プログレメタル・レビュー
〜ProgMetal
by Tosei Midorikawa
掲載バンドはABC順になっています
A | B | C | D | E | F | G | H | I | J | K | L |
M | N | O | P | Q | R | S | T | U | V | W | XYZ |
A
Absolute Priority 「Hunter」
イタリアのプログレメタル、アブソリュート・プリオリティの2012年作
ツインギターにシンセを含む6人編成で、適度にモダンなヘヴィさとドラマティックな構築力で描かれるサウンド。
テクニカルな要素もあるが、しっかりと歌い上げるヴォーカルとともに、VANDEN PLASのようなメロディックで
重厚な聴き心地である。ツインギターにきらびやかなシンセアレンジを含ませた音の厚みもあって、
この手のバンドにありがちな貧弱なマイナー臭さは感じさせない、なかなか堂々たるサウンドである。
これだという決定曲がもっとあればと思うが、ラスト曲のドラマティックな展開美には今後に期待が持てそう。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 重厚度・・8 総合・・7.5
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ABSTRACTA「T.R.I.P」
イタリアのプログレメタルバンド、アブストラクタの1998年作
楽曲はほとんど7分以上という大作志向で、サウンドには軽妙な
フュージョン的なアプローチを取り入れた大人のプログレという要素がある。
キーボード、ギター、ドラム、ベース、ヴォーカルと全てがテクニシャンで、
変拍子を多用したインストパートにはLiquid Tension Experimentばりの緊張感がある。
しっとりとしたピアノ/キーボード、技巧的なテクニカルパートともに聴き応えがある。
また後にDGMに加入するヴォーカルもなかなかの実力者で、楽曲に彩りを添えている。
メロディアス度・・8 プログレ度・・8 メタルフュージョン度・・8 総合・・7.5
Abstraction 「End of Hope」
ブルガリアのプログレメタル、アブストラクションの2014年作
シンセを含む5人編成で、パワフルなヴォーカルとヘヴィなギターワークに、
うっすらとしたシンセアレンジでドラマティックに聴かせるProgMetalサウンド。
テクニカル性よりはどっしりとした重厚さに、物悲しい叙情を感じさせるメロディで
薄暗系シンフォニックメタルとしても楽しめる。どこか辺境的な野暮ったさも残していて、
ときにクサめのメロディが出てくるところなどは、なかなか日本人好みと言えるかもしれない。
楽曲ごとの完成度にはまだ物足りなさはあるが、今後に期待のバンドといえる。
ドラマティック度・・8 重厚度・・8 辺境度・・8 総合・・7.5
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ACOLYTE 「ENTROPY」
オーストラリアのプログレメタル、アコライトの2021年作
2016年にデビューし、2作目となる。ほどよくヘヴィなギターにきらびやかなシンセを重ね、
中音域の女性ヴォーカルとともに、モダンでシンフォニックな味わいのハードプログレを展開する。
10分前後の大曲も多く、優美なシンセと女性声によるゆったりとした浮遊感に包まれながら、
ときにポストロック的な空間性や、ProgMetal寄りの重厚なパートも覗かせる。これという派手な展開がないので、
わりとつかみどころがないのだが、ラスト曲では、しっとりとしたピアノをバックに美しい女性ヴォーカルを乗せ、
メタリックなギターにシンセを加えて、翳りを帯びたドラマティックなサウンドを構築する。この路線での深化を期待。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 女性Vo度・7 総合・7.5
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ACRON「LABYRINTH OF FEARS」
イタリアのプログレメタルバンド、アクロンの1st。
私はどうもイタリアものと相性が良いらしい。キーボード入りで楽曲はそこそこドラマティックだし
演奏技術もまあある方だ。ただ個性という点では、アレンジにしろメロデイにしろあと一歩。
キーボードがけっこう良いので、もっとそれを大々的に生かしたアレンジで密度を上げてもらいたい。
メロディアス度・・7 プログレ度・・7 楽曲・・7 総合・・7
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ACRON
ブラジルのプログレメタル、アクロンの1997年作
チープなシンセのイントロから、軽めのドラムにオールドな感触のギター、ヘナチョコなヴォーカルを乗せた、いかにも自主制作然としたサウンド。
ほどよい疾走感からスローテンポへのリズムチェンジやうっすらとしたシンセを重ね、いくぶんメロディアスなギタープレイなど、音質も含めてB級以下の代物だが、よくこれでCD化したものだと感心はする。
楽曲は4〜5分前後が主体で、多少の展開力はあるものの、むしろProgMetalというよりは、80年代ルーツのマイナーなエピックメタルに近いかもしれない。
バンドは1999年に2作目を出して消える。
ドラマティック度・6 テクニカル度・6 楽曲度・6 総合・5.5
Aeon Spoke
CYNICのメンバーによるプログレバンド、アエオン・スポークの2007年作
メロウなギターとヴォーカルメロディで薄暗い叙情を描くゆったりとしたサウンド。
メタル的なヘヴィさはあまりなく、やはり最近のCYNICのような内面的な情感表現で
繊細な聴き心地の作風だ。キャッチーな耳心地はモダンなエモロック的でもあるが、
随所に聴かせるギターのセンスはやはり見事で、ひとつひとつのリフやフレーズが
世界観を巧みに構築してゆく。Porcupine Tree系のリスナーにもオススメの作品です。
メロディアス度・・8 メタル度・・6 プログレ寄り度・・8 総合・・8
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Aeon Zen 「Enigma」
イギリスのプログレメタル、イーオン・ゼンの2013年作
美麗なシンセアレンジと、適度にヘヴィなギターとともに構築される、正統派のプログレメタル。
ゲストヴォーカルも含めて多数の歌声が交わる、コンセプト的なドラマ性に包まれていて、
随所にテクニカルなパートも含ませながら、キャッチーなメロディラインで効果的に盛り上げる。
デスヴォイスも含んだ激しさや、メタルコア的なモダンな硬質感も覗かせた楽曲は、緩急に富んでいて、
若いリスナーにもスリリングに楽しめるだろう。あとは、楽曲ごとのメロディや聴かせどころが増えればと思う。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 構築度・・8 総合・・7.5
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AEON ZEN 「Ephemera」
イギリスのプログレメタル、イーオン・ゼンの2014年作
シンセを含む5人編成で、モダンな硬質感とテクニカルなアレンジに、
ハイトーンヴォーカルを乗せた、キャッチーかつヘヴィなプログレメタル。
テクニックのあるギターを含めた変則リズムによるDjent的な聴き心地に、
UKロック的なエモーショナルな感触を融合させたというスタイルで、
ときにデスヴォイスも入ったりと、カオティックコア風味のごった煮感も含む。
ProgMetalのモダンヘヴィネス化という意味では若いリスナー向けの作品だろう。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・8 モダン度・・8 総合・・7.5
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AFFECTOR「Harmagedon」
プログレメタルバンド、アフェクターの2012年作
ドイツ出身のギタリストを中心にしたユニットで、テッド・レオナルド(SPOCK'S
BEARD)
マイケル・レポンド(SYMPHONY X)といったメンバーが参加。シンフォニックなイントロから始まり、
テクニカルなインストパートとメロディックな叙情性を含んだ、質の高い構築力で聴かせるサウンドだ。
いくぶんのネオクラシカル風味も感じさせるギターとともに、メタリックな重厚さと展開美に歌メロのキャッチーさも合わさって、
メロディックで濃密なProgMetalが楽しめる。10分を超える大曲も含め、ドラマティックな美意識と構築センスに包まれた力作だ。
ジョーダン・ルーデス、デレク・シェリニアン、ニール・モーズ、アレックス・アルジェントといった名うての鍵盤奏者がゲスト参加。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 重厚度・・8 総合・・8
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After All 「A.C.I.D.」
ハンガリーのハードプログレ、アフター・オールの2001年作
SF的なイントロから始まり、美麗なシンセアレンジとメタリックなギターを重ね、エモーショナルなヴォーカルとともに
ProgMetal的な重厚なサウンドを聴かせる。変則リズムを含むテクニカルな展開力とモダンな翳りを含んだ、
ドラマティックな感触は、RIVERSIDEやPAIN OF SALVATIONあたりが好きな方にも楽しめるだろう。
ときにDREAM THEATERのジェイムス・ラブリエのように歌い上げるヴォーカルがシアトリカルな雰囲気もかもしだし、
緩急ある流れと知的な構築力で、コンセプト的なスケール感を描き出す。ハードシンフォニックというよりは
やはりプログレメタル方面に受ける作風であろう。ジャケは地味だが内容はかなりの力作です。
ドラマティック度・・8 プログレメタル度・・8 重厚度・・8 総合・・8
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Age of Nemesis「Terra Incognita」
ハンガリーのプログレメタル、エイジ・オブ・ネメシスの2007年作
モダンなアレンジで構築する楽曲は、適度にヘヴィでテクニカルな演奏と、
ときに美しく、ときにコミカルにかぶさるシンセワークとともに重厚なドラマ性を描いている。
メロディや展開そのものに、もっと耳を引くような魅力があればよいのだが、
サウンドとしてのクオリティはなかなか高い。ProgMetal好きは聴いてみてもよいかと。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・7 重厚度・・8 総合・・7.5
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Age of Rebellion「Ikarus Dream」
ドイツのプログレメタルバンド、エイジ・オブ・リベリオンの1997年作
シンセを含む5人組で、垢抜けなさの残るヴォーカルと、少々無理やりな展開で聴かせるサウンドは
お世辞にもメジャーにはなり得ないが、独特の味があってそう嫌いではない。
リフやメロディ自体は、ときにIRON MAIDENあたりを思わせる正統派の質感ながら、
起伏に富んだ楽曲はシンセによる美しい味付けも含めて、なかなか面白いものがある。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・7 唐突度・・8 総合・・7.5
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AGHORA「AGHORA」
アメリカのプログレメタルバンド、アゴーラの1st。2000年作
テクニカルな変拍子リズムと、ときおり民族風味もある楽曲に、浮遊感のある女性ヴォーカルで聴かせる、
個性的なサウンド。CYNICのリズム隊が参加しているだけあって、ひねくれ方は知的でプログレッシブ。
いわゆるプログレメタルではなく、むしろクリムゾン系のへヴィプログレといった方が良いだろう。
GORDIAN KNOTや90年代の、KING CRIMSONを楽しめるかどうかでこのバンドへの評価は分かれるだろう。
テクニカル度・・8 変態度・・7メロディアス度・・6 総合・・8
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AGHORA「Formless」
アメリカのプログレメタル、アゴーラの2nd。2007年作
アラビックな味わいのイントロから、テクニカルな変拍子リズムに硬質なギターリフと
やわらかな女性ヴォーカルを乗せた、浮遊感のあるプログレッシブ・メタルサウンドが広がる。
新加入のディアナ嬢のフェミニンな歌声は、ヘヴィなバックとのミスマッチな味わいで
ゴシックともプログレメタルとも言えないような不思議な質感のサウンドを作り出している。
メタリックな部分ではむしろよりヘヴィになっていて、KING CRIMSON風でもあった前作よりは
ある意味で分かりやすくなっている。変わったProgMetalが好きな方には充分楽しめるだろう。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・8 変態度・・7 総合・・8
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AGORA 「Zona De Silencio」
メキシコのプログレメタル、アゴラの2005年作
ツインギターにシンセを含む6人編成で、きらびやかなシンセにヘヴィなギターと、
スペイン語のハイトーンヴォーカルを乗せ、モダンな構築センスで聴かせるProgMetal。
音質はややラウドながら、演奏自体はテクニカルなアンサンブルとキャッチーなメロディアス性で、
マイナー臭さというのはさほど感じさせない。楽曲も5分前後が中心で、わりとシンプルな作風で、
モダンな雰囲気のナンバーの中、アコースティックを用いたスパニッシュな哀愁を感じさせるパートなどもなかなか魅力的。
メロディと技巧を同居させた厚みのあるサウンドとスタイリッシュな構築力で描かれる、メキシカンな高品質作です。
メロディック度・・8 テクニカル度・・7 スタイリッシュ度・・8 総合・・7.5
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AGORA「Segundo Pasado」
メキシコのプログレメタル、アゴラの2007年作
重厚なツインギターの重なりと美しいシンセアレンジ、伸びやかなスペイン語のヴォーカルを乗せ
適度にテクニカルでキャッチーなProgMetalサウンドで、今作も4〜5分前後の楽曲を主体に、
シンプルなノリの良さとメロディックな感触で、随所に知的な技巧性を織り込んだ聴き心地。
ツーバスのドラムがややうるさめではあるが、ツインギターによる叙情的なフレーズと、
きらびやかなシンセによるインストパートも耳心地よく、スパニッシュな歌声が哀愁を乗せる。
全体的にクオリティは高いのだが、あとはドラマティックな大曲などがあればと思う。
メロディック度・・8 テクニカル度・・7 スタイリッシュ度・・8 総合・・7.5
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Akribi 「Black Morning Sun」
スウェーデンのプログレメタル、アクリビの2011年作
女性Voにシンセ奏者を含む編成で、変則リズムを含むテクニカルな構築性とモダンなヘヴィネス、
そしてパワフルな女性ヴォーカルの歌声で聴かせる、シンフォニック・プログレメタルサウンド。
ジェシカ嬢の歌声は力強くも伸びやかで、いかにもバンドのフロントらしい存在感を放っており、
随所にシンセによるプログレ的なアレンジも、楽曲のインストパートを知的に彩っている。
9分前後の大曲も多いが、メリハリに富んだ巧みな展開力で、メロディックな叙情性とテクニカル性の
バランスのとれた聴き心地は、若手にしてはなかなか見事。モダンな女性声ProgMetalの力作。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8
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Aleph 「in tenebra」
イタリアのプログレメタル、アレフの2006年作
美麗なシンセアレンジにツインギターを重ね、ガナり気味のダーティなヴォーカルとともに、
緩急ある展開で聴かせる、ダークな味わいのプログレメタル。随所に語りなどを含んだ、
ホラー映画的なシアトリカルな空気感に包まれつつ、ギターリフなどはわりと正統派で、
ときにスラッシーなパートもあったりしつつ、楽曲にこれという派手さがないところが惜しい気もする。
ドラムをはじめとした演奏力はしっかりしていて、9分、10分という大曲をじっくりと構築する力量もあり、
あとはヴォーカルの表現力が上がればというところか。世界観は悪くないので精進してください。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・7 楽曲・・7 総合・・7
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Alessandro Bertoni 「Keystone」
イタリアのシンセ奏者、アレッサンドロ・ベルトーニの2013年作
彼のバンド、APHELIONの方もなかなか素晴らしい作品であったが、初のソロ作となる本作は
ドラムにヴァージル・ドナーティが参加、デレク・シェリニアンがプロデュースということで、
サウンドの方はやはりPLANET Xを思わせるテクニカルなメタルフュージョンとなっている。
ときにジャズタッチの鍵盤さばきも織り交ぜたベルトーニの華麗なシンセワークを中心に、
ドナーティのどっしりとしながらもグルーヴィなドラムと、ブレット・ガーストのセンスあるギターワーク、
リック・フィエラブラッチのベースも存在感を覗かせる。一流のメンバーによるアンサンブルは見事である。
オールインストであるが、ときにムーグやオルガンなどプログレな味わいもあるシンセと
随所にメロディックなギターフレーズが、優雅でやわらかな聴き心地となっている。
メロディック度・・8 テクニカル度・・8 メタルフュージョン度・・8 総合・・8
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ALEX ARGENTO「EGO」
イタリアのシンセ奏者、アレックス・アルジェントの2007作
ジョーダン・ルーデス主催のキーボードコンテストで最優秀賞に輝いたという経歴の持ち主。
本作のサウンドは、シンセとギターを中心にしたテクニカルなハード・フュージョン。
PLANET Xほどまでは超絶ではなく、むしろメロディを大事にしている部分は
T.マカパインのCABに近いか。アレックスの鍵盤は、時にジャズタッチのピアノなども聴かせ、
軽やかなリズムの上で、こちらもかなりのテクニックのギターとの掛け合いも光る。
楽曲の独自性の点ではさして目新しさはないが、演奏力はさすがのメタル・フュージョン作。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・8 フュージョンロック度・・8 総合・・8
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ALEX MACHACEK 「24 Tales」
オーストリア出身のテクニカル系ギタリスト、アレックス・マカチェクの2010年作
UKZでもメンバー同士であるマルコ・ミネマンのドラムをフィーチャーした作品で
変則リズムまくりのドラムの上に、さらりと超絶技巧なギターフレーズが乗り、
シンセなどで味付けされた聴き心地は、優雅なハードフュージョン的に楽しめる。
1、2分台の小曲が連なる形式で、場面ごとに弾むような軽やかさや緊張感がやってきて、
なかなか息つく暇がない。テクニカルでありながらフリーなジャズ色も強く、マカチェクのギターは
ホールズワースの再来と言われるように、天才肌の奔放なセンスとクールな知的さを感じさせる。
テクニカル度・・9 プログレ度・・8 ジャズ的優雅度・・9 総合・・8
ALIAS EYE「FIELD OF NAMES」
英独混合プログレハードバンド、アリアスアイの1st。2001作
しっとりとした叙情に彩られた大人っぽいサウンドはやかましいものが苦手なプログレファンに聴ける。
適度にテクニカルな部分もあるが、基本はゆったりとした哀愁で、ビアノ、キ−ボードも、ギターも
弾きまくりを抑えマイルドでセンスの良い演奏だ。その分刺激は少ないか。対象年齢25才以上(笑)。
ちなみに歌っているのは英国の名バンドBEGGAR'S OPERAのメンバーの息子。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 メタル度・・4 総合・・7
ALIAS EYE「A DIFFERENT POINT OF YOU」
英独混合バンド、アリアス・アイの2nd。2003作
前作はプログレメタル風の音だったのだが、今回はメタル色はほぼなくなっている。
BEGGER'S OPERAのメンバーの息子が歌っていることで話題を呼んだが、
今回もそのマイルドな歌唱を中心とした大人のメロディックロックといった感じ。
大げさに盛り上がることも、クサメロを奏でることもなく、ジャズ的なアプローチともいえる
落ち着いたうるさくない音づくりで、ゆったりと聴くことができる。
それだけにインパクトという点ではいまひとつなことも確か。
メロディアス度・・7 プログレ度・・6 ゆったりアダルト度・・9 総合・・7
alias eye「In Focus」
ドイツのプログレメタルバンド、アリアス・アイの4th。2007作
適度にメタリックなギターと、モダンな薄暗さがミックスされた雰囲気で、
ブルージーな質感とともに大人のプログレハードというような印象だ。
曲は3〜4分台が中心で、展開や盛り上がりというものはあまりなく、
良くいえば肩の力の抜けたサウンドだが、悪くいうとつかみ所がない。
メロディアス度・・7 プログレ度・・7 大人のロック度・・8 総合・・7
ALKIMYA「The Other Side」
フランスのプログレメタルバンド、アルキミアの2007年作
シンセを含む5人組で、一聴してDREAM THEATERを思わせる正統派のProgMetalサウンド。
テクニックのあるギターはときにメロウな旋律を奏で、うっすらとしたシンセが美しく重なる。
ハイトーンのヴォーカルもまずまずの力量で、なかなかレベルの高い演奏を聴かせる。
ドラムを含めたサウンドプロダクションの薄っぺらさが惜しいが、メタル的な重厚さよりも
プログレとしてのドラマティックな世界観が前に出ているのが好みだし、今後が楽しみなバンドである。
LED ZEPPELINの“KASHMIR”のProgMetal風カヴァーも、シンフォニックでいい感じだ。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 楽曲・・7 総合・・7.5
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ALTURA「Mercy」
アメリカのプログレメタルバンド、アルトゥラの1996年作
DREAM THEATERの成功により活気を見せ始めたProgMetalシーンに登場したこのバンド、
ジャケだけ見ると、とてもDT系のサウンドには思えないのだが、実際に聴いてみると、
テクニカルな展開力とメロディアスさのバランスのとれた、なかなかの好作である。
本家に比べると、演奏力や楽曲アレンジの面ではやはりいくぶん見劣りするが、
DTの「AWAKE」におけるダークな叙情性を受け継いだサウンドは、メロウなギターや
シンセによる美しいアレンジとともに、技巧に走りすぎない適度な聴き心地のよさがある。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・7 楽曲・・7 総合・・7.5
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AMARAN'S PLIGHT「Voice in the Light」
SHADOW GALLERYのG、ゲイリー・ワーカンプを中心としたユニット、アマランズ・プライトの2007作。
参加しているメンバーは、現SPOCK'S BEARDのDrに、VoにはSILENT FORCEのD.Cクーパーという
なかなか豪華な顔ぶれ。サウンドの方は、比較的難解さのない歌重視のProgMetalスタイルで、
テクニカルなプレイよりは、小説をモチーフにコンセプト的に物語を進める方法論で、
SHADOW GALLERYを思わせる部分もありつつも、もう少し淡々としている印象。
やはり要となるD.Cの歌唱の説得力が、作品の質をしっかりと保たせている。
派手さはあまりないが、玄人好みのメロディアス・プログレメタル作品である。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・7 ドラマティック度・・7 総合・・7.5
ANCIENT CURSE 「THIRSTY FIELDS」
ドイツのプログレメタル、エンシェント・カースの1995年作
適度にテクニカルなリズムにツインギターのリフを乗せ、マイルドなヴォーカルで聴かせる、
どっしりと重厚な正統派ProgMetal。「AWAKE」期のDREAM THEATERにも通じる
ダークな叙情性に包まれつつ、メタリックなヘヴィネスと硬質感もしっかりあって、
なかなか本格派のスタイル。全26分のミニアルバムなので、もう少し聴きたかったが、
バンドは本作を残して消えてしまう。しかしながら2020年になって、じつに25年ぶりの復活作を発表。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・7 叙情度・・7 総合・・7.5
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ANDEAVOR「ONCE UPON TIME」
アメリカのプログレメタルバンド、アンデバーの1st。1999作
LEGER DE MAIN、RH FACTOR等でも知られるクリス・ロドラーらを中心としたバンド。
音の方はやはりDREAM THEATER的で、メロディアスなギターとキーボードによる
なかなかテクニカルな曲に、けっこう実力のあるVoが歌っている。
ただLEGER DE MAINほどプログレしているわけでもなく、メロディにもそう魅力がないので
全体的には悪くないものの、この手としてはやや中途半端な印象か。
メロディアス度・・7 プログレ度・・7 楽曲・・7 総合・・7
Andeavor 「Darkest Fear」
アメリカのプログレメタルバンド、アンデバーの2nd。2009作
MYTHOLOGICのメンバーなども在籍することで、コアなProgMetalマニアに知られるこのバンド、
前作から10年ぶりとなるアルバムで、テクニカルなアンサンブルのDREAM THEATER的なサウンド。
クオリティはそれなりに高いのだが、今となっては目新しさのないテクニカルメタルで、
メロディやコンセプトにおける魅力が薄いと、そう感動はできない。いまだ存在するProgMetalマニアへ。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・8 ドラマティック度・・7 総合・・7.5
ANDROMEDA「EXTENSION OF THE WISH」
スウェーデンのプログレメタルバンド、アンドロメダの2001年作
へヴィなリフとクラシカルさを併せ持ったギターワーク、美麗なシンセを変拍子リズムに乗せたサウンドは、
テクニカルで高品質。やはり北欧という土地柄か、メロディや展開はなかなかクールで切れ味鋭い。
メタルとしての攻撃性を残したまま、プログレ的技巧リズムとキメをしなやかにこなすセンスは見事。
方向性が分かりやすいので、プログレメタルが苦手という様式美好きメタラーにも楽しめる傑作です。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・7 楽曲センス・・8 総合・・8
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ANDROMEDA「U=T」
スウェーデンのプログレメタルバンド、アンドロメダの2nd。2002年作
前作にあった美麗なアレンジをそぎ落とした硬質感のあるプログレメタルとなっている。
よりソリッドになった楽曲は、高い演奏技術に裏打ちされた隙のないもので、
そこに効果的にメロディアスなギターや歌メロを組み込んでいるという印象だ。
たとえばDREAM THEATERほどには音が詰まっていない分、さほど疲れずに聴き通せる。
前作が好きだった者にはメロディックな分かりやすさが減少した分、ややとっつきは悪くなったかもしれない。
ただ純粋なプログレメタルリスナーにとっては、このテクニカル路線は望むところか。個人的には痛し痒し。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・8 楽曲センス・・8 総合・・8
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ANDROMEDA「chimera」
スウェーデンのプログレメタルバンド、アンドロメダの3rd。2006年作
2ndではより硬質感を増しテクニカルメタルに変貌した感があったが、3rdとなる本作では、
過去2作の良い部分を取り入れた、いわばバランスに優れた質の高い作品といえる。
この手のバンドの中では絶妙ともいえる、プログレッシブな知性とメロディセンスの同居は
屋台骨となるThomas Lejonの巧みなドラミングと、うっすらとしたシンフォニック性を漂わせるシンセワークを中心に
ときに攻撃的に、ときに北欧的な叙情美をまとわせて展開してゆく楽曲に表れている。これは傑作です。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・8 楽曲センス・・9 総合・・8
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ANDROMEDA「Immunity Zone」
スウェーデンのプログレメタルバンド、アンドロメダの2008年作
前作「Chimera」で、ProgMetalとしての最高傑作を作り上げたこのバンド、
続く本作は、時代の空気を反映するようなややダークなサウンドとなった。
無機質なリフと変拍子リズムに乗る、悲しみと怒りを含んだような歌声は
まるでモノトーンのような世界観を描き出し、インダストリアルな雰囲気が強まった。
一時期のDREAM THEATERにも感じられたような、ヘヴィで硬質な感触とともに、
現代の我々が直面する環境破壊、人類の傲慢さなどへのメッセージ性が込められた作品だ。
壮麗なProgMetalを期待するとやや肩すかしを食うが、本質的な部分は不変なのでご安心を。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・8 無機質度・・8 総合・・8
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ANDROMEDA 「Manifest Tyranny」
スウェーデンのプログレメタル、アンドロメダの2011年作
2001年のデビュー以来、北欧のプログレメタル勢としてはトップクラスの実力を持つこのバンド、
5作目となる本作は、一聴していくぶんモダン化したという印象であるが、
テクニカルなリズムと適度にヘヴィなギターワーク、シンセによる派手すぎない味付けによる、
センス溢れるProgMetalは健在。歌メロの適度なキャッチーさも硬質感を中和させていて、
複雑すぎずストレートすぎずという、そのあたりのバランス感覚はさすがというところ。
6〜7分台の曲をメインに構築された楽曲は、これだというインパクトはないが、安心して楽しめる。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・8 モダンセンス度・・8 総合・・7.5
ANGELS GRACE「NEW ERA RISING」
イタリアのプログレメタルバンド、エンジェルズ・グレースの2000年作
ひとことでいうと、DREAM THEATERのゆったりパートを取り出したようなサウンド。
テクニカルさやスリリングさよりは、ジャケ通り「ゆったりとしたおだやかな海の中を
きらきらとしたキーボードに光を照らされながら進むサブマリン」というイメージ。
メロウなギターや、落ち着いた声質のVoなどもこの音楽性にマッチしており
シンフォプログレ寄りのたおやかプログレメタルと考えれば、なかなかの出来。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 ゆったりプログレメタル度・・8 総合・・7.5
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Animals as Leaders
アメリカのテクニカルメタルバンド、アニマルズ・アズ・リーダーズの2009年作
8弦ギターを駆使する黒人ギタリストを擁する4人組で、プログラミング専門のメンバーもいるという、
少し変わったインストのテクニカルメタルバンド。変則リズム入りのフュージョンメタル的な
質感はPLANET X的でもあり、手数の多いドラムも含めてメタリックな硬質感は
DREAM THEATERを思わせたりもする。全編インストであるのだが、このギタリストのプレイがじつに巧みで、
フレーズには歌ごごろがあって、じっくり聞き入ってしまう。バックのシンセの空間的なアレンジもセンスがよく、
テクニカルなサウンドの難解さを緩和してくれている。演奏、センスとも抜群のインスト・プログレメタル作品。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・9 演奏センス・・9 総合・・8
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ANIMALS AS LEADERS「Weightless」
アメリカのテクニカルメタルバンド、アニマルズ・アズ・リーダーズの2011年作
8弦ギターを駆使する黒人ギタリストを擁し、前作はインストによるセンス抜群の作品だったが、
今作もなかなか面白い。テクニカルかつメロディアスな抜群のギターフレーズを軸に
メタルフュージョン的な軽やかさにモダンな硬質感を加えたという作風で、3〜4分台の曲が中心ながら
先の読めない展開で濃密なインストメタルを聴かせる。洒落たプログレ感覚に、Djent風味もありつつも、
ただ複雑なだけでなく、しっかりとメロディを乗せられるセンスは見事。インストなのに飽きません。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・8 軽妙センス度・・9 総合・・8
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Animals As Leaders 「The Joy of Motion」
アメリカのテクニカルメタルバンド、アニマルズ・アズ・リーダーズの2014年作
8弦ギターを駆使する黒人ギタリスト、トシン・アバシを中心としたバンドの3作目。
モダンなテクニカル性を前面に出した、Djent的な聴き心地がさらに強まっていて、
Meshuggahを思わせるような超絶的なリズムギターでたたみかける濃密な味わいと、
一方ではしっかりとメロディックなフレーズを聴かせる、耳心地の良さも同居している。
楽曲は3、4分台と短めながら、せわしない変則リズムと、テクニカルなギタープレイの連続で
オールインストであっても恐ろしく中身の詰まった印象である。ときにアコースティックな曲もまじえて、
単なるテクニカルメタルの枠にとどまらないセンスを披露するなど、メリハリに富んだ見事な傑作だ。
メロディック度・・7 テクニカル度・・9 ヘンタイ度・・8 総合・・8.5
ANTHRIEL 「The Pathway」
フィンランドのプログレメタル、アンスリエルの2010年作
きらびやかなシンセに流麗なギター、伸びやかなハイトーンヴォーカルを乗せて、
随所に変則リズムを含む適度なテクニカル性で、メロパワ寄りのProgMetalを聴かせる。
ヘヴィ過ぎない優雅さと、キャッチーなメロディアス性は、いかにも北欧のバンドらしく、
SONATA ARCTICAなどが好きな方にも楽しめるだろう。優美なシンセワークとともに
シンフォニックな味わいもありつつ、全体的に濃密すぎない聴き心地で楽しめる。
ラストは13分の大曲で、緩急ある展開力とドラマティックな叙情性に包まれる。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 優美度・・8 総合・・8
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ANTHRIEL 「Transcendence」
フィンランドのプログレメタル、アンスリエルの2017年作
2010年にデビューし、本作が2作目となる。美しいイントロから、テクニカルなリズムに
パワフルなヴォーカルを乗せ、メタリックなギターときらびやかなシンセを重ねた、
メロパワ寄りのProgMetalを聴かせる。ギターは随所に流麗なフレーズを織り込んで、
北欧らしい涼やかでキャッチーなメロディに、知的な展開力も含めてクオリティは高く、
伸びやかなヴォーカルもサウンドに説得力を加えている。ラストは19分の大曲で
ゆったりとした叙情的なパートから、優雅な構築センスでゆるやかに盛り上げてゆく。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 北欧度・・8 総合・・8
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Anthropia 「The Ereyn Chronicles: Pt. 1」
フランスのプログレメタル、アントロピアの2006年作
ヴォーカル、ギター、ベース、シンセをこなすマルチミュージシャンのHugo氏を中心にしたユニットで
きらびやかなシンセアレンジとハイトーンヴォーカルを乗せた、ドラマティックなProgMetalサウンド。
ファンタジーストーリーを題材にしたコンセプトアルバムで、DREAMTHEATER以降のテクニカルな構築性と
適度にヘヴィなギターリフと随所にネオクラ的なメロディを含んで描かれるサウンドはなかなか質が高い。
8〜10分という大曲も多い力作なのだが、もう少し明確な盛り上がりや印象的なメロディがあればと思う。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 楽曲・・7 総合・・7.5
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Anthropia 「Non-Euclidean Spaces」
フランスのプログレメタル、エントロピアの2015年作
2006年にデビューし、3作目。美しい女性ヴォーカルに男性声を重ね、ヘヴィなギターに美麗なシンセアレンジで
モダンでスタイリッシュなProgMetalを聴かせる。ほどよいテクニカル性とシンフォニックな音の厚みと、
キュートな女性声による優雅な叙情美に、ときにアコースティックギターもまじえるなど、
ゴシック風味の空気も覗かせるなど、メリハリある構築力で、6〜9分前後の大曲を描いてゆく。
どっしりとした重厚さと知的なテクニカル性に、優雅な叙情が同居したというなかなかの力作です。
ドラマティック度・8 重厚度・8 優雅度・8 総合・8
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ANTI-DEPRESSIVE DELIVERY「FEEL MELT RELEASE ESCAPE」
ノルウェーのプログレメタルバンド、アンチ・デプレッシブ・デリバリーの2004年作
面白いことに、このバンドメンバーは皆デスメタル関係でバンド活動をしていた経緯をもつ。
したがってサウンドの方は、いわゆるDREAM THEATER系のProgMetalとも、
シンフォニック系のプログレハードとも異なり、変拍子リズムを使用したギターリフに
時々デスチックになるドラミング、そこにヴィンデージ調のキーボードが重なり
目新しくないようでいて、意外にこのタイプはいない、というものになっている。
時に古めかしいハモンドや、まるでANEKDOTENのようなメロトロンが盛大に鳴り響き、
メロディにはキャッチーさをかいま見せつつも北欧のバンドらしいさびれた風情をかもしだす。
難解さよりはプログレ・ロック的なノリがあるので、複雑すぎる変態系が苦手な人にも聴けるだろう。
ACT、ANEKDOTEN、PAIN OF SALVATION、MATS/MORGANあたりに通じる要素も感じられる。
メロディアス度・・7 プログレ度・・8 北欧度・・8 総合・・8
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ANUBIS GATE「Purification」
デンマークのプログレメタル、アヌビス・ゲートの2004年作
いまでこそプログレメタルの雄として語られるこのバンドだが、デビュー作である
本作の時点では、テクニカルな要素や展開美で聴かせる部分はまだ薄く、
全体的に重厚に聴かせる正統派のドラマティックメタルという印象だ。
ミドルテンポのどっしりとした曲調に、うっすらとシンセアレンジを含みつつ
ゆるやかに構築される質感は悪くないものの、ややインパクトには乏しいか。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・6 重厚度・・8 総合・・7.5
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ANUBIS GATE「Andromeda Uchained」
デンマークのプログレメタルバンド、アヌビス・ゲートの2007年作
SF小説からとったバンド名やジャケなどから、本作もやはりSF仕立てのコンセプト作らしい。
楽曲には難解さはなく、適度なテクニカル性とキャッチーな歌メロで聴かせる
プログレパワー的なサウンドが聴きやすい。随所に疾走感もあるのでだれることもなく、
重厚でドラマティックな世界観を、北欧的な爽快なメロディとともに作り上げている。
さほど派手さはないが、じっくり作り込まれた質の高い作品である。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 重厚度・・8 総合・・8
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ANUBIS GATE「The Detached」
デンマークのプログレメタルバンド、アヌビス・ゲートの2009年作
前作もSF的なストーリーを感じさせるドラマティックな力作であったが、
本作も重厚さとメロディアスな叙情に彩られた、じつに質の高いアルバムだ。
じっくりと聴かせる展開美に、効果的なギターのメロディとシンセによるシンフォニックな彩り、
そしてマイルドに歌いあげるヴォーカルが一体となって、見事な世界観を作り上げている。
楽曲のメリハリ、モダンなアレンジセンスも細心で隙がない。作り込まれた大作である。
ドラマティック度・・8 重厚度・・8 大作度・・9 総合・・8.5
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デンマークのプログレメタル、アヌビス・ゲートの2011年作
前作は現代のProgMetal作品としてはSeventh Wonderと並ぶくらいの傑作であったが、
5作目となる本作もメロディと展開美のバランスのとれた力作だ。叙情的に歌い上げるヴォーカルと、
シンセを含んだシンフォニックな音の厚み、そしてテクニカルさに頼らないどっしりとした重厚さで、
聴き心地の良いサウンドを描いている。曲は5〜8分台で、長めの曲であってもあくまでメロディとドラマ性を重視し、
決して難解にならないのがこのバンドの特徴である。前作のようなスケール感はないが、やはり質は高い。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 重厚度・・8 総合・・8
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Anubis Gate 「Horizons」
デンマークのプログレメタル、アヌビス・ゲートの2014年作
北欧プログレメタルとしてはすでに中堅といってよいバンドの6作目。
メロディックなギターと美しいシンセアレンジにハイトーンヴォーカルで聴かせる、
正統派のProgMetalスタイルは本作でも健在。知的な構築美とメロディセンス、
キャッチーな聴き心地を両立させる、キャリアに裏打ちされた説得力あるサウンドだ、
適度なモダンも含ませながら、しっかりとクオリティの高さを見せつける力作に仕上がっている。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 重厚度・・8 総合・・8
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Anubis Gate 「Covered in Black」
デンマークのプログレメタル、アヌビス・ゲートの2017年作
2004年にデビューし、本作は7作目。毎作質の高い作品を聴かせる北欧ProgMetalの中堅バンドである。
のっけから硬質なギターを乗せたモダンなヘヴィネスを感じさせつつ、エモーショナルなヴォーカルを乗せて
スタイリッシュなサウンドを展開。ほどよくテクニカルで知的な展開力に、シンセを加えた厚みのあるサウンドで、
Djent的でもあるモダンな感触に随所にキャッチーな歌パートも含みつつ、現在形のプログレメタルが楽しめる。
全体的には、もう少しドラマティックな盛り上がりやメロディアスな部分が欲しい気もするが、さすがの高品質作です。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・7 スタイリッシュ度・・8 総合・・8
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Aphelion「Franticode」
イタリアのプログレメタル、アフェリオンの2009年作
PLANET Xのデレク・シェレニアンがプロデュース、サウンドの方も、いかにも初期のプラネット・エックスを思わせる
テクニカルなメタルフュージョン。ときにDREAM THEATERを思わせるような美麗なシンセワークと、
メタリックなギターが絡み、テクニカルなリズムとともに、プログレメタル的なアンサンブルを構築している。
このバンドの場合、シンセの音がどちらかというとプログレ寄りの感触であるので、PLANET Xのファンはもちろん、
Spaced Outなどテクニカルプログレのリスナーでも楽しめると思う。華麗なるプログレメタルフュージョン作品。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・8 プログレ・フュージョン度・・8 総合・・8
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APPEARANCE OF NOTHING 「All Gods Are Gone」
スイスのプログレメタル、アピアランス・オブ・ナッシングの2011年作
2005年にデビューし、本作で3作目。メタリックなギターをテクニカルなドラムに乗せ、パワフルなヴォーカルで聴かせる、
プログレ・パワーメタルというサウンド。オルガンなどのシンセアレンジを加えたほどよくキャッチーな感触と
Psychotic Walzのデヴォン・グレイヴス、元Edge of Sanityのダン・スワノがゲストヴォーカルで参加して、
デスヴォイスをまじえたアグレッシブな部分が同居しているのも特徴だろう。9分の大曲でも難解さはなく、
重厚さと知的な展開力の同居という点では、VANDEN PLASなどのファンにも楽しめるだろう。
曲によってはダークなナンバーもあり、ドラマティックな空気に包まれる。なかなかの力作である。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 重厚度・・8 総合・・7.5
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APPEARANCE OF NOTHING 「In Times of Darkness」
スイスのプログレメタル、アピアランス・オブ・ナッシングの2019年作
5作目となる本作も、重厚なギターにシンセを重ね、伸びやかなヴォーカルを乗せて、適度にダークでテクニカル、
そしてドラマティックなプログレ・パワーメタルを聴かせる。Djent的でもあるモダンなヘヴィネスと硬質感に、
デスヴォイスを加えたアグレッシブな迫力、ゲストによる物悲しいチェロの音色を加えた、メランコリックな9分の大曲や、
Cellar Darlingのアンナ・マーフィがゲストで参加した男女Voのナンバーなど、ゴシックやデスメタルの要素も随所に含んだ
スタイリッシュなミクスチャー感覚は、若いリスナーなどにも楽しめると思う。ダーク寄りのモダンProgMetalというべき力作だ。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 重厚度・・8 総合・・8
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ARABESQUE「THE UNION」
オランダの女性Voプログレメタルバンド、アラベスクの1st。2002作
テクニカルなインストパートを中心に、ハスキー系の女性Voが歌を載せる。
曲はキーボード入りだがメロディアスというよりはリフメインのアンサンブル重視。
ときおり中近東的な部分も顔を出し、浮遊感のある女性声がサイケな印象を作り出している。
雰囲気的にはAGHORA、AZIGZAなどにも通じる部分を感じるサウンドで、
一聴くして単調に聴こえはするが、このノリが分かってくるとなかなか気持ちよい。
派手な展開やシンフォニック性はないので、それを期待すると肩すかしを食う。
メロディアス度・・7 プログレ度・・8 サイケ度・・8 総合・・7
Arcanum XII 「Evening Lights」
イタリアのプログレメタル、アルカナン12の2015年作
きらびやかなシンセをギターに重ね、ハイトーンのヴォーカルを乗せて、リズムチェンジを含む展開力のある
ドラマティックなProgMetalを聴かせる。イタリアンメタル特有の粗削りなマイナーな味わいとともに、
翳りを帯びたヨーロピアンな叙情と、ほどよくテクニカルな味わいで、7〜9分前後の楽曲を構築してゆく。
盛り上がり切らないメロディや、インストパートにおける唐突な展開などには、いくぶんB級臭さも感じさせるが、
BLACK JESTERあたりに通じるロマンの香りは、きっとカルトなファンには届くことだろう。
ドラマティック度・8 テクニカル度・7 叙情度・8 総合・7.5
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Arch Echo
カナダのプログレメタル、アーチ・エコーの2017年作
新世代のProgMetalとして注目を集めるバンドのデビュー作で、流麗なギターにきらびやかなシンセアレンジ、
Djent的なモダンなヘヴィネスも含んだ、フュージョン的な優雅でテクニカルなインストサウンドを聴かせる。
メロディックなギターのフレージングもセンスが良く、技巧的でありながらもキャッチーな味わいで、
変拍子のキメを盛りこんで展開するところは、DREAM THEATERのインストパートにも通じるだろう。
ときおり、MESHUGGAH風になったかと思えば、ジャズタッチのピアノを乗せた軽妙なナンバーなど、
オールインストながら、振り幅の大きい作風だ。ドラムのサウンドがいくぶんデジタルっぽいのが気になるが、
新世代系テクニカルプログレとしては、ANIMALS AS LEADERSやCHONなどのファンにも楽しめそう。
ドラマティック度・7 テクニカル度・8 優雅でモダン度・9 総合・8
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Arch Echo 「You Won't Believe What Happens Next」
カナダのプログレメタル、アーチ・エコーの2019年作
2作目となる本作も、きらびやかなシンセにメロディックなギターフレーズを乗せた、流麗なインストサウンドで、
デジタルなアレンジを取り入れつつ、テクニカルなリズムの遊びを含んだ、高度な演奏が楽しめる。
前作に比べてヘヴィさは控えめで、優雅なメロディアス性に包まれているが、技巧的なアプローチには磨きがかかり、
フュージョン的な軽妙さの中にも、ときおりメタリックな硬質感が垣間見える。オールインストなので、
どうしても耳心地の良いBGMになってしまいがちだが、巧みなギターフレーズに美麗なシンセによる
シンフォニックなテイストも含んだナンバーなどはなかなか気に入った。
ドラマティック度・7 テクニカル度・8 優雅でモダン度・9 総合・8
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Arduini/Balich 「Dawn of Ages」
アメリカのプログレ・ドゥームメタル、アルドゥイニ/バリッチの2017年作
元Fates WarningのVictor Arduiniと、ドゥームメタルバンド、ArgusのBrian"Butch"Balichのユニットで、
ミステリアスな空気に包まれた、浮遊感のあるエピックなドゥームメタルサウンドを聴かせる。
ギターリフには、やはりどことなくFates Warningのような独特のセンスとメロディをにじませていて、
80年代ルーツの正統派メタルの感触とともに、知的なプログレッシブ性を内包しているのが面白い。
10分以上の大曲を中心に、どっしりとした味わいの中にもリズムチェンジを含む展開力で、
スケール感に包まれた重厚な世界観を描きながら、正統派メタルとしてのハードなノリも生み出している。
そしてやはり、随所にヴィクターのギターワークが魅力的で、17分の大曲ではProgMetal的な構築性も楽しめる。
まさに「初期フェイツ・ウォーニングがドゥームメタル化した」というべき力作である。
ドラマティック度・・8 Progドゥーム度・・8 重厚度・・8 総合・・8
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ARK
元CONCEPTIONのトゥーレ・オストビーを中心にした、プログレメタルバンド、アークの1st。1999作
コンセプションといえば、かつてはKAMELOTのロイ・カーンがいたバンドとしても知られるが
音楽性の方の方でイニシアチブをとっていたのは、むしろギターのトゥーレ・オストビーである。
本作はそのトゥーレ自身の音楽センスが遺憾なく発揮された作品で既存のProgMetalとはまったく違う手法で、
独自の世界観を作り上げている。あえていえば、メロディアスさや表面的なテクニカルさといったものには背を向け
ジャズ的なアプローチや、民族音楽的な感触を取り入れているのが面白い。複雑なリズムを叩くドラムや
ときにスパニッシュテイストもまじえたギターワークなど、じつに玄人好みのサウンドが楽しめる。
ヨルン・ランデのヴォーカルも、ここではただのメタルシンガーというよりは、もっとソウルフルな歌声で
多様性に富んだ楽曲の中で力強い「色」を出している。言葉にしきれないハイセンスな音楽性をもった傑作である。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・8 多様性・・8 総合・・8
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ARK「Burn The Sun」
ノルウェーのテクニカル・プログレッシブ・メタルバンド、アークの2nd。2001作
シンセ奏者が加わり5人編成となった本作では、玄人好みで媚びのなかった前作よりも
バンドサウンドとしてぐっとまとまってきて聴きやすくなっている。シンセが入ったことでサウンドには厚みと
やわらかみが加わり、トゥーレ・オストビーの多彩なギターワークもより引き立ってきた。
またメロディアスな展開も増えたことで、楽曲における焦点がしぼれてきているのが大きい。
ヨルン・ランデのヴォーカルもさすがの存在感だし、手数の多いドラムも相変わらず素晴らしい。
この編成でもう少しアルバムを出してもらいたかった…というのが正直なところ。
真に個性的な新時代のプログレッシブ・メタルを体現したアルバムといえるだろう。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・8 プログレッシブ度・・8 総合・・8
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ARKHE
イタリアのプログレメタルバンド、アークの1st。1997作
サウンドはもろDREAM THEATER影響直下のテクニカル&叙情プログレメタル。
全8曲中7曲が6分以上、うち8分以上5曲、という大作主義で
曲展開やリズム、Voの歌唱法まで、相当DTを研究しているのかよく似ています。
イタリア臭さはあまりなく、EMPTY TREMORのようなクールな構築タイプで、
なかなかクオリティは高い。しかし、このVo。ホントにラブリエが好きなのね。
メロディアス度・・7 プログレ度・・8 DT度・・8 総合・・7.5
Ashent「Flaws of Elation」
イタリアのプログレメタルバンド、アシェントの1st。2006年作
先に聴いていた2ndはモダンなミクスチャー感覚のあるテクニカルな作品であったが
本作もただのProgMetalというよりは、センスのいいシンセワークとともに
けっこう激しく疾走するパートがあったりと、テクニカルなプログレパワーという作風。
ヴォーカルの歌うメロディは、やわらかみのあるキャッチーな感触で
展開の多い曲調においても、硬質感よりもメロディが前にきているのがいい。
2ndほどの完成度はまだないが、この時点ですでにセンスの片鱗は感じさせる。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・7 楽曲・・7 総合・・7.5
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ASHENT「Deconstructive」
イタリアのプログレメタルバンド、アシェントの2009年作
ツインギターにシンセを含む6人組みで、美麗なシンセを乗せたテクニカルな演奏と
デス声入りのヴォーカルも含んだ、なかなか派手やかなサウンドを聴かせる。
ガチャガチャとしたリズムとシンフォニックなシンセの対比や、エモーショナルなヴォーカルには
モダンな感触もあり、そこにデス声を入れてしまうという発想なども、いかにも若者らしい。
王道のProgMetalというよりは、ミクスチャーされたテクニカルメタルというべきバンドかもしれない。
メロディアスなフレーズとテクニカルな速弾きをこなすギタリストの実力もなかなかのものだ。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・8 モダン度・・8 総合・・8
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Ashent「Inheritance」
イタリアのプログレメタルバンド、アシェントの2012年作
これが3作目で、カッチリとしたリズム面の硬質感と、美しいシンセアレンジが合わさった
モダンなミクスチャー感覚で聴かせる、ProgMetalサウンドは前作から同路線。
テクニカルなギターフレーズとともに、キャッチーなメロディのフックも前作以上で、
イタリアらしい叙情性もなかなか魅力的だ。楽曲的にも4〜6分くらいで、複雑すぎないのが好印象。
Spheric Universe Experienceあたりにも通じる、モダンなセンスに包まれたプログレメタルの好作品。
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ASPERA「Ripples」
ノルウェーのプログレメタルバンド、アスペラの2010作
最近は北欧からのProgMetal系がまた増えてきているが、このバンドもシンセ奏者を含む5人組で
テクニカルなアンサンブルで聴かせる、なかなか高品質なサウンドを聴かせてくれる。
変拍子リズムを巧みに取り入れたアレンジに、きらびやかなシンセワークと、
なかなかパワフルなヴォーカルとギターサウンドで、新人らしからぬ堂々とした作風だ。
個人的にはもっとメロディにこだわってもらいたいが、ひねくれ気味が好きな方にはちょうどいいかも。
ちなみに2011年現在は、バンド名を、Above Symmetryに改名している。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・8 ドラマティック度・・7 総合・・8
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ASTRA 「About Me」
イタリアのプログレメタル、アストラの2006年作
ヘヴィなギターにシンセを重ね、パワフルなヴォーカルを乗せて、テクニカルな展開力で聴かせる、
硬質感のあるスタイリッシュなプログレ・メタルサウンド。随所にメロディックなギターフレーズと
美麗なシンセによる叙情性も覗かせつつ、ややダークでモダンな感触に包まれるところは、
「AWAKE」期のDREAM THEATERにも通じるだろう。キャッチーなコーラスやマイルドな歌メロ、
オルガンやムーグの音色を使ったプログレ的なシンセによるインスト曲など、ジャケのイメージよりも
カラフルな作風が楽しめる。甘すぎないメロディとほどよいテクニカル性のバランスで聴かせる高品質作。
メロディック度・・7 テクニカル度・・8 スタイリッシュ度・・8 総合・・8
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ASTRA「From Within」
イタリアのプログレメタルバンド、アストラの2009年作
DGMともメンバーの関わりの深いバンドらしいが、こちらはもっとモダンなアレンジで
適度な疾走感をともないながら、重厚で奥行きのあるサウンドを聴かせる。
テクニックのあるギターは、ヘヴィさとともにときにメタルらしからぬ軽やかなフレーズを奏で、
楽曲の場面によってバッキングとメロディを弾き分けるシンセのセンスもなかなかのもの。
ヴォーカルの歌声とコーラスにはキャッチーな聴き心地があり、テクニカルさとともに
しっかりと楽曲に彩りを加えている。強烈なインパクトはないが質の高い作品だと思う。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 楽曲センス度・・8 総合・・8
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Athem 「The Extended Mind」
アメリカのプログレメタル、アセムの2010年作
ツインギターを含む5人編成で、きらびやかなシンセアレンジとマイルドなヴォーカルで聴かせる、
テクニカルなProgMetalサウンドながら、エモーショナルな哀愁を含んだ叙情的なメロディアスさと
いわばアメリカンプログレ的なキャッチーさを同居させたような、やわらかな耳心地がよいですな。
DT以降の知的な構築センスとモダンな質感を有しつつ、楽曲はあくまでメロディ志向で、
随所に覗かせるメロウなギタートーンや、やわらかなヴォーカルの歌声は、プログレリスナーにも楽しめる。
リズムチェンジも含めてメリハリに富んだ構成力で、12分、15分という大曲も巧みに描いてゆく力作です。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・7 構築度・・8 総合・・8
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ATHENA「Inside the moon」
イタリアンメタルバンド、アシーナの1st。1995作
一聴してDREAM THEATERからの影響を感じさせるサウンドであるが
美しいシンセワークに絡むギターのセンスもよく、しっかりと世界観を感じさせるのが見事。
ハイトーンヴォーカルの歌声とともに、イタリアらしい叙情とメロディを聴かせつつ、
適度にテクニカルな展開と構築性が一体となった質の高い作品だ。
続く2ndではRHAPSODYのファビオ・リオーネが加入し、よりパワフルなサウンドとなっている。
その後3rdでは、マイナー系のメロスピになってしまい失速するものの、
本作の輝きはイタリアンメタルの幕開けを告げる一枚として記憶に残るものだ。
メロディアス度・・8 ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 総合・・8
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Atlantyca「To Nowhere And Beyond」
フランスのプログレメタル、アトランティカの2012年作
ギター、ベース、ドラムというトリオ編成で、ヴォーカルはオールゲスト。元ANGRAのエドゥ・ファラスキ、
VANDEN PLASのアンディ・カンツ、元Quiet Riotのポール・ショーティノといったメンバーが参加しており、
テクニカルというよりはキャッチーな聴き心地のサウンドは、MIND'S EYEあたりにも通じる感触である。
適度に変則リズムも含ませつつも、基本的にはメロハー的な雰囲気で、スリリングなインパクトはないのだが、
名うてのヴォーカルが、こんなマイナーバンドの曲を歌っているのを楽しんだりもできるだろう。
メロディック度・・7 プログレメタル度・・7 楽曲・・7 総合・・7.5
Atmosfear 「Zenith」
ドイツのプログレメタル、アトモスフィアーの2009年作
デビューは90年代というキャリアのあるバンドで、シンセを含む5人編成。
いくぶんダークなイントロから、ヘヴィなギターリフを乗せた適度にテクニカルなアンサンブルに、
美しいシンセワークにパワフルなハイトーンヴォーカルを乗せた重厚なサウンドを聴かせる。
派手なテクニカル性はないのだが、ゆったりとした叙情パートを含んだ大人の味わいで、
随所にプログレ的なシンセやメロウなギターフレーズ覗かせつつ、10分を超える大曲を構築する。
ラストは23分におよぶ組曲で、緩急ある流れで、どっしりとした大人のProgMetalを描き出す。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 重厚度・・8 総合・・7.5
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AT WAR WITH SELF「TORN BETWEEN DIMENTIONS」
アメリカのプログレメタル、アット・ウォー・ウィズ・セルフの2005年作
GORDIAN KNOTにも参加したギタリスト、グレン・スネルウォーを中心に、ベースに、マイケル・マンニング、
FATES WARNINGのドラマー、マーク・ゾンダーというトリオ編成で、ほどよくヘヴィなギターを交えつつ、
優雅なテクニカル性と、薄暗い叙情性を含んだインスト主体のスタイリッシュなプログレメタルサウンド。
無機質な硬質感の中にも、マンドリンやキーボードなどによるメロディアスでアコースティカルな質感も覗かせ、
ジャケのイメージよりはもっと自然体のセンスで、やわらかみがあるアンサンブルで楽しめる。
派手すぎず、うるさすぎないテクニカルな演奏が聴きたい方にお勧めしたいセンス抜群の逸品だ。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・8 薄暗度・・8 総合・・8
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AT WAR WITH SELF「Acts of God」
アメリカのプログレメタルバンド、アット・ウォー・ウィズ・セルフの2nd。2007年
前作はやわらかみのある自然体の作品だったが、今作ではさらに音楽の幅が広げてきており、
より深みのあるアルバムになっている。存在感のあるベースと、非常にテクニックのあるドラム、パーカッションによる
うねりあるグルーブ感に、ザクザクのギターリフが乗るという独特のサウンドは、
混沌としたサイケ風味のメタルジャズロックという、なんとも奇妙な雰囲気なのだが、かと思えば、
PINK FLOYDのような静けさに、どことなく土着的なヴォーカルを聴かせたりモダンなインダストリアル要素もありと、
単なるProgMetalとは括れないアーティスティックな芸術的感性を前面に出していて、とても奥深い楽曲構造。
一聴して地味に感じるのは全体的にセピア調の世界観に彩られているからだろう。
聴き込むごとに味わいの広がる芸術作品のようなアルバムです。
メロディアス度・・7 プログレ度・・8 芸術度・・9 総合・・8
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AT WAR WITH SELF「Familiar Path」
アメリカのプログレメタルバンド、アット・ウォー・ウィズ・セルフの3rd。2009年作
過去の2作も、プログレ、ジャズ、サイケ、メタルなどをミクスチャーさせた芸術的な作品だったが、
今作もインストを中心にした、緊張感と叙情性を交差させた見事なアルバムである。
前作以上にプログレメタリックなヘヴィさを覗かせながら、牧歌的なマンドリンの音色に、
うっすらとしたシンセを絶妙に絡ませ、もの悲しくも美しい、繊細な叙情を表現している。
たとえば、同じく知性派で芸術肌のPAIN OF SALVATIONが歌ものへの傾倒を見せるのとは逆に
彼らはあくまでもインスト演奏、音での空間美を描き出すことにこだわっているのも面白い。
ドラマティック度・・8 空間美度・・9 芸術度・・9 総合・・8
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AURA「A Different View from the Same Side」
イタリアのプログレメタル、オーラの2008年作
ギター、ベース、ドラム、シンセという4人編成で、ヴォーカルはドラムが兼任。
やわらかみのあるメロディアスなProgMetaで、曲は9分台2曲に10分以上が2曲と大曲指向、
インスト部分ではプログレ的なシンセワークとともにシンフォニックな味わいがあるのが特徴。
メタリックな重厚さよりも、フュージョン的な軽やかさがあるので、プログレ側のリスナーにも楽しめる。
シンフォニツク度・・8 プログレ度・・8 テクニカル度・・7 総合・・8
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AWACKS 「Atmosphere 136」
フランスのプログレメタル、アワックスの2003年作
1999年にデビュー、本作は2作目となる。叙情的なギターにシンセを重ね、ハントーンのヴォーカルとともに、
ほどよくノリのあるキャッチーなサウンドを展開。テクニカルな展開力というよりは、流麗なギターフレーズや
優美なシンセアレンジを含むメロディックな叙情に包まれていて、わりとメロハー寄りの楽しみ方もできる。
反面、ProgMetalとしてはスリリングなところには欠けるのだが、イントロがDREAM THEATERっぽかったりと、ニヤリとしたり、
アルバム後半のフランス語のナンバーなどは、ヨーロピアンな優雅な味わいでなかなか良い感じです。
ドラマティック度・7 テクニカル度・6 叙情度・8 総合・7.5
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AWAKE 「Illumination」
イギリスのプログレメタルバンド、アウェイクの2007作
シンセを含む5人組みで、DREAM THEATERを思い浮かべるバンド名であるが、
実際はDTほどテクニカルではないプログレパワー的なサウンドだ。
ヘヴィなギターとシンフォニックなシンセが合わさった重厚な雰囲気は
なかなか悪くないのだが、楽曲やメロディそのものにインパクトが薄い。
そうした詰めの甘さを改善してゆけば、今後に期待できそうなバンドではある。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・7 楽曲・・7 総合・・7
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AWAKE 「Forever More」
イギリスのプログレメタルバンド、アウェイクの2011年作
ツインギターにシンセを含む6人編成で、けっこうヘヴィなギターリフと
うっすらとしたシンセアレンジとともに重厚に聴かせるサウンド。
テクニカルな派手さよりもどっしりとした作風で、モダンな薄暗さとともに
適度にキャッチーな感触もあるのだが、爽快になりきれないもどかしさもある。
全体的な雰囲気は悪くないので、今後はメロディアスでいくのかシンフォニックか
重厚路線なのか、楽曲そのものの方向性をさらに絞っていってもらいたい。
ドラマティック度・・7 重厚度・・8 楽曲・・7 総合・・7.5
AZAZELLO 「UPSTAIRS」
ロシアのプログレメタルバンド、アザゼロの2nd。2000作
ジャケからして怪しいが内容もまた怪しい。アコースティカルなイントロでほのぼの始まったかと思えば、
曲が始まるとせわしない変拍子リズムの演奏で、ヘナチョコ気味のB級調プログレメタルになる。
けっこう展開も凝っているし、キーボードも入って、なかなかドラマティックなハズ…なのだが、
テクニカルなのにあまり力強くないギターリフと、このヴォーカルの声がどうも脱力系なのだな。
こういう辺境っぽいイケてなさは、自分はけっこう好きなので、にやにやしながら楽しめる。
上手い下手の問題でなく、志向とセンスのせいだろう、聴きようによっては、少し前の中南米…
とくにメキシコあたりのシンフォ系バンドのショボい質感にもダブる。10分以上の大曲も3曲あり、
プログレ側のリスナーにも辺境ものとして楽しめるかもしれないが、ダメっぽさを楽しめる余裕のある方にだけ密かにオススメしたい(笑)
メロディアス度・・7 B級系プログレメタル度・・8 辺境度・・10 総合・・7.5
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AZAZELLO「Wings」
ロシアのプログレメタル、アザゼロの2002年作
ヘンテコかつユルかった前作の路線を見事に受け継ぎ、オルガンを含んだシンセと
ヘヴイなのに重厚さのないギターで、テクニカルなんだけどなんだかユルいという
彼らならではの怪しげProgMetalが愉快に炸裂している。ロシア語の歌声もいい感じで、
メロディックなはずなのに、ヘンタイかつオトボケな雰囲気がじつにステキで、
このセンスはイタリアのEvil Wingsとタメを張れるだろう。シンフォニックなところなどは
まるでLittle Tragediesのような華麗さで、本作は濃密さの点では最高傑作であろう。
ドラマティック?度・・8 ユル度・・8 ヘンテコ度・・9 総合・・8
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AZAZELLO 「СЕДЬМОЕ НЕЬО(SEVENTH HEAVEN)」
ロシアのプログレメタルバンド、アザゼロの2004年作
美しいシンセとギターが絡むイントロから、ひねくれ気味のリズムとともに、
ロシア語によるヴォーカルが乗ると、辺境メタル的な濃密さが広がってゆく。
メロディにはクラシカルな優雅さも感じさせつつ、唐突な展開とエキセントリックな奇妙さがかもしだす、
なんともいえないユルい味わいが特徴だ。楽曲はどれも8分以上、10分を超える曲も3曲あり、
無駄に長い気もするのだが、マンドリンや笛の音が鳴り響くアコースティカルな牧歌性も垣間見せつつ、
のんびりと聴けたりする。ヘンテコなProgMetalを好まれる方ならきっと楽しめる作品だろう。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 辺境度・・9 総合・・7.5
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AZAZELLO「Transformation」
ロシアのプログレメタル、アザゼロの2011年作
以前に聴いていた2作はヘンテコなセンスを漂わせた好作品だったのだが、
本作はシンセによる壮麗なイントロからして、なにやらいつになく美しい。
適度なヘヴィさと、モダンさを含んだシンセアレンジ、ロシア語によるヴォーカルで聴かせるスタイルに加え、
新たに男女ヴォーカル編成となったことで、女性声による優雅さがサウンドのアクセントになっている。
一方では、ゆったりとした牧歌的な曲調もいい感じで、ロシアン・ハードプログレ的に楽しめたりもするが、
もちろん、怪しげなローカルさもしっかり残っていて、欧米のバンドでは決して感じられない世界観である。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・7 ヘンテコ度・・8 総合・・7.5
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AzaZello 「Megadream」
ロシアのプログレメタル、アザゼロの2013年作
ヘンテコなセンスのProgMetalとしてマニアにひそかな人気を誇るこのバンド、
本作も適度にテクニカルな展開力と、どことなく怪しげなミステリアスさを漂わせた
イタリアのEvil Wingsなどを思わせる聴き心地で、そのねじれ気味のセンスにはやはりにやにやとなる。
今作はSFファンタジー的なコンセプトがあるのか、楽曲によってはずいぶんと恰好よくなっていて、
まるでちゃんとしたメタルバンドのようだが、一般のリスナーにはむしろ間口が広がったかもしれない。
ドラマティックでちょいヘンテコな力作。尚、2012年にドラマーが死去したようで、本作はその遺作となったようだ。
何故かアメリカのプログレバンド、Mastermindのビル・ベレンズや、Mars Hollowのシンセ奏者などがゲスト参加。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 ヘンテコ度・・7 総合・・8
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Azure Agony「Beyond Belief」
イタリアのプログレメタル、アズーレ・アゴニーの2009年作
シンセを含む4人組で、シンフォニックでテクニカルなインストによるプログレメタル。
美しいシンセアレンジとともにイタリアらしいいくぶん唐突なアレンジも含みながら、
先の読めない展開がなかなか面白い。随所に爽やかなギターメロディや叙情的な切り返しも多く、
美しくも混沌とした聴き心地は、EVIL WINGSやDaedalusなどにも通じるようなヘンテコさがある。
歌がないぶん曲の展開で勝負ということだろうが、良くも悪くもイタリア的な匂いを漂わせる作品だ。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 唐突度・・8 総合・・7.5
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Azure Agony 「India」
イタリアのプログレメタル、アズーレ・アゴニーの2012年作
シンセを含む5人編成で、適度にモダンなヘヴィさと、シンフォニックな美しさを同居させ、
イタリアらしい唐突な展開を含んだProgMetalサウンド。ときにプログレ的なシンセアレンジや
キャッチーな感触に包まれながら、どこか得体の知れない妖しさがあるのが特徴か。
雰囲気は嫌いでないのだが、メロディや展開にもう少し明確な盛り上がりというか、聴かせどころが欲しい。
このままではただのヘンテコなプログレメタルなので、いっそうもっとヘンテコにするとかもよいかも。
メロディック度・・7 展開美度・・7 イタリア度・・8 総合・・7.5
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AZTEC JADE「PARADISE LOST」
イタリアのプログレメタルバンド、アズテック・ジェイドの2000作
かつてDREAM THEATERトリビューアルバム「VOICES」にも参加していたバンド。
いかにもプログレメタル的な変拍子を取り入れつつも、曲は3〜4分台のものがほとんどで、難解さはない。
メロディには分かりやすいキャッチーさもあり、ハイトーンヴォーカルの実力もなかなかのもので、
この手のProg Metal好きならそこそこ楽しめるが、曲、演奏共にこれというインパクトには欠ける。
メロディアス度・・7 プログレ度・・7 テクニカル度・・7 総合・・7
B
BALANCE OF POWER「PERFECT BALANCE」
イギリスのメロディアスメタルバンド、バランス・オブ・パワーの4th。2001作
英国バンドとして地道に活動を続けているこのバンドはもっと多くの人々に評価されていい。
シンフォニックなキーボードを散りばめたメロディアスな楽曲には、プログレッシブな知性とブリテイッシュの誇りを感じさせる。
4作目となるこのアルバムでは、さらにメタリックな音の迫力が増しており、メロディアスハード的でありながら、
ネオクラシカル風味もあり、そしてプログレメタルとしてもしっかり楽しめるくらいの見事なサウンドになっている。
ときにDREAM THEATERを想起させるドラマティックさに加え、しっとりと聴かせるたおやかなピアノも美しく、
全体的に隙のないクオリティの高いアルバムである。このバンドをまだ聴き逃している方は要チェック!
メロディアス度・・8 ドラマティック度・・8 けっこうプログレメタル度・・8
総合・・8
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Behind the Curtain 「Till Birth Do Us Part」
デンマークのプログレメタル、ビハインド・ザ・カーテンの1999年作
ツインギターにシンセを含む6人編成で、ピアノとアコギによる美しいイントロから、
変則リズムを含んだテクニカル性と、美しいシンセアレンジ、いくぶん弱弱しいハイトーンヴォーカルで、
初期DREAM THEATERタイプのProgMetalを聴かせる。ギタリストのテクニックもあって、緩急のついた展開力と
適度にモダンな感触で、なかなかセンスのよいサウンドにはなっているのだが、メロディにしろリズムにしろ、
いまひとつ盛り上がりきらないというもどかしさもある。部分的にはキャッチーな爽快さもあるので、
決して難解ではないのだが、少し唐突な展開はむしろ玄人好みといえるかも。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・8 楽曲・・7 総合・・7.5
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Beyond The Bridge 「The Old Man and The Spirit」
ドイツのプログレメタル、ビヨンド・ザ・ブリッジの2012年作
男女Voにシンセを含む7人編成で、モダンなヘヴィネスを感じさせる硬質感に、
知的な展開力で聴かせるドラマティックなサウンド。パワフルな男性ヴォーカルをメインに
随所に女性ヴォーカルが絡み、シンフォニックメタル的な壮麗な雰囲気とともに
メリハリのあるアレンジ力でコンセプト的な流れをともなった楽曲が描かれてゆく。
若手らしいメタルコア的要素も感じさせつつ、DREAM THEATER以降のドラマ性を盛り込み
オペラティックメタル的に仕上げたというような力作に仕上がっている。知的な作品が好きな方はぜひ。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 知的アレンジ度・・8 総合・・8
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Black Fabula 「Running Through The Ages」
イタリアのプログレメタル、ブラック・ファブラの2003年
女性シンセを含む5人編成で、変則リズムにギターとシンセを重ね、煮え切らないハイトーンヴォーカルで聴かせる、
いくぶんヘンテコなセンスのプログレメタル。キレのないドラムやこもり気味の音質も含めて、
いかにもアマチュアの自主制作然としていて、正直、デモ音源レベルといって差し支えない。
ときに疾走したり、リズムチェンジを多用したアレンジは唐突な部分も多く、この垢抜けなさは
イタリアらしい混沌とした味わいというべきか。優美なシンセワークはなかなか良い感じだし、ギターもテクニックはある。
全5曲であるが、7〜8分という長めの曲も含めて34分もあるので、いちおう1stアルバムということなのだろう。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・7 楽曲・・6 総合・・6.5
BLACK JESTER「Diary of a Blind Angel」
イタリアのプログレメタルバンド、ブラック・ジェスターの1992年作
美麗なシンセとメロウなギターに頼りなげなヴォーカルを乗せて、幻想的な世界観を描いてゆく好作品。
テクニカルさよりは繊細な叙情性が前に出ていて、随所に聴かせる泣きのギターも含め、
むしろプログレ/シンフォニックロックのリスナーに受けそうな音だ。
いくぶんくぐもった音質も、薄靄がかかったような幻想的な雰囲気にぴったりで、
ロマンの香りをたっぷりと含んだ耳心地は個人的にはとても好みです。
メロウ度・・8 テクニカル度・・5 幻想度・・9 総合・・7.5
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BLACK JESTER「Welcome to the Moonlight Circus」
イタリアのプログレメタルバンド、ブラック・ジェスターの2nd。1994年作
1992年に「Diary of a Blind Angel」でデビューしたときから、マイナー調のサウンドながら、
ジャケやアルバムタイトルなど、その幻想的なイメージがじつに素敵なバンドであった。
本作では、サウンドのダイナミズムがいくぶん増していて、そのやわらかで薄暗い情感と、
ロマンあふれる叙情美がより魅力をともなって聴けるようになった。美しいシンセを中心にした
どこかぼうっとした音作りからしても、ヨーロッパの暗がりをのぞくような感覚で耳に心地よい。
イタリアのプログレバンド、レ・オルメのカヴァーも実にハマっている。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・7 幻想度・・9 総合・・8
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BLACK JESTER「The Divine Comedy」
イタリアン・プログレメタルバンド、ブラック・ジェスターの3rd。1997年作
ダンテの「神曲」をテーマにしたコンセプト作で、3パートに分かれた71分の大作。
インストパートの比重が増えた分、ややこのバンドの魅力であった繊細な叙情が少し
分かりにくくなったが、ドラマティックな流れで壮大なストーリーを描くという意気込みは十分。
ProgMetalというよりも、幻想的なプログレとして聴く方がいいかもしれない。
歌の弱さは相変わらずなのだが、そこも含めてのマイナー感覚が許せるのなら聴く価値はある。
バンドは本作のあと、Moonlight Circusと名前を変えアルバムを発表している。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・7 幻想度・・9 総合・・7.5
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Black Wings 「Sacred Shiver」
イタリアのプログレメタル、ブラック・ウイングスの2008年作
シンセを含んだ5人編成で、美麗なシンセワークとハイトーンヴォーカルを乗せて
軽やかに聴かせるProgMetal。キャッチーなメロディで疾走するメロスピ要素も含みつつ
オルガンの音色などを使ったプログレ的な聴き心地と、モダンなきらびやかさが合わさった、
なかなかセンスのよいサウンドだ。若手ながらも余裕あるアンサンブルに演奏力を覗かせる好作。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・7 サウンドセンス・・8 総合・・8
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BOZZIO LEVIN STEVENS「SITUATION DANGEROUS」
テリー・ボジオ、トニー・レヴィン、スティーブ・スティーブンスの三人によるユニットの2nd。2000作
今回は、1週間のリハーサルをとったというだけあって、前作よりも曲としてまとまっている。
のっけからのヘヴィプログレ的な演奏は音に迫力があり、即興だった前作に比べて
各メンバーがイメージを共有できているようなリラックスした部分も感じる。
スティーブ・スティーブンスの奏でるギターにもメロディアスなものが増え、
曲の聴かせ所と演奏のメリハリが備わったことで、アルバムとしての完成度もずっと高まっている。
GORDIAN KNOTやLIQUID TENTIONなどが好きな方もぜひ聴いて欲しい。
メロディアス度・・7 プログレ度・・8 演奏・・9 総合・・8
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Breaking Silence「Impact」
ギリシャのプログレメタルバンド、ブレイキング・サイレンスの2000年作
ツインギターとハイトーンヴォーカルで聴かせる正統派のメタルサウンドを基本にしつつ、
ときおり知的な展開美を含ませていて、90年代のプログレメタル的な雰囲気もある。
楽曲は4〜6分台で、疾走感よりもミドルテンポを主体にどっしりとした聴き心地で、
個人的には、もう少しプログレメタル要素を強めれば、より楽しめるバンドになりそう。
ドラマティック度・・7 プログレメタル度・・7 重厚度・・7 総合・・7.5
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C
CAB
トニー・マカパイン、バニー・ブルネル、デニス・チェンバース によるテクニカルフュージョンバンドの1作目。2000作
PLANET Xでの活動もあって、テクニカルなプレイに磨きをかけたマカパイン、
その流麗かつ軽やかなギタープレイがたっぷりと堪能できるのがこのユニット。
この時点ではまだ3人編成で、マカパインはギターの他にシンセも担当、
自身がリーダーであるだけに、ときおりメタリックな質感を漂わせる弾きまくりの
インスト演奏が楽しめる。シンセの方もギター同様に才能を見せつけている。
デニス・チェンバースの手数の多いドラムも聴き所で、安定したアンサンブルの中にも
緊張感とキメの爽快感をしっかりともたらしているのが見事。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・9 大人のフュージョン度・・9 総合・・8
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CAB 「2」
テクニカル・フュージョンロックバンド、CABの2nd。2000作
メンバーは皆名うての実力者であるのでグルーブに富んだその演奏を聴いているだけでも惚れ惚れとする。
PLANET Xへ参加するあたりから、マカパインのプレイにはプログレ的な変則リズム感が加わりだして
かつてのネオクラシカル系の幻影を完全に払拭したという印象があった。
ここでのジャジーかつハードなフュージョン的なアンサンブルの中にあっても、
そのギターサウンドは、抜群のメロディ感覚と技巧とが合わさって実に輝いて聴こえる。
デニス・チェンバースのドラムも、ときに即興的な巧みな色をかもしだしており、
ブライアン・オーガーのキーボードは、硬くなりがちなインストサウンドをやわらかに彩っている。
PLANET X好きにもお勧めしたいテクニカルなハード・フュージョン作だ。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・8 ハードフュージョン度・・9 総合・・8
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CAB「4」
トニー・マカパイン、バニー・ブルネル、デニス・チェンバース、ブライアン・オーガー による
テクニカルフュージョンバンドの3作目。2003作。3作目なのに「4」というのは謎だが、
今回も技巧派メンバーたちによるテクニカルで軽やかなフュージョンロックが炸裂している。
新たに女性Keyも加わり、メロディアスな聴きやすさも増しているが、
前作で聴かれたマカパインの超絶弾きまくりギターはやや控えめになっている。
全体的なまとまりと、よりジャズロックがかったフュージョンらしさが増しており、
サウンド的にはメタルファンにはややまったりしすぎにも感じられるかもしれない。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・8 大人のフュージョン度・・9 総合・・7.5
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CAB「Live on Sunset」
フュージョンロックバンド、キャブのライブアルバム。2011作
トニー・マカパイン、バニー・ブルネル、デニス・ハム、ヴァージル・ドナーティという
実力者4人によるライブ演奏で、落ち着いた大人のジャズ/フュージョンを聴かせる。
ドナーティのドラムプレイは、玄人好みのグルーブを効かせ、その上にマカパインのギターが
ときにテクニカルに乗せられる。ブルネルのベースの存在感もさすがというべきで、
この技巧派メンツにおけるアンサンブルの要を担っている印象だ。音質的には
自主レーベルからの発売ということで、おそらくほとんど手を加えられていないだろう、
生々しさが伝わってくる感じが、ライブ的でよい。凄腕メンバーたちの大人の演奏を楽しみたい。
ジャズ・フュージョン度・・9 ライブ演奏・・9 実は超絶度・・9 総合・・8
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CAB「Theatre De Marionnettes」
アメリカのフュージョンロックバンド、キャブの2011年作
トニー・マカパイン、バニー・ブルネル、ヴァージル・ドナーティという凄腕3人による
ハード・フュージョンサウンド。マカパインのギターは随所にメロディックでテクニカルなフレーズを
聴かせつつ、あくまで軽妙にさらりと弾き鳴らす。ドナーティのタメの効いたドラムも素晴らしく、
大人の余裕を感じさせるアンサンブルが楽しめる。今回、ブライアン・オーガーは1曲のみの参加で、
代わりにチック・コリア、ミシェル・ポルナレフ他、ゲストによるエレピやオルガンなどが楽曲を優しく彩る。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・8 軽妙度・・9 総合・・8
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CAIRO「CONFLICT AND DREAMS」
アメリカのプログレメタルバンド、カイロの2nd。1998作。
1stを聴いた時点ではあまりにもYES/ELP色が強すぎたが、2ndでは彼ら独自の色が出始めている。
Voの歌いまわしには今だYES臭さがのこるし、KEYのELP好きは顕著に音に表れているが、曲が良くなった。
同じレーベルの先輩であるSHADOW GALLERYにも通じる、メタリックなプログレアレンジが功を奏して、
長い曲でもだれることなく緊張感と叙情を保たせることに成功しているのが大きい。
以前はKEYに押されて目立たなかったギターのフレーズも効果的で、シンフォニックにKEYと絡んで音を厚くする。
70年代的プログレの香りを受け継ぐテクニカルシンフォバンドとして期待させてくれるバンドである。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・8 キーボー度・・9 総合・・8.5
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CAIRO「TIME OF LEGENDS」
アメリカのプログレメタルバンド、カイロの3rd。2001作。
ELPやYESなどの70年代の音を再構築し、そこに90年代以降のプログレメタルの構築性を加味した、
ある意味懐古主義ともいえるバンドであるのだが、前作2ndで有無を言わせぬ完成度の作品を作り上げた。
続く今作では、前作のようなダイナミックさは若干抑えられた、とても落ち着いた感じのサウンドである。
同レーベルの先輩、MAGELLANにも通じるキャッチーなコーラスワーク、
しっとりとした美しいキーボード、センスの良いギターと、どれもが高品質。
70年代の音を融合させ、今や違和感なく自分たちのサウンドに溶け込ませている。
シンフォニック度・・9 テクニカル度・・8 キーボー度・・8 総合・・8
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Caligula's Horse 「Moments from Ephemeral City」
オーストラリアのプログレメタル、カリギュラズ・ホースの2011年作
アコースティックを含む叙情的なイントロから、うっすらとしたシンセに流麗なギター、エモーショナルなヴォーカルを重ね、
優雅な叙情に包まれたスタイリッシュなサウンドが広がってゆく。序盤はメタル的な激しさはさほどなく、
随所にメロディックなギターの旋律や、ポストプログレ的でもある繊細な歌ものパートがゆったりと耳心地よい
テクニカルなギターを乗せた軽妙なインストナンバーから、11分の大曲では、優美な叙情とDjent的な硬質感が行き来する。
2作目以降に比べると、ProgMetalとしては作風が曖昧な感じもあるが、演奏力の高さはすでに一級品である。
ドラマティック度・7 テクニカル度・8 スタイリッシュ度・8 総合・7.5
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CALIGULA'S HORSE 「TIDE THIEF AND RIVER'S END」
オーストラリアのプログレメタル、カリギュラズ・ホースの2013年作
2011年にデビューし、2作目。硬質なツインギターにエモーショナルなヴォーカルを乗せ、Djent的でもあるテクニカル性とともに
モダンでスタイリッシュなサウンドを描く。シンセによる優美なアレンジや、ときにフルートやヴァイオリンなどの音色も加えて、
ポストプログレ的でもある繊細な歌ものパートを含む、優雅な叙情性も耳心地良い。一方では、流麗なギターのフレーズや
硬質なリフによるソリッドなメタル感触が、メリハリある輪郭を描いていて、緩急ある構築力は本作でもすでに完成されている。
アコースティックによる小曲も気が効いていて、ドラマティックに展開するラスト曲まで、アルバムとしての流れも見事な力作だ。
ドラマティック度・8 テクニカル度・8 叙情度・8 総合・8
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CALIGULA'S HORSE 「BLOOM」
オーストラリアのプログレメタル、カリギュラズ・ホースの2015年作
2011年にデビューし、本作が3作目となる。アコースティックギターにマイルドなヴォーカルで始まり、
やわらかなシンセに叙情的なギターでしっとりと聴かせつつ、ハードなリフが切り込んで来て
途端にテクニカルメタルの感触に変わる。変則リズムを含む、Djent的でもある硬質なグルーブ感に
エモーショナルな歌声が同居したスタイリッシュなプログレメタルで、曲によってはポストプログレ寄りの
優美な歌もの感も覗かせる。流麗なギターワークやテクニカルなリズムなど、演奏力の高さも光っていて、
メタルやプログレのボーダーを突き抜ける感覚も含めて、まさに新時代のProgMetalというべき強力作だ。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 スタイリッシュ度・・8 総合・・8
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CALIGULA'S HORSE 「In Contact」
オーストラリアのプログレメタル、カリギュラズ・ホースの2017年作
2011年にデビューし、本作がすでに4作目となる。ヘヴィなギターにうっすらとしたシンセを重ね、
Djent感覚も含んだモダンなテクニカル性で構築する、スタイリッシュなProgMetalサウンド。
マイルドなヴォーカルには、ポストプログレ的な感触があり、メタリックな硬質感とのコントラストになっていて、
繊細な叙情性に包まれたキャッチーなナンバーなどは、プログレ寄りのリスナーにも楽しめるだろう。
ラストは15分を超える大曲で、メロディックなギターとエモーショナルな歌声をシンフォニックなアレンジに乗せ、
じわじわとドラマティックに盛り上げる。モダンな技巧性とゆるやかな美意識が同居した力作だ。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 モダン度・・8 総合・・8
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Caligula's Horse 「Rise Radiant」
オーストラリアのプログレメタル、カリギュラズ・ホ−スの2020年作
2011年にデビューし、すでに5作目となる。叙情的なツインギターをテクニカルなリズムに乗せて、
Djent系のモダンなサウンドを描きつつ、マイルドなヴォーカルによるウェットな味わいが同居した、
新世代のハードプログレというべきスタイルを確立。変則リズムのキメをさりげなく織り込みつつ、
優美なシンセを含むシンフォニックな感触も覗かせて、緩急あるドラマティックな仕上がりになっている。
ラストは10分を超える大曲で、優雅な叙情を含んだプログレッシブな構築力でスタイリッシュに聴かせる。
ドラマティック度・8 テクニカル度・8 優雅度・8 総合・8
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CARAVELLUS「KNOWLEDGE MACHINE」
ブラジルのシンフォニック・プログレメタル、カラヴェラスの2010年作
シンセを含む5人編成で、1作目は女性Voをフロントにしていたが、本作から男性Voの編成になり、
テクニカルな展開力で聴かせるプログレッシブなシンフォニックメタルに深化している。
きらびやかなシンセアレンジとモダンなヘヴィさに、随所に軽やかな優雅さも覗かせる作風で、
テクニカルで流麗なギターフレーズや語りの入ったシアトリカルな雰囲気とともに、
SYMPHONY XやKAMELOT、SERENITYあたりにも通じるでドラマティックな世界観だ。
ヴォーカルの歌声もなかなか力強く、全体的にマイナー臭さはほとんど感じられない。
ラストの15分の大曲も含めて、シンフォニックで知的な構築センスの備わった高品質な作品です。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 構築センス・・8 総合・・8
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CATHARSIS「PATHWAYS TO WHOLENESS」
アメリカのプログレメタルバンド、カタルシスの1st(?)。1995作
それなりにメロディアスで、それなりにテクニカル。だが何かが足りない。
やはりメンバーにKeyがいないというのが、メロディの説得力や
音の厚みに直結するだけに、この手の音を目指すには痛いか。
良くも悪くも世代的にすでに「一昔前」のプログレメタルという印象。
メロディアス度・・7 プログレ度・・7 楽曲・・7 総合・・6
Centrica
イタリアのプログレメタル、セントリカの2008年作
美麗なシンセをメタリックなギターに重ね、ほどよいテクニカル性とシンフォニックな優雅さが合わさった
インストによるProgMetalを聴かせる。流麗なギターフレーズやプログレ寄りのきらびやかなシンセワークなど、
オールインストながらも優美な叙情性が前に出ていて、シンセをメインにした2部構成の大曲などでは、
シンフォニックロック的な耳心地の良さが味わえる。メロウなギターにオルガンやムーグシンセなどを重ねた
ヴィンテージ感触など、キーボーディストのプログレっぷりが素敵である。叙情的なギターの小曲も良い感じで、
ヴォーカルがいないことをさほど感じさせない、実力者たちによるインストサウンドである。
ドラマティック度・7 テクニカル度・7 優美度・8 総合・8
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CHAIN 「RECONSTRUCT」
アメリカのプログレメタルバンド、チェインの1st。2003作
FRAMESHIFTでも活躍する、ヘニング・ポウリーのメインバンド。
インストに主眼を置いたプログレメタルで、変拍子を多用したリズムの上をメロディアスなギターとキーボードが乗る。
この手のバンドの中では叙情性も高く、DREAM THEATER的な要素を持ちつつも、
うるさすぎないサウンド作りにはなかなかのセンスを感じる。Vo入りの曲はややありきたりな感があるのが惜しまれるが、
SEなどで曲をつなぐやり方などにも知性とセンスを感じるので、今後に大いに期待したい。
メロディアス度・・8 プログレメルタル度・・8 楽曲・・7 総合・・7.5
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Chain「exe」
アメリカのプログレメタルバンド、チェインの2nd。2004年作
FRAMESHIFTでも活躍する、ヘニング・ポウリー率いるバンドで、いきなり38分の組曲が始まる力作。
ヘヴィなギターとテクニカルなリズムに上手くシンセを絡ませる方法論は、やはりDREAM THEATERの影響下にあるが、
これまでよりサウンドの説得力が格段に増し、重厚かつドラマティックに繰り広げられるサウンドは、
ピアノやサックスなどのジャズ的な要素を取り込むなど、なかなか起伏に富んだ聴き心地で
定型内のProgMetalを一段踏み越えようとしているようだ。こうしたミクスチャー的なセンスは
かつてのPAIN OF SALVATIONあたりに通じるものがあるが、このバンドの場合は内的な世界観ではなく、
あくまで楽曲そのもので聴かせる明快なタイプ。79分という長さの濃密かつ高品質な正統派ProgMetal作品だ。
メロディアス度・・7 ドラマティック度・・8 ProgMetal度・・9 総合・・8
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CHROMA KEY「Dead Air for Radios」
元DREAM THEATERのケヴィン・ムーアによるプロジェクト、クロマ・キーの1999年作
うっすらとしたシンセワークと、薄暗い叙情で聴かせる、ケヴィン流のプログレ・ロックサウンド。
モダンな雰囲気を取り入れつつも、人間の内的な深みに入り込むようなナイーブな感性と、
どことなくサウンドトラック的でもある、ゆるやかなドラマ性が耳に優しく心地よい。
PINK FLOYDなどにも通じる浮遊感と、繊細な翳りに包まれた世界観は、
PORCUPINE TREEあたりのポストプログレ感覚を先取りしていたともいえるだろう。
メロディアス度・・7 プログレ度・・7 薄暗度・・8 総合・・8
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Chroma Key「You Go Now」
元DREAM THEATERのケヴィン・ムーアによるプロジェクト、クロマ・キーの2000年作
浮遊感をともなったほの暗いサウンドに、デジタリィなシンセアレンジが加わったモダンな感触。
エフェクトのかかったヴォーカルとともに、もの悲しさを漂わせたメロウな叙情が耳に優しい。
英国のモダンロックやポストプログレ的な聴き心地で、ゆったりと浸れる作品だ。
メロディアス度・・7 プログレ度・・7 モダンな薄暗度・・8 総合・・7.5
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Chroma Key 「Graveyard Mountain Home」
元DREAM THEATERのケヴィン・ムーアによるプロジェクト、クロマ・キーの2004年作
3作目となる本作は、シンプルなリズムにエレクトロなシンセを乗せたテクノ風のサウンドで
プログレともメタルともつかない作風であるが、ヴォーカルを乗せたキャッチーな味わいもある。
一番近いのは、BRIAN ENOあたりに通じるアンピエントな浮遊感だろうか。
音数の少ない無機質なリフレインのようでいて、ドラムが生音であるので、
不思議と人間的な暖かみも感じさせる、ゆったりとした癒しに浸れるサウンドである。
映画「Age13」の映像に音楽を乗せたDVD付きの限定盤もあり。
ドラマティック度・・6 プログレ度・・6 アンビエント度・・8 総合・・7.5
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Circle of Illusion 「Jeremias」
オーストリアのプログレメタル、サークル・オブ・イリュージョンの2013年作
女2人、男1人のトリプルヴォーカルに、シンセに女性ヴァイオリン奏者を含んだ編成で
シンフォニックな壮麗さとフックに富んだ展開美で聴かせる、ドラマティックなProgMetaサウンド。
スタイリッシュでキャッチーな優雅さに包まれた楽曲は、ミュージカルなどを思わせる感触で、
ときにコミカルな雰囲気も現れたりと、なかなか個性的だ。艶やかなヴァイオリンを含む美麗な感触と
リズムチェンジを含めた知的な構築センスが随所に散りばめられていて、ストーリーを見せるように進む
楽曲の構成力も見事。ラストは16分の大曲で、緩急のある展開で物語的なドラマ性を描いてゆく。これは力作!
