ポーランドのメタルとプログレ
ポーランドのバンドというと、どこか翳りを帯びた薄暗さや、他の西欧、東欧諸国とも異なる、独特の空気感をもったイメージがある。
それは、たびたび戦火によって国土を侵略され、分割されてきたという、悲しみの歴史を背景に持つことからくるのかもしれない。
プログレの方面では、Collage、Satelliteなどのウェットな叙情や泣きの哀愁を含んだサウンドは、いかにも東欧らしい空気を感じさせるし、
メタル系においては、耽美なゴシック系のバンドがいる一方で、VADER、BEHEMOTHを筆頭にしたエクストリームなバンドも存在し、
さらに近年では、Riversideなどの出現で、プログレとメタルのボーダーレスをゆくようなパンドも人気を博しており、
いまやメタルとプログレにおいて、ポリッシュといえば、個性的なバンドを輩出する第三勢力というべき存在となった。
ここでは、2018年ワールドカップ、日本の対戦国でもある東欧の古豪、ポーランドの良質なバンドたちを紹介する。
2018.6 緑川 とうせい
◆ベヒモスとベイダー
BEHEMOTH「Demonica」
ポーランドのブラックメタル、ベヒーモスの2枚組デモ音源集。
ブルータル系の代表として語られる彼らだが、デビュー当時は、原初的なブラックメタルのスタイルであった。
Disc1には「The Return of The Northern Moon」と題された1992年のデモテープ音源に
1994年のスタジオセッション、EP「And The Forests Dream Eternally」のリレコーディング音源を収録。
Disc2には、1993年のデモテープ「From The Pagan Vastlands」に未発音源などを収録。
ノイジーなギターリフとガナりヴォーカルで聴かせる、初期BURZUMに影響を受けたとおぼしき、
ミスティックでアンダーグラウンドな香りのするブラックメタルサウンドを繰り広げている。
のちの作風のような怒濤の疾走感はなく、スローからミドルのじっとりとした妖しさが魅力で
北欧の初期ブラックメタル勢を思わせる、地下に立ち込める怨念のような邪悪さがにじみ出ている。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・7 初期ブラック度・・9 総合・・8
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BEHEMOTH「The Apostasy」
ポーランドのブラックメタルバンド、ベヒーモスの2007年作
ポーランド産ブルータルメタルとしては、VADERと実力を二分するベテランバンドである。
前作「Demigod」も相当の強度と暴虐度の高いアルバムであったが、続く今作も見事な出来。
マシンガンのようなブラストビートで突進する暴虐性はそのままに、今作ではサウンドに魔界の邪神のごとき荘厳さが加わって、
今まで以上に「浸れる」作品となっているのである。これまでになくメロディを聴かせる部分が増しており、
魅力的なギターリフやソロが効果的に導入されたことで、邪悪でありながらも聴きやすいという、奇跡的なバランスとなっている。
全39分というのもこの密度ならちょうど良い。完成度の点でバンドの最高傑作だろう。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・9 荘厳度・・10 総合・・8.5
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VADER「THE PROFUNDIS」
ポーランドのデスメタルバンド、ヴェイダーの2nd。1996年作
SLAYERと初期MORBID ANGELの暴虐性を正しく受け継ぐそのサウンドは
邪悪さとブルータリティに包まれながらも、どこか知的で、ぬかるんだ泥のような濃密さがある。
神話や宗教などをモチーフにした歌詞の深遠さにも恐るべきものがあるが、
それをデスメタルとしての高度な殻に封入して表現する彼らのセンスもただごとではない。
ギターのリフの流れ、プレイクやリズムチェンジなどの曲運びも自然で
ただ暴虐なだけではなく、デスメタル…音楽としての完成度の高さが光っている。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・8 完成度・・9 総合・・8.5
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VADER「Necropolis」
ポーランドのデスメタルバンド、ヴェイダーの2009年作
結成25周年のベストアルバムを出したと思ったら、ピーター以外のメンバーが脱退、
ほぼピーターのソロバンド的となってしまったVADERであるが、サウンドの方は不変。
絡みつくようなギターリフを2〜3分台のコンパクトな楽曲に詰め込んだ、
非常に濃密かつスラッシーなデスメタルが楽しめます。咆哮するピーターのヴォーカルとともに、
最近のバンドでは表現できない、この有機的な硬質感は、まさにこのバンドならではのもの。
ファンが求める変わらぬVADERサウンドがここにある。強力な再出発作だ。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・8 ヴェイダー度・・9 総合・・8
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DIES IRAE「IMMOLATED」
ポーランドのデスメタルバンド、ディエズ・イラエの2000年作
VADERのギターを務めるマウザーを中心としたプロジェクトバンドで、ドラムにはそのVADERの故Docがすわり、
Vo/BはDEVILYNのメンバーが務める。サウンドの方は初期のVADERに通じるストレートなデスメタルで、
ブルータルに疾走しまくる明快なスタイル。暴虐な突進を支えるDocのドラムは
やはり見事で、一本調子になりがちな楽曲のの説得力を一段引き上げている。
このバンドならではの個性はあまり感じられないが、VADERが好きなリスナーなら充分楽しめる出来だ。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・8 VADER度・・9 総合・・8
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VESANIA「God the Lux」
ポーランドのブラックメタルバンド、ヴェサニアの2005年作
シンセを含む4人組で、BEHEMOTHばりに激しく疾走するブラックメタルを基本に、
シンセによる美麗なアレンジも覗かせる。演奏のレベルも高く、楽曲における緩急や
ブレイクなども多用した構成にはVADERなどに近いブルータルデス的な方法論も感じさせる。
と思ったら、そのBEHEMOTHのOrionととVADERのDareyが在籍するバンドでした。納得!
