Traite De Meccanique Populaire

チェンバーロック大特集!〜ヘンリーでユニヴェルな異端の芸術音楽へようこそ



「チェンバー」とは室内楽を表す言葉であり、チェンバーロックなるものをごく端的に指すなら、クラリネットやオーボエ、ヴァイオリン、
チェロなどの管弦楽器をバンド編成に取り入れ、あるいは室内楽的なアンサンブルを演奏するロックということになる。
むろん、それだけではなく、ポップや商業音楽、メインストリームとは極北にあたる、極端にアーティスティックな側面の強い音楽でもある。
代表的なバンドとしては、サード・イヤー・バンド、ヘンリー・カウ、ユニヴェル・ゼロ、アール・ゾイといった名前が挙げられるが、
ジャズロックの側面から、ミステリアスでチェンバー的な世界観を志向したマグマなども、取り上げない訳にはいかないだろう。
プログレッシブロックのなかでも、とりわけ難解で、特殊なイメージがまとうのが、このチェンバーロックであるが、
裏を返せば、もっとも自由で、非商業的、つまりアーティストとしての芸術性が最大に発揮される音楽であるともいえる。
商業主義と決別したヘンリー・カウが、思想的立場を共有するミュージャンたちと、R.I.O.(ロック・イン・オポジション)なるネットワークを築き、
そこで設立された「レコメンデッド・レコード」を由来にした、「レコメン系」なる呼ばれ方を耳にしたことのある方もいるだろう。
クラシック音楽以前の中世音楽から、サロンミュージック、シャンソン、トラッド、ジャズ、現代クラシックなど、
様々な要素を取り入れたバンドを、まとめてチェンバーロックと呼ぶのは、要するに他に名づけようのない音楽だからであり、
それは、「プログレッシブロック」というジャンルが許容する、無限の広がりと可能性を意味しているともいえる。
ヨーロッパのクラシック音楽、その裏側にある闇を抽出したような張詰めた空気を描くバンド、
一方では、シャンソン、タンゴなどの優雅なサロン的な音楽を、少しひねくれた可愛らしさで表現するバンド、
クラシックもジャズも、トラッドも、現代音楽も取り込んで、それをミニマムな編成で表現する才能豊かなアーティストたち。
ここでは、プログレッシブロックとしての側面から見た、魅力的なチェンバーロック作品を紹介したい。
音楽の芸術を愛するリスナーたちに、このジャンルの入門用にもなれば幸いである。

                                            2017. 12  緑川 とうせい


◆チェンバーロックの70年代

Third Ear Band「Macbeth」
イギリスのチェンバー・サイケロック、サード・イアー・バンドの1972年作
チェンバーロックの元祖とも言われるバンドで、1969年作「錬金術」はアンダーグラウンドな妖しい世界観を描いた異色作だった。
本作は3作目で、ロマン・ポランスキーの映画「マクベス」のために作られたサントラ作品であるが、
音楽の雰囲気自体は、前2作で聴けたサウンドの延長で、オーボエやリコーダー、パーカッションが鳴り響く
不穏で妖しげな世界観をかもしだしている。一方では、前2作の様なフリーキーな浮遊感よりも、
ヴァイオリンの鳴り響くクラシカルな美しさも含んで、曲ごとに場面のイメージを抱かせるような
繊細な部分が聴かれる。その点では音楽的には彼らの最高作といってもよいだろう。
ドラマティック度・・8 フリーキー度・・8 妖しげ度・・9 総合・・8
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ALGARNAS TRADGARD「Framtiden ar ett svavande skepp, forankrat I forntiden」
スウェーデンのプログレバンド、エルヤーナス・トレッゴードの1972年作
ボッシュの悦楽の園をジャケにあしらった本作は、北欧の初期サイケ&チェンバーロックの傑作とされる一枚。
うっすらとしたシンセにシタールなどの中近東的な旋律をまじえて、静謐感を漂わせた作風は、
Third Ear Band、あるいは、POPOL VUHなどにも通じるもので、ヴァイオリンやチェロなどが鳴り響く
中世音楽的な呪術性を漂わせている。ドラムが入ってロック感触があるぶん、難解すぎる印象はなく、
チェンバーロック風味の妖しげなトリップミュージックとしても楽しめる。
メロディック度・・7 プログレ度・・7 妖しげ度・・9 総合・・8
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Henry Cow「Leg End」
イギリス、カンタベリー系を代表するバンド、ヘンリー・カウの1st。1973年作
ケンブリッジ大学の学生であったフレッド・フリス、ティム・ホジキンソンによって結成、
その後、ジョン・グリーブス、クリス・カトラーらが加わり本格的に活動を開始し、
アンサンブルを重視したフリーキーな演奏と、思想的な側面を併せ持った独自の音楽性を作り上げてゆく。
本作はジャズロック的なサックスが鳴り響く優雅な感触ながら、アヴァンギャルドかつフリーキーな展開を垣間見せ、
緻密なスコアをあえて壊すような作風がとてもスリリングだ。いうなれば、ジャズロックと現代音楽を合わせて、
鋭敏な知性と衝動的感覚を総動員したというような、年代を考えればえらく先鋭的な仕上がりの傑作だ。
プログレ度・・8 ジャズロック度・・8 アヴァンギャル度・・8 総合・・8.5
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Henry CowUnrest
ヘンリー・カウの2nd。1974年作
2作目となる本作ではサックス奏者のジェフ・リーに代わり、バスーン、オーボエ奏者のリンゼイ・クーパーが加入、
前作でのフリーキーなジャズロック風味に加え、より現代音楽的な複雑さを際立たせた、唯一無二の演奏を聴かせる。
優雅なクラシカルさと、毒気をはらんだ底のしれない不気味さは、チェンバーロック的な聴き心地を強めていて、
ART BEARSSLAPP HAPPYなどと同様に、芸術性を備えた遊び心がたっぷりのおそるべき傑作である。
クラシカル度・・8 チェンバージャズロック度・・8 アヴァンギャル度・・9 総合・・8.5
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ART BEARS「Winter Songs」
イギリスのチェンバー・ジャズロック、アート・ベアーズの2nd。1979年作
HENRY COWのクリス・カトラー、フレッド・フリス、ダグマー・クラウゼにより結成されたバンドの2作目で、
アヴァンギャルドなクラシカルロックという方向性はそのままに、1stよりも音の焦点が絞れ、同時に美しさと毒気が増した。
ダグマー・クラウゼの歌声はときにオペラティックにときにヒステリックに響きわたり、その存在感とインパクトはものすごい。
暗がりの中の呪術性と、クラシカルな格調高さが混在しているようなサウンドはより迫力ある強度をともなっている。
濃密なる静寂。ジャズロック的な混沌。優雅な闇。各メンバーの引き出しの多さが、無秩序の中にもひとつの引力をともなって
強力に音を組み立てている。前作にも増してキレたような鋭い展開が痛快に思える、これは音による先鋭芸術だ。
チェンバー度・・9 アヴァンギャル度・・9 女性声力度・・9 総合・・8.5
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◆フランスからマグマ、アールゾイ、ベルギーからユニヴェル・ゼロが登場!

MAGMA 「KOBAIA」
フランスのプログレ・ジャズロック、マグマの1970年作
バンドの記念すべき1stで、2枚組のコンセプト大作。当たり前のようにヴォーカルはコバイヤ語で歌っている。
サウンド自体はホーンセクションを含んだファンクな感触の、奇妙なジャズロックという印象で、
のちのアルバムに比べると重厚なスケール感というのは希薄ながら、独特のシアトリカルな妖しさは、
すでに十分マグマらしさを垣間見せている。10分を超える大曲での起伏のある展開と、迫力を増してゆくドラムプレイは
さすがというべきか。むしろ、圧倒される感じがない分、ジャズロックサイドのプログレとしての聴きやすさがある。
フルートが鳴り響き、美しいピアノ、トランペットなどがチェンバーロック的でもある優雅さをかもしだす、
一方で、コバイヤ星をめぐる壮大なSFストーリーが含まれた異色の力作であろう。
ドラマティック度・・8 ジャズロック度・・8 妖しさ度・・8 総合・・8
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ART ZOYD 「Symphonie Pour Le Jour Ou Bruleront Les Cites」
フランスのチェンバーロック、アール・ゾイの1980年作
「都市が燃える日の為の交響曲」と題された1976年作を新たに再録したバージョン。
フランス語による絶叫のような語りから始まり、艶やかなヴァイオリンにトランペットの音色が重なり、
優雅でありつつダークでスリリングなサウンドを描いてゆく。オリジナルバージョンに比べると、
より研ぎ澄まされたような演奏と音の厚みが増していて、ダイナミズムを強めた聴き心地である。
キレのよいヴァイオリンが鳴り響くクラシカルな空気感を、ここまでミステリアスに昇華するセンスは素晴らしい。
一方ではとぼけたような味わいのコミカルな曲調もあったりと、バンドとしての成熟の余裕も感じさせる。
クラシカル度・・9 スリリング度・・9 暗黒度・・7 総合・・8.5
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UNIVERS ZERO「Ceux du Dehors」
ベルギーのチェンバー・プログレ、ユニヴェル・ゼロの3rd。1981年作
ジャズロック的でもあるテクニカルなリズムの上を、ピアノやシンセ、ヴァイオリン、オーボエなどが鳴り響く、
室内楽的な優雅さとともに、不穏な緊張感に包まれたサウンド。ストリングスが鳴り響くクラシカルな美しさと
スリリングなアンサンブルの絶妙な融合が、メリハリのあるインストパートを描き出す。一方では前作で見せた
おどろおどろしげな暗黒性も垣間見せる、適度にアヴァンギャルドな空気感も含めて、バンドの本領がよく発揮されている。
ミステリアスなダークさを残しながらも、次作「UZED」へと至るアンサンブル志向が巧みに融合された傑作だ。
クラシカル度・・8 テクニカル度・・8 ダークな緊張感・・9 総合・・8.5
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PRESENT「Triskaidekaphobie」
ベルギーのチェンバーロック、プレザンの1980年作
UNIVERS ZEROのロジェ・トリゴーを中心に結成されたバンドで、かつては1st、2ndのカップリングでCD化されていたが、
2014年にそれぞれ単体CDでリマスター再発された。「13恐怖症」という邦題のこの1stは、クラシカルなピアノの旋律に、
不穏なコード進行によるベースが絡み、変則的なリズムによるアヴァンギャルド性と知的な構築力で聴かせる、
ポスト・ユニヴェル・ゼロというべきサウンド。ときにフリーキーに鳴り響くギターやドラムを含めた攻撃性という点では、
UNIVERS ZEROよりもさらに明快なロック志向が感じられ、ミステリアスかつ優雅なプログレとしてもとても楽しめる。
19分、15分という2曲の大曲を軸にした圧巻の力作だ。ボーナストラックに1981年のライブ音源を2曲追加収録。
チェンバー度・・8 プログレ度・・9 ミステリアス度・・9 総合・・8.5
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◆サロン系チェンバーの系譜

