルなダークさは、チェンバー化したMESHUGGAHのようでもある。
ラストの18分の大曲もまた物凄い。マッツ・エーベリーなどもゲスト参加。必聴の傑作です。
ドラマティック度・・8 アヴァンギャル度・・9 スリリング度・・9 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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DAAU 「Tub Gurnard Goodness」
ベルギーのチェンバーロック、Die Anarchistische Abendunterhaltungの2004年作
クラリネット、チェロ、アコーディオン、ヴァイオリンという4人編成で、不穏なチェロの音色に
クラリネット、ヴァイオリンの響きが重なり、スリリングな空気を優雅な音で表現するサウンドは、
ロック色を排したUNIVERS ZEROという雰囲気もある。ストリングスの強弱によるダイナミクスが
迫りくるような緊迫感を描き出し、ダークなクラシカル性が耳心地よくもおどろおどろしい。
一方では、アコーディオンとクラリネットが前に出た、とぼけた味わいと哀愁も感じさせ、
アコースティック主体ながら、メリハリのある聴き心地で飽きさせない。曲によってはドラムも入って
女性ヴォーカルを乗せたジャズやタンゴ風味のナンバーもあったりする。本格派チェンバーの好作品。
スリリング度・・8 チェンバー度・・9 ロック度・・3 総合・・8
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DAAU 「HINEININTERPRETIERUNG」
ベルギーのチェンバーロック、Die Anarchistische Abendunterhaltungの2017年作
アコーディオン、クラリネット、ベース、ドラムの4人編成を基本に、ヴァイオリン、チェロ、フルート、
複数のヴォーカルなど多数のゲストを加えてのアルバムで、クラリネットとアコーディオンを中心とした牧歌的なナンバーから、
落ち着いた歌声を乗せたわりとモダンなアンビエント調のナンバーなど、幅の広いアレンジのサウンドが楽しめる。
艶やかなヴァイオリンやフルートによる優美なクラシック性も耳心地よく、アコースティックを主体にした
ミニマムなアンサンブルを中心に、ドラムが入ったロック色も取り入れつつ、チェンバーロックとしての優雅さと、
適度に薄暗い自然体の味わいには、バンドとしての成熟を感じさせる。まさに大人のためのチェンバーミュージックである。
スリリング度・・8 チェンバー度・・9 ロック度・・5 総合・・8
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Vezhlivy Otkaz 「Geese And Swans」
ロシアのチェンバーロック、ヴェジリヴィ・アトカズの2010年作
トランペットにヴァイオリンがけたたましく鳴り響き、繊細なピアノが絡みつつ、
偏屈なアヴァンギャルド性と哀愁の情緒が交差する、硬質なチェンバーロック。
スリリングでアカデミックなシリアス性は、Henry Cowにも通じる感触で、
変拍子リズムに乗せるクラシカルなピアノは優雅なれど、母国語による男性ヴォーカルはどこか偏屈な印象。
ゆったりとしたピアノにヴァイオリンが絡む、ジャズタッチのアダルトな味わいも覗かせる。玄人好みのチェンバー作品だ。
ドラマティック度・・7 チェンバー度・・8 アヴァンギャル度・・7 総合・・8
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BPM&M「XtraKcts & ArtifaKcts」
パット・マステロットとプロジェクトXのプロデューサー、ビル・マニヨンによるユニット。2001年作
ロバート・フリップ、トニー・レヴィンらが参加、エレクトロニクスを駆使したテクノ的なサウンドは、
デジタルにインダストリアル化したクリムゾンというべき作風で、アレンジ面での方向性は異なるが、
フリップの遺伝子は確実に受け継いでいる。くぐもったベースのみがリフレインするパートなど、
適度にアヴァンギャルドな部分もあって、単なるクリムゾン系と思って聴くと肩透かしだろうが、
無機質なビート感に、トニー・レヴィンのベースとフリップのギター音が重なると、いかにもそれらしくなる。
ロック色、プログレ色はあまりないのだが、むしろエレクトロなトリップミュージック的にも楽しめるかもしれない。
ドラマティック度・・6 プログレ度・・7 インダストリアル度・・8 総合・・7.5
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FLIGHT 「Incredible Journey」
アメリカのジャズロックバンド、フライトの1976年作
おそらくは初のCD化で本作は2作目となる。きらびやかなシンセに適度にハード寄りのギター、
ジャズタッチのピアノにサックスやトランペットなどのブラスが鳴り響く、軽やかなフュージョン・ジャズロック。
ファンキーな味わいのヴォーカルがポップな感触をかもしだしているが、バックの演奏は相当テクニカル。
手数の多いドラムとうねるベースが、躍動的なアンサンブルを作り出し、プログレ的でもあるリズムチェンジや
唐突な展開力も含んだエキセントリックなセンスも素晴らしい。厚みのある音の塊が突き抜けてゆく爽快さで、
マハヴィシュヌとはまた違ったスタイルでの、プログレッシブなジャズロックの最高峰というべき傑作だ。
メロディック度・・8 ジャズ&フュージョンロック度・・9 テクニカル度・・9 総合・・8.5
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チェンバー&アヴァンロック!(27)
「チェンバーロック特集」ページはこちら


Karda Estra 「Infernal Spheres」
イギリスのクラシカル・チェンバーロック、カルダ・エストラの2017年作
ギター、ベース、シンセを操るマルチミュージシャン、Richard Wilemanによるソロユニットで
ミステリアスなシンセに、ギターやクラリネット、オーボエ、トロンボーンなどを使用した、
クラシカルなチェンバーロックは本作も同様。アコースティックギターにオーボエが重なる
物悲しくもミステリアスな空気感というのは、いかにも王道のチェンバーミュージックらしい。
美しいストリングスや、シンセの重ねにノイジーなギターを加えたアレンジなど、空間的なスケール感と
スリリングな緊張感の同居も、さすがキャリアのあるミュージシャンである。一方では、ドラムの加わったナンバーは
わりとキャッチーで、女性スキャットも入ったり、サロン系チェンバーのノリもある。いつになく多様な印象の逸品だ。
クラシカル度・・8 チェンバー度・・9 ミステリアス度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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GUAPO 「Black Oni」
イギリスのアヴァンプログレ、グアポの2004年作
結成は90年代という、なにげにキャリアのあるバンドで、本作は鬼をテーマにしたコンセプト作。
ノイジーでヘヴィなギターが鳴り響き、美しいシンセを絡ませながら、不穏な空気感を躍動的に描く、
いわゆる「MAGMA/Zeuhl系」の作風に、暗黒性をたっぷりとまぶした重厚なサウンドを展開する。
ジャズロック、チェンバーロックというカテゴライズ不要な、凶暴なダークさとスリリングな緊張感が、
聴き手をじわじわと包み込む。UNIVERS ZEROをよりハードにしたという感触もあるが、
シンセのメロデイはときに優美ですらあって、メタル寄りのリスナーにも楽しめるかもしれない。
5パートに分かれた、44分のオールインストだが、最後まで張詰めた緊張感で飽きさせない。
ドラマティック度・・8 アヴァンギャル度・・8 暗黒度・・9 総合・・8
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GUAPO 「History Of The Visitation」
グアポの2013年作
7作目となる本作は、のっけから26分の組曲で幕を開ける。サックスやトランペット、バスーン、ヴァイオリンなどが鳴り響き
うっすらとシンセが重なる不穏な空気感のイントロから、ギター、ベース、ドラム、シンセによる四人編成による
シンプルなアンサンブルへ移行する極端なギャップも含めて、聴き手に先を読ませないセンスは見事。
メロウなギターフレーズにシンセを重ねた優雅な叙情性も覗かせつつ、徐々にハードなヘヴィさと躍動感で、
アッパーなノリを強めながらサウンド盛り上げてゆく。適度なアヴァンギャルド性は決して難解過ぎず、
案外チェンバー/アヴァンロック初心者にも楽しめるだろう。DVDには2006年、2007年のライブ映像を収録。
ドラマティック度・・7 アヴァンギャル度・・7 暗黒度・・8 総合・・8
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GUAPO 「OBSCURE KNOWLEDGE」
グアポの2015年作
今作も25分の大曲で幕を開け、オルガンを含むシンセに、優雅なギタープレイを乗せた軽妙なアンサンブルで、
むしろメロディックなプログレ寄りの聴き心地も感じさせつつ、ときにノイジーなギターと反復するシンセによる
トリップ感と、レコメン系としての偏屈なアレンジを自然に溶け込ませている。本作ではタークさは控えめに、
ときに叙情的なギターフレーズも覗かせつつ、適度な緊張感のある展開力とともに壮大に大曲を描いてゆく。
もはやチェンバーロックというよりは、ミステリアスなプログレとして楽しむ方がよいかもしれないが、
湿り気のあるギターメロディにシンセが絡むあたりは、ダークなシンフォ系としても鑑賞可能だろう。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 ミステリアス度・・8 総合・・8
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Poil 「Brossaklitt」
フランスのアヴァンロック、ポアルの2014年作
2008年にデビューしたフレンチ・アヴァンロックの新鋭。本作は3作目となる。ジャケからしてすでにカオスだが、
サウンドの方も、アヴァンギャルドの極地。重ためのドラムがフリーキーなリズムを叩き出し、
シンセとギターが螺旋のように絡みつく。怪しげなヴォーカルとコーラスが加わって、
おちゃらけと毒気が混じり合った異様な感触は、「ダークになったサムラ」というべきか。
テンションの高さとスリリングな緊張感と、それを笑い飛ばすような脱力感を同居させた無茶なサウンドは、
完全なヘンタイで、その迫力には圧倒される。曲によってはデジタルなテクノ的アプローチもあったりとなんでもあり。
崩壊しそうでしっかりと構築されているという不思議なセンスは見事。ホイリー・コーンも真っ青の傑作です。
ドラマティック度・・7 アヴァンギャル度・・10 ヘンタイ度・・10 総合・・8.5
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Vak 「Aedividea」
フランスのチェンバー・ジャズロック、ヴァクの2015年作
シンセにフルート奏者を含む編成で、躍動的なドラムと存在感あるベースを軸にしたアンサンブルに、
女性声のスキャットにエレピを含むシンセを重ねた、MAGMAルーツのアヴァン・ジャズロック。
程よいダークさと軽妙な優雅さのバランスで、いかにも「Zeuhl系」を地でゆくようなサウンドを聴かせる。
フルートによる叙情性やヘヴイでありながらも空間的なアプローチには、クリムゾン的な雰囲気も漂わせるが、
結局はマグマへと回帰するような作風は、やはり同郷の偉大な存在への憧れが強いのだろう。
10分前後の大曲も多いが、わりあいゆったりとした叙情パートも多いので、聴き疲れせずに楽しめる。
一方では、アヴァン・プログレ的なスリリングなナンバーもあり、バランスのとれた高品質な作品といえる。
ドラマティック度・・8 マグマ度・・8 ミステリアス度・・7 総合・・8
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CAMEMBERT 「Schnoergl Attahk」
フランスのチェンバー・ジャズロック、カマンベールの2011年作
プラグが貫通したカマンベールチーズのジャケからしておちゃらけているが、なにやらスペイシーなイントロから、
トランペット、トロンボーンが鳴り響き、コロコロとしたマリンバの響きにギターを加え、軽妙なアンサンブルが広がる。
優雅なテクニカル性ととぼけた味わいに、ときおりスペイシーなスケール感が加わるところが面白く、
美しいハープの音色など、やわらかでメロディック味わいが前に出ているので難解な印象はない。
オールインストなので聞き流してしまいがちだが、しっかりとしたアンサンブルとほどよいヒネくれ方もあって、
MAGMAのような緊張感はないが、ディープなリスナーでも楽しく聴ける。チェンバー・ジャズロックの好作品だ。
ドラマティック度・・7 ジャズロック度・・8 優雅なおとぼけ度・・9 総合・・8
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Angel Ontalva 「Tierra Quemada」
スペインのチェンバーロック、OCTOBER EQUUSのギタリスト、エンジェル・オンタルヴァのソロ。2015年作
軽やかなリズムに乗せる、ベースとギターに、美しいシンセアレンジを加えた優雅なインストサウンドで、
サックス、クラリネットの音色による、チェンバーロックらしい聴き心地は、さすが現代R.I.Oの申し子である。
ベースに重なるチェロの響きが、シリアスな重厚さを描きつつも、全体的にはダークさは控えめで、
シンセやメロディかの音色など哀愁を含んだ叙情性が前に出ている。一方で、エレピを乗せた優雅な質感は
カンタベリー的でもあって、ジャズロック寄りの耳でも楽しめるだろう。全体的には小曲主体なので、
わりとあっさりと聴き通せるが、ラストは9分近い大曲で、メロウなギターも鳴り響き、叙情豊かに締めくくる。
ドラマティック度・・7 チェンバー度・・8 哀愁の叙情度・・8 総合・・8
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Thinking Plague「In This Life」
アメリカのチェンバーロック、シンキング・プレイグの1989年作
Henry Cowのサウンド受け継ぐ、アメリカきってのレコメン系バンド。アルバム25周年記念のリマスター再発盤。
変則リズムによるアンサンブルに、クラリネットやヴァイオリンが鳴り響き、浮遊感のある女性ヴォーカルを乗せた、
アヴァンギャルドでキュートなサウンドは、ダグマー・クラウゼのいた頃の、ヘンリー・カウを思わせる。
のちの作風に比べれば、もっとミニマムで、プリミティブ、ようするに雰囲気モノとしての作風が強いのだが、
女性声の妖しさも含めて、70年代の香りを残しているという点では、Art Bearsなどのファンでも楽しめそう。
タブラによるリズムが鳴り響くところは、Third Ear Bandあたりも思わせる。ほどよいサイケ感も含んだ異色作である。
ドラマティック度・・7 チェンバー度・・8 アヴァンギャル度・・8 総合・・8
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Thinking Plague「Hoping Against Hope」
シンキング・プレイグの2017年作
前作「衰退と滅亡」は見事な傑作だったが、「一縷の望み」と題された6年ぶりとなる本作も、
変則リズムのアンサンブルに、クラリネット、フルート、サックス、ピアノの優雅な音色に、
女性ヴォーカルの歌声を乗せた、Art Bearsをルーツにした妖しくも美しいチェンバーサウンドを聴かせる。
優雅なアヴァンギャルド性とテクニカルな構築センスのバランスもよろしく、程よい緊張感が耳心地よい。
クラリネットがリードをとりながら、変拍子でたたみかけるナンバーは、これぞチェンバーロックという味わいで、
シリアスなダークさは、UNIVERS ZEROに通じるところもある。キャリアのあるバンドならではの堂々とした空気感と
重厚な音の説得力というのもさすがである。いうなれば現在形の正統派チェンバーロックの力作である。
ドラマティック度・・8 チェンバー度・・9 アヴァンギャル度・・8 総合・・8
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Combat Astronomy 「Time Distort Nine」
アメリカのアヴァンロック、コンバット・アストロノミーの2014年作
MAGMAルーツの所謂「Zeuhl系」の妖しさにインダストリアルなメタル質感を加えた独自のサウンドを聴かせるバンド。
本作はCD2枚組の大作で、のっけから17分、21分という大曲を聴かせる。重たいドラムにノイジーなギターを乗せ、
メロトロンやオルガンなどのシンセに、トランペット、サックスといったブラスをサンプリングで加えたデジタルなアレンジで、
モダンなチェンバーメタルというべきサウンドを描き出す。硬質なギターリフにる無機質で不穏な空気感は、
結果として、Meshuggahなどにも通じるような無機質なおどろおどろしさを感じさせる。一方では残響音が延々と鳴り響く、
ドローン的なナンバーや、男女声の語りを乗せた怪しげなインダストリアルロックなど、実験的な作風は良くも悪くも愛想がなく、
アヴァンギャルドなメタルを好む方なども含め、まさにディープな音楽リスナーに向けた異色作といえるだろう。
ドラマティック度・・7 チェンバーメタル度・・8 無機質な闇度・・9 総合・・8
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The Book Of Knots 「Traineater」
アメリカのアヴァンロック、ブック・オブ・ノッツの2007年作
Sleepytime Gorilla Museumのメンバーを含むバンドで、サウンドの方は、ノイジーなギターに
シアトリカルな歌声を乗せた、ドゥーミィなポストロックという雰囲気で始まるが、フリーキーなサウンドに
ハスキーで中性的な女性ヴォーカルを乗せた感触は、Art Bearsなどをルーツにしたレコメン系の趣。
アコースティックギターや、ピアノ、ヴァイオリンなどの優雅な叙情性を含みつつ、とぼけたような偏屈さと
アヴァンギャルドなセンスはチェンバーロック系のリスナーも唸らせるだろう。ストーリー的な流れの中に、
モダンなヘヴィネスも垣間見せつつ、ポストロック的なスケール感も内包した、まさに異色のアヴァンロック作品だ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 アヴァンギャル度・・8 総合・・8
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Doctor Nerve 「Every Screaming Ear」
アメリカのアヴァンロック、ドクター・ナーヴのライブ作。1997年作
1984年にデビュー、アメリカのレコメン系を代表するバンドのひとつである。
本作は、1992年のドイツ、オランダ、アメリカでのライブ音源を中心に収録。
躍動的なドラムとベースに、トランペット、サックスが吹き鳴らされ、テンション高いアンサンブルで、
チェンバーでジャジーなアヴァンロックを描き出す。変則リズムのテクニカル性も含めてさすがの演奏力です。
即興的なアヴァンギャルド性はフリージャズに通じる部分もあり、オールインストなのでブラスが鳴り響く奔放なBGMとしても楽しめる。
ライブ演奏・・8 テクニカル度・・8 アヴァンギャル度・・8 総合・・8
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SALES DE BANO 「HORROR VACUI」
アルゼンチンのチェンバーロック、サレス・デ・バノの2016年作
FACTOR BURZACOにも参加するベースを中心にしたバンドで、うるさすぎないドラムとベースによる
ミニマムなアンサンブルにエレピが重なり、サックス、トランペット、フルートなどがゆるやかに鳴らされる、
チェンバーなアヴァンロック。HENRY COWなどにも通じるスリリングな緊張感を、
カンタベリー的な優雅さで包み込んだという聴き心地で、ロック的な部分での重厚さは希薄であるが、
ブラスが鳴り響くとぼけた味わいとシリアスな空気が同居した、フリーキーなチェンバーサウンドが楽しめる。
ドラマティック度・・7 チェンバー度・・8 優雅度・・8 総合・・8



1/12
本年もプログレでよろしくお願い致します(13)


THE TANGENT「THE SLOW RUST OF FORGOTTEN MACHINERY」
イギリスのプログレバンド、タンジェントの2017年作
マルチプレイヤーのアンディ・ティリソンを中心に2003年にデビュー、本作はすでに9作目となる。
シンセ&ドラムのアンディ・ティリソンを中心に、ギターにルーク・マシン、ベースにヨナス・レインゴールド、
さらに女性Voにサックス&フルート奏者を加えての編成で、マイルドなヴォーカルに美しいシンセを乗せた、
カンタベリー的な優雅なアンサンブルに、繊細なシンフォニック風味が合わさったサウンドを聴かせてくれる。
やわらかな女性ヴォーカルに、フルートの音色も加わった優美な雰囲気に、軽妙なテクニカル性を含んだ展開美で、
10分を超える大曲をコンセプト的なスケール感で描くのはさすがのセンスである。随所にオルガンが鳴り響く、
古き良きプログレ質感も覗かせつつあくまで優雅な聴き心地。レトロとモダンのバランスも絶妙な、全79分の力作です。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 優雅度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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MARILLION 「F.E.A.R」
イギリスのメロディックロック、マリリオンの2016年作
1983年にデビュー、初期のポンプロック路線からしだいに深みを増したメロウなサウンドへと移行、
いまでいうポストプログレの先駆けというべき繊細な叙情美をまといながら、いまや世界的な評価も取り戻した。
通算18作目の本作は、人間の存在意義をテーマにしたコンセプト作品で、タイトルは「FUCK EVERYONE AND RUN」の略。
組曲構成の大曲3曲を軸に、スティーヴ・ホガースのマイルドな歌声に、いつになくシンフォニックなアレンジとともに、
うっとりとするような繊細な叙情美のサウンドが広がってゆく。スティーブ・ロザリーのギターも随所に泣きのフレーズを奏で、
じわじわと盛り上げてゆく感触は、いわばポストプログレとシンフォニックロックを融合させたような聴き心地である。
コンセプトアルバムとしては「BRAVE」、「MARBLES」にも通じる、スケール感のあるドラマティックな流れで楽しめる傑作です。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 繊細な叙情度・・9 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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THE MUTE GODS 「Do Nothing Till You Hear From Me」
Steven Wilson
バンドやIONALIFESIGNSにも参加するベース奏者、ニック・ベッグスと
Steve Hackett Bandのシンセ奏者、ロジャー・キングによるユニット、ミュート・ゴッズの2016年作
ドラムにはマルコ・ミネマンが参加、適度にモダンでソリッドな硬質感と、キャッチーな歌もの感に、
シンフォニックなシンセアレンジを加えた聴き心地。ニック・ベッグスのマイルドな歌声は、
80年代ルーツの爽快なポップ性も感じさせ、全体としてはモダンなメロディックロックでありながらも、
さすがの実力者たち、ミンネマンのドラムとベッグスのベースもじつによい仕事をしているし、
ロジャー・キングのシンセが美しく彩る、繊細なプログレらしさもしっかりと融合されている。
KINOPocupine Treeあたりが好きな方にもお薦めの、英国モダンプログレの好作品だ。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 モダン度・・8 総合・・8
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THE MUTE GODS 「Tardigrades Will Inherit the Earth」
イギリスのプログレユニット、ミュート・ゴッズの2017年作
2作目となる本作も、ニック・ベッグス、ロジャー・キング、マルコ・ミンネマンのトリオ編成で、
メタリックといってもよいハードなギターに、マイルドなヴォーカルとシンセアレンジを乗せた、
重厚でモダンなサウンドを聴かせる。ヘヴィな硬質感と英国らしい翳りある空気感とともに、
前作よりもややダークな味わいが強まってはいるが、8分、9分という大曲ではキャッチーで繊細な叙情も覗かせる。
ヴォーカル、ギター、ベース、スティックをこなすニック・ベッグスのマルチなセンスと、
ロジャー・キングの美しいシンセが絶妙に融合し、ミンネマンのドラムもいつになく激しく、
曲によってはProgMetalファンなどにも対応する。スタイリッシュな英国ハードプログレの力作だ。
メロディック度・・7 プログレ度・・7 モダン度・・9 総合・・8
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ESP 「Invisible Din」
イギリスのプログレユニット、ESPの2016年作
BRAM STORKERのトニー・ロウと、BIG COUNTRYのマーク・ブルゼジキによるユニットで、
メロトロンやムーグ、オルガンを含む古き良きシンセとメロウなギターに、やわらかなヴォーカルを乗せ、
ゆったりとした叙情を描くシンフォニックロックサウンド。キャッチーな繊細さで聴かせる歌もの的なプログレハード色もありつつ、
元VDGGのデヴィッド・ジャクソンのサックスが大人の哀愁をかもしだす。曲によってはオールドなブリティッシュロック色も覗かせ、
英国らしい湿り気に包まれた優美な空気感は、ギター、ベース、シンセにヴォーカルもこなすトニー・ロウの
マルチな才能とアレンジセンスによるものだろう。ラスト2曲ではデヴィッド・クロスのヴァイオリンも美しい。
LANDMARQのスティーヴ・ジー、LIFESIGNSのジョン・ヤングなど多数のゲストが参加している。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 英国の叙情度・・9 総合・・8
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GANDALF'S FIST 「THE CLOCKWORK FABLE」
イギリスのプログレバンド、ガンダルフズ・フィストの2016年作
ファンタジーストーリーに基づいたコンセプチュアルなハードシンフォニックロックを得意とするこのバンド、
本作はなんとCD3枚組で、配役ごとに男女ヴォーカルやコーラスを配置した壮大なストーリーを感じさせる
ロックオペラ大作となっている。映画のようなナレーションで幕を開け、やわらかなシンセアレンジと、
美しい女性ヴォーカルを乗せ、ケルティックなメロディを含んだ叙情性とともに、優美なシンフォニックロックを描く。
オルガンやメロトロンなど古き良きプログレの感触を覗かせつつ、ストーリーを語るナレーションを随所に挿入しながら、
AYREON
ばりのファンタジックなロックオペラを展開してゆく。当のアンソニー・ルカッセンもゲスト参加しています。
CD3枚、3時間超はさすがに通しで聴くのは大変なのだが、バンドとしては渾身の力作というのは間違いない。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 壮大度・・8 総合・・7.5
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KONCHORDAT 「Rise to the Order」
イギリスのシンフォニックロック、コンコルダットの2016年作
前作はPENDRAGONなどを思わせる王道のシンフォニックロックであったが、3作目となる本作は
これまでになくモダンなヘヴィさが加わった感触で、どことなくニック・バレットを思わせるヴォーカルを乗せ、
これまでのシンフォニックなアレンジとモダンな歌もの感が合わさったという聴き心地。
かといって、王道のシンフォ色が失ったわけではなく、むしろ近年のPENDRAGONPALLASなどにも通じる
適度に翳りを含んだハードシンフォニックとして楽しめる。プログレらしいきらびやかなシンセとともに
ときにキャッチーなメロディも覗かせつつ、どっしりとしと重厚さでもって、7~9分前後の楽曲を構築する。
ペンドラ&パラスのファンにもうってつけな、英国らしい大人のシンフォニックロック力作だ。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 英国度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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DRIFTING SUN 「Safe Asylum」
イギリスのシンフォニックロック、ドリフティング・サンの2016年作
90年代から活動するキャリアのあるバンドで、美しいシンセアレンジにマイルドなヴォーカル、
メロウなギターで聴かせる、正統派のシンフォニックロック。ヨーロピアンな湿り気を感じさせる泣きの叙情に、
適度にマイナー臭さを含んだ垢抜けない雰囲気も、この手のシンフォ好きにはむしろ嬉しいかもしれない。
10分を超える大曲も、あくまで叙情とメロディ重視で、派手さはないが優雅な耳心地の良さで楽しめる。
フルートやストリングスを含む優美なアレンジのナンバーなど、叙情派のシンフォファンはチェックです。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 マイナーシンフォ度・・8 総合・・7.5
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THE VICAR 「Songbook #1」
イギリスのミュージシャン、デヴィッド・シングルトンによるプロジェクト、ヴィカー2013年作の
KING CRIMSONのDGMレコードのプロデューサーで、ロバート・フリップの片腕としても知られるミュージシャン。
本作は自身の息子が手掛けるコミックとの連動作品で、音楽プロデューサー「ザ・ヴィカー」の冒険を描いたコンセプト作。
キャシー・スティーヴンス、トニー・レヴィン、スティーヴ・シドウェル、チャス・ディッキー、セオ・トラヴィスといったメンバーが参加、
QUEENNを思わせるキャッチーなコーラスハーモニーに艶やかなヴァイオリンが鳴り響き、優雅なクラシカル性と、
モダンなポップセンスを合わせたサウンドを描く。無名ながら、参加したヴォーカリストたちの表現力も見事だ。
ドラムやエレキギターなどは入らないのでロック的な質感は薄いのだが、ストリングスやフルート、クラリネット、オーボエ、
トロンボーン、ピアノといった、室内楽的な優雅さに包まれた聴き心地で、むしろチェンバー的なポストプログレとしても楽しめる。
クラシカル度・・8 プログレ度・・7 優雅度・・8 総合・・8
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WILLOWGLASS 「Book of Hours」
イギリスのシンフォニックロック、ウィローグラスの2008年作
マルチプレイヤーのアンドリュー・マーシャルとドラマーによる二人組ユニットで、
1作目はいくぶんマイナー臭さのある牧歌的なシンフォであったが、本作はのっけからムーグにメロトロンを含む
きらびやかなシンセの重ねにメロウなギターを乗せた、優雅なシンフォニックロック・サウンドが広がってゆく。
10分を超える大曲も、メロディのフックとプログレらしさに包まれたシンセワークで、にんまりしながら楽しめる。
アコースティックギターやフォーキーなリコーダーなど、英国らしい牧歌的な味わいの繊細な叙情も含んだ、
耳心地の良いインストシンフォ作品。ドン・キホーテをイメージさせるジャケも、微笑ましくてよいですね。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・8 叙情度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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POSTO BLOCCO 19 「Motivi Di Sempre」
イタリアのプログレバンド、ポスト・ブロッコ19の2014年作
結成は70年代というバンドで、本作は30年ぶりに復活しての初のアルバムとなる。
オルガンやムーグを含んだきらびやかなシンセークに、ブルージーな哀愁を感じさせるギター、
イタリア語の歌声を乗せた、70年代を思わせる古き良き感触のイタリアンプログレを聴かせる。
女性ヴォーカルにフルートも鳴り響く、やわらかな叙情性のシンフォニックロックナンバーなど、
イタリアらしい繊細な美しさも魅力的で、元ACQUA FRAGILE、MANGALA VALISのベルナルド・ランゼッティを
ヴォーカルに迎えてのボーナストラックも聴きどころ。全35分というのがやや物足りないが、なかなかの好作です。
ドラマティック度・・8 古き良き度・・9 イタリア度・・9 総合・・7.5
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LAZULI 「En Avant Doute」
フランスのポストプログレ、ラズリの2006年作
やわらかなフランス語の歌声に、モダンなシンセやストリングスによるアレンジを乗せて、
薄暗い叙情を描く、ポーキュパイン系サウンドのフランス版という雰囲気という聴き心地。
メロディックロックとしてのキャッチーなノリも含みつつ、ポップとまではいかないという絶妙さと
フランス語のヴォーカルが優雅な味わいになっていて、新しさはないのにどこか新鮮な感じの作風である。
ベースに聴こえるのはレオーデという独自の楽器で、ウォーギターを使用していたりと個性的な編成も面白い。
精細な叙情と適度にハードなダイナミズムを同居させた、モダン系ポストプログレの好作品。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 叙情度・・8 総合・・7.5
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ANGE 「Le Tour de La Question」
フレンチプログレを代表するバンド、アンジュのライブ作品。
2005年作「?」ツアーでのライブステージを収録したCD+DVD。トリスタン・デカンをシンセに迎えての6人編成で、
ややハード寄りのギターに美しいシンセアレンジ、そしてクリスチャン・デカンのフランス語の歌声を乗せた、
濃密なシンフォニックロックが繰り広げられる。シアトリカルな語りを含む、クリスチャン・デカンの歌声は
衰え知らずの存在感で、これぞアンジュという世界観を描き出す。息子のトリスタンのシンセワークも美しく、
女性コーラスも加わった優雅な空気感と、ここぞと盛り上げる泣きのギターとともに、緩急のある楽曲展開で聴かせる。
ドラマティックな演劇性をシンフォニックロックに融合した、ベテランバンドらしい説得力あるサウンドはさすがで、
過去のナンバーも厚みのある演奏で生き生きと蘇る。DVDのステージ映像では、シンセやギターも弾きながら歌う
デカン御大の堂々たるお姿や、妖艶な女性コーラスも含めたシアトリカルなステージが楽しめる。ファン必携のライブ作品です。
シンフォニック度・・8 ライブ演奏・・8 フレンチ度・・10 総合・・・8.5 過去作のレビューはこちら
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12/30
来年もプログレでよろしく!(364)