シンフォニック度・・7 暴虐度・・8 ポーラン度・・8 総合・・8
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◆ポーランドのメロディックメタル
Crystal Viper「Crimen Excepta」
ポーランドのメロディックメタル、クリスタル・ヴァイパーの2012年作
女性ヴォーカル、マルタ嬢のハスキーな歌声で、パワフルに聴かせる正統派サウンドは
4作目となる本作でも健在。ツインギターのレーズにはIRON MAIDENなどからの影響も思わせる
オールドなテイストをたっぷりと感じさせ、軟弱すぎない適度なメロディックな感触もよろしく、
80〜90年代にさらに回帰したような、古き良きヨーロピアンメタルの雰囲気を漂わせている。
いくぶんマイナー臭い妖しさも魅力的で、楽曲のクオリティの点でも過去最高の出来だろう。
ドラマティック度・・8 正統派度・・8 古き良き度・・8 総合・・8
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PATHFINDER「Fifth Element」
ポーランドのシンフォニックメタルバンド、パスファインダーの2012年作
前作はクラシカルに疾走するなかなかの力作であったが、本作も壮麗なイントロから始まり
シンフォニックな大仰さとともに疾走開始。楽曲はメリハリのある展開力とともに
プログレッシブな知的さも垣間見せつつ、全体的にはあくまできらびやかな聴き心地だ。
ブラストビートも含めてたたみかけるような勢いと、エピックな壮大さが前作以上に前に出ていて、
RHAPSODY+DRAGONFORCEというような、濃密なシンフォニックメタルを繰り広げる傑作である。
シンフォニック度・・8 疾走度・・8 大仰度・・9 総合・・8
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Titanium 「ATOMIC NUMBER 22」
ポーランドのメロディックメタル、チタニウムの2016年作
PATHFINDERのキャロル・マニアを中心にしたバンドの2作目。前作同様にシンフォニックなシンセアレンジに、
ツインギターの叙情メロデイとハイトーンヴォーカルを乗せて疾走する、美麗なメロディック・スピードメタル。
サビの歌メロでキャッチーな爽快感はDRAGONFORCEばりで、クサメロ好きならばニンマリだろう。
北欧のバンドのようなきらびやかな感触と、繊細な叙情性が合わさって、AQUARIAの1stあたりにも通じる
メロスピの理想形ともいうべき聴き心地である。ミドルテンポのナンバーも、かつてのSTRATOVARIUSや
SONATA ARCTICAを思わせる感触で、随所にピロピロなギターも奏でながら、あくまで美しい叙情に包まれている。
楽曲におけるシンフォニックな華麗さは前作以上で、メロディのフックの充実ぶりも含めて傑作と言う他にない。
メロディック度・・9 疾走度・・9 壮麗度・・9 総合・・8.5
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ETERNAL DEFORMITY 「Frozen Circus」
ポーランドのシンフォニックメタル、エターナル・デフォーミティの2008年作
ツインギターにシンセを含む5人編成で、ダミ声ヴォーカルを含んだシンフォブラック風味と
KAMELOTなどにも通じる、モダンなセンスとシンフォニックな美意識で構築されるサウンド。
ギターやシンセは随所にクラシカルなメロディを奏で、ゴシック的でもある耽美な世界観も感じさせ、
全体的にコンセプチュアルでシアトリカルな雰囲気に包まれている。ゲストの女性ヴォーカルが加わると
よりオペラティックな聴き心地になるので、個人的にはぜひとも男女ヴォーカルのバンドになっていただきたい。
ドラマティック度・・8 疾走度・・7 耽美派度・・8 総合・・7.5
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LUX PERPETUA 「The Curse Of The Iron King」
ポーランドのメロディックメタル、ラックス・ペルペトゥアの2017年作
ツインギターに女性シンセ奏者を含む6人編成で、クサメロたっぷりのツインギターのフレーズに、
美麗なシンセアレンジとかすれた味わいのヴォーカルを乗せて疾走する、正統派のメロディックメタル。
適度にマイナー臭い辺境的な雰囲気が、シンフォニックなクサメロスピ風味とマッチして、
これがなかなか良い感じなのであります。パワフル過ぎないヴォーカルも、むしろ前に出すぎず、
ヨーロピアンでエピックな幻想性を感じさせる味になっていて、総じてマイルドな耳心地で楽しめる。
随所にフォーキッシュな叙情も覗かせ、疾走のみならず、スローやミドルテンポのナンバーも、
しっかりメロディのフックがあって魅力的だ。辺境メタルファンならずとも薦められる逸品です。
メロディック度・・8 疾走度・・8 クサメロ度・・8 総合・・8
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KRUK 「Before」
ポーランドのハードロック、クラクの2014年作
レトロなオルガンが鳴り響く、オールドスタイルのハードロックスタイルで、
適度にヘヴィなギターと朗々としたヴォーカルで聴かせる正統派のHRサウンド。
アナログ感に富んだ味のあるギターソロにやわらかなオルガンが加わると
70年代英国ハードロックのテイストが広がってゆく。随所に女性声も加わったりと、
決して一本調子ではないアレンジと、確かな演奏力によるマイルドな感触もよろしい。
ヴィンテージな懐古主義をセンスよく形にしたというような好作品だ。