ドラマティック度・・8 優雅度・・8 ミュージカル風度・・8 総合・・8
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CIRCUS MAXIMUS「THE 1ST CHAPTER」
ノルウェーのプログレメタルバンド、サーカス・マキシマスの2005年作
いわゆるDREAM THEATER系なのだが、音を聴くかぎりこの手としてはかなりの逸材。
テクニカルなリズムと曲構成、メロディの吹っ切れの良さが印象的でヴォーカルもなかなかいい。
前に出すぎないキーボードと、なかなかのテクニックを持つギターとのバランスが見事で
全体的に「AWAKE」期のDTをもっとメロウに、北欧っぽくしたという雰囲気。
うるさすぎず静かすぎずという均衡の保ち方と、時折聴かせるしっとりとした叙情性とが相まって、
「知的でありながらどこか優しげ」というプログレメタルとしては理想的な音像。
これからこのバンド独自の個性をつけてゆけば素晴らしいバンドになってゆきそうだ。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・8 楽曲・・8 総合・・8
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CIRCUS MAXIMUS「Isolate」
ノルウェーのプログレメタルバンド、サーカス・マキシマスの2nd。2007年作
デビュー作の段階でも、楽曲の構築性とメロディを両立させた質の高いサウンドだったが、
この2作目も期待を裏切らないものに仕上がっている。テクニカルな変拍子リズムから
キャッチーなメロディパートへの展開は実に見事で、さらに今作ではギターの表現力も増していて、
メロディアスな部分にも磨きがかかっている。アルバム中盤での、DREAM THEATER的なインスト曲は
ややありがちながら、5分前後の曲にこれだけ濃密な展開を入れられるセンスはやはり非凡だし、
12分の大曲におけるダークさはドラマティックなストーリィを見事に描き出している。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・8 楽曲センス度・・9 総合・・8
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CIRCUS MAXIMUS「NINE」
ノルウェーのプログレメタル、サーカス・マキシマスの2012年作
新時代ProgMetalの期待のバンドとして登場し、過去2作は見事な傑作だったが、
本作は5年ぶりとなる3作目である。イントロに続くのは、いきなり10分の大曲で
適度にヘヴィなギターワークにうっすらとした美しいシンセが重なり、薄暗い叙情も含ませつつ
やはり随所にDREAM THEATERを思わせるような構築センスが相変わらずさすがである。
変則リズムのテクニカル性とマイルドなヴォーカルで聴かせる部分がバランスよく融合し、
モダンでキャッチーな聴き心地は、プログレの現在形トレンドともしっかりシンクロしているのが心憎い。
ProgMetalファンのみならず、ハードプログレのリスナーにも楽しめる、メロウでセンス抜群の傑作です。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 楽曲センス度・・9 総合・・8.5
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Circus Maximus 「Havoc」
ノルウェーのプログレメタル、サーカス・マキシマスの2016年作
2005年にデビュー、4作目となる本作はポストプログレ風味の繊細な叙情とテクニカル要素が融合、
メロウでシンフォニックな感触もありつつ、全体的にはいくぶんダークでモダンな感触が前に出ている。
これまでの作品に比べると分かりやすいフックと展開は薄めなので、ぱっと聴きの派手さはないのだが、
マイルドなヴォーカルによる翳りを含んだキャッチーな耳心地は、じわじわと染み入るような空気感である。
そして知的で緻密なアレンジは、イギリスのHAKENあたりにも通じるハイブリッドなセンスを感じさせ、
メタルが苦手なプログレ系リスナーにも楽しめるだろう。4〜5分前後のわりとコンパクトな曲をメインに、
7、8分のハードプログレ的な叙情的なナンバーも加えた、バランスのとれた好作品である。
限定盤のDisc2には、2012年来日時のラウドパークでのライブ音源を収録。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・7 メロウでモダン度・・8 総合・・8
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CLANDESTINE「The Invalid」
アメリカのプログレメタル、クランデスティンの2011年作
韓国人女性Voを擁するバンドで、サウンドはモダンなヘヴィネスと女性ヴォーカルの歌声に、
変則リズム入りのテクニカルな展開力とお洒落な軽やかさを合わせたような感じ。
メタルコア的な激しさとともにポップなキャッチーさもあって、ヘヴィであっても硬質すぎない。
EVANESCENCEやLACUNA COILをProgMetal化したような、というたとえもできるか。
現時点では楽曲の魅力がまだ足りないが、将来性のあるなかなか面白いバンドだと思う。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・7 女性Vo度・・7 総合・・7.5
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COEN 「REMNANTS OF YESTERDAY」
シンガポールのプログレメタル、コーエンの2018年作
APHELIONのメンバーを中心に結成。きらびやかなシンセに、メタリックで技巧的なギターをテクニカルなリズムに乗せ、
伸びやかなヴォーカルで聴かせる、スタイリッシュなProgMetalを聴かせる。ヴォーカルの力量や演奏力の高さも含めて、
アジアレベルを超えたクオリティで、ときにDREAM THEATERを思わせるインストパートの構築力もなかなかのもの。
ドラム、ベース、ギターと各パートのプレイもレベルが高く、テクニカルな展開力とキャッチーなメロディアス性のバランスもよい。
13分を超える大曲では、ジョーダン・ルーデスがゲスト参加。シンフォニックな美しさとドラマティックな展開力が素晴らしい。
ジャケはB級臭いが内容は抜群。ドリムシ系のプログレメタルが好きな方は必聴でしょう。
メロディック度・・8 テクニカル度・・8 構築センス・・8 総合・・8
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COMA「ELUSIVE DREAMS」
トルコ産プログレメタルバンド、コマの1st。2001作
まさかイスラム圏のトルコからこのようなバンドが登場するとは。
サウンドはやはりDREAM THEATER以降のテクニカルな構築型のプログレメタルで
変拍子を多用した演奏はなかなかまとまっていて、英語で歌われるVoも違和感はない。
ときおり中近東系のメロディフレーズが顔を見せるが、それがまだ個性とまではなっていない。
今後は土地柄生かしてターキー度を上げるのか、一般的な方向を保つのかが別れ道となるか。
メロディアス度・・7 プログレ度・・7 中近東度・・6 総合・・7
COMMUNIC「Payment of Existence」
ノルウェーのプログレメタルバンド、コミュニックの2008年作
これが3作目らしいが、過去作は未聴。ギター、ベース、ドラムという3人組で
比較的オーソドックスなメタルサウンドに、テクニカルなリズムを盛り込んだスタイル。
簡単に表すなら、Voの歌唱も含めてFATES WARNING+Nevermoreという感じだろうか、
ダークさの中にもドラマティックな叙情を残していて、案外聴きやすいのもポイント。
曲は7〜9分台と長いのだが、演奏力と音の説得力で緊張感を保っている。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 重厚度・・8 総合・・8
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Conception 「Parallel Minds」
ノルウェーのプログレッシブ・メタル、コンセプションの1993年作
1991年のデビュー作に続く2作目。クールなギターリフにかすれた味わいのヴォーカルを乗せて、
ほどよいメタル感感と知的な構築力が同居した、独自のサウンドは本作でもまだ発展途中。
のちにKAMELOTに加入する若き日のロイ・カーンの歌声は、その伸びやかな表現力で
わりと硬質な楽曲にエモーショナルな表情を加え、トゥーレ・オストビーのギターワークも
随所に流麗なフレーズを乗せていて、のちのARKにも通じる浮遊感のあるプログレッシブメタルが楽しめる。
ラストは9分の大曲で、緩急ある流れでじっくり聴かせるが、印象的なメロディや展開がもっと欲しい気もする。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・7 知的でクール度・・8 総合・・7.5
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Conception 「In Your Multitude」
ノルウェーのプログレッシブメタル、コンセプションの1995年作
1991年にデビューし、3作目となる。モダンなシンセにメタリックなギターを重ねたイントロから
のちにKAMELOTに加入する、ロイ・カーンの表現力あるヴォーカルを乗せて、
トライバルな味わいとメタルの重厚さに知的な構築力を加えた、独自のサウンドを描いてゆく。
トゥーレ・オストビーのギタープレイも、硬質なリフから流麗なフレーズまで前作以上に光っていて、
3分前後のシンプルなナンバーでも、巧みなリフとヴォーカルの説得力で、しっかりとバンドとしての世界観を感じさせる。
プログレ的なシンセを乗せたテクニカルなナンバーも含めて、多様なセンスを感じさせる玄人好みの力作である。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・7 重厚度・・8 総合・・8
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Conception 「State of Deception」
ノルウェーのプログレッシブメタル、コンセプションの2020年作
1991年にデビュー、97年までに4作を残して消えたバンドが、じつに23年ぶりに復活。シンフォニックなイントロ曲から、
知的なギターリフにシンセを重ね、KAMELOTを脱退してバンドに復帰したロイ・カーンのエモーショナルな歌声を乗せて
独特の浮遊感と適度なテクニカル性が同居したサウンドを構築してゆく。随所にシンフォニックなスケール感も感じさせ、
トゥーレ・オストビーによるセンスあるギターワークも光っていて、全体的にスリリングな展開力はさほどないものの、
女性声を加えたゆったとりとした大人のバラードナンバーや、モダンでキャッチーなロックナンバーなど、自然体の作風で、
力量あるヴォーカルが楽曲に説得力を加えている。大曲などはないので物足りなさはあるが、復活後のさらなる傑作に期待したい。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 コンセプション度・・8 総合・・8
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CONDITION RED「CONDITION RED」
テクニカル系ギタリスト、ラーズ・エリック・マットソンとアレックス・マシを中心にした
フィンランドのプログレメタルユニット、コンディション・レッドのアルバム。2000作
基本は変拍子を多用したテクニカルなインストで、男女ヴォーカル入りのサウンドは、
無理にメタルっぽくしようとしていないのが好感が持てる。時にフュージョン的なのりの良さもあり、
曲の組み立てのセンスの良さはフランスのシリル・エイチャードなどが思い出された。
テクニカルになりすぎないところが秀逸で、じっくり聴き込むことも出来れば
お茶を飲みながらしっとりもできる。メタルジャズロックとしても一級品。デレク・シェリニアンも参加。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・8 楽曲センス・・9 総合・・8
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CONDITION RED「U」
北欧のテクニカルギタリスト、ラーズ・エリック・マットソン率いるコンディション・レッドの2nd。2003作
前作はジャズロック&フュージョン色も強かったが、今回はのっけからネオクラシカルなサウンドで
そこに浮遊感のあるやや素人臭い女性ヴォーカルが歌を載せ、ときおりテクニカルなキメをしてみせるという
いわばネオクラ系プログレメタル。インスト曲におけるシンセはかなりプログレ的で、それが様式美ギターと合わさると
まるでイングヴェイをプログレ化したような雰囲気にもなる。これをプログレメタルというべきか、
北欧ネオクラシカルというべきか迷うところだが、とにかくテクニカルメタル好きには楽しめるサウンドであることは確か。
なお、今作ではアレックス・マシはゲスト扱いとなっている。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・8 ネオクラ度・・8 総合・・7.5
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Continuum 「Lifeless Ocean」
フランスのプログレメタル、コンティニュームの2009年作
美麗なシンセと適度にヘヴィなギターを乗せ、テクニカルなアンサンブルと緩急ある展開力で、
DREAM THEATERばりのProgMetalを聴かせる。湿り気を含んだ叙情性は、ヨーロピアンな香りの
シンフォニックプログレ的な雰囲気もあって、ドラマティックな構築センスもなかなか見事。
ときに激しい疾走パートなども含んだリズムチェンジや、美しいシンセに包まれたシンフォニックな味わいの
ヴォーカルナンバーもあったりと、全体的にもメリハリに富んだ、高品質なプログレメタルが楽しめる。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 構築センス・・8 総合・・8
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Cosmics「The Cosmic Year」
EMPTY TREMOR、Twinspiritsのダニエル・リヴェラーニを中心としたプロジェクトバンド、コズミックスの2008年作
タイトルどおり、スペイシーな雰囲気が漂うインストのProgMetalで、ダニエルの変幻自在のシンセワークに、
名手ヴァージル・ドナーティ(PLANET X、RING OF FIRE)の見事なドラムが変則リズムとともに緊張感を作り出す。
テクニカルな展開の後には、メロディアスなギターの切り返しなどもあって、なかなかにドラマティック。
音を詰め込むのではなく、空間的な壮大さを描くような作風がプログレッシブ好きには心地よいですな。
シンフォニック度・・8 テクニカル度・・8 プログレ的センス度・・9 総合・・8
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a COSMIC TRAIL「Outer Planes」
ドイツのプログレメタル、コズミック・トレイルの2010年作
ソリッドなギターで聴かせるテクニカルメタル風味と、しっとりとしたポストプログレを合わせたような感触で、
7〜9分の大曲をメインにした、知的な構築性も感じさせるサウンド。ときに美しいストリングスアレンジや
繊細で叙情的なパートなどを挟み、メリハリのついた構成は、型にとらわれない若手らしいボーダーレスな作風だ。
ポストロック、エモーショナルロック、ラウドロックを合わせたというべきか、Porcupine Tree以降のモダンな解釈で
それらをプログレ化したとも言えるかもしれない。オールインストで、スペイシーでミステリアスな聴き心地と
エクスペリメンタルなセンスに包まれた異色作。さらに化けるとすごいバンドになるかもしれない。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・7 モダンセンス度・・8 総合・・7.5
CREATION'S END「A New Beginning」
アメリカのプログレメタルバンド、クリエイションズ・エンドの2010年作
元RIOTのマイク・ディメオがヴォーカルを務めるバンドで、適度にダークで重厚なプログレ・パワーメタル。
ヘヴィなギターリフとシンセワークを重ね、どっしりとミドルテンポの楽曲を聴かせるスタイルは、
たとえるなら、Nevermoreあたりをメロディックに聴きやすくしたような感触もあり、
ドラマティックな展開力はかつてのCONCEPTIONなどにも通じるかもしれない。
ラストの見事な大曲も含めて、全体的にも高品質で知的にして重厚な力作だ。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 重厚度・・8 総合・・8
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CRISALIDA
チリのハードシンフォニック/プログレメタルバンド、クリサリダの2006年作
MATRAZをはじめ、ハードめのシンフォニックバンドの多いこの国だが、
このバンドもDREAM THEATERに影響を受けたとおぼしきメタリックなテイストと
スペイン語の女性ヴォーカルの情熱的な歌唱が特徴的な、クオリティの高いサウンドをやっている。
かなりハードエッジなギターワークは、メタルファンでも普通に楽しめるくらいにテクニカルだし、
きらきらとしたシンセワークもなかなかのもの。曲は3〜6分台で比較的シンプルにまとまっていて聴きやすい。
むしろプログレメタルとしても楽しめるような好作品だ。オフィシャルサイトで試聴可能。
シンフォニック度・・7 メタリック度・・8 女性Vo度・・7 総合・・8
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CRISALIDA「RACO」
チリのハードシンフォニックバンド、クリサリダの2009年作
前作はプログレメタリックなサウンドと女性ヴォーカルの歌声で聴かせるなかなかのアルバムであったが、
本作では、しっとりとしたシンフォニックな楽曲もあって、女性Voのスペイン語の歌唱がより引き立っている。
もちろんハードメタリックなProgMetal要素も残っているが、トータルなバランスを高めてきたという印象だ。
贅沢をいえば、もう少し派手さというか、インパクトのある曲や明快な聴かせどころがあればと思う。
シンフォニック度・・7 メタリック度・・7 女性Vo度・・7 総合・・7.5
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CRISALIDA 「Terra Ancestral」
チリのプログレメタル、クリサリダの2015年作
2006年にデビューしてから、本作は4作目となる。ツインギターのメタリックなリフと、
うっすらとしたシンセアレンジに、スペイン語の女性ヴォーカルを乗せた重厚なサウンド。
適度にテクニカルな展開力と南米らしい繊細な叙情性も含みつつ、過去のアルバムに比べると
ゴシックメタル的なメランコリックな空気感とモダンなヘヴィネスがずいぶん増している。
スローからミドルテンポのナンバーを主体にしたどっしりとしたアンサンブルで、
女性声による優雅な浮遊感と薄暗い叙情に包まれたサウンドが楽しめる。
ドラマティック度・・7 むしろゴシックメタル度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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CRISES「Broken Glass」
ドイツのプログレメタル、クライシスの1998年
シンセを含む5人編成で、メタリックなギターに美麗なシンセを重ね、マイルドなヴォーカルを乗せた、
正統派のProgMetalスタイル。「AWAKE」期のDREAM THEATERの影響を感じさせる、
ほどよくダークなヘヴィネスとリズムチェンジを含むテクニカルな構築力で、クオリティの高いサウンドを描く。
随所に流麗なメロディを奏でるギターのセンスもなかなかのもので、表現力あるヴォーカルとともに、
単なるDTフォロワーという以上にドラマティックな世界観を感じさせる。6〜8分前後の楽曲を主体に、
20分におよぶ大曲では、緩急ある展開美と、メロディックな叙情とテクニカル性が同居した構築性が光る。
DREAMSCAPEあたりが好きな方にもお薦めの、掘り出し物的な高品質プログレメタル。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 構築度・・8 総合・・8
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CYNIC 「FOCUS」
アメリカのプログレッシブ・デスメタルバンド、シニックの1993年作
ともかく、このバンドの出現は、とても大きなインパクトだった。それまでデスメタルといえば、
粗暴な吐き捨てヴォーカルとも重厚なギターリフというイメージがあったのだが、本作で聴かれるサウンドは、
最初から優雅で知的さの漂う、ほとんどデスメタルと言うこともはばかれるような、そんな音なのである。
プログレッシブで空間的な広がりのある音作りは、ほの暗い叙情と繊細な感性とともに、
メタルらしからぬ不思議な浮遊感をかもしだしている。メンバーの技量が高いからだろう、
演奏の余裕がそのまま耳触りの良さにつながっていて、アコースティカルなパートや女性コーラスなど
芸術的なセンスが光っている。ここから25年の歳月をへて復活することを思うと、感無量である。
浮遊感度・・8 デスメタル度・・4 芸術感性度・・9 総合・・8.5
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CYNIC「Traced in Air」
伝説のプログレッシブ・デスメタルバンド、シニックの復活作。2008作
かつて「Focus」というアルバム1枚を残し、コアなリスナーから注目を浴びたこのバンド、
中心人物のショーン・マローンは、その後、GRDIAN KNOTをはじめ、AGHORAへの参加や
ソロワークなど、地道な音楽活動をしていたが、この度ついにCYNICでの新作が叶った。
サウンドの方は、どこかスペイシーで神々しいジャケのイメージとリンクするように、
内的宇宙を思わせるような深みのある雰囲気で、かつての芸術的な感性はそのまま。
テクニカルでありながら、決して弾きまくるのではく、プログレッシブな知性を感じさせる演奏とともに
楽曲アレンジには、むしろ淡々としたヴォーカルとマッチするような繊細さがある。
一部デス声も使用しているが、OPETHなどと同様に、音を通じて静と動、悲しみと怒りの表現を
描いているというイメージで、全体的にも美しくすらあるプログレ的な作品に仕上がっている。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・8 芸術度・・8 総合・・8
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CYNIC「Carbon Based Anatomy」
アメリカのプログレッシブメタル、シニックのミニアルバム。2011年作
2009年に25年ぶりの復活作「Traced in Air」を発表し、そのプログレッシブな美しさでファンを喜ばせ、
続くミニ「Re-Traced」では意表をついたアレンジで賛否両論を呼んだ。これはそれに続くミニアルバムで、
のっけからしっとりとしたシンセと女性ヴォーカルによるアンビエントな雰囲気で驚かされるが、
2曲めからは彼ららしい知的で芸術的なサウンドを聴かせてくれる。やわらかな聴き心地の中に
もの悲しい情感と未来的なセンスのスケール感を内包し、巧みなアンサンブルで構築してゆく。
ProgMetalとしての質感を残しつつ、ほのかな民俗要素やモダンプログレのアンニュイさも取り込んでいて
そのセンスの良さは、Porcupine Treeなどにも通じるかもしれない。早くフルアルバムが聴きたい。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 芸術度・・9 総合・・8
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CYNIC 「Kindly Bent to Free Us
2008年に復活し、ミニアルバム2作をはさんで、6年ぶりとなるフルアルバム。
前作ミニでの脱メタルの方向性から次がどうなるのかと思っていたが、本作のサウンドはマイルドなヴォーカルと浮遊感のあるコーラスを乗せた、いわばポストプログレ風味を強めた奥深い聴き心地のサウンドに仕上がっている。
随所にメタリックなギターも含んだ、テクニカルなスタイルも顔を覗かせるが全体としてはやわらかな美しさに包まれたキャッチーなプログレメタルで、
軽妙なアンサンブルとしっとりとした静謐感が巧みにミックスされた絶妙の路線。
むしろ、多くのプログレリスナーにアピールするだろう傑作に仕上がっている。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 センス度・・9 総合・・8.5
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Cynic 「Uroboric Forms」
アメリカのプログレッシブ・デスメタル、シニックの初期音源集。2016年作
1993年のデビュー作「FOCUS」以前、バンドの黎明期である、1988〜1991年までのデモ音源を収録。
テクニカルな変則リズムにうねるベースとツインギターのリフを乗せ、吐き捨てヴォーカルを乗せた
初期DEATHにも通じるサウンドで、アヴァンギャルドな展開の中にも、プログレッシブな構築力と、
ときにメロディックなギターフレーズを覗かせるなど、1991年デモの段階でも知的なセンスが光っている。
1990年以前のデモは、よりアグレッシブなパートが多いが、テクニカルデスとしての骨格はすでに完成していて
確かな演奏力も含めて単なるデモという以上の迫力がある。音質もまず良好でファンは必聴の音源デス。
音質・・7 テクニカル度・・8 貴重音源度・・9 総合・・8
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Cynthesis「ReEvolution」
ZERO HOURやENCHANTのメンバーによるプログレメタルバンド、シンセシスの2013年作
薄暗さを含んだメロウな叙情と、適度にモダンなヘヴィネスも加わって構築されるハイセンスなサウンド。
硬質なテクニカル性をもったインスト部分と、歌入りのやわらかな情感が合わさった雰囲気で、
コンセプト的なドラマティックな流れを感じさせる構成にも知的なセンスを感じさせる。
9分、13分という大曲もあるが、もう少し明快な盛り上げというか、聴かせどころがあると、
傑作になったかもしれない。実力とセンスは十分なので、あとは楽曲ですな。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 重厚度・・8 総合・・7.5
Cyrax「Reflections」
イタリアのプログレメタル、サイラックスの2013年作
メタリックなギターにシンセを重ね、パワフルでシアトリカルなハイトーンヴォーカルで聴かせる、
ほどよくアヴァンギャルドなプログレメタル。楽曲は4分前後主体で、ときにシンフォニックな優雅さも覗かせつつ、
メロディックというよりはヘンテコな展開力とネジが抜けたようなヴォーカルも含めて、一般受けはしないだろう。
一方では叙情的なインストナンバーもあったりと、まだ方向性を模索している感じもある。全33分と、わりと短めで
内容的にもまだ突き抜けきらないのだが、次作では、WATCHTOWERばりのテクニカルメタルの力作になる。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・7 アヴァンギャル度・・7 総合・・7
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Cyrax 「Pictures」
イタリアのプログレメタル、サイラックスの2015年作
2013年にデビュー、本作は2作目となる。メタリックなギターにパワフルなハイトーンヴォーカルを乗せ
随所に疾走する激しさを含みつつ、唐突なリズムチェンジなどのテクニカルな展開力で聴かせる、
いわばWATCHTOWERルーツのヘンテコなProgMetal。随所にオルガンやピアノなどのシンセや、
ヴァイオリンなどのストリングス、さらには女性ヴォーカルを加えた優雅な感触も覗かせつつ、
3パートに分かれた15分におよぶ組曲も、メタリックな硬質感とクラシカルな優雅さが同居した、
ひと筋縄ではいかない構築センスを見せつける。ヘンタイ系ProgMetaが好きな方にはとても楽しめる力作だ。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 優雅でヘンタイ度・・8 総合・・8
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CYRIL ACHARD'S MORBID FEELING「...In Inconstancia Constans」
フランスのギタリスト、シリル・エイチャード率いるモービッド・フィーリングの2002年作
シリル・エイチャードはフランスの大御所プログレバンドATOLLやARRAKEENなどへ参加した経歴をもつ。
サウンドは、DREAM THEATER的なテクニカルさとメロディアスな叙情とのバランスのとれた見事なもので、
インストパートの壮絶さはDT並である。キーボードとギターのコンビネーションも良く、
かすれ気味の声質のヴォーカルもなかなかアダルトなテイストでメロディを歌い上げている。
シリルのギターは緩急自在で、正確かつテクニカルでありながらも、しっかりムーディなセンスもある。
DTのジョン・ペトルーシに比肩できるギタリストといっても過言ではないだろう。楽曲的にもDTに通じるところもあるが、
聞き手をぐいぐいと引きこむ力強さと、メロウな繊細さを併せ持った素晴らしい傑作だ。フランスおそるべし。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・9 楽曲センス・・9 総合・・8.5◆メタル名盤特選入り
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Cyril Achard「Confusion」
フランスのギタリスト、シリル・エイチャードのソロアルバム。2002作
シリル・エイチャードというと、プログレメタルユニット、MORBID FEELINGが思い出されるが、
本作はそれより前、1996年に録音されたもので、メタルというよりはフュージョン的な作品。
おそらく、プログレバンドArrakeenを脱退してからのものだろう。随所にプログレ的な構築性や
ギターのみならずシンセを含んだシンフォニックな味わいもあって、そのセンスと才能を発揮している。
メロディアスなギタープレイでの泣きのセンスは素晴らしく、クラシック、ジャズなどの素養も覗かせて
単なるギターインスト以上の魅力ある楽曲が楽しめる。ボーナスに2002年のデモやArrakeen時代の曲も収録。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 ギターメロ度・・8 総合・・8
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Cyril Achard Trio 「Trace」
フランス人ギタリスト、シリル・エイチャード率いるユニットの2009年作
アコースティックギター、ウッドベース、ドラムというトリオ編成で、
インストによるジャズタッチのアンサンブルを聴かせるサウンド。
即興的な要素も含みつつ、スリリングな緊張感というものはあまりなく、
大人の味わいでつむがれる演奏を、ゆるやかに鑑賞できるもの。
音数が少ないのでシンプルな聴き心地で、余裕ある技巧を含んだアダルトな作品だ。
アコースティック度・・9 プログレ度・・7 大人のアンサンブル度・・8 総合・・7.5
Cyril Achard 「Violencia」
フランスのギタリスト、シリル・エイチャードの2010年作
2002年には、MORBID FEELING名義でProgMetalの傑作を発表、クラシックやジャズの素養も持つ技巧派ギタリストで、
本作は、ギター、ベース、ドラムというシンプルなトリオ編成による作品で、メタリックな硬質感を前に出した作風。
サウンドはわりとラフにも聴こえるが、テクニカルなギタープレイは、メタル寄りであっても優雅さは失っておらず、
変則リズムを取り入れたアンサンブルは、メタルフュージョン的でもある。ネオクラシカル寄りのメロディも覗かせつつ、
本作のコンセプトなのだろう、メタル感の強い音色とともに、全体的にアグレッシブな聴き心地になっている。
メロディック度・・7 テクニカル度・・8 ギター度・・9 総合・・8
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D
DAEDALUS「The Never Ending Illusion」
イタリアのプログレメタルバンド、ダイダルスの2009年作
シンセを含む5人組で、テクニカルなリズムとメロディアスなギター、美麗なシンセアレンジとともに、
なかなかクオリティの高いサウンドを構築する。歌メロはキャッチーでありながら、
どことなくヒネくれたセンスを窺わせ、かつてのELDRITCHやEVIL WINGSあたりにも通じる、
いわば「イタリアンプログレ的な混沌」を感じさせるところは、個人的にもとても好みである。
タイトル曲での優雅なヒネくれた展開美やイタリア語のヴォーカルを乗せたラスト曲もよい感じで、
メロディックで濃密な味わいのイタリアンProgMetalが楽しめる力作だ。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・8 イタリア度・・9 総合・・8
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「Motherland」
イタリアのプログレメタル、ダイダルスの2011年作
前作もじつにイタリアらしい奇妙な構築センス満載の力作であったが、
本作も初期のELDRITCHのようなプログレ感あふれるシンセワークと
聴き心地はキャッチーだがどことなくヒネたメロディに包まれたProgMetalサウンド。
ギターのフレーズは爽やかといってもよいくらいで、メロディアスな叙情性は前作と同様なのだが、
全体的には軽妙なノリと怪しさがやや薄れたのが残念。ときおりヘンなリフもちゃんと出てくるが。
ちなみに、シンセを弾くのはプログレバンドIl Tempio Delle Clessidreの女性奏者で、
その筋のマニアにもニヤり。なぜかMASTERPLANのローランド・グラポウもゲスト参加している。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・7 イタリア度・・8 総合・・7.5
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Dali's Dilemma「Manifesto for Futurism」
アメリカのプログレメタルバンド、ダリズ・ジレンマの1999年作
MAGNA CARTAレーベルからデビューした5人組で、一聴してDREAM THEATERからの影響を感じさせるもの。
テクニカルなリズムの上に美しいシンセとペトルーシばりのギターワークが乗る。そしてヴォーカルの実力もなかなか。
5〜7分台の曲を中心に、巧みな構成力で聴かせつつ、歌メロにはアメリカンプログレ的なキャッチーな
抜けの良さがあり、難解さを感じさせないセンスもいい。1作のみで消えるには惜しいバンドだった。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・8 楽曲センス・・8 総合・・8
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Daniel J「Losing Time」
イスラエル出身のギタリスト、ダニエル.Jの2003年作
ギターの他にベースにドラム、シンセも弾きヴォーカルもとるというマルチプレイヤーで
Jordan Rudessのソロ作に参加したこともあるという経歴の持ち主らしい。
やっているのはヘヴィなリフとプログレメタリックな変拍子にテクニカルなキメという、
やはりDREAM THEATERに通じる部分の多いサウンドだが、モダンなヘヴィロック風味や
UKロック的なキャッチーな歌メロもあったりと、なかなか面白い作品に仕上がっている。
現時点ではDTからの影響や、雑多な要素が楽曲の中で活かしきれていない気がするが、
テクニック的にはもちろん、才能あるミュージシャンであることは間違いないだろう。
個人的にはかすかに覗かせる中近東的フレイバーを増やすと個性になる気がする。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・8 ProgMetal度・・8 総合・・7.5
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DANIELE LIVERANI「Daily Trauma」
イタリアのマルチプレイヤー、ダニエレ・リヴェラーニのソロアルバム。2004作
EMPTY TREMORやGENIUSなどでの活動で知られている彼だが、
このソロ作もジャケはチンケだが内容は充実。ギター、ベース、シンセを一人でこなし、
全編テクニカルなインストプログレメタルが炸裂。イタリア人らしい陽性のメロディと
いかにもプログレ的なシンセアレンジとともに、キャッチーで爽快なサウンドが楽しめる。
やはり歌がないので途中でやや飽きるのは否めないが、シンフォニック、ポップ、テクニカルと
キラキラと表情を変える遊園地のような楽しい作品であると思う。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 楽曲・・7 総合・・7.5
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DANIELE LIVERANI「GENIUS A ROCK OPERA」
イタリアンプログレメタルバンド、EMPTY TREMORのG、ダニエル・リベラーニのプロジェクト。2002作
まるでスターウォーズみたいなジャケットからして壮大なSFロックオペラのようである。
ギター、ベース、キーボードは自身がこなしており、Voに豪華なゲストを迎えて
配役ごとに歌を載せるという方法論はアルイエン・ルカッセンのAYREON的か。
適度にテクニカルに展開する楽曲は、歌もの的なキャッチーな感触が前に出ていて聴きやすい。
マーク・ボールズ、ラナ・レーン、ダニエル・ギルデンロウ、ジョン・ウェットン、スティーブ・ウォルシュなどが参加。
メロディアス度・・7 ProgMetal度・・7 壮大度・・8 総合・・8
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GENIUS A ROCK OPERA「EPISODE 2- IN SEACH OF THE LITTLE PRINCE」
イタリアのマルチプレイヤー、ダニエル・リヴェラーニによるロックオペラプロジェクト、ジーニアスの第二弾。2004作。
今回も、マーク・ボールズ(RING OF FIRE)、ダニエル・ギルデンロウ(PAIN OF SALVATION)に
エリック・マーティン(元Mr.BIG)、ロブ・タイラント(LABYRINTH)、エドゥ・ファラスキ(ANGRA)、
リブ・クリスティン(LEAVES' EYES)他、豪華ゲストが参加。それぞれの配役ごとにヴォーカルに迎えて、
壮大なSFストーリィが繰り広げられる。前作は歌もの的要素が強かったが、今回は曲によって
雰囲気に幅を持たせていてなかなか楽しめる。テクニカルな部分とキャッチーなメロディとのバランスがよく、
壮麗なキーボードのアレンジも全体のサウンドにに厚みをもたせている。AYREONにも匹敵するロックオペラ作品。
メロディアス度・・8 ProgMetal度・・7 ドラマティック度・・8 総合・・8
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GENIUS A ROCK OPERA「EPISODE 3 -The Final Surprise」
イタリアのマルチプレイヤー、ダニエル・リヴェラーニによるロックオペラ、ジーニアスの3作目。2007年作
今作は、D.C.クーパー、ダニエル・ギルデンロウ、ヨルン・ランデ、エリック・マーティンという、豪華なヴォーカル陣が集結。
楽曲の方もやや地味だった前作に比べて、シンフォニックで壮麗なアレンジが増していて、随所にテクニカルな
プログレメタル的な展開美も光ってる。そして当然ながら、実力あるヴォーカリストたちの歌唱も見事で、
サウンドの説得力をぐっと引き上げている。重厚かつ壮麗なシンフォニックメタルオペラの傑作だ。
シンフォニック度・・8 ProgMetal度・・8 壮大度・・8 総合・・8
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Daniele Liverani 「Eleven Mysteries」
GENIUS A ROCK OPERAなどでも活躍する、イタリアのミュージシャン、ダニエレ・リヴェラーニの2012年作
EMPTY TREMOR時代はシンセ奏者であったが、本作では主にギターをプレイ。
バンド編成によるインストサウンドで、きらびやかなシンセワークとともに、
ネオクラシカルな感触を含んだテクニカルなギターを聴かせてくれる。
メタルフュージョン的な軽やかな楽曲は、トニー・マカパインなどにも通じる感触もあるが、
超絶技巧というほどではなく、メロディ自体はキャッチーなので、案外普通に楽しめる。
これというインパクトや音の迫力はあまりないので、テクニカル派には少し物足りないか。
メロディック度・・8 テクニカル度・・7 新鮮度・・7 総合・・7.5
DANTE 「inner circle」
ドイツのプログレメタル、ダンテの2007年作
シンセを含む5人編成で、適度にテクニカルで重厚なProgMetalサウンドは、
いかにもドイツのバンドらしく、バランスのとれた聴き心地と、ややダークな叙情が魅力。
いきなり10分の大曲で始まって、その後も8分、9分という長い楽曲を構築してゆくのだから、
それなりの自信とセンスがなくてはできない。テクニカルに走りすぎないどっしりとした感触と
サウンドを包むドラマティックな雰囲気はVANDEN PLASあたりに近いだろうか。なかなかの力作。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 重厚度・・8 総合・・7.5
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DANTE 「November Red」
ドイツのプログレメタル、ダンテの2013年作
シンセによるきらびやかなアレンジと、適度にテクニカルな展開美で聴かせる正統派のProgMetal。
ヘヴィなモダンさとメロディックなバランスもよく、かすれたヴォーカルの歌声を乗せて、
10分以上の大曲を知的に構築してゆく。オルガンやムーグの音色も含んだシンセワークはなかなか多彩で
インストパート彩りながら引っ張っている。ギターにもう少し叙情フレーズがあればよい気もするが、
ヘヴィなリフを弾くことで重厚な耳心地をかもしだしているのだろう。突出したものはないが安定した作品だ。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 重厚度・・8 総合・・8
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DANTE 「When We Were Beautiful」
ドイツのプログレメタル、ダンテの2016年作
2007年にデビューし、本作が4作目となる。今作は色っぽいジャケに目が行くが、サウンドの方は
硬質なギターときらびやかなシンセを乗せた、クールでスタイリッシュなProgMetal。
適度なテクニカル性と甘すぎないメロディアス性が融合し、結果としてモダンなオルタナ感を描いていて、
一聴しての愛想の無さが好みを分けるところだが、随所に流麗なギタープレイやシンセアレンジを含めて
確かな演奏力とメロディセンスは、さすが中堅バンドである。10分を超えるナンバーも多いが、
スリリングなインストパートを織り交ぜながら、クールな構築力で大曲を巧みに仕上げている。
ラストの14分の大曲も、緩急ある展開美と濃密すぎない叙情性で聴かせる。玄人好みの力作だ。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・7 スタイリッシュ度・・8 総合・・8
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DANTE 「SATURNINE」
ドイツのプログレメタル、ダンテの2010年作
2007年にデビュー、本作は2作目。12分の大曲で幕を開け、硬質なギターにモダンで優雅なシンセアレンジ、
マイルドなヴォーカルとともに、ほどよくテクニカルな展開と、翳り帯びたドラマ性に包まれたサウンドを聴かせる。
やわらかなピアノにヴァイオリンも鳴り響くゆったりとした叙情ナンバーや、オルガンを使ったプログレ寄りのアレンジなど、
随所にセンスの良さも覗かせつつ、ヨーロピアンな構築性とともに、スタイリッシュなProgMetalが楽しめる。
ラストも19分の大曲で、壮麗なオーケストレーションから、メロディックなギターやきらびやかなシンセとともに
起伏のある展開力でドラマティックなサウンドを描いてゆく。重厚にしてスタイリッシュな高品質プログメタルです。
ドラマティック度・8 テクニカル度・7 スタイリッシュ度・8 総合・8
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DARK AGES 「A CLOSER LOOK」
イタリアのプログレメタル、ダーク・エイジスの2017年作
デビューは1991年というベテランで、本作はおそらく4作目。女性シンセ奏者を含む5人編成で、
美麗なシンセワークにメロディックなギターを乗せ、変拍子を含むテクニカル性と
ほどよいマイナー臭さ包まれた、EVIL WINGSあたりにも通じるProgMetalサウンド。
垢抜けないヴォーカルの歌声に、いくぶん唐突な展開力などにもB級らしさを漂わせるが、
随所に聴かせる泣きのギターにオルガンを含むプログレ的なシンセ、女性ヴォーカルを加えた
叙情ナンバーなども悪くない。イタリアらしい混沌とした味わいに包まれた好作品だ。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 イタリア度・・8 総合・・7.5
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Dark Suns「Swanlike」
ドイツのプログレメタルバンド、ダーク・サンズの1st。2002作
先に2nd、3rdを聴いていて、非常にセンスのあるバンドと感心しきりであったが、
この1stの時点でも、ツインギターによる叙情メロディで聴かせる見事なサウンドだ。
薄暗いメロウさと起伏のある展開力は、ほとんどOPETHに近い雰囲気で、
ときおりデスヴォイスも出てくる。メランコリックなもの悲しさはKATATONIA的か。
適度なゴシック風味と、プログレッシブな構築性を合わせた、センス抜群のデビュー作。
ドラマティック度・・8 薄暗度・・8 楽曲センス・・8 総合・・8
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DARK SUNS「Existence」
ドイツのプログレメタルバンド、ダーク・サンズの2nd。2005作
OPETHを思わせる薄暗い叙情と重厚な世界観に、もの悲しい静寂を盛り込んだ、
現代型のメランコリック・プログレメタルサウンド。美しいシンセをバックに
ツインギターがときにメロウなフレーズを弾きつつ、曲によってはメタル度の薄い
いわばPorcupine Tree系の雰囲気もあって、マイルドな歌声とともにしっとりと聴かせる。
ProgMetalとしての展開美では物足りないが、Riversideなどが好きな方にもアピールする音楽性だ。
メロウ度・・8 ProgMetal度・・7 メランコリック度・・8 総合・・8
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DARK SUNS「Grave Human Genuine」
ドイツのプログレメタルバンド、ダーク・サンズの3rd。2008作
前作同様、薄暗い叙情性で聴かせるサウンドに、本作ではアレンジ面での
巧みな展開力が加わって、作品としての密度がぐっと増してきている。
静寂パートでのしっとりとしたもの悲しさはプログレ的な感性であり、
美しいフルートの音色とメタリックなギターリフが絡む部分などはとても個性的。
今回はデス声も使っていて、楽曲における静と動のメリハリの付けかたには
OPETHばりのセンスを感じさせる。艶やかなストリングを用いたアレンジなども見事で、
これはプログレッシブ・メタルの新しい可能性を思わせる一枚といえる出来だろう。
ドラマティック度・・8 モダンProgMetal度・・8 アレンジセンス度・・9 総合・・8.5
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DARK SUNS「Orange」
ドイツのプログレメタルバンド、ダーク・サンズの4th。2011作
OPETHを思わせる薄暗い叙情と展開美が素晴らしいこのバンドであったが、
本作は、これまでとは異なりオルガンが鳴り響く70年代プログレ風味のサウンドで
アナログ風味のやわらかさと軽やかなアンサンブルに、マイルドなヴォーカルを乗せ
どこかサイケ気味の浮遊感もあって、前作までのダークな重厚さとはガラリと変わった。
曲は4〜6分台がほとんどで中だるみすることなく楽しめる。ラストの14分の大曲もなかなか圧巻。
奇しくもOPETHの2011年作と同じような作風の、プログレリスナー向きの傑作である。
限定盤にはアコースティック録音の4曲を収録したCDと、ライブやセッション映像を収録したDVD付き。
メロディアス度・・8 プログレ度・・8 70年代風度・・8 総合・・8
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Dark Suns 「Everchild」
ドイツのプログレメタル、ダーク・サンズの2016年作
2002年にデビュー、センス豊かなPrrogMetalサウンドは玄人受けする高品質なもので、本作は5作目となる。
前作のオルガン鳴り響く、OPETHなどを思わせるオールドなプログレの質感からうって変わり、
今作ではポストプログレ的な薄暗い叙情性に包まれた作風で、マイルドなヴォーカルを乗せた、
エモーショナルな繊細さに、サックスやトランペットが鳴り響く大胆なアレンジがなかなか面白い。
ピアノやオルガンなどのシンセアレンジもうるさすぎず、適度なヘヴィさとプログレ感のバランスも見事で、
このやわらかな聴き心地は、メタルが苦手なポストプログレのリスナーにも楽しめそうだ。
一方では、前作の流れにあるオルガン系プログレメタルをモダンに進化させたようなナンバーもあって、
巧みなアレンジと構築センスに感心させられる。繊細で優雅、濃密な71分の傑作である。
ドラマティック度・・8 薄暗&繊細度・・8 知的センス・・9 総合・・8.5
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Darkwater「Calling the Earth to Witness」
スウェーデンのプログレメタルバンド、ダークウォーターの2007年作
モダンなヘヴィさと美しいシンセアレンジを同居させたサウンドには、
テクニカルすぎない聴きやすさとともに、北欧らしいクールなアレンジが効いている。
メロディや楽曲展開などにはさして目新しさはないが、総じてクオリティの高さが光り、
適度な硬質感の中にモダン派ProgMetalとしてのセンスが感じられる好作品だ。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・7 楽曲・・7 総合・・7.5
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DARKWATER「Where Stories End」
スウェーデンのプログレメタルバンド、ダークウォーターの2010年作
前作はクオリティは高いがさして印象に残る作品ではなかったのだが、
今作もシンセを含んだ美しくも重厚なサウンドで、質の高い構築センスを聴かせる。
北欧らしいクールな叙情と適度にテクニカルなアンサンブルがは耳心地がよいのだが、
やはりドラマティックな盛り上がりやはっとするような展開が少ないので、
どうしても中庸感を感じてしまう。美麗なシンセのセンスはなかなかなのだが。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・7 北欧度・・8 総合・・7.5
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Darkwater 「Human」
スウェーデンのプログレメタル、ダークウォーターの2019年作
Harmonyのメンバー中心にしたバンドで、2007年にデビュー、本作は9年ぶりとなる3作目。
硬質なギターに美しいシンセアレンジを重ね、ハイトーンヴォーカルを乗せた透明感のあるサウンドで、
メロディックなフックと知的な構築力で、モダンでスタイリッシュなProgMetalを聴かせる。
シンフォニックな美麗さに包まれつつ、ヘヴイさと優雅な感触を同居させて、エモーショナルなヴォーカルや
随所に流麗なギターフレーズも魅力的で、過去2作の中庸感を脱却する楽曲アレンジの質の高さが光っている。
10分前後の大曲も、メリハリあるドラマティックな展開力で、美しくも重厚な世界観を味わえる。
イタリアのKINGCROWなどとともに、新時代のプログレメタルを感じさせるような強力作である。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 スタイリッシュ度・・9 総合・・8.5
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DAY SIX「Grand Design」
オランダのプログレメタル、デイ・シックスの2010年作
シンセを含む4人組で、テクニカルなアンサンブルで聴かせるProgMetalサウンド・
ドラマティックな叙情性とモダンなヘヴィさを同居させたアレンジで、
9分、16分という大曲を構築してゆく。ヴォーカルの力量もなかなかのもので、
ダークめの世界観とともに、ときにDREAM THEATERを思わせる展開力もある。
楽曲ごとのインパクトやメロディにいくぶんの物足りなさは感じるが、質の高い力作である。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 楽曲・・7 総合・・7.5
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Day Six 「Solitary League」
オランダのプログレメタル、デイ・シックスの2017年作
メタリックなギターに美しいシンセアレンジを重ね、伸びやかなハイトーンヴォーカルを乗せた
重厚なProgMetalを聴かせる。コンセプト的なドラマ性を感じさせるシリアス空気感とともに、
DREAM THEATERをルーツにした知的な構築センスで、クオリティの高いサウンドを展開。
随所に叙情的なギターフレーズを乗せたメロディックなフックもなかなか魅力的で、
適度なテクニカルに、オルガンを含む大人のハードロック的な味わいも覗かせつつ、
8分、9分という大曲をじっくりと描く力量もある。派手さはないが正統派プログレメタルの力作だ。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 構築度・・8 総合・・8
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Dead Air Radio「Signal To Noise Radio」
アメリカのプログレメタルバンド、デッド・エア・ラジオの2007年作
ヴォーカルにギター、ベース、シンセアレンジもこなすビル・ギブンス氏を中心にした3人組。
テクニカルな展開力に、キャッチーなメロディと叙情を織り込んだ楽曲は濃密かつスリリング。
ヴォーカルはラブリエみたいだし、ドラムの叩きかたはポートノイにクリソツという…
いかにもDREAM THEATERフォロワー丸出しながら、演奏、楽曲の質ともに高く
アメリカンプログレ的なメロディの抜けの良さとともに、クールなセンスを感じさせる。
DT好きはもちろん、EcholynやSPOCK'S BEARDなど、プログレ側のリスナーにも勧められる。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・8 演奏力・・9 総合・・8
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DEAD LINE「DRESSED TO KILL」
イタリアのプログレメタルバンド、デッド・ラインの1st。
プログレ色は思ったほどなく、シンフォニックかというと、そうでもない。
普通のメロディアスメタル、ふりかけにプログレ風味という感じか。
大仰なハッタリも、テクニカルな変拍子もない、何が売りなのかイマイチ分からない。
メロディアス度・・6 プログレ度・・5 楽曲・・6 総合・・6.5
DEREK SHERINIAN「PLANET X」
元DREAM THEATERのシンセ奏者、デレク・シェリニアンのソロ。1999年作
DTを解雇されたデレクが目覚めたのは、超絶テクニカル・プログレメタル・フュージョンだった!
本作の広告の文句には「これが奴らへの答えだ」とあったが…奴ら、というのがDTであるのは明白、
それはともかく、ここで聴けるサウンドは、変拍子に次ぐ変拍子の、強烈なテクニカルプログレである。
天才ドラマー、ヴァージル・ドナーティの叩き出す、ありえないような変幻自在のリズムに、
吹っ切れたようなデレクのシンセワークが重なり、ヒねくれ気味のヘヴィ・フュージョンが構築される。
モダンなテクニカルさの裏には、ELPなどの古き良きプログレッシブロックへの憧憬もかいま見える。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・9 キーボー度・・8 総合・・8.5
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DEREK SHERINIAN「INERTIA」
PLANET Xを率いるデレク・シェリニアンのソロ作。2001作
デレク・シェレニアンは、ソロ1作目のあと、トニー・マカパインと組んで、PLANET X名義のアルバム「UNIVERS」を製作、
続いて発表されたのが個人ソロ名義の2作目となる本作である。今回は英国の名ドラマー、サイモン・フィリップスと組み、
PLANET Xよりはややジャズよりの落ち着いた音作りとなっている。デレクのキーボードプレイはメロディ、リズムセンスともに素晴らしく、
スティーブ・ルカサー(TOTO)のメロウなギターを包み込み、あるいはザック・ワイルドのギターとバトルし、楽曲の彩りを調和させている。
全篇インストでありながら、まったく飽きさせることなく大人のアンサンブルを聴かせてくれるのは、さすが技巧派メンバーたち。
技巧的なプログレでもあり、優雅なメタルフュージョンであり、しかもムーディでメロディアスなアルバムだ。
メロディアス度・・8 プログレ度・・8 技巧派アンサンブル度・・9 総合・・8
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DEREK SHERINIAN「BLACK UTOPIA」
PLANET Xを率いるデレク・シェリニアンのソロ3作目。2003年作
今回も豪華なゲストを揃え、のっけからイングヴェイ・マルムスティーンのクラシカルギターが鳴り響く。
その他、曲ごとにアル・ディメオラ、ザック・ワイルド、スティーブ・ルカサーといった大御所がギターを弾き、
ドラムにサイモン・フィリップス、ベースにはビリー・シーンら名うてのプレイヤーが名をつらねる。
サウンドは、キーボーディストのソロ作というよりは、デレクvs名うてのギタリストとのバトルといった様相で
テクニカルな技巧パートはもちろん、ヘヴィなギターリフのダークなメタルパートもあり、
ゆるやかなハードフュージョンの曲もありと、インスト作でありながらなかなかバラエティに富んでいる。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・8 ギタリスト活躍度・・9 総合・・8
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DEREK SHERINIAN「MYTHOLOGY」
デレク・シェリニアンのソロ4作目。2004作
前作に続き、ギターにはザック・ワイルド、スティーブ・ルカサー、ドラムにサイモン・フィリップス、
今作にはスティーブ・スティーブンス、ジョン・サイクス、アラン・ホールズワースらも参加しており
今回も卓越したミュージシャンたちによる一流のプレイがたっぷり堪能できる。
前作はのっけからのイングヴェイのギターがインパクト大だったが、今作はシンフォニックテイストもある
プログレメタルサウンドから始まり、派手さはないのだが非常に濃密な印象だ。
リズム的にもよりプログレっぽいアレンジで感触的には1stソロ「PLANET X」に近いイメージか。
もちろんギターとキーボードのバトルもあり、フラメンコ調のラテンナンバーもありで、やっぱりバラエティ豊か。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・8 テクニカル度・・8 総合・・8
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DEREK SHERINIAN 「Blood Of The Snake」
PLANET Xでも活躍するシンセ奏者、デレク・シェリニアンのソロ。2006年作
ザック・ワイルドをはじめ、イングヴェイ、ブラッド・ギルス、ジョン・ペトルーシという豪華ギタリストが参加、
ドラムにはサイモン・フィリップスという技巧派メンバーにより、テクニカルなメタルフュージョンが繰り広げられる。
各ギタープレイヤーのプレイも素晴らしいが、トニー・フランクリンのベースの存在感も際立っていて、
メロディックというよりはややダークな感触でもあるサウンドは、ほどよい緊張感に包まれている。
ブラッド・ギルスのメロウなギターに、ジェリー・グッドマンのヴァイオリンが絡む叙情的なナンバーや、
イングヴェイのギターとデレクのシンセのバトルが聴ける9曲るあたりも、スリリングで素晴らしい。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・8 豪華メンバー度・・9 総合・・8
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Derek Sherinian「Molecular Heinosity」
PLANET Xの鍵盤奏者、デレク・シェリニアンの2009年作
デレクの作品ではすでにおなじみのザック・ワイルドをはじめ、トニー・フランクリンら実力あるメンバーが参加。
その中には、日系の新鋭ギタリスト、Taka Minaminoなる人物もいる。頭3曲はドラムにヴァージル・ドナーティが参加して、
PLANET X的なテクニカルなプログレ・フュージョンが楽しめて、まずはファンの期待を裏切らない。
4曲目以降は、参加プレイヤーの味を出させる楽曲アレンジで、Zakk Wyldeの存在感のあるギターを引き立て
テクニカル系ギタリスト、Rusty Cooleyの参加曲では華麗なネオクラシカル風味も入ったりと、
多くのプレイヤーの起用をアルバムとしてまとめあげるデレクの手腕が光っている。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・9 ギターが活躍度・・8 総合・・8
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Derek Sherinian「Oceana」
PLANET Xのシンセ奏者、デレク・シェリニアンの2011年作
今作はドラムにはサイモン・フィリップスを固定、ギターはトニー・マカパインをはじめ、
スティーブ・ルカサー、スティーブ・スティーブンス、ベースにはジミー・ジョンソン、トニー・フランクリン
といった名うての実力者を迎え、軽やかなフュージョンタッチのサウンドを繰り広げている。
デレクのシンセはオルガンの音色をはじめ、いくぶんレイドバックしたようなプログレ風味を聴かせ、
PLANET Xに比べるとぐっと肩の力が抜けた、大人の余裕を感じさせるサウンドに仕上がっている。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・8 プログレフュージョン度・・9 総合・・8
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Derek Sherinian「The Phoenix」
アメリカの鍵盤奏者、デレク・シェリニアンの2020年作
PLANET Xなどで活躍する技巧派キーボーディスト、ソロ作としては2011年以来となる作品で、
サイモン・フィリップスをドラムに、スティーヴ・ヴァイ、ザック・ワイルド、ロン・サール、キコ・ルーレイロ、
ビリー・シーン、ジミー・ジョンソン、トニー・フランクリンといった名うてのギタリスト、ベーシストが参加。
巧みなギタープレイとシンセの掛け合いを軽やかなリズムに乗せた、フュージョンロックを描き出す。
各ギタリストのメロディやフレージングを活かした、デレクのアレンジャーとしてのセンスも冴えていて、
テクニカルでありながらも、技巧のみに走らない大人のハードフュージョンというべき優雅な聴き心地。
オルガンやエレピを含む鍵盤もさすがで、軽妙なドラムとともに素晴らしいギタリストたちのプレイに聴き惚れる。
メロディック度・・7 テクニカル度・・8 優雅度・・9 総合・・8
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DEREK SHERINIAN 「VORTEX」
アメリカのシンセ奏者、デレク・シェリニアンの2022年作
サイモン・フィリップスがドラムで全面参加、ギターは、スティーヴ・スティーヴンス、スティーヴ・ルカサー、ヌーノ・ベッテンコート、
マイケル・シェンカー、ザック・ワイルド、マイク・スターン、ロン・サール、ベースには、アーネスト・ティブス、トニー・フランクリン、
ジェフ・バーリン、リック・フィエラブラッチ、といったビッグネームが参加。軽快なリズムにきらびやかなシンセと巧みなギターを重ね、
フュージョンプログレとハードロックが融合したというべきカラフルなサウンドを聴かせる。大人のジャズタッチのナンバーでは、
ジェフ・バーリンのベースプレイが素晴らしく、マイケル・シェンカー&ザック・ワイルドの豪華ギターのハードロックナンバーも感涙もの。
ラストの11分の大曲では、テレミン奏者も加えて、緩急あるプログレッシブなサウンドを構築。コンポーザーとしてのデレクの力量も見事です。
ドラマティック度・7 テクニカル度・9 豪華メンツ度・9 総合・8
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Devils Slingshot 「Clinophobia」
トニー・マカパイン、ビリー・シーン、ヴァージル・ドナーティのユニット、デヴィルズ・スリングショットの2007年作
このメンツだけでもう凄いのは分かりますが、サウンドの方は超絶というほどにはテクニカルではなく、
ビリー・シーンのベースとドナーティのドラムによるグルーブの効いたリズムを軸に、
今回はあくまでリフをメインにした硬質なギターワークで、どっしりと重厚に聴かせる作風。
PLANET X をよりヘヴィにしたという感じもあるが、随所にテクニカルなフレージングをキメつつ
ときおり叙情的なメロディを奏でるマカパインの技量はさすが。楽曲自体はミドルテンポ主体なので、
案外にスリリングな部分は薄く、凄腕のメンバーたちの作品にしては少し地味か。
メロディック度・・7 テクニカル度・・7 楽曲・・7 総合・・7.5
Devin Townsend「OCEAN MACHINE:BIOMECH」
奇才、デヴィン・タウンゼンドの1997年作
STRAPPING YOUNG LADでヘヴィなミクスチャーメタルを極めたデヴィンだが、
本作で聴けるのはもっとオーセンティックなプログレメタル的なサウンドである。
メタリックなヘヴィさは残しながら、エモーショナルなメロディと浮遊感を取り入れ
彼自身も嗜好するRUSHのように、バランスのとれた知的ロックを描いている。
UKのエモのようなキャッチーさとモダンさなヘヴィロック色も聴かせつつ、
アルバム終盤の大曲などではとらえどころのない懐の深さを感じさせるのはさすが。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 知的モダン度・・8 総合・・8
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Devin Townsend「Infinity ∞ 」
奇才、デヴィン・タウンゼンドの1998年作
STRAPPING YOUNG LADの活動を一段落させたデヴィンが、今一度、己自身の内面と向き合うことで作り上げたのが本作。
メタリックなハードさとプログレッシブな知的さ、そこにいくぶんのユーモアを合わせたそのサウンドは、
芸術的な音楽家であり、孤高の道化師でもあるような、デヴィン自身の人生が投影されたような作風だ。
内的な吐露という点ではPAIN OF SALVATIONのダニエル・ギルデンロウなどに通じるものも思わせる。
連なってゆく楽曲の中にある、苦悩や悲しみや楽しさ、そのきらめきを、音として聞き取ることができたなら、
これはまさに彼の人生のテーマのようなアルバムであり、ひとつの自伝書ともいうべき濃厚な作品である。
おそろしく内的なパワーに溢れている。このアルバム完成後、彼は1、2年ぐったりとしていたというのもうなずける。
ドラマティック度・・8 内的プログレ度・・8 内的表現度・・9 総合・・8.5
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Devin Townsend「Physicist」
奇才、デヴィン・タウンゼンドの2000年作
本作はSTRAPPING YOUNG LADと同じメンバーで作られていることから、
いわばSYLとデヴィンのソロ作の融合という感じのサウンドで、
これまでの彼のソロ作の中ではもっともメタリックな激しさが強い。
ザクザクのギターでスラッシーに疾走しながら、シンセによるきらびやかなアレンジと
どこかスペイシーな浮遊感が交差して、シンフォニックでインダストリアルなスラッシュという、
不思議な感触が楽しめる。一方ではモダンでキャッチーなハードロック風味もあり、
結局どんなことをやっても聴き手を引き込むセンスはさすがである。
ドラマティック度・・8 スラッシー度・・8 プログレ度・・6 総合・・8
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Devin Townsend「TERRIA」
奇才、デヴィン・タウンゼンドの2001年作
超絶テクニカルエクストリームメタルのSTRAPPING YOUNGLADと平行しながら、
よりプログレッシブで内的なソロ作も作り続けている。本作はソロ4作目となるアルバムで、
ヘヴィなギターをうっすらとしたシンセで包み込み、モダンなアレンジの中にもの悲しい叙情を取り込んだ、
ミクスチャー感覚にあふれた現代的なプログレッシブ作品である。今作では静けさの中でのざわめきや、
さまざまなヴォイスの使い方なども繊細で、耳を澄ませて聴くほどに音の広がりが感じられる。
ドラマティック度・・8 プログレッシブ度・・8 内的センス度・・9 総合・・8
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The Devin Townsend Band「Synchestra」
奇才、デヴィン・タウンゼンド率いるバンドの2006年作
STRAPPING YOUNG LADの活動にひと区切りをつけたデヴィンが、再び己を見つめなおすかのように作られた、
プログレッシブで美しいアルバム。アコースティックギターの素朴な音色で幕を開け、
しっとりとした優しいサウンドにシンセが加わると美しいシンフォニックな音像になるが、
そこにしっかりとメタリックなギターも加えるのがただのプログレ風味には終わらないという、
さすがデヴィンのセンス。プログレ風というだけでなく、メタルな激しさもちゃんとある。
肩の力が抜けたようなユーモラスな部分も含めて、彼という人間の多面的な要素が非常によく現れたサウンドだ。
いうなればSYLでのブルータルな部分を削ぎ落としたミクスチャー感覚というべきか、
あるいはMIKE OLDFIELDのメタル版というべきか、己の中にある音を曲にして構成したという作風で、
じつに感動的でドラマティック、アーティスティックな作品である。これぞ本当のプログレッシブハードロック!
ドラマティック度・・8 プログレッシブ度・・8 内的センス度・・9 総合・・8
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DEVIN TOWNSEND「ZiltoidThe Omniscient」
奇才、デヴィン・タウンゼンドの2007年作
2006年の「Synchestra」は優しく内的なプログレッシブ作品であったが、
本作はSFコメディー的なストーリーを盛り込んだ壮大な(?)コンセプト作となった。
時間を操る燃料であるコーヒーを手に入れようと地球を侵略にかかる宇宙人、
ジルトイドを主役にした、壮大かつちょっぴりおバカなストーリーを、セリフなども含んだ
メタルオペラ的な世界観で構築、ヘヴィなギターリフと変則リズムを盛り込んだテクニカル性は
いわばGjent的な聴き心地もあり、スペイシーなシンセアレンジがそれを包み込んでゆく。
いかにもデヴィンらしいアヴァンギャルドなセンスと、緻密なアレンジ力が合わさった力作です。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 壮大度・・8 総合・・8
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Devin Townsend Project 「KI (氣)」
プログレッシブとエクストリームの垣根を超える、奇才、デヴィンタウンゼンドの壮大なプロジェクト、
本作は四部作となる壮大なコンセプトの1作目である。起承転結でいえば「期」というところか、
サウンドはゆるやかに聴かせる歌ものという雰囲気から、ダミ声ヴォーカル入りのラウドロックにもなったりしつつ
モダンなポストプログレ風味と、もの悲しさを含んだ叙情で、全体的にはしっとりとした聴き心地。
後半には広がりのあるスケールを感じさせる曲もあり、次作以降への橋渡し的な内容となっている。
ドラマティック度・・8 メタル度・・3 しっとり歌もの度・・8 総合・・8
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Devin Townsend Project「Addicted」
アルバム「氣」に続く4連作の2作目で、ヘヴィなギターのモダンロック風味でスタート、
浮遊感のあるシンセアレンジと、ダミ声とノーマル声を使い分ける不思議な歌メロにより、
内的でありつつもどこか広がりのある壮大さを描き出すという、デヴィン節は健在だ。
そして本作では、元GATHERINGのアネク・ヴァン・ガースヴァーゲンが参加し、
その美しい歌声で楽曲に彩りを添えている。コンセプト的なドラマ性と知的センス、
楽曲の連動性により、単なるメタルでもハードロックでもない器の大きさを感じさせる。
ドラマティック度・・8 知的アレンジ度・・8 内的壮大度・・9 総合・・8
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Devin Townsend Project「Deconstruction」
薄暗い雰囲気のモダンなプログレ風味から始まり、メタリックなヘヴィさが加わると
しだいにいつもの“混沌とした壮大な世界観”が広がってゆく。今作ではシンセだけではなく
オーケストラによる音の厚みがあるので、サウンドにはより説得力が増している。
まるでブラックメタルばりの激しさや、プログレメタリックな知的な狂気ともいうべき表現力、
そして繊細な叙情…10分、16分という大曲を含め、メリハリのある展開と強固な構築性が素晴らしい。
ドラマティック度・・8 知的アレンジ度・・8 内的壮大度・・9 総合・・8.5
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Devin Townsend Project「Ghost」
先の「Deconstruction」と表裏一体の作品で、上記が混沌とした濃密さであるなら
本作はゆったりと優しい自然を感じさせるヒーリング系プログレというべきサウンド。
シンセとヴォーカルを中心にしつつ、アコステッィクギターやフルートなどの素朴な音色と
ときに女性Voも加わって、GANDALFなどにも通じる癒し系の叙情で聴かせる。
メタルファンよりもむしろプログレ、シンフォニックリスナー向けの作品だ。
シンフォニック度・・7 しっとり繊細度・・8 ヒーリング度・・8 総合・・8
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Devin Townsend Project 「EPICLOUD」
デヴィン・タウンゼンド・プロジェクトの2012年作
「KI (氣)」、「Addicted」、「Deconstruction」、「Ghost」という四部作を完成させたデヴィンが
新たに描き出すサウンドは、スペイシーなシンセアレンジに包まれた壮大なメロディックロック。
キャッチーなヴォーカルとコーラスハーモニーによるモダンなポップ性とスペースサイケ的な壮大さに、
QUEENなどアリーナロックの感触が加わったような作風だ。随所にヘヴィロック、メタル的なラウドさも含みつつ、
あえて籠もり気味のサウンド作りが硬質なエッジを削いでいて、不思議と近未来的な耳心地となっている。
元The Ghatheringの女性Vo、アネク・ヴァン・ガースヴァーゲンがゲスト参加。ボーナスのDisc2にはデモ音源を収録。
ドラマティック度・・8 壮大度・・8 スペイシー度・・8 総合・・8
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DEVIN TOWNSEND PROJECT 「The Retinal Circus」
アメリカの奇才、デヴィン・タウンゼンドのライブ作品。2013年作
スティーヴ・ウァイに見いだされてヴォーカリスとしてデビュー、Strapping Young Ladを結成し、
その後ソロへと転身。エキセントリックでスケールの大きな独自のプログレッシブなメタルを描き続けている。
本作はデヴィンのこれまでのキャリアを総括するように行われたロンドンでのライブステージを収録。
サウンド自体で聴くならば、時期によってメロディックだったり激しかったりアンビエントだったりと様々なのだが、
Strapping Young Ladのナンバーも含めて、ヘヴィかつテクニカルな感触と、シアトリカルかつSF的でもある
コミカルな大仰さが同居していて、それらはデヴィンの内側に存在するショーマンシップの核を担う空気感なのだろう。
サーカスかショウのような派手やかなステージ写真からは、映像を含めてカラフルなライブの雰囲気が伝わってくるが、
それは同タイトルのDVDの方でチェックすべし。アネク・ヴァン・ガースバーゲンなどがゲスト参加している。
ドラマティック度・・8 ライブ演奏・・8 ファンはDVDもチェック度・・9 総合・・8
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DEVIN TOWNSEND PROJECT 「ZILTOID - DARK MATTERS」
鬼才、デヴィン・タウンゼンドによるプロジェクトの2014年作
2枚組でリリースされた「Z2」のDisc2にあたる作品の単品リリースで、2007年作の続編ともいうべき、
SFコメディタッチのストーリーで描かれるメタルオペラ的な作品。随所に映画的なナレーションを含んで、
メタリックな重厚さとシンセアレンジと壮麗なコーラスによるシンフォニック性、スペイシーな神秘性に
知的な展開力で構築される楽曲は、プログレッシブでアーティスティックなセンスを感じさせる。
激しい疾走パートも織り込みつつ、アネク・ヴァン・ガースバーゲンが参加し、女性ヴォーカルを乗せた
美麗なシンフォニックメタルパートもあったりと、起伏に富んだドラマ性で濃密な味わいが楽しめる。
ドラマティック度・・8 SF度・・8 壮大度・・9 総合・・8
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DEVIN TOWNSEND PROJECT 「TRANSCENDENCE」
鬼才、デヴィン・タウンゼンドによるプロジェクトの2016年作
SF的なメタルオペラの前作「Z2-Dark Matters」に続き、本作は壮麗なオーケストレーションにギターを重ねたイントロから
シリアスなスケール感をともなったサウンドが広がってゆく。デヴィン本来のプログレッシブな構築センスと
メタリックな重厚さが合わさり、スペイシーで壮大な世界を描き出す。自身のマイルドなヴォーカルを中心に、
アネク・ヴァン・ガースバーゲン、チェ・エイミー・ドーヴァル、カトリーナ・ナターレの3人の女性コーラスを迎え、
歌ものとしてのメロディックな味わいも楽しめる。シンプルなリズムのリフレインがなにげに変拍子だったりと、
さりげない知的なセンスも散りばめられて、じっくりと鑑賞できるシンフォニックメタル的な作風でもある。
アグレッシブな要素は控えめながら、広がりのあるスケール感に包まれた力作です。
ドラマティック度・・8 重厚度・・9 壮大度・・9 総合・・8
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DEVOID 「Cup of Tears」
フランスのプログレメタル、デヴォイドの2017年作
Shadyonのギターを中心にしたバンドで、同バンドのシンセも参加。ほどよくヘヴィなギターにきらびやかなシンセ、
パワフルなハイトーンヴォーカルを乗せて、どっしりとしたプログ・パワーメタルというサウンドを聴かせる。
DomainやEvidence Oneなども参加した、ドイツ人シンガー、カーステン・シュルツの歌声も力強く、
サウンドにマイナー臭さは感じない。楽曲は4〜5前後がメインで、テクニカルな展開というのはさほどないが、
VANDEN PLASなどにも通じる重厚な作風で、メロディックな盛り上がりがもう少し増えれば良いバンドになりそう。
マグナス・カールソン、マティアス・エクルンド(Freak Kitchen)、ヘンリク・ダンヘージ(Evergley)などがゲスト参加。
ドラマティック度・7 テクニカル度・7 重厚度・8 総合・7.5
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DGM「DREAMLAND」
イタリアのメロディックメタル、ディージーエムの3rd。2001作
前作2ndは、まだメロパワ色が強く、ストラトヴァリウス+シンフォニーX、という感じだったが、
今作はその持ち前のプログレッシブなリズム感覚を発揮させ、非常に作りこまれた高密度の作品となった。
ヴォーカルが新加入したことで、サウンドの説得力向上とともに、ギターとシンセのバランスが素晴らしい。
とくにインストパートでは、プログレ感覚溢れる変拍子を巧みに取り入れていて、
メロディアスな疾走メタルとしても、高品質なプログレメタルとしても一級品だ。
前作までのネオクラシカル要素は薄まったが、むしろこのバンドの質の高さを浮き彫りにした。
メロディアス度・・9 プログレ度・・8 楽曲センス・・9 総合・・8.5◆メタル名盤特選入り
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DGM「HIDDEN PLACE」
イタリアのメロディックメタル、DGMの4th。2003年作
2ndまではイタリア版STRATVARIOUS+プログレメタルという感じだったのだが、
前作「DREAMLAND」にしてセンス抜群の独特のプログレメタルの傑作を作り出した。
それに続くこの4thだが、いっそう疾走メタルから離れ本格派PROG METALを追求した音になっている。
2ndまでの様式美色がなくなっているので、シンフォメタルファンには肩すかしを食うだろうが、
その抜群のセンスによるリズムアレンジ、キーボードのセンスには目を見張るものがある。
イタリアっぽさは皆無で、グローバルなプログレメタルとして聴くべきバンドになった。
メロディアス度・・7 プログレ度・・8 アレンジセンス・・8 総合・・8
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DGM「MISPLACED」
イタリアのメロディックメタル、DGMの5th。2004作
3rd「DREAMLAND」の完成度でテクニカル・メロディックメタルバンドとして名を上げ、
前作「HIDDEN PLACE」ではプログレメタルの硬質感を押し出したが、
続くこのアルバムでは、楽曲がよりメロディックに聴きやすくなっている。
もちろんセンスあるアレンジは健在で、疾走しながらもリズムが3拍子になったり、
きらびやかなキーボードの音色などにはプログレッシブなマインドがたっぷり。
キャッチーな歌メロで疾走する部分は普通のメロディックメタルとして聴け、
またプログレメタルとしても楽しめるという、両方の感覚で聴ける作品。
日本盤ボーナスにはHIGHLOADに対抗してか、北斗の拳の「愛を取り戻せ」を収録。
メロディアス度・・8 疾走度・・8 プログレメタル度・・7 総合・・8
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DGM「Different Shapes」
イタリアのメロディックメタル、DGMの6th。2007作
すでにデビューから10年以上の中堅となり、メロパワとブログレメタル色との融合を模索してきたサウンドは
今作でも高品質。裏と表を使い分けるテクニカルなリズムと、展開力は普通のメロスピバンドにはないもので、
新加入のキーボーディストのクラシカルなプレイなども新たなアクセントになっている。
楽曲は4〜6分台とコンパクトで、難解さがなく分かりやすいのは良いのだが、
手堅い作りだけに新鮮味とインパクトにはやや欠けるか。期待を込めて厳しく言うならば、
今後は何か突き出たものがないと、単なる器用な好作量産バンドで終わりかねない。
ボーナスビデオの「北斗の拳」のカヴァーが最大のインパクトではHIGHLORDとさして変わらない。
耳触りのよいサウンドは万人受けするもので、欠点のない優等生的に質の高い作品だ。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・8 新鮮度・・7 総合・・8
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DGM「Frame」
イタリアンメタルバンド、DGMの7th。2009作
本作では元MIND KEYのヴォーカルを新たに迎え、よりパワフルなサウンドとなっている。
楽曲は4、5分台がメインで、前作からの流れであるモダンなプログレパワー路線は
純粋にProgMetalとして聴くには相変わらず物足りないのだが、適度に派手さがあって
メロディアスという、この明快な音作りは万人受けするだろう。反面これだという曲がないのも
やはり前作同様で、このまま質の高い佳作止まりのバンドにならないか心配な部分もある。
メロディアス度・・8 ProgMetal度・・7 楽曲・・7 総合・・8
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DGM「Momentum」
イタリアのメロディック(プログレ)メタル、DGMの2013年作
8作目となる本作は、1曲めからゲストのラッセル・アレン(SYMPHONY X)の歌声とともにパワフルに疾走、
適度なモダンさとともにきらびやかなシンセアレンジを含んだプログレッシブな構築センスも健在だ。
初期を思わせるネオクラシカルなテイストも随所に感じさせながら濃密なサウンドが展開される。
ある種の吹っ切れのような爽快さがメジャー感となっていて、いまひとつ煮え切らなかったこれまでよりも、
ぐっと明快な作風になったと言える。反面、どっちつかずの中庸感がなくなってクリアになりすぎた感もあるが、
テクニカルなギターとシンセのバトルなど、SYMPHONY X系のリスナーにもアピールするような出来だろう。
メロディック度・・8 爽快度・・8 モダンセンス度・・8 総合・・8
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DGM 「The Passage」
イタリアのメロディックメタル、DGMの2016年作
1997年デビューのベテランで本作は9作目。2パートに分かれた15分を超える大曲で幕を開け、
モダンなギターワークと美麗なシンセアレンジに、伸びやかなヴォーカルを乗せたサウンドで、
キャッチーなメロディックメタルを聴かせる。きらびやかなシンセとテクニカルなギターが絡む、
Symphony X風味の感触に、クールな硬質感とメロディックなフックを同居させたアレンジは、
若いメタルリスナーにもアピールするだろう。前々作から加入したマーク・バジルのヴォーカルの表現力も、
ミケーレ・ルッピばりのハイトーンとともに楽曲に説得力を付加していて、ミドルテンポの爽快なナンバーなども、
シンプルながらメロディックな明快さで楽しめる。テクニカルメタルとしての味わいも含んだ強力作だ。
メロディック度・・8 テクニカル度・・8 きらびやか度・・8 総合・・8
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Dianthus 「Realms」
アメリカのプログレメタル、ダイアンサスの2022年作
G、B、Vo、Keyをこなすジャッキーと、Dr、Key、Voをこなすジェシカの、パリー姉妹によるユニットで、
2020年にデビューし、2作目。硬質なギターをテクニカルなリズムに乗せ、伸びやかな女性ヴォーカルで
スタイリッシュなProgMetalサウンドを聴かせる。二人の女性声によるエモーショナルな歌メロと、
知的なテクニカル性が同居していて、モダンでありながらも優美でメロディックな聴き心地。
楽曲は3〜5分前後が主体で、技巧的になり過ぎず、あくまでキャッチーなフックで楽しめる。
姉妹によるメタルユニットは珍しいので、今後はよりドラマティックな展開の大曲なども期待したい。
ドラマティック度・7 テクニカル度・7 女性Vo度・8 総合・8
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Dimension Act「Manifestationof Progress」
ノルウェーのプログレメタル、ディメンション・アクトの2012年作
最近はSeventh Wonderなどの活躍で、北欧のProgMetalシーンにも再び灯がともりはじめた。
このバンドはシンセを含む5人編成で、シンフォニックかつ重厚な正統派プログレメタルスタイル。
ヘヴィなリフに美麗なシンセを絡ませながら、適度にテクニカルな展開力に、
プログレパワー的な疾走感も含ませつつ、ドラマティックに楽曲を構築してゆく。
力強いヴォーカルの力量もなかなかで、サウンドの説得力を高めている。
8分、9分の大曲に続く31分の組曲は充実のインストパートで聴かせる圧巻の大作。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 重厚度・・8 総合・・8
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DISPERSE「Living Mirrors」
ポーランドのテクニカルメタル、ディスパースの2013年作
Vo&Key、G、B、Drの4人編成で、エクスペリメンタルな浮遊感で聴かせるテクニカルメタルサウンド。
うっすらとしたシンセアレンジはポストプログレ的であり、翳りのある叙情性とともに、
たとえれば、CYNICなどにも通じるアーティスティックな感性に富んだ作風だ。
いわゆるDjent系のモダンなテクニカルさと、やわらかな浮遊感が合わさった聴き心地で、
変則リズムに乗せるリフや、クリーントーンのメロディなど、多彩なギターのセンスも光っている。
RiversideやOsada Vidaに続く、新たなポーランドからの期待の新鋭といってもよいだろう。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 テクニカル度・・8 総合・・8
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Distorted Harmony 「Utopia」
イスラエルのプログレメタル、ディストーテッド・ハーモニーの2012年作
モダンな硬質感を含んだギターと美しいシンセアレンジを乗せ、適度にテクニカルなサウンドで、
ヴォーカルの歌うメロディにはポストプログレ的なメランコリックな叙情を漂わせている。
7〜9分の長めの楽曲を主体に、ドラマティックな構成力とメリハリのある展開で描かれる世界観は、
アレンジセンスの良さも含めて、かつてのPain of Salvationなどにも通じる感触もあるが、
こちらはもっとメロウな雰囲気で、繊細な情感を含ませながら、ダイナミックな展開美を作り出す
確かな演奏技術も含めて、イスラエルという地域性を超える質の高さがある。これは傑作でしょう!
