プログレCDレビュー 
PROGRESSIVE ROCK CD REVIEW 2018 by 緑川 とうせい

★2018年に聴いたプログレ(フォーク/トラッド・その他含む)CDレビュー
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*メタル最新レビュー *注目の新譜コーナー


4/6
フォーク&トラッドの女性シンガーもの(109)


JUDY DYBLE & ANDY LEWIS 「Summer Dancing」
英国の女性シンガー、ジュディ・ダイブルとSSWのアンディ・レヴィスのユニット。2017年作
初期FAIRPORT CONVENTIONTRADER HORNなどに参加した女性シンガーで、
本作はアコースティックギターにシンセアレンジ、ベース、ドラムを加えた叙情的なフォークロック。
ジュディのやわらかな歌声の魅力は歳を経ても健在で、英国らしい牧歌的な空気感と
ユルめのサイケ感触も含んだサウンドによくマッチしている。楽曲は2~3分前後が主体で
シンプルな聴き心地であるが、60~70年代を思わせるおおらかな雰囲気にのんびりと浸れる。
どこかくぐもったような音質もよい感じで、優雅なピアノやメロトロンのようなシンセも加わって、
プログレファンもにんまりだ。ジュディの魅力が存分に活かされたアシッド・フォークの傑作です。
古き良きフォークロック度・・9 英国度・・9 女性Vo度・・8 総合・・8
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ELIN KAVEN 「Eamiritni - Rimeborn」
スウェーデンの女性シンガー、エリン・カヴェンの2015年作
うっすらとしたシンセにアコースティックギターのつまびき、母国語よる女性ヴォーカルを乗せて、
しっとりと聴かせるネオフォーク/トラッドサウンド。フィドルが鳴り響く北欧らしいトラッド感触を、
優雅で幻想的な空気感に包み込み、モダンなアレンジで仕立て上げたという作風は、
サーミ語による独特の歌唱も(ヨイク)含めて、ラップランドのラジカルトラッドという趣であろうか。
ときにエレキギターも加わったりと、打ち込みを含めた聴きやすいアレンジセンスとともに、
プログレリスナー向きの北欧トラッドポップとしても楽しめる。
幻想度・・8 北欧トラッ度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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Jenny Hval「Apocalypse, Girl」
ノルウェーの女性SSW、ジェニー・ヒヴァルの2015年作
2011年作の出来が素晴らしかったので期待したが、本作はジャケの感じからしてサイケな雰囲気。
なにやら妖しい語りによるイントロから始まり、少女めいた囁きのようなキュートな歌声を乗せ、
浮遊感のあるシンセアレンジと、エキセントリックな空気感に包まれたサウンドを展開。
向こう側に倦怠の闇を匂わせる、危うくけだるげな狂気が、スリリングに漂ってくるような、
いわば、ケイト・ブッシュを暗黒寄りに包み込んだというような、アーティスティックなセンスが素晴らしい。
ラストの10分におよアヴァンギャルドなナンバーまで、単なる女性声サイケポップの域を超えた異色作。
ドラマティック度・・8 倦怠の狂気度・・9 女性Vo度・・9 総合・・8.5
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Huldrelokkk 「I Levende Live」
ノルウェー、スウェーデン、デンマークのメンバーによる、女性トラッドユニット、ハルドレロクの2015年作
フィドルやニッケルハルパを操る女性3人のユニットで、本作は2013~14年のドイツでのライブを収録。
艶やかなフィドルと素朴なニッケルハルパの音色、アコースティックギターによるアンサンブルで、
メンバーそれぞれの母国のトラッドをベースにしたナンバーを聴かせる。派手な衣装のメンバーに反して
サウンドはしごく素朴なアコースティック系トラッドで、新鮮さやスリリングな部分というのはさほどないが、
母国語による女性ヴォーカルを乗せた、北欧らしい涼やかな叙情が楽しめる。
アコースティック度・・9 トラッ度・・9 女性Vo度・・7 総合・・7.5
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Annbjorg Lien「Waltz With Me」
ノルウェーの女性アーティスト、アンビヨルグ・リエンの2008年作
フィドル奏者でありシンガーでもあるミュージシャンで、本作はゲストのフィドル、ヴィオラ、チェロ奏者を迎えたカルテット編成。
艶やかなフィドルの重なりに、アコースティックギターが重なり、北欧らしい涼やかな空気感のトラッドを演奏。
ノルウェー語による男女ヴォーカルの歌声が牧歌的な味わいをかもしだしつつ、ライブ録音ならではの躍動感と、
素朴な優しさに包まれた演奏が楽しめる。伝統的なフォーク、トラッドに根差したアコースティック演奏ということで、
ロック色やプログレ寄りのテイストはほとんどないが、その分、フィドラーとしての彼女の実力が感じ取れる。
アコースティック度・・9 トラッ度・・9 北欧度・・8 総合・・7.5
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Eivor
フェロー諸島出身の女性シンガー、アイヴォール・ポルスドッティルの2004年作
2000年にデビュー、フェロー諸島の伝統的なトラッドを現代的に蘇らせるシンガーで、
本作はアコースティックギターのつまびきに、美しい歌声を乗せた素朴な聴き心地。
フェロー語の歌声を乗せたトラッドナンバーに、英語歌詞によるキャッチーなカントリーソング風味もあり、
彼女の美声をのんびりと楽しめる内容だ。基本的にはアコギ一本のシンプルな音数なので、
コンテンポラリーなトラッドを求めるリスナーにに物足りないが、彼女の歌声にゆったりと浸れます。
アコースティック度・・9 トラッ度・・7 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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Eivor 「Room」
フェロー諸島出身の女性シンガー、アイヴォール・ポルスドッティルの2012年作
今作は全曲英語歌詞によるナンバーで、モダンなアレンジを取り入れたアンビエントな作風。
彼女の美しい歌声を乗せたしっとりとした聴き心地で、うっすらとしたシンセアレンジとともに、
涼やかな北の空気が感じられる。適度にキャッチーなポップ性もあるので、わりとメジャー寄りの作りなのだが、
やはりどこかにトラッド的な土着性を含んだ哀愁が感じられるのが、単なるアンビエントポップと異なるところ。
表現力ある歌声も含めて、むしろKATE BUSHなどのファンにもアピールする内容かもしれない。
キャッチー度・・8 トラッ度・・6 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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Eivor 「AT THE HEART OF A SELKIE」
フェロー諸島出身の女性シンガー、アイヴォールをフロントにしたプロジェクトの2016年作
フェロー諸島に伝わる、セルキー(あざらし女)の神話をテーマにした作品で、
The Danish Radio Big Band、The Danish National Vocal Ensembleがバックを務める。
北欧トラッド的な涼やかな空気感と、フェロー語の女性ヴォーカルを乗せたしっとりとした作風に、
男女混声コーラスによる厳かで神秘的な味わいも加えた聴き心地だ。
ブラスの音色があざらしの鳴き声にも聞こえたり、海を感じさせるSEなども含んだ、
神話のストーリーを、寒々しく土着的なトラッドと融合させたサウンドが鑑賞できる。
トラッ度・・8 涼やか度・・8 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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Gudrid Hansdottir 「Love is Dead」
フェロー諸島の女性シンガー、グドリッド・ハンスドティアの2007年作
アコースティックギターにシンセを重ね、やわらかな女性ヴォーカルを乗せたフォークロックで
ポップな感触に包まれたサウンドながら、どこかサイケがかったような浮遊感も含めて、
ユルめのアシッド・フォーク的な味わいもある。オルガンやシンセによる素朴な叙情と
艶めいた歌声の魅力が合わさって、レトロさとモダンを行き来するような空気感も面白い。
単なるフィメールポップという以上に、北欧的でエキセントリックなセンスが楽しめる好作品。
ドラマティック度・・7 妖しさ度・・8 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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Gudrid Hansdottir 「Sky Is Opening」
フェロー諸島の女性シンガー、グドリッド・ハンスドティアの2011年作
本作は、古き良き味わいのギターにやわらかな女性ヴォーカルを乗せた、どこか70年代を思わせる
ソフトなフォークロックというサウンド。メロトロンのようなシンセやヴァイオリンを含んだアレンジに、
伸びやか女性声を乗せたナンバーなどは、Renaissenceのような美しい聴き心地である。
しっりとしとしたバラードや、オールドなポップロック調のナンバーまでキャッチーな作風であるが、
ヴァイオリンにギターが重なり、翳りを含んだ叙情に包まれたナンバーはうっとりとなる素晴らしさ。
フォークロック度・・8 古き良き度・・8 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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Olof Arnalds 「Vid Og Vid」
アイスランドの女性アーティスト、オルロフ・アルナルズの2007年作
アコースティックギターのつまびきに母国語のやわらかな歌声を乗せた、素朴なフォークサウンド。
アコギの弾き語りで音数が少ない分、シンプルな味わいで、暖かみのある彼女の歌声がよく活きていて、
北欧らしい土着的な空気感に包まれた、伝統的なトラッド、フォークをゆったりと楽しめる。
のちの作品では、この素朴な路線を守りつつ、コンテンポラリーな味付けが加わってゆく。
アコースティック度・・9 素朴度・・9 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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Harriet ja Kapypojat 「siiville」
フィンランドの女性シンガー、ハリエット・ヤ・カピィポヤトの2014年作
ストリングスによる壮麗なアレンジに、フィンランド語の女性ヴォーカルを乗せ、ハードなドラムやギターが加わった
適度にモダンなロック感触を含んだサウンドで、キャッチーな感触とフィンランド的な土着性が融合した
シンフォニックなハードポップというか、女性声の北欧ハードロックとしても楽しめる作風だ。
クラシカルなストリングスにピアノによる優美な聴き心地に包まれて、ゆったりとしたバラード曲なども含む、
北欧らしい涼やかな叙情も覗かせつつ、フィメールロックとしての艶めいた歌声の魅力もある。
メロディック度・・8 フィンラン度・・8 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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Islaja 「Meritie」
フィンランドのフリーフォーク系アーティスト、イスラヤの2004年作
二本のアコースティックギターに、即興的な女性ヴォーカルを絡ませた浮遊感のあるサウンドで、
ノイズ混じりの宅録のようなチープな感触も含めて、いかにもマイナーな自主制作感に包まれている。
スキャット的な女性声が重なり、ときにフィドルが適当に鳴り響いたり、曲なのか即興なのかよく分からない、
サイケ的でもあるアヴァンギャルド性と妖しげな土着感は、ときに魔女めいていて呪術的ですらある。
単に北欧アシッド・フォークという以上にミステリアスな空気感で、ある意味とても怖くて楽しめます。
アコースティック度・・8 アヴァンギャル度・・8 妖しげ度・・9 総合・・7.5
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Marja Mattlar 「tuli」
フィンランドの女性アーティスト、マーヤ・マターの2003年作
アコースティックギターに、うっすらとしたシンセアレンジ、フィンランド語のヴォーカルを乗せた、
ゆったりと叙情的なトラッドサウンド。艶やかなストリングスにピアノも加わったクラシカルな優雅さに
素朴な母国語ヴォーカルの味わいが合わさって、土着的なサウンドをコンテンポラリーに仕立てている。
繊細なカンテレの音色や、やわらかなアコーディオンなども随所にアクセントになっている。
北欧らしい本格派のトラッドをベースに、ヴァイオリンやピアノなどで美しく味付けされた作品。
ラスト曲は、何故かエレキギターが加わったフォークメタル風味というのは意外でした。
アコースティック度・・8 北欧トラッ度・・8 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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3/24
そろそろ桜の季節(95)


NECROMANDUS
ブリティッシュロックバンド、ネクロマンドゥスの2017年作
1972年にレコーディングした唯一の音源を残して消えた、伝説の英国ハードロックバンド、
本作はなんと、35年ぶりとなる正規作品である。サウンドは、往年のBLACK SABBATHに通じる
翳りを含んだヴィンテージなハードロックで、新作と知らなければ当時の発掘音源と勘違いしそう。
うっすらとオルガンが鳴り、古き良き感触のギターと、ジェントルなヴォーカルで聴かせる
なつかしさたっぷりの味わいににんまりである。ブルージーな渋さと英国らしい叙情性も覗かせつつ、
わりとキャッチーーなナンバーなどもあって、案外幅広い曲調が楽しめる。価値ある復活作だ。
ドラマティック度・・7 古き良き度・・9 英国ハー度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Henry Cow 「Late」
イギリスのチェンバーロック、ヘンリー・カウのライブ音源。
結成40周年を記念して発売された2009年のボックスセットから、未発ライブの単独CD化。
1978年のイタリアでのライブと、同年のイギリス「Rock in Opposition Festival」でのライブ音源を収録。
1978年作「WESTERN CULTURE」時期のライブで、フレッド・フリス、ティム・ホジキンソン、クリス・カトラー、
リンゼイ・クーパーの四人に加え、女性ベース&チェロのジョージィ・ボーンが参加した5人編成でのステージ。
サックスやバスーンが鳴り響き、ギターにヴァイオリンが絡む即興的なチェンバーロックを演奏。
メインは17分に及ぶその名も「RIO」という即興曲か。媚びの無い硬派でフリーキーな聴き心地は、
初心者にはややきついかもはれない。全体的にも全35分とやや短いが、バンドのファンであればぜひ。
ライブ演奏・・8 チェンバー度・・9 音質・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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COS 「Postaeolian Train Robbery」
ベルギーのチェンバー・ジャズロック、コスの1974年
1974~83年までに5枚のアルバムを残したバンドで、存在感のあるベースを乗せたリズムに
優雅なエレピ、フルート、オーボエなどを加えた、チェンバー寄りのジャズロックサウンド。
コケティッシュな女性ヴォーカルが加わると、ZAOMAGMAのような妖しいテイストも感じさせ、
軽妙なアヴァンギャルド性に包まれた聴き心地。キュートな女性声を乗せたポップな小曲もあったり、
逆にギターがフリーキーに弾きまくるアグレッシブなジャズロックパートもあったりと、なかなか面白い。
ボーナスには前身バンドCLASSROOMの1973~74年の音源を収録。こちらもキュートなジャズロック。
ドラマティック度・・7 ジャズロック度・・8 アヴァンギャル度・・7 総合・・7.5
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Univers Zero 「Relaps: Archives 1984 - 1986」
ベルギーのチェンバーロック、ユニヴェル・ゼロのライブ音源。2008年作
1984年作「UZED」発表後から、1986年作「HEATWAVE」発表後までの間のライブ音源を収録。
サックスにクラリネットが鳴り響き、うねるようなベースとテクニカルなリズムによるスリリングなアンサンブルは、
まさに初期の暗黒路線と「UZED」でのテクニカル路線の融合という、バンドの完成系ともいう聴き心地。
1985年以降の音源は、ギターにツインキーボードの7人編成となり、より厚みのあるスケール感で
ヴァイオリンやクラリネットによるクラシカルな優雅さを含んだ、ミステリアスなチェンバーロックを描いてゆくく。
80年代後期のユニヴェル・ゼロ最盛期の迫力あるライブ演奏が味わえる。ファンは必聴作である。
ライブ演奏・・9 スリリング度・・9 暗黒度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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PRESENT 「No.6」
ベルギーのチェンバーロック、プレザンの1999年作
タイトル通り6作目となるアルバムで、重いベースにギター、ピアノ、チェロの音色が重なり、
スリリングな緊迫感を描き出す、ダークなチェンバーロック・サウンドは健在だ。
変則リズムを叩き出すドラムのキレもよく、エッジの効いたギターが鳴り響きつつ、
クラシカルなアヴァンギャルド性を重厚なアンサンブルで表現するサウンドは説得力十分。
インダストリアルな小曲も挟みつつ、16分、19分という組曲構成の大曲を中心に、
攻撃的なまでの迫力でたたみかける、ヘヴィなチェンバーロックが堪能できる。。
チェンバー度・・9 スリリング度・・9 重厚度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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FINNEGANS WAKE「Blue」
ベルギーのチェンバーロック、フィネガンズ・ウェイクの2008年作
結成は90年代というキャリアのあるバンドで、本作は5作目のアルバム。
優雅なピアノに、やわらかなシンセとヴァイオリンが絡み、軽妙なアンサンブルとともに、
わりとヘヴィなギターが加わった、スリリングでアヴァンギャルドなセンスも感じさせる。
女性ヴォーカルが加わると、ART BEARSにも通じるような妖しい雰囲気にもなり、
チェロやフルートが不穏に鳴り響く、ほどよくダークでクラシカルなチェンバーロック感触を、
ときにKENSOのような、軽やかでとぼけた味わいとともに描き出す。玄人好みの傑作。
チェンバー度・・9 スリリング度・・8 優雅度・・9 総合・・8
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CAPTAIN CHEESEBEARD 「SYMPHONY FOR AUTO-HORN」
ベルギーのプログレ・ジャズロック、キャプテン・チーズビアードの2016年作
UNIVERS ZEROのピエール・シュヴァリエも参加、二人のシンセ奏者に女性Voを含む編成で、
スペースロック的なサイケ感と軽快なジャズロックサウンドが融合した、アッパーなノリの良さで聴かせる。
トランペット、トロンボーン、サックスといったブラスが鳴り響き、男女ヴォーカルの歌声を乗せた
ゴージャスな味わいとファニーな楽しさで、ソフトなアヴァンギャルド性も含んだジャズロックを展開する。
エレピを乗せたカンタベリー風味の優雅さや、ゆったりとした大人のジャズ風味も覗かせる、玄人好みの逸品。
軽妙度・・8 プログレ度・・7 愉快なジャズロ度・・9 総合・・8
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PROMENADE 「Noi Al Dir Di Noi」
イタリアのプログレ・ジャズロック、プロムナードの2016年作
若手の4人組で、軽やかなピアノにサックスが鳴り響き、変則リズムのテクニカルなアンサンブルで、
華麗なジャズロックサウンドを展開する。技巧的にたたみかけるせわしない曲調ながらも、
優雅なメロディアス性が前に出ているので、決して難解ではなく、イタリアらしい陽性のノリに包まれている。
一方では、イタリア語のヴォーカルを乗せ、ストリングスなども加えた繊細な叙情性はPFMのようでもあり、
やわらかなエレピにサックス、ヴァイオリンを加えたカンタベリー的でもある優美なサウンドを描いてゆく。
1曲目のテクニカルなテンションに圧倒されるが、全体的にはじっくりと味わえる叙情的なジャズロック作品である。
メロディック度・・8 テクニカル度・・9 優雅なジャズロ度・・9 総合・・8
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Sailor Free 「Spiritual Revolution」
イタリアのプログレバンド、セイラー・フリーの2012年作
1994年作以来となる18年ぶりのアルバムで、トールキンの「シルマリルの物語」をコンセプトにした作品。
メロトロンやムーグを含むシンセにピアノ、適度にハードなギターを乗せたオールドロックの感触に、
フルートやフィドルの音色を含む、素朴なトラッド風味も感じさせる。ヴォーカルは英語なので
イタリア的な雰囲気は薄めで、楽曲自体はわりとシンプルなのでプログレ的な展開力というよりは、、
むしろサイケハードというようなノリと浮遊感もある。全体的には盛り上がりどころの少なさや、
楽曲そのもののインパクトの弱さから、どうに中途半端な印象なのが惜しい。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 楽曲・・7 総合・・7
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Scherzoo 「02」
フランスのチェンバー・ジャズロック、スケルズーの2012年作
マルチ・ミュージシャンFrancois Thollotを中心にしたバンドの2作目で、サックスが鳴り響きやわらかなエレピを乗せて、
クリムゾン的な硬質感と優雅さを同居させたアンサンブルで、スリリングなチェンバー・ジャズロックを描き出す。
リズム面での遊びや、展開力の面白さは前作以上で、トロ氏の標榜する軽妙かつ芸術的なサウンドは完成の域に近づいた。
ダーク過ぎない程度に、UNIVERS ZERO風味も感じられ、ベースとギターの存在感がサックスと対峙することで、
とぼけた味わいと緊迫感の同居という、絶妙のバランス感覚を生み出している。さらに今作ではエレピのみならず、
オルガンなども含むシンセアレンジも曲によってマッチしていて、よりプログレ感をかもしだしている。
チェンバー・ジャズロック度・・8 スリリング度・・8 優雅で軽妙度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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YACINE SYNAPSAS「Akala Wa Chariba」
フランスのミュージシャン、ヤシン・シナプサスの2016年作
優雅なエレピの音色に朗々としたヴォーカルを乗せ、ロック的なギターがかき鳴らされる。
先の読めないアヴァンギャルド性と、サロン系チェンバーのとぼけた味わいが同居した作風で、
歌いまわしにはどこかアラビックな中近東色も感じさせる。14分、16分という大曲でも、
構築性とは無縁の即興的な感性で、フリーなリズムと歌声を連ねてゆく。悪く言うと自己満足感に包まれた異色作だ。
ドラマティック度・・6 プログレ度・・7 アヴァンギャル度・・8 総合・・7


MURDER IN THE CATHEDRAL 「Afraid of」
フランスのサイケロック、マーダー・イン・ザ・カテドラルの1999年作
かつてアナログ限定で500枚のみ流通していた幻のバンドの音源が、2007年にCD化された。
メロディックなギターの旋律にヘタウマなヴォーカルを乗せ、ややフォークロック的でもある
おおらかな牧歌性に包まれたサウンド。叙情的でユルめの浮遊感は、なかなか耳心地が良く、
70~80年代を引きずったようなオールドな味わいは、90年代では見向きもされなかったことだろう。
歌の入らないインスト曲もけっこうあって、奔放に弾き鳴らされるギターのセンスの良さとともに、
サイケロックとしての自由な空気感が楽しめる。ボーナスに1998年の1stを全曲収録。こちらもレアですな。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 ユルめの叙情度・・8 総合・・7.5
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FRANCIS BERTHELOT 「L'inaccessible」
フランスの小説家、フランシス・ベルセロットによるプロジェクト。2015年作
中世の作曲家の生涯を描いた同名小説を、独自のオーケストラサウンドで描いたコンセプト作品。
基本的には打ち込みによるシンセとデジタルなオーケストラアレンジを駆使した作風で、
クラシカルな優雅さと映画サントラ的なイメージが合わさった聴き心地。ロック色はないので、
どうしてもBGMになってしまいそうなのだが、ほのかにドラマ性を感じさせる雰囲気はあって、
シンセの重ねによるシンフォニックなサントラという風には味わえる。全72分の力作。
クラシカル度・・8 プログレ度・・6 優雅度・・8 総合・・7
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FULANO 「Animal en Extincion」
チリのアヴァン・ジャズロック、フラノの2016年作
CONGRESOのメンバーを中心に1987年にデビュー、1997年までに4枚のアルバムを残すも、2003年にシンセ奏者が死去、
バンドは解散状態となっていたが、ここにきて19年ぶりとなる5作目を発表。「絶滅動物」というタイトルの本作は、
やわらかなフルートにピアノ、サックスを乗せた、優雅なアンサンブルから、リズムチェンジを含むアヴァンギャルドな展開力に
チェンバーロック的でもあるスリリングな空気感をまとわせた、個性的なプログレ・ジャズロックを聴かせてくれる。
スペイン語による女性ヴォーカルも妖しく、そして美しく、ときにMAGMAを聴いているかのようなスケール感にも包まれる。
ザッパをルーツにした軽妙な意外性と、南米らしいやわらかな叙情が合わさった、まさにアヴァン・ジャズロックの力作。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 優雅で軽妙度・・9 総合・・8
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PROCOSMIAN FANNYFIDDLERS 「Return Of The Sweaty Owl」
ノルウェーのアヴァン・プログレ、プロコスミアン・ファニーフィドラーズの2003年作
ヘンタイ過ぎてのけぞった2001年作から、本作ではヴァイオリン、女性シンセ奏者を含む6人編成となり、
優雅なフルートの音色にアコースティックギター、美しい女性ヴォーカルを乗せてしっとりと始まりつつ、
変拍子にリズムチェンジを含むプログレ的な展開力とともに、のっけから20分の大曲を描いてゆく。
北欧らしい涼やかな叙情のシンセアレンジも含めて、マイナー臭くなったANGLAGARDという雰囲気もあり、
シアトリカルなドラマ性とともに妖しい垢抜けなさもかえっておもしろい。女性声の北欧アヴァン・プログレとして楽しめる力作だ、
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 北欧度・・9 総合・・8



3/3
ひな祭りはプログレで♪(78)


