〜PROGRESSIVE ROCK CD REVIEW 2019 by 緑川 とうせい

★2019年に聴いたプログレ(フォーク/トラッド・その他含む)CDレビュー
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12/27
ハケットと北欧プログレ!(330)


Steve Hackett 「At The Edge Of Light」
イギリスのギタリスト、スティーブ・ハケットの2019年作
ここ近年は充実の傑作を作りづけているハケット先生。本作も円熟の極みというべきギタープレイを中心に、
ロジャー・キングのシンセによるシンフォニックな味わいが合わさった、流麗な叙情に包まれたサウンドを聴かせる。
繊細なアコースティックパートや壮麗なオーケストラアレンジ、弟、ジョン・ハケットのやわらかなフルートが鳴り響き、
自身の味わいのあるヴォーカルが哀愁をかもしだし、メロウな泣きのギターが全てを包み込んでゆく。
一方では、ヨナス・レインゴールド、サイモン・フィリップス、ニック・ディヴァージリオらが参加しての、
軽やかなアンサンブルもさすがで、キャッチーな曲の中にも英国的な優雅な空気を描くハケットのセンスが光る。
アコースティックとエレキのバランスもよく、11分の壮麗な大曲も素晴らしい。まさに衰え知らずの傑作である。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 叙情度・・10 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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BRIGHTEYE BRISON「V」
スウェーデンのプログレバンド、ブライトアイ・ブライソンの2019年作
2003年にデビュー、本作は8年ぶりとなる5作目。12分、17分、36分という大曲3曲の構成で、
きらびやかなシンセワークに伸びやかなヴォーカルを乗せた優雅なアンサンブルで、
キャッチーなメロディアス性とともに、ダイナミックなシンフォプログレを展開する。
やわらかなコーラスハーモニーに、オルガンなどを含むオールドなプログレ感触と、
TRANSATLANTIC以降のスタイリッシュな構築センスに爽快な抜けの良さも魅力的。
そして、前作「The Magician Chronicles」の続編となる、36分の長大な組曲は、
MOON SAFARIばりのキャッチーな感触で、緩急に富んだドラマティックな聴き心地です。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 構築度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Magic Pie 「Fragments of the 5th Element」
ノルウェーのプログレバンド、マジック・パイの2019年作
2005年にデビュー、過去作はいずれも高品質な傑作であったが、4年ぶり5作目となる本作も、
美しいシンセアレンジに適度にハードなギターとマイルドなヴォーカルを乗せ、優美な叙情に包まれた、
北欧らしいシンフォプログレを聴かせる。前半は比較的コンパクトに仕上げられたナンバーで、
キャッチーなコーラスハーモニーとともに、A.C.Tなどに通じるスタイリッシュな味わいで楽しめる。
随所に聴かせる流麗なギタープレイなども含めて、演奏力の高さもさすが。ラストは22分の大曲で、
テクニカルな構築力とシンフォニックロックとしての優雅なメロディアス性が結実した見事なサウンド。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 優雅度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Nad Sylvan 「The Regal Bastard」
スウェーデンのミュージシャン、ナッド・シルヴァンの2019年作
Agents of Mercyや、Steve Hackettのツアーメンバーとしても知られるヴォーカリストで、
スティーブ・ハケット、ガスリー・ゴーヴァン、トニー・レヴィン、ヨナス・レインゴールド、ニック・ディヴージリオ、
ニック・ベッグスなどがゲスト参加。ピーター・ガブリエルを思わせるエモーショナルな歌声を乗せた、
かつてのGENESISIQなどをルーツにした、翳りを帯びたシンフォニックロックを聴かせる。
表現力あるヴォーカルをメインに、英国的な雰囲気のシアトリカルなドラマ性を描きつつ、
随所にメロウな泣きのギターを盛り込んで、ゆったりとしたウェットな叙情美に包まれる。
キャッチーなナンバーから、優美な12分の大曲まで、派手なインパクトはないがじっくりと楽しめる好作品。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 叙情度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Isildurs Bane & Peter Hamill 「In Amazonia」
スウェーデンのプログレバンド、イシルドゥルス・バーネとピーター・ハミルのコラボ作。2019年作
MARILLIONのスティーブ・ホガースとのコラボに続き、本作はVAN DER GRAAF GENERATORのピーター・ハミルを迎えた作品。
ハミルの味わいのあるヴォーカルと、薄暗いバンドサウンドが絶妙に合わさり、エレクトロなモダンさとインダストリアルな硬質感に、
トランペットやヴァイオリン、マリンバなどを加えた、チェンバーロック的な芸術性を感じさせる異色のプログレを展開する。
メロトロンも加えての涼やかなシンフォニック性も覗かせつつ、シアトリカルなハミルの歌声を存分に活かした世界観で、
ときに濃密にたたみかけつつ、美しき静寂の叙情も含んだアレンジの妙が光る。まさにVDGGとイシバネの融合という、異色の傑作。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 ハミル度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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GOSTA BERLINGS SAGA 「ET EX」
スウェーデンのプログレバンド、イエスタ・ベルリング・サーガの2018年作
2006年にデビュー、本作は5作目となる。エレクトロなシンセとメロトロンが幻想的な鳴り響くイントロ曲から、
不穏なギターが加わって、いくぶんヘヴィなアンサンブルとともにスリリングな空間性に包まれてゆく。
うねるようなベースと手数の多いドラムに、ハード寄りのギターを重ねた、クリムゾンばりの迫力に、
ダークな叙情性に包まれたスケール感が合わさった異色のヘヴィ・シンフォニックロックというべきか。
エフェクトがかったエレクトロなリズムに美しいシンセを乗せたナンバーやアコースティックな小曲など、
バンドとしてのアーティスティックなセンスが詰まった作風は、涼やかで荘厳な空気を描き出す。
北欧のクリムゾン…などという以上の壮大な迫力に包まれた、異色の傑作がここに誕生した。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 荘厳度・・9 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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Necromonkey 「Necroplex」
スウェーデンのプログレバンド、ネクロモンキーの2013年作
ANGLAGARDのマティアス・オルソンと、GOSTA BERLINGS SAGAのシンセ奏者によるユニットで、
メロトロンを含むシンセの重ねに、エフォクトを加えたエレクトロなアレンジで、空間的なサウンドを描きつつ、
ドラムを加えたロック色と、トランペット、チェロなどのチェンバー風味が融合した、スリリングなインストを聴かせる。
アナログシンセであるメロトロンやオルガンを、デジタルなモダンさの中に存在させるという手法で、
KING CRIMSONにも通じるような実験性と、新たなプログレへの挑戦が感じられる作風だ。
クラシカルなピアノにフルートが重なる小曲や、重たいベースとドラムをメインにした曲など、
定型にとられれない自由度で、優美で混然としたノイズ(プログレ)を表現したというような傑作だ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 アナログとエレクトロ度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Gungfly 「Friendship」
スウェーデンのミュージシャン、リカルド・ソーブロムによるプロジェクト、ギャングフライの2018年作
BEARDFISHBig Big Trainで活躍するマルチミュージシャンで、オルガンを含むやわらかなシンセに
ジェントルなヴォーカルを乗せ、軽やかなリズムとともに優雅でキャッチーなサウンドを聴かせる。
古き良きロックの感触をシンフォプログレに包み込んだ、BEARDFISHの続編といってもよい作風であるが、
流麗なギターフレーズやスタイリッシュなアンサンブルは、単なるヴィンテージプログレという以上の構築力だ。
10分を超える大曲では、ストリングスアレンジも加えたシンフォニック性や、哀愁の叙情に包まれた
ヴォーカルパートにじっくりと聴き入れる。オールドなプログレファンも満足させつつ、ほどよくモダンな味わいもあり、
キャッチーなナンバーは、IT BITESなどのファンにも楽しめるだろう。北欧と英国がブレンドしたような傑作です。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 叙情度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Professor TipTop 「Hybrid Hymns」
ノルウェーのプログレバンド、プロフェッサー・ティプトップの2019年作
オルガン、メロトロンを含むシンセに、メロウなギター、マイルドなヴォーカルを乗せ、
翳りを含んだ叙情に包まれたサウンドを聴かせる。いわゆるヴィンテージな北欧プログレではあるが、
ポストプログレ以降のスタイリッシュな雰囲気と、DUNGENのようなユルめの浮遊感が同居していて、
サイケ寄りの歌ものシンフォという感じでも楽しめる。楽曲は長くても6分と、わりとコンパクトなので、
プログレというよりは、サイケな北欧ポストロックという感じで、肩の力を抜いてのんびりと聴けます。
もう少しメロディやフックのある展開があればと思うが、ユル系の北欧サウンドが好きな方はどうぞ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 ユル度・・8 総合・・7.5
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TROJKA 「Tre Ut」
ノルウェーのプログレバンド、トロイカの2019年作
ギターレスのトリオ編成で、オルガン、ムーグを含むシンセをメインに、優雅なアンサンブルで聴かせる、
プログレフュージョン的なサウンド。母国語によるヴォーカルを乗せたキャッチーな味わいに、
ほどよいユルさを含んだ、スペイシーでヴィンテージなサイケロックとしても楽しめるだろう。
トリオ編成ならではの隙間を活かしたグルーブ感とともに、北欧らしい涼やかな叙情も含んだ、
耳心地の良いやわらかな味わいで、ポストロック、ポストプログレ好きにも対応の好作品。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 やわらか度・・8 総合・・8
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Jordsjo
ノルウェーのプログレユニット、ヨルドシオの2018年作
自主制作のカセットで発表された2015年のデビュー作をDisc1に、Disc2には2016年に発表された2作をまとめて収録。
メロトロンやオルガン、ムーグといったヴィンテージなシンセが鳴り響き、いくぶんサイケ気味のギターを乗せて、
北欧らしい涼やかな叙情と土着的な空気に包まれたサウンド。母国語によるヴォーカルも味わいがあって、
古ぼけたようなローカルな味わいを感じさせつつ、妖しくフルートが鳴り響く、TUSMORKEなどにも通じるような、
神秘的な北欧プログレが楽しめる。Disc2の方は、サイケな浮遊感が増しつつも、ドラムとベースのリズムが強固になり
メリハリのあるアンサンブルによるサウンドの説得力が高まった。アコースティックギターにフルートが鳴り響く優美な叙情に、
響き渡るメロトロン、そして、Kebnekaiseや、kama Lokaなどにも通じる土着メロディが心地よい。これぞ北欧のプログレです。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 北欧度・・10 総合・・8
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The Windmill 「Tribus」
ノルウェーのプログレバンド、ウインドミルの2018年作
2010年にデビューし、本作が3作目となる。のっけから23分という大曲で、アースティックギターにフルート、
うっすらとしたシンセに北欧らしいギターの旋律を乗せて、優美で涼やかなシンフォニックロックを展開する。
インストパートがメインながら、ときに大人の味わいのヴォーカルにサックスの響きが哀愁の叙情を描き出し、
美しいメロトロンに繊細なフルートの音色がやわらかく包み込むところは、北欧シンフォプログレの王道である。
派手な展開はないものの、オルガン鳴り響くヴィンテージな感触も含んだ、耳心地の良い逸品です。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 涼やか叙情度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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The Flower Kings 「Betcha Wanna Dance Stoopid!」
スウェーデンのプログレバンド、フラワー・キングスのライブ。2004年作
2003年、ニューヨークでのファンクラブでのセッションギグで、即興的なナンバーを主体にしたセットリスト。
ダニエル・ギルデンロウを加えての6人編成で、ソルタン・チョースの叩き出す軽やかなドラムに、
トマス・ボディーンのやわらかなシンセ、肩の力の抜けたロイネ・ストルトのギターを乗せて、
ジャズロック的でもある優雅な演奏が聴ける。ハッセ・フレベリのヴォーカルも即興的で、
アコースティックギターにオルガンを重ねた、18分の大曲など、通常のライブでは聴けない
バンドのリラックスした側面を覗かせる。ボーナスも含めて77分。フリーなフラキンが楽しめます。
ライブ演奏・・8 プログレ度・・7 即興度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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Tangekanic 「Hotel Cantaffordit」
イギリスのTHE TANGENTとスウェーデンのKARMAKANICの合体バンド、タンジェカニックのライブ。2018年作
2017年のアメリカツアーのライブを収録。両バンドに参加する、ヨナス・レインゴールドを筆頭に、
タンジェントのアンディ・ティリソン、ルーク・マシン、カーマカニックのヨラン・エドマンが参加。
タンジェントから3曲、カーマカニック2曲、そしてオリジナル1曲を演奏。軽やかなリズムにきらびやかなシンセ、
ほどよくハードで流麗なギターを乗せた、技巧的なアンサンブルで軽妙なプログレサウンドを聴かせる。
インストの12分の大曲も確かな演奏力と展開力でスリリングに聴け、25分におよぶKARMAKANICの大曲では、
美麗なシンセとヨラン・エドマンの豊かな歌声で、フラキンにも通じる叙情的なシンフォニックロックを展開する。
ライブ演奏・・8 プログレ度・・8 技巧度・・8 総合・・8
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UNIFAUN
スウェーデンのプログレバンド、ユニファウンの2008/2013年作
のちにSteve Hackettのバンドに参加する、ナッド・シルヴァンのユニット。ジャケ変えての再発盤。
いかにもピーター・ガブリエルのようなヴォーカルで、初期〜ブロードウェイ期のGENESISを思わせる、
キャッチーな味わいのサウンドを聴かせる。オルガンやメロトロンを含んだヴィンテージなシンセとともに、
やわらかな叙情性と幻想的な空気に包まれながら、フックのある展開力で構築するセンスも見事。
14分におよぶ大曲では、物語的なドラマ性を描くようにじっくりと盛り上げる。全75分はちょっと長いが、
ヴォーカル、ギター、ベース、シンセ、ドラムをこなす、ナッドのマルチプレイヤーぶりを発揮した好作品。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 ジェネシス度・・8 総合・・8
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ANSSI TIKANMAKI 「MAISEMAKUVIA SUOMESTA」
フィンランドのミュージシャン、アンシ・ティカンマキの2016年作
70年代から活動する作曲家で、1981年のデビュー作「フィンランドの風景」に、2004年のライブを加えた2枚組。
壮麗なオーケストラにサックスが鳴り響き、叙情的なギターの旋律が加わって涼やかな空気を描く、
北欧版THE ENID、あるいはMIKE OLDFILEDというような優美でシンフォニックなサウンド。
北欧らしい土着的なギターフレーズや、繊細なピアノにフルートの音色、美しいストリングスにうっとりしつつ、
軽妙でジャズロック的なとぼけた雰囲気もあり、TRIBUTEPEKKAなどが好きな方にも楽しめるだろう。
Disc2のライブは、デビュー作全曲に5曲を加えた構成で、原曲を忠実に再現しつつ、オーケストラをツインシンセに変えて
サックスを加えたジャズロック寄りの軽快なアンサンブルで、エニド+ペッカというような優雅な演奏が味わえる。
シンフォニック度・・8 優美度・・9 北欧度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Khatsaturjan 「Beast, Machine & Man」
フィンランドのプログレバンド、ハチャトゥリアンの2015年作
2005年にデビュー、本作は3作目で、シンセにストリングスを含んだシンフォニックな壮麗さに、
適度にハードなギターを乗せ、軽妙な展開力と優美なクラシカル性が同居したサウンド。
美しいピアノにキャッチーなコーラスなどは、MOON SAFARIなどにも通じる感触ながら、
こちらはよりマイナー寄りのくぐもったような空気感と、変化に富んだ展開の意外性が魅力的。
QUEENをルーツにしたオールドなロック感触を、シンフォプログレにしたという感じもあり、
10分を超える大曲も優雅な構築力で楽しめる。ジャケはイマイチだが内容は充実の傑作です。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 優雅度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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KYTAJA 「II」
フィンランドのフォークプログレ、キタヤの2013年作
2006年にデビュー、本作は2作目。やわらかなフルートの音色にシンセを重ねたイントロ曲から、
北欧らしい涼しげな空気に包まれる。ドラムとベースを加えた2曲目は、男女ヴォーカルを乗せ、
ハーモニカの音色とともに哀愁の叙情を感じさせる、北欧らしいフォークロックが広がる。
ギターやサックスが入ると、かつてのKebneKajseにも通じるような雰囲気もありつつ、
うっすらとしたシンセが幻想的な味わいをかもしだす。楽曲は3〜4分前後とシンプルで
基本はインスト中心であるが、曲によってはPEKKAのような繊細な優雅さも感じさせる。
北欧の涼やかな世界観にのんびりと浸れるような方にお薦めしたい好作品。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 北欧度・・8 総合・・7.5
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GAZPACHO 「TICK TOCK」
ノルウェーのポストプログレ、ガスパチョの2009年作
2003年にデビュー、本作は5作目の2016年再発盤。適度にハードなギターにうっすらとしたシンセを重ね、
マイルドなヴォーカルを乗せた、わりとキャッチーな感触ながら、ときにメロトロンの音色が鳴り響く、
涼やかな幻想性とともに、しっとりと繊細な叙情美に包まれた聴き心地。2パート、3パートに分かれた
それぞれ13分、22分という組曲もあって、MARILLIONのような翳りを帯びた美しさに浸れます。
美しいシンセにストリングスも加えたシンフォニックロック的な優美な空間性に、泣きのギターフレーズを乗せ、
ゆるやかに盛り上げるところなどは、多くのシンフォ系リスナーが涙腺を緩ませることだろう。傑作。
シンフォニック度・・8 繊細度・・9 叙情度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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12/20
プログレの師走(311)


Lonely Robot 「Under Stars」
イギリスのシンフォニックロック、ロンリー・ロボットの2019年作
ARENAIT BITESなどで活躍するジョン・ミッチェルによるプロジェクトの3作目。本作もFROST*のクライグ・ブランデルがドラムで参加、
美しいシンセアレンジにギターを重ね、マイルドなヴォーカルで、スペイシーな味わいのシンフォニックロックを展開する。
ときにポストプログレ的でもある繊細な叙情を、スタイリッシュでほどよいハードさとモダンなアレンジで包み込みつつ、
随所に流麗なギターフレーズやキャッチーなメロディ展開を聴かせるのは、さすがキャリアのある才人である。
また、歌ものナンバーでのヴォーカリストとしての表現力も素晴らしい。翳りを帯びた優しい聴き心地は、
MARILLIONIT BITESの中間をゆくイメージか。マルチプレイヤー、ジョン・ミッチェルの才能が溢れる傑作です。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 叙情度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Thieves' Kitchen 「Genius Loci」
イギリスのシンフォニックロック、シーブス・キッチンの2019年作
2000年にデビュー、本作で7作目となる。元ANGLAGARDのトーマス・ジョンソンの奏でるやわらかなシンセに、
美しい女性ヴォーカルで聴かせる、優美なシンフォニックロックはこれまで通り。軽やかなアンサンブルに、
オルガンやメロトロンにメロウなギターを乗せた涼やかな叙情性は、Paatosなどにも通じる聴き心地。
しっとりとしたフルートの音色も入りつつ、シンフォニックになり過ぎないシンプルでスタイリッシュな味わいは、
キャリアのあるバンドならではだろう。20分の大曲も、繊細なギターワークとプログレらしいシンセに、
アミイ嬢の優しい歌声で、MAGENTAのような優雅さに包まれる。派手な盛り上がりはないがじつに優美な逸品。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 優雅度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Big Big Train 「Swan Hunter」
イギリスのプログレバンド、ビッグ・ビッグ・トレインの2018年作
名実ともに現在系の英国プログレの代表となったこのバンド、本作はタイトル曲の別バージョンやリミックス、
ライブ音源など、5曲を収録した全27分のEP。ジェントルなヴォーカルで聴かせる優美なタイトルナンバーは、
ラジオエディット、ニューリミックス、ライブバージョンの3通りを収録。ゆったりとした大人の叙情に包まれつつ、
トランペットやヴァイオリンなどを加えたライブ演奏では、優雅で厚みのあるアンサンブルが素晴らしい。
Tim Bowness(NO-MAN)をゲストに迎えての、ポストプログレ的な繊細なナンバーも味わい深く、
プログレ的な派手さはないものの、アルバムにつなげる箸休め的な小品として静かに鑑賞すべきですね。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 ゆったり叙情度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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DAMANEK 「IN FLIGHT」
イギリス、ドイツ、オーストラリアのメンバーによるプログレユニット、ダマネクの2019年作
THE TANGENTのガイ・マニングを中心に、MASCHINE、SEVEN STEPS TO THE GREEN DOOR、SOURTHERN EMPIREのメンバーが集った
多国籍バンドで、本作が2作目となる。美しいシンセアレンジに適度にハードなギター、マイルドなヴォーカルで、
モダンな翳りに包まれた叙情的なサウンド。ゲストにルーク・マシンなどが参加、随所に流麗なギタープレイも覗かせ、
前作以上にスタイリッシュなシンフォニック性を増した聴き心地である。歌もの的なキャッチーなナンバーもありつつ、
サックスが鳴り響く優雅なパートなど、大人の余裕を感じさせる作風は、さすがにキャリアのあるガイ・マニングというところ。
後半は3パートに分かれた30分近い大作で、優美なシンセと叙情的なギターを重ね、じっくりと構築される英国的なシンフォプログレが味わえる。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 大人の叙情度・・8 総合・・8
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DUKE 72 「The Mid Shires Herald」
イギリスのサイケロック、デューク72の2019年作
BIG HOGGのギター、女性Vo&フルート、トロンボーン奏者を擁するバンドで、アナログ感あるギターに
男女ヴォーカルの歌声を乗せた、サイケなガレージロックというサウンド。70年代フォークルーツの牧歌性や
サイケやドゥーム、ハードロックを思わせる感じもあり、わりとシンプルなアンサンブルながら、
英国らしい土着性やオールドな空気感を蘇らせるような、ヴィンテージロックとして楽しめる。
カンタベリー風のBIG HOGGに比べると、こちらはサイケハード化したGONGという雰囲気も。
全体的にプログレというよりは、トロンボーンやフルートが入った風変わりなガレージサイケです。
サイケ度・・7 プログレ度・・6 ヴィンテージ度・・8 総合・・7.5
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MAGENTA 「Chaos from the Stage」
イギリスのプログレバンド、マジェンタのライブ。2016年作
いまや英国を代表する女性Voプログレバンド。本作は、2015年の英国公演のステージをCD+DVDに収録。
近年のアルバムからまんべんなく選曲されたセットリストで、ロブ・リードのひらびやかなシンセワークと、
クリス・フライの流麗なギター、そして大人の艶を増したクリスティーナの伸びやかなヴォーカルで、
優雅なシンフォニックロックを聴かせる。過去のナンバーもバンドの現在形の編成で高品質に蘇り、
キャリアのあるバンドらしい余裕のある演奏力も見事。DVDには全12曲、CDには内8曲を収録。
ラスト2曲は合わせて30分を超える大曲で、このバンドの軽妙な構築力をたっぷりと堪能でき、
とくにDVDは映像、音質ともに良好で、マジェンタの魅力を余すところなく伝えてくれる。入門用にもどうぞ。
ライブ演奏・・8 プログレ度・・8 女性Vo度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Silver Key 「Third」
イタリアのシンフォニックロック、シルヴァー・キーの2019年作
2012年にデビューし、3作目となる。英国的なモダンさに包まれたシンフォニックロックは本作も同様で、
適度にハードなギターとスタイリッシュなシンセに、キャッチーなヴォーカルパートを乗せ、
ときにデジタルなアレンジやポストプログレ的な薄暗い叙情性を含んだサウンドを描く。
翳りを帯びた歌パートは、Marillionにも通じる雰囲気があり、全体的にもシンフォニックというよりは
大人の叙情ロックという趣で、派手な展開はさほどないが、アルバム後半は組曲的な構成になっていて、
ハードエッジなギターによる硬質感とシアトリカルな歌声を乗せ、ストーリー的な流れで構築される。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 モダン度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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RANESTRANE 「A Space Odyssey Part. 3: Starchild」
イタリアのシンフォニックロック、ラネストラーネの2018年作
スタンリー・キューブリックの「2001年宇宙の旅」をコンセプトにした、3部作の完結編。
スペイシーなシンセアレンジにメロウなギターと、イタリア語のヴォーカルを乗せ、
ゆったりとした叙情を描きながら、随所に物語的なSEや語りを含んだドラマ性とともに、
壮大なスケール感に包まれたサウンドを展開。MARILLIONのスティーブ・ロザリーが参加して、
流麗なギターを聴かせるナンバーから、アコースティックパートを含む繊細さとダイナミズムが同居した14分の大曲、
そして、スティーブ・ホガースが参加してのエンディング曲。あらためて3部作まとめて聴き返したくなる力作です。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 壮大度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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RANESTRANE 「MONOLITH IN ROME - A Space Odyssey Live」
イタリアのシンフォニックロック、ラネストラーネのライブ。2015年作
2014年ローマで行われた、「A Space Odyssey Part One-Monolith」の完全再現ライブを収録。
やわらかなシンセアレンジにイタリア語によるマイルドヴォーカルを乗せ、叙情的なギターとともに、
スペイシーな広がりを描くようなシンフォニックロックを演奏。MARILLIONのスティーブ・ロザリーがゲスト参加して、
流麗なギタープレイと深みのある歌声で楽曲を彩る。ライブ映像では、リードヴォーカルをとるドラムを中心とした
優雅なアンサンブルが視覚的にも楽しめる。ラストには、MARILLIONのナンバー「Cinderella Search」を披露。
ドラマティック度・・8 ライブ演奏度・・8 壮大度・・8 総合・・8
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Trama 「Oscure Movenze」
イタリアのシンフォニックロック、トラマの2018年作
1998年に1作を残して消えたバンドの、じつに20年ぶりとなる復活作。艶めいた女性ヴォーカルの歌声に、
LA COSCIENZA DI ZENO、HOSTSONATENなどにも参加する、ルカ・スケラーニの美麗なシンセワーク、
適度にハードなギターとともに幻想的なシンフォプログレを聴かせる。繊細で優美だった前作の作風に、
いくぶんゴシック的な翳りが加わっていて、ときにPresenceのような魔女めいた妖しさも感じさせる。
12分、14分という大曲も、ゆったりとした叙情性から、ハードシンフォへと緩急ある展開を垣間見せつつ、
美しいシンセアレンジと女性声の魅力で、ダークなジャケのイメージとは異なる優雅な聴き心地に包まれる。
ドラマティック度・・7 優美度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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ARCHENSIEL 「PIOVA」
イタリアのフォーク・プログレ、アーケンシエルの1989年作
アコースティックギターにマンドリンのつまびき、艶やかなヴァイオリンの音色に、
清涼な女性ヴォーカルのイタリア語の歌声を乗せた、しっとりと優美なフォークロックサウンド。
うっすらとしたシンセによる味付けやエレキギターも随所に加わって、ほどよいロック色とともに、
初期QUIDAMのような女性声シンフォニックロックとしても楽しめる。繊細なアコースティックパートと
美しい女性ヴォーカルにウットリしつつ、キャッチーなノリのナンバーも魅力的で、たおやかにして優雅な聴き心地。
3〜4分前後のわりとシンプルな楽曲の中にも、牧歌的な優雅さが溢れている。女性ヴォーカル好きは必聴の逸品です。
優美度・・9 プログレ度・・7 女性Vo度・・9 総合・・8
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Konstantin Jambazov 「Fate」
ブルガリアのミュージシャン、コンスタンティン・ジャンバゾフの2019年作
VirtulHadesなど多数のバンドで活躍する、ブルガリアきってのマルチミュージシャンのソロ作品。
前作「Talking to Myself」はキャッチーなメロディと技巧が合わさった見事な傑作であったが、
今作は軽快なリズムに、メロディックで流麗なギターを乗せた、オールインストの作品。
ドラムは打ち込みのようだが、巧みなベースプレイにシンセアレンジも加えた厚みのあるサウンドで、
優雅なプログレフュージョン的にも楽しめつつ、テクニカル過ぎないキャッチーな感触に包まれている。
ゆったりとしたバラード的なナンバーも、叙情豊かなギターフレーズに彩られて、ゆったりと鑑賞できる。
ギタリストとしてのジャンバゾフの技巧とメロディセンスが存分に味わえる、高品質な作品です。
メロディック度・・8 テクニカル度・・8 優雅度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Virtuel 「Conception of Perception」
ブルガリアのプログレハード、ヴィルチュエルの2013/2019年作
1992年にJekyll Hydeという名で結成され、活動休止後にメンバー三人のうち二人は、アメリカ、イギリスへと移住、
インターネットでのデータ共有により2010年に新たにVirtuelとしての1stを発表し、本作はそれに続く2作目となる。
美麗なシンセアレンジと、大人の味わいのヴォーカルで聴かせる、キャッチーなプログレハードサウンドで、
随所にテクニカルなギターフレーズなどを盛り込んだり、メリハリのあるインストパートもなかなか充実している。
ドラムは打ち込みながら、優雅なシンセワークを中心にしたやわらかな聴き心地で、古き良きプログレハードと
シンフォニックプログレの壮麗さが合わさったという傑作です。2019年リミックス版でDL購入が可能になりました。
ドラマティック度・・8 キャッチー度・・8 プログレハー度・・8 総合・・8
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MOONPARTICLE 「HURRICANE ESMERALDA」
ブルガリア出身のミュージシャン、ニコ・ツォネフのソロプロジェクト、ムーンパーティクルの2018年作
LIFESIGNSSteven Wilsonの作品などに参加したギタリストで、FROST*のクレイグ・ブランデルをはじめ、
アダム・ホルツマン、セオ・トラヴィスなどが参加し、ハードなギターにモダンなシンセアレンジ、
艶めいた女性ヴォーカルの歌声を乗せた、スタイリッシュなハードプログレを聴かせる。
叙情的なギターの旋律にやわらかなフルートの音色などの優美な側面も覗かせつつ、
翳りを帯びたモダンなハードさとのコントラストで、技巧性と叙情とのメリハリのある作風だ。
東欧らしい涼やかな薄暗さと、英国的なモダンプログレの感触が合わさった好作品です。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 モダンな翳り度・・8 総合・・7.5
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Vespero 「Liventure N19」
ロシアのサイケプログレ、ヴェスペロの2008/2019年作
2007年にデビュー、本作は2008年ライブ作の再発盤で、2009年のライブ音源をボーナスを収録。
シンセにヴァイオリン奏者を含む6人編成で、フリーキーなギターにシンセ、女性ヴォーカルを乗せ、
生々しいドラムが叩き出す即興的なアンサンブルとともに、妖しげなサイケロックを展開。
勢いの良いアッパーなノリの良さと、混沌としたユルさが同居したサウンドであるが、
奔放に弾きまくるギターをはじめ、インストパートにおいても高い演奏力と緊張感に包まれる。
ヴァイオリンやフルートが加わると、アヴァンギャルドなチェンバーロック風味も顔を出し、
浮遊感のある女性ヴォーカルとともに、優雅でミステリアスなサイケプログレが楽しめます。
ライブ演奏・・8 プログレ度・・7 妖しげ度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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12/14
傑作多数のイタリアンプログレ!(296)


OPUS AVANTRA ENSEMBLE 「Rosa Rosae」
ドネラ・デル・モナコとピアニストのパオロ・トロンコンによる、オパス・アヴァントラ・アンサンブルの2019年作
OPUS AVANTRAの名を冠したスタジオ作としては、1995年以来となる。クラシカルなピアノの旋律に、
ドネラのオペラティックなヴォーカルを乗せ、ヴァイオリンやフルートの音色を重ねた優雅なサウンドは、
70年代の名作「内省」蘇らせるような雰囲気もあり、クラシックをルーツにした優雅さに包まれながら、
随所にドラムの入ったロック感触を加えた、プログレッシブで芸術的なチェンバーロックというべき聴き心地。
ドネラの歌声も表現豊かに、ときに優美に、艶めいて響き渡る。楽曲自体は4分前後で、全39分程度ながら、
かつてのイタリアンロックの妖しい芸術性に肉薄した世界観で、もっと長く聴いていたいとファンなら思うだろう。
ゲストにフォルムラ・トレのアルベルト・ラディウス、オザンナのリーノ・ヴァイレッティ、サン・ジュストのジェニー・ソレンティが参加。
クラシカル度・・9 プログレ度・・8 芸術度・・9 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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ARTI E MESTIERI 「Universi Paralleli」
イタリアのプログレジャズロック、アルティ・エ・メスティエリの2015年作
スタジオ作としては2004年以来となる作品で、フリオ・キリコの叩き出す軽妙なリズムに、
エレピを含むシンセに艶やかなヴァイオリン音色を重ね、優美で叙情的なジャズロックを聴かせる。
軽やかなサックスの音色やメロディックで流麗なギタープレイも随所にアクセントになっていて、
ヴォーカル入りのナンバーでは、ゆったりとしたイタリアらしい繊細な叙情に包まれる。
アコースティックギターを使ったナンバーや、美しいヴァイオリンの響きにうっとりとなる小曲など
全体的にも技巧的すぎない優雅な聴き心地で楽しめる。まさに大人のプログレ・ジャズロック。
KING CRIMSONのメル・コリンズや、OSANNAのリノ・ヴァイレッティなどがゲスト参加。
メロディック度・・8 テクニカル度・・7 優雅度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Nico Di Palo/Gianni Belleno of NEW TROLLS 「LIVE 50.0」
イタリアンロックバンド、ニュー・トロルスの往年のメンバー、ニコ・ディ・パーロ、ジャンニ・ベッレーノを中心にしたライブ。2018年作
活動50周年を記念してイタリアで行われたライブを収録。トリプルシンセを含む7人編成のステージで、「UT」をはじめ
「コンチェルト・グロッソ2」、「アルデバラン」、「FS」、など、かつての傑作アルバムから選曲された全15曲を披露。
美しいシンセの重ねにメロウなギター、朗々としたイタリア語のヴォーカルを乗せて、シンフォニックな音の厚みとともに、
古き良きイタリアンロックの優美な叙情を再現。キャッチーなナンバーも、味わい深い大人の哀愁を感じさせ、
グルーヴィなジャンニのドラムも含めて、50年をへてきたバンドとしてのキャリアを描くような聴き心地である。
全77分、たっぷりとイタリアンロックの巨人たる芳醇な叙情美が味わえる、見事な記念ライブです。
ライブ演奏・・8 トロルス度・・8 イタリア度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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OSANNA 「PALEPOLITANA」
イタリアのプログレバンド、オザンナの2015年作
1972年の名作「パレポリ」の続編として作られたアルバムで、スタジオアルバムとしては2009年以来の作品。
やわらかなピアノにオルガン、ヴァイオリンの音色に、リノ・ヴァイレッティのジェントルなイタリア語の歌声を乗せ、
フルートが鳴り響く幻想的な叙情性とともに、かつてを思わせる妖しくも優雅なサウンドを展開。
元VDGGのデヴィッド・ジャクソンが参加して、サックスとフルートを奏で、ジャズロック的な香りも覗かせつつ、
PRESENCEのソフィア・バッチーニを加えての、男女ヴォーカルによる華やいだ空気感も魅力的だ。
Disc2には1972年作の再録バージョンを収録。アレンジを変えた新鮮な味わいでかつての名作が楽しめます。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 イタリア度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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OSANNA 「The Best of Italian Rock Vol.1」
イタリアのプログレバンド、オザンナのライブ。2015年作
2015年の来日公演のステージを2CDに収録。「ファーストアルバム」「ミラノ・カリブロ9」「パレポリ」「人生の風景」といった
70年代のアルバムからの楽曲を中心に、オルガン、ピアノを含むツインシンセに、デヴィッド・ジャクソンによるサックス&フルート、
リノ・ヴァイレッティの味わい深い歌声を乗せて、かつてのナンバーを再現してゆく。ジェニー・ソレンティ(Saint Just)が加わって、
美しい歌声でサン・ジュストのナンバーを披露したり、ジャンニ・レオーニ(Il Balletto Di Bronzo)を迎えてのイル・バレット・ディ・ブロンゾ、
さらにはコッラード・ルスティチ(Cervello)が参加して、チェルヴェッロのナンバーも披露。ラストはVDGGのナンバーで締めくくり、
アンコールには故フランチェスコ・ジャコモを偲んでバンコから、全員集合的なメドレーと、まさにイタリアンロック祭り状態の濃密ライブです。
ライブ演奏・・8 イタプロ度・・9 濃密度・・9 総合・・8
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Le Orme 「Live in Rome」
イタリアのプログレバンド、レ・オルメのライブ。2018年作
2010年イタリアでのライブを収録した、オフィシャルブートレグとして発表されたものの正規再発盤。
Metamorfosiのジミー・スピタレーリをヴォーカルに迎え、ツインシンセを含む6人編成のステージで、
やわらかなオルガンが鳴り響き、ジェントルなイタリア語のヴォーカルを乗せた優美なサウンドを聴かせる。
90年代以降の復活作からのナンバーから、1971年作「コラージュ」、1974年作「夜想曲」からの優美な大曲に、
EL&Pの「ロンド」も披露。オルガンに絡む端正なピアノや、うるさすぎないギターワークもサウンドに厚みを付加していて、
単なるヴィンテージなキーボードロックという以上のダイナミックな演奏が楽しめる。音質もまず良好です。
ライブ演奏・・8 イタプロ度・・9 オルガン度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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NEW GOBLIN 「LIVE IN ROMA」
イタリアンロックバンド、ゴブリンのライブ。2012年作
2011年イタリアでのライブを2CDに収録。クラウディテオ・シモネッティを含むツインシンセの5人編成で、
Disc1は、「ローラー」からのナンバーを主体に、「サスペリア2」、「マークの幻想の旅」、といった
往年の名作からのナンバーに、「沈黙」、「Back to the Goblin」など近年の作品からも披露。
オルガンやムーグを含むシンセワークに、マッシモ・モランテの適度にハードなギターを加えて、
勢いのある演奏を聴かせてくれる。Disc2は、「ローラー」からの大曲で始まり、「ゾンビ」、
「サスペリア」、「シャドー」、「フェノメナ」と、ホラーサントラ系のナンバーをたっぷり聴かせる。
ライブらしい臨場感あるアンサンブルで、オールドなゴブリンファンも楽しめる2枚組ライブです。
ライブ演奏・・8 プログレ度・・7 ゴブリン度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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FEM (FORZA ELETTRO MOTRICE) 「MUTAZIONE」
イタリアのプログレバンド、フォルツァ・エレットリオ・モトリーチェの2019年作/邦題「突然変異」
2012年にデビュー、前作「Sulla Bolla Di Sapone」は、現在版PFMというような傑作であったが
続く本作は、トロンボーン奏者を加えた6人編成となり、オルガンやムーグを含むシンセに
伸びやかなイタリア語のヴォーカルと、トロンボーンの音色を重ね、クラシカルな味わいに包まれた
優雅なシンフォニックロックを聴かせる。スタイリッシュなアンサンブルは適度にモダンな感触ながら、
かつてのPFMをはじめとする、イタリアンロックの伝統美を受け継いだ繊細な叙情性には、
オールドなファンも満足だろう。ラストは10分の大曲で、緩急ある展開力で優美に構築される。
優美度・・9 プログレ度・・8 イタリア度・・9 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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Moongarden 「Align Myself to The Universe」
イタリアのプログレバンド、ムーンガーデンの2018年作
1994年にデビュー、Genesisルーツのシンフォニックロックからしだいにモダンな作風へと深化をとげ、
8作目となる本作では、美麗なシンセとメロディックなギターを軽快なリズムに乗せて、
ヴァイオリンも鳴り響く、優雅でスタイリッシュなシンフォニック・ハードプログレで幕を開ける。
英語歌詞のヴォーカルを乗せたキャッチーな感触に、メロトロンが鳴り響き、メロウなギターとともに
泣きの叙情に包まれる。一方では、デジタルなアレンジを取り入れたモダンなナンバーなどもあり、
イタリアというよりは英国のバンドに近い聴き心地だ。12分の組曲は、叙情的な歌パートを含む、
王道のシンフォニックロックで、PENDRAGONあたりにも近い甘美なメロディアス性が心地よい。
メロディック度・・8 スタイリッシュ度・・9 叙情度・・9 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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La Coscienza Di Zeno 「Una Vita Migliore」
イタリアのプログレバンド、ラ・コシェンツァ・ディ・ゼノの2018年作
2011年にデビューし、本作が4作目となる。アコースティックギターのつまびきに優雅なピアノが重なり
艶やかなヴァイオリンとシンセを加えて、繊細な美しさに包まれたシンフォニックロックが広がってゆく。
やわらかなフルートにオルガンやムーグを含むシンセが、往年のイタリアンプログレの幻想的な香りを放ち、
メロウなギターが重なると、その優美な叙情にウットリとなる。イタリア語によるヴォーカルが加わると、
物語的なドラマ性を描くようなロマンティシズムに包まれ、ときにクラリネットやヴァイオリンによる
古楽的でもあるクラシカルな旋律も覗かせながら、プログレ的なアンサンブルで構築するセンスも素晴らしい。
12分の大曲も軽やかな展開力と叙情美が同居する。イタリアらしいシンフォプログレを求める方には必聴の傑作だ。
ドラマティック度・・8 イタリア度・・9 優美度・・10 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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La Coscienza Di Zeno 「Il Giro Del Cappio」
イタリアのプログレバンド、ラ・コシェンツァ・ディ・ゼノのライブ。2018年作
2016年オランダでのライブを収録。リリカルなピアノの旋律にオルガンを含むシンセとギターを重ね、
スタジオ盤以上に躍動感のあるアンサンブルで、優雅でヴィンテージなプログレサウンドを聴かせる。
2011年のデビュー作、2013年作「Sensitivita」からのナンバーに、2015年作「La Notte Anche Di Giorno」から
20分を超える組曲も披露。ときにエモーショナルに歌い上げるヴォーカルとともに、ドラマティックな展開力で
プログレらしい緩急ある大曲を描いてゆく。イタリアン・シンフォプログレ好きには至福の全72分のライブです。
ライブ演奏・・8 プログレ度・・8 優美度・・9 総合・・8
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La Dottrina Degli Opposti 「Arrivederci Sogni」
イタリアのシンフォニックロック、ラ・ドットリーナ・デッリ・オポスティ の2018年作
LA COSCIENZA DI ZENOのシンセ奏者によるプロジェクト、繊細なピアノにヴァイオリンが絡み、
クラシカルな優雅さに包まれたサウンドで、ジェントルなイタリア語のヴォーカルとともに、
古き良きイタリアンロックの牧歌的な叙情を描き出す。優美なピアノとシンセにストリングスが加わると、
PFMやスティッキエリ & ボルディーニなどを思わせる泣きの叙情が現れる。やわらかなフルートや
ムーグシンセによるヴィンテージな味わいも含めて、ゆったりとイタリアらしいシンフォニックロックを味わえる。
ジャケは小学生のお絵書きみたいだが、内容は繊細な美に溢れるクラシカルな逸品です。
クラシカル度・・8 プログレ度・・7 優美度・・9 総合・・8
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ELETTROSMOG 「MONOLOCANDO」
イタリアのプログレバンド、エレトロスモッグの2006年作
ASTROLABIOの改名前のバンドで、ほどよくハードなギターにオルガンを含むシンセを重ね、
イタリア語による味わいのあるヴォーカルで、軽快なノリのあるキャッチーなサウンドを聴かせる。
古き良きイタリアンプログレの混沌とした部分を感じさせつつ、ピアノによる優美な感触など、
メリハリある構築力とともに、わりとスタイリッシュに仕上げているのがセンスの良さだろう。
テクニカルな部分とロックとしてのシンプルなキャッチーさ、フルートが鳴り響く牧歌的な味わいも覗かせつつ、
偏屈でとぼけたセンスとイタリアらしい濃密さが、バランス良く同居した高品質な作品です。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 イタリア度・・8 総合・・8