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 楽曲センス・・8 総合・・8
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DISTORTED HARMONY 「A Way Out」
イスラエルのプログレメタル、ディストーテッド・ハーモニーの2018年作
2012年にデビューし、本作は3作目。硬質なギターにきらびやかなシンセを重ね、
エモーショナルなヴォーカルをテクニカルなリズムに乗せた、モダンなプログレメタル。
MESHUGGAHなどにも通じる、Djent系というべき変則リズムに包まれたサウンドは、
1stに比べるとよりスタイリッシュな作風になっている。一方ではゆったりとした叙情パートなど、
緩急ある構築力を覗かせるドラマティックな部分も残していて、非常に濃密な印象だ。
楽曲は4〜5分前後がメインなので、より壮大な大曲などがあればもっと良かった。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 スタイリッシュ度・・8 総合・・8
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DIVINE REGALE「HORIZONS」
アメリカのプログレメタルバンド、ディヴァイン・リーガルのミニアルバム。
ドリームシアターのソフトでメロディアスな部分を取り出したような印象。
Voは高音。ギターは非常にメロディアス。キーボード入り、と
全ての条件は満たしているのであとは楽曲のメリハリだろう。
メロディアス度・・8 プログレ度・・6 楽曲・・7 総合・・7
DIVINE REGALE「OCEAN MIND」
アメリカのプロレメタルバンド、ディヴァイン・リーガルの1stフル。1997作
デビューミニアルバムから音楽性は同傾向だが曲と演奏のクオリティが増した。
基本はDREAM THEATERタイプの叙情派プログレメタル。Voはラブリエよりも高音で初期FATES WARNING的。
ただ曲の方向性があいまいな部分もあり、突き抜けた爽快感は聴いていて感じられない。
演奏技術があるだけに、この辺の曲の練りこみ、曲想の強度が課題か。ただラスト曲の叙情は白眉。
メロディアス度・・7 プログレ度・・7 楽曲度・・7 総合・・7
DOMINICI「03 a Trilogy - Pt. 2」
元DREAM THEATERのVo、チャーリー・ドミニシ率いるバンド、ドミニシの2nd。
DTの15周年記念の1st完全再現ライブで久しぶりに姿を見たと思ったら、
自身のProgMetalバンドを率いて活動していたとは驚きであるが、内容もなかなか素晴らしいではないか。
のっけから8分を超えるインスト曲で幕を開け、美麗なシンセワークにDREAM THEATERを思わせる展開美で聴き手を惹きつける。
ドミニシのヴォーカルが入ると、やはりDT的な雰囲気が強くなるが、曲の方はバラードから正統派でメタリックなナンバーまで
3部構成の壮大なドラマ性に引きこみながら、いくぶんダークで重厚に、そしてコンセプチュアルなサウンドを聴かせてくれる。
メロディアス度・・7 ProgMetal度・・8 ドラマティック度・・8 総合・・7.5
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DOMINICI「03 A Trilogy-Part 3」
DREAM THEATERの初代Vo、チャーリー・ドミニシ率いるドミニシの3rd。2008年作
前作に続き、イタリアのSOLID VISIONのメンバーをバックにした重厚なProgMetalを聴かせる。
シリアスなコンセプトストーリーがあるようで、衰えを知らないドミニシの伸びやかな歌声とともに、
ドラマティックなサウンドを構築。ほどよいテクニカルな展開力とメロディアス性に、
プログレパワー的なメタリックなパワフルさも含んだ作風で、わりと明快な聴き心地。
随所にDREAM THEATER的な味わいも覗かせながら、重厚でドラマティックな世界観を描く力作だ。
ドラマティック度・・8 ProgMetal度・・8 重厚度・・8 総合・・8
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DOOMOCRACY 「UNORTHODOX」
ギリシャのプログレメタル、ドゥーモクラシーの2022年作
2014年にデビューし、3作目となる。ヘヴィなギターにほどよく叙情的なフレーズをまじえ、歌い上げるヴォーカルを乗せた、
ドゥームメタル寄りの感触に、リズムチェンジなどの知的な展開力で、CONCEPTIONあたりにも通じるサウンドを聴かせる。
朗々とした伸びのあるヴォーカルの表現力もサウンドにマッチしていて、ときに混声コーラスが重なる荘厳なアレンジも覗かせる。
甘すぎない叙情性とダークでドゥーミィな世界観とともに、CANDLEMASSなどのエピックドゥームとしても楽しめつつ、
たとえばPSYCHOTIC WALTZなど、個性派のProgMetalが好きな方にお薦めできる。
ドラマティック度・8 テクニカル度・7 重厚度・8 総合・8
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DREAMSCAPE「VERY」
ドイツのプログレメタルバンド、ドリームスケープの2nd。1999作
この手のProgMetal系においては、やはりどうしてもDREAM THEATERとの比較で語らざるを得ないのが
バンドにもつらい部分であると思うのだが、彼らの音もいわゆるシアター系のアレンジがほのかに垣間見える。
リズムアレンジはテクニカルでなかなか流麗だし、歌メロはラブリエよろしく繊細さと力強さを表現しようとしている。
全体として音にはB級臭さはなく、それなりにメロディアスで、クールな作りなのだが、やはり曲にしろメロディにしろ
ややインパクトに欠ける。演奏そのものは悪くないので、今後はメロディを聴かせるということに重点を置いてほしい。
メロディアス度・・7 プログレ度・・8 新鮮度・・7 総合・・7.5
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DREAMSCAPE「End of Silence」
ドイツのプログレメタルバンド、ドリームスケープの3rd。2004作
ヴォーカルが代わった今作では、これまでよりも楽曲のスケール感がぐっと増している。
ヘヴィなギターリフを包むシンセワークもなかなかセンスよく、空間的に聴かせるドラマティックなサウンドは、
よい意味でDREAM THEATERに近づいた感がある。6〜7分台の曲を飽きさせずに聴かせるというだけでも、
演奏に説得力がなくてはできない。ギターのフレーズにしてもテクニカルさとメロディのバランスがよく、
聴いていて心地よいし、ヴォーカルの歌唱力もしっかりしているので、サウンド自体にも安心感がある。
20分の大曲ではシンセを中心にシンフォニックに盛り上げる、聴き応え充分の力作だ。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 ProgMetal度・・9 総合・・8
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DREAMSCAPE 「Revoiced」
ドイツのプログレメタル、ドリーム・スケープの2005年作
本作は、1st、2ndの曲を現ヴォーカルの歌に差し替えたというアルバムで、
サウンド的にはDREAM THEATERからの影響が伺える知的な展開力で聴かせる
正統派のProgMetal。ソリッドなギターときらびやかなシンセが絡み、適度なテクニカル性と
ドラマティックな味わいはこのバンドの持ち味だろう。楽曲的にはアレンジのセンスが上がる
3rd以降の方が出来はよいと思うが、聴きやすいプログレメタルが好きならば充分楽しめるだろう。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 ProgMetal度・・9 総合・・8
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DREAMSCAPE「Fifth Season」
ドイツのプログレメタルバンド、ドリームスケープの2007年作
DREAM THEATERのフォロワー的なサウンドでテビューしたこのバンドであるが、
3rd「End of Silence」にて確かな傑作を作り上げ、個人的にもぐっと評価が上がった。
本作もドラマティックな構築美で聴かせるProgMetal作品で、安心して楽しめる出来だ。
このバンドの場合、テクニカルな部分はむしろ控えめで、シンセとギターを中心とした
メロディアスさと重厚さ、そしてヴォーカルの確かな歌唱力によって堂々と勝負をしている。
ときおりどうしてもDT的な質感が覗くのだが、そこも含めて非常に高品質な作品である。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 ProgMetal度・・8 総合・・8
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DREAMSCAPE「Everlight」
ドイツのプログレメタル、ドリームスケープの2012年作
すでにデビューから15年という中堅バンドで、本作はおそらく6作目。
実力はあるのに売り方がヘタなのか、まったく知名度が上がらないのが可哀相ですが、
本作も重厚かつドラマティックな、なかなか素晴らしいProgMetalを聴かせてくれるのです。
きらびやかなシンセワークと適度にテクニカルな展開美、力強いヴォーカルの歌声とともに、
メロディックかつダイナミックなサウンドを描いている。これまで以上にプログレパワー的な迫力も加わっていて、
ヴォーカルのアクの強さは好みが分かれるかもしれないが、パワフルな力作と呼べる内容に仕上がっている。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 重厚度・・8 総合・・8
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DREAM THEATER「IMAGES AND WORDS」
アメリカのプログレメタル、ドリーム・シアターの2nd。1992年作
言わずと知れたProgMetalの流れを決めた歴史的傑作。すべてはこのアルバムの成功から始まった。
1st「When Dream and Day Unite」が時代に早すぎたため、さして話題にならなかったが、
バンドはカナダ人シンガー、ジェイムス・ラブリエを迎えてこの勝負作を完成させた。
全8曲中、4曲が8分以上という、当時にしては異色の大作志向であるが、
メタリックな重厚さを失わず、ドラマティックなスケール感と緻密きわまりないアレンジで
ぐいぐいと聴かせる説得力が音にはある。メロディアスとテクニカルの奇跡的なバランス、
代表曲となる“Take theTime”、そして“Metropolis”の構築美は芸術的なまでの完成度だ。
ラブリエの見事にな歌唱が映える絶品のバラード“Another Day”や“Sorrounded”といったキャッチーな楽曲も
作品としてのバランスに貢献しており、“Wait for Sleep”からラストの“Learning
to Live”への流れには、
彼らのプログレッシブなセンスが凝縮されている。まさに歴史に残る、全てにおいて完璧な名作だ。
ドラマティック度・・9 テクニカル度・・8 楽曲センス・・10 総合・・9
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DREAM THEATER「AWAKE」
ドリーム・シアターの3rd。1994作
歴史的名作となった前作の勢いに乗り、バンドは世界的成功のきっかけとなる本作を発表。
1曲目からRUSHを思わせるテクニカルなアンサンブルと、薄暗い叙情をともなったこの作風は
メロディ志向のリスナーには、一聴としてとっつきが悪いかもしれないが、
リズム面でのアプローチと強固なアンサンブルはさらに一段高みへ到達している。
“Erotomania”における美しくもテクニカルなインストサウンドは今聴いても素晴らしいし、
“Voices”、“Lifting Shadows off a Dream”の叙情は、現代的な翳りを含んだ色を聴かせてくれる。
前作における幻想的なまでのドラマティックさは薄まったが、代りに多様性のあるリアルが加わった。
テクニカルメタルとしての最高傑作は、むしろ本作であるといってもいいのかもしれない。
本作完成直後にケヴィン・ムーアが脱退。バンドは次のステップへと向かうことになる。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・9 楽曲センス・・8 総合・・8.5
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DREAM THEATER 「FALLING INTO INFINITY」
ドリーム・シアターの1997年作
シンセにデレク・シェリニアンが正式加入してのEP「A Change Of Seasons」に続く、アルバム4作目で、
前作の重厚なサウンドにスタイリッシュな優雅さを加えた、キャッチーでモダンな感触に包まれている。
バンドとしての成熟に加え、デレク・シェリニアによるオルガンなどを含むオールドなプログレ感触のシンセも
良い味わいを出していて、これがなかなか玄人好みの作風である。軽妙なテクニカル性とともに、
「Hollow Years」のような落ち着いたバラードナンバーや優雅なインスト曲からの12分の大曲「Lines In The Sand」と、
力みのない自然体の拡散性が感じられる。ラストの「Trial Of Tears」は前作EPからの流れのドラマティックな大曲だ。
リアルタイムで聴いた時には物足りなさもあったが、プログレらしい大人のドリムシが楽しめる全78分の力作です。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・8 スタイリッシュ度・・9 総合・・8
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DREAM THEATER「IMAGES AND WORDS LIVE IN TOKYO / 5 YEARS IN A LIVE TIME」
ドリームシアターの過去に発売された2作品のカップリング作品。DVD2枚組
1枚目は2nd「IMAGES AND WORDS」の日本ツアーの時のライブ映像に、ビデオクリップ等を加えたもので、すでにビデオで見ている方も多いだろう。
改めて見返すと、この時期での彼らの演奏には新進気鋭の勢いと若さの熱情があり、とくにマイク・ポートノイの鋭いドラミングには感心させられる。
「SURROUNDED」を楽々と歌いこなすラブリエも明らかに全盛期はこの頃で、その見事な歌唱力に改めてうっとり。
メンバーが全員長髪なこともあり、絵的に全盛期か(笑)。2枚目は4th「FALLING INTO INFINITY」の時期で、KEYはデレク・シェリニアン(PLANET X)。
個人的にはこのアルバムがあまり好きでないせいか、どうしても曲よりも演奏がメインという感じ。
1994〜1998の彼らの姿が見れるという点では、その変遷を含めて興味深い作品ではある。
ライブ映像・・8 ライブ演奏・・8 お買い得度・・8 総合・・8
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DREAM THEATER「METROPOLIS PT2:SCENES FROM A MEMORY」
ドリーム・シアターの5th。1999年作
4th「Falling Into Infinity」において、いくぶんの模索段階にあったバンドが再び世に放った強力作だ。
「IMAGES AND WORDS」収録の“METROPOLIS”のストーリーを膨らませた、壮大なコンセプト作をここに完成させた。
新たに超絶鍵盤奏者、ジョーダン・ルーデスを迎え、最強ともいうべき演奏陣による隙のないアンサンブルで、
ときに効果音や語りなどを織りまぜながら、場面ごとに映像とシンクロするかのように楽曲を連ねてゆく。
この映画的手法こそ、まさに彼らのプログレッブな感性とセンスの集大成というべきものだ。
PINK FLOYDの「The Wall」を思わせる内的な叙情と、広がりのあるスケール感に、
ストーリーの流れにそった劇的なサウンドがじわじわと蓄積し、ラストでの感動へとつながってゆく。
鉄壁のリズム隊に乗るペトルーシのギターワークと、ルーデスの巧みなシンセが重厚に重なり、
部分ごとの濃密さもさることながら、楽曲の緩急の付けかたと、コンセプト作としての強固なビジョンが素晴らしい。
知的プログレッシブメタルの新たな歴史を刻んだドラマティックな傑作だ。
ドラマティック度・・10 テクニカル度・・9 楽曲センス・・9 総合・・9
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DREAM THEATER「LIVE SCENES FROM NEW YORK」
ドリーム・シアターのライブアルバム。CD3枚組。2001作
音源としては「METROPOLIS 2000」のDVDのものと同様だが、あらためて音だけで聴いても、
この長大なコンセプト作の凄味と、ライブにおける一糸乱れぬ彼らの演奏とにやはり耳は釘付けになる。
CD版の聞きどころとしては、DISC2のC以降で、DVD未収録の「METROPOLIS PT1」や
ルーデスのキーボードソロ、それに日本盤CDには未収の「ANOTHER DAY」(本物サックス入り)など
合計3時間超、たっぷりと彼らの演奏を堪能できる。ファン必聴のライブ作品だ。
メロディアス度・・8 プログレ度・・9 ライブ演奏・・10 総合・・9
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DREAM THEATER「SIX DEGREES OF INNER TURBULENCE」
ドリーム・シアターの2002年作
1枚目をぱっと聴いた印象は、へヴィ、ダーク、アグレッシブ、そしてライブ的な音作り、熱い演奏である。
アルバム「AWAKE」の頃の音で、そのまま激しいスタジオライブをやったようなイメージというべきか。
もちろん曲は複雑で、テクニカルなリズムアプローチもたっぷり盛り込みつつ、エフェクトやSEを用い「狂気」を演出する手法は
いわば「メタリックなPINK FLOID」とも言い得るだろうか。一方でルーデス加入による恩恵としては、
テクニカルパートでのキーボード入りのアンサンブルの見事さはプログレらしい高度な技巧と密度を感じさせる。
そして2枚目は長大な組曲で、イントロが始まった瞬間、なにか壮大なオペラが始まったのかと思わず身構えた。
クラシカルな格調高いオーケストラアレンジにまず度肝を抜かれる。40分以上の組曲は山あり谷ありの展開で、
美しいキーボードメロディ、叙情豊かなヴォーカルパート、テクニカルな変拍子を取り入れながら、
まざまざと見事な楽曲構築能力を見せつける。ここでもやはり素晴らしいのはジョーダン・ルーデスのシンセワークで、
クラシックに裏打ちされた繊細なピアノ、キーボードメロディは前作以上に重要な位置を占めている。
感動的なラブリエの歌と共にクライマックスを迎える盛り上がりでは、シンフォニックな荘厳さとダイナミズムに溢れている。
ドラマティック度・・9 テクニカル度・・9 楽曲センス度・・8 総合・・8.5
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DREAM THEATER「TRAIN OF THOUGHT」
プログレッシブ・メタルの代表格、ドリーム・シアターの7th。2003作
1曲目から割とメタルの王道的なリフが飛び出し、2曲目ではMETALLICAの“BLACKEND”のような歌メロが顔を出し、
3曲目のイントロはまるで“WELCOME HOME”という、メタリカをリスペクトした雰囲気がそこかしこに漂っている。
もちろん演奏のテクニックは抜群で、間奏部での技巧は物凄い切れ味、これをライブでやったらカッコいいのだろうと思う。
全体的にもとてもヘヴィな音作りで、ラブリエの歌唱や、ルーデスのキーボードが曲によっては生かしきれていない気もするが、
おそらく本作に関しては、ライブでのメタルバンドとしてのエネルギッシュな演奏に磨きをかけてゆくことを念頭に置いたのだろう。
後半の楽曲には、プログレメタルとしての面目躍如の楽曲もあり、多少は救われた気分になった。メタルサイドの強力作である。
メロディアス度・・6 プログレ度・・7 メタル度・・9 総合・・8
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DREAM THEATER「LIVE AT BUDOKAN」
ドリームシアターの2004年ジャバンツアー、武道館でのライブを収録したDVD。
今更このバンドの超絶な技巧と、一糸乱れぬその完璧な演奏については言及するまでもないが、
「Train of Thought」からの楽曲は、ライブではさらにたたみかけるような迫力ある音圧で迫ってくる。
とくに“BETOND THIS LIFE”の間奏部…ルーデスとマイクとの凄まじい掛け合いから、再び音が重なってゆき、
曲がつながる部分のグルーヴィングは聴いていて鳥肌ものだし、バラード“HOLLOW YEARS”での、
ギターソロ後半からのじわりとくる盛り上がりは感動的で、ラブリエの深みを増した歌唱、ルーデスの繊細なKEYとピアノ、
そしてペトルーシのギタリストとしての表現力が合わさり、まさに前半部のハイライトともいえる演奏である。
過去の曲のインスト部をつなげたメドレー、“INSTRUMEDLEY”では、その鋭角な技巧に加え、アレンジでの遊び心も見せつける。
2ndからは“PULL ME UNDER”のみなのは残念だが、1stからの名曲“ONLY A MATTER OF TIME”がルーデスのKEYで聴けるのは嬉しいし、
全18曲のラストを飾るアンコール曲が“IN THE NAME OF GOD”というのも、1曲目とラストを最新アルバムからの曲で締めるという、
セットリストとしては見事な構成だ。当然のことながら、録音のクオリティも素晴らしく、また各プレイヤーの手元を多く映すカメラワークも秀逸で
細かな技巧を重視するこうしたバンドの映像作品として、実にツボを押さえた作り。全体として感じたことは、彼らはバンドとしてもプレイヤーとして
今もなお向上し続けており、「真の演奏技術」というのは、凄まじい技巧的なプレイをしながらも、それを「楽しむ」余裕があり、
「技術以上の何か」を聴き手に伝えられるということなのだと、見ていて実感させられた。DISC2には、日本ツアーのドキュメント等が収録、
メンバーのインタビューでは彼らが「伝説の会場、武道館」でのライブに、非常な気合を入れて臨んでいたことが分かる。
また機材等の説明もあり、彼らは今回ステージでモニタースピーカーを使わず、イヤーモニター(イヤホン)を使用し、
あの正確な高速ユニゾンを完璧にこなしていたのであった。なんにしても、過去に武道館でライブをした数々のバンドの中で、
彼らが最も複雑な音楽を演奏したことは疑いようもない。尚、輸入盤DVDはリージョン1であるが、日本語字幕が選択できて、とても親切設計。
ライブ演奏・・10 ライブ映像・・9 選曲・・8 総合・・8.5
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DREAM THEATER「OCTAVARIUM」
ドリーム・シアターの8作目。2005作
ジャケ裏を広げれば4つの玉が8つになるというシャレの効いたデザイン。
前作がヘヴィネスとメタリックに接近した音だったが、今作は意外にも聴きやすく、ラブリエがしっかりメロディを歌うCあたりは
かつての“SURROUNDED”とまではいかないが、非常に爽快な印象。複雑すぎずヘヴィすぎずといったバランスの良い前半は、
超絶技巧を抑え気味で、ややおとなし目な印象だが、後半からは「もう我慢できん」というようにアグレッシブに。
鉄壁のリズム隊にルーデスのキーボードが荘厳さをかもしだすDなどはドラマティック純粋にかっこいいし、
10分、24分という大作はこのバンドのプログレッシブ方面での面目躍如といったところ。
Gのテクニカルな中間部〜盛り上がりなどは、新鮮味はないもののかつての“METROPOLIS”あたりを思わせてやはりいいですねえ。
あくまで冷静に、バンドとしてのこのアルバムの位置づけを考えると、自然体で聴ける「落ち着いた出来の良い佳作」というところだろうか。
メロディアス度・・7 プログレ度・・8 聴きやすさ度・・8 総合・・8
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DREAM THEATER「Score -20th Anniversary World Tour」
ドリーム・シアターのバンド結成20周年記念のステージを収録したライブ作。2006作
CD3枚組で、Disc1では初期から現在までの楽曲を各アルバムごとに披露。
相変わらず絶品のテクニックで、タイトな引き締まった演奏を聴かせてくれる。
disc2の目玉は、「Six Digrees Of Inner Turbuleance」の完全再現。
生のオーケストラをバックに、壮大な組曲が感動的に繰り広げられる。
Disc3は、“Octavarium”、“Metropolis”という2つの大曲で、超絶な演奏力と
楽曲構築の妙を見せつける。まさにお腹いっぱいのライブアルバムだ。
CD3枚組でこの値段ならば、すでにDVDを見ている方でも買って損はない。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・9 ライブ演奏・・9 総合・・8.5
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DREAM THEATER
「Score 〜 20th Anniversary World Tour Live With The Octavarium Orchestra
」
ドリーム・シアターのライブDVD。2006作
バンド結成20周年を記念してのワールドツアーのラスト、ニューヨークでの公演を収録。
第一部はバンドの過去を振り返るように、初期の楽曲をアルバムごとに披露。デビュー前のMAJESTY時代の曲も聴かせてくれる。
やはり2nd以前の曲における、テクニカルな熱い演奏はたまらない。ラブリエの歌唱は、歳をとった外見に反してじつに素晴らしいし、
ペトルーシのギターにしろ、ジョン・ミュングのベースにしろ、難易度の高い楽曲を易々とこなしている。
ルーデスのテクニカルなキーボードワークにはややマンネリ感があるのだが、楽しげに叩きまくるポートノイの正確無比のドラミングは、
やはり見どころになっている。第一部は“The Spirit Carries On”で感動的に幕を閉じ、第二部はいよいよオーケストラとの競演。
目玉はやはり組曲“Six Digrees〜”の完全再現で、緻密に展開してゆく楽曲と完璧なバンド演奏、
そして生のオーケストラの厚みが加わって厳かにして壮大…おそらくこれを生で見たら泣くに違いない。
各メンバーのテク見せつけまくりの大曲“Octavarium”から、そしてラストは“Metropolis”で締めくくる。
全160分超の濃密なステージ。disc2にはメンバー自身がバンドの歴史を振り返る興味深いドキュメンタリーや
Octavariumの間奏部用に作られたアニメーションなどを収録。とりあえずDTファンは全員必買!
ライブ映像・・9 ライブ演奏・・10 壮大度・・10 総合・・9
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DREAM THEATER「Systematic Chaos」
今やプログレメタルのモンスターバンド、ドリーム・シアターの2007作
1曲目はテクニカルかつメロディアスな、ある種プログレプロパー的な雰囲気だがなかなかよい。
しかし、2曲目以降は前作から聴かれた、エモ風の叙情ロックであったり彼らがやるにはどうかという
モダンな歌メロのヘヴィロックが続き、少々げんなり。こうした中途半端な楽曲には緊張感もないし、世界観の深さも見えてこない。
悪く言うと、後半までまったりだらだらと進んでゆき、ようやく本来のこのバンドの魅力が聴けるのは
14分、16分というラスト2曲のそれぞれ後半のみ。そこで帳尻を合わせられた気分で、ややもやもやしつつも
納得してしまうDTファンは、少し疑問を持つべきだろう。自然体で作った作品といえば聞こえはいいが、
魂を削ったような鬼気せまる迫力は皆無だし、バンドとしての老成をよくも悪くも感じさせられる問題作だ。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・8 楽曲・・7 総合・・7.5
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DREAM THEATER「Chaos in Motion 2007-2008」
アメリカプログレメタルの大御所、ドリーム・シアターのライブDVD。2008作
2007〜2008年にかけてのワールドツアーでの、35カ国、115公演から集めたライブス映像を収録。
これはひとつのライブ作品というよりは、途中にバックステージ映像をまじえながらの
壮大なツアードキュメントというべき内容のDVDだろう。MANOWARもこういうのやっていた。
2007年作「Systematic Chaos」自体は、個人的にはDTの作品の中では凡庸なアルバムだったと思うのだが、
ライブでの演奏はなんだかんだでやはり素晴らしい。なんというか、楽曲のパーツごとのアンサンブルの説得力というのか、
その辺のバンドなどではけっしてかもしだせない、きめ細やかなグルーブと躍動感が味わえるのだ。
映像の方はカメラワークなど公演ごとにバラつきがあるのだが、3時間にわたってこのモンスターバンドの
世界ツアーの雰囲気が自宅で味わえるという点では、なかなかお得な作品ともいえるだろう。
ラブリエはじめ、メンバーたちの太り具合が時の流れを感じさせるが、演奏のキレに衰えはなし。
DTファンであれば見て損はない作品。DVDのみと、3CDが付いた5枚組ボックスという豪華盤もあり。
ライブ映像・・7 ライブ演奏・・9 ドキュメンタリー・・8 総合・・8
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DREAM THEATER「Greatest Hit」
プログレメタルの大御所、ドリーム・シアターのベストアルバム。2008作
DTの歴史を総括するベストで、1992〜2005年までのワーナー時代から選曲された22曲をCD2枚に収録。
「The Dark Side」と題されたDisc1は“Pull Me Under”、“Take The Time”の2007年リミックスを筆頭に
ヘヴィかつテクニカルな楽曲がずらりと並び、新規リマスターにより音質向上したサウンドが楽しめる。
Disc2は「The Light Side」で、“Another Day”の2007年リミックスに、“ Lifting Shadows Off A Dream ”
“Hollow Years ”、“The Spirit Carries On ”など、メロディアスで叙情的なナンバーを収録。
このバンドに限っては、ベストなどは不要で各アルバムごとに聴くべきだという意見もあるだろうが、
これからDTを聴き始めるリスナーにもこれは嬉しいガイドとなるだろうし、あらためてこのバンドの歩みを
俯瞰するという意味合いでも、個人的には充分に楽しめる2枚組であると思う。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・9 DTの歴史度・・9 総合・・8
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DREAM THEATER「Black Clouds and Silver Linings 」
プログレッシブ・メタルの大御所、ドリーム・シアターの2009作
のっけからポートノイの強力なツーバスドラムで始まり、ダークかつヘヴィな楽曲はかつての「AWAKE」を思わせる質感とともに、
これまでのアルバムで培われた手法や既存のリズムパターンやフレーズのコンビネーションなどを随所に覗かせながら、
そこに現時代的なモダンさを盛り込んで巧みにアレンジ、そして再構築している。とにかく曲がどれも長いので、
パートごとに歌を聴かせるようなメロディアスな部分とテクニカルな展開力を見せつける部分とがやや乖離している気もしなくはないが、
曲ごとにしっかりと聴かせ所のポイントを提示してくるのは、さすがに年季の入ったバンドである。強烈なインパクトや新鮮味は皆無だし、
名曲というほどのナンバーもないのだが、あえて冒険をおかさずともこれくらいのものは生み出せるという、実力者の手による力作である。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 新鮮度・・7 総合・・8
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DREAM THEATER「Dramatic Turn Of Events」
アメリカのプログレメタル、ドリーム・シアターの2011年作
マイク・ポートノイの脱退から、公開のメンバーオーディションで加入したマイク・マンジーニを迎えてのアルバム。
さて、肝心のサウンドの方は、これがなんの違和感もなく聞き流せるDT節が満載。
メロディにしろ展開にしろ、どこかで聴いたよね、と思いつつ、包み込むようなシンセの美しさや
ラブリエの絶妙の歌い回しで、すべてOK的な、ファンにはひと安心という落ち着いた内容。
新鮮味がどうとか新たな刺激とか、そんな野暮なことを言わなければ85点はとるだろう、という…。
マンジーニのドラムにしても、マイクを意識しながらむしろ控えめなほど楽曲に忠実でバランスがいい。
前作のレビューでも「冒険なしの傑作」と書いた気がするが、本作ではさらにレイドバックしたような
メロディアスでやわらかな感触が、精巧に作られたスリリングさとともに高い演奏力で再現されている。
これを期待通りととるのか、物足りないととるのかは、アナタのDTファンの度合いによるだろう。
誤解をおそれずに言えば、大人のフュージョンを思わせる軽やかな職人技の整合感があり、
ひとことで言うのなら「良くできたドリームシアター的作品である」と…個人的にはそう感じた。
ドラマティック度・・7 新鮮度・・7 DT風味度・・9 総合・・8
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DREAM THEATER
アメリカのプログレッシブ・メタル、ドリームシアターの2013年作
ドラムがマイク・マンジーニになっての2作目、セルフタイトルの作品ということで相当の自信作なのだろう。
壮大な雰囲気のイントロ曲に続き、ヘヴィなテクニカル性が炸裂するモダンなサウンドは、
聴き手に与えるインパクトは充分。マンジーニのドラムも前作以上にパワフルで、
メタリックな硬質感をともなった楽曲は非常に重厚な印象だ。随所に技巧的なギターとシンセを絡ませて
プログレとしての側面も際立たせた展開力は、知的バンドとしてバンド円熟の極みにあるといっていい。
ファンカが求めるようなキャッチーな曲や、ラブリエの歌声をじっくり聴かせるメロウな曲などもはさみつつ、
テクニカルとヘヴィネスのバランスを巧みにとっていて、ラストの22分の組曲でドラマティックに締めくくる。
前作で感じた「自らによるDTサウンドの再現」という感触は、より深いレベルで融合され、意義ある作品を生み出した。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 楽曲・・8 総合・・8
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DREAM THEATER 「The Astonishing」
アメリカのプログレッシブメタル、ドリーム・シアターの2016年作
いまやキャリア25年を超えるベテランであり、すでに世界的なモンスターバンドというべき存在である。
その通算13作目、マイク・マンジーニが加わってからの3作目となる本作は、CD2枚組の大作となった。
壮大なストーリーに基づいたコンセプトアルバムで、映画的なSEなどを挟みつつ、重厚にドラマを描く作風は
AYREONなどにも通じる感触である。ProgMetalとしてのテクニカルなアンサンブルも随所に織り込みつつ、
優美でキャッチーなシンフォニックロック的でもあるアレンジは、かつての「Six Degrees〜」のDisc2を思わせる。
ラブリエのマイルドなヴォーカルもこの激しさ控えめのサウンドにぴったりマッチしていて、ゆるやかな盛り上がりを描きながら、
じっくりと味わえる耳心地の良さが素晴らしい。後半にはスリリングなパートも含みつつ、全体的には一つの映画のような
雄大でドラマティックな聴き心地だ。今回はむしろプログレリスナー向けの壮麗な叙情に包まれた傑作といっていいだろう。
ドラマティック度・・9 プログレ度・・9 壮大度・・9 総合・・8.5
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Dream Theater 「Distance Over Time」
アメリカのプログレメタル、ドリーム・シアターの2019年作
通算14作目の本作は、2枚組の大作だった前作に比べて、楽曲は最長でも9分と、比較的コンパクにまとめられている。
適度なヘヴィネスと翳りを帯びた叙情に包まれながら、ジョーダン・ルーデスのきらびやかなシンセワークと、
ジェイムス・ラブリエの伸びやかなヴォーカルは、その表現力でドラマティックにサウンドを彩り、
曲によっては、「SCENES FROM A MEMORY」を思わせたり、ヘヴィな「TRAIN OF THOUGHT」を思わせたりと、
この20年のバンドの世界観を再構築しているような感触もある。マイク・マンジーニのドラムもよりなじんでいて、
サウンドの硬質なテクニカル性を支えている。ジョン・ペトルーシの流麗なギターワークを乗せたメロディックなナンバーや、
優美なシンセアレンジのバラードなども含む、バランスの取れた内容で、強いインパクトや新鮮味はないが、さすがの完成度です。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 新鮮度・・7 総合・・8
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Dream Theater 「A View From The Top Of The World」
アメリカのプログレメタル、ドリーム・シアターの2021年作
通算15作目となる本作は、テクニカルなリズムにヘヴィなギターを乗せた導入から爽快なメロディへと展開、ラブリエのヴォーカルとともに、DTらしいドラマティックなProgMetalを聴かせる。
ペトルーシによる流麗なギタープレイ、ルーデスのプログレなキーボード、それを支えるマイアングのベース、手数の増えたマンジーニのドラムと、すべてが高次元で融合し、卓越したインストパートを描いてゆく。
ラブリエのヴォーカルも楽曲のキーに合っていてしっかり耳に心地よいし、複雑なインストからの抜けのあるメロディの流れも、もはやお家芸だ。
ラストは20分を超える大曲で、優美な叙情と華麗な緩急ある流れで、じわじわと盛り上げるドラマ性はさすが。インパクトはさほどないがなんだかんだで力作です。
ドラマティック度・8 テクニカル度・9 ドリムシ度・8 総合・8
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DREAM THEATER「THE MAJESTY DEMOS 1985-1986」
OFFICIAL BOOTLEGシリーズ。DTの前身であるマジェスティ時代のデモ音源等を収録。
バークリー音楽院時代の1985-1986の音源は、元がテープであるだけに音質は悪い。
この時点でもすでに彼らは抜群の演奏力を持っており、若さゆえか、それを見せつけるようなリズムの遊びや、
初期FATES WARNINGやWATCHTOWERなどにも通じるような変態メタル的な無茶な構成がなかなか楽しい。
RUSHの“YYZ”のガヴァーなども実に堂々たるものだ。歌入りの1986年のデモはちゃんと曲として聴け、
そのテクニカルな演奏とメロディのセンスを聴けば、たいていのレーベルならば通りそうだ。
DREAM THEATERという知的な怪物バンドの原点として、とても興味深い音源である。
テクニカル度・・8 音質・・6 マニア向け度・・9 総合・・7
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DREAM THEATER「WHEN DREAM AND DAY UNITE DEMOS 1987-1989」
OFFICIAL BOOTLEGシリーズ。1stのデモを収録。
Disc1には歌なしのインストデモを収録。アルバム収録曲とほぼ近い楽曲で、
1987年の段階でここまで完成度の高いアレンジを行っていたのだと感心させられる。
Disc2にはアルバムレコーディング前のプリ・プロダクションデモの音源を収録。
音質は良くないが、演奏、楽曲ともにほぼアルバムに近いアレンジとなっている。
この頃のDTにはテクニカルメタルとしての勢いがあり、演奏重視の曲がメインとなっている。
続く2ndで聴かせる世界観の壮大さは、このアルバムを踏み台として形作られていったのだろう。
クリスマス用のデモに録音された、ビートルズのカヴァーやクリスマスソングもコアなファン向け。
テクニカル度・・8 音質・・7 マニア向け度・・9 総合・・7.5
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DREAM THEATER「Images And Words Demos 1989-1991」
OFFICIAL BOOTLEGシリーズ。2nd「イメージズ・アンド・ワーズ」のデモ等を収録。2CD
Disc1には“Metropolis”“Take The Time”“Learning To Live”“Under A Glass
Moon”という
アルバム収録4曲のインストデモと、ラブリエ加入前の別Voでのオーディションデモを収録。
デモにしては音質的も良く、これから傑作アルバムを創造するのだという気合に満ちた演奏が素晴らしく、
もちろんテクニカルな部分も見事なのだが、ケヴィン・ムーアの陰りのあるシンセ音がとてもよいです。
2曲で歌っているジョン・ヘンドリックスなるVoは知らなかったが、なかなかいい歌声をしている。
大曲“Change Of Seasons”はVoが違うということもあって、印象がえらく違う。まるで別の曲のよう。
Disc2には1991年のアルバム制作直前のデモを収録。ここから加入したラブリエのVoはやはり説得力が違いますな。
そしてラブリエの本名は「ケヴィン・ラブリエ」だったのね(笑)それはさておき、2ndが大好きなDTファンは必携。
テクニカル度・・8 音質・・8 マニア向け度・・8 総合・・8
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DREAM THEATER「LOST IN THE SKY」
1993年ヨーロッパツアーのライブブートCD、2枚組。1994年作
イタリア盤で細長くでかいパッケージとインナーは、ブートレグとは思えぬ豪華さです。
音質の方も良好で、ベースの音もよく聴き取れて、いたって通常のライブアルバム並の品質だ。
楽曲の方は、2nd「IMAGES AND WORDS」からほぼ全曲+1stの曲といった具合で当然名曲多数。
演奏はいうまでもなく素晴らしいが、ライブ用に即興も加えて完璧に表現される楽曲のなかで、
ラブリエの歌声がときおり危うげなのが気にかかるものの、全盛期の貴重なライブが味わえる内容だ。
ライブ演奏・・9 音質・・8 ラブリエ度・・6 総合・・8
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DREAM THEATER「JUST ANOTHER DREAM」
1993年のヨーロッパツアーからの音源で、ケヴィン・ムーア在籍時の頃。
曲は2nd「IMAGES AND WORDS」からが中心で、“METROPOLIS”をはじめ名曲多数。
録音はサウンドボードらしく、音質はなかなか良好でレンジは狭いが、
ノイズ等はまったくなく彼らの超絶な演奏が楽しめる。ラブリエのVo以外は素晴らしい。
しかし、ブートCDのはずが何故か日本盤みたいな帯が付いていて、定価\2000の表示が…。
そしてよくよく聴けば、この音源、上記「LOST IN THE SKY」とまったく一緒でした。
ライブ演奏・・9 音質・・7 ラブリエ・・6 総合・・7.5
DREAM THEATER 「NEW YORK CITY 3/4/93」
アメリカのプログレメタル、ドリーム・シアターのオフィシャルブートレグ。
「IMAGES AND WORDS」期、1993年のライブを2CDに収録。ケヴィン・ム−ア在籍時のライブ音源は、
あまり多くないので、ファンには嬉しい限り。音質はサウンドボード音源なのでなかなか良好。
当然ながら、楽曲は1st、2ndの曲が中心で、大曲「Metropolis」で幕を開け、「A Fortune un Lies」
「Surrounded」「Take The Time」と、初期の名曲が若々しくダイナミックな演奏で楽しめる。
ラブリエのハイトーンがいくぶんあやういが、それもまたライブ感があってよろしい。
Disc2には20分におよぶ大曲「Change of Seasons」を披露。初期DTのファンはチェックすべし!
ライブ演奏・・8 音質・・7 往年のDT度・・9 総合・・8
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DREAM THEATER「AWAKE DEMOS 1994」
OFFICIAL BOOTLEGシリーズ。3rd「アウェイク」のデモを収録。
歴史的傑作の後だけに、昔はさほど好きではなかったが、こうしてデモを聴いていると
ややヘヴィながらも落ち着いたアレンジが、なかなか耳に心地よい曲が多い。
バンドとして売れることが約束された、リラックスした中で作ったという感じがする。
演奏における絶対的なメロディという点では、インストの“Erotomania”以外には
これという曲がないのは昔聴いた印象と同じだが、アルバム通しての浮遊感と鬱ぎみの質感は、
かつてのPINK FLOYDがそうだったように、時代を先取りしていたと言えるかもしれない。
デモとしての音質もよく、ここだけでしか聴けない未発曲もあるので、ファンなら買って損はない。
テクニカル度・・8 音質・・8 マニア向け度・・7 総合・・8
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DREAM THEATER「TOKYO,JAPAN 10/28/'95」
OFFICIAL BOOTLEGシリーズ。1995年、東京でのステージを収録。2CD。
“AWAKE”ツアーの時のものだろうか、当然ながら曲も「AWAKE」からのものが中心ではあるが、
“Under A Glass Moon”、“Surrounded”、“Pull Me Under”“Learning To Live”など2ndからの曲や
“A Change of Seasons”完全版、さらにはIRON MAIDEN、METALLICA、PINK FLOYD他の
メドレーも聴かせてくれる。Keyのデレク・シェリニアンの加入直後ということもあってか、
演奏にはやや硬さがあり、サウンドの平坦さもあってか勢いと迫力は感じられない。
まあブートレグと考えれば、音質は良い方だと思う。熱心なDTファン向け。
ライブ演奏・・8 音質・・7 楽曲・・8 総合・・7.5
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DREAM THEATER 「Old Bridge, New Jersey 12/14/96」
ドリーム・シアターのオフィシャルブートレグ。1996年のライブ音源をCD2枚に収録。
ちょうど「Falling Into Infinity」発表前の時期で、シンセはデレク・シェリニアン。
「A Change of Seasons」Pt.1&2からスタートし、「Falling Into Infinity」からの曲も多数、
セットに取り入れている。DTがバンドとして脂の乗りだした時期であるので、演奏の安定感はもちろん、
初期のテクニカル性に加えて、いくぶんダークな表現力も備わった楽曲表現力が楽しめる。
音質もなかなか良好なので、DTのファンであれば、聴いて損のない音源だろう。
ドラマティック度・・8 ライブ演奏・・8 音質・・7 総合・・8
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DREAM THEATER 「FALLING INTO INFINITY DEMOS 1996-1997」
ドリーム・シアターのオフィシャル・ブートレグシリーズ。
4作目「FALLING INTO INFINITY」のデモを収録したCD2枚組。Disc1には1996年のデモで
アルバム未収録曲を含む、全8曲69分。音質はややラウドながら、曲構成はしっかりと出来上がっていて、
巧みな演奏とラブリエの伸びやかなヴォーカル、デレク・シェリニアンのオルガンをメインにしたシンセも良い感じで、
大曲「Lines in the Sand」などもすでに見事な出来栄えだ。Disc2には1996〜97年のデモを収録。
アルバム完成間近ということもあって、楽曲のアレンジもアルバムに近く、音質、演奏ともにしっかりしていて
良質のデモ音源として十分に楽しめる。ボーナスに「Metropolis Pt.2」の貴重なリハーサル音源を収録。
テクニカル度・・8 楽曲度・・8 音質・・8 総合・・8
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DREAM THEATER「LOS ANGELS,CALIFORNIA 5/18/98」
OFFICIAL BOOTLEGシリーズ。1998年アメリカ、カルフォルニアでのステージを収録。2CD。
“FALLING INTO INFINITY”時代のライブということで、Keyがデレク・シェリニアン。
雰囲気としては、時期的にも正規盤で出ている「ONCE IN A LIVE TIME」に近いか。
バンドの演奏はむしろ淡々としていて、音源のレンジの狭さもあってか迫力はあまりない。
選曲的にも、やや散漫な印象が強く、個人的に聴いていて盛り上がるのは“Take
The Time”や
“Pull Me Under”、それにラストの“Metropolis”〜“Leaning to Live”のメドレーくらいか。
Disc2ではIRON MAIDENのカヴァーも披露し、ゲストのブルース・ディッキンソンが熱唱を聴かせる。
ライブ演奏・・8 音質・・7 楽曲・・7 総合・・7.5
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DREAM THEATER「THE MAKING OF SCENES FROM A MEMORY」
OFFICIAL BOOTLEGシリーズ。名作「SCENES FROM A MEMORY」の制作過程のデモ音源を収録。
クリック入りの演奏で、一応、曲順通りに入っているが、ブツ切れで、テイクをやり直したり、コメントが入っていたりと、
いかにも制作中という雰囲気が伝わってくる。シンセのアレンジを模索していたり、メロディを何通りも試したりと、
試行錯誤する様子ながらすでに、大まかな構成的には出来上がっていて、細部詰めの段階という感じ。
タイトル通りメイキングを楽しむという内容で、ラブリエのヴォーカルは素のままでも上手いなあ、と感心したり、
要求に応えて変化するルーデスのキーボードワークがあってこそのアルバムだったのだなと思ったり、
DTファンであれば色々な角度で楽しめるとは思う。無論、先に正規盤を聴き込んでおくのが大前提だが。
Disc2には同アルバムのオルタナティブミックス音源を収録。こちらは正規盤と若干の違いがある程度。
一般向け度・・2 制作過程度・・9 マニア向け度・・10 総合・・7
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DREAM THEATER 「TRAIN OF THOUGHT DEMOS」
OFFICIAL BOOTLEGシリーズ。2003年作。「TRAIN OF THOUGHT」のデモを収録。
元々メタル要素の強い作品であるから、当然、デモの方も硬質なギターリフを乗せたメタル感触が、
より生々しい音質で迫ってくる。一方では。ジョーダン・ルーデスのシンセがアルバム以上に存在感があって、
美しくもダークな叙情性を随所ににじませながら、10分を超える大曲を構築してゆく。バンドとしての力量は
このデモの段階で十分に感じ取れるし、楽曲としての完成度の高さが窺える。ファンなら聴いて損なしです。
ドラマティック度・・8 完成度・・8 音質・・7 総合・・8
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DREAM THEATER「WHEN DREAM AND DAY REUNITE」
ドリーム・シアターのOFFICIAL BOOTLEGライブ。2004年作
デビュー作「WHEN DREAM AND DAY UNITE」から15周年を記念して行われた完全再現ライブを収録したDVD。
あらためて聴いても、1stはテクニカルメタルとしての魅力がたっぷりで、リズムの遊びや唐突な曲展開などが当時いかに斬新であったかが分かる。
1st最高の名曲“Only A Matter Of Time”の格好良さは、ラブリエのVoで聴くと、(キーが高いのでやや苦しそうだが)
改めてそのドラマティックなサウンドにしびれます。アンコールの“To Live Forever”では、いいオッサンと化した初代Voのチャーリー・ドミニシが登場、
ラストの“Metropolis”では、デレク・シェリニアンも加わり、ツインヴォーカル&ツインキーボードとなり間奏部ではデレクとルーデスの夢の掛け合いも。
ボーナスにはリハーサルの模様や、1stアルバム当時の映像なども収録。同タイトルのCD盤はこちら。
ライブ映像・・8 ライブ演奏・・9 テクニカルメタル度・・9 総合・・8.5
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DREAM THEATER 「MASTER OF PUPPETS」
ドリーム・シアターのオフィシャルブートレグ。2004年作
メタリカの傑作「メタルマスター」を完全再現した、2002年スペインのライブを収録。
叙情的なイントロから、ザクザクのギターリフを乗せて疾走する「Battery」で幕を開け、
ラブリエのヴォーカルにやや違和感はあるが、シングルギターにシンセを重ねたスタイルで、
本家とはまた違った味わいで楽しめる。「Welcome Home」や、インストの大曲「Orion」などは、
さすがになかなかハマっていて、DTのメタルサイドのルーツのひとつという側面が垣間見える。
ドラマティック度・・7 ライブ演奏・・8 メタリカ度・・7 総合・・7.5
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DREAM THEATER「The Number of the Beast」
OFFICIAL BOOTLEGシリーズ。アイアン・メイデンのカヴァーライブ音源。2005年作
もともと、ライブではアルバム丸ごとのカヴァーなどをよくやるバンドであるが、
本作はタイトル通り、IRON MAIDENの名作「魔力の刻印」を完全再現した音源で
2002年、パリでの録音を収録。DT自体はご存じの通りシングルギターの編成なので、
メイデンのツインギターをそのまま再現というというわけにはゆかないのだが、
そこは上手いことシンセとの絡みで表現していて、これはこれでアリかなと。
ドラマティック度・・7 ライブ演奏・・8 メイデン度・・7 総合・・7.5
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DREAM THEATER「Dark Side of the Moon」
ドリーム・シアターのOFFICIAL BOOTLEGシリーズのライブ作品。2005年作
PINK FLOYDの名作「狂気」を完全再現したライブの2CDで、2005年のステージをDisc1に収録。
抜群の演奏技術とともに、フロイドの薄暗い叙情と空気感まで再現してゆくライブが楽しめる。
ペトルーシのいくぶんハード寄りのギターとラブリエのヴォーカルがオリジナルとはまた別の味わいがあり、
オルガンを含んだルーデスのシンセワークは、古き良きプログレ愛に満ちていてなかなか見事。
Disc2には1995〜2006年におけるライブでのPINK FLOYDのカヴァー曲を収録。“Echoes pt.1”や“Sleep”
などの大曲をはじめ、DTらしい構築力とともに、どの曲もスケール感のあるカヴァーが味わえる。
ライブ演奏・・8 メタル度・・6 フロイ度・・9 総合・・8
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DREAM THEATER「Dark side of the Moon」
ドリーム・シアターのOFFICIAL BOOTLEGライブDVD。2005年作
PINK FLOYDの名作「狂気」を完全再現した2005年のステージを収録。
正直言って、テクニカル指向のこのバンドがフロイドのカヴァーというのは違和感があるのだが、
(ラブリエの歌声はどう考えてもHR向きだし)…本家の雰囲気とは別物として考えれば、これはこれで楽しめる。
まず頑張っているのはジョーダン・ルーデスで、オルガンの音色を再現したり、巨大なムーグシンセを操る姿は必見。
ペトルーシも随所にメロウなギターを聴かせ、女性ヴォーカルやサックス奏者なども登場してステージを彩りながら、
アルバムの世界観を再現してゆく。このゆったりとした聴き心地はメタルファンには少々退屈かもしれないが、
プログレファンやフロイドも好きとい変わったうDTファンであればとても楽しめるだろう。
ライブ映像・・7 ライブ演奏・・8 フロイ度・・8 総合・・8
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DREAM THEATER 「MADE IN JAPAN」
ドリーム・シアターのオフィシャル・ブートレグシリーズ。2007年作
Deep Purpleの名盤ライヴアルバム「Made in Japan」を完全再現。オルガンを使ったシンセにメタル過ぎないギター、
そこにラブリエのヴォーカルを乗せて、かつてのオールドなディープ・パープルのサウンドをDTならではで再現。
カッチリとした演奏力という点では、ポートノイの正確なドラムやペトルーシの流麗なギターも含めて、
本家よりはメタル感が強いのだが、雰囲気までの完コピを気にしなければ、普通に楽しめると思う。
「Lazy」や「Space Truckin'」の間奏部などは、本家ライブのアドリブと同じく長い尺をとっているので、
熱心なパープルのファンでないと、やや長尺に感じてしまうかもしれない。全79分の力作カヴァーです。
名作ライブ度・・9 再現度・・8 演奏度・・8 総合・・8
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DREAM THEATER 「UNCOVERED 2003-2005」
ドリーム・シアターのオフィシャル・ブートレグシリーズ。2009年作
Queen、Yes、Black Sabbath、Kansas、Journey、Led Zeppelin、Ozzy Osbourne、Pantera、The
Whoといった
大御所メジャーバンドの楽曲のカヴァー集。テクニック抜群のメンバーたちであるから、この手のカヴァーはお手の物、
YESの大曲「Heart Of The Sunrise」はProgMetal寄りのハードなカヴァーが秀逸で、ラブリエの伸びやかなヴォーカルも素晴らしい。
キャッチーな仕上がりの、BLACK SABBATH「Heaven And Hell」、ヴァイオリンもシンセで再現したKANSAS「Paradox」
オルガンにブルージーなギターでオールドなロック感を再現した、LED ZEPPELIN「Since I've Been Loving You」、
ドラマティックな名曲、OZZY OSBOURNE「Diary Of A Madman」も恰好いい出来だ。PANTERA「Cemetary Gates」では、
デイブ・ムステイン、ラッセル・アレンが参加。ラストのTHE WHO「Won't Get Fooled Again」には、Queensrycheのメンバーが集結。
名曲度・・8 ナイスカヴァー度・・8 演奏度・・9 総合・・8
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DREAM THEATER 「The Broadcast Archives」
ドリーム・シアターのライブアーカイブ作品。2019年作
「NEW MILLENNIUM」、「ANOTHER DAY IN TOKYO」、「DYING TO LIVE FOREVER」、それぞれ2枚組のライブ音源集で、
合計6枚組のボックスセット。「DYING TO LIVE FOREVER」は、1993年ミルウォーキーのライブで、ケヴィン・ムーア在籍時、
「Images And Words」からのナンバーを中心に、若々しい躍動的な演奏を披露。ラブリエのヴォーカルはやや危ういところもあるが、
バンドの初期の貴重なライブが楽しめる。「ANOTHER DAY IN TOKYO」は、1995年埼玉でのでのライブを収録。
「AWAKE」発売後の日本公演で、キーボードがデレク・シェリニアンに替わっているが、演奏はさすがに安定していて、
2nd、3rdの楽曲を巧みに再現してゆく。来日中に起きた阪神・淡路大震災への追悼のMCなども収録している。
「NEW MILLENNIUM」は、1999年オランダでのライブで、デレク・シェニリアン在籍時期としては最後のライブ音源。
音質はややこもり気味であるが、「Metropolis Pt. 2」からのナンバーもいち早く披露するなど、ファンなら充分楽しめる。
ライブ演奏・・9 音質・・7 ドリムシ好きは買い度・・9 総合・・8
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Dream Theater 「Lost Not Forgotten Archives: A Dramatic Tour Of Events」
アメリカのプログレメタル、ドリーム・シアターのオフィシャル・ブートレグシリーズ。2021年作
2011年作「A Dramatic Turn Of Events」ツアーからセレクトされたライブ音源を、2CDに収録。
マイク・マンジーニ加入後の初のツアーの音源で、「Under A Glass Moon」、「Peruvian Skies」
「Ytsejam」、「Another Day」、「To Live Forever」、「Learning To Live」といった、往年のナンバーも多数演奏。
音質も良好で、きらびやかなシンセや巧みなギタープレイとともに、テクニカルなインストパートが迫力たっぷり。
ラブリエのヴォーカルはいくぶんこもり気味であるが、ハイトーンのシャウト部分などもライブならではの生々しさ。
マンジーニのドラムは、テクニック充分で、ドラムソロはやや退屈であるが、わりと楽曲に自然に融合されている。
ライブの選曲としてはいくぶんマニアックな感じはするが、DTファンであれば聴いて損はない内容でしょう。
ライブ演奏・8 音質・7 楽曲度・7 総合・7.5
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Dream Theater 「Lost Not Forgotten Archives : Images and Words - Live in Japan, 2017」
アメリカのプログレメタル、ドリーム・シアターのオフィシャルブートレッグ。2021年作
1992年の傑作「Images and Words」を、25周年で完全再現した、2017年、日本でのステージを収録。
ご存知の通り、DT初期の最高傑作であり名曲多数。当時のメンバーから、ドラムとシンセが交替しているものの、
確かな演奏力と楽曲そのものの魅力と展開美で、年月をへてもなお、スリリングに楽しめるのは素晴らしい。
ラブリエのヴォーカルには、エフェクトがかかっているようで、高音部をフェイクでカバーしたり、やや苦しいのだが、
ルーデスの美麗なシンセワークとペトルーシのギターの表現力はさすがで、楽曲のイメージをしっかりと再現している。
一方では、「Take The Time」の間奏に即興的パートを盛り込むなど、大人の余裕を感じさせるアレンジも面白く、
「Metropolis」では、マンジーニのドラムソロも披露。なんだかんだで、名作を完全再現したファン必聴のライブです。
ライブ演奏・8 音質・8 名作度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Dreamtone「Sojourn」
トルコのプログレメタルバンド、ドリームトーンの2006年作
Neverlandの方でも活動するメンバーによる、ドラマティックなProgMetal。
おそらくストーリーに基づいたコンセプト作で、曲間にはナレーションやSEなどが入り、
ややダークでシアトリカルな世界観を演出する。楽曲自体にはあまり派手さはないが、
シンセによるシンフォニックな味付けと、哀愁を漂わせつつほのかにアラビックな香りを
感じさせるギターワークによるインスト部分はなかなかの深みある音を聴かせる。
全体的にはテクニカルさよりも雰囲気でじっくりと聴かせる作風だ。
シンフォニック度・・7 ProgMetal度・・7 ドラマティック度・・8 総合・・7.5
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Dorian Opera 「No Secrets」
ドイツのプログレメタル、ドリアン・オペラの2008年作
ロシア人シンセ奏者を含む4人編成で、きらびやかなシンセワークにヘヴィなギターを乗せ、
適度にテクニカルな展開力とメロディックな叙情を併せ持った、わりと正統派のProgMetalサウンド。
ギターは随所にテクニカルなフレーズも覗かせ、美麗なシンセワークもプログレ的でよいのだが、
ヴォーカルの歌声がやや不安定で弱いので、結果としてB級プログレメタルの域を脱せず。
インストパートはときおり優雅な叙情性に包まれていて、なかなか悪くないんですがねえ。
ちなみにギタリストは元STORMWITCHのメンバーとか。なるほどマイナーなわけだ!
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・7 楽曲・・7 総合・・7
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Drivhell「A Journey As A Life」
イタリアのプログレメタルバンド、ドリブヘルの2010年作
ツインギターならぬツインシンセを含む6人組で、適度なヘヴィさを保ったギターに
プログレ的な美しいシンセアレンジを重ねたサウンドは、聴き心地のよい重厚さと
ヴォーカルの伸びやかな歌声による爽快さがなかなかいい感じだ。
知的な構築力と、リズムアレンジや曲のつなぎなどのセンスも光っていて、
イタリア語による語りを挿入させるなど、アイデアの多さも作品としての深みにつながっている。
やわらかな音の感触はイタリア独特のもので、シンフォニックなハードプログレ的にも楽しめる。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・8 イタリア度・・8 総合・・8
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E
Edgend「New Identity」
イスラエルのプログレメタルバンド、エドジェンドの2009年作
イスラエルのバンドといえば、Orphaned Land、Amaseferあたりを思い浮かべるが、
このバンドはそれらとは異なる、重厚な本格派のプログレメタルをやっている。
シンセによるオーケストラルなドラマティックなアレンジと、ヘヴィなギターワークを中心に、
プログレパワー的な雰囲気で、確かな演奏力とともに世界観を構築してゆく。
ネオクラ風味や壮麗なコーラスなども含めて、広がりのある音作りがなかなか見事で、
シンフォニックな叙情性とメタリックな重厚さのバランスのとれた力作だ。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 重厚度・・8 総合・・8
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EFFLORESCE「Coma Ghosts」
ドイツのプログレメタル、エフロレースの2012年作
ProgMetal的なテクニカルな展開力と、美しい女性ヴォーカルの歌声で聴かせる
ゴシックメタル的な雰囲気を合わせたようなサウンド。紅一点のニッキー嬢の歌声は、
普通の声質もなかなか魅力的なのであるが、ときに激しいグロウルもこなし、フルートも吹いたりする。
楽曲の方は、8分、10分、16分と大作志向で、随所に美しいシンセアレンジも加わわりつつ、
リズム面での多彩なアイデアも含めてセンスよく構築される。モダンなヘヴィさも感じさせながら、
女性声でしっとりと聴かせるソフトな曲などもあって飽きさせない。耽美系プログレメタルというべき力作だ。
ドラマティック度・・8 ProgMetal度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8
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ELDRITCH「SEEDS OF RAGE」
イタリアのプログレメタルバンド、エルドリッチの1st。1995年作
テクニカルな変則リズムに乗るやや奇妙なメロディライン。このバンドの魅力は
そのまさにイタリアといった、混沌と濃密さに満ちた奇妙な展開にある。
メロディはときにキャッチーですらあるが、リズムや展開を含めた楽曲アレンジの懲り方、
ヒネくれ方は、私のような複雑音楽愛好者の耳には非常に心地よい。
とくにシンセのセンスには、イタリアンプログレの名バンドパレッド・ディ・ブロンゾあたりを
彷彿とさせ、濃密かつ不可思議な空間を描き出している。変わり種ProgMetalの傑作。
メロディアス度・・7 プログレ度・・8 イタリア度・・9 総合・・7.5
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ELDRITCH「EL NINO」
イタリアのプログレメタルバンド、エルドリッチの3rd。1998作
すで中堅バンドであるから、音のほうはさすがに安定した演奏力を聴かせる。
イタリアお得意のプログレ的なシンセアレンジもじつによろしく、録音も良好。
このバンド独特の奇妙な展開とリズム、そしてメロディセンスはとても楽しい。
混沌としたサウンドの構成には、このジャケのように少し変態ぎみの異色さもあり。
メロディアス度・・7 演奏度・・8 プログレ度・・8 総合・・8
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ELDRITCH「REVERSE」
イタリアンプログレメタルバンド、エルドリッチの4th。2000作
1stのころからその独特のセンスとヒネたアレンジで、私のようなプログレ者メタラーの心を
ガッチリと掴んでいた彼らだが、今回はそうしたプログレ性を捨て、むしろへヴィで
モダンなメタルになってしまっているではないか。無機質なアレンジ…いまさらグランジ系かよ。
もとから演奏力があるだけに、こういう音楽をやってもそれなりに質が高いのがかえって憎らしいよ。
メロディアス度・・5 プログレ度・・3 演奏度・・8 総合・・6.5
ELDRITCH「PORTRAIT OF THE ABYSS WITHIN」
イタリアのプログレメタルバンド、エルドリッチの5th。2004作
3rdまでは独特の感性で面白いProgMetalをやっていた彼らだが、前作はヘヴィな無機質さを前に出した微妙なアルバムだった。
続く今作ではやや一般寄りのパワーメタル路線になっていて、かつてのような奇妙な展開やリズムアプローチは薄まっている。
もちろん演奏の方はしっかりとしていて、時折聴かせる変拍子などはいかにも彼ららしいし、このアルバムのみで聴くなら、なかなかの好作だとは思う。
メロディアス度・・7 プログレ度・・7 演奏・・8 総合・・7.5
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ELDRITCH「Livequake」
イタリアンメタルバンド、エルドリッチのライブアルバム。2009作
初期はセンスのあるプログレメタルをやっていたが、4th以降はヘヴィ路線に変化し興味が薄れていた。
しかし、こうしてCD2枚+DVDというボリュームのライブ作を出せるほど向こうでは人気があったとは…
演奏はさすがに活動15年のベテランらしく、ややクセのあるヴォーカルは好みを分けるものの、
安定したアンサンブルを聴かせる。Disc1は近年のアルバムからの曲が中心で、
ProgMetalというよりはモダンでシンプルなものが多く、正直あまり魅力は感じないのだが、
Disc2では1st〜3rdまでの曲を演奏してくれ、こちらはシンセ入りのプログレ的な展開美が楽しめる。
DVDにはDisc1、2の全曲と、ツアードキュメンタリー、インタビュー、ビデオクリップなどを収録。
メロディアス度・・7 ライブ演奏・・7 やはりDisc2度・・9 総合・・7.5
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ELDRITCH「Gaia's Legacy」
イタリアのプログレメタルバンド、エルドリッチの2011年作
初期の頃の怪しげなProgMetal風味から一時期はずいぶんモダンな作風へと変化していたが、
今作では変則リズムたっぷりのかつてのテクニカルな作風に戻りつつあり、
きらびやかなシンセワークがいかにもプログレ的に楽曲を彩っている。
気持ち悪さが魅力でもあった独特のメロディラインと混沌とした雰囲気はまさにイタリア。
ツインギターによる適度なヘヴィさとともにドラマティックに聴かせる、これは久しぶりの快作だ。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 イタリア度・・8 総合・・8
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ELDRITCH 「Tasting the Tears」
イタリアのプログレメタル、エルドリッチの2014年作
デビューは1995年のベテランで、本作は9作目となる。ヘヴィなギターにきらびやかなシンセアレンジで、
薄暗くモダンな感触のプログパワーメタルを聴かせる。随所に流麗なフレーズを奏でるギターに
ハイトーンヴォーカルの歌うキャッチーなメロディを乗せて、ときにメロパワ的な疾走感も覗かる。
3〜4分前後の楽曲は比較的シンプルで、今作はプログレメタルとしてのテクニカルな部分はあまりなく、
むしろシンフォニックメタル的に楽しめる重厚な感触だ。新鮮なインパクトがないので物足りなさもあるが、
全体的には安定の質の高さで、ダークな雰囲気ながらもわりと聴きやすい好作品である。
ドラマティック度・・7 ProgMetal度・・6 重厚度・・8 総合・・7.5
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ELDRITCH 「Underlined Issues」
イタリアのプログレメタル、エルドリッチの2015年作
デビューは1995年のベテランで、一時は方向性に迷いが感じられたものの、前作でProgMetal性を取り戻し
本作もモダンなヘヴィさをまとわせつつ、適度にテクニカルな展開力とどこかヒネくれたセンスで描かれる
サウンドは健在。クセのあるハイトーンヴォーカルを乗せた濃密な聴き心地は、まさにエルドリッチ節である。
シンセを含めた重厚なアレンジと、ベテランらしい確かな演奏力による音の説得力もさすがで、
ヘヴィネスとメロディアス性のバランスがとれた正統派のシンフォニックメタル的要素も強いので、
プログレメタルファンのみならず、間口の広いリスナーにも対応した力作といえるだろう。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 重厚度・・8 総合・・8
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ELDRITCH 「CRACKSLEEP」
イタリアのプログレメタル、エルドリッチの2018年作
デビューは1995年のベテランで、本作ですでに11作目。今作はジャケからしてダークな雰囲気だが、
シンフォニックで耽美なイントロから始まりつつ、ヘヴィなギターと物悲しいシンセアレンジに、
ハイトーンヴォーカルを乗せて、重厚でドラマティックなプログレ・パワーメタルを聴かせる。
メランコリックな叙情性にはゴシックメタル的な感触もありつつ、美麗なシンセワークにリズムチェンジを含む、
知的なプログレ性も覗かせる。流麗なギターとシンセが絡みつつ、適度な激しさを含んだ展開力と、
ベテランらしい説得力ある力強さで、ダークなシンフォニックメタルとしても楽しめる力作だ。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 重厚度・・8 総合・・8
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ELDRITCH 「EOS」
イタリアのプログレメタル、エルドリッチの2022年作
1995年にデビュー、イタリアンメタルを代表するバンドのひとつで、本作は通算12作目となる。
メタリックなツインギターにシンセを重ね、ハイトーンヴォーカルを乗せてメロパワ的に疾走しつつ、
リズムチェンジを含む緩急ある展開力とともに、知的でキャッチーなサウンドを構築する。
このバンドらしい引っ掛かりのある独自のプログレッシブなセンスを随所に覗かせながら、
初期の頃に回帰したイタリアらしい濃密な味わいもかもしだしている。6〜7分前後の楽曲を主体に、
11分という大曲では、重厚でドラマティックなスケール感に包まれる。全65分の力作だ。
ドラマティック度・8 テクニカル度・7 濃密度・8 総合・8
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ELEGACY「Impression」
イタリアのプログレメタルバンド、エレガシーの2005年作
シンセ入りでやわらかなメロディで聴かせる、なかなか質の高いProgMetal作。
随所にDREAM THEATERからの影響を感じさせつつも、
テクニカルさよりもシンフォニックな美しさが前にでているのがイタリア的か。
パワフルさはないがマイルドなヴォーカルの歌声に、ときに泣きのギターフレーズも聴かせ
あくまでメロディにこだわっている点に好感が持てる。ときにメロスピ的な疾走もあり、
プログレパワー、シンフォニックメタル的にも楽しめる。掘り出し物的な好作だ。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・7 イタリア度・・8 総合・・7.5
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ELFONIA 「This Sonic Landscape」
メキシコのプログレメタル、エルフォニアの2003年作
のちにSTREAM OF PASSIONに加入する、Marcela Bovio嬢の美しい歌声を乗せ、
適度にテクニカルな展開力と、アンニュイな叙情でゴシック的な薄暗さをもったサウンド。
ときにジャズ的でもある優雅なアンサンブルに、いくぶんエキセントリックなセンスと、スリリングな空気感、
やわらかな浮遊感を同居させたという聴き心地である。なによりもマルセラ嬢の伸びやかな歌声は素晴らしく、
ゴシック寄りのナンバーはThe Gatheringなども思わせる。ラストは3パートに分かれた16分を超える組曲で、
プログレ的な構築センスも光る。美しい女性声ハードシンフォとしても楽しめる好作である。
ドラマティック度・・8 アンニュイ度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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Elysium Theory 「Event Horizon」
アメリカのプログレメタル、エリシウム・セオリーの2013年作
シンセ奏者を含む5人編成で、適度にハードなギターと美麗なシンセアレンジ、
ハイトーンヴォーカルで聴かせる、ドラマティックなハード・シンフォニックサウンド。
全体的にテクニカルな要素は薄く、プログレメタル一歩手前という雰囲気で、
歌もの主体の楽曲はスリリングな展開美に関してはいくぶん物足りなさもあるが、
エドガー・アラン・ポーの小説「アモンティリャドの酒樽」をテーマにした組曲など
物語性を感じさせる構築センスに包まれている。ドラマティックな好作ではあると思う。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 楽曲・・7 総合・・7.5
Emphasis 「Revival」
エストニアのプログレメタル、エンファシスの2016年作
女性Vo、女性Bを含む5人編成で、ヘヴィなギターにシンセを重ね、美しい女性ヴォーカルの歌声とともに、
ほどよくテクニカルな展開力で聴かせる、シンフォニックメタル。きらびやかなシンセアレンジと、
魅力的な女性声が華やかに楽曲を彩っていて、5曲目などのシンフォニックな壮麗さも白眉。
随所に巧みなプレイを聴かせるギターの演奏力もかなりのもので、メタリックでモダンな硬質感を
サウンドに加えつつ、クラシカルな優雅さと女性ヴォーカルの美しさをしっかりと引き立てている。
次作「Soul Transfer」ではよりテクニカルなProgMetal路線へと移行して、充実の傑作となる。
シンフォニック度・・7 テクニカル度・・7 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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EMPHASIS 「Soul Transfer」
エストニアのプログレメタル、エンファシスの2018年作
ほどよくテクニカルなリズムにメタリックなギターと美しいシンセ、ソプラノ女性ヴォーカルの歌声を乗せた、
ゴシックメタル寄りのサウンドに、サックスなどを加えたジャズ風味の優雅な感触が同居した聴き心地。
リズムチェンジを含む知的な展開力と、適度にモダンなヘヴィネス、シンセを加えた浮遊感も同居した、
ボーダーレスのサウンドで、10分を超える大曲でも、先の読めないつかみどころのなさがなかなか新鮮だ。
ときにトランペットが鳴り響き、ヴァイオリンの音色などのクラシカル性と女性声の美しさが加わって、
格調ある優雅なProgMetalが楽しめる。小曲を挟んだ構成や独自のセンスも見事な、全73分の力作。
ドラマティック度・・8 優雅度・・9 女性Vo度・・8 総合・・8
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EMPTY TREMOR「APOCOLOKYNTOSYS」
イタリアのプログレメタルバンド、エンプティ・トレマーの1st。1997年作
テクニカルなキメを多用したサウンドはこの手のバンドとしては非常に高クオリティ。
イタリアくささはなく、すっきりと甘すぎないメロディでぐいぐい聴かせる。
変則リズム入りの展開力と、ギターの奏でるメロディ、そして美しいシンセワークも見事。
この手のイタリアンプログレメタルとしては、頭ひとつ抜けたデビューアルバムだ。
メロディアス度・・8 プログレ度・・8 ドラマティック度・・7 総合・・8
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EMPTY TREMOR「EROS AND THANATOS」
イタリアのプログレメタルバンド、エンプティ・トレマーの2nd。2000年作
1stの時点で、技量、センスともになかなかのものがあったが、本作ではそこにクールな構築センスが加わり、
イタリアのバンドにありがちな展開の唐突感…ダサさのようなものはまったく消えて、ダイナミックな聴き心地に。
テクニカルなキメとメロディアスなフックのバランスも絶妙で、ラストの大曲まで飽きずに聴き通せる。
ドラマティックなProgMetalとして、DREAM THEATERとはまた違った、スタイリッシュなセンスが光る傑作だ。
メロディアス度・・8 プログレ度・・8 ドラマティック度・・8 総合・・8
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EMPTY TREMOR「THE ALIEN INSIDE」
イタリアのプログレメタルバンド、エンプティ・トレマーの3rd。2004作
リーダーでシンセ奏者のダニエレ・レヴェラーニはGENIUS A ROCK OPERの方で知られているが、
本業はこちらのバンド。その基本的には、テクニカルなリズムにメロディアスなパートを混在させた
所謂DREAM THEATER系といってよく、楽曲やアレンジなども緻密でなかなか凝っている。
元AT VANCEの新ヴォーカリストの声質が、この手のプログレメタルには合っていないせいか、
テクニカルな曲よりもむしろバラード系の歌もの曲の方がしっくりいっているのが惜しいが、
美しいシンセワークやテクニカルなリズム展開などは、さすがのクオリティだ。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・7 ドラマティック度・・8 総合・・7.5
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Empty Tremor「Iridium」
イタリアのプログレメタルバンド、エンプティ・トレマーの2010年作
中心人物であったダニエレ・リヴェラーニが脱退し、再スタートをきったこのバンド、
本作はこれまで以上にシリアスなProgMetalに接近した力作となった。
シンセを含んだメロディックな聴き心地と、リズム面での知的な構築力、
マイルドなヴォーカルの歌声と、センスあるギターワークが合わさり、
ドラマティックでスリリングな楽曲を展開してゆく。現在このジャンルの最高峰である
Seventh Wonderあたりにも通じるクールでスタイリッシュな王道のプログレメタル。
これは中堅バンドとしての底力をまざまざと見せつける傑作である。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 構築センス・・8 総合・・8
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Empty Tremor 「Slice of Live」
イタリアのプログレメタル、エンプティ・トレマーのライブ。2015年作
1997年にデビュー、2010年作を最後に音沙汰がなかったが、こんなライブ作品を出していたとは。
本作は2013年に行われた、結成20周年のアコースティックライブを収録。アコースティックギターにピアノ、
伸びやかなヴォーカルを乗せて、キャリアを感じさせるリラックスした味わいの演奏を聴かせる。
脱退したダニエレ・リヴェラーニは不参加なのが残念だが、過去4作のアルバムからの曲に加え、
DREAM THEATER「Another Day」のカヴァーも収録。全76分、メタル感触はほとんどないので、
少々長尺ではあるが、バンドが健在であることが知れたので今後は新たな作品にも期待したい。
ドラマティック度・・7 ライブ演奏・・8 アコースティック度・・7 総合・・7.5
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ENCHANT「Blueprint of the World」
アメリカのプログレハードバンド、エンチャントの1st。1994年作
MARILLIONのスティーブ・ロザリーがプロデュースした作品で、RUSHを思わせる軽妙なアンサンブルと、
キャッチーなメロディで聴かせる質の高いプログレハードサウンド。やわらかなヴォーカルと
うっすらとしたシンセアレンジ、随所にメロウなギターフレーズも盛り込んで、叙情的な美しさを描き出す。
そしてポール・クラディックの絶品のドラムプレイがアンサンブルをぐっと引き締めていて、
IT BITESから続いてきた現代系プログレハードのひとつの形を軽やかに提示している。
キャッチーでスタイリッシュな傑作だ。デモバージョンを収録したCD2枚組限定盤もあり。
メロディアス度・・8 キャッチー度・・8 プログレハー度・・8 総合・・8
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ENCHANT 「Wounded」
アメリカのプログレハードバンド、エンチャントの2rd。1996年作
2nd「Wonded」は前作の延長上のサウンドで、軽やかなアンサンブルとキャッチーなメロディで聴かせる好作品。
ハスキーなヴォーカルの歌声は前作以上に抜けがよくなり、うっすらとしたシンセアレンジや
適度にテクニカルなリズムとともに、バンドの持ち味であるやわらかな叙情を描いている。
1stに比べるとウェットな雰囲気が増した分、爽快な心地よさは減っているが、これは次作への布石だろう。
INSIDE OUTからの再発盤は未発音源集「Time Lost」をカップリングした2CDとなっている。
メロディアス度・・8 キャッチー度・・8 プログレハー度・・8 総合・・8
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ENCHANT「BREAK」
アメリカのプログレハードバンド、エンチャントの3rd。1998年作
1stはキャッチーなメロディとテクニカル性が融合された良質のプログレハード作品であったが、
本作ではレーベルをINSIDE OUTに移し、より現代的な叙情美を聴かせる傑作となった。
うっすらとしたシンセにメロウなギターフレーズ、そして名手ポール・クラディックによる手数の多いドラム、
楽曲は静寂と動のメリハリが効いており、メロウな質感ともの悲しい空気が見事に表現されている。
中期以降のMARILLIONなどにも通じる薄暗さを感じさせつつ、やわらかでシンフォニック的な部分もある。
4th以降もそれなりに質の高い佳作だと思うが、どれか1枚挙げるなら本作をお薦めする。
メロディアス度・・8 叙情度・・8 プログレハー度・・8 総合・・8
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ENCHANT「JUGGLING 9 OR DROPPING 10」
アメリカのプログレハードバンド、エンチャントの4th。2000年作
前作での薄暗路をいくぶん残しつつ、キャッチーな路線に回帰。随所にメロディックなフレーズを奏でるギターと
マイルドなヴォーカルを乗せ、優雅で軽妙なプログレハードを聴かせる。重すぎないテクニカル過ぎないという、
いわば中庸の路線ながら、安定した演奏とメロウな聴き心地の良さで、全体的にゆったりと楽しめる。
5〜7分前後の楽曲も、シンプル過ぎず複雑すぎずという絶妙のバランスで、強いインパクトこそないものの、
職人気質のようなクオリティの高さが光っている。スリリングさは希薄だが、捨てがたい味わいの好き作品。
メロディアス度・・7 キャッチー度・・8 プログレハー度・・8 総合・・8
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ENCHANT「BLINK OF AN EYE」
エンチャントの5th。2002年作
1stの頃から軽快なサウンドに、手数の多いドラム、よく鳴くメロウなギターで、
非常に聴きやすく、メタラーにもOKなプログレ/シンフォニックをやっていたこのバンド。
従来からあった、「傑作まであと一歩」な感じもそのままに良質な佳作を作りつづけている。
今回も「これだ」と膝を叩くような部分はないのだが、とにかく心地よい音なのである。
安定したリズム隊に、テクニックとセンスのあるギター、そしてマイルドヴォーカルで、
キャッチーなメロディの心地よさとともに優雅に聴かせるシンフォニックハードの好作。
メロディアス度・・8 シンフォニック度・・8 プログレハー度・・8 総合・・8
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ENCHANT「TUG OF WAR」
エンチャントの6th。2003年作
このバンドは「プログレメタル」と呼ぶべきか、「プログレハード」と呼ぶかで少々悩むのだが、
今作もこれまで同様に、随所にハードなギターが入りつつも、あくまでキャッチーな聴き心地で楽しめる。
適度なテクニカル性と、一方でしっとり系の曲では爽やかで優しく、そして叙情的な雰囲気に包まれている。
ドラマティックすぎず、派手すぎず、テクニカルすぎずという、いわば寸止めの美学というべきか。
盛り上がりや展開美という点ではこれという派手さはないものの、全体のクオリティとバランスはさすがだし、
あくまで音の気持ちよさにこだわっている姿勢には好感が持てる。安定のプログレハードの好作品。
メロディアス度・・8 キヤッチー度・・8 プログレハー度・・8 総合・・8
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ENCHANT「LIVE AT LAST」
エンチャントのライブアルバムCD2枚組。2004作
このバンドの魅力は、音の心地よさ、聴きやすさだと思うが、それはライブ演奏でも同様で
メロウなギターと力みすぎないが情感豊かなヴォーカルに、クールな構築センスと軽妙な曲調が合わさって
激しすぎず、静かすぎずというバランスのとれたマイルドなサウンドになっている。
ときにアコースティックをまじえて、ゆったりと聴かせるメロウなギターのセンスはかなりのものである。
個人的にはやはり1st〜3rdあたりの曲が嬉しい。この派手さの無さを退屈ととるか、あるいは心地よいととるかの差で、
このCD2枚全23曲を楽しめるか否か分かれるだろう。のんびりと聞き流すには最適の音楽だとは思う。
メロディアス度・・8 プログレハー度・・8 ライブ演奏・・8 総合・・8
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ENCHANT「The Great Divide」
アメリカのハードプログレ、エンチャントの2014年作
1994年〜2003年までに6作を発表したが、2004年のライブ作品を最後に音沙汰のなかったバンドが10年ぶりに復活。
適度なハードさを含みつつも、あくまでキャッチーかつメロディックな聴き心地は健在で、
シンセアレンジはよりプログレ的になり、むしろ古き良きプログレハード質感が強まっている。
SPOCK'S BEARDにも参加するテッド・レオナードの歌声も、落ち着いたマイルドな雰囲気で
大人の味わいをかもしだしている。派手な盛り上がりがないのは相変わらずだが、昔からのリスナーならば、
これぞエンチャントと思うことだろう。10年空白だったとは思えないような安定の好作品ですわ。
メロディック度・・8 プログレハー度・・8 新鮮度・・7 総合・・8
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Enochian Theory 「Evolution: Creatio Ex Nihilio」
イギリスのプログレメタル、エノチアン・セオリーの2009年作
コンセプチュアルな雰囲気の小曲からして、すでに知的なセンスを感じさせるが、
モダンなヘヴィさと硬質感に、適度にテクニカルな展開力で聴かせる、新世代のProgMetalサウンド。
基本はギター&ヴォーカルに、ベース、ドラムのトリオ編成ながら、随所にオーケストレーションによる
壮麗なアレンジでがシンフォニックな質感を生みだしている。マイルドなヴォーカルを乗せた繊細な叙情性などは、
モダンなハードプログレとしても楽しめる。Pain of Salvationあたりに通じるアーティスティックな構築性で、
ドラマティックなサウンドをセンスよく描いてゆく。英国の新鋭による高品質な作品である。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 モダンなセンス度・・8 総合・・8
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Enochian Theory「Life & All It Entails」
イギリスのプログレ(メタル)バンド、エノチアン・セオリーの2012年作
ギター&ヴォーカルに、ベース、ドラムのトリオ編成のバンドながら、
オーケストラルなアレンジを含んだシンフォニック性と適度にテクニカルな展開力、
エモーショナルな叙情性を含んだサウンド。4〜6分台の楽曲が中心で、
サウンドに難解さはなく、やわらかなヴォーカルの歌声とメロウな聴き心地は
メタルとしてのヘヴィさよりも、むしろハードプログレ的な感触でも楽しめる力作だ。
メロディック度・・8 テクニカル度・・7 叙情度・・8 総合・・8
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EPHRAT「No One's Words」
イスラエルのプログレ(メタル)バンド、エフェラトの2008年作
適度にメタリックなギターとシンセを中心に、薄暗い叙情で聴かせるサウンドはときにゆったりとメロウに、
ときにフルートなども入った民族色もあり、じっくりと盛り上げるドラマ性は、ProgMetal系のリスナーにも勧められる。
のっけから10分を超える大曲に、その後も8分、9分という大作指向で、新人にしては堂々たる自身が窺える。
ラストの18分の組曲もなかなか圧巻。ゲストヴォーカルにはなんとPain of Salvationのダニエル・ギルデンロウに
PAATOSの女性Vo、PetronellaNettermalm 嬢が参加している。中心人物、オマー・エフェラトの若き才能に今後も注目だ。
ドラマティック度・・8 メタリック度・・7 薄暗度・・8 総合・・8
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EPYSODE「Obsessions」
ベルギーのシンフォニック・プログレメタルプロジェクト、エピソードの2011年作
ギタリストのサムエル・アルカンを中心に、多数のゲストを迎えたAYREONを思わせるような壮大なメタルオペラ的作品。
そのAYREONにも参加した女性Voや、PAIN OF SALVATION、BEYOND TWILIGHTなどからもメンバーが集結、
シンフォニックな美麗さと、そして男女ヴォーカルによる歌声で、重厚かつダークなドラマ性を描いてゆくサウンドだ。
曲自体は4〜5分台がメインなので難解さはなく、ミドルテンポ主体のモダンなシンフォニックメタルとして普通に楽しめる。
女性声がメインになるとゴシックメタル的な雰囲気にもなる。全体的にはヘヴィになったAYREONという感じの力作。
ドラマティック度・・8 シンフォニック度・・7 重厚度・・8 総合・・8
The Erkonauts 「I Want It To End」
スイスのプログレメタル、エルコナウツの2020年作
2014年にデビューし、3作目となる。硬質なギターにスクリームとノーマルヴォーカルを乗せ、モダンなヘヴィネスとテクニカル性が融合したサウンド。
ゆったりとした哀愁に包まれたポストプログレ風のパートや、巧みなペースプレイにヘヴィなギターリフでたたみかけるアグレッシブなハートなどメリハリはあるのだが、メロディや叙情性という部分ではわりと薄味。
ProgMetalというよりは、スクリーモ寄りのテクニカルなヘヴィロックというべきか。
ドラマティック度・7 テクニカル度・7 モダンヘヴィネス度・8 総合・7
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Eternity X「Mind Games」
アメリカのプログレメタル、エターニティ・エックスの1995年作
Eternity名義で1994年にデビュー、本作は2作目なる。3rd以降から「X」を付けた名前に変更したようだ。
変則リズムを含むテクニカル性と緩急ある展開力で、Queensrycheなどに通じるProgMetalを聴かせる。
シアトリカルな味わいのハイトーンヴォーカルや、随所に流麗なフレーズを奏でるギターもよい感じで、
B級なジャケほどにはマイナー臭さは感じない。美麗なシンセを重ねてのシンフォニックな叙情性も覗かせて、
派手さはないがわりとキャッチーな味わいでも楽しめる。楽曲的には突き抜けきらないもどかしさもあって、
メロディ重視なのかテクニカルなのかがやや中途半端な印象。90年代プログレメタルの埋もれた佳作というところ。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・7 楽曲・・7 総合・・7
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EtHERSENS 「Ordinary Days」
フランスのプログレメタル、エーテルセンスの2008年作
硬質なギターリフによるモダンなヘヴィネスとテクニカル性にマイルドなヴォーカルを乗せた
メランコリックな味わいを含んだスタイリッシュな作風。Pain of Salvationなどにも通じる知的なセンスに、
ヴォーカルはときにがなり立てるような激しく歌ったり、、シアトリカルな側面も垣間見せる。
派手な展開というのはあまりないが、ゴシックロック的な翳りのある叙情性に包まれた世界観で、
Wolverineなどが好きなリスナーにも楽しめるだろう。モダンでハイセンスな薄暗系メタルの好作品。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 メランコリック度・・8 総合・・7.5
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EVEFEAR 「9 Elements of Inner Vision」
オーストラリアのプログレメタル、イヴフィアーの2005年作
シンセを含む5人編成で、適度にヘヴィなギターリフとテクニカルな感触に、
うっすらとしたシンセアレンジとハイトーンヴォーカルで聴かせるサウンド。
随所に正統派メロパワ的な疾走感もありつつ、リズムチェンジを多用したメリハリのある展開は
90年代のマイナー系プログレメタルを思い出すようなイメージ。これというインパクトはないのだが、
随所にメロディックなフックもあって、全体的にもじっくり楽しめる好作であると思う。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・7 楽曲・・7 総合・・7.5
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EVENT「Electric Skies」
アメリカのプログレメタルバンド、イヴェントの1st。1998年作
バークリー出身のメンバーによるバンドで、DREAM THEATERばりのインストパートに
モダンな構築センスを含ませたクールなテクニカル・プログレメタルを聴かせる。
複雑なリズムアレンジと、ヒネくれ気味の展開は、なかなかひと筋繩ではゆかないが、
随所にシンセを含んだ叙情的なパートを盛り込むなど、メロディアスな要素もある。
抜群の演奏力も含めて、知的で起伏に富んだ構成力は只者ではない。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・9 演奏度・・9 総合・・8
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EVENT「HUMAN CONDITION」
アメリカのプログレメタルバンド、イヴェントの2nd。2001作
今作ではメタル色はずいぶん薄くなり、代わって演奏にはフュージョン、テクノ、ジャズ色が増した。
どこかすっとぼけた曲構成や、あえて王道を避けるかのようなひねくれ加減はMATS/MORGANなども思わせる。
シンフォニック/メロディアスなプログレメタルが好みの私としてはどっちかというと苦手な音なのだが、
このバンドの音には、それでもどこかにメロディを感じる部分とハードロックにリンクしている部分があり、
ときどき引き込まれるように演奏を聴いてしまう。そこが魅力なのかもしれない。
メロディアス度・・7 プログレ度・・9 演奏度・・9 総合・・8
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EVENT「Scratching at the Surface」
アメリカのプログレメタルバンド、イヴェントの3rd。2003年作
1stはテクニカルなProgMetalであったのが、2mdではフュージョン/ジャズ風味のアヴァンロックとなり、さらにこの3作目では、
ノリのよいハードロック色が強まっていて、KINGS Xあたりを思わせるモダンなビート感覚と知的なアレンジで、
いわばオルタナ・プログレロックというべき聴き心地である。楽曲は3分台がほとんどで、しごくシンプルではあるが、
演奏力の確かさはさすがといったところ。個人的にはやはりもっとプログレ風味が欲しいのだが
ひとつところにとどまらないという点では彼ららしいとも。歌もの的なキャッチーさは、Garactic Cowboysあたりにも通じるか。
メロディック度・・7 テクニカル度・・7 楽曲・・7 総合・・7.5
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EVERWOOD「MIND GAMES」
ハンガリーのプログレメタルバンド、エヴァーウッドの2005年作
ドラマ的なセリフ入りのイントロから、テクニカルな楽曲が始まり、かなりの期待感。
シンフォニックなキーボードと、変拍子を多用したリズムと展開美でなかなか聴かせてくれる。
総じて力みがちの大仰さと、ダミ声がかったヘタウマのVoが好みを分けるところかもしれないが、
新人にしては音にはったりが効いているところもいいし、ハンガリーという地域性を考えれば
これは堂々たるデビュー作といっていいだろう。バタバタしたドラムサウンドの改善とともに、
今後は少しずつ曲における無駄をそぎ落として、聴きやすくしていって欲しい。
シンフォニック度・・8 プログレメタル度・・8 楽曲・・7 総合・・7.5
EVERWOOD「The Raven's Nest」
ハンガリーのプログレメタルバンド、エヴァーウッドの2nd。2008年作
前作は濃密なサウンドでなかなかの出来だったが、本作ではサウンドにさらに力強さが増してきている。
テクニカルなリズムの上をメタリックなギターリフときらびやかなシンセが絡み、
プログレメタルとしての王道的な展開力でぐいぐい聴かせる、その説得力も十分だ。
弱点だったヴォーカルも自然体の歌唱になり、問題なくサウンドに溶け込んでいるし、
三部構成に分けられた物語的なコンセプトも作品をドラマティックに仕上げている。
ハンガリーという地域性を考えれば、これは傑作の名に値するだけの力作だ。
メロディアス度・・8 ProgMetal度・・8 ドラマティック度・・8 総合・・8
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EVERWOOD「Without Saving」
ハンガリーのプログレメタル、エヴァーウッドの2011年作
傑作だった前作から3年ぶりとなるアルバムで、これが3作目となる。
美麗なシンセワークと適度にテクニカルな楽曲で効かせる正統派の作風、
曲は3〜5分台と短めで、キャッチーな分かりやすさがあるので力まずに聴き通せる。
ドラムの録音の貧弱さやヘタウマ気味なヴォーカルは好みを分けるだろうし、
前作ほどの完成度はないものの、やわらかみのあるメロディアスなProgMetalが楽しめる。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・7 重厚度・・7 総合・・7.5
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EVIL WINGS
プログレメタルバンド、イーブル・ウイングスの1st。1994作
なにやらおどろおどろしいイントロからして、いかにもイタリアらしい音であるが、
ヘナチョコ気味のヴォーカルが力んだ歌を乗せつつ、演奏が始まるや、
テクニカルかつ切れ味のよい展開力に奇妙な唐突さが合わさった独自のセンスが炸裂。
この違和感が気持ちよくなると、このバンドの魅力がきっと理解できる…ハズ。
随所にDREAM THEATERを思わせる構築的な質感を折り込みながら、
やはりヘンテコな感性でつむがれた楽曲は相当イカれていると言わざるを得ない。
つづく2ndは、その異質なセンスを最大限に発揮した迷盤なので、ぜひとも聴いていただきたい。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・8 ヘンテコ度・・9 総合・・8
EVIL WINGS 「Brightleaf」
プログレメタルバンド、イーブル・ウイングスの2nd。1996年作
DREAM THEATERもどきの1stから脱却したこのアルバムは、独自の迷宮感覚を盛り込んだ展開が見事な名作。
とくに大曲における奇妙さ加減はもう絶品で、メロディアスなのに、ここまでひねくれ、気持ち悪く展開させる楽曲には
唖然とさせられる。高度な演奏技術を持つだけに、よけいその変態を説得力あるものにしているのだ。
どんどんわき道へそれてゆき、けっして元に戻らない曲構造は、まるで迷宮散策のよう。
ここまでくると下手なVoさえもが、演奏に集中させるためのギミックにすら思えてくる。
変拍子の海、イントロを思い出せなくなる曲展開、迷宮の奥底へ突き進む潔さ。
すべてが変態的で、逆を返せば常人には計り知れない天才的なセンスが炸裂している。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・9 混沌度・・9 総合・・8.5
EVIL WINGS 「Colors of the New World」
プログレメタルバンド、イーブル・ウイングスの3rd。1999年
一聴して前作よりもキャッチーな感触が増して聴きやすくなっているが、よくよく耳を傾けると
ヘタウマのヴォーカルや唐突な展開力とともに、サイケな浮遊感をかもしだしていて、
抜群の演奏力なのに、さほどカッチリしていないという、このバンドらしい雑多なる魅力を随所に発見できる。
美しいシンセアレンジやテクニカルなギターフレーズも随所に覗かせつつ、イタリアらしい混沌としたアレンジや
屈折感のある変拍子リズムとともに、ヘンタイ系ProtMetal好きにも密かにお薦めできるという内容。
無駄に長い18分の大曲も含めて、ヘンテコなセンスが最高だし、ひねくれものにだけ聴いて欲しい逸品です。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・8 混沌度・・8 総合・・8
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EVIL WINGS「KITE」
イタリアのプログレメタルバンド、イーヴル・ウイングスの4th。2001作
今回は凧(空を飛ぶやつ)をテーマにしたコンセプト作のようで、音のシリアス度が上がっている。
いつものような能天気さと、無意味なキャッチーさに破天荒な展開美を期待していたのだが、
まさかこれほどマジなコンセプトアルバムでくるとは。DREAM THEATERの「METROPOLIS PTU」に影響を受け
「よしゃ、俺らも」と思ったのだろうか。似合わんことをしないで欲しい、…と思うが演奏の実力では引けをとっていない分、
それなりにちゃんと聴ける作品には仕上がっているのがかえって口惜しい。私としては、彼らの本当の持ち味である、
気持ち悪い無茶な展開と妙なノリの良さを詰め込んだ変態度全開の作品を望みたい。ただし、相変わらず演奏力は抜群。
メロディアス度・・7 プログレ度・・8 混沌度・・7 総合・・7.5
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EVIL WINGS「SHINE IN THE NEVERENDING SPACE」
