〜PROGRESSIVE ROCK CD REVIEW 2022 by 緑川 とうせい

★2022年に聴いたプログレ(フォーク/トラッド・その他含む)CDレビュー
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11/25
日本のバンド特集♪(357)


Kiku Latte / Cichla Temensis「『小さな物語』〜Stories」
日本のプログレバンド、キクラテメンシスの2021年作
2008年にデビュー、女性フルート奏者を含む5人編成となり2016年に再始動、本作は4作目となる。
やわらかなフルートの音色にシンセとギターが重なり、軽やかなリズムのアンサンブルを描きつつ、
ジャズロックとシンフォプログレが同居したような、優雅で繊細なインストサウンドを展開する。
前作から加入した鈴木和美のフルートは、ときにFOCUSのタイス・ファン・レアーを思わせつつ、
優しい音色を心地よく奏でている。4パートに分かれた10分を超える組曲では、スリリングな展開力も含んだ
プログレらしい味わいも楽しめる。ラストはフォーカス「House Of The King」のカヴァーでニヤリ。
優雅度・9 プログレ度・7 フルート度・9 総合・8
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Evraak 「Evraak I」
日本のプログレバンド、エヴラークの2021年作
シンセにサックスを含む6人編成で、2020年のEPに続くフルアルバム。ヘヴィなベースとギターにサックスが鳴り響き、
クリムゾン的なスリリングなアンサンブルの1曲目は、妖しい女性ヴォーカルを乗せたミステリアスなサウンドを聴かせる。
アナログ感あるドラムやオルガンやメロトロン風のシンセとともに、ときにアヴァンギャルドな展開や
ジャズロック寄りのフリーキーな感触も同居しつつ、本格派のプログレッシブロックを構築する。
マリナ嬢の伸びやかな歌声が美しい、日本語歌詞のナンバーは、優美な叙情に包まれていて
サックスやピアノを乗せた軽やかなジャズタッチのナンバーなども心地よい味わい。10分を超える大曲も多いが、
日本らしいキャッチーな歌謡風味も覗かせるなど、難解な印象はない。期待の日本産プログレが登場である。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 叙情度・8 総合・8
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MIZUKI Da Fantasia 「幻想の一夜 - In memory of fantasy」
日本の女性アーティスト、ミズキ・ダ・ファンタジーアの2019年作
2017年のデビュー作のリマスター再発盤で、優美なピアノにオルガン、メロトロンを含むシンセアレンジ、
日本語歌詞による女性ヴォーカルを乗せたサウンドで、カルメンマキ&OZにも通じる古き良き哀愁を感じさせる。
シンセをバックにした歌ものナンバーなど、ロック感触はわりと薄めなので、純粋にプログレとして聴くには物足りないが、
ソロでも活躍する、Anna Hardyのピアノやフルートも随所に美しく、MIZUKIのエモーショナルな歌声とともに、
昭和風のプログレ歌謡としては充分楽しめる。タイトル曲などはどことなくクリムゾンの香りもしたり。
昭和風度・8 プログレ度・7 女性Vo度・8 総合・8
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MIZUKI Da Fantasia 「Question 1969 - 去りゆく時代に」
ミズキ・ダ・ファンタジーアの2019年作
本作は3作目で、優美なシンセアレンジに、どこか昭和感を漂わせる日本語歌詞の歌声で、
ゆったりとした叙情に包まれた歌謡ロックを聴かせる。Anna Hardyによる精細なピアノの旋律や、
Ichro Quo氏のメロトロン、オルガンなどの鍵盤も優雅で、優しい情感を語るような、MIZUKIのヴォーカルとともに、
しっとりと耳心地よく、ゲストのYuka & Chronoshipのギターによる叙情的なプレイも随所にアクセントになっている。
ラストの11分のタイトル曲は、シンセをバックにした静かな歌ものを基本にしつつ、シンフォニックに盛り上がる。
優雅度・9 プログレ度・7 女性Vo度・8 総合・8
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Anna Hardy 「Lunatic Spells 月の呪文、あるいは狂人の呟き」
日本の女性鍵盤奏者、アンナ・アルディの2020年作
MIZUKI da Fantasiaのピアニストで、本作にはMIZUKI da Fantasiaのドラム、ギター、ベース、シンセも参加。
クラシカルなピアノの旋律に優美なシンセが重なり、ギターやドラムも加わった、典雅なシンフォニックロックを展開。
インストパートをメインにしつつ、随所に彼女自身の歌声やゲストによる声楽的なソプラノヴォーカルも美しい。
メロトロンやオルガンなどのシンセワークもしっかりとプログレ的な感触となっており、艶やかなヴァイオリンに
ピアノが絡むクラシカルなナンバーなども、じつに優雅な聴き心地である。全体的にロック要素はさほど高くないが、
ハープシコードやチャーチオルガンなど、鍵盤にこだわったサウンドは、キーボード好きには嬉しいだろう。
クラシカル度・8 プログレ度・7 優雅度・8 総合・8
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難波弘之 「一生鍵命」
日本のキーボーディスト、なんば・ひろゆきの2016年作
多数のソロや、自らのバンド、Sence of Wonder、ゲームやアニメのサントラなど、幅広い活躍で知られる
日本を代表する鍵盤奏者の一人。本作はデビュー40周年を記念して、SOBやExhiVisin、野獣王国、A.P.J、EDENなど、
過去のバンドやユニットの楽曲をリレコーディング。そうる透、長谷川浩二、永井敏巳、玲理、吉良知彦松本慎二など、
多くのゲストが参加。織田哲郎のヴォーカルにやわらかなシンセで聴かせる「浮遊」、和田アキラの巧みなギターと
オルガンが味わい深い「Hokey Pokey Baroquey」、玲理嬢の歌声が美しい「THE DOOR INTO SUMMER」、
野獣王国メンバーが集っての優雅なフュージョンを奏でる「Floating Island」、アニメ「スペース・ダンディ」のナンバーは
プログレらしいテクニカルで軽快な聴き心地で楽しめる。ジャズタッチのピアノ曲など、バラエティに富んでいながら、
プロミュージシャンとしての確かな矜持を感じさせる、全72分。難波ファンにはベスト盤的にも味わえる作品です。
メロディック度・8 プログレ度・7 優雅度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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NOA 「JOURNEY TO BABEL」
日本のプログレバンド、ノアの2020年作
1987年に1st「トライ・ロジック」を発表、その後活動を停止し、2018年に30年ぶりの2nd「IF TOMORROW COMES」で復活。
本作はデビュー作からの5曲を再録音し、追加曲を加えたアルバム。MONGOLのギタリストでもある三苫裕文と
オリジナルメンバーの竹迫一郎に、PRISMの渡部チェル、新月の前身HALの桜井良行という4人編成で、
インストによる優雅なジャズロックを聴かせる。軽やかなリズムにホールズワースばりのメロウなギターの旋律と
エレピを含む優美なシンセを重ね、フュージョン・ジャズロックにシンフォプログレが合わさったような耳心地の良いサウンド。
アコースティックも含めて、三苫裕文のギターワークがじつに素晴らしく、技巧的でありながら叙情美に浸れる逸品だ。
ドラマティック度・7 プログレ度・8 優雅度・9 総合・8
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PTF 「The World[s]」
日本のプログレバンド、PTFの2018年作
2013年にデビューし、3作目。艶やかなヴァイオリンの音色にシンセを重ね、涼やかな叙情美に包まれたインストサウンド。
存在感のあるベースと巧みなドラムで、リズムチェンジを含むスリリングな展開力と、クラシカルな優雅さが同居していて、
オルガンなどのプログレらしいシンセワークとともに、KBB+GERARDというような味わいでも楽しめる。
オールインストであるが、アルバム全体を2パートに分け、コンセプト的な流れで描くスケール感も見事。
ラストは11分を超える大曲で、優雅に奏でられるヴァイオリンにウットリとなる、全78分という力作だ。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 優雅度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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FLAT1-22「In Spriit」
日本のプログレバンド、フラット・ワン・ツーツーの2020年作
2005年にデビューし、本作は11年ぶりとなる3作目。2作目まではベースレスのトリオ編成だったが、
今作ではギターがいなくなり、ベースが加入しての、キーボードトリオのスタイルとなった。
優美なピアノの旋律にフリーキーな即興性も覗かせつつ、ジャズ風味の優雅さを強めた作風で
ライブ録音での13分の大曲など、インプロヴィゼーションを含むスリリングなアンサンブルはさすがの実力だ。
ギターがいないのでロック的な感触は薄まっているが、女性ヴォーカルを加えたコケティッシュなナンバーや
後半の10分の大曲「Spiral」は、1作目収録のリメイクのようで、軽妙な技巧派ジャズロックが楽しめる。
ジャズ度・8 プログレ度・7 優雅度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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矢吹卓 「Modern World Symphony No.2」
日本のミュージシャン、やぶき・たくの2015年作
高円寺百景にも参加するピアニストで、本作にはアメリカのジャズ系ギタリスト、アレン・ハインズ、
ベースに、ロバート・バービー・ルイス、ドラムには平川象士が参加。民族的なイントロ曲から始まり、
やわらかなピアノの旋律に流麗なギターが絡み、優雅で繊細なフュージョンロックを聴かせる。
うっすらとしたシンセに巧みなベースを重ねたナンバーや、アコースティックギターとピアノによる牧歌的な味わいに
メロウなギターのフレーズやうるさすぎないドラムも含めて、軽やかに自然体のアンサンブルが耳に優しい。
ジャズ度・8 プログレ度・7 優雅度・9 総合・8
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Ringing Ring 「Ancient Stone」
日本のアコースティックユニット、リンギング・リングの2007年作
やわらかなリコーダーの音色に素朴なリュート、チェロのようなヴィオラ・ダン・ガンバの響きとともに、
優雅な中世古楽サウンドが広がってゆく。繊細なハープのつまびきにリコーダーが重なるしっとりとした耳心地に、
英語歌詞のソプラノ女性ヴォーカルが加わると、ぐっと格調高いクラシカルな美しさにも包まれる。
トラッドナンバーから、FOCUSのカヴァー、さらにはエザイアス・ロイスナー作曲の14分におよぶ組曲など、
フォーキーな土着性から、室内楽的な優雅さまで、無国籍の幻想的なトラッド/フォークとしても楽しめる。
ロック色は皆無なので、プログレというよりは、やはりケルトやトラッドが好きな方向けですね。
アコースティック度・9 クラシカル度・8 優雅度・9 総合・7.5
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SIDE STEPS 「OUT AND OUT」
日本のフュージョン・プログレ、サイド・ステップスの1998年作
ギター、ベース、シンセ、ドラムの4人編成で、叙情的なギターにきらびやかなシンセを重ね、
軽やかなアンサンブルとともに、インストによる優雅なプログレ・フュージョンサウンドを聴かせる。
美しいシンセワークと、ときにアラン・ホールズワースやヤン・アッカーマンばりのメロウなギターによる、
シンフォニックな味わいもあって、ほどよいテクニカル性とともに、わりとメロディックな感触で楽しめる。
10分近い大曲も多く、オールインストなので、どうしてもBGMになりがちではあるが、
軽妙かつ優美な耳心地で、プログレ寄りのフュージョンロックが味わえる逸品です。
メロディック度・8 プログレ度・7 優雅度・9 総合・8
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SIDE STEPS 「Verge of Reality」
日本のフュージョン・プログレ、サイド・ステップスの2005年作
5作目となる本作は、巧みなベースに美しいエレピを乗せた、軽やかなアンサンブルで
大人のジャズロック的な雰囲気を強めている。ギターの旋律も、技巧的ながらあくまで軽妙、
シンセの音色もプログレ寄りなので、ジャズロック初心者でも優雅なサウンドに聴き入れる。
ドラムを含めたリズム面での演奏力も上がっていて、インストサウンドの説得力とともに、
バンドとしての実力は、KENSOなどにも引けを取らないだろう。泣きのギターによる叙情美に
シンフォプログレ的なシンセの美しさで、耳心地よく楽しめるプログ・フュージョンの好作品。
メロディック度・8 プログレ度・7 優雅度・9 総合・8
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11/11
女性シンガーにウットリ(344)

JUDY DYBLE 「Weavings Of A Silver Magic」
イギリスの女性シンガー、ジュディ・ダイブルのライブ。2020年作
Fairport Conventionのオリジナルシンガーで英国フォーク界を代表するシンガー、本作は2016年の英国でのライブを収録。
THE CURATORのアリスター・マーフィに、マーク・フレッチャー、ジェレミー・サルモンといったメンバーが参加し、
優美なシンセやストリングス隊をバックに、しっとりと優しいジュディの美声が響き渡る。艶やかなヴァイオリンの音色に、
クラシカルなピアノを重ねた優雅なナンバーも耳心地よく、2013年作「Flow And Change」からの楽曲を主体に、
2018年作「Earth Is Sleeping」からのナンバーや、ラストはKING CRIMSON「風に語りて」も披露。
年を経ても変わらぬその歌声にウットリと浸れる。2020年にこの世を去った彼女の、最後のライブ音源である。
優雅度・9 プログレ度・7 女性Vo度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Heather Findlay 「Wild White Horses」
イギリスの女性シンガー、ヘザー・フィンドレイの2019年作
MOSTLY AUTUMNのシンガー、現在はMANTRA VEGAで活躍、The Heather Findlay Bandとしても作品を出しているが
本作は純粋にソロ名義となっている。サウンドの方は、肩の力の抜けたわりとストレートなポップロックという趣で、
ブルージーなギターに、大人の女性を感じさせるヘザーの歌声で、ローリング・ストーンズのようなオールドなロック感に包まれる。
全体的にプログレ的な感触は少ないが、アコースティックギターやフルート、トロイ・ドノックリー(Nightwish)によるイーリアン・パイプが鳴り響く、
フォーキーなナンバーには、いくぶんMOSTLY AUTUMN時代の香りも感じさせる。ヘザーの優しい歌声が堪能できる牧歌的な好作です。
メロディック度・7 プログレ度・5 女性Vo度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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Heather Findlay 「LIVE WHITE HORSES」
イギリスの女性シンガー、ヘザー・フィンドレイのライブ作品。2020年作
Disc1は、2019年の英国公演から、全17曲、78分を収録。ツインギターにシンセ、女性コーラスを含む編成で 
2019年作「Wild White Horses」からのナンバーを主体に演奏。アルバム同様、オールドなロック感触とともに
ヘザーの伸びやかな歌声で聴かせる牧歌的な味わいながら、ライブとしてのグルーヴィな躍動感が伝わってくる。
Disc2には、アメリカ、イギリス、ドイツなどでの、2019〜2020年のライブ音源を、会場ごとに数曲ずつ収録。
ブートレグ風のラフな音源やアコースティック編成でのセッションなど、わりとボーナス的な内容である。
ライブ演奏度・8 プログレ度・5 女性Vo度・8 総合・8
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Phi Yaan-Zek 「Reality Is My Play Thing」
イギリスのミュージシャン、ファイ・ヤーン・ゼクの2018年作
マルコ・ミンネマン、ラレ・ラーション、マイク・ケネリー、ブライアン・ベラーといった腕利きメンバーを迎えた2枚組大作。
ミンネマンの巧みなドラムに存在感のあるブライアン・ベラーのベース、ラレ・ラーションの優美なシンセにトランペットなども加え、
マイク・ケネリーのマイルドなヴォーカルを乗せた、Gentle Giant的な優雅な作風で、3〜5分前後を主体にした
歌もの的なキャッチーな聴きやすさの中にも、アヴァンギャルドなセンスが垣間見える。Disc2は、インストがメインで
軽やかなテクニカル性ととぽけた屈折感は、MATS/MORGANにも通じる味わい。叙情的なギターの旋律が耳心地よい
ゆったりとしたナンバーから、ラストの15分の大曲で、軽やかなピアノやブラスとともに優雅なアヴァン・ジャズロックを構築する。
テクニカル度・8 プログレ度・8 優雅度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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PETER BLEGVAD/JOHN GREAVES 「Kew. Rhone.」
イギリスのミュージシャン、ピーター・ブレグヴァドとジョン・グリーヴスによる1977年作
SLAPP HAPPYとHENRY COWの合体後、バンドを脱退した2人に、女性シンガー、リサ・ハーマンを加えて制作したアルバム
サックスやトランペット、フルートにピアノの旋律、コケティッシュな女性ヴォーカルを乗せた軽妙なサウンドで、
HENRY COWの即興性とアヴァンギャルドな香りをいくぶん残しつつ、よりジャズ寄りの優雅な感触に包まれている。
ダグマー・クラウゼ風の歌ものナンバーから、ヘンリー・カウ風味まで、3分前後の小曲主体ながら、なかなか楽しめる。
ジャズ度・8 プログレ度・7 アヴァンギャル度・7 総合・8
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DEANGELO SILVA 「HANGOUT」
ブラジルのピアニスト、ディアンジェロ・シルヴァの2020年作
ミナス派の若手ジャズピアニストとして評価されるアーティストで、2作目のソロアルバム。
軽やかなリズムに優美なピアノの旋律を重ね、変拍子を含んだ優雅なテクニカル性で、
オールンインストのフュージョン・ジャズロックを聴かせる。巧みなドラムとベースも実力者で、
ときにフリーキーに弾きならされるピアノとの柔軟なアンサンブルも素晴らしい。
随所にギターも加わっての、ロック寄りの感触も覗かせつつ、あくまで繊細なピアノをメインにした、
耳心地のよい作風である。DAVID SANCIOUSなどのファンにも楽しめるだろう逸品だ。
ジャズロック度・8 プログレ度・7 優雅度・9 総合・8
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FERNANDO PERDOMO 「OUT TO SEA」
アメリカのミュージシャン、フェルナンド・ペルドモの2018年作
ピーター・バンクス、フォーカス、ネクター、カーヴド・エアといった、70年代プログレへのオマージュというべき作品で、
メロウなギターにオルガンやメロトロンなどのシンセを重ね、優美な叙情に包まれたシンストサウンドを聴かせる。
ときにアッカーマンかハケットかという、歌心あるギターメロディとやわらかなシンセアレンジも耳心地よく、
16分を超える優雅なシンフォニック組曲では、これでもかと泣きのギターとシンセによる叙情美が味わえる。
ラストは、亡きジョン・ウェットンへ捧げる「スターレス」で、シンフォプログレ好きなら必聴の内容だろう。
シンフォニック度・8 プログレ度・8 叙情度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Harlequin Mass
アメリカのプログレバンド、ハーレクイン・マスの1978/1994年作
本作が唯一のアルバムで、やわらかなシンセにクラリネットの音色、叙情的なギターを重ねたイントロから、
軽快なリズムにオルガンとギター、コケティッシュな女性ヴォーカルの歌声に優美なフルートも加わり、
キャッチーなシンフォプログレを聴かせる。RENAISSANCEにも通じる優雅な味わいながら、
ほどよくマイナーな香りをかもしだしていて、全体的にもゆったりと牧歌的な耳心地で楽しめる。
10分を超える大曲も、やわらかなフルートと女性ヴォーカルで、あくまで優雅な叙情に包まれる。
CDには、1978年のアルバム音源に加え、1982年の音源4曲をボーナス収録。
シンフォニック度・7 プログレ度・7 女性Vo度・7 総合・7.5
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EIEMEL
アルゼンチンのシンフォニックロック、エイエメルの2019年作
LAQUESISのベーシストのソロプロジェクトで、優美なシンセアレンジに叙情的なギターを重ね
インストをメインにしたシンフォニックロックを聴かせる。スペイン語のヴォーカルを乗せたナンバーは
キャッチーなプログレハード風味だったりして、巧みなベースを聴かせる確かなアンサンブルと、
きらびやかなシンセワークも含めて、ソロというよりは優雅なシンフォプログレとして楽しめる。ジャケのようなダークさはなく、
ゲストによるフルートやアコーディオンなども加わった、やわらかな叙情美も南米らしい。全14曲で72分という力作です。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・8 総合・8

Sur Oculto 「Estados」
アルゼンチンのプログレバンド、サー・オカルトの2006年作
ギターレスのキーボードトリオで、クラシカルなピアノやカラフルなシンセを軽妙なアンサンブルに乗せ
ジャズロック風の優雅さとミステリアスな空気が同居した、オールインストのキーボードロックを聴かせる。
存在感あるベースとテクニカルなリズムのキーボードプログレという点では、日本のGerardにも通じるところも。
やわらかなピアノの旋律が舞うジャズタッチのナンバーも耳心地よく、歪ませたベースがヘヴィなナンバーなど、
独自の世界観を描こうとしているところが個性的。スリリングなトリオのアンサンブルが楽しめる好作品だ。
ドラマティック度・7 プログレ度・8 優雅度・8 総合・8
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Stern-Combo Meissen「Lebensuhr」
ドイツのプログレバンド、シュテルン・コンボ・マイセンの2011年作
1977年にデビュー、旧東ドイツ時代から活動するバンドで、本作は1987年以来、24年ぶりとなるスタジオアルバム。
Seven Steps To The Green Doorなどで活躍するシンセ&サックス奏者マーク・アーノルドや、Cyrilのシンガーらが加入、
ツインヴォーカル、ツインキーボードの6人編成で、優美なシンセにドイツ語によるエモーショナルなヴォーカルを乗せて、
哀愁の叙情に包まれたサウンドを描く。ギターが入らないのでロック感触は薄めながら、美しいシンセアレンジをメインに
耳心地の良いシンフォニックロックが味わえる。軽やかなサックスも加わった、ポップ寄りの歌ものナンバーなど、
肩の力の抜けた作風は、プログレ的には物足りなさもあるが、総じてキャッチーに楽しめる全74分の力作です。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Arthuan Rebis 「Sacred Woods」
イタリアのミュージシャン、アーサン・レビスこと、アレッサンドロ・ククルニアの2021年作
クラシックギターやケルティック・ハープをはじめ、ニッケルハルパ、ホイッスル、ガイタといった
古楽器を弾きこなすミュージシャンで、本作はアコースティック楽器をを主体に、シンセやギターを加えた、
ケルティックなフォーク作品。バウロンのリズムに艶やかなニッケルハルパやホイッスルの音色、
イタリア語によるマイルドなヴォーカルにうっすらとしたシンセ、ゲストによる女性ヴォーカルも加わり、
幻想的なネオフォークを展開する。クラシックギターによる弾き語り風の牧歌的な味わいもありつつ、
全体的にはジャケのイメージのような神秘的な雰囲気は薄めなので、わりとあっさりとした聴き心地。
アコースティック度・8 ケルティック度・8 牧歌的度・8 総合・7.5
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HEXPEROS 「The GARDEN Of The HESPERIDES」
イタリアのゴシックアンビエント、ヘクスペロスの2007年作
男女の2人組ユニットで、コントラバスの物悲しい音色にうっすらとしたシンセを重ね、
しっとりとした女性ヴォーカルの歌声で、耽美で幻想的なゴシック・ネオフォークを聴かせる。
妖しい女性スキャットとともに秘教的な空気に包まれつつ、随所にやわらかなハープの音色や
ヴァイオリンなども加わった、優雅な耳心地に浸れる。2〜3分前後の楽曲を主体に、わりと雰囲気モノという感じで
これといった展開力には欠けるが、この手のダークアンビエントを好む方ならハマるだろう。
幻想度・7 耽美度・8 優雅度・8 総合・7
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HEXPEROS 「Lost in the Great Sea」
イタリアのゴシックアンビエント、ヘクスペロスの2014年作
2007年にデビューし、3作目。チェロやヴァイオリンの物悲しい旋律にうっすらとしたシンセ、優美なハープや
ハンマーダルシマーのつまびきに、女性のスキャットヴォーカルを乗せた、妖しく幻想的なサウンド。
艶やかなヴァイオリンとハープ、フルートをバックに、美しい女性声で聴かせるしっとりとしたナンバーや、
パーカッションのリズムにイーリアンパイプが鳴り響く、ケルティックな土着性も覗かせて、
アコースティック楽器を含めた耳心地の良さは、単なるネオフォークという以上の説得力である。
幻想度・8 耽美度・9 優雅度・9 総合・8
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10/29
ヨーロッパのプログレ(330)

Tiger Moth Tales 「Spring re-Loaded」
イギリスのシンフォニックロック、タイガー・モス・テイルズの2022年作
CAMELやIT BITESなどにも参加する、マルチプレイヤーで盲目のシンセ奏者、ピーター・ジョーンズのプロジェクト。
本作は「A Song Of Spring/春の歌」制作時の別バージョン音源にライブ音源などを加えた、全9曲入り、50分の作品。
ヴィヴァルディ「四季」をモチーフにしたキャッチーなメロディと、サックスも鳴り響くファンキーなテイストが合わさった
軽快なナンバーから、元々ポップユニットをやっていたという、ピーター・ジョーンズらしいモダンなアレンジに、
クラシカルなピアノをメインにした優美なアコースティックバージョンなど、それぞれ色合いの違ったミックスが楽しめる。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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THE PARADOX TWIN 「The Importance of Mr Bedlam」
イギリスのモダンプログレ、パラドックス・ツインの2018年作
マルチプレイヤー、ダニエル・ソレールを中心にしたバンドで、ハード寄りのギターに優美なシンセを重ね、
マイルドなヴォーカルを乗せた、スタイリッシュなハードプログレを聴かせる。10分を超える大曲では、
ProgMetal的な構築力とともに、翳りを帯びた叙情を描きつつ、じっくりと重厚なサウンドを聴かせ、
IT BITESのジョン・ミッチェル、TOUCHSTONEのキム・セイヴィアーがゲスト参加、美しい女性声を乗せるパートなども
良いアクセントになっている。ほどよくキャッチーながら、ドラマティックなスケール感に包まれたモダンプログレの好作だ。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 叙情度・8 総合・7.5
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THE PARADOX TWIN 「SILENCE FROM SIGNALS」
イギリスのモダンプログレ、パラドックス・ツインの2021年作
2作目となる本作は、女性Vo、女性Gを含む5人編成となり、叙情的なギターにうっすらとしたシンセ、
伸びやかな女性ヴォーカルと男性ヴォーカルを乗せて、翳りを帯びたモダンなハードプログレを描く。
ProgMetal的でもある硬質さも覗かせつつ、ときにアコースティックギターなどの繊細なパートや
ポストプログレ寄りの歌ものパートなども含ませながら、10分を超える大曲もじっくりと構築する。
突き抜けるようなドラマ性まではもう一歩であるが、薄暗い空気感で描かれるスケールの大きな力作である。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 叙情度・8 総合・8
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Malady  「Ainavihantaa」
フィンランドのプログレバンド、マラディの2021年作
2015年にデビュー、3作目となる。幻想的なシンフォニックロックだった前作から、今作はクリムゾン風の出だしで、
オルガンやメロトロンにムーグシンセも鳴り響く、ヴィンテージな感触がぐっと強まっている。
マイルドな大人のヴォーカルにサックスや、ときにやわらかなフルートの音色も加わって、
哀愁を含んだ涼やかな叙情に包まれながら、随所に北欧らしい土着性も感じさせる。
全37分と少々短めだが、クリムゾン風の北欧プログレという感じで楽しめる逸品だ。
ドラマティック度・7 プログレ度・8 叙情度・8 総合・8
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GAZPACHO 「NIGHT OF THE DEMON」
ノルウェーのポストプログレ、ガスパチョのライブ。2015年作
2003年にデビュー、いまや北欧ポストプログレを代表するバンド。2014年作「Demon」のツアーより、
オランダでのライブをCD+DVDに収録。叙情的なギターにうっすらとしたシンセ、マイルドなヴォーカルとともに
翳りを帯びた繊細なサウンドを描く。いくぶんハードなギターや、オルガンなどのプログレらしさなども覗かせて
スタジオ盤以上にダイナミックな演奏が味わえる。しっとりとした静寂パートや、ときにヴァイオリンも加った
優雅なアレンジで、10分前後の大曲をゆるやかに構築してゆくセンスは、この手のバンドでは屈指だろう。
CDは全79分、DVDには100分超のフルライブ映像を収録。安定した演奏力と雰囲気のあるステージが楽しめる。
ライブ演奏・8 プログレ度・7 叙情度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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The Adekaem 「Sound Coloring」
ポーランドのプログレバンド、アデカエムの2017年作
2015年にデビューし、2作目。シンセとギターによるユニットで、本作では、Vo、B、Drはゲスト扱いとなっている。
プログレらしいきらびやかなシンセに叙情的なギターの旋律で、優雅なシンフォプログレを展開する。
ジェントルなヴォーカルが加わると、キャッチーなメロディアス性に包まれて、12分の大曲では、
アコースティックギターや優美なピアノによる繊細な叙情に、メロウな泣きのギターが響き渡る。
プログレハード的な軽快なパートもありつつ、再び泣きのギターフレーズと優美なシンセに包まれる。
全40分なので、もう1曲くらい大曲が欲しかったが、これぞシンフォニックロックという味わいの逸品です。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 叙情度・9 総合・8
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The Ryszard Kramarski Project 「Books That End In Tears」
ポーランドのシンフォニックロック、リシャルト・クラマルスキ・プロジェクトの2021年作
Milleniumのシンセ奏者としても活躍するミュージシャンによるプロジェクトで、5作目となる本作は、
ウィリアム・ゴールディング『蝿の王』、フランツ・カフカ『審判』、ジョージ・オーウェル『1984』、『動物農場』
それぞれの文芸作品からインスパイアされた4つの組曲を、女性声、男性声とバージョンを変えて2CDに収録。
メロウなギターの旋律にやわらかなシンセ、しっとりとした女性ヴォーカルを乗せて、優美なサウンドを構築する。
派手な展開はないが、Mindfieldsのギタリストによる哀愁を含んだギターメロディが、ゆったりとした耳心地の良さで、
Disc2の男性ヴォーカルVerでは、よりフロイド的というか、Milleniumに接近した翳りを帯びた雰囲気が楽しめる。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 叙情度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Millenium 「Exist」
ポーランドのプログレバンド、ミレニアムの2008年作
1999年にデビュー、いまやポーランドを代表するプログレバンドで、本作は7作目となる。
デイヴ・ギルモアばりのサステインの効いたギターにうっすらとしたシンセ、マイルドなヴォーカルを乗せ、
ゆったりとした叙情に包まれた、フロイド・ルーツのシンフォプログレ。12〜15分前後の大曲4曲という構成であるが、
長尺感はさほどなく、メロウな泣きのギターフレーズに、オルガンなどのシンセアレンジもツボをついていて、
ほどよく緩急のある展開も覗かせながら、キャリアのあるバンドらしい強度のある世界観を描いている。
ラスト曲での美麗なシンセと泣きのギターには、シンフォニックロック好きならばウットリとなるだろう。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 叙情度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Openspace 「Elementary Loss」
ポーランドのプログレバンド、オープンスペースの2010年作
2008年にデビューし、2作目となる。適度にハードなギターにうっすらとしたシンセを重ね、
エモーショナルなヴォーカルで、ポリッシュらしい翳りを帯びたスタイリッシュなサウンド聴かせる。
メロウなギターフレーズにシンセが重なると、SYLVANなどにも通じる泣きの叙情に包まれ
オルガンなどのシンセが優雅に絡みつく、オールドとモダンの混在したシンフォニックロックである。
10分を超える大曲も、派手さはないが、ゆったりとしたギターの旋律とともに涼やかな叙情美を描いてゆく。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 叙情度・8 総合・7.5
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RIVERSIDE 「VOICES IN MY HEAD」
ポーランドのプログレバンド、リヴァーサイドの2006年作
2003年にデビュー、いまや東欧ハードプログレの代表格。本作は未発曲にライブ音源を加えた全36分のEP。
叙情的なギターにうっすらとしたシンセや優美なピアノ、マイルドなヴォーカルとともに物悲しいサウンドを描く。
泣きのメロディを奏でるギターが耳心地よく、ほどよくモダンな硬質感も覗かせながら、繊細な叙情とハードさの
メリハリある楽曲もさすがの完成度。ライブ音源は、1st「Out Of Myself」からの3曲で、安定したアンサンブルに
美麗なシンセワークと巧みなギタープレイ、エモーショナルなヴォーカルで、素晴らしい演奏を聴かせてくれる。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 叙情度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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MacroMarco 「Il Pianeta Degli Uomini Liberi」
イタリアのシンフォニックロック、マクロマルコの2009年作
Marco Grieco氏によるソロユニットで、アコースティックを含む叙情的なギターに優美なシンセを重ね、
イタリア語のヴォーカルに女性ヴォーカルも加わって、大人の味わいのシンフォプログレを聴かせる。
イタリアらしい哀愁を含んだやわらかな歌もの感触には、I POOHなどにも通じる牧歌的な優雅さがあったり、
4〜6分前後の楽曲をメインに、1曲ごとはわりとシンプルな味わいで、シンフォ・メロディックロック的にも楽しめる。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 叙情度・8 総合・7.5
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OFFICINA MECCANICA 「La Follia Del Mino Di Fuoco」
イタリアのプログレバンド、オフィシナ・メカニカの2007年作
70年代に活動しながら、アルバムを残さずに終わったバンドで、1973年の未発音源にライブ音源などを合わせてCD化された。
アコースティックギターにムーグやメロトロンなどのシンセ、イタリア語によるヴォーカルを乗せた優美な叙情と、
トランペットやサックスの音色を含んだファンキーなテイストが同居した、なかなか個性的なサウンドを聴かせる。
シアトリカルな表現力ある歌声に、ジャズロック的でもある軽やかなインストパートが合わさり、10分を超える大曲では
それらが混在したアヴァンギャルドな展開を覗かせる。音質はややこもり気味だが、イタリアらしい牧歌性と芸術性が感じられる面白い作品。
ドラマティック度・7 プログレ度・8 イタリア度・9 総合・7.5
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SITHONIA 「CONFINE」
イタリアのプログレバンド、シトニアの1995年作
1989年にデビュー、本作は3作目。アコースティックギターとイタリア語のヴォーカル、クラシカルなチェンバロとともに
優雅に始まりつつ、エレキギターが加わって、厚みのあるシンフォプログレとしての叙情性に加えて、
随所にとぼけた味わいと屈折感のある展開力も覗かせる。メロウなギターの旋律にプログレらしいシンセで
90年代らしい優美な聴き心地と、先の読めない構築センスが同居した、わりと玄人好みのシンフォである。
変拍子を抜くむリズムの遊びも含めた、演奏力の確かさという点でも、90年代としては抜群の出来といえる。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 イタリア度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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10/7
サイケとシンフォの秋(317)

Hawkwind 「All Aboard the Skylark」
イギリスのサイケロック、ホークウインドの2019年作
1970年にデビュー、本作はすでに何枚目なのかも分からないが、おそらくは30作前後だろうか。
ほどよくハードなギターにスペイシーなシンセを重ね、デイヴ・ブロックの枯れた味わいのヴォーカルで、
70年代風のアナログ感も随所に残した、往年のホークスらしいスペース・サイケロックは健在。
優美なシンセアレンジによる耳心地の良さは、1975年の代表作「絶体絶命」の頃を思わせつつ、
アコースティックを含んだナンバーや、ジャズタッチのピアノの入った優雅さなど、幅のあるアレンジで
カラフルなサウンドが楽しめる。ラストの9分のナンバーでは緩急あるドラマティックな展開も見事。
Disc2には、過去曲をアコースティックにアレンジした11曲を収録。牧歌的な仕上がりながら格好良いです。
ドラマティック度・8 サイケ度・8 優雅度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Tiger Moth Tales 「A Song Of Spring」
イギリスのシンフォニックロック、タイガー・モス・テイルズの2022年作
全盲のマルチミュージシャン、ピーター・ジョーンズによるプロジェクトで、2014年にデビューし、すでに7作目。
本作は、2017年の「玄冬」に続く、春をテーマにしたコンセプト作で、CAMELのアンディ・ラティマーがゲスト参加。
きらびやかなシンセによるイントロから、ヴィヴァルディの「四季」を思わせるメロディとともに春の喜びが感じられ、
自身のジェントルなヴォーカルを乗せ、やわらかなサックスも加えたキャッチーなシンフォニックロックが広がってゆく。
10分を超える大曲も、随所にプログレらしいシンセワークを織り込みつつ、あくまで優雅な耳心地で構築する。
ポップな小曲も挟みつつ、ラストは優美な歌もの感から、メロウなギターとシンセによるシンフォプログレとしての美しさに包まれる。
メロディアス度・8 プログレ度・7 優美度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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The Watch 「The Art Of Bleeding」
イタリアのプログレバンド、ウォッチの2021年作
2001年にデビュー、キャリア20年以上のイタリアを代表するプログレバンド。本作は8作目となる。
オルガンにメロトロンを含むヴィンテージな味わいのシンセと、相変わらずガブリエル風のヴォーカルで、
ほどよくスタイリッシュでキャッチーでもある、GENESIS系のシンフォプログレを聴かせる。
随所にアコースティックを含むハケット風のメロウなギターの旋律も覗かせ、あくまで優雅な耳心地で
ゆったりとした叙情美が味わえる。派手さはないものの、ベテランらしい安定の好作品である。
ドラマティック度・8 ジェネシス度・8 優美度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Michele Conta 「Endless Nights」
イタリアのミュージシャン、ミケーレ・コンタの2019年作
Locanda Delle Fateのシンセ奏者によるソロで、2021年に日本盤の紙ジャケで発売された。
優美できらびやかなシンセワークをメインに、ギャビン・ハリソン(King Crimson)らがドラムで参加し、
巧みで軽やかなリズムとともに、インストをメインにした優雅なシンフォニックロックを展開する。
クラシカルなピアノにストリングスが絡み、ゲストによるメロウなギターも加わると、ロカンダ・デッレファーテのような
優しい泣きの叙情に包まれる。マイルドなヴォーカルを乗せたキャッチーな優しさは、MOON SAFARIなどを思わせ、
壮麗にして甘美なシンセにはどこを切ってもウットリとなる。まさに繊細にして優美なる傑作です。
クラシカル度・8 プログレ度・8 優美度・9 総合・8.5
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P.L.J Band 「Armageddon」
ギリシャのプログレバンド、PLJバンドの1982年作
エゼキエルの予言したアルマゲドン(世界最終戦争)をテーマにしたコンセプト作で、うっすらとしたシンセに
叙情的なギターを重ねたイントロから始まり、聖書を引用した語りや英語歌詞のヴォーカルとともに、
シアトリカルなドラマ性とサイケロック寄りの牧歌的な叙情が同居した、独自のサウンドを聴かせる。
ブルージーなギターやシンフォニックなシンセアレンジなども含みつつ、どことなく怪しいスケール感とともに、
「黙示録」の世界を描いてゆく。シンセによる小曲をはさみ、優美なシンフォニックナンバーと続く後半の流れもいい。
バンドはその後、1983年に2作目を発表したのち、TERMITESと改名し、80年代に4作を残して解散している。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 壮大度・8 総合・7.5
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Osiris 「Take a Closer Look」
バーレーンのプログレバンド、オシリスの2020年作
1982年にデビュー、本作は13年ぶりとなる5作目。オルガン鳴り響くオールドな味わいに、
叙情的なギターの旋律とともに、80〜90年代の香りに包まれたシンフォプログレを聴かせる。
マイルドなヴォーカルを乗せたキャッチーな優雅さに、展開力のあるインストパートも含めて
きらびやかでいて泣きの叙情美も含んだ、日本人好みのシンフォニックロックが楽しめる。
甘美なギターメロディと壮麗なシンセワークにウットリとなる部分もしばしば。これぞ王道シンフォです。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 優美度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Sympozion 「Kundabuffer」
イスラエルのプログレバンド、シンポズィオンの2006年作
エレピを含む優美なシンセにやわらかなリコーダーの音色、巧みなギターを乗せた軽妙なアンサンブルで、
SHESHETにも通じる優雅なジャズロックサウンドを聴かせる。2本のギターによる叙情的な旋律に
シンセを重ねたシンフォプログレ的な耳心地と、カンタベリー風味の軽やかなジャズロック要素が同居し、
インストを主体にしたさらりとした味わいの中に、プログレらしい知的さと、ときに偏屈な部分も覗かせる。
ラストは10分を超える大曲で、ゆったりとした繊細な叙情美に包まれながら、爽快なジャズロックへ展開する。
ドラマティック度・7 プログレジャズロック度・8 優雅度・8 総合・8
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David Sancious 「Forest Of Feelings」
アメリカの黒人ミュージシャン、デイヴィッド・サンシャスの1975年作
これまで2作目以降は聴いていたのだが、デビュー作の紙ジャケリマスター盤が2021年に再発された。
1曲目から9分におよぶ「カサンドラ組曲」は、優美なシンセワークにクラシカルなピアノ、ギターも加えて
軽やかなドラムとともに、EL&Pにも通じるようなプログレッシブな構築力で優雅なサウンドを聴かせる。
鍵盤はもちろん自身の巧みなギタープレイも随所に織り込んだ、フュージョンロック的な軽妙なアンサンブルで
オールインストながらもカラフルな印象に包まれている。軽妙でクラシカルなタイトル曲をはじめ、
ピアノによる優美な小曲、ギターをメインにしたロックナンバーもあったりと、多彩な内容が楽しめる。
メロディアス度・8 プログレ度・7 優雅度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Ryo Okumoto 「Coming Through」
SPOCK'S BEARDのシンセ奏者、リョウ・オクモトの2002年作
大阪出身のシンセ奏者で、80年代に3枚のソロを出しているが、本作はスポックス・ビアード加入後の初のソロ。
ニック・ディヴァージリオ、ニール・モーズ、アラン・モーズ、デイヴ・メロスなどのスポビ関連メンバーに、
サイモン・フィリップス、スティーヴ・ランカスター、スティーヴ・ルカサー、ボビー・キンボール、デイヴ・カーぺンター、
グレン・ヒューズなどの名だたるゲストが参加。巧みなドラムとベースに、オルガンやピアノなどのシンセが絡み、
軽やかなフュージョン風味とアメリカンなポップ性が合わさって、ときにブラスが加わったゴージャスな耳心地もまじえつつ
ボビー・キンボールが歌うナンバーはTOTO風だったり、グレン・ヒューズが歌うとオールドなハードロック風だったりと、
80年代ルーツのロック感触をプログレッシブに昇華している。19分におよぶ大曲では展開力のあるプログレが炸裂する。
テクニカル度・8 プログレ度・7 豪華ゲスト度・9 総合・8
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DREAM THE ELECTRIC SLEEP 「BENEATH THE DARK WIDE SKY」
アメリカのプログレロック、ドリーム・ザ・エレクトリック・スリープの2016年作
ギター、ヴォーカル、シンセをこなす、マット・ペイジ氏を中心にしたトリオで、2011年にデビューし、3作目となる。
コンセプチュアルなドラマ性を想起させる叙情的なイントロから、ほどよくハードなギターとシンセの重ねに
マイルドなヴォーカルを乗せ、Trail Of Deadなどに通じる知的なオルタナロックというサウンドを構築する。
アコースティックなパートからPINK FLOYD的なユルめの叙情も覗かせつつ、ヘヴィなダークさに包まれるなど
メリハリある流れとともに聴かせる重厚な味わいは、やはりプログレファン向けだろう。センスのよい逸品です。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 重厚度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Agitation Free 「Last」
ドイツのサイケロック、アジテーション・フリーの1976年作
1972年にデビュー、本作は3作目で、70年代のバンドのラスト作。スペイシーなシンセが鳴り響き
叙情的なギターとドラムも加わって、荒涼とした物悲しさに包まれた独自の世界観を描いてゆく。
わりとキャッチーなオールドロック的なノリの良さに、ドラッギーなユルさと酩酊感も含んだ雰囲気は、
AMON DULL IIなどに通じる部分もあるだろう。ガレージロック的な躍動感あるアンサンブルに、
ときにブラスなどを加えたアレンジセンスは、FAUSTあたりのスケール感も思わせ、後半は23分という大曲で
メロトロンなどのシンセにフリーキーなギターを重ね、神秘的なトリップ感に包まれたサウンドスケープを描く。
ドラマティック度・7 サイケ度・8 神秘的度・8 総合・8
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Agitation Free 「Fragments」
ドイツのサイケロック、アジテーション・フリーの1996年作
1974年のライブを収録。オルガンやムーグなどのシンセに、フリーキーでほどよく叙情的なギターを乗せ、
軽やかなノリのアンサンブルと、けだるげなヴォーカルも加わったユルさが同居したサウンドを聴かせる。
スタジオ盤に比べ、バンドとしての生々しさが強く、即興的なギターにエレピを重ね、軽やかなドラムとともに、
サイケなジャズロックという味わいもあり、長めのインストパーでもわりと耳心地ちよく聴ける。
10分を超える大曲を主体に、いかにもクラウトロックらしいドラッギーなラスト曲まで、全5曲のライブです。
ライブ演奏度・8 サイケ度・8 軽妙度・8 総合・7.5
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WIGWAM 「Lucky Golden Stripes & Starpose」
フィンランドのプログレバンド、ウィグワムの1976年作
優雅なオルガンやピアノに叙情的なギター、エモーショナルなヴォーカルを乗せて、
ブリティッシュロックをルーツにしたキャッチーで牧歌的なサウンドを聴かせる。
初期に比べるとぐっとポップな感触も増しているが、涼やかな北欧らしさは残っていて、
本作から加入した、ヘス・ヒエタネンの優美な鍵盤ワークもサウンドによくマッチしている。
プログレというよりはキャッチーでブルージーなロックであるが、ほのかにマイナーな美学も漂う。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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10/1
プログレの秋(304)