KANSAS 「Leftoverture Live & Beyond 」
アメリカのプログレバンド、カンサスのライブ作品。2017年作
本作は1976年の傑作「永遠の序曲」から、40周年を記念してのアメリカツアーのライブステージを2CDに収録。
2014年に脱退したスティーヴ・ウォルシュは不参加だが、ギターのリチャード・ウィリアムス、ヴァイオリンのデヴィッド・ラグスデールは健在、
のっけから、「SOMEWHERE TO ELSEWHERE」の名曲“Icarus II”で、ヴァイオリン鳴り響くカンサス節というべき叙情が炸裂。
フィル・ハートの衰え知らずのドラムとともに、適度なハードさを残した厚みのあるサウンドは、さすがベテランの説得力だ。
新加入のロニー・プラットの歌声は、スティーヴよりもやや落ち着いた感じの声質で、どっしりとしたアンサンブルによく合っている。
“Point Of Know Return”、“Lamplight Syimphony”といった往年の名曲も嬉しいが、Disc2はお待ちかね「永遠の序曲」の完全再現で、
名曲中の名曲“The Wall”をはじめ、曲順通りにアルバムが再現される様は感動的だ。新旧のカンサスファンはチェックです。
ライブ演奏・・8 完全再現度・・8 往年のカンサス度・・9 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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Kaipa 「Children of the Sounds」
スウェーデンのプログレバンド、カイパの2017年作
ハンス・ルンディンを中心に復活した2002年からすでに15年、再結成カイパとしては本作で8作目となる。
今作もドラムにモルガン・オーギュレン(MATS/MORGAN)、ベースにヨナス・レインゴールド(THE FLOWER KINGS)が参加、
美麗なシンセワークに、女性ヴォーカルの歌声を乗せて優美に幕を開け、男性声にメロウなギターの旋律が加わって、
壮麗にして繊細な叙情美を描き出す。オルガンを含むやわらかなシンセアレンジに、ゲストによるヴァイオリン、
男女ヴォーカルの掛け合いとともに、物語的でもある幻想的な雰囲気に包まれていて、一方ではメリハリに富んだ楽曲は
いつも以上に弾きまくるペル・ニルソン(SCAR SYMMMMETRY)のテクニカルギターを乗せ、スタイリッシュな優雅さも感じさせる。
どちらかというとフラキン寄りの音で、綺麗に作られ過ぎている感じもなくもないが、10分前後の大曲を中心にした高品質な力作です。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・8 優雅度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Wobbler 「From Silence to Somewhere 」
ノルウェーのプログレバンド、ウォブラーの2017年作
2005年にデビュー、確信犯的なヴィンテージサウンドで、一躍北欧プログレ期待の新鋭となったこのバンド。
4作目となる本作は、のっけから21分におよぶ大曲で幕を開ける。オルガン、ミニムーグ、メロトロンを含むシンセに、
70年代ルーツのギターサウンドを乗せ、アナログ感たっぷりのアンサンブルで、軽妙なインストパートを描く。
アコースティックギターやフルートなどを含む叙情性に、緩急のある展開力と北欧らしい土着的な空気感は、
ANGLAGARDなどにも通じる、やわらかな神秘性に包まれていて、マイルドなヴォーカルを乗せた繊細さは、
フォーク的でもある涼やかな聴き心地。ANEKDOTENばりに鳴り響くメロトロンパートもじつに魅力的である。
ピアノによる2分の小曲を挟んで、10分、13分という大曲の全4曲46分。北欧プログレ好きはマストでしよう。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 ヴィンテージ度・・9 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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AGUSA
スウェーデンのサイケプログレ、アグサの2017年作
かつてのKEBNEKAJSEを思わせる、土着的なサイケプログレで過去2作もじつによかったが、
3作目となる本作も、妖しいフルートの音色にオルガンが響き、土着的なギターの旋律を乗せた、
にんまりするほどに北欧らしい空気感に包まれた、トラッド・サイケプログレを聴かせる。
10分前後の大曲を中心に、オールインストであるが、フルートやオルガンの奏でるメロディは、
とても叙情的な味わいで、北欧プログレ好きならば飽くことなくゆったりと鑑賞できるだろう。
オルガン鳴り響くオールドなロック感触も含めて、70年代のSilenceレーベル発掘音源と言われても
信じてしまいそう。ケブネカイゼの後継者として今後ともこのヴィンテージすぎるサウンドを追及して欲しい。
ドラマティック度・・7 ヴィンテージ度・・9 北欧度・10 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Michael Stolt 「En Hedonist Utan Skam」
スウェーデンのミュージシャン、マイケル・ストルトの2016年作
ご存知、ロイネ・ストルトの弟であり、Kaipa Da Capoのヴォーカル&ギター。「破廉恥な快楽主義者」とと題された本作は、
そのロイネ・ストルトをはじめ、トマス・ボディーン、マーカス・リリークィストら、The Flower Kings関連のメンバーがゲスト参加、
渋みのあるアダルトな歌声で聴かせる、3~4分前後のシンプルな歌ものが中心であるが、美しいシンセによるアレンジに
ロイネによる泣きのギターが加わると、初期のフラキンを思わせる感触にもなる。2曲目以降は、キャッチーな雰囲気も含んだ
大人の叙情ロックという聴き心地で、プログレ的な要素は薄めだが、母国語による味わいのあるヴォーカルを乗せた、
メロウなサウンドが楽しめる。北欧らしい翳りと哀愁の空気感は、さすがへてきたキャリアを物語るような深みがあります。
メロディック度・・8 プロクレ度・・6 叙情度・・8 総合・・7.5
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GLASS HAMMER 「Valkyrie」
アメリカのプログレバンド、グラス・ハマーの2016年作
1993年にデビュー、いまやアメリカを代表するシンフォニックロックバンド。本作は16作目で、
やわらかなシンセワークに、マイルドなヴォーカルを乗せたYesを思わせるキャッチーな感触で
女性ヴォーカルを加えた優美なサウンドを描く。オルガンやムーグなど、古き良き王道のプログレを
軽妙なアンサンブルと起伏のある構築美で仕立て上げた、「GH節」というべき作風は円熟の域。
スリリングな展開力のインストパートとやわらかな女性声が合わさった、14分の大曲もさすがの出来。
もはや新鮮味は希薄だが、「これがグラスハーマーです」とも言える、安心安定の高品質作品です。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 安心度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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AN ENDLESS SPORADIC「Magic Machine」
アメリカのプログレバンド、アン・エンドレス・スポラディックの2016年作
マルチプレイヤー、ザック・カミンズを中心に、ベースにはTHE FLOWER KINGSのヨナス・レインゴールドが参加、
Djent的でもあるモダンなテクニカル性と、オルガンなどのシンセを含んだ往年のプログレ感触が融合したサウンド。
メロディックなギターフレーズに適度なヘヴィさを含んだProgMetal風味も覗かせ、ストリングスによる優雅なアレンジなど、
様々な要素をセンスよくまぶし、軽妙に仕上げたという聴き心地。オールインストであるが、起伏に富んだ展開力と
先の読めないスリリングな空気感も含めて、最後まで飽きさせない。とぼけた味わいの洒落っ気を巧みに盛り込みながら、
シンフォニック美しさも失っていない。まさにハイブリッドなモダンプログレである。ロイネ・ストルト、ジョーダン・ルーデスがゲスト参加。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 優雅で軽妙度・・9 総合・・8
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The Neal Morse Band 「ALIVE AGAIN」
アメリカのプログレアーティスト、ニール・モーズのライブ。2016年作
ソロ名義での活動を、新たにバンド名義へと発展させ、2015年には「The Grand Experiment」を発表、
本作は2015年のツアーからオランダ公演のステージを2CD+DVDに収録。マイク・ポートノイ、ランディー・ジョージの盟友二人に、
2012年からオーディションで加わった、シンセのビル・ヒューバウアー、ギターのエリック・ジレットを含めた5人編成で、
同作からのナンバーを中心に、メロディックかつダイナミックな楽曲を展開。全員がコーラスをとるハーモニーの美しさに、
アンサンブル的にもますます強固になったケミストリーで、表情豊かなサウンドを描いてゆく。ポートノイのキレのあるドラムは言わずもがな、
エリックのギターはクールでときに叙情的、渋みを増したニールの歌声を乗せて、緩急ある展開の中でドラマティックな高揚感が何度も訪れる。
中盤ではアコースティックナンバーも挟みつつ、タイトル組曲では全員が楽器持ち替えての妙技も見せつけ、
凄腕のメンバーたちの演奏が合計140分強にわたってたっぷり堪能できる。ニールモー好きは当然必見。
プログレ度・・8 ライブ演奏・・9 ライブ映像・・8 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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THE PROG WORLD ORCHESTRA「A Proggy Christmas」
ニール・モーズを中心にしたクリスマス・プログレユニット、プログ・ワールド・オーケストラの2012年作
スティーヴ・ハケットをはじめ、ロイネ・ストルト、マイク・ポートノイ、ピート・トレワヴァスのTRANSATLANTIC組や、
スティーブ・モーズ、さらにはTHE NEAL MORSE BANDのランディ・ジョージ、ビル・ヒューバウアーらが参加、
「もろびとこぞりて」「きよしこの夜」といったたクリスマスキャロルや、THE EDGAR WINTERGROUP、CARPENTERSなどのクリスマスソングを
プログレにアレンジした作品で、手数の多いポートノイのドラムに美麗なシンセワークを乗せ、テクニカルなギターフレーズも乱舞する、
そのクオリティの高さはさすがで、ニールのヴォーカルが入ると、ほぼ彼のソロ作に入っていてもよいほどの聴き心地である。
随所になじみのあるクリスマスのメロディが微笑ましいが、アレンジセンスのせいで、ほぼシンフォプログレとして鑑賞可能です。
メロディック度・・8 ニールモー度・・9 クリスマスプログレ度・・9 総合・・8
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CAST 「Power and Outcome」
メキシコのプログレバンド、キャストの2017年作
80年代から活躍するベテランで、近年は出すアルバムがすべて世界最高レベルの大傑作というこのバンド、
本作はおそらく16作目くらいか。ヴァイオリンが鳴り響き、美しいシンセアレンジにメロディックなギターと
スペイン語の歌声を乗せて、適度にハードなモダンさも含んだ、優雅なシンフォニックロックを描き出す。
クラシカルなピアノの旋律に、ヴァイオリンと泣きのギターメロがかぶさった哀愁の叙情に、優美で洗練された空気感は、
スペインのKOTEBELあたりにも通じるかもしれない。手数の多いドラムとともに、プログレらしい起伏のある展開力で、
ハードシンフォニックとしての濃密さも随所に現れる。繊細な美意識と細やかなアレンジが楽曲の質を恐ろしく高めていて、
この美しさとスケール感に対抗できるのは、ロシアのLittle Tragediesくらいだろうか。まさに美麗なる大傑作だ。
シンフォニック度・・9 プログレ度・・8 優美度・・9 総合・・9 過去作のレビューはこちら
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SONUS UMBRA 「Beyond the Panopticon」
メキシコのプログレバンド、ソナス・ウンブラの2016年作
2000年にデビュー、前作はProgMetal風味のハードシンフォの力作だったが、5作目となる本作は
変拍子を盛り込んだテクニカルなアンサンブルと、フルートなどによる優雅な叙情性を盛り込んだ、
軽妙な味わいのサウンドを聴かせる。マイルドな男性ヴォーカルに美しい女性ヴォーカルも絡んで、
優美でラテン的なやわらかな繊細さを強めた感触で、随所に適度にハードな部分も残しつつ、
純粋にシンフォニックロックのファンに楽しめる作風になった。フルートやピアノのやわらかな音色と、
アコースティックなギターを含んだ叙情は、ときにPFMなどイタリアンロック寄りの雰囲気もある。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 優雅な叙情度・・8 総合・・8
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Bad Dreams 「Apocalypse Of The Mercy」
アルゼンチのプログレバンド、バッド・ドリームスの2015年作
シンセを含む5人編成で、シンフォニックなアレンジと英語によるマイルドなヴォーカルを乗せ、
叙情豊かなサウンドを描き出す。のっけから13分という大曲であるが、流麗な展開力とセンスで、
若手とは思えない自然体の優雅さに包まれた作風だ。ムーグシンセやオルガン、メロトロンなど
きらびやかなシンセとともに、往年のプログレらしさを残しつつ、キャッチーなメロディアス性と、
モダンな構築力を融合させていて、南米的なマイナー臭さというのはほとんど感じさせない。
随所にメロウなギターフレーズも含ませて、あくまで優美な叙情に包まれた聴き心地で、
高品質なシンフォニックロックがじっくりと楽しめる。南米期待の新鋭バンドである。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 叙情度・・8 総合・・8
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AISLES「4:45 AM」
チリのプログレバンド、アイスルズの2016年作
2005年にデビュー、本作は7年ぶりの3作目。ジャズ、フュージョン的な感触もある軽やかなアンサンブルで聴かせる、
優雅なシンフォニックロックは本作でも健在で、マイルドなヴォーカルを乗せたやわらかなサウンドが楽しめる。
巧みな演奏力とともにメロウなギターフレーズのセンスも抜群で、キャリアのあるバンドらしいアダルトな余裕も感じさせ、
南米のバンドにありがちなマイナー臭さはまったくなく、メロディのフックはキャッチーで湿り気を帯びた優しさがある。
4~5分前後を中心に、8分、10分という大曲も、濃密すぎない優美な聴き心地で、しっとりと叙情豊かに構築する。
全体的に派手さはないものの、大人のシンフォニックロックという趣で、耳心地のよい好作品です。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 優雅度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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BANANA 「ETAPA SINFONICA 79 - 80」
アルゼンチンのメロディックロック、バナナのアンソロジー。2016年作
南米シンフォの傑作として知られる、1979年作「AUN ES TIEMPO DE SONAR(影法師)」全曲と、
初のCD音源化となる、1980年作「LICUADO」の楽曲を合わせて11曲、67分を収録。
オルガンを含むやわらかなシンセに、メロディックなギターとスペイン語のヴォーカルを乗せ、
リリカルで繊細な叙情美に包まれたシンフォニックロックが味わえる。とくにギターの泣きのフレーズは、KAIPAばりの美しさで、
10分前後の大曲を構築する確かな演奏力も含めて、当時のアルゼンチンのバンドでは、PABLOと並ぶクオリティの高さ。
初出となる1980年作も、負けず劣らずの出来で必聴級。まさに隠れた傑作というべき内容です。
メロディック度・・9 プログレ度・・7 叙情度・・9 総合・・8.5
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12/23
プログレでメリークリスマス☆(350)


Konstantin Jambazov 「Talking to Myself」
ブルガリアのミュージシャン、コンスタンティン・ジャンバゾフの2017年作
TOTALVirtulなどにも参加する、ブルガリアきってのマルチミュージシャンのソロ作品。
本作は、YESQUEENのようなキャッチーなメロディアス性と、GENTLE GIANTのようなテクニカルなリズムチェンジに、
とぼけた味わいの知的な展開力で聴かせる、これまで以上にプログレ、シンフォニックロック色を強めたサウンドだ。
ギター、ベース、シンセ、さらにはヴォーカルもこなし、すべてのパートで技巧性と表現力を兼ねそろえた、
彼の非凡な音楽センスが結集されたというべき聴き心地で、ときに唐突ともいえるスリリングな展開力を
優雅なメロディアス性で昇華。適度にハードなパートも織り込みつつ、マイルドなヴォーカルを乗せた
あくまでキャッチーな感触が前に出ている点でも、今作はより多くのリスナーにアピールするだろう。
A.C.Tあたりを好むリスナーにも勧められる、会心のプログレッシブ・ハード作品に仕上がっている。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 優雅度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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PFM 「Live Collection - 25 November 1980」
イタリアのプログレバンド、プレミアータ・フォルネリア・マルコーニのライブ作品。2015年作
「SUONARE SUONARE」リリース後、1980年にテレビ放送用に収録されたスタジオライヴ音源のCDと、同DVDの2枚組。
ポップロックへの過渡期とされる時期なので、プログレファンからはさほど評価されない時代の音源ではあるが、
新加入のルキオ・ファブリのシンセ&ヴァイオリンにツインドラムの編成で、“LA LUNA NUOVA”や“IL BANCHETTO”、
“CELEBRATION”といった初期のナンバーも演奏。往年のような圧倒的な鋭さはないが、ドラムにヴォーカルに、
大忙しのフランツ・ディ・チョチョのはっちゃけっぷりもなかなか楽しく、テクニックのあるイタリアンロックという趣で、
キャッチーなポップさをたたえた、おおらかな空気感で楽しめる。音質はややもったりとしているがまずまず良好。
全7曲53分と、ライブとしてはやや物足りない長さであるが、ブートレグでしか見られなかった貴重な映像が
正規にDVDされたというだけでも、ファンには一見の価値ありだろう。80年代のイタリアの時代性がよく伝わってくる。
ライブ演奏・・8 ライブ映像・・8 貴重度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Le Orme 「Felona E/and Sorona 2016」
イタリアのプログレバンド、レ・オルメの2016年作
代表作として知られる1973年作「フェローナとソローナの伝説」をイタリア語と英語でリレコーディングした2CD。
オルガンを含むキーボードが美しい鳴り響き、優雅で幻想的なシンフォニックロックが広がってゆく。
オリジナルのメンバーはドラムだけであるが、キーボードトリオの編成で、クラシカルなピアノに
たたみかけるムーグシンセ、オールドなプログレ感触も残しつつ、アンサンブル的に演奏力も上がり、
音質も向上したことで、むしろ聴きやすくなったとも言える。かつてのような薄暗い空気感はいくぶん薄らいではるが、
オルメらしさはしっかり残している。なにより、40数年をへて過去のアルバムを再現できるバンドの熱意は素晴らしい。
ドラマティック度・・8 リメイク度・・8 イタリア度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Metamorfosi 「Purgatorio」
イタリアのプログレバンド、メタモルフォシの2016年作
1974年作「INFERNO」、2004年作「PARADISO」に続く、ダンテの「神曲」をテーマにした3部作の完結編で、
イタリア語の語りによる導入から、オルガンにムーグシンセが鳴り響き、ジェントルなヴォーカルを乗せたサウンドは、
往年のイタリアンロックの濃密さと、クラシカルな大仰さをしっかり残していて、その世界観に引き込まれる。
イタリア語特有の、まるでオペラのような伸びやかな歌声も素晴らしく、キーボードを中心にしてたたみかける荒々しさと
クラシカルな優雅さを同居させたメリハリのある展開力も健在だ。小曲をはさみながら、コンセプト的な流れに沿って展開する、
まさにイタリアン・シンフォプログレの力作だ。40年もの年月をかけて、三部作を完結させたバンドの底力には敬意を表したい。
ドラマティック度・・9 プログレ度・・8 イタリア度・・9 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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Profusion 「Phersu」
イタリアのプログレメタル、プロフュージョンの2015年作
本作はタイトルなどから古代イタリアのエトルリア人をテーマにした作品のようだが、サウンドの方は
ハード寄りのギターときらびやかなシンセをテクニカルなアンサンブルに乗せた、モダンでキャッチーな作風。
前作よりもヘヴィな部分をスタイリッシュにを強めた感触で、HAKENFROST*あたりにも通じるような、
優雅な構築センスが光る。一方では、エモーショナルなヴォーカルと美しいシンセによる叙情性は、
イタリアのバンドらしい繊細さを感じさせ、メリハリのあるドラマ性とスケール感を描くのも素晴らしい。
プログレ的な展開美とやわらかなメロディを同居させ、モダンなセンスで仕上げたという傑作です。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 構築度・・9 総合・・8.5
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Lazuli 「Nos Ames Saoules」
フランスのプログレバンド、ラズリの2016年作
90年代から活動するバンドで、本作は6作目となる。繊細なモダンプログレという趣だった前作に続き、
ピアノを含むシンセにフランス語によるやわらかなヴォーカルを乗せた、優雅なポストプログレ・サウンドを聴かせる。
ベースレスであるが、独自の弦楽器レオーデ奏者によるシンセベース的な音色も含んだ浮遊感に包まれた感触で、
美しいシンセに二本のギターも加わった厚みのあるサウンドは、モダンなシンフォニックロックとしても楽しめる。
楽曲は4~5分前後と、わりとシンプルで濃密になりすぎないところも、スタイリッシュな感覚だろう。翳りのある重厚さと、
涼やかな叙情性、クリアな音質なども、既存のスタイルにとらわれない新たなプログレの音を示している。
ドラマティック度・・8 モダンプログレ度・・8 フレンチ度・・8 総合・・8
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TRICANTROPUS 「El sueno de Arsinoe」
スペインのプログレバンド、トリカントロプスの2011年作
うっすらとしたシンセアレンジにメロウなギターを乗せた、ラテン系らしい柔らかみのある繊細なサウンド
基本的にインスト主体で、優雅なアンサンブル志向はCAMELあたりにも通じる雰囲気もあって、
オルガンをバックにギターの泣きのフレージングが耳に優しい。派手な展開やインパクトというのはないものの、
女性ヴォーカルを乗せた優美なナンバーなども含め、ゆったりとした叙情で楽しめる作風だ。
11分を超える大曲なども、適度なプログレらしさを含ませつつ、あくまで優雅で力み過ぎない。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 叙情度・・8 総合・・7.5
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Neal Morse 「Momentum Live」
アメリカのプログレアーティスト、ニール・モーズのライブ。2013年作
2012年のニューヨーク公演のステージを、3CD+2DVDに合計175分収録。2012年作「Momentum」からのナンバーを中心に、
2003年作「TESTIMONY」、2005年作「?」、2007年作「Sola Scriptura」からの抜粋組曲などを演奏。
ときにトリプルシンセにもトリプルギターにもなるという6人編成で、手数の多いマイク・ポートノイのキレキレのドラムに、
厚みのあるツインギターにオルガンの音色が重なり、ニール・モーズの歌声を乗せた、テクニカルかつキャッチーなプレイが繰り広げられる。
全員がコーラスをとるハーモニーの美しさや、ときにシンセからヴォーカル、ギターにも持ち替えるニールの姿も楽しげだ。
オーディションで加わった3人のメンバー…Adson Sodreの技巧的なギターワークはサウンドにハードなエッジをもたらし、
シンセ&ギターをクールに使い分ける、Eric Gillette、オルガンやムーグを含めたシンセにヴァイオリン、サックスもこなす、Bill Hubauerと、
それぞれがマルチな能力を発揮。全体的には、なにせ大曲が多いので、さすがに途中で聴き疲れしてくるのだが、
卓越したミュージシャンたちの作り出すグルーブと表現豊かな演奏が楽しめる。ニールモーファンは必携です。
ライブ演奏・・9 ライブ映像・・8 お腹いっぱい度・・9 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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Edensong 「Years in the Garden of Years」
アメリカのプログレバンド、エデンソングの2016年作
2010年作以来となる3作目で、オルガン、メロトロン、フルートが鳴り響き、薄暗い叙情性とともに、
ヴィンテージなハードプログレサウンドを聴かせる。56分におよぶ8パートに分かれた組曲は、
Riversideなどにも通じる適度なハードさを含んだメリハリのあるインストパートで構築され、
美しいストリングスや、やわらかなヴォーカルパートも加わって、物語的なドラマ性を描いてゆく。
ムーグシンセが鳴り響き、フルートが絡みつつ、テクニカルな展開力とモダンな知的センスも合わさり、
プログレリスナーの望む「プログレらしさ」が存分に詰まった聴き応えで、全71分の傑作です。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 薄暗度・・8 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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EYE 「VISION AND AGELESS LIGHT」
アメリカのプログレバンド、アイの2016年作
2012年にデビュー、本作はすでに3作目となる。女性鍵盤奏者を含む4人編成で、
ノイズまじりのメロトロンが妖しく鳴り響き、アナログ感たっぷりのドラムサウンドとともに、
スペイシーでサイケな浮遊感を描き出す。HAWKWINDにも通じるオールドなサイケロックを、
メロトロンにオルガン、ムーグなどで、シンフォ寄りに味付けしたという聴き心地もあって、アッパーなノリの中に
神秘的な空気感をまとわせているのも特徴的だ。70年代的なブルージーなギターに優雅なエレピなども重なり、
英国ロックルーツの雰囲気が散りばめられている。後半は27分の大曲で、メロトロンをたっぷり響かせながら、
ギターもメロディックなフレーズを奏で、ANGLAGARDばりの展開で、ストーナーロック的な感触を同居させる。
ドラマティック度・・7 アナログ度・・9 妖しげ度・・9 総合・・8
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Huis「Neither in Heaven」
カナダのプログレバンド、ヒュイスの2016年作
Mysteryのギタリストを含む5人編成で、本作はコンセプト的な雰囲気を感じさせるイントロから始まり、
適度にハードなギターと美麗なシンセアレンジとともに、やわらかなシンフォニックロックが広がってゆく。
マイルドなヴォーカルを乗せたキャッチーな感触と、大人の哀愁をかもしだす叙情性が合わさり、
とても耳心地の良いサウンドを描いている。一方では、いくぶん翳りのあるウェットな空気感もあって、
美しいシンセにメロウなギターフレーズを乗せた、しっとりとした泣きの叙情にはうっとりとなる。
13分、11分という大曲を織り込みつつ、ドラマ性を感じさせる流れで構築されるハードシンフォの力作です。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 叙情度・・8 総合・・8
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XNA 「WHEN WE CHANGED」
アメリカのプログレバンド、XNAの2013年作
YESのビリー・シャーウッドがプロデュース&ベースで参加するバンドで、美麗なシンセによるイントロから、
ドラマティックなコンセプト風味を感じさせるスケール感に包まれている。メロディックなギターにきらびやかなシンセ、
伸びやかなヴォーカルが加わった厚みのあるサウンドは、YESをハードにシンフォニックロック化したような感触で、
叙情的な泣きのギターフレーズは日本人好みのクサメロ感をかもしだす。ビリー・シャーウッドのベースの存在感もさすがで、
シアトリカルなヴォーカルは、ときにGENESISのP.ガブリエルを思わせる。アコースティックパートも含んだ展開美と、
繊細な叙情を描く王道のシンフォプログレの空気感で、15分を超える大曲もじっくりと構築してゆくだけの力量がある。
古き好きプログレの空気感を残しつつ壮麗なサウンドを描く、泣きのシンフォ好きにとっては掘り出し物的な力作です。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 叙情度・・9 総合・・8
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12/9
真冬の寒さです(338)


