スラッシュ/デスラッシュ/ブルータルデスメタル
〜thrash metal/brutal death metal
by Tosei Midorikawa
掲載バンドはABC順になっています
M | N | O | P | R | S | T | U | V | W |
A
After All 「Mercury Rising」
ベルギーのスラッシュメタル、アフター・オールの2002年作
1995年にデビュー、本作は4作目で、ツインギターのリフにほどよくパワフルなヴォーカルを乗せた、
オールドな感触のスラッシュメタル。適度にメロディも含んだギターはパワーメタル的でもあり、
激しすぎない疾走感は、EXODUSなどの80年代のベイエリア・スラッシュにも通じる聴き心地だ。
METALLICAなどを思わせるミドルやスローテンポのナンバーなど、疾走スラッシュを期待する向きには
やや物足りないかもしれないが、オールドメタルとしては普通に楽しめる。強いインパクトはないのものの、
キャリアのあるバンドらしい安定した演奏力はさすがというところ。スラッシーなパワーメタルという好作品。
ドラマティック度・・7 疾走度・・7 古き良き度・・8 総合・・7.5
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ANASARCA「God Machine」
ドイツのデスメタル、アナサーカの1998年作
低音デスヴォイスとツインギターのリフを乗せて、やや軽めのドラムで激しく疾走、
スローパートも含めてミステリアスなダークさに包まれたデスメタルサウンド。
適度にメロディックなフレーズを含んだギターは、いかにもヨーロッパのバンドらしく、
楽曲は3分前後が中心で、あっさりと終わってしまう感じもあるのだが、その潔さもむしろ
冷徹な雰囲気を与えている。オールドスタイルのヨーロピアン・デスメタルの傑作です。
現在はスペインのブラックメタル、OUIJAとのカップリングCDで出回っている模様。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・8 オールドデス度・・8 総合・・8
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ANASARCA「MORIBUND」
ドイツのデスメタルバンド、アナサーカの2nd。2001作
ヨーロッパのブルデスというと、最近はポーランドが最大の原産地だと思うが、
ドイツにもこんないいバンドがいたのですね。ブラスト入りで暴虐にたたみかけつつも、
ギターリフの中にそこはかとない湿りけを感じさせるのがさすがヨーロッパ産バンド。
曲はほとんど3分台でコンパクトで明快。ツインギターはメロディックなフレーズを奏でたり、
ブルータルなのに聴きやすいです。VADERあたりが好きならチェックして損のない作品かと。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・8 ブルだが聴きやす度・・8 総合・・8
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ANGEL BLAKE
スウェーデンのメタルバンド、エンジェル・ブレイクの2007作
元THE CROWNのマルコ・テルヴォーネンがヴォーカル以外のすべてのパートをこなし、
実質的にはバンドというよりも、マルコのソロプロジェクトと言ってよいのだろう。
サウンドは爆走デスラッシュだったTHE CROWNはやや異なり、スラッシーな味わいもあるダークメタルといった雰囲気。
ヴォーカルはノーマル声で、メランコリックな雰囲気と、古き良きスラッシュメタルの質感をかもしだす楽曲は、
一聴して地味ながら、じわじわと来る感触で、PARADISE LOSTあたりに通じるマイルドさもある。
ただ現時点では、メロディアスにするのかスラッシーにするのかまだ手さぐり状態という印象。
ドラマティック度・・7 メランコリック度・・7 スラッシー度・・7 総合・・7.5
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Angelus Apatrida「Clockwork」
スペインのスラッシュメタル、エンジェラス・アパトリダの2010年作
ザクザクとしたツインギターのリフで疾走するオールドスタイルのスラッシュメタルで、
切れ味のよいクールなリフにはDESTRUCTIONあたりに通じる知的な感触がある。
若手らしい勢いの良さとオールドスラッシュへの敬意を感じさせつつ、
モダンな構築感とのバランスもよく、激しさだけではないセンスの良さが光る。
デイブ・ムステインとシュミーアの中間といった感じのヴォーカルのがなり声も
サウンドによくマッチしていて、すべてのスラッシュ好きが気に入るだろう好作である。
ドラマティック度・・7 疾走度・・8 オールドスラッシュ度・・8 総合・・8
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Angelus Apatrida 「Call」
スペインのスラッシュメタル、エンジェラス・アパトリダの2012年作
前作もDestructionばりの力作だったが、2作目となる本作も激しく勢いのある
スラッシュサウンドを聴かせてくれる。オールドとモダンが適度に融合したギターワークと
高音ダミ声のヴォーカルを乗せて疾走しつつ、テクニックと知的な構築力も感じさせる。
個人的には、もっと風変わりなフックがあると嬉しいが、楽曲は適度に緩急をつけながら
あくまで正統的スラッシュとしての突進力に満ちている。やはり高品質な作品には間違いない。
ドラマティック度・・7 疾走度・・8 スラッシュ度・・9 総合・・8
ANNIHILATOR「Alice in Hell」
カナダのスラッシュメタルバンド、アナイアレイターの1st。1989年作
今やテクニカルなスラッシュメタルの代表格である、ジェフ・ウォーターズ率いるこのバンド、
その切れ味鋭いクールなリフと楽曲展開力で、知的なスラッシュサウンドを生み出し続けているが
もっともプログレッシブで、ある種変態的な傑作といえるのが、このデビュー作だ。
美しいイントロ曲“Crystal Ann”で幕を開け、続く“Alison Hell”でのドラマティックな展開力は
このバンドがただものではないことを物語る、続く“W.T.Y.D”とともにまさにアナイア節ともいうべき
初期を代表するサウンドだろう。整合感を高めた2nd「Never,Neverland」も傑作であるが、
すべてのギターパートと、ベースをこなすジェフ・ウォーターズの才能の本質が本作には詰まっている。
知的スラッシュとしては初期MEGADETHと双璧。リマスター盤には初期のデモ音源3曲を追加収録している。
ドラマティック度・・7 濃密度・・8 知的スラッシュ度・・9 総合・・8
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ANNIHILATOR「Never, Neverland」
カナダのテクニカルスラッシュバンド、アナイアレイターの2nd。1990年作
今作からヴォーカルにコバーン・ファーが加入。ジェフ・ウォーターズのクールでヘンテコなギターリフはいよいよ本領を発揮、
一方で、歌えるヴォーカルのおかげで、サウンドはある種メロディアスになりメタルとして聴きやすくなった。
1曲目の“The Fun Palace”、タイトル曲の“Never,Neverland”をはじめ、初期の代表曲“Phantasmagoria”など、
プログレッシブなアナイア節が詰まった作品だ。スラッシーな激しさはやや薄いが、初心者でも聴きやすいサウンドになっている。
個人的には初期の最高傑作としたい。リマスター盤には初期のデモ音源3曲を追加収録している。
ドラマティック度・・8 濃密度・・8 知的スラッシュ度・・9 総合・・8
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ANNIHILATOR「Set The World on Fire」
カナダのスラッシュメタルバンド、アナイアレイターの3rd。1993年作
前2作に比べるとスラッシュメタル的な激しさはやや影を潜め、パワーメタル的な質感が増している。
もちろんジェフ・ウォーターズのクールなギターリフは健在で、モダンなヘヴィさと硬質感で、
知的に構築されるサウンドは、MEGADETHなどを思わせる雰囲気もある。
コバーン・ファーのヴォーカルも楽曲にメロディックな味わいを加えていて、
叙情的なバラード曲なども含めて、聴きやすくバランスのとれたアルバムだ。
ちなみにドラムには、マイク・マンジーニが参加している。
ドラマティック度・・7 濃密度・・7 知的スラッシュ度・・8 総合・・8
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ANNIHILATOR 「King of the Kill」
カナダのスラッシュメタルバンド、アナイアレイターの4th。1994年作
前作からメンバー全員が脱退、本作では、ジェフがギター、ベース、ヴォーカルもこなしている。ドラムにはランディ・ブラックが参加。
わりとスローテンポの1曲目から、ダークなメタル感触であまり愛想はよくないが、続く2曲目のタイトル曲は
スラッシーな疾走感とキレの良いギターリフを乗せた好ナンバーで、これが1曲目ならもっと評価が上がっていたかも。
ジェフのヴォーカルは上手くはないが、酷評するほどひどくもない。2ndの頃を思わせるナンバー「Second to None」など
佳曲もけっこうあって、スラッシュ寄りに回帰したという印象だが、随所に前作を思わせる叙情姓も残している。
ドラマティック度・・7 濃密度・・7 知的スラッシュ度・・8 総合・・8
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ANNIHILATOR「Bag of Tricks」
カナダのスラッシュメタルバンド、アナイアレイターの初期音源集。1994年作
デビュー前となる1986年のデモや、1st、2nd曲のデモ、ライブ音源など16曲を収録。
メンバーチェンジも絶えなかった当時のバンドの状況とは裏腹に、年代考えればもじつに革新的な
知的スラッシュというべき独自のサウンドを、デビュー前後の時点ですでに確立していたことが分かる。
ヴォーカルも含めてデスメタル的な激しさも感じさせる初期のデモや、1st完成前後の楽曲における
クールなギターリフと唐突とも思えるユニークな展開は、いま聴いてもじつにスリリングである。
初期のアナイアの魅力がすべて詰まっているという点で、ファンには最高の作品と言えるだろう。
ドラマティック度・・7 濃密度・・9 知的スラッシュ度・・9 総合・・8
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ANNIHILATOR 「In Command(Live 1989-1990)」
アナイアレイターのライブアルバム。1996年作
現在も活動中の彼らであるが、クールなギターリフと奇妙なまでの展開の面白さにおいては初期の楽曲が最高なのだが、
これは1st「Alice in Hell」発表直後の1989年のツアーと、2nd「Never Never Land」発表後の1990年のステージを収録していて、
まさに知的系スラッシュのファンには必聴の内容となっている。若さ溢れるスラッシーな疾走感に加え、唐突にも思える展開と、
耳にこびりつくクールなギターリフ、初期の彼らのライブでの高度な演奏力と、個性的な音楽性が確かめられる一作だ。
スラッシュ度・・8 濃密度・・9 ライブ演奏・・8 総合・・8
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ANNIHILATOR「Refresh the Demon」
アナイアレイターの5th。1996年作
あらためて聴くと、初期アナイア節満載のクールなリフがカッコいい。硬質感のテクニカルさが合わさった、
これぞアナイア!という楽曲が多く、彼らのスラッシーな部分が好きな方にはたまらんでしょう。
ジェフのVoに関しては可も無く不可もなくという感じで、この後7thからはまたVoをメンバーに入れるわけですが。
ともかく、初期のクールなリフで聴かせるアナイアサウンドがお好きな方には普通にお勧めです。
ドラマティック度・・7 スラッシュ度・・8 アナイア度・・8 総合・・8
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ANNIHILATOR「REMAINS」
カナダのスラッシュメタルバンド、アナイアレイターの6th。1997年作
ドラムは打ち込みで、それ以外のパートは全てジェフ・ウォーターズがこなすという、
ほとんどソロアルバム的な作品。コアなファンの間では「駄作」「問題作」と言われているようだが、
ギターリフのクールなキレ味はいつもと変わりないアナイア節満載であるし、そこまで悪くはない。
打ち込みドラムのせいでやや軽いサウンドなのは確かだが、逆にギターの巧みさを際立たせていて
これはこれで案外楽しめるのである。つまりジェフ・ウォーターズのソロ名義として聴くべきアルバムなのだ。
ドラマティック度・・7 疾走度・・7 ジェフのソロ度・・9 総合・・7.5
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ANNIHILATOR「CRITERIA FOR A BLACK WIDOW」
カナダのスラッシュメタルバンド、アナイアレイターの7th。1999年作
個人的には1st「ALICE IN HELL」と2nd「NEVER NEVER LAND」が大好きなのだが、
本作は、ヴォーカルのランディ・ランペイジをはじめ、1stの頃のメンバーを集め、
ジャケにもアリスが復活し、バンドとしての原点回帰を目指した内容になっている。
初期のような疾走感が戻ってきていて、いかにもスラッシュ的なリフが重なるところはなつかしい感触だ。
往年のファンには嬉しいサウンドだが、曲調がややストレート過ぎるのが少し残念か。
スラッシュ度・・9 かつてのアナイア度・・8 クール度・・7 総合・・7.5
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ANNIHILATOR「Carnival Diablos」
ジェフ・ウォーターズ率いるテクニカルスラッシュメタルバンド、アナイアレイターの8th。2001年作
ツアー中に解雇されたランディ・ランペイジに替わり、元OVER KILLのギタリスト、ジョー・コミューをVoに迎えている。
アグレッシブなアナイア節が久々に炸裂しているなかなかの好盤で、ザクザクと切れ味のよいギターリフは、
年季とともに研ぎ澄まされたように硬質で、尖った刃物のように我々の耳を切りつける。
ジョー・コミューのヴォーカルも、アグレッシブな曲とスローな曲での声を使い分けるなど、
なかなか器用なところを聴かせてくれる。アルバム全体としてはやや中庸な曲もあり、
クールな展開力という点でも物足りなさはあるが、硬質な勢いを感じられる好作ではある。
ドラマティック度・・7 スラッシー度・・8 アナイア度・・7 総合・・8
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ANNIHILATOR「Waking the Fury」
カナダのテクニカルスラッシュメタルバンド、アナイアレイターの9th。2002年作
メンバーチェンジを繰り返しながら、ジェフ・ウォーターズ自身の求めるスラッシュサウンドを
追求し続けているこのバンド。今作は元OVERKILLのVoを迎えての2作目となる。
一聴して、ギターの音に強くエフェクトがかかっていて、ヘヴィでありながらモダンな印象の音で、
彼ら独特のテクニカルさとスラッシーなリフを聴かせつつも、ヘヴィロック風のサウンドも融合している。
楽曲には、初期のようなクールでユニークな雰囲気もそこはかとなく感じられるが、
全てのバランスにおいての傑作である次作「All For You」への布石というか、習作のような感もある。
ドラマティック度・・7スラッシー度・・8 ヘヴィ度・・8 総合・・7.5
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ANNIHILATOR「Double Live Annihilation」
カナダのテクニカルスラッシュメタルバンド、アナイアレイターのライブ作。2003年作
2002年ヨーロッパツアーでのステージを収録。アルバム「Waking the Fury」時のツアーということで
同作からの曲をメインにしつつ、それ以前のアルバムからもバランスよく演奏している。
バンドの年季を感じさせる安定したテクニックと、よりヘヴィな音像で繰り広げられる
スラッシュメタルサウンドはさすがの迫力で、スタジオ盤以上にパワフルだ。
聴き所はdisc2の方で、“Alison Hell”“Never,Neverland”“Set The World
On Fire”といった
初期の楽曲を聴けるのが嬉しい。やはり彼らの魅力はクールなリフとテクニカルな展開力なのだ。
クールなスラッシュ度・・8 ライブ演奏・・9 音質・・8 総合・・8
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ANNIHILATOR「ALL FOR YOU」
ジェフ・ウォーターズ率いる、スラッシュメタルバンド、アナイアレイターの10th。2004年作
1989年からコンスタントにアルバムを出し続け、今なお現役で活動を続けているこのバンド。
アルバムごとにメンバーが変わる様は、まさにジェフの個人バンドといったところか。
今作は、ドラムにマイク・マンジーニが復帰、ヴォーカル兼サイドギターにはデイブ・パデンが参加、
かつてのテクニカルスラッシュ路線と現代的なアレンジが合わさった好盤になっている。1曲目こそヘヴィロック調の曲だが、
それ以降は不思議にメロディを感じる独特のクールなリフによるテクニカルなアナイア節が堪能出来る。
新Voの歌唱もときにマイルドにときに攻撃的にと表現力もあり、メロディアスなバラードなども
アルバム中のアクセントになっている。1stからもう15年…ジャケのアリスもいい大人になるわけだ(笑)
ドラマティック度・・8 疾走度・・7 アナイア度・・8 総合・・8
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ANNIHILATOR「SCHIZO DELUXE」
カナダのスラッシュメタルバンド、アナイアレイターの11th。2005年作
新たにドラムにトニー・シャペルが参加、ヴォーカルは前作に引き続きデイブ・パデンが務めている。
前作から何かが吹っ切れたのか、今作もアナイア節たっぷりなスラッシュアルバムとなっている。
往年のサウンドを硬質にしたような鋭いギターリフに、展開の面白さはやや薄くなったが
突進しながらときに見せるテクニカルなブレイクや効果的なリズムチェンジなどはさすが。
前作からのVoはがなり声と歌い上げる部分の使い分けができるタイプで、楽曲に貢献している。
全体的なクオリティの高さは全盛期復活かと思わせるが、個人的には前作「ALL FOR YOU」の方が好みか。
ドラマティック度・・7 突進度・・8 アナイア度・・8 総合・・8
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ANNIHILATOR「Ten Years in Hell」
カナダのスラッシュメタルバンド、アナイアレイターのDVD。2006年作
デビューからすでに17年を数えるこのバンドの、歴史を振り返る作品。
過去の貴重なライブ映像や、インタビュー等からなる、ドキュメンタリー風の作りで
若き日のメンバーの姿や、10数年の変遷をたどってゆくバンドの様子が見て取れる。
2枚組みのDisc2では、ジェフ・ウォーターズ自身がバンドの歴史を細かく語っている。
純粋なライブ作品ではないので、熱心なファンでないとあまり面白くはないかもしれない。
バンドの歴史映像度・・8 ライブ映像・・7 ファン向けDVD度・・9 総合・・7
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ANNIHILATOR「METAL」
カナダのテクニカルスラッシュメタルバンド、アナイアレイターの12th。2007年作
CHILDREN OF BODOMのアレキシ・ライホを筆頭に、IN FLAMESのイェスパー・ストロムブラード、
THE HAUNTEDのアンダース・ビョーラー、TRIVIUMのコリー・ビューリー、NEVERMOREのジェフ・ルーミス、
ARCH ENEMYからアンジェラ・ゴソウとマイケル・アモットなど豪華なゲスト陣を迎えて作られたアルバム。
ドラムには、マイク・マンジーニが参加。前作までのスラッシーな突進力はやや薄まり、
ギター弾きまくりというコンセプトで聴かせるサウンドは、豪華なゲスト陣とそれに負けじと弾きまくる
ジェフの楽しそうな顔が見えてくるかのようだ。テクニカルでクールなアナイア節を期待すると
やや肩すかしを食うかもしれない。弾きまくりのお祭り大会として楽しめば、クオリティの高い演奏はさすがだ。
ドラマティック度・・7 スラッシー度・・7 アナイア度・・7 総合・・8
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ANNIHILATOR「Live at Masters of Rock」
カナダのスラッシュメタルバンド、アナイアレイターのライブ作品。2009年作
デビューからすでに20年、長きに渡ってその個性的なギターリフでファンを魅了してきた
ジェフ・ウォーターズ率いるこのバンド、本作は2008年チェコでのライブ音源を収録。
ヴォーカル&サイドギターのデイブ・パデン以外は、ツアー用のメンバーと思われる。
美しいイントロ曲“Crystal Ann”で幕を開け、続く“King of the Kill”からアナイア節が全開、
安定した演奏力と、巧みなリフワークで聴かせるクールなスラッシュメタルが堪能できる。
“Never,Neverland”、“Phantasmagoria”、“W.T.Y.D”、“Alison Hell”といった初期の代表曲が
多く収録されているのも嬉しい。最近のファンはもちろん、1st、2ndがフェイバリットな方にもお薦めだ。
クールなスラッシュ度・・8 ライブ演奏・・8 名曲たっぷり度・・9 総合・・8
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ANNIHILATOR「ANNIHILATOR」
カナダのスラッシュメタルバンド、アナイアレイターの2010年作
前作「METAL」が多数のゲストを迎えてのいわばお祭り的なアルバムであったと考えれば、
純粋なバンド作としては5年ぶりといってもいい。1989年のデビューから数えて21年めで13作目となる本作は、
硬質感を漂わせたギターリフでいつになくスラッシーに疾走する、オールドなスラッシュメタル風味を強くしている。
すべてのギターパートに加えベースもこなす、ジェフ・ウォーターズのセンスが遺憾なく発揮されたそのサウンドには、
変わることのない頑固なまでのメタルへの情熱が窺える。もちろんクールなギターワークにはさすがの切れがあり、
王道の突進スラッシュを知的な鎧で包み込んでいる。なんだかんだでこれも傑作である。
ドラマティック度・・7 スラッシュ度・・9 クール度・・9 総合・・8
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ANNIHILATOR 「Feast」
カナダのベテランスラッシュ、アナイアレイターの2013年作
前作から3年ぶりとなる14作目で、ドラムにはマイク・ハーショウ、ベースにアルベルト・カンプサノが参加、
のっけからシンプルに疾走するスタイルで、知的でクールなアナイア節は影をひそめたかに思えたが、
その後はいつもの感じのリフとともにスラッシーな勢いだけでない、このバンドらさが現れてひと安心。
随所にメロディックな歌メロもあったりとアダルトな味わいのパワーメタル的にも楽しめるが、
前作に比べると肩の力が抜けたラフな印象で、楽曲自体のインパクトや濃密さの点でもやや物足りないか。
限定盤のボーナスDiscには、過去曲のリレコーディングベストを収録。往年のアナイアファンにはむしろ、こちらの方が楽しめる。
ドラマティック度・・7 アナイア度・・7 スラッシュ度・・7 総合・・8
Annihilator 「Suicide Society」
カナダのスラッシュメタル、アナイアレイターの2015年作
1989年のデビュー作から数えて15作目となる。10年以上ヴォーカルを詰めていたデイブ・パデンが前作後のツアー中に脱退し、
ジェフ・ウォーターズ自らがヴォーカルをとり、ギター、ベースをプレイするという、6th「REMAINS」以来の準ソロアルバム的な作品となった。
相変わらずキレのよいクールなギターワークは健在で、シンプルでいくぶんキャッチーな感触は
MEGADETHに接近したような印象もある。一方ではスラッシーで激しい疾走ナンバーや、
ダークな叙情を感じさせるスローなナンバーなどもあって、楽曲ごとにダーティに吐き捨てたり、
じっくりと歌い上げたりもするジェフのヴォーカルもなかなか頑張っているのであった。
昔と今が混ざりあったような曲調に富んでいて、いわば大人のアナイアが楽しめる好作品です。
ドラマティック度・・7 インテレクチュアル度・・8 アナイア度・・8 総合・・8
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ANNIHILATOR 「TRIPLE THREAT」
カナダのスラッシュメタル、アナイアレイターのライブ。2017年作
ライブ作品としては2009年以来となる。DIsc1には2016年ドイツでのステージを、Disc2にはスタジオセッションを収録。
叙情的なイントロの“Crystal Ann”に続き、アグレッシブなオールドナンバー“King of the Kill”でスタートし、
長年のアナイアファンはニンマリだ。音質的にもクリア過ぎないことで、むしろ古き良きメタルの味わいが感じられる。
新しい曲も挟みつつ、“Set The World On Fire”、“W.T.Y.D”、“Never,Neverland”など、往年のナンバーを盛り込んで、
ラストは、“Alison Hell”、“Phantasmagoria”で締めくくる。Disc2は、ギター2人を加えて、5人編成でのスタジオライブで、
アコースティカルな叙情とともに、一味違う優雅なアナイアサウンドが楽しめる。ラストの“Phoenix Rising”も実に美しい仕上がりです。
