プログレ/インドネシア/オセアニア/イスラエル/ギリシャ/中東
〜PROGRESSIVE ROCK/Indonesia/Oceania/Israel/Greece/and Others
                   by Tosei Midorikawa

■CDの評価に関しては、個人的嗜好が反映されることもあり、納得のいかない評価もあるかと思いますが、どうかご了承ください。

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AKRITAS (AKPITAZ)
ギリシャのプログレバンド、アクリタスの1973年作
ムーグシンセが鳴り響き、ドカドカとしたアッパーなアンサンブルから、美しいピアノに母国語のヴォーカルを乗せた
優美な叙情が交差する、メリハリに富んだサウンド。ややラウドな音質と荒削りの演奏ではあるが、
ジャケのイメージのようなスペイシーな壮大さを、ドラマティックな展開力で描こうとしている点では、
当時のギリシャの作品の中でも、指折りのプログレ作品と言ってもよいのではないだろうか。
奔放に弾きまくるギターのセンスもなかなかのもので、サイケ的な浮遊感を描きつつ、
EL&Pのようなクラシカルな鍵盤プログレを融合させたインストパートも聴きごたえがある。
全33分というのが少し物足りないが、ギリシャらしい神秘的な味わいの力作と言えるだろう。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 壮大度・・8 総合・・8
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ALEPH 「SURFACE TENSION」
オーストラリアのプログレバンド、アレフの1977年作
二人の女性シンセ奏者を含む6人編成で、これが唯一の作品。
ピアノやオルガン、メロトロンを含む美しいシンセワークと、随所に泣きのメロディを奏でるギターワークに、
中性的なヴォーカルが繊細な歌声を乗せる、YESルーツの本格派のシンフォニックロックスタイル。
RENAISSANCEを思わせるようなクラシカルなピアノのセンスもなかなかで、サウンドにB級臭さはほとんどない。
確かな演奏力とともにロックとしてのダイナミズムをしっかり有していて、14分の大曲を構築する力量も含めて
ドラマティックな聴き応えが素晴らしい。70年代オーストラリアのプログレ系作品では最高の1枚といえるだろう。

ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 ダイナミック度・・8 総合・・8
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ALITHIA 「THE MOON HAS FALLEN」
オーストラリアのポストプログレ、アリシアの2018年作
2014年にデビューし2作目となる。のっけから10分を超える大曲で、適度にハードで叙情的なギターに優美なシンセを重ね、
マイルドなヴォーカルとともにスタイリッシュなサウンドを描く。エモーショナルな歌声と、ポストロック的な空間性が
結果的にプログレッシブな味わいを作り出していて、繊細な叙情性とProgMetal的な展開力が同居したような味わいだ。
ときにシンフォニックなシンセアレンジがサウンドに厚みを与えていて、翳りを含んだ歌もの感と轟音系のコントラストで、
なかなかメリハリある聴き心地である。モダンな叙情ロックとしても、ハードなポストプログレとして楽しめる好作です。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 スタイリッシュ度・8 総合・7.5
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Anakdota 「Overloading」
イスラエルのプログレバンド、アナクドタの2016年作
優雅なピアノの旋律を乗せた、ジャズロック的な軽やかなアンサンブルに、きらびやかなシンセも加わり
マイルドなヴォーカルを乗せた、スタイリッシュな歌もの感触と、軽妙なテクニカル性が同居したサウンド。
ファルセットも使い分ける演劇的な歌声とともに、リズムチェンジを含むエキセントリックな展開力も覗かせて、
単なるジャズロックとも異なるシアトリカルな世界観に包まれる。曲によっては女性ヴォーカルも加わって、
しっとりとした優美な叙情を描くところは、同郷の名バンド、SHESHETなどを思わせる。
派手さはないが、あくまで優雅な味わいで楽しめる、繊細な男女声プログレ・ジャズロックの逸品です。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅で軽妙度・9 総合・8
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ANANE「The Evolution Ethnic」
インドネシアのプログレバンド、アナネの2005作
7人編成+ゲスト2人という大所帯のアンサンブルで、ごった煮感のあるジャズロックサウンドを繰り広げている。
荒々しいエレキギターにサックスが絡み、ガムランやケチャを思わせるコーラスがかぶさりつつ、
2曲目では瑞々しい女性ヴォーカルを乗せて、まるでサムラあたりを思わせる土着ロックとなる。
シンセにフルート、チェロ、パーカッションなども加わって軽快なノリとともに、濃密な民族性とエネルギーが合わさったサウンドはとても個性的。
DISCUSでも聴かれたインドネシア特有の混濁感と構築性がここにもあり、勢いの中にも人間的な叙情を有していて、なかなか飽きさせない。
祭りのような熱気を帯びた、民族プログレロックとして大変楽しめつつ、曲によってはチェンバーロック的なシリアスさも聴かせてくれる。素晴らしい傑作だ。
メロディアス度・・7 民族度・・9 ハレの熱気度・・10 総合・・8.5
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Anubis「Tower of Silence」
オーストラリアのシンフォニックロック、アヌビスの2011年作
ツインギターにシンセを含む6人編成による、重厚なシンフォニックロックサウンド。
いきなり17分の大曲で幕を開け、ツインギターとシンセによる音の厚みと
いくぶんダークな叙情性を含んだ、ARENAあたりに通じる雰囲気である。
ゆったりとした聴き心地なのでどうしても長尺感はあるのだが、メロウな叙情性と
ドラマティックな雰囲気で、PALLASなどのハードシンフォのファンにも楽しめるだろう。
ドラマティック度・・8 メロディック度・・7 重厚度・・8 総合・・8
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ANUBIS 「Hitchhiking to Byzantium」
オーストラリアのシンフォニックロック、アヌビスの2014年作
前作はARENAやPALLASを思わせる、重厚なハードシンフォの力作であったが、
本作も適度にハードな感触のギターに、シアトリカルな感じのヴォーカルを乗せ、
ドラマティックなスケール感を描いてゆく。ムーグやメロトロンなどの音色のプログレらしいシンセワークもよろしく、
随所にメロウなギターフレーズが楽曲を彩る。長めの楽曲でのゆったりとしたメロディックな聴き心地は、
大人の叙情シンフォという趣だ。リズム面での展開がもう少しあればとも思うが、後半での16分におよぶ大曲では、
インストパートでのダイナミックなアプローチも覗かせる。なんにしても正統派シンフォニックロックの力作である。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 重厚度・・8 総合・・8
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ANUBIS 「Behind Our Eyes」
オーストラリアのシンフォニックロック、アヌビスのライブ。2015年作
2009年にデビュー、豪州の本格派シンフォ系プログレとして期待のバンド。本作は2014年のライブを収録。
2011年作「Tower of Silence」、2014年作「Hitchhiking to Byzantium」からのナンバーを中心に
うっすらとしたシンセとエッジの効いたなギター、マイルドなヴォーカルで、PALLASあたりに通じる、
正統派のハード・シンフォニックロックを聴かせる。メロウなギターフレーズとともに泣きの叙情を描くところは、
PENDRAGONあたりが好きな方にも楽しめるだろう。わりとゆったりとしたアンサンブルながら、
9分、10分という大曲も、しっかりとした演奏力で、野暮ったさはないスタイリッシュな聴き心地である。
メロディック度・・8 ライブ演奏・・8 叙情度・・8 総合・・8 
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APERCO 「THE BATTLE」
イスラエルのプログレバンド、アペルコの2016年作
美しいシンセとオーケストレーションによるイントロから、フルートがやわらかに鳴り響き、
CAMELを思わせるような優美なインストパートが広がってゆく。叙情的な泣きのギターに
ジェントルなヴォーカルも加わって、70年代英国ルーツの素朴な牧歌性に包まれたサウンドを描く。
11分の大曲も、メロトロンなどのうっすらとしたシンセにピアノによる繊細なシンフォニック性に加え、
サイケロック的な怪しげな浮遊感も覗かせる。ムーグシンセ鳴り響くキャッチーなノリのナンバーなど、
古き良きプログレへの敬愛をうかがわせる作風には、なかなか好感が持てる。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 繊細度・・8 総合・・8
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APHRODITE'S CHILD 「666」
ギリシャのプログレバンド、アフロディーテズ・チャイルドの1972年作
ギリシャを代表する作曲家にしてシンセ奏者、ヴァンゲリスが率いるバンドの3作目で、
ヨハネの黙示録をテーマにした2枚組の大作。小曲を連ねる形でストーリーを描いてゆく手法は、
The WHOの「Tommy」などを思わせるが、おおらかなサイケロック風味や中東風味の旋律も顔を覗かせつつ
いい意味でいくぶん散漫なユルさも含めて、プログレとアートロックの中間というような聴き心地である。
ヴァンゲリスの鍵盤ワークはもちろん、自身の奏でるフルートやパーカッションなどもサウンドにアクセントを付けている。
英米のバンドにはないような異国的な妖しさも魅力の作品だ。ギリシャきっての女性シンガー、イレーネ・パパスがゲスト参加。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 怪しげ度・・8 総合・・8
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Aragon 「The Angels Tear」
オーストラリアのプログレバンド、アラゴンの2004年作
90年代から活動するバンドで、かつてはZEROレーベルから日本盤も出ていたので、知っている方もいるだろう。
適度なハードでモダンな感触と、キャッチーなノリのあるポンプロックルーツのサウンドで、
随所にメロウなギターを乗せた古き良きシンフォニックロックの感触も残している。美しいシンセアレンジに
ときにヴァイオリンも加わった繊細な叙情性、薄暗さと湿り気のある雰囲気は、ヴォーカルの声質も含めて
かつてのIQあたりを思わせるという点では、英国シンフォの空気感に近いかもしれない。
12分の大曲も、派手に盛り上げすぎず、あくまでゆったりとした耳心地の良さで楽しめる。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 叙情度・・8 総合・・7.5
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ARNIOE 「So Heaven Is Gone」
オーストラリアのマルチミージシャンによるプロジェクト、アルニオエの2010年作
うっすらとしたシンセにサイケ気味のギタートーンで聴かせる、スペイシーなインストを中心に、
PINK FLOYD的な浮遊感とオルガンも鳴り響くプログレ風味で、ときどきヴォーカルも入る。
CDRの2枚組という大作なのだが、前半はあまりスリリングさもなく長尺感は否めず、
プログレとしてもサイケとして聴くにも中途半端。2枚目の方は曲によってはよい感じなのだが。
よっぽど予算がなかったのか、ブックレットもペラ紙、ケースも1枚用のものという…トホホ。涙
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 サイケ度・・7 総合・・7




