〜HEAVY METAL CD REVIEW 2019 by 緑川 とうせい

★2019年に聴いたメタルCDレビュー
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*プログレ最新レビュー *注目の新譜


11/30
メタルの冬きたる(336)


GRAILKNIGHTS 「NIGHTFALL」
ドイツのメロディックメタル、グレイルナイツの2018年作
5色のコスプレに身を包んだ、スーパーヒーロー・メタルバンドを名乗り、本作はすでに5作目となる。
サウンドの方は、わりと正統派のギターにシンセアレンジを重ね、ハイトーンなヴォーカルで聴かせる、
しごくキャッチーなメロディックメタル。SABATONのヨアキム・ブローデンが参加していてパワフルな歌声を披露。
ミドルテンポのナンバーを主体にしつつ、アグレッシブな疾走感も覗かせるところは、やはりジャーマンメタルらしい。
全体的にも普通に聴きやすいのだが、楽曲におけるメロディのフックや展開にはさほど新鮮さはなく、
スーパーヒーローなんだけどカタルシスが足りないという気が。色モノ感の脱却にはさらなる楽曲の充実を望みたい。
メロディック度・・7 疾走度・・6 正統派度・・8 総合・・7.5
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Freedom Call 「Master of Light」
ドイツのメロディックメタル、フリーダム・コールの2016年作
1999年にデビュー、いまやHELLOWEENGAMMA RAY以上にクサ☆メロディアスな作品を連発するこのバンド。
9作目となる本作も、勇壮なクワイヤから始まり、キャッチーなメロディで疾走する正統派ジャーマンメロパワが炸裂。
HELLOWEENにも通じる陽性のメロディと、曲によってはヴァイキングメタル的な旋律も覗かせつつ、
シンフォニックなアレンジと厚みのあるコーラスをまとって、エピックな壮麗さに包まれる。
アコースティックギターを使ったゆったりとしたバラードは、BLIND GUARDIAN風だったりして、
個性や新鮮味は薄いものの、華麗な疾走メロスピナンバーの楽しさには、ほとんどのリスナーはニンマリだろう。
メロディック度・・8 疾走度・・8 ジャーマン度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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ROSS THE BOSS 「BY BLOOD SWORN」
アメリカのミュージシャン、ロス・ザ・ボスの2018年作
MANOWARの初代ギタリストとして知られるミュージシャンで、2010年以来となる3作目となる。
正統派のギターにパワフルなヴォーカルを乗せて、のっけから「Blood of My Enemies」のような、
どっしりとしたエピックメタルナンバーが炸裂。その後も決してモダンにならない、ヘヴィ過ぎない、
80年代ルーツの勇壮なヘヴィメタルで、マノウォーが失いかけたサウンドを蘇らせるようだ。
ベースにはSymphony Xのマイク・レポンドが参加していて、リズム面での安定感もしっかりとあり、
エリック・アダムスばりのハイトーンもこなすヴォーカルも、サウンドの説得力に一役かっている。
ドラマティック度・・8 正統派度・・9 マノウォー度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Zephaniah 「REFORGED」
アメリカのメロディックメタル、ゼファニアの2015年作
2008年にデビュー、本作は2作目で、流麗なツインギターにハイトーンヴォーカルを乗せて
Dragonforceばりに激しく疾走する、メロディック・スピードメタル。やや唐突なリズムチェンジを含む、
緩急ある展開力に、随所にスラッシュメタルのようなアグレッシブな勢いを垣間見せつつ、
メロディのフックはあくまでキャッチーなので、激しくともけっこう聴きやすいというサウンドだ。
ギターのリフやフレーズは、過去のバンドで聴いたようなものが多いので、新鮮味は薄いのだが、
若手バンドらしい勢いを感じさせる仕上がりで、まさにスラッシュとメロスピの中間という感触の強力作です。
メロディック度・・8 疾走度・・9 スラッシー度・・8 総合・・8
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Numenor 「Chronicles」
セルビアのシンフォニック(ブラック)メタル、ナメノールの2017年作
2013年のデビュー作は、メロパワ風のシンフォニック・ブラックメタルという感触であったが、
3作目の今作はメロパワ要素が強まっていて、美麗なシンセにメロディックなギターフレーズを絡め、
パワフルなヴォーカルで聴かせる、エピックな味わいの正統派メロディックメタルになっている。
随所にダミ声ヴォーカルも出てくるが、クサメロなギターとややローカルな雰囲気も含めて、
初期のNOCTURNAL RITESなどにも近いイメージ。一方では、ダミ声ヴォーカルを乗せて激しく疾走する
ブラックメタル的な雰囲気や、女性ヴォーカルを加えた耽美なコシック風味など、いったいどれがやりたいのだろう…という。
楽曲は3〜4分前後、全9曲34分という短さながら、ラストは、BLIND GUARDIAN「Valhalla」のカヴァーでなかなか恰好よかったりする。
メロディック度・・8 メロパワ度・・7 シンフォブラック度・・7 総合・・7.5
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Platens 「Out Of The World」
イタリアのメロディアスハードロック、プラテンズの2014年作
THY MAJESTIEの初代シンガー、ダリオ・グリロをフロントにしたバンドの、2004年以来となる2作目で、
メロディックなギターにシンセを重ね、ハイトーンなヴォーカルを乗せた、キャッチーなメロハーサウンド。
オルガンを含むシンセアレンジなど、80年代ルーツの古き良き感触とともに、楽曲自体はわりとシンプルに
爽快なメロディアス性で楽しめる。楽曲自体にさほど新鮮味はないものの、叙情的なバラードなど、
ダリオの歌唱をじっくりと聴けるナンバーは魅力的だし、随所にシンフォニックメタル的なアレンジや、
テクニカルなギターフレーズをも覗かせて、単なるメロハーという以上の壮麗な好作品だ。
メロディアス度・・8 キャッチー度・・8 爽快度・・8 総合・・7.5
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The Sword 「Used Future」
アメリカのサイケ・ドゥームロック、ソードの2018年作
2006年にデビュー、6作目となる本作は、前作でのユルめのストーナー・サイケ路線から
ヴィンテージなハードロック感触が戻ってきていて、アナログ感あるギターリフに
パワフル過ぎないヴォーカルを乗せた、グルーヴィーなドゥームロックを展開する。
3〜4分前後の楽曲はシンプルながら、ブルージーなギターに随所にオルガンなどのシンセを乗せた
70年代感覚をキャッチーに聴かせるセンスは、さすが中堅クラスのバンドというところ。
ほどよいユルさも健在で、新鮮味はないものの、古き良きサイケドゥームとしての魅力十分の好作だ。
ドラマティック度・・7 サイケ度・・8 古き良き度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Toundra 「Vortex」
スペインのポストロック、トウンドラの2018年作
2008年にデビューし、本作ですでに5作目となる。トレモロを含む叙情的なギターフレーズに
うっすらとしたシンセを重ね、スタイリッシュなアンサンブルとともに空間的なスケール感を描き出す。
ときにハードなギターによる、ProgMetal的な構築性や、エモーショナルロックの味わいも同居して
モダンで優雅な聴き心地は、結果としてAlcestなどにも通じる繊細な美意識を感じさせる。
変拍子によるプログレ的なリズムも覗かせつつ、物悲しい叙情美に包まれた耳心地の良さで、
オールインストながらも軽妙な演奏力にゆったりと聴き入れる。個人的にはさらなるプログレ化を期待。
ドラマティック度・・8 叙情度・・9 繊細度・・9 総合・・8
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Mister Kite 「All in Time」
スウェーデンのメロディック・オルタナロック、ミスター・カイトの2002年作
ヘヴィなギターリフにハイトーンヴォーカルを乗せた、モダンでキャッチーなサウンド。
オルタナ的なヘヴィネスとノリのよいメタル感触に知的な構築性が同居した、
KINGS X
GALACTIC COWBOYSあたりにも通じる聴き心地ともいえる。
ときにアコースティックパートなどのやわらかな叙情性も覗かせつつ、全体的には
メロディアスになり過ぎず、さりとてテクニカルでもなく、耳を引くような展開や派手さはないので、
パッと聴きには地味なのだが、玄人好みのセンスを感じさせる好作品といえる。
メロディック度・・7 キャッチー度・・8 モダン度・・8 総合・・7.5
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AHAB「The Boats of the Glen Carrig 」
ドイツのゴシック・ドゥームメタル、エイハブの2015年作
「白鯨」のエイハブ船長をバンド名に、4作目となる本作も、ゆったりとしたポストプログレ風味のイントロから、
重厚なギターリフに迫力ある低音グロウルヴォイスを乗せた、フューネラルなドゥームメタルが展開される。
ダークなヘヴィネスの一方で、物悲しい叙情パートでは、マイルドなノーマル声ヴォーカルとともに
やわらかな浮遊感を描いていて、暗黒の深海にうっすらと光が差し込むかのような聴き心地だ。
5曲中、4曲が10分超えという大作志向で、気が短い方には向かないが、どっしりとした重厚な説得力と、
ミステリアスな空気感に包まれた、スケール感のある海洋ドゥームメタルが味わえる力作だ。
ドラマティック度・・7 ドゥーム度・・8 重厚度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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MEMORIAM 「THE SINLENT VIGIL」
イギリスのデスメタル、メモリアムの2018年作
元BOLT THROWER、元BENEDICTION、元SACRILEGEのメンバーによるバンドで、本作が2作めとなる。
ツインギターのリフに吐き捨てヴォーカルを乗せた、オールドスタイルの重厚なデスメタルで、
適度な疾走感もありつつ、激しさだけに頼らないどっしりとした聴き心地は、かつてのボルト・スロワーや
オビチュアリーなどにも通じるものがあるだろう。メロディアス性や派手な展開というものはないので、
若いリスナーにはやや退屈かもしれないが、シンプルなリフ中心の古き良きデスメタルを愛する人へ。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・7 重厚度・・8 総合・・7.5
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Windfaerer 「ALMA」
アメリカのメロディック・デスメタル、ウインドファーラーの2018年作
2010年にデビュー、本作は3作目となる。うっすらとしたシンセにヴァイオリンが鳴り響き、
ツインギターのリフとともに激しくブラスト疾走する、シンフォニックなメロデスサウンド。
6〜8という長めの楽曲を主体に、トレモロのギターリフが幻想的な叙情性を描きつつ
随所にクラシカルなヴァイオリンが彩りを添え、激しいサウンドながらも優雅な味わいに包まれる。
低音のダミ声ヴォーカルもうるさすぎない迫力で、霧の向こうから響いてくるようなイメージだ。
メロデスというよりは、ヴァイオリン入りのネイチャーブラックメタルという雰囲気でも楽しめる強力作。
ドラマティック度・・8 疾走度・・8 優雅度・・8 総合・・8
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VANIR 「Allfather」
デンマークのヴァイキングメタル、ヴァニルの2019年作
2011年にデビューし、本作はすでに5作目となる。北欧神話の世界とデンマーク王スヴェン一世をコンセプトに、
ツインギターによる土着的なリフにシンセを重ね、迫力あるダミ声ヴォーカルで聴かせるヴァイキングメタルサウンド。
勇壮な戦いを描くような硬派な雰囲気と寒々しい北の空気感は、同郷のSVARTSOTあたりにも通じるが、
メロデスばりの激しい疾走ナンバーもあったりと、全体的にもメリハリのある流れで楽しめる。
MANOWAR「THOR-The Powerhead」のカヴァーもなかなかハマっていて、エピックな迫力に包まれる。
AMON AMARTHなどに比べると、ほどよい叙情性と土着性もあって、ドラマティックな味わいの力作です。
ドラマティック度・・8 ヴァイキング度・・8 重厚度・・8 総合・・8
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Satanakozel (СатанаКозёл)「The Sun of The Dead (Солнце мёртвых)
ロシア、カレリア共和国のフォークメタル、サタナコツェルの2010年作
メタリックなギターリフにホイッスルの音色を重ね、武骨なダミ声ヴォーカルで聴かせる、
重厚なペイガンメタルサウンド。朗々とした勇壮なコーラスや土着的なギターの旋律が、
寒々しく神秘的な世界観を描き出しつつ、アコーディオンの音色とともに激しく疾走する
Finntrollあたりに通じるような雰囲気もある。一方では、シンセを加えた壮麗なアレンジも覗かせて、
辺境的な武骨さと、ビアーメタル系の愉快さがほどよくブレンドされたサウンドが楽しめる。
ドラマティック度・・7 フォーキー度・・8 武骨度・・8 総合・・7.5
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Hantaoma 「Malombra」
フランスのフォークメタル、ハンタオマの2005年作
ツインギターの土着的なリフに武骨なダミ声ヴォーカルを乗せた、ローカルな味わいのフォークメタルで、
ブズーキやマンドリン、フルートにヴァイオリンなどを用いた、わりと本格派のフォーク要素も覗かせる。
アグレッシブにたたみかける疾走感もありつつ、牧歌的な土着性に包まれるところは、
粗削りの辺境フォークメタルという聴き心地。クサメロ感がさほどないので全体的には硬派な印象ながら、
フランス語によるヴォーカルが独特の味わいになっていて、荒々しさの中にもそこはかとない優雅さを感じさせる。
勇壮なコーラスもいい感じで、蛮族系のフォークメタル、ヴァイキングメタルが好きな方なら、けっこう楽しめるでしょう。
ドラマティック度・・7 フォーキー度・・7 武骨度・・8 総合・・7.5
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11/17
プログレメタルの秋(321)


Dream Theater 「Distance Over Time」
アメリカのプログレメタル、ドリーム・シアターの2019年作
通算14作目の本作は、2枚組の大作だった前作に比べて、楽曲は最長でも9分と、比較的コンパクにまとめられている。
適度なヘヴィネスと翳りを帯びた叙情に包まれながら、ジョーダン・ルーデスのきらびやかなシンセワークと、
ジェイムス・ラブリエの伸びやかなヴォーカルは、その表現力でドラマティックにサウンドを彩り、
曲によっては、「SCENES FROM A MEMORY」を思わせたり、ヘヴィな「TRAIN OF THOUGHT」を思わせたりと、
この20年のバンドの世界観を再構築しているような感触もある。マイク・マンジーニのドラムもよりなじんでいて、
サウンドの硬質なテクニカル性を支えている。ジョン・ペトルーシの流麗なギターワークを乗せたメロディックなナンバーや、
優美なシンセアレンジのバラードなども含む、バランスの取れた内容で、強いインパクトや新鮮味はないが、さすがの完成度です。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 新鮮度・・7 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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ANTHRIEL 「Transcendence」
フィンランドのプログレメタル、アンスリエルの2017年作
2010年にデビューし、本作が2作目となる。美しいイントロから、テクニカルなリズムに
パワフルなヴォーカルを乗せ、メタリックなギターときらびやかなシンセを重ねた、
メロパワ寄りのProgMetalを聴かせる。ギターは随所に流麗なフレーズを織り込んで、
北欧らしい涼やかでキャッチーなメロディに、知的な展開力も含めてクオリティは高く、
伸びやかなヴォーカルもサウンドに説得力を加えている。ラストは19分の大曲で
ゆったりとした叙情的なパートから、優雅な構築センスでゆるやかに盛り上げてゆく。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 北欧度・・8 総合・・8
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INFINITE SPECTRUM 「Misguided」
アメリカのプログレメタル、インフィニット・スペクトラムの2012年作
タロットカードをモチーフにしたコンセプト作で、ヴァイオリンによる優雅なイントロから美麗なシンセとともに、
シンフォニックなサウンドが広がってゆく。表現力あるヴォーカルがシアトリカルなドラマ性をかもしだし、
ギターとシンセを重ねた重厚な味わいと緩急ある展開で、18分、14分という組曲を濃密に構築してゆく。
現時点では、DREAM THEATERを手本にしたようなスタイルなので、新鮮味というものはさほどないが、
ドラマティックに大曲を描こうとする意気込みは立派。ゲストによる女性ヴォーカルが参加したバラードナンバーなど、
このあたりの優雅な叙情性をもっと伸ばしてもらたい。ともかくプログレメタルらしい全79分という力作です。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 壮大度・・8 総合・・7.5
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INFINITE SPECTRUM 「HAUNTER OF THE DARK」
アメリカのプログレメタル、インフィニット・スペクトラムの2016年作
2作目の本作は、女性シンセ奏者を含む5人編成となった。H.P.ラブクラフトの小説を基にしたコンセプト作のようで、
美麗なシンセアレンジに、ハード過ぎないギターとマイルドなヴォーカルを乗せて薄暗い叙情に包まれた
シンフォニックなProgMetalを聴かせる。メタル的な激しさは控えめなので、オルガンを含むシンセワークとともに、
シンフォニック・ハード的な優美な聴き心地でも楽しめ、5パートに分かれた18分の大曲も、
テクニカル過ぎない展開美とともに、濃密なドラマを描くようにしてじっくりと構築される。
ここぞいう盛り上がりやフックのあるメロディがもう少しあればと思うが、なかなかスケールの大きな力作だ。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 壮大度・・8 総合・・7.5
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Forgin'Fate 「Antares」
フランスのプログレメタル、フォージンフェイトの2005年作
ツインギターにシンセを含む6人編成で、美麗なシンセアレンジと伸びやかなヴォーカルを乗せ
テクニカルなアンサンブルで聴かせる、シンフォニックな雰囲気のProgMetalを聴かせる。
ゆるやかな叙情パートを含む緩急のある展開力は、コンセプトアルバム的なスケール感で
いくぶん唐突なB級らしいアレンジも含めて、なかなかドラマティックな作風で楽しめる。
ドラムも含めた音作りが軽いので重厚な説得力という点では物足りないのだが、プログレ寄りのシンセワークや
クサメロ感に包まれた叙情的なナンバーもあり、むしろヘヴィ過ぎないところがよいのかもしれない。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 重厚度・・7 総合・・7.5
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SUPERIOR 「Ultima Ratio」
ドイツのプログレメタル、スペリアーの2002年作
1995年にデビュー、1st「Behind」は日本盤も出ていたのでご存知の方もいるだろう。
本作は3作目で、コンセプト的なSEを含んだクラシカルなイントロから始まり、
ヘヴィなギターにうっすらとしたシンセを重ねた重厚なメタルサウンドが広がってゆく。
シアトリカルなヴォーカルが濃密な空気を描きつつ、クラシカルなシンセアレンジが
サウンドを優雅に包み込む。モダンなアプローチを強めた分、プログレメタル要素は薄まったが、
女性ヴォーカルを加えての壮麗なシンフォニックメタル風ナンバーなど、華麗なセンスはさすが。
PAIN OF SALVATIONPOVERTY'S NO CRIMEなどが好きな方はぜひ。
ドラマティック度・・8 プログレメタル度・・7 重厚度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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WREKMEISTER HARMONIE 「NIGHT OF YOUR ASCENSION」
アメリカのエクスペリメンタルロック、レックマイスター・ハーモニーズの2015年作
J.R.ロビンソンによる個人プロジェクトで、本作は4作目となる。のっけから32分という大曲で、
うっすらとしたシンセに女性スキャットを乗せたミステリアスな空気感が広がってゆく。
シンセの重ねによる空間性には、Klaus Schulzeを思わせるようなところもあり
ストリングスを加えたクラシカルな美しさも含んでいて、ゆったりと夢見心地で鑑賞しつつ、
15分過ぎからギターとドラムが入って来て、一気に不穏なドゥームロックへと変化する。
轟音系ポストロックの感触に、ダミ声ヴォーカルを乗せたブラックメタル的な要素も感じさせつつ、
リフレインが多いので楽曲としてはやや単調ながら、雰囲気モノが楽しめる方はいかが。
ドラマティック度・・7 暗黒度・・7 壮大度・・8 総合・・7.5
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Gnaw Their Tongues 「L'arrivee De La Terne Mort Triomphante」
オランダのエクスペリメンタル・ブラックメタル、グノウ・ゼア・トングスの2010年作
マウリス・デ・ヨングによる独りユニットで、2006年にデビュー。本作はすでに7作目となる。
男女混声コーラスと、ノイジーなギター、絶叫するヴォーカル、ドラムが混然一体となった、
サウンドスケープ、ポストロック的な妖しさと、荘厳なスケール感を描くような異色の世界観。
ダークアンビエント、ノイズ、ドローン、インダストリアルの要素をブラックメタルばりの暗黒性で塗りつぶし、
ときにクラシカルなピアノなど耽美な空気も覗かせ、アヴァンギャルドなELENDというような聴き心地もある。
7〜11分という大曲ばかりで、曲というよりは混沌とした耽美な音の塊を味わうというところは、
カルトでダークなアヴァンミュージック好きには脳が心地よいことこの上ない。新時代の暗黒魔王です。
ドラマティック度・・8 メタル度・・5 暗黒度・・9 総合・・8
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Remembrance 「Fall, Obsidian Night」
フィンランドのゴシックメタル、リメンブランスの2010年作
2005年にデビューし本作が3作目となる。うっすらとしたシンセと重厚なギターに低音デスヴォイスを乗せ、
はかなげな女性ヴォーカルが絡む、DRACONIANにも通じるフューネラルなゴシック・ドゥームメタル。
これという盛り上がりはないものの、叙情的なギターフレーズとともに描かれるメランコリックな空気感が、
媚びの無い淡々とした世界観となっていて、この手のサウンドに耽溺できる方にはとても心地よいだろう。
6〜9分というスローテンポの楽曲が退屈かどうかは、闇を嗜好する聴き手との共同幻想にかかってくる。
個人的には女性声をメインにしたパートがもっとあればと思うが、ともかく耽美でフューネラルな力作です。
ドラマティック度・・7 ゴシック度・・8 フューネラル度・・8 総合・・8
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Thyrien 「Hymns Of The Mortals- Songs From The Nort」
フィンランドのヴァイキング・メロデス、スィリエンの2014年作
シンセによる幻想的なイントロから、ツインギターにダミ声ヴォーカルを乗せて激しく疾走する、
エピックなメロデスサウンドを聴かせる。涼やかな叙情性と流麗なギターメロディが同居した感触は、
初期のCHILDREN OF BODOMとヴァイキングメタルのENSIFERUMを足したようでもある。
随所にシンセによるシンフォニックなアレンジもあって、勇壮な武骨さと美しさがバランスよく融合し、
ギターやシンセのフォーキッシュなメロディとともに、TURISASなどを思わせる幻想的な土着性に包まれる。
ミドルテンポの叙情的なナンバーもあり、全体的にも激しすぎない聴き心地で楽しめる高品質な作品デス。
ドラマティック度・・8 ヴァイキング度・・7 叙情度・・8 総合・・8
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11/9
メロディックメタルの秋(311)


IRON MAIDEN「The Book of Souls」
イギリスのメタルバンド、アイアン・メイデンの2015年作
1980年デビューの大ベテラン、前作から5年ぶりとなる通算16作目となるアルバムで、「魂の書」と名付けられたCD2枚組の大作。
王道のギターリフにブルース・ディッキンソンの衰え知らずのヴォーカルを乗せたサウンドは、2000年作「BRAVE NEW WORLD」以降の、
どっしりとしたドラマティックメタルの流れをくむ作風であるが、本作ではより大作志向のドラマ性とスケール感を感じさせる。
いかにもメイデンらしい王道のメタルナンバーもありつつ、ゆったりとしたスローからミドルテンポでじっくりと聴かせる部分も多いが、
随所にウェットなギターフレーズを盛り込んだ、大人の哀愁を描くようなハードロックとしても楽しめる。
ラストは18分という大曲で、美麗なシンセアレンジとともに叙情的に始まりつつ、リズムチェンジを含む展開力で
ドラマティックに構築される、むしろプログレ風味の聴き心地で楽しめる。全90分を超える、まさに大人のHM力作だ。
ドラマティック度・・8 メタル度・・7 大人の叙情度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Power Quest「Sixth Dimension」
イギリスのメロディックメタル、パワークエストの2017年作
2002年にデビュー、2013年に一度は解散するもメンバーチェンジをへて復活し、通算6作目のアルバムが完成。
1曲目からきらびやかなシンセに伸びやかなヴォーカルを乗せて疾走する、爽快なサウンドが戻ってきた。
ミドルテンポのナンバーもこのバンドらしい、やわらかなメロディアス性とファンタジックな感触で、
3rd「Magic Never Dies」の頃に回帰したような抜けの良いキャッチーな聴き心地が楽しめる。
パワフル過ぎないほどよいB級風味も絶妙で、ときにシンフォニックなシンセアレンジとともに
美麗なクサメロ感に包まれて、初期DRAGONFORECEばりの疾走メロスピ曲もよい感じで、
中盤以降もダレることなく質の高いナンバーが続く。キャリア15年目にして最高作かというべき充実ぶり。
メロディック度・・8 疾走度・・8 美麗度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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ACCEPT 「BLIND RAGE」
ドイツのメタルバンド、アクセプトの2014年作
1979年にデビュー、二度の解散をへて、2009年に再々結成。14年ぶりとなる2010年の復活作から数えて3作目で、
過去2作に劣らぬオールドなヘヴィメタルが炸裂する。マーク・トーニロのダーティなヴォーカルの迫力は唯一無二で、
ときに流麗なフレーズも覗かせるツインギターとともに、まさにアクセプト節に包まれた強力なパワーメタルである。
ミドルテンポのナンバーの、どっしりとしたサウンドの説得力は、キャリアのあるバンドならではで、
これぞHMという王道のギターリフとともに、甘すぎないメロディも含めて、まさに元祖ジャーマンメタル。
スローな叙情ナンバーから疾走するラスト曲への流れも素晴らしい。すべてのメタルファンが歓喜する力作だ。
限定盤のDVD(ブルーレイ盤もあり)には、2013年チリ公演のステージをたっぷりと収録。こちらもファン必見。
ドラマティック度・・8 パワフル度・・9 正統派度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Stallion 「Rise And Ride」
ドイツのメタルバンド、スタリオンの2014年作
ツインギターのリフにややダーティなハイトーンヴォーカルを乗せ、ヘヴィ過ぎないほどよくスカスカ感で
80年代ルーツのオールドな正統派メタルを聴かせる。わりとキャッチーなメロディも覗かせつつ、
適度な疾走感の古き良きスピードメタル風味には、ACCEPTANTHRAXのような雰囲気もある。
どちらかというとHELLOWEENなどのジャーマンメタル以前のスタイルで、スラッシーな感触を残した
オールドスクール・メタルというべきか。3〜4分前後の楽曲も比較的シンプルな聴き心地で、
ドラマティックな雰囲気を求める方には物足りないかもしれないが。ディス・イズ・オールドメタルです。
メロディック度・・7 疾走度・・7 古き良き度・・8 総合・・7.5
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Sinbreed「IV」
ドイツのメロディックメタル、シンブリードの2018年作
BLIND GUARDIANのドラム、フレデリック・エームケが在籍するバンドで、4作目の本作は、
ヴォーカルがハービー・ランガンスから、元Vicious Rumorsのニック・ホルマンに替わっている。
サウンドの方は、正統派のギターリフにハイトーンヴォーカルを乗せた王道のジャーマンメタルで、
リーダーのフロー・ローリンが敬愛する、Seventh Avenueにも通じるクサメタル感をまき散らして疾走する。
ニック・ホルマンのカイ・ハンセンばりの弱めのハイトーンも、このメロスピ路線にはよくマッチしていて、
キャッチーなメロディのフックはGAMMA RAYのようでもある。前作からクサメロ度が増した好作です。
メロディック度・・8 疾走度・・8 クサメロ度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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RADIANT
ドイツのメロディアスハード、ライディアントの2018年作
Sinbreedのハービー・ランガンスに、かつての盟友である元Seventh AvenueのG、Bらによるバンドで、
パワフルなヴォーカルとキャッチーなメロディで聴かせる、いわばジャーマンメタル風のハードロック。
ギターのリフやフレーズにはメロパワ的な香りも残しつつ、随所に美しいシンセアレンジも加わって、
かすれた味わいのヴォーカルが大人の哀愁をかもしだす。楽曲は3〜4分前後がメインで、わりとシンプルながら、
かつてのSeventh Avenueのメンバーが揃っているので、どの曲も爽快なメロディと叙情性に包まれていて、
ゆったりと聴かせるバラードもナンバーなどもとても聴き心地が良い。派手さはないが安心して楽しめる好作です。
メロディック度・・8 キャッチー度・・8 叙情度・・8 総合・・8
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Cryonic Temple「Deliverance」
スウェーデンのメロディックメタル、クライオニック・テンプルの2018年作
2002年にデビュー、メンバーを大幅にチェンジして9年ぶりの復活作となった前作に続き、本作は6作目。
壮麗なイントロで幕を上げ、うっすらとしたシンセをバックにツインギターとマイルドなヴォーカルを乗せて疾走する
初期のHAMMERFALLを思わせる雰囲気の正統派メロパワサウンド。ツインギターの流麗なフレーズや
シンセによるシンフォニックな味付けも含めて、SONATA ARCTICAにも通じる壮麗な雰囲気に包まれていて、
ミドルテンポでのキャッチーな味わいもなかなかよい感じだ。ほどよいクサメロ感とヘヴィ過ぎないサウンドが、
北欧メロスピらしい優雅さをかもしだしつつ、ゆったりとした叙情のバラードナンバーや、JUDAS PRIESTのような
オールドなメタル感触もあったりと、コンセプトアルバムでありながら自然体で楽しめるのがよいですな。
メロディック度・・8 疾走度・・8 壮麗度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Blazon Stone 「Down in the Dark」
スウェーデンのメロディックメタル、ブレイズン・ストーンの2017年作
2013年にデビューし、本作ですでに4作目。海賊をミチーフにしたジャケやバンド名からして、
RUNNING WILDからの影響がぷんぷんであるが、サウンドの方も、ツインギターの土着的なリフと
伸びやかなヴォーカルを乗せた、往年のランニング・ワイルドを思わせる、メロディック・パワーメタル。
楽曲は3〜4分前後とシンプルながら、勇壮なコーラスとともにサビでのキャッチーな爽快さも心地よく、
本家以上のパワフルな疾走感と弾きまくりの流麗なギターは、最近のメロパワファンも楽しめるだろう。
ALESTORMにも通じる随所にフォーキーなメロディも含んだ、正統派パイレーツ・メタルの後継者。
メロデッィク度・・8 疾走度・・8 ランニングワイル度・・8 総合・・8
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WARKINGS「REBORN」
国籍不明のメロディックメタル、ウォーキングスの2018年作
メンバーが戦士のコスプレに身を包んだ、バトルメタルを標榜するスタイルで、
王道のギターリフにハイトーンヴォーカルで疾走する、正統派のメロパワを聴かせる。
エピックな勇壮さとメロディアス性が同居したサウンドは、ジャーマンというよりは北欧系の感触で
伸びやかなヴォーカルの力量も含めて、かつてのLOST HORIZONなどにも通じるだろう。
どっしりとしたミドルテンポから疾走ナンバーまで、どの曲もフックのあるメロディとともに、
キャッチーな聴き心地なので、メタル初心者でも楽しめるだろう。反面、重厚さや濃密さの点では、
さほどのインパクトはないのだが、デビュー作にしては十分なクオリティと言ってよい出来だ。
メロディック度・・8 疾走度・・7 勇壮度・・8 総合・・8
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Silver Wind 「Legion of the Exiled」
フランスのメロディックメタル、シルヴァー・ウインドの2017年作
ツインギターのリフにパワフルなヴォーカルを乗せた、古き良き正統派のメロパワサウンドで、
RUNNING WILDMANOWARにも通じる、勇壮でエピックな世界観を描き出す。
どっしりとしたミドルテンポを主体にしつつ、ほどよく疾走するナンバーもあり、これという新鮮味はないのだが、
スウェーデンのThe Storytellerなどを思わせるヴァイキング風味のナンバーもあり、
オールドスタイルのエピック系メロパワが好きな方なら十分楽しめる出来だろう。
アメリカ幻のエピックメタル、Medieval Steelのカヴァーもじつにマニア好みですな。
ドラマティック度・・8 エピック度・・8 正統派度・・8 総合・・7.5
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DOOMSDAY OUTLAW「Hard Times」
イギリスのハードロック、ドゥームズデイ・アウトローの2018年作
2016年にデビューし、本作が2作目となる。オールド味わいのツインギターに、
伸びやかなヴォーカルを乗せた、70年代ルーツの正統派のハードロックを聴かせる。
楽曲自体はわりとシンプルながら、随所にLED ZEPPELINあたりを思わせるノリの良さと、
ジェントルなヴォーカルの魅力とともに、ヴィンテージなロック好きにはじっくりと味わえる作風である。
RIVAL SONSGENTLEMANS PISTOLSなどに比べると、全体的なアナログ感を出しすぎない
どっしりとした聴き心地で、ピアノやストリングスなどを加えた叙情的なバラードなどもなかなか魅力的だ。
ドラマティック度・・7 古き良き度・・8 どっしり重厚度・・8 総合・・8
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INGLORIOUS 「II」
イギリスのハードロック、イングロリアスの2017年作
ウリ・ジョン・ロートの「SCORPIONS REVISITED」にも参加したシンガー、ネイサン・ジェイムスを中心にしたバンドの2作目。
オールドな味わいのツインギターに表現豊かなヴォーカルを乗せた、正統派のハードロックサウンドで、
ブルージーな70年代性と、キャッチーな80年代風味が同居したような、どっしりとした聴き心地。
3〜4分前後の楽曲には、これという新鮮さはないものの、パワフルな演奏と歌唱力で、
メジャー感のある堂々たる作風だ。個人的にはマイナーな叙情性がもっと欲しい気もするが。
日本盤に付属のDVDには、2016年、ドニントンでのライブ映像やPVなどを収録。
メロディック度・・7 パワフル度・・8 古き良き度・・8 総合・・8
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10/19
デス&ブラックの秋(299)