SLAPP HAPPY「Casablanca Moon/Desperate Straights」
アンソニー・ムーア、ピーター・ブレグヴァド、ダグマー・クラウゼの3人によるスラップ・ハッピーの1974/75年作
のちに「Acnalbasac Noom」のタイトルで発表される楽曲を録り直した2nd「Casablanca Moon」と、
Henry Cowと合体して作られた3rd「Desperate Straights」のカップリング盤。
2ndはオシャレなタンゴ調で始まり、ダグマーの美しい歌声を中心に、カフェミュージックのポップ感覚や
チェンバーロック、牧歌的なカントリー風味などを感じさせながら、ゆったりと聴かせるサウンド。
3rdはHenry Cowのシリアスなアヴァンギャルド性が強く出ていて、プログレとしてより楽しめる。
チェンバーロック的な不穏な空気と、ジャズロック的な演奏が合わさり、ダクマーの歌唱にも力が入る。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8
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ZNR 「Barricade 3」
フランスのチェンバーロック、ゼッデンネールの1976年作
ピアノ&シンセのジョゼフ・ラカイユ、エクトール・ザズー、ベース&クラリネットのパトリック・ポルテラという三人編成で、
優雅なピアノが鳴り響くエリック・サティ的な雰囲気に、ビープ音的なアナログシンセが合わさり、
随所にクラリネットやサックスが加わった、アヴァンギャルドでミニマムなチェンバーロック。
1〜3分前後の小曲を主体に、飾り気や展開というものを無視した、唐突感とアンニュイな倦怠、
抽象絵画的なエキセントリックな感性は、聴き手を突き放したような冷たさも感じさせる。
9分の大曲では、ギターも加わっていくぶんロック的な香りも匂わせ、フランス語のヴォーカルを乗せた歌ものナンバーなど、
次作に比べるといくぶん拡散志向の方向性で、アヴァンミュージックとしてはむしろ、こちらの1作目が分かりやすいか。
ともかく、サロン的な優雅さとフランスらしい毒気が同居した、室内楽の抽象芸術というべき異色作である。
ドラマティック度・・2 チェンバー度・・8 優雅でアヴァンギャル度・・9 総合・・8
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aksak maboulUn Peu De L'ame Des Bandits
ベルギーのチェンバーロック、アクサク・マブールの1980年作
クラムド・ディスクレーベル創設者でシンセのマーク・ホランダーを中心に、
Henry Cow〜ART BEARSのクリス・カトラー、フレッド・フリスなどが参加
エキセントリックな女性ヴォーカルの歌声に、鳴り響くヴァイオリンやオーボエ、
サロンミュージックのポップ性にアヴァンギャルドな毒気を注入したようなサウンドで
軽やかな優雅さと偏執的な狂気を同居させたような感触はとても個性的。
演奏面ではやはりHenry Cowや、Univers Zero風味を感じさせるところもあり、
ポップなチェンバーロックとしても、アヴァンギャルドなレコメン系としても楽しめる。
クラシカル度・・7 優雅な毒気度・・9 アヴァンギャル度・・8 総合・・8
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JULVERNE「emballade...」
ベルギーのチェンバーロックバンド、ジュルベルヌの3rd。1983年作
まるでヴィクトリア朝のイギリスのような、レトロな雰囲気のジャケだが、
サウンドの方も郷愁に満ちあふれた、たおやかでクラシカルなアンサンブル。
ピアノ、フルート、ヴァイオリン、サックス、クラリネット、といった室内楽の楽器を中心に
ロック的なリズムを排した、クラシックとジャズの優雅さを漂わせる演奏だ。
シャンソン風の女性ヴォーカルやそれに絡む男性コーラスなどもどこか年代的で、
いわばなりきり度の高い懐古主義を思わせるユーモアが垣間見える。
ゆったりとした時間の流れと、古き良き時代にトリップできる、不思議な味わいの作品だ。
クラシカル度・・8 プログレ度・・6 懐古サウン度・・10 総合・・8
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◆70〜80年代の諸作

ZAO「Z=7L」
フランスのジャズロックバンド、ザオの1973年作
MAGMAを脱退したFrancois"Faton"CahenとYochk'o Sefferを中心に結成されたバンドのデビュー作。
優雅なジャズロックと、緊迫感のあるアヴァンギャルドさが融合したようなサウンドで、
そこに個性的な女性ヴォーカルが加わると、やはりMAGMAを思わせる雰囲気にもなる。
ときにエキセントリックになる女性声も含めて、アートな作風の個性派ジャズロック作品。
ジャズロック度・・8 マグマ度・・8 アヴァンギャル度・・8 総合・・8
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YOCHK'O SEFFERGhilgoul」
フランスのミュージシャン、ヨシコ・セファーの1978年作
ZAOMAGMAにも参加していた、ピアニストにしてサックス奏者で、
どことなくユーモラスなサックスの音色にシリアスなピアノの旋律が絡み、
ストリングスカルテットによる美しい叙情性もあって、クラシカルな美意識が
ミニマムな空間表現に直結したような抜群のセンスに引き込まれる。
ドラムも入ったジャズロック的な曲にしても、バルトークなど現代クラシックを下地にした
硬質な浮遊感と、即興性の上にある構築性がチェンバーロック的に音を引き締めている。
クラシカル度・・8 ジャズロック度・・8 アヴァンギャル度・・8 総合・・8
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OPUS AVANTRA 「Lord Cromwell Plays Suite for Seven Vices
イタリアンロックの輝ける芸術、オパス・アヴァントラの2nd。1975年作
至高の芸術作品と名高き1st「内省」に続き、本作もクラシカルな優雅さで聴かせる絶品の傑作。
とにかく、荘厳なティンパニの響きから始まる1曲目“Flowers on Pride”の素晴らしさは筆舌に尽くしがたい。
たおやかに鳴らされるフルートと繊細なピアノの音色で、しっとりとゆるやかに盛り上がり、
妖艶なドネラの歌声とオペラティックな男女コーラスが重なってゆく。1stに比べてヴォーカル曲が減っているが、
むしろクラシカルな構築性は増していて、最後まで優雅な気分で鑑賞できるのが本作と言えるだろう。
バンドはこの作品のあと活動休止状態となるが、1989年になって3rd「Strata」を発表する。
クラシカル度・・9 アヴァンギャル度・・8 芸術度・・10 総合・・9
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STORMY SIX「Macchina Maccheronica
イタリアのチェンバー・プログレバンド、ストルミィ・シックスの1979年作
60年代から活動するバンドで、初期は反体制的なフォークバンドだったらしいが、
本作は管楽器を散りばめた、遊び心たっぷりのチェンバーロックの異色作。
クラリネットやサックスのコミカルな音色と、イタリア語のヴォーカルを含んだ哀愁を漂わせ
変則リズムとブレイクの入ったアヴァンギャルドな展開は予測不可能。
ヴァイオリンやチェロなどが緊張感を漂わせつつ、やはりイタリアらしい情緒も顔を出す。
トボけた味わいのポップさが、エキセントリックなセンスに包まれた濃密な力作だ。
プログレ度・・8 アヴァンギャル度・・8 イタリア度・・8 総合・・8
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Maneige「Les Porches」
カナダのプログレバンド、マネイジュの2nd。「寺院の門」1975年作
美しいフルートの音色にクラリネットが絡む、優雅なチェンバーロック風味に始まり、
クラシカルなピアノも美しく鳴り響く、ノートルダム寺院をテーマにした19分の組曲である。
前半はロック色は薄いが、後半になるとドラムにギターも入ってきて、いっきにプログレらしくなる。
フランス語のヴォーカルにトランペットも加わって、メリハリのある展開力が最後まで飽きさせない。
アルバム後半の「サックスとクラリネットの冒険」組曲では、アヴァンギャルドな即興性も含んだ
軽妙なアンサンブルが素晴らしい。代表作とされる次作よりもむしろスリリングな優雅さでは上だろう。
クラシカル度・・8 プログレ度・・8 優雅度・・9 総合・・8
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ConventumLe Bureau Central des Utopies
カナダ、ケベック出身のプログレバンド、コンヴェンタムの2nd。1980年作
艶やかなヴァイオリンに、アコースティックギター、マンドリンなどによる
繊細でクラシカルな室内楽的サウンドは、ロック色は薄いものの、
高度なテクニックによる複雑な楽器の絡みによる知性的な美しさがある。
曲によってはエレキギターが絡んで、ややダークめの不思議な味わいを聴かせる。
カナダのチェンバーロックとしては屈指の作品であるのは間違いない。
クラシカル度・・8 プログレ度・・7 チェンバー度・・8 総合・・8
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News From Babel「Sirens and Silences・Work Resumed on the Tower
イギリスのチェンバーロック、ニュース・フロム・バベルの1984年作
ART BEARS解体後、ダグマー・クラウゼ、クリス・カトラーに、元Henry Cowのリンゼイ・クーパー、
ゼナ・パーキンスによって結成。チェンバーロック的なピアノやバスーンが鳴り響き、
ダグマーのエキセントリックな歌声とともに、先の読めない緊張感とアヴァンギャルドな展開を描き出す。
アート・ベアーズに比べると80年代的なスタイリッシュな軽妙さが強まっている分、
ミステリアスではあってもどろどろとした混沌ではなく、どこかドライな聴き心地だ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 アヴァンギャル度・・8 総合・・8
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Dagmar Krause  「Tank Battles」
ドイツ人女性ヴォーカリスト、ダグマー・クラウゼの1988年作
SLAPP HAPPYHENRY COWART BEARSなどのメンバーとして知られる彼女だが、
本作は作曲家Hanns Eislerの楽曲を取り上げた歌曲集で、ほとんどが1〜3分の小曲ながら、
社会的なメッセージ性の強い歌詞とドイツ語なまりのダグマーの表現力ある歌声が合わさって、じつに濃密な聴き心地。
ドイツ語の曲では、さらにゲルマンなパワーに溢れた、艶やかでヨーロピアンな空気を表現する歌唱が素晴らしい。
随所にサックスやバスーンなども入ったチェンバーロック風味も含めて、プログレリスナーにもかなり楽しめるだろう。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 ダグマーの声度・・9 総合・・8
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◆マグマ系チェンバージャズロック