イタリアのプログレメタルバンド、イーヴル・ウイングスのライブアルバム。2003年作
コレハ夢の様なブツです。まさか、DVD付きで、このバンドのライブ映像が見られる日が来ようとは。涙
DREAM THEATERを基盤にしたProgMetalでありながら、変態系テクニカルメタルとしても語るべきこのバンド。
ギター兼ヴォーカルの歌唱の適当さはともかくとして、その演奏力は抜群で、シンセ入りのメロディアス系ProgMetalでありつつ、
高速フレージングや変拍子の無茶なキメを強引に組み入れたり、ある意味、自己満足精神の追求が素晴らしい。
DVDでは、演奏の合間に時折挿入される意味不明なイラストが妙なサイケ色をかもしだしており、その意味のなさに呆れ、嬉しくなる。
ステージは4人編成+1(赤マントの怪しいおねーちゃん)で、中央に立つそのおねえさんは、一応コーラスなのだろうが声を出す曲は少なく、
あとはただ視覚的価値としてのみ存在しているようだ。1st収録の“CHRYSALIS”は、せわしない矢継ぎ早の展開〜叙情シンフォニックという、
無茶な流れの裏名曲で、部分的にはDREAM THEATERを思わせるカッコ良さがありながら、そのヘンテコなセンスのため、結果として変態度を高めている。
あえて言うなら、「脳内にサイケ的な迷宮感覚を持ったメンバーたちによる、テクニカルプログレメタル」としか。これぞ必聴&必見のライブである。
メロディアス度・・8 変態度・・9 ライブ演奏・・9 総合・・8.5(個人的には9)
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EVIL WINGS 「KALEIDOSCOPE」
イタリアのプログレメタルバンド、イーヴル・ウイングスの2011年作
前作から10年ぶりとなる5作目で、このヘンテコなバンドがまだ存続していたことを嬉しく思う。
サウンドの方は、これまでにないラフなハードロック風味で始まり、キャッチーな聴き心地がむしろ怪しい。
オルガンの音色が鳴り響き、奔放なギターフレーズで聴かせるサイケなロック色とともに、
全体的にも肩の力の抜けた作風で、テクニカルなものを期待するとガッカリしてしまうのだが、
ときおり聴かせるプログレ的な展開力と、奇妙な浮遊感のようなものはまぎれもないEW節である。
メロディック度・・7 テクニカル度・・7 ユル度・・8 総合・・7.5
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Exawatt 「Among Different Sights」
イタリアのプログレメタル、エクサワットの2011年作
男女Voにシンセを含む6人編成で、変則リズム入りのテクニカルなアレンジと
適度にヘヴィなギターとプログレ的なシンセワークで聴かせるモダンなProgMetalサウンド。
楽曲におけるメロディのフックや盛り上がりという点では、さほどインパクトはないのだが、
男女ヴォーカルの歌声とともに優雅な味わいで、とくに女性声メインの曲はよい感じだ。
全体的にはテクニカル性もシンフォニック性もや中途半端なので、方向性を絞り込んでいってもらいたい。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・7 楽曲・・7 総合・・7.5
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EXIVIOUS
オランダのプログレメタル、エクシヴィアスの2009年作
元CYNICのギター、ベースを擁するバンドで、軽やかなリズムにメタリックなツインギターを重ね、
変拍子を含むテクニカル性とともに、優雅なジャズ/フュージョン風味のインストサウンドを聴かせる。
流麗なギターはほどよくメロディックなフレーズも奏で、存在感のあるベースのプレイや
手数の多いドラムなど、高度な演奏力で、リズムチェンジや複雑なキメを軽やかにこなす。
Djent的なスタイリッシュな技巧性とともに、うっすらとしたシンセアレンジなども加わった、
叙情的なパートも覗かせる。緩急あるテクニカルなメタルフュージョンとしても楽しめる強力作。
ドラマティック度・7 テクニカル度・8 優雅度・8 総合・8
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Exivious 「Liminal」
テクニカルメタルユニット、エグジビオスの2013年作
元CYNICや、元Pestilence、オランダのブラックメタルDodecahedronのメンバーらによるユニットで、
テクニカルなアンサンブルによるプログレッシブな味わいのサウンド。
CYNICのインスト部分をメタルフュージョン風味にしたという聴き心地もあり、
変則リズムまくりのDjent的な感触とともに、クールで知的な構築センスが楽しめる。
一方では、叙情的な浮遊感も漂わせていて、アーティスティックな楽曲構築も見事。
最近のCYNICよりも、即効的なテクニカル性が強めなので、その手のファンはオススメです。
メロディック度・・7 テクニカル度・・8 知的&クール度・・9 総合・・8
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Expedition:Delta
ALOGIAのギタリスによるプロジェクト、エクスペディション:デルタの2007年作
エリク・ノーランダー、リチャード・アンダーソン、ゲイリー・ワーカンプ(SHADOW
GALLERY)
サビーネ・エデルスバッカー(EDENBRIDGE)他、豪華なゲスト陣が参加している。
さぞ重厚なProgMetalであろうかと思いきや、実際は爽快なプログレハード的なサウンド
テクニカルでありながらキャッチーなメロディを聴かせるあたりはACTあたりを思わせるが、
さすがに実力あるメンバーたち。きらびやかなシンセと、テクニック溢れるギターワーク、
そして、そこに男女ヴォーカルが歌を乗せると、なんともカラフルでゴージャスな質感となる。
メロディにこだわりつつも、ProgMetal的な技巧とキメをしっかりと盛り込んで聴かせる力作だ。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・8 プログレハー度・・8 総合・・8
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EXPLORERS CLUB「RAISING THE MAMMOTH」
MAGNA CARTAレーベルによるプログレメタルプロジェクト、エクスプローラーズ・クラブの2nd。2002作
今回もMAGELLANのトレント・ガードナーを中心に、テリー・ボジオ、マーティ・フリードマン、
ジョン・ミュングら、豪華ゲストを迎えての作品となっている。大曲2曲という構成はインスト中心で、
各メンバーの技量が結集した、技巧的なアンサンブルを聞かせている。
ただ、前作にあったMAGELLAN的なメロディアスで華麗なコーラスワーク、分かりやすい盛り上がり
といったものはやや影をひそめ、ジャズロック的な「演奏主体」の雰囲気になっており、
部分的には長丁場の退屈を感じてしまう。曲よりも演奏が前に出た作品。
シンフォニック度・・7 テクニカル度・・8 楽曲・・7 総合・・7.5
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EXXILES 「Oblivion」
メキシコのプログレメタル、エグザイルスの2015年作
メタリックなギターにシンセを重ね、伸びやかなヴォーカルを乗せて、適度にテクニカルな展開力で聴かせる、
モダンな感触のProgMetal。歌詞は英語なので辺境臭さは感じさせず、ドラマ性を感じさせるダークな雰囲気に
リズムチェンジを含む知的な構築力とともに、重厚なヘヴィネスとスタイリッシュなサウンドを描いてゆく。
メロディックな叙情性よりはクールな硬質さに包まれた作風なので、楽曲ごとの盛り上がりがさほどないのだが、
Stream of Passionのマルセラ嬢が美しい歌声を聴かせる叙情ナンバーや、シンフォニックなラスト曲などはなかなか良い。
Symphony Xのマイク・レポンド、元SAVATAGEのザッカリー・スティーヴンス、Circus Maximusのマッツ・ハウゲンらがゲスト参加。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 重厚度・・8 総合・・7.5
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F
Fallin' Time 「Point of No Return」
イタリアのプログレメタルバンド、フォーリン・タイムの1999年作
シンセ入りで派手派手しく疾走しつつ、唐突でせわしない展開に
どこかシアトリカルな男女ヴォーカルがべっとりとした歌を乗せる。
イタリアらしい濃密なサウンドはときにオペラティックですらあり、
この混沌とした押しの強さを気持ち悪いと思わなければ、
むしろ変態的なプログレメタルとしてにやにやしながら楽しめる。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・8 イタリア度・・9 総合・・7.5
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Farther Paint「Lose Control」
イタリアのプログレメタルバンド、ファーザー・ペイントの2008年作
女性ヴォーカルを含む5人組で、DREAM THEATERからの影響を感じさせるテクニカルなイントロから
打ち込みを取り入れたデジタリィなシンセアレンジを加えた、美しい女性ヴォーカルを乗せたスタイル。
演奏自体はかなりテクニカルで、ギターにしろドラムにしろ演奏力は抜群なのだが、
そこに女性ヴォーカルが加わると、やわらかな優雅さが前に出てきて、お洒落なモダンさが支配する。
メタルっぽくない軽やかさが逆に個性にもなっていて、個人的には全然アリです。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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FATES WARNING「THE SPECTRE WITHIN」
アメリカのプログレメタルバンド、フェイツ・ウォーニングの2nd。1985年作
プログレメタルという言葉がない80年代から変拍子リズムを多用した楽曲をやっていたこのバンド、
彼らこそがプログレメタルの元祖であろう。最高作は次作であると思うが、本作でもすでに独自の方向性は打ち出していて、
テクニカルな変則リズムに乗るジョン・アーチの独特の節回しの歌声は、今聴いても実に個性的だ。
おそらくアルバム発表当時は奇妙な音楽とみなされたことだろうが、時代を超えた今になって聴くと、
当時から実に先鋭的なリズム感覚を持っていたかが分かる。正統派メタル路線の前作から大きく進化したアルバム。
とくにラストの大曲“EPITAPH”は一聴の価値ありである。再発盤のボーナスには貴重なデモ音源やライブトラックが収録。
メドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 ひねくれリズム度・・9 総合・・8 ◆メタル名盤特選入り
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FATES WARNING「AWAKING THE GUARDIAN」
アメリカのプログレッシブメタルバンド、フェイツ・ウォーニングの3rd。1986年作
テクニカル・プログレメタルの元祖ともいうべきこのバンドの初期の最高作。
リマスターに加えデモやライブ音源入り、さらに当時のライブ映像が楽しめるDVD付きの3枚組。
やや変態気味の変則リズムに、ジョン・アーチの浮遊感のあるハイトーンヴォーカル…
改めて聴き返しても1986年という早い時期に(DREAM THEATERのデビューよりずっと前)、
ここまで複雑なリズムを用いた音楽をやっていたということには驚愕すら覚えるし、
変態メタルの先駆けは彼らだったのだなということが改めて知れる傑作だ。
貴重なデモ音源も音質良好で、ファンには大変楽しめる内容だろう。
DVDに関しては、映像、音声共にブート並みなのだが、当時の様子が知れるだけでもよいか。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 ひねくれリズム度・・9 総合・・8.5 ◆メタル名盤特選入り
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FATES WARNING「NO EXIT」
アメリカのプログレッシブメタルバンド、フェイツ・ウォーニングの4th。1988年作
初期の最高作というべき前作「Awaken the Guardian」の流れを汲む作風で
変則リズムを含みつつ、適度なマイナー臭さで聴かせるプログレメタルサウンド。
脱退したジョン・アーチに代わって加入したレイ・アルダーのヴォーカルは、
QUEENSRYCHEのジェフ・ テイトにも似たハイトーンで、ややクセのあったアーチよりも
一般受けしそうな歌声である。8つのパートに分かれた20分超の組曲もなかなか圧巻だ。
次作以降は次第に、テクニカル路線からスタイリッシュに深化してゆくのだが、
初期のファンはこのアルバムまでは充分楽しめるだろう。隠れた傑作といえる。
25周年記念エディションには当時のツアーの映像が入ったボーナスDVD付き。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 ひねくれリズム度・・8 総合・・8
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FATES WARNING「PARFECT SYMMETRY」
アメリカのプログレメタルバンド、フェイツウォーニングの5th。1989年作
90年代以降は、しだいにサウンドをスタイリッシュに、いわば内側向けにしてゆくのだが、
本作はまだ初期からの面影を残した、変則リズムをたっぷりと取り入れたテクニカル路線。
前作から加入したレイ・アルダーのハイトーンヴォーカルも違和感なくバンドに溶け込み、
メロディの叙情性を増したプログレメタルを構築している。一方では、唐突なまでのリズムチェンジと
楽曲のインパクトはいくぶん薄れてきていて、一般的にも次作「Parallels」と並んで聴きやすい作品だろう。
2008年のスペシャルエディションは、デモを収録したDisc2と、当時のライブ映像を収録したDVD付きの3枚組仕様
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・8 ひねくれリズム度・・7 総合・・8
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FATES WARNING 「Parallels」
アメリカのプログレメタル、フェイツ・ウォーニングの1991年作
本作は6作目で、前作からの流れで、ジャケのイメージのように薄暗い叙情に包まれた作風へと深化、
ジム・マテオスによる巧みで叙情的なギターに、レイ・アルダーの伸びやかなハイトーンヴォーカルを乗せ、
ほどよくテクニカルなリズムとともに、いくぶんオルタナ寄りの翳りも含んだサウンドを構築する。
楽曲は4〜6分前後を主体に、8分の大曲もあるが、わりとキャッチーな歌メロも含めて比較的聴きやすい。
全体的にはProgMetalとしての引っ掛かりがもう少し欲しいか。2018年再発盤には、デモ音源を5曲ボーナス収録。
ドラマティック度・8 テクニカル度・7 翳りある叙情度・8 総合・8
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FATES WARNING 「Inside Out」
アメリカのプログレッシブ・メタル、フェイツ・ウォーニングの1994年作
1984年にデビュー、プログレメタルの元祖というべきバンドで、本作は7作目となる。
前作「Parallels」のメロディックな路線を受け継いだ作風で、レイ・アルダーの伸びやかなヴォーカルとともに
ほどよいテクニカル性とキャッチーな感触が同居したサウンド。楽曲は4〜6分前後と比較的コンパクトであるが、
ジム・マテオスの流麗なギターワークも随所に光っていて、スタイリッシュな構築性でじっくりと楽しめる。
初期に比べると変則リズムの使い方も自然で、ジャケも含めて地味な印象ながら、さすがという高品質作である。
2012年再発盤は3枚組で、Disc2には、1995年のライブ音源とデモを、DVDには、アルバム全曲のライブ映像を収録。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 構築度・・8 総合・・8
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FATES WARNING 「A Pleasant Shade of Gray」
アメリカのプログレッシブ・メタル、フェイツ・ウォーニングの1997年作
1984年にデビュー、プログレメタルの元祖というべきバンドで、本作は8作目となる。DVD付きの再発盤。
キーボードに元DREAM THEATERのケヴィン・ムーアが参加していて、うっすらとしたシンセに硬質なギター、
エフェクトのかかったヴォーカルを乗せて、翳りを帯びたモダンな感触に包まれたサウンドを構築する。
マーク・ゾンダーの巧みなドラムと、ジム・マテオスのセンスあるギタープレイも効いていて、
随所にテクニカルな展開力も覗かせる。一聴して派手さはないのだが、ほどよいヘヴィネスと薄暗い叙情で、
コンセプト的な流れとともにじっくりと世界観に浸れる、時代を先取りしたようなモダンProgMetalの好作品。
限定盤のDVDには、1997年ドイツでのライブ映像を収録。本作を完全再現したライブでファンは必見です。
ドラマティック度・7 テクニカル度・7 薄暗度・8 総合・8
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Fates Warning「still life」
アメリカのプログレメタルバンド、フェイツ・ウォーニングのライブ作。1998作
DREAM THEATERの影に隠れながらも通好みのProgMetalとして地道に活動を続けてきたベテラン。
本ライブ作はCD2枚組で、Disc1はアルバム「A Pleasant Shade of Gray」の全曲再現。
元DTのKevin Mooreが参加したことでも知られる作品であるが、ライブには不参加。
やはりぱっと聴きには地味な印象で、盛り上がりにも欠けるのでやや難解な印象か。
Disc2は3rd〜7thまでのアルバムからまんべんなく選曲され、これは往年のファンにも嬉しい。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・7 ライブ演奏・・8 総合・・7.5
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Fates Warning 「Disconnected」
アメリカのプログレメタル、フェイツ・ウォーニングの2000年作
プログレメタルの元祖というべきバンドの9作目で、
サウンド的にはモダンなヘヴィさを強めているが、随所に軽妙なアンサンブルも聴かせつつ
新たなFW節というべき世界観を構築していて、初期とは別物と思えばこれはこれで悪くない。
ケヴィン・ムーアがゲスト参加していることもあって、のちのOSIにも通じる薄暗い感触もあり、
やわらかな浮遊感も含んだ耳心地だ。16分の大曲‘Still Remains’のドラマティックさも見事。
あるいは、Porcupine Tree以降のモダンなセンスを先取りした好作ともいえる。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・7 モダン・・8 総合・・7.5
FATES WARNING「FWX」
アメリカのプログレッシブメタルバンド、フェイツ・ウォーニングの10th。2004作
90年代の作品から、ダークでモダンなサウンドへと変化していたバンドだが、
今作はまがりなりにもプログレメタルとしてのFW節が復活してきている。
「Parallels」の頃のメロディアスさはもうないが、前作のモダンなアプローチを残しつつも
曲によってはかつてを思わせるテクニカルな変拍子を取り入れていて、
ヘヴィなギターリフとともに、なかなか重厚なサウンドが楽しめる。
メロディアス度・・7 プログレメタル度・・7 重厚度・・8 総合・・7.5
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Fibonacci Sequence 「Numerology」
アメリカのプログレメタル、フィボナシ・セクエンスの2010年作
メロディックなギターに美麗なシンセアレンジを中心にした、オールインストによるProgMetal。
テクニカルなリズムにセンスのよいギターフレージングと、ときにマンドリンなどによる
素朴な叙情も含ませた構成は、インストながらもメリハリに富んでいて、なかなか楽しめる。
あくまでメロディに重点が置かれたサウンドなので耳心地もよく、10分前後の大曲も疲れずに聴き通せる。
さすがに全曲インストで聴き通させるほどのクオリティはないのだが、随所にはっとするメロディの良さが光る。
メロディック度・・8 テクニカル度・・7 楽曲アレンジ・・7 総合・・7.5
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FLAMING ROW 「Elinoire」
ドイツのプログレメタルバンド、フレイミング・ロウの2011年作
男女ヴォーカルの歌声とキャッチーなメロディ、適度にテクニカルな構築力で聴かせるドラマティックなサウンド。
若手らしいモダンなアレンジとノリで、ダイナミックな展開力を含んだ楽曲は、コンセプト的な流れとともに
知的な濃密さを描いてゆく。DREAM THEATERなどを通過してきた新たな世代の高品質ハードプログレという点では、
イギリスのHAKENなどにも通じるかもしれないが、ドラムの感触はよりメタル的で、ときにメタルコア的な激しさもある。
抜けの良いギターの叙情フレーズも随所に楽曲を盛り上げる。ラストの13分の大曲も含めてかなりの力作だ。
今後が楽しみな逸材です。ゲイリー・ワーカンプ(Shadow Gallery)、ビリー・シャーウッドなどがゲスト参加。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 構築センス・・8 総合・・8
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FLAMING ROW 「Mirage - A Portrayal of Figures」
ドイツのプログレメタル、フレイミング・ロウの2014年作
Frequency Driftの女性Vo、G、Seven Steps To The Green Doorのシンセ奏者を擁するメンバーで、
2011年にデビュー、本作は2作目となる。のっけから16分という組曲で、男女ヴォーカルの歌声とテクニカルな展開力で、
SF的なコンセプトに基づいたドラマティックなProgMetalを聴かせる。メタリックなヘヴィネスとモダンなスタイリッシュ性に、
プログレ的な軽妙な優雅さが同居して、ときにシンフォニックに、ときにアグレッシブにと起伏のある構築力が光る。
その反面、いくぶん唐突な展開が多く、楽曲ごとの焦点が絞り切れていない感じもするが、ケルティックなメロディを乗せた
優美な叙情性なども含めて、引き出しの多い味わいで楽しめる。AYREONのアルイエン・ルカッセンをはじめ、
Shadow Galleryのゲイリー・ワーカンプ、Spock's Beardのテッド・レオナルドなど、多数のゲストが参加。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 構築度・・8 総合・・7.5
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FLAMING ROW 「The Pure Shine」
ドイツのプログレメタル、フレイミング・ロウの2019年作
3作目の本作も、ストーリー的なコンセプトアルバムとなっていて、優美なイントロ曲で幕を開け、
伸びやかな女性ヴォーカルにマイルドな男性声が加わり、変拍子を含んだテクニカルなリズムに、
硬質なギターと美しいシンセ、男女Voを乗せた、優雅でドラマティックなサウンドを構築する。
10分を超える大曲を中心に、ホイッスルやイーリアンパイプなどのケルティックな旋律や、ヴァイオリン、チェロなど
ストリングスなども加えた壮麗さ、アコースティックパートを含むやわらかな叙情性と、メリハリある展開美で
じっくりと聴かせる。前作に比べるとメタル感が薄まったので、シンフォニックロック的な楽しみ方もできる。
Threshold、Pain Of Salvation、TraumhausなどのVoをはじめ、多数のゲストが参加。全73分という力作だ。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 構築度・・9 総合・・8
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Flashback of Anger「Splinters of Life」
イタリアのプログレメタルバンド、フラッシュバック・オブ・アンガーの2009年作
最近にわかにまたProgMetal系が活気づいてきたイタリアであるが、
このバンドもきらびやかなシンセにドラマティックな楽曲で聴かせる、
なかなか質の高いサウンドをやっている。ツインギターにシンセを含む6人編成で、
とくにネオクラシカル的なシンセのプレイがときにギター以上に目立っているのが特徴的。
マイルドな歌声のヴォーカルもなかなか耳心地がよく、テクニカルさよりも
あくまでメロディアスさにこだわった作風といえる。ただ全体的に質は高いが、
その反面ややまとまりすぎというきらいもあるのだが、今後に期待できるバンドだ。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・7 楽曲・・7 総合・・7.5
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Flashback of Anger 「Terminate and Stay Resident」
イタリアのプログレメタル、フラッシュバック・オブ・アンガーの2014年作
ツインギターにシンセを含む6人編成で、きらびやかなシンセワークと適度にモダンなヘヴィネスに
ハイトーンヴォーカルを乗せた、構築力のあるシンフォニックメタルとしても楽しめるサウンド。
楽曲は5〜6分前後が中心で、ほどよい展開力なのでProgMetalとして難解過ぎず、全体的にもキャッチーで、
メロディックな感触が強いので聴きやすい。Vision Divineあたりが好きな方にもアピールするだろう。
新鮮味という点では薄いものの、壮麗かつ適度にテクニカルなシンフォニックメタルが好みの方はぜひ。
Rhapsody of Fireのファビオ・リオーネが1曲ゲスト参加していて、伸びやかな歌声を聴かせてくれる。
メロディック度・・8 テクニカル度・・7 壮麗度・・8 総合・・8
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For All We Know
オランダのプログレメタルユニット、フォー・オール・ウイ・ノウの2011年作
WITHIN TEMPTATIONのギタリストRuud Jolieを中心にしたユニットで、
PAIN OF SALVATIONのクリストファー・ギルデンロウも参加している。
サウンドはメランコリックな情緒で聴かせる、モダン派のProgMetal作品で、
適度にテクニカルではあるが、むしろゆるやかで薄暗い世界観を描く感じで
随所にオルガンを含むプログレ的なシンセアレンジやテクニカルなギターフレーズもまじえつつ、
Porcupine TreeやMARILLIONなどをメタリックにしたような聴き心地も感じられる。
ゲストヴォーカルに、ジョン・ウェズリー、PAIN OF SALVATIONのダニエル・ギルデンロウ、
WITHIN TEMPTATIONのシャロン・デル・アデルTHRESHOLDのダミアン・ウィルソンらが参加。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・7 薄暗叙情度・・8 総合・・7.5
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Forgin'Fate 「Antares」
フランスのプログレメタル、フォージンフェイトの2005年作
ツインギターにシンセを含む6人編成で、美麗なシンセアレンジと伸びやかなヴォーカルを乗せ
テクニカルなアンサンブルで聴かせる、シンフォニックな雰囲気のProgMetalを聴かせる。
ゆるやかな叙情パートを含む緩急のある展開力は、コンセプトアルバム的なスケール感で
いくぶん唐突なB級らしいアレンジも含めて、なかなかドラマティックな作風で楽しめる。
ドラムも含めた音作りが軽いので重厚な説得力という点では物足りないのだが、プログレ寄りのシンセワークや
クサメロ感に包まれた叙情的なナンバーもあり、むしろヘヴィ過ぎないところがよいのかもしれない。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 重厚度・・7 総合・・7.5
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FORGOTTEN SUNS「SNOOZE」
ポルトガルのプログレメタルバンド、フォーゴットン・サンズの2nd。2004作
DREAM THEATERからの影響も感じさせながら、GENESISやMARILLIONなどに通じる
シンフォニックな叙情性もあるというサウンド。CD2枚組み、計80分以上におよぶ作品で、
さすがにややだれる部分もあるが、総じてドラマティックな雰囲気はなかなか耳に心地よい。
メロウなギターフレーズやときに繊細なタッチのピアノ、テクニカルなリズムなども楽しめて
プログレメタルのみならずシンフォニックロック好きのリスナーにもアピールするだろう。
シンフォニック度・・8 プログレメタル度・・7 壮大度・・8 総合・・7.5
FORGOTTEN SUNS「Innergy」
ポルトガルのプログレメタルバンド、フォーゴットン・サンズの3rd。2009年作
2作目となる今作は、硬質なギターリフにきらびやかなシンセワークを重ね、ハイトーンヴォーカルとともに重厚さ増したProgMetalを展開。
アンサンブルにはDREAM THEATER的な巧みな雰囲気もついてきて、よりドラマティックなサウンドに深化している。
10分超の大曲が3つもあり、どれもしっかりと構築されて、メロディや楽曲にこれだという強いインパクトはないが、成長を感じさせる出来となっている。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 壮大度・・8 総合・・8
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FRAGILE VASTNESS「EXCERPTS」
ギリシャのプログレメタルバンド、フラジャイル・ヴァーストネスの1st。2002作
女性KEYを含む5人編成。下地にDREAM THEATERがあるのは確かだが、
押しまくるだけでなく、しっとりとした大人の落ち着きがサウンドに感じられるのがポイント。
ギリシャのProgMetalということで珍しさが先に来るが、演奏、センスともに欧州のバンドと遜色はない。
一聴してガツンとくる部分はないが、クラシックの素養がうかがえるキーボードの優美さが心地よく、
今後はこうした部分を魅力的な楽曲に活かすアレンジを期待したい。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・7 楽曲・・7 総合・・7
FRAMESHIFT「UNWEAVING THE RAINBOW」
CHAINでも活躍するヘニング・ポウリーのプロジェクト、フレイムシフトの2003年作
ジェイムス・ラブリエ(DREAM THEATER)がヴォーカルで全面参加。
なかなか軽快なプログレメタルで、DTとはまた違った伸び伸びとしたラブリエの歌唱が光る。
曲のほうはテクニカルなプログレメタル曲から、メロディアスなものまで幅広く、
この手のプロジェクトとしてはバランス感のあるアルバムになっている。
ギター、ベース、シンセをこなす、ヘニング・ポウリーのマルチミュージシャンぶりも
作曲センスとともにその逸材ぶりを見せつけている。Fの美しいバラードなんかいいね。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 ラブリエ度・・9 総合・・8
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FRAMESHIFT「AN ABSENCE OF EMPATHY」
マルチミュージシャン、ヘニング・ポウリーによるプロジェクトバンド、フレイムシフトの2nd。2005年作。
1作目ではDTののジェイムス・ラブリエが歌っていたが、今作ではなんと、元SKID ROWのセバスチャン・バックが参加。
現代の病理、暴力衝動による事件などをテーマにしたシリアスな内容で、適度にテクニカルな展開力と、
キャッチーなハードロックが融合、前作で聴かれたエモーショナルな叙情よりも、ぐっとモダンなアレンジが耳につく。
ときおりヒステリックに歌うセバスチャンのパワフルな歌唱は、Prog Metalとはミスマッチにも思えるが、
そのあたりがむしろ新鮮に聴けなくもない。前作が好きだった方はやや物足りないかもしれないが、
大人の味わいのモダンなテクニカル・ハードロックとして聴けば、わりと楽しめる。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・7 モダン度・・8 総合・・7.5
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FREAKY JELLY 「REVERSE」
ブラジルのプログレメタル、フリーキー・ジェリーの2017年作
DREAM THEATER的なテクニカルなリズムに巧みなギターと優美なシンセワーク、ハイトーンのヴォーカルを乗せて
ドリムシを優雅にしたようなProgMetalを聴かせる。かつてのアンドレ・マトスにも通じる、エモーショナルなヴォーカルや
美麗なシンセアレンジは魅力的で、知的でメリハリのある楽曲の構築力には、マイナー臭さを感じさせない。
テクニカルなインストパートとキャッチーな歌パートのバランスも良く、正統派のプログメタルとしては出色の出来。
中盤の11分の大曲も緩急あるドラマティックな味わいだが、アルバム後半は4部構成、31分超の組曲になっていて、
テクニカルとヘヴィネス、キャッチーな軽やかさが交差しながら巧みに構築されてゆく。全69分の力作だ。
ドラマティック度・8 テクニカル度・8 優雅度・8 総合・8
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FUGHU 「HUMAN」
アルゼンチンのプログレメタル、フグの2013年作
2009年にデビュー、本作は2作目で、「The Tales」「The Facts」とそれぞれに分かれた2枚組のコンセプト作品。
メタリックなギターに朗々としたヴォーカル、うっすらとしたシンセを重ねた、モダンで重厚な味わいのサウンド。
情感的に歌い上げるシアトリカルなヴォーカルとともに、ドラマティックな濃密さに包まれながら、
一方では、エモーショナルロック的な叙情ナンバーもあったり、逆にカオティックなテクニカル性も覗かせて、
振り幅の大きな楽曲にはバンドとしての器の大きさを感じる。全体的にはスケールの大きなB級という印象なので、
もう少し分かりやすい盛り上がりや、魅力的なメロディのフックが増えれば、よいバンドになりそうに思う。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 重厚度・・8 総合・・7.5
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G
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GARDEN WALL 「ASSURDO」
イタリアのアヴァン・プログレ(メタル)、ガーデン・ウォールの2011年作
1993年にデビュー、8作目となる本作は、のっけからデジタルなリズムにがなり声ヴォーカルを乗せた、
エレクトロなアヴァンロックが広がってゆく。ヴァイオリンが鳴り響く妖しいチェンバーロック風味に
エスノビートやジャズ風味の優雅なアンサンブルも覗かせて、つかみどころのないキワモノ的センスに包まれる。
ときおり凶暴なギターが加わると、メタリックな激しさも匂わせるが、曲によってはゆったりとした叙情パートも多く、
しっとりとした女性声やオルガン、フルートを使ったオールドロック風味など、全体的には、むしろプログレ寄りの作風。
なにをやりたいのかよくわからないという、得体の知れない聴き心地が、67分も続くのがある意味凄い。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 アヴァンギャル度・・8 総合・・7.5
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Gates of Winter 「Lux Aeterna」
カナダのプログレメタル、ゲイツ・オブ・ウインターの2008年作
うっすらとしたシンセアレンジに適度にヘヴィなギターを乗せ、マイルドなヴォーカルで聴かせる、
シンフォニックな味わいに、デスヴォイスを加えた重厚な迫力もある、高品質なProgMetal。
随所に美麗なシンセに技巧的なギターワークを加えて、知的な構築力で包み込んだ楽曲は、
ほどよくテクニカルな感触で、16分を超える組曲なども、緩急ある展開力で描いてゆく。
音の重ねやメロディのフックも含めて、インストパートの充実という点では高いレベルで楽しめる。
重厚でシンフォニックなプログレメタルとしては、掘り出し物的な逸品であろう。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 構築センス・・8 総合・・8
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Ghost Ship Octavius 「Delirium」
アメリカのプログレメタル、ゴースト・シップ・オクタヴィアスの2019年作
元NEVERMOREのドラマーと、元GOD FORBIDのギタリストを中心に、2015年にデビュー、本作は2作目。
シンセとヴァイオリンによる優美なイントロから、流麗なギターにパワフルなヴォーカルを重ね、
モダンなヘヴィネスと巧みな展開力が同居した、スタイリッシュなプログレメタルを聴かせる。
メタルコアを通過したような激しさに、クラシカルなシンセアレンジによる叙情性が同居して、
重厚なサウンドの中に、ミステリアスなスケール感も垣間見せる。楽曲は4〜5分前後が主体で、
複雑すぎない知的なメタル感触には、NEVERMOREをメロディアスにしたようなところもある。
ドラマティック度・8 テクニカル度・7 重厚度・8 総合・8
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GLASSWORK 「FEAR AND TREMBLING」
スペインのプログレメタル、グラスワークの2018年作
シンセを含む4人編成で、メタリックなギターをテクニカルなリズムに待載せた乗せたモダンな硬質感と
オルガンなどを含むシンセに、フルートが鳴り響くというプログレ的なアプローチが個性的だ。
インストパートが主体ながら、ドラムを兼任するヴォーカルがマイルドな歌声を乗せ、ときおり聴かせる
ギターの叙情的なメロディも悪くない。全体的にはテクニカルな展開力や意外性というのは希薄で、
わりとゆったりとした聴き心地。スタイリッシュな感触に、ヴィーテージなハードロック風味が同居するところは
なかなか良い感じなのだが、突き抜けるようなドラマ性や魅力的な展開がもう少し欲しいか。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・7 スタイリッシュ度・・8 総合・・7.5
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GORDIAN KNOT「EMERGEMT」
CYNICのショーン・マローンを中心としたユニット、ゴーディアン・ノットの2nd。
自身で本も書き、大学で音楽理論についての教鞭もとるという、学者肌のミュージシャンである彼が、
FATES WARNINGやDREAM THEATERのメンバーとも交流があるというのは、自然なことのようにも思える。
1stを聴いたときにもサウンドの難解さに舌を巻いたが、本作はさらにぐっと力の抜けた、一聴するとメタルとは程遠い音になった。
今回は、ジョン・マイアングは不参加のようだが、その代わり、スティーブ・ハケット、ビル・ブラッフォード
といった大物がゲスト参加しているのも見逃せない。サウンドには媚がなく、ぱっと聴きには地味にも思えるが、
インプロ的なグルーブ感をかもし出しつつ、リズムアレンジにはPLANET Xあたりを思わせる、
探求的なアプローチを感じさせ、プログレッシブ・ジャズロック的なテイストで演奏を楽しむことができる。
マローンのベースはもちろん、自身が弾くスティックやキーボードの音色も美しい。
メタル度・・6 プログレ度・・8 アンサンブル度・・9 総合・・8
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GLORY HUNTER「ULISSES DAY TWO」
イタリアのプログレメタルバンド、グローリー・ハンターの1996年作
シンセを含む5人組で、じっくりとメロディを聴かせるゆるやかなProgMetal。
哀愁ただようメロディと、穏やかな知性を感じさせるセンスある楽曲アレンジ、
決してテクニックに走りすぎないところにこそ、このバンドの魅力がある。
ときにメロディアスハード的な耳触りの良さと、クールな構築力を両立させた
うるさ過ぎない大人のプログレメタルサウンドだ。これは隠れた好アルバム。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・7 叙情センス度・・8 総合・・8
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The Great Discord 「Duende」
スウェーデンのプログレメタル、グレート・ディスコードの2015年作
女性Voにツインギターを含む5人編成で、テクニカルでモダンなヘヴィネスと硬質感、
女性ヴォーカルの歌声を乗せて、ブラストを含む激しいリズム展開で聴かせるサウンド。
ジャケのようなダークな雰囲気と浮遊感ある叙情性も覗かせつつ、メタリックな激しさとのメリハリが
バランスよく配置されていて、北欧らしいメランコリックな味わいもなかなかよろしい。
ソフィア嬢の歌声にはどこか醒めたような冷たさがあるのもサウンドによくマッチしている。
女性声のモダンProgMetalというのはあまりなかった路線なので、これからも期待したいバンドです。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8
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THE GREAT DISCORD 「THE RABBIT HOLE」
スウェーデンのゴシック・プログレメタル、グレート・ディスコードの2017年作
女性Voにツインギターを含む5人編成で、前作はテクニカルかつモダンな好作品であったが、
続く本作は3パートに分かれたコンセプト的なアルバムで、適度にモダンなヘヴィネスと
ハスキーな女性ヴォーカルの歌声を乗せ、翳りを帯びたゴシックロック風味で始まりつつ、
アグレッシブな迫力やときなテクニカルな展開も盛り込んだ、スリリングなサウンドを聴かせる。
前作に比べるとダークなゴシックヘヴィロック調が強まり、全体的にはProgMetal的な感触は薄まったが、
ソフィア嬢改め、フィア嬢の歌声には中性的な妖しい雰囲気があって、この路線にもマッチしている。
ドラマティック・・7 テクニカル度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8
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H
Haken「Aquarius」
イギリスのハードプログレバンド、ヘイケンの2010年作
英国からハードシンフォニックの大型新人が登場、ツインギターにツインシンセの6人組で
シンフォニックなシンセワークと、ハードめのギターによる厚みのあるサウンドで、
ドラマティックな壮大さを聴かせる。一方ではとぼけた味わいの展開の妙も取り入れていて、
ヘヴィ・チェンバー的な味わいもあってなかなか面白い。メタリックな重厚さと知的なセンス、
ときにDREAM THEATER的なドラマ性も感じさせる。これは驚愕の新人が現れた。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・8 壮大度・・8 総合・・8
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HAKEN「VISIONS」
イギリスのハードプログレバンド、ヘイケンの2011年作
デビュー作にして新時代のハードシンフォニックの傑作と話題となったこのバンド、
本作も適度にヘヴィなギターワークと、メロディックな叙情性で構築される、
絶品のサウンドが楽しめる。プログレメタル的でもあるインストパートでの展開美は
テクニカルな要素とともに、いかにもプログレ的なシンセアレンジが融合され、
クールでありつつも古き良さもあるという感触が面白い。センスの良さという点では
The TANGENTにもすでに匹敵するだろう。ラストは22分の大曲も圧巻だ。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・8 楽曲センス度・・9 総合・・8
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HAKEN 「The Mountain」
イギリスのハードプログレバンド、ヘイケンの2013年作
過去2作もかなりの出来であったが、3作目となる本作はやわらかなヴォーカル曲で幕を開け、
美しいシンセワークに導かれて、適度なハードさとともにProgMetal的なテクニカルな構築力と、
キャッチーな軽快さを含んだサウンドが広がってゆく。そのアレンジセンスはやはり抜群だ。
メリハリのあるドラマティックな展開美とコンセプト的な壮大さに包まれたサウンドは、
あくまでメロディアスな聴き心地で、ときにGENTLE GIANTばりの遊び心も含んだ、
素晴らしい仕上がりには脱帽。シンフォニック、プログレ、ProgMetalと、どの耳でも楽しめる傑作。
ドラマティック度・・9 プログレ度・・9 楽曲センス・・9 総合・・8.5
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HAKEN 「Restoration」
イギリスのハードプログレバンド、ヘイケンの2014年作
初期のデモ音源の再録を含む、全3曲入りのミニアルバム。20分近い大曲を含む34分弱の内容で
テクニカルな展開力と適度にモダンなハードさを含んだ、ProgMetal感触の強いサウンドを聴かせる。
GENTLE GIANTルーツの軽妙な変拍子入りアンサンブルを、時代的なハードプログレに仕立てたという1曲目から、
2曲目になるとポストプログレ的な薄暗い叙情性も垣間見せる。目玉である20分の大曲にはマイク・ポートノイが参加していて、
古き良きプログレ/シンフォニックロック性を感じさせるキャッチーな質感とともに、ダイナミックな展開で描かれる、
TRANSATLANTICばりの優雅なスケール感が見事。古さと新しさを併せ持つこのバンドのセンスが再確認できる作品だ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 ハイブリッ度・・8 総合・・8
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HAKEN 「Affinity」
イギリスのモダンプログレバンド、ヘイケンの2016年作
2010年にデビュー、メタリックでハード感触と知的なテクニカル性にシンフォニックロックを融合させた
新時代のハイブリッド・プログレバンドとして注目を浴びる。フルアルバムとしたは4作目となる本作は、
80年代のコンピュータを思わせるシンプルなデザインに包まれているが、サウンドの方は適度なハードさに
Riversideあたりに通じるクールな構築センスと薄暗い繊細な叙情が交差する、モダンプログレとなっている。
スティーヴン・ウィルソンなどのポストプログレと、FROST*のようなキャッチーな展開力を合わせたというべきか、
ProgMetal的にも楽しめるハードさもありつつ、ときにメロウな耳心地と、しっかりとプログレらしさも感じさせるという、
心憎いバランス感覚である。ダイナミックな展開力を聴かせる15分の大曲もさすがというところ。文句なしの傑作だ。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 ハイブリッ度・・9 総合・・8.5
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Haken 「Vector」
イギリスのプログレメタル、ヘイケンの2018年作
2010年にデビュー、そのスタイリッシュなサウンドで、いまやモダンプログレの旗手というべき存在。
5作目となる本作は、美麗でミステリアスなイントロから、適度なヘヴィさを含んだテクニカル性に、
マイルドなヴォーカルを乗せたキャッチーなサウンドで、コンセプト的なドラマ性を描き出す。
DREAM THEATERにも通じる、ProgMetal的な感触に、きらびやかなシンセやモダンなアレンジを加えて、
エモーショナルな叙情性を表現する、スタイリッシュなメロディアス性というべきフックのある展開力もさすが。
今作ではインストパートでのテクニカルメタルとしての側面も強めていて、リズムのハネ方はDjent的でもある。
傑作だった前作に比べると、楽曲ごとの魅力では物足りなさもあるが、安定の実力を発揮した高品質作である。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 スタイリッシュ度・・9 総合・・8
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Haken 「Virus」
イギリスのモダンプログレ(メタル)、ヘイケンの2020年作
2010年にデビュー、6作目の本作はタイトルからして、まさにコロナ禍である年を思わせるが、
のっけから硬質なギターリフを乗せた、モダンなテクニカルメタルの感触を強めたような聴き心地。
エレクトロなシンセアレンジにマイルドなヴォーカルで聴かせる、ハードなポストプログレという感触や、
Djent風のリズムチェンジなど、ボーダーレスの味わいは、単なるProgMetalという以上のセンスを感じさせ、
ダークで不穏な雰囲気から、ほどよくメロディックなギターも切り込んでくるという、絶妙のバランスも見事である。
5パートに分かれた19分の大曲では、エモーショナルな叙情性も覗かせつつ、起伏に富んだテクニカルな展開力で、
スケールの大きなスタイリッシュなハードプログレを構築する。ヘヴィ過ぎずエモ過ぎない、クールでハイセンスな作品。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 スタイリッシュ度・・9 総合・・8
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HAKEN 「Fauna」
イギリスのプログレメタル、ヘイケンの2023年作
2010年にデビューし、7作目となる。今作はのっけから硬質なギターでハードに幕を開けつつ、マイルドなヴォーカルにシンセも加え、
軽妙でテクニカルリズムとともに、モダンでキャッチーな新時代のProgMetalを描く。随所に流麗なギタープレイも織り込んで
曲によってはヘヴィなメタル感触や、Djent的なテクニカル性、エモーショナルな叙情も含ませて変幻自在の聴き心地である。
優雅なアレンジセンスと巧みな演奏による構築力という点では、Caligula's Horseと双璧と言えるかもしれない。
IT BITES風のメロディックな小曲から、11分の大曲では、GENTLE GIANT的なとぽけた感じも覗かせつつ、
DREAM THEATER以降のドラマティックなプログメタルへと展開。バンドとしての熟成を感じさせるハイセンスなアルバムだ。
ドラマティック度・8 テクニカル度・8 優雅度・8 総合・8
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Hammers of Misfortune「Bastard」
アメリカのプログレ風メタル、ハマーズ・オブ・ミスフォーチュンの1st。2001年作
女性ベース奏者を擁する4人組で、男女ヴォーカルの歌声で聴かせる、
古き良きテイストのサウンド。まだ後のアルバムほどにはProgMetal的な展開はないが、
随所に激しく疾走したり、アコースティカルな叙情パートを織り込むなど、
メリハリのある楽曲はすでに個性的。全14曲を3つのパートに分けて曲を連ねてゆく
知的な構成力も素晴らしい。ヘヴィすぎないアナログ的な質感も魅力的で
これもNWOTHMのひとつの形だろうか。土着的なエピックメタルとしても楽しめる力作。
ドラマティック度・・8 エピック度・・8 古き良き度・・8 総合・・8
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Hammers of Misfortune「August Engine」
ハマーズ・オブ・ミスフォーチュンの2nd。2003年作
本作から女性オルガン/ピアノ奏者が加わり、音の厚みが増すと同時に、
そのダイナミックな展開力にもさらに磨きがかかってきている。男女ヴォーカルの歌声と、
ツインギターの古き良き正統派メタルの質感に加え、ProgMetal的なリズムを含ませつつ
メリハリの効いたアレンジ力で知的な構築センスを聴かせる。前作のエピックな感じは薄れたが、
ストーナー的でもあるアナログ感は強まった印象だ。プログレッシブなオールドメタルというべきか。
ドラマティック度・・8 知的アレンジ度・・8 古き良き度・・8 総合・・8
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Hammers of Misfortune 「Locust Years」
アメリカのプログレッシブ・メタル、ハマーズ・オブ・ミスフォーチュンの3rd。2006年作
女性鍵盤奏者に、女性ヴォーカル&ベースを擁する5人組で
ピアノやオルガンの音色を含む70年代プログレ&ハードロック風味に
ProgMetal的な展開力を含んだ楽曲で聴かせるという、なかなか個性的な作風。
レトロなオルガンが鳴るアナログ感を漂わせつつ、男女ヴォーカルの歌声で
描かれるサウンドは、メタル化したPROCOL HARUMというような雰囲気もある。
女性ヴォーカルと優雅なピアノの音色でしっとりと聴かせる部分もよろしい。
メロディアス度・・8 ProgMetal度・・7 古き良き度・・8 総合・・8
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Hammers of Misfortune「Fields/Church of Broken Glass」
ハマーズ・オブ・ミスフォーチュンの4th、5thのカップリング。2008年作
女性ベース、ギターの片割れが抜け、代わりに男女ヴォーカルとベースが加入し、
6人編成となった。4thはのっけから15分の組曲で、オルガンの音色が鳴り響く、
まるで古き良きプログレの雰囲気で始まりつつ、フルートの音色なども含みながら
適度なハードさで展開してゆく。疾走感よりもゆったりとした70年代ロックの聴き心地が強く、
メタルというよりはむしろ、オルガン入りのプログレッシブなサイケハードというような1枚だ。
5thも同路線であるが、女性ヴォーカルの歌うパートが増えて、叙情的な部分が増した。
ミステリアスな雰囲気も感じさせる10分の大曲などは、妖しげなドゥームサイケのようで、
しっとりとしたピアノやオルガンの音色が美しい。プログレリスナー向きの作品だろう。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 古き良き度・・8 総合・・8
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Hammers of Misfortune「17th Street」
アメリカのプログレッシブ・メタル、ハマーズ・オブ・ミスフォーチュンの2011年作
オルガン鳴り響く70年代風味のハードロック色に、男女ヴォーカルの歌声で
ProgMetal的な展開力も見せつけるサウンドは、さらにダイナミックになっている。
古き良きヘヴィメタルの感触とレトロなヴィンデージ感覚が自然に融合されており、
本作ではギターのメロディックなフレージングが随所に効果的に聴かれ、
やわらかなシンセワークとのコントラストを描いている。メタルとしてのヘヴィさもちゃんとあり、
まるでPROCOL HARUMとMOTORHEADが一緒にバンドをやっているように聴こえたりもする。
ドラマティック度・・8 古き良き度・・8 構築センス・・8 総合・・8
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HAMMERS OF MISFORTUNE 「DEAD REVOLUTION」
アメリカのサイケメタル、ハマーズ・オブ・ミスフォーチュンの2016年作
2001年にデビュー、本作は5年ぶりとなる7作目。なにやら怪しげなジャケが目を引くが、
サウンドの方は、1曲目からドコドコのドラムにオールドメタルなギターリフを乗せた、
80年代風味のNWOBHM的でもある聴き心地に、サイケ的な浮遊感が合わさった感触。
オルガンが鳴り響き、パワフル過ぎない男性ヴォーカルに女性コーラスが絡み、
サイケでドゥーム感のあるエピックメタルというような、なかなか不思議な味わいだ。
前作までのプログレ的な要素は薄まったが、代わりに確信犯的なオールドスタイルのメタル色を強め、
このカルトなアナログ感に溢れた作風を楽しめる方には、とても魅力的なバンドとなるに違いない。
ドラマティック度・・7 古き良きメタル度・・9 サイケでエピック度・・8 総合・・8
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Hammers of Misfortune「Overtaker」
アメリカのサイケ・プログレメタル、ハマーズ・オブ・ミスフォーチュンの2022年作
2001年にデビュー、本作は6年ぶりの7作目となる。スラッシーな激しさにオルガンが鳴り響き、女性ヴォーカルの歌声と共に
いつになくアグレッシブなサウンドを展開。ストリングスよるシンフォニックなアレンジが怪しいスケール感を描き出しつつ、
いくぶんこもり気味の音質も含めて、確信犯的な80年代風のアナログ感にも包まれる。浮遊感ある女性声と激しい疾走感で、
いわばスラッシーなサイケメタルというべきか、型にとらわれない自由さがこのバンドの強みだろう。楽曲自体は3〜5分前後と、
わりと短めなのだが、脳内のインパクトはかなりのもの。得体の知れない音楽を楽しめる方にはぜひお薦めしたい。
ドラマティック度・7 サイケスラッシュ度・8 怪しさ度・8 総合・8
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HANNAH 「A Life In Rock Minor」
スペインのプログレメタル、ハンナの2008年作
シンセを含む5人編成で、シンフォニックなアレンジとテクニカルな展開力に、
キャッチーなメロディアス性に包まれたプログレメタルサウンド。唐突なリズムチェンジなども含みつつ、
オルガンやムーグなどを含むシンセとメロディアスハード寄りのギターが爽快な聴き心地。
ヴォーカルはややスペインなまりの英語で、いくぶん辺境感をかもしだしていているが、
楽曲はあくまでキャッチーで、プログレ寄りのシンセワークがとてもいい感じである。
メタル過ぎない耳心地のよさと、テクニカルすぎない抜けの良さがよいバランスで、
あるいは、A.C.Tなどにも通じる、プログレ・ハードロックとしても楽しめる好作品だ。
メロディック度・・8 テクニカル度・・7 キャッチー度・・8 総合・・7.5
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Headspace「I Am Anonymous」
イギリスのプログレメタルバンド、ヘッドスペースの2012年作
アダム・ウェイクマン、Thresholdのダミアン・ウィルソン、IT BITESのリー・ポメロイらによるバンドで、
適度なヘヴィさと展開美で聴かせる、ハードシンフォニックサウンド。モダンさのある薄暗い叙情は
ARENAなどにも通じるが、こちらはもっとProgMetal寄りの作風で、ドラマティックな重厚さが
持ち味になっている。アダムの父親譲りの華麗な鍵盤さばきや、RICK WAKEMANのツアーなどにも参加していた
ピート・リナルディのテクニカルなギターも随所に光っていて、実力あるヴォーカルの歌声とともに、
どっしりとした聴き応えがある。10分、15分という壮大な大曲を構築する力量もさすがの力作に仕上がっている。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 重厚度・・8 総合・・8
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HEART OF SUN
イタリアのプログレメタルバンド、ハート・オブ・サンの2007年作
ARKHE、TIME MACHINEといったバンドに参加していたメンバーらによるバンドで、
きらびやかなシンセワークを含む、近未来的なコンセプトのProgMetalをやっている。
適度にヘヴィなギターと切れ味のいいリズムでモダンな感触をかもしだしつつ、
表現力あるヴォーカルの歌声とともに、DREAM THEATER的でもある
ドラマティックなサウンドを聴かせてくれる。テクニカルさよりも世界観の構築に重きが置かれ、
じっくりとヴォーカルが歌い上げる部分などが印象的で、派手さよりもバランスの良さが光る。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・7 ドラマティック度・・8 総合・・8
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HELIZER「TALES FROM A DAMAGED MIND」
アルゼンチンのプログレメタルバンド、エリセルのアルバム。2000作
Keyを含む5人組で、DREAM THEATERに影響されたようなサウンド。
変拍子を用いたテクニカルな曲調と、ややナルシスティックなヴォーカルの歌唱、
疾走するメロスピ風の部分や重厚さに欠ける点も含めて
どこかイタリアのマイナー系ProgMetalバンドなどを思わせる。
曲によってはスペイン語で歌ったり、やや唐突な曲展開もあったりと、
なかなか面白い部分もあるのだが、個性の点ではやはり新鮮味は薄い。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・7 楽曲・・7 総合・・7.5
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HELREID「Memoires」
イタリアのプログレメタルバンド、ヘルレイドの1997年作
シンセを含む5人編成で、美しいシンセアレンジに、ハイトーンヴォーカルを乗せ、
リズムチェンジを含む起伏のある展開力で聴かせる、メロディアスなProgMetalサウンド。
重厚過ぎない適度なヘナチョコ感覚が、イタリアのバンドらしいやわらかな叙情にもなっていて、
クサメロ気味の耳心地が悪くない。10分を超える大曲にしても、盛り上がりきらないマイナー臭さを漂わせる。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・7 クサメロ度・・8 総合・・7
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HELREID「FINGERPRINTS OF THE GODS」
イタリアのプログレメタルバンド、ヘルレイドの2nd。2001年作
CD2枚組なのだが、1枚目が3曲、計20分ちょっと。2枚目も3曲、20分という…わざわざ2枚に分ける意味があるのかが不明。
音の方はシンセ入り、変拍子をところどころに使ったシンフォニックかつプログレ的なもので展開も多く疾走パートもあって、
なかなか頑張っている。同郷のBLACK JESTERあたりにも通じるB級臭さとメロディにはやわらかみが感じられ、
聴いていて心地よい部分もある。とくに10分台の大曲にはシンフォニックな要素が強い。
シンフォニック度・・7 プログレ度・・7 クサメロ度・・8 総合・・7
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Hemina「Synthetic」
オーストラリアのプログレメタル、ヘミナの2012年作
ツインギターにシンセ、女性ベーシストを含む5人編成で、美しいシンセを盛り込んだ幻想的な構築美とともに、
シンフォニックに聴かせるProgMetal。ツインギターの奏でるメロディックなギターフレーズも耳心地がよく、
パワフルでないヴォーカルの歌声は、むしろエモのような叙情性もかもしだしている。
いくぶん煮え切らない楽曲の盛り上がりなど、どことなくひと昔前のバンドのような
垢抜けなさもあって、その微妙さも魅力といえば魅力になっている気もする。
10分超の大曲が3曲もあり、中盤はややタダレるのだが、充分にセンスは感じる力作だ。
ドラマティック度・・8 シンフォニック度・・8 構築度・・8 総合・・7.5
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Hemina 「Nebulae」
オーストラリアのプログレメタル、ヘミナの2014年作
シンセに女性ベーシストを含む編成で、全員がヴォーカル&コーラスをこなすというバンド。
美しいシンセアレンジに、Djent的でもあるモダンなテクニカル性と男女ヴォーカルを乗せ、
キャッチーなメロディアス性とともに構築されるサウンドは、スタイリッシュなセンスの良さを感じさせる。
モダンな軽妙さの一方で、ムーグやオルガンなどのプログレ的なシンセワークが随所に効いていて、
欧米のバンドなどに比べると、どこかミテスリアスな独特の浮遊感を漂わせる。ラストの11分の大曲を含めて、
メリハリに富んだドラマティックな展開力と、メロディックな叙情性をセンス良く仕上げた傑作だ。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 モダン度・・8 総合・・8
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Henning Pauly 「Babysteps」
アメリカのミュージシャン、ヘニング・ポウリーの2006年作
CHAINやFRAMSHIFTなどで知られるミュージシャンで、本作は実話に基づいたコンセプト作品。
Trans-Siberian Orchestraのジョディ・アシュワース、DREAM THEATERのジェイムス・ラブリエ、
SAGAのマイケル・サドラーなどが参加、美しいシンセに適度にヘヴィでメロディックなギター、
ゲストによるヴォーカルを乗せて、テクニカルでキャッチーなProgMetalサウンドを構築する。
シンフォニックなアレンジを含んだ緩急ある展開力と、メタリック過ぎない優雅なセンスもさすがで、
実力あるヴォーカリストによる説得力ある歌声が、楽曲ごとのドラマを語るように彩ってゆく。
インストによる小曲や、キャッチーなプログレハードナンバーなども魅力的。全75分という力作です。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 優雅度・・8 総合・・8
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HEONIA 「Winsome Scar」
フランスのプログレメタル、ヘオニアの2010年作
女性Voにシンセを含む5人編成で、サウンドは適度なヘヴィさと美しいシンセアレンジに
浮遊感のある女性ヴォーカルを乗せたモダンな感触。楽曲はメロディックというよりは、
ゴシックメタル的な薄暗さもあり、むしろこの歌声なら、その方が似合いそうな気もする。
ときおり、女性声に男性デスヴォイスが絡むと、ますますゴシックっぽくなるという。
プログレメタルとしての魅力は正直微妙なところ。どっちつかずの方向性が残念だ。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・7 女性Vo度・・7 総合・・7
Hidden Lapse 「Redemption」
イタリアのプログレメタル、ヒドゥン・ラプスの2017年作
モダンなシンセによるイントロから、硬質でテクニカルなギターに伸びやかな女性ヴォーカルを乗せ、
優美なシンセアレンジを加えて、緩急ある展開力のスタイリッシュなProgMetalを聴かせる。
楽曲は3〜4分前後が主体とわりと短めで、ドラマティックな展開というよりは、優雅で軽やかな聴き心地。
メランコリックな味わいのナンバーでは、Alessia嬢の歌声が、The Gatheringのアネクばりの表現力で、
この路線での楽曲ももっと聴きたくなる。アルバムとしては、大曲がないので、全38分というのが少し物足りないか。
ドラマティック度・7 テクニカル度・8 女性Vo度・8 総合・7.5
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Hidden Lapse 「Butterflies」
イタリアのシンフォニック・プログレメタル、ヒドゥン・ラプスの2019年作
2017年にデビュー、2作目となる本作はのっけからメロパワ風の疾走感で始まり、硬質なギターリフに優美なシンセと伸びやかな女性ヴォーカルを乗せ、シンフォニックな味わいのプログレメタルを聴かせる。
テクニカルなモダンさに、曲によってはゴシック寄りの倦怠の叙情も覗かせるなど、激しさと優雅が同居した現在形のシンフォニックメタルとしても楽しめる。
楽曲は4〜5分前後で、ドラマティックな大曲などが欲しい気もするが、エモーショナルな表現力のある女性声とともに、知的なスタイリッシュ性ときらびやかなシンセアレンジが同居した、美麗派ProgMetalの好作品です。
シンフォニック度・8 スタイリッシュ度・8 女性Vo度・7 総合・7.5
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HOURGLASS 「Subconscious」
アメリカのプログレメタル、アワーグラスの2004年作
シンセを含む5人編成で、きらびやかなシンセアレンジとともにメロディックなギターと
マイルドなヴォーカルを乗せて、テクニカルな展開力で聴かせる高品質なサウンド。
のっけから17分の大曲で、その後も20分、32分という組曲を構築する力量もあり、
メロディのキャッチーな感触と、フュージョン・メタル的な軽やかさが同居した演奏は
遊び心も含んだクールな耳心地で、いうなれば、DREAM THEATERとPLANET Xの中間というところ。
テクニカル性とメロディセンスが巧みに融合した、これはなかなかの傑作である。
メロディック度・・8 テクニカル度・・8 キャッチー度・・8 総合・・8
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HOURGLASS「Oblivious to the Obvious」
アメリカのプログレメタル、アワーグラスの2009年作
シンセを含む5人編成で、適度にヘヴィなギターと変拍子を含んだリズムアレンジ、
ハイトーンヴォーカルとともに聴かせる、テクニカル志向のアンサンブル。
コンセプト作らしく、10分、20分という大曲をメインに、ドラマティックな流れを感じさせつつ
メタルフュージョン的な軽妙さやじっくりと聴かせるバラードなどもあり、なかなか起伏に富んでいる。
途中いくぶん長尺感も感じるのだが、Disc2のラストは30分の組曲で大変な力作であるのは違いない。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・8 曲が長い度・・9 総合・・7.5
HUBI MEISEL「EMOCEAN」
ドイツのプログレメタルバンド、DREAMSCAPEのVo、フービ・マイゼルのソロアルバム。2004作
DREAMSCAPE自体、マイナーなバンドであるが、そのVoのソロ作というのが日本盤出して
はたしてどのくらい売れるものなのだろう?…という疑問はまあさておき、
内容の方は、3部作に分かれた壮大風のコンセプト作で、まあプログレメタルといってもよい音だ。
さりとて、ヴォーカリストのソロ作であるので、歌ものでもあり、適度にテクニカルでもあるという、
言ってしまえばやや中途半端なサウンドでメロハーとしてはメロディが弱く、プログレとしては展開が物足りない。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・7 どっちつかず度・・8 総合・・7
I
ICE AGE「The Great Divide」
アメリカのプログレメタルバンド、アイス・エイジの1st。1999年作
とことん変拍子にこだわったリズムと、シンセ入りのシンフォニックさが融合したProgMetalで、
「IMAGES AND WORDS」の頃のDREAM THEATERをよりメロディアスにしたという傑作。
演奏力も抜群で、テクニカルなリズムに乗るいかにもプログレ的なシンセワークと
キャッチーな歌メロで、10分以上の大曲も濃密かつ爽やかにに聴かせてくれる。
これはまさにProgMetalマニアのための作品である。より整合感を高めた次作も必聴だ。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・8 変拍子度・・9 総合・・8.5
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ICE AGE「LIBERATION」
アメリカのプログレメタルバンド、アイスエイジの2nd。2001年作
前作「The Great Divide」は、数あるDREAM THEATERフォロワーの中では出色の出来であったが、
2作目の今作も期待にたがわぬ素晴らしい出来だ。変拍子リズムにこだわりながら、キャッチ−でメロディアスという
抜群のセンスは変わらず。今回はより曲ごとに曲調を変え、メロディアスなパートはより聴きやすく、
テクニカルなパートは変拍子バリバリというこの手のプログレメタル好きならたまらない内容に仕上がっている。
やはり特筆すべきはその独特のリズム感覚で、「なんでこんなリズムを?」という…
意表をつくようなアレンジが随所にちりばめられ、思わずにやりとさせられる。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・8 楽曲アレンジ・・9 総合・・8.5
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ICEFISH 「HUMAN HARDWARE」
イタリアのプログレメタル、アイスフィッシュの2017年作
ドラムにヴァージル・ドナティ、ギターにマルコ・スフォーリ(PFM)、ベース&ヴォーカルにアンドレア・カサリ(ASTRA)
シンセにはアレックス・アルジェントという名うてのメンバー参加したユニットで、硬質なギターにシンセを重ね、
エモーショナルなヴォーカルを乗せた、ほどよくキャッチーでスタイリッシュなProgMetalを聴かせる。
ドナーティの叩き出すテクニカルなドラムに、アルジェントのきらびやかなシンセワークも随所に輝いていて、
DREAM THEATERにも通じる優雅な技巧性を描きつつ、ヴォーカルをメインにしたメロディックな聴きやすさは、
よりモダンでキャッチーな作風といえる。楽曲自体は4〜5分前後とわりとシンプルであるが、流麗なギターを乗せた
インストパートなどはなかなか魅力的なので、次作があれば大曲でのテクニカルな構築力などにも期待したい。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・8 スタイリッシュ度・・8 総合・・8
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Illusion Suite「Final Hour」
ノルウェーのプログレメタルバンド、イリュージョン・スイートの2009年作
ときにスクリームヴォイスも含んだ激しさと、メロウかつ叙情的なギターフレーズ、
知的な展開美の楽曲には北欧らしいキャッチーなメロディも聴かせる高品質なサウンド。
プログレパワー的な重厚さと、美しいシンセアレンジも含めてドラマティックな作風は聴き応え充分だ。
DREAM THEATER風味もいくぶんあるが、よりモダンにアップデートされた新時代のProgMetalを感じさせる。
聴かせ所でのメロディの盛り上げ方と、緩急のつけられた展開力はなかなか見事だ。曲間の日本語の語りや
女性コーラスの使い方などにもセンスを感じさせる。北欧ProgMetalの名作のひとつというべき出来である。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・8 ドラマティック度・・9 総合・・8.5
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Illusion Suite「Iron Cemetry」
ノルウェーのプログレメタル、イリュージョン・スイートの2013年作
前作も見事な傑作であったが、本作も適度にモダンなフレーバーをまじえながら
メロディックかつテクニカルなProgMetalを聴かせてくれる。変拍子をふくんだリズムチェンジと
ハードな硬質感を含んだギターに、シンセアレンジが合わさり、厚みのある音を作りながら
知的に展開してゆく楽曲は、なかなかメリハリに富んでいてスリリングだ。
重厚なバックに比べてハイトーンのヴォーカルがいくぶん弱い気もするが、
マイルドな爽快さを感じさせる曲にはよく合っている。キャッチーな聴き心地と
モダンなテクニカル性をバランスよく両立させた、これぞ新時代ProgMetalの傑作です。
メロディック度・・8 テクニカル度・・8 構築センス・・8 総合・・8
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Imagery 「The Inner Journey」
ブラジルのプログレメタル、イマジェリーの2013年作
ギター&ヴォーカル、ベース、ドラムというトリオ編成のバンドで、
アナログ感を漂わせた70年代風の一風変わったプログレ・ハードロック。
弾きまくりのギターやリズム的なテクニカルさはProgMetalを通過した感触で、
いうなれば、ヴィンテージな音でプログレメタルをやっているという感じが面白い。
インスト主体の作風ながら、ときおり歌も入ったり、オルガンやピアノが鳴り響く優雅さと
エキセントリックなセンスが混在したような作風だ。変わったバンドが好きな方はどうぞ。
ドラマティック度・・7 ヴィンテージ度・・8 奇妙なセンス度・・8 総合・・8
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INFINITE SPECTRUM 「Misguided」
アメリカのプログレメタル、インフィニット・スペクトラムの2012年作
タロットカードをモチーフにしたコンセプト作で、ヴァイオリンによる優雅なイントロから美麗なシンセとともに、
シンフォニックなサウンドが広がってゆく。表現力あるヴォーカルがシアトリカルなドラマ性をかもしだし、
ギターとシンセを重ねた重厚な味わいと緩急ある展開で、18分、14分という組曲を濃密に構築してゆく。
現時点では、DREAM THEATERを手本にしたようなスタイルなので、新鮮味というものはさほどないが、
ドラマティックに大曲を描こうとする意気込みは立派。ゲストによる女性ヴォーカルが参加したバラードナンバーなど、
このあたりの優雅な叙情性をもっと伸ばしてもらたい。ともかくプログレメタルらしい全79分という力作です。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 壮大度・・8 総合・・7.5
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INFINITE SPECTRUM 「HAUNTER OF THE DARK」
アメリカのプログレメタル、インフィニット・スペクトラムの2016年作
2作目の本作は、女性シンセ奏者を含む5人編成となった。H.P.ラブクラフトの小説を基にしたコンセプト作のようで、
美麗なシンセアレンジに、ハード過ぎないギターとマイルドなヴォーカルを乗せて薄暗い叙情に包まれた
シンフォニックなProgMetalを聴かせる。メタル的な激しさは控えめなので、オルガンを含むシンセワークとともに、
シンフォニック・ハード的な優美な聴き心地でも楽しめ、5パートに分かれた18分の大曲も、
テクニカル過ぎない展開美とともに、濃密なドラマを描くようにしてじっくりと構築される。
ここぞいう盛り上がりやフックのあるメロディがもう少しあればと思うが、なかなかスケールの大きな力作だ。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 壮大度・・8 総合・・7.5
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Inner Strength 「The Common Theme」
アメリカのプログレメタル、インナー・ストレングスの2019年作
1993年に唯一のアルバム「Shallow Reflections」を残して消えたバンドの発掘音源で、
1994、95年のカセットリリースのデモ音源と、2nd用に録音された1995〜96年の未発音源を収録。
ほどよくテクニカルなリズムに絡みつくようなギターリフと独特のハイトーンヴォーカルを乗せ、
PSYCHOTIC WALTZあたりを思わせる、いかにもマニア好みのProgMetalを聴かせる。
ミドルテンポの変則リズムとタメの効いたグルーヴィな浮遊感は、CONFESSORなどにも通じるだろう。
巧みなドラムや存在感あるベースをはじめ、演奏力もしっかりとしており、正規アルバムを聴きたかった。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・8 マニアック度・・9 総合・・7.5
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In Search For 「Faith」
ロシアのプログレメタル、イン・サーチ・フォーの2009年作
SF的なコンセプト作で、キャッチーなメロディで聴かせるプログレハード風味に、随所にプログレ的なシンセアレンジや、
流麗なギターワーク、そして知的な展開力とロシアらしい優雅なメロディを含んだ、なかなかメリハリに富んだ構成。
ヴォーカルも英語歌詞が中心なので、あまり辺境臭さは感じさせない。10分を超える大曲や、20分の組曲もあり、
女性ヴォーカルや男性グロウルなども顔を出して、語りを含んだSEなどとともに、シアトリカルで濃密な世界観を描いてゆく。
ロシア版AYREONというような雰囲気もある。全70分を超える壮大でドラマティックな力作です。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 壮大度・・8 総合・・7.5
IVANHOE 「Symbols Of Time」
ドイツのプログレメタル、アイバンホーの2nd。1995年作
適度なヘヴィさと変拍子を含んだテクニカルな構築力で聴かせるPogMetalで、
ハイトーンヴォーカルを乗せた聴き心地は、Queensryche+DREAM THEATERという感じか。
シンセによる美麗なアレンジを含む厚みのあるサウンドにキャッチーなメロディアス性と
知的な展開美とともに、EVELONのようなきらびやかなプログレハード風味も随所に含んでいる。
DTほどのスタイリッシュなセンスはないものの、その辺のB級バンド以上の実力を感じさせる力作だ。
メロディック度・・8 テクニカル度・・7 きらびやか度・・8 総合・・7.5
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IVANHOE「Walk in Mindfields」
ドイツのプログレメタルバンド、アイバンホーの4th。2007作
シンセを含む5人組で、これまでも日本盤も出ていたが、どこかマイナーなバンドという印象だった。
本作では、重厚かつダークな叙情を前に出したプログレパワー的な作風となり、
作品としての説得力がぐっと増している。ときおりテクニカルな切り返しを折り込みつつも、
メロディアスなギターとシンセによる緩急をつけた展開は、難解すぎずに楽しめ
いうなれば同郷のVANDEN PLASあたりにも通じるバランスの良さを感じさせる。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 重厚度・・8 総合・・8
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IVANHOE 「7 DAYS」
ドイツのプログレメタル、アイバンホーの2015年作
デビューは1994年というキャリアのあるバンドで、本作はおそらく7作目。
重厚なギターリフとシンセアレンジを乗せて、変則リズムを含んだ知的な展開力で
90年代DREAM THEATERをモダンに深化させたような正統派のProgMetalサウンドを聴かせる。
深みのあるヴォーカルの歌声と随所に聴かせるメロディックなギターフレーズもよろしく、
ドラマティックな叙情性を描き出すその世界観は、これまで以上に説得力をまとわせている。
同郷のVANDEN PLASやDREAMSCAPEなどにもひけをとらない重厚な力作です。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 重厚度・・8 総合・・8
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Ivory Gates「Shapes of Memory」
ブラジルのプログレメタルバンド、アイヴォリー・ゲイツの2002年作
黒人ドラマー入りの五人組でシンセはゲストという編成。8分、9分、12分という大作志向の
楽曲は適度にヘヴィなギターと、モダンで知的さを感じさせるアレンジで聴かせるProgMetal。
ヴォーカルの実力もまずまずで、ときに女性コーラスも入ってきてサウンドを彩っている。
変則リズムによるキメはFATES WARNING的でもあったりして、細かなアイディアも多く、
演奏力も充分あるので、テクニカルメタルが好きな方ならけっこう楽しめる内容だと思う。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・8 楽曲センス・・8 総合・・7.5
J
JAMES LaBRIE'S MULLMUZZLER「2」
DREAM THEATERのVo、ジェイムス・ラブリエのプロジェクト、マルマズラーの2nd。2001作
メンバーはラブリエの他、VAIで活躍するG、Drに、DALI'S DILEMMAのKey、
ゲストには、MAGELLANのトレント・ガードナーが参加。
楽曲はやはり歌もの中心だが、やはりDREAM THEATERを思わせる部分もあり、
ハードロック調のものからプログレメタル風のもの、叙情的なバラード曲まで色々。
個人的には、もう少しプログレ色が欲しいが、ラブリエのファンなら問題なく楽しめるだろう。
メロディアス度・・7 プログレ度・・7 ラブリエ度・・9 総合・・7.5
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JAMES LABRIE「ELEMENTS OF PERSUASION」
DREAM THEATERのVo、ジェイムス・ラブリエのソロ作。2005作
DT以外にもMULLMUZZLERやFLAMESHIFTなどでその歌声を聴かせてきたラブリエだが、
最近の好調ぶりを示すかのように、今回は1曲めからMETALLICAばりのヘヴィチューンが炸裂している。
ややモダンなアレンジのヘヴィロックや、ミドルテンポでダークめの曲調はむしろDTよりも重厚な雰囲気。
メンバーにはDALI's DILEMMAのKeyをはじめ、ややマイナーな人選に思えるが、
無名のイタリア人ギタリストMarco Sfogliのプレイは、なかなかのセンスを聴かせる。
ラブリエのVoも、ダークさとエモーショナルな表現力を併せて、ヘヴィな楽曲を見事に歌い上げている。
メロディアス度・・7 けっこうヘヴィ度・・8 けっこうダーク度・・8 総合・・7.5
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The Jelly Jam
Ty Tabor (King's X)、John Myung (Dream Theater)、Rod Morgenstein (Dixie Dregs)
というメンツによる、名前通りのジャムセッションバンド、ゼリー・ジャムの1st。2002作
このメンバーはPLATYPUSの延長と思われるが、デレク(KEY)がいない分サウンドがシンプルになっている。
やはり、タイ・テイバー/KINGS X色が強く、プログレというよりは力を抜いた浮遊感のあるサウンド。
皆が実力者なので演奏は上手く、中でもロッド・モーゲンスタインのタイトかつ手数の多いドラムは聴きどころ。
メロディアス度・・7 プログレ度・・7 演奏・・8 総合・・7.5
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The jelly jam「2」
Ty Tabor (King's X)、John Myung (Dream Theater)、Rod Morgenstein
(Dixie Dregs)
というメンツによる、名前通りのジャムセッションバンド、ゼリー・ジャムの2nd。2004作
前作同様にKINGS Xを思わせる、浮遊感のあるブルージーなプログレロックで、
3〜5分台の楽曲は、タイトル通りのジャムセッションの延長という雰囲気ながら、
技巧派揃いのメンバーの演奏はグルーブ感が抜群。分かりやすいメロディや
耳を引く展開というのはあまりなく、全体的にも玄人好みの渋めの音なので、
聴き手が楽器をたしなむ人間ならば充分楽しめるだろうが、そうではないと
ただの地味なサウンドに聴こえるかもしれない。1作目よりはまとまりがいいと思う。
メロディアス度・・7 楽曲・・7 演奏・・8 総合・・7.5
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JEREMY「LIVE」
韓国のシンフォニックメタルバンド「イェレミー」のライブアルバム。2枚組。
プログレ色はさほどなく、キーボードも意外と控えめ、普通の印象。
インペリテリ的な王道HRをメインに、韓国語のVoがさほど力まない歌をのせている。
たとえばN.EX.Tのようなポップさ、派手なプログレ的アレンジはなく、どちらかというと正統派のようだ。
ライブということだが、演奏力もまあ普通。韓国産高クオリティバンドということで非常に期待したが、
ネクストをはじめて聴いたときほどの感動はなかった。
メロディアス度・・7 プログレ度・・4 楽曲度・・7 総合・・7
JEREMY「OUT OF FEAR」
韓国のメロディック・メタルバンド、イェレミーの2nd。1999年作
このバンドは、おそらくDREAM THEATERやSYMPHONY Xなどを通過した世代だけあって、
楽曲にはリズム的なプログレアプローチや様式美的なギター、メロディを混在させた色が見える。
この2ndではVoが韓国語で歌っており、それが良い個性となっていて、メタル音像の中にも
曲によってはポップなキャッチーさが心地よく、アルバムのなかにいいバランスで混じっている。
キーボードのシンフォニックな味付けが素晴らしく、韓国という地域性を抜きにしてもクオリティは高い。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 キャッチー度・・8 総合・・8
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JEREMY「FLYNG OF EAGLE」
韓国のメロディアス・プログレメタルバンド、イェレミーの3rd。2000年作
アジアンな叙情性とキャッチーさに、様式美、さらにDREAM THEATER的な展開美などを融合させた
N.EX.T以来の韓国産高品質プログレメタルを構築するバンド。今作ではインストパートの壮大さを増し、
より音の厚みとダイナミックさをつけた充実作となった。そこに乗る韓国語の歌唱もなんともいえない情緒があり、
この爽快なポップ性ともいうべきメロディラインこそが彼らの生命線だと思う。
英語に置き換えられている国内盤より、ハングルで歌われている韓国盤がオススメだ。
メロディアス度・・8 プログレ・・7 爽快度・・8 総合・・8
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JEREMY「EXODUS PARTU」
韓国のプログレメタル、イェレミーの2001年作
5つのパートに分かれた25分に及ぶ組曲を収録したミニアルバムで
シンフォニックなスケールを感じさせるイントロから、ヘヴィなギターが加わり、
随所にProgMetal的なテクニカル性も含んだ、ドラマティックなサウンドが楽しめる。
オルガンやムーグなどを含んだシンセアレンジはときにプログレ的な香りもあって、
重厚なメタル感と美麗なシンフォニック性が融合した、クオリティの高い大曲作品だ。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・8 壮大度・・8 総合・・8
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JEREMY「EDGE ON THE HISTORY」
韓国のメロディアス・プログレメタルバンド、イェレミーの4th。2002作
今作も、録音、演奏ともに着実な成長の見える仕上がりとなっていて、
シンフォニックなキーボード(女性奏者)、メタリックなギターによる楽曲は、ドラマティックなメロディに加え
プログレ的展開美を持ち込んでおり、歌詞が英詞なので、とくに韓国産ということを意識せずに聴ける。
バラードにおけるメロディは、同郷の先輩N.EX.Tにも通じる聴きやすさがあり、とてもなごめるのだが、
個人的には英語よりも母国語(ハングル)での歌唱の方がバンドの個性を引き出すのではないかと思う。
キャッチーなメロディという点では、前作、前々作の韓国盤をまずお薦めしたい。
メロディアス度・・7 プログレ度・・7 韓国度・・7 総合・・7.5
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JEREMY「ACCESS ALL AREMS」
韓国のプログレメタルバンド、イェレミーのライブアルバム。2004作
楽曲、演奏力ともデビュー時からかなりのものを持っていたバンドなので、
ライブ演奏の方にも安定感があり、ときに変拍子をまじえ、ときに様式美的に
ときにキャッチーにと、見事に複雑な楽曲を再現している。
Voのハイトーンがややヨレ気味になるので、やはり英語曲よりも韓国語の歌唱の方が
しっくりといっている気がする。なんにしても、欧州のメロスピやDREAM THEATERあたりの
音楽性を巧みに取り入れながら、独自のメタルサウンドを再構築する手腕は見事だと思う。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 ライブ演奏・・8 総合・・8
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JEREMY「Trivial Life」
韓国のメロディアス・プログレメタルバンド、イェレミーの5th。2003作
今作も、プログレッシブな感覚をたっぷりと折り込んだ、メロディアスなメタルサウンドで、
アルバムとしてのクオリティは非常に高い。メロディの充実度も素晴らしく、テクニカルな変拍子とともに
歌メロのキャッチーさとネオクラ色もあるギターワーク、そしてキーボードの美しさも光っている。
ハングルによるバラードの泣きメロはかつてのN.EX.Tを思わせるほど美しい。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 楽曲・・8 総合・・8
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JEREMY「The 2nd Advent」
韓国のプログレメタルバンド、イェレミーの6th。2006作
クリスチャンバンドらしい、厳かなチャント的なイントロで幕をあげる今作も、
聴きやすいメロディとテクニカルな展開美にこだわった良質の作品だ。
DREAM THEATERなどからの影響を感じさせつつも、決して難解になることなく、
「弾きすぎない」バランスの取れた落ち着きが今回の音には感じ取れる。
プログレメタル的にはやや物足りないものの、普遍的なドラマティックさを追求したという印象だ。
ただし、彼らの場合、やはり英語の歌唱よりは、母国語のハングルにこそ持ち味があると思うのだが。
メロディアス度・・7 ドラマティック度・・8 プログレメタル度・・7 総合・・7.5
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Jeremy「Quo Vadis, Domine?」
韓国のプログレメタルバンド、イェレミーの7th。2008作
壮麗でシンフォニックなイントロから引き込まれるが、
ザクザクのギターで疾走を始めると、一気にメタリックなサウンドに。
ハングルによる歌唱はやはり彼らならではの持ち味だし、
ヘヴィさの中にも美しいパートを上手く盛り込んで聴かせるセンスもさすが。
ギターの泣きのフレーズやここぞというときの美しいシンセアレンジも効果的で、
メロディの充実という点では過去最高といっていいだろう。
ドラマティックな展開力とベテランらしい堂々とした自信が感じられる出来だ。
メロディアス度・・8 ドラマティック度・・8 楽曲アレンジ・・8 総合・・8
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Jezebel's Tower「Selling The Wind」
ドイツのプログレメタル、ジェゼベルズ・タワーの1999年作
確か1stの「Like Every Mother's Son」は日本盤が出ていたようにも思ったが、
日本での知名度はかなり低いバンドですね。サウンドはハイトーンヴォーカルの歌声と
シンセアレンジを含んで、ミドルテンポを主体に聴かせる適度にドラマティックなもの。
最近のバンドのようにテクニカルな要素は強くなく、一聴したときのインパクトはさほどないが、
古き良きHRの感触も覗かせるギターワークはセンスが良く、いま聴くと逆に渋い感じで楽しめる。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・7 古き良き度・・8 総合・・7.5
JOHN ARCH「A TWIST OF FATE」
アメリカのプログレメタルバンドFATES WARNINGの、ジョン・アーチのソロ作。2003作
FWの最高作は3rd「AWAKEN THE GUARDIAN」であると信じている私としては、
その3rdを最後に脱退したアーチの復活作がこうして聴けるのはとても嬉しいかぎり。
ギターにはFWのジム・マテオス、ドラムにはマイク・ポートノイが参加。全2曲のミニアルバムながら、
それぞれ12分、15分という大曲で、往年のFWを思わせる変則リズムに独特の節回しのハイトーンヴォーカルを乗せた、
まさに「あの頃の」フェイツ・ウォーニングを彷彿とさせるサウンド。2曲目のイントロなど意外にシンフォニック度が高く、
メロディアスな要素を適度に盛り込んだプログレメタルが楽しめる。往年のファンは必聴だ。
メロディアス度・・7 プログレ度・・8 FW度・・9 総合・・8
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ARCH/MATHEOS「Sympathetic Resonance」
元FATES WARNINGのジョン・アーチとジム・マテオスのユニット、アーチ/マテオスの2011年作
2003年のアーチ名義のミニアルバム「A TWIST OF FATE」はかつてのFWを思わせる濃密なサウンドで、
コアなファンは続編を期待していたはずだが、ここに待望のフルアルバムが完成。
アーチ&マテオスのFWからのコンピに、今作ではドラムにはボビー・ジャーゾンベクが参加、
独特の浮遊感あるヴォーカルと変則リズムを取り入れたテクニカルな楽曲は、
この二人でしか出せない個性であろう。10分超の曲が3曲と大作志向であるがまったく飽きない。
巧みなギターリフと甘すぎない叙情性とともに、テクニカルかつメロウに展開するサウンドはじつに通好みである。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 FW風浮遊感・・9 総合・・8
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Arch Matheos 「Winter Ethereal」
元FATES WARNINGのジョン・アーチとジム・マテオスのユニット、アーチ/マテオスの2019年作
2011年以来となるアルバムで、ボビー・ジャーヘゾンベクやCYNICのショーン・マローンなどがゲスト参加。
テクニカルなリズムに硬質なギターリフと独特のハイトーンヴォーカルを乗せ、いくぶんダークな浮遊感に包まれた
かつてのFWをよりスタイリッシュにしたというサウンドを聴かせる。ゆったりとした叙情性も随所に覗かせつつ、
全体的にはリフ主体のメタリックな無機質感が強めで、あえてメロディを控えめにした硬派の作風にも思えるが、
ジョン・アーチの存在感ある歌いまわしはより際立っていて、歌をメインにした叙情ナンバーなどもいい感じ。
8〜9分という長めの楽曲も、緩急ある構築力で聴かせてくれる。ラストの13分の大曲も含めてさすがの出来だ。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 アーチ度・・9 総合・・8
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JOHN PETRUCCI 「TERMINAL VELOCITY」
Dream Theaterのギリスト、ジョン・ペトルーシの2020年作
ソロとしては2005年以来となる2作目で、ドラムにマイク・ポートノイ、ベースにデイヴ・ラルー(元Dixie Dregs、Planet X)が参加、ポートノイの叩く巧みなドラムに、メロディックで技巧的なギタープレイで、随所にProgMetal的なキメを含んだインストを展開する。
聴きやすいノリのキャッチーなメロディや正統派のリフも含んだペトルーシのプレイは、テクニカルではあるが嫌味がなく、軽やかなポートノイのドラムによくマッチしていて、かつてのDTを想起させるナンバーも良い感じ。
楽曲5〜7分前後と、この手のインストにしては長めであるが、技巧に走り過ぎないロックギターが爽快な味わいで、ドライブのお供などにもうってつけですな。
メロディック度・8 テクニカル度・8 優雅度・9 総合・8
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Jordan Rudess「Listen」
DREAM THEATERのシンセ奏者、ジョーダン・ルーデスのソロ。1993年作
DT加入前のソロ1作目で、メタル色はほとんどなく、歌入りのフュージョン・ポップという曲から始まり、
その後も男女ヴォーカルの歌声で聴かせるやわらかでキャッチーな感触が前に出ている。
もちろん随所にテクニカルな鍵盤さばきもあり、シンフォニックな優雅さはプログレリスナーにも対応。
全体的には肩の力の抜けた優しい仕上がりで、クラシックやジャズの素養を取り込んだ好作品である。
メロディック度・・8 テクニカル度・・7 キーボー度・・8 総合・・8
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JORDAN RUDESS「FEEDING THE WHEEL」
DREAM THEATERのシンセ奏者、ジョーダン・ルーデスのソロ。2001年作
ソロとしてはこれが3作目であるが、過去の作品の中ではもっともプログレしているアルバムといってよいだろう。
参加ミュージシャンは、ジョン・ペトルーシ(DREAM THEATER)、テリー・ボジオ、ビリー・シーン、
スティーブ・モーズという、いずれも名うてのつわものたち。当然ながらその演奏は抜群だ。
全編インストのテクニカルなプログレアルバムであるが、リキッドテンションとの違いを挙げるなら、
即興ではなく構築性としっかりとした音楽理論に裏打ちされたルーデスの作曲能力、そして、
彼のメロディセンスが最大限に生かされている点。楽曲は技巧性と叙情性をかねそろえ、
ELPなどにも影響を受けたというとおり、ルーデスのキーボードは70年代プログレ的なものから、
ジャズ色あるピアノタッチまで変幻自在。そんな中で気持ちよいメロディを奏でるペトルーシのギターも
また見事。作りこまれ、計算されつくした、決して自己満足に終わらない、優れたソロアルバムである。。
メロディアス度・・8 プログレ度・・9 キーボー度・・10 総合・・8.5
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JODAN RUDESS「Rhythm of Time」
DREAM THEATERのシンセ奏者、ジョーダン・ルーデスのソロ。2004年作
ソロ名義としては4作目となり、今作もプログレッシブで超絶技巧たっぷりの力作だ。
盟友ロッド・モーゲンスタインをドラムに迎え、イスラエル出身の新鋭ギタリスト、ダニエル.Jをはじめ、
ジョー・サトリアーニ、グレッグ・ハウ、ヴィニー・ムーア、スティーヴ・モーズ、キップ・ウインガーら
名うてのゲストが参加し、ハードフュージョンがかった軽やかさとプログレ的な遊び心たっぷりで
楽しませてくれる。テクニカルなことをさらりとやってのけるセンスは相変わらず素晴らしく、
豪華メンバーを従えて、これだけ自由に質の高い作品を作れるシンセ奏者は、
おそらくDEREK SHERINIANとこのルーデスくらいのものだろう。
メロディアス度・・8 プログレ度・・8 キーボー度・・9 総合・・8
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Jordan Rudess 「Unplugged」
DREAM THEATERのシンセ奏者、ジョーダン・ルーデスの2006年作
タイトル通り、ピアノのみによるアコースティックなソロ作品。
もともとクラシックやジャズの素養のしっかりとある鍵盤弾きであるから、
このような作品においても、その演奏力と優雅なピアノタッチはさすがに見事で、
流麗に奏でられる美しいピアノの旋律にうっとりとなります。
紅茶でも飲みながらゆったりと鑑賞したい作品ですな。
クラシカル度・・8 ロック度・・0 ピアノ度・・9 総合・・7.5
JORDAN RUDESS「Road Home」
DREAM THEATERのKey、ジョーダン・ルーデスのソロ作。2007年作
本作は70年代プログレのカヴァー集で、GENESIS、YES、GENTLE GIANT、KING CRIMSON、ELPという名バンドたちの楽曲を
独自のアレンジで再構築している。てっきりクラシックとジャズの人とばかり思っていたら、かなりのプログレ好きだったのね。
きらびやかなシンセワークのGENESIS「Dance On A Volcano」では、ニール・モーズがヴォーカルで参加、YES「Sound Chaser」は
ニック・ディヴァージリオとキップ・ウインガーがヴォーカルを担当。ドラムは全編ロッド・モーゲンスタインで、テクニカルなリズムを軽やかに演奏する。
GENTLE GIANT「Just The Same」から、YES、GENESIS、KING CRIMSONといった名曲を散りばめた優雅なピアノメドレー、
そしてラストはEL&P「タルカス」で、原曲をよりダイナミックに仕上げている。ここではスティーヴン・ウィルソンなどがヴォーカルで参加。
わりとモダンなアレンジも含め、元曲に愛着がある場合は微妙な心境にもなるかもしれないが、ルーデスらしいカラフルなアレンジの好カヴァーである。
テクニカル度・・8 70'sプログレ度・・8 アレンジ度・・8 総合・・8
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Jordan Rudess 「Notes on a Dream」
アメリカのシンセ奏者、ジョーダン・ルーデスの2009年作
本作は、DREAM THEATERの楽曲を、ピアノによるアレンジで聴かせる作品で、
ルーデスの軽やかな鍵盤さばきとともに、優雅でクラシカルなピアノの独奏が楽しめる。
原曲通りというよりは、メロディ自体も崩したアレンジがされていて、「Lifting Shadows Off A Dream」、
「Another Day」、「Hollow Years」、「The Spirit Carries On」あたりは、原曲自体の美しさもあって、
良い感じに仕上がっている。ただ、なにせピアノのみなので、メタル感はほぼゼロ。思い入れのある曲でないと、
どうしても単なるクラシック音楽になってしまうのだが。ルーデスのピアニストとしての技量が再発見できる。
クラシカル度・8 メタル度・1 優雅度・8 総合・7.5
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Joviac 「Here & Now」
フィンランドのプログレメタル、ジョヴィアクの2020年作
2017年デビュー、本作は2作目で、美麗なシンセアレンジを叙情的なギターに重ねた、シンフォニックな感触のイントロ曲から、マイルドなヴォーカルを加えて、ほどよくテクニカルな展開力とともに、キャッチーでスタイリッシュなProgMetalを聴かせる。
エモーショナルなヴォーカルとモダンなヘヴィネスには、若手らしい雰囲気を覗かせて、8分の大曲も優雅なメロディアス性と軽妙なリズムで、緩急あるサウンドを構築する。
全体的に、テクニカル過ぎず、重すぎずで、耳心地のよいサウンドであるが、もう1曲くらいドラマティックな大曲が欲しかったか。全41分の好作品。
ドラマティック度・7 テクニカル度・7 スタイリッシュ度・8 総合・7.5
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K
KALISIA「CYBION」
フランスのシンフォニック・プログレメタル、カリシアの2009/2011年作
制作に13年を費やしたという力作は20パートに分かれた組曲方式で、
シンフォニックなシンセアレンジとProgMetal的なテクニカルな展開力で、
メロデス的な激しさも含みつつ、壮大なスケールと美意識を感じさせるサウンド。
美しい女性ヴォーカルに絡むデス声、細やかなコーラスの使い方も含めて
随所に知的でプログレ的な構築性が光っており、とくに美麗なシンセのセンスは相当なものだ。
モダンなインダストリアル要素を取り入れたり、質感としては同郷のVENTURIAにも通じるものある。
メロデスとしては激しさはやや足りないが、むしろ展開美のあるシンフォニックメタルとして楽しむ作品だろう。
ボーナスCDには、デモ音源のリミックスに、CYNIC、DREAM THEATER、EMPERORといったコアなカヴァーを収録!
