プログレ /東欧ロシア(旧ソ連)・ハンガリー・ポーランド・旧東ドイツ・チェコ、ブルガリア、スロヴェニア
~PROGRESSIVE ROCK/EAST EUROPE
                     by Tosei Midorikawa

掲載バンドはABC順になっています

M UVWXYZ

■CDの評価に関しては、個人的嗜好が反映されることもあり、納得のいかない評価もあるかと思いますが、その辺はどうかご了承ください。

 
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ABRAXAS
ポーランドのシンフォニックロックバンド、アブラクサスの1st。1996年作
今でこそポーランドといえばシンフォニック系の宝庫というイメージだが、
90年代においては、QUIDAMなどとともにこのバンドこそが泣き系シンフォの先駆けであった。
きらびやかなシンセにメロディアスなギターフレーズが絡む軽快なサウンドは、
CAMELやGENESIS、さらにはPENDRAGONなどからの影響を感じさせるが、
それだけではなく母国語による演劇的なヴォーカルや、東欧特有の異色な雰囲気とともに、
メロウな泣きとほの暗さをかもしだしている。独自のポリッシュシンフォが完成された一枚。
シンフォニック度・・8 シアトリカル度・・8 ポーラン度・・8 総合・・7.5
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Abraxas「Centurie」
ポーランドのシンフォニックロックバンド、アブラクサスの2nd。1998年作
1996~2000年までにライブ作を含めて4作を発表して解散したこのバンド、
基本はかつてのGENESISANGEなどに通じるシンフォニックロックであるが、
そこに90年代以降のPENDRAGONに代表されるような泣きのメロディとモダンさ、
そしてポーランドらしいほの暗い質感を織り込んだ濃密な作風である。
美麗なシンセと、メロウなギターが合わさると、なかなか耳に心地よいのだが
シアトリカルで不思議な歌い回しのヴォーカルが個性的で、やや好みを分けるところか。
シンフォニック度・・8 シアトリカル度・・8 東欧度・・8 総合・・7.5
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Abraxas「99」
ポーランドのシンフォニックロックバンド、アブラクサスの3rd。1999年作
スタジオ作としてはラストのアルバムで、のっけからハードエッジなギターで始まり、
母国語によるシアトリカルなヴォーカルとうっすらとした美しいシンセアレンジも含め、
これまで以上にシリアスな雰囲気に包まれたハード・シンフォニックサウンドを聴かせる。
薄暗い情緒を漂わせるメロウな泣きという点では、本作がもっとも聴きどころが多く、
コンセプチュアルな構築性も素晴らしい。90年代ポリッシュ・シンフォの傑作のひとつである。
シンフォニック度・・8 シアトリカル度・・8 東欧度・・8 総合・・8
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Abraxas「Live in Memoriam」
ポーランドのシンフォニックロックバンド、アブラクサスのライブ作品。2000年作
スタジオアルバム3作を残して消えたこのバンドであるが、本作はおそらく集大成的な意味合いのライブだったのだろう。
母国語による長いMCはバンドの歴史を語っているのだろうか。演奏が始まるとうっすらとしたシンセに叙情的なギターと
シアトリカルな雰囲気のヴォーカルで、いかにも東欧らしい薄暗く濃密な味わいのシンフォニックロックが広がってゆく。
過去のスタジオ作以上に起伏に富んだメリハリのある演奏が、ドラマティックな機き心地となって世界観を構築し、
随所に入ってくる泣きのギターフレーズにはうっとりとなる。ライブにしては音質も抜群によい。傑作ライブアルバムだ。
ドラマティック度・・8 ライブ演奏・・8 音質・・9 総合・・8
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The Adekaem 「Sound Coloring」
ポーランドのプログレバンド、アデカエムの2017年作
2015年にデビューし、2作目。シンセとギターによるユニットで、本作では、Vo、B、Drはゲスト扱いとなっている。
プログレらしいきらびやかなシンセに叙情的なギターの旋律で、優雅なシンフォプログレを展開する。
ジェントルなヴォーカルが加わると、キャッチーなメロディアス性に包まれて、12分の大曲では、
アコースティックギターや優美なピアノによる繊細な叙情に、メロウな泣きのギターが響き渡る。
プログレハード的な軽快なパートもありつつ、再び泣きのギターフレーズと優美なシンセに包まれる。
全40分なので、もう1曲くらい大曲が欲しかったが、これぞシンフォニックロックという味わいの逸品です。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 叙情度・9 総合・8
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The Adekaem 「The Great Lie」
ポーランドのプログレバンド、アデカエムの2021年作
2015年にデビューし、3作目となる。前作もなかなかの高品質作であったが、本作ものっけから13分という大曲で、
叙情的なギターの旋律にやわらかなシンセを重ね、優雅で知的なシンフォプログレを構築する。
キャッチーで軽快なノリと、ウェットな叙情美が合わさった楽曲は、随所にオールドなプログレらしさを残しつつ、
東欧らしい涼やかな翳りも感じさせる。ゲストによるヴォーカルも加わりつつ、アンビエント寄りのナンバーや、
ミステリアスな空気に包まれたインストの大曲など、とらえどころがない。10分以上の大曲を4曲含む、全76分の力作です。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 叙情度・8 総合・8
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AFTER...「endless lunatic」
ポーランドのシンフォニックロックバンド、アフターの2005年作
QUIDAMのメンバーも参加しているということで、サウンドの方もやはり最近のQUIDAMに通じる、
ほの暗い叙情で聴かせる、ゆったりと耳心地のよいシンフォニックロックである。
ギターの奏でるメロウなフレーズはときにPENDRAGONばりの泣きを聴かせ、
マイルドなヴォーカルの歌声は、憂いを含んだ哀愁を感じさせる。
楽曲にあまり派手さはなく、インパクトのある音ではないのだが、
逆に言うと、じわじわとくるこの押しつけがましくなさこそがポーランド的とも。
シンフォニック度・・7 プログレ度・・7 ゆったり叙情度・・8 総合・・7.5
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After... 「Hideout」
ポーランドのプログレバンド、アフターの2008年作
QUIDAMのベースが在籍するバンドで、2005年にデビューし、2作目となる。叙情的なギターにシンセを重ね、マイルドなヴォーカルとともに、ほどよくノリのあるロック感触に東欧らしい翳りが同居したサウンドを聴かせる。
随所にオルタナ風のハードさも含みつつ、優雅なピアノやオルガンを含むシンセなど、シンフォニックロックの要素もあるので、わりと聴きやすい。
全体的には、もう少し明快な盛り上がりが欲しいのだが、ラストは11分の大曲で、モダンなハードプログレ的な感触で楽しめる。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 翳りと叙情度・7 総合・7.5 
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AFTER... 「Live At Home」
ポーランドのシンフォニックロックバンド、アフターのライブ作品。2010年作
2009年ポーランドでのステージを収録、QUIDAMのメンバーも含んだこのバンド、
薄暗い叙情とメロウな翳りに適度にモダンなハードさをまぶしたサウンドは、
泣きのギターメロディなども含めて、やはりQUIDAMやSATELLITEなどに通じるものがある。
雰囲気は悪くないのだが、上記バンドに比べると、楽曲自体の魅力がやや乏しいか。
SYSTEM OF A DAWNBLACK SABBATHのカヴァーなど意外なところが楽しめたりする。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 ライブ演奏・・8 総合・・7.5
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After All 「A.C.I.D.」
ハンガリーのハードプログレ、アフター・オールの2001年作
SF的なイントロから始まり、美麗なシンセアレンジとメタリックなギターを重ね、エモーショナルなヴォーカルとともに
ProgMetal的な重厚なサウンドを聴かせる。変則リズムを含むテクニカルな展開力とモダンな翳りを含んだ、
ドラマティックな感触は、RIVERSIDEPAIN OF SALVATIONあたりが好きな方にも楽しめるだろう。
ときにDREAM THEATERのジェイムス・ラブリエのように歌い上げるヴォーカルがシアトリカルな雰囲気もかもしだし、
緩急ある流れと知的な構築力で、コンセプト的なスケール感を描き出す。ハードシンフォニックというよりは
やはりプログレメタル方面に受ける作風であろう。ジャケは地味だが内容はかなりの力作です。
ドラマティック度・・8 プログレメタル度・・8 重厚度・・8 総合・・8
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AFTER CRYING「Megalazottak Es Megszomoritottak
ハンガリーのシンフォニックロックバンド、アフター・クライングの2nd。1992年作
6作目以降は東欧のクラシカルシンフォの巨人というべき存在となるこのバンドだが、
本作はまだ後の作品のような、クラシックとプログレの融合以前の作風で、優雅なピアノの音色に
トランペットやチェロが鳴り響く、チェンバーロックスタイルのサウンドをやっている。ロック色を感じさせるのはドラムのみだが、
クラシカルな味わいの中にも、随所にドラマテイックな緊張感を垣間見せるそのセンスはさすがで、
11分、22分という大曲を、ときにクリムゾンを思わせるアヴァンギャルドな展開も含んで構築してゆく。
クラシカル度・・8 プログレ度・・7 優雅度・・8 総合・・8
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AFTER CRYING「FOLD ES EG」
ハンガリーのシンフォニックロックバンド、アフター・クライングの3rd。1994年作
前作のクラシカルなチェンバーロック路線から変わって、本作ではEL&Pを思わせるキーボードを前に出した、
ぐっとプログレ寄りのスタイルとなっている。しかしながら、壮大かつアカデミックな印象で聴かせるサウンドは、
やはりクラシックルーツのバンドならはの緊張感に包まれている。90年台の東欧圏のバンドとしては非常に出来の良い、
シリアスなクラシカル系キーボードプログレが堪能できる好作品であろう。
クラシカル度・・8 シンフォニック度・・8 ピアノ&キーボー度・・8 総合・・8
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AFTER CRYNG「ELSO EVTIZED」
ハンガリーのシンフォニックロックバンド、アフター・クライングの5作目。1996作
CD2枚組で、1枚目は以前のアルバムからのベストに未発表曲、2枚目は1991年のライブ音源という構成。
1枚目は、この類まれなクラシカル・シンフォニックロックバンドのここまでの歩みが再確認できる作りで、セレクトされた16曲がたっぷり楽しめる
2枚目ライブの方は、バンド内にすでに小オーケストラがいるようなものなので、クラシカルさ、重厚さともに損なうことなく、
シリアスかつアカデミックな見事な演奏。ロックに対するバンドの回答ともいうべき次作「6」に至る前の、静寂と緊張感、
そしてクラシックへのこだわりとがここでは聴ける。ラストは「21世紀の精神異常者」の完コピ演奏でしめる。
シンフォニック度・・8 クラシカル度・・9 シリアス度・・9 総合・・8.5
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AFTER CRYING「6
ハンガリーのシンフォニックロックバンド、アフター・クライングの6作目。1998年作
チェンバーロック風からスタートし、EL&Pの東欧版という3rdをへてから今作を聴くと、その進化の早さに驚かされる。
ここで聴かれる演奏は、EL&Pとともに、彼らがKING CRIMSONもルーツにしていることを感じさせながら、
より重量感、密度を増した印象である。従来のクラシック要素は、よりロック的ダイナミズムとの深い融合を果たし、
シンフォニーとさえいってよい優雅なクラシカルパートから一転、ドラム、ギターが入るヘヴィパートでの躍動感は、
くっきりとしたコントラストとなって、長大な組曲2つを含む楽曲にドラマティックなメリハリを加えている。
5人のメンバーに加え、管楽器隊など10人以上のゲストによる大がかりなシンフォニックサウンドは
室内楽的イメージも加わり、たとえば「CHEVAL」以降のIsildurs Baneなどに通じるものを感じる。
また、ラストにはエマーソンへのトリビュートとして爽快なキーボードシンフォ曲をやっているのも興味深い。
北欧のIsildurs Baneと並び、90年代の硬質系シンフォとしては最重要のバンドであろう。
シンフォニック度・・8 クラシカル度・・8 重厚度・・9 総合・・8.5 ◆プログレ名作選入り
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After Crying 「Almost Pure」
ハンガリーのプログレバンド、アフター・クライングの1998年作
これまでの楽曲から集められたインスト曲のベストで、未発曲4曲を含むアルバム。
本作では、このバンドの特徴である小オーケストラ的な編成のクラシカルロック、
シンフォニーロックとしての雄大さが味わえる、インストの小曲が多く収録されていて、
ギターやドラムなどのロックフォーマットが絶妙に融合されたサウンドには、あらためて驚嘆する。
10分前後のシンフォニックな大曲も含め、このバンドの優美なクラシカル性がたっぷりと味わえる作品だ。
クラシカル度・・9 プログレ度・・8 優美度・・9 総合・・8
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After CryingStruggle for Life
ハンガリーのシンフォニックロック、アフター・クライングのライブアルバム。2000年作
東欧きってのシンフォニックロックバンドの、1999年のライブ音源をCD2枚に収録。
アカデミックななクラシカル要素を、KING CRIMSONEL&Pから影響を受けた
シリアスなプログレ感覚と融合させ、壮麗でスケールの大きなサウンドを聴かせるこのバンド
優美なピアノにサックス、フルート、オーボエ、トランペット、チェロなどを含んだ編成で、
これぞシンフォニーロックというたおやかなサウンドを描き出す。ほとんどクラシックのようなナンバーもありつつ、
うるさすぎないダイナミズムで、ロックとしてのアンサンブルを絶妙に融合させている。
優雅さと硬質感の狭間にある、このバランス感覚こそが見事なのだともいえる。
ジョン・ウェットンをゲストに迎えての、King Crimson“Starless”も収録。
クラシカル度・・9 ロック度・・7 ライブ演奏・・8 総合・・8
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AFTER CRYING「BOOTLEG SYMPHONY KONCERTSZIMFONIA」
アフター・クライングのオーケストラとの競演ライブアルバム。2000年作
意外にもオーケストラとの競演はこれが初めてとなるが、もともとスタジオ作からして
クラシック的な手法を多く取り入れていただけに、その楽曲をオケで再現してもなんら違和感がない。
というか、あまりに自然すぎて、逆にロックとしての「引っ掛かり」が感じられないほどだ。
8人のバンドメンバーに選抜された交響楽団が加わり、美しくも壮大に楽曲を構築してゆく。
サウンドのダイナミズムという点では、会場や録音設備のためか少々物足りなさは残るが、
このバンドのアカデミックな方向性を改めてかいま見れる作品である。
シンフォニック度・・8 クラシック度・・9 録音・・7 総合・・8
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AFTER CRYING「SHOW」
ハンガリーのシンフォニックロックバンド、アフター・クライングの7th。2003年作
90年代以降の東欧を代表する本格派のシンフォニックバンド。
今作はメッセージ性の強いコンセプト作となっていて、歌パートの重要性がずいぶん増した傑作。
「巨大帝国アメリカ」への批判を根幹のテーマにしながら、サウンドの方はやはり彼ららしい重厚なシンフォニックロックで、挿入されるクラシック名曲のメロディもとても効果的だ。
クラシックのみならずファンクやラップ的な要素も世界観を失わない程度に折り込まれており、その自然なミクスチャーセンスすらも、このバンドのアカデミックな側面を強調するように見事である。
シンフォニック度・・8 クラシカル度・・8 重厚度・・9 総合・・8.5 ◆プログレ名作選入り
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AFTER CRYING「Live」
ハンガリーのシンフォニックロックバンド、アフター・クライングのライブDVD。2007年作
ハンガリーきってのシンフォニックロックバンドの初のライブ映像作品。2004年ブダペストでのステージを収録。
2003年作品の「SHOW」からの楽曲を中心にしながら、過去のアルバムからもたっぷりと演奏。
すでに15年以上のキャリアがあるだけあって、メンバーは皆ほぼおっさん。面白いのはシンセ奏者が三人もおり、
一人は鍵盤専任だが、一人はトランペットを片手にシンセも弾き、一人は普段はギターも弾いていて、ギターを下げたままでシンセも弾く。
ベーシストがいきなりチェロに持ち替えていたり、フルート奏者がちゃっかりいたりと、曲によってバンドスタイルが変わるのだ。
しかし長髪でガタイのいいVoは絵的に濃すぎるので、せめて女性コーラスくらい一人いれば…などと思ってしまった(^_^;
ともかく、クラシックの素養を感じさせる硬質でシリアスなアカデミックさと、ELPKING CRIMSONなどからの影響が垣間見える
プログレバンドとしてのマニアックさが絶妙に融合されているのが彼らの個性だろう。
東欧のバンドのライブ映像はそれだけでも貴重なので、内容の濃さも含めて見る価値あり。
ライブ映像・・7 ライブ演奏・・8 いろいろ濃いです度・・9 総合・・8
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AFTER CRYING「CREATURA」
ハンガリーのシンフォニックロックバンド、アフター・クライングの8th。2011年作
前作から8年ぶりとなる本作は10分、24分、14分、14分という、長大な組曲による四部構成で、それぞれの楽曲が世界における東西南北を表すというコンセプト作品。
どっしりとしたグルーブを下地にした緊張感に包まれたアンサンブルと、クラシカルなアカデミックさを覗かせるシリアスな重厚さが素晴らしい。
ヴァイオリンやチェロ、トランペットなどを効果的に使い、オーケストレイテッドな壮大さと室内楽の繊細な空間性を同居させる、その職人的アレンジセンスも見事という他にない。
ELPとKING CRIMSONの影響下からスタートしたこのバンドが、ここまでの雄大なビジョンを描ききるバンドになったのだから、
まったくもってプログレは素晴らしい…そう思わせるだけの傑作だ。「東欧の巨人」という名称を彼らに与えたい。
ドラマティック度・・9 プログレ度・・9 壮大度・・9 総合・・9
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AFTER CRYING 「XXV: JUBILEUMI KONCERT」
ハンガリーのシンフォニックロック、アフター・クライングのライブ作品。2013年作
クラシックとプログレを巧みに融合し、まさしく現代プログレの巨人と呼ぶにふさわしいスケールをもったこのバンド、
本作は、バンド結成25年周年記念として行われたライブ作品である。CD1は、2011年作「CREATURA」からの楽曲を演奏、
もともとが驚異的なクオリティの作品であったのだが、チェロやヴァイオリンもトランペットなどの管弦楽をまじえながら、
優雅な躍動感をともなったライブ演奏はさすがである。CD2とDVDには、オーケストラとの共演ステージを収録、
女性ヴォーカルの美しい歌声に、やわらかなフルートの音色、包み込むようなオーケストラの調べにうっとりとなりつつ、、
起伏に富んだ壮麗なクラシカル・シンフォニーロックが楽しめる。DVDの映像で見るとよりゴージャスに鑑賞できます。
ドラマティック度・・8 クラシカル度・・9 ライブ演奏・・9 総合・・8.5
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Aiste Smilgeviciute ir Skyle 「Povandenines Kronikos」
リトアニアの女性シンガー、アイステ・スミルジェヴィッチュテとスカイルの2007年作
2010年にデビューし、2作目となる。優美なアコースティックギターにシンセを重ね、
ドラムやエレキギターも加えて、美しい女性ヴォーカルを乗せたシンフォニックロックを聴かせる。
アイステ嬢の母国語によるなよやかな歌声が非常に魅力的で、フルートやチェロなども加えた
クラシカルな優雅さと壮麗なシンセを重ねた、東欧系トラッドロックとしても楽しめる。
曲によっては男性声も加わったり、アコーディオンの音色がフォーキーな哀愁をかもしだす。
KORMORANのようなプログレ寄りの優雅な女性声フォークロックというべき逸品です。
優雅度・9 プログレ度・7 女性Vo度・9 総合・8
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Albion
ポーランドのシンフォニックロック、アルビオンの1995年作
デビュー作、25周年記念の再発盤で、メロウなギターにシンセを重ね、コケティッシュな女性ヴォーカルとともに
優美なシンフォプログレを聴かせる。Anna嬢の歌声は、かつてのトレイシー・ヒッチングスにも通じるハスキーな魅力で
女性声の繊細系シンフォとしては、同郷のQUIDAMの1作目にも通じるような清涼な耳心地で楽しめる。
全体的に派手さはないものの、ときにアコースティックを含んだやわらかな叙情性や、うっすらとしたシンセによる
幻想的な空気感が、キュートな女性ヴォーカルを引き立てている。ボーナスに1994年のデモ音源を追加収録。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 女性Vo度・8 総合・8 
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Albion 「Remake」
ポーランドのシンフォニックロック、アルビオンの2006年作
1994年のデビュー作、1995年の2作目をCD2枚にカップリング。やわらかな女性ヴォーカルの歌声に、
美しいシンセアとメロウなギターを乗せた清涼感のあるサウンドで、初期のQUIDAMにも通じる優美な聴き心地。
紅一点、Anna嬢の歌声は、トレイシー・ヒッチング(Landmarq)などにも通じるハスキーな魅力があって、
楽曲をコケティッシュに彩っている。叙情的な泣きのギターフレーズも随所に彩りを放ち、
東欧らしいアンニュイな湿り気は、まさにシンフォニックロックの王道といった趣である。
2作目になると、翳りを帯びたメロウな作風が強まり、ゆったりとしたやや地味な作風になる。
方向性に迷ったのか、バンドはこの後いったん消滅するが、10年後にまた復活をとげる。
シンフォニック度・・8 美麗度・・9 女性Vo度・・9 総合・・8 
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Albion「Wabiac cienie」
ポーランドのシンフォニックロック、アルビオンの2005年作
前作から10年ぶりとなる3作目で、女性Voが交代しての復活作。
美しいシンセとメロウなギター、そして女性ヴォーカルの歌声がやわらかに響く、
初期のQUIDAMTarquoiseなどに通じる優美な女性声シンフォニックロックはそのまま。
しっとりとした美しさに加え、ポーランドらしいほのかな薄暗い情緒も感じさせ、
曲によってはミステリアスな雰囲気にも包まれる。なかなかの好作だ。
シンフォニック度・・8 ポーラン度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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Albion 「Broken Hopes」
ポーランドのシンフォニックロック、アルビオンの2007年作
前作「Wabiac cienie」は初期のQUIDAMやTarquoiseなどに通じるような好作であったが、
4作目となる本作も、美しい女性ヴォーカルの歌声とともに、しっとりとした叙情美が楽しめる。
美麗なシンセアレンジにメロウなギターもよい感じで、ときにPENDRAGONばりの泣きも入って、
シンフォニックロックとしての魅力もたっぷり。録音面での粗さが少し残念だが、
繊細な叙情とメロディックな感触に包まれた、女性声シンフォの好作です。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8
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Albion 「The Indefinite State Of Matter」
ポーランドのシンフォニックロック、アルビオンの2012年作
女性Vo擁する叙情派バンドの5作目。メロウなギターワークとうっすらとしたシンセで描かれる、
ポーランドらしい薄暗い叙情とやわらかな浮遊感を感じさせるシンフォニックロックサウンド。
美しい女性ヴォーカルが入ってくると、初期のQUIDAMを思わせる優美な聴き心地に包まれる。
全体的にはインストパートがメインなので、女性声シンフォとしてはいくぶん物足りないのが残念。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 女性Vo度・・7 総合・・7.5
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Albion 「You'll Be Mine」
ポーランドのプログレバンド、アルビオンの2018年作
1995年にデビュー、本作は6作目となる。叙情的なギターにコケティッシュな女性ヴォーカルを乗せ、
うっすらとしたシンセとともに、しっとりと翳りを帯びたサウンドを聴かせる。ときにアコーステッィクも挟みつつ
泣きのギターメロディと優美なシンセアレンジで、シンフォニックな厚みのある叙情を描くところはさすが。
パーカッション的なリズムが鳴り響く、トライバルな感触も覗かせつつ、美しい女性ヴォーカルと
包み込むようなシンセが幻想的な空気を描く。ラスト曲の最期ではヘヴィな重厚さも現れる。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 叙情度・8 総合・8 
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ALGABAS 「Angels And Demons」
ロシアのプログレバンド、アルガバスの2014年作
きらびやかなシンセを叙情的なギターに重ね、ロシア語によるシアトリカルなヴォーカルとともに
優雅な味わいのシンフォプログレを聴かせる。ヴィンテージな感触のシンセワークを中心に、
ときに奔放なギターを前に出しながら、ほどよくテクニカルで軽妙なインストパートを構築。
歌入りパートでは、GENTLE GIANTのロシア版というようなキャッチーな偏屈さも感じさせる。優雅な好作品。
ドラマティック度・7 プログレ度・8 軽妙度・8 総合・7.5


Alina Skrzek / Jozef Skrzek 「SLONE PERLY」
ポーランドのベテラン、SBBのヨゼフ・スカルツェクと娘であるアリナ・スカルツェクによる2001年作
優美なシンセにフルートが鳴り響き、叙情的なギターの旋律も加えたシンフォニックな味わいと、
母国語によるヴォーカルを乗せた、キャッチーな歌もの感触が同居したサウンド。
ほどよくエレクトロ寄りのアレンジや、ときにスラヴ的な民族感も漂わせていて、
単なるポップロックでもない、さすがのゼンス。美しい女性スキャットを乗せた優雅さや
シンセをメインにしたアンビエントな質感なども含めて、シンフォニックなポストプログレとしても楽しめる好作品
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・8 総合・7.5


AMAROK
ポーランドのシンフォニックロックバンド、アマロックの1st。2001作
スペインにも同名のトラッドシンフォバンドがいるが、こちらはトラッドというよりは
マイク・オールドフィールドの「OMMADAWN」的なインストメインのサウンドで、
ゆったりとしたギターのフレーズにハモンドやメロトロン(サンプリング)等のキーボードが絡む。
時折女性コーラスも出てきたりして、総じて清涼感のある心地よいサウンドである。
ややもったりとしていて、1曲としてのコンパクトさには欠ける気はするが、
そこも含めて気に入れば、とてもいい出来だと思う。
シンフォニック度・・7 清涼度・・8 楽曲・・7 総合・・7.5
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AMAROK「NEO WAY」
ポーランドのシンフォニックロックバンド、アマロックの2nd。2002作
今作も、気取らない自然体のたおやかな音作りで、メロウなギターとシンセをメインに、
曲によっては打ち込み風のアレンジを用いたセンスのよいサウンドを展開している。
いよいよシンフォニックロック/プログレからは離れた感があるが、
たおやかに鳴らされるアコースティックギターやフルートなどが美しく、
自然派メロディック音楽としては、むしろ焦点が絞られたという言い方もできる。
ギターによる土着的メロディはトラディショナルな雰囲気をもかもしだし、女性スキャットも美しい。
メロディアス度・・8 シンフォニック度・・7 自然派度・・9 総合・・7.5
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AMAROK「METANOIA」
ポーランドのプログレバンド、アマロックの3rd。2004作
本作では、のっけから打ち込み的なデジタリィなサウンドになっていてびっくり。
かつてポーランドのMIKE OLDFIELDと言われた1stから考えるとえらいギャップである。
まあ、デジタルなビートアレンジを上手く取り入れていると言えなくもないが、
前作よりもさらに土着性が薄れていて、こうなるともうプログレなのかすらも分からない。
彼ららしいメロウなギターを聴かせる部分もあるにはあるが、深化と呼ぶにはやや作り込みが足りない気もする。
メロディアス度・・7 プログレ度・・7 デジタル度・・8 総合・・7
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AMAROK 「HUNT」
ポーランドのプログレバンド、アマロックの2017年作
スペインにも同名バンドがあるが、こちらは別バンド。2001年にデビュー、本作は、2004年以来となる4作目。
メロウなギターにエレクトロな感触も含んだアレンジ、マイルドなヴォーカルを乗せたスタイルで、
薄暗い叙情に包まれたアンビエントな味わいは、Kscope系のポストプログレに接近した印象。
サウンドスケープ的なしっとりとした涼やかさや、ギルモアばりのギターを聴かせるインストナンバーなど、
全体的にもクールな聴き心地で、ドラマティックな部分は希薄ながら、ラストは18分におよぶ大曲で、
うっすらとしたシンセに叙情的なギターのトーンで、翳りを帯びたシンフォニックロックが味わえる。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 叙情度・8 総合・7.5 
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Amaryllis「Inquietum Est Cor」
ポーランドの女性Voシンフォニックロック、アマリリスの2009年作
女性Voにツインギターを含む6人組でシンセはゲスト。しっとりとした女性ヴォーカルの母国語の歌声に、
メロウなギターとうっすらとしたシンセ、浮遊感のある叙情性と幻想的な薄暗さで聴かせる世界観は、
QUIDAMなど、やはり同郷のバンドに通じる匂いも感じさせ、いくぶんのメタリックな感触と
素朴なシンフォニック性を描く一方では、PINK FLOYDルーツのサイケなロック風味もあり、
それがはかなげな美しい女性声と合わさって、なんともいえないゆるやかなサウンドを描いている。
楽曲の間に小曲を織り込んだ構成で、アルバム全体を流れで鑑賞できるのも心憎い。マイスペ
シンフォニック度・・7 しっとり度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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ANAMOR「IMAGINACIE」
ポーランドの女性Voシンフォニックバンド、アナモルーの2002作
かつてのQUIDAMを思わせる伸びやかな女性Voのシンフォサウンド。
メロウなギターフレーズもなかなかよろしく、GENESIS的な雰囲気に
ポーランド語の美しい歌声が合わさり、しっとりとした感触で聴かせてくれる。
QUIDAMTURQUOISEなど、女性ヴォーカルシンフォ好きにはお勧めの一作。
メロディアス度・・8 ポーラン度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8

Anamor 「Za Witrazem」
ポーランドのシンフォニックロック、アナモールの2018年作
2003年にデビュー、本作は15年ぶりとなる2作目。美麗なツインキーボードに叙情的なギターを重ね、母国語による美しい女性ヴォーカルとともに、東欧らしい翳りを帯びたサウンドを描く。
優雅な女性声シンフォという点では、初期のQUIDAMにも通じる聴き心地であるが、ほどよくハードなギターが加わると、ゴシック系シンフォニックロックというような味わいにもなる。
ラストの9分のタイトル曲では、泣きのギターフレーズに優美なシンセで、じわじわと盛り上げる。WHITE WILLOWのファンにもお薦めの逸品だ。
ドラマティック度・7 翳りと叙情度・8 女性Vo度・8 総合・8
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Ananke 「Malachity」
ポーランドのプログレバンド、アナケの2010年作
ABRAXASのヴォーカルとシンセを中心にしたバンドで、薄暗さを含んだモダンな空気感に、
シアトリカルな母国語のヴォーカルを乗せた、ゴシック風味のシンフォニックロックを聴かせる。
メロウなギターに美しいシンセと独特の味のあるヴォーカルで、東欧らしい翳りを描くサウンドは、
やはりかつてのABRAXASに通じる感触で、メランコリックなポリッシュロックが楽しめる。
全体的には、しっとりとした歌ものメインの作風だが、オルガンを使ったプログレ的な部分もあり、
繊細な叙情性をほどよくスタイリッシュに仕上げたという、ゆったりと耳心地の良い好作品です。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 叙情度・・8 総合・・8
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ANANKE 「SHANGRI-LA」
ポーランドのプログレバンド、アナケの2012年作
ABRAXASのヴォーカルとシンセを中心にしたバンドで、オルタナ的なモダンなハードさと
うっすらとしたシンセアレンジ、母国語のヴォーカルで聴かせる、薄暗い感触のモダンシンフォ。
かつてのアブラクサスにもあったシアトリカルな雰囲気と東欧らしい翳りを含んだ叙情性を、
よりスタイリッシュに構築したというサウンドで、マイルドでメランコリックな空気感が耳心地良い。
ムーグなどのプログレらしいシンセアレンジに、ギターのメロウなフレーズも随所によい感じで、
モダン過ぎない雰囲気もよろしい。ABRAXASの続編というイメージで楽しめる好作品だ。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 薄暗度・・8 総合・・8
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ANDREW ROUSSAK 「NO TRESPASSING」
ロシアの鍵盤奏者、アンドリュー・ロウサクの2008年作
エレピやオルガンなどのやわらかなシンセに優雅なフルートの音色、叙情的なギターとマイルドなヴォーカルで、
キャッチーで軽妙な味わいのシンフォプログレを聴かせる。サックスの音色も加わった大人の叙情性から、
優美なピアノにムーグシンセが鳴り響く、THE NICEのようなクラシカルな感触に包まれながら、
ときにEL&Pのようなダイナミックな展開も覗かせる。バッハのカヴァーから、ジャズタッチのピアノ曲など、
鍵盤奏者としての素養の深さも感じさせる。総じて優雅なクラシカルロックが楽しめる逸品です。
クラシカル度・8 プログレ度・7 優雅度・8 総合・8
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Ankh 「Bedzie Tajemnica」
ポーランドのプログレバンド、アンクの1998年作
1995年にデビューし、2作目。艶やかなヴァイオリンが鳴り響き、母国語によるヴォーカルとともに、
オルタナ的な薄暗さを含んだハードプログレを聴かせる。小曲を織り込んで組曲的に連なる構成や、
クラシックのメロディを取り入れたりと、優雅さとハードエッジが同居した、緩急の大きな展開とともに
いくぶんアヴァンギャルドな感触もある。女性ヴォーカルが加わったパートでは、優美な浮遊感も描いていて
クラシカルなヴァイオリンも良い味わい。ProgMetal的な硬質感も覗かせたかと思えば、KING CRIMSON
「21世紀の精神異常者」のカヴァーをやったりと、とらえどころがない。もう少し明快な聴きどころが欲しい。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度アヴァンギャル度・8 総合・7
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Antony Kalugin Projects「Gnomology-Chapter 1」
KARFAGEN、SUNCHILDなどで活躍するウクライナ出身のシンセ奏者、アントニー・カルギンの2013年作
2002~2012年作までの10年間の作品から集められたアンソロジー的なアルバムで
ソロ作から、KARFAGEN、SUNCHILD、HOGGWASHなどのバンド各作品の楽曲を15曲、80分にわたって収録。
プログレらしいムーグシンセや女性ヴォーカルを加えたきらびやかなシンフォニックロック路線から、
センスのよいキャッチーな歌ものナンバー、繊細でメロウな叙情を聴かせるナンバーまで、
どれも東欧らしい湿り気のあるメロディアス性に包まれたサウンドがたっぷり楽しめる。
いまや東欧きっての多作アーティストといってよいミュージシャンの活動を俯瞰できる1枚だ。
ドラマティック度・・8 叙情度・・8 東欧度・・8 総合・・8
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ANTONY KALUGINS KINEMATICS ORCHESTRA 「AKKO I」
KARFAGEN、SUNCHILDなどで活動する鍵盤奏者、アントニー・カルギンのソロ。2013年作
自身のシンセとプログラムによるオーケストレーションを中心に、ギターやサックス、ヴァイオリン奏者を迎え、
ゆったりとした雄大なシンフォニックロックを描いている。打ち込みのドラムによるモダンなデジタル感覚と
東洋的な旋律を含む民族的なメロディが合わさった、GANDALFあたりに通じるやわらかなインストサウンド。
10分を超えるような大曲も、あくまでゆるやかな聴き心地で、スリリングな展開というのがあまりない分、
プログレとして楽しむには少しのんびりとしているが、メロウなギターやアダルトなサックスの音色は心地よく、
MIKE OLDFIELDなどが好きな方にも聴きやすいのではないかと。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 ゆるやか度・・8 総合・・7.5
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ANTONY KALUGIN PROJECT「BREAKING FREE TOUR LIVE」
ウクライナのシンフォニックロック、AKP/アントニー・カルギン・プロジェクトのライブ作品。2017年作
Karfagen、Sunchildなどで活躍するミュージシャンのデビュー10周年を記念した、2016年ポーランドでのライブをCD+DVDに収録。
Karfagenのメンバーを中心に、それぞれにシンセとギターを兼任する2人の女性シンガーを含む6人編成で、
美麗なツインキーボードに叙情的なギターを重ね、コケティッシュな女性ヴォーカルとともに、Sunchildの大曲を披露。
ケイト・ブッシュを思わせる女性声のキャッチーなナンバーや、Karfagenの楽曲も含めて、CDは80分に及ぶライブ音源が楽しめる。
DVDの方はスタジオライブなどをボーナス収録した、106分のボリュームで、映像にはさほどお金がかかっていないのだが、
キュートな2人の女性シンガーの姿も含めて、視覚的にもバンドのステージが味わえる。ウクライナきっての才人のライブです。
ライブ演奏・8 ライブ映像・7 優美度・8 総合・8 
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ANTONY KALUGIN 「MARSHMALLOW MOONDUST」
KARFAGEN、SUNCHILDなどで活躍するウクライナ出身のシンセ奏者、アントニー・カルギンの2020年作
ソロ名義としては7年ぶりとなる作品で、20分の大曲2曲という構成。メロウなギターの旋律に優美なシンセアレンジで、
ジャケのイメージのような幻想的なシンフォニックロックを展開する。スリリングな展開よりはあくまで優雅な味わいで、
基本はオールインストながら、コーラスなどが加わる部分もあったりと、キャッチーなメロディアス性にも包まれる。
後半の大曲では、甘美なギターフレーズとともに、初期のTHE FLOWER KINGSにも通じる人懐こいメロディも覗かせつつ、
ストリングスやサックス、フルートなどの管弦楽のクラシカルなアレンジも取り入れた、たおやかなサウンドをじっくりと構築する。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 優雅度・・9 総合・・8 
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ANTONY KALUGIN 「STELLAR GARDENER」
ウクライナ出身のシンセ奏者、アントニー・カルギンの2021年作
前作に続き、20分の大曲2曲という構成で、叙情的なギターにきらびやかなシンセワークで、
インストを主体にした優雅なシンフォプログレを構築する。ほどよく緩急のある展開力に、
TRANSATLANTICにも通じる爽快なメロディとともに、前作以上にプログレらしい聴き心地。
泣きのギターフレーズはときにロイネ・ストルトを思わせ、プログレらしいシンセはクライブ・ノーランのよう。
後半の大曲もあくまで優美な叙情を描いていて、どこを切ってもシンフォプログレ好きはウットリとなる。
大曲志向のソロプロジェクトという点では、CHRISThe Black Codexシリーズのようなイメージになってきた。
あるいは、KARFAGEN「ドラゴン・アイランド組曲」に匹敵する幻想シンフォの逸品だろう。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・8 優雅度・・9 総合・・8.5
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Antony Kalugin/Karfagen 「Rebirth」
ウクライナのミュージシャン、アントニー・カルギンの2022年作
Karfagen、Sunchildなどでも活躍するミュージシャンで、ロシアによる侵攻後はポーランドへ避難し創作を継続している。
本作は、バンド結成以前のマテリアルを形したというソロ名義の作品で、戦火からの復興の願いを込めた内容になっている。
優美なシンセワークに泣きのギターを重ね、Mike Oldfileldにも通じる繊細な叙情に包まれたシンフォニックロックを展開。
アコースティックを含む素朴な牧歌性も覗かせつつ、あくまで優雅で優しいサウンドにウットリと浸ることができる。
Disc2には、Karfagen名義の作品「Land of Green」に関連した楽曲を収録。華麗なシンセとメロウなギターを主体に、
よりプログレらしい構築力で楽しめ、クラシカルなピアノ曲から、ラストの19分の大曲まで、シンフォプログレらしい味わいだ。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 優美度・9 総合・8 
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ARCHANGELICA 「Tomorrow Starts Today」
ポーランドのハードプログレ、アーチャンゲリカの2016年作
女性Vo、女性Bを含む5人編成で、いくぶんメタル寄りのギターとうっすらとしたシンセに
伸びやかな女性ヴォーカルを乗せた、タイトでモダンな感触のハードプログレを聴かせる。
ポーランドらしいメランコリックな味わいと、しっとりとした浮遊感に包まれて、美しい歌声が
響き渡るところは、かつてのThe Gatheringのアネク・ヴァン・ガースバーゲンなどを思わせる。
8分、9分という大曲も、プログレというよりはメランコリック・ロックという趣であるが、
同郷のLOONYPARKあたりと同様、女性声ハードシンフォとしても楽しめる好作だ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8
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The Archestra 「Arches」
ベラルーシのチェンバーロック、アーケストラの2013年作
RATIONAL DIETのヴァイオリン奏者を中心に、艶やかな弦楽器とピアノの音色に、
女性チェロ奏者の母国語の歌声も合わさった、優雅でクラシカルなチェンバーロックサウンド。
ドラムとベースが加わると、適度なロック色とともに、ときにUNIVERS ZEROにも通じるダークな空気感と、
ヴァイオリンとチェロの絡むストリングスをメインにした旋律を乗せた、スリリングな味わいに包まれる。
純室内楽をロック化したという気品のあるクラシカル性に包まれる一方、美しくも妖しい女性ヴォーカルが
Art Bearsのようなエキセントリックな彩りを添え、フリーキーなアヴァンギャルド性を描くナンバーなど、
一筋縄ではいかない先鋭的でアーティスティックなセンスも光っている。まさに本格派チェンバーの傑作。
クラシカル度・・8 プログレ度・・8 チェンバー度・・9 総合・・8
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AVIVARokus Tonalis
ロシアのシンフォニックロックバンド、アヴィヴァの2006作
LITTLE TRAGEDIESLOST WORLDに続く、ロシアンシンフォニック期待の新鋭は、
ピアノ、キーボードにベースもこなすマルチプレイヤー、アヴィバさんのソロバンド。
クラシックの素養を感じさせるピアノタッチに、EL&P的なシンセワークで、インストを中心にした楽曲は
シンフォニックでありながらも暑苦しさはなく、むしろ涼やかな質感にはチェンバーロック的でもある
アカデミックさも感じられる。リズムが打ち込みなのが惜しく、曲によってはデジタルな雰囲気もあり、
ロック的なダイナミズムには欠けるが、シンセミュージックとして聴くとそれもまあまあ楽しめる。
シンフォニック度・・8 クラシカル度・・8 キーボー度・・8 総合・・7.5
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AvivA Omnibus「Nutcracker in Fury」
ロシアのプログレバンド、アヴィヴァ・オムニバスの2008年作
前作はシンセ奏者である、AvivA氏のソロ的なアルバムであったが、本作ではバンド編成での作品。
EL&P的なきらびやかなシンセにハード寄りのギターが絡んだ、クラシカルなシンフォニックロックを展開、
インストがメインながら、シリアスになりすぎない童話的なファンタジー性がキャッチーな雰囲気を作り出していて、
シンセのメロディを中心にした優雅なサウンドには、さほど硬質な印象はない。エフェクトのかかったヴォーカルを乗せたりと
遊び心あるアレンジセンスもなかなか面白い。Little Tragediesのような分かりやすい派手さではないので、
プログレ中級者以上向けかもしれないが、クラシカルな優雅さとモダンなスタイリッシュ性に包まれた逸品です。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・8 優雅度・・8 総合・・8
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AVIVA 「Peer Gynt in Favour」
ロシアのシンフォニックロック、アヴィヴァの2011年作
シンセ奏者のAviva氏による一人ユニット、きらびやかなシンセワークを中心にした、
モダンなアレンジとクラシカルな優雅さをまぶした、インストによるシンフォニックサウンド。
歌がない分、どうしてもメロディで勝負するしかないのだが、あまりクッキリとした抜けの良さはなく、
むしろミステリアスな雰囲気で世界観を描くような感触もあるので、ぱっと聴きのインパクトはあまりない。
また、打ち込みのリズムを含めて、デジタルな作風は重厚さという点ではやや物足りないか。
シンフォニック度・・7 プログレ度・・7 優雅・・8 総合・・7.5
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Beam-Light
ポーランドのメロディックロック、ビーム・ライトの2009年作
うっすらとしたシンセアレンジにハスキーな女性ヴォーカル、適度にハードなギターを乗せた、
ゴシック的な雰囲気も含んだサウンド。The Gatheringあたりに通じるアンニュイな浮遊感に、
ポリッシュらしいメランコリックな翳りと、ときにサックスも加わったアダルトな哀愁も感じさせる。
中盤以降はわりとキャッチーなポップロック風味もあったりと、方向性は微妙ながら、
やや声の裏返るキュートな女性声の魅力も含めて、薄暗系シンフォニック・ハードとしても楽しめる好作品だ。
シンフォニック度・・7 ゴシック度・・7 女性Vo度・・7 総合・・7.5
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BELIEVE「Hope to See Another Day」
ポーランドのシンフォニックロックバンド、ビリーヴの1st。2006作
COLLAGEのMirek Gilを中心にしたバンドで、すでに2nd、3rdは聴いていた。
シンセに絡むヴァイオリンの音色とマイルドな歌声で、薄暗い叙情を聴かせるサウンドは
本作ですでに出来上がっている。UKロックを思わせるモダンロック的な質感に加え、
ときおり聴かせるメロウな泣きのギターフレーズはCAMELやPENDRAGONなどを思わせる。
QUIDAM、SATELLITE、Riversideなどとともに、ほの暗系シンフォの代表格といえるだろう。
メロディアス度・・8 薄暗度・・8 ポーラン度・・8 総合・・8
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BELIEVE「Yesterday Is a Friend」
ポーランドのシンフォニックロックバンド、ビリーヴの2nd。2008年作
COLLAGEのMirek Gilを中心に、分派したSATELLITEに通じる叙情性と、
ほのかな薄暗さで聴かせるシンフォサウンド。メロウなギターワークに、
女性奏者の奏でるヴァイオリンの響きが重なり、哀愁を漂わせたクラシカルさが美しい。
シンセはゲストメンバーによるもので、むしろギターとヴァイオリンを中心とした曲作りが
美麗なシンフォニックさよりも、素朴な叙情をかもし出していて、それが耳に優しい。
シンフォニック度・・7 メロディアス度・・8 ゆるやか叙情度・・9 総合・・8
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BELIEVE「This Bread Is Mine」
ポーランドのプログレバンド、ビリーヴの2009年作
COLLAGEのMirek Gilを中心に、ヴァイオリン入りの叙情的なサウンドを聴かせるこのバンド。
3作目となる本作ではヴォーカルが交代し、新たにシンセやフルートもこなせるヴォーカルが加入、
サウンド自体は薄暗い叙情で聴かせるいかにもポーランドらしいシンフォニックには変わりないが、
これまでよりもギターとシンセの絡みが増えたことで、いっそうSATELLITEあたりの音に近づいた。
もちろんこのバンドの特徴である、もの悲しいヴァイオリンの音色も随所に聴かれ、
アコースティカルな繊細さとともに、しっとりとセンシティブな叙情美をかもしだしている。
メロディアス度・・8 薄暗度・・8 ポーラン度・・8 総合・・8
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BELIEVE 「Live at the 1st Oskar Art Rock Festival 2006」
ポーランドのシンフォニックロックバンド、ビリーヴのライブ作品。2009年作
SATELLITEとともに薄暗系ポリッシュシンフォを代表するバンド、2006年のポーランドでのライブを収録。
Mirek.Gilのメロウなギターワークと、マイルドなヴォーカル、派手すぎないシンセアレンジとともに、
いかにもポーランドらしい繊細にして叙情的なサウンドを、ライブにおいてもじっくりと描いてゆく。
日本人女性ヴァイオリニスト、Satomiの奏でる優雅な旋律も素晴らしい。12分を超えるラストの大曲まで
安定した演奏力と、優美な叙情に包まれたライブサウンドが楽しめる。
ドラマティック度・・8 ライブ演奏・・8 叙情度・・9 総合・・8
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BELIEVEWorld Is Round」
ポーランドのシンフォニックロックバンド、ビリーヴの2010年作
ギターのMirek.Gilを中心に、日本人女性ヴァイオリニストを含む6人組。
4作目となる本作も、薄暗い叙情でしっとりと聴かせるシンフォニックロックで、
うっすらとしたシンセに、マイルドなヴォーカル、メロウなもの悲しさの中をヴァイオリンが鳴り響く。
一方では、曲によってはRiversideあたりにも通じるモダンなヘヴィさもあったり、
意外にメリハリのある作品に仕上がっている。どこをとってもやはりポーランドの音である。マイスペ
メロウ度・・8 薄暗度・・8 ポーラン度・・8 総合・・8
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BELIEVEWarmest Sun in Winter
ポーランドのシンフォニックロックバンド、ビリーヴの2013年作
ギターのMirek.Gilを中心にしたバンドの5作目。日本人女性ヴァイオリニストは脱退しゲスト扱いとなっているが、
叙情豊かな薄暗系シンフォサウンドは、よりメロウなギターを前に出したことで、むしろさらに美しくなっている。
こうなるとマイルドなヴォーカルもいよいよ楽曲にマッチし、泣き泣きの繊細系ポストプログレ風味も出て来て
SYLVANのようなじつに美しい耳心地である。うるさすぎないやわらかなシンセアレンジもなにげに絶妙だ。
Satomi嬢が参加した絶品の叙情曲や、10分を超えるラストの大曲も素晴らしい。ここにきて最高作かも。
メロウ度・・8 繊細度・・9 叙情度・・9 総合・・8 
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BENKO LASZLO「 IKAROSZ / Icarus」
ハンガリーを代表するバンド、OMEGAのメンバーとして活躍するシンセ奏者のソロ。1990年作
ギリシャ神話のイカルスをテーマにした作品で、打ち込みのリズムの上にシンセの多重録音を乗せた
プログレというよりはむしろ、80年代のゲームュージック的な聴き心地のインストサウンド。
メロディ自体はキャッチーなので普通にBGMとして聴き流せ、エレクトロなシンセものでありつつ
ときおりギターが入ってくると、GANDALFのようなファンタジックなしっとり系作品としても楽しめる。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 キーボー度・・7 総合・・7
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Bijero Dagme 「Kad Bi Bio Bijelo Dugme」
旧ユーゴスラビアのロックバンド、ビエロ・ドゥグメの1974年作
オルガンが鳴り響き、ブルージーなギターが重なってゆく、70年代英国ハードロックの感触を
いくぶんプログレ風味にしたというサウンドで、母国語によるヴォーカルの歌いまわしが、
辺境ロック好きの心をくすぐります。のっけから10分を超える大曲というのも気合が入っている。
大人の渋みを感じさせるブルージーなナンバーや、ポップなヴギウギナンバーなども、ヴォーカルの暑苦しさが
ほどよい辺境感をかもしだしていてなかなか楽しい。演奏も歌もレベルが高いので、旧ユーゴのロック入門にもよいのでは。
メロディック度・・7 プログレ度・・6 辺境度・・8 総合・・7.5
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CAREN COLTRANE CRUSADE 「Potwor」
ポーランドのプログレバンド、カレン・コルトレーン・クルセイドの2019年作
2015年にデビューし、2作目となる。うっすらとしたシンセにコケティッシュな女性ヴォーカルの歌声を乗せ、
翳りを帯びた浮遊感に包まれたサウンドを描く。わりとキャッチーなノリのナンバーでも
耽美でメランコリックな空気に包まれていて、ポストプログレ寄りのアンビエントなところや、
トランペットが鳴り響く哀愁の雰囲気もある。紅一点、Marzena嬢の表現力ある歌声が
サウンドに妖しい倦怠を加えていて、ケイト・ブッシュ系の世界観が好きな方にもお薦め。
ドラマティック度・・6 プログレ度・・7 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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CIRYAM「Szepty Dusz」
ポーランドのハードプログレバンド、シリアムの2004年作
艶やかなヴァイオリンの音色とシンフォニックなシンセ、そして母国語の女性ヴォーカルで聴かせる。
楽曲には、いくぶん唐突な展開力とともに、いかにも辺境的なマイナーバンドの味わいがある。
適度にハードなギターが入ると、メタリックな質感でゴシックとProgMetalの中間という感じにもなる。
同郷のゴシックメタルバンド、MOONLIGHTをプログレ寄りにした感じか。ポリッシュ好きには楽しめる。
シンフォニック度・・7 ポーラン度・・8 女性Vo度・・7 総合・・7.5