Clive Nolan 「Song of the WildLands」
イギリスのミュージシャン、クライヴ・ノーランの2021年作
PENDRAGON、ARENAなどで活躍するシンセ奏者で、本作は、叙事詩「ベーオウルフ」を題材としたシンフォニック・ロックオペラ。
ドラムにPENDRAGONのスコット・ハイアム、ギターには、SHADOWANDのマーク・ウエストウッド、The Windmillのベースとフルート、
MAGENTAのクリスティーナ・ブースなどがヴォーカルで参加している。壮麗なシンセアレンジに物語を語るナレーション、
配役ごとの男女ヴォーカルを乗せて、ファンタジックなシンフォニックロックを展開する。混声コーラス隊を重ねたスケール感に、
ときに土着的なメロディを含んだ、ケルトやフォークロック的なパートと勇壮な世界観が合わさって、ドラマティックなサウンドを描く。
2008年作「Caamora」や、2012年作「Alchemy」も見事な出来だったが、幻想的なロックオペラという点で本作も素晴らしい内容だ。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 壮麗度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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ZORBONAUTS 「THE UNOBSERVED BEAVER」
イギリス&アメリカのプログレバンド、ゾルボナウツの2021年作
YESのジェフ・ダウンズ、BIG BIG TRAINのニック・ディヴァージリオ、SPOCK'S BEARDのデイヴ・メロス
Jerusalemのリンデン・ウィリアムス、ボブ・コックといったメンバーが集ったバンドで、本作は2作目となる。
ハード寄りのギターにオルガンなどのシンセを重ね、伸びやかなヴォーカルで聴かせる、
わりとストレートなロックサウンド。70年〜80年代のブリティッシュロックをルーツにした味わいに
キャッチーなスタイリッシュ性が合わさったコンパクトな作風であるが、技量のあるメンバーによる
演奏力の高さはさすがというところ。プログレというよりは、シンセ入りのハードロックとしても楽しめる。
ドラマティック度・7 プログレ度・6 爽快度・8 総合・7.5
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PARZIVAL 「DAVID・THE HYMN」
ドイツの古楽プログレ、パルツィヴァルの2021年作
1971年、73年に2作を残して消えたバンドが、デビュー50年周年を記念して、じつに48年ぶりに復活。
困難に直面する現代社会と人類愛をテーマにした、2枚組の壮大なコンセプト作で、オリジナルメンバーは、
ドラムのトーマス・オリバーのみで、本作ではヴォーカルを担当している。オーケストラによる壮麗なアレンジに、
ときに美しい女性ヴォーカルやフルートの音色なども加えた、優雅なシンフォニックロックを構築する。
枯れた味わいのヴォーカルを乗せた牧歌的な味わいも覗かせつつ、女性声によるオペラティックなナンバーから、
フルートの美しいフォーキーなパートなど、楽曲はバラエティに富んでいる。反面、明快な盛り上がりにはやや欠けるか。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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Starfish64 「The Crimson Cabinet 」
ドイツのプログレバンド、スターフィッシュ64の2020年作
マルチプレイヤー、ディーター・ホフマンを中心に、2015年にデビュー、本作は3作目となる。
エレクトロな味のあるシンセにマイルドなヴォーカルを乗せた、ほどよくユルめの牧歌的なサウンド。
楽曲はキャッチーな味わいで、プログレ色はさほどないのだが、アルバム後半になるにつれて、
往年のクラウトロックの酩酊感に包まれて、叙情的なギターの旋律とともに耳心地よく楽しめる。
サイケロック調のゆったりとした作風ながらも、アコースティックパートなど優美な繊細さは
ときにシンフォプログレ的でもあったりして、9分近い大曲も含めて、やわらかなサウンドに浸れる。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 叙情度・8 総合・7.5
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Into the Open 「Destination Eternity」
オランダのプログレバンド、イントウ・ザ・オープンの2020年作
Knight AreaのVoが参加するバンドで、ほどよくハードなギターに美麗なシンセを重ね、
エモーショナルなヴォーカルとともに、優雅でスタイリッシュなシンフォプログレを展開する。
メロウな泣きのギターにうっすらとしたシンセが耳心地よく、ほのかに翳りを帯びた叙情性は、
MARILLIONなどに通じるところもあるが、一方では、メロディックロックとしてのキャッチーな抜けの良さも覗かせる。
9分を超える大曲では、表現力ある歌声とともに、Knight Areaを思わせるドラマティックなハードプログレを構築。
ゲストによる女性ヴォーカルも加えた優美なナンバーなど、泣きの叙情とドラマ性が合わさった逸品です。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 叙情度・8 総合・8
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SUNRISE AURANAUT「INSERTER」
ロシアのシンフォニックロック、サンライズ・オーラナウトの2018年作
2013年にデビューし、4作目。3作目までは個人プロジェクトだったようだが、本作から2人組のユニットに。
きらびやかなシンセを中心にメロディアスなギターも加えた、インストによる優雅なシンフォニックロック。
キャッチーで優美な雰囲気に包まれつつも、ときにプログレ的な偏屈なアレンジも加わっていて、
初期作に比べて、楽曲のダイナミズムと幻想的なシンフォニックロックとしての強度が増してきた。
このまま深化してゆけば、アントニー・カルギンなどに追いつけるレベルになれるかも。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優美度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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Le Orme 「1967-69 Le Origini」
イタリアのプログレバンド、レ・オルメの1969年/1970年作
1作目「Ad Gloriam」、2作目「L'Aurora」をリマスター、2CDに収録したカップリング盤。
デビュー作は、オルガンを含むシンセにイタリア語のヴォーカルを乗せた牧歌的なサウンドで、
まだプログレというよりは、60年代の香りを残したおおらかなサイケロックという趣だ。
2作目になると、叙情的なギターにオルガンやピアノ、ストリングスによるアレンジも加わって、
いくぶんシンフォプログレ的な味わいが増している。楽曲は3分前後とシンプルであるが、
THE NICEにも通じるクラシックのカヴァーもあったりと、素朴さと優美な叙情が同居した好作だ。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 イタリア度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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FRANCIS BERTHELOT「KAEL ET ORIAN - BALLET EN TROIS ACTES POUR ORCHESTRE VIRTUEL
フランスのミュージシャン、フランシス・ベルテロットの2018年作
ファンタジー作家でもあるミュージャンによる、自身の小説をもとにしたバレエ音楽として作られた作品で、
優雅でクラシカルなシンセをメインにした、オールインストのサウンド。ギターやドラムなどは入らないので、
ロック感触は皆無ながら、オーケストラルなシンフォニック性という点では、The Enidなどにも通じるかもしれない。
2〜3前後の小曲を連ねた構成なので、プログレ的な盛り上がりなどはなく、クラシック的に鑑賞するのがいいだろう。
クラシカル度・8 ロック度・1 優雅度・8 総合・7
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NEVERNESS「Cuentos De Otros Mundos Posibles」
スペインのプログレバンド、ナヴァーネスの2007年作
2002年にデビューし、2作目となる。ほどよくハードなギターにオルガンなどのシンセを重ね、
スペイン語のヴォーカルとともに、優雅な叙情に包まれたシンフォニックロックを聴かせる。
メロウな泣きのフレーズを奏でるギターに、プログレらしいシンセワークもセンスが良く、
サウンドにはほどよくヴィンテージな味わいを感じさせる。後半は10分前後の大曲が続き
インストパートがわりと長尺な感じで、ドラマティックな展開や盛り上がりがもう少し欲しいが、
総じて大人の哀愁を含んだ叙情が耳心地よい。スパニッシュシンフォの好作品です。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 叙情度・7 総合・7.5
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WIGWAM 「DARK ALBUM」
フィンランドのプログレバンド、ウィグワムの1977年作
1969年にデビュー、本作は7作目にして、70年代最後のアルバム。肩の力の抜けた軽やかなアンサンブルで、
優雅なギターのトーンにジェントルなヴォーカルを乗せ、大人の哀愁を含んだキャッチーなサウンドを聴かせる。
楽曲は4〜5分前後が主体で、プログレ的な展開はあまりなく、いくぶんブルージーなギターとともに
おおらかで牧歌的な北欧ロックとして味わうのが良いだろう。本作は最後にバンドは活動停止、
90年代に再結成するも、その後再び活動停止。2021年に、長年フロントを務めていたジム・ペンブロークが死去している。
ドラマティック度・7 プログレ度・6 北欧度・7 総合・7 過去作のレビューはこちら
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U.N.I 「DREAMLAND」
フィンランドのプログレユニット、U.N.Iの2013年作
マルチミュージシャンによる個人ユニットで、女性シンガーにギター、ベース、ヴァイオリンなど多数のゲストが参加。
アコースティックギターやマンドリン、フルートなどの素朴な味わいに、エレクトロなシンセとヴァイオリンなどが重なり、
コケティッシュな女性ヴォーカルを乗せた、エキセントリックなサウンドで、北欧的な土着性も含んだ聴き心地。
クラシカルなストリングスにギターが絡む優美なインストナンバーや、フォークルーツの素朴さも覗かせつつ
全体的には、プログレというよりはポップロック的なキャッチーな雰囲気でも楽しめる。わりつかみどころのない作風。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 女性Vo度・7 総合・7
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Djam Karet 「Reflections From The Firepool」
アメリカのプログレバンド、ジャム・カレットの1989年作
1985年にデビューし、4作目。ほどよく叙情的なギターを乗せた優雅なアンサンブルで聴かせる、
オールインストのロックサウンド。ジャズロックというほどにはテクニカルというわけでもなく、
ときにフュージョン的な雰囲気もありつつ、うっすらとしたシンセを重ねた物悲しい叙情や、
ときにブルージーなギターの旋律にも味があり、これといって盛り上がるところはないのだが、
どこか知的なセンスを漂わせる。ラストのタイトル曲は10分を超え、インストで65分は少々長いか。
メロディック度・7 プログレ度・7 優雅度・8 総合・7.5
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Djam Karet 「Burning The Hard City」
アメリカのプログレバンド、ジャム・カレットの1991年作
5作目の本作は、ほとんどが10分前後の大曲となり、ますますジャム系プログレを突き進んでいる。
フリーキーなギターの旋律を乗せた、ほどよいハードさと優雅さが同居したアンサンブルで、
テクニカル過ぎないインストサウンドを描く。ディレイの効いたギターを乗せたサウンドスケープ的な叙情や
メロウなギターフレーズを聴かせるパートもあり、前作に比べて緩急のついた構成も光っている。
ときにオルガンなどのシンセを加えたプログレ感触とともに、耳心地の良いインストが楽しめる。
メロディック度・7 プログレ度・7 優雅度・8 総合・8
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9/17
カイパだ、マリリオンだ!(291)

Marillion 「An Hour Before It's Dark」
イギリスのプログレバンド、マリリオンの2022年作
会心の傑作なった前作「F.E.A.R.」に続く本作は、美しいシンセとコーラスによるイントロから、
スティーブ・ホガースのエモーショナルな歌声とともに、しっとりとした叙情に包まれてゆく。
小曲を連ねた組曲形式のナンバーも多く、世界的パンデミックや気候変動など地球規模の事変をテーマに、
物悲しい味わいとキャッチーかつ繊細な叙情美で、スティーブ・ロザリーのメロウなギターの旋律とともに、
マリリオン節というべきサウンドを構築する。この耳心地の良さは、若手バンドでは到底出せないもので、
ほどよくモダンで翳りを帯びた、深みのあるシンフォニックロックといっていい。豊饒なまでの泣きを描く傑作である。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 叙情度・10 総合・8.5 過去作のレビューはこちら
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KAIPA 「Urskog」
スウェーデンのプログレバンド、カイパの2022年作
2002年の復活後から数えて、すでに9作目。のっけから19分におよぶ大曲で、ハンス・ルンディンの優美なシンセに
パトリック・ルンドストロムの伸びやかなヴォーカルとペル・ニルソンの流麗なギターで、優雅なシンフォプログレを展開。
新加入のダービィ・トッドのドラムも巧みに軽やかで、ヨナス・レインゴールドのベースとともに屋台骨を支えつつ、
キャッチーなコーラスワークによる、爽快なメロディアス性と北欧らしい土着的な空気がスタイリッシュに融合、
緩急ある展開力で大曲を構築するバンドとしての力量は見事である。女性ヴォーカルを乗せた優美なナンバーは
メロウな泣きのギターとともにウットリで、艶やかなヴァイオリンも鳴り響く。ラストの15分の大曲まで素晴らしい完成度。
シンフォニック度・8 プログレ度・・8 優美度・9 総合・8.5 過去作のレビューはこちら
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CRAFT 「First Sign」
イギリスのシンフォニックロック、クラフトの1984年作
THE ENIDのメンバーによるバンドの唯一の作品で、1989年にCD化されたが、2021年にリマスターで再発。
オリジナルの1983年ミックスに未発音源、1989年のミックスに、新たなボーナス音源も加えた、全14曲入り。
美麗なシンセワークにほどよくハードなギターを重ねた、優雅さとキャッチーな感触が同居したサウンド。
80年代的なビート感のドラムに、エニドに通じるクラシカルなシンセの旋律を乗せ、華麗なシンフォプログレを聴かせる。
オールインストで、オリジナルは35分弱程度だが、別ミックスや未発音源も加え、全77分に拡張させて聴きごたえがある。
1989年ミックスの方は、ドラムがうるさすぎない分、優美な耳心地になっていて、よりエニド風味のサウンドが楽しめる。
クラシカル度・8 プログレ度・8 優雅度・8 総合・8
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HAWKWIND 「SOMNIA」
イギリスのサイケロック、ホークウインドの2021年作
1970年にデビュー、スケールの大きなアッパーな浮遊感に包まれたスペースサイケというスタイルを確立したベテラン、
本作はローマ神話に伝わる睡眠の神、ソムナス由来する、不眠時の幻覚や発熱時にみる夢などをテーマにしている。
のっけから10分を超える大曲で、オルガンなどのシンセにサステインの効いたギター、ジェントルなヴォーカルを乗せ
いかにもスペイシーなサイケロックを展開。2曲目は、きらびやかなシンセとともアッパーなノリのカラフルなナンバーで、
往年のファンもニンマリだろう。ほどよいキャッチーな部分や、デジタルでモダンなアレンジなども覗かせつつ、
語りを含んだシネマティックな流れや、御大、デイヴ・ブロックの枯れた味わいの歌声も含めて、ベテラン健在の力作です。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 サイケ度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Charlie Cawood 「Blurring Into Motion」
イギリスのミュージシャン、チャーリー・カーウッドの2019年作
KNIFEWORLDなどで活躍するマルチミュージシャンで、本作には多数のゲストが参加し、アコースティックギターに
やわらかなフルート、ピアノにクラリネット、ヴィブラフォンの響きに、ヴァイオリン、チェロなども加えて、
優雅でクラシカルなアコースティックサウンドを聴かせる。バウロンのリズムに乗るフルートやヴァイオリンが
ときにケルティックな雰囲気もかもしだし、女性ヴォーカルが加わった優美なナンバーなども耳心地が良い。
3〜4分前後の小曲を主体に、スリリングな展開はないが、優雅なチェンバーロックとしても楽しめる。
アコースティック度・9 ロック度・1 優雅度・9 総合・8
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Mostly Autumn 「The Spirit of Autumn Past」
イギリスのプログレバンド、モストリー・オータムの1999年作
1998年にデビュー、本作は2作目で、これまで貴重盤のため聴けていなかったのだが、ようやくゲット。
オールドスタイルのフォーキーな旋律と男女ヴォーカルの歌声を乗せた、牧歌的なサウンドはそのままに、
1stに比べて楽曲はよりダイナミックになった。ライブでもおなじみのナンバー「Evergreen」をはじめ、
フェザー・フィンドレイの美しい歌声を乗せた、しっとりと優美なパートも耳心地よく、やわらかなフルートや
ヴァイオリンなどを含むフォーキーな味わいに、シンフォニックな優雅さが合わさったバンドの世界観が確立。
ラストの11分の大曲まで、英国らしい優美な叙情に包まれたサウンドに浸れる。全69分の力作です。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 優雅度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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MARCO BERNARD & KIMMO PORSTI「Robinson Crusoe」
フィンランドのミュージシャン、マルコ・ベルナルドとキンモ・ポルスティによる2021年作
THE SAMURAI OF PROGの中心人物で、本作は「ロビンソン・クルーソー」をテーマにしたコンセプト作。
元LATTE E MIELEのオリヴィエロ・ラカグニア、Jinetes Negrosのオクタヴィオ・スタンパリダ、スティーブ・ハケット、ジョン・ハケット
MAD CRAYONのアレッサンドロ・ベネデッティ、HOSTSONATENのルカ・シェラーニ、Museo Rosenbachのステファノ・ガリフィ、
Ubi Maiorの女性ギタリスト、Greenwallのアンドレア・パヴォーニなど、多数のゲストが参加。優美なフルートにヴァイオリン、
メロウなギターの旋律にシンセを重ね、優雅なシンフォプログレを展開する。クラシカルなピアノによる小曲から、
10分を超える大曲では、KAYAKのバート・シュワートマンの歌声も加わり、ドラマティックな叙情を描いてゆく。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 優雅度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Arabs In Aspic 「Live At Avantgarden」
ノルウェーのプログレバンド、アラブス・イン・アスピックのライブ。2018年作
2003年にデビュー、70年代ルーツのスタイルを標榜するバンドで、本作は2018年ノルウェーでのライブを収録。
のっけから、2017年作「Syndenes Magi」からの全3曲を再現、オルガン、メロトロンを含むシンセにブルージーなギター、
ジェントルなヴォーカルとともに、サイケがかったユルさとヴィンテージな空気に包まれたサウンドを構築してゆく。
ドゥームロック的でもある怪しさを含みつつ、随所に北欧プログレの涼やかな土着性も感じさせる楽曲は、
どこかなつかしいような味わいで、派手さはないがじっくりと楽しめる。全75分のヴィンテージなライブです。
ライブ演奏・8 プログレ度・7 ヴィンテージ度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Brother Ape「Karma」
スウェーデンのプログレバンド、ブラザー・エイプの2017年作
2005年にデビューし、本作は7作目。流麗なギターにシンセを重ね、マイルドなヴォーカルとともに
キャッチーでスタイリッシュなサウンドを描く。叙情的なギターフレーズや優雅なシンセアレンジには、
シンフォプログレとしての感触を残しつつ、モダンな歌もの感の繊細さと、いくぶんの硬質さが合わさって
軽やかなリズムとともに普遍的なメロディックロックとしても楽しめる。10分を超えるような大曲こそないものの、
ラストのタイトル曲は、シンフォニックロックとしての叙情美に包まれていて、泣きのギターとともにウットリである。
全40分というコンパクトな仕上がりながら、北欧らしい涼やかさと優雅な耳心地で聴き通せる好作だ。
メロディック度・8 プログレ度・7 スタイリッシュ度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Kebnekajse 「III」
スウェーデンのフォーク・プログレ、ケブネカイゼの1975年作
北欧きってのトラッドロックバンドの作品が、全作リマスター&紙ジャケで再発された。
本作は3作目にしてバンドの最高傑作。土着的なギターの旋律に艶やかなヴァイオリンが重なり、
パーカッションが鳴り響く、伝統的な民族音楽の感触とサイケロックが融合した牧歌的な味わいは
北欧らしい涼やかな哀愁の叙情に包まれていて、じつに我々日本人好みのサウンドなのである。
基本的にはインストながら、母国語の歌声を乗せた、フォーク風味のナンバーにも味わいがあり、
一方で、13分での大曲ではプログレとしての構築センスも覗かせる。これぞ北欧の音楽という傑作。
ドラマティック度・8 優雅度・8 北欧度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Kebnekajse 「Elefanten」
スウェーデンのフォーク・プログレ、ケブネカイゼの1977年作
これまでは、LPのみでしか聴けなかった後期の2作、「エレファント」「アフリカの灯」が紙ジャケCD化された。
5作目の本作は、全作のアフロ路線からまた変わり、艶やかなヴァイオリンをメロウなギターに絡ませた、
優雅なシンフォニック路線となっている。パーカッションも鳴り響く、かつての土着的な感触も残しつつ、
ときにジャズロック的でもある優雅なアンサンブルは、より洗練された印象である。12分の大曲では、
軽やかなリズムに叙情的なギターとヴァイオリンを重ねた、トラッド・ジャズロックというサウンドを聴かせる。
ボーナスのラスト曲は、「III」にも収録されていたスウェーデン民謡のアレンジであるが、より優雅な別バージョン。
ドラマティック度・7 優雅度・8 北欧度・8 総合・8
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Dungen 「Stadsvandringar」
スウェーデンのサイケロック、ドゥンエンの2002年作
2001年にデビュー、本作は2作目。牧歌的なギターとキャッチーなコーラスハーモニーで、
フォークルーツのユルめのサウンドを描く。母国語によるヴォーカルとともに、涼やかな土着性に包まれつつ
メロウなギターのトーンにメロトロンなどのシンセが合わり、北欧プログレ的な感触でも楽しめる。
楽曲は3〜4分前後とシンプルだが、キャッチーなメロディのフックもあって、総じて耳心地が良いので、
肩の力を抜いてのんびりと鑑賞できる。優雅なフルートやヴァイオリンも鳴り響き、随所にオルガンや
メロトロンも加えての、シンフォプログレとしての魅力も覗かせる。これぞ北欧というサイケプログの逸品。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 北欧度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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LE ORME 「LIVE ORME」
イタリアのプログレバンド、レ・オルメのライブ。1986年作
1975〜77年に録音されたイタリアツアーの音源で、1993年にキングからの日本盤で聴いた時は、音質がラウドで
いまひとつだと思っていたが、2009年の再発盤で聴いてみると、リマスターによる音の迫力が増していてなかなか楽しめる。
スタジオ盤以上に激しいドラムと、オルガンやムーグなどのシンセも華やかで、EL&Pを思わせる部分もしばしば。
そこに独特の翳りを帯びた幻想性が加わるのがオルメで、けっして上手くはないがイタリア語によるヴォーカルにも味がある。
1974年作「夜想曲」、1971年作「コラージュ」といった初期作からのナンバーも多数演奏していて、ファンには嬉しいところ。
Disc2では「フェローナとソローナの伝説」組曲も披露。即興パートもまじえた演奏は、粗削りだがアルバム以上に生々しい。
ライブ演奏・8 プログレ度・8 音質・7 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Harvest 「Northern Wind」
スペインの女性Voメロディックロック、ハーヴェストの2014年作
2009年にデビューし、3作目となる。優美なシンセとピアノにコケティッシュな女性ヴォーカルの歌声で
のっけからウットリと引き込まれるが、ほどよくモダンなアレンジを含んだ優雅でキャッチーなサウンド。
魅力的な女性声にメロウなギターの旋律も耳心地よく、かつてのKARNATAKAあたりにも通じる、
シンフォニックなフィメールロックという赴きで楽しめる。いくぶんの翳りをおびたアンニュイな雰囲気に
スペインというよりはむしろ英国寄りのウェットな耳心地で、ゆったりと聴ける女性声シンフォの好作。
メロディック度・8 優美度・9 女性Vo度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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9/2
9月のプログレ(278)

Steve Thorne 「Island Of Imbeciles」
イギリスのミュージシャン、スティーヴ・ソーンの2016年作
2005年にデビュー、5作目となる本作には、トニー・レヴィン、ニック・ディヴァージリオ、ロビン・アームストロングなどが参加。
オルガンなどのシンセにマイルドなヴォーカルを乗せ、メロウなギターとともに、翳りを帯びた大人の叙情に包まれた
歌もの系のポストプログレを聴かせる。やわらかなシンセアレンジにエモーショナルな歌声で、MARILLION風味の
しっとりとした繊細な味わいに、トニーとニックによるリズム隊の描く軽妙なアンサンブルが随所に楽しめる。
楽曲は3〜6分背前後と長すぎず、プログレ的な展開はさほどないが、自然体の優雅さで濃密すぎない聴き心地。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 叙情度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Steve Thorne 「Levelled: Emotional Creatures Part 3」
イギリスのミュージシャン、スティーヴ・ソーンの2021年作
6作目の本作は、2007年作の続編となる作品。アコースティックギターにフルートを含む牧歌的なイントロから、
やわらかなシンセをギターに重ね、マイルドなヴォーカルを乗せた、優雅なシンフォニックロックが広がってゆく。
スタイリッシュな歌もの感とともに、華麗なシンセワークと随所に奏でられる泣きのギターフレーズが、
シンフォプログレとしての英国らしい美学を感じさせ、ドラマティックな流れでコンセプト作品を構築してゆく。
ラストはアルバム冒頭の牧歌的なイントロに戻って幕を閉じる。派手さはないが、英国的な空気に包まれた好作。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 叙情度・8 総合・8
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ESP Project 「The Rising」
イギリスのプログレバンド、イー・エス・ピーの2019年作
ギター&シンセ奏者のトニー・ロウによるプロジェクトで、2016年にデビュー、本作は4作目となる。
優美なシンセワークに、新たに加入したダミアン・チャイルドのマイルドなヴォーカルを乗せ、
プログレハード的なキャッチーな優雅さに包まれたサウンドを聴かせる。叙情的なギターの旋律に
オルガンなどのオールドな味わいも加わって、随所に70年代の英国らしさを覗かせつつ、
それをスタイリッシュに昇華していて、ときにしっとりとした浮遊感にも包まれる。
軽やかなシンフォニックロックとしても楽しめる。優雅で耳心地の良い逸品です。
メロディック度・8 プログレ度・7 優雅度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Combination Head
イギリスのプログレバンド、コンビネーション・ヘッドの2006年作
優美なピアノのイントロから、オルガンなどのシンセに叙情的なギターを重ね、軽やかなアンサンブルとともに
どこかスペイシーな味わいもある優雅なシンフォニックロックを聴かせる。オールインストであるが、
楽曲はきらびやかなシンセワークを中心に、決してテクニカルにはなり過ぎず、ときにカンタベリー的でもある
軽妙な味わいで耳心地よく楽しめる。濃密な盛り上がりというのはさほどないが、キーボードの音色には
オールドなプログレ感触を残しつつ、英国らしい叙情美と軽妙なスタイリッシュ性が同居した好作品である。
ドラマティック度・7 キーボー度・8 優雅度・8 総合・8
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Mangala Vallis 「Voices」
イタリアのプログレバンド、マンガラ・ヴァリスの2020年作
2002年にデビュー、本作は8年ぶりとなる4作目。ほどよくハードなギターにオルガンなどのシンセ、
英語歌詞のヴォーカルを乗せた、オールドスタイルのキャッチーなシンフォプログレを聴かせる。
初期に比べると、ブルージーなギターや、ニール・モーズ風のヴォーカルなど、枯れた味わいが強まっているが、
プログレらしいきらびやかなシンセワークを随所に織り込んで、優雅に構築するセンスはさすが。
楽曲は4〜7分前後と、シンフォ系にしてはわりとシンプルで、新鮮味のある展開はさほどないのだが、
キャリアをへたバンドらしいロックとしての力強さを感じさせる。大人の哀愁シンフォというべき作品だ。
メロディック度・8 プログレ度・7 哀愁度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Rosenkreutz 「Divide Et Impera」
イタリアのプログレバンド、ローゼンクロイツの2020年作
2014年にデビューし、2作目となる。女性ヴィオラ奏者を加えた6人編成となり、美麗なシンセにギターを重ねた導入から、
きらびやかなシンフォニックロックの感触が広がり、英語によるマイルドなヴォーカルとともに優雅なサウンドを展開。
キャッチーなメロディアス性と軽快なアンサンブル、随所にストリングスアレンジを加えたクラシカルな美意識に、
オルガンなどのヴィンテージな感触や、ほどよくエッジの効いたギターワークにもセンスを感じさせる。曲によっては
エレクトロなアレンジやアコースティックパートも覗かせ、プログレハード的なナンバーや、ラストの15分の大曲も圧巻だ。
現在形のシンフォプログレとしては、BAROCK PROJECTなどにもひけをとらない、じつに高品質な作品です。
メロディック度・8 プログレ度・8 優雅度・9 総合・8.5 過去作のレビューはこちら
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Sintonia Distorta 「A Piedi Nudi Sull Arcobaleno」
イタリアのプログレバンド、シントニア・ディストリアの2020年作
2015年にデビューし、2作目となる。ファビオ・ズファンティがプロデュース。ピアノやオルガンなどのシンセに
やわらかなフルートの音色、イタリア語のヴォーカルを乗せた、叙情的なシンフォニックロックを聴かせる。
楽曲は7〜9分前後をメインに、ほどよくハードなギターにテクニカルな展開も覗かせるなど、
かつてのBlack Jeaterにも通じる、ProgMetal寄りの味わいもある。全体的にはマイナー寄りの
いくぶんの野暮ったさも感じさせ、もう少し盛り上がりが欲しい気もするが、フルートが活躍するパートも多く
優美な幻想性はいかにもイタリアらしい。ラストはなんと、Black Jeaterのカヴァー。やっぱりですか!
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優美度・8 総合・7.5
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OAK (Oscillazioni Alchemico Kreative) 「Giordano Bruno」
イタリアのシンフォニックロック、オシラツィオーニ・アルケミコ・クリエイティヴの2018年
マルチミュージシャン、ジェリー・カテッロによるプロジェクトで、美麗なシンセに繊細なピアノ、フルートの音色に
イタリア語によるヴォーカルを乗せ、牧歌的なシンフォニックロックを展開する。デヴィッド・ジャクソンが参加して
優雅にサックスも鳴り響き、アコースティックギターにホイッスルなど、ケルティックなテイストも含ませつつ、
ソーニャー・クリスティーナが、しっとりとした歌声を聴かせるナンバーや、シンセにわる優美なインストパートなど、
物語的な流れで楽曲を構築してゆく。シンフォニックな盛り上がりがもう少しあればと思うが、全71分の力作です
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・8 総合・7.5
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Sithonia 「Folla Di Passaggio」
イタリアのプログレバンド、シトニアのライブ。1994年作
1989年にデビュー、2nd「Spettacolo Annullato」は、90年代イタリアシンフォの傑作として名高いが、
本作は1993年のライブ音源を収録。クラシカルなピアノやシンセにイタリア語のヴォーカルを乗せ、
偏屈なリズムチェンジを含む知的な展開力で、独自のセンスのテクニカルプログレを聴かせる。
叙情的なギターの旋律に優美なシンセワークが繊細な叙情美を描きつつ、インストパートでの巧みな構築性は、
90年代のバンドでは屈指だったろう。録音的にはややダイナミックさに欠けるが、貴重な1stからのナンバーも披露して、
通好みのイタリアンプログレを聴かせるバンドの記録として、コアなファンには聴いていただきたいライブである。
ライブ演奏・8 プログレ度・8 音質・7 総合・8 過去作のレビューはこちら
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ANAPHORA 「EXODE」
フランスのシンフォニックロック、アナフォラの2022年作
2006年にデビュー、本作は12年ぶりとなる3作めとなる。きらびやかなシンセアレンジにほどよくハードなギター、
フランス語による女性ヴォーカルを乗せた優美なサウンドを描く。メロウなギターによる叙情性と、
スタイリッシュなハードさが同居していて、プログレッシブな女性声シンフォニックメタルとしても楽しめる。
一方では、ゆったりとした叙情美に包まれた、シンフォニックロックナンバーから、ツーバスのドラムによる
適度な激しさも随所に覗かせつつ、キャッチーな優雅さとのメリハリある聴き心地。女性声ハードシンフォの逸品だ。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 女性Vo度・7 総合・7.5
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AMAROK 「HUNT」
ポーランドのプログレバンド、アマロックの2017年作
スペインにも同名バンドがあるが、こちらは別バンド。2001年にデビュー、本作は、2004年以来となる4作目。
メロウなギターにエレクトロな感触も含んだアレンジ、マイルドなヴォーカルを乗せたスタイルで、
薄暗い叙情に包まれたアンビエントな味わいは、Kscope系のポストプログレに接近した印象。
サウンドスケープ的なしっとりとした涼やかさや、ギルモアばりのギターを聴かせるインストナンバーなど、
全体的にもクールな聴き心地で、ドラマティックな部分は希薄ながら、ラストは18分におよぶ大曲で、
うっすらとしたシンセに叙情的なギターのトーンで、翳りを帯びたシンフォニックロックが味わえる。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 叙情度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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In Continuum 「Acceleration Theory」
アメリカのシンフォニックロック、イン・コンティニュームの2019年作
Arc Of LifeやMantra Vegaなどにも参加するシンセ奏者、デイヴ・ケンジナー率いるプロジェクトで、
マルコ・ミンネマンやランディ・マクスタイン(Lo-Fi Resistance)、ガブリエル・アグド(Bad Dreams)というメンバーに、
スティーブ・ハケット、スティーブ・ロザリー、ジョン・デイヴィソン、ニック・ディヴァージリオ、ジョン・ウェズレイ、
フェルナンド・ペルドモなど、豪華なゲストが参加。モダンなシンセアレンジにマイルドなヴォーカルを乗せ、
ミンネマン、ディヴァージリオによる巧みなドラムとともに、スタイリッシュなシンフォプログレを聴かせる。
ヴァイオリンやチェロなどを加えた優雅な味わいや、緩急ある構築センスとともに、スケール感のある力作です。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 優雅度・8 総合・8
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Tony Castellano 「Fun Size」
アメリカののミュージシャン、トニー・カステラーノの1997年作
Holding Patternにも参加するミュージシャンで、本作は5曲入りのEP。
優美なシンセに叙情的なギターの旋律を重ね、ジェントルなヴォーカルを乗せた
キャッチーなシンフォニックロック。ギターのメロディには泣きのセンスを感じさせ、
単なるマイナー系シンフォという以上の優雅な味わい。この路線のフルアルバムだったら、
あるいは、90年代アメリカンシンフォの隠れた逸品となっていたかもしれない。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・8 総合・7.5
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8/20
プログレ残暑(265)