ライブ演奏・・8 Disc1はメタル・・8 Disc2はアコースティック・・8 総合・・8
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ANNIHILATOR 「For the Demented」
カナダのスラッシュメタル、アナイアレイターの2017年作
1989年のデビュー作から数えて16作目。本作ではライブメンバーとして参加していた、ギターのアーロン・ホンマ、
ベースのリック・ヒンクス(Aeon Zen)、ドラムのファビオ・アレッサンドリーニという若手メンバーが加入した編成になった。
1曲目からアグレッシブにたたみかけるスピードナンバーで、クールなギターリフを乗せたスラッシーな勢いに、
テクニカルで流麗なギタープレイを嫌味なく盛り込みつつ、往年のアナイアの香りをしっかりと残している。
ジェフのヴォーカルも前に出すぎず、程よく楽曲にダーティな味わいを加えていて、なにも不満はないし、
正直、どこかの曲で聴いたようなギターフレーズもあるのだが、アナイアらしいサウンドという点では文句もない。
ゆったりとしたバラード調のナンバーもよいアクセントになっていて、楽曲ごとのカラーをハッキリとさせ、
クールなモダンさと古き良きアナイア節を巧みに融合させたという点では、じつに高品質な作品といえる。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・8 アナイア度・・9 総合・・8
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Annihilator「Ballistic, Sadistic」
カナダのベテランメタルバンド、アナイアレイターの2020年作
1989年にデビュー、17作目の本作も、ジェフ・ウォーダーズの切れ味鋭いリフにパワフルなヴォーカルを乗せ、
スラッシーなアグレッションとクールなセンスが同居した、アナイアレイターらしいサウンドを聴かせてくれる。
たたみかける激しいドラムの迫力や、随所に聴かせる流麗なギターソロなど、メタリックな硬質さと
甘すぎない叙情のバランス感覚もさすがで、勢いある疾走ナンバーからミドルテンポまで、
どこを切っても隙のないエッジの効いたギターリフと巧みなフレーズで埋め尽くされている。
過去作からの雰囲気も随所に感じさせる、リフマスターとしての集大成的な聴き心地である。
ドラマティック度・・8 アグレッシブ度・・8 アナイア度・・9 総合・・8
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ANTHRAX 「Spreading the Disease」
アメリカのベテランスラッシュバンド、アンスラックスの2nd。1985作
「恐気のスラッシュ感染」の邦題でも知られる初期の傑作。ザクザクとしたメタリックなリフを乗せ
スラッシーな勢いとともに、伝統的なハードロック/ヘヴィメタルの感触も残しながらたたみかける。
しっかりと歌い上げるジョーイ・ベラドナのヴォーカルもバンドの顔としての存在感がある。
次作「Among the Living」も、よりハードコア的な激しさを増した傑作だが、
個人的には本作の正統的なメタル/スラッシュサウンドが好み。
ドラマティック度・・7 アグレッシブ度・・7 スラッシュ度・・8 総合・・8
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ANTHRAX「We've Come for You All」
アメリカのベテランスラッシュバンド、アンスラックスの9th。2003作
METALLICA、SLAYER、MEGADETHとともにスラッシュメタル四天王と呼ばれるバンドであるが、
個人的にはハードコア的なノリのあるANTHRAXのサウンドはさほど好みではなかった。
今作はザクザクとしたリフで重厚かつパワフルに聴かせる堂々たる作品で、
そこにモダンなヘヴィネスをまぶしているのが、若いリスナーにも楽しめるだろう。
ドラマティック度・・7 疾走度・・6 スラッシュ度・・7 総合・・7.5
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ANTHRAX「The Greater of Two Evils」
アメリカのベテランスラッシュバンド、アンスラックスの2004作
デビュー20周年を記念したセルフカヴァー集で、1st〜5thまでの初期曲をリメイクしたアルバム。
スタジオでのライブ録音ということらしいが、それでも当時の音質よりもはるかに迫力があり、
かつてのスラッシュメタル黎明の時代の勢い溢れる楽曲がパワフルに蘇っている。
個人的にはブリティッシュメタルの影響を残した2ndあたりまでが好きなのだが、
多くのリスナーには3rd「Among The Living」から選ばれた5曲もたまらないだろう。
オールドファンのみならず、初めてアンスラックスに触れる若いリスナーにもお勧めの1枚だ。
ドラマティック度・・7 疾走度・・8 スラッシュ度・・9 総合・・8
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ANVIL 「Hope in Hell」
カナダのメタルバンド、アンヴィルの2013年作
1981年にデビューしてから、地道に活動を続けるベテランバンド。本作はおそらく15作目くらい。
ミドルテンポで重厚に聴かせるナンバーから始まるが、ベテランらしいどっしりとした音の迫力はさすがで、
躍動感あるロブのドラムに、リップスのダーティなヴォーカルとシンプルなギターリフを乗せた、
アンヴィルらしいメタルサウンドが楽しめる。正直、なにも新しいことやインパクトは感じられないが、
80年代から続くHR/HMとしての誇りと力強さを失うことなく、作品を作り続けることだけでも敬服する。
ノリのあるロックンロール要素を適度にまじえた、愚直なまでのアンヴィル・ロック作品だ。
ドラマティック度・・7 パワフル度・・8 新鮮度・・7 総合・・7.5
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Arma Gathas「Dead to This World」
オランダのハードコア系デスメタルバンド、アーマ・ガーサスの2010年作
ジャケからしてブラックメタルなのかと思いきや、ヘヴィなギターリフと
ダミ声ヴォーカルで疾走する、ダーティなスラッシュメタル風味のサウンド。
デスコアというほどには激しくはなく、むしろいくぶんのアナログ感を漂わせた
デスロール風味が強い。随所に感じさせる荘厳な雰囲気がヨーロッパのバンドらしい。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・7 デスロール度・・8 総合・・7.5
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Armortura
イギリスのスラッシュメタル、アーマーチュラの2018年作
ツインギターのザクザクとしたリフにダーティなヴォーカルを乗せた、オールドスタイルのスラッシュメタル。
初期のEXODUSのような激しい疾走感とともに、随所に叙情的なギターソロも覗かせる。
ミドルテンポのパートも含んだ激しすぎない聴き心地は、80〜90年代スタイルのスラッシュで
これという新鮮味はないのだが、複雑すぎないギターリフを主体にしたわりとシンプルな作風。
オールドなリスナーが喜ぶ正統派のスラッシュメタルではあるが、リフのキレや勢いの点でも
80〜90年代の偉大なバンドたちと比べるとインパクトは足りないか。次作以降にに期待。
ドラマティック度・・7 疾走度・・7 オールドスラッシュ度・・8 総合・・7.5
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ARTILLERY「B.A.C.K.」
デンマークのスラッシュメタルバンド、アーティレリーの復活作。4th。2000作
1990年に「BY INHERITANCE」という傑作を残し消えたこのバンドがまさかの復活。
ドイツのPARADOXなどもそうだが、メジャーなスラッシュバンドに比べるとマニアックな存在だろう。
ジャケ裏の写真を見ると、さすがにいいオッサンになっているメンバーの写真が哀愁を誘うが
音のほうは勢いのあるスラッシュメタルサウンドで、まったく衰えていないのが凄い。
現在のリスナーにとってはこうした音はやや古めかしいものを感じるかもしれないが
キレのいいギターリフに、どこか知性的な雰囲気もある、あのアーティレリーの音がたっぷり詰まっている。
ドラマティック度・・7 疾走度・・8 オヤジスラッシュ度・・8 総合・・7.5
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ARTILLERY 「One Foot in the Grave the Other One in the Trash」
デンマークのスラッシュメタル、アーティレリーのライブ作品。2008年作
1985〜1990年までに3枚の作品を出し、疾走感溢れるヨーロピアンなスラッシュサウンドで、
ディープなスラッシャーから支持された。1999年に復活してから、バンドは現在まで活動を続けている。
本作は2008年のポーランド公演を収録したライブ作品のCD+DVDで、1stから3rdまでの初期曲をメインに
全13曲を収録。どの曲も切れのあるリフで疾走しまくるスラッシュメタルとしてのスピーディな激しさと
オールドスタイルの格好よさを有していて、甦った往年のサウンドにファンは歓喜することだろう。
DVDの方は、ヴォーカル以外はみんないいオッサンなので、見た目の派手さはないものの、
そのひたむきな演奏姿からは、愚直なまでのメタル愛、スラッシュ愛が伝わってくる。
ライブ演奏・・8 ライブ映像・・7 スラッシュ度・・9 総合・・8
Artillery「When Death Comes」
デンマークのスラッシュメタルバンド、アーティレリーの2009作
2000年の復活作「B.A.C.K.」以来しばらく沙汰がなかったが、ここに無事新作が届けられた。
元CRYSTAL EYESのヴォーカルを新たに迎えているが、ステュッツァー兄弟のツインギターによる
ザクザクのリフで疾走するオールドスタイルのスラッシュサウンドはなにも変わらず
ヴォーカルのハイントーンも、むしろ往年のスラッシュ色をかもしだしていて、激しさの中にも
どこか知的さを感じさせるリフワークとともに、勢いに溢れたヨーロピアンスラッシュが満喫できる。
ドラマティック度・・7 疾走度・・8 スラッシュ度・・9 総合・・8
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Artillery「My Blood」
デンマークのスラッシュメタルバンド、アーティレリーの2011年作
2000年の復活作から数えて3作目で、バリバリのスラッシュだった前作に比べて、
いくぶん正統派パワーメタルの質感に近づいたようなサウンドになっている。
前作から加入の元Crystal Eyesのソーレンの歌声も、パワフルなシャウトをまじえ
古き良きメタルの雰囲気をかもしだしていて、ツインギターのリフもどこかオールドな感触。
アラビックな音階をまじえた独特の雰囲気と、90年代的なアナログ感覚のスラッシュが融合、
どこかなつかしいような作風で、オールドスラッシャーには耳心地がよい音である。
随所にかつての傑作「By Inheritance」を思い出させるような力作だ。
ドラマティック度・・8 疾走度・・7 古き良きスラッシュ度・・8 総合・・8
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ARTILLERY 「Legions」
デンマークのスラッシュメタル、アーティレリーの2013年作
いくぶんパワーメタル的になっていた前作に比べると、よりパワフルなサウンドになり、
いまや彼らの持ち味でもあるアラビックな旋律をまじえたギターフレーズとともに、
ミステリアスなスラッシュメタルが楽しめる。初期を思わせる激しい疾走感も心地よく
本作から新たに加入したヴォーカルのハイトーン気味の歌声も、サウンドによくマッチしている。
スラッシーな激しさとドラマティックな聴き応えを同居させ、ときに知的なリズムチェンジなども含んで、
濃密に構築された見事なアルバムだ。これはバンドの新たな最高傑作というべき出来ですな。
ドラマティック度・・8 スラッシュ度・・8 パワフル度・・9 総合・・8.5
Artillery 「Penality By Perception」
デンマークのスラッシュメタル、アーティレリーの2016年作
復活後2009年以降は順調に作品を作り続け、前作「Legions」はバンドの最高傑作というべき仕上がりだったが、
本作も、切れ味の良いギターリフとハイトーンヴォーカルを乗せて疾走する、アーティレリー節のサウンドが楽しめる。
随所にメロディックなフレーズを含ませたギターワークもさすがで、欧州のスラッシュとしてのウェットなドラマ性を感じさせる。
前作から加入のヴォーカルのクリーンな声質も含めて、正統派のパワーメタル的にも楽しめる聴き心地で、
適度な叙情性をスラッシュメタルに持ち込んだ、このバンドらしいサウンドは円熟の境地にある。見事な力作だ。
ドラマティック度・・8 疾走度・・8 スラッシュ度・・8 総合・・8
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Artillery 「Face of Fear」
デンマークのスラッシュメタル、アーティレリーの2018年作
1985年にデビュー、本作は9作目となる。2000年の復活後から数えると6作目で、1曲目から激しく疾走する
オールドな味わいのスラッシュメタルサウンドで、ハイトーンのパワフルなヴォーカルを乗せた、
ほどよくメロディックな味わいのパワーメタル的にも楽しめる。ミドルテンポのパートから、
激しい疾走へと展開する知的な構築力は、かつてのMETALLICAにも通じる雰囲気もあり、
良い意味でヘヴィ過ぎない90年代感覚に包まれている。ウェットな叙情曲などもアクセントになっていて、
疾走のみでないバランスの良さは、スラッシュ初心者にも対応。初期のデモ音源の再録ナンバーも収録。
ドラマティック度・8 疾走度・8 スラッシュ度・8 総合・8
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Azooma 「The Act of Eye」
イランのデスメタル、アゾーマの2016年作
2014年にデビューし、2作目となる。巧みなギターリフに低音デスヴォイスを乗せて、テクニカルなリズムチェンジとともに
緩急あるプログレッシブなデスメタルを聴かせる。存在感あるベースを含む、確かな演奏力のリズムパートと、
ギターのセンスあるリフとフレージングで、地域性を感じさせない知的なテクニカルデスが楽しめる。
暴虐過ぎないメロディアス性も覗かせながら、随所にシンセアレンジも加えた荘厳なスケール感を描くところは、
Decrepit BirthやSpawn of Possession、Monstrosity などが好きな方にもお薦めできる。
8〜11分という大曲も、激しいだけでない知的な構築センスを感じさせ、プログレ・デス好きはニンマリ。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・8 テクニカル度・・8 総合・・8
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B
Blind Illusion 「The Sane Asylum」
アメリカのテクニカル・スラッシュメタル、ブラインド・イリュージョンの1988年作
のちにHEATHENに加わる、マーク・ビーデルマンを中心に、元POSSESSED、のラリー・ラロンデも参加。
スラッシーなギターリフにハイトーンのヴォーカルを乗せ、激しい疾走とリズムチェンジを多用した、
初期MEGADETHにも通じる、いわゆるインテレクチュアル・スラッシュというべきサウンド。
ラウドな音質も含めてやや荒削りながら、部分的にはMETALLICAやHEATHENを思わせる部分もあり、
スラッシュメタルの激しさをテクニカルに落とし込んだ作風で、流麗なツインギターによるインストパートなども含めて、
当時としては個性的な作風であったろう。一作のみで消滅したのが惜しまれる。80年代変わり種スラッシュの裏傑作。
ドラマティック度・・7 スラッシュ度・・7 インテレクチュアル度・・8 総合・・8
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BLOODHUNTER
スペインのデスメタル、ブラッドハンターの2014年作
女性Voをフロントにしたバンドで、強烈なグロウルヴォーカルを乗せて、ブラストを含んだブルータルな激しさと
緩急のあるリズムチェンジで聴かせるデスメタルサウンド。ディーヴァ・サタニカ嬢の歌声はそうと知らなければ
女性とは思えぬほど強烈で、元ARCH ENEMYのアンジェラばり。ギターはとき叙情フレーズも覗かせるが、
全体的にはメロディックなフックに関しては物足りず、かといってブルータルな激烈さもさほどでもないので、
やや中途半端な感触か。むしろスラッシユメタル的な疾走ナンバーの方が恰好いいような気もする。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・7 楽曲・・7 総合・・7
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Bonded By Blood「Feed the Beast」
アメリカのスラッシュメタル、ボンデッド・ブラッドの2008年作
ツインギターを含む5人組で、ザクザクのギターリフとともに疾走する
オールドスタイルのスラッシュメタルサウンド。ヴォーカルの声質は好みを分けそうだが、
若さ溢れる勢いの良さと、変に飾らないシンプルな聴き心地はなかなか好感が持てる。
リフ自体にもっと格好よさが加わればさらに良くなるだろう。今後に期待の若手スラッシャー。
ドラマティック度・・7 疾走度・・8 スラッシュ度・・8 総合・・7.5
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BRAINDRILL「Apocalyptic Feasting」
カナダのテクニカルデスメタルバンド、ブレインドリルの2008作
これは本当に凄いです。ジャケはおバカ系のSFみたいですが、サウンドはもう…
CRYPTOPSYを超えるくらいの強烈なテクニカルデスメタル。あははー、気が狂ってます。
マシンガンのような凄まじいブラストビートに、テクニカルなギターフレーズが重なり
全編キメとユニゾンの超絶プレイ。これが異常すぎて馬鹿に聴こえる…という。笑
しかしながら、それでいて高速のギタープレイにはメロディらしきフレーズも聴け、
これが騒々しさのわりにちゃんと聴けてしまうという…不思議な整合感なのデス。
メチャクチャなようでいてカッチリしている。驚異の超人的テクニカルデス!腰抜かします。
メロディアス度・・7 暴虐度・・8 テクニカル度・・10 総合・・8.5
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Braindrill「Quantum Catastrophe」
カナダのテクニカル・デスメタルバンド、ブレインドリルの2010年作
前作は異常なまでのテンションでたたみかける、ヘンタイ系テクニカルデスの衝撃作であったが、
今作もブルータルなブラストと、矢継ぎ早のキメの連続という濃密バカ系のデスメタル作。
CRYPTOPCYを軽めにして飛び跳ねまくるとこうなる、というような…確信犯的な変態ぶりがいっそ潔く、
思わず笑いが込み上げる。1作目ほどの衝撃はないものの、相変わらず聴いていてヘトヘトになる作品デス。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・8 テクニカル度・・9 総合・・8
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C
Cannibal Corpse「15 Years Killing Spree」
アメリカデスメタルのベテラン、カンニバル・コープスのベストアルバム。2003作
デビューから15周年という区切りでのCD3枚組のベストで、げぼげぼのグロウメヴォーカルを乗せて、
オールドなデスメタルとハードコア色を混ぜてたたみかけるカンニバル節は徹頭徹尾不変。
これを3枚も聴くのか…と憂鬱になるが、アルバムをすべて網羅していない自分のようや軟弱なリスナーには、
これでカンニバルの歴史を知った気になるにはちょうど良いマテリアル。
ドラマティック度・・5 暴虐度・・9 カンニバル度・・9 総合・・7.5
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CARCASS「Surgical Steel」
イギリスのデスメタル、カーカスの2013年作
かつてリヴァプールの残虐王と謳われ人気を博し、1996年に惜しまれながら解散したバンドが、
オリジナル・メンバーのジェフ・ウォーカーとビル・スティアーを中心に復活、17年ぶりとなるスタジオアルバムが完成した。
ツインギターのオールドスタイルのリフとともに疾走する、スラッシュルーツのデスメタルサウンドで、
しゃがれたジェフのヴォーカルも含めて、まぎれもない90年代カーカスの続編というべき聴き心地だ。
マイケル・アモットは不参加だが、随所にメロディックなギターフレーズをまじえた楽曲には、
ジェフのギタリストとしてのセンスが詰まっていて、かつての傑作「Heartwork」を思わせる質の高さ。
そして楽曲の日本語タイトル訳のグチャドロ加減もまた相変わらずで、思わずにんまりである。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・7 オールドデス度・・8 総合・・8
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CELTIC FROST「Into The Pandemonium」
スイスの伝説的メタルバンド、セルティック・フロストの3rd。1987年作
実験性という曖昧な言葉や、ボスのジャケのイメージが先行してしまい、
このアルバムに対してミステリアスなものを想像する方も多いだろうが、
実際に聴いてみればそうでもなく、モダンさを取り入れた浮遊感のあるスラッシュメタルである。
楽曲によっては、この当時は珍しかった管弦楽やオペラティックな女性声を取り入れたりしているが、
ジャケで想像するような、暗黒的なドラマティックさや荘厳さはさほどには感じられない。
後のTHERIONやPARADISE LOSTなどへも多くの影響を与えたのは部分的に聴きとれるが、
名盤と呼ぶには全体的には散漫さも感じるし、むしろバンドの過渡期の作品と言うのが正しい気もする。
ドラマティック度・・8 暗黒度・・7 重厚度・・7 総合・・7.5
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CELTIC FROST「MONOTHEIST」
スイスの伝説的メタルバンド、セルティック・フロストの2006年作
このバンドが、純粋に暴虐なサウンドを目指していたのは2ndまでで、3rd「Into the Pandemonium」では
スラッシュサウンドの中にモダンな要素を取り入れるなど、アルバムごとに異なる顔を見せていた。
そんな彼らの注目の復活作であるが、過去のどのアルバムとも異なる、聴きようによってはもっともヘヴィな作品となった。
昨今のテクノロジーに頼った若手バンドでは決して表現できない本物の硬質感と暗黒性、
そしてドゥームメタル的な重厚さをまとい、ジャケのイメージするモノクロームの世界観を描き出している。
スラッシュでもデスでも、ブラックでもないが、ヘヴィな邪悪さの点ではとてつもなく強烈な作品だ。
ドラマティック度・・8 暗黒度・・8 重厚度・・8 総合・・8
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Cerebrum 「Iridium」
ギリシャのテクニカルデスメタル、セレブラムの2018年作
2009年にデビューし、3作目となる。変拍子を含むテクニカルなリズムに重すぎないギターリフと
低音デスヴォイスを乗せた、DEATHやATHEISTなどにも通じるオールドスタイルのテクニカルデス。
ブルータルな暴虐性はさほどなく、デス声を除けば、むしろクールななアンサンブルなので、
プログレッシブ・デスメタル寄りのサウンドと言ってよいかもしれない。リズムチェンジは多いが、
ヘンタイにはなり過ぎず、この手としてはわりと聴きやすいが、反面、濃密さの点では物足りなさも。
楽曲は3〜4分前後で、全34分。もっと突き抜けるような展開力か、新鮮なセンスが欲しいというところ。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・7 テクニカル度・・7 総合・・7.5
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CHAIN COLLECTOR「The Masquerade」
ノルウェーのメロデスラッシュバンド、チェイン・コレクターの2005作
Green Carnation、Carpathian Forest、Trail of Tearsといったバンドのメンバーたちが参加。
ザクザクのスラッシュ風リフで疾走するスタイルは、メロデスというよりも北欧デスラッシュの質感で、
モダンなヘヴィさと甘すぎない程度のメロディアスさで聴かせる、いわば硬派なサウンドだ。
演奏的にもクオリティが高く、硬質かつスラッシー、そしてときおり叙情も含んだ楽曲が楽しめる。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・7 デスラッシュ度・・8 総合・・7.5
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The Company
アメリカのスラッシュメタル、カンパニーの1995年作
HEATHENのダグ・ピアシー率いるバンドで、ダミ声ヴォーカルと硬質感のあるギターリフを乗せて疾走する、
正統派のスラッシュメタルサウンド。随所にかつてのヒーゼンを思わせるメロディックな感触も覗かせつつ、
ベイエリアクランチのザクザク感に、ANNIHILATOR的な知的スラッシュの香りを感じさせるサウンドだ。
楽曲自体はわりと普通なのだが、激しすぎないところがパワーメタル的な味わいにもなっていて
やはりダグのギターリフのセンスが秀逸である。HEATHENファンにはお薦めの強力作!