CIRCA 「LIVE」
イギリスのプログレハード、サーカのライブ。2016年作
元Yesのビリー・シャーウッド、トニー・ケイ、アラン・ホワイトらによるバンドで、本作は2007年のデビュー直後のライブから、
アメリカツアーのステージを2CDに収録。アラン・ホワイトの軽やかなドラムに、存在感あるビリー・シャーウッドのベース、
トニー・ケイのシンセとともに、初期のYESを思わせるようなキャッチーなプログレハードサウンドを聴かせる。
オルガンを含む古き良きプログレの感触と、枯れた味わいのヴォーカルによる、大人の味わいの叙情性は、
目新しさはないものの安心して楽しめる。そして、Disc2の目玉は、YESの歴史を振り返るような40分のメドレー。
1969年のデビュー作から1999年までのナンバーから抜粋した演奏を披露してくれ、往年のファンは感激だろう。
音質的にはややラウドながら、イエス関連のファンはチェックすべきライブですね。Disc2だけでも必聴かと。
ライブ演奏・・8 Yes度・・8 音質・・7 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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MESSENGER 「Illusory Blues」
イギリスのプログレバンド、メッセンジャーの2014年作
Vo&G、B、Drという三人編成で、やわらかなギターのつまびきに、マイルドなヴォーカルを乗せ、
フルートが優美に鳴り響く、繊細な叙情性に包まれたサウンドで、ポストプログレ的なモダンさと、
オルガンなどのヴィンテージな感触が融合したサウンド。ゲストによるヴァイオンなども加えた優雅な美しさと、
フォーク的でもある素朴さが英国らしい味わいとなっていて、曲によってはシンフォニックに盛り上がる場面や、
オールドな70年代ロックテイストもあったりして、全体的に派手さはないが、ゆったりと楽しめる内容だ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 繊細で素朴度・・9 総合・・7.5
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STEVEN WILSON 「Hand.Cannot.Erase」
PORCUPINE TREEのスティーヴン・ウィルソンのソロ。2015年作
2013年の傑作「レイヴンは歌わない」に続く本作は、孤独死を遂げた女性の人生を描くコンセプト作。
うっすらとしたシンセアレンジに叙情的なギターを乗せ、キャッチーなメロディアス性も含んだ
軽快なProgMetal風のパートから、やわらかなヴォーカルパートまで、メリハリのある展開力で構築される、
いつになくダイナミックな聴き心地。ポストプログレらしい繊細で物悲しい味わいに、
プログレ的シンセにメロウなギター鳴り響くインストナンバーなど、楽曲ごとの巧みアレンジセンスも見事。
ニック・ベッグスをはじめ、THE ARISTOCRATSのガスリー・ゴーヴァン、マルコ・ミンネマン
GONGのテオ・トラヴィスらが参加。アーティストとしての豊かな才能が詰め込まれた傑作である。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 叙情度・・8 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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STEVEN WILSON 「INSURGENTES」
PORCUPINE TREEのスティーヴン・ウィルソンのソロ。2009年作
本作がソロデビュー作で、うっすらとしたシンセに、マイルドなヴォーカルを乗せた、
のちにいうポストプログレ的な物悲しい味わいの叙情ロックサウンドはすでに確立されている。
ギターには適度にメタリックなヘヴイさもあり、オルタナ的でもある硬質感を残している。
一方ではエレクトロなアレンジを加えたモダンさや、クリムゾンばりのスリリングなナンバー、
ゲストによるフルートやクラリネット、ピアノなどの音色によるやわらかな味わいなど、
楽曲ごとの面白さもある。PORCUPINE TREE~KING CRIMSONのギャビン・ハリソン、
トニー・レヴィン、DREAM THEATERのジョーダン・ルーデス、GONGのテオ・トラヴィスらが参加。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 叙情度・・8 総合・・8
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ARPIA 「Racconto D'inverno」
イタリアのプログレ・フォークロック、アルピアの2009年作
アコースティックギターの上に、イタリア語のマイルドな男性ヴォーカルと美しい女性ヴォーカルを乗せ、
ゴシック・フォーク的な薄暗い叙情に包まれたサウンド。ほとんどが1~3分前後の小曲で、
エレキギターは入らないので、プログレ的ではないかといえば決してそうでもなく、
ベースとドラムの生み出すアンサンブルやリズムチェンジを含む感触は十分イタリアンロック的だし、
シンセの加わったシンフォニックなナンバーもある。う少し女性声をメインにした曲が多いと嬉しいのだが。
ともかくアコースティックを主体にした、プログレ寄りのイタリアン・フォークロック好作品です。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 イタリア度・・8 総合・・7.5
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THE PSYCHEDELIC ENSEMBLE 「The Sunstone」
アメリカのシンフォニックロック、サイケデリック・アンサンブルの2014年作
ジャケからしていかにもB級シンフォっぽいのたが、美麗なシンセアレンジにオーケストレーションも含む
優雅なシンフォニック性に、マイルドなヴォーカルを乗せたメロディックなやわらかさに包まれたサウンド。
基本的に、ギター、ベース、シンセ、ヴォーカル、ドラムとすべてを一人でやっているソロ作品なのだが、
ゲストによる女性ヴォーカルを乗せた妖しいナンバーや、ストリングスも加わったクラシカル性と、
軽妙なリズムで聴かせるインストナンバーなど、シンフォプログレとしての聴きどころもたっぷり。
良くも悪くも独りシンフォとしてのマイナー臭さは感じられるのだが、そこも含めて楽しめるマニアはどうぞ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 優雅度・・8 総合・・7.5
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STYX「Grand Illusion/Pieces of Eight Live」
アメリカのプログレハード、スティクスのライブ作品。2012年作
代表作として名高い1977年作と、1978年作を完全再現したライブを、2CDに収録。
Disc1は「大いなる幻影」の再現で、バンドの人気を確実なものとした最大の出世作ということで、
楽曲的にはプログレハードとしての聴き心地の良さが際立っている。キャッチーなヴォーカルハーモニーと
美麗なシンセアレンジ、トミー・ショウとジェイムス・ヤングのツインギターとともに、アルバムを再現してゆく。
音質はややラウドながら、ベテランらしい味わいのある演奏力も含めて、往年のファンにはたまらないだろう。
Disc2「古代への追想」も、よりキャッチーなハードポップ感を強めた作風で、各メンバーのパートごとの充実も光る佳曲揃い。
4人がコーラスをとる厚みのあるハーモニーとともに、全盛期の最高作というべき2作品の完全再現にじっくり耳を傾けたい。
ライブ演奏・・8 アルバム再現度・・8 音質・・7 総合・・8
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SEVEN SIDE DIAMOND「Enigma」
ブラジルのプログレバンド、セヴン・サイド・ダイヤモンドの2011年作
シンセを含む5人編成で、ドラマティックな雰囲気のイントロから、ProgMetal的なハードさを含んだ
テクニカルなアンサンブルとシンセによる美麗なアレンジに、キャッチーなヴォーカルメロディを乗せた
壮麗なシンフォニックハードを聴かせる。ギターはわりとメタル寄りだが、シンセの方はオルガンや
ムーグなどの音色を含むプログレ寄りの感触なので、メタル、プログレどちらの耳でも楽しめる。
一方、やわらかな歌メロは、QUEENなどからの影響も感じさせ、サウンドに優雅さを加えている。
後半は13パートに分かれた34分の組曲で、優美なシンフォニック性とキャッチーな軽快さに、
ドラマティックな構築力が合わさった、メリハリのある展開で聴かせる。シンフォニックハードの力作。
ドラマティック度・・8 壮麗度・・8 構築度・・8 総合・・8
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CRISALIDA「Solar」
チリのハードプログレ(メタル)、クリサリダの2012年作
2006年にデビューしてから、本作は3作目となる。メタリックなギターにシンセが重なり、
スペイン語の女性ヴォーカルを乗せた、しっとりとした叙情性が合わさったサウンドで
いわば、メタリックなシンフォニックハードという聴き心地。やや微妙だった前作に比べ、
楽曲におけるダイナミックなスケール感や、女性ヴォーカルの表現力も増していて、
全体的にもぐっとレベルアップしたという印象だ。南米らしい優雅な叙情とメタル寄りの重厚さを同居させた
バランスのよいアレンジで構築された、女性声ハード・シンフォプログレ(メタル)の力作である。
ドラマティック度・・8 重厚度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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ARCHANGELICA 「Tomorrow Starts Today」
ポーランドのハードプログレ、アーチャンゲリカの2016年作
女性Vo、女性Bを含む5人編成で、いくぶんメタル寄りのギターとうっすらとしたシンセに
伸びやかな女性ヴォーカルを乗せた、タイトでモダンな感触のハードプログレを聴かせる。
ポーランドらしいメランコリックな味わいと、しっとりとした浮遊感に包まれて、美しい歌声が
響き渡るところは、かつてのThe Gatheringのアネク・ヴァン・ガースバーゲンなどを思わせる。
8分、9分という大曲も、プログレというよりはメランコリック・ロックという趣ではあるが、
同郷のLOONYPARKあたりと同様、女性声ハードシンフォとしても楽しめる好作だ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8
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Gazpacho 「FIREBIRD」
ノルウェーのポストプログレ、ガスパチョの2005年作
3作目となるアルバムの2016年再発盤。うっすらとしたシンセに包まれて、メロウなギターと
マイルドなヴォーカルを乗せた、薄暗系のポストプログレは、本作の時点で完成されたといえる。
前作でのMarillion的なスタイルから、北欧らしい涼やかで物悲しい空気感をまとわせ、
厚みのあるシンセアレンジやヴォーカルの表現力も含めて、ひとつモダンに推し進めたという感触。
アコースティックパートから、わりとハード寄りのギターや、女性コーラスを加えたパートなど
メリハリある構築センスも光っている。2パートに分かれた優美なナンバー「Orion」をはじめ、
楽曲ごとの魅力も十分。バンドとしては初期の傑作というべきアルバムだろう。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 薄暗度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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イタリアにスペイン、ドイツのプログレ♪(67)


MALIBRAN 「Le Porte Del Silenzio」
イタリアのプログレバンド、マリブランの1993/2016年作
デビューは80年代というキャリアのあるバンドで、本作は2ndアルバムを新たにリミックスした再発盤。
シンセにフルート奏者を含む6人編成で、美しいシンセワークにフルートが鳴り響き、しっとりとした叙情性と
適度に軽快さもあるメリハリのあるアンサンブルで聴かせる、90年代らしい王道のシンフォニックロック。
イタリア語のヴォーカルが加わると、やはりB級っぽさが現れて、長めの楽曲もときおり退屈になったりするのだが、
ロマンの香りを含んだ幻想性というのはこのバンドの持ち味で、後半の27分におよぶ長大な組曲も含めて、
B級シンフォとしての捨てがたい魅力がある。再発盤のボーナスには1991~93年までのライブ音源を収録。
ドラマティック度・・8 B級シンフォ度・・8 イタリア度・・8 総合・・7.5
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PANDORA 「TEN YEARS LIKE IN A MAGIC DREAM」
イタリアのプログレバンド、パンドラの2016年作
2008年にデビュー、過去3作も濃密なイタリアンプログレを描く傑作だったが、4作目となる本作は、
バンドの結成から10年を総括するような内容で、ムーグシンセにメロトロンが鳴り響き、
適度にハードなギターも加わった、美麗なシンフォニック性と重厚さを同居させたサウンドを展開。
イタリア語のジェントルな男性ヴォーカルにときに女性ヴォーカルも絡んで、やわらかなピアノに
ゲストによるヴァイオリンやフルート、きらびやかなシンセワークが合わさって、いつも以上に優雅な聴き心地である。
アルバム後半には、Banco、Genesis、Marillion、Yes、EL&Pのカヴァーを収録。女性声のマリリオン、ELPもよいですね。
Bancoのビットリオ・ノチェンツィ、元VdGGのデヴィッド・ジャクソンらがゲスト参加。プログレ愛に満ちた全76分です。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 イタリア度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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CHERRY FIVE 「Il Pozzo Dei Giganti」
イタリアのプログレバンド、チェリー・ファイヴの2015年作
GOBLINの前身バンドとしても知られ、1975年に唯一のアルバムを残したバンドが、40年ぶりに復活。
かつてのアルバムは英手歌詞のヴォーカルを乗せた、軽快やジャズック風味のサウンドであったが、
本作はのっけから24分の大曲で、オルガンにムーグを含むヴィンテージなシンセに、イタリア語のヴォーカルを乗せた、
ミステリアスなシンフォニックロックという聴き心地。メロディックなギターに、きらびやかなシンセワークを乗せ、
リズムチェンジを含んだ展開力で、METAMORFOSIなどにも通じる往年のイタリアンプログレの濃密な味わいだ。
かつてのような優雅で軽妙なアンサンブルも覗かせつつ、オールドなプログレ感触に包まれた力作に仕上がっている。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 イタリア度・・9 総合・・8
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ERRATA CORRIGE 「Siegfried Il Drago E Altre Storie」
イタリアのプログレバンド、エラータ・コリージの2015年作
オリジナルメンバーが集結し、1976年作をリメイクした作品で、アコースティックギターにやわらかなフルート、
サックスが鳴り響き、イタリア語による優しい歌声を乗せた、繊細な叙情美に包まれたサウンド。
メロトロンを含むシンセにクラシカルなピアノ、メロウなギターによるリリカルな美しさとともに、
古き良きイタリアンロックの素朴さを残しつつも、よりシンフォニックな優雅さが際立っている。
ジャケの美しさも含めて、幻想的な味わいをそのまま新鮮に蘇らせたという点でも、素晴らしい作品となった。
DVDには、本作のスタジオライブを収録。往年のイタリアンロックファンには歓喜のリメイクだろう。
ドラマティック度・・8 優美な叙情度・・10 イタリア度・・9 総合・・8.5
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IL BABAU E I MALEDETTI CRETINI 「Il Cuore Rivelatore」
イタリアのプログレバンド、イル・ババウ・アンド・マレデッティ・クレティニの2016年作
エドガー・アラン・ポー「THE TELL-TALE HEART(告げ口心臓)」をコンセプトにした作品で、
イタリア語の語りを乗せたイントロ曲から、シアトリカルなドラマ性に包まれた空気感で、
その後も、セリフのような演劇的な歌声を乗せた、一種のサントラ的なサウンドが続く。
プログレというよりは、聴く小説というような作風なので、イタリア語が分からないと少しつらいのだが、
スリリングな世界観は伝わってくる。2~4分前後の小曲を連ねた、全29分という短めの作品です。
ドラマティック度・・7 フログレ度・・7 イタリア度・・8 総合・・7
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OLD ROCK CITY ORCHESTRA 「Back to Heart」
イタリアのプログレバンド、オールド・ロック・シティ・オーケストラの2015年作
コケティッシュな女性ヴォーカルの歌声を乗せ、ほどよくサイケな浮遊感を漂わせたサウンドで、
ヴァイオリンが鳴り響くクラシカルな優雅さと、レトロなヴィンテージロックが合わさったという聴き心地。
2~4分前後の小曲を主体にした、わりとシンプル作風で、歌詞は英語なのでイタリアらしさは希薄ながら、
オルガンを含むシンセや70年代感触たっぷりのギターも含めて、ユルめの女性声サイケロックとしても楽しめる。
プログレとして聴くには物足りなさもあるが、ラストは9分の大曲で、しっとりと優美なシンフォニック性も覗かせる。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 ヴィンテージ度・・8 総合・・7.5
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Entity 「Il Falso Centro」
イタリアのプログレバンド、エンティティの2013年作
やわらかなピアノによるイントロ曲から、テクニカルなリズムに、ムーグやオルガンを含むシンセワークと、
メロディックなギター、イタリア語によるマイルドなヴォーカルを加えたサウンドで、古き良きプログレ感触と、
優美なシンフォニック性を同居させた作風。16分の大曲などは、わりともったりとした展開なのがB級シンフォらしく、
叙情的で耳心地はよいのだが、長尺ぎみのアレンジがときおり退屈に聴こえてしまうのが惜しい。
曲によっては適度にハードな質感もあったしてり、テクニカルなシンフォハードとしても楽しめるところも。
クラシカルなピアノや美麗なシンセアにはセンスを感じるので、楽曲とアレンジの質を高めてゆけばいいバンドになりそう。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 優雅な叙情度・・8 総合・・7.5
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KOTEBEL 「Live at Prog-Resiste 2013」
スペインのシンフォニックロック、コテベルのライブ。2016年作
1999年にデビュー、クラシカルな美意識を追及したサウンドで見事な傑作を作り続けるこのバンド、
本作は2013年ベルギーでのライブを2CDに収録。2003年作「FRAGMENTS OF LIGHT」からのナンバーで幕を開け、
女性シンセ奏者を含むツインキーボードによるシンフォニック性と、変拍子を多用した巧みなアンサンブルで、
クラシカルな美意識に包まれた格調高いインストサウンドを構築。濃密でありながら流麗な美しさという点では、
THE ENIDANGLAGARDが合体したような感触か。2011年作「Concerto for Piano & Electric Ensemble」からの
43分におよぶ長大な組曲の再現も圧巻で、クラシカル化したクリムゾンというべきスリリングで優美なサウンドに聴き惚れる。
Disc2には、2009年作「Ouroboros」からのナンバーに、ボーナストラックとして、2007年、2011年のライブ音源も収録。
クラシカル度・・9 プログレ度・・8 ライブ演奏・・8 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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KOTEBEL 「COSMOLOGY」
スペインのシンフォニックロック、コテベルの2017年作
ライブ作品を挟んで、7作目となるスタジオアルバムで、美しいフルートの音色にツインキーボードが重なり、
壮麗なシンフォニック性に包まれつつ、今作ではタイトルのようなスペイシーなミステリアス性も感じさせる。
ときに日本のKENSOにも通じる軽妙なアンサンブルで、起伏に富んだ構築力と知的なセンスで、
優雅なインストサウンドを描いてゆく。ハイライトである32分を超えるタイトル組曲も、従来のクラシカルな優美さに
フルートが鳴り響く繊細な叙情性も含ませながら、どことなく日本的な情感を匂わせているのが特徴的だ。
クリムゾン的でもある緻密なアンサンブルを、シンフォニックロックとしての端麗な味わいに溶け込ませる作風は、
まさに円熟の域にまで到達している。オールインストでここまでの構築性を描けるバンドというのはなかなかいない。
クラシカル度・・8 プログレ度・・8 優雅な叙情度・・9 総合・・8
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Grobschnitt 「The International Story」
ドイツのプログレバンド、グロープシュニットのライブ作品。2006年
1972年デビュー、クラウトロックを代表するバンドの、1973年~83年までのライブ音源をCD2枚に収録。
エロック氏の手数の多いドラムに、オルガンを含むシンセとメロウなギターを乗せ、シンフォニックロック的な叙情に、
シアトリカルなヴォーカルを乗せて、とぼけた演劇性をまぶした濃密な空気感というのは、このバンドならではの聴き心地。
Disc1の53分におよぶ「ソーラー・ミュージック組曲」を演奏、サイケ的でもある浮遊感に包まれた壮大な大曲だ。
Disc2には、1977年作「Rockpommel's Land」からのナンバーを含め、優美なシンフォニック性に包まれたサウンドが楽しめる。
リマスターの鬼、エロック氏だけあって音質も抜群。2CDで合計160分弱、まさにバンドの歴史を俯瞰するようなライブ作品です。
ドラマティック度・・8 ライブ演奏・・8 濃密度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Zara-Thustra 「Best of」
ドイツのシンフォニックロック、ツァラ・トゥストラのベストアルバム。2015年作
1982~88年にかけて4枚のアルバムを残したバンドで、本作には1985年の3作目までから16曲を収録。
優美なシンセアレンジに、ドイツ語による歌声を乗せた、キャッチーなプログレハード的なサウンドで、
ヨーロピアンなロマンティシズムを感じさせる空気感は、ANYONE'S DAUGHTERなどを思わせる雰囲気もある。
ASIAやダウンズ期のYESにも通じるスタイリッシュなポップ性も含んでいるが、どこか翳りを含んだウェットな質感は、
ヨーロッパのバンドならではだろう。曲によっては、サックス、ホルンなどのブラスを加えたアレンジも面白い。
正規アルバムはどれも未CD化なので、このベストアルバムでの音源はとても貴重だろう。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 ゲルマン度・・8 総合・・8
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APERCO 「THE BATTLE」
イスラエルのプログレバンド、アペルコの2016年作
美しいシンセとオーケストレーションによるイントロから、フルートがやわらかに鳴り響き、
CAMELを思わせるような優美なインストパートが広がってゆく。叙情的な泣きのギターに
ジェントルなヴォーカルも加わって、70年代英国ルーツの素朴な牧歌性に包まれたサウンドを描く。
11分の大曲も、メロトロンなどのうっすらとしたシンセにピアノによる繊細なシンフォニック性に加え、
サイケロック的な怪しげな浮遊感も覗かせる。ムーグシンセ鳴り響くキャッチーなノリのナンバーなど、
古き良きプログレへの敬愛をうかがわせる作風には、なかなか好感が持てる。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 繊細度・・8 総合・・8
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TELERGY 「HYPATIA」
アメリカのシンフォニックロック、テレルジィの2015年作
マルチミュージシャン、Robert McClungによるプロジェクトで、本作はキリスト教徒の暴徒に襲われて殺されたという、
古代ギリシアの女性哲学者、ヒュパティアをテーマにした作品。やわらかなフルートなヴァイオリンなどのストリングスを含む、
オーケストラルなアレンジで、スケール感のあるシンフォニックロックを描いてゆく。適度にメタリックでハードなギターワークに、
ヴァイオリンが鳴り響き、男女混声コーラスを乗せた、壮大で優美なサウンドが楽しめる。やわらかなフルートやハープの音色に
クラリネット、オーボエなどのクラシカルな叙情美も含んだ、繊細さとハードさのメリハリのある展開力もなかなかのもの。
曲間に物語的な語りやセリフを挿入しながら、ドラマ性を感じさせる構成で描かれる、全63分の力作だ。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 壮大度・・8 総合・・7.5
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トラッド、ケルト、フォーク♪(54)