VANHELGD 「DEIMOS SANKTUARIUM」
スウェーデンのデスメタル、ヴァンヘルグドの2018年作
2008年にデビューし、本作が5作目となる。重厚なギターリフに迫力あるデスヴォイスを乗せ、
かつてのENTOMBEDなどにも通じる、オールドスタイルの北欧デスメタルを聴かせる。
どっしりとしたスローパートからの激しい疾走感は迫力たっぷりで、スウェディッシュらしい
ダークでウェットな世界観に包まれながら、随所に甘すぎない程度のフレーズも覗かせる。
全体的には激しさはやや抑え目であるので、疾走系が好きな方にはやや物足りないかもれないが、
ドゥーミィなスローテンポでの重厚な説得力には、バンドとしての力量を感じさせる。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・7 重厚度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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WITHERSCAPE 「THE NORTHERN SANCTUARY」
スウェーデンのシンフォニック・デスメタル、ウィザースケープの2016年作
EDGE OF SANITYのダン・スワノ率いるユニットの2作目で、自身はヴォーカル、ドラム、シンセを担当。、
オールドスタイルのギターリフに迫力ある低音デスヴォイスを乗せ、美麗なシンセアレンジを加えた、
ドラマティックなサウンドを聴かせる。ノーマル声を使いながら、起伏のある展開力で構築される楽曲は、
OPETHなどにも通じる知的な感触で、ほどよくキャッチーなメロディアス性も垣間見せながら、
あくまで重厚な味わいで楽しめる。ゆったりとした叙情的なパートを含んだ13分を超える大曲など、
EDGE OF SANITYのプログレッシブな傑作、「CRIMSON」あたりが好きな方にもお薦めの力作だ。
ドラマティック度・・8 プログレッシブ度・・7 重厚度・・8 総合・・8
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Veiled in Scarlet 「Reborn」
日本のメロディック・デスメタル、ヴェイルド・イン・スカーレットの2016年作
SERPENTのKeija率いるバンドの2作目で、ANCIENT MYTHのギターを新たに迎え、
叙情的なツインギターに美麗なシンセアレンジとダミ声ヴォーカルを乗せて疾走する、
優雅なメロデスサウンドを聴かせる。泣きのギターフレーズなどにはゴシカルな耽美さも漂わせ、
デスメタル的な迫力よりは、よりメロディックな方向性を強めてきたという印象だ。
低音で唸るようなヴォーカルも、暴虐さではなくダークなメランコリズムを感じさせ、
部分的にはメロデスというよりりもシンフォニックメタルの質感に近いかもしれない。
迫力の点では物足りなさはあるが、泣きのギターと疾走が好きな方には楽しめるはず。
メロディック度・・8 暴虐度・・6 優雅度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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WINDFAERER 「Tenebrosum」
アメリカのメロディック・デスメタル、ウインドファーラーの2015年作
2010年にデビュー、本作は2作目となる。メロディックなギターリフにダミ声ヴォーカルを乗せ、
ブラストを含む激しい疾走感に包まれた、スタイリッシュなメロデスサウンドを聴かせる。
リズムチェンジを含む知的な展開力に、ときに艶やかなヴァイオリンの音色も加わった
フォーキーなメロディも覗かせて、全体的に暴虐さよりも優雅な構築センスが前に出た聴き心地。
メロディのフックにもう少し濃密な扇情力が欲しい気もするが、高品質なモダン派メロデスです。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・7 フォーキー度・・6 総合・・7.5
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CULTUS PROFANO 「SACRAMENTUM OBSURUS」
フランスのブラックメタル、カルタス・プロファノの2018年作
コープスペイントをした二人組のユニットで、妖しいジャケからもカルトな雰囲気がぷんぷんであるが、
鐘の音と詠唱によるカルトなイントロから、絶叫するダミ声ヴォーカルを乗せて激しくブラスト疾走、
こもり気味の音質とともにプリミティブな空気に包まれた、オールドスタイルのブラックメタルが炸裂する。
トレモロのギターリフによる甘すぎない程度の叙情と、リズムチェンジを含む展開力で聴かせるところは
EMPERORの1stあたりにも通じる雰囲気。暴虐過ぎないサウンドがわりと幻想的な聴き心地になっていて、
楽曲は4〜5分前後と長すぎず、ブラックメタル初心者の方にもお薦めできる。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・7 荘厳度・・7 総合・・8
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Bliss of Flesh 「Empyrean」
フランスのブラックメタル、ブリス・オブ・フレッシュの2017年作
2009年にデビューし、本作で3作目。ダンテの「神曲」をテーマにした3部作の完結編で、
重厚なギターに低音デスヴォイスを乗せて激しくブラスト疾走、リズムチェンジを含む緩急ある展開とともに、
デスメタル的でもある荘厳なサウンドを描いてゆく。甘すぎない程度の叙情性も覗かせつつ、
激しさだけでないエピックなスケール感などは、SEPTICFLESHあたりにも通じるところがあるだろう。
全体的にはメロディのフックが希薄で、ギターリフもやや単調なので、ヘヴィな迫力はあるのだが、
楽曲的な盛り上がりには欠けるか。今後は、よりドラマティックな楽曲アレンジを目指して欲しい。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・7 重厚度・・8 総合・・7.5
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Les Chants Du Hasard
フランスのゴシックブラック、レス・チャンツ・ドゥ・ハサードの2017年作
ハザード氏による独りユニットで、シンセとオーケストレーションによる壮麗なサウンドに、
ダミ声ヴォーカルが響き渡る、ELENDを思わせる荘厳なゴシック&ネオクラシカルを聴かせる。
ギターやドラムなどは一切入らないので、闇のサントラか暗黒の交響曲かという雰囲気で、
この手の世界観が苦手な方には薦められないが、大仰なダークミュージックか好きならば、
心地よく耽溺できるだろう。ただ、エレンドのフォロワーという以上の個性はまだないか。
シンフォニック度・・8 メタル度・・3 暗黒度・・7 総合・・7.5
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ASPHAGOR 「THE CLEANSING」
ドイツのブラックメタル、アスファゴールの2018年作
いかにもB級臭いジャケながら、不穏なギターリフにダミ声ヴォーカルを乗せて疾走する、
迫力たっぷりのオールドスタイルのブラックメタル。安定感のあるドラムも含めてどっしりとしたアンサンブルで、
この手としてはわりと重厚な聴き心地に、ほどよく叙情的なギターフレーズも入ってきて、なかなか聴きやすい。
ブラッケンなダークさとプリミティブな荒々しさも残しつつ、ミドルテンポのナンバーも含め、暴虐過ぎないサウンドで
突出した迫力はないものの、しっかりとした演奏力で楽曲を構築するところは、ブラックメタル初心者にも楽しめるかもしれない。
7分を超える長めの曲も多いが、疾走する激しさとスローパートのバランスも良く、案外心地よく楽しめる好作品。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・7 荘厳度・・8 総合・・7.5
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Thakandar 「Sterbende Erde」
ドイツのブラックメタル、ザカンダールの2017年作
ツインギターのトレモロのリフとダミ声ヴォーカル乗せて激しくブラスト疾走する、
わりとメロディックな味わいのブラックメタル。ツインギターの奏でる物悲しい叙情と、
緩急ある展開力も含めて、DISSECTIONあたりにも通じるクオリティの高いサウンド。
ときに女性ヴォーカルやチェロやピアノを加えての、優雅なアレンジセンスも覗かせつつ、
激しいだけでなくスロ〜ミドルテンポのどっしりとしたパートでも荘厳な雰囲気に包まれる。
ラストの10分の大曲では、シンセを加えたポストプラック的なゆったりとした叙情性を描き出す。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・7 叙情度・・8 総合・・8
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Heimdalls Wacht 「Ut De Graute Olle Tied - Deel Twee (Land Der Nebel)」
ドイツのブラックメタル、ヘイムダルズ・ワハトの2015年作
2005年にデビューし、本作で6作目。アコースティックギターによるイントロから幕を上げ、
ノイジーなギターと絶叫するヴォーカルを乗せて激しくブラスト疾走する、プリミティブなスタイル。
ダークな暴虐さの中にも、トレモロのギターフレーズによる適度な叙情性を覗かせつつ、
ドイツ語の語りや朗々としたコーラスを含むエピックな勇壮さと、ドラマティックなスケール感、
神秘的な土着性とともに、ゲルマンなペイガン・ブラックメタルを描く強力作だ。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・8 叙情度・・7 総合・・8
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Aethernaeum 「Naturmystik」
ドイツのペイガン・ブラックメタル、エーテルナウムの2015年作
チェロ奏者を含む5人編成で、ツインギターのリフにうっすらとしたシンセアレンジと
ドイツ語によるダミ声ヴォーカルを乗せて、土着的な叙情性を含んだサウンドを聴かせる。
物悲しくチェロが鳴り響くクラシカルな優雅さと、ミステリアスな幻想性が合わさって、
トレモロのギターリフも含めてネイチャーブラック的でもあるメロディックな感触に包まれて、
10分前後の大曲も、アコースティックパートなどを挿入した緩急ある構築力で描いてゆく。
激しさよりも優雅な叙情が前に出た、幻想的なペイガンブラックが楽しめる力作です。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・7 叙情度・・8 総合・・8
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Blaze of Sorrow 「Astri」
イタリアのポストブラックメタル、ブレイズ・オブ・ソロウの2017年作
2010年にデビュー、本作が5作目となる。G&B&Key&Voのピーター氏とドラムによる二人ユニットで、
トレモロを含む叙情的なギターの旋律に、低音ダミ声ヴォーカルを乗せ、そこそこ激しく疾走しつつ、
ほどよいスカスカ感とともに、カスカディアン風の幻想的なブラックメタルを聴かせる。
随所にシンセやアコースティックギターなどによる優雅なアレンジも加わって、
全体的にも激しさはさほどでもなく、むしろ牧歌的なポストブラックという雰囲気もあり、
こうなると、ヴォーカルのゲボ声が非常に耳障りに思えてしまう。より幻想的な深化に期待。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・6 優雅度・・8 総合・・7.5
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VOLOH 「Gromovi Nad Trebiscem」
クロアチアのペイガンメタル、ヴォローの2016年作
美麗なシンセにメタリックなギターを重ね、ダミ声ヴォーカルとともに聴かせる武骨なペイガンメタル。
勇壮なコーラスを乗せたヴァイキングメタル的な感触に、激しくブラスト疾走するパートも含みつつ、
辺境らしいローカルなクサメロ感も匂わせる。牧歌的なホイッスルにアコーディオンの音色も加えた、
優雅な叙情性も覗かせて、ほどよくマイナーな味わいの幻想的なフォークメタルとしても楽しめる。
全27分というミニアルバム並みの短さなので、物足りなさはあるが、辺境ペイガン好きはいかが。
ドラマティック度・・8 勇壮度・・8 ペイガン度・・8 総合・・7.5
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FEDRESPOR「TID」
ノルウェーのフォークユニット、フェドレスパーの2018年作
アコースティックギターにピアノやシンセなどを重ね、詠唱のような歌声を乗せた、
神秘的な聴き心地のトラッド・フォークサウンド。北欧らしい涼やかな土着性を、
スタイリッシュなセンスで昇華していて、淡々とした静寂感の中に優雅なものを感じさせる。
全体的にもダークな妖しさよりも、優しい牧歌性に包まれた世界観で、ゆったりと楽しめる。
一曲ごとの濃密さの点では物足りなさもあるが、夢見心地でまどろめる北欧ネオフォークです。
アコースティック度・・8 幻想度・・8 北欧度・・8 総合・・7.5
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NUCLEUS TORN 「STREET LIGHTS FAIL」
スイスのゴシック・フォーク、ニュークリアス・トーンの2014年作
マルチプレーヤーのFredy Schnyderと、ELUVEITIEのAnna Murphyによるユニットで、
19分の大曲を含む全3曲という構成。うっすらとしたシンセにピアノのつまびき、
はかなげな女性ヴォーカルを乗せた繊細で薄暗いサウンドから、2曲目の大曲では
ハードなギターも加わりつつ、アコースティックパートを含む起伏のある展開力とともに、
単なるネオフォークという以上のプログレ的なセンスも覗かせる。やわらかなフルートが鳴り響く
涼やかな叙情性は、WHITE WILLOWなどの北欧プログレの世界観にも通じるだろう。
ドラマティック度・・8 北欧プログレ?度・・8 薄暗叙情度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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10/5
メタルの熱い秋!(284)


Dark Moor 「Origins」
スペインのシンフォニックメタル、ダークムーアの2019年作
1999年にデビュー、初期のメロスピ路線から、優雅なクラシカル・シンフォニックメタルへ、
そして近年でのメロディアスハード路線と、深化を続けるベテランバンド。本作は11作目で、
ケルトをテーマにした作品らしく、のっけからバグパイプの音色が響き渡り、フォーキーな感触に包まれる。
アルフレッド・ロメロのジェントルな歌声を乗せて、わりと疾走感のあるキャッチーなナンバーも含んだ、
ケルティックな味わいのスタイルで、MAGO DE OZSKYCLADあたりが好きな方にも楽しめそう。
従来のシンフォニックな感触も残しつつ、フルートやヴァイオリン、アコースティックギターを使ったメディーヴァルなナンバーや
オルガンが鳴り響くオールドなロック感触なども新機軸で、バンドとしての懐の深さを感じさせる好作品となっている。
シンフォニック度・・7 メロディック度・・8 ケルティック度・・7 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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EUNOMIA 「The Chronicles Of Eunomia Part I」
ノルウェーのメロディックメタル、ユーノミアの2018年作
Legend of Valley Doomのダニエルセン兄弟を中心にしたメタルオペラプロジェクトで、
壮麗なイントロで幕を開け、シンフォニックなアレンジにパフワルなヴォーカルを乗せ、
勇壮なコーラスとともにエピックな世界観を描く、正統派のメロディックメタルを聴かせる。
RHAPSODYなどを思わせる壮大なストーリー性に包まれた作風に、ほどよいクサメロ感をまぶした
ゲーム的な雰囲気のライトなファンタジーメタルというべきか。キャッチーなミドルテンポのナンバーから、
ゆったりとしたバラードまで、総じて心地よいメロディのフックとともに安心して楽しめる。全73分の力作。
ヴィクター・スモールスキやアレッサンドロ・コンティ(Trick or Treat)をはじめ、多数のミュージシャンが参加。
メロディック度・・8 エピック度・・8 壮麗度・・8 総合・・8
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VALENTINE 「The Alliance」
オランダの貴公子、ヴァレンタインの2018年作
1992年に「ロビー・ヴァレンタイン」としてデビュー、オリジナル作品としてはおそらく10作目となる。
久しぶりの復活作化と思いきや、2014年に「Bizarro World」というアルバムを出していたんですな。
時代を超えても、甘くキャッチーなヴォーカルハーモニーと壮麗にしてゴージャスなアレンジは、
かつてのヴァレンタインそのままのサウンドで、長年のファンはほっと安心することだろう。
80〜90年代にレイドバックしたような作風は、繊細で暖かな聴き心地で、どこかなつかしく楽しめ、
もともとQUEENや70年代ロックからの影響を受けていた作風なので、新鮮味はさほどなくとも、
どの曲もしっかり「ロビヴァレ節」に昇華されているのがさすが。優しくナルシスな歌声もいまだ魅力十分。
日本盤ライナーでの、緑内障や鬱と戦いながら創作を続ける、彼自身の文章による楽曲解説も必読だ。
メロディック度・・8 キャッチー度・・9 壮麗度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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DIVINE ASCENSION 「THE UNCOVERING」
オーストラリアのシンフォニックメタル、ディヴァイン・アセンションの2018年作
2011年にデビューし、本作が3作目となる。硬質なギターワークに美麗なシンセアレンジを重ね、
伸びやかな女性ヴォーカルを乗せた、モダンな感触のシンフォニックメタルサウンドで、
1stの頃に比べると、フックのある展開が増えたことで、楽曲にも魅力が増してきている。
随所に流麗なギターフレーズを覗かせつつ、リズムチェンジなどの知的な構築力も含めて、
スタイリッシュな女性声メタルという点で、TEMPERANCEあたりのファンにもアピールするだろう。
紅一点、ジェニファー嬢の歌声も、パワフルでありながら女性的な艶めいた部分も残していて、
表現力の点でも実力十分。この手の女性声シンフォニックメタルの中でも成長株というべきバンドである。
メロディック度・・8 スタイリッシュ度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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Temperance 「Of Jupiter & Moons」
イタリアのシンフォニックメタル、テンペランスの2018年作
2015年にデビュー、3作目となる本作はヴォーカルが交代、新たに男女Vo編成のスタイルとなった。
美麗なシンフォニックアレンジにソリッドなギター、そして男女二人のヴォーカルが重なり、
フックのある展開力ととともに、ドラマティックかつオペラティックなシンフォニックメタルを展開。
新加入のアレッシア嬢の歌声は伸びやかな中音域で、男性シンガーのミケーレの甘い歌声とよくマッチしていて、
曲によってはモダンでダンサブルであったり、キャッチーなメロディアス性に包まれた楽曲を華やかに彩っている。
純粋なフィメールメタルを愛好する向きには痛し痒しだが、バンドとしての深化のビジョンを明確に示した壮麗な力作だ。
シンフォニック度・・8 壮麗度・・9 女性Vo度・・7 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Trillium「Tectonic」
シンフォニックメタル、トリリアムの2018年作
アメリカ人女性シンガー、アマンダ・サマーヴィルをフロントにしたユニットの7年ぶりとなる2作目で、
ゴシック風味のハードロックという印象だった前作に、シンフォニックな壮麗さを加えたという作風。
伸びやかなアマンダのヴォーカルは、EPICAやAVANTASIA、KAMELOTなどにも参加した実力通り、
オペラティックな美しさとパワフルな表現力で楽曲を彩っていて、モダンなヘヴィネスを感じさせる、
ゴシックメタル的なナンバーから、NIGHTWISHばりのキャッチーで壮麗なシンフォニックメタルまで、
それぞれの曲ごとに表情を変えてゆく素晴らしい歌声が楽しめる。楽曲は総じて4分前後とわりとシンプルで、
新鮮味というのはさほどないが、優れたシンガーによる壮麗なシンフォニックメタルの好作である。
シンフォニック度・・7 ゴシック度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8
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The Dark Element
元Nightwishのアネット・オルゾンと元SONATA ARCTICAのヤニ・リマタイネンによるシンフォニックメタル、ダーク・エレメントの2017年作
ドラムとベースは、CAIN'S OFFERINGに参加したメンバーで、モダンなシンセアレンジにヘヴィなギター、
伸びやかな女性ヴォーカルの歌声を乗せた、ややダークなシンフォニックメタルというサウンド。
随所にメロディックなギターフレーズも織り込みつつ、Nightwishを思わせる壮麗なナンバーや
女性声版SONATA ARCTICAというようなキャッチーなナンバーなど、アネットの歌声を活かした作風で、
ゆったりとしたシンフォニックなバラードなどもとても美しい。楽曲に新鮮なインパクトはさほどないのだが、
実力ある女性ヴォーカルによる、メロディックな北欧シンフォニック・ハードが楽しめる好作品です。
メロディック度・・8 壮麗度・・8 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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Kliodna 「The Dark Side...(...Of The Stories)」
ベラルーシのシンフォニックメタル、クリーオドナの2016年作
美麗なシントロで幕を開け、ツインギターに美しい女性ヴォーカルを乗せ、適度に疾走感のある、
シンフォニック・パワーメタルを聴かせる。紅一点、スヴェトラーナ嬢のオペラティックな歌声と、
パワフルなサウンドのコントラストで、壮麗にして重厚なサウンドを描き出しながら、
ときにフォーキーで土着的な旋律も覗かせる。東欧らしい翳りと湿り気を含んだ世界観に、
Nightwishのフロールにも通じる表現力ある女性ヴォーカルの歌声も素晴らしく、
スローからミドルテンポのナンバーも説得力十分。激しさと優雅さが同居した逸品です。
シンフォニック度・・8 壮麗度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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Vivaldi Metal Project「The Four Seasons」
イタリアのシンフォニックメタル・プロジェクト、ヴィヴァルディ・メタル・プロジェクトの2016年作
キーボードのミステリアとベースのアルベルト・リゴーニを中心に、ヴィヴァルディの「四季」をメタルアレンジするプロジェクトで、
リック・ウェイクマンをはじめ、マーク・ボールズ、ファビオ・リオーネ、ロブ・ロック、エドゥ・ファラスキ、ヴィクター・スモールスキなど、
多数のゲストが参加。メタリックなギターにオーケストラルなアレンジを重ね、男女ヴォーカルの歌声とコーラスで聴かせる、
壮麗なシンフォニックメタルスタイルで、クラシックの優雅さと様式美メタルを合体させたという聴き心地。
ソプラノ女性ヴォーカルと男性声が絡むオペラティックな美しさや、ProgMetal的でもある構築力に、
優美なストリングスにネオクラなギターが加わった、バロックな濃密さで華麗なサウンドを描いてゆく。
シンフォニック度・・8 クラシカル度・・9 優雅度・・9 総合・・8
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The Ferrymen
メロディックメタルバンド、ザ・フェリーメンの2017年作
LAST TRIBEやPRIMAL FEARなどで活躍するギタリストの、マグナス・カールソンを中心に、
RAINBOWやLORDS OF BLACKのロニー・ロメロ、元RAGEのマイク・テラーナによるトリオバンドで、
重厚なギターにパワフルなヴォーカルを乗せた、正統派のメロディック・パワーメタルを聴かせる。
流麗でテクニカルなギターフレーズを随所に盛り込みつつ、ロニー・ロメロの伸びやかな歌声を活かした
比較的ストレートなナンバーを中心に、古き良き様式美メタルの香りを残したサウンドが楽しめる。
安定感のあるドラムに巧みなギター、表現力あるヴォーカルと、すべてが一級品なので、
楽曲に新鮮味がなくとも音の説得力は十分。とくに、ロニー・ロメロのファンなら満足でしょう。
メロディック度・・7 正統派度・・8 新鮮度・・7 総合・・8
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KILMARA 「Across the Realm of Time」
スペインのメロディックメタル、キルマラの2018年作
2007年にデビュー、本作は4作目で、ツインギターのリフにパワフルなヴォーカルで聴かせる、
正統派のメロパワスタイルで、歌詞は英語なのでスパニッシュ的な雰囲気はさほどない。
楽曲自体にこれという新鮮味はないのだが、王道のメタル感触と、ほどよいモダンなヘヴィネスが合さって、
POWERWOLFあたりが好きな方にも楽しめるだろう。ミドルテンポを主体に、どっしりとした聴き心地で、
ジャケほどにはクサメタル感はないのだが、女性ヴォーカルを加えての叙情ナンバーなどはなかなかいい感じだ。
あとは突き抜けるようなキラーチューンが欲しい。元HELLOWEENのローランド・グラポウなどがゲスト参加。
ドラマティック度・・7 正統派度・・8 新鮮度・・7 総合・・7.5
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FUGHU 「HUMAN」
アルゼンチンのプログレメタル、フグの2013年作
2009年にデビュー、本作は2作目で、「The Tales」「The Facts」とそれぞれに分かれた2枚組のコンセプト作品。
メタリックなギターに朗々としたヴォーカル、うっすらとしたシンセを重ねた、モダンで重厚な味わいのサウンド。
情感的に歌い上げるシアトリカルなヴォーカルとともに、ドラマティックな濃密さに包まれながら、
一方では、エモーショナルロック的な叙情ナンバーもあったり、逆にカオティックなテクニカル性も覗かせて、
振り幅の大きな楽曲にはバンドとしての器の大きさを感じる。全体的にはスケールの大きなB級という印象なので、
もう少し分かりやすい盛り上がりや、魅力的なメロディのフックが増えれば、よいバンドになりそうに思う。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 重厚度・・8 総合・・7.5
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9/27
彼岸過ぎれば秋の風(272)


THE HEARD 「THE ISLAND」
スウェーデンの女性声ハードロック、ヘルドの2018年作
CRUCIFIED BARBARAのメンバーを中心にしたバンドで、DEATHSTARSのギターを含む、女4人男1人という編成。
重厚なツインギターにハスキーな女性ヴォーカルで聴かせる、古き良き感触のハードロックサウンドで、
メロディックな部分よりは、妖しい魔女感に包まれた雰囲気に、ときにメロトロンも鳴り響くなど、
ヴィンテージなドゥームロック感触もある。PEPPER嬢の歌声も、艶めいた妖しさと伸びやかな表現力が、
ほどよく同居していて、このサウンドにはよくマッチしている。ノリのあるハードロックナンバーの一方で、
ゆったりとしたバラードなども幻想的な魅力があって、魔女系ロックとオールドなHRの中間という聴き心地。
適度にキャッチーなナンバーもよい感じで、多くの女性声HR好きのリスナーに楽しめる出来です。
ドラマティック度・・7 古き良き度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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SMOKING MARTHA 「IN DEEP」
オーストラリアのハードロック、スモーキング・マーサの2018年作
コケティッシュな女性ヴォーカルの歌声を乗せ、80年代からの流れの正統派ハードロックを聴かせる。
楽曲は3〜4分前後とシンプルで、適度なヘヴィさとキャッチーな感触で、HALESTORMなどにも通じる、
古き良きスタイルの女性声HRが楽しめる。紅一点、ターシャ嬢の歌声は、いくぶんかすれたハスキーさで、
大人のロックというようなサウンドによくマッチしている。全体的には、オールドな雰囲気は悪くないものの
どの曲もいまひとつ突き抜けきらないのが残念。もう少しメロディのフックが欲しい。
メロディック度・・7 キャッチー度・・7 女性Vo度・・7 総合・・7
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SUPERLYNX 「NEW MOON」
ノルウェーのドゥームメタル、スーパーリンクスの2019年作
オールドなギターにどっしりとしたベース、けだるげな女性ヴォーカルを乗せた、神秘的なドゥームメタル。
女性B/Vo、G、Drのトリオ編成で、シンセなどは使わず、楽曲は4〜5分前後とシンプルな聴き心地ながら、
魔女系ドゥームというべき妖しい浮遊感に包まれていて、耽美な世界観にゆったりと浸れる。
これというインパクトはないものの、アナログ感あるアンサンブルの古き良きドゥームサウンドに、
アンニュイな女性ヴォーカルが合わさったスタイルは、この手の好きなリスナーにはたまらないだろう。
ドラマティック度・・7 妖しげ度・・8 女性Vo度・・7 総合・・7.5
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CRONE 「GODSPEED」
ドイツのアトモスフェリック・ドゥームメタル、クロンの2018年作
Secrets Of The MoonのsGが参加するバンドで、メロウな感触のギターに朗々としたヴォーカルを乗せて、
物悲しくミステリアスな叙情とスペイシーな浮遊感に包まれたサウンドを描き出す。ポストロック的な空間性に、
メタルとしての激しさも残していて、ここぞと重厚にたたみかけるドラマティックな構築性も覗かせる。
派手な展開というものはないものの、全体的にどっしりとした聴き心地で、ときにメロディックなギターフレーズに
オルガンを含むシンセも加わって、オールドなドゥームメタル感触から、ポストロック風のスラッジというふうにも楽しめる。
ラストは12分の大曲で、キャッチーといってよい歌パートから、後半のメランコリックな流れへとつながってゆく。
ドラマティック度・・7 ドゥーム&スラッジ度・・7 重厚度・・8 総合・・7.5
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The Howling Void 「The Darkness at the Edge of Dawn」
アメリカのゴシック・ドゥームメタル、ハウリング・ヴォイドの2017年作
2009年にデビュー、本作は6作目で、うっすらとしたシンセにギターを重ね、マイルドなヴォーカルとともに、
ゆったりとしたメランコリックなゴシックドゥームを聴かせる。フューネラルなダークさに包まれつつも、
ヘヴィ過ぎないサウンドがわりと聴きやすく、トレモロのギターによる叙情性など、ポストブラック的な味わいもある。
ときにシンフォニックといってもよい美しさと、神秘的な幻想性に包まれながら、6〜9分という長めの楽曲を描いてゆく。
デス声などが入らないので、暗すぎるフューネラルドゥームが苦手な方にも楽しめるだろう。
ドラマティック度・・7 ゴシック度・・8 幻想度・・8 総合・・8
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Eva Can't 「Gravatum」
イタリアのプログレ・ドゥームメタル、エヴァ・キャントの2017年作
2012年にデビューし、本作が3作目となる。適度にヘヴィなギターにイタリア語によるヴォーカルを乗せ、
メランコリックな叙情に包まれながら、プログレッシブな展開力で聴かせる、シアトリカルなドゥームメタル。
オルガンを使ったヴィンテージな雰囲気と緩急ある構築力は、OPETHなどが好きな方にも楽しめるかもしれない。
10分、15分という大曲を構築する知的なセンスと、イタリア語の歌声に語りを含んだ妖しくダークな世界観、
随所にデスヴォイスも加えたり、ブラックメタルばりの激しい疾走パートもあったりと、一筋縄ではいかない。
一方では繊細なアコースティックパートや、叙情的なギターを乗せたメロディックなナンバーなどもあり、
プログレッシブなバンドが好き方にはたまらないだろう。優雅さと妖しさ、繊細と激しさが同居した力作だ。
ドラマティック度・・8 プログレッシブ度・・8 妖しく知的度・・9 総合・・8
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The Temple 「Forevermourn」
ギリシャのドゥームメタル、テンプルの2017年作
重厚なギターにジェントルなヴォーカルを乗せた、ダークでウェットな味わいの正統派エピック・ドゥームメタル。
CANDLEMASSをルーツにしたヨーロピアンな空気感と、ツインギターの叙情的なフレーズで
この手の泣きの幻想ドゥームが好きな方にはたまらないだろう。5〜8分前後の長めの曲を主体に、
これという新鮮味はないものの、ゆったりとしたギターのメロウな旋律が心地よく、重厚でありながらも
けっこうメロディアスな聴き心地で楽しめる。どこを切っても曲調が似たり寄ったりなので、
後半はさすがに飽きてくるものの、ラストは12分の大曲でさらにコテコテに攻めてくる。ある意味最高かよ。
ドラマティック度・・8 エピックドゥーム度・・9 重厚度・・9 総合・・7.5
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Syberia 「Resiliency」
スペインのポストロック、シベリアの2016年作
2012年にデビューし、本作が2作目となる。ギター、ベース、ドラムによるインストのアンサンブルで、
いくぶんダークでメランコリックな空気感とともに、広がりのある幻想的なポストロックを聴かせる。
トレモロを含んだギターによる物悲しい叙情は、ときにAlcestのようなポストブラック的な感触もあり、
ロックアンサンブルとして躍動感と、繊細な美意識が同居した聴き心地で、オールインストながら
適度にヘヴィなところもあるので、単なるBGMになることなく、じっくりとその世界観が味わえる。
ポストロック初心者のメタルファンでも楽しめる、幻想的な叙情性の好作品といえる。
ドラマティック度・・7 叙情度・・8 幻想度・・8 総合・・8
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Reveries End 「Edge of Dark Waters」
アメリカのゴシックメタル、リヴェリーズ・エンドの2015年作
しっとりと美しい女性ヴォーカルにツインギターによる適度なヘヴィさで聴かせる、
The Gatheringにも通じるような浮遊感とメランコリックな叙情に包まれたサウンド。
うっすらとしたシンセアレンジによるシンフォニックな味わいに、随所にデスヴォイスも絡みつつ、
Sariina嬢の歌声はDelainのシャルロット嬢のように魅力的で、優美に楽曲を彩ってゆく。
全体的に派手さはないものの、美しきメランコリーというべき空気感に包まれた好作品だ。
シンフォニック度・・7 ゴシック度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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Anthemon 「Arcanes」
フランスのゴシックメタル、アンテモンの2002年作
女性Vo、ツインギター、シンセを含む6人編成で、美麗なイントロで幕を開け、
重厚なギターに優美なシンセワーク、美しい女性ヴォーカルの歌声で聴かせる、古き良きスタイルの
正統派のゴシックメタルサウンド。90年代を引きずったような、いくぶんの野暮ったさ幻想的な味わいになっていて、
初期のTRISTANIAなどにも通じる涼やかな叙情性に包まれる。女性ヴォーカルに絡む男性声とデスヴォイスも、
どことなく垢抜けないマイナー臭さをかもしだし、全体的に湿り気を帯びたヨーロピアンな風情が感じられるのがいいですな。
ソプラノ女性Voのはかなげな魅力とともに、これぞゴシックメタルというべき幻想的な世界観に浸れる好作品。
シンフォニツク度・・8 ゴシック度・・8 女性Vo度・・7 総合・・7.5
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LAMORI 「To Die Once Again」
フィンランドのゴシックメタル、ラモリィの2016年作
シンセを含む5人編成で、適度にヘヴィなギターにモダンなシンセアレンジ、
低音域のややしわがれたようなヴォーカルを乗せた、ゴシック・ハードロックというサウンド。
同局のHIMに通じる感触もあるが、メロディのフックやメランコリックな叙情性は薄く、
ヴォーカルの魅力という点でも先輩には及ばないし、ギターにしろシンセにしろ、
インパクトのあるリフやフレーズがないので、楽曲における聴きどころが感じられない。
ゴシックとしての耽美な空気ももの足りない。中庸のゴス風モダンロックという作品。
メロディック度・・7 ゴシック度・・7 楽曲・・7 総合・・7
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RED HARVEST 「HYBREED」
ノルウェーのプログレッシブ・ダークメタル、レッド・ハーヴェストの1997年作
1992年にデビュー、本作は3作目で、硬質なギターリフにうっすらとしたシンセ、ダミ声ヴォーカルを乗せ、
インダストリアルな感触も含んだ知的なダークメタルを聴かせる。10分前後の大曲も多く、
激しさよりも不穏で無機質な空気感を描くような、プログレッシブといってよいセンスも個性的で、
ときに90年代クリムゾンがメタル化したような雰囲気もあったり、シンセとノイジーなギターによる
アトモスフェリックなインストや、メロトロンが鳴り響く、ドゥーミィでダークアンビエントなナンバーなど、
全78分、つかみどみろのない長尺感もあるが、得体の知れない北欧の薄闇を感じるような力作でもある。
ドラマティック度・・7 プログレッシブ度・・7 ダークでアトモスフェリック度・・8 総合・・7.5
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Cyril Achard 「Violencia」
フランスのギタリスト、シリル・エイチャードの2010年作
2002年には、MORBID FEELING名義でProgMetalの傑作を発表、クラシックやジャズの素養も持つ技巧派ギタリストで、
本作は、ギター、ベース、ドラムというシンプルなトリオ編成による作品で、メタリックな硬質感を前に出した作風。
サウンドはわりとラフにも聴こえるが、テクニカルなギタープレイは、メタル寄りであっても優雅さは失っておらず、
変則リズムを取り入れたアンサンブルは、メタルフュージョン的でもある。ネオクラシカル寄りのメロディも覗かせつつ、
本作のコンセプトなのだろう、メタル感の強い音色とともに、全体的にアグレッシブな聴き心地になっている。
メロディック度・・7 テクニカル度・・8 ギター度・・9 総合・・8 過去のレビューはこちら
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Henning Pauly 「Babysteps」
アメリカのミュージシャン、ヘニング・ポウリーの2006年作
CHAINFRAMSHIFTなどで知られるミュージシャンで、本作は実話に基づいたコンセプト作品。
Trans-Siberian Orchestraのジョディ・アシュワース、DREAM THEATERのジェイムス・ラブリエ、
SAGAのマイケル・サドラーなどが参加、美しいシンセに適度にヘヴィでメロディックなギター、
ゲストによるヴォーカルを乗せて、テクニカルでキャッチーなProgMetalサウンドを構築する。
シンフォニックなアレンジを含んだ緩急ある展開力と、メタリック過ぎない優雅なセンスもさすがで、
実力あるヴォーカリストによる説得力ある歌声が、楽曲ごとのドラマを語るように彩ってゆく。
インストによる小曲や、キャッチーなプログレハードナンバーなども魅力的。全75分という力作です。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 優雅度・・8 総合・・8
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9/14
秋の気配とメタル(258)


