〜PROGRESSIVE ROCK CD REVIEW 2025 by 緑川 とうせい

★2025年に聴いたプログレ(フォーク/トラッド・その他含む)CDレビュー
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12/28
今年最後のプログレCDレビュー!(372)
2025年間BESTも決定しました…こちら

The Flower Kings 「Love」
スウェーデンのプログレバンド、フラワー・キングスの2025年作
1995年にデビュー、すでにキャリア30年の北欧プログレのベテラン。本作は2年ぶりの17作目で、前作ゲストのラレ・ラーションがキーボードで正式に加入した。
オルガンを含む優美なキーボードに、ロイネ・ストルトのメロウなギター、ハッセ・フレベリのジェントルなヴォーカルで、のっけからフラキンらしいキャッチーなサウンドが広がる。
11分の大曲は、クラシカルなピアノやストリングスアレンジも加わって、しっとりとした優美な繊細さに包まれ、ロイネの泣きのギターも随所に楽曲を彩っている。
2〜3分前後のインストの小曲も、軽やかなアンサンブルで楽しめ、アコーディオンの音色が優しい牧歌的なナンバーなどもゆったりと大人の叙情を描いている。
全体的にスリリングな部分は希薄ながら、90年代の傑作「Retropolis」あたりに通じる、落ち着いた味わいで鑑賞できる、全70分の力作です。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 優雅度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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RITUAL 「The Story Of Mr. Bogd - Part 1」
スウェーデンのプログレバンド、リチュアルの2024年作
1995年にデビュー、本作は17年ぶりとなる復活の5作目。艶やかなストリングスの音色で幕を開け、軽やかなリズムに、KAIPAでも活躍するパトリック・ルンドストロムのヴォーカルと、叙情的なギターにオルガンを含むシンセを重ね、優雅な展開力のシンフォプログレを聴かせる。
アコースティックギターによリコーダーやホイッスルのやわらかな音色、ブズーキやダルシマー、ニッケルハルパなども用いた、トラッド/フォーク的な小曲も耳心地よく、北欧らしい涼やかな土着性に包まれる。
ときにほどよいハードさとテクニカルな感触も含ませつつ、大曲こそないものの、コンセプト的な流れで楽曲を連ねてゆく。次作にも期待です。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 北欧度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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MERIT HEMMINGSON 「MOTHER EARTH FOREVER」
スウェーデンの女性鍵盤奏者、メリット・ヘミングソンの2024年作
60年代から活躍する女性オルガン奏者で、本作にはロイネ・ストルトが全面参加。12弦ギターを含む、叙情的なギターの旋律にやわらかなオルガンを重ね、北欧らしい土着的な温かみのサウンドを描く。
メリット自身のコケティッシュなスキャットヴォイスも加わって、サックスや優美なパイプオルガンの響きとともに幻想的な空気に包まれる。
ロイネのギターは、KAIPAの頃を思わせる繊細なメロディを奏で、トラディショナルな感触とともに、随所にオールドロックの雰囲気も楽曲に融合させている。
派手な鍵盤プレイはないものの、あくまで優しく、涼やかな北欧の風を感じさせるような逸品です。
幻想度・8 プログレ度・7 北欧度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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The Samurai Of Prog Featuring Marco Grieco「The Time Machine」
フィンランドのプロジェクト、サムライ・オブ・プログの2024年作
イタリアのミュージシャン、マルコ・グリエコを迎えての第三弾は、タイムマシンを使って人類の各時代を訪れるというコンセプト作品で、THE FLOWER KINGSのロイネ・ストルト、KAYAKのマルセル・シンゴール、PENDRAGONのクライブ・ノーラン、MAGENTAのクリスティーナ・ブースなどがゲスト参加。
メロウなギターとプログレらしいシンセワーク、ウクライナからのゲストを含むシンガーの歌声を乗せて、クラシカルなストリングスアレンジとともに、典雅なシンフォニックロックを描く。
ヴァイオリンやトランペット、フルートなどの管弦楽器を使ったパートも多く、ロイネ・ストルとの奏でる甘美なギターとともに、ゆったりとした耳心地で楽しめる。
味わいのあるヴォーカルパートは、大人の叙情というべき、翳りを含んだ優雅な味わいで、じっくりと盛り上げる。まさにクラシカルなシンフォニックロックの力作に仕上がっている。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 優雅度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら

LARS FREDRIK FROISLIE 「GAMLE MESTER」
ノルウェーのミュージシャン、ラーズ・フレドリック・フロイスリーの2025年作
Tusmorke、White Willow、Wobblerなどに参加するシンセ奏者で、ソロとしては2作目となる。オルガン、メロトロンを含むシンセにフルートの音色を重ね、北欧らしい土着性を感じさせる、ヴィンテージなサウンドを描く。
Anglagardにも通じる涼やかな幻想性と、やわらかなエレピやうっすらとしたメロトロンの響きが楽曲を包み込み、朴訥なヴォーカルもむしろ味わいになっている。
ゆったりとした展開力の中にスリリングな空気をかもしだし、12分の大曲では、Par Lindh Projectにも通じるバロックな優雅さとともに、北欧らしい鍵盤プログレを構築する。
アナログ感ある音質もよろしく、ヴィンテージな北欧シンフォプログレが好きな方には必聴の傑作です。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 北欧度・9 総合・8.5 過去作のレビューはこちら
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Amarok 「Canciones Para Un Planeta Herido」
スペインのプログレバンド、アマロックの2024年作
1994年にデビュー、10作目となる本作は2枚組の大作となった。デジタルなイントロから、軽やかなリズムにオルガンなどのシンセと美しい女性ヴォーカルを乗せ、いつになくモダンでキャッチーなサウンドを聴かせる。
やわらかなフルートの音色が、カタルーニャの優雅な空気を思い出させ、しっとりとした叙情と哀愁を描くような細やかなアレンジはさすが。
アコースティックをメインにしたトラッド寄りのナンバーから、中近東風のアラビックな感触も覗かせて、過去曲の再録もスタイリッシュなアレンジで楽しめる。
10分を超える大曲も、優美なピアノにフルート、母国語の女性ヴォーカルで、あくまで優雅な耳心地。16分におよぶラスト曲も、民族色とリリカルなシンフォが融合してウットリである。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 優雅度・10 総合・8 過去作のレビューはこちら

Karfagen 「Messages from Afar: Second Nature」
ウクライナのシンフォニックロック、カルファゲンの2024年作
ソロとしても活躍するアントニー・カルギン率いるプロジェクトで、2006年にデビュー、本作はトータルで16作めあたりで、2017年作の続編となる。
優美なシンセワークにマイルドなヴォーカルを乗せ、メロウなギターの旋律とともに、ゆったりとしたスペイシーな幻想性に包まれる。
ときにサックスが鳴り響く大人の優雅さや、美しい女性ヴォーカルも加わり、ほどよくハードな重厚さも覗かせるなど、メリハリあるアレンジもさすが。
アコースティックギターとシンセによる小曲もしっとりと美しく、11分の大曲も軽妙なアンサンブルに巧みなギターと美麗なシンセやピアノで、CAMELにも通じる優雅な叙情美に浸れる。
どこをきっても優雅な美学に溢れている。シンフォプログレとしての魅力が詰まった傑作です。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 優美度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Karfagen 「Messages from Afar: The Working Tapes」
ウクライナのシンフォニックロック、カルファゲンの2024年作
コンセプト2部作となった、2017年と、その続編となる2024年作の、別バージョンや未収録のアウトテイクスをまとめた作品。
軽やかなリズムに、メロディックなギターと壮麗なシンセアレンジで、インストをメインにしたファンタジックなシンフォプログレを聴かせる点では、通常アルバムと変わりない。
別バージョン曲については、聴き比べてみないと違いが分からないのだが、アコースティックな小曲を交えつつ、2017年作のアウトテイクスである21分の大曲ではきらびやかなシンフォプログレを展開する。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 優美度・8 総合・8
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Karfagen 「LAND OF CHAMELEONS」
ウクライナのシンフォニックロック、カルファゲンの2024年作
ソロを含めて毎年複数のアルバムを発表し続ける、アントニー・カルギンの多作ぶりは驚嘆すべきところだが、本作もオリジナルストーリーに基づくコンセプト作となった。
メロウなギターにやわらかなシンセやピアノを重ね、男女ヴォーカルの歌声にサックスも加わり、しっとりと優雅なシンフォニックロックを描く。
10分を超える大曲も、プログレらしいきらびやかなシンセアレンジに包まれて、軽やかなリズムのジャズロック感触も含んだ、The Tangentなどにも通じる味わいで、女性ヴォーカルがメインのパートでは、MAGENTAなどが好きな方にも楽しめるだろう。
限定盤のDisc2には、別バージョンや未発曲、ライブ音源など、たっぷり57分を収録。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 優美度・9 総合・8
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BLANK MANUSKRIPT 「HIMMEFAHRT」
オーストリアのプログレバンド、ブランク・マヌスクリプトの2020年作
2008年にデビューし、4作目となる。北欧プログレの傑作、DICE「黙示録の四人の御使い達」のカヴァーを冒頭とラストに配し、11分、15分という大曲を軸にした構成で、オルガンを含むシンセに適度に硬質なギター、クリムゾン的でもあるテクニカルなアンサンブルで、スリリングなインストサウンドを描く。
サックスやトロンボーンがフリーキーに鳴り響く、アヴァンギャルドなチェンバーロック風味と、オルガンなどのヴィンテージなプログレ感触が混ざりあい、ほどよい緊張感に包まれた聴き心地で、15分の大曲では、ヴォーカルも加わり、シンフォニックなアレンジにフルートの音色、サックスを乗せたジャズロック風から、静謐感あるアヴァンロックへと展開する。
このつかみどころのなさは、やや難解で玄人好みといえるかもしれないが、ラストはまたDICEのカヴァーで、優雅に締めくくる。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 優雅度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら

7 OCEAN (7 Океан) 「The Mysterious Race Of Strange Entities」
ベラルーシのプログレバンド、セヴン・オーシャンの2008年作
きらびやかでスペイシーなシンセワークに、母国語のヴォーカルを乗せた、優雅で軽妙なシンフォプログレを展開する。
かつての東欧プログレらしい涼やかな感触を残したサウンドに、かすれた味わいのヴォーカルにオルガンやピアノ、ムーグ風のシンセが、ヴィンテージに鳴らされる。
アコースティックを含むメロウなギターとシンセでゆったりと聴かせる優美な歌ものの小曲から、クラシカルなシンセのメロディとキャッチーなヴォーカルのナンバーも耳心地よい。
ラストは、10分、14分という大曲が続き、軽妙な大人のジャズロック風味から、カラフルなシンセのシンフォプログレへ、ドラマティックに構築される。全79分という力作。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 優雅度・8 総合・7.5
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DEJA-VU 「BETWEEN THE LEAVES」
ノルウェーのプログレバンド、デジャ・ヴの1976/1995年作
1995年にCD化されたバンド唯一のアルバム、2024年リマスター再発盤。いくぶんハードなギターに優美なキーボードを重ね、テクニックのあるドラムとともに軽妙なサウンドを描きつつ、エモーショナルなヴォーカルに、メロウなギターの旋律で、涼やかな叙情に包まれるところは、KAIPADiceなどにも通じる優雅な味わい。
70年代の作品としては音質、演奏ともに高品質で、英語歌詞で歌い上げるヴォーカルの力量も含めて、マイナー臭さはほとんどない。
10分を超える大曲は、スリリングな展開力と北欧らしい空気感のハードプログレが楽しめる。1作のみで消えたのが惜しまれるような好作品である。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 北欧度・8 総合・8 




12/19
往年の復活作いろいろ(360)

IMAGINAERIUM 「SIEGE」
イギリスのシンフォニックロック、イマジナリウムの2025年作
PENDRAGON、ARENAのクライブ・ノーランと、Nine SkiesのEric Bouilletteによるプロジェクト。前作発表後にエリックが死去、プロジェクトの意思を受け継いで、2作目が完成した。
今作もイタリア人女性シンガー、Laura Piazzaiが参加、壮麗なシンセアレンジに艶めいた女性ヴォーカルを乗せ、CAAMORAにも通じる、コンセプチュアルなシンフォニックロックを描く。
ゲストよる流麗なギタープレイも随所にアクセントになっていて、リズム的にはストレートなメロディックロック寄りであるが、シンフォニックなシンセワークがサウンドを包み込む。
クライブのピアノとシンセをバックに、エモーショナルな女性Voが歌い上げるあたりは、かつてのSTRANGERS ON A TRAINを思わせる優美な聴き心地。
後半には、クライブ・ノーランが歌うナンバーもあって、オペラティックな男女ヴォーカルシンフォという感じでも楽しめる。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 女性Vo度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら

Downes Braide Association 「Live in England DBA」
イギリスのフログレハード、ダウンズ・ブレイド・アソシエーションの2019年作
ジェフ・ダウンズとクリス・ブレイドのユニット、DBAの2019年のライブを、2CD+DVDに収録。2017年作「Skyscraper Souls」全曲に、2015年作「Suburban Ghosts」からのナンバーも披露。
イントロに続き、大曲“Skyscraper Souls”で幕を開け、ジェフ・ダウンズの優美なピアノとシンセに、クリス・ブレイドの伸びやかなヴォーカルを乗せ、優雅なプログレハードを聴かせる。
ドラムは音源再生で、躍動的なライブ感はさほどないのだが、サウンド的にもカッチリとした演奏で、80年代ルーツのデジタルなAORとしても、違和感なく楽しめる。
BIG BIG TRAINのデヴィッド・ロングドンがシンガー&フルートでゲスト参加した、ツインヴォーカル編成での叙情的なナンバーも味わいがある。
後半には、ASIA“Heat Of The Moment”も披露。シンセと歌のみでしっとりとした聴き心地。DVD映像は、会場のせいかライティングも含めて、ダイナミックさには欠けるか。
ライブ演奏・7 プログレ度・7 キャッチー度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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DELVING 「ALL PATHS DIVERGE」
ドイツのプログレバンド、デルヴィングの2024年作
ELDERでも活躍するマルチミュージシャン、ニック・ディサルヴォを中心にして、2021年にデビューし、2作目となる。
アナログ感あるドラムに、適度にハードで叙情的なギターと涼やかなシンセを重ね、優雅なインストサウンドを描く。
ときにエレクトロな感じのナンバーや、サイケな浮遊感も覗かせ、13分という大曲では、軽やかなアンサンブルとともに、テクニカルな味わいも楽しめる。
オールインストなので、ドラマティックな盛り上がりというのはないのだが、スタイリッシュなサイケ・ジャズロックとしても鑑賞可能な好作です。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・8 総合・7.5
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THE BOXX ORCHESTRA「THE HORN OF PLENTY」
オランダのプログレバンド、ボックス・オーケストラの2024年作
2021年にデビューし、2作目となる。オルガンなどのやわらかなシンセをギターに重ね、ハスキーな女性ヴォーカルの歌声で、90年代ルーツの古き良きシンフォプログレを聴かせる。
GENESISRENAISSANCEなどに通じる優雅な叙情性に包まれて、いくぶん野暮ったいポンプロック感触も含んだサウンドは、マイナー系シンフォの王道という味わい。
随所に泣きのギターもよろしく、艶めいた女性ヴォーカルの歌うキャッチーなメロディなどは、トレイシー・ヒッチングのLANDMARQなどが好きな方にも楽しめるだろう。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 女性Vo度・8 総合・8
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RACCOMANDATA RICEVUTA RITORNO「In Fuga」
イタリアのプログレバンド、ラコマンダータ・リチュヴータ・リトルノの2025年作
1972年に1作を残して消えたバンドで、2009年に復活、本作は16年ぶりとなる復活後の2作目。オリジナルメンバーのうち4人が参加しており、ハードで叙情的なギターにオルガンが鳴り響き、イタリア語で歌い上げるヴォーカルとともに、ヴィンテージなイタリアンプログレを聴かせる。
メタルバンドDGMなどにも参加していた、ルシアノ・レゴーリのエモーショナルな歌声がシアトリカルな空気を描き、緩急ある展開力の中に、ときにフルートやサックス、ヴァイオリンも鳴り響く涼やかな叙情性が包み込む。
イタリアらしい濃密なプログレという点では、バンコやイルバレにも通じる感触で、全35分というのは少し短いが、ミステリアスな世界観をドラマティックに描く傑作です。
ドラマティック度・9 プログレ度・8 イタリア度・9 総合・8.5 過去作のレビューはこちら
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SEMIRAMIS「LA FINE NON ESISTE」
イタリアのプログレバンド、セミラミスの2024年作
1973年に1作を残して消えたバンドの、じつに50年ぶりとなる復活作。オリジナルメンバーはドラムのみであるが、オルガンが鳴り響き、イタリア語のヴォーカルとともに、かつての妖しいイメージを継承したヴィンテージなサウンドを聴かせる。
随所に叙情的なギタープレイも覗かせつつ、緩急あるリズム展開でドラマ性のある濃密な世界観を描くところは、イタリアのバンドらしさが全開だ。
70年代の空気感をしっかり残しつつ、巧みな構築力でアップデートされた、クオリティの高い復活作である。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 イタリア度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Macchina Pneumatica 「Appartenenza」
イタリアのプログレバンド、マキナ・プニュマティカの2022年作
2019年にデビューし、2作目となる。オールドロック調のギターにオルガン含むシンセを重ね、イタリア語によるダンディなヴォーカルで、ヴィンテージなサウンドを聴かせる。
ハードロック的なノリから、牧歌的なパートにミステリアスな妖しさにも覗かせて、ムーグシンセが鳴り響くとオールドなプログレらしさも現れる。
9分におよぶインストナンバーは、優美なシンセをメインに、わりとフリーキーなギターも加わった、ほどよいユルさの展開力で楽しめる。
ヴィンテージなハードプログレであるが、濃密さや盛り上がりはさほどなく、自然体のアンサンブルでイタリアらしい妖しい空気を描いてゆく。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 妖しさ度・7 総合・7.5
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KARMAMOI 「STRINGS FROM THE EDGE OF SOUND」
イタリアのプログレ・ポストロック、カルマモイの2023年作
2011年にデビュー、6作目となる本作は、新曲4曲と過去曲のオーケストラバージョンを5曲収録した作品となっている。
アコースティックを含む叙情的なギターとうっすらとしたシンセ、マイルドなヴォーカルにオーケストラアレンジを重ねて、スペイシーなサウンドを描く。
シンフォニックなオーケストラをバックに、朗々とした歌声が、一種のシネマティックなスケール感を描いていて、ゆったりとした聴き心地ながらほどよい高揚感もある。
メロウなギターにキャッチーなヴォーカルメロディなど、PINK FLOYDなどにも通じる翳りを帯びた叙情もあり、12分に及ぶ大曲も壮麗にして優雅な味わいだ。
シンフォニック度・8 プログレ度・7 壮大度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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MERGING CLUSTER「PEAK EPHEMERAL LIGHT」
イタリアのプログレバンド、マージング・クラスターの2024年作
うっすらとしたシンセにメロウなギターを重ね、マイルドなヴォーカルとともに、MARILLIONSYLVANなどに通じる、翳りを帯びた叙情のシンフォニックロックを聴かせる。
ほどよいハードさも含んだスタイリッシュなサウンドで、随所に泣きのギターフレーズとシンセで盛り上げながら、10分前後の大曲をドラマティックに構築してゆく。
曲が長めなので、中盤以降は長尺感はあるのだが、ゆったりとした叙情に包まれたシンフォプログレが好きな方なら、耳心地よく楽しめるだろう。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 叙情度・7 総合・7.5
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ATILA 「Encarnacio」
スペインのプログレバンド、アッティラの2024年作
1975年にデビュー、1978年までに3作を残して消えたバンドの36年ぶりとなる復活作。日本盤タイトルは「化身」。
ミステリアスなキーボードが鳴り響き、変拍子を含むテクニカルなリズムと、適度にハードなギターも加えたスリリングなインストから、エモーショナルなスペイン語の男女ヴォールを乗せた優雅なシンフォプログレ大曲を聴かせる。
哀愁を感じさせる叙情的なギターのメロディやオルガンなどのヴィンテージなシンセ、スパニッシュらしいラテンな味わいのノリとともに、独特のハードプログレが描かれてゆく。
軽妙なアンサンブルのインストから、ゆったりとしたギターにシンセを重ねた優美なサイケ風ナンバーなども耳心地よく、ラストはエンディング的な美しいキーボード曲でウットリ。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 スパニッシュ度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら

ARTNAT「THE MIRROR EFFECT」
ポルトガルのプログレバンド、アートナットの2021年作
Tantraのギタリストを中心に結成、女性シンガーにツインキーボードを含む編成で、ゴシックメタルバンド、Ava Inferiのドラムも参加している。
スペイシーなシンセをわりとサイケな感じのギターに重ね、妖しい女性ヴォーカルの歌声で、異国めいた神秘的なシンフォプログレを聴かせる。
優美なフルートにメロトロン、メロウなギターの旋律がゆったりとした叙情を描きつつ、14分という大曲では、ダイナミックな展開力とともに、美しい女性声を乗せた優雅なサウンドが楽しめる。
プログレらしいきらびやかなシンセもよろしく、随所に土着的な野暮ったさも味になっていて、辺境系シンフォが好きならお薦めの力作です。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 神秘的度・8 総合・7.5
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MASA CRITICA「LUNATICO」
メキシコのミュージシャン、マサ・クリティカの2024年作
2022年にデビューし3作目となる。アコースティックを含むメロウなギターに優美なシンセ、スペイン語の女性ヴォーカルも加わって、牧歌的な叙情と神秘性が同居したシンフォプログレを聴かせる。
オルガンやムーグ風のヴィンテージなシンセワークと、男性ヴォーカルによるジェントルな味わいも覗かせつつ、優雅でもどこか洗練されきれないサウンドもメキシコらしい。
楽曲的にも、ゆったりとした味わいで、叙情的なギターとシンセの重ねは耳心地よいものの、これといって盛り上がりがなく、後半はつい眠くなってしまう。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・8 総合・7



12/6
プログレの師走(348)

BIG BIG TRAIN 「THE LIKES OF US」
イギリスのプログレバンド、ビッグ・ビッグ・トレインの2024年作
前作発表後にフロントマンのデヴィッド・ロングドンが急逝し、バンドの存続が危ぶまれたが、PFMSinestesiaでも活動するアルベルト・ブラヴィンが加入し、15作目の本作が完成した。
きらびやかなシンセワークに、ソロでも活躍する、デイヴ・フォスターとリカルド・ショブロムによるギター、ニック・ディヴァージリオの巧みなドラムで、緩急あるインストパートを構築。
シンセもこなすアルベルトの歌声は、デヴィッドに比べるとクセがない分、バンドの個性が薄まった感はあるが、エモーショナルな表現力という点では、リスナーの間口を広げるだろう。
17分という大曲も、アコースティックを含む繊細な叙情と、ヴィンテージなプログレ感触を覗かせながら、緩急ある流れでドラマティックに構築される。
随所にほどよくハードな硬質感も含ませた、まさに、GENESISルーツのシンフォプログレをダイナミックにアップデートしたというべき力作である。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 叙情度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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STUCKFISH「IV」
イギリスのプログレバンド、スタックフィッシュの2024年作
2018年にデビューし、4作目となる。叙情的なギターにオルガンを含むシンセを重ね、エモーショナルなヴォーカルとともに、PALLASなどに通じる英国らしいシンフォプログレを聴かせる。
翳りを帯びた叙情性はMARILLION的でもあり、軽やかなリズム展開からメロディアスなギターフレーズが現れる、PENDRAGON的なキャッチーな抜けの良さも感じさせる。
きらびやかなシンセワークはヴィンテージでありつつ、ほどよくスタイリッシュなハードさも取り入れていて、ARENAなどが好きな方にも楽しめるだろう。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 叙情度・8 総合・8
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BANCO DEL MUTUO SOCCORSO「GREGGIO E PERICOLOSO」
イタリアのプログレバンド、バンコ・デル・ムトゥオ・ソッコルソの2024年作
70年代の小説を元にしたTVシリーズ用のサントラとして、1981年に録音された音源の初CD化となる。
2〜4分前後の小曲主体で、1曲目は軽やかなリズムに優美なピアノを含むシンセとメロディアスなギターのフレーズで、インストによる優雅なフュージョン風のサウンド。
シンセをメインにしたサントラらしい小曲では、アヴァンギャルドで不穏な空気も描きつつ、クラシカルなピアノの旋律には、やはりバンコらしい優雅さがにじみ出る。
オールインストで、プログレとして聴くにはやはり物足りなさもあるが、GOBLINとはまた異なるサントラへのアプローチが感じられるという点ではわりと楽しめる。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 サントラ度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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Arcansiel 「HARD TIMES」
イタリアのプログレバンド、アーカンシエルの2024年作
1988年にデビュー、1994年までに3作を残して消えたバンドの20年ぶりとなる復活作。
のっけから17分という大曲で、叙情的なギターにピアノを含む優美なシンセ、ジョン・ウェットンを思わせる枯れた味わいのヴォーカルで、アダルトなシンフォプログレを聴かせる。
オルガンなどのヴィンテージな味わいと、メロウなギターの旋律も耳心地よく、GENESISルーツの泣きの叙情に、PFM的なキャッチーな優雅さも覗かせる。
大曲ばかりで全4曲という構成も自信の現れだろう。やわらかなシンセと繊細なギターで、90年代を受け継ぐロマン派シンフォニックロックが味わえる逸品です。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 叙情度・8 総合・8
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LETHE 「Il Cavaliere Inesistente」
イタリアのプログレバンド、レゼの2024年作
1994年に1作を残して消えたバンドの、30年ぶりとなる復活作。美麗なシンセにやわらかなフルートの音色、朗々としたイタリア語のヴォーカルで、典雅なシンフォプログレを聴かせる。
90年代シンフォ的でもある、いくぶん唐突な展開がマイナーな香りを描きつつ、リリカルで幻想的な叙情性に包まれたサウンドは、マニア心をくすぐるだろう。
8〜10分の大曲も、メロウなギターにフルートで、ゆったりとした繊細な叙情を描きつつ、ほどよく緩急のある構築力で飽きさせない。
優雅な美学に包まれた古き良きシンフォプログレが楽しめる、全69分の力作です。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 優美度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Ancient Veil 「Puer Aeternus」
イタリアのプログレバンド、エンシェント・ヴェイルの2023年作
Eris Pluviaのメンバーを中心にして、1995年に1作を残して消えたバンドが、2017年に復活、本作は復活後の2作目となる。
優美なピアノにフルートの音色、オルガンを含むシンセとイタリア語によるヴォーカルで、繊細なシンフォニックロックを聴かせる。
12弦ギターを含めたアコースティックギターのつまびきに、ホイッスルやフルートがやわらかに重なる、優雅な耳心地にウットリしつつ、プログレらしい展開も現れる。
1〜2分の小曲をまじえた流れのある構成で、ときにストリングスなどの室内楽的なアレンジや、サックスが鳴り響く軽やかな味わいも覗かせる。
アコースティックをメインにしたパートも多いので、派手なサウンドではないが、クラシカルな美意識に彩られた、繊細系シンフォの好作品。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 優美度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Moongarden「Christmas Night 2066」
イタリアのプログレバンド、ムーンガーデンの2023年作
1994年にデビュー、9作目となる本作は、未来のクリスマスをコンセプトにした作品で、叙情的なギターに美麗なシンセ、英語歌詞のダンディな歌声を乗せて、スタイリッシュなサウンドを描く。
ときに艶やかなヴァイオリンやオーケストラアレンジも加わって、クラシカルなシンフォニック性と、モダンな歌もの感が合わさり、随所に泣きのギターの旋律で盛り上げる。
3〜5分前後の小曲が主体なので、プログレ的な緩急ある展開はあまりないが、女性ヴォーカルがウィスパーな歌声を乗せるなど、優雅で華麗なアレンジセンスはさすが。
12弦ギターやフルートなど、GENSISルーツの繊細な叙情も残していて、ラスト曲ではヴァイオリンやメロウなギターとともに、しっとりとした余韻に包まれる。
Disc2には、Il Porto Di Venere、Mangala Vallis、Simone Rossetti、Saro Cosentinoらとコラボしての、GENESISやASIAのカヴァーなどを収録。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 優雅度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Accordo Dei Contrari 「UR」
イタリアのプログレ・ジャズロック、アッコルド・デイ・コントラリの2021年作
2007年にデビューし、5作目。クラシカルなピアノの旋律に、ギター、サックスが重なり、スリリングなアンサンブルのチェンバー・ジャズロックを展開。
テクニカルなリズムの上を、アヴァンギャルドな屈折感と、クラシカルな優雅さが交差して、フリーキーでありながらも構築性を感じさせるのは、メンバーの技量の高さだろう。
10分を超えるタイトル組曲は、ゲストによる女性スキャットヴォイスが加わり、優美なピアノにサックスが鳴る、涼やかに緊張感あるプログレ・チェンバーロックが楽しめる。
艶やかなヴァイオリンの音色も随所に典雅な味わいになっていて、まさにジャズとクラシック、プログレの融合というべき、巧みなインスト作品である。
クラシカル度・8 ジャズロック度・8 優雅度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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RESIDUOS MENTALES「A TEMPORARY STATE OF BLISS」
ギリシャのモダンプログレ、レシデュオス・メンタルスの2023年
VERBAL DELIRIUMのメンバーらによるユニットで、2018年作に続く2作目。1曲目から17分の組曲で、美麗なシンセワークに叙情的なギターを重ねて、優雅なインストのシンフォニックロックを展開。
随所にモダンなヘヴィネスも覗かせつつ、シリアスな翳りを帯びたコンセプト的な流れで構築されるサウンドは、ときに重厚なスケール感に包まれる。
ゲストによるトランペットが鳴り響く小曲から、アルバム後半は12分の大曲で、軽やかなリズムにきらびやかなシンセを乗せて、テクニカルなキーボードプログレを聴かせる。
ラスト曲は、優美なフルートの音色にアコースティックを含むギターとピアノのしっとりとした導入から、スリリングなシンフォプログレへと展開してゆく。見事な力作だ。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 優雅度・8 総合・7.5
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Leap Day 「Treehouse」
オランダのプログレバンド、リープ・デイの2021年作
Flamborough HeadTRIONのメンバーが参加するバンドで、2009年にデビューし、6作目となる。
7〜11分という大曲ばかりの構成で、ヴィンテージにきらびやかなキーボードにギターが重なり、アダルトなヴォーカルで、ゆったりと優美なシンフォプログレを聴かせる。
哀愁を含んだメロウなギターの旋律にオルガンやピアノなどのシンセとともに、ゆるやかに盛り上げてゆくあたりは、キャリアのあるメンバーらしい。
どことなくフィル・コリンズ似のヴォーカルの声質も含めて、GENESISを継承したサウンドには、尖った派手さはないが、安心して鑑賞できる耳心地の良さが光る。
12分におよぶラストの大曲は、泣きのギターと美麗なキーボードで、シンフォニックな叙情に包まれる。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 優美度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Southern Empire 「Another World」
オーストラリアのプログレバンド、サウザン・エンパイアの2023年作
2016年にデビューし、3作目となる。軽やかなリズムに巧みなギターと美麗なシンセを重ね、伸びやかなヴォーカルとともに、A.C.T.あたりにも通じる優雅でキャッチーなハードプログレを聴かせる。
10分を超える大曲も多く、ProgMetal的なメタルエッジなテクニカル性と優美な叙情が交差して、NEAL MORSEのような緩急あるシンフォニックプログレとしても楽しめる。
ときにサックスが鳴り響く、アダルトなアンサンブルや、ストリングスによる壮麗なアレンジも加わるなど、引き出しの多さもこれまで以上で、構築力という点でもTRANSATLANTICばりである。
きらびやかなシンセワークと流れのあるリズム展開、歌い上げるヴォーカルで、随所にドラマティックな盛り上がりと高揚感を描いてゆく。
後半の19分の大曲では、アコースティックギターや繊細なフルートも用いて、シンフォニックロックとしての優雅な美学を濃縮された味わい。見事な傑作である。
ドラマティック度・8 ハードプログレ度・8 構築度・9 総合・8.5 過去作のレビューはこちら
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MILLENIUM 「44 MINUTES」
ポーランドのプログレバンド、ミレニウムの2017年作
1999年にデビュー、ポリッシュプログレを代表するバンドで、13作目となる本作では、Moonriseのドラム、サックス奏者が加入して6人編成となった。
「両親の死を経ての幼年期からの終焉」をテーマにした組曲作品で、うっすらとしたシンセにメロウなギター、アダルトなサックスが鳴り響き、マイルドなヴォーカルとともに、PINK FLOYDルーツの翳りを帯びたサウンドを描く。
女性ヴォーカルも加わっての、男女Voによるシアトリカルなドラマ性を描きつつ、繊細なピアノやアコースティックギターなどによる、ゆったりと優雅な叙情が楽しめる。
派手な展開はないが、コンセプト的な流れとともに、東欧らしいほの暗い美学のシンフォニックロックが味わえる好作です。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 叙情度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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HEAD WITH WINGS「From Worry To Shame」
アメリカのモダンプログレ、ヘッド・ウィズ・ウイングスの2018年作
アコースティックを含むメロウなギターに、マイルドなヴォーカルを乗せて、翳りを帯びた叙情に包まれた歌もの系ポストプログレ。
随所にほどよいハードさも覗かせつつ、Porcupine Tree以降のメランコリズムをスタイリッシュな構築センスで聴かせる。
4〜6分前後の楽曲に、わりと緩急あるリズム展開も織り込んでいて、ProgMetal的なハードプログレとしても楽しめる。
難を言えば、典型的な「KScope系」のサウンドで、このバンドならではの個性は希薄なところだが、レベルの高いデビュー作であるには違いない。
ドラマティック度・7 モダンプログレ度・8 薄暗度・8 総合・7.5
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Herd of Instinct 「Manifestation」
アメリカのプログレバンド、ヘルド・オブ・インスティンクトの2016年
2011年にデビューし、3作目となる。変拍子を含む軽やかなリズムに優雅なギター、プログレらしいシンセを重ね、インストによる屈折感あるテクニカルプログレを聴かせる。
サックスが鳴り響く、クリムゾン的なジャズロック感触や、メロウなギターとメロトロン風シンセ、フルートも加わったヴィンテージなシンフォプログレ感触もよい感じだ。
ほぼオールインストであるが、巧みなアンサンブルとうっすらとしたシンセ、涼やかなギターが不穏な怪しさを感じさせる空気感をかもしだし、わりとスリリングに楽しめる。
ECHOLYNDeluge Glanderなど、テクニカルで優雅、偏屈なシンフォプログレが好きな方はいかが。
ドラマティック度・7 プログレ度・8 屈折度・8 総合・8
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11/22
ベテランも頑張るプログレ(334)

JETHRO TULL「The Zealot Gene」
イギリスのプログレバンド、ジェスロ・タルの2022年作
1968年にデビュー、オリジナル作品としては、2003年のクリスマスアルバム以来となる、19年ぶりの作品となる。
イアン・アンダーソンのソロに参加していたメンバーを揃え、やわらかにフルートが鳴り響き、ジェントルなヴォーカルにオルガンを含むシンセとオールドなギターが重なり、ほどよくキャッチーなサウンドを展開。
英国らしい牧歌的な叙情性を、優雅なアレンジで再構築したというスタイルで、アコースティックギターやマンドリンを用いたフォークルーツの土着性も含めて、往年のタルの雰囲気もしっかりと受け継いでいる。
味のあるイアンのヴォーカルも年季を経た表現力で、シアトリカルに楽曲を彩り、おなじみのツバ吹きフルートも随所に健在。小曲主体ながら、タル復活を感じさせる好作である。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 英国度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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JETHRO TULL「CURIOUS RUMINANT」
イギリスのプログレバンド、ジェスロ・タルの2025年作
復活作となった前作に続く本作は、優美なフルートの音色にアコースティックギター、アコーディオンの音色に、ダンディなイアンの歌声で、フォークロック的なサウンドを描く。
新たに、Albionのギターが参加して、随所に巧みなギタープレイも奏でられ、オルガンなどのシンセとともに、前作以上にプログレらしい軽妙なアンサンブルを聴かせる。
今作は、よりレイドバックしたようなヴィンテージな雰囲気と、コンセプト的なドラマ性を感じさせる流れで、「神秘の森」や「逞しい馬」の頃のトラッド・プログレ的な味わいとともに鑑賞できる。
後半には、16分という大曲もあり、やわらかなシンセとビアノにフルートが響きわたり、ヴォーカルも加わりつつ、典雅でフォーキーなサウンドが広がる。
語りを乗せたエンディング的な小曲まで、前作以上にフルートが大活躍する、じつ優雅な逸品です。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 英国度・9 総合・8
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Jethro Tull「Living With the Past」
ブリティッシュロックバンド、ジェスロ・タルのライブ。2002年作
2001年のロンドンでのステージを中心に、後半にはアコースティックをメインにした、1989〜2002年のライブ音源など全21曲を収録。
フルートのイントロに続き、1968年デビュー作「This Was」のナンバーでスタート。オールドなギターにオルガン、フルートにジェントルなヴォーカルで、牧歌的なサウンドを聴かせる。
1995年作「Roots To Branches」からのナンバーや、「Stand Up」や「Aqualung」など、往年のアルバムからもたっぷりと演奏していて、バンドの歴史を俯瞰できる。
後半のアコースティックによるフォーキーな演奏にもベテランらしい味があり、のんびりと楽しめるライブです。
ライブ演奏・8 プログレ度・7 牧歌的度・9 総合・7.5
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Gryphon 「Get Out Of My Father's Car!」
イギリスの古楽プログレ、グリフォンの2020年作
古楽とロックを優雅に融合させたスタイルで、1973〜77年までに5枚のアルバムを残したバンドで、40年ぶり復活作となった前作に続く、2年ぶりのアルバム。
艶やかなヴァイオリンにフルート、リコーダー、ホイッスルが鳴り響き、バンドサウンドと融合した優雅なフォークロックを聴かせる。
コミカルなホルンと優美なホイッスルやリコーダーの音色、典雅なハープシコードや、ときにサックス、クラリネットなども加えて、クラシカルなチェンバーロック風味も感じさせつつ、男女ヴォーカルを乗せたナンバーは古き良き英国フォークの趣もある。
かつてのようなプログレッシブな展開力は薄めだが、軽やかな古楽ロックとしての味わいは健在。のんびり牧歌的に鑑賞できる好作です。
フォーク風味度・8 プログレ度・7 優雅度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Hawkwind 「We Are Looking in on You」
イギリスのサイケロック、ホークウインドのライブ。2022年作
2021年作「Somnia」にともなう全英ツアーのステージを2CDに収録。1975年作「Warrior on the Edge of Time」からの大曲で幕を開け、アッパーなリズムにサイケなギターとシンセを重ねた、スペイシーなサイケロックを展開。
唯一のオリジナルメンバーである、デイブ・ブロックの味わいのあるヴォーカルも力強く、新作からのナンバーもシアトリカルな朗々とした歌声を響き渡らせ、70年代のオールドなスペースロックから、90年代のアルバム「Electric Tepee」からのナンバーなどは、わりとキャッチーなノリで楽しめる。
最新作「Somnia」からのナンバーも随所に入っているが、過去曲と違和感なく並んで聴けて、バンドとしての一貫した方向性に改めて感服する。
ライブ演奏・8 サイケ度・8 スペース度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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The Enid 「Live at Loughborough Town Hall,1980」
イギリスのシンフォニックロック、エニドの2020年作
1980年英国でのライブで、フランシス・リカーリッシュ、ステファン・スチュアートという2人のギターに、のちにCRAFTを結成する2人のシンセ奏を含む、トリプルキーボード編成のステージ。
同年発表のノリのよいシングル曲で幕を開け、1979年作「Six Pieces」、「Touch Me」からのナンバーは、叙情的なギターの旋律にキーボードが重なり、壮麗なシンフォニックロックを構築。
オーケストレーションのような厚みのあるキーボードに、随所に繊細なピアノもクラシカルに美しい。シングル曲“Golden Earrings”のライブ演奏が聴けるのも貴重だろう。
後半には、18分におよぶ組曲“Fand”も演奏。ダイナミックに盛り上がる感動的なシンフォニーは、いつ聴いても素晴らしい。
音質も良好で、生々しいライブの迫力をしっかりと封じ込めている。これまで発掘されなかったのが不思議なほどの音源だろう。
ライブ演奏・8 シンフォニック度・9 優雅度・10 総合・8.5 過去作のレビューはこちら
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Blackfield 「NYC: Live in New York City」
Porcupine Treeのスティーブン・ウイルソンとイスラエル出身のミュージシャン、アビブ・ゲフィンによるユニット。2007年作
2007年アメリカでのライブを収録。THE MISTAKESでも活動するメンバーを迎えた編成で、2004年の1st、2007年の2ndからのナンバーを主体に演奏。
わりとロック感のあるギターにうっすらとしたシンセを重ね、2人のマイルドな歌声とともに、メランコリックな叙情に包まれたポストプログレを聴かせる。
随所にメロウな泣きの旋律を奏でるギターに、優美なピアノなどのシンセアレンジ、安定したリズム隊も含めて、表現力のある演奏はさすがである。
楽曲は3〜4分前後が主体で、淡々とした味わいながらも耳心地よく、翳りを帯びたオルタナ風のポストプログレというサウンドが楽しめる。
DVDの映像は、各パートを映すカメラワークも見やすく、リラックスした自然体のステージが視覚的に鑑賞できる。全18曲、79分。
ライブ演奏・8 プログレ度・7 叙情度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Tudor Lodge「Runaway」
イギリスのフォークバンド、チューダー・ロッジの2003年作
1971年に、SPIROGYRAMELLOW CANDLEとともに英国フォーク三種の神器とされる傑作を残し、その後、女性シンガー、リン・ホワイトランドと、オリジナルメンバーのジョン・スタンナードとのデュオとなって、1997年に復活の2作目、1999年に3作目を発表。
4作目の本作も、二人のデュオ編成で、アコースティックギターのつまびきに女性ヴォーカルを乗せた、牧歌的なフォークサウンドを聴かせる。
アコギによるシンプルなバックに、母性的なやわらかな歌声が耳心地よく、一部に男性声のナンバーもありつつ、古き良き英国の田園的なフォークの空気感を受け継いだスタイルで、のんびりと楽しめる。
アコースティック度・9 英国フォーク度・8 女性Vo度・7 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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YESTERDAYS「SAINT-EXUPERY ALMA」
ハンガリーのシンフォニックロック、イエスタデイズの2022年作
2006年にデビューし、4作目となる。きらびやかなシンセにフルートの音色、叙情的なギターに、母国語の女性ヴォーカルで、優雅で軽やかなサウンドを描く。
10分を超える大曲では、MAGENTAにも通じるキャッチーなメロディアス性と、前作から加入のルーマニア人女性シンガー、ステファニーの優しい歌声で、緩急あるシンフォプログレが楽しめる。
オルガンやムーグ、メロトロン風のヴィンテージなシンセワークもよろしく、中盤の20分という大曲も、やわらかなフルートにカラフルなシンセと女性声で、YESルーツの軽妙なサウンドを展開。
全体的に派手さや新鮮味はないが、あくまで優雅な耳心地で、オールドなプログレファンにもお薦めできる女性声シンフォの逸品です。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 優雅度・10 総合・8 過去作のレビューはこちら
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TOMPOX「REINCARNATION」
ハンガリーのプログレバンド、トンポックスの2019年作
SOLARISのB、トマス・ポックス率いるバンドで、2012年にデビューし、3作目となる。
軽やかなリズムに叙情的なギターとフルートの音色、エレピを含むシンセが重なり、優雅なシンフォニックロック展開する。
インストをメインにしつつ、ときに美しい女性スキャットヴォーカルも加わって、SOLARISに比べてより繊細な叙情美に包まれる。
6分以上の曲が多いが、きらびやかなキーボードや巧みなギターの旋律、そしてフルートやサックスがサウンドを華麗に彩っている。
後半の10分近い大曲も、泣きのギターと美麗なシンセでじつに優美な味わい。ラストはハスキーな女性ヴォーカルのナンバーで締めくくる。
ドラマティック度・7 プログレ度・8 優雅度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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QUORUM 「Klubkin's Voyage」
ロシアのプログレバンド、クオラムの2011年作
Eternal Wanderersのメンバーを中心に結成したバンドで、優美なピアノにメロウなギターのイントロから、泣きのシンフォプログレを予感させる。
軽妙なリズムにオルガンを含むプログレらしいシンセワーク、ロシア語によるマイルドなヴォーカルで、YESをルーツにした優雅なサウンドを展開。
3〜4分前後の小曲から、7〜8分という長めの楽曲もまじえて、軽やかなプログレ感触と、やわらかな叙情美が交差する耳心地の良さが光る。
ときにCAMELばりのメロディアスなギターの旋律も覗かせ、キャッチーなポップ感の中にも、繊細なフルートの音色やオーケストラルなアレンジも加わるなど、美意識あるセンスは、KARFAGENのアントニー・カルギンなどを思わせる。
8分を超える大曲では緩急あるプログレらしい展開で楽しめる。全78分、どこをきっても優美でメロディアスというシンフォプログレの力作です。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 優雅度・9 総合・8.5
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11/8
オールドなプログレは素敵(323)