Eskaton 「4 Visions」
フランスのプログレ・ジャズロック、エスカトンの1981年作
1980年作「Ardeur」を先に聴いていたが、本作はデビュー前の1979年に録音された音源。
スペイシーなシンセに存在感あるベースを乗せたアッパーなアンサンブルに、
妖しい女性ヴォーカルが響き渡る、MAGMAを思わせる神秘的なジャズロックサウンド。
ほとんどの曲が10分前後という大作志向で、本家マグマに通じるスケール感ととともに、ときにムーグシンセや
オルガンなどを加えたプログレらしさも覗かせる。フランス語による女性ヴォーカルがミステリアスな優雅さをかもしだし、
サイケな浮遊感にチェンバーロック色も混ざったような、単なるMAGMAフォロワー以上の濃密な聴き心地だ。
ドラマティック度・・8 神秘的度・・8 MAGMA度・・9 総合・・8
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Jean-Paul Prat 「MASAL」
フランスのミュージシャン、ジャンポール・プラットのソロ。1982年作
MAGMAに影響を受け70年代より活躍するマルチミュージシャンで、本作は42分の大曲を中心にした大胆な構成。
手数の多いドラムに、わりとハードなギター、サックス、トランペット、ホルン、フルートといった管楽器が絡んで、
いかにも怪しげで大仰なジャズロックを描いてゆく。まさにMAGMAを思わせるダークな世界観と重厚な演奏で、
プラット氏のドラムもクリスチャン・ヴァンデ並みに叩きまくっている。優雅なピアノが響くゆったりとしたパートから、
ときに3本のギターが重なり、ブラスセクションを加えたぶ厚いアンサンブルで、ダイナミックに構築されるサウンドは圧巻だ。
MAGMAファンならずとも圧倒されるスケール感に包まれた異色の力作である。CD化に際し、1985年に録音された15分、9分の大曲と、
1990年録音の2曲をボーナストラックとして追加されている。こちらは、もう少しソフトなプログレジャズロックである。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 重厚度・・9 総合・・8
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RJALZ 「U Rigiru」
フランス、コルシカ島出身のプログレバンド、リアルズの2008年作
「コルシカのマグマ」とも呼ばれ1978年に1000枚のみのプレスでLPが出回っていたレアな音源がCD化された。
オルガンやピアノの音色にヴァイオリンが鳴り響き、優雅で軽やかなアンサンブルを聴かせるサウンドで、
基本はジャズロックでありながらも、どこか辺境的な妖しさと湿り気を含んだ土着的な空気感が特徴的。
フランス語による男性ヴォーカルはときに詠唱のようで、女性声のスキャットとともに神秘的な雰囲気を描いている。
16分、11分という大曲を、ときに即興的な演奏を含んだセンスも面白く、MAGMAの妖しさにTerpandreの優雅さを合わせた、
濃密なサウンドが味わえる。このままバンドが活動を続けていたらものすごい作品を作ったのではないかという気もする。
CD化のボーナスとして、1977年に録音されたライブ音源と、76年の未発音源を追加収録。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 神秘的度・・8 総合・・8
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Michael Riessler「HONIG UND ASCHE -HONEY AND ASH」
ドイツ出身のサックス&クラリネット奏者、ミヒャエル・リースラーの1998年作
L'Orchestre National de Jazz Parisにも参加していたミュージシャンで、本作はエキセントリックな女性声を乗せた
チェンバーロック的な怪しさに包まれた作風で、変則リズムまくりの緊張感の中を、クラリネットやトロンボーン、
トランペットなどが吹き鳴らされる。恐ろしくアヴァンギャルドなジャズロックなのだが、先の読めないスリリングな空気感と
得体の知れないダークなチェンバーロックが交差して、結果としてこれは…とてもプログレだろうという聴き心地なので、
MAGMAなどが好きな方にも対応。ドラムが躍動する激しいジャズロック感触に、ときにアコーディオンやヴァイオリンも加わった
一種、土着的な感触も覗かせつつ、トランペットが盛大に鳴り響き、女性ヴォーカルがフランス語の声を妖しく乗せる、
じつにアヴァンギャルドかつダイナミックな演奏が繰り広げられる。ううむ…コレはもの凄い作品ですね。
プログレ度・・8 スリリング度・・9 アヴァンギャル度・・8 総合・・8.5
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高円寺百景「Angherr Shisspa」
日本のプログレバンド、こうえんじひゃっけいの2005年作
2001年作「NIVRAYM」に続く4作目で、男女混声のヴォーカルを乗せたMAGMA影響下の妖しげな世界観と、
吉田達也の手数の多い奔放なドラムで聴かせる、たたみかけるようなプログレッシブ・ジャズロックは健在。
本作では新たに、る*しろうの金澤美也子嬢(Key&Vo)、山本響子嬢(Vo)、小森慶子嬢(Sax/Clarinet)の三人の女性が加わり
本格派のオペラティックなソプラノを乗せた優雅さと、荒々しくサックスが鳴り響くフリーキーなジャズ要素が際立って、
サウンドはますます濃密に、そして凶暴になってきている。美しいソプラノをメインにしたしっとりとしたパートも含みつつ、
変則リズムを軽やかに叩き出す吉田氏のドラムもさすがで、もはや本家MAGMA以上にテクニカルな仕上がりと言ってよいだろう。
濃密度・・9 プログレ度・・8 マグマ度・・9 総合・・8
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Scherzoo 「02」
フランスのチェンバー・ジャズロック、スケルズーの2012年作
マルチ・ミュージシャンFrancois Thollotを中心にしたバンドの2作目で、サックスが鳴り響きやわらかなエレピを乗せて、
クリムゾン的な硬質感と優雅さを同居させたアンサンブルで、スリリングなチェンバー・ジャズロックを描き出す。
リズム面での遊びや、展開力の面白さは前作以上で、トロ氏の標榜する軽妙かつ芸術的なサウンドは完成の域に近づいた。
ダーク過ぎない程度に、UNIVERS ZERO風味も感じられ、ベースとギターの存在感がサックスと対峙することで、
とぼけた味わいと緊迫感の同居という、絶妙のバランス感覚を生み出している。さらに今作ではエレピのみならず、
オルガンなども含むシンセアレンジも曲によってマッチしていて、よりプログレ感をかもしだしている。
チェンバー・ジャズロック度・・8 スリリング度・・8 優雅で軽妙度・・9 総合・・8 
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RHUN 「Fanfare Du Chaos」
フランスのプログレ・ジャズロック、ルーンの2013年作/邦題「混沌のファンファーレ」
サックスが鳴り響き、コバイヤ語を思わせる男女コーラスの歌声を乗せた、まさにMAGMAタイプのサウンド。
サックス、クラリネット、バスーン、フルートなどがチェンバーロック的にときに優雅にときにシリアスに吹き鳴らされ、
変則リズムを含んだテクニカルなアンサンブルとともに、アヴァンギャルドな展開を大仰に描いてゆく。
特徴としてはノイジーなギターによる不協的な緊迫感が、スリリングな危うさをかもしだしていて、
フルートなどが美しいゆったりとしたパートとの強烈なコントラストとなっている。暴れん坊のマグマというか、
むしろシアトリカルな妖しさでは、本家マグマを凌駕するかもしれない。これは強力なアルバムだ。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 マグマ度・・9 総合・・8
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Vak 「Aedividea」
フランスのチェンバー・ジャズロック、ヴァクの2015年作
シンセにフルート奏者を含む編成で、躍動的なドラムと存在感あるベースを軸にしたアンサンブルに、
女性声のスキャットにエレピを含むシンセを重ねた、MAGMAルーツのアヴァン・ジャズロック。
程よいダークさと軽妙な優雅さのバランスで、いかにも「Zeuhl系」を地でゆくようなサウンドを聴かせる。
フルートによる叙情性やヘヴイでありながらも空間的なアプローチには、クリムゾン的な雰囲気も漂わせるが、
結局はマグマへと回帰するような作風は、やはり同郷の偉大な存在への憧れが強いのだろう。
10分前後の大曲も多いが、わりあいゆったりとした叙情パートも多いので、聴き疲れせずに楽しめる。
一方では、アヴァン・プログレ的なスリリングなナンバーもあり、バランスのとれた高品質な作品といえる。
ドラマティック度・・8 マグマ度・・8 ミステリアス度・・7 総合・・8
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◆ユニヴェルゼロ系チェンバー