Steve Hackett 「The Total Experience Live in Liverpool」
イギリスのギタリスト、スティーヴ・ハケットのライブ作品。2016年作
2012~13年の「Genesis Revisited」のツアーをへて、本作は2015年、リバプールでの公演を2CD+2DVDに収録。
シンセにロジャー・キング、ドラムのゲイリー・オトゥール、サックス&シンセのロブ・タウンゼンドというこれまでのツアーメンバーに加え、
ベースにはなんとThe Flower Kingsのロイネ・ストルトが参加しての編成。「Voyage of the Acolyte」、「Spectral Mournings」など、
初期のソロ作から、最新作「Wolflight」のナンバーまで、ハケットの歴史を俯瞰するようなセットリストで、美しいシンセアレンジに
メロウなギターが響き渡る、優美なサウンドにうっとりと聴き入れる。ハケット先生の繊細なギタートーンはもちろん衰え知らず、
自身のマイルドなヴォーカルも味わいがあり、ゲストのアマンダ・レーマンが加わっての男女ヴォーカルの掛け合いも楽しげだ。
弟であるジョン・ハケットがフルートで加わった優美なアコースティックナンバーや、ハケット&ロイネの夢のツインギターが楽しめる“After the Ordel”、
そしてナッド・シルヴァンをヴォーカルに迎え、“The Cinema Show”、“The Musical Box”、“Firth of Fifth”といったGENESISの代表ナンバーも演奏。
それにしても、サックス、クラリネット、フルート、シンセ、ベースペダルと、八面六臂のロブ・タウンゼントがなにげに凄いという。
DVDのカメラワークも抜群で、飄々としたロイネと泰然としたハケット御大の対比も面白い。至福の2時間半が味わえる。当然のようにファンはマストです!
ライブ演奏・・9 ライブ映像・・9 ハケット&ロイネ度・・10 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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BRUCE SOORD
イギリスのポストプログレ、THE PINEAPPLE THIEFのリーダーのソロプロジェクト。2015年作
繊細なピアノのつまびきに、マイルドなヴォーカルを乗せた、Nosoundあたりに通じるアンビエントなサウンド。
アコースティックギターにドラムも加わった、適度なロック感触と、プログレ寄りのシンセアレンジは、
やはり、パイナップル・シーフを率いるミュージシャンらしい知的で豊かなセンスを感じさせる。
曲によっては、Marillionあたりを思わせるメロウな翳りを含んだ叙情ロックや、サックスなどのブラスを加えて、
ポストロック的なスケール感を描くナンバーもあったりと、3~5分前後の楽曲にそれぞれテーマを感じさせる世界観もさすが。
泣きのギターにシンセを絡めた優しい叙情性にもうっとり。繊細系ポストプログレを好む方は一聴の価値ありです。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 繊細度・・8 総合・・7.5
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Luar Na Lubre 「Mar Major」
スペインのケルティックバンド、ルアル・ナ・ルブレの2012年作
90年代から活動するキャリアのあるバンドで、バグパイプにヴァイオリン、ホイッスルの音色に
女性ヴォーカルの母国語の歌声を乗せ、ジャケのイメージ通り、ケルトの大地を思わせる雄大なサウンドを描いてゆく。
シンセアレンジも加えたシンフォニックな感触は、プログレリスナーも楽しめるケルティックロックとして鑑賞可能。
本作では中世音楽の素朴な優雅さを取り入れた雰囲気もあって、祝祭的な空気に包まれた9分の大曲をはじめ、
キャッチーなノリの良さと、湿り気を含んだ叙情が同居した、メリハリに富んだ聴き心地が楽しめる。
本格派ケルティック作品としても、ドラマティックなコンセプト性を感じさせる、全64分の力作だ。
シンフォニック度・・8 ケルティック度・9 女性Vo度・・8 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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Maria Del Mar Bonet 「Bellver」
スペインの女性歌手、マリア・デル・マール・ボネットの2010年作
カタルーニャ出身、70年代から活動する、いまやスパニッシュ・トラッドを代表する女性シンガー。
本作は2009年にスペインのパルマ市、ベルヴェル城にて行われた「バレアス交響楽団」と共演したライブ作品で、
優雅なオーケストラの演奏をバックに、伸びやかな彼女の歌声が響き渡る、壮麗にして優美なサウンドが楽しめる。
キャリアのある歌い手のみがかもしだせる円熟の表現力で、優しく、ときに力強く歌い上げるさまは、
マヨルカの歴史的な空気感をともなった壮大なときの流れを感じさせ、じつに感動的である。
全体的にみ、クラシック、オペラティック寄りの雰囲気で、トラッド系が苦手な方でも味わえる内容である。
優雅度・・9 壮麗度・・8 女性Vo度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Mercedes Peon「SOS」
スペインの女性トラッドミュージシャン、メルセデス・ペオンの2010年作
ガリシア出身のシンガーで、パンデイレータ(タンバリン)やガイタ(ガリシアン・パイプ)の名手でもあるミュージシャン。
本作はブックレットの内容からして、日本をはじめ世界各国をテーマにした内容らしく、どことなく和風のメロディに、
お経じみた歌を乗せたり、エレクトロなシンセアレンジを含むモダンなテイストと、不思議な土着性が融合した、
先鋭的なトラッドミュージックを聴かせる。アラビックな中近東要素や、ボサノバやスカやジャズ要素なども入り混じり、
クラリネット、アーディオンとなども加わった、チェンバーロック的なアヴァンギャルド性も垣間見せる。
エキセントリックなセンスに包まれた異色のエレクトロ・トラッド作品であり、アヴァンロック的にも味わえる傑作。
先鋭トラッ度・・8 アヴァンギャル度・・9 女性Vo度・・8 総合・・8
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Mara Aranda & Solatge「Deria」
スペインの女性シンガー、マラ・アランダを擁するユニット。2009年作
L'Ham de Focの女性ヴォーカリストで、バックにもラム・デ・フォクのメンバーが参加した本作は、
やわらかなハープのつまびきに、ブズーキ、ドルサイーナといった古楽器の素朴な音色に
母国語による伸びやかなヴォーカルを乗せた、本格派のトラッドサウンドを聴かせる。
バルカン風味の神秘性を感じさせたラム・デ・フォクに比べると、よりスパニッシュトラッドの深みを探求するような
土着的な雰囲気で、アコースティック楽器を主体としながら、繊細かつ躍動的なアンサンブルを描いている。
表現豊かなマラ嬢の歌声は、中世から連なるような幻想的な世界観を包み込むような空気感をかもしだし、
シリアスなトラッドからバラッド調のやわらかなナンバーまで、説得力に満ちたサウンドの強度が素晴らしい。
アコースティック度・・9 トラッ度・・9 女性Vo度・・9 総合・・8
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Lot Lorien 「Eastern Wind」
ブルガリアのフォークロック、ロット・ローリエンの2009年作
アコースティックギターに艶やかなヴァイオリンの音色が絡み、美しい女性ヴォーカルの歌声を乗せた、
繊細で叙情的なサウンドを描く。ドラムの入った適度なロック感触と、ケルティックな牧歌性が合わさって、
スペインのLuar Na Lubreあたりに通じる雰囲気がある。ということは、しっかりプログレファン向けですよ。
どの曲も美しいヴァイオリンのフレーズが前に出るパートがあって、リズムチェンジを含むインストパートと
やわらかな女性声を乗せたしっとりとした叙情が、ほどよいバランスで同居している。幻想的な雰囲気はとてもいいので、
女性ヴォーカルの存在感がもっと強まれば、よりダイナミックなサウンドになるだろう。
ケルティック度・・8 ロック度・・7 女性Vo度・・7 総合・・8
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Procol Harum 「Well's on Fire」
ブリティッシュロックバンド、プロコル・ハルムの2003年作
1991年作「放蕩者達の絆」以来の12年ぶりとなるアルバムで、ピアノやオルガンの音色に
枯れた味わいのヴォーカルを乗せた、大人の哀愁を感じさせるメロディックロック。
ギターは適度にハードに、そしてメロウに、英国の70年代を通り抜けてきたバンドらしい
大衆的なぬくもりを含んだ聴き心地で、オールドなファンも納得のサウンドだろう。
楽曲そのものはシンプルで、適度にノリのよいポップ性と、渋みのあるナンバーが同居していて、
70年代を思わせる古き良き感触が楽しめる8曲目、クラシカルな10曲目あたりは嬉しいところ。
60年代から活動する大ベテランバンドの現在形を伝えるには十分な内容だろう。
ドラマティック度・・7 古き良きプロコル度・・8 大人の哀愁度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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Goblin 「Profondo Rosso」
イタリアンロックバンド、ゴブリンの1975年作
ダリオ・アルジェント監督の映画音楽を手掛けるバンドでもあり、本作は「サスペリア2」のサントラ作品。
Disc1はオリジナル音源を、Disc2には、映画本編で仕様された音源を収録した2015年デラックスバージョン。
オリジナル音源は29分と短いが、クラウディオ・シモネッティのピアノやオルガンを含むシンセワークを中心に、
クラシカルな優雅さと湿り気を帯びたダークな空気感が素晴らしい。バンドとしてはもっとも古い音源であるが、
切れの良いリズム隊とアンサンブルはさすがで、サントラではあるが、それぞれが楽曲として十分楽しめる。
Disc2の映画用音源は、1、2分前後の小曲主体なのだが、全29トラックを映画のような流れで鑑賞出来て、
よりホラーサントラとしての空気感が味わえる。ゴブリンファンなら必聴の2枚組バージョンです。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 サントラ度・・8 総合・・8 
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Bugskull & Big White Cloud
アメリカのエレクトロ系サイケロック、バグスカルの2003年作
90年代に「粉雪の恐怖・その2」、「わくわく昆虫ランド」といったユルすぎるエレクトロ・サイケ作品で、
アンダーグラウンドなマニアのみに知られていたこのバンド。バンド自体はその後消滅したようだが、
残ったメンバーの二人が共作して発表したのが本作。ふんわりとシンセにヨレ気味のギターを乗せた、
ユルめのスペースサイケに、かつてのジャーマンロック的なエレクトロ感覚が合わさった作風で、
シンセの重ねによるシリアスな空気感が、FAUSTあたりにも通じるミステリアスな気配を感じさせる。
パーカッションに詠唱的な歌声を乗せた東洋的な雰囲気の小曲など、とりとめのなさもさすが。
ロック度・・2 サイケ度・・8 アヴァンギャル度・・8 総合・・7.5
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YAHOWHA 13 「An Penetration An Aquarian Symphony」
アメリカのカルト教団、ヤホワ13の音楽作品。1973年作
1960年代カルフォルニアで誕生した宗教団体で、教祖である、ファーザー・ヨッドを中心に菜食や動物愛護、
反戦および愛と平和を説き、音楽活動も熱心に行っていたという。70年代半ばに、ファーザーの事故死によって
教団は解散状態となるが、彼らの残した音楽作品はCD化され、密かに世に出回ることとなった。
本作は10分前後の大曲を中心にした全4曲の作品で、妖しい女性スキャットに詠唱のような男性声、
いかにもサイケらしいヨレ気味のギターをフリーキーに乗せた、ユルくて神秘的なサウンドを展開。
打ちならされるパーカッションに、ノイジーなギターが絡み、ドラムも加わったアヴァンギャルドな感触から、
ラストの大曲は、東洋的なギターのリフレインに口笛が吹き鳴らされる、スピリチュアルな空気感に包まれた聴き心地。
アッパーなノリは控えめなので、一般のリスナーには向かないが、怪しすぎるカルトなサイケを体験したい方はいかが。
サイケ度・・8 ロック度・・5 ユル度・・8 総合・・7.5
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AJA 「綾音」
日本の女性シンガー、アヤの2005年作
じゃがたらのOTOがサウンドアレンジャーとして全面参加したアルバムで、
しっとりとした彼女の歌声と、エフェクトの効いたギターを乗せた浮遊感のあるサウンドで、
ポストロック的な雰囲気も感じさせる。初期の頃のエロティックでエキセントリックな世界観が、
よい感じにソフィスティケイトされていて、うっすらとした艶やかさが大人の彼女を表現している。
ポップな感触であっても、音そのものに空間的な奥行きをがあるので、ディープなファンにも楽しめる
いわば玄人好みの聴き心地で、彼女の良さを自然に引き出すモダンなアレンジセンスも見事である。
ポップ度・・8 ロック度・・7 女性Vo度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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12/2
師走のプログレ(326)


Morgan Agren 「Through The Eyes Of Morgchestra」
スウェーデンのミュージシャン、モルガンオーギュレンの2016年作
MATS/MORGAN結成35年イベントとして行われたノールランド歌劇場交響楽団との共演ライブのために書き下ろされた楽曲集。
クラシカルで優雅なアプローチと軽妙でとぼけた味わいを、巧みに融合されたチェンバーロックというサウンドで、
オーケストラパートをキーボード、ヴァイオリン、クラリネット、バスーンなどで過不足なく表現している。
モルガンのドラムは前に出すぎることなく、今作では作曲者としてのサウンドの構築を主眼に置いた感じで、
オケパートの旋律を引き立たせるアレンジは、彼の新たな才能を垣間見る思い。アヴァンギャルド性が薄めな分、
わりと初心者にも聴きやすいかもしれない。相方であるマッツ・エーベリ、サイモン・スティーンスランドも参加。
優雅度・・8 チェンバー度・・9 アヴァンギャル度・・7 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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HOMUNCULUS RES 「Come Si Diventa Cio' Che Si Era」
イタリアのプログレ・ジャズロック、ホムンクルス・レスの2015年作
前作はカンタベリー+アヴァンギャルドな力作であったが、邦題「変拍子の王国」と題されたこの2作目も、
やわらかなシンセに、サックスやフルート、クラリネットなどを加えた、カンタベリー風味の優雅なサウンドを描く。
変則リズムを多用した手技なアヴァンギャルド性と、牧歌的なヴォーカルが入ったキャッチーな感触が同居し、
メロディアスな聴きやすさの中に、ふとスリリングな展開を覗かせるという、絶妙のバランス感が心憎い。
オルガンやメロトロンのも音色も含んだシンセワークもなにげに効いていて、往年のプログレ感触を残しているのもよろしい。
1、2分前後の小曲を織り込みつつ、17分という大曲もあくまで軽やかでとぼけた味わい。肩の力を抜いて楽しめる傑作だ。
優雅度・・9 プログレ度・・8 カンタベ度・・8 総合・・8
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Scherzoo 「03」
フランスのチェンバーロック、スケルズーの2014年作
マルチ・ミュージシャンFrancois Thollotを中心にしたバンドの3作目。1作目はドラムだったフランソア・トロは、
本作のではベースとシンセを担当している。美しいエレピの音色にサックスが絡み、優雅なアンサンブルの中に、
ほのかな翳りを含んだ、玄人好みのチェンバー・ジャズロック。1作目のようなMAGMA色はやや薄れて、
アッパーなノリが控えめな分、一聴しての派手さはないのだが、ジャズ色を増したやわらかな聴き心地で、
アンサンブリーなインストを描いてゆく。曲によってはチェンバー寄りのスリリングな空気もしっかり感じられ、
ギター、ベース、サックスが対位法的な旋律で絡んでゆく、優雅な大人のチェンバーロックが味わえる。
ラストの14分の大曲もスリリングな展開力が見事。ボーナスにはF.トロの別バンド、DISSONATAの楽曲を収録。
優雅度・・8 プログレ度・・7 スリリング度・・8 総合・・8
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Manu Ribot 「CA」
フランスのミュージシャン、マニュ・リボーの2015年作
Xレッグド・サリーでも活躍したピエール・フェルヴルーセムの作品にも参加したギタリストで、
本作は、ベース、ドラム、ギターを中心にした、アヴァン・フュージョンロック的なインスト作品。
わりとポップなフレーズを奏でつつも、どこかヒネくれた偏屈さを感じさせるセンスはさすがで、
ノイジーで奔放なギターをかき鳴らし、適度なハードさも含ませつつ、あくまで軽妙な聴き心地で、
トランペットやトロンボーンも加わった、スカやフリージャズ的な雰囲気もいくぶん覗かせる。
アヴァンギャルドなチェンバー・ポップという点では、MATS/MORGANあたりにも通じる部分もあるが、
こちらはそこまで逸脱しきれておらず、楽曲ごとのインパクトという点でも少し物足りないか。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 アヴァンギャル度・・7 総合・・7.5
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GERARD MANSET 「Le Langage Oublie」
フランスのミュージシャン、ジェラール・マンセの2004年作
1971年作「La Mort D'Orion」は、クラシカルで芸術的なまでの名作として名高いが、
本作は、ロック寄りのギターにオルガンが鳴り響き、フランス語による味わい深い歌声を乗せた、
渋めのフレンチロックというサウンドを聴かせる。美しいピアノにストリングスなども加わったナンバーは、
しっとりと優雅な感触で、クラシカルな美意識という点では、NEW TROLLSあたりにも通じる感触もある
哀愁を感じさせるアコーディオンの音色や、ストリングスと女性声を含んだ薄暗い叙情のナンバーなど、
なかなか幅のあるアレンジでじっくりと楽しめる。プログレ的な要素は薄めだが、フレンチな味わいの好作品だ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・6 フランス度・・8 総合・・7.5
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MICHAEL BERNIER/RITCHIE DeCARLO
パーシー・ジョーンズ、リッチー・コッツェンともコラボしたドラマー、リッチー・デ・カルロと、
STICK MENでも活躍するスティック奏者、マイケル・ベルニエのユニット。2015年作
ギターとも思えるエフェクトのかかったスティックサウンドと低音のベースサウンドを
手数の多いダイナミックなドラムに乗せた、ジャズロック、ハードフュージョン的なサウンド。
ヴァージル・ドナーティばりのセンスで、テクニカルな変則リズムを叩き出すドラムに、
ギターばりに弾きまくるスティックワークはときにヴァイオリンのような音色にも変化する。
超絶テクニックのナンバーも圧巻で、スティックの可能性を感じさせる強力作だ。
テクニカル度・・9 プログレ度・・7 スティック度・・9 総合・・8
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ALEX MACHACEK 「[SIC]」
オーストリア出身のギタリスト、アレックス・マカチェクの2006年作
アラン・ホールズワースの再来とも評され、UKZなどにも参加したギタリストで、
本作には、テリー・ボジオをはじめとした技巧派ミュージシャンがゲスト参加としている。
なめらかで流麗なフレーズを奏でるギターを中心に、フュージョン、ジャズなどの要素を含んだ
高度でテクニカルなアンサンブルは、ボジオのドラミングも含めてもはや名人芸の域だろう。
女性ヴォーカルを加えた、優雅なジャズロック的なナンバーも、適度にアヴァンギャルドな感触に包まれた
スリリングなインストパートが際立っている。ギターに関しては単なる上手いを通り越しているので、
つい聴き流してしまう部分でも、おそらく超絶技巧。ギターとドラムの間の取り合いにしびれる一枚です。
テクニカル度・・9 プログレ度・・8 優雅度・・9 総合・・8
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ALEX MACHACEK 「Improvision」
オーストリア出身のテクニカル系ギタリスト、アレックス・マカチェクの2007年作
本作は、アメリカ人ベースのマシュー・ギャリソン、ドイツ人ドラマーのジェフ・サイプによるトリオ編成の作品で、
のっけからヘヴィなギターが、手数の多いドラムに乗り、スリリングなアンサンブルを描き出す。
存在感あるベースに絡みつくテクニカルなギターフレーズは、ときにシンセのようにも、ヴァイオリンのようにもなり、
まさしく変幻自在の表現力である。単なるフュージョンロックの枠を超えたレベルの演奏であり、
技巧のみならず楽器の表現力そのものへ挑戦するかのような、迫力と緊張感が伝わってくる。
即興的な要素も感じさせつつ、結果としてカッチリと合わさるところは、さすがテクニック集団ですな。
テクニカル度・・9 プログレ度・・8 技巧の表現度・・9 総合・・8
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Faust 「C'est Com...Com...Complique」
ジャーマンロックバンド、ファウストの2009年作
1999年作以来となるアルバムで、ややノイジーなギターリフに、ベルの音が重なり、
ドラムのリズムに乗せて単調に反復する、9分のナンバーで幕を開けるのが、いかにも「らしい」。
ドイツ語の語りのような歌声に、シンセも加わった、どっしりとしたナンバーなども、
ポストロック的でもある空間的なスケール感に包まれていて、冷たい美しさを感じさせるのも、
うっすらとしたシンセアレンジによるところが大きい。全体的には、適度なアヴァンギャルド性とともに、
ほどよいロック性がブレンドして、わりと聴きやすい作風なのだが、極端さに欠ける分物足りなさも。
ロック度・・7 アヴァンギャル度・・7 サイケ度・・7 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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Faust 「Something Dirty」
ファウストの2011年作
今作はジャケの雰囲気からしてダークだが、サウンドの方も、ノイジーなギターにシンセを乗せ、
無機質な暗がりを感じさせる、インダストリアルなナンバーで始まる。その後もポストロック的な、
静謐な空間性と不穏な空気を、サウンドスケープ的なギターとシンセの重ねで描いてゆく、
初期の作品にも通じる、音楽の定型にとどまらないアーティスティックな世界観に包まれている。
ゲストによる女性ヴォーカルを乗せた、しっとりとした倦怠的なナンバーなども魅力的で、
誤解を恐れずに言えば、ポストロック化したクリムゾンのようなサウンドに聴き惚れる。
サイケ要素が減退し、代わりにスリリングな緊張感と、冷徹な暗がりを感じさせる力作である。
ロック度・・7 アヴァンギャル度・・8 ポストロック度・・8 総合・・8
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Faust 「Just Us」
ファウストの2014年作
闇に包まれたジャケのイメージ通り、前作でのダークで不穏な路線を継承した作風で、
生々しいドラムとドゥーミィなベースに、ヘヴィでノイジーなギターを乗せ、
クリムゾンの実験性をよりアヴァンギャルドに推し進めたようなサウンドを展開。
シンセやヴァイオリンなどを、上質のノイズというか、パーツのように使いながら、
前作の作風をさらに無機質化したというべき、愛想の無さが不気味で心地よい。
一方では、サイケなユルさを前に出したナンバーや、ピアノをメインにしたチェンバー風味と、
振り幅の大きさもこのバンドらしい。静謐な暗闇を感じさせる、じつに先鋭的な作品です。
ロック度・・7 アヴァンギャル度・・9 無機質度・・8 総合・・8
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GURU GURU 「In The Guru Lounge」
ジャーマンロックバンド、グル・グルの2005年作
1970年デビュー、ジャーマンロックを代表するバンドのひとつ。アヴァンギャルドなハードロックという趣の初期から、
メンバーを替えながら、ウィットに富んだ大人のサイケロックへと進化。「導師の社交部屋」と邦題が付けられた本作は、
ぼやけた東京タワーのジャケのように、山手線のアナウンスから始まり、シンプルなベースのリフレインに、
渡辺悦子さんの艶めいた日本語の台詞と、恋人のようなマニさんのデュエットを乗せた異色のナンバー。
その後は、ほどよくサイケで民族色やジャズ色を含んだナンバーが続き、アルバム後半は組曲形式になっていて、
サックスの音色に妖しい女性スキャットが絡む、即興的なサイケ・ジャズロックというサウンドを描いてゆく。
ロック度・・7 サイケ度・・8 アヴァンギャル度・・7 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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Kayo Dot 「COYOTE」
アメリカのエクスペリメンタル・ポストロック、ケイヨ・ドットの2010年作
バンドの支援者でもある一人の重病の女性をテーマにしたという作品で、
全5曲39分という流れのあるコンセプト作品。物悲しくヴァイオリンが鳴り響き、
悲哀を感じさせるヴォーカルに、トランペット、トロンボーンなどの管楽器も加えた
チェンバーロック風味のサウンドで、重厚かつアヴァンギャルドなポストロックでもある。
激しくたたみかけるドラムと、管弦楽と悲痛な歌声が混ざった音の洪水が、
混沌とした内的な人間性をさらけ出すようだ。ダークな世界観に包まれた異色の傑作。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 アヴァンギャル度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Kayo Dot 「Plastic House on Base of Sky」
アメリカのエクスペリメンタル・ポストロック、ケイヨ・ドットの2016年作
今作はジャケの感じからして、なにやら日本的な雰囲気を感じさせるが、サンクスリストに平沢進の名があるように、
シンセの重ねに浮遊感のあるヴォーカルを乗せ、モダンなテクノ色を知的にプログレ化したようなサウンドになっている。
オルガンやメロトロンまで使ったシンセアレンジがスペイシーでやわらかな空間性を描きつつ、
従来の作品のように、ヴァイオリンやサックスなどの管弦楽器も加わった厚みのある聴き心地と、
混沌としたようなアヴァンギャルド性も垣間見せる。こもり気味のヴォーカルがキャッチーな歌もの感を中和して、
サウンドの中の要素のひとつとして混ざり合うのも確信犯的だ。ポストプログレを好む方にもお薦めできる傑作です。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 浮遊感・・9 総合・・8
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The Hosemobile 「What Can & Can't Go On」
アメリカのプログレ・ポストロック、ホースモービルの1999年作
ノイジーなリフと叙情な旋律を奏でる二本のギターを中心に、無機質な冷たさとプログレ的な知性が合わさり、
一種、アヴァンギャルドなマスロックというべき、空間的なフリーキーさを描く異色のサウンド。
適度にヘヴィにもなるギターは、それど凶暴過ぎずに、あくまでサウンドを担うパーツとしての冷徹さを保っていて、
この愛想の無さがしだいに心地よくなってくれば、これはプログレ寄りの聴き方もできるのだろうと思う。
生々しいドラムが即興的にリズムを構築し、ときに壊しながら、変則リズムによるテクニカル性も含めて、
MATS/MORGANなどにも通じる面白さもあって、インストのアヴァンロックが好きな方ならBGMにもイケルかと。
アヴァンギャル度・・8 プログレ度・・7 冷徹度・・8 総合・・7.5
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11/18
プログレ300枚突破♪(311)


White Willow 「Future Hopes」
ノルウェーのプログレバンド、ホワイト・ウィローの2017年作
1995年にデビュー、本作は2011年作以来となる7作目。ロジャー・ディーンによるジャケとロゴが、
まるでYESのような雰囲気だが、サウンドの方は、たゆたうように美しい女性ヴォーカルを乗せ
アンニュイな空気感に包まれた、これまでの作風の延長上。メロウなギターにうっすらとしたシンセ、
ときにトランペットやクラリネットも加わりつつ、しっとりとした叙情性とゴシック寄りの倦怠の美を描き出す。
Necromonkeyでも活躍するマティアス・オルソンのドラムもメリハリのあるグルーブ感を付加していて、
古き良きアナログ感を巧みに感じさせるのも見事。11分、18分という大曲も、決して派手には盛り上がらないが
あくまでしっとりと、涼やかで繊細な空気に包まれている。モダンな翳りとやわらかな叙情美に浸れる傑作です。
ドラマティック度・・7 繊細な翳り度・・9 女性Vo度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Nad Sylvan 「Bride Said No」
スウェーデンのミュージシャン、ナッド・シルヴァンの2017年作
AGENTS OF MERCYSteve Hackettバンドのツアーメンバーとしても活躍するヴォーカリストでもあり、
本作は2015年作に続く2作目のソロ作品。コンセプト的な雰囲気の幻想的なイントロから、わりとハード寄りのギターに
きらびやかなシンセアレンジ、そしてP.ガブリエルを思わせるヴォーカルを乗せた、シンフォニックロックを展開。
自身の歌声によるシアトリカルな雰囲気を前に出した歌もの的な作風と、冬を思わせる薄暗く物悲しい世界観で、
涼やかでメロディックな聴き心地。スティーヴ・ハケット、トニー・レヴィン、ガスリー・ゴーヴァンをはじめ、
盟友、ロイネ・ストルト、ヨナス・レインゴールド、ニック・ディヴァージリオなどがゲスト参加。
ラストは12分の大曲で、女性ヴォーカルの歌声も加わって、ゆったりと盛り上げる展開力も見事。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 冬の叙情度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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The SAMURAI OF PROG 「On We Sail」
フィンランドのミュージシャンを中心にしたプログレユニット、サムライ・オブ・プログの2017年作
LATTE E MIELE、LA CONSCINZA DI ZENO、SIMONS SAYS、WHITE WILLOW、ECHOLYN、PRESTO BALLET、
JINETES NEGROS、UNITOPIA、Michelle Youngなど、世界各国のメンバーが集結、楽曲ごとに作曲者を替えながら、
オルガンやメロトロンなどのシンセワークをたっぷりと盛り込み、伸びやかなヴォーカルにヴァイオリンも鳴り響き、
爽快なシンフォニックロックを展開する。プレスト・バレットやユニトピアのシンセ奏者が作曲のナンバーは、
Yesのようなキャッチーな感触で、ラッテ・エ・ミエーレのシンセ奏者作曲ナンバーは、美しいピアノにフルート、
ストリングスを加えた優雅でクラシカルなシンフォニックロックが楽しめる。9分、10分という大曲もあくまでメロディックで
叙情的な味わいに包まれている。スリリングな部分は少ないが、聴き心地の良いシンフォプログレを愛する方は必聴だろう。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 爽快度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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KNIFEWORLD 「BOTTLED OUT OF EDEN」
イギリスのサイケ・プログレ、ナイフワールドの2016年作
GONGにも参加するイラン出身のギタリスト&シンガー、カヴス・トラビを中心にしたバンドで、
前作はチェンバー風味とポップ要素が融合した好作品であったが、本作は女性Vo、女性シンセ奏者、
サックス、バスーン奏者を含む8人編成となり、オリエンタルなサイケ感触を強める一方で、
前作でのカラフルなポップ感触とともに、独自のチェンバー・サイケ・ポップロックを展開する。
GONG的でもある浮遊感と女性コーラスを加えたキャッチーな歌メロに、サックスが鳴り響き、
個性的でありながら、決して難解にならない絶妙の聴き心地で、スペイシーなスケール感を描き出す。
強烈なインパクトはないが、じわじわとセンスがにじみ出る、まさに玄人好みの好作品である。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 サイケ度・・8 総合・・8
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CIRCA 「Valley of the Windmill」
イギリスのプログレハード、サーカの2016年作
Yesのビリー・シャーウッド、トニー・ケイを中心にしたバンドで、本作は14分、18分という大曲を含む全4曲という構成。
美しいシンセアレンジに、キャッチーなコーラスハーモニーを乗せた、ASIAにも通じるポップでメロディックな味わいと
オルガンなどを含む古き良きプログレ性が合わさったサウンド。楽曲は長いものの、あくまで歌ものという構成で、
スリリングな展開や新鮮味というのは薄いのだが、逆に言えばメロディックロックとしてのメジャー感に包まれていて、
渋みのある歌声と安定した演奏でゆっくり楽しめる。ラストの大曲はシンフォニック的でもある起伏のある構成力で
中期のYesを思わせるような優美なサウンドが味わえる。大作志向ながら、耳心地のよいキャッチーな好作品。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 王道プログレハー度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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DBA 「PICTURES OF YOU」
ジェフ・ダウンズとクリス・ブレイドのユニット、ダウンズ・ブレイド・アソシエイションの2012年作
シンガーにして作曲家、プロデューサーとしての顔も持つクリス・ブレイドと、バグルズ、イエスで活躍したジェフ・ダウンズという、
このコンビで作られたイメージ通りのサウンドで、美しいシンセアレンジとマイルドなヴォーカルを乗せた、
モダンでキャッチーなプログレハード。打ち込みのドラムによる80年代ルーツのシンプルなビート感に、
ときにメロディックなギターを加えた耳心地の良さは、バグルズなどが好きな方には普通に楽しめるだろう。
1曲目は13分という大曲ながら、シンセの重ねによるシンフォニックな感触もあったり、間延びせず聴き通せる。
その後は4分前後のコンパクトなナンバーが並び、じこく普通のAORという感じなのだが、それが心地よいのだな。
メロディック度・・8 プログレ度・・6 80'sAOR度・・8 総合・・8
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Downes Braide Association 「Suburban Ghosts」
ジェフ・ダウンズとクリス・ブレイドのユニット、ダウンズ・ブレイド・アソシエイションの2015年作
2作目となる本作も、前作同様に、AOR的なきらびやかなシンセアレンジにマイルドなヴォーカルを乗せた、
聴き心地の良いキャッチーなメロディックロック。今作もドラムは打ち込みのようだが、モダンなAORというべきこのサウンドには、
違和感のないデジタル感覚となっていて、むしろそのシンプルなリズムが80年代風味を確信犯的にかもしだしている。
楽曲そのものには、これという新鮮味はないのだが、アレンジャーとしての確かな力量とサウンドセンスが
クオリティの高いレベルで結実した好作品といえる。リー・ポメロイ(IT BITES)、デイヴ・グレゴリーがゲスト参加。
メロディック度・・8 プログレ度・・6 80'sAOR度・・8 総合・・8
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THIS OCEANIC FEELING 「Universal Mind」
イギリスのプログレハード、ディス・オーシャニック・フィーリングの2015年作
Downes Braide Associationでも活動するクリス・ブレイドを中心に、ベースはIT BITESのリー・ポメロイ、
ドラムは、PRODUCERSにも参加したアッシュ・ソーンというトリオ編成のユニットで、
マイルドなヴォーカルとメロウなギターワークに、プログレ寄りのシンセアレンジで聴かせる、
キャッチーなやわらかさと湿り気のある叙情を同居させたサウンド。ASIAなどに通じる古き良きAOR感触とともに、
ときにポストプログレ寄りの繊細な感触もありつつ、オルガンやムーグ、ピアノなどのシンセも随所に美しい。
DBAの方が80年代感覚を再現しているのに対し、こちらはモダンプログレの要素を含んだ聴き心地。
プログレ、ポップ、AORという要素を、絶妙なアレンジセンスで包み込んだ見事な傑作です。
メロディック度・・9 プログレ度・・7 叙情度・・8 総合・・8.5
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PRODUCERS 「Made in Basing Street」
イギリスのメロディックロック、プロデューサーズの2012年作
トレヴァー・ホーン、ロル・クレーム、アッシュ・ソーン、スティーヴ・リプソンによるバンドで、
キャッチーなポップ性と80年代的なAOR感触を、モダンに再構築したというきらびやかなメロディックロック。
レコーディング途中で脱退したクリス・ブレイドが作曲に参加、4曲でリード・ヴォーカルを担当する他、
ジェフリー・ダウンズも全曲に参加していて、美しいシンセに爽快なコーラスハーモニーを乗せ、
随所にメロディックなギタープレイも含んだ、大人味わいのポップなプログレハードとしても楽しめる。
ほのかにプログレ感触も覗かせつつ、やわらかなメジャー感を漂わせた音作りで、
バグルズやダウンズ期のイエスあたりが好きな方には、とても心地よいサウンドだろう。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 爽快キャッチー度・・9 総合・・8
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The Blue Ship 「Executioner's Lover」
スコットランドのチェンバーロック、ブルー・シップの2014年作
「死刑執行人の恋人」と題された作品で、ヴァイオリンが鳴り響き、ジェントルなヴォーカルを乗せ、
QUEENにも通じる緩急のあるドラマティックな展開と、シアトリカルな空気感を含んだサウンド。
やわらかなヴォーカルメロディに、ピアノやアコーディオン、ヴァイオリンによる優雅さと、
大人の哀愁を感じさせる叙情性に包まれながら、どこか不穏でスリリングな気配も覗かせる。
いわば、キャッチーな歌ものロックにチェンバーロックの要素を加えたというべきか、
クイーンをプログレ化したような感じでも聴けてしまう。Disc2にはクラシカルなインストによる組曲を収録。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 チェンバー度・・7 総合・・8
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IL FAUNO DI MARMO 「Canti, Racconti e Battaglie」
イタリアのプログレバンド、イル・ファウノ・ディ・マルモの2013年作
オルガンが鳴り響き、アナログ感たっぷりのギターに、イタリア語のヴォーカルを乗せた、
いかにも70年代初頭の古めかしさをかもしだすサウンド。オールドロックのブルージーな味わいと、
女性コーラスやヴァイオリン、ピアノなどが絡むクラシカルな優雅さも合わさり、
結果としてとてもイタリアらしい濃密かつ混沌とした空気感に包まれている。
ジャズタッチのピアノの旋律に、牧歌的なフルートが吹き鳴らされオルガンが重なるという、
怪しいごった煮間も含めて、往年のイタリアンロックの自由さを再現したような力作だ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 イタリア度・・10 総合・・8
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Aparecidos 「Palito Bomobon Helado」
イタリアのチェンバーロック、アパラチドスの2013年作
アルゼンチン出身の兄弟ギタリストを中心に結成されたバンドで、二本のクラシックギターが絡み
グロッケンシュピール(鉄琴)のきらきらとした響きを乗せた、優雅なチェンバーロックサウンド。
哀愁を感じさせるラテンのフォークロアのテイストを、軽妙なアンサンブルに溶け込ませ、
適度な屈折感を盛り込みながら、ジャズやボサノヴァ要素も含んだ自然体の聴き心地。
アコースティック主体ながらも、随所にエレキギターも加わって、技巧的なドラムとともに、
うるさすぎないロック感触を描いて、ヴァイオリンやアコーディオンなども優雅なアクセントだ。
ダークでもサロン系でもない、いわばラテン系チェンバーという、とても優しいサウンドである。
ドラマティック度・・7 チェンバー度・・7 優雅なラテン度・・9 総合・・8
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Special Providence 「Essence of Change」
ハンガリーのプログレ・フュージョンロック、スペシャル・プロヴィデンスの2015年作
過去3作はセンス抜群のプログレ・フュージョン作品であったが、4作目となる本作はメタリックなギターを乗せて、
やたらとハードに始まりつつ、実力あるドラムの叩き出す、PLANET Xばりのテクニカルなアンサンブルで、
軽妙なフュージョンロックを展開。ホールズワースばりに優雅なフレージングを乗せるギターのセンスも抜群で、
スペイシーに重ねられたシンセワークがサウンドを壮麗に彩る。テクニカル集団がここにきてさらにアンサンブルを強化、
かいとって硬質すぎず、適度なハードさを覗かせつつ、あくまで優雅な聴き心地。フュージョン・ジャズロックとしても楽しめ、
Djent系リスナーにも対応。プログレ感触のシンセアレンジも随所に心憎いばかり。もはや世界最高レベルの傑作でしょう。
メロディック度・・8 テクニカル度・・8 優雅で軽妙度・・9 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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HEDERSLEBEN 「The Fall of Chronopolis」
アメリカのサイケロック、ヘダースレーベンの2015年作
女性シンセ、女性ヴァイオリン&Voを含む5人編成で、オルガンやムーグシンセが鳴り響き、
メロウなギターワークに、美しい女性ヴォーカルの歌声を乗せた、妖しいサイケプログレ。
HAWKWINDのようなスペイシーな空気感に、アコースティカルな叙情性も覗かせて、
サイケとしてはわりとプログレ寄りの、緩急のあるドラマティックなサウンドを聴かせる。
アッパーなノリの部分でも、美しいシンセアレンジが幻想的な雰囲気を描いていて、
ジャケやタイトルのようなSFストーリーを感じさせてくれる。インストによる小曲なども、
シンセやヴァイオリンなどが効果的に叙情を加えて、作品全体として流れのある聴き心地。
ドラマティック度・・7 スペイシー度・・8 叙情度・・8 総合・・7.5
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The Intersphere 「Hold on, Liberty!」
ドイツのプログレ・エモーショナルロック、インタースフィアの2012年作
前作はCOHEED AND CAMBRIAにも通じるような好作であったが、続く本作も同様の好作。、
センスあるギターワークとマイルドなヴォーカルを乗せた、キャッチーなメロディックロックを聴かせる。
エモーショナルロックとしての爽やかなポップ性と、存在感あるベースとドラムによる、
どっしりとしたアンサンブルに、やはりコヒカンを思わせる知的な構築センスが素晴らしい。
適度なハードさも含んだグルーヴィなノリの良さと、モダンでクールなセンスが合わさって、
曲によってはメタル寄りのヘヴィさも覗かせる。エモーショナルロックとしても普通に高品質ながら、
やはり3拍子のナンバーだったり、プログレ的なセンスを覗かせるナンバーに魅力を感じます。
メロディック度・・8 プログレ度・・6 コヒカン度・・8 総合・・8
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10/27
いよいよ来週、KOOL LIPSライブ!(296)