Beardfish 「Songs For Beating Hearts」
スウェーデンのプログレバンド、ビアードフィッシュの2024年作
BIG BIG TRAINにも参加する、RIKARD SJOBLOMを中心にしたバンドで、2003年にデビュー、2015年作を最後に活動を休止していたが、9年ぶりのアルバムが登場。
アコースティックギターにジェントルなヴォーカルを乗せた牧歌的な1曲目から、続く20分という大曲は、軽やかなリズムに優美なピアノ、オルガンを含むシンセとともに、ヴィンテージなシンフォプログレを展開する。
アコースティックを含む繊細なパートも織り込んだ緩急ある流れとともに、北欧らしい涼やかさと、ときにサイケな浮遊感も混ざり、濃密ながらもアナログ感のある優しい聴き心地である。
ストリングスアレンジを重ねてのもの悲しい叙情と、オールドなロック感触を同居させた11分の大曲から、女性シンガーが加わっての優雅で牧歌的なナンバーなども耳心地よい。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 ヴィンテージ度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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CIRKUS 「Avalanche」
イギリスのプログレバンド、サーカスの2022年作
1973年に唯一のアルバム「One」を残して消え、90年代になって一時的に再結成するも解散、その後2017年に復活し、本作は復活後4作目となる。
オールドな味わいのギターに優美なシンセ、かすれたヴォーカルをわりとストレートなリズムに乗せて、キャッチーなプログレハード風のサウンドを描く。
ピアノを含むシンセワークと叙情的なギターで、ブリティッシュロックの哀愁を含んだ空気に包まれて、派手さはないものの耳心地のよいサウンドだ。
ときに優雅なシンフォニック性も覗かせつつ、落ち着いた大人の英国ロックと、ほどよくモダンなアレンジが同居したスタイルで、じっくりと鑑賞できる好作です。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 英国ロック度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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CLIVE MITTEN 「TALES FROM A MISSPENT YOUTH - VOLUME I」
イギリスのミュージシャン、クライブ・ミッテンの2022年作
Twelfth Nightのベースとしても活躍するミュージシャンで、本作は、PINK FLOYD、PETER GABRIEL、GENESIS、MIKE OLDFIELD、SUPERTRUMP、RUSH、JETHRO TULLといった、往年のプログレ名曲をアレンジしたCD2枚組作品。
シンセによるオーケストレーションをメインに、クラシカルなPINK FLOYD“Shine On You Crazy Diamond”から、20分を超えるMIKE OLDFIELD“Tubular Bells”はメロディや音色をわりと再現しており、GENESIS“Supper's Ready”は優雅にして壮麗な聴き心地で、随所に打ち込みのドラムも入ったメリハリのある展開で素晴らしい。
Disc2は、ヴァイオリンの音色を主旋律にした優美なPINK FLOYD“Echoes”から、優美なピアノの導入から軽やかなリズムで聴かせる、RUSH“La Villa Strangiato”なども味がある。
ラストは、GENESIS“In The Cage Medley”(In The Cage, The Cinema Show, Duke's Travels)、で、インストによる優雅なシンフォプログレとして楽しめる。
クラシカル度・8 ロック度・3 プログレ名曲度・9 総合・8
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CLIVE MITTEN 「TALES FROM A MISSPENT YOUTH - VOLUME II」
イギリスのミュージシャン、クライブ・ミッテンの2023年作
Twelfth Nightのベースとしても活躍するミュージシャンで、往年のプログレ名曲のアレンジ第二弾。
EL&P“タルカス”は、ピアノやフルートの音色を使った優美な聴き心地で、ドラムは入らないものの、楽曲のクラシカルなメロディが際立っている。
IQ“Widow's Peak”の優美なシンフォニック風から、YES“危機”はストリングスとピアノを軽やかなリズムに乗せ、オーケストラルなアレンジも壮麗だ。
KING CRIMSON“21世紀の精神異常者”の、ピアノとヴィブラフォンの音色を打ち込みのドラムに乗せたジャズロック風から、哀愁の“スターレス”へと展開。
ストリングスアレンジでしっとりと聴かせる、LED ZEPPELIN“天国への階段”、20分を超える、JETHRO TULL“Thick As A Brick”もあくまで優雅な味わい。
Disc2は、EL&P“庶民のファンファーレ”から、GENESIS“Watercher Of The Skies/Fountain Of Salmasis/The Musical Box/Firth Of Fifth”という名曲メドレーにファンは歓喜。
スリリングなKING CRIMSONから、繊細なMARILLIONのメドレー、RUSH“Cygnus X-1 Books I And II”はテクニカルな展開力をよく再現している。
クラシカル度・8 ロック度・3 プログレ名曲度・9 総合・8
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BANCO DEL MUTUO SOCCORSO「STORIE INVISIBILI」
イタリアのプログレバンド、バンコ・デル・ムトゥオ・ソッコルソの2025年作
1972年にデビュー、PFMとともにイタリアンプログレを代表するバンド。シンガーのフランチェスコ・ジャコモの死を乗り越え、新生バンコとしての3作目となる
軽快なリズムにきらびやかなシンセと、トニー・ダレッシオの伸びやかなイタリア語のヴォーカルを乗せて、ほどよくキャッチーなサウンドを描く。
ピアノやオルガンを含むシンセワークに、オールドなギター、どこか80年代的なビート感に包まれなどら、大人の哀愁も感じさせる。
楽曲は3〜4分前後と、わりとシンプルであるが、随所に初期の頃を思わせるメロディなども現れて、バンコらしさもしっかり覗かせている。
しっとりとしたラストの叙情ナンバーも、プログレ的な感触は薄いが、歌もの系の優雅なイタリアンロックとして楽しむのがよいだろう。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 イタリア度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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QUANAH PARKER 「NEL CASTELLO DELLE FATE」
イタリアのプログレバンド、クアナ・パーカーの2024年作
2012年にデビュー、スタジオ作としては9年ぶり3作目となる。ほどよくハードなギターにオルガンを含むシンセを重ね、イタリア語による女性ヴォーカルとともに、軽やかなシンフォプログレを展開。
アコースティックギターも含む優雅なアンサンブルに、艶めいた女性声による妖しさも覗かせて、ヴィンテージな感触の中に、イタリアらしいシアトリカルな空気も描いている。
小曲を織り込んだコンセプト的な構成で、しっとりした優美な叙情から、プログレらしい展開力も随所に現れるなど、ほどよく緩急あるサウンドで楽しめる。
明快な盛り上がりがさほどないのだが、たとえばPRESENCEのような耽美系の女性声プログレが好きな方にもいけるかと。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 優雅で耽美度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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Il Cerchio D'Oro 「Pangea E Le Tre Lune」
イタリアのプログレバンド、イレ・チェルキオ・ドーロの2023年作
1999年にデビュー、本作は6年ぶりとなる6作目。優美なピアノとフルートの音色のイントロから、叙情的なギターにオルガンを含むやわらかなシンセ、ジェントルなイタリア語の歌声で、優雅でヴィンテージなイタリアンプログレを聴かせる。
緩急あるプログレらしい展開力に、70年代を受け継ぐ妖しい幻想性も覗かせて、優雅な叙情性と、濃密な空気感を同居させたサウンドの説得力を高めている。
古き良きイタリアンプログレの感触を現在のシンフォニック性に落とし込んだという点では、LA MASCHERA DI CERAなどのファンにもお薦めの逸品です。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 イタリア度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Latte Miele 2.0 「Paganini Experience」
イタリアのプログレバンド、ラッテ・ミエーレ2.0の2019年作
1976年作「鷲と栗鼠」期のメンバー、マッシモ・ゴーリとルチアーノ・ポルティーニによる別働バンドで、19世紀の天才ヴァイオリニスト、ニコロ・パガニーニの生涯を描いたコンセプト作。
パガニーニ音楽院出身の女性ヴァイオリニストを迎えて、艶やかなヴァイオリンにオルガンを含むシンセを重ね、クラシカルで壮麗なシンフォプログレを展開。
イタリア語による伸びのあるヴォーカルも加わって、オーケストラルなアレンジとともに、オペラティックな優雅さに包まれた聴き心地である。
当然ながら、本物の力量あるヴァイオリンの艶やかな演奏も素晴らしく、これがバンドサウンドと融合されているというだけでも感動的だ。
ギターよりもヴァイオリンがメインのパートが多いので、むしろクラシック的な耳で鑑賞するのもいいかもしれない。
クラシカル度・9 プログレ度・8 優雅度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Ubi Maior 「Incanti Bio Meccanici」
イタリアのプログレバンド、ウビ・マイオールの2014年作
2005年にデビューし、3作目となる。のっけから20分の大曲で、艶やかなヴァイオリンが叙情的なギターに重なり、プログレらしいヴィンテージなシンセとイタリア語によるヴォーカルで優美なシンフォプログレを展開する。
繊細なピアノやエモーショナル歌い上げるヴォーカルなど、イタリアらしいクラシカルな優雅さと、メリハリのあるダイナミックな流れで、大曲をメインに壮麗なドラマ性を描いてゆく。
メロウなギターの旋律はときにハケットばりで、軽やかなドラムにグルーヴィなベースなど、確かなアンサンブルとともに、優雅なイタリアンプログレが楽しめる。
全4曲で、ラストも18分という大曲。ゆったりとした歌ものパートは大人の叙情に包まれつつ、泣きのギターとシンセでじわりと盛り上げる。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 イタリア度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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EDMONDO ROMANO 「MISSIVE ARCHETIPE」
イタリアのミュージシャン、エドモンド・ロマノの2014年作
ERIS PLUVIAなどで活躍した管楽器奏者で、ソロとしては2012年に続く2作目となる。
優美なピアノにヴァイオリン、クラリネットやロウホイッスルの音色が合わさり、しっとりとした優雅でクラシカルな室内楽サウンドを描く。
ゲストによるフルートやオーボエなどの音色も優しく、チェロやバスーンなども加わって、クラシカルで涼やかなチェンバーロックが味わえる。
イタリア語による女性の語りやスキャットヴォイスも加わって、うっすらとシンセとともにシンフォニックで幻想的な空気にも包まれる。
ミステリアスであってもダークになりすぎない、あくまで優雅なサウンドなので、チェンバーロック初心者にも楽しめるでしょう。
クラシカル度・9 プログレ度・7 優雅度・9 総合・8
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Il Balletto Di Bronzo 「Trys」
イタリアのプログレバンド、イル・バレット・ディ・ブロンゾの1999年作
1970年にデビュー、1972年に傑作「Ys」を残して消えたバンドの、1996年の再結成ライブを収録。
ジャンニ・レオーネを中心に、DIVAEのリズム隊が参加したキーボードトリオの編成で、レオーネのソロ作品からのナンバーに、新曲、そして「Ys」の全曲を演奏。
変拍子を含む軽やかなリズムに、きらびやかなシンセワークを乗せたサウンドは、日本のGERARDARS NOVAにも通じるだろう。
傑作「Ys」のナンバーは、スリリングなアンサンブルと華麗なシンセワークで、オリジナル以上にダイナミックな味わいで楽しめる。
レオーネの鍵盤はもちろん、その歌声も往年のイタリアンロックの妖しさを表現していて、イルバレのファンは必聴というべき内容です。
ライブ演奏・8 プログレ度・8 イタリア度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Donella Del Monaco 「Shakespeare Ballet」
イタリアの女性シンガー、ドネラ・デル・モナコの2005年作
OPUS AVANTRAのシンガーで、本作はシェイクスピアの演劇舞台用に作られたバレエ音楽集。
優雅なフルートの音色にピアノ、ヴォイオリンの響き、パーカッションのリズムに妖しいスキャットヴォイスで、チェンバーロック風のサウンドを描く。
3曲目からは、ドネラのソプラノヴォーカルに、混声クワイアが重なって、グレゴリアンチャント的な崇高な空気感に包まれる。
クラシックの旋律を取り入れて鳴り響くヴァイオリンと、幻想的なSEを重ねたコンテンポラリーなアレンジや、ドラムも加わってのアヴァンギャルドな小曲なども面白い。
アコースティックギターにヴァイオリンやフルートが絡むラスト曲も、エンディング的な味わいで優雅に楽しめる。
クラシカル度・8 プログレ度・5 優雅度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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5uu'S 「Point of Views」
アメリカのアヴァンロック、ファイヴ・ユースの1996年作
AranisPresentにも参加するドラムのデヴィッド・カーマンを中心に、1986年にデビュー、本作は1st「Bel Marduk + Tiamat」からの8曲に、1986年のEP、1988年2nd「Elements」全曲を収録した、全20曲入り。
巧みなドラムにわりとヴィンテージなシンセにフリーキーなヴォーカルを乗せ、不穏なチェロの響きやピアノとともに、アヴァンギャルドなレコメンサウンドを展開。
どことなく、ピーター・ハミル風の歌声や、わりとロック感触のあるナンバーも屈折感を覗かせて、1作目はヘンテコなマイナー感触が強めかもしれない。
2ndになると、アンサンブルにクールな知的さが感じられ、フルートやバスーンの音色も加わって、チェンバーロックとしてのスリリングな聴き心地にとぼけた優雅さが同居する。
アヴァンギャル度・8 スリリング度・8 優雅度・7 総合・7.5
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5uu'S 「Crisis in Clay」
アメリカのアヴァンロック、ファイヴ・ユースの1997年作
4作目の本作は、のっけから屈折感あるリズムにシンセとエレクトロなアレンジを重ね、ピーター・ハミル的な歌声とともに、スペイシーなアヴァンロックを聴かせる。
1〜4分前後の小曲を主体に、不穏でミステリアスな空気と、ときに、とぼけたようなコミカルな軽やかさが交差する。
一方では、歪んだギターを重ねたどっしりとしたパートもあり、ノイジーなアレンジも含めての、アヴァンギャルドな演出も堂に入ったもの。
存在感あるベースとセンスのあるドラムを軸にしたリズムアンサンブルの妙や、ダークで重厚な味わいのパートも含めて、Simon Steenslandあたりが好きな方もどうぞ。
アヴァンギャル度・8 スリリング度・8 優雅度・7 総合・7.5
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10/24
チェンバーにジャズロの秋(309)

SOLAR PROJECT 「PICTURE AT AN EXHIBITION」
ドイツのプログレバンド、ソーラー・プロジェクトの2024年作
90年代初頭から活動するベテランで、本作は14作目あたり。本作はタイトル通りムソルグスキーの「展覧会の絵」をアレンジした作品で、オルガン含むシンセとギターによる耳慣れた旋律とともに、EL&Pとはまた違った感触のクラシカルなプログレを聴かせる。
随所に女性ヴォーカルを加えての優雅な感触に、メロウなギターによる叙情性やアコースティックも取り入れた、起伏のあるアレンジもなかなか見事。
ボーナスの14分におよぶ大曲も、プログレらしいキーボードに泣きのギター、男女ヴォーカルとともに、ドラマティックな展開力を見せる。ベテランらしいアダルトなヴィンテージプログレである。
クラシカル度・8 プログレ度・8 優雅度・8 総合・8
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Michael Riessler & Lorenzo Riessler 「The Machine」
ドイツのミュージシャン、ミヒャエル・リースナーとロレンツォ・リースラーによるコラボ作品。2024年作
クラリネット&サックス奏者で、1991年にデビュー、本作は2012年以来となる作品で、息子であるドラマーとのコラボ作品で、バレルオルガン奏者がゲスト参加。
不穏なサックスにバスクラリネットの音色がかぶさり、軽やかなドラムとともに、フリーキーでアヴァンギャルドなジャズロックを聴かせる。
ゆったりと優雅なクラリネットの響きのバックで、叩きまくるモルガン・オーギュレンばりの巧みなドラムプレイも聴きどころで、スリリングな演奏は圧巻だ。
やわらかなオルガンも随所に加わって、テクニカルでフリーキーながらも、どこかとぼけたサウンドは、MATS/MORGANのファンなどにも楽しめるだろう。
ラスト曲での、アヴァンギャルド全開のアッパーな迫力もなかなか凄いです。リースナー息子ドラマーの技量も素晴らしい。
ジャズロ度・8 テクニカル度・8 アヴァンギャル度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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PRESENT 「THIS IS NOT THE END」
ベルギーのチェンバーロック、プレザンの2024年作
198o年にデビュー、本作は2009年以来となるアルバムで、バンドの創設者であるロジェ・トリゴーがレコーディング中に逝去したため、事実上のバンドのラスト作品となった。
フランスからNIのギタリスト、ベルギーからARANISのヴァイオリン奏者が参加し、2パートに分かれた37分の大曲を中心に構成されている。
重たいドラムとベースに、冷たくヴァイオリンが鳴り響き、硬質なギターも加わって、緊迫感に包まれたダークなチェンバーロックを展開する。
サックスやクラリネットにピアノが絡むクラシカルな優雅さに、緩急あるダイナミズムと先の読めない展開力が、非常にスリリングな聴き心地である。
恐ろしげなバスクラリネット、ヴァイオリン、ハードなギターと打ち鳴らされるドラムで、UNIVERS ZERO以上の迫力に覆われる。これぞ暗黒系チェンバーの傑作だ。
ロック度・7 チェンバー度・9 優雅で不穏度・10 総合・8.5 過去作のレビューはこちら
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ECLECTIC MAYBE BAND 「AGAIN ALORS?」
ベルギーのチェンバーロック、エクレクティック・メイビー・バンドの2023年作
元UNIVERS ZERO、PRESENTのギー・セジュール率いるバンドで、2018年にデビューし、3作目となる。シンセによる不穏なイントロから、チェロやコントラバスに、フルートやバスーンの音色が重なり、もの悲しいヴァイオリンの響きをドラムに乗せた、翳りを帯びたチェンバーロックを展開する。
テクニカルなリズムに存在感あるベース、サックスが重なる、KING CRIMSON的なスリリングなジャズロック感触もありつつ、フリーキーなフルートが鳴り響く即興性や、ヴォーカル入りのアヴァンロック風ナンバーなども面白い。
10分を超える大曲もいくつかあり、ジャズロックのアンサンブルに、チェンバー/アヴァンロックを融合させたという聴き心地で、ダークの中にもとぼけた優雅さが見え隠れする。
アヴァンギャル度・8 プログレ度・8 優雅度・7 総合・8
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PIERRE VERVLOESEM「Flambant 9」
ベルギーのミュージシャン、ピエール・ヴェルヴルーゼムの2021年作
X-LEGGED SALLYFLAT EARTH SOCIETYで活躍するギタリストで、ソロとしては1994年にデビューし、すでに10作以上を発表している。
軽やかなドラムに重めのベース、サックス、トランペットが派手やかに鳴り響き、巧みなギターやシンセも加えて、スリリングなジャズロックを展開する。
テクニカルでありながら、フルートの音色が優雅に彩るあたりは、わりと叙情的でもあり、アヴァンギャルドになりすぎない聴きやすさもある。
コミカルなブラスとギターが絡むパートや、どっしりとしたリズムに、ギターがフリーキーに奏でられるナンバーなど、奔放なセンスも随所に楽しい。
アルバム終盤は、すっとぼけたテクニカルなアンサンブルが炸裂するアヴァン・ジャズロックから、アダルトなサックスの哀愁漂うラスト曲も味がある。
ジャズロ度・8 テクニカル度・8 アヴァンギャル度・7 総合・8
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PIERRE VERVLOESEM GROUP「30 YEARS OF SUCCESS」
ベルギーのミュージシャン、ピエール・ヴェルヴルーゼム率いるユニットの2021年作
過去の関連作からの楽曲をアレンジ、再録音した作品で、FLAT EARTH SOCIETYや、UNIVERS ZEROのメンバーが参加。
巧みなドラムとベースのリズムにサックスが鳴り響き、テクニカルなアンサンブルとともに軽妙なジャズロックを構築。
サックスによる優雅な旋律に、ときにハードなギターが絡み、アヴァンロックの奔放さをジャジーに落とし込んだという感触でも楽しめる。
UNIVERS ZEROではギターを担当する、ニコラスの存在感あるベースも存在感があり、ピエールのギターを引き立てている。
ジャズロ度・9 テクニカル度・8 アヴァンギャル度・7 総合・8
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BASta! 「VERTIGO」
ベルギーのジャズロック、バスタ!の2018年作
Aranis、Flairckにも参加するダブルベース奏者によるプロジェクトで、2009年にデビューし、本作は3作目となる。
Aranisの女性フルート奏者が全面参加して、やわらかなフルートの音色に、重厚なダブルベースの響きが重なる、優雅にしてほどよくスリリングなサウンドを描く。
ときに女性スキャットも加わりつつ、旋律を奏でるのはフルートがメインなので、不穏なベースとのコントラストや、もの悲しさのユニゾンという、曲ごとのアプローチの違いも楽しめる。
ロック感触はほぼ皆無なので、チェンバー系が苦手な方には向かないが、むしろ音数が少ない分、フルートとベースの細やかな響きに集中して鑑賞できる。
5〜7分のわりと長めの曲もあり、ダブルベースの音色を重ねた緊迫感も覗かせつつ、涼やかにフルートが響き渡る。全57分という力作である。
ロック度・1 チェンバー度・8 優雅で不穏度・8 総合・7.5
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Hidden Kingdom 「Genezis」
ハンガリーのシンフォニックプロジェクト、ヒドゥン・キングダムの2022年作
映画音楽に影響を受けたというミュージシャン、フェレンツ・バログ・ジュニアによるプロジェクトで、本作は2作目となる。
美しいピアノやオーケストレーションを、デジタルなシンセサウンドと融合させ、雄大なシンフォニックサウンドを構築。
艶やかなストリングスにエレクトロなアレンジが重なり、壮麗にしてクラシカル、スケールの大きなシンフォニーを描き出す。
ドラムやギターが入らないのでロック感触はあまりなく、VANGELISなどにも通じる映画サントラ的な雰囲気に包まれつつ、女性ヴォーカルも加わってのしっとりと優雅な味わいも楽しめる。
ラストは、母国語によるマイルドな男性ヴォーカルを乗せたエンディング的なナンバーで締めくくる。
シンフォニック度・9 プログレ度・5 壮麗度・9 総合・7.5
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AUGA ZULA 「NOCHE SUMERGIDA VOL.6」
アルゼンチンのチェンバー・ユニット、オーガ・ズラの2020年作
コンテンポラリーダンスを取り入れた視覚面のアートも表現したライブ作品で、ゆるやかなピアノの旋律に、サックス、フルートがかぶさり、ヴァイオリンが鳴り響く、静謐感のある優雅なクラシカルサウンド。
ドラムとベースも加わっての軽やかなアンサンブルも覗かせつつ、なよやかな女性ヴォーカルがスパニッシュな歌声でサウンドを優しく彩る。
曲によっては、南米らしいフォルクローレ風や、ジャズロック感触なども含んだ聴き心地で、やわらかなサックスにピアノがアダルトな叙情を描くあたりは、初期のKING CRIMSONを思わせるところも。
ライブ音源ながら、巧みな演奏力で繊細なダイナミズムをしっかりと表現するあたりもセンスを感じさせる。クラシカルなチェンバーロックが味わえる逸品である。
クラシカル度・8 プログレ度・7 優雅度・8 総合・8


MAYRA ORCHESTRA 「ORACLE」
オランダのシンフォニックロック、マイラ・オーケストラの2017年作
女性シンガー、マールチェ・デッカー率いるユニットで、優美なピアノのイントロから、ギターにドラム、オーケストラアレンジが重なり、涼やかな女性ヴォーカルとともに、シンフォニックなポップロックというべきサウンドを描く。
マールチェ嬢の歌声はときにコケティッシュでときにクールに表情を変え、クラシカルなピアノやストリングスとの相性もよく、シンフォプログレファンにも楽しめる。
リズム的にはストレートなので、わりとモダンでポップな聴きやすさがあり、オーケストラな女性ヴォーカルものとして、多くのリスナーにアピールするだろう。
シンフォニック度・8 プログレ度・6 女性Vo度・8 総合・8
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FAUST 「RAVVIVANDO」
ジャーマンロックバンド、ファウストの1999年作
1971年にデビュー、4作を残して消えるも、1995年にライブ音源を含む復活作を発表、本作は完全新録となるアルバム。
やわらかなオルガンに、不穏なベースとドラムのアナログ感あるアンサンブルで、ノイズまじりのインストサウンドを描く。
往年のジャーマンロックのような、荒々しいガレージロック感触もありつつ、リフレインされるサイケなトリップ感も心地よくなってくる。
ドカドカしたドラム叫びのような声も加わっての、トライバルでフリーキーな怪しさは、AMON DUULにも通じるか。なかなかの力作です。
アヴァンギャル度・8 プログレ度・7 ジャーマンロック度・9 総合・8 過去作のレビューはこち
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10/18
プログレの秋深し(298)

IQ 「Dominion」
イギリスのプログレバンド、アイキューの2024年作
1983年にデビュー、GENESISルーツのスタイルを深化させ、90年代以降はより壮大なシンフォニックロックへとシフト。
本作は、傑作となった2枚組の前作「Resistance」に続く、6年ぶりの作品で、のっけから22分という大曲で始まる。
優美なシンセにピーター・ニコルズの味わいのあるヴォーカルを乗せ、メロウな泣きのギターとともに、英国らしいウェットなシンフォプログレを構築する。
ニール・デュラントによるオルガンを含むプログレらしいシンセワークも見事で、ほのかに90年代的なマイナー感をまとわせつつ、確かな演奏力でダイナミックな展開力を描く。
後半にはまた、12分の大曲もあり、PALLASなどにも通じるベテランらしい重厚な音の厚みで、ドラマティックに盛り上げる。さすがの傑作。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 英国シンフォ度・9 総合・8.5 過去作のレビューはこちら
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AZURE 「Fym / フィムの冒険」
イギリスのプログレバンド、アジュールの2024年作
2017年にデビューし、3作目となる。フュージョン風の軽妙なリズムに美しいシンセと流麗なギタープレイ、エモーショナルなヴォーカルを乗せた優雅なサウンドを描く。
裏声を使った中世的なハイトーンヴォーカルに、ProgMetal的なテクニカル性が合わさり、ゲームや映画的なドラマ性に包まれた、モダンなハードプログレが楽しめる。
キャッチーな優雅さは、QUEENなどからの影響も覗かせ、メロディアスな旋律を奏でる巧みなギタープレイも見事で、ボーダーレスのスタイリッシュ性という点では、NATIVE CONSTRUCTや、NO MORE PAINなどにも通じるところがあるだろう。
日本盤は独自に2CD仕様になっており、Disc2の16分という大曲では、アグレッシブなテクニカルメタル感触も現れる。全体的にはコンセプト的な流れで展開される、カラフルな力作である。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 優雅度・9 総合・8
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RICHARD WILEMAN「Cabal Of A Thousand Souls」
イギリスのミュージシャン、リチャード・ワイルマンの2019年作
チェンバーロックプロジェクト、KARDA ESTRAで活躍するマルチミュージシャンで、本作は全21分というEP作品。
涼やかなピアノの旋律にシンセを重ね、ブズーキやダルシマーなどの古楽器が鳴り響き、アコースティックギターにサックス、クラリネットの音色、ジェントルなヴォーカルに女性ヴォーカルも絡んで、優雅なサウンドを聴かせる。
チェンバーロックとしてのミステリアスな空気感と、男女声によるキャッチーな牧歌性が同居した作風で、ピアノによるアンビエントな小曲なども含めて、わりとのんびりと楽しめる。
ドラマティック度・6 プログレ度・7 優雅度・8 総合・7.5
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RICHARD WILEMAN「THE FORKED ROAD」
イギリスのミュージシャン、リチャード・ワイルマンの2024年作
ソロ名義としては4作目。今作も、サックス&クラリネット女性奏者、エイミー・フライと組んで、女性ハープ奏者も参加。
優美なハープの音色にピアノ、アコースティックギターのつまびきに、クラリネットが優しく絡む、涼やかなチェンバーサウンドを展開。
マイルドなヴォーカルも加わると、ポストプログレ的な繊細な歌もの感も現れ、叙情的なギターの旋律が耳心地よい。
美しい女性ヴォーカルとアコースティックギターによる小曲も、クラリネットの音色がひんやりとチェンバーに引き戻す。
寒々しいシンセに包まれたミステリアスなナンバーでも、決してダークになりすぎない、クールで優雅な味わいの作品です。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・8 総合・7.5
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GUAPO 「Five Suns」
イギリスのアヴァンロック、グアポの2004年作
1997年にデビュー、本作は4作目で、42分に及ぶタイトル組曲を中心に構成される。不穏なピアノの旋律にフリーキーなドラムとギターが重なり、轟音系ポストロックの様相に包まれる。
うねりあるベースにシンセを重ね、ときにクリムゾンばりのスリリングなアンサンブルで、重厚でダークなサウンドを描いてゆく。
オールインストであるが、緩急ある展開とともに随所にたたみかけるような迫力も覗かせる。ユニヴェル系の暗黒プログレが好きなら聴くべし。
ドラマティック度・7 プログレ度・8 スリリング度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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TAL NEUNDER 「L'ALBERO DELLA VITA」
イタリアのプログレバンド、タル・ネウンダーの2024年作
オールドロックなギターにオルガンが重なり、イタリア語によるハイトーンヴォーカルを乗せた、ヴィンテージなプログレを聴かせる。
アコースティックな繊細な叙情を含みつつ、エモーショナルに歌い上げるヴォーカルの表現力で、色彩豊かなサウンドを構築。
楽曲は4〜5分前後で、ほどよい展開はありつつ難解さはなく、随所にメロウな奏でられるギターも含めて、総じて優雅な味わいに包まれる。
アコースティックを用いての牧歌的な雰囲気という点では、JETHRO TULLあたりに通じる部分もあるかもしれない。
全36分というのがやや物足りないが、今後は大曲などを盛り込めば、傑作となる作品を作れるだけのポテンシャルは感じる。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 イタリア度・8 総合・7.5
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DANIELE SOLLO 「ORDER AND DISORDER」
イタリアのミュージシャン、ダニエレ・ソロの2020年作
HOSTSONATENのファビオ・ズファンティ、ルカ・シェラニ、LA MASCHERA DI CERAのアレッサンドロ・コルヴァギラ、LA COSCIENZA DI ZENOのステファノ・アグニーニなどがゲスト参加、優美なピアノとシンセにハードなギターを重ね、マイルドな英語のヴォーカルとともに、叙情豊かなシンフォプログレを聴かせる。
自身の巧みなベースプレイも随所にアクセントになっていて、ほどよくモダンな硬質感と、繊細なピアノやシンセとのコントラストも鮮やかである。
10分を超える大曲では、ポストプログレ寄りのしっとりとしたパートから、ProgMetal的なテクニカルな展開や、アレッサンドロのシアトリカルな歌声を乗せた、GENESIS的なドラマ性も覗かせる。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 イタリア度・7 総合・8


ENDLESS SEASON 「Paths And Crossroads」
イタリアのジャズロック、エンドレス・シーズンの2022年作
MAD FELLAZのギターとドラムが参加するバンドで、2016年にデビューし、本作が2作目となる。
軽やかなドラムにやわらかなエレピとサックスが鳴り響き、ロック感触のあるギターとともに優雅なジャズロックを聴かせる。
手数の多いドラムを軸にした巧みなアンサンブルに、優美なシンセが重なるあたりは、ARTI E MESTIERIなどに通じる雰囲気もあり、随所に流麗なギターのプレイも光っている。
一方では、技量のあるドラムとベース、サックス、ピアノによる、アダルトなジャズタッチや、いくぶんコミカルな感じのナンバーなどもゆったりと楽しめ、ラスト曲では、チェンバーロック風のミステリアスな空気も覗かせる。
ジャズロ度・8 プログレ度・7 優雅度・8 総合・8

ARILD BROTER 「A SPECTRE OF SOUNDS」
ノルウェーのミュージシャン、アリルド・ブロスターの2024年作
Pymlicoのドラマーとして活躍するミュージシャンで、本作は映画「007」シリーズの音楽をアレンジしたという作品。
なじみのメロディを奏でるギターにシンセを重ね、トロンボーン、トランペッドなどのブラスを加えて映画のサウンドを再現。
映画の熱心なファンでなければ、有名なテーマ曲以外はよく分からないのであるが、叙情的なギターに涼やかなシンセで聴かせる、インストのプログレと思えばOK。
10分を超える“The Living Daylights Suite”では、美麗なシンセをメインにしたシンフォニックな聴き心地も楽しめる。
Airbagのギター、Pymlicoのギター、シンセ奏者などが参加している。全78分という力作ですボンド。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 007度・8 総合・7.5
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KNEKKLECTRIC 「ALT BLIR VERRE」
ノルウェーのプログレ・アートロック、ネックレックトリックの2022年作
2014年にデビューし、3作目となる。軽やかなリズムに優美なピアノ、母国語によるジェントルなヴォーカルと叙情的なギターにメロトロンも重なり、優雅で繊細なサウンドを描く。
ジャズロック的でもある軽妙なアンサンブルと、ヴィンテージなシンセワーク、どこかサイケな浮遊感も融合され、結果として耳心地よいカンタベ風プログレになっている。
優雅でキャッチーな部分では、ユルめのMOON SAFARIという感じでも楽しめ、母国語の歌声も牧歌的な味わいになっている。
ジャズロック、サイケ、ヴィンテージの要素を、北欧風にやわらかく取り込んだというべき逸品です。
ドラマティック度・7 プログレ度・8 優雅度・8 総合・8
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Moonrise 「Soul's Inner Pendulum」
ポーランドのプログレバンド、ムーンライズの2009年作
2008年にデビューし、2作目となる。ピアノを含む優美なシンセにほどよくハードなギター、マイルドなヴォーカルで、ポリッシュらしい翳りを帯びたシンフォプログレを描く。
随所にメロウな泣きのギターやアコースティックなパートも含ませて、しっとりとしたシンセワークとともに聴かせるあたりは、かつてのCOLLAGEあたりに通じる感触もあり、一方、ノリのあるプログレハード風のナンバーは、PALLASなどのファンにも楽しめそう。
ラストは13分という大曲で、やわらかにサックスも鳴り響きつつ、叙情的なギターの旋律とうっすらとしたシンセ、エモーショナルなヴォーカルで、ゆるやかに盛り上げる。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 叙情度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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ANGIPATCH 「DELIRIUM」
フランスのプログレバンド、アンジパッチの1981年作
1976〜82年の間活動したバンドで、バンドのラスト作となる2作目が、2021年に初CD化された。
1曲目から19分近いタイトル組曲で、きらびやかなシンセワークにギターを重ね、フランス語のヴォーカルを乗せた、キャッチーなサウンド。
ポンプロック的な軽快さと、優雅なシンフォニック性が合わさって、フランス語の歌声がヨーロピアンな味わいをかもしだす。
80年代的なフレンチプログレという点では、ATOLLの「Rock Puzzle」あたりにも通じるが、シアトリカルに歌唱は、ANGEなどのファンにも楽しめそう。
美麗なキーボードのポンプロック好きにもお薦めの好作品。ボーナスに1982年のEPやデモ音源を追加収録。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 フランス度・8 総合・8
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Art Zoyd「Musique Pour L'Odyssee」
フランスのチェンバーロック、アール・ゾイの1979年作
1976年にデビューし、2作目。「オデッセイの為の音家」と題された作品で、17分のタイトル曲は、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロが不穏に鳴り響き、サックス、オーボエ、バスーンも加わって、ダークなチェンバーサウンドを描く。
怪しげな詠唱がカルトな神秘性をかもしだし、緊迫感あるトランペットの響きが重なって、まるで暗黒系ホラー映画のサントラ的にも鑑賞できる。
2曲目の大曲“雑音、沈黙-雑音、休息”は、優雅なクラシカル性から、不協和音のストリングスにブラスが重なり、重厚なベースがアンサンブルをリードする、これぞチェンバーロックの醍醐味である。
クラシカル度・9 スリリング度・9 暗黒度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Maahinen 「Ihmeellinen Iltapaiva」
フィンランドのフォークロック、マーヒネンの1997年作
SAMURAI OF PROGのキンモ・ポルスティによるプロジェクトで、軽やかなドラムにやわらかなサックス、ピアノやオルガンを含むシンセを乗せ、母国語による女性ヴォーカルとともに、フォークロック寄りの優雅なサウンドを聴かせる。
もの悲しいヴァイオリンや優美なフルートのインストや、男性Voを乗せたジャズ調のナンバーから、アコーディオンの鳴り響くカントリー風など、どの曲も牧歌的な空気に包まれている。
アコースティックギターにフルート、美しい女性ヴォーカルでしっとりと聴かせるあたりも耳心地よく、ドリーミーな北欧フォークとしての味わいも覗かせる。全70分
ドラマティック度・6 プログレ度・6 北欧度・8 総合・7.5



KENNY HAKANSSON  「Springlekar och Ganglatar」
スウェーデンのミュージシャン、ケニー・ハカンソンの1978年作
Kebnekajseのギタリストで、本作はバンド脱退直後に発表したソロ1作目。土着的なギターの旋律で、フォーキーな味わいのギターインストを聴かせる。
ヴァイオリニストであるアンダース・ローゼンをカヴァーするなど、北欧トラッドのメロディをエレキギターで表現するのは、ケブネカイゼが好きな方にはたまらない。
楽曲は2〜4分前後で、どこをきっても涼やかなギターメロディが響き渡る。Kebnekajseの方向性を受け継ぎいだ、耳心地の良い好作品です。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 北欧度・10 総合・8
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10/3
秋のプログレ(283)

RETURNED TO THE EARTH 「STALAGMITE STEEPLE」
イギリスのモダンプログレ、リターンド・トゥ・ジ・アースの2024年作
2016年にデビューし5作目。叙情的なギターに優美なシンセを重ね、マイルドなヴォーカルとともに、PINK FLOYDをスタイリッシュにしたようなサウンドを展開。
デイブ・ギルモアばりの泣きのギタートーンに、オルガンやピアノなどのやわらかなシンセで、しっとりと繊細なシンフォプログレが楽しめる。
派手な展開はないものの、ポストプログレ的な歌もの感触に、メロウなギターフレージングがかぶさると、翳りを帯びた叙情性にウットリとなる。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 叙情度・8 総合・8
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Tempus Fugit Percussion Ensemble 「Tarkus Revisited」
イタリアの打楽器ユニット、テンパス・フュージット・パーカッション・アンサンブルの2022年作
本作はEL&Pとグレッグ・レイクをトリビューした作品で、傑作「タルカス」を、マリンバ、グロッケンシュピール、ビブラフォンなどの音色をロックドラムに重ねて再現。
女性シンガー、アンニ・バルバッツァによる美しい歌声も加わって、やわらかなマリンバなどの響きとともに優雅な耳心地で楽しめつつ、巧みなドラムによるソロパートなども聴きどころ。
KING CRIMSON「Moonchild」も女性声を乗せたしっとりとした味わいで、静謐な緊張感に包まれたオリジナル曲を挟んで、ラストは「奈落のボレロ」で締めくくる。
パーカス度・9 優雅度・9 タルカス度・8 総合・8
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EDENSONG 「OUR ROAD TO DUST」
アメリカのプログレバンド、エデンソングの2025年作
2008年にデビュー、本作は9年ぶりとなる3作目。アコースティックギターによるイントロから、ハードなギターが切り込んで、テクニカルなリズムにオルガンなどのシンセを加えて、スリリングなサウンドを展開する。
伸びやかなヴォーカルによるキャッチーなメロディアス性に、ProgMetal的でもある硬質なエッジが合わさり、優美なフルートの音色が巧みなギターフレーズに重なる、スタイリッシュな叙情性も強まっている。
新加入のドラムのメタル的なプレイも随所に効いていて、モダンなテクニカルプログレという点では、初期のHAKENあたりに通じるところもあるだろう。
フルートやヴァイオリンをメインにした優雅にしてヘヴィな小曲も際立っていて、ラスト曲ではシンフォニックな盛り上がりを見せる。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 重厚度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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FERNANDO PERDOMO「SELF」
アメリカのミュージシャン、フェルナンド・ペルドモの2024年作
「Out To Sea」シリーズでは叙情的なギターインスト作品を発表しているいるが、本作は自身の渋い歌声をフィーチャーした、いわば歌ものアルバム。
アコースティックギターにうっすらとシンセを重ね、哀愁を含んだヴォーカルで、ゆったりとしたアダルトな叙情に包まれたサウンドを聴かせる。
ヴィンテージなキーボードなど、70年代風ポップロックの雰囲気も確信犯的でありつつ、泣きのエレキギターが加わってのシンフォプログレ風味も残している。
ラストは20分近い大曲で、キャッチーなヴォーカルメロディと優美なシンセとギターが重なり、厚みのあるサウンドを構築してゆく。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 叙情度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Sonus Umbra 「Whiteout」
アメリカのプログレバンド、ソナス・アンブラの2024年作
メキシコ出身のバンドとして2000年にデビュー、その後はアメリカに活動を移し、本作は7作目となる。
ナレーション入りのイントロから、叙情的なギターにオルガンなどのシンセを重ね、適度なハードさと展開力のあるコンセプチュアルなシンフォプログレを聴かせる。
ときにサックスが優雅に鳴り響き、16分という大曲では、いくぶんアヴァンギャルドな雰囲気も覗かせて、スリリングなハードプログレを描き出す。
楽曲ごとの盛り上がりはさほどないので、ややつかみどころのない印象か。マティアス・オルソン(Anglagard)や、LITTLE ATLASのシンセ奏者などがゲスト参加。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 壮大度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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THIRTEEN OF EVERYTHING 「Our Own Sad Fate」
アメリカのプログレバンド、サーティーン・オブ・エヴリシングの2019年作
2005年作以来となる、14年ぶりの復活作で、華麗なシンセアレンジを叙情的なギターに重ね、マイルドなヴォーカルを乗せ、テクニカルなリズムとともに緩急あるシンフォプログレを展開。
繊細なピアノによるクラシカルな美しさに、オルガンなどのヴィンテージなプログレ感触も覗かせて、インストをメインに3パートに分かれた20分超の組曲を聴かせる。
歌い上げるヴォーカルも含めてシアトリカルな雰囲気も漂わせ、アメリカらしいキャッチーな抜けの良さもありつつ、ほどよいマイナー臭さも同居する。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 叙情度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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POLYGONE 「EclectiQue」
カナダのプログレバンド、ポリゴンの2023年作
EXCUBUSのメンバーを中心に70年代に結成し、作品を残さず消えたバンドの当時の楽曲を復刻した作品。
存在感あるベースと軽やかなドラムに、きらびやかなシンセワークと叙情的なギターで優雅なサウンドを描く。
フランス語によるマイルドなヴォーカルが加わると、ヨーロピアンな味わいのシンフォプログレとして楽しめる。
3〜4分前後の楽曲を主体に、アコースティックギターやピアノにやわらかなヴォーカルで聴かせる歌ものナンバーから、GENTLE GIANT風のテクニカルな偏屈性も覗かせり、なかなか幅が広い。
大曲がないのでドラマティックな展開力はないものの、総じてケベックらしい優雅な耳心地の好作品です。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・8 総合・7.5