ドラマティック度・・7 正統派スラッシュ度・・8 ヒーゼン度・・8 総合・・8
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CONSTRUCDEAD「The Grand Machinery」
スウェーデンのデスラッシュバンド、コンストラクデッドの2006作
モダンヘヴィネスの要素をブルータルな硬質感と合わせて激しく疾走
ザクザクのギターでたたみかけながら、ときおりギターはメロディアスなフレーズも奏で
SOILWORK以降に流行りだしたノーマルヴォイスも取り入れるなど、コア系の雰囲気が漂う。
正直、この手のラウドでモダンなサウンドは苦手なのだが、音圧が心地よいという方には向く。
ドラマティック度・・7 疾走度・・7 モダンヘヴィ度・・9 総合・・8
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Control Denied「The Fragile Art of Existence」
DEATHの故チャック・シュルディナーによるメタルバンド、コントロール・ディナイドの1999年作
プログレッシブな知的さをただよわせたデスメタルを標榜したDEATHは、
チャックの死とともに終焉を迎えた。本作は彼のもうひとつの遺産といえるバンドで、
デスメタル色のないDEATHというべき、知的なメタルサウンドである。
テクニカルな変則リズムに、スラッシュ的なギターリフとハイトーンヴォーカルを乗せ、
随所にメロディアスな聴き心地もあるという、比較的正統派の質感であるが、
やはりDEATHを思わせるセンスもあり。再発盤のDisc2には1997、1999年のデモ音源を収録。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・8 知的アレンジ度・・8 総合・・8
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CORONER 「Punishment for Decadence」
ドイツのテクニカル・スラッシュメタルバンド、コロナーの2nd。1989年作
テクニカルかつプログレッシブな知性を感じさせる個性派のバンド。
ザクザクとしたクールなリフで聴かせつつ、細かなキメや楽曲の展開力には、
MEGADETHやANNIHILATORと同様にセンスある構築力が光っている。
スラッシュ=低能という概念を完全に覆したバンドで、本作がその最高作。
当時はえらく新鮮に新鮮に思えたが、今聴いてもまったく古くさくないのが凄い。
かつての日本盤は、3rd「No More Color」とのカップリングだった。
ドラマティック度・・8 スラッシー度・・7 インテレクチュアル度・・8 総合・・8
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CORONER 「MENTAL VORTEX」
ドイツのインテレクチュアル・スラッシュメタル、コロナーの1991年作
1987年デビュー、本作は4作目となる。クールなギターリフを乗せたキレのよいアンサンブルと、
リズムチェンジを含む知的な展開力で、本作もじつに個性的なメタルサウンドを聴かせる。
ダミ声ヴォーカルを乗せて疾走する、DESTRUCTIONにも通じるスラッシーな感触を残しつつ、
甘すぎないダークな叙情とともに、ミステリアスな空気感に包まれた作風はさらに深化している。
変拍子を使ったプログレッシブな味わいと、トリオ編成のシンプルなグルーブ感が融合していて、
5〜7分というわりと長めの楽曲を、演奏力とセンスでスリリングに聴かせる実力は見事である。
ドラマティック度・・7 スラッシー度・・8 インテレクチュアル度・・8 総合・・8
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CORONER 「GRIN」
コロナーの1993年作
バンドの事実上のラスト作となる5作目。民族的なイントロから始まりつつ、硬質なギターリフと
ダミ声ヴォーカルを乗せたこれまでの作風に、いくぶんインダストリアルな雰囲気が加わって、
モダンなサウンドになった印象がある。持ち味であるリズムチェンジや知的な構築センスは残しつつ、
スラッシーな激しさがやや薄まったことで、人によっては物足りなさを感じるかもしれないが、
インテレクチュアル・メタルとしての本質は不変。派手さはないものの、7分、8分という長めの曲も、
ほどよい屈折感とともにセンス良く聴かせる。さらなる深化が見たかったが、本作を最後にバンドは沈黙。
ドラマティック度・・7 スラッシー度・・7 インテレクチュアル度・・8 総合・・8
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CROWN OF THORNES「The Burning」
スウェーデンのメロディアス・デス(スラッシュ)メタルバンド、クラウン・オブ・ソーンズの1st。1995作
後にThe Crownと名を変えてオールドスタイルのデスラッシュの代表格となるこのバンドだが、
この頃はブラストビート込みで激烈に疾走する、突進デスメタルスタイルで、
そこに北欧らしいツインギターのメロディアスさが光るというサウンドであった。
ヘヴィさよりも突進力が上回っていて、とにかく速いサウンドが聴きたい向きにはお勧め。
90年代後半、メロデスというものがしだいに聴きやすくキャッチーなものになってゆく中で、
このバンドやAT THE GATESあたりは硬派なメロデス好きからも支持されていたのもうなずける。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・8 突進疾走度・・9 総合・・7.5
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THE CROWN 「HELL IS HERE」
スウエェーデンのデスラッシュバンド、ザ・クラウンの1998作
CROWN OF THORNSから改名し、The Crownとなっての1作目。
前作まではメロデス風の質感もあったが、このアルバムから突進デスラッシュど真ん中となり
まさに快速球158km!(意味不明…)という感じでとことん突っ走る。
次作「DEATHRACE KING」で、デスラッシュの帝王の座につくことになる彼らだが、
キチガイじみた激烈な疾走という点では、粗削りながら本作が一番かもしれない。
強烈なブラストビートや、メロデス風の名残である叙情フレーズも顔を出すのもポイント。
ドラマティック度・・7 疾走度・・10 コイツラヤバイ度・・10 総合・・7.5
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THE CROWN「DEATHRACE KING」
スウェーデンのデスラッシュバンド、ザ・クラウンの4th。2000作
CROWN OF THORNEから改名後2作目となる本作は、彼らのアルバムの中でも代表作との呼び声が高い。
初期の暴虐メロデススタイルから、やがてスラッシュ色を濃くしてゆくのだが、このアルバムにおいては、
特攻デスラッシュサウンドに加え、MOTORHEADあたりを思わせるダーティなロックンロール魂を見せて爆走。
フレドリック・ノルドストロームのプロデュースも加わってか、音には以前よりも力強さと説得力が増している。
そして矢継ぎ早のリフには、そのフレーズの節々に北欧らしいメロディが若干残っているのもポイントで、
ドライな疾走デスラッシュでありながらも、かすかな叙情も感じられるのがまた良い。
ドラマティック度・・8 疾走度・・10 暴虐度・・9 総合・・8.5
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THE CROWN「Crowned in Terror」
スウェーデンのデスラッシュバンド、ザ・クラウンの5th。2002作
北欧デスラッシュの代表ともいうべきこのバンド。強烈に疾走しつつも、
ときおりメロディックなフレーズをまぶし、北欧メロデス的な叙情もあるのが魅力だ。
本作は元AT THE GATESのトーマスがヴォーカルで参加していることもあってか、
いっそうメロデスに接近にした作風になっていて、個人的にも好みのサウンドだ。
後に「Crowned Unholy」としてヨハンのヴォーカルで録音し直されているのだが、
メロデス派のリスナーはむしろこちらのオリジナルの方を気に入るかもしれない。
ドラマティック度・・8 疾走度・・9 暴虐度・・9 総合・・8.5
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THE CROWN 「POSSESSED 13」
スウェーデンのデスラッシュバンド、ザ・クラウンの2003作
CROWN OF THORNS時代から含めて6作目となるアルバム。
ジャケやタイトルからしてホラー映画的な作りだが、内容はやはり痛快な疾走デスラッシュ。
古き良きスラッシュメタル魂を感じさせる王道サウンドに北欧バンドらしいドラマティックな雰囲気をかすかに匂わせる。
手数の多いドラムも良いし、ロックの荒々しい部分を確信犯的に封入した音作りは
VENONやMOTORHEADにも通じる原初の暴力パワーが感じられる。
ドラマティック度・・8 疾走度・・9 オールドな激烈度・・9 総合・・8
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THE CROWN「Crowned Unholy」
スウェーデンのデスラッシュバンド、ザ・クラウンの2004年作
5th「CROWNED IN TERROR」を、現ヴォーカルのヨハン・リンドストランドの編成でリレコーディングした作品。
激烈に疾走するデスラッシュサウンドに、ときにメロディアスな色を見せるギター、そして迫力あるタイトなドラムと、
音質、演奏とも抜群の出来で、バンドのディスコグラフィー中でも最高作となった。
咆哮するヨハンのヴォーカルも凄まじく、激烈さの点ではデスメタル寄りのサウンドなので、
かつてのCROWN OF THORNESを思わせ、しかもクオリティが高まっているのが凄い。
付属のDVDには2003年のライブ映像が入っており、これはファンならずとも必携だ。
ドラマティック度・・7 疾走度・・9 激烈度・・10 総合・・8.5 ◆メタル名盤特選入り
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The Crown「Doomsday King」
スウェーデンのデスラッシュバンド、クラウンの2010年復活作
2004年の「Crowned Unholy」を最後に、バンドは解散の道を辿ったが、なんと6年ぶりに復活、
ここに新作が届けられた。The Hauntedとともに北欧デスラッシュの大御所である。期待感とともに聴いてみると、
オールドスタイルのギターリフで疾走する、スラッシーな感触はかつてのままで一安心。
新ヴォーカルも適度にダーティな歌声でサウンドによくマッチしていて、名盤「Deathrace King」の頃のような
デスロール色は薄まったものの、正統的なスラッシュメタルとしてその健在ぶりを見せつける快作に仕上がっている。
うねりを効かせたミドルテンポ曲もじっくり聴けば味わいがある。疾走のみにとどまらない大人の復活作だ。
ドラマティック度・・7 疾走度・・8 デスラッシュ度・・9 総合・・8
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THE CROWN 「COBRA SPEED VENOM」
スウェーデンのデスラッシュ、クラウンの2018年作
CROWN OF THORNES名義で1995年にデビュー、一時期の解散をへて、本作は通算10作目となる。
フレドリック・ノルドストロムをプロデューサーに迎えた本作は、イーヴルなジャケの雰囲気も含めて、
激烈に突進するデスラッシュサウンドがたっぷり楽しめる。ツインギターのリフとクールなフレーズに、
前作から復帰したヨハン・リンドストランドの咆哮するような迫力あるヴォーカルを乗せて激しく疾走、
スラッシーなデスロールというべき圧殺感が味わえる。緩急あるスローパートでの荘厳な空気感と、
随所に甘すぎない程度のメロディも覗かせつつ、デスラッシュの帝王たる威厳に満ちた強力なアルバムに仕上がっている。
ドラマティック度・・7 疾走度・・8 激烈度・・9 総合・・8
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The Crown「Royal Destroyer」
スウェーデンのデスメタル、クラウンの2021年作
CROWN OF THORNES名義で1995年にデビュー、一時期の解散をへて復活し、本作は通算11作目となる。
のっけからハードコアばりの突進力で、ブラストビートを含んだ激烈なイントロ曲が聴き手を圧倒する。
その後も、切れのよいギターリフを乗せたブルータルなアグレッションと甘すぎないメロディも覗かせて、
かつてのデスラッシュをデスメタルへと昇華したような激しさに、デスロールとしてのノリの良さも含んだ
痛快なサウンドでたたみかける。本作ではこれまでよりもデスメタルとしての激しさが際立ったパートが多く、
ほどよい疾走感のデスラッシュが好きだった方には、やや圧殺感が強いかもしれない。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・8 デスラッシュ度・・7 総合・・8
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Crypta 「Echoes Of The Soul」
ブラジルのガールズデスメタル、クリプタの2021年作
元NERVOSAのメンバーを中心にしたガールズメタルバンド、ブラストビートを含む激しさに、
喚き声ヴォーカルを乗せて、オールドスタイルのスラッシーなデスメタルを聴かせる。
テクニックのあるドラムを含め安定したリズムに、ツインギターのリフのキレも良く、
随所にメロディックなフレーズも覗かせるなど、サウンドの勢いやクオリティも充分。
どちらかというとブラックメタル寄りのガナリ声や、ブルータル過ぎず重すぎずという点では、
デスラッシュ的な聴きやすさがある。楽曲的に似たものが多いので、今後の成長にも期待デス。
ドラマティック度・7 暴虐度・7 疾走度・8 総合・8
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CRYPTOPSY「NONE SO VILE」
カナダのテクニカルデスメタルバンド、クリプトプシーの2nd。1996作
今やテクニカルにしてブルータルなデスメタルのトップに君臨するバンドだが、
彼らの出世作となったのが本作で、ファンの間では今なお最高傑作と名高いアルバム。
その超絶にして暴虐なサウンドは、獰猛なブルータリティとある種の知的な演奏力が同居している。
このバンドの場合、暴虐性を内的世界ではなく外側に発散するスタイルなので音がドライで
MORBID ANGELやVADERなどとは、その音楽性は似て非なるものといえるだろう。
32分というミニアルバム並の短さながら、テクニカルにして激烈なサウンドが目一杯詰まっており、
整合感の上がった後のアルバムに比べ、まだ音が荒々しく、突進する生々しく伝わってくる。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・10 テクニカル度・・9 総合・・8
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CRYPTOPSY「AND THEN YOU'LL BEG」
カナダの超絶デスメタルバンド、クリプトプシーの4th。2000作
変拍子を交えた異常とも思える、ブラスト入り激速リズムが凄い。完全なる変態でしょう。
このバンドの演奏力の高さはライブなどでも実証済みですが、
今回はドラムの超人ぶりとともに、ベースの凄さも分かるような
切り返しの多い曲が並び、聴き終える頃にはへとへとになります。
たまにギターがメロディっぽいものを弾きますが、基本的にはリズム重視のサウンド。
全編暴虐かつテクニカルで物凄いですが、唯一のつまらなさは平坦なわめきVoでしょう。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・9 テクニカル度・・9 総合・・8
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CRYPTOPSY「None So Live」
カナダのテクニカルデスメタルバンド、クリプトプシーのライブ作。2003作
その変態的なまでに複雑かつブルータルなサウンドで、聴き手を苦行僧にも近い状態に陥れる、
圧殺デスメタル道を突き進むこのバンド。2002年は地元カナダ、モントリオールでのステージを収録したライブ作で、
そのとんでもない演奏力で暴虐のかぎりを見せつける、物凄いことになっている。
実際に彼らのライブを見たことはあるが、凄すぎて何をやっているかよく分からないというのが
正直なところだったので(笑)、こうしてCDでその超絶さを再確認するのもよいかと思う。
とくにドラマーの呆れるほどのバカテク&無尽蔵の体力には、聴いていて笑いさえ浮かぶ。
暴虐度・・9 変態度・・9 ライブ演奏・・9 総合・・8
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CRYPTOPSY「Once Was Not」
カナダのテクニカルデスメタルバンド、クリプトプシーの5th。2005作
本作はドラマティックなイントロからして、これまでとはやや異なる作風で
もちろん曲に入ると超絶なテクニカルデスメタルには違いないが、
緩急の展開の中にいくぶんモダンなヘヴィネスとメタルコア風味を取り入れている。
強烈なブラストを叩き出すドラムを中心とした激しさと変態的なリズムチェンジとともに
矢継ぎ早の高速リフの嵐は、同郷のBRAINDRILLなどにも多分に影響を与えたことだろう。
続く6thにて本作で覗かせるドラマティック路線はより顕著になる。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・9 テクニカル度・・9 総合・・8
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CRYPTOPSY「Unspoken King」
カナダのテクニカルデスメタルバンド、クリプトプシーの2008作
ヴォーカルが代わり、新たに女性シンセ奏者も加入した6作目。
怪物的な超絶ドラムを中心にしたブルータルでテクニカルな質感はこれまで通りだが、
そこに歌声を使い分けるヴォーカルとともに、いくぶんモダンな感触を取り入れていて
最近のコア系リスナーにも対応したようなサウンドともなっている。
今までのドライなテクニカル一辺倒のデスメタルから、どことなくミステリアスな
ドラマ性も感じられるようになって、個人的にはこれはこれで気に入った。
なにより、曲としてちゃんと聴けるというのが嬉しい。この脱皮は正解だと思う。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・8 テクニカル度・・9 総合・・8
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Cryptopsy「Cryptopsy」
カナダのテクニカルデス、クリプトプシーの2012年作
前作で聴かれたモダンでドラマティックな作風から、本作ではかつての激烈な暴虐路線へ回帰、
ゲボゲボのグロウルヴォーカルとともに、激しくたたみかけるブルータルなサウンドを聴かせる。
ブラストビートを含んだ激しさと、テクニカルな切れ味にベテランらしい貫祿が加わって、
迫力たっぷりの音圧で、聴き手を殺戮の海に引きずり込む。これぞ圧殺テクニカルデス。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・10 テクニカル度・・9 総合・・8
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D
DARKANE「INSANITY」
スウェーデンのデスラッシュバンド、、ダーケインの2nd。2001作
元ARCH ENEMYのドラマー、ピーター・ウィルドアーらによるバンドで、
ツインギターのリフで疾走しまくりのオールドスタイルのデスラッシュサウンド。
ゴリゴリしたリフでの疾走には、ほのかにメロディを漂わせつつ
サビ部分ではツインリードの美しさもしっかり聴かせてくれる。
激烈に疾走するドラムの迫力もさすがで、ARCH ENEMYを思わせるヘヴィさに加え
かつてのAT THE GATESあたりにも通じる、スラッシーなメロデスとしても楽しめる。
ドラマティック度・・7 疾走度・・9 北欧デスラッシュ度・・9 総合・・7.5
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DARKANE「Layers of Lies」
スウェーデンのデスラッシュバンド、ダーケインの4th。2005作
それなりに質は高かったが、アルバム的な統一感は薄かった2ndの頃に比べ、
本作は全編勢いのある北欧デスラッシュ色に染められたアルバムだ。
ザクザクとした硬質感あるリフで聴かせつつ、曲展開にはドラマティックさがあり、
ギターのフレーズなどにもメロディアスな部分が増している。
激烈でありながらある意味聴きやすくもなり、硬派に疾走するサウンドは
素直にカッコいいと思える。デスラッシュ好きはヘドバン必至の高品質作。
ドラマティック度・・8 激烈度・・8 デスラッシュ度・・8 総合・・8
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DARKANE「Demonic Art」
スウェーデンのデスラッシュバンド、ダーケインの5th。2009作
前作は間違いなくバンド史上最高傑作であったが、ヴォーカルを交代して迎えた本作も同様に、
密度の濃い力作となった。なにやらドラマティックなイントロに続き、メロディアスなギターのフレーズにおっとなるが、
スラッシーに疾走を開始すると、相変わらずの王道デスラッシュサウンドが炸裂する。
今作ではときおり聴かせる煽情的なギターメロディが効果的で、激しさの中にも北欧メロデス風の美意識が垣間見える。
ややハードコアがかったヴォーカルの歌い方は好みを分けるかもしれないが、
ザクザクの硬質感と、ドラマティックな荘厳さを併せた、質の高いデスラッシュアルバムだ。
ドラマティック度・・7 疾走度・・8 デスラッシュ度・・9 総合・・8
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Darkane 「The Sinister Supremacy」
スウェーデンのデスラッシュバンド、ダーケインの2013年作
ARCH ENEMYやARMAGEDDONなどに参加したドラマー、ピーター・ウィルドアー率いるバンドの6作目
今作は物悲しいストリングスによるイントロから始まり、ツインギターのリフとダミ声ヴォーカルネを乗せて疾走する、
オールドスタイルのデスラッシュサウンドに、ほどよくモダンなアプローチを加えたサウンドを聴かせる。
リズムチェンジや技巧的なギターフレーズに、甘すぎないメロディを盛り込みつつ、勢いよくたたみかける。
全体的には、デスラッシュにしてはリフの魅力が物足りなりず、メロデスというほどの叙情性もない。
そこそこの質の高さと激しさで聴かせる佳作というところ。楽曲ごとのインパクトがもう少し欲しい。
ドラマティック度・・8 疾走度・・8 新鮮度・・7 総合・・7.5
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Dark Angel 「Darkness Descends」
アメリカのスラッシュメタルバンド、ダーク・エンジェルの2nd。1988作
ザクザクのギターリフでハードコア気味に激しく疾走するサウンドは、
当時にしては演奏力も抜群で、この手のバンドにありがちのB級臭さは微塵もない。
のちにDEATHに加入するジーン・ホグランの安定したドラムもさすがで、
全盛期のSLAYERにもひけをとっていないばかりか、疾走感という点では上をゆくだろう。
これでもかと駆け抜けてゆく、激烈爽快スラッシュの傑作。音にただようダークな雰囲気もいい。
1998年の再発盤はリマスターで音質も向上、ボーナス2曲を追加収録。
ドラマティック度・・8 疾走度・・9 スラッシュ度・・9 総合・・8.5
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DEATH 「Scream Bloody Gore」
アメリカのデスメタル、デスの1st。1987年作
テクニカルデスメタルの元祖としても語られるこのバンドだが、このデビュー作の時点では
SLAYERやKREATORにも通じるスラッシュメタルという雰囲気で、若き日のチャック・シュルディナーの
禍々しい絶叫ヴォーカルと、キレのいいギターリフを乗せて突進するスタイルである。
緩急のついたリズムチェンジなどには後の知的な作風の萌芽もいくぶん垣間見られるが、
全体的にはダークなB級スラッシュという聴き心地。この時点では、後の驚異的な深化を想像したものはいまい。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・8 テクニカル度・・6 総合・・7.5
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DEATH 「Leprosy」
アメリカのデスメタル、デスの2nd。1988年作
次作以降はしだいにテクニカルなスタイルをきわめてゆくが、本作の時点ではまだ
クールなギターリフを含んだアンダーグラウンドなデスメタルという印象で、
いくぶんこもり気味の音質にチャック・シュルディナーの不穏な絶叫ヴォーカルが響き渡る。
緩急のある楽曲展開と、随所に覗かせるギターフレーズには、このバンドの確かなセンスを感じさせ、
スラッシュメタルルーツの激しさとテクニカル性がそれとなく融合した個性は、本作でも感じられる。
疾走しまくりのデスという点では、本作をフェイバリットに挙げる方も多いかもしれないデスね。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・8 テクニカル度・・7 総合・・8
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DEATH 「Spiritual Healing」
デスの3rd。1990年作
本作ではギターにジェームス・マーフィが参加し、ツインギターのリフのキレがぐっとアップしている。
前作での疾走感あるサウンドをよりテクニカルにした印象で、リズムチェンジを多用した楽曲はさらに複雑になり、
録音の質も上がったことで90年代的なヘヴィネスも増してきている。硬質なクールさが前に出た分、
ややとっつきは悪いのだが、知的デスメタルとしての土台はここで完成しつつあったのだと思う。
再発盤のボーナスDiscには、当時の貴重なリハ音源などを収録。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・7 テクニカル度・・8 総合・・8
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DEATH「Human」
アメリカのテクニカルデスメタルバンド、デスの4tn。1991年作
故チャック・シュルディナー率いるこのバンド、初期はアンダーグラウンドな香りのデスメタルであったが、
本作ではCYNICのポール・マズヴィダル、ショーン・レイナート、SADUSのスティーヴ・ディジョルジォを迎え、
知的なテクニカル性を取り入れたサウンドを確立した。激しく絶叫するようなヴォーカルと、
スラッシーかつ独特のギターリフ、ときにメロディアスですらある巧みなフレーズが合わさって、
プログレッシブなリズム感覚とともに、激しくも複雑なデス/スラッシュメタルを聴かせる。
このスタイルは次作で完成系をみることになるが、本作もそれに劣らぬ濃密なアルバムだ。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・8 プログレッシブ度・・8 総合・・8
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DEATH「Individual Thought Patterns」
アメリカのテクニカルデスメタルバンド、デスの5tn。1993年作
前作「HUMAN」で知的でプログレッシブな展開力に磨きをかけ、それが本作で見事に花開いた。
変則リズム入りのテクニカルさと矢継ぎ早の展開に独自のギターリフ、そこに故チャック・シュルディナーの
絶叫ヴォーカルが絡み、濃密に聴かせる。スラッシーな硬質感とプログレッシブな切り返し、
ときに美しくすらある叙情性などもあって、緊張感に満ちた楽曲は一筋縄ではいかない。
名手ジーン・ホグランのドラムもさすがに素晴らしく、サウンドの説得力をまた高めている。
後の多くのバンドにも影響を与えたであろうテクニカルデスの名作だ。次作「Symbolic」も同等の傑作。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 プログレッシブ度・・8 総合・・8.5
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DEATH「Sound of Perseverance」
アメリカのテクニカルデスメタルバンド、デスの7th。1998年作
夭逝した鬼才、チャック・シュルディナーの遺作となったアルバムで、
歴史的傑作である5thと、6thからの流れを受け継いだプログレッシブな味わいのある濃密なサウンドを展開、
独特のリフワークからなるテクニカルな切り返しと変則リズムには圧倒される。
シュルディナーの鬼気せまるようなダミ声ヴォーカルも、いよいよ気持ち悪くなり、
バンドとしての今後のさらなる深化を思わせるだけに、彼の死は本当に残念である。
デスメタルというよりは、いわばプログレッシブ・スラッシュというべき芸術性に包まれた聴き心地だ。
ボーナスのDVDには1998年のライブ映像を収録。画質は上等のブートレグ程度だが、ファンは必見。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・8 プログレッシブ度・・8 総合・・8.5
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DEATH「Vivus!」
アメリカのテクニカルデスメタル、デスのライブ音源のカップリング。2012年作
デス・メタル界の奇才、チャック・シュルディナーの死去により幕を閉じたこのバンド、1998年のライブ音源のカップリングで、
DISC1は以前にDVD化もされていた「LIVE in L.A」、DISC2はDYNAMO OPEN AIRのステージを収録した「LIVE in EINDHOVEN」
独特のギターフレーズと、知的でプログレッシブな展開力で構築される楽曲はデスメタルというよりは、
むしろテクニカルスラッシュというべき聴き心地で、そのエキセントリックなセンスは他に類を見ない個性であった。
あらためてチャックの死への無念とともに、残された音源を鑑賞することで、このバンドの芸術的なまでの音楽性を確認する思いである。
テクニカル度・・8 ライブ演奏・・8 音質・・8 総合・・8
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DEATH「LIVE IN L.A.(Death & Raw)」
アメリカのテクニカルデスメタルバンド、デスのライブDVD。2001作
リーダーのチャック・シュルディナーが脳腫瘍で他界したのは2001年の12月だったか。
このライブ映像は、彼の雄姿が見られる貴重なものとなった。おそらく1998年頃のライブ。
正規リリースする予定はなかった映像だけに画質の点ではいま一つながら、テクニカルデスの元祖であったこのバンドの
凄まじい演奏がしっかり堪能できる。とくにドラマーの手数の多さは驚異的で、かつてのジーン・ホグランを思わせるほど。
デスメタル的な疾走よりは、テクニカルな切り返しや巧妙なリフのつなぎによって楽曲を構築しているという印象で、
一般のデスメタラーには向かないかもしれないが、変態系メタル、テクニカル系を楽しめる方々には一聴をお勧めしたい。
知的な楽曲センスと演奏力、このアートなデスメタルバンドが病によって終焉を迎えたのはまことに残念なことであった。
テクニカル度・・8 ライブ映像・・7 ライブ演奏・・8 総合・・7.5
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DEATH ANGEL 「ACTV」
ベイエリアスラッシュの代表格、デス・エンジェルの3rd。1990作
平均年齢17歳という若さでデビュー、勢いだけだった印象の1stなどから比べると
今作では音がだいぶ整理され、疾走するだけでなくリフで聴かせる安定したノリとともに
メロディアスな聴きやすさが出てきていて、演奏的にも楽曲的にもずいぶん成長した。
もちろん、スラッシュメタルとしての突進力はしっかりと見せつけながら、
ブレイクなどの緩急をつけたアレンジや、ときにファンキーな要素を取り入れたりと
アルバムとしても飽きさせない。アコースティカルな叙情パートもいい味を出している。
ドラマティック度・・7 疾走度・・7 スラッシュ度・・7 総合・・8
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DEATH ANGEL「The Art of Dying」
ベイエリアスラッシュの代表格、デス・エンジェルの復活作。2004作
王道のスラッシュメタルにファンキーな要素などを取り入れた「ACTV」は、
このバンドの最高傑作として名高いが、本作はそれから14年ぶりとなるアルバムだ。
アコースティカルなイントロから曲が始まると、もうかつての雰囲気そのままの
オールドスラッシュが全開。このバンドの場合ただ激しいだけでなく、
どことなくユーモラスなリフやファンキーなノリを自然に融合させているのが個性的で
そのあたりを含めて気に入っている方には期待通りの出来といえるだろう。
ドラマティック度・・7 疾走度・・7 スラッシュ度・・8 総合・・8
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DEATH ANGEL「A Killing Season」
ベイエリアスラッシュの代表格、デス・エンジェルのアルバム。2008作
前作「The Art of Dying」で復活をとげたベイエリアスラッシュのベテラン。
一聴して、前作よりも音の硬質さが増し、ダークなスラッシュサウンドに磨きがかかっている。
その反面、このバンドの特徴でもあったファンキーなキャッチーさが薄れていて、
個人的には痛し痒しか。ヘヴィな音が好みの方には楽しめるだろう。
ドラマティック度・・7 疾走度・・7 スラッシュ度・・8 総合・・7.5
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DEATHCHAIN「Deathrash Assault」
フィンランドのデスラッシュバンド、デスチェインの2007年作
「デスラッシュ・アサルト」というタイトル通り、疾走しまくりの強力作。
王道のスラッシーなリフを乗せて、ときにブラストをまじえつつ、強力にたたみかけるサウンドはいっそ潔いまでに爽快だ。
デスラッシュの本場スウェーデン勢のバンドに比べると、ギターのリフやフレーズの面白みには欠けるものの、
こちらはむしろかつてのジャーマンスラッシュ的な明快さがあって、そのオールドスタイルが魅力。
とにかく疾走、疾走じゃなきゃ嫌だ…という方には潔くお勧めできる。
ドラマティック度・・7 疾走度・・10 爽快スラッシュ度・・9 総合・・8