ANTONIUS REX 「NEQUE SEMPER ARCUM TENDIT REX」
イタリアのカルトプログレ、アントニウス・レックスの1974/2002年作
JACULAを率いるアントニオ・バルトチェッティによるプロジェクトで、本作は1974年の名作「サバトの宴」直後に発表された作品。
チャーチオルガンが妖しく鳴り響き、イタリア語による語りを乗せた黒魔術的な世界観は、まさにヤクラそのもの。
ドラムにギターが加わるとロック的な感触もいくぶん増すのだが、これという展開はあまりないので、
やはり雰囲気モノとしての色合いが強く、オルガンやチェンバロの音色を耽美に楽しめる人向けです。
SE入りのホラーサントラ的なナンバーもいかにもという雰囲気だが、個人的には女性声が入らないのが残念。
ドラマティック度・・6 プログレ度・・6 妖しげ度・・8 総合・・7  過去作のレビューはこちら
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ANTONIUS REX 「Anno Demoni」
イタリアのカルトプログレ、アントニウス・レックスの1979/2001年作
JACULAを率いるアントニオ・バルトチェッティによるプロジェクト、本作は1974〜78年に録音されたマテリアルを収録。
ヤクラの2作目として作られた楽曲ということで、クラシカルなピアノにオルガンが鳴り響き、
妖しくも優雅な世界観を描いてゆくのだが、美しい女性ヴォーカルを乗せた小曲や、ギターにドラムの入った
ロック寄りのナンバーなどもあり、名作「サバトの宴」の暗黒美に比べると、もう少し聴きやすい作風。
ボーナストラックには、1972年、ヤクラのプロトタイプというべき音源を収録。こちらは、チャーチオルガンに
フルートが鳴り響き、妖しい女性声の詠唱のような歌声で、まさに「サバトの宴」につながる世界観です。
ドラマティック度・・7 妖しげ度・・8 ヤクラ度・・8 総合・・7
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12/6
プログレの師走(281)


Duncan Mackay 「Kintsugi」
英国出身のミュージシンャン、ダンカン・マッケイの2019年作
1974年作「Chimera」、1977年作「Score」はクラシカルなシンフォニック・プログレの名作であったが、
純粋なソロ名義としては「A PICTURE OF SOUND」(1992年録音)以来となる作品。
サウンドは、オルガンを含むシンセの多重録音を中心にした、デジタリィなシンセミュージックで、
打ち込みによるリズム入るもののロック色は希薄。ときおり女性ヴォーカルも加わって、
アンビエントポップ的な感触もあったり、Klaus Schulzeあたりに接近したような雰囲気も。
3〜4分前後の小曲主体で、プログレとして聴くにはやや物足りなさもあるが、ファンならばどうぞ。
クラシカル度・・8 プログレ度・・7 キーボー度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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Big Big Train 「Merchants of Light」
イギリスのプログレバンド、ビッグ・ビック゛・トレインのライブ。2018年作
1991年にデビュー、いまや英国シンフォニックロックの代表格。本作は2017年の英国公演の模様を2CDに収録。
ツインキーボードに女性ヴァイオリン奏者を含む8人編成に、トランペット、ホルン、トロンホーンなどブラスセクションを加えた、
ゴージャスなステージで、優雅なヴァイオリンの音色が鳴り響き、メロウな味わいのギターにうるさすぎないシンセと、
枯れた味わいのヴォーカルを乗せ、英国らしい叙情美に包まれたシンフォニックロックを展開。ほどよくモダンな感触と
古き良きプログレらしさの絶妙に同居したサウンドで、2009〜17年のアルバムから選曲された楽曲をたっぷりと披露してくれる。
ツインギターにツインシンセ、ブラスも加えた厚みのある演奏ながら、濃密になり過ぎない軽妙なアンサンブルであるのも、
キャリアのあるバンドならではだろう。10分を超える大曲も多いが、聴き疲れしない大人の味わいのライブ作品です。
ライブ演奏・・8 叙情度・・8 英国度・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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STRANGEFISH 「The Spotlight Effect」
イギリスのプログレバンド、ストレンジフィッシュの2018年作
2003年にデビュー、本作は2005年以来、13年ぶりとなる3作目。アコースティックギターに
ジェントルなヴォーカルを乗せた小曲で幕を開け、続いてハードエッジなギターとリズムが加わり、
オルガンを含むシンセとともに、モダンとヴィンテージが同居したようなハードプログレを聴かせる。
女性声を加えた優美な叙情性も覗かせつつ、18分に及ぶ大曲も落ち着いた味わいでじっくりと構築してゆく。
随所に軽妙なリズムや展開も織り込んで、往年のプログレらしいシンセアレンジにはにんまりとしつつ、
しっかりと現在形の英国らしさを表現している。まさに、大人のハードプログレというべき逸品です。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 大人の叙情度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Tim Bowness 「Flowers At The Scene」
イギリスのミュージシャン、ティム・ボウネスの2018年作
NO-MANやHenry Foolでも活躍するミュージシャンのソロで、うっすらとしたシンセにメロウギターを重ね
センシティブなヴォーカルを乗せた、しっとりと幻想的な味わいのポストプログレを聴かせる。
シンフォニックなシンセアレンジや優雅なストリングス、泣きのギターフレーズやフルートなど、
本家NO-MAN以上にプログレ的に楽しめる部分も多く、優しい聴き心地にうっとりとなりつつ、
曲によってはハードめのギターが加わって、Porcupine Treeのような味わいもある。繊細で優美な作品です。
スティーヴン・ウィルソンがミックスを手掛け、ゲストには、ピーター・ハミルをはじめ、アンディー・パートリッジ(XTC)
コリン・エドウィン(Porcupine Tree)、ジム・マテオス(Fates Watning)、デヴィッド・ロングドン(Big Big Train)などが参加。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 優美度・・8 総合・・8
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BIG HOGG
イギリスのプログレバンド、ビッグ・ホッグの2015年作
女性Vo、トランペット、トロンボーン奏者を含む6人編成で、軽快なアンサンブルに
やわらかな女性ヴォーカルを乗せた、70年代的な牧歌的な味わいのサウンドを聴かせる。
優美なフルートの音色に、トランペット、トロンボーンを絡めたチェンバー的な感触と、
カンタベリー風味の優雅な偏屈さが同居したような作風で、曲によっては男性Voも加わる。
アナログ感のある音質に、ときにオルガンも加わったヴィンテージロック風味の耳心地で、
あまり派手な展開がないぶん、のんびりと鑑賞できる。古き良き英国の香りを感じさせる好作だ。
プログレ度・・7 優雅度・・8 英国度・・9 総合・・7.5
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BIG HOGG 「Gargoyles」
イギリスのプログレ・ジャズロック、ビッグ・ホッグの2017年作
2作目となる本作も、やわらかなフルートに男女ヴォーカルの歌声を乗せて、
70年代英国フォークやジャズロック的な優雅さに包まれたサウンドを聴かせる。
2〜4分前後の小曲を主体に、プログレというよりはむしろ、ユルめのサイケ感触もあって、
肩の力が抜けた味わいだ。曲によってはエレピなどのシンセも加わり、トランペット、トロンボーンの音色ともに、
カンタベリー的なプログレ・ジャズロックが楽しめる。技巧よりはレトロな浮遊感に包まれた作風です。
プログレ度・・7 優雅度・・8 英国度・・9 総合・・7.5
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MORDECAI SMYTH 「The Mayor of Toytown Is Dead」
イギリスのミュージシャン、モルデカイ・スミスの2017年作
メロトロンを含むシンセに叙情的なギター、ジェントルなヴォーカルとともに、
どこかシアトリカルな雰囲気を感じさせる、古き良き英国ロックを継承するサウンド。
美しい女性ヴォーカルを加えてのしっとりと優美なパートなどもなかなか魅力的で、
クラリネットやサックスなどの音色がやわらかに鳴り響きつつ、牧歌的な優雅さに包まれる。
60年代サイケや英国フォーク的なおおらかさもあって、プログレというよりは、THE WHO
THE MOODY BLUESなどをルーツにした、英国叙情ロックとして楽しむのがよいかと。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 英国度・・8 総合・・7.5
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JOHN WETTON「Rock of Faith」
イギリスのミュージシャン、ジョン・ウェットンのソロ。2003年作
ASIA、U.K.などで知られるヴォーカリストにしてベーシスト。本作にはジョン・ミッチェル(ARENA、IT BITES)、
クライブ・ノーラン(ARENA、PENDRAGON)、ジェフリー・ダウンズ(YES、ASIA)らが参加し、
美麗なシンセアレンジにメロウなギター、そしてウェットンの味わい深いヴォーカルで聴かせる、
シンフォニックロック寄りの作品となっている。全体的にもゆったりとしたナンバーが主体であるが、
オルガンを含むプログレ寄りのシンセアレンジに泣きのギターフレーズで、英国らしい優美な叙情に包まれる。
そしてウェットンの枯れた味わいの歌声で、のちのICONへとつながるようなウェットなドラマ性を描いてゆく。
PENDRAGONのピーダー・ジー、元IQのマーティン・オーフォードなどがゲスト参加。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 叙情度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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BLACKFIELD 「BLACKFIELD II」
イギリスのポストプログレ、ブラックフィールドの2007年作
スティーブン・ウイルソンとイスラエル出身のミュージシャン、アビブ・ゲフィンを中心としたバンドで
うっすらとしたシンセに適度にハードなギター、マイルドなヴォーカルを乗せて、
繊細な叙情美に包まれたメロディックロックを聴かせる。近年のMARILLIONにも通じるような
薄暗系の歌ものサウンドであるが、美しいシンセの重ねはときにシンフォニックであり、
歌メロを含むメロディはキャッチーで、翳りの中にも光が差し込むような感触が楽しめる。
ロックとしてのアンサンブルもしっかりとあるので、繊細なだけのポストプログレとも違う、
いわば、オルタナ系シンフォニックロックというべき聴き心地の傑作です。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 叙情度・・8 総合・・8
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Odyssice 「Moondrive」
オランダのシンフォニックロック、オディッシスの2013年作
1996年のデビューEPのリマスターにデモ音源などを加え、ボーナスDiscに2001年のライブ音源を収録した2枚組。
メロウなギターにオルガンを含むシンセワークを重ね、ポンプロックルーツのきらびやかなメロディアス性で、
いかにも90年代らしいシンフォニックロックを聴かせる。オールインストながら、ギターの泣きのフレーズとともに
PENDRAGONなどにも通じる優美な叙情に包まれた耳心地の良さで、ゆったりと楽しめます。
Disc2のライブは、2000年作「Impression」からのナンバーを中心に、デビューEPからの3曲も披露。
軽やかな演奏力で音質も良好。メロディックなギターとシンセを重ねた優雅なシンフォニックロックが味わえる。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 優美度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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ELLEVEN 「TRANSFICTION」
ドイツのプログレハード、エレヴェンの2015年作
ハード寄りのギターとモダンなシンセアレンジを重ね、女性ヴォーカルの歌声で聴かせる、
翳りを帯びたメロディックロック。紅一点、ジュリア嬢の艶めいた歌声を前面に出した、
ウェットな叙情性にオルガンを含むシンセで、アダルトなプログレハードが味わえる。
キャッチーな抜けの良さよりは薄暗い空気感に包まれたサウンドは、ゴシックロック的でもあり、
メロウなギターの旋律にうっすらとしたシンセが重なる、アンニュイな倦怠の美が耳に心地よい。
楽曲は7〜8分前後を中心に、11分の大曲もあり、全体的にもゆったりとした聴き心地ながらも、
ほどよくプログレ的なアンサンブルも覗かせる。ふわりと吸い込まれるような魅力がある好作品だ。
ドラマティック度・・7 薄暗度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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Klaus Schulze「The Crime of Suspense」
ジャーマンシンセミュージックの巨匠、クラウス・シュルツェの2006年作
2000年に発売された10枚組BOX「CONTEMPORARY WORKS I」に収録されていたものを単体CD化した作品。
24分、17分、29分という大曲を収録。デジタリィなシンセとシーケンサーのリズムとともに、
美しい女性のスキャットヴォイスを乗せて、優雅でモダンなシンセサウンドを展開する。
2曲目は、鳴り響くフルートがエレクトロなシンセとの対比となっていて、なかなか面白い。
3曲目の大曲は、再び女性ヴォーカルを加えての、艶めいた大人のシンセミュージックが楽しめる。
ドラマティック度・・7 幻想度・・7 シンセ度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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Klaus Schulze 「Ballett 1」
クラウス・シュルツェの2006年作
バレリーナであった母の死をモチーフにした作品で、10分、29分、36分という大曲3曲を収録。
チェロ奏者を迎えて、シンセの重ねに艶やかなチェロが鳴り響き、女性スキャットを乗せた、
優雅なクラシカル性を感じさせる作風で、シンフォニックな美しさに包まれたダークな空気を描き出す。
中盤の大曲は、シンセよりもむしろチェロの方が前に出ていて、シュルツェの曲の中では異色かもしれない。
3曲目の36分の大曲は、死を感じさせるようなダークな空気感に包まれていて、物悲しいチェロの音色と、
うっすらとしたシンセサウンドが、漆黒の闇を描くようなイメージで、その世界観に浸れます。
ドラマティック度・・7 幻想度・・8 シンセ度・・8 総合・・7.5
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Klaus Schulze 「Kontinuum」
クラウス・シュルツェの2007年作
24分、19分、31分という大曲3曲の構成で、シーケンサーのリフレインに美しいシンセを重ね、
スペイシーな空間性で描かれる、シンセミュージックはデビューから35年を経ても不変。
デジタルなサウンドに移行しつつも、過去の作品における幻想性を再構築したという印象もあり、
ときに詠唱のような男性声を乗せながら、わりと淡々としたリフレインでトリップ感に包まれる。
70年代の作品のような神秘的なスケールまでは感じないので、やや単調な長尺感がつきまとう
ドラマティック度・・7 幻想度・・8 シンセ度・・8 総合・・7.5
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Klaus Schulze 「Live @ Klangart」
クラウス・シュルツェのライブ。2001/2008年作
2001年ドイツ公演のライブで、元々は単体で発売されていたものを、2枚組にしてまとめた再発盤。
シーケンサーによるリズムに、幾重にも重なるシンセが、ときにアッパーにときに静謐に鳴り響く。
ノリのあるキャッチーなリフレインの曲はやや単調ながら、幻想的な空間美を描くような曲では、
まさにシンセの魔術師というべき、スペイシーなスケール感に包まれたシュルツェサウンドが楽しめる。
Disc2には、22分におよぶ大曲2曲を含めて、79分を収録。ストリングスの音色を加えたクラシカルな優雅さと
ほどよく翳りを帯びた幻想性で、近年のシュルツェ作品に関しては、やはりライブにこそ真髄がありますね。
ドラマティック度・・7 幻想度・・8 シンセ度・・8 総合・・8
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11/23
まだまだプログレの秋(266)


Kayak 「The Anniversary Box」
オランダのプログレバンド、カヤックのデビュー35周年記念のボックス作品。2008年作
2008年にアムステルダムで行われたステージを、2CD+DVDに収録し、さらにファン投票により選ばれた、
13枚のスタジオアルバムから選ばれた23曲と未発曲を、2CDに収録した、4CD+DVDの豪華ボックス。
1973年のデビュー作「See See The Sun」から年代順に並べられたベスト選曲は、改めて聴いても
繊細な叙情とメロディをキャッチーなポップセンスで包み込んだ、優美なサウンドではじつに耳に優しい。
2000年の復活作「Close to the Fire」以降の、よりスタイリッシュな作風も個人的には素晴らしいと思う。
ライブの方は、新旧とりまぜたセットリストで、全28曲、女性ヴォーカルを含む7人編成でのステージ。
厚みのあるシンセの重ねに男女Voの歌声を乗せた、壮麗なシンフォニックロックがたっぷり味わえる。
まさに、1973〜2008年までのバンドの35年の歴史を総括する、ファン必携のボックスセットです。
メロディック度・・9 記念ライブ度・・9 カヤックの歴史度・・9 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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Leap Day 「Timelapse」
オランダのシンフォニックロック、リープ・デイの2018年作
FLAMBOROUGH HEADTRIONのメンバーにより結成し、2010年にデビュー。5作目となる本作は
結成10周年を記念しての企画アルバムで、未発曲やリレコーディング、ライブ音源などを収録。
メロディックなギターにオルガンやムーグなどのシンセと枯れた味わいのヴォーカルを乗せた、
90年代ルーツの優美なシンフォニックロックサウンド。スリリングな展開というのはあまりなく、
大人の哀愁を含んだ叙情に包まれていて、10分を超える大曲もゆったりと優雅な聴き心地。
インストのナンバーなどは、TRIONのアルバムに入っていてもおかしくない出来で、
ラストの10分を超えるライブナンバーでは、GENESISルーツのメロウな美旋律に包まれる。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 優美度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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CRAYON PHASE 「Within My Recollection」
ドイツのプログレバンド、クレヨン・フェイスの2014年作
ムーグなどを含むプログレらしいシンセワークに適度にハードなギターを重ね、
マイルドなヴォーカルとともに、優美なシンフォニック性に包まれたサウンドを聴かせる。
泣きのフレーズを奏でるギターや繊細なピアノなど、しっとりとした叙情性には、
Anyone's Daughterを受け継ぐような、ヨーロピアンな甘美なロマンを感じさせる。
いくぶんProgMetal的な感触もあるが、どこかアンニュイなヴォーカルの声質も含めて
ハード過ぎない優雅な聴き心地で、15分を超える大曲などもゆるやかに盛り上げる。
翳りを帯びた叙情美は、ARENAあたりのファンでも楽しめる。ハードシンフォニックの逸品です。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・8 優美度・・9 総合・・8
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JACK YELLO 「XERIC」
ドイツのハードプログレ、ジャック・イエロの2009年作
2003年にテビュー、本作は2作目となる。うっすらとしたシンセに適度にハードなギターと
ジェントルなヴォーカルで聴かせる、翳りを帯びた叙情に包まれたプログレハードサウンド。
オルガンやムーグなど、ヴィンテージなシンセワークと随所にメロウなギターフレーズを乗せ
ときにProgMetal的でもある緩急のある展開力とともに、コンセプト的な世界観を描いてゆく。
かといって難解になることはなく、あくまでキャッチーな聴き心地で、SAGAIT BITESなどが好きな方にもお薦めだ。
ラストは13分に及ぶ大曲で、プログレらしい展開美でじっくりとドラマティックに盛り上げる。全78分という力作です。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 キャッチー度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら

Carptree 「Subimago」
スウェーデンのシンフォニックロック、カープトゥリーの2018年作
2001年にデビュー、本作はすでに7作目となる。オルガンやメロトロンを含むヴィンテージなシンセに、
マイルドなヴォーカルを乗せて、薄暗い翳りとモダンな構築性が同居したサウンドは健在。
本作ではこれまで以上に、ANGLAGARD以降の北欧らしい涼やかな叙情性に包まれていて、
それを濃密すぎないスタイリッシュなセンスで描くところは、さすがキャリアのあるバンドである。
メロウなギターフレーズや女性コーラスなどを加えた優雅な感触もあり、繊細な歌ものパートは、
「北欧化したMarillion」という雰囲気でも楽しめる。北欧シンフォの現在系というべき傑作。
ドラマティック度・・8 薄暗度・・8 北欧度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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LAZULI 「SAISON 8」
フランスのモダンプログレ、ラズリの2018年作
1999年にデビュー、本作は8作目となる。やわらかなシンセにフランス語による歌声を乗せた、
繊細な叙情美に包まれたポストプログレサウンド。ほどよくハードなギターにドラムのリズム、
そして独自の弦楽器レオーデによるシンセベース風の音色を重ねた、スタイリッシュなアンサンブルで
モダンな味わいの中にも、翳りを帯びた優雅な空気を描き出すところがフランスのハンドらしい。
楽曲は5〜6分前後と、派手な展開はないものの、ピアノを含むシンセやレオーデの音色が重なった
クラシカルな美意識とともに、Sylvanのような優美なポストプログレとしても楽しめる好作品だ。
スタイリッシュ度・・8 プログレ度・・7 優美度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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After All 「A.C.I.D.」
ハンガリーのハードプログレ、アフター・オールの2001年作
SF的なイントロから始まり、美麗なシンセアレンジとメタリックなギターを重ね、エモーショナルなヴォーカルとともに
ProgMetal的な重厚なサウンドを聴かせる。変則リズムを含むテクニカルな展開力とモダンな翳りを含んだ、
ドラマティックな感触は、RIVERSIDEPAIN OF SALVATIONあたりが好きな方にも楽しめるだろう。
ときにDREAM THEATERのジェイムス・ラブリエのように歌い上げるヴォーカルがシアトリカルな雰囲気もかもしだし、
緩急ある流れと知的な構築力で、コンセプト的なスケール感を描き出す。ハードシンフォニックというよりは
やはりプログレメタル方面に受ける作風であろう。ジャケは地味だが内容はかなりの力作です。
ドラマティック度・・8 プログレメタル度・・8 重厚度・・8 総合・・8
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Bubblemath 「Edit Peptide」
アメリカのプログレバンド、バブルマスの2017年作
2002年作以来、15年ぶりとなるアルバムで、前作のテクニカルな偏屈路線を引き継いで、
変則リズムたっぷりの技巧的なアンサンブルに、メロディックなギターとシンセワークを重ね、
エモーショナルなヴォーカルを乗せたスタイリッシュ性を、いわばヘンタイ気味に処理したという
せわしないサウンドを展開。のっけから12分の大曲でこれだけでお腹いっぱいになりそうだが、
カオティックな展開の中にもフルートによる優美な叙情性などもあり、聴き手をほっとを和ませる。
極端な切り返しやリズムチェンジでヘトヘトになりつつも、優雅なメロディアス性がときおり現れるという、
EcholynThank You Scientistを合わせたような、偏屈技巧とキャッチーなメロが同居した濃密傑作。
テクニカル度・・8 プログレ度・・8 カオスと叙情度・・9 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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ELECTRUM 「Standard Deviation」
アメリカのプログレバンド、エレクトラムの2002年作
1998年の自主制作アルバムに続く2作目で、うっすらとしたシンセにギターが絡み、
オールインストの優雅なアンサンブルを描く、プログレフュージョン風味のサウンド。
ほどよくハードなギターと技巧的なドラムなどは、PLANET Xあたりを思わせる感触もありつつ、
アッパーになり過ぎない落ち着いた大人のジャズロック風でもあり、叙情的なギターフレーズや
エレピやオルガン、ときにメロトロンも含む優美なシンセワークとともにゆったりと楽しめる。
ラストは14分を超える大曲で、TANGENTにも通じるシンフォニックなプログレジャズロックを展開。
ドラマティック度・・7 プログレジャズロ度・・8 優雅度・・8 総合・・7.5
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Pinnacle 「A Blueprint for Chaos」
アメリカのプログレバンド、ピナクルの2012年作
のっけから28分におよぶ組曲で、メロディックなギターにきらびやかなシンセを重ね、
マイルドなヴォーカルを加えた、爽快なシンフォニックロックを展開。軽快なアンサンブルと起伏のある展開力で、
TRANSATLANTICにも通じるスケール感を描きながら、キャッチーなメロディアス性にとともに、
アメリカのバンドらしい抜けの良いサウンドが楽しめる。大人の叙情を感じさせるゆったりとしたナンバーなども
なかなか魅力的で、ギターにもキーボードも確かなメロディセンスを感じさせる。平坦な音質がやや惜しいものの、
適度なテクニカル性と優美なメロディアス性に包まれた、全74分のシンフォプログレの力作です。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 爽快度・・8 総合・・8
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Morse Code 「D'un Autre Monde」
カナダのプログレバンド、モールス・コードの1996年作
70年代に残した3枚の作品はプログレとしての評価が高いが、その後、1983年作はポップなAOR化していた。
本作はそれに続く5作目となる。美しいシンセアレンジにフランス語によるヴォーカルを乗せた、
優雅な味わいのメロディックロックで、どことなくANGEにも通じるフレンチな雰囲気も感じさせる。
TOTOのようなポップなビートのナンバーもありつつ、プログレらしい変拍子もあり、メロディックなギターの叙情と
きらびやかなシンセが重なると、シンフォニックな味わいになって、キャッチーなプログレハードとしても楽しめる。
優美なバラードナンバーなども、フランス語のやわらかな響きとともにゆったりと鑑賞できる。なかなかの好作です。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 優雅度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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11/3
プログレの秋深し(255)


The Enid「Hammersmith Odeon」
イギリスのシンフォニックロック、エニドのライブDVD。2013年作
先にCDで発売されていた、1979年、英国ロンドン、ハマースミス・オデオンでのライブ映像を収録。
英国国歌で壮麗に幕を開け、ロバート・ジョン・ゴドフリー&ウイリアム・ギルモアによるキーボードと、
ステファン・スチュアートとフランシス・リカーリッシュのツインギターが奏でる優美なメロディとともに、
バンド編成でのクラシカルなシンフォニーロックが、当時の映像で展開される様はまさに圧巻である。
「Judgement」、「In The Region Of The Summer Stars」といったデビュー作からのナンバーに、
同時期に発表されたアルバム「Touch Me」からのオーボエ奏者も加わっての優雅なナンバー、
そして、大曲「FAND」の壮大にして華麗なシンフォニーとダイナミクスはハイライトというにふさわしい。
また、若き日の(といっても風貌はすでに貫録だが)ゴドフリーのとぼけた味のMCや、要塞のようなシンセ群、
ドラムやティンパニを元気よく叩きまくる、デイヴ・ストーリーの(ソロタイム含む)ハジけっぷりも見どころだ。
客席の盛り上がりも素晴らしく(意外と女性客も多い)、ゴドフリーが「Wild Thing」を熱唱するアンコールはまあオマケとして、
年代を考えればカメラワークを含む映像も良好で(一部ノイズは入るが)、全盛期のエニドの姿を収めた必見のライブ作品である。
ライブ演奏・・9 ライブ映像・・8 壮麗度・・10 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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BIG BIG TRAIN「Grand Tour」
イギリスのプログレバンド、ビッグ・ビック゛・トレインの2019年作
1991年にデビュー、いまや英国シンフォの代表格。自主制作を入れると、アルバムとしてはすでに12作目となる。
英国貴族の子弟がローマをめぐる旅を描いたコンセプト作品で、美しいシンセアレンジにジェントルなヴォーカルで、
序盤は、TRANSATLANTICのようなキャッチー抜けの良さで、爽快なシンフォニックロックが広がってゆく。
優雅なストリングスやフルート、そして泣きのギターフレーズによる、GENESISルーツのウェットな叙情美に包まれながら、
円熟味を増したデヴィッド・ロングドンのヴォーカルとともに、英国らしい繊細にして優雅なサウンドが味わえる。
13分、14分という大曲も、キャリアのあるバンドらしい落ち着いた展開力と流れのあるドラマ性で
じっくりと優美な世界観を描き出す。まさに新時代のジェネシスというような、全74分の見事な力作だ。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 叙情度・・9 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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MIKE OLDFIELD 「MAN ON THE ROCKS」
イギリスのミュージシャン、マイク・オールドフィールドの2014年作
今作は、THE STRUTSのルーク・スピラーが参加して、全編でヴォーカルを乗せていることもあり、
キャッチーなロック感触に包まれている。マイクのギターもいつになくロックしているが、
肩の力の抜けた楽し気なポップ色の中に、繊細な叙情性を織り込むセンスはさすが。
シンフォニックなシンセアレンジとともに、表現力あるヴォーカルと泣きのギターフレーズで、
ゆったりと盛り上げるナンバーも素晴らしい。上質のメロディックロックでありながら、
しっかりとマイク・オールド・フィールドらしさに包まれている。これ普通に傑作ですよ。
メロディック度・・8 プログレ度・・6 叙情度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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David Cross 「Testing to Destruction」
イギリスのミュージシャン、デヴィッド・クロスの1994年作/邦題「破滅への試行 」
KING CRIMSONに参加したヴァイオリン奏者として知られる、ソロとしての3作目。
うねるようなベースにハードなギター、艶やかなヴァイオリンを乗せたアンサンブルに、
きらびやかシンセを加えたサウンドは、90年代型のモダンプログレというべき聴き心地。
第四期クリムゾンと時期的にかぶることもあって、どうしても比べてしまう作風だが、
ヴァイオリンを含む音のカラフルさや、アーティスティックなアヴァンギャルド性に、
キャッチーなナンバーなども含めた楽曲ごとの味わいでは、こちらをとる人もいるかもしれない。
味わいのあるヴォーカルもなかなか魅力的で、クリムゾン好きの方なら外せない力作でしょう。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 クリムゾン度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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The Mute Gods 「Atheists And Believers」
イギリスのプログレバンド、ミュート・ゴッズの2019年作/邦題「無神論者と信者」
2016年のデビューから本作で3作目。ニック・ベッグス、ロジャー・キング、マルコ・ミンネマンのトリオで、
モダンなアレンジとキャッチーなポップ性が同居した、スタイリッシュなメロディックロックを聴かせる。
ベースにスティック、ギターもこなすニック・ベッグスのマイルドな歌声に、ロジャー・キングのやわらかなシンセ、
軽やかなマルコ・ミンネマンのドラムで、英国的な翳りと優雅な叙情が同居した絶妙なサウンドを描いていて、
ふわりとした80年代的な雰囲気をまといつつ、ROXY MUSICのようなポップな感触を強めたという印象だ。
軽妙なインストナンバーや、やわらかなフルートにアコースティックギターによる、クリムゾンの「風に語りて」のような
叙情的な小曲なども魅力的で、アルバムとしてのメリハリある構成も含めて、さすがという仕上がりです。
キャッチー度・・8 プログレ度・・7 英国度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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LEE ABRAHAM 「Black & White」
イギリスのミュージシャン、リー・アブラハムの2009年作
GALAHADのベーシストでもあるマルチプレイヤーで、自主制作を含めると3作目のソロ作となる。
IT BITESのジョン・ミッチェル、BIG BIG TRAINのシーン・フィルキンス、FROST*のジム・ゴドフリー、
JADISのゲイリー・チャンドラー、スティーブ・ソーンらが参加、きらびやかなシンセアレンジにハードなギター、
マイルドなヴォーカルを乗せて、メタリックでモダンな感触のメロディックロックを聴かせる。
随所にオルガンやピアノなどの優美な叙情性や、技巧的で流麗なギタープレイも覗かせながら、
IT BITESのようなキャッチーなナンバーもあってなかなか楽しめる。後半は、14分、23分という大曲で、
泣きのギターメロディと美麗なシンセを重ね、プログレらしい構築力でドラマティックなシンフォニックロックを描き出す。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 スタイリッシュ度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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LEE ABRAHAM 「COLOURS」
イギリスのミュージシャン、リー・アブラハムの2017年作
本作は6作目のソロアルバムで、AOR風のジャケのイメージのように、よりスタイリッシュな作風で、
美しいシンセにメロディックなギター、マイルドなヴォーカルで聴かせるハードポップ風のサウンド。
全体的にストレートな作風だが、きらびやかなシンセアレンジとギターのメロディセンスはさすがで、
ASIAあたりにも通じる爽快なプログレハードから、ゆったりとしたシンフォニックロック風のナンバーも白眉。
そしてラストは10曲超の大曲で、これぞシンフォプログレという叙情美が炸裂する。今回も傑作ですよ。
デック・バーク、ゲイリー・チャンドラー(JADIS)、ロビン・アームストロング(COSMOGRAF)などがゲスト参加。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 キャッチー度・・8 総合・・8
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Anima Mundi 「Insomnia」
キューバのプログレバンド、アニマ・ムンディの2018年作
2002年にデビュー、そのクオリティの高さで、一躍、中米プログレのトップに躍り出たこのバンド、
本作は6作目で、ジャケのデザインからして前作と対になるようなアルバムなのだろう。
前作でのダークなスタイリッシュ性を受け継いだ雰囲気で、美麗なシンセアレンジと適度にハードなギター、
マイルドなヴォーカルとともに、スペイシーで広がりのあるスケールを感じさせるサウンドを描いてゆく。
翳りを含んだ叙情はポーランドのバンドなどにも通じる、モダンなシンフォニックロックという味わいで、
3〜5分前後の小曲を織り込みながら、コンセプト的な流れのある構成で楽曲を連ねてゆく。
メロディックな抜けがもう少し欲しい気もするが、ダークでスペイシーな味わいの力作である。
ドラマティック度・・8 スタイリッシュ度・・8 叙情度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Anima Mundi「Once Upon A Live」
キューバのプログレバンド、アニマ・ムンディのライブ作。2018年作
2017年キューバでのライブをCD2枚組に収録。女性シンセ奏者を含む5人編成のステージで、
2015年作「I Me Myself」からの全曲を含むセットを演奏。美しいシンセワークにハード寄りのギターで、
空間的なスリリングなインストパートを描きながら、薄暗いドラマ性に包まれたサウンドを聴かせる。
近年のアルバムのようにモダンな雰囲気であるが、随所に叙情的なギターフレーズにシンセが重なる
シンフォニックな味わいも残していて、伸びやかなヴォーカルと確かな演奏力で、楽曲にシリアスな説得力を付加している。
Disc2では、2010年作「The Way」からのナンバーも披露。後半の大曲3曲には、王道のシンフォニックロック好きも満足。
10分を超える大曲も多数で、CD2枚トータル120分を超える濃密なライブが楽しめます。
ドラマティック度・・8 ライブ演奏・・8 シリアス度・・8 総合・・8
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LIGHT DAMAGE 「NUMBERS」
ルクセンブルクのプログレバンド、ライト・ダメージの2018年作
前作はドイツのSYLVANなどに通じる好作であったが、2作目となる本作も、適度にハードなギターに
美しいシンセとエモーショナルなヴォーカルを乗せた、モダンなシンフォニックロックを聴かせる。
ときに女性ヴォーカルを加えた優美な浮遊感と、モダンなスタイリッシュ性が同居したサウンドで、
物悲しい空気をまとった繊細な作風は、シンフォニックなポストプログレとしても楽しめる。
20分におよぶ大曲は、泣きのギターフレーズによる翳りを帯びた叙情性と緩急ある展開力で
じわじわとドラマティックに盛り上げる。優雅なストリングスを加えたナンバーも美しい。これは傑作。
ドラマティック度・・8 スタイリッシュ度・・9 叙情度・・9 総合・・8.5
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Sea Goat 「TATA」
ドイツのシンフォニックロック、シー・ゴートの2016年作
70年代に活動しながら作品を残さず消えたバンドが再結成して完成させたデビューアルバムで、
メロトロンを含む美麗なシンセに枯れた味わいのヴォーカルを乗せ、アコースティックギターに
やわらかなフルートの音色で、KING CRIMSON「宮殿」の叙情美を思わせる優雅な聴き心地。
オルガンやメロトロンの響きに、メロウなギターのフレーズも、いかにも70年代をルーツにした
くぐもったような空気感を描き出し、どこかなつかしい聴き心地。北欧プログレにも通じる
翳りを帯びた涼やかな叙情に包まれていて、派手さはないがゆったりと鑑賞できる逸品です。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 叙情度・・8 総合・・7.5
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Rick Van Der Linden 「Vivace」
オランダのシンセ奏者、リック・ヴァン・ダー・リンデンの2001年作
EKSEPTIONTRACEで知られる鍵盤奏者で、本作はバッハの楽曲をアレンジした作品。
チャーチオルガンが鳴り響き、ときにギターにストリングスを加えた壮麗なサウンドは、
PAR LINDHにも通じるようなクラシカルなシンフォニックロックとしても楽しめる。
FLAIRCKのピーター・ウィーカースが参加して、優美なパンフルートの音色を響かせるナンバーや、
サックスを乗せたジャズタッチのパートを大胆に取り入れたりと、リックのアレンジセンスが光る。
やわらかなチャーチオルガンの音色とともに、バッハの名曲がプログレ寄りのアレンジで鑑賞できる逸品です。
クラシカル度・・9 プログレ度・・7 優雅度・・9 総合・・8
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DRACMA 「A Fine Stormy Weather」
スペインのプログレバンド、ドラクマの1996年作
シンセを含む5人編成で、美しいシンセアレンジにメロウなギターフレーズを重ねて、
マイルドなヴォーカルを乗せた、リリカルで繊細なシンフォニックロックを聴かせる。
アコースティックパートも含んだやわらかな叙情美は、CAMELあたりに通じる感触ながら、
いくぶん唐突なリズム展開などは、マイナー系シンフォの醍醐味というべきだろうが、
軽やかなドラムを中心にした演奏力はしっかりしているので、B級臭さは感じさせない。
ヴォーカルの甘い声質も含めて、スイスのCLEPSYDRAなどにも似たサウンドかもしれない。
10分を超える大曲も爽快な叙情メロディと優美な構築性で描かれる。90年代シンフォの隠れた好作品。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 叙情度・・9 総合・・8
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10/25
秋のフォーク&トラッド(242)