ボーナストラックの母国語によるナンバーもよい感じですよ。
メロディック度・・8 古き良き度・・8 正統派HR度・・8 総合・・8
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Guitar Force 「Different Universe」
ポーランドのメロディアスハード、ギター・フォースの2016年作
ギタリストのソロ作のようなバンド名だが、女性G/Vo、女性B/Vo、女性ヴァイオリン奏者を含む6人編成で、
伸びやかな女性ヴォーカルを乗せた、古き良き感触のハードロックサウンドを聴かせる。
トリプルギター編成なので、ときに様式美色も含んだ厚みのあるギターサウンドに加え、
随所にヴァイオリンが鳴り響き、単なるキャッチーなメロハーという以上の優雅な味わい。
楽曲そのものに新鮮味はさほどないのだが、女性Voの力量もしっかりとしていて、
ゆったりとしたナンバーでは東欧らしい湿り気のある叙情も覗かせる。女性声HR好きはチェック。
メロディック度・・8 キャッチー度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8
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◆ポーランドのゴシック&ドゥームメタル
ARTROSIS「IN NOMINE NOCITIS」
ポーランドのゴシックメタルバンド、アートロシスの2nd。1998年作
前作からの流れにある耽美なゴシックメタルスタイルに、シンフォニックなアレンジや
ギターによる叙情メロディがより加わって、楽曲のレベルがひとつ上がってきた。
まさにゴシックメタルにうってつけのMEDEAH嬢の艶めいた歌声にもうっとりである。
やはりドラムが打ち込みなのでサウンドの重厚さには欠けるのだが、
あくまで歌がメインのバンドと考えればそう気にもならない。ギターは時折へヴィなリフを聴かせたり、
クラシカルなストリングス風のシンセもよい感じで、楽曲面でのメリハリといういう点でも出来がよい好作。
シンフォニック度・・8 ゴシック度・・8 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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MOONLIGHT「FLOE」
ポーランドの女性Voゴシックメタルバンド、ムーンライトの4th。2000年作
美しい女性ヴォーカル乗せた、浮遊感のある耽美な世界観を描くバンド。
今作ではよりしっとりとした雰囲気を増した、じつに美しいサウンドとなっている。
チェロやヴァイオリンなど、クラシック系のゲストがバックの演奏をより格調高いものにし、
相変わらずポーランド語による歌唱は英語にはない不思議なやわらかさをかもし出す。
バンドとしての最高傑作であり、美と静謐とに彩られた叙情派ゴシックの傑作だ。
メロディアス度・・8 ポーラン度・・9 女性Vo度・・9 総合・・8
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Darzamat「Solfernus' Path」
ポーランドのゴシック・ブラックメタルバンド、ダルザマットの2009年作
以前からゴシックとブラックの中間というサウンドで質の高い作品を作っていたこのバンド、
5作目となる本作でついに日本デビューを飾った。シンセ入りで重厚にたたみかける楽曲に
男女Voの歌声を乗せて、耽美かつ激しく疾走。DIMMU BOGIRばりの雰囲気がありながら、
女性ヴォーカルをメインに聴かせるシンフォニックなパートもあり、ゴシックメタルリスナーにも
鑑賞に耐えうるだろう。ブラックメタル的な暗黒性といくぶんモダンなヘヴィさが増したことで、
ゴシック風味のシンフォブラックというべき音になったかもしれない。重厚でシンフォなゴシブラ。
シンフォニック度・・8 暴虐度・・7 ゴシック度・・7 総合・・8
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Batalion D'Amour「Fenix」
ポーランドのゴシックメタル、バタリオン・ド・アムールの2016年作
2005年作以来、じつに11年ぶりとなる復活作で、メンバーもやや変わっているようだが、
サウンドの方は、ポーランド語による美しい女性ヴォーカルを乗せ、適度にモダンな感触を含んだ、
優雅なゴシックメタルで、フロントを務めるキャロライナ嬢の妖艶な歌声もなかなか魅力的だ。
4〜5分のコンパクトな楽曲を中心にしつつ、わりとキャッチーな感触のゴシックロック風のナンバーや
しっとりと聴かせる9分の大曲もあって、キャリアをへたバンドとしての自信と実力が発揮されている。
メロディック度・・8 ゴシック度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8
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Victorians 「Aristocrats' Symphony」
ポーランドのシンフォニック・ゴシックメタル、ヴィクトリアンズの2013年作
シンフォニックで美麗なアレンジとしっかりとメタリックな重厚さの合わさった楽曲に、
中音域からオペラティックなソプラノも使い分ける女性ヴォーカルの歌声で聴かせるサウンド。
3〜5分台にまとめられた楽曲は、そのメロディックなフックも堂々たるもので、
デビュー作にしては相当クオリティが高い。これまでのバンドのよい部分を吸収しながら、
あくまで美しさにこだわった世界観と、優雅な感触に仕上げる実力はなかなか見事。
日本のヴィジュアル系のような華やかな衣装のメンバーたちの姿も含め、話題性充分だ。