Esquizoide「Cronicas」
アルゼンチンのハードプログレ、エスクイゾイデの2024年作
適度にヘヴィなギターにきらびやかなシンセ、スペイン語のヴォーカルを乗せて、ProgMetal的な感触もあるハードプログレを展開する。
ピアノやサックス、フルートの音色が優雅に鳴り響きつつ、テクニカルなリズム展開から、スパニッシュな哀愁を漂わせるヴォーカルメロディで盛り上げる。
エモーショナルなスペイン語の歌声が映える、ゆったりとしたシンフォニック・ハード的なパートから、わりとキャッチーな歌もの感触まで、センスよくアレンジされている。
巧みなギタープレイにときにオルガン含むカラフルなシンセアレンジで、重厚にして叙情的なシンフォプログレが楽しめる力作です。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 重厚度・8 総合・8
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Jaime Rosas 「Flashback 」
チリのミュージシャン、ハイメ・ロサスの2011年作
ENTRANCEのシンセ奏者で、Jaime Rosas Cuartetoとしても活動し2作を残すが、純粋なソロ名義としては2作目となる。
のっけから20分の大曲で、手数の多いドラムにオルガン鳴り響き、EL&Pばりの派手やかな鍵盤プログレを展開する。
ジャズタッチのピアノをメインにしたアダルトな小曲や、ムーグシンセとオルガンを軽やかなリズムに乗せる、桜庭統ばりのカラフルなナンバー、スペイン語のヴォーカルも加わったしっとりとしたバラードなど、南米らしいやわらかなシンフォニック性に包まれる。
ラストも10分の大曲で、壮麗なシンセの重ねとともにオーケストラルなダイナミズムで盛り上げる。
クラシカル度・8 プログレ度・8 キーボー度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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NAUTILUS「WHEN TIME IS JUST A WORD」
ドイツのプログレバンド、ノーチラスの2024年作
1998年にデビューし、本作は9作目。アコースティックギターとマイルドな歌声のイントロから、うっすらとしたシンセにメロウなギターの旋律を重ね、CAMELにも通じる優美なサウンドを描く。
10分を超える大曲では、KLAUS SCHULZEにも通じるようなエレクトロなシンセの重ねとともにスペイシーな世界観に包まれる。
ジェントルなヴォーカルは淡々とした声を重ねる感じで、基本的にはインストがメインながら、泣きのフレーズを奏でるギターは耳心地よい。
エレクトロなシンセミュージツクと、ギター主導の叙情シンフォが同居したという、ありそうでなかった幻想系プログレの好作品です。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 叙情度・8 総合・8
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ARGOS 「UNIDENTIFIED DYING OBJECTS」
ドイツのプログレバンド、アルゴスの2018年作
2009年にデビューし、5作目となる。軽妙なリズムにオルガンを含むシンセと叙情味あるギターを乗せ、ジェントルなヴォーカルとともに、優雅なシンフォプログレを聴かせる。
キャッチーな歌もの感触に、繊細なピアノやメロトロンなど、優美なシンセワークもよろしく、インストパートをメインにしたナンバーもメロディアスな味わい。
ラストは18分を超える組曲で、シアトリカルなヴォーカルパートから、サックスが鳴り響き、カンタベリー的でもある優雅な味わいも覗かせつつ、ナレーションによる物語性から叙情的なギターでじわりと盛り上げる。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 優雅度・8 総合・8 
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Perfect Storm 「No Air」
オランダのプログレバンド、パーフェクト・ストームの2021年作
ほどよくハードなギターに優美なシンセアレンジと男女ヴォーカルの歌声で、キャッチーなシンフォプログレを聴かせる。
オルガンなどのヴィンテージな味わいと、モダンな硬質感が同居したアンサンブルに、ギターは随所にメロディアスなプレイも響かせる。
ジェントルな男性Voをメインにしたプログレハード的でもあるストレートな聴きやすさに、女性ヴォーカルが加わると、MOSTLY AUTUMNをスタイリッシュにしたような味わいにもなる。
YESのような優美な聴き心地のタイトルナンバーから、ラストの9分の大曲も、あくまでキャッチーに構築されるサウンドが楽しめる。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 優雅度・8 総合・8
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GIANT SKY 「GIANT SKY II」
ノルウェーのモダンプログレ、ジャイアント・スカイの2023年作
SOUPでも活躍するErlend Vikenによるソロプロジェクトの2作目で、Disc A、Bと分けられたCD2枚組。
スペイシーなシンセにマイルドなヴォーカルを乗せ、ときに女性Voも絡みつつ、ポストロック的な広がりのあるサウンドを描く。
アコースティックを含むギターやピアノに、やわらかなフルートと女性ヴォーカルでしっとりと聴かせるパートや、デジタルなアレンジを取り入れたテクノプログレ風のナンバーもあったりと、なかなか面白い。
ポストプログレ寄りの繊細な歌もの感触にも、うっすらとしたシンセとともに空間的なスケールも感じさせつつ、ラストはゆるやかに盛り上げる。
2CDで、合計68分ほどであるが、コンセプトとしてあえて2枚に分けたのだろう。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 壮大度・8 総合・7.5
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KANSAS 「Bryn Mawr 1976」
アメリカのプログレバンド、カンサスのライブ音源。2014年作
1976年の名作「Leftoverture」発表前、FM放送用のライヴ音源で、ヴァイオリン鳴り響き、オルガンにギターが重なり、優雅でドラマティックなプログレハードを聴かせる“Song For America”をはじめとする、2nd収録曲や、“Icarus”はじめ、3rd「Masque」からの曲が中心。
ブルージーなオールドロック調のナンバーや、優雅なヴァイオリンとピアノが重なり、ロビー・スタインハートの味のあるヴォーカルでゆったりと聴かせるナンバーなど、哀愁の叙情も持ち味だろう。
音質的には上質のブートという感じだが、バンド全盛期の演奏には熱量があり、時代の空気が感じ取れる。
ライブ演奏・8 音質・7 叙情度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Regenesis 「Live at the Empire」
イギリスのGENESISトリビュートバンド、リジェネシスのライブ。2010年作
初期ジェネシスのナンバーを完コピするという人気バンドで、1997年に最初のライブ作品を発表してから、本作で4作目となる。
2009年ロンドンでのライブで、“Return Of The Giant Hogweed”、“Fountain Of Salmacis”などの往年の名曲を演奏。
ソロでも活躍するトニー・パターソンは、ピーター・ガブリエル風のヴォーカルにフルートもこなし、軽やかなドラムをはじめ演奏陣もなかなか頑張っていて、1作目のライブに比べるとずいぶん楽しめる。
24分を超える大曲“Supper's Ready”も、シアトリカルなドラマ性までも見事に再現していて、ラストは“Dance On A Volcano”〜“Los Endos”で締めくくる。
初期GENESIS好きなら聴いて損はない、全75分というジェネシス愛が詰まった力作ライブです。
ライブ演奏・8 ジェネシス度・8 楽曲再現度・9 総合・8
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9/5
9月のプログレ(268)

ARENA 「LIFIAN TOUR MMXXII」
イギリスのプログレバンド、アリーナのライブ。2023年作
ダミアン・ウィルソン加入後、2022年作「THE THEORY OF MOLECULAR INHERITANCE」にともなうヨーロッパツアーを2CDに収録。
同作からのナンバーで幕を開け、壮麗なシンセとハードなギター、朗々としたヴォーカルを重ねて、重厚でモダンなシンフォニックロックを描く。
初期を含む過去作品からもまんべんなく選曲されていて、クライブ・ノーランの華麗なシンセワークや、ジョン・ミッチェルの叙情的なギターフレーズも素晴らしい。
ダミアン・ウィルソンのエモーショナルの歌声は、聴いていると少々うざったくもなるのだが、サウンドを濃密に彩っているのは間違いない。
Disc2では、デビュー作から大曲“Solomon”も披露。往年の香りを残した英国らしいシンフォプログレが広がってゆく。2CD、114分の見事なライブ。
ライブ演奏・8 プログレ度・7 重厚度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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MARILLION「RADIATION 2013」
イギリスのプログレバンドマリリオンの2013年作
1998年作を新たにリミックスした2013年エディションで、オールドロック感のあるギターにオルガンを含むシンセが重なって、ヴィンテージなサウンドを描く。
以前は、わりと普通の歌ものロックというイメージであったのだが、スティーブ・ホガースのエモーショナルな歌声とゴージャスなシンセアレンジが際立って、ぐっと厚みのある音作りになった。
一方では、のちの作品のような繊細な歌ものナンバーもあって、スティーブ・ロザリーのメロウなギターが随所に泣きのフレーズを奏でる。
リミックスによりクリアにダイナミックになったサウンドは、かつては物足りなさを感じた方も再評価するだろう。
今思えば、本作あたりが、いわゆるポストプログレの走りであったのかもしれない。Disc2にはオリジナルの1998年バージョンを収録。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 叙情度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Ozric Tentacles「Strangeitude」
イギリスのサイケロックバンド、オズリック・テンタクルズの1991/2010年作
アッパーでスペイシーなサイケロックを標榜するバンドの初期の代表作として名高いアルバムで、2010年の再発盤2CD。
巧みなドラムにグルーヴィなベース、カラフルなシンセを重ね、優雅なフルートも加わって、プログレッシブなサイケロックを展開。
ロックなギタープレイも含めて、のちの作風のようにデジタルになりすぎず、躍動感ある軽妙なアンサンブルが味わえる。
オールインストながら、神秘的なスケール感を描けるのは、演奏力の高さとメンバーのビジョンの共有だろう。
オズテン入門にもお薦めの傑作である。ボーナスDiscには、ライブ音源や別ミックスなどを6曲収録。
サイケ度・8 アンサンブル度・9 優雅度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Ozric Tentacles「Pyramidion / Floating Seeds Remixed」
イギリスのプログレ・サイケロックバンド、オズリック・テンタクルズの2001/1999年作のカップリング
「Pyramidion」は、ライブ録音を含む変則的なアルバムで、軽やかなリズムビートにデジタルなシンセが鳴り響き、ロック的なギターが弾きまくる。
エジプト的なモチーフの曲では、スペイシーな浮遊感と神秘性も覗かせ、EP扱いだが、5曲で41分と聴き応え充分。ライブ演奏のカッコよさは一聴の価値あり。
「Floating Seeds」は、過去の楽曲をDJがリミックスした企画もの。デジタルなビートにきらびやかなシンセが重なり、ダンサブルなアレンジで聴かせる。
エフェクトのかけられたドラムなどが好みを分けるところだが、オズテンの番外編と思えば、わりと楽しめます。
サイケ度・8 プログレ度・7 エレクトロ度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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Ozric Tentacles「At The Pongmasters Ball」
オズリック・テンタクルズのライブアルバム。2002年作
グルーヴィなベースと巧みなドラム、フリーキーに弾きまくるギターときらびやかなシンセワークが重なり、躍動感のあるアンサンブルを展開。
10分前後の大曲も多いのだが、スペイシーな浮遊感と抜群の演奏力に、聴き手はトリップするようにして引き込まれる。
ときに中近東的なフレーズや、優雅に吹き鳴らされるフルートも交えて、濃密でカラフルなサイケロックのライブが堪能出来る。
まさにオズテンファンは必聴のライブ。同ステージを収録したDVDも必見だ。左のジャケは再発盤CD+DVD。右は旧規格2CD盤。
ライブ演奏・9 サイケロック度・9 カラフル度・9 総合・・8.5
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CORMORANO「Obliquizioni D'Autunno」
イタリアのプログレバンド、コルモラノの2023年作
結成は70年代で、RUNAWAY TOTEMのラファエロ・リゴーニが在籍するバンド。本作は2001年以来となる22年ぶりの復活作
ピアノと語りによるイントロ曲からエキセントリックな雰囲気を漂わせ、オルガンなどのシンセにサイケ風のギター、イタリア語のシアトリカルなヴォーカルとともに、浮遊感に包まれたサウンドを描く。
サイケロック的なユルさとイタリアらしい妖しい空気感が合わさり、プログレらしい展開の中にも、雰囲気モノとしての幻想性がにじみ出る。
サックスが鳴り響く軽妙なナンバーや、ゆったりとしたインストなど、とらえどころのない作風で、ヘンテコなのんびりサイケとして聴くがよろしいか。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 妖しさ度・8 総合・7.5
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ANDERS BUAAS「TAROT」
ノルウェーのミュージシャン、アンダース・バースの2021年作
タロットカードにおける「大アルカナ」22枚をコンセプトに、それぞれをテーマにした22曲を収録した作品。
アコースティックを含むギターにシンセアレンジを重ねて、随所に古楽やフォークロア風味も含んだ優雅なインストサウンド展開。
ミステリアスなシンフォプログレ寄りのナンバーや、泣きのギターフレーズにピアノが重なる繊細な美意識もよろしく、1〜5分前後の小曲主体ながらも、楽曲ごとの世界観が味わえる。
美しいシンセとメロウなギターで聴かせる、GANDALFのようなネイチャーな叙情に包まれたナンバーから、キャッチーなビート感のプログレハード感触まで、オールインストで、全76分という力作です。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・8 総合・8
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RHYS MARSH 「The Black Sun Shining」
英国出身、ノルウェーで活動するアーティスト、ライス・マーシュの2015年作
2008年、The Autumn Ghostの連名でデビュー。本作はソロ名義となっての2作目、ギター、ベース、シンセ、ドラムなど、すべて一人でこなしたソロ作品で、パーカッションやタブラのリズムにサイケなギター、ジェントルなヴォーカルを乗せた1曲目から、怪しい空気に包まれる。
その後も、無機質なドラムに冷たいピアノ、淡々とした歌声とともに、モノトーンのようなダークで不穏な世界観を描いてゆくあたり、前作「Sentiment」とは対になっているのかもしれない。
11分という大曲では、翳りを帯びたポストプログレ感触から、後半にはサイケデリックな浮遊感が現れる。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 叙情度・7 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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White Willow 「Ex Tenebris」
ノルウェーのプログレバンド、ホワイト・ウィローの1997年作
1995年にデビュー、本作は2作目となる。ヤコブ・ホルム=ルポによる、2024年リマスター盤で聴きなおし。
アコースティックな導入から、オルガン、メロトロンを含むヴィンテージなシンセと、マイルドな男性ヴォーカルに女性ヴォーカルが絡み、ANGLAGARDにも通じる翳りを帯びた涼やかな幻想性に包まれる。
前作のフォーキーな叙情を受け継いだ牧歌的な優雅さも覗かせつつ、ゴシック的でもある耽美な空気も加わって、シンセによる小曲なども雰囲気がある。
ラストは14分におよぶ大曲で、メロウなギターの旋律にメロトロンが重なり、美しい女性ヴォーカルとともに、しっとりとしたシンフォプログレを展開する。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 翳りと叙情度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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A FLYING FISH 「Carnival Of Souls」
メキシコのプログレバンド、フライング・フィッシュの2020年作
アヴァン・ブラックメタル、Vitam Aeternamのメンバーによるユニットで、本作は全44分1曲という異色の構成。
ブックレットのイラストや写真からして、DEVIL DOLLのようなオカルトな世界観を想起させるが、チャーチオルガンが鳴り響き、クラシカルなピアノにストリングス、しわがれたヴォーカルや詠唱めいた歌声を乗せて、シアトリカルで幻想的なサウンドを展開する。
やや唐突でダイナミックな展開力と、カルトな暗黒性を演劇的に描つつ、声色を使い分けるヴォーカルの表現力や、ときに叙情的なギターの旋律を聴かせるあたり、まさしくDEVIL DOLL影響下の作風と言える。
36分くらいで曲が終わったと思いきや、空白をはさんで映画的なSEとセリフの妖しいシークレットトラックが現れるのもそれっぽい。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 デヴィルドール度・9 総合・8

A FLYING FISH「El Pez Que Volo - Act I」
メキシコのプログレバンド、フライング・フィッシュの2023年作
前作は、DEVIL DOLLに酷似した作風であったが、2作目の本作は、バンド名のような飛ぶ魚を主役にしたストーリーを描くロックオペラとなっている。
シアトリカルなヴォーカルに囁きやダミ声などを使い分け、QUEEN的なキャッチーなメロディにオーケストラアレンジも加えて、緩急あるシンフォニックロック聴かせる。
ときに女性ヴォーカルやクラシカルなピアノにストリングス、曲によってはモダンなハードさも覗かせて、濃密にしてシアトリカル、さらにはコミカルな雰囲気も溶け込ませた作風である。
楽曲自体は3〜4分前後が主体で、全42分というのも少し物足りないなと思いきや、ストーリーはACT IIへと続くらしい。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 シアトリカル度・9 総合・8
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TERCIA「EL VIAJE」
メキシコのプログレバンド、テルシアの2022年作
70年代に結成されたバンドの楽曲を、シンセ奏者のFernando Garridoが再現した作品で、オルガンを含むきらびやかなシンセをドカドカとしたドラムに乗せ、EL&PTHE NICEPAR LINDH PROJECTなどにも通じるクラシカルな鍵盤プログレを聴かせる。
録音面での弱さやドラムの技量などにやや不満はあるのだが、10分前後大曲を主体に、緩急あるインストパートを構築するビジョンの高さは立派。
スペイン語のヴォーカルを乗せた牧歌的な叙情も現れて、初期のICONOCLASTAにも通じる、マイナー臭いB級シンフォの感触に包まれる。
アルバム後半には、18分というタイトル曲で、クラシックのコードを取り入れた優雅なシンフォプログレを展開する。
クラシカル度・8 プログレ度・8 キーボー度・9 総合・7.5
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ICONOCLASTA 「Concierto de Aniversario 35 Anos」
メキシコのプログレバンド、イコノクラスタのライブ。2022年作
1980年結成のベテランで、本作は35周年記念となる、2015年のライブを2CDに収録。
オリジナルメンバーが集っての6人編成で、2009年作「Resurreccion」、2013年作「Movilidad」からのナンバーを主体にしたセットリストを演奏。
適度にハードなギターにシンセを重ね、スペイン語の女性ヴォーカルとともに、ジャズロック的でもある軽妙なアンサンブルのシンフォプログレを展開。
幻術師マリア・サビーナをテーマにした11分の大曲や、妖しい女性声が神秘的な浮遊感を描く小曲なども、メキシコという国の空気をしっかりと感じさせる。
Disc2では、デビュー作を含め初期からのナンバーも披露。メロウなギターにやわらかなシンセの優雅なインストナンバーなど、叙情豊かな聴き心地である。
ライブ演奏・8 プログレ度・7 軽妙度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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ROSTRO DEL SOL
メキシコのサイケ・ジャズロック、ロストロ・デル・ソルの2021年作
軽やかなリズムにフリーキーなギター、オルガンを含むシンセにサックスが鳴り響く、ジャズロック風味のインストサウンドを聴かせる。
70年代のヴィンテージ感触と、スリリングな即興性が同居して、サイケデリックな浮遊感をカンタベリー調ジャズロックに仕立てたという味わい。
オールインストなので、軽妙なアンサンブルを楽しむ聴き方であるが、叙情的なギターの旋律にオルガンが重なる優雅なパートなど、ほどよく展開があるので飽きさせない。
後半には、KING CRIMSON的なプログレッシブな組曲などもあって、単なるジャズロック以上の知的なセンスが見え隠れする。
ジャズロ度・8 サイケ度・7 優雅度・8 総合・8
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EQUILIBRIO VITAL 「KAZMOR EL PRISIONERO」
ヴェネズエラのプログレバンド、エクイリブリョ・ヴィタルの1984年作/邦題「囚人カスモール 」
1983年にデビューし2作目。タイトなリズムにツインギターにコケティッシュな女性ヴォーカルと男性ヴォーカルが絡み、ダイナミックなアンサンブルで優雅なハードプログレを聴かせる。
ハードロック的でもある巧みなギターの旋律と手数の多いドラム、ときにフルートも鳴り響き、疾走感ある展開力は、RAINBOWや日本のSTARLESSあたりを南米シンフォと融合させたような味わいか。
一方では、不穏な空気をはらんだスリリングなインストパーやエキセントリックな女性声も含む、緩急ある楽曲を表現する演奏力の高さとアレンジのセンスも見事。
本作を最後にバンドは解散、その後、2010年になって復活作を発表している。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 優雅度・8 総合・8
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8/23
英国プログレで残暑お見舞い(253)

Pink Floyd 「A Momentary Lapse of Reason (Remixed & Updated)」
イギリスのプログレバンド、ピンクフロイドの2019/2021年作
1987年発表「鬱」をデヴィッド・ギルモアがオリジナルのマスターテープからリミックス。一部の曲でゲストが弾いていたシンセを、リチャード・ライトのものに差し替え、ドラムスもニック・メイソンが新たに録音したニューバージョンとなっている。
優美なシンセにデイブ・ギルモアのメロウなギター、ニック・メイスンのドラムも含めて、輪郭がぐっとクリアになり、より広がりのあるダイナミックなサウンドになった。
曲によっては80年代らしいキャッチーなビート感も覗かせつつ、サックスや女性コーラスなどを重ねた優雅な味わいなどもあらためて魅力的だ。
かつては地味に思えていた本作であるが、あらたなリミックスによって、スケールの大きな空間性が味わえる作品に生まれ変わっている。
ドラマティック度・8 叙情度・8 サウン度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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VA/An All Sttar Tribute to Pink Floyd - The Everlasting Songs
ドイツMassacre傘下のレーベルによる、ピンク・フロイド・トリビュート作品。2015年作
Billy Sherwood企画のPink Floydカヴァー作品、2002年作「Pigs And Pyramids」、2005年作「Back Against The Wall」収録曲から選曲された全11曲を収録
ジョン・ウェットンの渋い歌声にスティーブ・ルカサーの奏でる泣きのギター、トミー・ショウ、アラン・ホワイト、ビリーシャーウッドによる“Hey You”をはじめ、エイドリアン・ブリューが歌う“Speak To Me/Breathe”、ルカサーがギター&ウォーカルをとる“狂ったダイアモンド”なども、原曲とは別のダイナミックな魅力を表現。
他にも、デヴィッド・サンシャス、トニー・フランクリン、トニー・レヴィン、キース・エマーソン、リック・ウェイクマン、デレク・シェリニアン、スティーヴ・ハウ、トニー・ケイなど名だたるメンバーが参加。
原曲に比べるとややハードでゴージャスなアレンジなので、オールドファンよりは、むしろフロイド初心者や若いリスナー向けのトリビュートかもしれない。
ドラマティック度・8 フロイ度・8 豪華メンツ度・9 総合・8
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GNIDROLOG「In Spite Of Harry's Toe-Nail」
イギリスのプログレバンド、ニドロログの1972年作
わりとハードなギターにシアトリカルなヴォーカルに、優雅なリコーダーやフルートが鳴り響く、独自の雰囲気のヘヴィプログレを聴かせる。
いくぶん唐突なリズム展開と屈折感は、KING CRIMSONVAN DER GRAAF GENERATORあたりに通じるマニア好みのスタイルで、ニヤりとなる。
7〜9分台の長めの楽曲をメインに、先の予測できないようなスリリングな楽しさと、フルートやチェロの音色が重なる、アコースティカルなフォーク風味も覗かせたりと、緩急自在。
2nd「レディ・レイク」の方が有名だが、内容的には甲乙つけがたい出来といえる。むしろ、MARSUPILAMIなど、ディープな英国プログレが好きなら本作をとるだろう。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 屈折度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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MARSUPILAMI「Arena」
ブリティッシュロックバンド、マルスピラミの1971年作
2作目の本作は、古代ローマの闘技場を舞台にしたコンセプト作で、粗削りだった1stに比べてサウンドの輪郭がはっきりしてきており、楽曲におけるメリハリのつけ方もよりドラマティックになった。
たたみかけるドラムに、ハモンドオルガン、メロトロンやフルート、サックスも加わり、ジャズロック的な軽やかさとハードな質感に、厳かな叙情パートも含ませつつ、楽曲は緩急自在に展開してゆく。
ヴォーカルはときに物語を語るように静かに、かと思うと戦闘をする戦士のように激しく歌い上げ、ときに女性コーラスも交え、妖しくシアトリカルな世界観を描く、スケールの大きな聴き心地である。
まさに当時の英国からしか出て来ない、ブリティッシュロックの裏傑作といえる。2016年の紙ジャケリマスター盤で音質もぐっと向上した。
ドラマティック度・9 プログレ度・8 英国度・9 総合・8.5 過去作のレビューはこちら
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Jade Warrior「Released」
ブリティッシュロックバンド、ジェイド・ウォーリアーの1971年作
元JULYのメンバーを中心に結成、本作は2作目となる。ブルージーなギターにパーカッションが絡み、サックスやフルートも加わった、独自のサウンド。
古き良きブリティッシュロックに、サイケや民族色が同居した、いくぶんヘンテコな雰囲気もあるが、ゆったりとした牧歌的なナンバーやジャズ風味のナンバーなど、わりと優雅な聴き心地で楽しめる。
15分近い大曲は、ブラスが鳴り響き、フリーキーなギターにパーカッションが重なり、ほどよくユルめのインストアンサンブルを展開する。
民族サイケ・ジャズロックというべき、やや雑多な方向性は、まだバンドのスタイルを模索中という感じもある。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 牧歌的度・7 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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Jade Warrior 「Last Autumn's Dream」
ブリティッシュロックバンド、ジェイド・ウォーリアーの1972年作
3作目の本作から、日本的なジャケデザインが登場。アコースティックギターにジェントルなヴォーカルを乗せ、ドラムも加わって、フォークロック的でもある牧歌的なサウンドを描く。
優雅にフルートが鳴り響く、神秘的な土着感にはオリエンタルな雰囲気を覗かせ、サイケと民族色が合わさったバンドとしての世界観がしだいに固まりつつある。
ギターを重ねた叙情的なインストナンバーや、英国フォーク風味の歌もの、ファンキーなロックナンバーなど、とらえどころのないサイケロックが楽しめる好作だ。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 牧歌的度・8 総合・7.5
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BAKER GURVITZ ARMY 「Elysian Encounter」
ブリティッシュロックバンド、ベイカー・ガーヴィッツ・アーミーの1975年作
The GunThree Man Armyのガーヴィッツ兄弟と、元CREAMのジンジャー・ベイカーによるバンドで、本作が2作目となる。
巧みなドラムにブルージーで叙情的なギターとシンセを重ね、朗々としたヴォーカルとともに、英国らしいウェットなハードロックを展開する。
リズムチェンジを含むアンサンブルは、Three Man Armyに通じるもので、プログレリスナー向けの緩急ある構築力も見事。
一方では、ゆったりとした叙情ナンバーや、メロウなギターの旋律で哀愁と泣きを描くミドルテンポのナンバーなども魅力的だ。
ドラマティック度・8 叙情度・8 英国度・8 総合・8
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BAKER GURVITZ ARMY 「Live 1975」
ブリティッシュロックバンド、ベイカー・ガーヴィッツ・アーミーのライブ。2023年作
2005年にリリースされた「Live」に、同年のロンドンでの音源を追加収録したもので、2nd発表後の5人編成でのステージ。
エイドリアン・ガーヴィッツのブルージーなギターとジンジャー・ベイカーの手数の多いドラムに、エレピなどのシンセを重ね、2ndから加入のスニップスの味わいのあるヴォーカルで、スタジオ以上に躍動的な演奏を聴かせる。
間奏でのフリーなギターソロ含む、10分以上に拡大された“Remember”、ドラムソロを挿入した“Memory Lane”も圧巻で、70年代ブリティッシュロックの底力を見るようだ。
1st、2ndのナンバーを主体に、ロンドンの音源では長尺のドラムソロや、3rdからの楽曲も披露。曲間のMCなどもステージの臨場感を伝えてくれる。
ライブ演奏・8 叙情度・8 英国度・8 総合・8
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Moraz / Bruford 「Music For Piano And Drums」
パトリック・モラーツ&ビル・ブラッフォードの1983年作
ともにYESで活躍したことで知られる名キーボーディスト、名ドラマーで、このユニットとしての1作目。ピアノとドラムによる一発録りという作品で、軽やかなドラムにクラシカルなピアノを乗せた優雅なインストサウンド。
ブラッフォードのジャズタッチの巧みなドラムプレイと、即興をまじえたモラーツのピアノが、ときにスリリングなチェンバーロック風味を描き出す。
涼やかなピアノの旋律は繊細な美意識を感じさせ、うるさすぎないドラムとともに、卓越したプレイヤーによる絶妙のアンサンブルを楽しめる。リマスター盤には、ボーナストラックにライブ2曲を追加収録。
ジャズ度・8 スリリング度・8 優雅度・9 総合・8
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FOX 「Blue Hotel」
イギリスのポップロック、フォックスの1977年作
1975年にデビューし3作目。オーストラリア出身の女性シンガーを含む男女Vo編成で、ポップなビート感にコケティッシュな女性ヴォーカルを乗せた、グラムロック風のサウンドを聴かせる。
Wooden Horseにも在籍していたノーシャ(スーザン)嬢のいくぶんけだるげな歌声も魅力的で、英国フォークルーツの牧歌性とともに、ほどよいサイケ感も覗かせる。
元Bryan Ferry Bandのアン・オデルが鍵盤でゲスト参加しているのも興味深い。
英国度・8 プログレ度・6 女性Vo度・8 総合・7.5
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Duncan Mackay 「A Picture Of Sound」
イギリスのミュージシャン、ダンカン・マッケイの2017年作
英国出身、70年代は南アフリカで活動していたミュージシャンで、その後、英国に戻り10ccに加入する。本作は1993年に英国で録音された音源のCD化作品。
シンプルなリズムビートに、80年代以降のデジタル感覚を取り入れたシンセの重ねに、ピアノやオルガンのプレイも含んだ、インストによる鍵盤ロックを聴かせる。
きらびやかなシンセアレンジという点では、RICK WAKEMANなどにも通じるが、よりポップでキャッチーなアプローチといえる。
一方では、映画サントラ的なゆったりとしたシンフォニックなナンバーには優雅な味わいがあり、シンセミュージックとしてのセンスも抜群だ。
プログレとして聴くには、ドラマティックな展開力は薄いのだが、自身の奏でるヴァイオリンが艶やかなラスト曲など、クラシカルな美意識も素晴らしい。
シンフォニック度・8 プログレ度・7 キーボー度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Richard Pinhas 「East/West」
フランスのミュージシャン、リシャール・ピナスの1980年作
HELDONで知られるミュージャンで、ソロとしては4作目となる。のっけからハードなギターにエレクトロなシンセ、SF的な語りを重ねた、80年代的なデジタルなアヴァンロックを聴かせる。
美麗なシンセをメインにした小曲や、BRIAN ENOのようなアンビエントなシンセサウンドに叙情的なギターの旋律が交わり、どこか翳りを含んだ空気をかもしだすのもピナスらしいところ。
ヴォーカル入りのナンバーは、デジタルなグラムロックという味わいだったり、ラスト曲などは、HELDONを思わせるモダンで重厚なプログレ曲が楽しめる。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 エレクトロ度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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8/8
プログレ暑中お見舞い(241)

EMERSON LAKE & PALMER 「LIVE AT THE KINGDOM FESTIVAL」
エマーソン・レイク・アンド・パーマーのライブ音源。2020年作
1997年のスイス公演のステージを2CDに収録。「LIVE AT MONTREUX 1997」とは同月のライブで、“Karn Evil 9”の抜粋からスタート。
音質はややラウドだが、きらびやかなエマーソンのシンセに、渋みのあるグレッグ・レイクの歌声で、アダルトなEL&Pサウンドが味わえる。
軽快なノリの“Hoedown”から、“From The Beginning”、“Knifes Edge”、“石をとれ”などの初期のナンバーは、オールドなファンには嬉しいところ。
Disc2では“タルカス”〜“展覧会の絵”、“庶民のファンファーレ”という、往年の大曲を演奏。
ラストの、KING CRIMSON“21世紀の精神異常者”〜“アメリカ”まで、70年代の圧倒的な勢いこそないものの、丁寧な演奏で楽曲の魅力を再認識させてくれる。
ライブ演奏・8 プログレ度・8 ELP度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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KEITH EMERSON & GREG LAKE 「LIVE FROM MANTICORE HALL」
イギリスのミュージシャン、キース・エマーソンとグレッグ・レイクによるライブ。2014年作
EL&Pで活躍した2人による2020年アメリカでのライブを収録。キーボードと、ギター&ベース&ヴォーカルという編成で、EL&Pのナンバーを演奏。
ドラムが入らないのでロック感触は薄いものの、味わいのあるグレッグ・レイクのヴォーカルとともに、KING CRIMSON「風に語りて」なども含めて、アダルトなアレンジでかつての楽曲が味わえる。
オルガン鳴り響く「未開人」では、ドラム音を流していて、原曲に近い雰囲気が楽しめる。17分におよぶ「タルカス」で、クラシカルなピアノとベースの絡みで、プログレ大曲を優雅に演奏。ラスト近くではドラム音も入って盛り上げる。
優美な大曲「海賊」から、ラストはムーグシンセのソロ〜「ラッキー・マン」で締めくくる。
ライブ演奏・7 プログレ度・7 EL度・8 総合・7.5
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U.K. 「Live In Philadelphia 1978」
イギリスのプログレバンド、ユーケーのライブ。2024年作
1978年8月のアメリカでのライブを収録。FMラジオ放送用に録音された音源のリマスターで、短い全盛期であった、第一期UKの圧倒的な演奏が封じ込められている。
エディ・ジョブソンの艶やかなヴァイオリンとシンセから、ビル・ブラフォードの巧みなドラムに、アラン・ホールズワースのギターが重なり、ジョン・ウェットンのベース&ヴォーカルとともに、軽妙にしてメロディアスなサウンドを聴かせる。
音質も良好で、やや軽めながらブラフォードの生々しいドラムをはじめ、勢いある演奏が際立っていて、ホールズワースの色気のあるギターフレージングも素晴らしい。
2nd「Dange Maney」収録の“The Only Thing She Needs”、“Carrying No Cross”や、BRUFORDのソロ作品からの“Forever Until Sunday”、“The Sahara Of Snow”などを、このメンバーの演奏で聴けるのも嬉しいかぎり。
ライブ演奏・9 プログレ度・8 巧み度・9 総合・8.5 過去作のレビューはこちら
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BRUFORD 「Live In Boston 1980」
英国のドラマー、ビル・ブルーフォード率いるバンドのライブ。2024年作
U.K.を脱退したブルーフォードは、アラン・ホールズワースと、ジェフ・バーリン、デイヴ・スチュワートとともに活動を始めるが、方向性の違いからホールズワースは離脱、替わってジョン・クラークが加入する。
本作は、その編成でのアルバム「Gradually Going Tornado」を引っ提げてのアメリカツアーから、FM局用のプロモーションに録音された音源を収録。
軽やかで巧みなブルーフォードのドラムを軸に、デイヴ・スチュアートのきらびやかなキーボードに、ジョン・クラークのギターはときにホールズワースを髣髴とさせ、優雅でテクニカルなインストサウンドは、ただのジャズロックという以上に聴きごたえがある。
ホワイトノイズが混じった音質は良質のブートレグといった感じだが、観客の歓声も含め生々しいライブ感が伝わってくる。ブラフォードのファンはチェック。
ライブ演奏・9 ジャズロ度・8 音質度・7 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Caravan 「Green Bottles for Marjorie」
イギリスのプログレバンド、キャラヴァンのライブ音源集。2002年作
デビュー直後の1968年〜1972年までの、BBCセッションのライブ音源を収録。1968年の音源は、SOFT MACHINEの1967年のシングルにも収録されたナンバーを含む、初期の貴重なライブで、サイケがかったサウンドの中に、デイヴ・シンクレアのオルガンプレイが光っている。
1971年の音源は、傑作「グレイとピンクの地」発表直後で、優雅なカンタベリー系ジャズロックへと深化。大曲“Nine Feet Underground”では、パイ・ヘスティングスの味わいのあるギタープレイも含めて、展開力あるアンサンブルが楽しめる。
1972年の音源は、シンセにスティーブ・ミラーが加わって、ジャズロック色を強めた「ウォータールー・リリー」収録の大曲“The Love In Your Eye”を収録。
ライブ演奏・8 カンタベ度・8 音質度・7 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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Mike Oldfield 「Live In Germany 1982」
イギリスのミュージシャン、マイク・オールドフィールドのライブ。2020年作
1982年ドイツでのステージを2CDに収録。同年発表の「Five Miles Out」にともなうツアーで、ティム・レンウィック、マギー・ライリー、ピエール・ムーラン(GONG)、リック・フェン(10cc)らが参加。
Disc1は“Tubular Bells Part 1”、“Platinum”、“Ommadawn Part1”という大曲を収録。叙情的なギターの重なりにきらきらとしたシンセ、美しい女性ヴォーカルも加えて、アルバム以上に優雅でダイナミックなサウンドを聴かせる。
FMラジオ放送用に録音されたものをリマスターしているので、音質もいたって良好。Disc2では、27分におよぶ“Taurus 2”が圧巻。
アコースティックも含めた各楽器の細かな演奏と、音の連なりによって構築される長大な楽曲たちは、素晴らしいという他にない。
ライブ演奏・9 プログレ度・8 優雅度・9 総合・8.5 過去作のレビューはこちら
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PHI YAAN-ZEK 「Interdimensional Garden Party」
イギリスのミュージシャン、ファイ・ヤーン・ゼクの2022年作
英国で活動するインド系ギタリストで、2005年にソロデビュー、本作は「サイケ・プログレ・フュージョンの祭典」を標榜し、ラレ・ラーションをはじめ、マルコ・ミンネマン、モルガン・オーギュレン、ブライアン・ベラー、アンディ・エドワーズ、マット・イングラム、など多数のメンバーが参加。
きらびやかなイントロから、軽妙なリズムに優美なエレピと巧みなギターを乗せ、キャッチーコーラスも加えて、MATS/MORGANにも通じるユーモラスでテクニカルなサウンドを描く。
インストを基本に、アッパーなサイケ感触と、ほどよいアヴァンギャルド性に、ときにジェントルなヴォーカルを乗せたヘンテコな歌ものや、オールドロック風のナンバーなどもあり、楽曲ごとに異なるアレンジが面白い。
ラストは、シンセとギターにトランペットやトロンボーンが重なり、ゴージャスでカラフルなサイケ・ジャズロックが繰り広げられる。
ドラマティック度・7 プログレ度・8 アヴァンギャル度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Phi Yaan-Zek 「Play My Strange Thing」
イギリスのミュージシャン、ファイ・ヤーン・ゼクの2018年作
マルコ・ミンネマン、ラレ・ラーション、マイク・ケネリー、ブライアン・ベラーといったメンバーが参加した、2018年作「Reality Is My Play Thing」3枚組限定版、Disc3の単品リリース盤。
ジャズロック的な軽妙なリズムに、カラフルなシンセに奔放なギターが重なり、先の読めないアヴァンギャルドなインストを展開する。
MATS/MORGAN的なすっとぼけたセンスと、巧みなドラムを中心にした高度な演奏力で、フリーキーな小曲もヘンテコで面白い。
全体的には、とらえどころがなく、アルバムのオマケという感じはぬぐえないか。ラストにはシークレットトラックあり。
ドラマティック度・7 プログレ度・8 アヴァンギャル度・9 総合・7.5