SPIROGYRA 「BURN THE BRIDGES」
イギリスのフォークバンド、スパイロジャイラの2000年作
1971〜73年に3枚のアルバムを残した英国フォークを代表するバンドの初期音源集。デビュー前の1970年から、
1作目を出した後あたりまでのデモ音源を17曲収録。アコースティックギターにヴァイオリンが鳴り響き
男女ヴォーカルを乗せた、牧歌的なフォークサウンドで、バーバラ・ガスキンの初々しい歌声が美しい。
2〜4分前後の小曲を主体にした、比較的シンプルな作風で、正規の1stアルバムに比べると、
マーティン・コッカーハムの歌声が力み過ぎていない分、素朴な味わいで楽しめる曲が多い。
英国フォークの歴史を彩るバンドの貴重音源集ということで、ファンの方は手に入れるべきでしょう。
アコースティック度・・8 優雅度・・8 英国フォーク度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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BRANDYWINE BRIDGE 「An English Meadow」
イギリスのフォークバンド、ブランディワイン・ブリッジの1978年作
アコースティックギターやマンドリン、バンジョーのつまびきにやわらかな女性ヴォーカルの歌声で、
素朴で優雅な味わいのフォークを聴かせる。リコーダーやホイッスルの牧歌的な音色も加わって、
ジェントルな男性ヴォーカルとともに、AMAZING BLONDELにも通じる中世音楽の感触もある。
楽曲は2〜3分前後とシンプルで、ほどよいマイナー感と比較的キャッチーな味わいが同居した好作品。
アコースティック度・・9 素朴度・・9 英国度・・9 総合・・7.5
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FLIBBERTIGIBBET「My Lagan Love」
MELLOW CANDLEの解散後、ギターのデヴィッドとヴォーカルのアリソンが南アフリカへ渡って結成したユニット。
1978年に「WHISTLING JIGS TO THE MOON」を発表して消えたが、本作はその前後に録音された未発表音源。
アコースティックギターのつまびきに美しい女性ヴォーカルを乗せた、優美なフォークサウンドで、
フィドルやリコーダー、素朴なマンドリンの音色が土着的な牧歌性を描きながら、70年代の香りに包まれる。
トラッドのカヴァーを中心にした、1〜3分前後の小曲で、ライブ音源なども含んだ雑多な内容ながら、
アリソン嬢のやわらかな歌声にはやはりウットリとなる。メロキャン好きならチェックすべき音源ですね。
アコースティック度・・9 素朴度・・8 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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CAEDMON 「LIVE」
スコットランドのフォークバンド、カエドモンのライブ作品。
1978年に唯一のアルバムを残して消えたバンドで、本作には1977、78年のライブ音源を収録。
1977年の音源は、わりとラウドなエレキギターにブズーキの音色、美しい女性ヴォーカルの歌声で聴かせる、
幻想的なフォークサウンドで、アコースティックギターやマンドリンの牧歌的なつまびきにときにシンセも加えて、
SPRIGUNSのように、ほどよくロック風味の感触もある。エレキギターをメインにしたナンバーでは、
普通にブリティッシュロックのリスナーにも楽しめそうで、70年代のフォークバンドではプログレ寄りといってよい作風だ。
後半の1978年の音源は、うって変わってアコースティック主体で、ゆったりと優雅な聴き地です。全14曲、70分収録。
わりとエレキ度・・8 牧歌的度・・7 英国フォーク度・・8 総合・・7.5
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CLANNAD 「Nadur」
アイルランドのケルティックバンド、クラナドの2013年作
70年代から活動するベテランで、オリジナルアルバムとしては、じつに1997年以来となる作品。
うっすらとしたシンセにアコースティックギター、そしてENYAの姉である、モイヤ・ブレナンのやわらかな歌声で、
しっとりとしたコンンテンポラリーなケルトミュージックを聴かせる。マンドリンやハープ、フルート、ホイッスルなどの
素朴な音色と、適度にキャッチーなフォーク風味が合わさって、いわば本格派過ぎない聴きやすさがこのバンドの魅力だろう。
といってもポップになることもなく、トラッドナンバーを含む楽曲自体の魅力もあって、深みを増したモイヤのヴォーカルとともに、
ジャケのイメージのような幻想的な雰囲気に包まれたサウンドが楽しめる。復活作としては見事な出来だと思う。
ケルティック度・・8 コンテンポラリー度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Marissa Nadler 「For My Crimes」
アメリカの女性SSW、マリッサ・ナドラーの2018年作
2004年にデビューし、本作で8作目となる。アコースティックギターのつまびきに、
はかなげな彼女の歌声を乗せた、シンプルな味わいのネオフォークサウンド。
チェロやヴァイオリンなどのストリングスを加え、寒々しい叙情性と倦怠の幻想性に包まれた
物悲しい世界観で、美しいヴォーカルとともにウットリしながら浸れること請け合い。
楽曲は2〜4分前後で、全34分という作品なので、飽きずに聴き通せるのもよいですね。
アコースティック度・・8 儚げ度・・9 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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ARTORIUS
イギリスのネオフォーク、アルトリウスの2007年作
アーサー王伝説をテーマにした作品で、うっすらとしたシンセをバックに映画的なナレーションから始まり、
アコースティックギターの優美な音色にやわらかなシンセアレンジ、女性ヴォーカルの歌声とともに、
幻想的なネオフォークを聴かせる。随所にエレキギターや男性ヴォーカルを加えたり、
IONAあたりにも通じるケルティックでシンフォニックな感触もあり、リコーダーが鳴り響く、
Gryphonのような優雅な古楽風味も覗かせる。自主制作ながら、ファンタジックな幻想美に浸れる好作品です。
アコーステッィク度・・7 幻想度・・8 優美度・・8 総合・・7.5

Fairytale 「Autumn's Crown」
ドイツのネオフォーク、フェアリーテールの2018年作
女性Vo、女性ヴァイオリン&Vo、女性チェロ奏者を含む編成で、アコースティックギターにマンドリン、
艶やかなヴァイオリンが鳴り響き、しっとりと美しい女性ヴォーカルを乗せた幻想的なネオフォーク。
ドラムによるリズムが加わると、BLACKMORE'S NIGHTにも通じるような、わりとキャッチーで
メディーヴァルなフォークロックとしても楽しめる。2人の女性声が重なると、ウットリするような優美な聴き心地で、
チェロやヴァイオリンの響きとともに、アコースティックでありながら厚みのあるサウンドに引き込まれる。
全体的には薄暗さや翳りが無い分、一般のリスナーにも取っつきやすく、ややライトな感触ではあります。
アコースティック度・・8 幻想フォーク度・・8 女性Vo度・・9 総合・・8
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HAVNATT「Havdegn」
ノルウェーのトラッド・フォーク、ハヴナットの2012年
VoとGの2人組ユニットで、アコースティックギターのつまびきに美しい女性ヴォーカルで聴かせる、
わりとシンプルなスタイルのフォークサウンド。母国語による伸びやか歌声が魅力的で、
北欧らしい涼やかな空気感とともに、しっとりとした幻想的な味わいに包まれる。
全5曲29分のミニアルバムであるが、透き通るようなヴォーカルの美しさで、
幻想美に包まれたアコースティックな女性声フォークとしての魅力は十分に感じられる。
アコースティック度・・8 涼やか度・・8 女性Vo度・・9 総合・・8
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HAVNATT「Etterlatte」
ノルウェーのトラッド・フォーク、ハヴナットの2013年作
アコースティックギターにやわらかな女性ヴォーカルを乗せた、幻想的な味わいのネオフォークで、
前作ミニに比べると、随所にヴァイオリン、チェロの音色が絡むなど、クラシカルな優雅さが強まった。
Cecille嬢の母国語による歌声は相変わらずしっとりと美しく、涼やかな北の空気を運んでくれる。
アコースティックを主体にした伝統的なトラッドとしての素朴な叙情と、コンテンポラリーで
優雅なアレンジセンスを同居させた、北欧らしいネオフォークサウンドにゆったりと浸れる。
アコースティック度・・8 涼やか度・・8 女性Vo度・・9 総合・・8
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Unni Lovlid 「Rite」
ノルウェーの女性シンガー、ユンニ・ローヴリの2008年作
エレクトロなシンセアレンジにしっとりとした女性ヴォーカルの歌声を乗せ、
物悲しいチェロの音色とともに、幻想的な味わいのフォークサウンドを聴かせる。
土着的なパーカッションの響きや、ホルン、フィドルなどの音色も加えたトラッド感触に
美しくもはかなげな女性声で、涼やかな薄暗さに包まれた神秘的な世界観を描きだす。
デジタルなアレンジを北欧トラッドに大胆に取り入れながら、空間的な静寂感に浸れる逸品です。
アコースティック度・・7 しっとり幻想度・・9 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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CAPRICE 「Sister Simplicity」
ロシアのゴシックフォーク、キャプライスの2005年作
物悲しいピアノの旋律にヴァイオリン、チェロの音色が絡み、男性声の語りによるイントロから、
美しい女性ヴォーカルの歌声を乗せて、しっとりと優美なサウンドが広がってゆく。
艶やかなストリングスが優雅に彩り、ときにオペラティックな、Inna嬢の歌声が魅力的に響き渡る。
のちの作品に比べると、幻想的な味わいは希薄だが、クラシカルなピアノにクラリネット、フルートが絡む、
チェンバーロック風の優雅さもあり、妖しい女性声とともに耽美な空気を描くところは素晴らしい。
クラシカル度・・9 優美度・・9 女性Vo度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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BALTAZAR 「Nusta La Leyenda De La Tirana」
スペインのトラッドロック・プロジェクト、ヌスタの2010年作
ミュージシャン、ロドリゴ・ヴィラセカ(バルタザー)による民族・ロックオペラ作品で、
スペイン語による女性ヴォーカルの歌声に牧歌的なパンパイプの音色を、
ドラムやギター、シンセによるロックアンサンブルに融合したサウンド。
民族的なおおかな優雅さと、キャッチーな感触が合わさった雰囲気で、
プログレ的な要素はさほどないがのんびりと楽しめる。男性声のナンバーもあるが、やはり女性声メインの曲が優美です。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・6 優雅度・・8 総合・・7.5

Amaia Zubiria & Pascal Gaigne 「Tasogare」
スペインの女性シンガー、アマイア・スビリアと音楽家、パスカル・ゲイニュのコラボ作。1996年作/邦題は「黄昏」
バスク地方を代表するアマイアと、フランス圏の現代クラシック音楽架のゲイニュによる初期の2作品、
1985年作「Egun Argi Hartan」、1986年作「Kolorez Eta Ametsez」から選曲されたナンバーに新曲を加えた作品。
伸びやかに美しいアマイアの歌声に、うっすらとしたシンセアレンジを加え、サックスやクラリネットが鳴り響く、
トラッドとフォーク、クラシック、ジャズ風味を足したような聴き心地で、これはなかなかプログレファン好み。
一方ではしっとりとしたピアノやヴァイオリンをバックにした現代クラシック的な歌もの曲や、アコーステイックギターに
パーカッションが鳴り響くフォークタッチのナンバーまで、素朴さと優雅さが同居したゲイニュのアレンジセンスが光る。
プログレ度・・7 優雅度・・9 女性Vo度・・9 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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Fia Na Roca「Agardando Que Pase Algo」
スペインのトラッドバンド、フィア・ナ・ロカの1996年作
デビューは1993年で、本作は2作目。パーカッションのリズムに素朴なマンドリンの音色、
ヴァイオリンやサックスが絡み、ときにロック的なドラムも加わったケルティックなトラッドを聴かせる。
ジャズタッチのピアノやシンセによるアレンジも含めて、優雅でスタイリッシュな感触で、
わりとキャッチーな味わいとともに、コンテンポラリーなケルトロック的にも楽しめる。
ほぼオールインストであるが、やわらかなアコーディオンの音色にホイッスル、ヴァイオリンなどが、
優美なメロディを奏でていて、耳心地よく鑑賞できる。ラスト曲には男性ヴォーカルも入ります。
アコースティック度・・9 ケルティック度・・8 優雅度・・9 総合・・8
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Fia Na Roca「Contravento」
スペインのトラッドバンド、フィア・ナ・ロカの2001年作
本作では女性Voがゲスト参加していて、優美なピアノの旋律に美しい女性ヴォーカルを乗せ、
ドラムのリズムにガイタやヴァイオリンの音色が艶やかに重なる、スパニッシュなケルトサウンド。
やわらかなホイッスルやアコーディオンの響きで、インストのナンバーでも親しみやすい聴き心地だ。
モダンでコンテンポラリーであっても、トラッドとしての伝統美と説得力は演奏から感じられ、
AMAROKほどにはプログレ寄りではないが、シンセを加えたナンバーもあったりと、
シンフォな味わいも覗かせる。個人的には女性声入りのナンバーがもっと増えると嬉しい。
アコースティック度・・8 ケルティック度・・8 優雅度・・9 総合・・8
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Fia Na Roca「Vente Vindo」
スペインのトラッドバンド、フィア・ナ・ロカの2007年作
女性Voをメンバーに加えた7人編成となり、スペイン語による女性ヴォーカルにアコーディオンの音色、
艶やかなヴァイオリンを乗せて、躍動的なスパニッシュ・トラッドを聴かせる。ドラムを加えたロック色と、
ガイタやホイッスルなどのケルティックで素朴な感触が同居した、絶妙のバランス感が素晴らしい。
やわらかな女性声も魅力的で、ゆったりとした哀愁溢れるナンバーなども、じつに優美な味わいで、
ジャズ要素もある軽妙なアンサンブルとともに、曲によってはAMAROKに接近したような雰囲気にもなる。
確かな演奏力でセンス抜群のスタイリッシュなトラッドロックが楽しめる傑作です。
アコースティック度・・8 トラッドロック度・・8 優雅度・・9 総合・・8.5
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10/12
台風のプログレ(225)


ROBERT REED 「SANCTUARY III」
イギリスのミュージシャン、ロバート・リードの2018年作
MAGENTAのシンセ奏者でもある彼が、Mike Oldfieldへのオマージュを込めて作り上げた作品の3作目。
今回も21分、20分という大曲2曲の構成で、メロウなギターに美しいシンセアレンジと女性ヴォーカルの歌声に
ピアノ、マンドリン、ビブラフォン、リコーダー、そしてチューブラーベルズなど、多くのアコースティック楽器を取り入れ、
繊細にして優雅なサウンドを構築してゆく。ドラムにサイモン・フィリップスが参加、随所にロック的な躍動感も覗かせつつ、
シンフォニックロックとしての起伏のある展開とともに、マイク・オールドフィールド的な壮麗で牧歌的な世界観を描き出す。
トム・ニューマンやトロイ・ドノクリーなどもゲスト参加。3部作まとめて鑑賞したいと思わせる優美な傑作である。
Disc2は、未発表曲や、トム・ニューマンによる本編の別ミックスを収録した全79分。DVDには5.1サラウンドミックスを収録。
シンフォニック度・・8 優美度・・9 オールドフィール度・・9 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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Pablo El Enterrador 「Threephonic」
アルゼンチンのプログレバンド、パブロ・エル・エンテラドールの2016年作
1983年に名作と名高いアルバムを残して解散後、1998年に再結成作を発表、本作は3作目として、
2004年に制作されながら、シンセ奏者の死去によりお蔵入りになっていた作品。
オルガンを含むやわらかなシンセに叙情的なギターを乗せた優美なシンフォニックロックで、
どことなく80〜90年代の香りを残した、くぐもったような湿り気に包まれた聴き心地。
スペイン語による歌声を乗せた南米らしい哀愁も覗かせつつ、きらびやかなシンセワークによる
壮麗な味わいと大人の枯れた味わいが同居していて、過去の2作に比べても決して引けを取らない。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・8 優美度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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TEXEL「ZOOMING INTO FOCUS」
イギリスとデンマークのミュージシャンによるユニット、テクセルの2018年作
オランダのプログレバンド、FOCUSをリスペクトして作られた作品で、やわらかなオルガンが鳴り響き
メロウなギターフレーズを乗せた、軽やかで優雅なアンサンブルで聴かせるインストサウンド。
前編オリジナルでありながら、ヤン・アッカーマンを思わせる流麗なギタープレイや、
フルートを加えた牧歌的な味わいなど、まさにかつてのフォーカスを思わせる聴き心地。
オールインストであるが、歌心のある叙情的なギターメロディが心地よく、ゆったりと楽しめる。
FOCUSのファンはもちろん、ヴィンテージな70年代風のインストプログレとしても魅力十分だ。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 フォーカス度・・8 総合・・8
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Poor Genetic Material 「Absence」
ドイツのプログレバンド、プアー・ジェネリック・マテリアルの2016年作
元BEGGARS OPERAのマーティン・グリフィスと、その息子である、フィル・グリフィスの親子ツインヴォーカル編成で、
うっすらとしたシンセにやわらかなフルートの音色、メロウなギターに、マイルドなヴォーカルを乗せて
繊細な叙情に包まれたシンフォニックロックを聴かせる。全体的に派手な展開というものはあまりないが、
ピアノを含む美しいシンセアレンジにメロウなギターと伸びやかな歌声で、ゆったりと優美なサウンドに浸れる。
基本はやわらかな歌ものメロディック・ロックであるが、アルバム後半の10分、18分という大曲では、
キャッチーな抜けの良さと、大人の哀愁に包まれたしっとりとした叙情美がそれぞれに味わえる。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 優美度・・8 総合・・7.5
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PAUW 「Macrocosm Microcosm」
オランダのサイケロック、パウの2015年作
シンセを含む4人編成で、オルガンやメロトロンといったヴィンテージなシンセに
中性的でエモーショナルヴォーカルを乗せた、キャッチーなサイケロックを聴かせる。
ハード過ぎないギターがメロウな旋律を奏で、やわらかなフルートにメロトロンが重なると、
シンフォニック寄りのプログレ感触にもなって、じつに優しい耳心地で楽しめる。
70年代ルーツの作風でありながら、クサみのないスタイリッシュなアンサンブルは、
サイケ化したシガー・ロスという雰囲気もある。ゆったりとまどろめる優美なサイケです。
メロディック度・・8 サイケ度・・8 優美度・・9 総合・・8
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Klaus Schulze 「La Vie Electronique 5」
クラウス・シュルツェの未発音源集その5。2010年作
1976〜77年のライブ音源を主体にしたマテリアルをCD3枚に収録。アナログシンセを含む時期の、
幻想的なシンセの重ねによる美しいサウンドで、ときおりノイズも入りつつ音質は良好。
Disc1には、24分、48分、Disc2は、34分、27分、そしてDisc3は、52分、23分という
組曲方式の大曲を収録。70年代らしいアナログ感とともに、スペイシーな静謐感に包まれた、
壮大なシンセミュージックが楽しめる。Disc2とDisc3では、シーケンサーのリフレインを絡めた
厚みのあるシンセにより、きらびやかさと薄暗い幻想性がバランスよく同居した聴き心地になっている。
ドラマティック度・・8 幻想度・・9 シンセ度・・10 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Klaus Schulze 「La Vie Electronique 9」
クラウス・シュルツェの未発音源集その9。2011年作
Disc1には、1982年ブダペストでのライブ音源を収録。デジタルシンセを使用し始めた時期であるが、
1978年作「X」収録の「ルートヴィヒ」を基にした21分の組曲は、ストリングスやドラムが加わった、
起伏のある構成とともに、シンフォニックな優雅さに包まれる。後半はテクノプログレ的な39分の大曲で、
シュルツェにしては手数の多いシンセワークが楽しめる。Disc2には1983〜85年のマテリアルで、
シーケンサーによるデジタルなリズムにシンセのリフレインを重ねた、わりとシンプルな聴き心地。
Disc3には1984〜85年のマテリアルで、サイケな浮遊感を含んだ、53分という長大な組曲などを収録。
ドラマティック度・・7 幻想度・・8 シンセ度・・9 総合・・8
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Klaus Schulze 「La Vie Electronique 10」
クラウス・シュルツェの未発音源集その10。2011年作
Disc1には1985年のドイツのラジオ用のライブ音源などを収録。デジタルシンセを主体にした53分という組曲は、
クラシカルな優雅さに包まれながら、デジタルなビート感とともにスリリングに展開する圧巻の大曲。
Disc2には1985年に録音された、アメリカ映画「ジェイソン/地獄の綱渡り」とノルウェー映画のサントラ音源を収録。
リフレインを多用した比較的シンプルなサウンドながら、ノルウェーの方は薄暗い空気に包まれた幻想的な聴き心地。
Disc3には1991〜92年のマテリアルを収録。1991年スペイン公演で演奏されたライブ音源は、シュルツェにして短めの(?)
10分、20分台で、スパニッシュ風の異色のナンバーもある。ラストはバッハの「G線上のアリア」の優美なアレンジでウットリです。
ドラマティック度・・8 幻想度・・8 シンセ度・・8 総合・・8
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FRANZ DI CIOCCIO & FRANCO MUSSIDA「ATTILA」
イタリアのプログレバンド、PFMのフランツ・ディ・チョチョとフランコ・ムッシーダによる1983年作
フン族の王、アッティラにまつわる、1982年作のコメディ史劇映画のサントラであるが、
生演奏による軽やかなアンサンブルで、わりとポップな感触ながらも、ときにサックスやヴァイオリン、
女性ヴォーカルも加わって、PFMにも通じる優雅なフュージョン・ジャズロック風のナンバーや、
ロック調のナンバーもあったりして、これがなかなか楽しめる。後半はフィルムバージョンを収録。
マウロ・パガーニ、ルシオ・ファビッリといったPFMのメンバーもゲスト参加している。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 PFM度・・7 総合・・7.5
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LIZARD 「TALES FROM ARTICHOKE WOOD」
ポーランドのプログレバンド、リザードの2005年作
1996年にデビュー、クリムゾンをルーツにしたシンフォニックロックを聴かせるこのバンド。
本作は3作目で、軽やかなドラムと巧みなベースによるリズムに、やわらかなシンセアレンジと、
マイルドなヴォーカルを乗せて、スタイリッシュな叙情に包まれた軽妙なサウンドを聴かせる。
随所に艶やかなヴァイオリンも重なって、美しいシンセとともに優雅なシンフォニック性に包まれながら、
ポーランド語の歌声が東欧らしい湿り気を帯びた空気を描く。演奏力の高さがインストパートでの説得力となり、
ほどよい緊張感を作り出しているのが見事。ポリッシュ系プログレの中でも、玄人好みの質の高さが光る逸品だ。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 優雅度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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HILDEGARD
アメリカのプログレバンド、ヒルデガルドの2015年作
わりとハードなギターにモダンなシンセアレンジ、フェミニンな女性ヴォーカルを乗せて、
優雅でコケティッシュなサウンドを聴かせる。ほどよくテクニカルなリズムチェンジと
カンタベリー的でもある軽妙な展開力で、やわらかなジャズロック風味も含んだ作風は、
BENT KNEEなどにも通じるいくぶんエキセントリックで、スタイリッシュなセンスを感じさせる。
ストリングスアレンジを加えたクラシカルなナンバーなど、しっとりとした耳心地の良さに包まれ、
エレピを含む優雅なシンセと美しい女性声をメインにしたサウンドが味わえる好作品。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 優雅度・・9 総合・・8
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Spaced Out
カナダのテクニカル・ジャズロック、スペイスト・アウトの2000年作
軽やかなドラムと存在感あるベースによる有機的なリズムに、やわらかなシンセと巧みなギターを乗せて、
PLANET Xあたりにも通じる、テクニカルでスペイシーなプログレ・フュージョンロックを聴かせる。
奔放に弾きまくるギターは、ときにアラン・ホールズワースを思わせつつ、変則リズムやキメを含む
技巧的なアンサンブルで、スタイリッシュなインストサウンドを描いてゆく。テクニカルではあっても、
シンセやギターのフレーズにはほどよく叙情性が感じられるので、全体的に硬質すぎない聴き心地で、
テクニカルロックの初心者でも楽しめるはず。3作目以降に比べると、より優雅なサウンドが心地よい。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・8 優雅度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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9/20
初秋のプログレ(213)


Woolly Wolstenholme 「Strange Worlds: A Collection 1980-2010」
イギリスのミュージシャン、ウーリー・ウォルステンホルムのアンソロジー。2018年作
BARCLAY JAMES HARVESTのシンセ奏者で、MANDALABANDにも参加、近年はソロプロジェクトMAESTOSOで活躍しながら、
2010年に逝去した彼の全作品を収録したボックス。ソロ名義の1980年作「MAESTOSO」、1994年作「BLACK BOX RECOVERED」、
MAESTOSO名義の2004年作「ONE DROP IN A DRY WORLD」、2005年のライブ作「FIDDLING MEANLY」、2005年作「GRIM」、
2007年作「CATERWAULING」、そして生前に書き残した未発表音源集を収録した、CD7枚組。ソロ名義の2作は、BJHにも通じる
牧歌的でキャッチーな味わいで、英国らしい優雅さに包まれたサウンドが楽しめる。マエストソとしての3作+ライブでは、
よりドラマティックなシンフォニックロックを志向して、クラシカルな壮麗さに大人の叙情美が合わさった作風が素晴らしい。
Disc7の未発音源20曲はいずれも初出で、ファンには嬉しい限り。優雅な叙情とメロディに溢れた作品群を改めて再評価すべし。
メロディック度・・8 優美度・・9 英国の叙情度・・9 総合・・8.5 過去のレビューはこちら
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MAGENTA 「We Are Legend」
イギリスのプログレバンド、マジェンタの2017年作
2001年にデビュー、女性Voをフロントにしたキャッチーなサウンドで、いまや英国シンフォを代表するバンドのひとつ。
スタジオ作品としては8作目で、26分、10分、11分という大曲3曲を収録した、コンセプト的なアルバムとなった。
美しいシンセアレンジに適度にハードさを含んだ叙情的なギターを重ねて、優雅で軽やかなアンサンブルに、
紅一点、クリスティーナ・ブースの伸びやかな歌声を乗せた、ドラマティックなシンフォニックロックを展開。
バンドとしての演奏力も、クリスティーナの歌唱の表現力も、ずいぶん上がっていて、アコースティックパートなどを含む
メリハリのある構築力と、物語的な流れを感じさせる展開美で、キャリアのあるバンドらしい大人の叙情に包まれた、
レベルの高いプログレサウンドを描いてゆく。優雅でドラマティック、文句なく傑作といえる内容です。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 優雅度・・9 総合・・8 過去のレビューはこちら
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MAGENTA 「We Are Seven」
イギリスのプログレバンド、マジェンタのライブ。2018年作
Disc1には、2017年作「We Are Legend」からの全曲を含むセットで、過去作からのナンバーも披露、
安定したリズム隊に、ロバート・リードのきらびやかなシンセとクリス・フライの巧みなギターワーク、
クリティーナ・ブースの伸びやかな歌声を乗せて、優美で叙情的なシンフォニックプログレを聴かせる。
26分の大曲を構築するバンドとしての確かな力量も見事で、ライブ演奏における貫禄も備わってきた。
Disc2には、2004年作「Seven」の全曲を収録。YESをルーツにしたオールドなプログレ感触に包まれて、
優雅でキャッチーなメロディアス性で楽しめる。バンドの現在形と、過去作の再現が両方味わえるライブですな。
ライブ演奏・・8 プログレ度・・8 優雅度・・9 総合・・8
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LIFESIGNS 「Live in London: Under the Bridge」
イギリスのプログレバンド、ライフサインズのライブ作。2016年作
ジョン・ウェットン・バンドやグリーンスレイドなどで活動するシンセ奏者、ジョン・ヤングを中心にしたバンドで、
2015年ロンドンでのステージを2CD+DVDに収録。1stの全曲に、2ndから数曲、ジョン・ヤング・バンドのナンバーも含むセットで、
メロディックなギターとやわらかなシンセワーク、ジェントルなヴォーカルを乗せて、優美な叙情に包まれたサウンドを描きだす。
キャッチーなコーラスハーモニーなども含めて、キャリアのあるメンバーらしい落ち着いたプレイと繊細な表現力で、
大人の味わいの英国プログレを堪能できる。各楽器の音のバランスもよく、うるさすぎない音圧が臨場感となっていて、
フロスティ・ビードルの巧みなドラムをはじめ、インストパートでの軽やかなアンサンブルを際立たせている。
DVDでの映像も素晴らしく、カメラワーク、ライティングも含めて臨場感あるステージを視覚的に楽しめる。
ライブ演奏・・9 ライブ映像・・9 大人の叙情度・・9 総合・・8 過去のレビューはこちら
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IT BITES 「It Happened One Night」
イギリスのプログレハード、イット・バイツのライブ作。2011年作
2009年の英国でのライブを2CD+2DVDに収録。メンバー全員が白い衣装というのも、なんとなく80年代的であるが、
2008年作「The Tall Ships」からのナンバーを中心に、80年代の傑作「Once Around the World」からのナンバーも披露。
適度にハードで軽やかなアンサンブルとキャッチーなメロディアス性に包まれた、サウンドはライブにおいても魅力は十分だ。
バンドのフロントである、ジョン・ミッチェルの巧みなギターと味わいのあるヴォーカルに、メンバー全員のコーラスハーモニーが重なり、
ジョン・ベックのオルガンを含む繊細なシンセワークもさすがで、安定した演奏力とともに優雅なプログレハードが再現される。
DVDの画質がさほど良くはないのと、CDの音源ではバスドラがややラウドに感じるのが残念なのだが、
ラストでの大曲「Once Around the World」、アンコールの「This Is England」などはとても感動的だ。
ライブ演奏・・8 ライブ映像・・7 プログレハー度・・8 総合・・8 過去のレビューはこちら
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PAUL CUSICK 「FOCAL POINT」
イギリスのミュージシャン、ポール・カシックの2010年作
ギター、ベース、シンセ、ヴォーカルをこなすマルチミュージシャンで、適度にハードなギターに美しいシンセアレンジ、
マイルドなヴォーカルを乗せて、モダンな翳りを含んだスタイリッシュなサウンドを聴かせる。
メロウなギターの旋律にシンセを重ねたシンフォニックな叙情性に、ポストプログレ的な繊細さ、
キャッチーなメロディックロックというノリのナンバーなど、わりと振り幅の大きな聴き心地で楽しめる。
全体的に派手なインパクトはないものの、じっくりと作り込まれた大人のモダン・プログレの好作だ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 スタイリッシュ度・・8 総合・・7.5 
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LINDA HOYLE 「The Fetch」
イギリスの女性シンガー、リンダ・ホイルの2016年作
AFFINITYのヴォーカルとして知られる彼女の、ソロとしては1971年作以来、44年ぶりとなるとなる2作目。
アフィニティーのモ・フォスターをはじめ、元CARAVANのダグ・ボイル、元STACKRIDGEのピーター・ヴァン・ホーク
さらには、ゲイリー・ハズバンドなどが参加。彼女のやわらかな歌声を中心に、ジャズやアンビエントな感触を含んだ
大人の叙情に包まれたしっとりとした聴き心地で、アコースティックギターにヴァイオリンの音色を乗せた、
英国らしいフォーク風味のナンバーなども魅力的。オルガンが鳴り響く70年代風のナンバーもよいですね。
ロジャー・ディーンのジャケも嬉しいが、内容も深みを増した彼女の歌声を楽しめる好作品です。
プログレ度・・6 大人のアンビエントジャズ度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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Stackridge「The Final Bow ,Bristol 2015」
ブリティッシュロックバンド、スタックリッジのライブ作品。2017年作
1971年にデビュー、1976年までに5作を残して消えるも、1999年に復活、2009年にも作品を発表しながら、
その後、再び解散を表明、本作は、バンドのラストツアーとなった、2015年のライブを2CDに収録。
アンディ・デーヴィス、ジェームズ・ウォーレンの2人のオリジナルメンバーを中心に、女性ヴァイオリン&Voを含む
5人編成で、やわらかなピアノに女性ヴォーカルの歌声を乗せてしっとりと幕を開け、やわらかなシンセに
ヴァイオリンが鳴り響き、ジェントルなヴォーカルを乗せた、牧歌的な味わいのサウンドが広がってゆく。
英国フォークをルーツにした素朴な叙情と、ビートルズ以降のキャッチーなポップセンスが融合した、
聴き心地の良さは最後まで不変。オリジナルフルート奏者のマター・スレーターがゲスト参加、
70年代の初期のナンバーもたっぷり含んだ、オールドファンも必聴のライブ作品です。
ライブ演奏・・8 プログレ度・・7 英国度・・9 総合・・8 過去のレビューはこちら
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GREENSLADE 「Large Afternoon」
イギリスのプログレバンド、グリーンスレイドの2000年作
1973〜75年までに4作を残して消えたバンドの、じつに25年ぶりとなる復活作。
ツインキーボードの4人編成で、シンフォニックなシンセの重ねで聴かせる優美なサウンドで、
ジェントルなヴォーカルを乗せた、大人の歌ものナンバーも含めて、ゆったりと落ち着いた作風。
プログレ的な展開力や躍動感はあまりなく、インストの曲はシンセをメインにしたフュージョン風味で、
耳触りの良いBGMになりがちなのが好みを分けるところ。オルガンはほとんど使われないので、
70年代のスタイルとは異なるが、むしろ現代的で優雅なキーボードロックを味わえる好作品だ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・6 キーボー度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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Lady June 「Hit & Myth」
イギリスの女流詩人、レディ・ジューンの1996年作/邦題「あてこすりとつくりばなし」
カンタベリー方面に関係の深いアーティストで、1974年作「堕落詩人」はケヴィン・エアーズが全面参加していたが、
本作はじつに22年ぶりとなる作品。語りを含む魔女めいた歌声を乗せた、幻想的なサイケ・フォークという作風で、
アコースティックな牧歌性とともに、GONGにも通じるサイケな浮遊感が同居した聴き心地。
ヴァイオリンが鳴り響く、英国らしいアシッドフォーク風味もありつつ、詩の朗読などの独自の寓話的な世界観は、
やや聴き手を選ぶかもしれないが、これもカンタベリーから生まれた音楽芸術のひとつというべきだろう。
なお、本作を残したあと、彼女は1999年に死去している。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 サイケ・フォーク度・・8 総合・・7
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ORDO EQUITUM SOLIS「PLANETES」
イタリアのゴシックユニット、オルド・イクイタム・ソリスの1998年作
1990年デビュー、本作は5作目で、アコースティックギターにうっすらとしたシンセ、
美しい女性ヴォーカルの歌声で聴かせる、妖しく幻想的なダークアンビエント。
美麗なシンセにフルートの音色が重なるプログレ寄りの感触も覗かせつつ、
クラシカルな優雅さと魔女めいた世界観が合わさったサウンドが楽しめる。
ときに男性声によるイタリア語の語りなども加えたシアトリカルな雰囲気もあり、
派手な盛り上がりなどはないものの、ゆったりと耽美な空気に浸れる。
クラシカル度・・7 耽美度・・8 幻想度・・8 総合・・7.5 過去のレビューはこちら
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ORDO EQUITUM SOLIS「METAMORPHOSIS」
オルド・イクイタム・ソリスの2000年作
シンセと詠唱、語りを含んだ、9分におよぶ序曲からして、すでに妖しげな香りがぷんぷん。
アコースティックギターにパーカッションのリズム、しっとりとした女性ヴォーカルの歌声に、
トランペットなども加えた、ゴシックチェンバー的な雰囲気や、シンセをメインにしたシンフォニックなナンバーなど、
とにかく耽美な世界を描くという点では、Lacrimosaあたりの精神性に通じるものがあるかもしれない。
一方では、大仰になり過ぎない、ダークになり過ぎないという、煮え切らないもどかしさも残るのだが。
オルガンを使ったプログレ寄りのナンバーなどもよい感じで、優雅な聴きやすさで楽しめる。
クラシカル度・・7 耽美度・・8 幻想度・・8 総合・・7.5
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ORDO EQUITUM SOLIS 「Killing Time Killing Love」
イタリアのゴシックユニット、オルド・イクイタム・ソリスの2013年作
13年ぶりとなる7作目で、これまでの男女ユニットにベーシストが加わった3人編成となっている。
アコースティックギターのつまびきに、たゆたうような女性ヴォーカルとうっすらとしたシンセアレンジ、
ベースとドラムによるリズムによって、いくぶんロック寄りの感触が強まったという印象。
ときにシンフォニックなシンセの重ねやピアノのつまびきで、耽美でクラシカルなサウンドを描く、
幻想的なゴシック世界は不変。Leithana嬢の艶めいたヘタウマな歌声も、もはや魅力のひとつだろう。
相変わらず派手な大仰さというのはないのだが、この中庸なダークウェーブに浸れる方はどうぞ。
クラシカル度・・7 耽美度・・8 幻想度・・8 総合・・7.5
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8/31
残暑のプログレ(200)