シンフォニック度・・8 ゴシック度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8
Evangelist 「Doominicanes」
ポーランドのドゥームメタル、エヴァンゲリストの2013年作
CANDLEMASSやSOLITUDE AETRUNUSなどを受け継ぐ、ドラマティックなエピックドゥームメタルで、
スローな曲調に重厚なツインギターと朗々としたヴォーカルを乗せた、本格派のスタイルだ。
歴史や宗教観を含んだ重々しいドラマ性とエピックな雰囲気に包まれ…ダークでヘヴィでありながら、
ヨーロピアンな湿り気を含んだ聴き心地もあって、随所にメロウなギターフレーズも入ってくるのが嬉しい。
全5曲ながら、9分、12分という大曲もあり、重厚にしてドラマティックなエピックドゥームが楽しめる力作。
ドラマティック度・・8 重厚度・・9 エピックドゥーム度・・9 総合・・8
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Monasterium
ポーランドのドゥームメタル、モナステリウムの2016年作
ツインギターの重厚なリフに朗々としたヴォーカルで聴かせる、Candlemassタイプのエピックドゥーム。
翳りを含んだ湿り気ある空気感と、ダークな叙情性がドラマティックな味わいになっていて、
表現あるヴォーカルも含めて、単なるフォロワーにとどまらないサウンドの説得力を描いている。
楽曲は5〜7分前後が中心で、短すぎず長すぎず、スローテンポ主体ながらもどっしりとしたノリと、
随所に甘すぎない程度のメロディと叙情を覗かせる。案外メリハリある構成力も見事だ。
新しさはないが、正統派のエピック・ドゥームメタルが好きなら、これは必聴レベルの傑作だろう。
ドラマティック度・・8 ドゥーム度・・8 重厚度・・8 総合・・8
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◆ポーランドのプログレメタル
Symphony「Mind Reflections」
ポーランドのプログレメタルバンド、シンフォニーの2008年作
シンセ奏者を含む5人組みで、ジャケのセンスからは想像できないような美麗なプログレメタルをやっている。
テクニカルなリズムと、DREAM THEATER的なメタリックなギターワーク、
そこにシンフォニックなシンセが加わったインスト重視のサウンドは新人とは思えない質の高さ。
ギターにしろキーボードにしろなかなかセンスがよく、ポーランドらしい叙情を感じさせるメロディとプログレ的な音作りが心地よい。
シンフォニック度・・8 ProgMetal度・・8 ポーラン度・・8 総合・・8
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DISPERSE「Living Mirrors」
ポーランドのテクニカルメタル、ディスパースの2013年作
Vo&Key、G、B、Drの4人編成で、エクスペリメンタルな浮遊感で聴かせるテクニカルメタルサウンド。
うっすらとしたシンセアレンジはポストプログレ的であり、翳りのある叙情性とともに、
たとえれば、CYNICなどにも通じるアーティスティックな感性に富んだ作風だ。
いわゆるDjent系のモダンなテクニカルさと、やわらかな浮遊感が合わさった聴き心地で、
変則リズムに乗せるリフや、クリーントーンのメロディなど、多彩なギターのセンスも光っている。
RiversideやOsada Vidaに続く、新たなポーランドからの期待の新鋭といってもよいだろう。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 テクニカル度・・8 総合・・8
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VOTUM 「Ktonik」
ポーランドのプログレメタル、ヴォータムの2016年作
2008年にデビュー、4作目となる本作も、Riversideあたりを思わせる翳りを帯びた空気感に、
マイルドなヴォーカルとメタリックなギターリフを乗せた、薄暗い叙情のサウンドを描いてゆく。
楽曲は4〜6分と比較的コンパクトで、ときにメロウなギターにシンセを含んだ重厚な感触と
ドイツのSYLVANあたりにも通じる繊細な泣きの叙情美が同居したナンバーもありつつ、
全体的にはヘヴィなパートが増えていて、今作はメタルが苦手なリスナーにはややきついかもしれない。
モダンなポストプログレをメタル化したという感じが好みならお薦めできる好作品ではあります。
ドラマティック度・・7 薄暗度・・8 叙情度・・8 総合・・8
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◆ポーランドのプログレバンド
NIEMEN「Mourner's Rhapsody」
ポーランドを代表するアーティスト、ニーメンことCzeslaw Niemenの1975年作
1967年にデビューした旧ソ連出身のアーティストで、デビュー前のSBBのメンバーとともに活動するなど、
サイケ、ジャズ、R&Bなど、さまざまな要素を取り入れて、結果プログレッシブに昇華するという才人である。
本作はMAHAVISHNU ORCHESTRAのメンバーをはじめ、米/英Jazzシーンのミュージシャンを迎えて作られた。
ニーメン自身の弾くメロトロン、ムーグに、ゲストによるヴァイオリンやフルート、パーカッションが重なり
そこに乗る哀愁を感じさせる歌声は、英国でいえばRobert Wyatt的であろうか。
ジャズやブルージーな感触を東欧的な鬱屈とした悲哀にひたしたような世界観は、
唯一無二のものだろう。歌唱の表現という点では間違いなく世界レベルである。