CIRYAM「W sercu kamienia」
ポーランドのハードプログレバンド、シリアムの2006作
ツインギターに女性Voを含む6人組で、メタリックなギターと美しいシンセワーク
そして母国語の女性ヴォーカルの歌声で、ハードなシンフォニックロックを聴かせる。
きらびやかな作風は全体的に嫌いではないが、耳を引くようなメロディにはやや乏しく、
今後は楽曲アレンジの面での個性やクオリティをもっと上げていってもらいたい。
シンフォニック度・・7 プログレ度・・7 女性Vo度・・7 総合・・7.5
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Ciryam 「Czlowiek Motyl」
ポーランドのプログレバンド、シリアムの2008年作
ツインギターに女性Voを含む6人組で、前作もメタリックな感触のあるハード・シンフォニックロックだったが、
本作もハードなギターワークに美しいシンセと母国語の女性ヴォーカルの歌声で聴かせるサウンド。
ゴシックメタル的な翳りを含んだ叙情性は悪くないのだが、相変わらずメロディのフックや楽曲の魅力が足りず、
どうにも煮え切らない印象だ。メタルでゆくのかシンフォでゆくのか、もう少しはっきりさせた方がよいかと。
シンフォニック度・・7 プログレ度・・7 女性Vo度・・7 総合・・7
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COLLAGE 「Basnie」
ポーランドのシンフォニックロックバンド、コラージュの1st。1990年作
まずこのファンタジックなジャケに惹かれるが、サウンドの方は80年代ポンプロックからの流れを感じさせる、
Genesisルーツのシンフォニックロック。美しいシンセアレンジにポーランド語のヴォーカル、メロウなギターフレーズは
すでになかなか魅力的で、このしっとりとした叙情性は次作にもつながるものだ。傑作となる2nd「Moonshine」に比べると、
まだいくぶん辺境的なマイナー臭さを残してはいるが、ポリッシュシンフォらしい幻想的な聴き心地の好作品である。
シンフォニック度・・8 薄暗度・・7 叙情度・・8 総合・・7.5
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COLLAGE「Moonshine」
ポーランドのシンフォニックロックバンド、コラージュの2nd。1994年作
ベクシンスキーによるジャケも美しい傑作。 のちのSATELLITEの前身でもあるバンドで、
東欧的な冷たく荘厳なシンセをバックにした重厚な雰囲気の中に、翳りを含んだメロウな叙情サウンドは、
今でいう薄暗系シンフォに通じるもので、マイルドなヴォーカルの歌声が繊細な耳心地となって、
美しくも物悲しい世界観を描いてゆく。Mirek.Gilの奏でるやわらかなギタートーンは東欧のハケットというべきか。
90年代後半以降のモダン派シンフォの先駆けともいえる。湿りけのある叙情に浸れる一枚である。
シンフォニック度・・9 メロディアス度・・8 薄暗度・・9 総合・・8.5<プログレ名盤入り>
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COLLAGE「SAFE」
ポーランドのシンフォニックロックバンド、コラージュの3rd。1995年作
前作にくらべると全体的にキャッチーさが増しており、むしろ爽やか系のシンフォサウンドになっているが、
聴き直してみると、その細かく作り込まれた楽曲の繊細さと録音の良さに改めて感心する。
歌詞は英語なので、東欧という地域性をあまり意識せずに聴け、メロディアスさと優しい質感に包まれたサウンドは、
Yes + Genesisという質感でシンフォニック系を愛好するリスナーならばとても楽しめるだろう。
バンドはこのアルバムを最後に解散することになるわけだが、このメロウな叙情はSATELLITEへと受け継がれる。
シンフォニック度・・8 メロディアス度・・8 繊細度・・8 総合・・8
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COLLAGE「CHANGES」
ポーランドのシンフォニックロックバンド、コラージュの未発表曲集。2003作
ポーランドのみならず東欧を代表するシンフォニックロックバンドである彼らだが、
クオリティの高い3枚のアルバムを残して解散。メンバーはその後SATELLITEを結成する。
これは彼らが1985~992年の間に残した未発表音源をまとめたもので、2nd、3rdの完成度にはおよばないものの
「これぞシンフォニック」という美麗なキーボードに、ほのかに翳りを感じさせる雰囲気はやはり彼らならではのもので、
未発曲とは思えない叙情美が楽しめる。リマスター盤にはボーナス2曲に、ビデオクリップが2曲追加されている。
シンフォニック度・・8 メロディアス度・・8 楽曲・・7 総合・・7.5
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COLLAGE「LIVING IN THE MOONLIGHT」
ポーランドのシンフォニックロックバンド、コラージュのライブDVD。
かつて90年代に高品質な3枚のアルバムを残して解散、その後ギターのGILを中心に、SATELITEという新バンドを結成しているが、
こちらCOLLAGEはその原点ともいえるバンド。1996年のライブステージを収録したもので、名作2nd「MOONSHINE」からの楽曲を中心に、
しっとりとした叙情溢れるシンフォニックかつロマンティックな演奏が堪能出来る。5人編成でメロディを奏でるのはギター1本にキーボードだけなのだが、
盛り上がり時の音のブ厚さはただごとでなく、「これぞシンフォニック!」という、泣きの叙情には、この手の音楽が好きなら感銘をうけるだろうこと請け合い。
かなり手数の多いドラムのテクニックにも感心するし、熱の入った演奏ぶりにはプログレでありながらもどこかゴシックメタル的な色合いもある。
メロディのセンスも抜群で、ARENAPENDRAGONなどが好きな方には一見の価値あり。90年代シンフォの傑作「MOONSHINE」ともども、
ポリッシュシンフォの泣きを味わって欲しい。ボーナスとして、ビデオクリップや1995年ライブのブート映像などを収録。
シンフォニック度・・9 ライブ映像・・7 ライブ演奏・・8 総合・・8
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Collegium Musicum 「Collegium Musicum/Konvergencie」
旧チェコのプログレバンド、コレギウム・ムジカムの1970/1971年作
レコード時代の1970年のデビューシングルに、1970年、1971年のアルバムをカツプリングした2CD仕様。
バッハの楽曲をロック解釈したシングルの1曲は、オルガンが鳴り響きNICEやTRACEに通じる優雅な聴き心地。
1stアルバムは、13分前後の大曲が3曲という構成で、ジャジーな感触と、インプロ的な演奏も含んで、
ライブでのEL&Pを思い出すような荒々しさも魅力的だ。オーケストラアレンジを加えたクラシカルな大曲も素晴らしい。
2ndは、17~22分の大曲4曲という構成で、オルガン入りのクラシカルロックを基本に、少女合唱団の美しいコーラスが入ったり、
かと思えばいきなりダークなチェンバーロック風になったりと、なかなか混沌としたアレンジで、ひとすじ縄ではいかない。
当時の東欧クラシカルロックの強烈な息吹が感じ取れるという点で、辺境プログレ入門にもお薦めしたい逸品ですね。
クラシカル度・・8 プログレ度・・8 東欧度・・9 総合・・8
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Collegium Musicum 「Live」
旧チェコのプログレバンド、コレギウム・ムジカムの1973年作
鍵盤、ベース、ドラムというトリオ編成でのライブを収録した作品で、オルガンを主体にした、
EL&Pスタイルの躍動的な鍵盤ロックが炸裂している。クラシックのフレーズを随所に取り入れた作風は
やはりTRACEに通じる感触で、うねりのあるベースとタイトなドラムとともに、濃密な演奏でたたみかける。
NICEやEL&Pなどに比べると、より即興的でアヴァンギャルドなセンスが随処に感じられて、
バロック的なクラシカル性をここまで崩して表現した、当時の東欧ロックシーンの懐の深さが知れる。
クラシカル度・・8ライブ演奏・・8 オルガン度・・8 総合・・7.5
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COLLEGIUM MUSICUM「CONTINUO」
旧チェコを代表するプログレバンド、コレギウム・ムジカムの1978年作
初期のようなEL6&PNICE的なクラシカルなオルガンロック要素は薄まり、
冒頭のきらびやかなキーボードにこそ耳を惹きつけられるが
その後は、ときおりメロディアスなフレーズを奏でるジャジーなギターと少々癖のあるヴォーカルが
バックのシンセとともに比較的ゆるやかな展開で、16分の大曲を形成してゆきます。
クラシカルなピアノなどは美しくて良いですが、正直、曲の構成や展開は大雑把な感じで、
5分の曲をはさんで、またもや16分の大曲で終わり、というのもやや大味感が残りますな。
クラシカル度・・7 プログレ度・・7 東欧度・・8 総合・・7
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Collegium Musicum 「Divergencie」
チェコのプログレバンド、コレギウム・ムジカムの1981年作
東欧のキース・エマーソンとも言われる、Marian Varga率いる旧チェコスロバキアを代表するバンド、
本作は通算7作目でラスト作となる。ジャズロック的な軽やかなアンサンブルに、EL&Pを思わせるシンセワーク、
クラシカルで優雅なピアノや、ジャジーなホーンセクションなども取り入れた、軽妙なサウンドを聴かせる。
一方ではチェンバーロック的なアヴァンギャルド性や、やわらかな歌もの曲、1~2分の小曲なども多く、
案外バラエティ豊かな内容となっている。Disc2では、オーケストラルなアレンジも含んだ壮大さで、
ときにArt Zoydばりのシリアスなサウンドが楽しめる。全体的な統一感には欠けるが、いかにも東欧らしい作品だ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 東欧度・・8 総合・・7.5
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The COSMIC REMEDY
ハンガリーのYESTERDAYSと、フィンランドのSAMURAI OF PROGのメンバーによるユニット、コズミック・レメディの2013年作
いかにもプログレらしいシンセワークと、やわらかなフルートの音色にメロウなギター、
Genesisルーツの繊細な叙情性も覗かせる、正統的なシンフォニック・プログレサウンド。
キャッチーで軽妙なアンサンブルはYes的でもあるが、アコースティカルな優しい感触もあって、
全体的にも素朴でやわらかな耳心地。後半には、女性ヴォーカルの歌声も入ってきて、
Yesterdaysを思わせる楽曲もあり、個人的には全編その路線にしてもらいたかった気もする。
シンフォニックな派手さよりも、ゆったりとした叙情が楽しめる好作品です。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 繊細度・・8 総合・・8
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CTHULHU RISE「42」
ウクライナのアヴァン・プログレ、クトゥルー・ライズの2012年作
バンド名のように、クトゥルー神話をテーマにしているようだが、サウンドはエレピを主体にした美しいシンセに
ややメタル寄りのギターを乗せ、アヴァンギャルドなテクニカル性と優雅なフュージョン色が合わさったというもの。
オールインストながら、切り返しやリズムチェンジの多さと、コロコロとした軽やかな質感があって、
メタリックなチェンバー・ジャズロック的にも楽しめる。重すぎない音質も、硬質過ぎずにかえって聴きやすい。
程よくテクニカルでヘンタイでありつつ、軽妙なユーモアと遊び心を感じさせる、どこか繊細なセンスも含んでいて、
楽曲も3~5分台と長すぎず、アヴァンギャルドな作品が苦手な方でもわりと楽しめるかもしれない。
本作には曲名というものがなく、それぞれ番号がふられた小曲「24~32」を収録というのも無機質で面白い。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・8 アヴァンギャル度・・8 総合・・8
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CUPRUM 「Brahma Visnu Siva」
チェコのプログレバンド、カプラムの2014年作
2011年にデビューし、本作が2作目となる。フルートが鳴り響きブルージーなギターに、
母国語のヴォーカルを乗せた、Jethro Tullなどに通じる牧歌的なサウンドを聴かせる。
オルガンやメロトロンを含むヴィンテージなシンセと、いかにも70年代風のツインギターの旋律、
そしてやわらかなフルートの音色で、ときにFOCUSのような雰囲気もあったりして、
耳心地よくのんびりと楽しめる。全38分というのもアナログ時代のようで、
ジャケは派手なのに、内容はいい意味で地味というギャップも面白い。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 ヴィンテージ度・・9 総合・・7.5
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CZIGLAN ISTVAN「ALHAMBRA KAPUI - SEVEN GATES OF ALHAMBRA」
ハンガリーのミュージシャン、シジグラン・イストバンの1999年作
1999年に死去したSOLARISのギタリストの遺作で、本人の死去の後、他のメンバーたちの手によって完成された。
サウンドは美しいシンセやフルート、女性スキャットなどによるサウンドで、SOLARISほどのロック性はないが、
神秘的な静謐感に包まれつつ、泣きのギターがかぶさるととたんにシンフォニックロックとしての煽情度が増す。
楽曲としてのまとまりに欠けるのは本人が逝ってしまったので仕方はないが、雰囲気もののシンフォとして聴くには充分鑑賞に耐えられる。
シンフォニック度・・8 ソラリス度・・7 遺作度・・9 総合・・8
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DEVIL DOLL「The Girl Who Was...Death」
スロヴェニア出身のシアトリカル・ゴシックバンド、デヴィル・ドールの1st。1989年作
謎の鬼才、Mr.Doctorによる、誇大妄想的なホラーがかったオペラティックロックを体現するプロジェクト、
このデビュー作は、「死せる少女に捧ぐ」というタイトルとインパクトのあるジャケも強烈だが、
闇の気配とクラシカルな美学、そして狂気を封じ込めた、40分におよぶ全1曲の長大な作品で、
美しいシンセにオーケストラルなアレンジ、厳かな混声合唱、そしてしわがれ声からヒステリックな高音まで
巧みに使い分けるヴォーカルのインパクトたるや強烈きわまりない。一方では、ロック的なドラムにギターが入ってくると、
濃厚なハードシンフォという聴き心地で、クラシカルなパートとの極端なギャップが楽曲にメリハリと緊張感を与えている。
壮大なスケール感と優雅な暗黒性に包まれた、まさに驚異の怪作である。
クラシカル度・・8 暗黒オペラ度・・9 シアトリカル度・・10 総合・・9
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DEVIL DOLL「Eliogabalus」
スロヴェニア出身のシアトリカル・ゴシックバンド、デヴィル・ドールの2nd。1990年作
謎の鬼才、Mr.Doctorによる、誇大妄想的な暗黒オペラティックロックを体現するプロジェクト、
2作目となる本作は、20分、24分という大曲2曲による構成だが、全1曲だった1st「死せる少女に捧ぐ」に比べると
まだずいぶん聴きやすい。艶やかなストリングスの音色に、Mr.Doctorkのかすれたしわがれ声が陰々と響き、
美しいピアノの調べをはさみつつ、ときに物語るように、ときに絶望を吐露するような歌声に引き込まれる。
完成度としては次作「Sacrilegium」が最高だろうが、楽曲としての鑑賞しやすさでは本作をどうぞ。
クラシカル度・・8 暗黒オペラ度・・9 シアトリカル度・・10 総合・・8.5
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DEVIL DOLL「Sacrilegium」
スロヴェニア出身のシアトリカル・ゴシックバンド、デヴィル・ドールの3rd。1992年作
最高傑作ともいうべき暗黒の異色作。とにかく、本作「宗教冒涜」を最初に聴いたときの衝撃というのは大変なものだった。
鬼才Mr.Doctorの描き出す豊穣な闇と美しき狂気…一歩踏み込んだら二度とは抜け出せないような
妖しく耽美なその世界。荘厳なチャーチオルガンと混声コーラスで幕を開け、もの悲しいピアノをバックに
老婆のようなしわがれ声から甲高い絶叫まで声を使い分けるヴォーカルが暗闇のオペラを語り上げてゆく。
クラシカルな優雅さとゴシックホラー的な漆黒の芸術性が合わさった異常ともいうべき全1曲の長大な構成。
もはや演劇か映画か、ともいうべき濃密なドラマ性を有したその音に、衝撃を受けないものはいまい。
アヴァンギャルドな感性を解するものであるほど、この前代未聞の音楽芸術に引き込まれるはずだ。
クラシカル度・・8 暗黒オペラ度・・9 シアトリカル度・・10 総合・・9
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DEVIL DOLL「The sacrilege of fatal arms」
スロヴェニア出身のシアトリカル・ゴシックユニット、デヴィルドールの1994年作
正規アルバムとしては4枚出しているが、そのどれもがダークで演劇的な妖しい暗闇を感じさせる怪作である。
本作は3rd「SACRILEGIUM」の元となった映画サントラ作品として作られ、かつては限定900枚プレスの希少盤だった。
日本でたとえるならこれはもう、JAシーザー、天上桟敷か…といったぐあいの濃密なシアトリカル性であるが、
一方のギター、ドラムなどにはいくぶんメタル色もあり、その点でクラシカルなゴシックメタルとしても楽しめる。
高音カナきり声から恐ろしげな囁き、しわがれ声までを巧みに使い分けるMr.Doctorの歌声は一聴の価値あり。
壮大な混声コーラス、そしてオペラティックな展開で濃密に描かれる、ブラックメタルも真っ青な暗黒の世界に浸りましょう。
なお、本作には3種類のジャケがある(日本盤の2008年再発盤は右のジャケ)。詳しくはこのページを参照。
クラシカル度・・9 暗黒度・・9 シアトリカル度・・10 総合・・9
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DEVIL DOLL「DIES IRAE」
スロベニアの暗黒プログレバンド、デヴィル・ドールの4th。1995年作
鬼才Mr.Doctorによる、誇大妄想的な暗黒オペラティックロックバンド。4枚+1の作品はどれもが濃密な闇と、
アヴァンギャルドかつ芸術的な傑作である。圧倒的な迫力においては、3rd「宗教冒涜」が一番だろうが
楽曲としての完成度の高さではおそらく本作「怒りの日」だろう。16パートに分かれたこの長大な楽曲は、
優美で荘厳なオーケストレーションと、オペラティックな女性スキャットから始まり
しわがれ声と高音を使い分ける、Mr.Doctorのヴォーカルを中心に、シアトリカルに展開してゆく。
つまびかれるピアノすらも不穏な気配を感じさせ、優雅なクラシカルさを深い暗黒の舞台において
緊張感をもたせた演劇性とともに存在させている。このセンスと世界観は誰にも真似ができない。
まさに驚異の怪作だ。火災により一度はマスターテープが焼けてしまったという、いわくつきの本作は、
これからもカルトな音楽ファンを魅了し続けることだろう。2008年リマスター盤は変形ジャケを再現。
クラシカル度・・9 暗黒オペラ度・・9 シアトリカル度・・10 総合・・9
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Djabe and Steve Hackett 「Life Is A Journey - The Budapest Live Tapes」
ハンガリーのエスノ・フュージョンバンド、ジャベとスティーブ・ハケットがコラボしたライブ作品。2018年作
2017年のハンガリーのステージをCD+DVDに収録。アコースティックギターにシンセを重ね、トランペットも鳴り響き、
軽やかなドラムとスラップの効いたベースとともに、インストをメインにした優雅なフュージョンロックを聴かせる。
ジャズタッチのエレピからプログレ寄りのオルガンまで、シンセワークもセンス良く、アンサンブルも含めてさすがの演奏力。
ハケットの登場は30分過ぎたあたりから。「Los Endos」、「Firth of Fifth」など、Genesisからのナンバーも披露。
これぞハケット節というメロウなギターの旋律に、トランペットが重なるという、なかなか新鮮な味わいで楽しめる。
全体的には、優雅なフュージョンロックという趣ながら、随所にプログレ感触もあるので、耳心地よく鑑賞できます。
ライブ演奏・8 プログレ度・7 優雅度・9 総合・8 
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DRACULA KOMPLET
チェコのホラー・ミュージカルオペラ、「ドラキュラ」のサントラアルバム。1997年作
劇の内容についてはよく知らないが、ブックレットの写真などを見ると、
ドラキュラを題材にした異世界風のファンタジックなミュージカルといった雰囲気だ。
音楽の方が凄い。クラシックを基盤にしながら、壮麗なオーケストレイションやたおやかなピアノ、
そこに巻き舌の演劇的なヴォーカルが加わると、まるでDEVIL DOLLを思わせる世界観になる。
J.Aシーザー(天井桟敷)ばりの混声合唱隊に、オペラティックに歌い上げる男性ヴォーカル、
そしてヒロイン役だろう、美しい女性ヴォーカルの歌声もサウンドに華を添える。
CD2枚、計2時間にわたって繰り広げられるこのカルトなドラマティック・オペラミュージックは、
単なるサントラの枠を超えて、シアトリカルロック好きの胸を打つだけの強度がある。
クラシカル度・・8 耽美度・・9 シアトリカル度・・10 総合・・8
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EAST 「Huseg」
ハンガリーのプログレバンド、イーストの1982年作/邦題は「フェイス」
本作は2作目で、軽やかなリズムにメロウなギターと美しいシンセを乗せた優雅なアンサンブルで、
同郷のSOLARISに比べると、やわらかな叙情性が前に出たシンフォニックロックが楽しめる。
マイルドな母国語のヴォーカルも味わいがあるが、それ以上に、インストパートの確かな演奏力は
東欧的なマイナー臭さはほとんど感じられない。まさに「東欧のCAMEL」というような好作品だ。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 優雅度・・8 総合・・8
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EAST 「Live - Ket Arc」
ハンガリーのプログレバンド、イーストのライブ。1995年作
1981年にデビュー、1st「Jatekok/蒼い楽園」、2nd「Huseg/フェイス」は、SOLARISの「火星年代記」とともに、
80年代東欧プログレの傑作として名高いが、本作は、1994年ブダペストでのステージを収録。
1988年作「A Szerelem Sivataga」、1992年作「 Taking The Wheel」、1994年作「Radio Babel」あたりからのナンバーを主体に、
優美なシンセに母国語によるヴォーカル、女性コーラスを加えた、キャッチーなハードプログレを聴かせる。
ほどよくモダンでポップな匂いもありつつ、その確かな演奏力はさすが東欧屈指のバンドである。
後半には、初期作からのナンバーも披露。シンフォニックなシンセワークとともに優雅な演奏で、
ラストは2ndからの「Varni Kell」で、泣きの叙情ギターにウットリ。東欧らしい涼やかな味わいの好ライブです。
ライブ演奏・・8 プログレ度・・7 優雅度・・8 総合・・8 
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Edwin Durant Kovtun (COLIN EDWIN/JON DURANT/INNA KOVTUN)
Porcupine Treeのベース、コリン・エドウィン、アメリカのギタリスト、ジョン・デュラント、
ウクライナの女性シンガー、インナ・コヴトゥンによるユニット。2019年作
打ち込みによるドラムに叙情的なギター、エモーショナルな女性ヴォーカルを乗せた、無国籍感漂うサウンドで、
母国語の歌声によるトラッド寄りの土着的な哀愁とロックの質感とが、ほどよくミックスされた作風。
コリン・エドウィンのベースは目立ちすぎず、あくまで歌声を支えているという印象で、
派手なインパクトはないが、スタイリッシュな女性声トラッドロックが味わえる異色作だ。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 女性Vo度・8 総合・7.5
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Eduard ARTEMIEV「Warmth of Earth」
旧ソ連の音楽家、エデュアルド・アルテミエフの1984年作
アルテミエフの代表作にして、80年代東欧シンフォニックの名作。音を聴いて血涌き肉踊るとはまさにこのこと。
なにやらただ事でない雰囲気のSEから、曲が始まるや、疾走するリズムに炸裂する怒濤のシンセ。
静寂パートに響く美しい女性ヴォーカル…そして、泣きの大叙情。クラシカルな硬質感と
オペラティックな壮大さが合わさり、ときにまるで映画音楽のようにドラマティックな音像になる、
かと思えば、プログレ的なシンセとギターが躍動感溢れるロックのダイナミズムを構築する。
アルテミエフ本人は作曲のみで演奏はしていないということだが、そうした指揮者と演奏者を分けた
いわばクラシック的な方法論から生まれた異色の作品とも言えるだろう。ともかく、壮大かつ緻密に作られた
東欧のシンフォニックロック史上に残る大傑作だ。紙ジャケリマスター盤にはオリジナルLPヴァージョンを4曲追加収録!
シンフォニック度・・9 プログレ度・・8 壮大度・・10 総合・・9 ◆プログレ名作選入り
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EDWARD ARTEMIEV「THREE ODES」
旧ソ連を代表する作曲家、エデュアルド・アルテミエフのアルバム。
1984年作「WARMTH OF EARTH」は、そのダイナミズムに溢れた一大シンフォニックサウンドが衝撃的だったが、
これはそれ以前の音源をリマスターしたもので、モスクワオリンピックに使用された楽曲を含む。
独自に開発されたキーボード群をゴージャスに弾き鳴らし、オペラチックな男女Voや壮大な混声合唱などが楽曲を盛り上げる。
プログレ、というよりは壮大系サントラやロックオペラのようなノリで、そのサウンドは、大宇宙に向かって叫びだすがごとく、
アドレナリン全開で「もう行き着くところまで行ってやるゼ!」という、ヤバいぐらいの迫力とカケール感である。
じっさいこれらの曲がオリンピックの舞台で大音声で流れたら、そして私がその場にいたとしたら・・・
おそらくは大団円の感動にむせび滂沱たる涙を流しながら夕日に向かって走り出したに違いない。
ジャケが地味すぎるのが残念だが、大仰系シンフォプログレが好きなら、なんとしてでも手に入れていただきたい。
シンフォニック度・・9 壮大度・・10 大仰度・・10 総合・・8.5 ◆プログレ名作選入り
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EDWARD ARTEMYEV「SOLARIS,THE MIRROR,STALKER」
エドワルド・アルテミエフの手による、ロシアの巨匠タルコフスキーの映画
「惑星ソラリス」「鏡」「ストーカー」のサントラの編集アルバム。
アルテミエフといえば、プログレ方面からの評価も高い音楽家であるので、
このサントラ作もプログレッシブなキーボードミュージックとして聴ける。
サントラということで当然インストで、シンセのみの涼やかなサウンドだか
その冷徹にして独特の世界を感じさせる質感は彼ならではのもの。
まったくのところロックではないが、シンセ音楽が好きならじっくり聴き入ることができる。
シンフォニック度・・7 プログレ度・・5 冷やかシンセ度・・9 総合・・7
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EDUARD ARTEMIEV(EDWARD ARTEMIEV) 「ODYSSEY」
ロシアの音楽家、エドゥアルド・アルテミエフの1998年作
フランシス・コッポラ監督、ホメロスの叙事詩を映画化した「オデュッセイア」のサウンドトラック。
美しいシンセの重ねに、壮麗なオーケストラアレンジや民俗的なメロディを含ませたシンフォニックな作風で、
戦いを描くような勇壮な曲調から、クラシカルで優美な曲調まで、場面ごとのビジョンをイメージさせる、
壮大なスケール感のあるサウンドが楽しめる。女性スキャットの入った妖艶なナンバーや、
Tangerine Dreamのようなスペイシーなシンセ曲など、プログレ的な要素もそこそこあって、
単なるサントラという以上に魅力的なサウンドである。アルテミエフのファンはぜひチェックすべし。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 壮大度・・9 総合・・8 
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EDWARD ARTEMIEV 「A Book Of Impressions」
ロシア最高の作曲家、エデュアルド・アルテミエフの2000作
自身のキャリアにおける1975~1996年の楽曲をリミックスしたもので、
歴史的大傑作「Warmth of Earth」のような、プログレとしてのロック性は薄く、
シンフォニックかつスペイシーなシンセミュージックになっている。
いわゆるベスト盤的な寄せ集め感はなく、東欧らしい冷徹さとミステリアスな質感に
彩られたサウンドは、SVEN GRUNBERGにも通じるような空間美を感じさせる。
シンフォニック度・・8 ロック度・・1 スペイシー度・・9 総合・・7.5
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ELECTRA「Die Sixtinische Madonna」
東ドイツのプログレバンド、エレクトラの4th。1980作
このバンドについては詳しくないのだが、これはライブ録音でのアルバム。
美しいピアノや、合唱入りのシンフォニックロックで、1曲めから25分の大曲だ。
ジャケの絵などからキリスト、とりわけ聖母マリアをモチーフとした組曲らしい。
東欧らしいクラシカルなメロディに、合唱隊の荘厳さが加わり、
ある種崇高なサウンドになっていて、ドイツ語によるVoの歌唱も叙情的で、
西欧圏のバンドにはないシアトリカルで格調ある雰囲気になっている。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 荘厳度・・8 総合・・7.5