AUSTRALIAN PINK FLOYD SHOW 「Everything Under The Sun」
オーストラリアのピンク・フロイド・トリビュートバンドによるライブ。2017年
男女4人のシンガーにツインギター、シンセ、サックス奏者を含む編成で、2016年ドイツでのステージをCD2枚に収録。
1st収録の“Astronomy Domine”で幕を開け、14分を超える“Shine On You Crazy Diamond”、“Wish You Were Here”、
そしてもちろん名作「The Dark Side of the Moon」や「The Wall」からのナンバーもたっぷり演奏、
厚みのあるシンセにメロウなギターワークで、ピンク・フロイドへのリスペクトが伝わってくる王道のカヴァーが素晴らしい。
「鬱」「おせっかい」といったアルバムからのナンバーも含め、ラストは「The Wall」からの2曲の大曲で締めくくる。
ディープなフロイドファンも納得するレベルの演奏と表現力、そして雄大なスケール感に包まれた見事なライブ作品です。
ライブ演奏・・9 壮大度・・9 フロイ度・・9 総合・・8
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BARIS MANCO 「2023」
トルコのミュージシャン、バリス・マンチョの1975年作
近未来をテーマにしたコンセプト作で、スペイシーなシンセが鳴るサイケロック的な雰囲気と、
母国語のヴォーカルの歌声がいかにも辺境的な味わいをかもしだす。
素朴なフルートの音色やオルガンなど、プログレ的な味わいも多く、
独特のアラビックな世界観が楽しめる。不思議に壮大な作品だ。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 アラビック度・・8 総合・・7.5
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BEN CRAVEN 「LAST CHANCE TO HEAR」
オーストラリアのミュージシヤン、ベン・クラヴェンの2016年作
ギター、シンセ、ヴォーカル、ドラム、ベースと全パートを一人で手掛けたという大作で、
オルガンを含むシンセにジェントルなヴォーカルで、PINK FLOYDをルーツにした叙情性とともに、
キャッチーなメロディックロックを聴かせる。コンセプチュアルなイメージを感じさせるスリリングな気配と、
クラシカルで優美な感触が合わさったインストパートには、シンフォニックロックとしての味わいもある。
プログレ的な展開力というのはさほどないが、アコーステッィクを含むメロウなギタートーンや、
繊細なピアノにオルガンが絡む、大人の叙情美に包まれた好作品だ。DVDにはメイキングやPVなどを収録。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 叙情度・・8 総合・・7.5
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The Cambodian Space Project 「2011: A Space Odyssey」
カンボジアのサイケロック、その名も、カンボジアン・スペース・プロジェクトの2011年作
我々にはあまり馴染みがないが、カンボジアという国にもロックバンドはけっこういるらしい。
母国語による女性ヴォーカルに、哀愁を漂わせたアコーディオンにハーモニカの音色、
60〜70年代的なサイケロックの味わいが絶妙に混じって、なかなか面白い民俗ロックという趣だ。
全9曲30分という短さであるが、キャッチーなメロデイとアジアンな情緒に包まれた作品です。
メロディアス度・・8 サイケ度・・8 カンボジアン度・・9 総合・・7.5





Ciccada「A child in the Mirror」
ギリシャのシンフォニックロック、チッカーダの2010年作
女性Voをフロントにした4人編成で、アコーディオン、フルートなどが叙情的な
土着的なシンフォニックロックで、むしろ北欧のバンドのような質感もある。
イタリアのDFAのメンバーが関わっているということもあり、軽やかなチェンバーロック色も
いくぶん覗かせていて、とくにインスト曲でのクラシカルな優雅な質感は個性的だ。
女性ヴォーカルの歌声も美しく、アコースティカルな楽曲をバックにしっとりと楽しめるが、
ハードめのギターも入ったテクニカルな要素もあり、音のメリハりのつけかたにもセンスを感じさせる。
シンフォニック度・・7 クラシカル度・・8 女性Vo度・・7 総合・・8
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Ciccada 「The Finest of Miracles」
ギリシャのプログレバンド、シッカーダの2015年作
前作も優雅で繊細な作品であったが、2作目となる本作も美しいヴァイオリンの音色に
オルガンやメロトロンを含むシンセアレンジとともに、優美なシンフォニックサウンドを展開。
2曲目からは女性ヴォーカルの歌声も加わって、繊細なフルートの音色がやわらかに響き渡る。
コロコロとしたマリンバが鳴るエキセントリックな雰囲気など、軽妙な洒落たセンスも垣間見せ、
アコースティカルな要素を自然に取り入れる技量は、やはりメンバーの素養の高さだろう。
アルバム後半は18分におよぶ組曲で、インストパートをメインに、どことなく哀愁を含んだ大人の味わいは、
なにげに玄人好みの作風。派手さよりも優雅な素朴さでセンス良く仕上げたというような逸品です。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 優雅で繊細度・・9 総合・・8
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CICCADA 「HARVEST」
ギリシャのプログレバンド、シッカーダの2021年作
2020年にデビュー、本作は6年ぶりたなる3作目。2人の女性Vo、女性サックス奏者を含む、7人編成となり、
アコースティックギターにやわらかなフルートが重なり、オルガンやレピを含むシンセにサックスも加わり、
美しい女性ヴォーカルを乗せて、優雅で牧歌的なサウンドを描く。フォークロック寄りの繊細な叙情性と
軽やかなアンサンブルによるカンタベリー風の雰囲気が合わさって、これまで以上に典雅な聴き心地。
フルートとサックスの絡みが増えたことで、インストパートでは、優美なシンフォプログレ風味とともに、
チェンバーロック寄りのミステリアスな部分も覗かせる。ラストは12分の大曲で、しっとりとした優雅に包まれながら、、
プログレらしさたっぷりの展開美が見事。この大曲の存在こそが、バンドとしての成熟と深化を示している。
ドラマティック度・・7 プログレ度・8 優雅度・9 総合・8 
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Crimson Chrysalis「Crimson Passion Cry」
南アフリカのシンフォニック・ハードロック、クリムゾン・クリサリスの2012年作
ストリングスを含む美しいアレンジと男女ヴォーカルの歌声で聴かせる、シンフォニックハードサウンド。
マイルドな男性ヴォーカルにハスキーな女性ヴォーカルの歌声が絡み、キャッチーかつ壮麗な聴き心地で、
辺境的な雰囲気というのはほとんどない。随所にゴシック的な耽美なロマンティシズムも感じられ、
情感的な女性声の魅力も含めて、これはなかなか素晴らしい。プログレハードのリスナーから
女性Voハードロック、シンフォニックメタルのファンにも楽しめそうな好作品です。
シンフォニック度・・8 壮麗度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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Crimson Chrysalis「Enraptured」
南アフリカのシンフォニック・ハード、クリムゾン・クリサリスの2015年作
前作はシンフォニックなアレンジと女性ヴォーカルで聴かせるプログレハード的な好作であったが、
本作では、1曲目からいくぶんメタル的な質感を増した印象ながら、レン・ヴァン・デン・バーグ嬢のハスキーな歌声と
美麗なシンセアレンジを乗せて、適度な薄暗さとオペラティックな優雅さで描かれるサウンドは、
プログレハード、シンフォニックロックのリスナーなどにも楽しめるだろう。さらに今作では、ジャズやタンゴ、
シャンソン的なポップ感を含んだナンバーもあり、大人の哀愁を感じさせるウェットな聴き心地である。
より情感を増したレン嬢の歌唱の表現力も素晴らしく、オーケストレーションを含む壮麗なアレンジに、
バンドサウンドが融合したシンフォニックナンバーにもうっとり。地域性をまったく感じさせない高品質な傑作です。
シンフォニック度・・9 オペラティック度・・8 女性Vo度・・9 総合・・8
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DEWA 19「the best of」
インドネシアのロックバンド、デワ19のベストアルバム。1999年作
1992年にアルバムデビュー、バンドは2000年に新生DEWAとしてスタートするが、
本作はDEWA19名義での1992〜96年までに出された4作からのベスト。
哀愁の叙情とキャッチーなメロデイで聴かせるサウンドは、シンセアレンジなどもなにげに効いていて、
単なるポップロックとは異なる、プログレハード的な質感があるのがよい。
泣かせどころを抑えた叙情的なバラードなども絶品だ。
メロディアス度・・8 キャッチー度・・8 プログレ度・・6 総合・・8
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DEWA「★★★★★」
インドネシアのメロディアスロックバンド、デワの2000作
元はDEWA19という名前だったらしいが、DEWA名義ではこれが初アルバム。
地元インドネシアでは相当な人気だということだが、音を聴けば確かにそれもうなずける。
しっかりとした演奏力に支えられた楽曲は、ポップで甘いメロディに加え、
キーボード、オーケストレイションによるシンフォニック性がじつに美しい。
母国語の歌い回しがなんかラテン系の歌ものを思わせる感じでエキゾチック。
すごいぞインドネシア。しかしアルバムタイトルが「五つ星」って・・?
シンフォニック度・・8 メロディアス度・・8 ポップ度・・8 総合・・8