ROYAL HUNT 「CAST IN STONE」
デンマークのシンフォニックメタル、ロイヤル・ハントの2018年作
1993年にデビュー、本作は14作目で、美麗なシンセに叙情的なギターを乗せたイントロから、
ウェットな叙情に包まれながら、大人の叙情性をクラシカルに包み込む、優雅なサウンドが広がってゆく。
オルガンを含むアンドレ・アンダーセンの円熟のシンセアレンジに、D.C.クーパーのマイルドな歌声とともに、
派手さよりもアダルトな香りを前に出し、古き良き時代にレイドバックしたような、1stの頃を思わせる聴き心地。
エッジが弱めの音質も、むしろ90年代の空気を蘇らせるようで、初期のロイハン好きにはたまらないだろう。
インストのタイトル曲も王道の様式美が炸裂していて、5〜7分前後の楽曲は長すぎずダレることなく、
ときにシンプルなハードロック感触も覗かせつつつ、全体的にも爽快な印象で聴き通せる好アルバムだ。
シンフォニック度・・8 様式美度・・8 初期ロイハン度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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RAGE「THE DEVIL STRIKES AGAIN」
ジャーマンメタルのベテラン、レイジの2015年作
80年代から活動を続けるベテラン中のベテラン、通算22作目となる本作は、ビーヴィ以外のメンバーが変わっていて、
ギターにはSOUNDCHASERのマルコス・ロドリゲスが加入。のっけからスラッシーに疾走するパワフルなサウンドで、
90年代のトリオ編成レイジが好きな方はニンマリだろう。ヴィクターのようなテクニカルなギターワークはさほどないが、
随所にほどよくメロディックなフレーズも覗かせ、新加入のドラマーは、元RAGEのクリスの弟子ということで、
かつてのクリスを思わせるようなノリのあるドラムを聴かせる。4分前後の比較的シンプルな楽曲が中心で、
スラッシーなギターリフとピーヴィのダーティな歌声とともに、荒々しくも爽快なレイジスタイルが戻ってきた。
メロディック度・・8 パワフル度・・8 かつてのレイジ度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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RAGE「Seasons of The Black」
ドイツのベテランバンド、レイジの2017年作
新たなトリオ編成となっての2作目で、原点回帰した前作からの流れを継承しつつ、よりパワフルなサウンドを聴かせる。
1曲目のややダークなメタルナンバーから、続く2曲目はジャーマンメタルらしいキャッチーな歌メロを乗せて疾走する、
かつてのレイジらしさにオールドなファンは留飲を下げるだろう。前作から加入のマルコ・ロドリゲスのギターは、
ヘヴィなリフから流麗なメロディまで幅広いプレイを聴かせてくれ、存在感あるピーヴィのヴォーカルを引き立てている。
アルバム後半は、組曲的な構成になっていて、アコースティックの小曲から始まり、メロディックなフックの疾走ナンバー、
ダークで激しいヘヴィネスからの、シンフォニックなドラマ性を描くラスト曲へと、見事な構築力を見せつける。
ボーナスCDには、前身であるアヴェンジャー時代のリレコーディングを6曲収録。
メロディック度・・8 パワフル度・・8 かつてのレイジ度・・8 総合・・8
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Stormwitch 「Bound to the Witch」
ジャーマンメタルのベテラン、ストームウィッチの2018年作
1984年にデビュー、RUNNING WILD、GRAVE DIGGAR、TYRANTらとともに、ジャーマンメタルの黎明期を支えたバンドであるが、
いっこうに知名度が上がらぬまま、30年以上が経ったいまなお、マイナーバンド的な扱いを受ける不遇のベテランバンド。
通算11作目の本作も、欧州の翳りを含んだウェットな空気感に、アンディ・マックの味わいのあるハイトーンヴォーカルを乗せ、
古き良きスタイルの正統派ジャーマンメタルを聴かせてくれる。随所にツインギターのメロディックなフレーズも覗かせつつ、
ほどよくキャッチーでどっしりとしたオールドなメタル感が心地よい。インパクトのある展開というのはないのだが、
キラーチューンなどいらないという、安心のストームウィッチ節で、突き抜けきらない中庸のジャーマンメタルが楽しめる。
限定盤ボーナストラックに過去曲のリメイク3曲を収録していて、往年のファンには嬉しいかぎり。
ドラマティック度・・7 疾走度・・6 古き良きジャーマン度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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Hyperion 「Dangerous Days」
イタリアのメロディックメタル、ハイペリオンの2017年作
同名のバンドはいくつかあるが、こちらはNWOTHMタイプの新鋭バンド。ツインギターの5人編成で、
オールドなギターリフにハイトーンヴォーカルを乗せて疾走する、古き良き正統派メロパワの感触に
やや唐突なリズムチェンジを含んだ、フックのある展開力が個性的。80年代ルーツのサウンドながら、
キャッチーなクサメロ感覚がマニア好みで、パワフル過ぎないヴォーカルもよい味わいを出している。
IRON MAIDEN風のナンバーでも、いくぶんヘンテコな雰囲気を匂わせていて、曲によっては変拍子を含む
知的なアレンジも覗かせるなど、B級メタル好きの耳を刺激する。80'sスラッシュやスピードメタル的な疾走感と、
確信犯的なマイナーなヘナチョコ感を合わせて流麗に仕上げたという、ある意味では素晴らしい強力作。
メロディック度・・8 古き良き度・・8 ヘンテコ度・・8 総合・・8
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QUICKSAND DREAM 「BEHEADING TYRANTS」
イタリアのエピックメタル、クイックサンド・ドリームの2016年作
VoとG&Bの2人組ユニットで、アナログ感あるギターに、朗々としたヴォーカルを乗せ
BLACK SABBATHなどの70年代のドゥームロックの味わいに、WARLOADなどに通じる、
マイナー風味のエピックメタルが合わさったサウンドを聴かせる。ミドルテンポを主体にしつつ、
適度にキャッチーなノリもあり、オールドなギターリフにメロディックな叙情フレーズも覗かせながら、
ウェットな幻想性に包まれたエピック・ドゥームメタルが楽しめる。全6曲31分のミニアルバム。
ドラマティック度・・7 古き良き度・・8 エピック度・・8 総合・・7.5
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Burning Shadows 「Gather Darkness!」
アメリカのメロディックメタル、バーニング・シャドウズの2012年作
壮麗なイントロから幕を開け、メロディックなギターとパワフルなヴォーカルを乗せて、
どっしりとした正統派メタルサウンドを展開。Hammerfallあたりに通じる古き良きスタイルに
エピックメタル寄りの勇壮な感触で、組曲的に楽曲を連ねたコンセプチュアルでドラマティックな世界観は、
BLIND GUARDIAN
ICED EARTHなどが好きな方にも対応。いまひとつ抜けきらないメロディのフックや
曲展開の煮え切らなさなど、いくぶんのマイナー臭さも含めて、B級メロパワ好きにはたまらないかも。
ドラマティック度・・8 正統派度・・8 重厚度・・8 総合・・7.5
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Winters Veil 「Storm Awakens」
アメリカのメロディックメタル、ウインターズ・ヴェイルの2012年作
ギターによる叙情的なイントロから始まり、オールドなギターにハイトーンヴォーカルを乗せた、
Hammerfallなどにも通じる、勇壮な雰囲気の正統派メロパワサウンドを聴かせる。
ラウドな音質がいかにも自主制作らしいが、エピックメタル的なウェットな叙情性と、
美しいシンセや女性ヴォーカルで聴かせる優雅さは、マイナーな感触ながらもなかなか魅力的。
メタル感のないゆったりとしたバラードなどもあり、涼やかな叙情性は北欧のバンドのようでもある。
激しい疾走感はほとんどないが、じっくりとエピックな世界観に浸れるマイナーメタルの好作品。
ドラマティック度・・8 エピック度・・8 重厚度・・7 総合・・7.5
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WILD STEEL
イタリアのメロディックメタル、ワイルド・スティールの2006年作
SHADOWS OF STEELの仮面のヴォーカリストによるソロプロジェクトで、シンフォニックなシンセに
ネオクラ気味のギターとハイトーンヴォーカルを乗せて疾走する、正統派のメロディックメタルサウンド。
90年代のイタリアンメタルの流れをくむ、ほどよいクサメロ感とキャッチーなメロディック性で、
これという新鮮味はないものの、なかなか微笑ましく楽しめる。パワフル過ぎないヴォーカルも、
むしろ強すぎなくてよいですね。どこかなつかしいクサ☆メロスピナンバーには思わずにんまり。
Disc2には、CRIMSON GLORYのカヴァーを4曲収録。アコースティックを含むアレンジでなかなかハマっている。
メロディック度・・8 疾走度・・7 イタリアンメタル度・・8 総合・・7.5
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WILD STEEL 「Transcending Glory」
イタリアのメロディックメタル、ワイルド・スティールの2010年作
SHADOWS OF STEELの仮面のヴォーカリストによるソロプロジェクトで、本作は彼の敬愛する
CRIMSON GLORYのトリビュート作品。前作のボーナスDisc収録曲とはかぶりのない選曲で、
「Dragon Lady」、「Valhalla」、「Lady of Winter」といった代表曲を含め、1stから4曲、2ndから5曲を取り上げている。
独特のハイトーンヴォーカルを乗せ、原曲に忠実な演奏でクリムゾン・グローリーの楽曲を再現しているが、
どことなくイタリアンメタルらしいマイナー感がにじみ出ている。本家ミッドナイトの歌唱には及ばないが、
ウェットでドラマティックな世界観を映すようなオリジナルへの愛情が感じられるので、なかなか楽しめる。
ドラマティック度・・8 カヴァー度・・8 ミッドナイト度・・7 総合・・7.5
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REVOLUTION SAINTS
アメリカのメロディアスハードロック、レヴォリューション・セインツの2015年作
元JOURNEYのディーン・カストロノヴォ、NIGHT RANGERのジャック・ブレイズ、元WHITE SNAKEのダグ・アルドリッチによるバンドで、
EDEN'S CURSEのアレッサンドロ・デル・ヴェッキオがシンセで参加。古き良き王道のHRをキャッチーに聴かせるサウンドで、
ディーン・カストロノヴォの味わいのあるヴォーカルとともに、大人の哀愁を感じさせるメロディックなフックが心地よい。
前に出すぎないが随所に技巧的なプレイを奏でるダグのギターに、ほどよいシンセの味付けも含めて、派手すぎないところが、
80年代的なマイルドな聴き心地にもなっていて、ゆったりとしたバラードナンバーなども、やわらかな叙情に包まれる。
一流の演奏陣と爽快なコーラスハーモニーが合わさった、抜群のクオリティで楽しめるメロディアスハードの逸品です。
メロディック度・・8 王道HR度・・8 大人の叙情度・・9 総合・・8
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REVOLUTION SAINTS 「LIGHT IN THE DARK」
アメリカのメロディアスハードロック、レヴォリューション・セインツの2017年作
前作でのキャッチーなサウンドはそのままに、ダグ・アルドリッチのギターがさらに楽しげにメロディを奏で、
ディーン・カストロノヴォの伸びやかなヴォーカルの魅力とともに、爽快なメロディアスハードが楽しめる。
前作に比べると、よりレイドバックしたようなオールドテイストのHR感触を強めた雰囲気で、
アレッサンドロ・デル・ヴェッキオによる、オルガンを含むシンセアレンジも巧みに楽曲を彩っている。
様式美HR的でもあるノリのよい疾走ナンバーから、バラードナンバーでの泣きのギターフレーズなど、
アルバムとしてのメリハリも前作以上で、メロディックな楽曲の充実ぶりも素晴らしい。
メロディック度・・8 王道HR度・・9 大人の叙情度・・9 総合・・8
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9/7
残暑のブラック&フォークメタル(246)


Immortal 「Northern Chaos Gods」
ノルウェーのブラックメタル、イモータルの2018年作
1992年にデビュー、ブラックメタル黎明期から活動するベテランで、本作は2009年以来となる9作目。
フロントマンであったアバスが脱退し、デモナスとホルグの2人組となっているが、のっけから激しくブラスト疾走する、
王道のブラックメタルサウンドで、かすれ気味のデモナスのダミ声ヴォーカルも違和感なく、迫力たっぷりだ。
サラついたギターリフには叙情的な媚びはないが、ときにほどよくメロディを含んだ旋律を覗かせつつ、
強烈なドラムとともにオールドスタイルのノルウェイジャン・ブラックメタルが展開する。ミドルテンポのナンバーなども、
荒涼とした北の空気感をまとっていて、ラストの9分の大曲まで、ベテランらしい説得力と荘厳な味わいに包まれる。
これという新鮮味はないものの、かつての90年代初頭の正統派ブラックメタルを現在の力量で表現したような力作である。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・8 荘厳度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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INTER ARMA「SULPHUR ENGLISH」
アメリカのスラッジ系ブラックメタル、インター・アルマの2019年作
2010年にデビュー、本作は4作目で、ミステリアスで不穏なイントロから、ヘヴィなギターがドゥーミィに重なり、
低音デスヴォイスを乗せてブラスト疾走する、ブラッケンな暗黒スラッジサウンドが広がってゆく。
激しいブラックメタル感触もありつつ、こもり気味の音質がアナログな空気感をかもしだしていて、
スローテンポのドゥームメタルパートとともに、重厚でありながら靄のかかったような神秘性を描き出す。
ゆったりとしたナンバーと激しいブラックメタル風ナンバーがわりとはっきりしていて、10分前後の大曲も多いので
全体的には長尺感はあるのだが、ダークなスケール感に包まれた強力な作品であるのは確かだろう。
ドラマティック度・・7 暗黒度・・8 重厚度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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HELHEIM 「Rignir」
ノルウェーのペイガン・ブラックメタル、ヘルヘイムの2019年作
1995年デビューのベテランで、本作は10作目。マイルドな母国語のヴォーカルを乗せてゆるやかに始まる1曲目は、
激しさのないノルディック・メタルという趣で、ブラックメタル色はほとんどない。2曲目以降もときおりブラスト疾走はあるが、
ノーマル声がメインで、いつになくゆったりとした静寂感に包まれている。その分、寒々しい空気感と物悲しい叙情を感じさせ、
ミステリアスでダークなペイガンメタルでありながら、ときにアンビエントでもあるという不思議な聴き心地である。
正統派寄りのどっしりとしたナンバーなども、派手さや愛想はないが、硬派なヴァイキングメタルとしても楽しめる。
過去作に比べて激しさは薄まったが、キャリアのあるバンドらしい涼やかな音の説得力はさすがである。
ドラマティック度・・7 重厚度・・8 ペイガン度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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LLOTH 「ATHANATI (IMMORTAL) 」
ギリシャのエピック・デスメタル、ロスの2017年作
ヴァイキングメタル風のギターフレーズにデスヴォイスを乗せた重厚なサウンドで、
ブラスト疾走する激しさも含みつつ、基本はミドルテンポで、どっしりとしたデスメタルを聴かせる。
ギリシャ神話をテーマにした神秘的なスケール感に包まれながら、ほどよくメロディックな叙情性もあるので
全体的にわりと聴きやすく、SEPTIC FLESHなどに比べると、より正統派の雰囲気があって、
メロデス寄りのダークメタルとしても楽しめる。Rotting ChristのSAKIS、NIGHTFALLのEfthimis Karadimas、
CHAOSTARのアンドロニキ嬢が、それぞれ1曲ずつヴォーカルでゲスト参加している。
ドラマティック・・8 暴虐度・・6 重厚度・・8 総合・・8
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NIGHTBRINGER 「Apocalypse Sun」
アメリカのブラックメタル、ナイトブリンガーの2010年作
本作は2作目で、トレモロのギターに喚き声ヴォーカルを乗せて激しくブラスト疾走する、
ミステリアスなブラックメタルサウンド。適度にウェットな湿り気を感じさせつつも、
媚びの無いアンダーグラウンドな香りは、本格派のブラックメタル好きにも対応。
7、8分という長めの曲でも、漆黒の闇に包まれたダークで妖しい世界観と緩急ある展開力で
濃密に聴かせてくれる。後の圧倒的な作品に比べると、荘厳な迫力の点ではまだ及ばないが
本作の時点でも十分なクオリティの、暗黒系本格派ブラックメタルの力作だ。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・8 暗黒度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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HELSOTT「SLAVES AND GODS」
アメリカのペイガンメタル、ヘルソットの2018年作
ヘヴィなギターにダミ声&低音デスヴォイスを乗せ、うっすらとしたシンセアレンジとともに、
重厚なペイガンメタルを聴かせる。パワフルなドラムとともにモダンな硬質感に包まれつつ、
土着的なギターの旋律を乗せた、幻想的でミステリアスな空気とアグレッシブなヘヴィネスが合わさって、
ペイガン寄りのデスメタルというふうにも楽しめる。クサメロ感やシンフォニックな要素は希薄なので、
良く言えば硬派な、悪く言えば引っ掛かりがないという印象で、もう少しフックのある展開が欲しいか。
ドラマティック度・・7 ペイガン度・・7 重厚度・・8 総合・・7
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Sons of Crom 「The Black Tower」
スウェーデンのエピック・ヴァイキングメタル、サンズ・オブ・クロムの2017年作
ギター&ベース&シンセとドラムの2人組ユニットで、シンフォニックで壮麗なイントロから始まり、
トレモロのギターリフにダミ声ヴォーカルを乗せて激しくブラスト疾走、勇壮なコーラスなどを重ねた
エピックな味わいとともに、ときにブラックメタル要素もある幻想的なサウンドを聴かせる。
メロディアスなギターフレーズやノーマル声で歌われるところなどは、正統派メロパワ寄りの感触で、
アコースティックによるバラッドナンバーもあったりと、全体的には激しいパートはさほど多くなく、
ヴァイオリンの旋律も含んだフォーキーなメロディとともに、TURISASなどにも通じる雰囲気もある。
土着感よりは壮麗な味わいが前に出た、シンフォニックなヴァイキングメタルが楽しめる強力作だ。
ドラマティック度・・8 ヴァイキング度・・7 壮麗度・・8 総合・・8
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FUROR GALLICO 「Dusk of the Ages」
イタリアのフォークメタル、フロー・ギャリコの2019年作
女性ハープ奏者を含む5人編成で、ヴァイオリンが優雅に鳴り響くイントロから、幻想的な雰囲気に包まれ、
メロデス的なギターリフに低音デスヴォイスを乗せて疾走する、アグレッシブなサウンドが広がってゆく。
艶やかなヴァイオリンにケルティック・ハープ、美しい女性ヴォーカルの歌声も加えた優美な叙情性と、
デスメタル風味の激しさが同居していて、リズムチェンジを含むメリハリのある展開力でドラマティックに聴かせる。
ハープの音色にホイッスルやヴァイオリンが重なる、ケルティックな味わいもこれまで以上に説得力がともなっており、
迫力たっぷりのデス声とのコントラストが際立っている。重厚で優雅な本格派フォークメタルの傑作です。
ドラマティック・・8 ケルティック度・・8 重厚で優雅度・・9 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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EQUINOX 「SWITEZ」
ロシアのフォークメタル、イクイノクスの2015年作
美麗なシンセとバグパイプが鳴り響くイントロから、ほどよくヘヴィなギターにヴァイオリンを重ね、
伸びやかな女性ヴォーカルの母国語の歌声で聴かせる、キャッチーな味わいのフォークメタル。
随所に激しい疾走感もあって、ときにソプラノも使い分けるAlla嬢の凛とした歌唱力とともに、
パワーメタル的なフォークメタルという、ノリのよいサウンドが楽しめる。9分の大曲ではどっしりとした
シンフォニックメタル的な雰囲気もあり、アコースティックを含むギターのセンスもなかなかのもの。
表現力ある女性声が素晴らしい、パワフルなメタル感触と幻想的な土着性が同居した好作品だ。
メロディック度・・8 フォーキー度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8
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KOT BAYUN 「Сильнее зла(STRONG THAN EVIL)」
ロシアのフォークメタル、コト・バユンの2016年作
美しい女性ヴォーカルの歌声に、アコーディオンの音色、適度にヘヴィでメロディックなギターで聴かせる、
KALEVALAを思わせるキャッチーなサウンド。哀愁を含んだ土着的な叙情性に包まれつつ、
ギターはわりと正統派メタル寄りの感触で、随所にクサメロを奏でてサウンドを彩っている。
楽曲は2〜4分前後が主体で、全体的にシンプルな聴き心地であるが、女性声の魅力を前に出した
優雅な作風という点での方向性は絞れている。濃密すぎないバランスのとれた好作といえる。
メロディック度・・8 フォーキー度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8
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SURTURS LOHE 「SEELENHEIM」
ドイツのペイガン・ブラックメタル、サーターズ・ローの2016年作
ドイツ語の語りの入ったイントロで幕を開け、ダミ声ヴォーカルを乗せて激しくブラスト疾走、
クサメロ気味のギターフレーズとともに、いくぶんローカルな味わいに包まれた聴き心地。
アコースティックギターにフルートや美しい女性ヴォーカルを乗せた優美な感触と、
激しいブラックメタルが融合した作風であるが、ゆったりとした叙情ナンバーや、
朗々としたノーマル声を乗せたナンバーもあり、優雅なフォークメタルとしても楽しめる。
神秘的な土着性とゲルマンな勇壮さ、アコースティックな繊細さが合わさった、幻想的な好作品。
ドラマティック度・・7 フォーキー度・・7 幻想度・・8 総合・・7.5
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Crom 「When Northmen Die」
ドイツのヴァイキングメタル、クロムの2017年作
ギター、ベース、ヴォーカルをこなすクロム氏(元DARK FORTRESS)による独りヴァイキングメタルで、
前作から6年ぶりの3作目。パワフルなギターリフに朗々としたヴォーカルを乗せた、
正統派メロパワ寄りのサウンドで、勇壮でメロディックなスタイルは、FALCONERTYRなどにも通じる聴き心地。
叙情的なギターフレーズやエピックなコーラスなどを重ねた、ドラマティックな味わいとともに、
北欧神話的なスケールの大きな世界観は、MANOWARが好きな方にも薦められるだろう。
重厚さと涼やかな叙情が同居したサウンドは、表現力あるヴォーカルも含めて、幻想的な説得力に包まれる。
ドラマティック度・・8 正統派度・・8 エピック度・・9 総合・・8
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Steignyr 「Tales of a Forgotten Hero」
スペインのフォークメタル、ステイグニルの2014年作
シンフォニックなイントロから幕を開け、ヘヴィなギターと土着的なシンセのメロディに、
粗野なダミ声と美しい女性ヴォーカルが重なる、疾走感のあるフォークメタルを聴かせる。
きらびやかなシンフォニック性と辺境的なクサメロ感が同居したフォーク・メロスピ的でもあったり、
男声メインの曲ではヴァイキングメタル的な勇壮な武骨さに包まれる。エピックなスケール感に、
フォーキーな土着性と疾走感を含んだ起伏のある展開力で、ファンタジックな世界観を描き出す。
女性シンセ奏者による壮麗なアレンジセンスも魅力的で、粗削りながらも聴きどころの多い好作品だ。
ドラマティック度・・8 フォーキー度・・7 エピック度・・8 総合・・7.5
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8/24
残暑のブラック&ドゥーム!(233)


HECATE ENTHRONED 「Embrace of the Godless Aeon」
イギリスのシンフォニック・ブラックメタル、ヘカテ・エンスロンドの2019年作
1995年にデビュー、本作は6年ぶりとなる6作目。B級感ただようジャケであるが、美麗なシンセアレンジに
ダミ声ヴォーカルを乗せてブラスト疾走する、クオリティの高い王道のシンフォニック・ブラックメタルを聴かせる。
かつてのDIMMU BORGIRなどにも通じる壮麗さに、ときに女性ヴーカルなども加わった耽美な雰囲気は、
CRADLE OF FILTHが好きな方にも楽しめるだろう。ヴォーカルはガナり声と低音デスヴォイスを使い分け、
オールドなギターリフやトレモロの叙情フレーズとともに、90年代のシンフォブラックに回帰したというべき力作だ。
シンフォニック度・・8 暴虐度・・7 壮麗&耽美度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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BERGRAVEN 「DET FRAMLIDNA MINNET」
スウェーデンのプログレッシブ・ブラックメタル、バーグレイヴンの2019年作
2004年にデビュー、本作は4作目で、アコースティックを取り入れた有機的なギターにダミ声ヴォーカル、
リズムチェンジを含むいくぶん唐突な展開力で、アヴァンギャルドなブラックメタルを聴かせる。
OPETHSOLEFALDなどに通じる知的なセンスと、北欧らしい寒々しい土着的な空気感をまとい、
ときにトランペットやサックスの音色が絡み、妖しくフルートが鳴り響き、優雅でプログレッシブ、
そしてダークな香りに包まれた異色のサウンドを構築。10分を超える大曲も先の読めない展開で、
媚びの無いモノトーンの叙情を含んだ、ミステリアスなアヴァン・ブラックメタルが楽しめる。
ドラマテッック度・・8 アヴァンギャル度・・8 知的で優雅度・・8 総合・・8 
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EISREGEN 「FEGEFEUER」
ドイツのアヴァン・ブラックメタル、エイスレゲンの2018年作
90年代から活動するベテランで、ゲルマンなアヴァンメタルを聴かせる個性派バンド。
本作は13作目で、なにやらコンセプト的なイントロから始まり、メタリックなギターにドイツ語のダミ声ヴォーカルを乗せた
シアトリカルなブラックメタルサウンドを展開。適度に激しい疾走感と、シンセによるシンフォニックな味付けや、
ノーマル声のヴォーカルも加え、ゲルマンな武骨さとホラーなドラマ性に包まれた濃密な味わいである。
ブラックメタルらしいブラスト疾走するパートもありつつ、ヴァイオリンが鳴り響く叙情的なナンバーもあって、
激しくも艶めいた闇の空気に包まれる。シアトリカルな濃密さで描かれる、ゲルマン・ダークメタルの力作だ。
ドラマティック度・・8 ダーク度・・8 ゲルマン度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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WINDSWEPT「THE ONLOOKER」
ウクライナのブラックメタル、ウインドスウェプトの2019年作
DRUDKHのメンバーを中心にしたバンドで、本作が2作目となる。聞き覚えのあるオルガールの音色で始まり、
トレモロのギターリフを乗せて激しくブラスト疾走。ドゥルドフに比べるとわりとストレートな作風で、
ダミ声ヴォーカルとともにブラスト疾走しまくりつつ、ほどよくメロディックな叙情を含んだ聴き心地で、
激しくもミステリアスなブラックメタルが味わえる。疾走感は凄いがわりとスピードは一本調子で、
トレモロのギターフレーズが耳心地よく、邪悪さや暗黒性はあまり感じないので、ブラメタ初心者の方にもイケるかと。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・8 ミステリアス度・・8 総合・・8
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BEGERITH 「A.D.A.M.」
ポーランドのブラックメタル、ベゲリスの2017年作
妖しげなイントロ曲から、ツインギターのリフにうっすらとしたシンセを重ね、低音デスヴォイスとともに、
ブラストビートで激しくたたみかける、重厚なブラックメタルスタイル。ブルータルな激烈さの中で、
ギターは随所にメロディックなフレーズも奏で、シンセによるシンフォブラック的な味付けとともに、
緩急あるリズムチェンジでメリハリのある楽曲を構築する。マシンガンのようなドラムはブルデス的でもあり、
同国の先輩、BEHEMOTHにもひけをとらない荘厳な迫力に包まれながら、ギターはヘヴィ過ぎずに、
わりと叙情的なメロディも覗かせるので、全体的には意外と聴きやすい。今後の深化に期待のバンドです。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・8 重厚度・・8 総合・・8
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ABYSSIC 「High in the Memory」
ノルウェーのシンフォニック・ドゥームメタル、アビシックの2019年作
SUSPERIA、元DIMMU BORGIR、元OLD MAN'S CHILDのメンバーらによるバンドで、本作が2作目となる。
低音デスヴォイスを乗せたフューネラル・ドゥームに、壮麗なシンフォニックアレンジを加えたスタイルで、
叙情的なフレーズも奏でる重厚なギターとオーケストラルな美しさで、荘厳なサウンドを描いてゆく。
8分、20分、12分、20分、15分という、大曲5曲という構成で、全体的にゆったりとした聴き心地ながら、
ときにスローすぎないシンフォニック・デスメタル的なノリもあり、なにより美麗なシンセアレンジが
ダークな世界観を耽美に彩っていて、じっくりとそのサウンドに浸ることができる。全77分という長さで、
気が短い方には向かないが、ラスト曲ではいきなりブラスト疾走するシンフォブラックになりますよ。
シンフォニック度・・8 重厚度・・8 荘厳度・・9 総合・・8
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DAWN OF WINTER 「PRAY FOR DOOM」
ドイツのドゥームメタル、ドーン・オブ・ウインターの2018年作
Sacred SteelのVoを含むバンドで、重厚なギターに朗々としたヴォーカルを乗せた、
Candlemassタイプの正統派エピック・ドゥームメタル。ゆったりとしたスローテンポながら、
ウェットで叙情的なギターフレーズとともに、遅めのジャーマンメタルのような聴き心地もある。
パワフル過ぎないヴォーカルも、このサウンドにはよくマッチしていて、WARLORDなどにも通じる
古き良きB級エピックメタルのような感触とともに、ドゥームが苦手な方でもわりと楽しめる好作品だ。
ドラマティック度・・7 エピックドゥーム度・・8 重厚度・・8 総合・・8
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Towards Atlantis Lights 「Dust of Aeons」
イタリア&イギリスのドゥームメタル、トワーズ・アトランティス・ライツの2018年作
PANTHEIST、VOID OF SILENCE、APHONIC THRENODYといったバンドのメンバーからなるバンドで、
叙情的なギターフレーズに詠唱のようなヴォーカル、うっすらとしたシンセアレンジで、
ミステリアスなドゥームメタルを聴かせる。のっけから30分という大曲で、デスヴォイスも交えつつ、
スローテンポで淡々とした作風は気の短い方には向かないが、古代ギリシャをテーマにした、
幻想的で荘厳な空気感に包まれたサウンドにじっくりと浸れる。30分、16分という大曲をメインにした
全4曲という構成で、盛り上がりやフックのある展開はさほどないので、雰囲気モノとしたのんびり楽しみたい。
ドラマティック度・・7 ドゥーム度・・8 ミステリアス度・・8 総合・・7.5
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Cardinals Folly 「Deranged Pagan Sons」
フィンランドのドゥームメタル、カーディナルズ・フォリーの2017年作
2008年にデビュー、本作は4作目のアルバムで、ギター、ベース、ドラムというトリオ編成の
シンプルなアンサンブルで、アナログ感たっぷりのオールドなドゥームメタルを聴かせる。
遅すぎないテンポのノリに、ジェントルなヴォーカルを乗せ、いくぶんのメロディアス性とともに、
北欧のバンドらしい翳りを含んだ空気に包まれた、ヴィンテージなハードロックとしても楽しめる。
随所にダミ声ヴォーカルも加えて、過去作からの流れのアンダーグラウンドな妖しさも覗かせつつ、
全体的にはストレートなノリでいくぶん聴きやすくなった。いわば適度なカルト感の王道ドゥームですね。
ドラマティック度・・7 ドゥーム度・・8 アナログ度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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The Order of Israfel 「Red Robes」
スウェーデンのドゥームメタル、オーダー・オブ・イスラフェルの2016年作
アラビックなイントロから始まり、ヘヴィなギターと朗々としたヴォーカルを乗せて、
どっしりと聴かせる、BLACK SABBATHルーツのドゥームメタルが広がってゆく。
ザラついたストーナー感触とオールドなドゥーム感が合わさり、ときにアコースティックな叙情性や
イスラム教の最後の審判を告げる天使からとったバンド名のように、中近東風の旋律も覗かせる。
ラストは15分という大曲で、初期CATHEDRALのような重厚なスローテンポの中に、
ミステリアスな気配を描き出す。まさに本格派のドゥームサウンドを体現した力作です。
ドラマティック度・・7 ドゥーム度・・9 重厚度・・9 総合・・8
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Grayceon 「IV」
アメリカのプログレッシブ・ゴシック・ドゥームメタル、グレイセオンの2018年作
Amber Asylumの女性Voを擁するバンドで、アナログ感あるギターリフに女性ヴォーカルを乗せ、
手数の多いドラムとともに、リズムチェンジを含むエキセントリックな展開力を聴かせる。
チェロが鳴り響くメランコリックな空気感を描いていて、JACKIE嬢のアンニュイな歌声とともに、
妖しいけだるさも漂わせる。随所に彼女のデスヴォイスも加えたり、激しい疾走パートもあったりと、
ほどよくアグレッシブな部分もあるので、わりと飽きさせない。はかなげなゴシック感触と、
ドゥームのヘヴィさにアヴァンギャルドなセンスを加えたというような異色作です。
ドラマティック度・・7 ゴシック度・・7 女性Vo度・・7 総合・・7.5
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Ghostbound 「All Is Phantom」
アメリカのゴシック・ポストロック、ゴーストバウンドの2018年作
物悲しいギターのつまびきから始まり、ジェントルなヴォーカルにヴァイオリンやチェロの音色を重ね、
ポストロックらしいスケール感に包まれながら、ときにブラスト疾走するような激しさも覗かせる。
ヘヴィ過ぎないギターにはメタル感触はさほどなく、ゆったりとしたナンバーでは、キャッチーでありながらも、
ゴシックロック的でもあるメランコリックな叙情を描いてゆく。全体的に派手な盛り上がりというのはなく、
わりと淡々とした聴き心地であるが、後半にはポストブラック風の疾走ナンバーもあり、ますますジャンル分け不能に。
朗々としたヴォーカルとストリングスの音色で、クラシカルで物悲しいポストロックが楽しめるという好作品だ。
ドラマティック度・・7 重厚度・・7 叙情度・・8 総合・・7.5
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8/10
猛暑のブラックメタル(221)


DIMMU BORGIR「Eonian」
ノルウェーのシンフォニック・ブラックメタル、ディム・ボルギルの2018年作
1994年にデビュー、スタジオ作としては8年ぶりの10作目。「ボガー」だったのが正式な発音の「ボルギル」になって、
違和感のある方もいるかもしれないが、アチエネもそうだったし、まあよいでしょう。今作は生のオーケストラは使わず、
打ち込みによるオーケストレーションによる壮麗なシンフォニック性と、硬質なバンドサウンドをスタイリッシュに融合。
ときにインダストリアルなモダンさも匂わせつつ、男女コーラスによる荘厳なスケール感は、THERIONなどにも通じるだろう。
暴虐なブラスト疾走は少なめなので、激しさを求める方にはやや肩透かしかもしれないが、トライバルな民族性を覗かせたり
メランコリックな叙情を含んだメロディアス性なども含め、より多くのリスナーへと間口を広げる作品というべきだろう。
ブラックメタルというものをここまでスタイリッシュに仕上げたという点では、CRADLE OF FILTHと同様に敬意を表したい。
シンフォニック度・・8 暴虐度・・7 荘厳度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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THE ORDER OF APOLLYON 「The Sword And The Dagger」
イギリスのブラックメタル、オーダー・オブ・アポリュオンの2015年作
ABORTED、元CRADLE OF FILTH、AKERCOCKEといったバンドのメンバーが集まったバンドで、
硬質なギターリフに低音デスヴォイスを乗せて激烈にブラスト疾走する、硬派のブラックメタルスタイルで、
MARDUKBEHEMOTHなどにも引けを取らない暴虐な迫力に包まれる。ときにリズムチェンジを含む
知的な展開力を覗かせるところは、AKERCOCKEにも通じるが、とにかくブルータルにたたみかけるサウンドは、
マシンガンのようなドラムも含めて前作以上の激しさである。今作は戦い、戦争をテーマにしているようで、
ダークで無慈悲な死の香りもぷんぷん漂う。暴虐系ブラックメタルとしてはかなりの力作である。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・9 荘厳度・・8 総合・・8
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THE ORDER OF APOLLYON 「MORIAH」
イギリスのブラックメタル、オーダー・オブ・アポリュオンの2018年作
2010年にデビュー、3作目の今作は、旧約聖書「創世記」をテーマにした作品で、
アコースティックなイントロから、トレモロのギターリフを乗せてブラスト疾走開始、
低音デスヴォイスを乗せた迫力はそのままに、前作に比べるとウェットなギターフレーズとともに、
いくぶんメロブラ的な感触もある。激烈な疾走感に甘すぎない程度の叙情性を加え、
荘厳な空気感に包まれたサウンドは、さすがキャリアのあるメンバーらしい説得力である。
激しさの中に崇高な闇のドラマを描くような、これぞブラックメタルというべき強力作です。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・8 荘厳度・・9 総合・・8.5
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Paara 「Riitti」
フィンランドのペイガン・ブラックメタル、パーラの2018年作
2015年にデビューし、本作が2作目となる。男女Voにツインギターを含む6人編成で、
叙情的なギターに母国語によるノーマルヴォーカルを乗せ、女性ヴォーカルも加わって
土着的で悲しい空気を描きつつ、トレモロのギターリフとダミ声を乗せてブラスト疾走。
リズムチェンジを含む緩急ある展開力で、のっけから15分を超える大曲を描いてゆく。
ブラッケンなダークさと、オールドなプリミティブ性、知的な構築力が同居した味わいで、
フィンランド語による土着的な感触と、涼やかな叙情性も匂わせる、神秘的な聴き心地。
10分を超える大曲を2曲含む全4曲。幻想的なペイガン・ブラックが楽しめる強力作だ。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・7 神秘的度・・8 総合・・8
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AEOLIAN 「SILENT WITNESS」
スペインのメロディック・デスメタル、アエオリアンの2018年作
ツインギターにダミ声ヴォーカルを乗せて激しく疾走する、正統派のメロデス・スタイルで、
随所に叙情的なギターフレーズによる優雅なパートも含んだ、緩急ある構築力で聴かせる。
トレモロのギターでブラスト疾走するところは、わりとペイガン・ブラック的でもあるが、
部分的にはモダンなヘヴィネスもあって、結果としてヴァイキング・メロデスという聴き心地。
楽曲は4〜5分前後で、全体的にクオリティは高いのだが、もう少しクサメロ感や幻想性が欲しい気も。
メロディック度・・7 疾走度・・8 ペイガン度・・7 総合・・7.5
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Sanguine Glacialis 「Hadopelagic」
カナダのプログレッシブ・デスメタル、サンギエン・グラチャリスの2018年作
ツインギターに女性Vo&シンセを含む5人編成で、硬質なギターリフを乗せたデスメタル感触に、
美しい女性ヴォーカルとシンセアレンジで、シンフォニックな優美さも覗かせる、テクニカルにして壮麗な作風。
緩急あるリズムチェンジと、デスヴォイスも使い分ける女性声とともに、きらびやかで重厚な聴き心地ながら、
ときにジャズ風味の軽妙さが現れたりと、いくぶん唐突でエキセントリックなセンスと展開力も面白い。
激しく疾走しつつ、オペラティックな女性ヴォーカルを乗せた優雅さなど、単なるデスメタルとは異なる、
プログレッシブな味わいに包まれていて、先の読めないスリリングなサウンドが楽しめる。
極端なアヴァンギャルド性と耽美性の融合は、Ebonylakeあたりが好きな方にもお薦めの濃密作デス。
ドラマティック度・・8 濃密度・・9 優雅でエキセントリック度・・9 総合・・8
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Battlesoul 「Lay down Thy Burdens」
カナダのフォークメロデス、バトルソウルの2011年作
ツインギターにダミ声ヴォーカルを乗せて激しく疾走しつつ、随所にフォーキッシュなメロディを盛り込んだ、
メロデス寄りのヴァイキングメタルサウンド。朗々としたノーマル声を織り込んで、勇壮な世界観を描きつつ、
B級気味のクサメロ感触もあって、わりと正統派メロパワ風のツインギターも覗かせるところもある。
メロデスばりの疾走曲でも、途中に牧歌的なフォークメロディが現れたりと、フックのある展開はなかなか楽しい。
一方では、長めの曲では煮え切らない中庸感もあり、楽曲のアレンジの質がマイナー臭さとなっている。
エピックな世界観はよいので、クサメロ感を増やすか、スタイリッシュにそぎ落とすか、今後の成長に期待したい。
ドラマティック度・・8 疾走度・・8 フォーキー度・・7 総合・・7.5
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Moonlyght 「Return to Desolation」
カナダのヴァイキング・メロデス、ムーンライトの2015年作
2002年にデビュー、本作は7年ぶりの3作目となる。壮麗なシンセアレンジに、叙情的なツインギターと
ダミ声ヴォーカルを乗せた、疾走感のあるシンフォニックなヴァイキングメタルを聴かせる。
ノーマル声の男女コーラスを加えたエピックなスケール感と、メロウなギターフレーズとともに、
優美な叙情性に包まれて、8分、9分という大曲を緩急ある展開で、ドラマティックに構築する。
激烈にブラスト疾走するペイガンブラック的なパートもありつつ、あくまで美しいシンセワークと、
泣きのギター、艶やかなヴィオラの音色や美しい女性声が、扇情的なメロディとともに楽曲を彩る。
美麗なシンフォニック性と泣きメロたっぷりで描かれる、ヴァイキングメロデスの傑作です。
シンフォニック度・・8 ヴァイキング度・・7 叙情度・・8 総合・・8.5
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Chasma 「Codex Constellatia」
アメリカのブラックメタル、チャスマの2013年作
2011年にデビュー、クリーンなギターに絶叫ヴォーカルを乗せ、ゆったりとしたイントロから、
激しくブラスト疾走しつつもも、暴虐さよりもスペイシーな神秘性に包まれたサウンドを描く。
いわゆるカスカディアン・ブラックメタルというべきスタイルであるが、よりプリミティブな雰囲気で、
初期のWOLVES IN THE THRONE ROOMを、サイケデリック志向にしたような世界観である。
アンビエントなリフレインによる小曲を挟みつつ、10分を超える大曲ではトレモロのギターを乗せて、
ブラスト疾走するお約束のスタイルに、緩急ある構築力で耳心地の良いポストブラックが味わえる。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・7 神秘度・・8 総合・・7.5
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Parodos 「Catharsis」
イタリアのシンフォニック・ブラックメタル、パロドスの2017年作
シンセを含む5人編成で、イタリア語の語りの入ったイントロから、美麗なシンセなアレンジに
朗々としたヴォーカルと低音デスヴォイスを乗せて、ARCTURUSのようなスペイシーで壮大なサウンドを描く。
クラシカルなピアノの旋律やメロディックなギターなどを加え、激しく疾走しつつも美しく優雅な聴き心地。
オルガンの音色に女性声のイタリア語の語りなど、ときにプログレッシブな雰囲気にも包まれた展開力で、
7〜9分前後の大曲を知的に構築してゆく。ミステリアスでいくぶんアヴァンギャルドな空気感も好みです。
全体的に激しさよりも優雅な雰囲気で、プログレッシブなシンフォニックブラックが楽しめる力作です。
ドラマティック度・・8 優雅で知的度・・8 イタリア度・・8 総合・・8
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In Tormentata Quiete 「Finestatico」
イタリアのプログレッシブ・ブラックメタル、イン・トーメンタータ・クイーテの2017年作
2005年にデビュー、本作は4作目で、スペイシーなシンセとダミ声ヴォーカルを乗せて激しくブラスト疾走、
美しい女性ヴォーカルも加わって、ミステリアスなスケール感に包まれたサウンド聴かせる。
リズムチェンジを含む緩急ある構築力と、随所にプログレ的なシンセアレンジも覗かせつつ、
ダミ声、ノーマル男声、女声という3人のヴォーカルを重ねながら、壮大な世界観を描き出す。
全体的には激しさは控えめで、THERIONあたりにも通じるシンフォニックなゴシック・ブラックという感じもありつつ、
変拍子やイタリア語の歌声は、すでに十分プログレしている。個人的にはもっとアヴァンギャルドになっちゃって欲しい。
ドラマティック度・・8 壮大度・・8 アヴァンギャル度・・7 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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The Fallen Divine 「The Binding Cycle」
ノルウェーのプログレッシブ・デスメタル、フォールン・ディヴァインの2012年作
ツインギターのリフに迫力あるデスヴォイスを乗せ、テクニカルなリズムチェンジで聴かせる、
プログレッシブなメロデスサウンド。手数の多いドラムと存在感のあるベース、ツインギターのフレーズに
美麗なシンセアレンジを重ねたシンフォニックな美しさとともに、知的な展開力で構築する。
OPETHというよりは、EDGE OF SANITYの傑作「CRIMSON」を思わせるような雰囲気で、
ときにメロディックなギターフレーズや優雅なシンセパートが、涼やかな叙情性を描き出す。
ミックス&マスタリングはダン・スヴァノ。これぞ北欧プログレッシブ・デスメタルの力作です。
ドラマティック度・・8 プログレデス度・・8 北欧デス度・・8 総合・・8
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Belenos 「Errances Oniriques」
フランスのペイガン・ブラックメタル、ベレノスの2009年作
本作は2000年のデビュー作をリレコーディングしたアルバムで、ツインギターにダミ声ヴォーカルを乗せ、
随所に叙情的なパートを含んだメリハリある展開力で、ミステリアスなペイガンブラックを聴かせる。
メロディックなギターフレーズやときに朗々としたコーラスも加えて、勇壮な世界観を描きつつ
激しいブラストでたたみかける、オールドなブラックメタル風味もまじえた迫力あるサウンドだ。
いくぶん唐突なリズムチェンジェンジなど、のちのアルバムに比べて楽曲アレンジの点での粗さはあるが、
甘すぎない叙情性と激しさのバランスのとれた聴き心地で、幻想的なペイガンブラックが味わえる。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・7 勇壮度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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7/27
メタルの夏きたる(208)