FLORENCE + THE MACHINE「How Big, How Blue, How Beautiful」
イギリスの女性Voポップロック、フローレンス・アンド・ザ・マシーンの2015年作
KATE BUSHのセンスと、QUEENのような華麗さを同居させ、一躍英国女性アーティストのトップへと躍り出た彼女、
3作目となる本作は、のっけから軽快なポップフィーリングに包まれた感触ながら、どこか倦怠を含んだ彼女の歌声は
いかにも英国らしいウェットな表現力を匂わせる。モダンなシンセアレンジにブラスやストリングスなども加えた
厚みのある音作りとオーケストラルなスケール感には、単なる歌ものという以上に楽曲そのものへのこだわりが感じられる。
しっとりとしたバラードナンバーなども含め、普遍的なポップロックの聴きやすさの中に、アーティスティックなセンスを覗かせる、
さりげないクオリティの高さは3作目にしてすでに円熟の域。いうなれば自然体の彼女を表現したような好作品です。
メロディアス度・・8 ポップロック度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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AnnaMy 「Woodpecker」
イギリスのフォークユニット、アナミーの2013年作
女性シンガー、アンナ・ミステン嬢をフロントに、アコースティックギターのつまびきに
優しい女性ヴォーカルを乗せた、英国らしい素朴な叙情を聴かせるフォークサウンド。
しっとりとした落ち着いた味わいに加え、ドラムにオルガン、エレキギターを加えた
程よいロック感触もありつつ、物寂しい空気感に包まれた幻想的な味わいも感じさせる。
英国アシッドフォークとしてのほのかな翳りを含んだ、耳心地のよさに包まれた逸品です。
ドラマティック度・・7 英国度・・8 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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Anna Shannon 「Over Land」
イギリスの女性シンガー、アンナ・シャノンの2010年作
自身の奏でるアコースティックギターに、ハスキーな女性ヴォーカルを乗せ、
ケルトテイストのある、素朴で牧歌的なフォークサウンドを聴かせる。
美しすぎない歌声には、良い意味で年季を感じさせる落ち着いた味わいがあり、
ジヤケのようなイングランドの田舎の優しい空気に包まれるような感触だ。
曲によっては、フルートやヴァイオリンの音色も加わって、優美な叙情に包まれる。
しっかりと土臭さを感じさせつつ、神秘的なケルトの味わいをまぶした作品です。
アコースティック度・・8 ケルティック度・・8 女性Vo度・・7 総合・・7.5
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Stone Angel 「Circle of Leaves」
イギリスのフォークバンド、ストーン・エンジェルの2007年作
1975年に1作を残して消え、その後、2000年に25年ぶりとなる復活作を出し、本作は復活後の3作目となる。
うっすらとしたシンセアレンジに、美しい女性ヴォーカルの歌声に、英国らしい湿り気を帯びた空気感に包まれた
幻想的なフォークサウンド。フルートやリコーダーのやわらかな音色に、アコースティックギターが絡む
素朴な牧歌性を残しながらも、ドラムの入った適度なフォークロック風味もあって初心者にも聴きやすい、
マイルドな男性ヴォーカルも加わった、男女声の古き良き伝統的な英国フォークとしても楽しめ、
アコーディオンやダルシマーなど、中世風味のトラッド要素も含んだ、優雅な味わいの好作品だ。
アコースティック度・・8 素朴で優雅度・・9 英国度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Kathryn Williams 「The Quickening」
イギリスの女性SSW、キャスリン・ウィリアムスの2009年作
アコースティックギターの旋律にマリンバが響き、やわらかな女性ヴォーカルを乗せたフォークサウンド。
英国らしい翳りを帯びた空気感に、マンドリン、バンジョー、アコーディオン、ハーディ・ガーディなどが、
素朴な彩りを添える。いくぶんかすれた彼女の歌声は耳に優しく、アコースティックサウンドによくマッチしていて、
ときにドラムやエレキも加わった聴きやすさとともに、ブリティッシュ・フォークルーツの牧歌的な叙情が味わえる。
アコースティック度・・8 素朴な叙情度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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Kathryn Williams 「Crown Electric」
イギリスの女性SSW、キャスリン・ウィリアムスの2013年作
アコースティックギターに、やわらかな歌声を乗せた、フォーク&カントリー調の素朴なサウンドに
優雅なチェロが鳴り響き、物悲しい叙情性も含ませた、しっとりとした聴き心地。
本作では、ストリングスによる美しいアレンジや、わりとキャッチーなナンバーなども含め、
アルバムとしてのメリハリもあって、ドラムにエレキも加えたフォークロックとしての味わいもよいですね。
翳りを帯びた英国フォークルーツのサウンドに、現代的なセンスをまぶしたという好作品。
ドラマティック度・・8 優雅な叙情度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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Cecile Corbel「Songbook Vol.3」
フランス、ブルターニュ出身のハープ奏者/シンガー、セシル・コルベルの2008年作
フランス語によるキュートな歌声と、美しいハープの音色、ヴァイオリンやチェロ、フルートなども加わった
繊細で優雅なケルティックサウンドを聴かせる。アコースティックが主体ながら、
どことなくコンテンポラリーな雰囲気がただようのは、若手アーティストのセンスだろう。
しっとりとした幻想的な空気感は、中世やケルトのロマンを現在に蘇らせたようだ。
曲によってはエレキギターやドラムも加わったりと、トラッドにとらわれないアレンジも楽しい。
アコースティック度・・8 ケルティック度・・8 優雅で繊細度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Cecile Corbel「Songbook Vol.4」
フランス、ブルターニュ出身のハープ奏者/シンガー、セシル・コルベルの2013年作
少女めいたコケティッシュな歌声とハープのつまびきを乗せた、優美なサウンドはそのままに、
今作ではドラムの入ったケルトロック的なナンバーで始まり、ストリングスアレンジを加えての
しっとりとした叙情や、うっすらとしたシンセにハープが美しく響くアンビエントなナンバーなど、
ややコンテンポラリーな雰囲気を強めた作風だ。もちろんトラッド的なアコースティック感触も残していて、
伝統とモダンのバランスのとれたサウンドは、ケルト初心者にも楽しめるだろう。
アコースティック度・・8 ケルティック度・・8 優雅で繊細度・・9 総合・・8
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SEIVA
ポルトガルのトラッドユニット、セイヴァの2015年作
パーカッションのリズムに母国語の女性ヴォーカルを乗せ、アコースティックギターにバクパイプの音色も加わり、
ケルトとバルカンの中間のような、土着的なトラッドサウンドを聴かせる。技巧的なギターとリズミカルな躍動感は、
スパニッシュ系のトラッドにも通じる感触で、素朴でありながらも情熱的な聴き心地が楽しめる。
民族的なガイタ(バグパイプ)の音色もよいアクセントどころか、曲によっては主役になって大活躍。
歌声にエフェクトのかかったラジカルトラッド風味も含めて、伝統と先鋭を同居させた好作品です。
アコースティック度・・9 トラッ度・・9 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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Lauren Edman 「It's Always the Quiet One」
アメリカのSSW、ローレン・エドマンの2012年作
エレクトロなシンセに、美しい女性ヴォーカルを乗せた、フィメールポップというサウンドながら、
ピアノをバックにしっとりとした歌声を聴かせる、クラシカルでコンテンポラリーな味わいもある。
打ち込みによるモダンなアレンジと、フォークルーツの素朴な味わいが融合した自然体の聴き心地に
やわらかな女性声による耳心地のよさで、ゆったりと鑑賞できる、わりと癒し系寄りの作風でもある。
濃密さやインパクトは薄いものの、フォーク寄りのフィメールポップとして普通に楽しめる。
ドラマティック度・・7 しっとり度・・8 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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Isabelle Boulay 「Nos Lendemains」
カナダの女性シンガー、イザベル・ブーレイの2008年作
ケベック州のアーティストで、アコースティックギター、ピアノなどのシンプルなアレンジに、
フランス語による艶めいた彼女の歌声を乗せた、シャンソン的な味わいのサウンド。
古き良きポップロックの空気感と、しっとりとした大人の雰囲気に包まれた聴き心地で、
派手さや新鮮さはないものの、アダルトな歌声とともに、どこかなつかしいような安心感が魅力。
楽曲も3分前後のゆったりとしたバラードナンバーが中心で、フランス語の優雅な響きが
疲れた耳にも優しく響く。大人歌声が楽しめる、フレンチな味わいの女性シンガー作品です。
メロディック度・・7 ゆったり安心度・・8 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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Linde Nijland 「I Am Here」
オランダの女性SSW、リンデ・ニルランドの2014年作
アコースティックギターのつまびきにアコーディオンの音色、美しい女性ヴォーカルを乗せたトラッド寄りのサウンド。
マンドリン、シターンの素朴な音色で聴かせる、Renaissanceの名曲“Ocean Gypsy”カヴァーもしっとりと美しい。
牧歌的なバンジョーに艶やかなフィドルが絡む、カントリー風味にフォーク&トラッドの空気感が合わさって、
全体的にシンプルな音数ながら、彼女の美声をよく引き立てている。優しい素朴さに包まれた逸品です。
アコースティック度・・9 素朴な叙情度・・9 女性Vo度・・9 総合・・8
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DEW-Worship 「Release your power : Worship, Welfare & Impartation」
オランダのケルティック・ロック、デュー・ワーシップの2007年作
2006年オランダでのライブを収録した作品で、フルート、ホイッスルの音色に、美しい女性ヴォーカル、
うっすらとしたシンセにエレキギターを乗せた、優雅なケルトロックというサウンドで始まりつつ、
語りの掛け合いを乗せたシアトリカルなナンバーもあったり、タイトルのようにスピリチュアルで、
宗教的なストーリー性を描くような、演劇的なライブステージであったのかもしれない。
テンション高めの演奏で盛り上がってゆくところは、MAGAMAなどにも通じる空気感で、
軽快なドラムにピアノが鳴り響く、ジャズロック風味もあったり、わりととりとめがない。
ラストは、艶やかなヴァイオリンにピアノ、女性ヴォーカルを乗せ、しっとりと優美に締めくくる。
ドラマティック度・・7 ケルティック度・・7 女性Vo度・・7 総合・・7
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まだまだチェンバーにジャズロック!(41)


QUINTESSENCE 「Spirits from Another Time」
イギリスのサイケロック、クインテセンスの2016年作
1969年に結成、HAWKWINDとともに70年代の英国サイケロックを代表するバンドで、
本作は1969~71年の作品から選曲された、シングル曲や未発曲を含む、CD2枚組のベスト。
アコースティックギターにシタール、フルートの音色が重なり、詠唱的な感じのヴォーカルを乗せた、
ユルめのサイケロックサウンド。スペイシーなホークウインドに比べて、こちらは東洋的な神秘性を感じさせ、
11分を超える大曲なども、盛り上がり過ぎず、あくまでオリエンタルなサイケ感をゆったりと描いている。
適度にアッパーでありながら、70年代初頭のおおらかな空気感のサイケロックが楽しめます。
ドラマティック度・・7 サイケ度・・9 ユル度・・8 総合・・7.5
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Karda Estra 「Mondo Profondo/New Worlds」
イギリスのチェンバーロック、カルダ・エストラの2013年作
ギター、ベース、シンセを操るマルチミュージシャン、Richard Wilemanによるソロユニットで、
本作は2013年のミニアルバムと、2011年作のカップリングCD。不協和音を含んだピアノが鳴り響き、
艶やかなストリングスが包み込む。ドラムのリズムに乗む重々しいベースが不穏な緊張感をかもしだす、
まさに王道のチェンバーロックが楽しめる。一方では、女性声のスキャットにメロウなギターが加わった、
シンフォニックロック的な優美さや、オーボエの音色に繊細なピアノが絡むクラシカルな聴き心地にもウットリ。
2011年作の方は、うっすらとしたシンセにサウンドスケープ的なギターによる、クールなアンビエント感触と、
オーボエやクラネットによる優雅なチェンバー色が合わさった、わりとモダンなアレンジでじっくりと楽しめる。
クラシカル度・・8 チェンバー度・・9 優雅で不穏度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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FLAIRCK 「The Lady's Back」
オランダの技巧派アコースティックユニット、フレアークの2014年作
1978年にデビュー、その超絶技巧というべき軽やかなアコースティック・アンサンブルで、
通好みのプログレファンも虜にするこのバンド。本作は2014年オランダでのライブを収録。
オリジナルのフルート奏者、PETER WEEKERSが復帰し、アコースティックギター、女性ヴァイオリン、
ベースという編成で、過去作品のナンバーを再現。パンパイプやサンポーニャ、ティンホイッスルといった
多彩な笛を優雅に吹き鳴らし、技巧的なアコースティックギターに艶やかなヴァイオリンが合わさった
見事なアンサンブルは、4人編成であっても圧倒的な存在感である。名曲“East West Express”、
“Sofia”といった初期のナンバーも含めた素晴らしい演奏が堪能できる。フレアーク健在である。
アコースティック度・・10 テクニカル度・・9 優雅度・・9 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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MICHAEL RIESSLER「MOMENTUM MOBILE」
ドイツ出身のサックス&クラリネット奏者、ミヒャエル・リースラーの1994年作
ハーモニカ、バレルオルガン、ベ-ス、ドラムというメンバー編成での、1993年ドイツのライブ音源を収録。
テクニカルなドラムとベースが、スリリングなグルーブを生み出し、手回しオルガンによる素朴な音色に、
サックスやクラリネットがフリーキーに重なる技巧的なアンサンブルで、アーティスティックなジャズロックを聴かせる。
ときにゆったりとした叙情的な味わいもかもしだしつつ、トランペット、トロンボーン、チューバというブラスに、
ヴァイオリン、ビオラ、チェロのストリングスも加えて、クラシカルなチェンバー風味の優雅さも含んだ聴き心地。
一糸乱れぬ演奏はライブとは思えないほどで、とぼけた大人の味わいも含んだアヴァン・ジャズロックが楽しめる。
テクニカル度・・9 ジャズロック度・・8 スリリング度・・9 総合・・8
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MICHAEL RIESSLER「ORANGE」
ドイツ出身のサックス&クラリネット奏者、ミヒャエル・リースラーの2000年作
L'Orchestre National de Jazz Parisにも参加していたミュージシャンで、ソプラニーノ(リコーダー)の素朴な音色に
技巧的なクラリネットが絡み、女性声のスキャットを乗せた、ミニマムなフリージャズ的サウンドを聴かせる。
基本は、クラリネットとリコーダーが綿井ながら、曲によってはアコーディオンやパイプオルガンが加わり、
女性声を前に出したナンバーなどもあって、エキセントリックなチェンバー、アヴァン・ジャズ的にも楽しめる。
オールアコースティックなので、チェンバー・ジャズロック的な名作「HONIG UND ASCHE」のような怒涛の迫力はないのだが、
スリリングな演奏には、クラリネット奏者としての彼の才能がしっかりと感じられる。Elise Caronの表現力ある女性声も素晴らしい。
スリリング度・・8 フリージャズ度・・8 アヴァン・チェンバー度・・8 総合・・8
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MICHAEL RIESSLER「Big Circle」
ドイツ出身のサックス&クラリネット奏者、ミヒャエル・リースラーの2011年作
サックス、トランペット、トロンボーンがけたたましく鳴り響く、冒頭の迫力から圧倒されるが、
技巧的なドラムとベースによるジャズロック的なアンサンブルに、素朴なバレルオルガンの音色が重なり、
クラリネットがフリーキーに響き渡る。厚みのあるブラスセクションとテクニカルなリズムのバトルという様相から、
バレルオルガンとクラリネットによるシンプルな音数による優雅な技巧ナンバーまで、どれも圧巻の演奏である。
随所にアヴァンギャルドなチェンバーロック風味も覗かせるところは、やはりプログレリスナー向きのアーティスト。
テクニカル度・・9 ジャズロック度・・8 スリリング度・・9 総合・・8
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MICHEL AUMONT 「Le Grant Orchestre Armorigene」
フランスのクラリネット奏者、ミシェル・オーモンの2012年作
ピアノ、ヴァイオリン、チューバ、ヴィエレ・ア・ルー(ハーディ・ガーディ)、ドラムを含む7人編成で、
ブルターニュ地方のトラッドをモチーフにした楽曲を、ジャズオーケストラの編成で演奏。
軽やかなドラムの上に、チューバの低音とヴァイオリンが鳴り響き、優美なピアノの旋律に、
エレクトリック・ヴィエレ・ア・ルーも加わって、素朴なブルターニュの空気感に包まれた
技巧的なジャズロックが楽しめる。土着的なトラッド感触を軽妙に表現するという点では、
FLAIRCKにも通じるスタイルだろう。ジャズ、クラシック、トラッドの要素を絶妙に溶け込ませた傑作だ。
テクニカル度・・9 トラッド・ジャズ度・・8 優雅度・・9 総合・・8.5
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SETNA 「Guerison」
フランスのプログレバンド、セトナの2013年作
2007年作に続く2作目で、やよらかなエレピの音色に重たいベースを乗せた優雅なアンサンブルに、
中性的な男性ヴォーカルが妖しく歌声を響きかせる。MAGMAをルーツにしたジャズロックながら、
オルガンなどを加えたカンタベリーなテイストが合わさった感触には、どこか素朴な牧歌性も感じさせる。
シンセの重ねによるシンフォニックなパートや、12弦ギターによる繊細な叙情性も含んで、
26分の大曲もメリハリある流れでじっくりと構築してゆく。哀愁のギターフレーズにエレピが重なる辺りは、
単なるマグマ系とは異なる優美なプログレ・ジャズロックという趣だが、ときにフリーキーにドラムが叩かれる、
おどろおどろしさも覗かせる。いわば「カンタベリーなマグマ」というべき優雅で叙情的な好作品。
ドラマティック度・・8 優雅度・・8 マグマ度・・8 総合・・8
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Simon Steensland 「Led Circus」
スウェーデンのマルチミュージシャン、サイモン・スティーンスランドの1999年作
本作は、のっけから16分を超える大曲で、モルガン・オーギュレンの叩きだすドラムに
コロコロとしたマリンバの響きにサックスやリコーダーを加え、怪しげなヴォーカルを乗せた、
まさにMATS/MORGANをダークにしたような、異色のアヴァンロックを聴かせる。
とぼけた味わいの中にも、音の塊が押し寄せる緊迫感と得体の知れないスケール感を描く
アーティスティックなセンスというのは、北欧のチェンバー/アヴァンロックの中でも屈指であろう。
変則リズムによるテクニカルなダークさは、チェンバー化したMESHUGGAHのようでもある。
ラストの18分の大曲もまた物凄い。マッツ・エーベリーなどもゲスト参加。必聴の傑作です。
ドラマティック度・・8 アヴァンギャル度・・9 スリリング度・・9 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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DAAU 「Tub Gurnard Goodness」
ベルギーのチェンバーロック、Die Anarchistische Abendunterhaltungの2004年作
クラリネット、チェロ、アコーディオン、ヴァイオリンという4人編成で、不穏なチェロの音色に
クラリネット、ヴァイオリンの響きが重なり、スリリングな空気を優雅な音で表現するサウンドは、
ロック色を排したUNIVERS ZEROという雰囲気もある。ストリングスの強弱によるダイナミクスが
迫りくるような緊迫感を描き出し、ダークなクラシカル性が耳心地よくもおどろおどろしい。
一方では、アコーディオンとクラリネットが前に出た、とぼけた味わいと哀愁も感じさせ、
アコースティック主体ながら、メリハリのある聴き心地で飽きさせない。曲によってはドラムも入って
女性ヴォーカルを乗せたジャズやタンゴ風味のナンバーもあったりする。本格派チェンバーの好作品。
スリリング度・・8 チェンバー度・・9 ロック度・・3 総合・・8
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DAAU 「HINEININTERPRETIERUNG」
ベルギーのチェンバーロック、Die Anarchistische Abendunterhaltungの2017年作
アコーディオン、クラリネット、ベース、ドラムの4人編成を基本に、ヴァイオリン、チェロ、フルート、
複数のヴォーカルなど多数のゲストを加えてのアルバムで、クラリネットとアコーディオンを中心とした牧歌的なナンバーから、
落ち着いた歌声を乗せたわりとモダンなアンビエント調のナンバーなど、幅の広いアレンジのサウンドが楽しめる。
艶やかなヴァイオリンやフルートによる優美なクラシック性も耳心地よく、アコースティックを主体にした
ミニマムなアンサンブルを中心に、ドラムが入ったロック色も取り入れつつ、チェンバーロックとしての優雅さと、
適度に薄暗い自然体の味わいには、バンドとしての成熟を感じさせる。まさに大人のためのチェンバーミュージックである。
スリリング度・・8 チェンバー度・・9 ロック度・・5 総合・・8
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Vezhlivy Otkaz 「Geese And Swans」
ロシアのチェンバーロック、ヴェジリヴィ・アトカズの2010年作
トランペットにヴァイオリンがけたたましく鳴り響き、繊細なピアノが絡みつつ、
偏屈なアヴァンギャルド性と哀愁の情緒が交差する、硬質なチェンバーロック。
スリリングでアカデミックなシリアス性は、Henry Cowにも通じる感触で、
変拍子リズムに乗せるクラシカルなピアノは優雅なれど、母国語による男性ヴォーカルはどこか偏屈な印象。
ゆったりとしたピアノにヴァイオリンが絡む、ジャズタッチのアダルトな味わいも覗かせる。玄人好みのチェンバー作品だ。
ドラマティック度・・7 チェンバー度・・8 アヴァンギャル度・・7 総合・・8
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BPM&M「XtraKcts & ArtifaKcts」
パット・マステロットとプロジェクトXのプロデューサー、ビル・マニヨンによるユニット。2001年作
ロバート・フリップ、トニー・レヴィンらが参加、エレクトロニクスを駆使したテクノ的なサウンドは、
デジタルにインダストリアル化したクリムゾンというべき作風で、アレンジ面での方向性は異なるが、
フリップの遺伝子は確実に受け継いでいる。くぐもったベースのみがリフレインするパートなど、
適度にアヴァンギャルドな部分もあって、単なるクリムゾン系と思って聴くと肩透かしだろうが、
無機質なビート感に、トニー・レヴィンのベースとフリップのギター音が重なると、いかにもそれらしくなる。
ロック色、プログレ色はあまりないのだが、むしろエレクトロなトリップミュージック的にも楽しめるかもしれない。
ドラマティック度・・6 プログレ度・・7 インダストリアル度・・8 総合・・7.5
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FLIGHT 「Incredible Journey」
アメリカのジャズロックバンド、フライトの1976年作
おそらくは初のCD化で本作は2作目となる。きらびやかなシンセに適度にハード寄りのギター、
ジャズタッチのピアノにサックスやトランペットなどのブラスが鳴り響く、軽やかなフュージョン・ジャズロック。
ファンキーな味わいのヴォーカルがポップな感触をかもしだしているが、バックの演奏は相当テクニカル。
手数の多いドラムとうねるベースが、躍動的なアンサンブルを作り出し、プログレ的でもあるリズムチェンジや
唐突な展開力も含んだエキセントリックなセンスも素晴らしい。厚みのある音の塊が突き抜けてゆく爽快さで、
マハヴィシュヌとはまた違ったスタイルでの、プログレッシブなジャズロックの最高峰というべき傑作だ。
メロディック度・・8 ジャズ&フュージョンロック度・・9 テクニカル度・・9 総合・・8.5
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チェンバー&アヴァンロック!(27)
「チェンバーロック特集」ページはこちら