Phi Yaan-Zek 「Anomalies」
イギリスのミュージシャン、ファイ・ヤーン・ゼクの2007年作
1997年に制作されたカセット音源をリミックス、元FROST*のアンディ・エドワーズ、KARMAKANICのラレ・ラーションらが参加しての新録パートを追加しての新装版。
デジタルなシンセを巧みなギターに重ね、ノリのよいリズムとともに、アッパーでカラフルなサイケ風のアヴァン・プログレを構築する。
MATS/MORGANあたりに通じるテクニカル性とユーモラスなセンスに包まれながら、曲によってはメロウなギターを奏でる優雅な叙情性も覗かせる。
2〜5分前後の小曲が主体なので、ドラマティックな展開はあまりないが、軽妙でヘンテコなプログレが好きならけっこう楽しめるだろう。
ドラマティック度・7 プログレ度・8 アヴァンギャル度・8 総合・7.5
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JG THIRLWELL & SIMON STEENSLAND 「OSCILLOSPIRA」
オーストラリアのミュージシャン、JG.サールウェルとスウェーデンのミュージシャン、サイモン・スティーンスランドによる2020年作
MATS/MORGANのモルガン・オーギュレンがドラムで全面参加、ヴァイオリンやチェロ、サックス、クラリネット、トロンホーンなどをゲストに、スリリングなチェンバーロックを聴かせる。
巧みなドラムにストリングスやブラスなどが重なり、わりとハードなギターに男女のスキャットヴォイスも加えて、クラシカルな優雅さとダークな緊張感が同居したサウンドを構築。
10分前後の大曲も多く、インストパートがメインであるが、緩急あるダイナミックな展開で、Univers Zeroや、ときにMAGMAなどにも通じるスケール感に包まれる。全69分の力作。
スリリング度・8 プログレ度・7 チェンバー度・9 総合・8
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Motorpsycho 「Yay!」
ノルウェーのロックバンド、モーターサイコの2023年作
1991年デビュー、ノルウェーを代表するバンドであり、プログレ、サイケ、ガレージロックなどの要素を融合した、独自のロックを生み出し続けるバンド。
本作はアコースティックギターをメインにした牧歌的な歌ものサウンドで、うっすらとしたメロトロン風のシンセも加わって、優雅でやわらかな耳心地。
ユルめのエレキギターが入るとサイケ的な浮遊感もかもし出し、裏声まじりのヴォーカルがポストプログレ的な繊細な叙情を描き出す。
ドラムが加わったナンバーではヴィンテージなロック感触が現れて、LED ZEPPELIN「カシミール」を思わせる曲もあったりしてニヤりとなる。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 牧歌的度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Yobrepus 「A Rhizome Revolution Part 1」
ノルウェーのプログレ・ポストロック、ヨブレプスの2024年作
2017年にデビューし、3作目。哲学/現代思想における「リゾーム」を掲げた現代社会をコンセプトにしたロックオペラ作品で、わりとヘヴィなギターにマイルドなヴォーカルを乗せ、うっすらとしたシンセとともにアナログ感あるポストロックを聴かせる。
ドゥーム風のラウドなロック感触も覗かせつつ、静謐な空気感が交差して、ときにファルセットヴォイスやオーケストラルなアレンジも加わって、優雅で涼やかな叙情に包まれる。
全体的にゆったりとした作風で、エレクトロなシンセアレンジや、優美なピアノにストリングスなど、ほのかにプログレ的な匂いも含んでいるが、全34分というのがやや物足りないか。Pt2に続くらしい。
ドラマティック度・7 プログレ度・6 ヴィンテージ度・7 総合・7.5
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Maybe Violet 「For The Time Being」
スペインのフォークロック、メイビー・ヴァイオレットの2020年作
Harvestの女性シンガーとギターによるユニットで、アコースティックを含むメロウなギターに伸びやかな女性ヴォーカルで、優美で繊細なサウンドを描く。
叙情的な旋律を奏でるギターと、モニーク嬢のしっとりとした歌声も耳心地よく、ドラムとベースも含め、わりとシンプルなメロディックロックながら、ゆったりと楽しめる。
楽曲自体に新鮮味や意外性はないので、プログレとしとて聴くにはやや退屈だが、Harvestにも通じるアンニュイな翳りを含んだ、女性声メロウロックの好作品だ。
ドラマティック度・7 プログレ度・6 女性Vo度・8 総合・7.5


Amplifier
イギリスのプログレ・ポストロック、アンプリフィアーの2004年作
バンドのデビュー作で、度にハードなギターを乗せた重厚なアンサンブルにマイルドなヴォーカルを乗せ、浮遊感のある叙情のあるオルタナ的なサウンドを聴かせる。
ギター&ヴォーカル、ベース、ドラムのトリオ編成で、シンセは入らないためプログレ感触はさほどないのだが、ときにフリーキーなギターが、初期のPINK FLOYD的なサイケな味わいにもなっている。
後半には、わりと軽快なリズムとともに、モダンでスタイリッシュなプログレ感触も覗かせる。全71分というのも、デビュー作にしてはなかなかの力作だ。
ドラマティック度・7 プログレ度・6 オルタナ&ポストロック度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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7/18
英米のプログレ(227)

Steve Hackett 「Surrender of Silence」
イギリスのギタリスト、スティーブ・ハケットの2021年作
アコースティックをメインにした前作「紺碧の天空」から、同年のうちに早くも完成。シンセには盟友ロジャー・キング、ベースにはヨナス・レインゴールドが全面参加。
ハケットのライブではおなじみのロブ・タウンゼンド、ナッド・シルヴァン、アマンダ・レーマン、クレイン゛・プランデル、ニック・ディヴァージリオなどもゲスト参加している。
メロウなギターとオーケストラによる壮麗なイントロ曲から、自身のヴォーカルを乗せた優雅にして繊細なサウンドが広がってゆく。
今作では、わりとハードなパートもあって、巧みなギタープレイはもちろん、オーケストラとの絡みで、スリリングなスケール感も描いている。
チャーチオルガンを使った荘厳なイントロから、ナッド・シルヴァンが歌声を乗せ、ドラマティックに展開するナンバーから、パーカッションが鳴り響く民族調のトライバルなナンバーなど、楽曲も彩り豊か。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 叙情度・8 総合・8.5 過去作のレビューはこちら
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DBA (Downes Braide Association)「Celestial Songs」
ジェフ・ダウンズとクリス・ブレイドのユニット、ダウンズ・ブレイド・アソシエイションの2023年作
2012年にデビューし、5作目となる。3作目からメンバーに名を連ねるドラムのアッシュ・ソアンに、ベースのアンディ・ホッジ、ギターには前作に引き続きCELESTIAL FIREのデイヴ・ベインブリッジ。さらにはフランシス・ダナリーなどもゲスト参加している。
ピアノを含む優美なシンセにクリス・ブレイドの味わいのヴォーカルを乗せ、ASIAなどに通じるキャッチーなメロディックロックを聴かせる。
プログレらしいきらびやかなシンセワークや、ベインブリッジによる叙情的なギターが随所に楽曲を彩り、ロジャー・ディーンのジャケのようにカラフルな聴き心地に包まれる。
9分、10分という大曲もあり、インストパートでの叙情や優雅なコーラスなども耳心地がよく、YESなどのファンにも楽しめるだろう。
メロディック度・8 プログレ度・7 叙情度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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The Tangent 「To Follow Polaris」
イギリスのプログレバンド、タンジェントの2024年作
2003年にデビュー、通算13作目の本作は、アンディ・ティリソン自身が全パートを手掛けたというソロ的な内容となった。
オルガンなどのヴィンテージなシンセを軽やかなリズムに乗せて、マイルドなヴォーカルとともに、優雅なシンフォプログレを構築する。
ドラムはデジタルドラムによる録音ながら、自身のベースプレイとともに、しっかりとグルーブ感を描きつつ、テクニカルになりすぎない展開力もさすが。
21分という大曲では、いくぶんハードな感触から、どこか80年代風のポップなヴォーカルパートも含む、緩急あるダイナミックな流れで楽しめる。
ラストの小曲もキャッチーなメロディのフックとオールドなプログレらしさに溢れていて、まさに「安心のタンジェント」というべき力作です。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 優雅度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Zeelley Moon 「Author & The Dreamer」
イギリス&アイルランドのプログレバンド、ゼーレイ・ムーンの2023年作
2017年にデビューし、2作目となる。優美なピアノを含むシンセに叙情的なギターの旋律が重なり、ジェントルなヴォーカルを乗せて、CAMELにも通じる甘美なシンフォプログレを聴かせる。
やわらかなオルガンやフルートがオールドな優しさを描き出し、キャッチーなヴォーカルメロディとともに、どこか懐かしいアートロック風味も感じさせる。
アッカーマンか、ラティマーかという、優雅なギタープレイも魅力的で、ときにFOCUSを思わせるメロディも現れてにやり。
10分近い大曲もあくまでやわらかな叙情に包まれ、メロウなギターと優しいコーラスハーモニーにウットリとなる。オールドなシンフォプログレが楽しめる逸品。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 優雅度・9 総合・8
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PURE REASON REVOLUTION「ABOVE CIRRUS」
イギリスのモダンロックバンド、ピュア・リーズン・レヴォリューションの2022年作
2006年にデビューし、5作目となる。ハードなギターに男女ヴォーカルを乗せ、オルタナ風の硬質なサウンドを描きつつ、翳りを帯びた叙情とともに、ポストプログレ的な雰囲気も覗かせる。
ほどよくキャッチーなポップ感触もありつつ、知的でスタイリッシュなモダンロックとしては、The Pineapple Thiefなどにも通じるだろう。
10分を超える大曲では、女性ヴォーカルによるしっとりとしたパートから、後半にはハードなヘヴィさも現れて、振り幅のある構築力を聴かせる。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 スタイリッシュ度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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PINN DROPP「LIVE IN LODZ」
ポーランドのプログレバンド、ピン・ドロップのライブ。2023年作
2024年の「Marillion Weekend」でのステージを収録。メロウなギターにシンセを重ね、エモーショナルなヴォーカルとともに、MARILLIONにも通じる翳りを帯びたサウンドを聴かせる。
ツーバスのドラムなど随所に適度にハードな感触も覗かせながら、ピアノを含む美しいシンセワークが楽曲をシンフォニックに包み込む。
15分という大曲では、きらびやかなシンセを軽やかなリズムに乗せて、緩急ある展開力で濃密なシンフォプログレを構築する。
音質はややラウドながら、ライブらしいダイナミックな演奏が楽しめる。これはスタジオ作品もチェックせねばですね。
ライブ演奏・8 プログレ度・7 叙情度・8 総合・8
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SCALADEI「SCHOOL OF PURE SOUL」
スペインのプログレバンド、スカラデイの2023年作
カタルーニャ出身、Harnakisのメンバーを中心にして、2019年にデビュー、本作は2作目となる。
メロトロンを含む優美シンセと、CAMELばりの叙情的なギターを重ね、ジェントルなヴォーカルとともに、優雅やわらかなシンフォプログレを展開する。
いくぶんマイナーかかったウェットな空気感は、90年代ルーツのヨーロピアンなシンフォニックロックを継承した聴き心地で、牧歌的な叙情美の中にも、くぐもったような翳りを覗かせる。
ラストは17分の大曲で、キャッチーなヴォーカルパートから、泣きのギターに甘美なシンセを重ね、スタイリッシュとは真逆の美学でじわりと盛り上げる。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 叙情度・8 総合・8
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District 97 「Stay For The Ending」
アメリカのプログレバンド、ディストリクト97の2023年作
2010年にデビュー、5作目の本作も、メタリックなギターにシンセを重ね、エモーショナルな女性ヴォーカルで、スタリッシュなハードプログレを聴かせる。
モダンなヘヴィネスとテクニカル性の一方では、優雅でコケティッシュな味わいもあり、レスリー・ハント嬢の歌唱の表現力もさすがというところ。
ハードな硬質感と軽妙なセンスが混じりあった楽曲アレンジは緩急自在で、女性声プログレとしての魅力も随所にしっかりと感じさせる。
ラスト2曲は、7分、9分という濃密な大曲で、重厚にして優雅な展開力で、エキセントリックなProgMetalとしても楽しめつつ、オルガンを使ったオールドな要素も残しているという、ヘヴィにして巧みなる力作だ。
ドラマティック度・8 プログメタル度・8 スタイリッシュ度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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BIRTH 「BORN」
アメリカのプログレバンド、バースの2022年作
ASTRAでも活躍するメンバー2人を中心にしたバンドで、オルガンなどのヴィンテージなシンセに、オールドなギターが絡むアナログ感たっぷりのサウンドを展開。
どことなく哀愁を漂わせるヴォーカルも加わって、泣きのギターとともに70年代英国風味のヴィンテージなアートロックとしても楽しめる。
9分の大曲は、オルガンやエレビを含むやわらかなキーボードをメインに、ゆったりとした歌ものパートなどで、じつに優雅な味わい。
アルバム後半にはスリリングなインストナンバーや、メロトロンの音色を用いた、ANEKDOTENKING CRIMSON風のどっしりたとしナンバーもあって、なかなかよろしい。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 ヴィンテージ度・8 総合・8
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Bubblemath 「Turf Ascension」
アメリカのプログレバンド、バブルマスの2022年作
2002年にデビュー、15年ぶりの復活作となった前作に続く、5年ぶりの3作目。のっけから17分の大曲で、いくぶんハードなギターとシンセを変則リズムに乗せて、屈折感のある優雅なテクニカルプログレを聴かせる。
エキセントリックな展開力はスリリングで、叙情的なギターやきらびやかなシンセアレンジが随所に彩りを添え、偏屈なシンフォプログレとしても楽しめる。
2曲目以降も10分前後の大曲で、全4曲という構成もなかなか凄いが、各楽曲ごとに確かな構築力で、とぼけた軽妙さと濃密な味わいが同居する。
まさにGENTLE GIANTの現代版というべき力作でしょう。
ドラマティック度・7 プログレ度・8 屈折度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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DAVE KERZNER「NEW WORLD LIVE」
アメリカのミュージシャン、デイヴ・カーズナーのライブ。2016年作
Arc Of Life、In Continuum、Sound Of Contact、Mantra Vegaなどに参加するシンセ奏者で、本作は2014年作を完全再現したライブ。
ギターにFernando Perdomo、In Continuumのベース、Mantra Vegaのドラムが参加、SFストーリーに基づいたコンセプト作を、77分にわたって再現する。
メロウなギターに優美なシンセを重ね、自身のマイルドなヴォーカルとともに、PINK FLOYDにも通じるゆるやかな叙情を描いてゆく。
随所に女性コーラスも加わって、泣きのギターフレーズやシンセによるシンフォプログレとしての味わいで、じわりとスペイシーな雄大さに包まれる。ラストの16分の大曲も圧巻だ。
ボーナスDiscには、EL&P“Lucky Man”、PINK FLOYD“Great Gig In The Sky”カヴァーや、Sound Of Contactのナンバーを演奏したライブ音源などを収録。
ライブ演奏・8 プログレ度・7 叙情度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Monarch Trail 「Wither Down」
カナダのプログレバンド、モナーク・トレイルの2021年作
2014年にデビューし、3作目となる。のっけから10分の大曲で、ピアノを含む美しいシンセをギターに重ね、やや線の細いヴォーカルとともに、優雅なシンフォプログレを聴かせる。
メロディのキャッチーな抜けの良さは、NEAL MORSE的でもあり、軽妙なリズムにグルーヴィなベースなど、インストパートの演奏力もしっかりしている。
アルバム後半にも11分、15分という大曲が並び、やわらかな歌メロとメロディックなフックを、シンフォニックなシンセアレンジが包み込む。
軽やかなアンサンブルながら、テクニカルに走るのではなく、ふわりとした幻想的な耳心地で、インストパートをメインに構築しつつ、叙情的なギターと繊細なヴォーカルでゆるやかな盛り上がりを見せる。
ドラマティック度・7 プログレ度・8 優雅度・9 総合・8
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IZZ 「Everlasting Instant」
アメリカのプログレバンド、イズの2015年作
1999年にデビュー、本作は6作目。男女Voにドラム2人を含む7人編成で、軽やかなリズムに優美なシンセと巧みに叙情的なギター、男女ヴォーカルの歌声を乗せて、優雅でスタイリッシュなサウンドを聴かせる。
プログレらしさのあるきらびやかなシンセワークに、軽妙なアンサンブルを生み出すドラムとベース、うるさすぎないギターが随所に泣きのフレーズを奏で、バンドとしての実力の高さを窺わせる。
女性Voをメインにしたジャズタッチの小曲から、いくぶんハードなギターを乗せたタイトルナンバーなど、楽曲ごとのアレンジセンスも見事で、テクニカル性を優雅さで包み込んだというべき傑作です。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 優雅度・9 総合・8.5 過去作のレビューはこちら
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Metaphor 「Sparrow」
アメリカのプログレバンド、メタファーの2007年作
1999年にデビューし3作目となる。ソロでも活躍するマルコム・スミスによる優美なキーボードに、叙情的なギター、マイルドなヴォーカルで、リズムチェンジを含む展開力のあるプログレらしいサウンドを聴かせる。
GENTLE GIANTをルーツにしたキャッチーな屈折感とともに、ECHOLYNSPOCK'S BEARDをマイナー臭くした感じの、古き良きアメリカンプログレが楽しめる。
一方では、KANSAS的でもある、ストレートな抜けの良いナンバーもあって、小曲を挿入しながら、アルバム全体の流れでドラマ性を描いてゆく。
全71分と、やや長尺ではあるが、緩急ある構成でプログレらしさたっぷりの力作です。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 優雅度・8 総合・7.5
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GREY EYE GLANCES「A LITTLE VOODOO」
アメリカのメロディックロック、グレイ・アイ・グランセスの2002年作
EcholynのG&Vo、ブレット・カルを中心にしたバンドで、1994年にデビュー、本作は5作目となる。
ハード過ぎないギターにシンセを重ね、美しい女性ヴォーカルを乗せた、All About Eveなどにも通じるキャッチーなサウンド。
アメリカンなポップ感触とともに、ほどよくウェットな叙情を感じさせ、オルガンなどのシンセにはほのかにプログレ風味も漂わせるところも。
全体としては、ライトな歌ものポップロックであるが、魅力的な女性声で耳心地よく楽しめる好作品です。
キャッチー度・8 プログレ度・5 女性Vo度・8 総合・7.5
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7/4
プログレと参院選の夏(212)

SOLSTICE 「Light Up」
イギリスのプログレバンド、ソルスティスの2023年作
1984年にデビュー、1997年までに3作を残して消えるも、2010年に復活し、本作は前作の続編となる7作目。
軽やかなリズムにオルガンなどの優美なシンセと叙情的なギター、伸びやかな女性ヴォーカルを乗せ、優雅なシンフォプログレを聴かせる。
艶やかなフィドルとともに、前作から加入のJess嬢の透明感ある歌声もサウンドにマッチしていて、英国らしいキャッチーな爽快さは、MAGENTAをいくぶんフォーキーにしたような味わいもある。
しっとりとした優しいアンビエントなナンバーから、ラストは10分を超える大曲で、鳴り響くフィドルと女性ヴォーカルが重なり、90年代の頃を思わせる優美な浮遊感に包まれる。
ドラマティック度・8 優雅度・9 女性Vo度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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IONA 「Snowdonia」
スコットランドのケルティックロック、アイオナの2006/2021年作
2002年発売の4枚組アンソロジー「The River Flows」Disc4の単体再発盤で、ボーナスのDisc2には、2011年作「Another Realm」のデモ、別バージョンなどを収録
22分のタイトル組曲は、トロイ・ドノクリーによる優美なホイッスルやイーリアンパイプが鳴り響き、アコースティックを含むギターにシンセを重ねて涼やかなケルトの空気を描き出す。
デイヴ・ベインブリッジの奏でる叙情的なギターの旋律に、艶やかなヴァイオリンも加わり、ときに軽やかなアンサンブルとともに、繊細にして優雅なインストパートを構築してゆく。
組曲はほぼオールインストだが、後半の小曲では、ジョアンヌ・ホッグの美声を乗せたしっとりとした味わいで楽しめる。
Disc2は、傑作「Another Realm」のデモを主体に全14曲、70分を収録。デモとはいえ雄大にして華麗なサウンドが素晴らしい。
ケルティック度・8 ロック度・6 優美度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Mostly Autumn「PINK FLOYD Revisited」
イギリスのプログレバンド、モストリー・オータムのライブ作品。2004年作
ツインキーボードの7人編成のステージで、PINK FLOYDのナンバーを演奏した2004年のライブを収録。
“翼を持った豚”から牧歌的に始まり、大曲の“エコーズ”へ。メロウなギターにマイルドなヴォーカル、オルガンを含むシンセとともに、フロイドの雰囲気を忠実に再現。
サイケな“デブでよろよろの太陽”から、ハードさと翳りが同居した“シープ”なども味わいがあり、ヘザー嬢はコーラス中心ながら、“夢に消えるジュリア”では、優美なフルートをバックにしっとりと美声を聴かせてくれる。
“Hey You”をはじめ「THE WALL」収録曲も何曲か演奏していて、男女ヴォーカルとともに優雅な味わいで楽しめる。
あらためてこのバンドの原点が、ピンク・フロイドであることが感じられるカヴァーライブです。同タイトルのDVDはこちら
ライブ演奏・8 プログレ度・7 フロイ度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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FRANK ROHLES 「TRAPPED IN A NEW WORLD PT.I」
ドイツのミュージシャン、フランク・ローレスの2019年作
SUBSIGNALにも参加していたギタリストで、ストリングスによる優雅なイントロから、適度にハードなギターにきらびやかなキーボードで、ギターインスト的なサウンドを展開。
叙情的なフレーズもまじえての巧みなギタープレイとオルガンを含むシンセ、SAGAのマイケル・サドラーが参加しての歌入りのキャッチーなナンバーでは、プログレハード的な味わいもある。
10分前後の大曲を主体に、ストリングスシンセが美しいシンフォプログレ風から、ノリのよいハードロック寄りのナンバーまで、わりと曲調に振り幅はありつつ、メロウな泣きのギターでじわりと要所を盛り上げるあたりは心憎い。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 叙情度・8 総合・8

FRANK ROHLES「TRAPPED IN A NEW WORLD PT.II」
ドイツのギタリスト、フランク・ローレスの2019年作
前作の続編となる作品で、のっけから13分という大曲で幕を開ける。優美なピアノとシンセのイントロから、哀愁のギターの旋律が重なり、叙情的なプログレハードを聴かせる。
マイルドなヴォーカルに、ゲストによるハスキーな女性ヴォーカルも加わり、オルガンなどのシンセとともに、ほどよくハードでテクニカルなシンフォプログレとしても前作以上に楽しめる。
随所にメロウなギタープレイを織り込みつつ、メロディックなフックと展開もしっかりとあり、ラスト曲では、壮麗なオーケストラアレンジから、歌い上げるヴォーカルと泣きのギターでシンフォニックに盛り上げてゆく。
ほとんどが10分声の大曲という、全71分の力作です。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 叙情度・9 総合・8

KURIIRI「VALKEANAINEN」
フィンランドのプログレバンド、クリイリの2022年作
優美なシンセとメロウなギター、母国語によるやわらかな女性ヴォーカルを軽やかなリズムに乗せた、北欧らしい涼やかなシンフォプログレ。
ジャズロック的でもある軽妙なアンサンブルと、透明感のあるシンセと叙情的なギターの旋律に、美しい女性声で耳心地の良いサウンドを描く。
2曲目からは、男性ヴォーカルも加わって、フォーキーな牧歌性を含んだ味わいで、土着的な北欧サイケ・プログレという感触に包まれる。
ラストの10分の大曲も、あくまで優雅な聴き心地で、スリリングな部分はあまりないが、ゆったりと楽しめる好作です。
ドラマティック度・7 優雅度・8 北欧度・9 総合・8
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FREE HUMAN ZOO 「MYSTERIOUS ISLAND」
フランスのジャズロック、フリー・ヒューマン・ズーの2023年作
2016年にデビューし、3作目。サックス、トロンボーン奏者を含む6人編成で、MAGMAのステラ・ヴァンデなどがゲスト参加。
優美なピアノにメロウなギター、フランス語による女性ヴォーカルも加えて、ゆったりとしたアダルトなジャズロックを展開する。
アルトサックス、トロンボーンの音色に、ゲストのフルートも加わって、たおやかなピアノとともに優雅なサウンドを描きつつ、妖しい女性ヴォーカルがけだるげな空気をかもしだすと、シャンソン的にもなる。
一方では、軽やかなインストパートでは、MAGMAをルーツにしたテクニカルなジャズロックの側面も現れて、プログレファンにはなかなか楽しめる作風だ。
ジャズロ度・9 チェンバー度・6 優雅度・8 総合・8
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Scherzoo 「05」
フランスのチェンバー・ジャズロック、スケルズーの2020年作
フランソワ・トロを中心に、2011年にデビュー、本作は5作目となる。前作と同じメンバー編成で、トロはベース担当。
カンタベリー+チェンバーロックという前作の流れを汲み、オルガンやメロトロンを含む鍵盤を軽やかなリズムに乗せ、優雅でありながら不穏な空気感に包まれたサウンドを展開。
基本はインストのジャズロックながら、やわらかなエレピや涼やかなメロトロンが響き渡る優美な感触もあって、ミステリアスなシンフォプログレとしても楽しめる。
ラストは14分の大曲で、巧みなドラムとベースによるうねりのあるアンサンブルにエレピが鳴る、ダークなカンタベリーというべき聴き心地である。
ジャズロ度・8 チェンバー度・7 優雅度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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MAGMA「Merci」
フランスのプログレ・ジャズロック、マグマの1984年作
80年代にバンドとしての実態がなくなる中で、1982〜84年の間に断続的にレコーディングされた作品で、80年代マグマの唯一のアルバム。
デジタルなビート感に、ステラ・ヴェンデによる女性ヴォーカルを乗せ、サックスやトランペットを加えたファンクやソウルが融合されたサウンドを展開。
ガイ・カリファによるマイルドな男性声とともに、英語歌詞のナンバーはわりとポップな味わいであるが、美麗なシンセにブラスを重ねたゴージャスなサウンドは、これはこれで楽しめる。
クリスチャン・ヴァンデの歌声が響く跳ねるようなファンクなジャズロックナンバーもありつつ、マグマらしさを随所に覗かせながら、フランス語の歌声を乗せた11分の大曲も優雅な味わいがある。
2018年のリマスター盤ボーナストラックには、80年代のライブで演奏されていた小曲、“You”のスタジオバージョンを収録。
ドラマティック度・7 ファンク・ジォズロ度・8 優雅度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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MAGMA 「Felicite Thosz」
フランスのプログレ・ジャズロック、マグマの2012年作
スタジオアルバムとしては「Emehntehtt-Re」に続くものだが、純然たる新曲としては、1984年作「Merci」以来となる作品。
優美なピアノに男女ヴォーカルを乗せ、軽妙なドラムとともに、優雅さの中にマグマらしい緊迫感のあるジャズロックを展開。
小曲を連ねた組曲方式で、美しい女性ヴォーカルをメインにしたパートなど、キャッチーな味わいに、クラシカルなピアノやヴィヴラフォンの響きも優美である。
優しく爽快な聴き心地の半面、往年の壮大な作風を期待すると、やや物足りなさも感じるかもしれないが、後半にはマグマらしい高揚感もしっかりとあって、全32分という短さながら、優雅なジャズロック・オペラ的に楽しめる好作品です。
ドラマティック度・7 ジォズロ度・7 優雅度・9 総合・8
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Enneade 「Withered Flowers And Cinnamon」
フランスのハード・プログレ、エネアドの2022年作
2006年にデビュー、本作は11年ぶりとなる3作目。前作はゴシックメタル寄りの作風であったが、本作も叙情的なギターにマイルドなヴォーカルを乗せた、メランコリックな作風。
やわらかなシンセアレンジと適度にハードなギターで、翳りを帯びた叙情とともに、Lazuliなどにも通じるスタイリッシュなサウンドを描いてゆく。
歌詞は英語なので、フランス的な雰囲気はさほどないが、ヨーロピアンな倦怠の美学と、もの悲しい世界観を感じさせる。
ラストは12分の大曲で、美麗なシンセに泣きのギターとヴォーカルで、ゆったりとしたシンフォニック性に包まれながら、軽やかなリズム展開と鳴り響くサックスの音色で優雅に構築される。
ドラマティック度・7 メランコリック度・8 スタイリッシュ度・8 総合・8
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ABYSAL「EXPLORER OF THE WORLDS」
ポーランドのハードプログレ、アビサルの2021年作
ギタリスト、Adam Jurczynskiによるプロジェクトで、シンセと管制塔との通信によるイントロから、叙情的なギターによるゆったりとしたサウンドが広がってゆく。
メロウなギタープレイによるインストをメインに、随所に朗々としたヴォーカルも加わってミステリアスな浮遊感に包まれつつ、ときにハードエッジなギターとともにProgMetal的な感触も覗かせたり、ゴシックメタル風のナンバーもあったりと、わりと多様な楽曲を聴かせる。
全体的にはプログレ的に盛り上がりはあまりなく、ギタリストのソロ的な色合いが強いので、もう少しフックのある展開などが欲しかった。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 叙情度・7 総合・7
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THE THIRD ENDING
オーストラリア、タスマニアのプログレバンド、サード・エンディングの2006年作
叙情的なギターにマイルドなヴォーカルを乗せ、オルガンを含むシンセとともに、もの悲しい空気に包まれたポストプログレ寄りのサウンドを描く。
随所に繊細なアコースティックギターや、ほどよくハードなギターリフを使い分け、メランコリックな叙情とポストロック的なスケール感が融合したスタイリッシュな聴き心地。
ゆったりとしたリズムの中にもスリリングなアンサンブルを覗かせるあたりは、ProgMetal的な構築力で、ヴォーカルメロディには、DREAM THEATERの叙情パートを思わせるところもある。
さりげない変拍子を盛り込むアレンジやメロウなフレーズを奏でるギターのセンスもよろしく、演奏も歌唱もしっかりと実力があるので、キャッチーなモダンプログレとしても楽しめる逸品です。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 叙情度・8 総合・8
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DECADENCE 「Dreams of Nekton」
ロシアのプログレバンド、デカダンスの1999年作
女性Vo&Keyを含む5人編成で、いくぶんハードなギターに美麗なシンセ、コケティッシュな女性ヴォーカルの歌声で、優雅なシンフォプログレを展開。
随所にに叙情的な泣きのギターも現れ、いくぶんエキセントリックな展開とともに、マイナーな味わいの辺境シンフォという感触も覗かせる。
10分を超える大曲も、緩急あるインストパートを主体に、ツインギターが流麗なフレーズを奏でたり、ときにフリーキーな流れで構築される。
女性声は可愛いのに楽曲は煮え切らずちょっとヘンテコ…というギャップが面白く、ラストは叙情的なギターを乗せたインストで締めくくる。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 ヘンテコ度・8 総合・7
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6/20
ドイツやスペイン系ネオフォーク(198)

Loreena McKennitt 「Lost Souls」
カナダ出身の女性シンガー、ロリーナ・マッケニットの2018年作
1985年にデビュー、ケルト系女性シンガーを代表するベテランで、スタジオアルバムとしては8年ぶりとなる10作目。
スパニッシュギターに表現豊かな歌声を乗せ、うっすらとしたシンセにチェロやヴァイオリンのアレンジで、哀愁の美に包まれたサウンドを描く、1曲目から引き込まれる。
崇高な気品と母性とを併せ持ったロリーナの歌声は唯一無二で、やわらかなピアノをバックにしっとりと歌い上げるナンバーなども素晴らしい。
バグパイプやトランペット、混声合唱も加わったオーケストラルで雄大なナンバーも感動的だ。単なるケルトの枠を超えた傑作である。
アコースティック度・8 幻想度・8 女性Vo度・10 総合・8.5 過去作のレビューはこちら
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Mediaeval Baebes 「Temptation」
イギリスの女性Voアンサンブル、メディーヴァル・ベイブスの2010年作
1997年デビュー、本作は過去の楽曲を現在の6人のメンバーでセルフカヴァーした、2枚組のコンピレーション。
アコースティックギターやマンドリンのつまびきにホイッスルの音色、女性シンガーたちの優美な歌声を重ねて、優雅で牧歌的なサウンドを描く。
中世音楽の素朴さを残しながらも、どこか童話的な幻想性も感じさせ、美しい歌声が響き渡る、典雅な古楽フォークとしても楽しめる。
全体を3章に分け、Disc1を「Heavenly Delights」「Worldess Blysse」、Disc2を「Paradise Lost」として、テーマごとに楽曲を連ねた構成も見事。
パーカッシブでフルートも鳴り響く、アラビックな民族色も含んだDisc2は、神秘的な土着感も垣間見せるなど、なかなか聴きごたえありだ。
アコースティック度・9 優雅度・9 女性Vo度・8 総合・8
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TVINNA 「TWO - WINGS OF EMBER」
ドイツ&スイスのネオフォークロック、トヴィナの2023年作
FAUNのシンガー2人と、Cesairの女性シンセ奏者によるプロジェクトで、Eluveitieのギターとドラムも参加している。
タイトなドラムにうっすらとしたシンセとギターを重ね、美しい女性ヴォーカルを乗せて、モダンなフォークロックを展開。
ドラムやギターにはわりとハード硬質感があるので、スタイリッシュなサウンドは優美なフォーク系プログレとしても楽しめるだろう。
フォーキーな土着性よりは、ラジカルなモダンさが強めなので、FAUNの幻想性を期待するとやや肩透かしか。
ドラマティック度・7 幻想度・7 女性Vo度・7 総合・7.5
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Elane 「Blackvale」
ドイツのネオフォーク、エラーネの2022年作
2004年にデビューし、7作目となる。うっすらとしたシンセの重ねに、パーカッションのリズム、美しい女性ヴォーカルを乗せた幻想的なネオフォークサウンド。
男性声も乗せた牧歌的なフォーク感触も覗かせつつ、ときにドラムや叙情的なギターも加わってのロック感触もあったり、チェロやヴァイオリン、ティンホイッスルなどが優雅な音を響かせるなど、楽曲ごとのアレンジも多彩。
“Scar Borough Fair”のカヴァーなども優美な聴き心地で、ケルト、フォーク、コンテンポラリーが融合された、スタイリッシュなネオフォークが楽しめる。
ドラマティック度・7 幻想度・8 女性Vo度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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CUELEBRE 「DIJARA」
スペインのネオフォーク、クエレブレの2020年作
2014年にデビューし、3作目となる。パーカッションのリズムにアコースティックギター、素朴なハーディ・ガーディ、ホイッスルの音色に、美しい女性ヴォーカルを乗せて、メディーヴァルな世界観に包まれたトラッド・フォークを聴かせる。
ほぼアコースティック楽器がメインながら、リズムアンサンブルもしっかりあり、厚みのある音数とともに幻想的な空気を描きだす、演奏面の実力も見事。、
無骨な男性声の語りを乗せたラストナンバーも雰囲気たっぷりで、シアトリカルなイメージでアルバムを締めくくる。
アコースティック度・9 幻想度・8 女性Vo度・8 総合・8
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An Danzza 「Cancion De Los Juncos」
スペインのネオフォーク、アン・ダンザの2011年作
男女のデュオで、2020年にデビュー、本作は2作目となる。物語的なコンセプト作で、スペイン語による男性の語りを含むイントロから、アコースティックギターにホイッスルの音色、スペイン語のなよやかな女性ヴォーカルとともに、優雅なサウンドを描いてゆく。
オペラティックなソプラノを使い分ける女性シンガーもなかなか魅力的で、やわらかなハープやアコーディオン、ときにシンセも重ねた優美でシネマティックな雰囲気にも包まれる。
SEや語りの入った小曲を何度もはさむので、曲だけ聴きたい向きにはわずらわしいか。ケルティック・フォーク・オペラとして楽しむのがよいのかも。
ドラマティック度・8 幻想度・8 女性Vo度・8 総合・7.5
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Anna Halldorsdottir 「Here」
アイスランド出身の女性SSW、アンナ・ハルドルスドティアーの2010年作
1996年にデビュー、12年ぶりとなる3作目。アコースティックギターのつまびきに優美なピアノ、コケティッシュなヴォーカルを乗せた、しっとりとした味わいのサウンド。
弾き語り的なシンプルの音数のナンバーでも、チェロやアコーディオンなどがさりげなく入ってきて、彼女のアレンジセンスも感じさせる。
2〜4分前後の歌ものがメインで、素朴で涼やかな空気を描くのは、アイスランドのお国柄か。シンセなどが使われていないので、プログレファンにはやや退屈か。
アコースティック度・8 素朴度・8 女性Vo度・7 総合・7
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Al Andaluz Project 「Deus Et Diabolus」
ドイツ&スペインのトラッドバンド、アル・アンダルース・プロジェクトの2007年作
中世イベリア半島で、イスラム教、ユダヤ教、キリスト教の人々が共存したアンダルース時代の音楽を蘇らせるというコンセプトで、Estampieのメンバーを中心に、L'Ham De Focの女性シンガーが参加。
タブラやサントゥールのリズムに、サズやハーディ・ガーディやカーヌーンの優雅な響き、アラブ語やスペイン語をまじえた女性ヴォーカルの歌声で、アラビックなトラッドサウンドを聴かせる。
3人の女性シンガーが、ときに美しいソプラノをまじえて歌い上げつつ、民族楽器を主体にしたアンサンブルで、異国的な空気感をコンテンポラリーに表現している。
アコースティック度・9 アラビック度・8 女性Vo度・8 総合・8
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Al Andaluz Project 「Al-Maraya」
ドイツ&スペインのトラッドバンド、アル・アンダルース・プロジェクトの2010年作
2作目となる本作も、アンダルース時代のトラッド曲を中心に、サズやサントゥール、ハルモニウムやフルート、ヴァイオリンも加わり、アラビックな女性ヴォーカルが歌い上げる、中近東的トラッドサウンドを聴かせる。
3人の女性シンガーの魅力的な歌声を前に出した優雅な感触と、パーカッションのリズムともにアッパーな祝祭感を描くようなノリの良さも覗かせる。
中世イベリア半島のアンダルシアのトラッドを現代的に解釈した、異国情緒に溢れた、全65分という力作です。
アコースティック度・9 アラビック度・8 女性Vo度・8 総合・8
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Mara Aranda & Solatge 「Deria」
スペインの女性シンガー、マーラ・アランダをフロントにしたユニットの2010年作
L'Ham De Focの女性シンガーが参加。ブズーキ、ハーディ・ガーディの素朴な音色に、優美なハープ、アラビックな女性ヴォーカルが歌い上げる、アンダルシアらしいトラッドサウンド。
リュートやシトルのつまびきに、ドゥルザイナ(木管楽器)、モラハルパ、ガイダ(バグパイプ)といった古楽器も取り入れた、中世を思わせる暖かみのあるアコースティックアンサンブルで、幻想的な聴き心地に包まれる。
アコースティック度・9 アラビック度・8 女性Vo度・8 総合・8
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Vainica Doble 「Contracorriente」
スペインのフォークロック、ヴァイニカ・ドーブルの1976年作
女性2人によるデュオで、牧歌的なギターに、スペイン語による2人の女性ヴォーカルを乗せ、ドラムも加わった優雅なフォークロックを聴かせる。
サイケなギターにオルガンが重なるあたりは、プログレ寄りのアシッドフォーク風という感じでも楽しめ、妖しい女性スキャットもいい味わいだ。
GRANADAのカルロス・カルカモがゲスト参加して、マンドリンとヴァイオリンを奏でているのも注目である。
スパニッシュな哀愁とユルめのアシッド感が同居した、女性声フォークロックの好作です。
ドラマティック度・7 アシッドフォーク度・8 女性Vo度・7 総合・7
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ESTAMPIE 「Crusaders」
ドイツのネオフォーク、エスタンピーの1996年作の復刻版。2024年作
タイトル通り十字軍時代、12〜13世紀のトラッドのモチーフにした作品で、グレゴリアンチャント風で幕を開け、アコースティックギターのつまびきに美しい女性ヴォーカル、勇壮な男性コーラスなどで、メディーヴァルな世界観を描く。
優美なハープや艶やかなフィドル、アコーディオンやパーカッションの響きとともに、素朴な幻想性に包まれたサウンドは、ドイツ語による朗々とした男性ヴォーカルと女性声が合わさって、中世風フォークというべき味わいである。
アコースティック度・9 メディーヴァル度・8 女性Vo度・7 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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ESTAMPIE 「ONDAS」
ドイツのネオフォーク、エスタンピーの2000/2008年作
2000年作のジャケを変えての再発版で、パーカッションにトロンボーン、サズ、ハープのつまびきなどを重ね、ガリシア・ポルトガル語の美しいソプラノヴォーカルで、しっとりと幻想的なトラッド・フォークを聴かせる。
アコースティックによるメディーヴァルな古楽フォークであるが、随所にドラムも入っての厚みのあるアンサンブルに、トロンボーンの響きも味になっていて、ほどよくコンテンポラリーなアレンジで楽しめる。
ときに男性コーラスも加わって、厳かな混声チャント風の味わいも含め、中世ヨーロッパの世界観を表現したような好作品です。
アコースティック度・9 メディーヴァル度・8 女性Vo度・8 総合・7.5
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Citania 「Segredos Do Mar」
ポルトガルのトラッド・フォーク、シターニアの2011年作
軽やかなドラムに、アコーディオンやギターのつまびきを重ね、ポルトガル語の伸びやかな女性ヴォーカルで、優雅なトラッドフォークを聴かせる。
美貌のシンガー、クラウディア嬢の歌声も艶めいて魅力的で、ときにた男性声も加わりつつ、もの悲しいチェロの音色が、ポルトガルギターに重なると、地中海的な哀愁の叙情に包まれる。
バグパイプが鳴り響き、ストリングスも重なるシンフォニックなケルト風味もよろしく、しっとりとした女性声にウットリの好作品。
アコースティック度・9 優雅度・8 女性Vo度・8 総合・8
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6/7
北欧プログレとジャズロ(184)