Eskalation「different music for bassoon,wind synthesizer and sampled percussion」
ドイツのチェンバーロックユニット、エスカレーションの2000年作
バズーン、コントラバス、シンセを使いこなすステファン・コール氏による個人作で、
UNIVERS ZEROを思わせるダークめのクラシカルなチェンバーサウンドをやっている。
ゲストによるヴァイオリンもアクセントになっており、シンセと打ち込みによるリズムで
緊張感の表現としてはややあざといものの、モダンなセンスの良さも感じさせる。
シンフォニックで分かりやすい音なので、初心者や若いリスナーにもアピールするかもしれない。
クラシカル度・・8 チェンバー度・・8 モダン度・・8 総合・・8
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Univers Zero「Clivages」
ベルギーのチェンバープログレバンド、ユニヴェル・ゼロの2010年作
1987年の5作目を最後に沈黙していたバンドが、1999年に復活、以後再び作品を生み出し続ける。
シンセとクラリネット、ヴァイオリンが絡み流麗に始まる本作は、一聴して従来のダークさは控えめに思えるが、
むしろ3作目あたりの作風をソリッドに仕立て上げたという感触で、スリリングなアンサンブルが際立っている。
クラシカルな美しさが前に出ているものの、本質的なダークな世界観は変わらず。音数を絞ってきたことで
静けさの中での張りつめた緊張感はむしろむしろ高まっている。2002年作「rhythmix」以来の大傑作である。
クラシカル度・・8 テクニカル度・・7 ダークな緊張感・・9 総合・・8.5
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Aranis 「Roqueforte」
ベルギーのチェンバーロック、アラニスの2009年作
フルートにピアノ、アコーディオン、ヴァイオリン、ヴィオラを含む編成で、室内楽的な優雅さを
スリリングなアンサンブルで構築する、クラシカルかつアカデミックなチェンバーロックサウンド。
同郷の先達である、UNIVERS ZEROのダークでミステリアスな空気感を受け継ぎつつ、
アコースティック楽器の旋律を前に出した軽妙なサウンドで、ほどよい緊張感も備えている。
アコーディオンの音色にフルート、ピアノが絡む哀愁あるナンバーや、ドラムが入らないアンプラグドなナンバーなど、
暗黒性やスリリングな部分はユニヴェル・ゼロほどはないが、攻撃性がない分優雅な感触に包まれていて、
むしろチェンバーロックの本質を分かりやすく表現している。結果として、初心者にも楽しめるだろう好作品かと。
チェンバー度・・9 プログレ度・・7 スリリング度・・8 総合・・8
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Karda Estra 「Strange Relations」
イギリスのクラシカル・チェンバーロック、カルダ・エストラの2015年作
ギター、ベース、シンセを操るマルチミュージシャン、Richard Wilemanによるソロユニットで、
90年代から活動していて作品は優に10作は超える。本作はこれまでのようなゴシック的なダークさは薄めで、
ジャズやクラシック風味で軽妙に聴かせる、チェンバーロックサウンド。エレピやシンセ、ギター、ドラムを中心に、
オーボエやクラリネット、サックス、トランペットなどの音色が優雅に加わる、いわばUNIVERS ZEROの暗黒度を
いくぶん薄めたような聴き心地である。本作では世界観よりもアンサンブル重視の作風なので、
プログレ、チェンバーロックのリスナーにもぐっと聴きやすいアルバムになっている。
クラシカル度・・8 プログレ度・・8 ミステリアス度・・7 総合・・8
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October Equus 「Saturnal」
スペインのチェンバーロック、オクトーバー・イクースの2011年作
本作は3作目で、物悲しくチェロが鳴り響き、サックスにドラムも加えて、スリリングなアンサンブルを描く、
Univers Zeroを思わせるダークなチェンバーロックサウンド。変則リズムによる唐突な展開は、
ときにジャズロック風味になったり、室内楽的な優雅さとフリーキーな緊張感を巧みに融合させた、
軽妙かつテクニカルなインストサウンドは、この手のチェンバー系プログレの愛好家にはたまらないだろう。
アンサンブル志向の展開力で聴かせるタイプなので、難解な世界観というものはあまり感じさせず、
偏屈な技巧派プログレが好きな方にも対応。暗すぎないダークさも含めて初心者から玄人まで楽しめます。
チェンバー度・・8 プログレ度・・8 スリリング度・・8 総合・・8 
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Makajodama
スウェーデンのチェンバー・プログレバンド、マカジョダマの2009年作
バンド名も面白いが、「Post Rock meets Prpg Rock」といううたい文句通り、ポストロック的な世界観と
レトロなプログレ感覚が合わさったようなインスト主体のサウンドも、これがなかなか面白い。
ヴァイオリン、チェロ、サックスなどがギターやシンセと絡み、薄暗いチェンバーロックを基本にしつつ、
クリムゾン的なヘヴィプログレの質感もあるという。 どことなく日本の美狂乱っぽくもあったりする。
この妖しさと暗さは聴いていて引き込まれます。 メンバーが影響を受けたバンドとして、Dmitri Shostakovich、
King Crimson、Can、Univers Zero、Algarnas Tradgard、Godspeed You! Black Emperor、Third Ear Bandなどの名が。
メロディアス度・・7 チェンバー度・・8 薄暗度・・9 総合・・8
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SUBTILIOR 「ABSENCE UPON A GROUND」
イタリアのチェンバーロック、サブティリオルの2012年作
ギター、ベース、ドラムにヴァイオリン、クラリネット、ヴィブラフォン、ピアノ、オルガン、サックスなど、
多数のミュージシャンが参加したプロジェクト的な作品で、29分、15分というふたつの組曲を演奏している。
艶やかなヴァイオリンの響きに、クラリネット、マリンバなどが優雅な音色を乗せながら、
UNIVERS ZEROを思わせるダークな雰囲気と、緊張感あるスリリングなアンサンブルを構築してゆく。
曲が長いので、いくぶんルーズに思えるところもなきにしもあらずだが、雰囲気モノとしてゆったりと聴ける部分もあって、
カッチリしすぎていないところも逆によいのかもしれない。ダーク寄りのチェンバーロック好きはチェック。
ドラマティック度・・7 クラシカル度・・8 ダーク度・・7 総合・・7.5
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Rational Diet「On Phenomena And Existence」
ベラルーシのチェンバーロックバンド、ラショナル・ダイエットの2010年作
ヴァイオリン奏者、女性チェロ奏者、女性鍵盤/Voなどを含めた7人編成で、
クラシカルなシリアスさとUnivers Zeroなどに通じるダークな緊張感で聴かせるサウンド。
艶やかなヴァイオリンの音色にスキャット的な女性ヴォーカルが絡み、不穏なチェロの響きとピアノが重なり、
そこにギターとドラムが加わるとミステリアスで壮大なビジョンを描くようなチェンバーロックが構築されてゆく。
重厚さの中にダークな優雅さとユーモアが存在する点も、聴いていてにやりとさせられる。
クラシカル度・・8 プログレ度・・7 チェンバー度・・9 総合・・8
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Five-Storey Ensemble 「Not That City」
ベラルーシのプログレバンド、ファイヴ・ストレイ・アンサンブルの2013年作
解散したRATIONAL DIETのメンバーにより結成されたバンドで、その女性鍵盤奏者を中心に、
クラシカルなピアノに艶やかなヴァイオリン、オーボエやフルートの音色がやわらかに絡む、
優雅なチェンバーロックサウンド。やがて、スリリングな重厚さをかもしだすバスーンが響き、
いくぶんダークな色合いを帯びながら、鈍色の東欧の空気を描くような聴き心地になる。
牧歌的なアコーディオンにオーボエ、バスーンという取り合わせも面白く、哀愁の叙情を深みある音で
表現するようなセンスが素晴らしい。ときに男女ヴォーカルの母国語の歌声も加わった繊細な美しさが、
作品としての優美な気品を付加している。クラシカルな優雅さに包まれたチェンバーロックの傑作。
チェンバー度・・9 プログレ度・・8 優雅度・・9 総合・・8.5
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The Archestra 「Arches」
ベラルーシのチェンバーロック、アーケストラの2013年作
RATIONAL DIETのヴァイオリン奏者を中心に、艶やかな弦楽器とピアノの音色に、
女性チェロ奏者の母国語の歌声も合わさった、優雅でクラシカルなチェンバーロックサウンド。
ドラムとベースが加わると、適度なロック色とともに、ときにUNIVERS ZEROにも通じるダークな空気感と、
ヴァイオリンとチェロの絡むストリングスをメインにした旋律を乗せた、スリリングな味わいに包まれる。
純室内楽をロック化したという気品のあるクラシカル性に包まれる一方、美しくも妖しい女性ヴォーカルが
Art Bearsのようなエキセントリックな彩りを添え、フリーキーなアヴァンギャルド性を描くナンバーなど、
一筋縄ではいかない先鋭的でアーティスティックなセンスも光っている。まさに本格派チェンバーの傑作。
クラシカル度・・8 プログレ度・・8 チェンバー度・・9 総合・・8
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◆クラシカル系チェンバー