DEWA「CINTAILAH CINTA」
インドネシアのメロディアスロックバンド、デワの6th。2002年作
インドネシアでは人気のポップグループだったらしいが、前作「★★★★★」から
プログレ的なアレンジが冴えその手のファンにもアピールできる内容になっている。
今回も、オーケストラを導入し壮大さを演出しており、そのキャッチーなメロディセンスや
ヴォーカルハーモニーは美しく、しみ入るような叙情と哀愁をともなって胸に届いてくる。
インドネシア語の歌唱も、なんとなく我々アジア人に共感する響きを感じさせ、
言葉を超えた音楽の素晴らしさを聴く側に伝えてくれている。ときにメロウに奏でられるギターなども良い感じで、
ポップでキャッチーなのに、じーんとなる。きっとやさぐれたあなたの心も解かします。
メロディアス度・・8 シンフォニック度・・8 キャッチー度・・9 総合・・8.5◆プログレ名作選入り
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DEWA「Atas Nama CintaT/ II」
インドネシア最高のロックバンド、デワのライブアルバム。2004作
「T」と「U」まとめてレビュー。DISCUSなどのおかげで、脚光が当たりはじめたインドネシアのロックシーンだが、
現在のところ、人気、実力ともにナンバー1と思われるのがこのバンドだろう。
DEWA 19名義から数えて8枚アルバムを発表しており、とくに5、6枚目はプログレッシブな質感の曲アレンジから、
日本のファンにも人気が高い。このライブ作はその6th「Cintailah Cinta」発表後なので、同アルバムからの曲がメイン。
哀愁を漂わせた美しいメロディラインは、たとえばQUEENあたりからの影響も思わせつつ、
そこにインドネシアの土着性をブレンドさせたもので、同じアジア人である我々の耳にはとても馴染み安い。
ライブ音源を聴くと演奏力もしっかりとしていて、地元でのステージなのか観客の盛り上がりと歓声もすごい。
6th収録の感動的なシンフォニックバラードには涙チョチョ切れもの(;_;)オフィシャルサイトはこちら
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 ライブ演奏・・8 総合・・8
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Dewa Budjana「Dawai in Paradise」
インドネシアのギタリスト、デワ・ブジャナの2011年作/邦題「楽園の琴線」
インドネシアを代表するロックバンド、GIGIのギタリストで、本作は過去のソロ作からのセレクトに
新曲を加えてのメジャーデビュー作。モダンなシンセアレンジにメロディックなフレーズも織り込んだ
巧みなギターワークで、インストによる優雅なフュージョン・ジャズロックを聴かせる。
どっしりとしたベースと手数の多いドラムによる強固なアンサンブルも含めて、演奏力は世界レベル。
随所にシンセギターも使った華やかな聴き心地や、民族的なメロディを奏でる叙情性に、
やわらかなピアノで聴かせる優美なジャズナンバーもあったりと、オールインストでありながら、
起伏に富んだアレンジも見事。これぞ、インドネシアのホールズワースという見事な内容だ。
メロディック度・・8 テクニカル度・・8 優雅度・・9 総合・・8.5
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Dewa Budjana 「Joged Kahyangan」
デワ・ブジャナの2013年作/邦題「天国の舞踏」
今作は、鍵盤にラリー・ゴールディングス、ベースにジミー・ジョンソン、ドラムにピーター・アースキン
サックス&クラリネットにボブ・ミンツァーという名うてのメンバーを迎えてのアルバムで、
やわらかなピアノにサックスが優雅に鳴り響く、大人のフュージョン・ジャズロック。
前作に比べると、デワのギターは控えめな印象もあるが、随所に奏でる流麗なフレーズは
すでに円熟の味わいで、サックスやピアノの旋律を引き立てているのも素晴らしい。
ジャニス・シーゲルが参加した、女性ヴォーカルナンバーもよいアクセントになっていて、
しっとりと聴き入れる。落ち着いた味わいの優雅なアンサンブルが楽しめる好作品だ。
メロディック度・・8 テクニカル度・・7 優雅度・・9 総合・・8
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Dewa Budjana 「Surya Namaskarn」
デワ・ブジャナの2014年作/邦題「太陽への賛歌」
前作に引き続き、ベースはジミー・ジョンソン、ドラムには新たにヴィニー・カリウタが参加。
ゲイリー・ハズバンドが参加した1曲目は、優美なシンセとホールズワースばりのギターの旋律で、
スリリングなプログレ・ジャズロック感触が楽しめる。巧みなドラムとベースが生み出すリズムに乗せる、
奔放にして深みを感じさせるギターワークはじつに見事で、適度にエスニックの香りを含んだメロディも絶妙だ。
9分を超えるナンバーでは、ガムラン的なオリエンタリズムと、どっしりとしたロック感触を同居させた聴き心地で、
プログレリスナーにもしっかり対応。今作は6分以上の曲が多いので、聴きごたえありの力作です。
メロディック度・・8 テクニカル度・・8 優雅度・・9 総合・・8.5
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Dewa Budjana 「Hasta Karma」
デワ・ブジャナの2015年作/邦題「8つの運命」
ドラムにアントニオ・サンチェス、ベースにベン・ウィリアムス、ヴィブラフォン奏者のジョー・ロッカを迎えて、
4人編成でのアンサンブルで、本格派のジャズロックを志向したアルバム。パット・メセニー関連で活躍する
ドラムとベースのリズム隊に、ヴィヴラフォンのやわらかな響き、そして優雅なギターフレーズを乗せて、
軽すぎず重すぎずという絶妙のサウンドで、ときにガムランの詠唱を加えた民族的な味わいも覗かせつつ、
10分を超える大曲もじっくりと構築してゆく。ゲストによるピアノを加えての優美なナンバーも素晴らしい。
メロディック度・・8 テクニカル度・・8 優雅度・・9 総合・・8.5
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DEWA BUDJANA 「MAHANDINI」
インドネシアのギタリスト、デワ・ブジャナの2019年作/邦題「マハンディニ〜新たなる大地の夜明け」
本作は、ドラムにマルコ・ミンネマン、シンセにジョーダン・ルーデスというビッグネームが参加、
インドの新進女性ベース奏者を迎えての編成で、軽やかなアンサンブルにメロウなギターを乗せた、
テクニカルで優雅なフュージョン・ジャズロックを聴かせる。いくぶんハードエッジなギターを聴かせつつ、
ルーデスによるやわらかなピアノの旋律も美しく、随所に民族的な土着性を含んだ構築センスも見事。
元レッド・ホット・チリ・ペッパーズのジョン・フルシアンテが参加した歌入りのナンバーも味わい深く、
インド出身という女性ベース奏者のプレイもなにげに凄いのだが、なによりもブジャナ氏のギターは、
ときにホールズワースのように流麗で円熟の極致。まさにアジアが誇る世界最高レベルのギタリストである。
メロディック度・・8 テクニカル度・・8 優雅度・・9 総合・・8.5
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DISCUS「1st」
インドネシアのプログレバンド、ディスカスの1st。1999年作
先に2nd「...tot licht!」を聴いていたのでもう驚きませんが、このデビュー作もなかなか。
矢継ぎ早の変態的な展開とメタリックな大仰さでは、さすがに大傑作の2ndに及びませんが、
それでも、十分に質の高い民族調プログレ・ジャズロックが楽しめます。
ガチャガチャとテクニカルにたたみかけると思えば、美しいフルートがたおやかに鳴り
優しげな女性ヴォーカルを乗せた、カンタベリー的な優雅さに包まれたナンバーや、
艶やかなヴァイオリンとアコースティックギターが奏でる叙情性にもうっとりとなる。
ラストの12分の大曲はプログレとしての彼らの魅力が炸裂。オフィシャルサイトで試聴可能
メロディアス度・・8 プログレ度・・8 優雅度・・9 総合・・8.5
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DISCUS「...tot licht!」
インドネシアのプログレバンド、ディスカスの2nd。2003年作
やや変態入ったジャズロックかと思いきや、楽曲が進むにつれ、素晴らしく無節操で高度な演奏と矢継ぎ早の展開に唖然となること必至。
なにげにバックではギターがメタルリフを弾いているし、かと思うとガムランの詠唱みたいのが始まってゆったりとしたサックスのメロディ〜
シンフォニックなキーボード、美声の女性ヴォーカルのたおやかな歌声にうっとりしていたら次の曲では、アヴァンギャルドな変則リズムに乗せて
歪み系男Voがガナってます。プログレ…ジャズ、シンフォ、メタル、民族音楽と、様々な要素を叩き込みゴッタ煮にして仕上げましたという感じで、
結果として恐るべきプログレッシブな作品になっています。楽しみ所満載で怖いほど。そして最終曲のダイナミズムと美しい女性声を含めた
感動的なまでの盛り上がりには、何故か日本のMr.SIRIUSを思い出したほど。いやはや…まさに超濃密なるド傑作!
テクニカルでメロディアス度・・9 プログレ度・・10 ごった煮度・・10 総合・・9◆プログレ名作選入り
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Double Space「Windings」
イスラエルのプログレバンド、ダブル・スペースの2006年作
クラシカルなピアノの旋律にたおやかなフルートの音色とともに、
カンタベリー的な軽やかさをもったジャズロックスタイルを聴かせる。
牧歌的なヴォーカル曲ではフォーク風味の繊細さもあり、男女Voの歌声が耳に優しい。
サックスも入った大人のジャズ風味も含め、優雅で余裕のある演奏が楽しめる好作品。
メロディック度・・8 ジャズ度・・8 優雅度・・8 総合・・8


EGGROLL & The SHAKES「Fairytale
イスラエルのメロディックロック、エッグロール・アンド・ザ・シェイクスの2006年作
BeatlesやQueenなどをルーツとしたようなポップなメロディックロックの感触に、
ピアノやオルガンを含むシンセによるアレンジを含んだやわらかなサウンド。
たとえばBarclay James Harvestのような素直な叙情性が耳に優しく、
普遍性のあるメロディアスさでイスラエルという地域性はあまり感じさせない。
メロディック度・・8 プログレ度・・6 やわらか叙情度・・9 総合・・7.5