Karda Estra 「Infernal Spheres」
イギリスのクラシカル・チェンバーロック、カルダ・エストラの2017年作
ギター、ベース、シンセを操るマルチミュージシャン、Richard Wilemanによるソロユニットで
ミステリアスなシンセに、ギターやクラリネット、オーボエ、トロンボーンなどを使用した、
クラシカルなチェンバーロックは本作も同様。アコースティックギターにオーボエが重なる
物悲しくもミステリアスな空気感というのは、いかにも王道のチェンバーミュージックらしい。
美しいストリングスや、シンセの重ねにノイジーなギターを加えたアレンジなど、空間的なスケール感と
スリリングな緊張感の同居も、さすがキャリアのあるミュージシャンである。一方では、ドラムの加わったナンバーは
わりとキャッチーで、女性スキャットも入ったり、サロン系チェンバーのノリもある。いつになく多様な印象の逸品だ。
クラシカル度・・8 チェンバー度・・9 ミステリアス度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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GUAPO 「Black Oni」
イギリスのアヴァンプログレ、グアポの2004年作
結成は90年代という、なにげにキャリアのあるバンドで、本作は鬼をテーマにしたコンセプト作。
ノイジーでヘヴィなギターが鳴り響き、美しいシンセを絡ませながら、不穏な空気感を躍動的に描く、
いわゆる「MAGMA/Zeuhl系」の作風に、暗黒性をたっぷりとまぶした重厚なサウンドを展開する。
ジャズロック、チェンバーロックというカテゴライズ不要な、凶暴なダークさとスリリングな緊張感が、
聴き手をじわじわと包み込む。UNIVERS ZEROをよりハードにしたという感触もあるが、
シンセのメロデイはときに優美ですらあって、メタル寄りのリスナーにも楽しめるかもしれない。
5パートに分かれた、44分のオールインストだが、最後まで張詰めた緊張感で飽きさせない。
ドラマティック度・・8 アヴァンギャル度・・8 暗黒度・・9 総合・・8
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GUAPO 「History Of The Visitation」
グアポの2013年作
7作目となる本作は、のっけから26分の組曲で幕を開ける。サックスやトランペット、バスーン、ヴァイオリンなどが鳴り響き
うっすらとシンセが重なる不穏な空気感のイントロから、ギター、ベース、ドラム、シンセによる四人編成による
シンプルなアンサンブルへ移行する極端なギャップも含めて、聴き手に先を読ませないセンスは見事。
メロウなギターフレーズにシンセを重ねた優雅な叙情性も覗かせつつ、徐々にハードなヘヴィさと躍動感で、
アッパーなノリを強めながらサウンド盛り上げてゆく。適度なアヴァンギャルド性は決して難解過ぎず、
案外チェンバー/アヴァンロック初心者にも楽しめるだろう。DVDには2006年、2007年のライブ映像を収録。
ドラマティック度・・7 アヴァンギャル度・・7 暗黒度・・8 総合・・8
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GUAPO 「OBSCURE KNOWLEDGE」
グアポの2015年作
今作も25分の大曲で幕を開け、オルガンを含むシンセに、優雅なギタープレイを乗せた軽妙なアンサンブルで、
むしろメロディックなプログレ寄りの聴き心地も感じさせつつ、ときにノイジーなギターと反復するシンセによる
トリップ感と、レコメン系としての偏屈なアレンジを自然に溶け込ませている。本作ではタークさは控えめに、
ときに叙情的なギターフレーズも覗かせつつ、適度な緊張感のある展開力とともに壮大に大曲を描いてゆく。
もはやチェンバーロックというよりは、ミステリアスなプログレとして楽しむ方がよいかもしれないが、
湿り気のあるギターメロディにシンセが絡むあたりは、ダークなシンフォ系としても鑑賞可能だろう。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 ミステリアス度・・8 総合・・8
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Poil 「Brossaklitt」
フランスのアヴァンロック、ポアルの2014年作
2008年にデビューしたフレンチ・アヴァンロックの新鋭。本作は3作目となる。ジャケからしてすでにカオスだが、
サウンドの方も、アヴァンギャルドの極地。重ためのドラムがフリーキーなリズムを叩き出し、
シンセとギターが螺旋のように絡みつく。怪しげなヴォーカルとコーラスが加わって、
おちゃらけと毒気が混じり合った異様な感触は、「ダークになったサムラ」というべきか。
テンションの高さとスリリングな緊張感と、それを笑い飛ばすような脱力感を同居させた無茶なサウンドは、
完全なヘンタイで、その迫力には圧倒される。曲によってはデジタルなテクノ的アプローチもあったりとなんでもあり。
崩壊しそうでしっかりと構築されているという不思議なセンスは見事。ホイリー・コーンも真っ青の傑作です。
ドラマティック度・・7 アヴァンギャル度・・10 ヘンタイ度・・10 総合・・8.5
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Vak 「Aedividea」
フランスのチェンバー・ジャズロック、ヴァクの2015年作
シンセにフルート奏者を含む編成で、躍動的なドラムと存在感あるベースを軸にしたアンサンブルに、
女性声のスキャットにエレピを含むシンセを重ねた、MAGMAルーツのアヴァン・ジャズロック。
程よいダークさと軽妙な優雅さのバランスで、いかにも「Zeuhl系」を地でゆくようなサウンドを聴かせる。
フルートによる叙情性やヘヴイでありながらも空間的なアプローチには、クリムゾン的な雰囲気も漂わせるが、
結局はマグマへと回帰するような作風は、やはり同郷の偉大な存在への憧れが強いのだろう。
10分前後の大曲も多いが、わりあいゆったりとした叙情パートも多いので、聴き疲れせずに楽しめる。
一方では、アヴァン・プログレ的なスリリングなナンバーもあり、バランスのとれた高品質な作品といえる。
ドラマティック度・・8 マグマ度・・8 ミステリアス度・・7 総合・・8
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CAMEMBERT 「Schnoergl Attahk」
フランスのチェンバー・ジャズロック、カマンベールの2011年作
プラグが貫通したカマンベールチーズのジャケからしておちゃらけているが、なにやらスペイシーなイントロから、
トランペット、トロンボーンが鳴り響き、コロコロとしたマリンバの響きにギターを加え、軽妙なアンサンブルが広がる。
優雅なテクニカル性ととぼけた味わいに、ときおりスペイシーなスケール感が加わるところが面白く、
美しいハープの音色など、やわらかでメロディック味わいが前に出ているので難解な印象はない。
オールインストなので聞き流してしまいがちだが、しっかりとしたアンサンブルとほどよいヒネくれ方もあって、
MAGMAのような緊張感はないが、ディープなリスナーでも楽しく聴ける。チェンバー・ジャズロックの好作品だ。
ドラマティック度・・7 ジャズロック度・・8 優雅なおとぼけ度・・9 総合・・8
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Angel Ontalva 「Tierra Quemada」
スペインのチェンバーロック、OCTOBER EQUUSのギタリスト、エンジェル・オンタルヴァのソロ。2015年作
軽やかなリズムに乗せる、ベースとギターに、美しいシンセアレンジを加えた優雅なインストサウンドで、
サックス、クラリネットの音色による、チェンバーロックらしい聴き心地は、さすが現代R.I.Oの申し子である。
ベースに重なるチェロの響きが、シリアスな重厚さを描きつつも、全体的にはダークさは控えめで、
シンセやメロディかの音色など哀愁を含んだ叙情性が前に出ている。一方で、エレピを乗せた優雅な質感は
カンタベリー的でもあって、ジャズロック寄りの耳でも楽しめるだろう。全体的には小曲主体なので、
わりとあっさりと聴き通せるが、ラストは9分近い大曲で、メロウなギターも鳴り響き、叙情豊かに締めくくる。
ドラマティック度・・7 チェンバー度・・8 哀愁の叙情度・・8 総合・・8
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Thinking Plague「In This Life」
アメリカのチェンバーロック、シンキング・プレイグの1989年作
Henry Cowのサウンド受け継ぐ、アメリカきってのレコメン系バンド。アルバム25周年記念のリマスター再発盤。
変則リズムによるアンサンブルに、クラリネットやヴァイオリンが鳴り響き、浮遊感のある女性ヴォーカルを乗せた、
アヴァンギャルドでキュートなサウンドは、ダグマー・クラウゼのいた頃の、ヘンリー・カウを思わせる。
のちの作風に比べれば、もっとミニマムで、プリミティブ、ようするに雰囲気モノとしての作風が強いのだが、
女性声の妖しさも含めて、70年代の香りを残しているという点では、Art Bearsなどのファンでも楽しめそう。
タブラによるリズムが鳴り響くところは、Third Ear Bandあたりも思わせる。ほどよいサイケ感も含んだ異色作である。
ドラマティック度・・7 チェンバー度・・8 アヴァンギャル度・・8 総合・・8
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Thinking Plague「Hoping Against Hope」
シンキング・プレイグの2017年作
前作「衰退と滅亡」は見事な傑作だったが、「一縷の望み」と題された6年ぶりとなる本作も、
変則リズムのアンサンブルに、クラリネット、フルート、サックス、ピアノの優雅な音色に、
女性ヴォーカルの歌声を乗せた、Art Bearsをルーツにした妖しくも美しいチェンバーサウンドを聴かせる。
優雅なアヴァンギャルド性とテクニカルな構築センスのバランスもよろしく、程よい緊張感が耳心地よい。
クラリネットがリードをとりながら、変拍子でたたみかけるナンバーは、これぞチェンバーロックという味わいで、
シリアスなダークさは、UNIVERS ZEROに通じるところもある。キャリアのあるバンドならではの堂々とした空気感と
重厚な音の説得力というのもさすがである。いうなれば現在形の正統派チェンバーロックの力作である。
ドラマティック度・・8 チェンバー度・・9 アヴァンギャル度・・8 総合・・8
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Combat Astronomy 「Time Distort Nine」
アメリカのアヴァンロック、コンバット・アストロノミーの2014年作
MAGMAルーツの所謂「Zeuhl系」の妖しさにインダストリアルなメタル質感を加えた独自のサウンドを聴かせるバンド。
本作はCD2枚組の大作で、のっけから17分、21分という大曲を聴かせる。重たいドラムにノイジーなギターを乗せ、
メロトロンやオルガンなどのシンセに、トランペット、サックスといったブラスをサンプリングで加えたデジタルなアレンジで、
モダンなチェンバーメタルというべきサウンドを描き出す。硬質なギターリフにる無機質で不穏な空気感は、
結果として、Meshuggahなどにも通じるような無機質なおどろおどろしさを感じさせる。一方では残響音が延々と鳴り響く、
ドローン的なナンバーや、男女声の語りを乗せた怪しげなインダストリアルロックなど、実験的な作風は良くも悪くも愛想がなく、
アヴァンギャルドなメタルを好む方なども含め、まさにディープな音楽リスナーに向けた異色作といえるだろう。
ドラマティック度・・7 チェンバーメタル度・・8 無機質な闇度・・9 総合・・8
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The Book Of Knots 「Traineater」
アメリカのアヴァンロック、ブック・オブ・ノッツの2007年作
Sleepytime Gorilla Museumのメンバーを含むバンドで、サウンドの方は、ノイジーなギターに
シアトリカルな歌声を乗せた、ドゥーミィなポストロックという雰囲気で始まるが、フリーキーなサウンドに
ハスキーで中性的な女性ヴォーカルを乗せた感触は、Art Bearsなどをルーツにしたレコメン系の趣。
アコースティックギターや、ピアノ、ヴァイオリンなどの優雅な叙情性を含みつつ、とぼけたような偏屈さと
アヴァンギャルドなセンスはチェンバーロック系のリスナーも唸らせるだろう。ストーリー的な流れの中に、
モダンなヘヴィネスも垣間見せつつ、ポストロック的なスケール感も内包した、まさに異色のアヴァンロック作品だ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 アヴァンギャル度・・8 総合・・8
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Doctor Nerve 「Every Screaming Ear」
アメリカのアヴァンロック、ドクター・ナーヴのライブ作。1997年作
1984年にデビュー、アメリカのレコメン系を代表するバンドのひとつである。
本作は、1992年のドイツ、オランダ、アメリカでのライブ音源を中心に収録。
躍動的なドラムとベースに、トランペット、サックスが吹き鳴らされ、テンション高いアンサンブルで、
チェンバーでジャジーなアヴァンロックを描き出す。変則リズムのテクニカル性も含めてさすがの演奏力です。
即興的なアヴァンギャルド性はフリージャズに通じる部分もあり、オールインストなのでブラスが鳴り響く奔放なBGMとしても楽しめる。
ライブ演奏・・8 テクニカル度・・8 アヴァンギャル度・・8 総合・・8
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SALES DE BANO 「HORROR VACUI」
アルゼンチンのチェンバーロック、サレス・デ・バノの2016年作
FACTOR BURZACOにも参加するベースを中心にしたバンドで、うるさすぎないドラムとベースによる
ミニマムなアンサンブルにエレピが重なり、サックス、トランペット、フルートなどがゆるやかに鳴らされる、
チェンバーなアヴァンロック。HENRY COWなどにも通じるスリリングな緊張感を、
カンタベリー的な優雅さで包み込んだという聴き心地で、ロック的な部分での重厚さは希薄であるが、
ブラスが鳴り響くとぼけた味わいとシリアスな空気が同居した、フリーキーなチェンバーサウンドが楽しめる。
ドラマティック度・・7 チェンバー度・・8 優雅度・・8 総合・・8



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本年もプログレでよろしくお願い致します(13)


THE TANGENT「THE SLOW RUST OF FORGOTTEN MACHINERY」
イギリスのプログレバンド、タンジェントの2017年作
マルチプレイヤーのアンディ・ティリソンを中心に2003年にデビュー、本作はすでに9作目となる。
シンセ&ドラムのアンディ・ティリソンを中心に、ギターにルーク・マシン、ベースにヨナス・レインゴールド、
さらに女性Voにサックス&フルート奏者を加えての編成で、マイルドなヴォーカルに美しいシンセを乗せた、
カンタベリー的な優雅なアンサンブルに、繊細なシンフォニック風味が合わさったサウンドを聴かせてくれる。
やわらかな女性ヴォーカルに、フルートの音色も加わった優美な雰囲気に、軽妙なテクニカル性を含んだ展開美で、
10分を超える大曲をコンセプト的なスケール感で描くのはさすがのセンスである。随所にオルガンが鳴り響く、
古き良きプログレ質感も覗かせつつあくまで優雅な聴き心地。レトロとモダンのバランスも絶妙な、全79分の力作です。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 優雅度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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MARILLION 「F.E.A.R」
イギリスのメロディックロック、マリリオンの2016年作
1983年にデビュー、初期のポンプロック路線からしだいに深みを増したメロウなサウンドへと移行、
いまでいうポストプログレの先駆けというべき繊細な叙情美をまといながら、いまや世界的な評価も取り戻した。
通算18作目の本作は、人間の存在意義をテーマにしたコンセプト作品で、タイトルは「FUCK EVERYONE AND RUN」の略。
組曲構成の大曲3曲を軸に、スティーヴ・ホガースのマイルドな歌声に、いつになくシンフォニックなアレンジとともに、
うっとりとするような繊細な叙情美のサウンドが広がってゆく。スティーブ・ロザリーのギターも随所に泣きのフレーズを奏で、
じわじわと盛り上げてゆく感触は、いわばポストプログレとシンフォニックロックを融合させたような聴き心地である。
コンセプトアルバムとしては「BRAVE」、「MARBLES」にも通じる、スケール感のあるドラマティックな流れで楽しめる傑作です。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 繊細な叙情度・・9 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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THE MUTE GODS 「Do Nothing Till You Hear From Me」
Steven Wilson
バンドやIONALIFESIGNSにも参加するベース奏者、ニック・ベッグスと
Steve Hackett Bandのシンセ奏者、ロジャー・キングによるユニット、ミュート・ゴッズの2016年作
ドラムにはマルコ・ミネマンが参加、適度にモダンでソリッドな硬質感と、キャッチーな歌もの感に、
シンフォニックなシンセアレンジを加えた聴き心地。ニック・ベッグスのマイルドな歌声は、
80年代ルーツの爽快なポップ性も感じさせ、全体としてはモダンなメロディックロックでありながらも、
さすがの実力者たち、ミンネマンのドラムとベッグスのベースもじつによい仕事をしているし、
ロジャー・キングのシンセが美しく彩る、繊細なプログレらしさもしっかりと融合されている。
KINOPocupine Treeあたりが好きな方にもお薦めの、英国モダンプログレの好作品だ。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 モダン度・・8 総合・・8
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THE MUTE GODS 「Tardigrades Will Inherit the Earth」
イギリスのプログレユニット、ミュート・ゴッズの2017年作
2作目となる本作も、ニック・ベッグス、ロジャー・キング、マルコ・ミンネマンのトリオ編成で、
メタリックといってもよいハードなギターに、マイルドなヴォーカルとシンセアレンジを乗せた、
重厚でモダンなサウンドを聴かせる。ヘヴィな硬質感と英国らしい翳りある空気感とともに、
前作よりもややダークな味わいが強まってはいるが、8分、9分という大曲ではキャッチーで繊細な叙情も覗かせる。
ヴォーカル、ギター、ベース、スティックをこなすニック・ベッグスのマルチなセンスと、
ロジャー・キングの美しいシンセが絶妙に融合し、ミンネマンのドラムもいつになく激しく、
曲によってはProgMetalファンなどにも対応する。スタイリッシュな英国ハードプログレの力作だ。
メロディック度・・7 プログレ度・・7 モダン度・・9 総合・・8
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ESP 「Invisible Din」
イギリスのプログレユニット、ESPの2016年作
BRAM STORKERのトニー・ロウと、BIG COUNTRYのマーク・ブルゼジキによるユニットで、
メロトロンやムーグ、オルガンを含む古き良きシンセとメロウなギターに、やわらかなヴォーカルを乗せ、
ゆったりとした叙情を描くシンフォニックロックサウンド。キャッチーな繊細さで聴かせる歌もの的なプログレハード色もありつつ、
元VDGGのデヴィッド・ジャクソンのサックスが大人の哀愁をかもしだす。曲によってはオールドなブリティッシュロック色も覗かせ、
英国らしい湿り気に包まれた優美な空気感は、ギター、ベース、シンセにヴォーカルもこなすトニー・ロウの
マルチな才能とアレンジセンスによるものだろう。ラスト2曲ではデヴィッド・クロスのヴァイオリンも美しい。
LANDMARQのスティーヴ・ジー、LIFESIGNSのジョン・ヤングなど多数のゲストが参加している。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 英国の叙情度・・9 総合・・8
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GANDALF'S FIST 「THE CLOCKWORK FABLE」
イギリスのプログレバンド、ガンダルフズ・フィストの2016年作
ファンタジーストーリーに基づいたコンセプチュアルなハードシンフォニックロックを得意とするこのバンド、
本作はなんとCD3枚組で、配役ごとに男女ヴォーカルやコーラスを配置した壮大なストーリーを感じさせる
ロックオペラ大作となっている。映画のようなナレーションで幕を開け、やわらかなシンセアレンジと、
美しい女性ヴォーカルを乗せ、ケルティックなメロディを含んだ叙情性とともに、優美なシンフォニックロックを描く。
オルガンやメロトロンなど古き良きプログレの感触を覗かせつつ、ストーリーを語るナレーションを随所に挿入しながら、
AYREON
ばりのファンタジックなロックオペラを展開してゆく。当のアンソニー・ルカッセンもゲスト参加しています。
CD3枚、3時間超はさすがに通しで聴くのは大変なのだが、バンドとしては渾身の力作というのは間違いない。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 壮大度・・8 総合・・7.5
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KONCHORDAT 「Rise to the Order」
イギリスのシンフォニックロック、コンコルダットの2016年作
前作はPENDRAGONなどを思わせる王道のシンフォニックロックであったが、3作目となる本作は
これまでになくモダンなヘヴィさが加わった感触で、どことなくニック・バレットを思わせるヴォーカルを乗せ、
これまでのシンフォニックなアレンジとモダンな歌もの感が合わさったという聴き心地。
かといって、王道のシンフォ色が失ったわけではなく、むしろ近年のPENDRAGONPALLASなどにも通じる
適度に翳りを含んだハードシンフォニックとして楽しめる。プログレらしいきらびやかなシンセとともに
ときにキャッチーなメロディも覗かせつつ、どっしりとしと重厚さでもって、7~9分前後の楽曲を構築する。
ペンドラ&パラスのファンにもうってつけな、英国らしい大人のシンフォニックロック力作だ。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 英国度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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DRIFTING SUN 「Safe Asylum」
イギリスのシンフォニックロック、ドリフティング・サンの2016年作
90年代から活動するキャリアのあるバンドで、美しいシンセアレンジにマイルドなヴォーカル、
メロウなギターで聴かせる、正統派のシンフォニックロック。ヨーロピアンな湿り気を感じさせる泣きの叙情に、
適度にマイナー臭さを含んだ垢抜けない雰囲気も、この手のシンフォ好きにはむしろ嬉しいかもしれない。
10分を超える大曲も、あくまで叙情とメロディ重視で、派手さはないが優雅な耳心地の良さで楽しめる。
フルートやストリングスを含む優美なアレンジのナンバーなど、叙情派のシンフォファンはチェックです。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 マイナーシンフォ度・・8 総合・・7.5
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THE VICAR 「Songbook #1」
イギリスのミュージシャン、デヴィッド・シングルトンによるプロジェクト、ヴィカー2013年作の
KING CRIMSONのDGMレコードのプロデューサーで、ロバート・フリップの片腕としても知られるミュージシャン。
本作は自身の息子が手掛けるコミックとの連動作品で、音楽プロデューサー「ザ・ヴィカー」の冒険を描いたコンセプト作。
キャシー・スティーヴンス、トニー・レヴィン、スティーヴ・シドウェル、チャス・ディッキー、セオ・トラヴィスといったメンバーが参加、
QUEENNを思わせるキャッチーなコーラスハーモニーに艶やかなヴァイオリンが鳴り響き、優雅なクラシカル性と、
モダンなポップセンスを合わせたサウンドを描く。無名ながら、参加したヴォーカリストたちの表現力も見事だ。
ドラムやエレキギターなどは入らないのでロック的な質感は薄いのだが、ストリングスやフルート、クラリネット、オーボエ、
トロンボーン、ピアノといった、室内楽的な優雅さに包まれた聴き心地で、むしろチェンバー的なポストプログレとしても楽しめる。
クラシカル度・・8 プログレ度・・7 優雅度・・8 総合・・8
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WILLOWGLASS 「Book of Hours」
イギリスのシンフォニックロック、ウィローグラスの2008年作
マルチプレイヤーのアンドリュー・マーシャルとドラマーによる二人組ユニットで、
1作目はいくぶんマイナー臭さのある牧歌的なシンフォであったが、本作はのっけからムーグにメロトロンを含む
きらびやかなシンセの重ねにメロウなギターを乗せた、優雅なシンフォニックロック・サウンドが広がってゆく。
10分を超える大曲も、メロディのフックとプログレらしさに包まれたシンセワークで、にんまりしながら楽しめる。
アコースティックギターやフォーキーなリコーダーなど、英国らしい牧歌的な味わいの繊細な叙情も含んだ、
耳心地の良いインストシンフォ作品。ドン・キホーテをイメージさせるジャケも、微笑ましくてよいですね。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・8 叙情度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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POSTO BLOCCO 19 「Motivi Di Sempre」
イタリアのプログレバンド、ポスト・ブロッコ19の2014年作
結成は70年代というバンドで、本作は30年ぶりに復活しての初のアルバムとなる。
オルガンやムーグを含んだきらびやかなシンセークに、ブルージーな哀愁を感じさせるギター、
イタリア語の歌声を乗せた、70年代を思わせる古き良き感触のイタリアンプログレを聴かせる。
女性ヴォーカルにフルートも鳴り響く、やわらかな叙情性のシンフォニックロックナンバーなど、
イタリアらしい繊細な美しさも魅力的で、元ACQUA FRAGILE、MANGALA VALISのベルナルド・ランゼッティを
ヴォーカルに迎えてのボーナストラックも聴きどころ。全35分というのがやや物足りないが、なかなかの好作です。
ドラマティック度・・8 古き良き度・・9 イタリア度・・9 総合・・7.5
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LAZULI 「En Avant Doute」
フランスのポストプログレ、ラズリの2006年作
やわらかなフランス語の歌声に、モダンなシンセやストリングスによるアレンジを乗せて、
薄暗い叙情を描く、ポーキュパイン系サウンドのフランス版という雰囲気という聴き心地。
メロディックロックとしてのキャッチーなノリも含みつつ、ポップとまではいかないという絶妙さと
フランス語のヴォーカルが優雅な味わいになっていて、新しさはないのにどこか新鮮な感じの作風である。
ベースに聴こえるのはレオーデという独自の楽器で、ウォーギターを使用していたりと個性的な編成も面白い。
精細な叙情と適度にハードなダイナミズムを同居させた、モダン系ポストプログレの好作品。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 叙情度・・8 総合・・7.5
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ANGE 「Le Tour de La Question」
フレンチプログレを代表するバンド、アンジュのライブ作品。
2005年作「?」ツアーでのライブステージを収録したCD+DVD。トリスタン・デカンをシンセに迎えての6人編成で、
ややハード寄りのギターに美しいシンセアレンジ、そしてクリスチャン・デカンのフランス語の歌声を乗せた、
濃密なシンフォニックロックが繰り広げられる。シアトリカルな語りを含む、クリスチャン・デカンの歌声は
衰え知らずの存在感で、これぞアンジュという世界観を描き出す。息子のトリスタンのシンセワークも美しく、
女性コーラスも加わった優雅な空気感と、ここぞと盛り上げる泣きのギターとともに、緩急のある楽曲展開で聴かせる。
ドラマティックな演劇性をシンフォニックロックに融合した、ベテランバンドらしい説得力あるサウンドはさすがで、
過去のナンバーも厚みのある演奏で生き生きと蘇る。DVDのステージ映像では、シンセやギターも弾きながら歌う
デカン御大の堂々たるお姿や、妖艶な女性コーラスも含めたシアトリカルなステージが楽しめる。ファン必携のライブ作品です。
シンフォニック度・・8 ライブ演奏・・8 フレンチ度・・10 総合・・・8.5 過去作のレビューはこちら
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12/30
来年もプログレでよろしく!(364)