Cosmograf 「Rattrapante」
イギリスのミュージシャン、ロビン・アームストロングのプロジェクト、コスモグラフの2021年作
2009年にデビューし、本作は8作目となる。叙情的なギターにオルガンなどを含むシンセ、
ジェントルなヴォーカルを乗せて、コンセプト的なシンフォニックロックを展開する。
古き良きロック感触とスペイシーなスケール感が同居した作風で、派手な展開はないが、
ときに女性ヴォーカルも加えた優しい叙情性や、メロウなギターの旋律にシンセを重ねた
シンフォニックな泣きのナンバーも耳心地よい。ラストの12分の大曲も、あくまで大仰にはならず
クールな空気感とゆったりとした優雅さに包まれながら、わりとあっさりと締めくくる。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 叙情度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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THE PINEAPPLE THIEF 「HOLD OUR FIRE」
アメリカのポストプログレ、パイナップル・シーフのライブ。2019年作
2018年のヨーロッパツアーのライブを収録。同年発表「Dissolution」からのナンバーをメインにしたセットで、
叙情的なギターにうっすらとしたシンセ、マイルドなヴォーカルで、オルタナ的な翳りを含んだサウンドを展開。
Porcupine Treeでも活躍する、ギャヴィン・ハリソンの巧みなドラムを軸にしたタイトなアンサンブルと
随所に聴かせるメロウなギターの旋律、ブルース・ソードのエモーショナルな歌声とともに、アルバム以上に
躍動的な演奏が楽しめる。ラストは、2010年作「Someone Here Is Missing」収録曲で優雅に聴かせる。
ライブ演奏・7 プログレ度・7 叙情度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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THE PINEAPPLE THIEF 「VERSIONS OF THE TRUTH」
アメリカのポストプログレ、パイナップル・シーフの2020年作
1999年にデビュー、本作は13作目となる。うるさすぎないギターとシンセに、マイルドなヴォーカルで聴かせる
繊細な叙情に包まれたモダンなポストプログレサウンド。タイトなドラムがスタイリッシュなアンサンブルを描き、
ピアノを含む優美なシンセとほどよくハードなギターで、しっとりと薄暗くもメリハリある構築力で描かれる。
楽曲は4〜5分前後が主体で、プログレというよりは、もはやモダンロックというべき感触ではあるが、
クールなセンスとキャッチーな叙情のバランスで、さらりと耳心地が良い。個人的にはもう少し濃密さが欲しいか。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 叙情度・8 総合・7.5
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Jan Scheelhaas 「DARK SHIPS」
イギリスのミュージシャン、ヤン・シェルハースの2008年作
CAMELやCARAVANで活躍するシンセ奏者のソロで、本作には元キャラバンのギタリスト、ダグ・ボイル、
フルート&サックス奏者のジミー・ヘイスティングスが参加している。やわらかなシンセにメロウなギター、
自身のマイルドなヴォーカルを乗せた、優美でキャッチーなプログレハード風味のサウンドを聴かせる。
フルートの音色が優雅な小曲から、シンフォニックなシンセアレンジに、CAMELばりの叙情的なギター、
ときにサックスも加わった、しっとりとした繊細な耳心地で、幻想的な空気に包まれた逸品です。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優美度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Jonas Lindberg & The Other Side 「Miles From Nowhere」
スウェーデンのミュージシャン、ヨナス・リンドバーグによるプロジェクト。2022年作
2016年にデビューし、本作は2作目。ソリッドなギターに優美なシンセ、キャッチーなヴォーカルメロディで
Brighteye Brisonなどにも通じる、ほどよくハードでスタイリッシュなシンフォプログレを展開。
中盤には10分を超える大曲が続き、女性ヴォーカルを乗せた優雅な味わいや、緩急ある展開力とともに、
随所に流麗なギタープレイを織り込んで、TRANSATLANTICのようなドラマティックなサウンドが楽しめる。
後半の25分の組曲では、ロイネ・ストルトがゲスト参加、これぞシンフォプログレという叙情美に包まれる。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 優美度・8 総合・8
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Kornmo 「Fimbulvinter」
ノルウェーのプログレバンド、コルンモの2021年作
Morildのギター、ベースを中心にしたバンドで、本作は3作目となる。叙情的なギターにオルガンを含む
ヴィンテージなシンセを重ね、涼やかな哀愁に包まれた、ゆったりとしたシンフォプログレを聴かせる。
メロウな泣きのギターも随所に覗かせ、Morlidにもあった北欧らしい素朴な土着性が耳心地よく、
全体的に派手な展開はないが、ゆったりとしたインストサウンドが味わえる。アルバム後半には、
19分、26分という大曲もあるが、あくまでユルめの構築性で、もっさりとした素朴な叙情に包まれる。
初期のKAIPAKERRS PINKなど、これぞ北欧という空気感が好きな方は聴くべし。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 北欧度・9 総合・8
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KANSAS 「POINT OF KNOW RETURN LIVE & BEYOND」
アメリカのプログレバンド、カンサスのライブ作品。2021年作
2019〜2020年のツアー音源を2CDに収録。1995年作「Freaks of Nature」収録曲から幕を開け、
艶やかなヴァイオリンにツインギターが絡み、優美なシンセとともに、キャッチーなサウンドを披露。
「Masque」収録のポップなナンバーから、「The Wall」、「Song For America」といった代表曲で盛り上がる。
ロニー・プラットのヴォーカルも楽曲にマッチしていて、YESやCAMELにも参加していた、トム・ブリスリンのシンセも
なにげに見事に楽曲を彩っている。Disc2では、1977年作「Point Of Know Return/暗黒への曳航」を完全再現、
オリジナルの雰囲気を忠実に、より厚みのあるシンフォニックな味わいで楽しめる。現在形カンサスの好ライブ。
ライブ演奏・8 プログレ度・7 カンサス度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Pattern-Seeking Animals 「Only Passing Through」
アメリカのプログレバンド、パターン・シーキング・アニマルズの2022年作
テッド・レナードをはじめ、新旧のSPOCK'S BEARDメンバーを中心にしたバンドで、本作は3作目となる。
適度にハードなギターにオルガンやメロトロンを含むシンセを重ね、キャッチーなヴォーカルメロディとともに、
クールな味わいのプログレサウンドを聴かせる。本家スポビに比べるといくぶんシンプルな味わいであるが、
その分、テッドの伸びやかな歌声が映えていて、A.C.T.のような優雅なプログレハード風にも楽しめる。
13分の大曲では、ブラスやヴァイオリンを取り入れた軽妙なアレンジで、じっくりとドラマティックに構築される。
全体的には複雑になりすぎないメロディアスな耳心地で、歌もの感強めなわりとストレートな味わいです。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 優雅度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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SCARLET HOLLOW 「A Window To October」
アメリカのプログレバンド、スカーレット・ホロウの2020年作
2010年にデビュー、本作は2作目となる。叙情的なギターにシンセを重ね、やわらかな女性ヴォーカルを乗せた
スタイリッシュなシンフォニックロックで、いくぶん翳りを帯びたアンニュイな空気を漂わせる。
プログレ的な凝った展開力はさほどないが、ゆったりとした流れの中にもドラマ性を感じさせ
メロウなギターの旋律にはかなげな女性ヴォーカルで、しっとりと優雅な聴き心地で楽しめる。
もう少し明快な盛り上がりが欲しい気もするが、薄暗系のシンフォプログレが好きな方にはお薦めです。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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THEO 「Figureheads」
アメリカのプログレバンド、テオの2020年作
トニー・バンクスを敬愛するというジャズミュージシャンの鍵盤奏者を中心に、2015年にデビューし、本作は2作目。
大曲ばかりの全4曲という構成で、オルガンやピアノなどの優美なシンセにメロウなギターが絡み、
古き良きシンフォプログレを受け継ぎつつ、随所にモダンなアレンジを加えたという作風。
ジェントルなヴォーカルを乗せたキャッチーな雰囲気に、美麗なキーボードワークは、リック・ウェイクマン風であったり、
GENESIS風であったりして、ときにクラシックやジャズの素養も感じさせる。ラストの16分の大曲は、
泣きのギターにシンセが重なり、起伏のある展開で、これぞ王道のシンフォプログレという味わいだ。
ドラマティック度・7 プログレ度・8 優美度・8 総合・8
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8/11
椅子、八十八、恵比須(255)


人間椅子「真夏の夜の夢」
日本のハードロックバンド、にんげんいすの2007年作
1990年にデビュー、トリオ編成を守りながら、コンスタントにアルバムを発表し続け、本作は14作目となる。
古き良きテイストのギターリフに朗々とした日本語ヴォーカルを乗せた、サバスルーツの和風ロックという趣で、
江戸川乱歩「白日夢」や、怪談「牡丹灯籠」をモチーフにしたナンバーなど、おどろおどろしい世界観を
ドゥーミィなハードロックで表現する手腕は円熟の域である。一方では、ほどよくキャッチーなナンバーもあり、
牧歌的な叙情性も含んだ、バランスのとれた内容となっている。全12曲で、73分は少々長いが、
戦地からの手紙を語るような異色のナンバーなどは、J.A.シーザーなどにも通じる世界観であろう。
ドラマティック度・7 おどろおどろ度・7 文学度・8 総合・8
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人間椅子「怪談-そして死とエロス」
日本のハードロックバンド、にんげんいすの2016年作
通算19作目の本作は、世紀末をテーマにした1曲目「恐怖の大王」から、ヘヴィなベースとギターリフに
朗々とした歌声を乗せて、ダークで重厚なサウンドが広がってゆく。パワフルなドラムも含めて、
これまで以上にメタリックな味わいをにじませていて、切れ味あるギターリフはもちろん
ソロパートでのギタープレイも光っていて、トリオとは思えない力強さが楽曲全体から感じられる。
おどろおどろしい歌詞の世界観も抜群にマッチしていて、ドラマティックと言ってよい展開力も見事だし、
わりとオヤジ的な味のある歌声も、バンドの個性とインパクトになっていて、和風メタルとしての迫力も凄い。
ドラマティック度・8 おどろおどろ度・9 文学度・8 総合・8.5
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人間椅子「苦楽」
日本のハードロックバンド、にんげんいすの2021年作
バンド活動30年で、22作目となる本作は、1曲目から芥川龍之介「杜子春」をテーマにした文芸ロックが炸裂。
王道のギターリフにシアトリカルなヴォーカルを乗せ、古き良きハードロックをベースにしつつ、
リズムチェンジからの叙情的なギターフレーズを聴かせるところなど、プログレッシブな構築力も光る。
ベテランらしいサウンドの強固な説得力とともに、それぞれのギターリフやソロパートの魅力も強まったことで
楽曲としてのメリハリある緊張感に包まれる。歳を経て味わいを深めた歌声と、文学的な歌詞による
哀愁や悲哀をたっぷりと表現させながら、全13曲71分が濃密に楽しめる。見事な傑作です。
ドラマティック度・8 おどろおどろ度・8 文学度・9 総合・8.5
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八十八ヶ所巡礼「八十八」
日本のロックバンド、はちじゅうはちかしょじゅんれいの2009年作
G、B/Vo、Drというトリオ編成で、ガレージロック的なノリの中に、ヒステリックなヴォーカルと
奇妙な歌詞の世界観にサイケデリックな浮遊感を含んだ、アヴァンギャルドなロックサウンド。
ギターにしろドラムにしてテクニックはかなりのもので、ハードロック的な激しさの中に和の空気と、
プログレッシブな味わいも覗かせるところは、人間椅子などにも通じるが、こちらはよりエキンセトリックで
型にとらわれない奔放なセンスがある。わりとパンク的でもある尖ったメッセージ性とともに、
ナチュラルな脱力感が同居したというスタイルで、強固なアンサンブルでたたみかける異色作。
メロディック度・7 ロック度・8 アヴァンギャル度・8 総合・8
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八十八ヶ所巡礼 「SYG88」
日本のロックバンド、はちじゅうはちかしょじゅんれいの2011年作
2作目となる本作も、サイケな浮遊感とガレージロックのノリの良さが合わさった独自のスタイルで、
1st以上に、フックのある展開も含んだプログレ感覚に、甘すぎないキャッチーさが加わった印象。
巧みなベースとドラムによるグルーヴィなリズムに、テクニックあるギターの自由度の高いフレーズ、
軽やかなキメを盛り込みながら、古き良きロックとしての恰好良さを失わないところは見事である。
ベーシストでもあるマーガレット廣井のヴォーカルも、エキセントリックな表現力を強めていて、
ストレンジなポッブ感をかもしだしつつ、どこか演劇的な毒気を含んだ世界観を描いてゆく。
単なる個性派の和製ロックというにはとどまらない、そんな境地に達した2作目である。
メロディック度・7 ロック度・8 アヴァンギャル度・8 総合・8
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八十八ヶ所巡礼 「〇△□」
日本のロックバンド、はちじゅうはちかしょじゅんれいの2012年作
ジャケをめくると全裸のオッサンという3作目は、のっけから激しいドラムにテクニカルなギターリフと
高音域のヴォーカルを乗せた、サイケでプログレッシブなハードロックが炸裂する。
言葉遊びを含んだエキセントリックな歌詞と、ヒステリックな歌声がよくマッチしており、
リズム的なキメが増した演奏のキレとともに、サウンドとしてのインパクトがさらに強まった。
10分を超える大曲では、どことなく80年代テイストのデジタルな感触を覗かせつつ、
サイケとプログレの境をゆくような浮遊感が絶妙だ。しっかりとロックとしての尖った部分も健在。
メロディック度・7 ロック度・8 アヴァンギャル度・8 総合・8
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八十八ヶ所巡礼 「0088」
日本のロックバンド、はちじゅうはちかしょじゅんれいの2013年作
4作目の本作は、ゆったりとした始まりから、変拍子を含むリズムに巧みなギターを乗せ、
独特の日本語歌詞のヴォーカルとともに、ストレンジな和風サイケロックが広がってゆく。
グルーヴィなベースとパワフルなドラムが支える強力なリズムが、サウンドを骨太にしていて
そこに乗る奔放なギターが浮遊感をかもしだし、トリオとしての強みが存分に発揮されている。
キャッチーな部分が薄まった分、よりコアなバンド色を強めたという印象で、通好みの仕上がり。
今回は大曲はなく、全8曲38分であるが、演奏の強度と濃密さで一気に聴かせる。
メロディック度・7 ロック度・8 アヴァンギャル度・8 総合・8
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八十八ヶ所巡礼 「日本」
日本のロックバンド、はちじゅうはちかしょじゅんれいの2015年作
6作目の本作は、シンセによるミステリアスなイントロから幕を開け、軽やかなドラムに巧みなベースを重ね、
軽やかなギターのリフレインとともに、テクニカルなアンサンブルを展開。ベースもこなすマーガレット廣井による
独特の歌いまわしのヴォーカルとともに、ロックなノリのキャッチーさが包み込み、とわりとライトな感触であるが、
キレのあるギタープレイや手数のあるドラムなど、演奏面での勢いはさすがというところ。全体的にロックの硬質感や
テクニカル性が強まった印象ながら、ラストの9分の大曲は、サイケなプログレ的スケール感が味わえて良いですね。
メロディック度・7 ロック度・8 アヴァンギャル度・8 総合・8
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八十八ヶ所巡礼 「凍狂」
日本のロックバンド、はちじゅうはちかしょじゅんれいの2018年作
1曲目からノリのよいアンサンブルとともに、ラウドなロック感とスタイリッシュなテクニックが同居した
ノリの良いサウンドに、エキセントリックな展開を盛りこんだ独自の世界観をかもしだす。
ヘンテコな歌詞を乗せたストレートなロックナンバーから、ヘヴィなギターリフのハードロック風味、
どことなくV系ロック風のタイトル曲など、これまで以上にクールな感触と、叙情的なパートも含めて、
わりとサイケなヘンタイ性は控えめ。全体的にもアンダーグラウンドな雰囲気が薄まったので、
マニア好みの作風ではなくなったのは痛しかゆし。勢いで楽しめる演奏はさすがですが。
メロディック度・7 ロック度・8 アヴァンギャル度・7 総合・7.5
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金属恵比須 「阿修羅のごとく」
日本のプログレバンド、きんぞくえびすの2016年作
新曲、初期曲の再録、2015年のライブ3曲を収録した5曲入りEP。メロトロン、オルガンを含むシンセに
ほどよくハードかつ叙情的なギター、どこかなつかしい日本語歌詞の女性ヴォーカルを乗せて、
KING CRIMSONをルーツにした叙情的なサウンドを構築する。ライブ音源も音質良好で、
メロトロンの美しいしっとりとしたナンバーから、おどろ系和風プログレハードの「ハリガネムシ」、
人間椅子を思わせる江戸川乱歩の世界観を描く「箱男」と、後藤マスヒロの躍動的なドラムも含めて、
生々しいライブ演奏が楽しめる。曲数は物足りないのだが、バンドの入門用にも良いのかも。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 ライブ演奏・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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金属恵比須「シン・紅葉狩」
日本のプログレバンド、きんぞくえびすの2019年作
2004年の自主制作盤の音源3曲のリマスターに、同作からの2019年のスタジオライブ音源2曲を加えたEP。
ハードロック的なギターリフに朗々とした男性ヴォーカルを乗せたサウンドは、人間椅子からの影響を感じさせつつ、
メロトロンが重なるととたんなクリムゾン風味になる。声の裏返る男性ヴォーカルややや気持ち悪いコーラスなどは、
正直好みを分けるし、後の楽曲に比べると優雅な叙情性は希薄ではあるが、17分を超える「紅葉狩」では、
オルガンやムーグなどを含む優美なシンセにはかなげな女性ヴォーカルで、日本らしいシンフォプログレを描き出す。
2019年のライブ音源は、ギターの高木大地以外はメンバーが替わっているが、原曲の雰囲気を再現しつつも、
よりプログレッシブなリズムや美しいシンセアレンジを加えて華麗に甦っている。バンドの過去と現在をつなぐ作品だ。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 初期曲度・9 総合・8
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金属恵比須「黒い福音」
日本のプログレバンド、きんぞくえびすの2020年作
スタジオ音源3曲に、無観客ライブの音源9曲を収録した作品で、アコースティックによるイントロナンバーから、
ハードなギターとツーバスのドラムに、オルガン、女性ヴォーカルを乗せた、ヴィンテージなハードロックを聴かせる。
伸びやかな女性声と和風の歌詞とともに、どことなく陰陽座を思わせるような「ルシファーストーン」から、
続く「鬼ヶ島」は、人間椅子にも通じる、男性声によるサバスルーツのどっしりとしたメタリックなナンバー。
映画「八つ墓村」のサントラから幕を開けるライブ音源は、後藤マスヒロのパワフルなドラムを土台に、
オルガンやムーグ、メロトロンをたっぷり使った鍵盤と、稲益宏美のおきゃんな歌声を乗せ、
和風ハードプログレというべき独自の世界観で、「武田家滅亡」、「ハリガネムシ」などの代表曲を演奏。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 ライブ演奏・8 総合・8
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後藤マスヒロ「Intention」
日本のミュージシャン、後藤マスヒロのソロ。2017年作
元GERARD、人間椅子、現在は金属恵比須で活動するドラマーで、本作には、頭脳警察や金属恵比須のメンバーが参加。
ジャズタッチの優雅なイントロから、宮嶋健一(金属恵比須)のきらびやかなシンセに軽やかなギターを加えて
キャッチーなインストサウンドを展開。入江陽のヴォーカルを乗せた、ストレンジなポップナンバーから、
稲益宏美(金属恵比須)のやわらかな歌声によるフォークプログレ風味など、全体的にはテクニカルというよりは
むしろ牧歌的な味わいで、マスヒロ氏のドラムプレイも楽曲に自然に溶け込ませている。ぼやけたような音質は、
あえて狙ったのか分からないが、慣れてくるとあまり気にならない。菊池琢己(頭脳警察)のギターにシンセを重ねた
フュージョン風味の叙情ナンバーも良い感じで、随所にプログレ風味を覗かせつつ、自然体で作られた好作品です。
メロディック度・8 プログレ度・7 優美度・8 総合・7.5
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曇ヶ原
日本のプログレバンド、くもりがはらの2021年作
オルガンにメロトロンが鳴り響き、アナログ感あるギターを重ねて、ANEKDOTENにも通じる、ヴィンテージなサウンドを展開、
「プログレッシブ・ハード・フォーク」を標榜するように、道端のふとした光景などをテーマにした日本語歌詞とともに、
どこかなつかしい昭和の空気に包まれる。10分を超える大曲も多く、ゆったりとしたフォークルーツの歌パートから
スリリングなインストパートへと緩急ある構築力も見事で、うっすらとしたメロトロンや優美なピアノ、巧みなギタープレイなど、
随所にしっかり聴きどころも押さえている。13分というラストナンバーは、不穏なフレーズによるダークな味わいに、
EL&Pばりのオルガンとギターを重ねてたたみかけ、アコギと歌によるフォークパートも含んだドラマテイックな展開が圧巻だ。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 昭和度・9 総合・8
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キノコホテル 「プレイガール大魔境」
日本のガールズロック、キノコホテルの2017年作
2010年にデビュー、本作は創業(結成)10年を記念しての、過去の楽曲を新たにアレンジしたベスト盤。
ハード過ぎないギターにオルガンが鳴り響き、マリアンヌ東雲のハスキーなヴォーカルを乗せた
レトロな昭和感に包まれたサイケなガレージロックで、昭和歌謡的でもあるキャッチーなポップ性も魅力。
未発曲も含んだ、バンド初期のナンバーも多く、現在のキノコのサウンドと比較したりして楽しめる。
ジャズタッチのナンバーから激しいインスト曲、13分のサイケな大曲「風景」など、楽曲のバラエティも豊かで、
70年代の香り漂う初期の代表曲「あたしのスナイパー」は、新たなPVを限定盤のDVDにも収録。
DVDには、台湾ツアーのドキュメントも収録。衣装姿のメンバーたちが台湾の街を歩き回る映像はシュールです。
メロディック度・8 歌謡サイケ度・8 昭和度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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キノコホテル 「マリアンヌの奥儀」
日本のガールズロック、キノコホテルの2019年作
フルアルバムとしては7作目となる本作は、キャッチーでコケティッシュなナンバーでスタート。
昭和歌謡的な歌いまわしは残しつつ、80年代以降のデジタル感覚を含んだアレンジで、
いくぶんスタイリッシュになった印象。ドラムの音などもタイトになっていて、サウンド面の向上により
かつてのサイケなガレージロック感触が薄れ、わりと普通のポップロックに聴こえる場面もしばしば。
オルガンなどのシンセはよいのだが、全体的にはポップ寄りのキャッチーさが強まっていて、
初期に比べるとずいぶん垢抜けた聴き心地に。物足りないと思いきや、9曲目の昭和感でひと安心。
メロディック度・8 歌謡サイケ度・7 昭和度・8 総合・8
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8/5
プログレ暑中お見舞い(239)


KONSTANTIN JAMBAZOV & DEYAN ANGELOFF 「Fly Again」
ブルガリアのミュージシャン、コンスタンティン・ジャンバゾフとデヤン・アンゲロフによるユニット作品。2022年作
この2人のユニットとしては、2019年作「ネ・スピーライ!」に続く2作目となる。1曲目から、キャッチーなノリのメロディックロックで、
母国語による表現力豊かな歌声とコーラスハーモニーが耳に心地よい。存在感のあるベースときらびやかなシンセアレンジ、
ソロ名義でも活躍するジャンバゾフの巧みなギタープレイも随所に光っていて、爽快なメロディアス性に包まれつつ、
随所にプログレッシブなセンスも含んだ優雅なサウンドが味わえる。打ち込みによるドラムがやや軽いのだが、
テクニックあるギターとともに、メジャーレーベルと契約した経歴を持つ実力あるヴォーカルが、サウンドに説得力をもたらしている。
細やかなアレンジのAOR風のプログレハードというべき聴き心地で楽しめる。ボーナス含む全17曲、78分という力作だ。
メロディック度・8 キャッチー度・8 優雅度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Mandoki Soulmates 「Utopia For Realists: Hungarian Pictures」
ドイツ系のハンガリー人ミュージシャン、レスリー・マンドキによるプロジェクト、マンドキ・ソウルメイツの2021年作
ホビー・キンボール、クリス・トンプソン、イアン・アンダーソン、ジャック・ブルース、アル・ディ・メオラ、マイク・スターンなど、
多数のゲストが参加。クラシカルなピアノの旋律にやわらかなフルート、女性ヴォーカルの歌声にサックスも鳴り響き、
軽やかなアンサンブルで優雅なジャズロック風味のサウンドを聴かせる。インストパートでのスリリングな展開は、
ときにKING CRIMSONにも通じるところもあり、テクニカルなプログレッシブ性と叙情的なヴォーカルパートや
アコースティックギターによる哀愁に、艶やかなヴァイオリンも加わって、26分という大曲を構築してゆく。
EL&Pを思わせるクラシカルなピアノやオルガンを聴かせるナンバーなど、プログレ寄りジャズロックの逸品です。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・8 総合・8
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Fuchs 「One Lively Decade」
ドイツのシンフォニックロック、フックスのライブ。2020年作
INESの夫であるミュージシシャン、ハンス・ヨルゲン・フックスによるプロジェクトで、
2020年にドイツで行われたライブを収録。妻のイネスも参加してのツインキーボード編成で、
2018年作「Station Songs」、2014年作「The Unity Of Two」からのナンバーを主体に、
叙情的なギターにオルガンを含むやわらかなシンセを重ね、優雅なシンフォプログレを聴かせる。
二人の男性ヴォーカルは、いくぶんオヤジっぽい感じで、力量的な物足りなさはあるのだが、そこも含めて
マイナー系シンフォの醍醐味かも。全体的に派手さはないが、繊細で優美なシンフォ好きはいかが。
ライブ演奏・8 プログレ度・7 優美度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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FLAIRCK 「Back Alive!」
オランダのアコースティックバンド、フレアークの2020年作
1978年にデビュー、超絶技巧のアコースティックバンドとしてプログレファンにも評価の高い存在で、
スタジオアルバムとしては、24年ぶりとなる。バンドのリーダーであった、エリック・ヴィッセルがバンドを引退、
新たに5人編成となっての復活作。2本の女性ヴァイオリンが奏でるクラシカルな旋律に、アコースティックギター、
コントラバスを重ねた、優雅なアコースティックアンサンブルを聴かせる。やわらかなフルートも加わりつつ、
全体的にはこれまで以上にヴァイオリンが目立っていて、管楽器好きには少し物足りなさもあるが、
その分、クラシカルな味わいが強まった。ラストの9分の大曲は、かつてのフレアークを思わせる優雅さです。
アコースティック度・9 プログレ度・7 優雅度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Focus 「Hocus Pocus Box」
オランダのプログレバンド、フォーカスのボックスセット。2017年作
1970年のデビュー作から、ライブ、未発音源集を含む、70年代の8作品に、2002年復活以降の3作品、ベストなど、CD13枚組のボックス。
牧歌的なブリティッシュロック風の1作目から、ヨーデルを取り入れ、優雅な大曲を含む個性を打ち出した「Moving Waves」、
ジャズロック的なアンサンブルが強固になった「III」、クラシカルな組曲を含む「Hamburger Concerto」あたりはどれもが必聴。
ヤン・アッカーマンの巧みなギタープレイに酔いしれつつ、タイスの鳴らすオルガンやフルートも楽曲を彩っている。
単体では貴重盤だった、1978年作「Focus Con Proby」、1985年作「青い旅路」もしっかり入っているのが嬉しいし、
復活後の「8」以降も、アッカーマンは不在ながら、往年のフォーカスらしさを残したサウンドで完成度は高い。
リマスターもされていて音質も良好。フォーカスファンはもちろん、一家に一箱というべき、必携のBOXセットです。
プログレ度・8 アッカーマンとタイス度・9 フォーカスのすべて度・9 総合・9 過去作のレビューはこちら
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FOCUS 「THE FOCUS FAMILY ALBUM」
オランダのプログレバンド、フォーカスの2017年作
タイス・ファン・レアーをはじめ、現FOCUSのメンバーのソロ作品の楽曲や、FOCUSの未発音源を含む全20曲を2CDに収録。
タイスのフルートによる優美な序曲から、メンノ・ホーチェスのメロウなギターを乗せた、ゆったりとしたナンバーへと続く。
FOCUSの楽曲は「10」や「11」など近作からがメインで、現在形フォーカスのメンバーたちのコンピという印象である。
各ソロからの楽曲は小曲が主体で、プログレ感触はさほどないのだが、それぞれのメンバーのセンスの一端が垣間見える。
ピエール・ファン・デル・リンデンの軽快なドラムは、ちゃんとフォーカスっぽいし、オルガンに重なるメンノのギターも優雅で、
ときにヤン・アッカーマンを彷彿とさせる。全体的には熱心なファン向けのアイテム化。ジャケはロジャー・ディーンだが。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 タイスのフォーカス度・8 総合・7.5
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FOCUS 「LIVE IN EUROPE」
オランダのプログレバンド、フォーカスのライブ。2009年作
ファンサイト限定で販売されていたCDで、ヨーロッパツアーからの音源をCD2枚に収録。
2006年作「9」から加入した、メロウなギターに、タイスの奏でるオルガンを重ね、随所にフルートが鳴り響く、
往年のフォーカスを思わせるアンサンブルで、デビュー作からのナンバーや、2nd「Moving Waves」収録の大曲「Eruption」、
叙情的な名曲「Sylvia」も披露。Disc2では、1974年作「Hamburger Concerto」からも数曲演奏していて、ゆったりとした
大人のフォーカスという味わいながら、叙情豊かなニルス・ヴァン・ダー・スティーンホーヴェンの巧みなギタープレイに、
タイスの優雅なオルガンも味わい深い。ラストはドラムソロを含む、15分に拡大された「Hocus Pocus」でタイスのヨーデルも健在。
ライブ演奏・8 優雅度・8 フォーカス度・8 総合・8
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SCHERZOO 「04」
フランスのチェンバー・ジャズロック、スケルズーの2018年作
フランソワ・トロを中心に、2011年にデビュー、本作4作目となる。マグマ+クリムゾンという趣だった初期2作から、
前作ではより優雅さを増し、メンバーチェンジをへた今作では、やわらかなオルガンにエレピが重なり、
カンタベリー的な軽妙な味わいと不穏な空気感が同居した、独自のジャズロックへと深化をしている。
ギターとサックスがいなくなった分、オルガンなどの鍵盤パートが増えたことで、音に棘がなくなってはいるが
ゆったりとしたアンサンブルの中にも、緊張感あるベースラインが奥行きある空間を描いていて、むしろ玄人好み。
優雅なカンタベ風ジャズロックを、チェンバー寄りの偏屈さで仕立て上げたというような逸品です。
ドラマティック度・7 ジャズロ度・8 優雅で不穏度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Anakdota 「Overloading」
イスラエルのプログレバンド、アナクドタの2016年作
優雅なピアノの旋律を乗せた、ジャズロック的な軽やかなアンサンブルに、きらびやかなシンセも加わり
マイルドなヴォーカルを乗せた、スタイリッシュな歌もの感触と、軽妙なテクニカル性が同居したサウンド。
ファルセットも使い分ける演劇的な歌声とともに、リズムチェンジを含むエキセントリックな展開力も覗かせて、
単なるジャズロックとも異なるシアトリカルな世界観に包まれる。曲によっては女性ヴォーカルも加わって、
しっとりとした優美な叙情を描くところは、同郷の名バンド、SHESHETなどを思わせる。
派手さはないが、あくまで優雅な味わいで楽しめる、繊細な男女声プログレ・ジャズロックの逸品です。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅で軽妙度・9 総合・8
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Univers Zero 「Phosphorescent Dreams」
ベルギーのチェンバーロック、ユニヴァル・ゼロの2014年作
1977年デビュー、暗黒系チェンバーロックの代表格。本作は10作目で、ギターとシンセ奏者が新たに加わった5人編成で、
優美なシンセにクラリネットが絡み、軽快なアンサンブルにギターも加わっての適度にロックな感触と
クラシカルなピアノなどの優雅な味わいが同居している。不穏な空気の中にもやわらかな美意識が感じられて、
クラリネットやサックスの音色に美しいピアノ、シンセとギターによるシンフォニックといってもよい耳心地もあって、
初心者にも聴きやすいかもしれない。10分を超える大曲も多いが、ほどよいダークさとともにわりとゆったりと楽しめる
クラシカル度・8 プログレ度・8 ダーク度・7 総合・8 過去作のレビューはこちら
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GUTS! 「ARDENSE」
ベルギーのアヴァン・ジャズロック、ガッツの1996年作
ギ・セガースや元UNIVERS ZEROのベースが参加、フランス語によるシャンソン風の中性的な歌声に、
ヴァイオリンやトランペットが絡み、ジャズロック的な優雅なアンサンブルの中ににシアトリカルな毒気を感じさせる。
ときにロック的なハードなギターが鳴り響いたり、ほどよくアヴァンギャルドなノリとスリリングな展開で、
スウィングジャズとシャンソンとチェンバーロックが混在したような、ある意味、ゴージャスな聴き心地である。
音にさほどダークさがないので、愉快なシャンソン風アヴァン・ジャズロックとして楽しめる異色作だ。
ジャズロック度・8 アヴァンギャル度・8 シャンソン度・8 総合・8
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THINKING PLAGUE 「A HISTORY OF MADNESS」
アメリカのチェンバーロック、シンキング・プレイグの2003年作
1984年にデビュー、Henry Cow、Art Bearsを受け継ぐ、アメリカきってのレコメン系バンドの3作目。
ピアノやシンセ、フルートやクラリネットを軽やかなリズムに乗せ、妖しい女性スキャットとともに、
優雅でミステリアスなアヴァンロックを構築する。美しい女性声を乗せたしっとりとしたパートから、
スリリングな緊張感をたたえたアンサンブルは、Art Bearsを思わせるアーティスティックな耳心地で、
サックスがフリーキーに鳴り響くナンバーや、アコースティックギターのつまびきなど、静寂パートを含む
ゆるやかな倦怠に優雅なアヴァンギャルド性が溶け込んでくる。バンドの芸術性が発揮された傑作だ。
アヴァンギャル度・8 スリリング度・8 優雅度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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The Spirit Of Christmas 「Lies To Live By」
カナダのサイケプログレ、スピリット・オブ・クリスマスの1974年作
Christmas名義で1970年にデビュー、本作はバンド名を変更しての実質的な3作目となる。
ユルめのギターにマイルドなヴォーカルを乗せた、ゆっりとしたサイケ感触とともに、
アコースティックを含む牧歌的な叙情に包まれたサウンド。プログレ的な感触は薄いが、
アルバム後半は、8〜11の大曲が続き、メロトロンに優美なピアノ、メロウなギターの旋律とともに
シンフォニックロック的なアプローチや、いくぶんアヴァンギャルドな緩急ある展開力も覗かせる。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 牧歌的度・8 総合・7.5
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Procol Harum 「The Prodigal Stranger」
ブリティッシュロックのベテラン、プロコル・ハルムの1991年作/邦題「放蕩者達の絆」
1967年にデビュー、1977年までに9作のアルバムを残して解散。本作は14年ぶりとなる復活作で、
3rd以来のオリジナルメンバーが集結、優美なシンセをギターに重ね、枯れた味わいのヴォーカルで、
大人の叙情ロックを聴かせる。オルガンが鳴り響くところは、かつてのプロコル・ハルムを思わせるが、
モダンなビート感による80年代的な雰囲気も感じさせる。オールドな味わいとキャッチーな部分のバランスもよく、
ロビン・トロワーの奏でるギターの旋律も随所に光っている。本作ののちバンドは再び沈黙。2003年の再復活を待つことになる。
メロディック度・7 プログレ度・5 大人の叙情度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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7/15
哀悼のプログレ(225)