ERWIN GUTAWA「ROCKESTRA」
インドネシアのミュージシャン、エルウィン・グタワの2006年作
ロンドンシンフォニーオーケストラが参加、大規模なオケとロックを融合させた本作は、
まるでENIDのような壮麗かつダイナミックなサウンドを描き出す。
インドネシア伝説のロックバンドGodblessのメドレーからスタート、その後も
インドネシアンロックの哀愁とシンフォニックなオーケストラが合わさった壮大なロックオペラ的な
世界観で、女性ヴォーカル曲や、牧歌的なバラードなどを感動的に聴かせてくれる。
シンフォニック度・・9 壮麗度・・9 ロック度・・7 総合・・8
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EPHRAT「No One's Words」
イスラエルのプログレ(メタル)バンド、エフェラトの2008年作
適度にメタリックなギターとシンセを中心に、薄暗い叙情で聴かせるサウンドは
ときにゆったりとメロウに、ときにフルートなども入った民族色もあり、
じっくりと盛り上げるドラマ性は、ProgMetal系のリスナーにも勧められる。
のっけから10分を超える大曲に、その後も8分、9分という大作指向で、
新人にしては堂々たる自身が窺える。ラストの18分の組曲もなかなか圧巻。
ゲストヴォーカルにはなんとPain of Salvationのダニエル・ギルデンロウに
PAATOSの女性Vo、PetronellaNettermalm 嬢が参加している。
バンドの中心人物、オマー・エフェラトの若き才能に今後も注目だ。マイスペで試聴可能
メロディアス度・・7 メタリック度・・7 薄暗度・・8 総合・・7.5
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FROM.UZ 「Audio Diplomacy」
ウズベキスタンのプログレバンド、フロム・ウズの2007年作
ギター、ベース、ドラム、シンセの4人編成で、モダンなシンセアレンジと適度にハードさと
硬質なテクニカル性で聴かせるインストサウンド。先の読めない偏屈な展開力も面白く、
随所にメロディックなフレーズや渋みのあるプレイを奏でるギターのセンスもなかなかのもの。
ベースのタッピングも恰好よく、ときにジャズ的な優雅さも垣間見せつつ、タイトなリズムアンサンブルは、
とても辺境のバンドとは思えない。のちのアルバムに比べればメロディのフックではまだ物足りないものの、
この時点でもすでに十分な実力派であることが分かる。10分前後の大曲が多いので、オールインストということで
ついBGMになってしまう感じもあるのだが、オリエンタルな香りを含んだ異色の力作だ。
メロディック度・・7 プログレ度・・7 テクニカル度・・8 総合・・7.5
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FromuzOverlook」
ウズベキスタンのハード・プログレバンドド、フロムウズの2008作
さすがにマニアな私ですらも、ウズベクのバンドというのは初めてだ。
しかしこれがなかなかいい。歌なしのインストによるハードシンフォニック作で
全5曲でそれぞれが15分、14分、10分、11分、17分というものすごい大作志向。
メロディアスなギターに美しいシンセが絡みつつ、随所にProgMetal的なテクニカルさや、
オリエンタルなメロディを盛り込むなど、演奏、楽曲ともになかなかいいセンをいっている。
ともかく歌がない上に、曲が長いので、気が短い人には向かないのだが
むしろ長曲に慣れたシンフォ系リスナーにはとても心地よいサウンドではないかと思う。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・7 長大度・・8 総合・・7.5
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FROMUZ「Seventh Story」
ウズベキスタンのプログレバンド、フロムウズの2010年作
前作は全曲が10分以上という大作であったが、本作も20分、16分、18分という
大曲を含む全6曲78分という力作である。まるで映画的のようなイントロから始まり、、
ときにハードフュージョン/ジャズロック的な軽やかさと、シンフォニックな音の厚みが合わさった
濃密なサウンドが展開される。これまで以上にコンセプト的なシリアスさが出ていて
ミステリアスな雰囲気が壮大な質感となり、ギターによる叙情フレーズでここぞと盛り上げる。
インストが中心ながらも細かなアレンジによる楽曲構築が見事で、聴き手を飽きさせないだけの
音の説得力もついた。ドラマティックなセンスで、辺境性を感じさせない力作に仕上がっている。
シンフォニック度・・8 ドラマティック度・・9 濃密度・・9 総合・・8.5
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FROM.UZ「Quartus Artifactus」
ウズベキスタンのプログレバンド、フロム.ウズの2011年作
過去3枚のアルバムを再録した2CDに、ライブ映像入りのDVDという3枚組。
FROMUZからFROM.UZへと微妙に名前が変化しているが…まあいい。
前作「Seventh Story」の素晴らしさが印象深いが、本作はアコースティックな要素を強めた
新たなアレンジでバンドの力量を見せつける。優雅な軽やかさの中に、チェンバーロック的な
得体の知れなさを練り込んで、適度な緊張感とともに構築されるサウンドに引き込まれる。
楽曲はほとんどが10分以上であるが、切り返しの多い構成や、牧歌的でもあるメロディのセンス、
クラシックなども取り入れた多様性あるアレンジで、飽きずに聴き通せるだけの魅力と演奏力がある。
メロディアス度・・8 プログレ度・・8 楽曲センス・・9 総合・・8
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FROMUZ 「Sodom and Gomorrah」
ウズベキスタンのプログレバンド、フロムウズの2013年作
2010年の「Seventh Story」はじつに素晴らしい完成度の傑作であったが、
再録アルバムをはさんで3年ぶりとなる本作も、辺境性を感じさせない見事な出来だ。
本作は、旧約聖書「創世記」に出てくる滅びの都市、ソドムとゴモラをテーマにしたアルバムで、
美麗なシンセアレンジと叙情的なギターワークを中心に、いくぶんダークでシアトリカルな緊張感とともに
3〜5分というコンパクトな曲を並べて、インストでありながらも巧みにコンセプト的な流れを描いている。
派手な盛り上がりやキャッチーな感触は薄いが、じっくりと丁寧に構築された、聴き応えのある力作である。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 シアトリカル度・・8 総合・・8



Galadriel
オーストラリアのフォークロックバンド。1971年作
ジャケのイメージはファンタジックなB級シンフォのようだが、サウンドの方はブルージーなギターを乗せた
いかにも70年代ブリティッシュロック的な雰囲気で、ときにフルートが鳴り響くフォークロック的な牧歌性も感じさせる。
3〜5分前後の楽曲はわりとコンパクトで、全体的にもプログレというほどの展開はないのだが、
男性ヴォーカルの通りの良い歌声や叙情的なギターの味わいで、なかなか耳心地よく楽しめる。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 ブルーズ&フォーク度・・8 総合・・7
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godbless「36th」
インドネシアのロックバンド、ゴッドブレスの2009年作
1973年から数えて36年というキャリアを誇る大ベテランで、
見た目はみんないいオッサンなのだが、サウンドの方は熱い熱い。
オルガン入りの英国風ハードロックで、インドネシア語のヴォーカルによる
キャッチーな聴き心地と、ときに哀愁の叙情も含んだ楽曲はなかなかいい感じ。
年季の入ったバンドらしい演奏力もさすがというところ。シンフォニックに盛り上げる
プログレハード風の曲や泣きのバラードもGood♪
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 叙情度・・8 総合・・8
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GOD BLESS 「7 - CERMIN」
インドネシアのロックバンド、ゴッド・ブレスの2017年作
70年代から活動するインドネシアを代表するバンドのひとつで、プログレリスナーからも評価の高いバンド。
7作目の本作は、1980年の2ndアルバムのリレコーディングに、Disc2には新曲を加えた2枚組作品。
オルガンを含むシンセにほどよくハードなギター、母国語による伸びやかなヴォーカルを乗せた
古き良き味わいのプログレハードサウンドを聴かせる。ほのかに様式美HRの香りをまとわせた
叙情的なギターの旋律に、手数の多いドラム、きらびやかなキーボードが一体となった、濃密な味わいは、
このバンドならではのものだろう。一方では柔らか味のある叙情性や、ファンキーなポップ性なども覗かせつつ、
ゴージャスなシンフォニック性も含んだ感動的なナンバーまで、アジアン・プログハードの傑作というべき内容です。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 濃密度・・9 総合・・8
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GONG 2000 「Prahara」
インドネシアのプログレ・ハードロック、ゴングの2000年作
シンフォニックなイントロから、オルガンを含むシンセワークと適度にハードなギター、
伸びやかな母国語のヴォーカルを乗せ、優雅なプログレハード・サウンドを聴かせる。
ギターはときに様式美HR的な旋律を奏で、どこかなつかしさを感じさせるメロディのフックもあって
なかなか日本人好みの作風といえる。ドラムをはじめとした演奏力の高さも見事で、
叙情的なバラードナンバーなども、泣きのギターフレーズも含めて耳心地よく楽しめる。
メロディック度・・8 プログレ度・・6 叙情度・・8 総合・・8
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RISHAD SHAFI & GUNESH
トルクメニスタンのプログレジャズロックバンド、ガネッシュの1980年の1stと84年の2ndを併せて収録したアルバム。
旧ソ連時代の作品ということで、東欧独特のスケールの大きさとシンセによる浮遊感、
そこにエネルギッシュな爆発力が加わって、ただのジャズロックではない迫力が生まれている。
このジャケのインパクトもそうだが、リーダーRISHAD SHAFIの手数の多いドラムプレイは
明らかにジャズというよりもロック、それもプログレ的な変態感があり、
サウンドは単なる辺境モノでは片づけられない存在感をかもしだしている。
ヴォーカル入りの曲では、一転してエキゾチックな郷愁を漂わせる中東的な色が前に出る。
テクニカルさと民族色を融合させた、質の高い変態ジャズロックプログレ作だ。
メロディアス度・・7 プログレ度・・8 テクニカル度・・8 総合・・8
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RISHAD SHAFI & GUNESH 「45°IN A SHADOW」
トルクメニスタンのプログレジャズロックバンド、ガネッシュの1984〜1990の曲を集めたCD。
こちらは未発集ということらしいが、それでも録音以外はかなりのクオリティ。
手数の多いドラム、ツインキーボード、ツインギターを中心に、
かなりテクニカルな演奏でぐいぐいとたたみかけてゆくさまは圧巻。
サックス、パーカッションなどがときに民族的な雰囲気をかもし出しながら、
シンセは陽性なメロディを奏でつつ、随所に重厚になったり、ジャズ調になったりもする。
やはり、要はリーダーであるRISHAD SHAFIのドラムで、陽気にドカドカと叩きまくり
一人でロック度を高めている。辺境からの民族調ジャズロック異色の力作。
メロディアス度・・7 プログレ度・・8 バカジャズロック度・・9 総合・・7.5
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I KNOW YOU WELL MISS CLARA 「Chapter One」
インドネシアのプログレ・ジャズロック、アイ・ノウ・ユー・ウェル・ミス・クララの2013年作
やわらかなエレピの音色にメロウなギターが絡む、繊細なアンサンブルのジャズロックで、
ときにスリリングでフリーキー、そしてほどよくアヴァンギャルドな雰囲気もある。
いくぶんミステリアスな空気感も覗かせつつ、優雅な静寂感を描くようなパートもあり、
カンタベリー風でもあるやわらかな作風で、全体的にうるさすぎない聴きやすさで楽しめる。
10分を超える大曲も、派手さはないが、適度に不穏な緊張感に包まれながら展開してゆく。
本格派のジャズロックに、ウェットな翳りと空間的な静寂を加えたような好作品である。
ジャズロック度・・8 プログレ度・・7 優雅度・・8 総合・・8
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IMANISSIMO「Z's Diary」
インドネシアのプログレバンド、イマニシモの2004作
恐るべき完成度を誇ったDISCUSの2ndを聴いてからというもの、インドネシアのシーンへの
興味はかなり高まっていたのだが、そんな中現れたこのバンドもまたしても驚異のクオリティだ。
基本は、ギター、ベース、ドラム、キーボードというわりと普通の編成なのだが、メロディアスでシンフォニック、
テクニカルで適度にメタリックという、聴き心地で、たおやかなフルートやパーカッション、
ときに民族的な色合いをかもし出しつつ、きらびやかなプログレッシブ・ハード系として楽しめる作品となっている。
DISCUSほどにはたたみかけるようなインパクトはないが、組曲形式の43分の大曲では、メロウな旋律とともに
シンフォニックでゆるやかな盛り上がりが相まって、内的宇宙のスケールを感じるまでに壮大な世界観を感じさせてくれる。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・8 壮大度・・9 総合・・8
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Indigo 「Short Stories」
オーストラリアのプログレバンド、インディゴの1991年作
1984年にデビューして、本作は2作目となる。やわらかなシンセにマイルドなヴォーカルを乗せ、
ほどよくキャッチーなポップ感も含んだ、優美なシンフォニックロックを聴かせる。
10分を超える大曲も、叙情的なギターとオルガンなどのシンセと優しい歌声で、
後期のANYONE'S DAUGHTERにも通じる、ゆったりとしたキャッチーな耳心地だ。
派手な展開はないのだが、甘美なギターとシンセワークに、中性的な歌声が心地よい逸品です。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 優美度・・9 総合・・7.5
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IN MEMORIAM「The Ultimate Terrorizing Aura Of Unlogic Mind
インドネシアのプログレバンド、イン・メモリアムの2003作
写真を見ると若手の5人組み。牧歌的で壮大なイントロから曲が始まると
プログレメタル的な質感のサウンドに音程の危うい女性コーラス、
シンフォニックなシンセに男Voのオペラティックな歌(というほどには上手くないが)が乗る。
ジャズ風なピアノや、ラップ調のヴォーカル(ときにおちゃらけ入り)も入り交じり、ゴシックメタル風で
ときおり民族入りプログレメタル風という、奇怪なごった煮サウンド(結果として変態?)が進行してゆく。
だが同郷のDISCUSに比べると、演奏技術、楽曲、センスともに遠くおよばず、
無理矢理感のあるアヴァンギャルドな部分は、かえって音の浅い感じがする。
技量的に消化しきれていないキワモノ系サウンドはむしろ気持ちが悪いという見本。
シンフォニック度・・8 アヴァンギャル度・・9 ごった煮度・・9 総合・・7


