〜HEAVY METAL CD REVIEW 2025 by 緑川 とうせい
★2025年に聴いたメタルCDレビュー
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3/13
ペイガン&フォークメタル(73)
Beyond The Black
ドイツのシンフォニックメタル、ビヨンド・ザ・ブラックの2023年作
2015年にデビューし、5作目となる本作は、セルフタイトルの作品となった。メタリックなギターにハスキーな女性ヴォーカル、シンフォニックなアレンジを重ねたスタイルで、ほどよくキャッチーでヘヴィなメタルサウンドを展開。
ジェニファー嬢の歌声は、パワフルさと伸びやかさがあり、ときにアコースティックを含む優美なパートから、重厚なメタル感触のナンバーまで、楽曲をあでやかに彩っている。
楽曲的には、新鮮味やインパクトという点では物足りなさはあるが、メロディックなフックは随所に感じられ、全体的に安定したレベルの高さで楽しめる。
ドラマティック度・7 重厚度・8 女性Vo度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Witchcraft 「Cinema」
ロシアのゴシックメタル、ウィッチクラフトの2018年作
2008年にデビューし、4作目となる。ヘヴィなギターにシンセを重ね、艶めいた女性ヴォーカルで、インダストリアルな硬質感と妖しい耽美性が同居したサウンドを描く。
ロシア語による男性ヴォーカルを加えたナンバーもあって、ほどよくキャッチーなノリと男女Voのゴシック・ハードロック的な感触が合わさり、シンフォニックなシンセアレンジも含めて、なかなか重厚な聴き心地。
楽曲は3〜4分前後で、ドラマティックな展開はあまりなく、わりとストレートではあるが、ヴァイオリンが鳴り響くナンバーなどは、美しい女性声とともにしっとりと楽しめる。
ドラマティック度・7 ゴシック度・7 女性Vo度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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LADUSHKA (Ладушка)「A HOUSE FULL OF HAPPINESS(Счастья Полон Дом!)」
ロシアのフォークメタル、ラドゥースカの2021年作
2015年にデビューし、3作目となる。女性Vo、女性ドムラ奏者を含む編成で、やわらかなアコーディオンをギターに重ね、ロシア語の女性ヴォーカルに、素朴なドムラのつまびきも加わり、優美なフォークメタルを聴かせる。
ツインギターによるメタリックなヘヴィネスと、コケティッシュな女性ヴォーカルとのコントラストも鮮やかで、優雅な土着性と重厚なメタル感をしっかりと同居させている。
激しすぎないサウンドは、ロシアン・フォークメタル初心者にも対応。ヘヴィで優雅なサウンドに浸れる逸品です。
ドラマティック度・8 フォーキー度・8 優雅度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Plamya V Mas (Пламя В Нас) 「Times (Времена)」
ロシアのフォークメタル、プラミア・V・マスの2020年作
美女Voを擁する、Rvi Mekha! (Рви Меха!)が改名したバンドで、メタリックなギターにアコーディオンの音色、ロシア語のなよやかな女性ヴォーカルとともに疾走する、優雅なフォーク・メロスピを展開。
フルートやヴァイオリンも加えつつ、フォーキー過ぎない聴きやすさがあって、女性声の艶めいた歌声も魅力的で、楽曲は4分前後と比較的シンプルながら、キャッチーな聴きやすさで楽しめる。
現バンド名で、2017年の1st「SKYLARK (Жаворонок)」も再発されているので、そちらも女性声フォークメタラーは必聴である。
ドラマティック度・8 フォーキー度・7 女性Vo度・8 総合・8
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Alkonost 「Tales of Wanderings」
ロシアのペイガンメタル、アルコノストの2015年作
本作は、2013年作の再録&英語版アルバムで、美麗なシンセをギターに重ね、美しい女性ヴォーカルにデスヴォイスが絡む、優雅でシンフォニックなペイガンメタルを展開する。
新加入のKsenia嬢のコケティッシュな歌声は伸びやかに魅力的で、英語歌詞なので辺境臭さは控えめ、再録のためか演奏面もいくぶんスタイリッシュになっている。
ほどよく叙情的なギターと厚みのあるシンセアレンジ、可憐な女性ヴォーカルで、ロシアン・ペイガンメタルの初心者にも聴きやすい逸品です。
ドラマティック度・8 ペイガン度・8 女性Vo度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Alkonost 「Ведомые Ветром」
ロシアのペイガンメタル、アルコノストの2021年作
2000年にデビュー、本作は10作目となる。美麗なシンセによるイントロから、叙情的なギターにロシア語の艶めいた女性ヴォーカルを重ね、優美な土着性に包まれたなサウンドを構築。
初期から比べると、アレンジがずいぶんスタイリッシュになり、魅力的な女性声を乗せた壮麗な感触は、フォーキーなシンフォニックメタルとしても鑑賞できる。
物語的なコンセプトもあるのだろう、エピックな神秘性を描き出すサウンドの説得力も見事で、どっしりとしたスローテンポのナンバーでも、Ksenia嬢の表現力あるヴォーカルが光る。
名実ともに女性声ロシアン・ペイガンメタルの代表格というべき、堂々たる傑作である。
ドラマティック度・8 ペイガン度・8 女性Vo度・9 総合・8.5
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Smorodina Reka 「Предвестье」
ロシアのペイガン・フォーク、スモロディナ・レカの2021年作
元Imperial Age、Grailight、Рарогъ、Zmey Gorynichなどで活躍する女性シンガーによるバンドで、アコースティックギターにうっすらとシンセを重ね、ロシア語の艶めいたヴォーカルで幻想的なぺイガン・フォークを聴かせる。
艶やかなヴァイオリンにシンフォニックなシンセアレンジ、2人の女性バックヴォーカルによる厚みのあるサウンドで、随所にドラムも加わって、単なるネオフォーク以上のダイナミクスも感じさせる。
メタル感触はほぼないが、ラスト曲にはメタルバージョンを1曲収録。シンフォニックなペイガン・フォークとして、壮麗な味わいで楽しめる力作です。
幻想度・8 フォーキー度・8 女性Vo度・8 総合・8
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SMUTA (Смута) 「THE TIME OF TROUBLES (Время беды)」
ロシアのフォークメタル、スムタの2018年作
2007年にデビュー、6作目となる。なにやら物騒なジャケであるが、メタリックなギターリフにフルートの音色、武骨なダミ声ヴォーカルに艶めいた女性ヴォーカルが重なり、ほどよく激しいフォークメタルを聴かせる。
ときにクサメロ感をまじえたギターフレーズと美麗なシンセアレンジによるシンフォニックな感触し、美しい女性ヴォーカルを乗せて疾走する、フォーク・メロスピ風味も覗かせる。
迫力あるデスヴォイスによるアグレッシブな重厚さと、優美なフルートの音色が響き渡る土着的性が合わさり、男女Voのフォークメタルとしての世界観もしっかりしている。
女性ヴォーカルをメインにしたナンバーもあり、全体的にも優雅で神秘的なペイガン・フォークタルが味わえる強力作です。
ドラマティック度・8 フォーキー度・7 優雅で重厚度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Pagan Reign 「Art of The Time」
ロシアのペイガンメタル、ペイガン・レインの2019年作
2002年にデビュー、2006年までに4作を残して消えるも、2018年に復活し、本作は6作目となる。
土着的なギターフレーズにシンセを重ね、牧歌的なドムラやフルートの音色にデスヴォイスも加え、随所に疾走感を含んだ辺境的なペイガンメタルを展開する。
マンドリンのような優雅なトレモロを奏でるプサルタリーやトムラの響きと、武骨なヴォーカル、クサメロ感あるギターのコントラストも面白く、勇壮なフォークメタルとしても楽しめる。
キャリアのあるバンドらしいどっしりとした説得力と、神秘的な土着性が融合して、激しさと重厚さの緩急ある展開力とともに、聴きごたえがある力作に仕上がっている。
ドラマティック度・8 フォーキー度・8 辺境度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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TROLL ORCHESTRA (Оркестръ Тролля) 「TURBO RETRO (Турбо Ретро)」
ロシアのフォークメタル、トロル・オーケストラの2015年作
TROLL BENDS FIR(Тролль Гнёт Ель) のメンバーによるプロジェクトで、2013年にデビューし、2作目となる。