THE FLOWER KINGS 「BY ROYAL DECREE」
スウェーデンのプログレバンド、フラワー・キングスの2022年作
1995年にデビュー、北欧プログレを代表するバンドの通算15作目。今作もまたCD2枚組の大作で、
優美なシンセにハッセ・フレベリの味わいのある歌声、ロイネ・ストルトのメロウなギターとともに、
ゆったりとした大人のシンフォニックロックが広がってゆく。オルガンやムーグなど、ヴィンテージなシンセの音色には
70年代プログレへのリスペクトも感じられ、優しいヴォーカルメロディは「Stardust We Are」の頃を思わせるところもある。
全体的には肩の力の抜けた味わいであるが、ヨナス・レインゴールドのベースの存在感がアンサンブルを支えていて、
軽やかなサウンドの中にどっしりとした芯を感じさせる。ドラマティックな大曲はないが、大人の優雅さに包まれた好作品だ。
ドラマティック度・7 プログレ度・8 優雅度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Edwin Durant Kovtun (COLIN EDWIN/JON DURANT/INNA KOVTUN)
Porcupine Treeのベース、コリン・エドウィン、アメリカのギタリスト、ジョン・デュラント、
ウクライナの女性シンガー、インナ・コヴトゥンによるユニット。2019年作
打ち込みによるドラムに叙情的なギター、エモーショナルな女性ヴォーカルを乗せた、無国籍感漂うサウンドで、
母国語の歌声によるトラッド寄りの土着的な哀愁とロックの質感とが、ほどよくミックスされた作風。
コリン・エドウィンのベースは目立ちすぎず、あくまで歌声を支えているという印象で、
派手なインパクトはないが、スタイリッシュな女性声トラッドロックが味わえる異色作だ。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 女性Vo度・8 総合・7.5
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STERN-COMBO MEISSEN 「Weises Gold (WEISSES GOLD)」
旧東ドイツのプログレバンド、シュテルン・コンボ・マイセンの2018年作
バンドの代表作である、1979年作「錬金術師」を、4つのバージョンで2CDに収録した完全版。
Disc1には、1978年の初期バージョンと、1979年のオリジナルを収録。きらびやかなシンセとともに
軽やかな展開力で描かれるサウンドは、初期バージョンでもすでに完成していて、オリジナル以上に躍動的
優美なオルガンの音色とムーグシンセで、EL&Pをルーツにしたクラシカルな鍵盤プログレが楽しめる。
Disc2には、2001年と、2018年の再録バージョンを収録。よりスタイリッシュなアレンジになっていて、
2018年版は、往年のプログレ感触に加えて、シンフォニックな優雅さも際立っている。
クラシカル度・8 プログレ度・8 キーボー度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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STERN-COMBO MEISSEN 「Bilder Einer Ausstellung -The Rock Version」
ドイツのプログレバンド、シュテルン・コンボ・マイセンの2015年作
2014年に行われた、ムソルグスキー「展覧会の絵」をロックアレンジしたライブをCD+DVDに収録。
バンド編成にフルオーケストラを加えたステージで、クラシカルな優雅さとロックのダイナミズムを含んだ
壮麗なシンフォニーで「展覧会の絵」を構築する。EL&Pに比べるとロック的な派手やかさはないものの、
より緻密で繊細なアプローチで、73分におよぶ組曲を再現してゆく。DVDでは各演奏者のアップを含む
オーケストラの映像も楽しめ、Cyrilでも活躍する若き鍵盤奏者、マヌエル・シュミットのオルガンやムーグなど
アナログシンセを巧みに操る姿や、ドイツ語による爽やかなヴォーカルも随所にアクセントになっている。
ライブ演奏・8 ライブ映像・8 クラシカル度・9 総合・8
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PANTA RHEI
ハンガリーのプログレバンド、パンタ・レイの2018年作
70〜80年代にかけて活動していたバンドで、1997年の未発音源集「Epilogus」からの楽曲を中心に
ライブや未発音源を加えた内容。のっけから22分という組曲で、クラシカルなピアノと優美なシンセに、
男女の混声コーラスを乗せた、The Enidにも通じる典雅なシンフォニックロックから、ムーグシンセが鳴り響く
軽やかなサウンドになると、Solarisなどに通じる雰囲気もある。クラシカルなメロディをロックアレンジで聴かせるという点では、
NICEEKSEPTIONにも近いかもしれないが、曲によってはエレクトロなアレンジのスペイシーなシンセサウンドになる。
コンピレーション的な寄せ集め感はあるのだが、知られざる東欧バンドの楽曲を聴けるようになっただけで感謝ですな。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 キーボー度・8 総合・7.5
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Eureka 「Great Escapes」
ドイツのプログレバンド、エウレカの2015年作
Frank Bossertによるプロジェクトで、1997年にデビュー、本作は5作目となる。ほどよくハードで叙情的なギターに
きらびやかなシンセアレンジとマイルドなヴォーカルを乗せ、キャッチーでスタイリッシュなサウンドを描く。
EVERONあたりにも通じる優雅なハードプログレの感触も覗かせつつ、泣きのギターと優美なシンセによる
シンフォプログレとしての魅力もあって、3〜4分前後の小曲から、10分という大曲もあり、派手さはないものの、
やわらかな叙情に包まれる。ちなみに、本作はRPWLのYogi Langがミックス&マスターを手掛けている。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優美度・8 総合・7.5
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Grobschnitt 「Merry-Go-Round」
ドイツのプログレバンド、グローブシュニットの1979年作
1972年にデビュー、クラウトロックを代表するバンドで、本作は5作目のスタジオアルバム。
遊園地=理想郷をテーマにしたコンセプト作で、美麗なシンセアレンジに叙情的なギター、
いくぶん野太いヴォーカルを乗せた、シンフォニックロック寄りの優雅なサウンドを聴かせる。
メロウなギターとシンセによる、ユートピア的なイメージのゆったりとしたパートも多いのだが、
どことなくサイケ風のユルサもあるのがこのバンドらしい。エロックのドラムもさすがの演奏力。
2015年再発盤はリマスターで音質が向上、1978〜79年のライブ音源などをボーナス収録している。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 優美度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Grobschnitt 「Die Grobschnitt Story 1」
ドイツのプログレバンド、グローブシュニットのライブ作品。1994年作
バンドのリーダーでドラマーの、Eroc監修による、70年代の音源を中心にしたライブアーカイブ作品。
ドイツ語による語りを含んだ、ANGEにも通じるシアトリカルな雰囲気のイントロから、観客の声援とともに
優美なシンセとほどよくハードで叙情的なギターに、野太めのヴォーカルを乗せた、独自のサウンドを展開。
MCも含めたライブの臨場感や、メンバーによるコメントなども挟み、当時のバンドの雰囲気が味わえるのはいいが、
楽曲だけを楽しみたいという型には、少々ウザったいかも。Disc2では、37分におよぶ組曲「Solar Music」も収録。
シンフォニック、サイケなどが混在した独自のクラウトロックが味わえる。CD2枚で155分のボリュームです。
ライブ演奏・8 ドラマティック度・8 プログレ度・7 総合・8
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Grobschnitt 「Die Grobschnitt Story 2」
ドイツのプログレバンド、グローブシュニットのライブ作品。1994年作
Eroc監修による、ライブアーカイブ作品のパート2。70年代〜80年代初頭の音源を中心に、イタンビューなどもはさみつつ、
バンドの歴史を俯瞰する内容。デビュー前の1968年の音源では、Steppenwolf「Born To Be Wild」のカヴァーも披露。
ライブでのMCや観客とのやりとりも多いのだが、ドイツ語なので、演劇的なセリフなどが延々と続くところなどは、
理解できないと長尺に思えてしまう。優雅なシンフォニックロック風味から、コミカルなナンバーなど、とりとめがない感じだが、
Disc2では、キャッチーなハードプログレ風味から、サイケシンフォ的な大曲まで、このバンドらしさが楽しめる。
ライブ度・7 ドラマティック度・7 プログレ度・7 総合・7.5
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Grobschnitt 「2010 Live」
ドイツのプログレバンド、グローブシュニットのライブ。2010年作
1977年作「Rockpommel's Land/おとぎの国へ」全曲を含むセットリストで、SEによるイントロから、
叙情的なツインギターに美麗なシンセを重ね、きらびやかなシンフォニックロックを展開する。
いくぶんダーティなヴォーカルも演劇的な味わいになっていて、GENESISANGEの流れをくむ、
シアトリカルなシンフォニックロックとしても楽しめる。ときに繊細で優美な叙情も覗かせつつ、
緩急ある流れとともに、10分、20分という大曲をじっくりと構築する、その演奏力もさすがである。
代表作の完全再現として意味あるライブ作品だ。2008年のライブ音源とカップリングした2CDバージョンもあり。
ライブ演奏・8 ドラマティック度・8 プログレ度・8 総合・8
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Klaus Schulze 「La Vie Electronique 7」
クラウス・シュルツェの未発音源集その7。2010年作
1978〜1979年の音源をCD3枚に収録。Disc1は1979年のライブ音源で、シーケンサーのリフレインとシンセの重ねで、
ゆったりとしたスペイシーなサウンドを描く。後半の大曲では、アナログシンセによるシンフォニックな味わいの中に、
アーサー・ブラウンが参加しての、語りを含む歌声や、絶叫するパートなどもあり、シアトリカルな雰囲気も感じさせる。
Disc2は、1978〜79年、アルバム「X」、「Dune」制作時期の音源で、幻想的なシンセの音色が広がりつつ、
ドラムも加わったロック的なリズムを含むダイナミックな流れで楽しめる。後半の大曲は、スペイシーな不穏さと
未知の空間を描くような、「デューン」に通じるサウンドを展開。Disc3は、1978年に録音されたサントラ用音源で
SE的なシンセにヴァイオリンなども加わって、ミステリアスな世界観を淡々と構築する。
ドラマティック度・8 幻想度・8 シンセ度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Klaus Schulze 「La Vie Electronique 13」
クラウス・シュルツェの未発音源集その13。2013年作
1993〜1994年のスタジオ音源をCD3枚に収録。「喜びのマーチ」と題されたDisc1は、優美なシンセの重ねによる
オーケストラルな雰囲気で、シンセのリフレインを主体にしつつ、幻想的でクラシカルな優雅さに包まれながら、
しっとりとした組曲的な流れで味わえる。Disc2は、オペラティックな男女声を乗せた、エレクトロなアレンジの曲から、
後半は、「アーサー・スタンリー・ジェファーソン」という、アメリカの喜劇役者をテーマにした56分の組曲で、
打ち込みによるリズムにデジタルなシンセの重ねで、トランスの感のあるリフレインで、淡々とした聴き心地。
Disc3は、シーケンサーのリズムにエレクトロなシンセと、男性声、女性声のコーラスなども乗せた、
わりとポップな感触のサウンドで、ダークな雰囲気というのはあまりない。
ドラマティック度・7 幻想度・7 シンセ度・8 総合・7.5
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Klaus Schulze 「La Vie Electronique 16」
クラウス・シュルツェの未発音源集その16。2015年作
Disc1は、2001年の未発音源から始まり、デジタルなシンセとドラムが重なったモダンなサウンドから
2曲目は、1972年の音源で、タイムスリップしたようにアナログシンセが響き渡る、「イルリヒト」にも通じる作風。
1976年のライブ、1978年の音源も幻想的なシンセサウンドで、1985年のライブになるとデジタルなビート感に包まれる。
Disc2は、1977年のライブ音源で、スペイシーなシンセの重ねにドラムも加わった、ライブならではの生々しさが味わえる。
Disc3には、1981年のライブをメインに、1990年、1993年の音源を収録。Disc4は、1981年のライブに、1984〜85年の音源、
1973年のライブを収録。Disc5は、1991〜92年、1989年、2002年、2000年、1970年と、わりと年代はバラバラであるが、
総じて幻想的なシンセサウンドが味わえる。ラスト曲はシュルツェのドラムソロ。CD5枚分の大ボリュームの未発音源です。
ドラマティック度・8 幻想度・8 シンセ度・9 総合・8
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EKSEPTION 「Beggar Julia's Time Trip」
オランダのクラシカルロック、エクセプションの1970年作
のちにTRACEを結成するリック・ヴァン・ダー・リンデンが率いるバンドの2作目で、バンドの代表作。
サックスやトロンボーン、フルートなどのブラスアレンジに、クラシカルなピアノ、オルガンが重なり、
語りを挿入したストーリー性とともに、優雅で牧歌的な叙情に包まれる。優美なチェンバロの音色に
トランペットが鳴り響き、クラシックの旋律をブラスが奏でつつ、やわらかなオルガンが包み込む。
バッハやチャイコフスキーの楽曲を、巧みにロックアレンジするセンスは、のちのTRACEにも通じるだろう。
クラシカル度・9 プログレ度・7 優雅度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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KAYAK 「THE GOLDEN YEARS OF DUTCH POP MUSIC」
オランダのメロディックロック、カヤックのアンソロジーベスト。2015年作
1973年デビューのベテラン、本作はシングル曲をメインにした2枚組のアンソロジーで、
Disc1には、1973〜78年のシングルナンバーを、Disc2には1978〜81年のナンバーを収録。
きらびやかなシンセに優雅なヴォーカルハーモニー、随所に泣きのギターも覗かせて、
キャッチーなポップ感のカヤック流プログレハードが楽しめる。B面曲にはCD初出のものもあり、
アルバムを網羅しているファンでもわりと新鮮に楽しめる。楽曲はほとんどが2〜3分前後ながら、
「Starlight Dancer」や「Irene」などの名曲にはぐっとくる。全42曲バンドの黄金期を俯瞰できる2CD。
メロディック度・9 プログレ度・7 優美度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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7/1
猛暑のプログレ(210)


ISILDURS BANE & PETER HAMMILL 「IN DISEQUILIBRIUM」
スウェーデンのプログレバンド、イシルドゥルス・バーネとピーター・ハミルのコラボ作。2021年作
2019年作「In Amazonia」に続く2作目で、それぞれ3パート、4パートに分かれた大曲2曲という構成。
エレクトロなシンセアレンジにギターを重ね、優雅なマリンバの音色にトランペットも鳴り響き、
ピーター・ハミルの味わいのある歌声で、モダンでスタイリッシュなサウンドを描いてゆく。
ミステリアスでほどよくアヴァンギャルドというサウンドは、まさしく「VDGG+イシバネ」という感じながら、
メロトロンやムーグなどのヴィンテージなシンセや、ヴァイオリンやトランペットなども加わった、
シンフォニックなチェンバーロックとしても楽しめる。ハミルの歌声を活かした見事な逸品です。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 優雅度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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ALWANZATAR 「DEN GLEMTE DALEN」
ノルウェーのエレクトロ・プログレ、アルワンザターの2021年作
TUSMORKEのKristoffer Momrakによるソロプロジェクトの4作目で、妖しくフルートが鳴り響き、
アナログシンセがスペイシーに重なって、いかにもサイケデリックなエレクトロ・プログレを展開。
シンセをメインにしつつ、シーケンサーや打ち込みによるドラムも入るので、前作よりはメリハリのある
いくぶんのロック感触とともに、8〜11分前後の大曲をユルめに描いてゆく。サウンドを包み込む
幻想的な妖しさに強度が加わったことで、じっくりと浸れるようになった。Tangerine Dream
北欧の土着的な空気を加えたというような、異色のサウンドが楽しめる好作です。
スペイシー度・8 サイケ度・8 エレクトロ度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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KHADAVRA 「HYPNAGOGIA」
スウェーデンのプログレバンド、カダヴラの2019年作
2014年にデビューし、2作目となる。シンセによるサイケなイントロから、ギターのリフレインにシンセやピアノを重ね、
アナログ感たっぷりのアンサンブルで、ANEKDOTENをサイケ寄りにしたようなヴィンテージなサウンドを聴かせる。
母国語によるヴォーカルとともに、神秘的な土着性に包まれつつ、軽やかなリズムチェンジにオルガンが鳴り響き、
わりとハード寄りのギターが楽曲を彩る。北欧らしい涼やかな叙情性に包まれつつ、大曲でのメリハリのある構築力は
ANGLAGARDを思わせるところもあるが、もっとユルめの幻想性を感じさせるのが、このバンドの個性だろうか。
ラストは27分という大曲で、北欧シンフォとサイケの合間を行き来する、オールインストながらスリリングな展開が見事。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 北欧度・8 総合・8
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RPWL 「The Rpwl Live Experience」
ドイツのプログレバンド、RPWLのライブ。2009年作
SYLVANとともにドイツを代表するネオプログレ系バンドで、本作は、2008年作のツアーを収録した2CDのライブ作品。
同作からのナンバーに加え、2nd「Trying To Kiss The Sun」、4th「World Through My Eyes」からのナンバーも披露。
メロウな泣きのギターにうっすらとしたシンセを重ね、マイルドなヴォーカルとともに、ゆったりとしたサウンドを描く。
いくぶん翳りを帯びた、PINK FLOYDルーツの繊細な叙情に包まれた耳心地に、ときにオルガンが鳴り響き
いくぶんハードなギターもまじえてのロック感と、キャッチーな歌もの感触もあって、全体的にも普通に聴きやすい。
シンフォプログレとしてはこれという新鮮さはないのだが、キャリアのあるバンドらしい安定したライブが楽しめる。
ライブ演奏・8 プログレ度・7 優雅度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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RPWL 「Plays Pink Floyd」
ドイツのプログレバンド、RPWLのライブ。2013年作
タイトル通り、ピンク・フロイドの楽曲をカヴァーしたライブを収録。未発扱いだった大曲「The Embryo」や、
「原子心母」収録「Atom Heart Mother」、「ウマグマ」収録「The Narrow Way」など、初期のナンバーを主体に、
オルガンが鳴り響き、オールドな感触のギターとともに、70年代初頭の空気まで再現するような演奏を聴かせる。
原曲の雰囲気に忠実にしつつ、「原子心母」収録「Fat Old Sun」は、19分に拡大された壮大なシンフォニックロックになり、
なかなか聴きごたえがある。ラストは2nd「神秘」から「光を求めて」。フロイド愛に満ちた、見事なカヴァーライブです。
ライブ演奏・8 プログレ度・8 フロイ度・9 総合・8
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RPWL 「God Has Failed - Live & Personal」
ドイツのプログレバンド、RPWLのライブ。2021年作
2000年のデビュー作、「God Has Failed」の20周年として、スタジオライブで完全再現した作品。
叙情的なギターにシンセを重ね、マイルドなヴォーカルに二人の女性コーラスも加えた、ゆったりとしたサウンドで、
PINK FLOYDをルーツにした、スタイリッシュな薄暗系プログレの先駆けといってよい作風だろう。
ギルモアばりの泣きのギターメロディが耳心地よく、美しい女性ヴォーカルが前に出たパートなども優美な味わいだ。
キャリアを重ねた演奏の表現力が加わっていて、かつてのアルバム以上にエモーショナルなサウンドが味わえる。
ライブ演奏・8 プログレ度・7 叙情度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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LEGACY PILOTS 「CON BRIO」
ドイツ出身のマルチ・ミュージシャンによるプロジェクト、レガシー・パイロッツの2018年作
マルコ・ミンネマンをはじめ、STYXのトッド・ズッカーマン、MARILLIONのスティーヴ・ロザリー、ARENAのジョン・ミッチェル、
DEEP PURPLE/FLYING COLORSのスティーヴ・モーズなど、そうそうたるメンバーが参加、優美なシンセにギターを重ね、
巧みなドラムとともに、キャッチーでスタイリッシュなサウンドを聴かせる。ジェントルなヴォーカルが加わったナンバーでは、
翳りを帯びた大人の叙情を感じさせ、ゆったりとしたポストプログレ寄りの雰囲気に。全体的に、派手なインパクトはないが、
ときにオルガンが鳴り響く、古き良きプログレ感触と、モダンでスタイリッシュな味わいが同居した好作です。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 叙情度・8 総合・7.5

HUXLEY WOULD APPROVE 「GRAVE NEW WORLD: PART ONE」
ドイツのミュージシャンとカナダの作詞家によるユニット、ハクスレイ・ウッド・アプローヴの2016年作
「自己発見の旅」をコンセプトに、うっすらとしたシンセにほどよくハードでメロウなギター、
マイルドなヴォーカルを乗せた、PINK FLOYDルーツの翳りを帯びた叙情に包まれたサウンド。
随所に女性ヴォーカルを加えた優雅な味わいと、エレピやオルガンを含むシンセワークで、
ゆったりとした繊細なシンフォニックロックとしても楽しめる。これという派手な盛り上がりはないが、
コンセプト的な流れで楽曲を連ねた耳心地の良さが光る。ただ全41分は少し物足りないか。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 ゆったり叙情度・8 総合・7.5
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ORION DUST「LEGACY」
フランスのプログレバンド、オリオン・ダストの2018年
2016年にデビューし、2作目となる。アコースティックギターのつまびきに妖しい女性ヴォーカルの歌声、
優美なシンセアレンジやエレキギターにドラムも加わった、フォークプログレ風の優雅なサウンドを聴かせる。
ときにハードなギターにオルガンを重ねた、ヴィンテージな感触や、ヒステリックなヴォーカルによる
エキセントリックな雰囲気も覗かせるなど、わりと振り幅の大きな作風。8〜9分という長めのナンバーも、
オールドロック風味から、優美なアコースティックパート、メロウで叙情的なギターに、怪しい詠唱なども含んだ、
先の読めない展開力でじっくりと聴かせる。全体的には、つかみどころがないのだが、それが個性なのかも。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 女性Vo度・7 総合・7
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SAENA 「Dias eternos」
メキシコのプログレバンド、サエナの2021年作
2008年以来、13年ぶりとなる2作目。Jose Luis Fernandez Ledesmaを中心に、女性Vo&シンセ奏者に
ウォーギター奏者を含む編成で、軽やかなリズムに、ギターやシンセを乗せた巧みなアンサンブルで、
スリリングなインストパートを構築、ときにアコーディオンやヴァイオリンの優雅な音色も加わって、
スキャット的な女性ヴォーカルを乗せて、クリムゾン的でもあるほどよいヘヴィネスと緊張感が同居、
幻想的な浮遊感に包まれたサウンドを描く。テクニックのあるドラムを中心にした軽妙なテクニカル性と、
ピアノやギターの繊細な旋律がバランスよく融合した作風で、耳心地は優しくなにげに複雑という玄人好みのセンス。
10分を超える大曲でも、濃密に盛り上がるというよりは、あくまで優雅で自然体のアンサンブルを聴かせる。
幻想度・8 軽妙度・9 優雅度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Cast 「Laguna de Volcanes」
メキシコのプログレバンド、キャストの2000年作
いまや世界最高のシンフォプログレバンドとなった彼らの、1994年のデビュー作から、1999年の8作目までの楽曲に、
シンセ奏者のLuis Alfonso Vidalesのソロからのナンバーも加え、2CDに収録したベストアルバム。
きらびやかなシンセワークにこれでもかと叙情メロディを奏でるギター、わりと激しめのドラムとともに、
濃密にして優雅なサウンドを展開。スペイン語のヴォーカルも加えた哀愁の叙情性に、優美なフルートの音色
クラシカルなピアノなど、繊細さとダイナミズムが交差する、じつに日本人好みのシンフォプログレである。
10分を超える大曲も多いが、緩急ある構築力で飽きさせないアレンジは、さすがの実力バンドです。
ドラマティック度・9 プログレ度・8 優雅で濃密度・9 総合・8.5 過去作のレビューはこちら
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GABRIEL AGUDO 「NEW LIFE」
アルゼンチンのミュージシャン、ガブリエル・アグドの2020年作
BAD DREAMSのシンガーで、 In Continuumにも参加するミュージシャン。ソロとしては1作目で、
スティーブ・ロザリー、クライブ・ノーラン、デイヴ・カーズナー、フェルナンド・ペルドモなどがゲスト参加している。
美しいシンセにヴァイオリンが鳴り響き、エモーショナルなヴォーカルを乗せた、壮麗なシンフォニックロックを展開。
アコースティックギターによる繊細な叙情から、ハードなギターやテクニカルなドラムによるスタイリッシュな感触もあり、
キャッチーなメロディのフックとクラシカルな優雅さが同居。メロトロンが鳴り響き、メロウなギターフレーズで
ゆったりと聴かせるシンフォニックロック風味から、牧歌的な歌ものパートまで、南米らしい優美な聴き心地で楽しめる。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 優雅度・8 総合・8
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SEMENTE
ブラジルのプログレバンド、セメンテの1999年作
妖しくフルートが鳴り響き、うっすらとしたシンセに叙情的なギターのインストをメインに、
ポルトガル語による女性ヴォーカルを乗せた、幻想的なシンフォニックロックを展開する。
スリリングな展開はさほどなく、11分の大曲もゆったりとしたギターフレーズとオルガンなどのシンセ、
男性ヴォーカルも加わって、牧歌的ながら、ほどよく辺境感のあるサウンドを描いてゆく。
サックスが鳴り響く優雅な味わいに、アコースティックギター、フルートなどで聴かせる繊細なパートも覗かせる。
全体的には、派手な盛り上がりがないので、シンフォプログレとしてはいくぶん物足りなさもある。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・8 総合・7.5

La Nuova Era
イタリアのシンフォニックロック、ラ・ヌオヴァ・エラの1984年作
シンフォプログレバンドのNuova Eraとは別バンドで、本作は唯一のアルバムのようだ。
やわらかなシンセにアコースティックギター、ピアノやフルートも加えた、しっとりと繊細なサウンド。
シンセとアコギをメインにした、GANDALFにも通じる優雅で幻想的なインストを描きつつ、
ネオフォーク寄りの神秘的な雰囲気もあって、ゆったりと鑑賞できる。楽曲は2〜4分前後で、全32分。
ロック感触はほとんどないので、プログレとしては物足りなさはあるが、マイナー系シンフォ好きはチェック。
ドラマティック度・7 プログレ度・5 優美度・8 総合・7.5

UNDER THE SUN 「Schematism: On Stage With」
アメリカのプログレバンド、アンダー・ザ・サンのライブ。2005年作
2000年にMAGNA CARTAレーベルから1作のみを残して消えたバンドで、本作は2001年のライブを収録。
優美なシンセに適度にハードなギターを重ね、ハイトーンのヴォーカルを乗せた、軽やかなサウンドで、
随所に流麗なフレーズを奏でるギターや、オルガンを含むきらびやかなシンセがよい味を出している。
8分前後の大曲を主体に、アルバム未収録の13分の組曲なども、いくぶんProgMetal色も含ませながら
緩急ある巧みなアンサンブルで、じっくりと構築してゆく。ヴォーカルの弱さはあるのだが、演奏力は高く、
キャッチーで優雅なハードプログレとしては、なかなか楽しめるバンドであった。本作は唯一のライブ音源。
ライブ演奏・8 フログレ度・8 優雅度・8 総合・7.5
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6/24
英国&イタリアンプログレ!(195)

CLIVE NOLAN/OLIVER WAKEMAN「DARK FABLES」
イギリスのミュージシャン、クライヴ・ノーランとオリヴァー・ウェイクマンによる2021年作
2人のユニット作としては、1999年作「ジャバーウォック」、2002年作「バスカヴィル家の犬」とあるが、
本作は、3作目に予定していた「フランケンシュタイン」用に作られた未発音源を収録している。
きらびやかなシンセアレンジを中心にしたシンフォニックロックで、元Twelfth Nightのアンディ・シールズ、
元ARENAのポール・マンズィがヴォーカルでゲスト参加。女性シンガーが参加したしっとりとしたナンバーなど、
幻想的な翳りを帯びた世界観と、二人の奏でる優美な鍵盤プレイで、全体的にはゆったりと楽しめる内容。
楽曲自体は2〜4分前後の小曲が多く、ドラマティックな盛り上がりがもう少し欲しかったが、そこは未発曲なので。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優美度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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TIGER MOTH TALES 「THE DEPTHS OF WINTER」
イギリスのシンフォニックロック、タイガー・モス・テイルズの2017年作
全盲のミュージシャン、ピート・ジョーンズによるプロジェクトで、2014年にデビュー、本作は3作目となる。
タイトル通り、冬をテーマにしたコンセプト作で、優美なシンセワークを中心にマイルドなヴォーカルと、
随所にホルンやトロンボーンなどのブラスも加えて、物悲しい精細な叙情美に包まれたサウンドを描く。
メロウなギターの旋律による泣きの叙情とともに、GENESISルーツのシンフォニックな美意識に包まれ
10分を超える大曲もしっとりと優美に聴かせる。MOON SAFARIあたりに通じるキャッチーな味わいも覗かせつつ、
軽やかなアンサンブルで耳心地の良いサウンドが楽しめる。うるさすぎない優雅なシンフォプログレの逸品です。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優美度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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TIGER MOTH TALES 「A VISIT TO ZOETERMEER」
イギリスのシンフォニックロック、タイガー・モス・テイルズのライブ。2019年作
CAMELのツアーキーボードとしても活躍するミュージシャンで、本作は2019年オランダでのライブをCD+DVDに収録。
ギター、ベース、ドラムにRED BAZARのメンバーが参加してのバンド編成、2016年作「Story Tellers Part Two」
デビュー作「Cocoon」からのナンバーを中心にしたセットで、やわらかなシンセワークにジェントルな歌声で、
優美なシンフォニックロックを聴かせる。ピアノをメインにした弾き語りのような繊細なナンバーなども含め、
全体的にも自然体な力みのなさで、スリリングな部分は希薄であるが、1st収録の14分超えの大曲なども、
丁寧な演奏でじっくりと構築している。DVDには同ライブの映像に加え、PVを5曲収録。
ライブ演奏度・8 プログレ度・7 優雅度・8 総合・8
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JADIS 「AS DAYLIGHT FADES」
イギリスのプログレバンド、ジャディスのライブ。1998年作
1992年にデビュー、本作は1996年のイギリスでのライブを収録。流麗なギターのメロディに
きらびやかなシンセを重ね、マイルドなヴォーカルとともに、優雅なシンフォニックロックを聴かせる。
デビュー作「More Than Meets The Eye」からのナンバーを主体に、2nd、3rdの楽曲も披露、
アルバム以上に躍動的な演奏で、ゲイリー・チャンドラーの奏でる叙情的なギターがたっぷり味わえる。
同時期のARENAPENDRAGONとともに、90年代英国シンフォの魅力が詰まったライブ作品だ。
ライブ演奏・・8 プログレ度・8 叙情度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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SYNDONE 「KAMA SUTRA」
イタリアのプログレバンド、シンドーネの2021年作
1992年にデビュー、いまやイタリアを代表するプログレバンドのひとつ。8作目の本作は、タイトル通り、
インドの性愛論書「カーマ・スートラ」をテーマに、オリエンタルなイントロから、オルガンが鳴り響く、
ヴィンテージなロック感触と、ジェントルなヴォーカルを乗せた歌もの的なキャッチーな雰囲気が同居したサウンド。
軽やかなピアノやストリングスを加えたクラシカルな優雅さに、ジャズロック的な軽妙なリズムチェンジ、
艶めいた女性ヴォーカルも加わった、しっとりとした叙情美など、変幻自在のアレンジはさすがというところ。
3〜5分前後の小曲を連ねた構成で、派手な盛り上がりは薄いが、流れのあるドラマ性でじっくりと鑑賞できる。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 優雅度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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IL BACIO DELLA MEDUSA「ANIMACUSTICA」
イタリアのプログレバンド、バシオ・デッレ・メデューサの2020年作
2008年にデビュー、本作は、2019年イタリアでのアコースティックライブを収録。
女性フルート奏者を含む6人編成で、優美なピアノとシンセにアコースティックギターのつまびき、
やわらかなフルートが鳴り響き、イタリア語のヴォーカルを乗せて、繊細な叙情美を描いてゆく。
ピアノの旋律にサックスも加わった、軽やかなアンサンブルのジャズタッチのナンバーも含め、
バンドとしての演奏力の高さを聴かせてくれる。11分という大曲では、クラシカルな美意識も覗かせ
アコースティックであるが、繊細なシンフォニックロックとしても楽しめる、全78分の好ライブ作品。
ライブ演奏・8 プログレ度・7 優雅度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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ALTARE THOTEMICO「SELFIE ERGO SUM」
イタリアのプログレバンド、アルターレ・トーテミコの2020年作
2009年にデビュー、本作は7年ぶりとなる3作目で、いくぶんダークなイントロから、
イタリア語による野太いヴォーカルと、ハードなギターにシンセを重ねた重厚なサウンドを描く。
女性ヴォーカルも加わった妖しく耽美な雰囲気に、ときに優雅なサックスも鳴り響きつつ、
ヴィンテージなハードロック感触と、ゆったりとした浮遊感が現れる、振り幅の大きな作風だ。
9分の大曲では、プログレらしい展開力も覗かせる。異色のイタリアン・ハードプログレです。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 耽美でハード度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Il Castello Di Atlante「Siamo Noi I Signori Delle Terre A Nord - 25th Anniversary Edition」
イタリアのプログレバンド、イル・カステッロ・ディ・アトランテの2018年作
1993年のデビュー作「我こそは北の大地を支配するものなり」を、25周年記念でリメイクした作品で、
優美なシンセとメロウなギターを乗せた軽やかなアンサンブルに、イタリア語のヴォーカルを乗せ、
やわらかなピアノにヴァイオリンも鳴り響く、優雅でキャッチーなシンフォニックロックが楽しめる。
年を経たことでヴォーカルにも味わいが出ていて、いくぶん軽めのB級シンフォだったオリジナルに比べ、
哀愁を含んだ繊細な叙情美が際立ってきている。聴き比べるもよし、新作としても普通に楽しめる出来ですね。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 優雅度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Il Rovescio Della Medaglia 「Tribal Domestic」
イタリアンロックバンド、ロヴェッショ・デッラ・メダーリャの2016年作
1971年にデビュー、2011年の復活作以来、5年ぶりの作品で、のっけから15分という組曲で幕を開ける。
艶やかなストリングスに流麗なギターが絡み、クラシカルな優雅さとヴィンテージなロックが融合、
オリジナルギタリストであるエンツォ・ヴィタのギタープレイをたっぷり盛り込んだ、ハード・シンフォニックロックを展開。
オルガンやメロトロンなどのシンセに、ピノ・ヴァラリーニによるイタリア語の伸びやかなヴォーカルも加わり、
クラシカルなオーケストラパートを含むダイナミックな構築力が素晴らしい。2曲目からは、初期のRDMを受け継いだ
70年代ハードロック風味の作風ながら、巧みなギターにオルガンを重ねたベテランらしい濃密なイタリアンロックである。
クラシカル度・8 プログレ度・7 イタリア度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Goblin 「Four of a Kind」
イタリアンロックバンド、ゴブリンの2015年作
GOBLIN REBIRTH、CLAUDIO SIMONETTI'S GOBLINなど、分派バンドもあるが、こちらは、本家によるオリジナルアルバム。
黄金期のギター、ベース、ドラムに加え、New Goblinにも参加した、マウリツィオ・グアリーニをシンセに迎えた編成で、
ほどよくハードにして叙情的なギターと、雰囲気のあるシンセワークを中心に、往年のゴブリンを受け継ぐ、
ミステリアスなシネマ性のあるインストサウンドを展開。ときにサックスも鳴り響き、やわらかなピアノとシンセに、
マッシモ・モランテのメロウなギターワークがじつに良いのです。全体的にゆったりと優雅に楽しめつつ、
古き良きプログレ感触もしっかりと残しているのが素晴らしい。シモネッティなしでもここまでの作品が作れるとは。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 ゴブリン度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Goblin 「Austinato」
イタリアンロックバンド、ゴブリンのライブ。2016年作
2014年の活動40周年ツアーから、アメリカのライブを2CDに収録。TITANのスティーヴ・ムーアをサポートシンセに迎えた5人編成で、
きらびやかなツインキーボードを適度にハードなギターに重ねて、ゴブリンらしいスリリングなインストサウンドを聴かせる。
2005年作「BACK TO THE GOBLIN」から、「サスペリア2」、「ローラー」、「マークの幻想の旅」など、往年の作品のナンバーも披露、
スタイリッシュにアレンジしすぎることなく、70年代の香りを残した空気感を再現していて、オールドなファンにも嬉しい耳心地だ。
Disc2では、「ローラー」からの大曲「ゴブリン」や、「ゾンビ」からのナンバーも聴かせてくれ、バンドのキャリアを総括するような好ライブです。
ライブ演奏度・8 プログレ度・8 ゴブリン度・9 総合・8
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MAURIZIO GUARINI 「A GOBLIN'S CHAMBER」
イタリアのミュージシャン、マウリツィオ・グアリーニの2019年作
GOBLINのシンセ奏者で、本作はストリングスカルテットを迎えて、「ゾンビ」や「サスペリア」など、ゴブリンの代表曲に
自身のソロ楽曲を室内楽アレンジでリメイク。優美なピアノの旋律に艶やかなヴァイオリン、ヴィオラ、チェロが絡む、
クラシックのような優雅なサウンド。ロック感触は薄めなので、ゴブリンの曲と言われなければ気づかないものもあるが、
曲によってはドラムも入って、とくに「ゾンビ」あたりは艶やかなストリングスがスリリングな味わいになっている。
ダークなイメージの楽曲も多いので、わりとチェンバーロック的にも鑑賞できて、これはこれで楽しめますな。
クラシカル度・9 ロック度・2 ゴブリン度・7 総合・7.5
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Banco Del Mutuo Soccorso 「En Concierto Mexico City」
イタリアのプログレバンド、バンコ・デル・ムトゥオ・ソッコルソのライブ。2000年作
PFMとともに、イタリアンプログレを代表するバンド、1999年メキシコでのステージを2CDに収録。
1994年作「13」収録曲でゆったりと始まり、フランチェスコ・ジャコモの伸びやかな歌声とともに、
優雅な大人のサウンドを聴かせる。1976年作「最後の晩餐」収録曲や、デビュー作から「R.I.P.」、
1972年作「ダーウィン」収録「征服者」など、往年の代表曲も取り入れていて、ファンには嬉しい限り。
Disc2では、1979年作「春の歌」収録の2曲で、しっとりと優雅に聴かせつつ、「ダーウィン」収録「革命」の
スリリングなプログレ感はいかにもバンコらしい。1983年作「Banco」からも2曲を披露するなど、
70〜90年代のナンバーをまんべんなく取り入れたセットで、濃密なライブ演奏が楽しめる。
ライブ演奏・8 プログレ度・7 音質・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Gruppo 2001「L'alba Di Domani」
イタリアンロックバンド、グルッポ2001の1972年作
「新世代の夜明け」という邦題で日本盤も出ていたが、イタリアンロックの中では比較的マイナーな存在。
フルートが鳴り響き、アコースティックを含む軽やかなギターの旋律を巧みなアンサンブルに乗せて、
詩情を感じさせるイタリア語のヴォーカルとともに、IL VOLOなどにも通じる叙情豊かなサウンドを描く。
アコースティックをメインにしたフォーク寄りの感触とともに、全体的にも牧歌的な繊細さに包まれていて、
プログレ的な展開はさほどないのだが、ときにミステリアスな空気をかもしだし、メロトロンをバックにした
優美な叙情性にはウットリとなる。確かな演奏力も含め、本作のみ残して消えるには惜しい存在であった。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 叙情度・8 総合・7.5
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Marathon 「Impossible Is Possible」
イタリアのプログレバンド、マラソンの1993年作
イギリスやオランダにも同名バンドがいるが、こちらはイタリアのバンド。ジャケはいかにもB級だが、
サウンドの方は、わりとテクニカルなリズムに優美なシンセと適度にハードなギターを重ね、
ハイトーンのヴォーカルで聴かせる、GENESISルーツの優雅なシンフォニックプログレ。
メロウなギターの旋律とやわらかなシンセアレンジが耳心地よく、いくぶん弱めのヴォーカルも、
サウンドにほどよくマッチしている。リズムチェンジを含む展開力には、90年代以降のネオプログレらしい
構築センスも覗かせていて、マイナーな翳りには包まれているが、優雅な叙情性が味わえる好作だ。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 叙情度・8 総合・7.5
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6/10
ベテランも、新鋭も(180)

Yes 「The Quest」
イギリスのベテランバンド、イエスの2021年作
7年ぶりとなるアルバムで、スティーヴ・ハウ、アラン・ホワイト、ジェフ・ダウンズ、ビリー・シャーウッド、ジョン・デイヴィソンという
前作と同様のラインナップ。きらびやかなシンセに味わいのあるハウのギターを重ね、デイヴィソンの伸びやかなヴォーカルとともに、
イエスらしい優雅でキャッチーなサウンドを展開。アコースティックも含めたハウのギタープレイの繊細さが際立つ部分も多く、
シャーウッドの巧みなベースプレイとともにサウンドの核を担っている。ときに壮麗なオーケストラアレンジも加わりつ、
ゆったりとした叙情美がじつに耳心地よく、琴を使った意外なアレンジなども覗かせて、全体的にもスリリングさよりも、
大人の優雅さに包まれて、インストパートの細部まで楽しめるのはさすが。優美なコーラスとデイヴィソンの歌メロの美しさは、
しっかりとイエスしているので、安心して鑑賞できる出来栄えだ。アラン・ホワイトは今作を最後に、2022年に死去している。
メロディック度・8 プログレ度・7 優雅度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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MOSTLY AUTUMN 「GRAVEYARD STAR」
イギリスのシンフォニックロック、モストリー・オータムの2021年作
1998年にデビュー、本作は14枚作目となる。のっけから12分という大曲で美麗なシンセアレンジに
男女ヴォーカルを乗せたやわらかなシンフォニックロックサウンドで、英国らしい牧歌的な叙情性は、
初期の頃に回帰したようなイメージもある。オリヴィア嬢のなよやかな歌声もしっとりと魅力的で、
メロウなギターフレーズに、ときにヴァイオリンも鳴り響き、アコースティックギターのパートも含めて、
フォーク的でもあるおおらかな優雅さに包まれる。全体的には派手なインパクトは薄いものの、
キャリアのあるバンドらしい自然体の作風で、じっくり楽しめる。ラストも12分の大曲で、全74分の力作です。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 優雅度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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TEXEL 「Metropolitan」
イギリスとデンマークのメンバーによるプログレバンド、テクセルの2021年作
2018年のデビュー作は、FOCUS愛に満ちた好作であったが、2作目となる本作もオルガンが鳴り響き、
ヤン・アッカーマンばりのギターを乗せた、フォーカス風味たっぷりのプログレサウンドを聴かせる。
やわらかなフルートの音色にメロウなギターが重なる優雅な叙情性は、まさにあの頃のFOCUSに通じる
ヴィンテージな味わいで、マルコ・ミンネマンが巧みなドラムを叩く、ジャズロック寄りの軽妙なナンバーや
ピーター・ジョーンズ(Csmel、Tiger Moth Tales)が参加した、キャッチーな歌入り曲などもアクセントになっている。
日本からはキクラテメンシスの鈴木和美もゲスト参加している。まさにポスト・フォーカス的な傑作です。
優雅度・9 プログレ度・7 フォーカス度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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CHIMPAN A 「THE EMPATHY MACHINE」
イギリスのプログレユニット、チンパン・エーの2020年作
MAGENTAのロバート・リードと、THE STORYSのシンガー、スティーヴ・バルサモによるユニットで、
美しいシンセを中心にしたモダンでエレクトロなアレンジに、繊細なアコースティックギター
ジェントルな男性ヴォーカルに女性ヴォーカルも加えた、ポストロック風味の優雅なサウンド。
楽曲は7〜9分とわりと長めながら、あくまでしっとりとした優しい耳心地で、スペイシーなシンセと
男女Voの歌声でゆったりと楽しめる。MAGENTAのクリスティーナ・ブースが参加していて、
女性声の入ったパートが多いのも嬉しい。ロック感触は薄めの、癒し系モダンプログレです。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優美度・9 総合・8
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THE NEAL MORSE BAND 「THE GREAT ADVENTURE」
アメリカのプログレバンド、ニール・モーズ・バンドの2019年作
John Bunyanの宗教書「THE PILGRIM'S PROGRESS(天路歴程)」をテーマにした、2016年作の続編となる作品で、
前作同様、マイク・ポートノイ、ランディ・ジョージ、エリック・ジレット、ビル・ヒューバウアーを含む5人編成。
テクニカルなドラム流麗なギターワーク、オルガンを含むカラフルなキーボードとともに、緩急自在のアンサンブルで、
ドラマティックなサウンドを構築。ストリングスなども加えた厚みのあるシンフォニック性にキャッチーなコーラスも含めて、
ときにハードに重厚に、ときに繊細な叙情性も覗かせて、ストーリー性を感じさせる流れとともにじっくりと盛り上げてゆく。
エリック・ジレットのギターも冴えを見せ、渋みのあるニールの歌声がエモーショナルに響く。これぞシンフォプログレの理想郷。
ドラマティック度・9 プログレ度・8 壮大度・9 総合・8.5 過去作のレビューはこちら
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In Continuum 「Acceleration Theory Part Two: Annihilation」
アメリカのプログレバンド、イン・コンティニュームの2019年作
Arc Of LifeMantra Vegaのシンセ奏者、デイヴ・カーズナー率いるバンドで、アルゼンチンのシンガー、ガブリエル・アグド、
Lo-Fi Resistanceのランディ・マクスタイン、ドラムにはニック・ディヴァージリオ(Big Big Train)、マルコ・ミンネマンが参加。
ゲストには、フェルナンド・ペルドモ、ジョン・デイヴィソン(YES、GLASS HAMMER)、マイケル・サドラー(SAGA)
ジョン・ウェズリー(元Porcupine Tree)、レティシア・ウルフ(The Dead Deads)など多数のミュージシャンが参加し、
きらびやかなシンセワークにギターを重ね、マイルドなヴォーカルとともに、壮麗でキャッチーなサウンドを描く。
ときに女性ヴォーカルも加えた優美な叙情や、近未来をテーマにしたモダンでスタイリッシュな空気感に包まれて、
20分という大曲では、壮大なスケール感とともにドラマティックなシンフォニックロックを構築する。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 壮大度・8 総合・8
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AUDIOPLASTIK 「IN THE HEAD OF A MANIAC」
イギリスのモダンプログレ、オーディオプラスティックの2015年作
元Frost*のDec Burke、Thresholdのシンセ奏者らによるバンドで、硬質なギターにうっすらとしたシンセを重ね、
マイルドなヴォーカルとともに、翳りを帯びたポストプログレ寄りのモダンなサウンドを聴かせる。
涼やかに美しいシンセとDec Burkeの優しいヴォーカルも耳心地よく、繊細な叙情美に包まれながら、
キャッチーなノリのハードプログレとしても楽しめる。楽曲自体は4〜5分前後とほどよくコンパクトで、
派手な展開はないものの、優美な叙情に包まれた、スタイリッシュなモダンプログレの逸品です。
ドラマティック度・8 モダンプログレ度・8 叙情度・8 総合・8
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GENTLE GIANT 「LIVE IN STOCKHOLM '75」
イギリスのプログレバンド、ジェントル・ジャイアントのライブ。2009年作
1975年スウェーデンでのラジオ放送用のライブを収録。1975年作「The Power and the Glory」、
同年「FREEHAND」からのナンバーを主体に、1974年作「In a Glass House」のメドレーや
1971年作「Acquiring The Taste」からのナンバーも披露。音質もまずまず良好で、
巧みで軽やかなアンサンブルに、とぼけた味わいのヴォーカルメロディで描かれるサウンドは、
当時としてはおそろしく斬新なスタイルだったろう。即興を含む余裕ある演奏が楽しめる発掘ライブ音源。
プログレ度・8 ライブ演奏・8 音質・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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GENTLE GIANT「LIVE AT THE BICENTENNIAL 1776-1976」
イギリスのプログレバンド、ジェントル・ジャイアントのライブ。2014年作
1976年のアメリカツアーを2CDに収録。1975年作「FREEHAND」、1976年作「IN'TERVIEW」からのナンバーを主体に
1974年作「In a Glass House」、1975年作「The Power and the Glory」からのメドレーなども披露。
音質も良好で、巧みなアンサンブルとキャッチーなヴォーカル&コーラスハーモニーで、どこかとぼけた味わいの
軽妙なサウンドを聴かせる。優雅なフルートやヴァイオリンなど、アコースティックパートを取り入れつつ、
客席からの大歓声や、MCなども含めた、ライブならではの臨場感もあって、GGファンにはとても楽しめる。
Disc2では「Octopus」からのメドレーも披露するなど、全盛期の発掘音源としては必聴級の内容だろう。
プログレ度・8 ライブ演奏・9 音質・8 総合・8
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PALLAS 「LIVE OUR LIVES」
イギリスのプログレバンド、パラスのライブ。2000年作
1984年にデビュー、PENDRAGONやMARILLION、IQとともに英国ネオプログレを牽引するバンド、
本作は、1999年のヨーロッパツアーの音源を2CD収録。きらびやかなシンセと叙情的なギター、
アラン・リードの味のあるヴォーカルとともに、ドラマティックなシンフォニック・ハードを聴かせる。
1998年の復活作「Beat The Drum」からのナンバーを中心に、デビュー作「The Sentinel」や、
2作目「The Wedge」からのナンバーも披露。音質も良好で、ライブならではの躍動的な演奏が味わえる。
Disc2のラストは、1stの大曲「Atlantis」で締めくくる。これぞパラスという優美なライブ。Web販売限定CDなので希少です。
ライブ演奏・8 プログレ度・7 音質・8 総合・8 過去作のレビューはこちら