JERICHO
イスラエルのロックバンド、ジェリコの1972年作
8分、9分、11分という大曲を含む全5曲で、センスのあるツインギターにパワフルなヴォーカルを乗せて、
適度に疾走感もある、正統派のブリティッシュ・ハードロックのスタイル。鍵盤のたぐいはほとんど使っていないので、
前半はプログレ色というのはあまり感じないのだが、ブルージーな味わいを含んだ大曲などは
年代を考えればなかなか冒険的だし、後半にはピアノやストリングスを使った叙情的なナンバーなどもある。
ラストの11分の大曲は、プログレ的な展開力も覗かせたバンドのセンスが光る。英国ではないが英国らしい好作品だ。、
ドラマティック度・・7 プログレ度・・6 ブリティッシュ度・・8 総合・・7.5
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KRAKATAU 2000「Magical Match」
インドネシアの民族ロック、カラカタウの2000年作
パーカッションに笛の音が鳴り響く土着性と、ジャズロック的な優雅なアンサンブルに、
女性ヴォーカルの艶めいた歌声を乗せた、民族ジャズロックというサウンドを聴かせる。
フレットベースによるグルーブ感に、鉄琴やスリン(笛)の音色、シンセによるモダンなアレンジに
ラップとガムランが合わさったような歌声が乗る、オリエンタルと西洋音楽が同居したごった煮は、ちょっと他に類を見ない。
祝祭的なノリとアジアンな神秘性をジャズロック化したような濃密な作品で、結果としてプログレリスナーも楽しめる。
プログレ度・・7 ジャズロック度・・7 民族度・・9 総合・・8
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KETTLESPIDER「Avadante」
オーストラリアのシンフォニックロック、ケトルスパイターの2011年作
ツインギターにシンセを含む5人編成で、ジャケはB級ゴシックメタルのようなジャケだが、
サウンドはメロディックなギターフレーズを主体にした、爽快な聴き心地のインスト作品。
適度にハードなProgMeta風味の感触もありつつ、あくまでメロウな叙情を大事にした楽曲は耳心地がよい。
シンセによる美しい味付けに、ハケットかランヴァルかという、ギターのメロディセンスもなかなかのもの。
トータル33分弱と物足りなさがあるので、今後は一部歌入りにしたりするのもよいかと。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 叙情度・・8 総合・・7.5


MADDEN AND HARRIS「FOOLS PARADISE」
オーストラリアのフォークデュオ、マッデン・アンド・ハリスの1975作
メロトロンの入った男性ヴォーカルで聴かせるやわらかな叙情のフォークロック作品。
楽曲は2、3分台のあっさりとしたものが多く、聴き応えの点ではやや物足りない。
これが女性Voだったら嬉しかったのだが、とりあえずメロトロンの美しさはよいですけどね。
メロディアス度・・7 メロトロン度・・7 しっとりゆるやか度・・9 総合・・7.5
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Mario Millo & Jon English 「Against The Wind」
オーストラリアのミュージシャン、マリオ・ミーロの1978年作
ご存じ、セバスチャン・ハーディのギタリストとして名をはせる彼が、ソロへと転向する契機となった作品で、
SHのプロデューサーでもあり、シンガー、舞台俳優のジョン・イングリッシュが主演したTVドラマのサントラ作品。
やわらかなフルートの音色とアコースティックギターで始まり、ロック色は薄いのかと思いきやそんなことはなく、
2曲目からはしっかりとエレキギターにドラムも入ってくる。やはりサントラなので、プログレ的な盛り上がりや展開などはあまりないのだが、
牧歌的な歌もの曲や叙情的な小曲などもなかなか魅力的で、マリオ・ミーロの繊細なギターワークが随所に光っている。
叙情性という点ではSHのファンにも十分楽しめる。後の傑作ソロ「エピックIII」へとつながる作品ともいえるだろう。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 叙情度・・8 総合・・7.5
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MARIO MILLO「EpicV」
オーストラリアのSebastian Hardieのギタリスト、マリオ・ミーロのソロ。1979年作
セバスチャン・ハーディの2枚のアルバム「哀愁の南十字星」、「ウインド・チェイス」は
オーストラリアのプログレシーンにおける金字塔的なアルバムだったが、その後に発表された本作も、
マリオ・ミーロの魅力が詰まった隠れた名作として名高い。なんといっても14分におよぶ、1曲目のタイトル曲が素晴らしい。
セバスチャン・ハーディを思わせる感触に、テクニカルなリズムにキャッチーな歌メロを乗せ、
プログレ的なシンセワークで聴かせる見事な大曲だ。もちろん以降の曲も雰囲気が良く、
マリオ・ミーロのメロディアスなギターがたっぷり楽しめる。ゲストによる男女ヴォーカル入りの曲や
アコギとフルートによる繊細な小曲、ゆるやかなストリングスのアレンジなどもじつに美しい。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 繊細度・・9 総合・・8
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Montecristo 「A Deep Sleep」
インドネシアのプログレバンド、モンテクリストの2016年作
2010年にデビューし、2作目。圧巻の傑作を残したDISCUSをはじめ、インドネシアには良いバンドが多いのだが、この若手5人組は、DREAM THEATERのライブ会場で出会って結成したという。
優美なピアノとシンセに、英語によるエモーショナルなヴォーカルを乗せ、ほどよくハードなギターとともに、カラフルでキャッチーなサウンドを描く。
プログレらしいきらびやかなシンセワークと、やわらかなメロディのフックにコーラスハーモニー、ほどよくスタイリッシュなハードさも織り込んで、ときにMOON SAFARIのような優雅な耳心地で楽しめる。
かすかなイモ臭さはあるものの、演奏力アレンジセンスともにレベルが高く、今後に期待の新鋭といえる。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 優雅度・8 総合・8
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Musica Ficta「A Child & A Well」
イスラエルのプログレバンド、ムジカ・フィクタの2012年作
女性Vo、フルート奏者を含む6人編成で、オルガンやピアノを含んだ美しいシンセアレンジに
女性ヴォーカルのキュートな歌声とともに軽やかなアンサンブルを聴かせる傑作。
4〜6分という比較的短めの曲が中心だが、フルートの音色がやわらかに響き、
アコースティカルな優雅さを中世音楽的な幻想性で構築するセンスがじつに素敵である。
軽妙でいて繊細、しっとりとした耳心地の良さは、ある意味でPFMなどにも通じるかもしれない。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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nerv 「ragam」
インドネシアのプログレバンド、ネルフの2005年作
女性ヴィオラ奏者を含む6人組で、叙情的な笛の音色にシンセが加わり、
パーカッションのリズムにロックギターがかぶさると、民族色の濃いプログレとなる。
同郷のANANEに比べると、もっとスタイリッシュでバランスのよさ聴き心地である。
美しいヴィオラの音色がうねるようなビートに包まれて、インストながらも濃密な作風。
たとえば、日本のKENSOあたりが好きな方でも楽しめるクオリティの高さである。
メロディアス度・・7 プログレ度・・8 民族度・・8 総合・・8
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NONAMES「SHLOMO GRONICH SHLOMO YDOV SHEM TOV LEVY」
イスラエルのプログレバンド、ノー・ネームスの1975年作
70年代のイスラエルのバンドというと、ZINGALEくらいしか聴いたことがなかったが、
本作は哀愁を含んだ母国語のヴォーカルに、オルガンやメロトロンを含んだキャッチーなサウンドで、
これがなかなか質が高い。楽曲は2〜4分台と短めで、複雑な展開はあまりないが、
ときにフルートやヴァイオリンが鳴り響き、いくぶん辺境的な牧歌性を感じさせつつも、
耳心地のよい優雅さとやわらかな叙情が味わえる。年代と地域性を考えればかなりの好作だろう。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 やわらか叙情度・・8 総合・・7.5
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OAKSENHAM 「Conquest of the Pacific」
アルメニアのプログレバンド、オークセンハムの2006年作
女性シンセ奏者、フルート、ヴァイオリン奏者を含む6人編成で、アコースティックギターに
やわらかなフルートの音色が絡む軽妙なアンサンブルに、オルガンを含んだシンセや
ときにヘヴィなギターも合わさった、なかなか個性的な民族プログレサウンド。
いうなれば、Flairckのクラシカルな優雅さをハードプログレ化したような感触もあり、
中世音楽風味のトラッドなテイストをしっかり現代的に解釈しているのが素晴らしい。
後半の26分の組曲も圧巻で、オールインストながらも最後まで楽しめる傑作です。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 優雅で軽妙度・・9 総合・・8.5
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OSIRIS
バーレーンのプログレバンド、オシリスの1982年作
80年代の中東のプログレではわりと有名なバンドで、美しいシンセアレンジに
いくぶんハードエッジのギターで聴かせる、正統派のシンフォニックロックスタイル。
ダイナミックな展開と英語歌詞によるヴォーカルのマイルドでキャッチーな味わいには
さほどの辺境臭さはなく、むしろスペインのBloqueあたりに通じる哀愁の叙情がよろしい。
2nd「Myths & Legends」に比べると、まだいくぶん荒削りでやぼったさはあるものの、
Camelから影響を受けたようなメロウなギターフレーズにオルガンやムーグなどのシンセが絡む、
メロディックな耳心地はなかなかたまらないのである。地域性を考えるとじつに見事な出来である。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 中東度・・7 総合・・7.5
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OSIRIS 「Myths & Legend」
バーレーンのプログレバンド、オシリスの1984年作
中東バーレーンでは名の知られたバンド、本作は2ndでバンドの代表作とされる。
サウンドは中東臭さはさほどなく、ムーグを含んだシンセと、メロディックなギターに
英語歌詞のヴォーカルで聴かせる、しごく正統派のシンフォニック・プログレ。
辺境的な野暮ったさもありつつ、ギターの泣きのメロディはときにCAMELばりで、
なかなか叙情豊かな聴き心地。演奏自体にはスリリングなところはないのだが、
プログレ大好きな中東のおっさんたちがかもしだす、素朴な味わいがよいんですな。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 辺境度・・8 総合・・7.5