Haken 「Vector」
イギリスのプログレメタル、ヘイケンの2018年作
2010年にデビュー、そのスタイリッシュなサウンドで、いまやモダンプログレの旗手というべき存在。
5作目となる本作は、美麗でミステリアスなイントロから、適度なヘヴィさを含んだテクニカル性に、
マイルドなヴォーカルを乗せたキャッチーなサウンドで、コンセプト的なドラマ性を描き出す。
DREAM THEATERにも通じる、ProgMetal的な感触に、きらびやかなシンセやモダンなアレンジを加えて、
エモーショナルな叙情性を表現する、スタイリッシュなメロディアス性というべきフックのある展開力もさすが。
今作ではインストパートでのテクニカルメタルとしての側面も強めていて、リズムのハネ方はDjent的でもある。
傑作だった前作に比べると、楽曲ごとの魅力では物足りなさもあるが、安定の実力を発揮した高品質作である。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 スタイリッシュ度・・9 総合・・8 過去作レビューはこちら
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MY INDIGO
WITHIN TEMPTATIONのシャロン・デン・アデルのユニット、マイ・インディゴの2018年作
ウィズインのシャロンが歌う作品と聴いて、飛びついた方も多いだろうが、
サウンドの方は、打ち込みとシンセアレンジを中心としたけっこうポップな作風で、
メタルはおろかロック色も希薄。たしかにシャロンさんのヴォーカルは上手いのだが、
この路線なら別に誰がやっても…というね。トランペットやヴァイオリンなどを使ったアレンジや、
ピアノをバックにしっとりとした歌声を聴かせる部分などはわりとよい感じなんですがね。
女性Voを乗せたモダンなポップスというべき内容は、WTのファンには物足りないでしょう。
ポップ度・・8 メタル度・・1 女性Vo度・・8 総合・・7
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MILLENNIUM 「Awakening」
イギリスのメタルバンド、ミレニアムの2018年作
1984年に唯一のアルバムを残して消えたバンドの、じつに34年ぶりとなるオリジナルアルバムで、
王道のギターにパワフルなヴォーカルを乗せた、正統派のブリティッシュメタルを聴かせる。
往年のJUDAS PRIESTにも通じる勢いあるメタルナンバーから、メロディックなギターを乗せた
ウェットな哀愁に包まれたナンバーなど、80年代の英国メタル好きならばにんまりだろう。
全体的には新鮮なインパクトというのは薄く、どの曲も、80〜90年代の雰囲気に包まれた正統派で、
キャッチー過ぎず、ヘヴィ過ぎずという中庸な感触であるが、これこそがNWOBHMの生き残りというべきか。
ドラマティック度・・7 正統派度・・8 新鮮度・・7 総合・・7.5
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Graveshadow 「Nocturnal Resurrection」
アメリカのメロディックメタル、グレイヴシャドウの2015年作
ツインギターに女性Vo、女性シンセ奏者を含む6人編成で、ヘヴイなギターリフに美麗なシンセを重ね
艶めいた女性ヴォーカルで聴かせるシンフォニックメタル。迫力あるデスヴォイスもこなすヘザー嬢の歌声は、
妖しい魔女感もありつつ、ゴシックメタル的なナンバーでは美しいソプラノも披露。全体的には激しさは控えめで、
優美なシンセアレンジとともにわりとキャッチーな聴き心地で楽しめる。こうなるとデス声がいらない気もするが、
ジャケのようなダークなイメージも目指しているのかもしれない。今後の深化に期待したいバンドですね。
シンフォニック度・・8 正統派度・7 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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Teodasia 「Upwards」
イタリアのシンフォニックメタル、テオダシアの2012年作
美麗なイントロ曲から始まり、美しいシンセアレンジに伸びやかな女性ヴォーカルの歌声を乗せた、
キャッチーなシンフォニックメタルを展開。ヘヴィ過ぎないメロディアスハード的な聴きやすさと、
クラシカルな優雅さに包まれたアレンジに、紅一点、プリシラ嬢の歌声も、なかなか魅力的だ。
アネット期のNightwishに通じる雰囲気というべきか。男女ツインヴォーカルのナンバーや、
ストリングスを加えた優美なアレンジもありつつ、全体的にはゆったりとした耳心地の良さで、
大仰すぎないところがかえって良いですね。ヘヴィなメタルが苦手な方にも楽しめる優雅な好作品。
シンフォニック度・・8 キャッチー度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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Oblivious Signal 「Exordium」
アメリカの女性声ハードロック、オブリヴィアス・シグナルの2014年作
ヘヴィなギターにハスキーな女性ヴォーカルの歌声で聴かせる、モダンなメタルサウンドで
適度にキャッチーな味わいと、ときにスクリームヴォイスも加えたヘヴィロック的な雰囲気も覗かせる。
ヴォーカル嬢の歌声は伸びやかで表現力もあるのだが、肝心の楽曲の魅力がいまひとつで、
これという新鮮味はなく、メロディのフックも物足りない。EVANESCENCEのような翳りを帯びた叙情性か、
もしくは、よりキャッチーでメロディックな路線か、もう少し方向性を絞り込んでいってもらいたい。
メロディック度・・7 キャッチー度・・7 女性Vo度・・8 総合・・7
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Stormy Atmosphere 「Pent Letters」
イスラエルのプログレメタル、ストーミー・アトモスフィアの2015年作
男女Voにシンセを含む5人編成で、本作は6年ぶりの2作目となる。映画的なナレーションから始まり、
ほどよくヘヴィなギターに優美なシンセを重ね、朗々とした男性ヴォーカルに美しい女性声が絡みつつ、
コンセプトアルバム的な雰囲気とともに、メタルオペラ風でもある優雅なサウンドを描いてゆく。
シアトリカルな世界観に包まれつつ、どこか煮え切らない辺境的なマイナー臭さも感じさせ、
小曲を織り込んだ流れのある構成はよいのだが、前作に比べると楽曲ごとのインパクトが薄い気も。
ラストは14分の大曲で、緩急に富んだ構築力でドラマテッィクに聴かせる。全71分という力作です。
ドラマティック度・・8 優雅度・・8 インパクト度・・7 総合・・7.5
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Odin's Court 「The Warmth of Mediocrity」
アメリカのプログレメタル、オーディンズ・コートの2013年作
2003年デビューという、中堅クラスのキャリアがあるバンドで、本作は過去曲のリミックスを中心にしたアルバム。
ヘヴィなギターにうっすらとしたシンセと伸びやかなヴォーカルを乗せて、適度にテクニカルな展開力で聴かせる、
重厚でドラマティックなProgMetalサウンド。アメリカのバンドらしい抜けの良い歌メロやギターの奏でる叙情的なフレーズは、
けっこう日本人好みで、作品のクオリティとキャリアを考えれば、もっと知名度があってもよいバンドだろう。
ときにきらびやかなシンセとともにシンフォニックな音の厚みや、優雅なテクニカル性も覗かせつつ、
キャッチーでメリハリのあるサウンド楽しめる。好曲多数の全64分。バンドの入門用にも良いですな。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 重厚度・・8 総合・・8
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Jess and The Ancient Ones  「The Horse & Other Weird Tales」
フィンランドのサイケハード、ジェス・アンド・ジ・エンシェント・ワンズの2017年作
2012年にデビュー、3作目となる本作も、レトロなオルガンにアナログ感あるギター乗せ、
艶めいた女性ヴォーカルで聴かせる、サイケなヴィンテージロックを繰り広げる。
Blood CeremonyPURSONなどに通じる魔女系ロックでありつつ、ハードさは控えめで
ユルめのサイケ感とキャッチーなノリが前に出ているので、プログレ寄りのリスナーにも楽しめるかと。
大曲のあった前作に比べると、2〜3分前後の小曲を主体に、全34分とわりとあっさりしていて、
濃密さの点ではやや物足りなさもあるが、ラスト曲での妖しい魔女っぷりはさすが。
ドラマティック度・・7 キャッチー度・・8 ヴィンテージ度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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The Golden Grass 「Coming Back Again」
アメリカのヴィンテージロック、ゴールデン・グラスの2016年作
ギター、ベース、ドラムのトリオ編成で、2作目となる本作も、アナログ感たっぷりのアンサンブルで、
70年代英国ロックに回帰したようなヴィンテージなサウンドを聴かせる。ブルージーなハードさに、
ジェントルなヴォーカルを乗せた牧歌的なおおらかさで、ブギウギ調のキャッチーなノリのナンバーから、
アコースティックな小曲、そして10分に及ぶサイケ・ドゥーム風の大曲など、意外とメリハリに富んた構成で、
オールドな70's風ロックをじっくりと楽しめる。適度なハードさとほどよいユルさのバランスも絶妙だ。
ドラマティック度・・7 キャッチー度・・8 ヴィンテージ度・・9 総合・・8 
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Crimson Dawn 「Chronicles Of An Undead Hunter」
イタリアのエピック・ドゥームメタル、クリムゾン・ドーンの2017年作
ツインギターにシンセを含む6人編成で、壮麗なイントロから、重厚なギターに朗々としたヴォーカルを乗せた、
正統派のエピック・ドゥームを聴かせる。オルガンを含むシンセがヴィンテージな味わいをかもしだし、
ときにメロディックなギターフレーズやメディーヴァルな女性コーラスなどが、サウンドを彩る。
楽曲のテンポも遅すぎず、ドゥームが苦手な方でも普通に正統派メタルとしても楽しめるだろうし、
ときにフォーキッシュなパートも覗かせるなど、中世イタリアを思わせるような世界観もよい感じだ。
ほどよく重厚なドゥーム感触とメロディックなメタルサウンドのバランスのとれた好作品である。
ドラマティック度・・8 エピックドゥーム度・・8 正統派度・・8 総合・・8
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Redemption Unnamed 「From Silent Shadows」
イギリスのヴィンテージロック、リデンプション・アンネームドの2008年作
アナログ感あるアンサンブルに妖しげな女性ヴォーカルを乗せた、ヴィンテージなハードロック。
ときにスクリームも加えたダークさも覗かせつつ、サウンド自体はさほどヘヴィではないので、
いまのメタルというよりは、70〜80年代のNWOBHMのアンダーグラウンドな雰囲気に通じるかもしれない。
サイケな浮遊感やドゥームなおどろおどろさはないが、ヴィクトリアンな優雅な倦怠に包まれた世界観で、
激しめの魔女系ロックとしても楽しめる。個人的には、ここにオルガンでも加われはもっといいのだが。
ドラマティック度・・7 ヴィンテージ度・・8 妖しげ度・・8 総合・・7.5
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7/19
京アニに黙祷…涙(196)


At The Gates 「To Drink from the Night Itself 」
スウェーデンのメロディック・デスメタル、アット・ザ・ゲイツの2018年作
1992年にデビュー、北欧メロデス黎明期から活動するバンドで、2014年の復活作に続く通算6作目。
シンフォニックなイントロに続くのは、AT THE GATES節というべきツインギターのリフで疾走する、
オールドスタイルのサウンドで、脱退したアンダース・ビョーラーの不在を感じさせない聴き心地。
リズムチェンジによる緩急ある展開力に、随所に北欧メロデスらしい叙情性を覗かせつつ、
迫力ある疾走感でたたみかけるスタイルは、まさにファンが望むこのバンドらしい作風だろう。
一方では、わりとスタイリッシュでキャッチーな感触を融合させていて、メロディックなギターリフとともに、
かつてのThe Hauntedにも通じる、クールな北欧メロデスラッシュとしても楽しめる強力作だ。
ドラマティック度・・8 疾走度・・8 アットザゲイツ度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Pestilence 「Hadeon」
オランダのデスメタル、ペスティレンスの2018年作
1988年にデビュー、1993年までに4作のアルバムを出して消えるが、2009年に復活、
本作は復活後の4作目となる。オールドなギターリフと低音デスヴォイスを乗せて、
ストレートな疾走感でたたみかける、デスラッシュ気味の強力なサウンドを聴かせる。
楽曲は3分前後とシンプルであるが、90年代を思わせるスラッシーな突進力に、
スローパートでの重厚な迫力にはデスメタルとしての不穏な空気感も匂わせる。
曲によってはリズムチェンジを含む知的なアレンジセンスも覗かせる、さすがの強力作デス。
ドラマティック度・・7 疾走度・・9 重厚度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Anamnesi 「La Proiezione Del Fuoco」
イタリアのブラックメタル、アナムネシの2017年作
ザラついたギターにダミ声ヴォーカルを乗せて激しくブラスト疾走するブラックメタルに、
朗々としたコーラスやときにアコースティックなパートも加え、緩急ある展開で聴かせる。
ジャケのイメージから古代ローマをコンセプトにしているのだろう。ダークな暴虐性の中にも
ミステリアスな空気とともに荘厳なスケール感と幻想性も感じさせる。10分を超える大曲では、
イタリア語による語りを含んだシテマティックなドラマ性で迫力あるサウンドを描き出す。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・7 荘厳度・・8 総合・・8
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LEMURIA 「The Hysterical Hunt」
ベルギーのシンフォニック・ブラックメタル、レムリアの2018年作
18世紀フランスの伝説の獣とされる「ジェヴォーダンの獣」をテーマにしたコンセプト作で、
荘厳なイントロから、シンフォニックなアレンジとダミ声ヴォーカルを乗せて疾走する、
CRADLE OF FILTHにも通じるスタイルで、随所に語りやSEなどを盛り込んで、
シアトリカルなドラマ性を描き出す。激しい疾走パートだけでなく、緩急ある展開力に、
随所にメロディックなギターや女性コーラスなどを加えた優美な聴き心地も日本人好み。
エピックな雰囲気も感じさせる、高品質なシンフォニック・ブラックメタルの力作デス。
シンフォニック度・・8 暴虐度・・7 壮麗度・・8 総合・・8
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Darkane 「The Sinister Supremacy」
スウェーデンのデスラッシュバンド、ダーケインの2013年作
ARCH ENEMYやARMAGEDDONなどに参加したドラマー、ピーター・ウィルドアー率いるバンドの6作目
今作は物悲しいストリングスによるイントロから始まり、ツインギターのリフとダミ声ヴォーカルネを乗せて疾走する、
オールドスタイルのデスラッシュサウンドに、ほどよくモダンなアプローチを加えたサウンドを聴かせる。
リズムチェンジや技巧的なギターフレーズに、甘すぎないメロディを盛り込みつつ、勢いよくたたみかける。
全体的には、デスラッシュにしてはリフの魅力が物足りなりず、メロデスというほどの叙情性もない。
そこそこの質の高さと激しさで聴かせる佳作というところ。楽曲ごとのインパクトがもう少し欲しい。
ドラマティック度・・8 疾走度・・8 新鮮度・・7 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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Mean Streak 「Blind Faith」
スウェーデンの正統派メタルバンド、ミーン・ストリークの2017年作
2009年にデビュー、オールドなメタルサウンドで、ENFORCERやWHITE WIZARDなどとともに、
NWOTHMシーンを盛り上げるバンド。4作目となる本作も、ツインギターに伸びやかなヴォーカルを乗せた
古き良き感触のメタルサウンドであるが、メロディのフックがよりキャッチーになったという印象だ。
ツインリードの叙情メロディとともに疾走するところは、JUDAS PRIESTがジャーマンメタル化したというような感触で、
重すぎず軽過ぎずというサウンドのバランスも絶妙だ。ヴォーカルの表現力も以前よりも上がっていて、
単なるオールドなメタルという以上にメロディックで、普遍的な欧州HR/HMの味わいが楽しめる。
メロディック度・・8 正統派度・・8 古き良き度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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SINBREED 「Shadows」
ドイツのメロディック・パワーメタル、シンブリードの2014年作
2010年にデビュー、本作は2作目で、BLIND GUARDIANのマーカス・ジーペンが参加している。
メタリックなツインギターに、Seventh Avenueのハービー・ランガンスのパワフルなヴォーカルを乗せて疾走する、
古き良きジャーマンメタルを継承した正統派のメロパワスタイル。現ブラガーのフレデリック・イームクの安定したドラムも含めて、
適度な硬質感とヘヴィネスも含ませつつ、ときにキャッチーなメロディも覗かせる、そのバランスもなかなかよろしい。
個人的には、かつてのセブンス・アヴェニューのようなクサメロな疾走ナンバーが気に入ったのだが、
全体的には音圧がやや一本調子で、硬質なドラムやギターリフなどにもう少しメリハリがあればというところ。
ドラマティック度・・7 疾走度・・8 正統派ジャーマン度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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REXOR 「Powered Heart」
ブラジルのメタルバンド、レクソールの2014年作
エピックメタル風のジャケに惹かれるが、実際はオールドなギターリフにダーティなヴォーカルを乗せて疾走する、
しごく正統派のメロパワサウンド。演奏にしろメロディのフックにしろ、突き抜けきらないところは、いかにも80年代の
B級メタルのテイストを感じさせ、マイナーなドグサレメタルマニアにはある意味たまらないかもしれない。
とにかく一本調子なギターにはセンスも感じないし、ガナり立てるヴォーカルにも魅力は感じない。
オールドなメタルをやっているという以外に、なにか個性があればいいのだが。いやだからドグサレなのか。
ドラマティック度・・6 正統派度・・8 楽曲・・6 総合・・6
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DOOMSHINE 「THE PIPER AT THE GATESOF DOOM」
ドイツのドゥームメタル、ドゥームシャインの2010年作
2004年にデビュー、本作は2作目で、ファンタジックなジャケのイメージにそそられるが、
サウンドの方は重厚なツインギターにパワフル過ぎなヴォーカルを乗せ、ほどよい叙情性を含んだ、
まさに正統派のエピック・ドゥームメタル。ときにメロディックなフレーズを聴かせるギターも魅力的で、
かつてのBLACK SABBATHをルーツに、ウェットな感触を加えたヨーロピアンな作風は、
CANDLEMASSなどが好きな方にも薦められる。全72分というエピックドゥームの力作です。
ドラマティック度・・8 ドゥーム度・・8 重厚度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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KING GOAT 「DEBT OF AEONS」
イタリアのドゥームメタル、キング・ゴートの2018年作
2016年にデビューし、本作が2作目となる。ツインギターのリフに朗々としたヴォーカルを乗せ、
エピックドゥーム的でもあるウェットでミステリアスな空気を描く、どっしりとした聴き心地のサウンド。
随所にメロディックなギターフレーズも覗かせつつ、ある意味イタリアらしいカルトな妖しさで
濃密なドゥームメタルを描いてゆく。楽曲は7〜10分前後で、基本はゆったりとしたテンポながら、
メタルとして遅すぎない程度のノリがあるので、わりと初心者にも聴きやすいだろう。
これといった目新しさはないが、オールドな正統派エピック・ドゥームが味わえる1枚。
ドラマティック度・・7 ドゥーム度・・8 重厚度・・8 総合・・7.5
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MAIDAVALE 「MADNESS IS TOO PURE」
スウェーデンのガールズ・サイケロック、メイダヴェールの2018年作
2016年にデビュー、本作は2作目となる。女性4人組のバンドで、アナログ感たっぷりのギターに、
ハスキーな女性ヴォーカルで聴かせる、ヴィンテージなサイケハードを聴かせる。
いくぶんヨレ気味のギターにこもり気味の音質が、妖しげな浮遊感をかもしだし、
サイケな魔女系ロックとしても楽しめる。楽曲自体にこれといった新鮮味はないものの、
70年代的なオールドなロック感と、北欧サイケの怪しさが同居した好作品だ。
メロディック度・・8 ヴィンテージ度・・9 女性Vo度・・7 総合・・7.5
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The Sword 「High Country」
アメリカのサイケ・ドゥームロック、ソードの2015年作
2006年にデビュー、初期のBlack Sabbathルーツのドゥームスタイルから、5作目となる本作は、
従来のヴィンテージロック感触に、よりストーナーとサイケな要素を強めたという聴き心地。
ヘヴィ過ぎないギターリフに、パワフル過ぎないヴォーカル、アナログ感ある音質も含めて、
肩の力の抜けたほどよいユルさが耳心地よい。一方では、モダンなビートによる小曲もあったりと、
一筋縄ではいかないセンスも覗かせる。曲は2〜4分前後とシンプルな分、濃密さの点では少し物足りなさも。
ドラマティック度・・7 ストーナー度・・7 ヴィンテージ度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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GENTLEMANS PISTOLS
イギリスのハードロック、ジェントルマンズ・ピストルズの2007年作
先に2作目を聴いていたが、ようやくデビュー作をゲット。本作の時点ではまだ4人編成で、
ブルージーなギターとヴォーカルを乗せ、アナログ感たっぷりの70年代風のハードロックを聴かせる。
サウンド的には次作ほどの完成度はまだないが、荒削りの演奏も含めてまさにヴィンテージ。
一発録りのような生々しいギター、ドラムの音ともに、ノリのよいオールドロックが楽しめる。
楽曲は2〜3分前後とシンプルで、全30分という短さもいっそ潔い。70's英国ロックのファンはぜひ。
ドラマティック度・・7 70'sロック度・・9 ブルーズ度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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7/5
梅雨にはブラックメタル(183)


ABIGOR 「LEYTMOTIF LUZIFER」
オーストリアのブラックメタル、アビゴルの2014年作
1994年にデビューのベテランで、本作はおそらく9作目あたり。いかにもサタニックなジャケもよい感じだが、
サウンドの方も、のっけから暴虐にブラスト疾走しつつ、リズムチェンジを含む知的な構築力で、
迫力たっぷりのブラックメタル聴かせる、ギターのフレーズはときに流麗でメロディックで、
プログレッシブといってよい展開力とともに、禍々しくもどこか優雅な空気感に包まれる。
激しさだけではないスローパートでの不穏な気配も含めて、ベテランらしい荘厳な世界観を描く
音の説得力はさすが。ラストは11分の大曲で、怪しくアヴァンギャルドなサウンドを繰り広げる。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・8 荘厳度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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BEHEMOTH 「I LOVED YOU AT YOUR DARKEST」
ポーランドのブラックメタル、ベヒーモスの2018年作
1995年デビューのベテラン。11作目となる本作は、子供のチャントによる妖しげなイントロから始まり、
激烈なドラムにツインギターのリフを乗せ、ダミ声ヴォーカルとともに暴虐にたたみかける、
迫力たっぷりのブラックメタルを展開。オーケストラルなアレンジを加えた荘厳なスケール感に、
ときにアコースティックパートを挿入するなど、激しさの中にもドラマティックな展開力も覗かせる。
また今作では、ミドルテンポに近いわりと聴きやすいナンバーもあったり、メロディックなギターパートなど、
アルバムとしてのメリハリある構成に、クリアな音質も手伝って、初心者にも楽しめるような作風である。
もちろんブラックメタルとしての邪悪さ、禍々しさはしっかりと感じられる、非常に完成度の高い傑作である。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・8 荘厳度・・9 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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ALGHAZANTH 「Eight Coffin Nails」
フィンランドのブラックメタル、アルガザンスの2018年作
1999年にデビュー、本作は5年ぶりの8作目となる。メロディアスなツインギターにダミ声ヴォーカルを乗せ、
メランコリックな叙情に包まれた、北欧らしいメロディックブラックを聴かせる。激しい疾走パートもありつつ、
美しいシンセアレンジや泣きのギターフレーズがサウンドを彩り、物悲しい叙情美に溢れたサウンドに浸れる。
トレモロのギターにシンセが重なると、シンフォニックな音の厚みと、寒々しい哀愁のメロディにウットリとなれる。
ブラストビートを含むブラックメタルとしての激しさもしっかりとありつつ、緩急あるリズムチェンジで構築する、
フックある楽曲センスもさすがキャリアのあるバンドらしい。ともかく、泣きメロまくりの北欧メロブラ傑作!
メロディック度・・8 暴虐度・・7 泣きの叙情度・・9 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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ACHERONTAS 「Faustian Ethos」
ギリシャのブラックメタル、アケロンタスの2018年作
2007年にデビュー、本作はおそらく8作目で、のっけからトレモロのギターリフを乗せて激しくブラスト疾走。
迫力ある低音ダミ声ヴォーカルとともに荘厳な邪悪さに包まれつつ、メロディックなギターフレーズを含む、
叙情的な展開力もあって、メロディック・ブラックとしても楽しめるサウンドだ。朗々とした語りのようなVoは、
ミスティックな神秘性をかもしだし、初期EMPERORなどにも通じるダークなドラマ性を感じさせ、
スローパートを含んだ緩急ある構築力なども、キャリアのあるバンドらしい堂々たる説得力で聴かせる。
楽曲は5〜7分前後で、ブラックメタルとして長めなのだが、ウェットなメロディのフックで激しくとも心地よく楽しめる。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・8 ダークな叙情度・・8 総合・・8
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Dark Mirror Ov Tragedy 「The Lord Ov Shadows」
韓国のシンフォニック・ブラックメタル、ダーク・ミラー・オヴ・トラジェディーの2018年作
2004年にデビュー、本作は4作目。美しいシンセによるクラシカルなイントロで幕を開け、
オーケストラルなアレンジにピアノの旋律、メロディックなギターとダミ声ヴォーカルを乗せた、
壮麗なシンフォニック・ブラックメタルを聴かせる。激しくブラスト疾走するパートでもヘヴィさはさほどなく、
スローパートで鳴り響くヴァイオリンや女性ヴォーカルなども含めて、優雅で耽美な世界観を描き出す。
そういう点では、むしろゴシックメタルのリスナー向けともいえるだろう。13分の大曲も緩急ある展開とともに、
クラシカルな美意識に包まれ、ラストは20分の大曲で、泣きのヴァイオリンを乗せて優美に疾走する。
シンフォニック度・・8 暴虐度・・6 優雅度・・8 総合・・8
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A FOREST OF STARS「Grave Mounds and Grave Mistakes」
イギリスのプログレッシブ・ブラックメタル、フォレスト・オブ・スターズの2018年作
2008年にデビュー、女性ヴァイオリン&フルート奏者を含む7人編成で、本作は5作目となる。
アコースティックギターとフルートのやわらかなイントロから、重厚なギターリフにガナりたてるヴォーカルを乗せて
激しく疾走する、シアトリカルなブラックメタルサウンドが広がってゆく。ヴァイオリンが鳴り響く優雅な叙情性と
サイケデリックなアヴァンギャルド性も覗かせつつ、演劇的なヴォーカルとともに濃密な聴き心地が味わえる。
女性ヴォーカルによるしっとりとした叙情ナンバーもアクセントになっていて、10分前後の大曲も多いのだが、
緩急ある流れで飽きずに聴き入れる。声の裏返るヴォーカルが好みを分けるところだが、これぞアヴァン・ブラックの力作だ。
ドラマティック度・・8 シアトリカル度・・8 壮大度・・8 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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Imperious 「Tales of Woe - The Journey of Odysseus, Part I: From Ilion to Hades」
ドイツのブラックメタル、インペリオスの2017年作
ホメロスの叙事詩「オデュッセイア」をコンセプトにした作品で、シンセをバックに語りの入ったイントロから、
激しいドラムにノイジーなギターと低音ダミ声ヴォーカルを乗せた、重厚なエピック・ブラックメタルを展開。
シンフォニックなアレンジや、メロディックなギターフレーズによる甘すぎない叙情性とともに、
ダークな迫力に包まれたサウンドを描き出す。14分、12分という大曲も、どっしりとした聴き心地で
スローテンポでのドゥーミィな味わいも含めて、暴虐性よりも重厚なドラマ性に包まれた作品に仕上がっている。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・7 重厚度・・8 総合・・8
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Imperious 「Tales of Woe - The Journey of Odysseus, Part II: From Hades to Ithaca」
ドイツのブラックメタル、インペリオスの2017年作
ホメロスの叙事詩「オデュッセイア」をコンセプトにした作品の続編で、メロディックなギターを乗せた
叙情的な味わいで始まり、オデュッセウスの旅の途中を思わせる物悲しい世界観を描きつつ、
女性ヴォーカルを加えた優美なナンバーから、10分を超える重厚なぺイガンブラック的な大曲へと、
ドラマティックな流れで展開する。前作同様、激しい疾走感はさほどないが、ときにシンセやピアノを加えた、
メランコリックな叙情性や、神話の世界を描く荘厳な空気感は、エピックなメタル好きならば心地よく楽しめるだろう。
アルバム後半の盛り上げ方は、さすがコンセプト作品の大団円というところ。前編から2枚通して聴きたい。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・7 重厚度・・8 総合・・8
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SADIST 「SPELLBOUND」
イタリアのプログレッシブ・デスメタル、サディストの2018年作
1994年にデビュー、8作目の本作は、ヒッチコックのサスペンス映画をモチーフにした作品で、
ピアノとヴァイオリンによる物悲しいイントロから、ヘヴィなギターに低音デスヴォイスを乗せた、
オールドなデスメタル風味に、シンセによるアレンジを加えた、ミステリアスなサウンドを聴かせる。
疾走する部分は、90年代初頭のスラッシュメタル風であったり、一方ではインダストリアルな感触や
シンセによるホラーサントラ風味などが合わさって、いかにもイタリアらしい混沌とした味わいが楽しめる。
楽曲は3〜4分前後とわりとシンプルながら、随所にメロディックなギターやピアノを含む優雅なアレンジなど、
このバンドらしい異色のセンスは随所に感じられる。古き良きデスメタルをホラームービー化したような力作。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・7 ホラーデス度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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ORKAN 「ELEMENT」
ノルウェーのブラックメタル、オルカンの2018年作
TAAKEのライブに参加していたギタリストを中心にしたバンドで、ノイジーなトレモロのギターに
迫力あるダミ声ヴォーカルを乗せて、激しく疾走する、オールドなノルウェイジャン・ブラックメタル。
ジャケのイメージのような寒々しい荒涼感とともに、甘すぎない叙情性も魅力的で、
スローテンポを含むリズムチェンジて、6〜9分という大曲も緩急ある構築力で聴かせる。
激しいブラスト疾走でも涼やかな耳心地で、これぞ北欧のブラックメタルというべき傑作。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・8 北欧ブラック度・・9 総合・・8
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Sear Bliss 「Eternal Recurrence」
ハンガリーのブラックメタル、シア・ブリスの2012年作
1996年にデビュー、本作で7作目となる。不穏なギターリフにダミ声ヴォーカルを乗せ、
うっすらとしたシンセアレンジに、トランペット、トロンボーン、チューバなどが加わる、
ミステリアスなサウンドを描き出す。スローテンポを主体にした楽曲は、暴虐性よりも
ダークな浮遊感に包まれていて、そこにブラスが加わると奇妙で優雅な味わいになる。
スペイシーなスケール感のサイケブラック的にも楽しめつつ、激しく疾走するパートでは、
オールドなデスメタル的な味わいもあり、つかみどころがない面白さが個性的ともいえる。
全36分という短さも含めて、全体的には濃密さにおいて物足りなさもあるのが惜しい。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・6 ミステリアス度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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Sear Bliss 「Letters from the Edge」
ハンガリーのブラックメタル、シア・ブリスの2018年作
6年ぶりとなる8作目で、アコースティカルなイントロから、低音ダミ声ヴォーカルを乗せて激しく疾走、
リズムチェンジを含む展開力に、トロンボーンの音色を加えた、怪しげなブラックメタルを聴かせる。
随所にメロディックなギターフレーズやシンセアンレジを加えた叙情性とともに、重厚な激しさの中にも
優雅なセンスを覗かせ、スローテンポのナンバーは、どっしりとした神秘的な味わいで楽しめる。
10分の大曲では、ギターに絡むトロンボーンがチェンバーロック的な雰囲気をかもしだし、
激しい疾走パートでたたみかける、荘厳なブラス入りブラックメタルサウンドが展開される。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・7 ミステリアス度・・8 総合・・8
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6/22
コパアメリカになでしこも応援してます!(171)