National Health 「Playtime」
ナショナル・ヘルスの未発ライブ音源2001年作
バンド活動末期の1979年の、フランスとアメリカでの発掘ライブ音源を収録。脱退したデイブ・スチュワートに替わり、
シンセにはアラン・ゴウエンが参加、ドラムにはゲスト扱いでピップ・パイルが参加している。
やわらかなエレピに、フィル・ミラーの巧みなギターを重ね、ジャズ色の強い軽やかなアンサンブルを聴かせる。
音質もまずまず良好で、ソロパートを含む即興的な演奏の優雅さは、さすがの実力者たちである。
2ndからのナンバーがないのが残念だが、1stからは数曲を披露していて、ファンには嬉しい。
バンドの晩年の貴重なライブ音源が味わえる、コアなファン向けのアイテムだろう。
ライブ演奏・8 ジャズロック度・8 音質・7 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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Simon Apple 「River To The Sea」
アメリカのプログレハード、サイモン・アップルの2004年作
1997年にデビューし、2作目となる。優美なシンセアレンジに叙情的なギター、マイルドなヴォーカルで
優雅でシンフォニックなメロディックロックを聴かせる。アメリカらしいキャッチーな叙情性と
軽やかなドラムや巧みなギタープレイを含めた演奏力の高さは、TOTOをルーツにしたような、
ポップなプログレハードとしても楽しめる。美しいエレピやシンセの重ねも耳心地よく、
キャッチーなポップ性と、繊細な優美さがバランスよく同居している。小曲を盛りこみつつ、
4〜5分前後のナンバーを主体に、あくまでメロディアスな味わいだ。トニー・レヴィン、
バック・ダーマ(BLUE OYSTER CULT)らがゲスト参加。全70分の優美な逸品です。
メロディック度・8 プログレ度・7 優美度・9 総合・8
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CHON 「GROW」
アメリカのプログレバンド、チョンの2015年作
ツインギターの四人編成によるバンドで、メロディックで流麗なギターフレーズを
テクニカルなドラムに乗せ、フュージョン風味の優雅なアンサンブルを聴かせる。
変則リズムによるキメをたっぷり織り込みつつ、メロディックでポップな感触もあって、
BGMとして心地よく聴き流せつつも、テクニカルロックとしてじっくり鑑賞もできる。
いわば力みのない自然体で、軽妙なアンサンブルの妙を味わうというサウンドだ。
インスト主体ながら、歌も入ったエモーショナルロック風味もあり、最後まで心地よく楽しめる。
メロディック度・8 テクニカル度・8 優雅で軽妙度・9 総合・8
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CHON 「Homey」
アメリカのプログレバンド、チョンの2017年作
2作目の本作は、ギターのエリックがベースも担当しているが、基本的なサウンドは変わらず。
メロディックなギターとテクニカルなリズムで、フュージョン風味の軽やかなインストを聴かせる。
中盤には歌入りのポップなナンバーもあって、ジャケのイメージのような南国を思わせる、
ゆるやかで陽性のサウンドは、プログレというよりはお洒落なテクニカルポップというべきか。
アンサンブルが巧みなぶん、BGMとして軽やかに聴き流せてしまうので、フックのある展開や
ドラマティックなものを期待するリスナーには物足りないかもしれないが、この耳心地の良さは特筆もの。
メロディック度・8 テクニカル度・8 優雅で軽妙度・9 総合・8
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CHON
アメリカのプログレバンド、チョンの2019年作
3作目となる本作も、軽やかなドラムに流麗なギタープレイを乗せたフュージョン風味のアンサンブルに、
テクニカルなキメを盛りこんだ、優雅でスタイリッシュなインストサウンドを聴かせる。
2〜3分前後の小曲を主体に、テクニック抜群のドラムとギターのプレイも見事で、
今作では随所にシンセによるアレンジも加わっていて、よりプログレらしい作風になった。
ギターのメロディにはキャッチーな優しさがあるので、耳心地の良さという点でも多くのリスナーが楽しめる。
軽妙でポップながら、しっかりテクニカルというのも心憎い。3作目にして最高作でしょう。
メロディック度・8 テクニカル度・8 優雅で軽妙度・10 総合・8
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6/3
ネオフォークに癒される(165)


Wyndow
イギリスのアシッドフォーク、ウインドウの2021年作
TREMBLING BELLSのLAVINIA BLACKWALLと、女性SSW、LAURA J MARTINによるユニットで、
うっすらとしたシンセにピアノ、アコースティックを含むギターに、透明感のある女性ヴォーカルを重ねた、
しっとりとした美しいサウンド。優美なピアノをバックに、コケティッシュな二人の歌声が重なると、
爽やかな空気に包まれて、妖しさよりもむしろキャッチーな清涼感が前に出る。随所にやわらかなフルートや
チェロなども加えた、優雅なアレンジも耳に心地よく、単なるフォークにとどまらないモダンなセンスは、
UNTHANKSなどにも通じるだろう。美しい女性声にウットリできる、コンテンポラリーな好品です。
アコースティック度・7 優雅度・9 女性Vo度・8 総合・8
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The Moon and The Nightspirit 「Aether」
ハンガリーのゴシック・フォーク、ムーン・アンド・ナイトスピリットの2020年作
男女2人組のユニットで、2005年にデビューし、7作目となる。うっすらとしたシンセとピアノに
アコースティックギター、優美なハープの音色に、モリン・ホール(馬頭琴)なども加え、
女性のスキャットヴォイスに男性声が絡む、幻想的なネオフォークを聴かせる。
ヨーロッパやバルカン、ときに中近東的な空気が混在した異国的性に、ドラムも加わった
ロック的なアレンジも覗かせて、スタイリッシュな民族的なフォークに仕上げたという作風であるが、
ほどよいダークな翳りを含んだ耳心地の良さはさすが。全40分というのが本作は少し短いですかね。
民族度・7 幻想フォーク度・8 女性Vo度・7 総合・8 過去作のレビューはこちら
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FAUN 「MARCHEN & MYTHEN」
ドイツのゴシック・フォーク、フォウンの2020年作
2001年にデビュー、10作目となる本作は物語的な妖精譚をコンセプトにした作品で、
ドイツ語による語りで幕を開け、アコーステッィクギターやマンドリン、ヴァイオリンやホイッスルの音色に
うっすらとしたシンセを重ね、美しい女性ヴォーカルに男性声が絡む、幻想的なネオフォークを聴かせる。
バウロンなどパーカッションのリズムとともに、バグパイプが鳴り響くケルティックなテイストと
キュートな女性声で聴かせるメディーヴァルな優雅さが合わさり、ほどよくモダンなシンフォニック性が
サウンドを華やかに彩っている。初期に比べるとずいぶん垢抜けた分、神秘的な翳りは薄まったか。
ドラマティック度・8 幻想フォーク度・8 女性Vo度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Loreena McKennitt 「Live At The Royal Albert Hall」
カナダ出身の女性シンガー、ロリーナ・マッケニットのライブ。2019年作
1985年にデビュー、ケルト系シンガーのベテラン。英国ロイヤル・アルバートホールでのライブを2CDに収録。
ヴァイオリン、チェロ、などを含むバンド編成でのステージで、伸びやかで表現豊かな歌声を中心に、
自身の奏でるハープやアコーディオンの音色に、アコースティックギターやブズーキ、艶やかなヴァイオリンに、
うっすらとしたシンセも加えた、しっとりと優雅なサウンドを描いてゆく。パーカッションやドラムのリズムとともに、
ライブらしい躍動感あるアンサンブルと、優しく豊かな情感に包まれたロリーナの歌声をゆっくりと味わえる。
楽曲ごとに、中近東的なテイストや、ストリングスとピアノによるクラシカルな味わいなど、ケルトのみならず
アラブやバルカン、ヨーロッパなど世界各地を旅するように鑑賞できる。まさに円熟のステージである。
ライブ演奏・8 優雅度・9 女性Vo度・9 総合・8.5 過去作のレビューはこちら
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West of Eden 「Safe Crossing」
スウェーデンのフォークロック、ウエスト・オブ・エデンの2012年作
1997年にデビューし、6作目。アコースティックギターのつまびきに、男女ヴォーカルの歌声を乗せ、
艶やかなフィドルが鳴り響く、北欧らしい素朴で涼やかなフォークサウンドを聴かせる。
バウロンのリズムにアイリッシュ寄りのフィドルの旋律、歌詞が英語であることもあって、
英国ルーツの牧歌的なフォークとしても楽しめる。曲によっては、エレキギターにドラムも加えた
ロック色もいくぶんあって、カントリー調のキャッチーなノリから、女性ヴォーカルをメインにした
優雅なナンバーなども耳心地よい。わりとメジャー感のある作風なので、北欧らしさは薄めかな。
アコースティック度・7 英国風味度・8 女性Vo度・7 総合・7.5
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Moon'shee
イギリスのフォークバンド、ムーンシーの2011年作
女性ハープ奏者、女性ヴァイオリン、女性ギター、女性パーカッションを含む6人編成で、
アコースティックギターとシタールのつまびきに、パーカションのリズム、優雅なヴァイオリンの音色に
美しい女性ヴォーカルの歌声で、異国的でコンテンポラリーなフォークサウンドを聴かせる。
女性メンバーが4人いるので、女性声のコーラスによる華やかさがキャッチーな味わいになっていて、
優しいハープの音色とともに、やわらかな耳心地で楽しめる。アジアンや中近東的な雰囲気も覗かせつつ
歌声は英国フォーク寄りなので、多国籍感もありつつ、全体的にはストレートな聴きやすさがある。
アコースティック度・9 多国籍度・8 女性Vo度・8 総合・7.5
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InChanto 「Le Stanze Di Ambra」
イタリアの古楽フォーク、インチャントの2011年作
艶やかなヴァイオリンにリコーダーの優美な音色、ハーディ・ガーディが鳴り響き、
イタリア語による女性ヴォーカルとともに、優雅でクラシカルなフォークサウンドが広がる。
アコースティックギターやハープのつまびきに、ホイッスルのケルティックな音色、
美しい女性声とともに、しっとりとした耳心地に包まれて、異国的なバウロンのリズムが
メディーヴァルな空気をかもしだす。物語を語るようなシアトリカルな歌声も含めて、
プログレ寄りの世界観も感じさせ、アコースティック主体ながらも幻想的な味わいで楽しめる。
アコースティック度・9 優雅度・8 女性Vo度・8 総合・8
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Fleur 「Awakening (Пробуждение)」
ウクライナのゴシック・ポップ、フルールの2012年作
2002年にデビューし、7作目となる。優美なシンセに母国語によるなよやかな女性ヴォーカルを乗せ、
ギターやドラムによる適度なロック感触に、ピアノやストリングスも加わった優雅なサウンドを聴かせる。
東欧らしいアンニュイでメランコリックな翳りに包まれながら、美しい女性声のしっとりとした耳心地の良さで、
ほどよくキャッチーな感触でも楽しめる。単なるゴシックポップという以上のクラシカルで優雅な美意識は、
ときにシンフォニックでもあり、プログレリスナーの心を捉えるだろう。うっとりとなるような傑作である。
クラシカル度・8 優雅度・8 女性Vo度・9 総合・8.5 過去作のレビューはこちら


Alizbar & Ann'Sannat 「Welcome in the Morning 」
ロシアのハープ奏者擁するモルドバのネオフォーク。2010年作
アコースティックギターのつまびきにパーカッションのリズム、優美なハープの音色にヴァイオリンを重ね、
ホイッスルの音色とともに、ケルティックなサウンドを聴かせる。美しい女性ヴォーカルも加わった
しっとりとした耳心地で、あくまでアコースティックをメインにした素朴で繊細な味わいだ。
シンセなどを使っていないので、シンフォニックな幻想性を期待すると少し物足りないが、
アイルランド民謡の「シューラ・ルーン」といった伝統的なケルトナンバーなどは味わいがあり、
キュートな女性声入りの、アコースティックなケルト系トラッドが好きな方にはお薦めです。
アコースティック度・9 ケルティック度・8 女性Vo度・7 総合・7.5
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Aiste Smilgeviciute ir Skyle 「Povandenines Kronikos」
リトアニアの女性シンガー、アイステ・スミルジェヴィッチュテとスカイルの2007年作
2010年にデビューし、2作目となる。優美なアコースティックギターにシンセを重ね、
ドラムやエレキギターも加えて、美しい女性ヴォーカルを乗せたシンフォニックロックを聴かせる。
アイステ嬢の母国語によるなよやかな歌声が非常に魅力的で、フルートやチェロなども加えた
クラシカルな優雅さと壮麗なシンセを重ねた、東欧系トラッドロックとしても楽しめる。
曲によっては男性声も加わったり、アコーディオンの音色がフォーキーな哀愁をかもしだす。
KORMORANのようなプログレ寄りの優雅な女性声フォークロックというべき逸品です。
優雅度・9 プログレ度・7 女性Vo度・9 総合・8
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DONIS 「Kas Tave Saukia... 」
リトアニアのネオフォーク、ドニスの2010年作
90年代から活動するリトアニアを代表するポストアンビエント系バンドで、うっすらとしたシンセをバックに
叙情的なギターにリュートのつまびき、民族的なバグパイプの音色に、母国語の女性ヴォーカルも加えて、
異国的でコンテンポラリーなトラッド・フォークを聴かせる。やわらかなフルートの音色に、優美なピアノとシンセ
エレキギターやドラムなどのを加えたロック感触もいくぶんあって、幻想的なフォークロックとしても楽しめる。
カンテレやハープなどの繊細な音色も織り込みつつ、ギターにシンセが重なると厚みのあるサウンドになり、
雄大なシンフォニック・トラッドという趣もある。アコースティックとエレクトリックの同居した幻想ネオフォークの逸品。
ドラマティック度・8 幻想度・8 女性Vo度・8 総合・8
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Somnare 「Bellum Esse」
スペインのゴシック・ネオクラシカル、ソムナーレの2016年作
うっすらとしたシンセに美しい女性ヴォーカルを乗せ、物悲しいチェロの響きとともに、
耽美で秘教的なゴシックアンビエントを聴かせる。オーケストレイテッドなシンセに、
クラシカルなピアノ、オペラティックなソプラノを主体に、ときに詠唱のような男性声も加わって、
ELENDあたりにも通じるダークな妖しさを描いてゆく。いくぶんインダストリアルに香りも含みつつ、
全体的には雰囲気モノに近いので、楽曲というよりはサウンドの空気に浸るというような作品だろう。
幻想度・8 ゴシック度・8 女性Vo度・7 総合・7.5

NARSILION 「ARCADIA」
スペインのゴシック・ネオフォーク、ナルシリオンの2006年作
2004年にデビュー、本作は2作目で、美麗なシンセにアコースティックギター、ヴァイオリンが絡み
美しい女性ヴォーカルにやわらかなフルートの音色も加えた、幻想的なネオフォークを聴かせる。
男性声による語りもあって、ほどよく土着的でゴシック寄りの耽美な空気も感じさせるあたりは
DAGAARDなどに通じる部分もある。ときおりドラムやパーカッションによるリズムも入るので、
うっとりと聴き入りつつ、わりとメリハリもあるので、ネオフォーク初心者にも楽しめるだろう。
ユニコーンのジャケのイメージ通り、幻想の叙情美に包まれた逸品です。
幻想度・8 ゴシック度・7 女性Vo度・7 総合・7.5
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Collection D'Arnell Andrea 「La Nuit Des Fees - Live」
フランスのゴシック・ネオクラシカル、コレクション・ド・アルネール・アンドレアの2008年作
1989年デビューというベテランで、本作は2007年のフランスでのライブを収録。
男女Voに2人のピアノ、ヴィオラ、チェロという6人編成で、クラシカルなピアノに
艶やかなストリングス、なよやかな女性ヴォーカルに男性声が絡む優雅なサウンド。
楽曲は3〜4分前後なのでわりとあっさりしていて、濃密な妖しさがさほどないぶん、
アコースティックなクラシカルサウンドといった趣だ。聴き心地は優雅なのだが、
ライブならではの迫力や、生々しさというものがもう少し欲しかったような。
アコースティック度・8 ライブ演奏・7 女性Vo度・7 総合・7
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Daemonia Nymphe 「The Bacchic Dance of the Nymph」
ギリシャのゴシック・ネオフォーク、ダエモニア・ニンフェの2004年作
2002年にデビュー、本作は2作目で、ハープのような弦楽器のつまびきに、パーカッションのリズムが重なり、
詠唱のような男性声を乗せた、秘教的な民族ゴシックサウンドを聴かせる。やわらかなフルートの音色に、
妖しい女性ヴォーカルも加わりつつ、ときにロックなドラムも入って来るなど、単なるゴシックフォークという以上の
神秘的な個性を本作の時点ですでに感じさせる。のちのアルバムに比べるとまだ雑多な感触であるが、
それがかえって原初的でトライバルなおどろおどろしさも感じさせるという。辺境系ゴシックフォークの異色作。
ドラマティック度・・6 耽美度・・7 神秘的度・・8 総合・・7 過去作のレビューはこちら
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PINKNRUBY 「The Vast Astonishment」
スロベニアとイギリスのメンバーによるデュオ、ピンクンルビーの2003年作
アコースティックギターにコケティッシュな女性ヴォーカルの歌声を乗せた、しっとりとしたフォークサウンド。
ドラムによるリズムも入るが、シンセなどはあまり使わず、バックは基本的にはギターのみなので、
歌をメインにしたわりとシンプルな聴き心地ながら、女性声の美しさで、ゆったり夢見心地に味わえる。
スロベニア出身という、ミハエラさんの歌唱の繊細な表現力も魅力的。夢見系幻想ネオフォークの好作。
アコースティック度・8 幻想度・8 女性Vo度・8 総合・7.5
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5/14
プログレで5月病知らず(149)


Kimmo Porsti  「Past & Present」
フィンランドのミュージシャン、キンモ・ポルスティの2021年作
PAIDARIONやSAMURAI OF PROGでも活躍するドラマーで、マルチプレイヤー。本作は「過去と現在」というタイトル通り、
過去曲のリメイクと新曲を収録した作品。スペイン人ギタリストのラファエル・パシャ、KAYAKのトン・スケルペンツェルなどが参加、
叙情的なギターの旋律にシンセを重ねた、優美なシンフォニックロックを聴かせる。繊細なピアノとやわらかなフルートの音色で、
クラシカルな優雅さに包まれつつ、随所にオルガンなどのヴィンテージなプログレ感触も覗かせる。
ゲストによるエモーショナルなヴォーカルを乗せたナンバーや、フュージョン風味の軽妙なアンサンブルなど、
楽曲ごとの統一感がない分、バラエティ豊かな聴き心地で楽しめる。今作はフルートが活躍する曲も多く、
ケルティックなホイッスルにギターが絡む、ケルトロック風味のナンバーなども味わいがある。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 優美度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Blacksmith Tales 「The Dark Presence」
イタリアのプログレバンド、ブラックスミス・テールズの2021年作
美麗なシンセ、ピアノを叙情的なギターに重ね、マイルドなヴォーカルを乗せた、シンフォニックロックで、
オルガンなどのヴィンテージな味わいと、わりと唐突なリズムチェンジを含むハードな展開力も覗かせる。
コンセプト的な楽曲の流れとともに、ドラマティックな世界観を描いてゆき、変拍子などのプログレらしさと
ときにスペイシーなスケール感にも包まれる。後半には、17分の大曲もあり、優美なシンセワークに包まれて、
KaledonTemperanceでも活躍するミケーレ・グアイトーリのエモーショナルな歌声に、Moonlight Hazeでも活躍する、
マルコ・ファランガのギターも随所に流麗なメロディを奏でつつ、じっくりと構築してゆく。全76分の力作です。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 優美度・8 総合・8
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LOGOS 「Sadako E Lemille Gru Di Carta」
イタリアのプログレバンド、ロゴスの2020年作
90年代から活動するバンドで、本作は「原爆の子の像」や「千羽鶴」で知られる佐々木禎子を題材としたコンセプト作。
きらびやかなシンセを乗せたイントロ曲から、すでにドラマティックなプログレ感触に包まれているが、
変拍子を含むスリリングなアンサンブルに、イタリア語によるマイルドなヴォーカルを乗せて、
ときにサックスの音色も加えた優雅な味わいとともに、10分を超える大曲を構築してゆく。
オルガンやムーグなどのヴィンテージなシンセワークをメインに、ラストは21分という大曲で、
ゆったりとした叙情パートから、優美なシンセとギターを重ね、これぞシンフォプログレという叙情美を描く。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 優美度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Aurora Lunare 「Translunaggio ...Nove Tributi Al Rock Progressivo」
イタリアのプログレバンド、オーロラ・ルナーレの2018年作
2013年作は優雅な好作であったが、本作はメンバーが影響を受けたバンドのカヴァーを収録した作品。
PROCOL HARUM「青い影」は、優美なシンセにフルートで、キャッチーなシンフォプログレ寄りのアレンジ。
俳優としても活躍したクラウディオ・シモネッティの父である、故エンリコ・シモネッティのナンバーは、
女性スキャットを加えた優雅な味わい。BANCO「最後の晩餐」収録のシングル曲もなかなかハマっていて、
AREA「1978」収録の軽妙なナンバーや、YES「トーマト」収録曲は、男女ヴォーカルでキャッチーに聴かせる。
GOBLINは「エイリアンドローム」からのマニアックな選曲で、MARILLIONは「Holidays in Eden」から、
THE FLOWER KINGSは「The Sum of no Evil」からと、わりと新しめのナンバー。マニア好みのカヴァー集です。
ドラマティック度・7 プログマニア度・8 アレンジセンス・8 総合・7.5
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EGOBAND 「Tales From The Time」
イタリアのプログレバンド、エゴバンドの2016年作
1991年にデビュー、本作は2000年以来、16年ぶりとなる作品で、美しいシンセと叙情的なギターに
英語歌詞のヴォーカルを乗せた、キャッチーなプログレハード寄りのサウンドを聴かせる。
オルガンを含むシンセやブルージーな味わいのギターなど、ヴィンテージな感触も覗かせつつ
8〜10分前後の大曲を主体に、歌もの的なゆったりとした叙情パートから、プログレらしい展開力の
スケール感のあるインストパートをじっくりと構築する。アコースティックギターが響く繊細な味わいから、
ゆるやかな叙情の大人のシンフォプログレを聴かせるラスト曲まで、さほど新鮮さはないが優美な好作品。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 大人の叙情度・8 総合・7.5
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Notturno Concertante 「The Hiding Place」
イタリアのプログレバンド、ノットゥルノ・コンセルタンテの1990年作
80年代から活動するバンド、シンセにフルート奏者を含む6人編成で、本作がレーベルデビュー作。
きらびやかなシンセワークに叙情的なギター、ジェントルなヴォーカルで聴かせる、王道のシンフォプログレ。
ヘタウマ感のあるヴォーカルは英語なので、イタリア臭さはあまりなく、優美なシンセとメロウなギターで
耳心地の良いサウンドを構築する。アコースティックギターを用いた繊細な小曲も味わいがあり、
泣きのギターや美しいシンセ、フルートの音色とともに、GENESISや初期MARILLIONを受け継ぐような、
叙情豊かなシンフォプログレが楽しめる。90年代初頭のシンフォ系作品としてはかなり出来が良い作品だ。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 優美度・9 総合・8

Fuchs 「Station Songs」
ドイツのシンフォニックロック、フックスの2018年作
INESの夫であるミュージシシャン、ハンス・ヨルゲン・フックスによるプロジェクトで、本作は3作目。
前作「Unity of Two」GENESIS系の好作であったが、本作はのっけから11分という大曲で、メロトロンを含む優美なシンセに
メロウなギター、ジェントルなヴォーカルで大人の叙情に包まれたシンフォプログレを聴かせる。妻であるINESも参加していて、
随所に女性コーラスやオルガンなどのやわらかなシンセを披露。スリリングな展開はないが、ゆったりとした耳心地の良さで、
あくまで優雅で繊細な美意識に包まれたサウンドが味わえる。全65分、まさに大人のシンフォニックロックという力作です。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 優美度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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KAYAK 「Seventeen」
オランダのプログレバンド、カヤックの2017年作
1973年デビュー、本作はタイトル通り、通算17作目となるアルバムで、トン・スケルペンツェル以外のメンバーが一新、
Pain Of Salvationのダニエル・ギルデンロウの弟である、クリストファー・ギルデンロウなどが新たに加入している。
サウンドは、きらびやかなシンセワークとメロディックなギター、キャッチーなヴォーカルハーモニーで聴かせる、
「KAYAK節」は健在で、むしろ80〜90年代に回帰したような優しい味わいだ。10分を超える大曲なども、
あくまで優雅なメロディアス性に包まれて、ほどよいハードさを含んだプログレ的な構築力も覗かせる。
Galaxyというバンドでも活躍する、バート・シュワートマンの味のある歌声もサウンドによくマッチしていて、
往年のファンも満足の出来でしょう。CAMELのアンディ・ラティマーがゲスト参加。DIsc2にはデモ音源を4曲収録。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 優雅度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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RIKARD SJOBLOM 「THE UNBENDABLE SLEEP」
スウェーデンのミュージシャン、リカルド・ショーブロムの2016年
BEARDFISH、GUNGFLY、BIG BIG TRAINでも活躍するアーティストで、オルガンを含むシンセに
ロックな味わいのギター、自身のジェントルなヴォーカルを乗せて、キャッチーなオールドロックを聴かせる。
牧歌的な大人の叙情性は、BIG BIG TRAINにも通じる雰囲気であるが、ブルージーなギタープレイなど、
より70年代ロックへの憧憬を感じさせる内容になっていて、かつてのBEARDFISHを思わせる部分も多い。
全体的には肩の力の抜けた作風で、プログレというよりはわりとストレートなロックナンバーもあったりと
もう少しフックも欲しい気がするが、ラストの11分の大曲は、叙情性を含んだ緩急ある展開力で構築する。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 オールドロック度・8 総合・7.5
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Brother Ape 「III」
スウェーデンのプログレバンド、ブラザー・エイプの2008年作
2003年にデビューし、3作目となる。適度にハードなギターにモダンなシンセアレンジを重ね、
マイルドなヴォーカルで聴かせる、キャッチーでスタイリッシュなプログレハード寄りのサウンド。
2作目までに比べると、いくぶんオルタナ寄りの翳りとともに、ポストプログレ的な深化を感じさつつ、
優美なシンセと叙情的なギターによる、優雅なシンフォプログレ風味も随所に残している。
楽曲も5〜7分前後と長すぎず、ほどよくコンパクトな耳心地の良さで、爽快な味わいだ。
軽やかでメロディアス、モダンなセンスと涼やかな北欧プログレ感触が合わさった逸品です。
メロディック度・8 プログレ度・7 スタイリッシュ度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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MOLESOME 「Are You There?」
スウェーデンのエレクトロプログレ、モールソムの2021年作
ANGLAGARDのドラマー、Necromonkeyなどでも活躍するマティアス・オルソンのプロジェクトで、
本作はすでに5作目となる。メロトロンをはじめとしたヴィンテージなシンセを、エレクトロに鳴り響かせ、
ときに日本語による語りを取り入れるなど、ストリーリー風のミステリアスな雰囲気に包まれる。
ドラムが加わったインダストリアル調のロック感触から、女性ヴォーカルを乗せたアンビエントなナンバー、
ストリングスを取り入れつつ、ポップなビート感で聴かせるナンバーなど、バラエティ豊かな作風である。
うっすらとしたシンセをバックにした、女性声入りポストプログレという趣もある。エレクトロ・ヴィンテージな好作。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 エレクトロ&ヴィンテージ度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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Morild 「Time To Rest」
ノルウェーのプログレバンド、モリルドの2010年作
CD2枚組の大作で、オルガンやムーグシンセが鳴り響き、ジェントルなヴォーカルを乗せ、
北欧らしい涼やかな叙情美に包まれた、ヴィンテージなシンフォプログレを聴かせる。
くぐもったような翳りとマイナーな空気感は、KERRS PINKあたりにも通じる雰囲気で、
アコースティックギターやフルートの音色など繊細な叙情性と、随所に泣きのギターフレーズも加え、
10分を超える大曲をじっくりと構築してゆく。Disc2の後半は、3パート、28分におよぶ組曲になっていて、
展開力のあるサウンドで聴かせる。2CDで全100分、これぞ北欧プログレという優美な味わいの逸品。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 北欧度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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DRUCKFARBEN
カナダのプログレバンド、ドラックファーベンの2011年作
軽やかにオルガンが鳴り響くイントロから、ヴィンテージなプログレ感触がたっぷりだが、
リズムチェンジを含むテクニカルなアンサンブルは、Spock's Beardあたりにも通じる、
知的なスタイリッシュ性で、ハイトーンのヴォーカルが乗ると、YESを思わせる雰囲気も。
流麗なギタープレイをはじめとして、演奏力の高さはいかにもカナダのバンドらしく、
オールドなプログレ感触を、センスある構築力で巧みに料理。キャチーなメロディアス性と
テクニカル性の同居という点では、近年のバンドではピカイチ。続く2作目も見事な出来です。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 構築センス・9 総合・8
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SAGA 「Contact: Live In Munich」
カナダのプログレハード、サーガのライブ。2009年作
2007年ドイツでのライブを2CDに収録。1981年作「Worlds Apart」をはじめとした初期のナンバーから、2007年作「10,000 Days」まで、
新旧織り交ぜたセットリストで、ほどよくハードなギターにシンセを重ね、マイケル・サドラーのヴォーカルを乗せた、
キャッチーでノリの良いサウンドを聴かせる。巧みなドラムやきらびやかなシンセワークなど、ベテランらしい確かな演奏力で
非常に安定感はあるが、本作を最後にいったん脱退するサドラーの歌声に関しては、いくぶん物足りないような気もする。
楽曲的には、1993年作「The Security Of Illusion」などからもけっこう選曲されていて、コアなファンにも嬉しいだろう。
後半には、1978年のデビュー作や、1980年の3rd「Silent Knight」からのナンバーも続けて披露。2枚組で120分の好ライブ。
ライブ演奏・8 プログレ度・7 キャッチー度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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4/30
GWはプログレで(135)