KANSAS 「Leftoverture Live & Beyond 」
アメリカのプログレバンド、カンサスのライブ作品。2017年作
本作は1976年の傑作「永遠の序曲」から、40周年を記念してのアメリカツアーのライブステージを2CDに収録。
2014年に脱退したスティーヴ・ウォルシュは不参加だが、ギターのリチャード・ウィリアムス、ヴァイオリンのデヴィッド・ラグスデールは健在、
のっけから、「SOMEWHERE TO ELSEWHERE」の名曲“Icarus II”で、ヴァイオリン鳴り響くカンサス節というべき叙情が炸裂。
フィル・ハートの衰え知らずのドラムとともに、適度なハードさを残した厚みのあるサウンドは、さすがベテランの説得力だ。
新加入のロニー・プラットの歌声は、スティーヴよりもやや落ち着いた感じの声質で、どっしりとしたアンサンブルによく合っている。
“Point Of Know Return”、“Lamplight Syimphony”といった往年の名曲も嬉しいが、Disc2はお待ちかね「永遠の序曲」の完全再現で、
名曲中の名曲“The Wall”をはじめ、曲順通りにアルバムが再現される様は感動的だ。新旧のカンサスファンはチェックです。
ライブ演奏・・8 完全再現度・・8 往年のカンサス度・・9 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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Kaipa 「Children of the Sounds」
スウェーデンのプログレバンド、カイパの2017年作
ハンス・ルンディンを中心に復活した2002年からすでに15年、再結成カイパとしては本作で8作目となる。
今作もドラムにモルガン・オーギュレン(MATS/MORGAN)、ベースにヨナス・レインゴールド(THE FLOWER KINGS)が参加、
美麗なシンセワークに、女性ヴォーカルの歌声を乗せて優美に幕を開け、男性声にメロウなギターの旋律が加わって、
壮麗にして繊細な叙情美を描き出す。オルガンを含むやわらかなシンセアレンジに、ゲストによるヴァイオリン、
男女ヴォーカルの掛け合いとともに、物語的でもある幻想的な雰囲気に包まれていて、一方ではメリハリに富んだ楽曲は
いつも以上に弾きまくるペル・ニルソン(SCAR SYMMMMETRY)のテクニカルギターを乗せ、スタイリッシュな優雅さも感じさせる。
どちらかというとフラキン寄りの音で、綺麗に作られ過ぎている感じもなくもないが、10分前後の大曲を中心にした高品質な力作です。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・8 優雅度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Wobbler 「From Silence to Somewhere 」
ノルウェーのプログレバンド、ウォブラーの2017年作
2005年にデビュー、確信犯的なヴィンテージサウンドで、一躍北欧プログレ期待の新鋭となったこのバンド。
4作目となる本作は、のっけから21分におよぶ大曲で幕を開ける。オルガン、ミニムーグ、メロトロンを含むシンセに、
70年代ルーツのギターサウンドを乗せ、アナログ感たっぷりのアンサンブルで、軽妙なインストパートを描く。
アコースティックギターやフルートなどを含む叙情性に、緩急のある展開力と北欧らしい土着的な空気感は、
ANGLAGARDなどにも通じる、やわらかな神秘性に包まれていて、マイルドなヴォーカルを乗せた繊細さは、
フォーク的でもある涼やかな聴き心地。ANEKDOTENばりに鳴り響くメロトロンパートもじつに魅力的である。
ピアノによる2分の小曲を挟んで、10分、13分という大曲の全4曲46分。北欧プログレ好きはマストでしよう。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 ヴィンテージ度・・9 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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AGUSA
スウェーデンのサイケプログレ、アグサの2017年作
かつてのKEBNEKAJSEを思わせる、土着的なサイケプログレで過去2作もじつによかったが、
3作目となる本作も、妖しいフルートの音色にオルガンが響き、土着的なギターの旋律を乗せた、
にんまりするほどに北欧らしい空気感に包まれた、トラッド・サイケプログレを聴かせる。
10分前後の大曲を中心に、オールインストであるが、フルートやオルガンの奏でるメロディは、
とても叙情的な味わいで、北欧プログレ好きならば飽くことなくゆったりと鑑賞できるだろう。
オルガン鳴り響くオールドなロック感触も含めて、70年代のSilenceレーベル発掘音源と言われても
信じてしまいそう。ケブネカイゼの後継者として今後ともこのヴィンテージすぎるサウンドを追及して欲しい。
ドラマティック度・・7 ヴィンテージ度・・9 北欧度・10 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Michael Stolt 「En Hedonist Utan Skam」
スウェーデンのミュージシャン、マイケル・ストルトの2016年作
ご存知、ロイネ・ストルトの弟であり、Kaipa Da Capoのヴォーカル&ギター。「破廉恥な快楽主義者」とと題された本作は、
そのロイネ・ストルトをはじめ、トマス・ボディーン、マーカス・リリークィストら、The Flower Kings関連のメンバーがゲスト参加、
渋みのあるアダルトな歌声で聴かせる、3~4分前後のシンプルな歌ものが中心であるが、美しいシンセによるアレンジに
ロイネによる泣きのギターが加わると、初期のフラキンを思わせる感触にもなる。2曲目以降は、キャッチーな雰囲気も含んだ
大人の叙情ロックという聴き心地で、プログレ的な要素は薄めだが、母国語による味わいのあるヴォーカルを乗せた、
メロウなサウンドが楽しめる。北欧らしい翳りと哀愁の空気感は、さすがへてきたキャリアを物語るような深みがあります。
メロディック度・・8 プロクレ度・・6 叙情度・・8 総合・・7.5
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GLASS HAMMER 「Valkyrie」
アメリカのプログレバンド、グラス・ハマーの2016年作
1993年にデビュー、いまやアメリカを代表するシンフォニックロックバンド。本作は16作目で、
やわらかなシンセワークに、マイルドなヴォーカルを乗せたYesを思わせるキャッチーな感触で
女性ヴォーカルを加えた優美なサウンドを描く。オルガンやムーグなど、古き良き王道のプログレを
軽妙なアンサンブルと起伏のある構築美で仕立て上げた、「GH節」というべき作風は円熟の域。
スリリングな展開力のインストパートとやわらかな女性声が合わさった、14分の大曲もさすがの出来。
もはや新鮮味は希薄だが、「これがグラスハーマーです」とも言える、安心安定の高品質作品です。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 安心度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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AN ENDLESS SPORADIC「Magic Machine」
アメリカのプログレバンド、アン・エンドレス・スポラディックの2016年作
マルチプレイヤー、ザック・カミンズを中心に、ベースにはTHE FLOWER KINGSのヨナス・レインゴールドが参加、
Djent的でもあるモダンなテクニカル性と、オルガンなどのシンセを含んだ往年のプログレ感触が融合したサウンド。
メロディックなギターフレーズに適度なヘヴィさを含んだProgMetal風味も覗かせ、ストリングスによる優雅なアレンジなど、
様々な要素をセンスよくまぶし、軽妙に仕上げたという聴き心地。オールインストであるが、起伏に富んだ展開力と
先の読めないスリリングな空気感も含めて、最後まで飽きさせない。とぼけた味わいの洒落っ気を巧みに盛り込みながら、
シンフォニック美しさも失っていない。まさにハイブリッドなモダンプログレである。ロイネ・ストルト、ジョーダン・ルーデスがゲスト参加。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 優雅で軽妙度・・9 総合・・8
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The Neal Morse Band 「ALIVE AGAIN」
アメリカのプログレアーティスト、ニール・モーズのライブ。2016年作
ソロ名義での活動を、新たにバンド名義へと発展させ、2015年には「The Grand Experiment」を発表、
本作は2015年のツアーからオランダ公演のステージを2CD+DVDに収録。マイク・ポートノイ、ランディー・ジョージの盟友二人に、
2012年からオーディションで加わった、シンセのビル・ヒューバウアー、ギターのエリック・ジレットを含めた5人編成で、
同作からのナンバーを中心に、メロディックかつダイナミックな楽曲を展開。全員がコーラスをとるハーモニーの美しさに、
アンサンブル的にもますます強固になったケミストリーで、表情豊かなサウンドを描いてゆく。ポートノイのキレのあるドラムは言わずもがな、
エリックのギターはクールでときに叙情的、渋みを増したニールの歌声を乗せて、緩急ある展開の中でドラマティックな高揚感が何度も訪れる。
中盤ではアコースティックナンバーも挟みつつ、タイトル組曲では全員が楽器持ち替えての妙技も見せつけ、
凄腕のメンバーたちの演奏が合計140分強にわたってたっぷり堪能できる。ニールモー好きは当然必見。
プログレ度・・8 ライブ演奏・・9 ライブ映像・・8 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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THE PROG WORLD ORCHESTRA「A Proggy Christmas」
ニール・モーズを中心にしたクリスマス・プログレユニット、プログ・ワールド・オーケストラの2012年作
スティーヴ・ハケットをはじめ、ロイネ・ストルト、マイク・ポートノイ、ピート・トレワヴァスのTRANSATLANTIC組や、
スティーブ・モーズ、さらにはTHE NEAL MORSE BANDのランディ・ジョージ、ビル・ヒューバウアーらが参加、
「もろびとこぞりて」「きよしこの夜」といったたクリスマスキャロルや、THE EDGAR WINTERGROUP、CARPENTERSなどのクリスマスソングを
プログレにアレンジした作品で、手数の多いポートノイのドラムに美麗なシンセワークを乗せ、テクニカルなギターフレーズも乱舞する、
そのクオリティの高さはさすがで、ニールのヴォーカルが入ると、ほぼ彼のソロ作に入っていてもよいほどの聴き心地である。
随所になじみのあるクリスマスのメロディが微笑ましいが、アレンジセンスのせいで、ほぼシンフォプログレとして鑑賞可能です。
メロディック度・・8 ニールモー度・・9 クリスマスプログレ度・・9 総合・・8
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CAST 「Power and Outcome」
メキシコのプログレバンド、キャストの2017年作
80年代から活躍するベテランで、近年は出すアルバムがすべて世界最高レベルの大傑作というこのバンド、
本作はおそらく16作目くらいか。ヴァイオリンが鳴り響き、美しいシンセアレンジにメロディックなギターと
スペイン語の歌声を乗せて、適度にハードなモダンさも含んだ、優雅なシンフォニックロックを描き出す。
クラシカルなピアノの旋律に、ヴァイオリンと泣きのギターメロがかぶさった哀愁の叙情に、優美で洗練された空気感は、
スペインのKOTEBELあたりにも通じるかもしれない。手数の多いドラムとともに、プログレらしい起伏のある展開力で、
ハードシンフォニックとしての濃密さも随所に現れる。繊細な美意識と細やかなアレンジが楽曲の質を恐ろしく高めていて、
この美しさとスケール感に対抗できるのは、ロシアのLittle Tragediesくらいだろうか。まさに美麗なる大傑作だ。
シンフォニック度・・9 プログレ度・・8 優美度・・9 総合・・9 過去作のレビューはこちら
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SONUS UMBRA 「Beyond the Panopticon」
メキシコのプログレバンド、ソナス・ウンブラの2016年作
2000年にデビュー、前作はProgMetal風味のハードシンフォの力作だったが、5作目となる本作は
変拍子を盛り込んだテクニカルなアンサンブルと、フルートなどによる優雅な叙情性を盛り込んだ、
軽妙な味わいのサウンドを聴かせる。マイルドな男性ヴォーカルに美しい女性ヴォーカルも絡んで、
優美でラテン的なやわらかな繊細さを強めた感触で、随所に適度にハードな部分も残しつつ、
純粋にシンフォニックロックのファンに楽しめる作風になった。フルートやピアノのやわらかな音色と、
アコースティックなギターを含んだ叙情は、ときにPFMなどイタリアンロック寄りの雰囲気もある。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 優雅な叙情度・・8 総合・・8
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Bad Dreams 「Apocalypse Of The Mercy」
アルゼンチのプログレバンド、バッド・ドリームスの2015年作
シンセを含む5人編成で、シンフォニックなアレンジと英語によるマイルドなヴォーカルを乗せ、
叙情豊かなサウンドを描き出す。のっけから13分という大曲であるが、流麗な展開力とセンスで、
若手とは思えない自然体の優雅さに包まれた作風だ。ムーグシンセやオルガン、メロトロンなど
きらびやかなシンセとともに、往年のプログレらしさを残しつつ、キャッチーなメロディアス性と、
モダンな構築力を融合させていて、南米的なマイナー臭さというのはほとんど感じさせない。
随所にメロウなギターフレーズも含ませて、あくまで優美な叙情に包まれた聴き心地で、
高品質なシンフォニックロックがじっくりと楽しめる。南米期待の新鋭バンドである。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 叙情度・・8 総合・・8
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AISLES「4:45 AM」
チリのプログレバンド、アイスルズの2016年作
2005年にデビュー、本作は7年ぶりの3作目。ジャズ、フュージョン的な感触もある軽やかなアンサンブルで聴かせる、
優雅なシンフォニックロックは本作でも健在で、マイルドなヴォーカルを乗せたやわらかなサウンドが楽しめる。
巧みな演奏力とともにメロウなギターフレーズのセンスも抜群で、キャリアのあるバンドらしいアダルトな余裕も感じさせ、
南米のバンドにありがちなマイナー臭さはまったくなく、メロディのフックはキャッチーで湿り気を帯びた優しさがある。
4~5分前後を中心に、8分、10分という大曲も、濃密すぎない優美な聴き心地で、しっとりと叙情豊かに構築する。
全体的に派手さはないものの、大人のシンフォニックロックという趣で、耳心地のよい好作品です。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 優雅度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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BANANA 「ETAPA SINFONICA 79 - 80」
アルゼンチンのメロディックロック、バナナのアンソロジー。2016年作
南米シンフォの傑作として知られる、1979年作「AUN ES TIEMPO DE SONAR(影法師)」全曲と、
初のCD音源化となる、1980年作「LICUADO」の楽曲を合わせて11曲、67分を収録。
オルガンを含むやわらかなシンセに、メロディックなギターとスペイン語のヴォーカルを乗せ、
リリカルで繊細な叙情美に包まれたシンフォニックロックが味わえる。とくにギターの泣きのフレーズは、KAIPAばりの美しさで、
10分前後の大曲を構築する確かな演奏力も含めて、当時のアルゼンチンのバンドでは、PABLOと並ぶクオリティの高さ。
初出となる1980年作も、負けず劣らずの出来で必聴級。まさに隠れた傑作というべき内容です。
メロディック度・・9 プログレ度・・7 叙情度・・9 総合・・8.5
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12/23
プログレでメリークリスマス☆(350)


Konstantin Jambazov 「Talking to Myself」
ブルガリアのミュージシャン、コンスタンティン・ジャンバゾフの2017年作
TOTALVirtulなどにも参加する、ブルガリアきってのマルチミュージシャンのソロ作品。
本作は、YESQUEENのようなキャッチーなメロディアス性と、GENTLE GIANTのようなテクニカルなリズムチェンジに、
とぼけた味わいの知的な展開力で聴かせる、これまで以上にプログレ、シンフォニックロック色を強めたサウンドだ。
ギター、ベース、シンセ、さらにはヴォーカルもこなし、すべてのパートで技巧性と表現力を兼ねそろえた、
彼の非凡な音楽センスが結集されたというべき聴き心地で、ときに唐突ともいえるスリリングな展開力を
優雅なメロディアス性で昇華。適度にハードなパートも織り込みつつ、マイルドなヴォーカルを乗せた
あくまでキャッチーな感触が前に出ている点でも、今作はより多くのリスナーにアピールするだろう。
A.C.Tあたりを好むリスナーにも勧められる、会心のプログレッシブ・ハード作品に仕上がっている。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 優雅度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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PFM 「Live Collection - 25 November 1980」
イタリアのプログレバンド、プレミアータ・フォルネリア・マルコーニのライブ作品。2015年作
「SUONARE SUONARE」リリース後、1980年にテレビ放送用に収録されたスタジオライヴ音源のCDと、同DVDの2枚組。
ポップロックへの過渡期とされる時期なので、プログレファンからはさほど評価されない時代の音源ではあるが、
新加入のルキオ・ファブリのシンセ&ヴァイオリンにツインドラムの編成で、“LA LUNA NUOVA”や“IL BANCHETTO”、
“CELEBRATION”といった初期のナンバーも演奏。往年のような圧倒的な鋭さはないが、ドラムにヴォーカルに、
大忙しのフランツ・ディ・チョチョのはっちゃけっぷりもなかなか楽しく、テクニックのあるイタリアンロックという趣で、
キャッチーなポップさをたたえた、おおらかな空気感で楽しめる。音質はややもったりとしているがまずまず良好。
全7曲53分と、ライブとしてはやや物足りない長さであるが、ブートレグでしか見られなかった貴重な映像が
正規にDVDされたというだけでも、ファンには一見の価値ありだろう。80年代のイタリアの時代性がよく伝わってくる。
ライブ演奏・・8 ライブ映像・・8 貴重度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Le Orme 「Felona E/and Sorona 2016」
イタリアのプログレバンド、レ・オルメの2016年作
代表作として知られる1973年作「フェローナとソローナの伝説」をイタリア語と英語でリレコーディングした2CD。
オルガンを含むキーボードが美しい鳴り響き、優雅で幻想的なシンフォニックロックが広がってゆく。
オリジナルのメンバーはドラムだけであるが、キーボードトリオの編成で、クラシカルなピアノに
たたみかけるムーグシンセ、オールドなプログレ感触も残しつつ、アンサンブル的に演奏力も上がり、
音質も向上したことで、むしろ聴きやすくなったとも言える。かつてのような薄暗い空気感はいくぶん薄らいではるが、
オルメらしさはしっかり残している。なにより、40数年をへて過去のアルバムを再現できるバンドの熱意は素晴らしい。
ドラマティック度・・8 リメイク度・・8 イタリア度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Metamorfosi 「Purgatorio」
イタリアのプログレバンド、メタモルフォシの2016年作
1974年作「INFERNO」、2004年作「PARADISO」に続く、ダンテの「神曲」をテーマにした3部作の完結編で、
イタリア語の語りによる導入から、オルガンにムーグシンセが鳴り響き、ジェントルなヴォーカルを乗せたサウンドは、
往年のイタリアンロックの濃密さと、クラシカルな大仰さをしっかり残していて、その世界観に引き込まれる。
イタリア語特有の、まるでオペラのような伸びやかな歌声も素晴らしく、キーボードを中心にしてたたみかける荒々しさと
クラシカルな優雅さを同居させたメリハリのある展開力も健在だ。小曲をはさみながら、コンセプト的な流れに沿って展開する、
まさにイタリアン・シンフォプログレの力作だ。40年もの年月をかけて、三部作を完結させたバンドの底力には敬意を表したい。
ドラマティック度・・9 プログレ度・・8 イタリア度・・9 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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Profusion 「Phersu」
イタリアのプログレメタル、プロフュージョンの2015年作
本作はタイトルなどから古代イタリアのエトルリア人をテーマにした作品のようだが、サウンドの方は
ハード寄りのギターときらびやかなシンセをテクニカルなアンサンブルに乗せた、モダンでキャッチーな作風。
前作よりもヘヴィな部分をスタイリッシュにを強めた感触で、HAKENFROST*あたりにも通じるような、
優雅な構築センスが光る。一方では、エモーショナルなヴォーカルと美しいシンセによる叙情性は、
イタリアのバンドらしい繊細さを感じさせ、メリハリのあるドラマ性とスケール感を描くのも素晴らしい。
プログレ的な展開美とやわらかなメロディを同居させ、モダンなセンスで仕上げたという傑作です。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 構築度・・9 総合・・8.5
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Lazuli 「Nos Ames Saoules」
フランスのプログレバンド、ラズリの2016年作
90年代から活動するバンドで、本作は6作目となる。繊細なモダンプログレという趣だった前作に続き、
ピアノを含むシンセにフランス語によるやわらかなヴォーカルを乗せた、優雅なポストプログレ・サウンドを聴かせる。
ベースレスであるが、独自の弦楽器レオーデ奏者によるシンセベース的な音色も含んだ浮遊感に包まれた感触で、
美しいシンセに二本のギターも加わった厚みのあるサウンドは、モダンなシンフォニックロックとしても楽しめる。
楽曲は4~5分前後と、わりとシンプルで濃密になりすぎないところも、スタイリッシュな感覚だろう。翳りのある重厚さと、
涼やかな叙情性、クリアな音質なども、既存のスタイルにとらわれない新たなプログレの音を示している。
ドラマティック度・・8 モダンプログレ度・・8 フレンチ度・・8 総合・・8
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TRICANTROPUS 「El sueno de Arsinoe」
スペインのプログレバンド、トリカントロプスの2011年作
うっすらとしたシンセアレンジにメロウなギターを乗せた、ラテン系らしい柔らかみのある繊細なサウンド
基本的にインスト主体で、優雅なアンサンブル志向はCAMELあたりにも通じる雰囲気もあって、
オルガンをバックにギターの泣きのフレージングが耳に優しい。派手な展開やインパクトというのはないものの、
女性ヴォーカルを乗せた優美なナンバーなども含め、ゆったりとした叙情で楽しめる作風だ。
11分を超える大曲なども、適度なプログレらしさを含ませつつ、あくまで優雅で力み過ぎない。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 叙情度・・8 総合・・7.5
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Neal Morse 「Momentum Live」
アメリカのプログレアーティスト、ニール・モーズのライブ。2013年作
2012年のニューヨーク公演のステージを、3CD+2DVDに合計175分収録。2012年作「Momentum」からのナンバーを中心に、
2003年作「TESTIMONY」、2005年作「?」、2007年作「Sola Scriptura」からの抜粋組曲などを演奏。
ときにトリプルシンセにもトリプルギターにもなるという6人編成で、手数の多いマイク・ポートノイのキレキレのドラムに、
厚みのあるツインギターにオルガンの音色が重なり、ニール・モーズの歌声を乗せた、テクニカルかつキャッチーなプレイが繰り広げられる。
全員がコーラスをとるハーモニーの美しさや、ときにシンセからヴォーカル、ギターにも持ち替えるニールの姿も楽しげだ。
オーディションで加わった3人のメンバー…Adson Sodreの技巧的なギターワークはサウンドにハードなエッジをもたらし、
シンセ&ギターをクールに使い分ける、Eric Gillette、オルガンやムーグを含めたシンセにヴァイオリン、サックスもこなす、Bill Hubauerと、
それぞれがマルチな能力を発揮。全体的には、なにせ大曲が多いので、さすがに途中で聴き疲れしてくるのだが、
卓越したミュージシャンたちの作り出すグルーブと表現豊かな演奏が楽しめる。ニールモーファンは必携です。
ライブ演奏・・9 ライブ映像・・8 お腹いっぱい度・・9 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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Edensong 「Years in the Garden of Years」
アメリカのプログレバンド、エデンソングの2016年作
2010年作以来となる3作目で、オルガン、メロトロン、フルートが鳴り響き、薄暗い叙情性とともに、
ヴィンテージなハードプログレサウンドを聴かせる。56分におよぶ8パートに分かれた組曲は、
Riversideなどにも通じる適度なハードさを含んだメリハリのあるインストパートで構築され、
美しいストリングスや、やわらかなヴォーカルパートも加わって、物語的なドラマ性を描いてゆく。
ムーグシンセが鳴り響き、フルートが絡みつつ、テクニカルな展開力とモダンな知的センスも合わさり、
プログレリスナーの望む「プログレらしさ」が存分に詰まった聴き応えで、全71分の傑作です。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 薄暗度・・8 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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EYE 「VISION AND AGELESS LIGHT」
アメリカのプログレバンド、アイの2016年作
2012年にデビュー、本作はすでに3作目となる。女性鍵盤奏者を含む4人編成で、
ノイズまじりのメロトロンが妖しく鳴り響き、アナログ感たっぷりのドラムサウンドとともに、
スペイシーでサイケな浮遊感を描き出す。HAWKWINDにも通じるオールドなサイケロックを、
メロトロンにオルガン、ムーグなどで、シンフォ寄りに味付けしたという聴き心地もあって、アッパーなノリの中に
神秘的な空気感をまとわせているのも特徴的だ。70年代的なブルージーなギターに優雅なエレピなども重なり、
英国ロックルーツの雰囲気が散りばめられている。後半は27分の大曲で、メロトロンをたっぷり響かせながら、
ギターもメロディックなフレーズを奏で、ANGLAGARDばりの展開で、ストーナーロック的な感触を同居させる。
ドラマティック度・・7 アナログ度・・9 妖しげ度・・9 総合・・8
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Huis「Neither in Heaven」
カナダのプログレバンド、ヒュイスの2016年作
Mysteryのギタリストを含む5人編成で、本作はコンセプト的な雰囲気を感じさせるイントロから始まり、
適度にハードなギターと美麗なシンセアレンジとともに、やわらかなシンフォニックロックが広がってゆく。
マイルドなヴォーカルを乗せたキャッチーな感触と、大人の哀愁をかもしだす叙情性が合わさり、
とても耳心地の良いサウンドを描いている。一方では、いくぶん翳りのあるウェットな空気感もあって、
美しいシンセにメロウなギターフレーズを乗せた、しっとりとした泣きの叙情にはうっとりとなる。
13分、11分という大曲を織り込みつつ、ドラマ性を感じさせる流れで構築されるハードシンフォの力作です。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 叙情度・・8 総合・・8
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XNA 「WHEN WE CHANGED」
アメリカのプログレバンド、XNAの2013年作
YESのビリー・シャーウッドがプロデュース&ベースで参加するバンドで、美麗なシンセによるイントロから、
ドラマティックなコンセプト風味を感じさせるスケール感に包まれている。メロディックなギターにきらびやかなシンセ、
伸びやかなヴォーカルが加わった厚みのあるサウンドは、YESをハードにシンフォニックロック化したような感触で、
叙情的な泣きのギターフレーズは日本人好みのクサメロ感をかもしだす。ビリー・シャーウッドのベースの存在感もさすがで、
シアトリカルなヴォーカルは、ときにGENESISのP.ガブリエルを思わせる。アコースティックパートも含んだ展開美と、
繊細な叙情を描く王道のシンフォプログレの空気感で、15分を超える大曲もじっくりと構築してゆくだけの力量がある。
古き好きプログレの空気感を残しつつ壮麗なサウンドを描く、泣きのシンフォ好きにとっては掘り出し物的な力作です。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 叙情度・・9 総合・・8
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12/9
真冬の寒さです(338)