ETERNAL WANDERERS 「THE MYSTERY OF THE COSMIC SORROW」
ロシアのプログレバンド、エターナル・ワンダラーズの2016年作
2008年作にデビューし3作目となる。ほどよくハードで叙情的なギターにシンセを重ね、
緩急ある展開とともに、ドラマ性のあるスタイリッシュなハード・シンフォプログレを構築する。
インストによる序盤から、3曲目からは女性ヴォーカルも加わって、しっとりとしたパートも覗かせつつ、
MAGENTAなどにも通じる軽妙なアンサンブルで、優雅でキャッチーなサウンドが楽しめる。
8~10の大曲を主体にも、Disc2では、23分という組曲もあって、オーケストラルなアレンジに
メロウなギターの旋律も加えて、THE ENIDにも通じる壮麗なシンフォニックロックを構築する。
SFサイバー的なモダンな雰囲気も漂わせる、2CDで合計90分の優雅なシンフォプログレの力作です。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 優雅度・8 総合・8
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EXODUS「the most beautiful day」
ポーランドのシンフォニックロック、エクソダスの1980作
80年代ポーランド最高のシンフォ系作品としてマニアの間では評価が高いアルバム。
基本はYESタイプで、この頃の東欧バンドにしてはかなりメロディアスな部類といえる。
マイルドな男性ヴォーカルの母国語による歌唱と、抜けのいいキーボードメロディが印象的で
キャッチーでなかなか耳心地がよい。そんな中にもどこかに辺境的なミステリアスな匂いが感じ取れ、
その野暮ったさがブリティッシュロックファンからすると敬遠される部分かもしれないのだが。
反対に、辺境シンフォ好きであれば押さえておきたい一枚といえるだろう。
メロディアス度・・8 プログレ度・・8 辺境度・・8 総合・・8
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EXODUS 「Supernova」
ポーランドのプログレバンド、エクソダス1982年作
1作目の「The Most Beautiful Day」はポリッシュ・プログレの傑作とされているが、2作目の本作は、美麗なイントロから、
ほどよくハードなギターが加わり、東欧らしい涼やかな空気感に包まれたシンフォプログレを展開する。
母国語によるヴォーカルが加わると、YESのようなキャッチーな味わいとともに、優美なシンセアレンジと
叙情的なギターを乗せた軽やかなアンサンブルで、1stに負けないきらびやかなサウンドが楽しめる。
しっとりと聴かせる繊細な味わいの小曲や、わりとオールドロック風のナンバーもありつつ、
透明感のあるシンセが楽曲を彩っていて、中性的な歌声も含め、優美な幻想性も感じさせる。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 優美度・8 総合・8
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Exodus 「Hazard」
ポーランドのプログレバンド、エクソダスの1983/2008年作
当時未発表に終わった幻の3作目とされる作品のCD化。東欧版Yesというような作風だった1stに比べ、
本作では、けっこうハードなギターが前に出ながら、80年代東欧らしい硬質なシンセワークとともに、
ミステリアスな壮大さを感じさせる仕上がりになっている。アコースティカルな叙情も含みつつ、
メリハリのある展開と辺境らしい荒削り感が、英米のバンドにはない魅力になっている。
母国語によるシアトリカルな感じのヴォーカルが入ると、とたんに濃密な聴き心地になる。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 東欧度・・8 総合・・7.5
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Five-Storey Ensemble 「Not That City」
ベラルーシのプログレバンド、ファイヴ・ストレイ・アンサンブルの2013年作
解散したRATIONAL DIETのメンバーにより結成されたバンドで、その女性鍵盤奏者を中心に、
クラシカルなピアノに艶やかなヴァイオリン、オーボエやフルートの音色がやわらかに絡む、
優雅なチェンバーロックサウンド。やがて、スリリングな重厚さをかもしだすバスーンが響き、
いくぶんダークな色合いを帯びながら、鈍色の東欧の空気を描くような聴き心地になる。
牧歌的なアコーディオンにオーボエ、バスーンという取り合わせも面白く、哀愁の叙情を深みある音で
表現するようなセンスが素晴らしい。ときに男女ヴォーカルの母国語の歌声も加わった繊細な美しさが、
作品としての優美な気品を付加している。クラシカルな優雅さに包まれたチェンバーロックの傑作。
チェンバー度・・9 プログレ度・・8 優雅度・・9 総合・・8.5
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FIVE-STOREY ENSEMBLE 「Night En Face」
ベラルーシのプログレバンド、ファイヴ・ストレイ・アンサンブルの2017年作
解散したRATIONAL DIETのメンバーにより結成されたバンドで、前作は素晴らしい傑作であったが、
2作目となる本作は、繊細なピアノのつまびきから始まり、ヴァイオリン、チェロというストリングスが絡み、
優雅な美しさの中にも不穏な緊張感を覗かせる。そこにバスーンやオーボエの音色が加わり、
重いベースの響きとともに、UNIVERS ZEROルーツのダークなチェンバーロックが広がってゆく。
クラシカルなピアノの旋律に、サックスやクラリネットなどが不協和音的に重なるスリリングな空気感。
ギターやドラムがないのでロック的な部分はほとんどないが、アコースティック主体のアンサンブルで
ここまでの音の強度を描けるのは素晴らしい。まさにチェンバーロックの魅力が凝縮された傑作だ。
クラシカル度・・9 チェンバー度・・9 優雅でスリリング度・・9 総合・・8.5
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FLЁUR「Prikosnovenie」
ウクライナのトラッド・ポップバンド、フルールの1st。2002作
アコースティックギターのゆるやかな響きにたおやかなフルートの音色、
そして美しい女性ヴォーカルの歌声で聴かせる、しっとりとしたサウンド。
ヴォーカルのオルガ嬢の母国語の歌声は、やわらかでありつつ妖しさもただよわせ、
バックのうっすらとしたシンセとフルートとともに、幻想的な世界観を描いている。
ピアノやチェロなどのクラシカルな要素と、土着的なトラッド風味も合わさって
一種エキセントリックな女性声トラッド・ポップという趣もある。
プログレファンにも充分楽しめる奥の深さが素晴らしい。オフィシャルサイトはこちら
シンフォニック度・・8 幻想度・・9 女性Vo度・・9 総合・・8.5
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FLЁUR「Magic」
ウクライナのトラッド・ポップバンド、フルールの2nd。2003作
今作もいくぶんモダンなアレンジの中に、美しいピアノやルートの音色と、
艶やかなヴァイオリンが鳴り、オルガ嬢の絶品の歌声が響きわたる。
トラディショナルな土着性とポップな聴き心地が絶妙のブレンドで、
女性ヴォーカルのコンテンポラリー系としては理想的な作風である。
翳りある落ち着きとコケティッシュな魅力を併せ持った女性声にうっとり。
アコースティックメインの曲ではLOREENA McKENNITTぱりの表現力が素晴らしい。
シンフォニック度・・8 幻想度・・9 女性Vo度・・9 総合・・8.5
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FLЁUR「Siyanie」
ウクライナのトラッド・ポップバンド、フルールの3rd。2004作
クラシカルなピアノやストリングスと、表現力豊かな女性ヴォーカルで聴かせる、
美しいサウンドはそのままに、今作ではバックの演奏はいくぶんシンプルになり、
しっとりとしたたおやかな雰囲気が強まっている。オルガ嬢の艶めいた歌声にも
妖艶な魅力が増していて、チェロやフルート、アコギなどをバックにしたその美声には惚れ惚れだ。
シンフォニック度・・7 幻想度・・8 女性Vo度・・9 総合・・8
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FLЁUR「Все вышло из под контроля
ウクライナのトラッド・ポップバンド、フルールの4th。2006作
美しいピアノと艶やかなヴァイオリン、そして女性ヴォーカルの艶めいた歌声…
クラシカルな優雅さと、ポップな聴きやすさが同居した絶品のアレンジで、
本作もじつに素晴らしいコンテンポラリーサウンドを作り上げている。
初期よりもいくぶん垢抜けて、デジタリィなリズムなども取り入れているが、
母国語による歌唱も含めて、土着的なトラッド要素もしっかりと感じられる。
シンフォニック度・・7 幻想度・・8 女性Vo度・・9 総合・・8
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Fleur 「Trilogy」
ウクライナのクラシカル・ゴシック、フルールの2007年作
1st「Prikosnovenie」、2nd「Magic」、3rd「Siyanie」を収録したCD3枚組。
アコースティックギターにフルートの音色、美しい女性ヴォーカルの歌声を乗せた、
しっとりとした聴き心地で、とくに1作目は、のちの作品に比べて素朴な優しさに包まれている。
2作目も1stの延長上ながら、いくぶんスタイリッシュなアレンジで、艶やかなヴァイオリンを乗せた優雅なクラシカル性とともに
ほのかなポップ性とメランコリックな翳りが融合した、絶品のサウンドを聴かせる。3作目はさらにロック&ポップ色を増しつつ、
クラシカルな美しさと幻想性をしっかり残している。現在は入手困難な3作をまとめて楽しめる、お得な3枚組です。
クラシカル度・・8 優雅度・・9 女性Vo度・・9 総合・・8.5
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Fleur 「Euphoria」
ウクライナのクラシカル・ゴシックポップ、フルールの2008年作
前作はいくぶんデジタルなアレンジも取り入れた作風であったが、5作目となる本作は
やわらかなフルートにピアノ、しっとりとした女性声を乗せた、クラシカルな優雅さに包まれている。
適度にモダンなシンセアレンジを含んだキャッチーなポップ感と、倦怠の翳りを同居させたサウンドは、
よりスタイリッシュな感触になり、ストリングスも含んだ厚みのあるアレンジも素晴らしい。
クラシカル度・・8 優雅でポップ度・・8 女性Vo度・・9 総合・・8
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Fleur 「Almost a'live/Heart」
フルールの2008年作
デビュー前のデモ曲10曲と、ライブ録音11曲からなる2枚組アルバム。
Disc1は2000年にレコーディングされた音源で、アコースティックギターにやわらかなフルートの音色、
母国語によるしっとりとした歌声を乗せた優美なサウンド。クラシカルなピアノにストリングスが絡む、
優雅にして幻想的な聴き心地に、東欧らしいほの暗い翳りも含んでいて、すでにその空気感も完成されている。
Disc2は2001年のライブ音源で、アコギにチェロ、フルート、そして美しい女性声による演奏にうっとりと浸れます。
クラシカル度・・8 優雅な幻想度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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Fleur 「Awakening (Пробуждение)」
ウクライナのゴシック・ポップ、フルールの2012年作
2002年にデビューし、7作目となる。優美なシンセに母国語によるなよやかな女性ヴォーカルを乗せ、
ギターやドラムによる適度なロック感触に、ピアノやストリングスも加わった優雅なサウンドを聴かせる。
東欧らしいアンニュイでメランコリックな翳りに包まれながら、美しい女性声のしっとりとした耳心地の良さで、
ほどよくキャッチーな感触でも楽しめる。単なるゴシックポップという以上のクラシカルで優雅な美意識は、
ときにシンフォニックでもあり、プログレリスナーの心を捉えるだろう。うっとりとなるような傑作である。
クラシカル度・8 優雅度・8 女性Vo度・9 総合・8.5 


Fokatelep
ハンガリーのサイケ・トラッドロック、フォカテレプの2008年作
女性ヴォーカルの母国語の歌声に、パーカッションのリズム、
アコースティックギターにシンセやピアノアレンジなども含みつつ、
アラビックな異国情緒を漂わせたサウンド。エレキギターも入ったロック色に
サイケな浮遊感が混ざって、ほのかに倦怠的な女性ヴォーカルの歌声が
不思議なユルさをかもしだす。アシッド・フォーク的な聴き心地もある作品です。
メロディック度・・7 アラビック度・・8 女性Vo度・・7 総合・・7.5
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FSB「II」
ブルガリアのプログレバンド、エフ・エス・ベーの1979年作
1977年にデビュー、本作は2作目で、ツインシンセによるシンフォニックな感触に
ときにジャズロック的な軽妙なアンサンブルを含んだ優雅なサウンドを聴かせる。
美麗なインストから、やわらかなヴォーカルを乗せたキャッチーなナンバーまで
演奏力の高さもあって、辺境的なマイナーさを感じさせないクオリティの高さが光る。
3~5分前後の楽曲はわりとシンプルで、もう少し展開すれば、というところで終わるのがやや物足りないか。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 優雅度・・8 総合・・7.5

FSB 「Обичам те дотук(I Love You Up To Here)」
ブルガリアのプログレバンド、エフ・エス・ベーの1987年作
7作目となる本作は、80年代らしいデジタルなアレンジを取り入れた、
TOTOなどにも通じる、AOR風のキャッチーなメロディックロック。
きらびやかなシンセアレンジに母国語によるヴォーカルを
打ち込み風のリズムに乗せた作風で、プログレ的な部分はあまりないが、耳心地の良い好作だ。
メロディック度・・8 プログレ度・・6 優雅度・・8 総合・・7.5


FUGATO「Neander variations/variaciok」
ハンガリーのシンフォニックロックバンド、フガートの2004作
バンドといっても、メンバーはヴァイオリン×2、チェロ、フルート、オーボエ、トランペット等含む
総勢17名という大編成で、ジャケのバンド名の下にある通り、まさに“オーケストラ”だ。
こうしたことから、どうしても思い出すのは、同郷のRUMBLIN' ORCHESTRAだが、
彼らに比べてもこちらの方がシンフォニー度が高く、サウンドは優雅にしてクラシカル。
ある意味、THE ENIDのように、オーケストラ曲をロック化とたものを聴いているような印象だ。
たたみかける大仰さやメロディの愉快さはRUMBLIN' ほどにはないが、
しっとりとした美しいフルート、オーボエなどの音色には聴いていてうっとりとなる。
シンフォニック度・・8 クラシカル度・・9 ロック度・・7 総合・・8
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Fugato Orchestra「Noe」
ハンガリーのシンフォニックロック、フガート・オーケストラの2010年作
フガート名義の2004年作は、THE ENIDばりのクラシカルシンフォの力作であったが、
本作ではさらに深化し、アカデミックなクラシカル性を、モダンで軽やかなポップ性とともに巧みに取り込んでいる。
艶やかに響くヴァイオリンの音色に、フルートやオーボエ、トランペットなどの金管楽が重なり、
絶妙のアレンジ力とともに、爽快でキャッチー、そして優美なシンフォニーが展開されるさまはじつに見事。
ロックというよりはむしろ、「オーケストラがプログレ化した」というような趣で、優雅に楽しめる傑作だ。
クラシカル度・・9 プログレ度・・7 オーケストラ度・・9 総合・・8
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Gargantua
ポーランドのプログレバンド、ガルガンチュアの2003年作
基本はインストパートがメインだが、どこかくぐもったような薄暗さはチェンバーロック的でもあり、
展開のヒネ方には、GENTLE GIANTにも通じるような偏屈さがある。母国語で歌われるヴォーカルも含めて
サウンドには辺境的な味があり、メロディアスな要素も多分にあるのだが、どうも一筋縄ではいかない。
クラシカルな優雅さと同時に、聴き手を翻弄するかのような意地の悪さが同居していて、
単なるシンフォ系とも異なる知的なセンスと、懐の深さについつい引き込まれる。ポーランドという国はあなどれない。
メロディアス度・・7 プログレ度・・8 偏屈度・・8 総合・・8


Gaspar Almos 「The Lagend of Lake Saint Anna」
ハンガリーのトラッドロック、KORMORANのヴァイオリン奏者、ガスパー・アルモスの2010年作
語りによるコンセプト的なイントロから始まり、艶やかなストリングスを含むオーケストレイテッドな優雅さで
クラシカルなシンフォニーを描き出す。ドラムにギターとシンセアレンジも加わったシンフォニックロック風味と
民俗的なトラッド要素が合わさると、コルモランのインストバージョンという趣でも楽しめる。
全体的はあくまで優雅な聴き心地であるが、8分を超えるナンバーではプログレ的な展開力も垣間見せる。
クラシカル度・・8 ロック度・・7 優雅度・・9 総合・・7.5

Gleb Kolyadin
ロシアのミュージシャン、グレブ・コルヤディンの2018年作
Iamthemorningでも活躍する鍵盤奏者で、本作は初のソロ作。ベースにニック・ベッグス、ドラムにKING CRIMSONのギャヴィン・ハリソン、
フルート&サックスでセオ・トラヴィスが参加、さらにはMARILLIONのスティーヴ・ホガース、DREAM THEATERのジョーダン・ルーデスもゲスト参加。
クラシカルなピアノとシンセを主体に、ヴァイオリンなどのストリングスも加え、サックスも鳴り響くジャズタッチの軽妙なアンサンブルや
ときにプログレ的なテクニカル性も現れる。ピアノをメインにしたクラシック寄りのナンバーや、ドラムなどを加えた、ジャズやフュージョン、
チェンバーロック風味も感じさせるクロスオーヴァーな作風で、10分を超える大曲もいたって優雅な味わいだ。
クラシカル度・7 プログレ度・7 優雅度・9 総合・8
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Gourishankar「Close Grip」
ロシアのシンフォニックロックバンド、グリシャンカールの1st。2003年作
2nd「2nd Hands」で新時代のプログレ傑作として絶賛を受けたこのバンド、
デビュー作となる本作でも、すでに充分質の高いハードプログレをやっている。
ProgMetal的なテクニカルなアンサンブルにモダンなシンセアレンジを乗せ、
軽やかに聴かせる展開美はさすがのセンス。メタリックなギターにシンセが絡み
メロディアスな叙情性も含めて濃密に構築された、ハードシンフォニックの力作だ。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・9 ProgMetal的度・・8 総合・・8
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The GOURISHANKAR「2nd Hands」
ロシアのシンフォニックロックバンド、グリシャンカールの2nd。2007年作
LITTLE TRAGEDIESの出現以降、ハイクオリティなバンドの宝庫となったロシアだが、またシンフォ系の有望株が現れた。
ドラム、ギター、ヴォーカル、キーボードという変則の四人編成で、ゲストにヴァイオリン、フルートなども参加して、
優雅でテクニカルなシンフォニックロックを聴かせる。基本はインストメインで、美しいシンセアレンジに適度にハードなギターを乗せ、
随所に中性的なヴォーカルも加え、変拍子を含む軽妙なアンサンブルと、ProgMetal的なスタイリッシュな構築センスで聴かせる。
やや唐突なリズムチェンジによる先の読めない展開力や、ピアノやヴァイオリンなどのクラシカルな優雅さが合わさって、
デジタルなアレンジとやわらかなフルートなどの叙情性が同居する。どこをきっても優雅でスリリング。まさに新世代のモダンプログレというべき傑作だ。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・9 スタイリッシュ度・・9 総合・・8.5
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GRENDEL 「The Helpless」
ポーランドのシンフォニックロック、グレンデルの2008年作
うっすらとしたシンセにメロウな旋律を奏でるギター、そしてやわらかなヴォーカルを乗せ、
同郷のSatelliteあたりに通じる、繊細な叙情に包まれた優美なサウンドを聴かせる。
ポーランドのバンドらしい翳りを帯びた空気と、ゆったりとした泣きの叙情性が同居していて、
曲によっては適度にヘヴィなギターも加わって、ARENAなどを思わせるところもある。
これという新鮮味はないものの、耳心地のよいシンフォニックロックを楽しめる好作だ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 叙情度・・8 総合・・7.5
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Group 309 「Dreams of Sea」
ロシアのプログレバンド、グループ309の2010年作
やわらかなシンセワークとロシア語による枯れた味わいのヴォーカルで、
ゆったりとした哀愁を描くようなイントロ曲から始まるが、2曲目からはプログレらしい
変則リズムを含んだ軽妙なアンサンブルと、CAMELなどを思わせる叙情美が交差する。
メロディとリフのメリハリのついたギターのセンスもなかなかで、全体的にもロシア語の歌以外は
辺境臭さを感じさせない仕上がりだ。泣きのメロディとキャッチーな聴きやすさを含んだ好作品。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 叙情度・・8 総合・・7.5

The Group 309 「The Keeper Of An Hourglass」
ロシアのプログレバンド、グループ309の2014年作
前作はCAMELあたりに通じるキャッチーな好作であったが、今作もやわらかなシンセとメロウなギターに
ジェントルな母国語のヴォーカルを乗せた、叙情豊かなシンフォニックロックを聴かせる。
クラシカルなピアノやプログレらしいムーグシンセなどが、適度にハードなギターに絡み
きらびやかな聴き心地は前作以上で、巻き舌のヴォーカルとともに濃密なサウンドを描いてゆく。
ときに女性ヴォーカルも加わった優美な叙情も素敵です。これぞロシアン・シンフォの傑作でしょう。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 ロシア度・・8 総合・・8
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HELLHAVEN 「Mitologia Bliskosci Serc」
ポーランドのハード・プログレバンド、ヘルヘヴンの2021年作
2012年にデビューし、4作目となる。ハードなギターにきらびやかなシンセ、母国語によるヴォーカルを乗せた、
スタイリッシュなハードプログレを聴かせる。メタリックなプレイも奏でるツインギターに、優美なシンセを重ねた
厚みのあるサウンドで、ダミ声ヴォーカルによるアグレッシブなパートや、ときに女性Voも加わった、
ボーダーレスの作風である。モダンな硬質感と叙情性が同居した、エモーショナルなProgMetalとしても楽しめる。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 メタル寄り度・8 総合・7.5
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Hoggwash 「Spellbound」
イギリス&ウクライナのシンフォニックロック、ホグワシュの2013年作
英国のミュージシャン、Will MackieとKARFAGENのAntony Kaluginを中心にしたユニットで、
オルガンを含むシンセワークにメロディックなギターを重ねた優雅なシンフォニックロック。
マイルドなヴォーカルハーモニーはキャッチーなやわらかさで、ときにポップな要素も感じさせつつ、
泣きのギターフレーズと美麗なシンセは、あくまでしっとりとした叙情に包まれている。
メロディックな歌ものナンバーがメインながら、8分、9分という大曲では、KARFAGENにも通じる
美麗なシンフォニックロックが楽しめる。繊細でメロウな味わいのシンフォ好作だ。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 優雅度・・8 総合・・8
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HOLY LAMB 「Salt Of The Earth」
ラトビアのプログレバンド、ホーリー・ラムの1999年作
叙情的なギターにうっすらとしたシンセを重ね、ジェントルなヴォーカルで聴かせる、
GENESISルーツの優美なシンフォニックロック。ツインギターによるメロウな叙情性と
美麗なシンセワークに包まれていて、辺境的なマイナー臭さはさほど感じさせない。
12分、16分という大曲も、繊細なピアノや泣きのギターなどを織り込みつつ、
優雅な叙情とドラマティックな展開力でじっくりと構築してゆく。ジェネシス系が好きならとても楽しめる。
90年代東欧の王道シンフォプログレとしては屈指の出来の一枚といえるだろう。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 優美度・・9 総合・・8

HOLY LAMB 「Gyrosophy」
ラトビアのプログレバンド、ホーリー・ラムの2016年作
1991年に結成。本作は2002年以来、14年ぶりとなる4作目。きらびやかなシンセワークに
適度にハードなギターを重ね、リズムチェンジを含んだ展開力のあるシンフォニックロックサウンド。
オルガンを含むシンセにフルートの音色、メロディアスなギターによる古き良きプログレ感触に、
ジェントルなヴォーカルを乗せたキャッチーな味わいで聴かせつつ、独特の空気感もまじえながら
いくぶん偏屈なテクニカルプログレの側面も覗かせる。軽妙なアンサンブルと優雅な展開力に、
メロディックな味わいを盛り込んだ、東欧らしいシンフォニックロックが楽しめる好作品だ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 東欧度・・8 総合・・8
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HORIZONT「Summer in Town」
旧ソ連のプログレバンド、ホリゾントの1985年作
1曲目はオルガンを含むクラシカルで美麗なシンセワークを中心にした、NICEやEL&P、あるいはTRACEなどにも通じるサウンドで、
叙情的なフルートやギターが加わり、軽快かつキャッチーな聴き心地。ときにオーケストラルなアレンジも含めて、
80年代旧ソ連の作品としては洗練されていてとてもクオリティが高い。2曲目は一転してスペイシーなシンセに包まれた
ミステリアスな感触で、いかにも東欧らしいスケール感が広がってゆく。ラストは19分近い組曲で、クラシック的な構築性と
適度にアヴァンギャルドなセンスも漂わせた優雅な緊張感が楽しめる。80年代旧ソ連の傑作プログレといってよい出来だ。
クラシカル度・・8 プログレ度・・8 壮大度・・8 総合・・8
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HORIZONT「THE PORTRAIT OF A BOY」
旧ソ連のプログレバンド、ホリゾントの2nd。1989年作
のっけから20分近い大曲で幕を開ける本作は、前作に比べると、硬質感ただようダークでテクニカルなサウンドへ変化をとげている。
いかにも東欧的な手数の多い無機質なドラムの上にダブルキーボードの音色が重なり合う、シリアスかつ重厚な聴き心地だ。
オールインストの作品で、おそらくなんらかのコンセプトに基いたアルバムであろうが詳しくは不明。
アヴァンギャルド性を含んだ壮大な世界観に加え、クラシック的な方法論によるシンフォニックロックという側面もあり、
After Cryingなどに通じるアカデミックな冷徹さを感じさせる、一方では未完成のプログレ的センスが昇華しきれていないという、
そのあたりも含めての得体の知れなさ、収束に向かわない拡散志向こそがこのバンドの魅力であったのかもしれない。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 壮大度・・8 総合・・8
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I

IAMTHEMORNING 「belighted」
ロシアのシンフォニックロック、アイアムザモーニングの2014年作
ピアノ&シンセ奏者と女性ヴォーカルによる二人組ユニットで、美しい女性ヴォーカルの歌声に
プログレ的なシンセと繊細なピアノの旋律、随所にストリングスも加わった美麗なサウンドだ。
ゴシック的でもある翳りを含んだ叙情性や適度にモダンな感触もありつつ、歌メロはあくまで優しく
キャッチーな聴き心地。ギター、ベース、ドラムなどはすべてゲストによるもので、曲によっては、
エキセントリックなフォークロックという味わいもある。クラシカルでやわらかな雰囲気の好作品。
シンフォニック度・・7 プログレ度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8
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Iamthemorning 「Lighthouse」
ロシアのシンフォニックロック、アイアムザモーニングの2016年作
ピアノ&シンセ奏者と女性Voによる二人組ユニットで、美しい女性ヴォーカルの歌声に
ストリングスによる優美なアレンジ、繊細なピアノなど、クラシカルな味わいに包まれたサウンド。
ドラムやギターが加わると、ほの暗い叙情と女性声の美しさに包まれたシンフォニックロックになり、
やわらかなフルートの音色も美しくゴシック的な耽美さもあってしっとりとした耳心地で鑑賞できる。
ゲストヴォーカルにはRiversideのマリウスツ・ドゥラが参加、マイルドな歌声を披露している。
ドラムには、Porcupine TreeKing Crimsonにも参加するギャビン・ハリソンが参加、
ベースには同じくPTからコリン・エドゥィンが参加していて、さすがのグルーブを聴かせてくれる。
シンフォニック度・・8 繊細で優美度・・9 女性Vo度・・8 総合・・8
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IAMTHEMORNING 「Ocean Sounds」
ロシアのシンフォニックロック、アイアムザモーニングの2018年作
ピアノ&シンセ奏者と女性Voによる二人組ユニットで、本作はスタジオでのセッションライブを収録した作品。
ヴァイオリン、チェロ、ベース、ドラムを加えての編成で、やわらかなピアノのつまびきに美しい女性ヴォーカルを乗せて、
艶やかなストリングスとともに優雅なクラシカル性に包まれる。リズムセクションを加えてのジャズタッチのアンサンブルや、
キュートな歌声をメインにしたしっとりとしたナンバーもじつに優美です。楽曲は3~4分前後とわりとシンプルであるが、
ジャケも含めてのアーティスティックなセンスや、コケティッシュな優雅さはケイト・ブッシュなどにも通じる雰囲気もあるだろう。
Blu-rayには、スタジオセッションの映像を収録していて、雰囲気あるスタジオセットの中でのライブ演奏が楽しめる。
クラシカル度・・8 優雅度・・9 女性Vo度・・8 総合・・8 
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IAMTHEMORNING 「The Bell」
ロシアのシンフォニックロック、アイアムザモーニングの2019年作
2012年にデビューし、本作は5作目となる。やわらかなピアノにハープの音色、うっすらとしたシンセを重ね、
コケティッシュな女性ヴォーカルの歌声で、しっとりと優美なサウンドを聴かせる。艶やかなヴァイオリンにサックスも鳴り響き、
ドラムも加えた躍動的なアンサンブルも覗かせつつ、アコースティックギターやアコーディオン、マリンバなどの素朴な叙情と
シンフォニックロックとしての優雅な音の重ねが同居していて、これまでの作品以上にダイナミックな味わい。
3~4分前後の小曲がメインなので、プログレ的な展開や派手さはあまりないものの、繊細な美意識の中に、
翳りを帯びた幻想性やケイト・ブッシュ的な優雅なポップ性も感じさせ、優しくまどろめるような耳心地よい作品だ。
プログレ度・・7 優雅度・・9 女性Vo度・・8 総合・・8
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Indrek Patte 「Cinemanic」
エストニアのミュージシャン、インドレック・パッテの2017年作
エストニアではレジェンドのベテランロックバンド、Rujaで活躍するシンセ奏者で、ソロとしては3作目となる。
東欧らしい透明感あるシンセにほどよくハードなギターを重ね、ミステリアスな翳りを帯びたインストサウンドを展開。
曲によってはハードロック的なギターを乗せたノリの良さもありつつ、シンフォニックなシンセアレンジが包み込み、
空間的な幻想性が現れる。10分を超える大曲では、シンセをメインにした、Klaus Schulzeのような雰囲気もありつつ、
一転、ムーグシンセがきらびやかなキャッチーなナンバーなども、メロウなギターの旋律も含めてなかなか楽しめる。
アルバム後半には、歌入りのAOR風味のナンバーもあり、全体的にも辺境臭さのない叙情的な好作である。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優美度・8 総合・8
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INDUKTIS.U.S.A.R.
ポーランドのヘヴィ・プログレバンド、インダクティの2004年作
ヘヴィなギターリフに浮遊感のあるヴォーカルラインに瑞々しいヴァイオリン、ハープなどの美しさが加わり、
クリムゾン風の硬質感に叙情性を併せ持ったサウンドスタイルでを独自のヘヴィシンフォニックに昇華。
モダンな質感と、薄暗い叙情が交差する音楽性は、緊張感と心地よさを同居させており、
単にクリムゾン系ヘヴィシンフォと呼ぶには、このバンドはセンスの良さでも突出している。
ANEKDOTENよりもさらに革新的な香りがする。おそるべしポーランドというべき力作。
ヘヴィシンフォニック度・・8 プログレ度・・8 硬質&叙情度・・8 総合・・8
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Indukti「Idmen」
ポーランドのヘヴィ・プログレバンド、インダクティの2nd。2009年作
前作はポーランド版ANEKDOTENというような傑作であったが、本作ではのっけからギターによるメタリックなヘヴィさが増している。
その後はやはり独特の薄暗さを内包した叙情をともないながら、女性ヴァイオリニストの奏でるもの悲しい旋律とともに重厚に聴かせる。
今回のコンセプトなのか、土着的な闇の中に太古の神秘性を感じさせる世界観がモダンなプログレと巧みに融合されていて、
とくに大曲での迫力には圧倒される。同郷のRiversideがPINK FLOYDなら、こちらは土着化したメタル・クリムゾンか。
シンフォニックな美しさは薄れたが、重厚なる音世界で構築された力作である。
メロディアス度・・7 プログレ度・・8 重厚度・・9 総合・・8
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Inner Drive 「Oasis」
ロシアのプログレバンド、インナー・ドライブの2014年作
シンセ奏者のセルゲイ・ボロトフを中心にしたバンドで、クラシカルなヴァイオリンやフルートの音色に
ピアノやシンセが絡む優雅なインストプログレ・サウンド。楽曲は4~6分台なので難解さはなく、
シリアスなアカデミックさをリリカルなメロディで包み込んだような聴き心地ながら、
随所にスリリングな緊張感をまとわせたアレンジセンスもなかなかのもの。
LOST WORLDに続く、スタイリッシュな高品質バンドとして期待できる新鋭です。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 叙情度・・8 総合・・8
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inSpe
旧ソ連、エストニアのバンド、インスペの1st。1983作
東欧らしい硬質感はあるが、メロディ自体は繊細で美しく美しいフルートの音色はリリカルといってよいほど。
ただしロックとしての熱さよりも、音楽としての完成度を重視しているようで音そのものに愛想はない。
方向はややことなるが、スウェーデンのISILDURS BANEのような冷たさと叙情が混在している。
ギター、キーボード、フルートが重なりドラムが動きだす3曲目半ばあたりになると、
その辺のシンフォバンドを圧倒する重厚さをもった、見事なサウンドとなる。
メロディアス度・・8シンフォニック度・・8 クールな叙情度・・9 総合・・8 ◆プログレ名作選入り

IN SPE「Typewriter concerto in D」
エストニアのプログレバンド、イン・スペの2nd。1983作
このバンドの1stは80年代東欧プログレの傑作に挙げられる出来だったが、
本作ではそのシリアスな硬質シンフォニックにモダンさが付加されいくぶんスタイリッシュなサウンドになっている。
18分におよぶタイトルの組曲などはオールインストでありながら、東欧的な硬質なシンセにギター、室内楽的なフルート、
シロフォン(木琴)、さらにはタイプライターの音までが合わさって、アイディア多く聴かせる。
前作に比べると全体的にはやや地味な印象であるが、ラスト曲での美しいシンセサウンドには思わずうっとりとなる。
シンフォニック度・・7 プログレ度・・7 東欧度・・8 総合・・7.5
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IN SPE
エストニアのプログレバンド、イン・スペの1983/2019年作
1983年、85年に2作を残して消えたバンドで、本作は80年代東欧プログレの傑作として名高い1作目に
1979~83年にかけて録音されたライブ音源や未発表音源を収録したボーナスDisc付きの2CD再発盤。
流麗なギターにうっすらとしたシンセを重ねた、涼やかな空気感のインストのシンフォニックロックで、
優美なフルートの音色とともに繊細な叙情にも包まれる。翳りを帯びたどこかクールな雰囲気は、
旧ソ連を思わせるミステリアスな味わいで、母国語によるヴォーカルを加えたナンバーも、辺境的な匂いを感じさせる。
Disc2のライブ音源も派手さはないものの、淡々とした演奏の中に、メロウなギターフレーズや優美なフルートの音色とともに
しっとりとした聴き心地で楽しめる。ヴォーカル入りの未発音源は、辺境らしいマイナーな雰囲気に包まれていて面白い。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 優美度・・8 総合・・8 
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JANOS VARGA PROJECT「THE WINGS OF REVELATION Ⅰ.」
ハンガリーを代表するプログレバンドEASTのギタリスト、ヤノス・バルガの2000年作
全編インストで、ギター、キーボードによるテクニカルかつメロディアスな演奏。
東欧のバンドらしく非常にしっかりしたアンサンブルで、メロディアスだが甘すぎず、
クサすぎないセンスの良さが感じられる。ある部分CAMEL的なメロディの質感を感じさせるが、
トータル的にはジャジーな部分もあり、知的な構築性を垣間見せるインストプログレの佳作といってよい。
内容は良いのに、ジャケがヒゲオヤジ(自分の写真)なのが難点か。
メロディアス度・・8 シンフォニック度・・8 演奏・・9 総合・・8◆プログレ名作選入り
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JANOS VARGA PROJECT「THE WINGS OF REVELATION Ⅱ.」
ハンガリーのプログレバンドEASTのギタリスト、ヤノス・バルガの2作め
前作同様キーボード、ギター、ドラム、ベースによるインスト作品で、いかにも東欧らしいテクニカルで切れ味のある演奏を繰り広げている。
かつてのEASTやポーランドのSBBあたりのファンは聴く価値があるだろう。適度な硬質感がクールな東欧プログレの空気感を描いている。
シリアス系のインストシンフォとしてはかなり高品質だと思うが、自らの写真をジャケにするのはもうやめるべきだと思う(・・白髭仙人)。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 テクニカル度・・8 総合・・7.5
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JAZZ Q 「Symbiosis」
旧チェコのロックバンド、ジャズ・キューの1974年作
ケバめのメンバージャケのインパクトが大きいが、どんよりとした暗さのあるブルージーな感触に、
翳りを含んだ中性的な女性ヴォーカルの歌声を乗せたサウンドで、やわらかなエレピを含んだ、ジャズ風味の優雅さも感じさせる。
シンガーは英国人であるので、辺境的な違和感はほとんどなく、本場のブルースを素養にした歌唱には、しっかりとした説得力がある。
前半はプログレというよりはむしろ、倦怠の女性声ブルーズ・ロックという聴き心地で、ゆったりとした曲が多くいくぶん地味な印象ではあるが、
16分を超える大曲では、カンタベリー風の優雅なジャズロックで、後半のドラマティックなブルーズハードロックという流れはなかなか圧巻だ。
ラストの9分を超える大曲もプログレ寄りのサイケブルーズロックでなかなか楽しめる。リマスター& 8枚組のボックスセットも発売されている。
ブルーズロック度・・8 プログレ度・・7 辺境度・・7 総合・・7.5
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Jordan Jordanov featuring Goran Edman 「天使のてざわり」
ブルガリアのミュージシャン、ヨルダン・ヨルダノフの2021年作
ギタリストのソロ作品であるが、楽曲の方はしっとりとしたピアノやシンセアレンジを含んだ大人のAORという作風で、
アコースティックギターによる繊細な叙情から、エレキギターを使ったロック寄りのナンバーまで、なかなかバラエティ豊か。
HR界では名の知れたスウェーデンのヴォーカリスト、ヨラン・エドマンが前面参加していて、表現力豊かな歌声を披露。
曲によっては、ストリングスによるアレンジを加えたシンフォニックな味わいもあって、プログレリスナーにも楽しめるだろう。
もちろん、しっかりとしたテクニックの流麗なギタープレイも随所に光っていて、アレンジ面でのスタイリッシュなセンスというのは、
メジャー寄りの実力を感じさせる。実力あるG.エドマンの歌声とともに、優雅なサウンドをじっくりと味わえる逸品だ。
ちなみに、CDライナーの解説を手掛けるのは吾輩でありますので、購入の際はご一読をぜひ。
叙情度・・8 ロック度・・7 優雅度・・9 総合・・8
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KARFAGEN「Continium」
ウクライナのシンフォニックロックバンド、カルファゲンの1st。2006年作
ログレ的なカラフルさをまじえたしっとりとしたシンセワークに美しいフルートやピアノの音色が重なり、
メロウなギターがかぶさるとCAMELばりの叙情美になる。MIKE OLDFILEDGANDALFあたりにも通じる
自然体のシンフォニックサウンドで、アコーディオンやパイプの音が入ったケルティックなテイストもあり、
インスト中心ながら歌心のあるメロディが詰まっていて飽きさせない。ゆったりと鑑賞できる叙情派作品。
シンフォニック度・・8 メロディアス度・・8 やわらか叙情度・・9 総合・・8
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KARFAGENThe Space Between Us
ウクライナのシンフォニックロックバンド、カルファゲンの2nd。2007年作
一聴して肩の力が抜けたような、軽やかかつしっとりとした優しいサウンドで、清涼感のあるシンセに
美しいピアノの音色、前にですぎないギターのアンサンブルはGANDALFあたりにも通じる自然体のやわらかさがある。
アコーディオンやフルートなどのほのかな民族調の隠し味もあって、優しく薄味でありながらも、
じっくりと楽しめる奥の深さがあるのはPEKKA POHJOLAなどにも近いかもしれない。
センスのよいジャズロック調のアンサンブルと、自然派のシンフォニックが融合した耳に優しい作品だ。
シンフォニック度・・7 メロディアス度・・8 やわらか自然体度・・9 総合・・8
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Karfagen 「The Key To Perception」
ウクライナのプログレバンド、カルファゲンの2009年作
2006年作「Continium」、2007年作「The Space Between Us」全曲をCD2枚に収録し、
それぞれのDiscに未発音源やデモをボーナス収録した、初期2作のカップリング再発盤。
やわらかなシンセアレンジとメロウなギターワークで、清涼な叙情性を描くサウンドは、
MIKE OLDFIELDやGANDALF、CAMELなどをシンフォニックプログレ寄りにしたという聴き心地で、
オールインストながら歌心あふれるメロディとともにじつに耳に優しく、ゆったりと楽しめる。
CD2枚で全39曲、160分というボリュームで、このバンドを初めて聴く方にもオススメの内容だ。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 優美で清涼度・・9 総合・・8
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KARFAGEN「Solitary Sandpiper Journey」
ウクライナのシンフォニックロックバンド、カルファゲンの3rd。2009年作
過去2作も自然体の叙情美を聴かせる見事なシンフォニック作であったが、
本作もまたCAMELを思わせる甘いトーンのギターと、美しいシンセワークを中心にした
たおやかなシンフォニックロックである。北欧のバンドを思わせる涼やかな爽やかさと
優しいメロディが耳に優しい。インスト主体であるが、数曲で女性ヴォーカルが歌っているので
繊細さの中にもアルバムとしてのメリハリがついている。長大な組曲を含む75分の力作。
シンフォニック度・・8 メロディアス度・・8 やわらか叙情度・・9 総合・・8
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KarfagenLost Symphony」
ウクライナのシンフォニックロックバンド、カルファゲンの4th。2011年作
SUNCHILDでも活動するシンセ奏者、アントニー・カルギンを中心としたバンドで、
過去3作も繊細なシンフォニック作品だったが、本作も美麗なシンセをたぷり使ったサウンドを聴かせる。
組曲形式で進行する楽曲は、インスト主体でいかにもプログレ的な感触でありながら、随所にストリングスや
オーボエなどの音色が加わり、ミステリアスな世界観と知的な展開力とともに起伏に富んで構築されてゆく。
アコースティカルな繊細さもあり、クラシカルな優雅さと東欧らしい緊張感を含んだ素晴らしい作品に仕上がっている。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・8 構築度・・9 総合・・8
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Karfagen  「Aleatorica」
カルファゲンの2013年作
Sunchildでも活躍するアントニー・カルギン率いるバンドで、本作が5作目となる。
シャケ裏にキリル文字が書かれているので、今作は母国をテーマにした内容なのだろうか。
アコーディオンがフォーキーな旋律を奏でつつ、やわらかなピアノの音色にギターも加わり、
東欧的な哀愁の叙情に包まれたサウンドを描き出す。ときにサックスがジャジーに鳴り響き、
アコーディオンの音色とともに、いつになく愉快な曲調で、ロシアンな牧歌性にあふれた聴き心地。
いつものクラシカルなシンフォニックプログレを求めると、やや肩透かしを食う内容であるが、
やわらかなオーボエの音色にメロウなギターやフルートなど、優雅に聴かせるアレンジセンスはさすが。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 優雅度・・8 総合・・7.5
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Karfagen 「Magician's Theater」
カルファゲンの2014年作
前作の牧歌的な作風から一転、のっけから大仰なシンセアレンジとともにLITTLE TRAGEDIESばりの
壮麗なシンフォニックプログレが広がってゆく。メロディックなギターの旋律はCAMELかハケットかという耳心地で、
やわらかなフルートの音色とともに繊細な叙情美を聴かせる。一方ではアコーディオンなどの音色とともに
前作にもあったフォーキーな牧歌的メロディも覗かせながら、曲によっては適度にハードな重厚さと
メロトロンやムーグシンセの音色も入った古き良きプログレ性も匂わせる優美なサウンドを構築。
21分におよぶ組曲も含めて、優しいメロディアス性に包まれたファンタジックな力作に仕上がっている。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 優美で繊細度・・9 総合・・8
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Karfagen「7」
ウクライナのシンフォニックロック、カルファゲンの2015年作
Sunchildでも活躍するアントニー・カルギンによるプロジェクトで、本作がすでに7作目となる。
のっけから28分の大曲で、SF的な雰囲気のSEから始まり、美しいシンセにメロウなギターの旋律を乗せて、
ゆったりとしたシンフォニックロックが広がってゆく。フルートやアコーディオンなどの民族的な色合いも含みつつ、
大仰な展開や盛り上がりというのはさほどなく、むしろじっくりと大人の叙情を描くような作風である。
マイルドなヴォーカルと甘美なギターフレーズによる泣きの叙情は、SatelliteQuidamなど、
ポーランドのバンドにも通じる繊細な感触で、ときに女性ヴォーカルも加わった優美な耳心地で楽しめる。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 繊細な叙情度・・8 総合・・8
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Karfagen 「Spektra」
ウクライナのシンフォニックロック、カルファゲンの2016年作
8作目となる本作も、美しいシンセアレンジにメロディックなギター乗せた、優雅で軽妙なアンサンブルで聴かせる
リリカルなシンフォニックロックサウンド。ヴァイオリンやフルートなども加えたクラシカルな美しさに
随所にプログレらしいスリリングな展開力も含んだ構築センスは、さすがの才人ぶりである。
三部構成に分かれたアルバム中盤には、アコースティカルな小曲から、21分におよぶ組曲を配した流れで、
インスト中心ながらもドラマティックな世界観を丹念に描いてゆく、シンフォニックロックとしての強度も素晴らしい。
アルバム後半はゆったりとした叙情曲が続いて優美に締めくくる。じつに上品な聴き心地の傑作である。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 優美度・・9 総合・・8.5 
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Karfagen 「Messages from Afar: First Contact」
ウクライナのシンフォニックロック、カルファゲンの2017年作
Sunchildでも活躍するアントニー・カルギンのプロジェクトで、2006年のデビュー作からすでに9作目となる。
スペイシーなシンセにメロウなギターを重ね、エフェクトの効いたコーラスを含むキャッチーなサウンドで、
わりとモダンなプログレハード感触もありつつ、泣きの旋律を奏でるギターにときにサックスも重なって、
ゆったりとした優美な叙情を描いてゆく。ほぼオールインストであるが、随所にリズムチェンジを含む展開力で、
軽妙な味わいも覗かせつつ、ラストは15分という大曲で、クラシカルなイントロから、美麗なシンセにギターが重なり、
優雅でファンタジックなシンフォプログレを構築する。お約束の耳心地であるが、文句のない完成度の逸品です。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 優雅度・・9 総合・・8
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KARFAGEN/ANTONY KALUGIN「THE KEY TO PERCEPTION」
ウクライナのシンフォニックロック、カルファゲン/アントニー・カルギンの2019年作
KARFAGENの1st、2006年作「Continium」、2nd、2007年作「The Space Between Us」
ANTONY KALUGIN名義のソロ、2002年作「The Water」、2004年作「AKKO II」を収録したCD4枚組。
KARFAGENの1作目は、美麗なシンセにメロウなギター、フルート、ピアノなどで繊細な叙情を描く、
インスト主体のシンフォニックロック。CAMELかハケットかという泣きのギターにケルティックなテイストも加わった
優美なサウンドにウットリ。2作目になると、フュージョン的な軽妙さが増して、優雅なシンフォニックと融合した味わいに。
それぞれボーナスにデモ音源などを追加収録。「The Water」は、やわかなシンセとギターでゆったりとした叙情を描く、
80分におよぶアンビエント寄りの力作。ANTONY KALUGINS KINEMATICS ORCHESTRA名義の「AKKO II」は、
シンセの重ねを中心に、クラシカルなピアノや女性ヴォーカルも加えて、しっとりとしたサウンドを聴かせる。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・8 優美度・・9 総合・・8 
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Karfagen 「Echoes From Within Dragon Island」
ウクライナのシンフォニックロック、カルファゲンの2019年作
10作目の本作は「ドラゴン・アイランド組曲」という、3部構成で、それぞれが17分、18分、16分という大曲。
ヴァイオリンなどのストリングスにシンセが重なる、優美なクラシカル性に包まれたサウンドで、
マイルドなヴォーカルに女性声も加えて、オールドなロック感触も同居した起伏のある展開力で聴かせる。
メロウなギターの旋律は、ロイネ・ストルトあたりを思わせ、随所にフラキン的な雰囲気も現れるが、
ピアノやフルートによる繊細な叙情などには、クラシックの素養をシンフォニックロックに溶け込ませたという、
優雅でアカデミックな説得力を感じさせる。まさにアントニー・カルギンの集大成的な傑作である。
クラシカル度・・8 プログレ度・・8 優雅度・・9 総合・・8.5
Amzonで購入する CD2枚組限定版