優雅なアコーディオンに、素朴なバラライカのつまびき、ときにトランペットやチューバも加わり、野太いダミ声ヴォーカルとともに、武骨で軽やかなフォークロックを聴かせる。
歪んだギターが入らないのでメタル感触はさほどなく、軽快に疾走しつつもアコーディオンの音色などが愉快な味わいで、メタル色のないKorpiklaaniという感じでも楽しめる。
楽曲は2〜3分前後と、ストレートでライトな聴き心地。重厚さや濃密さはあまりないので、酒飲み系フォークロックが好きな方へ。
ドラマティック度・7 フォーキー度・8 メタル度・6 総合・7.5
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STOZHAR (Стожар)「Ни Шагу Назад /No Retreat」
ロシアのフォークメタル、ストズハーの2013年
アコーディオンの音色をギターに重ね、ダミ声ヴォーカルとともに激しく疾走する、アグレッシブなフォークメタルサウンド。
母国語による朗々としたノーマルヴォイスもまじえ、ラウドな荒々しさと土着的なクサメロ感が同居した、辺境らしい空気に包まれつつ、随所に優美なシンセアレンジやヴァイオリンなども加わって、優雅な叙情も覗かせる。
楽曲は3〜4分前後とわりとシンプル。次作からは女性シンガーが加わるが、本作の時点ではまだB級という印象。全34分のデビュー作。
ドラマティック度・7 フォーキー度・7 辺境度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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SEVERHIE VRATA (Северные Врата) 「Prau/Правь」
ロシアのペイガンメタル、セヴァーハイ・ヴラタの2003年作
1998年にデビューし、3作目。女性シンセ奏者によるシンフォニックなアレンジをギターに重ね、ロシア語によるマイルドなヴォーカルとともに、ほどよくキャッチーなペイガンメタルを展開。
アコーディオンの音色などフォークメタル的な優雅さも覗かせつつ、なんとなくヘタウマの歌声と牧歌的なクサメロ感とともに、辺境的なシンフォニックメタルとしても楽しめたりする。
楽曲はどれも3分前後と、わりとあっさりしていて、盛り上がりそうで突き抜けないという、その中庸感も辺境らしい味わいか。
ドラマティック度・7 ペイガン度・7 叙情度・7 総合・7
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Eluveitie 「Live At Masters Of Rock」
スイスのフォークメタル、エルヴェイティのライブ。2019年作
2019年チェコの「マスターズ・オブ・ロック・フェスティヴァル」でのステージを収録。同年作「Ategnastos」を中心に、過去作からのナンバーを含む15曲を収録。
女性フィドル、ハーディーガーディ奏者を含む9人編成で、メタリックなギターに咆哮するデスヴォイス、ホイッスルやフィドルの音色とともに激しく疾走、女性ヴォーカルの歌声とともに、アグレッシブなフォークメタルを展開する。
シンセを用いずに、ツインギターと民族楽器で、これほど厚みのあるサウンドをライブで再現するのは圧巻で、ハーディーガーディとフィドルの優雅な絡みや、シンガーのファビエンヌによるハープの音色も随所に美しい。
メロデスばりの激しさと本格派フォークメタルの土着感を融合し、スタイリッシュに仕立てたという、強力なライブが楽しめる。、
ライブ演奏・8 アグレッシブ度・8 重厚度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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KerecsenSolyom 「Aquileia Ostroma」
ハンガリーのペイガンメタル、ケレッセンソルヨムの2010年作
ツインギターにフルート、女性シンセ奏者を含む7人編成で、優雅でオーケストラルなイントロから、フルートやチェンバロの音色に、クサメロ感あるギターとダミ声ヴォーカルで、勇壮で辺境的なペイガンメタルを聴かせる。
メディーヴァルな土着感と、ラウドなマイナー臭さが合わさって、ほどよい激しさも覗かせながら、フォーキーな優雅さに包まれつつ、わりと愉快に楽しめる。
ときに女性コーラスも加わって、やわらかなフルートの音色とともに、中世の空気を思わせる幻想性もよろしい。
ラスト曲ではトロンボーンやホルン、トランペットのブラスが加わり、激しい疾走感にハーディ・ガーディが鳴り響くという、ごった煮感も面白い。
全31分という短さが物足りないが、優雅でヘンテコな辺境ペイガンメタル好きはどうぞ。
ドラマティック度・8 ペイガン度・8 辺境度・8 総合・7.5
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Svartanatt 「Starry Eagle Eye」
スウェーデンのヴィンテージロック、スヴァータナットの2018年作
オールドなギターにオルガンを重ね、かすれた味わいのヴォーカルとともに、70年代ルーツのヴィンテージハードロックを聴かせる。
ブルージーな感触のギターは随所に叙情的なフレーズも奏で、やわらかなオルガンを含む感触は、70'sブリティッシュロック好きの方にも対応。
スローテンポのナンバーでの哀愁を感じさせる叙情などは、むしろプログレリスナー向けで、ときに北欧らしい涼やかな空気感にも包まれる。
全体的にもハード過ぎない作風で、サイケやブルーズの要素を優雅なオールドロックで包み込んだというべき逸品です。
ドラマティック度・8 ブルージーな叙情度・8 ヴィンテージ度・9 総合・8
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Witchgrave
スウェーデンのメタルバンド、ウィッチグレイヴの2013年作
バンド名からしてサタニックなメタルサウンドを想像するが、オールドなギターにダミ声ヴォーカルを乗せて、1曲目は初期のMETALLICAにも通じる疾走感あるサウンド。
その後は、ほどよく叙情的なツインギターを盛りこみつつ、ENFORCERなどを思わせる、ヨーロピアンなヴィンテージメタルとしても楽しめる。
ヴォーカルのダミ声がややうるさいのだが、曲によっては、Motorhead風だったりもして、80年代ルーツのダーティなメタル感が悪くない。
新鮮味はほぼ皆無であるが、80年代ルーツのオールドメタルが全開だ。全31分という短さもいっそ潔い。
ドラマティック度・7 疾走度・7 ヴィンテージ度・8 総合・7
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2/28
メタル春の足音(57)
The Night Flight Orchestra 「Give Us The Moon」
スウェーデンのメロディックロック、ザ・ナイト・フライト・オーケストラの2025年作
70〜80年代のクラシックロックを蘇らせることを旗印に、SOILWORKのビョーン・ストリッド、ダーヴィド・アンデション、ARCH ENEMYのシャーリー・ディアンジェロらにより結成、2012年にデビューし7作目となる。
2022年にダーヴィド・アンデションが死去、本作からSOILWORKのラスムス・エーンボーンが加入し、2人の女性コーラスを含む8人編成となった。
空港のアナウンスのイントロから、きらびやかなシンセをギターに重ねて、伸びやかなヴォーカルとともキャッチーで爽快なサウンドが広がる。
JOURNEYなどを思わせる、80年代風味のメロディックロックであるが、巧みなギターソロも随所に見事で、BOSTONやSURVIVORなど、哀愁に包まれた往年のハードポップスタイルとウェットなメロディアス性が耳心地よい。
プログレバンドのVALINOR'S TREEで活躍するシンセ奏者のセンスも素晴らしく、TOTOなどに通じるポップ性から、ASIAのような優雅なシンフォニック性と、それぞれの楽曲を鮮やかに彩っている。
YESとJOURNEYが合体したような華麗なラスト曲まで、古き良きメロディックロックの理想郷というべきサウンドが味わえる傑作だ。日本盤ライナーは緑川です。
メロデッィク度・8 キャッチー度・9 80'sロック度・9 総合・8.5 過去作のレビューはこちら
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Candlemass 「Sweet Evil Sun」
スウェーデンのドウームメタル、キャンドルマスの2022年作
1986年にデビュー、2012年作を最後に解散を示唆するも、シンガーにマッツ・レヴィンを迎えてバンドは2016年に再び復活、2作のEPを残したのち、バンドには初代シンガーのヨハン・ラングクイストが加わり、2019年に12作目を発表した。
それに続く13作目の本作も、アナログ感たっぷりのギターにほのかな叙情を漂わせ、ややダーティなヴォーカルとともに、最初期のスタイルに回帰したような古き良きドゥームメタルを聴かせる。
メサイア・マーコリンの加入した2作目よりも、さらにオールドな雰囲気かもしだしていて、ザラついたギターサウンドは、ときにBLACK SABBATHを思わせる。
これぞドゥームタル!という聴き心地であるが、反面、エピックドゥームとしてのドラマティックな雰囲気はやや薄まって、個人的には痛しかゆしか。