OSADA VIDA 「VARIOMATIC」
ポーランドのモダンプログレ、オサダ・ヴィダの2018年作
2000年にデビューし、本作で9作目となる。近作でのメロディックなスタイルをより深化させ、
エレクトロな感触のシンセアレンジに適度にハードなギター、マイルドなヴォーカルを乗せた、
スタイリッシュなハードプログレを聴かせる。随所に叙情的なギターフレーズとシンセの重ねで、
シンフォニックな感触も残しつつ、歌もの的なシンプルなキャッチーさにポストプログレ的な繊細さも同居した、
非常にセンスのよいバランス感覚である。サックスが鳴り響く大人の優雅さと、オルタナ的でもある硬質感、
モダンと繊細な美意識が溶け合った聴き心地で、キャリアを経てほどよく肩の力が抜けた自然体の好作品といえる。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 スタイリッシュ度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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THE SAMURAI OF PROG「SECRETS OF DISGUISE」
フィンランドのミュージシャンを中心にしたプログレユニット、サムライ・オブ・プログの2013年作
KING CRIMSON、YES、GENESIS、ENGLAND、GENTLE GIANT、PFM、SANDROSE、VDGG、RUSH、CRACKなどのカヴァーに
一部オリジナルを含む全15曲を2CDに収録。ロバート・ウェッブが自ら参加した、ENGLANDの大曲で幕を開け、メロウなギターに
オルガン、メロトロン、男女ヴォーカルで優美なアレンジを聴かせる。CRACKのMento Heviaがチェロで参加したセルフカヴァーに、
GENESIS「Dancing With The Moonlit Knight」、KING CRIMSON「One More Red Nightmare」、男ヴォーカルのSANDROSE
そして、元GLASS HAMMER、現YESのJon Davisonが参加しての、YES「Time And A Word」なども、なかなかハマっている。
Disc2では、ロイネ・ストルト、故ガイ・ルブラン(Nathan Mahl)などが参加した、Todd Rundgren's Utopiaの大曲から、
女性ヴォーカルの、RUSH「Jacob's Ladder」のカヴァーもよい感じだ。ラストはラブクラフトのオムニバス収録のオリジナル大曲。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 カヴァー度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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THE SAMURAI OF PROG「The Imperial Hotel」
フィンランドのミュージシャンを中心にしたプログレユニット、サムライ・オブ・プログの2014年作
過去2作のカヴァー路線から、本作ではついにオリジナルの楽曲による作品となり、ENGLANDのRobert Webbをはじめ、
JINTES NEGROSのOctavio Stampalia、BRIGHTEYE BRISONのLinus Kase、といったメンバーが楽曲を担当。
やわらかなシンセにキャッチーな歌メロを乗せたYesを思わせるナンバーから、KENSOの清水義央も参加して
メロウなギターを奏でつつ、艶やかなヴァイオリンも鳴り響く優雅なインストパートなど、なかなか濃密な聴き心地。
28分を超えるタイトル曲では、ガブリエル似のヴォーカルを乗せたGENESIS風の作風で、フルートやピアノも美しい
繊細な叙情にゆったり浸ることができる。どこを切っても、シンフォプログレ愛に溢れたサウンドが楽しめる逸品です。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・8 優美度・・8 総合・・8
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THE SAMURAI OF PROG 「OMNIBUS:The Early Years」
フィンランドのミュージシャンを中心にしたプログレユニット、サムライ・オブ・プログの2018年作
2011年作「Undercover」、2013年作「SECRETS OF DISGUISE」2CD、2014年作「The Imperial Hotel」を収録したCD4枚組のボックス。
GENESIS、YES、EL&P、PINK FLOYD、ARTI E MESTIERI、MARILLION、THE FLOWER KINGSなどを比較的忠実にカヴァーした1作目、
KING CRIMSON、YES、GENESIS、ENGLAND、PFM、SANDROSE、RUSH、CRACKなどをよりマニアックにカヴァーした2作目では、
ロバート・ウェッブなど、自らが参加してのセルフカヴァーが楽しめる。ボーナスに、EL&P「悪の教典#9第二印象」などを追加収録。
3作目では、初のオリジナルに挑戦、多くのゲストとともに優美なプログレ/シンフォニックロックを作り上げた。ボーナスとして
HOSTSONATENのLuca Scheraniが作曲、MUSEO ROSENBACHのステファノ・ガリフィがヴォーカルを取るイタリアンなシンフォ曲や、
IL TEMPIO DELLE CRESSIDREのエリサ・モンタルド嬢がキーボード&ヴォーカルもとる優美なナンバー、さらには
LATTE E MIELEの名作「パピヨン」からのセルフカヴァーも追加収録。初期の作品は入手困難なのでファンには嬉しいだろう。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・8 お買い得度・・9 総合・・8.5
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Flying Colors「SECOND FLIGHT: LIVE AT THE 27」
TRANSATLANTICのニール・モーズに、Deep Purple、Dixie Dregsのスティーヴ・モーズ
元DREAM THEATERのマイク・ポートノイらによるユニット、フライング・カラーズのライブ作品。2015年作
2作目となる「Second Nature」のナンバー全曲に、1作目からの楽曲も収録したCD2枚組のライブ。
手数の多いポートノイののドラムを土台に、流麗なツインギターにオルガンを含むシンセが重なり、
ケイシー・マクファーソンのマイルドなヴォーカルで、キャッチーな叙情的なプログレハードを展開。
デイヴ・ラルー(DIXIE DREGS)のベースも、アルバム以上に存在感があって、まさに鉄壁のリズムアンサンブルだ。
適度にテクニカルなインストパートに、歌もの的なメロディアス性と、アメリカンロックの爽快な抜けの良さが合わさった
バランスのとれた聴き心地は、トランスアトランティックよりもさらに普遍的なメジャー感触があり、
むしろプログレというよりは、大人のメロディックロックとしても多くのリスナーに楽しめる内容だろう。
ライブ演奏・・9 プログレ度・・7 大人のプログハー度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Light Freedom Revival 「Eterniverse Deja Vu」
アメリカのプログレハード、ライト・フーダム・リヴァイバルの2017年作
ギター&ヴォーカルのジョン・ベハディアを中心としたユニットで、ドラムとベースにビリー・シャーウッド、
シンセにオリヴァー・ウェイクマン、ギターにエリック・ジレット(The Neal Morse Band)が参加、
ファンタジックなジャケからは、きらびやかなシンフォニックロックを想像させるが、サウンドの方は、
ポップでキャッチーな歌もの系AORで、美しいシンセにメロディックなギター、女性コーラスも加わった
なかなか華やかな聴き心地。4〜5分前後の楽曲は、わりとシンプルでライトな感触ながら、
O.ウェイクマンの繊細なシンセワークなど、優美な叙情に包まれたシンフォニックなプログレハードが楽しめる。
キャッチー度・・8 プログレ度・・6 優美度・・8 総合・・7.5
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SYNERGY 「SEQUENCER」
アメリカのシンセ奏者、Larry Fastによるプロジェクト、シナジーの1976年作
1975年作「10番街の殺人」に続く2作目。シンセの重ねによるきらびやかなサウンドで、
ムーグをはじめ多彩なシンセにチェンバロの音色なども使った、クラシカルなシンフォニック性と
やわらかなメロディによるキャッチーな抜けの良さが同居した、じつに優美な聴き心地。
ドヴォールザークの「新世界」から「家路」をカヴァーした叙情的なナンバーから、ラストの11分の大曲は、
シンフォニックでスペイシーなスケールの大きなサウンドに包まれる。キーボード好きは必聴の逸品です。
クラシカル度・・8 プログレ度・・7 シンセ度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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SYNERGY 「Reconstructed Artifacts」
アメリカのシンセ奏者、Larry Fastによるプロジェクト、シナジーの2002年作
1987年以来、15年ぶりとなる作品で、過去作の楽曲をリレコーディングした作品となっている。
美しいシンセの重ねによるサウンドで、70年代の楽曲も当時の雰囲気を残したやわらかな聴き心地。
デジタル技術の向上からよりクリアになったシンセサウンドであるが、クラシカルなメロディセンスは、
かつてと同じ優雅な感触に包まれていて、違和感のないシンフォニックな味わいで楽しめる。
1975年作「10番街の殺人」から、86年作「Metropolitan Suite」までの楽曲を収録していて、
ラリー・ファストという希代のシンセ使いの作品に初めて触れる方にもお薦めの内容だ。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 シンセ度・・9 総合・・8
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Under The Big Tree
アメリカのシンフォニックロック、アンダー・ザ・ビッグ・トゥリーの1997年作
EPISODEのシンセ奏者NICK PECKを中心に、多数のミュージシャンが参加したプロジェクト作品。
オルガンが鳴り響くヴィンテージなプログレ感触に、マイルドなヴォーカルとともに薄暗い叙情に包まれる。
メロディックなギターに優美なピアノを乗せた繊細さと、アメリカらしいキャッチーで牧歌的な雰囲気もありつつ、
全体的には、90年代のB級シンフォニックにありがちな、盛り上がり切らないところもまた微笑ましい。
EPISODEもそうだったように、ヘタウマなジャケのイメージ通りの作品。マニアの方はどうぞ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 優雅度・・8 総合・・7
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WITSEND 「Cosmos And Chaos」
アメリカのシンフォニックロック、ウィットセンドの1993年作
のちのSyzygyの母体となるバンドで、ギター、シンセ、ドラムというトリオ編成。
オルガンを含む美しいシンセにギターを重ね、古き良き感触のリリカルなプログレを聴かせる。
ハケットを思わせるようなメロディックな泣きのギターも耳心地よく、マイルドなヴォーカルを乗せた
優しい叙情性とともに、ゆったりとした味わいで楽しめる。マイナー系バンドにしては演奏も安定していて、
テクニカルなアンサンブルのプログレナンバーから、アコースティックギターや優美なピアノの小曲など
繊細でクラシカルなセンスも覗かせる。のちのSyzygyへとつながるだけある優雅な逸品である。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 優雅度・・8 総合・・8
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Montesano 「El Pasillo」
アルゼンチンのミュージシャン、グスタヴォ・モンテサーノの1982年作
CRUCISのKey奏者として知られるミュージシャンで、前作「HOMENAJE」も素晴らしい出来だったが
今作は2〜4分前後の小曲を主体に、メロディックなギターに美しいシンセを重ね、
マイルドなスペイン語の歌声を乗せたキャッチーな作風となっている。タンゴなどの感触を含む
南米らしいやわらかな叙情性とともに、優雅なプログレハードというべきサウンドが楽しめる。
曲によっては、プログレ、シンフォニックロックとしてのドラマティックな雰囲気も残していて、
哀愁を感じさせるギターフレーズに美麗なシンセワークもさすがのセンスを覗かせる。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 優雅度・・8 総合・・8
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KLAUS SCHULZE 「BIG IN JAPAN」
ジャーマンシンセミュージックの巨匠、クラウス・シュルツェのライブ。2010年作
2010年に行われた奇跡の来日公演のステージを、2CD+DVDに収録。序盤は単調なリフレインが延々と続き、
19分過ぎてからシーケンサーのリズムとともに、デジタルな空間性に包まれたシンセサウンドが広がってゆく。
Disc1は、38分、39分の大曲2曲で、幻想的にシンセが重なる2曲目の美しさには、思わずうっとりとしてしまう。
曲の後半ではなんと自らギターも弾いて、シンセとの独りコラボを聴かせる。Disc2には、46分、14分、12分の3曲を収録。
優美なシンセにドラムのリズムを加えた、わりと聴きやすい大曲で、デジタルな音の向こうに、人間シュルツェが見え隠れする。
筆者もこの公演を見に行き、静謐感に包まれたスケールの大きなシンセサウンドに感激した、あのときの記憶が蘇った。
ライブ演奏度・・8 幻想度・・8 シンセ度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Klaus Schulze 「La Vie Electronique 11」
クラウス・シュルツェの未発音源集その11。2012年作
1992〜93年にかけてのマテリアルをCD3枚に収録。90年代に入って、多重シンセの録音技術が向上したことで、
デジタルシンセによる自然な美しさに、サックスの音色やクラシカルなストリングスが加わった、
優美なシンフォニック性と、シーケンサー的なリフレインによるエレクトロ色が合わさった聴き心地。
ときにオペラティックな女性スキャットやフルートなど、優美な叙情をスペイシーなシンセと融合した、
90年代的らしいデジタルなシュルツェサウンドが楽しめる。Disc2では、かつての傑作「TIMEWIND」のような
ダークでクラシカルな世界観で、ワーグナーかマーラーかというような幻想的なスケール感に包まれる。
ほとんどの曲が20分を超える大曲で、CD3枚で合計225分という大ボリュームです。
ドラマティック度・・8 幻想度・・8 シンセ度・・9 総合・・8
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Amartia 「Maieutics」
フランスのシンフォニックロック、アマルティアの2006年作
適度にハードなギターにうっすらとしたシンセ、はかなげな女性ヴォーカルを乗せた、
マイナーな翳りに包まれた、いくぶんゴシック寄りのシンフォニックロックサウンド。
アンニュイな空気感に包まれつつ、こもり気味の音質がいかにも自主制作的ながら、
叙情的なギターフレーズや美しいシンセにクラシカルなピアノ、ヴァイオリンなども加えた、
優雅な耳心地の良さがある。11分という大曲もゆったりとした夢見心地の幻想性に包まれて、
けだるげな空気がわりと魅力的であったりする。上手すぎない女性Voもよい味わいです。
シンフォニック度・・7 優美度・・8 女性Vo度・・7 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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8/16
台風一過のプログレ(186)


GLASS HAMMER「Untold Tales」
アメリカのシンフォニックロック、グラス・ハマーの2017年作
デビュー25周年記念の作品で、未発音源に、再録、ライブ、カヴァー音源を加えた企画アルバム。
未発音源の中には、トレイシー・クラウドのソロ作やコンピレーションへの提供曲など、
すでに聴いているものもあるが、12分を超える長さの90年代の未発音源などは、
きらびやかなシンセとメロウなギターで、シンフォニックロックの王道というサウンドが楽しめる。
AGENTのカヴァーは意外な選曲だが、THE BEATLESのカヴァーは、女性ヴォーカルを乗せた
優美なアレンジでなかなかハマっている。インストによる小曲なども挟みつつ、バンドの過去から、
現在形のライブ音源までを網羅した、全72分のグラスハマー祭り。ファンの方はどうぞ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 未発音源度・・7 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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COMEDY OF ERRORS 「Disoby」
イギリスのプログレバンド、コメディ・オブ・エラーズの2011年作
80年代に結成され、いったんは活動を停止したものの復活。きらびやかなシンセに適度にハードなギター、
中性的なヴォーカルを乗せた正統派のシンフォニックロックを聴かせる。叙情的なギターフレーズに、
美麗なシンセワークが重なる、ほどよくキャッチーでメロウなサウンドは、GENESISルーツの英国シンフォとしては、
BIG BIG TRAINなどにも引けをとらない。哀愁を含んだコーラスハーモニーなどは、NEAL MORSEなどにも通じるか。
ラストは24分におよぶ組曲で、優美なメロディアス性に包まれた、ドラマティックな展開力で盛り上げる。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・8 英国シンフォ度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Nuova Era 「Return To The Castle」
イタリアのプログレバンド、ヌオヴァ・エラの2016年作
1988年にデビュー、イタリアン・ネオプログレの先駆けというべきバンドのひとつで、
オリジナルアルバムとしては、1994年作以来、22年ぶりとなる復活作。メロトロンにオルガン、フルートが鳴り響く、
ジャケのイメージ通りの、変わらぬ懐古主義を貫く、ロマン溢れるイタリアン・シンフォニックロックを聴かせる。
渋みのあるギターフレーズは、むしろ英国のバンドのようで、70年代プログレをルーツにしたヴィンテージな感触と、
イタリアンロック特有のくぐもったような野暮ったさも、もはや味わいとなっていて、おもわずニンマリとしてしまう。
今作はインスト曲が多いので、全74分は少し長尺であるが、古き良きロマン派のシンフォプログレ好きはチェック。
ドラマティック度・・7 イタリア度・・9 古き良き度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Fufluns 「Spaventapasseri」
イタリアのプログレバンド、フフルンスの2016年作
IL BACIO DELLA MEDUSA、DAAL/PROWLERS、LA BOCCA DELLA VERITA/TAPROBANなどのメンバーにより結成。
オルガンやムーグを含むきらびやかなシンセアレンジにメロウなギター、イタリア語のヴォーカルを乗せて、
牧歌的な叙情に包まれたシンフォニックロックを聴かせる。やわらかなフルートの音色にピアノが絡む、
繊細な美しさと、表現力あるヴォーカルの歌声で、コンセプト的でもあるゆるやかなドラマ性を描いてゆく。
70年代イタリアンロックをルーツにしたヴィンテージな味わいに、シンフォプログレの泣きを加えたという聴き心地で、
派手さはないが、RANDONEあたりにも通じる、イタリアらしいおおらかで繊細な美意識に包まれた好作品です。
ドラマティック度・・7 イタリア度・・9 優美な叙情度・・9 総合・・8
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Armonite 「And the Stars Above」
イタリアのチェンバー・プログレ、アルモニテの2018年作
艶やかなヴァイオリンにピアノが絡み、美しい女性ヴォーカルを乗せた優雅なイントロから、
ドラムとベースを加えた、クラシカルなフュージョンロックというサウンドが広がってゆく。
きらびやかなシンセアレンジと変拍子を含んだリズムで、ほどよくキャッチーなやわらかさと、
偏屈なチェンバー風味が同居したスタイルに、イタリアらしい優美な叙情性も覗かせる。
楽曲は3分前後で、インストがメインでも難解というほどではなく、ヴァイオリンをたっぷりと使った
クラシカルな感触に包まれ、キュートな女性ヴォーカルを乗せたナンバーもアクセントになっている。
クラシカル度・・8 プログレ度・・7 優雅度・・8 総合・・8
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Subsignal 「The Beacons of Somewhere Sometime」
ドイツのハードプログレ、サブシグナルの2015年作
SIEGES EVENのMarkus SteffenとArno Mensesを中心にしたバンドで、本作は4作目となる。
新たにDREAMSCAPEのベースと、AXXISのドラム、SOUL SECRETのシンセ奏者を加えた編成で、
これまでのキャッチーなハードプログレ路線から、モダンな硬質感をまとったサウンドへといくぶん変化している。
適度にヘヴィなギターにうっすらとしたシンセをテクニカルなリズムに乗せ、エモーショナルなヴォーカルで聴かせる、
翳りを帯びたスタイリッシュなProgMetal感触が強まっているが、一方では、しっとりとした叙情を描くナンバーもあったり、
プログレ/シンフォ系リスナーでも楽しめるところも多い。4パートに分かれた23分のタイトル組曲も含めて、全66分の力作だ。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 スタイリッシュ度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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THE CRAZY JUGGLER'S PROG ORCHESTRA
 「UTOPIA - PLANET EUPHORIA PART ONE」
スイスのプログレユニット、クレイジー・ジャグラーズ・プログ・オーケストラの2015年作
マルチミュージシャンのネオ・スミス氏を中心にしたプロジェクトで、美麗なシンセアレンジに
メロディックなギターを乗せ、古き良き感触の王道のシンフォニックロックサウンドを描く。
タイトルのように宇宙的なスケールのコンセプト作であるが、かすれた味わいのヴォーカルや、
オルガンを含んだシンセなど、70年代プログレを受け継いだ、どこかなつかしいメロディアス性に包まれる。
キャッチーな抜けの良さという点では、TRANSATLANTICなどにも通じる雰囲気で楽しめ、大曲と小曲を織り交ぜた
流れのある構成でドラマティックに聴かせる。全79分という大力作です。これは続編もチェックせねば!
ドラマティック度・・9 プログレ度・・8 古き良き度・・8 総合・・8.5

Elixir 「Sabbat」
フランスのプログレバンド、エリクサーの1987年作
80年代に2作を残して消えたバンド。美しいシンセアレンジにいくぶんハードロック寄りのギター、
フランス語の歌声を乗せた、カルトでシアトリカルな雰囲気に包まれたプログレハードを聴かせる。
ややクセのあるヴォーカルとともに、ANGEのようなテアトリカル・ロック風味の濃密さを描きつつ、
やわらかなシンセのメロディが前に出た、キャッチーでシンフォニックな叙情パートも多いので、
いくぶんB級臭さもあるものの、わりと耳心地良く楽しめる。優雅なフランス語の響きと、
きらびやかなシンセワークで聴かせる、メロディックなフレンチプログレの幻の好作です。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 フレンチ度・・8 総合・・7.5
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PITCH 「Conquistador」
フランスのプログレバンド、ピッチの2012年作
オルガンを含むやわらかなシンセに、フェミニンな女性ヴォーカルを乗せた優雅なサウンドで、
軽妙なアンサンブルの中にもほどよいユルさと、アンニュイな香りを含んだ聴き心地。
ときにヴァイオリンも鳴り響き、リズムチェンジを含むエキセントリックな展開で、
いわば、シャンソンとプログレ、ジャズロックを同居させたような雰囲気というべきか。
盛り上がりや抜けの良さがないので、やや偏屈で玄人好みというか、BENT KNEEのように、
コケティッシュな女性声アヴァンポップとして楽しむのがよいのかも。全70分のなかなかの力作です。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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The Aurora Project 「Selling the Aggression」
オランダのシンフォニックロック、オーロラ・プロジェクトの2012年作
「マジック・ザ・ギャザリング」の愛好家により結成され、2005年にデビュー、本作は3作目となる。
メタリックなギターに美麗なシンセを重ね、マイルドなヴォーカルで聴かせるハードシンフォニックロック。
適度な硬質感と優美なメロディアス性に、戦争や資源、情報社会など、現代の問題にフォーカスした
シリアスなテーマとともに描かれる、ARENAあたりに通じるモダンでスタイリッシュな聴き心地。
重厚なバックに負けない伸びやかなヴォーカルの表現力がサウンドの説得力となっていて、
全体的にはこれという新鮮味はないものの、高品質なハードシンフォが楽しめる力作だ。
ドラマティック度・・8 スタイリッシュ度・・8 重厚度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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UNICORN 「A Collection Of Worlds - Resurrection」
スウェーデンのプログレッシブ・ハードロック、ユニコーンの2018年作
EDGE OF SANITYをはじめ、北欧のメタルシーンで活躍する、ダン・スヴァノが若き日に結成したバンドで、
本作は1989〜90年代に録音されていた幻のカセット音源のCD化。美しいシンセワークにメロディックなギター、
ときに変拍子を含んだ軽妙なリズムで聴かせる、キャッチーなシンフォニック・プログレハード。
ダン・スヴァノのジェントルな味わいのヴォーカル(2011年に再録)、そして彼のドラムもかなりの腕前で、
テクニカルなリズムチェンジを含む構築力なども、未発音源とは思えないクオリティの高さだ。
全体的には、むしろASIAなどにも通じる、メジャー感のある優雅なメロディックロックとしても楽しめる。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 優雅度・・8 総合・・8
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THREE SEASONS 「THINGS CHANGE」
スウェーデンのヴィンテージロックバンド、スリー・シーズンズの2017年作
SIENA ROOTのG&Voを中心にしたバンドで、本作が4作目となる。アナログ感たっぷりのギターに
ジェントルなヴォーカルを乗せた、70年代スタイルのヴィンテージなロックサウンドは変わらず。
今作ではオルガンが使われていないので、プログレ感触は薄まり、LED ZEPPELINなどに通じる、
ブルージーなハードロック質感が前に出ている。トリオ編成のシンプルなアンサンブルながら、
よりレイドバックしたグルーヴィな演奏は、じつに自然体でとても現代のバンドとは思えない。
ハートになり過ぎないユルさもあるので、70's英国ロック好きならばニンマリすること請け合いだ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・2 古き良き度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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MOLESOME 「SONGS FOR VOWELS AND MAMMALS」
スウェーデンのエレクトロプログレ、モレサムの2015年作
元ANGLAGARDのドラマーで、Necromonkeyをはじめ多くのプロジェクトに参加するマティアス・オルソンのソロ。
1998〜2001年に録音された物で、メロトロン、ムーグシンセのやわらかなメロディを、デジタルなリズムに乗せた、
エクスペリメンタルなエレクトロサウンドを聴かせる。曲によっては、ドラムやギターを使ったロック色も覗かせ、
無機質なサウンドの中に、素朴で涼やかなアナログ感を溶け込ませているのが、さすがのセンスというところ。
ビープ音のような古めかしいデジタル音が哀愁をともなって聴こえるというのも面白い。ネクロモンキーなどが好きな方もチェックすべし。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 デジタルでアナログ度・・9 総合・・8



8/3
猛暑のプログレ!(173)


THE SAMURAI OF PROG 「Toki No Kaze (時の風)」
フィンランドのミュージシャンを中心にしたプログレユニット、サムライ・オブ・プログの2019年作
2011年にスタートしたプロジェクトで、7作目となる本作は、宮崎駿とジブリアニメをテーマにした作品。
Jinetes NegrosのOctavio Stampalia、Mad CrayonのAlessandro Di Benedetti、LATTE E MIELEのOliviero Lacagnina、
KARFAGENのAntony Kalugin、HOSTSONATENのLuca Scherani、La Torre Dell'AlchimistaのMichele Mutti、
IL TEMPIO DELLE CRESSIDRE
のElisa Montaldo、などが参加し作曲を担当。「天空の城ラビュタ」をイメージにした1曲目から、
「風立ちぬ」をテーマにした3曲目、日本のSSW、富山優子さんが作曲、自ら日本語の歌声を乗せる優美なナンバーなどが続き、
美麗なシンセにヴァイオリンが鳴り響く、ファンタジックなシンフォニック・プログレが描かれる。「もののけ姫」をテーマにしたナンバーでは、
Interpose+
の田中ケンロウがギターで参加、イントロからそれと分かる「風の谷のナウシカ」では美しい女性ヴォーカルにうっとり。
エリサ・モンタルド嬢が日本語歌詞で歌うラスト曲まで、全74分の力作。プログレファンでないジブリ好きもにもぜひ聴いていただきたい。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 優美度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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La Bottega Del Tempo a Vapore「Il Guerriero Errante」
イタリアのプログレバンド、ボッテガ、デル・テンポ・ア・ヴァポーレの2016年作
壮麗なイントロから、適度にハードなギターにイタリア語のヴォーカルを乗せ、
プログレらしいシンセアレンジを重ねた、濃密な味わいのサウンドが広がる。
往年のイタリアンプログレの混沌とした空気感も感じさせつつ、ときに重厚に、
ときに優雅な叙情とともに、緩急のあるドラマティックなサウンドを構築してゆく。
メタリックなハードさと展開力で、ときにProgMetal的にも楽しめるところもあり、
いわば古さと新しさを同居させたという、イタリアン・ハードプログレの力作です。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 イタリア度・・9 総合・・8
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La Bottega Del Tempo a Vapore 「Viaggi in Versi」
ボッテガ・デル・テンポ・ア・ヴァポーレの2018年作
歌詞&ストーリー担当メンバーを含む6人編成で、2作目となる本作も、ドラマ性を感じさせるイントロから、
メタル寄りの激しいドラムとギターにきらびやかなシンセを乗せ、イタリア語のヴォーカルとともに、
展開力のあるハードプログレを構築する。オルガンを含むヴィンテージなプログレ感触と、
メタリックな重厚さに包まれながら、緩急ある流れでイタリアらしい濃密な世界観を描きだす。
25分という大曲では、ゆったりとした叙情パートから、ProgMetal的なアンサンブルでたたみかけ、
美麗なシンセとメロウなギター、伸びやかなヴォーカルを乗せ、物語をつむぐように盛り上げてゆく。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 イタリア度・・9 総合・・8
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RICCARDO ROMANO LAND 「B612」
イタリアのミュージシャン、リカルド・ロマノ・ランドの2018年作
RANESTRANESteve Rothery BANDなどで活躍するシンセ奏者のソロで、
フランス文学の名作「The Little Prince(星の王子さま)」をコンセプトにしたロックオペラ作品。
MARILLIONのスティーブ・ロザリーや、スティーブ・ホガースをはじめ、RANESTRANEのメンバーも参加。
美しいシンセにピアノ、フランス語の語りによるイントロから、マイルドなヴォーカルを乗せて繊細な叙情を描く。
メロウなギターの旋律にシンセを重ね、マリリオンにも通じるやわらかな聴き心地に、ときに女性ヴォーカルも含んだ
配役ごとの5人のVoの歌声で、ストーリーをつむぐようにゆるやかに盛り上がる。優美なシンフォニックロックが楽しめる逸品です。
ドラマティック度・・8  プログレ度・・7 優美度・・9 総合・・8
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AREKNAMES 「Live at Burg Herzberg Festival 2007」
イタリアのプログレバンド、アレクナムスのライブ。2007年作
SRANDARTEやANEKDOTENを思わせるヴィンテージなスタイルで、マニア好みのバンド。
2007年ドイツでのライブステージを収録。やわらかなオルガンが鳴り響き、マイルドなヴォーカルを乗せた
70年代ルーツの古き良きサウンドを聴かせる。17分、13分という大曲もわりとユルめの展開力と、
まったりとしたアンサンブルで描きつつ、即興的な演奏も覗かせるところは、70年代英国のサイケや
アートロックの香りも感じさせる。プログレとしてはスリリングな部分はさほどないが、
アナログ感のあるオルガンロックが好きな方なら、わりと楽しめるかと。
ドラマティック度・・7 ライブ演奏・・7 イタリア度・・7 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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THE AURORA PROJECT 「World Of Grey」
オランダのシンフォニックロック、オーロラ・プロジェクトの2016年作
「マジック・ザ・ギャザリング」の愛好家により結成され、2005年にデビュー、本作は4作目となる。
メロディックなギターに美麗なシンセ、マイルドなヴォーカルを乗せた、PALLASなどにも通じる
ポンプロックルーツのシンフォニックロック。ほどよくハードな重厚さとキャッチーな味わいが同居した
バランスのとれた聴き心地に、朗々とした歌声がシアトリカルでドラマティックな空気感を描きだす。
どことなく90年代のシンフォ系バンドに通じるような空気感で、これという個性はないのだが、
全体的にも高品質な、正統派のハード・シンフォニックロックが楽しめる力作に仕上がっている。
ドラマティック度・・8  プログレ度・・7 重厚度・・8 総合・・8
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PHILHELMON 「ENJOY IT WHILE IT LASTS」
オランダのハードプログレ、フィルヘルモンの2012年作
マルチミュージシャンのHenk Bolを中心にしたプロジェクト作品で、楽曲ごとに多数のメンバーが参加、
美麗なシンセに適度なハードなギター、マイルドなヴォーカルを乗せた、キャッチーな味わいの
プログレハードサウンド。ツインギターによるメロウな叙情性やシンフォニックなシンセアレンジ、
随所に女性コーラスなども加えて、優雅に聴かせるスタイルは、KAYAKなどにも通じるだろう。
リズム面での演奏に物足りなさはあるが、歌もの系シンフォニックハードの好作品ではある。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 壮麗度・・8 総合・・7.5
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Alwanzatar 「Heliotropiske Reiser」
ノルウェーのエレクトロ・プログレ、アルワンザターの2017年作
TUSMORKEのKristoffer Momrakによるソロプロジェクト。フルートが妖しく鳴り響き、
シーケンサーによるデジタルなリズムとシンセの重ねで、神秘的なエレクトロプログレを聴かせる。
一聴して、Tangeline Dreamあたりを思わせるサウンドながら、ムーグやメロトロンを使った
ヴィンテージなシンセとともに、涼やかな翳りを帯びた北欧らしい土着性が感じられる。
10分、16分という大曲では、シンプルなフレーズのリフレインで、気の短い方には向かないが、
美しいメロトロンにフルートが重なる北欧プログレ風味に、オリエンタルなサイケ感触が融合した好作品。
ドラマティック度・・7 エレクトロ度・・8 北欧度・・8 総合・・8
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THREE SEASONS 「GROW」
スウェーデンのヴィンテージロックバンド、スリー・シーズンズの2014年作
SIENA ROOTのG&Voを中心にしたバンドで、本作が3作目となる。
ブルージーなギターにオルガンが鳴り響く、アナログ感たっぷりのヴィンテージロック。
いくぶんこもり気味の音質や、ハモンドオルガン特有のやわらかな聴き心地で、
70年代の作品と言っても疑われないだろう。ほどよいユルさとキャッチーな感触で、
プログレ色はさほどないものの、オルガンをたっぷり使った牧歌的な味わいで楽しめ、
ラストの10分近い大曲では、サイケ的な浮遊感とやわらかな叙情性に包まれる。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・6 ヴィンテージ度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Radiomobel 「Gudang Garam」
スウェーデンのプログレバンド、レディオモービルの1978年作
1975年にデビュー、本作が2作目でラスト作となる。メロトロンを含むうっすらとしたシンセに
メロウなギターのトーンを重ね、北欧らしい翳りを帯びた叙情に包まれたサウンドを聴かせる。
くぐもったような湿り気に、RAGNAROKあたりを思わせるユルさをまぶしたという聴き心地であるが、
美しいシンセに女性ヴォーカルの歌声も加わった優美な感触は、北欧シンフォ的にも楽しめるだろう。
KAIPAKEBNEKAISEなどにも通じる土着的なギターフレーズも魅力的で、この涼やかな空気感は、
まさに北欧からしか出てこない音だろう。15分という大曲もあり、サイケとプログレの狭間がよい感じ。
自主制作らしいマイナーな香りとともに、まさに北欧プログレの幻の逸品です。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 北欧度・・9 総合・・8
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ANUBIS 「Behind Our Eyes」
オーストラリアのシンフォニックロック、アヌビスのライブ。2015年作
2009年にデビュー、豪州の本格派シンフォ系プログレとして期待のバンド。本作は2014年のライブを収録。
2011年作「Tower of Silence」、2014年作「Hitchhiking to Byzantium」からのナンバーを中心に
うっすらとしたシンセとエッジの効いたなギター、マイルドなヴォーカルで、PALLASあたりに通じる、
正統派のハード・シンフォニックロックを聴かせる。メロウなギターフレーズとともに泣きの叙情を描くところは、
PENDRAGONあたりが好きな方にも楽しめるだろう。わりとゆったりとしたアンサンブルながら、
9分、10分という大曲も、しっかりとした演奏力で、野暮ったさはないスタイリッシュな聴き心地である。
メロディック度・・8 ライブ演奏・・8 叙情度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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TIDES FROM NEBULA 「Eternal Movement」
ポーランドのプログレ・ポストロック、タイズ・フロム・ネビュラの2013年作
2009年にデビュー、本作は3作目となる。美麗なシンセアレンジに適度にハードなギターを乗せ、
スタイリッシュなアンサンブルでインストサウンドを聴かせる。トレモロを含むギターフレーズに、
シンセの重ねによる優雅な叙情性と、モダンな硬質感が同居した感触は、いわばシンフォ系プログレと
クールなポストロックのハイブリッドというところか。さすが、RIVERSIDEを生んだお国柄ですね。
5〜7分前後の楽曲は、短すぎず長すぎず、知的なリズム展開とともにゆるやかに構築される。
派手な盛り上がりはないが、繊細で優雅なインストサウンドにゆったりと耳を傾けられる好作品。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 スタイリッシュ度・・8 総合・・8
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TIDES FROM NEBULA「SAFEHAVEN」
ポーランドのプログレ・ポストロック、タイズ・フロム・ネビュラの2016年作
4作目となる本作も、うっすらとしたシンセアレンジにメロウな味わいのギターを重ね、
翳りを含んだ叙情性とともに、繊細でスタイリッシュなインストサウンドを聴かせる。
今作では変拍子リズムも加えて、よりプログレ風味が強まった感触で、ゆるやかな聴き心地の中にも
いくぶんダイナミックな展開力が増えた感がある。ここにヴォーカルが加われば、HAKENのような
モダンでキャッチーなプログレになりそうなのだが、あくまでインストなのはこだわりか。
オールインストながら空間的なスケール感を描けるセンスというのは見事ですね。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 スタイリッシュ度・・8 総合・・8
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7/12
続、梅雨のプログレ!(160)