Karfagen 「Sandpipers Symphony」
ウクライナのシンフォニックロック、カルファゲンの2020年作
アントニー・カルギンによるプロジェクトで、本作は2010年作「Solitary Sandpiper Journey」、2011年作「Lost Symphony」に、
未発音源集を合わせたCD3枚組。2010年作は、CAMELばりの叙情的なギターと優美なシンセをメインにした
繊細なシンフォプログレで、インストを主体に、女性ヴォーカルも加わった、たおやかな聴き心地。全75分の力作だ。
2011年作は、組曲方式の流れで、プログレらしいスリリングな展開力に、アコースティックを含む繊細なパートも含んだ
緩急ある構築力でクラシカルなシンフォニックロックを描いてゆく。後半の18分、19分という大曲は特に素晴らしい。
Disc3の未発音源は、ライブやデモなども含んでいるが、アルバムに遜色ない完成度で楽しめる。全70分収録。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 優雅度・9 総合・8 
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Karfagen 「Birds of Passage」
ウクライナのシンフォニックロック、カルファゲンの2020年作
見事な傑作となった前作から早くも新作が登場。アントニー・カルギン氏の創作意欲にはすさまじいものがある。
本作は22分、21分という大曲2曲をメインにした構成で、美麗なシンセにギターを重ね、キャッチーなヴォーカルメロディとともに、
やわらかな叙情美に包まれたシンフォニックロックを展開。ほどよくヴィンテージなシンセの音色に、ときに女性ヴォーカルも加わり、
フルートやヴァイオリンなど、クラシカルな優雅さとともに、ファンタジックな世界観を描いてゆく。軽やかなアンサンブルと展開力、
きらびやかなシンフォニック性が合わさって、GENESISルーツのロマンティシズムをまぶしたような、まさにシンフォプログレの理想郷。
繊細な泣きの美学と優美な幻想性に包まれたサウンドにウットリ。THE FLOWER KINGSのファンなども必聴の出来です。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 優雅度・・9 総合・・8
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KARFAGEN 「PRINCIPLES AND THEORY OF SPEKTRA」
ウクライナのシンフォニックロック、カルファゲンの2020年作
マルチミュージシャン、アントニー・カルギンによるプロジェクトで、2006年にデビューし、すでに12作目。
優美なシンセに叙情的なギターの旋律、ヴァイオリンやフルートの音色も加わった、優雅なシンフォプログレで、
ヴィンテージな優しさとメロディアスな旋律は、初期のTHE FLOWER KINGSにも通じる聴き心地。
オールインストであるが、繊細なアコースティックパートから、スペイシーなシンセをメインにした
ミステリアスな雰囲気も覗かせつつ、10分前後の大曲をじっくりと構築するセンスはさすがで、
甘美なギターフレーズに優雅なフルートが重なるところなどはウットリとなる美しさである。
キャッチーな希望を描くようなラストナンバーまで、これぞシンフォプログレという音が詰まっている。
シンフォニック度・8 プログレ度・8 優美度・9 総合・8
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Karfagen「Land Of Green And Gold」
ウクライナのシンフォニックロック、カルファゲンの2022年作
アントニー・カルギンによるプロジェクトで、2006年にデビューし、本作はすでに13作目となる。
アコースティックギターとシンセによるイントロから、CAMELにも通じるメロウな泣きのギターとやわらかなシンセで、
ゆったりとしたシンフォプログレを展開する。インストパートをメインに、繊細な美意識とユートピア的な幻想性に包まれた
あくまで優雅なサウンドで、マイルドなヴォーカルも加わって、優しい叙情性とともにゆったりと楽しめる。
アルバム後半では、サックスも鳴り響き、ピアノとともにジャズ寄りのパートも覗かせる。円熟の好作です。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・9 総合・8
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KOLLAR ATTILA「MUSICAL WITCHCRAFT」
ハンガリーのシンフォバンド、SOLARISのフルート奏者、コラー・アティラの1998作
ソラリスのメンバーも参加しており、本家以上にクラシカルな演奏を繰り広げている。
特に楽曲を彩るフルートの表現力は素晴らしく、エレキギターとのコントラストにより
その深みのある音色がいっそう浮き上がっている。アコギとの絡みも実に美しい。
とりあえずフルート好き、クラシカルなシンフォ好きは聴くべし。
シンフォニック度・・8 クラシカル度・・8 フルート度・・9 総合・・8◆プログレ名作選入り
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MUSICAL WITCHCRAFTⅡ.「UTOPIA」
SOLARISのフルート奏者、アッティラ・コラーによるプロジェクト作第二弾。2002作
本家ソラリスのコテコテシンフォ路線とは若干趣を異にし、フルートやヴァイオリンなど
アコースティック楽器をメインにしたトラディショナル系シンフォといえるサウンド。
もちろんギターが入ると一気にSOLARISっぽくなるのだが、
全体としてはロック色は抑えぎみでアカデミックなクラシカル性が強いか。
PAR LINDH PROJECTの静かな部分のみを取り出し東欧風(?)にした感じ。
王道のシンフォファンにはややおとなしすぎに聴こえるかもしれない。
シンフォニック度・・7 クラシカル度・・8 ロック度・・5 総合・・7.5
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KOLINDA「ELFELEJTETT ISTENEK」
ハンガリーのラジカル・トラッドバンド、コリンダの2000年作
イメージではけっこうプログレ寄りの緊迫感のありそうな音だと思っていたが
このアルバムにおいては落ち着いた感じの正統的なトラッドをやっている
たおやかな女性ヴォーカルの歌声に、素朴なアコースティック楽器の音色、
所々にはシンセも使用していて、それらがソフトに音を重ねている。
一聴して地味にも聴こえるが、バンドとしての音には深みが感じられる。
プログレ度・・6 トラッ度・・8 たおやか度・・8 総合・・8
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Konstantin Jambazov 「Talking to Myself」
ブルガリアのミュージシャン、コンスタンティン・ジャンバゾフの2017年作
本作は、YESQUEENのようなキャッチーなメロディアス性と、GENTLE GIANTのようなテクニカルなリズムチェンジに、
とぼけた味わいの知的な展開力で聴かせる、これまで以上にプログレ、シンフォニックロック色を強めたサウンドだ。
ギター、ベース、シンセ、さらにはヴォーカルもこなし、すべてのパートで技巧性と表現力を兼ねそろえた、
彼の非凡な音楽センスが結集されたというべき聴き心地で、ときに唐突ともいえるスリリングな展開力を
優雅なメロディアス性で昇華。適度にハードなパートも織り込みつつ、マイルドなヴォーカルを乗せた
あくまでキャッチーな感触が前に出ている点でも、今作はより多くのリスナーにアピールするだろう。
A.C.Tあたりを好むリスナーにも勧められる、会心のプログレッシブ・ハード作品に仕上がっている。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 優雅度・・9 総合・・8 
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Konstantin Jambazov 「Fate」
ブルガリアのミュージシャン、コンスタンティン・ジャンバゾフの2019年作
VirtulHadesなど多数のバンドで活躍する、ブルガリアきってのマルチミュージシャンのソロ作品。
前作「Talking to Myself」はキャッチーなメロディと技巧が合わさった見事な傑作であったが、
今作は軽快なリズムに、メロディックで流麗なギターを乗せた、オールインストの作品。
ドラムは打ち込みのようだが、巧みなベースプレイにシンセアレンジも加えた厚みのあるサウンドで、
優雅なプログレフュージョン的にも楽しめつつ、テクニカル過ぎないキャッチーな感触に包まれている。
ゆったりとしたバラード的なナンバーも、叙情豊かなギターフレーズに彩られて、ゆったりと鑑賞できる。
ギタリストとしてのジャンバゾフの技巧とメロディセンスが存分に味わえる、高品質な作品です。
メロディック度・・8 テクニカル度・・8 優雅度・・9 総合・・8 
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Konstantin Jambazov 「A Look Over My Shoulder」
ブルガリアのミュージシャン、コンスタンティン・ジャンバゾフの2021年作
VirtulHadesなどでも活躍する、ブルガリアきっての多彩なマルチミュージシャン。
本作は全パートを一人でこなしている、まさに完全なソロアルバムで、巧みなギターワークに
美しいシンセアレンジ、自身の味のあるヴォーカルを乗せた、キャッチーなメロディックロックを聴かせる。
ドラムはプログラミングであるが、随所にテクニカルなリズムやプログレッシブなアレンジを覗かせながら、
あくまで優雅なメロディアス性に包まれていて、ときにトニー・マカパインばりの流麗なギタープレイから、
ゲイリー・ムーアのような哀愁の旋律も弾きこなすところはさすが。10分近い大曲はプログレよりの構築センスで
じっくりと楽しめる。キャッチーな大人のメロディックロックにプログレハード的な味わいが加わった好作品だ。
メロディック度・・8 キャッチー度・・8 優雅度・・9 総合・・8 
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KONSTANTIN JAMBAZOV & DEYAN ANGELOFF 「Fly Again」
ブルガリアのミュージシャン、コンスタンティン・ジャンバゾフとデヤン・アンゲロフによるユニット作品。2022年作
この2人のユニットとしては、2019年作「ネ・スピーライ!」に続く2作目となる。1曲目から、キャッチーなノリのメロディックロックで、
母国語による表現力豊かな歌声とコーラスハーモニーが耳に心地よい。存在感のあるベースときらびやかなシンセアレンジ、
ソロ名義でも活躍するジャンバゾフの巧みなギタープレイも随所に光っていて、爽快なメロディアス性に包まれつつ、
随所にプログレッシブなセンスも含んだ優雅なサウンドが味わえる。打ち込みによるドラムがやや軽いのだが、
テクニックあるギターとともに、メジャーレーベルと契約した経歴を持つ実力あるヴォーカルが、サウンドに説得力をもたらしている。
細やかなアレンジのAOR風のプログレハードというべき聴き心地で楽しめる。ボーナス含む全17曲、78分という力作だ。
メロディック度・8 キャッチー度・8 優雅度・8 総合・8 
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Kormoran「Folk and Roll」
ハンガリーのトラッドロックバンド、コルモランの1st。1984作
活動25年を超える、ハンガリーを代表するトラッドバンドとなった大御所。
このデビュー作では、メンバー4人を中心としたまだ素朴なバンドサウンドで、
後のシンフォニックかつダイナミックな雰囲気はまだないが、
フルートやバグパイプが鳴り響き、それをロックリズムと融合させた
個性的なサウンドはすでに完成されている。泣きのギターによる哀愁もあり。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 トラッ度・・8 総合・・7.5
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KORMORAN「GODOLLOI KONCERT」
ハンガリーのトラッド・ロックバンド、コルモランのライブ作。2001年作
2001年に行われた結成25周年のライブステージ。ヴァイオリン、フルート、パイプなどに混じって、
エレキギターやシンセ入っていて、案外ドイツあたりのフォークメタルにも通じるような聴き心地もある。
写真を見るとメンバーは9人で、男ヴォーカルと2人の女性ヴォーカルが混声の歌声を乗せる。
ハンガリアントラッドを基本にしつつも、音に暗さはあまりなく、むしろ愉快でノリの良さを聴かせる。
フィンランドのVARTTINAをよりロックにした感じとも言えるかもしれない。じつに躍動感に満ちた演奏で、
土着的なメロディのトラッド曲に加え、泣きのギターを聴かせる熱いロック曲などもあり飽きさせない。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 トラッ度・・8 総合・・8
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KORMORAN「TALTOSOK FIAI」
ハンガリーのトラッドロックバンド、コルモランの2002作
今作はハンガリーの古き伝承をコンセプトにしており、古いスラヴ言語で歌われている。
エレキギターに絡むフィドルやパイプの音色に、デジタリィなアレンジを取り入れたリズムで
VARTTINAGARMARNAあたりを思わせるラジカルなトラッドロックをやっている。
民族楽とロックの融合されたサウンドは、古い言語の呪術的なコーラスのせいもあってか
ある種の崇高さをたたえており、ビートを効かせたモダンなアレンジでありながら、
しっかりと伝統の重さを感じさせる。曲によってはギターとシンセの重なりがシンフォニックでもあり、
プログレファンにも充分楽しめる。壮大な太古の世界を現代的サウンドで再現した傑作だ。
メロディアス度・・8 トラッ度・・8 壮大度・・9 総合・・8
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KORMORAN「A SZERETET HIDJA」
ハンガリーのトラッドロックバンド、コルモランの2002作
活動は20年以上にもわたり、その膨大なディスコグラフィーからもはや国民的なバンドなのだろう。
土着的な辺境性と、ロックとアコースティックの融合という点で、とても個性的なバンドだし、
プログレリスナーからしてもとても楽しめるサウンドだ。今作はなにやらコンセプト作らしく、物々しい語りで始まる。
ヴァイオリンにエレキギターが大胆に交わり、濃いめの男性ヴォーカルが歌い上げると
どことなくオペラティックな雰囲気になる。艶めいた女性ヴォーカルの歌唱に、美しいピアノ、フルートで
ゆったりと聴かせる曲など、聴き所も多く、ロックフォーマットされたトラッドサウンドがやはり斬新だ。
哀愁とポップ感覚を持ち合わせた、濃密で異境的なトラッドロックの好作品だ。
メロディアス度・・8 辺境トラッ度・・8 ロック融合度・・9 総合・・8
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KORMORAN「A LOVAK ALMA」
ハンガリーのトラッドロックバンド、コルモランの2004年作
さて今作は、古楽的なアコースティック要素とモダンでデジタリィなアレンジが融合した、
現代的なトラッドロックサウンドとなっている。ぱっと聴きにはポップですらある女性Voの歌声や
男女のコーラスワークに、ヴァイオリン、パイプ類が重なる部分はVARTTINAあたりを思わせ、
ロックドラムによるビート感覚と、キャッチーなメジャー感のあるメロディをトラッド風に聴かせる。
古くささを感じさせず、老若男女問わずに気軽に親しめる作品に仕上げたベテランらしい
てらいのなさが嬉しい。 バンドのディスコグラフィーについてはこのページを参照。
メロディアス度・・8 トラッ度・・8 モダンなアレンジGoo度・・9 総合・・8
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KORMORAN「Magyarnak Lenni Hivatasunk」
ハンガリーのトラッドロックバンド、コルモランの2005年作
結成30年にも及ぶベテランバンドで、早くからハンガリアントラッドとロックサウンドを融合させた、
独自の音楽性を確立していた。今作も、おそらく伝統曲をベースにしてアレンジしたトラッドロックで
ヴァイオリンやパイプが鳴り響き、母国語の女性ヴォーカルがオペラティックに歌いあげる。
ギター、シンセ、ドラムが加わると、シンフォニックロックとしてのダイナミックな醍醐味も味わえて、
メロディにはキャッチーな大衆性もあるという、そのパランス感覚も含めて素晴らしく見事な出来映えだ。
メロディアス度・・9 トラッ度・・8 東欧度・・10 総合・・8.5
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KORMORAN 「Kapuk」
ハンガリーのトラッドロック、コルモランの2007年作
1984年にデビュー、トラッドとロックを融合させ、キャッチーな普遍性を有したサウンドで、
多数のアルバムを作り続けている。本作もバグパイプやヴァイオリンの音色が鳴り響き、
女性ヴォーカルの母国語による歌声を乗せた、メロディックな明快さをもった聴き心地だ。
トラッド的な素朴さと土着的なメロディを、ここまでメジャー感をともなって仕上げられるのは、
たとえばフィンランドのVarttinaあたりにも通じるセンスと演奏力があるからだろう。
プログレ的なテクニカルな感触のナンバーや哀愁の叙情をじっくりと聴かせるナンバーなど、
アルバムとしてのメリハリもしっかりとある。女性声の魅力もたっぷりの傑作です。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 トラッドロック度・・9 総合・・8 
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KORMORAN 「Gaspar Almos : Balvanyosvar Legendaja」
ハンガリーのトラッドロック、コルモランの2008年作
いったいすでに何作存在しているのか分からないほど多作だが、そのどれもが質が高いので無視できないという。
本作はジャケのイメージからも分かるように、中世を舞台にしたようなコンセプト的な作品のようで、
美しいシンセに叙情的な泣きのギターが重なり、シンフォプログレとしてのつかみはばっちり。
素朴なフルートの音色やヴァイオリンの音色が加わると、中世風味のトラッドプログレとなり、
じつに自然なアレンジでロックフォーマットとの融合がなされているのは脅威的な完成度である。
今作は2~3分の小曲を連ねた構成で、インストが中心であるが、ときに女性声のスキャットが入ったり、
オーケストラアレンジも加わったりと、メリハリに富んだ構成も光る。壮麗なる中世シンフォニック・トラッドロックである。
ドラマティック度・・8 壮大度・・8 トラッドロック度・・9 総合・・8
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KORMORAN 「Farkasok Eneke」
ハンガリーのトラッドロック、コルモランの2008年作
ヴァイオリン、フルートの音色がエレキギターにまじわり、ロックなアンサンブルに乗る、
クオリティの高いトラッドロックは本作でも健在。男女ヴォーカルのハーモニーとともに、
爽快な躍動感と重厚なスケール感を描いてゆく、そのサウンドはまさに円熟の境地にある。
本作ではいつも以上にギターが活躍しているので、フォークメタルなどのファンにも楽しめるくらいの、
堂々たるダイナミズムに包まれた聴き心地である。3~5分台中心の楽曲は、比較的シンプルな構成なので
濃密すぎずに聴きとおせる。涼やかなトラッドメロディをロックフォーマットで聴かせる高品質作。
ドラマティック度・・8 壮大度・・8 トラッドロック度・・9 総合・・8
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KORMORAN 「MAGYAR KETTOS」
ハンガリーのトラッドロック、コルモランの2010年作
1984年にデビュー、トラッドとロックを融合させたダイナミックなサウンドで、多数のアルバムを作り続けている。
本作は、のっけからいつになくメタリックなギターによるハードな感触に、ヴァイオリンやフルートの音色が重なり
男女ヴォーカルの母国語の歌声を乗せた、トラッド・ハードロックというべきサウンドが広がってゆく。
随所にフォーキー土着性を含んだメロディと、ロックとしての躍動感が絶妙に合わさり、言語を除けば、
むしろ堂々たるメジャー感すら漂わせる聴き心地である。雄大なまでの叙情性と奇跡的なキャッチーな感触で、
細やかなアレンジの質の高さで構築された楽曲は、ドラマティックな美意識とともにロックオペラのような華麗さである。
ドラマティック度・・8 壮大度・・9 トラッドロック度・・8 総合・・8.5
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KORMORAN 「Angyalok Enekei」
ハンガリーのトラッドロック、コルモランの2013年作
ヴァイオリンやバグパイプ、フルートの音色が、ギターやシンセと融合したトラッドロックを基本に
母国語による男女ヴォーカルの歌声を乗せ、シンフォニックかつゴージャスな味付けをしたサウンドは、
本作でも華麗に炸裂。オーケストラアレンシ゜を含む厚みのあるアンサンブルと、素朴な民族的なメロディが合わさり、
究極のシンフォニック・トラッドロックを描いてゆく。朗々とした男性Voと女性Voのオペラティックな掛け合いも素晴らしい。
優美なクラシカル性にうっとりしつつ、シアトリカルでもあるドラマティック性に高揚する。これぞまさに世界最高のトラッド・ロックオペラである。
ドラマティック度・・9 壮大度・・9 トラッドロック度・・9 総合・・8.5
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KRZYSZTOF LEPIARCZYK 「GAME OF SYMPHONY」
ポーランドのミュージシャン、クリストフ・レピアルツィクの2021年作
LOONYPARKなどで活躍するシンセ奏者で、本作はタイトルのようにゲームのサントラをイメージしたという作品。
壮麗なシンセアレンジにクラシカルなピアノ、オペラティックな女性ヴォーカルのスキャットを乗せて、優美なサウンドを描く。
1曲目はリズムはシーケンサーがメインながら、ときおりドラムやギターも入ったりと、随所にロック感触も覗かせる。
キラキラとしたポップなパートや、優雅なシンフォニック性も同居して、美しい女性スキャットとともに耳心地のよい作品だ。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・8 総合・7.5
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LANTINOR (Лантинор)「ENSIGN OF FAIRIES vol.1 (Знамя Фей. Книга 1)
ロシアのプログレバンド、ランティノールの2013年作
いかにもアマチュア臭いジャケであるが、内容はファンタジー世界を思わせるB級シンフォという聴き心地で
完成度はともかくとして、この幻想的な雰囲気は悪くない。メロディックなギターワークにロシア語の歌声、
アコースティカルで素朴な感触も含みつつ、ときにエキセントリックで唐突な展開も垣間見せる。
15分、21分という大曲もあるのだが、これが正直どうも退屈で、ときおり女性ヴォーカルか絡んだりするのはいいのだが、
せめてもう少しドラマティックな盛り上がりが欲しい。あるいはサイケ寄りのふわふわとした未構成感でせめるなら、
もっとおバカにしないと。シンフォでもフォークでもサイケでもヘンタイでもないという、どっちつかずのアルバム。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 楽曲・・6 総合・・7


LIFT「1」
旧東ドイツのプログレバンド、リフトの1st。1977年作
ドイツ語によるヴォーカルと、フルートの音色にオルガンが鳴り響く、キャッチーで牧歌的なサウンド。
楽曲は3、4分台が中心で、プログレというほど複雑ではなく、むしろポップな歌ものという感触が強いが、
10分近い大曲では、サックスなどが加わって、インストを主体にしたプログレ的な構築センスを覗かせる。
プログレとして聴くには次作の方だろうが、70年代東欧ロックの好作であるのは間違いない。
現在は、代表作である2作目とのカップリング盤でリマスター再発されている。
メロディアス度・・7 プログレ度・・7 ゲルマン度・・8 総合・・7
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LIFT 「Spiegelbild & Nach Hause」
旧東ドイツのプログレバンド、リフトの3rd/4th。1981/1987年作
1977年にデビュー、本作は3作目と4作目のカップリング盤。きらびやかなシンセにサックスが鳴り響き、
ドイツ語のヴォーカルを乗せた、軽快でキャッチーな味わいのシンフォニックロックを聴かせる。
巧みなドラムとベースによる確かなアンサンブルに、RICK WAKEMANばりのシンセが弾きまくり、
ピアノやチェロ、フルートなどのクラシカルな優雅さも含んだ、メロディアスなシンフォプログレが楽しめ、
個人的には、代表作とされる2作目よりも、この3作目の方が出来が良いのではないかと思う。
4作目になると、ギターが加わったことでAOR風の感触が強まり、80年代的産業ロックの聴き心地に、
曲によってはASIAのようなキャッチーなプログレハードとしてもわりと普通に楽しめる。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 東欧度・・8 総合・・8
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Liquid Shadow 「Spectrum
ポーランドのハードシンフォニック、リキッド・シャドウの2008年作
女性Voにツインギター、シンセを含む6人編成で、本作は2001年~2003年の未発音源をまとめた作品。
曲はどれも3~6分程度で、適度にハードな聴き心地と、中音域の女性ヴォーカルの歌声とともに、
いくぶん翳りを帯びた叙情性も感じさせる。英語よりもポーランド語で歌われる曲の方が、
しっとりとしたヨーロピアンな情感があって、メランコリックな雰囲気が楽しめる。全15曲も入っているが、
これだというインパクトがないのが惜しい。マイナー系特有の突き抜けきれないメロディも含めて、
ある意味では、わりとポーランドらしい作品といえるかもしれない。
メロディック度・・7 プログレ度・・7 女性Vo度・・7 総合・・7.5
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LITTLE TRAGEDIES「PORCELAIN PAVILION」
ロシアのシンフォニックロック、リトル・トラジェディースの2000年作
一曲目のクラシカルかつ壮大なシンセが鳴り出した瞬間に衝撃が走りました。二人組のユニットですが、
多彩なキーボード、シンセ、ピアノをメインにした格調高いアカデミックなメロディと、
ときにポップかつキャッチーな歌を聞かせてくれます。壮大華麗に弾きまくったかと思えば、
しっとりとした叙情もあり、ロシアのバンドにしては硬質な印象は受けません。母国語の歌唱もいい感じ。
しっかりとしたクラシックの素養を持ちながら、独自のセンスで音楽を作っているという印象で楽曲には余裕と自信とがうかがえ、
ありがちなシンフォニックに陥っていないのが凄いです。ひと言で表すなら、SOLARIS+SAGRADOという感じでしょうか。
シリアスさとクラシカルさ、そして温かみを持ったキーボードシンフォの傑作です。
シンフォニック度・・9 キーボー度・・9 音楽センス・・9 総合・・8.5◆プログレ名作選入り
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LITTLE TRAGEDIES「THE SUN OF SPIRIT」
ロシアのシンフォニックロックバンド、リトル・トラジェディーズの2000作
録音が1998年となっているので、実質的にはこちらが1stなのかもしれない。
「PORCELAIN PAVILION」はのっけからたたみかけるような大仰さで腰を抜かしたが
今作はゆったりとしたシンセからはじまり、じわじわと盛り上げてゆく感じ。
クールでシリアスでありながらも、音にはどこかやわらかみがあるのがポイント。
相変わらず、過剰なまでにシンフォしているキーボードはその筋のファンにはたまらないものがある。
シンフォニック度・・8 キーボー度・・9 楽曲・・7 総合・・8



LITTLE TRAGEDIES「RETURN」
ロシアのシンフォニックロックバンド、リトル・トラジェディーズの3rd。2003年作
今回もEL&Pばりに派手なキーボードを中心に、壮麗かつこけおどし感抜群なサウンドで
弾きまくり&盛り上がりまくりの大仰シンフォなサウンドに、思わずにやにやとしてしまう。
ともかく、全編にわたってのテンションの高さ、ときらびやかなシンセの元気の良さは相当のもので、
かつてのRUMBLIN' ORCHESTRAあたりを思わせるほどだ。一応しっとりとした歌もの系曲もあり、
押すだけでないところも聴かせる。ともかく、派手系の弾きまくりシンフォが好きな方は必聴。
シンフォニック度・・9 ハイテンション度・・10 キーボー度・・9 総合・・8
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LITTLE TRAGEDIES「NEW FAUST」
ロシアのシンフォニックバンド、リトル・トラジェディーズの4th。2006年作
毎回、「超」がつくほどのド級のシンフォニック作を聴かせてくれる、ロシアきってのプログレシンフォバンド、
前作も思わず笑ってしまうほどの大盛り上がり大会であったが、この新作はそれらをも上回る出来。
タイトル通り、ゲーテの「ファウスト」を新解釈したコンセプト作で、クラシックのメロディや古典の文献からの引用など、
恐ろしく気合の入ったCD2枚組作品となっている。とにかく弾きまくりのコテコテのキーボード、クラシカルかつ優雅なメロディに
むせび泣くギターが加わっての怒濤の盛り上がり。どこを切っても、手抜きなしの濃密シンフォニックサウンドでとんでもなく濃密な味わい。
物語的に進んでゆく楽曲構成は、2枚組み作品としての長大な流れも見事にかみ合っていてまるで壮麗な古典絵巻を聴いているかのよう。
血湧き肉躍るメロディの大洪水に顔がにやけっぱなし。まさに美麗大仰シンフォのド傑作とはこのことだ!
シンフォニック度・・9 プログレ度・・8 ドラマティック度・・10 総合・・9
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LITTLE TRAGEDIES「The Six Sense」
ロシアのシンフォニックバンド、リトル・トラジェディーズの5th。2006作
これでもかというほどの大仰シンフォの傑作であった前作からわずか1年足らずでもう新作を作るとは…なんともおそるべき創作意欲である。
今作は従来のコテコテ路線からやや変わり、キレのある展開とメジャー感のあるキャッチーさがポイントで、
クラシカルに弾きまくり、盛り上げるシンセは相変わらずだが、ハードエッジな部分と、メロディアスな部分とのメリハリがついている。
ロシア語の歌唱によるシアトリカルな響きに、優雅なチェンバロの音色、泣きのギターと優しげなサックスの音色がドラマティックに絡まり合う。
濃密でありながらも口当たりがよいという傑作。やはりロシア恐るべし。前作に引き続き必聴ですよ。
シンフォニック度・・8 メロディアス度・・8 ドラマティック度・・9 総合・・8.5
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LITTLE TRAGEDIES「CHINESE SONGS」
ロシアのシンフォニックロックバンド、リトル・トラジェディーズの6th。2007作
今作ものっけから大仰弾きまくりでくるのかと思いきや…いつになくしっとりとした典雅な雰囲気で始まってやや肩すかし。
しかし2曲目になると、相変わらずの高血圧ぎみシンフォニックサウンドが炸裂。
いつもの作品よりは音作りが優雅に聴こえるのは、タイトル通り、中国の歴史的な世界観をコンセプトにしたせいもあるだろう。
なにせこれまでの作品が凄すぎたので、どうしても地味に聴こえてしまうのだが、
普通のバンドのレベルで考えれば充分に美麗シンフォニックサウンドといってよい。
シンフォニック度・・8 大仰度・・8 いつになくたおやか度・・9 総合・・8
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Little Tragedies「Chinese SongsPart 2
ロシアのシンフォニックロックバンド、リトル・トラジェディーズの2007作
中国の詩歌をテーマにした前作は、このバンドにしてはやや地味であったのだが、これはその続編。
のっけからギターとシンセ、サックスによる優雅なクサメロともいうべき叙情美で押してくる感じは、
やはりそんじょそこらのバンドにはない、このバンドならではの濃厚さが感じられる。
いかにもシンフォニックな大仰シンセワークに、ときにけたたましいくらいのドラム、
そして巻き舌のロシア語ヴォーカルで、いくら繊細に作ろうとしてもこってり味となるボルシチのようだ。笑
シンフォニック度・・8 繊細だが濃密度・・8 ロシア度・・9 総合・・8
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Little Tragedies「Cross」
ロシアのシンフォニックロックバンド、リトル・トラジェディーズの2008年作
2000年にデビューしてから、そのクラシカルかつ大仰きわまりないド級のシンフォニックサウンドで
多くのシンフォ大好きリスナーを悶絶させてきたこのバンドも、これで早8作目となる。
今作は無駄に紙ジャケだし、ジャケデザインもメンバー写真もダサイのだが、内容は最高。
ムーグにハモンドで弾きまくり鳴りまくりのシンセと、クサメロたっぷりのギターを中心に、
きらびやかに盛り上げまくりのシンフォニックロックがこれでもかと炸裂してます。
それでいて古くさいわけではなく、しっかりと楽曲としてよくできているというのは、
基本に作曲センスの良さがあるからなのでしょうな。濃厚な1曲目のあとは、
しっとりとした叙情を聴かせる曲もあり、クラシカルで優雅な趣もなかなか心憎い。
巻き舌ヴォーカルもいい感じです。19分の大曲含む72分のロマン大作。マイスペはこちら
シンフォニック度・・9 クラシカル度・・8 キーボー度・・8 総合・・8.5