ZOPP
イギリスのジャズロック、ゾップの2020年作
マルチプレイヤーのライアン・スティーヴェンソンを中心としたバンドで、イタリアのLeviathanのドラムが参加、アンディ・ティリソン(The Tangent)がシンセで、テオ・トラヴィスがフルートでゲスト参加している。
軽やかなリズムにオルガン、メロトロンを含むヴィンテージなシンセとギターを乗せて、HATFIELD & THE NORTHやNATIONAL HEALTHなど、古き良きカンタベリー風味を継承した優雅なジャズロックを展開する。
鍵盤をメインにしながらも、メロウなギターの旋律も随所に効いていて、やわらかな叙情に包まれながら、ほどよくスリリングなアンサンブルが楽しめる。
オールインストなので、ドラマティックな盛り上がりはさほどないが、現代風に再構築されるカンタベリーなジャズロックは非常に高品質。
ジャズロ度・8 カンタベ度・8 優雅度・9 総合・8
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ZOPP 「DOMINION」
イギリスのジャズロック、ゾップの2022年作
2作目となる本作は、優美なエレピにホルンの音色、女性のスキャットヴォーカルの乗せて、チェンバー感触もある妖しくも優雅なサウンドが広がってゆく。
叙情的なギターの旋律にシンセが重なると、シンフォプログレ風にもなりつつ、スリリングなジャズロックとしても前作以上で、緩急自在のアンサンブルが光る。
やわらかなオルガンにサックスが鳴り響く、オールドなプログレ風味は、単なるカンタベリーの再現という以上のスタイリッシュな構築性も感じさせる。
ラストは14分の大曲で、男性ヴォーカルを乗せてのキャッチーなパートと、軽妙な偏屈さが交差する、ダイナミックな展開力で楽しめる。優雅にして濃密な傑作です。
ジャズロ度・8 プログレ度・8 優雅度・9 総合・8
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The New Empire 「Second Lifetime」
アメリカのプログレバンド、ニュー・エンパイアの2020年作
The Syn、Yes、 Flashで活躍したピーター・バンクスが結成した、Empireのドラマー、マーク・マードックと、アメリカ人ミュージシャン、Fernando Perdomoを中心にしたバンド。
叙情的なギターにハスキーな女性ヴォーカルを乗せ、きらびやかなシンセとともに、オールドな味わいのプログレ・アートロックを聴かせる。
ときにブルージーにときに泣きのフレーズを奏でる、フェルナンド・ペルドモのギタープレイも素晴らしく、オルガンなどのヴィンテージな味わいと、女性シンガーによる優雅な耳心地が楽しめる。
楽曲は3〜5分前後が主体で、わりとシンプルなのだが、後半には7〜8分の長曲もいくつかあり、軽快なアンサンブルとプログレ的な展開力も覗かせる。
YesEmpireのカヴァーを含む、オマージュ的な作品ともいえるだろうが、全14曲、72分という大ボリュームの力作です。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・8 総合・8
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AGUSA「PRIMA MATERIA」
スウェーデンのサイケプログレ、アグサの2023年作
2014年にデビューし、2作目から女性フルート奏者を含む編成となり、本作はすでに6作目となる。アコースティックを含む叙情的なギターにエレピやオルガン、やわらかなフルートの音色を重ねて優雅なインストサウンドを展開。
初期のころのサイケかがかった土着性も残しつつ、ジャズロック的でもある軽妙なアンサンブルとともに、いくぶんスタイリッシュな聴き心地に変化している。
10分を超える大曲が3曲続くが、濃密になりすぎないほどよいユルさと、北欧らしい涼やかな空気感で、わりとゆったりと楽しめるのもポイント。
ギターやオルガンによるメロウなフレーズと吹きならされるフルートが、優雅でヴィンテージな味わいで、ラストまで優しい耳心地の良さで楽しめる。
ドラマティック度・7 プログレ度・8 北欧度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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JORDSJO「Salighet」
ノルウェーのプログレバンド、ヨルドショの2023年作
2015年にデビューし、5作目となる。オルガンにフルートが鳴り響くイントロから、すでにヴィンテージ感がたっぷりで、変拍子を含むリズムにギターを乗せて、母国語のヴォーカルとともに、北欧らしいプログレを展開。
ピアノやフルートによる繊細な優美さと、土着的なフレーズを奏でるギターフレーズで涼やかな叙情を描くあたりは、ANGLAGARDKERRS PINKなどにも通じるが、こちらはより北欧の空気を感じさせる。
ときに軽妙に、ときに静謐観も覗かせながら、緩急ある展開で構築されるアレンジセンスも見事。ラストの10分の大曲は、しっとりと優雅な叙情美にうっとりとなる。これぞ北欧プログレという傑作です。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 北欧度・10 総合・8.5 過去作のレビューはこちら
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CHRONICLES OF FATHER ROBIN「The Songs & Tales Of Airoea - Book 1」
ノルウェーのプログレバンド、クロニクルズオブ・ファーザー・ロビンの2023年作
WOBBLER、Fangorn、THE SAMUEL JACKSON FIVEのメンバーによるバンドで、WOBBLERのラーシュ・フレドリック・フロイスリー、JORDSJOのシンセ奏者などがゲスト参加。
ノルウェーの神話/ファンタジー小説に着想を得た、ファーザー・ロビンの旅を描いたコンセプトストーリーの第1章。
優雅なチェンバロにジェントルな歌声を乗せたイントロ曲から、軽やかなリズムにオルガンやメロトロン、フルートが鳴り響き、北欧らしい涼やかな空気に包まれたヴィンテージなサウンドが広がる。
アコースティックなパートなどを織り込みつつ、物語的な流れで展開してゆく大曲は、ときに静かに、ときにアッパーにと緩急あるアレンジで構築される。
いくぶんのサイケ感とともに幻想的な世界観を描き出す、BEARDFISHあたりにも通じるヴィンテージな北欧プログレが楽しめる逸品。よりサイケな2作目へつづく。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 北欧度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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PIXIE NINJA 「HYPNAGOGIA」
ノルウェーのプログレバンド、ピクシィ・ニンジャの2023年作
エクスペリメンタルメタルバンド、Rusty Crownのメンバーを中心に結成、元ANGLAGARDのマティアス・オルソンも参加し、2017年にデビュー、本作は3作目となる。
メロトロンなどのヴィンテージなシンセにエフェクトを加えたアレンジと、サックスが鳴り響く哀愁の空気が同居し、デジタルとアナログが錯綜する不思議なサウンドを描き出す。
北欧らしい翳りを帯びた涼やかな味わいに、80年代的というかオールドなデジタル感触が絶妙に融合したスタイルで、ときにインダストリアスな硬質感も覗かせるあたりもクールなセンスである。
ラストの9分の大曲は、マティアスのロックなドラムにメロトロンとギターが重なり、クラウト風のサイケでフリーキーなサウンドを展開。古くて新しいという逸品です。
ドラマティック度・7 プログレ度・8 アレンジセンス・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Ring Van Mobius 「Commissioned Works Pt Ii - Six Drops Of Poison」
ノルウェーのプログレバンド、リング・ヴァン・モービウスの2023年作
2018年にデビュー、シンセ、ベース、ドラムのトリオ編成で、本作は3作目となる。優美なピアノにメロトロンを含むシンセ、情感的なヴォーカルを乗せて、スペイシーな味わいのサウンドを展開。
軽やかなドラムを中心にしたアナログ感あるアンサンブルと、オルガンなどのヴィンテージな感触はEL&P的でもあり、70年代のバンドのような怪しさも感じさせる。
ピアノをバックにエモーショナルな歌声を乗せる小曲など、緩急あるコンセプト的な流れとともに楽曲を連ねてゆく作風で、大曲こそないのだが神秘的なスケール感を描き出す。
手数の多いドラムにムーグシンセが鳴り響くあたりもたまらない。オールドな味わいの鍵盤プログレ好きなら必聴の内容です。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 ヴィンテージ度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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LAUGHING STOCK 「SONGS FOR THE FUTURE」
ノルウェーのプログレバンド、ラフィング・ストックの2023年作
2018年にデビューし、5作目。前作は「ZERO」という連作によるコンセプト作品であったが、本作はジャケのイメージのように、80年代ポップロック風のアルバムとなっている。
軽やかなリズムに優美なシンセ、ジェントルなヴォーカルに、ピアノやトランペットやサックスも加わって、優雅でキャッチーなメロディックロックを聴かせる。
シンプルなAOR風味の中にも、北欧らしい涼やかな味わいはあるので、ゆったりとした歌ものナンバーなども、わりと耳心地よく楽しめる。
プログレ的な展開というのはあまりないのだが、やわらかなシンセも含めて、キャッチーな北欧ロックが味わえる好作だ。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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Utopian Fields 「White Pigeon, You Clean...」
ノルウェーのプログレバンド、ユートピアン・フィールズの1990年作
1989年にデビュー、前作はKERRS PINKなどにも通じる繊細な好作品であったが、2作目の本作は、オルガンに叙情的なギターを乗せ、ジェントルなヴォーカルとともに、優雅で涼やかなサウンドを描く。
巧みなドラムを中心に、軽やかなリズム展開には知的なセンスも漂わせ、90年代的なスタイリッシュ構築性も感じさせる。
ハードな重厚さがないので、シンフォとしては物足りなさもあるのだが、うるさすぎない音数で素朴な叙情を聴かせるあたりは玄人好み。
10分を超える大曲を4曲も揃えた力作でもあるが、野暮ったさを卒業した、北欧ネオプログレの先駆け的な好作といえるだろう。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら


The Tronosonic Experience 「The Shadow Vol.2」
ノルウェーのジャズロック、トロノソニック・エクスペリエンスの2022年作
2017年にデビューし、4作目。前作の続編となる作品で、グルーヴィなドラムとベースにフリーキーなギターとサックスが鳴り響く、スリリングなヘヴィ・ジャズロックを展開。
12分の大曲では、ノイジーでダークなヘヴィネスが不穏な空気を描き出し、ミステリアスなアヴァンロックとしても聴けるだろう。
サウンドスケープ的なギターにサックスが重なるクリムゾン的な感触もあって、オールインストであるが、緊張感あるアンサンブルで、エクスペリメンタルなジャズロックが楽しめる。、
アヴァンギャル度・8 ジャズロ度・7 ミステリアス度・8 総合・8
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ERIK WOLLO「WIND JOURNEY」
ノルウェーのミュージシャン、エリク・ウォーロの2001年作
1983年にデビュー、本作は9作目あたり。ジャケのように気球の旅をテーマにした作品で、ゆったりとしたメロウなギターの旋律にデジタルなシンセを重ねて、幻想的なサウンドを描く。
KLAUS SCHULZEのようなスペイシーなシンセサウンドであるが、ギターが入ることで人間的な温かみと、叙情的なメロディの流れが感じられる。
アルバム中盤は、“Seasons Suite”と題された組曲となっていて、涼やかなシンセの重ねにアコースティックを含むギターで、繊細な叙情美に包まれる。
シーケンサー的なデジタルなリズムがトリップ感を誘いつつ、小曲を連ねた全70分、北欧らしい翳りを帯びたシンセサウンドに浸れます。
ドラマティック度・7 幻想度・8 優美度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Klaus Schulze 「In Blue」
ジャーマンシンセミュージックの巨匠、クラウス・シュルツェの1995年/2005年作
90年代のシュルツェの作品はデジタル化が進んでいるのだが、本作は青をテーマに、Disc1「Into The Blue」、Disc2に「Return Of The Tempel」、「Serenade In Blue」と題された、3部構成の長大な組曲となっている。
うっすらとしたシンセがゆったりと涼やかでアンビエントなサウンドを描きつつ、シーケンサーによるリズムも加わって、70年代の頃のような透明感のある幻想的な世界観に包まれる。
Disc2では、マニュエル・ゲッチングが参加していて、重ねられたシンセをバックにメロウなギターを響かせる。優美なシンセミュージックにギターが加わり、わりと初心者にも楽しめるだろう。
2005年再発盤ボーナスのDisc3には、本作に関連するライブ音源を収録。Disc1&2の続編的な大曲が演奏される。
ドラマティック度・7 幻想度・8 シンセ度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Klaus Schulze「La Vie Electronique 14」
ジャーマンシンセミュージックの巨匠、クラウス・シュルツェの2013年作
未発音源集その14で、Disc1には「Opera Trance」と題された、1997年の音源、Disc2には1993〜2000年までの音源、Disc3には「Tradition And Vision」と題された、1997年の音源を収録。
「Opera Trance」は、オーケストラ風のアレンジをデジタルシンセに重ね、サンプルヴォイスがオペラティックな味わいとなって響く。シーケンサーによるビート感もあり、わりとアッパーな感触も含んだ優雅な作風。
Disc2はコンピレーション用の曲や、映画サントラ用の曲などを収録。デジタルなビート感触から、クラシカルなスケール感まで、楽曲ごとのテーマでわりと雑多に楽しめる。
Disc3は、幻想的な静謐観に包まれた大曲や、いかにもデジタルなシンセサウンドと、いくぶん地味な味わいなので、やや未発感の強い内容か。
ドラマティック度・7 幻想度・7 シンセ度・8 総合・7.5
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5/16
5月のプログレ(170)

Robert Fripp 「Exposure」
KING CRIMSONのロバート・フリップの1979/2021年作
ソロとしては初の作品で、70年代クリムゾンが終焉を迎え、フリップがアメリカに移住していた時期の作品。2021年スティーヴン・ウィルソンによるニューミックス盤。
フィル・コリンズ、ピーター・ガブリエル、ダリル・ホール、ピーター・ハミル、トニー・レヴィン、ブライアン・イーノなど、名だたるゲストが参加。
ファンキーなテイストのポップナンバーに面食らうが、3曲目以降は硬質なギターとスリリングなアンサンブルで、80年代クリムゾンへとつながる聴き心地。
ピーター・ハミルによるヴォーカルがシアトリカルな空気を描いたり、ダリル・ホールがアダルトな歌声を乗せるブルージーなナンバー、女性シンガーのテリー・ローチがエキセントリックな歌声を響かせるなど、それぞれに味わいがある。
2〜4分前後の小曲を連ねた作風で、時代的にもニューウェイブの雰囲気も取り入れているが、フリップの精神性をしっかりと感じさせるサウンドである。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 クリムゾン度・8 総合・8
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Karnataka 「Requiem For A Dream」
ウェールズ出身のシンフォニックロック、カルナタカの2023年作
1998年にデビュー、6作目となる本作は、イアン・ジョーンズ以外のメンバーが抜けて、実質ソロプロジェクトのようになっている。
女性シンガーも交替し、ギターにはルーク・マシン(The Tangent)が参加、トロイ・ドノクリー(Nightwish)がイーリアンパイプ&ホイッスルでゲスト参加している。
11分の大曲で幕を開け、優美なシンセアレンジにほどよくハードで叙情的なギター、伸びやかな女性ヴォーカルを乗せ、清涼なシンフォニックロックを聴かせる。
新加入のSetariの歌声は、随所にソプラノを使ったフェミニンな声質が魅力的で、キャッチーな叙情ナンバーなども含めて、楽曲を艶やかに彩っている。
ラストは25分におよぶタイトル曲で、やわらかな叙情と重厚さのコントラストで、なよやかな女性声にイーリアンパイプも鳴り響く、美麗なケルテイック・シンフォを構築する。
シンフォニック度・8 プログレ度・7 女性Vo度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Karfagen「Messages From Afar: The Working Tapes」
ウクライナのプログレバンド、カルファゲンの2024年作
2017年作に関連する未発音源集で、きらびやかなシンセワークと、オーケストラルなアレンジ、叙情的なギターの旋律とともに優雅なシンフォニックロックを聴かせる。
CAMELばりの泣きのギターや、女性ヴォーカルを加えた優美なパート、しっとりとしたアコースティカルな小曲なども耳心地よく、まさに円熟の作風が楽しめる。
本作のハイライトである21分という大曲では、プログレらしいカラフルなシンセを重ねて、ダイナミックな展開力で緩急あるインストパートを華麗に構築してゆく。
ボーナスとして、ギタリストであるマックス・ヴェリチコのソロ作品からの未発音源を追加収録。アコースティックなナンバーなども味わいがある。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 優美度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Antony Kalugin 「Chameleon Shapeshifter」
ウクライナのミュージシャン、アントニー・カルギンの2021年作
KarfagenSunchildとは別に、多数のソロ作品も発表し続けるのだから恐れ入る。本作は同年発表の「STELLAR GARDENER」に続く3部作の完結編。
19分の大曲“Chameleon”は、優美なシンセークに繊細なピアノ、メロウなギターにより、幻想的なシンフォプログレを構築。
ほぼオールインストではあるが、プログレらしい緩急ある展開がスリリングで、ときにフルートなども加わり優雅な叙情に包まれる。
やわらかなサックスが大人の哀愁を描くナンバーや、CAMELばりの泣きのギターも現れて、シンフォ好きにはたまらない。
ラストはマイルドなヴォーカル入りで、派手さはないものの、どこを切っても優美で繊細な耳心地のよさにウットリとなる逸品です。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 優美度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Antony Kalugin Project 「A Message Of Peace Tour - Karfagen /Sunchild/ Hoggwash」
ウクライナのミュージシャン、アントニー・カルギンによるプロジェクト、AKPのライブ。2023年作
2022年のオランダでのライブ収録。2人の女性シンガーを含む6人編成で、自身が率いる3バンドの楽曲を演奏。
優美なピアノとシンセに叙情的なギター、マイルドなヴォーカルに女性ヴォーカル加えて、やわらかなシンフォプログレを聴かせる。
中盤は、Sunchildのナンバーが続き、ゆったりとした幻想的なサウンドを、重くなりすぎない優雅なアンサンブルで再現してゆく。
終盤は、Karfagenの初期のナンバーなどもあって、繊細な叙情美に包まれる。全12曲77分収録。
ライブ演奏・8 プログレ度・7 優美度・9 総合・8 去作のレビューはこちら
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Hoggwash 「The Last Horizon」
ウクライナのプログレバンド、ホグワシュの2007年作
KarfagenSunchildなどで活躍する、アントニー・カルギンを中心にしたプロジェクトで、美しいシンセと叙情的なギターが重なり、マイルドなヴォーカルとともに、ゆったりとしたシンフォプログレを聴かせる。
のっけから15分の大曲で、ときにアコースティックギターやフルートやオーボエの音色に、ヴァイオリンなどのストリングスも加わって、繊細で優雅な叙情に包まれる。
中盤にも、9分、10分という大曲が多数あり、PENDRAGONにも通じるような泣きのギターも含めて、ロマンの香りをまとった王道のシンフォニックロックが味わえる。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 叙情度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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SOLARIS 「Marsbeli Kronikak III / Martian Chronicles III」
ハンガリーのプログレバンド、ソラリスの2022年作
1984年のデビュー作「火星年代記」は、80年代東欧プログレの傑作とされる。2014年に続編となる「火星年代記 II」を発表。本作は「火星年代記 III」に先駆けた4曲入りのEP。
コラー・アッティラの吹く、優雅なフルートの音色にオルガンやピアノを含むシンセとギターを重ね、濃密な味わいの東欧らしいシンフォプログレを展開する。
チェロとフルートによるクラシカルな小曲から、11分を超えるタイトル曲では、アコースティックギターを用いた牧歌的な導入から、カラフルなシンセにフルートが鳴り響き、軽やかで優美なサウンドが広がる。
往年のソラリスらしさをしっかり継承した作風で、2枚組の力作となったフルアルバムの方もチェックせねばならないだろう。
クラシカル度・8 プログレ度・8 濃密度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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VAST CONDUIT「ALWAYS BE THERE」
アメリカのプログレバンド、ヴァスト・コンダートの2021年作
ENCHANTやTHOUGHT CHAMBERで活躍する鍵盤奏者、ビル・ジェンキンス率いるバンドで、きらびやかなシンセアレンジに巧みなギターを重ね、マイルドなヴォーカルを軽やかなアンサンブルに乗せた、優雅なハードプログレを聴かせる。
クラシカルなピアノにヴァイオリンが絡み、女性コーラスも加わった優美な感触と、ProgMetal的でもあるテクニカルなスタイリッシュ性が同居していて、エンチャントあたりに通じるだろう。
楽曲は5〜6分前後が主体で、ゆったりとした叙情ナンバーから、フュージョン風味や、トランペットが鳴り響く軽妙なインストまで、確かな演奏力で描かれるサウンドを楽しめる。
ドラマティック度・7 テクニカル度・8 叙情度・8 総合・8
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CHAOS AND THE COSMOS 「OUR SONG」
アメリカのアートロック、カオス・アンド・ザ・コスモスの2023年作
マルチミュージシャンのポール・ランガーと、MOON LETTERSのジョン・アルディによるユニットで、優美なピアノに艶やかなストリングス、マイルドなヴォーカルとともに、70年代ルーツの牧歌的なアートロックを聴かせる。
アコースティックを含むどこか野暮ったいギターの旋律も、オールドな感触をかもしだし、THE MOODY BLUESや、BARCLAY JAMES HARVESTのような、優しく繊細な叙情に包まれる。
プログレ的な展開はさほどないのだが、ラストは13分におよぶ大曲で、ピアノやオルガンにストリングスが重なるシンフォニックな優雅さと、泣きのギターに歌い上げるヴーカルでじわりと盛り上げる。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 叙情度・8 総合・7.5
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Rani Chatoorgoon 「Samsara」
カナダの女性アーティスト、ラニ・チャトールゴーンの2016年作
ヴァイオリンにシタール、サントゥールなどの異国的なつまびき、艶めいた女性ヴォーカルにギターも加えて、中近東風味のハードシンフォを聴かせる。
ハードなギターはときにメタリックな感触で、美麗なシンセアレンジと叙情的なギターが重なると、女性声のシンフォニックメタルとしても楽しめる。
ヴァイオリンを含むストリングスと、タブラなどのパーカッシブなリズムにギターが合わさった重厚なバックに、美しい女性ヴォーカルが映えて、神秘的な壮麗さに包まれる。
一方では、キャッチーなシンフォポップ風のナンバーでは、KARNATAKAのような、ケルティック・シンフォの味わいもあってウットリです。
魅力的な女性Voの民族シンフォニック・ハード。全69分という、ボリューム的にも聴きごたえある力作です。
シンフォニック度・8 プログレ度・6 女性Vo度・8 総合・8
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Verbal Delirium 「From The Small Hours Of Weakness」
ギリシャのハードプログレ、ヴァーバル・デリリウムの2013年作
2010年にデビューし、2作目となる。軽やかなリズムにきらびやかなシンセとギターを重ね、ほどよいハードさを含んだモダンでスタイリッシュなサウンドを聴かせる。
優美なピアノにマイルドなヴォーカルを乗せた、繊細な叙情を描くポストプログレ風のパートから、サックスが鳴り響くジャズロック風味などは、The Tangentあたりが好きな方にも楽しめるかもしれない。
ラストは12分の大曲で、スペイシーなシンセにギターが絡み、サイケデリックで怪しげなスケール感に包まれる。ひと味違う異色のモダンプログレ作品です。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 優雅度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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QUANAH PARKER「QUANAH!」
イタリアのプログレバンド、クアナ・パーカーの2012年作
ヴェネチア出身のバンドで、結成は1980年代ながらアルバムを残さずに解散、その後復活して本作がデビューアルバムとなる。
優美なピアノのイントロから、美しいシンセに女性ヴォーカルの歌声、メロウなギターとともに、優雅なシンフォプログレを聴かせる。
オルガンなどのヴィンテージな感触に、やわらかな女性声にはいくぶんのヘタウマ感もありつつ、軽やかなアンサンブルとキャッチーな耳心地は、MAGENTAをマイナーにした雰囲気もある。
楽曲は、3〜7分前後と長すぎず、ほどよくプログレ的な展開も含んで、女性声シンフォ好きならけっこう楽しめだろう。
ドラマティック度・7 プログレ度・8 優雅度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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Fish on Friday 「Shoot the Moon」
ベルギーのプログレバンド、フィッシュ・オン・フライデイの2010年作
2023年までに6作を発表しているバンドの、これがデビュー作品。80年代的なビートに適度にハードなギターときらびやかなシンセを重ね、ジェントルなヴォーカルとともに、古き良きプログレハードを聴かせる。
爽快なメロディアス性にはほどよくポップな感触もありつつ、随所に泣きのギターとシンフォニックなシンセアレンジに包まれて、総じて優美な耳心地で楽しめる。
楽曲は4〜5分前後で、プログレらしい展開はあまりないのだが、キャッチーなメロディックロックをより美麗に仕立てあげたという作風はすでに本作で確立している。
メロディック度・8 プログレ度・7 優美度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Panzerballett
ドイツのテクニカル・ジャズロック、パンツァーバレットの2005年作
サックス奏者を含む4人編成でのデビューアルバム。軽やかなドラムに存在感のあるベース、優雅なサックスが鳴り響く、ジャズロックを聴かせる。
メタリックなギターが加わると、とたんにハード感触になるが、のちの作品のような超絶なヘンタイ性はまだ控えめなのでで、ハードなジャズロックとして普通に楽しめる。
後半にはテクニカルなナンバーも覗かせて、のちのアヴァンギャルドなメタルジャズロックへの深化を感じさせる。
テクニカル度・8 プログレ度・7 メタルジャズロ度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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4/25
GWはプログレで(156)

LUCIFER WAS 「EN FIX FERDIG MANN」
ノルウェーのヴィンテージロック、ルシファー・ワズの2024年作
結成は70年代ながらアルバムを残さず解散、その後再結成し、1997年にアルバムデビュー、本作は7年ぶりの8作目となる。
適度にハードでブルージーなツインギターにオルガンを含むシンセ、母国語によるジェントルなヴォーカルで、ヴィンテージな北欧ロックを聴かせる。
今作は全編ノルウェー語で歌われていて、叙情的なギターとともに、涼やかな土着性がオールドなロックの哀愁を包み込む。
朗々と歌い上げるヴォーカルに女性コーラスも重なり、優美なピアノやメロトロンなども加わった厚みのあるサウンドは、シアトリカルでドラマティック。
プログレ的な展開はあまりないが、涼やかな哀愁の美学を感じさせる、URIAH HEEPを北欧プログレにしたような逸品です。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 ヴィンテージ度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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JOHN LONNMYR「AFTONLAND」
スウェーデンのシンセ奏者、ジョン・ロンミュールの2023年作
Valinor's Treeなどで活躍、近年はThe Night Flight Orchestraにも参加するシンセ奏者で、ソロとしては初の作品となる。
オルガンやメロトロンを含むヴィンテージなシンセを中心に、ゲストによるギターも重ねて、涼やかなインストサウンドを聴かせる。
優雅さの中に北欧的な土着感を描くあたりは、BJORN JOHANSSONなどに通じる雰囲気で、ほどよくプログレらしいリズム展開もある。
ローズピアノにオルガン、メロトロンが重なるやわらかな叙情美は、オールドなキーボード好きにはたまらないだろう。
女性スキャットが美しい歌声を乗せるラスト曲まで、北欧の空気感をヴィンテージに楽しめる好作品です。
キーボー度・8 プログレ度・7 北欧度・8 総合・8
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Art Deco 「Turhat Tarinat」
フィンランドのプログレバンド、アート・デコの2023年作
2013年にデビュー、本作は10年ぶりとなる2作目となる。二本のギターにうっすらとシンセを重ね、母国語によるコケティッシュ女性ヴォーカルとともに優雅なサウンドを展開。
北欧らしい翳りを帯びた雰囲気は、PAATOSあたりにも接近したイメージでもあるが、ときにジャズロック寄りの軽妙なアンサンブルも覗かせる。
随所に叙情的なギターのフレーズとヘタウマ感のある女性シンガーが、妖しい空気をかもしだしていて、涼やかな優雅さというべき聴き心地である。
ラストは9分の大曲で優美なピアノとメロウなギターの旋律、美しい女性ヴォーカルで、シンフォプログレらしい泣きの叙情を描き出す。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Suomen Tulli 「Kukkola」
フィンランドのプログレバンド、スオメン・トゥリの2016年作
2012年にデビューし、3作目となる。繊細なトーンのギターにうっすらとしたシンセ、母国語によるヴォーカルを乗せて、ゆったりと涼やかなアートロックを聴かせる。
やわらかなオルガンに叙情的なギター、いくぶんサイケ的な浮遊感も描きつつ、北欧らしい優雅な土着感もなかなか耳に心地よい。
プログレ的な展開や盛り上がりはさほどないが、いくぶん翳りを帯びた牧歌的なフォークロックとしてものんびりと楽しめる。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 北欧度・8 総合・7.5
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Seppo Tyni 「Juhlet Suulissa - A Musical Night」
フィンランドのミュージシャン、セッポ・ティニの1995年作
THE GROUPやPEKKA POJOLA BANDなどで活躍したギタリスト、本作は初のソロアルバム。ロック的でブルージーなギターにオルガンが絡み、フリーキーなインストを展開。
ペッカを激しくしたようなジャズロックの聴き心地の中に、叙情的なフレージングも含めて、軽妙さとラウドさが同居したダイナミックなギタープレイは見事。
オルガンをたっぷりと使ったパートでは、THE NICEのような雰囲気も覗かせ、サックスが鳴り響くジャズ風味から、アコーディオンの音色が優雅なナンバーなど、ジャズとロックの融合の度合いもよろしく、おとなしいジャズロックが苦手な方にも楽しめるだろう。
ジャズロ度・8 プログレ度・7 優雅度・8 総合・8
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FOLQUE「LANDET DITT」
ノルウェーのフォークロック、フォルケの1981年作
1974年にデビュー、本作は5作目となる。チャーチオルガンによるイントロから、ロック的なギターに素朴なバンジョーの音色、艶やかなフィドルが重なり、優美なピアノに母国語による美しい女性ヴォーカルも加わり、涼やかな空気に包まれたフォークロックが広がってゆく。
フォーキーながらドラムとギターによるロック色もしっかりあるスタイルは、やはりSprigunsを思わせるが、土着的なギターの旋律はKebnekajseなどにも通じる北欧らしい味わいだ。
キーボードをメインにした小曲などは、プログレ的な味わいで、フィドルが鳴り響くトラッド風味など、北欧的なプログレが好きなら、かなり楽しめるだろう。
一部、男性ヴォーカル曲もあるが、魅力的な女性ヴォーカルをメインにした、プログ・フォークロックの逸品です。
ロック度・8 フォーク度・7 北欧度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら

FOLQUE 「Sort Messe」
ノルウェーのフォークロック、フォルケの1983年作
6作目となる本作は、初期のフォークロック路線から深化して、サウンドがぐっとポップでスタイリッシュになっている。
キャッチーなビート感とロック寄りのギターに、母国語の女性ヴォーカルを乗せて、ほどよい哀愁と北欧の空気を残した聴き心地。
牧歌的なバンジョーを乗せたカントリー風の味わいも覗かせつつ、ときに土着的なギターの旋律も現れて、80年代的なポップなロック感とのミックスが楽しめる。
楽曲は2〜3分前後といたってシンプル。全33分という短さである。本作がバンドのラスト作となった。
ロック度・8 フォーク度・6 北欧度・8 総合・7.5


VOYAGER IV 「PICTURES AT AN EXHIBITION」
ドイツのプログレバンド、ヴォイジャー・IVの2019年作
タイトル通りムソルグスキー「展覧会の絵」をアレンジした作品で、優美なピアノとシンセを軽やかなリズムに乗せて、ジャズタッチの作風で優雅なカヴァーを聴かせる。
枯れた味わいのヴォーカルを乗せた、大人の哀愁も含んだ味わいで、クラシックとジャズロックの要素を同居させたアレンジも良い感じだ。
EL&P“Lucky Man”、KING CRIMSON“風に語りて”のカヴァーも、どことなくグレッグ・レイクに通じるジェントルな歌声とともに、アダルトな仕上がりで楽しめる。
クラシカル度・8 ジャズロ度・8 優雅度・8 総合・8
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Atme 「Mantrakora」
ポーランドのプログレバンド、アトメの2021年作
2017年にアルバムデビュー、本作は5曲入りの2ndEPとなる。適度にハードで叙情的なギターに母国語によるヴォーカルを乗せ、モダンな翳りを帯びたサウンドを描く。
シンセ奏者がいないのでシンフォニックな感触は薄めで、プログレ的な展開もさほどないので、メランコリックな哀愁に包まれたポリッシュロックという聴き心地。
8分という大曲もあるが、Djent的な硬質感とともに、わりと歌もの感も強く、フックのある展開や盛り上がりもさほどないので、プログレ的には物足りないかもしれない。
ドラマティック度・7 プログレ度・6 哀愁度・8 総合・7
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Blank Manuskript 「Krasna Hora」
オーストリアのプログレバンド、ブランク・マヌスクリプトの2019年作
2008年にデビューし、4作目となる。いくぶんハードなギターにオルガンやピアノなどのシンセ、サックスも加わり、KING CRIMSON的でもあるスリリングなプログレを展開。
ミステリアスなインストパートと、叙情的なヴォーカルパートの対比もよろしく、先の読めない緊張感ある展開で聴き手を惹きつける。
15分という大曲では、静謐感ある序盤から、フリーキーなギターによるサイケロックな後半という、とらえどころのなさが楽しめる方には良いだろう。
サックス鳴り響くジャズロックの小曲から、「風に語りて」風のゆったりとした叙情パートを含んで展開する、9分の大曲などもニンマリである。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 スリリング度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Colin Bass 「Live at Polski Radio 3」
イギリスのミュージシャン、コリン・バースの2009年作
CAMELのベーシストとして知られるミュージシャンで、本作は1999年ポーランドでのライブを収録したCD2枚組。
QUIDAM、ABRAXASのメンバーがバックに参加、ドラムは元CAMELのデイヴ・スチュワートという編成で、軽やかなアンサンブルに優美なシンセにジェントルなヴォーカルで、CAMELのナンバーも披露。
QUIDAMの女性シンガーが加わっての男女ヴォーカルのナンバーや、やわらかなフルートの音色も美しく、繊細な叙情を描くあたりもウットリである。
1998年のソロ傑作「An Outcast of the Islands」からのナンバーは、メロウなギターと美麗なシンセによる爽快なシンフォニック性が素晴らしい。
ライブ演奏・8 プログレ度・7 叙情度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Slychosis 「Slychedelia」
アメリカのプログレバンド、スライコシスの2008年作
2006年にデビューし、2作目となる。「シェー」のおっさん風のジャケがいかにもB級臭いが、優美なシンセにいくぶんラウドなギター、マイルドなヴォーカルで、正統派のシンフォプログレを聴かせる。
ギターは随所にヘヴィなハードさと、叙情的なフレーズも覗かせ、プログレらしいきらびやかなシンセワークが包み込み、インストパートでのダイナミックな展開力も悪くない。
キャッチーなプログレハード風味のナンバーはいかにもアメリカ的であるが、GOBLINのようなホラー風味のスリリングなインストナンバーから、GENESISルーツの優雅な叙情美まで、楽曲ごとに異なる味わいで楽しめる。
サウンドやアレンジにはややマイナー感触があるものの、叙情性と展開力があるシンフォプログレとしては、充分に鑑賞にたる好作品だ。
ドラマティック度・7 プログレ度・8 叙情度・8 総合・7.5
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4Front 「Gravity」
アメリカのプログレバンド、フォー・フロントの2002年作
2001年にデビューし、2作目。D&Key、B、Drのトリオ編成で、軽やかなリズムに巧みなギタープレイ、優美なシンセを重ねて、インストによるテクニカルなシンフォプログレを聴かせる。
のちにHAPPY THE MANに参加するドラマーのテクニックもさすがで、ときにハードにときに流麗な叙情を奏でるギターのセンスも素晴らしい。
オルガンやエレビを含むシンセとともに、優雅なフュージョン感触と、ロックギターによるノリの良さが融合して、インストながらもメロディアスで爽快な味わいだ。
曲によっては、ハピマン+フィンチというような、メロウなテクニカル・シンフォにもなって、フュージョン/ジャズロックと両方の耳で楽しめる高品質作。
ドラマティック度・7 テクニカル度・8 優雅度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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4/19
ドイツとフランスのシンフォプログ(143)

Dawnation 「The Mad Behind」
ドイツのプログレハード、ダウネイションの 2020年作
ハードロック寄りのギターにオルガンを含むシンセを重ね、エモーショナルなヴォーカルとともに、オールドな味わいのメロディックなプログレハードを聴かせる。
一方、ゆったりとした大曲では、マイルドな歌声に優美なシンセと叙情的なギターフレーズで、シンフォブログレ的な泣きも現れる。
アコースティックギターとピアノによる、GENESIS風の繊細な叙情も覗かせるなど、奥深いアレンジも魅力的で、ときに70's英国ロックやキャッチーなAORの要素なども含みながら、マイナーになり過ぎないほどよいプログレ感触が味わえる。
8〜10分前後の大曲もけっこうあるが、演奏と歌唱のレベルも高いので、緩急ある流れで飽きずに楽しめる。大穴的な好作品です。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 叙情度・8 総合・8
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Dawnation 「...Wait For The Past」
ドイツのプログレハード、ダウネイションの 2023年作
前作もなかなかの好作であったが、2作目となる本作も、いくぶんハードロック感のあるギターに優美なシンセ重ねた、爽快なイントロ曲から始まり、ジェントルなヴォーカルも加わって、キャッチーなプログレ・メロディックロックを聴かせる。
前作に比べて、3〜6分前後と楽曲はコンパクトになり、その分、明快なメロディアス性に包まれていて、EVERONあたりに通じるシンフォニックなプログハードとしても楽しめる。
ゆったりとしたポストプログレ風の繊細な歌ものナンバーもあり、やわらかなピアノや泣きのギターも心地よく、大人の哀愁を描くような味わいから、随所にハードロック寄りのノリの良さも覗かせる。
きらびやかなシンセによるプログレ感触は、シンフォ好きにもアピールするだろう。ダークなジャケに反してじつに爽快な好作品です。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 叙情度・8 総合・8
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InVertigo 「Inmotion」
ドイツのプログレバンド、イン・ヴァーティゴの2019年作
2010年にデビューし、3作目となる。軽妙なリズムに適度にハードで叙情的なギターと、ピアノやオルガンなどのシンセを乗せ、マイルドなヴォーカルとともに、いくぶん翳りを帯びたシンフォプログレを描く。
キャッチーな歌メロとともに、ときにポストプログレ的なモダンさと、オルガンやムーグなどのヴィンテージなプログレ感覚が融合したスタイルで、大人の哀愁を感じさせる叙情美に包まれる。
10分を超える大曲なども、決して難解にはならず、ほどよく重厚で、あくまで優美な叙情を描き出す。ドラマティックに盛り上げるラスト曲まで、さすがの高品質作です。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 叙情度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Subsignal 「A Canopy Of Stars - The Best Of Subsignal 2009 - 2015」
ドイツのハードプログレ、サブシグナルのベストアルバム。2018年作
Sieges Evenのギターとヴォーカルを中心にしたバンドで、本作は、2009年デビュー作から、2015年の4作目までの楽曲に、デモなどを加えた2CDのベストアルバム。
いくぶんメタリックで技巧的なギターにシンセを重ね、マイルドなヴォーカルを乗せて、優雅でキャッチーなハードプログレを聴かせるスタイル。
適度なテクニカル性はときにProgMetal的でもあるが、叙情的なギタープレイにシンセが重なる優美な感触や、女性ヴォーカルを加えたナンバーなども耳心地よい。
中でもやはり、2015年作からのナンバーはよりスタイリッシュなアレンジが光る。2CDで、全25曲、156分のボリュームで、レベルの高いバンドの全貌を俯瞰できる。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 優雅度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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EYE 2 EYE 「NOWHERE HIGHWAY」
フランスのプログレバンド、アイ・トゥ・アイの2020年作
2006年にデビューし、5作目。優美なシンセとヴァイオリン、SEを含むイントロからコンセプト的な香りを漂わせ、シアトリカルなヴォーカルとともに、ストーリーを描くような幻想的なシンフォプログレを展開する。
きらびやかなシンセとメロウなギターが重なり、涼やかな叙情性を描きつつ、ときにヴァイオリンも鳴り響いて、ATOLLなどにも通じる優雅でミステリアスな空気もよい感じだ。
中盤には16分、後半は24分という組曲があり、オルガンやムーグ、メロトロンなどのヴィンテージな音色とともにじわじわと盛り上げる、王道のシンフォプログレが味わえ、ドラマティックな流れの中で歌い上げるヴォーカルも含めて、濃密ながらもフレンチらしい優雅な美学に包まれた力作である。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 優雅度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Light 「The Path」
フランスのプログレバンド、ライトの2023年作
マルチプレイヤーのカミーレ・デ・カルヴァルホによるプロジェクトで、厚みのあるシンセアレンジにピアノ、サックスやフルート、オーボエ、ホルン、バスーンなどの管楽器やハープも加わり、優雅でクラシカルなサウンドを構築する。
チェンバーロックとシンフォプログレの融合という点では、Isildurs Baneにも通じる感触だが、より優美な叙情に包まれた壮麗な味わいで楽しめる。
流れの中で小曲を配して、長大なシンフォニーのように楽曲が連なりながら、ときにプログレらしいシンセワークや、男女ヴォーカルを加えてのシアトリカルな雰囲気も現れる。
妖しいスキャットを乗せての、MAGMAのようなジャズロック風味も含んだ大曲も圧巻。まさにクラシカルで優雅な、全77分の力作です。
クラシカル度・9 プログレ度・7 優雅度・9 総合・8

Out5ide 「Naked」
フランスのプログレバンド、アウトサイドの2016年
1997年デビュー、4作目となる。いくぶんハードなギターに、キャッチーなヴォーカルメロディで、RUSHTILESあたりに通じる巧みなハードプログレを聴かせる。
歌詞は英語なのでフランス臭さはなく、流麗なギタープレイに派手すぎないシンセを重ね、適度にテクニカルな感触も含ませたスタイルだ。
シンフォプログレ的な泣きやメロディはあまりないのだが、モダンな翳りを帯びたサウンドは、むしろProgMetalリスナーに合うかもしれない。
大人の哀愁を感じさせる叙情ナンバーなど、派手さはないが、確かなアンサンブルとともにじっくりと聴かせる好作品だ。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 叙情度・7 総合・7.5
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Audio'm
フランスのプログレバンド、オーディオームの2016年
やわらかなシンセとフルートの音色に叙情的なギター、女性ヴォーカルの歌声で、GENESISルーツの優美なシンフォプログレを聴かせる。
のっけから、14分、13分という大曲が続き、リズムチェンジなどのプログレらしい展開力と、鮮やかなシンセワークにメロウなギターの旋律、英語歌詞による中性的な歌声も耳心地よく、シンフォニックロックとしての理想郷というべきサウンドだ。
アルバム後半も、8分、9分という大曲が続き、ヘタウマ感のある女性ヴォーカルとともに、ほどよいユルさと浮遊感を含んだ幻想的なヨーロピアン・シンフォが楽しめる。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 優雅度・9 総合・8
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Puzzle King 「Anna」
フランスのプログレバンド、パズル・キングの2012年作
カラフルなシンセに適度にハードなギターを重ね、フランス語のヴォーカルを乗せて、緩急ある展開力のスタイリッシュなサウンドを聴かせる。
RUSHにも通じるほどよいテクニカル性に、ときにアコースティックな叙情も覗かせるなど、振り幅の大きなアレンジの中で、エモーショナルなフランス語の歌声が響き渡る。
楽曲は5〜8分前後を主体に、リズムチェンジなどフックのある構築力もなかなか見事で、安易にシンフォプログレにいかないところが玄人好みだろう。
確かなアンサンブルの中に、フランスらしい優美な叙情性も織り込みながら、ときにスリリングに、ときに優雅にと、濃密に聴かせる全77分という力作。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 優雅度・8 総合・8
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Maldoror 「L'Arbre-Cimetiere」
フランスのプログレバンド、マルドローの2004年作
3パートに分かれた物語的なコンセプト作で、美麗なシンセに叙情的なギターとフランス語によるヴォーカルで、フレンチらしい優雅でシアトリカルなシンフォプログレを聴かせる。
情感たっぷりに歌い上げるヴォーカルや、緩急ある演劇的な展開は、ANGEを思わせる部分もしばしばで、組曲的な流れとともに、ドラマティックな世界観を描いてゆく。
オルガンなどを含むプログレらしいシンセアレンジに歌メロもやわらかで、キャッチーになり切らない、マイナーな空気とヨーロピアンな翳りをまとわせているのも耳心地よい。
優雅にしてシアトリカルなシンフォニックロックで、これぞフレンチプログレというサウンドが楽しめる、全65分の力作です。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 フレンチ度・9 総合・8