Steve Hackett 「The Total Experience Live in Liverpool」
イギリスのギタリスト、スティーヴ・ハケットのライブ作品。2016年作
2012~13年の「Genesis Revisited」のツアーをへて、本作は2015年、リバプールでの公演を2CD+2DVDに収録。
シンセにロジャー・キング、ドラムのゲイリー・オトゥール、サックス&シンセのロブ・タウンゼンドというこれまでのツアーメンバーに加え、
ベースにはなんとThe Flower Kingsのロイネ・ストルトが参加しての編成。「Voyage of the Acolyte」、「Spectral Mournings」など、
初期のソロ作から、最新作「Wolflight」のナンバーまで、ハケットの歴史を俯瞰するようなセットリストで、美しいシンセアレンジに
メロウなギターが響き渡る、優美なサウンドにうっとりと聴き入れる。ハケット先生の繊細なギタートーンはもちろん衰え知らず、
自身のマイルドなヴォーカルも味わいがあり、ゲストのアマンダ・レーマンが加わっての男女ヴォーカルの掛け合いも楽しげだ。
弟であるジョン・ハケットがフルートで加わった優美なアコースティックナンバーや、ハケット&ロイネの夢のツインギターが楽しめる“After the Ordel”、
そしてナッド・シルヴァンをヴォーカルに迎え、“The Cinema Show”、“The Musical Box”、“Firth of Fifth”といったGENESISの代表ナンバーも演奏。
それにしても、サックス、クラリネット、フルート、シンセ、ベースペダルと、八面六臂のロブ・タウンゼントがなにげに凄いという。
DVDのカメラワークも抜群で、飄々としたロイネと泰然としたハケット御大の対比も面白い。至福の2時間半が味わえる。当然のようにファンはマストです!
ライブ演奏・・9 ライブ映像・・9 ハケット&ロイネ度・・10 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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BRUCE SOORD
イギリスのポストプログレ、THE PINEAPPLE THIEFのリーダーのソロプロジェクト。2015年作
繊細なピアノのつまびきに、マイルドなヴォーカルを乗せた、Nosoundあたりに通じるアンビエントなサウンド。
アコースティックギターにドラムも加わった、適度なロック感触と、プログレ寄りのシンセアレンジは、
やはり、パイナップル・シーフを率いるミュージシャンらしい知的で豊かなセンスを感じさせる。
曲によっては、Marillionあたりを思わせるメロウな翳りを含んだ叙情ロックや、サックスなどのブラスを加えて、
ポストロック的なスケール感を描くナンバーもあったりと、3~5分前後の楽曲にそれぞれテーマを感じさせる世界観もさすが。
泣きのギターにシンセを絡めた優しい叙情性にもうっとり。繊細系ポストプログレを好む方は一聴の価値ありです。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 繊細度・・8 総合・・7.5
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Luar Na Lubre 「Mar Major」
スペインのケルティックバンド、ルアル・ナ・ルブレの2012年作
90年代から活動するキャリアのあるバンドで、バグパイプにヴァイオリン、ホイッスルの音色に
女性ヴォーカルの母国語の歌声を乗せ、ジャケのイメージ通り、ケルトの大地を思わせる雄大なサウンドを描いてゆく。
シンセアレンジも加えたシンフォニックな感触は、プログレリスナーも楽しめるケルティックロックとして鑑賞可能。
本作では中世音楽の素朴な優雅さを取り入れた雰囲気もあって、祝祭的な空気に包まれた9分の大曲をはじめ、
キャッチーなノリの良さと、湿り気を含んだ叙情が同居した、メリハリに富んだ聴き心地が楽しめる。
本格派ケルティック作品としても、ドラマティックなコンセプト性を感じさせる、全64分の力作だ。
シンフォニック度・・8 ケルティック度・9 女性Vo度・・8 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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Maria Del Mar Bonet 「Bellver」
スペインの女性歌手、マリア・デル・マール・ボネットの2010年作
カタルーニャ出身、70年代から活動する、いまやスパニッシュ・トラッドを代表する女性シンガー。
本作は2009年にスペインのパルマ市、ベルヴェル城にて行われた「バレアス交響楽団」と共演したライブ作品で、
優雅なオーケストラの演奏をバックに、伸びやかな彼女の歌声が響き渡る、壮麗にして優美なサウンドが楽しめる。
キャリアのある歌い手のみがかもしだせる円熟の表現力で、優しく、ときに力強く歌い上げるさまは、
マヨルカの歴史的な空気感をともなった壮大なときの流れを感じさせ、じつに感動的である。
全体的にみ、クラシック、オペラティック寄りの雰囲気で、トラッド系が苦手な方でも味わえる内容である。
優雅度・・9 壮麗度・・8 女性Vo度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Mercedes Peon「SOS」
スペインの女性トラッドミュージシャン、メルセデス・ペオンの2010年作
ガリシア出身のシンガーで、パンデイレータ(タンバリン)やガイタ(ガリシアン・パイプ)の名手でもあるミュージシャン。
本作はブックレットの内容からして、日本をはじめ世界各国をテーマにした内容らしく、どことなく和風のメロディに、
お経じみた歌を乗せたり、エレクトロなシンセアレンジを含むモダンなテイストと、不思議な土着性が融合した、
先鋭的なトラッドミュージックを聴かせる。アラビックな中近東要素や、ボサノバやスカやジャズ要素なども入り混じり、
クラリネット、アーディオンとなども加わった、チェンバーロック的なアヴァンギャルド性も垣間見せる。
エキセントリックなセンスに包まれた異色のエレクトロ・トラッド作品であり、アヴァンロック的にも味わえる傑作。
先鋭トラッ度・・8 アヴァンギャル度・・9 女性Vo度・・8 総合・・8
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Mara Aranda & Solatge「Deria」
スペインの女性シンガー、マラ・アランダを擁するユニット。2009年作
L'Ham de Focの女性ヴォーカリストで、バックにもラム・デ・フォクのメンバーが参加した本作は、
やわらかなハープのつまびきに、ブズーキ、ドルサイーナといった古楽器の素朴な音色に
母国語による伸びやかなヴォーカルを乗せた、本格派のトラッドサウンドを聴かせる。
バルカン風味の神秘性を感じさせたラム・デ・フォクに比べると、よりスパニッシュトラッドの深みを探求するような
土着的な雰囲気で、アコースティック楽器を主体としながら、繊細かつ躍動的なアンサンブルを描いている。
表現豊かなマラ嬢の歌声は、中世から連なるような幻想的な世界観を包み込むような空気感をかもしだし、
シリアスなトラッドからバラッド調のやわらかなナンバーまで、説得力に満ちたサウンドの強度が素晴らしい。
アコースティック度・・9 トラッ度・・9 女性Vo度・・9 総合・・8
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Lot Lorien 「Eastern Wind」
ブルガリアのフォークロック、ロット・ローリエンの2009年作
アコースティックギターに艶やかなヴァイオリンの音色が絡み、美しい女性ヴォーカルの歌声を乗せた、
繊細で叙情的なサウンドを描く。ドラムの入った適度なロック感触と、ケルティックな牧歌性が合わさって、
スペインのLuar Na Lubreあたりに通じる雰囲気がある。ということは、しっかりプログレファン向けですよ。
どの曲も美しいヴァイオリンのフレーズが前に出るパートがあって、リズムチェンジを含むインストパートと
やわらかな女性声を乗せたしっとりとした叙情が、ほどよいバランスで同居している。幻想的な雰囲気はとてもいいので、
女性ヴォーカルの存在感がもっと強まれば、よりダイナミックなサウンドになるだろう。
ケルティック度・・8 ロック度・・7 女性Vo度・・7 総合・・8
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Procol Harum 「Well's on Fire」
ブリティッシュロックバンド、プロコル・ハルムの2003年作
1991年作「放蕩者達の絆」以来の12年ぶりとなるアルバムで、ピアノやオルガンの音色に
枯れた味わいのヴォーカルを乗せた、大人の哀愁を感じさせるメロディックロック。
ギターは適度にハードに、そしてメロウに、英国の70年代を通り抜けてきたバンドらしい
大衆的なぬくもりを含んだ聴き心地で、オールドなファンも納得のサウンドだろう。
楽曲そのものはシンプルで、適度にノリのよいポップ性と、渋みのあるナンバーが同居していて、
70年代を思わせる古き良き感触が楽しめる8曲目、クラシカルな10曲目あたりは嬉しいところ。
60年代から活動する大ベテランバンドの現在形を伝えるには十分な内容だろう。
ドラマティック度・・7 古き良きプロコル度・・8 大人の哀愁度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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Goblin 「Profondo Rosso」
イタリアンロックバンド、ゴブリンの1975年作
ダリオ・アルジェント監督の映画音楽を手掛けるバンドでもあり、本作は「サスペリア2」のサントラ作品。
Disc1はオリジナル音源を、Disc2には、映画本編で仕様された音源を収録した2015年デラックスバージョン。
オリジナル音源は29分と短いが、クラウディオ・シモネッティのピアノやオルガンを含むシンセワークを中心に、
クラシカルな優雅さと湿り気を帯びたダークな空気感が素晴らしい。バンドとしてはもっとも古い音源であるが、
切れの良いリズム隊とアンサンブルはさすがで、サントラではあるが、それぞれが楽曲として十分楽しめる。
Disc2の映画用音源は、1、2分前後の小曲主体なのだが、全29トラックを映画のような流れで鑑賞出来て、
よりホラーサントラとしての空気感が味わえる。ゴブリンファンなら必聴の2枚組バージョンです。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 サントラ度・・8 総合・・8 
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Bugskull & Big White Cloud
アメリカのエレクトロ系サイケロック、バグスカルの2003年作
90年代に「粉雪の恐怖・その2」、「わくわく昆虫ランド」といったユルすぎるエレクトロ・サイケ作品で、
アンダーグラウンドなマニアのみに知られていたこのバンド。バンド自体はその後消滅したようだが、
残ったメンバーの二人が共作して発表したのが本作。ふんわりとシンセにヨレ気味のギターを乗せた、
ユルめのスペースサイケに、かつてのジャーマンロック的なエレクトロ感覚が合わさった作風で、
シンセの重ねによるシリアスな空気感が、FAUSTあたりにも通じるミステリアスな気配を感じさせる。
パーカッションに詠唱的な歌声を乗せた東洋的な雰囲気の小曲など、とりとめのなさもさすが。
ロック度・・2 サイケ度・・8 アヴァンギャル度・・8 総合・・7.5
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YAHOWHA 13 「An Penetration An Aquarian Symphony」
アメリカのカルト教団、ヤホワ13の音楽作品。1973年作
1960年代カルフォルニアで誕生した宗教団体で、教祖である、ファーザー・ヨッドを中心に菜食や動物愛護、
反戦および愛と平和を説き、音楽活動も熱心に行っていたという。70年代半ばに、ファーザーの事故死によって
教団は解散状態となるが、彼らの残した音楽作品はCD化され、密かに世に出回ることとなった。
本作は10分前後の大曲を中心にした全4曲の作品で、妖しい女性スキャットに詠唱のような男性声、
いかにもサイケらしいヨレ気味のギターをフリーキーに乗せた、ユルくて神秘的なサウンドを展開。
打ちならされるパーカッションに、ノイジーなギターが絡み、ドラムも加わったアヴァンギャルドな感触から、
ラストの大曲は、東洋的なギターのリフレインに口笛が吹き鳴らされる、スピリチュアルな空気感に包まれた聴き心地。
アッパーなノリは控えめなので、一般のリスナーには向かないが、怪しすぎるカルトなサイケを体験したい方はいかが。
サイケ度・・8 ロック度・・5 ユル度・・8 総合・・7.5
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AJA 「綾音」
日本の女性シンガー、アヤの2005年作
じゃがたらのOTOがサウンドアレンジャーとして全面参加したアルバムで、
しっとりとした彼女の歌声と、エフェクトの効いたギターを乗せた浮遊感のあるサウンドで、
ポストロック的な雰囲気も感じさせる。初期の頃のエロティックでエキセントリックな世界観が、
よい感じにソフィスティケイトされていて、うっすらとした艶やかさが大人の彼女を表現している。
ポップな感触であっても、音そのものに空間的な奥行きをがあるので、ディープなファンにも楽しめる
いわば玄人好みの聴き心地で、彼女の良さを自然に引き出すモダンなアレンジセンスも見事である。
ポップ度・・8 ロック度・・7 女性Vo度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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12/2
師走のプログレ(326)


Morgan Agren 「Through The Eyes Of Morgchestra」
スウェーデンのミュージシャン、モルガンオーギュレンの2016年作
MATS/MORGAN結成35年イベントとして行われたノールランド歌劇場交響楽団との共演ライブのために書き下ろされた楽曲集。
クラシカルで優雅なアプローチと軽妙でとぼけた味わいを、巧みに融合されたチェンバーロックというサウンドで、
オーケストラパートをキーボード、ヴァイオリン、クラリネット、バスーンなどで過不足なく表現している。
モルガンのドラムは前に出すぎることなく、今作では作曲者としてのサウンドの構築を主眼に置いた感じで、
オケパートの旋律を引き立たせるアレンジは、彼の新たな才能を垣間見る思い。アヴァンギャルド性が薄めな分、
わりと初心者にも聴きやすいかもしれない。相方であるマッツ・エーベリ、サイモン・スティーンスランドも参加。
優雅度・・8 チェンバー度・・9 アヴァンギャル度・・7 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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HOMUNCULUS RES 「Come Si Diventa Cio' Che Si Era」
イタリアのプログレ・ジャズロック、ホムンクルス・レスの2015年作
前作はカンタベリー+アヴァンギャルドな力作であったが、邦題「変拍子の王国」と題されたこの2作目も、
やわらかなシンセに、サックスやフルート、クラリネットなどを加えた、カンタベリー風味の優雅なサウンドを描く。
変則リズムを多用した手技なアヴァンギャルド性と、牧歌的なヴォーカルが入ったキャッチーな感触が同居し、
メロディアスな聴きやすさの中に、ふとスリリングな展開を覗かせるという、絶妙のバランス感が心憎い。
オルガンやメロトロンのも音色も含んだシンセワークもなにげに効いていて、往年のプログレ感触を残しているのもよろしい。
1、2分前後の小曲を織り込みつつ、17分という大曲もあくまで軽やかでとぼけた味わい。肩の力を抜いて楽しめる傑作だ。
優雅度・・9 プログレ度・・8 カンタベ度・・8 総合・・8
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Scherzoo 「03」
フランスのチェンバーロック、スケルズーの2014年作
マルチ・ミュージシャンFrancois Thollotを中心にしたバンドの3作目。1作目はドラムだったフランソア・トロは、
本作のではベースとシンセを担当している。美しいエレピの音色にサックスが絡み、優雅なアンサンブルの中に、
ほのかな翳りを含んだ、玄人好みのチェンバー・ジャズロック。1作目のようなMAGMA色はやや薄れて、
アッパーなノリが控えめな分、一聴しての派手さはないのだが、ジャズ色を増したやわらかな聴き心地で、
アンサンブリーなインストを描いてゆく。曲によってはチェンバー寄りのスリリングな空気もしっかり感じられ、
ギター、ベース、サックスが対位法的な旋律で絡んでゆく、優雅な大人のチェンバーロックが味わえる。
ラストの14分の大曲もスリリングな展開力が見事。ボーナスにはF.トロの別バンド、DISSONATAの楽曲を収録。
優雅度・・8 プログレ度・・7 スリリング度・・8 総合・・8
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Manu Ribot 「CA」
フランスのミュージシャン、マニュ・リボーの2015年作
Xレッグド・サリーでも活躍したピエール・フェルヴルーセムの作品にも参加したギタリストで、
本作は、ベース、ドラム、ギターを中心にした、アヴァン・フュージョンロック的なインスト作品。
わりとポップなフレーズを奏でつつも、どこかヒネくれた偏屈さを感じさせるセンスはさすがで、
ノイジーで奔放なギターをかき鳴らし、適度なハードさも含ませつつ、あくまで軽妙な聴き心地で、
トランペットやトロンボーンも加わった、スカやフリージャズ的な雰囲気もいくぶん覗かせる。
アヴァンギャルドなチェンバー・ポップという点では、MATS/MORGANあたりにも通じる部分もあるが、
こちらはそこまで逸脱しきれておらず、楽曲ごとのインパクトという点でも少し物足りないか。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 アヴァンギャル度・・7 総合・・7.5
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GERARD MANSET 「Le Langage Oublie」
フランスのミュージシャン、ジェラール・マンセの2004年作
1971年作「La Mort D'Orion」は、クラシカルで芸術的なまでの名作として名高いが、
本作は、ロック寄りのギターにオルガンが鳴り響き、フランス語による味わい深い歌声を乗せた、
渋めのフレンチロックというサウンドを聴かせる。美しいピアノにストリングスなども加わったナンバーは、
しっとりと優雅な感触で、クラシカルな美意識という点では、NEW TROLLSあたりにも通じる感触もある
哀愁を感じさせるアコーディオンの音色や、ストリングスと女性声を含んだ薄暗い叙情のナンバーなど、
なかなか幅のあるアレンジでじっくりと楽しめる。プログレ的な要素は薄めだが、フレンチな味わいの好作品だ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・6 フランス度・・8 総合・・7.5
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MICHAEL BERNIER/RITCHIE DeCARLO
パーシー・ジョーンズ、リッチー・コッツェンともコラボしたドラマー、リッチー・デ・カルロと、
STICK MENでも活躍するスティック奏者、マイケル・ベルニエのユニット。2015年作
ギターとも思えるエフェクトのかかったスティックサウンドと低音のベースサウンドを
手数の多いダイナミックなドラムに乗せた、ジャズロック、ハードフュージョン的なサウンド。
ヴァージル・ドナーティばりのセンスで、テクニカルな変則リズムを叩き出すドラムに、
ギターばりに弾きまくるスティックワークはときにヴァイオリンのような音色にも変化する。
超絶テクニックのナンバーも圧巻で、スティックの可能性を感じさせる強力作だ。
テクニカル度・・9 プログレ度・・7 スティック度・・9 総合・・8
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ALEX MACHACEK 「[SIC]」
オーストリア出身のギタリスト、アレックス・マカチェクの2006年作
アラン・ホールズワースの再来とも評され、UKZなどにも参加したギタリストで、
本作には、テリー・ボジオをはじめとした技巧派ミュージシャンがゲスト参加としている。
なめらかで流麗なフレーズを奏でるギターを中心に、フュージョン、ジャズなどの要素を含んだ
高度でテクニカルなアンサンブルは、ボジオのドラミングも含めてもはや名人芸の域だろう。
女性ヴォーカルを加えた、優雅なジャズロック的なナンバーも、適度にアヴァンギャルドな感触に包まれた
スリリングなインストパートが際立っている。ギターに関しては単なる上手いを通り越しているので、
つい聴き流してしまう部分でも、おそらく超絶技巧。ギターとドラムの間の取り合いにしびれる一枚です。
テクニカル度・・9 プログレ度・・8 優雅度・・9 総合・・8
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ALEX MACHACEK 「Improvision」
オーストリア出身のテクニカル系ギタリスト、アレックス・マカチェクの2007年作
本作は、アメリカ人ベースのマシュー・ギャリソン、ドイツ人ドラマーのジェフ・サイプによるトリオ編成の作品で、
のっけからヘヴィなギターが、手数の多いドラムに乗り、スリリングなアンサンブルを描き出す。
存在感あるベースに絡みつくテクニカルなギターフレーズは、ときにシンセのようにも、ヴァイオリンのようにもなり、
まさしく変幻自在の表現力である。単なるフュージョンロックの枠を超えたレベルの演奏であり、
技巧のみならず楽器の表現力そのものへ挑戦するかのような、迫力と緊張感が伝わってくる。
即興的な要素も感じさせつつ、結果としてカッチリと合わさるところは、さすがテクニック集団ですな。
テクニカル度・・9 プログレ度・・8 技巧の表現度・・9 総合・・8
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Faust 「C'est Com...Com...Complique」
ジャーマンロックバンド、ファウストの2009年作
1999年作以来となるアルバムで、ややノイジーなギターリフに、ベルの音が重なり、
ドラムのリズムに乗せて単調に反復する、9分のナンバーで幕を開けるのが、いかにも「らしい」。
ドイツ語の語りのような歌声に、シンセも加わった、どっしりとしたナンバーなども、
ポストロック的でもある空間的なスケール感に包まれていて、冷たい美しさを感じさせるのも、
うっすらとしたシンセアレンジによるところが大きい。全体的には、適度なアヴァンギャルド性とともに、
ほどよいロック性がブレンドして、わりと聴きやすい作風なのだが、極端さに欠ける分物足りなさも。
ロック度・・7 アヴァンギャル度・・7 サイケ度・・7 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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Faust 「Something Dirty」
ファウストの2011年作
今作はジャケの雰囲気からしてダークだが、サウンドの方も、ノイジーなギターにシンセを乗せ、
無機質な暗がりを感じさせる、インダストリアルなナンバーで始まる。その後もポストロック的な、
静謐な空間性と不穏な空気を、サウンドスケープ的なギターとシンセの重ねで描いてゆく、
初期の作品にも通じる、音楽の定型にとどまらないアーティスティックな世界観に包まれている。
ゲストによる女性ヴォーカルを乗せた、しっとりとした倦怠的なナンバーなども魅力的で、
誤解を恐れずに言えば、ポストロック化したクリムゾンのようなサウンドに聴き惚れる。
サイケ要素が減退し、代わりにスリリングな緊張感と、冷徹な暗がりを感じさせる力作である。
ロック度・・7 アヴァンギャル度・・8 ポストロック度・・8 総合・・8
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Faust 「Just Us」
ファウストの2014年作
闇に包まれたジャケのイメージ通り、前作でのダークで不穏な路線を継承した作風で、
生々しいドラムとドゥーミィなベースに、ヘヴィでノイジーなギターを乗せ、
クリムゾンの実験性をよりアヴァンギャルドに推し進めたようなサウンドを展開。
シンセやヴァイオリンなどを、上質のノイズというか、パーツのように使いながら、
前作の作風をさらに無機質化したというべき、愛想の無さが不気味で心地よい。
一方では、サイケなユルさを前に出したナンバーや、ピアノをメインにしたチェンバー風味と、
振り幅の大きさもこのバンドらしい。静謐な暗闇を感じさせる、じつに先鋭的な作品です。
ロック度・・7 アヴァンギャル度・・9 無機質度・・8 総合・・8
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GURU GURU 「In The Guru Lounge」
ジャーマンロックバンド、グル・グルの2005年作
1970年デビュー、ジャーマンロックを代表するバンドのひとつ。アヴァンギャルドなハードロックという趣の初期から、
メンバーを替えながら、ウィットに富んだ大人のサイケロックへと進化。「導師の社交部屋」と邦題が付けられた本作は、
ぼやけた東京タワーのジャケのように、山手線のアナウンスから始まり、シンプルなベースのリフレインに、
渡辺悦子さんの艶めいた日本語の台詞と、恋人のようなマニさんのデュエットを乗せた異色のナンバー。
その後は、ほどよくサイケで民族色やジャズ色を含んだナンバーが続き、アルバム後半は組曲形式になっていて、
サックスの音色に妖しい女性スキャットが絡む、即興的なサイケ・ジャズロックというサウンドを描いてゆく。
ロック度・・7 サイケ度・・8 アヴァンギャル度・・7 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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Kayo Dot 「COYOTE」
アメリカのエクスペリメンタル・ポストロック、ケイヨ・ドットの2010年作
バンドの支援者でもある一人の重病の女性をテーマにしたという作品で、
全5曲39分という流れのあるコンセプト作品。物悲しくヴァイオリンが鳴り響き、
悲哀を感じさせるヴォーカルに、トランペット、トロンボーンなどの管楽器も加えた
チェンバーロック風味のサウンドで、重厚かつアヴァンギャルドなポストロックでもある。
激しくたたみかけるドラムと、管弦楽と悲痛な歌声が混ざった音の洪水が、
混沌とした内的な人間性をさらけ出すようだ。ダークな世界観に包まれた異色の傑作。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 アヴァンギャル度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Kayo Dot 「Plastic House on Base of Sky」
アメリカのエクスペリメンタル・ポストロック、ケイヨ・ドットの2016年作
今作はジャケの感じからして、なにやら日本的な雰囲気を感じさせるが、サンクスリストに平沢進の名があるように、
シンセの重ねに浮遊感のあるヴォーカルを乗せ、モダンなテクノ色を知的にプログレ化したようなサウンドになっている。
オルガンやメロトロンまで使ったシンセアレンジがスペイシーでやわらかな空間性を描きつつ、
従来の作品のように、ヴァイオリンやサックスなどの管弦楽器も加わった厚みのある聴き心地と、
混沌としたようなアヴァンギャルド性も垣間見せる。こもり気味のヴォーカルがキャッチーな歌もの感を中和して、
サウンドの中の要素のひとつとして混ざり合うのも確信犯的だ。ポストプログレを好む方にもお薦めできる傑作です。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 浮遊感・・9 総合・・8
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The Hosemobile 「What Can & Can't Go On」
アメリカのプログレ・ポストロック、ホースモービルの1999年作
ノイジーなリフと叙情な旋律を奏でる二本のギターを中心に、無機質な冷たさとプログレ的な知性が合わさり、
一種、アヴァンギャルドなマスロックというべき、空間的なフリーキーさを描く異色のサウンド。
適度にヘヴィにもなるギターは、それど凶暴過ぎずに、あくまでサウンドを担うパーツとしての冷徹さを保っていて、
この愛想の無さがしだいに心地よくなってくれば、これはプログレ寄りの聴き方もできるのだろうと思う。
生々しいドラムが即興的にリズムを構築し、ときに壊しながら、変則リズムによるテクニカル性も含めて、
MATS/MORGANなどにも通じる面白さもあって、インストのアヴァンロックが好きな方ならBGMにもイケルかと。
アヴァンギャル度・・8 プログレ度・・7 冷徹度・・8 総合・・7.5
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11/18
プログレ300枚突破♪(311)