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DEATHROW「Satan's Gift /Riders of Doom」
ドイツのスラッシュメタルバンド、デスロウの1st。1986年作
80年代ジャーマンスラッシュのマイナーバンド。初期KREATORばりに疾走しまくるスタイルながら、
いかにもドイツのバンドらしく、ヨーロピアンなツインギターメロディを随所に感じさせるのがポイント。
リズムのズレもお構いなしに突進しまくるさまは微笑ましくもあるが、不思議と嫌いにはなれない。
2nd「Raging Steel」ほどの完成度はないものの、B級スラッシュマニアなら楽しめると思う。
なお、レーベル変更により、ジャケもタイトルも変わっているという紛らわしい作品である。
ドラマティック度・・7 疾走度・・8 B級度・・8 総合・・7.5
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DEATHROW「Raging Steel」
ドイツのスラッシュメタルバンド、デスロウの2nd。1987作
Living Deathなどとともにジャーマンスラッシュの隠れた名バンドとされる。
強烈に疾走する激しさの中、ギターのフレーズはけっこうメロディアスだったりして、
いかにもジャーマンらしい。そういう点では激しめのパワーメタルとしても聴ける。
いかにもB級な疾走スラッシュだった前作よりも、クオリティは向上している。
メロディアス度・・7 疾走度・・8 スラッシュ度・・8 総合・・8
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DEATHROW 「DECEPTION IGNORED」
ドイツのスラッシュメタル、デスロウの3rd。1988年作
ジャーマンスラッシュの裏傑作として貴重盤だった本作が2012年に再発された。
かれらはLiving Deathなどとともに、80年代のジャーマンB級スラッシュの代表各とされていたが、
1st、2ndの疾走一辺倒だったサウンドから、本作では知的な展開力をまとわせた作風に変化している。
ザクザクとしたギターリフを中心に疾走しながら、DESTRUCTIONあたりを思わせるクールな切り返しや
唐突なリズムチェンジやブレイクなど、もはやテクニカルスラッシュともいうべき作風となっている。
一方では随所にメロディアスなギターも含みつつ、8分、9分という大曲も緩急を盛り込んで構築する、
MEKONG DELTAなどにも通じるヘンテコなジャーマンスラッシュとしても一級品の出来だ。
ドラマティック度・・7 スラッシュ度・・8 知的(ヘンテコ)度・・9 総合・・8
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DEATH WOLF 「III: OSTERGOTLAND」
スウェーデンのダークメタル、デス・ウルフの2014年作
MARDUKのモルガン・ハカンソン率いる、DEVIL'S WHOREHOUSEから改名したバンドで、
オールドスタイルのギターリフにダミ声ヴォーカルを乗せた、ダークなメタルサウンド。
CELTIC FROSTあたりにも通じる、ブラックメタル的な空気を含んだ重厚な聴き心地で、
ミステリアスなサウンドを描いている。ドゥームメタル的なスローからミドルテンポを基本にしつつ
一方ではスラッシュメタル的に激しく疾走するナンバーもあったりと、適度にメリハリもある。
ブラッケンロールやドゥームブラックなど、暗黒系メタルが好きな方はチェックしてみてはいかが。
ドラマティック度・・7 重厚度・・8 暗黒度・・8 総合・・7.5
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DECAPITATED 「ORGANIC HALLUCINOSIS」
ポーランドのデスメタルバンド、ディキャピテイテッドの4th。2006作
ポーランドといえば、VADERやBEHEMOTHなどを筆頭に、今やデスメタル大国と
なりつつあるが、このバンドはデビュー時には平均18歳だったという若手の筆頭株。
サウンドの方はやはりVADERを思わせるブルータルに疾走するスタイルであるが、
音作りにはさらにモダンでヘヴィロック風のソリッドさがあり、いかにも若者らしい。
20代前半にして4作目というだけあって、メンバーの実力も高く、単に押すだけでなく、
ときにテクニカルに聴かせたり、重々しい雰囲気をかもしだす曲アレンジもなかなかのもの。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・8 モダンヘヴィ度・・9 総合・・8
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Deceased「Supernatural Addiction」
アメリカのスラッシュメタル、ディケースドの2000年作
ツインギターのリフとダミ声ヴォーカルを乗せて疾走する、正統派のスラッシュメタル。
ギターフレーズには随所にメロディックな感触もあって、パワーメタル的な聴き心地もある。
疾走するだけでなく、スローやミドルテンポも取り入れたメリハリのある楽曲アレンジにもセンスを感じる。
質の高いオールドスタイルのスラッシュ・パワーメタルが楽しめる好作品。
メロディアス度・・8 疾走度・・7 正統派度・・8 総合・・8
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Deceased「As the Weird Travel on」
アメリカのスラッシュメタル、ディケースドの2005年作
デビューは90年代初等というベテランで、初期はB級のデスメタルだったようだが、
本作ではメロディアスなギターを盛り込んだパワーメタル風のスラッシュで、これがなかなか格好いい。
ヴォーカルは野太いダミ声で、ツインギターのオールドなリフとともに激しく疾走しつつ、
叙情的ともいってよいフレーズを盛り込んで、ダーティでありながら聴き安いサウンドだ。
たたみかける突進から、古き良き正統派メタル風味に切り替わる極端さにもにやにや。
メロディアス度・・8 疾走度・・8 オールドメタル度・・9 総合・・8
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Deceased「Surreal Overdose」
アメリカのスラッシュ・デスメタル、ディケースドの2011年作
前作のメロディアスさはいくぶん抑え気味に、デスメタルばりに激しくたたみかけるサウンドで、
スプラッター映画的な世界観を描いている。ツインギターのリフはヘヴィでありつつも
オールドスタイルの感触で、随所にメロディックフレーズを織り込んで、適度に緩急をまじえた楽曲は
ある種ドラマティックに展開する。そういう点で、激しいだけのバンドとは一線を画すような
6分、8分というこの手のバンドにしては長い曲を構築する知的なアレンジ力があるのが特徴だ。
硬質すぎず甘すぎずという、古き良きデス/スラッシュ好きはやはり聴く価値ありです。
メロディアス度・・7 疾走度・・9 オールドデス度・・8 総合・・8
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Decrepit Birth 「...And Time Begins」
アメリカのデスメタルバンド、デクレピット・バースの1st。2003年作
のっけから凶悪無慈悲なブラストビートが炸裂、これぞブルデスの王道というサウンドで、
低音デスヴォイスとSUFFOCATIONあたりを思わせるキレのよい演奏力も見事。
リズム的にもブレイクや変拍子を取り入れていて、とくにドラムはCRYPTOPCYばりに超絶。
オールドスタイルのブルデスながら、この強烈な突進力は聴いていてへとへとになる。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・9 テクニカル度・・8 総合・・8
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Decrepit Birth「Diminishing Between Worlds」
アメリカのデスメタルバンド、デクレピット・バースの2nd。2008年作
1stの強烈なブルータル路線から、本作ではメロディックなフレーズを取り入れだし、
変則リズムとブレイクを多用した、いわゆるテクニカル・デスの路線へと変化している。
クールなリフとブラストを含んだ激しさに、プログレッシブな知性が加わったサウンドは、
DEATHを元祖とする、オールドスタイルのテクニカルデスを受け継ぐスタイルで、
新旧のリスナーを唸らせるクオリティの高さである。次作はさらにこの路線を極めた傑作となる。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・8 テクニカル度・・8 総合・・8
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Decrepit Birth 「Polarity」
アメリカのデスメタルバンド、デクレピット・バースの3rd。2010年作
1stで聴けた暴虐ブルデス路線から、テクニカル路線へと進化を遂げている。
ドラムとベースが交代しているが、むしろギターのクリーントーンのパートが増えていて
叙情的なフレーズやメロディを随所に聴かせながら、知的に構築してゆくサウンドは
プログレッシブ・デスといってもよいものだ。一方では低音デスヴォイスの迫力はそのままで、
ブラストでたたみかける部分にはブルデスとしての突進力もしっかり残している。
DEATHやOBSCURAなどのリスナーにも勧められる。個人的には好みのバンドになった。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・8 テクニカル度・・9 総合・・8.5
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Decrepit Birth 「Axis Mundi」
アメリカのテクニカルデスメタル、デクレピッド・バースの2017年作
2003年にデビュー、本作は7年ぶりとなる4作目。強烈なツーバス連打と変則リズムのドラムに、
デスメタルらしいギターリフと低音ゲボ声ヴォーカルを乗せてたたみかける、テクニカルデスメタル。
激しいブラストビートとともにオールドなブルデスの味を残しつつ、スウィープのギターフレーズを乗せたり、
テクデスとしての知的な展開力も備わっていて、緩急のあるじつに濃密な聴き心地である。
ラストのSuffocationカヴァーもハマっていて、モダン過ぎるテクデスが苦手という方にも楽しめる作品だろう。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・8 テクニカル度・・8 総合・・8
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Defleshed「Under the Blade」
スウェーデンのデスラッシュバンド、デフレッシュドの2nd。1997作
とにかく疾走、猪突猛進に突き進む、爽快なまでの爆走デスラッシュ。
ザクザクのギターリフにはときにクールな知的さもかいま見せ、
メンバーの演奏力の高さを窺わせる。ラストはDESTRUCTIONのカヴァー。
ドラマティック度・・7 疾走度・・9 デスラッシュ度・・9 総合・・8
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DEFLESHED「Fast Forward + 7Lives」
スウェーデンのデスラッシュバンド、デフレッシュドの3rd。1999作
北欧デスラッシュの最高傑作である4thに比べると、サウンドはより荒々しく
ヴォーカルの咆哮とともにデスメタル的な色合いが強く残っているが、
痛快なほどに強烈に疾走するこのバンドの持ち味はすでに十分堪能できる。
日本盤にはボーナスとしてミニアルバム「DEATH...THE HIGH COST LIVING」から
全曲追加収録されていて、彼らの激烈なライブ演奏も楽しめる。
ドラマティック度・・7 疾走度・・9 デスラッシュ度・・9 総合・・8
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DEFLESHED「ROYAL STRAIGHT FLESH」
スウェーデンのデスラッシュバンド、デフレッシュドの4th。2002作
スラッシーなギターリフを乗せ、ブラストしつつ激烈に疾走するサウンドはまさにデスラッシュ。
オールドスタイルなスラッシュの暴虐さを持っていて、リフにしろリズムにしろ実に切れ味のよい疾走感。
ドラマーはブラックメタルバンドDARK FUNERALなどでも叩いている人物なので、
なるほど手数も多いしブラストも見事なもの。久々にもの凄いスラッシュメタルを聴いた感じがする。
ドラマティック度・・7 疾走度・・9 激烈デスラッシュ度・・9 総合・・8
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DEFLESHED「Reclaim the Beat」
スウェーデンのデスラッシュバンド、デフレッシュドの5th。2005作
前作「Royal Straight Flesh」は北欧デスラッシュの圧倒的パワーを見せつける傑作だったが、
続く本作も相変わらず強烈に疾走する、すがすがしいほどの快速球スラッシュだ。
ときにブラストをかましながらスタスタと疾走しつつ、決して軽くならない見事なドラムと
スラッシーな王道のギターリフで聴かせるスタイルは楽曲的にはやや単調ではあるが、
モダンな流行サウンドから敢然と背を向けたような潔い爽快感がある。
今はなきThe Crownあたりのリスナーにも勧められる、直球型デスラッシュ痛快作。
ドラマティック度・・7 疾走度・・10 デスラッシュ度・・10 総合・・8
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DEICIDE「The Stench of Redemption」
アメリカのデスメタルバンド、ディーサイドの9th。2006作
活動はすでに15年にもおよぶベテラン、本作ではMILLENIUMのラルフ・サントーラが加入。
リーダーのグレン・ベントンは根っからのアンチクライストとしても知られるが、
その通り、歌詞の内容もキリストを非難、冒涜する類のものが多い。
サウンドの方は激烈に疾走する暴虐性とともに、ラルフ・サントーラ効果だろう
二本のギターによるテクニカルでメロディのあるリフ構成が耳を惹きつける。
吐き捨てのゲボ声Voにはかつての古きデスメタルのイメージが重なるが、
演奏、サウンドの質ともにバンドの最高作といってもよいクオリティだ。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・8 ギターリフ度・・9 総合・・8
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DEICIDE「To Hell With God」
アメリカのデスメタルバンド、ディーサイドの11th。2011年作
グレン・ベントン率いるキャリア20年以上のベテランバンド、今作ものっけから激しくたたみかける
ブルータルなデスメタルが炸裂。緩急をつけながら、二本のギターのリフと存在感のあるベースによって
うねりのある迫力を聴かせるのはベテランならでは。また前々作で参加していたラルフ・サントーラが再び参加、
随所で流麗なギタープレイを聴かせてくれる。咆哮するベントン先生のデスヴォイスも迫力充分で、
オールドスタイルの格好よさと、アグレッシブな勢いにあふれた力作に仕上がっている。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・8 ベテランデス度・・9 総合・・8
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DEKAPITATOR「We Will Destroy...You Will Obey!」
アメリカのスラッシュメタル、デカピテイターの1st。1999年作
ゴアメタルバンド、EXHUMEDのマット・ハーヴェイを中心にしたバンドの1st再発盤。
ジャケからも分かる通り、サウンドは徹頭徹尾、80年代風味のスラッシュメタルで、かつてのSODOMあたりを思わせる、
潔いまでの突進っぷりだ。こもり気味の音質に、吐き捨てヴォーカル、どこかチープなアナログ感までも、
あの頃のアンダーグラウンドな香りを見事に再現している。好きなものにはたまらなく、ダメなものにはダサいという、
ある意味、天晴れなまでのサウンドだ。日本盤付属のマット本人による解説がまた素晴らしく、泣けて笑える文才ぶり。
ドラマティック度・・7 突進度・・9 古き良きスラッシュ度・・9 総合・・7.5
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DEMONOID「Riders of the Apocalypse」
THERIONのメンバーによるデスラッシュバンド、デモノイドの2004作
サウンドはセリオンとはまったくの別物で、激烈に疾走するスラッシュメタル。
やや古めかしいザクザクのリフを基調としつつも、ときおり荘厳なシンセも現れたり、
黙示録の四人の御使いをテーマにしていることもあってか、ただのデスラッシュではない重厚な世界観がある。
これがパーマネントなバンドとして続いてゆくのかは分からないが、
THERIONからシンフォニックな要素を削ぎ落としたというべきソリッドなサウンドは、
本家とは別の意味での荘厳なメタル世界を見事に形作っている。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・8 デスラッシュ度・・8 総合・・8
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Denominate 「Those Who Beheld the End」
フィンランドのデスメタル、デノミネートの2016年作
ツインギターのリフに低音デスヴォイスを乗せて激しく疾走、リズムチェンジを含めてキメの多い、
テクニカルデスメタルで、随所にメロディックなギターフレーズも覗かせる濃密なサウンドだ。
マスタリングをダン・スヴァノが手掛けていることもあり、激しくともヘヴィすぎない音作りには
オールドスタイルの感触もあるが、手数の多いドラムをはじめ、演奏力の高さはいかにも若手らしい。
11分の大曲では、ポストブラック的なモダンな雰囲気も垣間見せる。北欧テクデスの高品質作。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・8 テクデス度・・8 総合・・8
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DESPAIR「History of Hate」
ドイツのスラッシュメタルバンド、デスペアーの1st。1988年作
1992年までに3作を残して消えた、個性派のスラッシュメタルバンドのデビュー作が、
何故かいまごろになってボーナスディスク付きで再発された。ジャケのC級臭さはハンパないが、
サウンドは、私のような知的メタル、プログレッシブな個性派が好きであれば、喜ぶこと請け合い。
チェンバロの音色にギターが絡むクラシカルな香りを漂わせたイントロ曲からして只者ではないが、
スラッシーな疾走感に唐突ともいうようなリズムチェンジや曲展開が合わさって、せわしなくも楽しい音なのである。
ちなみに、ギターは後にGRIP.INCを結成するヴァルデマー・ソリクタで、随所にクールなセンスを見せつける。
2nd「Decay of Humanity」に比べると完成度の点では及ばないものの、じつに濃密なデビュー作である。
ボーナスDiscには1989年のライブ音源を収録。音質は悪いのだが、彼らのライブが聞けるのは貴重かと。
ドラマティック度・・8 プログレッシブ度・・8 個性派度・・9 総合・・8
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DESPAIR 「Decay of Humanity」
ドイツの個性派スラッシュメタルバンド、デスペアーの2nd。1991作
プログレッシブともいうべき展開力と、ミステリアスでドラマティックな世界観、
そして後にGRIP.INCを結成するヴァルデマー・ゾリクタによる湿り気を含んだ
クールなギターリフとともに抜群のセンスで聴かせる傑作アルバム。
スラッシーな疾走よりも、重厚かつダークな雰囲気で聴き手を引き込むセンスは
他に類を見ない個性的なものがある。今でこそ再評価をうながしたいバンドである。
次作「BEYOND ALL REASON」も同様に素晴らしい傑作だ。
ドラマティック度・・8 インテレクチュアル度・・8 クール度・・9 総合・・8.5
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DESPAIR 「Beyond All Reason」
ドイツのテクニカル・スラッシュメタルバンド、デスペアーの3rd。1992年作
前作も見事な出来であったが、3作目となる本作ではさらに知的なスラッシュメタルを展開。
ヴァルデマー・ゾリクタによるクールなギターリフと、緩急に富んだリズムチェンジにより、
まさにインテレクチュアルなスラッシュメタルを聴かせてくれる。そしてやはりドイツのバンドらしい
湿り気のある叙情性を含ませたドラマティックな世界観は、激しいスラッシュが苦手な方にも対応。
センス抜群のギターリフという点では、CORONERなどが好きな方にも楽しめるだろう。
現在でもまったく古臭さを感じさせない個性派スラッシュの傑作だ。2016年盤はリマスターで音質も向上。
ドラマティック度・・8 インテレクチュアル度・・8 クール度・・9 総合・・8.5
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DESTRUCTION 「Eternal Devastation」
ドイツのベテランスラッシュメタルバンド、デストラクションの2nd。1986作
ジャーマンスラッシュの中でも名実共に頂点に君臨するこのバンド、
デビュー当時はただ激しいだけの荒々しいサウンドであったのが、
本作ではドラマティックな構築性を身につけて、音の説得力がぐんと高まっている。
1曲目の“Curse The God”はチリチリとした切れ味のよいリフとともに、
シュミーアの不穏な歌声を乗せて疾走するバンドの代表曲。
知的なスラッシュ好きは次作を、疾走スラッシュファンは本作を最高作に挙げるだろう。
ドラマティック度・・8 疾走度・・8 スラッシュ度・・9 総合・・8
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DESTRUCTION 「Release From Agony」
ドイツのベテランスラッシュメタルバンド、デストラクションの3rd。1987作
デビュー当時はただ激しいだけの荒々しいサウンドであったのが、
前作「Eternal Devastation」において格段の成長をとげ、ここに最高傑作ともいうべき本作を生み出した
ミスタリアスなイントロに続く“Release From Agony”はクールなリフと変則的な展開の中に、ある種知的ともいうべき
メロディや世界観を感じさせる。甲高いシュミーアのヴォーカルとともに、デストラクションサウンドを印象づける名曲だ。
リーダーであったシュミーアは本作の後、ライブアルバムを最後に脱退、Headhunterを結成するが、
1999年にバンドに復帰。デビューから20年を超えてもなお精力的に活動を続けている。
ドラマティック度・・8 疾走度・・8 スラッシュ度・・9 総合・・8.5
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DESTRUCTION「Inventor of Evil」
ドイツのベテランスラッシュメタルバンド、デストラクションの2005年作
2000年のシュミーアの復帰作からコンスタントにアルバムを出し続け、これが復活後4作目。
個人的にはかつての名作「Release From Agony」の知的スラッシュサウンドが好きだったので
復活後の勢い重視のサウンドにはさほどのめり込めなかった。本作でもザクザクのリフと
咆哮するシュミーアのヴォーカルでたたみかけるノリのよいスラッシュメタルで、
特有の妖しさをかもしだしつつも、ヘヴィメタルとしてはむしろ明快でシンプルな音である。
ミドルテンポで聴かせる安定感にはベテランとしての自信に満ちているが、強烈な迫力は感じない。
ドラマティック度・・7 疾走度・・7 スラッシュ度・・8 総合・・7.5
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DESTRUCTION「Thrash Anthems」
ドイツのベテランスラッシュメタルバンド、デストラクションの2007作
一度はシュミーアの脱退などもあり、活動を停止していたが、2000年に復活。
これは彼らの初期作を中心とした楽曲を現メンバーで再録したアルバムである。
熱きスラッシュ魂そのままの演奏で、かつての名曲たちが蘇る。
ザクザクのギターリフに、ときに個性的な複雑さを垣間見せつつ疾走するサウンドは、
攻撃的でありつつも、やはりどこか知性的な構成力を感じさせる。とくに彼らの代表曲、
“Release from Agony”“Curse the Gods”あたりは、オールド・スラッシャーは感涙。
ドラマティック度・・8 疾走スラッシュ度・・9 デストラクション度・・10 総合・・8
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DESTRUCTION「D.E.V.O.L.U.T.I.O.N」
ドイツのベテランスラッシュメタルバンド、デストラクションの2008作
過去曲のリメイク「Thrash Anthems」で往年のファンを狂喜させたバンドの新たな一歩。
激しく疾走する勢いに満ちたスラッシュサウンドに加え、本作では特異な展開と知的さが戻り、
80年代の楽曲構成を思わせる雰囲気になっている。妖しげなリフとメロディを聴かせるギターに
シュミーアのヴォーカルもいくぶん昔のスタイルに戻ったかのようだ。これぞデストラクションという力作。
ドラマティック度・・8 疾走度・・8 スラッシュ度・・9 総合・・8
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DESTRUCTION「The Curse of the Antichrist: Live in Agony」
ジャーマンスラッシュのベテラン、デストラクションのライブアルバム。2009作
2000年のシュミーアの復帰作からコンスタントにアルバムを出し続け、
同時に精力的にライブもこなし、ベテランスラッシャーの熱き魂はとどまるところを知らない。
本作は2007年Wackenでのバンド25周年のライブと、2009年の来日音源からなる、
CD2枚組のライブアルバム。“Curse the Gods”、“Mad Bucher”などをはじめ
過去から現在までの代表曲を、衰えを知らぬ強力な演奏でたっぷり聴かせてくれる。
ライブ演奏・・8 スラッシュ度・・9 濃密度・・9 総合・・8
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DESTRUCTION「Day of Reckoning」
ジャーマンスラッシュのベテラン、デストラクションの2011年作
2000年のシュミーアの復帰から、めざましいばかりの活動で、往年以上のスラッシュを聴かせるこのバンド、
本作も1曲めからデストラ節の激しさでたたみかける強力な内容だ。もちろん激しいだけではなく
クールなギターリフと知的な硬質感を漂わせた演奏には、ベテランならではの質の高さがある。
さすがにもう新鮮味はあまり感じないが、安心して楽しめるのはデストラクションクオリティ。
ドラマティック度・・7 激しさ度・・8 スラッシュ度・・9 総合・・8
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DESTRUCTION「Spiritual Genocide」
ジャーマンスラッシュのベテラン、デストラクションの2012年作
2000年のシュミーアの復帰から早くも8作目で、今作も期待に違わぬ強力な内容だ。
硬質なリフを乗せて激しく疾走する、これぞスラッシュメタルという切れ味と、
シュミーアの爬虫類的な個性的なヴォーカルとともに、全盛期のデストラクションを
さらにパワーアップしたというような聴き心地に圧倒される。キレのいいドラムを中心とした
リズム面の安定も素晴らしく、楽曲は随所にテクニカルで知的な展開も覗かせながら、
その堂々たる自信に満ちた音の迫力は、若手バンドとの格の違いを思い知らせてくれるようだ。
ドラマティック度・・7 疾走度・・8 スラッシュ度・・9 総合・・8
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Destruction 「Under Attack」
ドイツのスラッシュメタル、デストラクションの2016年作
1984年デビュー、ジャーマンスラッシュメタルを代表するバンドの、4年ぶりとなる14作目。
今作は叙情的なイントロで幕を開け、切れ味のいいクールなギターリフとともに疾走開始、
ドスの効いたダミ声ヴォーカルを乗せて、オールドスタイルのスラッシュメタルを聴かせる。
軽すぎず重すぎずというリフに、随処にほどよくメロディックなギターフレーズも覗かせつつ、
適度にミドルテンポも織り交ぜながら、トリオとしてのシンプルなノリと疾走感が楽しめる。
爽快なスラッシュサウンドが楽しめるという点では最高だと言うしかない。ベテラン充実の強力作。
ドラマティック度・・7 疾走度・・8 デストラ度・・9 総合・・8
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Destruction 「Born To Perish」
ドイツのスラッシュメタル、デストラクションの2019年作
本作はツインギターの4人編成となり、ドラムも交代。エッジの効いたギターリフにダミ声ヴォーカルを乗せて
疾走するスタイルはそのままに、ダークなジャケのイメージも含めて、より重厚で攻撃的なサウンドを聴かせる。
ストレートな迫力が強まったことで、前作にあったメロディックなフレーズは、今作ではさらにビターな味わいで、
激しさの中で甘すぎない程度に光っている。反面、硬質なダークさが強まった分、オールド感が薄くなったのは痛しかゆしか。
スローテンポを含む緩急あるドラマティックな雰囲気は、Kreatorなどにも接近した印象もある。新生デストラの力作だ。
ドラマティック度・・8 疾走度・・8 デストラ度・・8 総合・・8
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DEVILYN「REBONE IN PAIN」
ポーランドのデスメタルバンド、デヴィリンの2nd。1998作
ポーランドといえば、なんといってもVADERであるが、このバンドはその「VADERの弟分」的に語られる。
サウンドの方は、当然ながらVADERを思わせる暴虐なデスメタルであるが、
こちらの方はSLAYERよりもむしろ初期MORBID ANGELを想起させる部分が強く、
また荒々しく疾走する部分はCANNIVAL CORPES的なドライな質感もある。
展開力と演奏能力もなかなかテクニカルで、本家VADERにはまだ及ばないものの、
ポリッシュデスメタルシーンの中核をになうバンドとしてのクオリティは有している。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・8 楽曲・・7 総合・・7.5
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DEW-SCENTED「Inwards」
ドイツのデスラッシュバンド、デュー・センテッドの4th。2002作
デスラッシュというと北欧が主流というイメージがあったのだが、ドイツにもいいバンドがいたのである。
このバンドは1996年から地道に活動を続けていたようで、本作で日本デビューを飾ったことになる。
サウンドは、ややデスメタルに近いような吐き捨て型のヴォーカルと、疾走するリズムに乗る
切れ味のいい硬質なギターリフで聴かせる、本格派のスタイル。緩急を織りまぜた楽曲は、
ブレイクやリズムチェンジを多用するなど、激しくはあっても決して一本調子ではない。
音圧の点ではモダンなエクストリーム系のそれであるが、SLAYERのカヴァーも取り上げるなど、
案外に古き良きスラッシュメタルへの敬意も感じられる。
ドラマティック度・・7 疾走度・・8 スラッシュ度・・8 総合・・8
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DEW-SCENTED「Issue VI」
ドイツのデスラッシュバンド、デュー・センテッドの6th。2005作
すでにデビューから10年以上という、なにげにキャリアの長い実力派バンド。
今作もザクザクのリフで激しく疾走しつつ、モダンなヘヴィネスでたたみかける。
ときにメロディアスなフレーズを奏でるギターや、随所にテクニカルなリズムチェンジを
取り入れたりと、突進力だけではないバンドとしての実力を感じさせる。
ヴォーカルの吐き捨て声はやや好みを分けるだろうが、質の高いデスラッシュ作品だ。
ドラマティック度・・7 疾走度・・8 ザクザク度・・8 総合・・8
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DIAMOND PLATE「Generation Why?」
アメリカのスラッシュメタル、ダイアモンド・プレートの2010年作
若手の4人組ながら、いかにもオールドスタイルの古き良きスラッシュをやっている。
かつてのEXODUSを思わせるようなザクザクのリフと、ダミ声のヴォーカルを乗せて
激しくたたみかけつつ、随所にメロディックなフレーズも取り入れたサウンドは
若手にしてはなかなかの迫力。全体的には強いインパクトが足りないので次作に期待。
ドラマティック度・・7 疾走度・・7 オールドスラッシュ度・・8 総合・・7.5
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DIES IRAE「IMMOLATED」
VADERのメンバーらによるデスメタルバンド、ディエズ・イラエの1st。2000作
今やポーランド最高のデスメタルバンドとなったVADERだが、
そのギターを務めるマウザーを中心としたプロジェクトバンドで、ドラムにはそのVADERの故Docがすわり、
Vo/BはDEVILYNのメンバーが務める。サウンドの方は初期のVADERに通じるストレートなデスメタルで、
ブルータルに疾走しまくる明快なスタイル。暴虐な突進を支えるDocのドラムは
やはり見事で、一本調子になりがちな楽曲のの説得力を一段引き上げている。
このバンドならではの個性というものはあまり感じられないが、VADERが好きなリスナーなら充分楽しめる出来だ。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・8 VADER度・・9 総合・・8
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DIES IRAE「The Six War」
ボーランドのデスメタルバンド、ディエズ・イラエの2nd。2002作
1st同様に、ブルータルなオールドデスメタルを基調に、VADERを思わせる
スラッシーなリフとDocによる見事なドラムでたたみかける質の高いサウンド。
楽曲は比較的シンプルだが、ときおりギターがメロディを聴かせるなど、
しっかりと緩急もつけられていて、さすがに実力者のバンドだと思わせる。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・8 VADER度・・8 総合・・8