Rosa Luxemburg 「I & II」
フランスのプログレバンド、ローザ・ルクセンブルグの2009年作
ポーランド産まれのドイツ革命の指導者の名をバンド名に、コンセプト的なイントロから、サイケがかったギターにフランス語による女性ヴォーカルと男性声も加え、いくぶんアヴァンギャルドで牧歌的なアートロックを聴かせる。
アコースティックギターによるパートから、わりとハードなギターが重なったり、一転してユルめの浮遊感に包まれるなど、つかみどころのない展開がフランスらしい。
後半には、8分の大曲もあり、叙情的なギターにやわらかなシンセ、女性ヴォーカルを乗せたシンフォプログレ的な味わいから、ラスト曲はマイルドな男性ヴォーカルを主体に、プログレらしい優雅で軽妙な展開力で描かれる。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・8 総合・7.5
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Ekzilo
スペインのプログレバンド、エクズィロの2020年作
優美なピアノとシンセにアコースティックを含む叙情的なギターによる、軽やかなインストのアンサンブルから、ヴォーカルも加えての優雅なアートロックを聴かせる。
楽曲は6〜8分前後と、わりと長めで、オルガンなどのシンセとともに涼やかな浮遊感を描くあたりはサイケロック風だったり、スパニッシュなギターが巧みに奏でられるなど、とらえどころのないフリーキーな味わい。
メロウなギターにエレピが重なるインストナンバーにも繊細な魅力があり、これという派手さはないが、ギターやベースの確かな技量も含めて、耳心地の良い好作です。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・8 総合・7.5
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Rousseau 「At The Cinema」
ドイツのプログレバンド、ルソーの2002年作
1980年にデビュー、88年までに3作を残して消えたバンドの14年ぶりとなる4作目。
優美なピアノのイントロから、ポップなビート感に叙情的なギターとシンセを重ねて、かすれた味わいのヴォーカルともに、AOR的なプログレハードを聴かせる。
シンフォニックなシンセワークと、CAMELにも通じる泣きのギターの旋律が耳心地よく、楽曲は3〜5分前後とシンプルであるが、ゆったりと大人の叙情に浸れる。
歌入りとインストのナンバーが半々くらいであるが、メロウなギターをたっぷりと聴ける点ではインストの方が、よりキャメル的な優雅な味わいか。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・9 総合・8
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4/4
新年度のプログレ(130)

THE HAYLEY GRIFFITHS BAND 「Live At T'Blok」
KARNATAKAの女性シンガー、ヘイリー・グリフィスのバンドによるライブ。2021年作
2019年、オランダでのライブ音源で、元KARNATAKAのシンセ奏者にドラムも参加し、ソロアルバムからのナンバーに加えて、KARNATAKAの楽曲も披露。
美麗なシンセを適度にハードなギターに重ね、なよやかな女性ヴォーカルとともに、優雅で可憐なシンフォニックロックを聴かせる。
ZIOでも活躍するジミー・パラグロシの手数の多いドラムも含め、安定感のある演奏陣をバックに、ヘイリーの高音域の歌声が響き渡る。
ビリー・ジョエル“Only The Good Die Young”のカヴァーも、ブルージーながらも優美な味わい。カルナタカや女性Vo好きはチェックです。
ライブ演奏・8 プログレ度・6 女性Vo度・8 総合・8
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THE HAYLEY GRIFFITHS BAND 「Melanie」
KARNATAKAの女性シンガー、ヘイリー・グリフィス・バンドの2023年作
いくぶんメタリックなギターに美麗なシンセを重ね、コケティッシュなヘイリーの歌声で、優雅なハード・シンフォニックロックを聴かせる。
ドラムとシンセは元KARNATAKAのメンバーであるから、サウンド的もその延長上にあるが、巧みなドラムを土台にしたテクニカル性や流麗なギタープレイも覗かせるなど、シンフォニックメタルのファンにも楽しめるだろう。
一方では、彼女のルーツでもあるケルティックな叙情性や、オルガンを使ったオールドな英国ロック/ポップ風のナンバーもあったりして、総じて優美な耳心地。
シンフォニックロックとしての華麗な味わいと、美しい女性ヴォーカルが融合した見事な傑作です。ニック・ディヴァージリオ(Big Big Train)がゲスト参加。
シンフォニック度・8 プログレ度・7 女性Vo度・9 総合・8.5
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ZIO 「Truewaves」
イギリスのシンフォニックハード、ジオの2023年作
元KARNATAKA、DRIFTING SUNのドラムを中心にしたプロジェクトで、本作は2作目となる。元KARNATAKAのヘイリー・グリフィス、や、IT BITESのジョン・ミッチェルなどがヴォーカルで参加、モダンなビート感のイントロから、わりとメタリックなギターにカラフルなシンセアレンジ、男女ヴォーカルを乗せて、近未来感のあるハードシンフォを聴かせる。
スタイリッシュなテクニカル性ときらびやかなシンフォニック性が同居したナンバーや、女性ヴォーカルをメインにしたしっとりとした叙情パートなど、楽曲ごとに表情を変えるサウンドが楽しめる。
後半には9分の大曲もあって、緩急ある流れで男女声のシンフォニック・ハードプログレを展開する。全36分とボリューム的にはやや物足りないが、質の高い好作だ。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 スタイリッシュ度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Three Colours Dark 「The Science Of Goodbye」
イギリスのシンフォニックロック、スリー・カラーズ・ダークの2020年作
元KARNATAKA、The Reasoningの女性シンガー、レイチェル・コーエンと、元KARNATAKA、PANIC ROOMのシンセ奏者、ジョナサン・エドワーズのユニットで、優美なヴァイオリンの音色に、メロウなギターとうっすらとしたシンセ、美しい女性ヴォーカルで、ゆったりとした叙情に包まれたサウンドを描く。
KARNATAKAを思わせる優雅な空気感とともに、繊細なギターのトーンやピアノに、アンニュイな歌声を乗せるあたは、翳りを帯びたメロディックロックという趣もあり、ALL ABOUT EVEなどのファンにもお薦めだ。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 女性Vo度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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DAVE FOSTER BAND 「GLIMMER」
イギリスのミュージシャン、デヴィッド・フォスター率いるバンドの2023年作
元Big Big Train、元Panic Room、Mr. SO & SOなどに参加するギタリストで、ソロ名義としては3作目となる。
モダンなビート感に、適度にハードなギターときらびやかなシンセを重ね、コケティッシュな女性ヴォーカルを乗せて、キャッチーなポップ感のあるサウンドを聴かせる。
80年代グラムロックやオルタナ的でもあるアンニュイな感触とともに、随所にメロウなギターの旋律もよろしく、オーケストラアレンジを加えてのナンバーなども感動的だ。
プログレとして聴くには物足りないのだが、All About Eveなど、浮遊感のある女性声メランコリックロックが好きな方には楽しめるだろう。
メランコリック度・8 プログレ度・6 女性Vo度・8 総合・8
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Last Flight To Pluto 「RANDOM KARMA, FATE AND DESTINY」
イギリスのプログレバンド、ラスト・フライト・トゥ・プルートの2022年作
2015年にデビューし、3作目となる。ピアノを含む優美なシンセにメロウなギター、キュートな女性ヴォーカルで、優雅でキャッチーなシンフォプログレを聴かせる。
ほどよくハードさとともに、ノリのよいロック感触も覗かせつつ、コケティッシュな歌声を乗せたしっとりとしたパートもあったり、ストレートな聴きやすさの中にもメリハリあるセンスが光る。
プログレらしさという点では、これという展開はないのだが、ラストは8分の大曲で、ゴシックロック的な妖しさも含んだ、女性声のシンフォハードとして楽しめる。
メロディック度・8 プログレ度・7 女性Vo度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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RANDOM EARTH PROJECT「AIRWAVES」
イギリスのプログレバンド、ランダム・アース・プロジェクトの2023年作
ギター、ベース、シンセ、ヴォーカルの4人組で、打ち込みのドラムに優美なシンセにメロウなギターの旋律が重なり、かすれた味わいのヴォーカルとともに、GENESISや初期MARILLIONルーツのウェットなシンフォニックロックを聴かせる。
アマンダ・レーマンがゲスト参加し、美しい歌声を乗せた、PROCOL HARUMにも通じる叙情的なナンバーなども含めて、随所に70年代のオールドロックの雰囲気も覗かせる。
90年代ポンプロック的なキャッチーな優雅さもあって、ラスト曲の盛り上がりまで、往年の英国シンフォプログレの香りを継承した好作品です。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 叙情度・8 総合・8
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THE TIRITH 「RETURN OF THE LYDIA」
イギリスのプログレバンド、ティリスの2022年作
結成は70年代というバンドで、2015年に復活しアルバムをリリース。本作は3作目となる。G&Key、B&Vo、Drというトリオ編成で、メロウなギターにシンセを重ね、マイルドなヴォーカルを乗せた、英国らしいプログレハードを聴かせる。
PENDRAGONのニック・バレットを思わせる味のある歌声に、ほどよくハードなギター、オルガンを含むヴィンテージなシンセとともに、10分前後の大曲を描いてゆく。
哀愁を感じさせる大人の叙情に包まれて、ときにゲイリー・ムーアばりのギタープレイも覗かせるなど、随所にオールドなロック感触と、ベテランらしい余裕のあるアンサンブルも心地よい。
一方では優美なシンフォプログレの泣きも含んだメロディアス性もあって、総じてキャッチーでアダルトなプログレハードが楽しめる。全66分の逸品ですね。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 叙情度・8 総合・8
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VIRIDITAS 「GREEN MARS」
イギリスのプログレバンド、ヴィリディタスの2021年作
2018年に自主デビュー、男女Voに女性Key奏者を含む7人編成で、2作目の本作は、CDR仕様、SF的なコンセプトの2枚組の大作となった。
ピアノを含む壮麗なシンセに適度にハードなギターを重ね、男女ヴォーカルも加えて、きらびやかなシンフォプログレを聴かせる。
テクニカルな展開力とメロディアスな抜けの良さで、10分前後の大曲を華麗な描くところは、NEAL MORSETRANSATLANTICにも通じるだろう。
一方では、インストによる軽妙なジャズロック風のナンバーから、女性ヴォーカルをメインにした、LANDNARQあたりを思わせるキャッチーな優雅さも覗かせる。
ProgMetal的な知的な構築力と、プログレらしいヴィンテージ感触が同居しながら、ドラマティックに描かれる。CD2枚で全156分という、濃密な力作です。
ドラマティック度・9 プログレ度・8 構築度・9 総合・8.5

TRAUMHAUS 「IN OCULIS MEIS」
ドイツのプログレバンド、トラウムハウスの2020年作
Anyone's Daughter、Novalis、Grobschnittに影響を受け、2001年にデビュー、5作目となる本作は、ドイツ語バージョン、英語バージョンの2枚組仕様。
優美なピアノのイントロから、ヘヴィなギターをシンセに重ね、朗々と歌い上げるヴォーカルとともに、いくぶんダークなハードプログレを展開する。
モダンな硬質感とテクニカル性に、シンフォプログレとして優雅な叙情が交互に現れて、英国のARENAあたりを思わせるところもある。
ドイツ語によるヨーロピアンな雰囲気は、「メタリックなAnyone's Daughter」という感じもあるが、こちらはよりスタイリッシュな感触だ。
Disc2の英語バージョンは、モダンなハードシンフォとして、英米バンドに近くて聴きやすいだろう。
ドラマティック度・8 ハードプログ度・8 叙情度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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3/28
お花見とプログレ(120)

THE BARDIC DEPTHS 「PROMISES OF HOPE」
多国籍のプログレバンド、バルディック・デプスの2022年作
スペイン出身のミュージシャン、デイエヴ・バンダナを中心にしたバンドで、2020年にデビューし、2作目となる。
Tiger Moth Talesのピーター・ジョーンズ、Cosmografのロビン・アームストロング、Fractal Mirrorのガレス・コールが参加、
優美なシンセにメロウなギター、ジェントルなヴォーカルとともに、キャッチーなシンフォプログレを展開する。
やわらかなオルガンやピアノ、アコースティックギターを用いた、リリカルな繊細さも覗かせながら、フルートやサックスが鳴り響く、優雅な大人の叙情に包まれる。
AOR風のナンバーもありつつ、プログレらしいシンセアレンジに、ハケットばりの泣きのメロディを奏でるギターが、前作以上にウェットな味わいになっていて、シンフォニックロックとしての魅力がぐっと増している。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 叙情度・8 総合・8
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THE BARDIC DEPTHS「What We Really Like In Stories」
多国籍のプログレバンド、バルディック・デプスの2024年作
3作目の本作は、J.R.R.トールキンやC.J.ルイスの物語からインスパイアされた作品で、前作に続き、Tiger Moth Talesのピーター・ジョーンズ、Fractal Mirrorのガレス・コールが参加、
壮麗なイントロから、叙情的なギターに美しいシンセワーク、ジェントルなヴォーカルとともに、優雅で軽やかなシンフォプログレを聴かせる。
ゆったりとした曲調には、スリリングな展開はさほどないが、アコースティックギターやサックスの音色による大人の叙情美に、メロトロンが鳴り響き、メロウなギターの旋律も耳心地よく、のんびりと楽しめる。
ラストは10分の大曲で、AOR寄りのストレートなメロディックロックの感触から、泣きのギターと美麗なシンセにヴォーカルを重ねて、じわりと盛り上げるあたり、シンフォ好きはにんまりだ。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 叙情度・8 総合・8
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REFESTRAMUS 「Intourist」
アメリカのプログレバンド、レフェストラムスの2024年作
2021年にデビューし、2作目。オルガンを含むきらびやかなシンセにロックなギター、変則リズムを含むインストパートに、Inductionのシンガーなどゲスト参加のヴォーカルを加え、キャッチーなハードプログレを聴かせる。
メロトロンやムーグ、オルガンなどヴィンテージなシンセを使いつつ、11分という組曲では、わりと80年代風のビート感で、確信犯的なAOR風味も覗かせる。
一方では、女性声メインの70年代ブリティッシュロック風のブルージーなナンバーや、フルートやサックス、ヴァイオリンを使った小曲なども、なかなか楽しませてくれる。
今後は正式なシンガーを入れるのか、あくまでゲストでいくのかも含めて、ヴィンテージ系バンドとしての方向性も楽しみではある。
ドラマティック度・7 ヴィンテージ度・8 優雅度・8 総合・7.5
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Forever Twelve 「Neighborhood Of Spirits」
アメリカのプログレバンド、フォーエヴァー・トウェルヴの2023年作
2002年にデビューし、5作目となる。哀愁を感じさせる泣きのギタートーンにエレピやオルガンを含むシンセ、ジェントルなヴォーカルを乗せ、軽やかなリズム展開とともに優雅なシンフォプログレを聴かせる。
楽曲は6〜9分前後で、ダイナミックな展開力と、アメリカらしいキャッチーな抜けの良さが同居して、メロディアスでありながら、ほどよく偏屈なプログレ感が楽しい。
ラストは10分の大曲で、プログレらしい緩急ある流れの中で、流麗なギターと鮮やかなシンセワーク、エモーショナルなヴォーカルで、ドラマティックなサウンドを描いてゆく。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 叙情度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Red Sand 「Sound Of The Seventh Bell」
カナダのプログレバンド、レッド・サンドの2021年作
2004年にデビューし、すでに10作目となる。アコースティックギターと優美なシンセに、マイルドなヴォーカルを乗せた叙情的なナンバーで幕を開け、シンフォプログレらしい泣きの美学とともに、ゆったりと耳心地のサウンドを描く。
キャッチーなヴォーカルメロディにメロウなギターの旋律は、PENDRAGONなどにも通じ、コンセプト的でウェットなドラマ性を描くあたりは、GENESISルーツの世界観といえるだろう。
中盤には、いかにもジェネシスライクな軽快なナンバーもありつつ、後半の21分の大曲では、大人の哀愁を含んだギターのトーンとうっすらと包み込むシンセで、じわりと盛り上げる。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 叙情度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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FRACTAL MIRROR 「BEYOND BORDERS」
オランダのプログレバンド、フラクタル・ミラーの2021年作
2013年にデビューし、5作目となる。メロトロンを含むシンセにメロウなギターを重ね、優美なシンフォニックロックを展開する。
17分という大曲では、マイルドなヴォーカルに泣きのギターの旋律と壮麗なシンセワークで、じわじわと盛り上げて、シンフォプログレ好きはにんまり。
アコースティックギターにジェントルな歌声を乗せた小曲をはさみ、ポンプロックルーツのキャッチーなナンバーから、ラストは12分の大曲で、叙情的なギターフレーズにうるさすぎないシンセで、メロディックロック寄りの歌もの感触に包まれながら、優しい耳心地のまま幕を閉じる。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 叙情度・8 総合・8
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Black Midi 「Schlagenheim」
イギリスのロックバンド、ブラック・ミディの2019年作
若手4人組のバンドで、奔放なリズムにガレージ色のあるギターを重ね、アヴァンギャルドで唐突な展開とともに、緩急あるインストサウンドを構築。
味わいのあるヴォーカルが奇妙な浮遊感をかもしだしていて、ポストパンクやハードコアの激しさに、クラウトロック、ポストロックなどのスケール感をまとって、結果としてプログレッシブな聴き心地になっている。
曲によっては、KING CRIMSONがハードコア化したような雰囲気もあったり、 パンキッシュな勢いのある演奏の中に、英国らしいウィットと知性が見え隠れする。
ジェントルでシアトリカルに表情を変える歌声も、どこか70年代英国ロック的で、若手なのだがオールドロックからの影響も多分に感じさせる。
楽曲アレンジはまだ粗削りながら、リズム面を含めての演奏力は抜群で、ごった煮ロックの面白い若手バンドが登場した。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 アヴァンギャル度・8 総合・7.5
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Black Midi 「Cavalcade」
イギリスのロックバンド、ブラック・ミディの2021年作
2作目となる本作は、ノリの良いリズムにフリーキーなギター、ピアノやブラスアレンジを加えた重厚な味わいが強まり、物語を語るようなヴォーカルとともに、スケール感あるサウンドを描く。
変則リズムを叩き出すドラムの力量も見事で、クリムゾン的な知的な硬質感に包まれながら、アナログ感あるアンサンブルで、先の読めないプログレッシブなガレージ・ポストパンクとしても楽しめる。
緩急あるダイナミックな展開とスリリングなアヴァンギャルド性は、充分プログレファン向けで、クラウトロック風の浮遊感や、ジャズロック風味も覗かせるなど、多彩なセンスが光る。
ラストの10分近い大曲では、ゆるやかに歌い上げるヴォーカルに、叙情的なギター、サックスなども加わり、KING CRIMSONばりの静謐な空間性も描いてゆく。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 アヴァンギャル度・8 総合・8
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LA LEGGENDA NEW TROLLS 「CONCERTO GROSSO 1-2-3 di LUIS BACALOV」
イタリアのプログレバンド、レッジェンダ・ニュー・トロルスの2014年作
ヴィットリオ・デ・スカルツィ、ニコ・デ・パーロ、ジャンニ・ベッレーノ、ジョルジョ・ダダモという「コンチェルト・グロッソ」1〜3期のオリジナルメンバーにより再結成された、新たなニュートロルスで、ルイス・バカロフが指揮するオーケストラとの共演ライブを収録。
冒頭の「アレグロ」から、艶やかなヴァイオリンが鳴り響き、優雅なフルートが絡み、オーケストラとバンドが一体となって「コンチェルト・グロッソ」を再現。
アンドレア・マダローネ(NEW TROLLS)のギターも随所に泣きのメロディを奏でつつ、オケとともに「アレグロ」、「カデンツァ」を壮麗に描いてゆく。
中盤は「コンチェルト・グロッソ2」の3曲で、より優雅な作風ながら、原曲よりもダイナミックな聴き心地で楽しめる。
後半は2013年に発表された「コンチェルト・グロッソ3」からの5曲。優美なフルートから、ノリのあるバンドサウンドとキャッチーなヴォーカルハーモニー、オーケストラが合わさった、ほどゆくモダンになったスタイルで、ヴィットリオのマイルドなヴォーカルも味わい深い。
クラシカル度・9 壮麗度・9 優雅度・9 総合・8.5 過去作のレビューはこちら
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Corde Oblique 「Moon Is A Dry Bone」
イタリアのクラシカル・フォークロック、コルデ・オブリクの2020年作
ギタリストのリカルド・プレンシペを中心に、2005年にデビューし、8作目となる。優美なギターにピアノやヴァイオリンが加わり、イタリア語のジェントルな歌声に女性ヴォーカルが絡む、翳りを帯びたネオフォーク風サウンドを聴かせる。
哀愁を感じさせるアコーディオンに民族的なパーカッション、はかなげな女性ヴォーカルとともに、ゴシック的なメランコリックな空気感も描きつつ、地中海らしい異国情緒が包みこむ。
神秘的なネオフォーク、アコースティカルなクラシカル・ゴシック、あるいは地中海系プログレフォークとしても楽しめる。
アコースティック度・8 プログレ度・7 神秘的度・8 総合・7.5
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Never Wasn't
アメリカのプログレバンド、ネヴァー・ワズントの2008年作
本作が唯一の作品で、わりとハードなギターにきらびやかなシンセが重なり、エモーショナルなヴォーカルとともに、ドラマ性を感じさせるシンフォプログレを構築する。
ProgMetal的でもあるほどよくテクニカルな展開力に、オルガンなどのヴィンテージな味わいと、ときに叙情的なギターフレーズで、優雅な聴き心地に包まれる。
一方では、アコースティックギターを含む、GENESISルーツの繊細な叙情性も覗かせるなど、往年のシンフォニックロックの感触を随所に残している。
楽曲は4〜6分が中心で、長尺になりすぎず、あくまで優雅でキャッチー。いくぶんのB級感覚で、アメリカらしいシンフォプログレが味わえる好作です。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 叙情度・8 総合・7.5
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Scott McGill's Hand Farm 「Ripe」
アメリカのギタリスト、スコット・マッギル率いるユニット、ハンド・ファームの1999年作
FINNEUS GAUGEにも参加していた、マッギルの巧みなギタープレイを軽やかなリズムに乗せた、フュージョン・ジャズロックサウンド。
オールインストなので、ギターメロディを弾かない部分は、わりと硬派なテクニカルロックという感触ながら、優雅なアコースティックギターによるプレイも挟みつつ、キーボード入りのナンバーもあって、楽曲ごとに異なる作風で楽しめる。
後半では、アラン・ホールズワースを思わせる叙情的なギターフレージングも垣間見せ、ギタリストとしてのプレイの幅を感じさせる作品といえる。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・8 総合・7.5
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Hexatonica 「El Visionario」
アルゼンチンのプログレバンド、ヘクサトニカの2012年作
ほどよくハードなギターに優美なシンセを重ね、手数の多いドラムとともに、ProgMetal感触もあるテクニカルなインストのハードプログレを聴かせる。
叙情的なギターの旋律にシンセが合わさると、きらびやかなシンフォプログレの耳心地になりつつも、ときにメタリックな硬質さも覗かせる。
アコースティックギターにフルート、ヴァイオリンによる繊細な小曲から、10分を超える大曲では、泣きのギターメロディにオルガンを含むシンセで、FINCHのようなインストシンフォが楽しめる。
オールインストながら、センスあるギターの叙情フレーズや鮮やかなシンセワークで、魅力的なメロディとフックが随処に現れる。
ドラマティック度・7 プログレ度・8 叙情度・8 総合・8
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3/20
ジャパニーズプログレ!(107)

PICARESQUE OF BREMEN
日本のプログレバンド、ピカレスク・オブ・ブレーメンの1984年作
岩手出身、ベース&ヴァイオリンにドラムもこなす栃澤潤を中心に、1995年までに作のアルバムを残している。その初期3作品が紙ジャケでCD化された。
歪ませたハードなギターにヴォイオリンが鳴り響き、日本語歌詞のヴォーカルとともに、どこか怪しい翳りを帯びたサウンドを聴かせる。
ヴァイオリン入りのプログレとしては、OUTER LIMITSを思い出すが、それよりも粗めのハードさを感じさせ、自主制作然としたこもり気味の音質も含めて、なかなかマイナーな味わい。
ジャズロック寄りのアンサンブルには、KING CRIMSONからの影響も覗かせて、クラリネットやフルートも用いた優雅さに、女性声も加わって、ほどよいアヴァンギャルド性が同居する。
一方ではポップな小曲などもあり、2作目以降の深化を予見させる。東北にも個性的なプログレバンドがいたのだと再認識できる1枚だ。
ドラマティック度・7 プログレ度・8 日本度・8 総合・7.5
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PICARESQUE OF BREMEN 「TALES OF AN ALCHEMIST」
日本のプログレバンド、ピカレスク・オブ・ブレーメンの1985年作
前作と同じメンバーで作られた2作目で、SFコンセプト風のSEと、アコースティックギターに、リズムマシンによる硬質なドラムに2本のギターが重なり、日本語歌詞のヴォーカルで、わりとハードなサウンドを展開。
歌もの的なポップ性と、ハードロック寄りのギター、ときにフルートやクラリネットも加えて、優雅でサイケなハードポップ・プログレという、なかなかヘンテコな路線をいっている。
80年代らしいドラムマシンがやや単調だが、女性ヴォーカルによる歌謡ロック風のナンバーもメタルテクノ風プログレという味わいなので、それなりに面白いかもしれない。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 日本度・8 総合・7.5
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PICARESQUE OF BREMEN 「OUT OF THE WAY」
日本のプログレバンド、ピカレスク・オブ・ブレーメンの1987年作
フルート&クラリネットの西村聡子に替わり、新たに女性シンガーとして工藤ゆかりが参加している。ドラムマシンのリズムにきらびやかなシンセ、コケティッシュな女性ヴォーカルを乗せた、スペイシーなポップロックを展開。
突然のポップ化に当時は、スチュアート&ガスキンか、イエス+松田聖子かとも言われたようだが、歌謡ポップスタイルの中にサイケな浮遊感も覗かせていて、そこまで違和感なく聴ける。
プログレ方面からの女性声ポップという点では、同時期のサブリナが有名だが、こちらはカラフルでエキセントリックな香りがする。
ドラマティック度・7 プログレ度・6 日本度・8 総合・7.5
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金属恵比須 「邪神覚醒」
日本のプログレバンド、きんぞくえびすのベストアルバム。2023年作
2001年にアルバム「箱男」でデビュー、2022年までの5枚のアルバムを含む音源から、新曲2曲に再録を含めた11曲を収録したベストアルバム。
古き良きハードロック感触のギターに、日本語歌詞の女性ヴォーカルを乗せ、オルガンを含むキーボードとともら、妖しくも日本的なサウンドを展開。
後藤マスヒロのグルーヴィなドラムも迫力たっぷりで、ライブ音源でのスリリングなアンサンブルは、アナログ的なバンドの本質を描き出している。
「ハリガネムシ」収録の“光の雪”の物悲しい叙情性もあらためてよい感じだし、自主製作時代の2004年以前の音源は、男性ヴォーカルによる人間椅子を思わせるサウンドで、初めて聴くという方も多いだろう。
バンド最初期の楽曲“トイレの花子さん”の再録音バージョンも楽しい仕上がり。日本が誇る和風ハードプログレバンドの歴史を俯瞰できる1枚です。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 和風度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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VSQ Sports /バスクのスポーツ 「AVATAMA」
日本のプログレバンド、バスクのスポーツの2023年作
武蔵野美大のメンバーにより結成、2016年にデビューし、本作は2作目となる。オルガンやモジュラーシンセを含むヴィンテージな味わいと、軽やかなリズムアンサンブルにメロウなギターで、ジャズロック寄りの優雅なインストサウンドを聴かせる。
ゲストの女性シンガーがコケティッシュな歌声を乗せる、スペイシーでポップなナンバーもあったり、ほどよい脱力感は、かつてのカンタベリー系に通じるところもあり、鳴り響くムーグシンセとともに軽妙なプログレサウンドが楽しめる。
いくぶんアヴァンギャルドなセンス覗かせつつ、全体的には難解になり過ぎないところもミソ。優雅で少しヘンテコな好作品です。
ドラマティック度・7 プログレ度・8 軽妙度・9 総合・8
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TEE 「TOTAL EDGE EFFECT」
日本のプログレバンド、ティーの2022年作
2007年にデビュー、本作は6年ぶりとなる4作目で。優美なピアノの旋律にフルートが鳴り響き、メロウなギターとシンセが重なって、軽やかなアンサンブルの優雅なインストサウンドが広がってゆく。
ムーグ風のシンセとフルートがオールドなプログレ感触を描きつつ、今作では美しいシンセと泣きのギターによるシンフォニックロック的な部分も増している。
テクニカルなジャズロック感触はやや薄まってはいるが、より叙情性を高めたスタイルは、12分という大曲も含めて、軽妙なシンフォプログレとして楽しむべき逸品となった。
ジャズロ度・7 プログレ度・7 優雅度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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DDR 「SEVEN SEARS」
日本のプログレユニット、DDRの2022年作
京極輝男(De-LAX)を中心に結成、ワタナベカズヒロをシンガーに、入山ひとみ(STELLA LEE JONES)、花本彰(新●月)、大山曜(ASTURIAS)、MILKY(CRYED、MILKY SWEET)などが参加。
ハードなギターにオルガンなどのシンセ、英語歌詞のヴォーカルを乗せて、ヴァイオリンも鳴り響く、プログレ・グラム・ハードロックというべきサウンドを聴かせる。
花本氏作曲のナンバーは、どこか昭和感のただよう叙情性に包まれて、鳴り響くメロトロンとともにゆったりとした耳心地。
一方、ゲーム音楽で知られる、磯江俊道の曲は、ドラマティックなハードシンフォで、楽曲ごとに異なる感触が楽しめる。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・7 総合・7.5
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Alsciaukat「A new myth」
日本のプログレバンド、アルシアカットの2022年作
Quiの林隆史を中心に結成、プログレアイドル、XOXO EXTREMEのバックバンドからスタートして、本作が初のアルバムとなる。
わりとハードなギターにオルガンやピアノ、やわらかなフルートの音色とともに、ジャズロック寄りのインストサウンドを聴かせる。
ギターやベースがそこそこヘヴィで、優雅なフルートやサックスも鳴り響くところは、KING CRIMSONからの影響も感じるが、リズム的にはシンプルで、テクニカルというほどでもない。
ゆったりとした叙情ナンバーは、むしろシンフォプログレ風なので、今後はどの路線でゆくのか固めていいってもらいたい。全33分というのがやや物足りないか。
ジャズロ度・7 プログレ度・7 優雅度・7 総合・7.5
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LU7 「L'esprit de l'exil Revisite」
日本のプログレユニット、エルユー・セヴンの2018年作
ギターの栗原努と女性シンセ奏者の梅垣ルナによるユニットで、本作は2005年の2作目を新たにリミックス、再録を加え、ジャケも新たにした新装版。
優美なシンセにバグパイプが鳴り響くイントロ曲から、軽やかなリズムにメロウなギターの旋律を乗せ、きらびやかなシンセワークとともに、インストによる優雅なフュージョン・プログレを展開。
岡田治郎(PRISM)や、永井敏巳(VIENNA)による巧みなベースもさすがの存在感で、嶋村一徳の軽妙なドラムに、ときに民族的なパーカッションも加わって、単なるフュージョン以上の幻想的な世界観も構築。
7分を超えるタイトルナンバーでは、プログレッシブな展開力とともに、美麗なシンセと叙情的なギタープレイが光っている。国産フュージョンプログレとしては最高峰だろう。
フューロ度・8 プログレ度・7 優雅度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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KBB 「Age Of Pain」
日本のプログレバンド、KBBの2013年作
2000年にデビュー、本作は6年ぶりとなる4作目。艶やかに鳴り響くヴァイオリンに、優美なエレピとシンセ、軽やかなリズムアンサンブルで、優雅で軽妙なインストサウンドを描く。
楽曲は6〜8分前後と、わりと長めで、ギターが入らない分、ロック的なノリは希薄なのだが、クラシカルなフュージョン/ジャズロック系のプログレが好きなら心地よく楽しめる。、
そして、どこを切っても華麗なヴァイオリンが鳴り響く、壷井氏のテクニックはまさに円熟の域にあると言ってよいだろう。新鮮味は薄いが優雅なる好作品です。
フューロ度・8 プログレ度・7 優雅度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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East Wind Pot
日本のジャズロック、イースト・ウインド・ポッドの2006年作
女性シンセ奏者、土屋裕子を中心にしたバンドで、軽妙なアンサンブルにサックスやクラリネットが鳴り響き、オルガンやエレピを含むシンセとともに、カンタベリー風味のジャズロックを聴かせる。
12分という大曲では、クラシカルなピアノパートから、軽やかなリズムに存在感あるベースとヴィブラフォン風の音色も含んだシンセとクラリネットで、とぼけた味わいの優雅なインストサウンドを展開。
土屋氏の巧みな鍵盤さばきはもちろん、表現力あるサックスのプレイも見事で、オールインストながらも日本人らしい耳触りの良さを感じさせる。
ジャズロ度・8 カンタベ度・7 優雅度・8 総合・8
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Djamra 「Transplantation /イショク〜遺伝子の記憶〜」
日本のジャズロック、ジャンラの2003年作
軽やかなドラムに存在感のあるベース、サックス、トランペットが鳴り響き、スカ風のレコメン系ジャズロックを聴かせる。
フリーキーなブラスと巧みなリズムによるアンサンブルが、優雅でテクニカルなインストサウンドを描いていて、なかなか玄人好みのスタイル。
スラッピングを含めて、唸るようなベースのプレイも際立っており、ギターがおらずとも音の薄さを感じさせないのもポイント。
ラストは15分という大曲で、レコメン系らしい不穏なアヴァンギャルド性も含みつつ、あくまで奔放なジャズロックを展開してゆく。
ジャズロ度・9 プログレ度・7 テクニカル度・8 総合・7.5
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Kunitaka Watanabe/渡辺邦孝 「Death Crimson Soundtracks」
日本のシンセ奏者、渡辺邦孝による、ゲーム「デス・クリムゾン」のサウンドトラック。2018年作
セガサターンの「伝説のクソゲー」として知られるようだが、プログレファンからの評価が高いようで、紙ジャケで発売されている。
打ち込みのリズムにオルガンなどのシンセが鳴り響き、キャッチーなメロディを奏でるサウンドは、桜庭統などにも通じるだろう。
あくまでサントラであるから、楽曲は1〜3分前後で、全21曲47分、さらりと聴け、華麗なキーボードサウンドが味わえる。
ボーナスの「クリムゾン・デスの宮殿」は、美麗なシンセにフルートも使った、いかにもKING CRIMSONライクな確信犯的なナンバー。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 キーボー度・8 総合・7.5
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桜庭統 「Band Arrangement Album / STAR OCEAN & VALKYRIE PROFILE」
日本のシンセ奏者、桜庭統によるゲームミュージックのアレンジ作品。2016年作
以前も同タイトルのアレンジ作品が出ていたが、今作は「スターオーシャン」「ヴァルキリープロファイル」から、それぞれの人気曲をセレクトしての新アレンジバージョン。
ドラムは桜庭氏自身が演奏。バトル曲をメインに、ツーバスを使ったアグレッシブなノリに、きらびやかなシンセとギターを重ねた、ロックアレンジが楽しめる。
オルガン弾きまくりのプログレナンバーには思わずニンマリで、今作ではギターが活躍しているので、ハードロック方面のリスナーにもイケるだろう。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 キーボー度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Marge Litch 「マスカレード・ゲーム 〜 デモ・トラックス・ヴォリューム・ワン」
日本のプログレッシブ・ハードロック、マージュ・リッチの2024年作
バンド創世記の1988年前後のデモテープの音源を集めたもので、のちにライブでも披露する楽曲のプロトタイプが収録されている。
初期のサウンドは専任シンセ奏者がいないぶん、STARLESSあたりに通じる女性声歌謡ハードロックという趣で、プログレッシブな要素は薄めだが、リズムチェンジを含む展開力や若き日の世良純子嬢の伸びやかな歌声など、バンドとしての独自のカラーはすでに感じさせる。
ドラムに長倉氏が加入した後半の音源は、バンドとしてのアンサンブルがよりタイトでパワフルになり、その後のデビューアルバムへとつながる勢いあるサウンドが楽しめる。
初期音源度・8 プログレ度・6 音質・7 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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Marge Litch「真夏の夜の夢 〜 デモ・トラックス・ヴォリューム・ツー」
日本のプログレッシブ・ハードロック、マージュ・リッチの2024年作
3rdアルバム「悲劇の泉」制作時のデモ音源を収録。1993年あたりの録音で、ベースに神保氏が加入、シンセの竹内氏は加入前となる。
楽曲は、のちのアルバム収録に近い雰囲気がすでにあり、パワフルなリズム隊を軸に、きらびやかな疾走感の「彗星の翼」から、キャッチーかつテクニカルなマージュリッチ節が炸裂。
世良純子のコケティッシュなヴォーカルは、激しいナンバーから、「真夏の夜の夢」のようなポップなナンバーでもよく映えている。
20分の大曲「悲劇の泉」は、シンセサウンドがややチープではあるが、シアトリカルでドラマティックな流れのシンフォニックロックが味わえる。
正規録音のスタジオ盤が現在廃盤なのが残念だが、お持ちの方は聴き比べるなどしても楽しめるだろう。
ドラマティック度・8 プログレハー度・8 音質・7 総合・8
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Marge Litch 「氷の魔女 〜 ライヴ・トラックス・ヴォリューム・ワン」
日本のプログレッシブ・ハードロック、マージュ・リッチのライブアーカイブ。2024年作
1999〜2002年までのライブ音源で、筆者も同時期に吉祥寺のシルバーエレファントへよくライブを観に行っていたものだ。
ツーバスのパワフルなドラムに巧みなベース、世良純子の伸びやかなヴォーカル、美麗なシンセとともに、疾走感のあるテクニカルなサウンドを聴かせる。
2000年以降の音源では、Yuhki(ALHAMBRA、GALNERYUS)こと、中島氏が参加して、そのきらびやかなシンセワークはさすが。また神保氏のベースも格好いいこと。
10分前後の大曲も多く、ファンタジックなストーリーをコンセプトにした、かつてのNOVELAをルーツにした、ロマン溢れる世界観が表現されている。
サウンドボード音源で、ブートレグとしては音質も上質、臨場感あるステージが楽しめる。エンディング的な大曲、「ファンタージェン」は感動的です。
ライブ演奏・8 プログレハー度・8 音質・7 総合・8
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Marge Litch「魔王の法廷 〜 ライヴ・トラックス・ヴォリューム・ツー」
日本のプログレッシブ・ハードロック、マージュ・リッチのライブアーカイブ。2024年作
1998〜2002年までのライブ音源で、Vol.1からは楽曲かぶりなしで全9曲71分を収録。テクニックとパワフルが融合したドラムとベースを土台に、シンフォニックなシンセと女性ヴォーカルで、重厚にして華麗な演奏を聴かせる。
疾走感とキャッチーなメロディが同居した「プレイヤー」はライブ映えするナンバー。10分を超える「トリムの冒険」は、ファンタジックな世界観と、世良純子のエモーショナルな歌声にたっぷりと浸れる。
ポップで軽快な「真夏の夜の夢」や、アルバム「真実の指輪」収録「サルタンの最後〜真実の指輪」のドラマティックな展開力など、メリハリに富んだ楽曲は今聴いても楽しい。
ライブ演奏・8 プログレハー度・8 音質・7 総合・8
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Marge Litch「The Singles Body〜冷えてゆく身体 〜」
日本のプログレッシブ・ハードロック、マージュ・リッチのコンピレーション。2024年作
リーダーでギターの横山氏以外のメンバーが交替した、2003年以降のシングルをリミックス、未発曲などを追加した全9曲を収録。
優美なシンセをギターに重ね、日本語歌詞の女性ヴォーカルで疾走するスタイルは、初期に回帰したような、STARLESSなどを思わせる女性声ハードロックという感触。
前任の世良純子比べて、関聡子のキュートな歌声はパワフルさには欠け、楽曲自体もテクニカル性はやや薄まって、わりとストレートなジャパメタという聴き心地である。
2009年以降は、月本美香がシンガーとなり、その昭和感を感じさせる歌声とともに、楽曲的にも10分を超える大曲「殯の丘」などは、ページェントにも通じるドラマティックな味わい。
デビュー前のデモ音源のリメイクナンバー「Marge Litch 2015」まで、バンドの経てきた変遷と歴史が窺い知れるアーカイブコンピである。
ドラマティック度・8 プログレハー度・8 ジャパメタ度・8 総合・7.5
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J・A・シーザー「J・A・シーザーリサイタル 荒野より」
寺山修司率いる劇団「天井桟敷」の音楽を担当、その後は「万有引力」を率いるミュージシャン。2017年作
本作は、2016年の公演をCD2枚に収録。6部構成になっていて、1部は少女革命ウテナ関連の合唱曲集で幕を開ける。
音質はややラウドであるが、オルガンを含むシンセに随所に巧みなギタープレイも聴かせ、生々しい演奏と混声合唱が一体となって迫力たっぷり。
2部は「ある家族の血の起源」で、ヴァイオリン鳴り響き、奇妙なセリフを導入しながらの、男女ヴォーカルのアングラ演劇ロックを繰り広げる。一方、オペラティックな女性ソプラノによる叙情曲などにも味わいがある。
3部は、J.A.シーザー名曲集で、「越後つついし親知らず」をはじめ、シーザーの味わいのある歌声とともに、70年代ルーツのサイケ風歌謡ロックが繰り広げられる。
4部「歌姫絶唱」では、俳優でもあるシンガーの蜂谷眞未、石川詩織、森ようこ、アマンダ・ワデル(革命アイドル暴走ちゃん)、声優でもある籠原帝子による歌曲で、ジャズやシャンソンを思わせるナンバーも含め、しっとりとした優雅さと情感に包まれた聴き心地。
5部「シーザー千一夜」は、70年代に天井桟敷のイラン公演前後に作曲された楽曲をメインに、シーザーの渋みのある歌声が響き渡る。セリフからの「阿呆船」の流れはやはり感動的だ。
6部「荒野より」の荘厳な合唱曲で幕を閉じる。Disc1、79分、Disc2、72分というボリュームで、ライブステージを切り取ったかのような臨場感あるサウンドでお腹いっぱい。
ライブ演奏・8 昭和アングラロック度・10 シーザー度・9 総合・8.5 過去作のレビューはこちら
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3/6
紙ジャケ&SHM-CDで名作を再び(87)