Mostly Autumn 「Sight of Day」
イギリスのシンフォニックロック、モストリー・オータムの2017年作
1998年にデビュー、本作ですでに12枚目のアルバムとなる、英国を代表するシンフォニックロックバンド。
のっけから14分を超える大曲で、クラシカルなピアノと美しいシンセワークに、オリヴィア嬢のやわらかな歌声を乗せ、
しっとりとした優雅さと気品を感じさせるサウンドが広がり、牧歌的なフォーク風味を含んだ英国らしい空気感とともに
じわじわと盛り上がるいつものモストリー節が楽しめる。フルートやヴァイオリンなども加えたアコースティックな素朴さと
古き良き英国らしさをシンフォニックロックの中に自然に取り入れるセンスは、さすがキャリアのあるバンドで、
男女ヴォーカルの歌声にメロウな泣きのギターで涙腺を刺激するところは、初期から中期の作風に戻った感触もある。
トロイ・ドノックリーが参加してバグパイプが鳴り響くスコティッシュなテイストなども含めて、大人の余裕を感じさせる好作品だ。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 英国度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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THE FAR MEADOW 「GIVEN THE IMPOSSIBLE」
イギリスのシンフォニックロック、ファー・メドウの2016年作
女性Voにシンセを含む5人編成で、ハスキーな女性ヴォーカルとアコースティックギターによる
英国フォーク風味の牧歌的なイントロから、叙情的なギターにプログレらしいシンセを乗せて、
優美なシンフォニックロックを展開する。緩急のある展開力は、ときにエキセントリックな唐突性もあり、
女性声によるキュートな聴き心地の中に、ときに先の読めないスリリングな空気感を描いている。
16分を超える大曲も、きらびやかなシンセとメロウなフレーズを奏でるギターを前に出したインストパートと、
やわらかなヴォーカルパートが合わさったダイナミックなサウンドが楽しめる。ラストのスカーボローフェアのアレンジも見事。
英国の女性声シンフォとしては、Mostly AutumnKARNATAKAMagentaに続く存在となれるか、期待大のバンドです。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 女性Vo度・・7 総合・・8
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KYROS 「VOX HUMANA」
イギリスのプログレバンド、キロスの2016年作
SYNAESTHESIAのメンバーによる新バンドで、本作はCD2枚に分かれたコンセプト的な大作。
エモーショナルなヴォーカルを乗せ、適度にハードな質感とエレクトロなシンセを加えたモダンなアレンジに、
キャッチーなプログレ風味を融合したサウンド。テクニカルな構築力とモダンでクールなセンスで、
アップデートしたシンフォプログレを聴かせるという点では、FROST*あたりに通じるかもしれない。
メロディックな歌もの感触とプログレらしい技巧的なインストパート、モダンなエモーショナルロック、
それらがほどよくブレンドされ、HAKENなどとも同様に新たな英国プログレの形を提示した力作です。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 クールどモダン度・・9 総合・・8
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OLIVER WAKEMAN 「Mothers Ruin」
イギリスのシンセ奏者、オリヴァー・ウェイクマンの2005年作
ご存知、リック・ウェイクマンの息子として知られるミュージシャンで、かつてはクライブ・ノーランと組んだ
「Jabberwocky」「パスカヴィル家の犬」といったシンフォニックロック作品を発表していたが、
本作はオルガンやムーグなどレトロなシンセが鳴り響き、適度にハードなギターとノリのよいヴォーカルを乗せた、
わりとストレートなメロディックロックを聴かせる。プログレ的な要素はやや薄いのだが、シンフォニックなシンセの重ねで、
随所に父親譲りのセンスを覗かせ、曲によってはギターとの絡みで、プログレハード的なインストパート盛り込んで、
単なる歌もの以上のサウンドに仕上げているのはさすが。ジャケも含めて、やや地味なのだがなかなかの好作ですよ。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 ウェイクマン度・・8 総合・・7.5
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No-Man 「Together We're Stranger」
イギリスのポストプログレ、ノーマンの2003年作
スティーヴン・ウィルソンとトム・ボウネスによるユニットで、うっすらとしたシンセの重ねに、
マイルドなヴォーカルを乗せ、サウンドスケープ的なギターが鳴り響く、アンビエントなサウンド。
いわゆるロック的なノリはほとんどないのだが、ときにシンフォニックといってよい音の厚みで、
じわじわと泣きの叙情を描くところは、さすがのスティーヴン・ウィルソン先生、
ゲストによるクラリネットやトランペットの音色も加わった、ポストロック的なスケール感も見事で、
アコースティックギターを使用した素朴な暖かみもあって、耳心地よい優しい音に浸れます。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 アンビエン度・・8 総合・・8
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Camel 「The Paris Collection」
イギリスのプログレバンド、キャメルのライブ作品。2001年作
2000年フランスでの公演を収録。シンセに故ギー・ルブラン(Nathan Mahl)を迎えた編成で、
1曲目の“Ice”から、しっとりと美しいシンセアレンジに、アンディ・ラティマーのメロウなギターを乗せた繊細なサウンドが広がる。
2曲目は「MoonMadness」からのナンバーで、ゆったりとした叙情からの軽快なリズムチェンジで、初期キャメルのメロディックな作風が味わえる。
「Rajaz」からのナンバー“Sahara”でのラティマーのギターの卓越した表現力にうっとりしつつ、中盤には「怒りの葡萄」からのナンバーを連ねた、
大人の哀愁と叙情を組曲的に描いてゆく。ラストは大曲“Lady Fantasy”で、往年のファンも大歓喜。新ドラマーのプレイも見事で、
コリン・バースのベースのなにげない存在感もさすが。安定した演奏力で楽しめる好ライブです。
ライブ演奏・・8 大人の叙情度・・8 往年のキャメル度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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METADRIVE 「OVER REALITY」
イタリアのモダンプログレ、メタドライブの2016年作
ギターレスのトリオ編成で、スペイシーなシンセの重ねにエモーショナルなヴォーカルを重ね、
エレクトロなアレンジで聴かせる、ポストプログレ風味のサウンド。グルーブ感のあるドラムが
程よいロック風味を作り出し、美しいシンセワークが、ある種シンフォニックな味わいとなっている。
薄暗く繊細な空気感は、ドイツのSYLVANなどに通じる感触もあり、2~5分前後のコンパクトな楽曲の中に、
メロディのフックと泣きの叙情を溶け込ませるアレンジセンスも素晴らしい。ギターを使わなくても、
シンセの重ねが空間的な音の厚みを作り出し、物足りなさは感じない。美麗で繊細な傑作だ。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 繊細な叙情度・・9 総合・・8
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NEMO「COMA」
フランスのプログレバンド、ネモの2015年作
2002年にデビューしてからすでに10作目となる。メタル寄りのハードなギターと美麗なシンセを乗せ、
テクニカルなリズムとともに、知的な展開力のハード・シンフォニックロックを聴かせる。
フランス語の歌声を乗せたリリカルな叙情性も持ち味で、本作ではProgMetal的な感触と
優雅なシンフォニック性が自然体に融合されている。8~12分という大曲を主体に、
緩急の付いたメリハリある構築性を描くところは、さすがキャリアのあるバンドである。
メロウなギターフレーズやメロトロンにオルガンといった、王道のシンフォとしての魅力もしっかりと残し、
フレンチらしいシアトリカルなドラマ性も覗かせる。これは見事なシンフォニックハードの力作です。
ドラマティック度・・8 ProgMetal度・・8 優雅な叙情度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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LAZULI 「Tant Que L'herbe Est Grasse」
フランスのプログレバンド、ラズリの2014年作
90年代から活動していたキャリアのあるバンドで、本作はおそらく5作目となる。
美麗なシンセアレンジにフランス語のヴォーカルを乗せ、エレクトロでモダンなアレンジに包まれた、
ポストプログレ寄りのサウンド。シンセの音も出せるという独自の弦楽器「Leode」奏者を含む編成も面白いが、
適度にハードなギターも加わって薄暗い叙情を描くところは、Porcupine Treeのフランス版というような感じもある。
一方では、オルガンが鳴り響くプログレ感触やキャッチーな抜けの良さも垣間見せ、メロウなギターフレーズを重ねた
シンフォニックロックとしての味わいもある。楽曲は長くても6分ほどと比較的コンパクトで、スリリングな展開はない分、
フランス語の優雅な味わいとともに、繊細や優しさに包まれた大人のモダンプログレとして楽しめる。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 繊細な叙情度・・8 総合・・8
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GREEN VIOLINIST 「More Thrill And Never Ending Blessings」
ベルギーのプログレバンド、グリーン・ヴァイオリニストの2013年作
ツインギターに男女Voを含む6人編成で、美麗なシンセアレンジにジェントルな男性ヴォーカルを乗せ、
ときに女性ヴォーカルが絡みつつ、ゆったりとしたエモーショナルな叙情を描くシンフォニックロックサウンド。
メロウなギターワークも耳心地よく、かつてのCOLLAGEなど、ポーランドのバンドにも通じるような
薄暗い空気感に包まれた聴き心地。アコースティックなやわらかさに美しいシンセが重なり、
ポストプログレ寄りの繊細さも含ませつつ、ときにオルガンが鳴り響くオールドな感触も覗かせる。
基本的にはヴォーカルがメインの作風なので派手な展開力はないものの、13分の大曲ではゆるやかに盛り上がる
シンフォニックロックが味わえる。あるいはMarillionなどの薄暗系メロディックロックとしても楽しめる好作品だ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 薄暗叙情度・・8 総合・・8
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Laquesis
アルゼンチンのプログレバンド、ラケシスの2013年作
ジャケやバンド名から、運命の三人の女神(ラケシス、アトロポス、クロートー)をモチーフにしているようで、
ムーグやオルガンを含む美しいシンセアレンジに、エモーショナルなヴォーカルで聴かせる叙情的なサウンド。
Marillionにも通じる薄暗い繊細さの歌ものナンバーから、いかにもシンフォプログレ系らしいシンセワークに、
CAMELばりの泣きのメロディを奏でるギターを乗せたインストパートも耳心地良く、曲によってはオールドなロック風味も覗かせる。
12分、16分という大曲も濃密すぎず、優雅なアンサンブルでスタイリッシュに構築するところは、南米らしからぬセンスというべきか。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 叙情度・・8 総合・・8

After The Fire「Signs of Change」
アメリカのメロディックロック、アフター・ザ・ファイヤーの1978年作
ヒット曲「秘密警察」で知られるバンドの自主制作時代のデビューアルバムで、
のちのニューウェイブなポップとは異なり、本作はオルガンにムーグシンセが鳴り響く
いかにも英国ルーツのプログレサウンドを聴かせる。ドラムを含めて録音はやや軽めながら、
リズムチェンジを含んだ緩急のついた展開力と、シアトリカルな表情を覗かせるヴォーカルなどは、
GENESISをポップ寄りにしたという感じもあるが、むしろJethro Tullのような牧歌的な叙情性が耳心地よい。
8分、11分という大曲も、軽快なリズムとローカルなやわらかさが同居していて飽きさせない。
あるいはQUEENをプログレ寄りにした雰囲気もあったりと、総じてキャッチーな感触の好作品です。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 叙情度・・8 総合・・7.5
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10/13
チェンバーにジャズロック!(284)


Steve Hillage「L」
元GONGのギタリスト、スティーヴ・ヒレッジのソロ。1976年作
トッド・ラングレンがプロデュース、ユートピアのメンバーがバックを務めたアルバムで
DONOVAN、THE BEATLES(ジョージ・ハリスン)のカヴァーを含む、サイケ風味のメロディックロック。
スペイシーなシンセアレンジに、随所にメロディックなギターフレーズも含ませて
GONGの延長上だった前作の流れを汲みつつ、よりアッパーなノリのアンサンブルで、
後のOZRIC TENTACLESにも通じる聴き心地もある。歌ものとしてキャッチーな感触に、
優雅なギタープレイも前作以上に光っていて、女性ヴォーカルを加えての東洋的なナンバーや
トランペットが鳴り響く妖しくサイケな12分の大曲も面白い。ヒレッジの初期の代表作というべき内容だ。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 サイケ度・・8 総合・・8
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Steve Hillage「Green」
スティーヴ・ヒレッジのソロ。1978年作
ソロ4作目の本作には、PINK FLOYDのニック・メイスンをプロデュースに迎えている。
スペイシーなシンセを乗せたゆったりとしたアンサンブルに、ユルくて渋くてメロウなギターを乗せた、
GONGルーツのサイケロックサウンドは本作でも健在。派手さはないが耳に心地よいギターワークと
味のあるヴォーカルも含めて、ソロアルバムとしての自身の世界観を描く音の説得力は、ますます高まっている。
のちの作風へとつながるアンビエントな部分も覗かせつつ、全体的に肩の力の抜けた自然体の作風で、
PINK FLOYDを思わせるゆったりとした雰囲気も耳に優しい。打って変わって、ラスト曲でのスリリングな演奏、
本気のサイケロックぶりはこのアルバムの価値をぐっと高めている。ロック、サイケ、アンビエントをミックスした見事な力作だ。
メロウ度・・8 プログレ度・・7 サイケ度・・9 総合・・8
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OZRIC TENTACLES 「PAPER MONKEYS」
イギリスのサイケロック、オズリック・テンタクルズの2011年作
80年代から活動するベテランバンドで、本作はおそらく…16か17作目くらいと思われる。
エレクトロなアレンジのカラフルなサイケサウンドは、本作ではますますスタイリッシュになり、
デジタルなビート感に乗るスペイシーなシンセで、トランス的なインストサウンドを聴かせる。
一方では、存在感あるベースとドラムによる優雅でグルーヴィなアンサンブルに、
技巧的なギターフレーズを乗せたフュージョン的な感触も。後半には10分を超える大曲もあり、
オールインストであっても、最後まで音の強度を保つのはさすが年季のあるバンドである。
ドラマティック度・・6 プログレ度・・7 優雅度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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Art Zoyd 「Generation Sans Futur」
フランスのチェンバーロック、アール・ゾイの1980年作
空間的な暗黒性を感じさせる、冷たい空気感に包まれたサウンドで、
ピアノ、ヴァイオリン、サックス、トランペットなどがひっそりと不穏に響き渡る。
やがて静けさの中から、突如としてけたたましく鳴り響く、管弦楽と野卑なヴォイスが、
緊張感となって聴き手に襲い掛かる。アヴァンギャルドミュージックの権化というべき内容だ。
1曲目の17分におよぶ大曲がとにかく圧巻だが、ストリングスによるクラシカルなナンバーもあって、
ロック色は薄いもののスリリングなアンサンブルと、優雅なクラシック性が共存した逸品である。
ドラマティック度・・6 チェンバー度・・8 アヴァンギャル度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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PANZERPAPPA 「Pestrottedans」
ノルウェーのチェンバーロック、パンザーパッパの2016年作
結成は90年代というバンドで、ムーグなどのプログレ的なシンセにサックスが鳴り響き、
わりとメロディックなギターフレーズを乗せた、ジャズロック色もある軽妙なサウンドを聴かせる。
とぼけた味わいはSAMLA MAMMAS MANNAにも通じる雰囲気で、カンタベリー的な優雅さもある。
ベースとドラムの生み出すわりとストレートなノリの良さと、屈折感をほどよく同居させたセンスもなかなかで、
アヴァンギャルド過ぎずダークな要素も薄いので、チェンバー・ジャズロック初心者にも聴きやすい作風だろう。
オールインストで演奏が流麗なため、聞き流してしまいそうになるのだが、アンサンブルのレベルは高く、
メロディも分かりやすいためキャッチーな爽快さもあって、軽快なプログレ・ジャズロックとしても楽しめる。
メロディック度・・8 チェンバー度・・7 ジャズロック度・・8 総合・・8
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The Archestra 「Arches」
ベラルーシのチェンバーロック、アーケストラの2013年作
RATIONAL DIETのヴァイオリン奏者を中心に、艶やかな弦楽器とピアノの音色に、
女性チェロ奏者の母国語の歌声も合わさった、優雅でクラシカルなチェンバーロックサウンド。
ドラムとベースが加わると、適度なロック色とともに、ときにUNIVERS ZEROにも通じるダークな空気感と、
ヴァイオリンとチェロの絡むストリングスをメインにした旋律を乗せた、スリリングな味わいに包まれる。
純室内楽をロック化したという気品のあるクラシカル性に包まれる一方、美しくも妖しい女性ヴォーカルが
Art Bearsのようなエキセントリックな彩りを添え、フリーキーなアヴァンギャルド性を描くナンバーなど、
一筋縄ではいかない先鋭的でアーティスティックなセンスも光っている。まさに本格派チェンバーの傑作。
クラシカル度・・8 プログレ度・・8 チェンバー度・・9 総合・・8
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PikaPika Teart「Moonberry」
ロシアのチェンバーロック、ピカピカ・ティートの2011年作
シベリア出身という珍しいバンドで、ツインギター、クラリネット奏者、ピアノ奏者を含む7人編成。
艶やかなヴァイオリンにクラリネット、ピアノが絡み、ドラムが加わった優雅なアンサンブルで、
クラシカルな気品とともにジャズロック的な軽妙さを合わせたようなサウンドを描き出す。
どこか荒涼とした寒々しい空気を感じさせるのは、やはりシベリアという土地柄か、
トラッド的な旋律も含ませた哀愁の叙情性と、チェンバーロックとしてのシリアスな緊張感を、
しっかりとプログレ感として音に溶け込ませるセンスはなかなか素晴らしい。
ときにクリムゾン風のパートも覗かせたり、女性ヴォーカルを乗せたトラッド的な小曲や、
ヴァイオリンに絡むピアノもじつに美しい。北の大地をチェンバーロックで表現したという傑作です。
スリリング度・・8 プログレ度・・8 北のチェンバー度・・9 総合・・8.5
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Thinking Plague 「Decline and Fail」
アメリカのチェンバーロック、シンキング・プレイグの2011年作
80年代にデビュー、本作は6作目となるアルバムで、不穏なベースラインと硬質なドラムに
うっすらとしたシンセやピアノ、浮遊感ある女性ヴォーカルを乗せたスリリングなサウンド。
HENRY COWART BEARSといったかつてバンドのエキセントリックな芸術性を受け継ぐ作風で、
サックスやクラリネットが鳴り響く、チェンバーロックの王道をレコメン寄りに構築したという雰囲気。
どこか醒めたような女性声が理性ある狂気を描きつつ、ミステリアスでダークな妖しさの中にも、
コロコロとしたキュートな質感も覗かせる。ドラムとベースのアンサンブルを軸にした確かな演奏力が、
ベテランらしい音の説得力をかもしだし、8分、11分という大曲も緊張感を保って描かれる。これは傑作。
スリリング度・・8 プログレ度・・8 チェンバー度・・8 総合・・8
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FACTOR BURZACO
アルゼンチンのチェンバーロック、ファクトル・ブルサコの2007年作
ピアニストのAbel Gilbert率いるユニットで、スペイン語による女性ヴォーカルの美しい歌声に、
やわらかなフルート、オーボエ、ヴァイオリンなどの音色に、ロック的なギターとドラムが加わった、
わりとノリの良いメロディアスなチェンバーロックサウンド。優雅なピアノを含むクラシカルな感触と、
静と動のメリハリある展開で適度にミステリアスな空気感も漂わせつつ、繊細な美しさに包まれた作風で、
アヴァンギャルドではあるがしっかりとロック色もあるので、チェンバー初心者にもとっつきやすいだろう。
反面、室内楽的な味わいはやや薄いので、ダークなチェンバーが好きな方には物足りないかもしれない。
スリリング度・・8 プログレ度・・8 優雅度・・9 総合・・8
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FACTOR BURZACO 「II」
アルゼンチンのチェンバーロック、ファクトル・ブルサコの2011年作
スペイン語によるキュートな女性ヴォーカルを乗せた、エキセントリックなチェンバーロックサウンドは、
前作に比べて、よりミニマムでスタイリッシュな作風へと深化している。やわらかなヴィブラフォンの響きにギターが絡み、
ジャズロック的な軽妙なアンサンブルに、女性声の妖しい表現力も加わって、ダークな空気感が増している。
フルート、クラリネット、サックス、バスーンなどによる室内楽色も含んで、アヴァンギャルドなテイストが先の読めない緊張感となって、
とてもスリリングな聴き心地だ。シアトリカルな語りの入ったナンバーなど、異色の味わいが楽しめる力作だ。
スリリング度・・9 プログレ度・・8 優雅度・・8 総合・・8
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FACTOR BURZACO「III」
アルゼンチンのチェンバーロック、ファクトル・ブルサコの2014年作
3作目となる本作は、サックス、クラリネットの軽やかな音色に、ギター、ベース、ドラムのアンサンブルが合わさった、
中期UNIVERS ZEROにも近づいたような、適度にダークで重さもあるスリリングなチェンバーロックを聴かせる。
カロリーナ嬢のエキセントリックな歌声は、サウンドにキュートな浮遊感を描き、シリアス過ぎない緊張感は、
いよいよ絶妙の域に達している。ヴィブラフォンが鳴り響くミニマムな静けさから、ドラムが加わった即興的なナンバーや
ハードなギターが加わったテクニカルで硬質なナンバー、一転してコミカルなアヴァンロックまで、振り幅の大きさが物凄い。
ラストは14分を超える大曲で、優雅さと激しさ、静と動の起伏に富んだアレンジセンスで、圧巻のチェンバーロックを描き出す。
スリリング度・・9 プログレ度・・8 優雅度・・8 総合・・8
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CatuKua「Lomas」
FACTOR BURZACOの女性シンガー、Carolina Restucciaのソロユニット。2013年作
スペイン語のコケティッシュな女性ヴォーカルを乗せた、ポップなアヴァンロックで、
タンゴ風味や南米らしい哀愁を含んだ、わりとメロディックな聴き心地。
アコースティックギターにエキセントリックな歌声を乗せた風変わりなナンバーや
ユルめのサイケ風味のナンバーまで、表現豊かな女性声がサウンドを色彩豊かにしている。
カロリーナ嬢の音楽センスが詰め込まれた、キュートなアヴァンロック作品です。
スリリング度・・8 プログレ度・・7 エキセントリック度・・9 総合・・8

FULANO 「En La Batuta 1993」
チリのジャズロック、フラノのライブ作品。2016年作
80年代から活動するバンドで、本作は1993年に行われた地元サンティアゴでのライブを収録。
シンセに二人のサックス奏者を擁する編成で、ハスキーな女性ヴォーカルのスペイン語の歌声を乗せ、
ダンサブルなノリの良さでたたみかける、ジャズロックサウンド。南米らしい土着的な味わいと、
シンセによるアレンジとクラリネットなどが加わった、ハイテンションなチェンバー風味も随所に覗かせる。
存在感のあるベースにジャズタッチもこなすドラムなど、技量のあるアンサンブルはプログレファン好みで、
フリーキーなサックスにフルートも加わったりと、カラフルなアヴァン・ジャズロックという感触でもある。
即興的でエキセントリックな女性声や、スカやタンゴなどの要素も含んだ、ごった煮感も凄いです。
ライブ演奏・・9 プログレ度・・7 アヴァンジャズ度・・8 総合・・8
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SLIVOVITZ「Hubris」
イタリアのトラッド・ジャズロック、スリボヴィッツの2009年作
サックス、ヴァイオリン、ハーモニカ奏者を含む編成で、軽妙なアンサンブルにサックスが鳴り響き、
女性スキッャトを乗せた、民族色もあるジャズロックを展開。変則リズムを含む屈折した即興性と
唐突感のあるアヴァンギャルド性を覗かせつつ、スリリングな演奏を繰り広げている。
テクニカルなアンサンブルの中に、フォルクローレ的でもある叙情も垣間見せ、
地中海、バルカン、スパニッシュなどのトラッド感触とジプシー的な無国籍感を漂わせた作風だ。
ヴァイオリン弾きまくりの軽快なトラッドナンバーから正統派のジャズロックまで、
確かな演奏力と優雅で知的なセンスで楽しませてくれる、玄人好みの力作だ。
プログレ度・・8 ジャズロック度・・8 トラッ度・・7 総合・・8
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SLIVOVITZ「Bani Ahead
イタリアのジャズロックバンド、スリボヴィッツの2011年作
2作目となる本作ではトランペット奏者が加わり、サックスと合わせたブラスサウンドが強化、
とぼけた味わいのジャズロックサウンドに、いくぶんチェンバー寄りのの質感が増している。
屈折感のあるひねくれたアンサンブルにも磨きがかかり、前作でのトラッド要素はやや薄まった分、
アヴァンギャルドなチェンバー・ジャズロックとしての音の強度が強まった印象だ。
管弦楽がゆったりと鳴り響く、不穏な空気感をにじませたナンバーなども含めて、
ダークなチェンバー風味を感じさせる一方で、優雅なジャズロック色も随所に覗かせる。
プログレ度・・8 ジャズロック度・・8 チェンバー度・・8 総合・・8
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GLAZZ「CIRQUELECTRIC」
スペインのプログレ・ジャズロック、グラッツの2011年作
アンダルシア地方のバンドで、基本はギター、ベース、ドラムというトリオ編成で、
ときにムーグを含むプログレ的なシンセやピアノ、スパニッシュギターなどを加えた、
軽妙で優雅なアンサンブルを聴かせる。本作はサーカスをテーマにしたアルバムで
随所にSEやナレーションを含んだ、コンセプト的な空気感と哀愁の叙情も感じさせる。
クラトカルなヴァイオリンにピアノが絡み、技巧的なギターがまじわる味わいは、
テクニカルなジャズロックにフュージョン、室内楽を合わせたような上品な聴き心地である。
一方ではハード寄りのギターを乗せたロック感触や、ミゲル・リオスがゲスト参加した、
スペイン語によるヴォーカル入りのナンバーなど、バラエティに富んだ21曲、78分の力作だ。
メロディック度・・8 ジャズロック度・・7 優雅度・・8 総合・・8
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GLAZZ 「The Jamming Sessions Take II」
スペインのプログレ・ジャズロック、グラッツの2014年作
ギター&シンセ、ベース&シンセ、ドラムというトリオ編成でのライブセッションを収録。
それぞれ29分、12分、38分という3パートに分かれた、78分に及ぶ即興的なライブで、
随所にムーグシンセが鳴り響き、生々しいドラムにフリーキーなギターとベースを乗せた、
アヴァンギャルドなフュージョンロック的なアンサンブルを聴かせる。即興的に叩きまくるドラムに
ブルージーなロック色も含んだ奔放なギタープレイで、ジャズ色は中盤あたりから現れる。
いかにもセッションという雰囲気であるから、スタジオアルバムとの違いにけっこうびっくりする。
メロディック度・・5 ジャズロック度・・6 セッション度・・8 総合・・7.5



10/1
秋はプログレ!(267)