IN THE LABYRINTH 「SAMAS ANTARAL」
スウェーデンのサイケロック、イン・ザ・ラビリンスの2018年作
1996〜2002年までに3作を出したバンドの久々の復活作…と思いきや、どうやらデビュー前の初期音源を基にした作品らしい。
アコースティックギターにフルート、うっすらとしたシンセによる涼やかな叙情性で、牧歌的なサウンドを描きつつ、
タブラが鳴り響くアラビックな妖しさが合わさって、まさしくこのバンドならではの異国的なサイケロックを味わえる。
マイルドなヴォーカルが乗ると、キャッチーな優雅さに包まれて、サイケというよりは繊細なポストロック的にもなる。
小曲を連ねた構成も、過去マテリアルのつなぎ合わせという以上に、流れのある幻想的な雰囲気を感じさせる。
全20曲、76分という力作ながら、ゆったりと聴けるユルさがいいですね。北欧らしさと中近東の要素が合わさった逸品です。
ドラマティック度・・7 サイケ度・・8 叙情度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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RING VAN MOBIUS 「Past The Evening Sun」
ノルウェーのプログレバンド、リング・ヴァン・モビウスの2018年作
シンセ、ベース、ドラムのトリオ編成で、ハモンドオルガンにムーグ、メロトロンが鳴り響き、サックスの音色に
ジェントルなヴォーカルも加わって、いかにも70年代を思わせるヴィンテージなサウンドを聴かせる。
21分という組曲をメインに、スペイシーな浮遊感とともに、どこか混沌とした雰囲気はサイケ感触もあるが、
クリムゾンの名曲「Starless」を思わせるような叙情曲など、アナログシンセが好きな方にはたまらないだろう。
全3曲のラストの11分のナンバーは、VDGGのようなシアトリカルな優雅さに包まれてにんまり。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 ヴィンテージ度・・9 総合・・8
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SUPERFJORD 「ALL WILL BE GOLDEN」
フィンランドのサイケプログレ、スーパーフヨルドの2018年作
二人にシンセ、パーカッション奏者を含む7人編成で、エレピを含むやわらかなシンセに、
メロウなギター、マイルドなヴォーカルを乗せた、GONG + PINK FLOYDというようなサウンド。
ほどよいユルさと浮遊感に、北欧らしい土着的な旋律や、スペイシーな味わいが混ざり合って、
わりとメロディアスな耳心地のよさで楽しめる。ツインシンセにサックスも加わった音の厚みは、
単なるヴィンテージな北欧サイケという以上に、ミステリアスなスケール感も感じさせる。
ムーグシンセにオルガン、ツインギターを重ねたアッパーなプログレ感も魅力的だ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 サイケ度・・8 総合・・8
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ERIK WOLLO 「GUITAR NOVA」
ノルウェーのミュージシャン、エリク・ウォーロの2000年作
TERJE RYPDALの後継者と言われるギタリストで、本作はタイトルのようにギターをメインにした作品。
アコースティックギターの優雅なつまびきで、ゆったりとした繊細な叙情を描きながら、
ときにエレキギターも使って北欧らしい涼やかなメロディを奏でる。楽曲は3〜4分前後とシンプルながら、
民族的な雰囲気の旋律や、クラシック、ジャズの素養も覗かせる、そのセンスはさすが。
おおらかな自然を感じさせる繊細な雰囲気は、GANDALFあたりにも通じるかもしれない。
繊細度・・9 プログレ度・・5 ギター度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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My Sleeping Karma 「Mela Ananda - Live」
ドイツのサイケロック、マイ・スリーピング・カルマのライブ。2017年作
オリエンタルな世界観とサイケロックを融合させるバンドの、2016年フランスでのライブを収録。
東洋的な旋律を奏でるギターにうっすらとしたシンセが重なり、浮遊感あるサウンドを構築、
タメの効いたドラムとうねりのあるベースも含めて、アルバム以上にグルーヴィな演奏で、
ヒンドゥーなサイケロックを描き出す。オールインストなので、これという盛り上がりはないが、
トリップ感のある心地よいグルーブにのんびりと浸れる。DVDには2010年のライブやドキュメンタリーを収録。
ライブ演奏・・8 サイケ度・・8 トリップ度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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Lunatic Soul 「Under the Fragmented Sky」
ポーランドのポストプログレ、ルナティック・ソウルの2018年作
Rivesideのマリウス・デューダのソロプロジェクトで、本作は6作目。エレクトロなシンセをバックに
優雅なギターの旋律、マイルドなヴォーカルとともに、物悲しくも繊細なサウンドを描き出す。
美しいピアノに叙情的なギターとともに、メランコリックな味わいの歌ものナンバーから、
中近東風味の旋律を乗せた、エレクトロな浮遊感のナンバーなど、わりと幅広い作風で楽しめる。
全36分と、少し物足りなさもあるが、モダンな繊細系ポストプログレが好きな方はいかが。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 繊細度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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Vespero 「By the Waters of Tomorrow」
ロシアのサイケプログレ、ヴェスペロの2010年作
軽妙なリズムにスペイシーなシンセとギターを乗せ、ミステリアスな浮遊感に包まれたサウンドで、
ときにヴァイオリンやチェロなども加えた、チェンバーロック風味も覗かせるシリアスなサイケ。
ギターにシンセとメロディカなどが重なる厚みのある音に、存在感あるベースと巧みなドラムによる、
アッパーなノリで迫力あるサイケロックを展開。演奏力の高さも含めて、Ozric Tentaclesにも通じるが、
こちらはシリアスでアナログ感ある音作りに加え、メロトロンを使った涼やかな叙情性もあって、
よりプログレファン向けといえるだろう。全63分、濃密すぎない味わいで楽しめるサイケプログレ好作。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 優雅なサイケ度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Vespero「Droga」
ロシアのサイケプログレ、ヴェスペロの2013年作
本作はのっけから10分を超える大曲で、チェロやフルートが鳴るイントロから、アッパーなリズムに
オルガンなどを含むスペイシーなシンセと、ギター、メロディカなどを乗せた、サイケロックを聴かせる。
技巧的なドラムとどっしりとしたベースが、サウンドに強固な説得力を生み出していて、
随所に叙情的なフレーズを乗せるギターや、メロトロンなどの美しいシンセが合わさると、
シンフォ寄りのプログレ感触も覗かせる。オールインストながら、ミステリアスな空気感を描きつつ、
7〜9分という大曲を構築する演奏センスは見事。前作以上にプログレ度を強めた72分の力作。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 優雅なサイケ度・・8 総合・・8
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HOLY LAMB 「Gyrosophy」
ラトビアのプログレバンド、ホーリー・ラムの2016年作
1991年に結成。本作は2002年以来、14年ぶりとなる4作目。きらびやかなシンセワークに
適度にハードなギターを重ね、リズムチェンジを含んだ展開力のあるシンフォニックロックサウンド。
オルガンを含むシンセにフルートの音色、メロディアスなギターによる古き良きプログレ感触に、
ジェントルなヴォーカルを乗せたキャッチーな味わいで聴かせつつ、独特の空気感もまじえながら
いくぶん偏屈なテクニカルプログレの側面も覗かせる。軽妙なアンサンブルと優雅な展開力に、
メロディックな味わいを盛り込んだ、東欧らしいシンフォニックロックが楽しめる好作品だ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 東欧度・・8 総合・・8
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Herd of instinct 「Drone Priest」
アメリカのモダンプログレ、ヘルド・オブ・インスティンクトの2017年作
2011年にデビュー、本作は4作目となる。ウォーギターやフレットレスベースを操る、MARK COOKと
DJAM KARETのシンセ奏者、GAYLE ELLETTを中心に、硬質感に包まれたモダンなアンサンブルに、
オルガンやムーグシンセが鳴り響くヴィンテージな感触が合わさった、スタイリッシュなインストを構築。
うねりのあるベースや技巧的なギターなどの、テクニカルな側面と、空間的なサウンドが同居していて、
フルートやメロトロンなどの優雅な叙情性も覗かせつつ、ミステリアスな怪しさも表現するという、
この知的なセンスはポーキュパイン的というべきか。まさに新時代のプログレ作品です。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 スタイリッシュ度・・9 総合・・8
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NECRO 「Adiante」
ブラジルのヴィンテージハード、ネクロの2016年作
2012年にNECRONOMICON名義でデビュー、NECROと改名してからの3作目となる。
ドグサレなジャケにはやや引いてしまうが、サウンドの方はアナログ感あるギターに
妖しいくハスキーな女性ヴォーカルを乗せ、70年代英国ハードロックルーツの感触に、
サイケな浮遊感を加えたという聴き心地。ツェッペリンやヒープなどを思わせる空気感に
ときにアコースティックな叙情性も覗かせて、母国語の女性Voに怪しくオルガンが鳴り響く
ヴィンテージな魔女系ロックとしても楽しめる。男性声が加わったナンバーでは、よりヒープ感が増します。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・6 ヴィンテージ度・・8 総合・・7.5
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Virgil Donati「Just Add Water」
オーストラリア出身のドラマー、ヴァージル・ドナティの1997年作
PLANET Xなどで活躍する超絶ドラマー。本作は1996年ハリウッドでのスタジオセッション音源。
ギターはスコット・ヘンダーソン、ベースはリック・フィエラブラッチというトリオ編成で、
パワフルかつ流麗なドナティのドラムに、存在感のあるリックのベースが合わさり、
奔放なグルーヴを描きつつ、ヘンダーソンのブルージーなギターが渋めに彩を添える。
10分前後の大曲もあり、即興的なセッション色が強いので、プレイヤーに興味のない方にはつらいかもしれないが、
トリオによるそれぞれの巧みな演奏は玄人好みの味わいで、とくにドナーティのファンであれば楽しめるだろう。
テクニカル度・・8 即興度・・8 楽曲度・・5 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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6/29
梅雨のプログレ!(148)


Robert John Godfrey & The Enid 「Live at the Citadel」
イギリスのシンフォニックロック、エニドのライブ作。2017年作
いったんはバンドから引退した、ロバート・ジョン・ゴドフリーをゲストに迎えて、
ダブルキーボード+ギターという、3人編成で行われた、2017年のライブを収録。
ドラムが入らないのでロック色は希薄ながら、美しいシンセにギターが重なる優雅な旋律は、まさにエニドならではのもの。
繊細なピアノに、シンセによるトランペットなどの音が合わさり、ジェイソン・ダッカーによる叙情的なギターワークで、
最少人数でのシンフォニーというべき優美なサウンドを描いている。22分に及ぶ組曲「FAND」の再現も含め、
たおやかなクラシカル性の中にも、壮麗なダイナミズム溢れる演奏が素晴らしい。全76分にうっとり聴き入れます。
クラシカル度・・9 ロック度・・2 優雅度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Robert John Godfrey with The Enid 「70th Birthday Concert」
イギリスのシンフォニックロック、エニドのライブ作。2017年作
ロバート・ジョン・ゴドフリー、自身の70歳を祝う、ロンドン、ユニオエン・チャペルのライブを2CDに収録。
前半は、初期のナンバーを主体にしたセットリストで、壮麗なツインキーボードに叙情的なギターが絡み、
ドラムを含めた4人編成とは思えない重厚なサウンドで、エニドの壮大華麗なシンフォニーを再現する。
「In the Region of the Summer Stars」のドラマティックな美しさに、ゴドフリーのソロ作からの繊細なピアノ曲にもうっとり。
Disc2では、1988年作「The Seed And The Sower」や、1986年作「Salome」からのナンバーも披露。
後半は1977年の名作「Aerie Faerie Nonsense」からの楽曲を並べ、おまちかねの組曲「FAND」では
優雅にそしてダイナミックに盛り上がる。ゴドフリー健在を嬉しく思う、ファン必聴のライブ作品だ。
シンフォニック度・・9 ライブ演奏・・8 壮麗度・・9 総合・・8.5
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THE ENID & ROBERT JOHN GODFREY 「The Music Of William Arkle And Other Recordings」
イギリスのシンフォニックロック、エニド、その総帥、ロバート・ジョン・ゴドフリーの2017年作
1986、1987年にファンクラブのみで販売された、カセットテープ作品をまとめて収録したアルバムで、
前半は、エニドの活動に参加していた映像作家、ウィリアム・アークルの手掛けた楽曲をゴドフリーが演奏。
ほぼシンセのみの演奏なのでロック色は皆無ながら、クラシカルな美意識とシンフォニ―のごとき優雅さは、
まさにエニドの世界観そのもの。後半は1987年作「REVERBERATIONS」からの、19分、18分というふたつの大曲で、
こちらもゴドフリー色の強い優美な旋律で描かれる、ロマンティックな味わいのサウンドだ。
シンフォニック度・・8 クラシカル度・・9 優美度・・9 総合・・8 
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The Enid 「The Stand Vol. 1-1984」
イギリスのシンフォニックロック、エニドの2009年作
1983年のイギリス公演の3日間からセレクトされたライブ音源を収録した、ファンクラブオンリー作品の再発盤。
同年発表の「Something Wicked This Way Comes」からの楽曲を中心にしつつ、70年代の名作…
「In The Region Of The Summer Stars」、「Aerie Faerie Nonsense」からのナンバーも含むセットで、
ダイナミックかつ優雅なシンフォニックロックを展開。とくにステファン・スチュワートの流麗なギターが冴えを見せる。
リマスターにより音質も良好、80年代エニドのパワーが感じられる演奏で、正規ライブ作品にも遜色ない内容だ。
ライブ演奏・・8 音質・・8 流麗度・・9 総合・・8
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Pink Floyd 「Cre/Ation - The Early Years 1967-1972」
ピンク・フロイドの初期音源集。2016年作
バンド最初期の音源集で、BBCラジオの音源や、リミックス、シングル曲などを2CDに27曲収録。
先に発売された27枚組の同タイトルのダイジェスト的な編集版であるが、コアなファンでなければこれでOK。
シド・バレット時代のキャッチーなサイケロックから、デヴィッド・ギルモアが加入しての黄金期のへと至る、
バンドとしての裏音源的な楽しみ方ができる。年代を考えれば音質も良好で、リック・ライトのオルガンとともに、
ユルめのサイケ感が心地よい前半から、Disc2での18分に及ぶ「Atom Heart Mother」のライブも聴きどころ。
フロイドの正規アルバムを聴いてから手を付ければそれなりに楽しめる。話題の27枚組ボックスセットはこちら
初期フロイ度・・9 プログレ度・・7 音質・・7 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Downes Braide Association 「Skyscraper Souls」
ジェフ・ダウンズとクリス・ブレイドのユニット、ダウンズ・ブレイド・アソシエイションの2017年作
本作は3作目で、ジャケとロゴがロジャー・ディーンになって、見た目にもプログレ感が増した。
ピアノをバックにしたしっとりとした歌もの小曲に続くのは、18分という大曲で、マイルドなヴォーカルを乗せた
キャッチーで優美なサウンドは、ASIAあたりに通じる雰囲気で、女性コーラスなども加えた壮麗な聴き心地。
美しいシンセアレンジに随所にメロウなギターの旋律など、シンプルにAOR色の強かった過去2作に比べると、
よりシンフォニックロック的な優雅な雰囲気もあって、叙情的な大人のプログレハードとしても楽しめる傑作です。
BIG BIG TRAINのデヴィッド・ロングトン、NO-MANのティム・ボウネスなどがゲスト参加。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 優雅度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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PARALLEL OR 90 DEGREES
「JITTERS」
イギリスのプログレバンド、パラレル・オア・ナインティ・ディグリーズの2009年作
The Tangentのアンディ・ティリソンが率いるバンドで、2002年以来となる6作目。
適度にヘヴィなギターを乗せた、ノリのよいアンサンブルにデジタルでモダンなアレンジを取り入れた、
スタイリッシュなハードプログレ。随所にタンジェントにも通じるシンフォニックなシンセも覗かせつつ、
マイルドなヴォーカルを乗せたキャッチーな歌もの感触に、オルタナ的な硬質感が合わさって、
いまでいう、THE MUTE GODSあたりに通じる雰囲気もある。モダンなハードエッジと肩の力の抜けた
とぼけた味わいを同居させ、あるいは、IT BITESの3rdを現代よりにしたというような好作品である。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 スタイリッシュ度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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Spider Kitten 「Ark of Octofelis」
イギリスのサイケドゥームロック、スパイダー・キッテンの2015年作
怪しいジャケの雰囲気もよろしいが、叙情的なイントロに続くのはのっけから22分の大曲で、
プログレ的なシンセワークに、けだるげなヴォーカルを乗せてゆったりと、そして淡々と進行する、
スペイシーなサイケロックを聴かせる。この大曲ではヘヴィなギターは入らないので重厚な感触は薄く、
女性コーラスなどを加えた浮遊感とともに、サイケなポストロックという聴き方もできるのだが、
中盤には、オールドなギターリフを乗せた正統派ドゥームメタル感触もあったりと、一筋縄ではいかない。
今後は、AncestorsCrippled Black Phoenixのような、スケール感を身に着けていってもらいたい。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 サイケドゥーム度・・8 総合・・7.5
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SINTESI DEL VIAGGIO DI ES
「Il Sole Alle Spalle」
イタリアのプログレバンド、シンテシ・デル・ヴィアジオ・ディ・エスの2018年作
SITHONIAのメンバーを中心にしたバンドで、アコースティックギターのつまびきで始まり、
うっすらとしたシンセにイタリア語によるジェントルなヴォーカルを乗せた優雅なサウンドが広がる。
叙情的なギターフレーズや、やわらかなオルガンにフルートの音色など、イタリアンプログレとしての
優美な繊細さに包まれていて、派手な展開はないが、ゆったりとした歌ものシンフォが味わえる。
ラストは15分を超える大曲で、オルガンやムーグなどのシンセにメロウなギターとフルート、
そしてマイルドな歌声で、叙情豊かなシンフォニックロックを描き出す。優しい美意識に浸れる逸品です。
ドラマティック・・7 優美度・・9 イタリア度・・8 総合・・8
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TRAUMA FORWARD「SCARS」
イタリアのプログレバンド、トラウマ・フォワードの2017年作
きらびやかなシンセにハード寄りのギターを乗せ、知的なセンスのモダンなハードプログレを聴かせる。
クラシカルなピアノにデジタルなアレンジを重ね、叙情的なギターフレーズも覗かせつつ、
ときにイタリア語による語りが入ってきたり、どことなくシアトリカルな妖しさをかもしだす。
楽曲自体は3〜4分前後とわりとあっさりしていて、シンセをメインにしたニューエイジ風の小曲などもあり、
なかなかつかみどころがない。全体的にイタリアらしい濃密さはあまり感じないので、プログレとして聴くには物足りなさも。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 モダン度・・8 総合・・7.5
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SOLAR PROJECT「UTOPIA」
ドイツのプログレバンド、ソーラー・プロジェクトの2018年作
90年代初頭から活動するベテラン。これまではB級のハードプログレというイメージが強かったが、
本作は15分、11分、23分という、3つの組曲によるコンセプト作品で、やわらかなシンセアレンジに
叙情的なギターを重ね、渋めのヴォーカルを乗せた、本格派のシンフォニックロックを聴かせる。
オルガンが鳴り響く古き良きプログレ感触と、アメリカのバンドにも通じるキャッチーな歌メロに、
ときに女性コーラスやサックスなどを加えながら、緩急あるドラマティックな展開でじっくりと楽しめる。
一方ではサイケがかった空気感もあり、ジャーマン・クラウトロックの血を受け継ぐシンフォ作品というべきか。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 クラウトシンフォ度・・8 総合・・7.5
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Cirrus Bay 「The Search for Joy」
アメリカのシンフォニックロック、シルス・ベイの2014年作
2008年にデビュー、本作が4作目となる。うっすらとしたシンセにメロウなギターのトーン、
そして美しい女性ヴォーカルの歌声で聴かせる、優美でたおやかなシンフォニックロック。
CAMELを思わせる泣きのギターに、ときに典雅なヴァイオリンの音色も加わって、
繊細な美意識に包まれたサウンドにウットリとなる。派手な展開というのはさほどないが、
RENAISSANCEのような優雅な空気感に、清涼感あるヴォーカル嬢の歌声も魅力的だ。
優雅な女性声シンフォとしては、MAGENTAあたりが好きな方にも薦められる逸品です。
メロディック度・・8 優雅度・・9 女性Vo度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Lo-Fi Resistance 「A Deep Breath」
アメリカのプログレユニット、ローファイ・レジスタンスの2010年作
マルチミュージシャン、ランディ・マクスタインによるソロプロジェクトで、本作が1作目となる。
コンセプト的なシリアスなSEで幕を開け、マイルドなヴォーカルを乗せたキャッチーなメロディックロックを展開。
やわらかなシンセにメロディックなギターも随所に聴かせつつ、Neal Morseなどにも通じるやわらかな叙情で
プログレハード的なサウンドを描いてゆく。アコースティックギターやフルートなどを用いた繊細なパートから、
一転して、軽快なリズムにテクニカルなギターを乗せた展開力には、スタイリッシュなモダンさを感じさせる。
ほどよくハードでメロディックな味わいの好作品。ニック・ディヴァージリオ(元Spock's Beard)がドラムで参加。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 スタイリッシュ度・・8 総合・・7.5
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ASIDE BeSIDE 「Tadji Mahall Gates」
フランスのプログレバンド、アサイド・ビサイドの2002年作
結成は90年代で、本作はバンドとしてのデビューアルバムとなる。うっすらとしたシンセにメロウなギター、
どこかフランスなまりの英語ヴォーカルを乗せて、翳りを帯びたゆったりとした叙情を描いてゆく。
メロトロンなどを含むシンセに随所に泣きのギターフレーズも魅力的で、PULSARのような繊細な浮遊感に、
フレンチらしい優雅さがミックスして、かつてのATOLLなどにも通じるウェットな空気感とともに、
異国的なシンフォニックロックとしても楽しめる。ときに女性コーラスやサックスなども加わって、
しっとりとした優美さと哀愁の叙情に包まれる。ラスト曲は、静寂のあとで妖しい隠しトラックが現れます。
ドラマティック度・・8 プロクレ度・・7 フレンチ度・・8 総合・・7.5
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5/24
もう初夏の陽気!(134)


Presto Ballet 「Days Between」
アメリカのプログレバンド、プレスト・バレーの2018年作
METAL CHURCHのカート・ヴァンダーホーフを中心に結成され、2005年にデビュー、本作が5作目となる。
きらびやかなシンセワークに適度にハードなギターと、ジェントルなヴォーカルを乗せ、
TRANSATLANTICにも通じる、軽快でキャッチーなハードプログレ・サウンドを聴かせる。
オルガンやムーグなどのヴィンテージな味わいのシンセと、いくぶんメタル感触も含んだギターワークで
爽快な抜けの良さとハードな重厚さが同居していて、A.C.Tなどが好きなリスナーにも楽しめるだろうし、
NEAL MORSESPOCK'S BEARDといった、アメリカン・プログレらしいメロディアス性に包まれた逸品です。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 爽快度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Jodan Rudess & Steve Horelick 「InnerSonic」
DREAM THEATERのシンセ奏者、ジョーダン・ルーデスと作曲家、スティーヴ・ホアリックによるユニットの2017年作
映画やテレビのサントラを手掛けるホアリックと、プログレッシブロックを愛するルーデスという組み合わせで、
やわらかなピアノに電子的なシンセを重ねた、しっとりと美しいシンセミュージックに仕上がっている。
ほとんどがスタジオライブをもとにした音源ということで、二人の即興的な感性が混ざり合いながら、
TANGERINE DREAMあたりに通じる、繊細でスペイシー、そして優雅な味わいに包まれたサウンドだ。
随所にルーデスのクラシカルなピアノも美しく、ロック色はほぼないものの、ゆったりと楽しめる作風で、
プログレメタルを期待する向きには向かないが、シンセサイザー奏者としてのセンスの一端を垣間見ることができる。
プログレ度・・7 ロック度・・1 シンセ度・・9 総合・・8
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Cirrus Bay 「Places Unseen」
アメリカのシンフォニックロック、シルス・ベイの2016年作
2008年にデビュー、本作がすでに5作目となる。やわらかなシンセに美しい女性ヴォーカルで聴かせる、
優美なシンフォニックロックはこれまで通り。CAMELばりの泣きのギターメロディに、メロトロンやピアノを含む
美麗なシンセワークにウットリしつつ、古き良きプログレらしいローカルな幻想性も楽しめる。
メリハリのあるインストパートの展開力もこれまで以上で、楽曲のアレンジという点でも魅力が増した。
10分を超える大曲もあくまで優美な感触で、キャッチーで繊細、そして優雅なサウンドは、
MAGENTAなどが好きな方にも薦められるだろう。たおやかな女性声シンフォの逸品です。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 優美度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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LED BIB 「UMBRELLA WEATHER」
イギリスのプログレ・ジャズロック、レッド・ビブの2017年作
二人のサックス奏者にシンセを含む編成で、軽妙なリズムにサックスが鳴り響く、
KING CRIMSON
的な雰囲気も漂わせる、スリリングなアンサンブルを聴かせる。
手数の多いドラムと存在感あるベース、ツイン・サックスによる、フリーキーな優雅さで
アヴァンギャルドな展開とともに不穏な緊張感を漂わせつつ、10分を超えるナンバーなども、
自由度の高い即興性が合わさった迫力ある演奏が楽しめる。テクニックのあるドラムを軸に、
歪んだベースとサックスがバトルするような激しさから、とぼけた味わいの軽妙なパートまで、
オールインストながら表現豊かな感触が素晴らしい。全75分というアヴァン・ジャズロックの力作。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 アヴァンジャズロ度・・9 総合・・8.5
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CIRCUS
スイスのプログレバンド、サーカスの1976年作
次作「MOVIN' ON」の方は傑作として名高いが、こちらのデビュー作も紙ジャケ再発盤でゲット。
軽やかなリズムに、優美なフルートが鳴り響き、どこかグレッグ・レイクを思わせるヴォーカルを乗せた、
初期のクリムゾン的な雰囲気も漂わせたサウンド。センスのよいドラムを中心にしたスリリングなアンサンブルに、
妖しく響くフルートや12弦ギターのつまびきを乗せた、ミステリアスで繊細な叙情性は、チェンバーロック的でもある。
静謐感を含んだ空間性という点では、VDGGにも通じるだろう。ラストは15分という大曲で、優雅な構築センスが素晴らしい。
優雅度・・9 プログレ度・・8 スリリング度・・8 総合・・8
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CONEXION 「Harmony」
スペインのジャズロック、コネクションの1973年作
やわらかなピアノにフルートの音色、ソウルフルな男性ヴォーカルを乗せた叙情的なサウンドで
コーラスを加えたキャッチーな1曲目から、2曲目からはトランペットやサックスも加わった、
渋みのある叙情性にオルガン、メロトロンも鳴り響く、プログレ寄りの大人のジャズロックを聴かせる。
ギター以上にブラスセクションが活躍しているので、優雅で華やかな感触に加えて、歌詞は英語なので、
言われなければスペインのバンドとは思わないかもしれない。前半は小曲主体だが、後半は15分という大曲で、
リズムチェンジを含むプログレらしい展開力とともに、軽妙なジャズロックが楽しめる。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 ブラス度・・8 総合・・7.5
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T 「Epistrophobia」
ドイツのプログレユニット、ティーの2016年作
SCYTHEのリーダーThomas Thielenによるソロユニットで、うっすらとしたシンセに
メロウなギターのトーンを重ね、マイルドなヴォーカルとともに、Marillionにも通じるような
薄暗い空気に包まれたサウンドを描く。泣きの叙情性のシンフォニックロックと、
モダンなポストプログレを合わせたような聴き心地で、繊細なダイナミズムを含んだ
コンセプトアルバム的な流れのあるドラマ性で楽しめる。10分を超える大曲も多く、
ゆるやかな盛り上がりを繰り返しながら感動的に描かれる。全78分という力作です。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 叙情度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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SILHOUETTE 「World Is Flat」
オランダのシンフォニックロック、シルエットの2017年作
2006年にデビュー、いまやオランダ最高のシンフォニックロックバンドというべき存在になった。
5作目となる本作も、美しいシンセアレンジにメロウな泣きのギターをたっぷりとまぶした、
正統派のシンフォプログレを聴かせる。やわらかなハイトーンヴォーカルを乗せて、
繊細にして優美な叙情性に包まれたサウンドは、かつてのPENDRAGONにも比肩するだろう。
ヴァイオリンが鳴り響くクラシカルな優雅さや、オルガンを使った古き良きプログレ感触も覗かせつつ、
18分におよぶ大曲もゆったりと美麗に盛り上げる。これぞ正統派のシンフォプログレ傑作です。
シンフォニック度・・8 優美度・・9 叙情度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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YESTERDAYS 「SENKI MADARA」
ハンガリーのシンフォニックロック、イエスタデイズの2018年作
2007年のデビュー作「Holdfenykert」は、美声の女性ヴォーカルで聴かせる優美な傑作であったが、
本作は2012年作に続く3作目となる。やわらかなフルートの音色に、ピアノやムーグを含むシンセと
メロウなギター、やわらかな女性ヴォーカルの母国語の歌声で、優雅なシンフォニックロックを描く。
アコースティックなパートでは、スペインのAMROKのようなトラッド・プログレ的な感触もあり、
艶やかなヴァイオリンにフルートの音色、そして女性声が重なる、繊細な叙情美にウットリとなる。
全体的に派手な展開というのはないのだが、しっとりと落ち着いた味わいの優美なる逸品です。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 優美度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Lunatic Soul「Fractured」
ポーランドのポストプログレ、ルナティック・ソウルの2017年作
Rivesideのリーダーであるマリウス・デューダのソロプロジェクトで、本作は5作目となる。
エレクトロなヴォイスエフェクトで幕を開け、デジタルなアレンジにマイルドなヴォーカルを乗せた、
薄暗い叙情の繊細なサウンドを聴かせる。曲によっては、適度にロック的なギターを乗せたり、
生々しいドラムによる軽妙なリズムに、美しいピアノにシンセを重ねた優雅な聴き心地も楽しめ、
ストリングスによるシンフォニックな感触もあって、これまで以上にプログレらしさが味わえる内容だ。
12分という大曲では、途中からサックスも加わって、クリムゾン的な雰囲気も覗かせる。
エレクトロなモダンさと、ポストプログレの繊細さが融合した好作品といえる。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 優雅度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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MILLENIUM 「Puzzles」
ポーランドのプログレバンド、ミレニアムの2011年作
1999年にデビュー、本作は8作目で、人の人生をパズルになぞらえた2枚組のコンセプトアルバム。
美しいシンセにメロウなギターの旋律を乗せた、叙情豊かなシンフォニックロックサウンドで、
マイルドなヴォーカルとともに、ほどよくキャッチーな感触もありつつ、ときにPINK FLOYDのような
翳りを帯びた湿り気も感じさせる。派手な展開はあまりないが、プログレらしいシンセワークと
ギターの奏でる泣きのフレーズが、サウンドを優美に彩り、ゆったりとした耳心地の良さに包まれる。
キャリアのあるバンドらしい安定した演奏力と、ヴォーカルの繊細な表現力も含めてレベルの高い力作です。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 叙情度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Vespero 「Fitful Slumber until 5 A.M.」
ロシアのサイケプログレ、ヴェスペロの2015年作
うっすらとしたシンセにマンドリンの音色を乗せ、サックスが鳴り響く、優雅な浮遊感に包まれて、
うねりのあるベースとともに、アッパーなノリのアンサンブルで、スペイシーなサイケ・プログレを展開。
やわらかなフルートの音色も加わって、Ozric Tentaclesのようなオリエンタルなサイケ感と、
美しいシンセの重ねによる適度なシンフォ感触が同居していて、オールインストながらも聴きやすい。
10分を超える大曲も多いが、確かな演奏力による軽妙なアンサンブルが、スケール感ある音の広がりと
スリリングでミステリアスな世界観を構築している。オズテン好きはもちろん、サイケプログレ好きは必聴。
ドラマティック度・・7 サイケプログレ度・・8 優雅でミステリアス度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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GRENDEL 「The Helpless」
ポーランドのシンフォニックロック、グレンデルの2008年作
うっすらとしたシンセにメロウな旋律を奏でるギター、そしてやわらかなヴォーカルを乗せ、
同郷のSatelliteあたりに通じる、繊細な叙情に包まれた優美なサウンドを聴かせる。
ポーランドのバンドらしい翳りを帯びた空気と、ゆったりとした泣きの叙情性が同居していて、
曲によっては適度にヘヴィなギターも加わって、ARENAなどを思わせるところもある。
これという新鮮味はないものの、耳心地のよいシンフォニックロックを楽しめる好作だ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 叙情度・・8 総合・・7.5
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5/11
北欧プログレ!(121)