ドラマティック度・7 ドゥーム度・8 エピック度・7 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Hallas 「Isle Of Wisdom」
スウェーデンのヴィンテージハードロック、ハラスの2022年作
2017年にデビュー、3作目となる本作も、オールドなギターにオルガンやムーグシンセを重ね、URIAH HEEPにも通じるヴィンテージなハードロックを聴かせる。
ゆったりとしたユルめの叙情性に包まれつつ、随所にリズムチェンジを含む展開力、鳴り響くムーグシンセなどプログレ寄りの感触もあるので、北欧プログレハードロックとしても楽しめる。
伸やかなヴォーカルもパワフル過ぎない味わいがあって、70年代ルーツのオールドなロックサウンドによくマッチしている。
ドラマティックな展開のラスト曲も含めて、叙情的なギターの旋律にオルガンが重なるスタイルが好きなら、間違いなく気に入るだろう。
ドラマティック度・8 ヴィンテージ度・8 叙情度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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TRIAL 「Feed The Fire」
スウェーデンのメタルバンド、トライアルの2022年作
2011年デビューし、4作目となる。前作は、ツインギターにハイトーンヴォーカルを乗せて疾走するメロパワスタイルに、エピックなドラマ性を内包したサウンドで、ヨーロピアンな叙情に包まれる。
ときに、初期IRON MAIDEN風や、JUDAS PRIESTなどへのリスペクトも感じさせつつ、くぐもった湿り気は北欧のバンドらしく、80年代ルーツの激しすぎないメタル感触が耳に心地よい。
随所に疾走パートをまじえながら、リズムチェンジを含む展開力で、初期ENFORCERなどが好きな方にもお薦め。
ラストはエピックドゥームメタル風の9分の大曲でどっしりとした聴き応えがある。ボーナスには、Fleetwood Macと、Black Sabbathのカヴァーを収録。
ドラマティック度・8 ヴィンテージ度・8 叙情度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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DARK FOREST 「Oak, Ash & Thorn」
イギリスのエピックメタル、ダーク・フォレストの2020年作
2009年にデビューし、5作目となる。川のせせらぎにギターを重ねたイントロから、叙情的なツインギターとジェントルなヴォーカルを軽快なリズムに乗せて、トラディショナルなメタルサウンドが広がってゆく。
ときにネイチャーなケルト風味を含んだギターの旋律や、ほどよくキャッチーな歌メロなど、全体的にも激しさよりも優雅な耳心地で、アナログ感たっぷりのオールドメタルが楽しめる。
曲によっては、FALCONERのような勇壮な土着感や、ゲイリー・ムーア的な哀愁も覗かせるなど、ヴィンテージなメタル好きから、ブリティッシュなハードロックファンにも対応。
12分に及ぶどっしりとしたドラマティックなタイトルナンバーや、アイリッシュな叙情性、パワフルなエピックメタルナンバーと、楽曲も充実の強力作です。
ドラマティック度・8 エピック度・7 オールドメタル度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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MAGNUM 「The Monster Roars」
イギリスのドラマティック・ハード、マグナムの2022年作
1978年デビューのベテランバンド、2002年の再結成後は旺盛な活動を続けていて、本作は通算21作目となる。
ほどよくハードなギターに優美なピアノやオルガンを含むシンセ、ボブ・カトレイの枯れた味わいのヴォーカルで、英国らしい哀愁の叙情に包まれたサウンドを描き出す。
今作はウェットな翳りを含んだナンバーも多く、メロウなギターソロやクラシカルなピアノやストリングスによる優雅なアレンジも、随処で楽曲をじわりと盛り上げる。
楽曲は3〜5分前後と、ほどよくシンプルでストレートだが、ブラスを用いたキャッチーなナンバーから、どっしりと重厚なドラマ性まで、どこを切っても英国らしさに包まれる。
たとえ新鮮味はなくとも、伝統のスタイル守り続けるバンドの強固なスタンスには感服する。
ドラマティック度・8 叙情度・8 英国度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Saxon 「Battering Ram」
イギリスのベテランバンド、サクソンの2015年作
1979年にデビュー、本作はおそらく21作目あたりだろう。オールドなツインギターにビフ・バイハートの味わいのある歌声乗せ、ほどよい疾走感のあるヘヴィメタルを聴かせる。
Judas Priestあたりにも通じるパワフルなメタル感触とともに、ときに勇壮でエピックな世界観を描き出すのは、このバンドの伝統的なスタイルであるだろう。
ベテランながらもほどよくアグレッシブなノリとともに、70年代ブリティッシュ・ハードロックから受け継がれたサウンドをしっかりと残している。
一方ではわりとダークなナンバーもあって、哀愁を感じさせるギターの旋律がウェットな叙情性を感じさせるなど、決して一本調子にならないのも見事。
ドラマティック度・8 オールドHM度・9 英国度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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SONIC HAVEN 「VAGABOND」
ドイツのメロディックメタル、ソニック・ヘイヴンの2021年作
Seventh Avenue、Sinbreed、Radiantなどでシンガーを務める、ハービー・ランハンスを中心に、Radiantのギター、Enemy Insideのベース、Silent Forceのドラムが集結したバンド。
3〜5分前後の作曲を主体に、巧みなギターにパワフルなヴォーカルを乗せ、シンプルに疾走するキャッチーなメロディックメタルを聴かせる。
ミドルテンポの爽快なメロディアス性は、GAMMA RAYなどにも通じる感触で、かすれた味わいの歌声も、どことなくカイ・ハンセン風だったりする。
美麗なシンセアレンジも加えて盛り上げるあたりは、AVANTASIAに参加した経験からか、流麗なギタープレイも随所にサウンドを華やかに彩る。
メタルバラード的なナンバーも、味わいのあるヴォーカルが哀愁の叙情を描き出す。疾走曲もミドルテンポも、メロディのフック充実の好作品である。
メロディック度・8 疾走度・7 正統派度・8 総合・8
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PALADIN 「ASCENSION」
アメリカのメロディックメタル、パラディンの2019年作
メロデッィクで巧みなギターにパワフルなハイトーンヴォーカルを乗せて激しく疾走する、いわばスラッシーなメロスピサウンドを聴かせる。
ときにイングヴェイばりの流麗なギタープレイを織り込みつつ、デスヴォイスも用いたアグレッシブな部分もあって、メロデスとメロスピのハイブリッドとしても楽しめる。
ちなみにギタリストは、GALNERYUSのSyuをリスペクトしているとか。日本のアニメ調のジャケも含めてなんとなく納得である。
きらびやかなメロスピにチルボド風の感触も加えたという強力作で、ドラマティックな展開や盛り上がりが増えれば、傑作を作りそうな予感もする。
メロディック度・8 疾走度・8 メロスピデス度・8 総合・8
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Eternal Flight 「Under The Sign Of Will」
フランスのメタルバンド、エターナル・フライトの2006年作
2004年にデビューし、2作目となる。正統派のギターにハイトーンヴォーカルを乗せ、リズムチェンジを含む適度にテクニカルなメロパワを聴かせる。
随所に美麗なシセアレンジも加えて、いくぶんProgMetal寄りの雰囲気も覗かせつつ、オールドな正統派メタル感触もしっかり残している。
同国のMANIGANCEあたりに通じるところもあるが、メロディのフックや展開はいま一つ突き抜けきらず、わりとB級なテイストを感じさせる。
ドラマティック度・7 疾走度・6 楽曲・7 総合・7 過去作のレビューはこちら
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Maestrick 「Espresso Della Vita・Solare」
ブラジルのプログレメタル、マエストリックの2018年作
2011年にデビューし、7年ぶりとなる2作目。人生を列車に例えたコンセプト的な作風で、テクニカルなリズムに美麗なシンセと巧みなギターを重ね、一聴してDREAM THEATERをルーツによりシンフォニックに仕立て上げたというサウンドを描く。
オルガンなどを用いたプログレ寄りのシンセワークや、ジェントルなヴォーカルとキャッチーなコーラスで優雅なメロディアス性に包まれるところは、A.C.T.やTRANSATLANTICにも通じるだろう。
一方では、疾走感あるナンバーでは、ANGRAのような華麗なメロディックメタルになったり、メタル感触と優美なプログレ感が同居したハイブリッドなセンスは見事。