Little Tragedies「The Paris Symphony」
ロシアのシンフォニックロックバンド、リトル・トラジェディーズの2009作
ロシア最強のクラシカルシンフォバンド、本作はデビュー前の1997年の音源を新たにリリースしたもの。
きらびやかなシンセを中心にした濃密かつ華麗なサウンドは、すでに確立されていて、
聴いていて思わず笑いが込み上げてくるほどに派手で大仰。
ただ後のアルバムのように計算された盛り上がり、構築性にはやや薄く、
音質を含めたサウンド、メロディなどの質の点でもデモの延長という雰囲気。
シンフォニック度・・8 クラシカル度・・8 大仰度・・9 総合・・7.5
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LITTLE TRAGEDIES 「OBSESSED」
ロシアのシンフォニックロックバンド、リトル・トラジディーズの2011年作
名実共にロシアを代表するシンフォニックロックバンド。9作目となる本作も相変わらず素晴らしい。
泣き泣きのギターに、哀愁ただようロシア語のヴォーカル、美麗なシンセワークとともに
クラシカルな優雅さと叙情メロディまくりで聴かせる、まさに桃源郷的シンフォサウンド。
非常に濃密でありながら、センスのある構築美で描かれる流れるような展開力は、
洗練された円熟の域にあり、叙情性と大仰なスケール感を見事に両立させている。
ロシアというより、いまや世界最高のシンフォニックロックバンドと言っていいだろう。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・8 泣きメロ度・・9 総合・・8.5
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Little Tragedies 「At Night」
ロシアのプログレバンド、リトル・トラジディーズの2014年作
2000年にデビューしてから、高品質なシンフォニックロック作品を作り続けるこのバンド、
10作目となる本作も、1曲目から12分の大曲で、ハードなギターにオルガンとムーグシンセがかぶさる
古き良き感触の大仰系シンフォプログレ・サウンドが炸裂する。EL&PかGERARDかという鍵盤ワークに、
ロシア語の歌声が加わった濃密な聴き心地、そして緩急自在のドラマティックな展開力はさすがの完成度。
本作には、サックス、トランペット、トロンボーンというホーンセクションも参加していて、随所にクラシカルな優雅さと
オーケストラルな音の厚みを楽曲に付加している。押すだけではなく繊細で叙情的な小曲などもあって、
濃厚であるが優雅な美しさを保っているのは奇跡的というべきだろう。相変わらずの素晴らしい大傑作!
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 濃密度・・9 総合・・8.5 
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LIZARD 「W Galerii Czasu」
ポーランドのプログレバンド、リザードの1996年作
美麗なシンセアレンジに叙情的なギターワーク、母国語によるマイルドな歌声を乗せた
ポーランドらしい翳りを含んだシンフォニックロック。緩急の付いたダイナミックなアンサンブルは
確かな演奏技術もあって躍動的な聴き心地で、適度なハードさとスタイリッシュでモダンな香りを感じさせる。
次作以降へとつながるクリムゾン的なスリリングな展開力も覗かせつつ、本作ではまだメロウな叙情が前に出ている。
10分前後の大曲を含む構築センスも見事で、90年代のポリッシュ・プログレとしては出色の出来だろう。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 ダイナミック度・・8 総合・・8
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Lizard 「Noc Noc Zywych Jasxczurow」
ポーランドのプログレバンド、リザードのライブ。1999年作
1996~1997年に行われたポーランドでのライブを収録。のっけからKING CRIMSON「21世紀の精神異常者」で、
クリムゾンフリークぶりを暴露。確かな演奏力とともに、ヴァイオリンを加えた優雅なカヴァーで楽しめる。
その後は、1stアルバムからの曲をまじえつつ、再びクリムゾンの「ムーンチャイルド」を演奏し、さらには
「The Court of The Crimson King」を披露、はては、U.K.の「In The Dead of Night」までやってしまうという、
半分がカヴァー曲というのが微笑ましいが、12分の大曲などオリジナルナンバーの構築力も見事で、
次作以降のプログレバンドとしての深化を思えば、まさに実力派バンドの面目躍如というところだろう。
ライブ演奏・・8 プログレ度・・8 カヴァー度・・8 総合・・8 
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LIZARD「PSYCHOPULS」
ポーランドのヘヴィシンフォニックロックバンド、リザードの2nd。2004年作
前作は、翳りある叙情を含んだダイナミックなシンフォニックロックだったが、
この2ndではKING CRIMSONの「太陽と戦慄」、「RED」期あたりを思わせる音になっている。
ゲストによるヴァイオリンもなかなか効果的で、ポーランドらしいほのかな翳りを垣間見せながら、
適度に緊張感をかもし出すヘヴィ・シンフォニックサウンドを形成している。
演奏にしろ楽曲にしろ、ただのフォロワー以上のセンスを感じるものがある好作だ。
メロディアス度・・7 シンフォニック度・・7 ヘヴィシンフォ度・・8 総合・・7.5
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LIZARD 「TALES FROM ARTICHOKE WOOD」
ポーランドのプログレバンド、リザードの2005年作
1996年にデビュー、クリムゾンをルーツにしたシンフォニックロックを聴かせるこのバンド。
本作は3作目で、軽やかなドラムと巧みなベースによるリズムに、やわらかなシンセアレンジと、
マイルドなヴォーカルを乗せて、スタイリッシュな叙情に包まれた軽妙なサウンドを聴かせる。
随所に艶やかなヴァイオリンも重なって、美しいシンセとともに優雅なシンフォニック性に包まれながら、
ポーランド語の歌声が東欧らしい湿り気を帯びた空気を描く。演奏力の高さがインストパートでの説得力となり、
ほどよい緊張感を作り出しているのが見事。ポリッシュ系プログレの中でも、玄人好みの質の高さが光る逸品だ。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 優雅度・・9 総合・・8 
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Lizard 「Spam」
ポーランドのプログレバンド、リザードの2006年作
90年代から活動する中堅バンド。ハードなギターワークとヴァイオリンが鳴り響き、
母国語の男性ヴォーカルがマイルドに歌い上げる、薄暗さをまとったハードプログレサウンド。
初期のRiversideのようなモダンなアレンジセンス、優雅なヴァイオリンの音色が合わさって
適度な緊張感をともなったアンサンブルがゆるやかに楽曲を盛り上げてゆく。
派手な展開というものはないのだが、じわじわとした心地よさが広がってゆく、不思議な魅力がある。
8分、9分、12分という大曲を構築する力量と、確かな演奏の強度とがそなわった力作だ。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 薄暗度・・8 総合・・8
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Lizard 「Master & M」
ポーランドのプログレバンド、リザードの2013年作
90年代から活動するキャリアのあるバンドで、本作はコンセプト的な世界観に包まれたような、
ゆったりとした歌もの的な始まりからして異色で、これまでにない濃密な世界観を感じさせる。
ハードめのギターが入って来て、クリムゾン的な偏屈な知的さを組み込んだアンサンブルに、
母国語によるヴォーカルが東欧的な雰囲気をかもしだす。かと思うとムーグシンセなどが加わって
シンフォ系プログレの側面も垣間見せる。モダンな感触に包まれながら、先の読めないミステリアスな空気感と、
スケールの大きな構築センスによって、10分以上の大曲もじっくりと重厚なサウンドで描かれる。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 重厚度・・8 総合・・8
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LIZARD 「HALF-LIVE」
ポーランドのプログレバンド、リザードの2018年作
1996年にデビュー、本作は6作目で、44分におよぶ大曲を収録した異色のアルバム。優美なピアノとヴァイオリンのイントロから、
グルーヴィなベースとギターが加わり、KING CRIMSONを思わせる軽妙にしてスリリングなアンサンブルが広がってゆく。
優雅なインストパートを主体にしつつ、母国語によるヴォーカルが随所によいアクセントになっていて、全体的にはシンフォというより、
クールで知的な聴き心地に包まれているが、後半はきらびやかなシンセパートも現れたりオルガン鳴り響くオールドなロック感触から、
優雅なジャズロック調まで変幻自在。キャリアのあるバンドらしい自由度の高い作風で、玄人好みのプログレを構築する。
ドラマティック度・7 プログレ度・8 知的度・8 総合・8 
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LOONYPARK 「Egoist」
ポーランドの女性Voシンフォバンド、ルーニーパークの2008年作
メロウなギターワークとしっとりとしたシンセ、そこに女性ヴォーカルの歌声を乗せた
いかにもポーランドらしい翳りのあるシンフォニックロック作品です。
かつてのQUIDAMを思わせるようなゆったりとした叙情性が耳に心地よく、
ジャケの雰囲気からは想像がつかないような美しく優しげなサウンドだ。
包み込むようなオーケストラルなシンセワークも見事で、
ほの暗い女性Voのメロディックロックという点ではAll About Eve風味もある。
メロウ度・・8 叙情度・・8 女性Vo度・・7 総合・・8
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LOONYPARK 「Unbroken Spirit Lives In Us」
ポーランドのシンフォニックロック、ルーニーパークの2014年作
適度にモダンでハードエッジな感触を含んだサウンドに、情感豊かな女性ヴォーカルの歌声、
ホーランドらしいほの暗い叙情性と、ネオプログレ以降のダイナミックな展開美も備わっている。
NEMESISやLIQUID SHADOWにも参加したシンセ奏者による多彩なアレンジも光っていて、
しっとりとしたメロウな要素とハードシンフォのドラマ性が同居したクオリティの高さはさすが。
各楽曲ごとのフックのある構成も見事な傑作だ。現在形女性声シンフォの代表になれるだけの逸材ですな。
ドラマテイック度・・8 プログレ度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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LOST WORLD「AWAKENING OF THE ELEMENTS」
ロシアのシンフォニックロック、ロスト・ワールドの2nd。2006年作
驚異の大仰シンフォバンド、LITTLE TRAGEDIESの存在で注目されるロシアから、
またハイクオリティなバンドが登場した。三人編成でDrは打ち込み、オールインストながら
ヴァイオリン、フルート入りでクラシカルなメロディを奏でるサウンドは説得力充分。
一方、押すだけではなくアコースティカルな格調高さも有り、リトトラに比べて優雅さも備えている。
シリアスな雰囲気は、AFTER CRYINGにも通じる重厚さをかもしだしていて、
硬質感のあるピアノとエレクトリックヴァイオリンがハードシンフォな質感でたたみかける。
また、尖ったギターとフルートで聴かせる、ハードなSOLARISという感じの曲もあり、
案外幅広い音楽性を聴かせてくれる。今後の進化にも要注目のバンドである。
シンフォニック度・・8 クラシカル度・・9 楽曲・・8 総合・・8
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Lost World Band「Sound Source」
ロシアのプログレバンド、ロスト・ワールド・バンドの2009年作
2006年の「AWAKENING OF THE ELEMENTS」は、After Cryingばりの力作であったが、
今作では正式にドラムが加わり4人編成のバンドとなった。3、4分台の楽曲を中心に、
軽快なアンサンブルで聴かせるフュージョン風味と、ヴァイオリンやフルートが鳴り響く
叙情性が合わさった濃密な作風で、切れ味のよいリズムは日本のKENSOあたりにも通じる。
ベースの存在感も含めた重厚なヘヴィさも含みつつ、メロディにはクラシカルな優雅さも備わっていて、
オールインストながらも、スケールを感じさせる展開力は素晴らしい。じつにクオリティの高い傑作です。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 軽快&優雅度・・9 総合・・8.5
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LOST WORLD BAND 「In Concert」
ロシアのシンフォニックロック、ロスト・ワールド・バンドのライブ作品。2011年作
2009年母国ロシアでのライブステージを収録。美しいフルートのイントロからヴァイオリンが激しく鳴り響き、
テクニカルなアンサンブルで優雅で軽やか、そしてスリリングなサウンドを描いてゆく。
しっかりとリズムを支えるドラムに、クラシックの素養を感じさせるヴァイオリンとフルートの二人、
そのどちらもがギターを弾きこなせるというメンバーの確かな演奏力も音楽的な説得力となっている。
歌入りのキャッチーなナンバーやハードなギターで聴かせるナンバー、しっとりとフルートの美しい叙情曲まで
ロックとクラシックの融合という側面で考えても、堂々たる見事なライブ演奏である。
クラシカル度・・8 ライブ演奏度・・8 優雅度・・9 総合・・8
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Lost World Band 「Solar Power」
ロシアのシンフォニックロック、ロスト・ワールド・バンドの2013年作
2作目まではドラムが不在であったが、前作から名実ともにバンド体制になって本作が通算4作目。
前作「SOUND SOURCE 」も大変に素晴らしい傑作であったが、本作も艶やかなヴァイオリンの音色に、
やわらかなフルートの音色を乗せた、日本のKBBやKENSOなどを思わせる軽妙なアンサンブルと、
クラシカルな構築美が合わさったきらびやかなインストサウンドが楽しめる。楽曲自体は3~5分と長すぎないのだが、
軽やかな優雅さの中に、随所にプログレらしい屈折感を盛り込むセンスはさすがというところ。
歌入りの曲でゆったりと聴かせたかと思えば、たたみかけるようなスリリングなナンバーもあり、
アルバムとしてのメリハリの付け方も堂に入っている。じつに洗練されたクラシカルシンフォの傑作です。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 軽妙で優雅度・・8 総合・・8
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LOST WORLD BAND「AWAKENING OF THE ELEMENTS Revisited」
ロシアのシンフォニックロック、ロスト・ワールド・バンドの2014年作
2006年の2ndのリメイク版で、打ち込みだったドラムを録音しなおし、ギターやストリングスパートも大幅に加えた
ほとんど新録といってよい内容である。ヴァイオリンやフルートが優雅に鳴り響き、シンセやギターとともに、
軽やかで流麗なアンサンブルを形成、なにより生のドラムによるダイナミズムが加わったことで、
シンフォニックロックとしての音の迫力が増している。クラシカルにヴァイオリンを聴かせるチェンバーロック的な組曲など、
随所にアコースティカルな叙情性とアカデミック性を含ませながら、プログレとしての躍動感を伝える演奏力は素晴らしい。
フルート入りのナンバーでは、ハンガリーのSOLARISに通じるような感触もある。優雅にしてスリリング…クラシカルプログレの傑作に間違いない。
クラシカル度・・8 プログレ度・・8 優雅度・・9 総合・・8
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LOST WORLD BAND 「Of Things And Being」
ロシアのシンフォニックロック、ロスト・ワールド・バンドの2017年作
2003年にデビュー、LOST WORLD時代から数えての通算5作目となるアルバムで、
のっけから4部構成の組曲で始まる。艶やかなヴァイオリンとシンセが絡み、軽快なアンサンブルとともに、
優雅なクラシカル性に包まれたインストサウンドが広がってゆく。やわらかなフルートにヴァイオリンの音色に
ときにハードエッジなギターも切り込みながら、テクニカルな変則拍子を含む知的な構築性で、
チェンバーロック的でもあるアプローチをシンフォニックロック風に昇華したという聴き心地。
偏屈気味のほどよいアヴァンギャルド性も含めて、玄人好みの作品に仕上がっている。
クラシカル度・・9 プログレ度・・8 優雅で軽妙度・・9 総合・・8 
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LOST WORLD BAND「Spheres Aligned」
ロシアのプログレバンド、ロスト・ワールド・バンドの2019年作
2003年にデビュー、いまやロシアを代表するバンドの6作目。女性シンセ奏者を含む5人編成で、
艶やかなヴァイオリンにギターが重なり、躍動的なアンサンブルとともに、優美なフルートが鳴り響く、
クラシカルなシンフォプログレを展開。軽妙なテクニカル性は日本のKENSOを思わせる部分もあり、
きらびやかなシンセワークに技巧的なギターもセンス抜群。同郷のLITTLE TRAGEDIESを思わせる、
濃密なシンフォニック性と、高度な演奏力による知的な展開美が合わさった、優雅なサウンドに聴き惚れる。
ヴォーカル入りのキャッチーなパートも含めて、クラシックとロックをスタイリッシュに融合させる卓越したセンスが光る。
最高傑作であった3rd「Sound Source」を超えようかという完成度。これは新たな傑作の誕生である。必聴級。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・9 優雅度・・9 総合・・8.5 
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LOST WORLD BAND 「LOST WORLD 1992 」
ロシアのプログレバンド、ロスト・ワールド・バンドの2020年作
デビューより前の1992年に企画されていた音源をもとに、あらたな録音音源を合わせて完成された作品で、
艶やかなヴァイオリンに優美なシンセを重ね、マイルドなヴォーカルとともに、やわらかなシンフォプログレを聴かせる。
現在のバンドのサウンドに比べると、レトロなオルガンやフルートなどフォークロック風味の素朴な牧歌性も感じさせ、
楽曲自体も2~5分前後とわりとコンパクトなので、ドラマティックな展開などはさほどないのだが、これはこれで
ゆったりと味わえる。ラスト曲は、のちの作風に通じるような、ヴァイオリン鳴り響くクラシカルプログレが楽しめる。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・8 総合・7.5 
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LOVE DE VICE 「Dreamland」
ポーランドのシンフォニックロック、ラブ・デ・ヴァイスの2011年作
ツインギターにシンセを含む5人編成で、メタリックな感触を含んだ適度にハードなギターと
美麗なシンセアレンジで聴かせるサウンド。メランコリックな情感を含んだところは、
ゴシックロック風味であったり、モダンロック的なノリもあったりと、つかみどころのなさが
個性とまではなっていないのが惜しい。叙情的なシンフォをベースにした質の高い好作ではある。
メロディック度・・7 プログレ度・・7 叙情度・・8 総合・・7.5


Lunatic soul
RIVERSIDEのMariusz Dudaを中心としたユニット、ルナティック・ソウルの2008年作
薄暗い叙情と浮遊感で聴かせる、ゆったりとしたサウンドに、けだるげなヴォーカルを乗せた作風は、
RiversideINDUKTIの静寂部分を取り出したようなイメージもある。アコースティックギターにシンセ、
パーカッションが絡み、フルートの音色が響く中を、モノクロームの暗がりに包まれた幽玄な世界観を描き出す、
その世界観は、よりしっとりとした、PINK FLOYD的なアプローチとも言えるかもしれない。
エスニックな旋律をハードプログレ的に聴かせる部分もあって、上記したバンドに興味があるリスナーなら聴いてみて損はない。
メロディアス度・・7 暗がり度・・8 叙情度・・8 総合・・8
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Lunatic Soul 「Lunatic Soul 2」
RIVERSIDEのVo&B、Mariusz Dudaによるソロユニット、ルナティック・ソウルの2010年作
うっすらとしたシンセアレンジに、やわらかなヴォーカルで聴かせる、繊細なポストプログレ系サウンド。
アコースティカルなギターには前作にもあったようなエスニックな感触も混じり、薄暗い叙情に包まれた楽曲は、
ときにミステリアスな浮遊感も漂わせる。ほとんどドラムが入らないのでロック的なダイナミズムは薄いが、
パーカッション的なリズムが入った民族要素も覗かせるなど、モダンさと人間味がバランスよく昇華された
アーティスティックなセンスが光っている。いかにもKScopeらしい好作品。Nosoundあたりが好きな方もチェック。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 繊細度・・8 総合・・8
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Lunatic Soul 「Impressions」
ポーランドのポストプログレ、ルナティック・ソウルの2011年作
Rivesideのリーダーであるマリウス・デューダのソロプロジェクトで、3作目となる本作は
おそらくタイトルのように習作集で、過去2作を制作した間の未発音源かと思われる。
エレクトロなリズムプログラミングに、シンセやギターを重ねたアンビエントな作風はBrian Eno的で、
シンプルなフレーズをリフレインさせながら、じっくりと内的な叙情を描いてゆくというサウンドだ。
曲によってはわりとギターを中心にしたところもあって、静謐感の中にロック要素を程よく残している。
ほぼオールインストなので、どうしてもBGMになってしまいがちであるが、マリアス氏のファンであれば
彼の音楽センスの一端をしっかりと感じ取れる作品であると思う。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 繊細度・・7 総合・・7.5
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Lunatic Soul 「Walking on a Flashlight Beam」
ポーランドのポストプログレ、ルナティック・ソウルの2014年作
美しいシンセアレンジと、ディレイの効いたシューゲイザー的なトーンのギターが鳴り響き、
エレクトロなモダンさも含んだサウンドは、いわばBrian Enoのようなアンビエントな聴き心地と、
ポストプログレの繊細なはかなさを巧みに融合させている。曲によってはベースによるリズムが、
ほどよいグルーブ感を生み出していて、これまでの作品よりも明快なビート感覚があるので聴きやすい。
12分の大曲も、決して派手に盛り上がることないが、メロウなギターが入ってきたりとシンフォニックな味わいも。
アコースティックの入り方も絶妙で、単なる繊細系ポストプログレ以上の楽曲センスが素晴らしい。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 繊細度・・8 総合・・8
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Lunatic Soul「Fractured」
ポーランドのポストプログレ、ルナティック・ソウルの2017年作
Rivesideのリーダーであるマリウス・デューダのソロプロジェクトで、本作は5作目となる。
エレクトロなヴォイスエフェクトで幕を開け、デジタルなアレンジにマイルドなヴォーカルを乗せた、
薄暗い叙情の繊細なサウンドを聴かせる。曲によっては、適度にロック的なギターを乗せたり、
生々しいドラムによる軽妙なリズムに、美しいピアノにシンセを重ねた優雅な聴き心地も楽しめ、
ストリングスによるシンフォニックな感触もあって、これまで以上にプログレらしさが味わえる内容だ。
12分という大曲では、途中からサックスも加わって、クリムゾン的な雰囲気も覗かせる。
エレクトロなモダンさと、ポストプログレの繊細さが融合した好作品といえる。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 優雅度・・8 総合・・7.5 
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Lunatic Soul 「Under the Fragmented Sky」
ポーランドのポストプログレ、ルナティック・ソウルの2018年作
Rivesideのマリウス・デューダのソロプロジェクトで、本作は6作目。エレクトロなシンセをバックに
優雅なギターの旋律、マイルドなヴォーカルとともに、物悲しくも繊細なサウンドを描き出す。
美しいピアノに叙情的なギターとともに、メランコリックな味わいの歌ものナンバーから、
中近東風味の旋律を乗せた、エレクトロな浮遊感のナンバーなど、わりと幅広い作風で楽しめる。
全36分と、少し物足りなさもあるが、モダンな繊細系ポストプログレが好きな方はいかが。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 繊細度・・8 総合・・7.5 
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M.EFEKT「NOVA SYNTEZA 2」
旧チェコのプログレバンド、モドリー・エフェクトの3rd。1974年作
チェコを代表するプログレバンド、のっけから22分の大作で幕を上げる本作は、
6th以降の洗練された音とは違い、まだいくぶん粗削りな作風であるが、ジャジーな感触も含んだギターに鳴り響くモーグシンセ、
そこにトランペットなどのブラスが加わると、音はぐっとブ厚くなる。母国語による歌声が牧歌的な素朴さをかもしだしつつ、
ときの泣きのメロディで盛り上げ、ダイナミックに展開してゆくサウンドは迫力充分である。シンフォニックロックのスケール感と、
サックスなどのブラスを含むジャズ感触にクラシックの美意識が強引に合わさったというべき、濃密な力作である。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 濃密度・・8 総合・・8
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Modry Efekt & Radim Hiadik
旧チェコスロバキアのプログレバンド、モドリー・エフェクトの4th。1975年作
旧チェコのプログレバンドとしては、Collgium MusicumSynkopyと並ぶ存在で、
本作はギターの叙情フレーズをたっぷりとまぶした、シンフォニックロック的な大曲で始まる。
エレピなどを含んだ優雅な感触はフュージョンロック的でもあり、やわらかなフルートが絡む繊細な美しさも際立っている。
ラディム・ハラディークのギターはジャズやクラシックの素養を感じさせる、FOCUSのヤン・アッカーマンばりのプレイで
サウンドのメロディックかつジャジーな側面を担っている。オールインストであるが、楽曲の展開の多さと構築性に
随所に適度なアヴァンギャルドなセンスも覗かせていて最後まで飽きさせない。ラスト曲はどことなくクリムゾン風。
メロディアス度・・8 プログレ度・・8 ジャジー度・・7 総合・・8
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M EFEKT「SVITANIE」
旧チェコスロバキアのプログレバンド、モドリー・エフェクトの5th。1977年作
本作は彼らの最高作とも呼ばれるアルバム。キーボード奏者にOldrich Veselyが加入したことで、
メロディアスな感触がより強まっており、ヤン・アッカーマンにも通じるセンスの良いギターも
随所に耳心地よいプレイを聴かせる。濃密なシンフォニック性の点では、次作「Svet Hledacu」に譲るが、
ときにFOCUSを思わせるジャジーな要素と、CAMELのような繊細な美意識とともに、スタイリッシュなサウンドが楽しめる。
70年代東欧のプログレ作品としては、クオリティの高い一枚だ。なお、オリジナル盤はジャケが異なる。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 繊細度度・・8 総合・・8
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M.EFEKT「Svet Hledacu」
チェコを代表するプログレバンド、モドリー・エフェクトの6th。1979年作
前作のメロディックなサウンドをさらにシンフォ寄りに仕立てたというサウンドで、スタイリッシュな硬質感がありながらも、
メロディアスなギターを奏でる叙情性もたっぷり味わえる。ツインキーボードの音の重ねも重厚で、
スペイシーなムーグの音使いがいかにも東欧的である。メロウなフレーズから、時折ジャジーなプレイも聴かせる
ギタリストの腕前もかなりのもので、70年代東欧シンフォニックロックとしてはクオリティが高い傑作といえるだろう。
ボーナスに当時のシングル曲の6曲が収録されている。
メロディアス度・・8 プログレ度・・8 東欧シンフォ度・・8 総合・・8
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M.EFEKT「33」
旧チェコのプログレバンド、モドリー.エフェクトの7th。1981年作
SYNKOPYに加入するOidrich Veseleyが脱退し、シンセ奏者には初期のメンバーが復帰している。
前作「Svet Hledacu」よりも いくぶん落ち着いた感があるが、表現豊かなギターフレージングは相変わらず見事で、
その点だけでもFOCUSにも引けをとらない。スペイシーなシンセが加わるとポーランドのSBB後期を思わせるが、
歌ものパートとインスト部でのジャジーかつメロディアスな質感がバランス良く、長い曲でも聴きやすい。
そして随所に東欧的な硬質感もほどよく残っており、メロウであってもべたつかない清涼感が心地よいのである。
個人的にはバンドの最高傑作と呼びたい。再発盤にはライブやシングルからの音源などを多数収録。
メロディアス度・・8 シンフォニック度・・7 ジャジー度・・7 総合・・8
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Mikhail Chekalin 「Concerto Grosso No.1」
ロシアのシンセ奏者、ミハイル・チェッカリンの1989年作
アルテミエフとともに旧ソ連時代を代表するシンセ奏者。多重シンセによるサウンドスケープ的な感触に
チェンバーロック的なミステリアスな雰囲気も含ませつつ、ジャケのような薄暗く怪しげな世界観を描きだす。
クラシカルな優雅さとスケール感のあるアヴァンギャルドな感性を大胆に混在させたという作風は、
あるいは、FAUSTなどのコラージュ的なジャーマンプログレを好むような方にも楽しめるかもしれない。
14分と11分、2曲の大曲を中心に、ボーナスには1990年に録音された20分に及ぶ楽曲も収録。
アルバムタイトルからは、クラシカルなプログレを想像するが、内容はアヴァンギャルドの極地。
ドラマティック度・・7 ミステリアス度・・8 アヴァンギャル度・・8 総合・・8
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Mikhail Chekalin 「Concerto Grosso No.2」
ロシアのシンセ奏者、ミハイル・チェッカリンの1991年作
アルテミエフとともに旧ソ連時代を代表するシンセ奏者。今作も多重シンセによるオーケストラルな壮麗さに、
SEやサウンドコラージュなどを用いたアヴァンギャルドなセンスを含んだ独自の世界観を展開。
映画的なスケール感と、とぼけたようなユーモラスな要素が合わさったという聴き心地である。
15分前後の大曲も3曲あり、詠唱のような歌声が妖しく響き渡り、アルバム後半にはアンビエントな雰囲気と、
やわらかなピアノのつまびきにストリングスが絡んだ、スリリングなチェンバーロック風味も現れる。
クラシカルな優雅さに、アトモスフェリックな幻想性も含んだ、エキセントリックな異色作である。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 アヴァンギャル度・・8 総合・・7.5
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MILLENIUM
ポーランドのシンフォニックロック、ミレニアムの1999年作
うっすらとしたシンセにメロウなギター、母国語によるマイルドなヴォーカルを乗せ
やわらかな叙情に包まれたシンフォニックロック。デイブ・ギルモア的な泣きのギターに、
美麗なシンセワークにうっとりしつつ、母国語のヴォーカルの響きに女性コーラスも加わった、
東欧的なシアトリカルな雰囲気は、同郷のAbraxasなどにも通じる感触だ。
曲によって、ヴァイオリンやサックス、フルートが鳴り響く、優雅なアレンジもよいですね。
ドラマティック度・・8 フログレ度・・7 叙情度・・8 総合・・8

MILLENIUM 「REINCARNATIONS」
ポーランドのプログレバンド、ミレニウムの2002年作
1999年にデビュー、本作は3作目で、美しいシンセアレンジにメロウなギターとマイルドなヴォーカルを乗せ、
東欧らしい翳りのあるゆったりとした叙情美に包まれた、正統派のシンフォニックロック・サウンド。
キャッチーな歌メロと繊細な耳心地は、のちのポストプログレ的な雰囲気も漂わせていて、
曲によっては、Marillionのようなモダンな哀愁のメロディックロックとしても楽しめる。
スリリングな展開というのはあまりないので、ドラマティックな部分での物足りなさはあるが、
随所に聴かせる泣きのギターフレーズとともに、ラストの15分の大曲までゆるやかな叙情美に浸れます。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 叙情度・・8 総合・・8
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MILLENIUM 「DEJA VU」
ポーランドのプログレバンド、ミレニアムの2004年作
1999年にデビュー、本作は4作目で、うっすらとしたシンセにメロウなギター、
マイルドなヴォーカルを乗せた、PINK FLOYDルーツの叙情サウンドを聴かせる。
全体的にプログレ的な展開はあまりなく、キャッチーな歌もの系ポストプログレといった感じで、
ポーランドらしい翳りをおびた空気と、モダンなビート感が同居したようなナンバーもある。
ラスト曲では、ようやくプログレ的なキーボードが現れて、薄暗系シンフォという雰囲気が楽しめる。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 叙情度・・8 総合・・7.5
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MILLENIUM 「INTERDEAD」
ポーランドのプログレバンド、ミレニウムの2005年作
5作目となる本作は、「インターデッド」というタイトルやジャケからも、IT社会への警鐘を感じさせる。
SF的なSEで幕を開け、モダンなリズムにサックスが鳴り響きつつ、マイルドなヴォーカルを乗せた、
叙情ロックという雰囲気はこれまで通り。歌もの色が増していくぶんシンプルにはなっているが、
メロウなギターフレーズを奏でる、シンフォニックロックとしての味わいもしっかりと残している。
演奏力と表現力あるヴォーカルの歌声も含めて、Marillionなどのレベルにも匹敵するクオリティで、
2パートに分かれたラストナンバーでは、ギターとサックスによる泣きの哀愁を聴かせる前半から、
女性コーラスも加えたエモーショナルな歌声とともに、余韻を残しながらコンセプト的に幕を閉じる。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 叙情度・・8 総合・・8
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Millenium 「Exist」
ポーランドのプログレバンド、ミレニアムの2008年作
1999年にデビュー、いまやポーランドを代表するプログレバンドで、本作は7作目となる。
デイヴ・ギルモアばりのサステインの効いたギターにうっすらとしたシンセ、マイルドなヴォーカルを乗せ、
ゆったりとした叙情に包まれた、フロイド・ルーツのシンフォプログレ。12~15分前後の大曲4曲という構成であるが、
長尺感はさほどなく、メロウな泣きのギターフレーズに、オルガンなどのシンセアレンジもツボをついていて、
ほどよく緩急のある展開も覗かせながら、キャリアのあるバンドらしい強度のある世界観を描いている。
ラスト曲での美麗なシンセと泣きのギターには、シンフォニックロック好きならばウットリとなるだろう。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 叙情度・9 総合・8 
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MILLENIUM 「Puzzles」
ポーランドのプログレバンド、ミレニアムの2011年作
1999年にデビュー、本作は8作目で、人の人生をパズルになぞらえた2枚組のコンセプトアルバム。
美しいシンセにメロウなギターの旋律を乗せた、叙情豊かなシンフォニックロックサウンドで、
マイルドなヴォーカルとともに、ほどよくキャッチーな感触もありつつ、ときにPINK FLOYDのような
翳りを帯びた湿り気も感じさせる。派手な展開はあまりないが、プログレらしいシンセワークと
ギターの奏でる泣きのフレーズが、サウンドを優美に彩り、ゆったりとした耳心地の良さに包まれる。
キャリアのあるバンドらしい安定した演奏力と、ヴォーカルの繊細な表現力も含めてレベルの高い力作です。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 叙情度・・8 総合・・8 
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MILLENIUM 「WHITE CROW」
ポーランドのプログレバンド、ミレニアムの2011年作
結成10周年を記念して、過去の未発曲や別バージョンを中心に編纂された作品で、
叙情豊かなギターに美しいシンセを重ねた、ウェットなシンフォニックロックを聴かせる。
英語歌詞のマイルドなヴォーカルも含めて辺境感はほとんどなく、PINK FLOYDルーツの
翳りを帯びたメロウな空気感に、東欧らしい涼やかでスタイリッシュな味わいを加えたという作風。
女性ヴォーカルやアコースティックを取り入れた優美なナンバーもありつつ、15分におよぶ大曲では、
泣きのギターフレーズをたっぷり響かせる、フロイド系シンフォプログレの王道が楽しめる。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 叙情度・・8 総合・・8 
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Millenium 「Ego」
ポーランドのシンフォニックロック、ミレニウムの2013年作
90年代から活動する、ポリッシュ・シンフォ系のバンドとしては中堅~ベテランのキャリアのあるバンド。
美しいシンセアレンジとメロウなギターワークで、薄暗い叙情を描く繊細なシンフォニックロックサウンド。
適度にハードエッジでモダンな感触と、ポリッシュらしい泣きの美学が合わさった聴き心地で、
10分前後の大曲をゆったりと描いてゆく。PENDRAGONにも通じるギターの叙情メロディもよろしく、
やわらかな男性ヴォーカルの歌声に女性声コーラスも加わって、しっとりとした美しさに包まれる。
QuidamやSylvanなど、繊細系叙情シンフォが好きな方にはたまらないだろう傑作です。
シンフォニック度・・8 繊細度・・8 叙情度・・9 総合・・8
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Millenium 「In Search of the Perfct Melody」
ポーランドのシンフォニックロック、ミレニウムの2014年作
90年代から活動するキャリアのあるバンドで、本作はのっけから20分に及ぶ大曲を含んだ力作。
うっすらとしたシンセにメロウなギターの旋律、チェロやサックスも加えた叙情的なサウンドで、
マイルドなヴォーカルがじっくりと歌い上げる、ウェットなドラマ性に包まれた世界観を描いてゆく。
表現豊かな男性声に女性ヴォーカルも加わった、シアトリカルなロックオペラ的な感触もあり、
これという派手な展開はないものの、ゆるやかな叙情美で味わえるシンフォニックロック作品。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 叙情度・・8 総合・・8
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MILLENIUM 「MMXVIII」
ポーランドのプログレバンド、ミレニアムの2018年作
LYNXレーベル設立20周年記念の作品で、9分の新曲に、2013年作「EGO」収録のリメイク、
そして過去曲11曲をメドレーにした、20分の組曲という構成。新加入のヴォーカルのマイルドな歌声に、
メロウなギターとシンセにサックスも鳴り響く、キャッチーながらもしっとりとした翳りを帯びた、
メロディックなサウンドが広がってゆく。リメイク曲は、女性ヴォーカルを加えた優美な聴き心地で、
泣きのギターフレーズによるフロイド・ルーツの叙情に、大人の哀愁を感じさせるサックスの響きも味わいがある。
20分のメドレーは、いくぶん強引な流れもあるが、逆にいうと展開力あるシンフォプログレとして楽しめるる
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 叙情度・・8 総合・・8
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MILLENIUM 「THE SIN」
ポーランドのプログレバンド、ミレニアムの2020年作
1999年デビュー、本作は14作目で、キリスト教における七つの大罪をテーマにした、全7曲を収録している。
サウンド自体は叙情的なギターに優美なシンセアレンジ、マイルドなヴォーカルで聴かせる、
PINK FLOYDルーツの翳りを帯びたシンフォニックロックで、いつも通りの優雅な耳心地。
罪を題材にしている分、いくぶんダークな感触もあるのだが、メロウなギターの旋律やフルートの音色など
随所に耳に残る叙情美やフックのある流れとともに構築するところは、さすがベテランの実力というところだろう。
ラストの「Envy(妬み)」は10分の大曲で、ゆったりとした優しいサウンドに繊細な美意識が光る。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 叙情度・8 総合・8 
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MILLENIUM 「VOCANDA 2000 & 2013 Live」
ポーランドのプログレバンド、ミレニアムの2021年作
本作は、2000年発表の2ndと、それを再現した、2013年のスタジオライブを収録した2CD盤。
アコースティックギターにマイルドなヴォーカルを乗せたイントロから、美しいピアノにシンセが重なり
叙情的なギターとともに翳りを帯びたシンフォニックロックを展開する。メロウな旋律を奏でるギターと、
美麗なシンセアレンジ、表現力あるヴォーカルも含めて、MARILLIONなどのファンも楽しめるだろう。
ときに女性ヴォーカルも加わった優美な耳心地と、コンセプト的な流れでドラマティックに構築される。
Disc2では、女性Vo、サックス奏者を含む編成で、スタジオライブでアルバムを忠実に再現する。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 叙情度・8 総合・8
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mindfields「one」
ポーランドのプログレバンド、マインドフィールズの2008年作
MILLENIUMのシンセ奏者とNEMESIZのギタリストを中心にしたバンドで、
美麗なシンセワークとメロウかつ適度にハードなギターで聴かせるサウンド。
10分以上の大曲をゆるやかに構築してゆくメロディセンスはさすがで、
情感を含んだ男性ヴォーカルとともに、繊細な叙情を描いてゆく。
あくまでゆったりとした楽曲は、スリリングさにはやや欠けるが、
シンフォニックな感触とともに、ここぞというときに泣きまくるギターがよいですな。
シンフォニック度・・8 ドラマティック度・・7 繊細度・・9 総合・・7.5
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MINDFLOWERS 「IMPROGRESSIVE」
ハンガリーのシンフォニックロックバンド、マインドフラワーズの2002作
G、B、Dr、Keyの4人組みによるオールインストのハード・シンフォニックロック。
DREAM THEATER的なプログレメタル色もあり、ギターは時折ザクザクとメタリックになったりする。
ジャズっぽいたおやかなタッチのピアノや、大曲での大人っぽいメロウな雰囲気は
インストということもあってついBGMになってしまうが、しっかりした演奏力もあるし、
なかなかセンスも良いバンドだと思うので、今後の活動に期待したい。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・7 DT度・・7 総合・・7.5

MINDFLOWERS「NUANCES」
ハンガリーのテクニカルプログレ、マインド・フラワーズの2nd。2006年作
前作では、DREAM THEATER的なプログレメタル風味もあったが、今作では肩の力が抜けた軽妙なアンサンブルで、
テクニカルなジャズ/フュージョンロック風のサウンドを聴かせる。手数の多い巧みなドラムと存在感あるベース、
オルガンからジャズタッチのピアノも弾きこなす鍵盤に、適度にハードエッジなギターと演奏力も抜群。
オールインストながら、スリリングな技巧とともに、優雅なフュージョン・プログレが楽しめる好作だ。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・8 フュージョンロック度・・8 総合・・8
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MOODMAN 「Man Of The New Age」
ポーランドのアーティスト、ムードマンの2019年作
うっすらとしたシンセにジェントルなヴォーカルを乗せ、翳りを帯びた繊細な叙情を描く、
ポストプログレ寄りのサウンド。やわらかなピアノにサックスが鳴り響く、大人の哀愁に包まれて、
インストパートもあくまでしっとりと優雅な聴き心地。ゲストの女性ヴォーカルを迎えての
男女Voによるナンバーなども耳心地よく、プログレというよりは薄暗系メロウロックという作風。
これという展開や派手なところはないが、全体的にゆったりと聴かせるマイルドな味わいです。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 叙情度・・8 総合・・7
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MOONPARTICLE 「HURRICANE ESMERALDA」
ブルガリア出身のミュージシャン、ニコ・ツォネフのソロプロジェクト、ムーンパーティクルの2018年作
LIFESIGNSSteven Wilsonの作品などに参加したギタリストで、FROST*のクレイグ・ブランデルをはじめ、
アダム・ホルツマン、セオ・トラヴィスなどが参加し、ハードなギターにモダンなシンセアレンジ、
艶めいた女性ヴォーカルの歌声を乗せた、スタイリッシュなハードプログレを聴かせる。
叙情的なギターの旋律にやわらかなフルートの音色などの優美な側面も覗かせつつ、
翳りを帯びたモダンなハードさとのコントラストで、技巧性と叙情とのメリハリのある作風だ。
東欧らしい涼やかな薄暗さと、英国的なモダンプログレの感触が合わさった好作品です。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 モダンな翳り度・・8 総合・・7.5
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MOONRISE 「LIGHT OF A DISTANT BAY」
ポーランドのシンフォニックロック、ムーンライズの2008年作
メロウなギターと美しいシンセアレンジを中心に聴かせる正統派のシンフォニックロック。
ヴォーカルは英語なので、雰囲気としてはむしろ英国のネオシンフォニックの感触に近く、
適度なハードさも含んだクールな構築センスの中で、随所に聴かせるギターの泣きのメロディなどはいい感じだ。
全体的には涼やかにスタイリッシュな作風なので、個人的にはもっと濃密な盛り上がりがあればと思う。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 クールなシンフォ度・・8 総合・・7.5


Mr.Gil 「Alone」
ポーランドのミュージシャン、ミレック・ギルのソロ。1998年作
当時はCOLLAGEで、現在はBELIEVEで活躍する彼のソロ1作目。