ALWANZATAR 「Fangarmer Gjennom Tid Og Rom」
ノルウェーのエレクトロ・プログレ、アルワンザターの2018年作
TUSMORKEのKristoffer Momrakによるソロプロジェクトの2作目で、エレクトロなシンセに、
フルートやギターによる東洋的な旋律を乗せた、サイケでスペイシーなサウンドを描いてゆく。
シーケンサー的なリズムに乗る、やわらかなフルートの音色や詠唱のようなヴォイスは、
神秘的な浮遊感をかもしだし、デジタルとアナログが同居したような不思議な感触が味わえる。
曲が長くてリフレインが多いので、普通のプログレを楽しむ向きには薦められないが、
怪しくスペイシーなエレクトロ・サイケがイケるという奇特な方はどうぞ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 スペイシー度・・8 総合・・7.5
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JORDSJO 「JORD」
ノルウェーのプログレバンド、ヨルドスヨの2018年作
Norsk RakkOLAFLYといったバンドにも参加するマルチミュージシャンを中心にしたユニットで、
土着的な旋律を奏でるギターに、オルガンやメロトロンを含むシンセ、やわらかなフルートも加わって、
いかにも北欧らしい空気を感じさせる、ヴィンテージな味わいのサウンドを聴かせる。
ヴォーカルはオマケ程度で、ほぼインストが中心の作風であるが、叙情的なギターのメロディに
フメートの音色も耳に心地よく、ANGLAGARDを少しユルめのサイケ寄りにしたような雰囲気もある。
全体的に派手な展開はあまりないものの、翳りを帯びた北欧の空気に包まれた逸品です。
ドラマティック度・・7 叙情度・・8 北欧度・・9 総合・・8
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LUCIFER WAS 「Morning Star」
ノルウェーのヴィンテージロック、ルシファー・ワズの2017年作
1997年にデビュー、本作は7作目となる。アナログ感たっぷりのハードなギターにオルガンを含むシンセ、
ジェントルなヴォーカルを乗せた、70年代英国ハードロックルーツのヴィンテージなサウンドを聴かせる。
やわらかなオルガンにフルートが鳴り響くところは、JETHRO TULLなどを思わせる感触もあり、
叙情的なギターフレーズを乗せた厚みのあるサウンドで、牧歌的なハードプログレとしても楽しめる。
チェンバロやピアノが優雅に鳴り響くナンバーはシンフォニックロック的でもあり、ラストの15分を超える大曲は、
オルガンに泣きのギターが重なり、朗々としたヴォーカルとともにドラマティックな味わいに包まれる。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 ヴィンテージ度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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HOLLOW EARTH 「Out of Atlantis」
スウェーデンのプログレバンド、ホロウ・アースの2017年作
ギター、ベース、ドラムのシンプルな構成に、オルガンの音色を乗せたヴィンテージなスタイルで、
いくぶんサイケロック寄りの浮遊感に、北欧的な涼やかさが合わさったという聴き心地。
ときおりヴォーカルも入るが、どちらかというとインストパートがメイン、シンセやギターが奏でる
メロディにはさほどフックがないので、全体的にぼんやりとした印象になっているのは確信犯的か。
16分を超える組曲は、アコースティックギターにオルガンが絡む妖しい空気から、メロトロンも鳴り響き、
マイルドなヴォーカルとともに、物悲しい叙情を描き出す。濃密すぎない北欧ヴィンテージプログレ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 ヴィンテージ度・・8 総合・・8
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ARSTIDIR 「NIVALIS」
アイスランドのポストプログレ、アルスティディアの2018年作
うっすらとしたシンセにやわらかなギター、マイルドなヴォーカルを乗せた繊細なサウンドで、
Sigur Rosあたりにも通じる涼やかな叙情性に包まれたゆったりとした耳心地。
ヴァイオリンやチェロなどのストリングスが優雅に重なるシンフォニックな質感に
キャッチーな歌もの感が同居したソフトな聴きやすさもある。楽曲は2〜4分前後と
わりとシンプルなのでプログレ的な展開力というのはさほどないが、北の大地を思わせる
涼やかな空気感とともに、ストリングス入りのポストプログレとして楽しめる好作品です。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 叙情度・・8 総合・・7.5
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JEAVESTONE 「Human Games」
フィンランドのプログレバンド、ジェーブストーンの2016年作
2005年にデビュー、本作は4作目で、やわらかなピアノにマイルドなヴォーカルを乗せたイントロ曲から、
軽妙なリズムに美しいシンセを乗せ、キャッチーな味わいとともに躍動感あるアンサンブルを描き出す。
メロディックで爽快な抜けの良さは、傑作であった2ndに戻ったような聴き心地で、レトロなアナログ感と
ときにストリングスなどを加えたシンフォニックな音の厚みが、センスよく同居したサウンドが素晴らしい。
やわらかなメロディに包まれたナンバーは、MOON SAFARIあたりをサイケ寄りにしたという雰囲気もある。
4〜5分前後の楽曲は、プログレを意識せずとも楽しめるシンプルなノリの良さもあって、北欧ロックとしても普通に傑作。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 優雅で軽妙度・・9 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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A Secret River 「Colours Solitude」
スウェーデンのシンフォニックロック、シークレット・リヴァーの2014年作
ピアノを含む美しいシンセにマイルドなヴォーカルを乗せた、繊細な味わいのサウンドで、
メロウなギターも加えた北欧らしい涼やかな叙情美に包まれた優しい聴き心地。
軽やかなアンサンブルの優雅な感触にオルガンなどを含む古き良き味わいと、
MOON SAFARIのようなキャッチーなメロディが聴き手の心を和ませてくれる。
ポストプログレ風の繊細さも感じさせつ、北欧シンフォの優美な旋律が合わさって、
スタイリッシュなセンスとともに、やわらかな耳心地の良さに包まれた逸品です。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 叙情度・・9 総合・・8
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Erik Wollo 「Elevations」
ノルウェーのミュージシャン、エリク・ウォーロの2007年作
広がりのあるシンセサウンドに、ディレイの効いたギターが幻想的なフレーズを奏でる。
涼やかで荒涼とした空気感に包まれながら、繊細な美意識と空間性を感じさせるサウンドだ。
翳りを帯びた静謐感は、Klaus Schulzeをシンフォニック寄りにしたような雰囲気もあるが、
こちらはゆったりとしたメロディの流れがあって、ネイチャーな音で雄大さを描くようなところは、
GANDALFなどの世界観にも通じるだろう。ヒーリング系シンフォとしても、ゆったりと鑑賞できる。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 幻想度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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WHEN 「Pearl Harvest」
ノルウェーのアヴァンロック、ウェンの2003年作
鬼才、ラーズ・ペデルセンの一人ユニットで、本作はのっけからインド音楽的なオリエンタルな雰囲気。
パーカッションにシタール、わりとまともなヴォーカルを乗せた、案外聴きやすい民族サイケという趣。
シンセやアコーディオン、オーケストラのサンプリングのアレンジを加えた、なかなか面白い味わいで、
ドラムとギターを使った、ポップなロックナンバーもあるというのが、この方にしては逆にまともではない。笑
暗黒性はさほど強くないのだが、やはり怪しげでアヴァンギャルドな部分は、そこかしこに覗かせてくれ、
ときにホラーサントラ的な味わいに包まれる。メロトロンなどのシンセも美しく、全体的にはキャッチーな作品だろう。
プログレ度・・7 アヴァンギャル度・・8 暗黒度・・6 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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WHEN 「WHENEVER」
ウェンの2004年作
本作は目玉焼きのジャケがいつになくポップな雰囲気であるが、オリエンタルな旋律と
お経のような語りの入ったイントロからしてもう怪しい。民族的なパーカッションに笛の音色を乗せた、
インド音楽かガムランか、というようなナンバーから、シンセやサンプリングなどによる味付けで、
ミステリアスな空気も含んだ「らしさ」も健在だ、。一方では、テクノ的なコミカルな味わいもあったり、
妖しすぎる雰囲気モノというような、14分というアヴァンギャルド大曲は、暗黒魔王の面目躍如というところ。
ラスト曲はわりと聴きやすいサイケなプログレで、片手間に作ったというようなとりとめのなさも持ち味というべきか。
プログレ度・・7 アヴァンギャル度・・8 暗黒度・・6 総合・・7.5
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WHEN 「Trippy Happy」
ウェンの2007年作
本作は、メロトロンを含んだ美しいシンセにマイルドなヴォーカルを乗せた、牧歌的なフォーク風味で始まりつつ、
オーケストラルなアレンジに唐突な緊迫感も現れて、アヴァンギャルドなチェンバーポップというサウンドになる。
やわらかなコーラスハーモニーにメロトロンが重なるところはじつに優雅で、まるでビートルズのように
普通にキャッチーなロックをやりながらも、その背後にはうっすらと暗黒性が見え隠れしている。
このポップ性に隠された不穏なセンスというのはさすがである。今作はバンド的な楽曲が多いので、
一般のプログレファンも楽しめつつ、ときおりニヤリとするようアヴァンギャルド性が垣間見える好作品だ。
プログレ度・・8 アヴァンギャル度・・8 キャッチーで暗黒度・・8 総合・・8
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WHEN 「HOMAGE SERIES Vol 1.Sun Ra」
ウェンの2009年作
前作「You are Silent」は暗黒魔王復活というような力作であったが、本作はジャズタッチのナンバーで幕を開けつつ、
落ち着いた大人のサウンドかと思いきや、それは唐突に崩壊し、スペイシーなシンセがサイケに鳴り響く、
アヴァンギャルド性が炸裂。コロコロとしたエレクトロなコミカル性と、得体の知れない怪しいセンスが同居していて、
3分前後の小曲を主体にしつつも、まったく先が読めない。ときに語りを含んだSFコンセプト的な雰囲気もかもしだす。
結局はよく分からないまま右脳で感じるような、スペース・サイケな作品です。いずれ続編もあるのかな?
プログレ度・・7 アヴァンギャル度・・9 暗黒度・・7 総合・・7.5
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When 「Whensday」
ウェンの2013年作
今作は、ファン・エイクの絵画をあしらったジャケからして、中世ヨーロッパを感じさせるが、
シンセによるイントロから始まり、軽快なリズムにギターを重ねたキャッチーなロック感触から
牧歌的なアコースティックなナンバーにメロトロンも鳴り響く、北欧フォーク的な叙情性など、
相変わらずとりとめのないサウンドが楽しい。全体的にアヴァンギャルドな暗黒性は薄めであるが、
むしろ、サムラのようなとぼけたセンスとともにユルーく聴かせる作風で、これはこれでよいですな。
後半はキャッチーな小曲が続くと思ったら、ラスト曲ではかつての「The Black Death」を思わせるような
怪しいサウンドコラージュとともに暗黒魔王が降臨…これですよコレ。健在ぶりにほっとしました。
プログレ度・・7 アヴァンギャル度・・7 暗黒度・・7 総合・・8
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4/26
いよいよGW10連休!(108)


Abel Ganz 「Gratuitous Flash」
イギリスのシンフォニックロック、アベル・ガンズの1984/2016年作
自主制作による1984年のデビュー作のリミックス盤で、ジャケも変更されている。
オルガンにメロトロンを含む美麗なシンセにほどよくハードなギターを乗せ、のちにPALLASに加入する
アラン・リードの歌声とともに、きらびやかでキャッチーな王道のシンフォニックロックを聴かせる。
いわゆるポンプロックの軽快な優雅さと、英国らしいウェットな味わいが魅力で、爽快な叙情性という点では、
初期のIQPALLASを上回る。リミックスにより音質もダイナミックになり、30数年前という古臭さはさほど感じない。
16分という大曲なども、デビュー作としては堂々とした構築力で、ポンプルーツのシンフォニックロックが楽しめる。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・8 叙情度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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BLACK WIDOW「Sacrifice」
ブリティッシュロックバンド、ブラック・ウィドウの1970年/2014年作
Dr.Zなどとともに、70年代の英国アンダーグラウンドシーンで異彩を放ったバンドの2CD+DVD限定盤。
Disc1にはオリジナル音源のリマスターを、Disc2には未発表の間奏(語り)入りバージョンを収録。
妖しく鳴り響くオルガンにメロトロン、サックスやフルートの音色にシアトリカルなヴォーカルを乗せて
黒魔術的なカルトな雰囲気を描き出す。英国らしいウェットな空気感とヴィンテージな味わいで、
Black Sabbathとともに、現在の多くの魔女系ロックバンドにも影響を与えたサウンドが楽しめる。
DVDには1970年の貴重なライブ映像を収録。年代を考えれば、映像、音質ともに良好で、
1stアルバムの全曲の丁寧な演奏が楽しめる。透け透け衣装の女性も踊ります。ファン必見のライブ映像。
ドラマティック度・・8 怪しげ度・・8 英国度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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The Enid 「Sheets of Blue: Anthology 1977-2008」
イギリスのシンフォニックロック、エニドのベストアルバム。2009年作
1977年〜1998年作「White Goddess」までのアルバムからの選曲と、2008年時点での新曲を、2CDに収録。
クラシカルなシンフォニーをバンド編成でやったらこうなる、という壮麗なシンフォニックロックを聴かせるこのバンド、
繊細なピアノやシンセワーク、流麗なメロディを奏でるギター、そして鳴り響くティンパニの雄大なダイナミクス…
とくに初期3作までの楽曲は、決して他のバンドでは聴けない、優美なるロマンの香りに包まれたサウンドで、
壮麗な組曲「FAND」のライブ音源などもじつに感動的。ラストは、2010年作「JOURNEY's END」収録の新曲で幕を閉じる。
2CDで143分、エニドの歴史をまとめて俯瞰できる、初心者にもお薦めの2枚組ベストです。
シンフォニック度・・9 クラシカル度・・9 エニ度・・9 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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The Enid 「The Stand Vol.2」
イギリスのシンフォニックロック、エニドの1985/2009年作
ファンクラブオンリーで発売された作品の再発盤で、80年代のシングルや未発曲を中心に収録。
70年代のクラシカルシンフォ路線に比べると、ややモダンなロック感触が強まった作風ながら、
ステファン・スチュアート、フランシス・リカーリッシュによるメロディックなギターワークはさすがで、
わりとキャッチーな楽曲においても、叙情的な旋律が光っている。もちろんこのバンドらしい
クラシカルな優雅さは随所に健在で、あらためて、80年代のエニドを再評価することができる。
小曲主体なので、正規アルバムに比べると物足りなさはあるが、貴重音源はファンには嬉しいところ。
クラシカル度・・8 シンフォニック度・・7 貴重音源度・・8 総合・・7.5
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TIME
イギリスのプログレバンド、タイムの1975年作
SPONTANEOUS COMBUSTIONのメンバーによるバンドで、本作が唯一のアルバム。
ハードロック的でもあるギターにハイトーンヴォーカルを乗せ、RUSHにも通じる軽妙なアンサンブルと、
YESのようなキャッチーなメロディアス性で聴かせるサウンド。フリーキーなツインギターの絡みは
有機的な面白さになっていて、むしろ70年代初頭のアートロックのような味わいでも楽しめる。
変則リズムを含む複雑な展開力も覗かせつつ、英国らしい翳りと素朴な叙情に包まれていて、
全体的にはプログレ一歩手前にとどまっている印象。ともかく幻の逸品というべき好作品です。
メロディック度・・7 プログレ度・・7 英国度・・8 総合・・7.5
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GORDON GILTRAP「LIVE AT OXFORD」
イギリスのミュージシャン、ゴードン・ギルトラップのライブ。1980年作
1979年のライブ音源で、ベースはROXY MUSICのジョン・グスタフソン、ドラムにMARILLIONのイアン・モズレイが参加、
ツインキーボードによるシンフォニックな味わいと、メロウなギターに、随所にアコースティックギターも加えた、
英国らしい優雅な叙情性に包まれたサウンド。リズム隊をはじめ確かな演奏力のあるアンサンブルによる、
インストナンバーを主体にしつつ、ときに女性ヴォーカルを乗せたしっとりと優美なパートもなかなか魅力的。
プログレ的な展開力というのはさほどないが、美しいシンセワークとともに繊細で優美な演奏が楽しめる。
ライブ演奏・・8 プログレ度・・7 優雅度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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Robert Wyatt「Cuckooland 」
イギリスのミュージシャン、ロバート・ワイアットの2003年作
SOFT MACHINE、MATCHING MOLEでドラマーとして活躍、事故による下半身不随となってからは、
ヴォーカリストとして、ソロはもちろん、政治的なメッセージを含む作品に参加するなど、独自の活動を続ける。
本作は、うっすらとしたシンセにサックス、トランペットが鳴り響き、どこかけだるげなワイアットのヴォーカルが
優しい耳心地となっていて、大人のジャズソング風のナンバーなど、ゆったりと落ち着いた耳心地である。
前半と後半の2パートに分かれた、計75分。「ロック・ボトム」から30年。自身の音楽ルーツでもあるジャズの要素とともに、
深みを増した世界観が味わえる好作品。ブライアン・イーノ、デヴィッド・ギルモア、フィル・マンザネラをはじめ、多くのゲストが参加。
ジャズ度・・8 プログレ度・・6 優雅度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Ozric Tentacles 「There Is Nothing/Live Ethereal Cereal」
イギリスのサイケロック、オズリック・テンタクルズの2000年作
自主制作のカセットで発表された、1986年作と、1986年のライブ音源の2作品をカップリングした2CD。
エレクトロなシンセに手数の多い元気なドラムで、アッパーなノリで聴かせる、GONG+HAWKWINDというような
軽やかなスペース・サイケロックは、この時点ですでに方向性が固まっている。テクニックのあるリズム隊に、
メロディックな味わいのギターのフレージングもセンス良く、グルーヴィな技巧性に、東洋的なテイストをまぶした
神秘的な浮遊感というのは、やはりこのバンドならではのものだろう。自主制作とは思えない音質の良さと、
うるさすぎない軽妙な耳心地の良さも絶妙で、1985年のデビュー作から格段の進歩が窺える内容だ。
Disc2は、1985〜86年のライブ音源で、音質はややラウドながら、バンド初期の躍動感ある演奏が楽しめる。
サイケ度・・8 プログレ度・・8 爽快度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Ozric Tentacles 「The Bits Between the Bits & Sliding Gliding Worlds」
イギリスのサイケロック、オズリック・テンタクルズの2000年作
自主制作のカセットで発表された、1988年作と、1989年作のカップリング2CD。
「The Bits Between the Bits」は、エレクトロなシンセワークに流麗なギターを乗せながら、
東洋的な雰囲気に包まれたサウンドで、アッパーなノリは控えめのわりと落ち着いた作風。
「Sliding Gliding Worlds」は、きらびやかなシンセにロック的なフリーキーなギターの旋律を乗せ、
牧歌的なフルートの音色とともに、グルーヴィなプログレ・サイケロックを聴かせる。
カラフルなノリとユルさに叙情性がほどよく同居していて、インパクトはないが聴きやすい作品だ。
サイケ度・・8 プログレ度・・7 叙情度・・8 総合・・7.5
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Ozric Tentacles 「Eternal Wheel」
イギリスのサイケロック、オズリック・テンタクルズの2004年作
1984年にデビュー、GONGを受け継ぐスペイシーなサイケロックで数多くの作品を作り続けるこのバンド。
本作はデビュー20年を記念してのベストアルバムで、Disc1には、1990年作「Erpland」から、
1999年作「Waterfall Cities」までの作品からセレクトされた10曲を収録。きらびやかなシンセと、
ロック寄りの流麗なギターを、グルーヴィなリズムに乗せた、耳心地の良いアッパーなサイケロックで、
ドラム、ベース、ギターともに演奏力も抜群。1995年作「Become the Other」収録の10分を超える大曲なども圧巻だ。
ボーナスのDisc2には、ライブ音源を含む6曲に、ライブ映像をエンハンスドで収録。バンド入門用にも最適の作品です。
サイケ度・・8 プログレ度・・7 オズリックの20年度・・9 総合・・8
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Ozric Tentacles 「PAPER MONKEYS」
イギリスのサイケロック、オズリック・テンタクルズの2011年作
グルーヴィなリズムにスペイシーなシンセと奔放なギターを乗せた、ほどよくモダンなサイケロックで、
エレクトロなトランス感触とともに、一体感のある演奏でうねりある浮遊感を描き出す。
巧みなフレージングのギターもさることながら、曲によっては以上にベースの音の存在感も際立っていて、
どっしりとボトムを支えるプレイは見事。演奏力の高さも含めて、フュージョン・サイケ的にも楽しめる。
新鮮なところはないものの、25年以上もこの路線を追及してきたバンドの存在自体に敬服したい。
サイケ度・・8 プログレ度・・7 優雅度・・8 総合・・8
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GANDALF 「Live in Vienna」
オーストリアのミュージシャン、ガンダルフのライブ。2008年作
1980年にデビュー、自然との調和を描くような、ファンタジックで優美なサウンドを描くアーティスト。
本作は2001年母国ウイーンでのステージを収録したCD+DVD。EDENBRIDGEのランヴァルをはじめ、
多くの演奏陣が参加、ゲストにはスティーブ・ハケットの名前もある。うっすらとしたシンセにメロウなギターを乗せ、
繊細な叙情美に包まれたサウンドで、やわらかなフルートに美しいシンセやピアノが重なるクラシカルな優雅さとともに、
スタジオ版以上に躍動的な演奏が味わえる。男女ヴォーカルを迎えてのキャッチーなナンバーや、
ヴァイオリンが鳴り響く大曲、そして、ハケットとガンダルフによるツインギターの共演など、聴きどころも多いです。
シンフォニック度・・8 ライブ演奏・・8 優美度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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P.J. Shadowhawk 「Land of Dreams」
アメリカのミュージシャン、P.J.シャドウホークの2010年作
70年代に活動した、GABRIEL BONDAGEや英国のQUASARなどにも参加したドラマーで、
本作は上記バンド用のマテリアルとして書かれた楽曲を収録。美しいシンセを中心にした、
優雅なシンフォニックロックで、メロウなギターも加わった、ゆったりとした聴き心地。
インストパートをメインに、ときに語りやヴォーカルも乗せて、ファンタジックな世界観を描く。
ジャケのイメージのように、ファンタジックなサントラというような曲調から、15分、12分という、
プログレ的な雰囲気の大曲もある。全体的には、宅録めいたメリハリのなさが残念。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 優雅度・・8 総合・・7
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MIND FURNITURE「Hoop of Flame」
アメリカのプログレバンド、マインド・ファルニチャーの2007年作
オルガンを含むシンセに適度にハードなギター、ハイトーンヴォーカルを乗せた、
古き良きロック感触のシンフォニックロックで、リズムチェンジを含む展開力もある。
どことなく煮え切らない所は、いかにもB級シンフォらしく、盛り上がりそうで盛り上がらないのだが、
アコースティックギターにチェロの音色が重なる、物悲しい叙情性などはなかなかよろしい。
24分、29分という組曲2つという構成なのだが、さほどスケール感もないし、長尺感が苦手な方には厳しいか。
キャッチーな路線でゆくのか、壮大でゆくのか、どっちつかずの方向性と、メロディのフックを磨いて欲しい。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 楽曲・・6 総合・・7
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SYNERGY「GAMES」
アメリカのシンセ奏者、Larry Fastによるプロジェクト、シナジーの1979年作
1975年にデビュー、本作は4作目となる。きらびやかなシンセによる壮麗なサウンドで、タイトル通りゲームサントラ的な
デジタルなモダンさとクラシカルなシンフォニック性が同居したサウンドを聴かせる。シーケンサーによる単調なリズムは退屈だが、
ときに、TANGERINE DREAMのようなスペイシーな幻想性とともに、シンセミュージックとしての耳心地よさを感じ取れる。
後半は6パートに分かれた組曲風になっていて、エフェクトを含んだ映画的でもあるスケール感とともに、優美なシンセの重ねと、
プログレ的な構築性で描かれる。オールインストによるサントラ的なシンセサイザー作品としては、極めて出来が良い。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 シンセ度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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4/12
ミンネマンとブジャナ(93)


Pitts /Minnemann Project 「Psychic Planetarium」
Fractured Dimensionのシンセ奏者、ジミー・ピッツと、マルコ・ミンネマンのユニットの2016年作
OBSCURAのギタリストが参加、手数の多いミンネマンのドラムにきらびやかなシンセワークと
巧みなギターを乗せた、スペイシーなテクニカルロックを聴かせる。メタリックなテイストはさほどないが、
ツーバスを使ったマルコの激しいドラムと、スウィープ奏法の流麗なギターフレーズなどは、
PLANET Xなどの、メタルフュージョンやテクニカルメタル系のリスナーにも楽しめるだろう。
サックスが鳴り響くジャズロック風味もありつつ、ピアリ、オルガンを含む厚みのあるシンセワークは、
わりとプログレ的で優雅で繊細なセンスを感じさせる。24分という大曲も含んだオールインストの力作。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・8 優雅度・・8 総合・・8
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MARCO MINNEMANN 「Celebration」
ドイツ出身のミュージシャン、マルコ・ミンネマンの2015年作
UK/UKZ、The Aristocratsをはじめ、様々なアーティストと共演してきた技巧派ドラマー。
本作は、全パートを自身が手掛けたソロ作品で、のっけからメタリックなギターリフに、
サイケがかったギターの音を絡め、手数の多いドラムに乗せたアヴァンロックが炸裂。
プログラムによるオーケストラルなアレンジなども含めて、チェンバーロック的な怪しさもありつつ、
自身のヴォーカルを乗せた、ROXY MUSICのようなモダンなアヴァンポップ性も感じさせる。
巧みなドラムはもちろんのこと、ミンネマンはこんなにギターも弾けたのね。全18曲71分の力作。
テクニカル度・・8 プログレ度・・8 アヴァンギャル度・・8 総合・・8
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MARCO MINNEMANN「BROKEN ORANGE」
ドイツ出身のミュージシャン、マルコ・ミンネマンの2002年作
軽やかなドラムプレイにやわらかなピアノを乗せた、優雅なジャズロックサウンドで、
曲によっては、キュートな女性ヴォーカルを乗せたコケティッシュな味わいもある。
変拍子リズムを含んだテクニカルなアンサンブルは、けっこうプログレ寄りの感触で、
手数の多さとともに軽妙なグルーブを描く、ミンネマンのドラムもじつに巧みである。
一方では、女性ヴォーカルの美しい、しっとりとしたアンニュイなナンバーもあったり、
優雅さとテクニックが自然体で同居した作風で、耳心地よく鑑賞できる好作品だ。
テクニカル度・・8 プログレ度・・8 優雅度・・9 総合・・8
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The Aristocrats
ガスリー・ゴーヴァン、ブライアン・ベラー、マルコ・ミンネマンによるロックバンド、アリストクラッツの2011年作
シンプルなトリオ編成ながら、凄腕のメンバーによるアンサンブルはインストといえど迫力たっぷり。
優雅で軽妙なミンネマンのドラムに、存在感のあるブライアンのベース、そして奔放にガスリーのギターで、
オールドロックのアナログな味わいに、リズムチェンジを含むプログレッシブな感触も覗かせる。
オールインストながら表現力ある演奏で、8分、9分という長めの曲でもスリリングに楽しめる。
一方では、ラスト曲のような、ゆったりとタメの効いた叙情的な演奏も見事。味のあるインスト作品です。
メロディック度・・7 テクニカル度・・8 優雅なアンサンブル度・・8 総合・・8
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Terry Bozzio + Metropole 「Chamber Works」
アメリカ出身のドラマー、テリー・ボジオの2005年作
U.K.をはじめ多くのセッションやソロ作品などで活躍する、世界最高のロックドラマーの一人。
本作はオーケストラとの共演作で、タイトル通り、優雅でスリリングなチェンバーロックを聴かせる。
ストリングスやブラスなど、各パートと重なるドラムは、オケの一部というようなリズムのユニゾンなど、
アンサンブリーなプレイが素晴らしい。まさに、クラシックにロックドラムが融合されたという味わいだ。
ゆるやかなハートでは、ほとんどクラシックの演奏を聴いているような感じであるが、
そこにどれだけ自然にドラムが乗せられているか、という楽しみ方がよいだろう。
クラシカル度・・8 ロック度・・3 スリリング度・・8 総合・・8
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Dewa Budjana「Dawai in Paradise」
インドネシアのギタリスト、デワ・ブジャナの2011年作/邦題「楽園の琴線」
インドネシアを代表するロックバンド、GIGIのギタリストで、本作は過去のソロ作からのセレクトに
新曲を加えてのメジャーデビュー作。モダンなシンセアレンジにメロディックなフレーズも織り込んだ
巧みなギターワークで、インストによる優雅なフュージョン・ジャズロックを聴かせる。
どっしりとしたベースと手数の多いドラムによる強固なアンサンブルも含めて、演奏力は世界レベル。
随所にシンセギターも使った華やかな聴き心地や、民族的なメロディを奏でる叙情性に、
やわらかなピアノで聴かせる優美なジャズナンバーもあったりと、オールインストでありながら、
起伏に富んだアレンジも見事。これぞ、インドネシアのホールズワースという見事な内容だ。
メロディック度・・8 テクニカル度・・8 優雅度・・9 総合・・8.5
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Dewa Budjana 「Joged Kahyangan」
デワ・ブジャナの2013年作/邦題「天国の舞踏」
今作は、鍵盤にラリー・ゴールディングス、ベースにジミー・ジョンソン、ドラムにピーター・アースキン
サックス&クラリネットにボブ・ミンツァーという名うてのメンバーを迎えてのアルバムで、
やわらかなピアノにサックスが優雅に鳴り響く、大人のフュージョン・ジャズロック。
前作に比べると、デワのギターは控えめな印象もあるが、随所に奏でる流麗なフレーズは
すでに円熟の味わいで、サックスやピアノの旋律を引き立てているのも素晴らしい。
ジャニス・シーゲルが参加した、女性ヴォーカルナンバーもよいアクセントになっていて、
しっとりと聴き入れる。落ち着いた味わいの優雅なアンサンブルが楽しめる好作品だ。
メロディック度・・8 テクニカル度・・7 優雅度・・9 総合・・8
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Dewa Budjana 「Surya Namaskarn」
デワ・ブジャナの2014年作/邦題「太陽への賛歌」
前作に引き続き、ベースはジミー・ジョンソン、ドラムには新たにヴィニー・カリウタが参加。
ゲイリー・ハズバンドが参加した1曲目は、優美なシンセとホールズワースばりのギターの旋律で、
スリリングなプログレ・ジャズロック感触が楽しめる。巧みなドラムとベースが生み出すリズムに乗せる、
奔放にして深みを感じさせるギターワークはじつに見事で、適度にエスニックの香りを含んだメロディも絶妙だ。
9分を超えるナンバーでは、ガムラン的なオリエンタリズムと、どっしりとしたロック感触を同居させた聴き心地で、
プログレリスナーにもしっかり対応。今作は6分以上の曲が多いので、聴きごたえありの力作です。
メロディック度・・8 テクニカル度・・8 優雅度・・9 総合・・8.5
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Dewa Budjana 「Hasta Karma」
デワ・ブジャナの2015年作/邦題「8つの運命」
ドラムにアントニオ・サンチェス、ベースにベン・ウィリアムス、ヴィブラフォン奏者のジョー・ロッカを迎えて、
4人編成でのアンサンブルで、本格派のジャズロックを志向したアルバム。パット・メセニー関連で活躍する
ドラムとベースのリズム隊に、ヴィヴラフォンのやわらかな響き、そして優雅なギターフレーズを乗せて、
軽すぎず重すぎずという絶妙のサウンドで、ときにガムランの詠唱を加えた民族的な味わいも覗かせつつ、
10分を超える大曲もじっくりと構築してゆく。ゲストによるピアノを加えての優美なナンバーも素晴らしい。
メロディック度・・8 テクニカル度・・8 優雅度・・9 総合・・8.5
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DEWA BUDJANA 「MAHANDINI」
インドネシアのギタリスト、デワ・ブジャナの2019年作/邦題「マハンディニ〜新たなる大地の夜明け」
本作は、ドラムにマルコ・ミンネマン、シンセにジョーダン・ルーデスというビッグネームが参加、
インドの新進女性ベース奏者を迎えての編成で、軽やかなアンサンブルにメロウなギターを乗せた、
テクニカルで優雅なフュージョン・ジャズロックを聴かせる。いくぶんハードエッジなギターを聴かせつつ、
ルーデスによるやわらかなピアノの旋律も美しく、随所に民族的な土着性を含んだ構築センスも見事。
元レッド・ホット・チリ・ペッパーズのジョン・フルシアンテが参加した歌入りのナンバーも味わい深く、
インド出身という女性ベース奏者のプレイもなにげに凄いのだが、なによりもブジャナ氏のギターは、
ときにホールズワースのように流麗で円熟の極致。まさにアジアが誇る世界最高レベルのギタリストである。
メロディック度・・8 テクニカル度・・8 優雅度・・9 総合・・8.5
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I KNOW YOU WELL MISS CLARA 「Chapter One」
インドネシアのプログレ・ジャズロック、アイ・ノウ・ユー・ウェル・ミス・クララの2013年作
やわらかなエレピの音色にメロウなギターが絡む、繊細なアンサンブルのジャズロックで、
ときにスリリングでフリーキー、そしてほどよくアヴァンギャルドな雰囲気もある。
いくぶんミステリアスな空気感も覗かせつつ、優雅な静寂感を描くようなパートもあり、
カンタベリー風でもあるやわらかな作風で、全体的にうるさすぎない聴きやすさで楽しめる。
10分を超える大曲も、派手さはないが、適度に不穏な緊張感に包まれながら展開してゆく。
本格派のジャズロックに、ウェットな翳りと空間的な静寂を加えたような好作品である。
ジャズロック度・・8 プログレ度・・7 優雅度・・8 総合・・8
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Tohpati Ethnomission   「Save the Planet」
インドネシアのジャズロック、トーパティ・エスノミッションの2010年作
SIMAKDIALOGのギタリスト、トーパティ率いるバンドで、メロディックで巧みなギターワークに、
パーカッションやスリン(縦笛)の音色を加えた、優雅で民族的なジャズロックサウンド。
グルーヴィなベースとドラムの技量も高く、センス抜群のギターも世界レベルながら、
土着的なアイデンティティを感じさせるところも素晴らしい。笛の音色を乗せた叙情性と、
軽やかなアンサンブルは、日本のKENSOを思わせるところもある。技巧的でありながら、
やわらかな優雅さと民族色に包まれた、これぞエスノ・ジャズロックの傑作だ。
ジャズロック度・・8 プログレ度・・8 優雅度・・8 総合・・8
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GONG 2000 「Prahara」
インドネシアのプログレ・ハードロック、ゴングの2000年作
シンフォニックなイントロから、オルガンを含むシンセワークと適度にハードなギター、
伸びやかな母国語のヴォーカルを乗せ、優雅なプログレハード・サウンドを聴かせる。
ギターはときに様式美HR的な旋律を奏で、どこかなつかしさを感じさせるメロディのフックもあって
なかなか日本人好みの作風といえる。ドラムをはじめとした演奏力の高さも見事で、
叙情的なバラードナンバーなども、泣きのギターフレーズも含めて耳心地よく楽しめる。
メロディック度・・8 プログレ度・・6 叙情度・・8 総合・・8
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KRAKATAU 2000「Magical Match」
インドネシアの民族ロック、カラカタウの2000年作
パーカッションに笛の音が鳴り響く土着性と、ジャズロック的な優雅なアンサンブルに、
女性ヴォーカルの艶めいた歌声を乗せた、民族ジャズロックというサウンドを聴かせる。
フレットベースによるグルーブ感に、鉄琴やスリン(笛)の音色、シンセによるモダンなアレンジに
ラップとガムランが合わさったような歌声が乗る、オリエンタルと西洋音楽が同居したごった煮は、ちょっと他に類を見ない。
祝祭的なノリとアジアンな神秘性をジャズロック化したような濃密な作品で、結果としてプログレリスナーも楽しめる。
プログレ度・・7 ジャズロック度・・7 民族度・・9 総合・・8
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3/29
関東は桜満開♪(79)


Regal Worm 「Pig Views」
イギリスのプログレバンド、リーガル・ワームの2018年作
マルチミュージシャン、Jarrod Goslingによるユニットで、過去2作もアヴァンプログレの傑作であったが、
3作目となる本作は、メロトロンを含むヴィンテージなシンセを乗せ、エキセントリックな展開力とともに
優雅でとぼけた味わいのサウンドが広がってゆく。女性ヴォーカルを加えての、アコースティックなフォーク風味や
サックスが鳴り響くコミカルな部分もあったりと、なんでもありの軽妙なアヴァン・プログレが楽しい。
15分におよぶ大曲も、オールドなプログレ風味を含みつつ、ほどよくアヴァンギャルドな唐突感と、
軽やかな優雅さと先の読めない偏屈なセンスが光っている。1作目を超えるものではないが、さすがの傑作です。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 優雅で偏屈度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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RICHARD WILEMAN 「VEIL」
イギリスのミュージシャン、リチャード・ワイルマンの2018年作
チェンバーロックプロジェクト、KARDA ESTRAでもおなじみのアーティストだが、今作はソロ名義となっていて、
女性Vo&クラリネット奏者を迎えての作品。アコースティックギターのつまびきにジェントルな歌声を乗せた
素朴な出だしから、2曲目では女性ヴォーカルを加えてのキャッチーなフォーク風味になりつつ、
うっすらとしたシンセにクラリネットが重なる、チェンバーロック的でもあるミステリアスな優雅さも残している。
2〜3分前後の小曲を連ねた作風であるが、チェンバー風のアシッドフォークとして楽しめる好作品だ。
クラシカル度・・7 プログレ度・・7 優雅度・・8 総合・・7.5
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ELEPHANT PLAZA 「Momentum」
ノルウェーのプログレバンド、エレファント・プラザの2017年作
MAGIC PIEのシンセ奏者を中心にしたバンドで、厚みのあるキーボードアレンジにメロウなギター、
マイルドなヴォーカルで聴かせる、スタイリッシュでメロディックなシンフォニックロックサウンド。
いくぶんモダンな味わいを含んだ適度にハードな感触に、一方ではMARILLIONなどにも通じる、
ゆったりとした繊細な叙情も感じさせる。ヴォーカルのジェントルな雰囲気とウェットなメロディには、
PALLASあたりを思わせる部分もあり、随所に女性ヴォーカルも加わったキャッチーな優雅さも魅力的だ。
アルバム後半は20分におよぶ組曲で、きらびやかなシンセアレンジと優美な叙情でドラマティックに構築する。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 叙情度・・8 総合・・8
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THE OUTER SONICS 「VIOLET」
フィンランドのシンフォニックロック、アウター・ソニックスの2016年作
うっすらとしたシンセに美しい女性ヴォーカルの歌声を乗せ、北欧らしい涼やかな叙情と
MAGENTAのようなキャッチーな優雅さに包まれたサウンド。エレピやオルガンなどのシンセに、
ときにヴァイオリン、チェロなども加わったクラシカルなアレンジ、なによりコケティッシュな
Ninaさんの歌声はとても魅力で、PAATOSあたりが好きな方にも薦められる。
楽曲は3〜5分前後とわりとシンプルで、マニアックなプログレ感触がないので、
女性声の美麗系メロディックロックとしても普通に楽しめる好作品です。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8
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Groovector 「Darklubing at Tavastia」
フィンランドのプログレバンド、グルーヴェクターのライブ。2003年作
2001〜2002年のライブ音源で、美しいシンセワークにメロウなギターとやわらかなフルートの音色を乗せた
優雅なシンフォニックロックを聴かせる。北欧らしい涼やかな叙情のメロディを乗せたインストパートを主体に、
ときおりヴォーカルも加わったキャッチーな味わいもある。16分、19という大曲もあくまで優美な耳心地で、
ロイネ・ストルトばりの叙情的なギターとともに、どこか翳りを帯びた空気感も、北欧シンフォ好きにはたまらないだろう。
彼らの残した2枚のスタジオアルバム、「ultramarine」、「ENIGMATIC ELEMENTS」も傑作なのでチェックすべし。
ライブ演奏・・8 優雅度・・9 北欧度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Millenium 「In Search of the Perfct Melody」
ポーランドのシンフォニックロック、ミレニウムの2014年作
90年代から活動するキャリアのあるバンドで、本作はのっけから20分に及ぶ大曲を含んだ力作。
うっすらとしたシンセにメロウなギターの旋律、チェロやサックスも加えた叙情的なサウンドで、
マイルドなヴォーカルがじっくりと歌い上げる、ウェットなドラマ性に包まれた世界観を描いてゆく。
表現豊かな男性声に女性ヴォーカルも加わった、シアトリカルなロックオペラ的な感触もあり、
これという派手な展開はないものの、ゆるやかな叙情美で味わえるシンフォニックロック作品。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 叙情度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Ampledeed 「BYOB」
アメリカのプログレバンド、アンプレデードの2016年作
メロトロンやオルガン、ムーグの音色を含むシンセに、男女ヴォーカルの歌声を乗せ、
やわらかな優雅さと屈折感が同居した、軽妙なアヴァン・プログレを聴かせる。
歌メロなどはキャッチーで、むしろポップなのだが、随所にエキセントリックな展開と、
プログレらしい知的な構築センスを覗かせて、何度もニヤリとしてしまうという。
ツインキーボードによる厚みのあるメロディと、ほどよくテクニカルなアンサンブルで、
カンタベリーな優雅なジャズロックを、アヴァンプログレ化したような感触もある。
一方では、マイルドなヴォーカルを乗せたポストプログレ的なナンバーもあったり、
バンドとしての可能性を感じさせる。ポップで楽しい、優雅でカラフルな逸品です。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 優雅度・・9 総合・・8
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Ut Gret「Ancestors Tale」
アメリカのチェンバーロック、ウート・グリートの2014年作
クラリネットやバスーン、フルート、サックスが優雅に鳴り、けだるげな女性ヴォーカルの歌声を乗せて、
うっすらとしたシンセとともにアンニュイな叙情に包まれた、チェンバー寄りのプログレサウンド。
とぼけた味わいのキャッチーなメロディも覗かせつつ、あくまで優雅なアンサンブルを描くところはあくまで優雅で、
チェンバー系初心者を含めて、わりと多くのプログレリスナーにも楽しめるだろう。優美なフルートの旋律で
しっとりと聴かせるパートなど、クリムゾン的でもある叙情と知的な構築性に、HENRY COWのような
スリリングなチェンバー色を加えたという感触もある。7〜8分という大曲も多く、聴きごたえのある力作だ。
チェンバー度・・8 プログレ度・・8 優雅度・・9 総合・・8
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SALEM HILL「The Unseen Cord」
アメリカのプログレバンド、セーラム・ヒルの2014年作
1992年の自主制作のデビュー作から数えて9作目。GLASS HAMMERとともにアメリカン・シンフォプログレの先駆け的な存在。
前作での歌もの路線の流れで、QUEENを思わせるやわらかなヴォーカルメロディとともに、優雅でキャッチーなサウンドを描く。
やわらかなピアノやオルガンを含むシンセアレンジに、メロウな泣きのギターも加えて、しっとりとした叙情美に包まれながら、
一方では、KANSASなどをルーツにしたキャッチーなプログレハード風味や、プログレらしい展開力も随所に含んでいて、
キャリアのあるバンドらしい巧みなアレンジセンスとともに、スタイリッシュに楽曲を仕上げているのがさすが。
ラストは28分という大曲で、美麗なシンセワークにマイルドなヴォーカルを乗せて優雅に構築される。全70分の力作だ。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 優雅度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Syzygy 「A Glorious Disturbance」
アメリカのプログレバンド、シジギーのライブ。2012年作
2003年作「The Allegory of Light」、2009年作「Realms of Eternity」は、どちらもテクニカル系シンフォの傑作であったが
今作は、2009年と2010年のライブ音源を収録。プログレらしいきらびやかなシンセとわりとハードなギターを乗せて、
偏屈な軽妙さとシンフォニックなメロディアス性が同居した、躍動感あるテクニカルなアンサンブルを聴かせる。
インストパートを主体にしたジャズロック的な優雅さも覗かせつつ、ヴォーカルも加えたキャッチーな部分もある。
10分を超える大曲も、濃密すぎない味わいでスタイリッシュに構築するセンスはやはり見事。
音質もクリアで、アルバム以上にダイナミックな演奏が楽しめる、全72分の見事なライブ作品です。
ライブ演奏・・8 プログレ度・・8 優雅度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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BOUD DEUN 「Fiction And Several Days」
アメリカのジャズロック、ブード・ディオンの1995年作
ギターとヴァイオリンが絡む軽妙なアンサンブルで聴かせるジャズロックサウンドで、
チェンバーロック的でもあるアヴァンギャルドでスリリングな味わいも感じさせる。
手数の多いドラムはわりとロック寄りの感触もあって、テクニカルな技巧性と、
フリーキーな柔軟性が同居したしたという聴き心地。どちらかというとシリアスな空気感なので、
優雅なメロディアス性は乏しいのだが、ヴァイオリンがたっぷりと鳴り響くあたりは、プログレファン向けだろう。
テクニカルなプログレ・ジャズロックという点では、レコメン化したマハヴィシュヌという感じでも楽しめるかもしれない。
メロディック度・・7 プログレ度・・7 軽妙度・・8 総合・・8
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ABACAB 「Mal De Terre」
フランスのプログレバンド、アバカブの2009年作
適度にハードなギターに美しいシンセ、フランス語のヴォーカルを乗せ、
ときにProgMetal的な感触もある、ほどよくテクニカルな展開力で聴かせる。
フレンチらしい優雅さとシアトリカルな雰囲気に包まれつつ、濃密すぎない軽妙なアンサンブルが
若手らしいスタイリッシュな味わいである。楽曲ごとのメロディのフックや盛り上がりがもう少し欲しい気もするが、
ごった煮感のある作風なので、この偏屈な味わいがよいのかも。ただ全79分は長すぎですわ。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 フレンチ度・・8 総合・・7.5
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EX-VAGUS 「Ames Vagabondes」
フランスのプログレバンド、イーエックス・ヴァグスの2006年作
きらびやかなシンセにメロウなギター、フランス語のヴォーカルで聴かせる、
いかにも、ANGEをアップデートしたような濃密な味わいのシンフォニックロック。
ややクセのあるヴォーカルが、楽曲に優雅でシアトリカルな雰囲気を作り出しつつ、
随所に叙情的なフレーズを織り込むギターは優美なメロディック性を表現している。
優雅にして濃密、これぞ、フレンチプログレの現在形という好作品だ。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 フレンチ度・・9 総合・・8
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Estigma 「Retrato De Un Sueno」
チリのプログレバンド、エスティグマの2007年作
ヘヴィなギターにフルートが鳴り響き、スペイン語の歌声を乗せた、テクニカルなハード・プログレサウンド。
どことなくイタリアンプログレ的な混沌とした怪しさも覗かせつつ、やわらかで叙情的なフルートの旋律は、
初期クリムゾンを思わせたりもする。シンセ奏者はいないのだが、フルートが活躍するパートが多いので、
ハードエッジなツインギターとのコントラストになっていて、メリハリのあるインストパートを構築。
変拍子を含んだテクニカル性とメロウな叙情が同居した好作品。ProgMetal好きのリスナーにも楽しめるだろう。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 フルート度・・8 総合・・8
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Ficcion 「Sobre La Cresta De La Ola」
ヴェネズエラのシンフォニックロック、フィシオンの2002年作
軽妙なリズムに美麗なシンセワークで聴かせる、優美なシンフォニックロックで、
インストを主体にしつつ、曲によってはスペイン語のヴォーカルも加わって、
南米らしいやわらかな叙情に包まれる。全体的にはあくまでキーボードが主体で、
ギターレスなので音の厚みという点での物足りなさや、音質的な部分でもマイナー臭さはあるが、
きらびやかなシンセと優雅なアンサンブルで、耳心地よく楽しめる好作と言えるだろう。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 キーボー度・・8 総合・・7.5
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3/15
春の足音はプログレとともに(64)