混声コーラスから始まる15分の大曲は、緩急あるドラマティックな構築力で、きらびやかなProgMetalが楽しめる。ボーナス含めて全78分という大変な力作。
ドラマティック度・8 華麗度・8 優雅度・9 総合・8.5
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KALACREAD 「Mystic Society」
日本のプログレメタル、カラクリードの2019年作
女性シンセ奏者を含む5人編成で、壮麗でクラシカルなシンセにメタリックなギター、リズムチェンジを多用したテクニカル性に、英語歌詞のハイトーンヴォーカルで、ドラマティックなサウンドを描く。
メロウなフレーズを奏でるギターと、女性らしい優雅なシンセワーク、伸びのあるハイトーン、軽やかなリズムアンサンブルと、全体的にもレベルが高く、やや唐突な展開もアヴァンギャルドで面白い。
ゆったりとした叙情ナンバーでは、伸びやかなハイトーンヴォーカルがエモーショナルに歌い上げて、シンフォニックハード的にも楽しめる。
ドラマティック度・8 テクニカル度・8 優雅度・8 総合・8
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TOTO「TOTO XIV〜聖剣の絆」
アメリカのメロディックロック、トトの2015年作
1978年にデビュー、本作は9年ぶりとなる14作目で、オリジナルベーシスト、デヴィッド・ハンゲイドが復帰し、ドラムにはキース・カーロックが加入している。
「IV」以来となる剣がジャケットに戻り、ステスィーヴ・ルカサーのメロウなギターの旋律とともに、ジョセフ・ウィリアムズの味わいのある歌声で、往年を思わせる叙情的なロックサウンドが広がってゆく。
アダルトな枯れた味わいとともに、キャッチーなヴォーカルメロディには、80年代の香りをしっかりと感じさせ、どこを切ってもTOTOらしい味わいに包まれる。
スティーヴ・ポーカロ、デヴッィド・ペイチのシンセやオルガンも効いていて、ゴージャスなアンサンブルながら、あえて重くないサウンドメイキングもあの頃のようである。
ゆったりと落ち着いたAORであるが味わい深い。これは久々にオールドファンも感涙の出来だろう。
メロディック度・8 哀愁度・8 往年のトト度・8 総合・8
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2/14
バレンタインはブラック&デスメタル(44)
Enslaved 「Heimdal」
ノルウェーのプログレッシブ・ブラックメタル、エンスレイヴドの2023年作
90年代初頭から活動する、ヴァイキング・ブラックメタルの元祖、5作目以降はプログレッシブな構築力を強め、ベイガン、ブラック、プログレの要素が同居した独自の作風を確立。
本作も、アナログ感あるギターにシンセを重ね、巧みなリズムアンサンブルに、ダミ声&ノーマルヴォーカルをまじえて、ミステリアスなサウンドを展開。
涼やかな空気感と、ときにProgMetal的でもあるテクニカル性やオルガンも鳴り響き、スタイリッシュとヴィンテージが混在した、これまで以上にプログレッシブな作風である。
激しい疾走パートの中にも、スペイシーな旋律を盛り込むなど、神秘的なスケール感を描くあたりもさすがで、Solefaldなどに通じる涼やかな知的センスが光っている。
ラスト曲は、KING CRIMSONがブラックメタル化したような雰囲気もあったり、プログレ・ブラックが好きな方にはお薦めの内容だ。
ドラマティック度・8 プログレッシブ度・8 叙情度・7 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Primordial 「How It Ends」
アイルランドのペイガン・ブラックメタル、プライモーディアルの2023年作
1995年デビューのベテランで、本作は11作目となる。アイリッシュを感じさせるギターのイントロから、アナログ感あるドラムにかすれたヴォーカルも加えて、オールドなハードロック感触を含んだサウンドが広がる。
どことなく、ゲイリー・ムーア的な哀愁の空気感に包まれた1曲目から、2曲目以降はダミ声ヴォーカルによるアグレッシブなブラックメタル風味も加わって、重厚にして土着的な味わいに。
トレモロを含む甘すぎないギターの旋律も随所に心地よく、シンセやモダンなアレンジを一切使わない、いわばヴィンテージなペイガンメタルというべきか。
7分以上の大曲も多く、派手な展開などもないのだが、リフやフレーズからはベテランらしい力強さがにじみ出ていて、枯れた味わいが楽しめる方なら飽きないだろう。
ドラマティック度・7 暴虐度・6 古き良き度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Amon Amarth 「The Great Heathen Army」
スウェーデンのヴァイキング・デスメタル、アモン・アマースの2022年作
1996年デビューのベテラン、12作目となる本作も、北欧神話やヴァイキングの歴史を取り入れた世界観で、重厚なギターに迫力あるデスヴォイスで、猛々しいペイガン・デスメタルを聴かせる。
どっしりとしたミドルテンポを主体に、メロディックな部分はさほどないが、勇壮なバトル感触と、ほどよい叙情も覗かせながら、あくまでオールドなデスメタルのスタイルをつらぬいている。
ドラマティックな盛り上がりがもう少しあればと思うが、ラスト曲でのペイガンらしい土着感とエピックな雰囲気は悪くない。ベテランらしさは感じさせる内容だ。
ドラマティック度・7 暴虐度・7 重厚度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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BELPHEGOR 「TOTENRITUAL」
オーストリアのブラックメタル、ベルフェゴールの2017年作/邦題「屍骸典礼」
1995年にデビュー、現在では、ヘルムス、サーペンスの二人によるユニットとして活動。本作は11作目となる。
低音デスヴォイスとともに激烈にブラスト疾走する禍々しいスタイルで、圧殺感あるドラムも含めて、BEHEMOTHなどにも通じるブルータルなブラックメタルを展開。
トレモロを含む甘すぎない叙情のギタープレイも随所に覗かせながら疾走する、王道のブラックメタルとしても迫力たっぷりだ。
ミドルテンポのパートも、重厚感あるベテランらしい荘厳な世界観を描いていて、漆黒に覆われたサタニズムを感じさせる強力作である。
ドラマティック度・7 暴虐度・8 暗黒度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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MALPHAS 「PORTAL」
アメリカのメロディック・デスメタル、マルファスの2024年作
2018年にデビューし、2作目となる。美麗なシンセやピアノをギターに重ね、デスヴォイスとともに、緩急あるリズム展開で、テクニカルなシンフォニック・デスメタルを聴かせる。
オーケストラルなシンフォニック性とプログレッシブな構築力、随所にストリングスが重なるクラシカルな感触は、DARK LUNACYなどに通じる雰囲気もある。
ラストは12分の大曲で、軽やかな展開力の中に、女性ヴォーカルも加わった優美さと、叙情的なギターでじっくりと聴かせつつ、ストリングスやピアノによるクラシカルなアレンジにアグレッシブな激しさが同居して、優雅にしてプログレッシブなデスメタルを構築する。
シンフォニック度・8 暴虐度・7 優雅度・8 総合・8
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PRAISE THE PLAGUE 「Suffocating In The Current Of Time」
ドイツのブラックメタル、プライス・ザ・プレイグの2024年作
2018年にデビューし、3作目となる。ミステリアスなイントロから、トレモロのギターリフにシンセを重ね、喚き声ヴォーカルを加えた暗黒のスラッジ・ブラックを展開。
どっしりとした重厚なスローパートから、迫力あるブラスト疾走を織り込んで、ブラックメタルとしての激しさもしっかりと感じさせつつ、ドゥーミィと暴虐の緩急ある流れで聴かせる。
ラストは8分の大曲で、重いベースにトレモロのギターを乗せたゆったりと不穏な序盤から、絶叫するヴォーカルとともに疾走する、プリミティブなブラックメタルが炸裂する。
ドラマティック度・7 暴虐度・7 暗黒度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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JORD 「TUNDRA」
スウェーデンのブラックメタル、ヨルドの2023年作
2021年にデビューし3作目となる。ほどよい叙情を含んだアナログ感あるギターにうっすらとしたシンセ、ダミ声ヴォーカルを乗せて、カスカディアンブラック寄りのサウンドを描く。
ゆったりとしたリズムから、随所に激しい疾走パートを含んだ緩急ある展開と、北欧らしい土着性や、ピアノを使った優美なアレンジなど、知的な構築力もなかなか見事。
楽曲は5〜7分ほどと、短すぎず長すぎず、激しさと叙情が良いあんばいで同居、ノイジー過ぎず綺麗すぎず、というバランスの良い聴き心地だ。