Barclay James Harvest「Once Again」
イギリスのプログレバンド、バークレイ・ジェイムス・ハーヴェストの1971年作
2作目となる本作は、溢れるメロトロンに哀愁のギター、THE ENIDのロバート・ジョン・ゴドフリーのアレンジによるオーケストラが重なり、ロック的なダイナミズムとクラシカルな優雅さが融合したサウンドを聴かせる。
ときにわりとハードなギターや、いくぶんやぼったいヴォーカルも、英国ロックらしい味わいになっていて、1st以上にプログレらしい質感とシンフォニック性も強まった。
英国的な気品とウェットな叙情、メロトロンに重なるしっとりとしたピアノも美しい。アルバム中盤の“Mocking Bird”でのクラシカルな高揚感は、まるでエニドのごとし。
BJH初期の代表作といえるアルバムだろう。2024年紙ジャケSHM-CD盤は、ボーナストラック6曲収録。最新リマスターにより、サウンドの壮麗な臨場感が増ししている。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 英国度・10 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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FRUUPP「SEVEN SECRETS」
アイルランドのプログレバンド、フループの1974年作/邦題「七不思議」
1973年にデビュー、本作は2作目で、艶やかなヴァイオリンとハープシコードによる典雅なイントロから、オルガンにメロウなギター、ジェントルなヴォーカルを乗せ、リズムチェンジを含む軽やかな展開とともに、優雅で牧歌的なサウンドを描く。
楽曲はわりと長めで、アコースティックを含むプログレらしい緩急あるインストパートは、リマスター盤のくっきりとした音質で聴くと、あらためてじっくりと味わえる。
中盤には9分の大曲もあるなど、いくぶん長尺感はあるが、いまのバンドにはないゆるやかな余韻があり、優美なピアノやヴァイオリンなどによるクラシカルな叙情には、バンドとしての繊細な美意識を感じさせる。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 優雅度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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FRUUPP 「The Prince of Heaven's eyes」
アイルランドのプログレバンド、フループの1974年作/邦題「天の瞳を持つ王子〜虹の果ての黄金伝説」
本作は3作目で最高傑作。かつては「太陽の王子」のタイトルで、テイチク「ブリテイッシュ・プログレクラシックス」から出ていたが、2023年の紙ジャケ盤では若干変更されている。
ファンタジックなジャケからして良い感じであるが、旅の始まりを感じさせる1曲目から、美しいストリングスシンセとピアノ、マイルドなヴォーカルとともに、優雅なシンフォニックロックが展開される。
素朴な耳心地ながらも、じわりと優しい叙情美に包まれて、聴きこむうちに少年が繰り広げる冒険の物語が脳裏に浮かんでくるようだ。
7曲め“Seaward Sunset”のピアノとコーラスによるしっとりとした美しさ、“The Perfect Wish”での後半の大盛り上がりからラストへの展開は感動的で、エンディング的な“Prince of Heaven”で幕を閉じるまで、淡い色をした幻想の物語にゆったりと浸れる、じつに素敵なアルバムである。
2023年のSHM-CD盤は音質もクリアで、原作であるポール・チャールズによる小説の原文と、翻訳の小冊子が封入されているのも嬉しい。
ドラマティック度・・8 プログレ度・8 優美度・9 総合・8.5
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FRUUPP「Modern Masquerades」
アイルランドのプログレバンド、フループの1975年作/邦題「当世仮面舞踏会」
4作目の本作は、イアン・マクドナルドがプロデュースしたことでも知られ、バンドのラスト作にして、代表作としても名高い。
シンセ奏者のスティーブ・ヒューストンが前作で脱退し、ジャズの素養もあるジョン・メイスンが加入している。
冒頭の泣きのギターメロディにメロトロンやソリーナのシンセが重なる、繊細な叙情美にすでにウットリとなる。
初期の2作に比べるとずいぶん洗練されて、ジェントルなヴォーカルにやわらかなエレピ、キャッチーなコーラスも加えて、優雅な叙情を描いてゆく。
10分を超える大曲も、ほどよい素朴さと、70年代ロックの空気を残しながら、サックスなども加えたジャズタッチも覗かせて優しい耳心地に包まれる。
ラスト曲では、泣きのギターとシンセでじわりと盛り上げる。繊細な優美さでは前作に負けず劣らずの内容です。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 優美度・9 総合・8.5
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IQ 「Tales from the Lush Attic」
イギリスのシンフォニックロック、アイキューの1983年作
80年代ポンプロックを代表するバンドのデビュー作を、新たにリミックスした2013年新装版をもとに、リマスターされた2021年の紙ジャケSHM-CD盤。
オルガンを含むきらびやかなシンセに、ピーター・ニコルズのガブリエル風のかすれた味わいのヴォーカルを乗せ、緩急ある展開力とともに、のっけから20分の大曲を構築する。
リミックスによりサウンドがよりダイナミックになったことで、かつてのようなマイナー臭さは感じさせず、確かな演奏力も含めて、現在につながるネオプログレのスタイリッシュ性をしっかり有していたことが改めて確認できる。
3曲目のキャッチーなナンバーなども爽快で、じつにシンフォプログレらしい。クラシカルなピアノの小曲なども含め、マーティン・オーフォードの多彩な鍵盤ワークも随所に光っている。
MARILLIONのデビュー作とともに、GENESISルーツの80年代シンフォプログレとしては出色の出来といっていいだろう。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 ジェネシス度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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ETNA「ETNA」
イタリアのプログレ・ジャズロック、エトナの1975年作
FLEAを母体にしたバンドで、ETNA名義としては唯一の作品。長らく廃盤であったが、2024年に最新リマスターの紙ジャケSHM-CDで再発された。
のちにGOBLINに加入する、アゴスティーノ・マランゴーロの軽やかなドラムに、巧みなギターとエレピなどを重ね、優雅なフュージョン・ジャズロックを展開。
作りこまれた緻密な楽曲には、テクニカルでスリリングな緊張感があり、4人のメンバーの完璧なアンサンブルが一体となって硬質な音のテンションで描かれる。
カルロ・ペニシによるギターのフレーズは時にハードロック色もあって、手数の多いドラムとともに、ハードなジャズロックファンも唸らせるだろう。
イタリアン・ジャズロックでは、ARTI + MESTIERIが有名だが、本作は派手やかさではアルティに譲るものの、演奏面では充分互角に張り合える。
曲によってはアコースティックな地中海風や、イタリアらしいミステリアスな空気も覗かせる。本格派ジャズロックとしても屈指の完成度を誇る傑作です。
ドラマティック度・・7 ジャズロ度・9 優雅な硬質度・9 総合・8.5
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FINCH「Galleons Of Passion」
オランダのプログレバンド、フィンチの3rd。1977年作
バンドのラスト作であり、最高傑作ともされる本作は、前の2作よりもぐっとメロディの洗練度が増して、リリカルな美しさが全面に溢れている。
シンセとドラムが交替し、軽やかなリズムにメロウなギターときらびやかなシンセを重ねた、シンフォニックなフュージョンプログレ風のスタイリッシュな柔らかさに包まれる。
そして、ヨープ・ヴァン・ニムヴェーゲンのギターは、ハケットかアッカーマンか、というように扇情的に奏でられ、泣きのフレーズの数々が聴き手の涙腺を刺激する。
Yesの“Your is no Disgrace”を思わせるキャッチーなラスト曲まで、FOCUSの最高傑作にも比肩するクオリティの高い傑作アルバムだ。
2023年の紙ジャケ、SHM-CD盤は、ボーナスにデモ音源を7曲収録、デモとはいえ音質も良好で、別アレンジのアルバムをもう一枚楽しめる感じ。
リマスターにより音質もよりクリアになり、透明感あるシンフォニックロックの名作に浸れる。
メロディアス度・9 プログレ度・8 泣きのギター度・10 総合・8.5 過去作のレビューはこちら
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PULSAR「Halloween」
フランスのプログレバンド、ピュルサーの3rd。1977年作
コケティッシュな少女の歌声による“ダニーボーイ”で幕を開ける本作は、フランスプログレ史上においても5指に入るべき名作である。
妖しいジャケから想像されるコンセプトストーリーとともに、美しいフルートに幽玄なメロトロンの響き、アコースティックギターのつまびきに包まれて、ゆったりと曲は進んでゆく、
やがてヘヴィーなギターが加わりダイナミックなリズムとともに、薄暗い叙情とエキセントリックな夢見心地の狂気のようなものが交差してゆく。
メロウなギターワークとメロトロンの重なりは絶品で、初期GENESISの典雅な叙情をフランス的なアートな感性で仕立て上げたという感じか。
A、B面をいっぱいに使ったそれぞれ2つの組曲は、ゆるやかな流れと湾曲を、幻想的な感性で楽しむという、いわば絵画的なセンスで構築される。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 幻想度・9 総合・8.5 過去作のレビューはこちら
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Emmanuel Booz「Clochard」
フランスのシンガー、エマニュエル・ブーズの1976年作/邦題「聖なる浮浪者」
1969年にデビュー、元々はジャズやシャンソン畑のシンガーであったが、1974年の2作目では、プログレッシブな作風へ深化、3作目となる本作には、ZAOのジョエル・デュルグノーが参加している。
官能的なサックスにギターが絡み、うるさすぎないシンセとともに聴かせる、アートロック風のサウンドは、優雅でありつつ得体の知れない感性を覗かせ、結果としてプログレッシブな香りをまとう。
そして、フランス語によるダンディな歌声は、ときにオペラのようにシアトリカルに響きわたり、その存在感は大変個性的だ。

前作「迷宮の扉」で見せたシアトリカルな怪しさは、いくぶん薄まったようにも思えるが、アコースティックギターの弾き語りにも味があり、ラストの優美な叙情ナンバーまで、先鋭的な芸術センスを感じさせるのはさすが。 次作「彷徨」はユーロロック史に残る驚異の大傑作となる。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 シアトリカル度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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ISILDURS BANE「MIND Volume 1」
スウェーデンのプログレバンド、イシルドゥルス・バーネの1997年作
1984年にデビュー、1989年作 「Cheval」からは、よりシリアスでクラシカルなアプローチにシフトしたバンドが、さらなる一歩を踏み出したというべき7作目で、新たにジャケを変更しての2021年、紙ジャケリマスター盤。
トランペット、トロンボーン、ホルン、オーボエ、フルートといった楽器による室内楽的な優雅さとバンドサウンドが融合、シリアスなスタイリッシュ性とともにクールなアンサンブルを構築。
軽やかに鳴り響くシロフォン、チューブラーベルズ、艶やかなヴァイオリン、ゆったりとしたクラシカルな流れの中にも、空間的なスケール感を覗かせて、スリリングな聴き心地である。
後半には、15分前後の大曲が続き、室内楽的クラシックとロックが自然体で溶けあう圧巻のサウンドは、まさしく新時代の北欧シンフォニックロック。
後に続く「マインド」シリーズの始まりとして、新たなプログレの形を提示してみせた渾身の傑作である。右はオリジナルの旧盤ジャケ。
クラシカル度・8 プログレ度・8 優雅で壮大度・9 総合・8.5 過去作のレビューはこちら
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Moon Safari 「Best Of (2005-2013)」
スウェーデンのプログレバンド、ムーン・サファリのベストアルバム。2015年作
2005年にデビュー、いまやメロディック系北欧プログレの代表格となった。本作は2013年までの4作+EPからの楽曲を収録した、日本独自のCD2枚組ベストアルバム。
2nd「Blomljud」収録のアカペラ曲から始まり、続く大曲“The Ghost Of Flowers Past”の繊細な泣きの叙情で、すでに涙腺崩壊。
優美なピアノとシンセ、メロウギターに、マイルドなヴォーカルとキャッチーなラスハーモニー、どこを切ってもメロディの洪水で、じわりと泣かせる。
3rd「Lover's End」収録の14分におよぶ“A Kid Called Panic”の、爽快なメロディに浸りつつ、Disc2では4th「Himlabacken Vol. 1」収録の優雅な叙情ナンバーも光っている。
Disc2後半には、EP“Lover's End Pt III Skelleftea Serenade”、24分の組曲を収録。優しいメロディに包まれながら、緩急ある流れで構築されるドラマティックなサウンドに浸れる。
リマスター&SHM-CDで音質も良いですね。メロディ派プログレッシャーは必聴のベストであり、ムーン・サファリ入門用としても最高ですな。
メロディック度・10 プログレ度・8 泣きの叙情度・10 総合・9 過去作のレビューはこちら
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TURID 「Vittras Visor」
スウェーデンの女性シンガー、トゥリドの1971年作/邦題「ヴィトラの仮面」
これまでCDはベスト盤の「I Retur」のみだったのだが、2019年に、初期の3作品がそれぞれ単体でリマスター、紙ジャケ再発された。
本作には、ピアノ、オルガン、フルートで、Bjorn J:Son Lindhが参加、ギターに、KebnekajseKenny Hakanssonが参加している。
アコースティックギターのつまびきにコケティッシュな女性ヴォーカルを乗せ、やわらかなフルートの音色も加え、ドリーミィなフォークサウンドを聴かせる。
典雅なピアノの旋律も耳心地よく、英国フォークルーツの牧歌性に、北欧らしい涼やかな空気感を合わせた作風で、ゆったりと楽しめる。
曲によってはエレキギターも用いて、サイケなフォークロック風味も覗かせるなど、単なる北欧フォーク以上の、プログレリスナー向きの作品です。
北欧度・8 プログレ度・7 女性Vo度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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Estructura
ヴェネズエラのプログレバンド、エストルクトゥラの1980年作/邦題「構造」
前作「思考の彼方」も大変な力作であったが、2作目となる本作は女性Voに女性Gを含む7人編成で、やわらかなピアノとシンセに、スペイン語による美しい女性ヴォーカルを乗せ、優美なシンフォニックロックを聴かせる。
叙情的なツインギターにムーグやクラヴィネットなどのプログレらしい華麗なシンセが絡み、リズム面での安定した演奏力とともに、ときにジャズロック的でもある優雅で躍動感あるアンサンブルを描いている。
サウンドのマイナー臭さはあまりなく、緩急あるダイナミックな展開力や南米らしい繊細な叙情美には雄大なスケール感すら覚える。
3〜5分前後の小曲を主体にしつつ、インストパートでの確かな説得力に、魅力的な女性ヴォーカルも素晴らしい。マイルドな男性ヴォーカルをメインにした曲もあり。
この時期の南米のシンフォブログレ作品としては、PABLOBACAMARTEにも並ぶレベルの傑作だ。紙ジャケ、SHM-CDでの再発は嬉しい。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 叙情度・9 総合・8.5 過去作のレビューはこちら
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DISCUS「...tot licht!」
インドネシアのプログレバンド、ディスクスの2003年作/邦題「トット リヒト!光へ!」
インドネシアの奇跡というべきこのバンドの3作品が、2024年に紙ジャケリマスターで発売された。本作は2作目で最高傑作。
軽妙なリズムにサックスが鳴り響く、変態がかったジャズロックかと思いきや、楽曲が進むにつれ、無節操で高度な演奏と矢継ぎ早の展開に唖然となること必至。
バックではギターがメタルリフを弾きだし、かと思うとガムランの詠唱が始まり、ゆったりとしたサックスやクラリネットのメロディからシンフォニックなキーボードと美声の女性ヴォーカルの歌声にうっとりすると、次の曲では、アヴァンギャルドな変則リズムに乗せて歪み系男性ヴォーカルがガナりたてる。
プログレ…ジャズ、シンフォ、メタル、民族音楽と…様々な要素を叩き込み、ごった煮にして仕上げたというサウンドは、結果として恐るべきプログレッシブな作品に。
ラストは19分という大曲で、優雅なジャズロックにケチャやシンフォプログレが合わさり、緩急自在のダイナミックな展開と美しい女性ヴォーカルにより感動的な盛り上がりを見せる。
まさに濃密なる異色傑作とはこのこと!いますぐ買いに走るべし…いやポチるべし!新たなボーナスに2009年のライブ音源を収録。
ドラマティック度・9 プログレ度・10 濃密度・10 総合・9 過去作のレビューはこちら
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2/21
プログレの春はもうすぐ(73)

Steve Hackett 「Foxtrot At Fifty + Hackett Highlights: Live In Brighton」
Genesisのギタリスト、スティーヴ・ハケットのライブ作品。2023年作
ロジャー・キング、ヨナス・レインゴールド、クライグ・ブランデル、ロブ・タウンゼンド、ナッド・シルヴァン、ゲストにアマンダ・レーマンという不動のメンバーで、1972年作 「Foxtrot」の完全再現を含む、2022年のステージを2CD+BDに収録。
1975年デビュー作からの“Ace Of Wands”で幕を開け、軽やかなリズムに優美なシンセ、メロウなギターにサックスが重なる優雅なサウンドで、ハケットワールドが全開。
泣きのメロディが光る“Spectral Mornings”、キャッチーな“Every Day”といった人気曲はもちろん、「Highly Strung」収録の“Camino Royale”では、クライグ・ブランデルの巧みなドラムを含めてテクニカルなアンサンブルが見事。
アマンダ・レーマンの歌声に12弦ギターのつまびき、フルートも美しい大曲“Shadow Of The Hierophant”でじわりと盛り上げ、後半からはいよいよ「Foxtrot」の完全再現。
“Watcher Of Skies”のイントロから高揚感に包まれて、ナッド・シルヴァンの歌声ともに、往年のGENESISサウンドが甦る。
ドラマティックな大曲“Supper's Ready”、アンコールの“Firth Of Fifth”から、ドラムソロを挿入しての“Los Endos”で締めくくる。
ブルーレイは映像、音質ともに最高で、バンドとしてのアンサンブルとグルーブもぐっと高まった、素晴らしいステーシが楽しめる。
ライブ演奏・9 ライブ映像・9 フォックストロット度・9 総合・8.5 過去作のレビューはこちら
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PENDRAGON 「Fallen Dreams & Angels All The Loose Ends」
イギリスのプログレバンド、ペンドラゴンの2022年作
「Saved By You」、「Red Shoes」、「Fallen Dreams And Angels」、「As Good As Gold」という、4枚のEPをまとめた、全15曲入りのコンピレーション作品。
80年代のサウンドは、いかにも英国ポンプロックらしい、華麗でキャッチーなメロディックロックで、楽曲も3〜5分前後とシンプルながら、ニック・バレットの奏でる泣きのギターと味のある歌声で、叙情的な世界観はすでに確立されている。
8曲目以降は、傑作「The World」以降の90年代の楽曲で、ロマン派シンフォニックロックらしく、優美にじわじわと盛り上げるスタイルに深化。
アルバム未収録の曲も、ペンドラゴンらしい叙情美に包まれたサウンドで、近年のアルバムに物足りなさを感じているファンも必聴ですな。
シンフォニック・8 プログレ度・7 初期のペンドラゴン度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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PENDRAGON「PAST AND PRESENCE」
イギリスのプログレバンド、ペンドラゴンのライブ作品。2007年作
名実ともに英国シンフォニックロックを代表するバンド、デビューアルバムの1985年作「THE JEWEL」21周年を記念ツアーから、2006年のポーランド公演を2CD+DVDに収録。
バンドの初期にギターヴォーカルを務めていたジュリアン・ベイカーや、シンセ奏者のジョン・バーンフィールド、リック・カーターという歴代メンバーを迎え、「THE JEWEL」の全曲に加え、1984年のデビューEP「Fly High Fall Far」からの全曲や、デビュー前のデモからの楽曲も演奏。
90年代以降とは異なる、ポンプロック寄りのストレートな作風はむしろ新鮮で、ニック・バレットの味わいのあるヴォーカルに、メロウなギター、ゲストたちの華麗なシンセワークとともに、時代を超えて再現される楽曲には感慨もひとしお。
映像では楽しげに演奏するメンバーたちの姿も見られて、バンドのたどってきた長い歴史を感じることができる。また、ツアーメンバーである、ドラムのジョー・クラブトリーのプレイもなにげにレベルが高く、安定感あるステージはさすがである。
ライブ演奏・8 ライブ映像・7 ペンドラゴンの歴史度・9 総合・8
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VONN ZANDUS 「Unimortal」
イギリスのプログレユニット、ヴォン・ザンドゥスの2023年作
マルチミュージシャン、ジョン・バーンズによるプロジェクトで、ムーグなどのヴィンテージなシンセにマリンバやグロッケンシュピールの音色を重ね、軽やかなアンサンブルとともに、カンタベリー風サイケロックというようなサウンドを展開する。
ジャズロック的な優雅さとサイケの浮遊感が融合し、わりとユルめの耳心地ながらも、ほどよくテクニカルというのも絶妙の作風である。
この手にしてはドラムも生なので、アンサンブルには躍動感もあり、シンセをメインにしながらも、随所にギターも加わったりと音の厚みもある。
軽妙にしてエレクトロな、カンタベ・サイケ・ジャズロックというような好作品です。
ドラマティック度・7 プログレ度・8 優雅度・8 総合・8
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RICHARD HARVEY 「Plague And the Moonflowers」
イギリスのミュージシャン、リチャード・ハーヴェイの1999年作
GRYPHONで活躍したリコーダー&シンセ奏者で、本作はラルフ・ステッドマンの絵本を基にした童話的なコンセプト作品。
雄大なオーケストレーションにナレーションを乗せたシネマティックな世界観で、艶やかなヴァイオリンや優雅なフルートの音色など、クラシカルなサントラ的に鑑賞できる。
オペラティックなソプラノ女性ヴォーカルが歌い上げる、シンフォニックなアリアというようなパートなどは、むしろオペラを聴いてる感覚に近いかもしれない。
15分の大曲も、クラシカルなピアノやストリングス、語りを含んだ物語性や厳かな混声コーラスとともに、しっとりと幻想的なサウンドを描いてゆく。
ロック感触がほぼないので、プログレとして聴くにはややつらいか。
シンフォニック・8 プログレ度・5 優美度・8 総合・7
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AVKRVST 「The Approbation」
ノルウェーのプログレバンド、アヴクルヴストの2023年作
適度にハードなギターにメロトロンを含むうっすらとしたシンセ、マイルドなヴォーカルを乗せて、ANEKDOTENなどに通じる涼やかで物悲しい叙情に包まれたサウンドを描く。
緩急ある展開とともにメタリックでヘヴィなパートを覗かせるあたりは、OPETHなどを思わせ、ProgMetal的でもあるスタイリッシュな構築センスが光る。
ポストプログレ的な歌ものナンバーもはさみつつ、ラスト2曲は10分超の大曲で、アコースティックギターを用いた哀愁から、ゆったりとした繊細な叙情が広がってゆく。
13分のラスト曲は、優美なシンセとヘヴィなギターの重厚な味わいに、スリリングな展開力も見せながら、後半のシンフォプログレの叙情美へという流れも見事。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 スタイリッシュ度・8 総合・8
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ALWANZATAR 「ENGSYRE」
ノルウェーのエレクトロ・プログレ、アルワンザターの2023年作
TUSMORKEのKristoffer Momrakによるソロプロジェクトの6作目。ムーグやメロトロンなどのシンセをエレクトロに重ね、スペイシーでサイケな浮遊感を描く。
ジャケのイメージのような、妖しい幻想童話的な世界観も感じさせ、チープさをかもしだすオールドなシンセサイザー感触もいかにも確信犯的。
フルートがアラビックな旋律も覗かせつつ、北欧らしい涼やかな味わいで、アナログシンセのやわらかな耳心地がサイケなトリップ感を生み出している。
単なるシンセミュージックという以上に、プログレらしい幻想性に包まれていて、ピコピコ系なのに北欧シンフォの雰囲気も残した異色作である。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 エレクトロ度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Ocean of Lotion「LouiLouiLoui」
ノルウェーのプログレバンド、オーシャン・オブ・ローションの2023年作
2012年デビューし、11年ぶりとなる2作目。80年代なデジタルなシンセアレンジに、艶めいた女性ヴォーカルと男性ヴォーカルで、エレクトロなテクノポップ風味のサウンドを聴かせる。
楽曲は3〜5分前後とコンパクトで、YMOのようなキャッチーなビート感に、北欧らしい涼やかな浮遊感が同居しつつ、わりとストレートな耳心地で楽しめる。
全体的にはプログレ的な要素や展開は薄めなので、オールドなシンセポップが好きな方にどうぞ。
ドラマティック度・7 プログレ度・6 テクノ度・8 総合・7
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Kornmo 「Vandring」
ノルウェーのプログレバンド、コルンモの2019年作
AdventureMorildのメンバーを擁し、2017年にデビューし、2作目となる。オルガンやメロトロンなどのシンセに叙情的なギターを重ね、涼やかな空気を感じさせるシンフォプログレを聴かせる。
オールインストであるが、優美なピアノのパートなども含む、緩急あるリズム展開で、北欧らしい土着性ある叙情美を描いてゆくところは、Kerrs Pinkなどにも通じるだろう。
12分の大曲では、わりとハードなドラムとギターで重厚なパートも現れたりと、プログレらしいドラマティックな構築センスも光る。
牧歌的なギターの旋律とヴィンテージなシンセが融合し、これぞ北欧プログレというサウンドを堪能できる逸品です。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 北欧度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Kayo Dot / Tartar Lamb II 「Krakow」
アメリカのエクスペリメンタルロック、ケイヨ・ドットの2014年作
本作はライブ作品で、Disc2には、リーダーであるトビー・ドライヴァーによる別プロジェクト、ターター・ラムIIのライブ音源を収録した2枚組になっている。
Disc1は、1st〜5thまでの大曲を中心に、うねるベースにフリーキーなギター、サックスが鳴り響き、詠唱のような歌声とともに、チェンバー寄りのアヴァンプログレを展開。
うっすらとしたシンセによる静謐なパートから、ドラムも加わってアッパーにたたみかける部分では、スリリングな緊迫感に包まれて、鳴り響くトランペットもどこか妖しげだ。
Disc2も、基本的には同編成であるが、サックス、トランペットにクラリネットも加わって、より内省的な室内楽的なサウンドになっている。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 暗黒チェンバー度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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Kayo Dot 「Coffins On Io」
アメリカのエクスペリメンタルロック、ケイヨ・ドットの2014年作
2003年にデビュー、本作は7作目となる。のっけから12分におよぶ大曲で、エレクトロなアレンジにキャッチーなヴォーカルを乗せた、ROXY MUSICのようなシンセポップ風味のサウンド。
80年代ニューウェイブ風味を確信犯的に取り入れつつ、翳りを帯びたダークな空気感には倦怠の美学も感じさせ、ときにドゥーミィな重厚さも覗かせるなど、一筋縄ではいかない。
9分、10分という大曲では、サイケデリックなリフレインがドラッギーな浮遊感をかもしだし、淡々としているのにミステリアスな緊張感も漂わせ、曲によってはアヴァンギャルドな展開も顔を出し、底知れないセンスを感じさせる。
サックスが鳴り響くジャズ風味のラスト曲も味わいがある。決して一般受けはしないが、多面的な作品に本気で取り込むバンドの貪欲なスタンスに驚かされる。
エレクトロ度・8 プログレ度・7 倦怠の翳り度・8 総合・8
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Zyclope 「“Uno”」
スベインのプログレバンド、ザイクロープの2003年作
フルート、ヴァイオリン奏者を含む6人編成で、クラシカルなピアノとシンセにヴァイオリンが絡み、叙情的なギターとともに、ほどよいマイナー感触のあるシンフォプログレを聴かせる。
自主制作らしい音質面での粗さはあるが、優美なシンセやフルート、アコースティックを含むメロウなギターによるインストサウンドは、ヨーロピアンな優雅さに包まれていて耳心地が良い。
艶やかなヴァイオリンをメインに、シンセとフルートが重なるゆったりとした叙情美や、どことなくサントラ風の雄大なシンセアレンジなど、シンフォニックロックとしての美しさにうっとりとしつつ、エフェクトのかかったヴォーカルを乗せたナンバーもあったり、ほどよく緩急あるサウンドが楽しめる。
ドラマティック度・7 プログレ度・8 優雅度・8 総合・7.5
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Zyclope「Contracorriente」
スペインのプログレバンド、ザイクロープの2005年作
2作目となる本作は、美麗なシンセとピアノにほどよくハードで叙情的なギターを重ね、スペイン語によるマイルドなヴォーカルとともに、繊細なシンフォニックロックを展開する。
泣きのギターにヴァイオリンがかぶさる、優雅なシンフォニック性とスパニッシュな牧歌性が同居したサウンドは、いくぶんのB級感触も含めて日本人好みである。
前作に比べてヴォーカル入りのパートが増えたので、インストにおけるギターのメロウな旋律も効果的で、艶やかなヴァイオリンやピアノによるクラシカルな美意識も光っている。
全体的には、リズム面を含むもっさりとしたアレンジがスタイリッシュとは真逆であるが、90年代シンフォの香りを残した煮え切らなさも好きである。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 優雅度・9 総合・7.5
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NEURONIUM 「TODAS SUS GRABACIONES PARA DISCOS EMI/HARVEST(1977-1978) 」
スペインのエクスペリメンタル・ロック、ニューロニウムの1998年作
スペインのTANGERINE DREAMとも評されるユニットで、本作は1977年のデビュー作「QUASAR」、1978年作「VUELO QUIMICO」を2CDに収録、
デビュー作は、26分という大曲で幕を開け、スペイシーなシンセの重ねにフルートが鳴り響き、叙情的なギターの旋律とともに、雄大なサウンドが広がってゆく。
単なるシンセミュージックではなく、ギターやフルートなどを取り入れたスタイルは、エレクトロというよりは、ときにPOPOL VUHのような原初的な神秘性も感じさせ、メロトロン鳴り響くラストナンバーもじつに叙情的。
2作目も、20分近い大曲から始まり、KLAUS SCHULZEばりのシンセサウンドに、アコースティックを含むギターや、後半にはヴォーカルも加わって、スペイシーなシフォニックロック的にも楽しめる。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 神秘的度・8 総合・7.5
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LOTUS
スウェーデンのプログレバンド、ロータスの1975年作
ASOKAのメンバーを含むバンドのデビュー作で、叙情的なツインギターにオルガンやエレピを重ね、軽妙なアンサンブルのインストサウンドを聴かせる。
泣きの旋律をを含んだギターは北欧らしい味わいで、やわらかなオルガンとともに、FOCUSなどに通じるジャジーなサウンドを描く。
楽曲は2〜3分前後なので、プログレ的な展開というのはさほどないが、北欧的なアートロック、ジャズロックとして楽しむのがよいだろう。
当時としては演奏力も高く、とくにギタリストのフレージングのセンスは、ヤン・アッカーマンばりに素晴らしい。ボーナスに1975年のライブ音源を収録。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 北欧度・8 総合・8



2/8
立春のプログレ(58)

Fish On Friday 「8mm」
ベルギーのプログレバンド、フィッシュ・オン・フライデーの2023年作
2020年にデビューし、6作目となる。叙情的なギターにうっすらとしたシンセ、マイルドなヴォーカルを乗せて、優しく繊細なプログレハードを聴かせる。
今作では、どことなくオールドなAOR風味も感じさせ、きらびやかなシンセアレンジもどことなく80年代と、コンセプトとしての古き良き味わいで楽しめる。
派手さはないが、キャッチーなヴォーカルメロディとともに、TOTOのようなアダルトなメロディックロックを愛する向きにはストライクだろう。
後半以降は、泣きのギターフレーズにシンセを重ねたシンフォニック性も現れて、女性コーラスを加えたナンバーなども優美ですな。
メロディック度・8 プログレ度・7 優雅度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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SAMMARY 「THE DREAM」
ドイツのアートロック、サマリーの2023年作
2022年にデビューし、2作目となる。たゆたうような女性ヴォーカルとハードなギターのコントラストで、メランコリックな叙情とオルタナロック風味が交差する。
優美なピアノやプログレ的なシンセアレンジも現れ、神秘的な空気感に包まれつつ、エモーショナルな女性ヴォーカルがほどよくキャッチーに歌い上げる。
浮遊感ある物悲しさと表現力ある女性声という点では、THE GATHERINGあたりに通じるところもあり、ゴシックロック好きの方にもお薦めできるだろう。
前作以上に、緩急の差が顕著になっていて、翳りを帯びた重厚さとしっとりとした叙情美が同居した、女性声オルタナ・アートロックの好作品となった。
ドラマティック度・7 メランコリック度・8 女性Vo度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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FORCE OF PROGRESS 「A SECRET PLACE」
ドイツのプログレバンド、フォース・オブ・プログレスの2020年作
The Healing Roadのメンバーを中心に、2017年にデビュー、本作は2作目となる。ハードで硬質なギターにきらびやかなシンセを重ね、ProgMetal寄りのテクニカルなインストサウンドを聴かせる。
どことなくジョーダン・ルーデス風の美麗なシンセワークと巧みなギタープレイで、DREAM THEATERや、PLANET Xあたりに通じる感触もありつつ、11分の大曲ではミステリアスな静寂パートを織り込むなど、ドラマティックな世界観も描き出す。
アルバム後半には、シンフォニックで優雅なナンバーもあったり、疾走する激しさや、オルガンを使ったヴィンテージな感覚も同居していて、インストながらも濃密なサウンドが楽しめる。
ドラマティック度・7 プログレ度・8 テクニカル度・8 総合・8

JAN AKKERMAN 「CLOSE BEAUTY」
オランダのギタリスト、ヤン・アッカーマンの2019年作
元FOCUSのギタリストとして知られ、ソロとしては8年ぶりの作品となる。アコースティックギターの巧みな旋律にエレピを含むシンセをまじえ、グルーヴィなベーストとドラムのリズムで、ジャズタッチのサウンドを展開。
エレキギターを使った叙情的なナンバーは、かつてのFOCUSを思わせるところもあって、その優雅なギターフレージングには、アッカーマン節をしっかりと感じさせる。
ゆったりとした牧歌的な小曲から、メロウなギターにシンセを重ねた優美なナンバーまで、年季を経たプレイヤーのみがかもしだす、優しい深味が感じ取れる。
ジャズやクラシックの素養を熟成させた、ギタープレイヤーとしてのアッカーマン健在を思わせる好作品です。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 アッカーマン度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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THE AURORA PROJECT 「GREY_WORLD_LIVE」
オランダのプログレバンド、オーロラ・プロジェクトのライブ。2019年作
2016年作「World Of Grey」全曲を含む、2017年のライブを収録。うっすらとしたシンセにメロウなギター、ジェントルなヴォーカルで、MARILLIONにも通じる翳りを帯びたサウンドを描く。
コンセプト的なストーリー性を感じさせる楽曲は、これという派手な展開はないのだが、エモーショナルに歌い上げるヴォーカルとともに、ドラマティックな世界観を構築する。
2015年作「A Night To Remember」からのナンバーも挟みつつ、泣きのギターと表現力ある歌声で、ラスト2曲でじわじわと盛り上げる。
ライブ演奏・8 プログレ度・7 薄暗度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Utopia 「From Hell To Paradise」
スイスのプログレユニット、ユートピアの2013年作
マルチミュージシャンのネオ・スミス氏を中心にしたプロジェクトで、のちのCrazy Juggler's Prog Orchestraの前身となる作品。
Disc1「From Hell」、Disc2「To Paradise」とした近未来をテーマにしたコンセプト作品で、オルガンやピアノを含む美麗なシンセにギターを重ね、かすれた味わいのヴォーカルとともに、ドラマティックなシンフォプログレを構築する。
華麗なシンセワークによる小曲も挟みつつ、クラシカルなピアノと女性ヴォーカルも加わった優美なパートなど、ほどよいハードさと叙情性を含んだ、緩急ある展開力も見事だ。
Disc2では、のっけから17分の大曲で、ヴィンテージロックの感触を強めつつ、32分という大曲では、ドラマ性のある濃密なシンフォプログレが楽しめる。CD2枚、各78分、76分という、渾身の力作である。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 濃密度・9 総合・8.5
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DRY RYVER 「2038」
スペインのプログレバンド、ドライ・リヴァーの2018年作
2012年にデビュー、QUEENMOON SAFARIの優雅さと、スタイリッシュなハードさが融合したスタイルで、過去2作も圧巻の傑作であったが、3作目となる本作もまた素晴らしい。
オルガンやピアノを含むきらびやかなシンセにギターを重ね、スペイン語によるヴォーカルを乗せて、キャッチーな叙情とテクニカルなセンスが巧みに合わさったハードプログレを展開する。
爽快なメロディアス性とともに、随所にストリングスを加えた重厚なクラシカル性、泣きの叙情ギターなど、濃密に盛り上げるあたりは、いかにもスパニッシュらしい。
一方では、ダンサブルなアレンジやオールドロック風味、優美なバラードから、ブラスを取り入れたファンキーなナンバーなど、アレンジの幅も広がりつつ、スペイン語による哀愁の歌声がよくマッチしている。
過去2作に比べて、肩の力の抜けた作風であるが、10分の大曲ではDREAM THEATERにも通じるProgMetal的な展開力で、華麗でドラマティックなサウンドを描き出す。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 構築度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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DRY RIVER 「CUARTO CRECIENTE」
スペインのプログレバンド、ドライ・リヴァーの2022年作
4作目となる本作は、しっとりと優雅なピアノのイントロから始まり、ハードなギターとスペイン語のヴォーカルを乗せて、キャッチーでスタイリッシュなハードロック風のサウンドが広がる。
メタル寄りの疾走感も含んだリズムチェンジなど、ProgMetalとしての感触も強まりつつ、メロディのフックにはあくまで爽快な聴きやすさがあって、アコースティックギターなどによるやわらかな叙情美も覗かせる。
楽曲自体は4〜5分前後が主体で、壮大なドラマ性などはさほど感じないが、シンフォプログレ要素よりもメタル感触が強まったことで、重厚な作風に磨きがかかっている。
アルバム後半の7分の大曲は、流麗なギターメロディとエモーショナルなヴォーカルでじわりと盛り上げる。優雅なプログレメタルとしても楽しめるようになった高品質作。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 重厚度・8 総合・8


ASFALTO 「CRONICAS DE UN TIEMPO RARO」
スペインのプログレバンド、アスファルトの2017年作
70年代から活動するバンドで、アルバムは15作以上を数えるベテラン。オールドなギターにシンセを重ね、スペイン語のヴォーカルを乗せて、優雅な哀愁に包まれたプログレハードを聴かせる。
随所にサックスやピアノも使った大人のアレンジと、キャッチーなメロディのフックに、スパニッシュな香りをまとったサウンドは、スペイン版TOTOという雰囲気でも楽しめる。
叙情的なギターの旋律とやわらかなシンセワークも耳心地よく、YES風の優美なナンバーや、フルートの音色に美しいシンセのシンフォニックなナンバーなど、ベテランらしい引き出しの多さもさすが。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 スパニッシュ度・8 総合・7.5
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Popol Vuh 「Cobra Verde」
ドイツのクラウトロック、ホポル・ヴーの1987年作
ヴェルナー・ヘルツォーク監督のアフリカを舞台にした映画のサントラで、アコースティックギターとシンセの重ねに、チャント風の歌声を乗せた幻想的なサウンド。
シンセをメインにしたインストの小曲でも、雄大で神秘的な空気を描くところは、フローリアン・フリッケのセンスだろう。
パーカッションに子供たちの歌声を乗せた、現地で録音したようないかにもアフリカンな曲もありつつ、優美なピアノにギターとうっすらとしたシンセで聴かせるラストの大曲などは、ポポル・ヴーらしい崇高な味わいだ。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 雄大度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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1/31
英国、イタリア、ポーランド(48)