FLAT122「The Waves」
日本のプログレバンド、フラット・ワンツーツーの2005年作
ギター、シンセ、ドラムというベースレスのトリオ編成で、クラシックの手法で
ミニマル的なプログレを構築するという、いわゆるチェンバーロックと言ってよいサウンド。
さりげない変則リズムを含ませながら、それが巧みに計算された構築であるという点では
ジャズとクラシックの感性をプログレに置き換えたというべきか、難解になりそうなところを
ギターやシンセの軽やかなメロディ、フレーズなどで上手く耳に馴染ませてくれる。
不穏な緊張感はUnivers Zero風でもあるが、それよりも軽妙なセンスはジャズロック的な感性だろう。
ほぼオールインストながら、ちょっとした音楽通にとっては退屈せず、奥深い視点から楽しめる作品だ。
もしプログレを芸術ととらえるなら、こういう音楽なのだ。ラストの13分の大曲はロンドのように展開する力作。
クラシカル度・・8 チェンバー度・・8 芸術度・・8 総合・・8
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YUGEN「Iridule」
イタリアのプログレ・チェンバーロックバンド、ユーゲンの2010年作
2006年にデビュー、THE WATCHと元STORMY SIXのメンバーを含むバンドで
3作目となる今作では、ミステリアスな不穏さとアヴァンギャルドな展開がいっそう大仰に増幅され、
テクニカルなチェンバー、ジャズロックとプログレ的なシンフォニック要素が絶妙に融合、
ある種、奇跡的なまでの均衡を描いている。先の読めないスリリングな展開がたまらない。
サックス、クラリネットなどの管楽器と、クラシカルなピアノ、ヴァイオリン、シンセなどが一体となり、
まるでシンフォ化したUnivers Zeroとでもいうようなプログレ・チェンバーロックが楽しめる。
緊迫感を漂わせながらも、女性Voが入ったり、静かな叙情性も含んでいて、何度聴いても飽きない。
クラシカルチェンバー度・・9 プログレ度・・8 スリリング度・・10 総合・・9
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SKE「1000 AUTUNNI」
YUGENCICCADAで活躍するシンセ奏者、Paolo"SKE"Bottaのソロ。2011年作
オルガンを含むシンセに、ギター、フルート、ヴァイオリン、サックス、クラリネットなどが交わる
クラシカルなジャズロック、あるいは軽快なチェンバーロック風味のサウンド。
コミカルな雰囲気の中にテクニカルな軽妙さが光っていて、その高度な演奏力は
日本のKENSOなどを思わせる部分もある。随所にミステリアスなチェンバー色を垣間見せつつ
コロコロと主旋律の楽器が変化し、リズムチェンジやブレイクなど、エキセントリックなセンスが
緊張感を生み出している。やわらかなフルートの音色、テルミンの響き、ときに女性スキャットも加わって、
優雅な聴き心地の中に不思議なスケール感を漂わせている。YUGENも素晴らしかったが本作も良いです。
メロディック度・・8 テクニカル度・・8 チェンバー度・・8 総合・・8
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Altrock Chamber Quartet 「Sonata Islands Goes RIO」
イタリアのチェンバーロックユニット、アルトロック・チェンバー・カルテットの2012年作
YUGENのクラリネット奏者など含むユニットで、本作は、Fred Frith、UNIVERS ZERO、Stefano Zorzanello、
Massimo Giuntoliなどのアーティストの楽曲を独自にカヴァーした作品。奔放なクラリネットの音色にも
ヴァイオリン、チェロ、フルートなどが優雅に絡み、ときに激しく、ときに繊細な演奏を繰り広げる。
ギターやドラムが入らないのでロック色は薄いが、各楽器の輪郭がはっきりとしたスリリングなアンサンブルで
プログレというよりはむしろ、アヴァン・クラシックというべき感触が楽しめる作品だ。
ドラマティック度・・7 クラシカル度・・9 ロック度・・2 総合・・7.5
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Breznev Fun Club 「Il Misantropo Felice」
イタリアのチェンバーロック、ブレジネフ・ファン・クラブの2015年作
ギタリストのRocco Lomonacoを中心に、フルート、オーボエ、クラリネット、サックス、バスーン、ホルン、
トランペット、トロンボーン、チューバ、ヴァイオリン、チェロなど、総勢19名が参加した大がかりな室内楽ユニット。
フランク・ザッパ的なアヴァンギャルドなセンスとチェンバーロックの優雅さを合わせたような感触で、
ストリングスと管楽器が重なるオーケストラルな美しさに、軽やかなマリンバの音色、ジャズ的なサックス、
さらには女性声のスキャットなども加わったじつに豊穣な聴き心地。バンドは80年代から活動していたらしく、
近年のYUGENのブレイクに刺激を受けたのかどうかはともかく、素晴らしい内容の傑作に仕上がっている。
クラシカル度・・9 優雅度・・9 アヴァンギャル度・・8 総合・・8.5
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Loomings 「Everyday Mythology」
フランスのアヴァン・チェンバーロック、ルーミングスの2015年作
YUGEN、EMPTY DAYS、NOT A GOOD SIGN、FACTOR BURZACOなどにも参加するミュージシャン、
Jacopo Costaを中心にしたバンドで、ヴィブラフォンの優雅な音色に、エフェクトのかかった男ヴォーカルに
美しい女性ヴォーカルが絡み、フランスらしいエキセントリックな妖しさと軽妙なアンサンブルで聴かせる。
ミステリアスな静寂感と先の読めない展開も面白く、ときにシアトリカルな演劇性も匂わせながら、
軽やかなユーモアを含んだ聴き心地は、適度にダークながらも重すぎず、さほど難解な感じもしない。
女性ヴォーカルが前に出る部分が多いので、異色のアヴァンロックながらも、全体的には優雅な印象だ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 アヴァンギャル度・・8 総合・・8
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Jonathan & Corentin Aussems・Francois Schuiten「Idegael」
ベルギーのレーベル、Home RecordingsのスタッフであるAussems兄弟と、
ベルギーの画家&漫画家のFrancois Schuitenのコラボ作品のサントラ音源。2011年作
管弦楽器やピアノを含んだオーケストラルなアレンジと、男女混声コーラスも加わった
雄大なチェンバーロック的サウンドで、ストーリー性を感じさせる空間的な広がりには、
どこかなつかしいような優しい聴き心地もある。サントラ的でありつつも、クラシカルな優雅さと
適度な緊張感を含んだ構築性により、ひとつの音楽作品として楽しめる力作です。
クラシカル度・・8 プログレ度・・7 空間度・・8 総合・・8
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Morgan Agren 「Through The Eyes Of Morgchestra」
スウェーデンのミュージシャン、モルガンオーギュレンの2016年作
MATS/MORGAN結成35年イベントとして行われたノールランド歌劇場交響楽団との共演ライブのために書き下ろされた楽曲集。
クラシカルで優雅なアプローチと軽妙でとぼけた味わいを、巧みに融合されたチェンバーロックというサウンドで、
オーケストラパートをキーボード、ヴァイオリン、クラリネット、バスーンなどで過不足なく表現している。
モルガンのドラムは前に出すぎることなく、今作では作曲者としてのサウンドの構築を主眼に置いた感じで、
オケパートの旋律を引き立たせるアレンジは、彼の新たな才能を垣間見る思い。アヴァンギャルド性が薄めな分、
わりと初心者にも聴きやすいかもしれない。相方であるマッツ・エーベリ、サイモン・スティーンスランドも参加。
優雅度・・8 チェンバー度・・9 アヴァンギャル度・・7 総合・・8 
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◆女性声系チェンバー

Hardscore 「Methane」
ベルギーのチェンバープログレ、ハードスコアの1999年作
クラリネットの優雅な音色にサックス、コロコロとしたマリンバの響きを、変則リズムに乗せた、
コケティッシュな可愛らしさとスリリングなリズムアンサンブルが合わさった聴かせるチェンバーロック。
エレピを含むシンセの美しさ、キュートな女性ヴォーカルの歌声も加わった、キャッチーな耳心地と、
テクニカルで偏屈な楽曲展開の妙が対照的でとても面白い。暗黒性はほとんどないのだが、
ひねくれた味わいが優雅な無邪気さと合わさった、可愛らしい変態というべきサウンドにニンマリである。
一方では、サックスがゆったりと鳴らされ、マリンバにエレピが優しく絡む叙情的なパートから、
エキセントリックに展開するアヴァンギャルド性にもプログレらしい知性とセンスが感じられる。
チェンバー度・・8 プログレ度・・8 軽妙で軽妙度・・9 総合・・8
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OLIVE MESS 「Gramercy」
ラトビアのプログレバンド、オリーヴ・メスの2006年作
女性Voにシンセを含む6人編成で、バロックギターの優雅な音色にシンセが絡み、
ソプラノ女性ヴォーカルがオペラティックな歌を乗せる、チェンバーロック風味のサウンド。
ときに狂気をはらむかのようなエキセントリックな女性の歌声が妖しく響きわたり、
10分〜21分という大曲を中心に、軽妙なアンサンブルと涼やかな緊張感で描いてゆく。
いわばHenry Cowあたりにも通じるヘンタイ気味の聴き心地を辺境的に解釈したというような力作だ。
ドラマティック度・・7 チェンバー度・・8 ヘンタイ度・・8 総合・・8
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Thinking Plague 「Decline and Fail」
アメリカのチェンバーロック、シンキング・プレイグの2011年作
80年代にデビュー、本作は6作目となるアルバムで、不穏なベースラインと硬質なドラムに
うっすらとしたシンセやピアノ、浮遊感ある女性ヴォーカルを乗せたスリリングなサウンド。
HENRY COWART BEARSといったかつてバンドのエキセントリックな芸術性を受け継ぐ作風で、
サックスやクラリネットが鳴り響く、チェンバーロックの王道をレコメン寄りに構築したという雰囲気。
どこか醒めたような女性声が理性ある狂気を描きつつ、ミステリアスでダークな妖しさの中にも、
コロコロとしたキュートな質感も覗かせる。ドラムとベースのアンサンブルを軸にした確かな演奏力が、
ベテランらしい音の説得力をかもしだし、8分、11分という大曲も緊張感を保って描かれる。これは傑作。
スリリング度・・8 プログレ度・・8 チェンバー度・・8 総合・・8
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Squonk Opera 「Mayhem and Majesty」
アメリカのアヴァン・ロックバンド、スクォンク・オペラの2010年作
ステージではアーティスティックなパフォーマンスを行うバンドで、本作は7作目。
女性ヴォーカルの歌声と、ピアノやフルート、サックス、アコーディオンなどが絡む
民族的なテイストを、演劇的な雰囲気に融合させた、なかなか個性的な作風。
オータム嬢の美しい歌声にうっとりしつつ、さりげない演奏力の高さと先の読めない
エキセントリックなセンスが新鮮な耳心地だ。シアトリカルでオペラティックな傑作。
シアトリカル度・・8 プログレ度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8
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BENT KNEE 「Say So」
アメリカのアヴァンロック、ベント・ニーの2016年作
やわらかな女性ヴォーカルの歌声を乗せた、エモーショナルロック的でもある聴き心地に、
Kate Bush的なシアトリカルな雰囲気と、エキセントリックなセンスを含ませたというサウンド。
ヴァイオリンなどのストリングスアレンジを含む優雅な感触に、チェンバーロック風味を感じさせるスリリングさと、
キュートなキャッチーさが合わさった作風で、結果、プログレとしても十分に楽しめる面白さがある。
シンセ奏者でもあるコートニー嬢の表現豊かで伸びやかな歌声が大きな魅力となっていて、
ときにアヴァンギャルドな展開も見せながら、この包み込む歌声ですべてをソフトにしているという。
レーベルがCUNEIFORMというのもうなずける、ポップ系・チェンバー・アヴァンロックの好作品。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 女性Vo度・・9 総合・・8
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PEARLS OF SWINES
フランスのアヴァンプログレ、パールス・オブ・スウィネスの2013年作
エドガー・アラン・ポーの詩をコンセプトにした作品で、変則リズムを含むアンサンブルに、
女性ヴォーカルの歌声を乗せ、浮遊感のあるアヴァンギャルド性で聴かせるサウンド。
適度なテクニカル性とともに、チェンバーロック的でもあるミステリアスで不穏な空気感も描き出し、
手数の多いドラムやダークなフレージングを奏でるギタリストのセンスもなかなかのもの。
曲によってはHenly Cow的なキュートな毒気や、フランスらしい優雅な闇を感じさせつつ、
全体的にはまだ実力を出し切っていないような、得体の知れないセンスも匂わせる。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 アヴァンギャル度・・8 総合・・8
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PikaPika Teart「Moonberry」
ロシアのチェンバーロック、ピカピカ・ティートの2011年作
シベリア出身という珍しいバンドで、ツインギター、クラリネット奏者、ピアノ奏者を含む7人編成。
艶やかなヴァイオリンにクラリネット、ピアノが絡み、ドラムが加わった優雅なアンサンブルで、
クラシカルな気品とともにジャズロック的な軽妙さを合わせたようなサウンドを描き出す。
どこか荒涼とした寒々しい空気を感じさせるのは、やはりシベリアという土地柄か、
トラッド的な旋律も含ませた哀愁の叙情性と、チェンバーロックとしてのシリアスな緊張感を、
しっかりとプログレ感として音に溶け込ませるセンスはなかなか素晴らしい。
ときにクリムゾン風のパートも覗かせたり、女性ヴォーカルを乗せたトラッド的な小曲や、
ヴァイオリンに絡むピアノもじつに美しい。北の大地をチェンバーロックで表現したという傑作です。
スリリング度・・8 プログレ度・・8 北のチェンバー度・・9 総合・・8.5
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Media Banda「Dinero Y Terminacion Nerviosa」
チリのチェンバー・ジャズロック、メディア・バンダの2008年作
FULANOのサックス奏者と女性Voを中心に結成されたバンドで、本作は2作目となる。
「金と神経質な完成」と題されたCD2枚組の大作で、軽妙なアンサンブルにサックスが鳴り響き、
オルガンやエレピを含むシンセにキュートな女性ヴォーカルの歌声を乗せたキャッチーな感触と、
テクニカルなジャズロック風味が合わさったスタイル。ザッパ的でもあるアヴンギャルドな感触を優雅に溶け込ませつつ、
あくまで軽やかな聴き心地は、カンタベリー系のジャズロック的でもある。エキセントリックなセンスを覗かせながら、
南米のバンドらしいやわらかな聴き心地が特徴的。優雅なアヴァンロックであり、女性声ジャズロックとしても楽しめる傑作だ。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 優雅で軽妙度・・9 総合・・8
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FACTOR BURZACO「III」
アルゼンチンのチェンバーロック、ファクトル・ブルサコの2014年作
3作目となる本作は、サックス、クラリネットの軽やかな音色に、ギター、ベース、ドラムのアンサンブルが合わさった、
中期UNIVERS ZEROにも近づいたような、適度にダークで重さもあるスリリングなチェンバーロックを聴かせる。
カロリーナ嬢のエキセントリックな歌声は、サウンドにキュートな浮遊感を描き、シリアス過ぎない緊張感は、
いよいよ絶妙の域に達している。ヴィブラフォンが鳴り響くミニマムな静けさから、ドラムが加わった即興的なナンバーや
ハードなギターが加わったテクニカルで硬質なナンバー、一転してコミカルなアヴァンロックまで、振り幅の大きさが物凄い。
ラストは14分を超える大曲で、優雅さと激しさ、静と動の起伏に富んだアレンジセンスで、圧巻のチェンバーロックを描き出す。
スリリング度・・9 プログレ度・・8 優雅度・・8 総合・・8
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◆優雅系チェンバー