Osiris 「Take a Closer Look」
バーレーンのプログレバンド、オシリスの2020年作
1982年にデビュー、本作は13年ぶりとなる5作目。オルガン鳴り響くオールドな味わいに、
叙情的なギターの旋律とともに、80〜90年代の香りに包まれたシンフォプログレを聴かせる。
マイルドなヴォーカルを乗せたキャッチーな優雅さに、展開力のあるインストパートも含めて
きらびやかでいて泣きの叙情美も含んだ、日本人好みのシンフォニックロックが楽しめる。
甘美なギターメロディと壮麗なシンセワークにウットリとなる部分もしばしば。これぞ王道シンフォです。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 優美度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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P.L.J Band 「Armageddon」
ギリシャのプログレバンド、PLJバンドの1982年作
エゼキエルの予言したアルマゲドン(世界最終戦争)をテーマにしたコンセプト作で、うっすらとしたシンセに
叙情的なギターを重ねたイントロから始まり、聖書を引用した語りや英語歌詞のヴォーカルとともに、
シアトリカルなドラマ性とサイケロック寄りの牧歌的な叙情が同居した、独自のサウンドを聴かせる。
ブルージーなギターやシンフォニックなシンセアレンジなども含みつつ、どことなく怪しいスケール感とともに、
「黙示録」の世界を描いてゆく。シンセによる小曲をはさみ、優美なシンフォニックナンバーと続く後半の流れもいい。
バンドはその後、1983年に2作目を発表したのち、TERMITESと改名し、80年代に4作を残して解散している。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 壮大度・8 総合・7.5
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RAGNAROK「Ragnarok/Live」
ニュージーランドのプログレバンド、ラグナロクの1st+ライブのカップリング。1975/1977年作
2nd「Nooks」はかつてマーキーからの国内盤を聴いた記憶があるが、こちらの1stの方は
女性ヴォーカルの歌声も入って、メロトロンやムーグのシンセワークとともに
Earth and Fireのような素朴な感じの叙情性がなかなかよろしいですね。
ライブの方は音質はそれなりだが、PINK FLOYDのメドレーや
LED ZEPPELINのカヴァーなども含めて、まったりと楽しめる。
メロディック度・・7 シンフォニック度・・7 叙情度・・8 総合・・7.5
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Rainbow Theatre「Armada」
オーストラリアのプログレ、レンイボウ・シアターの1975年作
2nd「Fantasy Horseと」の方が有名だが、こちらの1stの方も10分以上の大曲を中心にした
なかなかドラマティックなサウンド。トランペット、トロンボーン、サックスなどの管楽器を大胆に取り入れ、
そこにオルガンが加わると、とても個性的なプログレになる。随所にオペラ風味の歌パートや、
男女の合唱隊も入った壮大さもあり、メリハリのある展開力という点ではむしろ本作の方が上だろう。
ラスト曲などは、ほとんどクラシックばりの美しさ。ブラス入り、オーケストラ・プログレとでもいうべき力作。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 管楽器度・・8 総合・・8
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RAINBOW THEATRE「Fantasy Of Horses」
オーストラリアのプログレバンド、レインボウ・シアターの2nd。1976作
管楽器を大胆に取り入れたこのバンドのサウンドは、当時のロックシーンではなかなか個性的だったことだろうが、
唐突なトランペットやトロンボーンの音色には聴いていてやや脱力してしまうのも否めず、
まるで吹奏楽バンドがプログレをやろうしているようにも聴こえてしまう。
軽快な1曲めに続き、2曲め以降は、11分、22分の組曲がメインで、ゆったりとした曲調にオペラチックなヴォーカルも入り、
静かなパートではフルートにストリングスも加わり、壮大な叙情性も感じられてなかなかよい。オセアニアのプログレというと、
ALEPH
SEBASTIAN HARDIEがダントツだと思うが、その次あたりには聴いてみるのもいいかもしれない。
メロディアス度・・7 シンフォニック度・・7 プログレ度・・7 総合・・7.5
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Sanhedrin「Ever After」
イスラエルのプログレバンド、サンヘドリンの2011年作
SHESHETのフルート奏者を擁するバンドで、美しいシンセアレンジとフルートの音色がやわらかに響く、
じつに優雅なプログレサウンド。初期のKENSOなども思わせる軽やかな叙情性が耳に優しく、
ギターの奏でるメロウなフレーズをうっすらとしたメロトロンが包み込んでゆくのはうっとりである。
CAMELやAnyones Daughter あたりにも通じる繊細さと、やわらかなメロディを紡いでゆく、
幻想的な聴き心地には、多くの叙情派愛好家が満足するだろう。オールインストであるが、
随所にスリリングなアンサンブルも聴かせるなど、プログレとしての構築センスも見事な傑作。
メロディック度・・9 プログレ度・・8 優雅度・・9 総合・・8.5
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SEBASTIAN HARDIE「Four Moments」
オーストラリアのプログレバンド、セバスチャン・ハーディーの1st。1975年作
「哀愁の南十字星」と題された本作は、オーストラリアの70年代作品では屈指の叙情傑作だ。
マリオ・ミーロの奏でる甘美なギタートーンと、うっすらとした美しいシンセワークを中心に
じつに繊細なメロディックロックを聴かせる。泣きのメロディがたまらない名曲“Rosanna”をはじめ、
CAMELを思わせるようなゆるやかな叙情美にうっとりだ。2ndWindchaseも同等の傑作。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 泣きの叙情度・・9 総合・・8
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Sebastian HardieWindchase
オーストラリアのプログレバンド、セバスチャン・ハーディーの2nd。1976年作
豪州随一のメロディアス系バンドとして、彼らの残した2枚のアルバムは、世界的に見ても
名作の名に値するだろう。有名なのは「哀愁の南十字星」と題された1stの方だろうが、
本作の方も内容としてはむしろそれ以上の出来だ。とくに20分を超えるタイトル曲は
マリオ・ミーロの泣きの叙情ギターをふんだんに楽しめるメロディアスな大曲だ。
技術的にはCAMELFOCUSなどには及ばないものの、泣きの哀愁メロディにおいては
引けをとらないばかりか、雄大な自然を感じさせるゆるやかな叙情は何物にも代えがたい。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 泣きの叙情度・・9 総合・・8
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SEBASTIAN HARDIE「LIVE IN LA.」
オーストラリアのプログレバンド、セバスチャン・ハーディのライブアルバム。1999年作
70年代に名作「哀愁の南十字星」「ウインドチェイス」といった傑作を残したこのバンドが復活し、
1994年にアメリカのPROGFESTで行ったライブの音源である。先に「プログフェスト94」のビデオは見ていたが、
こうして全10曲の完全版を聴けるのはやはり嬉しい。絶品のメロディを奏でるマリオ・ミーロのギターワークと、
自身の枯れた味わいの歌声は、聴くものにかつてのアルバムにあった美しい哀愁を呼び起こさせる。
「ROSANNA」「WINDCHACE」といった名曲が聴けるのも嬉しく、美しいシンセとメロウなギターに感動しきり。
録音面での弱さは若干あるが、それを差し引いても往年のファンにはたまらないライブ作品だろう。
メロディアス度・・8 音質・・7 往年の名曲度・・9 総合・・8
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SEBASTIAN HARDIE「BLUEPRINT」
オーストラリアのプログレバンド、セバスチャン・ハーディの2012作
70年代に「哀愁の南十字星」「ウインドチェイス」といった傑作を残したこのバンドであるが
1994年にアメリカのPROGFESTで復活、その後、ライブ音源を出したものの音沙汰がなかったが
まさかのスタジオ新作が登場。マリオ・ミーロのメロウなギターワークを中心に聴かせる、
メロディックなサウンドは、かつてのままで、うっすらとしたシンセアレンジも含めて
古き良きプログレ/シンフォニックロックの感触がある。哀愁を漂わせた大人の叙情と
おおらかな雄大さ、そしてCAMELのアンディ・ラティマーばりの泣きの旋律にうっとりだ。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 優美度・・9 総合・・8
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SHESHET
イスラエルのプログレバンド、シシェットの1977年作
美しいフルートの音色に軽やかなピアノが絡み、女性ヴォーカルがやわらかな歌を乗せる、
カンタベリー的な優雅さを感じさせるサウンド。軽妙なアンサンブルと繊細な美しさは、
NATIONAL HEALTHあたりを思わせ、辺境的な野暮ったさはほぼ皆無。
たっぷりとフルートを響かせるジャズロック風味の軽やかなプログレが楽しめる。
70年代のイスラエルでは出色のクオリティといってよい作品だろう。
30周年記念の再発盤には、幻の2ndの音源を収録した2枚組仕様となっていて、
全6曲20分余りの音源であるが、なかなか質が高く、ボーナス的に鑑賞できる。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 優雅で軽妙度・・9 総合・・8.5
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Solstice Coil「A Prescription for Paper Cuts」
イスラエルのプログレロックバンド、ソルスティス・コイルの2005作
サウンドの方は、昨今で言ういわゆるPORCUPINE系のオルタナシンフォで、
ゆったりとしたもの悲しい叙情をモダンなアレンジと浮遊感とともに聴かせる。
ヴォーカルのやや軟弱な声質は好みを分けるだろうが、イスラエル産ということで
彼らの描く悲しみとけだるげな諦観とに、どこか説得力を感じてしまう(^^;)
アレンジ面や曲のメリハリのなさなどにやや不満はあるが、今後に注目したい新人だ。
メロディアス度・・7 オルタナシンフォ度・・8 楽曲・・7 総合・・7