シンフォニック度・・8 プログレメタル度・・8 壮大度・・8 総合・・8
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Kevin Moore「Ghost Book」
元DREAM THEATERのKey、ケヴィン・ムーアの2004年作
同タイトルの映画のサントラという形をとった作品で、「音で空間を描く」ようなケヴィンのシンセーワークは、
ゆらめくような浮遊感のあるサウンドで、しっとりとした薄暗い世界観を形成する。
ロック色のないシンセ音楽であるが、難解さはなくゆったりと音に浸りながら楽しめ、
ジャーマンキーボードロック的な聴き方で意外とプログレリスナーにもいけるかもしれない。
メタル度・・1 ほの暗度・・9 空間美度・・8 総合・・7.5
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KHALLICE「The Journey」
ブラジルのプログレメタル、カリスの2007年作
シンセを含む5人編成で、DREAM THEATERを思わせる正統派のProgMetal。
いかにもプログレ的なシンセの音色とテクニカルなアンサンブルが合わさり、適度な重厚さとともに
楽曲は知的に構築されてゆく。ラブリエのようなヴォーカルの歌声もなかなかハマっていて、
初期のDTが好きな方にはたまらないだろう。ドラマティックな展開美と確かな演奏力、
遊び心も含んだ聞きどころの多い作品である。これはなかなかの掘り出しものだ。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 重厚度・・8 総合・・8
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Kingcrow 「Insider」
イタリアのプログレメタル、キングクロウの2003年作
2001年にデビュー、本作は2作目。5作目以降は聴いていたのだが、のちのスタイリッシュな作風に比べると、
本作はいくぶん野暮ったいメタル感を残していて、わりと正統派のギターに朗々としたヴォーカルを乗せ、
リズムチェンジなどほどよくテクニカルな味わいの、B級気味のプログ・パワーメタルという聴き心地。
SEやセリフを含むコンセプト的な流れを感じさせつつ、シンセなどはほぼ使っていないので、
ストレートなメタル感触が強く、全体的にドラマティックな重厚さがもっと欲しい気がする。
5作目以降のモダンな路線へ深化してゆくことを思えば、初期の試行錯誤の段階だったのかも。
ドラマティック度・7 テクニカル度・7 重厚度・7 総合・7
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KINGCROW 「In Crescendo」
イタリアのプログレメタル、キングクロウの2013年作
結成は90年代で、本作はすでに5作目という、なにげに中堅クラスのバンド。
楽曲は5、6分台が中心で、適度にヘヴィなギターと随所にシンセによる味付けもしながら、
構成は複雑すぎず、比較的シンプルな分かりやすさの、いわばプログレパワー的なスタイル。
じっくりヴォーカルを聴かせる部分もありつつ、DREAM THEATER以後のモダンな構築センスも感じさせ、
全体的にもクオリティは高い。あとは楽曲ごとのインパクトやフックのある展開を強めていってもらいたい。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・7 高品質度・・8 総合・・7.5
KINGCROW 「Eidos」
イタリアのプログレメタル、キングクロウの2015年作
結成は90年代で、本作はすでに6作目という中堅バンド。前作はモダンな感触の好作であったが、
本作もスタイリッシュな硬質感と、プログレッシブな知的さを融合させた、いわばオルタナ系ProgMetalを聴かせる。
適度にヘヴィなギターリフにサイケ気味の浮遊感も加えたミクスチャー感触は、Pain of SalvationやRiversideなど、
第三世代バンドらしいボーダーレス感をかもしだしていて、ときにメランコリックな薄暗さも含んだ世界観も現代的だ。
歌もの的な雰囲気でありながらも、随所にメロウなギターフレーズや美しいシンセアレンジも覗かせて、
しっかりと楽曲を構築する技量とセンスもさすがである。新時代のプログレメタルのひとつの形を提示した作品だ。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 モダン度・・8 総合・・8
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KINGCROW 「The Persistence」
イタリアのプログレメタル、キングクロウの2018年作
デビューは2001年で、本作はすでに7作目となる。硬質なギターをテクニカルなリズムに乗せ、
シンセで味付けしたスタイリッシュなサウンド。モダンなヘヴィネスとマイルドなヴォーカルによる、
翳りを含んだ叙情性が同居した、オルタナ系プログレメタルというべき聴き心地である。
Djent系にも通じるリズムのハネ具合もありつつ、楽曲自体はテクニカル過ぎヘヴイ過ぎず
ときにポストプログレ的な薄暗い美意識も覗かせる。メロディックな盛り上がりはさほどないので、
濃密さの点では物足りなさもあるが、クールで涼やかなセンスに包まれた好作品だ。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・7 スタイリッシュ度・・8 総合・・7.5
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L
LALU 「Atomic Ark」
フランス人シンセ奏者、ヴィヴィアン・ラルーのソロプロジェクトの2013年作
8年ぶりとなる2作目で、マーティン・レマー(MEKONG DELTA)、マイク・レポンド(SYMPHONY X)、
シモーネ・ムラローニ(DGM)、ヴァージル・ドナーティ(PLANET X)という豪華なメンバーが集結、
モダンなヘヴィさとテクニカルな構築性で聴かせるハイブリッドなプログレメタルサウンドを聴かせる。
カッチリとした硬質感とパワフルなヴォーカル、巧みなシンセアレンジに手数の多いドラムと、
抜群の演奏力で知的なテクニカルメタルを描いてゆく。もう少しメロディやフックが欲しい気もするが、
ラストの19分の大曲は、プログレッシブなセンスで構築されるメリハリの効いた流れがなかなか圧巻だ。
イェンス・ヨハンソン(STRATOVARIUS)、ジョーダン・ルーデス(DREAM THEATER)などもゲスト参加している。
メロディック度・・7 演奏度・・8 モダンメタル度・・8 総合・・7.5
LALU 「Paint Of Sky」
フランス出身のシンセ奏者、ヴィヴィアン・ラルーによるプロジェクト。2022年作
2005年にデビュー、9年ぶりとなる3作目。ヴォーカルにダミアン・ウィルソン(ARENA)、ドラムにジェリー・カルダデッリ(Adagio)が参加。
アレッサンドロ・デルヴェッキオ、ゲイリー・ワーカンプ(SHADOE GALLERY)、イェンス・ヨハンソン(STRATOVARIUS)、ジョーダン・ルーデス(DREAM
THEATER)、
サイモン・フィリップス、シモーネ・ムラーニ(DGM)、スティーヴ・ウォルシュ(元KANSAS)、トニー・フランクリンといった多数のゲストが参加している。
前作はモダンなプログレメタルであったが、今作では美麗なシンセワークと伸びやかなヴォーカルを主体にした、優雅でシンフォニックな
プログレハードというスタイルで、巧みなギタープレイやほどよい硬質さも覗かせつつ、華麗でスタイリッシュなサウンドを構築する。
しつとりと美しいナンバーから、曲によってはテクニカルなパートもあり、HAKENあたりに通じるモダンプログレとしても楽しめるだろう。
ドラマティック度・7 スタイリッシュ度・9 優雅度・9 総合・8
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LANFEAR「THE ART EFFECT」
ドイツのプログレメタルバンド、ランフィアーの3rd。2003作
けっこうヘヴィなギターワークに、うっすらとしたキーボードがサウンドに厚みを持たせ
曲はミドルテンポや三連系などを中心にした、どっちかというと重厚なタイプ。
ドイツのPROG METALというとVANDEN PLASが思い浮かぶが、
こちらの方がもう少し現代的というか、アレンジにマニアっぽさがなく、キレが良い。
いわばプログレメタル云々を意識させず、普通のメタルファンにも勧められる雰囲気。
テクニカルさで魅せるというよりは、キーボードを含めた音の厚みで説得力をかもしだすタイプか。
意外性は薄いがとにかく演奏のセンスが良いのが大きい。音が気持ちいい。
メロディアス度・・7 プログレ度・・7 演奏センス・・9 総合・・7.5
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LANFEAR「ANOTHER GOLDEN RAGE」
ドイツのプログレ風味入りメタルバンド、ランフィアーの4th。2005作
プログレメタルというには硬派寄りでヘヴィかつ現代的なサウンドで演奏のセンスが良い。
このアルバムも前作同様、しっかりとしたギターリフの重ねに、うっすらとしたキーボードが心地よく、
そこに中音域のVoが歌を乗せる。派手さやインパクトはないが、ヘヴィさとメロディアスさのバランスが良く、
正統派メタルとプログレ感覚を上手い具合にブレンドしたサウンド。前作よりもややアグレッシブになった感じがある。
メロディアス度・・7 プログレ度・・7 演奏・・8 総合・・7.5
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L'Anima 「Departures」
イギリスのプログレメタル、ル・アニマの2017年作
THE YARDBIRDSのVoと、Breed 77のGを中心にしたバンドで、重すぎないギターにやわらかなシンセ、
マイルドなヴォーカルを乗せて、ほどよくモダンでテクニカルなProgMetalを聴かせる。
メロディックなギターの旋律やキャッチーな歌メロなど、随所に爽快な抜けの良さもあって、
いくぶんのマイナー臭さも含めて、マニア向けでありながらもわりと聴きやすい。楽曲は6〜9分前後で、
派手な盛り上がりはさほどないが、全体的に優雅な聴き心地。これというインパクトに欠けるのが残念。
ドラマティック度・7 テクニカル度・7 優雅度・8 総合・7
Last Frontier 「Theta-Healing」
イタリアのプログレメタル、ラスト・フロンティアの2016年作
シンセを含む5人編成で、モダンなシンセアレンジとハイトーンヴォーカルを乗せ、
かつてのQUEENSRYCHEを思わせる、重厚でドラマティックなサウンドを聴かせる。
テクニカルな展開力は控えめで、むしろ古き良き正統派の感触を感じさせるので、
ProgMetalのリスナーというよりは、一般のHR/HMファンの方が楽しめるかもしれない。
ときに激しく疾走するパートもあったり、メロディックなギターフレーズなども出て来て、
そこそこ起伏に富んだ展開力も悪くない。あとは、盛り上げどころでの迫力や、
メロディのフックをより高めて、今後は楽曲自体を魅力的にしていって欲しい。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 重厚度・・8 総合・・7.5
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LAST WARNING「UNDER A SPELL」
イタリアのプログレメタルバンド、ラスト・ウォーニングの2nd。2000作
サウンドはキーボード入りでハイトーンヴォーカルに複雑な曲構成という
DREAM THEATER + QUEENSRYCHEというサウンドは1stから相変わらずで、
10年前のプログレメタルブームから大して進化はしていないようだ。
ジャケのB級さも含めて、垢抜けなさが音にもつきまとい、聴いていて高揚感は覚えない。
今となってはプログレメタルマニア、イタリアンメタルマニア向けとしか。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・7 オールドプログレメタル度・・8 総合・・7
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LAST WARNING「Throughout Time」
イタリアのプログレメタルバンド、ラスト・ウォーニングの2009年作
1994年に1st、2000年に2ndを出し、その後は音沙汰のなかったこのバンドだが、
まだ生き残っていたとは驚きである。サウンドの方は、時代的な正統派ProgMetalで、
変拍子を使ったリズムに、美しいシンセとハイトーンのヴォーカルで聴かせるスタイル。
正直言って、今となっては古くさい音なのだが、かつてのイタリアン・ブログレメタル勢が、
まだこういう音楽をやり続けていたことが嬉しくもある。DREAM THEATER的な質感を基本にしつつ、
繊細に聴かせるメロディアスなパートなどには成長の跡が窺える。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・7 オールドProgMetal度・・9 総合・・7.5
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Leger de Main「THE CONCEPT OF OUR REALITY」
アメリカのプログレメタルバンド、レガー・デ・メインの1st。1995年作
RH FACTORやMYTHOLOGICなどでも活動する、、ロドラー兄弟を中心としたバンドで、
美しい女性ヴォーカルをフロントに、テクニカルにたたみかける楽曲展開と、
シンフォニックなプログレ感覚を融合させたサウンドはとても濃密だ。
DREAM THEATER的な構築性と、破天荒な変則リズムの嵐に耳疲れしそうなところだが、
女性声の優雅さもあってか、音自体はむしろ美麗な質感なのも面白い。
現在は1st、2ndのカップリング2枚組みでリマスター再発されている。
シンフォニック度・・8 テクニカル度・・8 女性Vo度・・7 総合・・8
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LEGER DE MAIN「SECOND FIRST IMPRESSION」
アメリカのプログレメタルバンド、レガー・デ・メインの2nd。1997作
音楽性は1stと同様、女性ヴォーカルで聴かせるテクニカルなプログレメタル。
部分的には、たとえば日本のMARGE LITCHなどを想起させるメロディアスさがある。
非常にせわしない変拍子の展開と、キーボードもかねるギタリストのセンスあるメロディ、
またアコギも使用した叙情パートもあり、6曲中4曲が8分以上の大曲という大作志向。
ただ、前作とともに内容の充実ぶりに比して知名度がないのが可哀想。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・9 女性Vo度・・7 総合・・7.5
Lemur Voice 「Insights」
オランダのプログレメタル、レマー・ヴォイスの1996年作
シンセを含んだアレンジとテクニカルな構築力で聴かせる、Dream Theaterタイプのサウンド。
ハイトーンヴォーカルはラブリエを思わせ、メロディにはキャッチーな感触があるのだが、
イタリアのEVIL WINGSにも通じる、どことなくヘンテコな楽曲展開も垣間見せる。
9分、12分という大曲も、ドラマティックというよりは、どこか優雅でプログレハード的な聴き心地。
やはりDTに比べるとアレンジにマイナー臭さを滲み出してはいるが、それなりの好作ではある。
メロディアス度・・8 ドラマティック度・・7 テクニカル度・・7 総合・・7.5
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LEONARDO THE ABOSOLUTE MAN
アメリカのプログレメタル専門レーベル、MAGNA CARTA関連のミュージシャンが集い
芸術家レオナルド・ダヴィンチの生涯をテーマにしたシンフォニック大作。2001年作
MAGELLANのトレント・ガードナーが作曲、メインVoにDREAM THEATERのジェイムス・ラブリエを起用、
時にQUEENを思わせるコーラスハーモニーに、シンフォニックかつ壮麗な盛り上がりで聴かせるサウンドは、
しっかりとメタル的なエッジも効かせつつ、表現豊かな歌唱と優雅なオーケストレイション、
そしてプログレメタル的展開美が冴える、見事な力作に仕上がっている。
シンフォニック度・・9 プログレ度・・8 楽曲・・8 総合・・8
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「Tall Poppy Syndrome」
ノルウェーのプログレメタルバンド、レプラスの2009年作
モダンなヘヴィネスとメランコリックな叙情性が合わさったサウンドで、
スクリームをまじえたヴォーカルで、いくぶんOPETHに近い質感もある。
激しさの中ときおり聴かせるメランコリックなギターフレーズも絶品で、
そこにうっすらとしたシンセが加わると、北欧シンフォニックロックのように美しい。
こうなると正直、スクリームやデスヴォイスは不要にも思えてくるのだが、
ある意味、この振り幅の大きさは、若いファンにこそ受けるだろうとも思う。
メロディアス度・・8 プログレ度・・8 構築センス・・8 総合・・8
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LEPROUS「Bilateral」
ノルウェーのプログレメタル、レプラスの2011年作
前作はデスヴォイス入りでOPETHばりのヘヴィさもある作風であったが、
本作は怪しげなジャケのように、サイケ的な浮遊感が強まっていて、
Motorpsychoばりの不思議系ロックの得体の知れない壮大さを聴かせる。
スクリームヴォイスも含むモダンなヘヴィさと、グラムロック風味の80年代感覚や
プログレ的なシンセなどが合わさり、一筋縄ではいかない玄人好みの聴き心地である。
ジャンルにとらわれない知的センスを内包したプログレ・サイケメタルの力作だ。
メロディアス度・・7 プログレ度・・8 知的センス・・9 総合・・8
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Leprous 「The Congregation」
ノルウェーのプログレメタル、レプラスの2015年作
プログレッシブな知的さとモダンなヘヴィネスを同居させ、ダークな感性で仕立て上げたというべきサウンドは、
本作でさらにスタイリッシュな濃縮を見せている。Riverside、Opeth、Cynic、Pain of Salvation、Devin Townsendといった
個性的なアーティストの名前を持ち出したくなるような、現在形プログレッシブメタルとしてのエッセンスを随所に感じさせる。
一方ではうっすらとしたシンセアレンジとともに、ポストプログレ風味の繊細な叙情性も垣間見せるなど、
ミステリアスな激しさと薄暗い浮遊感を含んだ、メリハリのある構築センスも見事で、エイナル氏の歌声の表現力とともに
メランコリックな哀愁や内面を見つめるような深みのある聴き心地に唸らされる。これぞ新時代のプログレッシブ・メタルである。
ドラマティック度・・8 モダン度・・8 薄暗度・・8 総合・・8
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Leprous 「Malina」
ノルウェーのプログレッシブメタル、レプラスの2017年作
2009年にデビュー、EMPERORのイーサーンの義理の弟であるエイナル・スーベルグが率いるバンドで、
前作はプログレッシブな知性とモダンなヘヴィネスを同居させたダーク寄りの力作であったが、
5作目となる本作は、軽妙なアンサンブルにマイルドなヴォーカルを乗せた、ポストプログレ風味の感触で、
薄暗い叙情に包まれたサウンドを聴かせる。メタリックでモダンなヘヴィさも随所にしっかり含ませながら、
オルガンなどを含むヴィンテージなプログレ感触も取り入れていて、古さと新しさのバランスという点でも絶妙だ。
表現力のあるヴォーカルによる歌もの感という点では、Pain of Salvationなどにも通じるかもしれない。
曲によってはダークな雰囲気とともに、Devin Townsendにも通じるスケールの大きな世界観を描き出す。
ヴァイオリンが鳴り響き、物悲しい叙情美に包まれたラスト曲などは、まるで映画のラストシーンのようである。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 知的センス・・8 総合・・8
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Leprous 「Pitfalls」
ノルウェーのプログレッシブメタル、レプラスの2019年作
2009年にデビュー、EMPERORのイーサーンの義理の弟エイナル・スーベルグが率いるバンドで、
デビューから、きっちり2年おきに作品を発表するのも勤勉であるが、作品ごとに深化してゆくサウンドも興味深い。
6作目となる本作は、美しいシンセにマイルドなヴォーカルを乗せた、翳りを帯びた繊細なポストプログレ風味から、
オーケストラアレンジを取り入れたシンフォニック性、さらにはROXY MUSICのようなエレクトロなポップ性など、
ボーダーレスなとらえどころのなさと、アーティスティックな世界観を感じさせる。メタル要素が薄まっているので、
エモーショナルな歌もの感が強まり、表現力を増したエイナルの歌声は、楽曲ごとにその表情を変えてゆく。
ラストの11分の大曲では、モダンでテクニカルな構築力も現れて、ProgMetalファンはひと安心である。
ドラマティック度・・7 メタル度・・5 薄暗度・・8 総合・8
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LEPROUS 「Aphelion」
ノルウェーのプログレッシブメタル、レプラスの2021年作
2009年にデビュー、EMPERORのイーサーンの義弟エイナル・スーベルグが率いるバンドで、本作は7作目となる。
シンセをバックに独特のエモーショナルな歌声を乗せた導入部から、すでにミステリアスな空気を漂わせてるが、
モダンでキャッチーな感触に、ヴァイオリンが鳴り響く優雅なアレンジ、エレクトロでデジタルな質感も取り入れるなど、
変幻自在のセンスはさすが。しっとりとしたポストプログレ的な繊細さから、メタリックなヘヴィネスへの展開など、
知的な構築力も際立っていて、ヴォーカリストとしての表現力も含めて、アーティストとしての円熟の域を感じさせる。
全体的には、翳りを帯びたゆったりとしたパートが多いのだが、ラスト曲はこれぞプログメタルという展開で楽しめる。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 薄暗叙情度・8 総合・8
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Leviathan 「Riddles Questions Poetry & Outrage」
アメリカのプログレメタル、リヴァイアサンの1996年作
1994年にデビュー、本作は2作目で、ツインギターのリフにうっすとしたシンセ、ハイトーンヴォーカルを乗せて、
ほどよくテクニカルな展開力で聴かせる、FATES WARNINGにも通じるスタイルのProgMetalを聴かせる。
随所に叙情的なメロディアス性も覗かせながら、わりと唐突なリズムチェンジなどもあって、
煮え切らないマイナー臭さがなかなか楽しい。9分の大曲などもゆったりとした味わいで、
DRERAM THEATERなどど比較すると、楽曲自体にさほどスリリングなところはないが、
90年代の頃には、この手のインテレクチュアルなバンドを求めていたリスナーも多いだろう。
バンドは1997年の3作目を最後に解散するも、2010年になって復活する。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・7 マイナー度・・8 総合・・7.5
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LEVIATHAN 「Beholden to Nothing Braver Since Then」
アメリカのプログレメタル、リヴァイアサンの2014年作
コロラド出身のバンドで、聴くのは1994年作「Deepest Secrets Beneath」以来なのだが、すでに2011年に復活していて、
本作は復活後2作目らしい。変拍子をたっぷり盛り込んだテクニカルなリズムに、ハイトーンヴォーカルの乗せたスタイルは
かつてのFATES WARNINGを思わせる作風で、盛り上がりそうで盛り上がらない楽曲もかつてのままなのだが、
やや唐突なリズム展開とともに、個人的にはにやにやしながら楽しめる。コンセプトアルバム的な流れとともに、
適度にきらびやかなシンセアレンジも、サウンドに厚みをもたせていて、ラストの10分超の大曲まで濃密な味わいで構築される、
ドラマティックな力作である。オールドなプログレメタルファンならばチェックして損はないだろう。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 古き良きProgMetal度・・9 総合・・8
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LEVIN/MINNEMANN/RUDESS「LMR」
トニー・レヴィン、マルコ・ミンネマン、ジョーダン・ルーデスによるユニットの2013年作
この凄腕メンバーで、どんな超絶技巧が繰り出されるのかと興味津々であるが、
エフェクトの効いたレヴィンのスティックベースに、ルーデスの華麗なシンセが合わさり、
テクニカルなリズムの中にも、随所にシンフォニックですらあるメロディックな感触も覗かせる。
楽し気に叩きまくるミンネマンの軽やかなドラムもさすがで、トリオによるアンサンブルながら、
それぞれが己のセンスを十二分に発揮していて、厚みを感じさせるサウンドが素晴らしい。
ジャズロック、フュージョンロック的な要素もありつつ、じっくりとメロウに聴かせるパートなど、
単なる技巧のみに陥らないところが、さすが一流のミュージシャンたちである。
メロディック度・・7 テクニカル度・・8 アンサンブル度・・8 総合・・8
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Liquid Tension Experiment 2
トニー・レヴィン、マイク・ポートノイ、ジョーダン・ルーデス、ジョン・ペトルーシによる
リキッド・テンション・エクスペリメントの2作目。1999年作
いかにもジャムセッション的であった1作目に比べ、楽曲的な構築性がぐんと増し、
各メンバーの技量がより際立ったことで質の高い作品となった。
当然ながら4人のうち3人までがDREAM THEATERのメンバーということで、
サウンド的にもDTのインスト部分を軽やかにしたような雰囲気であるのだが、
ルーデスの巧みなシンセワークとペトルーシのギターの絡みはやはり絶品だし、
屋台骨を支えるポートノイのドラムも手数たっぷりでパワフルに張り切っている。
緊張感の漂う即興的な要素とともに、技巧派メンバーたちによるバトルが楽しめる。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・9 緊張感・・8 総合・・8
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Liquid Trio Experiment「Spontaneous Combustion」
トニー・レヴィン、マイク・ポートノイ、ジョーダン・ルーデスによる、リキッド・トリオ・エクスペリメントの2007作
これまでLiquid Tention名義で2枚のアルバムを出していたが、今作ではジョン・ペトルーシは参加しておらず、
よりジャム色の濃い内容になっている。奔放に叩きまくるポートノイのドラムに、軽やかなルーデスのシンセが絡まり、
渋みのあるベースが控えめに加わる。やはり主導はポートノイで、その多彩なリズム感覚と
細やかなシンバルワークなど、ドラムを好きな人間には聴いていていろいろと楽しめる。
曲としてはまとまっていないものなので、プレイヤーのファンでなければオススメはできないが。
フリーセッション度・・9 ポートノイ度・・9 演奏・・8 総合・・7.5
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Liquid Tension Experiment 「LTE3」
アメリカのテクニカルメタル、リキッド・テンション・エクスペリメントの2021年作
ジョン・ペトルーシ、マイク・ポートノイ、ジョーダン・ルーデス、トニー・レヴィンによるテクニカルユニット。
1999年以来、じつに22年ぶりとなる3作目。手数の多いドラムにきらびやかなシンセと巧みなギターを重ね、
カラフルなインストパートを描いてゆく。ペトルーシのメロディアスなギターフレーズも随所に織り交ぜつつ、
緩急あるドラマティックな構築性は、かつてのDREAM THEATERのインストパートを抽出したようでもある。
テクニカル性でだけでなく、メロディにはキャッチーな聴きやすさがあって、各メンバーの成熟したプレイが自然体で融合し、
肩の力の抜けた大人のアンサンブルも楽しめる。13分という2つの大曲も含めて、優雅と技巧が交差する見事な内容だ。
Disc2には、ジャムセッションを収録。けっこう長尺感はあるが、メンバーたちの演奏が好きな方には嬉しいボーナスだろう。
メロディック度・・8 テクニカル度・・9 優雅度・・8 総合・・8.5
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LOOSE CHANGE「Live at the Grainstore」
テクニカルドラマー、ヴァージル・ドナーティが80年代に活動していたバンド、ルース・チェンジのライブアルバム。2004年作
ドナーティといえばPLANET Xでの超絶なドラミングが印象的だが、この音源は1987年の録音で、若き日のドナーティのプレイが聴ける。
サウンドはギター、ベース、シンセ、ドラムの4人編成による、フュージョン・ジャズロックで、やはりPLANET X的なテクニカルさもある。
ドナーティのドラミングは当然に見事だが、ギタリストの腕前もかなりのもので、聴きやすいメロディフレーズと、
リズム面でのキメが合わさった質の高い演奏だ。PLANET X、そしてドナーティのファンであれば文句なしに楽しめる1枚。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・8 ライブ演奏・・9 総合・・8
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Lord of Mushrooms
モナコ公国のプログレメタル、ロード・オブ・マッシュルームスの2002年作
先に日本盤で2nd以降を聴いていたのだが、遅まきながら1stアルバムをゲット。
キャッチーなメロディアス性とテクニカルな構築美で聴かせるサウンドは、
本作の時点ですでに十分にクオリティが高い。変拍子入りのアンサンブルに
曲によってはジャズロック的な優雅さもあったりと、バンドとしてのセンスの良さが光り、
8分、9分という長めの楽曲を構築する知的なアレンジ力も見事。マイルドなヴォーカルと、
美しいシンセアレンジなども含めて、プログレリスナーにも十分楽しめる好作品だ。
メロディック度・・8 テクニカル度・・8 構築センス・・8 総合・・8
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LORD OF MUSHROOMS「Seven Deadly Songs」
モナコ公国出身のプログレメタルバンド、ロード・オブ・マッシュルームスの2nd。2005年作
モナコというとF1グランプリの開催地でも有名だが、こんな小国にもプログレメタルバンドがいたのです。
サウンドは、DREAM THEATER的な構築美と、ACTあたりにも通じるキャッチーな質感が合わさったもので、
メンバーは皆若そうだが、キリスト教神学の「七つの大罪」」(傲慢、貪欲、嫉妬、憤怒、怠惰、暴食、色欲)
をテーマにしているあたりは、なかなか知的なセンスが光っている。テクニカルな優雅さに包まれた作風は、
ヴォーカルの弱さを差し引いても、楽曲、演奏ともにクオリティが高い。プログレリスナーにも楽しめる好作品です。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 キャッチー度・・8 総合・・8
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Lord Of Mushrooms 「Perspectives」
モナコ公国出身のプログレメタル、ロード・オブ・マッシュルームスの2012年作
前作「Seven Deadly Songs」は日本盤も出た傑作であったが、本作は6年ぶりとなる3作目で、
キャッチーなメロディと知的な構築センスで聴かせるProgMetalサウンドは健在。
いくぶんモダンなヘヴィさも含ませつつ、DREAM THEATER的なドラマティックさと
ACTの軽快さを合わせたような作風は、この手のファンにはたまらないだろう。
テクニカルすぎない適度な余裕も魅力で、IT BITESあたりのプログレハードファンにも楽しめる高品質作だ。
メロディアス度・・8 テクニカル度・7 構築センス・・8 総合・・8
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Lost In Thought 「Opus Arise」
イギリスのプログレメタル、ロスト・イン・ソウトの2011年作
メタリックなギターにきらびやかなシンセを重ね、伸びやかなヴォーカルを乗せたサウンドに
ほどよくテクニカルな展開力で、DREAM THEATERタイプの重厚なProgMetalを聴かせる。
随所に流麗なギタープレイも覗かせつつ、手数あるヘヴィなドラムも含めたモダンな硬質感と、
叙情的なバラード曲などキャッチーなメロディのバランスも良く、ヴォーカルの表現力も備わっている。
楽曲は5〜7分前後と長すぎず短すぎず、全体的にもクオリティの高い濃密な聴き心地の力作だ。
ドラマティック度・8 テクニカル度・7 重厚度・8 総合・8
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Lucid Dream Syndrome 「ROAD TO THE MOUNTAIN TOP」
タイのプログレメタル、ルシッド・ドリーム・シンドロームの2012年作
シンセ、ギター、ドラムという若手3人組で、テクニカルなリズムに美麗なシンセアレンジを乗せ、
適度なヘヴィネスとモダンな感触に、随所にアジアンな旋律を含んだ、オリエンタルなProgMetal。
ほぼオールインストであるが、DREAM THEATERなどを思わせる技巧性もなかなかのもので、
リズムチェンジを含む展開力とともに、テクニカルな遊び心を盛り込んで、大曲を構築してゆく確かな力量もある。
一方ではオルガンやムーグシンセを使ったオールドなプログレ感触も覗かせるなど、多様なセンスが光っていて、あなどれない。
ゲストの女性ヴォーカルを加えた、ラストのしっとりとした叙情ナンバーもよいですね。タイ王国から登場した、期待の若手バンドですな。
メロディック度・・8 テクニカル度・・8 構築度・・8 総合・・8
Lunar 「Eidolon」
アメリカのプログレメタル、ルナーの2019年作
2017年にデビューし、2作目となる。メタリックなギターと存在感あるベースに、エモーショナルなヴォーカルを乗せ
モダンなヘヴィネスとテクニカルなアンサンブルに、グロウルヴォイスも絡めたアグレッシブなプログレメタルを聴かせる。
とき流麗なフレーズを奏でるギターは、わりとオールドなメタルリフも弾くなど、ヴィンテージメタルの感触もあり、
アコースティックパートなどを含む緩急ある展開で、10分を超える大曲を描いてゆく。グロウルヴォーカルを乗せた
デスメタル的な雰囲気のパートから、ノーマルヴォーカルのキャッチーな叙情まで振り幅が広く、むしろエモーショナルロックを
テクニカルメタルに仕立てたという聴き心地かもしれない。センスは面白いのだが、オールドスタイルなのかスタイリッシュなのか、
方向性がやや微妙なので、突き抜けきらないものかしさのようなものを感じる。潜在力はありそうなので大化けに期待。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・8 楽曲・・7 総合・・7.5
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LYRANTHE「OCULUS INFERNO」
アメリカのプログレメタルバンド、リランセのアルバム。2003作
まず曲が長い。全8曲中、8分以上が6曲。残り2曲も7分と5分。聴いていてただ疲れる…(^^;)
それに曲の展開が唐突。繰り返しも多く、ありていに言ってメロディアスでない。
ヴォーカルも好みではないし音質も良くない。テクニックはあるがそれを曲に活かしきれていない。
結論…自己満足のプログレメタル。まだDREAM THEATERのコピーバンドを聴いたほうがいい。
メロディアス度・・5 テクニカル度・・7 楽曲・・5 総合・・5.5
M
MADSWORD 「THE GLOBAL VILLAGE」
イタリアのプログレメタルバンド、マッドスウォードの2nd。
曲調はぐっと大人の雰囲気で正統的なアレンジ。まるでイタリアっぽくない。
プログレメタルとしてのクオリティはそこそこ高いので、さらりと聴けてしまう。
メロディアス度・・7 プログレ度・・6 イタリア度・・1 総合・・7
MAEVE OF CONNACHT「Imaginary Tales」
イタリアのプログレメタルバンド、マエヴ・コナックの2001年作
女性シンセ奏者を含む4人組で、元BLACK JESTERのメンバーもいるらしい。
やわらかなヴォーカルメロディと適度にヘヴィなギター、美しいシンセワークで聴かせる
どことなくB級感をただよわせたProgMetal。聴き心地はいいのだが、
これといった印象的なメロディやドラマテイックな展開がないのがもどかしい。
DREAMSCAPEのヴォーカルHUBI MEISELが参加している。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・7 楽曲・・7 総合・・7
MAGELLAN「Hour of Restoration」
アメリカのネオプログレバンド、マジェランの1st。1991作
80年代も終わり、プログレッシブロックが死に絶えたと思われていた90年代初頭に
突如としてアルリカからネオプログレ復興の旗手が現れた。マイク・ヴァーニーによる
その名もMagna Cartaレーベルからデビューしたこのバンドは、偉大な航海者マゼランの名を冠し、
まるでYesの「こわれもの」のジャケにでも飛んでいそうなレトロな宇宙船を描いたジャケからしても、
ワクワクするようなロマンに満ちているではないか。サウンドの方もかつてのプログレッシブ・ロックを
ルーツにしながらも、それをモダンなアレンジと融合、1曲目から14分の大曲を構築させる力作で、
ハードなシンフォニックロックともいうべききらびやかさに溢れている。このマグナ・カルタレーベルからは
SHADOW GALLERY、CAIRらといった素晴らしい後続を生み出し、新たなプログレシーンに貢献した。
シンフォニック度・・8 ドラマティック度・・8 ロマン度・・9 総合・・8
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MAGELLAN「Impending Ascension」
アメリカのハードプログレバンド、マジェランの2nd。1993作
1st「Hour of Restoration」はロマン溢れるアートワークとともに
華麗なサウンドにキャッチーな歌メロをまぶしたなかなかの出来であったが、
本作も基本的には同路線。QUEENばりのコーラスとシンフォニックなシンセを中心に、
きらびやかでドラマティックなハードプログレを聴かせてくれる。
ドラムが打ち込みであるぶん、ハードロック的な重厚さはまだないが、
その分、リーダーであるトレント・ガードナーの嗜好する世界観がよく現れている。
シンフォニック度・・8 ドラマティック度・・8 重厚度・・7 総合・・8
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MAGELLAN「Test of Wills」
アメリカのハードプログレバンド、マジェランの3rd。1997作
本作ではドラマーが加わり、一聴して音にハードエッジな部分が増した。
楽曲的な要素としては、過去のプログレへのオマージュ的な雰囲気は消え
よりモダンに、現時点でのバンドの色を出そうとしているのが窺える。
とはいえ、ドラマティックな質感や、彼ららしいキャッチーなメロディも健在で
ProgMetal的な硬質感にYesを思わせる構築力を同居させるセンスはさすが。
より歌メロに比重が置かれる次作への橋渡し的な楽曲もあり、
バンドとしての深化と変化が感じられるアルバムである。
シンフォニック度・・7 ドラマティック度・・8 重厚度・・7 総合・・7.5
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MAGELLAN「HUNDRED YEAR FLOOD」
アメリカのハード・プログレバンド、マジェランの4th。2002作
今回はベトナム戦争で戦死した兄弟をテーマにしたコンセプト作ということで、
のっけから34分という長大な組曲。歌メロに比重が置かれていることもあって、
大作でありながらもコーラスワークや、メロディアスな歌のせいかけっこう聴きやすい。
もちろんバンドの核であるトレント・ガードナーの多彩なキーボードワークも光っており、
EXPLORER'S CLUBなどにおける曲作りの経験がフィードバックされているのだろう。
メロディアス度・・8 ドラマティック度・・8 重厚度・・7 総合・・8
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MAGELLAN「IMPOSSIBLE FIGURES」
アメリカのシンフォニック・プログレ・ハードバンド、マジェランの5th。2003作
中心人物のトレント・ガードナーは、EXPLORE'S CLUBなどへの参加から評価が上がってきたようで、
本作は軽快なシンフォニック性とマジェラン節ともいえるキャッチーな歌メロが見事に融合した傑作となった。
多彩なシンセの音色はもちろん、どこかレトロなピアノの使用法や、時代的なコンセプトに基づいた世界観なども見事。
また、これまでにないドラムの手数の多さもポイントで、レーベルがINSIDE OUTに変わったことも作用しているのだろう、
プログレメタル、プログレハードとしても充分に聴ける。シンフォニックでキャッチーだが、全体的に締まった密度の高さがある。
シンフォニック度・・8 キャッチー度・・8 プログレハー度・・8 総合・・8
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MAGELLAN「SYMPHONY FOR A MISANTHROPE」
アメリカのハードプログレバンド、マジェランの通算6作目。2005作
前作でなにか吹っ切れた感があるサウンドに変化したが、今回もさらなる力作を作り込んできた。
ジャケやブックレットからは映画的なコンセプト作であることが垣間見えるが、曲だけでも充分ドラマティック。
前作から取り入れたややメタリックなギターと、今回はやたら美しいキーボードによる
シンフォニックな音圧が、厚みを増して押し寄せてくるという印象。
トレント・ガードナーお得意のキャッチーな歌メロもバックの壮大さに乗って、
いつも以上にドラマティックに盛り上げている。とにかく音のダイナミックさが心地よい。
とくにシンフォニックさの点では同時期に出たSHADOW GALLERYの「ROOM V」を上回る。
シンフォニック度・・9 メロディアス度・・8 プログレハー度・・8 総合・・8◆プログレ名作選入り
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Magellan「Innocent God」
アメリカのハードプログレバンド、マジェランの7th。2008作
レーベルがINSIDE OUTからMUSEAへと変わったようだが、地道にでも活動を続けていて嬉しいかぎり。
前作「SYMPHONY FOR A
MISANTHROPE」がシンフォニックな傑作であったのだが、
本作はその流れを汲みつつも、より歌もの的なキャッチーさが前に出てきた作風となっている。
ドラマティックなコンセプトの中で、抜けのよいメロディを聴かせつつ展開してゆくサウンドは、
いわばNEAL MORSEあたりにも通じる質感だろうか。難解さはなく、むしろプログレハード的だ。
壮大なシンフォニック性は減退したが、随所に光る美しいシンセワークは健在だし
やわらかなコーラスハーモニーなどとともに、爽やかなメロディアスさが心地よい作品だ。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 ドラマティック度・・7 総合・・8
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Major Denial 「Duchess Of Sufferings」
ギリシャのプログレメタル、メジャー・デニアルの2017年作
適度に叙情を帯びたツインギターに伸びやかなヴォーカルを乗せて、KAMELOTにも通じるような、
スタイリッシュでダークな味わいのサウンドを聴かせる。リズムチェンジを含む知的な展開力も覗かせつつ、
テクニカル過ぎない聴きやすさで、ときにシンセを加えた優美な味わいもあって、耳心地よく楽しめる。
メランコリックな薄暗さにはゴシック的な感じもあり、メロウな泣きのギターフレーズもサウンドをウェットに彩っている。
ラストは女性ヴォーカルに美麗なシンセも加えたナンバーで、派手なインパクトはないが、じっくりと世界観に浸れるような好作品だ。
本作で歌っているエモーショナルなヴォーカルはゲストらしいので、早く正規メンバーにしてください。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 薄暗度・・8 総合・・7.5
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MALPRACTICE 「Turning Tides」
フィンランドのプログレメタル、マルプラクティスの2014年作
モダンなメタルの感触に、適度にテクニカル性を含んだサウンドで、ヴォーカルはたまにダミ声になったりと、
いくぶんメタルコア的なアグレッシブさも覗かせる。ただ楽曲、演奏ともにこれというインパクトがなく、
シンセが入らないため音の厚みという点でも物足りない。かといってギタープレイが素晴らしいというワケでもないので、
要するに聴きどころがあまりない。メロディのフックもパンチが足りないし、さりとて音の迫力もそれほどないという。
中盤の15分の大曲は悪くないし、キャッチーな歌メロとコーラスもわりとよい感じなので、その方向を伸ばしてもらいたい。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・7 楽曲・・6 総合・・7
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MASTERMIND「ANGELS OF THE APOCALYPSE」
アメリカのプログレバンド、マスターマインドの6th。1999年作
デビュー時から、MIDIギターによるキーボード音の再現や、たたみかけるようなテクニカルな楽曲で
マニアックなプログレファンの間では認知度も高いこのバンド。しかし、何を思ったのか、
このアルバムでは突如女性ヴォーカル入りのメタル寄りのサウンドへと変化している。
ツーバスで疾走するドラムに、ヤンス・ヨハンソンのキーボード、そして流麗なギターと、
歌い上げるリサ嬢のヴォーカルという、これはまさにシンフォニックメタルの音像だ。
ただし、インスト部分でのプログレッシブなアプローチは健在で、ベレンズ兄弟のギターとドラム、
そしてヤンスのキーボードが一体となったテクニカルな側面を充分に見せつけてくれる。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・7 女性Vo度・・7 総合・・8
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MASTORD 「To Whom Bow Even The Trees」
フィンランドのプログレメタル、マストルドの2021年作
メタリックなギターに優美なシンセを重ね、かすれた味わいのヴォーカルとともに、
ほどよくテクニカルな展開力の北欧らしい涼やかなプログレメタルを聴かせる。
メロディはキャッチーというほどでもなく、たたみかけるようなテクニカル性もさほどないので、
全体的にこれという突出した部分がなく、やや地味な印象ではあるが、随所に叙情的なギターや
美しいシンセアレンジが現れる。後半にはDREAM THEATER的なテクニカルなナンバーもあり、
8〜9という大曲や、ラストの12分の大曲まで、なかなかドラマティックに聴かせる全72分。
ドラマティック度・7 テクニカル度・7 楽曲・7 総合・7.5
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MATRAZ 「TIEMPO」
チリのプログレバンド、マトラスの1st。1999作
彼らの2ndはDREAM THEATER的な方法論を、シンフォニックロックの繊細さで
再構築したような素晴らしい作品だった。この1stは全4曲という大作志向。
メンバーは4人で(2ndでは女性Voが加入する)、演奏は南米シンフォの中ではメタリックな要素が強く、
あるいは普通にプログレメタルとしても聴けるかもしれない。2ndできに比べると
大曲における散漫さも多少あるが、この時点でもバンドとしての演奏力はかなり高く、
テクニカルなキメも余裕を持って聴かせるところなどにはやはり非凡なセンスを感じる。
なんにしろ、久々に優れたセンスと演奏力を持ったバンドが南米から現れたものだ。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・8 プログレメタル度・・8 総合・・7.5
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MATRAZ「GRITARE」
チリのハードシンフォニックロックバンド、マトラスの2nd。2004年作
今やシンフォニック大国となりつつあるチリだが、このバンドもワールドクラスの実力を持つ。
スリリングでテクニカルな演奏はメタル色の薄いDREAM THEATERといった印象もあり、
音はけっしてやかましくならないが流れるような演奏はまるでKENSOのように優雅で、
たたみかける場面でもどこかクールな「静けさの美」を持つセンスが素晴らしい。
クラシカルなピアノはサウンドに格調高さをもたらし、スペイン語の女性ヴォーカルの歌唱は、
インストだけでは硬質になりすぎるところを、上手い具合にやわらかなバランスを保たせている。
南米なのに涼やかで、適度に硬質で、シンフォニックかつクラシカル。傑作アルバムです。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・8 クールな叙情度・・9 総合・・8.5◆プログレ名作選入り
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Mausoleum Gate 「Into a Dark Divinity」
フィンランドのプログレメタル、マウソレウム・ゲートの2017年作
2014年にデビューし、2作目となる。叙情的なギターのイントロから、オルガンやメロトロンを含むシンセに朗々としたヴォーカルを乗せ、ヴィンテージな味わいのハードロックを聴かせる。
10分前後の大曲も多く、ゆったりとしたナンバーでは、エピックドゥーム的な感触とともに、オルガンも鳴り響き、怪しい幻想性に包まれる。
ノリのよい小曲は、70年代のブリティッシュ・ハードロックのようで、ヘヴィ過ぎない聴き心地は、プログレファンにも楽しめるだろう。
ラストの10分の大曲は、メロトロンに優美なピアノが重なり、しっとりと優雅な味わいは、ほぼシンフォプログレですな。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 ヴィンテージ度・8 総合・8
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MAYADOME「PARANORMAL ACTIVITY」
スウェーデンのプログレメタルバンド、マヤドームの1st。1996作。
年代からも分かるとおり、AWAKE期のDREAM THEATERからの影響が顕著で、
ヘヴィなギターリフと変拍子リズム、クールな甘すぎないメロディアスさを持ったサウンドだ。
演奏のレベルもそこそこで、曲のアレンジもなかなかに流麗であるが、
「これだ!」という魅力が何かと問われると黙ってしまう。
メロディアス度・・7 プログレ度・・8 楽曲・・7 総合・・7
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MAYADOME「NEAR LIFE EXPERIENCE」
スウェーデンのプログレメタルバンド、マヤドームの2nd。1999作
1stの頃から「AWAKE」期のDREAM THEATERに近いテクニカルで少々ダークで
それなりに質の高いプログレメタルサウンドをやっていたこのバンドだが、今作はさらに一歩踏み出した力作。
ダークな叙情とテクニカルさはそのままに、曲のメリハリをより浮き立たせた作りで
歌メロや、キーボード・ギターフレーズを含めたアレンジの質がぐっと高まっている。
ときに耳を引くメロディを効果的に使うことで、全体的にテクニカル一辺倒ではなく、叙情と引きのパートを含めて
曲としての密度が向上したように思える。テクニカルに構築された北欧ProMetalの高品質作である。
メロディアス度・・7 プログレメタル度・・9 楽曲アレンジ・・8 総合・・8
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MECHANICAL BUTTERFLY 「The Irresistible Gravity」
イタリアのプログレメタル、メカニカル・バタフライの2015年作
女性Voにシンセを含む5人編成で、メロディックなギターにわりとモダンなシンセアレンジで、
適度にテクニカルでいくぶんエキセントリックな展開を含むインストパートを中心に、
しっとりとした女性ヴォーカルが加わると、妖しげな浮遊感をともなった感触になる。
メタリックなギターによるヘヴィさと軽妙なアンサンブルが同居した聴き心地は個性的であるが、
メロディのフックや盛り上がりの面では、ややとらえどころがない感じがして物足りないか。
個人的には女性Voをもっと活かしたシンフォ路線へいって欲しいような気もしますな。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・7 女性Vo度・・7 総合・・7
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MEGACE「Human Errors」
ドイツのテクニカルメタルバンド、メガスの1st。1991年作
女性ヴォーカルのテクニカル・スラッシュという当時にしてはなかなか珍しいスタイルで、
せわしない曲調に田舎臭い女性Voが歌を乗せ、ときおり彼女がデス声で歌うのだが、
この声がまたヒステリックで気持ち悪いというか…当時はえらく耳障りに感じたものだ。
今でこそ女性のスクリームヴォイスは珍しくもなくなったが、ある意味その先駆けか。
日本の五人一首の「あの字」嬢の歌唱に通じるものがあると言えばイメージしやすいだろうか。
曲調もWATCHTOWER系を目指しているようだが、そこまで凄くはなく、どこか中途半端で
わりとB級臭いのだが、女性声のインパクトとともに、キワモノ系のリスナーには楽しめるだろう
メロディアス度・・7 テクニカル度・・7 女性声インパクト度・・9 総合・・7.5
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MEGACE「Inner War」
ドイツのテクニカルメタルバンド、メガスの2nd。1999作
1991年の「Human Errors」、てっきりこの1枚のみで消えたと思っていたら、
8年後にこのアルバムを出していたんですね。まったく気づかなかった。笑
サウンドの方はずいぶん音がパワフルになっていますね。ヘンタイ気味の楽曲はそのままに、
そこに乗るギターリフが力強くなった。そして綺麗声と汚声を使い分ける女性ヴォーカルも
相変わらず少し気持ち悪くていい感じです。今作ではややダーティに歌うパートが増えていて
前作での不気味なヒステリックさよりも、女性メタラー的な強さが感じられるようになってます。
曲によってはメロディアスな部分もありつつ、ヘンテコなProgMetalとしても楽しめるかと。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・7 女性声インパクト度・・8 総合・・7.5
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Mercury Rising 「Upon Deaf Ears」
アメリカのプログレメタル、マーキュリー・ライジングの1994年作
適度なテクニカル性で構築される楽曲に、ハイトーンヴォーカルを乗せたキャッチーなProgMetal。
後のアルバムに比べて、メロディのフックや展開などがいまひとつ洗練されていないのだが、
唐突なリズムチェンジなどには、B級バンド風味の面白さもあり、ときおりDREAM THEATERばりの
技巧的な質感も覗かせる。ヴォーカルの微妙に頼りなげなピッチが、サウンドを不安定にしているのだが、
それがむしろFATES WARNING的なスリリング聴き心地になってもいて、個人的には嫌いではない。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・7 楽曲・・7 総合・・7.5
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Mercury Rising 「Building Rome」
アメリカのプログレメタル、マーキュリー・ライジングの1998年作
ツインギターを含む5人編成で、変拍子を含んだ適度にテクニカルなリズムと、
マイルドなヴォーカルで聴かせる、FATES WARNINGあたりを思わせるサウンド。
古代ローマをテーマにしたコンセプトのようだが、楽曲はだいたい5分前後で長すぎもせず、
適度にメロウでメロディック、Voの声質も含めてややダークなDREAM THEATERという感触もある。
ツインギターによる重厚さと、心地よいハイトーンヴォーカルの歌声で、バランスのとれた聴き心地だ。
ジャケの地味さや知名度の低さに比べると、なかなか高品質といってよい内容の力作である。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・8 構築度・・8 総合・・7.5
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METHODICA 「Searching for Reflections」
イタリアのプログレメタル、メソディカの2008年作
シンセを含む5人編成で、モダンな硬質感とテクニカル性に、ハイトーンヴォーカルを乗せた、
キャッチーなメロディアスが合わさったProgMetalサウンド。オルガンなどを含んだ多彩なシンセワークは
ときにプログレ的でもあり、イタリアらしい濃密な感触とモダンなヘヴィネスも適度に感じさせる。
ほとんどの曲が10分以上で、随所にテクニカルなインストパートを盛り込みながら、起伏のある展開力で構築する。
サビでのキャッチーな抜けの良さや、女性ヴォーカルが加わったシンフォニックな小曲など、アルバムとしてのメリハリもあり
なかなかの力作と言えるだろう。あとは楽曲における細かなアレンジの質を向上させて欲しい。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 楽曲・・7 総合・・7
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Michael Kocab, Glenn Proudfoot & Virgil Donati, Billy Sheehan 「Aftershocks」
チェコのロックバンド、PRAZSKY VYBERのVoとGを中心にしたテクニカルメタルユニット。2014年作
ヴァージル・ドナーティ、ビリー・シーンという強力なリズム隊に、グレン・プロウドフッドのキレのよいギターワークと、
モダンなシンセアレンジ、渋みのあるヴォーカルを乗せた、スタイリッシュなサウンドを聴かせる。
作品全体的にはマイケル・コカブのヴォーカルをメインにした歌もの的ナンバーもけっこうあって、
テクニカルでありながら、アダルトな渋さも感じさせるという。それにしてもドナーティの超絶なドラムは素晴らしい。
メロディック度・・7 テクニカル度・・8 スタイリッシュ度・・8 総合・・7.5
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MINDAHEAD 「6119: Part I」
イタリアのプログレメタル、マインドアヘッドの2022年作
2016年にデビューし、2作目。男女Voの6人編成で、硬質なツインギターにコケティッシュな女性ヴォーカルと男性ヴォーカルが絡み、スタイリッシュなメタルサウンドを展開。
知的なテクニカル性と壮麗なアレンジが同居して、SINHERESYなどにも通じるモダンなシンフォニックメタルとしても楽しめる。
ときにイタリア語による語りが、SF的でシネマティックな世界観を演出し、17分という大曲ではシアトリカルな男女ヴォーカルの掛け合いと緩急ある構築力で、ドラマティックな味わいに包まれる。
後半の楽曲ではアグレッシブな激しさも覗かせつつ、エモーショナルなKyo嬢の歌声も魅力的だ。コンセプト的なスケール感で聴かせる、モダンな男女声ProgMetalの力作です。
ドラマティック度・8 スタイリッシュ度・8 女性Vo度・・7 総合・8
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MIND COLOUR
イタリアのプログレメタルバンド、マインド・カラーの2002作
G、B、Dr、Voというオーソドックスな4人組みでKeyはゲスト扱い。
プログレメタルといっても、さほど難解でないスタイルで、王道なメタルにプログレ味付けをしてみましたという印象。
ギターは時折クラシカルなフレーズを奏でたりするなど、なかなかの実力者で、
バンドサウンドの説得力を一手に担っている感がある。全体的には曲アレンジの抜けが悪く、
スリリングな部分が希薄なこともあり展開として爽快感にまでは至っていないのが惜しい。
メロディアス度・・7 プログレ度・・6 楽曲・・7 総合・・7
MIND DOORS 「THE EDGE OF THE WORLD」
スペインのプログレメタル、マインド・ドアーズの2019年作
優美なシンセを叙情的なギターに重ね、マイルドなヴォーカルとともに、ほどよいハードさとテクニカル性の同居したスタイリッシュなサウンドを描く。
オルガンやピアノを用いたシンセはシンフォプログレ寄りの繊細さがあり、しっとりと聴かせる叙情パートから流麗なギタープレイとともにじわじわと盛り上げる。
一方ではモダンな硬質感でテクニカルなパートを構築するあたりは、HAKENあたりにも通じる感触もあるが、全体としての優雅な叙情性はこちらの方が強い。
メロディアスな優雅さとハードさのバランスも良く、きらびやかなシンセが包み込む、シンフォニックなProgMetalが味わえる好作品だ。
ドラマティック度・8 テクニカル度・7 優美度・8 総合・8
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Mindflow 「Just the Two of Us ...Me and Them」
ブラジルのプログレメタル、マインドフロウの2005年作
シンセを含む5人編成で、ヘヴィかつモダンなアレンジとテクニカルな展開美で
DREAM THEATER以降の知的な構築力を漂わせるサウンドを聴かせる。
随所に美麗なシンセメロディやメロウなギターフレーズを盛り込みつつ、
全体的に重厚なダイナミックさに包まれた堂々たる作風。SEや小曲を挿入しながら、
近未来風のコンセプト的な世界観を描いてゆくセンスもなかなか見事な力作だ。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 重厚度・・8 総合・・8
Mindflow 「With Bare Hands」
ブラジルのプログレメタル、マインドフロウの2011年作
これが3作目で、シンセが抜けて4人編成となっている。サウンドはぐっと硬質感を増して
ギター主導のスタイルとなっている。モダンなヘヴィネスを含んだところもあるが
歌い上げるヴォーカルとともに聴かせる、南米メタルらしいメロディックな叙情も随所に残している。
4、5分台の楽曲は比較的シンプルで、1stの頃のようなドラマティックな大曲も欲しい気はするが、
演奏力とアレンジセンスのあるバンドならではの余裕を感じさせる質の高さはさすがというところ。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・7 モダン度・・8 総合・・7.5
MIND KEY「Journey of a Rough Diamond」
イタリアのプログレメタルバンド、マインド・キーの2004作
テクニカルな演奏に、きらきらとしたシンセワークが美しい、SHADOW GALLERYを思わせるようなドラマティックなProgMetal。
この手のバンドに多い自己満足系のサウンドではなく、複雑な展開の中にもメロディの聴かせ所は多く、
またヴォーカルの実力もあるのでマイナー臭さは感じられない。長い曲をしっかりと聴かせるだけの構成力も備えており、
とくにラストの11分の大曲は圧巻だ。随所にDREAM THEATERからの影響も感じさせつつも、
単なるフォロワーに陥ることなく、確かな技術とセンスを備えた質の高い作品である。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・8 ドラマティック度・・8 総合・・8
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MIND KEY「Graveheart」
イタリアのプログレメタルバンド、マインド・キーの2009年作
はドラマティックな傑作であったが、5年ぶりとなる2作目が届けられた。美しいシンセワークとテクニカルな演奏で
質の高いProgMetalであるのは変わらないが、音にはいくぶんモダンな雰囲気が増していて、
歌いあげるヴォーカルの確かな力量もあって、マイナー臭さはほとんど感じられず
ダイナミックに展開する楽曲はなかなかパワフルだ。手数の多いツーバスドラムや
ザクザクとしたリフに、きらびやかなシンセが合わさったモダンで重厚なサウンドながら、
叙情的なメロディを効果的に挿入させるなど、アレンジ的にもよく作り込まれている。
ゲストにWINGERのレブ・ビーチ、PLANET Xのデレク・シェリニアンが参加。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・8 ドラマティック度・・8 総合・・8
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MIND KEY「MK III - Aliens in Wonderland」
イタリアのプログレメタル、マインド・キーの2019年作
2004年にデビュー、本作は10年ぶりとなる3作目。ほどよくヘヴィなギターにシンセを重ね、
かすれた味わいのパワフルなヴォーカルとともに、キャッチーなメロディック性で聴かせる。
きらびやかなシンセワークと知的な展開力には、ProgMetal感触を匂わせつつも、
楽曲は4〜5分前後とわりとシンプルで、キャッチーなシンフォニックメタルとしても
曲によってはメロディアスハードとしても普通に楽しめる。各曲のメロディのフックもそつがなく心地よいし、
安定した演奏力とともにまとまっていて、キャリアのあるバンドの帰還というべきレベルの高い好作品だ。
メロディック度・・8 キャッチー度・・8 テクニカル度・・7 総合・・8
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MIND'S EYE「Waiting For The Tide」
スウェーデンのプログレメタル、マインズ・アイの2000年作
1998年にデビュー、本作は2作目で、やや地味な印象だった前作に比べて、
テクニカルな構築性とキャッチーなメロディのバランスがとれたサウンドに仕上がっている。
ときにシンフォニックで壮麗なアレンジに、北欧らしい涼やかな叙情性も覗かせて、
変拍子リズムを含んだProgMetalらしい構築性とともに、クールな優雅さに包まれる。
全体的には、次作に比べるとまだ洗練しきれてはいないが、センスの原石が光る好作といえる。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・7 キャッチー度・・8 総合・・7.5
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MIND'S EYE「A WORK OF ART」
スウェーデンのプログレメタルバンド、マインズ・アイの3rd。2002年作
前作の延長上の作風であるが、軽やかなテクニカル性とキャッチーで爽快なメロディに磨きがかかっている。
全体的にメタル的なヘヴィさよりも、どちらかというとENCHANT系のプログレハードの質感で
けっしてやかましくならず、聴いていてとても耳に優しい。包み込むようなキーボードやピアノの美しさや、
ときにメロウなフレーズを奏でるギターもセンスが良く、全てに調和がとれたスタイリッシュなサウンドである。
なお、限定盤は、前作2ndを丸ごと収録したボーナスDiscが付いた2CD仕様となっている。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・7 キャッチー度・・8 総合・・8
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MIND'S EYE「Walking On H2O」
スウェーデンのプログレメタルバンド、マインズ・アイの4th。2006年作
本作も、軽快なテクニカル性とキャッチーなメロディ、北欧らしい叙情とが絶妙なバランスで融合している。
かつての王道のプログレハード的なセンスを感じるギターと、きらきらとしたキーボードとが絡み合い、
そこにハードポップ風なキャッチーな歌メロとコーラスが重なるのだから、これは心地よくないはずがない。
全体的にシリアスすぎずポップすぎずという感じで、5、6分台の比較的コンパクトな曲がメインで聴きやすいし
アルバム後半のシンフォニックさも以前にないスケールを感じさせる。バランス感覚に優れたProgMetalとしてお勧めしたい逸品だ。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・7 キャッチー度・・8 総合・・8
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MIND'S EYE「A Gentleman's Hurricane」
スウェーデンのプログレメタルバンド、マインズ・アイの5th。2007年作
本作はのっけから映画を思わせるSEで始まり、これまでになくコンセプチュアルな雰囲気。
ドラマティックさを前面に押し出した重厚なサウンドは、爽やかなキャッチーさよりもメタリックな硬質感が感じられ、
ProgMetal的なカラフルな展開力が同居していて、サウンドのクオリティ的には確実にアップしているといってよいだろう。
ただ、個人的には前作の聴きやすさが気に入っていたので、そこは痛し痒しというところか。
全74分の濃密なサウンドは少し聴き疲れがしてしまうものの、まごうことなき力作である。
メロディアス度・・8 ドラマティック度・・8 プログレメタル度・・8 総合・・8
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MIND'S EYE 「1994/Afterglow」
スウェーデンのプログレメタル、マインズ・アイの2008年作
Afterglowの名で活動していたデビュー前、1994年の音源で、後のキャッチーな作風に比べると
もっとテクニカルで硬質感の強いProgMetalサウンドをやっている。シンセの入らない4人編成を基本に、
テクニックのあるギターワークとを変拍子入りの展開力、ハイトーンヴォーカルを乗せた作風は、
中期以降のFATES WARNINGあたりにも通じる知的な構築センスを感じさせる。
のちの作品に比べてメロディックな感触はいくぶん薄いが、バンドのファンであればチェックすべし。
メロディック度・・7 テクニカル度・・7 楽曲・・7 総合・・7.5
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MONNALISA 「IN PRINCIPIO」
イタリアのプログレメタル、モナリザの2017年作
オルガンを含むシンセに適度にヘヴィなギター、イタリア語のヴォーカルを乗せた、
シアトリカルな味わいのハードプログレ風味のサウンド。漂わせるローカルな翳りと
ウェットなドラマ性に包まれた世界観は、Black Jeaterあたりに通じるものもある。
変拍子によるテクニカルな味わいも覗かせつつ、うっすらとした幻想性とともに、
メタリック過ぎない感触なので、むしろハードなシンフォニックロックとしても楽しめる。
プログレらしいシンセワークとともに、ほどよくマイナーな味わいが魅力の好作品です。
ドラマティック度・・8 幻想度・・8 イタリア度・・8 総合・・7.5
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Moonlight Comedy「The Life Inside」
イタリアのプログレメタルバンド、ムーンライト・コメディの2004作
ストーリー的なコンセプトを感じさせる、ドラマティックなProgMetal。
ヘヴィなギターワークに美しいシンセが重なる重厚なサウンドで、ダークな叙情性で聴かせるプログレパワー的な楽曲は聴き応えがある。
反面、きらびやかな展開美はよろしいが、メロディの魅力という点では物足りない。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 重厚度・・8 総合・・7
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Moonlight Comedy「Dorothy」
イタリアのプログレメタルバンド、ムーンライト・コメディの2007年作
ストーリー的な語りから始まるコンセプト作で、モダンなシンセアレンジと
テクニカルな展開力で聴かせるサウンドは、なかなかクオリティが高い。
プログレパワー的なヘヴィさとともに、PAIN OF SALVATIONあたりを思わせる
知的な雰囲気と歌による緩急の付け方がセンスよく、いくぶんのダークさとともに
甘すぎないメロディを聴かせるところは同郷のPATHOSRAYあたりにも近いか。
楽曲単位ではとっつきが悪い感じもあるが、アルバム全体として楽しむ作品と言えるだろう。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 重厚度・・8 総合・・7.5
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The MOOR 「Year Of The Hunger」
イタリアのモダン・プログレメタル、ムーアの2012年作
キャッチーなメロディとメタルコア的なモダンなヘヴィさも含んだサウンドで、
エモーショナルロック風味と知的な展開力を融合させたというような作風。
ときにスクリームも含んだ激しいパートも現れるなど、カオティックコア的な感触もありつつ、
基本はマイルドなヴォーカルで聴かせるモダンな耳心地だ。シンセがいない分、ツインギターによるリフが前に出ていて、
全体的に耳を惹くような叙情性は薄く、プログレメタルとしては少し物足りないか。今後の進化に期待したい。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・7 モダンヘヴィ度・・8 総合・・7.5
Music Station 「Shaping」
ブルガリアのプログレメタル、ミュージック・ステーションの2003年作
ツインギターにシンセを含む6人編成で、キャッチーなメロディとやわらかなヴォーカルを乗せて
適度にテクニカルな展開力で聴かせる、プログレ・ハードロックサウンド。
ツインギターは随所にメロディックなハモリを聴かせ、プログレ的なシンセアレンジとともに
軽やかに構築される楽曲は、地域性を考えればかなりの高品質といえるだろう。
曲によっては古き良きメロディアスハード風味などもありつつ、しっかりとした演奏力とともに
7曲目あたりはDTばりの展開美で楽しめる。派手さはないがじっくりと楽しめる好作品だ。
メロディック度・・8 キャッチー度・・8 構築センス・・8 総合・・8
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My Soliloquy「Interpreter」
イギリスのプログレメタル、マイ・ソリロキーの2013年作
ヴォーカル、ギター、ベース、シンセをこなすマルチプレイヤーとドラムの2人組で
美麗なシンセアレンジと、適度にモダンな硬質感を含んで構築されるサウンド。
楽曲には知的な展開力を感じさせるのだが、メロディのフックにこれという魅力がないのと、
いくぶん貧弱なヴォーカルの声質なども好みが分かれるだろう。中途半端なテクニカルさと
抜けきらないメロディももどかしい。ドラマティックな要素をシンプルにレベルアップしてもらいたい。
ドラマティック度・・7 展開美度・・7 楽曲・・7 総合・・7
MYRATH「Desert Call」
チュニジアのプログレメタルバンド、ミラスの2010年作
アラビックな旋律を取り入れたORPHANED LANDあたりに通じる民俗プログレメタルで、
DREAM THEATER的な構築センスと、重厚なドラマ性で描かれるサウンドは、
ヴォーカルの表現力をはじめとして演奏陣のレベルも高く、マイナー臭さがない。
民族的なパーカッションやシンセのメロディ、ギターのフレーズにも独自の中近東色があって
それがダイナミックなメタルサウンドに見事に融合されている。
一方ではメロディにはキャッチーな聴きやすさもあって、そのバランス感覚のセンスも素晴らしい。
アルバム後半になると民俗色は薄れて、普通のシンフォメタルになるが、総じて質の高い力作だ。
ドラマティック度・・8 重厚度・・8 中近東度・・8 総合・・8
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MYRATH「Tales of the Sands」
チュニジアのプログレメタルバンド、ミラスの2011年作
前作も民俗色を取り入れた高品質な作品だったが、今作もシンフォニックな美麗さに
中近東的なフレイバーを融合させたORPHANED LANDにも通じるサウンド。
随所に母国語の歌唱を織り込んだり、女性コーラスなどもアクセントになっていて
緻密なアレンジと展開力も含めて、サウンドのスケール感は前作以上だ。
曲は3〜5分台と比較的コンパクトなので難解さもなく、曲によってはクラシカルな質感や
モダンな薄暗系プログレのような情感もあり、バンドとしての懐の深さを感じさせる。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 楽曲センス・・8 総合・・8
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Myrath 「Legacy」
チュニジアのプログレッシブメタル、ミラスの2016年作
過去2作は、Orphaned Landにも通じるハイクオリティな出来であったが、3作目となる本作は、
オーケストラルなアレンジによる壮麗なシンフォニック性と、民族的なメロディをモダンに構築した、
独自のサウンドに磨きがかかっている。メロディックなギターフレーズとコーラスを含む音の厚みで
スケールの大きな世界観を描きつつ、どっしりとした重厚さに包まれたメタリック性をセンスよく融合、
中近東的な感触を残しつつも辺境臭さは感じさせない、より多くのリスナーに向けられたアレンジで、
その質の高さが見事である。最近のBLIND GUARDIANなどにも通じるドラマティックな空気感もありつつ、
もはやProgMetalというよりは、民族的シンフォニックメタルというべき、壮麗な傑作に仕上がっている。
ドラマティック度・・8 壮麗度・・9 重厚度・・8 総合・・8
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Myrath 「Shehili」
チュニジアのプログレッシブ・メタル、ミラスの2019年作
2007年にデビュー、本作は5作目で、エキゾチックなイントロで幕を開け、民俗的な旋律とともに
メタリックなギターが重なり、美麗なシンセアレンジにパワフルなヴォーカルを加えた、
初期のOrphaned Landにも通じるアラビックでドラマティックなメタルサウンドを展開する。
オーケストラルなアレンジによるシンフォニックメタルとしての壮麗な聴き心地が増していて、
楽曲自体も、4〜5分前後と比較的シンプルな作風なので、KAMELOTなどのファンにも楽しめるだろう。
個人的にはエスニックな民族色がもっとあってもよいと思うが、このバランスの良さが絶妙でもある。
ドラマティック度・・8 民族度・・7 壮麗度・・8 総合・・8
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MYRATH 「Live in Carthage」
チュニジアのプログレッシブメタル、ミラスのライブ作品。2020年作
2007年にデビュー、これまでに5作のアルバムを発表し、アラブ系PrpgMetalのトップへ踊り出したこのバンド。
本作は母国チュニジア、カルタゴでのライブをCD+DVDに収録。美麗なシンセワークにメタリックなギター
アラビックな旋律を含んだメロディとキャッチーな優雅さが合わさった、独自のサウンドを聴かせる。
ときにオルガンなどのオールドな味わいのシンセに流麗なギタープレイ、伸びやかなヴォーカルを乗せ、
ときにテクニカルに、そしてメロディアスに、確かな演奏力とともに、緩急ある楽曲をドラマティックに構築してゆく。
CDには17曲76分を収録。DVDは18曲92分で、ペルシア絨毯の敷かれた舞台に艶めいた踊り子が現れ
アラビックな踊りを披露するなど、視覚的にもゴージャスな躍動感に包まれたステージが鑑賞できる。
ライブ演奏・・9 ライブ映像・・9 アラビック度・・9 総合・・8.5
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Myth Of I
アメリカのテクニカルメタル、ミス・オブ・アイの2020年作
ギターのアルペジオによる叙情的なイントロから、テクニカルで硬質なリズムに流麗なツインギターを乗せ、
Djent的なモダンでテクニカルなメタルサウンドを聴かせる。歌の入らないオールインストなので、
BGMになりがちであるが、変則リズムを含むテクニカル性の中に、ほどよい叙情的なギターフレーズも覗かせ
起伏のある展開力で構築してゆく。楽曲は4〜5前後であるが、インストなのでこれくらいで丁度よいか。
全体的にはやはり歌があった方が、もう少しドラマティックな感じにはなると思うのだが。
ドラマティック度・7 テクニカル度・8 スタイリッシュ度・8 総合・7.5
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MYTHOLOGIC「STANDING IN STILLNESS」
アメリカのプログレメタルバンド、ミソロジックの1st。2003作
メンバーはLEGER DE MAINやRH FACTOR等で知られるロドラー兄弟を中心に、
女性ヴォーカルのメリッサを含めて、「ほぼLEGER DE MAIN」といったところ。
サウンドの方もやはりテクニカルな変拍子リズム+女性VoというLEGER DE MAINを引き継いだもの。
マルチ・プレーヤーであるクリス・ロドラーが今回はシンセをあまり弾かず、
ギターとベースに集中しているせいか、LEGER DE MAINの1stで聴かれたシンフォニックな叙情は薄く、
ある意味、押しと反復のプログレメタル・サイケ的にも聴こえる音像である。
おそらくこうした「展開があるようでない」楽曲は、PROG METALリスナー以外には
無意味に思える部分もあるだろうが、私のような人間にはなかなか心地よい。
メロディアス度・・7 プログレ度・・8 楽曲・・7 総合・・7.5
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N
N8「Reality…Fate」
イタリアのプログレメタルバンド、エヌ・エイトの1999作
90年代後半はイタリアからProgMetalバンドが次々に出ていたが、これもそのひとつ。
日本盤まで出ていたこともあって、サウンドの質はなかなか高く、ヘヴィなギターリフと
それに適度にからむシンセ、ハイトーンのヴォーカルでしっかりとした演奏を聴かせる。
DREAM THEATERというよりはQUEENSRYCHEの方に近いかもしれない。
本作の時点では、メロディにしろ曲展開にしろ抜きに出た部分がまだないのであるが、
イタリア人らしからぬあまり熱くならないクールな構築性にはなかなかセンスを感じる。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・7 楽曲・・7 総合・・7.5
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NATIVE CONSTRUCT 「Quiet World」
アメリカのプログレメタル、ネイティブ・コンストラクトの2015年作
バークリー卒というギタリストを中心にした若手バンドで、知的な構築力にシアトリカルなドラマ要素と、
モダンなキャッチーさを混在させたというようなサウンドは、やや唐突なリズムチェンジも含めて非常にせわしなく、
ダイナミックな勢いに満ちている。激しいヘヴィネスを聴かせたと思いきや、QUEENのようなポップなコーラスに
シンフォニックな優美さも覗かせつつ、いきなり強烈なブラストパートが現れたりと、聴き手の予想のつかない展開で
例えば、Between the Buried and Meあたりにも通じるような、若手らしいなんでもありのごった煮感に包まれている。
また凄いバンドが出てきたな…いわば優雅なるヘンタイというか、極端な振り幅が楽しめる方にはおススメです!