KATZEN KAPELL「Maximalism」
スウェーデンのプログレ・チェンバーロックバンド、カッツェン・カペルの4th。2009作
タンゴや室内楽をベースにした優雅さと、プログレッシブな構成力で品のよい音楽を聴かせるこのバンド、
本作も艶やかなヴァイオリンや、アコーディオンの音色を絡ませた、軽妙なサウンドが楽しめる。
しっとりとしたピアノの響きに、ヴァイオリンやビブラフォン、マリンバなどが合わさると
室内楽的な優雅さとクラシカルな情緒に包まれる。ドラムの入った変則リズムはプログレ的で、
相変わらずセンスの良いアレンシが絶妙だ。“上品な緊張感”ともいうべき面白さが漂う傑作。
クラシカル度・・8 軽妙プログレ度・・8 ハイセンス度・・9 総合・・8
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XL「surreal」
フィンランドのチェンバー・プログレバンド、エックスエルの4th。2002作
デジタリィなシーケンサーによるシンセアレンジと、PEKKAにも通じるような素朴な質感を融合させ、
独自のプログレッシブサウンドを聴かせるこのバンド。本作も進化の過程にある意欲作だ。
ヴァイオリンチェロなどのストリングスに、クラリネット、ホーンといった室内楽的な優雅さと
シーケンサーによるレコメン的なモダンさが合わさり、繊細でありつつ奥深い音楽を聴かせてくれる。
コロコロとしたヴィブラフォンの音色と、美しいストリングス、そしてロック的なギターが合わさると、
「優雅な偏屈」ともいうべき新鮮な感覚に包まれる。既存のスタイルに捕らわれないセンスある作品だ。
メロディアス度・・8 プログレ度・・8 優雅度・9 総合・・8
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ARTTU TAKALO「Truth in Dark Phrases
元XLのアトゥ・タカロのソロ、2010年作
どっしりとしたドラム、ベースのリズムに、エレクトロなシンセやヴァイブ、シロフォンの音色を乗せた、
モダンなチェンバーロックサウンド。今作ではロック寄りのギターがより活躍していて、
メロウな旋律を奏でる部分では、美しいシンセアレンジも相まってシンフォニックな感触になる。
今作でもストリングスによる味付けがサウンドに優雅な厚みを与えていて、北欧らしい人懐こいメロディや
繊細な美意識というのは、やはり偉大なる先人、ペッカ・ポーヨラ譲りのセンスと言ってよいだろう。
スリリングな部分は少ないが、ジャズ色も含んだ優雅なサウンドが楽しめる。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 モダン度・・8 総合・・8
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Gatto Marte 「COLOMBO TUTTO TONDO」
イタリアのプログレバンド、ガトー・マルテの2009年作
ヴァイオリン、ピアノ、バスーン、ダブルベースという編成で、今作はコロンブスの航海をテーマにした作品。
1〜3分という小曲を主体にした優雅でクラシカルなチェンバーロックで、艶やかなヴァイオリンにコミカルなバスーンが絡み、
オペラティックな男女ヴォーカルの歌声が重なると、シアトリカルなミュージカル風味という感じにもなる。
1980年代から活動しているベテランだが、よい意味での垢抜けなさと、アマチュア臭い親しみやすさが感じられて、
硬質なチェンバーロックとは真逆のラテンの空気感と言っていい。CDRでのリリースというのもいかにも自主制作っぽい。
プログレというよりは、演劇的なヴォーカルを乗せた小曲を連ねた、紙芝居風のクラシカルチェンバーというべきか。
クラシカル度・・8 プログレ度・・7 オペラティック度・・8 総合・・7.5
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HOMUNCULUS RES 「Limiti All'Eguaglianza Della Parte Con Il Tutto」
イタリアのプログレバンド、ホムンクルス・レスの2013年作
マルチ・ミュージシャンのDario D’Alessandroを中心にしたバンドで、ミニムーグやオルガン、メロトロンといったシンセが鳴り響き
コロコロとした可愛らしさと、アヴァンギャルドな感性をたっぷり含んだ、チェンバー風味のジャズロックというようなサウンド。
アコースティックギターやフルートによるやわらかな優雅さと、プログレ的なムーグシンセ、先の読めない変則リズムが楽しく、
ピッキオ・ダル・ポッツォあたりを思わせる部分もあるが、こちらの方がむしろ耳心地の良い、メロディアス性があるのがポイントで、
ヴォーカル入りのパートはキャッチーですらある。テクニカルではあるが硬質感はなく、MATS/MORGANがガンタベリーをやったらこうなる、
というのが分かりやすいかも。繊細な表現力を有するアヴァン・ジャズロック。YUGENのPaolo"Ske"Bottaがゲスト参加している。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 優雅なエキセントリック度・・9 総合・・8
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Empty Days
イタリアのプログレバンド、エンプティー・デイズの2013年作
YUGENのギタリスト、フランチェスコ・ザゴとシンセ奏者のスケ・ボッタを中心にしたバンドで、
本作はやわらかなシンセアレンジに男女ヴォーカルの歌声で聴かせる繊細なシンフォニックロック。
たおやかなピアノの音色にうっすらとしたメロトロンが重なり、幻想的な美しさに包まれつつも、
曲によってはダークなチェンバーロック色も覗かせる。楽曲の節々にはクラシカルな優雅さを垣間見せ
物悲しいチェロの音色をバックにしたヴォーカル曲やオペラティックな女性ソプラノのナンバーなど、
YUGENともNot a Good Signともやや異なる方向性で、こちらはよりアトモスフェリックな作風と言えるだろう。
POPOL VUHHENRY COWなどにも通じるようなナンバーもあり、妖しい世界観に浸れる異色作である。
ドラマティック度・・7 クラシカル度・・8 繊細度・・8 総合・・8
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Aparecidos 「Palito Bomobon Helado」
イタリアのチェンバーロック、アパラチドスの2013年作
アルゼンチン出身の兄弟ギタリストを中心に結成されたバンドで、二本のクラシックギターが絡み
グロッケンシュピール(鉄琴)のきらきらとした響きを乗せた、優雅なチェンバーロックサウンド。
哀愁を感じさせるラテンのフォークロアのテイストを、軽妙なアンサンブルに溶け込ませ、
適度な屈折感を盛り込みながら、ジャズやボサノヴァ要素も含んだ自然体の聴き心地。
アコースティック主体ながらも、随所にエレキギターも加わって、技巧的なドラムとともに、
うるさすぎないロック感触を描いて、ヴァイオリンやアコーディオンなども優雅なアクセントだ。
ダークでもサロン系でもない、いわばラテン系チェンバーという、とても優しいサウンドである。
ドラマティック度・・7 チェンバー度・・7 優雅なラテン度・・9 総合・・8
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PANZERPAPPA 「Pestrottedans」
ノルウェーのチェンバーロック、パンザーパッパの2016年作
結成は90年代というバンドで、ムーグなどのプログレ的なシンセにサックスが鳴り響き、
わりとメロディックなギターフレーズを乗せた、ジャズロック色もある軽妙なサウンドを聴かせる。
とぼけた味わいはSAMLA MAMMAS MANNAにも通じる雰囲気で、カンタベリー的な優雅さもある。
ベースとドラムの生み出すわりとストレートなノリの良さと、屈折感をほどよく同居させたセンスもなかなかで、
アヴァンギャルド過ぎずダークな要素も薄いので、チェンバー・ジャズロック初心者にも聴きやすい作風だろう。
オールインストで演奏が流麗なため、聞き流してしまいそうになるのだが、アンサンブルのレベルは高く、
メロディも分かりやすいためキャッチーな爽快さもあって、軽快なプログレ・ジャズロックとしても楽しめる。
メロディック度・・8 チェンバー度・・7 ジャズロック度・・8 総合・・8
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The Worm Ouroboros 「Of Things That Never Were」
ベラルーシのプログレバンド、ワーム・ウロボロスの2013年作
アメリカのゴシック・ドゥーム系にも同名バンドがいるが、こちらはダークな叙情を含んだ本格派プログレバンド。
不穏なベースラインとアコースティックギターの上をフルートが鳴り響く、チェンバーロック風味の感触に
変則リズムとメロウなギターがANGLAGARD的な浮遊感と涼やかな叙情をかもしだすという個性的なサウンド。
音数を絞ったアンサンブルなので、華美で重厚なシンフォニック性はないのだが、センスがものをいうこの作風で、
ときに優雅なカンタベリー風味を覗かせたり、繊細なメロディック性と軽妙なテクニカル性を融合させているのは見事。
歌入り曲でのキャッチーなアヴァンギャルド性は、どこかMATS/MORGAN的でもあったりと、とらえどころのないセンスは
玄人好みであるが、一方では、オルガンが鳴り響きフルートの音色が牧歌的なナンバーもあったりと、案外振り幅が広い。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 軽妙度・・8 総合・・8
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Frogg Cafe「Safenzee Siadies」
アメリカのプログレバンド、フロッグ・カフェのライブアルバム。2007年作
2001年にデビューし、フュージョン、ジャズロック風味の軽やかなサウンドで、
2005年のアルバム「Fortunate Observer of Time」はかなりの傑作であった。
本作は2005〜2006年のライブ音源をCD2枚に収めたもので、大人の余裕を感じさせる
軽妙なアンサンブルに、ヴァイオリン、トランペット、トロンボーンなどが加わった
とぼけた味わいのあるチェンバーロック的な風味とともに、見事な演奏を聴かせる。
テクニカルさに頼らず歌心のあるキャッチーさも魅力で、10分以上の曲も多いが、
飄々と曲を構築する雰囲気はECHOLYNあたりにも通じる。玄人好みのバンドである。
メロディアス度・・8 プログレ度・・8 ライブ演奏・・8 総合・・8
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◆暗黒系&ヘンタイ系チェンバー