Magnum 「Live At The Symphony Hall」
イギリスのドラマティックハード、マグナムのライブ作品。2019年作
1978年デビューという大ベテラン。本作は、2018年、イギリス、バーミンガムでのステージを2CDに収録。
素晴らしい傑作となった2018年作「Lost on the Road to Eternity」や、前作「Sacred Blood Divine Lies」など
近年のアルバムからのナンバーに加え、「Vigilante」や「The Spirit」 、「How Far Jerusalem」をはじめ
80年代のオールドナンバーも披露。枯れた味わいのボブ・カトレイの歌声に、トニー・クラーキンの哀愁のギター、
ときにシンフォニックでもある美しいシンセを重ねて、英国らしいウェットな叙情を帯びたプログレハードが楽しめる。
アルバムにも参加した、トビアス・サメットがここでもゲスト参加。2CDで全98分の大人の哀愁&叙情祭りです。
ライブ演奏・・8 ドラマティックハー度・・9 哀愁と叙情度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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ElvenStorm「THE CONJURING」
フランスのメロディックメタル、エルヴェンストームの2018年作
2011年にデビューし、本作が3作目となる。正統派のギターリフにハスキーな女性ヴォーカルを乗せて疾走する、
古き良きジャーマンメタルスタイルのメロディック・パワーメタルを聴かせる。パワフルに疾走しつつも、
ほどよいクサメロ感とともに、いくぶんマイナーな雰囲気もあって、紅一点、Laura嬢の歌声も力強過ぎず、
女性としての艶っぽさを残しているのもなかなか魅力的だ。楽曲も4〜5前後と長すぎず、わりとシンプルでありながら
エピックな味わいとウェットな空気感を描いていて、ときにRUNNING WILDを思わせるギターリフを乗せて
爽快に疾走するところもたまらない。もちろん、Crystal ViperVANDROYAなどが好きな方も必聴です。
メロディック度・・8 疾走度・・8 正統派度・・8 総合・・8
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Ereb Altor「Ulfven」
スウェーデンのヴァイキング・ブラックメタル、エレブ・アルターの2017年作
2008年にデビューし、本作がすでに6作目となる。女性声の語りによるイントロから始まり、
重厚なギターリフを乗せ、シンセによる土着的なメロディに朗々としたヴォーカルとともに、
迫力あるペイガンメタルを展開。適度なメロディアス性と甘すぎない叙情性を含みながら、
どっしりとした硬派な味わいは、MOONSORROWや、THYRFINGなどにも通じるだろう。
ダミ声ヴォーカルにトレモロのギターを乗せて激しく疾走する、ブラックメタル的な感触もありつつ、
北欧の寒々しい空気とペイガンな世界観にじっくりと浸れる。ラストは10分を超える大曲で、
キャリアのあるバンドらしい荘厳でシリアスなサウンドが味わえる、見事な力作だ。
ドラマティック度・・8 ヴァイキング度・・8 重厚度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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SUIDAKRA 「CIMBRIC YARNS」
ドイツのヴァイキングメタル、スイダクラの2018年作
1997年にデビュー、本作は13作目となるベテランバンド。本作はメタル色のないアルバムで、
アコースティックギターにオーケストラを重ねた、ヴァイオリンが鳴り響く優雅な叙情性に
美しい女性ヴォーカルを乗せて、繊細でシンフォニックなサウンドが広がってゆく。
アコースティックギターにマイルドな男性ヴォーカル、やわらかなフルートの音色とともに、
牧歌的な空気感に包まれる。メタル要素がほぼないので、ヴァイキングメタルとしては物足りなさもあるが、
シネマティックなスケール感を描き出す作風には、バンドとしての懐の深さを感じさせる。
ドラマティック度・・8 メタル度・・1 優美度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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MOTOROWL 「ATLAS」
ドイツのドゥームメタル、モトロウルの2018年作
シンセを含む5人編成で、前作はサイケ色もある古き良きストーナー風の力作であったが、
今作もアナログ感たっぷりのギターに、オルガンを含むシンセと、マイルドなヴォーカルで、
ヴィンテージなドゥームロックを聴かせる。今作ではムーグシンセによるスペイシーな雰囲気とともに、
プログレ寄りの部分も多くなっていて、ドゥーミィなサイケハード的にも楽しめるだろう。
ときに叙情的なギターのフレーズも覗かせて、全体的にへヴィすぎない味わいとともに、
ラストの9分の大曲では、オルガン鳴り響く妖しいエピック・ドゥームを聴かせる。これは力作ですな。
ドラマティック度・・8 ドゥーム度・・7 ヴィンテージ度・・8 総合・・8
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LEONOV 「WAKE」
ノルウェーのドゥームメタル、レオノヴの2018年作
ヘヴィなギターリフにうっすらとしたシンセを重ね、浮遊感ある女性ヴォーカルを乗せた、
神秘的な世界観のサウンドを聴かせる。ブラックメタル的な闇の空気を感じさせつつ、
ドローン、ドゥームの重厚さに、プリミティブな妖しさをまとった聴き心地はなかなか個性的。
いわばドゥームメタルの重さと、耽美な女性声で、ブラッケンな世界観を描くという作風であるが、
物悲しい叙情美という点では、初期のThe 3rd And The Mortalなどが好きな方にも楽しめるだろう。
10分、15分という大曲も、ゆったりとしたメランコリックな気配に包まれて、倦怠の女性声ドゥームが味わえる。
ドラマティック度・・7 重厚度・・8 倦怠の浮遊感・・9 総合・・8
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VALLENDUSK 「FORTRESS OF PRIMAL GRACE」
インドネシアのペイガン・ブラックメタル、ヴァレンダスクの2018年作
オルガンが鳴り響き、メロディックなギターフレーズとダミ声ヴォーカルを乗せてブラスト疾走する、
激しくも叙情的な味わいのブラックメタルサウンド。リズムチェンジを含む緩急ある展開に、
トレモロのリフや土着的なメロディを奏でるギターのセンスもなかなかのもので、
楽曲は7〜10分前後と長めながら、魅力的なツインギターのフレーズが耳心地よく、
ポストブラック的でもある優雅な繊細さも覗かせる。全体的に暴虐性は控えめなので、
ブラックメタル初心者や叙情性重視のメロディ派リスナーにもお薦めの逸品です。
メロディック度・・8 暴虐度・・7 優雅な叙情度・・9 総合・・8
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WAYFARER 「WORLD'S BLOOD」
アメリカのブラックメタル、ウェイファラーの2018年作
2014年にデビューし、本作で3作目。前作はスラッジ・ブラック的な重厚な作風だったが、
本作はアメリカ西部をテーマにした作品のようで、アナログ感あるプリミティブな空気とともに、
生々しいギターリフにデスヴォイスを乗せてブラスト疾走する、土着的なブラックメタルが炸裂。
10分を超える大曲3曲を中心に、スローパートやリズムチェンジを含む緩急ある構築力で、
甘すぎない叙情パートも含ませながら、ダークでミステリアスな世界観を描き出す。
荒涼としたサウンドは愛想のない硬派な聴き心地ながら、じっくり浸れる本格派の力作である。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・7 ミステリアス度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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HORRIFIED 「Allure of the Fallen」
アメリカのエピック・ブラックメタル、ホリフィードの2017年作
ツインギターによるメロディックなイントロから、トレモロのリフと低音のダミ声ヴォーカルを乗せて
激しくブラスト疾走するサウンドで、緩急ある展開とともに聴かせる、メロデス的な感触もある。
ツインギターによる叙情性は、かつての北欧メロデスを思わせ、それをエピックな雰囲気とともに
ブラックメタル風味に仕立てたという聴き心地だ。ギターは随所にオールドなメタル感触を覗かせるなど、
わりと聴きやすさもある。一方では、ブラックメタル的なダークなミステリアス性が少し足りない気もするが、
ラストの9分の大曲では、ポストブラック的な優美な叙情性に包まれる。なかなかの力作デス。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・7 幻想度・・8 総合・・7.5
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Winterfylleth 「The Ghost of Heritage」
イギリスのブラックメタル、ウインターフィレスの2008/2017年作
デビューアルバムのジャケを変えた再発盤。ザリザリとしたギターに絶叫するヴォーカルを乗せ、
激しくブラスト疾走するオールドなブラックメタルに、アコースティックギターなどを用いながら、
Wolves in the Throne Roomなどに通じる、神秘的な空気を描き出すスタイルは、
本作の時点ですでに確立している。2作目以降に比べると叙情性は薄めで、荒削りのサウンドが
迫力あるプリミティブな味わいになっていて、ブラックメタルとしての禍々しさも十分に残している。
いわばば自然崇拝のネイチャーブラックメタルとオールドな北欧系のブラックメタルの中間的な力作デス。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・8 神秘的度・・8 総合・・8  過去作のレビューはこちら
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HAIL SPIRIT NOIR 「MAYHEM IN BLUE」
ギリシャのサイケ・ブラックメタル、ヘイル・スピリット・ノアールの2016年作
本作は3作目で、今作もジャケからしてすでに怪しいが、オルガン鳴り響く70年代ルーツの
サイケなハードロック色に、ダミ声ヴォーカルを乗せ、随所に激しいブラスト疾走も覗かせる。
一方では、メタル感触のないパートでは、ほとんどサイケプログレといってもよい聴き心地で、
10分を超える大曲では、ジェントルなノーマル声を乗せてゆったりとした叙情に包まれながら、
激しいブラストを含む緩急ある展開力で、プログレッシブなアヴァン・ブラックメタルを描いてゆく。
単なるブラックメタルに飽き足らない方、プログレでサイケな浮遊感が楽しめる方はぜひ。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・5 サイケでアヴァンギャル度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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PESTILENCE 「Reflections of the Mind」
オランダのデスメタルバンド、ペスティレンスのレア音源集。2016年作
1988年にデビュー、1993年の4th「Spheres」を最後に休止するも、2009年に復活。本作は1992年のデモ、
1991〜1993年のリハーサル音源を収録。テクニカルデスへと移行してゆく、デモは4作目前の音源で、
ツインギターのリフにダミ声ヴォーカルを乗せ、リズムチェンジを含む緩急ある展開力で聴かせる、
DEATHにも通じるサウンドである。リハーサル音源の方は、さすがに音質がラウドであるが、
スラッシーな疾走感と随所にメロディックな味わいを含んだギターとともに、生々しい当時のサウンドが味わえる。
テクニカルデス度・・8 貴重音源度・・8 音質・・7 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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6/14
がんばれ、なでしこジャパン!(159)


Tarja 「ACT II」
元Nightwishの女性シンガー、ターヤ・トゥルネンのライブ作品。2018年作
2012年の「ACT I」に続くライブ作品で、2016年のイタリア公演のステージを2CDに収録。
2016年作「SHADOW SELF」からのナンバーを中心に、オペラティックな彼女の歌声を中心に、
シンフォニックなシンセにほどよくヘヴィなギターで、壮麗なハードロックサウンドを繰り広げる。
どこか演劇的な歌い方も含めて、ミュージカル的な世界観というのは、彼女の目指すところなのだろう。
Disc1のラストでは、Nightwishのメドレーも披露。全体的にはメタル的な高揚感はさほどないが、
その分、優雅なオペラティック・ヘヴィロックというべき味わいで、ターヤの歌声が楽しめる。
ライブ演奏・・8 メタル度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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TWO OF A KIND 「RISE」
オランダのメロディアスハードロック、トゥー・オブ・ア・カインドの2018年作
二人の女性Voをフロントに TERRA NOVAのメンバー3人がバックアップするユニットで、
2007年以来となる11年ぶりの2作目。きらびやかなシンセアレンジに適度にハードなギター、
そして、ハスキーな女性ヴォーカルの歌声で、キャッチーなメロディアスハードを聴かせる。
本作では、オールドなHR感触が強まっていて、オルガンが鳴り響く三連リズムのナンバーなど、
80年代ルーツの雰囲気も漂わせつつ、かつてのテラ・ノヴァのような爽快なナンバーもよいですな。
DANTE FOXなどが好きな方にもお薦めの、女性声メロハーの好作品です。
メロディック度・・8 古き良きHR度・・8 女性Vo度・・7 総合・・8
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BRIDES OF LUCIFER
ベルギーのメタル&コーラスユニット、ブライズ・オブ・ルシファーの2018年作
スティーヴン&スティン・コラクニー兄弟を中心に結成、ツインギターにシンセを含むバックバンドに、
13人の女性合唱隊による美しい歌声で、Twisted Sister、PANTERA、MANOWAR、System of A Down、
JUDAS PRIEST、IRON MAIDEN、SEPULTURA、BEHEMOTH、DIO、SLAYER、MACHINE HEADといった、
名だたるメタルナンバーを歌い上げる。女性のコーラス隊とヘヴィなメタルサウンドの融合という点では、
THERIONを思わせるような壮麗さとスケール感で、優雅なる女性コーラスのメタルソングが楽しめる。
前身のユニットである、スカラ&コラクニー・ブラザーズによるオリジナル曲も収録。今後の展開が楽しみです。
シンフォニック度・・8 壮麗度・・9 女性コーラス度・・9 総合・・8 
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Alvenrad 「Heer」
オランダのフォークメタル、アルヴェンラッドの2017年作
艶やかなヴァイオリンが鳴り響くイントロから、オルガンが鳴り響き、メタリックなギターに、
かすれた味わいのヴォーカルを乗せて、70年代風味のヴィンテージなハードロックに
フォークメタルが融合したようなサウンドを描く。ブルージーなフレーズを奏でるギターに、
やわらかなオルガン音色がよくマッチしていて、この牧歌的な土着性は、なんというか、
Jethro Tullがメタルになったような雰囲気もあるという。曲によっては、まるでビートルズのような
キャッチーな歌メロも出てきて、70年代オールドロック感がますます強まる。この極端な深化はけっこう楽しい。
ドラマティック度・・8 フォーキー度・・7 ヴィンテージロック度・・8 総合・・8
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KALEVALA 「Blizzard (Метель)」
ロシアのフォークメタル、カレヴァラの2017年作
2008年にデビューし、すでにロシアを代表するフォークメタルのバンドのひとつとなった。
本作は5作目で、アコーディオンの音色にヘヴィなギターを重ね、母国語の女性ヴォーカルの歌声で聴かせる、
キャッチーなノリのフォークメタルサウンドはこれまで通り。マンドリンやホイッスルなどの牧歌的な音色を乗せ、
ほどよく激しい疾走感も覗かせながら、ファンタジックでメディーヴァルな世界観を描き出す。
楽曲は3〜4分前後が主体で、わりとシンプルながら、いくぶんハスキーな女性声の魅力とともに、
キャリアのあるバンドらしい音の説得力で、幻想的なフォークメタルが楽しめる。充実の力作である。
メロディック度・・8 フォーキー度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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KALEVALA 「Path of Gamayun」
ロシアのフォークメタル、カレヴァラのライブアルバム。2018年作
デビュー10周年記念となる、2017年のライブを収録した2CD+DVD。
シンフォニックで壮麗なイントロから、ヘヴィなギターとアコーディオンの音色を乗せ、
紅一点、Ksenia嬢の艶めいたなよやかな歌声で、優雅なフォークメタルサウンドを展開。
わりと激しめのドラムも含めて、勢いあるノリの良さと、キャッチーな牧歌性がバランスよく同居し、
ラウドで生々しい音質も臨場感がある。ときにギターよりも前に出るアコーディオンや、
デス声がいっさい入らないこともあって、ロシアン・フォークメタル初心者にも薦められる。
2CDに全28曲、120分のボリュームでお腹いっぱい。DVDの映像もファンは必見だ。
ライブ演奏度・・8 フォーキー度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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Butterfly Temple 「Eternity」
ロシアのペイガン・フォークメタル、バタフライ・テンプルの2015年作
1999年デビューと、ロシアン・フォークメタルの中でも最もキャリアのあるバンド。本作は9作目で、
シンフォニックなシンセアレンジにヘヴィなギターを重ね、迫力あるダミ声ヴォーカルで聴かせる、
重厚なペイガンメタルサウンド。土着的なシンセのメロディに、朗々としたノーマルヴォーカルによる、
エピックメタル的な雰囲気もありつつ、デス声による武骨な激しさとのコントラストになっていて、
ほどよい辺境臭さとともにミステリアスなスケール感に包まれる。ゲストによる女性ヴォーカルも加わった
壮麗なナンバーもなかなか魅力的。DVDにはバンド20年の歴史を振り返る、インタビューやPV、ライブ映像を収録。
ドラマティック度・・8 フォーキー度・・7 重厚度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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SOJOURNER 「The Shadowed Road」
アメリカのペイガンブラックメタル、ソジョーナーの2018年作
ファンタジックなジャケもいい感じだが、サウンドの方もメロディックなツインギターを乗せて疾走する、
ウェットな叙情性に包まれていて、うっすらとしたシンセアレンジやときにホイッスルが鳴り響き、
ダミ声ヴォーカルに美しい女性ヴォーカルも加わって、激しくも優美な幻想性に包まれる。
トレモロのギターリフで疾走するブラックメタル要素に、フォークメタル的な土着フレーズも覗かせて
全体的にはツインギターによる優雅な叙情性に包まれる。ちなみにギターの片割れは女性で、
ヴォーカル&ホイッスルも担当。激しさは控えめで幻想的な美しさに浸れる逸品です。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・6 幻想の叙情度・・9 総合・・8.5
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HELRUNAR 「Vanitas Vanitatum」
ドイツのブラックメタル、ヘルラナーの2018年作
2003年にデビュー、本作は6作目となる。G、B、DrをこなすSebastian Korkemeierとヴォーカルの二人編成となり、
サウンドの方はさらにプリミティブなブラックメタルに回帰している。ノイジーなトレモロのギターに
ダミ声ヴォーカルを乗せてブラスト疾走する、オールドスタイルの寒々しいブラックメタルを聴かせつつ、
ペイガンメタル的でもある土着的な叙情も感じさせる。キャリアのあるバンドらしい荘厳な迫力が
サウンドの強固な説得力となっていて、暴虐な疾走パートからスローテンポを含むリズムチェンジなど、
緩急あるドラマティックな展開力もさすが。ミステリアスな本格派ペイガンブラックの傑作です。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・8 叙情度・・7 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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ETERNAL VALLEY 「THE FALLING LIGHT」
アメリカのブラックメタル、エターナル・ヴァレイの2017年作
Jason Yorke氏による個人ユニットで、オーケストラルなアレンジに美しいピアノの旋律と、
トレモロのギターとダミ声を乗せて、激しくブラスト疾走するシンフォニックなブラックメタル。
ドラムは打ち込みなので激しく疾走しても暴虐さはさほど感じず、世界観としてはむしろ、
アンビエントブラック寄りの美しさとともに、ウェットで物悲しい叙情性に包まれていて、
曲によっては、Alcestなどポストブラック好きの方にも楽しめるだろう。一方では、BURZUMのような
地下臭ただようプリミティブ・ブラックの雰囲気もあって、ミステリアスな聴き心地がなかなか良いですね。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・7 叙情度・・8 総合・・7.5
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Winterfylleth 「The Mercian Sphere」
イギリスのブラックメタル、ウインターフィレスの2010年作
2008年にデビューして2作目となる。ツインギターにダミ声ヴォーカルを乗せて激しく疾走、
オールドなメロディック・ブラックメタルの感触に、神秘的な土着性を含んだ世界観で、
暗黒性よりもネイチャーなスケール感を描き出すというサウンド。トレモロのギターフレーズも耳心地よく
アコースティックギターに艶やかなヴァイオリンが鳴り響く、優雅な小曲も織り込みつつ、
10分を超える大曲も緩急ある展開とともに、スケール感のあるネイチャーブラックを描いてゆく。
さほど邪悪な雰囲気がないので、ブラックメタルが苦手という方でも楽しめるだろう力作だ。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・7 ネイチャーブラック度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Sorcerer 「The Crowning Of The Fire King」
スウェーデンのドゥームメタル、ソーサラーの2017年作
90年代から活動するバンドで、2015年に復活してからの2作目。どっしりとしたツインギターに、
LION'S SHAREのAnders Engbergの朗々とした歌声を乗せた、正統派エピック・ドゥームメタルは健在だ。
オールドな味わいのドゥームサウンドであるが、今作ではよりメロディックなギターフレーズを盛り込んで、
同郷の先輩である、CANDLEMASSにも通じるウェットな叙情性とドラマティックな空気感に包まれている。
うっすらとしたシンセアレンジとツインギターが重なり、力量あるヴォーカルがサウンドに重厚な説得力をもたらしていて、
より多くのメタルリスナーが楽しめる普遍性をまとっている。8分、9分という長めの楽曲も、緩急ある構築力で描き出す。
ドラマティック度・・8 エピックドゥーム度・・9 重厚度・・8 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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BLITZKRIEG 「A TIME OF CHANGES」
イギリスのメタルバンド、ブリッツクリーグの2015年作
NWOBHMを代表するバンド、その1985年のデビュー作を、30周年記念でリレコーディングした作品。
シンフォニックなイントロから、ツインギターのリフに、SATANでも活躍するブライアン・ロスのヴォーカルを乗せ
パワフルなメタルサウンドが炸裂。いくぶんラウドな音質も、かつての80年代の雰囲気を残していて、
オールドなファンはニンマリだろう。初期のMETALLICAも影響を受けたであろう、独特のメロディとともに、
英国らしいウェットな湿り気とドラマティックな空気を描く、このバンドならではのメタルサウンドが楽しめる。
ドラマティック度・・7 オールドメタル度・・9 NWOBHM度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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6/7
梅雨入りはメタルで(146)


ACCEPT「SYMPHONIC TERROR」
ドイツのベテランメタルバンド、アクセプトのライブ作品。2018年作
2017年、ドイツのヴァッケン・オープン・エアでのオーケストラとの共演ライブをCD2枚に収録。
Disc1には、バンドのみによる第1部、ウルフ・ホフマンのソロバンド、ヘッドバンガーズ・シンフォニーによる第2部、
Disc2には、ACCEPTとオーケストラが共演した第3部を収録。2010年の復活後のアルバムからのナンバーを中心に、
80年代のオールドなナンバーも披露。どっしりとしたギターにマイク・トーニロの枯れた味わいのヴォーカルを乗せた、
パワフルな正統派メタルサウンドを聴かせる。オーケストラの加わった第2部では、クラシックのフレーズを盛り込みながら、
バンドの演奏とオーケストラが融合した、シンフォニックメタル的でもある壮麗なインストサウンドを展開。Disc2の第3部は、
まさしくACCEPTにオケが加わったという感じで、パワフルなメタル演奏と美麗なオーケストラが違和感なく融合している。
シンフォニック度・・8 ライブ演奏・・8 パワフル度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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AMBERIAN DAWN 「DARKNESS OF ETERNITY」
フィンランドのシンフォニックメタル、アンベリアン・ドーンの2017年作
2008年にデビュー、オリジナルアルバムとしては7作目。美麗なシンセアレンジとメロディックなギターを乗せ、
伸びやかな女性ヴォーカルの歌声で聴かせる、優雅なシンフォニックメタル・サウンドはこれまで通り。
楽曲は3〜4分前後とシンプルで、さらに今作は、これまで以上にキャッチーな感触を強めていて、
曲によってはポップといってもよいほどのメジャー感で、Nightwishあたりに通じるところもあるだろう。
もちろん、フィメール・シンフォニックメタルとしての優美な魅力はしっかり残していて、メタルとしての適度な激しさと
キャッチーなメロディを巧みに同居させたスタイリッシュな構築センスもさすが。バンドとしてひとつ前進した好作品である。
シンフォニック度・・8 キャッチー度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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DEAD OF NIGHT 「EVOLVING SCIENCE OF SELF」
イギリスのシンフォニックメタル、デッド・オブ・ナイトの2018年作
女性Voにシンセを含む5人編成で、自主制作を含めると4作目のアルバムになる。
きらびやかなシンセアレンジに適度にヘヴィなギター、美しい女性ヴォーカルの歌声で聴かせる、
キャッチーな味わいのシンフォニックメタル。オーケストラルな壮麗さにほどよくモダンなアレンジ、
伸びやかな女性声を乗せた爽快なメロディアス性はなかなか魅力的で、メンバー写真を見なければ、
うっとりと浸れる優美なサウンドである。このバンドならではの個性というのはまだ薄いものの、
ときにEDENBRIDGE思わせるような優雅なナンバーもあったりと、楽曲のクオリティも高いです。
シンフォニック度・・8 優雅で壮麗度・・9 女性Vo度・・8 総合・・8
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ELIMINATOR 「LAST HORIZON」
イギリスのメタルバンド、エリミネーターの2018年作
ツインギターによるオールドな味わいのリフとパワフルなヴォーカルを乗せて、
IRON MAIDENなど、80年代の香りを感じさせる古き良き正統派メタルサウンド。
楽曲はキャッチーなメロディのフックとウェットな哀愁を含んだ聴き心地で、
これという新鮮味はないものの、ほどよいB級臭さとともにメイデンライクに楽しめる。
White Wizzardあたりが好きな方ならニンマリのオールドメタルな好作品だろう。
ドラマティック度・・7 正統派度・・8 古き良き度・・9 総合・・7.5
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HEIR APPARENT「THE VIEW FROM BELOW」
アメリカのメロディックメタル、エア・アパレントの2018年作
1985年にデビュー、1989年の2作目「One Small Voice」は日本盤も出ていたのでご存知の方もいるはず。
本作は、じつに29年ぶりの復活作。オリジナルメンバーは、ギターのテリー・コールとベースのデレク・ピースのみだが、
サウンドの方は、かつてのQUEENSRYCHE路線をより重厚にスケールアップしたような聴き心地で、
パワフルなハイトーンヴォーカルを乗せた正統派エピックメタル的なドラマティックな味わいで楽しめる。
伸びやかなヴォーカルも魅力的で、叙情的なパラードでは、ジェイムス・ラブリエを思わせるような表現力も覗かせる。
ズライチ&クリグロ路線はやや薄まったが、古き良きメタル感触とともに、どっしりとした大人の味わいの強力作だ。
ドラマティック度・・8 重厚度・・8 正統派度・・8 総合・・8
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KALEDON 「CARNAGUS - EMPEROR OF THE DARKNESS」
イタリアのシンフォニックメタル、カレドンの2017年作
2002年にデビューしてから、マニア好みのクサメタル街道を走り続けてきたこのバンドだったが、
前作でついに傑作というべき作品を送り出した。続く本作は、シンフォニックなイントロで幕を開け、
ツインギターに壮麗なシンセアレンジとパワフルなヴォーカルを乗せた、エピックなメタルサウンドが広がる。
勇壮なコーラスなど、RHAPSODYばりの壮大さとキャッチーな歌メロを同居させたスタイルに、
いくぶんモダンなヘヴィネスも加わっていて、かつてのB級バンドのヘナチョコさは微塵もない。
随所にクサメロ系の匂いも残しつつ、重厚な説得力をまとったサウンドに浸れる。見事な力作ですどん。
ドラマティック・・8 重厚度・・8 エピック度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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SATAN 「CRUEL MAGIC」
ブリティッシュメタルバンド、セイタンの2018年作
80年代NWOBHM時代から活動するベテランバンド、2013年に復活してからの3作目となる。
今作も、オールドなツインギターに、ブライアン・ロスの味のあるヴォーカルを乗せ、
適度な疾走感とともに聴かせる、古き良き感触のパワーメタルサウンドが楽しめる。
1983年の傑作「Caught In The Act」を思わせる勢いのある疾走ナンバーからミドルテンポのナンバー、
ウェットな叙情を含んだスローパートまで、80年代英国の空気をそのまま蘇らせたような作風である。
オールドなファンはもちろん、NWOBHMを知らない若いリスナーまで、これぞセイタン!と薦められる強力作。
ドラマティック度・・8 古き良き度・・9 セイタン度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Van Canto 「Trust In Rust」
ドイツのアカペラメタル、ヴァン・カントの2018年作
2006年にデビュー、7作目となる本作も、ドラム以外はすべて声でこなす、「ダカダン」なアカペラメタルが炸裂。
わりと渋めのハードロック風ナンバーで始まりつつ、男女ヴォーカルによるオペラティックな味わいとともに、
メロスピ風味や、キャッチーなHRナンバーなど、わりと安定したズンズンダンダン愉快な声メタルが楽しめる。
HELLOWEEN「Ride The Sky」のカヴァーでは、カイ・ハンセンがゲスト参加。歌うのはサビくらいだが…。
AC/DC「Hells Bells」のカヴァーもなかなかハマっている。全体的にはすでに新鮮味はないので、何作か聴いている人には
ネタとしてのインパクトも弱いかもしれない。この路線での限界も感じさせる。今後の深化に期待したい。
ダカダン度・・8 ズンズン度・・8 新鮮度・・7 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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ALQUIMIA
スペインのメロディックメタル、アルキミアの2013年作
AVALANCHのギタリスト、Alberto Riondを中心に結成されたバンドで、シンフォニックで壮麗なイントロから、
ネオクラ風味を含んだギターにシンセを重ね、スペイン語の伸びやかなヴォーカルを乗せて疾走する、
かつてのAVALANCHを思わせる、メロディックメタルが炸裂。手数の多いドラムも含めて安定感のある演奏と、
力量のあるヴォーカルの表現力、スパニッシュな哀愁を感じさせる濃い目のメロディとともに、キャッチーでありながら
厚みのあるサウンドを描き出す。シンフォニックメタル的な優雅さと華麗なクサメロスピ感触が同居したという強力な作品。
輸入盤のボーナスには、AVALANCH時代のリメイク曲を収録で、最後までお腹いっぱい。濃密すぎる全76分ですわ。
メロディック度・・9 疾走度・・8 スパニッシュ度・・9 総合・・8
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SAUROM 「SUENOS」
スペインのフォーク・メロパワ、サウロムの2015年作
SAUROM LAMDERTH名義で2001年にデビュー、7作目となる本作はCD2枚組の大作で、
ケルティックなパイプにアコースティックギターとマンドリン、フルートの音色で牧歌的に始まり、
ハードなギターとスペイン語のマイルドなヴォーカルが加わって、叙情的なフォークメタルを展開。
アコーディオンの音色とともに疾走するキャッチーな陽気さと、スパニッシュな哀愁が同居していて、
ときに女性コーラスや美麗なシンセを加えた、キャリアのあるパンドらしい繊細なアレンジも見事。
楽曲自体は、3〜4分台とわりとシンプルで、ファンタジックな世界観を優雅なメロディアス性で描く力作だ。
ドラマティック度・・8 キャッチー度・・8 叙情度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Rough Silk 「Wheels of Time」
ドイツのメロディックメタル、ラフ・シルクの1999年作
90年代に隆盛を極めたジャーマンメタルシーンにおいて、優雅でプログレッシブな作風で個性的なサウンドを聴かせるこのバンド。
本作は、1993年のデビュー作〜1998年の5作目のアルバムからのベスト選曲に、未発曲や新曲を加えたCD2枚組。
ピアノやオルガンを含むきらびやかなシンセにパワフルなヴォーカルを乗せ、適度な疾走感とキャッチーなメロディアス性に、
QUEENをルーツにした優雅なHRナンバーなども魅力的だ。肝心の新曲については、さほど感銘は受けなかったが、
単なるメタルの枠を超えた、優美な味わいと知的な展開力で聴かせるスタイルは、あらためて再評価されるべきであろう。
メロディック度・・8 キャッチー度・・8 優雅度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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6/1
今年ももう6月!(135)


DESULTORY「THROUGH ACHING AEONS」
スウェーデンのデスメタルバンド、デザルトリーの2017年作
1993年にデビュー、96年までに3作を残して消えるも、2011年に復活、本作は6年ぶりとなる復活2作目。
ツインギターのリフとダミ声ヴォーカルを乗せて疾走する、デスラッシュ気味のサウンドで、
甘すぎないメロディアス性を含ませて激しく突進する、AT THE GATESにも通じる聴き心地。
オヘルドスタイルながらベテランらしい確かな演奏力と、クールなギターリフが見事で、
90年代の北欧メロデス、デスラッシュが好きな方にとってはニンマリのスタイルだろう。
この痛快なまでの疾走感は過去最高といってよいほどで、ベテラン健在の強力作である。
ドラマティック度・・8 疾走度・・9 オールドデス度・・9 総合・・8
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USURPRESS 「INTERREGNUM」
スウェーデンのスラッジ・デスメタル、ウスルプレスの2018年作
メロトロンが鳴り響きメロウなギターが重なるイントロから、ムーグシンセも鳴り響く北欧プログレ的な感触に、
低音デスヴォイスを乗せたヘヴィなデスメタル風味を加え、ドゥームやスラッジのような重厚な聴き心地になる。
その後も、ミステリアスな静寂パートから、暗黒ドゥーム&デスメタルパートへと起伏のある展開に、
ときにメロトロンなどのシンセによる北欧プログレ風味が融合した、独自の世界観を描いてゆく。
この振り幅の大きさは、いわばOPETHがスラッジ化したような雰囲気もあり、寒々しい空気感と
ダークな叙情性に包まれた、重厚なプログレッシブ・スラッジ・デスメタルが楽しめる力作です。
ドラマティック度・・8 重厚度・・8 暗黒度・・8 総合・・8
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BROOD OF HATRED「IDENTITY DISORDER」
チュニジアのブラックメタル、ブラッド・ハートレッドの2018年作
ムハンマド・メルキ氏による一人ユニットで、2014年にデビューし、本作が2作目となる。
ブラストを含む激しいドラムに低音デスヴォイスを乗せ、ほどよく叙情的なギターとともに、
ポストブラックメタル的でもある浮遊感と、デプレッシブなダークさ包まれたサウンドを聴かせる。
デスメタル的な感触もあるが、ミドルやスローテンポの部分も多く、暴虐さはさほど感じない。
13分という大曲では、メランコリックでミステリアスな空気感とともに緩急ある構築力も感じさせ、
あるいは、OPETHあたりが好きな方にも楽しめるだろう。ジャケも含めて孤独感ただよう力作デス。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・7 叙情度・・8 総合・・8
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Frostveil 「Antediluvian Majesty」
オーストラリアのアンビエント・ブラックメタル、フロストヴェイルの2017年作
いわゆるアトモスフェリック・ブラックメタルの独りユニットで、全5曲、29分のミニアルバム。
美しいシンセを中心にした、アンビエントな作風で、ネイチャーな神秘性を感じさせる世界観。
ヴォーカルやギターなどは入らないので、メタルとして聴くにはちょっと厳しいが、
Summoningあたりの雰囲気が好きな方なら、幻想的なアンビエントブラックとして楽しめるかと。
ドラマティック度・・7 メタル度・・1 幻想度・・8 総合・・7