コラージュでの明快なシンフォニック路線よりも、より内向的で繊細な叙情を聴かせるサウンドで、
やわらかなヴォーカルとメロウなギターフレーズ、うっすらとしたシンセアレンジとともに、
のちのSatelliteにも通じるほの暗い叙情美に包まれている。もちろんシンフォニックロックとしての
優美な感触もちゃんと残っていて、ARENAPENDRAGONなどのファンにも十分楽しめる好作品だ。
2005年のリマスター再発盤はジャケも右のものに変更されている。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 メロウな叙情度・・9 総合・・8
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Mr.Gil「Skelling」
ポーランドのミュージシャン、ミレック・ギルのソロ。2010年作
COLLAGE~現在はBELIEVEで活躍する彼のソロ2作目。
メロウなギタートーンが鳴り響き
うっすらしたシンセアレンジに、マイルドな母国語のヴォーカルを乗せた、薄暗い叙情に包まれたサウンド。
繊細な美意識と泣き泣きのギターは、かつてのCOLLAGEの名作「Moonshine」を思わせるほどで、
そこにいくぶんモダンなハードさや、やわらかなポストプログレ風味も加わった美味しい作風である。
ともかく、全曲に泣きの叙情メロディが顔を出し、やさしくメロディックな聴き心地にはうっとりすること請け合い。
これぞまさにポーランドという物悲しい美旋律に酔いしれるべし。泣きの叙情傑作。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 泣きの叙情度・・9 総合・・8
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Mr.Gil「I Want You to Get Back Home」
ポーランドのミュージシャン、ミレック・ギルのソロ。2012年作
COLLAGE~現在はBELIEVEで活躍する彼の、ソロとしては3作目の作品で、
しっとりとしたピアノのつまびきに、やわらかなヴォーカルを乗せた繊細なサウンド。
Nosoundなどにも通じるセンシティブな叙情に、随所に美しいストリングスアレンジも加わって
じつに優雅で優しい聴き心地である。一方ではただ静かなだけではない、ストーリー的な流れで
ドラマ性を感じさせるところも素晴らしい。作品全体としての完成度も含めて、繊細なる傑作といえる。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 繊細度・・9 総合・・8
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Niemen 「Ode to Venus」
ポーランドのアーティスト、ニーメンことCzeslaw Niemenの1973年作
旧ソ連出身のミュージシャンで、本作は彼の初期代表作のひとつ。デビュー前のSBBのメンバーをバックに、
表現豊かなヴォーカルが冴えわたる。メロウなギターにオルガンを含むシンセ、テクニカルなアンサンブルは
東欧プログレッシブロックそのもので、緩急に富んだ展開と、ときに語りを含んだシアトリカルな妖しさを垣間見せる。
この大仰なうさん臭さというのは、単なるサイケロックのレベルを超えている。まさにアーティスト、ニーメンだ。
ピアノをバックに、哀愁の歌声を響かせる感動的な味わいというのは、一流アーティストでもなかなかいない。
ジャズやR&Bのテイストも含ませたナンバーなど、多彩な顔を覗かせつつも、結果としてプログレッシブという傑作だ。
ドラマティック度・・8 哀愁度・・9 歌唱度・・9 総合・・8
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NIEMEN「Mourner's Rhapsody」
ポーランドを代表するアーティスト、ニーメンことCzeslaw Niemenの1975年作
1967年にデビューした旧ソ連出身のアーティストで、デビュー前のSBBのメンバーとともに活動するなど、
サイケ、ジャズ、R&Bなど、さまざまな要素を取り入れて、結果プログレッシブに昇華するという才人である。
本作はMAHAVISHNU ORCHESTRAのメンバーをはじめ、米/英Jazzシーンのミュージシャンを迎えて作られた。
ニーメン自身の弾くメロトロン、ムーグに、ゲストによるヴァイオリンやフルート、パーカッションが重なり
そこに乗る哀愁を感じさせる歌声は、英国でいえばRobert Wyatt的であろうか。
ジャズやブルージーな感触を東欧的な鬱屈とした悲哀にひたしたような世界観は、
唯一無二のものだろう。歌唱の表現という点では間違いなく世界レベルである。
メロディアス度・・8 哀愁度・・9 歌唱度・・9 総合・・8
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Niemen 「Spodchmurykapelusza」
ポーランドのミュージシャン、ニーメンこと、CZESLAW NIEMENの2002年作
60年代から活動するポーランドを代表するミュージシャンで、本作はそのラストアルバム。
打ち込みによるリズムに美しいシンセとバード寄りのギターを乗せ、ポーランド語による
枯れた味わいのヴォーカルで聴かせる、シンフォニックな歌ものロックというサウンド。
ときにフルートの音色などの民族色とエレクトロなモダンさが同居しつつ、情感的なニーメンの歌声が
時代的な雰囲気で包み込む。楽曲は3~4分前後で、全体的にもプログレ的な部分は少ないが、
アーティスト、ニーメンの最後の輝きが味わえる。本作を最後に偉大なるミュージシャンは、2004年に死去する。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 ニーメンの歌声度・・8 総合・・7.5 
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NOIBLA 「HESITATION」
ポーランドのシンフォニックロック、ノイブラの2018年作
ALBIONの女性シンガーをフロントにしたバンドで、やわらかなオーボエの音色にシンセを重ね、
美しい女性ヴォーカルとともに、しっとりとしたサウンドを描く、初期QUIDAMなどにも通じる作風。
エレピなどを含むシンセアレンジは派手すぎず、随所にメロウな泣きのギターも耳心地よい。
プログレ的な展開はあまりないので、シンフォニックロックとしてはいくぶん地味であるが、
美しい女性声をメインにした、翳りを帯びた大人の叙情ロックという感じでも楽しめる。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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NOSTRADAMUS「Testament」
ハンガリーのシンフォニックロックバンド、ノストラダムスの2008年作
SOLARISのベースとドラムを中心にしたSOLARIS FUSIONが発展したバンドで、シンセ、フルートを含む5人編成。
いかにもかつての東欧らしい緊迫感あるシンセワークと、鳴り響くフルートの音色でたたみかける、
いわば「パワーアップしたソラリス」というようなサウンドだ。ギターの奏でるメロディックなフレーズと、
ハードめのドラムに重量感のあるベースも含めて、インストながらも非常に濃密な作風。
ダイナミックな押しの曲は非常に格好よく、叙情的な小曲も含めて傑作に値する内容だ。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 ソラリス度・・8 総合・・8
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OLIVE MESS 「Gramercy」
ラトビアのプログレバンド、オリーヴ・メスの2006年作
女性Voにシンセを含む6人編成で、バロックギターの優雅な音色にシンセが絡み、
ソプラノ女性ヴォーカルがオペラティックな歌を乗せる、チェンバーロック風味のサウンド。
ときに狂気をはらむかのようなエキセントリックな女性の歌声が妖しく響きわたり、
10分~21分という大曲を中心に、軽妙なアンサンブルと涼やかな緊張感で描いてゆく。
いわばHenry Cowあたりにも通じるヘンタイ気味の聴き心地を辺境的に解釈したというような力作だ。
ドラマティック度・・7 チェンバー度・・8 ヘンタイ度・・8 総合・・8
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OLIVE MESS 「CHERDAK」
ラトビアのチェンバーロック、オリーヴ・メスの2008年作
2002年にデビューし、2作目となる。のっけから15分の大曲で、10分を超える大曲4曲という構成。
前作は女性ヴォーカルがいたが、今作はジェントルな男性ヴォーカルがフロントをつとめている。
軽妙なリズムに優雅なシンセとギターの旋律を乗せ、ときおり牧歌的なバグパイプも鳴り響く、
とぼけた味わいのサウンドで、スレリリングでありながら脱力したアンサンブルが面白い。
全体的にダークな部分はさほどなく、エレピを含む優美なシンセや、朗々とした男性ヴォーカルで
オペラティックな雰囲気を描くパートなど、クラシックをルーツにした優雅さが前に出ている。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅で軽妙度・8 総合・7.5 
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OMEGA「Szvit」
ハンガリーのハード(シンフォニック)ロックバンド、オメガの5th。1973/1999作
母国ハンガリーはもとより、ヨーロッパでは絶大な人気を誇る伝説的バンド。
かつては、共産主義圏のもと、バンドの望む形では作られなかったアルバムが
1999年のリマスターという形で、本来の曲順となって再発されたのがこれ。
のっけから20分の大曲を入れてくるあたり、バンドとして脂の乗った時期の作品なのだろう。
やや荒々しいハードロック色にブルージーな要素と、オルガン、ムーグシンセによる
プログレ/シンフォニック的な質感が混在したサウンドで、70年代イタリア的な熱さも感じる。
盛り上がりの部分では、QUEEN的なコーラスワークや、ギターとシンセの重ねによって
厚みのあるドラマティックさをかもし出し、これぞ東欧ロックという具合に情熱的にたたみかける。
メロディアス度・・7 プログレ度・・7 濃密度・・8 総合・・7.5
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OMEGA「GAMMAPOLIS」
ハンガリーのハードシンフォニックロックバンド、オメガの9th。1978年作
のっけから哀愁ただよう歌メロに演歌泣きのギターで惹きつけられる。
初期の頃よりも音の荒々しさが減って、全体的にソフトなサウンドになっている。
きらびやかなシンセの音色がシンフォニックな質感を生み出しているが、
それ以上に普遍的なロックバンドとしての勢いも感じられる。プログレ的な要素はさほどないが、
東欧ロック最高のきらめきとしてハンガリーという地域性とともに耳を傾けるに足る内容だ。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 濃密度・・8 総合・・8
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OMEGA「OMEGAKONCERT/NEPSTADION 1994 NO.2」
ハンガリーのロックバンド、オメガのライブアルバム。
70年代から活動するハンガリーの国民的ロックバンドで、ブックレットの写真を見ても
大観衆に包まれた巨大なステージでのコンサートであったことが分かる。
序盤は3~4分台のポップな大衆ロックといった雰囲気で、かつてのような大仰なシンフォニック性は薄れているものの、
中盤あたりからは濃密なハードプログレ的な感じが滲み出てきてなかなか楽しめる。
メロディアス度・・7 プログレ度・・6 ポップ度・・8 総合・・7

OMEGA 「TRANSCENDENT」
ハンガリーのメロディックロックバンド、オメガの1996年作
60年代から活動する、母国ハンガリーでは絶大な人気を誇る国民的なバンド
シンフォニックで優美なイントロから、母国語の歌声とメロウで叙情的なギターとともに
壮麗で厚みのあるシンフォニック・ハードロックというサウンドが広がってゆく。
適度にプログレ色も感じさせる部分もありつつ、母国語を除けばメジャー感もただよう
キャッチーなメロディックロックで、ベテランらしい哀愁の叙情もまじえつつ、
ロックンロール調なナンバーなども含めて、確かな演奏力で聴かせる力作だ。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 重厚度・・8 総合・・8
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OPENSPACE
ポーランドのプログレバンド、オープンスペースの2008年作
適度にヘヴィなギターワークとムーグやオルガンを含むプログレ的なシンセアレンジに
マイルドなヴォーカルで聴かせる、モダンな薄暗さのあるシンフォニックハード作品。
ポーランドらしい湿りけを含んだ叙情は、Riversideあたりにも通じる感触で、ProgMetal的な要素もある。
いわば、ハードになったMARILLIONともいう雰囲気でもありつつ、5~7分前後の楽曲は難解さはなく、
あくまでメロウな聴き心地。これだというインパクトはないのだが、じっくりと楽しめる好作品だ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 メロウ度・・8 総合・・7.5
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Openspace 「Elementary Loss」
ポーランドのプログレバンド、オープンスペースの2010年作
2008年にデビューし、2作目となる。適度にハードなギターにうっすらとしたシンセを重ね、
エモーショナルなヴォーカルで、ポリッシュらしい翳りを帯びたスタイリッシュなサウンド聴かせる。
メロウなギターフレーズにシンセが重なると、SYLVANなどにも通じる泣きの叙情に包まれ
オルガンなどのシンセが優雅に絡みつく、オールドとモダンの混在したシンフォニックロックである。
10分を超える大曲も、派手さはないが、ゆったりとしたギターの旋律とともに涼やかな叙情美を描いてゆく。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 叙情度・8 総合・7.5
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Osada Vida 「Three Seats Behind a Triangle」
ポーランドのハードプログレバンド、オサダ・ヴィダの2006年作
次作以降を先に聴いていたが、本作は4作目で3パートに分かれたコンセプト作になっている。
ムーグやピアノを含んだプログレ的なシンセアレンジと、ヘヴィなギターでProgMetal的に構築されるサウンドは
のちの作品に比べると、ずいぶん唐突でヘンテコな展開を含んでいて、ある意味ヘンタイ的に楽しめる。
優雅でクラシカル鍵盤のフレーズと、エキセントリックな混沌が混ざり合った濃密な力作だとは思うが、
部分ごとのメロディや展開の流れに、もう少しはっとするような魅力が欲しい。完成度はやはり次作以降。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 ヘンテコ・・8 総合・・7.5
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Osada VidaThe Body Parts Party
ポーランドのハード・プログレバンド、オサダ・ヴィダの2008年作
PORCUPINE TREEOPETHの登場以後、メタルとプログレのボーダーレス化が進み
ポーランドではまさに両者の中間というべきRIVERSIDEが出現、PINK FLOYD+OPETHともいうべきそのサウンドが
メタル、プログレの両リスナーから評価を受けたが、このバンドもProgMetal風の硬質感を上手く用いながら、
構築型のモダンなハードプログレを聴かせてくれる。2000年にデビューし、メンバーチェンジをへて本作がすでに5作目。
適度にヘヴィへなギターリフを変拍子に乗せつつ、要所ではしっかりと叙情を織り込むバランス感覚と
モダンとレトロの狭間をゆきながら、知的さを感じさせる展開力はなかなか見事だ。
ときおり聴かせる中近東的フレーズや、力みすぎない軽妙な演奏など、引き出しの多さとクールな余裕も感じる。
メロディアス度・・7 構築度・・8 クール度・・9 総合・・8
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Osada Vida「Uninvited Dreams」
ポーランドのハード・プログレバンド、オサダ・ヴィダの2010年作
新人ながら様々な要素をセンス良く盛り込んだ前作に続き、今作もレトロさとモダンさを両立させたハイブリッドなサウンドで、
こうした第三世代的というべきボーダーレスな感性は、やはりRiversideにも通じる部分がある。
本則ではさらに、メロトロンの響きを含め、ANEKDOTEN的な叙情性と薄暗い浮遊感が耳心地よく、
やや雑多に思えた前作よりも方向性を絞ってきたという印象だ。こうなるとPorcupine Tree系のリスナーでも楽しめそう。
メロディアス度・・8 薄暗度・・8 ハイブリッ度・・8 総合・・8
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OSADA VIDA 「PARTICLES」
ポーランドのハード・プログレバンド、オサダ・ヴィダの2013年作
すでに7作目となる中堅バンドで、前作までのRiverside的な薄暗いハードプログレから一転、
今作ではよりスタイリッシュになったアンサンブルとともに、キャッチーなメロディアス性が強まった。
きらびやかでモダンな感触のシンセアレンジと、適度にハードなギターとマイルドなヴォーカルを乗せ、
IT BITES あたりにも通じるメロディックなプログレハード風味のサウンドを聴かせてくれる。
ボーナストラックでは、METALLICA“Master of Puppets”をカヴァーしていて、これがなんとも
ゆったりとプログレなアレンジでとても面白い。全体的にもモダンなセンスの光る好作品である。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 スタイリッシュ度・・8 総合・・8
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OSADA VIDA 「VARIOMATIC」
ポーランドのモダンプログレ、オサダ・ヴィダの2018年作
2000年にデビューし、本作で9作目となる。近作でのメロディックなスタイルをより深化させ、
エレクトロな感触のシンセアレンジに適度にハードなギター、マイルドなヴォーカルを乗せた、
スタイリッシュなハードプログレを聴かせる。随所に叙情的なギターフレーズとシンセの重ねで、
シンフォニックな感触も残しつつ、歌もの的なシンプルなキャッチーさにポストプログレ的な繊細さも同居した、
非常にセンスのよいバランス感覚である。サックスが鳴り響く大人の優雅さと、オルタナ的でもある硬質感、
モダンと繊細な美意識が溶け合った聴き心地で、キャリアを経てほどよく肩の力が抜けた自然体の好作品といえる。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 スタイリッシュ度・・8 総合・・8 
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PANTA RHEI
ハンガリーのプログレバンド、パンタ・レイの2018年作
70~80年代にかけて活動していたバンドで、1997年の未発音源集「Epilogus」からの楽曲を中心に
ライブや未発音源を加えた内容。のっけから22分という組曲で、クラシカルなピアノと優美なシンセに、
男女の混声コーラスを乗せた、The Enidにも通じる典雅なシンフォニックロックから、ムーグシンセが鳴り響く
軽やかなサウンドになると、Solarisなどに通じる雰囲気もある。クラシカルなメロディをロックアレンジで聴かせるという点では、
NICEEKSEPTIONにも近いかもしれないが、曲によってはエレクトロなアレンジのスペイシーなシンセサウンドになる。
コンピレーション的な寄せ集め感はあるのだが、知られざる東欧バンドの楽曲を聴けるようになっただけで感謝ですな。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 キーボー度・8 総合・7.5
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PANTOKRAATOR 「Tormides」
エストニアのトラッドプログレ、パントクラトルの2009年作
90年代から活動するバンドで、男女ヴォーカルの母国語の歌声と、モダンなシンセアレンジで
ジャケのようなペイガン的な民族色を含んだ、ハード寄りのシンフォニックロックサウンド。
男性ヴォーカルの濃い目の歌声に比べて、線の細めの女性声はあまり前に出てこないが、
曲によってはキャッチーなポップ性もあって、VarttinaKormoranかという辺境トラッドロックの味わいも。
ギターのメロディックなフレーズも随所に爽快で、きらびやかなシンセパートも含めて、アレンジ自体には
むしろメジャー感も漂わせているという。個人的には女性声をメインにした曲も欲しかった。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 辺境トラッドロック度・・8 総合・・8
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PETER PAN「Days」
ポーランドのプログレバンド、ピーター・パンの2007年作
COLLAGESATELLITEのドラマーを中心に結成されたバンドで、メロディアスでモダンな正統派のシンフォニックロック。
しっかりと輪郭のあるフレーズを奏でるギターと、それに絡むシンセワークは、ポーランドというよりはむしろイギリスや
北欧のバンドに近い感触で、ダイナミックなサウンドの中に欧州らしい翳りと情感が見え隠れする。
粗野なヴォーカルの歌声にはさして魅力はないが、インストパートでのハードエッジな明快さは若いリスナーにもアピールするだろう。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 ポーラン度・・7 総合・・8
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PikaPika Teart「Moonberry」
ロシアのチェンバーロック、ピカピカ・ティートの2011年作
シベリア出身という珍しいバンドで、ツインギター、クラリネット奏者、ピアノ奏者を含む7人編成。
艶やかなヴァイオリンにクラリネット、ピアノが絡み、ドラムが加わった優雅なアンサンブルで、
クラシカルな気品とともにジャズロック的な軽妙さを合わせたようなサウンドを描き出す。
どこか荒涼とした寒々しい空気を感じさせるのは、やはりシベリアという土地柄か、
トラッド的な旋律も含ませた哀愁の叙情性と、チェンバーロックとしてのシリアスな緊張感を、
しっかりとプログレ感として音に溶け込ませるセンスはなかなか素晴らしい。
ときにクリムゾン風のパートも覗かせたり、女性ヴォーカルを乗せたトラッド的な小曲や、
ヴァイオリンに絡むピアノもじつに美しい。北の大地をチェンバーロックで表現したという傑作です。
スリリング度・・8 プログレ度・・8 北のチェンバー度・・9 総合・・8.5
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Pinkroom 「Psychosolstice」
ポーランドのハードプログレ、ピンクルームの2009年作
叙情的なギターにうっすらとしたシンセ、マイルドなヴォーカルを乗せた、繊細でメランコリックなサウンド。
PINK FLOYDルーツの浮遊感という点では、RPWLあたりを思わせるが、メタリックなギターが加わった
ProgMetal的な感触も覗かせつつ、スタイリッシュな構築センスは、Riversideなどにも通じるだろう。
翳りを帯びた優美なポストプログレ風味と、モダンなテクニカルメタル感触がほどよく同居していて、
ストリングスを取り入れた優雅なナンバーや、ポリッシュらしい薄暗いシンフォニック性も含んだ、
一筋縄ではいかない振り幅の大きさがある。派手な展開はないが、ハードなポストプログレというべき力作だ。
ドラマティック度・・7 スタイリッシュ度・・8 構築度・・8 総合・・7.5
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PROGRES 2 「Tulak Po Hvezdach」
チェコのプログレバンド、プログレス2の2018年作
結成は1968年、当初はPROGRESSIVE ORGANIZATIONとして活動、1977年にはBARNODAJと名前を変え、
1980年に、PROGRES 2名義でデビュー、88年までに4作を残して消えたが、30年ぶりにここに復活作を発表。
アコースティックギターとフルートのイントロから、ジェントルな母国語の歌声を乗せて、ゆったりと大人の叙情に包まれる。
3~4分前後の小曲を主体に、オルガンを含むシンセワークをメロウなギターに重ねたキャッチーな聴き心地から、
ブルージーなロック感触まで、オールドな渋さとポップ感が同居した作風で、プログレとしてはいささか物足りないか。
ドラマティック度・6 プログレ度・6 楽曲・6 総合・7
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Project Creation 「Dawn on Pyther」
ポーランドのシンフォニックロック、プロジェクト・クリエイションの2007年作
シンフォニックな壮麗さと男女ヴォーカルの歌声で聴かせるコンセプト作品で、
ハードシンフォニックな質感とともに、随所にフルートの音色が入ったりすると、
トラッド的な神秘性も現れて、メリハリに富んだアレンジで長曲を構築してゆく。
ときにメタリックなハードさや、ゴシックメタル的な耽美な雰囲気もあったりと、
いろいろな要素を詰め込むのはよいが、少しがちゃがちゃした印象になってしまっている。
長尺の力作なのは確かだが、メロディや展開にもう少し抜けの良さが欲しいか。
ドラマティック度・・8 壮大度・・8 楽曲・・7 総合・・7.5





QUIDAM「Quidam/Rzeka Wspomnien」
ポーランドのシンフォニックロックバンド、クィダムの1st。1996年作
美声の女性ヴォーカルで聴かせる本作は、ポーランドのシンフォニックシーンにおいて名作とされる一枚。
ゆったりと美しいシンセと叙情的なギターワークで聴かせる楽曲に母国語で歌われる女性ヴォーカルの絶品の歌声が
しっとりと優しく耳に響く。ときにハケット時代のGENESISを思わせる幻想的な雰囲気も素晴らしい。
最高傑作は3rdだと思うが、しっとりとした繊細さでは本作が一番だろう。ともかく女性声シンフォが好きな方は必聴。
再発盤のボーナスCDには、未発曲やライブ音源、CAMELのカヴァーなどを収録している。
シンフォニック度・・8 しっとり繊細度・・9 女性Vo度・・9 総合・・8.5
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QUIDAM「sny aniolow - angel's dreams」
ポーランドの女性Voシンフォニックロック、クィダムの2nd。1998年作
英語盤とポーランド語盤の2枚組仕様で、サウンドの方は1stでの優美なシンフォニックロックから、
よりキャッチーな作風へと進化、美しい女性ヴォーカルの歌声を乗せた繊細な叙情にうっとりとなる。
英語版のポップな感触に比べると、母国語でのエキゾチックな歌声の響きがやはり好みですね。
うっすらとしたシンセとたおやかなフルートの音色に癒されつつ、ギターによる叙情的なフレーズも随所に効いている。
アルバム終盤のしっとりとしたピアノ曲もじつに美しい。この路線では次作3作目で頂点を迎える。
メロディアス度・・8 キャッチー度・・8 女性Vo度・・9 総合・・8
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QUIDAM「Baja Prog - Live In Mexico '99」
ポーランドのシンフォニックロック、クイダムのライブアルバム。1999年作
メキシコでの1999年のライブを収録。2006年の再発盤ではライブ映像を収録したDVDが付いた2枚組となった。
現地での紹介音声から、やわらかなフルートの音色で幕を開け、美麗なシンセと叙情的なギター、
母国語の女性ヴォーカルを乗せた、しっとりと優雅なメロディに包まれたバンドサウンドが広がってゆく。
エミーラ嬢の包み込むような優しい歌唱は、それだけでもううっとりなのだが、バックの演奏もうるさすぎず
繊細なアンサンブルでヴォーカルを引き立てながらも、シンフォニックな美意識に包まれている。
CAMEL「スノー・グース」からの優美なカヴァーや、GENESIS「Firth of Fifth」の旋律を盛り込んだりと、
聴きどころも多く、ラストはDEEP PURPLE「Child In Time」のカヴァーで締めくくる。
シンフォニック度・・8 ライブ演奏・・8 女性Vo度・・9 総合・・8
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QUIDAM「Pod Niebem Czas (THE TIME BENEATH THE SKY)
ポーランドのシンフォニックロックバンド、クイダムの3rd。2002年作
前作はキャッチーな爽快さを前に出した作品だったが、本作ではぐっとシリアスさを増している。
美しいフルートの音色と、女性ヴォーカルの魅力はもちろん、ギターのエッジがよりはっきりとして
ときおり聴かせるハードなリフなどは、ある種ゴシックメタル的であったりする。
楽曲の雰囲気が多少ダークになった分、アンビエントな女性ヴォーカルものとしても楽しめ、
初期ALL ABOUT EVEや、あるいはフランスのMYLENE FARMER的な色合いすらも感じる。
LED ZEPPELINの“No Quarter”のカヴァーもなかなかハマっていて、
女性声シンフォニックとしても、アンビエントなゴシックロックとしても類まれなる傑作だ。
シンフォニック度・・8 アンビエント度・・9 女性Vo度・・9 総合・・9◆プログレ名作選入り
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QUIDAM 「surREvival」
ポーランドのシンフォニックロックバンド、クィダムの2005年作
女性Voシンフォニックファンを魅了したこのバンドだが、この4作目から男性Voバンドへと変わり、音楽性にも変化が見られる。
これまでの美しいシンフォ路線から、薄暗い叙情を聴かせるハードなシンフォニックへとシフトした。
ゆるやかなフルートの音色にマイルドな男性ヴォーカル、メランコリックでもの悲しいメロディがしっとりと包み込む。
ややヘヴィになったギターは、ARENARIVERSIDEあたりにも通じるモダンな質感がある。
初期とは別物として聴けば充分に楽しめる、ポーランドらしい哀愁を聴かせるアルバムだ。
メロディアス度・・7 シンフォニック度・・7 薄暗度・・8 総合・・8
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QUIDAM「...laez polPRADU HalfPLUGGED」
ポーランドのシンフォニックロックバンド、クィダムのライブ作。2006作
初期3作が女性Voだったバンドだが、4作目から男性Voのバンドとなり、
雰囲気もだいぶ変わったが、ゆったりと聴けるシンフォニックとしてはやはり高品質。
このライブアルバムはアコースティック中心ながら、美しいフルートの音色に、
たおやかなピアノ、そしてマイルドな男性Voの歌唱がなかなか耳に心地よい。
メロディにはポーランドらしい翳りと叙情があり、MARILLIONにも通じる質感で
ゆったりと聴ける薄暗系シンフォニックサウンドだ。ライブ録音だが音質も素晴らしい。
PINK FLOYDTHE MOODY BLUESのカヴァーも収録。
メロディアス度・・8 ゆったり叙情度・・9 ライブ演奏・・8 総合・・8
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QUIDAM 「ALONE TOGETHER」
ポーランドのシンフォニックロックバンド、クィダムの5th。2007作
初期の女性Voシンフォ路線から、男性Voのバンドとなってこれが2作目となる。
メロウなギターに、繊細なシンセワークで聴かせるしっとりとした薄暗さは
昨今のオルタナシンフォ系と言われる質感に近い、哀愁を漂わせたサウンドだ。
ゆるやかなピアノと力みのないギターのフレーズが重なり、フルートの音色も加わって
もの悲しくも美しい叙情美にうっとりとできる。過去にとらわれなければ
バンドとしての新たな方向性を確立した作品として、じっくり楽しめる好作だ。
シンフォニック度・・7 プログレ度・・7 ほの暗度・・9 総合・・8
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Quidam 「Saiko」
ポーランドのプログレバンド、クィダムの2012年作
1996年にデビュー、初期は女性Voのバンドであったが、4作目から男性Voの薄暗系にシフト、
本作では、よりシンプルなサウンドになっていて、母国語のエモーショナルな歌声を中心に、
繊細でキャッチーな聴き心地に包まれた、近年のMarillionを思わせるメロウな叙情ロックである。
やわらかなエレピにフルートの音色、サステインの効いた優美なギタートーンとともに、
ポストプログレ的なしっとりとした美しさを描いてゆく。軽妙なドラムとベースの存在感も
なにげに巧みなアンサンブルを作り出していて、玄人好みの感触はさすがキャリアのあるバンドである。
全体的に派手さというものはないが、ドイツのSylvanあたりが好きな方にも楽しめる好作品です。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 繊細な叙情度・・8 総合・・7.5
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Rational Diet「On Phenomena And Existence」
ベラルーシのチェンバーロックバンド、ラショナル・ダイエットの2010年作
ヴァイオリン奏者、女性チェロ奏者、女性鍵盤/Voなどを含めた7人編成で
クラシカルなシリアスさとUnivers Zeroなどに通じるダークな緊張感で聴かせるサウンド。
艶やかなヴァイオリンの音色にスキャット的な女性ヴォーカルが絡み、
不穏なチェロの響きとピアノが重なり、そこにギターとドラムが加わると
ミステリアスで壮大なビジョンを描くようなチェンバーロックが構築されてゆく。
重厚さの中にダークな優雅さとユーモアが存在する点も、聴いていてにやりとさせられる。
クラシカル度・・8 プログレ度・・7 チェンバー度・・9 総合・・8
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Retrospective 「Lost in Perception」
ポーランドのプログレバンド、レトロスペクティブの2012年作
ツインギターにシンセを含む6人編成で、ダークな翳りをまとわせたモダンなハードプログレサウンド。
うっすらとしたシンセアレンジとともにメランコリックな叙情を感じさせるところはドイツのSylvanのようでもあり、
いくぶんシアトリカルな感じのヴォーカルで薄暗い濃密さを描くところは、同郷の先輩であるAbraxasを思わせる。
全体的にはメロウな繊細さが前に出た曲が多く、ハードめの曲ではもっとドラマテイックな盛り上がりがないと、
アルバムとしてのメリハリにならない。ラストは10分を超える大曲で、女性声が入ってきたりしてなかなかよい。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 薄暗度・・8 総合・・7
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Retrospective 「Re:Search」
ポーランドのプログレバンド、レトロスペクティブの2017年作
ヘヴィなギターを乗せた、Riversideあたりにも通じる空気感とオルタナ風味の硬質感に、
エモーショナルなヴォーカルで聴かせる、モダンなハードプログレというようなサウンド。、
とき美しいシンセに女性ヴォーカルも加わって、メランコリックな叙情をかもしだすところは、
やはりポーランドのバンドらしい。楽曲は4~5分前後が主体で、わりとシンプルな聴き心地なので
プログレ的な展開力という点ではやや物足りないか。もう少しシンフォニックな壮麗さがあれば。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 モダン度・・8 総合・・7.5
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RIVERSIDE「OUT OF MYSELF」
ポーランドのプログレバンド、リヴァーサイドの1st。2003年作
今や英国をしのぐほどのシンフォ大国となったポーランドからまた新たなバンドが出現。
ソリッドなギターに、涼やかなシンセを鳴らし、クールなシンフォニックを奏でるサウンド。
甘さよりも、ややダークめの叙情を表現しているところは、ゴシック風味も感じさせ
演奏の切れの良さと録音の良さも手伝って、音が重厚に聴こえる。
英国のARENAのモダンな薄暗さに、メタリックなギターとポーランドらしい翳りを足したという印象で、
新人らしからぬ堂々とした雰囲気を感じる。メロウに泣くギターと、マイルドな声質のVoも良いですな。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 メロウな陰り度・・8 総合・・8
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RIVERSIDE「Second Life Syndrome」
ポーランドのダークプログレバンド、リヴァーサイドの2nd。2005年作
ポーランドという国は、もともとイギリスのポンプロック、シンフォニックロックをよく理解するお国柄のようで、
とくに90年代以降の同国では、英国のプログレシーンが下火になってからも数多くの良質なシンフォバンドが出現している。
COLLAGESATELLITEなどが代表格であるが、それに続くこのバンドもポリッシュシーンを代表する逸材であると思う。
おそらく、後期MARILLIONやARENAといった英国バンドからの影響も大きいかと思われるが、そうした湿り気をさらに助長させ、
どこか薄暗い叙情を含んだメロディは、現代的な哀愁の表現としての「泣き」を見事に体現している。もちろんテクニカルな部分や、
流れるような曲構成においても非凡なものがあるのだが、それら表面的な要素をあまり感じさせない「雰囲気」を彼らは身に付けている。
メロウなギターにマイルドな歌声を乗せ、ほの暗い叙情で聴かせるシンフォニックハード作である。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 薄暗度・・9 総合・・8
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RIVERSIDE 「VOICES IN MY HEAD」
ポーランドのプログレバンド、リヴァーサイドの2006年作
2003年にデビュー、いまや東欧ハードプログレの代表格。本作は未発曲にライブ音源を加えた全36分のEP。
叙情的なギターにうっすらとしたシンセや優美なピアノ、マイルドなヴォーカルとともに物悲しいサウンドを描く。
泣きのメロディを奏でるギターが耳心地よく、ほどよくモダンな硬質感も覗かせながら、繊細な叙情とハードさの
メリハリある楽曲もさすがの完成度。ライブ音源は、1st「Out Of Myself」からの3曲で、安定したアンサンブルに
美麗なシンセワークと巧みなギタープレイ、エモーショナルなヴォーカルで、素晴らしい演奏を聴かせてくれる。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 叙情度・8 総合・8 
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RIVERSIDE「RAPID EYE MOVEMENT」
ポーランドのダークプログレバンド、リヴァーサイドの3rd。2007年作
1stの時点からセンスある展開美と薄暗さのあるメロディが個性的なバンドだったが
3作目の今作も、オルガンを含むシンセアレンジにハード寄りのギターを乗せた、
スタイリッシュなアンサンブルで、モダンなメランコリック性に包まれたハードプログレを聴かせる。
アルバム全体を2つのパートに分け、それぞれをコンセプト的に聴かせる手法はいかにもプログレ的だし、
後半ではPINK FLOYDのような鬱ぎみの浮遊感も感じさせるのも、さりげないルーツを覗かせるようで心憎い。
インパクトの点では物足りなさもあるが、PORCUPINE TREE系サウンドの進化系というべき力作だ。。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 薄暗度・・9 総合・・8
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Riverside「Anno Domini High Definition」
ポーランドのハードプログレバンド、リヴァーサイドの2009年作
薄暗い叙情を聴かせるハードプログレとして、いよいよ人気も高まってきたこのバンド。
4作目となる本作もじつに見事な作品だ。ゆるやかな浮遊感を増した前作の流れにありつつも、
オルガンの音色も含めてプログレとしての美意識とメリハリのある展開力を強化させている。
しっとりとしたもの悲しさをたたえながら、ハードなところはよりハードに聴かせ、広がりのある音作りで
ミクスチャー的なモダンなアレンジと、レトロなロックの要素を巧みに同居させているのが見事。
ソリッドなセンスとアナログ的な生々しさが融合した現在形プログレの傑作。DVD付き2枚組もあり。
メロウ度・・8 プログレ度・・8 アレンジセンス・・9 総合・・8.5
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Riverside「Memories in My Head」
ポーランドのハード・プログレバンド、リヴァーサイドの2011年作
2009年のアルバムは、レトロなプログレとハードな構築美の合わさった傑作だったが、
本作では、少し前にもどったような薄暗い叙情と浮遊感でゆったりと聴かせる作風になっている。
メロウなギターワークにマイルドなヴォーカル、ムーグの音色を含めたアナログ感覚あるシンセ、
耳心地の良さと、派手に盛り上がることをしない楽曲は、Porcupine Tree系というべきスタイルだ。
全3曲ながら30分超の作品で聴き応えがある。次のアルバムがどうなるのか良い意味で予想がつかない。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 薄暗度・・8 総合・・8
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Riverside「Shrine of New Generation Slaves」
ポーランドのハードプログレ、リヴァーサイドの2013年作
いまや薄暗系ハードプログレの旗手というべき存在となったこのバンド、ミニアルバムを挟んでの5作目となる本作は、
前作にもあったヴィンテージな感触をまとわせ、アナログ的なギターにオルガンの鳴り響く、
古き良きハードロック的な感触がいくぶん強まっている。こうした回帰性は、たとえばOPETHや
PAIN OF SALVATIONの近作などもに通じるアプローチであるが、そこに薄暗い叙情が合わさり、
もの悲しい哀愁をただよわせたサウンドは、やはり唯一無二のものだ。初期のハードプログレ路線に比べて、
音作りは比較的シンプルなため即効性が薄いかもしれないが、 Porcupine Treeにも通じる深遠な世界観とともに
じわじわとくる聴き心地で、彼らの自然体の深化を見せつける作品といえるだろう。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 哀愁叙情度・・9 総合・・8

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Riverside「Love, Fear & the Time Machine」
ポーランドのプログレバンド、リヴァーサイドの2015年作
2003年にデビューしてから、薄暗くモダンなセンスのハードプログレ作品で、ずいぶんと認知度を高めてきたこのバンド、
6作目となる本作は、マイルドなヴォーカルとメロウなギター、うっすらとしたシンセで聴かせる繊細な作風を強めている。
オルガンやムーグを含んだ古き良きシンセワークも入りつつ、PINK FLOYD的な薄暗い叙情性と浮遊感で描かれる、
心地よい耳触りのサウンドはポストプログレ的でもある。もちろん従来通りの適度にハードな感触も含めて、
実力あるアンサンブルと円熟のアレンジセンスも見事。強いインパクトはないものの、じっくりと鑑賞できる好作品です。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 繊細度・・8 総合・・8
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Riverside 「Wasteland」
ポーランドのプログレバンド、リヴァーサイドの2018年作
7作目となる本作は、2016年にギタリストのPiotr Grudzinskiが死去して後の初めてのアルバムとなった。
やわらかな歌声を乗せた小曲で幕を開け、ハードエッジなギターとともに薄暗い空気感に包まれた、
サウンドが広がってゆく。オルガンを含むやわらかなシンセに、ときにメロウな旋律を奏でるギターが
物悲しい叙情性を描きながら、プログレらしいテクニカルな展開力も含んだ、モダンでスタイリッシュな作風だ。
ゴシック的でもあるゆったりとしたメランコリックなナンバーなども新機軸で、モノトーンのような薄暗さの中に、
繊細なメロディを描くところはポストプログレ的でもある。あるいはダークなProgMetalとしても楽しめる力作だ。
ドラマティック度・・7 スタイリッシュ度・・8 薄暗度・・9 総合・・8 
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RMP 「For The Light」
ロシアのプログレバンド、RMPの2017年作
叙情的なギターに美しいシンセを重ね、東欧らしい翳りとミステリアスな空気感も含んだ
インストメインの優雅なサウンドを聴かせる。、2~4分前後の小曲を主体にした軽妙なアンサンブルと、
やわらかなクラリネットの音色などには、チェンバーロック的でもある繊細なクラシカル性に包まれる。
プログレ的な展開のあまりない、うっすらとしたシンセとギターによるアンビエントなナンバーなど、
わりと雰囲気モノに近い感じもあるが、ラストは10分の大曲で薄暗系のシンフォニック的な味わい。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 優雅度・・8 総合・・7.5
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RSC「ZYCIE TO TEATR」
ポーランドのプログレバンドRSCの2004年作
80年代から活動するバンドで、本作は2000年のポーランド公演を収録したライブ音源。
艶やかなヴァイオリンが鳴り響き、適度にハードなギターと母国語の歌声を乗せたサウンドは、
SBBなどにも通じる東欧らしい硬質感とキャッチーなメロディが融合した聴き心地である。
ギターには古き良きハードロック風味も感じられ、オルガンなどを含むシンセワークとともに、
年季の入ったバンドらしい大人の味わいで楽しめる。優雅なヴァイオリンが大活躍のライブです。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 ライブ演奏・・8 総合・・7.5