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 優雅なヘンタイ度・・9 総合・・8
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NAWATHER 「KENZ ILLUSION」
チュニジアのプログレメタル、ナワサーの2021年作
2015年にデビューして、2作目となる。アラビックな旋律に、女性ヴォーカルを乗せたイントロから、
メタリックなギターに艶やかなヴァイオリンの音色、モダンできらびやかシンセアレンジとともに、
低音デスヴォイスを乗せたアグレッシブな迫力と、民族調のメロディが同居したサウンドを構築する。
同郷のMTRATHに比べるとより振り幅の大きな作風で、重厚でモダンな硬質感に包まれつつ、
女性ヴォーカルが優雅なコントラストになっている。全体的にはデス声のパートが多いので、
初期のORPHANED LANDなどに通じるところもあるだろう。今後も期待の民族メタルです。
ドラマティック度・8 アラビック度・8 重厚度・8 総合・8
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NEFESH 「Contaminations」
イタリアのプログレメタル、ネフェシュの2014年作
シンセを含む5人編成で、がなりヴォーカルを乗せたヘヴィな激しさと、
美しいシンセアレンジや随所にメロディックなギターを融合させたスタイルで、
いうなれば、デスメタル風味もあるプログレメタルというような感触である。
適度な展開力もあるがテクニカルというほどではなく、メロディックな盛り上がりもさほどではない、
かといって、デスメタルほどは激しくもないという、どっちつかずの方向性なので、かなり微妙デス。
どっちかというとメタルコア系のリスナーの方が聴けるのではないかと思いますが。とても微妙デス。
メロディック度・・6 ProgMetal度・・6 重厚度・・7 総合・・6.5
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NEMESIS「ABRAXAS」
ハンガリーのプログレメタルバンド、ネメシスのアルバム。1999作
キーボード入りの5人組みで、基本はDREAM THEATERタイプのプログレメタルだが、
歌詞やメロディなどには、中近東系のフレーズを配した個性的な雰囲気があり、
母国語の歌唱も異国情緒が漂っていてけっこう新鮮だ。
30分に及ぶ組曲形式の大曲といい、構成、アレンジ力ともなかなかで
この手のProg Metal好きにはアピールするものが多いと思う。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・7 中近東度・・7 総合・・7
Neverland「Schizophrenia」
スイスのプログレメタルバンド、ネヴァーランドの2007年作
ツインギターにシンセを含む6人組で、疾走するメロパワ要素とテクニカルな演奏、
そしてProgMetal的な知的な展開美で聴かせる、なかなか質の高いサウンド。
コンセプト風味のストーリーを感じさせるドラマティックな雰囲気とともに、
プログレパワー的な重厚さで構築される楽曲は、5〜6分台が中心ながら
テクニカルなギタープレイと美しいシンセワークに濃密に彩られている。
ドラマティック度・・8 展開美度・・8 楽曲センス・・7 総合・・7.5
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Next to None 「A LIGHT IN THE DARK」
アメリカのプログレメタル、ネクスト・トゥ・ノーンの2015年作
Mike Portnoyの息子、Max Portnoyが在籍するバンドで、プロデュースは父親であるマイク・ポートノイ。
モダンなヘヴィネスとテクニカルなアンサンブルで、やはりDREAM THEATERを彷彿とさせるサウンドに、
スクリームヴォイスを加えたメタルコア的な質感も覗かせる。父親譲りの手数の多いドラムを中心に、
若手ながらも安定した演奏力で、適度な激しさとダークな叙情を含ませて、8〜9分という大曲を構築する。
シンセアレンジもどこかジョーダン・ルーデス的で、楽曲における遊び心あるアレンジと緩急ある展開力は、
DTを参考にするところも大きいのだろうが、息子によるフォロワーという部分を差し引いてもなかなかレベルが高い。
アルバム中盤はやや中庸のナンバーもあるが、DTタイプのモダンなプログレメタルとしては十分なデビュー作だろう。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 DT度・・8 総合・・8
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Next to None 「Phases」
アメリカのプログレメタル、ネクスト・トゥ・ノーンの2017年作
Mike Portnoyの息子、Max Portnoyが在籍するバンドで、2作目となる本作は、モダンなヘヴィネスと、
アヴァンギャルドな感触を増した聴き心地で、スクリームするヴォーカルを乗せたメタルコア風味が強まった。
シンセアレンジを含んだ音の厚みと、テクニカルな展開力が合わさって、いくぶん唐突な味わいが面白い。
手数の多い父親譲りのドラムに重量感のあるベースのリズム隊は、ときにDjent的な感触も描いていて、
いかにも若手バンドらしい勢いと激しさに包まれている。10分前後の大曲では、知的な展開力とともに、
DREAM THEATERを思わせる雰囲気も覗かせる。ラストは20分に及ぶ大曲で、全78分という力作。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・8 モダンヘヴィ度・・8 総合・・7.5
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NIACIN
ビリー・シーン、ジョン・ノヴェロ、デニス・チェンバースによるユニット、ナイアシンの1996年作
オルガンが鳴り響き、軽妙なアンサンブルで聴かせるテクニカルで優雅なインストサウンド。
軽やかなリズムはフュージョン的でもあり、技巧的なジャズロック風味もあったりして、
つまりはプログレとしても楽しめる。ギターがいないので、メロディはオルガン中心であるが、
ビリー・シーンのベースの存在感も含めて、凄腕メンバーによる演奏をじっくり鑑賞できる。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・8 フュージョン度・・8 総合・・7.5
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NICODEMUS「VANITY IS A VIRTUE」
ポーランドのプログレメタルバンド、ニコデムスの2005年作
耽美なジャケの雰囲気からてっきりゴシック系かと思いきや、ややダークなプログレメタルでした。
ポーランドというお国柄か、バックのシンセやヴォーカルにはどこかに翳りがあり、
同郷のRIVERSIDEあたりを思わせる薄暗い叙情的な部分もある。
変拍子の上で絡むツインギターもいい感じだし、曲の雰囲気も悪くないのだが
まだまだ重厚なドラマティックさを描ききれてはいないようなので、
曲のスリム化をはかるか、あるいは派手さの説得力をもう少し上げていって欲しい。
ときおりデス声も出てきて、Eあたりでの爽やか声とデス声の掛け合いは面白い。
メロディアス度・・7 プログレ度・・7 雰囲気度・・8 総合・・7
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NIGHT CLOUD「DETEATED BY THE INNOCENTS」
イタリアのプログレメタルバンド、ナイト・クラウドのアルバム。2004作
ツインギターにキーボード入りの5人組で、DREAM THEATERやSYMPHONY Xなどからの影響を感じさせるサウンド。
アコギやピアノなどのしっとりしたパートが美しく、歌いあげるタイプのヴォーカルもなかなか。
ゲストのフルートやフラメンコギターなどを曲に折り込むなどアイデアも多く、長めの大曲をこなすところなど意気込みを感じる。
曲の展開も多く、テクニカルなリズムや切り返しもあってなかなか多彩だが、
楽曲としてまだいくぶん未整理で、消化しきれていないという印象もある。
ジャケの地味さも含めて「聴かせる・魅せる」というポイントを絞っていってほしい。
メロディアス度・・7 プログレメタル度・・8 楽曲・・7 総合・・7
NOCET「NOCET」
ブラジルのプログレメタルバンド、ノーセットの1st。
メロディアスなギター、キーボードを中心とした聴きやすいプログレハード。
テクニック的にも申し分なく、メロディもB級臭さがない。
たとえばエンチャントやジャディスなどにも通じるたおやかな音作りだ。
メロディアス度・・8 メタル度・・7 プログレ度・・7 総合・・7
North Of South 「The Dogma & The Outsider」
スペインのプログレッシブ・メタル、ノース・オブ・サウスの2020年作
マルチミュージシャン、チェチュー・ノスによるプロジェクトで、2018年にデビューし2作目。
メタリックなギターにマイルドなヴォーカルを乗せ、キャッチーな叙情と知的な展開力に、
ときにスクリームヴォイスも加えた、モダンでスタイリッシュなプログメタルを聴かせる。
スパニッシュ風のアコースティックギターなども取り入れたやわらかな叙情性や、
Diabulus in Musicaのズベロア嬢がゲスト参加した、男女ヴォーカルのナンバーなども含め、
つかみどころのないカラフルな味わい。全32分、インパクトのあるパートがもっと欲しいか。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・7 楽曲度・・7 総合・・7
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Nova Collective 「The Further Side」
イギリスのテクニカルメタル、ノヴァ・コレクティブの2017年作
HAKENのギター、リチャード・ヘンシャルを中心に、BETWEEN THE BURIED AND MEのベース、
元HAKENのシンセ、元CYNICのドラムが参加したユニットで、変拍子を盛り込んだ軽妙なリズムに
うねりのあるベースとシンセを乗せ、ジャズロック、フュージョン風味に、Djent時なモダンな感触を加えた
テクニカルメタルを聴かせる。オルガンなどを含むシンセワークはプログレ的で、ギターもヘヴィすぎず、
ときに軽やかなフレーズをまじえながら、適度にメロディックな味わいのインストサウンドを描いてゆく。
6〜9分という長めの楽曲を主体に、オールインストながらも優雅なアンサンブルで耳心地よく楽しめ、
メタル感触がさほど強くないので、プログレ・ジャズロックが好きな方にも薦められる。
メロディック度・・7 テクニカル度・・8 優雅度・・9 総合・・8
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NOVENA 「Eleventh Hour」
イギリスのプログレメタル、ノヴェナの2020年作
HAKENのヴォーカル、ロス・ジェニングスも参加、Slice The CakeのVoとのツインヴォーカル編成で、
メロディックなギターにマイルドなヴォーカルを乗せたキャッチーな優雅さに、ときに低音グロウルも加えた
モダンなヘヴィネスも覗かせたスタイリッシュなサウンドを聴かせる。伸びやかなヴォーカルに優美なピアノ、
ポストプログレ的でもある繊細な歌もの感から、メタルコア的なヘヴィさまで、振り幅の大きな構築力が楽しめる。
10分、15分という大曲を含む、全73分という力作であるが、個人的にはもう少しシンプルな盛り上がりが欲しいかも。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 スタイリッシュ度・・8 総合・・7.5
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O
OCEANS OF SLUMBER 「THE BANISHED HEART」
アメリカのモダン・プログレメタル、オーシャンズ・オブ・スランバーの2018年作
2013年にデビューし、本作は3作目。黒人系女性Voをフロントにした5人編成で、
メタリックなギターにエモーショナルな女性ヴォーカルを乗せ、緩急ある展開力とともに、
ほどよくダークでドラマティックなサウンドを描く。随所にデスメタルばりのアグレッシブなブラスト疾走や
デスヴォイスも加えた迫力あるパートから、ゴシックメタル風のメランコリックな叙情も覗かせるなど、
振り幅の大きなサウンドは、第三代のエクストリームメタルというべきか。しっとりとしたパートでは
Cammie嬢の伸びやかな歌声の表現力が素晴らしい。激しさと女性声のコントラストが強力な力作です。
ドラマティック度・8 激しく重厚度・8 女性Vo度・8 総合・8
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OCEANS OF SLUMBER
アメリカのプログレ・シンフォニックメタル、オーシャンズ・オブ・スランバーの2020年作
2013年にデビューし4作目となる。黒人系女性Voをフロントにした6人編成で、テクニカルなリズムに
メタリックなギターとシンセを重ね、エモーショナルな女性ヴォーカルで、スケール感のあるスタイリッシュなサウンドを描く。
随所にデスヴォイスを絡めたアグレッシブな重厚さと、オーケストレーションを重ねた壮麗な優雅さが同居した味わいで、
デスメタル的な激しい疾走パートから、ゆったりとした優美なシンフォニックメタルのパートが交差する。
インストの小曲なども含めて、コンセプト的な流れがドラマティックな世界観を描いていて、Cammie嬢の歌声も
ときに妖しい表現力に包まれる。女性声メインのエクストリームなメタルとしては、CRETURAなどにも通じるだろう。
プログレッシブな展開力と重厚な迫力、力量ある女性ヴォーカルで聴かせる、全71分という力作デス。
ドラマティック度・・8 重厚度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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Octavision「Coexist」
多国籍のプログレメタル、オクタヴィジョンの2020年作
アルメニア出身のギタリスト、ホヴァク・アラヴェルティアンを中心にしたプロジェクトで、
ジャズ系の凄腕ベーシスト、ヴィクター・ウッテンをはじめ、ビリー・シーン、ジェフ・スコット・ソートも参加、
硬質感のあるリズムに、ほどよくヘヴィで巧みなギタープレイを乗せ、きらびやかなシンセアレンジとともに、
スタイリッシュなインストサウンドを展開。ヴォーカルが加わったナンバーでは、キャッチーな味わいもありつつ、
間奏部では、ときにDREAM THEATER的なテクニカルなパートも垣間見せる。10分近い大曲もあり、
叙情的なギターのフレージングや、わりとプログレ寄りのシンセワークにフルートも鳴り響くなど、
優雅な構築力で楽しめる。凄腕のベーシストたちのプレイも含めて、玄人好みに鑑賞可能の逸品。
ドラマティック度・7 テクニカル度・8 優雅度・8 総合・8
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OCTOBER THORNS「CIRCLE GAME」
アメリカのプログレメタル、オクトーバー・ソーンズの2022年作
ツインギターにシンセを含む6人編成で、流麗なギタープレイにきらびやかなシンセを重ね、伸びやかなヴォーカルとともに
DREAM THEATERにも通じるドラマティックなProgMetalを聴かせる。リズムチェンジを含むテクニカルな構築力と
美麗なシンセワークと巧みなギターが厚みのあるサウンドを描いて、ヴォーカルのラブリエばりのハイトーンもなかなか魅力的。
モダンでクールなアレンジも随所に覗かせて、単なるフォロワー以上のセンスの良さを感じさせる。楽曲自体は5〜6分前後と長くはないが、
ほどよくアグレッシブで非常に濃密な聴き心地。爽快でキャッチーなラストナンバーも悪くない。ProgMetalに期待の新鋭である。
ドラマティック度・8 テクニカル度・8 構築センス・8 総合・8
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Odd Dimension「Symmetrical」
イタリアのプログレメタル、オッド・ディメンションの2011年作
シンセを含む5人編成で、テクニカルな展開力と重厚さを含んだドラマ性で聴かせる。
シンセのアレンジなどはときにもDREAM THEATERを思わせるようなセンスもあり、
軽妙なアンサンブルで巧みに構築する巧みな演奏力もしっかり備わっている。
曲はほとんど6分台で、ときなプログレパワー的なヘヴィさやクラシカルな美意識も含んで
最後まで飽きずに楽しめる。技術とセンスが融合された高品質なProgMetalアルバムだ。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 楽曲・・8 総合・・8
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Odd Dimension「Last Embrace to Humanity」
イタリアのプログレメタル、オッド・ディメンションの2013年作
前作もなかなか高品質なアルバムだったが、本作も美しいシンセと適度にモダンなアレンジ、
そしていくぶんダークな雰囲気とともに構築される、レベルの高い正統派ProgMetalサウンドである。
シアトリカルな情感を含んだヴォーカルも含めて、コンセプト的なドラマティックさを漂わせつつ、
一方ではメロウなギターで聴かせるキャッチーな曲もあって、作品としてのメリハリのつけ方は
DREAM THEATER的なセンスも感じさせる。重厚さと叙情のバランスのとれた見事な作品だ。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 重厚度・・8 総合・・8
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ODD DIMENSION 「THE BLUE DAWN」
イタリアのプログレメタル、オッド・ディメンションの2021年作
2011年にデビュー、本作は8年ぶりとなる3作目。SFは映画のような雰囲気のイントロで幕を開け、
きらびやかなシンセワークととともに、軽やかなリズムにかすれた味わいのヴォーカルを乗せて
DREAM THEATERルーツのメロディックなプログレメタルを展開。オルガンなどを含むシンセは、
オールドなプログレらしい感触もあって、ときにシンフォニックに楽曲を彩っていて主役級の働きぶり。
デレク・シェリニアン(Planet X)がシンセで参加した、キャッチーで優美な味わいの10分の大曲や、
ゲストの女性シンガーが歌うシンフォニックメタル風、ロベルト・ティランティ(Labyrinth)が参加しての
男女ヴォーカルの優雅なナンバーなども含めて、わりとバラエティに富んだサウンドが楽しめます。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 叙情度・・8 総合・・8
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ODD LOGIC 「LEGENDS OF MONTA Part II」
アメリカのプログレメタル、オド・ロジックの2009年作
タイトルからして物語的なコンセプトアルバムの2作目なのだろう。美麗なシンセに語りの入ったイントロから、
メタリックなギターリフとテクニカルなリズムによる、ProgMetalサウンド。リズムは打ち込みながら、
きらびやかなシンセアレンジに伸びやかなヴォーカルを乗せ、ドラマティックに構築するスタイルは、
テクニカルなリズムチェンジや展開力も含めて、DTRAM THEATERにも通じる感触がある。
オルガンなども使ったシンセワークや技巧的なギターも、自主制作にしてはなかなかレベルが高く、
CDR作品ではあるが、壮大な物語を描くようなサウンドが楽しめる、全72分の力作だ。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 壮大度・・8 総合・・7.5
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ODIN'S COURT 「HUMAN LIFE IN MOTION」
アメリカのプログレメタル、オーディンズ・コートの2011年作
ヘヴィなギターリフとテクニカルなリズム、中音域のヴォーカルとシンセによるアレンジで聴かせる、
メロディックで重厚なProgMetalサウンド。随所に流麗なフレーズを奏でるギターのセンスもよろしく、
テクニカルな展開力を前に出したスタイルであるが、ゆったりとした歌ものナンバーなど、
繊細な表現力もしっかりとある。楽曲は4〜5分前後と長すぎず、メタリックな硬質感と、
キャッチーなメロディアス性をバランスよく融合させていて、メリハリのあるスリリングな聴き心地。
いくぶん混沌とした濃密さと、モダンなヘヴィネスを、知的な構築センスで描く力作です。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 重厚度・・8 総合・・8
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Odin's Court 「The Warmth of Mediocrity」
アメリカのプログレメタル、オーディンズ・コートの2013年作
2003年デビューという、中堅クラスのキャリアがあるバンドで、本作は過去曲のリミックスを中心にしたアルバム。
ヘヴィなギターにうっすらとしたシンセと伸びやかなヴォーカルを乗せて、適度にテクニカルな展開力で聴かせる、
重厚でドラマティックなProgMetalサウンド。アメリカのバンドらしい抜けの良い歌メロやギターの奏でる叙情的なフレーズは、
けっこう日本人好みで、作品のクオリティとキャリアを考えれば、もっと知名度があってもよいバンドだろう。
ときにきらびやかなシンセとともにシンフォニックな音の厚みや、優雅なテクニカル性も覗かせつつ、
キャッチーでメリハリのあるサウンド楽しめる。好曲多数の全64分。バンドの入門用にも良いですな。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 重厚度・・8 総合・・8
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ON THE VIRG「SERIOUS YOUNG INSECTS」
テクニカルメタルバンド、オン・ザ・ヴァーグの1999年作
PLANET Xで活躍するドラマー、ヴァージル・ドナーティ率いるバンドで、
基本はオールインストの(やや変態入った)メタルフュージョンというサウンド。
テクニカルかつ軽やかな演奏は、やはりPLANET Xに通じる質感が多分にあり、
変幻自在のドナーティのドラムとそのリズムセンスは、やはり素晴らしいという他ない。
ときおりメタリックな色も見せるギターのテクニックも相当のもので、
デレク + ケヴィン・ムーアという感じのシンセもなかなか良い仕事をしている。
PLANET X系のテクニカル・フュージョンメタルが好きなら、これは聴くべし。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・8 ドナーティ度・・9 総合・・8
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Ora Nombro 「Between Man and Machine」
イタリアのプログレメタル、オラ・ノンブロの2010年作
シンセを含む4人編成で、スペイシーでデジタルなシンセと適度にハードなギターを乗せ、
変拍子を含むテクニカル性ときらびやかなシンフォニック性が合わさった、モダンなProgMetalサウンド。
メロディの流れはキャッチーで、マイルドなヴォーカルが加わると、DREAM THEATER的な雰囲気にもなる。
テクニカルなインストパートで聴かせる10分を超える大曲もありつつ、5分前後のわりとシンプルな歌ものナンバーもあり、
全体的にもメロディアスな感触が前に出ていて聴きやすい。軽妙なアレンジセンスも含めて、今後の成長が楽しみなバンドである。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・8 モダン度・・8 総合・・8
ORDINARY MILE
アメリカのプログレメタル、オーディナリー・マイルの2006年作
マルチプレイヤー二人組のユニットで、やわらかなシンセアレンジにマイルドなヴォーカルと、
適度にハードなギターを乗せた、メロウでキャッチーな味わいのハードプログレサウンド。
ドラムは打ち込みなので、リズム的な部分でのスリリングなグルーブはないのだが、
メロディ重視の楽曲はなかなか耳心地よく、キャッチーなProgMetalとしても楽しめる。
一方では印象的なメロディや展開が足りないので、作品全体としてのインパクト不足は否めない。
CDR配給なので、いかにも自主制作といった感じだが、方向性は悪くない。全14曲63分の力作。
メロディック度・・8 テクニカル度・・7 楽曲・・7 総合・・7
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ORDINARY MILE 「NEW HORIZONS」
アメリカのプログレメタル、オーディナリー・マイルの2007年作
2006年にデビューし、2作目となる。メタリックなギターにモダンなシンセアレンジ、パワフルなヴォーカルを乗せ、
ほどよくヘヴィで翳りを帯びたサウンドを描き出す。叙情的なギターの旋律やハイトーンの歌声も含めて、
いくぶんFATES WARNINGなどにも通じる感触もあるが、よりスタイリッシュな硬質感に包まれている。
楽曲は4〜5分前後とわりとシンプルで、テクニカルな展開力よりは、モダンな浮遊感を描いていて、
耳心地はよいものの、ドラマティックな盛り上がりや、メロディのフックという点では物足りないか。
ドラマティック度・7 テクニカル度・7 叙情度・7 総合・7
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ORENDA 「A Tale of a Tortured Soul」
フランスのプログレメタル、オレンダの2008年作
シンセを含む5人編成で、美麗なシンセワークとテクニカルな構築力を合わせた、
なかなかスケールの大きなProgMetalサウンド。マイルドなハイトーンヴォーカルに、
DREAM THEATER以降の知的な展開美と、適度に重厚さでもって大曲を描き出してゆく。
静と動のメリハリに富んだアレンジは、ときにヨーロピアンプログレ的な感触もあり、
フランスらしいシアトリカルな雰囲気も随所に覗かせる。13分、15分という大曲も
メロディアスかつドラマティックに構成され、聴き応えのある力作に仕上がっている。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 構築センス・・8 総合・・7.5
ORPHEO 「ECHOES」
オランダのプログレメタル、オルフェオの2005年作
オルガンを含むシンセに適度にハードなギターとハスキーな女性ヴォーカルを乗せた、
ハードプログレ寄りのサウンド。きらびやかなシンセワークとメロウなギターの絡む技巧的な味わいと、
女性声を乗せたキャッチーなメロディアス性がよいあんばいで、ヘヴイ過ぎない聴き心地は
プログレとメタルどちらのリスナーにも楽しめる作風だ。紅一点、Wendelin嬢の歌声は、オーセンティックなロックを歌うような
伸びやかな魅力があってマイナー臭さがない。シンセの使い方はかなりプログレ/シンフォニック寄りで、
16分という大曲も、優雅で叙情的なパートを含んだ構築センスが光る。感動的なラスト曲まで、全70分の力作です。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8
OSI 「OFFICE OF STRATEGIC INFLUENCE」
FATES WARNINGのジム・マテオス、元DREAM THEATERのケヴィン・ムーア、マイク・ポートノイ、
CYNICのショーン・マローンによるユニット、オフィス・オヴ・ストラティジック・インフルエンスの2003年作
このメンツということで物凄いものを期待してしまうが、1曲目こそテクニカルパートが炸裂しているものの
その後は技巧的な要素は控えめで、むしろソフトなヘヴィプログレというようなサウンドになっている。
Voを担当しているケヴィン・ムーアのダウナーな声質もあってか、全体的に薄暗い雰囲気に包まれていて、
モダンなシンセアレンジやヘヴィなリフの反復による、浮遊感のあるプログレロックという作風だ。
Porcupine Treeのスティーヴン・ウィルソンがヴォーカルでゲスト参加していて、さすがにこの手の作風にはよくハマっている。
とっつきはよくないが、何度か繰り返して聴けば心地よくなる作品だ。ボーナスにPINK
FLOYDの“太陽讃歌”のカヴァーなどを収録。
メロディアス度・・7 プログレ度・・7 浮遊感度・・8 総合・・8
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OSI 「FREE」
FATES WARNINGのジム・マテオス、元DREAM THEATERのケヴィン・ムーア、マイク・ポートノイによるユニット、
オフィス・オヴ・ストラティジック・インフルエンスの2006年作
2作目となる本作は、ショーン・マローンに替わって、ベースにFATES WARNINGのジョーイ・ヴェラが参加、
翳りを帯びたモダンなアプローチのプログレッシブ・オルタナロックというサウンドで、
ケヴィン・ムーアの渋い歌声とともに、前作に比べるとシンプルな歌もの感が強まった印象だが、
メタリックなリフを乗せた硬質なナンバーから、エレクトロなアレンジ、メランコリックな薄暗さとともに、
知的なセンスと空間的な浮遊感に包まれた味わいで、派手さはないがよりディープな作風になった。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 モダンなセンス度・・8 総合・・7.5
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OSI「Blood」
Fates Warningのジム・マテオスと、ケヴィン・ムーアによるユニットOSIの3作目。2009年作
今作はドラムにPorcupine TreeのGavin Harrisonを迎えていて、
モダンなアレンジによるオルタナ風のプログレという作風はそのままに、
ダークな薄暗さの中にあるほのかな叙情というものがより引き立ってきている。
プログレというには一聴してシンプルな音であるが、深みのあるケヴィンのシンセアレンジや
つかみ所のない空間的なサウンドは、聴き込むごとに不思議な味わいになるだろう。
一般的には理解しづらい音楽であるが、Porcupine Treeの登場後リスナーの側の懐も深くなってきた。
メロディアス度・・7 プログレ度・・7 浮遊感度・・8 総合・・7.5
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OSI「Fire Make Thunder」
Fates
Warningのジム・マテオスと、ケヴィン・ムーアによるユニットOSIの4作目。2012年作
前作に引き続きドラムにPorcupine
TreeのGavin Harrisonを迎え、
モダンなヘヴィさとダークな浮遊感を漂わせたサウンドを描いてゆく。
メロディアスでもなければ派手さもないという、愛想の良くなさは相変わらずながら
楽曲における構築性ではこれまでで一番テクニカルなメリハリを感じるし、
あえて通好みを脱却しない作風には、頑固でアーティスティックな美意識を内包している。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 モダン&ダーク度・・8 総合・・8
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P
PAGAN'S MIND「Celestial Entrane」
ノルウェーのプログレメタルバンド、ペイガンズ・マインドの2nd。2002作
サウンドはどちらかというとパワーメタル寄りで、そこに幾分のテクニカルな部分と
ネオクラ的なシンセによる味付けがなされたという感じで、プログレ性はあまり感じない。
ヴォーカルにしろバックの演奏にしろ堂々としていてマイナー臭さはあまりなく、
全体的に重厚なサウンドを聴かせてくれるが、真の意味でのProg Metal好きからすると
曲展開、メロディともに個性的なものは感じられず、面白みはあまりない。
メロディアス度・・7 プログレ度・・6 楽曲・・7 総合・・7
PAGAN'S MIND「Celestial Entrane」
ノルウェーのプログレメタルバンド、ペイガンズ・マインドの3rd。2005作
まるでウルトラマンタロウのようなポーズのジャケに思わずくすりとなる(笑)
サウンドの方は前作の延長線上。力強いメロパワに若干プログレ風味を足した感じ。
6〜7分台の曲がメインの大作志向であるが、70分も聴いているとさすがに飽きる。
前作よりも多少は聴きどころというかメロディに聴かせる部分が増えていて
表現力が増したキーボードプレイや堂々としたヴォーカルなど、
クオリティは依然高いかと思う。パワメタ系のプログレメタル好きに。
メロディアス度・・7 プログレ度・・6 楽曲・・7 総合・・7.5
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PAGAN'S MIND「God's Equation」
ノルウェーのプログレメタルバンド、ペイガンズ・マインドの4th。2007作
2nd、3rdを聴いたかぎりではパワーメタル風味のプログレメタルというサウンドであったが、
本作も基本的にはヘヴィなギターとシンセを中心とした、いわゆるプログレパワー路線。
キャッチーな歌メロとギターフレーズで盛り上げる、明快さがこれまでより際立っていて
作品としての質を高めている。一方ではモダンなヘヴィアレンジが前に出る部分もあり、
若いリスナーにも楽しめるサウンドになっている。現時点での最高作だろう。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 重厚度・・8 総合・・8
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Pagan's Mind 「Full Circle」
ノルウェーのプログレメタル、ペイガンズ・マインドのライブ。2015年作
すでにキャリア15年を超える中堅バンドで、本作は2014年アメリカ「ProPower Festival」でのステージを2D+DVDに収録。
きらびやかなシンセアレンジと重厚なギターに、パワフルなハイトーンヴォーカルを乗せたサウンドで、
どっしりとした聴き心地はアルバム同様。ProgMetalとしてのテクニカル性や派手な展開はさほどないので、
ミドルテンポの正統派シンフォニックメタルとしても楽しめるが、2パートに分かれた13分の大曲や、
後半の15分の大曲などは、メロディックな叙情性と緩急ある展開のインストパートが魅力的だ。
中堅バンドとしての音の説得力も含めて、合計150分超の濃密なステージでお腹いっぱい。
ライブ演奏・・8 テクニカル度・7 重厚度・・8 総合・・8
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PAIN OF SALVATION「Entropia」
スウェーデンのプログレメタルバンド、ペイン・オブ・サルヴェイションの1st。1997年作
若き天才ダニエル・ギルデンロウ率いるバンドの記念すべきデビュー作。
そのモダンなヘヴィネスとダークさをたたえた叙情性、そして個性的なミクスチャー感覚と
芸術的な展開力で、DREAM THEATERとはまた違ったProgMetal像を生み出した傑作。
彼の歌い上げる深遠な歌詞は世界に対する怒りと悲しみを詩的に表現しており、
デビュー作であるのに、すでに得体の知れない大きさと懐の深さを感じさせる。
初心者にはややとっつきづらいかもしれないが、バンドのスケール感の一端は感じ取れるだろう。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 楽曲センス・・9 総合・・8
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PAIN OF SALVATION「One Hour by the Concrete Lake」
スウェーデンのプログレメタルバンド、ペイン・オブ・サルヴェイションの2nd。1998年作
放射能に汚染された実在する死の湖をテーマにしたコンセプトアルバム。
シリアスかつドラマティックな世界観にはいっそうの磨きがかかり、
シンセとギターの絡み方にもより有機的なセンスが感じられるようになった。
楽曲単位での展開力とリズムも含めたアイディアの豊富さには感心させられるばかりで、
美しさと哀愁、悲しみ、怒り、それらの感情が螺旋のように渦を巻いて表現されてゆく。
ダニエル・ギルデンロウの才能と、そのモダンな楽曲アレンジ力には脱帽である。
新時代のProgMetalを代表する傑作。日本盤ボーナスの絶品の叙情曲もまた素晴らしい。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 構築センス・・9 総合・・8.5
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PAIN OF SALVATION「The Perfect Element」
スウェーデンのプログレメタル、ペイン・オブ・サルヴェイションの3rd。2000年作
傑作であった前作の流れを汲みつつ、よりエモーショナルな作風となったサウンドで、
アグレッシブなパートと歌もの的なキャッチーさが交差する知的なアレンジセンスが光っている。
ダニエル・ギルデンロウのヴォーカルもいよいよ表現力に磨きがかかり、内的な感情を描くような
シアトリカルな歌声が、本作のひとつのポイントと言ってもよいだろう。反面、前作にあった、
エキセントリックな実験性や新鮮味は薄れていて、よく言えば、モダンなプログレッシブメタルとして
より多くのファンが楽しめる分かりやすさが増していて、のちの薄暗系プログレを先取りするような空気感もある。
次作以降の、さらなる内的な深みを描写する独自の作風へとつながる傑作と言えるだろう。
ドラマティック度・・8 フログレ度・・8 構築センス・・9 総合・・8.5
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PAIN OF SALVATION「REMEDY LANE」
スウェーデンのプログレメタルバンド、ペイン・オブ・サルヴェイションの4th。2002年作
人間の内面を描き出した壮大なるコンセプト作。既成のプロクレメタルの概念にとらわれないアレンジと
ある意味でゴシックメタルにも通じるようなメランコリックな叙情も含み、効果的なシンセアレンジや
変拍子リズムの上に乗るクールなリフや語りのような歌、一転して繊細かつメロウなギターメロディなど
コンセプト作でありながら、初期の作品よりも楽曲にさらに幅をもたせているという印象である。
おそらくサウンドの深化は、リーダーであるダニエル・ギルデンロウの人間としての深化にも関わっているのだろう。
歌唱の表現力が増したことでシアトリカルなドラマ性にも説得力が感じられるようになった。
こうしたレビューや数字で評価をしづらい、スピリチュアルなバンドになってきた。内的宇宙を感じさせる傑作である。
ドラマティック度・・9 プログレ度・・8 内的宇宙度・・10 総合・・8.5
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PAIN OF SALVATION「12:5」
ペイン・オブ・サルヴェイションのライブアルバム。2004年作
初のライブ作品はなんと全編アコースティックという意外なものになった。
リーダーのダニエル・ギルデンロウはTHE FLOWER KINGS、TRANSATLANTICのツアーメンバーとしても活躍し
おそらくそれらのライブ経験を自身のものとしてフィードバックしているのだろう。
「ENTROPIA」、「THE PERFECT ELEMENT」、「REMEDY LANE」などからの曲は
アコースティックバージョンとして、また別の魅力を増しているように思えるし、
ダニエルの歌唱の表現力を含め、静寂感の中にも空間美とある種の緊張感が存在し
サウンドとしてはメタルではないのだが、見事にPOSとしての色をかもしだしている。
メロディアス度・・8 メタル度・・1 静寂の美度・・9 総合・・8
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PAIN OF SALVATION「BE」
スウェーデンのプログレメタルバンド、ペイン・オブ・サルヴェイションの5th。2004年作
我々がわれわれで「ある」ということ、つまり人間の存在意義そのものを問うという、
壮大なテーマに挑んだ渾身のコンセプト作。まるでSF映画のようなナレーションから始まり
古の人類を表現するような民俗音楽的な要素や、しっとりとしたピアノの鳴り響く繊細さなど、
単なるProgMetalというにはとどまらない作風で、静かなるドラマを含んで作品は淡々と進行してゆく。
演奏はもちろんだがとりわけダニエルのヴォーカルの表現力は見事という他はなく、ときに苦悩や怒りに満ちた
一人の人間の心情を吐露するように生々しい。歌詞を読みながら聴くと、よりこの世界に同調できるだろう。
人の精神の内面をえぐるようなおそるべきコンセプト作である。本作を完全再現したライブDVDもまた必見だ。
ドラマティック度・・9 ProgMetal度・・7 壮大度・・9 総合・・8.5
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PAIN OF SALVATION「BE - Original Stage Production」
スウェーデンのプログレッシブ・メタルバンド、ペイン・オブ・サルヴェイションのライブDVD。2005年作
彼らの5枚目のアルバム「BE」をライブで完全再現したもの。単なるライブ作品ではなく、映像とシンクロする映画的な作品。
まるで舞台のような奥行きのあるステージ上には、グランドピアノや管弦楽隊、中央には池まであるという凝りよう。
バンドメンバーのみならず楽隊の面々も白塗りで化粧をした、一種異様な雰囲気の中で演奏が始まる。
白い衣装で登場するダニエル・ギルデンロウ、マンドラを優雅に弾きながら静かに歌いはじめる。
パーカッションとマンドリンの音色に彩られた、およそメタルらしからぬ民族的なイメージの楽曲から、
ピアノとストリングスの美しい間奏曲や、コンセプトに沿ったSEと映画的な映像などをまじえつつ、
演奏はときにはヘヴィに、あるいはプログレメタル的な変拍子を盛り込みながら楽曲はゆるやかに、粛々と進行してゆく。
曲のコンセプトによって、髪を束ねサングラスをし、ジャケットを着たりして役を演じながら歌うダニエルの姿は、まるで舞台の主演男優のようだ。
音だけでは伝わりにくいだろう曲のコンセプトとビジョンとが、このDVD作品では、シアトリカルなステージと映像編集のおかげで、
視覚と聴覚とがシンクロして感じられる。ダニエルのときにナルシスティックなまでの、やや過剰な演技に感嘆するか、あるいは引いてしまうかで、
この作品にのめり込めるかどうかが分かれるだろう。楽曲単位の爽快感や見せ場がさほどないという点ではやや物足りないが、ともあれ、
これが鬼才ダニエル・ギルデンロウの世界であり、彼の中ではすでに表面的な音楽や曲の技巧うんぬんなどは超越しているのかもしれない。
これは70分間の映画というべきか。人間の外面と内面をえぐるような、この音と映像によるコンセプト作はテクニックや楽曲云々ではなく、
内面に語りかけるような、知的なプログレッシブロック作品として、アーティスティックに屹立している。まさに必見である。
作品映像・・9 ライブ演奏・・8 シアトリカル度・・9 総合・・8.5
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PAIN OF SALVATION「Scarsick」
スウェーデンのプログレッシブメタルバンド、ペイン・オブ・サルヴェイションの6th。2007年作
内省的なアルバムであった「Be」に続く本作は、ある意味でつかみ所の難しい作品となった。
のっけからラップ、ファンクを取り入れた曲調に、通常のProg Metalリスナーは度肝を抜かれるはず。
超大国アメリカへの批判的なまなざしと、近未来に対するシリアスなビジョンを描きだしつつも、
サウンドにおいては、ときにおちゃらけたようなシニカルな軽やかさで聴かせるという、
二律背反的な複雑さがこの作品にはある。歌詞を読みながら何度も聴きたい。
作詩、作曲、コンセプト、アートワークのアイディアのすべてに関与する
鬼才ダニエル・ギルデンロウは、もはやただのメタルミュージシャンではない。
まるで、現代世界の病理を叫ぶ心理学者であり、人間の内面を露呈する文学者である。
ラップ調のノリの中にたとえようのない孤独と、薄暗い世界感を感じられたなら、
少しずつこの作品の深みが分かるだろう。問題作であるが、POSのアルバムとしては裏切りではない。
メロディアス度・・7 内的プログレ度・・8 内的ダーク度・・8 総合・・8
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PAIN OF SALVATION「The Second Death of」
スウェーデンのプログレメタルバンド、ペイン・オブ・サルヴェイションのライブ作品。2009年作
2007年オランダでのライブを2CDに収録。 「Original Motion Picture Soundtrack」と銘打たれているが内容自体はしごくまっとうなライブ作品。
ステージにおいても演奏は安定しており、単にテクニックに走るだけのバンドに比べて、このバンドは内的な深みを音にリンクさせ、
ダニエル・ギルデンロウのヴォーカルにしても、ときにまるで映画の俳優のような表現力で世界観を描いてゆく。
反面、DREAM THEATERのようなゴリ押しドラマティックな演奏ではなく、あくまでクールな翳りがあるので
音だけ聴いていては物足りないと思ってしまうのも確かであって、歌詞の意味を考えながら鑑賞することで、
彼らの表現する世界にようやく辿り着けるのだろう。現時点での最新作「Scarsick」からはもちろん、1stや2ndの曲も演奏しているのが嬉しい。
同タイトルのDVDはツアードキュメントを含む2DVD仕様で、単なるオマケ以上にセンスのある仕上がり。ファンならば必見だ。
ドラマティック度・・8 ライブ演奏・・8 世界観・・9 総合・・8
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PAIN OF SALVATION「linoleum」
スウェーデンのプログレメタル、ペイン・オブ・サルヴェイションのミニアルバム。2009年作
鬼才、ダニエル・ギルデンロウの感性と哲学で、独自のプログレッシブメタルを深化させてきたこのバンド、
本作は新曲や未発曲を含んだミニアルバムということで、ファン向けのアイテムといえるだろう。
いきなりオルガンの鳴るレトロなハードロック調のサウンドに面食らうが、人生における痛みや苦しみ、愛や悲哀、
つまりは「人間そのもの」を歌うダニエル流の深みのある音楽表現はやはり健在で、一聴してシンプルな音の中に、
さまざまな混濁した情感を感じ取れたら、アナタも立派なPoSファンだ。身を切るような歌声が心に響いてくる。
メロディアス度・・7 内的情感度・・9 アナログ度・・8 総合・・8
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PAIN OF SALVATION「Road Salt One」
スウェーデンのプログレメタル、ペイン・オブ・サルヴェイションの2010年作
ミニアルバム「linoleum」で聴けた、レトロ風味のロック路線の延長にある作品。
生々しいギターといいプログレ的なオルガン、ピアノといい、アナログ的な古めかしさの上に乗せる、
ダニエル・ギルデンンロウの歌唱は、いよいよその表現力を増し、魂の叫びというべき情感と哀愁、
ストレートな曲調の内側にあるひどく繊細なものを、絶妙に集約して聴き手に届けてくる。
結局ロックとはテクノロジーではなく、作り手の生の心を描き出した結果の保存物なのだと、
この作品は教えてくれるようだ。ブックレットのアートな写真もまた素晴らしい。
メロディアス度・・7 内的情感度・・9 アナログ度・・9 総合・・8
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「Road Salt Two」
スウェーデンのプログレメタル、ペイン・オヴ・サルヴェイションの2011年作
スタイルとしてProgMetalから脱却し、古き良きロックの質感を押し出した前作の続編で
ダニエル・ギルデンロウの熱き歌声を中心にした、アナログ感覚あふれるサウンド。
70年代的なオールドなギタートーンと、どことなく土着的なシンセの旋律、
プログレッシブというよりはヴィンデージ調のロックという言葉がぴったりとくるような。
プログレメタルのファンではなく、間違いなくオールドロックのリスナーが歓喜する音だろう。
血の通ったロックへの回帰、それがダニエルの目指したコンセプトであるなら、
完璧なまでになし遂げた白と黒の2枚と言えるだろう。時間の流れを超えた力作である。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 古き良き度・・9 総合・・8
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Pain Of Salvation「Falling Home」
スウェーデンのプログレハードロック、ぺイン・オブ・サルヴェイションの2014年作
過去の楽曲をアコースティック風味にアレンジした作品で、70年代的なブルージーな感触や
R&B風味なども感じさせる、完全にメタルとはかけ離れた聴き心地がかえって面白い。
アナログ感たっぷりの軽妙なアンサンブルと、オルガンが鳴り響くヴィンテージな雰囲気は
OPETHの近作などにも通じるが、こちらはより肩の力が抜けた楽しげなジャムセッション風味というか、
むしろオールドなプログレ、70'sロックのリスナーなどにはとても楽しめ内容だろう。
DIOやLou Reedのカヴァーなども独自のアレンジで解釈していて、このバンドのセンスの良さを再確認する。
ドラマティック度・・7 メタル度・・1 アレンジセンス・・9 総合・・8
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Pain of Salvation 「Remedy Lane Re:Visited」
スウェーデンのプログレメタル、ペイン・オブ・サルヴェイションの2016年作
傑作である2002年作を新たにリミックス、Disc2にはそれをライブで再現した音源を収録した2CD。
新世代ProgMetalの代表たるこのバンドが、いったいなぜ、今更過去作をリメイクするのかという疑問はともかく、
「Be」と並んでバンドの代表作たるこのアルバム自体の完成度は素晴らしく、メランコリックな叙情性を含んだ
重厚なドラマ性に包まれた内的スケール感とともに、リーダーであるダニエル・ギルデンロウの世界観を
精神的に色濃く投影した哲学的なまでに深みのある作品に仕上がっている。リミックスの効果でサウンドは
より輪郭がくっきりとなり、そのDisc1は当然のように素晴らしいが、むしろ目玉はDisc2の2014年のライブ音源だろう。
ダニエル以外のメンバーはがらりと変わっているが、壮大なコンセプトアルバムを重厚でシリアスな空気感とともに再現する、
その技量とセンスは見事。バンドのファンは必聴であろうし、PoSをこれから知るという方にもお薦めしたい新たな傑作となった。
ドラマティック度・・9 リミックス度・・8 ライブ再現度・・9 総合・・8.5
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Pain of Salvation 「In The Passing Light of Day」
スウェーデンのプログレッシブメタル、ペイン・オブ・サルヴェイションの2017年作
1997年デビュー、初期のテクニカル路線からしだいに内的な深化をとげ、ここ数作では70年代的な
オールドロックへと傾倒していたが、9作目となる本作はのっけから硬質なギターを乗せたヘヴィなサウンドで、
初期の頃に回帰したようなテクニカル性と、ProgMetalとしての知的な構築センスが蘇ってきている。
物語を語るような、ダニエル・ギルデンロウの表現豊かな歌声を乗せ、メリハリある展開力で大曲を構築しつつ、
一方では、ヴァイオリンやブラスを含んだ叙情性や、ゆったりともの悲しい哀愁を感じさせるナンバーもあって、
コンセプト的な世界観をじっくりと描いてゆく。派手なインパクトがない分、キャリアのあるバンドらしい音の説得力で
ラストの15分の大曲まで、大人の味わいを含んだ重厚なサウンドが楽しめる。ここ数作で離れていたリスナーもチェックです。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 大人の哀愁度・・8 総合・・8
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PAIN OF SALVATION 「The Perfect Element Pt.1(Anniversary Mix 2020)」
スウェーデンのプログレッシブメタル、ペイン・オブ・サルヴェイションの2020年作
3作目である2000年作の20周年リミックス盤で、ボーナスDiscにはライブ音源を収録した2枚組。
サウンドは一聴してダイナミックになり、ギターやドラムなどの分離が良くなったことで奥行きが増した。
ダニエル・ギルデンロウのエモーショナルな歌声とともに、重厚さとキャッチーなメロディアス性を同居させ、
翳りに包まれた叙情性と知的な構築力で描かれるコンセプト大作が、壮大な空気をまとわせて甦った。
全76分の映画のようなドラマティックな傑作。PoSのコアなファンはもちろん、初めて聴くリスナーにもお薦めしたい。
ボーナスのDisc2には、2017〜2018年のライブ音源や別バージョン、未発曲などを収録。
ドラマティック度・・8 知的構築度・・9 壮大度・・8 総合・・8.5
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PAIN OF SALVATION 「PANTHER」
スウェーデンのプログレッシブメタル、ペイン・オブ・サルヴェイションの2020年作
1997年にデビュー、通算10作目となるスタジオアルバムで、豹人のジャケに「グイン・サーガ」を思い出したが、
それとは関係ないらしい。一時期のヴィンテージロック路線から、前作からは再びプログレメタルに回帰していたが、
本作も、モダンなシンセアレンジにエモーショナルなヴォールカルで、スタイリッシュなProgMetalを聴かせる。
テクニカルな部分よりも、薄暗くキャッチーな歌もの感が前に出ていて、楽曲的にとっつきはあまりよくないが、
ダニエル・ギルデンロウの表現力ある歌唱を中心に、「Scarsick」の頃のようなデジタルなアレンジも盛り込みつつ
人間の深層に分け入るような悲哀を含んだ情感が感じられる。ラストは13分の大曲で、じっくりとダークな叙情を描いてゆく。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 スタイリッシュ度・・9 総合・・8
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PANTALEON 「Virus」
ドイツのプログレメタル、パンタレオンの2017年作
Masterplanのドラム、ケヴィン・コットが在籍するバンドで、ヘヴィなギターにハイトーンヴォーカルを乗せ
緩急あるリズムチェンジとともに、ほどよくテクニカルなプログレ・パワーメタルを構築する。
叙情的なフレーズを奏でるギターに、ときにネオクラシカル風のきらびやかなシンセも重なって、
パワフルなヴォーカルとツーバスの激しいドラムも含めて、重厚にして濃密な聴き心地である。
10分前後の大曲もあり、とくにラストのナンバーはProgMetalらしいドラマティックな展開力が光る。
ドラマティック度・7 テクニカル度・7 重厚度・8 総合・7.5
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PANTOMMIND「Shade of Fate」
ブルガリアのプログレメタル、パントムマインドの2005年作
シンセを含む5人編成でテクニカルなリズムと実力あるハイトーンヴォーカルで聴かせる作風は
DREAM THEATERからの影響を感じさせつつ、メロウなギターフレーズや
シンセの重ねによる叙情的な雰囲気が素晴らしい。B級臭さは微塵もなく
ドラマティックに展開させる楽曲には堂々たるスケール感も備わっている。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・8 楽曲センス・・8 総合・・8
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PANTOMMIND「Lunasense」
ブルガリアのプログレメタル、パントムマインドの2009年作
前作もかなりの充実作だったが、2作目の今作もよりスタイリッシュなセンスで聴かせる傑作となった。
センスあるギターのメロディと巧みなシンセアレンジが融合、テクニカルなリズムと
力量あるヴォーカル、その堂々たる展開美は、すでに一線級のProgMetalである。
楽曲は5、6分台が中心で難解さはない。重厚さとメロディのバランスのとれた高品質作だ。
現在は1stとのカップリング2CDで再販されているのでチェックすべし。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・8 楽曲センス・・8 総合・・8
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PATHOSRAY
イタリアのプログレメタルバンド、パトスレイの2007作
美しいシンセとともにしっかりとヘヴィさを残したギターで聴かせる重厚な作風は
DREAM THEATERからの影響も感じさせつつも、ただのフォロワーに甘んじることなく、
その構築性にはなかなか非凡なセンスを感じさせる。テクニカルに走りすぎることもなく
ときにプログレパワー的な疾走感もあるので、音に難解さはなく聴き疲れもしない。
キャッチーな歌メロといかにもプログレ/シンフォニックなシンセワークもよい感じで、
メロディアスさと重厚さ、ドラマティック性のバランスのとれた好作といえる。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 重厚度・・8 総合・・8
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PATHOSRAY「Sunless Skies」
イタリアのプログレメタルバンド、パトスレイの2nd。2009年作
デビュー作はプログレパワー的に聴かせるドラマティックな好作だったが、
今作もヘヴィかつパワフルな演奏でたたみかける濃密な作品となった。
この手のバンドにしては重厚な音作りとシリアスな世界観は、若手バンドにしては
非常にまとまった演奏力により、しっかりと説得力をともなってクールに構築される。
正統派のプログレメタル質感とは対照的なモダンで軽やかなシンセワークも印象的だ。
個人的にはメロディの点ではやや聴き所が曖昧になったという感触もあるのだが
逆を返せば甘すぎない硬派なプログレパワー作品として聴くとより楽しめるだろう。
メロディアス度・・7 重厚度・・8 ProgMetal度・・7 総合・・8
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PENNY'S TWISTED FLAVOUR 「Sketches」
オランダのプログレメタル、ペニーズ・ツイステッド・フレーヴァーの2010年作
KNIGHT AREAのギタリストを中心にしたバンドで、きらびやかなシンセと適度にヘヴィなギターで
キャッチーなハードシンフォ/プログレメタルを聴かせる。随所に泣きの叙情メロを奏でるギターに、
ムーグやオルガンなどを含んだシンセワークもよい感じで、テクニカル過ぎない聴き心地もよい。
全体的にこれという新鮮味はないのだが、モダンなプログレメタルのドラマ性とオランダらしい
メロディックな叙情性を合わせた好作品。KAYAKのTon Scherpenzeelがゲスト参加している。
メロディック度・・8 テクニカル度・・7 ProgMetal度・・7 総合・・7.5
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PERFECT SMILE 「ERASE UNA VEZ...」
スペインのプログレメタル、パーフェクト・スマイルの2013年作
シンセを含む5人編成で、ストーリー的な雰囲気のイントロから、きらびやかなシンセにスペイン語の歌声を乗せ、
キャッチーなメロディアス性と緩急ある構築力で聴かせるサウンド。伸びやかなヴォーカルに美麗なシンセアレンジに、
A.C.Tなどにも通じるような優雅な軽妙さと、いくぶん唐突な展開力で、プログレ寄りのリスナーにも楽しめるだろう。
楽曲自体は4〜5分前後と、あくまでメロディックな明快さが前に出ていて、ときおり聴かせるギターの流麗なフレージングや
プログレ寄りのシンセワークもなかなかセンスがよい。爽快かつテクニカル、そしてキャッチーな聴き心地の逸品です。
メロディック度・・・8 プログレ度・・8 優雅度・・9 総合・・8
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Persona Non Grata「Shade in the Light」
ギリシャのプログレメタルバンド、ペルソナ・ノン・グラタの2009年作
ギリシャというメタル辺境の国でProgMetalバンドが出てきたことも驚きだが、
質の高さでもなかなかあなどれないのである。シンセを含む5人組みで、
一聴してDREAM THEATERからの影響を感じさせる本格派のサウンドだ。
空間的な美しさを感じさせるシンセワーク に、テクニックのあるギター、
そして、しっかりと歌い上げるヴォーカルの力量も申し分なく、シリアスかつシンフォニックに、
ドラマティックな世界観を描き出している。ときおり異国的な叙情を垣間見せたり、
ラテン系のファンキーなノリなどもあって、バンドとしての器の大きさも感じる。
シンフォニック度・・8 ProgMetal度・・8 叙情度・・8 総合・・8
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Persona Non Grata「Quantum Leap」
ギリシャのプログレメタルバンド、ペルソナ・ノン・グラタの2011年作
前作もなかなかの力作だったが、2作目となる本作も適度にヘヴィなモダンさと
知的で構築力で聴かせる、じつに正統派のProgMetalサウンドが楽しめる。
重厚なギターリフにセンスのあるシンセワークが重なり、伸びやかな歌声とともに
コンセプト的なシリアスさを描いてゆく。ギターとシンセが絡むテクニカルなインストパートなども含め、
バンドとしての確かな実力が楽曲から伝わってくる。これぞProgMetal、という高品質な作品だ。
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Perspective XIV「Shadow of Doubt」
アメリカのプログレメタル、ペルスペクティヴ14の2008年作
G/Vo、B/Key、Drというトリオ編成で、DREAM THEATERからの影響を思わせるProgMetal風味に
RUSHあたりの軽妙さと知的センスが融合されたような、なかなか質の高いサウンド。
テクニカルでありつつも、ドラムをはじめとしたしっかりした演奏力とギタリストの巧みなセンスで
全体にキャッチーな質感があって聴き疲れしない。メロディとテクニックのバランスの見事な傑作だ。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・8 演奏・・8 総合・・8
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PIGEON TOE 「FIRST PERCEPTION」
ドイツのプログレメタル、ピジョン・トーの2012年作
TRIPTYKON、FEAR MY THOUGHTSのメンバーらによるバンドであるが、
デスメタル的な激しさはまったくなく、マイルドなヴォーカルとキャッチーなメロディで聴かせる
ポスト・プレグレ的な叙情を含んだサウンド。グルーブのしっかりとしたドラムを含め、
テクニカルなアンサンブルの中にもゆったりとした浮遊感を感じさせるところは演奏力への自信とセンスの良さだろう。
派手さはないがじっくりと楽しめる。COHEED AND CAMBRIAあたりが好きな方にもオススメだ。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・7 構築度・・8 総合・・7.5
PIG FARM ON THE MOON「ORBITAL」
ヴェネズエラのプログレバンド、ピッグ・ファーム・オン・ザ・ムーンの2002年作
ツインギターにキーボード入りの5人組みで、サウンドはプログレメタリックな質感も漂わせつつ、
基本はメロディアスな聴きやすさにあり、展開の多い楽曲は濃密でアレンジの質もなかなか高い。
のっけから16分の組み曲ではじまり、その後も9分、12分、18分と続く大曲揃いの力作であるが、
メリハリのある展開力や、巧みな叙情パートの配し方などもセンスが良く、飽きさせない。
清涼感のあるシンセワークや、英語による歌唱もあって、地域的なマイナーさもあまり感じないし、
ゲストによるヴァイオリンやチェロなども楽曲に壮大さを加味している。曲によってはもろにDREAM THEATER風な部分もあり、
チリのMATRAZあたりとともにプログレメタル好きなシンフォニックリスナーにも勧められる作品だ。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・8 Prog Metal度・・8 総合・・8
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PIRATE「Left of mind」
オーストラリアのプログレメタル、ピラテの2010年作
シンセを含んだモダンでエクスペリメンタルなアレンジとヘヴィなギターリフとともに
テクニカルなアンサンブルを構築するサウンドで、エフェクトのかかったヴォーカルにサックスが鳴り響く、
プログレッシブなヘヴィロックという趣。ギターはリフ主体で、旋律の多くはサックスが担っている点も個性的で、
ミステリアスな怪しさと硬質観には、90年代クリムゾン的な感触もいくぶん垣間見える。
濃密な聴き心地なのだが、楽曲は2〜5分くらいなので意外とさっぱりとしているのもよろしい。
メロディック度・・7 テクニカル度・・8 モダン度・・8 総合・・7.5
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PLANET X「UNIVERSE」
デレク・シェリニアン率いるテクニカルメタルバンド、プラネット・エックスの1st。2000年作
デレクのソロ名義として発表された傑作「PLANET X」のタイトルをバンド名とした1作目。
天才ギタリスト、トニー・マカパインが加入し、まさに超絶技巧の作品となっている。
サウンドはヘヴィメタルからのテクニカルフュージョンへのアプローチともいえる、
キメとアンサンブルを際立たせた作風で、マカパインのギターはかつてのネオクラシカル色は抑え気味で
リズムギター的に変即拍子へのユニゾンを中心にしながら、ときに聴かせるフレーズを上手く挿入している。
4〜5分台の曲が多いが、どれも中身が詰まっており、気が抜けないスリリングな演奏には
バンドとしての一体感と同時にメンバー同志の技量のぶつかり合いが感じられ、
デレク、ドナーティ、マカパインの絶妙のバランスの取り合いに圧倒させられる。
メロディアス度・・7 プログレ度・・8 テクニカル度・・9 総合・・8
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PLANET X 「LIVE FROM OZ」
デレク・シェリニアン率いるテクニカル・プログレメタル、プラネットXのライブアルバム。2002年作
ジャズ/フュージョン的な軽妙なアンサンブルに、超絶な変拍子パートをまじえ、隙の無い演奏が淡々と繰り広げられる。
マカパインのギターは正確かつ高速なフィンガリングを垣間見せ、デレクのキーボードも実に「プログレ」していて良い。
やはり要はヴァージル・ドナーティの信じがたいリズムセンスを持ったドラム。ジャズの素養も窺わせるそのドラミングは、
独特のリズム感を持っていて聴いているだけで楽しくなる。このバンドを評価するにあたって、メタル?プログレ?とか、
楽曲の構築云々は不要であろう。この凄絶なインタープレイを楽しんで聴けるかどうか、要はそれだけである。
メロディアス度・・7 フュージョン度・・8 テクニカル度・・9 総合・・8
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PLANET X 「MOONBABIES」
デレク・シェリニアン率いるハイテク・インストバンド、プラネット・エックスの2002年作
ソロプロジェクト作「PLANET X」から始まったデレクのテクニカルなインスト追求は、
超絶ドラマー、ヴァージル・ドナーティに加え、前作に続き天才ギタリスト、トニー・マカパインも参加。
ソロ作「INERTIA」で聞かれたプログレ・フュージョン的なサウンドをより強く押し出し、
マイルドな聴き心地でありながら、素晴らしく切れがよいじつに緻密な演奏を繰り広げている。
マカパインのギターは時に技巧的、時にメロディアス、そしてときにメタリックなヘヴィリフを奏で
ドナーティの変幻自在な変拍子を刻むリズムの中で、デレクの変幻自在のシンセワークが冴え渡る。
これはプログレなのか、あるいはテクニカルメタルなのかと悩むところだが、このバンドのサウンドの存在感は
そうした論議をすでに軽々と超越している。プログレ・フュージョン・メタルのひとつの完成形というべき傑作だ。
メロディアス度・・7 プログレフュージョン度・・9 テクニカル度・・9 総合・・8◆メタル名盤特選入り
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PLANET X「Quantum」
アメリカのテクニカルメタルバンド、プラネット・エックスの3rd。2007作
毎度のこと超絶技巧アンサンブルで悶絶させてくれる、デレク・シェリニアン率いるこのバンド、
今作はトニー・マカパインの脱退にともない、パーマネントなギタリスト不在で作られた。
そのせいか、楽曲はデレクのソロ名義作であったアルバム「PLANET X」に接近した雰囲気で、
シンセとドラムをメインに、よりリズム面での細かなアプローチがなされた作りとなっている。
特筆すべきは、今回は楽曲面の多くに関わっている、ヴァージル・ドナーティのドラムプレイで
いつも以上に鋭角かつパワフルな音で、変則的なビートを叩き出しつつ、
複雑怪奇なリズムのアイディアや、常人にはマネのできないプレイをたっぷり聴かせてくれる。
ゲストギタリストに、アラン・ホールズワースの名前もあり、確かに魅力的なプレイをしてくれているが
それは単にオマケにすぎず、要はやはりドナーティのドラムであり、これはそれを聴くためのアルバムだ。
メタリックなプログレフュージョンであるが、究極の変則リズム音楽としてヒネ系のリスナーは悶絶できる。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・9 ドナーティの超絶ドラム度・・10 総合・・8.5
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Platypus「WHEN PUS COMES TO SHOVE」
Ty Tabor(KINGS X)、John Myung(DREAM THEATER)、Derek
Sherinian、
Rod
Morgensteinという豪華な顔ぶれによるユニット、プラティパスの1999作
メンバーがメンバーだけにテクニカルなサウンドかと思いきや、実際はゆったりとした歌もの系の曲を含め
70年代テイストにあふれたロック作。メロディや楽曲の雰囲気は、中心となるタイ・テイバーの色が強く
どこか浮遊感をともなったサイケロック的な色合いもある。インストナンバーでのデレクの華麗なシンセワークや、
ロッド・モーガンステインのドラムなどは、さすがの演奏力で聴かせてくれる。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・8 楽曲・・7 総合・・7.5
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PLATYPUS「Ice Cycles」
Ty Tabor(KINGS X)、John Myung(DREAM THEATER)、Derek Sherinian、Rod Morgenstein
という豪華な顔ぶれによるユニット、プラティパスの2nd。2000作
メンツから想像するような超絶技巧炸裂の音楽ではなく、どちらかというとしっとりと落ち着いたサウンド。
しかし、そこはさすがのメンバーたち。ゆっくりとした曲調でもまったく退屈させることなく、
その分むしろメンバーの技量の高さとアンサンブルの確かさを感じさせます。
核となっているのは、タイ・テイバーのメロウかつときにヘヴィなギターと、浮遊感のある歌メロで、
手数の多いロッド・モーゲンスタインのドラムが絡むと、ややダークでゆったりめのプログレメタルとしても楽しめます。
KINGS XやDREAM THEATER的な質感もあり、上記メンバーのファンなら聴いてみて損はないでしょう。
メロディアス度・・7 プログレメタル度・・7 アンサンブル度・・8 総合・・7.5
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PORT MAHADIA「Echoes in Time」
アメリカのプログレメタルバンド、ポート・マハディアの2007作
バンド名といい帆船のジャケといい、いかにも海洋冒険もの的な雰囲気だが
サウンドはテクニカルさとシンフォニック性を有したプログレハード的な雰囲気。
メロディアスなギターと美しいシンセに、ゆったりとしたヴォーカルパートは耳心地がよく、
ときおりヴァイオリン、チェロも加わって優雅に聴かせてくれる。
物語的なナレーションもあったり、ドラマ性の点ではなかなか楽しめるのだが、
肝心の曲自体にどうもインパクトがなく、悪くいうとアレンジが素人臭いのが残念。
メロディアス度・・7 ドラマティック度・・8 楽曲・・6 総合・・7
Portnoy, Sheehan, MacAlpine, Sherinian 「Live in Tokyo」
マイク・ポートノイ、ビリー・シーン、トニー・マカパイン、デレク・シェリニアンという
名うてのメンバーによるテクニカルユニットのライブ作品。2013年作
2012年の日本公演ライブを収録した2CDで、自分もこのライブに足を運んだが、
内容はまさに超豪華メンバーによるインストバトル。いきなりDREAM THEATERの曲で幕を開け、
続いてLiquid Tension Experiment、さらにはマカパインや、デレクのアルバムからの曲も披露、
急造ユニットとは思えない見事なアンサンブルを聴かせてくれる。ギターソロやドラムソロタイムなど、
それぞれの技巧でたっぷりと楽しませつつ、ラストはTALASの“SHY BOY”でMr.BIGファンも大喜び。
テクニカル度・・8 ライブ演奏・・9 楽曲・・8 総合・・8
Poverty's No Crime「The Autumn Years」
ドイツのプログレメタル、ポヴァティーズ・ノー・クライムの2nd。1996年作
シンセを含む5人組で、メロディアスな聴き心地と知的な展開力を併せ持ったサウンドは、
いわゆるプログレメタルといってよいものだが、このバンドの場合はただテクニカルに走るのではなく、
センスのよい整合性でドラマティックな雰囲気を作り出すというタイプ。
メロディックなギターフレーズとシンセによる優美な味付けで、じっくりと聴かせる。
ヴォーカルの弱さが惜しいが、確かな実力と音楽性をもったバンドだと思う。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・7 重厚度・・8 総合・・7.5
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Poverty's No Crime「Slave to the Mind」
ドイツのプログレメタル、ポヴァティーズ・ノー・クライムの3rd。1999年作
適度にテクニカルなアンサンブルとメロディックな叙情性のバランスに加え、
本作ではサウンドにぐっとスケール感が加わってきた。うるさすぎないシンセアレンジに、
ヘヴィすぎないギターワーク、リズムチェンジを含んだドラマティックな展開とともに、
知的なセンスに包まれたProgMetalが楽しめる。派手すぎないメロディアスすぎないという、
この寸止め感こそが、いわば玄人好みのサウンドなのだと思う。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 重厚度・・8 総合・・8
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POVERTY'S NO CRIME「ONE IN A MILLION」
ドイツのプログレッシブメタル、ポバティズ・ノー・クライムの4th。2001年作
美麗なシンセアレンジにメロディックなギターと伸びやかなヴォーカルを乗せた、
ドラマティックなサウンドであるが、いわゆるDTタイプのプログレメタルとも少し違う。
誤解を恐れずに言えば、PAIN OF SALVATIONなどと同様に、「何かに似てそうで似ていない」という、
バンド独自の深化の過程にある音、といえばいいのか。バックに荘厳なキーボードを使いながらも
安易にシンフォに走りもせず、ギターは効果的に流麗なメロを奏でるがそれは演奏に一体となったもので、
ヴォーカルにしろドラムにしろ、すべてこのサウンドを構築するための要素としてのプレイに従事している。
一言で言えばクールなサウンドであるが、同時にじっくりと胸にしみ入るメロディアスな部分も心地よい。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 楽曲センス・・8 総合・・8
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POVERTY'S NO CRIME「The Chemical Chaos」
ドイツのプログレッシブメタル、ポバティーズ・ノー・クライムの5th。2003年作
地道に活動を続けるこのバンド。知的なプログレ性と、内面的な描写はPAIN OF SALVATIONにも
通じる音楽性があり、その高い演奏力と楽曲センスにより玄人受けするProg Metalバンドだといえる。
前作もこの手としては相当にクオリティの高いアルバムだったが、今作ではさらにメロディの充実により
全体的にメロディックな聴きやすさもぐっと増していて、難解すぎずに楽しめる作品になっている。
もちろん、知的で奥深いプログレッシブな質感はそのままで、ほのかな薄暗さを持ったサウンドは
決して派手ではないが、じっくりと聴き込むに値するだけの完成度がある。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 内的マイン度・・8 総合・・8.5
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POVERTY'S NO CRIME「Save My Soul」
ドイツのプログレメタルバンド、ポヴァティズ・ノー・クライムの6th。2007年作
クオリティの割には比較的知名度が低いバンドだが、とくに4th以降の出来は見事で、
前作は派手さこそなかったが、メロディの充実と知的な奥深さを感じさせた傑作だった。
今作は、のっけからやや派手めのProgMetalサウンドでたたみかけてくる。
決してテクニカルな自己満足に陥らず、しっかりとメロディを紡ぐことでドラマ性を生み出し
哀愁の泣きのギターとうっすらとしたシンセによってサウンドを重厚に彩っている。
SIEGES EVENなどとともに、ハイセンスなドイツ産ProgMetalとして再評価すべきバンドだろう。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・7 ドラマティック度・・8 総合・・8
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Poverty's No Crime 「Spiral Of Fear」
ドイツのプログレメタル、ポヴァティズ・ノー・クライムの2016年作
1995年にデビューのベテランで、本作は2007年作以来、9年ぶりの7作目となる。
ほどよくヘヴィなギターに美しいシンセを重ねた重厚な感触に、知的な構築力で描かれる、
ドラマティックなサウンドはこれまで通り。キャリアのあるバンドらしいどっしりとした味わいで、
テクニカル過ぎないスタイリッシュなセンスで聴かせる作風。楽曲ごとのインパクトはさほどないものの、
VANDEN PLASなどと同様に、全体の流れでじっくりと楽しめる。ただ、もう少し盛り上がる部分が欲しいかな。
メロディック度・・8 テクニカル度・・7 スタイリッシュ度・・8 総合・・7.5
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POWER OF OMENS「EYES OF THE ORACLE」
イタリアのバンドかと思ったが実際はアメリカのバンドらしい、パワー・オブ・オーメンズの1st。
買うかどうか迷ったが、意味不明のCGジャケが妙にプログレだったので(笑)購入。
曲も10分台が3曲と気合十分。イントロの壮大さに思わず身構える。
Keyがいないので音の厚みはないが、変拍子多用のテクニカルな演奏はなかなかの迫力。
あとは聴かせどころのメロディの説得力か。メンバーの技量は十分とみた。
メロディアス度・・6 演奏・・8 プログレ度・・8 総合・・7
POWER OF OMENS「ROOMS OF ANGUISH」
アメリカのプログレメタルバンド、パワー・オブ・オーメンズの2nd。2002作
1stはギター主体のテクニカルメタルであったが、本作ではシンセが多用されるようになって、
ずいぶんProgMetalっぽさが増している。切り返しの多いやや唐突なリズムチェンジは相変わらずで、
Legar de Mainなどを思わせる複雑な楽曲にハイトーンヴォーカルが乗る。
なんというか、雰囲気は悪くないのだが、やはり曲が整理しきれていない感じで
聴き所は多くても印象に残らないのだ。まだまだProgMetalマニア向けの音である。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・8 楽曲構成・・6 総合・・7
PRESTO VIVACE 「REALIDADES CONVENIENTES」
アルゼンチンのプログレメタル、プレスト・ヴィヴァスの2018年作
2000年にデビューし、本作は5作目となる。のっけから15分の大曲で、きらびやかなシンセアレンジに
ほどよく叙情的なギターとパワフルなヴォーカルで、テクニカルで濃密なProgMetalを構築する。
巧みなベースプレイに流麗なメロディを奏でるギターも随所にアクセントになっていて、
リズムチェンジを含む緩急ある展開力とともに、知的でドラマティックなサウンドを描いてゆく。
中盤以降も、11分という大曲が2つあり、いくぶん力みがちのヴォーカルが暑苦しいのだが、
そんなエモーショナルな情感も南米らしさか。ともかく重厚にしてテクニカルな力作です。
ドラマティック度・8 テクニカル度・8 濃密度・8 総合・7.5
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Profusion 「Rewotower」
イタリアのプログレメタル、プロフュージョンの2012年作
シンセを含む5人編成で、適度なヘヴィさと軽妙なテクニカルさにキャッチーなメロディを含んだ、
ハードプログレ(メタル)サウンド。プログレ的な美しいシンセワークとともにセンスのよいアレンジで
SPOCK'S BEARDやIT BITES、あるいはACTあたりにも通じるような聴き心地がある。
ヴォーカルの繊細な歌声に、やわらかなピアノの音色など、叙情的な美しさも光っており、
随所に効かせるギターの流麗でテクニカルなフレージングもよい感じだ。ジャケは地味ながら、
メロディセンスに溢れた高品質な作品です。キャッチーなProgMetalとしても楽しめる。
メロディック度・・8 テクニカル度・・8 楽曲センス・・8 総合・・8
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Profusion 「Phersu」
イタリアのプログレメタル、プロフュージョンの2015年作
本作はタイトルなどから古代イタリアのエトルリア人をテーマにした作品のようだが、サウンドの方は
ハード寄りのギターときらびやかなシンセをテクニカルなアンサンブルに乗せた、モダンでキャッチーな作風。
前作よりもヘヴィな部分をスタイリッシュにを強めた感触で、HAKENやFROST*あたりにも通じるような、
優雅な構築センスが光る。一方では、エモーショナルなヴォーカルと美しいシンセによる叙情性は、
イタリアのバンドらしい繊細さを感じさせ、メリハリのあるドラマ性とスケール感を描くのも素晴らしい。
プログレ的な展開美とやわらかなメロディを同居させ、モダンなセンスで仕上げたという傑作です。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 構築度・・9 総合・・8.5
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Prospekt 「The Colourless Sunrise」
イギリスのプログレメタル、プロスペクトの2013年作
メタリックなギターワークとうっすらとしたなシンセアレンジに、伸びやかなハイトーンヴォーカル乗せ、
モダンな硬質感に包まれたProgMetalサウンド。随所に流麗なギターフレーズを覗かせつつ、
メロパワ的な疾走感も含んだ緩急ある展開力もなかなかのもので、ヴォーカルの確かな表現力が
サウンドに説得力を付加していて、テクニカルな演奏力も一線級のバンドとすでに遜色ない。
ヘヴィなリフを変拍子に乗せたDjent風の味わいもあったりと、若いメタルリスナーにも対応。
10分を超える大曲などもスタイリッシュに構築してゆく。重厚かつシンフォニックな高品質作品だ。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 モダンサウン度・・8 総合・・8
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PROTOTYPE「Trinity」
アメリカのプログレメタルバンド、プロトタイプの1st。2004作
聴くのは初めてだが、昨今珍しいギター主導型のプログレメタルをやっている。
リズムの変化と硬質のリフをメインにしたサウンドは、シンセがない分だけかなり硬派に聴こえる。
曲は4、5分台の比較的コンパクトなものが主体で、ドラマティックさや展開美には若干欠けるものの
ギターがときおりメロディを奏でたり、リフの変化によって叙情性を感じさせたりする部分には好感が持てる。
現時点では曲聴かせ所のインパクトがやや弱く、曲の輪郭をはっきりさせることが質の向上にもつながるはず。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・8 硬派ProgMetal度・・8 総合・・7.5
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PROTOTYPE「Continuum」
アメリカのプログレメタルバンド、プロトタイプの2nd。2006作
気持ち悪いジャケにやや引いたが…内容には前作から格段の成長が窺える。
ドラムが交代したせいもあってか、リズムのキレが増し、音に説得力が感じられるようになった。
ギターリフ主体の硬質感の中にも、コードによるメロディ感と流れの中での展開美が加わり
ある種ドラマティックな空間を描き出すところまで来ている。ギタリストの表現力にも成長の跡が見え、
スラッシュ的でありながらもプログレメタルとしてもちゃんと聴けるという、このバンドの独自の色が上手く発揮されている。
ザクザクなリフで聴く硬派なProgMetal。もしくは、メロディのあるスラッシーなテクニカルメタル作。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・8 硬派ProgMetal度・・8 総合・・8
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PRYMARY
アメリカのプログレメタルバンド、プライマリーの1st。2003作
基本はDREAM THEATERスタイルのサウンドで、適度にテクニカルでメロディアス。
昔のケヴィン・ムーア並みにシンフォニックなシンセワークも耳に心地よいが、
曲はやや唐突な展開もあり、部分的にアレンジにおけるマイナー臭さが感じられる。
また、ヴォーカルの弱さがそのまま音の説得力の弱さにつながっているのも惜しい。
10分台の大曲2つにラストは24分の長曲もあり、デビュー作にしてこの気合の入れようはすごいが、
全73分という長尺感を払拭するには、まだまだ楽曲アレンジの面でも演奏面でも物足りなさが残る。
メロディアス度・・7 プログレメタル度・・8 楽曲・・7 総合・・7.5
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PRYMARY「The Tragedy of Innocence」
アメリカのプログレメタルバンド、プライマリーの2nd。2006作
DREAM THEATERスタイルの5人編成で、サウンドの方も「AWAKE」期のDTを思わせる
ヘヴィで薄暗い質感とテクニカルな展開が合わさった、なかなか質の高いものだ。
曲ごとに25年前からしだいに現在へといたる過程を描く、コンセプト作となっているあたりも
Prog Metalとしての知的な世界観を描き出すというこだわりを感じる。
演奏力もあるし、全体的な雰囲気も悪くはないので、あとは楽曲の中にひとつ突き出た聴きどころや
魅力的なメロディなどを聴かせられるようになれば、さらにいいバンドになるだろう。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・8 楽曲・・7 総合・・7.5
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Psychic For Radio 「Standing Wave」
アメリカのハードプログレ、サイキック・フォー・レイディオの2012年作
Progrock Recordsのオーナーでもあるショーン・ゴードンとヘニング・ポウリー(CHAIN、FRAMESHIFT)を中心に、
マーク・ゾンダー(元Fates Warning、WARLORD)、トッド・プラント(MILLENIUM、Criptic Vision)などが参加したユニットで、
適度にテクニカルな展開とキャッチーなメロディが合わさった、Enchantなどにも通じる感触のハードプログレサウンド。
いくぶんモダンなヘヴィさも含ませた楽曲は、ProgMetal的な要素もあって、曲によってはサックスが鳴り響く
フュージョンメタル的な軽快さや、後半には女性ヴォーカルが参加した叙情的なナンバーなどもある。
それなりにクオリティは高いのだが、反面、方向性が絞り切れていないもどかしさも感じられるのが残念。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・7 楽曲・・7 総合・・7.5
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PSYCHOTIC WALTZ 「THE GOD-SHAPED VOID」
アメリカのプログレッシブメタル、サイコティック・ワルツの2020年作
1990年にデビュー、1996年までに4作を残して消えたバンドの、じつに24年ぶりとなる復活作。
ギター、シンセ、ベース、ドラムはオリジナルメンバーで、ヴォーカルは、Deadsoul TribeやThe Shadow Theoryの、
デヴォン・グラヴェスが参加。前任者の独特のハイトーンに比べると、ぐっとマイルドな歌声で、浮遊感のあるサウンドに
落ち着いた大人の味わいを加えている。ほどよく知的な展開力はかつてを思わせるが、より叙情的な味わいで、
メロウなギターの旋律にうっすらとしたシンセが耳心地よい。スリリングな部分よりはスペイシーな雰囲気に包まれていて、
中期のFATES WARNINGあたりにも通じる、良い意味での地味な味わいで、ゆったりと楽しめる。
ドラマティック度・・7 プログレッシブ度・・7 大人の叙情度・・8 総合・・8
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Q
QUEENSRYCHE「Operation Mindcrime」
アメリカのプログレッシブ・ハードロックバンド、クイーンズライクの1988作
このアルバムを語る上で、言及せねばならない「コンセプト作」云々に関しては、歌詞や世界観よりも
あくまで楽曲至上主義である今の日本のリスナーにとっては、なかなか評価が分かれるところだと思う。
すなわち、DREAM THEATERの登場以後やたらと演奏偏重のスタンスが定着している現在、
プログレッシブメタルとしての聴き方にこの作品を当てはめるべきなのかどうかという疑問がある。
あらためて聴いてみるに、イントロからしてすでに音の重ね方がドラマティック。
斬新なSEの使い方は流れの中でとても効果的だし、ギターとシンセによる音の広げ方も見事。
そして、自在に声を使い分けるジェフ・テイトの歌唱はやはり素晴らしい。
80年代にこれほどの知性とアイディア、そしてドラマ的手法を盛り込んだという歴史的評価はこれからも変わらないだろう。
メロディアス度・・8 ドラマティック度・・9 知的ロック度・・8 総合・・8.5
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QUEENSRYCHE「EMPIRE」
アメリカのプログレッシブ・ハードロックバンド、クイーンズライクの1990年作
驚異的な傑作となった「オペレーション・マインドクライム」の後で、バンドはどのようなサウンドを提示するのか、
多くのファンに注目されながら発表された作品。本作はコンセプトアルバムではないが、
楽曲ごとの確かなクオリリティと流れには、バンドとしての成長と勢いとが如実に感じ取れる。
正統派のHR/HMをモダンかつ知的なヴェールにくるんで再構築したというようなセンスで、
随所に美麗なシンセアレンジなども含みつつ、ジェフ・テイトの表現力ある歌声とともに、
じっくり聴かせるアダルトな味わいは見事。まさに90年代の幕開けを告げるような力作に仕上がっている。
メロディアス度・・8 ドラマティック度・・8 知的ロック度・・8 総合・・8.5
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QUEENSRYCHE 「Operation: LIVEcrime」
クイーンズライクのライブアルバム。2001作
彼らの最高傑作である「Operation Mind Crime」を完全再現したステージ。
映画的手法で、歌詞と楽曲をリンクさせ、曲間にSEや語りを入れるなど、
聴き手の想像力を喚起させるサウンドは、ライブでの臨場感を加えてさらに迫力を増している。
後のDREAM THEATERの「Metropolis pt2」などにも影響を与えたであろう、
歴史的名作のライブ再現アルバムである。アルバム盤を聴いている方も必聴だ。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 ライブ演奏・・9 総合・・8.5
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QUEENSRYCHE「Operation Mindcrime U」
クイーンズライクの2006作
あの名作から18年後になって、かつてのタイトルを冠した作品でバンドは勝負に出た。
ドラマティックなイントロから期待をさせるが肝心の曲の方は玉石混合な感があり、80年代風味出そうとしている部分はやはりどうも古くさい。
ギターフレーズにおけるかつての輝きもやや失われて、ストーリーのついたアルバムという点においても、現在ではまったく目新しくもなく、
音だけを取り出せばDREAM THEATER以後のプログレメタルリスナーが聴くにはややつらいかもしれない。
あるいは時代的意義は無視して過去からの贈り物として聴くのが正しいかもしれない。ともあれ、全体的にはよく作ってあると思うし、
とくに後半の出来はなかなかいい。名作復活とまではいかないが、あえて過去と向き合ったバンドの勇気は評価されるべきものだと思う。
メロディアス度・・7 ドラマティック度・・8 知的ロック度・・8 総合・・8
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QUEENSRYCHE
アメリカのプログレッシブ・メタル、クイーンズライクの2013年作
ジェフ・テイトが脱退し、新たにCRIMSON GLORYのトッド・ラ・トゥーレが加入した本作は
往年を思わせるドラマティックなサウンドが復活、随所に流麗なギターフレーズも響かせて、
古き良きHR/HMのテイストにモダンな翳りをまぶしながら、湿り気を含んだメロディを聴かせてくれる。
伸びやかなトッドの歌声も見事に楽曲にマッチしていて、メロウでドラマティックな世界観とともに、
これぞ知的メタルというサウンドを描いてゆく。ヘヴィさとキャッチーさのバランスもよく、
美しいラストのバラード曲まで、ベテランらしい味わいでじっくりと楽しめる重厚な力作に仕上がっている。
ドラマティック度・・8 メロウで知的度・・8 重厚度・・8 総合・・8
THE QUIET ROOM 「Reconceive」
アメリカのプログレメタル、クワイエット・ルームの2000年作
ツインギターにシンセを含む6人編成で、ザクザクとしたヘヴィなギターにパワフルなヴォーカルと
美しいシンセアレンジを乗せ、適度にテクニカルなアンサンブルで聴かせる重厚なProgMetal。
楽曲は4〜6分前後と長すぎず、DREAM THEATERをよりパワーメタル風にしたという感触もありつつ
ダークなドラマ性と知的な構築力が光る。メロディックなフックやキャッチーな部分での魅力は薄いものの、
テクニックのあるドラムをはじめ確かな演奏力で、どっしりとした説得力のあるサウンドを描きだす。
甘すぎない程度の叙情を、硬質なヘヴィネスで包み込んだ、玄人好みの高品質なアルバムだ。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 重厚度・・8 総合・・7.5
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R
REDEMPTION
アメリカのプログレメタルバンド、リデンプションの1st。2003作
すでに、2nd、3rdと質の高いアルバムで評価を高めているこのバンドのデビュー作。
壮大なシンセワークから、ドラマティックな雰囲気で曲が始まると、
変拍子の入った適度にテクニカルなリズムと、センスのよいギターワークで
モダンなProgMetalを構築してゆく。ヴォーカルはいくぶん弱いものの、サウンドにおける
メロディと硬質感のバランスがよくとれていて、聴き疲れしないのがこのバンドの特徴だろう。
完成度としては傑作となる2ndほどには高くないものの、ラストの20分超の大曲も含めてドラマティックな作風は、
この1stの時点でもうすでに完成されている。正統派のProgMetal好きならやはり要チェックのバンドであろう。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 楽曲・・7 総合・・7.5
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REDEMPTION「The Fullness of Time」
アメリカのプログレメタルバンド、リデンプションの2nd。2005年作
緊張感のあるややダークめの雰囲気に、テクニカルな変拍子リズムに
シンフォニックなキーボードとメロウなギターが合わさって重厚な世界観を構築している。
DREAM THEATER、PAIN OF SALVATIONあたりからの影響も感じさせつつ、
メロディアスでありながらもの悲しい叙情を盛り込んだ雰囲気は実に魅力的。
15分の大曲にラストには組曲方式の20分以上の楽曲を構築するセンスなどは只者ではない。
プログレッシブな叙情メタルに飢えている方にはまさにぴったりの一枚。
メロディアス度・・8 プログレメタル度・・8 メランコリックな叙情度・・9 総合・・8
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REDEMPTION「Origins of Ruin」
アメリカのプログレメタルバンド、リデンプションの3rd。2007作
この手の正統派プログレメタルバンドとしては、前作2ndは楽曲、演奏ともになかなか質が高かった。
今作も、いわゆるDREAM THEATER的なレベルの高い楽曲構築を聴かせてくれる。
最近のDTと同様、ややダークさのある叙情性をちりばめ、テクニカルな展開美と歌とのバランスもよく
近年のProg Metal系バンドにありがちな独りよがりな部分は感じられない。
適度な緊張感とともに、しっかりと世界観を感じさせるスケールも出てきたことで、
サウンドの説得力がさらに増してきたという印象だ。質の高い模倣という以上のセンスを感じ取れる。
生き残っている正統派のProg Metalバンドとして、今後の活動にさらに期待したい。
メロディアス度・・8 構築度・・9 楽曲・・8 総合・・8
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REDEMPTION「Snowfall on Judgement Day」
アメリカのプログレメタルバンド、リデンプションの4th。2009年作
過去3作はいずれもドラマティックなProgMetalの傑作であったが、
本作もDREAM THEATERを思わせるテクニカルなリズムと、アンサンブル、
適度なダークさを漂わせたメロディと叙情で構築されたクオリティの高いサウンドだ。
どのパートも高い演奏力があり、それがかえって歌の弱さを感じさせてしまうのだが、
むしろそこも含めてバランスのとれた聴き安さになっている…という気もしなくもない。
全体的に質は高いが、今回は曲ごとの印象は薄いか。ジェイムス・ラブリエが1曲ゲスト参加。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・8 ドラマティック度・・7 総合・・8
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「This Mortal Coil」
アメリカのプログレメタル、リデンプションの2011年作
2003年にデビュー、5作目となる本作は、のっけからなにやらヘヴィなリフで重々しく始まるが、
美しいシンセワークと、テクニックのあるギターとともに変則リズムのキメを多用した
スリリングなサウンドに引き込まれる。いわばDREAM THEATERタイプの典型なのだが、
むしろ、今のDT以上に濃密な正統派のプログレメタルを聴かせてくれている。
モダンな硬質感と薄暗い叙情性がドラマティックに構築されてゆく、質の高さとセンスが光る力作だ。
ボーナスDiscには、Elton John、Starship、TOTO、Journey、UFO、Tri Amosのカヴァーを収録。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 むしろDTよりイイ度・・9 総合・・8
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Redemption 「Long Night's Journey Into Day」
アメリカのプログレメタル、リデンプションの2018年作
2003年にデビュー、正統派のProgMetalバンドとしては、すでに中堅のこのバンド。本作は7作目となる。
ヘヴィなギターに美しいシンセを重ね、パワフルなヴォーカルを乗せて、テクニカルな展開力で聴かせる、
モダンな硬質感とシンフォニックな味わいが同居したサウンド。DREAM THEATERをルーツにしつつ、
デジタル世代のアレンジを取り入れながら、重厚かつキャッチーな聴き心地で構築される確かなセンスと
演奏力はやはり見事。ラストは10分を超える大曲で、緩急ある展開力でドラマティックに聴かせる。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 重厚度・・8 総合・・8
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RED HARVEST 「HYBREED」
ノルウェーのプログレッシブ・ダークメタル、レッド・ハーヴェストの1997年作
1992年にデビュー、本作は3作目で、硬質なギターリフにうっすらとしたシンセ、ダミ声ヴォーカルを乗せ、
インダストリアルな感触も含んだ知的なダークメタルを聴かせる。10分前後の大曲も多く、
激しさよりも不穏で無機質な空気感を描くような、プログレッシブといってよいセンスも個性的で、
ときに90年代クリムゾンがメタル化したような雰囲気もあったり、シンセとノイジーなギターによる
アトモスフェリックなインストや、メロトロンが鳴り響く、ドゥーミィでダークアンビエントなナンバーなど、
全78分、つかみどみろのない長尺感もあるが、得体の知れない北欧の薄闇を感じるような力作でもある。
ドラマティック度・・7 プログレッシブ度・・7 ダークでアトモスフェリック度・・8 総合・・7.5
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Regency 「Awakening」
フランスのプログレメタル、リジェンシーの2001年作
変則リズムのテクニカルなアンサンブルに、きらびやかなシンセワークを乗せ、
DREAM THEATERを思わせる知的な構築性に包まれたインストサウンド。
ギターは随所にメロディックなフレーズを奏で、シンセによるシンフォニックな味付けと、
緩急に富んだ展開力で、オールインストながらも叙情性のバランスがよく飽きずに楽しめる。
ギターやシンセのセンスもなかなかで、ドラムも上手いので、ここに歌が入れば
あるいは一線級のバンドになれた気もするのだが。この一作のみで終わったのだろうか…
バンドについての情報はまったく分からない。掘り出しもの的なインストProgMetalの好作品。
メロディック度・・8 テクニカル度・・8 知的構築度・・8 総合・・8
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The Reticent 「On The Eve Of A Goodbye」
アメリカのプログレメタル、レティセントの2016年作
2006年にデビューし、4作目。語りによるイントロから、正統派寄りのギターにエモーショナルなヴォーカルを乗せ、
随所にグロウルヴォイスも加えたアグレッシブなパートも含んだ、モダンなProgMetalを展開する。
小曲を挟んで、コンセプト的な流れで描かれるスケール感と、随所にエクストリームな激しさも覗かせつつ
メロディックな叙情も含ませた緩急ある展開力は、Between And Buried And Meなどに通じる部分もあるが、
こちらはそれほどは極端ではなく、楽曲自体にも、もう少し盛り上がりが欲しいか。全76分という力作ではある。
ドラマティック度・8 テクニカル度・7 叙情度・7 総合・7
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RH FACTOR「RODLER /HULTBERG」
アメリカのプログレメタル、RHファクターの1998作
LEGER DE MAINのクリス&ブレッドのロドラー兄弟とケヴィン・ハルトバーグによるトリオ編成。
軽やかなリズムの上に、適度にハードなギターとキャッチーなヴォーカルを乗せて、
随所に変則リズムのテクニカル性を含ませながら構築される、玄人好みのサウンド。
癖のあるヴォーカルはやや好みを分けるかもしれないが、メタルフュージョン的な軽妙な演奏力と
独自の浮遊感を感じさせるセンスは素晴らしい。個性派テクニカルメタル好きにはうってつけの作品だ。
メロディアス度・・8 軽妙度・・8 テクニカル度・・9 総合・・8
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RIVER OF CHANGE「Where Reality Cannot Enter」
イタリアのプログレメタルバンド、リヴァー・オブ・チェンジの1999作
美しいシンセによる叙情美とテクニカルな展開力で聴かせるProgMetal。
硬質感よりもややマイナー系のやわらかさ、つまりクサメロが前に出ていて、
とくにシンフォニックですらあるシンセワークはなかなか耳に心地よい。
グッとくるメロディの聴かせどころも心得ていて、ときおり耳を引かれるものの、
楽曲、メロディともにもう一歩というところ。ヴォーカルの弱さはいかんともしがたい。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・7 楽曲・・7 総合・・7.5
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Riviere「Heal」
フランスのプログメタル、リヴィエーレの2016年作
うっすらとしたシンセアレンジに、存在感あるベースと適度にハードなギターを乗せて、
モダンな硬質感と繊細な叙情性を同居させ、ProgMetal的な感触を含んだサウンド。
マイルドなヴォーカルを乗せたエモーショナルな聴き心地とやわらかな浮遊感も含めて、
ドイツのSYLVANをメタル寄りにしたという雰囲気もあり、プログレなエモロックとしても楽しめる。
2本のギターが複雑に絡む厚みのあるアレンジや、リズム面でのテクニカルなセンスにも
知的な構築性を感じさせる。スタイリッシュなプログレ風モダン・ポストロックの好作品。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 モダン度・・8 総合・・8
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Rossometile「Terrenica」
イタリアの女性Vo(プログレ)メタルバンド、ロッソメティレの2009年作
憂いを含んだ美しい女性ヴォーカルの歌声に、シンセを含んだシンフォニックなアレンジ、
適度にメタリックなギターはヘヴィすぎず、ゴシックメタル的なプログレという雰囲気もある。
メランコリックな叙情性とイタリア語の歌唱が良い感じでマッチしていてとても聴き心地がいい。
メロウなフレーズを奏でるギターのセンスも相当なもので、演奏にローカルなマイナー臭さはまったくない。
プログレとメタル、ゴシックの境目をゆくような作風がなかなか絶妙で、今後が楽しみな逸材だ。
シンフォニック度・・8 メタル度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8
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Rubycone 「Pictures For Susceptible Housewives」
ロシアのプログレメタル、ルビコンの2008年作
ツインギターにベース、ドラムという4人編成で、インストによるテクニカルなサウンド。
3、4分台を中心にした楽曲は複雑すぎず、軽やかなメタルフュージョン風味や
随所に叙情的なパートもあったりして悪くはないのだが、いかんせんメロディや展開の魅力が足りない。
ギターをはじめとして演奏陣の技量とセンスも、正直アマチュアに毛が生えた程度という感じで、
全体的にスリリングさや耳を惹きつけるものがない。とりあえず方向性の確立と腕を磨いてください。
メロディック度・・7 テクニカル度・・7 楽曲・・6 総合・・7
RUDESS MORGENSTEIN PROJECT
ジョーダン・ルーデスとロッド・モーゲンステインによるユニットの1997年作
「豪技」という邦題の通り、DREAM THEATER加入前のルーデスのキーボードプレイがたっぷりと堪能できる。
LIQUID TENTIONあたりに比べるとよりルーデスの遊び感覚と、豊富な素養がかいま見える音で、
ディキシー・ドレックズでもおなじみ、手数の多いモーゲンステインのドラムの上を楽しそうに弾きまくっている。
最近のルーデスのソロ作よりもメタル色は薄く、プログレキーボードが好きなら間違いなく楽しめる。
全編インストであるが二人の「豪技」が冴える一枚。このプロジェクトのオフィシャルブートのライブCDも出ている。
メロディアス度・・8 キーボード・・9 テクニカル度・・8 総合・・8
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RUDESS MORGENSTEIN PROJECT「THE OFFICIAL BOOTLEG」
ジョーダン・ルーデスとロッド・モーゲンスタインによるユニットのライブ作品。
1997年から98年のライブ音源を収録したオフィシャルブートのライブ作品であるが、
ブートレグといっても音質は通常のライブアルバム並に良好なのでご安心を。
ルーデスのシンセのテクニックは、DTやリキッド・テンションなどのアルバムにて折り紙つきだが、
ここで聴けるのは、メロディックな叙情とテクニカル性を抽出したような非常に高度なもので、
まさにシンフォニック・プログレ・ジャズロックの理想形といったサウンドだ。
変拍子リズムの上で、センスあるメロディを楽しそうに弾きまくるルーデスの鍵盤さばきは必聴!