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DIES IRAE「Sculptures of Stone」
VADERのマウザーと故ドックを中心にしたデスメタルユニット、ディエズ・イラエの3rd。2004作
スラッシーなギターリフで聴かせるデスメタルサウンドは、激しさとともにオールドテイストの
スラッシュ風味が本作ではより強くなっていて、むしろ感触としてはNevermoreあたりにも通じるか。
存在感のあるDocのドラムもやはり素晴らしく、実力のあるメンバーによる安定感はさすが。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・7 スラッシュ度・・8 総合・・7.5
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DOMINION「Born God and Aware」
スウェーデンのデスメタルバンド、ドミニオンの2006作
同名の英国のバンドとは別バンド。こちらはテクニカルなギターリフと
低音のデス声が咆哮する本格派のデスメタル。オールドな雰囲気を漂わせつつ、
MORBID ANGELを思わせる荘厳な雰囲気で重厚に聴かせるサウンドだ。
北欧のバンドなのに、かつてのフロリダ産デスメタルの進化形ような音である。
質の高さの点でも、VADERなどのブルデスファンも聴いて損はない出来だ。
ドラマティック度・・7暴虐度・・8 オールドデス度・・9 総合・・8
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Dying Gorgeous Lies 「The Hunter and They Prey」
ドイツのスラッシュメタル、ダイイング・ゴージャス・ライズの2019年作
2011年にデビュー、本作は3作目。オールドなギターリフに、ダーティなダミ声女性ヴォーカルを乗せた
HOLY MOSESにも通じる、パワーメタル寄りのスラッシュメタル。スラッシーな疾走感とともに、
随所にメロディックなギターや、ピアノやヴァイオリンなどの叙情的なパートも覗かせて、
ときにノーマルな女性声も使い分けるなど、激しさの中にもウェットな感触を漂わせている。
反面、疾走スラッシュでゆくのか、女性声の魅力を活かすのか、やや中途半端な感じもある。
ドラマティック度・・7 疾走度・・7 女性声度・・7 総合・・7.5
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Dystrophy 「Wretched Host」
アメリカのデスメタル、ディストロフィーの2015年作
オールドスタイルを感じさせるギターリフに低音グロウルヴォイスを乗せた、正統派のデスメタルサウンド。
緩急のついたテクニカルな展開力とともに、近年のブルデス勢とは異なり、激しくとも速過ぎない感じで、
あくまで重厚さを追及した聴き心地だ。絡みつくようなギターフレーズとともに、かつてデスメタル初期にあった、
不穏なおどろおどろしさも残していて、GORGUTSやSUFFOCATIONなどが好きな方にも楽しめるだろう。
むしろミドルからスローテンポでのギターのリフにセンスがあって、テクニックのあるプレイで
凶悪なゲボ声ヴォーカルとのコントラストになっている。オールドな香りのデスメタル強力作。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・7 重厚度・・8 総合・・8
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E
Entophyte 「End of Society's Sanity」
ドイツのスラッシュメタル、エントフィーテの1992年作
1作のみで消えたマイナー系バンドの作品が、何故か中国のレーベルから2019年に再発された。
サウンドの方は、クールなギターリフにハイトーンヴォーカルを乗せ、スピードメタル的に疾走しつつ、
テクニカルなリズムチェンジによる、インテレクチュアルな味わいで、マイナーらしい唐突な展開など、
プログレッシブメタル的な感触もある。ギターの奏でる流麗なリフやフレーズにはなかなかセンスを感じさせ、
変則リズムも含めてテクニックは安定しているが、楽曲的には尻切れな感じもあってとらえどころがない。
ボーナスを入れて全35分というのは物足りないし、スラッシュメタルというほどの激しさはあまりないが、
ヘンテコなマイナーメタルという点では、初期のMEKONG DELTAなどが好きな方にも楽しめるかも。
ドラマティック度・7 スラッシュ度・7 ヘンテコ度・8 総合・7.5
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Entombed 「Clandestine」
スウェーデンのデスメタル、エントゥームドの2nd。1992年作
Dismemberとともに90年代スウェディッシュ・デスメタルの代表というべきバンド。
「密葬」のタイトルでも知られるバンドの代表作。ザクザクのギターリフとともに疾走するスタイルは
いまでいう北欧デスラッシュの元祖といってもよいだろう。低音デスヴォイスの迫力もかなりのもので、
デスロール的な勢いの良さと、北欧らしいウェットなダークさが混じり合ったような濃密なパワーを感じさせる。
ドラマティック度・・7 疾走度・・8 デスラッシュ的度・・8 総合・・8
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ENTOMBED A.D. 「Dead Dawn」
スウェーデンのデスメタル、エントゥームドA.D.の2016年作
1990年にデビュー、スウェディッシュ・デスメタルを代表するバンドとして、2007年までに9作のアルバムを残したのちに
ギターのアレックス・ヘリッドとその他のメンバーが分裂する。アレックスを除くメンバーで新たにENTOMBED A.D.を立ち上げ、
本作はその2作目となる。ツインギターのリフと吐き捨てヴォーカルを乗せて疾走する、オールドスタイルのサウンドで
ヘヴィすぎないややこもり気味の音作りも含めて、いかにも80〜90年代的な空気感である。楽曲は3〜4分台中心で、
シンプルな突進力とともにスウェディッシュらしいウェットな感触が合わさった、古き良きデスメタルが楽しめる。
スラッシーな疾走ナンバーはもちろん、ミドルテンポのデスロール的なナンバーも、ベテランらしい音の説得力がさすがである。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・7 古き良きデス度・・9 総合・・8
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ENTRAILS 「TALES FROM THE MORGUE」
スウェーデンのデスメタル、エントレイルズの2010年作
デビューアルバムのジャケを変更した再発盤で、グロいアートワークがデスコアっぽい雰囲気だが、
サウンドはオールドなギターリフと吐き捨てヴォーカルでスラッシーに疾走する、初期Entombedなどを思わせる
古き良き北欧デスメタル。ザリザリとしたリフとともに、随所にほどよく叙情的なギターフレーズも覗かせて、
激しすぎずわりと聴きやすい。スローテンポもまじえたリズムチェンジや、クールなギターリフなどは、
Pestilenceあたりを思い出すかも。90年代ヨーロピアン・デスメタルの生き残り的なバンドでしょう。
ドラマティック度・7 暴虐度・7 オールドデス度・8 総合・8
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Entrails「Tomb Awaits」
スウェーデンのデスメタル、エントレイルズの2011年作
2作目となる本作は、もうジャケからして、かつてのENTOMBEDみたいなんですが、
サウンドもENTOMBEDや、DISMEMBERを思わせる、90年代風味のスウェディッシュデスメタルでにんまり。
ザクザクとしたギターリフと低音のデスヴォイスを乗せながらスラッシーに疾走しています。
ギターは随所にメロディのあるフレーズを聴かせつつも、甘すぎないところがミソで、
そのあたりのセンスの良さは、EDGE OF SANITYあたりに近いものも感じますね。
このジャケになにかなつかしさを覚えるような方は、まず聴いて間違いはないです。
ドラマティック度・・8 北欧デス度・・8 オールドデス度・・9 総合・・8
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Entrails 「Raging Death」
スウェーデンのデスメタル、エントレイルズの2013年作
エントゥームドのようなバンドロゴに、サウンドも古き良きオールドスタイルというこのバンド、
本作もツインギターのゴリゴリのリフとゲボデス声ヴォーカルを乗せて疾走する、
デスメタル&デスロール的な感触でたたみかける。随所にメロディックなフレーズも覗かせ、
90年代の北欧デスメタルの雰囲気を、まるでそのまま甦らせたような聴き心地が楽しめる。
激しいだけでなく、スローからミドルテンポでの雰囲気にも迫力があり、じつに高品質のオールドデス。
ドラマティック度・・7 重厚度・・8 オールドデス度・・8 総合・・8
Entrails「World Inferno」
スウェーデンのデスメタル、エントレイルズの2017年作
2010年にデビュー、オールドスタイルの北欧デスメタルを貫くサウンドで、本作が5作目となる。
ザリザリのギターリフと低音デスヴォイスを乗せて疾走する、ブルータルなデスメタルサウンドで、
オールドなデスラッシュ風味も含んだ聴き心地。以前のようなスウェディッシュな叙情性が薄まった分、
より硬派な感触になっていて、個人的には少し残念だが、迫力あるスラッシーなデスメタルが味わえる。
90年代デスを引き継ぐ空気感はよいのだが、このバンドならではの個性をそろそろ確立させて欲しい気も。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・8 オールドデス度・・8 総合・・7.5
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Eternal Gray「Your Gods, My Enemies」
イスラエルのデスメタル、エターナル・グレイの2011年作
イスラエルという国柄を考えると、まさに強烈なアルバムタイトルであるが、
サウンドもソリッドなギターリフに咆哮するデスヴォイスを乗せて、激しく疾走する強力な作風。
デスコア的なブルータルな激しさと荘厳な雰囲気に包まれているが、ヘヴィな硬質感の中にも、
シンセによる味付けなどもあって、随所にドラマティックなセンスが光っている。
モダンな音作りも含めて、地域性を抜きにしてクオリティの高い力作に仕上がっている。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・8 荘厳度・・8 総合・・8
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EVOCATION「Tales from the Tomb」
スウェーデンのデスメタル、エヴォケーションの2007年作
90年代的なスウェディッシュ・デスメタルの香りぷんぷんで、ツインギターのリフで疾走しつつ
EDGE OF SANITYやAT THE GATESなどにも通じるメロディックな感触も含んだサウンド。
ENTOMBEDのカヴァーも違和感なく、オールドスタイルの音作りには思わずにんまりである。
むしろ、いまでいうデスラッシュ風味なので、The CROWNあたりが好きな方にもよいだろう。
ドラマティック度・・7 疾走度・・8 北欧オールドデス度・・8 総合・・8
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Evocation 「Dead Calm Chaos」
スウェーデンのデスメタル、エヴォケーションの2nd。2008年作
ツインギターのオールドなリフに低音デスヴォイスを乗せて激しく疾走。緩急のついたリズムチェンジと
叙情的なギターフレーズを盛り込みつつ、かつてのEdge of SanityやAt The Gatesなどにも通じる、
湿り気のあるスウェディッシュ・デスメタルが楽しめる。今でいう北欧デスラッシュ的な激しさと
初期メロデス的な叙情性を融合させたとも言えるかもしれない。ヘヴィすぎないブルータルさと
古き良きデスメタルのダークな香りがよいですね。オールドな北欧デス好きはぜひ。
メロディック度・・7 疾走度・・8 オールドデス度・・8 総合・・8
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EVOCATION「Illusions of Grandeur」
スウェーデンのデスメタル、エヴォケーションの2012年作
EDGE OF SANITYあたりを思わせる、オールドなスウェディッシュデスのスタイルで
痛快にたたみかけるサウンドは本作も健在。ツインギターのリフで疾走しつつ、
随所にメロディックなフレーズを覗かせる、ドラマティックな感触が増していて、
初期のDARK TRANQUILLITYやAT THE GATESなどを思わせる部分もあり、
メロデス的にも楽しめるようになった。勢いに溢れた楽曲充実の傑作である。
ドラマティック度・・8 疾走度・・8 オールドデス度・・9 総合・・8
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EVOCATION 「THE SHADOW ARCHETYPE」
スウェーデンのデスメタル、エヴォケーションの2017年作
2007年にデビューし、本作は5作目となる。ツインギターに低音デスヴォイスを乗せて、
どっしりとした重厚なデスメタルを聴かせる。メロデス寄りだった前作に比べて、
叙情性はいくぶん薄まったが、AT THE GATESを思わせる疾走ナンバーもあって、
迫力あるスウェディッシュメタルが味わえる。ダークな重さと疾走感のバランスもよくて、
激しすぎない、不愛想過ぎないという、デスメタルとしての聴きやすさがこのバンドの魅力だろう。
ドラマティック度・・7 疾走度・・7 重厚度・・8 総合・・8
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Exmortus「In Hatred's Flame」
アメリカのデスラッシュバンド、エクスモータスの2008作
ジャケからしていかにもな感じだが、サウンドの方もオールドスタイルのギターリフで
吐き捨てヴォーカルを乗せて激しく疾走しまくるデスラッシュ。
ギターはけっこうテクニカルなフレーズをピロピロと弾いたりと、
節操のない勢いが魅力といえば魅力。いわばオールドなスラッシュを
モダンなヘヴィさで再現したという感じか。昔のメロデスっぽい曲もある。
メロディアス度・・7 疾走度・・8 デスラッシュ度・・7 総合・・7.5
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EXMORTUS「Beyond the Fall of Time」
アメリカのメロディック・スラッシュメタルバンド、エクスモータスの2011年作
前作はまあまあという程度の出来であったが、今作はなにやらドラマティックなイントロからして違う。
オールドなギターリフで疾走するアナログ的な古き良きメタル感覚にますます磨きがかかり、
随所にメロディを効かせたギターフレーズとともに、まるでArtilleryばりのヨーロピアンなスラッシュサウンドだ。
一連のNWOTHM系バンドのような80年代正統派の質感も多分にあって、オールドファンもにんまり。
前作にはあまりなかった緩急を使った展開や、ドラマティックな世界観もGoodな力作です。
ドラマティック度・・8 スラッシュ度・・8 古き良き度・・8 総合・・8
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Exmortus 「Slave to the Sword」
アメリカのスラッシュメタル、エクスモータスの2014年作
前作はオールドスタイルの力作であったが、3作目となる本作は1atの頃のメロディックな要素を取り戻し、
正統派のパワーメタル感触と、激しく疾走するスラッシュサウンドが融合したサウンドとなっている。
ダミ声ヴォーカルを乗せて突進しながら、ツインギターの叙情フレーズはときにメロデス的でもあり、
メリハリのついた楽曲展開には知的なセンスも垣間見せる。ギターに関しては様式美すぎるところもあるのだが、
1atと2ndの良い所を合わせたという密度の濃さは見事。これぞメロディック・スラッシュというべき力作だ。
ドラマティック度・・8 疾走度・・8 メロスラ度・・8 総合・・8
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EXMORTUS 「SOUND OF STEEL」
アメリカのメロディック・スラッシュメタル、エクスモータスの2018年作
2008年にデビューし、すでに5作目となる。ツインギターリフにダミ声ヴォーカルを載せてスラッシーに疾走する、
メロディック・スラッシュ・デスメタルというべきサウンドは本作も健在。オールドスタイルのギタープレイに
随所にネオクラ風の流麗なメロディも覗かせて、激しく疾走しつつも、わりとライトな聴き心地というのが特徴的。
今作には、WARBRINGERのドラムとギターが参加していて、パワフルなドラムはサウンドの核を担っている。
ベートーベンの「テンペスト」を取り上げたクラシカルなインストナンバーなど、ネオクラに寄せた部分は、
1stの頃に回帰したようなイメージだが、反面オールドなスラッシュ感触には目新しさはなくなったか。
ドラマティック度・7 疾走度・8 スラッシュ度・7 総合・8
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EXODUS 「Bonded by Blood」
ベイエリアスラッシュの代表格、エクソダスの1st。1985作
ザクザクリフで疾走するスタイルで、ツインギターの切れ味もなかなか。
昔はこれでも過激な部類だったのだろうが、今となってはけっこう聴きやすい音で
この手のバンドにしてはギターリフにうっすらとメロディを感じるところもポイント。
初期スラッシュメタルの粗削りな魅力が詰まった1枚。ジャケは一度発禁になっている。
ドラマティック度・・7 疾走度・・8 王道スラッシュ度・・8 総合・・7.5
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EXODUS「PLEASURES OF THE FLESH」
ベイエリアスラッシュの代表格、エクソダスの2nd。1987作
1st同様、スラッシーに疾走しつつも、ギターリフにおけるある種の知的さや
メロディアスな部分がいっそう強調され、聴きやすくなっている。、
METALLICAやTESTAMENTなどに比べるとややマイナーっぽいが、
80年代スラッシュの名作とされているだけあり、レベルの高いアルバムだ。
ドラマティック度・・8 疾走度・・8 王道スラッシュ度・・8 総合・・8
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EXODUS「Another Lesson in Violence」
アメリカのスラッシュメタルバンド、エクソダスのライブアルバム。1997作
本ライブ作は1stアルバムからの曲をメインに聴かせてくれ、(1stから8曲、2ndから3曲)
アルバムでのやや薄い音質に比べてドラムの迫力、ギターの硬質感がぐっと増している。
個人的には2ndからの曲の方が好きなのだが、どちらにしても初期のファンにはマスト。
これぞスラッシュとばかりに気持ちよく疾走するライブ作だ。
ドラマティック度・・7 スラッシュ度・・9 ライブ演奏・・8 総合・・8
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EXODUS「Shovel Headed Kill Machine」
ベイエリアスラッシュのベテラン、エクソダスの2005作
リーダーのゲイリー・ホルトを中心に、今作は元Heathenのリー・アルタスをギターに迎え
元SLAYER〜TESTAMENTのポール・ボスタフがドラムに座った強力作。
ツインギターによるオールドなリフワークは相変わらず絶品で、
それに加えてタイトなドラミングがサウンドの硬質感をぐっと増している。
本作を復活後の最高傑作というのにもうなずける王道スラッシュの力作だ。
ドラマティック度・・7 疾走度・・8 スラッシュ度・・9 総合・・8
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EXODUS「The Atrocity Exhibition:Exhibit A」
ベイエリアを代表するスラッシュメタルバンド、エクソダスの2007年作
2004年の復活後3作目となるアルバムで。ドラムにトム・ハンティングが復帰している。
ザクザクとしたギターリフで聴かせる、いわゆるベイエリア・クランチは健在で、
適度な疾走感とミドルテンポのヘヴィさも含めて、ベテランらしい余裕のある安定感と
ダークな世界観が楽しめる。随所にMEGADETHを思わせるような知的さもあり、
速さだけにこだわらないリスナーであれば、この格好よさにしびれることだろう。
ドラマティック度・・8 疾走度・・8 スラッシュ度・・9 総合・・8.5
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EXODUS「Exhibit B:The Human Condition」
ベイエリアを代表するスラッシュメタルバンド、エクソダスの2010年作
2007年作の続編となるアルバムで、その前作も大変素晴らしかったのだが、今作も同様の傑作。
過去最高ともいうべきクールなギターリフとかつての疾走感を取り戻した勢いある激しさで聴かせる、
これぞスラッシュメタルというサウンドだ。ときにメロディックな質感も含んだギターワークは、
TESTAMENTあたりを思わせ、知的な構築力はMEGADETH的でもあるだろうか。理屈抜きに格好いいが、
理屈で聴いてもまた格好いいという。ラスト曲などはまるで、METALLICAの“Battery”のような勢いだ。
ドラマティック度・・8 疾走度・・8 スラッシュ度・・9 総合・・8.5
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EXODUS 「Blood In Blood Out」
アメリカのスラッシュメタル、エクソダスの2014年作
1985年にデビュー、ベイエリアスラッシュを代表するバンドの4年ぶりとなる、通算12作目。
過去2作「Exhibit A/B」はインテレクチュアルな傑作だったが、本作では、スティーヴ "ゼトロ" ザウザが
10年ぶりにヴォーカルに復帰し、サウンドは、クランチの効いたリフにダミ声ヴォーカルを乗せて疾走する、
オールドスタイルのストレートなスラッシュメタルに回帰している。スティーヴのクセのある高音ダミ声は、
正直さほど好きではないのだが、ゲイリー・ホルトと元HEATHENのリー・アルタスによるツインギターはさすがのキレで、
ノリのある疾走感はファンには嬉しいだろう。初期のメンバーでもあったMETALLICAのカーク・ハメットがゲスト参加している。
ドラマティック度・・7 疾走度・・8 オールドスラッシュ度・・8 総合・・8
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F
THE FACELESS「PLANETARY DUALITY」
アメリカのテクニカルデスメタルバンド、フェイスレスの2008作
激烈なブラストビートでCRYPTOPSYばりに始まったと思いきや、変則リズムによるキメと、矢継ぎ早の展開に唖然となりつつ、
硬質なリフの合間に聴かせるギターのフレーズにはときおりメロディもある。咆哮するデスヴォイスの暴虐性とは反対に、
知性的な冷徹さも漂わせており、曲によってはイントロにシンセを使ったり、ミステリアスな雰囲気も感じさせる。
基本的にはドカドカとブルータルで激しいサウンドなのであるが、曲はどれも短めで、聴き疲れて飽きる前にスパッと終わるのもいっそ潔い。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・8 テクニカル度・・9 総合・・8
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F.K.U. 「4:Rise of The Mosh Mongers」
スウェーデンのスラッシュメタル、FKUの2013年作
ジャケも含めてホラー映画的なイメージを標榜するバンドで、なにやらドラマティックなイントロから始まり、
曲が始まると古き良き感触のギターリフにハイトーンヴォーカルを乗せて勢いよく疾走する、
オールドスタイルの正統派スラッシュメタルが炸裂する。楽曲自体は3分前後とシンプルであるが、
わずか10秒足らずの小曲やSEを随所に織り込むなど、作品としての構成も考えられている。
初期EXODUSやVIO-LENCE、TANKARDなど疾走型スラッシュが好きな方ならノリノリで楽しめるだろう。
METALLICAのジェイムス・ヘッドフィールドがシュミーア化したようなヴォーカルの歌声にもニヤリとする。
ドラマティック度・・7 疾走度・・9 オールドスラッシュ度・・8 総合・・8
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FORBIDDEN「Omega Wave」
アメリカのスラッシュメタル、フォビドゥンの2010年作
かつて、ベイエリアスラッシュを代表するバンドのひとつとして知られ、1997年までに4作を残して解散、
本作はじつに13年ぶりとなる復活作で、いかにも1st「Forbidden Evil」を思わせるジャケであるが、
サウンドもツインギターのリフで聴かせる初期を思わせるスラッシュ路線に戻っていて、なかなか楽しめる。
ただ、全体的には、いくぶんのヘヴィロック風味もあったり、スラッシュメタルとしてのインパクトや迫力の点では
まだまだ物足りなさもあり、本格的に復活するのなら次作の出来が重要になるかと思う。
ドラマティック度・・7 疾走度・・7 オールドスラッシュ度・・7 総合・・7.5
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The Forsaken「Manifest of Hate」
スウェーデンのデスラッシュバンド、フォーセイクンの2001作
AT THE GATESからの影響を感じさせるリフワークで激しく疾走するデスラッシュサウンド。
低音のスクリームヴォイスはデスメタル的であるが、激烈な楽曲の中にも
メロディアスなギターフレーズを覗かせていて、高い演奏力とともに聴かせてくれる。
THE HAUNTED、THE CROWNにも充分匹敵するクオリティのバンドである。
メロディアス度・・7 激烈度・・8 デスラッシュ度・・9 総合・・8
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The Forsaken「Traces of the Past」
スウェーデンのデスラッシュバンド、フォーセイクンの3rd。2004作
THE HAUNTED、The CROWNらの登場以降、北欧はデスラッシュバンドの宝庫となった感があるが
このバンドも非常に質の高いサウンドを聴かせてくれる。ときにブラストをまじえた激烈な楽曲と
限りなくデス声に近い吐き捨てヴォーカル、そして、いかにもスウェディッシュらしいツインギターのリフの絡みで
モダンなタイトさと古き良きデス/スラッシュの質感を融合させている。このバンドの場合、単に疾走に頼るだけでなく
ミドルテンポで重厚に聴かせたり、ギターのフレーズにメロデス風味の叙情を挿入したりとなかなか懐も深く、
ドラムをはじめとした演奏力の高さも光っている。METALLICAの“Blackend”のカヴァーも格好いい。
ドラマティック度・・8 疾走度・・7 激烈度・・8 総合・・8
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G
GAMA BOMB「Tales from the Grave in Space」
アイルランドのスラッシュメタル、ガンマ・ボムの2009年作
ジャケからしてもう、古き良きダサ格好いいスラッシュの香りがぷんぷんだが、
音の方も期待を裏切りません。オールドなリフを乗せてとにかく疾走しまくる、
往年のスピードスラッシュメタルがたっぷり。ヤケクソ気味の高音ヴォーカルを乗せて、
2〜3分の曲でシンプルに突っ走りつつも、ギターリフにはしっかりフックがあって格好よく、
確信犯的な知的さも窺える。オールドリスナーなら素直に楽しめるアルバムです。
ドラマティック度・・7 疾走スラッシュ度・・9 ダサ格好いい度・・9 総合・・8
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GIGAN「Order of the False Eye」
アメリカのテクニカル・デスメタル、ガイガンの2008年作
ギター、ベース、シンセをこなすエリック・ヘルセマンを中心にしたバンドで、
ブルータルな激烈さと複雑な展開が合わさったスタイルのテクニカルデスサウンド。
ブラストビートを含んだ矢継ぎ早のリズムチェンジで変態的なせわしなさを聴かせつつ、
ツインギターのサイケ的なフレーズにはどこかスペイシーな浮遊感があるのが特徴的。
ドラムの音が軽めなのと、基本となるリフはオールドなデスメタル的なので、全体的にヘヴィすぎない聴き心地だ。
テクニカルすぎないテクニカルデスを聴きたい方向け。ラストは21分のエクスペリメンタルなサイケ曲。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・7 テクニカル度・・8 総合・・8
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GIGAN「Quasi-Hallucinogenic Sonic Landscapes」
アメリカのテクニカル・デスメタル、ガイガンの2011年作
ギター、ベース、シンセをこなすエリック・ヘルセマンを中心にしたバンドで、
ブルータルな激烈さとカオティックなテクニカル性が同居したサウンド。
ブラストビートを含んだオールドスタイルのデスメタルを基本にしつつ、
サイケ的なギターリフでスペイシーな浮遊感をかもしだしているのが面白い。
GORGUTSやCRYPTOPCYなど、ヘンタイ系のテクニカルデスとしても楽しめる。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・8 テクニカル度・・8 総合・・8
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GIGAN 「Multi-Dimensional Fractal-Sorcery and Super Science」
アメリカのテクニカル・デスメタル、ガイガンの2013年作
ギター、ベース、シンセをこなすエリック・ハースマンを中心にしたバンドで、
過去2作もなかなか強力な作品だったが、本作もスペイシーな雰囲気の中に、
ミステリアスなブルータルデスメタルを融合させたサウンドが素晴らしい。
ヘンタイ系リズムチェンジを含んだ混沌としたテクニカル性とともに濃密にたたみかける、
これぞ、スペース・テクニカル・デスメタル。激しくとも暴虐過ぎないところが意外と聴きやすい。
ドラマティック度・・7 テクニカルデス度・・8 ヘンタイ度・・8 総合・・8
God Dethroned 「RAVENOUS」
オランダのデスメタル、ゴット・デスローンドの2001年作
1992年にデビュー、本作は4作目。ザクザクとしたギターリフにデスヴォイスを乗せて激しく疾走、
ブルータルな迫力にメロデス気味の甘すぎない叙情も同居させた、デスラッシュ的な感触もある。
楽曲は3〜4分前後で、激烈なブラストビートなど、たたみかけるドラムとともに強力に突進しつつ、
ツインギターによるメロディックなフレーズを含んだスローパートなど、緩急ある展開も覗かせる。
疾走まくりのデスラッシュ風味という点では、THE CROWNなどが好きな方にも楽しめそう。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・8 疾走度・・9 総合・・8
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GOD DETHRONED「Lair of the White Worm」
オランダのデスメタルバンド、ゴッド・デスローンドの6th。2005作
重戦車のように突進するグラインドコア並のブルータルさで聴かせるデスメタル。
まるでブラックメタルばりに強烈なブラスト疾走でたたみかけながらも、
ときおりハッとするような叙情的なギターフレーズが顔を覗かせたり、
その暴虐さとメロディの対比がなかなか極端で面白い。手数の多いドラムも凄い。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・9 激烈疾走度・・9 総合・・8
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GOD DETHRONED「The Toxic Touch」
オランダのデスメタルバンド、ゴッド・デスローンドの7th。2006作
結成は90年代初頭というから、なにげに相当のベテランといえるこのバンド。
知名度は低いながらも、演奏力、楽曲ともに質の高い作品を作り続けている。
本作もザクザクのギターリフでスラッシーに疾走する、デスメタルサウンドに仕上がっている。
硬質感あるドラムプレイにオールドなギターリフで突進する部分はブルータルで、
無慈悲な冷たさなのだが、ときおりメロディを聴かせるパートを巧みに配することで
全体としては案外聴きやすく、北欧のデスラッシュ系が好きな方にも楽しめるだろう。
ドラマティック度・・7 疾走デスラッシュ度・・8 硬質度・・8 総合・・8
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GOD DETHRONED「Passiondale」
オランダのデスメタルバンド、ゴッド・デスローンドの8th。2009作
本作は第一次世界大戦をコンセプトにしているらしく、微妙な日本語による語りから曲が始まると、
ツインギターのリフでVADERばりに強力にたたみかける激しいデスメタルサウンドを聴かせる。
ブラストビート入りのブルータルな激しさと、ときに叙情的なギターフレーズを盛り込んで
ベテランらしい自信に満ちあふれた迷いのなさで突き進む様は、爽快といってよいほどだ。
デスラッシュ風だった前作よりも、よりドラマティックな荘厳さが音に感じられる。これは傑作。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・9 荘厳度・・9 総合・・8.5
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「Under the Sign of the Iron Cross」
オランダのデスメタルバンド、ゴッド・ディスローンドの2010年作
活動20年近いベテランバンド、前作もドラマティックなデスメタルの強力作であったが、
本作も圧倒的な破壊力、激烈な疾走で重厚にたたみかけるブルータルさが素晴らしい。
前作に続き第一次世界大戦をテーマに、壮大なドラマ性を覗かせるスケール感とともに、
激しさの中にかいま見せる美意識というものが、サウンドに荘厳さと説得力を加えている。
暴虐さを損なわずにメロディを同居させる絶妙のセンスはベテランの技ならでは。必聴の大傑作!