Les Discrets 「PREDATEURS」
フランスのシューゲイザー・ポストロック、レス・ディスクレッツの2018年作
ALCESTのジャケを手掛け、AMESOEURSにも参加したアーティスト、Fursy Teyssierのユニットで、
本作が3作目となる。マイルドなフランス語の歌声を乗せた、メランコリックな味わいのポストロックで、
機械的なシンプルなドラムパターンや、ギターの単音の旋律が物悲しい哀愁の叙情を感じさせる。
美しいシンセアレンジとゆったりとした浮遊感は、ANATHEMAなどにも通じる優しい空気感で、
トレモロのギターも現れて、Alcestの叙情性を思わせるところもある。繊細な聴き心地の好作品です。
ドラマティック度・・7 メランコリック度・・8 薄暗度・・9 総合・・7.5
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L'HOMME ABSURDE 「SLEEPLESS」
ロシアのポストブラックメタル、ルオーム・アブサーデの2018年作
トレモロを含むギターリフにダミ声ヴォーカルを乗せ、適度に激しい疾走パートに、
リズムチェンジなどのモダンな展開力も覗かせるサウンド。デジタル風味のアレンジには
ブラックメタルとしての暗黒性はあまりなく、モノトーンをイメージさせるインダストリアルな感触は、
新たなポストブラックの深化の形というべきか。全体的にはわりとミドルテンポのパートが多く、
激しい疾走面での迫力のもの足りなさと、叙情性という面でも泣ききれない中庸感があるので、
現時点ではどっちつかずの煮え切らない聴き心地。今後はより方向性を明確にして欲しい。
ドラマティック度・・7 激しさ度・・6 モダン度・・8 総合・・7
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AN AUTUMN FOR CRIPPLED CHILDREN 「Eternal」
オランダのポストブラックメタル、アン・オータム・フォー・クリップルドチルドレンの2016年作
うっすらとしたシンセにトレモロのギター、ダミ声ヴォーカルを乗せた、幻想的なポストブラックメタル。
包み込むようなシンセの美しさや、叙情的なギターフレーズで、声以外は暴虐なところはまったくなく、
Alcestをシンフォニックにしたような味わいだ。楽曲は4〜5分前後なので長すぎず、
インストパートも多いのだが、メロディの聴き心地の良さでゆったりと楽しめる。
シンフォニックな音の厚みと優雅な叙情美に包まれたポストブラックの好作品。
ドラマティック度・・8 激しさ度・・6 叙情度・・8 総合・・8
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Krallice「Dimensional Bleedthrough」
アメリカのポストブラックメタル、クラリスの2009年作
トレモロを含むツインギターの叙情的なリフを乗せて疾走しつつ、リズムチェンジを含む展開力で
激しくとも優雅といってもよいブラックメタルを聴かせる。随所にブラストビートによる激しさも覗かせ、
ダミ声ヴォーカルを乗せてもさほどダークにはならないところは、ギターフレーズの泣きのためだろう。
10分を超える大曲を中心に、インストパートが多いので、一般のリスナーには長尺感があるだろうが、
トレモロなギターが好な人なら、わりとじっくりと鑑賞できるだろう。にしても、さすがに全77分は長いが。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・7 優雅な叙情度・・8 総合・・8
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Fjoergyn 「Sade Et Masoch」
ドイツのプログレッシブ・ブラックメタル、フヨルギンの2007年作
2005年にデビュー、本作は2作目で、シンフォニックなアレンジにドイツ語のダミ声ヴォーカルを乗せ、
リズムチェンジを含む知的な展開力で聴かせるサウンド。ときに激しい疾走パートも含みつつ、
暴虐さよりはオーケストラルなアレンジとともに、クラシカルで優雅な感触が前に出ていて、
この美意識に包まれた世界観は、シンフォニックなゴシックメタルが好きな方でも楽しめるかと。
シアトリカルな空気も漂わせるゲルマンなアヴァンメタルという点では、Eisregenにも通じるだろうが、
こちらはより優雅な聴き心地。いわばドイツ版SOLEFALDというところか。見事な傑作デス。
シンフォニック度・・8 暴虐度・・6 優雅度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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NORDHEIM 「Rapthor」
カナダのフォーク・デスメタル、ノルドヘイムの2017年作
ヘヴィなギターとダミ声ヴォーカルを乗せて激しく疾走するアグレッジブなサウンドに、
いくぶんフォーキーなメロディを加えた作風で、ときにブラストビートも含んだ激しさは、
いわばフォーク・メロデス的な聴き心地。トレモロのリフなどとともに、メロディック・ブラック的な味わいもあり、
随所にシンセによる美麗なアレンジや、クサメロ感のあるギターフレーズもなかなかよい感じだ。
全体的には、フォーキーな要素は薄めでヘヴィな疾走感が強く、激しいメロブラ路線でゆくのか、
フォークメタルでゆくのか、どっちつかずという印象も感じる。今後のさらなる深化に期待したい。
メロディック度・・7 フォーキー度・・6 激しさ度・・8 総合・・7.5
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Yearning 「Evershade」
フィンランドのゴシックメタル、ヤーニングの2003年作
1997年にデビュー、本作は4作目で、ツインギターによる流麗なフレーズに美麗なシンセを重ね、
低音デスヴォイスで聴かせる耽美なゴシックメタルサウンド。ゆったりとしたスローパートから、
ツーバスドコドコのメロデス的でもあるアグレッシブなパートへと展開するリズムチェンジなど、
メリハリのある構成とともに、ノーマルヴォーカルを乗せたフィンランドのバンドらしいメランコリックな味わいもある。
なにより、扇情力あるメロウなギターが泣きまくり、優雅な空気感を描きだすのが素晴らしい。
ゴシックが苦手な方でも、この泣きメロまくりの叙情には降参するだろう。耽美で優美なる傑作だ。
ドラマティック度・・8 ゴシック度・・8 叙情度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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The Foreshadowing 「Oionos」
イタリアのゴシックメタル、フォレシャドウイングの2010年作
2007年にデビュー、本作は2作目で、ツインギターにうっすらとしたシンセとジェントルなヴォーカルを乗せた、
耽美な気配に包まれた、正統派のゴシックメタルを聴かせる。ゆったりとしたスローテンポの中に、
ウェットな空気感と泣きの叙情をまとわせて、しっとりとしたシンセによる静寂パートなど、
ドラマティックな構築力も光っている。重すぎない重厚さとメロウな扇情力のバランスもよく、
デス声が入らないこともあって、マイルドなサウンドが耳心地よい。叙情たっぷりの力作です。
ドラマティック度・・8 ゴシック度・・8 叙情度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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5/17
春爛漫メタル!(123)


AMORPHIS 「Queen of Time」
フィンランドのトラッドメタル、アモルフィスの2018年作
1992年にデビュー、北欧らしい土着性をメタルに融合させたサウンドで深化を続けるこのバンド。
13作目となる本作は、女性スキャットを乗せた妖しいイントロから、オリエンタルなギターフレーズに、
デスヴォイス&ノーマル声を乗せ、ORPHANED LANDにも通じる重厚なサウンドを描いてゆく。
一方では、TURISASなどにも通じるバトルメタル的なエピックな勇壮さや、初期の作風を思わせる
北欧らしいトラッドメロディを盛り込んだ叙情性も残していて、ベテランらしい音の説得力も素晴らしい。
オーケストラアレンジを加えたシンフォニック性や、アコースティックパートなどを含むアレンジセンスもさすがで、
全体的にも重厚なヘヴィさとメロディックな叙情のバランスがとれた聴き心地。全69分の見事な力作デス。
ドラマティック度・・8 重厚度・・8 叙情度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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RUMAHOY 「The Triumph of Piracy」
アメリカのフォークメタル、ラマホイの2018年作
スコットランドのALESTORMのように、自らパイレーツメタルを名乗るバンド。
フォーキッシュなメロディにダミ声ヴォーカルを乗せ、随所に激しい疾走パートも含んだサウンドで
男臭く勇壮なコーラスとともに、TURISASなどにも通じるバトルメタルの雰囲気もある。
基本は3分前後のシンプルな作風なので、ドラマティックな展開力というのはあまりなく、
Korpiklaaniのような愉快さで、荒くれた酒飲み海賊の世界観を楽しむというのがよいだろう。
あとは、フォーク要素で生楽器を使ったりして、さらに音の説得力を高めていってもらいたい。
ドラマティック度・・7 フォーキー度・・7 海賊度・・8 総合・・7.5
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Neun Welten 「The Sea I'm Diving in」
ドイツのゴシック・ネオフォーク、ノイン・ウェルテンの2017年作
2006年にデビュー、フルアルバムとしては3作目となる。艶やかなヴァイオリンの音色に、
けだるげな男性ヴォーカル&女性ヴォーカルが絡み、薄暗くも幻想的なサウンドを聴かせる。
優雅であるが厚みのある音の重ねで、これまでの作品以上に強固な世界観を描き出していて、
ときにギターにドラムも加わった適度なロック色とダイナミズム、ゴシック的でもある耽美な空気感と、
美しいシンセによる北欧プログレ的な涼やかさが合わさった、素晴らしい幻想フォークロックが味わえる。
たとえば、Anathemaや、Katatoniaを涼やかな北の空気で包み込んだような傑作です。
ドラマティック度・・8 耽美度・・9 幻想度・・9 総合・・8.5
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Swallow The Sun 「When A Shadow Is Forced Into The Light」
フィンランドのゴシック・ドゥームメタル、スワロー・ザ・サンの2019年作
2005年にデビュー、本作は7作目となる。重厚なギターにうっすらとシンセが重なり、
マイルドなヴォーカルとデスヴォイスを乗せて、耽美でメランコリックな世界観を描き出す。
アコースティックギターやストリングスを加えた優雅なアレンジに、ノーマルヴォーカルのパートや、
しっとりとした叙情を聴かせる部分も多く、ときにデスヴォイスを乗せた激しさも随所に覗かせつつ、
3枚組だった前作の良い所をミックスさせたという印象だ。物悲しくも重厚な、さすがの出来です。
ドラマティック度・・8 メランコリック度・・8 重厚度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Draconian 「Sovran」
スウェーデンのゴシックメタル、ドラコニアンの2015年作
2003年にデビュー、本作は5作目で、女性Voが交代しているが、サウンドの方は重厚なギターリフに
うっすらとしたシンセを重ね、美しい女性ヴォーカルと低音デスヴォイスによるドゥーミィなゴシックメタルは変わらず。
近年、多くのバンドがシンフォニック化してゆく一方で、あくまでメランコリックな叙情性を追及するスタイルで、
この耽美な本格派サウンドは、昔からのゴシックメタルファンにはとてもアピールするだろう。
新加入のヘイケ嬢の歌声は、強いインパクトはないが、はかなげな雰囲気が寒々しいサウンドにマッチしていて、
随所に鳴り響くヴァイオリンとともに、涼やかで耽美な世界観を描いている。バンドとしてのキャリアが窺える力作だ。
ドラマティック度・・8 ゴシック度・・8 女性Vo度・・7 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Remembrance 「Silencing Moments...」
フィンランドのゴシック・ドゥームメタル、リメンブランスの2007年作
男女二人組のユニットで、うっすらとしたシンセに叙情的なギターを重ね、
低音デスヴォイスに女性ヴォーカルが絡む、耽美でメランコリックな味わいのサウンド。
初期Draconianにも通じる重厚な本格派で、フューネラルな暗黒性に包まれつつも
シンセによる美麗なアレンジと泣きのギターフレーズによるウェットな聴き心地で楽しめる。
シンセにドラム、ベース、ヴォーカルもこなすキャロラインさんのセンスも素晴らしい。
10分を超える大曲を主体に、どっしりとしたスローテンポで聴かせる耽美なる力作です。
ドラマティック度・・8 ゴシック度・・8 耽美で重厚度・・9 総合・・8
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LESOIR 「LATITUDE」
オランダのゴシックロック、レソールの2017年作
前作は、The Gatheringにも通じるような、メランコリックなゴシックロックの好作品であったが、
2作目となる本作も、やわらかなピアノの音色にしっとりと美しい女性ヴォーカルの歌声で、
繊細な叙情に包まれつつ、ドラムとギターが加わると物憂げなゴシックロック・サウンドを描き出す。
今作では、オーケストラアレンジを加えてのシンフォニックな優雅さも加わっていて、
前作以上にメリハリのある構築力と、ときに壮麗で厚みのあるサウンドが楽しめる。
倦怠系のゴシックメタルに優雅でプログレッシブな味わいを含ませたという逸品です。
シンフォニック度・・7 メランコリック度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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Little Dead Bertha「Age of Silence」
ロシアのシンフォニック・ゴシック・デスメタル、リトル・デッド・バーサの2018年作
男女Voに、女性シンセ奏者を含む6人編成で、美麗なイントロで幕を開け、メタリックなギターに
シンフォニックなシンセアレンジを重ね、低音デスヴォイスを乗せた激しいブラスト疾走に、
美しいソプラノ女性ヴォーカルが絡むという濃密なサウンド。ゴシックメタル的な耽美さと、
ブラックメタルばりの激しさが同居した作風で、クラシカルで優雅なシンセワークに
艶めいた女性ヴォーカルもなかなか魅力的だ。激しく疾走する荘厳な迫力とともに、
女性声のコーラスが加わって、THERIONのような壮麗なサウンドになる、強力作デス。
シンフォニック度・・8 激しさ度・・8 耽美度・・8 総合・・8
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Masquera Di Ferro「Stalactites」
ギリシャのゴシックメタル、マスクエラ・ディ・フェロウの2017年作
うっすらとしたシンセに重厚なツインギターを重ね、朗々とした男性ヴォーカルを乗せ、
メランコリックな味わいとオールドなドゥームメタル質感も含んだサウンドを聴かせる。
随所に叙情的なギターフレーズとともに、ウェットでキャッチーな感触もあって、
初期のMOONSPELLPARADISE LOSTなどにも通じる雰囲気もある。
一方では、どっしりとした重厚さは、エピック・ドゥーム的な感じでも楽しめるだろうし、
メロディのフックがしっかりしているので、ゴシックなハードロックとしても普通に聴きやすい。
メロディック度・・8 ゴシック度・・7 重厚度・・8 総合・・7.5
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NORHOD 「Blazing Lily」
イタリアのシンフォニック・ゴシックメタル、ノーオッドの2013年作
男女Voにシンセを含む7人編成で、壮麗なイントロから、ヘヴィなギターにオーケストラルなアレンジを重ね、
美しい女性ヴォーカルの歌声にデス声が絡む、EPICAにも通じる優美なシンフォニックメタルを聴かせる。
随所に技巧的なフレーズを奏でるギターと、クラシカルなシンフォニック性、モダンなヘヴィネスが合わさって
重厚でいて優雅な味わいを描き出す。紅一点、CLARA嬢のやわらかなソプラノもなかなか魅力的だ。
適度にアグレッシブな展開力もあって、叙情性と激しさのメリハリも含めて、総じてクオリティは高く、
ラスト曲のドラマティックな構築力は今後に期待させる。壮麗なサウンドにさらに磨きをかけていってもらいたい。
シンフォニック度・・8 ゴシック度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8
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Pursuing The End 「Symmetry of Scorn」
イタリアのシンフォニック・モダンメタル、パースゥイング・ジ・エンドの2013年作
男女Voにツインギター、シンセを含む7人編成で、ヘヴィなギターとシンセアレンジに、
男性デス声と女性ヴォーカルを乗せ、適度に疾走感のある展開力で聴かせるサウンド。
ゴシック的な耽美さは薄く、ツインギターを乗せて疾走するアグレッシブなメタル感触が強いので、
AMARANTHのような、女性声入りのモダンなシンフォニックメタルとして聴くのがよいだろう。
楽曲は、4〜5分前後と、長すぎずにわりとシンプルな分、ドラマティックというには物足りなさもあるのだが、
メタルコア系の好きな若いリスナーには受けるかも、個人的にはもう少しシンフォニックにして欲しい。
ドラマティック度・・7 シンフォニック度・・7 女性Vo度・・7 総合・・7.5
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Castle 「Welcome To Graveyard」
アメリカのドゥームロック、キャッスルの2016年作
2011年にデビュー、本作が4作目となる。本作では、男女二人組のユニット編成になり、
オールドなギターリフにハスキーな女性ヴォーカルで聴かせる、ヴィンテージなドゥームロックを聴かせる。
ベース&ヴォーカルのリズ・ブラックウェル嬢の魔女めいた歌声が、ウェットな妖しさをかもしだし、
サバスルーツのフレーズを奏でるギターのセンスも含めて、サウンドの強度がひとつ上がった印象だ。
サイケ的な浮遊感もいくぶん残しつつドゥームとしての迫力も同居した力作。アナログ感ある音質もよいですね。
ドラマティック度・・7 ドゥーム度・・8 古き良き度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Black Oath 「Ov Qlipoth And Drakness」
イタリアのドゥームメタル、ブラック・オースの2013年作
ウェットな空気感をかもしだす重すぎないギターリフに、朗々としたヴォーカルを乗せた、
妖しくもエピックな味わいのドゥームメタルを聴かせる。70〜80年代ルーツのアナログ感と
物寂しい叙情を含んだ世界観は、CANDLEMASSSOLITUDE AETERNUSにも通じるが、
こちらはヘヴィさよりも、より正統派のエピックメタル的なドラマ性を感じさせるのが好みです。
ゆったりとしたテンポからリズムチェンジで展開するところもあって、単調過ぎずに楽しめます。
ドラマティック度・・8 エピックドゥーム度・・8 重厚度・・7 総合・・8
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5/3
メタルで令和GW♪(110)


SAXON 「THUNDERBOLT」
イギリスのベテランメタルバンド、サクソンの2018年作
1979年にデビュー、キャリア40年を誇る大ベテラン。古き良きのギターリフをパワフルなドラムに乗せ、
ビフ・バイフォードの衰え知らずのヴォーカルで聴かせる、正統派のメタルサウンドは健在。
ほどよい疾走感とどっしりとした重厚さに、英国らしいウェットな味わいが合わさった楽曲は、
シンプルでありながらベテランらしい説得力に包まれていて、オールドなファンにはたまらないだろう。
叙情的なツインギターのスローテンポから、勢いある疾走ナンバーまで、誇り高きヘヴィメタルバンドとしての
揺るがぬ矜持を感じさせる。メイデンやジューダスなど同世代のバンドの中でも、いまだトップに君臨する内容だ。
メロディック度・・7 重厚度・・8 正統派度・・8 総合・・8 *過去作のレビューはこちら
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EDENBRIDGE 「THE GREAT MOMENTUM」
オーストリアのシンフォニックメタル、エデンブリッジの2016年作
2000年にデビュー、いまや女性ヴォーカル・シンフォニックメタルの代表格。本作で9作目となる。
今作はわりとヘヴィなギターリフで幕を開け、オーケストラルなアレンジを乗せたシンフォニック性と
サビーネ嬢の美しい歌声とともに、壮麗なサウンドを聴かせる。ほどよいヘヴィさとキャッチーなメロディのフックが同居していて、
楽曲アレンジのクオリティの高さは、さすがキャリアのあるバンド。随所にランヴァルの奏でる流麗なギターフレーズも光っている。
エリク・モーテンソン(ECLIPSE)がゲスト参加しての美麗な男女Voナンバーから、ラストの12分という壮大な大曲まで、
どこを切っても高品質な、まさにフィメール・シンフォニックメタルの逸品です。Disc2にはアルバムのインストバージョンを収録。
シンフォニック度・・8 壮麗度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Kingfisher Sky 「TECHNICOLOURED EYES」
オランダのシンフォニック(ゴシック)メタル、キングフィッシャー・スカイの2018年作
WITHIN TEMPTATIONのDrらが結成し、2008年にデビュー、本作が4作目となる。
適度にハードなギターとうっすらとしたシンセ、伸びやかな女性ヴォーカルの歌声を乗せた優美なサウンド。
ゴシックというには耽美な雰囲気はさほどなく、むしろキャッチーな爽快さがこのバンドの持ち味で、
ジュディス嬢の歌声は、元The Gatheringのアネクさんを思わせる雰囲気とともに確かな表現力もある。
今作ではオルガンが鳴り響く、オールドなハードロック風味や、クラシカルなピアノやチェロの音色も加えた
優雅なナンバーなども含めて、派手さはないものの、魅力的な女性Voとともにじっくりと楽しめる好作品だ。
シンフォニック度・・7 ゴシック度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Redemption 「Long Night's Journey Into Day」
アメリカのプログレメタル、リデンプションの2018年作
2003年にデビュー、正統派のProgMetalバンドとしては、すでに中堅のこのバンド。本作は7作目となる。
ヘヴィなギターに美しいシンセを重ね、パワフルなヴォーカルを乗せて、テクニカルな展開力で聴かせる、
モダンな硬質感とシンフォニックな味わいが同居したサウンド。DREAM THEATERをルーツにしつつ、
デジタル世代のアレンジを取り入れながら、重厚かつキャッチーな聴き心地で構築される確かなセンスと
演奏力はやはり見事。ラストは10分を超える大曲で、緩急ある展開力でドラマティックに聴かせる。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 重厚度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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COEN 「REMNANTS OF YESTERDAY」
シンガポールのプログレメタル、コーエンの2018年作
APHELIONのメンバーを中心に結成。きらびやかなシンセに、メタリックで技巧的なギターをテクニカルなリズムに乗せ、
伸びやかなヴォーカルで聴かせる、スタイリッシュなProgMetalを聴かせる。ヴォーカルの力量や演奏力の高さも含めて、
アジアレベルを超えたクオリティで、ときにDREAM THEATERを思わせるインストパートの構築力もなかなかのもの。
ドラム、ベース、ギターと各パートのプレイもレベルが高く、テクニカルな展開力とキャッチーなメロディアス性のバランスもよい。
13分を超える大曲では、ジョーダン・ルーデスがゲスト参加。シンフォニックな美しさとドラマティックな展開力が素晴らしい。
ジャケはB級臭いが内容は抜群。ドリムシ系のプログレメタルが好きな方は必聴でしょう。
メロディック度・・8 テクニカル度・・8 構築センス・・8 総合・・8
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Nova Collective 「The Further Side」
イギリスのテクニカルメタル、ノヴァ・コレクティブの2017年作
HAKENのギター、リチャード・ヘンシャルを中心に、BETWEEN THE BURIED AND MEのベース、
元HAKENのシンセ、元CYNICのドラムが参加したユニットで、変拍子を盛り込んだ軽妙なリズムに
うねりのあるベースとシンセを乗せ、ジャズロック、フュージョン風味に、Djent時なモダンな感触を加えた
テクニカルメタルを聴かせる。オルガンなどを含むシンセワークはプログレ的で、ギターもヘヴィすぎず、
ときに軽やかなフレーズをまじえながら、適度にメロディックな味わいのインストサウンドを描いてゆく。
6〜9分という長めの楽曲を主体に、オールインストながらも優雅なアンサンブルで耳心地よく楽しめ、
メタル感触がさほど強くないので、プログレ・ジャズロックが好きな方にも薦められる。
メロディック度・・7 テクニカル度・・8 優雅度・・9 総合・・8
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SPIRAL KEY 「An Error of Judgement」
イギリスのプログレメタル、スパイラル・キーの2017年作
シンフォニックなアレンジに包まれつつ、ヘヴィなギターに伸びやかなヴォーカルを乗せ、
薄暗いドラマ性に包まれた重厚なサウンドを聴かせる。メタリックでモダンな硬質感とともに、
知的な構築力も感じさせるスタイルは、同郷のTHRESHOLDなどにも通じる雰囲気がある。
一方では、キャッチーな歌メロには英国プログレやシンフォニックロック的な味わいもあって、
ヘヴィになったPALLASというような感触もある。随所に叙情的なギターフレーズも光っていて、
派手な展開力というのはないが、どっしりとした聴き心地の英国らしい力作ですな。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 重厚度・・8 総合・・7.5
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THE MINERVA CONDUCT
インドのテクニカルメタル、ミネルヴァ・コンダクトの2018年作
ヘヴィなギターリフとうっすらとしたシンセを変則リズムに乗せた、インストによるテクニカルメタル。
MESHUGGAHなどに通じる、Djent的な味わいと、スペイシーな浮遊感が合わさった感触で、
同郷のSkyharborなどに比べると、よりヘヴィでメタリックな聴き心地である。
一方では美麗なシンセアレンジを前に出したパートなど、プログレッシブな雰囲気とともに
厚みのあるサウンドで、オールインストながらも緩急ある構築センスはなかなか見事。
ジャケのイメージのように、サイケでカラフルなサウンドが楽しめる、テクニカルメタル作品だ。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・8 重厚度・・8 総合・・8
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Last Bastion 「The Road To Redemption」
アメリカのメロディックメタル、ラスト・バスティオンの2014年作
シンセを含む5人編成で、シンフォニックなアレンジにクサメロ感のあるツインギター、
パワフルなヴォーカルを乗せた、エピックな味わいに包まれた正統派のメロパワを聴かせる。
きらびやかなシンセにヴァイキングメタル風味のメロディなどで、濃密かつファンタジックな世界観を描きつつ、
ドカドカとしたせわしないドラムに、リズムチェンジによる唐突な展開などには、B級なマイナー臭さが感じられるが、
その荒削りなところが楽しめる方には、むしろクサメロ系ロメパワの好作品となるかもしれない。
個人的には、このエピックな勇壮さは好みなので、壮大なコンセプトアルバムなども期待したい。
ドラマティック度・・8 疾走度・・8 濃密度・・8 総合・・7.5
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Nordica 「Las Memorias De La Luna」
アルゼンチンのメロディックメタル、ノルディカの2015年作
ツインギターにシンセを含む6人編成で、正統派のギターにスペイン語によるヴォーカルを乗せて
適度に疾走感のある様式美メタルを聴かせる。シンフォニックなアレンジを含んだ壮麗さと、
古き良きメロパワ感触が同居した味わいで、随所にギターが奏でるクサメロ感なども含めて、
スペインのAVALANCHあたりにも通じる雰囲気もある。録音面での弱さが自主制作っぽいが、
伸びやかなヴォーカルや、ネオクラシカルなシンセトギターの絡みなど、楽曲や演奏はしっかりしていて、
クサメロ系の南米メロパワバンドとしては今後に期待できるだけの逸材だろう。
メロディック度・・8 疾走度・・7 クサメロ度・・8 総合・・7.5
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Erodhes 「Madre Tierra」
アルゼンチンのメロディックメタル、エロドエスの2011年作
きらびやかなシンセとクサメロなギターに、スペイン語のヴォーカルを乗せて疾走する、
正統派のメロパワサウンド。キャッチーな歌メロも含めて、南米らしいやわらかなメロディアス性で、
濃密な聴き心地がなかなかよろしい。ラウドな音質はB級臭さが漂うが、壮麗なアレンジセンスや
リズムチェンジを含む展開力などは、マイナーな味わいながら魅力的。曲によってはエピックな雰囲気の
シンフォニックメタルとしても楽しめるような力作だ。成長次第では、一線級のクサメタルになれるかもしれない。
ドラマティック度・・8 疾走度・・7 クサメロ度・・8 総合・・7.5

Angel Rubin 「Mi Oculta Soledad」
スペインのメロディックメタル、エンジェル・ルビンの2013年作
元ADGARのVoによるソロユニツトで、シンフォニックなアレンジにスペイン語のヴォーカルを乗せて疾走する、
正統派のメロパワサウンド。オールドな様式美テイストと、スパニッシュな濃密さが同居した感触は、
初期のAVALANCHにも通じる聴き心地。ハイトーンからダーティな声まで使い分ける表現力ある歌声とともに、
疾走するメロパワ曲から、いくぶんダークでモダンなメタルナンバーなどもあって、曲調はわりと幅広く、
キャッチーさは控えめで硬派な作風ともいえるが、クサメロ感という点では、もうひとつ突き抜けが欲しいか。
メロディック度・・7 疾走度・・7 楽曲・・7 総合・・7
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4/19
オールドメタル万歳!(98)


Seven Sisters 「The Cauldron and the Cross」
イギリスのメタルバンド、セヴン・シスターズの2018年作
2016年にデビューして、本作が2作目となる。80年代のNWOBHMをルーツにしたオールドなスタイルで、
ツインギターにハイトーンヴォーカルを乗せて疾走する、古き良き感触のスピードメタルを聴かせる。
リズムチェンジを含む緩急ある展開と、ギターフレーズにはジャーマンメタル的なクサメロ感も覗かせて、
パワフル過ぎないウェットなマイナー臭さも含めて、オールドメタラー諸君はニンマリだろう。
ラストは2パートに分かれた計16分という大曲で、ドラマティックな構築力もなかなかのもの。
初期のENFORCERPORTRAITあたりにも通じる、80'sメタル愛が感じられる強力なアルバムだ。
メロディック度・・8 疾走度・・8 古き良き度・・9 総合・8
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BLITZKRIEG 「JUDGE NOT」
イギリスのメタルバンド、ブリッツクリーグの2018年作
80年代から活動する、NWOBHMを代表するバンド、2015年には1stのリレコーディング作品を発表しているが、
オリジナルアルバムとしては、2013年作から5年ぶりとなる9作目。ツインギターのメタリックなリフに
SATANでも活躍するブライアン・ロスの味わいのあるヴォーカルを乗せた、正統派のメタルサウンドを聴かせる。
甘すぎない程度のウェットな叙情性も覗かせつつ、どっしりとした味わいのオールドなヘヴィメタルが続き、
楽曲的には、正直もうひとつ魅力的なフックが欲しい気もするが、この中庸さこそNWOBHMの醍醐味とも。
ドラマティック度・・7 正統派度・・8 古き良き度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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SATAN 「Trail of Fire」
イギリスのメタルバンド、セイタンのライブ作品。2014年作
NWOBHMを代表するバンドのひとつ、2014年のアメリカとカナダのツアーからのステージを収録。
2013年の復活作「Life Sentence」からのナンバーに加え、1983年作「Court in the Act」や、
1982年のデビューミニからの楽曲も演奏していて、オールドなメタルファンはにんまりである。
ツインギターにブライアン・ロスの味わいのあるヴォーカルを乗せて疾走する、古き良きメタル感触で、
いくぶんスカスカの音質もむしろアナログ感を強めていて、近年のライブ音源とは思えないところもGood。
全15曲、76分で、往年のブリティッシュ・メタルサウンドがたっぷり楽しめる内容だ。
オールドメタル度・・9 ライブ演奏・・8 音質・・7 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Old Wolf 「Fastian Mass」
アメリカのメタルバンド、オールド・ウルフの2018年作
ジャケの雰囲気からいかにもオールドなメタルの雰囲気が漂うが、ツインギターの正統派のリフに
ハイトーンヴォーカルを乗せた、80年代スタイルのアナログ感たっぷりのメタルサウンド。
マイナーな翳りを帯びたB級っぽさは、NWOBHMの生き残りと言われても信じてしまいそう。
ほどよくキャッチーなテイストとパワフル過ぎないヴォーカルを乗せたローカルな味わいは、
この手のオールドメタル好きにはニンマリだろう。ヘヴィ過ぎないメタル感触は確信犯的で、
随所に聴かせるツインギターのハモりも実にツボを突く。ヴィンテージメタル好きはマスト。
ドラマティック度・・8 正統派度・・9 古き良き度・・9 総合・・8
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IRON ANGEL 「HELLBOUND」
ドイツのスピードメタル、アイアン・エンジェルの2018年作
1985〜86年に2枚のアルバムを残して消えたバンドの、じつに32年ぶりとなる復活作。
オールドなギターリフにパワフルなヴォーカルを乗せて疾走する、爽快なスピードメタルは健在で、
80年代を蘇らせたかのようなサウンドに思わずにんまり。スラッシュメタルとパワーメタルの中間というような、
激しくもダーティな疾走感は、かつてのB級スピードメタルを愛好していたリスナーにはたまらないだろう。
これというメロディのフックがあるわけではないのだが、これぞジャーマンメタルというべきサウンドで、
全10曲47分というのもじつにちょうど良い長さ。オールドメタル好きはチェックすべし!
ドラマティック度・・7 疾走度・・9 古き良き度・・9 総合・・8
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Stranger 「The Bell」
ドイツのメタルバンド、ストレンジャーの1985年作
かつての貴重盤が、2018年になってめでたくリマスター再発された。500枚限定プレスなのでお早めに。
ツイギターのリフにハイトーンヴォーカルを乗せて疾走する、1曲目は、メロディックなギターソロも含めて
これぞジャーマンメタルという聴き心地。ミドルテンポのノリの良いナンバーから叙情的なバラードなど、
ヨーロピアンな翳りを帯びたウェットな雰囲気とともに、STORMWITCHあたりが好きな方にも楽しめるだろう。
バンドはメロハー寄りになった2作目を残して解散。ヴォーカルのゲルト・ザレウスキはのちに、
CHROMING ROSEを結成することとなる。再発盤のボーナスにはデモ音源を5曲追加収録。
メロディック度・・8 疾走度・・7 ジャーマン度・・8 総合・・7.5
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MEPHISTO
ドイツのメタルバンド、メフィストの1988年作
トリプルギター編成の5人組で、怪しげなイントロからクールなギターリフを乗せて、
のっけから10分の大曲を聴かせる。リズムチェンジを含む展開力とともに、
知的でプログレッシブなスラッシュメタル風味は、DESPAIRあたりにもサウンドだ。
独特のハイトーンヴォーカルは、初期のFATES WARNINGを思わせるところもありつつ、
随所にジャーマンメタルらしいキャッチーなメロディアス性や激しい疾走パートも覗かせる。
バンドは1991年に2作目を残して消滅。こんな恰好いい作品が知られずに消えたのは惜しい。
2018年のリマスター盤には、デモ音源6曲をボーナス収録。限定500枚プレス!
ドラマティック度・・8 クール度・・8 しっかりジャーマン度・・8 総合・・8
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NOISEHUNTER 「Spell of Noise」
ドイツのメタルバンド、ノイズハンターの1988年作
1986年にデビュー、HELLOWEENと同時期に活動しながら、日本ではまったく知名度がなかったバンド。
本作は2作目で、ツインギターのリフにパワフルなハイトーンヴォーカルを乗せて疾走する、
正統派のメロディックスピードメタル。随所に聴かせるツインリードのハモりは日本人好みで、
ゆったりとした叙情に包まれたバラードナンバーなどもなかなか魅力的。楽曲は3〜4分前後とシンプルながら、
どこかジャパメタ的でもあるメロディのフックにもにんまり。年代を思えばクオリティの高い作品といってよい。
2005年のリマスター盤には、ボーナスに1989年の3rd「Too Young To Die」全曲を収録。
こちらはキャッチーなミドルテンポが主体ながら、疾走曲も盛り込んでバランスのとれた内容。
メロディック度・・8 疾走度・・8 正統派度・・8 総合・・8
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TREAT 「Ghost of Graceland」
スウェーデンのメロディアス・ハードロック、トリートの2016年作
2010年の復活作「Coup De Grace」は素晴らしい傑作であったが、復活2作目となる本作も
美しいシンセワークに、ほどよくヘヴィなギターと伸びやかなヴォーカルを乗せた、厚みのあるサウンドで
正統派の北欧ハードロックを聴かせる。キャッチーな歌メロにシンフォニックといってもよいシンセアレンジ、
ときに泣きのギターを含んだ涼やかな叙情性 とともに、ベテランらしいどっしりとした説得力も感じさせる。
音作りがいくぶんモダンになった感じはあるものの、古き良き部分と現在形を同居させたバランスというべきか。
ジャケのイメージはいくぶんダークであるが、日本人好みのメロディのフックは健在。王道の北欧HR好作品です。
メロディック度・・8 どっしり度・・8 北欧HR度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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TRAVELIN JACK「COMMENCING COUNTDOWN」
ドイツの女性声ハードロック、トラヴェリン・ジャックの2017年作
古き良き感触のギターにハスキーな女性ヴォーカルを乗せた、ヴィンテージなハードロック・サウンドで、
70〜80年代テイストのグラムロック的なノリも感じさせる。紅一点、ALIA嬢のパワフルな歌声とともに、
HALESTORMのような骨太の感触と確かな演奏力もあって、しっかりと音の説得力を感じさせる。
曲によってはオルガンも鳴り響く、70年代ブリティッシュロックの雰囲気やブルージーな味わいもありつつ、
古臭いだけでないロックとしての普遍的な魅力も備えている。表現力ある女性声ブルーズHRの好作品。
ドラマティック度・・7 古き良き度・・9 女性Vo度・・8 総合・・8
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WINTERS 「BLACK CLOUDS IN TWIN GALAXIES」
イギリスのドゥームロック、ウインターズの2007年作
BLACK SABBATHルーツのヘヴィなギターリフにけだるげなヴォーカルを乗せた、
アナログ感たっぷりのヴィンテージな味わいに包まれたドゥームロックを聴かせる。
一方では、サイケな浮遊感や曲によってはメロトロンを使った叙情性もあり、
70年代プログレからの影響も匂わせる。楽曲自体は3〜4分前後と比較的シンプルなので、
さほどディープな濃密さは感じられず、いくぶん物足りなさもあるのだが、
ヘヴィすぎない味わいのヴィンテージなドゥームが楽しめる方にはお薦めです。
ドラマティック度・・7 ドゥーム度・・8 ヴィンテージ度・・9 総合・・8
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Syrens Call 「Emoceans」
フランスのシンフォニックメタル、サイレンズ・コールの2006年作
女性Voにシンセを含む編成で、きらびやかなシンセにキュートな女性ヴォーカルの歌声を乗せ、
適度な疾走感とともに、EDENBRIDGEあたりに通じる女性声シンフォニックメタルを聴かせる。
クサメロなギターも含めて、ほどよくローカルなB級感触と、ファンタジックな雰囲気は嫌いではないし、
紅一点、ヴァレリー嬢のなよやかでハスキーな歌声は、いくぶんのヘタウマ感も含めてなかなか魅力的。
リズムチェンジを含む、ProgMetal的な感触などもマニア好みだろう。全13曲、68分という力作。
シンフォニック度・・7 マイナー度・・8 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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4/6
お花見とメタル!(86)