White Willow 「Future Hopes」
ノルウェーのプログレバンド、ホワイト・ウィローの2017年作
1995年にデビュー、本作は2011年作以来となる7作目。ロジャー・ディーンによるジャケとロゴが、
まるでYESのような雰囲気だが、サウンドの方は、たゆたうように美しい女性ヴォーカルを乗せ
アンニュイな空気感に包まれた、これまでの作風の延長上。メロウなギターにうっすらとしたシンセ、
ときにトランペットやクラリネットも加わりつつ、しっとりとした叙情性とゴシック寄りの倦怠の美を描き出す。
Necromonkeyでも活躍するマティアス・オルソンのドラムもメリハリのあるグルーブ感を付加していて、
古き良きアナログ感を巧みに感じさせるのも見事。11分、18分という大曲も、決して派手には盛り上がらないが
あくまでしっとりと、涼やかで繊細な空気に包まれている。モダンな翳りとやわらかな叙情美に浸れる傑作です。
ドラマティック度・・7 繊細な翳り度・・9 女性Vo度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Nad Sylvan 「Bride Said No」
スウェーデンのミュージシャン、ナッド・シルヴァンの2017年作
AGENTS OF MERCYSteve Hackettバンドのツアーメンバーとしても活躍するヴォーカリストでもあり、
本作は2015年作に続く2作目のソロ作品。コンセプト的な雰囲気の幻想的なイントロから、わりとハード寄りのギターに
きらびやかなシンセアレンジ、そしてP.ガブリエルを思わせるヴォーカルを乗せた、シンフォニックロックを展開。
自身の歌声によるシアトリカルな雰囲気を前に出した歌もの的な作風と、冬を思わせる薄暗く物悲しい世界観で、
涼やかでメロディックな聴き心地。スティーヴ・ハケット、トニー・レヴィン、ガスリー・ゴーヴァンをはじめ、
盟友、ロイネ・ストルト、ヨナス・レインゴールド、ニック・ディヴァージリオなどがゲスト参加。
ラストは12分の大曲で、女性ヴォーカルの歌声も加わって、ゆったりと盛り上げる展開力も見事。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 冬の叙情度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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The SAMURAI OF PROG 「On We Sail」
フィンランドのミュージシャンを中心にしたプログレユニット、サムライ・オブ・プログの2017年作
LATTE E MIELE、LA CONSCINZA DI ZENO、SIMONS SAYS、WHITE WILLOW、ECHOLYN、PRESTO BALLET、
JINETES NEGROS、UNITOPIA、Michelle Youngなど、世界各国のメンバーが集結、楽曲ごとに作曲者を替えながら、
オルガンやメロトロンなどのシンセワークをたっぷりと盛り込み、伸びやかなヴォーカルにヴァイオリンも鳴り響き、
爽快なシンフォニックロックを展開する。プレスト・バレットやユニトピアのシンセ奏者が作曲のナンバーは、
Yesのようなキャッチーな感触で、ラッテ・エ・ミエーレのシンセ奏者作曲ナンバーは、美しいピアノにフルート、
ストリングスを加えた優雅でクラシカルなシンフォニックロックが楽しめる。9分、10分という大曲もあくまでメロディックで
叙情的な味わいに包まれている。スリリングな部分は少ないが、聴き心地の良いシンフォプログレを愛する方は必聴だろう。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 爽快度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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KNIFEWORLD 「BOTTLED OUT OF EDEN」
イギリスのサイケ・プログレ、ナイフワールドの2016年作
GONGにも参加するイラン出身のギタリスト&シンガー、カヴス・トラビを中心にしたバンドで、
前作はチェンバー風味とポップ要素が融合した好作品であったが、本作は女性Vo、女性シンセ奏者、
サックス、バスーン奏者を含む8人編成となり、オリエンタルなサイケ感触を強める一方で、
前作でのカラフルなポップ感触とともに、独自のチェンバー・サイケ・ポップロックを展開する。
GONG的でもある浮遊感と女性コーラスを加えたキャッチーな歌メロに、サックスが鳴り響き、
個性的でありながら、決して難解にならない絶妙の聴き心地で、スペイシーなスケール感を描き出す。
強烈なインパクトはないが、じわじわとセンスがにじみ出る、まさに玄人好みの好作品である。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 サイケ度・・8 総合・・8
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CIRCA 「Valley of the Windmill」
イギリスのプログレハード、サーカの2016年作
Yesのビリー・シャーウッド、トニー・ケイを中心にしたバンドで、本作は14分、18分という大曲を含む全4曲という構成。
美しいシンセアレンジに、キャッチーなコーラスハーモニーを乗せた、ASIAにも通じるポップでメロディックな味わいと
オルガンなどを含む古き良きプログレ性が合わさったサウンド。楽曲は長いものの、あくまで歌ものという構成で、
スリリングな展開や新鮮味というのは薄いのだが、逆に言えばメロディックロックとしてのメジャー感に包まれていて、
渋みのある歌声と安定した演奏でゆっくり楽しめる。ラストの大曲はシンフォニック的でもある起伏のある構成力で
中期のYesを思わせるような優美なサウンドが味わえる。大作志向ながら、耳心地のよいキャッチーな好作品。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 王道プログレハー度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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DBA 「PICTURES OF YOU」
ジェフ・ダウンズとクリス・ブレイドのユニット、ダウンズ・ブレイド・アソシエイションの2012年作
シンガーにして作曲家、プロデューサーとしての顔も持つクリス・ブレイドと、バグルズ、イエスで活躍したジェフ・ダウンズという、
このコンビで作られたイメージ通りのサウンドで、美しいシンセアレンジとマイルドなヴォーカルを乗せた、
モダンでキャッチーなプログレハード。打ち込みのドラムによる80年代ルーツのシンプルなビート感に、
ときにメロディックなギターを加えた耳心地の良さは、バグルズなどが好きな方には普通に楽しめるだろう。
1曲目は13分という大曲ながら、シンセの重ねによるシンフォニックな感触もあったり、間延びせず聴き通せる。
その後は4分前後のコンパクトなナンバーが並び、じこく普通のAORという感じなのだが、それが心地よいのだな。
メロディック度・・8 プログレ度・・6 80'sAOR度・・8 総合・・8
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Downes Braide Association 「Suburban Ghosts」
ジェフ・ダウンズとクリス・ブレイドのユニット、ダウンズ・ブレイド・アソシエイションの2015年作
2作目となる本作も、前作同様に、AOR的なきらびやかなシンセアレンジにマイルドなヴォーカルを乗せた、
聴き心地の良いキャッチーなメロディックロック。今作もドラムは打ち込みのようだが、モダンなAORというべきこのサウンドには、
違和感のないデジタル感覚となっていて、むしろそのシンプルなリズムが80年代風味を確信犯的にかもしだしている。
楽曲そのものには、これという新鮮味はないのだが、アレンジャーとしての確かな力量とサウンドセンスが
クオリティの高いレベルで結実した好作品といえる。リー・ポメロイ(IT BITES)、デイヴ・グレゴリーがゲスト参加。
メロディック度・・8 プログレ度・・6 80'sAOR度・・8 総合・・8
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THIS OCEANIC FEELING 「Universal Mind」
イギリスのプログレハード、ディス・オーシャニック・フィーリングの2015年作
Downes Braide Associationでも活動するクリス・ブレイドを中心に、ベースはIT BITESのリー・ポメロイ、
ドラムは、PRODUCERSにも参加したアッシュ・ソーンというトリオ編成のユニットで、
マイルドなヴォーカルとメロウなギターワークに、プログレ寄りのシンセアレンジで聴かせる、
キャッチーなやわらかさと湿り気のある叙情を同居させたサウンド。ASIAなどに通じる古き良きAOR感触とともに、
ときにポストプログレ寄りの繊細な感触もありつつ、オルガンやムーグ、ピアノなどのシンセも随所に美しい。
DBAの方が80年代感覚を再現しているのに対し、こちらはモダンプログレの要素を含んだ聴き心地。
プログレ、ポップ、AORという要素を、絶妙なアレンジセンスで包み込んだ見事な傑作です。
メロディック度・・9 プログレ度・・7 叙情度・・8 総合・・8.5
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PRODUCERS 「Made in Basing Street」
イギリスのメロディックロック、プロデューサーズの2012年作
トレヴァー・ホーン、ロル・クレーム、アッシュ・ソーン、スティーヴ・リプソンによるバンドで、
キャッチーなポップ性と80年代的なAOR感触を、モダンに再構築したというきらびやかなメロディックロック。
レコーディング途中で脱退したクリス・ブレイドが作曲に参加、4曲でリード・ヴォーカルを担当する他、
ジェフリー・ダウンズも全曲に参加していて、美しいシンセに爽快なコーラスハーモニーを乗せ、
随所にメロディックなギタープレイも含んだ、大人味わいのポップなプログレハードとしても楽しめる。
ほのかにプログレ感触も覗かせつつ、やわらかなメジャー感を漂わせた音作りで、
バグルズやダウンズ期のイエスあたりが好きな方には、とても心地よいサウンドだろう。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 爽快キャッチー度・・9 総合・・8
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The Blue Ship 「Executioner's Lover」
スコットランドのチェンバーロック、ブルー・シップの2014年作
「死刑執行人の恋人」と題された作品で、ヴァイオリンが鳴り響き、ジェントルなヴォーカルを乗せ、
QUEENにも通じる緩急のあるドラマティックな展開と、シアトリカルな空気感を含んだサウンド。
やわらかなヴォーカルメロディに、ピアノやアコーディオン、ヴァイオリンによる優雅さと、
大人の哀愁を感じさせる叙情性に包まれながら、どこか不穏でスリリングな気配も覗かせる。
いわば、キャッチーな歌ものロックにチェンバーロックの要素を加えたというべきか、
クイーンをプログレ化したような感じでも聴けてしまう。Disc2にはクラシカルなインストによる組曲を収録。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 チェンバー度・・7 総合・・8
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IL FAUNO DI MARMO 「Canti, Racconti e Battaglie」
イタリアのプログレバンド、イル・ファウノ・ディ・マルモの2013年作
オルガンが鳴り響き、アナログ感たっぷりのギターに、イタリア語のヴォーカルを乗せた、
いかにも70年代初頭の古めかしさをかもしだすサウンド。オールドロックのブルージーな味わいと、
女性コーラスやヴァイオリン、ピアノなどが絡むクラシカルな優雅さも合わさり、
結果としてとてもイタリアらしい濃密かつ混沌とした空気感に包まれている。
ジャズタッチのピアノの旋律に、牧歌的なフルートが吹き鳴らされオルガンが重なるという、
怪しいごった煮間も含めて、往年のイタリアンロックの自由さを再現したような力作だ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 イタリア度・・10 総合・・8
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Aparecidos 「Palito Bomobon Helado」
イタリアのチェンバーロック、アパラチドスの2013年作
アルゼンチン出身の兄弟ギタリストを中心に結成されたバンドで、二本のクラシックギターが絡み
グロッケンシュピール(鉄琴)のきらきらとした響きを乗せた、優雅なチェンバーロックサウンド。
哀愁を感じさせるラテンのフォークロアのテイストを、軽妙なアンサンブルに溶け込ませ、
適度な屈折感を盛り込みながら、ジャズやボサノヴァ要素も含んだ自然体の聴き心地。
アコースティック主体ながらも、随所にエレキギターも加わって、技巧的なドラムとともに、
うるさすぎないロック感触を描いて、ヴァイオリンやアコーディオンなども優雅なアクセントだ。
ダークでもサロン系でもない、いわばラテン系チェンバーという、とても優しいサウンドである。
ドラマティック度・・7 チェンバー度・・7 優雅なラテン度・・9 総合・・8
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Special Providence 「Essence of Change」
ハンガリーのプログレ・フュージョンロック、スペシャル・プロヴィデンスの2015年作
過去3作はセンス抜群のプログレ・フュージョン作品であったが、4作目となる本作はメタリックなギターを乗せて、
やたらとハードに始まりつつ、実力あるドラムの叩き出す、PLANET Xばりのテクニカルなアンサンブルで、
軽妙なフュージョンロックを展開。ホールズワースばりに優雅なフレージングを乗せるギターのセンスも抜群で、
スペイシーに重ねられたシンセワークがサウンドを壮麗に彩る。テクニカル集団がここにきてさらにアンサンブルを強化、
かいとって硬質すぎず、適度なハードさを覗かせつつ、あくまで優雅な聴き心地。フュージョン・ジャズロックとしても楽しめ、
Djent系リスナーにも対応。プログレ感触のシンセアレンジも随所に心憎いばかり。もはや世界最高レベルの傑作でしょう。
メロディック度・・8 テクニカル度・・8 優雅で軽妙度・・9 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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HEDERSLEBEN 「The Fall of Chronopolis」
アメリカのサイケロック、ヘダースレーベンの2015年作
女性シンセ、女性ヴァイオリン&Voを含む5人編成で、オルガンやムーグシンセが鳴り響き、
メロウなギターワークに、美しい女性ヴォーカルの歌声を乗せた、妖しいサイケプログレ。
HAWKWINDのようなスペイシーな空気感に、アコースティカルな叙情性も覗かせて、
サイケとしてはわりとプログレ寄りの、緩急のあるドラマティックなサウンドを聴かせる。
アッパーなノリの部分でも、美しいシンセアレンジが幻想的な雰囲気を描いていて、
ジャケやタイトルのようなSFストーリーを感じさせてくれる。インストによる小曲なども、
シンセやヴァイオリンなどが効果的に叙情を加えて、作品全体として流れのある聴き心地。
ドラマティック度・・7 スペイシー度・・8 叙情度・・8 総合・・7.5
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The Intersphere 「Hold on, Liberty!」
ドイツのプログレ・エモーショナルロック、インタースフィアの2012年作
前作はCOHEED AND CAMBRIAにも通じるような好作であったが、続く本作も同様の好作。、
センスあるギターワークとマイルドなヴォーカルを乗せた、キャッチーなメロディックロックを聴かせる。
エモーショナルロックとしての爽やかなポップ性と、存在感あるベースとドラムによる、
どっしりとしたアンサンブルに、やはりコヒカンを思わせる知的な構築センスが素晴らしい。
適度なハードさも含んだグルーヴィなノリの良さと、モダンでクールなセンスが合わさって、
曲によってはメタル寄りのヘヴィさも覗かせる。エモーショナルロックとしても普通に高品質ながら、
やはり3拍子のナンバーだったり、プログレ的なセンスを覗かせるナンバーに魅力を感じます。
メロディック度・・8 プログレ度・・6 コヒカン度・・8 総合・・8
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10/27
いよいよ来週、KOOL LIPSライブ!(296)


Mostly Autumn 「Sight of Day」
イギリスのシンフォニックロック、モストリー・オータムの2017年作
1998年にデビュー、本作ですでに12枚目のアルバムとなる、英国を代表するシンフォニックロックバンド。
のっけから14分を超える大曲で、クラシカルなピアノと美しいシンセワークに、オリヴィア嬢のやわらかな歌声を乗せ、
しっとりとした優雅さと気品を感じさせるサウンドが広がり、牧歌的なフォーク風味を含んだ英国らしい空気感とともに
じわじわと盛り上がるいつものモストリー節が楽しめる。フルートやヴァイオリンなども加えたアコースティックな素朴さと
古き良き英国らしさをシンフォニックロックの中に自然に取り入れるセンスは、さすがキャリアのあるバンドで、
男女ヴォーカルの歌声にメロウな泣きのギターで涙腺を刺激するところは、初期から中期の作風に戻った感触もある。
トロイ・ドノックリーが参加してバグパイプが鳴り響くスコティッシュなテイストなども含めて、大人の余裕を感じさせる好作品だ。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 英国度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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THE FAR MEADOW 「GIVEN THE IMPOSSIBLE」
イギリスのシンフォニックロック、ファー・メドウの2016年作
女性Voにシンセを含む5人編成で、ハスキーな女性ヴォーカルとアコースティックギターによる
英国フォーク風味の牧歌的なイントロから、叙情的なギターにプログレらしいシンセを乗せて、
優美なシンフォニックロックを展開する。緩急のある展開力は、ときにエキセントリックな唐突性もあり、
女性声によるキュートな聴き心地の中に、ときに先の読めないスリリングな空気感を描いている。
16分を超える大曲も、きらびやかなシンセとメロウなフレーズを奏でるギターを前に出したインストパートと、
やわらかなヴォーカルパートが合わさったダイナミックなサウンドが楽しめる。ラストのスカーボローフェアのアレンジも見事。
英国の女性声シンフォとしては、Mostly AutumnKARNATAKAMagentaに続く存在となれるか、期待大のバンドです。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 女性Vo度・・7 総合・・8
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KYROS 「VOX HUMANA」
イギリスのプログレバンド、キロスの2016年作
SYNAESTHESIAのメンバーによる新バンドで、本作はCD2枚に分かれたコンセプト的な大作。
エモーショナルなヴォーカルを乗せ、適度にハードな質感とエレクトロなシンセを加えたモダンなアレンジに、
キャッチーなプログレ風味を融合したサウンド。テクニカルな構築力とモダンでクールなセンスで、
アップデートしたシンフォプログレを聴かせるという点では、FROST*あたりに通じるかもしれない。
メロディックな歌もの感触とプログレらしい技巧的なインストパート、モダンなエモーショナルロック、
それらがほどよくブレンドされ、HAKENなどとも同様に新たな英国プログレの形を提示した力作です。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 クールどモダン度・・9 総合・・8
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OLIVER WAKEMAN 「Mothers Ruin」
イギリスのシンセ奏者、オリヴァー・ウェイクマンの2005年作
ご存知、リック・ウェイクマンの息子として知られるミュージシャンで、かつてはクライブ・ノーランと組んだ
「Jabberwocky」「パスカヴィル家の犬」といったシンフォニックロック作品を発表していたが、
本作はオルガンやムーグなどレトロなシンセが鳴り響き、適度にハードなギターとノリのよいヴォーカルを乗せた、
わりとストレートなメロディックロックを聴かせる。プログレ的な要素はやや薄いのだが、シンフォニックなシンセの重ねで、
随所に父親譲りのセンスを覗かせ、曲によってはギターとの絡みで、プログレハード的なインストパート盛り込んで、
単なる歌もの以上のサウンドに仕上げているのはさすが。ジャケも含めて、やや地味なのだがなかなかの好作ですよ。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 ウェイクマン度・・8 総合・・7.5
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No-Man 「Together We're Stranger」
イギリスのポストプログレ、ノーマンの2003年作
スティーヴン・ウィルソンとトム・ボウネスによるユニットで、うっすらとしたシンセの重ねに、
マイルドなヴォーカルを乗せ、サウンドスケープ的なギターが鳴り響く、アンビエントなサウンド。
いわゆるロック的なノリはほとんどないのだが、ときにシンフォニックといってよい音の厚みで、
じわじわと泣きの叙情を描くところは、さすがのスティーヴン・ウィルソン先生、
ゲストによるクラリネットやトランペットの音色も加わった、ポストロック的なスケール感も見事で、
アコースティックギターを使用した素朴な暖かみもあって、耳心地よい優しい音に浸れます。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 アンビエン度・・8 総合・・8
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Camel 「The Paris Collection」
イギリスのプログレバンド、キャメルのライブ作品。2001年作
2000年フランスでの公演を収録。シンセに故ギー・ルブラン(Nathan Mahl)を迎えた編成で、
1曲目の“Ice”から、しっとりと美しいシンセアレンジに、アンディ・ラティマーのメロウなギターを乗せた繊細なサウンドが広がる。
2曲目は「MoonMadness」からのナンバーで、ゆったりとした叙情からの軽快なリズムチェンジで、初期キャメルのメロディックな作風が味わえる。
「Rajaz」からのナンバー“Sahara”でのラティマーのギターの卓越した表現力にうっとりしつつ、中盤には「怒りの葡萄」からのナンバーを連ねた、
大人の哀愁と叙情を組曲的に描いてゆく。ラストは大曲“Lady Fantasy”で、往年のファンも大歓喜。新ドラマーのプレイも見事で、
コリン・バースのベースのなにげない存在感もさすが。安定した演奏力で楽しめる好ライブです。
ライブ演奏・・8 大人の叙情度・・8 往年のキャメル度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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METADRIVE 「OVER REALITY」
イタリアのモダンプログレ、メタドライブの2016年作
ギターレスのトリオ編成で、スペイシーなシンセの重ねにエモーショナルなヴォーカルを重ね、
エレクトロなアレンジで聴かせる、ポストプログレ風味のサウンド。グルーブ感のあるドラムが
程よいロック風味を作り出し、美しいシンセワークが、ある種シンフォニックな味わいとなっている。
薄暗く繊細な空気感は、ドイツのSYLVANなどに通じる感触もあり、2~5分前後のコンパクトな楽曲の中に、
メロディのフックと泣きの叙情を溶け込ませるアレンジセンスも素晴らしい。ギターを使わなくても、
シンセの重ねが空間的な音の厚みを作り出し、物足りなさは感じない。美麗で繊細な傑作だ。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 繊細な叙情度・・9 総合・・8
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NEMO「COMA」
フランスのプログレバンド、ネモの2015年作
2002年にデビューしてからすでに10作目となる。メタル寄りのハードなギターと美麗なシンセを乗せ、
テクニカルなリズムとともに、知的な展開力のハード・シンフォニックロックを聴かせる。
フランス語の歌声を乗せたリリカルな叙情性も持ち味で、本作ではProgMetal的な感触と
優雅なシンフォニック性が自然体に融合されている。8~12分という大曲を主体に、
緩急の付いたメリハリある構築性を描くところは、さすがキャリアのあるバンドである。
メロウなギターフレーズやメロトロンにオルガンといった、王道のシンフォとしての魅力もしっかりと残し、
フレンチらしいシアトリカルなドラマ性も覗かせる。これは見事なシンフォニックハードの力作です。
ドラマティック度・・8 ProgMetal度・・8 優雅な叙情度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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LAZULI 「Tant Que L'herbe Est Grasse」
フランスのプログレバンド、ラズリの2014年作
90年代から活動していたキャリアのあるバンドで、本作はおそらく5作目となる。
美麗なシンセアレンジにフランス語のヴォーカルを乗せ、エレクトロでモダンなアレンジに包まれた、
ポストプログレ寄りのサウンド。シンセの音も出せるという独自の弦楽器「Leode」奏者を含む編成も面白いが、
適度にハードなギターも加わって薄暗い叙情を描くところは、Porcupine Treeのフランス版というような感じもある。
一方では、オルガンが鳴り響くプログレ感触やキャッチーな抜けの良さも垣間見せ、メロウなギターフレーズを重ねた
シンフォニックロックとしての味わいもある。楽曲は長くても6分ほどと比較的コンパクトで、スリリングな展開はない分、
フランス語の優雅な味わいとともに、繊細や優しさに包まれた大人のモダンプログレとして楽しめる。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 繊細な叙情度・・8 総合・・8
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GREEN VIOLINIST 「More Thrill And Never Ending Blessings」
ベルギーのプログレバンド、グリーン・ヴァイオリニストの2013年作
ツインギターに男女Voを含む6人編成で、美麗なシンセアレンジにジェントルな男性ヴォーカルを乗せ、
ときに女性ヴォーカルが絡みつつ、ゆったりとしたエモーショナルな叙情を描くシンフォニックロックサウンド。
メロウなギターワークも耳心地よく、かつてのCOLLAGEなど、ポーランドのバンドにも通じるような
薄暗い空気感に包まれた聴き心地。アコースティックなやわらかさに美しいシンセが重なり、
ポストプログレ寄りの繊細さも含ませつつ、ときにオルガンが鳴り響くオールドな感触も覗かせる。
基本的にはヴォーカルがメインの作風なので派手な展開力はないものの、13分の大曲ではゆるやかに盛り上がる
シンフォニックロックが味わえる。あるいはMarillionなどの薄暗系メロディックロックとしても楽しめる好作品だ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 薄暗叙情度・・8 総合・・8
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Laquesis
アルゼンチンのプログレバンド、ラケシスの2013年作
ジャケやバンド名から、運命の三人の女神(ラケシス、アトロポス、クロートー)をモチーフにしているようで、
ムーグやオルガンを含む美しいシンセアレンジに、エモーショナルなヴォーカルで聴かせる叙情的なサウンド。
Marillionにも通じる薄暗い繊細さの歌ものナンバーから、いかにもシンフォプログレ系らしいシンセワークに、
CAMELばりの泣きのメロディを奏でるギターを乗せたインストパートも耳心地良く、曲によってはオールドなロック風味も覗かせる。
12分、16分という大曲も濃密すぎず、優雅なアンサンブルでスタイリッシュに構築するところは、南米らしからぬセンスというべきか。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 叙情度・・8 総合・・8

After The Fire「Signs of Change」
アメリカのメロディックロック、アフター・ザ・ファイヤーの1978年作
ヒット曲「秘密警察」で知られるバンドの自主制作時代のデビューアルバムで、
のちのニューウェイブなポップとは異なり、本作はオルガンにムーグシンセが鳴り響く
いかにも英国ルーツのプログレサウンドを聴かせる。ドラムを含めて録音はやや軽めながら、
リズムチェンジを含んだ緩急のついた展開力と、シアトリカルな表情を覗かせるヴォーカルなどは、
GENESISをポップ寄りにしたという感じもあるが、むしろJethro Tullのような牧歌的な叙情性が耳心地よい。
8分、11分という大曲も、軽快なリズムとローカルなやわらかさが同居していて飽きさせない。
あるいはQUEENをプログレ寄りにした雰囲気もあったりと、総じてキャッチーな感触の好作品です。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 叙情度・・8 総合・・7.5
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10/13
チェンバーにジャズロック!(284)