ドラマティック度・・8 暴虐度・・9 荘厳度・・9 総合・・9
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GOD DETHRONED 「The World's Ablaze」
オランダのデスメタル、ゴッド・デスローンドの2017年作
1992年デビューのベテランバンドで、最高傑作というべき前作から、7年ぶりとなる10作目。
強力なツーバスドラムに、ツインギターのリフとダミ声ヴォーカルを乗せて疾走する、
オールドスタイルのデスメタルサウンド。随所にブラストを含んだブルータルな暴虐性と、
甘すぎない程度にメロディを感じさせるギターのフレージングも相変わらず絶妙で、
ベテランらしい荘厳なまでの音の説得力はさすが。デスラッシュ的でもある疾走パートをメインに、
叙情的なスローパートを織り込んで、緩急あるドラマティックなデスメタルを聴かせる強力作。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・8 荘厳度・・8 総合・・8
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God Dethroned 「Illuminati」
オランダのデスメタル、ゴッド・デスローンドの2020年作
1992年デビュー、本作は11作目となる。オールドな感触を残したギターリフにデスヴォイスを乗せ、
うっすらとしたシンセアレンジとともに、ブラッケンな味わいのデスメタルサウンドを聴かせる。
甘すぎない叙を含むギターフレーズと暴虐な疾走感は、ときにブラックメタル寄りの感触もあって、
ベテランらしい荘厳な迫力に包まれる。どっしりとした重厚さと、激しいブラストビートにスラッシーな疾走と、
デスメタル、デスラッシュの王道をゆきながら、リズムチェンジやツインギターのメロディなどには、
メロデス風でもある構築力も覗かせる。全36分であるが、激しくも濃密な強力作デスよ。
ドラマティック度・8 暴虐度・8 重厚度・8 総合・8
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GORGUTS「Considered Dead / Erosion of Sanity」
カナダのデスメタル、ゴーガッツの1st/2ndカップリング盤。1991/1993年作
90年代初等という点では、テクニカルデスの元祖SUFFOCATIONと並ぶバンドだろう。
ツインギターのクールなギターリフで激しく疾走しながら、緩急のついた楽曲展開と、
地下室のようなダークな世界観で、ドラマティックといってもよい雰囲気を描いてゆく。
1stの段階ではいくぶんB級臭さがあるが、2ndになると、テクニカルな展開力に磨きがかかり、
ソリッドなギターリフとともに、不穏な空気をかもしだすその音の迫力がぐっと増している。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・7 テクニカル度・・8 総合・・8
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GORGUTS「Obscura」
カナダのデスメタルバンド、ゴーガッツの3rd。1998作
前作から5年ぶりとなる本作は、なかなか凄まじいテクニカルでヘンタイ気味のサウンドとなった。
緩急をつけた非常にせわしない展開に、普通ではない耳障りなギターリフなを盛り込んで、
ブルータルな激しさの中にも、奇妙な知的さとメンバーの確かな技量の高さを覗かせている。
強力なドラムももちろんだが、このバンドの場合ベースの上手さもポイントになっていて、
演奏上の密度がそのまま作品としての不気味な気持ち悪さ=変態感覚につながっている。
ヴォーカルの低音デスヴォイスも含めてオールドなデスメタルのスタイルに、極端さを盛り込んだ怪作。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・8 テクニカル度・・8 総合・・8
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GORGUTS「From Wisdom to Hate」
カナダのデスメタルバンド、ゴーガッツの4th。2001作
のっけから奇妙なリフで疾走しつつ、いくぶん変態的気配をまき散らしているが、
基本的にはブラストビートも含めてブルータルなオールドスタイルのデスメタル。
前作からドラムとギターが交代していることもあってか、サウンドがいくぶんドライになり、
濃密さが薄れた分、いくらか聴きやすくなっている。もちろん変則リズムを含めた
テクニカルな味わいはちゃんとあり、デスメタルとしてのミスティックな雰囲気もいい。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・8 テクニカル度・・8 総合・・8
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GORGUTS「Colored Sands」
カナダのデスメタルバンド、ゴーガッツの2013年作
なんと12年ぶりとなるアルバムで、メンバーはVo&GのLuc Lemay以外はがらりと変わっている。
サウンドは、ミステリアスな荘厳さと変則リズムを含んだテクニカルな展開力のデスメタルで、
あくまでオールドスタイルの感触を残しつつ、かつてを思わせる変態的な雰囲気も随所に垣間見せる。
重すぎず硬質すぎないギターリフにメロディアスとまではいかない怪しいフレーズも織り込みながら、
からみつくような有機的サウンドと、スローテンポも取り入れたメリハリのある楽曲を構築してゆく。
ときにNILEを思わせるようなエジプト的な雰囲気も含めて、いい意味でドラマティックな聴き心地だ。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・8 荘厳度・・8 総合・・8
Gorguts 「Pleiades Dust」
カナダのデスメタル、ゴーガッツの2016年作
2013年に12年ぶりの復活作を出したバンドが、復活2作目はなんと全1曲33分という作品を作り上げた。
なにやら不穏なイントロから幕を開け、うねりのあるギターリフに低音デス声を乗せながら、
プログレッシブな展開で構築されるサウンドは、いわばデスメタルとしての明快な激しさよりも
ミステリアスな香りと重厚さを押し出したという聴き心地。ドゥームメタル的な質感も含みつつ、
随所には激しいブラストパートもあり、緩急のある構成と確かな演奏力で、プログレッシブなサウンドが楽しめる。
デスメタルとしてよりも、テクニカルメタル、プログレメタルのファン向けか。まさに異色の力作。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・7 ミステリアス度・・8 総合・・8
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Graves of Valor「Salarian Gate」
アメリカのデスコア系バンド、グレイヴス・オブ・ヴァラーの2009作
このジャケもインパクト大だが、残虐かつエピックな歌詞もなかなかすごい。
サウンドは王道のブルータルデスメタルで、世界観の差はあるがどことなく
NILEあたりをを思わせる雰囲気がある。低音デスヴォイスとツインギターのリフ、
強力なドラミングで暴虐に聴かせる。コア系のモダンさに逃げないところもいいし、
ときおりメロディらしきフレーズを甘すぎない程度に折り込むセンスもなかなかのもの。
MORBID ANGELやVADER、NILEあたりが好きなら充分気に入ることだろう。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・8 オールドデス度・・8 総合・・8
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GRIP INC.「Power of Inner Strength」
元SLAYERのデイブ・ロンハードと、元DESPAIRのウォルデマー・ソリクタによるモダン・スラッシュメタル、グリップ・インクの1st。1995作
バンドの核となるウォルデマーのギターリフは、やはりただならぬセンスを感じさせつつも、DESPAIR時代よりも比較的シンプルで、
ときおりオリエンタルな音階も用いるなど、スラッシュメタル的な疾走よりは、モダンな硬質感を楽曲に与えている。
デイブ・ロンバードのパワフルかつ正確無比なドラミングはさすがのひとことで、単調になりがちなサウンドにしっかりと説得力を付加していて、
やはりひとつの聴き所といってよいだろう。全体的にはヘヴィロック風のモダンさと浮遊感のあるスラッシュメタルを融合させたような質感で、
この時点ではまだまだ楽曲の質よりもプレイヤーの力量が勝っている印象がある。
ドラマティック度・・7 スラッシュ度・・7 モダンヘヴィ度・・8 総合・・7.5
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GRIP INC.「NEMESIS」
モダン・スラッシュメタルバンド、グリップ・インクの2nd。1997作
元DESPAIRのウォルデマー・ソリクタの硬質感のあるクールなギターリフと、デイブ・ロンハードのパワフルなドラムで聴かせるサウンドは、
ミドルテンポ主体ながら音の強さと説得力で迫力たっぷり。さらに今作では、中近東的なフレイバーを随所に覗かせていて、
いわば知的でスラッシーなサイケメタルといった個性的な作風となった。激しい突進力も含めた楽曲のメリハリの点でも前作以上の力作に仕上がっている。
ドラマティック度・・7 スラッシュ度・・8 モダンヘヴィ度・・8 総合・・8
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GRIP INC.「Solidify」
モダン・スラッシュメタルバンド、グリップ・インクの3rd。1999作
曲はミドルテンポ主体ながら、やはりデイブ・ロンバードのドラミングの存在感は見事で、
ウォルデマー・ソリクタのセンス溢れるギターリフとともに、勢いあるヘヴィスラッシュサウンドを聴かせてくれる。
1stの頃よりも、曲的にも演奏的にも方向性絞れてきた印象で、サウンドの質がいっそう高まった。
ギターフレーズにはときおりオリエンタルな雰囲気もあり、全体的に薄暗い雰囲気に包まれているのもいい感じだ。
ドラマティック度・・8 スラッシー度・・7 クールリフ度・・8 総合・・8
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H
Hail of Bullets 「On Divine Winds」
オランダのデスメタル、ヘイル・オブ・バレッツの2010年作
大東亜戦争の悲劇をテーマに、旧日本帝国軍の栄枯盛衰を描いたコンセプト作。
ちなみに、日本盤のタイトルは「吹けよ神風!」、曲名も“ガダルカナル島の死闘”や
“東京大空襲”、“神風特攻隊”など、じつに生々しい。物々しいイントロから曲が始まると
重厚なリフでスラッシーに疾走する、オールドスタイルのデスメタルで、これが普通に格好いい。
適度にメロディックな感触もあるが、全体的にはOBITUARYにも通じるダークでどっしりとした聴き心地だ。
とにかく、テーマがテーマだけに、怒りや悲しみの渦巻く激しさがドラマティックに描かれてゆくのは圧巻。
ラストは“大東亜戦争終結ノ詔書”「耐えがたきを耐え、忍びがたきを忍び〜」の昭和天皇の言葉で締めくくる。
ドラマティック度・・8 重厚度・・8 オールドデス度・・8 総合・・8
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Hammercult 「Steelcrusher」
イスラエルのスラッシュメタル、ハンマーカルトの2014年作
ブラガーなどでおなじみのアンドレアス・マーシャルのジャケもいい感じだが、
サウンドの方も、吐き捨てヴォーカルを乗せて疾走する、オールドスタイルのスラッシュメタル。
ザクザクのリフとともに勢いよく突進しつつ、ツインギターは随所にメロディックな旋律も乗せる。
楽曲は3分前後とシンプルであるが、ただ激しいだけでないドラマティックな要素も覗かせる。
イスラエルという地域性はほとんど感じさせない、強力なスラッシュアルバムだ。
ドラマティック度・・7 疾走度・・8 スラッシュ度・・9 総合・・8
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HAMMERCULT 「Built for War」
イスラエルのスラッシュメタル、ハンマーカルトの2015年作
前作もオルールドスタイルの強力なスラッシュメタル作品であったが、本作はドラマティックなイントロから、
エピックな香りを漂わせ、ツインギターによる硬質なリフと強烈な吐き捨てヴォーカルを乗せて激しく疾走開始。
古き良き王道のスラッシュメタルを基本にしながらも、KREATORやPARADOXなどにも通じるような
ドラマティックな重厚さも感じさせる。随所に甘すぎない程度にメロディックなギターフレーズも覗かせ
ときに緩急のついたリズムチェンジとともに、迫力あるサウンドの説得力もぐっと増してきている。
楽曲は3分前後がほとんどでシンプルな潔さも爽快だ。これぞヨーロピアン・スラッシュの傑作ですな。
ドラマティック度・・8 疾走度・・8 重厚度・・8 総合・・8
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Hatchet 「Awaiting Evil」
アメリカのスラッシュメタル、ハッチェットの2008年作
ここのところオールドスタイルのスラッシュがブームとなっているが、このバンドもまさしく古き良き感触のスラッシュメタルをやっている。
ツインギターによるリフで疾走しつつ、音質も含めてややローカルな感触と、ときおり正統派メタル風味も覗かせていて、
硬質すぎないサウンドがよいですな。いくぶんのB級っぽさも含めて、ENFORCERなどNWOTHMのひとつとしても楽しめる。
メロディアス度・・7 疾走度・・7 オールドメタル度・・8 総合・・7.5
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Hate Eternal「fury & flames」
アメリカのデスメタルバンド、ヘイト・エターナルの4th。2008作
元MORBID ANGELのエリック・ルータン率いるこのバンド、帝王モービッドよろしく、
ブラストメインで激烈に疾走するブルータルきわまりないデスメタルサウンド。
MORBID ANGELのような邪悪な暗黒の美よりも醜悪な暴虐性が勝っている。
メロディのメの字もなく、グラインドコア的にたたみかける様はいっそ潔いが、
音楽として聴き通すとなるとややつらいか。凶悪なオールドデスメタルが好きな方へ。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・9 楽曲・・7 総合・・7.5
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Hatesphere「Bloodred Hatred」
デンマークのデスラッシュバンド、ヘイトスフィアの2nd。2002作
デスラッシュというとスウェーデンというイメージがあるのだが、このバンドの存在はなかなか面白い。
ミドルテンポのヘヴィロック的なグルーブをまじえつつ、ときにオールドな正統派スラッシュリフで疾走し、
ときにツインギターのドラマティックさと、コア系バンドのタテノリ感覚を取り入れたスタイルは、
この手のバンドの中でも個性的だ。パワーメタル的なメロディアスな質感と知的なアレンジも同居している。
ドラマティック度・・7 疾走度・・7 激烈度・・8 総合・・8
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THE HAUNTED
スウェーデンのデスラッシュバンド、ザ・ホーンテッドの1st。1998作
AT THE GATESなき後、その精神性を継承するギターリフでスラッシュサウンドを展開。
硬質に疾走する直線的なスタイルは分かりやすく、クールで実に格好いい。
叙情度が上がった2ndの方が楽曲としての完成度は上だが、勢いある疾走スラッシュメタルとしてはむしろこちらか。
ドラマティック度・・7 疾走度・・8 突進スラッシュ度・・9 総合・・8
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THE HAUNTED 「MADE ME DO IT」
ザ・ホーンテッドの2nd。2000作
さすが、元AT THE GATESのビョラー兄弟率いるバンドだけあって、ギターリフが格好いい。
スラッシーに疾走しつつ、ときおりメロディを奏でるギターはいかにも北欧的だし
それを支えるドラムの確かな演奏力も光る。クオリティの高いスラッシュメタルであるが、
同時にまたAT THE GATES的なオールドメロデスの質感も残っているのが嬉しい。
また今作は、疾走するだけでなく、曲の中にちゃんと聴かせるパートがあるのが素晴らしい。
ドラマティック度・・8 疾走度・・8 ギターリフカッコいい度・・9 総合・・8 ◆メタル名盤特選入り
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THE HAUNTED「ONE KILL WONDER」
スウェーデンのデスラッシュバンド、ザ・ホーンテッドの3rd。2003年作
疾走型スラッシュとしての傑作だった1st、よりAT THE GATES的なメロディが光る2nd、どちらもが見事な出来であったが、
この3rdも完成度の点では素晴らしい傑作だ。イントロに続く2曲めからもう、彼ららしいスラッシーな疾走感が炸裂し、
タイトなドラムに乗るセンスある二本のギターの絡み、その巧みなまでのリフワークがじつに見事。
スラッシュとメロデスの中間というような感触は、1stと2ndどちらのファンも満足させる出来で、
ザクザクとしたリフに叙情メロディを織りまぜて疾走しつつ、迫力を増したヴォーカルとともに
たたみかけるような高品質デスラッシュサウンドを描き出している。
ドラマティック度・・8 疾走度・・8 デスラッシュ度・・9 総合・・8
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THE HAUNTED「rEVOLVEr」
スウェーデンのデスラッシュバンド、ザ・ホーンテッドの4th。2004作
元AT THE GATESのビヨラー兄弟を中心にしたリフ主体のデスラッシュサウンドは
今回も冴えを見せ、いもながらの硬質感あふれるサウンドで疾走。
今回はバンドの初代Voのピーターが出戻りで復帰しており、迫力たっぷりの歌唱(絶叫)を聴かせる。
全体的には、メロディの点ではやや叙情性は薄まり、キターリフによるゴリゴリ感が増しているが、
この手のデスラッシュ系としては、依然最高クラスの品質の高さを誇るのは確かだ。
ドラマティック度・・7 疾走度・・8 デスラッシュ度・・8 総合・・8
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THE HAUNTED「The Dead Eye」
スウェーデンのモダン・デスラッシュバンド、ザ・ホーンテッドの5th。2006作
前作あたりからモダンでソリッドな質感を増し、本作ではよりアメリカを意識したような
ヘヴィロック風味が増している。とはいっても、アメリカのメタルコア勢に比べると
そのギターフレーズのひとつひとつには説得力と美意識が感じられ、えらく格好いい。
ミドルテンポのパートが増えているせいで、全体的にはどっしりとしたヘヴィな質感で、
そこにノーマルヴォイスを取り入れた歌声がいかにもメタルコア風なのだが、
それもなかなか悪くない。なにをやらせてもセンスがいいということか。意外と傑作。
ドラマティック度・・8 疾走度・・7 モダンヘヴィ度・・8 総合・・8
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THE HAUNTED「Versus」
スウェーデンのデスラッシュバンド、ホーンテッドの6th。2008作
今作もモダンになった4th以降の延長上の音作りで、デスラッシュというよりはむしろデスコア的な作風。
ただし、彼らの場合は力強くクールなギターリフが書けるセンスがあるので
そこいらのコア系などよりはよほどサウンドに説得力がある。
また今作はザクザク系のみでなく、ミドルテンポのミステリアスな作風や、
モダンなヘヴィメタル的な聴きやすさもあり、これまでよりも楽曲の幅を感じさせる。
そんな中でもときおり聴かせる叙情的なギターフレーズはさすがといったところ。
ドラマティック度・・7疾走度・・7 モダンヘヴィ度・・8 総合・・8
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THE HAUNTED「Road Kill」
スウェーデンのデスラッシュバンド、ホーンテッドのライブアルバム。2010作
これまでに6枚のアルバムを出し、名実共に北欧デスラッシュの立役者となったこのバンド、
このライブ作においてもツインギターのクールなリフで疾走する、さすがの演奏力を聴かせる。
懐古主義のスラッシュとは異なり、モダンなヘヴィさをともなった彼らのサウンドは
アメノカのメタルコア系などにも影響を及ぼしいてるように、スクリームするヴォーカルとともに、
勢いにあふれた激しさとソリッドな硬質感がある。ただ本作はDVDを前提で作られたものなのか、
音質的にはやや迫力不足にも思える。ライブ音源16曲に加え、スタジオ音源をボーナス収録。
デスラッシュ度・・7 ライブ演奏・・8 音質・・7 総合・・7.5
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The HAUNTED 「Exit Wounds」
スウェーデンのデスラッシュメタル、ホーンテッドの2014年作
AT THE GATESのビョラー兄弟を中心に結成し、1998年にデビュー、その後、メンバーチェンジを重ねつつ、前作を最後に
ビョラー兄弟の片割れ、アンダースとヴォーカルのピーター・ドルヴィングが脱退、本作では二代目ヴォーカルのマルコ・アロと
初代ドラマーのエイドリアン・アーランドソンが復帰している。サウンドは、近年のデスコア的なモダンな硬質感も含みつつ、
エッジの効いたギターリフと咆哮するヴォーカルを乗せて疾走する、かつての激しさを取り戻しているので、ファンは一安心だろう。
ときおり初期のような、ドラマティックなツインギターの絡みも覗かせつつ、全体的にはモダンなデスラッシュ路線を貫いている。
個人的にはもう少しオールドな感触を取り戻してくれる方が嬉しいのだが、ともあれ強力なサウンドには違いない。
ドラマティック度・・7 疾走度・・8 新鮮度・・7 総合・・7.5
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The Haunted「Strength in Numbers」
スウェーデンのデスラッシュメタル、ホーンテッドの2017年作
AT THE GATESのビョラー兄弟を中心に結成、1998年にデビューし、本作は9作目となる。マルコ・アロとエイドリアン・アーランドソンが復帰して、激しさを取り戻した前作に続き、本作ものっけから、これぞデスラッシュという突進力でたたみかける。
一方では、激しさのみにとらわれないダークな叙情性も感じさせ、前作のモダンな感触に比べると、初期の頃に戻ったような味わいで、オールドファンには嬉しい所。
ザクザクとした硬質なギターリフと、メロディアスなソロプレイの対比もあって、激しくも聴きやすく、デスラッシュ初心者にも楽しめるだろう。3rd以来の傑作デスら。
ドラマティック度・8 激しさ度・8 叙情度・7 総合・8
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HEADHUNTER「Parasite of Society」
ドイツのスラッシュメタルバンド、ヘッドハンターの2008年作
かつてDESTRUCTIONを脱退した(させられた)シュミーアが結成したこのバンドが、なんと10数年ぶりに復活、
当時のメンバーを集めてアルバムが完成した。DESTRUCTIONでの徹頭徹尾の激烈スラッシャーぶりとは異なり、
激しさの中にも正統派パワーメタル的な聴きやすさがあるのが特徴で、ときに流麗なギターフレーズを聴かせるあたりは、
シュムッデルのセンスだろう。単なる片手間のバンドにはとどまらない、質の高い演奏力はさすがで、
ヨルグ・マイケルの強力なドラムも含めて、トリオとしての一体感がある作品だ。
ドラマティック度・・7 パワースラッシュ度・・8 演奏度・・8 総合・・8
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HEATHEN「Breaking the Silence」
アメリカのスラッシュメタルバンド、ヒーゼンの1st。1987年作
ツインギターの叙情フレーズと独特のハイトーンヴォーカルで疾走する、パワーメタルとスラッシュの中間というようなドラマティックなサウンドは、
アメリカのスラッシュ系バンドとしては非常に日本人好みのバンドであった。完成度では2nd「Victims of Deception」にはおよばないものの
随所に散りばめた叙情的なメロディと緩急をつけたドラマティックな作風は、当時のバンドの中でも出色のセンスであった。
SWEETのカヴァーもなかなかハマっている。まだいくぶん粗削りであるが、初期のTESTAMENTなどが好きなら聴いて損はない。
リマスター盤は音質も向上、デモ音源を4曲ボーナス収録。
ドラマティック度・・8 疾走度・・8 スラッシュ度・・8 総合・・8
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HEATHEN 「Victims of Deception」
アメリカのスラッシュメタルバンド、ヒーゼンの2nd。1991年作
スラッシュメタルとしての激しさと、ツインギターによるメロディックな叙情を併せ持ち、
1st「Breaking the Silence」の時点ですでにドラマティックなメタルサウンドを確立していたが、
本2ndはサウンドにより重厚な説得力をともない、よりパワフルに聴かせるサウンドになっている。
サクザクのギターリフに、ときにメロディアスなフレーズをまじえながら疾走するスタイルを基本に、
ドラマティックなインスト曲“Heathen's Song”など、楽曲の展開にもぐっと深みが増している。
RAINBOWの名曲“Kill the King”のカヴァーなど聴き所も多い。まさに通好みの傑作といえる。
ドラマティック度・・8 疾走度・・8 スラッシュ度・・8 総合・・8
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HEATHEN「Evolution of Chaos」
アメリカのスラッシュメタルバンド、ヒーゼンの2009年作
かつて80年代後半から90年代初頭にかけて活動していたこのバンド、
ツインギターのフレーズによるドラマティックな疾走スラッシュメタルは、じつに日本人好みの作風で、
とくに2nd「Victim of Deception」の完成度はマニア好みの名盤として記憶に残っている。
その後メンバーは散り散りになるが、ここに18年となる復活作をひっさげて戻ってきた。
かつてのギタリスト、ダク・ピアシーは不在であるがツインギターのリフで疾走するスタイルは、
一聴してかつてのヒーゼンのサウンドを蘇らせるものだ。たとえばドイツのPARADOXあたりに通じる
メロディのあるギターフレーズで聴かせるサウンドは、往年のリスナーのみならず、若いファンにも受け入れられるだろう。
ドラマティック度・・8 疾走度・・8 ヒーゼン度・・8 総合・・8
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Heathen 「Empire of the Blind」
アメリカのスラッシュメタル、ヒーゼンの2020年作
1987年にデビュー、2作を残して消えるも、2010年に復活、本作はさらに10年ぶりとなる復活2作目。
EXDUSでも活動する、ギターのリー・アルタスが多忙のせいか、本作で楽曲を手掛けているのは、
前作から加入していたギターのクラーゲン・ラムである。叙情的なギターのイントロで幕を開け、
ザクザクとしたリフを乗せて疾走する、かつてのベイエリアクランチを踏襲したスラッシュメタルを展開。
随所にツインギターの叙情メロディも盛り込んだスタイルは、まさに日本人好みといえるだろう。
ミドルテンポの正統派メタル寄りのナンバーや叙情的なバラード、いくぶんモダンなノリの硬質感もありつつ、
全体的にしっかりヒーゼンらしさを保った作風。EXODUSのゲイリー・ホルトや、元メンバーのダグ・ピアシーがゲスト参加。
ドラマティック度・・7 疾走度・・7 叙情度・・7 総合・・8
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High on Fire「Snakes for the Divine」
アメリカのストーナー(スラッシュ)メタルバンド、ハイ・オン・ファイヤーの5th。2010作