MARILLION「HOLIDAYS IN EDEN:LVE」
イギリスのメロディックロック、マリリオンのライブ。2011年作
2011年オランダでの公演で、1991年作「HOLIDAYS IN EDEN」を完全再現したステージを収録。
元々、じっくりと聴かせる落ち着いた雰囲気のアルジムであったが、このライブでは年季をへて
表現力を増したスティーブ・ホガースの歌声と、スティーブ・ロザリーのメロウなギターとともに、
ライブならではのダイナミックなアンサンブルで聴かせてくれる。アルバムの繊細な叙情性を
ゆるやかなドラマ性で包み込みながら、現在形マリリオンのサウンドで表現しているのはさすが。
Disc2にはシングル曲や、「This Strange Engine」、「Mables」などからのアンコールナンバーを収録。
ドラマティック度・・8 ライブ演奏・・8 叙情度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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MARILLION 「ALL ONE TONIGHT」
イギリスのメロディックロック、マリリオンのライブ。2018年作
2017年のイギリス、ロイヤル・アルバート・ホールでのステージで、Disc1には2016年作「F.E.A.R」の完全再現を収録。
コンセプトアルバムとしては「BRAVE」、「MARBLES」と並ぶ傑作であるから、そのライブが素晴らしくないはずはない。
美しいシンセアレンジに、スティーブ・ロザリーの叙情的なギターに、スティーブ・ホガースのマイルドな歌声を乗せて、
繊細でありながら広がりを感じる空間性とともに、じわじわと盛り上げてゆくドラマティックなスケール感が素晴らしい。
Disc2には、過去曲からのセレクトで、ストリングスカルテットを加えたシンフォニックなアレンジによる演奏にウットリ。
「Afraid Of Sunlight」や「The Great Escape」などもじつに美しい。CD2枚で計150分におよぶライブが楽しめる必聴作。
ドラマティック度・・8 ライブ演奏・・9 叙情度・・9 総合・・8.5
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ALAN REED 「HONEY ON THE RAZORS EDGE」
イギリスのミュージシャン、アラン・リードの2017年作
80年代からPALLASのフロントマンを務めてきたシンガーで、本作がソロ2作目となる。
美麗なシンセアレンジに適度にハードなギターと、衰えぬ伸びやかなヴォーカルを乗せた、
PALLASARENAにも通じるシンフォニックロックを聴かせる。いくぶんモダンな感触もありながら、
そこにアランの歌声が加わると、とたんに90年代のシンフォ系に回帰したような空気感になってにんまり。
元PALLASのマイク・ストビーのシンセワークもさすがで、元PENDRAGONのスコット・ハイアムのドラム、
元MOSTLY AUTUMNのジェフ・グリーンのギターとともに、ゆるやかな叙情に包まれた英国らしいサウンドを描き出す。
ゲストに、スティーブ・ハケットや、クラウド・レオネッティ(LAZULI)、クリスティーナ・ブース(MAGENTA)、
モニク・ヴァン・ダー・コーク(HARVEST)などが参加。パラスのファンはもちろん英国シンフォ好きはチェックです。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 英国度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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ALAN REED 「LIVE :FROM THE RAZORS' EDGE」
PALLASのシンガー、アラン・リードのライブ作。2018年作
TWELFTH NIGHTのマーク・スペンサー、DEEEXPUS/TOUCHSTONEのヘンリー・ロジャースに、
女性ベーシストを含むバックバンド、THE DAUGHTERS OF EXPEDIENCYを従えての2017年英国でのライブで、
オルガンを含むシンセにツインギターと、シアトリカルな味わいを含んだ独特のヴォーカルを乗せた、
英国らしいハード・シンフォニックロックは健在。2012年、2017年のソロ作からのナンバーに加え、
PALLAS時代のナンバーも披露。音質的にやや平坦なのと、普通過ぎるジャケが少し残念だが、
あの頃のパラスが蘇るような聴き心地で、英国シンフォのファンには嬉しいライブ作品だろう。
ライブ演奏・・8 音質・・7 英国シンフォ度・・8 総合・・7.5
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DRIFTING SUN 「TWILIGHT」
イギリスのシンフォニックロック、ドリフティング・サンの2017年作
90年代から活動するキャリアのあるバンドで、美しいシンセにメロウなギターワーク、
マイルドなヴォーカルを乗せ、展開力のある優美なシンフォニックロックを聴かせる。
やわらかなエレピのしっとりとした叙情パートから、流麗なギターフレーズを乗せたメロディックな盛り上がりと
これまで以上にメリハリのある構築力で、コンセプト的なドラマ性を感じさせる流れとともに楽しめる。
フランス出身というシンセ奏者の奏でる繊細なキーボードワークが、バンドの世界観を優雅に彩り、
ヨーロピアンな美学に包まれた泣きの叙情を描き出す。正統派のシンフォ好きはぜひチェックすべし。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 優美度・・9 総合・・8
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STEVE HUGHES 「ONCE WE WERE - PART ONE」
イギリスのミュージシャン、スティーヴ・ヒュージスの2016年作
BIG BIG TRAINにも参加したドラマーで、ギター、ベース、シンセもこなすマルチプレイヤーのソロ。
本作は、過去の自分と対峙するというコンセプトストーりーを基にした、2部構成作品の前編。
前作「Tales from the Silent」はモダンシンフォの力作であったが、今作もきらびやかなシンセに
メロディックなギターとマイルドなヴォーカルで、スタイリッシュなシンフォニックロックを聴かせる。
のっけから33分の大曲で、厚みのあるシンセアレンジを中心にしたインストパートも充実、この1曲でお腹いっぱいだが、
その後はわりとシンプルでメロディックなナンバーが続き普通に聴きやすい。全76分。続編へと続く。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 優雅度・・8 総合・・8
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RANDONE 「ULTREIA」
イタリアのプログレバンド、ランドーネの2014年作
現代のカンタゥトーレと評価されるヴォーカル&シンセ奏者、ニコラ・ランドーネ率いるバンドで、本作は6作目となる。
キリスト教の聖地である、スペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラ大聖堂を目指す旅を描いたコンセプト作で、
オルガンやメロトロンを含む美麗なシンセにメロウなギターが重なり、表現豊かなイタリア語のヴォーカルを乗せた
叙情的なシンフォニックロックを展開。最高作となった前作「Linea Di Confine」の流れをくむドラマティックな流れと
ときに女性ヴォーカルも加わって、優美にして繊細なアレンジが同居した濃密な歌ものシンフォニックロックが楽しめる。
これぞイタリアンシンフォという全70分の傑作。ベッペ・クロヴェッラ(元Arti & Mestieri)がゲストでヴィンテージシンセを担当。
ドラマティック度・・9 プログレ度・・7 イタリア度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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IL PARADISO DEGLI ORCHI  「Il Corponauta」
イタリアのプログレバンド、パラディソ・デグリ・オルチの2016年作
ファビオ・ズッファンティがプロデュース、メロトロンを含むシンセにハード寄りのギターと
イタリア語のヴォーカルを乗せ、レトロとモダンが同居したスタイリッシュなサウンドを聴かせる。
適度にハードエッジな躍動感あるアンサンブルに、美しいフルートやサックスの音色とともに、
アコースティックな叙情性も織り込んだ、繊細で知的な構築力も覗かせる。
アレンジはデジタル世代のセンスなのだが、暖かみのあるアナログ音色を残した聴き心地で、
古き良き新しさとでもいうような絶妙の路線。まさに現在形のイタリアンプログレというべき好作品だ。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 イタリア度・・8 総合・・8
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Areknames 「Love Hate Round Trip」
イタリアのプログレバンド、アレクナムスの2006年作
2作目となる本作は、よりヘヴィなギターにメロトロンやオルガンによるシンセを重ね、
70年代懐古主義のスタイルをハードな感触で包み込んだというヴィンテージなサウンド。
ヴォーカルは英語なので、イタリアというよりはむしろブリティッシュ・ハードロックの質感で、
ANEKDOTENをヘヴィに、ブルージーにしたという聴き心地で、ときにBLACK SABBATH的な雰囲気も。
10分を超える大曲も、メリハリある構築力でミステリアスな空気を邪悪に描き出す、濃密なサウンドを展開。
優雅なピアノにジェントルなヴォーカルで聴かせるところは、VDGGのようでもある。全78分の力作。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 ヴィンテージ度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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RPWL 「WANTED」
ドイツのモダン・プログレバンド、RPWLの2014年作
2000年にデビュー、SYLVANと並んでドイツのネオ・ブログレシーンを代表するこのバンド、7作目となる本作は、
わりとハードなギターとモダンなアレンジを盛り込みつつ、オルガンやメロトロンによるシンセに
マイルドなヴォーカルを乗せた薄暗い空気感で聴かせる、Steven Wilson系というべきサウンド。
後半には、彼らのルーツでもある、PINK FLOYDを思わせる叙情的なナンバーもあり、
デイヴ・ギルモアを思わせるメロウなギターにもにんまりだ。これという派手さはないが、
フロイドをルーツにした繊細な叙情ロックをモダンに深化させた、このバンドの自然体の到達点である。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 叙情度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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RPWL「A NEW DAWN」
ドイツのモダン・プログレバンド、RPWLのライブ作品。2017年作
2015年のドイツ公演をCD2枚に収録。2014年作「Wanted」の全曲を含む構成で、
うっすらとしたシンセに適度にハードなギター、マイルドなヴォーカルに女性コーラスも加えた
厚みのある演奏で、シアトリカルな流れとともに、アルバム以上にダイナミックなサウンドを聴かせる。
オルガンやメロトロンの音色を含むシンセに、叙情的なギターフレーズも随所に乗せながら、
PINK FLOYDルーツのゆるやかな叙情性と、モダンなシンフォニックロックを融合させた作風は、
派手さはないものの、キャリアのあるバンドらしい深みのある聴き心地である。2CDで約120分。
ライブ演奏・・8 プログレ度・・7 叙情度・・8 総合・・8
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LEAP DAY 「Live at the Northern Prog Festival 」
オランダのシンフォニックロック、リープ・デイのライブ。2016年作
2010年にデビュー、Flamborough headSILHOUETTEとともに、王道のシンフォニックロックを聴かせるバンド。
本作は2015年ドイツでのステージを収録。ソロでも活躍するエディ・マルダーのメロウなギターワークに、
美しいシンセと枯れた味わいのヴォーカルで、GENESISルーツの優美なサウンドを描いてゆく。
ほどよくキャッチーな感触とともに、ヨーロピアンなウェットな叙情美が同居した作風で、
楽曲自体も5〜8分ほどで、この手のシンフォ系にしては長すぎないところもGood。
これという新鮮味はないですが、泣きのギターをたっぷりと味わえる優美なライブ作品です。
ライブ演奏・・8 叙情度・・8 優美度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Eddie Mulder 「Horizons」
LEAP DAYでも活躍するオランダのギタリスト、エディ・マルダーの2016年作
アコースティックギターを主体にした作品で、2〜4分の小曲をメインに、優雅なアコギのつまびきに
曲によってはメロトロンやオルガンも加わり、ヴァイオリン、フルートの音色が優雅に鳴り響く。
エレキギターを使った曲では、LEAP DAYのようなメロウなシンフォニックロックとしても楽しめる。
ロック色はほとんどないので、ゆったりとしたBGMのように繊細に鑑賞する作品です。
ネイチャーな感じのインストミュージックとして、GANDALFあたりがお好きな方もどうぞ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・6 優雅度・・8 総合・・7.5
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VA/Steppes Beyond The Colossus - Steve Hackett
イタリアMellow Records主催のスティーブ・ハケット、トリビュート作品。2014年作
CLARION、CONQUEROR、LEVIATHAN、NARROW PASS、PENSIERO NOMADEなど、
イタリアのバンドに加え、KARDA ESTRA、SPIRITS BURNINGなど、意外なアーティストも参加。
初期のソロ作「Voyage of the Acolyte」、「Please Don't Touch!」、「Spectral Morning」、「Defector」
あたりからの楽曲を中心に、2006、2009年作あたりの比較的新しいところも取り上げている。
女性ヴォーカルでしっとりと聴かせる、CONQUERORの優美なシンフォニックアレンジや、
KARDA ESTRAによるクラシカルなチェンバーロック風のカヴァーなどが魅力的ですね。
シンフォニック度・・7 プログレ度・・7 優美度・・9 総合・・7.5
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3/1
プログレ・ジャズロック!(50)
「ジャズロック特集」ベージはこちら


MUMPBEAK「TOOTH」
イギリスのジャズロック、マンプビークの2017年作
シンセ、ベース、ドラムというトリオ編成で、軽妙なリズムにムーグやオルガン含むシンセを乗せ、
どこかとぼけた味わいのインストサウンドを聴かせる。シンプルな音数ながら、生々しいドラムを含む
アナログ的なアンサンブルで、ほどよいテクニカル性と同時に、優雅な音の隙間を感じさせるような作風だ。
センスのよい演奏が耳心地よく、ときにBGMのようにもなるが、一方ではフリーキーにたたみかける
アッパーなナンバーもあり、全体的にはやわらかな屈折感とともに愉快なプログレ・ジャズロックが楽しめる。
ジャズロック度・・8 プログレ度・・7 優雅度・・9 総合・・8
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Accordo Dei Contrari 「Violato Intatto」
イタリアのプログレバンド、アッコルド・デイ・コントラリの2017年作
本作は4作目で、テクニカルなプログレジャズロックであった前作の流れを受け、オルガンやムーグを含むシンセに
サックスが絡み、変拍子たっぷりの技巧的なアンサンブルで、濃密なインストサウンドを描き出す。
アッパーにたたみかけつつ、静寂パートではやわらかなエレピが鳴り響き、緊張感ある空間性に包まれる。
ダイナミックな緩急は前作以上で、重たいベースとドラムによる重厚な感触でどっしりと聴かせる。
このスリリングなプログレ・ジャズロックサウンドは、例えるなら、KING CRIMSON+DEUS EX MACHINAといったところか。
ときにヴァイオリンも加わったクラシカルな恰好良さや、メロトロンが鳴り響く、優美な叙情性も覗かせる。
わりとロック質感が強いので、ジャズロックが苦手な方にでも十分楽しめるだろう。全73分。圧巻の傑作。
ジャズロック度・・7 プログレ度・・9 重厚な技巧度・・9 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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ARTI E MESTIERI 「THE LIVE」
イタリアのプログレ・ジャズロック、アルティ・エ・メスティエリのライブ作品。2013年作
CDには、オリジナルメンバーであるジジ・ヴェネゴーニを含む、2011年川崎でのライブを収録。
70年代の名作「ティルト」「明日へのワルツ」からのナンバーを含むセットリストで、
フリオ・キリコの衰え知らずの強力なドラムを軸に、優美なシンセワークに叙情的なギターが絡む、
ベテランらしい表現力で技巧的なアンサンブルを披露。ツインギター編成での迫力ある演奏が楽しめる。
音質も良好で、日本語を含むMCも収録。ライブに行けなかった方にも、臨場感が伝わる内容だ。
DVDには、メル・コリンズとデヴィッド・クロスがサックスとヴァイオリンで参加した、2011年イタリアでのライヴを収録。
こちらは音質はややラウドだが、地元ということで勢いのあるステージ映像が楽しめ、ファンは嬉しいだろう。
ライブ演奏・・9 プログレ度・・8 叙情と技巧度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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AREA 「Tic & Tac」
イタリアのジャズロック、アレアの1980年作
デメトリオ・ストラトスの死去後に作られた6作目となるアルバムで、バンドとしてのラスト作。
かつての民俗的な怒涛のジャズロック作風から、デジタルなシンセアレンジを乗せたフュージョン寄りのサウンドになっていて、
オールインストであることもあり、プログレとしてのアレアからはずいぶん変化してしまったが、手数の多いドラムをはじめ、
高い演奏力とともに軽妙なアンサンブルでたたみかけるところは、さすがのノリの良さ。きらびやかなシンセとともに、
メロディックな聴き心地の厚みのあるサウンドが楽しめる。一方では、サックスやトランペットが鳴り響き、優雅なピアノが絡む、
欧米的なジャズロック感触もある。過去の5作が大傑作であるなら、本作も十分に傑作と言えるくらいの出来である。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 優雅度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Mama Non Piangere 「N.3」
イタリアのアヴァンプログレ、ママ・ノン・ピアンジェーレの2016年作
STORMY SIXとも関係の深いバンドで、1979年、80年に2作を残して以来、じつに36年ぶりとなる3作目。
女性Vo、サックス、クラリネット、女性チェロ奏者を含む7人編成で、チェロやチューバの低音に、サックス、
クラリネット、ギターが絡み、イタリア語のキュートな女性ヴォーカルを乗せた、軽妙な味わいのサウンド。
いわゆるRIO、レコメン系のスタイルながら、イタリアらしいどこかシアトリカルな空気感も含んだ聴き心地で、
ダグマー・クラウゼを思わせるような女性声のオペラティックな魅力とともに、エキセントリックなポップ性と、
スリリングなアヴァンギャルド性が巧みに同居している。キャッチーな部分が難解さを薄めているので、
わりと気楽に楽しめる。らくがきのようなジャケに騙されず、女性声アヴァン・プログレ好きはぜひチェックすべし。
アヴァンギャル度・・8 軽妙度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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DUN 「Eros」
フランスのプログレ・ジャズロック、デューンの1981年作
自主制作で発表されたバンド唯一の作品で、MAGMA影響下のバンドの中では、幻の傑作というべき1枚。
妖しくフルートが鳴り響き、ブレイクを含む変則リズムと、手数の多いドラムが緊張感アンサンブルを描き出し、
軽妙な優雅さとミステリアスな空気感に包まれた、独自のジャズロックを展開。ゆるやかなピアノを含む静寂の緊張と、
たたみかけるダイナミズムのメリハリは、HENRY COWなどに通じるチェンバーロック的な手法も感じさせ、
ときにフリーキーなギターワークも特徴的で、マグマをマハヴィシュヌ寄りにしたという雰囲気もある。
アヴァンギャルドにたたみかける爽快さは、玄人好みのプログレファンも唸らせるだろう。楽しくスリリングな傑作だ。
10分前後の大曲を中心にした全4曲に、紙ジャケリマスター盤には未発曲や別テイクを計5曲、35分追加収録。
ドラマティック度・・8 ジャズロック度・・8 スリリング度・・9 総合・・8
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ESKATON 「Fiction」
フランスのプログレ・ジャズロック、エスカトンの1983年作
「Ardeur」、「4 Visions」に続く3作目で、軽やかなドラムにオルガンやエレピを含むシンセの重ねを乗せ、
妖しい男女ヴォーカルの歌声とともに、MAGMAをルーツにしたミステリアスなジャズロックを聴かせる。
過去2作に比べると、モダンでアヴァンギャルドなアプローチも覗かせるなど、方向性の試行錯誤が感じられる。
一方では、女性声にメロディアスなギターで聴かせるキャッチーなナンバーもあったりと、
わりとカンタベリー風のシンプルな優雅さもあって、こちらの路線での深化も見てみたかった気もする。
バンドは4作目「Icare」を録音はしたのちに活動停止。ボーナスにはその未発作からの4曲を収録。
MAGMA影響下のバンドであるが、マイナーシーンに葬られるには十分に魅力ある作品を残した存在というべきだろう。
ドラマティック度・・7 ジャズロック度・・8 優雅度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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MAGMA 「ZUHN WOL UNSAI: LIVE 1974」
フランスのプログレ・ジャズロック、マグマのライブ。2014年作
ヤニック・トップ在籍時である、1974年のドイツラジオ放送用のライブ音源を2CDに収録。
Disc1には1973年作「M.D.K.」をほぼ完全再現、手数の多いドラムにうねるようなベースが絡み、
優雅でありながらミステリアスな独自のジャズロックを展開。発掘音源ながら音質は良好で、
スタジオ版のような大仰な迫力というのは薄いものの、丁寧な演奏でマグマサウンドが味わえる。
Disc2には、クリスチャン・ヴァンデによる、20分超の即興的なドラムソロも収録。
さすがにこのドラムソロは長すぎるが、コアなファンには貴重なライブ音源だろう。
ライブ演奏・・8 音質・・8 壮大度・・7 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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One Shot 「Reforged」
フランスのジャズロック、ワン・ショットの1999年作
MAGMAに参加した、ジェイムズ・マクゴウ、フィリップ・ブソネ、エマニュエル・ボルギらによるバンドで、
オルガンやエレピを含むシンセに適度にハードなギターを乗せた軽妙なアンサンブルとともに、
ミステリアスな空気感をかもしだすプログレ・ジャズロック。マグマに比べると、ギターが前に出ていて、
ジャズロックが苦手な方にも、テクニカルなインストプログレとしてわりと聴きやすいかもしれない。
ジェイムズ・マクゴウの技巧的なギターフレーズは、ときにホールズワースばりに流麗で、
不穏でダークな空気感の中に、メロディックな味わいを付加している。10分前後の大曲が多いが、
手数の多いドラムも含め、テクニカルでありつつ有機的なアンサンブルが心地よく、スリリングに聴きとおせる。
ジャズロック度・・8 プログレ度・・8 軽妙度・・8 総合・・8
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One Shot 「Vendredi 13」
フランスのジャズロック、ワン・ショットの2001年作
2作目となる本作は、ライブでの一発録音ということで、生々しいリズムアンサンブルに、
エレピなのどのシンセにほどよくフリーキーなギターを乗せた、スリリングなインストを聴かせる。
ジャズとロックの中間をゆくような巧みなドラムと、流麗なロック感触のギターワークが魅力的で、
MAGMAを思わせる緊迫感に包まれた空気感とともに、10分を超える大曲を構築してゆく。
前作に比べると、曲によってはアダルトなジャズロック風味が強まっていて、たたみかける迫力は控えめながら、
優雅なライブ演奏にじっくりと聴き入れる。ラスト曲は重量級のチェンバー・ジャズロックでにんまり。
ジャズロック度・・8 プログレ度・・7 軽妙度・・8 総合・・8

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JEAN PASCAL BOFFO「Offrande」
フランスのギタリスト、ジャン・パスカル・ボフォの2006年作
80年代から活動するアーティストで、「フランスのハケット」というべき繊細な作風が魅力のギタリスト。
本作では優美なギターの調べにサックスを重ねた、典雅なアコースティックサウンドを聴かせる。
ドラムが入る分、ロック的な躍動感あるアンサンブルで、エレキギターも加えたメロウな叙情性は、
初期からのファンにも楽しめる内容だろう。今作ではギター以上にサックスが前に出ているので、
繊細なジャズロック的な味わいもありつつ、アルバム後半には泣きのギターをたっぷり乗せた
叙情ナンバーにウットリ。オールインストなので、優雅なBGMとしてもよいですな。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 優雅度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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PHASE 「MIDNIGHT MADNESS」
アメリカのプログレ・ジャズロック、フェイズの1979年作
本作が唯一の作品で、手数の多いドラムにうねるベース、テクニカルでフリーキーなギター、
ムーグシンセとやわらかなピアノを乗せた、優雅で技巧的なインストのジャズロックを聴かせる。
変則リズムを盛り込みつつ、クールなアンサンブルを描くところは、MAHAVISHNU ORCHESTRAにも通じるが、
こちらはあくまで4人でのシンプルな音数で、決して大仰にならないスタイリッシュな均整を感じさせる。
かき鳴らされるムーグシンセがプログレ寄りの感触になっていて、即興的な勢いでたたみかけつつ、
どこかスペイシーな雰囲気があるのも面白い。演奏力の高さも含めて、一作のみで消えたのが惜しまれる。
ジャズロック度・・8 プログレ度・・7 軽妙度・・9 総合・・8
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INNER EAR BRIGADE「Rainbro」
アメリカのプログレ・ジャズロック、インナー・イヤー・ブリゲイドの2012年作
オルガン、ムーグ、メロトロンを含むシンセに、やわらかなギターと女性ヴォーカルの歌声を乗せた、
カンタベリー的な優雅さに、エレクトロなアレンジを加えた、エキセントリックなアヴァンジャズロック。
サックスやクラリネット、トランペットの音色が、ときにチェンバーロック的な感触をかもしだしつつ、
決してダークにはならない、あくまでキャッチーで軽妙な聴き心地。この優雅なアンサンブルは、
National Healthにも通じるが、こちらはさらに確信犯的な屈折感が加わっているのが特徴だろう。
女性声の妖しさという点では、Kultivatorなどが好きな方にもお薦め。聴きやすさとマニア好みが同居した逸品です。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 優雅で軽妙度・・9 総合・・8
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INNER EAR BRIGADE「Dromology」
アメリカのプログレ・ジャズロック、インナー・イヤー・ブリゲイドの2017年作
6年ぶりとなる2作目で、前作からのエキセントリックな女性声ジャズロックの作風はそのままに、
サックス、トランペットといった管楽器の使用が増えて、エッジの立ったギターとのコントラストで、
よりアンサンブリーな演奏を聴かせる。エレピなどのシンセにはカンタベリー的なやわらかさを残していて
ほどよく妖しい女性ヴォーカルを乗せたキャッチーな浮遊感とともに、優雅な屈折感が味わえる。
ゆったりとしたジャズ風味の歌ものナンバーなど、前作に比べるといくぶん落ち着いた作風で、
一聴したインパクトは薄まったが、アダルトな女性声ジャズロックとしても楽しめるようになった。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 優雅で軽妙度・・8 総合・・8
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2/15
ロイネ・ストルト最高かよ!(36)


Roine Stolt's The Flower King 「Manifesto Of An Alchemist」
スウェーデンのシンフォニックロック、ロイネ・ストルトズ・フラワー・キングの2018年作
フラキンのロイネ・ストルトが「ロイネ・ストルトのフラキン」名義でアルバムを出すというのもややこしいが、
メンバーの方は、ドラムにマルコ・ミンネマンが参加、ベースはヨナス・レインゴールド、マイケル・ストルト
ヴォーカルはハッセ・フロベリ、ナッド・シルヴァン、シンセには、マックス・ロレンツ(Kaipa Da Capo)、ザック・ケイミンズが参加。
メロウなギターにオルガンを含むシンセとジェントルなヴォーカルを乗せ、ゆったりと優雅な叙情で聴かせる、
フラキンをよりレイドバックしたような聴き心地。ロイネ自身でギター、ベース、シンセをこなす12分の大曲や
軽やかなミンネマンのドラムにメロディックなギターと美麗なシンセ聴かせるインストナンバーなども素晴らしい。
大人の味わいの優しい叙情に溢れた、まさに1994年のロイネのソロ「The Flower King」の続編というべき傑作だ。
ドラマティック度・・8 フラキン度・・9 優雅度・・9 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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Tusmorke 「Fjernsyn I Farver」
ノルウェーのプログレバンド、タスメルケの2018年作
2012年にデビュー、妖しさたっぷりのヴィンテージなサウンドを描くこのバンド。本作は6作目となる
フルートが鳴り響き、サイケなシンセと適度にハードなギター、そして母国語による妖しいヴォーカルを乗せ
ヴィンテージかつカルトな気配に包まれた、これまで以上にいかがわしいサウンドを聴かせる。
ピアノやメロトロン、フルートが重なる、やわらかな叙情性は、やはり北欧のバンドらしい空気感で、
万物を照らす光と物質の関係性をテーマにしたという、スケールの大きさを覗かせつつ、
神秘的ですらあるサイケプログレを展開。この本気度というか、奇天烈な世界観はどこまで強固になるものか。
異色の存在感という点では、ある意味、Motorpsychoにも匹敵するかも。なんだかすごいバンドになってきた。
サイケ度・・8 プログレ度・・7 怪しげ度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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CARPTREE 「EMERGER」
スウェーデンのシンフォニックロック、カープトゥリーの2017年作
2001年にデビュー、本作は6作目で、オルガンやムーグを含むプログレなシンセアレンジに
マイルドなヴォーカルを乗せた、オールドスタイルのシンフォニックロックサウンドに、
Porcupine Tree以降の薄暗い翳りを含ませた、ほどよくハードな質感も絶妙だ。
いくぶん中途半端に思えた前作よりも、楽曲自体のドラマティックな空気感が強まって、
北欧プログレ的なキャッチーな叙情も残しつつ、ゆったり、どっしりとしたダイナミズムで
繊細かつ重厚に構築されるサウンドはここにきてついに完成をみたか。
ナッド・シルヴァンを思わせるような、ヴォーカルの表現力も見事な傑作です。
シンフォニック度・・8 ドラマティック度・・8 叙情度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Erik Wollo 「Different Spaces」
ノルウェーのミュージシャン、エリク・ウォーロの2017年作
北欧のジャズロック&ニューエイジ界では、TERJE RYPDALの再来とも言われるギタリストで、
うっすらとしたスペイシーなシンセに繊細なギタートーンを重ねた、サウンドスケープ的な作風。
シンフォニックといってもよい美しさと空間的な静謐感は、単なるニューエイジの枠を超えた幻想性に包まれていて、
シーケンサーによるデジタルなアレンジも含めて、Klaus Schulzeなどにも通じるサウンドが楽しめる。
2CDで合計147分という大作なので、途中、さすがに長尺感はあるのだが、美しいシンセの重ねと
ゆったりとしたギター、ときにエレクトロな感触も加わったスペイシーなBGMとしてのんびりと聞き流せます。
スペイシー度・・8 シンセ度・・8 ギター度・・7 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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ACQUA FRAGILE 「A NEW CHANT」
イタリアのプログレバンド、アクア・フラジーレの2017年作
ドラム、ベース、ヴォーカルのオリジナルメンバーを中心にした、1974年以来、じつに43年ぶりとなる復活作。
アコースティックギターによるイントロから、ピアノやストリングスによる優美なアレンジを重ね、
PFMにも参加したベルナルド・ランゼッティの枯れた味わいのヴォーカルを乗せた、繊細な叙情に包まれる。
キャッチーなコーラスワークとともに、あの頃のサウンドをそのまま大人の味わいにした聴き心地で、
これという派手さはないのだが、メロウなギターやうっすらとしたシンセなどで、じっくりと味わえる優雅な作風。
大人の歌もの感触と古き良きプログレらしさのバランスがとれた、これはファンには歓喜の復活作でしょう。
叙情度・・9 プログレ度・・7 イタリア度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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The Rome Pro(g)ject 「Exegi Monumentum Aere Perennius」
イタリアのシンフォニックロック、ローマ・プロ(グ)ジェクトの2017年作
シンセ奏者、ヴィンセンツォ・リカを中心にしたプロジェクトで、ニック・マグナスによるたおやかなピアノのイントロから、
スティーブ・ハケットのメロウなギターにジョン・ハケットのやわらかなフルートが重なる、繊細で優美なサウンドを聴かせる。
メロトロンやムーグの音色を含む美しいシンセとともに、ロマンの香りに包まれた優雅な味わいで、
オールインストによるシンフォニックロックを展開。デビッド・ジャクソン(元VDGG)、デヴィッド・クロスらもゲスト参加、
ヴァイオリンが美しい故ジョン・ウェットンに捧げたナンバーや、キース・エマーソンに捧げるナンバーもあり、
ボーナストラックには、故フランチェスコ・ディ・ジャコモ(BABCO)に捧げるナンバーを、本人の語りとともに収録。涙
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 優美度・・9 総合・・8
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Taproban 「Per Aspera Ad Astra」
イタリアのプログレバンド、タプロバンの2017年作
2001年にデビュー、本作が5作目となる。シンセ、ギター&ベース&シンセ、ドラムというトリオ編成で、
のっけからメロトロンにムーグが重なる、往年のプログレ感たっぷりのインストサウンドで
15分という大曲を描いてゆく。アコースティックギターによる叙情的な小曲から、
躍動的なアンサンブルにオルガンが鳴り響く、イタリアらしい濃密な味わいへと再び移り、
ときにヴォーカルも加わって、メリハリのある展開力で構築される。リズム面での演奏力も含めて、
バンドとしてひとつ突き抜けた感のある内容で、なにより、この天晴なまでのプログレ愛と懐古主義は、
オールドなプログレリスナーの胸を打つだろう。アナログキーボードがたっぷり味わえる濃密な快作だ。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 ヴィンテージ度・・9 総合・・8 
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Il Cerchio D'Oro 「Il Fuoco Sotto La Cenere」
イタリアのプログレバンド、チェルキオ・ドーロの2017年作
結成は70年というバンドで、1999年のデビュー作から本作で5作目となる。
オルガンやピアノ、ムーグを含むシンセにメロウなギター、イタリア語のヴォーカルで聴かせる、
70年代ルーツのイタリアンプログレで、繊細な叙情と適度にハード寄りの感触が同居したサウンド。
過去作に比べると、牧歌的なやわらかさが増していて、ジェントルな歌声と優雅なアンサンブルで、
古き良き空気感のイタリアンプログレが楽しめる。一方ではオルガンとブルージーなギターによる
オールドなロック感触も含んだ枯れた味わいも魅力的だ。大人の哀愁に包まれた好作品。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 古き良き度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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CHRISTADORO
イタリアのプログレバンド、クリスタドーロの2017年作
THE CARNIVAL OF FOOLSなどに参加した、マッシミラノ“MOX”クリスタドーロを中心に、
HOSTSONATEN、LA MASCHERA DI CERAなどでおなじみ、ファビオ・ズッファンティ、
YUGENのスケ・ボッタらも参加。フランコ・バッティアート、アントネッロ・ヴィンディッティ、
クラウディオ・バリョーニ、ルシオ・デッラといったイタリア系アーティストのカヴァー集で、
オルガンを含むシンセに適度にハードなギターと、イタリア語によるジェントルなヴォーカルを乗せた、
味わいのある歌ものロックを聴かせる。プログレ的なところはシンセくらいであるが、
フランコ・ムッシーダがゲスト参加するなど、ディープなイタリアンロック好きならチェックです。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 イタリア度・・9 総合・・7.5
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Glass Hammer 「Mostly Live in ITALY」
アメリカのシンフォニックロック、グラス・ハマーのライブ作品。2018年作
1993年にデビュー、いまやアメリカを代表するプログレバンドの2017年のイタリア公演を収録。
女性Voを含む4人編成というシンプルな構成で、2016年作「Valkyrie」からのナンバーをほぼ全曲演奏。
存在感あるベースに美しいシンセアレンジ、男女ヴォーカルの歌声を乗せた優雅なシンフォニックロックを聴かせる。
オルガンやムーグの音色によるヴィンテージなプログレ感と、女性ヴォーカルによる爽やかな味わいが同居して、
ベテランらしい力の抜けたアンサンブルでじっくりと構築されるサウンドは、まさにシンフォプログレの王道。
トリオとは思えない演奏陣もさすがで、Susie嬢の歌声を巧みに引き立てている。9分を超える過去曲メドレーもGood。
ライブ演奏・・8 プログレ度・・8 優雅度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Southern Empire
オーストラリアのプログレバンド、サウザン・エンパイアの2016年作
UNITOPIAのシンセ奏者を中心にしたバンドで、ほどよくハードなギターと美麗なシンセアレンジ、
伸びやかなヴォーカルを乗せて、キャッチーなメロディアス性で聴かせる、シンフォニックロックサウンド。
モダンで軽妙なセンスと抜けの良いメロディックな味わいは、IT BITESあたりにも通じるだろう。
10分を超える大曲も、起伏のある展開力で構築されながら、あくまでメロディアス性が前に出ていて、
NEAL MORSEなどのファンにも受けそうだ。28分という組曲ではサックスやフルートなども加えた優雅なアンサンブルと、
メロウなギターで大人の叙情を描き出す。さほど新鮮味はないのだが、楽曲、演奏共にクオリティの高さが光る力作です。
メロディック度・・8 ハードプログレ度・・8 優雅度・・8 総合・・8
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Southern Empire 「Civilisation」
オーストラリアのプログレバンド、サウザン・エンパイアの2018年作
19分、29分の大曲を含む全4曲という構成で、ハードエッジでモダンなメロディックロック感触に、
シンフォニックな味付けを加えたスタイリッシュなサウンドは、2作目にきてより磨きがかかっている。
艶やかなヴァイオリンに流麗なギターが絡むなど優美なアレンジなど、ドラマティックな盛り上げ方は前作以上で、
軽妙なテクニカル性に壮麗な叙情美の融合という点では、ProgMetal系のリスナーでも楽しめだろう。
インストパートでの濃密な充実ぶりが、味わいのあるヴォーカルパートとのコントラストとなっていて、
サウンドの説得力をぐっと強めている。29分の大曲もドラマティックな展開力で聴かせる。前作を超える力作。
メロディック度・・8 ハードプログレ度・・8 壮麗度・・8 総合・・8
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SONUS UMBRA 「Digging for Zeros」
メキシコのハードプログレ、ソナス・ウンブラの2005年作
2000年にデビュー、本作は3作目となる。ツインギターに男女Vo、シンセを含む6人編成で、
2〜4分前後の小曲を連ねたコンセプト的な流れとともに、ProgMetal的な構築性で描かれる、
いくぶんダークな空気感のシンフォニックロック。女性ヴォーカルがリードをとる優雅なパートから、
男性声メインになるとやぼったくなるが、メリハリのある構成でドラマテイックな世界観を描いてゆく。
楽曲が短めなので1曲ごとの盛り上がりは薄めながら、アルバム後半ではプログレらしい叙情美も現れる。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 重厚度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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NEBBIA PEZ 「Rodar」
アルゼンチンのシンセ奏者、リト・ネビアとにロックバンドのペズによるユニット。2017年作
アコースティックギターりのつまびきに、スペイン語のヴォーカルを乗せた哀愁に包まれた1曲目から、
ぐっとロック寄りになった2曲目からは、オルガンやピアノにオールドな味わいのギターで聴かせる、
70年代スタイルのサウンドになる。南米らしいやわらかな叙情性に包まれた聴き心地で、
プログレ的な要素というのはシンセくらいであるが、古き良き南米ロックがたっぷり味わえる全15曲。
メロディック度・・8 プログレ度・・6 南米度・・8 総合・・7.5
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2/2
フォーク、トラッド特集♪(29)