Odesos (Одесос)
ブルガリアのメロディックメタル、オデソスの未発音源集。2019年作
TOTALにも参加した、Konstantin Jambazovが在籍したバンドで、1993年に録音された唯一の作品。
叙情的なギターによるイントロから始まり、ネオクラシカル風味の流麗なギターにジェントルなヴォーカルを乗せた
メロディックなメタルサウンド。ヴァイオリンが鳴り響く叙情的なパートや、ときにプログレッシブな展開力もあって、
キャッチーな優雅さを感じさせつつ、一方では適度な疾走感とともに古き良きメタルテイストも感じさせる。
ブルガリア語の歌声にいくぶん辺境臭さは残しているが、演奏自体はなかなかハイレベル。
技巧的なギターフレーズも随所に光っていて、スローやミドルテンポのナンバーでもフックを感じる部分も多数。
いわば、メロハーとメロスピが同居したような味わいというべきか。優雅な叙情を含んだ高品質な内容です。
メロディック度・・8 疾走度・・7 優雅度・・8 総合・・8
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BLIND GUARDIAN 「Live Beyond the Spheres」
ドイツのメロディックメタル、ブラインド・ガーディアンのライブ作。2017年作
2015年のヨーロッパツアーのステージをCD3枚に収録。2015年作「Beyond The Red Mirror」からのナンバーで幕を上げ、
重厚なツインギターにパワフルなハンズィのヴォーカルを乗せて、荘厳でファンタジックなブラガーサウンドが広がってゆく。
続いて初期の疾走名曲「Banish from Sanctuary」で会場も大盛り上がり。いくぶんラウドな音質もライブらしい臨場感となっていて、
ドラマティックな大曲「And Then There Was Silence」でDisc1を締めくくる。Disc2は、幻想的なバラード「The Lord of the Rings」から、
中盤には「Lost in the Twilight Hall」、「Imaginations from the Other Side」といったナンバーもあり、オールドなファンも嬉しい。
Disc3は、「Valhalla」、オーケストラルな大曲「Wheel of Time」、そして「Majesty」、「Mirror Mirror」と、CD3枚で計160分たっぷりのブラガー祭り。
ドラマティック度・・8 ライブ演奏・・8 ブラガー度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Dragonforce 「Reaching Into Infinity」
イギリスのメロディック・スピードメタル、ドラゴンフォースの2017年作
2003年のデビューから、本作で7作目。前作までの疾走メロスピ路線を継承しつつも、
よりシンフォニックなアレンジとともに、流麗なメロディック・スピードメタルを聴かせる。
叙情的なツインギターにマイク・ハドソンのハイトーンヴォーカルも表現力を増していて、
これまでのようなキャッチーで軽快な疾走曲もたっぷりで、安定のサウンドが楽しめる。
メロディのフックに新鮮味は薄いものの、ときにやわらかな叙情パートなども覗かせたり、、
11分の大曲ではドラマティックな展開力で、いくぶん大人になったドラフォーも感じさせる。
ボーナストラックには、なんと、ZIGGYの名曲「グロリア」をメロスピアレンジ。
メロディック度・・8 疾走度・・9 新鮮度・・7 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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EDU FALASCHI 「The Glory of The Sacred Truth」
ブラジルのシンガー、エドゥ・ファラスキの2018年作
ANGRAのシンガーによるソロで、新曲2曲と、ライブ4曲を収録したミニアルバム。
ALMAHでのモダンなヘヴィネスとは異なり、きらびやかなアレンジとキャッチーなメロディを乗せて疾走する、
かつてのANGRAを受け継ぐ、爽快なメロディック・スピードメタルを聴かせる。エドゥのヴォーカルも伸びやかで、
パワフルな盟友アキレスのドラムも含めて、これぞファンが待ち望んでいたサウンドだろう。「Nove Era」、「Spread Your Fire」など、
ANGRAの人気ナンバーのライブ音源も、勢いある演奏力と、さすがの表現力の歌声でクオリティの高さを見せつける。
多くのリスナーが待っていたエドゥの帰還であろう。このメンバーでのフルアルバムにも期待したい。
メロディック度・・8 疾走度・・8 アングラ度・・8 総合・・8
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TOBIAS SAMMET'S AVANTASIA 「GHOSTLIGHTS」
トビアス・サメットによるメタルオペラ、アヴァンタジアの2016年作
2001年に始まったこのプロジェクトもすでに7作目となる。本作も、ヨルン・ランデ、マイケル・キスク、、ボブ・カトレイ
ディー・スナイダー、ジェフ・テイト、ロニー・アトキンス、ロバート・メイソン、シャロン・デン・アデル、マルコ・ヒエタラ、
サシャ・ピート、オリバー・ハートマンといった、豪華メンバーが集結。メロディックなギターに美しいシンセアレンジ、
そして配役ごとのヴォーカルを乗せて、キャッチーな味わいの壮麗なサウンドを展開。ミドルテンポを主体にしつつ、
マイケル・キスクのハイトーンヴォーカルを乗せて疾走するタイトルナンバーなどはさすがの恰好良さで、
これという新鮮味はないのだが、実力あるヴォーカリストたちの共演で、70分を超える力作に仕上がっている。
限定盤のボーナスDiscには、2014年のWACKEN OPEN AIRでのライブ音源を収録。
ドラマティック度・・8 壮麗度・・8 豪華メンツ度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Evertale 「The Great Brotherwar 」
ドイツのメロディックメタル、エヴァーテイルの2017年作
前作はBLIND GUARDIANを思わせるファンタジックな強力作であったが、2作目となる本作も
SF戦争的なイントロのSEから始まり、ツインギターのメロディックなフレーズとともに疾走開始、
パワフルなヴォーカルを乗せた、エピックな味わいのメロディック・パワーメタルを聴かせる。
かつてのブラガーを思わせる疾走感と荘厳なクワイア、ときにハンズィを思わせる歌い方も確信犯的で、
重厚なサウンドともにウェットな叙情性を描き出す構築力も、なかなかすでに堂に入っている。
個性という面では希薄ながら、往年のブラガーを受け継ぐファンタジック・メロパワの力作といえる。
ドラマティック度・・8 疾走度・・8 ブラガー度・・9 総合・・8
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EMERALD SUN 「UNDER THE CURSE OF SILENCE」
ギリシャのメロディックメタル、エメラルド・サンの2018年作
4作目の本作も、ツインギターにカイ・ハンセンを思わせるハイトーンヴォーカルを乗せ、
まさにGAMMA RAYのような、キャッチーな正統派メロディックメタルを聴かせる。
ミドルテンポを主体にした、古き良きジャーマンメタル感触はますます強まっていて、
RAGEのピーヴィ・ワグナーがヴォーカルで参加した、正統派のメタルナンバーなど、
全体的にこれという新鮮味はないが、定の好内容。アルバム後半には疾走ナンバーもあり、
1stの頃のキーパーメタルとしての味わいも残している。ジャーマン系スタイルが好きな方はチェック。
メロディック度・・8 疾走度・・7 正統派度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Melodius Deite「Episode III: The Archangels and the Olympians」
タイのメロディックメタル、メロディウス・ダイテの2018年作
MELODIUS名義でデビューした2008年作「DREAM ON」はまさにクサメロまくりの傑作であったが、
その後、MELODIUS DEITEとして、2014年にCD2枚組の大作を発表、それに続く本作でついに日本盤デビューを果たす。
神々やギリシャ神話をテーマにした作品らしく、神秘的なイントロに続き、流麗なギターとパワフルなヴォーカルを乗せて華麗に疾走する、
勢いのあるメロディック・スピードメタルを聴かせる。オーケストラルで壮麗なアレンジとクサメロをたっぷりまぶしたギターも日本人好みで、
緩急あるリズムチェンジとともにドラマティックなサウンドを描き出す。新加入のブラジル出身というシンガーの表現力ある歌声も含めて、
ときにANGRAを思わせる部分もあったり、シンフォニックなクサメロスピという点では、DERDIANなどにも通じるだろう。
ラストの23分を超える大曲はインストによるプログレッシブな味わいで、エピックなスケール感を表現するセンスも覗かせる。
ドラマティック度・・8 疾走度・・8 壮麗度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Nocturnal Rites 「Phoenix」
スウェーデンのメロディックメタル、ノクターナル・ライツの2017年作
1995年にデビュー、HAMMERFALLとともに北欧の正統派メロパワシーンを牽引してきたバンド。
本作は10年ぶりとなる9作目で、SCAR SYMMETRYのペル・ニルソンが新たに加入している。
のっけからヘヴィなギターによるモダンなサウンドに面らうが、ジョニー・リンドクヴィストのパワフルな歌声と、
楽曲におけるメロディックなフックは、まさしくノクターナル・ライツ。全体的に疾走感ほさほどないのだが、
随所にテクニックのあるギタープレイとともに、どっしりとしたヘヴィネスとキッャチーなメロディが同居し、
いわば古き良きメロパワにモダンな硬質感が加わったという印象で楽しめる。まさに新生ノクタの力作だ。
メロディック度・・8 パワフル度・・8 重厚度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Thaurorod 「Coast of Gold」
フィンランドのメロディックメタル、サウロロッドの2018年作
2010年にデビューして本作が3作目となる。メロディックなギターと美麗なシンセを重ね、
伸びやかなヴォーカルを乗せて疾走する、きらびやかなメロディック・スピードメタル。
かつてのSONATA ARCTICAを彷彿とさせるキャッチーなメロディに、エピックな勇壮さをまぶして
ファンタジックな世界観を描いてゆくという、とても日本人好みのスイタルといえるだろう。
DRAGONFORCEばりの強力な疾走感とともに、これまでよりもメロスピとしてひとつ突き抜けた感触もあり、
曲によっては北欧らしい土着的メロディも覗かせる。どこを切ってもシンフォニックな北欧メロスピ傑作だ。
メロディック度・・8 疾走度・・9 北欧度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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REBELLION 「A Tragedy in Steel Part II: Shakespeare's King Lear」
ドイツのエピック・パワーメタル、レベリオンの2018年作
Grave Diggerのメンバーを中心に結成、エピックかつパワフルな正統派メタルスタイルで、本作は通算8作目となる。
今作は2002年のデビュー作の続編にあたるコンセプト作品となっていて、正統派のギターリフにダミ声ヴォーカルを乗せた、
かつてのグレイヴ・ディガーを思わせるサウンド。これまでよりもダークな雰囲気なのは、コンセプトの世界観なのか、
適度にメロディックなギターも覗かせつつ、全体的には重厚でありつつも、ダミ声ヴォーカルが一本調子なところもあって、
どこか淡々とした聴き心地になっている。エピックで勇壮な感触は悪くないので、あとはメロディのフックがもっと欲しい。
ドラマティック度・・7 正統派度・・8 重厚度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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NOVI 「Залишатися Справжнiм」
ウクライナの女性ミュージシャン、Daria Naumenko (Lady Dea) のソロ作品。2018年作
SUNRISEの女性シンガー&シンセ奏者でもある、きらびやかなシンセアレンジに伸びやかな歌声を乗せた
キャッチーなメロディアス・ハードロックサウンド。母国語による歌声が辺境的な味わいを醸し出しつつ、
楽曲はあくまでメロディックな聴き心地。ときにプログレ的でもある優美なシンセワークもよい感じで、
なよやかな彼女のヴォーカルも魅力的。曲によってはほどよくヘヴィなギターによるメタリックな味わいもあり、
女性声のシンフォニックメタルとしても楽しめる。女性声の母国語メロディアスハードが好きな方はいかが。
メロディック度・・8 優美度・・8 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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3/22
イチローお疲れ様!(74)


LIONE/CONTI
RHAPSODYのファビオ・リオーネと、Luca Turilli's RHAPSODYのアレッサンドロ・コンティのユニット。2018年作
現在はANGRAで活動するファビオと、TRICK OR TREATでもその素晴らしい歌声を聴かせるアレッサンドロという、
素晴らしい二人のヴォーカリストをフロントに、プロデュースと楽曲を手掛けるのは、DGMのシモーネ・ムラローニ。
メロディアスハード的でもあるキャッチーさと随所に流麗なギターを乗せた、シンフォニックな厚みのあるサウンドに、
実力あるヴォーカルが乗るのだから、聴き心地が悪いわけはない。フックのあるメロディに二人の伸びやかな歌声を重ねた、
サウンドの説得力は当然のように素晴らしく、改めてメタル界トップクラスのヴォーカリストの歌声をたっぷり堪能できる。
二人の歌声をじっくり聴かせるバラードナンバーから、疾走感のあるメロパワチューンまで、すべてが高品質な完成度。
メロディック度・・8 壮麗度・・8 ヴォーカル度・・9 総合・・8
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PRELUDIO ANCESTRAL 「OBLIVION」
アルゼンチンのメロディックメタル、プレリューディオ・アンセストラルの2018年作
2012年にデビューし、本作で4作目となる。1曲目はネオクラ気味のギターとハイトーンヴォーカルを乗せて疾走する、
壮麗なメロディック・スピードメタルで、きらびやかなシンセワークも加えたシンフォニックなアレンジも覗かせる。
歌詞は英語なので、スパニッシュな雰囲気はあまりなく、曲によってはデジタルなアレンジのモダンな質感や、
一方では、ミドルテンポの王道のハードロックナンバーなどもあり、古さと新しさの混在した作風とも言える。
全体的にはメロディのフックにやや物足りなさもあって、突き抜けきらないもどかしさも感じるのだが、
王道の様式美メタルが好きな方なら楽しめるかと。AIRBORNのアレッシオ・ペラルディ、
Enzo and The Glory Ensemble
のエンゾ・ドンナルンマなどがゲストヴォーカルで参加。
メロディック度・・7 疾走度・・8 新鮮度・・7 総合・・7.5
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Enzo and The Glory Ensemble 「In The Name Of The Father」
イタリア人ミュージシャン、エンゾ・ドナルマによるメタルオペラプロジェクト。2016年作
マーティ・フリードマンをはじめ、SHADOW GALLERYのゲイリー・ワーカンプ、ブライアン・アシュランド
ラルフ・シーパーズ(PRIMAL FEAR)、コビ・ハルヒ(ORPHANED LAND)、マーク・ゾンダー(FATES WARNING)、
ニコラス・レプトス(WARLORD)といったメンバーヘが参加、オーケストラルなアレンジとメタリックな激しさが同居した、
壮麗なメタルオペラを展開する。キリスト教をテーマにしていることから、参加ミュージャンもみなクリスチャンで、
随所にアラビックな旋律を含んだ民族的な雰囲気は、ORPHANED LANDにも通じる作風である。
女性ヴォーカルにストリングスも加わった優美なナンバーや、讃美歌的なナンバーなどシンフォニックな感触に包まれる。
全体的には、もう少しドラマティックな盛り上がりも欲しい気もするが、これぞクリスチャン・メタルオペラの味わいである。
ドラマティック度・・7 重厚度・・7 優美度・・8 総合・・7.5
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Black Yet Full Of Stars
イタリアのメロディックメタル、ブラック・イェット・フル・オブ・スターズの2016年作
シンフォニックなアレンジにメタリックなギターリフとパワフルなヴォーカルを乗せた、
モダンな感触のサウンドで、リズムチェンジを含むテクニカルな展開力も覗かせる。
激しいドラムとともに硬質でヘヴィギターサウンドはエクストリームメタル的でもあり、
いくぶんダーティなヴォーカルが歌うキャッチーなメロディとオーケストラルなアレンジで、
重厚なシンフォニックメタルを聴かせる。オーレケストラ入りのモダンなパワーメタルとしては
EX DEOなどにも通じるが、こちらはもっとメロディック寄りなのでわりと聴きやすさもある。
シンフォニック度・・8 モダン&ヘヴィ度・・8 重厚度・・8 総合・・7.5
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MIDNATTSOL 「AFTERMATH」
ノルウェー&ドイツのゴシックメタル、ミッドナットソルの2018年作
7年ぶりとなる4作目で、ヴォーカルのカルメン嬢の姉である、リブ・クリスティンも参加している。
美しい女性ヴォーカルと優美なシンセアレンジを含む、幻想的なゴシックメタルサウンドに、
随所にリズムチェンジを加えたメタリックな勢いとともに、メリハリのある構築力で聴かせる。
サウンド作りがやや軽めなので、ゴシックとしての重厚な音の説得力というものは希薄だが、
スウェーデン民謡を取り上げた土着的なナンバーなどには、涼やかな北欧の空気が感じられ、
むしろこのフォークメタル路線へと舵をきってもよいような気もする。北欧度を増した好作品です。
シンフォニック度・・8 ゴシック度・・7 女性Vo度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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ALIGHT 「SPIRAL OF SILENCE」
イタリアのゴシックメタル、オライトの2018年作
前作から9年ぶりとなる2作目で、適度にヘヴィなギターとモダンなシンセアレンジに、
美しい女性ヴォーカルの歌声で聴かせる、キャッチーなゴシックメタルサウンド。
ゴシック的な耽美さとモダンなヘヴィロック感触が同居していて、3〜4分前後の楽曲は、
わりと普通に聴きやすいのだが、重厚さやシンフォニック性の点では物足りなさがあり、
全体的にも引っ掛かりのある曲が少なく、可もなく不可もなくという中庸感が漂っているのが惜しい。
CATIA嬢の伸びやかな歌声は、けっこう魅力的なので、あとは楽曲の深みが増せばと思う。
ドラマティック度・・7 ゴシック度・・7 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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Silent Opera 「Reflections」
フランスのシンフォニック・ゴシックメタル、サイレント・オペラの2014年作
男女Voに女性シンセ奏者を含む6人編成で、オーケストラルなイントロから始まり、
ヘヴィなギターにシンセを重ね、美しい女性ヴォーカルに男性デスヴォイスが絡む、
オペラティックなシンフォニックメタルを聴かせる。迫力あるデス声とメタリックなヘヴィネスに、
テクニカルな展開力も含んだアグレッシブさと、なよやかな女性声による優美さが同居した、
モダンな構築力が特徴で、Laure嬢の歌声は、Delainのシャルロット嬢を思わせるなよやかさで、
激しいデス声とのコントラストになっている。モダンなヘヴィネスと壮麗な美しさに包まれた力作だ。
シンフォニック度・・8 モダンヘヴィ度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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D.I.V.A. (Д.И.В.А.) 「Angel of Light (Ангел Света)」
ロシアのメロディックメタル、ディーヴァの2008年作
メロディックなギターにハスキーな女性ヴォーカルの歌声を乗せて疾走する、正統派のメロディックメタル。
わりとハワフルなヴォーカル嬢の歌声は、ARKONAのマーシャさんを思わせる声質で、
楽曲は正統派メロパワながら、ロシア語による歌唱が、どことなくペイガンな趣をかもしだす。
ゆったりと聴かせるバラード曲も、彼女の歌声のシリアスな説得力でじっくりと楽しめる。
楽曲は3〜4分前後で、全37分というのは少し物足りないか。もう2曲くらいあれば力作と言えたのだが。
メロディック度・・8 正統派度・・8 女性Vo度・・8 総合・・7.5

Autumn Tears 「Origin Of Sleep」
アメリカのゴシックユニット、オータム・ティアーズの2018年作
1996年にデビュー、2007年までに5作を残したバンドの、11年ぶりとなるミニアルバム。
ヴァイオリンやチェロなどのストリングスに、美しい女性ヴォーカルの歌声を乗せた
耽美でクラシカルなサウンド。やわらかなピアノの旋律に、ハープやフルートの音色、
ホルン、トランペット、トロンボーンなどの管楽器も加わった優雅な聴き心地で、
ゆったりとした室内楽的なゴシックミュージックとしても楽しめる。フルアルバムに期待。
クラシカル度・・8 ゴシック度・・7 優雅度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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KATATONIA 「LAST FAIR DAY GONE NIGHT」
スウェーデンのゴシックメタル、カタトニアのライブ。2014年作
2001年作「Last Fair Deal Gone Down」の10周年を記念してのロンドンでのライブをCD+DVDに収録。
CDに収録のライブ前半は同作の完全再現で、美しいシンセアレンジにメロウなギターと
マイルドなヴォーカルで、倦怠の翳りに包まれた叙情的なゴシックメタルを聴かせる。
DVDにのみ収録のライブ後半は、2009年作「Night Is The New Day」からのナンバーをはじめ、
過去作やシングル曲なども演奏。ベテランらしい表現力で、メランコリックなステージを見せてくれる。
ライブ演奏・・8 ゴシック度・・8 倦怠の叙情度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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DARE 「OUT OF THE SILENCE II」
アイルランドのメロディアスハードロック、デアーの2018年作
THIN LIZZYのダーレン・ワートンを中心に1988年にデビュー。本作はその1stの30周年リメイクアルバム。
うっすらとしたシンセアレンジに、元TENのヴィニー・バーンズの骨太のギターワーク、
そして哀愁を感じさせるマイルドなヴォーカルを乗せて、オリジナルの良さを生かしつつ、
より厚みのあるサウンドで、キャッチーなアイリッシュ・ハードロックを聴かせてくれる。
ジェントルな哀愁に包まれたメロディックでウェットな耳心地は、TENなどが好きな方にもお薦め。
こうしたリメイクには賛否両論あるだろうが、年代をへた録音で別物として新たに楽しめます。
メロディック度・・8 哀愁度・・8 アイリッシュハー度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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4BITTEN 「Rewind & Erase」
ギリシャのハードロック、フォービトゥンの2015年作
ヘヴィなギターリフにパワフルな女性ヴォーカルで聴かせるハードロックで、
随所にシンセアレンジを含んだ厚みのあるサウンドは、適度にモダンな感触もある。
Fori嬢の歌声は、女性らしいフェミニンなところはなく、あまり魅力は感じないのだが、
80年代スタイルの王道のハードロックをモダンヘヴィネスに仕上げた作風には似合っている。
楽曲そのものにメロディックなフックは希薄でも、全体的にも、これというナンバーがないので、
むしろもっとヘヴィでスラッシーにしても、このパワフルな女性声が引き立つ気もする。
メロディック度・・7 正統派HR度・・8 女性Vo度・・7 総合・・7
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ELDRITCH 「Tasting the Tears」
イタリアのプログレメタル、エルドリッチの2014年作
デビューは1995年のベテランで、本作は9作目となる。ヘヴィなギターにきらびやかなシンセアレンジで、
薄暗くモダンな感触のプログパワーメタルを聴かせる。随所に流麗なフレーズを奏でるギターに
ハイトーンヴォーカルの歌うキャッチーなメロディを乗せて、ときにメロパワ的な疾走感も覗かる。
3〜4分前後の楽曲は比較的シンプルで、今作はプログレメタルとしてのテクニカルな部分はあまりなく、
むしろシンフォニックメタル的に楽しめる重厚な感触だ。新鮮なインパクトがないので物足りなさもあるが、
全体的には安定の質の高さで、ダークな雰囲気ながらもわりと聴きやすい好作品である。
ドラマティック度・・7 ProgMetal度・・6 重厚度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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Sun Caged 「The Lotus Effect」
オランダのプログレメタル、サン・ケイジドの2011年作
2003年にデビュー、本作は3作目となる。ヘヴィなギターリフを乗せたアグレッシブな激しさで始まりつつ、
うっすらとしたシンセにハイトーンヴォーカルを加えた、重厚でモダンなProgMetalを展開する。
テクニカルな構築力とともに、キャッチーなメロディのフックもあり、DREAM THEATERルーツの作風としては
ヴォーカルの力量も含めてとても高品質なバンドである。アルバム後半は8パートに分かれた組曲となっていて、
コンセプト的な流れで展開するドラマティックな聴き心地。確かな演奏力と優雅なメロディアス性、
伸びやかなヴォーカルでじっくりと楽しめる、全72分という、正統派のプログレメタルの力作だ。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 重厚度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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3/8
花粉翔んで埼玉!(60)


ARKAN 「SOFIA」
フランスのゴシック・デスメタル、アルカンの2014年作
2008年にデビューして、本作は3作目。ヘヴィなギターに美しい女性ヴォーカルの歌声を乗せ、
適度にシンフォニックなアレンジや民族的な旋律も含んだ、ORPHANED LANDにも通じるサウンド。
前作に比べると女性声をメインにしたナンバーが増えているので、ほとんどゴシックメタル的な楽しめるが、
随所に低音デスヴォイスを乗せた重厚な迫力も現れる。アコースティックなパートとモダンなヘヴィネス、
アラビックな浮遊感が同居した、メリハリのある構築力と、ときにストリングスなどによるアレンジも魅力的だ。
ドラマティック度・・8 重厚度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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AGE OF TAURUS 「THE COLONY SLAIN」
イギリスのドゥームメタル、エイジ・オブ・タウラスの2018年作
2作目となる本作は、前作でのBLACK SABBATHルーツのドゥームをより正統派メタル寄りにしたスタイルで、
適度にノリのよいグルーブ感に包まれたサウンド。わりとキャッチーな歌メロにツインギターの叙情性もあって、
暗黒性は控えめで、むしろ、70年代ブリティッシュハードロックのブルージーな空気感を含んでいる。
前作に比べるとオールドなドゥーム色は薄まり、その分ミドルテンポを主体にした聴きやすさが強まっていて、
マイナーな味わいのヴォーカルも含めて、B級エピックメタルとしても楽しめる。TROUBLEのようなナンバーから、
CANDLEMASSを思わせる雰囲気まで、楽曲ごとに違った味わいもあって、ドゥーム初心者にも対応。
ドラマティック度・・8 ドゥーム度・・7 正統派度・・8 総合・・7.5
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DAUTHA 「BRETHREN OF THE BLACK SOIL」
スウェーデンのドゥームメタル、ダウサの2018年作
重厚なギターに朗々としたヴォーカルを乗せた、CANDLEMASSを思わせる正統派のエピック・ドゥーム。
ツインギターによるどっしりとした味わいに、ときにヴァイオリンが加わった優雅な感触も合わさって、
ダークで幻想的な世界観を描き出す。ヘヴイでありながらも湿り気を含んだほのかな叙情性もあって、
伸びやかなヴォーカルの表現力とともに、15分、11分という大曲も、説得力ある空気感で構築してゆく。
鳴り響くにヴァイオリンにコーラスが重なると、讃美歌ドゥームというべき荘厳な雰囲気にもなって、
キャンドルマスをシンフォニックにしたような聴き心地に。まさにクリスチャン・ドゥームメタルの力作だ。
ドラマティック度・・8 ドゥーム度・・8 重厚度・・8 総合・・8
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PRISTINE 「NINJA」
ノルウェーのヴィンテージロック、プリスティンの2017年作
ハスキーな女性ヴォーカルの歌声に、オルガンが鳴り響く、ブルージーなオールドロック。
ほどよくハードなギターに、魅力的な女性声を乗せたサウンドは、BLUES PILLSにも通じる感触で
古き良きアナログ感を漂わせながら、二人のオルガン奏者による音の厚みのあるのがポイント。
紅一点、ハイディ嬢のソウルフルな歌声は、ブルージーなバラードでは、さらにその実力を発揮、
LED ZEPPELINの女性声版というナンバーでも、実力ある歌唱がサウンドにしっかりと説得力を付加している。
メロディック度・・8 古き良き度・・9 女性Vo度・・9 総合・・8
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Lord Dying 「Poisoned Altars」
アメリカのスラッジ/ドゥームメタル、ロード・ダイングの2015年作
ヘヴィなギターにがなり立てるヴォーカルを乗せた、アグレッシブなスラッジサウンドで、
スラッシュメタル的な激しさと、怪しいドゥームメタルの空気を合わせたような雰囲気でもある。
前作に比べると、よりシンプルなヘヴィネスが強まっていて、ドゥーム色が薄まった分、
媚びの無い重厚さに包まれた、ブラッケンなオールドメタルとしても楽しめるだろう。
反面、楽曲としてのフックやウェットな妖しさの点では物足りなさも。硬派なヘヴィ・スラッジです。
ドラマティック度・・7 ドゥーム度・・7 重厚度・・8 総合・・7.5
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Palace of the King 「White Bird/Burn the Sky」
オーストラリアのストーナーロック、パレス・オブ・ザ・キングの2015年作
アナログ感たっぷりのギターにハイトーンヴォーカルを乗せ、オルガンの音色も加わった、
70年代ルーツのストーナーロック。ギターはほどよくヘヴィだがサウンドにダークさはなく、
ジャケのイメージはサイケなのだが、ロックンロールなギターやノリの良いなヴォーカルも含めて、
むしろLED ZEPPRELIN的なオールドロックの味わいが強い。基本はシンプルな聴き心地ながら、
曲によってはサイケやストーナー感触もあって、この確信犯的なアレンジセンスは心憎い。
全体的にはキャッチーな感触で、「ストーナー化したツェッペリン」的に楽しめる強力作だ。
キャッチー度・・7 アナログ度・・8 古き良き度・・9 総合・・8
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Arctic Plateau 「On a Sad Sunny Day」
イタリアのシューゲイザー・ポストロック、アークティック・プラテウの2009年作
ジャンルカ・ディヴァージリオによる一人ユニットで、うっすらとしたシンセにメロウなギター、
マイルドなヴォーカルを乗せた、メランコリックな叙情を描く。トレモロのギターフレーズとともに
Alcestあたりに通じるポストブラックの雰囲気もあるが、全体的にはメタル色は薄めなので、
繊細な叙情美に包まれた癒し系という趣。ラスト曲は、歌もの的なキャッチーな感触で、
シューゲイザーやポストブラック好きはもちろん、多くのリスナーが楽しめるだろう。
メランコリック度・・8 メタル度・・5 叙情度・・8 総合・・8
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Arctic Plateau 「Enemy Inside」
イタリアのシューゲイザー・ポストロック、アークティック・プラテウの2012年作
2作目となる本作も、クリアトーンのギターにマイルドなヴォーカルで聴かせる、
やわらかな叙情を描くサウンドは、前作よりもさらに繊細な空気感に包まれる。
メタル色は皆無化と思わせつつ、ダミ声ヴォーカルを乗せたナンバーがあったりと、
ポストブラックの感触もいくぶん残している。前作に比べると3分台の曲が多く、
全体的には比較的あっさりとした印象で、むしろポストプログレ的に楽しめるかも。
メランコリック度・・7 メタル度・・3 叙情度・・8 総合・・7.5
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SUNN O))) 「Black One」
アメリカのドローン系バンド、サンの2005年作
今作はジャケやタイトルからも窺えるように、ブラックメタルをコンセプトにした作品で、
いつものドローンな低音サウンドの中に、トレモロなギターの旋律が怪しく鳴り響き、
XASTHURのマレフィックが参加して不気味な歌声を乗せるなど、ドローン版ブラックという雰囲気に。
言われなきゃまったく分からない、IMMORTALのドローンなカヴァーも含めていつも以上にコアな内容で、
ノイジーなプリミティブ性が、暗黒に昇華したという強力な内容。ブラックもドゥームも両方好きな方であれば、
2倍楽しめる(ホントかよ?)かもしれない。わりと普通のドローン曲もありつつ、ラストはバソリー伯爵夫人をテーマにした大曲で締めくくる。
ドラマティック度・・7 ドローン度・・8 暗黒度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Kontrust 「Explositive」
オーストリアのモダンメタル、コントラストの2014年作
ヘヴィなギターにデジタリィなアレンジを加えた、インダストリアルな感触に、
男女ヴォーカルの歌声を乗せた、モダンでキャッチーなヘヴィロックを聴かせる。
楽曲は3〜4分前後とシンプルで、メタルとしてのヘヴィさを保ちながらハネるリズムと、
コミカルなポップ感が同居していて、モダンな硬質感の中にもパーカッションが鳴り響くなど、
個性的なセンスが見え隠れする。個人的には、もう少し楽曲自体に思い切った展開やフック、
ヘンテコ感があってもいいような気がするが、全体的にはわりと聴きやすいところがよいのかも。
キャッチー度・・8 モダンヘヴィ度・・8 ヘンテコ度・・7 総合・・7
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Helrunar 「:Sol I:Der Dorn Im Nebel」
ドイツのペイガン・ブラックメタル、ヘルルナーの2011年作
ツインギターのリフにダミ声ヴォーカルを乗せて激しくブラスト疾走する、
寒々しい空気感に包まれたミステリアスなブラックメタルサウンド。
激しいブラスト疾走パートは、MARDUKのような迫力で、トレモロを含んだギターリフは、
北欧のブラックメタルのような荒涼とした叙情性も感じさせる。7〜8分前後の楽曲を主体に、
物悲しい静寂パートやドイツ語による語りなども含んだ、緩急ある構成で硬派なサウントを描く。
甘すぎず暗黒過ぎない、本格派のペイガン・ブラックメタルの強力作だ。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・8 ペイガン度・・7 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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WINTERFYLLETH 「THE HALLOWING OF HEIRDOM」
イギリスのブラックメタル、ウインターフィレスの2018年作
自然崇拝をかがけたネイチャーブラックメタルを描くバンド。本作はアコースティックをメインにした作品で、
アコースティックギターのつまびきにヴァイオリンが重なり、詠唱のようなコーラスを乗せて、
ゆったりとした神秘的なフォークサウンドを聴かせる。エレキギターはもちろんドラムも入らないので、
メタル感触は皆無という点では、この手の幻想フォークが味わえるリスナー向けというべきだろう。
アルバム後半に女性声を乗せたナンバーもあるが、全体的にもう少しメリハリがないと単なるBGMになりそうzzz
ドラマティック度・・7 メタル度・・1 幻想フォーク度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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KRALLICE 「DIOTIMA」
アメリカのブラックメタル、クラリスの2011年作
2008年にデビュー、本作は3作目で、トレモロのギターと低音デスヴォイスを乗せて激しくブラスト疾走、
リズムチェンジを含む緩急ある構築力とともに、10分を超える大曲でも淡々とした叙情を描き出す。
激しくたたみかけながらも、ツインギターによるメロディックな味わいが、このバンドの最大の魅力で、
アナログ感触ただよう、こもり気味の音質も含めて、かつての北欧メロディックブラックメタルを基盤にしながら、
Wolves in the Throne Room以降の自然崇拝的な神秘性を加えて、ある意味では優雅な聴き心地である。
12分、13分という大曲も多く、全68分という長尺な感じはあるが、トレモロ好きのトレモラーな方にはお薦めです。
ドラマティック度・・8 激しさ度・・8 叙情度・・8 総合・・8
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GIGAN 「Undulating Waves of Rainbiotic Iridescence」
アメリカのテクニカル・デスメタル、ガイガンの2017年作
ギター、ベース、シンセをこなすエリック・ハースマンを中心にしたバンドで、本作は4作目となる。
のっけから10分の大曲で、ノイジーなギターに低音デスヴォイス乗せて、随所にブラストを含む激しいリズムチェンジで、
無慈悲な音の洪水と得体の知れないスケール感に包まれた、アヴァンギャルドなデスメタルを展開。
崩壊気味の構築性がサイケデリックな浮遊感にもなっていて、たたみかける暴虐性すらもスペイシーな味わいだ。
ただ激しいだけでなく、シンセやシロフォンなどによるアレンジと、プログレッシブともいえる緩急ある展開力も面白く、
先の読めないスリリングな聴き心地である。ヘンタイ気味のテクデスとしても、とても楽しめる濃密なる強力作デス。
暴虐度・・8 テクニカル度・・8 サイケデス度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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2/23
春遠からじ(46)