Shub-Niggurath 「Les Morts Vont Vite」
フランスのチェンバーロック、シュブ・ニグラスの1986年作
MAGMAをルーツに暗黒世界を突き詰めたようなサウンドで、かつて聴いた際には、WHENの「THE Black Death」のように、
恐ろしい心地がしたものだが、その異端の作品が「死せる暗黒の騎士」のタイトルで2015年紙ジャケで再発された。
不穏なギターフレーズにクラシカルなピアノが鳴り響き、妖しい女性スキャットが重なってゆく冒頭の雰囲気からして、
すでにUNIVERS ZEROクラスの強烈な暗黒性を感じさせる。トロンボーンを加えたチェンバーロック的な優雅さと、
ミステリアスな闇の気配…フリーキーに聴こえながらも、実は計算された音の重ねで構築されたサウンドが素晴らしい。
うねるようなベースの存在感と緊張感のあるドラムがアンサンブルを引き締める。重厚にしてアヴァンギャルド、
暗黒と優雅が同居したまさに異色の傑作。次作「C'etaient De Tres Grands Vents」も負けず劣らずの出来である。
ドラマティック度・・7 チェンバー度・・8 暗黒度・・9 総合・・8
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Mikhail Chekalin 「Concerto Grosso No.1」
ロシアのシンセ奏者、ミハイル・チェッカリンの1989年作
アルテミエフとともに旧ソ連時代を代表するシンセ奏者。多重シンセによるサウンドスケープ的な感触に
チェンバーロック的なミステリアスな雰囲気も含ませつつ、ジャケのような薄暗く怪しげな世界観を描きだす。
クラシカルな優雅さとスケール感のあるアヴァンギャルドな感性を大胆に混在させたという作風は、
あるいは、FAUSTなどのコラージュ的なジャーマンプログレを好むような方にも楽しめるかもしれない。
14分と11分、2曲の大曲を中心に、ボーナスには1990年に録音された20分に及ぶ楽曲も収録。
アルバムタイトルからは、クラシカルなプログレを想像するが、内容はアヴァンギャルドの極地。
ドラマティック度・・7 ミステリアス度・・8 アヴァンギャル度・・8 総合・・8
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When 「Black White & Grey」
ノルウェーのチェンバーロック、ウェンの1991年作
ラーズ・ペデルセンの一人ユニットで、1曲目は20分の大曲。うっすらとしたシンセに、不穏な鐘の響き、
救急車のサイレン、男の息づかいや銃声などのSEがホラー映画的な空気を描き、それらがギターやシンセと溶け合って、
聴き手の想像力を掻き立てる混沌としたダークなサウンドを作り出している。きっと一般のリスナーには、
これを音楽としては聴けないだろうが、音の暗黒芸術として悪夢を見るように楽しむのが正解だろう。
2曲目以降はヴォーカル入りのわりと聴きやすいところもあるが、やはりどうしても暗黒へと向かってゆく。
Henry Cowのクリス・カトラーが作詞を担当。次作「The Black Death」へとつながる、異色作である。
CD盤にはLPのみで発表された1988年作収録の21分の大曲「Death in the Blue Lake」を追加収録している。
ドラマティック度・・7 ロック度・・1 暗黒度・・9 総合・・8
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HOYRY-KONE「HUONO PARTURI」
フィンランドのチェンバーロックバンド、ホイリー・コーンの2nd。1997年作
のっけからいきなりグレゴリアンチャントみたく始まったかと思えば、続いてへヴィでノイジーな変拍子曲。
どの曲も途中から奇妙な展開をみせ、全体の音像としては非常にシリアスなのだが、
ねじくれた楽曲がこれがギャグであることを物語る。つまり大マジに変態をやったらこうなる、と。
しかし、ただの変なひと、ではなく「スーツを着た論理口調のインテリがキレたとき」、のような(笑)
抜群のテクニックと異常なセンスで聴かせる傑作。日本盤のタイトルは「偽理髪師」(なんなのコレ?)
ちなみに、後のALAMAAILMAN VASARATの前身となるバンドでもある。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・8 変態度・・10 総合・・8
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Sleepytime Gorilla Museum 「Grand Opening & Closing」
アメリカのシアトリカル・アヴァンギャルド・ロックバンド、スリーピータイム・ゴリラ・ミュージアムの2001年作
プログレ、チェンバー、レコメン、クラシック、メタルなどの要素をごった煮にした、ようするにヘンタイ。
ヴァイオリン入りのクラシカルな優雅さと、メタルばりのヘヴィさが混在し、インダストリアルな無機質さに、
女性声も絡み、おちゃらけた遊び心満載の唐突な展開で聴かせる、濃密かつ大胆なサウンド。
一筋縄ではいかない捉えどころの無さと不気味なスケール感、常人には計り知れない異常なセンス、
メタル化したART BEARSか、気の触れたDEVIL DOLLか…とにかく理性的に狂ってますが、これがじつに格好いい。
まさに先鋭の極み。ヘンタイ大好きなアナタならにやにやすること間違いなし。一般の方は聴かないでください。
ドラマティック度・・8 アヴァンギャル度・・9 ヘンタイ度・・10 総合・・8
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TAAL「SKYMIND」
フランスのシンフォニック・チェンバーロックバンド、タールの2nd。2002年作
1stの方も強引なメタルギターに管楽器をフィーチャーした、エセ壮大系の無茶なサウンドだったが、
この2ndにして、さらに楽曲のアレンジの細やかさが増し、サウンドのクオリティが高まった。
相変わらずのこけおどしメタルサウンドと管楽器、ストリングスの合体は素晴らしく、
時折聴かせるしっとり(?)とした叙情クラシカルパートも本物に聴こえるし、
おちゃらけたメロディや無茶な展開も、馬鹿にできずに、むしろシリアスに聴き通せる。
「本物」なのだ。本物の音で壮大な「悪ノリ」をしているのがこのバンドの魅力なのだ。
結果、まったくもって、シンフォニックでありながら、手の込んだいたずら心満載の
大仰なシンフォニーロックに聴こえてしまう。びっくりでニヤリ。オペラチックな女性Vo曲もある。
シンフォニック度・・8 クラシカル度・・8 本気だから度・・10 総合・・8.5
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GUAPO 「Black Oni」
イギリスのアヴァンプログレ、グアポの2004年作
結成は90年代という、なにげにキャリアのあるバンドで、本作は鬼をテーマにしたコンセプト作。
ノイジーでヘヴィなギターが鳴り響き、美しいシンセを絡ませながら、不穏な空気感を躍動的に描く、
いわゆる「MAGMA/Zeuhl系」の作風に、暗黒性をたっぷりとまぶした重厚なサウンドを展開する。
ジャズロック、チェンバーロックというカテゴライズ不要な、凶暴なダークさとスリリングな緊張感が、
聴き手をじわじわと包み込む。UNIVERS ZEROをよりハードにしたという感触もあるが、
シンセのメロデイはときに優美ですらあって、メタル寄りのリスナーにも楽しめるかもしれない。
5パートに分かれた、44分のオールインストだが、最後まで張詰めた緊張感で飽きさせない。
ドラマティック度・・8 アヴァンギャル度・・8 暗黒度・・9 総合・・8
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ALAMAAILMAN VASARAT「HUURO KOLKKO」
フィンランドのチェンバー・プログレバンド、アラマーイルマン・ヴァサラットの4th。2009作
トロンボーン、サックス、チェロといった楽器を激しく鳴らして独自の音楽を追求してきたこのバンド
2009年にはついに来日公演も果たし、ますます勢いに乗ってきている。「消えた冒険家」という
意味不明なタイトルの今作でも、のっけから重厚なチェロの音色にサックス、トロンボーンが愉快に絡み、
もはやこのバンドでしか描き出せない、ユーモア溢れるダンディズムといったようなものを匂わせた
独自のサウンドを聴かせる。アヴァンギャルドな天然ポケ的感性の中に、哀愁をにじませているのがいかにも
フィンランド的な情緒であり、メロディカなどの使用も含めて前作以上に音のメリハリがついているのもよろしい。
メロディアス度・・7 変態度・・8 哀愁度・・8 総合・・8
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Diablo Swing Orchestra「The Butcher's Ballroom」
スウェーデンのプログレ・ジャズメタルバンド、ディアブロ・スウィング・オーケストラの1st。2006年作
女性Voにチェロ奏者を含む6人組で、バンド名のようにスイングジャズを取り入れつつ、
オペラティックな女性ヴォーカルの歌声とともに、ゴシックメタル的な雰囲気を融合させた
とてもユニークな音楽性。一聴して思い出すのはフィンランドのALAMAAILMAN VASARAT
彼らのような「ユーモア溢れる本気」というような、大人の遊び的な強固な姿勢を感じさせる。
さらにこのバンドの場合、ジャズの素養がしっかりとしていることで、楽曲が嘘くさくなく
そこにメタリックなギターやチェロなどが割と自然に融合しているのがまた凄いところである。
ジャズメタル度・・8 オペラティック度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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Simon Steensland 「A Farewell to Brains」
スウェーデンのマルチミュージシャン、サイモン・スティーンズランドの2015年作
いまや北欧が誇る鬼才というべき存在だろう。本作にも盟友であるモルガン・オーギュレン(MATS/MORGAN)が参加、
さらには、サイモンが敬愛する元UNIVERS ZEROのベーシスト、ギ・セジュールがゲスト参加している。
17分におよぶ一曲目は、うっすらとしたシンセにクラリネットが妖しく鳴り響く、ダークなチェンバーロックで、
MATS/MORGANを思わせる軽妙でとぼけた味わいと、不穏な空気が合わさったスリリングな大曲。
ほぼインスト中心だが、今作ではUNIVERS ZEROのようなドラマティックなスケール感が加わって、
チェンバーロックとしてのシリアス性が強まったという印象だ。ラストの17分の大曲では、アヴァンロックの偏屈さと
女性コーラスなとを含んだ神秘的な雰囲気を含んだ、得体の知れない世界観が見事に表現されている。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 アヴァンギャル度・・8 総合・・8
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Senogul「III」
スペインのプログレバンド、セノガルの3rd。2011年作
妖しげなイントロから始まる本作は、優美なピアノに軽やかな変則リズムの嵐、
クラシカルなチェンバーロック風味とアヴァンギャルドな感性を取り込んだ、
ひと筋繩ではいかないサウンドを聴かせる。ときに哀愁を含んだギターフレーズに
コロコロとしたムーグシンセ、ファゴット(バスーン)やアコーディオン、ヴァイオリンも鳴り響き、
やわらかな叙情を漂わせつつ、予測のつかない展開はとてもスリリングだ。
ジャズやクラシック、タンゴまでも取り入れた独自のアレンジセンスで描かれる、
いわば優雅なるおヘンタイ。Hoyry-KoneAlamaailman Vasarat などが好きな方もぜひ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・9 優雅なヘンタイ度・・9 総合・・8
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ANGIZIA「39 Jahre fur den Leierkastenmann」
オーストリアのクラシカル・アヴァンギャルド・ゴシックバンド、アンギジアの4th。2001年作
メタル色はほぼ希薄で、クラシックに裏打ちされたピアノ、ヴァイオリンを用いた格調高い曲調から
軽快なアコーディオンの上を男女Voが歌を掛け合うといったおちゃらけたものまであり、
芸術性とアヴァンギャルドな精神が奇妙に融合した作風となっている。
ところによってはDEVIL DOLLなどのリスナーも惹きつけるような大仰なシリアスパートもあり、
野郎Voのドイツ語の歌唱はときにMr.Doctorのようだし、女性声のオペラティックな歌唱も良い感じだ。
テクニカル度・・7 クラシカル度・・8 アヴァンギャル度・・9 総合・・8.5
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AMYGDALA「complex combat」
日本のチェンバープログレユニット、アミグダラの2008年作
シンセ奏者の中島芳雪とTYRANTの山路善広を中心としたよるユニットで、前作もUNIVERS ZEROを思わせる力作だったが、
本作もギター、ドラム、シンセというトリオ編成を基本に、アヴァンギャルドかつスリリングなサウンドを聴かせる。
7分〜12分という大曲揃いで、ピアノやオルガンが鳴り響き、手数の多いドラムとともに変則リズムやキメの応酬に、
フリーキーなギターがかき鳴らされる。メタル色の強まったMats/Morganという感触もあって、不穏な緊張感の中にも
いくぶんコミカルな匂いを感じさせる。たたみかけるインストサウンドが楽しめる、ジャパニーズ・チェンバー・プログレの強力作。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 スリリング度・・8 総合・・8
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Kayo Dot 「Blue Lambency Downward」
アメリカのエクスペリメンタル系ポストロック、ケイヨ・ドットの2008年作
ポストロック的なアヴァンギャルドなセンスと神秘的な雰囲気で聴かせる異色のサウンド。
裏声を使ったヴォーカルはUKロックやエモに通じる感触だが、リズムという概念がないような、
フリーキーな曲調とあいまって、とても妖しげに歌声が響く。ヴァイオリンやオーボエ、クラリネットなどが鳴る、
チェンバーロック的でもあるスリリングなミステリアス性は、ときにUnivers Zeroばりである。
一方では、ポストプログレ的な繊細な浮遊感も覗かせたりと、なかなか一筋縄ではいかない。
10分を超える大曲も、インストの小曲も、音の強度とアーティスティックな世界観に惹きこまれる。
なにげにメロトロンも使ったりとプログレリスナーにも十分アピールするだろう。
ほぼチェンバー度・・8 プログレ度・・8 アヴァンギャル度・・8 総合・・8
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◆シンフォ系チェンバー