メロディアス度・・8 哀愁度・・9 歌唱度・・9 総合・・8
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SBB「WELCOME」
ポーランドのプログレバンド、エスベーベーの7th。1979年作
1974年デビュー、名実ともにポーランドを代表するバンドである。本作はのっけからスピーディで東欧的な硬質さと
メロディに溢れた楽曲で幕を開ける。ある意味アカデミックな雰囲気は、クラシックやジャズの要素を取り入れながら、
バンドとしての鋭い演奏に磨きをかけているような空気が如実に物語っている。
この緊張感あるクールなシンフォニックサウンドはまさに東欧ならではのものだが、
2曲目以降は美しいピアノやヴォーカルなど、むしろしっとりとした聴きやすさが増していて、
このあたりのメロディアスさが“世界を意識した”音作りということなのだろう。バンドの最高傑作。
メロディアス度・・8 シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 総合・・8
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EXODUS「the most beautiful day」
ポーランドのシンフォニックロック、エクソダスの1980年作
80年代ポーランド最高のシンフォ系作品としてマニアの間では評価が高いアルバム。
基本はYESタイプで、この頃の東欧バンドにしてはかなりメロディアスな部類といえる。
マイルドな男性ヴォーカルの母国語による歌唱と、抜けのいいキーボードメロディが印象的で
キャッチーでなかなか耳心地がよい。そんな中にもどこかに辺境的なミステリアスな匂いが感じ取れ、
その野暮ったさがブリティッシュロックファンからすると敬遠される部分かもしれないのだが。
反対に、辺境シンフォ好きであれば押さえておきたい一枚といえるだろう。
メロディアス度・・8 プログレ度・・8 辺境度・・8 総合・・8
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COLLAGE「Moonshine」
ポーランドのシンフォニックロック、コラージュの2nd。1994年作
ベクシンスキーによるジャケも美しい傑作。 のちのSATELLITEの前身でもあるバンドで、、
東欧的な冷たく荘厳なシンセをバックにした重厚な雰囲気の中に、翳りを含んだメロウな叙情サウンドは、
今でいう薄暗系シンフォに通じるもので、マイルドなヴォーカルの歌声が繊細な耳心地となって、
美しくも物悲しい世界観を描いてゆく。Mirek.Gilの奏でるやわらかなギタートーンは東欧のハケットというべきか。
90年代後半以降のモダン派シンフォの先駆けともいえる。湿りけのある叙情に浸れる一枚である。
シンフォニック度・・9 メロディアス度・・8 薄暗度・・9 総合・・8.5
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LIZARD 「W Galerii Czasu」
ポーランドのプログレバンド、リザードの1996年作
美麗なシンセアレンジに叙情的なギターワーク、母国語によるマイルドな歌声を乗せた
ポーランドらしい翳りを含んだシンフォニックロック。緩急の付いたダイナミックなアンサンブルは
確かな演奏技術もあって躍動的な聴き心地で、適度なハードさとスタイリッシュでモダンな香りを感じさせる。
次作以降へとつながるクリムゾン的なスリリングな展開力も覗かせつつ、本作ではまだメロウな叙情が前に出ている。
10分前後の大曲を含む構築センスも見事で、90年代のポリッシュ・プログレとしては出色の出来だろう。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 ダイナミック度・・8 総合・・8
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QUIDAM「Quidam/Rzeka Wspomnien」
ポーランドのシンフォニックロックバンド、クィダムの1st。1996年作
美声の女性ヴォーカルで聴かせる本作は、ポーランドのシンフォニックシーンにおいて名作とされる一枚。
ゆったりと美しいシンセと叙情的なギターワークで聴かせる楽曲に母国語で歌われる女性ヴォーカルの絶品の歌声が
しっとりと優しく耳に響く。ときにハケット時代のGENESISを思わせる幻想的な雰囲気も素晴らしい。
最高傑作は3rdだと思うが、しっとりとした繊細さでは本作が一番だろう。ともかく女性声シンフォが好きな方は必聴。
4th以降は、ヴォーカルを男性に替えて薄暗系の路線にシフトするが、やはり初期の作風が白眉であった。
シンフォニック度・・8 しっとり繊細度・・9 女性Vo度・・9 総合・・8.5
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Abraxas「99」
ポーランドのシンフォニックロックバンド、アブラクサスの3rd。1999年作
スタジオ作としてはラストのアルバムで、のっけからハードエッジなギターで始まり、
母国語によるシアトリカルなヴォーカルとうっすらとした美しいシンセアレンジも含め、
これまで以上にシリアスな雰囲気に包まれたハード・シンフォニックサウンドを聴かせる。
薄暗い情緒を漂わせるメロウな泣きという点では、本作がもっとも聴きどころが多く、
コンセプチュアルな構築性も素晴らしい。90年代ポリッシュ・シンフォの傑作のひとつである。
シンフォニック度・・8 シアトリカル度・・8 東欧度・・8 総合・・8
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Gargantua