Rumblin' Orchestra 「Spartacus」
ハンガリーのシンフォニックロック、ランブリン・オーケストラの1998年作
RICK WAKEMANあたりを思わせるクラシカルなシンセワークを中心に、フルート、オーボエ、ヴァイオリン、チェロ、といった
室内楽の要素が加わった華麗なシンフォニックロック。ときに男女混声ヴォーカルの歌声も含みつつ、
オーケストラルな優雅さはENIDのような聴き心地で、それをさらにキャッチーに仕上げたというセンスの良さが光る。
東欧らしい隙のないクオリティが、新たなクラシカルシンフォのマスターピースを作り出した。
シンフォニック度・・8 クラシカル度・・8 壮大華麗度・・9 総合・・8.5
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RUMBLIN' ORCHESTRA「THE KING'S NEW GARMENT」
ハンガリーのシンフォニックロック、ランブリン・オーケストラの2nd。2000年作
現代版TRIUMVIRATかRICK WAKEMANかという、素晴らしいキーボードシンフォ作品であった1st「Spartacus」に続き、
本作は「裸の王様」をテーマにした、より壮大さを増した、クラシカル・シンフォニックロックとなっている。
ヴァイオリン、オーボエ、トロンボーンなどの管弦楽隊を導入し、音の厚みとクラシカルな説得力も増しているが、
このバンドの素晴らしいところは、そうしたクラシックに裏打ちされた確かな素養を持ちながら
シンフォニックプログレとしてキャッチーで分かりやすい。つまり大衆向けであるということである。
いうなれば同じくクラシカルシンフォニック系のAFTER CRYINGのシリアスな方向性とは180度逆なのだ。
大仰かつクラシカルな作風であるが、爽快なメロディアス性を追求した濃密な大傑作である。
シンフォニック度・・9 クラシカル度・・8 壮大華麗度・・10 総合・・9◆プログレ名作選入り
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Ryszard Kramarski Project 「Music Inspired By The Little Prince」
ポーランドのアーティスト、リシャルト・クラマルスキ・プロジェクトの2017年作
MILLENIUMのシンセ奏者として知られるミュージシャンで、本作は「星の王子さま」をテーマにしたコンセプト作。
メロウで叙情的なギターの旋律にうっすらとしたシンセを重ね、美しい女性ヴォーカルの歌声とともに、
優美なシンフォニックロックを展開。派手な展開はさほどないものの、女性声のシンフォプログレとしては、
英国のLANDMARQなどにも通じる優雅でキャッチーな味わいで、随所にギターの泣きのメロディが心地よい。
アコースティックによる繊細な小曲なども味があり、ラスト曲もゆったりとした翳りを含んだ叙情美に包まれる。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 優美度・8 総合・8 
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THE RYSZARD KRAMARSKI PROJECT 「Sounds From The Past」
ポーランドのミュージシャン、リシャルト・クラマルスキによるプロジェクト。2018年作
MILLENIUMのシンセ奏者である彼が、それ以前に活動した、FRAMAUROの1998年作「ETERMEDIA」をリメイクした作品。
MOONRISEのギタリストによるメロウなギターにやわらかなシンセと女性ヴォーカルの歌声を乗せた、
ゆったりとしたシンフォニックロックサウンドで、PINK FLOYDルーツの翳りを帯びた空気に包まれる。
オルガンを使ったシンセなど、ときにオールドなロック感も含んだキャッチーなノリも現れつつ、
ポーランドらしい薄暗く繊細な美意識とともに、派手さはないが大人の叙情プログレを描いてゆく。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 叙情度・・8 総合・・8
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THE RYSZARD KRAMARSKI PROJECT 「Mr Scrooge」
MILLENIUMのシンセ奏者でもあるポーランドのミュージシャン、リシャルト・クラマルスキによるプロジェクト。2019年作
本作はディケンズの小説「クリスマス・キャロル」を題材にしたコンセプト作品で、MILLENIUMのベースに、
同郷のMoonriseLoonyparkのメンバーも参加、やわらかなシンセアレンジに美しい女性ヴォーカルを乗せ、
叙情的なギターとともに優美なシンフォニックロックを展開する。翳りを帯びた叙情性はPink Floyd的な部分もあり、
歌詞は英語ながらも、やはりポーランド的なしっとりとした空気感に包まれる。スリリングな展開はさほどないが、
Magentaの「Home」などにも通じる物語性のある女性声歌ものシンフォとして、ゆったりと楽しめる逸品です。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 優美度・・9 総合・・8 
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The Ryszard Kramarski Project 「Books That End In Tears」
ポーランドのシンフォニックロック、リシャルト・クラマルスキ・プロジェクトの2021年作
Milleniumのシンセ奏者としても活躍するミュージシャンによるプロジェクトで、5作目となる本作は、
ウィリアム・ゴールディング『蝿の王』、フランツ・カフカ『審判』、ジョージ・オーウェル『1984』、『動物農場』
それぞれの文芸作品からインスパイアされた4つの組曲を、女性声、男性声とバージョンを変えて2CDに収録。
メロウなギターの旋律にやわらかなシンセ、しっとりとした女性ヴォーカルを乗せて、優美なサウンドを構築する。
派手な展開はないが、Mindfieldsのギタリストによる哀愁を含んだギターメロディが、ゆったりとした耳心地の良さで、
Disc2の男性ヴォーカルVerでは、よりフロイド的というか、Milleniumに接近した翳りを帯びた雰囲気が楽しめる。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 叙情度・8 総合・8 
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SATELLITE「A Street Between Sunrise And Sunset」
ポーランドのシンフォニックロックバンド、サテライトの1st。2003年作
COLLAGEのドラム、ギター、ヴォーカルが中心となって結成したバンド。
音の方はやはりかつてのCOLLAGEに通じる、メロディアスで湿り気のある
叙情派シンフォニックロックで、コラージュの新作といってもよいもの。
名作「MOONSHINE」のような重厚さはないが、全体的によりマイルドに、
ポンプロック的な聴きやすさを追求したような作風となっている。
メロディアス度・・8 シンフォニック度・・8 COLLAGE度・・8 総合・・8
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SATELLITE「EVENING GAME」
ポーランドのシンフォニックロックバンド、サテライトの2nd。2004年作
今作でも、かつてのCOLLAGEから継承された泣きのシンフォサウンドは健在で
適度にモダンさとハードな感触も含みつつ、繊細で優美な叙情を描き出す。
メロウなギターのフレーズにやわらかなピアノが重なる部分などは実に美しく、
ゆったりとした中にもほんのりとした薄暗さが感じられるのはポーランドというお国柄か、
そうした音にこもった黄昏のような哀愁こそが、このバンドの大きな魅力だろう。
シンフォニック度・・8 哀愁の叙情度・・9 ポーラン度・・9 総合・・8◆プログレ名作選入り
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SATELLITE「EVENING DREAMS」
ポーランドのシンフォニックロックバンド、サテライトのライブ作品。CD+DVD。2005年作
メンバーは実質ギターの代わったCOLLAGEという4人編成なのだが、
クライブ・ノーランばりの美麗な音を出すキーボードに、リーダーである手数の多いドラム、
ニック・バレット並の泣きのメロディを奏でるギターと、ライブでの演奏も素晴らしい。
そして彼らの音にはポーランド特有の湿りけと翳りのある美しさがあるのがポイントで、
PENDRAGONを超えたかというくらいのシンフォニックロックの理想形ともいえるサウンドだ。
シンフォニック度・・8 ライブ映像・・8 ライブ演奏・・8 総合・・8
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SATELLITE 「Into the Night」
ポーランドのシンフォニックロックバンド、サテライトの3rd。2007年作
前作「Evining Game」は、素晴らしい叙情美の傑作だったが、それに続く本作である。
基本的には、前作からの流れで、しっとりとした美しいシンセワークに、
ここぞと盛り上げる泣きのギター、そしてやわらかなヴォーカルによる繊細なサウンド。
今回はより、楽曲にダイナミズムがつけられ、ときにモダンな質感を感じさせつつも、
ポーランドならではのほの暗い叙情とともに、ハードシンフォニック的な聴き方も可能。
より一般のシンフォファンにも好まれる作風になったというべきだろう。
シンフォニック度・・8 ほの暗叙情度・・8 ポーラン度・・9 総合・・8
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Satellite「Nostalgia」
ポーランドのシンフォニックロックバンド、サテライトの2009年作
COLLAGEを母体にしたバンドの4作目で、前作のドラマティックなハード路線から、
薄暗系シンフォに戻ってきた作風で、美しいシンセとメロウなギターワークを中心にした、
高品質なシンフォプログレを聴かせる。王道のシンフォニックロック感覚と、モダンなメランコリックさをまぶした
ポーランドらしいウェットな翳りに包まれつつ、曲によってはリズム面においてのポップロック的な質感もあって、
よりメジャーなシンフォ・プログレへと接近してきている。本作を最後にバンドは活動を停止。
シンフォニック度・・8 メランコリック度・・8 ポーラン度・・8 総合・・8
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SBB「2&3」
ポーランドのプログレバンドSBB(SZUKAJ,BURZ,BUDUJ)の2ndと3rdのカップリング。1974/1975作
あまりにディスコグラフィーが多すぎて、どれを聴いていいか分からないというバンドだが、
とりあえず傑作とされている3、4作目あたりを聴いてみるのがよろしいかと。
2nd「NOWY HORYZONT」は、まだ音が薄っぺらく、スピード感あるジャズロック風の雰囲気で
スペイシーなキーボードと東欧らしい硬質なギターサウンドが特徴的。地味ながら切れ味のよい演奏はさすが。
3rd「PAMIEC」になるとぐっとシンフォニック度が増し、曲の方も大曲3曲という構成がいかにもプログレ的。
録音も良くなっているので、静かなパートでの空間美も感じられると同時に
ドラムの表現力も増していて、アルバムとしての完成度も上がっている。
メロディアス度・・7 プログレ度・・8 スペイシー度・・8 総合・・7.5

SBB「ZE SLOWEM BIEGNE DO CIEBIE」
ポーランドのテクニカルプログレバンド、SBBの4th。1978作
ベースレスのKEY、G、Drという変則編成から繰り出されるサウンドはメロディアスでありながらも
あくまでシャープでクールな感触。アメリカの、HAPPY THE MANなどに通じる部分があるが
こちらはより冷徹でポップを排した研ぎ澄まされた演奏にやはり東欧という国柄を感じる
19分台の曲2曲のみというアルバム構成も、どこかアカデミックで硬派な香りがする。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・8 クール度・・9 総合・・7.5
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SBB「FOLLOW MY DREAM」
ポーランドのベテランバンド、SBBの6th。1978作
西ドイツ配給の1作目ということで、東欧圏を飛び出し世界水準に向けた作品といえる。
それぞれ24分と22分という大曲2曲という構成だが、そのサウンドは初期の頃よりも硬質感が減り、
代わりにメロディアスでシンフォニックな部分が増えて、とても聴きやすくなっている。
英語の歌詞にも代表されるように、いい意味でバンドとして丸くなった感がある。
もちろんちゃんと聴けばバンドとしての演奏、テクニックは相変わらず素晴らしい。
メロディアス度・・8 シンフォニック度・・7 プログレ度・・7 総合・・7.5
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SBB「WELCOME」
ポーランドのベテランバンド、SBBの7th。1979年作
きらびやかなシンセワークを乗せた優雅でテクニカルなアンサンブルとともに
東欧的な硬質さと涼やかな叙情に包まれたインストナンバーで幕を開ける。
バンドとしての鋭い演奏に磨きがかかり、クラシックやジャズの要素を取り入れながら、
緊張感あるクールなシンフォニックサウンドを描くのは、まさに東欧ならではの聴き心地。
2曲目以降は美しいピアノやヴォーカル、メロウなギターなど、しっとりとした聴きやすさが増してい、
このあたりのメロディアスさが“世界を意識した”音作りということなのだろう。バンドの最高傑作。
メロディアス度・・8 シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 総合・・8◆プログレ名作選入り
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SBB「Karlstad」
ポーランドのプログレバンド、SBBのライブ作。1975/2006作
アルバム、ライブ作ともにCDが多数だが、これは彼らのデビュー翌年の1975年、
スカンジナビア遠征でのライブを収録したもの。この時代のライブ音源にしては思いの外音がよい。
ここで聴けるのはプログレというよりはむしろギターメインの即興的な演奏で、
鳴り響くハモンドをバックにタイトなドラムとのインストバトルが堪能できる。
この時代の東欧ロックでここまでのキレのある演奏力を有していたバンドはそうはいないだろう。
全8曲中、7曲までがこのライブでしか聴けない曲というのも、いかにも彼ららしい。
尚、SBBについてはこのサイトがなかなか詳しいのでご参考までに。
メロディアス度・・7 プログレ度・・7 ライブ演奏・・8 総合・・7

SBB「Absolutely Live '98」
ポーランドのプログレバンド、SBBのライブアルバム。1999作
1998年ポーランドでのライブ録音を収録。1980年にいったん解散後、90年代になってライブ活動を再開、
スタジオ作での本格的な復活は2002年まで待つことになるが、こうしたライブ音源はそれまでの助走的な活動の記録というところか。
ギター、キーボード、ドラムという変則的な三人編成から繰り出されるのはときに即興的なジャズロック、フュージョンからシンフォニック、
さらには歌ものまで、ポーランド最大のプログレバンドたる引き出しの多さを感じさせる。
ドラムなどの録音状態はいま一つながら、76分にわたる熱演で、過去の大曲を含めて
たっぷりと聴かせてくれる。詳しいディスコグラフィーはこのページを参照。
メロディアス度・・7 プログレ度・・8 ライブ演奏・・8 総合・・7.5
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SBB「Iron Curtain」
ポーランドのベテランプログレバンド、SBBの2009作
ここで聴けるのは、かつてのような硬質感を漂わせたクールなテクニカルさはやや薄れ、
成熟した渋さとバランスの良さで聴かせるサウンド。とはいってもスペイシーなシンセワークに、
甘すぎないソリッドなギタープレイは随所にあって、緩急をつけながらもスケール感のあるアレンジが
じつに見事。母国語によるヴォーカル曲も味わいがある。東欧きっての名バンドはまだ色あせない。
メロディアス度・・7 プログレ度・・7 ベテランの味度・・8 総合・・7.5
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SBB「Blue Trance」
ポーランドのベテランバンド、SBBの2010年作
1974年のデビューから、いったい何作目になるのか見当もつかない。
活動停止などはあったにせよ、ともかく、これだけ継続できるというのが凄い。
本作もトリオ編成による作品で、1曲めから往年のプログレ的なシンセが鳴り響き、
東欧らしいミステリアスなスケール感と、硬質な構築性はかつてのSBBそのままである。
2曲め以降は母国語による歌声とともに、大人の哀愁を漂わせた感触と、枯れた味わいのギターで
じっくり聴かせる作風で、全体的にはプログレというよりはアダルトな東欧ロックとして聴くべき作品だ。
メロディアス度・・7 プログレ度・・7 東欧度・・9 総合・・7.5
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SFINX「THE ALBUM‘ZALMOXE’」
ルーマニアのプログレバンド、スフィンクスの1978作
組曲「ザルモクセ」のタイトルで東欧の隠れた名作とされている作品。
メロディアスなキーボードと母国語によるキャッチーな歌メロは
イタリア的な繊細さを感じさせる音で、東欧のバンドにしては違和感なく聴ける。
録音的にはやや迫力にかけるが、組曲としての完成度もなかなかで
この一作だけでプログレバンドとしては終わってしまったのが惜しまれる。
メロディアス度・・8 シンフォニック度・・7 プログレ度・・7 総合・・7.5
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SOLARIS「MARSBELI KRONIKAK」
ハンガリーのシンフォニックロックバンド、ソラリスの1984年作
レイ・ブラドベリィのSF小説「火星年代記」をタイトルにした本作は、東欧シンフォを代表するアルバムとして名高い。
今は亡きフルート奏者CZIGLAN ISTVANの伸びやかな演奏に、硬質感のあるギターと東欧らしいスペイシーなシンセが合わさり、
クールでありながらメロディアスなシンフォニックロックを展開している。全編インスト作品であるが、メリハリのついた楽曲と
聴かせるメロディとで軽やかに聴き通せてしまえる。バンドは一時休止後1990年に復活を遂げる。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 フルート度・・8 総合・・8 ◆プログレ名作選入り
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SOLARIS「1990」
ハンガリーのプログレバンド、ソラリスの1990年作
「火星年代記」は、80年代東欧プログレの名作として名高いが、7年ぶりとなる本作は、それを超えるボリュームの圧倒的な傑作になった。
フルート、ギター、キーボードを中心にしたインストで、メロディアスかつシンフォニックな楽曲群でたたみかける。
そのせわしない展開とコテコテのクサいメロディによるとてつもなく濃厚な楽曲群を、ここまでクールに演奏してしまうのがいかにも東欧的で、
吹き鳴らされるフルートにきらびやかなシンセワーク、メロディックなギターをたっぷりと乗せた、まさにシンフォニックプログレですという
お手本のようなアルバム。濃密すぎて胃もたれしないように。のちに2CDの完全盤として再発された。
メロディアス度・・9 シンフォニック度・・9 全篇コテコテ度・・10 総合・・8.5 ◆プログレ名作選入り
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SOLARIS「LIVE IN LOS ANGELS」
ハンガリーを代表するシンフォニックロックバンド、ソラリスのライブアルバムCD2枚組。1996年作
今では東欧にも多くのシンフォ系バンドが存在しているが、元祖と言うべきはEASTとこのSOLARISだったと思う。
さて、本作はアメリカのPROGFEST95でのライブ音源で、音質はなかなか良好である。
メロディアスなギターとキーボード、やわらかなフルートの音色が絡み合う様は圧巻だ。
ほぼ全編インストであるが、とにかくメロディにこだわった楽曲と切れの良い演奏でたたみかけてくる。
あまりにも「シンフォ」くさくてあざとさを感じるものの、好き者にはたまらないサウンドなのも確か。
メロディアス度・・9シンフォニック度・・8 コテコテ度・・9 総合・・8
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SOLARIS「Nostradamus-Book of Prophecies」
ハンガリーのプログレバンド、ソラリスの1999年作
1984年に発表された「火星年代記」は、ハンガリーのプログレシーンにおいて、
EASTとともに同国を代表する存在として知られることとなった名作であるが、
本作は「1990」に続く3作目ということになる。タイトル通り、予言者として知られる
ノストラダムスをテーマにしたコンセプト作で、荘厳なチャントにフルートの音色が重なり
中世を思わせる幻想性と、異国的な雰囲気を漂わせたシンフォニックロックが構築される。
硬質感のあるギターはいかにも東欧的であるが、むしろ本作では男女コーラスの歌声を軸に
包み込むようなシンセワーク、そしてフルートこそが楽曲のイメージを豊かなものにしている。
シンフォニック度・・7 幻想度・・8 荘厳度・・8 総合・・8
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SOLARIS 「Back to the roots」
ハンガリーのプログレバンド、ソラリスの未発表曲集。1980-2000
1984年に「火星年代記」でデビューし、ここ日本でもハンガリーを代表するプログレバンドとして認知される。
その後は、2枚組みの傑作「1990」を発表するが、ギタリストのIstvan Cziglanが死去。
バンドはそれを乗り越え1999年にはノストラダムスをテーマにしたコンセプト作を発表する。
現在はフルート奏者Attila KollarMusical Witchcraftが活動中だが、
ソラリスとしての新しい作品はこのアーカイブくらいであるのが残念だ。
本作はおそらくは初期のライブ音源で、デビュー前のものも含まれているようだ。
鳴り響くフルートに重厚なギター、たたみかける演奏力はすでに一線級のものがある。
音質はさほどでもないが、バンド黎明期の情熱が臨場感とともに伝わって来る。
シンフォニック度・・8 ライブ演奏・・8 音質・・7 総合・・7.5
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SOLARIS 「NOAB-archiv 2.」
ハンガリーのプログレバンド、ソラリスの未発表曲集。1980-2005
ハンガリーきってのシンフォニックロックバンドとして、いまだ根強いファンの多いこのバンド、
1984年の「火星年代記」で正式デビューを飾るが、このCDではそれより前の未発音源や
ライブ録音なども聴けソラリスファン、東欧ロックファンはは必聴の内容となっている。
のっけから21分の大曲“NOAB”が最大の聴きどころで、東欧らしいシンセワークに
ギターとフルートが絡み硬質感のメロディの同居した壮大なシンフォニックロックが炸裂する。
未発音源とは思えないクオリティでドラマティックにたたみかける素晴らしい内容。
こうなると他の曲はおまけのようなものだが、この1曲のためだけでも聴く価値はあり。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・8 楽曲・・8 総合・・8
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SOLARIS 「Martian Chronicles II」
ハンガリーのプログレバンド、ソラリスの2014年作
80年代東欧プログレを代表するバンドで、正規アルバムとしては1999年の「ノストラダムス」以来、15年ぶりとなる。
その復活作はなんと、SF作家、レイ・ブラッドベリの「火星年代記」をテーマにした作品の30年ぶりとなる続編である。
オリジナルのフルート奏者、コラー・アッティラとシンセ奏者のエルデスツ・ロバートを中心にしたメンバーで、
重厚なアンサンブルの上に、切れのいいフルートが鳴り響き、シンセによる彩りとメロウなギターフレーズとともに
スペイシーな世界観を描く。トーマス・ポックスは不参加ながら、往年のソラリスサウンドを再現するには過不足ない。
かつての作品よりもいくぶんモダンでデジタルなアレンジを取り入れている点は、時代の流れだろうが、
クールで叙情的、そして歌心のあるインストサウンドはまさにあのソラリスである。22分に及ぶタイトル組曲を中心に、
ときに男女のスキャットヴォーカルもまじえつつ、押すだけでない引きの叙情の繊細さも素晴らしい。さすがの力作です。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 ソラリス度・・8 総合・・8
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Solaris 「Martian Chronicles - Live」
ハンガリーのプログレバンド、ソラリスのライブ。2015年作
デビュー30周年となる、2014年ブダペストでのライブで、1984年の傑作「火星年代記」ほぼ全曲に、
1990年作「1990」、2014年の「火星年代記2」からのナンバーも加えたセットリストを披露。
きらびやかなシンセに鳴り響くフルート、叙情的なギターを乗せ、優雅なアンサンブルとともに
東欧らしい涼やかなシンフォニックプログレを再現。個人的には最高傑作「1990」からの楽曲が嬉しい。
とくにコラー・アッティラの繊細なフルートが素晴らしく、その優美な旋律で楽曲を彩っている。
ゲストによるサックスや、女性コーラスを加えたゴージャスな味わいも含めて、
全76分、優雅で濃密なソラリスのサウンドが楽しめる、ファン必聴のライブです。
ライブ演奏・・8 プログレ度・・8 優雅度・・9 総合・・8 
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Solaris 「Nostradamus 2.0 - Returnity」
ハンガリーのプログレバンド、ソラリスの2020年作
1984年デビュー、ハンガリーを代表するバンドのひとつ。本作は1999年作「ノストラダムス」の続編で、通作5作目となる。
「なされなかった予言」をコンセプトに、6パートに分かれた23分の組曲で幕を開け、優美なピアノに壮麗なシンセと男女コーラス、涼やかなフルートの音色とともに、優雅にしてどこか翳りを帯びたシンフォニックロックを展開する。
リズムチェンジによる緩急あるダイナミックな展開力と、知的でドラマティックな雰囲気は、まさに往年の東欧プログレを継承する聴き心地。
コラー・アッティラによるフルートとメロウなギターの絡みは、サウンドにおけるクールな叙情性を担っていて、インストをメインにしながらも、緊張感ある飽きさせない構築力はベテランならではだろう。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 優雅度・9 総合・8 
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SPECIAL PROVIDENCE「SPACE CAFE
ハンガリーのプログレ・フュージョンロック、スペシャル・プロヴィデンスの2007年作
ギター、ベース、シンセ、ドラムの4人編成で、軽やかなアンサンブルを聴かせる
インストのフュージョン・プログレサウンド。メロディックなギターにジャズタッチのピアノが重なり、
たとえば、CABやPLANET Xあたりをもっと優雅にしたような耳心地の良い感触である。
巧みな演奏力による繊細な表現力や知的な展開力も含んでいて、テクニカルなプログレとしても十分楽しめるが、
全体的に硬派な印象よりもメロディックな要素が強いので、多くのリスナーが鑑賞できるクオリティがある。
ただインストながら、6分以上の曲がほとんどなので、中盤のしっとりとした曲はついBGMのように聴いてしまう。
テクニカル度・・8 フュージョン度・・8 プログレ度・・7 総合・・8
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SPECIAL PROVIDENCE「LABYRINTH
スペシャル・プロヴィデンスの2008年作
テクニカルなアンサンブルがより強まってきていて、シンセアレンジにもプログレ的な質感が増した。
適度なハードさとメロディを兼ねそろえたギターワークは相変わらずレベルが高く、
ジャズタッチのピアノも含めた優雅な感触と、その知的な構築センスは抜群である。
今作も中盤にはゆったりとした曲があって、押しだけでないやわらかな叙情性も楽しめる。
飽きさせない程度にまたスリリングな楽曲が入ってくる構成も心憎い。全体的にも長尺感がなくなった。
ジャケはパックマンだが、内容は抜群のクオリティ。見事なテクニカルフュージョン・プログレ作品です。
テクニカル度・・8 フュージョン度・・7 プログレ度・・8 総合・・8
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SPECIAL PROVIDENCE「SOUL ALERT
ハンガリーのプログレ・フュージョン、スペシャル・プロヴィデンスの2012年作
3作目となる本作は、テクニカルプログレとしての振り幅がより大きくなり、
優雅なジャズロック風味、メロディックなフュージョンロックの聴き心地に、
ときにハードな激しさも同居させた、モダンかつスリリングな味付けが素晴らしい。
軽快なアンサンブルにリズムチェンジを多用した展開、ギターとシンセの有機的な絡み方も含め、
インストでありながらキャッチーな感触に包まれた仕上がりというのは、すでに職人の域である。
ハイセンスな恰好良さという点では過去2作を上回るほどの出来ですな。
テクニカル度・・8 フュージョン度・・7 プログレ度・・8 総合・・8
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Special Providence 「Essence of Change」
ハンガリーのプログレ・フュージョンロック、スペシャル・プロヴィデンスの2015年作
過去3作はセンス抜群のプログレ・フュージョン作品であったが、4作目となる本作はメタリックなギターを乗せて、
やたらとハードに始まりつつ、実力あるドラムの叩き出す、PLANET Xばりのテクニカルなアンサンブルで、
軽妙なフュージョンロックを展開。ホールズワースばりに優雅なフレージングを乗せるギターのセンスも抜群で、
スペイシーに重ねられたシンセワークがサウンドを壮麗に彩る。テクニカル集団がここにきてさらにアンサンブルを強化、
かいとって硬質すぎず、適度なハードさを覗かせつつ、あくまで優雅な聴き心地。フュージョン・ジャズロックとしても楽しめ、
Djent系リスナーにも対応。プログレ感触のシンセアレンジも随所に心憎いばかり。もはや世界最高レベルの傑作でしょう。
メロディック度・・8 テクニカル度・・8 優雅で軽妙度・・9 総合・・8.5 
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SPECIAL PROVIDENCE「Will」
ハンガリーのプログレ・フュージョンロック、スペシャル・プロヴィデンスの2017年作
世界最高レベルの傑作となった前作に続き、5作目となる本作も、ギター、シンセ、ベース、ドラムの4人編成で
テクニカルなフュージョンプログレが炸裂する。ソリッドなドラムとベースに、ハードエッジなギターと
美麗なシンセワークを乗せたサウンドは、PLANET Xのようなメタルフュージョン的な硬質感で、
ときにアラン・ホールズワースを思わせるような流麗なギターフレーズがなかなか素晴らしい。
オールインストであるが、確かなテクニックあるメンバーたちのスリリングな演奏は世界レベル。
今作は全体的にもハード寄りのサウンドなので、テクニカルメタル系のリスナーにも楽しめるだろう。
メロディック度・・7 テクニカル度・・9 軽妙度・・9 総合・・8
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SPIRAL 「Urban Fable」
ポーランドの女性声ロックバンド、スパイラルの2009年作
コケティッシュな女性ヴォーカルの歌声と、モダンなポストロック風味が合わさったサウンド。
エレクトロなビート感覚とオルタナティブロックの感触にヴァイオリンもチェロなどを含んだ
クラシカルな要素も加わった作風で、どこかミステリアスな浮遊感をともなった聴き心地は、
プログレファンにも楽しめる。ときにSigur Rosあたりに通じるようなしっとりとした叙情や、
The Gatheringなどのゴシックロック的なメランコリックな雰囲気も感じさせる。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8
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STERN MEISSEN「Weisses gold」
旧東ドイツのシンフォニックロックバンド、シュテルン・マイセンの2nd。1978作
組曲“錬金術”と題された、37分の大曲は、東欧的な硬質感とクラシカルなメロディを有した
キーボードをメインにしたシンフォニック曲で、シリアスに進行してゆく構成力が見事である。
ヴィヴァルディの“四季”をアレンジしたボーナス曲もなかなかのもので、
4th「Reise zum Mittelpunkt des Menschen(内的宇宙への旅)」と並んでバンドを代表する傑作である。
シンフォニック度・・8 クラシカル度・・8 キーボー度・・9 総合・・8
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STERN-COMBO MEISSEN「Der weite Weg」
旧東ドイツのシンフォニックロックバンド、シュテルン・(コンボ)・マイセンの3rd。1979作
キーボードシンフォの傑作として名高い2nd「錬金術」4th「内的宇宙への旅」に挟まれて
いまひとつ影の薄い本作のようだが、出来はなかなかのものだ。
ヴォーカルパートが増えて、やや歌ものめいている感はあるが、スペイシーなシンセワークは
健在で、重なり合うツインキーボードのシンフォニックな感触にはおもわずにんまりとなる。
AOR的なポップなナンバーでも、どうしても東欧的な硬質感がどこかにあるのが面白い。
3パートに分かれたヴィヴァルディの「四季」のカヴァーはクラシカルで良いが、
これは2ndのリマスター盤にホーナスで収録されていた気が…まあいいか(笑)
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 キーボー度・・8 総合・・7.5

STERN MEISSEN「REISE ZUM MITTELPUNKT DES MENSCHEN」
旧東ドイツのプログレバンド、シュテルン・マイセンの4th。1981作
ひとことでいうと、初期のELPを壮大にしたような、スペイシーに乱舞するキーボードを中心にしたサウンド。
東欧らしいアカデミックさに彩られた見事な楽曲は、ダブルキーボードによる多重録音など
アレンジにも細やかな気遣いが感じられて非常に高品質である。
楽曲、演奏力ともに、ポーランドのSBBなどと同様、躍動感がありしかも緻密かつソリッド。
キーボードメインのシンフォニックロックアルバムとしては文句なく名盤といっていいだろう。
シンフォニック度・・8 キーボー度・・10 演奏・・9 総合・・8
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Stern Combo Meissen「Die 7 Original Amiga Alben」
旧東ドイツのプログレバンド、シュテルン・コンボ・マイセンの7枚組ボックス。2011年作
1977年作「STERN-COMBO MEISSEN」、78年作「WEISSES GOLD」、79年作「DER WEITE WEG」
81年作「REISE ZUM MITTELPUNKT DES MENSCHEN」、82年作「STUNDENSCHLAG」
85年作「TAUFRISCH」、87年作「NACHTE」の7作をリマスター収録。東欧らしいスペイシーなシンセと、
ドイツのヴォーカルで聴かせるサウンドは、メロディックでありながらも冷たい硬質感も感じさせる。
「組曲・錬金術」のタイトルで知られる2nd、そして4th「内的宇宙への旅」が彼らの代表作であるのはもちろんだが、
ムソルグスキーの“はげ山の一夜”を含んだ1stや、ヴィヴァルディの“四季”に取り組んだ3rdもなかなかの出来。
5th以降は歌もの的なアプローチが強まってゆき、6th、7thあたりはほとんど80年代のポップロックそのものであるが、
ともかく、EL&Pとはまた違ったアプローチでクラシカルなキーボードプログレを構築していた彼らの作品を鑑賞できるセットである。
クラシカル度・・8 プログレ度・・8 キーボー度・・8 総合・・8
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Stern-Combo Meissen「Lebensuhr」
ドイツのプログレバンド、シュテルン・コンボ・マイセンの2011年作
1977年にデビュー、旧東ドイツ時代から活動するバンドで、本作は1987年以来、24年ぶりとなるスタジオアルバム。
Seven Steps To The Green Doorなどで活躍するシンセ&サックス奏者マーク・アーノルドや、Cyrilのシンガーらが加入、
ツインヴォーカル、ツインキーボードの6人編成で、優美なシンセにドイツ語によるエモーショナルなヴォーカルを乗せて、
哀愁の叙情に包まれたサウンドを描く。ギターが入らないのでロック感触は薄めながら、美しいシンセアレンジをメインに
耳心地の良いシンフォニックロックが味わえる。軽やかなサックスも加わった、ポップ寄りの歌ものナンバーなど、
肩の力の抜けた作風は、プログレ的には物足りなさもあるが、総じてキャッチーに楽しめる全74分の力作です。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・8 総合・8 
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STERN-COMBO MEISSEN 「Bilder Einer Ausstellung -The Rock Version」
ドイツのプログレバンド、シュテルン・コンボ・マイセンの2015年作
2014年に行われた、ムソルグスキー「展覧会の絵」をロックアレンジしたライブをCD+DVDに収録。
バンド編成にフルオーケストラを加えたステージで、クラシカルな優雅さとロックのダイナミズムを含んだ
壮麗なシンフォニーで「展覧会の絵」を構築する。EL&Pに比べるとロック的な派手やかさはないものの、
より緻密で繊細なアプローチで、73分におよぶ組曲を再現してゆく。DVDでは各演奏者のアップを含む
オーケストラの映像も楽しめ、Cyrilでも活躍する若き鍵盤奏者、マヌエル・シュミットのオルガンやムーグなど
アナログシンセを巧みに操る姿や、ドイツ語による爽やかなヴォーカルも随所にアクセントになっている。
ライブ演奏・8 ライブ映像・8 クラシカル度・9 総合・8
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STERN-COMBO MEISSEN 「Weißes Gold (WEISSES GOLD)」
旧東ドイツのプログレバンド、シュテルン・コンボ・マイセンの2018年作
バンドの代表作である、1979年作「錬金術師」を、4つのバージョンで2CDに収録した完全版。
Disc1には、1978年の初期バージョンと、1979年のオリジナルを収録。きらびやかなシンセとともに
軽やかな展開力で描かれるサウンドは、初期バージョンでもすでに完成していて、オリジナル以上に躍動的
優美なオルガンの音色とムーグシンセで、EL&Pをルーツにしたクラシカルな鍵盤プログレが楽しめる。
Disc2には、2001年と、2018年の再録バージョンを収録。よりスタイリッシュなアレンジになっていて、
2018年版は、往年のプログレ感触に加えて、シンフォニックな優雅さも際立っている。
クラシカル度・8 プログレ度・8 キーボー度・8 総合・8
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STERN MEISSEN 「FREIHEIT Ist」
ドイツのプログレバンド、シュテルン・マイセンの2020年作
1977年にデビュー、東ドイツ時代から活動するバンドで、本作は2011年の復活作以来、9年ぶりのスタジオアルバム。
オルガンやエレピなどを含む優美なシンセワークにドイツ語によるマイルドなヴォーカルを乗せ、
やわらかな叙情に包まれた大人のシンフォニックロックを聴かせる。3~4分前後の楽曲を主体に
比較的シンプルでキャッチーな楽曲は、プログレというよりは優雅なメロディックロックというべきか。
わりとポップな歌もの感も強いが、美しいシンセアレンジにはプログレの香りも残している。
オリジナルメンバーはドラムのみとなったが、歴史あるバンドが活動を継続しているのは嬉しいかぎり。
メロディック度・7 プログレ度・7 優雅度・8 総合・7.5 
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Lift・Electra・Stern-Combo Meissen「SACHSENDREIER・LIVE」
東ドイツを代表する3バンド、シュテルン・コンボ・マイセンリフトエレクトラによるライブアルバム。1999作
どれも70年代から活躍するバンドであるが、それらが一同に会して豪華なライブ演奏を繰り広げている。
プログレッシブというには往年よりもむしろ普通のロック寄りの曲が目立つが、
それでもクラシックのカヴァーなどでは瑞々しいシンフォニックな演奏が聴ける。
やはりSTERN-COMBO MEISSENのクラシカルな曲が白眉。ラストは3バンド合体しての大演奏で盛り上がる。
メロディアス度・・8 クラシカル度・・8 プログレ度・・7 総合・・7.5
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Strawberry Fields「Rivers Dry Gone」
ポーランドのシンフォニックロック、ストロベリー・フィールズの2009年作
Satelliteのメンバーによるユニットで、ゴシック的な倦怠感のある女性ヴォーカルの歌唱を中心に、
モダンロック的なサウンド聴かせる。ときおりSatelliteを思わせるような薄暗いシンフォ風味もあるが、
やはりもっと素朴で肩の力が抜けたような、アンニュイな優雅さが前に出ている。
音数は少ないながらも、退屈かというとそうでもなく、キャッチーな耳馴染みの良さもあって、
ゆったりとした聴き心地の女性声入りメランコリック・ロックとしても楽しめる作品だ。
メロディアス度・・7 薄暗シンフォ度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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SUNCHILD 「The Gnomon」
ウクライナのプログレバンド、サンチャイルドの2008年作
Karfagenでも活動するシンセ奏者、アントニー・カルギンを中心にしたバンドで、本作がデビュー作。
やわらかなフルートの音色のイントロから、美しいシンセに適度にハードなギターが重なり
インストを主体にした東欧らしい重厚で、ダイナミックなシンフォニックロックが広がってゆく。
アコーディオンの音色は民族的な雰囲気をかもしだし、ギターによる叙情メロディも随所に心地よく、
いかにもプログレらしいムーグシンセや、トランペットなど管楽器のアクセントも効いている。
ときにデジタリィでモダンなアレンジも含んだりと、起伏に富んだ展開で聴きどころも多い。
20分を超える大曲を2曲含む、CD2枚組、計96分の濃密な東欧シンフォプログレ大作です。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 重厚度・・8 総合・・8
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SUNCHILD 「The Invisible Line」
ウクライナのプログレバンド、サンチャイルドの2009年作
2作目となる本作では、男女ヴォーカルの歌声で聴かせる叙情的なパートが増した印象で、
プログレらしいシンセアレンジに、クラリネット、フルートといったクラシカルなテイストと、
東欧的な翳りあるメロディアス性を含ませた、繊細にして優美なシンフォニックロックが楽しめる。
ときにアコーディオンの音色による民族的な感触も魅力的で、メロウなギターのフレージングは、
やはりGenesisルーツの優雅な美意識を感じさせる。トランペットやサックスが鳴り響く哀愁や、
やわらかな歌ものの小曲など、楽曲の幅も広がった印象で、11分、15分という大曲も含みつつも、
前作の重厚さに比べて、より軽妙でメロディックなサウンドに仕上げてきている。傑作です。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 優美度・・9 総合・・8.5
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SUNCHILD 「THE WRAP」
ウクライナのプログレバンド、サンチャイルドの2010年作
Karfagenのシンセ奏者を中心としたバンドで、シンフォニックな美麗さと
東欧らしいクールな構築センスが同居したサウンドで、なかなか質は高い。
MARILLIONなどを思わせるメロウな叙情性と適度な硬質さが溶け合って
やわらかな聴き心地の中にも適度な緊張感を作り出している。
38分の大曲を含むドラマティックなモダンシンフォニックの力作である。
シンフォニック度・・7 プログレ度・・8 モダンシンフォ度・・8 総合・・7.5
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SUNCHILDAs Far As the Eye Can See
ウクライナのプログレバンド、サンチャイルドの2011年作
本作から女性ヴォーカルが加わり、サウンドはよりきらびやかになっている。
のっけから15分の大曲で、男女ヴォーカルの歌声と美しいシンセワークで
やわらかな叙情性が広がってゆく。アレンジ面ではこれまで以上のダイナミズムとともに
メロディックな爽やかさと、いかにもプログレ的な濃厚なインスト部分のバランスもよく、
一方では女性の歌声を活かしたKATE BUSHあたりに通じるキュートなお洒落さや、
フルートやストリングスなど、アコースティカルなやわらかみもあり飽きさせない。これは傑作。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・8 モダンシンフォ度・・8 総合・・8
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SUNCHILD「Isolation」
ウクライナのプログレバンド、サンチャイルドの2012年作
前作は叙情的な傑作アルバムだったが、本作ではよりモダンなアレンジを強め。
しっとりとした翳りのある叙情を聴かせる作風となっている。マイルドなヴォーカルの歌声と
比較的ポップなシンセアレンジにキャッチーな聴きやすさも含んだサウンドは、
濃密すぎない聴き心地で、ポーランドの薄暗系バンドに通じるかもしれない。
これだというインバクトは薄いものの、4パートに分かれた27分におよぶタイトル組曲を含め
シンフォニックというよりはモダンロック的な作りが確信犯的な作品に仕上がっている。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 薄暗度・・8 総合・・7.5
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Sunchild 「Synesthesia」
ウクライナのプログレバンド、サンチャイルドの2015年作
Karfagenでも活動するシンセ奏者、アントニー・カルギン率いるバンドで、モダンな感触であった2012年作に続き、
本作ではマイルドなヴォーカルの歌声と、モダンな感触のシンセアレンジとともに、ポストプログレ的な繊細さと、
東欧らしい翳りのある叙情性を含ませたサウンドを聴かせる。やわらかな歌もの曲にメロウなギターが鳴り響く
耳心地の良さは、Porcupine Treeなどのファンにも楽しめそうである。派手さはないがじっくりと味わえるセンスの良さで、
オールドなプログレスタイルのKarfagenとはまったく反対のアプローチというのも面白い。なかなかの好作品です。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 薄暗度・・8 総合・・8
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SUNCHILD 「Messages From Afar: The Division & Illusion Of Time」
ウクライナのシンフォニックロック、サンチャイルドの2018年作
Karfagenでも活動するシンセ奏者、アントニー・カルギン率いるバンドで、本作は7作目となる。
メロディックなギターに美麗なシンセワーク、マイルドなヴォーカルを乗せて、優雅でファンタジックな
シンフォプログレを展開する。随所に女性ヴォーカルを加え、やわらかなシンセアレンジとともに、
素朴で牧歌的な世界観に包まれた作風は、じつに優しい聴き心地。20分を超える大曲も
メロウなギターの旋律に優美なシンセと男女ヴォーカルで、あくまでゆったりと構築する。
全体的にスリリングな展開はさほどないが、優美な叙情派シンフォが楽しめる好作品です。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 優美度・・9 総合・・8 
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Sunchild 「Exotic Creatures & A Stolen Dream」
ウクライナのシンフォニックロック、サンチャイルドの2023年作
Karfagenでも活動する、マルチミュージシャン、アントニー・カルーギン率いるもうひとつのバンドの8作目。
26分、14分という2つの大曲からなる構成で、軽やかなリズムに美しいシンセワークとメロウなギターを乗せ、優雅でファンタジックなシンフォプログレを構築する。
やわらかなヴォーカルメロディと泣きのギターフレーズは、MOON SAFARIにも通じる優しい耳心地で、キャッチーでありながらもダイナミックな展開力が光る。
女性シンガーを加えての優美な叙情性の組曲「Northern Skies」は、うっとりとなる幻想的な味わい。
ボーナスには大曲のシングルエディションなどを収録。濃縮されたアレンジでこちらも見事な出来です。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 優美度・9 総合・8 
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Sunrise Auranaut 「Childhood's End?」
ロシアのマルチミュージシャンによるプロジェクト、サンライズ・オーラナウトの2013年作
シンフォニックできらびやかなシンセアレンジを中心に、ファンタジックな世界観を描いてゆく、
Genesisルーツのインストプログレサウンド。ドラムが打ち込みのためスリリングなダイナミズムは希薄だが、
やわらかな牧歌性に包まれた楽曲は総じて耳心地がよい。アンソニー・フィリップス的な繊細なギターなども随所に覗かせ
10分前後の大曲も含めてゆったりと楽しめる。オールインストのため、全体的には耳触りのいいBGMになってしまう部分もあるので、
もう少しドラマティックな盛り上がりや魅力的なメロディなどがあればさらに嬉しいのだが。とくにギターの活躍が物足りない。
シンフォニック度・・7 プログレ度・・7 繊細度・・8 総合・・7
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Sunrise Auranaut  「Way of the King」
ロシアのマルチミュージシャンによるプロジェクト、サンライズ・オーラナウトの2013年作
間をあけずに発表された2作目で、前作同様、美しいシンセとメロウなギターワークで、
ファンタジックな世界観を描くインスト系のシンフォ作品。ハケットやGANDALFあたりに通じるギタートーンは
技術的にはまだまだというところであるが、ユートピア的なほのぼのとしたユルさは耳に優しく、
プログレらしいシンセアレンジと、繊細な叙情性に包まれたサウンドはゆったりと聴くことができる。
打ち込みのリズムが平坦な印象がぬぐえないのと、やはり楽曲自体にこれというインパクトがないのが残念。
シンフォニック度・・7 プログレ度・・7 繊細度・・8 総合・・7
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SUNRISE AURANAUT「INSERTER」
ロシアのシンフォニックロック、サンライズ・オーラナウトの2018年作
2013年にデビューし、4作目。3作目までは個人プロジェクトだったようだが、本作から2人組のユニットに。
きらびやかなシンセを中心にメロディアスなギターも加えた、インストによる優雅なシンフォニックロック。
キャッチーで優美な雰囲気に包まれつつも、ときにプログレ的な偏屈なアレンジも加わっていて、
初期作に比べて、楽曲のダイナミズムと幻想的なシンフォニックロックとしての強度が増してきた。
このまま深化してゆけば、アントニー・カルギンなどに追いつけるレベルになれるかも。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優美度・8 総合・7.5 
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SVANN「GRANICA CZERNI BIELI」
ABRAXASのメンバーらによる、ポーランドのシンフォニックバンド、スヴァンの1st。2003作
音楽性としては、アブラクサスにあったシアトリカル性をややゴシック風に転換したサウンド。
ギターの泣きなどの煽情力はそのままなので、ミステリアスなシンフォニックロックとしても聴け、
メインシンガーの女性Voの妖艶な歌声はゴシック寄りの女性Voファンにもアピールする。
ABRAXASの男Voが好みを分ける声だっただけに、聴きやすさではこちらが上か。
シンフォニック度・・8 ゴシック度・・7 女性Vo度・・8 総合・・7.5