後半には暴虐なブラスト疾走から、ポストブラック的な幻想パートをはさんで再び疾走という、ドラマティックなナンバーもあり、ブラックメタルらしい禍々しさもしっかり感じさせる。
ドラマティック度・8 暴虐度・7 カスカディアンブラック度・8 総合・8
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DODSFALL 「Nar Morkret Ar Pa Vag」
スウェーデンのブラックメタル、ドッドゥスフォールの2022年作
2011年にデビュー、6作目となる今作では、全てのパートをIshtar氏が手掛ける、いわゆる独りブラックメタルとなっている。
アコースティックギターとシンセを重ね、日本語の語りによるイントロから、ノイジーなトレモロのリフとダミ声ヴォーカルで激しくブラスト疾走する。
随所に美麗なシンセアレンジも加わって、緩急あるリズムとともに、初期DIMMU BORGIRにも通じる禍々しくも幻想的なブラックメタルが味わえる。
ほどよくプリミティブな荒々しさとブラッケンロール的なアナログ感、甘すぎない叙情も含んだオールドスタイルのサウンドで、暴虐過ぎない聴きやすさもいいですね。
ドラマティック度・8 暴虐度・7 オールドブラック度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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HELGA 「WRAPPED IN MIST」
イギリスのアトモスフェリック・メタル、ヘルガの2023年作
スウェーデン出身のアジア系女性シンガー、ヘルガ・ガブリエルをフロントにしたバンドで、重すぎないギターにうっすらとしたシンセにヴァイオンも絡み、美しい女性ヴォーカルとともに幻想的なサウンドを描く。
物悲しい空気感に包まれた、曲によってはゴシックメタル寄りの感触で、妖しい女性声がアンビエントな味わいにもなっていて、キャッチーなメランコリックロックとしても楽しめる。
楽曲は3〜5分前後が主体で、Alcest風の優雅ナンバーや、ときにブラスト疾走も覗かせるなど、ポストブラックのファンにも対応しつつ、一方で、ケイト・ブッシュ的なコケティッシュな歌声を響かせるなど、表現力ある歌声もなかなか魅力的。
ドラマティック度・7 メランコリック度・8 女性Vo度・8 総合・8
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AODON 「Portraits」
フランスのポストブラックメタル、アオドンの2023年作
2016年にデビューし、3作目となる。トレモロのギターに喚き声ヴォーカルで激しく疾走するスタイルに、緩急ある展開と物悲しい叙情を含ませたサウンドで、Alcestなどに比べるとストレートなブラックメタル感触が強めか。
暴虐なブラスト疾走と、フレンチらしいコールドな空気感が合わさり、激しさと静寂感のバランスもあって、ブラックメタルとしてもレベルは高い。
全体的にはクールで硬派な感触で、もう少し泣きの叙情が欲しい気もするが、ラスト曲などはミドルテンポからの疾走という、ドラマティックな流れが見事。
ドラマティック度・7 疾走度・8 叙情度・7 総合・7.5
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Mesarthim 「Ghost Condensate」
オーストラリアのコズミック・ブラックメタル、メサーシウムの2019年作
2015年にデビューし、4作目となる。20分ぴったりの大曲2曲という異色の構成で、デジタルできらびやかなシンセを重厚なギターに重ね、ダミ声ヴォーカルとともに、スペイシーなブラックメタルを展開。
ときに激しいブラスト疾走も覗かせつつ、きらきらとしたシンセアレンジがシンフォニックな感触で包み込み、サイバーな近未来感とブラックメタルを自然に融合させている。
ARCTURUSのスタイルをよりコズミックに表現したという感じもあり、ブラックメタルの禍々しさを神秘性に変換させ、しっかりと激しさを残しつつも華麗なサウンドに仕立てている。
ドラマティック度・7 暴虐度・7 コズミック度・8 総合・8
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SATURNUS 「THE STORM WITHIN」
デンマークのゴシック・ドゥームメタル、サターナスの2023年作
1996年にデビューし、6作目となる。叙情的なギターにシンセを重ねた物悲しいイントロから、低音デスヴォイスとともに、重厚なフューネラルドゥームを聴かせる。
あくまでメロウで泣きを含んだギターの旋律に、ノーマルヴォイスをまじえたメランコリックな空気感はゴシックメタル寄りで、Swallow The Sunあたりのファンにも楽しめるだろう。
10分前後の大曲も多く、ゆったりとしたスローテンポを主体に、随所にシンセなどによる静謐なパートも盛り込むなど、わりと緩急ある構築力で飽きさせない。
一方では、優雅なピアノにヴァイオリン、ノーマルヴォーカルによるアンビエントなナンバーもあって、涼やかな静寂感も味わえる。
とにかくほぼ全編でギターが叙情メロディを奏でているので、重めのフューネラルドゥームが苦手という方でも楽しめるだろう。
ドラマティック度・8 メランコリック度・8 重厚度・8 総合・8
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Les Discrets 「Live at Roadburn 2013」
フランスのポスト・ブラックメタル、レス・ディスクレッツの2015年作
Alcest,、Amesoeursのメンバーを中心に結成し、2010年にデビュー、本作は2012年オランダ「Roadburn」フェスからのステージを収録。
AlcestのNeigeがベースで参加しての4人編成で、叙情的なツインギターにマイルドなヴォーカルを乗せ、メランコリックな翳りに覆われたサウンドを描く。
ツーバスのドラムや、ときにブラスト疾走を含む適度にアグレッシブなノリも覗かせつつ、あくまで優雅で薄暗い叙情に包まれた世界観は心地よい。
トレモロのギターに男女声が重なるパートや、泣きのギターの旋律と詠唱のような歌声が合わさる、神秘的なパートなどもウットリですな。
ライブ演奏・8 メランコリック度・8 叙情度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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God Is An Astronaut 「EPITAPH」
アイルランドのポストメタル、ゴッド・イズ・アン・アストロノートの2018年作
2002年にデビューし、すでに8作目となる。物悲しいピアノにノイジーなギターが重なり、メランコリックな叙情とともにポストロック的な世界観を描き出す。
ほどよくグルーヴィなドラムとベースが、ノリのあるリズムを作りだし、メタリックな重厚さも覗かせつつ、あくまで物悲しい涼やかな空気に包まれたサウンドだ。
オールインストなので、派手な展開はないが、シンセの重ねによるアンビエントな空間性を感じさせながら、轟音ギターによる不穏な重々しさが同居する。
ドラマティック度・7 ポストロック度・8 重厚度・8 総合・7.5
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メロパワ、スラッシュプログメタル!(30)
DragonKnight 「Legions」
フィンランドのメロディックメタル、ドラゴンナイトの2025年作
仮面をつけたメンバーたちによるバンドで、シンガーのミカエル・サロは、EVERFROSTで活躍しつつ、STRATOVARIUSやBEAST IN
BLACKなどでバックヴォーカルを務めた実力派。
オーケストラによる壮麗なイントロから、ツインギターに伸びやかなヴォーカルを乗せ、クラシカルなシンセアレンジとともに、RHAPSODYにも通じる勇壮でシネマティックなサウンドが炸裂する。
どっしりとしたミドルテンポやフォーキーなメロディを乗せたナンバー、SABATONやDREAM EVILのような王道の北欧メロパワから、HELLOWEENばりのキャッチーなメロディックメタルなど、楽曲ごとにメリハリがあり、異世界ファンタジー映画のような世界観で楽しめる。
アコースティックギターにアコーディオンやフルートの音色で、エンディング的な牧歌性に包まれたボーナストラックも含めて、ファンタジックなシンフォニックメタルが詰まった強力作だ。
日本盤ライナー解説は私、緑川が担当しているのでよろしくです。
ドラマティック度・8 疾走度・7 ファンタジック度・9 総合・8
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Metallica 「72 Seasons」
アメリカのベテランバンド、メタリカの2023年作
7年ぶりとなるスタジオアルバムで、72の季節…すなわち多感な人生最初の18年間をテーマにした作品。エッジの効いたギターリフにロバート・トゥルージロの存在感あるベースとともに、かつてを思わせる疾走感も含んだサウンドは、一聴して「...And
Justice For All」の頃を思わせる。
ジェイムス・ヘッドフィールドの味のあるヴォーカルと、ラーズ・ウルリッヒのドラムもバスドラのブチブチ感も含めて、往年に回帰したような雰囲気で、これはファンにはたまらない。