SOUL ENEMA「Thin Ice Crawling」
イスラエルのハードシンフォニックロック、ソウル・エネマの2010年作
イスラエルという国にも、あなどれないようないいバンドはいるのであった。
このバンドもシンセを含む5人組で、じつにドラマティックなシンフォプログレをやっている。
魅力的な女性ヴォーカルの歌声と、美麗なシンセアレンジで構築されるそのサウンドは
随所にテクニカルなProgMetal風味と、プログレ的で優雅なエッセンスを含んでとてもセンスが良く、
楽曲は7〜9分台と長めながら飽きさせない。ときに中近東的な民俗調のメロディも取り込んだりと
アレンジ面での引き出しの多さも見事。美しいシンフォニック性と地域性を両立させたような傑作。
ドラマティック度・・8 シンフォニック度・・8 構築度・・8 総合・・8

Soul Enema 「Of Clans And Clones And Clowns」
イスラエルのプログレバンド、ソウル・エネマの2017年作
女性Voにシンセを含む5人編成で、前作はテクニカルなハードシンフォニックの傑作だったが、
7年ぶりとなる本作も、女性ヴォーカルの歌声に、適度にハードなギターときらびやかなシンセを乗せ、
軽妙な展開力とともに、ときにアラビックな旋律を含む民族色を融合したサウンドを聴かせる。
優雅で知的なアンサンブルは、曲によってはシンフォニックなジャズロック的でもあったり、
程よくエキセントリックなセンスも覗かせたり、レベルの高い演奏で辺境臭さも感じさせない。
3パートに分かれた20分を超える組曲も素晴らしい。優雅で軽妙な女性声プログレの傑作である。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 優雅で軽妙度・・9 総合・・8
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Southern Empire
オーストラリアのプログレバンド、サウザン・エンパイアの2016年作
UNITOPIAのシンセ奏者を中心にしたバンドで、ほどよくハードなギターと美麗なシンセアレンジ、
伸びやかなヴォーカルを乗せて、キャッチーなメロディアス性で聴かせる、シンフォニックロックサウンド。
モダンで軽妙なセンスと抜けの良いメロディックな味わいは、IT BITESあたりにも通じるだろう。
10分を超える大曲も、起伏のある展開力で構築されながら、あくまでメロディアス性が前に出ていて、
NEAL MORSEなどのファンにも受けそうだ。28分という組曲ではサックスやフルートなども加えた優雅なアンサンブルと、
メロウなギターで大人の叙情を描き出す。さほど新鮮味はないのだが、楽曲、演奏共にクオリティの高さが光る力作です。
メロディック度・・8 ハードプログレ度・・8 優雅度・・8 総合・・8
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Southern Empire 「Civilisation」
オーストラリアのプログレバンド、サウザン・エンパイアの2018年作
19分、29分の大曲を含む全4曲という構成で、ハードエッジでモダンなメロディックロック感触に、
シンフォニックな味付けを加えたスタイリッシュなサウンドは、2作目にきてより磨きがかかっている。
艶やかなヴァイオリンに流麗なギターが絡むなど優美なアレンジなど、ドラマティックな盛り上げ方は前作以上で、
軽妙なテクニカル性に壮麗な叙情美の融合という点では、ProgMetal系のリスナーでも楽しめだろう。
インストパートでの濃密な充実ぶりが、味わいのあるヴォーカルパートとのコントラストとなっていて、
サウンドの説得力をぐっと強めている。29分の大曲もドラマティックな展開力で聴かせる。前作を超える力作。
メロディック度・・8 ハードプログレ度・・8 壮麗度・・8 総合・・8
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Sympozion 「Kundabuffer」
イスラエルのプログレバンド、シンポズィオンの2006年作
エレピを含む優美なシンセにやわらかなリコーダーの音色、巧みなギターを乗せた軽妙なアンサンブルで、
SHESHETにも通じる優雅なジャズロックサウンドを聴かせる。2本のギターによる叙情的な旋律に
シンセを重ねたシンフォプログレ的な耳心地と、カンタベリー風味の軽やかなジャズロック要素が同居し、
インストを主体にしたさらりとした味わいの中に、プログレらしい知的さと、ときに偏屈な部分も覗かせる。
ラストは10分を超える大曲で、ゆったりとした繊細な叙情美に包まれながら、爽快なジャズロックへ展開する。
ドラマティック度・7 プログレジャズロック度・8 優雅度・8 総合・8
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Tatiana's Niovi 「Breath Of Life」
ギリシャのシンフォニック・ハード、タティアナズ・ニオヴィの2013年作
やわらかなシンセアレンジに美しい女性ヴォーカルを乗せ、適度にハードなギターに
いくぶんエレクトロなアレンジも含んだ優美なサウンド。ときにアンビエントでキャッチーな感触と、
タティアナ嬢の艶めいたどこか神秘的な歌声とともに、随所にケルティックな土着性も含んだ
浮遊感のある聴き心地で楽しめる。美麗なシンセと叙情的なギターの旋律とともに、
曲によっては、IONAなどのケルティックなシンフォニックロックとしても鑑賞可能。
楽曲は3〜5分前後と、わりとコンパクトなので、より壮麗な大曲なども聴いてみたい。
シンフォニック度・・8 優美度・・9 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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TELIOF「Is It?」
イスラエルのプログレバンド、テリオフの2008年作
美しい
女性ヴォーカルの歌声とピアノやオルガンを含んだ美麗なシンセワーク、
そしてQUEENを思わせるキャッチーなメロディで聴かせるサウンドは、
叙情的なギターフレーズとともに、じつに繊細でやわらかで優雅な耳心地。
20分を超えるタイトル組曲は、荘厳な男女コーラスやアコースティカルな素朴さなどを含め、
起伏に富んだアレンジで、大曲を紡ぐ構築力にもエレガントなセンスを感じさせる。
シアトリカルなドラマ性やクラシカルな美意識も垣間見せる、高品質な傑作だ。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 優雅度・・9 総合・・8
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Tohpati Ethnomission   「Save the Planet」
インドネシアのジャズロック、トーパティ・エスノミッションの2010年作
SIMAKDIALOGのギタリスト、トーパティ率いるバンドで、メロディックで巧みなギターワークに、
パーカッションやスリン(縦笛)の音色を加えた、優雅で民族的なジャズロックサウンド。
グルーヴィなベースとドラムの技量も高く、センス抜群のギターも世界レベルながら、
土着的なアイデンティティを感じさせるところも素晴らしい。笛の音色を乗せた叙情性と、
軽やかなアンサンブルは、日本のKENSOを思わせるところもある。技巧的でありながら、
やわらかな優雅さと民族色に包まれた、これぞエスノ・ジャズロックの傑作だ。
ジャズロック度・・8 プログレ度・・8 優雅度・・8 総合・・8
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TRESPASS「IN HAZE OF TIME」
イスラエルのキーボードトリオ、トレスパスの1st。2002作
イスラエルのプログレというと、いままではZINGALEくらいしか知らなかったのだが、
このバンドはキーボードメインのテクニカルアンサンブルで、ときに優雅にクラシカルに、
あるいはジャジーに弾きまくるところなどはEL&P + NICE(つまりはTRACE?)という感じだろうか。
インストメインだが英詞の歌も違和感なく、「どこのバンド?」と尋ねなければイギリスか、あるいは
ヨーロッパの一級バンドだと思い込んでしまいそう。熱情的な演奏の中にもある種の気品とエレガントさを覗かせ、
5曲目の叙情的なクラシカルインスト曲にハッとしないリスナーはいまい。掘り出し物的な大傑作。
メロディアス度・・8 クラシカル度・・8 キーボー度・・9 総合・・8.5
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TRESPASSMorning Lights
イスラエルのプログレバンド、トレスパスの2nd。2006年作
驚愕のクオリティの傑作であった前作「IN HAZE OF TIME」に続く期待の2作目。
NICETRACEかという、素晴らしいキーボードロックサウンドはそのままで、
国名を知らずに聴けば、あるいは英国あたりのバンドかと思われそうなほど。
メロディには古典的なバロックの香りが感じられ、リズム面を含めての確かな演奏力に加え、
西洋的センスのアレンジ力も見事で、総じて音には気品と優雅さとが漂っている。フルートの音色なども美しく、
上品な叙情とクラシカルなエッセンスが満喫できる、これぞキーボードプログレの傑作だ。
シンフォニック度・・8 クラシカル度・・9 キーボー度・・9 総合・・8.5
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La Tulipe Noire 「Faded Leaves」
ギリシャのシンフォニックロック、チューリップ・ノワールの2003年作
美しいシンセワークに、女性ヴォーカルの歌声で聴かせるシンフォニックロック。
7〜9分という長めの楽曲が中心で、じっくりとドラマ性を描くような作風で、
随所に聴かせるGenesisルーツのメロウなギターフレーズもよい感じです。
スリリングな部分はあまりなく、英米のバンドに比べると野暮ったさはありますが、
辺境系シンフォファンにとってはなかなか美味しい作品ではないかと。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 メロウな叙情度・・8 総合・・7.5



La Tulipe Noire 「Nostimon Hemar」
ギリシャのシンフォニックロック、チューリップ・ノワールの2006年作
本作はホメロスの叙事詩「オデュッセイア」をテーマにした作品で、きらびやかなシンセと、
女性ヴォーカルの歌声を乗せて、スケール感のあるシンフォニックロックを聴かせる。
曲ごとのインパクトや魅力というものはさほどないのだが、コンセプト的な流れとともに、
ドラマティックな世界観を描いてゆくところは見事である。個人的には女性声を活かした、
しっとりとした叙情や繊細なパートがより効果的に入ればよいと思う。全69分の力作。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 壮大度・・8 総合・・7.5