メロディアス度・・8 テクニカル度・・8 弾きまくり度・・9 総合・・8
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S
SAHARA「Self Ego」
韓国のプログレメタルバンド、サハラの2nd。1996作
韓国のメタルバンドといえば、一番有名なのはJEREMYだろうが、
このバンドも安定した演奏力と展開美ず聴かせる質の高さが光る。
DREAM THEATERとまではいかないが、プログレッシブな知的さを感じさせる
楽曲アレンジと、甘くなりすぎないメロディと適度な硬質感にセンスを感じさせる。
英語とハングルを歌いわけながら、地域性にとらわれないHRとしての普遍性もある。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・7 楽曲センス・・8 総合・・7.5
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Scale the Summit「Monument」
アメリカのテクニカルメタルバンド、スケール・ザ・サミットの2007年作
ツインギター、ベース、ドラムという4人編成で、全編インストによるテクニカルメタルをやっている。
DREAM THEATERの間奏部を思わせるような質感もあり、メタリックな硬質感と
フュージョン的な軽妙さが同居していて、メロディアスなフレーズも多いので案外聴きやすい。
ただ、やはりオールインストなので、どうしてもBGMになりがちか。クオリティは高い。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・8 楽曲・・7 総合・・7.5
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Scale the Summit「Carving Desert Canyons」
アメリカのテクニカルメタル、スケール・ザ・サミットの2nd。2009作
基本は前作同様のインストのテクニカルメタルなのだが、一聴して音にダイナミックさが加わり、
メロディと技巧のメリハリがしっかりとついたという印象。またツインギターのそれぞれの
フレーズとリフがより有機的に絡むことで、単調だったサウンドが広がりをもって聴こえる。
リズム面でのテクニカルなキメもいっそうDREAM THEATERレベルにまでスリリングになって、
ややもするとBGMになりがちなインスト曲でも、聴いていて引き込まれる部分もしばしば。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・8 楽曲・・8 総合・・8
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Scale The Summit「The Collective」
アメリカのテクニカルメタルバンド、スケール・ザ・サミットの2011年作
いかにもDREAM THEATERのインスト版という感じだった前作も良かったが、
本作ではよりアンサンブルが強固になり、どこかスペイシーな浮遊感と
フュージョン的な軽妙さが融合された、テクニカルなサウンドが楽しめる。
歌なしながら、ギターのリフとメロディフレーズで聴かせるセンスはやはり絶品で
適度な緊張感に包まれた奥深いビジョンが楽曲を通してかいま見えてくる。
モダンな味わいの薄暗い叙情とメロウな哀愁を含んだ世界観を抜群の演奏で表現した傑作だ。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 構築センス・・9 総合・・8
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Scale the Summit 「Migration」
アメリカのテクニカルメタルバンド、スケール・ザ・サミットの2013年作
2ndまでは、DREAM THEATERのインスト版という雰囲気もあったが、前作ではひと皮むけたスケール感をまとい、
4作目となる本作では、その流れるようなテクニカル性にメロディックな聴き心地まとわせたサウンドに磨きをかけている。
メタルフュージョン的な優雅さと、Djent系の変則リズムを融合させたクオリティの高いインストパートは見事で
軽やかなアンサンブルはメタルというよりは、テクニカル・プログレ好きの方にも楽しめるだろう。
ギターのフレーズには、ジョン・ペトルーシに通じるセンスも感じさせるので、DT好きの方にもぜひ。
メロディック度・・8 テクニカル度・・8 軽やか度・・8 総合・・8
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Scale the Summit 「V」
アメリカのプログレメタル、スケール・ザ・サミットの2015年作
2007年にデビューしてから本作ですでに5作目。メタルフュージョン的な軽妙なアンサンブルと
DREAM THEATER的な構築力を融合したというようなサウンドは、本作でも存分に発揮されている。
メタリックなリフとメロディックなフレーズを兼ねそろえたセンス抜群のギターを中心に
モダンなテクニカル性を含ませた知的な展開美で、オールインストながらもメリハリに富んだ聴き心地だ。
曲によってはメタル色のぐっと薄い、肩の力の抜けたナンバーもあって、プログレ・フュージョン的な味わいもあるが、
全体的にはDjent系というべきモダンなテクニカルメタルとして楽しめる好作と言えるだろう。
ドラマテイック度・・7 テクニカル度・・8 軽妙度・・8 総合・・8
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SCALE THE SUMMIT 「In a World of Fear」
アメリカのプログレメタル、スケール・ザ・サミットの2017年作
2007年にデビュー、DREAM THEATER的な構築力をメタルフュージョン的な軽妙さに融合したサウンドで
6作目となる本作は、ギター、ベース、ドラムというトリオ編成となったが、方向性はおおむねそのまま。
テクニカルなリズムに、メロディックなギターフレーズを乗せ、優雅なメタルフュージョンを聴かせる。
楽曲は3〜5分台と長すぎず、オールインストながら、ギターの奏でるメロディのセンスとともに、
リズム面での展開力もあって飽きずに楽しめる。全体的には軽やかな聴き心地ながら、
随所にメタリックなヘヴィさも覗かせ、そのバランス感覚も見事。突出した曲はないが安定の好作品。
メロディック度・・8 テクニカル度・・8 優雅度・・9 総合・・8
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Scars Souls 「Highbreed」
ブラジルのプログレメタル、スカーズ・ソウルズの2006年作
シンセを含んだシンフォニックなアレンジと、女性ヴォーカルの歌声で
適度にテクニカルな展開力とともに聴かせるPrgMetalサウンド。
10分を超える大曲もあり、随所にDREAM THEATER的な構築力も覗かせるが、
メロディや楽曲そのものの魅力がもうひとつ足りないので、今後の成長に期待。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・7 女性Vo度・・7 総合・・7
SCENARIO「A FEARFUL SYMMETRY」
イタリアのプログレメタルバンド、シナリオの1st。2001年作
なんとフランスのプログレ/シンフォニック系レーベルMUSEAからの配給。
演奏力のあるバックに実力あるヴォーカルの歌声で聴かせる、DREAM THEATER以降のプログレメタル。
展開も多く、センスも感じられ、演奏にも問題がないので自然にさらりと聴ける。
メロディなりアレンジなりにもう一つ引っ掛かりが増えれば、さらに全体が生きてくると思う。
メロディアス度・・7 プログレ度・・8 演奏・・8 総合・・7
Sean Malone「Cortlandt」
CYNIC、GORDIAN KNOTのベーシスト、ショーン・マローンのソロ、1996/2007年作
軽やかなアンサンブルで聴かせるインストによるジャズロック色の強いサウンドで、
メタル色はほとんどない。歌うように奏でられるベースに、ギターとシンセが加わり、
フュージョン的な質感を描きつつ、随所にやはりGORDIAN KNOTを思わせる
知的でプログレッシブなアプローチがなされている。優雅に楽しめる作品です。
プログレ度・・8 メタル度・・5 アンサンブル度・・9 総合・・8
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the Seasons of Wither「Under The Spell Of A Sting Moon」
ギリシャのプログレメタル、シーズンズ・オブ・ウィザーの1998年作
ツインギターにシンセを重ねたイントロ曲から始まりつつ、マイルドなヴォーカルを乗せた、
翳りを帯びた叙情とモダンなスタイリッシュ性に、ときに語りやSEを含んだドラマ性、
スペイシーなシンセによるアンビエントなインスト曲など、とらえどころのない作風で、
全体的にさほどメタル感触はさほど強くない。ドラムは打ち込みのようで、
演奏面でのスリリングな部分もやや希薄で、楽曲的にもこれといって盛り上がらないのがもどかしい。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・7 楽曲・・6 総合・・7
SECRECY「Raging Romance」
ドイツのプログレッシブメタルバンド、シークレシィの2nd。1991年作
重厚なリズムと浮遊感のある独特のメロディセンス、DREAM THEATERとはまた異なるセンスを有し、
濃密で聴き応えのある2枚の作品を残し消えたこのバンド。今でいうとこの絶妙のバランス感覚は
PAIN OF SALVATIONにも近いかもしれない。叙情あふれるメロディをじつにクールに構築している。
ともかく、この年代にここまで知的で奥深いサウンドを生み出していたのだから、恐れ入る。
このような素晴らしいバンドは昨今でもなかなかいないので、ぜひとも再評価を願いたい。
1st「Art in Motion」も引けをとらない出来です。センスある知性派バンドが好きな方はぜひ。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・7 知的センス度・・9 総合・・8.5
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SECTION A「THE SEVENTH SIGN」
デンマーク人ギタリストを中心とした、プログレメタルバンド、セクション・エーの2003年作
メンバーは元LION'S SHAREのVoに、VANDEN PLASのDr。 ゲストにデレク・シェリニアンが参加。
トーベン・エンヴォルドセンのテクニカルギターを中心とした硬質なサウンドで
変拍子リズムの上をギターと自身のプレイによるベース、キーボードが乗り
そこにマイルドな歌声が加わると、意外に正統派のプログレメタルといった雰囲気。
ところによってはDREAM THEATER的で、ヘヴィでややダークな部分と
テクニカルな部分、メロウな部分のバランスがとれているので聴きやすい。
反面、プログレメタルとしてはアレンジの意外性や新鮮さには欠けるか。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・7 楽曲・・7 総合・・7
SECTION A「PARALELL LIVES」
トーベン・エンヴォルドセン率いるプログレメタルバンド、セクション・エーの2nd。2006年作。
テクニカルかつヘヴィなProgMetalであった前作に比べ一聴してオーセンティックなメタル度が増している。
重厚な雰囲気は悪くはないが、楽曲、演奏ともに突き抜けるものがなく、全体的にも中庸感が漂っている。
10分の大曲なども、それなりにドラマティックではあるのだが、なにかが物足りない。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・7 楽曲・・7 総合・・7
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Sed Lex 「De Viris」
フランスのプログレメタル、セッド・レックスの2003年作
シンセを含む5人編成で、重すぎないツインギターにシンセを重ね、ハイトーンのヴォーカルとともに、
わりとオールドスタイルのサウンドを聴かせる。テクニカルな展開というのはあまりないので、
むしろキャッチーなハードロック寄りの感触で、ときにきらびやかなシンセが楽曲を彩っている。
ややラウドな音質面も含めて、ほどよくマイナーなB級っぽさが味わいになっていて、マニア好みの聴き心地です。
ドラマティック度・7 テクニカル度・7 マイナー度・8 総合・7
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SEMANTIC SATURATION「Solipsistic」
テクニカルメタルユニット、セマンティック・サテュレーションの2012年作
カナダ在住のギタリスト、シャント・ハゴピアンを中心にしたユニットで、ドラムにはヴァージル・ドナーティ(PLANET
X)、
ベースにリック・フィエラブラシ(PLANET X)、ゲストヴォーカルはアンディ・カンツ(VANDEN
PLAS)が参加。
凄腕のメンバーによるテクニカルなインストパートは、随所にメロディックなギターフレーズも覗かせながら、
PLANET Xを思わせるメタルフュージョン的な軽妙さとともに、プログレッシブで知的な構築センスが光る。
さらにゲストでデレク・シェリニアンが参加…って、ほぼ、PLANET X じゃん!…などという突っ込みはさておき、
スリリングなアンサンブルとメロディックな聴き心地を巧みに同居させていて、全体的にも難解さは感じない好作品。
メロディック度・・8 テクニカル度・・8 構築センス・・8 総合・・8
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7for4 「Contact」
ドイツのテクニカルメタル、セヴン・フォー・フォーの2001年作
Sieges Evenで活躍したギタリスト、ウォルフガング・ツェンク率いるバンドで、
メロディアスなギターフレーズを盛り込んだ、メタルフュージョン的な優雅なサウンド。
テクニカルなキメを盛り込みつつ、難解さはなくあくまでメロディックな聴き心地が特徴で、
メタル度が控えめな分、ジャズロック風味の軽妙な味わいが前に出るナンバーもある。
後半には歌入りのナンバーもあって、歌が入るとよりキャッチーなプログレメタル風味になる。
メロディック度・・8 テクニカル度・・8 メタルフュージョン度・・8 総合・・8
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7 for 4 「Time」
ドイツのテクニカルメタル、セブン・フォー・フォーの2004年作
2作目となる本作も、変則リズムをたっぷり盛り込んだ、スタイリッシュなメタルフュージョン的なサウンドで、
インスト主体ながら、メロディックなギターフレーズを含んだ優雅な聴き心地が楽しめる。
うっすらとしたシンセによる味付けもセンスがよく、テクニカルなギタープレイを引き立てていて、
女性ヴォーカルを乗せた優美なナンバーなども魅力的だ。PLANET Xあたりに比べると、よりメロディックな感触が強いので、
複雑な楽曲であっても耳疲れしない。ラテン風味を感じさせる軽妙さに、ギターインスト的なメタル風味が合わさったような好作品だ。
メロディック度・・8 テクニカル度・・8 メタルフュージョン度・・8 総合・・8
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7 for 4「Difusion」
ドイツのテクニカルメタル、セブン・フォー・フォーの2008年作
Sieges Evenで活躍したギタリスト、ウォルフガング・ツェンク率いるバンドの3作目。
前作同様、メタルフュージョン的な軽妙なアンサンブルで、テクニカルな変拍子をまじえつつ、
メロディックかつ巧みなギターワークを中心にしたクオリティの高いインストサウンドを聴かせる。
ネオクラシカル風味からラテン風味、哀愁の泣きまで表現する、ツェッンクのギターはさすがという存在感で
随所に気の利いたシンセを乗せたアレンジとともに、クールな構築美と濃密さのバランスがとれた内容である。
今作ではゆったりとした叙情パートやクラシカルなアプローチなどもあって、聴きどころの多い力品となっている。
メロディック度・・8 テクニカル度・・8 メタルフュージョン度・・8 総合・・8
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7 for 4「Splash」
ドイツのテクニカルメタル、セブン・フォー・フォーの2014年作
前作から6年ぶりとなる4作目で、過去作同様のテクニカルなフュージョンメタルを基本に、
ジャケのイメージのようによりカラフルな仕上がりとなっている。変拍子入りのテクニカルな部分と
シンセアレンジを含んだメロディックな叙情性のバランスもよく、オールインストながらも起伏に富んだ楽曲は
流れるような大人のアレンジセンスが光っている。ネオクラシカルスタイルから、泣きのフレーズまで奏でる
ウォルフガング・ツェンクのギタープレイもたっぷり味わえる。強力なインパクトはないが安心の一枚です。
メロディック度・・8 テクニカル度・・8 メタルフュージョン度・・8 総合・・8
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Seven the Hardway
アメリカのプログレメタルユニット、セブン・ザ・ハードウェイの2010年作
ギターにトニー・マカパイン、ドラムはヴァージル・ドナーティ、ヴォーカルにマーク・ボールズという
名だたる凄腕メンバーが集結した期待のプロジェクト。プロデューサーは、ロイ.Zだ。
そのサウンドは、ヘヴィなギターで聴かせるけっこう正統的でモダンなハードロック/メタルで、
期待していたような超絶技巧は少なめ。ただし、随所にマカパイン節のクラシカルなギターワーク、
ドナーティのグルーヴィで巧みなドラムも聴かれ、むしろ玄人好みの作風といえるだろう。
マーク・ボールズの歌唱もさすがの実力で、さりげない変拍子やダークめの雰囲気も含め、
DREAM THEATERを思わせるものもある。実力者たちによるモダンメタル作。マイスペはこちら
メロディアス度・・7 テクニカル度・・7 モダンメタル度・・8 総合・・8
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SEVENTH WONDER「Become」
スウェーデンのプログレメタルバンド、セブンス・ワンダーの1st。2005年作
メロディックなギターにシンセを重ね、伸びやかなヴォーカルを乗せ、緩急ある展開力で聴かせるサウンド。
この1stの時点でもなかなか質は高いが、ギタープレイにはネオクラシカル風の色が見えたりと、
ProgMetalというよりは、まだテクニカルなメロディックメタルという印象もある。
ただ、楽曲の構成、演奏力ともに、これがデビュー作だったとは思えないほど質は高く、
凡百のProgMetalバンドよりは遥かに格好いい。クールでいながらしっかりメロディがある。
メロディアス度・・8 クラシカル度・・8 テクニカル度・・8 総合・・8
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SEVENTH WONDER「Waiting in the Wings」
スウェーデンのプログレメタルバンド、セブンス・ワンダーの2nd。2006作
細かなリズムチェンジと展開を繰り返しながら、知的に構築してゆく楽曲は
北欧のバンドらしいクールな質感と、甘すぎないメロディがなかなか魅力的だ。
FATES WARNINGあたりからの影響も感じさせる個性的な歌メロとともに、
ときおり聴かせるクラシカルなギターフレーズも効果的で、センスあるシンセアレンジも含めて
バランスのとれた演奏が重厚に繰り出されてゆく。突き抜けた個性はないもののクオリティの高い作品だ。
メロディアス度・・7 王道Prog Metal度・・8 楽曲構築度・・8 総合・・8
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Seventh Wonder「Mercy Falls」
スウェーデンのプログレメタルバンド、セブンス・ワンダーの3rd。2008年作
過去2作とも質の高い見事なアルバムで、一気に北欧ProgMetalのトップに躍り出た
そんな感もあるが、本作はそこにコンセプト作としてのシリアスなドラマ性が加わって、
ストーリー的なドラマティックさがいっそう増したじつに見事な傑作となった。
テクニカルなアンサンブルと叙情性とが高い次元で融合したインストパートは絶品で、
ヴォーカルパートがいくぶん弱く感じられてしまうのだが、それもまた贅沢な感想か。
ともかく、テクニックだけに頼らないメロディへのこだわりと、センスあるアレンジ力によって
巧みに構築されるサウンドは、静と動のバランスや世界観の描写も含めて隙がない。
ドラマティック度・・9 テクニカル度・・8 構築度・・9 総合・・8.5
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Seventh Wonder「The Great Escape」
スウェーデンのプログレメタルバンド、セブンス・ワンダーの2010年作
過去の3枚のアルバムの素晴らしさで、いまやProgMetal界のトップに躍り出たこのバンド。
その期待の4作目である。美しいシンセをまじえて、きらびやかに始まるそのサウンドは、
細かなキメも含めてリズム面での緻密なアレンジが光り、じっくりと聴かせるヴォーカルの力量もさすが。
メロディアスな聴き心地はキャッチーですらあるのだが、甘すぎないクールさとスタイリッシュなキレの良さ、
優しいバラード曲なども含みつつ、ラストは30分の大曲で、壮大なシンフォニーのようなイントロから、
起伏に富んだテクニカルな展開力でドラマティックに構築してゆくという圧巻の出来ばえ。またしても大傑作!
メロディアス度・・8 ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 総合・・8.5
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Seventh Wonder 「Welcome to Atlanta Live 2014」
スウェーデンのプログレメタル、セヴンス・ワンダーのライブ作。2016年作
いまや世界的にも最高レベルのProgMetalバンド。本作は2014年のアトランタでのライブをCD2枚に収録。
Disc1は、2008年の傑作「Mercy Falls」の完全再現で、美しいシンセに流麗なギターを乗せ、
テクニカルなリズムチェンジを含む展開力で、緩急あるインストパートを見事に再現。
KEMELOTでも活躍するトミー・カレヴィックの伸びやかなヴォーカルとともに聴かせる、
安定したライブパフォーマンスはさすが。Disc2には、2nd、4thからのナンバーに、
アコースティックメドレー、スタジオ録音の新曲などを収録。同タイトルのDVDも出ています。
ドラマティック度・・8 ライブ演奏・・8 テクニカル度・・8 総合・・8
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Seventh Wonder「Tiara」
スウェーデンのプログレメタル、セヴンス・ワンダーの2018年作
2005年にデビュー、そのクオリティの高いサウンドで、いまや新世代ProgMetalを代表する存在となった。
本作は8年ぶりとなる5作目で、シンフォニックなイントロで幕を開け、メタリックなギターと美麗なシンセアレンジに、
KAMELOTでも活躍するトミー・カレヴィックの伸びやかなヴォーカルを乗せて、ドラマティックなサウンドが広がる。
今作はシンフォニックメタル的でもある、明快なメロディアス性とコンセプト的なスケール感に包まれていて、
ときにキャメロットがプログレメタル化したような感触もある。流麗なギターとシンセを重ねた優美なアレンジに、
キャッチーな抜けの良さとわりとモダンなアプローチも増した分、若いメタルリスナーにはいっそう楽しめるかもしれない。
個々の楽曲は前作ほどのインパクトはないが、華麗な構築力で描かれる、70分におよぶシンフォニック・プログメタルの力作だ。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 壮麗度・・8 総合・・8.5
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SHADOW GALLERY
アメリカのプログレメタルバンド、シャドウ・ギャラリーの1st。1992年作
DREAM THEATERの名作「IMAGES AND WORDS」と同時期に出たこの作品は、
私にとってプログレッシブロックへの入り口を開いてくれた思い出のCDだ。
星空の回廊に舞い降りるイカルスという幻想的なこのジャケにまず想像が膨らむ。
やわらかなメロディと美しいシンセで聴かせる大曲は、ロマンの香りに満ちていて
その繊細な叙情性にうっとりとなる。本作ではドラムが打ち込みであることもあって、
メタリックな硬質感は薄く、むしろプログレ/シンフォニックロックとして鑑賞できる。
ラストの大曲“The Queen of the City of Ice”の幻想的な美しさは筆舌に尽くしがたい。
2011年の紙ジャケリマスター盤では、音質も向上している。
シンフォニック度・・8 ドラマティック度・・9 幻想度・・9 総合・・8.5
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SHADOW GALLERY「Carved In Stone」
アメリカのプログレメタルバンド、シャドウ・ギャラリーの2nd。1995作
古き良きプログレッシブのドラマ性を、テクニカルなメタル要素とバランス良く融合させた傑作。
正式にドラマーが加わったことで、サウンドにおけるメタリックな感触が増した。
テクニカルに構築されるProgMetal性と、ドラマティックな展開力が合わさり
歌メロ主体だった前作よりもインスト部分で聴かせるパートが多くなっている。
もちろん美しいシンセワークによるシンフォニックな叙情もちゃんとあり、メリハのついた楽曲構成で、
ラストの大曲“Ghostship”まで飽きさせない。アルバムが終わったと思いきや、しつこいノックの音に続いて扉が開くと
美しいシンフォニック曲が始まるので最後まで聞き逃さないように。
シンフォニック度・・8 ドラマティック度・・9 幻想度・・8 総合・・8.5
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SHADOW GALLERY「Tyranny」
アメリカのプログレメタルバンド、シャドウ・ギャラリーの3rd。1998作
アルバムをACTT、Uと2部構成に区切り、ドラマティックな楽曲にさらなる磨きがかかった傑作。
のっけから緊張感のあるProgMetalの王道的アンサンブルでたたみかけ、
キャッチーなコーラスワークと劇的な展開美で聴き手をぐいぐい惹きつける。
今作は比較的5分前後の曲が多いことで、楽曲ごとの方向性が明快である点も
より幅広いリスナーに受けるだろう。やわらかなシンフォニック性とテクニカルなバランスが絶妙で、
DREAM THEATERなどのリスナーにも勧められる。作品としての濃密さの点では本作が最高作か。
ジェイムス・ラブリエ(DREAM THEATER)、D.C.クーパー(当時ROYAL HUNT)がゲスト参加。
シンフォニック度・・8 ドラマティック度・・9 テクニカル度・・8 総合・・8.5
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SHADOW GALLERY「LEGACY」
アメリカのプログレメタルバンド、シャドウ・ギャラリーの4th。2001年作
このバンドの特徴はひとつに、ProgMetalというよりも、70年代プログレへの回帰性が挙げられる。
たとえばドリームシアターのような同時代的な感覚、ヘヴィさ、クールなメロディを取り入れるわけでもなく、
もちろん安易なネオクラシカル風プログレメタルに陥ることもない。彼らの目指すのは、
あくまで自然なるプログレッブロックとハードロックとの融合で、それはむしろ
メタルリスナーよりも、ユーロロック、プログレ系のリスナーにこそ向けられているように思う。
さて、今作だが、いつものように大作あり、テクニカルパートあり、静寂シンフォニックあり、と
聴かせどころ満載だが、今回は1stの頃のキャッチ−な歌メロ、コーラスハーモニーが復活、じつに美しい。
さらにインストパートでは変拍子を「変拍子として聴かせる」、つまりプログレのお約束も感じさせ、
ときに日本のジェラルドなどを想起させるような部分もあってとても嬉しかったりするのだった。
メロディアス度・・9 テクニカル度・・8 ドラマティック度・・9 総合・・9◆メタル名盤特選入り
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SHADOW GALLERY「ROOM V」
アメリカ、プログレメタルのベテラン、シャドウ・ギャラリーの5th。2005作
今回は傑作である3rd「TYRANNY」の続編というストーリー付きのコンセプト作である。
音だけを聴くと、スリリングな曲は今までよりは少なく、どちらかというとメロディアスで
ゆったりとした雰囲気の曲がメインとなっているので、やや物足りなさもあるが、
複雑な映画的な歌詞を読めば、おそらくサウンドとマッチしてこの世界をより楽しめるのだろう。
しかし、たたみかける部分での演奏はいつもながらに素晴らしい演奏を聴かせてくれるし、
今回専任キーボーディストは不参加ながら、いつものシャドウギャラリー節のメロディラインも健在。
情景を思い浮かべて楽しむような、奥深いプログレッシブメタル作品だ。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・7 壮大度・・8 総合・・8
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Shadow Gallery 「Prime Cuts」
アメリカのプログレメタル、シャドウ・ギャラリーの2007年作
1992年のデビュー作から、2001年作「Legacy」までの4作から選ばれた11曲に、未発曲を加えたベスト盤。
美麗なシンセにマイルドなヴォーカルで聴かせるシンフォニックなサウンドは、テクニカルな構築力も含みつつ
メタリックなハードさよりも、むしろ優雅な叙情に包まれていて、プログレリスナーからの人気も高い。
リマスターされているので初期のナンバーはいくぶん音質も向上している。大曲は外してあるので、
アルバムにあったコンセプト的な壮大さまでは伝わり切らないが、バンドの入門用としてはよいだろう。
未発曲は、2nd「Curved in Stone」時期のもので、シンフォニックなプログレ寄りのサウンドが楽しめる。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 叙情度・・9 総合・・8
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SHADOW GALLERY「Digital Ghosts」
アメリカのプログレメタルバンド、シャドウ・ギャラリーの2009年作
2008年にヴォーカルのマイク・ベイカーが死去し、バンドの存続が危ぶまれたが
彼らはそれを乗り越えて新作を届けてくれた。前作「ROOM X」が映画的なドラマ性を有した
トータル的なアルバムであったのに対し、本作はProgMetalの王道的なサウンドに戻っている。
ヴォーカルはギターのブライアン・アシュランドがとり、これまでの作品とはやや異なる雰囲気ながらも、
聴いているうちに違和感はなくなってゆく。なにより、充実のギターワークに華麗なシンセ、
そして厚みのあるコーラスワークが楽曲を豊かに彩っていて、これまでのキャリアで培われた
ゲイリー・ワーカンプのメロディセンスが最大限に活かされているのが素晴らしい。
6〜9分の楽曲は決して長すぎる印象はなく、レトロなプログレ感覚とモダンなヘヴィさを融合させ
このバンドの持ち味であるやわらかなメロディが随所にたっぷり織りまぜられており、
静と動のメリハリある構成がじつにドラマティック。文句なく傑作といえる出来ばえです。
シンフォニック度・・8 テクニカル度・・8 ドラマティック度・・9 総合・・8.5
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Shadowland 「Falling」
スウェーデンのプログレメタル、ジャドウランドの2007年作
メタリックなギターにうっすらとしたシンセ、伸びやかでパワフルなヴォーカルを乗せた、
VANDEN PLASなどにも通じる、重厚な正統派プログレッシブ・パワーメタルを聴かせる。
ほどよくキャッチーなヴォーカルメロディとともに、わりとストレートな聴きやすさがあって、
楽曲も4〜5分前後がメインで、全体的にもテクニカルというよりは、ドラマティックな雰囲気。
どっしりとしたメタル感と表現力あるヴォーカルの歌声のバランスも良く、じっくりと楽しめる一方、
インパクトのある展開やフックがもっと欲しいか。無名バンドながらもクオリティは高い好作品だ。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 重厚度・・8 総合・・7.5
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THE SHADOW THEORY「Behind The Black Veil」
アメリカのプログレメタル、シャドウ・セオリーの2010年作
元Psychotic Waltzのデボン・グラヴェス率いるバンドで、美しいシンセにフルートの音色、
硬質なギターリフとともにサイケメタル的でもある浮遊感が同居したダークなサウンド。
オーケストレーションなどの壮麗なアレンジも含みつつ、知的な構築力でダークなドラマ性を描き出す手法は、
一聴したインパクトよりもじわじわと世界観に入り込ませる感じで、いわば媚びのない玄人好みのスタイル。
一般的なProgMetalとは一線を画した個性的な雰囲気のダークな知的メタルとしても楽しめる作品だ。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 重厚度・・8 総合・・8
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Shadrane「Temporal」
フランスのシンセ奏者を中心にしたプログレメタルバンド、シャドランの2008年作
適度にテクニカルな演奏と、キャッチーなメロディで聴かせる質の高いProgMetalで、
安定したリズムに乗せるARABESQUEにも在籍するオランダ人ギタリストの巧みなプレイと、
そこに重なるシンセワークが光っている。楽曲そのものにはこれぞというインパクトはないが、
しっとりと叙情的な雰囲気も含めて、やわらかみのあるモダンなドラマティックサウンドが楽しめる。
ゲストにはPLANET Xのヴァージル・ドナーティーやTomorrow's Eve のVoなどが参加。
メロディアス度・・8 ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 総合・・7.5
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SHADYON「Mind Control」
フランスのプログレメタル、シャディオンの2010年作
シンセを含む5人組でおそらくこれが2作目。シンフォニックで美麗なイントロから曲が始まると、
キャッチーな歌メロで聴かせる優しくメロディアスな作風で、適度にテクニカルな要素もまじえつつ
聴き心地の良いサウンドが楽しめる。ヴォーカルのかすれ気味の声質にも哀愁が感じられて、
いかにもプログレ風味のシンセワークもなかなかセンスが良く、楽曲をカラフルに彩っている。
インパクトや個性の点ではやや物足りないが、メロディアス派のProgMetalがお好きならいかが。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・7 キャッチー度・・8 総合・・7.5
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Shoggoth 「Combination」
イタリアのプログレメタル、ショゴスの1998年作
ギター、ドラム、ベース&シンセ&ヴォーカルというトリオ編成で、
適度にハードでメロディアスなプログレメタル。のっけから28分の組曲というのも
いかにもプログレ的だが、シンフォニックなシンセアレンジに加え、
ヴォーカルはピーター・ガブリエルを思わせるシアトリカルな雰囲気で、
ProgMetal化したGenesisという感触もある。軽妙なアンサンブルとともに
ハードシンフォとしても楽しめる、キャッチーな聴き心地に包まれた好作品。
メロディック度・・8 メタル度・・7 ハードシンフォ度・・8 総合・・7.5
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Sieges Even 「Life Cycle」
ドイツのテクニカルメタル、シージス・イーブンの1988年作
2作目以降は難解な作風へと深化し、やがてスタイリッシュなプログレメタルになってゆくのだが、
本デビュー作においては、WITCHTOWER系のヘンタイ気味のテクニカルメタルをやっている。
変則リズムに乗せる硬質なリフにハイトーンヴォーカルで聴かせる、唐突なキメと展開は
アヴァンギャルド系メタルが好きな方にはにんまりだろう。本気で聴くとヘトヘトになるという異色作ですな。
メロディック度・・7 テクニカル度・・8 ヘンタイ度・・8 総合・・7.5
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SIEGES EVEN「Sophisticated」
ドイツのプログレメタル、シージス・イーブンの4th。1995年作
せわしないテクニカルな展開に、変拍子のキメの連続がたまらない。
しかしヴォーカルは案外キャッチーなメロディも聴かせるというサウンドは、
その対比こそが面白く、この変態的なリズム感はテクニックのなせる技か、
同じドイツのMEKONG DELTAとはまた別の爽やか(?)なヘンタイ感覚である。
DREAM THEATERが「AWAKE」とかいうアルバムを出していたその同じ頃に、
こんなステキな作品があったのです。ああ…タマラン。このリズムの遊び方。
ひと癖ある浮遊感が気持ちよくなってきたら…アナタも立派な変態だ(笑)。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・9 変態度・・9 総合・・8.5
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SIEGES EVEN「UNEVEN」
ドイツのプログレメタル、シージス・イーブンの5th。1997年作
前作同様のテクニカルメタルで、複雑なリズムの上にシンセとギターが螺旋のように絡まりつつ、
そこにメロディアスな歌メロが合わさって、非常に濃密な作風で楽しませてくれる。
奇妙な違和感が快感へと変わる、変則リズムのキメは前作ほど変態気味ではなく、
むしろ聴きやすくソフィスティケイトされた分、一般のProgMetalリスナーにも勧められる。
またアレンジに余裕がでてきた分、プログレ、ジャズロック的な部分も増していて
一筋縄ではいかないセンスと器の広さを感じさせる。テクニカルなプログレ好きもぜひ。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・9 変態度・・8 総合・・8.5
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SIEGES EVEN「The Art of Navigating by the Stars」
ドイツのプログレメタルバンド、シージス・イーブンの6th。2005年作
1997年の「UNEVEN」以来となるアルバムで、以前は変態気味のテクニカルなサウンドだったと思ったが、
このアルバムでは、メロディアスでほの暗い叙情的なプログレメタルとなっている。
時折聴かせる変拍子リズムは、さすがに年季の入ったバンドだけあって自然に楽曲に溶け込み、
そこに乗せるメロディにもどこかしっとりとした大人の繊細さを感じる。メタリックなリフのヘヴィさも
しっかり見せつけながらも、決して硬質すぎない、メロディと叙情美に溢れた好作品だ。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・8 叙情度・・8 総合・・8
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SIEGES EVEN「Paramount」
ドイツのプログレメタルバンド、シージス・イーブンの7th。2007作
前作も見事な出来だったが、今作も変に力むことなく、ベテランらしい落ち着いた質の高さで聴かせてくれる。
さり気ないテクニカルなリズムに、ややひねくれたメロディを乗せるサウンドには、
独特の個性があり、甘すぎない叙情にはどこか大人の味わいがある。
せわしない展開はあまりなく、ゆるやかな叙情で聴かせる楽曲には、
クールなセンスとともに、素朴で自然体のやわらかみが同居している。
全体的にはメロウな質感を漂わせながら、しっかりと知的な構築センスも感じさせる。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・7 ゆるやか叙情度・・8 総合・・8
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Sieges Even 「Playground」
ドイツのプログレメタル、シージス・イーヴンのライブ。2008年作
1998年デビューのベテラン。2007年のツアーを収録したライブ作品で、復活後の2005年作以降のナンバーを演奏。
Subsignalのメンバーでもあるヴォーカルとギター、ドラムは元RHAPSODYのアレックス・ホルツワース、
ベースはBLIND GUARDIANやRHAPSODY OF FIREにも参加した兄のオリヴァー・ホルツワースという編成で、
テクニカルなリズムにマイルドなヴォーカルによるキャッチーな味わいて、技巧的なアンサンブルを聴かせる。
ヘンテコにならない程度の軽妙な偏屈リズムも楽しく、優雅に変拍子を叩く手数の多いドラムのプレイも聴きどころ。
9分、11分という大曲も確かな演奏力で、余裕たっぷりに構築するのはさすがベテランというところ。見事なライブ作品だ。
メロディアス度・・7 ライブ演奏・・8 テクニカル度・・8 総合・・8
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SIGMA5「BUSCA」
ブラジルのプログレメタルバンド、シグマ5の2nd。2002作
サウンドは所謂DREAM THEATERタイプで、テクニカルに展開する複雑な楽曲を
高い演奏力でこなしている。美しいシンセとギターの重ねによる楽曲は
27分超の大曲も含めて、ドラマティックな構築性が感じられ、
母国語によるヴォーカルも南米的な味わいをかもしだしている。
これだというメロディの魅力がないのが惜しいが、なかなかの力作だ。
メロディアス度・・7 ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 総合・・7.5
Silent Call「Creations From A Chosen Path」
スウェーデンのメロディックメタルバンド、サイレント・コールの2008年作
元Seventh WonderのVoらによるバンドで、美しいシンセワークで聴かせる
モダンでハイセンスなメロディアスハードロック/メタルをやっている。
やわからみのあるヴォーカルはむしろメロディアスハード風でもあり、
やはり随所にProgMetal的なセンスを感じさせつつも、難解さのない聴きやすさが魅力。
テクニックのあるギターは一つ一つのフレーズに説得力があり、
シンセとの重ねでシンフォニックな厚みをサウンドにもたらしている。
反面、曲調がどれも似ていて、アルバム後半になるとやや聴き飽きてくるのも正直なところ。
メロディアス度・・8 シンフォニック度・・8 ProgMetal度・・7 総合・・7.5
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SILENT CALL「Greed」
スウェーデンのプログレメタルバンド、サイレント・コールの2010年作
元Seventh WonderのVoらによるバンドで、前作はProgMetal風味のメロディアスハードという感じだったが、
本作もキャッチーなメロディと爽やかな叙情で聴かせる、じつに北欧らしいサウンドだ。
テクニカルな構築力もありながら、楽曲は4〜6分台が中心なので、難解さはなくあくまでメロディアス。
シンセとギターによる重厚な重ねと適度な疾走感もあり、全体的にはプログレパワー的な聴き心地だ。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・7 北欧度・・8 総合・・8
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Silent Memorial「Retrospective」
スイスのプログレメタルバンド、サイレント・メモリアルの2nd。2009作
シンセを含む5人組で、1999年にアルバムデビューしたものの、その後活動休止し、
本作はじつに10年ぶりの作品となる。前作は未聴ながらそのサウンドはなかなか質が高く、
DREAM THEATER的なテクニカルなアンサンブルとメロディアスな叙情のバランスがよい。
重厚でドラマティックな雰囲気はドイツのVANDEN PLASあたりにも通じるか。
そして中盤の22分の組曲も圧巻で、まさしく正統派ProgMetalの力作といえる内容だ。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 ProgMetal度・・9 総合・・8
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SILENT VOICES「CHAPTERS OF TRAGEDY」
フィンランドのプログレメタルバンド、サイレント・ヴォイシズの1st。2002作
REQUIEM(SONATA ARCTICA)のKEY、ヘンリクを中心としたバンド。
サウンドは、北欧らしいクールな情感ただようメロディに、テクニカルさと
歌とのバランスが良く、「AWAKE」期のDREAM THEATERに通じる質感がある。
Voの声もラブリエみたいに聴こえる部分もあり、DTフォロワーという印象はぬぐえない。
全体的にそつなくよくできていてクオリティは高いが、インパクトは薄いかもしれない。
メロディアス度・・7 プログレ度・・7 楽曲・・7 総合・・7
SILENT VOICES「Building Up The Apathy」
フィンランドのプログレメタルバンド、サイレント・ヴォイシズの3rd。2006年作
フィンランドでは数少ないProgMetal系バンド、1stは可も不可もない中庸の出来であったが、
本作ではずいぶん成長が伺える。ヘヴィなギターリフと美しいシンセを乗せて疾走、
プログレパワー的な重厚さと、甘すぎないクールなメロディで構築される楽曲は
DREAM THEATERなどとはまた別のタイプの硬質感がある。シンフォニックなシンセと
ギターの絡みはなかなか魅力的で、ドラマティックな世界観を描き出している。
メロディアス度・・7 プログレ度・・7 重厚度・・8 総合・・7.5
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SIMULACRUM 「GENESIS」
フィンランドのプログレメタル、シムラクラムの2021年作
2012年にデビューし、3作目となる。ツインギターにツインVoを含む編成で、メタリックなギターリフにシンセを重ねた
モダンで硬質なサウンドに、ハイトーンを含むパワフルなヴォーカルを乗せ、重厚なProgMetalを展開する。
ほどよくテクニカルなリズムとスタイリッシュなヘヴィネスに、流麗なギタープレイときらびやかなシンセで、
激しくも濃密な聴き心地。アルバム後半は、4部構成の組曲になっていて、ツインギターに壮麗なシンセアレンジで
緩急あるリズムチェンジやシンセによる優雅な叙情パートなども含む、厚みのあるサウンドを構築する。
ドラマティック度・7 テクニカル度・7 モダンで重厚度・8 総合・7.5
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Sinestesia
イタリアのプログレメタルバンド、シネステシアの2007年作
シンセ奏者を含む5人組みで、基本はDREAM THEATERタイプの正統派ProgMetal。
薄暗い叙情性と、ドラマティックな世界観でじっくりと聴かせるサウンドは、
ときおりイタリアらしい軽やかなプログレ感覚を覗かせ、なかなか多彩である。
やわらかな美しさで聴かせる部分なども、効果的に盛り込まれ、適度なテクニカルさと
メロディとのバランスの取り方も新人にしてはなかなかのもの。これは見事なアルバムだ。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・7 楽曲センス・・8 総合・・8
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SINESTESIA 「Day After Flower」
イタリアのプログレメタル、シネステシアの2009年作
シンセを含む5人編成で、きらびやかなシンセによるシンフォニック性と、テクニカルな展開力で聴かせる、
正統派のProgMetalスタイル。全体的にキャッチーなメロディアス性が前に出ているので難解さはなく、
メロトロンやムーグなどを含むシンセアレンジなどはプログレ寄りの感触で、やわらかな耳心地で楽しめる。
ヴォーカルの弱さがいくぶん惜しいが、その突き抜けきらないマイナーっぽさを気に入る方もいるかもしれない。
8分、10分という大曲では、DREAM THEATERを思わせるドラマティックなフックと展開美もあるが、
むしろ3〜5分の小曲におけるシンセ主導のキャッチーなプログレ性にこそ魅力があるような気がする。
本作ののち、ギター、ベース、ドラムが相次いでRHAPSODY of FIREへと加入し、バンドは活動停止。
メロディック度・・8 テクニカル度・・7 楽曲度・・7 総合・・7.5
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SIX MINUTE CENTURY 「Wasting Time」
アメリカのプログレメタル、シックス・ミニット・センチュリーの2013年作
適度に疾走感もあるプログレパワー的なスタイルで、テクニカルな展開力も含んだスタイル。
ヴォーカルのいくぶん弱々しいハイトーンは初期FATES WARNING的にB級臭さをかもしだしているが、
うっすらとしたシンセにギターは随所にクサメロを奏でるなど、全体的にはメロディックな聴き心地。
SYMPHONY X系のネオクラ要素もあるので、その手のプログレメタルが好きな方なら楽しめるだろう。
あとは、メロディや楽曲にこのバンドならではの色が加われば、さらにレベルアップするかと。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・7 楽曲・・7 総合・・7.5
Skyharbor 「Blinding White Noise」
インドのテクニカルメタル、スカイハーバーの2012年作
インドではMESHUGGAHが人気らしいが、このバンドもいわゆるDjent系というべきテクニカルなサウンドをやっている。
ヴォーカルはさほど激しいスクリームではないが、変則リズムとリフによる構築は
「メロディアスになったメシュガー」という印象で、モダンでプログレッシブな味わいだ。
ヴォーカルがエモーショナルに歌い上げる部分など、キャッチーなミクスチャー感覚もあって、
テクニカルメタル、プログレメタル方面のリスナーなどにも幅広く楽しめるだろう。
メロディックな「Illusion」と激しい「Chaos」に分けられたCD2枚組というのもこだわりが見える。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 メシュガー風度・・8 総合・・8
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Skyharbor 「Guiding Lights」
インドのテクニカルメタル、スカイハーバーの2014年作
2枚組の力作であったデビュー作に続き、本作も変則リズムを多用した、いわゆるDjent系というべきサウンドに
エモーショナルなヴォーカルを乗せた、モダンなテクニカルメタルを聴かせる。今作ではさらに優雅なアンサンブルで
フュージョンメタル的なやわらかな感触が強まっていて、失礼ながらインド出身とはとても思えない洗練された作風だ。
楽曲は5〜9分と、比較的長めの曲もあるのだが、緩急のついたリズムとインストパートの展開力に、
やわらかなヴォーカルの歌声で聴き疲れしない。メタルというよりはフュージョンプログレ的にも楽しめる力作。
メロディック度・・8 テクニカル度・・8 優雅度・・8 総合・・8
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Skyharbor 「Sunshine Dust」
インドのプログレメタル、スカイハーバーの2018年作
2012年にデビューし、本作が3作目となる。重たいベースに技巧的なギター、うっすらとしたシンセに
マイルドなヴォーカルを乗せて、スタイリッシュなテクニカル性とキャッチーな味わいが同居したサウンド。
Djent系らしいモダンなハネるリズムに、ポストプログレ的でもある薄暗く繊細な叙情パートを含む、
緩急ある構築力で、モダンでエモーショナルなProgMetalを聴かせる。1stの頃に比べると、
よりキャッチーな仕上がりになっているので、テクニカルメタルが好きな方には物足りないかもしれないが、
ときにダミ声を乗せたアグレッシブなヘヴィネスも覗かせつつ、メロディのフックやドラマティックな展開力という点では
過去作を上回るだろう。あるいは、HAKENなどにも通じる新世代プログレとしてもオススメしたい出来だ。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 スタイリッシュ度・・9 総合・・8
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SOLID VISION 「Sacrifice」
イタリアのプログレメタル、ソリッド・ヴィジョンの2010年作
シンセ奏者を含む5人編成で、適度なヘヴィさとキャチーなメロディで聴かせるサウンドは、
テクニカルな部分はあまりなく、モダンな感触のプログレ風味のハードロックという印象。
薄暗い世界観も感じさせるウェットでドラマティックな雰囲気はなかなかよい感じだし、
随所に泣きのギターやシンセ入りのアレンジで厚みのあるサウンドを描いているのだが、
全体的にあまり印象に残らない、というか、演奏力はあるのだから、もっと楽曲展開の魅力が欲しい。
歌なしのインストバージョンを収録したボーナスDisc付きながら、とくに聴きたいとも思わない。
メロディック度・・7 テクニカル度・・7 楽曲・・7 総合・・7
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Sons of Apollo 「Psychotic Symphony」
アメリカのプログレメタル、サンズ・オブ・アポロの2017年作
元DREAM THEATERのマイク・ポートノイ、デレク・シェリニアン、元GUNS N` ROSESのロン・“バンブルフット”・サール、
MR. BIGのビリー・シーン、イングヴェイなどに参加したシンガー、ジェフ・スコット・ソートという名うてのメンバーが集結。
手数の多いポートノイのドラムにグルーヴィなシーンのベースと、デレクのきらびやかなシンセワークを乗せ、
ロン・サールの派手やかなギターとソートの渋みのあるヴォーカルで聴かせる、大人のプログレッシブメタル。
古き良き王道のHR/HM風味を感じさせつつ、10分前後の大曲では、DTを思わせるテクニカルな展開力を含んだ
インストパートも覗かせる。歌ものとしてのどっしりとした聴き心地と、各メンバーの技巧が融合された強力作である。
メロディック度・・7 テクニカル度・・8 重厚度・・8 総合・・8
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Sons of Apollo 「MMXX」
アメリカのプログレメタル、サンズ・オブ・アポロの2020年作
マイク・ポートノイ、デレク・シェリニアン、ロン・サール、ビリー・シーン、ジェフ・スコット・ソートという
名うてのメンバーが集結したスーパーバンドの2作目。ヘヴィなギターにシンセが重なり、
パワフルなドラムとヴォーカルによる、オールドスタイルのメタルナンバーで幕を開ける。
重厚なギターときらびやかなシンセの絡みに、歌メロには70年代風のキャッチーな感触も覗かせつつ、
どっしりとしたドラムとベースが、説得力あるアンサンブルで包み込むのはさすがというところ。
わりとオールドなハードロック色が前に出た作風であるが、随所にスリリングなテクニカル性も覗かせ、
ラストの15分の大曲は、激しい疾走も含んだ緩急ある構築力に、ドリムシ風味もまじえて盛り上げる。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・8 重厚度・・8 総合・・8
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Soulcage 「Dead Water Diary」
フィンランドのプログレメタル、ソウルケイジの2006年作
美しいシンセアレンジと、適度にテクニカルな展開で聴かせるProgMetalサウンド。
ギターも随所に叙情的なメロディを奏でたり、それなりに聴き心地はよいものの、
ヴォーカルの歌声にあまり魅力がない点と、盛り上がりきらない楽曲にはどうにも中庸さを感じてしまう。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・7 楽曲・・7 総合・・7
Soul Secret「Flowing Portraits」
イタリアのプログレメタルバンド、ソウル・シークレットの2008年作
G、B、Key、Drの4人編成で、DREAM THEATERを基本にしながら、適度にヘヴィなギターと美しいシンセワーク、
そしてキャッチーといってもいいメロディが合わさって、じつにバランスのよいサウンドに仕上がっている。
いかにもポートノイ風のドラムににやりとしつつ、テクニカルな展開力とドラマティックな雰囲気で
楽曲を構築してゆくセンスは、新人とは思えないクオリティ。メタル的な硬質感よりも、むしろシンセを中心にした
プログレ的な質感が強いのもイタリアのバンドらしい。7分台が3曲に8分台が1曲、ラストは16分の大曲という堂々たる力作である。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 楽曲センス・・8 総合・・8
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Soul Secret「Closer to Daylight
イタリアのプログレメタルバンド、ソウル・シークレットの2nd。2011年作
前作もなかなか質の高い正統派のProgMetalであったが、正規ヴォーカルが加わった本作は
サウンドに確かな方向性が通ったような力強さに溢れている。適度にテクニカルな展開力と
美しいシンセワークに、新ヴォーカルのハイトーンもドラマティックな楽曲にマッチしていて、
従来からあった構築センスとともに、DREAM THEATER以降の王道のプログレメタルが楽しめる。
プログレの国イタリアらしく、あくまでメロディにこだわった感触と、プログレ風のシンセアレンジも耳心地よく、
モダンすぎない作りに好感が持てる。ラストの16分の大曲も含め、ヨーロピアンProgMetalの力作である。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 構築度・・9 総合・・8
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Soul Secret 「4」
イタリアのプログレメタル、ソウル・シークレットの2015年作
シンセを含む5人編成で、3作目となる本作も、適度にモダンなヘヴィさとテクニカルな展開力で、
正統派のProgMetalサウンドを構築している。繊細な声質のヴォーカルの歌声は優雅な感触となっていて、
センスのよいシンセアレンジに随所にメロディックなギターも効いていて、なかなかメリハリに富んだ聴き心地。
DREAM THEATERタイプの知的な構築性に、イタリアンメタルのメロディアスな部分を融合させたというべきか。
キャッチーな聴きさすさに変拍子とテクニカルなキメを盛り込んだという点では、CIRCUS MAXIMUSあたりが
好きな方にも楽しめるだろう。ラストは16分の大曲で、ドラマティックな重厚さと巧みなアレンジセンスが見事です。
メロディック度・・8 テクニカル度・・8 モダンセンス・・8 総合・・8
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Soul Secret 「BABEL」
イタリアのプログレメタル、ソウル・シークレットの2017年作
2008年にデビュー、本作は4作目で、アコースティックギターによるイントロから始まり、
ハードなギターとシンセを重ね、テクニカルなリズムによるモダンなサウンドが広がってゆく。
伸びやかなヴォーカルに美麗なシンセワーク、SEなどを含んだコンセプト的なドラマ性と、
スタイリッシュなセンスが合わさって、随所にDREAM THEATER的な味わいも感じさせ、
中堅バンドらしい演奏力と展開美で、メロデイと技巧の同居したサウンドを構築してゆく。
10分を超える大曲も、テクニカルになり過ぎず、適度な硬質感をキャッチーな優雅さで包み込む。
全67分の力作であり、モダンなProgMetalとして、バンドのレベルをひとつ上げたような傑作です。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 スタイリッシュ度・・8 総合・・8
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Soulsplitter 「Salutogenesis」
ドイツのプログレメタル、ソウルスプリッターの2019年作
艶やかなヴァイオリンの音色で幕を開け、語りを乗せたシアトリカルな雰囲気に包まれて、
クラシカルなピアノやアコースティックギター、オルガンを含むシンセを加えた展開力のあるサウンドに、
ときに女性ヴォーカルの歌声も重なる。ゆったりとした叙情パートから、硬質なギターにダミ声を乗せた
テクニカルな可変性と、先の読めないアヴァンギャルドなセンスはなかなか個性的で、Pain Of Salvation「Be」などにも通じる、
ディープで内面的な世界観を描いてゆく。美しいヴァイオリンにピアノが絡むシンフォプログレ的な優雅さから、メタリックなギターを加えた
スタイリッシュな構築をみせる、10分を超える大曲なども白眉。モダンでエキセントリックなProgMetalが楽しめる力作だ。
ドラマティック度・8 テクニカル度・7 構築センス度・8 総合・8
Southern Cross 「From Tragedy」
カナダのプログレメタル、サウザン・クロスの2012年作
2006年にデビュー、本作は3作目となる。美麗なシンセアレンジにメタリックなギターを重ね、
マイルドなヴォーカルとともに、ドラマティックなスケール感を描くようなサウンドを聴かせる。
美しいシンセと流麗なギターフレーズの叙情性も覗かせつつ、10分を超える大曲を、
DREAM THEATERにも通じる確かな演奏力とスタイリッシュなセンスで描いてゆく。
伸びやかなヴォーカルで聴かせる優美なバラードナンバーもアクセントになっていて、
ラストの大曲では、シンフォニックな叙情とテクニカル性をまじえてじっくりと構築する。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 構築度・・8 総合・・8
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Speaking to Stones
アメリカのプログレメタル、スピーキング・トゥ・ストーンズ2006年作
シンセを含む4人編成で、適度にモダンな硬質感とテクニカルな展開力で聴かせる、わりと正統派のProgMetal。
「AWAKE」期のDREAM THEATERに通じるいくぶん翳りを含んだ叙情性にエモーショナルなヴォーカルを乗せ、
うっすらとしたシンセアレンジに、随所に流麗なフレーズを奏でるギターも含めて、なかなかクオリティが高い。
キャッチーな歌メロの感触などは、かつてのWithout Warningなどを思わせる部分もある。
9分、10分という大曲では、インストパートでの力量という点でやはり本家DTに比べると物足りなさもあり、
イマイチなジャケやサウンドプロダクションの弱さもややマイナー臭さをかもしだしてはいるのだが、
90年代スタイルのプログレメタルが好きな方なら、なかなか楽しめる好作品だろう。
メロディック度・・8 テクニカル度・・7 薄暗度・・8 総合・・7.5
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Spheric Universe Experience「Mental Torments」
フランスのプログレメタルバンド、スフェリック・ユニバース・エクスペリエンスの2005年作
2nd「Anima」にて、新世代ProgMetalの旗手となるべき傑作を作り上げたこのバンド、
本デビュー作でも、すでに安定した演奏力で高品質なサウンドをやっている。
テクニカルな展開美にモダンなシンセアレンジ、マイルドなヴォーカルの歌声が乗ると
メロディアスなバランスのとれた聴き心地で、楽曲を構築するセンスを感じさせる。
6〜8分台の曲を中心に、15分を超える大曲もあり。聴き応えたっぷりのモダン派ProgMetalの力作だ。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 モダンProgMetal度・・8 総合・・8
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Spheric Universe Experience「Anima」
フランスのプログレメタルバンド、スフェリック・ユニバース・エクスペリエンスの2nd。2007作
基本はDREAM THEATER以後のオーソドックスなプログレメタルで、
テクニカルなキメと変拍子によるせわしない展開で聴かせる。
このバンドの場合なかなかセンスがいいのは、うるさすぎる一歩手前で、
ギターなりシンセなりのメロディでドラマティックな雰囲気を曲に盛り込んでいる点。
正直これだという目新しいインパクトはないのだが、ProgMetal系の新人としては
SEVENTH WONDERやREDEMPTIONあたりと並ぶくらいの実力は備えている。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・8 ProgMetal度・・8 総合・・8
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Spheric Universe Experience「Unreal」
フランスのプログレメタルバンド、スフェリック・ユニバース・エクスペリエンスの3rd。2009年作
前作は正統派ProgMetalとしてはかなりのクオリティのアルバムだったが、本作もさすがの出来。
モダンなシンセアレンジと適度な硬質感を含んだテクニカルな展開力、そしてプログレパワー的ともいえる、
ストレートなメロディアス性で聴かせるサウンドは、巧みな構築性をもちながら難解さを感じさせないのが見事。
そして、ドラマテイックであっても決して大仰になりすぎない、優雅な余裕を描くのもフランス的だ。
DREAM THEATERが現れてから20年。プログレッシブなメタルがここまでアップデートされようとは、
当時は誰も思わなかったに違いない。まぎれもなく「今」の音がする高品質な作品だ。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 モダン度・・9 総合・・8
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Spheric Universe Experience 「The New Eve」
フランスのプログレメタル、スフェリック・ユニバース・エクスペリアンスの2012年作
4作目となる本作は、一聴してモダンかつヘヴィなテイストが増した印象であるが、
じっくり聴けば、そこは巧みなシンセアレンジも含めて、そのセンスの良さはさすが。
古き良きロックのラウドな勢いを確信犯的に盛り込みつつ、一方では80年代グラムロック風味というべき
お洒落れな感触をまぶしながら知的に構築してゆく、前作以上に深化を遂げた内容になっている。
そのよい意味でのProMetalファンに媚びない姿勢はPAIN OF SALVATIONにも通じるだろう。
既存のプロクレメタルのスタイルにとらわれない、新時代の知的メタルというべき力作である。
ドラマティック度・・7 モダン度・・8 知的センス度・・8 総合・・8
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SPIRAL KEY 「An Error of Judgement」
イギリスのプログレメタル、スパイラル・キーの2017年作
シンフォニックなアレンジに包まれつつ、ヘヴィなギターに伸びやかなヴォーカルを乗せ、
薄暗いドラマ性に包まれた重厚なサウンドを聴かせる。メタリックでモダンな硬質感とともに、
知的な構築力も感じさせるスタイルは、同郷のTHRESHOLDなどにも通じる雰囲気がある。
一方では、キャッチーな歌メロには英国プログレやシンフォニックロック的な味わいもあって、
ヘヴィになったPALLASというような感触もある。随所に叙情的なギターフレーズも光っていて、
派手な展開力というのはないが、どっしりとした聴き心地の英国らしい力作ですな。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 重厚度・・8 総合・・7.5
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STANDING OVATION 「GRAVITY BEATS NUCLEAR」
フィンランドのプログレメタル、スタンディング・オヴェーションの2015年作
2012年にデビューし、2作目となる。美麗なイントロから、メタリックなギターにシンセを重ね、
マイルドなヴォーカルを乗せた、ほどよくテクニカルで優雅なProgMetalを展開する。
随所に流麗なギタープレイもセンスを感じさせ、やわらかなシンセワークとともに、
北欧らしい涼やかなサウンドを描いてゆく。わりとストレートなメタルナンバーも挟みつつ、
中盤には、10分、18分という大曲もあり、緩急ある展開でドラマティックに聴かせる。
全体的には、楽曲のバラつきがあるので、今後はトータルな完成度の作品を期待したい。
ドラマティック度・7 テクニカル度・7 楽曲度・7 総合・7.5
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STARBYNARY 「Dark Passenger」
イタリアのプログレメタル、スターバイナリーの2014年作
メンバーは、ヴォーカル、ギター、シンセの3人で、Symphony Xのマイケル・レポンドがベースで参加。
美しいイントロから、曲に入るとテクニカルな変拍子リズムに、美麗なシンセとマイルドなヴォーカルを乗せた
ネオクラ調のProgMetalが広がってゆく。疾走パートを含んだせわしない展開と、シンフォニックな聴き心地に加え
どこかシアトリカルでイタリアらしい混沌とした濃密さが、微笑ましくも楽しい。歌メロ自体もけっこうクサいので、
メロスピ的な疾走ナンバーも含めて、全体的にもキャッチーなメロディアス性が前に出ているのでとっつき安い。
反面、プログレメタルとしてどこを目指しているのか疑問な感じもするが、まずはメンバーを揃えるところからですな。
メロディック度・・8 テクニカル度・・8 濃密度・・8 総合・・8
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Starbynary 「Divina Commedia: Inferno」
イタリアのプログレメタル、スターバイナリーの2017年作
前作もテクニカルかつメロディックな力作であったが、今作はシンセを含む5人編成となって、
サウンドのスケール感と説得力が高まった。ダンテの「神曲」をテーマに、硬質なギターリフを乗せ
たたみかける重厚さと、ネオクラシカルなフレーズとハイトーンヴォーカルとともに疾走、
緩急あるリズムチェンジで、知的な構築力で聴かせる、モダンなプログレメタルサウンド。
きらびやかなシンセアレンジにクラシカルなピアノも優雅で、叙情的なバラードナンバーなども織り込みつつ、
コンセプト的に楽曲を連ねながら、メリハリのある展開力でドラマティックな世界観を描いてゆく。
明快な盛り上がりやキラーチューンが欲しい気もするが、11分を超えるラストの大曲も含め、堂々たる力作である。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 重厚度・・8 総合・・8
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Starbynary 「Divina Commedia Paradiso」
イタリアのプログレメタル、スターバイナリーの2020年作
ダンテの「神曲」をテーマにした三部作の最終章で、メタリックなギターに美麗なシンセアレンジを重ね、
伸びやかなハイトーンヴォーカルとともに、緩急ある展開力のドラマティックなサウンドを展開する。
流麗なギターにきらびやかなシンセで疾走する、ネオクラシカル的なメロディックスピードメタル風味や、
ときに女性コーラスも加えた優雅な感触など、メロパワとしての勢いとProgMetal構築性が同居した味わいだ。
核となるのは、ときにシンフォプログレばりの美しいシンセワークであるが、元DERDIANのジョー・ガジアネッリの歌声も、
エモーショナルな説得力でサウンドを彩っている。壮麗なドラマを描くような、シンフォニックなProgMetalの傑作である。
ドラマティック度・8 テクニカル度・7 壮麗度・8 総合・8.5
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Status Minor「Dialog」
フィンランドのプログレメタルバンド、ステイタス・マイナーの2009作
フィンランドのProgMetal系というとSilent Voicesくらいしか思い浮かばないのだが、このバンドは
難解になりすぎない適度なテクニカルさと、シンセを含めたドラマティックな重厚さで聴かせる
なかなか質の高いプログレパワーをやっている。ザクザクとした硬質感とメタリックなヘヴィさ
そこにシンフォニックな味付けが加わったバランスのとれたサウンドで、甘すぎないメロディも含めて
DREAM THEATERというよりは、もっとソリッドでモダンなクールさを有している。
15分を超える大曲もあり、デビュー作としてはなかなかの力作といえるだろう。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 重厚度・・8 総合・・7.5
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Stonehenge 「Angelo Salutante」
ハンガリーのプログレメタルバンド、ストーンヘンジの2002年作
シンセを含む5人組で、いわゆるDREAM THEATERスタイルの正統派のプログレメタルをやっている。
美しいシンセワークに適度にヘヴィなギターと、やや田舎っぽいヴォーカルで構築する楽曲は、
なかなかドラマティックだ。テクニカルな要素よりもシンフォニックな質感が前に出ていて聴きやすく、
地域性を考えれば質の高い作品だと思う。あとはメロディや展開でもっと耳を惹きつける部分が欲しい。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・7 楽曲・・7 総合・・7.5
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STORMY ATMOSPHERE 「Colorblind」
イスラエルのプログレメタル、ストーミー・アトモスフィアの2009年作
男女Voにシンセを含む5人編成で、随所に中近東的な旋律を含んだメロディアス性と
美しい女性ヴォーカルにシアトリカルな男性ヴォーカルが絡むドラマティックなサウンド。
同郷のOrphaned Landなどにも通じる、プログレッシブな展開力とモダンなヘヴィネスが合わさった
なかなか迫力ある作風で、シンセによるシンフォニックな味付けも含めて重厚な聴き心地だ。
ヴァイオリンが鳴り響く繊細な叙情もあったりと、楽曲センスと作品としてのメリハリもなかなか見事。
そしてなにより、女性Voの艶めいた歌声の魅力というのがサウンドを華やかに彩っている。
ドラマティック度・・8 重厚度・・8 中近東度・・8 総合・・8
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Stormy Atmosphere 「Pent Letters」
イスラエルのプログレメタル、ストーミー・アトモスフィアの2015年作
男女Voにシンセを含む5人編成で、本作は6年ぶりの2作目となる。映画的なナレーションから始まり、
ほどよくヘヴィなギターに優美なシンセを重ね、朗々とした男性ヴォーカルに美しい女性声が絡みつつ、
コンセプトアルバム的な雰囲気とともに、メタルオペラ風でもある優雅なサウンドを描いてゆく。
シアトリカルな世界観に包まれつつ、どこか煮え切らない辺境的なマイナー臭さも感じさせ、
小曲を織り込んだ流れのある構成はよいのだが、前作に比べると楽曲ごとのインパクトが薄い気も。
ラストは14分の大曲で、緩急に富んだ構築力でドラマテッィクに聴かせる。全71分という力作です。
ドラマティック度・・8 優雅度・・8 インパクト度・・7 総合・・7.5
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STRAMONIO「SEASONS OF IMGINATION」
スペインのプログレメタルバンド、ストラモニオの1st。2000年作
SKYLARKのジャケなどでおなじみのLouis Royoによる美しいイラストに惹かれるが、内容もかなり素晴らしい。
全7曲中、5曲が7分以上ということからも分かる通り、ドラマティックに長曲を聴かせるセンスと、
変拍子を多用したアレンジが見事で、適度にテクニカルな楽曲を巧みにまとめあげ、メロディアスに聴かせる方法論は
1stにしてすでに完成されている。繊細できらきらしたシンフォニック音像が心地よく、美しいヴァイオリンも良い味を出している。
優美なメロディと構築センスで描かれる、高品質なプログレメタル作品だ。
メロディアス度・・8 シンフォニック度・・8 プログレ度・・8 総合・・8
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STRAMONIO「MOTHER INVENTION」
スペインのプログレメタルバンド、ストラモニオの2nd。2002年作
1stでゲストに迎えていたヴァイオリン奏者は今回は残念ながら不参加であるが、
楽曲はじっくり聴き込むほどにこのバンドの素晴らしさが分かってくるという奥深いもので、
一聴してメタルファンにはやや軽い音に聴こえるかもしれないが、そのセンスある展開力や
ここぞという時のメロディの活かし方などは相変わらず見事というほかはない。
そしてこのバンドの場合、単なるプログレメタルというよりは、色々なジャンルの音を取り込んでいて
ときおり現れる耳に付くキャッチーなメロディや、ジャズタッチのピアノやサックスなど、
様々な展開が楽しめる。とっつきは悪いかもしれないが何度か聴くにつれ面白さが分かってくる。
しっかりとした演奏力に、甘いヴォーカルの声質も楽曲にマッチしている。センス抜群の優雅なるProgMetal。
メロディアス度・・8 プログレ度・・8 楽曲センス・・9 総合・・8
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STRAMONIO「TIME WELL TELL」
スペインのプログレメタルバンド、ストラモニオの3rd。2004年作
このバンドの場合、プログレメタルであってもテクニカルに弾き倒すタイプではなく
楽曲やアレンジのセンスで聴かせるといったタイプ。曲はメロディックで聴きやすく、
メタルだけに固執しないアレンジにはときおりジャズ風、フュージョン風の質感をも感じさせる。
そのサウンドはキャッチーかつ繊細で、押しつけがましくない、いわばさらりとした優しさがあって、実にセンスがいい。
一聴したインパクトや衝撃は薄いバンドだが、じわじわと良さが伝わってくる。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 楽曲センス・・8 総合・・8
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STRIDE「Imagine」
アメリカのプログレメタルバンド、ストライドの2nd。2005作
いわゆるDREAM THEATER編成の5人組みで、テクニカルさとメロディの両立を重視しているサウンド。
曲の方は、間奏などの凝った展開もなかなか練られているし、総じて聴き心地は良いのだが、
ギターにしろキーボードにしろ、取り立てて突出したメロディの魅力に欠けるのが惜しい。
そして、やはり(ラブリエに比べれば)ヴォーカルの弱さも全体のマイナー臭さの原因になっている。
ともあれ、この手のバンドでは久しぶりに手応えのあるアルバムなので、今後に期待したい。
メロディアス度・・7 プログレメタル度・・8 楽曲・・7 総合・・7.5
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SUNBLAZE「ILLUMINATING HEIGHTS」
ドイツのプログレメタルバンドサンブレイズのデビューミニ
収録時間は24分だが、14分の組曲と10分の2曲という大仰さ。
曲の方はインストパート重視で歌はほぼおまけ。
ヴァイオリンとシンセの重なりがなかなか気持ちよい。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 楽曲・・6 総合・・7
SUN CAGED
オランダのプログレメタルバンド、サン・ケイジドの2003年作
キーボード、専任ヴォーカルを含む5人組で、雰囲気は「AWAKE」期のDREAM THEATERに近い。
メンバーは皆テクニックがあり、そのアンサンブルは新人とは思えないほどしっかりしていて、
曲は適度にヘヴィかつメロディアス。涼しげなキーボードの音などにはある種北欧的な清涼さが感じられ、
押しつけがましくないVoのせいもあり、全体的に「クールなエモーショナル」というものを作り出している。
ただ、やはり一曲ごとのインパクトに欠けるというか、密度はあるが印象が弱いという気がしてしまう。
メンバーが実力者なだけに、今後はテクニックを練り込む前の段階での曲の方向を詰めていってもらいたい。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・8 楽曲・・7 総合・・7.5
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Sun Caged 「Artemisia」
オランダのプログレメタル、サン・ケイジドの2007年作
2003年作に続く2作目で、テクニカルなアンサンブルに美麗なシンセアレンジ、
伸びやかなヴォーカルを乗せた、DREAM THEATERルーツのProgMetalを基本にした、
クールでモダンなサウンドを聴かせる。前作に比べるとテクニカルな展開力と楽曲アレンジにぐっと磨きがかかり、
翳りを帯びた叙情性とともに、ドラマティックな味わいに包まれている。甘すぎないメロディアス性と
リズムチェンジを含む確かな構築力で、7〜9分前後の長めのナンバーもじっくりと楽しめるクオリティがある。
全70分あるので、さすがせに長尺感は否めないが、確かな成長を見せたつけた見事な力作に仕上がっている。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 スタイリッシュ度・・8 総合・・8
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Sun Caged 「The Lotus Effect」
オランダのプログレメタル、サン・ケイジドの2011年作
2003年にデビュー、本作は3作目となる。ヘヴィなギターリフを乗せたアグレッシブな激しさで始まりつつ、
うっすらとしたシンセにハイトーンヴォーカルを加えた、重厚でモダンなProgMetalを展開する。
テクニカルな構築力とともに、キャッチーなメロディのフックもあり、DREAM THEATERルーツの作風としては
ヴォーカルの力量も含めてとても高品質なバンドである。アルバム後半は8パートに分かれた組曲となっていて、
コンセプト的な流れで展開するドラマティックな聴き心地。確かな演奏力と優雅なメロディアス性、
伸びやかなヴォーカルでじっくりと楽しめる、全72分という、正統派のプログレメタルの力作だ。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 重厚度・・8 総合・・8
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SUPERIOR「behind」
ドイツのプログレメタルバンド、スペリアーの1st。1996年作
ザクザクとしたギターとテクニカルなリズム、そこに乗る優雅なピアノの音色。
初期PAIN OF SALVATIONにも通じるその質感は、一聴しただけで抜群のセンスが分かる。
変に難解になるわけではなく、歌い上げるヴォーカルのメロディにはしっかりと叙情もあり
ドラマティックな流れでじっくり聴かせるだけの曲としてのまとまりがあるのが素晴らしい。
メンバーが高度な技術を持ちながらも、決して出しゃばりすぎないバランスが
この均衡を保ったサウンドを生み出しているのだろう。10年以上の前の作品とは思えない完成度。
同じくドイツのSECRECYなどとともに、無名で終わるには惜しいクオリティを持ったバンドだ。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・8 楽曲センス・・8 総合・・8
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SUPERIOR「Younique」
ドイツのプログレメタルバンド、スペリアーの2nd。1998作
一聴して、よりヘヴィなギターサウンドが耳につき、モダンなヘヴィロック風の音像に
「おや?」となるが、しかしちゃんと聴けば根幹のプログレッシブなセンスは変わらず。
前作よりもシンセ、ピアノなどが控えめになったことも要因だろうが、
それでもメタリックな重厚さとの対比に、ときおり美しいパートが顔を出し、にやりとなる。
テクニカルな変拍子リズムの上に、うねるようなリフを乗せた甘すぎないProgMetalサウンド。
なにより、何かに似ているというものがない、オリジナルなセンスを感じ取れるのが素晴らしい。
まさに大人のプログレメタル。PAIN OF SALVATIONあたりが好きな方はこのバンドも気に入るはず。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・8 楽曲センス・・8 総合・・8
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SUPERIOR 「Ultima Ratio」
ドイツのプログレメタル、スペリアーの2002年作
1995年にデビュー、1st「Behind」は日本盤も出ていたのでご存知の方もいるだろう。
本作は3作目で、コンセプト的なSEを含んだクラシカルなイントロから始まり、
ヘヴィなギターにうっすらとしたシンセを重ねた重厚なメタルサウンドが広がってゆく。
シアトリカルなヴォーカルが濃密な空気を描きつつ、クラシカルなシンセアレンジが
サウンドを優雅に包み込む。モダンなアプローチを強めた分、プログレメタル要素は薄まったが、
女性ヴォーカルを加えての壮麗なシンフォニックメタル風ナンバーなど、華麗なセンスはさすが。
PAIN OF SALVATIONやPOVERTY'S NO CRIMEなどが好きな方はぜひ。
ドラマティック度・・8 プログレメタル度・・7 重厚度・・8 総合・・7.5
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Suspyre「Silvery Image」
アメリカのプログレメタル、サスパイアの1stの再発盤。2005/2008年作
1999〜2005年までの楽曲を自主制作で発表した、バンドの実質的な1stの再発盤で、
本作の段階では、随所にテクニカルな展開を盛り込んだメロパワという感じが強い。
3rd「When Time Fades...」あたりに比べると全体的にまだまだ粗削りであるが、
シンセを含めての音の重ねや、ギターのメロディセンスなどには非凡なものを感じる。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・7 楽曲・・7 総合・・7.5
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Suspyre「A Great Divide」
アメリカのプログレメタルバンド、サスパイアの2nd。2007作
DREAM THEATERの歴史的名作「Imagesand Words」からすでに15年がたち、
それに影響を受けた若い世代による、いわば第三世代ともいうべきバンドが現れはじめているが、
このバンドもテクニカルかつ知的なアレンジで聴かせる、ドラマティックなサウンドを標榜している。
本作は34分、36分という2つの組曲で聴かせるコンセプト作で、前作は未聴なので
ストーリーの詳細は不明なのだが、若者らしい勢いあるプログレパワーが楽しめる。
曲間にはMIDIシーケンサーを駆使した、クラシカルなオーケストラルアレンジも取り入れるなど、
メリハリに富んだインストパートは、やや唐突なぎこちなさも感じるものの意気込みは窺える。
ただ力作であるのは確かだが、ヴォーカルの弱さも含めて、曲の盛り上げ方にひと工夫欲しい。
メロディアス度・・7 ドラマティック度・・8 楽曲・・7 総合・・7.5
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SUSPYRE「When Time Fades...」
アメリカのプログレメタルバンド、サスパイアの3rd。2008年作
前作もなかなかドラマティックな聴き心地の正統派ProgMetalであったが、
今作もまた濃密な力作となった。ツインギターのリフにプログレ的なシンセが絡み
変拍子入りのテクニカルな展開とともに、重厚に構築されてゆく楽曲は、
シンフォニックな美麗さと、メタリックなバワフルさのバランスもよく、
確かな演奏力と力強い音の説得力で、聴き手をぐいぐいと引き寄せる。
いい意味での大仰さとスケール感が出てきたことで、作品としての密度が増した。