6〜7分前後の長めの楽曲も多く、どっしりとしたミドルテンポのナンバーはやや単長にも聴こえるが、オールドスタイルと現在形を融合させた作風とも言えるだろう。
ラストは11分の大曲で、ブルージーなハードロック感触に、哀愁の叙情を含んだ大人のロックを聴かせる。全体的には、もう何曲か激しいナンバーが欲しかった。
ドラマティック度・7 疾走度・7 メタリカ度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Nervosa 「Jailbreak」
ブラジルのガールズ・スラッシュメタル、ネルヴォサの2023年作
2014年デビュー、5作目となる。スラッシーなギターリフに吐き捨て女性ヴォーカルを乗せて疾走する、オールドなスラッシュメタルを聴かせる。
迫力ある吐き捨てヴォイスとともに激しく疾走するあたりは、デスラッシュといってよいほどの圧殺感もあって、女性バンドとは思えぬ攻撃性である。
ときにツインギターによる叙情性も覗かせて、初期のTESTAMENTあたりを思わせるウェットなドラマ性も描くところは、バンドとしての成長も感じさせる。
初期KREATORのような疾走する突進力にも磨きがかかり、いまやガールズスラッシュの最高峰としての地位を確立したというべきだろう。
ドラマティック度・7 疾走度・8 スラッシュ度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Cobra Spell 「666」
オランダ、アメリカ、ブラシル混成のメタルバンド、コブラ・スペルの2023年作
元BURNING WICHES、CRYPTAのギタリスト、ソニア・アヌビス率いるガールズバンドで、オールドなギターにハスキーな女性ヴォーカルを乗せた、80年代ルーツのメタルサウンド。
疾走する激しさはあまりなく、どっしりとしたミドルテンポの中に、巧みなギタープレイを織り込むスタイルには、なつかしさを感じるリスナーも多いだろう。
ハードロック寄りのキャッチーなナンバーは、グラマラスなルックスも含めて、かつてのVIXENあたりに通じる雰囲気もありつつ、一方では叙情的なギターを乗せたヨーロピアンなメタルナンバーも良い感じだ。
凶悪なジャケのイメージに比べて、オーセンティックなHR/HMのストレートな聴きやすさに溢れていて、オールドなリスナーはニンマリだろう。
メロディック度・7 激しさ度・7 80'sHR/HM度・8 総合・8
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Dragonheart 「The Dragonheart’s Tale」
ブラジルのメロディックメタル、ドラゴンハートの2023年作
2000年にデビュー、8年ぶりとなる5作目で、語りを含むイントロから、王道のツインギターにハイトーンヴォーカルを乗せたオールドなメロディックメタルを聴かせる。
初期BLIND GUARDIANやGRAVE DIGGERなど、往年のジャーマンメタルに通じる雰囲気で、曲によってはRUNNING WILDあたりを思わせるところもある。
いくぶんB級がかったクサメロ感が、いまとなっては心地よく、スタイリッシュとは真逆のオールドなメロパワの追及には拍手をしたいほどだ。
曲間にSEをはさんだ構成で、エピックでファンタジーな世界観を表現しつつ、楽曲そのものはこれでもかという正統派メタル。
新しさは皆無だが、HAMMERFALLあたりを好むリスナーなら、間違いなく楽しめるだろう。
ドラマティック度・8 疾走度・7 ファンタジック度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Immortal Guardian 「Unite and Conquer」
アメリカのメロディックメタル、イモータル・ガーディアンの2023年作
ギター&シンセを同時に弾きこなすゲイブリエル・ガーディアン率いるバンドで、2018年にアルバムデビューし、本作は3作目となる。
きらびやかなシンセをシュレッドなギターに重ね、パワフルなヴォーカルとともに、ネオクラシカル風のテクニカルなメタルサウンドを聴かせる。
メロパワ的な疾走感と、ProgMetal的な展開力が同居して、スタイリッシュでありながらも、キャッチーなメロディアス性に包まれて、随所にクサメロなギタープレイも覗かせる。
Heaven's Guardianでも活躍するブラジル人シンガーの伸びやかなヴォーカルの実力もあって、優雅で濃密なメロディックメタルが味わえる強力作です。
メロディック度・8 疾走度・7 華麗度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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DGM 「Life」
イタリアのメロディックメタル、ディー・ジー・エムの2023年作
1997年にデビュー、6th以降はシモーネ・ムラローニが加わって、テクニカルなギタープレイを含んだスタイリッシュなスタイルへと深化し、本作は11作目となる。
きらきらとしたシンセのイントロから、巧みなギターをテクニカルなリズムに乗せ、伸びやかなヴォーカルとともに、華麗でメロディックなサウンドを展開。
モダンなヘヴィネスとテクニカルな展開力、流麗なギタープレイとキーボードを重ねて、濃密なインストパートを描きつつ、歌パートでのキャッチーな抜けの良さは爽快な味わいだ。
これという新鮮味は感じられないが、華麗なメロディアス性とメタリックな硬質感を優雅に同居させた、文句の付けどころのないハイクオリティな作品である。
ドラマティック度・8 テクニカル度・8 優雅度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Trick Or Treat 「The Legend of The XII Saints」
イタリアのメロディックメタル、トリック・オア・トリートの2020年作
2006年にデビューし、5作目となる本作は、「聖闘士星矢」をコンセプトに、12人の黄金聖闘士をそれぞれの楽曲にあてはめた構成となっている。
メロディックなツインギターにアレッサンドロ・コンティのハイトーンヴォーカルを乗せて疾走する、HELLOWEENルーツの王道のメロディック・スピードメタル。
キャッチーなフックで爽快に疾走する、双子座「ジェミニ」、獅子座「レオ」あたりは、クサメロ好きのメロスパーにはたまらないだろう。
叙情的なバラードの射手座「サジタリウス」、優雅なメロディアス性の山羊座「カプリコーン」など、好曲多数。哀愁あるエンディング曲も味わいがある。
版権の関係か日本盤は出ないようだが、バンドのディスコグラフィーにおいても、トップクラスの内容といってよいだろう。
メロディック度・8 疾走度・8 クサメロ度・8 総合・8.5 過去作のレビューはこちら
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GREAT MASTER 「MONTECRISTO」
イタリアのメロディックメタル、グランド・マスターの2023年作
2009年にデビューし、すでに6作目となる中堅バンドで、本作は「巌窟王」として知られるアレクサンドル・デュマの名作「モンテ・クリスト伯」をコンセプトにした作品。
ツインギターに美麗なシンセを重ね、伸びのあるハイトーンヴォーカルにエピックなコーラスも加えて、THY MAJESTIEあたりにも通じるドラマティックなサウンドを描く。
ほどよくクサメロ感を残したギターの旋律に、シンフォニックなシンセアレンジで、重厚でありながらイタリアンメタルらしいメロディックな優雅さもしっかりと融合している。
どっしりとしたミドルテンポを主体に、中盤以降は疾走するメロスピ寄りのナンバーもあって、ストーリー的な流れととともに緩急ある構成で楽しめる。
ヴォーカルの確かな力量も含めて、いよいよ一線級バンドに成長したかというような堂々たる力作です。
ドラマティック度・8 疾走度・7 重厚度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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A.C.T. 「Falling」
スウェーデンのプログレ・ハードロック、アクトの2023年作
「Rebirth」「Heatwave」と続いてきた、EP連作シリーズの3作目で、日本盤はボーナスのライブ音源を追加した全34分を収録。
わりとハードなギターから始まりつつ、一転してキャッチーな歌メロとともに、優雅でメロディアスなサウンドが展開される。
きらびやかなシンセアレンジと緩急あるリズム展開に、あくまでやわらかなヴォーカルメロディで、巧みな知的さと繊細な叙情が融合したスタイルは円熟の域。
楽曲自体は3〜5分前後であるが、流れのある構成で、EP全体をひとつの作品として仕上げているのも見事。早くも次のアルバムが聴きたい。
メロディアス度・8 キャッチー度・9 優雅度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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ICE AGE 「Waves Of Loss & Power」
アメリカのプログレメタル、アイス・エイジの2023年作
1999年に「The Great Divide」でデビュー、2001年に「Liberation」という2作を残して沈黙したバンドの、じつに22年ぶりとなる3作目。