The Samurai of Prog 「The White Snake」
フィンランドのシンフォニックロック、サムライ・オブ・プログの2021年作
前作に続くグリム童話をコンセプトにした作品の続編で、The Tripのカルミネ・カパッソ、Il Tempio Delle Clessidreのエリサ・モンタルド、
Ubi Maiorのマルセラ・アルガネッセ、元Latte E Mieleのオリヴィエロ・ラカグニア、MAD CRAYONのアレッサンドロ・ベネデッティ、
HOSTSONATENのルカ・シェラーニ、La Maschera Di Ceraのアレッサンドロ・コルヴァギラ、La Coscienza Di Zenoのアレッシオ・カランドリエロ、
Museo Rosenbachのステファノ・ガリフィ他、多数のゲストが参加。艶やかなヴァイオリンが鳴り響く、優雅なナンバーで幕を開け、
ピアノやオルガンを含むやわらかなシンセや叙情的なギター、フルートの音色で、しっとりと繊細なシンフォニックロックを展開する。
中盤は10分を超える大曲が続き、男女ヴォーカルを乗せたストーリー性のある世界観で、あくまで優美なサウンドを描き出す。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 優美度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Himmellegeme 「Variola Vera」
ノルウェーのプログレバンド、ハイメレジェーメの2021年作
2017年にデビューし、2作目となる。叙情的なギターに優美なシンセを重ね、
マイルドなヴォーカルを乗せた、涼やかでモダンな感触のポストプログレサウンド。
北欧らしい翳りやサイケ風味に加えて、本作では、わりとポップな感じのナンバーもあり、
とらえどころがない作風であるが、ゆったりとしたメロウな部分はPINK FLOYD風だったりする。
7曲目あたりのシンフォプログレ寄りの泣きの叙情はよろしく、このあたりを伸ばしてもらいたい。
楽曲は3〜5分前後と、わりとあっさりしているので、もう少し濃密な大曲があってもよいような。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 北欧度・8 総合・7.5
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MATS/MORGAN「35th Anniversary Collection」
スウェーデンのアヴァン・ユニット、マッツ&モルガンの2016年作
結成35周年を記念して、1996年のデビュー作から、2014年までの作品から選ばれた全42トラックを収録した
2枚組のベストアルバム。やわらかなシンセに味わいのあるマッツの歌声を乗せた牧歌的な1曲目から、
モルガンの巧みなドラムにエレクトロなシンセを重ね、テクニカルにたたみかけるアッパーなナンバーへ、
軽やかなポップ性をアヴァンギャルドに溶け込ませた、まさに「火星のヒットソング」というべき異色のサウンドを展開。
ときにライブでのMC音源も加えた遊び心や、MESHUGGAHのフレドリック・トーテンデルを迎えてのメタル感触に、
軽やかなジャズタッチのナンバーなど、単なるフリーミュージック以上のセンスと卓越した演奏力が随所に現れる。
入門用にしてはあまりに濃密であるが、この超絶ユニットの全貌を味わえるCD2枚、全152分である。
テクニカル度・8 プログレ度・8 アヴァンギャル度・9 総合・8.5
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MATS/MORGAN 「Live With Norrlandsoperan Symphony Orchestra」
スウェーデンのアヴァン・ユニット、マッツ&モルガンのライブ作品。2018年作
マッツ・エーベリ(キーボード)とモルガン・オーギュレン(ドラム)に、ベースとキーボードを加えたバンド編成で
2016年の結成35年イベントとして行われた、ノールランド歌劇場交響楽団との共演ライブをCD+DVDに収録。
美しいストリングスにブラスが鳴り響く、壮麗なオーケストラと軽やかなドラムが合わさり、エレクロなシンセを重ねた、
優美なチェンバーロックが広がってゆく。アヴァンギャルドな味わいは希薄であるが、ほどよくスリリングでありながら、
とぼけたようなセンスも随所に感じさせる。DVDの映像では、フルオーケストラを含む豪華なステージのもと、
モルガンの巧みなドラムや、ハーモニカとシンセを自在にこなす、盲目のマッツの楽しげなプレイぶりが見られる。
CD2には、本作のデモである、モルガン・オーギュレン名義での「Through The Eyes Of Morgchestra」を収録。
シンフォニー度・8 プログレ度・7 ライブ演奏・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Simon Steensland 「25 Years of Minimum R&B」
スウェーデンのミュージシャン、サイモン・スティーンスランドの2017年作
1994年にデビュー、UNIVERS ZERO + MATS/MORGANというような異色のアヴァンロックを生み出すアーティストで、
本作は、初期作品から、KAMIKAZE UNOTED名義を含む6作からセレクトしたベストというべきDisc1に、
Disc2には未発音源とライブを収録した、まさに北欧の鬼才のキャリアを俯瞰できる2枚組となっている。
アルバム「Led Circus」収録のダークなチェンバーロック曲から、とぼけた味わいの「The Zombie Hunter」収録曲では、
MATS/MORGANの2人が参加、マリンバやアコーディオンの優雅な音色を聴かせつつも、妖しいダークさを漂わせる。
舞台音楽である「The Phantom Of The Theatre」収録曲は、女性ヴォーカルも加わった優雅な味わいで、いいアクセント。
モルガン・オーギュレンによるリマスターで音の迫力も増している。Disc2の未発集は全19曲入りで、小曲が多いのだが、
生々しい演奏と楽曲の断片を垣間見る感じで、なかなかスリリングに楽しめる。ラストは15分のSE入りサントラ風ナンバー。
アヴァンギャル度・8 プログレ度・8 ダークでおとぼけ度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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STEN SANDELL & SIMON STEENSLAND 「UNDER OKNAR (Ranko Redn)」
スウェーデンのミュージシャン、ステン・サンデルとサイモン・スティーンスランドの共演作。1996年作
詠唱のような歌声と民族的なパーカッションにベースを重ねた、怪しくフリーキーなサウンドで
シンセやハルモニウムも加わって、チェンバーロックとしての優雅なダークさに包まれる。
MATS/MORGANのマッツ・エーベリ、モルガン・オーギュレンが参加、随所に巧みなドラムやエレクトロなシンセで
楽曲に華を添えている。全体的には、つかみどころがない民族風アヴァンミュージックという趣で、
アコーディオンや軽やかなマリンバの音色もどこか恐ろし気だ。スティーンスランドの作品の中でも異色の部類なので、
まずは傑作である、「Led Circus」「Fat Again」「A Farewell to Brains」あたりから入ることをお薦めします。
アヴァンギャル度・8 プログレ度・7 怪しげ度・9 総合・7.5
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Hidria Spacefolk 「Symbiosis」
フィンランドのサイケロック、ハイドリア・スペースフォークの2002年作
2001年にデビューし、2作目となる。アコースティックを含むギターの、オリエンタルな旋律に、
シンセアレンジを差ね、OZRIC TENTACLESにも通じるスペイシーなサイケロックを聴かせる。
オルガンを含むシンセワークやフルートも鳴り響いて、プログレ寄りの感触もわりと強めなので、
オールインストながら、カラフルなサウンドとほどよくアッパーなノリの良さで楽しめる。ラストは11分の大曲で、
これぞスペーストロックという味わいだ。オズテン系サイケロックが好きな方はチェックすべし。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 サイケ度・8 総合・8
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Hidria Spacefolk「Balansia」
フィンランドのサイケロック、ハイドリア・スペースフォークの2004年作
フリーキーなギターにスペイシーなシンセを重ねた、アッパーなノリのサイケロック。
グルーヴィなアンサンブルや、叙情的なフレーズを巧みに奏でるギターとともに、
OZRIC TENTACLES
をややハードした感触もあり、よりロック的な勢いで楽しめる。
優美なシンセアレンジも随所に引き立っていて、オズテンほどエレクトロ寄りでないので、
いわば、北欧シンフォニック・サイケ的な聴き方もできる。ラストには14分という大曲もあり、
パーカッションのリズムも入った民族的な怪しさから、スリリングなアヴァン・サイケを展開する。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 サイケ度・8 総合・8
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QUANTUM FANTAY 「Tessellation Of Euclidean Space」
ベルギーのサイケロック、クアンタム・ファンタイの2017年作
2005年にデビュー、本作は6作目となる。きらびやかなシンセにやわらかなフルートが鳴り響き、
グルーヴィなアンサンブルとエレクトロなアレンジで、OZRIC TENTACLES系のサイケロックを展開。
シンセとフルートが重なる優美な味わいは、シンフォプログレ寄りの幻想的な雰囲気もあって、
随所に叙情的なギターも旋律も耳心地よい。ドラムをはじめとした演奏力もしっかりしていて、
単なるオズテン系サイケという以上に、優雅な構築性も感じさせる。オールインストであるが、
プログレ的な叙情性とスペイシーな浮遊感が同居した、高品質なサイケロックの逸品です。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 サイケ度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Ryszard Kramarski Project 「Music Inspired By The Little Prince」
ポーランドのアーティスト、リシャルト・クラマルスキ・プロジェクトの2017年作
MILLENIUMのシンセ奏者として知られるミュージシャンで、本作は「星の王子さま」をテーマにしたコンセプト作。
メロウで叙情的なギターの旋律にうっすらとしたシンセを重ね、美しい女性ヴォーカルの歌声とともに、
優美なシンフォニックロックを展開。派手な展開はさほどないものの、女性声のシンフォプログレとしては、
英国のLANDMARQなどにも通じる優雅でキャッチーな味わいで、随所にギターの泣きのメロディが心地よい。
アコースティックによる繊細な小曲なども味があり、ラスト曲もゆったりとした翳りを含んだ叙情美に包まれる。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 優美度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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VESPERO 「THE FOUR ZOAS」
ロシアのサイケプログレ、ヴェスペロの2020年作
2007年にデビューし、すでにアルバムは軽く10作を超える多作バンド。本作はのっけから11分の大曲で
ミステリアスなシンセにギターを重ねた、ゆったりとしたアンサンブルに艶やかなヴァイオリンが鳴り響き、
展開力のあるプログレ・サイケロックを聴かせる。エクスペリメンタルな静寂感からアッパーなパートへの流れや
スペイシーなスケール感は、キャリアのあるバンドらしい確かな演奏力とアレンジセンスの妙であるだろう。
フリーキーなギターを乗せたガレージロック風味や、きらびやかなシンセをメインにしたナンバーなど、
オールインストながらも、様々な顔を覗かせる。ラストは21分の大曲で、軽妙なアンサンブルでたたみかける。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 サイケ度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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ETERNAL WANDERERS 「THE MYSTERY OF THE COSMIC SORROW」
ロシアのプログレバンド、エターナル・ワンダラーズの2016年作
2008年作にデビューし3作目となる。ほどよくハードで叙情的なギターにシンセを重ね、
緩急ある展開とともに、ドラマ性のあるスタイリッシュなハード・シンフォプログレを構築する。
インストによる序盤から、3曲目からは女性ヴォーカルも加わって、しっとりとしたパートも覗かせつつ、
MAGENTAなどにも通じる軽妙なアンサンブルで、優雅でキャッチーなサウンドが楽しめる。
8〜10の大曲を主体にも、Disc2では、23分という組曲もあって、オーケストラルなアレンジに
メロウなギターの旋律も加えて、THE ENIDにも通じる壮麗なシンフォニックロックを構築する。
SFサイバー的なモダンな雰囲気も漂わせる、2CDで合計90分の優雅なシンフォプログレの力作です。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 優雅度・8 総合・8
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OLIVE MESS 「CHERDAK」
ラトビアのチェンバーロック、オリーヴ・メスの2008年作
2002年にデビューし、2作目となる。のっけから15分の大曲で、10分を超える大曲4曲という構成。
前作は女性ヴォーカルがいたが、今作はジェントルな男性ヴォーカルがフロントをつとめている。
軽妙なリズムに優雅なシンセとギターの旋律を乗せ、ときおり牧歌的なバグパイプも鳴り響く、
とぼけた味わいのサウンドで、スレリリングでありながら脱力したアンサンブルが面白い。
全体的にダークな部分はさほどなく、エレピを含む優美なシンセや、朗々とした男性ヴォーカルで
オペラティックな雰囲気を描くパートなど、クラシックをルーツにした優雅さが前に出ている。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅で軽妙度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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EXODUS 「Supernova」
ポーランドのプログレバンド、エクソダス1982年作
1作目の「The Most Beautiful Day」はポリッシュ・プログレの傑作とされているが、2作目の本作は、美麗なイントロから、
ほどよくハードなギターが加わり、東欧らしい涼やかな空気感に包まれたシンフォプログレを展開する。
母国語によるヴォーカルが加わると、YESのようなキャッチーな味わいとともに、優美なシンセアレンジと
叙情的なギターを乗せた軽やかなアンサンブルで、1stに負けないきらびやかなサウンドが楽しめる。
しっとりと聴かせる繊細な味わいの小曲や、わりとオールドロック風のナンバーもありつつ、
透明感のあるシンセが楽曲を彩っていて、中性的な歌声も含め、優美な幻想性も感じさせる。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 優美度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Alina Skrzek / Jozef Skrzek 「SLONE PERLY」
ポーランドのベテラン、SBBのヨゼフ・スカルツェクと娘であるアリナ・スカルツェクによる2001年作
優美なシンセにフルートが鳴り響き、叙情的なギターの旋律も加えたシンフォニックな味わいと、
母国語によるヴォーカルを乗せた、キャッチーな歌もの感触が同居したサウンド。
ほどよくエレクトロ寄りのアレンジや、ときにスラヴ的な民族感も漂わせていて、
単なるポップロックでもない、さすがのゼンス。美しい女性スキャットを乗せた優雅さや
シンセをメインにしたアンビエントな質感なども含めて、シンフォニックなポストプログレとしても楽しめる好作品
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・8 総合・7.5


4/15
フランス&イタリアのジャズロック&アヴァンプログ(120)


LE GRAND SBAM 「Le Vaisseau Monde」
フランスのアヴァンロック、レ・グランド・スバムの2019年作
POILのメンバーに女性シンカー2人とヴィヴラフォン奏者を加えた編成で、軽やかなヴィヴラフォンの音色に
重たいペースとシンセを重ね、2人の女性ヴォーカルが、コバイヤ風のエキセントリックな歌声を乗せる、
アッパーなアヴァンロックを聴かせる。たたみかけるドラムも含めた激しさは、MAGMA的というよりは、
むしろ高円寺百景のフランス版というべきか、ヘヴィなベースとドラムが描く重厚なアンサンブルに、
フリーキーなシンセと女性スキャットが神秘的な空気をかもしだし、スペイシーな異色のサウンドを描きだす。
とっつきはあまりよくないが、女性声とアヴァンロックの組み合わせは好き者にはたまらない。
ドラマティック度・7 アヴァンギャル度・8 高円寺マグマ度・9 総合・8
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LE GRAND SBAM 「Furvent」
フランスのアヴァンロック、レ・グランド・スバムの2021年作
2作目の本作は、のっけから18分を超える大曲で、エキセントリックな男女ヴォーカルを変則リズムに乗せて、
優雅なマリンバやシンセとともに、前作の続編というような、異色のアヴァン・ジャズロックを展開する。
前作以上にフリーキーなアンサンブルに拍車がかかり、長尺になった分、ヘンタイ性が薄まった感もあるが、
静かめのパートでも、妖しい女性スキャットに吉田達也(高円寺百景)ばりのドラムがスリリングな空気を描いている。
後半は8パートに分かれた、32分におよぶ組曲で、中国語のような語りを挿入しつつ、よりアヴァンギャルドな作風で
ときにテクニカルにたみかけるところは、POILにも通じる聴き心地だ。ヘンテコと優雅とヘンタイが合致した強力作。
ドラマティック度・7 アヴァンギャル度・9 高円寺マグマ度・8 総合・8
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PINIOL 「Bran Coucou」
フランスのアヴァンロック、ピニョールの2017年作
POILNiの合体バンドで、ハードエッジなギターとエレクトロなシンセをテクニカルなリズムに乗せ、
詠唱めいたヘンテコな歌声とともに、アッパーなサイケ感を含んだ、フリーキーなアヴァンロックを聴かせる。
トリップ感のあるリフレインにカラフルでピコピコのシンセと、わりと重厚なギターがミスマッチな味わいながら
得体の知れない迫力に変わる瞬間があって、ヘンタイ系バンドが結束したさすがの演奏力というところ。
10分を超える大曲を、なし崩し的にたたみかける、怒涛のアヴァンギャルドセンスが素晴らしいのである。
インストパートをメインに、先の読めないスリリングさで、ハードなマスロックとアヴァンプログレが合致した異色の傑作だ。
ドラマティック度・7 アヴァンギャル度・9 ヘンタイ度・9 総合・8
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ELEPHANT TOK PROJECT 「Sitting With Bull」
フランスのジャズロック、エレファント・トク・プロジェクトの2018年作
ONE SHOTのメンバーを中心に、2016年にデビュー、本作は2作目となる。3つの組曲からなる構成で、
巧みなドラムとうねるベースに、スキャット的な歌声を乗せた、MAGMAルーツのジャズロックを展開。
優美なエレピも加わるが前に出すぎることはなく、基本はドラムとベースのアンサンブルなので、
全体的にあまり派手さはなく、モノトーンのような空気に包まれた、わりと玄人好みの印象である。
ダウナーなパートも多いのだが、ラストの組曲では、クリムゾン的なスリリングな硬質感も現れる。
ミステリアスな聴き心地の、マグマ系ジャズロックがお好きな方はいかが。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 ミステリアス度・8 総合・7.5
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ARNAUD BUKWALD 「La Marmite Cosmique」
フランスのミュージシャン、アーノルド・バクワルドの2017年作
軽やかなドラムにピアノにサックスを乗せた、SOFT MACHINEに通じる軽妙なジャズロック風味から、
やわらかなフルートにメロトロンを含むシンセ、ストリングスなども加えたシンフォプログレ風味も覗かせつつ、、
どこかとぼけた味わいの優雅なインストサウンドを展開する。後半氏、10分、9分、16分という大曲が並び、
EL&Pの「タルカス」を思わせるキーボードプログレから、SEをはさんでヴァイオリンがスリリングに鳴り響き、
アヴァンギャルドなチェンバーロック風に展開するなど、なかなかつかみどころがない。17分におよぶラストの大曲は、
民族的なパーカッションにスペイシーなシンセとストリングス、サックスも鳴り響く、混沌としたプログレ・ジャズロックになる。
ドラマティック度・7 プログレ度・8 優雅度・8 総合・7.5
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Chardeau 「In Terra Cognita?」
フランスのミュージシャン、チャルドーの2019年作
Brian Auger、Jerry Goodman、元JETHRO TULLのMartin Barre、ANGEのChristian Decamp、SAGAのMichael Sadler、
元CHICAGOのメンバーや、DOOBIE BROTHERSのJohn McFee、SUPERTRAMPのJohn Helliwellなど、多数のメンバーが参加、
ロシア、インド、チベット、北朝鮮、日本、メキシコ、ペルー、イスラエル、アフリカ、北極など、地球環境や国際、歴史問題を含むテーマを、
壮大なロックオペラに仕立て上げた作品で、クラシカルなストリングスやピアノに、枯れた味わいのヴォーカルを乗せ、
ブラスやシンセによるゴージャスなアレンジとともに壮麗なサウンドを描いてゆく。ムソルグスキー「はげ山の一夜」を取り入れたり、
東洋的なシタールやタブラの音色、ときにジャズロック風だったり、メロウなギターも加わって、楽曲ごとにカラーの違うサウンドが楽しめる。
全体的に明快な盛り上がりがさほどないのが惜しいが、世界各地をコンセプトにしたスケールの大きな、全69分の力作です。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 優雅度・8 総合・7.5
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ANAID 「Libertad」
フランスのプログレ・ジャズロック、アナイドの2016年作
デビューは80年代で、本作は1991年以来、25年ぶりとなる作品。優雅なピアノにオペラティックな女性ヴォーカルを乗せ、
OPUS AVANTRAのような妖しさに、ロック寄りのギターも加えた、ジャズロック風のアヴァンロックを聴かせる。
プログレというよりは、艶めいた女性声を中心にした歌ものパートが多いのだが、10分を超える大曲では、
やわらかなシンセ叙情的なギターの旋律を乗せた優美な味わいから、ハード寄りのギターを乗せた、
ノリのよいロックパートへと極端に展開し、はっちゃけた女性声とともにどことなくMAGMAっぽい勢いも感じさせる。
全体的にはしっとり優雅に楽しめる、エキセントリックな女性声アヴァンジャズロックの好作品。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅でアヴァンギャル度・8 総合・7.5
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MAGMA「Theusz Hamtaahk - Trilogie」
フランスのプログレジャズロック、マグマのライブ。2001年作
2000年のフランス公演、名曲「Theusz Hamtaahk」組曲、全3楽章を二日に渡って完全生再現したライブを3CDに収録。
Disc1には「THEUSZ HAMTAAHK/トゥーザムターク」、Disc2には「WURDAH ITAH/トリスタンとイゾルテ」、
Disc3には、「MEKANIK DESTRUKTIW KOMMANDOH/MDK」を収録、巧みなドラムを中心としたアンサンブルに
コバイヤ語による男女混声ヴォーカルを乗せて、優雅で躍動的なマグマ流ジャズロックを展開してゆく。
Disc3「MDK」ではブラスセクションも加わったゴージャスなアレンジに、ギターが弾きまくるインプロパートも含んだ、
壮大な組曲を作り上げてゆく。豪華ボックス入りで、ブックレットにはコバイヤ語の歌詞も完全掲載、まさにファン必聴のライブです。
ライブ演奏・8 優雅度・8 再現度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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MAGMA 「CONCERT BOBINO 1981」
フランスのプログレジャズロック、マグマのライブ。1995年作
1981年フランス、パリで3週間におよぶコンサートを行ったライブステージの一部を2CDに収録。
サックスやトランボーンが鳴り響き、軽快なリズムとともに、男女コーラスもファンキーな感触で、
随所にきらびやかなシンセワークも重なって、華麗でゴージャスなジャズロックを展開してゆく。
初期に比べると、明るめのサウンドであるが、手数の多いクリスチャン・ヴァンデのドラムを中心に、
巧みなアンサンブルとマグマらしい神秘性も健在で、即興的なパートも含めて楽し気な演奏である。
Disc2ではファンキーな歌ものナンバーから、30分を超える壮大な未完の大曲「Zess」も披露。
未発曲なども多数演奏していて、本ライブでしか聴けない楽曲もあるという点では、必聴の内容だろう。
ライブ演奏・9 ジャズロック度・9 コバイヤ度・8 総合・8
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Wrupk Urei 「Koik Saab Korda」
エストニアのプログレ・ジャズロック、ウラプク・ウレイの2014年作/邦題「結果オーライ」
女性サックス奏者、トロンボーン奏者を含む編成で、歪ませたベースにエレピやマリンバの音色を重ねた、
優雅な反復系サウンドを描きつつ、トロンボーンが鳴り響く、フリーキーな味わいのアンサンブルから、
ノリのよいストレートなリズムにロックギターやエレピを乗せた、わりとキャッチーなナンバーなど、
とぼけたセンスと、SOFT MACHINEなどの古き良きジャズロックが交差するという聴き心地。
オールインストで、2〜4分前後の小曲を主体に、さらっと聴けつつも、なんとなくヘンテコ感に包まれ、
エフェクトのかかったシンセなどがスペイシーなサイケ風味をかもしだしているところも面白い。
遊び心あるアヴァンギャルド性を、優雅なジャズロックで包み込んだというような逸品です。
ドラマティック度・7 プログレ度・8 優雅でヘンテコ度・9 総合・8
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THE SIRKIS/BIALAS IQ 「OUR NEW EARTH」
イギリスのジャズバンド、シルキス・ビアラス・インターナショナル・クインテッドの2019年作
イギリス人メンバーを主体に、ポーランド人女性シンガーを擁する編成で、CD2枚組の大作。
軽やかなドラムとベースに、優美なピアノやシンセを重ね、しっとりとした女性ヴォーカルの歌声で聴かせる
優雅なジャズロックサウンド。シンセをバックにゆったりとした女性声を乗せたアンビエントな味わいから、
正統派のジャズナンバーまで、美しい女性スキャットとともに耳心地よく楽しめる。サックスなどは入らず、
あくまでドラムとベース、ピアノがメインの演奏なので、ロック色は薄めでスリリングな部分もさほどないが、
7〜10分という長めの楽曲も含む、やわらかなエレビと女性声による、繊細で優雅な味わいの好作品です。
ジャズ度・9 ロック度・4 優雅度・9 総合・7.5
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HOMUNCULUS RES「Andiamo In Giro Di Notte E Ci Consumiamo Nel Fuoco」
イタリアのプログレバンド、ホムンクルス・レスの2020年作
2013年にデビュー、4作目となる本作は、牧歌的なイタリア語のヴォーカルにサックスを重ねて、
ゆったりと始まりつつ、シンセも加わって、とぼけた味わいの優雅なジャズロックサウンドを展開。
変則リズムによる屈折感と、軽妙なキャッチーさが合わさった、独自のスタイルはよりマイルドに深化、
エレピやオルガンを含むシンセと叙情的なフレーズを奏でるギター、ジェントルなヴォーカルとともに、
ソフトなアヴァン・ジャズロックが楽しめる。3〜4分前後の小曲も多く、プログレ的なフックは希薄で
あくまで軽やかなアンサンブルでライトに聴かせる。濃密すぎない、おとぼけ系プログ・ジャズロックです。
ジャズロック度・8 プログレ度・7 優雅度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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ZAAL 「Homo Habilis」
イタリアのジャズロック、ザールの2020年作
2004年にデビュー、本作は10年ぶりとなる3作目。ヴァイオリンやフルートの音色に、シタールのつまびき、
エレピを含むシンセにトランペットなども加わった、AREAなどにも通じる民族色のあるジャズロックから、
静寂感に包まれたアンビエントなチェンバーロック風味の2曲目から、フリーキーにトランペットが鳴り響く、
とらえどころのないアヴァン・ジャズロックへ展開し、艶やかなヴァイオリンや優雅なサックスの響きに、
パーカッションのリズムや東洋的なシタールの旋律とともに、バルカン、中近東的な民族色も覗かせる。
オールインストで、これという盛り上がりもないので、ゆったり系チェンバー・ジャズロックが好きな方はどうぞ。
ジャズロック度・7 プログレ度・7 民族チェンバー度・8 総合・7.5
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Risonanza Magnetica 「Andante」
イタリアのジャズロック、リゾナンツァ・マグネティカの2009年作
軽やかなピアノにサックスが絡み、コケティッシュな女性ヴォーカルを乗せた優雅なジャズロック。
ギターなどは入らないので、全体的にロック感触は薄めで、大人のジャズ寄りの作風であるが、
英語やイタリア語、フランス語を使い分けるキュートな女性声は魅力的で、軽妙なアンサンブルに
ピアノにオルガンなども加えた、肩の力を抜いてワインでも片手にして楽しめるようなサウンドだ。
プログレ的な部分はあまりないが、美しい女性ヴォーカルとともにしっとりと聴かせる好作品。
ジャズ度・8 ロック度・5 女性Vo度・8 総合・7.5
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Furio Chirico 「Furiosamente」
イタリアのミュージシャン、フリオ・キリコの2004年作
ARTI E MESTIERIのドラマーで、本作にはペッペ・クロヴェッラ、ジジ・ヴェネゴーニ、マルコ・クリミノ、マルコ・ガレッシ、
といったアルティのメンバーも参加して、フリオの軽妙なドラムをたっぷりと楽しめる優雅なジャズロックを聴かせる。
サックスが鳴り響き、優美なシンセを手数の多いドラムに乗せながら、アルティよりはもっと肩の力の抜けたサウンドで、
やわらかなエレピやサックスの音色を乗せた、ゆったりとした大人のジャズ風味のナンバーなども味わいがある。
フリオ・キリコの巧みなドラムはちろんのこと、マルコ・ガレッシのベースも随所に存在感を覗かせていて、
ゲストによるクラシカルなピアノや艶やかなヴァイオリンの音色も加えた、優雅なナンバーにも聴き惚れる。
ジャズ度・8 ロック度・6 優雅度・8 総合・8
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4/1
桜とプログレ(105)


CICCADA 「HARVEST」
ギリシャのプログレバンド、シッカーダの2021年作
2020年にデビュー、本作は6年ぶりたなる3作目。2人の女性Vo、女性サックス奏者を含む、7人編成となり、
アコースティックギターにやわらかなフルートが重なり、オルガンやレピを含むシンセにサックスも加わり、
美しい女性ヴォーカルを乗せて、優雅で牧歌的なサウンドを描く。フォークロック寄りの繊細な叙情性と
軽やかなアンサンブルによるカンタベリー風の雰囲気が合わさって、これまで以上に典雅な聴き心地。
フルートとサックスの絡みが増えたことで、インストパートでは、優美なシンフォプログレ風味とともに、
チェンバーロック寄りのミステリアスな部分も覗かせる。ラストは12分の大曲で、しっとりとした優雅に包まれながら、、
プログレらしさたっぷりの展開美が見事。この大曲の存在こそが、バンドとしての成熟と深化を示している。
ドラマティック度・・7 プログレ度・8 優雅度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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AMAROK 「El Ojo Del Mundo」
スペインのトラッドプログレ、アマロックの2021年作/邦題「世界の眼」
1994年にデビュー、カタルーニャのトラッドをプログレと融合させた独自のサウンドで、本作は9作目となる。
カーヌーンやサズ、サントゥールなどのアラビックな旋律にパーカッションのリズムで、中近東的な空気感に包まれ
艶かなヴァイオリンやフルート、アコーディオンも鳴り響き、女性ヴォーカルの歌声を乗せた、優雅なサウンドを構築。
随所にシンセによるプログレ風のアレンジも加わりつつ、全体的にはアコースティックをメインにした作風で
4th「スパイスの大地」あたりに通じる、エスニックな味わいが強まった印象。中盤には17分という大曲もあり、
優美なシンセにフルート、トランペットも加わって、プログレ的な展開力で聴かせる。優美で土着的な仕上がりです。
エスニック度・9 プログレ度・7 優雅度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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A Presenca Das Formigas 「Pe De Vento」
スペインのフォークロック、プレセンカ・ダス・フォーミガスの2014年作
2011年にデビューし2作目。アコースティックギターに艶やかなヴァイオリンの音色、女性ヴォーカルの歌声を乗せ
優雅なアコースティックサウンドを聴かせる。ドラムによるリズムが加わるので、ロック的な軽快さもいくぶんあり、
スパニッシュな歌声やアコーディオンの音色とともに、フォルクローレ風味の哀愁と叙情も感じさせる。
ときにマイルドな男性ヴォーカルも加わりつつ、あくまで女性声がメインなのも嬉しい。
あるいは、AMAROKからプログレ要素を薄めたイメージで楽しめるかもしれない。
アコーステッィク度・8 トラッド/フォーク度・8 優雅度・9 総合・8
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Gazpacho 「Fireworker」
ノルウェーのポストプログレ、ガスパチョの2020年作
2003年にデビュー、本作は11作目で、人間の根源的本能、精神性をテーマにした深遠なコンセプト作品。
のっけから19分という大曲で、しっとりと美しいシンセアレンジにマイルドなヴォーカルを乗せ、
翳りを帯びた物悲しい叙情と、静寂の空間性を含んだ、ドラマティックなサウンドを構築する。
ときに壮麗な混声コーラスや、ヴァイオリンなどもを加えた、優雅で涼やかなシンフォニック性と
繊細なピアノをバックにしたゆるやかな歌パートなど、メランコリックな空気感を描きながらも、
メリハリある展開が合わさった聴き心地。中盤にはポストプログレらしい優しい小曲をはさみ、
ラストは15分の大曲で、美しいシンセにメロウなギターを重ねて、じわりと泣きの叙情で盛り上がる。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 しっとり優美度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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NAD SYLVAN 「SPIRITUS MUNDI」
スウェーデンのミュージシャン、ナッド・シルヴァンの2021年作
Agents Of MercyUnifaun、スティーブ・ハケットのGENESISツアーなどで活躍するシンガーで、
本作には、カナダのギタリスト、アンドリュー・ライトレスを迎え、ベースにはトニー・レヴィンが参加。
優美なシンセアレンジにアコースティックを含むギターと、ナッドの独特の味のある歌声を乗せた、
しっとりとしたキャッチーなサウンド。プログレ的な展開はさほどなく、牧歌的な大人の叙情性に包まれた
繊細な耳心地で、12弦ギターの響きとともに、ときにGENESISにも通じる幻想的な空気も感じさせる。
派手さはないが、優雅な味わいの好作品。ボーナストラックのナンバーにはスティーブ・ハケットもゲスト参加。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優美な叙情度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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NEPHILA
スウェーデンのサイケロック、ネフィラの2021年作
女性ツインVoを擁する7人編成で、オールドなギターにオルガンを重ね、やわらかな女性ヴォーカルを乗せた、
70年代ルーツのヴィンテージなサウンドを聴かせる。二人の女性声が重なる、艶めいた妖しさとともに、
キャッチーなポップ感触もあり、アナログ感たっぷりの耳心地は、PURSONSIENA ROOTあたりに通じる。
楽曲は3〜5分前後とわりとシンプルで、インパクトのある展開はないのだが、サイケ寄りの浮遊感やほどよいユルさも含めて、
全体的にものんびりと楽しめる。ちなみにツインギターの片割れも女性で、うるさすぎないギターの重ねも良い感じだ。
ラストは9分の大曲で、スウェーデン語による歌声が土着感をかもしだす。全35分というのも、アナログ時代っぽい。
ドラマティック度・7 ヴィンテージ度・9 女性Vo度・8 総合・7.5
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RUPHUS 「Flying Colors」
ノルウェーのプログレバンド、ルーファスの1978年作
1973年にデビュー、本作は5作目で、ブルージーなギターにハスキーな女性ヴォーカルを乗せた1曲目から、
3作目以降のジャズロック色を受け継いだ軽やかなアンサンブルで、クロスオーバーなサウンドを聴かせる。
その後は、北欧らしい涼やかなギターフレーズにエレピを含むシンセと、女性ヴォーカルの歌声を重ねた、
優美なフュージョンロックを展開。楽曲は4分前後のシンプルな味わいであるが、ジャズロックとしての優雅さと
シンフォプログレのやわらかな叙情が同居した耳心地の良さで、初期に比べるとぐっと洗練されたという印象だ。
ラストは9分の大曲で、美しいシンセに女性声を乗せた、ゆったりとしたシンフォニックナンバー。優雅な好作品です。
メロディック度・8 優雅度・8 北欧度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Marco Minnemann 「Schattenspiel」
ドイツのミュージシャン、マルコ・ミンネマンの2016年作
The AristocratsやU.K.、UKZなどで活躍するドラマーとしても知られる、多彩なマルチミュージシャンである。
テクニカルなドラムにやわらかなシンセ、フルートを乗せた、優雅なジャズロック風のサウンドで、
ときにゲストによる女性声や語りを乗せて、シアトリカルでアヴァンギャルドな空間性を描いてゆく。
自身のヴォーカルを乗せた、わりとキャッチーなナンバーなど、難解になり過ぎない聴き心地で、
音数的にもシンプルなので、ミンネマンの巧みなドラムプレイにフォーカスして楽しむこともできる。
チェンバーロック的でもある優雅なスリリング性も覗かせつつ、ギターも加えたロック感触もあって、
ジャズ、クラシック、ポップ、プログレなどの要素が混在した、まさにボーダーレスをゆく内容だ。
ドラマティック度・6 プログレ度・7 優雅でアヴァンギャル度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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Klaus Schulze 「La Vie Electronique 4」
ジャーマン・シンセミュージックの巨匠、クラウス・シュルツェの未発音源集その4。2010年作
Disc1は、1975年の音源で、全73分におよぶ長大なマテリアル。時期としては「TIMEWIND」〜「MOONDAWN」の頃で、
アナログシンセをメインにしたスペイシーで幻想的なサウンドを描いている。シーケンサーによるリフレインの上に、
単音の旋律も重ねるなど、ときにスリリングなパートも含めた展開力で、スケールの大きな空間美が味わえる。
Disc2は、1975〜76年のライブ音源で、重なるシンセの音がより生々しく響き、49分の組曲を含む聴きごたえのある内容。、
Disc3は、1976年のライブ音源で、41分、28分という2つの大曲をメインに、この時期のシュルツェらしい幻想の翳りを含んだ、
薄暗くも優雅な世界観に包まれたシンセミュージックが堪能できる。70年代シュルツェが好きな方はチェックすべき出来です。
ドラマティック度・7 幻想度・9 シンセ度・10 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Amon Duul 「Experimente」
ドイツのサイケロック、アモン・デュールの1995年作
1969年作「Psychedelic Underground」は、ジャーマンサイケの金字塔として名高いが、本作は同時期の未発音源集。
トライバルなパーカッションに、ギターとフリーキーな歌声や喚きを乗せた、デビュー作の流れの作風で、
愉快でヨレ気味のドラッギーなサイケを繰り広げる。1〜2分前後の短いマテリアルも多く、ブツ切れで終わったりと、
いかにも寄せ集め感が強いが、バンドの本質であるフリーキーな酩酊感はしっかりと味わえる。
ノリノよいリズムに、ユルめの歌声を乗せる部分は、ダモ鈴木在籍時のCANなどにも通じる味わいで、
リフレインによるトリップ感も含めて、これぞサイケである。全24曲、66分を収録。コアなファンはどうぞ。
ロック度・6 サイケ度・9 フリーキー度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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The Aurora Project 「Shadow Border」
オランダのプログレバンド、オーロラ・プロジェクトの2009年作
トレーディングカードゲーム「MAGIC THE GATHERING」愛好者が集って結成され、2005年にデビュー、本作は2作目。
ハードなギターとシンセを重ね、マイルドなヴォーカルを乗せた、薄暗い叙情に包まれたシンフォニックロック。
硬質感と適度なヘヴィネス、エモーショナルな歌声で、翳りを帯びたドラマを描くところは、ARENAあたりにも通じる。
随所にメロウなギターの旋律も覗かせながら、モダンなシンフォプログレのどっしりとした重厚な聴き心地で、
ドラマティックな展開力とキャッチーな抜けの良さ含めて、ProgMetalのリスナーにも楽しめるだろう。
ラストは16分という大曲で、ほどよくスリリングな構築力で、シリアスなハードプログレを描いてゆく。これは力作だ。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 翳りと叙情度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Jane Getter Premonition 「Anomalia」
アメリカの女性ギタリスト、ジェーン・ゲッターによるユニット。2021年作
2015年作から6年ぶりとなる2作目。夫でもある、シンセ奏者のアダム・ホルツマンをはじめ、アレックス・スコルニック(TESTAMENT)、
ランディ・マクスタイン(THE FRINGE)、スチュアート・ハム、チャド・ワッカーマン、ジェーン・レイク、マーク・エガンなど、メタルやプログレ、
ジャズ畑からのメンバーも参加、みなギタープレイにシンセ重ね、優雅な大人のアンサンブルで聴かせるフュージョン的なサウンド。
インストパートをメインに、ジェーン自身の歌声を乗せたナンバーもあり、優美なシンセとともにしっとりとした味わいで楽しめる。
全体的に派手さやテクニカルにたたみかける部分はあまりなく、わりとゆったりとした落ち着いた作風なので、
プログレとして聴くには物足りないのだが、確かな演奏力で奏でられる耳心地の良いサウンドではあります。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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A Triggering Myth 「The Remedy of Abstraction」
アメリカのプログレバンド、トリガリング・ミスの2006年作
1990年にデビュー、チェンバーロックのクラシカル性をシンフォプログレに融合させるこのバンド。
本作は6作目で、バンドのラスト作。軽やかなドラムに巧みなベースとピアノ、シンセを重ねた、
ジャズロック的な優雅なアンサンブルで、軽妙でスリリングなインストサウンドを聴かせる。
KBBの壷井彰久がゲスト参加していて、優美なヴァイオリンの旋律を随所に響かせていて、
シンフォニックロックとしての叙情性と、アコースティックを含む大人のジャズロックが同居した味わい。
一聴したインパクトは薄いが、巧みな演奏とうるさいすぎないセンスが見事な、玄人好みの逸品です。
クラシカル度・7 プログレ度・8 優雅度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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THE LIFELINE 「WHERE THERE IS LIFE, THERE IS HOPE...」
アメリカのプログレ・エモーショナルロック、ライフラインの2004年作
全7曲、29分というデビュー作で、ほどよくハードなギターに艶やかなヴァイオリンを重ね、
ハイトーンヴォーカルを乗せた、モダンでキャッチーなプログレ・ハードロックを聴かせる。
4〜5分前後の楽曲は比較的シンプルで、ときにスクリームも加えたメタル感触も覗かせるなど、
プログレというよりは、本作の次点ではヴァイオリン入りのエモーショナルロックという趣のナンバーも多い。
2010年作「Reflections of Hope」では、よりスタイリッシュに深化したモダン派プログレの好作品となる。
ドラマティック度・7 プログレ度・6 ヴァイオリン度・8 総合・7
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Lasting Weep 「Le Spectacle De L'Albatross 1976」
カナダのプログレバンド、ラスティング・ウィープのライブ。2007年作
MANEIGEの前身バンドによる1976年のライブで、「アルバトロス」と題された未発表の大作を
マネイジュのメンバーを含む17人で演奏するステージ。フルートやサックス、トランペットが鳴り響き
軽やかなドラムにパーカッション、フランス語のヴォーカルもまじえ、ジャズやチェンバーの要素も含んだ
優雅でアヴァンギャルドなサウンドを展開する。随所にフルートの音色が土着的な優雅さをかもしだし、
語りのような怪しい歌声とともにシアトリカルな空気に包まれながら、手数の多いドラムを中心とした
緊張感あるアンサンブルに優美なピアノやシンセを乗せるところは、MANEIGEに通じる部分もある。
クラシカルな優雅さと、エキセントリックな芸術性に富んだアーティスティックなライブが味わえる。
ライブ演奏・8 プログレ度・8 優雅でアヴァンギャル度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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3/18
英国プログレの春(90)