ISILDURS BANE 「The Voyage」
スウェーデンのシンフォニックロックバンド、イシルドゥルス・バーネの6th。1992年作
前作「Cheval」でのチェンバーロック風味をさらに強化させ、いっそうの緊張感溢れる構成力でたたみかける。
鳴り響くヴァイオリンの音色に、クラシカルなピアノが重なり、シンフォニーのように優雅でありながらも
現代音楽的な硬質さを併せ持ったサウンドは、凡百のバンドにも真似のできないほどの強度がある。
旅をテーマにした幻想的なコンセプト作で、オールインストながら楽曲のドラマティックさは
90年代初頭のバンドの中でも際立っていた。このクラシカル路線は本作でやり尽くしたということか、
次作「Mind vol.1」からはバンドとしての新たな深化が始まる。底知れぬポテンシャルを秘めたバンドである。
クラシカル度・・9 シンフォニック度・・8 シリアス度・・9 総合・・8.5
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TIEMKO「Clone」
フランスのプログレバンド、ティアンコの4th。1995年作
3rd「Parade」はフレンチプログレ史上に残るシンフォニック系の傑作なのであるが、
本作も3人編成による巧みなヒネくれ系のプログレサウンドを聴かせてくれる。
シンフォニックといってもいいシンセワークを中心に、どこかミステリアスな雰囲気で
あるいはチェンバーロック的なミニマムな音空間を作り上げてゆくセンスはさすが。
この大仰さのないすっとぼけた感じがいかにもフランス的であり、リズムとシンセの重ねに
デジタルがかったアレンジを取り入れるなど、プログレというにはお洒落ですらある。
シンフォニック度・・7 プログレ度・・8 フランス度・・9 総合・・8
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A Triggering Myth 「Forgiving Eden」
アメリカのプログレバンド、トリガリング・ミスの2002年作
2人のキーボーディストによるユニツトで、クラシック、ジャズの要素を含んだチェンバーロック風味のサウンドで、
そこにシンフォニックロックの感触を加えたというサウンドは、本作でさらにスタイリッシュな優雅さをともなっている。
一聴してフリーキーにも思える音の鳴りが、すべて計算された構築の上に成り立っているという点では、
クラシックの方法論で譜面上の音符を完璧に再現したテクニカルシンフォといってもよいのだろう。
優雅でありながらスリリングな緊迫感に包まれた空間美には、玄人好みのプログレリスナーをもはっとさせる。
こうした硬質感と知的な構築美は北欧のIsildurs Baneなどにも通じるだろう。全曲が続いてゆく組曲的な流れも圧巻だ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 構築度・・9 総合・・8
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UZVA 「Uoma」
フィンランドのチェンバー・プログレバンド、ウズヴァの3rd。2006作
過去作は未聴ながら、本作ではヴァイオリン、チェロ、クラリネット、ハープ、
サックスにマリンバなど、多彩な楽器によるチェンバーロックサウンドをやっている。。
人懐こいメロディのせいもあって、シンフォニックな味わいもあり、ほとんど難解さはない。
インストメインながら曲は長めで、10分台のものや、23分の組曲なんてものもある。
たおやかなフルートの音色や、コロコロとしたマリンバにギターが重なると
ジャズと室内楽とシンフォニックの境界を行き来するプログレサウンドとなる。
音には北欧らしい清涼感があり、同郷のPEKKA POHJOLAにも通じる力の抜け具合が耳に優しい
メロディアス度・・8 プログレ度・・8 チェンバー度・・8 総合・・8

Gosta Berlings Saga「Glue Works」
スウェーデンのプログレバンド、イエスタ・ベルリング・サーガの2011年作
ANGLAGARDのマティアス・オルソンがプロデュース、本作が3作目。
サウンドはムーグやメロトロンなどレトロなシンセが鳴る、ANEKDOTENなどを思わせる
いかにも北欧らしいシンフォニックロックにシリアスなチェンバーロック色が加わったもの。
そう派手さはないものの、じわじわと感じられる静かなダイナミズムと知的なアレンジ、
涼やかな叙情に含まれた硬質な意思のようなものが感じられる、これは通好みの作品だ。
アナログ的なギターサウンドとそのメロウなフレーズにもにんまり。オールインストです。
シンフォニック度・・7 ミステリアス度・・8 北欧度・・9 総合・・8
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QUMMA CONNECTION 「Arabesque」
フィンランドのプログレバンド、クマ・コネクションの2011年作
アート・デザイナーでもあるRami "Qumma" Taljaを中心に、ALAMAAILMAN VASARATのチェロ奏者などが参加、
12弦のウォーギターの旋律ににプログレらしいシンセワークが絡み、随所に北欧らしい叙情メロディも含んだ
ハードプログレサウンド。ベースレスながら、低音までカヴァーするウォーギターとチェロの響きで、
むしろ重厚な聴き心地である。オールインストながら、クリムゾン的でもあるアーティスティックな構築センスと、
堂々たる音の強度がなかなか見事だ。10分を超える大曲ではアヴァンギャルドな破天荒さも覗かせる。
いわばチェンバーロックの緊張感にシンフォの叙情性を加えたような、ダイナミックな力作です。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 重厚度・・8 総合・・8

SAENA
メキシコのチェンバー・シンフォニックロック、サエナの2008年作
NIRGAL VALLISのシンセ奏者で、ソロ作品も多数のミュージシャン、Jose Luis Fernandez Ledesma率いるパンドで、
妖しげな女性ヴォーカルの歌声にヴァイオリンが鳴り響き、いくぶんミステリアスな薄暗さをまとわせた、
チェンバー風味のシンフォニックロック。クラシカルなピアノの優雅な音色に12弦ギターの繊細なつまびきなど
アコースティカルな叙情性や、アコーディオンによる牧歌的な味わいに、スペイン語の女性ヴォーカルが加わると、
AMAROKなどのトラッドプログレ的な質感も感じさせる。ジャズ的な軽妙さとエキセントリックな女性スキャットが乗る感じは
HENRY COWなどのカンタベリー系チェンバーに通じるところもある。あくまで叙情的な聴き心地ではあるが、
アルバム後半にはスリリングなシリアスさも顔を覗かせ、なかなか飽きさせない。チェンバー系シンフォの力作だ。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 優雅でミステリアス度・・9 総合・・8
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