ZNR 「Barricade 3」
フランスのチェンバーロック、ゼッデンネールの1976年作
ピアノ&シンセのジョゼフ・ラカイユ、エクトール・ザズー、ベース&クラリネットのパトリック・ポルテラという三人編成で、
優雅なピアノが鳴り響くエリック・サティ的な雰囲気に、ビープ音的なアナログシンセが合わさり、
随所にクラリネットやサックスが加わった、アヴァンギャルドでミニマムなチェンバーロック。
1~3分前後の小曲を主体に、飾り気や展開というものを無視した、唐突感とアンニュイな倦怠、
抽象絵画的なエキセントリックな感性は、聴き手を突き放したような冷たさも感じさせる。
9分の大曲では、ギターも加わっていくぶんロック的な香りも匂わせ、フランス語のヴォーカルを乗せた歌ものナンバーなど、
次作に比べるといくぶん拡散志向の方向性で、アヴァンミュージックとしてはむしろ、こちらの1作目が分かりやすいか。
ともかく、サロン的な優雅さとフランスらしい毒気が同居した、室内楽の抽象芸術というべき異色作である。
ドラマティック度・・2 チェンバー度・・8 優雅でアヴァンギャル度・・9 総合・・8
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The Enid 「Live at Town Hall Birmingham」
イギリスのシンフォニックロック、エニドのライブ映像作品。2010年作
2010年英国、バーミンガム公演のステージを収録。前半は2010年作「Journey's End」からの曲を演奏。
まずステージに所狭しと並んだ楽器群が壮観だが、ジョー・ペイン加入前の専任ヴォーカルがいない編成なので、
ステージ中央にはギターのジェイソン・ダッカーが立ち、フロントマン的に目立ちながら、メロウな旋律を奏でる。
シンセを奏でるゴドフリーは、ときに指揮者のように手を動かし、アンサンブルを司り、クラシカルな大曲“Malacandra”をはじめ、
静と動のダイナミズムを優美に描き出す。後半は“In The Region Of The Summer Stars”をはじめとした初期作品からの選曲で、
かつてのメンバーであるフランシス・リカーリッシュも登場、大人数のブラスセクションも加わったオーケストラルな編成に、
扇情的なギターが重なり、ティンパニが重厚に打ちならされる、壮麗なるシンフォニーロックが繰り広げられる。
そして“組曲Fand”は、4人のギターにオケが重なって、優雅して壮麗、ダイナミックなサウンドが感動的きわまりない。必見!
シンフォニック度・・10 ライブ演奏・・8 ライブ映像・・8 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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Barbara Dickson 「Winter」
イギリスの女性シンガー、バーバラ・ディクソンの2014年作
70年代は英国フォークシンガーとして活躍し、80年代以降はポップシンガーとして人気を博す。
本作は冬をテーマにした作品で、トラッドナンバーのアレンジやカヴァー曲を中心に、
艶めいた歌声を乗せたしっとりとした聴き心地。現Nightwishのトロイ・ドノクリーがプロデュース、
アコースティックギター、シンセ、バグパイプ、ホイッスルなどの音色を加えたトラッドナンバーは
ケルティックな味わいに包まれていて、ホルストの「木枯らし寒く吹きすさび」のカヴァーなどは
素朴な叙情となつかしさを感じさせる。落ち着いた大人の哀愁と英国の冬を感じさせる好作品。
フォーク&トラッ度・・8 哀愁と叙情度・・8 大人の歌声度・・8 総合・・7.5
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McCULLY WORKSHOP 「Ages」
南アフリカのサイケロック、マコーリー・ワークショップの2010年作
1969年の1作目、1971年の2作目続く3作目としてレコーディングされながら、長らく日の目を見なかった作品のCD化。
メロトロン、オルガンを含むシンセに、わりとハード寄りのギターとマイルドなヴォーカルを乗せたキャッチーな感触に、
サイケロックとしての浮遊感と美しいコーラスなども加わった独自のサウンド。叙情的なフレーズを奏でるギターのセンスや
ヴァイオリンが鳴り響くクラシカルなテイストを大胆に盛り込むなど、3分前後の小曲が主体ながら、聴きごたえがある。
英国的で牧歌的なナンバーなどは、Barclay James Harvestあたりにも通じる雰囲気でのんびりと味わえ、
カントリー風味のポップ調もありつつ、アーサー王伝説「王女グイネヴィア」のようなドラマティックなナンバーまで、
サイケというよりはむしろ英国叙情ロックという内容で楽しめる好作品である。CD化にあたってボーナス7曲を追加収録。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 叙情度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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GORDON GILTRAP 「VISIONARY」
イギリスのミュージシャン、ゴードン・ギルトラップの1976年作
フォークとプログレの中間をゆくという、通好みのギタリストでありミュージシャンで、
本作は英国を代表する詩人、ウィリアム・ブレイクの詩篇にインスパイアされたというアルバム。
ストリングスによるアレンジを取り入れ、プログレ的なシンセに12弦ギターの優美な音色が重なる、
シンフォニックロック的なインストは、Anthony Phillipsにも通じる優雅で繊細な空気と、
フォーク、トラッドルーツの牧歌的な英国らしさに包まれている。ドラムにはサイモン・フィリップスが参加。
オーケストラルな美麗さとアコースティックが融合した、耳心地の良い優雅なる傑作です。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 優雅度・・9 総合・・8
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GORDON GILTRAP 「PERILOUS JOURNEY」
ゴードン・ギルトラップの1977年作
アコースティックギターの優雅な音色と、美しいシンセにピアノ、オーケストラアレンジを加えた、
シンフォニックロックは前作からの延長上で、繊細で典雅なインストサウンドを描いている。
サイモン・フィリップスのドラムは前作以上に楽曲にフィットしていて、クラシカルな美意識に包まれた
優雅なダイナミズムというべき空気感にうっとりと浸れる。サックスなども加わった大人の哀愁や、
アコースティック主体のパートも挟んだりと、オールインストでありながら飽きさせない構成も見事。
次作とともに、彼のキャリアの中でも最高作のひとつと言えるだけの仕上がりだ。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 優雅度・・9 総合・・8
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GORDON GILTRAP 「FEAR OF THE DARK」
ゴードン・ギルトラップの1978年作
本作も、雅やかなアコースティックギターとシンセ入りのプログレ感触が融合した、
英国らしい優美な味わいのサウンドを聴かせる。やわらかなピアノにアコギのつまびき、
随所にオーケストラアレンジも加えた、シンフォニックな感触がよりスタイリッシュに合わさり、
ほぼオールインストであるが展開力のある、ゆったりとした繊細なドラマ性を描いている。
前半はアコーステッィクメインながら、4曲目からはサイモン・フィリップスのドラムとともに、
叙情的なエレキギターも加わった、大人のメロディックロックという趣のナンバーも含め、
70年代の隠れたシンフォニックロックの傑作と言ってもよいアルバムに仕上がっている。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 優雅度・・9 総合・・8
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Steve Hillage 「Fish Rising」
イギリスのギタリスト、スティーヴ・ヒレッジのソロ。1975年作
GONGにも参加したギタリストとして知られるミュージシャンで本作はソロ1作目。
当時、分裂しかけていたゴングのメンバーが参加していることから、サウンドの方も、ユルめのサイケ路線で、
スペイシーなシンセにやわらかなギター、男女ヴォーカルの歌声を乗せた、ゆったりとしたおおらかな聴き心地。
ヒレッジのギターは決してテクニカルではないが、ゆるやかにメロウなフレーズを乗せて、
ヒッピー的なサイケ感の中にも、プログレッシブな展開力で17分におよぶ組曲を構築する。
盟友デイヴ・スチュアートも参加して、随所にオルガンやピアノでらしいプレイを聴かせてくれる。
単なるサイケでもない、牧歌的なユルさとプログレな楽曲性が絶妙に交差する傑作である。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 サイケ度・・8 総合・・8
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LA NUOVA CREAZIONE 「Harleking」
イタリアのプログレバンド、ヌオヴァ・クリエツィオーネの2014年作
70年代に活動しながらアルバム未発表に終わった、1977年の作品をリレコーディングした復活作。
アコースティックギターに艶やかなヴァイオリン、アコーディオンの音色を乗せ、イタリア語の歌声とともに、
楽しげで愉快なノリと牧歌的な叙情で聴かせるサウンド。哀愁を奏でるサックスやトロンボーンに
繊細なフルートの音色に絡むピアノ、そしてアコースティックギターのつまびきが繊細な空気を描く。
3~5分の小曲主体なので、プログレ的な展開やドラマティックな派手さはあまりないのだが、
ジェントルな男性ヴォーカルに女性声が加わった大人のラブロック風味や、女性ヴォーカルをメインにした
ストリングスが美しいナンバーなど、イタリアらしい味わいのある歌ものサウンドが楽しめる。
ドラマティック度・・6 プログレ度・・7 イタリア度・・8 総合・・7.5
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Spleen Arcana 「Field Where She Died」
フランスのシンフォニックロック、スプリーン・アルカナの2009年作
ヴォーカル、ギター、ベース、シンセをこなすマルチミュージシャン、Julien Gaullierのソロユニットで、
いくぶんメタル寄りのギターにうっすらとしたシンセと、マイルドなヴォーカルを乗せて、
ゴシック的でもある耽美な世界観を描く、モダンなシンフォニックロックというサウンド。
10分前後の大曲を中心に、ゆったりとした薄暗い繊細な叙情を聴かせるところは、ポストプログレの感触もあり、
結果としてAnathemaなどにも通じる部分があるかもしれない。ときどきゲストの女性ヴォーカルが加わって、
男女Voになったりするが、正直歌声は微妙。ぜひバンド編成になって、いいヴォーカルを見つけてください。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・5 薄暗叙情度・・8 総合・・7.5
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PETER BRYNGELSSON 「Wunderbaum」
スウェーデンのミュージシャン、ペーター・ブリンゲルソンの2011年作
RAGNAROKのギタリストで、本作はそのラグナロクに通じる、北欧らしい涼やかな土着性に包まれた、
フォークロック的でもあるゆったりとした牧歌的なサウンド。ギターの旋律は北欧特有の哀愁の叙情を描いていて、
随所にシンセやアコーディオンの音色も加わって、メロウな北欧サイケフォークとしても楽しめる。
2~4分前後の小曲によるインストを連ねた構成なので、楽曲ごとの盛り上がりというのはない分、
スローでロハスなBGM的にも聞き流せてしまうのだが、素朴な北欧の空気感が心地よく感じ取れる好作品だ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 北欧度・・9 総合・・7.5
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OMEGA 「TRANSCENDENT」
ハンガリーのメロディックロックバンド、オメガの1996年作
60年代から活動する、母国ハンガリーでは絶大な人気を誇る国民的なバンド
シンフォニックで優美なイントロから、母国語の歌声とメロウで叙情的なギターとともに
壮麗で厚みのあるシンフォニック・ハードロックというサウンドが広がってゆく。
適度にプログレ色も感じさせる部分もありつつ、母国語を除けばメジャー感もただよう
キャッチーなメロディックロックで、ベテランらしい哀愁の叙情もまじえつつ、
ロックンロール調なナンバーなども含めて、確かな演奏力で聴かせる力作だ。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 重厚度・・8 総合・・8
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Morse Code 「Je Suis Le Temps」
カナダのプログレバンド、モールス・コードの1977年作
メロトロンやオルガンを使ったシンセにロック寄りのギターとヴォーカルを乗せて、
プログレハード的な爽快なサウンドを聴かせる。キャッチーなメロディのフックと洗練されたスタイルは、
後期のYESや、80年代GENESISのようなメジャー感も漂わせ、テクニックのある演奏とともに、
プログレらしさもしっかりと残している。フランス語による歌声が優雅な耳心地をかもしだし、
随所にやわらかなピアノや泣きのフレーズを奏でるギターの叙情性もいいですね。
大曲がないコンパクトな作風である分、シンプルなメロディアス性が前に出てとても楽しめる。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 優雅度・・8 総合・・8
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Contraction 「La Bourse Ou La Vie」
カナダ、ケベックのジャズロックバンド、コントラクションの1974年作
前作は、優雅なアンサンブルと浮遊感が同居したジャズロックの傑作であったが、2作目となる本作も
カンタベリー的でもある軽妙な演奏が素晴らしい。テクニックのあるギターに軽やかなピアノが絡み、
フランス語の女性ヴォーカルを乗せた、優美なシンフォニック・ジャズロックというサウンドだ。
おそらく、当時のケベックのバンドの中でも演奏力を含めたバンドの力量はトップクラスと言ってもよく、
美しいフルートや優しい女性Voの歌声も含めて、National Healthの1作目などが好きな方にもお薦めだ。
タイトル曲である、18分を超える組曲はテクニカルな構築と叙情が繊細な交差する、圧巻のプログレジャズロック。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 優雅度・・9 総合・・8
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9/24
いよいよペンドラゴン来日!(253)


Pendragon 「Masquerade 20」
イギリスのシンフォニックロック、ぺンドラゴンのライブ。2017年作
1983年にデビュー、MARILLION、IQ、PALLASとともに、80年代英国ポンプロックのムーブを形成し、
90年代英国シンフォの代表格というべきバンド。本作は1996年の傑作「Masquerade Overture」から
20周年を記念して行われたポーランドでのライブを収録。Disc1はその「仮面舞踏への序曲」を完全再現、
混声コーラスによる荘厳なイントロから、美しいシンセと枯れた味わいのヴォーカル、泣きメロを奏でる叙情ギターとともに
壮麗な世界観を構築。初期からのメンバーである、ニック・バレット、クライブ・ノーラン、ピーター・ギーの3人がいることで
当時のロマンの香りまでをそのまま再現している。とりわけ90年代に思い入れのあるシンフォファンには感涙のライブ作品だろう。
MAGENTAのクリスティーナ・ブースがコーラスで参加しているのも見逃せない。そして、バンドは2017年9月に来日を果たすのだ。
シンフォニック度・・9 ライブ演奏・・8 名作再現度・・9 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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KNIGHT AREA 「Heaven and Beyond」
オランダのシンフォニックロック、ナイトエリアの2017年作
2004年にデビューし、質の高いシンフォニックハードを聴かせるこのバンド。6作目となる本作は
美麗なシンセアレンジにメロディックなギターが重なり、ハードエッジなリズムを加えたサウンドで、
伸びやかなヴォーカルを乗せたキャッチーな聴き心地が楽しめる。適度にメタリックな硬質感と
テクニカルな展開力も含んだ感触は、ProgMetal的でもあり、抜けの良いメロディのフックと
重厚なスケール感を描くところは、さすが中堅バンドである。シンフォニックロックとしての優雅さを
ヘヴィに包み込んだサウンドの説得力は、音質の良さも含めて、ここにきてひとつ突き抜けた印象だ。
ドラマティックな音の洪水…まさにメタルとシンフォプログレの垣根を超えるような傑作です。
ドラマティック度・・9 ハードプログレ度・・8 重厚度・・9 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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COMEDY OF ERRORS 「SPIRIT」
イギリスのプログレバンド、コメディ・オブ・エラーズの2015年作
80年代に結成され、いったんは活動を停止したものの、2011年に復活し、本作は復活後3作目となる
ツインギターにシンセを含む6人編成で、美麗なシンセアレンジに、メロウなギターとマイルドなヴォーカルを乗せた
適度にハードでモダンな感触と繊細な叙情美に包まれた、英国らしいウェットなシンフォニックロックサウンド。
楽曲は3~6分前後と、比較的コンパクトであるが、楽曲を連ねた流れがドラマティックな構成になっていて、
キャッチーなシンフォニックハードという点では、PALLASあたりにも通じる雄大なスケール感に包まれている。
やわらかなメロディの流れに浸りつつ、シンフォプログレ好きで良かった、と心から思える力作に仕上がっている。
ドラマティック度・・8 キャッチー度・・8 英国シンフォ度・・9 総合・・8
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COMEDY OF ERRORS 「House of the Mind」
イギリスのプログレバンド、コメディ・オブ・エラーズの2017年作
復活後4作目となる本作は、大曲を含む楽曲の構築力とドラマティックなアレンジセンスとがぐっと高まった。
オルガンやムーグシンセによる古き良きプログレの味わいとメロウなツインギター、マイルドなヴォーカルを乗せ、
アメリカのシンフォ系バンドにも通じるキャッチーで抜けの良いサウンドが楽しめる。これぞシンフォプログレの王道だ。
美しいシンセにツインギターによる流麗なフレーズも随所に光っていて、15分におよぶ大曲をじっくりと構築してゆく。
一方では大人の味わいのアコースティックな小曲もあり、そういうパランス感は、BIG BIG TRAINにも通じるか。
優しい叙情に包まれた後半の13分の大曲もじつに優美な感触で、正統派のシンフォプログレ好きはうっとりの傑作です。
ドラマティック度・・8 キャッチー度・・8 大人の叙情度・・9 総合・・8
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The Room 「Beyond The Gates Of Bedlam」
イギリスのプログレ・ロックバンド、ルームの2015年作
先に聴いた2012年作は、70年代スタイルのキャッチーなメロディックロックという趣だったが、
古き良きロック感触のギターと表現力あるヴォーカルを乗せたオールドな感触はそのままに、
本作では美麗なシンセアレンジを加えた、適度なシンフォニックロック色が強まっている。
結果的に、いくぶんブルージーになった「英国版KAYAK」という聴き心地もありつつ、
ツインギターによるウェットな叙情性は、まぎれもなくブリティッシュロックの系譜である。
全体的に、プログレ的な展開力というのはさほどないのだが、6分、7分という長めの楽曲も、
力量のあるヴォーカルのおかげで心地よく聴き通せる。オールドな渋さとシンフォが合わさった好作品。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 古き良き度・・8 総合・・7.5
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The Gift 「Land of Shadows」
イギリスのプログレバンド、ギフトの2014年作
2006年のデビュー作は、Genesisルーツのシンフォニックロックの好作品であったが、
本作は8年ぶりとなる2作目で、語りの入った映画的なイントロと、アコースティックギターに
やわらかなピアノとジェントルなヴォーカルを乗せた大人の哀愁に包まれた雰囲気から、
ノリのあるアンサンブルに、ムーグシンセとメロウなギターが加わり、プログレらしい展開力と
メリハリある構築性で、ドラマティックなサウンドを聴かせる。メロトロンが鳴り響く叙情性もよろしく、
ラストは19分を超える組曲は、ストリングスを含む優雅でやわらかな感触の序盤から、
唐突にハードなパートも現れたりと、緩急ある展開が楽しめる。まさしく大人のシンフォ力作だ。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 大人の叙情度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Tinyfish 「One Night on Fire」
イギリスのプログレバンド、タイニーフィッシュのライブ作。2009年作
2009年ポーランドでのライブを収録。ナレーションによる語りを含んだコンセプト的な雰囲気で、
メロディックなギターに伸びやかなヴォーカルを乗せたキャッチーな爽快さに、
タイトでアンサンブルで聴かせる、スタイリッシュなプログレハードが広がってゆく。
いわゆるプログレらしさやダイナミックな展開というのはあまりないのだが、
It BitesPallasのような英国らしい空気感と適度にモダンな構築センスも含めて、
ポストプログレとUKロックの中間をゆくような雰囲気がこのバンドの持ち味なのだろう。
聴き心地は良いのだが、個人的にはもうひとつ突き抜けた楽曲が欲しいと思ってしまう。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 ライブ演奏・・8 総合・・7.5
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TCP「Temporal Chaos」
アメリカのプログレバンド、TEMPORAL CHAOS PROJECTの2016年作
2008年にデビューした愛すべきオッサンバンド。前作はGENESISルーツの叙情を偏屈にしたような好作だったが、
3作目となる本作も、ガブリエル寄りの声質のヴォーカルにメロウなギターを乗せたキャッチーな叙情性と構築力で、
聴かせるメロディックなサウンド。優雅なピアノを含んだシンセアレンジも随所に美しく、10分前後の大曲もさらりとこなすセンスは、
SPOCK'S BEARDばりで、3作目にして、すでにベテランの味わいをかもしだす、余裕のある楽曲アレンジも見事。
ときに女性声が加わった優美な感触も覗かせつつ、一方ではECHOLYNのようなとぼけた味わいの展開も垣間見せる。
オールドなシンフォニック・プログレを濃密すぎない叙情とともに、展開豊かに構築したという力作である。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 優雅な叙情度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Mindgames 「MMX」
ベルギーのプログレバンド、マインドゲームスの2010年作
美麗なシンセアレンジに、適度にハードでメロウなギターと伸びやかなヴォーカルを乗せた、
正統派のシンフォニックロック。PENDRAGONあたりを思わせる泣きの叙情美と、
ARENAにも通じるダイナミックな展開力で、ポンプロックルーツのサウンドを重厚に描く。
オルガンやミニムーグを使ったとオールドなテイストも覗かせつつ、扇情的なギターフレーズが、
ウェットなメロディを奏でる、あくまで優美な作風だ。ラストは15分におよぶ大曲でじっくりと盛り上げる。
キャッチーな耳心地の良さも含めて、ヨーロピアンなプログレハードとしても楽しめるシンフォ好作。
ドラマティック度・・8 プログレハー度・・8 メロウな叙情度・・8 総合・・8
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GUILLAUME DE LA PILIERE 「Requiem Apocalyptique」
フランスのミュージシャン、ガイラウム・デ・ラ・ピリエレのソロ2008年作
1990~98年までに4作を残したシンフォニックロックバンド、VERSAILLESの&ヴォーカルのソロ。
クリムトの絵画をあしらった見開きの特殊デジパック仕様もなかなかのインパクトであるが、
内容も全1曲45分という構成で、やや唐突な展開力にフランス語の歌声を乗せた、
ANGEにも通じるシアトリカルなフレンチロックを聴かせる。ギターはときにノイジーに鳴り響き、
アヴァンギャルドなシンセアレンジとともに、エキセントリックな不思議さをかもしだす。
意気込みは買うのだが、いかんせん楽曲としての盛り上がりや叙情が少ない分、
独りよがりの大曲に聞こえてしまう。シンフォ色も薄めのヘンテコなフレンチプログレです。
ドラマティック度・・7 アヴァンギャル度・・8 フレンチ度・・8 総合・・7
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The Natural Mystic 「Mother Nature,The Trees and The Magic of Seasons」
イタリアのプログレバンド、ナチュラル・ミスティックの2006年作
春夏秋冬の4パートに分かれた組曲形式のアルバムで、ムーグシンセに優雅なピアノ、
ときにフルートも鳴り響き、ジェントルな英語のヴォーカルを乗せたサウンドで、
イタリアというよりはむしろ英国的な牧歌的な味わいだ。Jethro Tullにも通じる土臭い渋さと、
プログレらしい展開力も同居させ、キャッチーで軽快なアンサンブルを描くバンドとしての技量とセンスも十分。
随所にストーリー的なSEを挿入させるなど、ドラマティックな演出と、ときにサイケ的でもある即興的な浮遊感に、
手数の多いドラムをはじめとするハードエッジな音の厚み、メリハリのある濃密さで聴かせる力作である。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 むしろ英国風味度・・8 総合・・7.5
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Beam-Light
ポーランドのメロディックロック、ビーム・ライトの2009年作
うっすらとしたシンセアレンジにハスキーな女性ヴォーカル、適度にハードなギターを乗せた、
ゴシック的な雰囲気も含んだサウンド。The Gatheringあたりに通じるアンニュイな浮遊感に、
ポリッシュらしいメランコリックな翳りと、ときにサックスも加わったアダルトな哀愁も感じさせる。
中盤以降はわりとキャッチーなポップロック風味もあったりと、方向性は微妙ながら、
やや声の裏返るキュートな女性声の魅力も含めて、薄暗系シンフォニック・ハードとしても楽しめる好作品だ。
シンフォニック度・・7 ゴシック度・・7 女性Vo度・・7 総合・・7.5
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Akacia 「An Other Life」
アメリカのプログレバンド、アカシアの2003年作
メロディックなギターにきらびやかなシンセ、中性的なハイトーンヴォーカルを乗せ
YESをややハード寄りにしたようなキャッチーなプログレサウンドを聴かせる。
90年代のネオプログレ的な構築性と唐突な展開力にマイナーな空気感が同居した感触で、
のっけから16分の大曲、最後も22分の組曲で、全4曲57分という大作志向も気合が入っている。
オルガンを使ったオールドな感じの歌ものナンバーもありつつ、ECHOLYNのような優雅さと、
偏屈な意外性も盛り込んだ面白さもある。あとは、メロディのフックや盛り上がりがもっとあれば。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 Yesルーツ度・・8 総合・・7.5
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Akacia 「The Brass Serpent」
アメリカのプログレバンド、アカシアの2006年作
正式なシンセ奏者が加わっての5人編成となった2作目。前作も曲が長かったが、
今作も36分というけっこうな大曲を含む全4曲。キミらはトランスアトランティックか!
アメリカのバンドらしいキャッチーなメロディアス性と、古き良きプログレらしい展開力で、
爽快な聴き心地にぐっと磨きがかかっている。ヴォーカルの表現力も上がったことで、
テクニカルなインストパートと叙情的な歌パートとのメリハリもよりくっきりとして、
YESルーツの構築センスをドラマティックに昇華できるようになった。これは力作!
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 Yesルーツ度・・8 総合・・8
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Shaun Guerin 「Archives」
アメリカのマルチミュージシャン、ショーン・グエリンの2004年作
2003年に41才の若さで亡くなった彼の未発音源集で、GENESIS、CLEARLIGHT、EL&P、PINK FLOYDのカヴァーを含む、
全16曲78分を収録。曲によった葉音質はややラウドながら、彼の演奏するドラムもシンセも、なかなかの技量とセンスで、
ジェネシスのトリビュートバンドもやっていたいとうだけあり、かすれた味わいのヴォーカルもサウンドによくマッチしている。
プログレへの愛情が確かに感じられる。クリアライトの大曲やEL&P「悪の教典#9」のカヴァーなども見事な出来だが、オリジナル曲の方も、
やわらかな叙情性で聴かせるシンフォニックロックとして出来がよく、夭逝したアーティストの遺作とするには惜しい内容である。
ドラマティック度・・7 プログレ愛度・・9 叙情度・・8 総合・・7.5



9/16
チェンバーロックとシュルツェと♪(238)