Dyble Longdon 「Between a Breath and a Breath」
英国の女性シンガー、ジュディ・ダイブルとBIG BIG TRAINのデヴィッド・ロングドンによるユニット。2020年作
初期FAIRPORT CONVENTION、TRADER HORNなどへの参加で知られる、ジュディのやわらかな歌声を中心に、
美しいシンセアレンジや叙情的なギターに、デヴィッドのジェントルな歌声も加わり、しっとりと優美なサウンドを聴かせる。
アコースティック含む英国フォークルーツの牧歌性に、シンフォニックロックとしての味わいが同居し、ときにフルートの音色や
ヴァイオリン、トランペットなどが加わった、優雅な大人のアレンジがじつに耳心地よい。うっすらとしたメロトロンをバックに、
二人の歌声が優しく響くナンバーや、3拍子のリズムとともに哀愁の叙情に包まれる、11分の大曲も素晴らしい。
リカルド・ショーブロム、ニック・ディヴァージリオといった、BIG BIG TRAINのメンバーや、ISLDURS BANE、GONG、
JADE WARRIORのメンバーなども参加。ジュディは本作の完成を見る前に、2020年7月に逝去している。
ドラマティック度・8 ジュディの歌声度・8 優雅度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Tom Newman 「Dance Of The Stems」
イギリスのミュージシャン&コンポーザー、トム・ニューマンの2021年作
1975年作「FINE OlLD TOM」収録曲、1977年作「FAERIE SYMPHONY」収録曲のニューミックスに、
MAGENTAのRobert Reed、ホイッスル奏者のLes Penningを迎えて作られた新曲を含む、6曲入りのEP。
アメリカ民謡の「シェナンドー」の雄大な牧歌性から、「妖精交響曲」収録「Dance Of The Daonie Sidhe」の
ケルティックなギターにヴァイオリンを加えた、MIKE OLDFIELD的な優雅な叙情性にウットリとなる。
デビュー作収録曲は、カントリー的なポップな味わいで、「シェナンドー」の別ミックスをはさみ、ラストは2曲目「Dane Of〜」、
20分に及ぶ拡大バージョンで、のんびりとしたドリーミィな幻想に包まれる。EPながら、全45分と聴きごたえがある内容だ。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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Tom Newman 「A Faerie Symphony II」
イギリスのミュージシャン&コンポーザー、トム・ニューマンの2021年作
1977年作「妖精交響曲」から、じつに44年ぶりとなる続編で、EPに引き続き、MAGENTAのロブ・リードが参加。
アコースティックを含む繊細なギターのつまびきにベースを重ね、奇妙なボイスやシンセの味付けと共に、
静謐感のあるエキセントリックでドリーミィなサウンドを描きだす。曲というよりは、奇妙なサントラ的な感じもあり、
プログレらしさや構築性を求める方には向かないだろうが、アーティスティックな感性で、映像を描くような作風は、
70年代の英国らしさを残した、イマジネーション豊かなサウンドである。中盤には、叙情的なギターやフルートとともに
Mile Oldfield的な雰囲気の繊細な優雅さに包まれつつ、Anthony PhillipsGANDALFともまた異なる、
独自の内的世界観を作りだしている。霧の向こうにある、かつての幻想の続きを楽しみたい方にはお薦めだ。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅でエキセントリック度・8 総合・7.5
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GENESIS 「THE LAMB LIES IN ROCHESTER」
イギリスのプログレバンド、ジェネシスのライブ音源。2CD/2020年作
1974年、アメリカ、ニューヨークでのライブで、「THE LAMB LIES DOWN ON BROADWAY」の完全再現を含むステージ。
70ンダイジェネシスのブート音源の中ではわりと音質が良く、何度かタイトルが変わって再版されてきているが、
この2020年版では、サウンドがよりダイナミックになっていて、全盛期のジェネシスの演奏として聴く価値がある。
ピーター・ガブリエルの歌声に、スティーブ・ハレーケットの叙情的なギター、トニー・バンクスの優美なシンセ、
そしてフィルコリンズの巧みなドラムが織りなす、ドラマティックな世界観が、躍動的な演奏で楽しめる。
ラストの「The Musical Box」まで、2CDで約110分、サウンドボード録音の臨場感あるライブ音源です。
ライブ演奏・8 音質・7 往年のジェネシス度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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CASTANARC 「Sea Of Broken Vows」
イギリスのプログレバンド、キャスタナルクの2021年作
1984年にデビュー、1998年までに4作を残して消えるも、2020年に復活。本作は復活2作目となる。
オリジナルメンバーは、ヴォーカルとシンセのみであるが、優美なシンセワークにメロウなギター、
味わいのあるヴォーカルを乗せたキャッチーな1曲目は、1984年作「Journey To The East」を思わせる。
その後は、歌ものナンバーを主体にに、4〜5分前後とシンプルな楽曲が続くが、メロディックロックとしての
純粋な耳心地の良さで、インストパートには凝った展開はさほどないものの、優雅な味わいで楽しめる。
ベテランらしい確かな演奏と歌唱力で、英国らしいウェットなプログレハードとしても鑑賞できる好作品。
メロディック度・8 プログレ度・7 優雅度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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FLUANCE 「LUNACY」
イギリスのプログレユニット、フルーアンスの2020年作
ジェーン・レーン、フィリップ・レーンという夫妻?によるユニットで、ダンカン・マッケイが全面バックアップ、
やわらかなシンセとピアノを中心にした、しっとりとしたサウンドに、味わいのあるヴォーカルを乗せた、
大人の叙情ロックというような聴き心地。オルガンなどのシンセは、さすがダンカン・マッケイらしい
プログレ的な雰囲気をかもしだしているが、楽曲自体はプログレというよりは、AOR風の落ち着いた印象。
ポップな歌メロがビートルズ風だったりしつつ、ときに叙情的なギターによる哀愁の泣きが現れて、
オールドな英国ロックの優雅さに包まれる。メロウなギターの旋律は、PINK FLOYD的といえなくもないが、
全体的にはキャッチーなポップ感を優美に包み込んだという作風で、もう少し深みのあるアレンジがあれば。
メロディック度・8 プログレ度・7 優美度・8 総合・7.5
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Fragile 「Beyond」
イギリスのプログレバンド、フラジャイルの2021年作
TANTALUS、AQUAPLANAGEなどで活躍したシンセ奏者、マックス・ハントを中心にしたバンドの2作目。
のっけから22分におよぶ組曲で、優雅なギターの旋律にオルガンやピアノなどのシンセを重ね、
クレア・ハミルの美しいヴォーカルを乗せた、YESルーツの優美なシンフォニックロックを聴かせる。
ピアノをバックにしっとりとした女性ヴォーカルが優しく響く部分は、RENAISSANCEにも通じる雰囲気で、
わりと軽めの音質なども含めて、今作はさらに70年代寄りのサウンドになった印象。2曲目、3曲目ともに、
14分という大曲で、ゆったりとした叙情パートをメインに、あくまで優雅な流れでじっくりと聴かせる。
YESタイプのシンフォプログレとしては、GLASS HAMMERとはまた違った繊細な味わいの好作品です。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Curved Air 「Alive 1990」
イギリスのプログレバンド、カーヴド・エアのライブ。2019年作
デビュー、20周年記念となる、1990年の英国、ロンドンでのライブを収録。ダリル・ウェイを含む往年のメンバ―編成で、
1970年のデビュー作「AIR CONDITIONING」から、1972年作「PHANTASMAGORIA」まで、初期3作からのセットリスト。
1曲目のイントロ曲はモノラル音質で、ブートかと思いきや、2曲目すぐからステレオの音質になるのでご安心を。
艶やかなヴァイオリンをギターに重ね、ソーニャ・クリスティーナの妖艶な歌声が乗ると、そこはカーヴド・エアの世界観。
サイケとロックに女性声の妖しさを加えたという独自のサウンドには、70年代の瑞々しさから時を重ねた大人の味わいも加わっていて、
ソーニャの歌声も、いくぶん年季が入った感じになっているが、ダリルの奏でる優雅なヴァイオリンの音色は変わらず素晴らしい。
ライブ演奏・8 音質・7 優雅度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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Curved Air 「Live at Under the Bridge: The 45th Anniversary Concert」
イギリスのプログレバンド、カーヴド・エアのライブ。2019年作
デビュー40周年を記念した、2015年イギリス、ロンドンでのライブを2CDに収録。
Disc1は、2014年作「NORTH STAR」からのナンバーを中心にしたセットで、優美なシンセに艶やかなヴァイオリン、
ソーニャ・クリスティーナの熟女風ヴォーカルを乗せ、キャッチーな優雅さとともに、軽妙な展開力で聴かせる。
随所にメロウなギターの旋律と、オルガンを含むシンセワークも効いていて、演奏面では往年以上の出来である。
Disc2では、ダリル・ウェイをゲストに迎えて、1970年作「AIR CONDITIONING」全曲を含むセットを披露。
ツインヴァイオリンで再現される初期ナンバーは優雅な味わいで、オールドファンにも嬉しい好ライブ作である。
ライブ演奏・8 音質・8 優雅度・8 総合・8
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Steven Wilson 「To the Bone」
イギリスのミュージシャン、スティーヴン・ウィルソンの2017年作
PORCUPINE TREEでの活動はもとより、ソロ活動や、プログレ作品のリミックスなど、多彩な才能を発揮し続けるミュージシャン。
本作は、80年代のニューウェイブや、ピーター・ガブリエルなど、わりとポップ路線から影響を受けたという作品で、
軽やかなリズムに、ロックなギターとマイルドなヴォーカルを乗せ、女性コーラスも絡んだ、キャッチーなサウンドを聴かせる。
80年代的なほどよいポップ感に包まれつつ、翳りを帯びた繊細な叙情性は、やはりスティーヴンらしい世界観で、
優美なピアノやシンセアレンジも含めて、しっとりとした耳心地の良さで楽しめる。比較的コンプクトな楽曲が中心で、
プログレとして聴くには物足りなさもあるのだが、サウンドメイキングの質の高さはさすが。センスの光る一枚です。
キャッチー度・8 プログレ度・7 優美で繊細度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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RICK WAKEMAN 「NO EARTHLY CONNECTION」
イギリスのシンセ奏者、リック・ウェイクマンの1976年作/邦題「神秘への旅路」
「ヘンリー八世〜」、「地底探検」、「アーサー王〜」という文芸三部作に続く作品で、アシュリー・ホルト、トニー・フェルナンデスら、
English Rock Ensembleとのバンド編成。フランスのウルヴィル城で録音されたという作品で、オーケストラは用いずに、
オルガンやクラヴィネット、ムーグ、メロトロンなど多彩なシンセをたっぷりと使った、優雅なシンフォニックロックを展開。
味わいのあるヴォーカルに、クラシカルなピアノ、ときにトランペットやホルンなども加えて、ゆったりとした耳心地の良さと、
キャッチーなメロディアス性に包まれる。バンド編成という点ではロックとしてのプログレらしいノリも感じられる。
三部作の陰に隠れた逸品だろう。2016年の再発盤は、Disc2に、1976年のBBCライブを収録した2枚組仕様。
シンフォニック度・8 プログレ度・8 キーボー度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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THE CRIMSON PROJEKCT 「LIVE IN TOKYO」
エイドリアン・ブリュー、トニー・レヴィンらによる、クリムゾン・プロジェクトのライブ。2014年作
2013年の来日公演のステージを収録。パット・マステロットとトビアス・ラルフによるツインドラムに、
トニー・レヴィンと女性奏者のツインベースを含む編成で、「ブルーム」や「スラック」、「ディシプリン」など、
KING CRIMSON
の80年代以降のナンバーを主体に演奏、ツインドラムのリズムと歪んだベースを重ねた、
スリリングで硬質なサウンドを描いてゆく。エイドリアン・ブリューのギターにヴォーカルも加わると、
「クリムゾンのあの曲だ」とやっと認識できるのだが、これも新たなクリムゾンの実験精神の形というべきだろう。
後半には「太陽と旋律Pt2」や「レッド」も披露。ツインドラムによる迫力ある演奏はなかなか圧巻である。
ライブ演奏・9 重厚度・9 クリムゾン度・8 総合・8
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Peter Gabriel 「UP」
イギリスのミュージシャン、ピーター・ガブリエルの2002年作
前作「US」から10年ぶりとなるアルバムで、前作のポップ性に比べると、ぐっとシリアスな空気をまとい、
インダストリアルなデジタルさをロックサウンドに融合させつつ、味わいのある歌声を乗せた、
ふわりとやわらかな叙情に包まれる。モダンでエレクトロな雰囲気や、ポップなビート感の中にも
ときおりプログレッシブな香りが感じられ、優雅な構築力とともに独自の世界観を描いている。
繊細な歌ものナンバーは、シンセやピアノのアレンジとともに、ポストプログレ的な聴き心地で、
翳りを含んだ空気にしっとりと浸れ、ストリングスを加えて壮麗に盛り上がるナンバーなども見事。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Raphael Rudd 「The Awakening」
イギリスのシンセ奏者、ラファエル・ラッドの1991年作
RENASSANCEに在籍していたキーボード奏者のソロで、1984年作「Reflections」の曲順を変えて再編集された作品
ピート・タウンゼント、フィル・コリンズ、アニー・ハズラムという名だたるメンバーが参加、優美なシンセとクラシカルなピアノに
自身のやわらかなヴォーカルを乗せた繊細なシンフォニックロックを聴かせる。アニー・ハズラムがヴォーカルをとるナンバーは
まるでルネッサンスのような優雅なクラシカルロックで、フィル・コリンズの巧みなドラムも光っている。
自身が演奏する美しいハープによる小曲なども味わいがあり、ジャケのイメージとは異なる、しっとりとした美しさの好作品だ。
クラシカル度・8 プログレ度・7 優美度・9 総合・8
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MCCULLY WORKSHOP「BUCCANEER」
南アフリカのアートロックバンド、マコーリー・ワークショップの1998年作
1970〜75年に3作を残したバンドの復活作で、過去曲のリメイクをメインにした12曲を収録。
オールドな味わいのギターに渋めのヴォーカル、キャッチーなコーラスを重ねて、
哀愁を感じさせる70年代ルーツのロックを聴かせる。リメイクはシングル曲が主体なので、
70年代のサイケな雰囲気よりは、よりポップでアダルトな渋みを増した作風であるが、
オルガンが鳴り響き、叙情的なギターとともにフックのある歌メロを乗せるところは、かつての雰囲気も覗かせる。
キャッチー度・8 プログレ度・5 大人のロック度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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3/4
イタプロ、ドイツ、フランスも(75)


La Maschera di Cera「S.E.I.」
イタリアのプログレバンド、ラ・マスケッラ・ディチェッラの2020年作
2002年にデビュー、古き良きイタリアンプログレのマインドを現代に蘇らせるこのバンド、
本作は、2012年以来となる6作目。のっけから21分という大曲で、オルガンが妖しく鳴り響き、
メロトロン、ムーグというヴィンテージなシンセにフルートが絡む、いかにもオールドスタイルのサウンドで、
イタリア語による味のあるヴォーカルとともに、あっという間に鈍色の幻想の世界観に包まれる。
2曲目も10分近い美麗なシンフォプログレナンバー、ときにサックスも加えた、緩急あるリズム展開も含め、
スリリングなドラマ性もたっぷり味わえる。ラストは13分の大曲で、やわらかなフルートに優美なシンセ
サックスも重なり、軽妙な展開からヴォーカルも加わえて、繊細な叙情に包まれながら幕を閉じる。
全3曲、香り立つようなヴィンテージプログとは、まさに本作のことだろう。ロマン派イタリアンプログレの傑作だ。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 イタリア度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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MINDANCE 「COSMICALLY NOTHING」
イタリアのプログレバンド、マインダンスの2020年作
わりとハードなギターにシンセを乗せ、英語歌詞のヴォーカルとともに、独特の浮遊感に包まれたサウンドを描く。
オールドロック寄りのギターとオルガンの音色によるヴィンテージな味わいと、モダンなエレクトロ感が同居し、
スペイシーなサイケ風味や、牧歌的なユルさ、メロウな叙情も覗かせて、なかなかつかみどころがない。
9分の大曲でも、あくまでゆったりとした、PINK FLOYD的な味わいに、ヴィンテージ感を漂わせていて、
ラストの12分という大曲は、フリーキーにギターが鳴り響く不穏な雰囲気から、ほどよい叙情をまとわせつつ、
シンフォプログレになりそうで、そうでもないという、やはりつかみどころのなさが個性といえなくない。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 イタリア度・7 総合・7.5
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Annie Barbazza & Max Repetti 「Moonchild」
イタリアの女性シンガー、アンニ・バルバッツァと鍵盤奏者、レペッティによる2018年作
故グレッグ・レイクの楽曲のトリビュート作品で、クラシカルなピアノをバックにしっとりとした女性ヴォーカルを乗せ、
KING CRIMSONEL&Pなどの楽曲を優美に聴かせる。「クリムゾンキングの宮殿」〜「21世紀の精神異常者」
「トリロジー」「ムーンチャイルド」「石を取れ」「セ・ラ・ヴィ」「エピタフ」「悪の教典#9」「将校と紳士の回顧録」
「ポセイドンの目覚め」「ラッキー・マン」「キエフの大門」など、クリムゾンやEL&Pのファンには馴染みの名曲も多数。
バックはシンプルなピアノのみなので、まるでジャズやシャンソンのようだが、表現豊かなヴォーカルが、
ときに優美に、ときにエモーショナルにプログレナンバーを歌い上げるところは、なかなか感動的である。
もともとがクラシカルなEL&Pのナンバーは、女性Vo&ピアノという優雅なアレンジがよくマッチしている。
優雅度・・9 プログレ度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8
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BARO PROG-JETS 「Lucillo & Giada / Topic Wurlenio」
イタリアのプログレユニット、バロ・プログ・ジェッツの2019年作
MARYGOLDで活躍した、Alberto “Baro” Molesiniを中心にしたプロジェクトで、本作は、70〜80年代に活動していた、
LA SINTESIというバンドのマテリアルを元にしたコンセプト作をDisc1に、1983年のソロ作を元にした音源をDisc2に収録。
「Lucillo & Giada」は、美麗なシンセワークにメロウなギター、イタリア語のジェントルなヴォーカルを乗せた、
シンフォニックロックを聴かせる。プログレらしい軽快な展開力に、ときにアコースティックパートを含む
優美な叙情性に包まれた、4パートに分かれた流れのあるドラマティックなシンフォプログレが楽しめる。
Disc2は、よりキャッチーな作風で、優雅なアンサンブルとともに大人の叙情プログレとして鑑賞できる。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 優美度・9 総合・8
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Paolo Nannetti 「Cronache Dalla Zona Est」
イタリアのミュージシャン、バオロ・ナンネッティの2019年作
SITHONIAのシンセ奏者として活躍したミュージシャンで、本作はアコースティックギターのつまびきから
美しいシンセワークにイタリア語によるマイルドなヴォーカルを乗せて、しっとりとした優美なサウンドを描く。
ときにやわらかなピアノやフルート、ヴァイオリンなども加わった繊細なアレンジに、メロウなギターの旋律で
耳心地よいシンフォニックロックが楽しめる。キャッチーなビート感のナンバーもありつつ、全体的にはシンセをメインに
ゆったりと聴かせる作風で、SITHONIAのようなプログレ的なフックはないが、のんびりと楽しめる好作品です。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優美度・8 総合・7.5
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UNREAL CITY 「FRAMMENTI NOTTURNI」
イタリアのプログレバンド、アンレアル・シティの2017年作
2013年にデビューし3作目。女性ギタリストを含む4人編成で、オルガンにヴァイオリンが鳴り響き、
サイケなギターを乗せたイントロから、ミステリアスで混沌としたプログレサウンドが展開してゆく。
クラシカルなピアノにイタリア語のヴォーカルも加え、ゆっりとした叙情パートも含め、5パートに分かれた13分の大曲を、
緩急ある流れで構築。随所に女性ヴォーカルや叙情的なギターで、シンフォプログレとしての優雅さも覗かせる。
続く2曲目も11分という大曲で、ヴィンテージ感のあるシンセとともに、イタリアンロックらしい濃密な味わいに包まれる。
古き良きプログレらしさと、イタリアならではの妖しさを、若手らしい瑞々しいセンスで仕上げたという逸品だ。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 イタリア度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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PFM 「CELEBRATION - LIVE IN NOTTINGHAM 1976」
イタリアのプログレバンド、ブレミアータ・フォルネリア・マルコーニののライブ音源。2019年作
1976年のイギリス、ノッティンガムでの音源で、「CHOCOLATE KINGS」2010年再発盤のDisc2に収録されていたものを
2CDに全10曲収録した完全版。当時のMCから始まる臨場感とともに、技巧的なアンサンブルにヴァイオリンも乗せた、
優雅な叙情が一体となった見事な演奏が楽しめる。「甦る世界」収録の名曲「Four Holes In The Ground」や
アコースティックギターによる優雅なソロも聴かせつつ、マウロ・パガーニのフルートとヴァイオリンが鳴り響く、
「Mr.9 'Till 5」、「Celebration」といったノリのよい代表曲も、バンドの全盛期らしい勢いある演奏が素晴らしい。
ドラムソロを含めて14分に拡大された「ハンスの馬車」、ラストの「ウイリアムテル序曲」まで、躍動感あふれるライブが味わえる。
ライブ演奏・9 プグレ度・8 音質・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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CELESTE 「FLASHES FROM ARCHIVES OF OBLIVION」
イタリアのプログレバンド、チェレステの2020年作
70年代の未発音源集で、1972〜73年のデビュー前の音源12曲に、1st発表後の音源7曲、新曲1曲を収録。
アコースティックギターにたおやかなフルート、美しい女性ヴォーカルの歌声で聴かせる初期の音源は、
ロック色はほとんどない優美なフォークサウンドで、RENAISSANCEなどにも通じる優雅で繊細な味わい。
2〜3分前後の小曲が多く、前半はプログレというよりはフォーク寄りの牧歌的な作風であるが、ときにシンセを加えた
シンフォニックな雰囲気もあり、ファンであればウットリと楽しめる。中盤にはエレピにサックスを乗せたジャズロック感触や
1976〜77年「CELESTE II」期の音源では、アコースティックギターやフルートの優雅さに、軽快なドラムも加えたアンサンブルで、
ヴァイオリンの音色とともにプログレらしいサウンドが聴ける。全体的に音質はややぼやけ気味だが、大変貴重な音源集である。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優美で繊細度・9 総合・8
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CAMERA ASTRALIS 「I SUPPLICANTI」
イタリアのプログレバンド、カメラ・アストラリスの1998年作
アコースティックギターのつまびきにイタリア語のヴォーカルを乗せ、やわらかなシンセやピアノとともに
しっとりとした叙情に包まれたシンフォニックロックを聴かせる。ハケットばりのメロウなギターも加わって
かつてのGENESISを思わせる優雅なサウンドを展開。メトロンを含む優美なシンセワークも含めて、
耳心地の良いジェネシス系シンフォという点では、SUBMARINE SILENCEなどが好きな方にも薦められる。
全体的にスリリングな展開はさほどなく、繊細で牧歌的な耳心地ながら、優しい叙情美に浸れる好作品。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 優美度・9 総合・8

Apogee 「Endurance of the Obsolete」
ドイツのシンフォニックロック、アポジーの2020年作
1995年にデビュー、 Versus Xでも活躍するミュージシャンのプロジェクトで、本作は9作目となる。
メロウなギターの旋律に、オルガンやメロトロンなどのやわらかなシンセを重ね、マイルドなヴォーカルとともに、
優美なシンフォプログレを構築する。軽めのドラムの音や、90年代ルーツの牧歌的なシンフォ感触が、
ほどよくマイナーな雰囲気をかもしだしていて、10分を超える大曲を中心に、プログレらしいリズム展開も含めて
あくまで優雅に聴かせながら、突き抜けきらならい微妙な盛り上がりが、わりと微笑ましくもあるという。
スタイリッシュとは真逆の拡散タイプなのはよいが、だらだらと長いだけでは、聴き手は飽きてしまう。
印象的なメロディや盛り上がりが随所に欲しい。TRANTATLANTICにはなり切れない佳作という印象です。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 楽曲度・7 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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US 「LINDISFARNE」
オランダのプログレバンド、USの2018年作
2002年にデビューし、本作は10作目あたり。やわらかなオルガンに叙情的なギターを重ねて、
ほどよく緩急あるリズムとともに、古き良き感触の優美なシンフォプログレを聴かせる。
素人臭いヴォーカルも含めて、野暮ったさは相変わらずなのだが、すべてが10分前後の大曲で、
女性ヴォーカルも加わった優雅なパートなどもあり、なかなかドラマティックな構築力が光っている。
ラストは19分におよぶ大曲で、キャッチーな軽快さも覗かせつつ、王道のシンフォニックロックを展開する。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 優雅度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら

Amon Duul II 「Flawless」
ドイツのサイケロック、アモン・デュール2の1997年作
過去曲のリレコーディングやリミックスを含む、バンド結成30周年を記念してのアルバム。
1995年作「ナダに輝く月」からの再録曲で幕を開け、男女ヴォーカルにフルートが鳴り響く、
アラビックなサイケロックを展開、2曲目は、傑作「WOLF CITY」からのナンバーで、
やわらかな女性ヴォーカルを乗せた、スペイシーなアレンジでキャッチーに聴かせる。
4曲目も「WOLF CITY」から。ヴァイオリンが鳴り響く優美なサウンドにウットリしつつ、6曲目は「Yeti」からのナンバーで、
アコースティックギターにパーカッションが重なる、妖しいサイケフォークから、歪んだギターが加わって迫力を増してゆく。
レナーテ・クナウプの艶めいた歌声を乗せた曲も多いので、往年のファンにも嬉しいだろう。
「ナダ〜」からの再録5曲に未発曲などを含む、全71分。AD2のファンであれば充分楽しめる内容だ。
ドラマティック度・7 サイケ度・8 AD度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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NITS「WOOL」
オランダのポップロック、ニッツの1999年作
1978年デビューのベテラン、やわらかなシンセにジェントルな男性ヴォーカル、女性ヴォーカルも加えて、
随所にヴァイオリン、サックスなども絡んで、落ち着いた大人の味わいのサウンドを聴かせる。
ロック的な躍動感というよりは、哀愁を含んだしっとりとした作風で、プログレ的な展開力はほとんどなく、
やはり大人のポップロックというところ。ヴァイオリンやチェロなどの美しいストリングスアレンジや、
オルガンやピアノを使ったところにはプログレの香りもあるものの、全体的には退屈に思える。
メロディック度・7 プログレ度・5 大人の哀愁度・8 総合・7
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ANGE 「La Gare De Troyes」
フランスのプログレバンド、アンジュの1983年作
80年代のアンジュは、70年代の黄金期や、90年代以降の新生アンジュに比べて影が薄かったが、
再発リマスター盤で、改めて聴いてみると、これがなかなか悪くない。80年代らしいポップなビート感に
スタイリッシュなシンセアレンジと、クリスチャン・デカンのフランス語の歌声を乗せたサウンドは、
フレンチらしい優雅なプログレハードという趣。楽曲は3〜4分前後が主体で、わりとシンプルではあるが、
アダルトなAOR風味の中にも、ヨーロピアンな翳りのようなものは感じられ、随所にメロディックなギターや
優美なシンセやピアノ、ときにサックスも加わるなど、繊細なアレンジセンスはさすがというところ。
ラストは9分の大曲で、起伏に富んだ展開でドラマティックなシンフォプログレが広がってゆく。
キャッチー度・8 プログレ度・7 フレンチ度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Halloween「Part One」
フランスのプログレバンド、ハロウィーンの1988年作
クラシカルなヴァイオリンが鳴り響き、うっすらとしたシンセにシアトリカルなヴォーカルを乗せて、
ヨーロピアンな翳りを帯びたシンフォニックロックを聴かせる。歌詞は英語ながら、どこなくフランス語なまりの発音で、
マイルドな歌声の中に幻想的な空気を感じるのはやはりフレンチらしい。艶やかなヴァイオリンがシンセに絡むところは、
優雅な味わいながらも、どこか怪奇ロマンのような妖しさがあって、ワインを片手に味わいたいサウンドである。
叙情的なギターの旋律も随処に耳心地よく、10分の大曲では、演劇的な語りや静寂感に包まれたパートを含む、
流れのある展開力で、じっくりと独自のシンフォプロクレを構築する。2001年までに5枚のアルバムを残して消えるが、
そのシアトリカルな世界観は一貫していて、90年代フレンチプログレを代表するバンドであった。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 フレンチ度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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2/18
北欧プログレ特集(60)


Trettioariga Kriget 「Till Horisonten」
スウェーデンのプログレバンド、トレッティオアリガ・クリゲットの2021年作
1974年にデビュー、1981年までに5作を残して消えるも、2004年に復活、本作は5年ぶりとなる作品で、
前作までの大人の哀愁路線に加えて、よりプログレッシブな作風へと回帰してきた会心の出来。
叙情的なギターの旋律にメロトロンが重なり、スウェーデン語による枯れた味わいの歌声を乗せて、
涼やかな土着性とともに、70年代ロックルーツの渋さも含んだハードプログレを展開する。
ほどよくキャッチーな味わいと、ときにシンフォニックロック的な優美なシンセワークも覗かせつつ、
牧歌的な小曲をはさんで、アルバム後半には14分におよぶ大曲を、ドラマティックに構築する。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 北欧度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Trettioariga Kriget 「WAR YEARS」
スウェーデンのプログレバンド、トレッティオアリガ・クリゲットのライブ。2008年作
Disc1には、1971〜81年のライブを収録。Disc2には、復活後、2004年、2007年のライブを収録した2枚組。
70年代の音源(PAST)は、アルバムデビュー前のステージも含めて、未発のナンバーも多く披露している。
ハードロック然とした演奏の中にも、母国語によるヴォーカルや涼やかな土着性はすでに個性的である。
70年代中期の音源になると、演奏力や楽曲の構築性も高まって、よりプログレッシブな演奏が味わえる。
Disc2(PRESENT)は、近年の作品からに加え、1974年のデビュー作からのナンバーも披露。より深みを増した
大人の哀愁を感じさせる演奏だ。2CDで合計138分、バンドの過去と現在を振り返ることができる2CDライブ。
ライブ演奏度・8 プログレ度・7 バンドの歴史度・9 総合・8
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Tillison Reingold Tiranti 「Allium: Una Storia」
THE TANGENTのアンディ・ティリソン、THE FLOWER KINGS、KARMAKANICのヨナス・レインゴールド、
NEW TROLLS、LABYLINTHのロベルト・ティランティによるユニット。2021年作/邦題「ネギ物語」
17分、14分という大曲を含む全3曲で、やわらかなシンセにイタリア語にるヴォーカルを乗せた優雅なサウンド。
PFMや後期OSANNAなど、往年のイタリアンプログレの雰囲気を織り込んだ、大人の叙情に包まれた作風で、
ときにサックスも加わったジャズロック的な軽妙さと、地中海的な牧歌性が同居したという味わい。
全体的に派手さはないがのんびりと楽しめる。後半には、ヨナス・レインゴールドによる別ミックス音源を収録。
より輪郭がはっきりしたダイナミックなサウンドになっていて、個人的にはこちらのミックスが好みかも。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・8 総合・7.5
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MATS GLENNGARD 「KOSTENLAGE」
スウェーデンのミュージシャン、マッツ・グレンガードの1972年作
Kebnekajseのヴァイオリン&ギターとして知られるミュージシャンで、70年代唯一のソロアルバム。
アコースティックギターに母国語による歌声を乗せた牧歌的なナンバーから始まりつつ、
土着的な旋律を奏でるヴァイオリンとともに、北欧らしい涼やかな空気を描いてゆく。
フリーキーなギターが加わると、サイケな浮遊感に包まれ、初期のケブネカイゼを思わせつつ、
バンジョーのつまびきやピアノの旋律も加わって、優しく牧歌的な聴き心地が楽しめる。
ラストは10分を超える大曲で、オルガンも加えたアンサンブルでプログレ風味も覗かせる。
牧歌的度・9 プログレ度・7 北欧度・9 総合・7.5
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LARS HOLLMER 「Siberian Circus」
スウェーデンのミュージシャン、ラーシュ・ホルメルの1993年作
サムラ・マンマス・マンナの中心人物として知られるアコーディオン&キーボード奏者で、
本作は、1981〜88年までソロ作品からの楽曲を収録したベストアルバム的な作品。
やわらかなアコーディオンの音色に母国語の歌声を乗せた、北欧の土着的な哀愁と、
とぼけた味わいが同居する。2〜3分前後の小曲主体なので、プログレ的なところはさほどないが、
1983年以降の楽曲にはシンセも使い始めていて、インストパートを優美に彩っている。
全体的には、アコーディオンをメインにした牧歌的なサウンドになごめます。全22曲、74分を収録。
アコーディオン度・・8 プログレ度・・6 北欧度・・8 総合・・7.5
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VIOLENT SILENCE 「TWILIGHT FURIES」
スウェーデンのプログレバンド、ヴァイオレント・サイレンスの2020年作
2002年にデビュー、本作は7年ぶりとなる4作目。デジタルなイントロに続くのは16分という大曲で、
テクニカルなリズムに優美なシンセアレンジ、なんとなくロック寄りのヴォーカルを乗せたクールで軽妙なサウンド。
ギターが入らないので、シンセをメインにした優雅な感触であるが、力みぎみの歌声がミスマッチなコントラストになっていて、
ときにシンフォニックな叙情性も覗かせつつ、メリハリある展開力で聴かせる、単なるフュージョンロックとも異なる味わいだ。
10分前後の大曲を主体に、涼やかでスタイリッシュなサウンドを描く、北欧テクニカルプログレの力作です。
ドラマティック度・7 テクニカル度・8 クールで優雅度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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PIXIE NINJA 「COLOURS OUT OF SPACE」
ノルウェーのプログレバンド、ピクシィ・ニンジャの2020年作
元ANGLAGARDのマティアス・オルソンが参加するバンドの2作目。エレクトロな感触もある優美なシンセの重ねに
ギターとドラムを加えて、北欧プログレらしいクールな空気感に包まれた、インストによる音響サウンドを展開。
エレクトロな雰囲気がアナログ感につながっているという点では、むしろヴィンテージといってよい聴き心地で、
ときにチェロやホルンなども加えた、わりとチェンバープログレ風味のスリリングな優雅さも覗かせる。
前作以上にギターがヘヴィにうなる部分もあって、シンセとの重なりとハードなドラムサウンドが合わさって
重厚なスケール感を描いている。10分前後の大曲を主体に、涼やかな景色を音で表現するような傑作だ。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 北欧度・8 総合・8.5 過去作のレビューはこちら
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Mollmaskin 「Heartbreak in Stereo」
ノルウェー出身のミュージシャン、アンダース・ベルムレランドによるプロジェクト、モルマスキンの2015年作
ギター、ベース、ドラム、シンセ、サックス、フルートなどを一人でこなすマルチミュージシャンで、
うっすらとしたシンセとギターに、マイルドなヴォーカルを乗せた、ジャズロック的な軽やかなアンサンブルに、
翳りを帯びたポストプログレ風味を加えたようなサウンド。あえて25分ずつのCD2枚組となっていて、
Leftサイドは、サックスが鳴り響くフリーキーなジャズ色も覗かせつつ、比較的キャッチーな聴き心地。
Rightサイドの方は、より繊細な歌もの感に包まれていて、やわらかなシンセアレンジやピアノが美しい。
巧みなドラムによる優雅なリズムとともに、涼やかなポスト・プログレ・ジャズロックが楽しめる好作。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・8 総合・7.5
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Motorpsycho 「The All Is One」
ノルウェーのプログレ・ロックバンド、モーターサイコの2020年作
1990年代初頭にデビュー、プログレッシブな知性とガレージロックが同居したノルウェーを代表するロックバンド。
本作は2枚組で、42分におよぶ組曲を含んだ大作。オールドなギターにマイルドなヴォーカルを乗せた
LED ZEPPELINなどに通じる、70年代ルーツのヴィンテージロックに、北欧らしい涼やかな空気を含ませた、
自然体のロックサウンドは健在。メロトロンやオルガンなどのシンセがプログレ寄りの叙情を描いていて、
メロウなギターの旋律とともに、単なるロック以上のスケール感を聴き手に感じさせる技量は素晴らしい。
2CDにまたがる長大な組曲「N.O.X.」は、ヴァイオリンも鳴り響き、混沌としたフリーキーなパートから、
メロディアスな叙情、そしてスペースサイケ風のリフレインまで内包した異色のナンバーである。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 壮大度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Motorpsycho 「Kingdom of Oblivion」
ノルウェーのプログレ・ロックバンド、モーターサイコの2021年作
2019年からの3年間でアルバム3枚という、多作ぶりを発揮するノルウェー最高のロックバンド。
今作は、オールドなハードロック風のギターにマイルドなヴォーカルを乗せた、渋いノリで始まり、
これまで以上にギターのエッジが立った、ツェッペリン風の70年代ハードロックを受け継ぐ味わい。
もとろん、シンセを重ねた涼やかな空気感も随所に覗かせつつ、今作ではアナログ感あるギターをメインに、
ヴィンテージなロック感触が際立っている。一聴してシンプルなノリから、ふわりとキャッチーなフックが現れたり、
メロトロンを用いてゆったりとした叙情に包まれた、プログレ寄りのナンバーも心地よい。全70分の力作です。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 ヴィンテージ度・9 総合・8
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OCTOPUS 「Thaerie Wiighem」
ノルウェーのプログレバンド、オクトパスの1981年作
アルバム1枚のみを残して消えた、幻の北欧プログレ作品が、2021年にCD化された。
繊細でメロウなギターの旋律に優美なシンセを重ね、母国語によるマイルドなヴォーカルで、
北欧らしい涼やかなシンフォプログレを聴かせる。初期のKAIPAなどに比べてもさらに牧歌的で、
翳りを帯びたマイナー感たっぷりの雰囲気であるが、これぞ北欧プログレというサウンドである。
メロディ自体はキャッチーで耳心地よく、随所にプログレらしいリズムチェンジを含んだ展開と、
流れのある構成で楽しめる。ジャケの雰囲気は辺境系そのものであるが、全45分の好作品です。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 北欧度・9 総合・8
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NOVA 「ATLANTIS」
フィンランドのプログレバンド、ノヴァの1976年作
北欧プログレの隠れた逸品とされるバンドの唯一のアルバム、40周年記念で、2017年に2枚組で再発された、
優美なピアノの旋律に導かれ、オルガンを含むやわらかなシンセに母国語によるヴォーカルを乗せた、
優雅なサウンドが広がってゆく。15分、10分という大曲を主体にしながら、さほど派手な展開はなく
フィンランドの歌声による素朴な響きが牧歌的な味わを描きつつ、ときにジャズロック的な感触も覗かせる。
ラストの10分の大曲は、北欧らしい涼やかな空気に包まれた物悲しいシンフォニックロックが味わえる。
Disc2には、2016年ミックス音源と未発のシングル曲を収録。新たなミックスはよりクリアなサウンドで良いですね。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 北欧度・9 総合・8
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KOSMOS 「Ajan Peili」
フィンランドのプログレバンド、コスモスの2019年作
2005年にデビュー、本作は6年ぶりとなる5作目。メロトロンが幻想的に鳴り響き、繊細なギターを重ねて
母国語による女性ヴォーカルの歌声とともに、涼やかな叙情に包まれたサウンドを描く。
フォークロック寄りのキャッチーな牧歌性も覗かせるなど、楽曲自体に派手な展開はないが
北欧らしい物悲しい翳りを帯びた空気と、素朴な土着性はとても耳心地よく、魅力的だ。
ラストは11分の大曲で、メロトロンをたっぷり使いながら、アコースティックギターに乗せる
やわらかな女性ヴォーカルでしっとりとしつつ、後半は神秘的なサイケ感も加えてじわりと盛り上げる。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 北欧度・9 総合・8
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DAI KAHT 「DAI KAHT II」
フィンランドのプログレバンド、ダイ・カートの2020年作
2017年にデビューし、2作目となる。軽やかなギターの旋律にシンセを重ね、独自の架空言語によるヴォーカルを乗せて
とぼけた味わいの軽妙でキャッチーなサウンドを描く。MAGMAからの影響を感じさせるジャズロック風味と
プログレらしいテクニカルなリズムに、メロディックなギタープレイによる優美なフュージョン感触が合わさって、
序盤はわりと爽快に楽しめる。アルバム中盤には、アヴァンロックとしての怪しげな雰囲気も漂わせ、
11分、12分という大曲では、緩急ある展開力とスリリングなアンサンブルで、異様なスケール感に包まれる。
全体的には、難解さよりも優雅なノリで楽しめる部分が多いので、アヴァンプログレ初心者にも薦められる。
ドラマティック度・7 プログレ度・8 優雅度・9 総合・8
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2/4
英国系プログレはよいものですね(46)