JUDY DYBLE 「EARTH IS SLEEPING」
英国のフォークシンガー、ジュディ・ダイブルの2018年作
Fairport Conventionのオリジナルシンガーとしても知られる、英国フォーク界伝説の女性シンガーのソロ。
前作に続きTHE CURATORのアリスター・マーフィがプロデュース、パット・マステロット、マーク・フレッチャー、ジェレミー・サルモンなど、
多くのメンバーが参加している。アコースティックギターのつまびきに、しっとりとした歌声を乗せた叙情ナンバーで幕を開け、
ドラムにエレキギター、シンセも加えた、どこかなつかしい70年代風のキャッチーなナンバーでは、あの頃の英国の香りが蘇るかのよう。
ヴァイオリンやチェロなどのストリングスを加えた優美なアレンジに、年を経ても魅力的なジュディの優しい歌声にウットリとなる。
フルートやシンセが入ると、KING CRIMSONの1stにも通じる幻想的な翳りに包まれる。これぞ英国の空気。繊細にして優美な傑作だ。
繊細で優美度・・9 英国度・・9 女性Vo度・・9 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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Galley Beggar 「Heathen Hymns」
イギリスのフォークロック、ギャリー・ベガーの2017年作
2010年にデビュー、リー・ドリアンのレーベルから発表された前作が話題になったが、本作はそれに続く4作目。
女性Vo、女性ヴァイオリン奏者を含む6人編成で、エレキギターも使ったほどよいロック感触に、
けだるげな女性ヴォーカルの歌声で聴かせる、70年代の英国アシッドフォークを思わせるサウンド。
前作に比べて魔女めいた妖しさが増し、女性ヴォーカルのヴィンテージロックとしても楽しめる。
一方では、アコースティックギターにシタール、ヴァイオリンが鳴り響く、牧歌的なフォーク感触も残していて、
どんよりとした妖しさと素朴な聴きやすさが同居した作風だ。これぞ英国の新時代アシッドフォーク。
アシッ度・・8 英国度・・9 女性Vo度・・8 総合・・8
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BARBARA DICKSON「TIME & TIDE」
イギリスの女性シンガー、バーバラ・ディクソンの2008年作
70年代から活動する、スコティッシュ・フォークを代表する女性シンガーの一人。
本作は、元IONAのトロイ・ドノックリーがプロデュース、IONAののフランク・ヴァン・エッセンがドラムで参加した
ケルティックなトラッドのアレンジを中心にした作品で、アコースティックギターにうっすらとしたシンセを重ね、
愁いを帯びた女性ヴォーカルで聴かせる優美なサウンド。ときにサックスやホイッスル、イーリアンパイプが鳴り響き、
ピアノやヴァイオリンをバックに、母性を感じさせる優しい彼女の歌声でしっとりと聴かせるナンバーにウットリしつつ、
エレキギターやドラムも加わった使ったナンバーでは、IONAのようなケルティックロックとしても楽しめるところもある。
ケルティック度・・8 ロック度・・5 女性Vo度・・8 総合・・8
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LOREENA McKENNITT「Troubadours on The Rhine」
カナダ出身のケルト系シンガー、ロリーナ・マッケニットのライブ。2012年作
ギター&シンセ奏者、チェロ奏者を加えての、2011年ドイツでのトリオ編成でのライブを収録。
彼女の奏でるやわらかなハープの音色に、伸びやかな歌声を乗せ、しっとりとしたトラッドソングを聴かせる。
ピアノとチェロによるシンプルなバックが、いっそう彼女の表現ある歌声を引き立てていて、
美しさと深みを併せ持ったその歌唱は、まさに現代最高の女性ケルト&トラッドシンガーであろう。
全44分であるが、まどろむようにウットリと聴き入れる。もっと聴いていたいという
ライブ演奏・・8 ケルト/トラッ度・・8 女性Vo度・・9 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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Joanne Hogg & Frank Van Essen 「Raphael's Journey」
IONAのジョアンヌ・ホッグとフランク・ヴァン・エッセンのユニット作。2010年作
アコースティックギターに牧歌的なホイッスルの音色、しっとりと美しい女性ヴォーカルを乗せた、
優美なサウンドで、デイブ・ベインブリッジやトロイ・ドノックリーなど、IONA関連のメンバーも参加。
ドラムにギター、うっすらとしたシンセアレンジも加えた、シンフォニックロック風のアレンジから、
クラシカルなピアノとヴァイオリンをバックに、繊細な歌声で聴かせるナンバーなども耳心地よい。
IONAファンなら押さえておきたい逸品だ。CLANNADのモイヤ・ブレナンが数曲で参加している。
シンフォニック度・・7 しっとり優美度・・9 女性Vo度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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The Unthanks 「The Songs of Robert Wyatt & Antony & The Johnsons」
イギリスのフォークバンド、アンサンクスの2011年作
2010年ロンドンでのライブ音源で、前半は、アントニー・アンド・ザ・ジョンソンズのカヴァー。
後半はロバート・ワイアットのカヴァー曲を演奏している。やわらかなピアノをバックに、
二人の女性ヴォーカルがしっとりと優しい歌声を乗せ、艶やかなストリングスが彩を添える。
後半のワイアットのカヴァーでは、チェンバー風味の優雅さとシリアスな緊張感とともに、
ヴォーカルの表現力で、英国らしいウェットな翳りを表現するセンスが素晴らしい。
ライブ演奏・・8 英国度・・9 女性Vo度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Estampie 「Secrets of the North」
ドイツのトラッド/ネオフォーク、エスタンピエの2013年作
90年代から活動するバンドで、艶やかなフィドル音色に、美しい女性ヴォーカルの歌声を乗せ、
アコースティック楽器を主体にメディーヴェルな世界を描く、幻想的なトラッドサウンドを聴かせる。
本作は中世の北欧バラッドを再現するというコンセプトで、ブズーキやガイタ、ニッケルハルパ、
ハーディ・ガーディといった北欧の古楽器に、サントゥールやサズといった中近東系の楽器や、
ポルタティフ、ハルモニウムといった中世の鍵盤楽器、チェロやトローボーンなども加えた厚みのあるサウンドで、
スウェーデン語で歌われているところもなかなかの本格派だ。曲によってはわりとモダンなアレンジもありつつ、
北欧的な寒々しさと土着的なメロディなど、トラッドとしての説得力が高いので、その世界観にうっとりと聴き入れる。
アコースティック度・・8 幻想トラッ度・・9 女性Vo度・・8 総合・・8.5
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Estampie 「Amor Lontano」
ドイツのトラッド/ネオフォーク、エスタンピエの2016年作
本作は、神聖ローマ帝国、フリードリヒ二世の世界をテーマにした作品で、
パーカッシヨンのリズムに、サズやシタールによるアラビックな音色を乗せ、
フィドルの音色に女性ヴォーカルを加えた、異国的なトラッドサウンドを描く。
ドイツ語、フランス語、アラビア語による歌声に、ハーディ・ガーディ、ニッケル・ハルパなど、
本格的なトラッド感触が、中世の空気感をかもしだす。躍動感あるアンサンブルもさすがで、
スペインのAMAROKあたりが好きな方にも楽しめるだろう。中近東系トラッドの傑作だ。
アコースティック度・・9 中近東トラッ度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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DELICATE CUTTERS 「Some Creatures」
アメリカのフォークロック、デリケート・カッターズの2011年作
女性SSW、ジャネット・エリザベス・シンプソンを中心にしたバンドで、
ヴァイオリンやピアノの音色に、キュートな女性ヴォーカルで聴かせるフォークロックサウンド。
わりとロック寄りのドラムに乗せたキャッチーなポップ性と、カントリー風味の牧歌性が同居した
どこかなつかしいような素朴な感触であるが、曲によっては翳りを含んだ倦怠の空気も覗かせて、
All About Eveなどにも通じる雰囲気もある。全編でヴァイオリンが使われているのも本作の特徴だ。
アコースティック度・・7 牧歌的度・・8 女性Vo度・・7 総合・・7.5
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IZZY'S DAUGHTER 「Autumn Flowers」
イギリスのネオフォーク、イジーズ・ドウターの2013年作
アコースティックギターのつまびきに、しっとりとした女性ヴォーカルの歌声、
うっすらとしたシンセに物悲しいチェロの音色も加わったゴシック寄りのネオフォーク。
翳りを帯びた倦怠感は、All About Eveなどにも通じる世界観で、そのたゆたうような歌声は、
ジュリアンヌ・リーガンとケイト・ブッシユを合わせたような雰囲気。楽曲は3分前後で、わりとあっさりしているのだが、
少ない音数で幻想的な世界を描くセンスという点では、今後に期待したいアーティストである。
幻想度・・8 ゴシックフォーク度・・7 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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ZARI 「Sazaroti」
ラトビアのネオフォーク、ザリの2017年作
うっすらとしたシンセにアコースティックギター、美しい女性ヴォーカルの母国語の歌声を乗せた
幻想的なネオフォークサウンドに、ゴシック的でもある物悲しい倦怠の空気感と、
ドラムやエレキギターも加わったロック寄りのアレンジもあって、辺境フォークロックとしても楽しめる。
打ち込みによるモダンな感触と、アコーディオンやフルートなどの土着的な牧歌性が合わさった
スタイリッシュなバランス感覚は、若手らしいセンスの良さでプログレファンにも対応するだろう。
ドラマティック度・・7 フォークロック度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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Ion 「Madre Protegenos」
アイルランドのネオフォーク、イオンの2006年作
アコースティックギターのつまびきに、やわらかなフルート、ピアノの音色、
しっとりとした女性ヴォーカルの歌声で、幻想的なネオフォークを描く。
マンドリン、ハープ、パーカッションなどのアコースティックな土着性と
うっすらとしたシンセに包まれて、妖しく薄暗い神秘性を感じさせるサウンドだ。
ダークではあるが、ほどよくメロディの旋律があるので、初心者にも聴きやすい。
幻想度・・8 ゴシックフォーク度・・7 耽美度・・8 総合・・7.5
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ACETRE 「BARRUNTO」
スペインのトラッドバンド、アセトレの2003年作
アコースティックギターに艶やかなヴァイオリンの音色、フルート、ホイッスルにアコーディオン、
そこに複数の女性ヴォーカルの歌声が重なる、コンテンポラリーなケルトサウンドを聴かせる。
Varttinaあたりに通じる涼やかな土着性と、スパニッシュなやわらかな叙情性が合わさった聴き心地で、
クラシカルな優雅さとともに、わりとキャッチーなノリも感じさせる。全体的には、アコースティックを主体にしつつ、
うっすらとシンセによる味付けもあるので、プログレリスナーにもわりと聴きやすいだろう。
アコースティック度・・8 ケルティック度・・8 女性Vo度・・7 総合・・7.5
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Julieta Venegas 「Aqui」
メキシコ出身のシンガー、ジュリエッタ・ヴェネガスの1997年作
ビートポップなリズムにアコーディオンの音色と、スペイン語による女性ヴォーカルを乗せ
土着的な素朴さとモダンなアレンジが融合された、トラッドポップというようなサウンド。
ボサノバ調のラテンなナンバーから、ピアノにクラリネット、チェロも加えたチェンバーロック的な感触など、
わりとプログレリスナー寄りの要素も覗かせ、単なる女性Voものという以上に楽しめる。
ジュリエッタ嬢の歌声は中音域で、とても美しいわけではないが、スパニッシュな情感を描く
表現力はなかなか魅力的。絶妙のアレンジセンスが光るトラッドポップの好作品だ。
メロディック度・・8 トラッドポップ度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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プログレの新春(25)

MIKE OLDFIELD「RETURN TO OMMADAWN」
イギリスのミュージシャン、マイク・オールドフィールドの2017年作
近年はヒーリング系やポップな作品のイメージだが、本作は、1975年の名作「オマドーン」への回帰を謳うタイトルと、
20分を超える大曲2曲という構成からして期待を抱かせる。ホイッスルのやわらかな音色にアコースティックギターや
マンドリンが牧歌的に絡み、うっすらとしたシンセにエレキギターが加わると、ケルティックな味わいとともに、
かつての幻想的な空気感が広がってゆく。前半はアコースティックな素朴さに包まれた作風であるが、
後半では、エレキギターによるメロディにマンドリンの音色で、かつてのような祝祭感とともに幕を閉じる。
オリジナルを超えるものではないが、円熟した大人の叙情性でゆったりと鑑賞できる好作品といえる。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 幻想度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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LIFESIGNS 「CARDINGTON」
イギリスのプログレバンド、ライフサインズの2017年作
ジョン・ウェットン・バンドやグリーンスレイドなどで活動するジョン・ヤングを中心にしたユニットの2作目で、
ニック・ベッグスに替わり、THE WILDHERATSのジョン・ポールが参加。美しいシンセアレンジにマイルドなヴォーカルを乗せた
キャッチーなメロディアス性と躍動的なアンサンブルで、前作以上にシンフォニック・プログレとしての魅力を感じさせるサウンドだ。
オルガンやピアノによるやわらかな味わいと、古き良きプログレ/メロディックロックの感触を、そのままアップデートしたような
ゆったりとした大人の叙情性に包まれた聴き心地。10分前後の大曲が多い点も、この路線での自信の表れだろう。
オールドなプログレファンはもちろん、多くのメロディ派リスナーに楽しめる充実の出来だ。元IONAのデイヴ・ベインブリッジがゲスト参加。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 大人の叙情度・・9 総合・・8
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KAPREKAR'S CONSTANT 「Fate Outsmarts Desire」
イギリスのプログレバンド、カープリカーズ・コンスタントの2017年作
オルガンやムーグを含むシンセに、フルートやサックスが鳴り響き、マイルドなヴォーカルを乗せ
ゆったりとした大人の叙情に包まれた、オールドな味わいのシンフォニックロック。17分、21分という大曲も、
派手に盛り上げるのではなく、美しいシンセにメロウなギターを重ねて、じっくりと繊維な流れで描かれる。
キャッチーで優雅な感触はCAMELなどにも通じるところもあり、フォークルーツの牧歌的な小曲なども耳心地よい。
元VDGGのデビッド・ジャクソンがサックス&フルートで賛歌、その娘、ドリー・ジャクソンもヴォーカルで参加していて、
ラストの大曲では透明感のある美声を聴かせてくれる。英国らしいゆるやかな叙情のシンフォニックロック作品です。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 大人の叙情度・・8 総合・・7.5
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EMMETT ELVIN 「ASSAULT ON THE TYRANNY OF REASON」
イギリスのミュージシャン、エメット・エルヴィンの2016年作
CHROME HOOF、KNIFEWORLD、GUAPOなどにも参加したシンセ奏者で、
キャッチーなポップ性とサイケ要素が合わさった、スタイリッシュなサウンドを聴かせる。
ストリングスにピアノが絡む、クラシカルなチェンバーロック風味もありつつ、
ときに躍動感あるアンサンブルで、知的でクールなインストパートを構築してゆく。
アコースティックやオルガンが鳴り響くオールドな味わいから、シンセをメインにした
ミステリアスなナンバーまで、独自のセンスで昇華したアヴァンプログレが楽しめる。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 アヴァンギャル度・・8 総合・・8
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FLAMBOROUGH HEAD 「Live at ProgFarm 2006」
オランダのシンフォニックロック、フランボロー・ヘッドのライブ作品。2017年作
1998年にデビュー、いまやオランダを代表する美麗系シンフォニックロックバンド。
本作は2006年と、2015年のライブをそれぞれに収録した、CD2枚組仕様。
2006年の方はメロウな泣きのギターに美しいシンセ、やわらかなフルートが絡み、
まだ初々しさの残る女性ヴォーカルとともに、GENESISルーツの繊細なサウンドを聴かせる。
2015年の方は、いくぶん垢抜けたアンサンブルで、音質は最高ではないが、
10分を超える大曲を主体に、じっくりと構築されるシンフォニックロックが楽しめる。
シンフォニック度・・8 ライブ演奏・・8 音質・・7 叙情度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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GOLDEN CAVES 「Collision」
オランダのプログレバンド、ゴールデン・ケイヴスの2017年作
女性Vo、女性シンセ奏者を含む5人編成で、適度にハードなギターにオルガンを含むシンセと
伸びやかな女性ヴォーカルで聴かせる、シンフォニックでコケティッシュなハードプログレサウンド。
美麗なシンセアレンジとともに、ゴシック的でもあるほのかな翳りを含んだメランコリックな叙情美は、
Frequency Driftなどにも通じる感触で、ProgMetal要素もある女性声シンフォとしても楽しめる。
同郷の先輩である、元The Gatheringのアネクさんを思わせる、ROMY嬢の表現力ある歌声も見事で、
しっとりと聴かせる優美なナンバーも心地よい。アンニュイな翳りに包まれた好作品です。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 女性Vo度・・9 総合・・8
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SILHOUETTE 「Beyond the Seventh Wave」
オランダのシンフォニックロック、シルエットの2014年作
美しいシンセアレンジにメロウなギターと繊細なヴォーカルの歌声で聴かせる、
正統派の叙情派シンフォニックロックサウンド。PENDRAGONもかくやという泣きのギターに
プログレらしいシンセの重ねで、優美なダイナミズムを描き出す。8分、10分という大曲も、
ゆったりとした展開の中に、ここぞと泣きの叙情美を盛り込んで、じっくりと構築してゆく。
ゲストによる女性ヴォーカルが加わったナンバーでは、KAYAKのような優雅でキャッチーな味わいも。
そのKAYAKのシンセ奏者、トン・スケルペンツェルもゲスト参加。泣きメロたっぷりの叙情シンフォの逸品です。
シンフォニック度・・8 ドラマティック度・・8 叙情度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Riverside 「Wasteland」
ポーランドのプログレバンド、リヴァーサイドの2018年作
7作目となる本作は、2016年にギタリストのPiotr Grudzinskiが死去して後の初めてのアルバムとなった。
やわらかな歌声を乗せた小曲で幕を開け、ハードエッジなギターとともに薄暗い空気感に包まれた、
サウンドが広がってゆく。オルガンを含むやわらかなシンセに、ときにメロウな旋律を奏でるギターが
物悲しい叙情性を描きながら、プログレらしいテクニカルな展開力も含んだ、モダンでスタイリッシュな作風だ。
ゴシック的でもあるゆったりとしたメランコリックなナンバーなども新機軸で、モノトーンのような薄暗さの中に、
繊細なメロディを描くところはポストプログレ的でもある。あるいはダークなProgMetalとしても楽しめる力作だ。
ドラマティック度・・7 スタイリッシュ度・・8 薄暗度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Walfad 「Colloids」
ポーランドのプログレバンド、ワルファッドの2018年作
2013年にデビュー、本作は4作目となる。シンセを含む5人編成で、ほどよいハードさを含んだギターに、
オルガンを含むうっすらとしたシンセと、伸びやかなヴォーカルを乗せたキャッチーな聴き心地に、
MARILLIONなどにも通じる精細さと、RIVERSIDEなどのポーランドらしい薄暗さも含んだサウンド。
10分を超える大曲も、ゆったりとした叙情性で、ポストプログレ的な歌ものとしての聴きやすさがある。
インストパートでの展開力がもう少し欲しい気もするが、スタイリッシュで耳心地のよいアレンジセンスには、
今後の成長に期待させるものがある。エモーショナルなロック感とモダンなプログレ色が同居した好作品。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 叙情度・・8 総合・・7.5
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Dave Kerznner 「Static」
アメリカのミュージシャン、デイヴ・カーズナーの2017年作
サイモン・コリンズとのユニット、SOUND OF CONTACTや、MANTRA VEGAにも参加するミュージシャンで、
本作はソロ2作目となる。人々の日常における障害からの解放をテーマにしたコンセプト作品で、
メロトロンを含むシンセに、ほどよくハードなギターとマイルドなヴォーカルを乗せた、
スタイリッシュなプログレハードを聴かせる。躍動感のあるリズムとモダンな硬質感に、
GENESISPINK FLOYDKING CRIMSONなどからの影響も匂わせる叙情性をまとって、
オルタナシンフォ的な薄暗さも描き出す。一方では、SPOCK'S BEARD的なキャッチーな感触や、
ラストの16分の大曲では、BIG BIG TRAINなどにも通じるウェットな叙情性に包まれる。
スティーブ・ハケット、ニック・ディヴァージリオ(SPOCK'S BEARD)などがゲスト参加。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 スタイリッシュ度・・8 総合・・8
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RTFACT 「LIFE IS GOOD」
アメリカで活動するロシア人ミュージシャンによるプロジェクト、アールティーファクトの2017年作
ナッド・シルヴァン(AGENT OF MERCY)、ジェフ・スコット・ソート(TALISMAN、SONS OF APOLLO)をはじめ、
オズ・ノイ、ジェフ・コールマン(EDWIN DARE)、ラフェエル・モレイラといった気鋭のギタリストも参加、
オルガンを含むシンセにオーケストラルなアレンジを重ね、フルートやサックスの音色に、
技巧的なギターフレーズを乗せた優雅で軽妙なサウンドを聴かせる。ヴォーカル入りのパートでは、
ブルージーな古き良き70'sロックの雰囲気もありつつ、クラシカルなシンセの旋律はThe NiceEL&P風味も。
もう少しドラマテイックな盛り上がりが欲しい気もするが、オールドな味わいのメロディックな好作品です。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 優雅度・・9 総合・・7.5
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VALDEZ 「THIS」
アメリカのプログレバンド、ヴァルデスの2017年作
イギリス人ミュージシンャン、サイモン・ゴドフリー(FROST*のジェムの兄)と、ECHOLYNのメンバーらによるユニットで、
ジェントルなヴォーカルにギターとオルガン重ねた、オールドな味わいのキャッチーな歌もの系メロディックロック。
楽曲自体も、ECHOLYNGENTLE GIANTを思わせるコーラスハーモニーとともにポップ感のある聴き心地ながら、
随所にときおりプログレ的なリズムも覗かせるのはさすが。わりとシンプルなメロディアス性で聴かせつつ、
ゆったりとした大人の叙情ナンバーなどでは、やわらかなピアノやメロトロンなどのシンフォニック風味もある。
ラストは12分の大曲で、プログレらしいメリハリのある展開力が楽しめる。やわらかな歌ものプログレ好作品。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 軽妙度・・8 総合・・8
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本年もプログレでよろしくお願いいたします(13)
昨年のプログレCDレビューはこちら


Spock's Beard 「Noise Froor」
アメリカのプログレバンド、スポックス・ビアードの2018年作
1995年にデビュー、いまやアメリカン・プログレを代表するバンドの通算13作目。
本作には元メンバーのニック・ディヴァージリオがドラムで参加していて、リョウ・オクモトのきらびやかなシンセに、
アラン・モーズの巧みなギター、テッド・レオナルドの伸びやかなヴォーカルを乗せた、キャッチーハードプログレを聴かせる。
ベテランらしい優雅なアンサンブルとダイナミックな展開力に、プログレらしいシンセパートもたっぷり盛り込んつつ、
ときにゆったりとした叙情を描くメロディックロックとしての普遍性も備えている。ヴォーカルの表現力と演奏力の高さが、
堂々たるメジャー感となっていて、古き良きプログレ感触を残しつつも、それをモダンにスタイリッシュに深化させたという、
まさに現代のスポビ流プログレを表現したという傑作だろう。限定盤2CDでは本編未収録の4曲が楽しめる。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 優雅な叙情度・・9 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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AMERICAN TEARS 「Hard Core」
アメリカのプログレハード、アメリカン・ティアスーズの2018年作
1977年作以来、じつに41年ぶりとなる復活作。シンセ、ベース、ドラム、ヴォーカルを一人でこなす、
実質的にはマーク・マンゴールードのソロ的な内容で、オルガンやムーグを含むきらびやかなシンセワークに、
枯れた味わいのヴォーカルで聴かせるキャッチーなサウンド。楽曲は4〜5分前後でわりとシンプルで、
ギターが入らない分、ロック的な部分での物足りなさはあるが、マンゴールドのキーボードがたっぷり味わえるという点では、
むしろオールドな雰囲気の鍵盤プログレハードという聴き方もできる。次回はぜひプログレらしい大曲もやってもらいたい。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 キーボー度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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Galahad 「Quiet Storms」
イギリスのシンフォニックロック、ガラハドの2017年作
デビューは80年代後半というベテランで、過去曲の新緑に新曲を加えた構成のアルバム。
しっとりとしたピアノにアコースティックギター、マイルドなヴォーカルで聴かせる繊細なアレンジで
MARILLIONのような優しい聴き心地。優雅な叙情に包まれた作風は、ロック的な躍動感はないが、
やわらかなシンセにヴァイオリンの音色、女性ヴォーカルなども加わった、優美なサウンドにじっくりと浸れる。
アコースティックなアレンジで仕上がった過去曲も違った味わいで楽しめます。しっとり優雅な全75分。
シンフォニック度・・7 プログレ度・・7 繊細度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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LONG EARTH「THE SOURCE」
イギリスのプログレバンド、ロング・アースの2017年作
ABEL GANZ関連のメンバーにより結成されたバンドで、うっすらとしたシンセにメロウなギターと
枯れた味わいのヴォーカルで、オールドなスタイルのシンフォニックロックを聴かせる。
20分前後の2つの組曲を中心にした構成で、全体的にゆったりとした流れのサウンドは
スリリングな部分は希薄だが、年季のあるメンバーらしい落ち着いた味わいで楽しめる。
大曲においては、もう少しドラマティックな盛り上がりが欲しい気もするが、
哀愁の叙情を帯びた歌もの的なところも含めて、大人のシンフォというべき好作だ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 大人のシンフォ度・・8 総合・・7.5
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Second Hand 「Death May Be Your Santa Claus」
イギリスのプログレバンド、セカンド・ハンドの1971年作/2010年紙ジャケリマスター盤
オルガンやメロトロンが鳴り響く優雅な味わいに唐突なリズムチェンジ、怪しげなヴォーカルを乗せ
エキセントリックな展開で聴かせる、時代を考えれば大変斬新なサウンドである。
クラシカルな要素のあるサイケロックであるが、今でいうアヴァンプログレの屈折感で、
ときにキャッチーなポップ性も覗かせつつ、知的なセンスが散りばめられた楽しさがある。
ジャケのインパクトも含めて、英国プログレ黎明期の裏傑作というべき一枚だろう。
本作ののち、主要メンバーであるケン・エリオットとキーラン・オーコナーはSeventh Waveを結成する。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 優雅に屈折度・・9 総合・・8
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FUCHSIA
イギリスのフォークロック、フューシャの1971年作
アコースティックギターに、エレキやドラムを加えたロック感触にヴァイオリンやチェロを加えた、
壮麗な味わいのフォークロック。ジェントルな男性ヴォーカルに美しい女性ヴォーカルの歌声と、
優美なストリングスが合わさり、メディーヴァルで華やかなロマンの香りを描き出す。
ヴァイオリン奏者でもある二人の女性ヴォーカルが、メインの男性声との美しい対比で、
素朴なフォーク感触を優雅に彩っていて、SPRIGUNSのようにプログレ的にも味わえる。
ドラマティック度・・8 優美度・・9 英国度・・8 総合・・8
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Marie Celeste 「And Then Perhaps」
イギリスのフォークバンド、マリー・セレストの1971年作
幻のブリティッシュ・アシッドフォークバンド、唯一の作品で、航海中に無人船として発見された
謎の事件、マリー・セレスト号を名前にしていることからも、ミステリアスなイメージであるが、
サウンドの方はアコースティックギターを主体に、男女ヴォーカルの歌声を乗せた牧歌的な聴き心地。
シンプルな音数の中にも、英国らしいウェットな空気感を漂わせるところは、マニア好みの雰囲気で、
二人の女性ヴォーカルの美しいハーモニーにはウットリとなる。まさにレアアイテムの奇跡のCD化ですな。
アコースティック度・・9 牧歌的度・・8 英国度・・9 総合・・7.5
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GAZPACHO「DEMON」
ノルウェーのボストプログレバンド、ガスパチョの2014年作
2003年にデビュー、いまやkscopeレーベルを代表するバンドで、本作は8作目のアルバム。
うっすらとしたシンセに物悲しいヴァイオリンの音色から始まり、淡々としたヴォーカルにギターが重なり、
薄暗い叙情に包まれた、繊細でシンフォニックなポストプログレサウンドが広がってゆく。
アコーディオンが鳴り響くフォーキーなナンバーもありつつ、アルバム後半は12分、18分という大曲で、
美しいピアノにヴァイオリンが絡み、ギターとシンセによる厚みのある音作りでゆったりと盛り上げる。
これまで以上にメリハリのある聴き心地で、涼やかな北欧シンフォニックロックとしても楽しめる。
ドラマティック度・・8 薄暗度・・8 繊細度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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SALEM HILL「Pennies In The Karma Jar」
アメリカのプログレバンド、セーラム・ヒルの2010年作
1992年の自主制作のデビュー作から数えて8作目。前作「Mimi's Magic Moment」は見事なシンフォニックロック傑作だったが、
5年ぶりとなる本作は、キャッチーなコーラスハーモニーから始まるように、メロディックな歌もの感が増していて、
これまでよりいくぶんシンプルな聴き心地。ときにオルガンも鳴り響き、ハード寄りのギターを乗せたキャッチーな感触は、
SPOCK'S BEARD
NEAL MORSEにも通じるだろう。美しいシンセにメロウなギターによるシンフォニック性も残しつつ、
14分という大曲では、プログレらしい構築力も覗かせる。全体的にゆったりとした優美な叙情で楽しめる好作品だ。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 キャッチー度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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The Rebel Wheel 「Diagramma」
カナダのプログレバンド、レベル・ホエールの2007年作
結成は90年代というキャリアのあるパンドで、2010年作「We Are in the Time of Evil Clocks」は見事な力作であったが
本作は女性サックス奏者を含む5人編成で、ヘヴィなベースとドラムのリズムにうっすらとしたシンセを重ね、
硬質なギターと浮遊感のあるヴォーカルで、ミステリアスなハードプログレ・サウンドを聴かせる。
リズムチェンジによる偏屈な展開力は、Deluge Granderなどにも通じる知的なセンスを感じさせる。
21分の大曲では、テクニカルなアンサンブルにゆったりとした叙情性も含んだ起伏のある展開力で
メリハリのあるインストパートを構築、シリアスな薄暗さとキャッチーなおとぼけ具合のバランスも絶妙だ。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 ミステリアス度・・8 総合・・8
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CIRCUS 「MOVIN' ON」
スイスのプログレバンド、サーカスの1977年作
本作は2作目で、70年代スイスの作品としては、ISLANDと並ぶ名作としても名高い。
アコースティックギターにフルートとサックスの優雅な音色が絡み、やわらかなヴォーカルを乗せ、
玄人好みの優雅なジャズロック的なアンサンブルを描き出す。知的でテクニカルな構築性は
同郷のアイランドなどにも通じる部分もあるが、こちらはもっと軽妙で、さらりとしたクールさが魅力。
上品なクラシカル性はチェンバーロック的でもあり、タイトル曲である22分の大曲はスリリングなインストパートが素晴らしい。
長らく貴重盤だったが、2017年に紙ジャケでリマスター再発された。プログレ中級者以上はチェックです。
優雅度・・9 プログレ度・・8 ジャズロック度・・8 総合・・8
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RAMSES「Control Me」
ドイツのプログレバンド、ラムセスの2000年作
1976〜81年までに3作を残して消えたバンドの復活作で、美麗なシンセアレンジにやわらかなギターと
マイルドなヴォーカルを乗せた、プログレハード風味のサウンド。リズムはわりとシンプルなので、
プログレというよりはキャッチーなメロディックロックという聴き心地だが、叙情的なギターやシンフォニックなシンセは、
後期のANYONE'S DAUGHTERにも通じるか。女性ヴォーカルを加えての優雅なメロディアス性は、
オランダのKAYAKを思わせる雰囲気もある。楽曲は4〜5分前後と、歌ものとしても普通に聴きやすい。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 優雅度・・8 総合・・7.5
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RAMSES「Firewall」
ドイツのプログレバンド、ラムセスの2014年作
前作から14年ぶりとなるアルバムで、うっすらとしたシンセにメロウなギターで聴かせる、
キャッチーなプログレハード風味は同路線。オーソドックスな歌ものナンバーの中にも、
きらびやかなシンフォニック性を覗かせるところは、やはりKAYAKSAGAなどにも通じるだろう。
ゆったりとした大人の叙情に包まれたポップなサウンドは、プログレとしてはやや物足りないが、
味わいのあるヴォーカルやメロディックなギタートーンなど、耳心地の良い好作といえる。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 大人の叙情度・・8 総合・・7.5
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