ポーランドのプログレバンド、ガルガンチュアの2003年作
基本はインストパートがメインだが、どこかくぐもったような薄暗さはチェンバーロック的でもあり、
展開のヒネ方には、GENTLE GIANTにも通じるような偏屈さがある。母国語で歌われるヴォーカルも含めて
サウンドには辺境的な味があり、メロディアスな要素も多分にあるのだが、どうも一筋縄ではいかない。
クラシカルな優雅さと同時に、聴き手を翻弄するかのような意地の悪さが同居していて、
単なるシンフォ系とも異なる知的なセンスと、懐の深さに引き込まれる。ポーランドという国はあなどれない。
メロディアス度・・7 プログレ度・・8 偏屈度・・8 総合・・8
SATELLITE「EVENING GAME」
ポーランドのシンフォニックロックバンド、サテライトの2nd。2004年作
今作でも、かつてのCOLLAGEから継承された泣きのシンフォサウンドは健在で
適度にモダンさとハードな感触も含みつつ、繊細で優美な叙情を描き出す。
メロウなギターのフレーズにやわらかなピアノが重なる部分などは実に美しく、
ゆったりとした中にもほんのりとした薄暗さが感じられるのはポーランドというお国柄か、
そうした音にこもった黄昏のような哀愁こそが、このバンドの大きな魅力だろう。
シンフォニック度・・8 哀愁の叙情度・・9 ポーラン度・・9 総合・・8
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BELIEVE「Yesterday Is a Friend」
ポーランドのシンフォニックロックバンド、ビリーヴの2nd。2008年作
元COLLAGEのMirek Gilを中心に、分派したSATELLITEに通じる叙情性と、
ほのかな薄暗さで聴かせるシンフォサウンド。メロウなギターワークに、
女性奏者の奏でるヴァイオリンの響きが重なり、哀愁を漂わせたクラシカルさが美しい。
シンセはゲストメンバーによるもので、むしろギターとヴァイオリンを中心とした曲作りが
美麗なシンフォニックさよりも、素朴な叙情をかもし出していて、それが耳に優しい。
シンフォニック度・・7 メロディアス度・・8 ゆるやか叙情度・・9 総合・・8
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PETER PAN「Days」
ポーランドのプログレバンド、ピーター・パンの2007年作
COLLAGE〜SATELLITEのドラマーを中心に結成されたバンドで、メロディアスでモダンな正統派のシンフォニックロック。
しっかりと輪郭のあるフレーズを奏でるギターと、それに絡むシンセワークは、ポーランドというよりはむしろイギリスや、
北欧のバンドに近い感触で、ダイナミックなサウンドの中に欧州らしい情感が見え隠れする。粗野なヴォーカルの歌声には
さして魅力はないが、インストパートでのハードエッジな明快さは若いリスナーにも大いにアピールするだろう。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 ポーラン度・・7 総合・・8
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Riverside「Anno Domini High Definition」
ポーランドのハードプログレバンド、リヴァーサイドの2009年作
薄暗い叙情を聴かせるハードプログレとしてPorcupine Tree系のリスナーはもとより
OPETHなどを好むメタルリスナーをも振り向かせ、いよいよ人気も高まってきたこのバンド。
4作目となる本作もじつに見事な作品だ。ゆるやかな浮遊感を増した前作の流れにありつつも、
オルガンの音色も含めてプログレとしての美意識とメリハリのある展開力を強化させている。
しっとりとしたもの悲しさをたたえながら、ハードなところはよりハードに聴かせ、広がりのある音作りで
ミクスチャー的なモダンなアレンジと、レトロなロックの要素を巧みに同居させているのが見事。
ソリッドなセンスとアナログ的な生々しさが融合した現在形プログレの傑作。DVD付き2枚組もあり。
メロウ度・・8 プログレ度・・8 アレンジセンス度・・9 総合・・8.5
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Indukti「Idmen」
ポーランドのヘヴィ・プログレバンド、インダクティの2nd。2009年作
前作はポーランド版ANEKDOTENというような傑作であったが、本作ではのっけからギターによるメタリックなヘヴィさが増している。
その後はやはり独特の薄暗さを内包した叙情をともないながら、女性ヴァイオリニストの奏でるもの悲しい旋律とともに重厚に聴かせる。
今回のコンセプトなのか、土着的な闇の中に太古の神秘性を感じさせる世界観がモダンなプログレと巧みに融合されていて、
とくに大曲での迫力には圧倒される。同郷のRiversideがPINK FLOYDなら、こちらは土着化したメタル・クリムゾンか。
シンフォニックな美しさは薄れたが、重厚なる音世界で構築された力作である。
メロディアス度・・7 プログレ度・・8 重厚度・・9 総合・・8
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◆女性ヴォーカル系
TURQUOISE
ポーランドのシンフォニックロックバンド、タークォイスの1st。2001年作
ファンタジックなジャケ絵に負けず、音の方もしっとりとやわらかみのある作りで、母国語で歌う美声の女性ヴォーカルをメインに、
メロウなギターと幻想的なシンセワークが一体となった、これぞ女性声シンフォの王道といえるサウンドである。