Steve Hillage「L」
元GONGのギタリスト、スティーヴ・ヒレッジのソロ。1976年作
トッド・ラングレンがプロデュース、ユートピアのメンバーがバックを務めたアルバムで
DONOVAN、THE BEATLES(ジョージ・ハリスン)のカヴァーを含む、サイケ風味のメロディックロック。
スペイシーなシンセアレンジに、随所にメロディックなギターフレーズも含ませて
GONGの延長上だった前作の流れを汲みつつ、よりアッパーなノリのアンサンブルで、
後のOZRIC TENTACLESにも通じる聴き心地もある。歌ものとしてキャッチーな感触に、
優雅なギタープレイも前作以上に光っていて、女性ヴォーカルを加えての東洋的なナンバーや
トランペットが鳴り響く妖しくサイケな12分の大曲も面白い。ヒレッジの初期の代表作というべき内容だ。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 サイケ度・・8 総合・・8
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Steve Hillage「Green」
スティーヴ・ヒレッジのソロ。1978年作
ソロ4作目の本作には、PINK FLOYDのニック・メイスンをプロデュースに迎えている。
スペイシーなシンセを乗せたゆったりとしたアンサンブルに、ユルくて渋くてメロウなギターを乗せた、
GONGルーツのサイケロックサウンドは本作でも健在。派手さはないが耳に心地よいギターワークと
味のあるヴォーカルも含めて、ソロアルバムとしての自身の世界観を描く音の説得力は、ますます高まっている。
のちの作風へとつながるアンビエントな部分も覗かせつつ、全体的に肩の力の抜けた自然体の作風で、
PINK FLOYDを思わせるゆったりとした雰囲気も耳に優しい。打って変わって、ラスト曲でのスリリングな演奏、
本気のサイケロックぶりはこのアルバムの価値をぐっと高めている。ロック、サイケ、アンビエントをミックスした見事な力作だ。
メロウ度・・8 プログレ度・・7 サイケ度・・9 総合・・8
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OZRIC TENTACLES 「PAPER MONKEYS」
イギリスのサイケロック、オズリック・テンタクルズの2011年作
80年代から活動するベテランバンドで、本作はおそらく…16か17作目くらいと思われる。
エレクトロなアレンジのカラフルなサイケサウンドは、本作ではますますスタイリッシュになり、
デジタルなビート感に乗るスペイシーなシンセで、トランス的なインストサウンドを聴かせる。
一方では、存在感あるベースとドラムによる優雅でグルーヴィなアンサンブルに、
技巧的なギターフレーズを乗せたフュージョン的な感触も。後半には10分を超える大曲もあり、
オールインストであっても、最後まで音の強度を保つのはさすが年季のあるバンドである。
ドラマティック度・・6 プログレ度・・7 優雅度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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Art Zoyd 「Generation Sans Futur」
フランスのチェンバーロック、アール・ゾイの1980年作
空間的な暗黒性を感じさせる、冷たい空気感に包まれたサウンドで、
ピアノ、ヴァイオリン、サックス、トランペットなどがひっそりと不穏に響き渡る。
やがて静けさの中から、突如としてけたたましく鳴り響く、管弦楽と野卑なヴォイスが、
緊張感となって聴き手に襲い掛かる。アヴァンギャルドミュージックの権化というべき内容だ。
1曲目の17分におよぶ大曲がとにかく圧巻だが、ストリングスによるクラシカルなナンバーもあって、
ロック色は薄いもののスリリングなアンサンブルと、優雅なクラシック性が共存した逸品である。
ドラマティック度・・6 チェンバー度・・8 アヴァンギャル度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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PANZERPAPPA 「Pestrottedans」
ノルウェーのチェンバーロック、パンザーパッパの2016年作
結成は90年代というバンドで、ムーグなどのプログレ的なシンセにサックスが鳴り響き、
わりとメロディックなギターフレーズを乗せた、ジャズロック色もある軽妙なサウンドを聴かせる。
とぼけた味わいはSAMLA MAMMAS MANNAにも通じる雰囲気で、カンタベリー的な優雅さもある。
ベースとドラムの生み出すわりとストレートなノリの良さと、屈折感をほどよく同居させたセンスもなかなかで、
アヴァンギャルド過ぎずダークな要素も薄いので、チェンバー・ジャズロック初心者にも聴きやすい作風だろう。
オールインストで演奏が流麗なため、聞き流してしまいそうになるのだが、アンサンブルのレベルは高く、
メロディも分かりやすいためキャッチーな爽快さもあって、軽快なプログレ・ジャズロックとしても楽しめる。
メロディック度・・8 チェンバー度・・7 ジャズロック度・・8 総合・・8
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The Archestra 「Arches」
ベラルーシのチェンバーロック、アーケストラの2013年作
RATIONAL DIETのヴァイオリン奏者を中心に、艶やかな弦楽器とピアノの音色に、
女性チェロ奏者の母国語の歌声も合わさった、優雅でクラシカルなチェンバーロックサウンド。
ドラムとベースが加わると、適度なロック色とともに、ときにUNIVERS ZEROにも通じるダークな空気感と、
ヴァイオリンとチェロの絡むストリングスをメインにした旋律を乗せた、スリリングな味わいに包まれる。
純室内楽をロック化したという気品のあるクラシカル性に包まれる一方、美しくも妖しい女性ヴォーカルが
Art Bearsのようなエキセントリックな彩りを添え、フリーキーなアヴァンギャルド性を描くナンバーなど、
一筋縄ではいかない先鋭的でアーティスティックなセンスも光っている。まさに本格派チェンバーの傑作。
クラシカル度・・8 プログレ度・・8 チェンバー度・・9 総合・・8
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PikaPika Teart「Moonberry」
ロシアのチェンバーロック、ピカピカ・ティートの2011年作
シベリア出身という珍しいバンドで、ツインギター、クラリネット奏者、ピアノ奏者を含む7人編成。
艶やかなヴァイオリンにクラリネット、ピアノが絡み、ドラムが加わった優雅なアンサンブルで、
クラシカルな気品とともにジャズロック的な軽妙さを合わせたようなサウンドを描き出す。
どこか荒涼とした寒々しい空気を感じさせるのは、やはりシベリアという土地柄か、
トラッド的な旋律も含ませた哀愁の叙情性と、チェンバーロックとしてのシリアスな緊張感を、
しっかりとプログレ感として音に溶け込ませるセンスはなかなか素晴らしい。
ときにクリムゾン風のパートも覗かせたり、女性ヴォーカルを乗せたトラッド的な小曲や、
ヴァイオリンに絡むピアノもじつに美しい。北の大地をチェンバーロックで表現したという傑作です。
スリリング度・・8 プログレ度・・8 北のチェンバー度・・9 総合・・8.5
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Thinking Plague 「Decline and Fail」
アメリカのチェンバーロック、シンキング・プレイグの2011年作
80年代にデビュー、本作は6作目となるアルバムで、不穏なベースラインと硬質なドラムに
うっすらとしたシンセやピアノ、浮遊感ある女性ヴォーカルを乗せたスリリングなサウンド。
HENRY COWART BEARSといったかつてバンドのエキセントリックな芸術性を受け継ぐ作風で、
サックスやクラリネットが鳴り響く、チェンバーロックの王道をレコメン寄りに構築したという雰囲気。
どこか醒めたような女性声が理性ある狂気を描きつつ、ミステリアスでダークな妖しさの中にも、
コロコロとしたキュートな質感も覗かせる。ドラムとベースのアンサンブルを軸にした確かな演奏力が、
ベテランらしい音の説得力をかもしだし、8分、11分という大曲も緊張感を保って描かれる。これは傑作。
スリリング度・・8 プログレ度・・8 チェンバー度・・8 総合・・8
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FACTOR BURZACO
アルゼンチンのチェンバーロック、ファクトル・ブルサコの2007年作
ピアニストのAbel Gilbert率いるユニットで、スペイン語による女性ヴォーカルの美しい歌声に、
やわらかなフルート、オーボエ、ヴァイオリンなどの音色に、ロック的なギターとドラムが加わった、
わりとノリの良いメロディアスなチェンバーロックサウンド。優雅なピアノを含むクラシカルな感触と、
静と動のメリハリある展開で適度にミステリアスな空気感も漂わせつつ、繊細な美しさに包まれた作風で、
アヴァンギャルドではあるがしっかりとロック色もあるので、チェンバー初心者にもとっつきやすいだろう。
反面、室内楽的な味わいはやや薄いので、ダークなチェンバーが好きな方には物足りないかもしれない。
スリリング度・・8 プログレ度・・8 優雅度・・9 総合・・8
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FACTOR BURZACO 「II」
アルゼンチンのチェンバーロック、ファクトル・ブルサコの2011年作
スペイン語によるキュートな女性ヴォーカルを乗せた、エキセントリックなチェンバーロックサウンドは、
前作に比べて、よりミニマムでスタイリッシュな作風へと深化している。やわらかなヴィブラフォンの響きにギターが絡み、
ジャズロック的な軽妙なアンサンブルに、女性声の妖しい表現力も加わって、ダークな空気感が増している。
フルート、クラリネット、サックス、バスーンなどによる室内楽色も含んで、アヴァンギャルドなテイストが先の読めない緊張感となって、
とてもスリリングな聴き心地だ。シアトリカルな語りの入ったナンバーなど、異色の味わいが楽しめる力作だ。
スリリング度・・9 プログレ度・・8 優雅度・・8 総合・・8
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FACTOR BURZACO「III」
アルゼンチンのチェンバーロック、ファクトル・ブルサコの2014年作
3作目となる本作は、サックス、クラリネットの軽やかな音色に、ギター、ベース、ドラムのアンサンブルが合わさった、
中期UNIVERS ZEROにも近づいたような、適度にダークで重さもあるスリリングなチェンバーロックを聴かせる。
カロリーナ嬢のエキセントリックな歌声は、サウンドにキュートな浮遊感を描き、シリアス過ぎない緊張感は、
いよいよ絶妙の域に達している。ヴィブラフォンが鳴り響くミニマムな静けさから、ドラムが加わった即興的なナンバーや
ハードなギターが加わったテクニカルで硬質なナンバー、一転してコミカルなアヴァンロックまで、振り幅の大きさが物凄い。
ラストは14分を超える大曲で、優雅さと激しさ、静と動の起伏に富んだアレンジセンスで、圧巻のチェンバーロックを描き出す。
スリリング度・・9 プログレ度・・8 優雅度・・8 総合・・8
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CatuKua「Lomas」
FACTOR BURZACOの女性シンガー、Carolina Restucciaのソロユニット。2013年作
スペイン語のコケティッシュな女性ヴォーカルを乗せた、ポップなアヴァンロックで、
タンゴ風味や南米らしい哀愁を含んだ、わりとメロディックな聴き心地。
アコースティックギターにエキセントリックな歌声を乗せた風変わりなナンバーや
ユルめのサイケ風味のナンバーまで、表現豊かな女性声がサウンドを色彩豊かにしている。
カロリーナ嬢の音楽センスが詰め込まれた、キュートなアヴァンロック作品です。
スリリング度・・8 プログレ度・・7 エキセントリック度・・9 総合・・8

FULANO 「En La Batuta 1993」
チリのジャズロック、フラノのライブ作品。2016年作
80年代から活動するバンドで、本作は1993年に行われた地元サンティアゴでのライブを収録。
シンセに二人のサックス奏者を擁する編成で、ハスキーな女性ヴォーカルのスペイン語の歌声を乗せ、
ダンサブルなノリの良さでたたみかける、ジャズロックサウンド。南米らしい土着的な味わいと、
シンセによるアレンジとクラリネットなどが加わった、ハイテンションなチェンバー風味も随所に覗かせる。
存在感のあるベースにジャズタッチもこなすドラムなど、技量のあるアンサンブルはプログレファン好みで、
フリーキーなサックスにフルートも加わったりと、カラフルなアヴァン・ジャズロックという感触でもある。
即興的でエキセントリックな女性声や、スカやタンゴなどの要素も含んだ、ごった煮感も凄いです。
ライブ演奏・・9 プログレ度・・7 アヴァンジャズ度・・8 総合・・8
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SLIVOVITZ「Hubris」
イタリアのトラッド・ジャズロック、スリボヴィッツの2009年作
サックス、ヴァイオリン、ハーモニカ奏者を含む編成で、軽妙なアンサンブルにサックスが鳴り響き、
女性スキッャトを乗せた、民族色もあるジャズロックを展開。変則リズムを含む屈折した即興性と
唐突感のあるアヴァンギャルド性を覗かせつつ、スリリングな演奏を繰り広げている。
テクニカルなアンサンブルの中に、フォルクローレ的でもある叙情も垣間見せ、
地中海、バルカン、スパニッシュなどのトラッド感触とジプシー的な無国籍感を漂わせた作風だ。
ヴァイオリン弾きまくりの軽快なトラッドナンバーから正統派のジャズロックまで、
確かな演奏力と優雅で知的なセンスで楽しませてくれる、玄人好みの力作だ。
プログレ度・・8 ジャズロック度・・8 トラッ度・・7 総合・・8
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SLIVOVITZ「Bani Ahead
イタリアのジャズロックバンド、スリボヴィッツの2011年作
2作目となる本作ではトランペット奏者が加わり、サックスと合わせたブラスサウンドが強化、
とぼけた味わいのジャズロックサウンドに、いくぶんチェンバー寄りのの質感が増している。
屈折感のあるひねくれたアンサンブルにも磨きがかかり、前作でのトラッド要素はやや薄まった分、
アヴァンギャルドなチェンバー・ジャズロックとしての音の強度が強まった印象だ。
管弦楽がゆったりと鳴り響く、不穏な空気感をにじませたナンバーなども含めて、
ダークなチェンバー風味を感じさせる一方で、優雅なジャズロック色も随所に覗かせる。
プログレ度・・8 ジャズロック度・・8 チェンバー度・・8 総合・・8
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GLAZZ「CIRQUELECTRIC」
スペインのプログレ・ジャズロック、グラッツの2011年作
アンダルシア地方のバンドで、基本はギター、ベース、ドラムというトリオ編成で、
ときにムーグを含むプログレ的なシンセやピアノ、スパニッシュギターなどを加えた、
軽妙で優雅なアンサンブルを聴かせる。本作はサーカスをテーマにしたアルバムで
随所にSEやナレーションを含んだ、コンセプト的な空気感と哀愁の叙情も感じさせる。
クラトカルなヴァイオリンにピアノが絡み、技巧的なギターがまじわる味わいは、
テクニカルなジャズロックにフュージョン、室内楽を合わせたような上品な聴き心地である。
一方ではハード寄りのギターを乗せたロック感触や、ミゲル・リオスがゲスト参加した、
スペイン語によるヴォーカル入りのナンバーなど、バラエティに富んだ21曲、78分の力作だ。
メロディック度・・8 ジャズロック度・・7 優雅度・・8 総合・・8
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GLAZZ 「The Jamming Sessions Take II」
スペインのプログレ・ジャズロック、グラッツの2014年作
ギター&シンセ、ベース&シンセ、ドラムというトリオ編成でのライブセッションを収録。
それぞれ29分、12分、38分という3パートに分かれた、78分に及ぶ即興的なライブで、
随所にムーグシンセが鳴り響き、生々しいドラムにフリーキーなギターとベースを乗せた、
アヴァンギャルドなフュージョンロック的なアンサンブルを聴かせる。即興的に叩きまくるドラムに
ブルージーなロック色も含んだ奔放なギタープレイで、ジャズ色は中盤あたりから現れる。
いかにもセッションという雰囲気であるから、スタジオアルバムとの違いにけっこうびっくりする。
メロディック度・・5 ジャズロック度・・6 セッション度・・8 総合・・7.5



10/1
秋はプログレ!(267)


ZNR 「Barricade 3」
フランスのチェンバーロック、ゼッデンネールの1976年作
ピアノ&シンセのジョゼフ・ラカイユ、エクトール・ザズー、ベース&クラリネットのパトリック・ポルテラという三人編成で、
優雅なピアノが鳴り響くエリック・サティ的な雰囲気に、ビープ音的なアナログシンセが合わさり、
随所にクラリネットやサックスが加わった、アヴァンギャルドでミニマムなチェンバーロック。
1~3分前後の小曲を主体に、飾り気や展開というものを無視した、唐突感とアンニュイな倦怠、
抽象絵画的なエキセントリックな感性は、聴き手を突き放したような冷たさも感じさせる。
9分の大曲では、ギターも加わっていくぶんロック的な香りも匂わせ、フランス語のヴォーカルを乗せた歌ものナンバーなど、
次作に比べるといくぶん拡散志向の方向性で、アヴァンミュージックとしてはむしろ、こちらの1作目が分かりやすいか。
ともかく、サロン的な優雅さとフランスらしい毒気が同居した、室内楽の抽象芸術というべき異色作である。
ドラマティック度・・2 チェンバー度・・8 優雅でアヴァンギャル度・・9 総合・・8
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The Enid 「Live at Town Hall Birmingham」
イギリスのシンフォニックロック、エニドのライブ映像作品。2010年作
2010年英国、バーミンガム公演のステージを収録。前半は2010年作「Journey's End」からの曲を演奏。
まずステージに所狭しと並んだ楽器群が壮観だが、ジョー・ペイン加入前の専任ヴォーカルがいない編成なので、
ステージ中央にはギターのジェイソン・ダッカーが立ち、フロントマン的に目立ちながら、メロウな旋律を奏でる。
シンセを奏でるゴドフリーは、ときに指揮者のように手を動かし、アンサンブルを司り、クラシカルな大曲“Malacandra”をはじめ、
静と動のダイナミズムを優美に描き出す。後半は“In The Region Of The Summer Stars”をはじめとした初期作品からの選曲で、
かつてのメンバーであるフランシス・リカーリッシュも登場、大人数のブラスセクションも加わったオーケストラルな編成に、
扇情的なギターが重なり、ティンパニが重厚に打ちならされる、壮麗なるシンフォニーロックが繰り広げられる。
そして“組曲Fand”は、4人のギターにオケが重なって、優雅して壮麗、ダイナミックなサウンドが感動的きわまりない。必見!
シンフォニック度・・10 ライブ演奏・・8 ライブ映像・・8 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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Barbara Dickson 「Winter」
イギリスの女性シンガー、バーバラ・ディクソンの2014年作
70年代は英国フォークシンガーとして活躍し、80年代以降はポップシンガーとして人気を博す。
本作は冬をテーマにした作品で、トラッドナンバーのアレンジやカヴァー曲を中心に、
艶めいた歌声を乗せたしっとりとした聴き心地。現Nightwishのトロイ・ドノクリーがプロデュース、
アコースティックギター、シンセ、バグパイプ、ホイッスルなどの音色を加えたトラッドナンバーは
ケルティックな味わいに包まれていて、ホルストの「木枯らし寒く吹きすさび」のカヴァーなどは
素朴な叙情となつかしさを感じさせる。落ち着いた大人の哀愁と英国の冬を感じさせる好作品。
フォーク&トラッ度・・8 哀愁と叙情度・・8 大人の歌声度・・8 総合・・7.5
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McCULLY WORKSHOP 「Ages」
南アフリカのサイケロック、マコーリー・ワークショップの2010年作
1969年の1作目、1971年の2作目続く3作目としてレコーディングされながら、長らく日の目を見なかった作品のCD化。
メロトロン、オルガンを含むシンセに、わりとハード寄りのギターとマイルドなヴォーカルを乗せたキャッチーな感触に、
サイケロックとしての浮遊感と美しいコーラスなども加わった独自のサウンド。叙情的なフレーズを奏でるギターのセンスや
ヴァイオリンが鳴り響くクラシカルなテイストを大胆に盛り込むなど、3分前後の小曲が主体ながら、聴きごたえがある。
英国的で牧歌的なナンバーなどは、Barclay James Harvestあたりにも通じる雰囲気でのんびりと味わえ、
カントリー風味のポップ調もありつつ、アーサー王伝説「王女グイネヴィア」のようなドラマティックなナンバーまで、
サイケというよりはむしろ英国叙情ロックという内容で楽しめる好作品である。CD化にあたってボーナス7曲を追加収録。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 叙情度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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GORDON GILTRAP 「VISIONARY」
イギリスのミュージシャン、ゴードン・ギルトラップの1976年作
フォークとプログレの中間をゆくという、通好みのギタリストでありミュージシャンで、
本作は英国を代表する詩人、ウィリアム・ブレイクの詩篇にインスパイアされたというアルバム。
ストリングスによるアレンジを取り入れ、プログレ的なシンセに12弦ギターの優美な音色が重なる、
シンフォニックロック的なインストは、Anthony Phillipsにも通じる優雅で繊細な空気と、
フォーク、トラッドルーツの牧歌的な英国らしさに包まれている。ドラムにはサイモン・フィリップスが参加。
オーケストラルな美麗さとアコースティックが融合した、耳心地の良い優雅なる傑作です。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 優雅度・・9 総合・・8
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GORDON GILTRAP 「PERILOUS JOURNEY」
ゴードン・ギルトラップの1977年作
アコースティックギターの優雅な音色と、美しいシンセにピアノ、オーケストラアレンジを加えた、
シンフォニックロックは前作からの延長上で、繊細で典雅なインストサウンドを描いている。
サイモン・フィリップスのドラムは前作以上に楽曲にフィットしていて、クラシカルな美意識に包まれた
優雅なダイナミズムというべき空気感にうっとりと浸れる。サックスなども加わった大人の哀愁や、
アコースティック主体のパートも挟んだりと、オールインストでありながら飽きさせない構成も見事。
次作とともに、彼のキャリアの中でも最高作のひとつと言えるだけの仕上がりだ。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 優雅度・・9 総合・・8
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GORDON GILTRAP 「FEAR OF THE DARK」
ゴードン・ギルトラップの1978年作
本作も、雅やかなアコースティックギターとシンセ入りのプログレ感触が融合した、
英国らしい優美な味わいのサウンドを聴かせる。やわらかなピアノにアコギのつまびき、
随所にオーケストラアレンジも加えた、シンフォニックな感触がよりスタイリッシュに合わさり、
ほぼオールインストであるが展開力のある、ゆったりとした繊細なドラマ性を描いている。
前半はアコーステッィクメインながら、4曲目からはサイモン・フィリップスのドラムとともに、
叙情的なエレキギターも加わった、大人のメロディックロックという趣のナンバーも含め、
70年代の隠れたシンフォニックロックの傑作と言ってもよいアルバムに仕上がっている。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 優雅度・・9 総合・・8
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Steve Hillage 「Fish Rising」
イギリスのギタリスト、スティーヴ・ヒレッジのソロ。1975年作
GONGにも参加したギタリストとして知られるミュージシャンで本作はソロ1作目。
当時、分裂しかけていたゴングのメンバーが参加していることから、サウンドの方も、ユルめのサイケ路線で、
スペイシーなシンセにやわらかなギター、男女ヴォーカルの歌声を乗せた、ゆったりとしたおおらかな聴き心地。
ヒレッジのギターは決してテクニカルではないが、ゆるやかにメロウなフレーズを乗せて、
ヒッピー的なサイケ感の中にも、プログレッシブな展開力で17分におよぶ組曲を構築する。
盟友デイヴ・スチュアートも参加して、随所にオルガンやピアノでらしいプレイを聴かせてくれる。
単なるサイケでもない、牧歌的なユルさとプログレな楽曲性が絶妙に交差する傑作である。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 サイケ度・・8 総合・・8
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LA NUOVA CREAZIONE 「Harleking」
イタリアのプログレバンド、ヌオヴァ・クリエツィオーネの2014年作
70年代に活動しながらアルバム未発表に終わった、1977年の作品をリレコーディングした復活作。
アコースティックギターに艶やかなヴァイオリン、アコーディオンの音色を乗せ、イタリア語の歌声とともに、
楽しげで愉快なノリと牧歌的な叙情で聴かせるサウンド。哀愁を奏でるサックスやトロンボーンに
繊細なフルートの音色に絡むピアノ、そしてアコースティックギターのつまびきが繊細な空気を描く。
3~5分の小曲主体なので、プログレ的な展開やドラマティックな派手さはあまりないのだが、
ジェントルな男性ヴォーカルに女性声が加わった大人のラブロック風味や、女性ヴォーカルをメインにした
ストリングスが美しいナンバーなど、イタリアらしい味わいのある歌ものサウンドが楽しめる。
ドラマティック度・・6 プログレ度・・7 イタリア度・・8 総合・・7.5
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Spleen Arcana 「Field Where She Died」
フランスのシンフォニックロック、スプリーン・アルカナの2009年作
ヴォーカル、ギター、ベース、シンセをこなすマルチミュージシャン、Julien Gaullierのソロユニットで、
いくぶんメタル寄りのギターにうっすらとしたシンセと、マイルドなヴォーカルを乗せて、
ゴシック的でもある耽美な世界観を描く、モダンなシンフォニックロックというサウンド。
10分前後の大曲を中心に、ゆったりとした薄暗い繊細な叙情を聴かせるところは、ポストプログレの感触もあり、
結果としてAnathemaなどにも通じる部分があるかもしれない。ときどきゲストの女性ヴォーカルが加わって、
男女Voになったりするが、正直歌声は微妙。ぜひバンド編成になって、いいヴォーカルを見つけてください。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・5 薄暗叙情度・・8 総合・・7.5
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PETER BRYNGELSSON 「Wunderbaum」
スウェーデンのミュージシャン、ペーター・ブリンゲルソンの2011年作
RAGNAROKのギタリストで、本作はそのラグナロクに通じる、北欧らしい涼やかな土着性に包まれた、
フォークロック的でもあるゆったりとした牧歌的なサウンド。ギターの旋律は北欧特有の哀愁の叙情を描いていて、
随所にシンセやアコーディオンの音色も加わって、メロウな北欧サイケフォークとしても楽しめる。
2~4分前後の小曲によるインストを連ねた構成なので、楽曲ごとの盛り上がりというのはない分、
スローでロハスなBGM的にも聞き流せてしまうのだが、素朴な北欧の空気感が心地よく感じ取れる好作品だ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 北欧度・・9 総合・・7.5
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OMEGA 「TRANSCENDENT」
ハンガリーのメロディックロックバンド、オメガの1996年作
60年代から活動する、母国ハンガリーでは絶大な人気を誇る国民的なバンド
シンフォニックで優美なイントロから、母国語の歌声とメロウで叙情的なギターとともに
壮麗で厚みのあるシンフォニック・ハードロックというサウンドが広がってゆく。
適度にプログレ色も感じさせる部分もありつつ、母国語を除けばメジャー感もただよう
キャッチーなメロディックロックで、ベテランらしい哀愁の叙情もまじえつつ、
ロックンロール調なナンバーなども含めて、確かな演奏力で聴かせる力作だ。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 重厚度・・8 総合・・8
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Morse Code 「Je Suis Le Temps」
カナダのプログレバンド、モールス・コードの1977年作
メロトロンやオルガンを使ったシンセにロック寄りのギターとヴォーカルを乗せて、
プログレハード的な爽快なサウンドを聴かせる。キャッチーなメロディのフックと洗練されたスタイルは、
後期のYESや、80年代GENESISのようなメジャー感も漂わせ、テクニックのある演奏とともに、
プログレらしさもしっかりと残している。フランス語による歌声が優雅な耳心地をかもしだし、
随所にやわらかなピアノや泣きのフレーズを奏でるギターの叙情性もいいですね。
大曲がないコンパクトな作風である分、シンプルなメロディアス性が前に出てとても楽しめる。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 優雅度・・8 総合・・8
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Contraction 「La Bourse Ou La Vie」
カナダ、ケベックのジャズロックバンド、コントラクションの1974年作
前作は、優雅なアンサンブルと浮遊感が同居したジャズロックの傑作であったが、2作目となる本作も
カンタベリー的でもある軽妙な演奏が素晴らしい。テクニックのあるギターに軽やかなピアノが絡み、
フランス語の女性ヴォーカルを乗せた、優美なシンフォニック・ジャズロックというサウンドだ。
おそらく、当時のケベックのバンドの中でも演奏力を含めたバンドの力量はトップクラスと言ってもよく、
美しいフルートや優しい女性Voの歌声も含めて、National Healthの1作目などが好きな方にもお薦めだ。
タイトル曲である、18分を超える組曲はテクニカルな構築と叙情が繊細な交差する、圧巻のプログレジャズロック。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 優雅度・・9 総合・・8
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