LODESTONE 「TIME FLIES」
イギリスのアートロック、ロードストーンの1971年作
1971年に唯一のアルバムを残して消えたバンドの初のCD化で、外宇宙への数百年の旅をするというテーマのコンセプトアルバム。
やわらかなオルガンの響きに、マイルドなヴォーカルを乗せ、Procol HarumThe Moody Bluesなどにも通じる英国らしい牧歌的なサウンドを描く。
The Beatlesのようなキャッチーな歌メロに、ストリングスが重なると、Barclay James Harvestを思わせる優雅な聴き心地にもなる。
1〜4分前後の小曲を主体に、アコースティックギターとオルガンを重ねた優美なナンバーや、アルバム後半はプログレらしい雄大な雰囲気にも包まれる。
派手な展開などはないのだが、英国70年代初頭の素朴な味わいのアートロックが楽しめる好作品です。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 牧歌的度・8 総合・7.5
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The Dear Mr Time 「Grandfather」
イギリスのアートロック、ディア・マイ・タイムの2021年作
1970年に1作を残して消えたバンドの1stのリマスターに、2015年の復活作、2018年の3作目をそれぞれに収録した。CD3枚組仕様
Dasc1のデビュー作は、ある男の人生をコンセプトにフルートによる牧歌的なイントロから、アコースティックギターにマイルなヴォーカル、オルガンやピアノなど加えて、英国らしい翳りを帯びたアートロックを聴かせる。
サックスやフルートが鳴り響き、ダイナミックなアンサンブルとともにに、コンセプト的スケール感を描くところは、MARSUPILAMIなどのファンにも楽しめるだろう。
優美ピアノにチェロやホルン、メロトロンが重なるインスト曲や、アコースティックの牧歌的なナンバーも多いので、フォークルーツの英国ロックとしても鑑賞できる。
Disc2には、2015年作「BRONTOSAURS AND BLING」を収録。キャッチーな歌ものロックという趣で、シンセによる優美なアレンジに叙情的なギターで、ゆったりとしたサウンド。
Disc3は、2018年作「TIME」を収録。ジェントルなヴォーカルを乗せた、STACKRIDGEあたりに通じるポップな味わいの英国ロックとなっている。ボーナスにデモ音源などを多数収録。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 英国度・8 総合・7.5
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Renaissance Illusion 「Through the Fire」
イギリスのクラシカルロック、ルネッサンス・イリュージョンの2001年作
YARDBIRDSのジム(ジェームス)・マッカーティ、ジェーン・レルフ、ジョン・ホークン、ルイス・セナモという、第一期RENAISSANCEILLUSIONのオリジナルメンバーが結集した復活作。
静謐感のあるベースとピアノのイントロから、ドラムとギターを加え、ジェントルなジムのヴォーカルにジェーンの美しい歌声を重ねて、フォークロックルーツの優雅なサウンドを聴かせる。
楽曲は3〜5分前後が主体で、クラシカルなピアノにはかつての面影があるが、男性声がメインなので、もっとジェーンの歌声を聴きたいのが正直なところ。
かつての瑞々しいサウンドと比べると、プログレとしてもクラシカルロックとしても物足りなさが残る。
クラシカル度・7 プログレ度・7 英国度・8 総合・7 過去作のレビューはこちら
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Oliver Wakeman 「Anam Cara」
イギリスのミュージシャン、オリヴァー・ウェイクマンの2024年作
リック・ウェイクマンの息子で、ソロとしては1997年にデビュー、クラシブ・ノーランとの連名作をはじめ、多くの作品を手掛けている。
本作には、元KARNATAKAのヘイリー・グリフィス、NIGHTWISHのトロイ・ドノクリー、FRAGILEのオリヴァー・デイ、元PENDRAGONのスコット・ハイアムなどが参加。
ケルトの物語をテーマにしたコンセプト作で、アコースティックを含む叙情的なギターに優美なシンセ、美しい女性ヴォーカルで、しっとりと繊細なシンフォニックロック展開する。
マンドリンやリュートのつまびきに、やわらかなピアノやホイッスル、イーリアンパイプの音色とともに、KOMPENDIUMなどにも通じる幻想的なケルティック・ロックとしても楽しめる。
随所に父親譲りのきらびやかなシンセワークも現れて、KARNATAKAにも通じる優雅でキャッチーなナンバーも良い感じだ。女性声シンフォ好きはチェックです。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 優美度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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TIGER MOTH TALES 「The Whispering Of The World」
イギリスのシンフォニックロック、タイガー・モス・テイルズの2020年作
全盲のミュージシャン、ピーター・ジョーンズによるプロジェクトで、本作はヴォーカルとピアノ、ストリングスのみで作られた、ロック色のないクラシカル路線のアルバム。
優美なピアノに艶やかなヴァイオリン、エモーショナルなヴォーカルを重ねて、しっとりと優雅なシンフォニックサウンドを描いてゆく。
ドラムやギターが入らないので、プログレとして聴くにはクラシック寄りであるが、いくぶん翳りを含んだ物悲しい作風には、コロナ禍における世界の空気を感じ取ってか。
それでいてなお、優しい愛を感じさせる、ピーターの歌声をじっくり味わえる内容だ。DVDにはピアノの弾き語りによるライブセッション映像を収録。
クラシカル度・8 プログレ度・6 優美度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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TIGER MOTH TALES 「The Whispering Suite」
イギリスのシンフォニックロック、タイガー・モス・テイルズの2023年作
本作は2020年作「The Whispering Of The World」の世界観を、15分の組曲へとリアレンジしたタイトルナンバーに、リミックス、ライブ音源など収録。
1曲目のリミックスは、軽やかなリズムにきらびやかなシンセ重ねた、シンフォプログレらしいカラフルなサウンドが楽しめる。
2曲目からは、ピアノの弾き語りによるライブ音源で、 「The Whispering Of The World」のナンバーを主体に、2022年作「A Song Of Spring」からの楽曲も披露。
ラストは15分のタイトル組曲で、シンセをメインにした涼やかなサウンドに、ヴォーカルを加えて、ゆったりとしたシンフォニックサウンドを構築する。
クラシカル度・8 プログレ度・7 優美度・8 総合・7.5
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TIGER MOTH TALES 「The Turning Of The World」
イギリスのシンフォニックロック、タイガー・モス・テイルズの2023年作
2020年作「The Whispering Of The World」と対をなす作品で、アコースティックギターによって作曲されたという楽曲は、ジェントルなヴォーカルとギターのつまびきをメインに、シンセやサックスも重なって、田園地帯をイメージするような牧歌的なシンフォニックロックが味わえる。
エレキギターこそ入らないが、ドラムとベースによるロック感触はあるので、英国らしいオールドなメロディックロックとしては普通に楽しめる。
プログレ的な展開力はほとんどないので、物足りなさもあるのも事実。この路線のままならプログレリスナーはつらい。
ドラマティック度・7 プログレ度・6 叙情度・8 総合・7.5
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JOHN HACKETT & NICK FLETCHER 「BEYOND THE STARS」
イギリスのミュージシャン、ジョン・ハケットとニック・フレッチャーのユニット、2018年作
2人のユニットとしては2016年作に続く2作目で、ドラムにはウェイン・プロクターが参加。やわらかなシンセにメロウなギター、ジェントルなヴォーカルにフルートも加えて、兄のスティーブ・ハケットにも通じる優雅な叙情を描く。
ニック・フレッチャーの巧みなギターは、ときにオールドな渋さや泣きの叙情を奏で、ジョン・ハケットのフルートや素朴な味わいの歌声は、古き良き英国の香りを感じさせる。
プログレらしい軽やかなリズム展開に、優美なフルートがしっとりと響き、メリハリある構成の中に繊細なセンス描くところも、やはり兄と似ているだろう。
GENESIS風のナンバーでは、オルガンやメロトロンも使い、流麗なギターの旋律も随所に素晴らしい。ラストの11分の大曲まで、英国的な叙情に包まれた逸品です。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 優美度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Tallis 「In Alia Musica Spero」
イギリスのプログレバンド、タリスの2021年作
Jethro Tullのディー・パルマー、ジョン・エヴァンス、元Magnumのミッケイ・バーカーを中心にしたバンドの、70年代後期の発掘音源のCD化で、ピアノやオルガンを含むトリプルシンセにジェントルなヴォーカルを乗せ、優雅でクラシカルなシンフォニックロックを聴かせる。
厚みのあるキーボードサウンドのブリティッシュロックという点では、DUNCAN MACKAYあたりに通じる雰囲気もあり、ベートーヴェンやモーツァルト、パッヘルベルのカノンなどのカヴァーでは、TRACEあたりを思わせる、クラシカルな鍵盤ロックが楽しめる。フルアルバム分のマテリアルがなかったのか、ラスト2曲は1、2曲目のインストバージョン。
クラシカル度・8 プログレ度・7 優雅度・8 総合・7.5
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Syndone 「Dirtythirty 1992-2022」
イタリアのプログレバンド、シンドーネの2023年作
1992年にデビューのベテラン。2010年に復活以降は旺盛に活動を続け、本作はデビュー30周年を記念し、過去作の楽曲のリアレンジを主体にしたアルバム。
1曲目の新曲は、優美なピアノにジェントルなヴォーカルのイントロから、オルガンにメロウなギターを加えて、哀愁の叙情に包まれたシンフォプログレを展開する。
3曲目以降は、過去曲のリアレンジで、ピアノのストリングスによるクラシカルな感触は、「コンチェルト・グロッソ」的だったり、歌い上げるヴォーカルとともに、ロックオペラ風のシアトリカルな雰囲気も覗かせるなど、曲ごとに異なる作風で楽しめる。
1992年のデビュー作や、1993年の2nd「Inca」からのナンバーも、プログレらしいシンセとストリングスを重ねて、じつに優雅な聴き心地になっている。
ボーナストラックには、2018年作「Mysoginia」のナンバーを日本語で収録していて、なかなか情緒があってよいですな。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 優雅度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Divae Project 「Stratosferico & Others Stories」
イタリアのプログレバンド、ディヴァエ・プロジェクトの2023年作
1995年に唯一のアルバムを出したDIVAEの後継プロジェクトで、2021年の6曲入りEP、2023年の3曲入りEPにコンピレーション参加曲を加えた作品。
ピアノとヘンテコな語りのアヴァンギャルドなイントロから、ストリングスとシンセとドラムのインプロ的な小曲、クラシカルなピアノ曲と、つかみどころがなく、バンド的なサウンドをイメージするとやや肩透かし。
OSANNAの“Introduzione”、“L’uomo”、“L’amore Vincera Di Nuovo”というカヴァー3連発は、リノ・ヴァレッティもヴォーカルで参加して、なかなかよい味わいで、ASIA“After The War”のカヴァーは、一転して王道のプログレハードが楽しめる。
故キース・エマーソンへ捧げるキーボードプログレなナンバーも良い出来なのだが、全体としてはオリジナル曲の少なさと統一感のなさという点で、作品としては物足りないか。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 イタリア度・8 総合・7 過去作のレビューはこちら
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L'Estate Di San Martino 「Kim」
イタリアのプログレバンド、ル・エスターテ・ディ・サン・マルティノの2022年作
70年代から活動しながら、アルバムデビューは2006年という遅咲きのバンドで、本作は7年ぶり5作目となる。
「癌にかかった少女を冬眠させ、未来に目覚めさせて回復させる」というアメリカのニュースにインスパイアされたという作品で、やわらかなシンセにフルート、ジェントルなイタリア語のヴォーカルとともに優雅なサウンドを展開。
アコースティックを含む繊細なギターの旋律、エモーショナルに歌い上げるヴォーカル、ここぞとメロウな叙情ギターにメロトロン風のシンセをかぶせてじわりと盛り上げるところは、シンフォプログレ好きにはたまらない。
後半は7分、9分という大曲が続き、優美なシンセワークや、大人の哀愁含んだ味わいで、ラスト曲では、いったんの静寂ののち、軽やかなアンサンブルから、フルートとピアノの音色が物悲しく響き、美しい女性スキャットにシンセが重なってしっとりと幕を閉じる。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 イタリア度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Prometheo 「D'un Fuoco Rapito D'un Giovane Uomo D'un Amore Insensato」
イタリアのプログレバンド、プロメセオの2019年作
オルガンが鳴り響き、オールドな感触のギターに朗々としたイタリア語のヴォーカルで、70年代ルーツのヴィンテージなイタリアン・プログレを聴かせる。
アナログ感たっぷりのアンサンブルと緩急ある展開力、Il Balletto Di Bronzoなどに通じる妖しい空気感もよろしく、優美なピアノなどの使い方なども堂に入っている。
ヴォーカルの入ったパートではキャッチーな牧歌性もあって、わりとユルめな感触であるが、アコースティックギターやヴァイオリンによる優雅な叙情性覗かせて、古き良きイタリアンロックの繊細な美学も覗かせる。
10分近い大曲では、ゲストの女性ヴォーカルも加えて、男女Voによる優雅でシアトリカルなシンフォプログレを展開する。Syndoneあたりが好きな方にもお薦めの逸材だ。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 イタリア度・9 総合・8
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Daal 「NAVELS FALLING INTO A LIVING ORIGAMI」
イタリアのプログレバンド、ダールの2018年作
Taprobanのドラムと、Tilionのシンセ奏者によるユニットで、2009年にデビュー、6作目となる本作は、49分全1曲という構成の作品。
SF的なイントロから、メロトロン含むシンセにゲストによるギターにヴァイオリンも加え、インストによるミステリアスなシンフォニックロックを展開する。
スペイシーなシンセの重ねは、ときにKlaus Schulze風だったり、デジタルなアレンジも覗かせつつ、優美なピアノやヴァイオリンにはクラシカルな側面も感じさせる。
ドラムがさほど入らずロック感触が薄めなのと、なにせ曲が長いので、気が短い方には向かないのだが、シンセがメインの雰囲気モノとしてどうぞ。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 イタリア度・7 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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LIGHT ENTANGLEMENT MACHINE 2021
ポーランドのプログレバンド、ライト・エンタングレメント・マシン2021の2021年作
優美なピアノとシンセにアコースティックギターが絡むインロトから、軽やかなドラムとベースにスペイシーなシンセと叙情的なギターを乗せて、優雅なインストサウンドを聴かせる。
メロウなギターの旋律は、PINK FLOYDルーツであるが、存在感あるベースも含めて、わりとのノリのあるアンサンブルで、ときにアッパーなスペースロック風でもある。
これという展開は盛り上がりなどはないので、プログレとして聴くにはいくぶん退屈だが、ラストは12分の大曲で、シンフォニックと言ってもよいシンセとピアノの重ねに、メロウなギターで、ゆるやかに泣きを描いてゆく。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・7 総合・7
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LOONYPARK 「PERPETUAL」
ポーランドのプログレバンド、ルーニーパークの2016年作
2008年にデビューし、4作目となる。美麗なシンセを硬質感のあるギターに重ね、伸びやかな女性ヴォーカルとともに、スタイリッシュでモダンなサウンドを描く。
ポリッシュらしい翳りに包まれた涼やかな空気に、艶やかなヴァイオリンも鳴り響き、メランコリックな味わいの重厚なシンフォプログレが楽しめる。
いくぶんゴシック的でもある優雅な倦怠と女性ヴォーカルの組み合わせは、ハードになったALL ABOUT EVEというような聴き心地もある。
ラスト曲での泣きのギターフレーズも耳心地よく、プログレ的な展開などはあまりないが、翳りを含んだ女性声メロウロックとして味わうのがよろしいかと。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 薄暗度・8 総合・8
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FRAMAURO「ETERMEDIA」
ポーランドのプログレバンド、フラマウロの1998年作
Milleniumの前身となるバンドで、うっすらとしたシンセワークにメロウなギター、母国語のヴォーカルを乗せて、PINK FLOYDルーツの翳りを帯びたシンフォプログレを聴かせる。
メランコリックな泣きの美学は、CollageAbraxas同様にじつにポーランドらしく、スタイリッシュになりきれないマイナーな空気感に包まれているが、優美なシンセと叙情的なギターの旋律が重なるあたりは、シンフォ好きにはたまらない。
全体的にゆったりとしたサウンドながらも、随所にほどよいリズムチェンジもあって、プログレとしての知的な構築センスもすでに感じさせる。
本作を残してバンドは消え、そのサウンドはMilleniumへと受け継がれるが、2022年になって復活している。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 叙情度・8 総合・8



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ドイツのプログレはいかが(31)

VIOLENT JASPER 「CONTROL」
ドイツのプログレバンド、ヴァイオリント・ジャスパーの2023年作
SYLVANのメンバー2人によるユニットで、SYLVANのシンガーにドラムも参加しているので、「ほぼシルヴァンじゃん」などとツッコミも入れたくなるが、サウンドの方は、わりとハードなギターに優美なシンセを重ね、美しい女性ヴォーカルも加わった、繊細でスタイリッシュなモダンプログレ。
マルコのヴォーカルが加わると、とたんにSYLVANっぽくなるのだが、基本は女性声をメインに、しっとりとした優雅さとメタリックなハードさのメリハリがあって、なかなか楽しめる。
エモーショナルな女性ヴォーカルに泣きのギターの旋律とシンフォニックなシンセを重ねて、じわりと盛り上がるラスト曲には、SYLVANのファンもぐっとくるだろう。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 優美度・8 総合・8
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Eyesberg 「Claustrophobia」
ドイツのプログレバンド、アイズバーグの2021年作
2014年にデビュー、3作目となる本作は、画家ゴッホの生涯をテーマにしたコンセプト作となった。
のっけから11分におよぶ大曲で、優美なシンセにメロウなギター、シアトリカルに歌い上げるヴォーカルとともに、大人のシンフォプログレを構築する。
オルガンやムーグなどのヴィンテージなシンセに、ときにやわらかなフルートの音色も加え、ピーター・ガブリエル系の味のある歌声が、ドラマティックなサウンドを描き出す。
曲によっては、ほどよくハードな感触も覗かせつつ、プログレらしい緩急ある知的にアレンジセンスも効いていて、泣きのギターメロディによる哀愁の叙情も含んでおり、全体的にもじっくりと楽しめる好作です。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 叙情度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Saris 「Beyond The Rainbow」
ドイツのプログレバンド、サリスの2020年作
1993年にデビュー、1作を残して消えるも、2009年に復活、本作は復活後の4作目となる。
美麗なシンセアレンジをギターに重ね、味わいのあるヴォーカルとともに、シンフォニックなプログレハードを聴かせる。
キャッチーなメロディのフックと、ピアノを含む透明感のあるシンセに、女性コーラスも加わった優雅さと、ほどよくハードなProgMetal風の展開美も覗かせる。
11分の大曲では、壮麗なシンフォニック性とともにドラマティックなスケール感に包まれ、全体的にも厚みのあるサウンドが味わえる力作である。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 壮麗度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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KARIBOW 「HOLOPHINIUM」
ドイツのプログレバンド、カリボウの2016年作
Last Turionのオリヴァー・ラッシングを中心に結成し、2011年にデビュー、本作は3作目となる。
それぞれが「The Fragments」、「Letter From The White Room」と題されたCD2枚組の大作で、優美なシンセのイントロから、軽やかなドラムに適度にハードで叙情的なギターを重ね、マイルドなヴォーカルとともに、ProgMetal感触も含んだシンフォプログレを展開する。
ギター、ベース、キーボード、ヴォーカルにドラムもこなすオリヴァー・ラッシングのマルチプレイヤーぶりが光っていて、激しく巧みなドラムの腕前もかなりのものだ。
プログレハード的なキャッチーな爽快さもあるので、メロハーやメタルのリスナーなどでも聴きやすく、Disc1ラストの9分近い大曲はドラマティックなハードシンフォが味わえる、
Disc2は7パートに分かれた36分の組曲になっていて、美麗なシンセアレンジとエモーショナルな歌声でじわじわと盛り上げる。SAGAのマイケル・サドラーなどがゲスト参加。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 叙情度・8 総合・8
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NEUSCHWANSTEIN 「Fine Art」
ドイツのプログレバンド、ノイシュヴァンシュタインの2016年作
1979年に傑作「Battlement」を残して消えたバンドの、じつに37年ぶりとなる復活作。
優美なフルートの音色にメロディックなギター、オルガンを含むシンセにヴァイオリンが鳴り響く、クラシカルなシンフォプログレを展開。
ツインキーボードの重なりにギターの泣きの旋律で、THE ENIDにも通じるシンフォニー的な優雅な耳心地に包まれる。
2曲目以降は小曲主体で、オールインストなのでBGMになってしまいそうだが、巧みでハードなギターを乗せたパートや、ナレーション風の語りからのフルートとピアノの古楽風ナンバーなど、ほどよくメリハリに富んでいる。
オリジナルメンバーはキーボードのみとなったが、優雅で壮麗なシンフォニックロックが楽しめる好作です。
クラシカル度・8 プログレ度・7 優雅度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Stern Combo Meissen 「Im Theater am Potsdamer Platz」
ドイツのプログレバンド、シュテルン・コンボ・マイセンのライブ。2014年作
1977年にデビュー、東ドイツ時代から活動するバンドで、本作は2013年4月8日ベルリンで行ったコンサートを2DVD+2CDに収録。
ツインヴォーカル、ツインキーボードの6人編成で、エレピやオルガン、ミニムーグといったきらびやかなシンセワークにマイルドなヴォーカルで、優美なシンフォニックロックを聴かせる。
ムソルグスキー「はげ山の一夜」も、ギターレスの編成ながら、スリリングなアンサンブルで、ヴィヴァルディ「四季」なども優雅でクラシカルな鍵盤プログレが味わえる。
キャッチーな歌ものナンバーもありつつ、目玉は後半での1978年の名作「錬金術師の物語」の完全再現で、37分に及ぶ組曲を、ヴィンテージな香りを残しつつ、ダイナミックな展開力で描き出す。若手メンバーを含む巧みな演奏と歌唱力で、聴きごたえのあるステージとなっている。
ライブ演奏・8 プログレ度・8 キーボー度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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RPWL 「Stock」
ドイツのモダンプログレ、RPWLの2003年作
200年にデビュー、本作は3作目となる。ゆったりとしたリズムに繊細なギターとシンセを重ね、マイルドなヴォーカルともに、PINK FLOYDルーツの浮遊感ある叙情を描く。
メロウなギターにうっすらと美しいシンセがかぶさると、シンフォニックな優雅さに包まれて、ときにプログレらしいムーグシンセの音色なども心憎い。
ドイツではアニメソングで知られる女性シンガーのコニーKがゲスト参加して、男女ヴォーカルで聴かせるナンバーは、初期のYESのようなキャッチーな味わい。
全体的にも派手な所はないが、まどろむようにゆるやかなサウンドが楽しめる好作品だ。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Glorious Wolf
「Zodiac」
オランダ出身のギタリスト、ルード・デイレンのプロジェクト、グロリアス・ウルフの2019年作
優美なシンセにメロウなギター、ジェントルなヴォーカルとともに、PINK FLOYDルーツのゆったりとした叙情に包まれたサウンド聴かせる。
サックスが鳴り響く大人の哀愁にサイケな浮遊感、ほどよくアヴァンギャルドなセンスも覗かせて、6〜11分という長めの楽曲を構築。
アコースティックギターにシンセを重ねた優雅なナンバーや、CAMELばりの泣きのギターをたっぷりと奏でるインストなど、ゆるやかな耳心地で楽しめる。
ギタープレイに関しては一流なのだが、自身のヴォーカルにはさほど魅力がないのと、楽曲展開のスリリングさに欠ける点で、もうひとつ抜けきらないか。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 叙情度・8 総合・7.5
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Banco Del Mutuo Soccorso 「Live In Mexico City 1999」
イタリアのプログレバンド、バンコ・デル・ムトゥオ・ソッコルソのライブ。2021年作
2000年に「En Concierto Mexico City」のタイトルで発売されていたものに、楽曲を追加してリマスター再発、2CDで116分に拡大された完全版。
1999年メキシコでのステージを2CDに収録。1994年作「13」収録曲から、いまは亡きフランチェスコ・ジャコモの伸びやかな歌声とともに、優雅なイタリアンロックが広がってゆく。
1976年作「最後の晩餐」収録曲や、デビュー作からの「R.I.P.」、1972年作「ダーウィン」収録「征服者」など、往年の代表曲も演奏。
Disc2では、1979年作「春の歌」収録曲で、しっとりと優雅に聴かせつつ、「ダーウィン」収録「革命」でのスリリングなアンサンブルはいかにもバンコらしい。
1983年作「Banco」からも2曲を披露するなど、70〜90年代のナンバーをまんべんなく取り入れたセットで、往年のファンも嬉しいだろう。
リマスターにより音質もさらに向上。巧みな演奏と素晴らしい歌唱で、ライブらしい濃密な臨場感が味わえる見事なライブ作品だ。
ライブ演奏・8 プログレ度・7 リマスター度・9 総合・8.5 過去作のレビューはこちら
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AUNT MARY 「Live Reunion」
ノルウェーのプログレ・ハードロック、アント・マリーのライブ作品。1993年作
1970年にデビュー、1973年までに3作を残して解散。本作は1980年の再結成ライブを収録。
ギター、ベース、ドラムのトリオ編成のステージで、1972年の2nd「Loaded」から3曲を取り上げ、さらに新曲も演奏している。
ブルージーなギターに、英語歌詞によるジェントルなヴォーカルで、70年代ブリティッシュロックルーツの渋い味わいのサウンドを展開。
オルガンなどが入らないので、プログレ感はほぼなく、古き良き北欧ハードロックとして聴くのが正しいだろう。
ラストは即興をまじえて、15分におよぶ演奏を披露。
ライブ演奏・7 プログレ度・5 北欧度・7 総合・7
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Alan Stivell 「Legend」
フランスのミュージシャン、アラン・スティーヴェルの1983年作
1970年デビュー、ケルトやトラッド関連の多数の作品に携わるミュージシャンで、本作はケルトの伝説を基にしたコンセプト作品。
1980年作「Symphonie Celtique」は壮大なる傑作であったが、本作もシンセやギターを使ったシンフォニックロックの感触と、ハープやフルート、パーカッションが一体となり、神秘的なケルティックロックを構築する。
楽曲は2〜3曲前後の小曲を主体に、素朴な土着性を残しながら、ときにフリーキーなエレキギターがサイケな味わいにもなっていて、繊細なハープやフルートの音色もしっとりと美しいという、わりとごった煮的センスであるが、優雅なケルトが楽しめる好作である。
ケルティック度・8 ロック度・5 優雅度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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Alan Stivell 「Again」
フランスのミュージシャン、アラン・スティーヴェルの1993年作
本作は70年代の楽曲をリレコーディングした作品で、優雅なフルートにケーナ、パンパイプにヴァイオリンが絡み、フランス語のヴォーカルに、ギターとドラムによるロック的なビート感が合わさったサウンドを聴かせる。
典雅なハープの響きにダルシマーやブズーキの素朴なつまびき、パーカッションのリズムとともに、土着的な空気に包まれつつ、ゲストも含む男女ヴォーカルを乗せた歌ものナンバーでは、わりとキャッチーなトラッドロック風にも楽しめる。
ケイト・ブッシュがゲスト参加して、スキャットヴォイスを乗せるナンバーや、オルガンが鳴り響きハード寄りのギターが重なるプログレ風のパートもあったりと、多様なアレンジが面白い。
ケルティック度・7 ロック度・6 優雅度・8 総合・7.5
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Alan Stivell 「Brian Boru」
フランスのミュージシャン、アラン・スティーヴェルの1995年
本作はケルトの伝承をもとにしたトラッドとオリジナル曲で構成された作品で、アコースティックギターやハープのつまびきにパーカッションのリズム、ブズーキやフィドルの音色に、マイルドな男性ヴォーカルと女性声が絡む、典雅なトラッドサウンドを聴かせる。
ケルティックな土着性に包まれながら、随所にエレキギターやドラムも加えたロックアレンジやデジタル感触も覗かせるなど、コンテンポラリーな感触はプログレファン向けと言えるだろう。
素朴なアコースティックナンバーからは、しっかりといにしえのケルトの神秘性も感じさせ、それでいてたくみに90年代感覚を取り入れた、モダンケルトの好作品といえる。
ケルティック度・8 ロック度・5 優雅度・8 総合・7.5
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Alan Stivell 「1 Douar-One Earth」
フランスのミュージシャン、アラン・スティーヴェルの1998年作
軽やかなリズムに優美なフルートやハープの音色、ジェントルなフランス語のヴォーカルに、シンセによるアレンジも加えた、エスノ風ケルトというようなサウンドを描く。
デジタルなモダンさと、わりと愉快な土着的なノリが融合していて、ケルトというよりはヘンテコな民族ポップという感触のナンバーもあるが、一方では、美しいシンセにヴァイオリンやハープを重ねた幻想的な雰囲気も残していて、女性ヴォーカルも加えた癒し系の側面も覗かせる。
ラスト2曲は、バグパイプやホイッスルを用いた優美なケルトスタイルに、しっとりとした男女ヴォーカルを乗せて優雅な耳心地で締めくくる。
ケルティック度・7 エスノ度・7 優雅度・8 総合・7.5
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Anima Dominum 「The Book Of Comedy」
ブラジルのプログレバンド、アニマ・ドミニムの1999年作
1993年にAnima名義でデビュー、本作は改名しての3作目となる。美麗なシンセのイントロから、軽やかなリズムに叙情的なギターを乗せ、やわらかなシンセワークとともに、優雅なシンフォプログレを展開。
15分という大曲では、マイルドなヴォーカルに、Quaterna Requiemなどに通じるクラシカルなシンセアレンジ、メロウなギターとともに南米らしい繊細な叙情に包まれる。
ときにフルートの音色も加わった、CAMELばりの優美な叙情から、ラスト曲では軽やかなシンフォ・ジャズロック風味のアンサンブルを描く。
全体的にも、美しいシンセをメインに、インスト主体の優雅なシンフォニックロックが楽しめる好作品です。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 優美度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら


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英国プログレであけおめです(16)

Steve Hackett「Selling England By The Pound & Spectral Mornings: Live at Hammersmith」
Genesisのギタリスト、スティーヴ・ハケットのライブ作品。2020年作
シンセは盟友ロジャー・キング、ベースにTHE FLOWER KINGSのヨナス・レインゴールド、ドラムに元FROST*KINOのクライグ・ブランデル、サックスにロブ・タウンゼンド、ヴォーカルにナッド・シルヴァン、ギター&コーラスにアマンダ・レーマンが参加。1973年の名作「Selling England By The Pound」の完全再現を含むステージを収録。
前半はソロ作「Spectral Mornings」の楽曲を主体に、2019年作「At The Edge Of Light」からのナンバーも披露。ハケット御大の優雅なギタープレイを中心に、シンセとサックスがゴージャスに重なり、随所にナッド&アマンダのヴォーカルも加わり、大人の叙情美に包まれたサウンドを描く。
弟のジョン・ハケットが登場して、優美なフルートの音色をハケットの12弦ギターに重ねる、しっとりとしたナンバーも味わい深く、クライグ・ブランデルの要塞のようなドラムセットと、ソロプレイを含めた正確で巧みなドラミングも見どころだ。
後半はお待ちかね「月影の騎士」完全再現で、ナッド・シルヴァンのガブリエル風ヴォーカルとともに、あの頃のGENESISのロマンの香りが蘇り、演奏陣はセッション的な即興プレイも織り込みつつ、名曲“Firth Of Fifth”ではじわじわとくる大叙情に聴き惚れる。
ラストは“Dance On A Volcano”、そしてアンコールの“Los Endos”で幕を閉じる。英国らしい会場の雰囲気も含めて、素晴らしいライブステージで映像的にも楽しめる。
ライブ演奏・9 ライブ映像・8 ジェネシス度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Steve Hackett 「Genesis Revisited Live: Seconds Out & More」
スティーヴ・ハケットのライブ作品。2022年作
ロジャー・キング、ヨナス・レインゴールド、クライグ・ブランデル、ロブ・タウンゼンド、ナッド・シルヴァン、ゲストにアマンダ・レーマンという不動のメンバーで、1977年の名ライブ作の完全再現を含む、2021年のマンチェスターでのステージを収録。
「Spectral Mornings」収録曲で幕を明け、2021年のソロ作からのナンバーから、アマンダ・レーマンをヴォーカルに迎え、1975年の1stソロからの大曲“Shadow Of The Hierophant”も披露。
7曲目からは「セカンズ・アウト」の再現で、ナッド・シルヴァンのPガブ風ヴォーカルに、クライグ・ブランデルの安定感のあるドラムもさすが。
名曲“Firth Of Fifth”の泣きのギタープレイにうっとりとなりつつ、“The Musical Box”は元のライブと同じように抜粋であるが、“Supper's Ready”〜“The Cinema Show”というドラマティックな大曲は悶絶もの。
ラストは“Dance On A Volcano”から、ドラムソロを挟んで“Los Endos”へとなだれこむ。たたみかけるパワフルなドラムも含めて演奏力の高さはさすがです。
ライブ演奏・9 ライブ映像・8 ジェネシス度・8 総合・8
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I AM THE MANIC WHALE 「BUMPER BOOK OF MYSTERY STORIES」
イギリスのプログレバンド、アイ・アム・ザ・マニック・ホエールの2023年作
2015年にデビューしてから、自主制作でありながら大変レベルの高い作品を作り続け、本作で4作目となる。
物語の始まりを思わせるような叙情的なイントロ曲から、メロウなギターに優美なピアノやオルガンを含むシンセを重ね、伸びやかなヴォーカルとともに、古き良きシンフォプログレを聴かせる。
オールドロックのヴィンテージ感と緩急ある展開力は、TRANSATLANTICにも通じる感触もあり、キャッチーなコーラスワークなども随所に耳心地よい。
後半には13分、14分という大曲もあり、A.C.T.あたりを思わせる優雅なメロディアス性とともに、流れるように巧みな構築されてゆく。全66分、さすがの力作です。
メロディック度・8 プログレ度・8 優雅度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら

CYAN「For King And Country」
イギリスのシンフォニックロック、サイアンの2021年作
MAGENTAのロバートリードによるプロジェクトで、1993年にデビュー、本作は1999年以来22年ぶりとなる作品で、デビュー作をリメイクした作品。
ギターにルーク・マシン(Maschine、The Tangent)、ヴォーカルにピーター・ジョーンズ(Tiger Moth Tales、Camel)、ベースはMagentaのダン・ネルソン、という編成で、壮麗なイントロからして往年のシンフォプログレの香りがぷんぷん。
きらびやかなシンセに叙情溢れる巧みなギターの旋律、エモーショナルなヴォーカルで、往年の英国シンフォのロマンの香りを再現するようなサウンドを描いてゆく。
当然ながら、かつてに比べても抜群の演奏力で、女性コーラスも加わった華やかで厚みのあるサウンドは、王道のシンフォプログレとしてはMAGENTAを凌駕するレベル、
ドラマティック度・8 プログレ度・8 英国シンフォ度・9 総合・8
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CYAN 「Pictures From The Other Side - Remix And Live」
イギリスのシンフォニックロック、サイアンの2023年作
1994年の2ndからの4曲を新たに録音して別バージョンとしてミックス、スタジオライブ音源を加えた、8曲入り全64分というEP作品。
優美なピアノにサックス、ピーター・ジョーンズの野太めのヴォーカルに女性ヴォーカルも絡み、クラシカルな味わいのシンフォニックロックを聴かせる。
やわらかなフルートの音色など、アコースティックなパートから、メロウなギターとシンセを加えて盛り上げるアレンジはさすがロバート・リード。
ケルティックなアレンジの10分の大曲も優雅な耳心地で、後半のライブセッションも、ピアノ、ギター、ヴォーカル&サックスのトリオ編成による演奏で、しっとりとした味わいで楽しめる。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優美度・8 総合・8
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Steve Thorne 「Malice In Plunderland」
イギリスのミュージシャン、スティーヴ・ソーンの2023年作
2005年にソロデビューし、本作は7作目となる。ニック・ディヴァージリオ(Big Big Train)をはじめ、カイル・フェントン(Cosmoglaf、Arrival)、ジェフ・リー(Animal Kingdom)といったメンバーが参加。
コロナ禍における各国政府や企業への揶揄を込めて、アリス・イン・ワンダーランドをもじったタイトルで表現。どっしりとしたベースにオルガンを含むシンセとマイルドなヴォーカルを乗せて、モダンなハードプログレを聴かせる。
キャッチーな叙情を描くナンバーなと、3〜4分前後の小曲がメインで、全体的に歌もの主体のストレートな聴き心地。
プログレらしい展開力などはさほどないので、ドラマティックな大曲がひとつ欲しかった気もする。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 叙情度・7 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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Swan Chorus 「Achilles and the Difference Engine」
イギリスのプログレバンド、スワン・コーラスの2023年作
Moonshotのシンガーとベースを含むメンバーで、2019年作に続く2作目。きらびやかなシンセとメロディックなギター、フィル・コリンズを思わせるヴォーカルとともに、GENESISルーツの優雅でキャッチーなシンフォプログレを展開。
オルガンやムーグを含むシンセワークに、哀愁の叙情を感じさせる泣きのギターも随所に光っており、IT BITESなどに通じるスタイリッシュなアレンジと軽妙なアンサンブルも素晴らしい。
ラストは13分という大曲で、優雅な流れで構築される。CDR仕様の自主作品であるが、クオリティの高さに驚愕すること請け合いの傑作だ。
メロディック度・8 プログレ度・8 優雅度・9 総合・8.5


This Winter Machine 「The Clockwork Man」
イギリスのプログレバンド、ディス・ウインター・マシンの2023年作
2016年にデビューし、4作目となる。のっけから11分の大曲で、適度にハードで叙情的なギターに優美なシンセを重ね、伸びやかなヴォーカルとともに、ARENAあたりに通じる翳りを帯びたスタイリッシュなシンフォプログレを展開する。
エモーショナルなヴォーカルとメロウなギターによる泣きの叙情は、MARILLIONなどにも通じる感触で、スケールの大きなドラマ性を感じさせる。
キャッチーな歌ものナンバーも、どこか英国らしいウェットな空気に包まれていて、重厚ながらもゆったりと鑑賞できる好作品だ。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 叙情度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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The Round Window
イギリスのプログレバンド、ラウンド・ウインドウの2022年作
自らを「ワイドスクリーン・ロック」と称する5人編成のバンドで、優美なシンセをギターに重ね、朗々としたヴォーカルとともに、ウェットな翳りを帯びたスタイリッシュなシンフォプログレを聴かせる。
ピアノやストリングなどのクラシカルなアレンジやプログレ感のあるシンセワークも覗かせつつ、リズムはわりとストレートなノリなので、キャッチーなメロディックロックという趣で楽しめる。
フックのある展開や盛り上がりはさほどないのが、MARILLIONあたりに通じるメロウなギターの旋律も含めて、英国らしい泣きの美学を受け継いだ耳心地の良さが光る。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 スタイリッシュ度・8 総合・7.5
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Pallas 「The Edge of Time」
イギリスのプログレバンド、パラスの2019年作
1984年にデビュー、本作は1st「The Sentinel」から、2014年作「Wearewhoweare」までの楽曲を、新たにアレンジした全10曲を収録。
ヴァイオリン鳴り響くイントロから、泣きの叙情ギターに優美なシンセワークで、ゆったりとしたシンフォニックロックを構築。
それぞれの楽曲は、原曲よりもアンビエントなアレンジで、オーケストラルなインストナンバーなど、全体的にバンド感触が薄めなので賛否はあるかもしれない。
ラスト曲はヴォーカル入りで、デジタルなアレンジにより、ポストプログレ風味のスタイリッシュな味わい。いつものパラスとは別物として楽しむべし。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優美度・8 総合・7 過去作のレビューはこちら
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NICK MAGNUS 「CATHARSIS」
イギリスのミュージシャン、ニック・マグナスの2019年作
Steve Hackettのバンドに参加していたことで知られるキーボーディストで、ソロ名義としては6作目となる。
フランス、アリエージュへの旅にインスパイアされた作品で、スティーブ・ハケット、トニー・パターソン、アマンダ・レーマンといったゲストが参加。
オーケストラルなアレンジを含む優美なシンセに、ジェントルなヴォーカルとコーラスハーモニーで、いにしえの歴史を描くようなメディーヴァルなシンフォニックロックを展開する。
それと分かるハケットの流麗なギタープレイもさすがで、ピート・ヒックスがヴォーカルで参加したキャッチーなナンバーや、クラシカルなチェンバロとフルートによる古楽風味なども優雅な味わい。
スティーブ・アンルー(The Samurai Of Prog)のヴァイオリンが鳴り響き、アマンダ・レーマンによる美しいヴォーカル曲にもうっとりです。DVDには旅のドキュメンタリーやMV映像を収録。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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JOHN HOLDEN 「CAPTURE LIGHT」
イギリスのミュージシャン、ジョン・ホールデンの2018年作
オリヴァー・デイ(Fragile)、オリヴァー・ウェイクマン、ジョー・ペイン(元The Enid)、エミリー・ドラン・デイヴィス(元The Darkness)、ビリー・シャーウッド(Yes)、ジーン・パジェウ(Mystery)、マックス・リード(元The Enid)、ピーター・ジョーンズ(Tiger Moth Tales、Camel)、ゲイリー・オトゥールといった多数のゲストが参加。
優美なピアノとシンセに繊細なリュートやマンドリン、ジョー・ペインのエモーショナルな歌声を乗せた1曲目から、その優雅なサウンドにうっとりと聴き入れる。
しっとりとした女性ヴォーカルが美しい2曲めや、オリヴァー・ウェイクマンの美麗なシンセに女性ヴォーカルで優しいシンフォニックロックを描く後半のナンバーもよろしい。
全体的に派手なインパクトはないものの、ゆったりと鑑賞できる大人のシンフォの好作品だ。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優美度・9 総合・7.5
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JOHN HOLDEN 「CIRCLE IN TIME」
イギリスのミュージシャン、ジョン・ホールデンの2021年作
3作目となる本作は、ニック・ディヴァージリオ、エリック・ポタペンコ(Gravity)、フランク・ファン・エッセン(IONA、Celestial Fire)、ヘンリー・ロジャース( Edison's Children)、ピーター・ジョーンズ(Tiger Moth Tales、Camel)などがゲスト参加。
のっけから、ニック・ディヴァージリオのダイナミックなドラムに巧みなギターが重なり、ジーン・パジェウ(Mystery)のヴォーカルを加えて、ドラマティックなシンフォプログレを展開する。
ピーター・ジョーンズの味わいのある歌声にサックスやヴァイオリンも鳴り響く優雅なナンバーや、マーク・アトキンソン(Moon Halo)と、サリー・ミナー(Celestial Fire)の男女ヴォーカルによるしっとりと繊細なナンバーも美しい。
ラストは19分の大曲で、パーカッションを使った民族色から、ナレーションを含む映画のような場面転換で、ドラマ性に包まれたサウンドを構築する。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 優美度・9 総合・8
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Tubular World 「Tubular Bells」
MAGENTAのロブ・リードを中心とした、Mike Oldfieldの「TUBULAR BELLS」を蘇らせるプロジェクト、チューブラー・ワールドの2020年作
スティーヴ・ヒレッジ(GONG)や、ジョン・フィールド(ジェイド・ウォリアー)、レス・ペニング、リック・フェン(10cc)、フィル・スパルディング、ジョン・フィールド、ダニエル・ホールズワース、そしてトム・ニューマンら、35人ものミュージシャンが参加。
Disc1には、名作「チューブラー・ベルズ」の新ヴァージョンのトム・ニューマンによるミックスを、DIsc2には、メンバー自身によるミックスを収録した2CD。
各楽曲ごとに3名〜10名が参加し、優美なピアノに繊細なギター、マンドリン、フルート、リコーダー、そしてチューブラー・ベルズが優雅な音色を重ねてゆく。
原曲へのリスペクトがしっかりとあるので、優雅なギターの旋律をとっても、いかにもマイク・オールドフィールドらしく、名作の新たなバージョンとして楽しめる。
プログレ度・7 オールドフィール度・9 チューブラー・ベルズ度・9 総合・8
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THE ARISTOCRATS 「CULTURE CLASH」
ガスリー・ゴーヴァン、ブライアン・ベラー、マルコ・ミンネマンによるロックバンド、アリストクラッツの2013年作
2作目となる本作も、軽やかなミンネマンのドラムに、存在感のあるブライアンのベース、フリーキーなガスリーのギターで、巧みなインストサウンドを聴かせる。
前作以上に肩の力が抜けたとぼけた味わいが、プログレ的な浮遊感を描いていて、大変テクニカルなのにユルいという、不思議な聴き心地である。
優雅なジャズ風味のナンバーでは卓越したギターのアルペジオも披露し、手数の多いドラムプレイに、不穏なベースが鳴り響く、ミステリアスなナンバーなど、オールインストながらも、3人の超絶プレイが随所に散りばめられている。
一転してスローなナンバーでは、大人の哀愁を含んだ、グルーヴィなアンサンブルも楽しめる。DVDにはインタビューやレコーディング風景を収録。
ドラマティック度・7 テクニカル度・8 アンサンブル度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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ARENA 「Ten Years On」
イギリスのプログレバンド、アリーナの2006年作
PENDRAGONのクライブ・ノーランと元MARILLIONのミック・ポインターにより結成、1995年のデビューから、2005年までの10年を振り返るベストアルバムで、全10曲71分収録。
適度にハードエッジなギターに美麗なシンセを重ね、エモーショナルなヴォーカルとともに、翳りを帯びたスタイリッシュなシンフォプログレを聴かせる、いわばネオプログレの先駆けといいえるスタイル構築。
2005年作「Pepper's Ghost」収録曲から、1998年作「The Visitor」、2002年作「Contagion」、2000年作「Immortal?」、さらには、2005年のライブ未発音源や、過去楽曲の新録音など、コアなファンでも楽しめる。
ラストは1995年の1st「Songs From The Lions Cage」収録の大曲「Solomon」で、ゆったりした叙情と壮大な展開力で聴かせる。バンドの初期の10年を俯瞰できる1枚だ。
ドラマティック度・8 ネオプログレ度・8 叙情度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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