これでヴォーカルの歌唱が素晴らしければ、文句なく傑作と言えただろう。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 重厚度・・9 総合・・8
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Symphony「Mind Reflections」
ポーランドのプログレメタルバンド、シンフォニーの2008年作。
シンセ奏者を含む5人組みで、ジャケのセンスからは想像できないような美麗なプログレメタルをやっている。
テクニカルなリズムと、DREAM THEATER的なメタリックなギターワーク、
そこにシンフォニックなシンセが加わったインスト重視のサウンドは新人とは思えない質の高さ。
ギターにしろキーボードにしろなかなかセンスがよくポーランドらしい叙情を感じさせるメロディとプログレ的な音作りが心地よい。
粗野なヴォーカルが唯一の欠点だが、今後が楽しみなバンドだ。マイスペで試聴可能
シンフォニック度・・8 ProgMetal度・・8 ポーラン度・・8 総合・・8
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T
TALESIEN
スペインのプログレメタル、テールジェンの2016年作
ツインギターにシンセを含む6人編成で、ハードエッジなギターに美麗なシンセワークと、
スペイン語のヴォーカルを乗せ、メロディックな叙情性とモダンなテクニカル性に包まれた聴き心地。
オルガンなども含んだきらびやかなシンセはプログレ寄りのシンフォニックな味わいもあってて、
ギターは硬質感のあるリフから随所に流麗なフレーズも奏で、スタイリッシュで技巧的なサウンドを描いてゆく。
一方では、スペイン語による歌メロは、キャッチーな哀愁の叙情も感じさせ、モダンな作風の中にも、
スパニッシュメタルとしての情感もしっかりと表現している。これは掘り出し物的な高品質作ですね。
メロディック度・・8 テクニカル度・・8 スタイリッシュ度・・9 総合・・8
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TANGENT PLANE「Project Elimi」
ドイツのプログレメタルバンド、タンジェント・プレーンの2011年作
シンセを含む5人組で、重厚なヘヴィさとテクニカルな展開力で聴かせる
ドラマティックな作風。少々力みすぎのヴォーカルが好みを分けるが、
SF風味の世界観と7〜9分という大曲を構築するセンスはなかなかのもの。
プログレパワー的な疾走感もあり、激しさをもった濃密なサウンドは悪くはないが、
ドタバタとしたところがややB級臭いので、今後のスタイリッシュ化に期待したい。
ドラマティック度・・8 重厚度・・8 楽曲・・7 総合・・7.5
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Tellus Requiem「Invictus [The 11th Hour]」
ノルウェーのプログレメタル、テルズ・レクイエムの2013年作
シンセを含む5人編成で、テクニカルな展開美とともに重厚かつメロディックに聴かせるProgMetal。
いくぶんネオクラシカル感触も含んだギターワークや、きらびやかなシンセワークとともに、
ドラマティックに構築される楽曲は聴き応え充分。ヴォーカルパートとインスト部分のバランスもよく、
メタリックな激しさと叙情パートのメリハリのついた楽曲アレンジにもセンスを感じさせる。
近年はノルウェーからもCIRCUS MAXIMUSをはじめとして質の高いProgMetal系が増えているが、
期待の新鋭として、Above Symmetry(ASPERA)やDimension Actなどとともに頑張っていってもらいたい。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 構築度・・8 総合・・8
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TERAMAZE 「Anhedonia」
オーストラリアのプログレメタルバンド、テラメイズの2012年作
ツインギターの5人編成で、ヘヴィなギターリフでスラッシーな硬質さも含みつつ、
そこに知的な構築性も感じさせるサウンド。ProgMetalというほどの展開力はないし、
テクニカルメタルというほど凄くもない…モダンな知的メタルというのが正しいか。
もう少しメロディックであれば楽しめた気もするのだが、楽曲自体の魅力もやや薄いという、
中途半端な方向性がもったいない。演奏力はあると思うので、作風をもっと極端に絞ってもらいたい。
メロディック度・・7 テクニカル度・・7 楽曲・・7 総合・・7.5
Terra Odium 「Ne Plus Ultra」
多国籍のプログレメタル、テラ・オディウムの2021年作
SPIRAL ARCHITECTのシンガーとドラムを中心に、TESTAMETのベースや、DRAGONFORCE/AMORPHIS/MOONSPELL
などでも活躍するギターが参加。テクニカルなリズムに巧みなギターリフを乗せ、ハイトーンヴォーカルとともに
ミステリアスなプログレッシブ・メタルを構築する。随所にオーケストラルなアレンジを加えた壮麗なスケール感と
薄暗い叙情性に包まれていて、歌い上げるヴォーカルも含め、11分の大曲などもインストパートに偏らない聴き心地。
ラストナンバーなどは、FATES WARNINGなどにも通じる雰囲気で、知的な展開力のProgMetalが味わえる。
ドラマティック度・7 テクニカル度・8 叙情度・7 総合・8
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TETRAFUSION「Altered State」
アメリカのテクニカルメタルバンド、テトラフュージョンの2010年作
ギター、ベース、ドラム、シンセ/ヴォーカルの4人組で、メロディアスな聴き心地の
テクニカルメタルをやっている。ギターのフレーズやリズム面でのアプローチには
いくぶんDREAM THEATER的な雰囲気もあるが、どこか淡々したヴォーカルを含めて
熱すぎないクールな構築感覚は、バンド名のようなフュージョン的な聴き心地もある。
いわば、メタルフュージョン的な優雅さをProgMetalと融合させているという感じもするのだが、
美しいシンセにうっとりしていると、唐突な曲展開でいきなり激しくなったりと、カオティックコア風味もある。
Scale The Summitといい、このバンドといいアメリカからは面白いバンドが出てくるものだ。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・8 ヘンタイ度・・8 総合・・8
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Thee Final Chaptre 「It Is Written」
アメリカのプログレメタル、セー・ファイナル・チャプターの2016年作
1991年に発表したミニアルバムに、デモとライブ音源9曲を加えた再発盤。
メタリックなギターリフにハイトーンヴォーカルを乗せたどっしりとした正統派の感触に、
リズムチェンジを含む知的な展開力で聴かせる、Queensrycheを思わせるサウンド。
伸びやかなハイトーンとマイルドな表現力を兼ねそろえたヴォーカルの実力もなかなかのもので、
緩急のあるアレンジとドラマティックな味わいは、Crimson Gloryに通じる雰囲気もある。
ライブ音源はブート程度の音質ながら、フルアルバムを聴いてみたかった幻のバンドですな。
メロディック度・・8 重厚度・・8 クリグロ&ズライチ度・・8 総合・・7.5
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THESSERA「Fooled Eyes」
ブラジルのプログレメタルバンド、セセーラの2006年作
南米のProg Metalの中でも、このバンドはメロディアス性とテクニカルな演奏力が同居していて、
なかなかの好作品である。ヴォーカルの弱さや、レコーディング面の迫力の足らなさを差し引いても、
キーボードの美しいメロディへのこだわりや、楽曲展開のセンスや美意識などは充分鑑賞に耐えうる。
あまりメタルメタルしておらず、ときに軽やかなタッチでフュージョン風に聴かせるアレンジは
スペインのSTRAMONIOあたりにも通じる優雅な質感で、センスの良さを感じさせる。
きらきらとしたシンフォプログレ的なキーボードワークと、テクニックのあるギターとの掛け合いも
インスト部での大きな聴かせ所になっていて、無名バンドとしては相当のクオリティといってよい。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・8 優雅度・・8 総合・・8
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THOUGHT CHAMBER「Angular Perceptions」
アメリカのプログレメタル、ソート・チェンバーの2007年作
ARCH RIVALのギタリスト、マイケル・ハリスと、ENCHANTのテッド・レオナードによるバンドで、
メンバー全員が素晴らしいテクニックの持ち主であるので、その演奏力は抜群。
緩急自在のリズムとテクニカルな展開力で、メタリック・フュージョン的な質感も含めて
ギターとシンセ、ベースが巧みに絡み、ときに同調し、見事な構築美を生み出している。
テッド・レオナードの歌声は楽曲をテクニカル一辺倒にならないメロウな叙情で彩り、
ENCHANTよりもさらにダイナミックなProgMetalを存分に聴かせてくれる。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・8 ドラマティック度・・8 総合・・8
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Thought Chamber「Psykerion」
アメリカのプログレメタル、ソート・チェンバーの2013年作
ARCH RIVALのギタリスト、マイケル・ハリスと、ENCHANT、SPOCK'S BEARDで活躍するテッド・レオナードを中心に、
前作はテクニカルかつメロデッィクな傑作だったが、本作ではENCHANTのシンセ奏者、ビル・ジェンキンスが加わり、
バンドとしてシンフォニックな音の厚みが増している。どこかとぼけた味わいの知的なテクニカルメタルの感触に
テッド・レオナードの表現力あるヴォーカルを乗せたドラマティックな聴き心地で、前作とはまた違った作風ながら、
小曲を連ねたコンセプト的な構成によるスケール感が作品としての統一感を生み出していて、これも見事な出来である。
各パートの実力ある演奏力も含めて、DREAM THEATERにも引けを取らないクオリティ。ProgMetal好きは要チェック。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 知的度・・8 総合・・8
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THRESHOLD「Wounded Land」
イギリスのプログレメタルバンド、スレッショルドの1993作
メタリックなギターにプログレ寄りのシンセワークを重ね、表現力あるヴォーカルを乗せ、
重厚な味わいと英国らしい叙情性を感じさせる、ドラマティックなプログレッシブメタルを聴かせる。
難解になり過ぎないリズムチェンジも含みつつ、全体的にはどっしりとしたナンバーが多く、
ダミアン・ウィルソンのマイルドで伸びやかな歌声が説得力ある世界観を描き出す。
曲によっては、美麗なシンセアレンジが前に出て、MAGELLANのようなシンフォニックハードとしても楽しめつつ、
環境破壊をテーマにしたシリアスなドラマ性とキャッチーな感触のバランスのとれた好作品といえる。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 重厚度・・8 総合・・7.5
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THRESHOLD「WIRELESS」
イギリスのプログレメタルバンド、スレッショルドのアコースティックライブ作。2003作
プログレメタルバンドのアコースティックライブってどうなのだろう…と思っていたが、
これがなかなか良い。ゆったりとしたメロディとほの暗い叙情美が耳に心地よく、
シンセとドラムが加わると、むしろPORCUPINE TREEのようなプログレ感覚で楽しめる。
けっこう過去の曲も取り上げていてバンドのファンならさらに楽しめるだろうし、
そうでなくてもしっとりとした叙情ロックとしてなら、案外普通に鑑賞できる。
叙情度・・8 プログレ度・・7 ライブ演奏・・8 総合・・7.5
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THRESHOLD「CRITICAL ENERGY」
イギリスのプログレハードバンド、スレッショルドのライブ作品。2004作。
メンバーは6人、ドラマーが黒人(しかも左利き)なのが珍しく、さらにギターの片割れも左利きで、
なんとなく絵としては奇妙なアンバランスな印象。サウンドは、メタリックなギターがガリガリやっていて、
音圧はプログレメタルなのだが、曲調はけっこう正統的なメロディアスハードっぽく、
やや古くさいHR風のギターリフが出てきたり、かと思えば曲によってはDREAM THEATER的な部分も
垣間見えたりする。(おそらく、古い曲、最近の曲が混ざっているせいだろうが)
全体的に、テクニカルな部分もあるにはあるものの、メロディにしろ曲にしろなんとも煮え切らない感じ。
もう少しシンフォニックにするのか、それとも完全にProgMetalで行くのかを定めてもらえないと、
どちらの耳で聴けばいいのかが曖昧でどうもすっきりしないのだな。ベテランだけあって演奏は安定している。
ライブ演奏・・8 ライブ映像・・7 楽曲・・7 総合・・7
THRESHOLD「SUBSURFACE」
イギリスのプログレメタルバンド、スレッショルドの7th。2004年作
このバンドの場合は、ProgMetalにありがちなテクニック至上主義ではなく、
プログレハード的なキャッチーなメロディを聴かせる点で個性的といえる。
長曲においてはもちろんDTからの影響を感じさせる部分もあるが、
あくまでメロディにこだわり、難解になりすぎない曲構成は広いリスナーに受けるだろう。
美しいシンセに爽やかな歌メロが合わさるとASIAあたりを思わせる雰囲気も。
重厚なドラマ性と、ハードロック的な明快さのバランスがとれた傑作だ。
メロディアス度・・8 ProgMetal度・・7 プログレハー度・・8 総合・・8
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THRESHOLD「Dead Reckoning」
イギリスのプログレメタルバンド、スレッショルドの8th。2007年作
1993年にデビューしてから、すでに活動15年を数えるベテランバンド。
前作ではメロディックな質感を強め、本作ではかなり普遍的なメジャー性を有した堂々たるサウンドとなっている。
骨太でメタリックなヘヴィさと適度なテクニカル性を同居させ、そこにYESやASIA風のいわばプログレハード的な
キャッチーなコーラスワークが絡む作風には難解さはなく非常に聴きやすい。派手すぎないシンセワークに、
楽曲を損なわない程度のリズムチェンジや転調なども非常にバランスがよく、ベテランらしい細やかなアレンジが光る。
強烈なインパクトこそないものの、じっくりと楽しむに足る、とてもよく出来たアルバムだ。
メロディアス度・・8 プログレメタル度・・7 プログレハー度・・8 総合・・8
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THRESHOLD「March of Progress」
イギリスのプログレメタルバンド、スレショルドの2012年作
デビューは1993年という、すでにキャリア20年のベテランで、本作は9作目となる。
適度にヘヴィな聴き心地とシンフォニックなアレンジ、キャッチーなヴォーカルメロディで聴かせる
プログレハードサウンドは今作も健在。6〜8分という比較的長めの曲であっても、複雑になりすぎず
あくまでメロディアスな聴き心地で、随所にプログレメタル的な構築センスも覗かせる。さして新鮮なものは感じないが、
10分を超えるラスト曲などはじつに見事で、ベテランらしいどっしりとした重厚さとともに、ドラマティックに彩られた力作だ。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 重厚度・・8 総合・・8
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Threshold 「For the Journey」
イギリスのプログレメタル、スレッショルドの2015年作
1993年デビューのベテラン、本作は10作目となる。適度にヘヴィなギターにシンセを重ね、
伸びやかなヴォーカルを乗せて、翳りを帯びた重厚でシンフォニックなサウンドを聴かせる。
きらびやかなシンセはわりとプログレ寄りで、随所に流麗なフレーズを奏でるギターと、
本作を最後に脱退する、ダミアン・ウィルソンの表現力ある歌声も含めて、安定した演奏力が光る。
12分という大曲では、ハードプログレとしても聴けるキャッチーな叙情性も覗かせながら、
間奏部ではほどよくテクニカルな展開美とともに、じっくりとドラマティックに構築してゆく。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 重厚度・・8 総合・・8
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THRESHOLD 「Legends of Shires」
イギリスのプログレメタル、スレッショルドの2017年作
1993年にデビュー、初期はわりと地味なイメージであったが、7thあたりから着実にクオリティを増してきた。
本作は通算11作目でCD2枚組の大作。脱退したダミアン・ウィルソンに替わり、ヴォーカルにグリン・モーガンが復帰。
マイルドな歌声を乗せた叙情的な導入部から始まり、ハードなギターとシンセを重ねた重厚なサウンドが広がってゆく。
キャッチーなヴォーカルメロディはプログレハード的でもあり、英国らしいウェットなドラマ性に包まれた聴き心地で、
ほどよくテクニカルなインストパートも含めて、DREAM THEATERをコンパクトにした、というような雰囲気もある。
随所にメロウなギターによる泣きの叙情も含んだ、メリハリのある展開力で、コンセプト的な流れのある作風が楽しめる。
曲ごとの派手さやインパクトというのはさほどないのだが、全81分、どっしり安定の力作と言える。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 重厚度・・8 総合・・8
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Threshold「Dividing Lines」
イギリスのプログレメタル、スレッショルドの2022年作
1993年にデビュー、本作は12作目となる。ヴォーカルにグリン・モーガンが復帰しての2作目で、
ヘヴィなギターにシンセを重ね、マイルドなヴォーカルとともに、モダンな硬質感とキャッチーな叙情性が同居したサウンドを描く。
叙情的なギターフレーズとシンフォニックなシンセアレンジに、パワフル過ぎない歌声も、爽快なメロディアス性となっていて、
軽妙なインストパートも含めて、これまで以上に抜けの良いフックが味わえる。10分を超える大曲でも、起伏のある展開の中に、
英国らしい叙情性を織り込んでいて、オルガンなどのシンセとともにプログレらしさが増したという、個人的にも好みの作風だ。
重厚なドラマティック性と知的でプログレッシブな香りがバランスよく同居した、ベテランらしい説得力ある力作である。
ドラマティック度・8 叙情度・8 重厚度・8 総合・8.5
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TILES
アメリカのプログレ・ハードロックバンド、タイルズの1st。1995作
この1stの時点では一聴してRUSHに影響受けたというのが分かるサウンドである。
聴きやすいが、ときにテクニカルな演奏を聴かせ、ヴォーカルのハイトーンもなかなか。
キーボードがいないので楽曲に派手さはなく、古き良きプログレハードの質感もある。
メロディアス度・・7 プログレ度・・7 RUSH度・・8 総合・・7
TILES「WINDOW DRESSING」
アメリカのプログレハードバンド、タイルズの4th。2004作。
ギター兼キーボード、ベース、ドラム、ヴォーカルという4人編成で、
サウンドの方は、RUSH + DREAM THEATERといった感じでそこそこテクニカルな演奏で、
適度にメロディアス。楽曲はDTのようにテクニカルさを前面に出しているわけではなく、
どちらかというとENCHANTあたりに近い、バランス感を大切にしている印象。
1曲目から17分の大曲であるが、あまり大仰にならずゆったりと聴かせる。
地味な味わいながらも哀愁ただよう歌メロもよろしく、なかなか心地よいサウンドだ。
ライブCDの方は、そこそこの出来で、これはあくまで“おまけ”という感じだが。
メロディアス度・・7 プログレ度・・7 バランス度・・8 総合・・7.5
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TIM DONAHUE「MADMEN AND SINNERS」
フレットレス・ハープギター奏者、ティム・ドナーヒューの2004年作
独自に開発したハープギターを弾きこなす、ティム・ドナヒューが長年温めてきたコンセプト、
人類と未来、精神世界や宗教観というものを合わせた壮大なテーマをプログレメタル的な作風で構築。
テクニカルでありつつも、ハープギター特有の繊細な音色が通常のギターとは違った感触で、
暖かみのある叙情美とともに、音圧のうるさくない、いわば優雅なプログレメタルに仕立てている。
ティム自身によるシンセアレンジも美しく、ときにはグレゴリアンな荘厳な雰囲気も加わって、
そこに乗るラブリエの歌唱が楽曲のドラマ性をぐっと高める。ドラムは現DREAM
THEATERのマイク・マンジーニ。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 優雅度・・8 総合・・8
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TIME MACHINE「Eternity Ends」
イタリアのプログレメタルバンド、タイム・マシンの2nd。1998作
かなり昔に日本盤で聴いた1st(ガリレオのやつ)はどうもパッとしない印象であったが、
このアルバムはなかなかいいですな。美しいシンセワークにマイルドなヴォーカルが歌い上げ、
メロディアスなフレーズを奏でるギターとともに、ゆったりと曲を構築する耳に優しいProgMetal。
派手な展開やテクニカルな緊張感はあまりないが、このイタリアらしい叙情性はなかなか魅力的で、
歌を含めて演奏のレベルも高く、安心して耳を傾けられる。サックスの音色もいい味を出している。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・7 イタリア度・・8 総合・・7.5
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TIME MACHINE「REVIVISCENCE」
イタリアのメロディアス(プログレ)メタルバンド、タイム・マシンの4th。2004作
活動歴はかなり長く、確か1stフルの「Galileo」は10年近く前に聴いた記憶がある。
久しぶりに聴いた今作の印象は、まずメタルとしての分かりやすさが増していて
クラシカルなギターで疾走する質感は、プログレメタルというよりはメロパワ的。
Voの歌唱もややマイナー臭いがなかなか頑張っているし、演奏力もあるのでそこそこ聴けてしまうが、
個人的にはもう少し曲にひっかかりが欲しい。時間と空間を超える壮大なコンセプト作なのだが。
ANGRAのキコ・ルーレイロ、ラファエル・ビッテンコートもゲスト参加。
メロディアス度・・7 疾走度・・7 楽曲・・7 総合・・7.5
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TO-MERA「Transcendental」
イギリスのプログレメタルバンド、トゥー・メラの1st。2006作
シンセ入りで適度にヘヴィでキラキラした雰囲気の、総じてモダンな作風ながら、
そこに女性ヴォーカルの歌声が入ると適度にゴシックっぽくなるのが面白い。
ヘヴィなギターリフや突進して疾走する部分にはデスメタル要素もいくぶんあるが、
曲の展開の仕方はやや唐突な部分も含めて、まだ無駄が多い印象。
雰囲気的には悪くはないものの、聴きおえて印象に残ったかと言われれば、
微妙に「うーむ」となる。メロディなり曲のキメなり、もうひとつ魅力が欲しい。
ちなみに女性Voはハンガリーのゴシックメタルバンド、WITHOUT FACEの人。
メロディアス度・・7 ProgMetal度・・7 女性Vo度・・7 総合・・7.5
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TO-MERA「Delusions」
イギリスのプログレメタルバンド、トゥー・メラの2nd。2008年作
ギターリフのヘヴィさと、浮遊感のある女性ヴォーカルとのコントラストが明確になり、
曲自体も7、8分代と長くなり、前作よりProgMetal的なテクニカルさが増した。
ブラックメタル風に疾走したり、いきなり静かになったりと唐突な部分は変わらないが、
聴かせるべきポイントの質が高くなったせいで、そのメリハリが少し気持ちよくなった。
複雑な曲展開で聴かせる女性ヴォーカルメタルという、この個性に今後も期待。
メロディアス度・・7 ProgMetal度・・7 女性Vo度・・7 総合・・8
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To-Mera 「Exile」
イギリスのプログレメタル、トゥー・メラの2012年作
女性VoフロントのProgMetalバンド。4年ぶりとなる3作目で、今作はジャケのイメージのように
エジプトをテーマにした世界観なのだろう。オリエンタルなメロディを乗せた軽やかなアンサンブルから、
モダンなヘヴィネスを含んだ激しさと、シンセによるシンフォニックなアレンジに女性ヴォーカルの歌声を乗せた
独自のサウンドを描いてゆく。いくぶんダークな叙情性には、ゴシックメタル的な感触もあり、
テクニカルで知的な展開力とともに起伏のある楽曲を構築する。伸びやかなジュリィ嬢の歌声もいですね。
6〜7分の楽曲をメインに、10分を超える大曲が3曲と、バンドの意気込みが伝わってくる濃密な味わいの力作になっている。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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Tomorrow's Eve 「The Unexpected World」
ドイツのプログレメタル、トゥモローズ・イヴの2000年作
シンセを含む5人編成で、DREAM THEATERに通じるテクニカルな構築力と
メロディックな叙情を含んだ正統派ProgMetal。時代的なものもあって、この時点ではまだ
楽曲には90年代的なおおらかな無駄の多さが感じられて、12分を超える大曲も含めて
いくぶん長尺感がある。完成度としてはのちの作品には及ばないが、演奏面での安定や
ドラマティックな構築性を目指すバンドの志の高さは十分うかがえる好作だ。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・7 構築度・・8 総合・・7.5
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TOMORROW'S EVE「Mirror of Creation 2」
ドイツのプログレメタルバンド、トゥモローズ・イヴの3rd。2006作
キーボード入りの5人組で、本作もドラマティックなプログレパワーメタルの力作。
SF的なコンセプト作なのだろうか、シリアスな世界観と、適度にテクニカルな楽曲で
重厚かつ濃密なサウンドを描き出すあたりは、なかなかの実力派だ。
9分、17分という大曲もこなすあたりは、しっかりとした構成力もあり、
最近でいうと、SEVENTH WONDERをもう少し正統派よりにした感じだろうか。
曲調は変に複雑すぎず難解さも感じられないので、ProgMetal初心者でも楽しめるだろう。
メロディアス度・・7 プログレ度・・7 重厚度・・8 総合・・8
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Tomorrow's Eve 「Tales From Serpentia」
ドイツのプログレメタル、トゥモロウズ・イヴの2008年作
前作「Mirror of Creation 2」は重厚かつドラマティックな傑作であったが、4作目となる本作も、
適度にモダンなヘヴィさを含んだ重厚な作風で、やはりとてもクオリティの高い仕上がりだ。
3部構成に分かれたコンセプトアルバムとなっていて、随所にSEやセリフなどを含みながら
組曲的に楽曲を連ねる手法は、DREAM THEATERの「Metropolis Pt 2」に通じる感触もある。
ストーリー的なものなのだろう、ダークなドラマ性を感じさせる世界観はとっつきは悪いかもしれないが、
じっくりと構築された強度をもったサウンドは、このバンドの非凡なセンスを物語っている。
ドラマティック度・・8 重厚度・・8 構築度・・8 総合・・8
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Traumpfad 「Die Kreise Schlieben Sich」
ドイツのプログレメタル、トラウムプファドの2006年作
シンセを含んだアレンジとドイツ語による歌声でキャッチーに聴かせるサウンドながら、
いくぶんヘンタイ気味…というか脱力気味の唐突な展開もあったり、なかなか個性的な作風。
これでもっと、センスと思い切りのよさがあれば、Die Apokalyptischen Reiterになれるのだろうが、
現時点ではヘンタイ性もメロディも構築センスもいまひとつというところ。シアトリカルなドラマ性や
ドイツ語に絡むプログレ的なオルガンの音色などはよい感じなので、さらなるクオリティアップをよろしくです。
ドラマティック度・・7 ゲルマン度・・8 楽曲・・7 総合・・7
Traumpfad 「Aufbruch」
トラウムプファドの2010年作
前作から4年をへて、少しはよいバンドになったかしら。ドイツ語の歌声とともにキャッチーに聴かせる楽曲は、
いくぶんスタイリッシュになった感じがするものの、基本的にはスリリングさもドラマ性もやはり足りない。
そこそこメロディアスで、そこそこ知的で、そこそこ展開があっても、どこか煮え切らない。興奮しないのである。
今回は10分を超える大曲もあるが、これという盛り上がりもなく、正直、時間が長く感じるだけ。
ヘンタイな唐突さやゲルマンなヘンテコさが薄れた分、楽曲の退屈さが浮き彫りになってしまったという。
ドラマティック度・・7 ゲルマン度・・7 楽曲・・7 総合・・7
Trytan 「Blood Of Kings」
アメリカのプログレメタル、トライタンの2021年作
デビューは1987年で、1990年までに2作を残して消えるも、じつに30年ぶりに復活。オリジナルメンバーは、
リーダーでG&Voのラリー・ディーンのみで、NEAL MORSEバンドではギターを弾く、エリック・ジレットがドラムで参加、
オールドな味わいのギターにハイトーンのヴォーカルを乗せた、RUSHやKANSASあたりをハードにしたようなサウンドを聴かせる。
メロディックなギターの旋律にシンセアレンジも加え、シンフォニックロック的な爽快さと、ProgMetal寄りの構築性が合わさって
中性的な伸びやかな歌声もひの作風によくマッチしている。弾きまくりのギターを中心にしたインストパートも含めて、
6〜9分前後の長めの楽曲をじっくりと聴かせる。80年代クリスチャンメタル的な雰囲気もあるので、その筋のファンもどうぞ。
メロディック度・8 テクニカル度・7 プログレハー度・8 総合・8
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TUNNEL VISION「TOMORROW」
フィンランドのプログレメタルバンド、トンネル・ヴィジョンの1st。2002作
メンバーにはWARMENなどに参加している者もおり、演奏力という点では堂々たるもの。
サウンドは初期QUEENSRYCHE+DREAM THEATER+北欧的様式美という感じで、
テクニカルに展開しながらも、きらきらとしたキーボードなどがなかなかメロディアス。
この手としてはやはり「個性」と「絶対的メロディ」などが感じられないので、
良質ながらジャケットの地味さ同様「あと一歩」的な感があるのは否めない。
メロディアス度・・7 プログレ度・・7 インパクト・・6 総合・・7
TURBULENCE 「FRONTAL」
レバノンのプログレメタル、タービュランスの2021年作
テクニカルなリズムに硬質なギターとカラフルなシンセ、エモーショナルなヴォーカルを乗せて
緩急ある知的な展開力とともに、モダンな感触のProgMetalサウンドを聴かせる。
随所にシンフォニックなアレンジや叙情的なギターによる、ウェットな感触も含ませつつ
DREAM THEATERのようなキャッチーなメロディアス性で、ドラマティックに盛り上げる。
10分前後の大曲をメインに、スタイリッシュに構築してゆくセンスと確かな演奏力もあって、
中東という辺境臭さはほとんど感じさせない。MYRATHのような民族色はないので、
クールでモダンなプログレメタルとして普通に楽しめる。今後の成長に期待のバンドです。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 スタイリッシュ度・・8 総合・・8
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Twenty3:Fifty9 「The Count Act I - The Soul of a Prisoner」
アメリカのプログレメタル、トウェンティスリー・フィフティナインの2009年作
「巌窟王」こと「モンテ・クリスト伯」をテーマにしたコンセプトアルバムで、美しいシンセアレンジと
適度にハードなギターワークとともに、プログレメタル的な構築力で描かれるサウンド。
朗々と歌い上げるシアトリカルなヴォーカルやときに女性ヴォーカルなども加わって、
全体的にはなかなかドラマティックな聴き心地なのだが、ややくぐもった音質がいかにも自主制作的な
マイナー感になってしまっているのが残念。コンセプチュアルな質感やメタルメタルしすぎないところなどは、
SHADOW GALLERYあたりに通じる雰囲気もあるのだが、そのレベルにはまだまだ至っていない。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・7 楽曲・・7 総合・・7
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U
UNDER THE SUN「UNDER THE SUN」
アメリカのプログレメタルバンド、アンダー・ザ・サンの1st。
音の方はYES的なキャッチーさを持った大人のプログレハード。
メタル色はさほどなく、どちらかというとたおやかな落ち着いた雰囲気。
ごり押しの変拍子展開がない分、一聴したインパクトは弱いかも。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 成熟度・・8 総合・・7
V
VANDEN PLAS「THE GOD THING」
ドイツのプログレメタルバンド、ヴァンデン・プラスの2nd。1998作
1stの時点では「中途半端なプログレメタル」という感じで、そう印象には残らなかったのだが、
この2ndでは一聴した感じDREAM THEATER的な質感がぐっと高まっている。
リズムにしろ、音の重ねかたや曲の展開にしろ、明らかにプログレメタル的になっており、
もともと演奏力はあるバンドだっただけに、その辺のバンドよりもずっと音に説得力がある。
おそらくこのアルバムで欧州での人気も高まり、バンドは3rd、4thと順調に発表していったのだろう。
ただクオリティは高いが、反面「何が個性か?」と問われると、「センスの良さ」というくらいしか思い浮かばず、
曲調やメロディの質そのものに一歩抜きでたものが出ないと、「DTの二番煎じ感」からは抜け出せない。
PROG METAL好きにはお薦めできるバンドだが、そうでない人には新鮮味は薄いかもしれない。
メロディアス度・・7 プログレメタル度・・8 楽曲・・7 総合・・7.5
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VANDEN PLAS「Far Off Grace」
ドイツのプログレメタルバンド、ヴァンデン・プラスの3rd。1999作
今回もDREAM THEATER的な手法を垣間見せる、なかなかの充実作なのだが、
演奏といい楽曲といい、良いものをもっていながら、どうしても「あと一歩」感がある。
悪く言えば意外性のなさ、これに尽きる。メロディにしろ、テクニカルな部分にしろ
楽曲を壊さないようにという意識のためか、どうも平坦に聴こえてしまう。
この中庸さが逆に良いのだというファンもいるのだろうが、少なくとも自分にとっては、
「心地よいが、あまり刺激のないプログレメタル」という評価しか浮かばない。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・7 楽曲・・7 総合・・7.5
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VANDEN PLAS「Spirit of Live」
ドイツのプログレメタルバンド、ヴァンデン・プラスのライブ作。2000作
2000年フランスでのステージからの収録であるから、3rd発表後の時期だろう。
Prog Metalとしては実力派とされつつも、日本ではさほどの知名度も上がらず
地道に活動を続けている彼らだが、欧州での人気はなかなかのようだ。
このライブ作では、スタジオ盤以上に勢いのある演奏で、テクニカルさよりも
むしろパワフルな雰囲気が漂っている。ただ、個々の楽曲としては
個性の薄いDREAM THEATE風味から抜け出していないきらいがあり、
見せ場となるメリハリが薄いので、やはり地味な印象はぬぐえないのが残念。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・7 ライブ演奏・・8 総合・・7.5
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VANDEN PLAS「BEYOND DAYLIGHT」
ドイツのプログレメタルバンド、ヴァンデン・プラスの4th。2002作
印象としては1stあたりからすると「ずいぶんプログレメタルらしくなったなぁ」という感じで、
やはりDREAM THEATERからの影響を受けたような楽曲の構築性が、
PROG METAL好きにとっては心地よく、またテクニカル過ぎないのも聴きやすい
「これだ」という名曲がないのが欠点だが、全体的に非常に丁寧に作られたアルバムだ。
スローパートや静寂パートでのメロウさが個人的にはこのバンドの持ち味だと思う。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 楽曲・・7 総合・・7.5
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VANDEN PLAS「Christo 0」
ドイツのプログレメタルバンド、ヴァンデン・プラスの5th。2006年作
過去の4作はどれも、まあ悪くはないが…というくらいのいわば中庸の出来であったのだが、
本作は「岩窟王」として知られるデュマの名作「モンテ・クリスト伯」をコンセプトにした、
ドラマティックな力作となった。メタリックなエッジと荘厳な叙情性で表現される楽曲は、
展開のメリハリという点でもこれまで以上で、ときにシンフォニックな厚みを感じさせながら
ストーリー的に構築されてゆく。全体的に無駄にテクニカルすぎず、どっしりとした流れと
しっかりと歌を聴かせる作風もはまっている。バンドとしての最高傑作がここに誕生した。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 重厚度・・8 総合・・8
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VANDEN PLAS「The Seraphic Clockwork」
ドイツのプログレメタルバンド、ヴァンデン・プラスの2010年作
デビューは1995年で活動はすでに15年というキャリアのあるバンド。
前作「Christo 0」は「モンテ・クリスト伯」を題材にしたドラマティックな傑作であったが、
続く本作も物語的なストーリーを感じさせる、なかなか濃密な作品に仕上がっている。
適度なヘヴィさを保った重厚なアレンジと、力量のあるヴォーカルで聴かせる楽曲は、
派手さはないものの、ベテランらしい音の説得力に包まれていて、じっくりと味わえる。
ラストの12を超える大曲も含めて、ProgMetalというよりもドラマティックメタルとして見事。
ドラマティック度・・8 重厚度・・8 ProgMetal度・・7 総合・・8
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VANDEN PLAS 「Chronicles of the Immortals: Netherworld (Path 1)」
ドイツのプログレメタルバンド、ヴァンデン・プラスの2014年作
デビューは1995年のベテランで本作は7作目となる。前作、前々作は非常に良かったが
本作は映画的なナレーションを含んだイントロから壮大な雰囲気を漂わせる。
説得力のあるヴォーカルの歌声と、適度にヘヴィなギターを含んだ重厚さで、
ドラマティックな展開力を覗かせる楽曲は、ベテランらしい堂々たる聴き心地だ。
女性ヴォーカルも入ったバラード曲など、叙情的な側面も含めた、メリハリのある構成力と
DREAM TEATER以降のProgMetalを引き継いだ、コンセプト的であるシリアスな流れも見事。
ドラマティック度・・9 テクニカル度・・7 重厚度・・8 総合・・8
Vanden Plas 「Chronicles of the Immortals Netherworld II」
ドイツのプログレメタル、ヴァンデン・プラスの2015年作
デビューは1995年、キャリア20年を誇るベテランバンド。通算8作目となる本作は、
前作からの続編となるコンセプトアルバムで、重厚なギターワークとシンセアレンジ、
パワフルなヴォーカルを乗せた、どっしりとしたドラマティックなサウンドを聴かせる。
これという派手さはないものの、随所にDREAM THEATERばりの構築力を覗かせて、
壮大なドラマを描くような世界観の強度はベテランならではの説得力である。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 重厚度・・8 総合・・8
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Vanden Plas 「The Ghost Xperiment - AwakenIng」
ドイツのプログレメタル、ヴァンデン・プラスの2019年作
1994年デビューのベテラン、本作は4年ぶりとなる9作目。ヘヴィなギターリフを乗せたイントロから、
うっすらとしたシンセとエモーショナルなヴォーカルが加わって、重厚なプログ・パワーメタルを展開する。
7〜9分の大曲を軸に、オルガンを含むシンセアレンジに叙情的なギター、表現力あるヴォーカルとともに、
ゆったりとしたスローナンバーなども、ベテランらしいどっしりとした説得力に包まれている。
全体的に落ち着いた作風で、派手な展開はさほどないものの、じわじわと大人のドラマ性を構築する力作だ。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・6 重厚度・・8 総合・・8
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Vanden Plas「The Ghost Xperiment - Illumination」
ドイツのプログレメタル、ヴァンデン・プラスの2020年作
1994年デビューのベテラン。本作は通算10作目で、前作の続編となるコンセプトアルバム。
重厚なギターにシンセを重ね、マイルドなヴォーカルを乗せて、どっしりとしたサウンドを構築。
ヴォーカルメロディはキャッチーで、いくぶんダークな雰囲気をまとわせたKAMELOTなどにも通じる感触に、
随所に叙情的なギターフレーズを盛り込んで知的な展開力も覗かせる。8分前後の長めの曲でも、
オルガンなどを含むシンセとエモーショナルなヴォーカルで、モダンなヘヴィネスとメロディックなフックが同居。
13分という大曲では、美麗なシンセとともにじわじわと盛り上げる。派手なインパクトはないものの安定の力作である。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 重厚度・・8 総合・・8
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Venice in Vain
イタリアのプログレメタル、ヴェニス・イン・ヴェインの2003年作
クラシカルで壮麗なイントロから、シンフォニックなシンセワークにギターを重ね、
シアトリカルに歌い上げるヴォーカルとともに、適度にテクニカルで優美なProgMetalを聴かせる。
メタル的な重厚さはさほどなく、ヴォーカルのヘタウマ感も含めたマイナーな翳りと、
優美なロマンティシズムに包まれるところは、同郷のBlack Jesterにも通じる雰囲気がある。
アルバム後半は、28分を超える組曲になっていて、緩急ある展開でドラマティックに構築されてゆく。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 優美なロマン度・・9 総合・・7.5
VENTURIA 「The New Kingdom」
フランスのプログレメタルバンド、ベンチュリアの1st。2006年作
DREAM THEATERを思わせる技巧的な構築美とモダンなシンセアレンジ、
手数の多いドラムに男女ヴォーカルの歌声で聴かせる、新世代のProgMetalスタイル。
曲は4〜6分台が中心でさして難解さは感じないが、随所に出てくる変拍子リズムや
展開力とともに実に濃密な印象である。単にテクニカルなものを見せつけるのではなく
しっかりとメロディやドラマティックな空間美もあって、高品質な完成度に仕上がっている。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・8 モダンセンス度・・9 総合・・8
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VENTURIA「Hybrid」
フランスのプログレメタルバンド、ベンチュリアの2nd。2009作
モダンなシンセアレンジと男女ヴォーカルの歌声で聴かせる新時代のProgMetalとして
前作もなかなかの出来だったが、今作もテクニカルさにデジタリィな質感を加えた
ハイクオリティなサウンドを聴かせる。手数の覆いドラムにテクニックのあるきギター、
女性ヴォーカルもなかなかいいのだが、今回はモダンな質感が前に出過ぎていて、楽曲構成、
メロディの魅力の点ではやや後退したか。もちろん質は高く、曲によってはドラマティックさもある。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・8 モダンセンス度・・9 総合・・7.5
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Venus Syndrome 「Cannibal Star」
フランス、ブラジル混合のプログレメタル、ヴィーナス・シンドロームの2021年作
エレクトロなシンセを適度にハードなギターに重ね、朗々としたハイトーンヴォーカルとともに
モダンなテクニカル性とオルガンなどのヴィンテージなHR風味が同居したというサウンドを構築。
ときおり、DREAM THEATERを思わせる雰囲気もありつつ、楽曲的にはそこまで複雑ではなく、
4分前後のナンバーを主体に、パワフルなヴォーカルも含めわりとオールドなメタル感も覗かせる。
全体的には、メロディアスでいくのか、テクニカルかが中途半端で、耳を引く展開がもっと欲しい。
ドラマティック度・7 テクニカル度・7 モダンでオール度・7 総合・7
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Virgil Donati「Just Add Water」
オーストラリア出身のドラマー、ヴァージル・ドナティの1997年作
PLANET Xなどで活躍する超絶ドラマー。本作は1996年ハリウッドでのスタジオセッション音源。
ギターはスコット・ヘンダーソン、ベースはリック・フィエラブラッチというトリオ編成で、
パワフルかつ流麗なドナティのドラムに、存在感のあるリックのベースが合わさり、
奔放なグルーヴを描きつつ、ヘンダーソンのブルージーなギターが渋めに彩を添える。
10分前後の大曲もあり、即興的なセッション色が強いので、プレイヤーに興味のない方にはつらいかもしれないが、
トリオによるそれぞれの巧みな演奏は玄人好みの味わいで、とくにドナーティのファンであれば楽しめるだろう。
テクニカル度・・8 即興度・・8 楽曲度・・5 総合・・8
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Virgil Donati 「In This Life」
PLANET Xなどで活躍する凄腕ドラマー、ヴァージル・ドナーティのソロ。2013年作
アレックス・マカチェク、マルコ・スフォーリ(CREATION'S END)、ラファエル・モレイラといった
玄人好みの超絶ギタリストに、ベースに、ダグ・シュリーヴ、アンソニー・クロフォード、
鍵盤には、ダリオ・アルジェント、ルスラン・シロタ、ジェフ・バブコという凄腕プレイヤーが参加、
サウンドの方も、ドナーティの超人的なドラムがたっぷりと楽しめるテクニカル・フュージョンメタルで、
変則リズムまくりの軽やかなアンサンブルによる優雅さは、PLANET Xにも通じる聴き心地だ。
実力あるギタリストたちのプレイも素晴らしい。テクニカルメタル&ドナーティファンは必聴の作品。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・9 メタルフュージョン度・・8 総合・・8
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Virgil Donati 「The Dawn Of Time - Orchestral Works」
PLANET Xなどで活躍する凄腕ドラマー、ヴァージル・ドナーティのソロ。2016年作
前作「In This Life」は、プラネット・エックスの延長のようなプログレ・フュージョンメタルの傑作であったが、
本作は「オーケストラル・ワークス」というタイトルのように、クラシックのシンフォニーにドラムを融合させるというテーマで、
ヴァイオリンなどのストリングスにオーボエやフルート、クラリネットによる優美な管弦楽をバックに、
ドラムとベースによるロックアンサンブルを加えたサウンドを展開。技巧的で繊細なドナーティのドラムプレイは、
抑揚のあるシンフォニーに見事に融合し、緊張感のあるテクニカルなシンフォニーロックというべ聴き心地である。
変則リズムとダイナミズムの応酬ながら、オーケストラルな美しさに包み込まれて、優雅なる技巧美が味わえる。
リズムの探求を人生とする希代の天才ドラマーが果敢に挑んだ、プログレ、チェンバーロックのファンも必聴の一枚だ。
クラシカル度・・9 スリリング度・・9 ドラム度…10 総合・・9
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Virgil Donati 「Ruination」
オーストラリア出身のドラマー、ヴァージル・ドナティの2019年作
PLANET X、ICEFISHなどで活躍する超絶ドラマーのソロ作品。前作はオーケストラとドラムを融合させた大傑作であったが、
本作には、オーストラリアのシンガー、イルウィン・トーマスをヴォーカルに迎え、ブラジルのジャズ系ギタリスト、アンドレ・ニエリをはじめ、
BRAND Xにも参加したクリス・クラーク、オーストラリアのピアニスト、ジョー・シンダモ、ICEHISHのメンバーなどがゲスト参加、
変則リズムたっぷりのテクニカルなドラムを軸に、メタリックなギターを重ねたDjent風味と、優美なピアノやシンセを加えた、
ジャズ/フュージョン要素が融合したサウンド。歌パートでのほどよくキャッチーな味わいと、随所に聴かせる巧みで流麗なギタープレイ、
ゆるやかであるが緊張感あるアンサンブルを生み出す恐るべきドラムテクニックが絶妙に融合されたプログ・メタルフュージョンが楽しめる。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・9 優雅度・・8 総合・・8
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VISION 「The Other Side of Grey」
アメリカのプログレメタルバンド、ヴィジョンの2009作
ヴォーカル、ギター/シンセ、ベース、ドラムという4人組で、初期Queensrycheを思わせる
重厚かつドラマティックなサウンド。メタリックなギターを中心に、うっすらとしたシンセ、
シアトリカルな雰囲気を漂わせたハイトーンヴォーカルで聴かせる、正統派のスタイル。
全体的に80〜90年代的な古めかしさがあって、オールドなリスナー向けかもしれない。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・7 新鮮度・7 総合・・7
VITRUVIUS
メキシコのプログレメタル、ヴィトルヴィウスの2010年作
適度にテクニカルな展開力と浮遊感をともなった女性ヴォーカルの歌声で聴かせる、
Mythologic、LEGER DE MAINあたりに通じる感触のプログレメタルサウンド。
シンセによるシンフォニックな味付けもよい感じで、メタリックな重厚さが希薄な分、
ハードプログレ的にも聴けるかもしれない。楽曲そのものに明快な盛り上がりがないので、
爽快な聴き心地の作品ではないが、なんとなく浮遊感をともなった叙情などは嫌いではない。
この煮え切らなさが逆に心地よいという思えるような、ディープなリスナー向けかもしれない。
VOLA「INMAZES」
デンマークのプログレメタル、ヴォラの2016年作
Djent的なモダンなテクニカル性に包まれた演奏に、エモーショナルなヴォーカルを乗せた
キャッチーな感触を融合したサウンド。美しいシンセアレンジに、プログレ的な知的な構築力
そして変則リズムのキメに乗せる硬質なギターリフは、エモーショナルロック化したMESHUGGAHのよう。
全体的には重すぎず、激しすぎずというバランスで、ときにエレクトロなデジタル感覚も含めて、
Animals As Leadersともまた違った、「新時代のテクニカルProgMetal」というべき作品である。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・8 モダン度・・8 総合・・8
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VOLA 「APPLAUSE OF A DISTANT CROWD」
デンマークのプログレメタル、ヴォラの2018年作
前作は「エモ化したメシュガー」というような、モダンなテクニカルメタルであったが、
2作目となる本作は、ほどよくヘヴィなギターにやわらかなシンセを重ね、マイルドなヴォーカルで、
スタイリッシュなサウンドを聴かせる。美しいシンセアレンジやスペイシーな浮遊感のある音作りが、
前作以上に叙情的な味わいになっていて、HAKENあたりにも通じるモダンなプログレ感触もある。
随所にDjent的なテクニカル性も覗かせつつ、エモーショナルなメロディアス性も現れるという、
メリハリのある構築センスは見事。モダンで硬質なサウンドを美麗なシンセが包み込む。
メロディック度・・8 テクニカル度・・7 スタイリッシュ度・・9 総合・・8
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Votum「Time Must Have a Stop」
ポーランドのプログレメタルバンド、ヴォータムの2008作
薄暗い叙情に適度なハードさとモダンな質感を加え、メランコリックに聴かせるサウンドは、
哀愁に包まれてなかなかいい雰囲気で、とくに美しいシンセワークが素晴らしい。
マイルドに歌うヴォーカルのかもしだす翳りあるやわらかみも耳に心地よく、
全体的にはRIVERSIDEをさらに叙情的に仕立て上げたという感触だ。
ときおり静寂パートを折り込むアレンジセンスも新人にしてはこなれており、
薄暗系の叙情メタルが好きな方にはぜひ聴いて欲しい好作品。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 薄暗叙情度・・9 総合・・8
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VOTUM「Metafiction」
ポーランドのプログレメタルバンド、ヴォータムの2010年作
デビュー作もなかなかの好作であったが、この2作目も、しっとりと美しいシンセワークにマイルドなヴォーカルが
とても耳心地よいサウンド。メロウな泣きのギターフレーズがメランコリックな情感を盛り上げてゆく感触には
ゴシックメタル的な雰囲気もある。同郷のRiversideなどに比べるともっとムーディで、
メタル的な激しさやテクニカルさよりも繊細な叙情美が引き立っている。その一方では
スクリームヴォイスを使ったモダンなヘヴィさもアクセントになっていてけっこう振り幅が広い。
ドラマティック度・・8 ProgMetal度・・7 メロウな叙情度・・9 総合・・8
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Votum 「Harvest Moon」
ポーランドのプログレメタル、ヴォータムの2013年作
2008年にデビュー、Riversideを思わせる翳りある世界観のサウンドで、過去2作も高品質な出来だったが、
3作目となる本作も、メロウなギターにマイルドなヴォーカルを乗せて、繊細な叙情を描くサウンド。
適度にモダンな重厚さと激しさを含みながら、メリハリのある展開力と知的な構築センスで、
ドラマティックに聴かせるクオリティの高さはさすがで、アコースティックな叙情パートや、
ポストプログレ的な繊細なヴォーカルパートなども織り込み、緩急のあるアレンジも見事である。
Porcupine Treee系のリスナーなどにも対応した、モダン・プログレメタルの力作である。
ドラマティック度・・8 薄暗度・・8 構築センス・・8 総合・・8
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VOTUM 「Ktonik」
ポーランドのプログレメタル、ヴォータムの2016年作
2008年にデビュー、4作目となる本作も、Riversideあたりを思わせる翳りを帯びた空気感に、
マイルドなヴォーカルとメタリックなギターリフを乗せた、薄暗い叙情のサウンドを描いてゆく。
楽曲は4〜6分と比較的コンパクトで、ときにメロウなギターにシンセを含んだ重厚な感触と
ドイツのSYLVANあたりにも通じる繊細な泣きの叙情美が同居したナンバーもありつつ、
全体的にはヘヴィなパートが増えていて、今作はメタルが苦手なリスナーにはややきついかもしれない。
モダンなポストプログレをメタル化したという感じが好みならお薦めできる好作品ではあります。
ドラマティック度・・7 薄暗度・・8 叙情度・・8 総合・・8
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VOYAGER「ELEMENT X」
オーストラリアのメロディック・プログレメタルバンド、ヴォイジャーの2003年作
キーボード入りの5人組で、ベースは女性。のっけからシンフォニックなイントロで幕を開け
曲調もプログレメタル的な知的な要素と、シンフォニックメタル的な壮麗さが合わさった雰囲気。
やや情感過多ぎみのヴォーカルが好みを分けるが、きらびやかに展開するサウンドは
デビュー作にしてはかなりのクオリティ。ネオクラシカル風だったりメロデス風だったりと、
曲調にとりとめがない感もあり、はては打ち込み風のディスコビートまで出てくるが、
様々な要素が楽しめる贅沢な作品ともいえる。きらきらとしたシンセワークとプログレッシブなドラマ性もよい感じで、
今後は音の深みを増してゆけば、相当のバンドにまで成長してゆきそうな可能性を感じる。
シンフォニック度・・8 ドラマティック度・・8 バリエーション多すぎ度・・9 総合・・8
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VOYAGER「UNIVERS」
オーストラリアのメロディック・プログレメタルバンド、ヴォイジャーの2nd。2007年作
本作では、GとBが女性で、KeyとVoが男性という、5人編成となっている。
前作もProgMetal風味のテクニカルさと、ドラマティックなシンフォニックメタルを合わせた
なかなかクオリティの高いアルバムであったが、本作も音のセンスの良さが素晴らしい。
適度にモダンなシンセアレンジに、知的な展開を聴かせる楽曲と、マイルドなヴォーカルの歌声も
表現力がずっと増している。派手な大仰さや、テクニカルな技巧を見せつけるわけではなく、
自然体の構築性で、耳触りのよいサウンドを作り上げている点が見事。
ややタイプは違うがPAIN OF SALVATIONあたりと同等のセンスを感じる。
知性ある奥深いドラマ性で聴かせる、豪州の隠れた傑作。これは要チェックだ!
メロディアス度・・8 ドラマティック度・・8 知的センス度・・9 総合・・8.5
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VOYAGER「I am the Revolution」
オーストラリアのメロディック・プログレメタルバンド、ヴォイジャーの3rd。2009作
前作「Univers」はプログレッシブなセンスが絶妙の傑作であったが、
本作もシンセ入りのシンフォニックメタルの質感と、知的な展開力で聴かせる
見事なサウンドを構築している。今作ではアレンジによりモダンさが感じられ、
この軽妙なメタリックさはある種、お洒落ですらあるが、生粋のメタルファンからすると
いくんぶん軟弱に感じられるかもしれない。バンド名のような挑戦精神が窺える作品だと思う。
シンフォニック度・・7 知的構築度・・8 モダンアレンジ度・・9 総合・・8
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「The Meaning Of I 」
オーストラリアのメロディック・プログレメタルバンド、ヴォイジャーの2011年作
プログレッシブかつ知的なアレンジセンスでじつにクオリティの高いサウンドを聴かせるこのバンド、
4作目となる本作もドラマティックなコンセプト性を匂わせる、期待にたがわぬ力作に仕上がっている。
きらびやかなシンセを含んだシンフォニックな感触と、重厚な硬質感にキャッチーな歌メロも盛り込んで
メロディックに聴かせるサウンドは、ときにもの悲しい叙情も含んで、いかにもモダンメタルという作風。
知的な構築力はProgMetalのリスナーにも楽しめる、いわば「新時代のメタル」というような力作だ。
ドラマティック度・・8 重厚度・・8 モダン度・・8 総合・・8
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VOYAGER「V」
オーストラリアのメロディック・プログレメタル、ヴォイジャーの2014年作
これまでも知的でハイセンスな傑作を作り続けてきたこのバンドだが、5作目となる本作も、
モダンできらびやかなシンセアレンジを含んだ、プログレッシブな味わいのサウンドを聴かせる。
楽曲自体は4、5分前後でシンプルなのであるが、ときにヘヴィに、そしてときにメロディックなギターワークと
マイルドなヴォーカルを乗せた、メロディックなキャッチーさが抜群のセンスで融合しているのが素晴らしい。
ProgMetalではないのだが、プログレメタル的にも楽しめるという、心憎いまでのバランス感覚が絶妙なのです。
爽快な歌メロの心地良さも魅力的。頭文字である「V」のアルバムタイトルをかかげた意欲的な力作に仕上がっている。
メロディック度・・8 モダン度・・8 ハイセンス度・・9 総合・・8.5
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Voyager 「Ghost Mile」
オーストラリアのモダン・プログレメタル、ヴォイジャーの2017年作
2003年にデビュー、モダンな構築性でハイセンスなサウンドを描く、実力派の中堅バンド。
6作目となる本作はよりモダンな感触を強めた作風で、ときにDjent的でもあるテクニカル性を含みつつ、
マイルドなヴォーカルを乗せたキャッチーな感触を融合した、スタイリッシュなサウンドを聴かせる。
ギターリフはけっこう硬質であるが、うっすらとしたシンセアレンジがサウンドに浮遊感をもたらしていて、
モダンなヘヴィネスと優雅なメロディック性、そして知的な構築センスのバランスが絶妙である。
テクニカルでありながら、ほどよくキャッチーなポスト・プログレメタルとしても楽しめるアルバムです。
メロディック度・・8 テクニカル度・・8 スタイリッシュ度・・9 総合・・8
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VOYAGER 「Colours in the Sun」
オーストラリアのプログレメタル、ヴォイジャーの2019年作
2003年にデビュー、モダンなミクスチャー感覚を有したスタイリッシュなサウンドを描くこのバンド、
7作目の本作は、きらびやかなシンセアレンジに硬質なギターとマイルドなヴォーカルを乗せて
前作のDjent的なテクニカル性を覗かせつつ、そこにキャッチーなポップ感を加えたサウンドを構築する。、
楽曲は4分前後がメインでわりとシンプル。ドラマティックな盛り上がりや展開力の点では物足りなさはあるが、
キャッチーなメロディアス性とスタイリッシュなテクニカル性を巧みに同居させた、モダン派ProgMetalの逸品です。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・8 スタイリッシュ度・・9 総合・・8
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W
Waken Eyes 「Exodus」
スウェーデンのプログレメタル、ウェイクン・アイズの2015年作
ドラムにマルコ・ミンネマン、ベースにSYMPHONY Xのマイク・レポンドが参加するバンドで、
流麗なギタープレイにハイトーンヴォーカルを乗せ、ほどよくテクニカルな展開力で聴かせる、
Seventh Wonderなどにも通じるスタイリッシュなProgMetal。翳りを帯びたドラマ性を感じさせる楽曲に、
Darkwaterにも参加するヴォーカルの伸びやかな歌声と、キャッチーな歌メロもなかなか魅力的だ。
楽曲は5〜8分前後を中心に、さほど派手な展開はないが、テクニカル過ぎず、甘すぎない叙情とともに、
じっくりと楽しめる。ラストは19分におよぶ大曲で、起伏のある展開美でドラマティックに構築される。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 スタイリッシュ度・・8 総合・・7.5
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Wedingoth 「Alone in the Crowd」
フランスのプログレメタル、ウェドインゴスの2016年作
2009年にデビューし、3作目となる。女性Vo、女性ベーシストを含む編成で、
適度にハードなギターにシンセアレンジを重ね、緩急あるアンサンブルに女性ヴォーカルを乗せた
スタイリッシュなプログレメタル。オルガンなどを含むシンセアレンジや、女性声による優美な感触と、
テクニカルな構築力が同居した作風で、いくぶんゴシック寄りのウェットな雰囲気も覗かせる。
10分を超える大曲では、緩急ある展開とともに、シアトリカルなドラマ性も感じさせつつ、
分かりやすい盛り上がりやフックのあるメロディが希薄なので、なんとなくもどかしい。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・7 女性Vo度・・7 総合・・7.5
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WHILE HEAVEN WEPT「Fear of Infinity」
アメリカのプログレッシブメタル、ワイル・ヘブン・ウェプトの2011年作
ツインギターにシンセ、男女ヴォーカルを含む7人編成で、本作はすでに5作目になる。
美しいシンセをバックに、ツインギターのリフとノーマルヴォーカルの歌声を乗せて
重厚でスペイシーなサウンドを描いてゆく。知的でプログレッシブな構築力に加え、
曲によってはゆったりとした聴き心地でエピックドゥーム的な感触もある。
ギターリフの重なりとうっすらとしたシンセが合わさって、音の厚みが壮大な雰囲気を作り出し、
派手な展開はないもののじっくりと楽しめる作品だ。ラストの11分の大曲もなかなか圧巻。
シンフォニック度・・8 重厚度・・8 知的構築度・・8 総合・・7.5
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WHILE HEAVEN WEPT 「Suspended at Aphelion」
アメリカのプログレッシブ・ドゥームメタル、ワイル・ヘヴン・ウェプトの2014年作
結成は90年代で、本作は5作目となる。なにやらシンフォニックで美しいイントロ曲から始まり、、
重厚なギターとシンセが重なったスペイシーなスケール感と、朗々としたヴォーカルを乗せた
エピックドゥームの感触が合わさった、独自のサウンドが広がってゆく。ときにダミ声ヴォーカルが入ったり
ブラックメタルばりの疾走感もありつつ、プログレメタル風味の知的でモダンな構築力も感じさせるという。
前作に比べて、壮大な世界観を描く音の説得力がぐっと増していて、随所に聴き手を惹きつけるような、
スリリングな展開力も備わっている。重厚なProgMetalとしても楽しめる力作に仕上がっている。
ドラマティック度・・8 重厚度・・8 壮大度・・8 総合・・8
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White Crow 「Creatio ex Nihilo」
ポーランドのプログレメタル、ホワイト・クロウの2005年作
古き良き感触のギターにうっすらとしたシンセ、ハイトーンヴォーカルを乗せて、
テクニカルなリズムとともに、オールドなハードロックテイストも含んだサウンド。
ほどよい疾走感のあるキャッチーなノリと、ドカドカとしたいくぶ野暮ったいリズムチェンジ、
ギターによるウェットな叙情性が合わさった、マイナーらしい垢抜けなさが微笑ましい。
楽曲的にも煮え切らなさがあるので、メロディックにするのかテクニカルにするのか、方向性を絞っていってもらいたい。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・7 構築度・・7 総合・・7
Wilderun 「Veil of Imagination」
アメリカのプログレッシブメタル、ウィルドランの2019年作
2012年にデビューし、3作目。アコースティックギターとマイルドなヴォーカルでゆるやかに幕を開け、
オーケストラルなアレンジや激しいブラストビート、ときにグロウルヴォーカルによるアグレッシブな感触と
ポストプログレ的な優美な叙情も垣間見せながら、緩急ある流れで14分の大曲を構築してゆく。
静と動の対比という点では、OPETHに通じる雰囲気もあるが、こちらはより極端で、ゆったりとしたパートでは
繊細な美しさに包まれ、オーケストラルな壮麗さはサントラ的に大仰で、そこにメタルの激しさが合体したという味わい。
9分、11分というラストの2曲は、それぞれ激しさと叙情とが対照的に表現され、アーティスティックなセンスが窺える。
日本盤のボーナスには、IRON MAIDEN「第七の予言」のシンフォニックなカヴァーを収録。
ドラマティック度・・8 壮大度・・8 壮麗度・・8 総合・・8
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WITHOUT WARNING「Making Time」
アメリカのプログレメタルバンド、ウィズアウト・ウォーニングの1st。1993年作
かつてのZEROレーベルは、マイナー系のプログレメタル、プログレハードを多数揃えていたが
その中でも最高の当たりがこのバンドであった。ヘヴィなギターとキャッチーな歌メロで聴かせる
構築力あるサウンドは、テクニカルに難解すぎず、それでいてドラマティックな重厚さを有している。
ときおり現れるはっとするような優しいメロディと、効果的なシンセワークもじつにセンスがいい。
DREAM THEATERとはまた違ったアメリカらしい抜けの良さが爽快だ。質の高い3作を残しバンドは解散。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・7 ドラマティック度・・8 総合・・8
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WITHOUT WARNING「Believe」
ウィズアウト・ウォーニングの2nd。1995年作
ハスキーなハイトーンヴォーカルと、適度にヘヴィかつテクニカルな展開と、
軽快でキャッチーな聴きやすさのある、ノリのあるProgMetal作品。
前作よりもリズム面での複雑なアプローチが強くなっているのは、もしかしたら
DREAM THEATERの「AWAKE」あたりにいくぶん影響されているのかもしれない。
個性的な部分は薄いものの、リフとフレーズにおけるギターメロディの心地よさや
絶妙なシンセの入れ方など、センスの良さとバランス感覚で聴き通せる好作だ。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・7 ドラマティック度・・8 総合・・8
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WITHOUT WARNING「STEP BEYOND」
アメリカのプログレメタルバンド、ウィズアウト・ウォーニングの3rd。1998年作
ZEROから日本盤の出ていた過去2作は素晴らしいできだったが、本作も期待通りの作品。
今作ではよりプログレ的なシンセを入れながら、いくぶん落ち着いたProgMetalを聴かせる。
このバンドのカラーとも思えるハスキーなヴォーカルと、爽快感のあるメロディを散りばめながら、
テクニカルすぎない絶妙の構築美で、派手さはないもののじっくりと楽しめる作品に仕上げている。
バンドは本作をもって活動を休止、解散となる。とても良いバンドであっただけに残念だ。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・7 ドラマティック度・・8 総合・・8
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World of Silence 「Window of Heaven」
スウェーデンのプログレメタルバンド、ワールド・オブ・サイレンスの1996年
シンセを含む5人組で、メタリックな激しさは控えめで、しっとりと聴かせる叙情性と
いかにも90年代的な…つまりDREAM THEATER登場後の、ダイナミックで、
いくぶん唐突な展開美が持ち味。当然ながら、ときおりDTを思わせる部分もあるが、
たとえれば、かつてのイタリア系ProgMetalバンドのようなマニアックなこだわりというか、
よりプログレ的な雰囲気が面白い。全体的にゆったりとしているのだが、
それでい起伏に富んでいるという、90年代プログレメタルのお手本のような好作。
メロディアス度・・8 プログレ度・・8 展開美度・・8 総合・・7.5
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THE WRING 「PROJECT CIPHER」
カナダのプログレメタル、ザ・リングの2020年作
2017年にデビューし、2作目。巧みなドラムとうねりのあるベース、流麗なギターによるテクニカルなアンサンブルに、マイルドなヴォーカルを乗せ、ENCHANTにも通じるほどよくキャッチーなProgMetalを聴かせる。
変拍子などの引っ掛かりのある展開はあまりなく、わりとノリのよいストレートなロック感に包まれているので、一般のハードロックファンにも抵抗なく楽しめるだろう。
楽曲は4分前後と比較的シンプルで、ProgMetalとしてはインストパートでのインパクトが弱いか。全7曲で30分というのも、アルバムとしてはやや物足りない。
ドラマティック度・7 テクニカル度・7 楽曲度・7 総合・7.5
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The Wring 「SPECTRA」
カナダのプログレメタル、リングの2023年作
ギタリストのドン・デュールフを中心にしたプロジェクトで、3作目の本作には、ドラムにマルコ・ミンネマンが参加。
軽やかなリズムにほどよくハードなギターを乗せ、マイルドなヴォーカルとともに、RUSHにも通じるキャッチーなプログレメタルを聴かせる。
随所にテクニカルな展開も覗かせつつ、全体的にはアンサンブル志向で、難解なインストパートなどはなく、わりとストレートな作風で初心者でも楽しめる。
楽曲は4〜5分前後で、アルバムとしても全38分と短め。大曲などがないこともあって、ProgMetalとしてはやや物足りなさもあるが。
ドラマティック度・7 テクニカル度・7 楽曲・7 総合・7.5
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XYZ
XEN 「84.000 DHARMA DOORS」
アメリカのプログレメタル、ゼンの1999年作
元ENCHANTのポール・クラディック、テット・レオナルドによるユニットで、軽妙なアンサンブルに
伸びやかなヴォーカルを乗せた、エンチャントにも通じるキャッチーなプログレメタルを聴かせる。
ポール・クラディックのタメの効いた巧みなドラムは、軽やかな優雅さでサウンドを支えていて、
楽曲は4〜5分前後とわりとシンプルながら、ほどよくテクニカルで適度にハードでメロディアス。
これという盛り上がりはないのだが、この聴き心地の良さはENCHANTそのものである。
プログレメタルというよりは、むしろ優雅なプログレハードとしても楽しめる好作品です。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・7 優雅度・・8 総合・・8
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XTERIA「OUTSHINE」
イタリアのプログレメタルバンド、エクステリアの1st。2000作。
キーボードをたっぷり使ったシンフォニックテイストのプログレメタル。
時折変拍子リズムなどでアクセントを付けているが、Voの声質やギターの音色
などからはどちらかというと正統派のハードロックサウンドがかいま見える。
ミドルテンポ主体の楽曲で、「これだ」という盛り上げまではあと一歩という感じだが
演奏やメロディセンスはなかなか悪くないので、今後はもう少し極端さをアレンジに出してほしい。
メロディアス度・・8 プログレ度・・6 楽曲・・7 総合・・7.5
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XTREME MEASURES
オーストラリアのプログレメタル、エクストリーム・メジャースの2004年作
G、B、Dr、Keyという4人編成で、インストによるテクニカルなプログレメタルを聴かせる。
スペイなシンセに、メロディックなギター、変拍子リズムが合わさった軽やかなサウンドは、
PLANET Xなどを思わせるメタルフュージョン的な聴き心地。楽曲は4、5分台が中心で、
テクニカル性とメロディアスさが硬質すぎないバランスで構築されている。
嫌いではないのだが、全体的には、スリリングさやこれだというインパクトが足りないか。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・7 メタルフュージョン度・・8 総合・・7.5
YARGOS 「To Be Or Not to Be」
ドイツのプログレメタル、ヤーゴスの2005作
男女Voを含む6人編成で、女性Voは、レディースバンド、ROSY VISTAのギターとしても活躍している。
ほどよくヘヴィなギターにシンセを重ね、伸びやかな男性ヴォーカルに女性声が絡むゴージャスなサウンド。
随所にモダンなシンセアレンジも含ませた、きらびやかなシンフォニックメタル風でもあり、
4〜5分前後の楽曲は、テクニカルな展開はさほどないが、優雅でキャッチーな聴き心地。
ヴォーカリストの実力も含めて、厚みのあるサウンドは、VANDEN PLASなどにも引けを取らない。
男女ヴォーカルによるドラマ性とともに、コンセプト的な流れで構築される力作です。
ドラマティック度・8 テクニカル度・7 優雅度・8 総合・7.5
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ZEN「GAZE INTO THE LIGHT」
イタリアのプログレメタルバンド、ゼンの1997年作
90年代後半のイタリアでは、DREAM THEATERから影響を受けたProgMetal系バンドが頻出していたが、
このバンドもきらびやかなシンセを乗せた、テクニカルなアンサンブルに、マイルドなヴォーカルで、
DTスタイルのドラマティックなプログレメタルを聴かせる。変拍子を含めた技巧的な構築性と、
叙情的なメロディを組み合わせたサウンドはなかなかクオリティが高く、
若き日のジェイムス・ラブリエを思わせるハイトーンヴォーカルも魅力的だ。90年代の作品としては、
EMPTY TREMOR、ATHENA、ARKHEなどと並んで質の高い好作品であろう。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 DT度・・8 総合・・7.5
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ZERO HOUR「THE TOWERS OF AVARICE」
アメリカのプログレメタルバンド、ゼロ・アワーの2001年作
ザクザクとした硬質なギターリフを変拍子リズムに乗せたテクニカルなサウンドで、MESHUGGAHあたりにも通じるような、いまでいうDjent系に近いモダンなスタイル。
力みがちに歌い上げるハイトーンヴォーカルを乗せながら、メロディックなフックよりは硬質なギターリフがメインで、FATES WARNINGをより重厚に、スタイリッシュにしたという感じもある。
タイトなドラムと存在感のあるベースなど、確かな演奏力とともに、15分という大曲を構築する力量もある。テクニカルなモダン派ProgMetalの元祖という内容だ。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・8 スタイリッシュ度・・8 総合・・8
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ZERO HOUR「Metamorphosis」
アメリカのプログレメタル、ゼロ・アワーの2003年作
1999年自主制作によるデビュー作のボーナストラック入り再発盤。
DALI'S DILEMMAのKeyがゲスト参加していて、ややもすると硬質一辺倒になりがちなサウンドをプログレ的に彩っている。
変拍子によるテクニカルなリズムチェンジの中を、ヴォーカルが歌いあげる雰囲気はFATES WARNING的な浮遊感も感じられ、
その手の変則メタル好きならば楽しめるだろう。楽曲の展開、アレンジにおいてはまだぎこちなさは残るものの、
正統派ProgMetalの質感とモダンなヘヴィさとドラマティック性を有した、バンドの意欲が買える力作だ。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 スタイリッシュ度・・7 総合・・8
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Zero Hour 「Fragile Mind」
アメリカのプログレメタル、ゼロ・アワーの2005年作
硬質なギターリフを主体にしたサウンドで、いきなり唐突な展開とリズムチェンジを含んだDjent的な雰囲気も漂わせる。
かつてのFATES WARNINGをモダンに深化させたという感じもあり、クールなテクニカルメタルが好きな方なら、スリリングな演奏と展開力が楽しめるだろう。
1stに比べて完成度は上がったが、やはり個人的には、ドラマティックなフックがもう少し欲しい。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・8 スタイリッシュ度・・8 総合・・7.5
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ZERO HOUR「Specs of Pictures Burnt Beyond」
アメリカのプログレメタル、ゼロ・アワーの2006年作
通算4作目となる本作は、技巧的なベースとギターが絡むイントロから、ハイトーンヴォーカルを乗せ、硬質さと浮遊感が同居したテクニカルなサウンドを聴かせる。
リフ主導によるモダンなヘヴィネスに随所に叙情的なパートを配したメリハリのある展開力で、スタイリッシュなサウンドを描きつつ、過去作に比べてサウンドの迫力が増してきている。
新たに加入したハイトーンヴォーカルの歌いまわしは、やはりFATES WARNING的で、濃密なインストパートに負けないクセの強さもある。
緩急ある構築力が見事なラスト曲まで、重厚かつテクニカルな聴き心地に包まれた力作だ。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・8 スタイリッシュ度・・8 総合・・8
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ZERO HOUR「Dark Deceiver」
アメリカのプログレメタルバンド、ゼロ・アワーの2008年作
5作目となる本作も硬質なギターリフを変則リズムに乗せた、MESHUGGAHを抑え目にしたようなテクニカルメタルで
そこに乗るヴォーカルは、マイルドな歌声に加え、ときどきお経のようで浮遊感があって面白い。
初期の頃に比べて演奏のキレもずいぶん増していて、ムチャな展開の中にも整合性が感じられるようになった。
メロディアス系ProgMetal好きにはそっぽを向かれそうな、ある意味で硬派なサウンドだが、
いくぶんの叙情性も含んだ感触もあって、コンセプト的なダークなドラマ性を感じさせる点では、
バンドの最高作といってもよいだろう。ヘンタイ的なリズムが好きなテクニカルメタルリスナーにも楽しめる濃密な力作。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・8 ヘンタイ度・・8 総合・・8
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Zero Hour 「Agenda 21」
アメリカのプログレメタル、ゼロ・アワーの2022年作
1999年にデビュー、2008年までに5作を残して沈黙、本作は14年ぶりの復活作。ギター以外はメンバーが交替、
ヴォーカルには初期メンバーだったElikが復帰、新たにSeventh Wonderのベース、Powerwolfのドラムが加入している。
のっけから14分という大曲で、ハードエッジなギターリフにパワフルなヴォーカルを乗せ、テクニカルなリズムとともに
スタイリッシュなProgMetalを聴かせる。シンセなどはさほど入らないので、メロディックなフックという点では不愛想だが、
実力あるリズム隊を屋台骨にしたモダンなテクニカル性に、ゆったりとしたナンバーでの叙情性もあってバランスのとれた味わいだ。
全体的には、ドラマティックな展開などがもっと欲しい気もするが、ともあれバンドの再始動に今後を期待したい。
ドラマティック度・7 テクニカル度・8 叙情度・7 総合・7.5
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VA/ VOICES : a Tribute to Dream Theater
イタリアンメタルバンドによるDREAM THEATERトリビュートアルバム。1999年作
EVIL WINGS、MOON OF STEEL、AZTEC JADE、EMPTY TREMOR、OVERLIFEなど9バンドが参加したCD2枚組
元々テクニックのあるEVIL WINGSによる「A Future In Lies」は歌以外はさすがという出来で見事。
MOON OF STEELの女性ヴォーカルによる「You Not Me」、わりと正統派のカヴァーのAZTEC JADE「Another Day」、
EMPTY TREMORによるメドレーもなかなか良い感じだ。OVERLIFE「Metropolis Part I」は間奏部にハラハラしつつ、
CMKYによる「Surrounded」はキュートな女性ヴォーカルによるじつに優美な仕上がり。DTファンであればけっこう楽しめる内容です。
Disc2には各バンドのオリジナル曲を収録。EVIL WINGSやEMPTY TREMORは、アルバムの出来も良いのでチェックすべし。
ドリムシ度・・8 カヴァー度・・8 DTファンなら面白い度・・9 総合・・7.5
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Symphonic Theater of Dreams - A Symphonic Tribute to Dream Theater
ポーランドのSinfonietta Consonusによる、ドリーム・シアターのトリビュート。2012年作
AffectorやVivaldi Metal Projectなどのメタル作品にも参加していたオーケストラで、
ストリングスにブラスを重ねたイントロ曲から、「Falling Into Infinity」収録の「Hell's Kitchen」が壮麗に演奏される。
「Octavarium」収録「Sacrificed Sons」でのスリリングな味わいは、原曲のドラマ性をシンフォニーに置き換えたよう。
「A Dramatic Turn of Events」収録「Beneath the Surface」では、クラシックギターにオーボエが絡む、優美な聴き心地で、
「Systematic Chaos」収録の大曲「The Ministry of Lost Souls」から、ラストは「Six Degrees
of Inner Turbulence」から
「Losing Time/Grand Finale」で華麗に締めくくる。メタル色は皆無ながら、優雅なオーケストラでしっとりとDTの楽曲が楽しめる
クラシカル度・9 メタル度・1 優美度・9 総合・8
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