Eskaton 「4 Visions」
フランスのプログレ・ジャズロック、エスカトンの1981年作
1980年作「Ardeur」を先に聴いていたが、本作はデビュー前の1979年に録音された音源。
スペイシーなシンセに存在感あるベースを乗せたアッパーなアンサンブルに、
妖しい女性ヴォーカルが響き渡る、MAGMAを思わせる神秘的なジャズロックサウンド。
ほとんどの曲が10分前後という大作志向で、本家マグマに通じるスケール感ととともに、ときにムーグシンセや
オルガンなどを加えたプログレらしさも覗かせる。フランス語による女性ヴォーカルがミステリアスな優雅さをかもしだし、
サイケな浮遊感にチェンバーロック色も混ざったような、単なるMAGMAフォロワー以上の濃密な聴き心地だ。
ドラマティック度・・8 神秘的度・・8 MAGMA度・・9 総合・・8
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Shub-Niggurath 「Les Morts Vont Vite」
フランスのチェンバーロック、シュブ・ニグラスの1986年作
MAGMAをルーツに暗黒世界を突き詰めたようなサウンドで、かつて聴いた際には、WHENの「THE Black Death」のように、
恐ろしい心地がしたものだが、その異端の作品が「死せる暗黒の騎士」のタイトルで2015年紙ジャケで再発された。
不穏なギターフレーズにクラシカルなピアノが鳴り響き、妖しい女性スキャットが重なってゆく冒頭の雰囲気からして、
すでにUNIVERS ZEROクラスの強烈な暗黒性を感じさせる。トロンボーンを加えたチェンバーロック的な優雅さと、
ミステリアスな闇の気配…フリーキーに聴こえながらも、実は計算された音の重ねで構築されたサウンドが素晴らしい。
うねるようなベースの存在感と緊張感のあるドラムがアンサンブルを引き締める。重厚にしてアヴァンギャルド、
暗黒と優雅が同居したまさに異色の傑作。次作「C'etaient De Tres Grands Vents」も負けず劣らずの出来である。
ドラマティック度・・7 チェンバー度・・8 暗黒度・・9 総合・・8
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SCHERZOO「01」
フランスのチェンバーロック、スケルズーの2011年作
マルチ・ミュージシャンFrancois Thollotを中心にしたバンドで、サックスがフリーキーに鳴り響き、
クラシカルなピアノを乗せた、テクニカルなアンサンブルで聴かせる、チェンバー・ジャズロック。
程よく即興的なアヴァンギャルド性と、ダークなチェンバー色が合わさった、静と動のメリハリある展開と
知的で空間的な構築力もさすがである。全体的にサックスがフレーズをとるパートが多いので、
チェンバーというよりはやはりジャズロック寄りの感触で、「MAGMAをクリムゾン化」させたという雰囲気もありつつ、
ミステリアスな怪しさという点では、「ジャズロック化したUNIVERS ZERO」という楽しみ方もできるだろう。
6~8分前後の楽曲を中心に、スリリングな緊張感で描かれるラストの19分におよぶ大曲も圧巻だ。
ドラマティック度・・7 ジャズロック度・・8 チェンバー度・・7 総合・・8
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UNIVERS ZERO 「Crawling Wind」
ベルギーのチェンバーロック、ユニヴェル・ゼロの2001年作
1983年に発売されたミニアルバムに未発音源、ライブ音源を加えたアルバム。
3rd「Ceux du Dehors」と4th「UZED」の間くらいの録音なので、1曲目はダークさよりもわりとスタイリッシュな作風へと
変化している時期だからか、ヴァイオリンとピアノによるクラシカルな優雅さと、リズムアンサンブルとの優雅なバランス感覚で、
チェンバーロックとしてのスリリングな空間性を生み出している。2曲目は2ndの頃のダークで不穏な空気を描くナンバー。
4曲目のやわらかなクラリネットの響きにヴァイオリン、ギターが重なる優雅な緊張感は、このバンドの本質を示した1曲。
ライブ音源は、1982年ベルギー、1984年ドイツ、1979年ベルギーでの音源を収録。当時の貴重なライブ音源が楽しめます。
クラシカル度・・8 プログレ度・・8 優雅度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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PRESENT「Triskaidekaphobie」
ベルギーのチェンバーロック、プレザンの1980年作
UNIVERS ZEROのロジェ・トリゴーを中心に結成されたバンドで、かつては1st、2ndのカップリングでCD化されていたが、
2014年にそれぞれ単体CDでリマスター再発された。「13恐怖症」という邦題のこの1stは、クラシカルなピアノの旋律に、
不穏なコード進行によるベースが絡み、変則的なリズムによるアヴァンギャルド性と知的な構築力で聴かせる、
ポスト・ユニヴェル・ゼロというべきサウンド。ときにフリーキーに鳴り響くギターやドラムを含めた攻撃性という点では、
UNIVERS ZEROよりもさらに明快なロック志向が感じられ、ミステリアスかつ優雅なプログレとしてもとても楽しめる。
19分、15分という2曲の大曲を軸にした圧巻の力作だ。ボーナストラックに1981年のライブ音源を2曲追加収録。
チェンバー度・・8 プログレ度・・9 ミステリアス度・・9 総合・・8.5
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PRESENT「Le Poison Qui Rend Fou」
ベルギーのチェンバーロック、プレザンの1985年作
「精神崩壊誘発剤」と題された本作は、軽やかなドラムと不穏なベースラインによる変則リズムにクラシカルなピアノの旋律を乗せ、
巧みなアンサンブルを描く前作からの流れに加えて、1曲目では女性ヴォーカルの歌声を乗せた優雅な美しさが加わって、
サウンドはよりスタイリッシュなダークさへと昇華されている。ギターによるフレーズも、ときにメロディックな感触であったり、
ロック的な聴きやすさも健在で、音圧的にもいくぶんソフィスティケイトされたことで、多くのチェンバーロックリスナーに楽しめる。
前作に比べるとたたみかける迫力は薄まったが、空間性に包まれたアヴァンギャルドかつテクニカルな展開力というのは大きな魅力である。
ボーナスDiscには1982年のライブ音源を収録、音質はそれなりだが、1st収録の大曲も含めて、たっぷり79分のライブに満腹です。
チェンバー度・・8 プログレ度・・8 ミステリアス度・・8 総合・・8
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PRESENT「High Infidelity」
ベルギーのチェンバーロック、プレザンの2001年作
ツインギターにチェロ、サックス、トランペット奏者を含む編成で、モダンなシンセアレンジに、
チェロやブラスが鳴り響き、重たいベースを乗せたインダストリアルな硬質感で聴かせるサウンド。
のっけから6パートに分かれた27分の組曲で、重厚なインストパートを中心に、随所にヴォーカルも入りつつ、
サックス、トランペットが吹き鳴らされ、不穏でスリリングな空気感に包まれた世界観を描いてゆく。
リズム的にはどっしりとしていて、軽妙な変拍子というものは少ないのだが、たたみかける圧殺感が
単なるBGM以上の重たい迫力で襲い掛かる。初期の作品に比べるとプログレらしさは薄まったがこれも力作。
チェンバー度・・8 プログレ度・・7 ミステリアス度・・8 総合・・8
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October Equus 「Saturnal」
スペインのチェンバーロック、オクトーバー・イクースの2011年作
本作は3作目で、物悲しくチェロが鳴り響き、サックスにドラムも加えて、スリリングなアンサンブルを描く、
Univers Zeroを思わせるダークなチェンバーロックサウンド。変則リズムによる唐突な展開は、
ときにジャズロック風味になったり、室内楽的な優雅さとフリーキーな緊張感を巧みに融合させた、
軽妙かつテクニカルなインストサウンドは、この手のチェンバー系プログレの愛好家にはたまらないだろう。
アンサンブル志向の展開力で聴かせるタイプなので、難解な世界観というものはあまり感じさせず、
偏屈な技巧派プログレが好きな方にも対応。暗すぎないダークさも含めて初心者から玄人まで楽しめます。
チェンバー度・・8 プログレ度・・8 スリリング度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Aranis 「Roqueforte」
ベルギーのチェンバーロック、アラニスの2009年作
フルートにピアノ、アコーディオン、ヴァイオリン、ヴィオラを含む編成で、室内楽的な優雅さを
スリリングなアンサンブルで構築する、クラシカルかつアカデミックなチェンバーロックサウンド。
同郷の先達である、UNIVERS ZEROのダークでミステリアスな空気感を受け継ぎつつ、
アコースティック楽器の旋律を前に出した軽妙なサウンドで、ほどよい緊張感も備えている。
アコーディオンの音色にフルート、ピアノが絡む哀愁あるナンバーや、ドラムが入らないアンプラグドなナンバーなど、
暗黒性やスリリングな部分はユニヴェル・ゼロほどはないが、攻撃性がない分優雅な感触に包まれていて、
むしろチェンバーロックの本質を分かりやすく表現している。結果として、初心者にも楽しめるだろう好作品かと。
チェンバー度・・9 プログレ度・・7 スリリング度・・8 総合・・8
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Aranis 「Made in Belgium」
ベルギーのチェンバーロック、アラニスの2012年作
UNVERS ZEROPRESENTを含む、ベルギーの作曲家が手掛けた楽曲のカヴァー集で、
ヴァイオリン、ヴィオラの音色にフルートが絡み、ピアノを加えたクラシカルなアンサンブルで、
アカデミックな室内楽を先鋭的に昇華したサウンドを聴かせる。基本、ドラムが入らないので、
ロック色というのはほとんど感じさせない。純粋なチェンバー・ミュージックというべき作風であるから、
カヴァー作品ということも含めて、やや聴き手を選ぶ内容かもしれない。全体的にも現代音楽や
クラシック寄りのナンバーが多いのだが、ラストのプレザンのカヴァーは素晴らしい。
チェンバー度・・9 プログレ度・・7 スリリング度・・8 総合・・8
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Klaus Schulze「Moonlake」
ドイツのシンセ奏者、クラウス・シュルツェの2005年作
2003年のポーランドでのライブ音源を基にした作品であるがライブ感はほとんど感じない。1曲目は30分の大曲で、
シーケンサーによるリズムとデジタルなアレンジをバックに、わりと聴きやすい旋律を乗せたモダンなサウンドで、
スペイシーな世界観を描いてゆく。かつての薄暗い幻想性は薄まっているが、中東的なスキャットヴォイスを乗せた浮遊感と
ヴァイオリンが鳴り響く優雅な感触に、デジタルなビートによるシンプルなノリ融合した、独自のシンセミュージックが楽しめる。
ドラマティック度・・6 デジタル度・・8 シンセ度・・7 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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Klaus Schulze/Lisa Gerrard 「FARSCAPE」
ドイツのシンセ奏者、クラウス・シュルツェと女性シンガー、リサ・ジェラルドによる2008年作
7パート、それぞれ20~30分からなるCD2枚組の大作で、うっすらとしたシンセの重ねに
元DEAD CAN DANCEのリサ・ジェラルドの表現豊かな歌声を乗せた幻想的なサウンド。
バックのシンセは、ときにシーケンサーのリフレインも加わりつつもおおらかな感触なのだが、
彼女の妖しい歌声がときに即興的な響きとともに、このサウンドの主役となっていて、
単なるBGM以上の情感をかもしだしていて、ゆったりとした世界観に引き込まれる。
2CDで合計150分を超えるボリュームなので、これを通しで集中して聴くのは大変だが、
互いの魅力を引きたてた作風という点で、ユニットとしては成功した力作と言えるだろう。
ドラマティック度・・8 シンセ度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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Klaus Schulze/Lisa Gerrard 「Rheingold: Live at the Loreley」
ドイツのシンセ奏者、クラウス・シュルツェと女性シンガー、リサ・ジェラルドによる2008年作
ドイツのライン川の名所ローレライ近くで行われた、2008年のライブステージをCD2枚に収録。
ワーグナーの「ニーベルングの指輪」をコンセプトに、スタジオアルバム 「FARSCAPE」の流れを汲みつつ、
よりシュルツェらしい即興的な演奏スタイルでシンセを重ね、10分から30分を超える大曲を描いてゆく。
リサ・ジェラルドの歌声もローレライの妖精さながらに、シンセサウンドに溶け込むような幻想的な響きで、
ときにワーグナーのオペラを物語るようである。Disc2では、デジタル調のナンバーも挟みつつ、
女性声を活かすしっとりとした大曲から、ラストのアッパーなナンバーと案外メリハリのある聴き心地。
ボーナストラックの「ニーベルング」こそやや単調な感触だが、リサの歌声とのバランスのとれたライブ作品である。
ドラマティック度・・8 シンセ度・・9 幻想度・・8 総合・・8
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Klaus Schulze/Lisa Gerrard 「Dziekuje Bardzo」
ドイツのシンセ奏者、クラウス・シュルツェと女性シンガー、リサ・ジェラルドによる2009年作
2008年ポーランドでの2公演を3CDに収録。シュルツェ御大はよほどリサとのコラボが気に入ったのだろう、
40分におよぶ大曲をそれぞれ2公演のメインに配し、CD3枚で180分を超える大ボリュームのライブ作品である。
詠唱のような男性声と女性声が絡まり、東洋的な旋律を乗せたナンバーから始まり、シーケンサーのリフレインを加えた
シュルツェサウンドが広がってゆく。前回のライブ作品に比べても、シュルツェとリサの二人の表現力が互いを高め合っていて、
より深い部分での世界観の融合を感じさせる。ときに妖しく語るように、ときにオペラティックに響き渡るリサの歌声は、
曲によっては完全にサウンドの主役となっていて、しっとりとした静寂パートを含む40分の大曲を描く音の説得力も素晴らしい。
ドラマティック度・・8 シンセ度・・9 幻想度・・9 総合・・8
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Tangerine Dream 「Great Wall of China」
ドイツのエレクトロ系ユニット、タンジェリン・ドリームの2000年作
1970年にデビュー、Klaus Schulzeと並ぶシンセサイザーミュージックの大御所である。
本作はタイトルのように万里の長城をテーマにしたドキュメンタリーのサウンドトラック作品。
エレピによる美しい旋律ををうっすらとしたシンセの重ねが包み込む、雄大なシンセミュージック。
かつての作品のようなスペイシーな幻想性はさほど感じられない、いかにもサントラらしい聴き心地であるが、
楽曲は4~7分前後と、わりとしっかりと長さがあって、全62分でエレクトロなシンセサウンドが楽しめる。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・6 シンセ度・・8 総合・・7.5
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Tangerine Dream 「Silver Siren Collection」
ドイツのエレクトロ系ユニット、タンジェリン・ドリームの2007年作
過去の音源をセルフカヴァーしたアルバムで、80~90年代の楽曲を中心にしたセレクトで、
透明感のあるデジタルなシンセの重ねと、シーケンサーによるリフレインによる、
新たなアレンジでモダンなシンセミュージックを聴かせる。打ち込みによるドラムも加わった
デジタルなビート感と、美しいシンセサウンドが融合した聴き心地で、現在形のTDらしさを表現している。
個人的にはやはり、70年代のリメイクアルバムなども聴いてみたい気がする。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・6 シンセ度・・8 総合・・7.5
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GONG 「Live 2 Infinitea」
フランス&イギリスのサイケロック、ゴングのライブ。2000年作
1974年作「YOU」を最後に、デヴィッド・アレン、ジリ・スマイス、スティーヴ・ヒレッジが脱退、
ドラムのピエール・ムーランを中心に、ジャズ/フュージョンロックバンドとして活動再開し、
その後は「ピエール・ムーランズ・ゴング」の名前で活動を続けてゆく。一方のデヴィッド・アレンは、
オリジナルなGONGとしての再編を繰り返しながら、2000年に復活作「Zero to Infinity」を発表する。
本作は2000年の英国公演を収録。復活作からのナンバーを中心に、サックスが鳴り響き
安定したリズムセクションとノリの良いアンサンブルに、アレン&ジリの歌声を乗せた、
サイケなゴングサウンドが楽しめる。さすが二人の歌声は老年の雰囲気であるが、
この復活がのちの傑作「2032」へとつながることを思えば、感慨深い復活のライブである。
ライブ演奏・・7 サイケ度・・8 ゴング度・・8 総合・・7.5
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Erik Wollo 「Gateway」
ノルウェーのミュージシャン、エリク・ウォロの2010年作
北欧のジャズロック&ニューエイジ界では、TERJE RYPDALの再来とも言われるギタリストで、
うっすらとしたシンセに包まれて、叙情的なギターがやわらかに響き渡る、涼やかで幻想的なサウンド。
曲によっては打ち込みのドラムも加わったロック色も覗かせて、ギターが奏でる旋律の美しさとともに、
GANDALFのようなニューエイジ、ヒーリング的なシンフォニックロックとしても楽しめる。
重ねられたシンセサウンドやシーケンサーのリフレインは、Klaus Schulzeを思わせるが、
そこにギターが加わると、ぐっと北欧シンフォ寄りになる。全70分の幻想ニューエイジ・シンフォ作品。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 幻想度・・9 総合・・8
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9/2
そろそろ秋の気配(220)


Big Big Train 「Grimspound」
イギリスのプログレバンド、ビッグ・ビッグ・トレインの2017年作
1993年にテビュー、すでにキャリア25年に及ぶベテランで、現在も旺盛にアルバムを発表し続けている。
12分を超える大曲から始まる本作は、のっけからシンフォニックロックとしての泣きが全開で、
メロウなギターにマイルドにヴォーカルを乗せ、英国らしいウェットな叙情に包まれたサウンドを描く。
ベテランらしい優雅なアンサンブルと、古き良きプログレのテイストを含んだ構築センスも見事で、
艶やかなヴァイオリンやチェロ、優美なピアノが加わった典雅なクラシカル性にもうっとりである。
近年のキャッチーでモダンな路線から、本格派のシンフォニックロックへと回帰したというべき大傑作。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 優雅度・・9 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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Big Big Train 「The Second Brightest Star」
イギリスのプログレバンド、ビッグ・ビッグ・トレインの2017年作
前々作「Folklore」、前作「Grimspound」を補完するアルバムで未発曲を主体に、別アレンジバージョンなどを収録。
ストリングスを含む壮麗なアレンジから、マイルドなヴォーカルでゆったりと聴かせる歌ものパートまで、
英国らしい叙情性と、このバンドらしいキャッチーなメロディアス性をたっぷりと含んだ聴き心地で、
新作アルバムとして聴いても十分楽しめる内容だ。ヴァイオリン鳴り響くクラシカルな小曲なども味わい深く、
随所にプログレらしい展開美やメロウな泣きのギターも加わった、シンフォプログレとしての王道を含ませた、
心憎いアレンジはキャリアのあるバンドならではだろう。そして後半の「Grimlore」と題された再構成組曲は圧巻だ。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 優雅度・・9 総合・・8
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Crippled Black Phoenix 「Bronze」
イギリスのプログレ・ドゥームロック、クリップルド・ブラック・フェニックスの2016年作
2007年にデビュー、ポストロック、プログレ、ドゥームロックの要素を融合させたセンス抜群のバンド、
7作目となる本作は、物語的なナレーションとシンセによるイントロからコンセプト風の壮大さを感じさせ、
2曲目に入ると、ヘヴィなギターも加わった重厚なドゥームロック感触が現れる。オルガンやメロトロンに
変拍子を使用したリズムなど、プログレ的な要素を含ませつつ、どっしりとしたサウンドを描いてゆく。
一方では70年代的なオールドロックの感触も本作では強めてきていて、ブルージーな渋さも随所に覗かせる。
9分前後の大曲をじっくりと構築する力量とセンスもさすがで、後半には女性ヴォーカルを乗せたナンバーもあったり、
イーグルスのギタリスト、Joe Walshのソロ曲のカヴァーというのは渋いセレクトながら、世界観によくマッチしている。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 重厚度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Fish On Friday 「Quiet Life」
ベルギーのプログレハード、フィッシュ・オン・フライデーの2017年作
前作も絶品のメロディで聴かせる傑作であったが、本作はのっけからオルガン鳴り響くオールドな感触に、
マイルドなヴォーカルを乗せた繊細な叙情に、メロウなギターを乗せた優しいシンフォニックロックが広がる。
女性声も加わった優美なメロディアス性は、ときにKAYAKなどにも通じる雰囲気もありつつ、
キャッチーなプログレハード風味をより繊細かつメロウに仕立て上げたというサウンドだ。
アコースティックギターやフルートも鳴り響く、しっとりとしたパートも含みつつ、泣きのギターフレーズや
Moon Safariばりのコーラスでじわじわと盛り上げる、シンフォニックロックとしての王道もしっかりと聴かせる好作品です。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 優美な叙情度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Anthony Phillips 「Sail the World」
イギリスのミュージシャン、アンソニー・フィリップスの1994年作
世界一周ボートレース「THE WHITEBREAD ROUBD THE WORLD RACE」1993年大会のドキュメンタリー番組用に制作されたサントラ作品。
シンセとギターを中心に、デジタルなアレンジを施したサウンドで、1~3分台の小曲を主体にしたいかにもサントラ的な内容。
きらびやかなシンセを軽快なリズムに乗せた、メロディックで爽快な楽曲が多く、リフレインされるギターのフレーズには
さすがにアンソニーという繊細なセンスも覗かせ、うっすらとしたシンセによる幻想的なナンバーなども耳心地よい。
ただ、基本は展開というものがほとんどない、BGMと言ってよい代物なので、プログレとして聴くには少しつらい。
全26曲のインスト曲を海とヨット、波間の夕日などの景色を想像しながら、のんびりと楽しむのがよいのだろう。
ドラマティック度・・6 プログレ度・・6 楽曲・・7 総合・・7 過去作のレビューはこちら
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Anthony Phillips & Harry Williamson 「Battle of The Birds & Gypsy Suite」
アンソニー・フィリップスとGONG関連で活躍するギタリスト、ハリー・ウィリアムソンとの2004年/1995年作のカップリング2CD。
「Gypsy Suite」は1975~78年に録音された作品で、二本のアコースティックギターが絡む、素朴な叙情を描くサウンド。
アコギ以外の楽器はほぼ入っていいないので、非常にシンプルな聴き心地であるが、8分、10分という大曲を
ゆったりと優雅につむいでゆくのは、繊細な美意識のあるアーティストでなければできないだろう。
「Battle of The Birds」は、フルートが鳴り響き、物語的な語りによるイントロから始まるコンセプト的な作風。
12弦ギターのつまびきに艶やかなヴァイオリン、フルートやオーボエの優雅な音色に女性声のナレーションが重なり、
配役ごとの男性声がセリフを重ねてゆく。ほとんど音楽をバックにした物語朗読という聴き心地ですね。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・6 物語度・・8 総合・・7.5
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Spring 「Second Harvest」
イギリスのプログレバンド、スプリングの未発音源集。2008年作
1971年に唯一のアルバムを残して消えたバンドの2作目用の未発音源のCD化。
「トリプルメロトロン」のうたい文句でマニアに支持された1作目に比べると
本作のサウンドは、オルガンをメインに使用した、ブリティッシュロックになっている。
メロトロンの使用は控えめながら、やわらかなピアノにフルートの音色、
随所にブラスやストリングスも加わった優雅なアレンジで、英国らしい良質のオルガンプログレが楽しめる。
日本盤では「ジ・アンタイトル2」としてジャケ違いで先に発売されている。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 英国度・・8 総合・・7.5
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Alan Simon 「Excalibur II:The Celtic Ring」
フランスのアーティスト、アラン・サイモンのケルティックロック・プロジェクトの第2弾。2007年作
アーサー王伝説をテーマに、アラン・パーソンズ、ジョン・ウェットン、ジョン・アンダーソン、カラン・ケイシー、FAIRPORT CONVENTION、
マディ・プライア、ジャッキー・マクシー(PENTANGLE)、ジャスティン・ヘイワード(The Moody Blues)、BARCLAY JAMES HARVEST、
カルロス・ヌヌス、といった、名だたるアーティストが参加、バウロンのリズムにアコースティックギター、ホイッスルが鳴り響き
トラディショナルなケルトサウンドから、モダンなバンドサウンドを融合させたナンバーまで、なかなか色彩豊かな聴き心地。
アコースティカルな牧歌性に包まれたサウンドを描いてゆく。マディ・プライアの歌を乗せたしっとりとしたナンバーや、
フェアポート・コンヴェンションが参加した本格派のナンバー、ジャッキー・マクシーの歌うフォークロックナンバーなども素敵です。
BJH参加のナンバーは繊細なシンフォニックロックとしても楽しめますね。豪華ゲスト参加の、ケルトロックがたっぷり詰まった力作。
ドラマティック度・・8 ケルティック度・・8 豪華ゲスト度・・9 総合・・8
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Alan Simon 「Excalibur III: The Origins」
アラン・サイモンによる、アーサー王伝説をテーマにしたケルティックロック・プロジェクトの第3弾。2012年作
FAIRPORT CONVENTION、BARCLAY JAMES HARVEST、セシル・コルベル、ジョン・ウェットン・ジェフ・ダウンズ、
ジョン・ヘリウェル(SUPERTRAMP)、ジャッキー・マクシー(PENTANGLE)、マーティン・バレ(JETHRO TULL)、
モイヤ・ブレナン(CLANNAD)、さらにはロバート・ティランティ(LABRYNTH)といった顔ぶれが参加、
今作はオーケストラアレンジを含むシンフォニックな美しさと、前作よりもバンドサウンドを強めた感触で、
ダイナミックでスケール感のあるケルティックロックが楽しめる。ホイッスルやバグパイプ、ハープにヴァイオリンなど、
アコースティックなパートを取り入れつつ、全体的にはプログレ、シンフォニックロックのリスナーに楽しめる作風だ。
前作に比べるとよりトータルな流れでストーリーを感じさせる内容になっている。全19曲67分の大作です。
ドラマティック度・・8 ケルティック度・・7 壮大度・・9 総合・・8
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Eden's Bridge 「Celtic Worship Live」
イギリスのケルティックバンド、エデンズ・ブリッジのライブ作。2009年作
2002年のスタジオアルバムはIONAばりのケルティックロックであったが、本ライブはアコースティック主体の演奏で、
アコースティックギターに美しい女性ヴォーカルの歌声を乗せ、随所にやわらかなフルートも加わった、
しっとりとした素朴な聴き心地。ドラムが入らないのでロック色は薄いものの、うっすらとしたシンセも加わった、
幻想的な味わいもありつつ、紅一点ネサラさんの優しい歌声にうっとりと浸れます。伝統的なケルトというよりは
すっきりとしたコンテンポラリーな作風なので、一般のリスナーにも聴きやすいでしょう。
ライブ演奏・・8 ケルティック度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8
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CRISTEL 「Il Tempo Il Nulla L'Amore ed io...」
イタリアの女性シンガー、クリステルの2010年作
ムフフなジャケにつられて購入しましたが、サウンドの方はアコースティックギターのつまびきに、
イタリア語による美しい歌声を乗せ、適度にロック色も加わった、コンテンポラリーな聴き心地。
オルガンを含むシンセにメロウなギターの旋律は、プログレ/シンフォ系のリスナーにもアピールしそう。
彼女の艶めいた歌声は、若手ながらも表現力があって、しっとりとした叙情パートから、
ストリングスなどによるオーケストラルなアレンジとともに盛り上がってゆく感触は、
いかにもイタリアらしい美意識に包まれている。キャッチーなポップ性と、シンフォニック要素が融合した好作品。
全31分というミニアルバム並みに短いのが惜しい。この歌声をもっと聴きたいですわ♡
メロディック度・・8 シンフォニック度・・8 女性Vo度・・9 総合・・8
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AUTUMN'S GREY SOLACE 「Riverine」
アメリカのシューゲイザー/アンビエントロック、オータムズ・グレイ・ソラスの2005年作
男女の2人組ユニットで、アコースティックギターに美しい女性ヴォーカルの歌声を乗せた、
しっとりとした浮遊感に包まれたサウンド。シンセは使わずに、サウンドスケープ的なギターの重ねと、
女性声による幻想的な聴き心地で、ドラムの入った適度なロック感触も含めて、とても耳心地が良い。
アンニュイな薄暗さもあるが、ゴシック寄りというわけではなく、案外キャッチーな爽やかさも感じさせる。
透き通るような女性ヴォーカルにウットリ。女性声のシューゲイザー・ポストロックという好作品です。
メロウ度・・8 しっとり浮遊感・・9 女性Vo度・・8 総合・・8
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AUTUMN'S GREY SOLACE 「Ablaze」
オータムズ・グレイ・ソラスの2008年作
キーボードを使わないというモットーで、ディレイの効いたギターと美しい女性ヴォーカルによる、
浮遊感のあるキャッチーなシューゲイザー・ポストロックは本作も同様。エリン嬢の歌声の表現力が増したことで、
メロディラインのフックがより魅力的になり、シンプルな楽曲構造でも耳心地よく楽しめる。
シンセ抜きでここまできらきらとした音作りができるのも、すべてのインストパートを手掛ける
スコット・フェレルの手腕によるところが大きいのだろう。今作では適度にモダンなアレンジのナンバーもありつつ、
女性声アンビエント・ロックとしての魅力はしっかりと残している。フィメールロックファンはぜひチェック。
メロウ度・・8 しっとり浮遊感・・9 女性Vo度・・9 総合・・8
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8/27
晩夏のシーザー祭り!(207)


J・A・シーザー「さらば箱舟」
寺山修司監督の映画「さらば箱舟」のサウンドトラック作品。1983年作
天井桟敷の公演「百年の孤独」をモチーフに映画化された作品ということで、
サントラという性質上、楽曲は1~3分前後の小曲がほとんどであるが、
シーザーによる土着的で呪術的な世界観という点では、むしろ色濃く出ていて、
民族的なパーカッションに笛やヴァイオリンの音色が、異国的なトラッド感をかもしだす。
女性スキャットが妖しく響く小曲から、昭和演歌なナンバーまで、どこかなつかしい哀愁や
不思議な神秘性を感じさせる空気感は、確かにシーザー氏らしい内的世界の側面だろう。
たとえば、POPOL VUHあたりにも通じる幻想的な土着感に包まれたサントラ作品だ。
ドラマティック度・・7 呪術度・・8 民族度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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J・A・シーザー 「国境巡礼歌・完全盤」
寺山修司率いる劇団「天井桟敷」の音楽を担当、その後は「万有引力」を率いるアーティスト。1973年のライブ作品。
発売から40周年を迎え、リサイタル当時の演奏順に曲を並び替え、2013年に新たにリマスター&リミックスを施して
さらに未発表曲を加えたCD2枚組の完全版。以前のCDとは曲順が違うため、ライブ作品としての印象がまったく違い、
笛と琴が鳴り響き、女性声の語りの入ったイントロからして、昭和的な濃密なアングラ感に包まれて妖しさたっぷり。
元々のテープにあったノイズも含めて、臨場感溢れるサウンドが当時のリサイタルの空気感までを伝えてくれる。
ギターやドラムも入ったロック色とサイケな浮遊感が、蘭妖子の艶めいた歌声と合わさって、土着的な呪術性と
実験演劇的な香りを強烈に放っている。CD2枚、135分におよぶリサイタルの全貌を味わえるファン必携作ですな。
ライブ臨場感・・9 アングラ度・・10 サイケ演劇ロック度・・9 総合・・9
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J・A・シーザー 「伝奇音楽集 鬼火 天井棧敷音楽作品集VOL.2」
未発のライブ音源を中心にしたCD5枚組ボックスセットの第二弾。2012年作
Disc1と2にには1977年の伝奇音楽会「鬼火」と1978年「月蝕歌」のライブ音源を収録。正規ライブ音源の「国境巡礼歌」とはまた違った迫力で、
生々しい音質も含めて、オルガン鳴り響くサイケデリックな昭和ロック感と、日本的な妖しい土着性に包まれた空気感に圧倒される。
「せっきゃうしんとくまる」と、「草迷宮」は、のちの「身毒丸」の原点というべき演劇的なロックオペラで、合わせて60分を超える音源だ。
Disc2の「組曲・怪人フーマンチュー」は音質がややラウドながら、こちらも後に長編演劇化されることを思えば、貴重なプロトタイプ。
Disc3、4には、1979年「闇乃降誕祭」、1975年「J.A.シーザーリサイタル」、1980年「萱草歌」からのライブ音源を収録。
組曲「十字架の蜃気楼」は、「島原の乱」をコンセプトに、男女混声の語りや歌声を乗せた66分に及ぶ演劇オペラ大作。
Disc5には1981年「蘭妖子コンサート」を収録。天井桟敷が誇るシンガーのハスキーな歌声と、ヴァイオリン、フルートが鳴り響き、
バンド編成による全17曲の歌謡サイケが堪能できる。シーザー関連のライブをたっぷり収録した5枚組、必携のボックス作品である。
ライブ臨場感・・9 アングラ度・・10 サイケ演劇ロック度・・9 総合・・8.5
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J・A・シーザー 「少女革命ウテナ/わたし革命ファルサリア<<変身譜>>」
J・A・シーザーが同アニメ用に書いた楽曲を、光宗信吉が編曲した楽曲を集めたアルバム。2016年作
ウテナの決闘シーンでおなじみの、「絶対運命黙示録」、ED曲である「バーチャルスター発生学」をはじめ、
インパクトのあるアヴァンギャルドな歌詞と混声合唱、そして古き良きロックの感触が融合された楽曲は、
当時は大変新鮮に思えたものだ。あらためて聴くと、光宗信吉氏によるアレンジが、アングラの極地であったシーザーのサウンドを
良い意味でスタイリッシュに、一般向けに昇華していて、演劇、舞台色を感じさせすぎないバランスが見事だったのだと思う。
ここから入った方は、シーザーのそれぞれの濃密な作品群を味わえるだけの感性を、助走的に身に着けてゆけたのだろうから。
リマスターにより音質もぐっと向上していて、かつてウテナの合唱曲にしびれた方は、ぜひチェックして欲しい。
ドラマティック度・・8 ウテナ度・・9 シーザー度・・8 総合・・8
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J・A・シーザー 「不思議オペレッタ・ある家族の血の起源」
J・A・シーザー率いる演劇実験室「万有引力」が1995年に上演した劇中歌のCD化作品。2016年作
かつての天井桟敷時代の作品「阿片戦争」「走れメロス」「ある家族の血の起源」の劇音楽を再構成したというべき作品で、
1~3分前後の小曲がほとんどで、リズムも含めて打ち込みによる作風はいかにもサントラ風であるが、
男女ヴォーカルによる妖しい歌詞を乗せた雰囲気は、昭和と現在をリンクするどろどろとした土着性を匂わせる。
ときに「少女革命ウテナ」のBGMに通じる雰囲気もありつつ、演劇的なセリフなどを含んだ言葉の面白さと、
アヴァンギャルドなセンスを昭和オペラ的な郷愁と狂気に混ぜ込んだ、一種独特の聴き心地が味わえる。
個人的には生演奏での音源が好きだが、デジタル音源による往年の劇音楽の空気感を再現する異色の作品である。
ドラマティック度・・7 ロック度・・6 怪しげ度・・8 総合・・7.5
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J・A・シーザー 「青少年のためのJ・A・シーザー入門」
劇団「天井桟敷」の音楽担当にして、「万有引力」を率いるアーティストの2枚組ベストアルバム。2015年作
Disc1には、「天井桟敷」の15年間にレコーディングされた歌曲を収録。ほとんどが寺山修司による歌詞で、
若き日のシーザーの歌声を乗せたサイケデリックな味わいのナンバーから、混声合唱によるシアトリカルな作風は
現在までつながる独自の土着性と、濃密なアヴァンギャルド性を含んで、時代的な濃密な空気感に包まれている。
Disc2には、1979年のコンサートから、復活後2012年「山に上がりて告げよ」、2013年「大鳥の来る日」を中心に収録。
シーザーのことを何も知らない青少年にいきなり聴かせるには、いささかアングラでディープなインパクトが強い気もするが、
むしろライトなファンにとっては、この異色のアーティストの70年代の作品群と近年までのライブがあらためて俯瞰出来る必聴作だ。
演劇ロック度・・8 アヴァンギャル度・・8 シーザーの歴史度・・9 総合・・8.5
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J・A・シーザー「山に上りて告げよ」
シーザー名義としては32年ぶりの復活ライブとなった、2012年の新宿でのステージを収録したCD+DVD。
筆者もこのコンサートに足を運んだのだが、開演間から異様な空気と熱気が会場を包み込んでいたと記憶している。
オルガンにフルートが鳴り響き、オールドな昭和ロック感に包まれたサウンドに、シーザー氏のやや不安定な歌声を乗せた、
独特の世界観が30年の時を超えて蘇る。クリアすぎない音質もむしろアナログな雰囲気があってよい感じだし、
長年の盟友であるギタリスト、森岳史氏(シーザーと悪魔の家)も参加していることも大きいだろう。楽曲的には、
ドラマティックな展開に圧倒される「精霊飛蝗」、40年前からの代表的なナンバー「越後つついし親不知」あたりが白眉ですね。
バックのバンドには、Mysterious Priestess、Knights of Roundといったメタル系バンドのメンバーが参加しているのも興味深い。
DVDの方はカメラワーク的な不満などはあるものの、当日の貴重な映像記録という点では、ファンには必見と言わざるを得ない。
ライブ演奏・・8 アングラ度・・8 シーザー度・・9 総合・・8.5
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J・A・シーザー 「大鳥の来る日 - THE END OF THE WORLD」
2012年の「山に上りて告げよ」に続く、2013年のライブを収録した復活後2作目となるCD2枚組。
「少女革命ウテナ」の楽曲「絶対運命黙示録」から始まり、混声合唱を乗せた異質のスケール感とともに、
「天地創造すなわち光」、「ワタシ空想生命体」と続いてゆく。ツインギターにツインシンセという編成で、
厚みのある音の塊はまさに圧巻である。その後も「邪宗門」、「田園に死す」からのナンバーも含め、
シーザーの渋い歌声を乗せたナンバー、蘭妖子、蜂谷眞未などの女性ヴォーカル陣に、少年合唱隊も参加、
とくに蘭妖子の独特の声は、演劇的なセリフも含めて天井桟敷の時代を強く感じさせ、往年のファンも嬉しいだろう。
シーザーの歌メインのナンバーを集めた前作に比べて、今回は愉快な(?)MCも含めてライブの全体の流れが楽しめる。
ラストは合唱を乗せた「大鳥の来る日」で感動的に締めくくる。シアトリカルな演劇性も随所に含んだ、じつに濃密な138分である。
ライブ演奏・・9 アングラ度・・9 シーザー度・・9 総合・・8.5
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万有引力「Vol.1 1994-2007」
J・A・シーザー率いる演劇実験室「万有引力」による、1994年~2007年までの楽曲を集めた2CD。
1~3分前後の小曲を主体にDisc1に31曲、Disc2に30曲を収録。Disc1は打ち込みリズムにハードなギターを乗せた、
いわゆるウテナ以降のサウンドで、インストのナンバーはなんだかゲームのBGMっぽいのだが、
男女混声の歌声や女性スキャットが入ったナンバーは、例によって摩訶不思議な歌詞とともに、
どこかなつかしい哀愁を漂わせたシーザー節が楽しめる。Disc2には生演奏による古めのナンバーもあって、
こちらはインストであっても歪んだギターの生々しいロック色が感じられて、より妖しい聴き心地が楽しめる。
オルガンやフルートが入ったナンバーはプログレ的でもある。音質が良すぎない点も含めて古い音源の方が好みですね。
ドラマティック度・・7 ロック度・・6 シーザー度・・8 総合・・7.5
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万有引力「Vol.2 1983-1993」
J・A・シーザー率いる演劇実験室「万有引力」による、1983年~1993年までの楽曲を集めたCD。
Vol.1の方は、打ち込みによる音源が中心だったのだが、こちらは生演奏による録音が多く、
うねりのあるギター、ベースに、アナログ感あるドラムがおどろおどろしい迫力となっていて、
日本語歌詞による怪しい世界観も含めて、まさに往年のJ.A.シーザーサウンドという聴き心地。
ややラウドな音質も土着的な生々しさを助長していて、女性ヴォーカルや混声コーラスなども加わったり、
哀愁を漂わせるサーカス風のナンバーや、一点してハードロック調のナンバー、さらには歌謡民謡調など、
けっこう曲調が幅広く、シンセによる小曲などもプログレ的な味わいがある。リズムが打ち込みのナンバーもあるが、
年代的にもデジタルに移行前の、昭和の空気感を残した雰囲気で、全30曲70分を濃密に楽しめる。
ドラマティック度・・8 ロック度・・8 シーザー度・・8 総合・・8
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演劇実験室・万有引力「黙示録」
J・A・シーザー率いる劇団「万有引力」の舞台用劇中歌を集めた作品。
アニメ「少女革命ウテナ」でも使用されたシーザー作曲の合唱曲を中心に全18曲を収録。
アニメ版とは異なるアレンジで、リズムが打ち込みのため、ロックとして聴くには物足りなさがあるのだが、
男女混声合唱のヘタウマ感も含めて、アングラ臭漂う独自の世界観が楽しめる。
サウンドの平坦さもあって、いかにも舞台BGM的なところは否めないのだが、
90年代後半以降の万有引力とシーザーの方向性が詰まったナンバーが揃っていて、
ファンであればチェックして損はない。ウテナから入ったリスナーにもお薦めですね。
ドラマティック度・・7 ロック度・・6 シーザー度・・8 総合・・7.5
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演劇実験室・万有引力「幻想音楽劇 リア王 - 月と影の遠近法」
2014年に公演された、劇団「万有引力」による舞台音楽のサントラ作品。2014年作
1~3分前後の小曲を中心に、アコースティックギターやフルートによるアコースティックなナンバーから、
いかにもJ・A・シーザー節という合唱曲まで、全40曲を収録した74分のボリューム。
オペラティックなソプラノ女性ヴォーカルを乗せたナンバーなどはとても美しく、
旋律的にもヨーロピアンとアジアンの両要素取り入れた雰囲気は、シェイクスピアを下地にした作品だからだろう。
往年のシーザー作品のような濃密なアングラ臭はないものの、単なるサントラ以上に世界観を伝えるサントラ作品だ。
ドラマティック度・・7 ロック度・・5 シーザー度・・7 総合・・8
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万有引力 「劇中歌唱曲集 あなたに - 大島睦子 Sings Selection」
J.A.シーザー作曲の劇中歌を、万有引力の俳優にしてシンガー、大島睦子が歌う全22曲を収録。
シンセの打ち込み音源を主体にしたサウンドは、歌詞こそシーザーらしい世界観であるが、
ロックやサイケ的な要素は薄めで、彼女の美しい歌声によるしっとりとした雰囲気だ。
間奏部分のほとんどない、1~3分前後の歌もの小曲で、ヴォーカルにあまり毒気のないこともあり、
妖しさや濃密さの点では物足りず、プログレ方面のリスナーにはやや退屈かもしれない。
全体的に綺麗な聴き心地なので、ウテナなどの劇中歌が好きな方ならわりと楽しめるかと。
ドラマティック度・・7 ロック度・・3 女性Vo度・・7 総合・・7
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畑亜貴 「隷属快美の娘達」
日本の女性SSW、はた・あきのベストアルバム。2007年作
アニメやゲーム方面ではすでにその名を知られたアーティストで、本作はゲーム系の楽曲を中心にしたCD2枚組。
キュートな歌声とは裏腹に、毒気のある破滅系の歌詞というギャップでもインパクトのある彼女であるが、
ゲームのテーマ曲がメインということもあって、本作のDisc2は、わりと可愛い系のキャッチーなナンバーが揃っている。
ポップなきらびやかさにオールドな歌謡ロック的なアレンジも合わさって、それなりにクオリティは高いのだが、
これを14曲続けて聴くのはちょっと厳しい。Disc2には、しっとりとしたゴシック寄りのナンバーから、
クラシカルでシンフォニックなアレンジの優雅な叙情性が、コケティッシュな彼女の歌声とよくマッチしている。
のちの死蝋月比古にも通じる感触で、個人的にはこの2枚目の作風が好きですね。
メロディック度・・8 ポップ度・・8 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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死蝋月比古 「永遠無惨」
畑亜貴によるゴシックプロジェクト、しろうつきひこの2013年作
こちらの名義では2008年「純血鬼爛」以来となる作品で、クラシカルなピアノとヴァイオリンが鳴り響き、
そこにキュートでエキセントリックな歌声を乗せた、耽美な幻想性に包まれた世界観。
畑亜貴嬢の舌足らずな歌唱は、ロリータ的な可愛らしさと、毒気を含んだ退廃の美を感じさせ、
人によっては好みが分かれるだろうが、この絶妙な「アキバ系ゴシック」というべき空気感は、確信犯的な絶妙さで、
前作に比べても、雰囲気モノとしての強度と楽曲のクオリティが上がっているので、けっこう楽しめます。
なにより、ヴァイオリンやピアノが打ち込みではない生の演奏なのがよいですね。
クラシカル度・・8 耽美度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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8/11
プログレで暑中お見舞い♪(192)