アコースティックや静寂パートを効果的に設けるなど、アレンジ面でも気を使っていてQUIDAMの1stにも通じる聴き心地。
ギターのメロディフレーズにもセンスが感じられ、決してただの歌モノになっていないところが良い。
メロディアス度・・8 シンフォニック度・・8 女性Vo度・・9 総合・・8
Albion「Wabiac cienie」
ポーランドのシンフォニックロック、アルビオンの2005年作
美しいシンセにメロウなギターが重なり、女性ヴォーカルの母国語の歌声がやわらかに響く、
初期のQUIDAMやTarquoiseなどにも通じる、優美な女性声シンフォニックロック。
しっとりとした美しさに加え、ポーランドらしいほのかな薄暗い情緒も感じさせ、
曲によってはミステリアスな雰囲気にも包まれる。繊細にして美麗な好作だ。
シンフォニック度・・8 ポーラン度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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Amaryllis「Inquietum Est Cor」
ポーランドの女性Voシンフォニックバンド、アマリリスの2009年作
女性ヴォーカルにツインギターを含む6人組でシンセはゲスト。しっとりとした女性Voの母国語の歌声に、
メロウなギターとうっすらとしたシンセ、浮遊感のある叙情性と幻想的な薄暗さで聴かせる世界観は、
QUIDAMなどに通じる匂いも感じさせる。いくぶんのメタリックな感触と素朴なシンフォニック性の一方では、
PINK FLOYDルーツのサイケ風味もあり、はかなげな美しい女性声と合わさって、ゆるやかなサウンドを描いている。
楽曲の間に小曲を織り込んだ構成で、アルバム全体を流れで鑑賞できるのも心憎い。
シンフォニック度・・7 しっとり度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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Strawberry Fields「Rivers Dry Gone」
ポーランドのシンフォニックロックバンド、ストロベリー・フィールズの2009年作
Satelliteのメンバーによるユニットで、ゴシック的な倦怠感のある女性ヴォーカルの歌唱を中心に、
モダンロック的なサウンド聴かせる。ときおりSatelliteを思わせるような薄暗いシンフォ風味もあるが、
やはりもっと素朴で肩の力が抜けたような、アンニュイな優雅さが前に出ている。
音数的には少ないながらも、退屈かというとそうでもなく、キャッチーな耳馴染みの良さもあって、
ゆったりとした女性声の入ったオルタナ・シンフォとしても楽しめる作品だ。
メロディアス度・・7 薄暗シンフォ度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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SPIRAL 「Urban Fable」
ポーランドの女性声ロックバンド、スパイラルの2009年作
コケティッシュな女性ヴォーカルの歌声と、モダンなポストロック風味が合わさったサウンド。
エレクトロなビート感覚とオルタナティブロックの感触にヴァイオリンもチェロなどを含んだ
クラシカルな要素も加わった作風で、どこかミステリアスな浮遊感をともなった聴き心地は、
プログレファンにも楽しめる。ときにSigur Rosあたりに通じるようなしっとりとした叙情や、
The Gatheringなどのゴシックロック的なメランコリックな雰囲気も感じさせる。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8
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「A JOURNEY INTO THE SUN WITHIN」
ポーランドの女性Voロックバンド、トラヴェラーズの2011年作
COLLAGE〜SATELLITEのWOJTEK SZADKOWSKIを中心に結成したバンドで、
女性ヴォーカルの歌声で聴かせるゆるやかなシンフォニックロックサウンド。
10分以上が2曲に8分が2曲という大作志向で、モダンなシンセアレンジと
アンニュイな翳りがミックスされて、独特の浮遊感をまとわせた作風になっている。
しっとりとした女性声が耳に優しく、初期のQUIDAMなどを思わせる部分もあり、
随所にプログレ的な感触を匂わせながら、さらりとクールなお洒落さを感じさせる作品だ。
シンフォニック度・・7 プログレ度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8
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ANANKE 「SHANGRI-LA」
ポーランドのプログレ、アナンケの2012年作
元ABRAXASのヴォーカルとシンセを中心にしたバンドで、オルタナ的なモダンなハードさと
うっすらとしたシンセアレンジ、母国語のヴォーカルで聴かせる、薄暗い感触のモダンシンフォ。
かつてのアブラクサスにもあったシアトリカルな雰囲気と東欧らしい翳りを含んだ叙情性を、
よりスタイリッシュに構築したというサウンドで、マイルドでメランコリックな空気感が耳心地良い。
ムーグなどのプログレらしいシンセアレンジに、ギターのメロウなフレーズも随所によい感じで、
モダン過ぎない雰囲気もよろしい。ABRAXASの続編というイメージで楽しめる好作品だ。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 薄暗度・・8 総合・・8