ストーナーロック/メタルバンドとして1998年に結成された中堅バンドであるということだが、
スラッジメタルとも呼ばれるらしい。ストーナー系に関しては疎いので、本作に関する率直な感想を。
Motorheadあたりを思わせる古き良きヘヴィさと突進力で聴かせるサウンドは、
アナログ的な粘っこい生々しさをもっていて、それがストーナーとの接点なのだろうが、
むしろ本作に限っては正統派のオールド(スラッシュ)メタルとしても楽しめる普遍性がある。
がなるようなダミ声ヴォーカルに、うねるようなヘヴィなベースとギターリフ、
楽曲の中にときおり効かせるメロディも効果的で、硬質すぎない聴きやすさがいい。
メロディアス度・・7 オールドメタル度・・8 アナログメタル度・・8 総合・・8
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HOLOSADE 「HELL HOUSE」
イギリスのスラッシュメタル、ホロセードの1988年作
元SABBATやDARK HEART、ACID REIGNのメンバーを中心にしたバンドで、本作が唯一のアルバム。
ツインギターのリフにハイトーンヴォーカルを乗せ、リズムチェンジを含むほどよい展開力で聴かせる、
パワーメタル寄りのスラッシュメタル。ギターソロはわりとメロディアスだったり、アグレッシブな激しさよりは
じっくりと構築するスタイルで、巧みなドラムを中心に演奏力もしっかりしている。ミドルテンポのナンバーなどは、
NWOBHMの名残を感じさせる雰囲気も。再発盤には1987年のデモと、1988年のBBC用のライブ音源をボーナス収録。
まさに知られざる80'sメタルの好作品。バンドは2021年になって、じつに33年ぶりとなる復活作を発表している。
ドラマティック度・・7 疾走度・・7 オールドメタル度・・8 総合・・7.5
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HOLY MOSES「STRENGTH, POWER, WILL, PASSION」
ドイツのスラッシュメタルバンド、ホーリー・モーゼスの2005年作
1986年にデビューし、女性声スラッシュの元祖としてコアなリスナーから支持されるこのバンド、
本作は10作目となる。到底女性とは思えないサビーナ・クラッセンの強烈な吐き捨て声と、
古き良きジャーマンスラッシュを感じさせるサウンドは、ベテランらしいパワーに溢れている。
ARCH ENEMYのアンジェラ以前から、こんなものすごいスクリームで歌っていた女性がいたのである。
スラッシュ度・・8 疾走度・・8 強烈女性声度・・8 総合・・7.5
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HOLY MOSES「AGONY OF DEATH」
ドイツのスラッシュメタルバンド、ホーリー・モーゼスのアルバム。2009作
初期KREATORばりの疾走感に、サビーナの迫力あるスクリームヴォイスが重なり
サウンドはますますパワーアップ。ザクザクとした本道のスラッシュスタイルであるが、
ツインギターによるドラマティックな要素も増していて、アルバムとしての密度が上がった。
女性声というものを抜きにしても、純粋に格好いいジャーマンスラッシュメタルである。
スラッシュ度・・8 疾走度・・8 強烈女性声度・・8 総合・・8
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Holy Terror「Terror and Submission/Mind Wars」
アメリカのスラッシュメタルバンド、ホーリー・テラーの1st/2ndカップリング盤。1986/1988作
コアなスラッシュファンからは80年代スラッシュの裏名盤に挙げられる存在でもあり、
元AGENT STEELのギタリストが在籍していたことでも知られるバンド。
1st「Terror and Submission」はまだ荒々しいながらも、往年のギターリフで疾走しつつ
ときにメロディアスなフレーズも垣間見せるなど、すでに単なるB級スラッシュ以上の魅力がある。
2nd「Mind Wars」になるとさらに激しい疾走感と魅力を増したツインギターのリフとともに、
TESTAMENT+EXODUSという雰囲気のドラマティックなスラッシュサウンドが楽しめる。
メロディアス度・・7 疾走度・・8 往年スラッシュ度・・9 総合・・8
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I
ICE AGE 「BREAKING THE ICE」
スウェーデンのスラッシュメタル、アイス・エイジの2017年作
80年代から活動するバンドで、女性Vo、女性G、女性Bを擁する4人編成。叙情的なアルペジオのイントロから、
エッジの効いたギターリフにダーティな女性ヴォーカルを乗せて疾走する、初期のMETALLICAや
TESTAMENTにも通じるオールドなスラッシュメタル。ほどよい叙情を含んだツインギターとともに
わりとメロディックなフックもあって聴きやすく、疾走一辺倒でない、どっしりとした聴き心地。
パワフルでハスキーな女性声も、正統派のオールド・メタルサウンドによくマッチしていて、
80年代ルーツのスラッシーなパワーメタルとしても楽しめる。ジャケが地味なのが惜しいですな。
ドラマティック度・7 疾走度・7 オールドメタル度・8 総合・7.5
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Immolation 「Close To A World Below」
アメリカのデスメタル、イモレーションの4th。2000年作
デビューは1991年という中堅バンドで、古き良き王道のデスメタルサウンド。
ブラストする激しいドラムと、吐き捨てる低音デスヴォイスでたたみかけ、
アンダーグラウンドな雰囲気も含めて、いかにもオールドスタイルの音である。
かつてのMALEVOLENT CREATIONなどと同様、これが本当のデスメタルだ!という
おどろおどろしい荘厳さというべきものが濃密に詰まったアルバムである。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・8 オールドデス度・・9 総合・・7.5
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IMPIOUS「helluciNAte」
スウェーデンのデスラッシュバンド、インピオスの4th。2004作
The Crownばりの突進力で聴かせるデスラッシュサウンド。潔いまでの疾走感に、
ギターリフとフレーズにはときおり北欧的なメロディックさもかすかに感じられる。
楽曲的にはいくぶん一本調子なのは否めないが、質の高さは文句なし。
デスラッシュ好きはぜひ。…しかし、日本盤解説の文章が下手すぎ…笑
ドラマティック度・・7 疾走度・・9 デスラッシュ度・・9 総合・・8
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IMPIOUS「Holy Murder Masquerade」
スウェーデンのデスラッシュバンド、インピオスの5th。2007作
北欧デスラッシュとしてはすでに中堅に位置するくらいのキャリアはあるが、日本での知名度はまだ低いようだ。
THE CROWNを思わせる突進力とザクザクのリフに北欧らしい叙情美をまとわせたサウンドは、
新鮮味はないが単純に格好いい。またスピード一辺倒ではなく、緩急をつけた楽曲にはオールドなメタルとしての魅力も感じられる。
ヴォーカルのデス声がやや一本調子なのと、リフの魅力という点ではまだまだ頑張って欲しいのだが、質の高さで聴き通せるアルバムだ。
ドラマティック度・・7 疾走度・・7 デスラッシュ度・・8 総合・・8
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IMPIOUS「Death Damnation」
スウェーデンのデスラッシュバンド、インピオスの6th。2009作
The Crownの後継者ともいうべき正統派北欧デスラッシュ を追求するこのバンド。
本作はブラストビートを多用して、これまで以上になく速さにこだわっている。
ヘヴィネスよりも突進力を感じさせるという点では、そのThe Crownの雰囲気に接近している。
個人的にはよりデスラッシュらしくてこの方が好みかもしれない。
ドラマティック度・・7 疾走度・・9 突進デスラッシュ度・・9 総合・・8
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Infection 「Beheaded Children Contest」
ペルーのデスメタル、インフェクションの2020年作
2009年にデビュー、本作は6曲入りのEPで、90年代ルーツのギターリフに低音ゲボデス声を乗せて疾走する、オールドスタイルのデスメタル。
激しいけれどもパタパタとした重すぎないドラムや、リズムチェンジを含みつつもテクニカル過ぎない感触は、初期のMalevolent Creationなどに通じる聴き心地。
ブルータルすぎないオールドなデスメタルが好きな方ならわりと楽しめると思うが、全6曲で、インスト2曲を除けば実質4曲と、ボリューム的に全12分は物足りない。
ドラマティック度・7 暴虐度・7 オールドデス度・8 総合・7
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K
KENN NARDI 「TRAUMA」
アメリカのミュージシャン、ケン・ナルディの2022年作
スラッシュメタルバンド、AnacrusisのG&Voでもあるミュージシャンで、ソロとしては2014年に続く作品となる。
ギタ、ベース、ドラム、ヴォーカルをすべて一人でこなしていて、クールなギターリフにダーティなヴォーカル乗せた
スラッシーなパワーメタル感触に、ANNIHILATORなどにも通じるインテレクチュアルなセンスが同居した作風。
曲によってはシンセアレンジを取り入れたり、ガナり声Voを乗せたアグレッシブなナンバーから、スローテンポまで、
スラッシュメタルを基にした独自のサウンドが楽しめる。ラストは11分の大曲で、プログレメタル的なドラマティックな聴き心地。
全74分という力作です。ボーナスDiscには、Anacrusisの過去曲のリメイクを含む6曲、全34分を収録。
ドラマティック度・7 スラッシュ度・8 インテレクチュアル度・8 総合・8
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KONKHRA「Weed Out The Weak」
デンマークのスラッシュメタルバンド、コンクラの1997年作
これが3作目で、本作にはギターにジェームズ・マーフィ(OBITUARY〜TESTAMENT)が参加、
テクニカルなギターリフとともに、古き良き感触のスラッシュメタルが炸裂している。
吐き捨てヴォーカルを乗せてミドルテンポで聴かせる曲がメインながら、突進力のあるナンバーもあって、
派手さはないもののなかなか楽しめる。重厚かつグルーヴィなノリはPANTERAを思わせるところもある。
ドラマティック度・・7 重厚度・・8 スラッシュ度・・8 総合・・8
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KONKHRA「Nothing Is Sacred」
デンマークのスラッシュメタルバンド、コンクラの2008作
デビューは1993年というベテランで、本作はおそらく7作目くらいか。
モダンなヘヴィネスでたたみかけるデスラッシュ的なサウンドで、吐き捨てヴォーカルとともに、ザクザクのリフで激しく聴かせる。
ギターはときおり妖しいフレーズを奏でたり、いくぶんメロディを感じさせるのもベテランバンドらしいそつのなさだ。
ドラマティック度・・7 疾走度・・8 デスラッシュ度・・8 総合・・7.5
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KREATOR 「Terrible Certainty」
ジャーマンスラッシュのベテラン、クリエイターの3rd。1987作
自分が最初に聴いたKREATORのアルバムが本作である。当時は怖いほどに速く感じたのだが、
今聴いてもこれが実に格好いい。2ndまではただ勢いにまかせて突っ走るだけのサウンドだったのが、
本作においてはギターリフの一つ一つのキレが増し、楽曲ごとに明確に個性がつけられている。
ドラムを含めてリズム面でもずいぶんタイトになり、バンドとしての技量が感性に追いついたという、
そんな感じがする。絶叫するようなミレ・ペトロッツァの感情的なヴォーカルとともに、
激しくもどこか薄暗い情感を感じさせるのも、このバンドならではの世界観だろう。
初期を代表する傑作であり、ジャーマンスラッシュの中でも外せない作品だ。
ドラマティック度・・8 疾走度・・9 スラッシュ度・・9 総合・・8.5
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KREATOR「Extreme Aggression」
クリエイターの4th。1989作
前作において、初期の直毛突進サウンドにドラマティックな構成力を身につけ、
いよいよ波に乗り始めた彼らの勢いに溢れる傑作。曲はどれも比較的コンパクトであるが、
その分リフワークのキレが鋭く、この怒りに溢れた疾走感が聴いていても実に爽快だ。
1曲目のタイトル曲の激しさからしてもうやられてしまうが、その後も終始テンションは落ちず、
6曲目の「Betrayer!](裏切り者)」の叫びなどは、ミレの心の絶叫のようだ。
とにかく疾走しまくるクリーターサウンドを味わうには最高の一枚である。
2017年リマスター再発盤のボーナスDiscには、1990年のライブ音源を収録。
ドラマティック度・・7 疾走度・・9 スラッシュ度・・9 総合・・8.5
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KREATOR「Outcast」
ジャーマンスラッシュのベテラン、クリエイターの8th。1997作
スラッシュ界の怒れる鬼才、ミレ・ペトロッツァ率いるこのバンド、
本作は、まずドラムにオリジナルメンバーであるヴェンターが復帰し
彼らしいオールドメタルの香り漂うドラムが聴けて嬉しい。楽曲の方は6th「Renewal」で聴かれた
モダンなアプローチをいくぶん残した、疾走に頼らないダークなスラッシュメタルで、
決して激しくはないのだが、なんというか実にクリエイターらしい怪しい雰囲気が漂っている。
バンドはこの後、さらにゴシックメタルに接近した異色作「Endorama」を発表する。
ドラマティック度・・7 疾走度・・6 ダーク度・・8 総合・・7.5
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KREATOR「Endorama」
ジャーマンスラッシュバンド、クリエイターの1999作
あのKREATORがゴシックメタル化した…ということで話題になったアルバム。
確かにテンポを落としたリズムにうっすらとシンセも使用、ややメロウになったギターの音色、
ミレ・ペトロッツァもいつものダミ声でなく、ノーマル声メインで歌っている。
とはいえ、完全なゴシックメタルというわけではなく、疾走ぎみの曲もあるので、
このバンドにもともとあった薄暗い部分を強調したダークなメタルと言った方がよいか。
スラッシュとして聴くには激しさが足りないが、たまにはこんなクリエイターもいいか。
ドラマティック度・・8 スラッシュ度・・7 ダークメタル度・・9 総合・・8
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KREATOR「Violent Revolution」
ジャーマンスラッシュのベテラン、クリーターの10th。2001作
前作は悪い出来ではなかったが、KREATORのアルバムとして聴くとやはり物足りなかった。
今作はかつての「Coma of Souls」を彷彿とさせるジャケとともに、スラッシュメタルとしての激しさを取り戻している。
ツインギターのリフによる疾走感と、怒りに満ちたミレの歌声がかぶさり、
KREATOR節ともいうべき、ダークでドラマティックな世界観を描いている。
ギターフレーズには過去の2作を経たメロディアスな要素もしっかりと残していて、
これまでの集大成的な作品といってもいいかもしれない。ともかくこのアルバムを経て、
彼らはキャリアの最高傑作ともいうべき次作「Enemy Of God」へとこぎ着けるのである。
ドラマティック度・・8 疾走度・・7 ダーク度・・8 総合・・8
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KREATOR「Live Kreation」
ジャーマンスラッシュのベテラン、クリエイターのライブアルバム。2003作
先に同作のDVDは見ていたが、音質はCDの方がいいらしいのでこちらも購入。
一番好きなジャーマン・スラッシュメタルは?と問われれば、迷わずこのバンドを挙げます。
本作は2002年のブラジル、サンパウロでのライブ音源を中心に、CD2枚に24曲を収録。
2001年のアルバム「Violent Revolution」からの楽曲をメインにしつつ、“Extrme
Agression”、
“Terrible Certainty”、“Coma of Souls”などの往年の楽曲も聴かせてくれ、思わず大興奮。
ジャーマンスラッシュ好きの血をたぎらせてくれます。ミレ・ペトロッツァの血を吐くようなヴォーカルも、
年齢を重ねた深みとともに迫力充分。激しさの中にも薄暗いドラマ性を感じさせる、これがクリーターサウンドだ!
ライブ演奏・・8 音質・・8 ジャーマンスラッシュ度・・9 総合・・8
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KREATOR「LIVE KREATION REVISIONED GLORY」
ジャーマンスラッシュメタルバンド、クリエイターのライブDVD。2003作
2002年のツアーを中心に、韓国、ブラジルそしてヨーロッパ諸国での彼らのステージがたっぷりと堪能出来る。
オールドファンからすれば、「TERRIBLE CERTAINTY」、「EXTREM AGGRESSION」「COMA OF SOULS」
あたりからの楽曲はなつかしく、当時そのままの熱さと速さで演奏されるアグレッシブな楽曲には感銘を受ける。
ミレ・ペトロッツァのダミ声の歌い方、低いポジションで前屈した弾き方はかつてと全く変わらない。
熱い演奏。そして熱いファン。ただの直線スラッシュでなく、どこかにヨーロピアンな湿り気を感じるリフ。
メロスピ、メロデス全盛の今に、このようなピュアなスラッシュメタルバンドがまだ生きているというのは
なんとも頼もしいことだ。1982年〜2001年までのビデオクリップも収録され、彼らの活動の歴史が分かる。
アグレッシブ度・・9 スラッシュメタル度・・10 ライブ演奏・・8 総合・・8
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KREATOR「Enemy Of God Revisited」
ドイツのスラッシュメタルバンド、クリエイターの2006作
DESTRUCTION、SODOMと並んでジャーマンスラッシュのベテラン三羽ガラスの中で最も好きなのがこのバンド。
激しい突進力とともに、どこか翳りを感じさせる薄暗さがたまらない。2005年の「Enemy
of God」にライブDVDを付けて再発したもので、
サウンドの方は往年の名作「Extreme Aggression」あたりを思わせる、爽快な疾走感と絶品のリフワークが戻ってきた。
ミレ・ペトロッツアのヴォーカルも変わらぬ吐き捨てスタイルながら、かつてよりも深みと表現力が増している。
ときおり聴かせるツインギターの叙情性も効果的で、硬質なサウンドの中にヨーロピアンな美しさを漂わせているのが素晴らしい。
スラッシュ度・・9 疾走度・・8 これぞKREATOR度・・10 総合・・8.5
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KREATOR「Hordes of Chaos」
ジャーマンスラッシュメタルのベテラン、クリエイターの2009作
前作は往年を思わせる勢いと、アップ・トゥ・デイトな構築力が見事に組み合わさった傑作であったが、
本作はスラシュメタルバンドとしてのさらなる原点回帰を果たした作品となった。かつての傑作「Extream Aggression」を思わせる
生々しいサウンドは、ただ重ければいいという最近のバンドの風潮をあざ笑うかのようで、アナログ的な音作りには、
80年代の香りをぷんぷんと漂わせている。ミレ・ペトロッツァの情感のこもった歌声に、ときおり聴かせるメロディアスなギターフレーズも
ただ激しいだけのスラッシュバンドとは一線を画すだけのドラマ性を持っている。若いリスナーなどには、やや物足りないかもしれないが、
10曲で38分という潔さも含めて、まさに往年のクリエイターが蘇ったような作品だ。
ドラマティック度・・7 疾走度・・8 往年スラッシュ度・・9 総合・・8
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KREATOR「Phantom Antichrist」
ジャーマンスラッシュのベテラン、クリエーターの2012年作
「Enemy Of God」、「Hordes of Chaos」と近作も素晴らしい内容であったが、
本作もツインギターによるリフで疾走する古き良きスラッシュメタルのスタイルを基本にしつつ、
随所にメロディアスな感触も織り込んで、いわばダークな叙情を含ませた仕上りである。
ミレ・ペトロッツァのヴォーカルも往年と変わらぬ、怒りと悲しみを内包する叫びで、
これぞクリーターという音像を描き出してゆく。完全なオールドスタイルであった前作よりも
知的な構築力をまとわせた楽曲は、オールドファンはもちろん、若いファンにも楽しめるだろう。
スラッシーな激しさとドラマティックな世界観を両立させた、これも見事な傑作である。
ドラマティック度・・8 疾走度・・8 スラッシュ度・・9 総合・・8.5
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KREATOR 「Dying Alive」
ドイツのスラッシュメタル、クリエイターのライブ音源。2013年作
ジャーマンスラッシュを代表するベテランバンド、2012年ドイツでのライブをCD2枚に収録。
ライブ作品としては10年ぶりとなるが、そのパワフルな演奏にはまったくの衰えはない。
ツインギターのキレのよいリフと、随所にヨーロピアンな翳りを含んだスラッシュサウンドは、
ミレ・ペトロッツァの独特の歌声も含めて、他のバンドにはないウェットな魅力を描いている。
ここ最近のアルバムの充実ぶりを示すような激しくもメロディックな楽曲から、なつかしい過去の曲まで、
どれにもしっかりとクリーター印が押され、ベテランらしい音の迫力に包まれた素晴らしい内容だ。
同タイトルのDVD付き3枚組もあるので、ファンはそちらもチェック。
ライブ演奏・・8 スラッシュ度・・8 クリーター度・・9 総合・・8
KREATOR 「Gods Of Violence」
ジャーマンスラッシュメタルのベテラン、クリエーターの2017年作
1985年にデビュー、初期の激しいスラッシュから、90年代にはモダンなサウンドへと変化しつつ、
2001年以降は、再び原点回帰したような強力なスラッシュメタル作品を作り続けている。
14作目となる本作は、荘厳なイントロから始まり、激しいギターリフを乗せて疾走開始、
ミレ・ペトロッツァの独特のダミ声ヴォーカルを乗せた、ダークなスラッシュメタルが炸裂する。
随所にツインギターの叙情的なフレーズを盛り込んだドラマティックな展開力も魅力で、
ミドルテンポのパートではメロディックな感触も強く、スラッシュ初心者にも聴きやすいだろう。
2014年のWACKENのステージを収録したDVD/Blu-ray付きの2枚組仕様もある。
ドラマティック度・・8 疾走度・・8 叙情度・・8 総合・・8
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KREATOR 「Hate Uber Aless」
ドイツのスラッシュメタル、クリエイターの2022年作
1985年デビュー、ジャーマンスラッシュを代表するベテランバンド、本作は5年ぶりとなる15作目で、
元Dragonforceのフレデリクが新たにベースで加入している。オーケストレーションを含む叙情的なイントロから、
ソリッドなギターリフに吐き捨てヴォーカルを乗せて激しく疾走する、クリエイター・サウンドが炸裂する。
随所に甘すぎないメロディを奏でるギターも含めて、本作はこれまで以上に叙情的なパートも多く、
ミドルやスローテンポでの聴きやすさもあって、スラッシュメタル初心者にも楽しめる内容だろう。
重厚なラストナンバーもなかなか魅力的。限定盤のDisc2には、2021年のライブを全12曲収録。
ドラマティック度・8 疾走度・7 スラッシュ度・7 総合・8
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KRISIUN「WORKS OF CARNAGE」
ブラジルのブルータルデスメタルバンド、クリジウンの5th。2004作
CRYPTOPSYを思わせる緩急とブレイクなどによる、暴虐テクニカル変態デス。
痙攣するほどの激しいブラストビートで爆撃暴走する凶悪なサウンドだ。
ハードコア的暴力性をともなうとてつもないアグレッションであるが演奏は極めてタイト。
2〜3分台の短い曲がほとんどだが、全部激速の特攻スタイル…デス(笑)
ブラジルの暴虐王というにふさわしい物凄いサウンド。…こいつら狂ってる。
ドラマティック度・・6 暴虐度・・10 テクニカル度・・8 総合・・8
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L
Landmine Marathon「Sovereign Descent」
アメリカのブルータル・デスラッシュバンド、ランドマイン・マラソンの2010年作
強烈なグロウルヴォイスで絶叫する女性ヴォーカルを含む5人編成で、
オールド風味のスラッシュ/デスメタルスタイルのギターリフで疾走する。
ハードコア風味のドライな激しさとブルータルなヘヴィさが合わさったサウンドであるが、
いくぶんヒステリックなこのヴォーカルのインパクトが好みを分けるかもしれない。
ドラマティック度・・6 暴虐度・・8 デスラッシュ度・・8 総合・・7.5
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LOST SOCIETY「Braindead」
フィンランドのスラッシュメタル、ロスト・ソサイエティの2016年作
2013年にデビュー、本作は3作目。オールドスイルの疾走スラッシュメタルだった過去2作から、
本作はミドルテンポのどっしりとしたナンバーで幕を開け、ダークなメタル感に包まれた印象。
ギターのリフはわりとオーソドックスなので、疾走感がない曲だと、これという特徴がなく
喚き散らすヴォーカルも好みが分かれるかも。曲によってはメタリカっぽかったり、アンスラックスっぽかったり、
中盤以降はアグレッシブに疾走するナンバーもあり、8分の大曲などもなかなかドラマティックな仕上がり。
全体的にはスラッシュというよりは、ダークメタルとして楽しむのがよいのかもしれない。
ドラマティック度・・7 疾走度・・6 オールドスラッシュ度・・7 総合・・7.5
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The Lurking Fear 「Out of the Voiceless Grave」
スウェーデンのデスメタル、ラーキング・フィアの2017年作
At The Gatesのヴォーカルとドラムを擁する編成で、メタリックなギターリフにデスヴォイスを乗せて激しく疾走する、
オールドなデスメタルサウンド。楽曲は、3〜4分前後が主体で、わりとストレートでアグレッシブなナンバーが多く、
メロディックな要素もわずかに覗かせるが、基本は硬派なスウェディッシュ・デスメタルといったところ。
全体的にも、At The Gates的な感じはさほどなく、無機質に疾走するあまり愛想のない作風なので、
緩急ある展開やもう少しウェットな叙情が欲しい気もするのだが、このデスラッシュ寄りの潔さは痛快でもある。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・8 硬派度・・8 総合・・7.5
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M
MAHATMA「Perseverance」
韓国のスラッシュメタルバンド、マハトマの2008作
これまで韓国に本格派スラッシュメタルバンドがいるなど知りもしなかったが、
「不屈のスラッシュ魂」という邦題がつけられた本作はこのバンドの2ndで、
全編これスラッシュメタルの塊のようなアルバム。ときにブラストを含む強力な疾走と