UNITOPIAMore Than a Dream
オーストラリアのプログレバンド、ユニトピアの1st。2005年作
メロトロンなどのヴィンテージなシンセを使用しながらも、サウンドはむしろモダンでキャッチーな聴き心地、
軽やかなリズムや歌メロにはポップともいってよい質感もあり、コーラスワークなどにはアメリカのバンド的な抜けの良さがある。
しかしながら、レトロなプログレ感覚もちゃんと残しているあたり、NEAL MORSEなどに近い雰囲気も感じさせる。
12分という大曲もスタイリッシュに構築するセンスもあって、モダン派シンフォプログレとしての魅力も十分の力作。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 ドラマティック度・・8 総合・・8
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UNITOPIA「The Garden」
オーストラリアのシンフォニックロックバンド、ユニトピアの2nd。2008年作
基本は前作同様にキャッチーでモダンなシンフォニックロックだが、今作はCD2枚組の大作となっていて、
ドラマティックな壮大さがいよいよ増している。美しいシンセワークに、かつてのGENESIS的なロマンティシズムを聴かせつつ、
NEAL MORSE風のメロディアスさと楽曲展開のダイナミズムが光る。CD1には22分、CD2には16分という大曲を収録し、
合計100分というボリューム。バンドとしての自信に溢れた現在形シンフォニックロックの力作だ。
メロディアス度・・8 シンフォニック度・・8 ドラマティック度・・8 総合・・8
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UNITOPIA「Artificial」
オーストラリアのシンフォニックロックバンド、ユニトピアの3rd。2010作
2枚組の力作であった前作に続き、本作もコンセプト的な壮大さを感じさせる力作。
うっすらとしたシンセに絡むアダルトなサックスの音色、渋みのあるギターに穏やかなヴォーカルの歌声、
長曲は1曲のみだが、その分マイルドな聴き心地で落ち着いたシンフォニックサウンドが楽しめる。
メロディにはアメリカのバンドのようなキャッチーさもあって、やはりクオリティの高いアルバムである。
シンフォニック度・・8 ドラマティック度・・8 ゆったり度・・8 総合・・8
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UNITOPIA
「Covered Mirror Vol. 1 Smooth as Silk」 
オーストラリアのプログレバンド、ユニトピアの2012年作
現在までに3作を発表する豪州シンフォニック期待のバンド。本作はかれらが影響を受けたバンドたちのカヴァー集となっていて、
MARILLIONGenesisYesALAN PARSONS PROJECTTodd RundgrenLED ZEPPELINKLAATUTHE KORGIS、といった
プログレからロックにいたるまでディープに選曲された楽曲をシンフォニックにアレンジしている。しっとりとメロウなマリリオンのカヴァーや、
ジェネシスやイエスのメドレーもじつに優雅で繊細な聴き心地である。ボーナストラックにはThe Flower Kingsのカヴァーを収録。
単なるトリビュートの枠を超え、しっかりとバンドとしての世界観に仕上げられたセンスあふれるカヴァーアレンジ作品だ。
叙情度・・8 プログレ度・・7 カヴァーセンス・・8 総合・・8
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UPF (United Progressive Fraternity) 「Fall in Love With the World 」
オーストラリアのプログレバンド、UPFの2014年作
Unitopiaを前身とするバンドで、適度なハードさを含んだキャッチーな聴き心地は、
ユニトピア時代から受け継がれていて、オルガンを含んだシンセワークをはじめ、
古き良きプログレの感触を残している点では、Neal Morseなどに通じる雰囲気である。
いくぶんオヤジ臭いヴォーカルの声質が、サウンドに大人の落ち着きを加えていて、
これという派手さや新鮮味はないのだが、オールドなプログレリスナーにはむしろすぐになじむ音だろう。
21分の大曲では、フルートやヴァイオリンなども加わった叙情性とフックに富んだ展開美で、
ドラマティックに盛り上げる。ジョン・アンダーソン、スティーブ・ハケットなどがゲスト参加している。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 古き良き度・・8 総合・・8
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UNITED PROGRESSIVE FRATERNITY 「PLANETARY OVERLOAD Part:1LOSS」
オーストラリアのプログレバンド、UPF(ユナイテッド・プログレッシブ・フラテルニティ)の2019年作
Unitopiaを前身とするバンドで、5年ぶりとなる2作目。環境破壊と地球をコンセプトにした作品で、
3部構成の全12パートに分かれた全74分という長大な組曲形式。美しいシンセワークに男女ヴォーカル、
ヴァイオリンやフルートなどを重ねた、優美なシンフォニックロックを展開。SAGRADOにも通じるような雄大さや、
キャッチーなオールドロック感触、ときに翳りを帯びた叙情も覗かせつつ、じっくりとした構築力で聴かせる。
フックのあるメロディがもう少しあればとは思うが、大変な力作なのは間違いない。Disc2には別バージョンなどを収録。
スティーブ・ハケット、ニック・マグナス、YESのジョン・デイヴィソン、THE FLOWER KINGSのハッセ・フレベリ、
ミッシェル・ヤング、PORCUINE TREEのコリン・エドウィン他、多数のミュージシャンがゲスト参加。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 壮大度・・9 総合・・8 
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VANTASMA 「Beyond Fallen Dreams」
インドネシアのシンフォニックロックバンド、ヴァンタスマの2006作
インドネシア産とは思えない正統派のシンフォニックスタイルで、歌詞も全編英詞。
CAMELを思わせる甘美なギターのトーンに、GENESIS以降のヨーロピアンシンフォ系バンドに通じる
ある種のロマンティックさに溢れている。細かい演奏やつなぎの部分にはまだ稚拙さもあるが、
それにもましてこの執拗なまでの泣きは、同じアジア人である我々の琴線に大きくうったえてくる。
メロディの中にある温かみと人懐こさは、やはりインドネシア独特のものだろう、
土着性が薄い分、辺境系愛好リスナー以外にも十分聴かせられる。
8分〜13分という大曲の中にいくつも泣きのメロディがあり、シンフォファンならたっぷり満足できる。
メロディアス度・・9 シンフォニック度・・8 インドネシア度・・7 総合・・8
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Verbal Delirium 「Imprisoned Words of Fear」
ギリシャのモダンプログレ、ヴァーバル・デリリウムの2016年作
2010年にデビューし、3作目となる。フルート&サックス奏者にピアノを含む6人編成で、
クラシカルなピアノにシンセを重ね、マイルドなヴォーカルとやわらかなフルートの音色に、
メタリックなギターが加わって、ときにメロトロンも鳴り響く、スタイリッシュなサウンドを展開。
翳りを帯びた叙情と、ピアノやフルートの鳴る優雅でキャッチーな感触が同居した作風で
ときにギターがメロウな旋律を奏でたり、サックスが加わったジャズロック的な部分もあったりと、
ジャンルに捕らわれないボーダーレス感で、ProgMetal的なセンスはHAKENあたりのファンにも楽しめる。
後半は10分を超える大曲が続き、優雅で軽妙な構築力でドラマティックなサウンドを描きつつ。
ラスト曲は淡々としたモダンロック風のナンバーで、最後は激しく疾走して幕を閉じる。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 スタイリッシュ度・・9 総合・・8
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Windchase 「Simphinity」
オーストラリアのプログレバンド、ウインドチェイスの1977年作
Sebastian Hardieとして2枚のアルバムを残したあと、マリオ・ミーロが新たに結成したバンド。
「夢幻神殿」と名付けられた日本盤のタイトルやファンタジックなジャケにも惹かれたものだが、
内容もセバスチャン・ハーディに勝るとも劣らない好作品。うっすらとしたシンセにマリオ・ミーロの叙情的なギターワークで、
Camelばりにメロディアスな聴き心地を描いてゆく。8分、9分という大曲も含めて、バンドとしての希望に満ちたサウンドが楽しめる。
本作1作のみで消えたのが残念だが、SHやマリオのソロ作と同様、メロディ派のリスナーに長く愛好されるべき作品である。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 叙情度・・8 総合・・8
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Yiannis Glezos 「The Roses of Pieria」
ギリシャのミュージシャン、イアニス・グレゾスの2013年作
古代ギリシャの詩吟をテーマにした作品で、わりとハードなギターにシンセ、ドラムを含んだ
比較的正統派のシンフォニックロックというスタイルで、ときにストリングスアレンジも加わった
優雅なインストサウンドを聴かせる。ヴァイオリンによる小曲などを挟みつつ、トラッドロック的な
土着的なフレーズを含んだ涼やかな叙情や、CAMELあたりを思わせるメロウなギターの旋律に
ピアノを含むシンセワークも優美な味わいだ。ヴォーカルが入ればさらに壮大華麗になったと思うのだが、
歌入りなのはラスト曲のみ。ともかく、全24曲、スケールの大きな74分の大作です。
ドラマティック度・・8 優美度・・8 叙情度・・8 総合・・7.5
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Yuval Ron 「Somewhere in This Universe,Somebody Hits a Drum」
イスラエル出身、ドイツで活動するギタリスト、ユヴァル・ロンの2019年作
ドラムにマルコ・ミンネマンを迎え4人編成で、きらびやかなシンセに流麗なギタープレイを乗せた
軽やかなアンサンブルを展開。アラン・ホールズワース的でもある優雅なジャズロック感触から、
クリムゾンにも通じるスリリングな構築力も覗かせながら、あくまでも濃密すぎない軽妙な味わい。
スペイシーなシンセにゆったりと叙情的なギターフレーズを重ねた優美なナンバーを挟みつつ、
後半は、10分近い大曲3連発で、テクニカルなリズムのシンフォニック・ジャズロック風味で、
技巧的なギターを奏でまくる。優雅で軽やかなホールズワース系プログレ・ジャズロックの逸品。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 優雅度・・9 総合・・8
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ZINGALE「PEACE」
イスラエルのプログレバンド、ツィンガーレの1977作
LP時代からイスラエル産バンドの幻の傑作とされてきた作品。邦題は「平和への希求」
メンバー表記は二人の作詞者を含む8人編成。艶やかなヴァイオリンの鳴り響くサウンドは、
演奏面、楽曲のクオリティともに西欧のバンドに引けをとらないレベル。
ジャズロック的にたたみかける部分と、美しいピアノとシンセ、やわらかなヴォーカルで
しっとりと聴かせる部分とが、なかなかよいコントラストになっている。
辺境ものプログレとしては、傑作といってよいクラスにある作品だろう。
アルバムタイトルや、曲名の“Soon The War is Over”が、お国柄の現実の重みを感じさせる。
メロディアス度・・8 プログレ度・・8 辺境度・・7 総合・・8
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ZINGALE 「The Bright Side」
イスラエルのプログレバンド、ツィンガーレの2009年作
1977年に唯一の作品を残して消えたバンドの、じつに32年ぶりとなる復活作。
ムーグやオルガンなどを含むきらびやかなシンセワークを中心に、軽やかなアンサンブルで聴かせる、
優雅なシンフォニックロックサウンド。美麗なシンセに重なるメロウなギターフレーズによる泣きの叙情は、
ロシアのLittle Tragediesあたりに通じる感触もあるが、こちらはいかにも自主制作らしい録音の弱さが、
マイナー臭さをかもしだしている。ジョン・アンダースもどきのようなナヨナヨとしたヴォーカルも好みを分けるだろうが、
10分を超えるナンバーでの軽やかでエキセントリックな展開などもなかなか楽しいし、全体的にも繊細な叙情性を描く
辺境系のシンフォニック・プログレとしては、マニアなリスナーには嬉しい復活作だろう。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 優雅度・・8 総合・・7.5
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