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LOONYPARK 「Unbroken Spirit Lives In Us」
ポーランドのシンフォニックロック、ルーニーパークの2014年作
適度にモダンでハードエッジな感触を含んだサウンドに、情感豊かな女性ヴォーカルの歌声、
ホーランドらしいほの暗い叙情性と、ネオプログレ以降のダイナミックな展開美も備わっている。
NEMESISやLIQUID SHADOWにも参加したシンセ奏者による多彩なアレンジも光っていて、
しっとりとしたメロウな要素とハードシンフォのドラマ性が同居したクオリティの高さはさすが。
各楽曲ごとのフックのある構成も見事な傑作だ。現在形女性声シンフォの代表になれるだけの逸材ですな。
ドラマテイック度・・8 プログレ度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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ARCHANGELICA 「Tomorrow Starts Today」
ポーランドのハードプログレ、アーチャンゲリカの2016年作
女性Vo、女性Bを含む5人編成で、いくぶんメタル寄りのギターとうっすらとしたシンセに
伸びやかな女性ヴォーカルを乗せた、タイトでモダンな感触のハードプログレを聴かせる。
ポーランドらしいメランコリックな味わいと、しっとりとした浮遊感に包まれて、美しい歌声が
響き渡るところは、かつてのThe Gatheringのアネク・ヴァン・ガースバーゲンなどを思わせる。
8分、9分という大曲も、プログレというよりはメランコリック・ロックという趣であるが、
同郷のLOONYPARKあたりと同様、女性声ハードシンフォとしても楽しめる好作だ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8
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WARSAW VILLAGE BAND 「Nord」
Varttinaなどを思わせる母国語による女性のコーラスワークに、フィドルやトランペットが響きわたり、
Hedningarnaがゲスト参加したこともあって、ぐっと重厚になったラジカルトラッドを聴かせる。
モラハルパやスウェデッシュ・バグパイプといった楽器も入ると北欧トラッド的な感触に包まれて、
伝統的なポルスカが新たな形になって躍動するような感動を覚える。
プログレ度・・8 トラッ度・・8 ラジカル度・・9 総合・・8
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◆ポストプログレ系
メロウなギタートーンが鳴り響き
うっすらしたシンセアレンジに、マイルドな母国語のヴォーカルを乗せた、薄暗い叙情に包まれたサウンド。
繊細な美意識と泣き泣きのギターは、かつてのCOLLAGEの名作「Moonshine」を思わせるほどで、
そこにいくぶんモダンなハードさや、やわらかなポストプログレ風味も加わった美味しい作風である。
ともかく、全曲に泣きの叙情メロディが顔を出し、やさしくメロディックな聴き心地にはうっとりすること請け合い。
これぞまさにポーランドという物悲しい美旋律に酔いしれるべし。泣きの叙情傑作。
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Quidam 「Saiko」
ポーランドのプログレバンド、クィダムの2012年作
1996年にデビュー、初期は女性Voのバンドであったが、4作目から男性Voの薄暗系にシフト、
本作では、よりシンプルなサウンドになっていて、母国語のエモーショナルな歌声を中心に、
繊細でキャッチーな聴き心地に包まれた、近年のMarillionを思わせるメロウな叙情ロックである。
やわらかなエレピにフルートの音色、サステインの効いた優美なギタートーンとともに、
ポストプログレ的なしっとりとした美しさを描いてゆく。軽妙なドラムとベースの存在感も
なにげに巧みなアンサンブルを作り出していて、玄人好みの感触はさすがキャリアのあるバンドである。
全体的に派手さというものはないが、ドイツのSylvanあたりが好きな方にも楽しめる好作品です。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 繊細な叙情度・・8 総合・・8
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Lunatic Soul 「Walking on a Flashlight Beam」
ポーランドのポストプログレ、ルナティック・ソウルの2014年作
美しいシンセアレンジと、ディレイの効いたシューゲイザー的なトーンのギターが鳴り響き、
エレクトロなモダンさも含んだサウンドは、いわばBrian Enoのようなアンビエントな聴き心地と、
ポストプログレの繊細なはかなさを巧みに融合させている。曲によってはベースによるリズムが、
ほどよいグルーブ感を生み出していて、これまでの作品よりも明快なビート感覚があるので聴きやすい。
12分の大曲も、決して派手に盛り上がることないが、メロウなギターが入ってきたりとシンフォニックな味わいも。
アコースティックの入り方も絶妙で、単なる繊細系ポストプログレ以上の楽曲センスが素晴らしい。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 繊細度・・8 総合・・8
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