RICK WAKEMAN 「THE RED PLANET」
イギリスのキーボーディスト、リック・ウェイクマンの2020年作/邦題「火星探検」
YESやソロ作品など、手掛けた作品は膨大な数に及ぶ、まさにプログレ界きってのシンセ奏者。
本作は火星をテーマにしたコンセプト作で、自身のバックバンド、English Rock Ensembleが参加、
往年を思わせるきらびやかなシンセワークをメインに、優雅でクラシカルなサウンドを描いてゆく。
アスクレウス山、オリンポス山など、楽曲ごとに火星の地名を使って、聴き手に雄大なイメージを膨らませる。
プログレらしい軽妙なリズムとともに、オルガンやムーグ、メロトロンなどのヴィンテージなシンセを使いつつ、
随所にギターが加わったロック感触も覗かせる。ウェイクマンの往年のソロ作に近い味わいの逸品だ。
ブックレットには、火星の探査機やクレーターなど、マニアックな写真やCGでの解説があって興味深い。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 キーボー度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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RICK WAKEMAN 「IN THE NICK OF TIME - LIVE 2003」
イギリスのキーボーディスト、リック・ウェイクマンのライブ。2012年作
自身のバックバンド、THE NEW ENGLISH ROCK ENSEMBLEを率いて行われた2003年英国ツアーの音源を収録。
のっけから名曲「Catherine Parr」で、オルガンやムーグを含む、ウェイクマンの華麗な鍵盤メロディが溢れ出す。
2003年作「Out There」、1976年作「神秘への旅路」、1999年作「地底探検・完結編」、1977年作「ホワイト・ロック」など、
わりとマニアックな選曲なので、コアなファンには嬉しいだろう。手数の多いトニー・フェルナンデスのドラムも含めて、
演奏陣も充実しており、アシュレイ・ホルトのヴォーカルも力強い。ラストはYES「Starship Trooper」から「WURM」で幕を閉じる。
音質も良好なので、ウェイクマンのファンなら聴いて損のないライブ音源だろう
ライブ演奏・8 音質・8 キーボー度・8 総合・8
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JON ANDERSON 「1000 HANDS - CHAPTER ONE」
イギリスのミュージシャン、ジョン・アンダーソンの2019年作
YES脱退後は、ソロ活動を主体に、リック・ウェイクマンやロイネ・ストルトなどとコラボ作なども発表していたが、
純粋なソロ名義としては2011年以来となる。アラン・ホワイト、クリス・スクワイア、スティーヴ・ハウ、トレヴァー・ラヴィンといった
YES関連メンバーから、イアン・アンダーソン、スティーヴ・モーズ、チック・コリア、ボビー・キンボール、ラリー・コリエル、
パット・トラヴァース、ロビー・スタインハート、ジェリー・グッドマン、ビリー・コブハム等々、名だたるミュージシャンが参加して、
まさに1000の手で作られたというアルバム。聴いた瞬間にそれと分かる、ジョンのハイトーンヴォーカルは健在で、
わりとポップでキャッチーな感触ながら、ヴァイオリンなどのストリングスやフルートも入った優雅なパートも多く、
やわらかなジョンの歌声がたっぷりと楽しめる。プログレ度はさほど高くないが、イエスのファンなら聴いて損のない出来だ。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・8 総合・7.5
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GNIDROLOG 「LIVE 1972」
イギリスのプログレバンド、ニドロローグのライブ音源。1972/1999年
1972年に2作を残した、英国プログレの知られざる実力派バンド、本作は1stと2ndの間の時期に行われたライブで、
デビュー作「...In Spite Of Harry's Toe-Nail」からの楽曲に、2nd「Lady Lake」からのナンバーや未発曲も披露。
MCによるイントロから、サックスが鳴り響き、ジャズロック色とインプロヴィゼーション色の強い演奏が繰り広げられる。
やわらかなフルートが鳴り響く、初期クリムゾン的な叙情とともに、混沌としたサイケな雰囲気も感じさせつつ、
全体的にフリーキーなユルさのアートロックという趣で、当時の生々しいステージがそのまま封じ込められている。
ボーナスに同年、別会場で行われたライブからの未発楽曲を収録。全70分の貴重音源です。
プログレ度・7 ライブ演奏・7 音質・7 総合・7 過去作のレビューはこちら
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GREENSLADE 「Live in Stockholm-March 10th 1975」
イギリスのプログレバンド、グリーンスレイドのライブ音源。2013年作
1975年、スウェーデンでのラジオ放送用スタジオライブを収録。同年発表の「Time And Tide」から4曲、
2nd「Bedside Manners Are Extra」から3曲、3rd「Spyglass Guest」からの2曲を演奏。全56分。
デイヴ・グリーンスレイドのオルガンを中心に、メロトロンも加わったツインキーボードで、
デイヴ・ローソンの味のあるヴォーカルとともに、軽やかなアンサンブルの鍵盤プログレを聴かせる。
音質もまずまず良好で、全盛期の貴重なライブとしてファンであれば十分楽しめる。
ライブ演奏・8 音質・8 キーボー度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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ROBERT REED 「CURSUS 123 430」
イギリスのミュージシャン、ロバート・リードの2020年作
MAGENTAのシンセ奏者でもある彼の、本作はシンセをメインにしたエレクトロニクス作品。
ストリングスシンセやコルグのアープ、ローランドSH-2000などを使った、スペイシーなシンセの重ねを
打ち込みによるリズムに乗せた、Tangerine Dreamなどにも通じる優美なサウンドを描いてゆく。
ヴィンテージ感としては、80〜90年代あたりの古臭すぎないシンセミュージックという趣で、
耳心地の良いBGMのようにも楽しめるのだが、プログレ感触はさほどないので、電子音楽好き向け。
DVDには5.1chミックスを収録していて、音響環境のある方なら、より広がりのあるサウンドが味わえる。
ドラマティック度・6 プログレ度・7 シンセ度・9 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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Simon McKechnie 「Retro」
イギリスのミュージシャン、サイモン・マッケチーニの2021年作
クラシックやジャズ、ラテンミュージックにも造詣のあるミュージシャンで、本作は全パートを一人で演奏。
のっけから20分を超える組曲で、やわらかなシンセの重ねに叙情的なギター、マイルドなヴォーカルで
キャッチーなシンフォニックロックを展開。アコースティックな繊細さを含むしっとりと雄大な叙情美と
ほどよくテクニカルな展開力が合わさり、GENTLE GIANTのような陽性の偏屈さも覗かせつつ、
しっかりとメロディックな抜けもあるところは、ECHOLYNなどのファンにも楽しめるだろう。
ポップ寄りのナンバーも挟みつつ、後半の12分の大曲では、クラシカルなシンセとメロウなギターで、
THE ENIDのような優雅なシンフォプログレを構築。オッサンのジャケに騙されず聴いて欲しい傑作。
メロディック度・8 プログレ度・8 キャッチーで優雅度・9 総合・8
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BRAM STOKER 「NO REFLECTION」
イギリスのアートロックバンド、ブラム・ストーカーの2019年作
1972年に1作のみを残して消えるも、2014年に復活し、本作は復活後の2作目となる
オリジナルメンバーは、トニー・ブロンストンのみで、前作に参加していたトニー・ロウは不参加。
美しいシンセワークに叙情的なギターが絡み、ジェントルなヴォーカルを乗せたキャッチーなサウンドで、
オルガンを含むヴィンテージな味わいは、70年代英国アートロックを、現在形で構築とたという聴き心地。
曲によっては女性ヴォーカルを乗せたやわらかな優雅さに包まれ、軽やかなプログレハード的にも楽しめる。
ロバート・ロウのESPに比べると、楽曲にはやや野暮ったい所もあるが、ほどよいB級っぽさも魅力である。
ヴァイオリン鳴り響くケルティックなナンバーや、ラストのAOR風味など、新たな方向性も感じられる。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 英国度・9 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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Jan Schelhaas 「Living On A Little Blue Dot」
イギリスのミュージシャン、ヤン・シェルハースの2017年作
CAMELCARAVANで活躍するシンセ奏者で、本作にはCAMELのアンディ・ラティマー、CARAVANのパイ・ヘスティングス、
ダグ・ボイルなどが参加、優美なシンセワークにメロウな叙情を奏でるギターに、自身のマイルドなヴォーカルを乗せた、
キャッチーでスペイシーなシンフォニックロックを聴かせる。ジミー・ヘスティングスによるサックスも味わいがあり、
ほぼ全曲に参加するダグ・ボイルによるギターワークも素晴らしい。哀愁に包まれた大人のメロディックロックという趣に、
やわらかなシンセが包み込むという、じつに優しいサウンドが味わえる。80年代ルーツのプログレハード好きにもぜひ。
2021年のリマスター再発盤には、アンディ・ラテイマーが参加する未発のボーナスを3曲追加収録。
メロディック度・8 プログレ度・7 優美度・9 総合・8
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Jan Schelhaas 「Ghosts」
イギリスのミュージシャン、ヤン・シェルハースの2018年作
ソロとしては3作目で、前作にも参加していたジミー・ヘスティングスによるサックスの音色に美しいシンセを重ね、
マイルドなヴォーカルとともに、ゆったりとした優美なメロディックロックを聴かせる。スペイシーだった前作よりは、
キャッチーな英国ロック風の作風であるが、繊細なピアノを含むやわらかなシンセアレンジが素晴らしく
わりとポップなヴォーカルメロディとともに、ASIAを大人のシンフォニックロックにしたような趣でも楽しめる。
元CARAVANのダグ・ボイルのギターも数曲でメロウな旋律を乗せて、9分の大曲などもしっとりとした味わいだ。
2021年のリマスター再発盤には、アンディ・ラテイマーが参加する未発曲を含むボーナスを3曲追加収録。
メロディック度・8 プログレ度・7 優美度・9 総合・8
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Eddie Jobson 「Live」
イギリスのミュージシャン、エディ・ジョブソンのライブ作品。2020年作
エディ率いるU-Z Projectのポーランド、ロシア、アメリカ、日本での公演からセレクトされた音源で、
ジョン・ウェットンをはじめ、サイモン・フィリップス、マルコ・ミンネマン、マイク・マンジーニ、トニー・レヴィン、トレイ・ガン、
ビリー・シーン、アレックス・マカチェク、グレッグ・ハウ、マーク・ボニーラ、リック・フィエラブラッチ、T.J.ヘルメッチといった
錚々たるメンバーが参加。「In The Dead of Night」などU.K.のナンバーを中心に、自身のソロ作からのナンバーも披露。
きらびやかなシンセワークに卓越したメンバーたちのギター、メロディアスでテクニカルな楽曲の数々は、時代を超えて輝いている。
Disc2では、EL&P「Bitches Crystal」やKING CRIMSON「Red」「Starless」、さらにはビル・ブルーフォードのソロからのナンバーも演奏。
音質的にはレンジが狭く物足りなさもあるが、一流の演奏陣によるライブのスリリングな臨場感は伝わってくる。
ライブ演奏・9 音質・7 名曲度・・8 総合・8
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IQ 「SEVEN STORIES INTO NINETY EIGHT」
イギリスのプログレバンド、アイキューの1998年作
本作は、1981〜82年にかけて録音しながら発表されなかった作品を、1998年に再録したもので、
Disc2にはそのオリジナルバージョンを収録した2CD。マーティン・オーフォードのきらびやかなシンセワークに
叙情的なギターを乗せた軽やかなアンサンブルで、翳りを帯びた英国らしいシンフォニックロックを聴かせる。
全体的にはインストパーが中心であるが、随所にピーター・ニコルズのヴォーカルも加わって、
じわじわとドラマティックに盛り上げる構築性は素晴らしい。リレコーディングの音質の良さも含めて、
正規アルバムとして数えてもよいくらいの出来である。Disc2のオリジナルは、デモ程度の音質であるが、
楽曲としての魅力は随所に感じられる。アイキューのファンであればチェックすべき音源ですな。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 叙情度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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DAVID MINASIAN 「THE SOUND OF DREAMS」
アメリカのミュージシャン、デヴィッド・ミナシアンの2020年作
80年代から活動するアーティストでプロデューサーとしても活躍。本作は、2010年以来となるソロアルバムで、
ジャスティン・ヘイワード(The Moody Blues)、スティーブ・ハケット、アニー・ハズラム、ビリー・シャーウッド、
さらにはGeof O'Keefe(PENTAGRAM)などがゲスト参加、優美なシンセアレンジに叙情的なギターを重ね、
ジェントルな歌声にやわらかなフルートなども加え、ゆったりとした繊細なシンフォニックロックを聴かせる。
アニー・ハズラムの歌声にハケットのギターを乗せたナンバーなどは、初期GENESISばりの美しさ。
どの曲も泣きのギターフレーズや甘美なシンセアレンジが、シンフォプログレとしてのツボをしっかり押さえていて、
13分という大曲を含めて、全74分の大作ながら、最後まで耳心地よく味わえる。これは傑作ですね。
シンフォニック度・8 優美度・9 豪華ゲスト度・9 総合・8.5 過去作のレビューはこちら
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Cirrus Bay 「The Slipping of a Day」
アメリカのシンフォニックロック、シラス・ベイの2008年作
やわらかなシンセアレンジに叙情的なギターと男女ヴォーカルの歌声を乗せた優美なサウンドで、
英国フォークルーツの靄のかかったような幻想性とともに、しっとりとした耳心地の良さに包まれる。
女性声の美しさと優雅な牧歌性という点では、RENAISSANCEなどにも通じる味わいで、
19分という大曲も、派手に盛り上がるわけでもなく、アコースティックを含んだ繊細なアレンジで、
ゆったりとしたフォークロックという趣。後半の12分の大曲では、やわらかなシンセワークを中心にした
叙情たっぷりのサウンドにウットリ。のちの作品に比べると、素朴な空気が耳に優しい。全77分という力作。
シンフォニック度・7 優美度・9 牧歌度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Daryl Stuermer 「Rewired - The Electric Collectio」
アメリカのギタリスト、ダリル・ステューマーの2006年作
GENESISのツアーギタリストとして知られるミュージシャンで、本作は1998〜2004年までのソロから編纂されたベスト。
テクニカルで流麗なギターフレーズにシンセを重ね、軽やかなフュージョン風味のインストサウンドを聴かせる。
巧みなギタープレイは、ときにトニー・マカパインのような優雅さで、わりとストレートなリズムに乗せるメロディは
あくまでキャッチーかつ爽快なので、CABなどのハードフュージョン系が好きな方にも楽しめるだろう。
一流のギタリストらしい存在感あるギターサウンドで、巧みなプレイがたっぷり詰まった好アルバムだ。
メロディック度・8 プログレ度・7 優雅度・8 総合・8
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ジャパニーズプログレを聴こう(31)


静かの海
新月の北山真、花本彰によるユニット、しずかのうみの2019年作
オルガンやメロトロンを含むやわらかなシンセに、北山氏の独特の歌声を乗せて、優しい日本語歌詞とともに、
昭和のロマンをかもしだしてゆく。新月のギターである、津田治彦も参加していて、随所にメロウなギターを聴かせる。
ピアノとアコースティックギターをバックにした繊細なナンバーなども、味わいあるヴォーカルが独自の空気を描いていて、
サステインの効いたギターのトーンやメロトロンの音色とともに、かつての新月の幻想的な世界観が甦るようだ。
全体的には、プログレというよりは、北山真のソロにも通じる、昭和の歌もの感に包まれたサウンドであるが、
花本氏のキーボードと北山氏の歌声というだけで、往年のファンにはたまらないだろう。
40年の歳月をへて、新●月の空気をそっと甦らせたという、宝物のようなアルバムです。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 新月度・8 総合・8
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Haco 「Nova Naturo」
日本の女性アーティスト、ハコの2021年作
After Dinnerのヴォーカルとして知られる、エキセントリックなエレクトロミュージックの作り手。
うっすらとしたシンセに透明感のある女性ヴォーカルを乗せた、ドリーミィなサウンドを聴かせる。
松尾哲治がピアノとドラムで参加していて、ときにドラムも入ったポップロック風の質感や、
フランスのギタリスト、Manuel Adnotなども参加して、エレクトロ一辺倒にならないアレンジで、
素朴で暖かみのあるサウンドを描いている。シンセにSEなどを重ねた幻想的なサウンドを、
プログレ寄りのアンビエントに仕上げるセンスはさすがで、日本語による詩的な言葉の断片も
聴き手のイメージを掻き立てる。ふんわり夢見心地の音に、疲れた心が癒される逸品です。
ロック度・3 プログレ度・7 夢見度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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MOONSTONE 「Laying」
日本のプログレバンド、ムーンストーンの2020年作
スターレスで知られる堀江睦男の巧みなドラムに、きらびやかなシンセとほどよくハード寄りのギターを重ね、
日本語歌詞によるハイトーンのヴォーカルとともに、かつてのNOVELAなどにも通じるプログレハードを聴かせる。
流麗で叙情的なギターの旋律と、オルガンなどを含むシンフォニックなシンセワークがサウンドを彩りつつ、
Max氏の中性的な歌声が独特の浮遊感となって、ジャパニーズプログレの幻想的なロマンを描いている。
音質面もしっかりとしていて、堀江氏のテクニックのあるドラムが、サウンドの説得力を高めており、
疾走するハードロックナンバーでは、ALHAMBRAなどにも通じる、激しくも優雅な味わいが楽しめる。
ノヴェラルーツのキャッチーなロマン派プログレハードが好きな方はチェックすべし。捨て曲無しの力作です。
メロディック度・8 プログレハー度・8 ロマン度・9 総合・8
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Ivory Tower 「The Earth」
日本のプログレバンド、アイヴォリー・タワーの2019年作
ハードなギターにオルガンが鳴り響き、変拍子のリズムとともに、テクニカルなハードプログレを展開。
イグアスの滝や、スリランカの王、古代エジプト、モン・サン・ミッシェル、サモア、モンマルトルなど、
楽曲ごとに世界各地の風景や神話、伝承をモチーフにしていて、インストパートをメインにしながら、
ときに女性ヴォーカルを加えた優雅なナンバーも聴かせる。メロトロンなどヴィンテージなシンセにピアノ、
叙情的なギターが重なるところは、シンフォニックロックとしてのやわらかな美しさにも包まれる。
日本語歌詞とともに、ジャパニーズプログレらしさを残しつつ、テクニカルなインストナンバーは、
GERARDのような巧みなアンサンブルでたたみかける。ヴァイオリン鳴り響くラスト曲もじつに優雅です。
メロディック度・8 プログレ度・8 優雅度・8 総合・7.5
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金属恵比須 「ハリガネムシ」
日本のプログレバンド、きんぞくえびすの2015年作
2001年にデビュー、本作は自主制作を入れて3作目となるアルバムで、メロトロンやオルガン、ムーグといったシンセに
ハード寄りのロックなギターと女性ヴォーカルの日本語の歌唱を乗せた、ヴィンテージなハードプログレを展開。
日本的な郷愁を含んだエキセントリックな歌詞の世界観とともに、クリスマスをテーマにした11分という大曲や、
メロトロンが鳴り響く、日本的な叙情美のナンバー「紅葉狩り」など、シンフォプログレ的な優雅さも感じさせる。
ジャケの「Yebis」のロゴは、まるでイエスのようだが、どちらかというとクリムゾン的…というか、日本らしいプログレという点では
美狂乱などが好きな方にも楽しめるだろう。入江陽氏がヴォーカルをとるラストナンバーも日本的な哀愁に包まれる。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 日本度・9 総合・8
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金属恵比須 「武田家滅亡」
日本のプログレバンド、きんぞくえびすの2018年作
タイトルのように、戦国時代の武田家の盛衰を描いた伊東潤氏の小説「武田家滅亡」のサウンドトラックというコンセプトで
メロトロン鳴り響くイントロから、ギターにオルガンを加えたスリリングなアンサンブルに、やわらかな女性ヴォーカルが
歴史を語るように歌詞を紡いでゆくところは、さしずめ戦国武家物語のテーマソングという趣である。
2〜3分前後の小曲を主体にしつつ、後藤マスヒロの巧みなドラムがダイナミックなグルーブを描き、
メロトロンとピアノをバックに女性ヴォーカルが美しい、しっとりとしたナンバーなど、メリハリのある流れで
歴史的なドラマ性を構築。ラストは10分の大曲で、ゆったりとしたエンディング的な叙情で幕を閉じる。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 日本度・9 総合・8
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Romanesco! 「ロマネスコの世界」
日本のプログレバンド、ロマネスコの2017年作
金属恵比須のキーボーディストとシンガーソングライター、櫻井ススムを中心としたアートロックバンドで
「1969年にアトランティックからリリースされた架空のファーストアルバム」というコンセプトで作られたという。
CD盤面の印刷デザインもATLANTICレコードのような感じで、ブックレットの写真もレトロな雰囲気のこだわりよう。
アナログ感たっぷりのギターに、日本語歌詞のヴォーカルやオルガンを乗せ、昭和フォーク的な哀愁に包まれたサウンドで、
プログレ以前のユルめのアートロックを再現。うっすらとメロトロンが鳴り響き、叙情的なギターを加えた耳心地の良さは、
ヴィンテージロック好きにはたまらないだろう。メロディはわりとポップなので、のんびりと楽しめる好作品です。
メロディック度・7 プログレ度・6 ヴィンテージ度・9 総合・7.5
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BIBLE BLACK
日本のプログレバンド、バイブル・ブラックの2012年作
モローの絵画ジャケからして良いセンスだが、サウンドの方もメロトロンが鳴り響くイントロから、
ヘヴィなギターにオルガンを乗せて、クリムゾン的な緊張感あるアンサンブルが広がってゆき、
美しいピアノや叙情的なギターの旋律とともに、インストによる幻想的なシンフォニックロックを聴かせる。
メロトロンなどの優美なシンセとの対比で、ギターはわりとラウドに聴こえるところもあるのだが、
それがスリリングなプログレ感になっていて、12分近い大曲を緩急ある流れで構築するところは
美狂乱あたりに通じるところもある。ラスト曲ではフリーキーなギターの旋律が不穏な迫力となって、
鳴り響くオルガンを加えたテクニカルな展開で、ミステリアスなインストプログレを聴かせる。
ドラマティック度・7 プログレ度・8 緊張感と叙情度・8 総合・8
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玲里 「OPEN WORLD」
日本の女性SSW、れいりの2016年作
3作目となる本作も、難波弘之、そうる透、土屋昌巳、織田哲郎、北島健二といった名だたるメンバーが参加。
彼女の伸びやかなヴォーカルを中心に、キャッチーなポップさと、ロックやジャズなどの要素も含んだ、
コケティッシュなサウンドを聴かせる。難波氏のオルガンなどが、いくぶんのプログレ感をかもしだし、
日下部"BURNY"正則氏をはじめ、ゲストによる巧みなギターの旋律がロックな雰囲気を加えていて、
単なるJポップとは異なるところがミソだろう。シンガーとしての表現力もアルバムごとに増していて、
楽曲ごとのイメージをエモーショナルに表現、バックの演奏も含めて、メジャー感のある堂々たる仕上がりだ。
反面、プログレリスナーが楽しむには、やや物足りなさも。マニアックな楽曲が少しあってもよいかな。
キャッチー度・8 プログレ度・5 女性Vo度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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BLUE MARBLE 「VALERIE」
日本のプログレ・ポップロック、ブルー・マーブルの2010年作
やわらかなシンセワークに日本語歌詞の女性ヴォーカルを乗せた、どこかなつかしさを感じさせる、
ふんわりと童話的なサウンド。CMソングソングで知られる女性シンガー、オオノマサエの歌声は、
コケティッシュで夢見がちなやわらかさで包み込む。ゴージャスで厚みのあるシンセアレンジと
リズム面を含めたセンスの良さは、プログレファン向けのストレンジポップとしても魅力充分だ。
ボサノヴァ風のナンバーなども、巧みなアレンジでさらりと聴かせ、楽曲は4分前後ながら、
厚みのあるシンセと表現力ある歌声で、わりと濃密な味わいである。
メロディック度・8 プログレ度・7 女性Vo度・9 総合・8
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J・A・シーザー「天井棧敷音楽作品集」
寺山修司率いる“演劇実験室”天井桟敷の音源集、5枚組ボックスセット。2008年作
Disc1と2には1973年の「J・A・シーザーリサイタル 国境巡礼歌」完全版を収録。合135分におよぶ濃密なステージで、
ロックと演劇、サイケとアングラが混在した、まさにシーザーの真骨頂というべき内容。のちに単独で再発されている。
Disc3には、1971年の演目「青少年のための無人島入門」を収録。オルガンにサイケなギターが鳴り響き、
妖しい女性スキャットに男女ヴォーカルを乗せ、呪術的な土着性に包まれた世界観には、粗削りながら原初的な魅力がある。
Disc4には1972年、ミュンヘンオリンピックの企画演目「走れメロス」、NHKラジオ青森の番組用「恐怖の音楽」を収録。
音質がラウドなこともあって荒々しい曲が多いが、叙情的なギターと壮大なコーラスの「国境哀歌」、「大鳥の来る日」あたりは、
「シーザー・リサイタル」にも収録されるなじみのあるナンバー。ラジオ用音源の報はややこもり気味だが、貴重なテイクだろう。
Disc5には、1979年、東京児童演劇祭の演目「こども狩り」を収録、子供のためのロックミュージカルというコンセプトで、
のちのウテナにも通じるキャッチー合唱曲から、たわいのない小曲まで、ライトでヘンテコな演劇サントラが楽しめる。
リサイタル度・9 アングラ度・10 サイケ演劇ロック度・9 総合・8.5 過去作のレビューはこちら
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J・A・シーザーと悪魔の家 「異郷巡禮歌」2018年作
シーザーのソロ作品としては、じつに初のスタジオ録音作品で、公式サイトのファン投票から選ばれた楽曲と新曲を含む全14曲。
アルバムタイトルからしてかつての「国境巡礼歌」を彷彿とさせるが、ほどよくハードなギターにオルガンを含むシンセ、
フルートやヴァイオリンも重なり、そこに渋みのあるシーザーの歌声が乗ると、一気に昭和感に包まれたサウンドになる。
演奏陣はライブにも参加する若手メンバーで、シーザーの歌唱と楽曲を引き立てつつ、ヴィンテージな雰囲気も残していて
女性コーラスも加えた妖しい酩酊感は、往年の独自の世界観をそのままアップデートしたようなイメージで楽しめる。
ノリの良いロックナンバーでは、70年代ハードロック的な巧みなギターとともに、シーザーのヴォーカルも輝いていて、
ゆったりとしたサイケ風味の浮遊感や、ときにジプシー風の無国籍感に、日本的な望郷や情感を同居させながら展開する、
メリハリのある構成も心憎い。ジェントルなシーザーの歌声を、たっぷり味わえる全79分、お腹いっぱいの力作だ。
シーザー度・9 昭和風度・9 アングラ度・8 総合・8.5
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J・A・シーザー「バルバラ矮星子黙示録」2017年作
かつてシーザーが音楽を手掛けた、幾原邦彦監督のアニメ「少女革命ウテナ」の世界観をテーマにした作品で、
副題は「アルセノテリュス絶対復活光とオルフェウス絶対冥府闇」。
打ち込みのリズムとシンセにロックなギターを乗せ、万有引力のメンバーを含む混声合唱が歌を乗せると、
まさしくウテナの劇中合唱曲の奇天烈な雰囲気が甦る。バックがほぼ打ち込みなので、サウンドがやや平坦で、
ギターの入らないインスト部分はゲームミュージックのようではあるが、かつての合唱曲アレンジ作品
「薔薇卵蘇生録ソフィア」から、20年近くたって、その続きが聴けるのだから、ファンには嬉しいだろう。
かつての代表ナンバー「絶対運命黙示録」の完全版も収録していて、新曲の中にもしっかり溶け込んでいる。
ドラマティック度・7 ロック度・6 ウテナの合唱曲度・8 総合・7.5
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J・A・シーザー「少女錬金術師 卵・バラモノガタリ」2019年作
アニメ「少女革命ウテナ」の世界観をテーマにした前作を引き継いだ作品、副題は「万象億光年より自鳴幻想論へ」。
クラシカルなシンセアレンジに、オペラティックな女性ヴォーカルと男性テノールの歌声を乗せて、
随所に語りを含んだ演劇的な歌詞とともに、不可思議で華やか、そして耽美な世界観を描き出す。
ソプラノ女性ヴォーカルをメインにしたナンバーも多く、美しくもエキセントリックな毒気も匂わせつつ、
鳴り響くヴァイオリンとギターが重なった、シンフォニック・ゴシックという雰囲気も味わえる。
楽曲は5〜6分前後とわりと長めで、かつての合唱曲のイメージを受け継ぐナンバーもありつつ、
全体的には「耽美派オペラ」というような雰囲気が強まっている。打ち込みのリズムの軽さはあるが、
声優風のキュートなシンガーの可愛らしさも含め、曲のバラエティと濃密さという点では前作を凌ぐ内容だ。
ドラマティック度・8 ロック度・5 演劇度・8 総合・8
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J・A・シーザー「チェンチ一族」2019年作
1982年に公演され、シーザーが音楽と演出を手掛けた演劇作品の当時のサントラ音源を収録。
シンセに重なるフルートが妖しく鳴り響くイントロから、各曲は、1〜3分前後で、シンセを主体にした小曲や、
いかにもサントラ的なBGMや効果音のようなものから、ドラムやギターを加えたバンド編成の楽曲もあって、
オルガンが鳴り響きヴォーカルと合唱の入ったナンバーなどは、シーザーらしい土着的な世界観が味わえる。
演劇自体が全員男性によるものだったので、女性声が一切入らないのは、シーザー作品では珍しい。
全体的には、場面ごとの断片的な背景音楽という雰囲気が強いので、純粋に音楽作品として楽しむには
ややもの足りなさもあるのだが、貴重な音源がCD化されたという点では、マニアや収集家には嬉しいだろう。
ドラマティック度・6 ロック度・3 演劇度・8 総合・7.5
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1/7
明けましてイタリアンプログレ(16)


I Pooh 「Dove Comincia Il Sole」
イタリアンロックバンド、イ・プーの2010年作
デビューは1966年という、まさにイタリアンロックの大御所中の大御所で、アルバムは優に30作以上。
本作は見開きジャケの豪華な仕様にもバンドとしての気合が感じられるが、サウンドの方も素晴らしい。
彼らにしてはわりとハード寄りのギターにオーケストレーションを重ねたシンフォニックに感触で、
ジェントルなイタリア語のヴォーカルとともに、壮麗な叙情に包まれたサウンドが広がってゆく。
キャッチーなコーラスに泣きのギターメロディ、優美なピアノとやわらかなシンセアレンジで、
大人のシンフォニックロックとしても鑑賞できる。もちろんキャッチーなイ・プーらしさも残していて、
優雅なアコースティックナンバーなどもアクセントになっている。歌もの系イタリアンロックの最高峰。
シンフォニック度・8 プログレ度・7 優美度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Rovescio Della Medaglia 「Contaminazione 2.0」
イタリアのプログレバンド、ロヴェッショ・デッラ・メダーリャの2020年作
RDMによる、1973年の傑作、3rd「汚染された世界」を完全再現した2018年シエーナでのライブを収録。
オリジナルメンバーはギターのエンツォ・ヴィータのみであるが、ツインギター、ツインキーボードの編成に
ストリングスカルテットも加え、クラシカルなシンフォニックロックをさらにダイナミックに甦らせている。
優美なピアノにエモーショナルなイタリア語のヴォーカル、オルガンなどのシンセにギターを重ね、
軽やかなアンサンブルとともに、バッハの楽曲をモチーフにした優雅なシンフォプログレを聴かせる。
艶やかなストリングスにウットリとなりつつ、フルートも鳴り響くイタリアンプログレらしさも含んだ、
見事な再現ライブが味わえる。ボーナスに、1st「La Bibbia」からの3曲を収録しているのもファンには嬉しい。
ライブ演奏・8 プログレ度・8 クラシカル度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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GOBLIN REBIRTH 「ALIVE」
イタリアのプログレバンド、ゴブリン・リバースのライブ。2016年作
本家GOBLINのベース、ドラムを中心に結成された別働バンドによる、2011年イタリアでのライブで、
ゴブリンの黄金期の作品中心にセレクトされたナンバーを、2CDに全18曲収録。同タイトルのDVDも出ている。
軽やかなドラムと存在感のあるベースに、オルガンやエレピを含むツインキーボードとギターを乗せ、
Disc1は、2000年作「スリープレス」や、往年の代表作である「ローラー」、「サスペリア2」、「シャドー」、
さらには「BUIO OMEGA」などからのレアなナンバーも披露。Disc2は、「ローラー」収録の大曲「Goblin」から
おなじみ「ゾンビ」、プログレの傑作「マークの幻想の旅」、日本未公開作「CONTAMINATION」からのナンバーも披露。
シモネッティのゴブリンとはやや異なる感触ながら、ファンにとっては往年の楽曲がたっぷり味わえるライブ作品である。
ライブ演奏・8 プログレ度・7 ゴブリン度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Il Paradiso Degli Orchi 「Samir」
イタリアのプログレバンド、イル・パラディソ・デグリ・オルチの2020年作
2016年にデビューし、2作目となる。前作はレトロとモダンが同居したスタイリッシュな作風であったが、
本作は、のっけからフルートが鳴り響き、ヴィンテージな妖しさに包まれる。叙情的なギターに
メロトロンも鳴り響き、緩急あるインストパートから、イタリア語のヴォーカルを乗せて、
混沌とした味わいのプログレサウンドを展開する。中盤には、10分の大曲が2曲続き、
シアトリカルな歌声とともに怪しさっぷりの雰囲気で、吹き鳴らされるフルートも効果的。
往年のヘヴィプログレの空気をかもしだしつつ、カッチリしすぎないユルさもあるのが面白い。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 イタリア度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Choruscant 「A Christmas Carol」
イタリアのプログレバンド、コーラスカントの2020年作
「クリスマス・キャロル」をコンセプトにした、CDR仕様の2枚組作品。1曲目からクリスマスキャロルのメロディを盛り込みつつ、
ハード寄りのギターにシンセやピアノ、艶やかなヴァイオリンを重ねた、ゴージャスなシンフォプログレを展開。
変則リズムにエモーショナルなヴォーカルを乗せ、メタリックなギターも加えたスリリングな展開力には、
ProgMetal的な感触もありつつ、22分という大曲では、優雅な叙情性に女性ヴォーカルも加わって、
シンフォプログレらしい展開力を見せる。Disc2では、MOON SAFARIばりのキャッチーなナンバーから、
メタル寄りのナンバーまで、ドラムを含めた確かな演奏力もあって、カラフルなハードプログレが楽しめる。
ジャケはチープだが、ドラマ性に包まれたサウンドは濃密な味わい。マイナー系シンフォプログの力作です。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 イタリア度・7 総合・7.5
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QIRSH 「ASPERA TEMPORA Parte 1」
イタリアのプログレバンド、キルシュの2020年作
2013年にデビューし、2作目となる。ツインギター、ツインドラムという7人編成で、優美なシンセに
イタリア語によるジェントルなヴォーカルを乗せて、のっけから17分の大曲を構築する。
インストパートにやや長尺感はあるのだが、オルガンなどのヴィンテージなシンセに、
コンセプト的なロマンを感じさせる世界観で、ドラマティックなシンフォプログレが味わえる。
演奏力は並程度でリズム面なども意外性が少ないので、スリリングな展開はさほどないが、
優美なシンセワークは、ときにLE ORMEのようなイメージで、幻想的なサウンドを描いている。
ラストは詠唱めいたチャントを乗せた曲で、やや意味不明だが、センスの面白さは感じさせる。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 イタリア度・8 総合・7.5
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Banda Belzoni
イタリアのプログレバンド、バンダ・ベルゾーニの2019年作
シンセ奏者のサンドロ・ベルゥとARTI E MESTIERIのジジ・ヴェゴーニを中心にしたバンドで、
OSANNAのリノ・ヴィレッティ、FINNISTERREのファビオ・ズファンティがヴォーカルで参加している。
エジプト遺跡の発掘で知られるイタリアの探検家、ジョバンニ・バティスタ・ベルゾーニをテーマに、
優美なシンセワークに叙情的なギターを重ね、イタリア語のジェントルなヴォーカルとともに、
大人の哀愁に包まれたシンフォプログレを聴かせる。アコースティックギターによる優雅な牧歌性や、
オルガンなどのヴィンテージな感触も含んだ作風で、全体的にもゆったりとしたサウンドなので、
スリリングな部分はあまりないが、イタリアンな叙情美をじっくりと鑑賞できる逸品です。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 イタリア度・9 総合・8
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LA BATTERIA 「II」
イタリアのプログレバンド、ラ・バテリアの2019年作
2015年にデビューし、2作目となる。オルガンやムーグ、メロトロンなどのヴィンテージなシンセに
適度にハードで叙情的なギターを重ね、Goblinのようなミステリアスなインストサウンドを聴かせる。
アコースティックギターにやわらかなフルートが重なる、しっとりと優美なナンバーから、
ファンキーでキャッチーなナンバーまで幅広く、メロウなギターの旋律にオルガンも重なり、
3〜4分前後の小曲を連ねた流れで、一本の映画を構築するような味わいで楽しめる。
インストなので濃密な盛り上がりは薄いが、ゴブリン系のサントラ風プログレが好きな方はいかが。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 サントラ風度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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CORPORESANO
イタリアのプログレバンド、コルポレサノの2019年作
やわらかなシンセにメロウなギター、イタリア語による優しいヴォーカルを乗せて、
ジャケのイメージ通りの幻想的な叙情美に包まれたシンフォプログレを聴かせる。
全体的にもゆったりとした味わいで、スリリングな展開は希薄であるが、
繊細なギターのトーンとうっすらとしたシンセにより、どこを切っても優美で叙情的で、
耳心地の良いサウンドであるが、気の短い方には、全74分の長さはちと退屈かもしれぬ。
90年代シンフォのもっさりとした煮え切らなさを継承したような、Mellowレーベルらしい好作。
繊細シンフォ度・8 プログレ度・7 イタリア度・8 総合・7.5
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I VIAGGI DI MADELEINE
イタリアのプログレバンド、イ・ヴィアージ・ディ・マデレイネの2019年作
わりとハードなギターにシンセ重ね、イタリア語のヴォーカルで聴かせる、70年代ルーツのイタプロサウンド。
緩急ある展開力は、ときにいくぶんアヴァンギャルドで、イタリアンプログレ特有の妖しさに包まれる。
8〜12分という大曲をメインに、叙情的なギターにオルガンやピアノが重なる優美なインストパートなど、
ほどよいハードなノリとプログレらしさが同居していて、新鋭ながら堂々たるサウンドが味わえる。
楽曲間にイタリア語による語りを挟みつつ、ラストの大曲では、往年のイタリアン・ハードプログレらしい
ドラマティックな展開力で聴かせる。同郷のPANDORAなどにも通じる濃密な力作です。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 イタリア度・8 総合・8
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SYNCAGE 「UNLIKE HERE」
イタリアのプログレバンド、シンケージの2017年作
テクニカルなリズムに硬質なギター、エモーショナルなヴォーカルを乗せ、エキセントリックな展開力と、
ときにDjent風味も含んだモダンなハードプログレを聴かせる。歌詞は英語なので、イタリアらしさは希薄で、
HAKENあたりをややスタイリッシュにした作風は、モダン派のProgMetalが好きな方などにも対応。
随所に叙情的なギターの旋律も覗かせたり、ヴァイオリンなどのストリングスを取り入れた優雅なアレンジや
アコースティックなパートから、ピアノやオルガンなど、プログレらしいシンセも加えた耳心地のよさも光っている。
14分という大曲では、先の読めない展開力でハードなモダンプログレを構築しつつ、後半はキャッチーに仕上げ、
ラスト3曲の流れるような構成には、クールなドラマ性を感じさせる。全68分、モダン派プログレの力作である。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 スタイリッシュ度・8 総合・8
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STRANAFONIA 「PER UN VECCHIO PAZZO」
イタリアのプログレバンド、ストランフォニアの1997年作
叙情的なギターの旋律にオルガンなどのシンセを重ね、イタリア語のヴォーカルを乗せた、
緩急ある展開力のシンフォプログレを聴かせる。わりと唐突なリズムチェンジなども含め、
イタリア特有の怪しい空気感もかもしだしつつ、メロウな泣きのギターが哀愁の叙情で包み込む。
オルガンやムーグ系シンセをメインにしたプログレらしいインストナンバーも良い感じで、
全体的にも、70年代ルーツのイタプロをスタイリッシュな90年代型に仕立て上げたというサウンド。
90年代の隠れた好作品のひとつである。本作の後、2005年に自主制作で2作目「Acrobazie」を発表する。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 イタリア度・8 総合・7.5
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STRANAFONIA 「Il Nuovo Rinascimento」
イタリアのプログレバンド、ストランフォニアの2014年作
1997年にデビュー、本作は9年ぶりとなる3作目。ジャケの地味さは相変わらずだが、
メロトロンやオルガン、ピアノなどの優美なシンセに、マイルドなヴォーカルを乗せて、
イタリアらしい優雅な叙情を描くサウンドは、より大人の深みを増した味わいになった。
もちろん70年代ルーツのイタリアンプログレの怪しさも残していて、屈折感のあるリズムチェンジや
シアトリカルなイタリア語の歌声とともに、初期のLA MASCHERA DI CERAなどに通じる雰囲気もある。
一方では、ジャズロック風味の軽妙なアンサンブルも覗かせるなど、バンドとしての成長を感じさせる好作品だ。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 イタリア度・8 総合・8
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LAVIANTICA 「Clessidra」
イタリアのプログレバンド、ラヴィアンティカの2013年作
やわらかなシンセにほどよくハードで叙情的なギター、イタリア語のジェントルなヴォーカルで、
優美なシンフォプログレを聴かせる。ピアノやオルガンなどのシンセワークも耳心地よく、
随所に変拍子を含む軽やかなアンサンブルも覗かせつつ、ゆったりと大人の叙情を描いてゆく。
ギターのフレージングのセンスが良いので、ロックな質感を残しつつ、泣きのメロディも織り込ませ、
優美なシンセが絡むインストパートはなかなか魅力的。ラストは11分の大曲で、ヴァイオリンが鳴り響き、
繊細なピアノやオルガンも重なって、メロウなギターとともに優雅なシンフォニックロックが味わえる。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅な叙情度・8 総合・8
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EUTHYMIA 「L'ultima Illusione」
イタリアのプログレバンド、ユーセイミアの2010年作
イタリア語の語りによるコンセプト的なイントロから、オルガンなどを含むきらびやかなシンセと
クラシカルなピアノを乗せた軽やかなアンサンブルで、優雅なシンフォプログレを展開する。
コケティッシュな女性ヴォーカルが加わると、NARROW PASSのような優雅な味わいになり、
しっとりとした叙情性とともに、ときに語りによる小曲を挟みつつ、物語的な流れで進行してゆく。
中盤は語りや小曲が多く、楽曲自体の方に、もう少し明快なフックが欲しいと思いつつ、
ラスト3曲の流れはなかなかドラマティックで、これぞシンフォプログレという展開で盛り上げる。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 優雅な叙情度・8 総合・7.5
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Fiaba 「XII L'Appiccato」
イタリアのプログレバンド、フィアバの1992年作
ほどよくハードなツインギターにイタリア語のシアトリカルなヴォーカルを乗せて、
どことなくヘンテコな怪しさに包まれたサウンドを聴かせる。シンセを使っていないので、
シンフォプログレ的な優雅さはなく、ギターをメインにしたわりとハードロック寄りの感触で、
インストパートにはこれといってメロディもなく、クセのあるヴォーカルによる歌ものロックという感じで、
正直あまり面白くないのだが、後半は14分という大曲で、アコースティックパートを含む叙情性と
演劇的なヴォーカルによる、ドラマティックなシアトリカルロックという趣で多少は楽しめます。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 イタリア度・8 総合・6.5
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