Barock Project 「Detachment」
イタリアのプログレバンド、バロックプロジェクトの2017年作
2007年のデビューから10年、いまやイタリアのみならずプログレ界の旗手のひとつとなるまでに成長したバンド。
若き天才の呼び声高いシンセ奏者、ルカ・ザッビーニを中心に、クラシカルな優雅さとキャッチーなメロディアス性を
高次元で融合させたサウンドは、5作目となる本作でいっそう磨きがかかっている。技量のあるリズムアンサンブルに、
伸びやかな英語のヴォーカルを乗せ、美しいシンセアレンジとともに適度にモダンな感触を含んだサウンドは、
英国のHAKENのように新時代のミクスチャー感覚と、It Bitesのようなプログレハードの爽快さを有していて、
ハード寄りのギターを乗せたテクニカルなパートはプログレメタル的でもあり、ふっと現れる叙情パートとのコントラストとなっている。
殻を突き抜けたようなダイナミックな展開力にはマイナー臭さは皆無で、自信にあふれたサウンドのパワーに引き込まれる。
ストリングスも加わった厚みのあるアレンジで随所にクラシカルな美学を覗かせる。まさに新時代の叙情プログレの傑作である。
ドラマティック度・・9 プログレ度・・8 爽快度・・9 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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The Neal Morse Band「The Similitude of a Dream」
アメリカのプログレ職人、ニール・モーズ率いるバンドの2016年作
バンド名義の作品としては2作目で、イギリスの教役者/文学者John Bunyanの「THE PILGRIM'S PROGRESS(天路歴程)」をテーマにした
CD2枚組のコンセプトアルバム。本作も、盟友マイク・ポートノイのドラムと、ランディ・ジャクソンのベースという鉄壁のリズム隊をバックに、
プログレらしいシンセワークとメロウなギターを乗せ、マイルドなヴォーカルを含むキャッチーな抜けの良いシンフォプログレを聴かせる。
テクニカルな展開力とメロディックな爽快さが合わさった、TRANSATLANTIC以降のスケール感あるサウンドは円熟に域に達している。
前作から加入のエリック・ジレットのギターとヴォーカルも、ときにサウンドのフロントを担っていて、ニールの渋みのある歌声とのコントラストが
楽曲にぐっと厚みをもたらしている。泣きの叙情と共にドラマティックに盛り上がる流れは、お約束ながらも聴き手の涙腺を刺激する。
ポール・ホワイトヘッドの手によるイラストを散りばめたブックレットも含めて、トータルな完成度の点でも代表作となりうる力作である。
ドラマティック度・・9 プログレ度・・9 ニールモー度・・9 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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Davy O'list 「Second Thoughts」
イギリスのミュージシャン、デイヴィッド・オリストの2015年作
The NICE、ROXY MUSIC、JETなどで活躍したギタリストで、本作ではヴォーカル、シンセ、トランペットもこなしている。
サウンドは、オルガンやムーグを含むシンセに、オールドな味わいのギターワークとマイルドなヴォーカルを乗せた
キャッチーな英国ロックという感触で、70年代を思わせるアダルトなクラシカルロックの趣をほどよく残している。
一方ではプログレらしい展開力のインストパートや、メロウなギターにシンセを重ねたプログレハード風味など、
歌パートとのコントラストで決して地味ではない耳心地で、結果としてシンフォニックな雰囲気でも楽しめたりもする。
ラストは14分の大曲で、美しいシンセにメロディックなギター、トランペットも加わった、優雅なシンフォニックロックを展開。
やわらかな英国プログレが味わえる好作品である。The Tangentのアンディ・ティリソンがシンセで参加。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 英国度・・9 総合・・8
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Il Castello Di Atlante 「Arx Atlantis」
イタリアのプログレバンド、カステッロ・ディ・アトランテの2016年作
1992年にデビュー、CalliopeSYNDONEらとともにイタリアのネオプログレシーンを牽引する存在として登場し、
キャリア25年をへた今も地道に活動を続けている。初期の作品はB級シンフォのイメージが強かったが、
前作から7年ぶりとなる本作は、最高作となった前作の内容を受け継ぎ、艶やかなヴァイオリンが鳴り響き、
オルガンやムーグを含むシンセとメロウなギターフレーズに、イタリア語の伸びやかなヴォーカルを乗せて、
ドラマティックなサウンドを描いてゆく。シンフォニックロックとしての叙情性とイタリアらしい濃密さとロマンの香りは、
かつてのままで、それをキャリアとともにレベルアップさせてきたバンドの力量が発揮された力作と言える。
ラストは16分の大曲で、じっくりと大人の哀愁と泣きの叙情で盛り上げつつ、軽妙な展開も含んだ構築力はさすが。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 イタリア度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Submarine Silence 「Journey Through Mine」
イタリアのプログレバンド、サブマリン・サイレンスの2016年作
MOONGARDENMANGALA VALLISにも参加するシンセ奏者、クリスティアーノ・ロベルシを擁するバンドで本作が3作目。
オルガンにムーグ、メロトロンを含む美しいシンセワークにハケットばりのメロウなギターフレーズを乗せた、
GENESISルーツのシンフォニックロックは本作も健在。アコースティックな12弦ギターのつまびきに、
枯れた味わいのヴォーカルで聴かせる、牧歌的な繊細さも持ち味で、うっすらと鳴り響くメロトロンもいいですね。
今作では、さらに80年代ジェネシス的なキャッチーなナンバーなどもあって、アルバム全体的にもレトロすぎず、
適度なモダンな感触とともに、BIG BIG TRAINあたりに通じる雰囲気も出てきた。10分を超えるナンバーでは、
じっくりと泣きの叙情を描く構築力で聴かせてくれる。ジェネシス系大好きという方は必聴この上ない傑作だ。
ドラマティック度・・8 叙情度・・8 ジェネシス度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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HOSTSONATEN 「Symphony N.1 - Cupid & Psyche」
イタリアのシンフォニックロック、ホストソナテンの2016年作
FINISTERRE、元LA MASCHERA DI CERのファビオ・ズッファンティが率いるメインユニットで、
1998年の1作目から始まり、壮大な四季の四部作や「老水夫の歌」など、シンフォニックロックの傑作を作り続けてきた。
本作はギリシャ神話の「エロス(クピド)とプシュケ」をテーマに、クラシカルなシンフォニーを表現したアルバム。
バレエ音楽的なイメージに沿って制作されたというサウンドは、クラシックの手法にシンフォニックロックをはめ込んだという感触で、
オルガンやムーグなどのシンセアレンジにフルートが鳴り響き、ストリングスやホーンセクションが楽曲に壮麗な厚みを加えながら
あくまで優雅な感触で構築されてゆく。いうなれば、英国のThe Enidにも通じるシンフォニーロックをイタリア的な濃密さで構築していて、
プログレらしいコテコテのシンフォ感もいくぶん残しつつ、優美な交響曲を鑑賞するようにも楽しめる傑作だ。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・8 優雅度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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LA CURVA DI LESMO
イタリアのプログレユニット、カーヴァ・ディ・レスモの2015年作
LA COSCIENZA DI ZENOのステファノ・アグニーニ、FINISTERREHOSTSONATENのファビオ・ズファンティを中心に
IL TEMPIO DELLE CLESSIDREのギターやERIS PLUVIAのフルート、さらにはSAINT JUSTのジェニー・ソレンティ、ANALOGYのユッタ・ニーンハウス、
新鋭女性シンガーのBeatrice Antoliniといったディープなメンバーが参加、メロトロン、オルガンが鳴り響き、男女ヴォーカルの歌声を乗せ、
古き良きイタリアンロックの叙情性と、アンニュイでしっとりとした空気感に包まれたサウンド。17分、26分という大曲を含む全3曲という構成で、
「イタリア版Paatos」というような薄暗いヴィンテージ感と、フルートやストリングスが加わったクラシカルな優雅さはOPUS AVANTRAを思わせる。
往年のイタリアらしい妖しいかぎろいと混沌たる濃密な美しさというのを、ここまで表現できるメンバーたちの実力の高さに敬服する傑作である。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 イタリア度・・9 総合・・8
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UNREAL CITY 「Il Paese Del Tramonto」
イタリアのプログレバンド、アンレアル・シティの2015年作
女性ギタリストを含む4人編成で、前作もなかなかの好作であったが、2作目となる本作も
オルガンやムーグ、メロトロンを含むシンセに、メロウなギターワークとイタリア語によるマイルドなヴォーカルを乗せた
古き良き感触のプログレサウンド。7~10分という長めの楽曲を中心に、今作では随所にイルバレ的でもある
エキセントリックなフレーズを覗かせ、適度にスリリングな混沌を含んだ濃密な聴き心地で飽きさせない。
一方では優雅なピアノに泣きのギターを乗せた、ゆったりとした叙情性もあって、牧歌的なシンフォとしての味わいも。
ラストは20分の大曲で、ゲストによるヴァイオリンも加わって、メリハリある構築性で展開する。全70分の力作。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 イタリア度・・8 総合・・8
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Reverie 「Gnos Furlanis」
イタリアのプログレフォーク、レヴェリーの2015年作
うっすらとしたシンセに包まれて、クラリネットの音色にマンドリンの素朴な響き、
優美なフルートに女性ヴォーカルの歌声を乗せた、シンフォニックなフォークロック。
小曲を連ねたコンセプト的な作風で、美しい女性声を乗せたクラシカルな優雅さと
ときにキャッチーでやわらかな聴き心地は、Renaissanceあたりに通じる感触もある。
イタリア語の響きも牧歌的な美しさによくマッチしていて、随所に叙情的なギターも加わって、
幻想的でシンフォニックなプログレとしても楽しめる。繊細な美意識に彩られた好作品だ。
ドラマティック度・・8 優雅度・・9 女性Vo度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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RanestRane 「Nosferatu Il Vampiro」
イタリアのプログレバンド、ラネストラーネの2009年作
ヴェルナー・ヘルツォークの名作「ノスフェラトゥ」をコンセプトにしたCD2枚組の大作。
オルガンやムーグ、ピアノなどの美しいシンセにメロウなギターを乗せ、イタリア語のヴォーカルを加えた、
叙情的なシンフォニックロックサウンド。2~5分の小曲を主体に、随所にSEや語りなどの映画的な演出も含んだ、
シアトリカルな空気感とともに、楽曲を連ねた流れの中でドラマティックな味わいを描いてゆく。
古き良きプログレの感触と、ミステリアスなドラマ性が融合した、シンフォニック・ロックオペラの力作である。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 イタリア度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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RANDONE 「Linea Di Confine」
イタリアのプログレバンド、ランドーネの2009年作
現代のカンタゥトーレと評価されるヴォーカリストにしてシンセ奏者、ニコラ・ランドーネ率いるバンドで、
2003年にデビューしてから本作は4作目となる。今作は一聴してコンセプトアルバム的な空気感に包まれていて、
メロトロン、オルガン、ムーグといったヴィンテージなシンセをたっぷりと使いながら、叙情的なギターワークに
イタリア語による伸びやかなヴォーカルを乗せた、やわらかなシンフォニックロックを聴かせてくれる。
ゆったりとした牧歌的な味わいは、やはりカンタゥトーレを基本にした叙情性で、スリリングな部分は薄いが、
ときにストリングスアレンジなども加わって、プログレらしい展開力を含んだ耳心地の良いサウンドが味わえる。
アルバム中盤以降の盛り上がりも繊細さと濃密さが同居していて、ラスト曲はいったん終わったと見せかけての大叙情。
今作はより多くのシンフォニックロックファンにアピールする出来だろう。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 イタリア度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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MALAAVIA 「VIBRAZIONI LIQUIDE」
イタリアのプログレバンド、マラーヴィアの2008年作
前作は女性声シンフォの好作であったが、2作目となる本作はアコースティックギターにフルート、サックスが鳴り響く、
地中海的なトラッドプログレ的な優雅で素朴な耳心地。一方ではメロウなエレキギターにムーグシンセが加わって、
イタリア語の男女ヴォーカルを乗せた、古き良きプログレ質感もあって、とらえどころのなさも案外味わいになっている。
ゆるやかなインストパートから、美しい女性声を乗せた叙情パート、曲によってはチェンバーロック風味もあったりと、
不思議なユルさが面白い。ラストは13分の大曲で、適度な展開力もあるマイナー臭いシンフォニックロックとしても楽しめる。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 イタリア度・・9 総合・・7.5

Jenny Sorrenti 「Medieval Zone」
イタリアの女性シンガー、ジェニー・ソレンティの2004年作
アラン・ソレンティの妹であり、Saint Justのヴォーカルとしても知られる彼女のソロ作品。
うっすらとしたシンセアレンジに、素朴なアコースティックギターにマンドラの音色、ドラムも加わった適度なロック色に、
美しいソプラノヴォーカルを乗せた、優美なフォークロックサウンド。しっとりとした聴き心地の中にも、
ほのかに妖しい翳りを含んだ独特の空気感は健在で、バックの演奏もアコースティック部分を含めてじつに見事。
ヴァイオリン、サックス、アコーディオン、ハープといった楽器も加わって、トラッド的に楽しめるナンバーや
シンセを使ったプログレ寄りのナンバーなど、コンテンポラリーなアレンジにもセンスの良さを感じさせる。
プログレ度・・7 優美度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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Gazpacho 「bravo」
ノルウェーのポストプログレ、ガスパチョの2003年作
自主制作によるデビューアルバムの2016年再発盤。いまやポストプログレの第一人者となった感のあるバンドだが、
本作の時点では、わりとハード寄りのギターを含んだロック色と、プログレ的なシンセによる味付けで、
モダンで繊細な薄暗系プログレというサウンドである。マイルドなヴォーカルにアコースティックギター、
オルガンなどのシンセが絡む繊細な聴き心地と、キャッチーな歌もの感触が合わさった作風は、
Porcupine Treeなどからの影響も感じさせる。3~6分ほどの楽曲を知的にスタイリッシュに構築するセンスは、
デビュー作ながらも光っていて、のちの作品に比べるとノリのあるロック感触も強いので、初心者にも入りやすいだろう。
ゲストによるヴァイオリンや女性ヴォーカルも加わったナンバーもあって、ゆったりと優しい聴き心地で楽しめます。
ドラマティック度・・7 薄暗度・・8 繊細度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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7/29
さすがのハケット先生!(178)


Steve Hackett 「The Night Siren」
元Genesisのギタリスト、スティーヴ・ハケットの2017年作
ジェネシスのセルフカヴァー以降、ライブ作品を含めて旺盛な活動を続けるハケット先生、2年ぶりとなる本作は、
適度にモダンな感触とメロウなギターワークに自身のヴォーカルを乗せ、かつての「Darktown」あたりを思わせるウェットな感触の1曲目から、
キャッチーで軽快な2曲目へと続く、メリハリある流れがいつになく面白い。盟友、ロジャー・キングによる美しいピアノやシンセアレンジ、
ときにストリングスを含むオーケストラルなアレンジが、シンフォニックなスケール感を生み出し、ツアーでおなじみアマンダ・レーマンによる女性声も
華やかなアクセントになっている。一方では、アコースティックな叙情美や、キャッチーなポップ性も含んだナンバーなど、さすがの引き出しの多さ。
ジョン・ハケット、ゲイリー・オトゥール、ロブ・タウンゼンド、ナッド・シルヴァン、ニック・ディヴァージリオ、トロイ・ドノックリーなど多彩なゲストが参加、
ゴージャスで重厚な雰囲気に包まれつつ、ハケット印の優美なギターフレーズに酔いしれることもできるという。先生、やっぱり傑作です!
ドラマティック度・・8 重厚度・・8 叙情度・・8 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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The Pineapple Thief 「Your Wilderness」
イギリスのポストプログレ、パイナップル・シーフの2016年作
1999年にデビュー、いまやポストプログレ系の代表格となったこのバンド、11作目となった本作は
前作の歌もの路線を受け継ぎつつ、うっすらとしたシンセにマイルドなヴォーカルを乗せた繊細な叙情で、
ポスプログレの王道をゆくようなサウンドに立ち返っている。メロウなギターを乗せたメランコリックな泣きに、
曲によってはダイナミックなノリのパートも含んだりと、プログレとしてのメリハリある構成力も見事。
10分近い大曲も、優雅な叙情とキャリアのあるバンドらしいスケール感とともに、じっくりと構築してゆく。
ファンはもちろん、このバンドを初めて知る方にも勧められる、完成度の高いアルバムに仕上がっている。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 繊細な叙情度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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COSMOGRAF 「THE UNREASONABLE SILENCE」
イギリスのシンフォニックロック、コスモグラフの2016年作
マルチ・ミュージシャン、Robin Armstrongのソロプロジェクトで、SFストーリー的なコンセプト作品。
オルガンを含むプログレらしいシンセアレンジに、メロディックなギターを乗せた王道のシンフォニックロックで、
PENDRAGONARENAなどに通じる適度にハードな感触と翳りを帯びたウェットな叙情性も魅力的。
BIG BIG TRAINのニック・ディヴァージリオがドラムで全面参加していて、リズム面での安定感も抜群だ。
配役ごとに多数のゲストヴォーカルが参加した、ロックオペラ的なスケール感にときにポストプログレ的な
繊細な叙情も織り込んだメリハリある構築センスで、ドラマティックな味わいが楽しめる力作ですな。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 壮麗度・・8 総合・・8
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NIALL MATHEWSON 「ECLECTIC ELECTRIC VOL.1」
イギリスのシンフォニックロック、PALLASのギタリスト、ニアール・マテウソンのソロ。2015年作
パラス関連では2012年にアラン・リードが初のソロ作品を発表したが、こちらもソロデビュー作品となる。
わりとモダンなアレンジに包まれたキャッチーなプログレハード風味に、メロディックなギターフレーズが光る、
最近のBIG BIG TRAINHAKENなどにも通じる、いかにも現在形の英国プログレらしいサウンドだ。
ドラムやシンセ、ヴォーカルも含めて、ほぼ一人でこなしているというマルチプレイヤーぶりも素晴らしいが、
やはり味わいのある、古き良き感触のギターワークはさすがキャリアのあるミュージャンというところだろう。
インストメインの曲でも、ドラマ性を感じさせる緩急ある展開力にもセンスを感じさせる。10分近いラストの大曲では、
大人の渋みを感じさせるギターワークとシンフォニックなシンセを合わせたインストサウンドが楽しめる。英国らしい好作品だ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 英国度・・8 総合・・8

Karfagen 「Spektra」
ウクライナのシンフォニックロック、カルファゲンの2016年作
Sunchildでも活躍するアントニー・カルギン率いるバンドで、本作がすでに8作目となる。
美しいシンセアレンジにメロディックなギター乗せた、優雅で軽妙なアンサンブルで聴かせる
リリカルなシンフォニックロックサウンド。ヴァイオリンやフルートなども加えたクラシカルな美しさに
随所にプログレらしいスリリングな展開力も含んだ構築センスは、さすがの才人ぶりである。
三部構成に分かれたアルバム中盤には、アコースティカルな小曲から、21分におよぶ組曲を配した流れで、
インスト中心ながらもドラマティックな世界観を丹念に描いてゆく、シンフォニックロックとしての強度も素晴らしい。
アルバム後半はゆったりとした叙情曲が続いて優美に締めくくる。じつに上品な聴き心地の傑作である。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 優美度・・9 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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KAIPA 「HANDER」
スウェーデンのプログレバンド、カイパの1980年作
KAIPAといえば、ロイネ・ロストルトが在籍した初期3枚がすべてだと思っていたが、
その後の80年代の2作が2015年になってようやくCD化された。本作はジャケのイメージもがらりと変わり、
サウンド的にもポップな感触が強まっているが、枯れた味わいのスウェーデン語のヴォーカルに、
ハンス・ルンディンによる美麗なシンセワークで、キャッチーなプログレハード的な聴き方が出来る。
楽曲は長くても6分ほどとコンパクトになり、シンフォニックな盛り上がりというのはさほどないのだが、
北欧らしい叙情的なナンバーは残していて、新加入のマックス・オーマンのクールで技巧的なギターは、
前任のロイネ・ストルトのメロウなプレイとはまた違ったモダンなテイストを楽曲にもたらしている。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 北欧度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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DUNGEN 「HAXAN」
スウェーデンのサイケロック、ドゥンエンの2016年作
2002年にデビュー、ユル系サイケと北欧らしい叙情を合わせたサウンドで、プログレファンにも人気のバンド。
7作目となる本作は、なんと世界初の長編アニメとして知られる「アクメッド王子の冒険」をコンセプトにしたインストアルバム。
うっすらとしたシンセに、サウンドスケープ的なギターサウンドを乗せて、ゆったりと聴かせる作風ながら、
メロトロンが鳴り響く北欧プログレ風味や、サイケロックとしての生々しいアナログ感も残していて、
アコースティックギターやフルートなども加わった、ユルめの叙情性と浮遊感はやはり絶妙だ。
1分前後の小曲を挟んだ構成で、オールインストながらも、曲によって空気感の変化があるので飽きずに楽しめる。
アルバム後半、優雅なピアノにメロトロンが重なり、ラスト曲のダイナミックなサイケになだれ込む展開も見事。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 北欧サイケ度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Bjorn Riis 「Lullabies in a Car Crash」
ノルウェーのミュージシャン、ヨルン・リースの2014年作
Airbagのギタリストであり、本作もうっすらとしたシンセアレンジにマイルドなヴォーカルを乗せ、
やはりポストプログレ寄りの薄暗く繊細な叙情と、空間的な静謐感に包まれたサウンド。
メロウなギターを含むウェットな感触は、ギルモア期のPINK FLOYDルーツの翳りと浮遊感を描いていて、
10分を超える大曲もじっくりと味わえる。北欧らしい涼やかな空気感は、GAZPACHOあたりにも通じるだろう。
メロトロンが鳴り響き、適度にハードなギターを乗せたインストナンバーなどもじつに味わい深い。
ギタリストとしてのセンスはもちろん、しっとりとした叙情作品を構築するアーティストとしての実力も感じさせる。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 薄暗度・・8 総合・・8
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Erik Wollo 「Star's End 2015」
ノルウェーのミュージシャン、エリク・ウォロの2016年作
北欧のニューエイジ界ではすでにキャリアのあるアーティストで、本作はスタジオライブを収録した60分全1曲という大作だ。
Klaus Schulzeあたりに通じるスペイシーで空間的なシンセサウンドに、サウンドスケープ的なギターを乗せた、
アンビエントな叙情性がゆったりと耳に心地よい。のんびりとまどろみながら聴き入りつつ、気付けば暖かな日差しが差し込むような
美しい音の渦に飲み込まれている。あるいは水中から、きらきらとした頭上の陽光を眺めているという感じだろうか。
ロック色は皆無ながら、単なるニューエイジとも異なる繊細で深みのある世界観が、プログレ向きな一枚であろう。
ドラマティック度・・7 ロック度・・1 ヒーリング度・・8 総合・・7.5
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Espoo Big Band with Pekka Pohjola「Yesterday's Games」
フィンランドのジャズロック、エスプー・ビッグ・バンドの1986年作
楽曲はペッカ・ポーヨラが手掛け、サックス、トランペット、トロンボーンで14名におよぶブラスセクションに、
ギター、ベース(ペッカ)、キーボード、ドラムが2名という大掛かりな編成。それぞれ4パートに分かれた、
7~10分の大曲で、ブラスが鳴り響くスウィングジャズを基本に、ギター、ドラムのロック色が加わったサウンド。
プログレとして聴くには、ブラスバンド色が強いのだが、そんな中でもペッカのベースの存在感はさすがで、
ソロパートでの巧みなプレイも含めて、スウィングジャズのノリとバンドアンサンブルを優雅に融合させている。
CD化にあたって、1998年のライブ音源(こちらはペッカは不参加)がボーナス収録されている。
ドラマティック度・・7 ロック度・・6 ジャズ度・・9 総合・・8
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Kinetic Element 「Travelog」
アメリカのプログレバンド、キネティック・エレメントの2015年作
前作も古き良きプログレ感触の好作品であったが、6年ぶりとなる本作はのっけから20分の大曲で、
オルガンを含むシンセにメロディックなギターの旋律で、ゆったりと叙情的なサウンドを描いてゆく。
リズム面の甘さを含めて演奏力にはアマチュア臭さを残していて、いわば「ユルめのTRANSATLANTIC」、
「もったりしたニール・モーズ」という雰囲気もあって、このヘタウマ感が人によっては厳しいかもしれない。
中盤も10分前後の大曲が続き、ラストは18分の大曲で、演奏や楽曲展開にさほどの緊張感がないので
とても長く感じてしまうのだが、やわらかで微笑ましいシンフォニックロックが楽しめる、全5曲70分の力作ではある。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 ヘタウマ度・・8 総合・・7.5
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Mahogany Frog「DO5」
カナダのプログレバンド、マホガニー・フロッグの2008年作
ギター&シンセ奏者、ベース、ドラム、トランペット奏者という4人編成で、わりとハードなギター乗せた
ジャズロック風味の軽快なアンサンブルに、オルガンやミニムーグといったヴィンテージなシンセが合わさった、
インスト・プログレサウンド。テクニカルであっても、メロディのフックがあるのでプログレとしても聴きやすく、
適度にヘヴィ寄りのギターがサウンドに厚みを持たせていて、インストながらもどっしりとした感触である。
シンセが前に出るパートではシンフォニック系プログレの感触もあって、そこにトランペットの音色が加わると、
ぐっとドラマティックな雰囲気になる。ドカドカとしたドラムも含めて、テクニカルプログレとしてのアッパーなノリは
アメリカのMASTERMINDにも通じるものもある。ヘヴィなプログレ、ハードなジャズロックとしても楽しめる力作だ。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 わりとヘヴィめ度・・8 総合・・8
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HOUR OF THE SHIPWRECK 「The Hour Is Upon Us」
アメリカのモダンプログレ、アワー・オブ・シップレックの2008年作
シンセを含む5人組で、うっすらとしたシンセに適度にハードなギターとエモーショナルなヴォーカルを乗せ、
ポストプログレ的な繊細な叙情に包まれたサウンド。メロウな泣きのギターは、ドイツのSYLVANあたりに通じる感触で
物悲しい哀愁の空気を漂わせながら、あくまで優し気な聴き心地。楽曲は5~8分前後と長すぎず短すぎず、
スリリングな展開や盛り上がりはさほどではないが、アコースティックなパートなども含めてゆったりと楽しめる。
裏声が主体の男性ヴォーカルはもしかしたら好みを分けるかもしれないが、繊細なポストプログレがお好きな方はどうぞ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 繊細度・・9 総合・・8
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VOLVOX
アルゼンチンのプログレバンド、ヴォルヴォックスの2014年作
シンセを含む4人編成で、わりとハード寄りのギターにきらびやかなシンセが絡み、
軽妙なアンサンブルで聴かせる、メタルフュージョン的なインストサウンド。
適度にテクニカルな硬質感と、シンフォニックでスペイシーな優雅さが同居していて、
オールインストながらもなかなか楽しめる。ドラムサウンドの野暮ったさが惜しいのだが、
ときに泣きのメロディを奏でるギターは、美しいシンセアレンジとともに、やわらかな叙情を描いている。
もう少し思い切った展開や、インパクトのあるパートが増えれば、より強力なバンドになるだろうと思う。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・7 優雅度・・8 総合・・7.5