SVEN GRUNBERG「BREATH」
エストニア(旧ソ連)のキーボード奏者、スヴェン・グルンベルクの1st。1980年作。
サウンドは、プログレというよりは、Keyのみによる多重録音のシンセミュージックです。
スペイシーな広がりを感じるその美しいサウンドは、ジャーマントリップ系に通じるものもあるようですが、
静謐なシンフォサウンドとしても楽しめ、かつまどろめます。雰囲気ものシンセ作品の傑作。
シンフォニック度・・9 プログレ度・・7 スペイシー度・・10 総合・・8.5 ◆プログレ名作選入り
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Sven Grunberg「OM」
エストニア(旧ソ連)のキーボード奏者、スヴェン・グルンベルクの1988年作
1981-87年のマテリアルをまとめた作品で、傑作であった前作の続編となる“Breath V”から始まり
スペイシーなシンセの多重録音による、初期のTangerine Dreamを壮大にしたようなサウンドが楽しめる。
その後10分を超える大曲3曲という構成で、東洋的な神秘性を感じさせる世界観とともに、
独自のシンセミュージックを展開する。1作目ほどのインパクトはないが本作も好作品である。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 シンセ度・・9 総合・・8
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Sven Grunberg 「Milarepa」
エストニア(旧ソ連)のキーボード奏者、スヴェン・グルンベルクの1993年作
チベットの仏教修行者、ミラレパをテーマにしたアルバムで、東洋的なシンセの旋律とともに、
お経を思わせるヴォーカルを乗せてゆるやかに聴かせるサウンド。笛の音色を思わせる単音メロディや
内的宇宙を感じさせる静謐間とともに、Klaus Schulzeにも通じるようなスピリチュアルなシンセミュージックが楽しめる。
デジタルな西洋楽器による東洋仏教の世界観の構築という点でも興味深い作品だ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 シンセ度・・8 総合・・7.5




Sven Grunberg「Prana Symphony」
エストニアのキーボード奏者、スヴェン・グルンベルクの1995年作
ヒンドゥー教の聖典「プラーナ」をテーマにした作品で、重ねられたシンセによるシンフォニックな聴き心地と
東洋思想を感じさせるミステリアスで雄大なスケール感に包まれたサウンドがゆるやかに広がってゆく。
80年代の作品に比べてもデジタル技術の発達の恩恵による、シンセの音の説得力が増していて、
1988年作「OM」の大曲3曲のリミックスも含めて、より厚みのある仕上がりになっている。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・6 シンセ度・・9 総合・・8




SVEN GRUNBERG'S PROGE-ROCK GROUP MESS
スヴェン・グルンベルグ率いるバンド、メスの1975~1976年の音源をCD化した作品。
ソロ作「HINGUS(BREATH)はスペイシーなシンフォニック作品として傑作の名に値するが、
これはそれ以前の何と彼のバンドの音源。デモ音源なのか正規アルバムにのかは不明だが
ちゃんとギターもいて、リズムセクションが入っているのでいかにもバンドっぽい。
やはりメインはスペイシーな広がりを感じるシンセでヨーロッパのバンドとは一線を画した雰囲気がある。
たゆたうようにゆるやかに曲はながれていくが、時折ギターがメロウなフレーズを奏で出すとDICEやFOCUSもかくやという
涼やかなシンフォニックロックサウンドに変貌する。ヴォーカルも添え物程度に入っているが、メインはインスト中心。
曲によって出来不出来があるが、旧ロシアのシンフォバンドとしてはかなりの高品質である。
シンフォニック度・・8 スペイシー度・・9 楽曲・・7 総合・・7.5
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SYNKOPY & Oldrich Vesely 「SLUNEČNÍ HODINY」
旧チェコのプログレバンド、シンコピーの1981年作/邦題「日時計」
もともとはSYNKOPY61として60年代に結成されたポップロックバンドが、
シンセ奏者オルジフ・ヴェセリーの復帰を契機に、プログレッシブ寄りの作風となったアルバム。
オルガンを含むシンセワークにキャッチーなヴォーカルで聴かせる、シンフォニック感触のサウンドで
母国語による東欧らしさも含めて、スケール感を漂わせた雰囲気がとてもよろしい。80年代東欧プログレの傑作のひとつ。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 東欧度・・8 総合・・8
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SYNKOPY「KRIDLENI」
旧チェコのプログレバンド、シンコピーの1983年作/邦題「時空を超えて」
美しいシンセアレンジを中心にしたメロディックな聴き心地はそのままに、
楽曲はよりスタイリッシュになり、U.K.辺りに通じる軽快なアンサンブルと
キャッチーな味わいが強まっている。こうなると母国語のヴォーカルがいくぶん粗野な感じもするのだが、
ボーナスには英語ヴォーカルバージョンも入っているので、聴き比べて楽しめる。
インストの小曲をまじえながら、コンセプト的な流れでも楽しめる80年代東欧プログレの力作です。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 東欧度・・8 総合・・8
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Tabula Smaragdina 「Szavakon Tul」
ハンガリーのプログレバンド、タブラ・スマラグディナの2009年作
Yesterdaysのギタリストを擁するバンドで、プログレらしいシンセワークに叙情的なギター、
母国語による中性的なヴォーカルを乗せて、展開力のある優雅なサウンドを聴かせる。
アコースティックギターや優美なピアノを織り込むなど、繊細な美意識も随所に感じさせ、
メロトロンやムーグなどを含む華麗なシンセもセンスがよい。オールドなロック感触も織り交ぜつつ、
全体的にゆったりとした耳心地の良さに包まれた、東欧的なシンフォプログレが味わえる。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・8 総合・8
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TANQUAM「artanasan」
ロシアのシンフォニックユニット、タンクゥアムの2005作
女性2人のヴォーカルにキーボード、ドラムという変則4人編成。
サウンドは、シンセがメインのエレクトリックサウンドであるが、どことなく民族色もある。
ゴシックというほどにはダークではないが、ゆるやかなシンセの重ねをバックに
妖しげな女性スキャットが加わると、立派な雰囲気ものサウンドとして成立する。
不気味なジャケとはうらはらに、映画サントラ風の壮大さも垣間見せてくれ、なかなか楽しめる。
今後は、できれば思い切り予算を注ぎ込んで、生楽器入りでより大仰な作品を期待したい。
シンフォニック度・・8 壮大度・・8 雰囲気もの度・・9 総合・・7.5


TIDES FROM NEBULA 「Eternal Movement」
ポーランドのプログレ・ポストロック、タイズ・フロム・ネビュラの2013年作
2009年にデビュー、本作は3作目となる。美麗なシンセアレンジに適度にハードなギターを乗せ、
スタイリッシュなアンサンブルでインストサウンドを聴かせる。トレモロを含むギターフレーズに、
シンセの重ねによる優雅な叙情性と、モダンな硬質感が同居した感触は、いわばシンフォ系プログレと
クールなポストロックのハイブリッドというところか。さすが、RIVERSIDEを生んだお国柄ですね。
5~7分前後の楽曲は、短すぎず長すぎず、知的なリズム展開とともにゆるやかに構築される。
派手な盛り上がりはないが、繊細で優雅なインストサウンドにゆったりと耳を傾けられる好作品。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 スタイリッシュ度・・8 総合・・8
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TIDES FROM NEBULA「SAFEHAVEN」
ポーランドのプログレ・ポストロック、タイズ・フロム・ネビュラの2016年作
4作目となる本作も、うっすらとしたシンセアレンジにメロウな味わいのギターを重ね、
翳りを含んだ叙情性とともに、繊細でスタイリッシュなインストサウンドを聴かせる。
今作では変拍子リズムも加えて、よりプログレ風味が強まった感触で、ゆるやかな聴き心地の中にも
いくぶんダイナミックな展開力が増えた感がある。ここにヴォーカルが加われば、HAKENのような
モダンでキャッチーなプログレになりそうなのだが、あくまでインストなのはこだわりか。
オールインストながら空間的なスケール感を描けるセンスというのは見事ですね。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 スタイリッシュ度・・8 総合・・8
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TOMPOX 「Hungarian Eclectic」
ハンガリーのシンフォニックロック、トンポックスの2012年作
SOLARISのベーシスト、トーマス・トンポックス率いるバンドで、美しいフルートの音色に
適度にハードなギターときらびやかなシンセで聴かせる、かつてのソラリスを思わせるサウンド。
味わいのあるベースラインが哀愁を感じさせ、どっしりとした大人のアンサンブルを描きつつ、
泣きに走りすぎない東欧らしいクールな叙情性とともに、17分の大曲をじっくりと構築してゆく。
基本はインストメインだが、KING CRIMSON“Epitaph”のカヴァーではヴォーカルも含めて
なかなかハマっている。ソラリスのファンは要チェック。ジャケが地味すぎるのが残念。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 ソラリス度・・8 総合・・8
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TOMPOX 「The Dark Side of The Sun」
ハンガリーのシンフォニックロック、トンポックスの2013年作
前作同様に、叙情的なギターと優美なシンセを中心にしたソラリスを思わせるサウンドであるが、
今作ではナレーションを含んだ大曲など、スペイシーなスケール感が加わったという印象で、
やわらかなフルートの音色に重なるメロウなギターなども、ミステリアスな空間美を感じさせる。
東欧らしい適度な硬質感と涼やかな構築性で、インスト主体の楽曲を説得力をともなって描いている。
いわば、ソラリスのサウンドをより重厚かつドラマティックに深化させたというべき傑作である。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 ソラリス度・・8 総合・・8
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TOWNSCREAM「MAGYVAROSI IKONOK」
ハンガリーのシンフォニックロック、タウンスクリームの1997年作
AFTER CRYNGのシンセ奏者、VEDRES CSABAのプロジェクトで、クラシカルなピアノを乗せた
変拍子を含むリズムとともに、東欧らしい硬質感のあるシンフォニックサウンドが炸裂。
全体的にはAFTER CRYINGシリアスな静謐感を強めた作風で、ときに、ISILDURS BANEあたりを彷彿とさせる。
7曲目で顔を出すEL&P風のメロディなどにはプログレ的なセンスを感じさせるるのだが、艶やかなピアノの音色には、
本物のクラシックの香りもある。アカデミックなシリアス調のシンフォニックロックとして聴けば、じつに素晴らしい作品だ。
シンフォニック度・・8 クラシカル度・・8 硬質度・・8 総合・・8
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TRAVELLERS「A JOURNEY INTO THE SUN WITHIN
ポーランドの女性Voロックバンド、トラヴェラーズの2011年作
COLLAGESATELLITEのWOJTEK SZADKOWSKIを中心に結成したバンドで、
女性ヴォーカルの歌声で聴かせるゆるやかなシンフォニックロックサウンド。
10分以上が2曲に8分が2曲という大作志向で、モダンなシンセアレンジと
アンニュイな翳りがミックスされて、独特の浮遊感をまとわせた作風になっている。
しっとりとした女性声が耳に優しく、初期のQUIDAMなどを思わせる部分もあり、
随所にプログレ的な感触を匂わせながら、さらりとクールなお洒落さを感じさせる作品だ。
シンフォニック度・・7 プログレ度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8
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TURQUOISE
ポーランドのシンフォニックロックバンド、タークォイスの1st。2001年作
ポーランドの女性声シンフォといえば、QUIDAMが挙げられるが、このバンドもファンタジックなジャケ絵に負けず、
しっとりとしたやわらかみのあるサウンドで、母国語で歌う美声の女性ヴォーカルをメインに、
メロウなギターと幻想的なシンセが一体となった、女性声シンフォの王道といえるサウンドである。
アコースティックや静寂パートなどを効果的に設けるなど、アレンジ面でも気を使っていて
ギターの泣きのフレーズにもセンスが感じられる。決してただの歌モノになっていないところが良い。
優美度・・プログレ度・・7 女性Vo度・・9 総合・・8
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TURQUOISE「PO DRUGIEJ STRONIE」
ポーランドのシンフォニックロックバンド、タークォイスの2nd。2003作
デビュー作は美しい童話的なジャケットに、清涼な女性ヴォーカルの歌声が実に心地よいアルバムだったが、
今作ではその美声ヴォーカルが交代している。前作のような暖かなシンフォ音像はやや影をひそめて、
どちらかというとしっとりとした内的な叙情を感じるサウンドになった。ヴォーカルは女性2人に男性が一人で、
母国語で歌われる歌には異国的な雰囲気が増しており、ギターの奏でる湿り気のあるフレーズとともに、
優美で幻想的なシンフォニックロックが味わえる。翳りを帯びた叙情にゆったりと浸れる好作品です。
優美度・・8 プログレ度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8


U V W X Y Z

Uz Jsme Doma 「Rybi Tuk」
チェコのアヴァンロック、ウジュ・ズマイ・ドマの2003年
1990年にデビューし、6作目となる。変則リズムを含むロックのノリにハード寄りのギターと母国語のヴォーカルを乗せ、
おちゃらけたユーモアと哀愁が交差する、アヴァンギャルドな辺境ロックを聴かせる。シンセを使っていないので
プログレ感触はさほどないものの、ゲストによるサックス、ホルン、トランペット、ヴァイオリンやバスーンなどが、
楽曲にカラフルな彩りを加え、ときに朗々とした歌声とともに、MAGMAのような怪しいアッパーな高揚感も覗かせる。
楽曲は3~5分前後で、濃密な味わいながらも、ほどよくシンプルにまとまっている。もっと突き抜けてもよいかも。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 アヴァンギャル度・8 総合・7.5
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VESPERO 「Rito」
ロシアのサイケプログレ、ヴェスペロの2007年作
チェンバーロック的なミステリアスな雰囲気とスペイシーなサイケが融合したようなサウンドで、
ときにヴァイオリンやフルートを含む優雅な叙情と、とらえどころのないサイケな浮遊感を
得体の知れない薄暗さで包み込んだような作風。ほぼオールインストであるが演奏力は高く、
軽やかなドラムを中心にした巧みなアンサンブルで、愛想はよくないながらも、
10分以上の大曲も含め、先の読めない不思議な緊張感で聴き通せてしまう。
ドラマテイック度・・7 プログレ度・・8 ミステリアス度・・9 総合・・8
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Vespero 「By the Waters of Tomorrow」
ロシアのサイケプログレ、ヴェスペロの2010年作
軽妙なリズムにスペイシーなシンセとギターを乗せ、ミステリアスな浮遊感に包まれたサウンドで、
ときにヴァイオリンやチェロなども加えた、チェンバーロック風味も覗かせるシリアスなサイケ。
ギターにシンセとメロディカなどが重なる厚みのある音に、存在感あるベースと巧みなドラムによる、
アッパーなノリで迫力あるサイケロックを展開。演奏力の高さも含めて、Ozric Tentaclesにも通じるが、
こちらはシリアスでアナログ感ある音作りに加え、メロトロンを使った涼やかな叙情性もあって、
よりプログレファン向けといえるだろう。全63分、濃密すぎない味わいで楽しめるサイケプログレ好作。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 優雅なサイケ度・・8 総合・・8 
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Vespero「Droga」
ロシアのサイケプログレ、ヴェスペロの2013年作
本作はのっけから10分を超える大曲で、チェロやフルートが鳴るイントロから、アッパーなリズムに
オルガンなどを含むスペイシーなシンセと、ギター、メロディカなどを乗せた、サイケロックを聴かせる。
技巧的なドラムとどっしりとしたベースが、サウンドに強固な説得力を生み出していて、
随所に叙情的なフレーズを乗せるギターや、メロトロンなどの美しいシンセが合わさると、
シンフォ寄りのプログレ感触も覗かせる。オールインストながら、ミステリアスな空気感を描きつつ、
7~9分という大曲を構築する演奏センスは見事。前作以上にプログレ度を強めた72分の力作。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 優雅なサイケ度・・8 総合・・8
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Vespero 「Fitful Slumber until 5 A.M.」
ロシアのサイケプログレ、ヴェスペロの2015年作
うっすらとしたシンセにマンドリンの音色を乗せ、サックスが鳴り響く、優雅な浮遊感に包まれて、
うねりのあるベースとともに、アッパーなノリのアンサンブルで、スペイシーなサイケ・プログレを展開。
やわらかなフルートの音色も加わって、Ozric Tentaclesのようなオリエンタルなサイケ感と、
美しいシンセの重ねによる適度なシンフォ感触が同居していて、オールインストながらも聴きやすい。
10分を超える大曲も多いが、確かな演奏力による軽妙なアンサンブルが、スケール感ある音の広がりと
スリリングでミステリアスな世界観を構築している。オズテン好きはもちろん、サイケプログレ好きは必聴。
ドラマティック度・・7 サイケプログレ度・・8 優雅でミステリアス度・・9 総合・・8 
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Vespero 「Azmari - Abyssinian」
ロシアのサイケプログレ、ヴェスペロのライブ作。2016年作
シンセにヴァイオリン、サックス奏者を含む7人編成のステージで、スペイシーなシンセにヴァイオリンが鳴り響き、
グルーヴィなベースとドラムによるアッパーなリズムとともに、のっけから17分のサイケ大曲を展開。
ノリのあるサイケロックとしては、Ozric Tentaclesにも通じるが、こちらはもっとフリーで先の読めない展開と
ミステリアスな気配を漂わせる。一方では、優美なヴァイオリンとシンセが重なるシンフォニックな質感も覗かせ、
オールインストであるが、厚みのあるアンサンプルで、妖しいスケール感に包まれた濃密なサウンドを聴かせる。
ドラマティック度・・7 サイケ度・・8 妖しげ度・・8 総合・・8
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Vespero 「Liventure N19」
ロシアのサイケプログレ、ヴェスペロの2008/2019年作
2007年にデビュー、本作は2008年ライブ作の再発盤で、2009年のライブ音源をボーナスを収録。
シンセにヴァイオリン奏者を含む6人編成で、フリーキーなギターにシンセ、女性ヴォーカルを乗せ、
生々しいドラムが叩き出す即興的なアンサンブルとともに、妖しげなサイケロックを展開。
勢いの良いアッパーなノリの良さと、混沌としたユルさが同居したサウンドであるが、
奔放に弾きまくるギターをはじめ、インストパートにおいても高い演奏力と緊張感に包まれる。
ヴァイオリンやフルートが加わると、アヴァンギャルドなチェンバーロック風味も顔を出し、
浮遊感のある女性ヴォーカルとともに、優雅でミステリアスなサイケプログレが楽しめます。
ライブ演奏・・8 プログレ度・・7 妖しげ度・・8 総合・・8 
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Vespero 「Hollow Moon」
ロシアのサイケプログレ、ヴェスペロの2018年作
本作は宇宙と月をテーマにしているようで、美しいシンセの重ねによるイントロ曲から
ドラムが加わった2曲目は、勢いのあるアンサンブルでアッパーにたたみかける。
フリーキーなギターにヴァイオリン、サックスが鳴り響き、スペイシーなシンセが重なって、
優雅で濃密、きらびやかなサイケプログレを展開する。リズム面を含めて演奏力も高いので、
ときにジャズロック的な軽妙な味わいもあって、サックスやヴァイオリンが活躍するところも多い。
叙情的なギターに美麗なシンセが重なると、わりとシンフォニックな感触も前に出てきて、
11分の大曲は、アヴァンギャルドなプログレらしさも覗かせる圧巻の出来。全64分の力作です。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 優雅でサイケ度・・8 総合・・8 
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Angel Ontalva & Vespero 「Carta Marina」
スペインのギタリスト、アンヘル・オンタルヴァとロシアのサイケプログレ、ヴェスペロのコラボ作。2018年作
アコースティックギターの素朴なイントロから、二本のエレキギターにシンセを重ね、軽やかなアンサンブルとともに、
サイケな浮遊感と優雅さが同居したサウンドを描く。OCTOBER EQUUSでも活躍する、オンタルヴァの巧みなギターは、
ロックのみならず、ジャズからの影響も匂わせるフリーキーな旋律を奏で、サウンドには叙情性と緊張感が同居する。
オールインストながら、楽曲は8~12分と長いものが多く、インプロ的な即興性も含んでいて、やや長尺感もあるのだが、
スペイシーなシンセパートにアコースティックを含む優雅なギターの絡みは、まさに両者の融合という味わいである。
ジャズ度・8 サイケ度・7 優雅度・8 総合・8
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VESPERO 「THE FOUR ZOAS」
ロシアのサイケプログレ、ヴェスペロの2020年作
2007年にデビューし、すでにアルバムは軽く10作を超える多作バンド。本作はのっけから11分の大曲で
ミステリアスなシンセにギターを重ねた、ゆったりとしたアンサンブルに艶やかなヴァイオリンが鳴り響き、
展開力のあるプログレ・サイケロックを聴かせる。エクスペリメンタルな静寂感からアッパーなパートへの流れや
スペイシーなスケール感は、キャリアのあるバンドらしい確かな演奏力とアレンジセンスの妙であるだろう。
フリーキーなギターを乗せたガレージロック風味や、きらびやかなシンセをメインにしたナンバーなど、
オールインストながらも、様々な顔を覗かせる。ラストは21分の大曲で、軽妙なアンサンブルでたたみかける。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 サイケ度・8 総合・8 
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Vespero 「Songo」
ロシアのサイケプログレ、ヴェスペロの2021年作
2007年にデビュー、本作はすでに13作目あたりか。艶やかなヴァイオリンをシンセに重ね、パーカッションが鳴り響くイントロから、
軽やかなリズムにグルーヴィなベースを重ね、ムーグ的なスペイシーなシンセとともに浮遊感のある神秘的なサイケロックを展開する。
基本はインストながら、随所に女性のスキャットヴォイスが美しく、クラシカルなヴァイオリンの音色が優雅に鳴り響く。
ブックレットに載せられた曲ごとに描かれた緻密な線画も含め、アートなセンスを感じさせる、サイケプログレの逸品だ。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・9 総合・8 
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Vezhlivy Otkaz 「Geese And Swans」
ロシアのチェンバーロック、ヴェジリヴィ・アトカズの2010年作
トランペットにヴァイオリンがけたたましく鳴り響き、繊細なピアノが絡みつつ、
偏屈なアヴァンギャルド性と哀愁の情緒が交差する、硬質なチェンバーロック。
スリリングでアカデミックなシリアス性は、Henry Cowにも通じる感触で、
変拍子リズムに乗せるクラシカルなピアノは優雅なれど、母国語による男性ヴォーカルはどこか偏屈な印象。
ゆったりとしたピアノにヴァイオリンが絡む、ジャズタッチのアダルトな味わいも覗かせる。玄人好みのチェンバー作品だ。
ドラマティック度・・7 チェンバー度・・8 アヴァンギャル度・・7 総合・・8
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Virtuel 「I」
ブルガリアのプログレハード、ヴィルチュエルの2011年作
1992年にJekyll Hydeの名で結成、本作は新たにVirtuelとして再録音された作品の2019年リミックス版。
近年は八面六臂に活躍するマルチ・ミュージシャン、コンスタンティン・ジャンバゾフを中心にしたバンドで、
きらびやかなシンセアレンジにマイルドなヴォーカルを乗せた、キャッチーな味わいのメロディックロック。
クラシカルかつシンフォニックな優雅さと、適度にハードで随所に流麗なフレーズも聴かせるギターワークに、
リズムチェンジも含んだProgMetal的な構築性で、単なるメロハーという以上に美意識を感じさせるサウンドを描いてゆく。
80年代的なAORの味わいを、優雅な技巧性と厚みのあるアレンジで包み込んだような高品質なアルバムです。
2作目となる、2013年作「Conception of Perception」も、同様にメロディ充実の好作品なのでチェックすべし。
メロディック度・・8 プログレハー度・・8 優雅度・・8 総合・・8
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Virtuel 「Conception of Perception」
ブルガリアのプログレハード、ヴィルチュエルの2013/2019年作
1992年にJekyll Hydeという名で結成され、活動休止後にメンバー三人のうち二人は、アメリカ、イギリスへと移住、
インターネットでのデータ共有により2010年に新たにVirtuelとしての1stを発表し、本作はそれに続く2作目となる。
美麗なシンセアレンジと、大人の味わいのヴォーカルで聴かせる、キャッチーなプログレハードサウンドで、
随所にテクニカルなギターフレーズなどを盛り込んだり、メリハリのあるインストパートもなかなか充実している。
ドラムは打ち込みながら、優雅なシンセワークを中心にしたやわらかな聴き心地で、古き良きプログレハードと
シンフォプログレの壮麗さが合わさったという傑作です。2019年リミックス版でDL購入可能。
ドラマティック度・・8 キャッチー度・・8 プログレハー度・・8 総合・・8
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Volgyessy Szomor FanniHajnalban
ハンガリーの女性ヴォーカル、ヴォルゲシー・ソモル・ファニーのソロ。1995年作
YOU AND Iのシンガーでもあった彼女の美しい歌声を中心に聴かせる
アコースティカルなポップロックという趣ながら、母国語によるヴォーカルが
異国情緒をかもし出していて、単なるポップという以上のサウンド。
楽曲はうっすらとしたシンセアレンジも含んだ爽やかでキャッチーな耳心地で、
キュートで伸びやかな歌声にうっとり。初期のQUIDAMなど、女性Vo好きはチェック。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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Volgyessy Szomor Fanni 「Var Rad Az Elet」
YOU AND Iのシンガー、ヴォルゲシー・ソモル・ファニーのソロ。2010年作
AFTER CRYINGのメンバーとの共同プロデュース作品ということだが、
サウンドの方は、シンセ類などのモダンなアレンジで聴かせるポップなサウンドで、
アコースティカルなトラッド色も含ませた、コンテンポラリーな趣がある。
ソロとしては実に15年ぶりながら、彼女の美声はまったく衰えることなく、
しっとりと優しいその歌声にうっとりである。曲によってはシンフォニックなロック色もあり。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8


Votchi Scary Woman
チェコのサイケ・ハードロックバンド、ヴォッチの2002年作
典雅なフルートとチェンバロの音色で始まりつつ、曲が始まると荒々しいヴォーカルを乗せて
オールドなギターリフとともに、古き良きハードロックな雰囲気に包まれる。
吹き鳴らされるフルートにオルガンも加わって、怪しげでサイケな感触も覗かせつつ
ときにBlack Sabbath(Ozzy)風味もあったりと、なかなか面白い辺境ハードロックが楽しめる。
B級臭い魔女のジャケもいかにもよろしいですな。マニア好みのサイケハード作品です。
メロディック度・・7 サイケハー度・・8 怪しげ度・・8 総合・・7.5
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VOTCHI 「UNICORN」
チェコのプログレ・ハードロック、ヴォッチの2005年作
2002年にデビューし本作は2作目となる。叙情的なギターにシンセとフルートが重なる優美なイントロから、
本作はずいぶんプログレ寄りのサウンドになっている。アナログ感あるギターにオルガンが鳴り響き、
英語歌詞のヴォーカルとともに、70年代のブリティッシュハードを蘇らせたような作風で、
フルートの活躍ぶりはJethro Tullを思わせる。ときにリズムチェンジを含む展開力とともに、
キャッチーなメロディのフックもなかなか魅力的で、オールドな辺境ハードロックだった前作から、
ヴィンテージなハードプログレというべき進化をしている。サイケ的でもある妖しげな部分も残していて、
ほどよいマイナーな辺境感も含んだ、フルート入りのプログレ・ハードロックが楽しめる。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 ヴィンテージ度・・8 総合・・8
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Walfad 「Colloids」
ポーランドのプログレバンド、ワルファッドの2018年作
2013年にデビュー、本作は4作目となる。シンセを含む5人編成で、ほどよいハードさを含んだギターに、
オルガンを含むうっすらとしたシンセと、伸びやかなヴォーカルを乗せたキャッチーな聴き心地に、
MARILLIONなどにも通じる精細さと、RIVERSIDEなどのポーランドらしい薄暗さも含んだサウンド。
10分を超える大曲も、ゆったりとした叙情性で、ポストプログレ的な歌ものとしての聴きやすさがある。
インストパートでの展開力がもう少し欲しい気もするが、スタイリッシュで耳心地のよいアレンジセンスには、
今後の成長に期待させるものがある。エモーショナルなロック感とモダンなプログレ色が同居した好作品。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 叙情度・・8 総合・・7.5
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The Worm Ouroboros 「Of Things That Never Were」
ベラルーシのプログレバンド、ワーム・ウロボロスの2013年作
アメリカのゴシック・ドゥーム系にも同名バンドがいるが、こちらはダークな叙情を含んだ本格派プログレバンド。
不穏なベースラインとアコースティックギターの上をフルートが鳴り響く、チェンバーロック風味の感触に
変則リズムとメロウなギターがANGLAGARD的な浮遊感と涼やかな叙情をかもしだすという個性的なサウンド。
音数を絞ったアンサンブルなので、華美で重厚なシンフォニック性はないのだが、センスがものをいうこの作風で、
ときに優雅なカンタベリー風味を覗かせたり、繊細なメロディック性と軽妙なテクニカル性を融合させているのは見事。
歌入り曲でのキャッチーなアヴァンギャルド性は、どこかMATS/MORGAN的でもあったりと、とらえどころのないセンスは
玄人好みであるが、一方では、オルガンが鳴り響きフルートの音色が牧歌的なナンバーもあったりと、案外振り幅が広い。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 軽妙度・・8 総合・・8
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Wrupk Urei 「Koik Saab Korda」
エストニアのプログレ・ジャズロック、ウラプク・ウレイの2014年作/邦題「結果オーライ」
女性サックス奏者、トロンボーン奏者を含む編成で、歪ませたベースにエレピやマリンバの音色を重ねた、
優雅な反復系サウンドを描きつつ、トロンボーンが鳴り響く、フリーキーな味わいのアンサンブルから、
ノリのよいストレートなリズムにロックギターやエレピを乗せた、わりとキャッチーなナンバーなど、
とぼけたセンスと、SOFT MACHINEなどの古き良きジャズロックが交差するという聴き心地。
オールインストで、2~4分前後の小曲を主体に、さらっと聴けつつも、なんとなくヘンテコ感に包まれ、
エフェクトのかかったシンセなどがスペイシーなサイケ風味をかもしだしているところも面白い。
遊び心あるアヴァンギャルド性を、優雅なジャズロックで包み込んだというような逸品です。
ドラマティック度・7 プログレ度・8 優雅でヘンテコ度・9 総合・8
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Xanadu 「Last Sunrise」
ポーランドのハードプログレ、ザナドゥの2011年作
適度にハードにギターとマイルドなヴォーカルを乗せた、ProgMetal的な感触もあるサウンド。
Riversideあたりに通じる薄暗い感触と、テクニカルな構築性で、ダークでヘヴィな世界観を描いてゆく。
全体的には派手さよりも淡々とした薄暗さが持ち味で、地味といえば地味かもしれないが、
随所にシンフォニックな美しさや叙情的なギターフレーズも顔を覗かせつつ、
10分を超える大曲では、重厚でドラマティックなハードプログレが楽しめる。
初期のPain of Salvationのような雄大なセンスも感じさせる。なかなかの力作です。
ドラマティック度・・8 ProgMetal度・・7 薄暗度・・8 総合・・7.5
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XANADU 「FOLLOW THE INSTINCT」
ポーランドのプログレバンド、ザナドゥの2014年作
90年代から活動するバンドで、2011年作に続く2作目。ほどよくハードなギターに優美なシンセを重ね、
かすれた味わいのマイルドなヴォーカルとともに、スタイリッシュなシンフォプログレを展開する。
リズムチェンジを含む、ProgMetal的な感触も覗かせつつ、ポリッシュらしい翳りを帯びた世界観で、
Riversideにも通じるモダンなハードプログレとしても楽しめる。もうひとつ盛り上がるナンバーが欲しいが、高品質な内容です。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 叙情度・8 総合・8

X-Panda 「Flight of Fancy」
エストニアのプログレバンド、エックス・パンダの2012年作
適度にハードなギターとともに、テクニカルなアンサンブルで構築されるProgMetal的な質感と、
キャッチーなヴォーカルメロディによる抜けのよい爽快さが合わさった高品質なサウンド。
辺境的な雰囲気はまったくなく、メロウなフレーズを奏でるギターやシンセによる巧みなアレンジ、
混声合唱隊が加わったスケール感も含ませて、10分を超える大曲を構築するセンスは見事。
NEAL MORSEやTRANSATLANTICなどのファンにも楽しめる、シンフォニックハードとしての側面と、
軽妙なフュージョン風味やヘンタイ的なリズムのキメなどもさらりとこなす、器の大きさも感じさせる。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 構築センス・・9 総合・・8
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Yesterdays「Holdfenykert」
ハンガリーのシンフォニックロックバンド、イエスタデイズの2007年作
やわらかなフルートの音色に、メロトロンを含むシンセ、美しい女性ヴォーカルによる繊細なシンフォニックロック。
アコースティカルな素朴さが耳に優しく女性奏者の吹くたおやかなフルートにメロトロンが重なると、もううっとりだ。
同郷の優美なシンフォニックロックバンド、YOU AND Iのメンバーがいるというのもうなずける。
リリカルかつやわらかな音で聴かせる、しっとり繊細系シンフォニックの好作品である。
2014年の再発盤ではジャケが変更されて、リミックス&リマスターがなされている。
シンフォニック度・・7 繊細度・・9 女性Vo度・・8 総合・・8
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Yesterdays「Colours Caffe」
ハンガリーのシンフォニックロックバンド、イエスタデイズの2012年作
女性ヴォーカルのキュートな歌声で聴かせる爽やかなサウンドは本作もそのまま、
キャッチーな軽快さとプログレ的なシンセアレンジが合わさった、耳心地の良さが光る。
素朴なフルートの音色も含ませつつ、母国語の歌声による異国的な情感とともに、
繊細なやわらかさで、女性声の素直なメロディックロックが楽しめる。
プログレとして聴くにはややインパクトは弱いのだが、初期のQUIDAMなどが好きな方はどうぞ。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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YESTERDAYS 「SENKI MADARA」
ハンガリーのシンフォニックロック、イエスタデイズの2018年作
2007年のデビュー作「Holdfenykert」は、美声の女性ヴォーカルで聴かせる優美な傑作であったが、
本作は2012年作に続く3作目となる。やわらかなフルートの音色に、ピアノやムーグを含むシンセと
メロウなギター、やわらかな女性ヴォーカルの母国語の歌声で、優雅なシンフォニックロックを描く。
アコースティックなパートでは、スペインのAMROKのようなトラッド・プログレ的な感触もあり、
艶やかなヴァイオリンにフルートの音色、そして女性声が重なる、繊細な叙情美にウットリとなる。
全体的に派手な展開というのはないのだが、しっとりと落ち着いた味わいの優美なる逸品です。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 優美度・・9 総合・・8 
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Yesternight 「The False Awakening」
ポーランドのプログレバンド、イエスタナイトの2017年作
ART OF ILLUSIONのメンバーを含むバンドで、メロウなギターの旋律にうっすらとしたシンセを重ね、
マイルドなヴォーカルとともに、モダンなハードさと翳りを帯びた叙情が同居したサウンドを聴かせる。
ほどよいヘヴィさと知的な構築力で、Riversideあたりにも通じるハードプログレとしても楽しめ、
泣きのギターと美しいシンセによる、薄暗系シンフォニックロックの叙情美も随所に覗かせる。
全体的にスリリングな展開というのはさほどないが、ラストの11分の大曲では、キャッチーな歌メロに
流麗なギターワークとシンセでじわじわと盛り上げる。ポーランドらしいモダンシンフォの逸品です。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 薄暗度・・8 総合・・8
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YOU AND I
ハンガリーのシンフォニックロックバンド、ユー・アンド・アイの1st。1995年作
ハンガリーというとクラシカルかつ濃いめのシンフォニックバンドが多いというイメージだが、
このバンドは女性ヴォーカルの美声を中心にした、じつにたおやかなサウンドで、
たとえば、ポーランドのQUIDAMあたりを想起させる優美な雰囲気を持っている。
アコースティックを含むギターにしろキーボードにしろ、あまり大仰にはならず、
歌をメインにした楽曲にも好感が持てるし、IONAのようなケルティックな空気感も含んだ耳心地よい逸品。
メロディアス度・・8 たおやか度・・9 女性Vo度・・8 総合・・8
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YOU AND I「GO」
ハンガリーのシンフォニックロックバンド、ユー・アンド・アイの2nd。1998年作
美しい女性ヴォーカルの歌声にシンフォニックなキーボードで聴かせる、
ポーランドのQUIDAMを思わせるような爽やかな女性声シンフォニックロック。
1stよりもいくぶんキャッチーなAORテイストが増しており、全体的に一般向けに聴き易くなっている。
伸びやかなVOLGYESSYさんの歌声がじつに素晴らしく、しっとりと耳に優しく響きます。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 女性Vo度・・9 総合・・8
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YOU AND I「EXIT」
ハンガリーのシンフォニックロック、ユー・アンド・アイの3rd。2001年作
今作もやわらかな美声を響かせるVOLGYESSY嬢の歌声を中心に、しっとりとキャッチーなサウンドが楽しめる。
オルガンなどを含んだ優美なシンセワークにメロウなギターフレーズもよろしく、中期以降のYESのような聴きやすさに、
母国語の女性ヴォーカルが歌を載せたというスタイルで、ゆったりと爽やかな味わいが広がってゆく。
スリリングな部分は薄いがとても耳に優しい好作。後のYesterdaysへとつながる作品でもある。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8
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ZLYE KUKLY
(ЗЛЫЕ КУКЛЫ)「ALIEN CELESTIAL CITY(ЧУЖОЙ НЕБЕСНЬЙ ГОРОД)
ロシアのゴシック・チェンバーロック、ザルイェ・カクリィの2002年作
詳細は不明だが、架空の都市をテーマにしたコンセプト作のようで、
男女ヴォーカルのロシア語の歌声で聴かせる演劇的なロックオペラ風味に
室内楽的な優雅さが合わさったようなサウンド。楽曲はおおむねゆったりとした感触で
それなりに怪しげではあるが、叙情的な歌ものとして案外普通に楽しめたりする。
もう少し極端なインパクトが欲しい気もするが、クラシカルなヴァイオリンが鳴り響くラストはよい感じです。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 シアトリカル度・・8 総合・・7.5


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