Virtuel 「I」
ブルガリアのプログレハード、ヴィルチュエルの2011年作
1992年にJekyll Hydeの名で結成、本作は新たにVirtuelとして再録音された作品の2019年リミックス版。
近年は八面六臂に活躍するマルチ・ミュージシャン、コンスタンティン・ジャンバゾフを中心にしたバンドで、
きらびやかなシンセアレンジにマイルドなヴォーカルを乗せた、キャッチーな味わいのメロディックロック。
クラシカルかつシンフォニックな優雅さと、適度にハードで随所に流麗なフレーズも聴かせるギターワークに、
リズムチェンジも含んだProgMetal的な構築性で、単なるメロハーという以上に美意識を感じさせるサウンドを描いてゆく。
80年代的なAORの味わいを、優雅な技巧性と厚みのあるアレンジで包み込んだような高品質なアルバムです。
2作目となる、2013年作「Conception of Perception」も、同様にメロディ充実の好作品なのでチェックすべし。
メロディック度・・8 プログレハー度・・8 優雅度・・8 総合・・8
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Seventh Wonder 「Welcome to Atlanta Live 2014」
スウェーデンのプログレメタル、セヴンス・ワンダーのライブ作。2016年作
いまや世界的にも最高レベルのProgMetalバンド。本作は2014年のアトランタでのライブをCD2枚に収録。
Disc1は、2008年の傑作「Mercy Falls」の完全再現で、美しいシンセに流麗なギターを乗せ、
テクニカルなリズムチェンジを含む展開力で、緩急あるインストパートを見事に再現。
KEMELOTでも活躍するトミー・カレヴィックの伸びやかなヴォーカルとともに聴かせる、
安定したライブパフォーマンスはさすが。Disc2には、2nd、4thからのナンバーに、
アコースティックメドレー、スタジオ録音の新曲などを収録。同タイトルのDVDも出ています。
ドラマティック度・・8 ライブ演奏・・8 テクニカル度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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ELDRITCH 「CRACKSLEEP」
イタリアのプログレメタル、エルドリッチの2018年作
デビューは1995年のベテランで、本作ですでに11作目。今作はジャケからしてダークな雰囲気だが、
シンフォニックで耽美なイントロから始まりつつ、ヘヴィなギターと物悲しいシンセアレンジに、
ハイトーンヴォーカルを乗せて、重厚でドラマティックなプログレ・パワーメタルを聴かせる。
メランコリックな叙情性にはゴシックメタル的な感触もありつつ、美麗なシンセワークにリズムチェンジを含む、
知的なプログレ性も覗かせる。流麗なギターとシンセが絡みつつ、適度な激しさを含んだ展開力と、
ベテランらしい説得力ある力強さで、ダークなシンフォニックメタルとしても楽しめる力作だ。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 重厚度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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DARK AGES 「A CLOSER LOOK」
イタリアのプログレメタル、ダーク・エイジスの2017年作
デビューは1991年というベテランで、本作はおそらく4作目。女性シンセ奏者を含む5人編成で、
美麗なシンセワークにメロディックなギターを乗せ、変拍子を含むテクニカル性と
ほどよいマイナー臭さ包まれた、EVIL WINGSあたりにも通じるProgMetalサウンド。
垢抜けないヴォーカルの歌声に、いくぶん唐突な展開力などにもB級らしさを漂わせるが、
随所に聴かせる泣きのギターにオルガンを含むプログレ的なシンセ、女性ヴォーカルを加えた
叙情ナンバーなども悪くない。イタリアらしい混沌とした味わいに包まれた好作品だ。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 イタリア度・・8 総合・・7.5
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MONNALISA 「IN PRINCIPIO」
イタリアのプログレメタル、モナリザの2017年作
オルガンを含むシンセに適度にヘヴィなギター、イタリア語のヴォーカルを乗せた、
シアトリカルな味わいのハードプログレ風味のサウンド。漂わせるローカルな翳りと
ウェットなドラマ性に包まれた世界観は、Black Jeaterあたりに通じるものもある。
変拍子によるテクニカルな味わいも覗かせつつ、うっすらとした幻想性とともに、
メタリック過ぎない感触なので、むしろハードなシンフォニックロックとしても楽しめる。
プログレらしいシンセワークとともに、ほどよくマイナーな味わいが魅力の好作品です。
ドラマティック度・・8 幻想度・・8 イタリア度・・8 総合・・7.5
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Ivory Moon 「Human Nature」
イタリアのシンフォニックメタル、アイヴォリー・ムーンの2007年作
男女Voにシンセを含む7人編成で、美麗なシンセアレンジに男女ヴォーカルの歌声を乗せた優美なサウンド。
オペラティックなソプラノ女性ヴォーカルに、クラシカルなシンセとクサメロ気味のギターと、
マイナー臭いながらも優雅な世界観を描くところは好感が持てる。ProgMetal的な展開力もありつつ、
ドタバタと雑多な印象だった前作に比べて、楽曲もいくぶんスタイリッシュにまとまってきた。
メロディのフックとシンフォニックメタルとしての幻想性が、サウンドにエピックな魅力を付加していて、
垢抜けない適度にB級な味わいが、やわらかな聴き心地になっている。ほどよくマイナーな好作品です。
ドラマティック度・・8 シンフォニック度・・7 幻想度・・8 総合・・7.5
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Poverty's No Crime 「Spiral Of Fear」
ドイツのプログレメタル、ポヴァティズ・ノー・クライムの2016年作
1995年にデビューのベテランで、本作は2007年作以来、9年ぶりの7作目となる。
ほどよくヘヴィなギターに美しいシンセを重ねた重厚な感触に、知的な構築力で描かれる、
ドラマティックなサウンドはこれまで通り。キャリアのあるバンドらしいどっしりとした味わいで、
テクニカル過ぎないスタイリッシュなセンスで聴かせる作風。楽曲ごとのインパクトはさほどないものの、
VANDEN PLASなどと同様に、全体の流れでじっくりと楽しめる。ただ、もう少し盛り上がる部分が欲しいかな。
メロディック度・・8 テクニカル度・・7 スタイリッシュ度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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WUCAN 「REAP THE STORM」
ドイツのヴィンテージロック、ウーカンの2017年作
前作もPURSONやBLOOD CEREMONYなどに通じる、70年代回帰型のヴィンテージな好作であったが、
2作目となる本作では、さらなる古めかしいサイケ感が強まっていて、アナログ感たっぷりのギターに
ハスキーな女性ヴォーカルの歌声を乗せて、のっけから10分におよぶヴィンテージ・ロックが炸裂。
フルートにギター、シタール、テルミンまでこなす、フランシス嬢のヴォーカルも、前作以上にはじけていて、
Jethro Tullばりに鳴り響くフルートに、どこかエキセントリックな世界観はサイケなプログレファンにも対応。
後半は、21分、18分というユルめの大曲で、これだけでもアルバム1枚くらいのボリュームという。全73分の力作。
ヴィンテージ度・・9 サイケハー度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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SHADYGROVE「 In The Heart Of Scarlet Wood」
イタリアのネオフォーク、シェイディーグローブの2018年作
EVENOIREの女性シンガーと、ELVENKINGのヴァイオリン奏者を中心に、SOUND STORMの女性シンセ奏者も参加。、
アコースティックギターにパーカッション、艶やかなヴァイオリンの音色に女性ヴォーカルで聴かせる、
Blackmore's Nightにも通じる、優雅でメディーヴァルなトラッド・フォークサウンド。
ロリーナ・マッケニットを敬愛するという、リシー・ステファノーニ嬢のフェミニンな歌声は、
アコースティック主体の演奏によく映えて、しっとりとした翳りを含んだ表現力にウットリとなる。
クラシカルなピアノやシンセアレンジが加わると、ゴシック・フォーク的な味わいにもなって、、
メタル色をほぼないが、FAUNなどの幻想系中世フォークが好きな方なら、とても楽しめるだろう。
幻想フォーク度・・8 メタル度・・1 女性Vo度・・8 総合・・8
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HEMELBESTORMER 「A RING OF BLUE LIGHT」
ベルギーのポスト・ドゥームメタル、ヘメルベストーマーの2018年作
ドローン気味の重厚なギターにうっすらとしたシンセを乗せ、スローテンポのドゥームメタル感触に、
ブラッケンな禍々しさを加えたという、ミステリアスな暗黒ドゥーム&スラッジサウンド。
10分を超える大曲を主体に、随所に叙情的なパートを織り込んだり、トレモロのギターを乗せた
ポストブラック風味の感触も覗かせるなど、なかなかメリハリある構成で聴き通せる。
オールインストながら、重厚な迫力と神秘的な空気感に引き込まれる力作です。
ドラマティック度・・7 暗黒度・・8 重厚度・・9 総合・・8
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ARKONA 「KHARM」
ロシアのペイガンメタル、アルコナの2018年作
2004年にデビュー、いまやロシアを代表するエクストリーム系バンド。デビュー作のリレコーディングに続き、
オリジナルとしては8作目となるアルバム。今作はジャケからして魔女めいた妖しさを感じさせるが、
内容の方も、しわがれた声のマントラの詠唱から始まって、すでにいかがわしさがぷんぷん。
ヘヴィなギターにホイッスルやパイプの音色が絡み、スクリーム&ノーマルを使い分けるマーシャ嬢の歌声を乗せて、
ミステリアスなペイガンメタルを描いてゆく。初期に比べると、メロデスやブラックメタル寄りの感触も強まってはいるが
怨念めいた土着性はこのバンドならではで、その辺の若手バンドでは到底描けない強固な説得力に包まれている。
10分前後の大曲も多く、ときにプログレッシブで展開力のあるインストパートも充実。ダークで重厚な全74分。
ドラマティック度・・8 ペイガン度・・7 妖しく重厚度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Trelleborg  「Lands of Njord」
ロシアのペイガンメタル、トレルボーグの2010年作
シンセによる美麗なイントロから、クサメロのギターと勇壮なヴォーカルにダミ声を交え、
ほどよくローカルでエピックな味わいの、シンフォニックなペイガンメタルを聴かせる。
どっしりとしたミドルテンポから、ブラスト入りで激しく疾走するナンバーまで、
全体的にシンセのメロデイが前に出ているので、わりとキャッチーな感触で楽しめて、
女性奏者が奏でるアコーディオンの音色を乗せた、FINNTROLLを思わせる愉快な雰囲気もある。
TURISASなどにも通じる勇壮な部分はなかなかよい感じなので、今後は音の説得力を高めていって欲しい。
ドラマティック度・・7 ペイガン度・・7 重厚度・・7 総合・・7
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2/8
明日は鶴見でKOOL LIPSライブ!(34)


MARDUK 「VIKTORIA」
スウェーデンのブラックメタル、マルドゥクの2018年作
1992年にデビュー、名実ともにスウェディッシュ・ブラックメタルを代表するバンドの14作目。
第二次世界大戦をテーマにしたアルバムで、オールドスタイルのギターリフにダミ声ヴォーカルを乗せ、
激しいブラスト疾走とともに激烈な突進力で、無慈悲なまでの正統派ブラックメタルを聴かせる。
ベテランならではの音の迫力が強固な説得力となっていて、どっしりとしたスローパートなども含めて、
ダークで荘厳な空気感に包まれる。楽曲は3〜4分前後とシンプルで、全33分という潔さ。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・8 荘厳度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Azusa 「Heavy Yoke」
アメリカ&ノルウェー混合のテクニカルメタル、アズサの2018年作
The Dillinger Escape Planのベース、リアム・ウィルソンとEXTOLのギター、ドラムによるユニットで、
スラッシーな疾走感に、スクリームも使い分ける倦怠の女性ヴォーカルの歌声を乗せ、
緩急あるリズムチェンジとともに、激しくもエキセントリックなプログレッシブ・メタルを描いてゆく。
メタリックな硬質感と薄暗い浮遊感を同居させた、いわば多重人格的な作風で、
ヘンタイ系のテクニカルメタルでありながら、プログレッシブで知的な翳りも含んだサウンドは、
モダンなスタイリッシュ性も感じさせる。楽曲自体は3〜4分前後と難解になり過ぎず、全34分とわりとあっさり。
静と動の唐突な二面性においても、何故かキャッチーな聴き心地なのが面白い。この路線での深化に期待。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・8 激しく倦怠度・・9 総合・・8
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Augury「Illusive Golden Age」
カナダのテクニカルデスメタル、オーガリーの2018年作
プログレッシブなテクデスとして素晴らしい傑作だった、2009年作以来の、9年ぶりとなる3作目で、
メロディックなギターフレーズを含ませつつ、デス声を乗せた激しいブラスト疾走へとたたみかける、
濃密なサウンドは健在。6弦ベーシストによるタッピングなどの技巧プレイも随所に覗かせつつ、
緩急あるリズムチェンジとともに、激しいだけではない知的な構築性を感じさせる点では、
プログレッシブメタル、テクニカルメタルのリスナーにも受けるだろう。ヘヴィすぎない聴きやすさと、
ほどよくメロディアスで、しっかりテクニカルな激しさを併せ持つ、とても高品質なアルバムデス。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 知的度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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CRUACHAN 「NINE YEARS OF BLOOD」
アイルランドのフォークメタル、クルアチャンの2018年作
1995年デビューと、この手のバンドではベテラン。本作は8作目で、男性Voとなっての3作目。
土着的なギターリフにうっすらとしたシンセとダミ声ヴォーカルを乗せ、重厚なペイガンメタルを聴かせる。
ときにブラックメタルばりの激しさも覗かせつつ、ダークでミステリアスな神秘性に包まれたサウンドで
ヴァイオリンやホイッスルの音色が鳴り響く、フォーキーな味わいもしっかりと残している。
初期のヘナチョコなクサフォークメタルとはもはや別バンド。どっしりとした硬派な音の説得力が魅力です。
ドラマティック度・・8 フォーキー度・・7 重厚度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Bellfast「Triquedraco」
日本のフォークメタル、ベルファストの2017年作
前作から7年ぶりとなる2作目で、ヴァイオリンとフルートによる優美なイントロから始まり、
朗々としたヴォーカルを乗せたメロパワ的な疾走感と、フォーキーなテイストが合わさった2曲目は、
MAGO DE OZElvenkingのようなわりとクサメロ寄りの作風で、叙情的なツインギターによる泣きの感触は
やはり日本のバンドらしい優美な味わいだ。フルートとヴァイオリンが美しいケルティックな味わいのナンバーや、
キャッチーなノリで聴かせるナンバーなど、前作以上にメロディのフックが明快なので、初心者にも楽しめるだろう。
8分に及ぶ大曲では、プログレッシブでもあるドラマティックな構築性に包まれる。音質も含めてレベルの高い力作だ。
ドラマティック度・・8 フォーキー度・・8 叙情度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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SEVENTH SON 「Arc of Infinity」
日本のメロディックメタル、セヴンス・サンの2016年作
2008年にデビュー、フルアルバムとしては3作目となる。ゲストにSAEKO(元Fairy Mirror)を迎えての、
優美なイントロ曲で幕を開け、メタリックなギターと日本人離れしたハイトーンヴォーカルを乗せ、
どっしりとした重厚さと適度な疾走感で、VIGILANTEあたりを正統派寄りにしたようなサウンドを描く。
今作では、曲によってはバックにうっすらとしたシンセアレンジも加えた厚みのある音作りで、
パワフルな疾走ナンバーからゆったりとした叙情ナンバーまで、ヴォーカルの確かな表現力で
じっくりと聴かせるクオリティがある。8分を超えるラスト曲は、プログレメタルな展開力も見事。
メロディック度・・7 パワフル度・・8 どっしり正統派度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Epitaph 「Claws」
イタリアのドゥームメタル、エピタフの2017年作
80〜90年代にかけて活動していたバンドの、2014年の復活作以来となる2作目。
正統派のギターリフとシアトリカルなヴォーカルを乗せた、Black Sabbathルーツのスタイルで、
古き良きHR的なノリに、おどろおどろしいカルトな雰囲気を漂わせたサウンドを聴かせる。
70年代風味のアナログ感と、ヘヴィ過ぎない重厚さに包まれた濃密な聴き心地で、
翳りを帯びたヴォーカルの表現力とともに、じっくりとダークな世界観を描き出す。
7〜8分前後楽曲を主体に、10分を超える大曲も含んだ、正統派ドゥームメタルの力作だ。
ドラマティック度・・8 ドゥーム度・・8 重厚度・・8 総合・・8
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Hellish Outcast 「Stay of Execution」
ノルウェーのデスメタル、ヘリッシュ・アウトキャストの2014年作
元KEEP OF KALESSINのVoが参加、ヘヴィなギターリフと低音グロウルヴォーカルを乗せて暴虐に疾走する、
ブラッケンなデスメタルサウンド。スローパートを織り込みつつ、デスラッシュ的でもあるたたみかける疾走感と、
硬質なギターの重ねには、わりとモダンなヘヴィネスも感じさせる。甘さの無いインダストリアルな無慈悲さと、
ブラックメタルをルーツにしたミステリアスなスケール感が合わさった、なかなか硬派な聴き心地といえる。
楽曲自体にこれという個性は薄いものの、重厚な迫力と暗黒の気配に包まれた強力なアルバムだ。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・8 暗黒度・・8 総合・・7.5
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Gartraada 「A Night Of Winter Solstice」
ロシアのメロディック・デスメタル、ガートラーダの2013年作
ツインギターにシンセを含む5人編成で、適度にメロディックなギターにうっすらとしたシンセ、
低音のダミ声ヴォーカルを乗せ、激しい疾走よりはミドルテンポを主体にしたサウンドを聴かせる。
デスメタル的な暴虐性というのは薄く、ツインギターによるメロディックな叙情が前に出ると、
むしろゴシックメタル的な雰囲気でも聴けたりする。アルバム後半にようやく疾走ナンバーがあるのだが、
全体的にはまったり系メロデスというべきか。もう少しインパクトか、大仰な濃密さでもあれば。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・6 楽曲・・7 総合・・7

Menhir 「Hildebrandslied」
ドイツのペイガン・ヴァイキングメタル、メンヒルの2007年作
1996年にデビュー、本作は4作目で、土着的でメロディックなギターにシンセを重ね、
ドイツ語による朗々としたヴォーカルで聴かせる、勇壮なヴァイキングメタルサウンド。
ときにダミ声ヴォーカルを乗せて疾走する、ブラックメタル的な激しさも覗かせつつ、
エピックで幻想的な空気感を描くのがこのバンドの魅力だろう。2パートに分かれた計142分の大曲では、
シンフォニックなシンセアレンジとともに、じっくりとした叙情性でスケール大きなサウンドを描き出す。
これぞゲルマンなヴァイキングメタル。再発盤のDisc2には、1996年のカセットによるデモ音源を4曲収録。
ドラマティック度・・8 勇壮度・・8 ゲルマン度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Mencea 「Dark Matter-Energy Noir」
ギリシャのプログレッシブ・デスメタル、メンセアの2008年作
ヘヴィなギターリフにシンセを絡ませ、低音デスヴォイスを乗せて疾走する重厚な迫力と、
リズムチェンジを含む知的な展開力で聴かせる、モダンでスタイリッシュなデスメタルサウンド。
適度なメロディアス性と暴虐過ぎない疾走感は、むしろメロデス的な感触でも楽しめるかもしれない。
センスのよいプログレッシブ・デスメタルという点では、EXTOLなどが好きな方にもお薦めだ。
展開にもう少し意外性が欲しい気もするが、楽曲そのものにさらに荘厳な迫力が増せば、
よいバンドになるだろう。2008年ドイツでのライブを収録したDVD付きの2枚組。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・8 重厚度・・8 総合・・8
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Blind Illusion 「The Sane Asylum」
アメリカのテクニカル・スラッシュメタル、ブラインド・イリュージョンの1988年作
のちにHEATHENに加わる、マーク・ビーデルマンを中心に、元POSSESSED、のラリー・ラロンデも参加。
スラッシーなギターリフにハイトーンのヴォーカルを乗せ、激しい疾走とリズムチェンジを多用した、
初期MEGADETHにも通じる、いわゆるインテレクチュアル・スラッシュというべきサウンド。
ラウドな音質も含めてやや荒削りながら、部分的にはMETALLICAHEATHENを思わせる部分もあり、
スラッシュメタルの激しさをテクニカルに落とし込んだ作風で、流麗なツインギターによるインストパートなども含めて、
当時としては個性的な作風であったろう。一作のみで消滅したのが惜しまれる。80年代変わり種スラッシュの裏傑作。
ドラマティック度・・7 スラッシュ度・・7 インテレクチュアル度・・8 総合・・8
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デヤン・アンゲロフ&ジャンバゾフのライナー解説書いてます!(22)


DEYAN ANGELOFF & KONSTANTIN JAMBAZOV「Ne Spirai」
ブルガリアのミュージシャン、デヤン・アンゲロフとコンスタンティン・ジャンバゾフによるユニット作品。2019年作
きらびやかでシンフォニックなアレンジに伸びやかなヴォーカルを乗せた、キャッチーな味わいのメロディックロックで、
AOR的でもあるハードポップの感触ながら、爽快なヴォーカルハーモニーが心地よく、ときに往年のTOTO
JOURNEYあたりを思わせるような雰囲気もある。楽曲そのものはわりとストレートでポップな感触ながら、
プログレやクラシックの素養を活かした繊細な音の重ねと美麗なシンセアレンジ、随所にテクニカルなギタープレイも覗かせるなど、
爽快にして濃密な味わいで、サウンドには辺境臭さはほとんど感じられない。英語版、ブルガリア語版をそれぞれ収録した2枚組仕様で、
堂々たるメジャー感に包まれたメロディックロックとしても、優れたシンガーの歌うハードポップとしても楽しめる高品質な作品だ。
メロディック度・・8 キャッチー度・・8 高品質度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Velvet Viper 「RESPICE FINEM」
ドイツのメタルバンド、ヴェルベット・ヴァイパーの2018年作
ZED YAGO時代を含め、80年代後半から90年代前半まで活動していた、女性Voフロントのメタルバンド。
ZED YAGO名義では2005年に復活作を出していたが、VELVET VIPERとしてはじつに1992年以来となる。
Jutta姐さんのハスキーな歌声を乗せた、ほどよくメロディックな正統派メタルはかつてのままで、
ジャーマンらしいウェットな湿り気を残した聴き心地が嬉しいですな。オルガンなどのシンセアレンジや
随所にメロウなギターの旋律も聴かせつつ、魔女めいた妖しさの、Juttaさんの歌声もいまなお魅力的。
ゆったりとしたスローテンポのナンバーなども叙情的な味わいで、10分を超える大曲も含めて堂々たる内容の復活作だ。
ドラマテイック度・・8 正統派度・・8 Jutta姐さん最高かよ!・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Whyzdom 「As Time Turns To Dust」
フランスのシンフォニックメタル、ワイズダムの2018年作
2009年にデビュー、この手の女性声シンフォメタルでは、なにげにキャリア10年の中堅バンド。
本作は4作目で、オーケストラルなイントロからして荘厳な雰囲気を漂わせ、ヘヴィなツインギターに
美麗なシンセとやわらかな女性ヴォーカルを乗せて、重厚にして艶めいて耽美なサウンドを描き出す。
シネマティックなドラマ性を感じさせるエピックなスケール感は、Ancient Bardsなどにも通じるだろう。
前作から加入のMarie嬢のヴォーカルも、より表現力をまとって、サウンドに優美な説得力を付加している。
ツインギターの流麗なメロディも随所に盛り込みつつ、ときに激しい疾走パートも含んだメタリックなヘヴィネスと
華麗なオーケストレーションが同居した、これぞシンフォニックメタルという壮大な世界観に浸れる力作だ。
シンフォニック度・・9 壮麗度・・9 女性Vo度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Meden Agan 「Catharsis」
ギリシャのシンフォニックメタル、メデン・アガンの2018年作
壮麗なイントロから始まり、ヘヴィなギターと美麗なシンセアレンジに、美しい女性ヴォーカルの歌声を乗せた、
重厚なシンフォニックメタルが広がってゆく。新加入のDIMITRA嬢の歌声は、パワフルな地声からソプラノまでこなす実力者で、
Nightwishのフロール・ヤンセンを思わせるところもある。サウンドの方も、ほどよくゴシック的な耽美さを含みつつ、
ときに荘厳なコーラスも加えた、EPICAにも通じるるスケール感やや、随所に流麗なギターフレーズも織り込んだ
なかなかゴージャスなアレンジで、これだという新鮮味はないが、前作から確実にレベルアップしてきたという印象だ。
シンフォニック度・・8 重厚度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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Eteddian 「Destiny」
スペインのシンフォニックメタル、エテディアンの2016年作
女性Voにシンセを含む編成で、美しいシンセアレンジに女性ヴォーカルの歌声を乗せたスタイルで、
楽曲は3〜5分前後と比較的シンプルながら、ストリングスなどを含む壮麗なシンフォニック性に
キャッチーなクサメロ感もあり、EdenbridgeAmberian Dawnなどに通じる優雅な聴き心地。
紅一点のBethany嬢の歌声は元Nghtwishのアネットタイプで、輪郭のある伸びやかな歌唱はなかなか魅力的。
オーケストラルでクラシカルなアレンジセンスとともに、ヘヴィ過ぎない優美なメロディアス性で楽しめる好作だ。
にしても、アー写のキーボード奏者のファッションセンスは。半袖白シャツ&Gジャンにマフラーって…笑
シンフォニック度・・8 壮麗度・・8 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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Icarus Dream 「Renace」
スペインのメロディックメタル、イカルス・ドリームの2016年作
正統派のギターリフに美しい女性ヴォーカルのスペイン語の歌唱を乗せた、
キャッチーな味わいのメロディックメタル。様式美系のテクニカルなギターフレーズや
うっすらとしたシンセアレンジも加えつつ、楽曲は3〜4分前後とわりとシンプルで、
ミドルテンポを主体にした古き良き感触ながら、随所にメロスピ的な疾走感も覗かせる。
メロディックな聴き心地はよいのだが、女性声の抑揚のなさも含めて、楽曲の展開的にも
もうひとつ突き抜けきらないところが惜しい。全8曲で33分というのも少し物足りないか。
メロディック度・・7 様式美度・・8 女性Vo度・・7 総合・・7
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Imperial Age 「Warrior Race」
ロシアのシンフォニックメタル、インペリアル・エイジの2014年作
壮麗なシンフォニックアレンジに包まれた重厚でドラマティックなメタルサウンドで、
男女声のクワイアを含む厚みのあるスケール感は、THERIONなどにも通じるだろう。
そのセリオンの代表曲「To Mega Therion」をカヴァーしていて、さすがにハマっている。
全体的にはシネマティックな壮大さが前に出ている分、楽曲自体のインパクトという点では
物足りなさもあるが、この手の大仰系シンフォニックメタルが好きなら普通に楽しめるだろう。
シンフォニック度・・8 壮麗度・・8 楽曲・・7 総合・・7.5
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Unshine 「ASTRALA」
フィンランドのゴシックメタル、アンシャインの2018年作
前作から5年ぶりとなる4作目で、適度にヘヴィなギターにうっすらとしたシンセを重ね、
美しい女性ヴォーカルの歌声を乗せた、メランコリックなゴシックメタルサウンド。
ややドゥーミーなナンバーや、ときに母国語の歌詞による土着的な味わいも含みつつ
Susanna嬢のはかなげな歌声がアンニュイな翳りを添えていて、ほどよくダークで耽美的、
そしていくぶんマイナーな空気感が魅力となっている。派手すぎないアレンジも好感が持て、
ラストの10分の大曲も、いかにもゴシックらしい物悲しいメランコリズムに包まれる。
ドラマティック度・・7 ゴシック度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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AURI
フィンランドのフォークロック、アウリの2018年作
NIGHTWISHのツォーマス・ホロパイネン、トロイ・ドノックリーと女性シンガー、ジョアンナ・カーケラによるユニットで、
ドラムとベースのリズムに美しいシンセを重ね、しっとりとした女性ヴォーカルの歌声で聴かせるサウンド。
ヘヴィなギターが入らないので、メタル色はほとんどないが、ストリングスによる優美なアレンジなど、
このシンフォニックで幻想的な世界観は、Nightwishのリスナーであれば、わりとすんなりと楽しめるだろう。
イーリアンパイプやホイッスルなどのケルティックな味わいと、ピアノやシンセによるクラシカルな優雅さが合わさり、
コンテンポラリーなシンフォニック・ネオフォークといった聴きやすさになっている。たおやかな女性声も魅力的だ。
シンフォニック度・・8 メタル度・・1 女性Vo度・・8 総合・・8
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Quayde Lahue 「Day of the Oppressor」
アメリカの女性声メタルバンド、クアイデ・ラヒューの2017年作
CHRISTIAN MISTRESSのギターとベースが在籍するバンドの自主制作カセットデモ音源のCD化。
オールドな味わいのギターリフにハスキーな女性ヴォーカルを乗せた古き良きスタイルで、
クリスチャン・ミストレスの雰囲気を、さらにローカルな70年代寄りにしたようなサウンド。
ややこもり気味の音質がいかにも自主制作的であるが、そのアナログ臭さも良い味わいで、
紅一点、JENNA嬢のわりとヘタウマ感のある歌声も、この路線によくマッチしている。
子供のお絵かきのようなジャケはヒドいが、内容は正統派の女性声ヴィンテージメタルです。
メロディック度・・7 正統派度・・8 古き良き度・・9 総合・・7.5
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TUATHA DE DANANN
ブラジルのフォークメタル、トゥアサ・デ・ダナンの2016年作
1999年のEPと、その再録版を収録。元音源は演奏力も含めてユルめのローカルさが面白かったが、
新たに録音された本作は、録音と演奏力の向上もあって、よりダイナミックな説得力が加わった。
フォーキーな牧歌性と、ノーマル声&デス声を絡めた、エピックな世界観に包まれたサウンドで、
随所に疾走するパートも含んだメリハリある展開力で楽しめる。バンドとしての成長が感じられる音源で、
初期のElvenkingのようなヘナチョコなクサメロ感が魅力だった、かつてのオリジナル音源と聴き比べるのもよいだろう。
ドラマティック度・・8 フォーキー度・・7 エピック度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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今年もメタルでよろしくお願いします!(11)


NovaReign 「Legends」
アメリカのメロディックメタル、ノヴァレインの2018年作
EXMORTUSのギターを中心にしたバンドで、流麗なツインギターにハイトーンヴォーカルを乗せて疾走する、
正統派のメロディック・スピードメタル。DRAGONFORCEのようなピロピロなギターで軽快に疾走するパートもありつつ
ミドルやスローテンポも含んで、9分、10分という大曲を起伏のある展開で構築するセンスもなかなかのもの。
パワフルなヴォーカルとともに演奏力もしっかりとしていて、ほどよいクサメロ感を乗せながら、
若さと勢いに溢れた疾走感はとても爽快だ。楽曲自体にこれだというインパクトはまだないが、
ドラフォーなどのクサめのメロスピが好きな方は、にんまりと楽しめるだろう濃密な作品だ。
メロディック度・・8 疾走度・・9 新鮮度・・7 総合・・8
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Cromonic 「Time」
スウェーデンのメロディックメタル、クロモニックの2017年作
シンセを含む5人編成で、メロディックなギターにハイトーンヴォーカルを乗せて疾走する
STRATOVARIUSなどにも通じる正統派のメロパワサウンド。わりとクサメロ寄りのギターフレーズに、
なかなか表現力のあるヴォーカルも含めて、この手のバンドの中でもクオリティは高い部類だろう。
全体的には、キラーチューンというほどのインパクトあるナンバーやメロに意外性がないのと、
ジャケの地味さも含めてまだまだ成長が必要だとは思うが、安定した好作ではあります。
メロディック度・・8 疾走度・・7 新鮮度・・7 総合・・7.5
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Arca Hadian 「The Prophecy」
イタリアのメロディックメタル、アルカ・ハディアンの2015年作
シンセを含む5人編成で、メロディックなギターに美麗なシンセを重ね、伸びやかなハイトーンヴォーカルで聴かせる、
SONATA ARCTICAあたりにも通じる正統派のメロパワサウンド。随所に流麗なフレーズを奏でるギターや、
中音域〜ハイトーンまで、なかなか表現力のあるヴォーカルなど、バンドとしての実力もあって、
ゆったりとしたバラードナンバーなども、じっくりと楽しめる。全体的にはクオリティはあるものの、
まとまりすぎていて新鮮味やクサメロ感は弱く、ミドルテンポのナンバーが中心なので、
疾走するキラーチューンなどがもっと欲しい。イタリアというよりは北欧のバンドっぽい音ですな。
ドラマティック度・・7 疾走度・・7 新鮮度・・7 総合・・7.5
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Amadeus 「Caminos Del Alma」
スペインのメロディックメタル、アマデウスの2009年作
ALQUIMIAにも参加するVo、Gが在籍するバンドで、ツインギターに美麗なシンセを重ね、
スペイン語による伸びやかな歌声を乗せた、優雅でキャッチーなメロディックメタル。
流麗なギターフレーズにクラシカルにシンセアレンジは、シンフォニックメタル的な優美さで、
スパニッシュらしいやわらかな叙情性は、ALQUIMIAAVALANCHにも通じる感触だ。
楽曲はミドルテンポ主体なので疾走感はさほどないが、どのナンバーもメロディのフックが心地よく、
ゆったりとしたバラード曲なども含めて、スペイン語の歌声による優しい情感に包まれた聴き心地は、
激しいメタルが苦手な方にも楽しめるだろう。スパニッシュなクサメロ感も実に日本人好みの好作品だ。
メロディック度・・9 優雅度・・9 スパニッシュ度・・8 総合・・8
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IN VAIN 「Currents」
ノルウェーのプログレッシブ・デスメタル、イン・ヴェインの2018年作
モダン化したSolefaldという力作であった前作に続き、4作目となる本作はテクニカルな展開力と、
低音デスヴォイスを乗せたダークな迫力が、寒々しいノルウェイジャンな空気感と融合した、
重厚でプログレッシブなサウンドが広がってゆく。かつての北欧メロデス的なギターフレーズとともに、
ときにノーマル声のヴォーカルを乗せ、ゴシック的でもあるメランコリックな叙情性も随所に覗かせる。
北の大地を感じさせる神秘性と、どっしりとしたヘヴィネスが合わさりながら、メロディックなフックもある、
その激し過ぎないバランスも絶妙だ。ペイガンな雰囲気と荘厳なスケール感も併せ持つ、強力作です。
ドラマティック度・・8 メランコリック度・・8 重厚度・・8 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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Arstidir Lifsins 「Vapna Laekjar Eldr」
アイスランドのペイガン・ブラックメタル、アルスティダー・リフシンズの2012年作
2010年にデビュー本作は2作めとなる。波の音とヴァイオリンによる物悲しいイントロから、
土着的なギターの旋律にダミ声ヴォーカルを乗せた、寒々しいペイガンメタルが広がってゆく。
アコースティックギターにヴァイオリンが重なる叙情性と、神秘的な幻想性が合わさった
本格派のペイガニズムに包まれた空気感に、激しいブラスト疾走によるブラックメタル感触も覗かせる。
8〜14分の大曲を主体に、硬派な重厚さと壮大なドラマ性に、フォーキーなトラッド感触を盛り込んだ、
全77分の力作です。ジャケの感じが次作とよく似ているので間違えないように。笑
ドラマティック度・・8 ペイガン度・・9 神秘的度・・9 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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The Vision Bleak 「The Unknown」
ドイツのゴシック・フォーク・ブラックメタル、ヴィジョン・ブレイクの2016年作
EMPYRIUM、EWIGHEIMのメンバーによる二人組ユニットで、2003年にデビューして本作で6作目となる。
うっすらとしたシンセにメロウなギターの旋律、マイルドなヴォーカルを乗せたメランコリックなサウンドで
ときにダミ声ヴォーカルに、激しめの疾走感も含んだ、フォーク・ブラック的な味わいもある。
神秘的な土着性に包まれながらも、わりとキャッチーなノリのゴシックロックなナンバーや、
逆にどっしりとしたペイガンメタル風味も覗かせるなど、ユニットとしての懐の深さを感じさせる。
結果として、プログレ受けしたEMPYRIUMに近い、知的なフォーク・ゴシックが楽しめる好作といえる。
ドラマティック度・・8 メランコリック度・・8 フォークゴシック度・・8 総合・・8
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Winterfylleth 「THE DARK HEREAFTER」
イギリスのブラックメタル、ウインターフィレスの2016年作
トレモロのギターリフを乗せて激しく疾走する、Wolves in the Throne Roomなどを思わせるスタイルで、
暴虐性よりも神秘的な空気感をまとわせた、いわゆるネイチャー系ブラックメタルサウンド。
ダミ声ヴォーカルを乗せてブラスト疾走しつつ、うっすらとしたシンセと土着的なギターフレーズが、
涼やかな耳心地になっていて、激しくとも叙情的な味わいで楽しめる。ときにスローなパートも織り込んで
13分という大曲を幻想的に構築するところは、実力的にもWolves in the Throne Roomに引けを取らない。
トレモロのブラスト好きはにんまりでしょう。自然崇拝系のポストブラックとしても鑑賞できる力作です。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・7 神秘的度・・8 総合・・8  過去作のレビューはこちら
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ZHRINE 「Unortheta」
アイスランドのブラックメタル、ズフリンの2016年作
ツインギターのトレモロのリフを乗せ、スローテンポでタメつつ、激しくブラスト疾走を開始、
低音のデスヴォイスによるダークな暴虐性と、荒涼とした空気感が同居したサウンド。
ときにポストブラック寄りの寒々しい叙情性も覗かせつつ、基本はブラッケンな闇に覆われた激しさで、
無慈悲な迫力でたたみかける。スローテンポから激烈なブラストへの移行は、むしろデスメタル的でもあり、
BEHEMOTHMARDUKばりの重厚な圧殺感に包まれる。メロディックな要素は薄いが硬派なの強力作だ。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・8 荒涼度・・8 総合・・7.5
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ONI 「Ironshore」
カナダのテクニカル・デスメタル、オニの2016年作
木琴シンセ奏者を含む編成で、せわしないリズムチェンジに硬質なギターフレーズを乗せ、
低音デスヴォイスによるブルータルな感触が合わさった、カオティックコア風味のサウンド。
ノーマルヴォイスも交えつつ、モダンなヘヴィネスとテクニカルメタルとしての知的な構築力に、
シロフォン・シンセによるデジタルな音色が加わって、不思議な味わいのテクニカルデスを構築している。
全体的に濃密なテクニカル性で、11分の大曲など、随所にプログレッシブな雰囲気も覗かせる。
映像で見ると、木琴シンセをどのように演奏しているかが分かるので、動画で検索してください。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・8 テクニカル度・・8 総合・・7.5
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Aura Shining Green「Green Man And The White Witch」
フィンランドのネオフォーク、オーラ・シャイニング・グリーンの2016年作
うっすらとしたシンセにマイルドな男性ヴォーカルを乗せ、ゆったりとした静謐感に包まれた
アンビエントなネオフォークを聴かせる。アコースティックギターの弾き語りによる素朴な感触と
ピアノやフルートなどのしっとりとした叙情性で、ネイチャーな北欧の空気を描き出す。
曲によってはエレキギターも加わって、ゴシックフォーク的な物悲しさも感じさせる。
それぞれにタイトルの付けられたCD2枚組で、Disc2では、ヴァイオリンやチェロも加えた、
牧歌的な叙情とともに、派手さはないが幻想的なフォークサウンドが楽しめる。
ドラマティック度・・7 涼やか度・・8 物悲しい度・・8 総合・・7
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