7/21
ジャパニーズプログレ特集!(164)

SHUSEI'S PROJECT 「Same Dreamer」
日本のシンセ奏者、塚本周成のプロジェクトユニットの2017年作
OUTER LIMITSVIENNAのシンセ奏者であり、GAKTの楽曲提供などでも活躍するミュージシャンで、
ギターにはアウター・リミッツの荒牧隆、ベースには永井敏巳、ドラムには菅沼孝三が参加、
さらにはヴァイオリンに藤本美樹、ヴォーカルには相馬優 雅絢恵という声優女子が参加している。
しっとりとしたピアノにヴァイオリンが重なり、美しい女性ヴォーカルを乗せた幻想的な小曲で幕を開け、
続く2曲目はムーグシンセによるプログレ的な味わいと、ギターにヴァイオリンが重なるインストナンバーで、
スリリングなアンサンブルはさすがのリズム隊である。ヴォーカル曲に関しては、プログレというよりは、
どうしてもゲームやアニメ的な雰囲気が漂うのだが、インストパートを挟むことでいい味わいになっている。
弾きまくることはしない繊細なシンセワークよりも、ときにヴァイオリンが目立っているのも人柄を感じさせる。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 むしろヴァイオリン度・・8 総合・・8
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新月「遠き星より」
日本のプログレバンド、新●月の2016年作
当時、1stに続く2作目として書かれた楽曲を2005年に録音し、今回新たなアレンジとヴォーカルテイクを加えて、
ジャケも一新しての紙ジャケSHM-CD盤。2パートに分かれた20分に及ぶ大曲、「殺意への船出」から
花本氏の美麗なシンセアレンジにうっとりとなる。津田氏のメロウなギターに、北山氏のマイルドな歌声は、
かつてのようなウェットな雰囲気で、まさに往年の新月を蘇らせたような叙情的な世界観が広がる。
メロトロンにオルガンといったヴィンテージなシンセを使ったやわらかな感触と、日本語歌詞による物語的な幻想性で、
シンフォニックな美意識に包まれたサウンドが素晴らしい。しっとりと聴かせる「赤い目の鏡」、
当時のスタジオデモを収録した「不意の旅立ち」も瑞々しく、続く牧歌的な「島へ帰ろう」で締めくくる。
かつてのボックスセットを聴いている方にも、新たなバージョンとして楽しめる内容だろう。
ドラマティック度・・8 叙情度・・8 新月度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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北山真 with 真〇日「冷凍睡眠 COLD SLEEP」
新●月の北山真によるプロジェクトバンド、しんじつの2015年作
KILLING TIMEの清水一登がシンセで参加、ドラムには清水氏の夫人である、れいちが参加している。
オルガンやピアノ、メロトロンの音色を含むシンセアレンジに、北山氏のシアトリカルなヴォーカルを乗せたサウンドは、
かつての新月に通じる叙情美と、詩情あふれる日本語歌詞による、どこか昭和を思わせる、なつかしい聴き心地である。
メロウなギターフレーズが心地よい大曲「別のなにか」は、北山氏の歌声とともに大人の哀愁を感じさせ、
やわらかなフルートも加わって、しっとりとした味わいが楽しめる。そして12分におよぶタイトル曲は、
新月の往年の代表曲にも引けを取らないドラマティックな盛り上がりが素晴らしい。まさに新月ファンは必聴!
ドラマティック度・・8 叙情度・・9 新月度・・9 総合・・8
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HAL 「KURSK」
日本のプログレバンド、ハルの2013年作
シンセ奏者の鎌田洋一を中心に、新月の母体となったことでも知られるバンドで、
本作は2006年のHAL & RING名義以来のアルバム。第二次世界大戦の「クルスクの戦い」をコンセプトに、
オルガンが鳴り響きメロディックなギターを乗せた、古き良きスタイルのインストによるプログレサウンド。
クラシカルなオルガンの旋律は、NICEあたりを思わせるが、ギターのフレーズもかなり前に出ていて、
テクニカルなギタープレイを乗せた軽妙なアンサンブルは、むしろフュージョンロック的でもある。
ほぼオールインストであるから、どうしてもBGMになってしまいちなのだが、20分のタイトル組曲では、
ホルンやヴァイオリンなどを加えたクラシカルなパートや女性スキャットがよいアクセントになっている。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 オルガン度・・8 総合・・7.5
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美笑 「HIZUMITE AHA SORA」
日本の歌謡プログレロック、びしょうの2016年作
どこかなつかしい昭和歌謡風味とプログレを融合させた個性派バンド、前作から10年ぶりとなる7作目で、
ジャケもタイトルも脱力感たっぷりだが、サウンドは、わりとロックなギターにオルガン、ムーグ、メロトロンなど
プログレなシンセが絡みつつ、MITOさんのヴォーカルを乗せたポップ性とエキセントリックなセンスが絶妙に融合した、
愉快なプログレ歌謡ロックで、相変わらずとても楽しめる。過去曲のリメイクもありつつ、よりロックなノリが増したナンバーや、
4パートに分かれたタイトルのインスト小曲を、アルバム内に散りばめた構成も面白い。楽曲ごとのシンセアレンジも抜群で、
古くて新しく、ポップなのにアヴァンギャルドで、ちゃんとプログレという、玄人好みの味わいにニヤニヤとなる。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 エキセントリック度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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NEGASPHERE 「CASTLE IN THE AIR - 砂上の楼閣 」
日本のプログレバンド、ネガスフィアの1984年作
80年代ジャパニーズ・プログレにおける未CD化最右翼がこのバンドだったのだが、2016年についに紙ジャケCD化された。
きらびやかなシンセによるファンタジックなイントロから、軽やかなリズムにギターが加わって、
テルズ・シンフォニアにも通じるような、キャッチーかつ陽性のシンフォニックロックが始まってゆく。
英語歌詞のヴォーカルは、正直、当時の日本のバンドらしいマイナー臭さをかもしだしているのだが、
そこも含めて、かつてのマージュ・リッチなどと同様、「シルエレ系」プログレというべき雰囲気が楽しめる。
幻想的な味わいとやわらかな叙情の本格派シンフォニックロックという点では、アウター・リミッツにも通じるか。
9分、10分という大曲を含んだ構築力は、デビュー作としては堂々たる内容。これぞジャパグレというロマン派の好作品。
シンフォニック度・・8 ファンタジック度・・8 ジャパグレ度・・9 総合・・8
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NEGASPHERE 「DISADVANTAGE」
ネガスフィアの1985年作
2作目の本作も、美麗なシンセのイントロからロマンの香りを漂わせており、専任ヴォーカルが加入したことで、
前作での歌の弱さがいくぶん解消されて、全体的にもレベルアップ、Yesにも通じるキャッチーな聴き心地が楽しめる。
前作に比べると、いくぶんスタイリッシュな作風になっていて、幻想的なシンフォ色は薄れているが、
その分、より多くのリスナーに楽しめるようなメロディックなプログレハード感が増したという印象だ。
そういう点では、むしろVIENNAあたりの雰囲気に近いかもしれない。アルバム後半の3パートに分かれた18分を超える組曲では、
濃厚すぎないゆるやかな構築センスで、本格派シンフォニックロックとしの聴き心地が味わえる。前作と甲乙つけがたい好作品だ。
シンフォニック度・・8 ファンタジック度・・7 ジャパグレ度・・9 総合・・8
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NEGASPHERE 「1985 - 1986」
ネガスフィアのライブ作品。1992年作
1992年にCD化されていたライブ音源で、ジャケが千之ナイフによる書下ろしに変更されている。
1985年と、1986年の東京、吉祥寺シルバーエレファントでのステージを収録。
軽やかでテクニックあるドラムに存在感のあるベース、そしてきらびやかなシンセワークによるアンサンブルで、
アルバムのイメージ通りの優雅なシンフォニックロックを聴かせてくれる。平田氏のセンシティブな歌声も
NOVELAの五十嵐氏とかつてのGERARDの藤村氏の中間という感じで、サウンドによくマッチしている。
1985年の音源は年代を考えれば音質も良好なのだが、1986年になるとギター、ベース、ドラムがメンバーチェンジしており、
音質面でもいくぶんこもり気味なのが惜しい。ともかく、まさしくシルエレ系プログレのど真ん中という好ライブ作品である。
ライブ演奏・・8 音質・・7 ジャパグレ度・・9 総合・・8
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Yuka & Chronoship 「The 3rd Planetary Chronicles 第三惑星年代記」
日本のプログレバンド、ユカ・アンド・クロノシップの2015年作
シンセ奏者の船越由佳を中心にした4人編成で、本作が3作目のアルバムとなる。
地球の歴史を俯瞰するように、石器時代から、ガリレオ、蒸気、電波、さらにはクローンといった、
楽曲ごとに人類の文明を掘り下げたコンセプトアルバムとなっていて、優美に重ねられたシンセを中心に、
存在感あるベースを乗せたどっしりとしたリズムアンサンブルに、うるさすぎない巧みなギターワークと、
ときに神秘的なコーラスなども加えて、インスト主体ながらスケール感のあるサウンドを描いてゆく。
オルガンやムーグの音色を使った往年のプログレらしさの一方で、より普遍的なシンセ入りロックとしての
分かりやすさがあるので、若いリスナーにも入りやすいというのもこのバンドの特徴だろう。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 壮大度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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難波弘之「Childhood's End~幼年期の終り~」
日本のシンセ奏者、なんば・ひろゆきの2013年作
センス・オブ・ワンターや野獣王国、A.P.J.、その他数々のサントラを手掛ける日本を代表するシンセ奏者。
ソロ名義としては、1987年作「N氏の天球儀」以来となる、じつに27年ぶりのアルバムで、松本慎二、そうる透の
SOWのメンバーが参加。シュトラウス「ツァラトゥストラはかく語りき」のアレンジから壮麗に始まり、
続くオリジナル曲は、オルガンにムーグシンセ、エレピを使ったプログレらしいナンバーでにんまり。
強力なリズム隊によるテクニカルなアンサンブルと、肩の力が抜けた濃密すぎない自然体のやわらかさが同居して、
一方では、ロマンあふれるヴォーカルナンバーは、キャッチーなポップ性を感じさせる。ホルスト「惑星」のアレンジに、
ウルトラQ、時計仕掛けのオレンジ~ブレードランナー~スタートレックという映画音楽メドレーまで、難波印のプログレが楽しめる好作品。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 キーボー度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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ptf 「What is Constant」
日本のプログレバンド、ピーティーエフの2015年作
ヴァイオリン、シンセ、ベース、ドラムという4人編成で、本作が2作目のアルバムとなる。
きらびやかなシンセに美しいヴァイオリンの音色を乗せたオールインストによるサウンドで、
適度にテクニカルでダイナミックなアンサンブルとともに、クラシカルな優雅さとスリリングな展開を同居させた
サウンドクオリティの高さは、同じくヴァイオリン・プログレのKBBなどにもまったく引けを取らない。
ギターレスであるが、どっしりとしたドラムに存在感のあるベースによるリズム隊の技量の高さが、
軽すぎない音の説得力となっていて、シンセとヴァイオリンのうわものを引き立てている。
11分、18分という大曲も、あくまで優雅に構築してゆくセンスもなかなか見事である。
ドラマティック度・・7 優雅度・・8 ヴァイオリン度・・9 総合・・8
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CINDERELLA SEACH「The Suite "Next World"」
日本のシンフォニックロックバンド、シンデレラ・サーチの2014年作
1993年にデビューし、本作は2001年作以来となる、じつに13年ぶりとなる3作目。
近未来SF的な壮大なストーリーを基にしたコンセプトアルバムで、きらびやかなシンセアレンジと
メロディックなギターを軽快なリズムに乗せて、壮麗にして優美なシンフォニックロックが広がってゆく。
英語歌詞によるマイルドなヴォーカルも、甘いロマンティシズムをサウンドに付加していて、
泣きのギターによる叙情とともに、かつてのアウター・リミッツなどにも通じる、ファンタジックな世界観に浸れる。
一方では適度にロック寄りのハードさや、曲によってはいくぶんモダンでキャッチーな感触もあったりと、
バンドとしての進化も覗かせる。シンフォニックロックの王道を、スケール大きなロマンで描いた力作である。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 壮麗度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Vermilion Sands「Spirits of the Sun」
日本のシンフォニックロック、ヴァーミリオン・サンズの未発音源集。2013年作
1987年に叙情豊かな傑作アルバム「Water Blue」を残して活動休止、ヴォーカルの蝋山陽子は1991年にソロ作品を発表し、
90年代にはバンドとしての活動を再開、2000年には、θ-theta(シータ)に参加するも、2004年に死去する。
本作は、2作目用に作られた楽曲や未発音源、1996年の東京、吉祥寺でのライブ音源を収録した作品。
やわらかなフルートの音色に美しいシンセと、ギターが重なり、蝋山陽子嬢の素朴な歌声を乗せ、
ロマンに包まれた叙情豊かなサウンドは未発音源とは思えぬ出来栄えだ。やはり正規音源でないので、
音質的にはいまひとつだが、ライブ音源では、現KBBの壷井彰久のヴァイオリンを加えた、躍動感ある演奏が楽しめる。
繊細で幻想的な世界観は、どこかはかなげで、蝋山嬢の残した歌声にその純朴な空気を感じ取れる。
ドラマティック度・・7 貴重音源度・・9 音質・・7 総合・・7.5
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夜長オーケストラ 「Time, Take Your Time」
日本のオーケストラ・ロックユニット、よながオーケストラの2015年作
大人数による編成でオーケストラとロックの融合をなし遂げる壮麗なるプロジェクト、
本作は2010年作から続いた3部作の完結編。ストリングスやブラスを含むオーケストラを軽快なリズムに乗せて、
美しいソプラノ女性ヴォーカルの歌声とともに、シンフォニックにしてキャッチーなサウンドを描いてゆく。
ヴァイオリンがソロを取るインストパートや、ブラスセクションをメインにした小曲などもあり、クラシックやジャズを巧みに融合、
また今作は約半分が歌入りのナンバーということで、一般のポップファンにも入りやすい内容だろう。オフィシャルサイトはこちら
シンフォニック度・・8 ロック&ポップ度・・8 オーケストラ度・・9 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら



7/8
猛暑の予感…(150)


ARENA 「XX」
イギリスのプログレバンド、アリーナのライブ作品。2016年作
1995年にデビュー、英国におけるモダンプログレの先駆けというべきこのバンド、
デビュー20周年を記念してのポーランドでのライブをCD2枚に収録。英国らしいウェットな叙情と
翳りを含んだモダンなシンフォニック性が、クライブ・ノーランの美麗なシンセに、ジョン・ミッチェルのギターワーク、
ポール・マンズィの表現力ある歌声を乗せて、ベテランらしい味わいのある演奏力で表現される。
2015年作からのナンバーをメインに、過去作からの楽曲もたっぷりと演奏。適度なハードさと薄暗さを、
キャッチーなメロディック性と同居させた、キャリアのあるバンドらしい重厚な説得力が見事である。
2000年作「Immortal?」収録の19分の大曲や、1st収録の大曲「Solomon」などが聴けるのも嬉しい。
ライブ演奏・・8 プログレ度・・7 重厚度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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LANDMARQ 「Origins」
イギリスのシンフォニックロロック、ランドマークのアンソロジー作品。2014年作
1992年にデビュー、活動20年を超えるキャリアのバンドで、初期にはクライブ・ノーランが関わっていたことでも知られる。
Disc1には、女性シンガー、トレイシー・ヒッチングスが加入した1998年から現在までの楽曲を、
Disc2には、ダミアン・ウィルソンがヴォーカルを務めた初期3作からの楽曲を収録した、CD2枚組。
初期の作品はZEROコーポレーションから日本盤も出ていたので、HR/HM方面のリスナーでも案外知っている方も多いだろう。
1stの頃は、シンフォニックというよりは、美しいシンセアレンジ入りのキャッチーな歌ものプログレハードという作風で、
メロウなギターも含んだ英国らしいウェットな叙情性は、Pallasあたりのファンにも受けそうだ。2nd、3rdのメロウな質感も捨てがたい。
トレイシー・ヒッチング時代になると、ハスキーで魅力的な歌声とともに、美麗なシンセアレンジとともにきらびやかな感触がぐっとアップ、
爽快なシンフォニックロックが楽しめる。バンドの歴史を振り返る意味でもファンには嬉しいアンソロジーだろう。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 バンドの歴史度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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The SYN 「LIVE ROSFEST」
イギリスのプログレバンド、シンのライブ。2015年作
2009年のアメリカ、ロズフェストでのステージを収録。オリジナルメンバーのSteve Nardelliを中心に、
IT BITESのフランシス・ダナリー、YESCAMELにも関わったシンセ奏者、トム・ブリスリンというトリオ編成を基本に、
初期のメンバーであったクリス・スクワイア、元YESのアラン・ホワイト、さらにはECHOLYNMOON SAFARIのメンバーも参加。
躍動感アンサンブルにメロウなギター、枯れた味わいのヴォーカルを乗せた、古き良き英国メロディックロックというサウンドで、
オルガンやメロトロンを含むんだレトロな感触のシンセワークにもにやりとする。スリリングな部分はあまりないが、
ゆったりと聴かせるアコースティックなパートなども含めて、落ち着いた大人のプログレ/英国ロックが味わえる。
ライブ演奏・・8 プログレ度・・7 大人の味わい度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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ROB COTTINGHAM 「Captain Blue」
イギリスのミュージシャン、ロブ・コッティンガムの2013年作
TOUCHSTONEのシンセ奏者のソロで、そのタッチストーンのギターに、元Mostly Autumnのヘザー・フィンドレイ、
Steve Hackett BANDのゲイリー・オートゥールがドラムで参加。さらには、スティーヴ・ハケットもゲスト参加している。
コンセプト的な雰囲気の語りから始まり、美麗なシンセアレンジにメロウなギター、マイルドな男性ヴォーカルに、
ヘザーによる美しい女性ヴォーカルも加わって、LANDMARQあたりに通じるキャッチーなプログレハードが楽しめる。
3~5分のコンパクトなナンバーが主体ながら、ストーリー的に楽曲を連ねた構成で、歌もの要素が強めではあるが、
モダンなシンフォニックロックとしても鑑賞可能。全体的にわりとあっさりとした印象ながら、アルバム後半には泣きの叙情が待ち構えていて、
ハケット先生のソロパートはさすが。ポストプログレ的でもある繊細な叙情性も含めて、Marillion + It Bitesという感じでもイケるかも。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 繊細な叙情度・・8 総合・・8
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The Fringe
アメリカとスウェーデンのメンバーによるプログレハードロック、ザ・フリンジの2016年作
ヨナス・レインゴールド(The Flower Kings)、ニック・ディヴァージリオ(元Spocks Beard)、ランディ・マクスタイン(Lo-Fi Resistence)による
トリオ編成のユニットで、適度にハード寄りのギターとテクニカルなアンサンブルで聴かせる、キャッチーなメロディックロック。
技量のあるメンバーによる、知的な構築センスがモダンな歌ものロックとしてのクオリティを高めていて、
A.C.TIT BITESなどのプログレハード系としてももちろん、ProgMetalのリスナーにも楽しめそうな聴き心地である。
曲によっては、TOTOなどを思わせる古き良きアメリカンロックの感触もあったりと、モダンとレトロを巧みに同居させ、
随所にセンスのよいギターワークも光っている。シンプルなロック感にプログレ的な味付けを混ぜ込んだ好作品。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 モダン&ハー度・・8 総合・・8
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Armed Cloud 「Obsidian Desert」
オランダのハードプログレ、アームド・クラウドの2015年作
シンセを含む5人編成で、適度にハードなギターにうっすらとしたシンセアレンジ、
中性的なヴォーカルの歌声を乗せ、シアトリカルな雰囲気をかもしだす、プログレハード的なサウンド。
楽曲は4~6分前後が中心で、複雑すぎずシンプル過ぎずという感触。わりとメロディアスなのだが、
そこそこダークな妖しさもあり、どうにも盛り上がり切らないところは、良く言えば玄人好みというべきか。
ヴォーカルの雰囲気も含めて、かつてのCRIMSON GLORYあたりに近い感触もあったりするのだが、
悪く言えば、フログレとしてもメタルとしてもやや中途半端なので、今後は方向性を絞っていってもらいたい。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 楽曲・・7 総合・・7
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T 「Anti-Matter Poetry」
ドイツのプログレユニット、ティーの2010年作
SCYTHEのリーダーThomas Thielenによるソロユニットで、うっすらとしたシンセアレンジに
メロウなギターを乗せた、ポストプログレ的な薄暗さと浮遊感に包まれたサウンド。
ヴォーカルが入ると、わりとキャッチーなノリも前に出て来るが、モダンな感触の中にも
翳りを帯びた叙情を覗かせるという点では、スティーヴン・ウィルソンあたりにも通じる
繊細でアーティスティックなものを感じさせる。シンフォニックなメロディアス性を随所にちりばめながら、
10分前後の大曲をじっくりと構築してゆくセンスも素晴らしい。全体的に派手さはないものの
耳心地の良さでゆったりと味わえる、玄人好みのモダンプログレの好作品だ。
ドラマティック度・・8 モダンプログレ度・・8 薄暗度・・8 総合・・8
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PI2「Tomorrow's Another Day (Dema sera un altre dia)」
スペインのシンフォニックロック、パイツーの2001年作
シンセにフルート奏者を含む7人編成で、やわらかなピアノに美しいシンセアレンジ、メロウなギターを乗せて
CamelGoticなどに通じる、しっとりとした優美な叙情を描くサウンド。マイルドなヴォーカルが加わると、
ウェットでキャッチーな感触が広がり、繊細なフルートのも色なども含めて、25分の組曲をゆったりと描いてゆく。
基本はインストがメインながら、叙情豊かなギターとシンセを中心に、繊細なシンフォニックロックが楽しめる好作品。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 繊細度・・8 総合・・7.5

Yvan Ouellet 「Le Chant Des Choses」
カナダのシンセ奏者、イヴァン・オーレットの1979年作
VEBB(Ville Emard Blues Band)のピアノ奏者としても知られるミュージシャンで、本作はソロデビュー作。
エレピを含む繊細なシンセワークにアコースティックギター、フランス語によるジェントルなヴォーカルを乗せた
しっとりと繊細なサウンドで、美しい女性ヴォーカルの歌声にエレキギターも加わって、やわらかな叙情に包まれた、
優美なシンフォニックロックとしても楽しめる。その女性Voは、CONTRACTIONのクリスティーン・ロビンショウ、
そして、SEGUNのマリ・クレールという二人で、カナディアン・プログレのマニアにはたまらないだろう。
優雅なヴァイオリンにエレピが重なり、艶やかな女性声が歌い上げるナンバーなどはじつに美しく、
ピアノによる小曲なども、ジャズやクラシックを基盤とした鍵盤奏者としてのセンスを覗かせる。たおやかなる好作品。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 繊細度・・9 総合・・8
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Jerome Langlois 「Live at Au EMPM 2006 + Themes」
カナダのシンセ奏者、ジェローム・ラングロウの2007年作
ケベックを代表するプログレバンド、MANEIGEの初期メンバーとしても知られるミュージャンのCD2枚組ライブ音源集。
Disc1には、2006年モントリオールでのライブを収録。元マネイジュ、元コンヴェンタムのメンバーが参加、
軽やかなドラムに乗るフルート、ヴァイオリン、自身の娘が奏でるクラリネットが鳴り響き、ジャズタッチのピアノを絡めた、
チェンバー・ジャズロックというサウンドで、繊細で優雅でありながらも適度にスリリングな聴き心地。
アコースティック主体のアンサンブルながら、知的な展開美とダイナミクスで、プログレファンにも十分楽しめる。
Disc2には1984年のカナダ、マギル大学でのピアノ演奏を収録。こちらは、ピアノの独奏なので、ちょいと眠く…zzz
ライブ演奏・・8 プログレ度・・7 優雅度・・9 総合・・8
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Offenbach 「Tabarnac」
カナダのロックバンド、オッフェンバッハの1974/2011年作
70年代ケベックを代表するロックバンドで、本作は1974年のフランスツアーのドキュメンタリー映画のサントラとして制作された、
変則的なライブアルバム。CD化に際して、40分者未発音源が加えられてCD2枚組となっている。
オルガンが鳴り響き、70年代らしいハード寄りのギターに、フランス語のヴォーカルを乗せたサウンドで、
ときにがなり立てる濃密な歌声も含めて、どことなくAngeなどにも通じるシアトリカルな感触もある。
Uriah Heepのフランス語版という雰囲気から、ブルースロック調のナンバーや、泣きのギターも加わった
叙情的なアートロックという風にも楽しめ、演奏力の高さも含めて結果としてプログレ的に味わえてしまうという。
エディット・ピアフ「愛の賛歌」のロックアレンジもなかなかよい感じです。オルガンロック好きもぜひ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 オルガン度・・8 総合・・8
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Holding Pattern 「Breaking the Silence」
アメリカのプログレバンド、ホールディング・パターンの2007年作
1981年に唯一のアルバムを残して解散、その後、ギタリストのTony Spadaはソロ作を発表するなど活動を続け、
本作はバンド名義での26年ぶりとなる復活作。メロディックなギターときらびやかなシンセを中心にした
優雅な叙情性に包まれたインストのシンフォニックロックサウンドで、適度に変拍子も含んだ聴き心地は、
さしずめ、CAMEL + HAPPY THE MANという聴き心地で、ときにGENESIS風にもなったりしてにやり。
メロトロンが鳴り響く古き良きプログレらしさをしっかり受け継いでいて、ほのかなB級テイストも含めて、
90年代のネオプログレ/シンフォニック世代のリスナーにはたまらないサウンドと言えるだろう。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 往年のシンフォ度・・9 総合・・8
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Flor De Loto 「Volver a Nacer」
ペルーのハードプログレバンド、フロー・デ・ロトの2012年作
濃密系ハードプログレとして一部のマニアからはすでに知られる存在で、本作は過去の楽曲のリレコーディング作品。
わりとメタル寄りのハードなギターにフルートが鳴り響き、スペイン語の歌声を乗せた濃厚なサウンドで、
南米らしいやわらかな叙情性を盛り込んだ、フォルクローレ・ハードプログレサウンドでたたみかける。
ドラムもけっこうドカドカと手数が多く、メタル的な要素が前に出すぎるかと思いきや、フルートやサンポーニャの牧歌的な音色に
曲によっては美しい女性ヴォーカルも加わったりして、意外となごめるところもあるというバランス感覚も見事。
あるいはプログレッシブなフォークメタルとしても楽しめたりするかもしれない。濃密なフォルクローレハードの強力作!
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 濃密度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Gerson Werlang 「Memorias Do Tempo」
ブラジルのシンフォニックロック、ガーソン・ワーラングの2008年作
POCOS & NUVENSのギタリストのソロ作品で、アコースティックギターに美しいシンセアレンジを乗せ、
南米らしいやわらかな叙情を描くシンフォニックロック。ポルトガル語による男女ヴォーカルが入ってくると、
フォークロック的な素朴な味わいに包まれ、ときにCAMELを思わせるメロウなギターフレーズや、
優雅なヴァイオリンの音色にマリンバなども加わり、10分を超える大曲をアーティスティックなセンスで構築してゆく。
プログレらしいメリハリあるダイナミックな展開力とアコースティックな叙情を同居させたシンフォニックロックの力作です。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 南米度・・8 総合・・8
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Aragon 「The Angels Tear」
オーストラリアのプログレバンド、アラゴンの2004年作
90年代から活動するバンドで、かつてはZEROレーベルから日本盤も出ていたので、知っている方もいるだろう。
適度なハードでモダンな感触と、キャッチーなノリのあるポンプロックルーツのサウンドで、
随所にメロウなギターを乗せた古き良きシンフォニックロックの感触も残している。美しいシンセアレンジに
ときにヴァイオリンも加わった繊細な叙情性、薄暗さと湿り気のある雰囲気は、ヴォーカルの声質も含めて
かつてのIQあたりを思わせるという点では、英国シンフォの空気感に近いかもしれない。
12分の大曲も、派手に盛り上げすぎず、あくまでゆったりとした耳心地の良さで楽しめる。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 叙情度・・8 総合・・7.5
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