ベーシストが交替しているが、他の3人は健在。のっけから巧みなギターをテクニカルなリズムに乗せ、パワフル過ぎないヴォーカルとともに、DREAM THEATERルーツのProgMetalが全開。
プログレ感あるキーボードも随所にきらびやかで、10分を超える大曲は緩急ある展開美とともに、伸びやかなヴォーカルも含めて優雅なセンスで構築される。
独特のリズム展開などもかつてのサウンドのままで、テクニカルでもメロディ重視なので、初心者にも楽しめ、玄人好みも唸らせる技巧も見事。
1stから続く壮大な組曲“To Say Goodbye”のPart4&5で締めくくるあたりも心憎い。これぞプログレメタル!というべき見事な復活作だ。
ドラマティック度・8 テクニカル度・8 王道ProgMetal度・9 総合・8.5 過去作のレビューはこちら
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FATES WARNING 「Chasing Time」
アメリカのプログレメタル、フェイツ・ウォーニングのベストアルバム。1998年作
1984年のデビュー作から、1994年作「Inside Out」まで、7枚のアルバムからセレクトされた楽曲に、未発曲を2曲加えた、全14曲を収録。
90年代以降のサウンドは、スタイリッシュな感触を増して、レイ・アルダーの伸びやかな歌声を活かしたメロディアス性と、翳りを帯びたクールな空気に包まれる。
個人的にはやはり、ジョン・アーチの歌声と分かりやすい変拍子リズムで聴かせる、初期の傑作「THE SPECTRE WITHIN」、「AWAKING
THE GUARDIAN」からのナンバーがお気に入り。
全78分、80〜90年代へ至るバンドの歴史を俯瞰できるベストアルバムです。FW入門用にもどうぞ。
ドラマティック度・8 元祖ProgMetal度・9 フェイツの歴史度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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SL THEORY 「CIPHER」
ギリシャのプログレメタル、SLセオリーの2019年作
Persona Non GrataのBらが在籍するバンドで、ほどよく叙情的なギターにオルガンを含むシンセを加え、伸びやかなヴォーカルとともに、キャッチーなプログレ・パワーを聴かせる。
のっけから13分という大曲だが、ROYAL HUNTのような女性コーラスを含む優雅なヴォーカルメロディと、巧みなギタープレイで、難解さのないメロディックな味わいである。
2曲目以降は4分前後の小曲主体で、メロディアスハード寄りの抜けの良い歌もの風味に優美なキーボードワークを重ねた、いわゆるプログレハード風の作風。
ProgMetalとしてのテクニカル性を求めると物足りないが、ミドルテンポのキャッチーなプログ・ハードとするならば、わりと楽しめる好作だろう。
メロディック度・8 テクニカル度・7 優雅度・8 総合・8
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Bertoncelli 「Leyendas De Amor Y Sangre」
アルゼンチンのメタルバンド、バートンセリの2011年作
シンガーのクリスティアン・ベトンセリ率いるバンドで、メタリックなギターに壮麗なシンセアレンジ、スペイン語によるハイトーンヴォーンルを乗せて、RATA BLANCAあたりに通じる正統派メタルサウンドを聴かせる。
随所に叙情的なギターの旋律や、オルガンなどを含む優雅なシンセワークのセンスもよろしく、力量あるヴォーカルの歌声が哀愁の情感を描き出してゆく。
ゆったりとしたミドルテンポのメロハー寄りのナンバーも含みつつ、曲によってはほどよい疾走感もあり、オールドな様式美風味とともに、メロディアスなスパニッシュメタルが楽しめる。
メロディック度・8 疾走度・7 哀愁度・8 総合・8
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フォークメタルで本年もよろ(15)
Furor Gallico 「Future To Come」
イタリアのフォークメタル、フロー・ギャリコの2024年作
2010年にデビューし、4作目となる。前作は見事な傑作であったが、本作もヴァイオリンやホイッスル、優雅なハープの音色をギターに重ね、迫力あるデスヴォイスと女性ヴォーカルの歌声で、幻想的なフォークメタルを聴かせる。
シュレッド的でもある巧みなギタープレイとともに、アグレッシブなパートではメロデス寄りの聴き心地にもなり、フォーク・メロデスが好きな方にも対応。
アコースティックなパートを含むフォーキーな優雅さも残しつつ、随所に激しい疾走感をまじえた緩急ある構成で描かれる力作だ。
ドラマティック度・8 フォーキー度・8 アグレッシブ度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Elvenking 「Reader Of The Runes: Rapture」
イタリアのフォーク・メロパワ、エルヴェンキングの2023年作
2001年にデビュー、本作は11作目で、前作の続編となるコンセプト作品。ツインギターにヴァイオリンの音色を重ね、ハイトーンヴォーカルとともに、土着的な旋律をまじえながら、重厚でエピックなサウンドを展開。
アグレッシブな疾走感も随所に覗かせつつ、フォーキーなメロディをしっかり盛り込んでいて、隙のないサウンドメイキングもさすがキャリアのあるバンドらしい。
全体的にも高品質であるが、コンセプトアルバムとしての幻想的な世界観の構築という点では、もうひとつ強度が欲しい気もする。
ドラマティック度・8 フォーキー度・8 重厚度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Heidevolk 「WEDERKEER」
オランダのペイガンメタル、ヘイデヴォルクの2023年作
2005年にデビューし、7作目となる。メタリックなギターリフに朗々としたヴォーカルと勇壮なコーラスを重ね、重厚なぺイガンメタルを展開する。
どっしりとしたミドルテンポを主体に、ときにブラックメタル的な激しい疾走パートも含んだ緩急ある聴き心地で、ヴァイオリンやアーディオンなどによるフォーキーなアレンジや、随所に叙情的なギターフレーズも覗かせる。
派手さはあまりないが、神秘的な世界観とともに、甘すぎない本格派のヴァイキングメタルが味わえる力作です。
ドラマティック度・7 ペイガン度・8 重厚度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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SKILTRON 「Bruadarach」
アルゼンチンのフォークメタル、スキルトロンの2023年作
2006年にデビュー、本作は7年ぶりとなる6作目。クサメロを含むメタリックなギターにバグパイプが鳴り響き、パワフルなハイトーンヴォーカルで、疾走感あるフォークメロパワを聴かせる。
ホイッスルやバグパイプによるフォーキーな土着性と、エピックで勇壮なバトル感が同居していて、中堅バンドらしい厚みのあるサウンドはクオリティが高く説得力も充分。
メロスピ寄りの疾走ナンバーから、どっしりとしたミドルテンポまで、フォークメタルの優雅さとキャッチーなメタル感触がバランスよく合わさった作風で、初心者にも爽快に楽しめる。
ドラマティック度・8 フォーキー度・8 勇壮度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Verikalpa 「Tuomio」
フィンランドのフォークメタル、ヴェリカルパの2024年作
2018年にデビューし、4作目となる。ほどよくメロディックなギターにシンセを重ね、ガナり声ヴォーカルを乗せて、疾走感のあるメロデス風のフォークメタルを聴かせる。
フィンランド語による歌声が土着的な空気を描きつつ、美麗なシンセと巧みなギターフレーズは、CHILDREN OF BODOMを思わせる部分もあり、FINNTROLLあたりに通じるキャッチーな愉快さも含めてなかなか魅力的だ。
シンセによるアコーディオン風のフォーキーなメロディと、ツインギターのメタリックなエッジが融合していて、激しく重厚でありながらも優雅な聴き心地が楽しめる。
楽曲は4分前後が主体だが、ときにブラックメタルばりのアグレッシブな疾走感と、TURISASばりの迫力あるダミ声ヴォーカルで非常に濃密な味わいである。
ドラマティック度・8 フォーキー度・7 メロデス風度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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VALKEAT 「Fireborn」
フィンランドのフォークメタル、ヴァルキートの2023年作
女性を含む2人のカンテレ奏者を含む6人編成で、2017年にデビュー2作目となる。艶やかなフィドルのイントロから、マイルドなヴォーカルに勇壮なコーラスを重ね、重厚なギターにオーケストラルなアレンジも重なって、エピックな神秘性に包まれたフォークメタルを聴かせる。
涼やかな土着性を描きつつも、伸びやかなヴォーカルとキャッチーなメロディのフックもあって、壮麗なシンフォニックメタルとしても楽しめる。
ときに女性コーラスも加わって、秘教めいた妖しさや語りを乗せた物語性も覗かせて、シネマティックといってもよいスケール感は、RHAPSODYのフォークメタル版という感触もある。
フィンランド語によるナンバーも味があって、神秘的な土着感と壮麗なシンフォニック性がほどよく融合した、全68分という力作だ。
ドラマティック度・8 フォーキー度・7 壮大度・8 総合・8
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The Privateer 「Kingdom Of Exiles」
ドイツのフォークメタル、プライヴァティアの2023年作
2011年にデビュー、4作目となる本作は、女性ヴァイオリン奏者を含む編成となり、正統派のギターを乗せて疾走し、朗々としたヴォーカルに女性デスヴォイスが絡む、激しくも勇壮なメタルサウンドを展開。
ときにデスメタルばりの激しい疾走感に、フォーキーなヴァイオリンの旋律も加え、アグレッシブでありながらも海賊をテーマにエピックな世界観を描き出す。
ダーティな女性ヴォーカルメインにしたパワーメタル風味と、荒々しいペイガンデスメタルが融合した感触もあり、メロディアスというほどでもない、わりと硬派なスタイル。
もう少しヴァイオリンを活かしたクサめのメロディや、ドラマティックな盛り上がりがあれば嬉しいのだが。今後に期待です。
ドラマティック度・7 フォーキー度・7 激しさ度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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Cruachan 「Blood For The Blood God」
アイルランドのフォークメタル、クルアチャンの2014年作
1995年にデビュー、ケルティックなフォークメタルの元祖というべき存在で、本作は7作目。男性ヴォーカルになって2作目となる。
アコースティックギターにマンドリン、ヴァイオリンが絡むイントロから、土着的なギターの旋律と荒々しいヴォーカルを乗せて、勇壮なペイガンメタルが展開される。
うっすらとしたシンセアレンジにチェロなども加えて重厚で神秘的な空気を描き出し、ホイッスル、ブズーキ、バグパイプなどのケルティックな味わいに、激しく疾走するアグレッシブなパートも現れつつ、メリハリのあるサウンドを構築。
ダミ声ヴォーカルも含めて荒々しい勢いと、ケルトの土着性ががっちり融合し、ラストの2パートに分かれた大曲も圧巻。ベテランならではの説得力に包まれた強力作だ。
ドラマティック度・8 フォーキー度・8 重厚度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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HELJAREYGA
フェロー諸島のメロディックメタル、ヘルヤレイガの2010年作
TYRのシンガーが率いるバンドで、土着的なメロディを含んだギターに母国語による朗々としたヴォーカルを乗せて、ほどよく疾走感のある正統派パワーメタルを聴かせる。
随所に流麗なギタープレイを含んだ優雅なメロディアス性も覗かせつつ、母国語の歌声がペイガンな神秘性を描いていて、涼やかな空気感はTYRにも通じるが、こちらはよりメロスピ寄り。
8〜11分という大曲5曲という構成で、長い曲が苦手な方にはやや散漫に感じるかもしれないが、伸びやかなヴォーカルの実力も含めてクオリティは高く、土着的な正統派北欧メロパワとしても楽しめる強力作だ。
メロディック度・8 疾走度・7 土着度・7 総合・8
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LYRRE 「NOT ALL WHO DREAM ARE ASLEEP」
ポーランドのフォークメタル、リーレの2023年作
女性Vo兼ハーディガーディ奏者を擁する編成で、素朴なハーディ・ガーディの音色にハープが重なり、アコースティックギターやパーカッションによる神秘的なトラッド風味から、エレキギターも加わって、2曲目からは美しい女性ヴォーカルを乗せて優雅で重厚なフォークメタルになる。
楽曲は3〜4分前後で、メタリックなギターと、うっすらとしたシンセやハーディ・ガーディの響きが合わさり、いにしえのトラッドとモダンなヘヴィネスが融合した味わいで、はかなげな女性ヴォーカルが、ときにゴシックメタル寄りのメランコリックな空気も描いている。
神秘的な雰囲気はとてもよいので、今後はドラマティックな展開など楽曲面の向上に期待したい。
ドラマティック度・7 フォーキー度・7 女性Vo度・8 総合・7.5
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Lysa Gora 「W Ogniu Swiat」
ポーランドのゴシック・フォークメタル、リサ・ゴラの2023年作
2013年にデビューし、4作目となる。ヘヴィなギターを硬質なリズムに乗せ、母国語による女性ヴォーカルの歌声に、物悲しいヴァイオリンの音色も加えて、ゴシック寄りのメランコリックな空気に包まれる。
わりと激しいドラムとギターがモダンなヘヴィネスを描きつつ、随所にシンセによる美麗なアレンジと優雅なヴァイオリンの旋律がアクセントになっていて、妖しい女性声とともに神秘的な土着性も感じさせる。
適度にアグレッシブな激しさと東欧らしいミステリアスな翳りが同居した、重厚なゴシック・フォークメタルが味わえる好作品。
ドラマティック度・7 フォーキー度・7 女性Vo度・7 総合・7.5
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ANDAJA 「ATVARAS」
リトアニアのフォークメタル、アンダージャの2017年作
2006年にデビュー、11年ぶりとなる2作目で、前作は男性ダミ声ヴォーカルのバンドであったが、今作から女性シンガーをフロントにした編成になった。
優雅なアコーディオンの音色を重すぎないギターに重ね、母国語による艶めいた女性ヴォーカルを乗せた、神秘的なフォークメタルを聴かせる。
緩急あるリズムチェンジはいくぶん唐突な展開もあるが、DALRIADAなどに通じる辺境的な土着感が好きな方にはなかなかたまらないだろう。
メタル的な重さがさほどないため、優雅なトラッドロックなどが好きな方にも聴けるだろう。ラスト曲などはむしろプログレ的な優雅さである。
ドラマティック度・7 フォーキー度・8 女性Vo度・7 総合・7.5
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ANDAJA「PAVIDALAI」
リトアニアのフォークメタル、アンダージャの2022年作
のっけからヘヴィなギターにピアノを重ね、テクニカルなリズムに、伸びやかな母国語の女性ヴォーカルを乗せた、前作よりもぐっとスタイリッシュなサウンドを聴かせる。
アコーディオン奏者がいなくなったので、フォーキーな感触は薄まっているが、優美なシンセがほどよく土着的なメロディも奏でていて、メランコリックな叙情と、ProgMetal的な感触も合わさった作風である。
曲によっては激しいブラスト疾走も覗かせるなど、緩急ある展開力は、巧みなドラムとベースによる演奏力も含めて、地域性を感じさせない質の高さがある。
女性シンガーの妖しい表現力も増していて、神秘的なプログ・ゴシックメタルとしても楽しめる逸品です。
メランコリック度・8 フォーキー度・7 女性Vo度・8 総合・8
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Ukanose
リトアニアのフォークメタル、ウカノスの2016年作
重すぎないギターにアコーディオンの音色を重ね、母国語によるマイルドなヴォーカルで、辺境的な土着性のペイガンメタルを聴かせる。
アコーディオンの音色とともに疾走するところは、初期FINNTROLLあたりに通じる感触で、ほどよくクサメロなギターも味になっている。
詠唱めいた独特のヴォーカルの歌いまわしが、神秘的な空気を描いていて、軽やかな疾走感との対比でなかなか面白い。
ドイツの古楽バンド、Corvus Coraxのカヴァーでは、女性ヴォーカルも加わって優雅なフォークメタルが楽しめる。
ドラマティック度・7 フォーキー度・8 辺境度・8 総合・7.5
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Abinchova「Wegweiser」
スイスのフォークメタル、アビンコヴァの2014年作
2010年にデビューし、2作目となる。女性シンセ、女性ヴァイオリン奏者を含む7人編成で、アコースティックギターにダミ声を乗せたイントロから、ツインギターのリフにヴァイオリンが絡み、ダミ声&女性ヴォーカルを乗せて、優雅さとアグレッシブな武骨さが同居したサウンドを描く。
随所に叙情的なギターのメロディやフォーキーなヴァイオリンの旋律、美しいソプラノ女性ヴォーカルもアクセントになっていて、確かな演奏力も含めて辺境臭さはさほど感じない。
後半にはメロスピ風の疾走ナンバーや、男女Voを乗せた勇壮な三連リズムのナンバー、ラストの8分の大曲まで、クオリティの高いフォークメタルが詰まった逸品です。
ドラマティック度・8 フォーキー度・8 優雅度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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