迫力たっぷりの吐き捨て形のヴォーカル、そしてツインギターによるリフは
TESTAMENTやEXODUSばりのオールドスタイルのクランチでザクザクと聴かせる。
なにも知らずに聴けば、アメリカのスラッシュバンドだろうと思ってしまいそうなほどだ。
JUDUS PRIESTの“Painkiller”のカヴァーや、ボーナスにはTESTAMENTのカヴァーも収録。
ドラマティック度・・7 疾走度・・8 スラッシュ度・・9 総合・・8
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Malevolent Creation「13th Beast」
アメリカのデスメタル、マルヴォレント・クリエイションの2019年作
1991年にデビュー、本作は13作目となる。ヴォーカルのブレット・ホフマンが死去し、オリジナルメンバーは
ギターのフィル・ファシアナのみとなったが、オールドなギターリフに低音デスヴォイスを乗せ、
ブラストを含む激しいドラムとともにたたみかける、ブルータルな正統派のデスメタルは健在。
新ヴォーカルのゲポ声も迫力たっぷりで、激烈なサウンドによくマッチしていて違和感なし。
スローからミドルテンポでの重厚な感触も含めて、ゴア系とは異なるスラッシーな聴きやすさもあり、
これという新鮮味はないのだが、あくまでオールドスクールのデスメタルを追及した強力作デス。
ドラマティック度・7 暴虐度・8 オールドデス度・9 総合・8
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Mammoth Grinder 「Cosmic Crypt」
アメリカのデスメタル、マンモス・グラインダーの2018年作
Power Trip、Iron Reaganなどのメンバーによるバンドで、2008年にデビューし、4作目となる。
スラッシュ寄りのギターリフにグロウルヴォーカルを乗せて疾走する、オールドなデスメタルサウンド。
80〜90年代ルーツのアンダーグラウンドなおどろおどろしさを残していて、いくぶんの野暮ったさとともに
重すぎない激しすぎないという聴き心地はなかなか絶妙なところ。ブラストビートなどはほとんどないので、
暴虐なデスメタルが苦手な方にもイケるだろう。楽曲は2〜3分前後で、全28分という短さもいっそ潔い。
ドラマティック度・7 暴虐度・7 オールドデス度・8 総合・7.5
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Mantic Ritual「Executioner」
アメリカのスラッシュメタル、マンティク・リチュアルの2009年作
昨今スラッシュメタルのリバイバルブームが広がっているが、このバンドもまた
EXODUSを思わせるような オールドテイストのスラッシュメタルをやっている。
シンプルながらも切れ味のよいギターリフで疾走しまくるスタイルはいかにも80年代的で、
若さに溢れた勢い重視のスピードメタルサウンドは、聴いていていっそ潔い。
リフの魅力や個性という点ではまだまだ物足りないが、今後に期待の若手である。
ドラマティック度・・7 疾走度・・8 古き良きスラッシュ度・・8 総合・・7.5
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MASTIFAL「CARNIVORA」
アルゼンチンのスラッシュメタルバンド、マスティファルの2006年作
アルセンチンにもこういうザクザク系のメタルもあったんですね。
古き良き王道メタル的なギターリフを主体にデス声一歩手前というグロウルヴォイスと
ときおりブラックメタル風のわめき声を乗せて疾走するスタイル。
北欧のデスラッシュやジャーマンスラッシュとも違う質感で、速い部分もあるが
全体的には突進力はわりと控えめで、硬質感よりも粘りつくようなヘヴィさというのか、
EXODUSを南米風にしたというイメージか、スラッシュロール的なノリもある。
ドラマティック度・・6 疾走度・・8 スラッシュ度・・8 総合・・7
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MEGADETH「Killing Is My Business...And Business Is Good!」
インテレクチュアルスラッシュバンド、メガデスの1st。1985年作
METALLICAをクビになったデイブ・ムステインが怒りと共に立ち上げたこのバンドであるが、
イントロの美しいピアノに続き、ハードコア的に激しく疾走しながら、アヴァンギャルドに展開してゆく楽曲は、
ある種プログレシッブですらある。リマスターによってかつてスカスカだった音質もかなり改善されていて、
手数の多いドラムサウンドにも迫力が出てきた。禁止用語連発の自主規制によるP音だらけの“These
Boots”は興ざめであるが…
メガデスのアルバム中もっとも激しく、個性的なサウンドが聴けるのは間違いない。怒りに満ちたムステインが生み出した傑作。
リマスターにあたってジャケが変更されているが、本来はこちらのジャケにしたかったらしい。ボーナスに1984年のデモ音源を3曲収録。
ドラマティック度・・7 インテレクチュアル度・・8 スラッシュ度・・7 総合・・8
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MEGADETH「Killing Is My Business...And Business Is Good! - The Final Kill」
アメリカのインテレクチュアル・スラッシュメタル、メガデスの1st。1985年/2018年作
2002年のリマスター盤でもけっこう音質は改善されていたが、今回は新たに発見されたドラム音源パーツを加えた完全新リミックス。
発掘されたライブ音源7曲を追加収録しての、まさに新装版「キリング・イズ・マイ・ビジネス」。イントロの優雅なピアノから、
続く2本のギターリフの音もクリアになり、軽かったドラムの迫力も増していて、リズムチェンジによる展開力の多い、
インテレクチュアルなメタルサウンドがよりソリッドな聴き心地になった。過激な歌詞で自主規制となった「These Boots」は
ヴォーカルを差し替えて収録。ライブ音源は、1986〜87年のものがメインで、音質もそれなりに良好、当時の勢いある演奏が聴ける。
激しさ度・8 インテレクチュアル度・8 リミックス度・9 総合・8.5
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MEGADETH「Peace Sells...But Who's Buying?」
メガデスの2nd。1986年作
前作の破天荒さにやや整合性を付加して作り上げられたアルバム。
ドラマティックさを増したギターリフとともに、知的さを漂わせた楽曲構造は、
まさにインテレクチュアル・スラッシュメタルというにふさわしいサウンドだ。
社会的皮肉を含んだ歌詞やジャケットワークとともに、バンドとしてのスタンスが確立し、
ムステインの目指す世界観のスケールが大きく広がった作品といえるだろう。
スラッシーでありながら、プログレッシブな完成度を誇る初期の最高傑作。
リマスター盤のボーナスには4曲の別ミックスバージョンを追加収録。
ドラマティック度・・8 インテレクチュアル度・・9 スラッシュ度・・8 総合・・8.5
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MEGADETH「So Far, So Good...So What!」
メガデスの3rd。1988年作
聴き手を不安にさせるようなシリアスなイントロ曲から、重厚な2曲目への流れは凄い。
続くSEX PISTOLSのカヴァー曲“Anarchy in the U.K.”に代表されるように、
アルバム全体により社会的なメッセージ色と冷笑的なドライさが増している。
デイブ・ムステインのヴォーカルもその表現力をぐっと増していて、怒りと悲しみに満ちた
この重々しい世界観を俯瞰する者のように、さらりとナイフを振り降ろすかのようだ。
物悲しいイントロで始まる「In My Darkest Hour」は、メタリカ時代のバンドメイト、クリフ・バートンが
バス事故で亡くなった日にデイヴ・ムステインが書いたナンバーだという。
スラッシュメタルとして聴くのなら、本作が最高の一枚ということになるだろう。
リマスター盤のボーナスには4曲の別ミックスバージョンを追加収録。
ドラマティック度・・8 インテレクチュアル度・・8 スラッシュ度・・8 総合・・8
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MEGADETH「Rust in Peace」
メガデスの4th。1990年作
ギターにマーティ・フリードマンが加わり、サウンドに一聴してテクニカルさと、メロディアスな説得力とが増した。
激しいギターで聴かせる1曲目に続き“Hanger 18”のドラマティックなイントロは誰もが思い浮かべる名フレーズだろう。
しっかりとヘヴィさを聴かせつつ、豊富なメロディのアイデアを楽曲の中に盛り込み、知的に展開されるメガデス節は、
ここに完成を見たといってもいい。もはやスラッシュというよりは、普遍的なヘヴィメタルとして扱う作品であるが、
総合的な質の高さでは本作をバンドの最高作としても不思議はないだろう。リマスター盤のボーナスにはデモ音源を3曲追加収録。
ドラマティック度・・8 インテレクチュアル度・・8 スラッシュ度・・7 総合・・8.5
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MEGADETH「Youthanasia」
メガデスの6th。1994年作
ややダークな作品だった前作「破滅へのカウントダウン」の延長上の作風であるが、
よりメロディに主眼を置いたアルバムで、マーティの叙情的なギターワークが光っている。
モダン化された中にもしっかりとメタリックなヘヴィさを残しているのもさすがで、
ダークでありながらもメロディアスでバランスのとれた好作といえるだろう。
リマスター盤のボーナスにはデモや未発音源を4曲追加収録。
ドラマティック度・・8 インテレクチュアル度・・7 スラッシュ度・・7 総合・・8
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MEGADETH「The System Has Failed」
アメリカの大御所メタルバンド、メガデスの2004年作
約2年のブランクを経て、デイブ・ムステインがついにメガデスを復活させた。
一時期は、らしからぬポップなアルバムで不評を買ったものの、今作ではジャケットからしてそうだが往年を思わせるサウンドが復活、
クールなリフと曲展開で聴かせるメガデス節が久々に楽しめる内容となっている。まだムステインのソロ的な色合いが強いものの、
往年のメンバーであるクリス・ポーランドの参加もファンには嬉しいだろう。楽曲の緊張感としては中盤から後半にかけてややダレる感じはあるが、
硬質感とメロディアスさのバランスもよく、全体的には安心して聴ける。社会風刺的な歌詞内容とともに、怒れるメガデスの復活を告げるアルバムだ。
ドラマティック度・・8 インテレクチュアル度・・8 これぞメガデス度・・9 総合・・8
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MEGADETH「United Abominations」
メガデスの復活2作目。2007作
一聴して前作よりもモダンでメジャーな感じの曲調になっている。
聴きやすいのはいいのだが、ギターリフも普通になっていてこれがメガデスらしいかと言われるとやや微妙なところ。
なんというか、スタイリッシュな部分にこだわりすぎているせいか、かつてのようなムステインの怒りや情念の翳りが感じられない。
LACUNA COILのクリスティーナ嬢とのデュエットを聴かせるリメイク曲にしても、これはこれで悪くはないが
これまでのメガデスがあまりやらないようなイメージに仕上がっている。
前作に感じられた復活の荒々しい息吹は影をひそめ、きれいにまとめられ、丁寧に作られた感のある作品だ。
ドラマティック度・・7 インテレクチュアル度・・7 これぞメガデス度・・7 総合・・7.5
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MEGADETH「ENDGAME」
デイブ・ムステイン率いるベテランバンド、メガデスの2009年作
2004年の「The System Has Failed」の後再び解散を匂わせつつもバンドは存続し、
2007年には「United Abominations」を発表、そのモダンなサウンドに新たなメガデス像をかいま見せた。
そして本作で聴けるのはさらなる原点回帰、そう…あの頃のメガデスの香りが漂う、妖しくも知的な激しい音なのである。
ギタリストにはNEVERMOREのツアーギタリストも務めていたクロス・ブロデリックを迎え、テクニカルかつクールなリフと、
いかにもメガデス然としたフレーズを連発、ムステインのヴォーカルにも初期の頃を思わせるノリが戻ってきている。
ダークかつ知的で、社会批判に富んだ怒り、そしてメタルへの愛情すらも感じられる、
ムステイン流の美学と世界観、そして濃密な演奏が絶妙に合わさった傑作である。
ドラマティック度・・8 インテレクチュアル度・・9 これぞメガデス度・・9 総合・・8.5
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MEGADETH「TH1RT3EN」
アメリカのベテランスラッシュメタル、メガデスの2011年作
13枚めのアルバムということで、タイトルにも数字が混じっているのが面白い。
さて、サウンドの方は前作で聴かれた、知的スラッシュメタルへの回帰に、
いくぶんモダンでスタイリッシュな質感を上乗せしてきたという感じだろうか。
メガデスらしいクールなギターリフと、テクニカルな硬質感を軸にしながら、
よりまとまりのあるシンプルさと、随所に感じられるメロディックな聴き心地で
メタルとしての普遍性を押し出したバランス感覚というものが見事。安心して聴ける好作だ。
ドラマティック度・・7 インテレクチュアル度・・8 これぞメガデス度・・8 総合・・8
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MEGADETH「Super Collider」
アメリカのベテランスラッシュメタル、メガデスの2013年作
通算14枚めのアルバムで、エッジの効いたギターリフとムステインのヴォーカルを乗せ
ダークな感触で聴かせる1曲目は、いかにもメガデスらしい安定感である。2曲目以降は、
メロディックでキャッチーなナンバーもあるが、メタリックな硬質感をしっかり同居させていて、
軟弱になったということではなく、いわば「大人のメガデス」といった余裕の作風が味わえる。
派手なインパクトというのはないので、一聴しての物足りなさはあるが、安心して楽しめる好作ではある。
ラストは何故か、THIN LIZZY“Cold Sweat”のカヴァー。悪くはないですが、いまさらどうしてコレなのという。
ドラマティック度・・7 インテレクチュアル度・・8 安定度・・8 総合・・7.5
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Megadeth 「Dystopia」
アメリカのインテレクチュアル・スラッシュメタル、メガデスの2016年作
前作は安定感とともに、やや散漫な印象を残したアルバムであったが、通算15作目となる本作は
ギターになんとANGRAのキコ・ルーレイロが加入したことで大いに話題となった。
硬質なギターリフを乗せたクールなメタルサウンドに、テクニカルな感触が加わっていて、
随所にかつてのメガデスらしいリズムチェンジも含んだ知的な展開力も覗かせる。
ムステインのダーティな歌声はもはやサウンドの顔となっていて、ダークな雰囲気と共に
全体的にもヘヴィな統一感があり、メタルとしてぐっと引き締まった感触のアルバムだ。
ドラマティック度・・7 硬質度・・8 メガデス度・・8 総合・・8
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MEGADETH 「THE SICK, THE DYING... AND THE DEAD!」
アメリカの大御所メタルバンド、メガデスの2022年作
ギターにキコ・ルーレイロが加入しての2作目で、ベースは盟友デイヴ・エレフソンに替わって、ジェイムズ・ロメンゾが加入
ドラムにはSOILWORKのダーク・ヴェルビューレンという新体制となった。叙情的なギターのフレーズで始まりつつ、
クセのあるムステインの歌声が乗ると、いかにもメガデスらしくなる。ソリッドなドラムにエッジの効いたリフを乗せた2曲目からは
アグレッシブなナンバーが続き、これぞインテレクチュアル・スラッシュというサウンドには、オールドファンも納得だろう。
キコのギタープレイも前作以上にメロディのアクセントを担っており、ムステインの描く世界観にフィットしてきたという印象。
全体的には、ストレートに聴けるシンプルなナンバーが多いのだが、スラッシーな激しさを堪能できる好作品であろう。
ドラマティック度・7 アグレッシブ度・8 インテレクチュアル度・8 総合・8
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MEKONG DELTA 「Dances Of Death」
ドイツのテクニカルスラッシュメタルバンド、メコン・デルタの4th。1990作
鬼才ラルフ・ヒューベルトを中心に、クラシックとスラッシュメタルを融合させるという無茶なテーマをかかげて結成されたこのバンド。
メンバー名を伏せながらも、名手ヨルグ・マイケルやLiving Deathのメンバーなどが参加していた。
本作は20分におよぶタイトル曲を含め、これまでのアルバム以上に細密に構築された大傑作。
変則リズムの嵐とクラシックの手法で作られた組曲は圧巻のひと言で、荘厳にして美しい。
スラッシーな激しさを失うことなく、これほどの知性と芸術性を兼ね揃えたバンドはそうはいない。
“はげ山の一夜”のカヴァーも見事。次作「Kaleidoscope」も完成度の高い傑作である。
ドラマティック度・・9 知的度・・9 スラッシュ度・・8 総合・・9
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MEKONG DELTA 「Kaleidoscope」
ドイツのテクニカル・スラッシュメタル、メコンデルタの1993年作
バンドとしての最高傑作となった前作「Dances of Death」に続くスタジオアルバム。
変則リズムたっぷりに疾走するテクニカル・スラッシュは、ぐっと整合感を増したアンサンブルとともに、
これまでよりもぐっと聴きやすくなっていて、もはやプログレッシブなテクニカルメタルと言ってよい。
Genesis“Dance on a Volcano”のカヴァーや恒例のクラシック本家取り…ハチャトゥリアン“剣の舞”も含め、
知的センスに包まれた見事な構築性は、バンドとしていよいよ次の段階に入ってきたという感じもある。
ドラマティック度・・8 メタル度・・8 知的センス・・9 総合・・8.5
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MEKONG DELTA 「Visions Fugitives」
ドイツのテクニカル・スラッシュメタル、メコンデルタの1994年作
2曲目までは前作からの流れの硬質に構築されたサウンドであるが、
続いて始まる“グループとオーケストらの組曲”と題された20分を超える組曲は
かれらがこれまで培ってきたクラシックカヴァーのアプローチを取り入れたような、
ミステリアスでプログレッシブな聴き心地で、オーケストラルなアレンジを含んだシンフォニックな感触もある。
クラシック的手法とメタルサウンドの融合という探求を完璧に成し遂げ、彼らは次作にていよいよ、
「展覧会の絵」のメタル解釈へと取り掛かるのである。その布石というにはあまりに素晴らしい傑作だ。
クラシカル度・・8 メタル度・・7 探求度・・9 総合・・9
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MEKONG DELTA 「Pictures at An Exhibition」
ドイツのテクニカル・スラッシュメタル、メコンデルタの1997年作
鬼才、ラルフ・ヒューベルトを中心にクラシックとスラッシュメタルの融合を実践するこのバンド、
1stの時点からからすでに複雑なリズムアプローチとクラシックのカヴァーなどを行っていたが、
本作は、彼の長年の夢であったムソグルスキーの「展覧会の絵」を完全再現した作品である。
かつてのEL&Pなども手掛けた名曲であるが、それよりもはるかな緻密な研究と解釈がなされ、
キーボードを使わず、ギター、ベース、ドラムのみで壮大な世界を再現してゆくさまは圧巻だ。
これはまさに、クラシックの完全メタル化というかつてない歴史的偉業といってよいだろう。
後半にはオーケストラアレンジを加えたバージョンも収録しているが、こちらはオマケのようなもので
聴き比べてみれば、バンドスタイルでの躍動感ある再現に軍配が上がるだろう。燦然と輝く異色の傑作。
クラシカル度・・9 メタル度・・7 探求度・・10 総合・・8.5
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MEKONG DELTA「Lurking Fear」
ドイツのテクニカルメタルバンド、メコン・デルタの復活作。2007年作
スラッシュメタルとクラシックの融合、ムソグルスキーの「展覧会の絵」の完全再現など、異端の偉業ともいうべき音楽活動で、
メタルという音楽のディープな深化に貢献してきた鬼才ラルフ・ヒューベルと率いるこのバンド、約10年の沈黙を破ってまさかの復活だ。
メンバーの方は、リーダーのラルフ・ヒューベル以外はがらりと変わり、ギターには元Theory in Practiceのピーター・レイク、
シンガーにはWOLF SPIDERやANGEL DUST、CROWSといったマニア好みのバンドで歌っていたレオ・スピーゲル、
そして元GAMMA RAY〜HELLOWEENのウリ・カッシュがドラムを叩く。サウンドの方は、たとえメンバーが変わろうとも、
楽譜から曲を起こすラルフの作曲法と、実力者揃いの演奏陣のおかげで、まさに往年のメコンデルタそのものといってよい。
複雑に絡むギターとベースによる細かなキメの連続に、これでもかという変拍子リズム、そして、ある種荘厳ですらある
クラシカルでストイックな空気が聴き手の脳を刺激する。変態系メタルとして、芸術的なアートメタルとして、再び味わえる彼らの音楽を存分に楽しみたい。
恒例のクラシック本家取りカヴァーはショスタコーヴィッチの「交響曲第10番」。輸入盤の限定版では1991年のライブ映像が楽しめるボーナスDVD付き。
ブートレグだが映像、音質ともに良好で、往年の彼らの凄まじい演奏が視覚的にも楽しめる。
クラシカル度・・7 テクニカル度・・8 メコンデルタ度・・9 総合・・8.5
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Mekong Delta「Wanderer on the Edge of Time」
ドイツのテクニカルメタルバンド、メコン・デルタの2010年作
2007年の復活作「Lurking Fear」はまさに感涙ものであったが、3年ぶりとなる本作では
またしてもメンバーががらりと変化、ヴォーカルにTomorrow's EveのMartin LeMar、
ドラムはAXXISのAlex Landenburg、ギターはBenedikt Zimniak(…誰?)とAnnon Vinに在籍していた
Erik Groschというメンツであるが、ブレインであるRalf Hubertさえいれば音楽性が変わるはずもなく、
クラシカルな優雅さとスラッシーな激しさを合わせたメコンデルタ節は健在。美しいイントロで幕をあけ、
変則リズムの嵐でたたみかけるサウンドに思わずにやにや。まさに技巧と芸術のスラッシュメタルだ。
今作はアルバム全体が組曲方式になっているという点でも、かつての名作「Dances of Death」や
「Visions Fugitives」などを思い出させ、プログレッシブな知的さとクラシカルな美意識が際立っている。
楽曲における極端な静から動への展開も含めて、底の知れない不気味さと壮大さが光る傑作だ。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 技巧と芸術度・・9 総合・・8.5
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Mekong Delta 「Intersections」
ドイツのプログレッシブ・スラッシュメタル、メコン・デルタの2012年作
2007年の復活から数えて3作目となる本作は、なんと過去曲のリメイクアルバムとなった。
現メンバーでのリレーコーディングによりで甦った楽曲の数々は、昔からのファンにはなつかしく、
むしろ若いファンにとっては、奇抜なスラッシュメタルとして新鮮に楽しめるに違いない。
初期の作品の頃の荒々しい迫力は薄れているが、その分楽曲のもつ知的な構築性が感じられ、
変則リズムでたたみかけるミステリアスなサウンドは、20年以上たった今でも古さを感じさせない。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・8 変則スラッシュ度・・8 総合・・8
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MEKONG DELTA 「In a Mirror Darkly」
ドイツのテクニカルスラッシュメタル、メコン・デルタの2014年作
鬼才、ラルフ・ヒューベルトを中心にした知的スラッシュメタルバンド、2007年の復活作から数えての4作目となる。
前作は過去曲のセルフリメイクアルバムであったが、本作は2010年作「Wanderer on the Edge of Time」以来のオリジナル作。
ProgMetal的なテクニカル性と、螺旋構造を描くような知的なギターリフと存在感あるベースとともに描かれるサウンドは
より自然体の一体感をともなって、ある意味とても聴きやすくなった。かつてのCYNICにも通じるようなミステリアスで、
広がりを感じさせる構築センスはじつに素晴らしい。全体的にはスラッシュ的な激しさやクラシカルな要素と変態性は薄まったものの、
むしろプログレメタル的に楽しめる、間口が広がった好作と言えるだろう。一度でいいからライブが観てみたいですわ!
ドラマティック度・・8 知的センス度・・9 ヘンタイ度・・7 総合・・8
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Mekong Delta 「Tales of a Future Past」
ドイツのテクニカルメタル、メコン・デルタの2020年作
1987年にデビュー、鬼才ラルフ・ヒューベルト率いる、プログレッシブ・スラッシュメタルのベテラン。
本作は6年ぶりとなる11作目で、ドラムは前作に続く、アレックス・ランデンバーグ、ギターには新たにピーター・レイクが加入。
シンセを使ったミステリアスなイントロから、テクニカルなリズムに複雑なギターリフを乗せた、独自の浮遊感あるサウンドは、
まぎれもなくメコン・デルタである。Tomorrow's Eveにも参加するマーティン・レマーのヴォーカルも、板についてきていて、
インテレクチュアルな楽曲にフィットしている。オーケストラアレンジを取り入れた荘厳なインストナンバーでは、
優雅なクラシックギターの旋律も披露。MEGADETHやANNIHILATORをも凌駕する突き抜けたセンスは最高である。
ドラマティックな9分の大曲から、ラスト曲では、イサーク・アルベニスの組曲「エスパーニャ」を優雅に取り上げている。
ミステリアス度・8 テクニカル度・8 インテレクチュアル度・9 総合・8.5
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MELIAH RAGE 「Dead To The World」
アメリカのスラッシュメタル、メライア・レイジの2011年作
80年代から活動するベテランバンドで、本作はおそらく8作目あたりか。
スラッシーな硬質感とともに、ツインギターのメロディアスな感触も含んでいて
随所に叙情的な展開も覗かせるという、なかなか面白い(ヘンテコな)サウンドだ。
スラッシュというには激しさが足りないが、むしろリズムチェンジを含んだフックのある展開に、
ヴォーカルも比較的ちゃんと歌うタイプなので、インテレクチュアルなメタルとして楽しめる。
ドラマティック度・・7 スラッシュ度・・7 知的(ヘンテコ)度・・8 総合・・7.5
MEMORIAM 「THE SINLENT VIGIL」
イギリスのデスメタル、メモリアムの2018年作
元BOLT THROWER、元BENEDICTION、元SACRILEGEのメンバーによるバンドで、本作が2作めとなる。
ツインギターのリフに吐き捨てヴォーカルを乗せた、オールドスタイルの重厚なデスメタルで、
適度な疾走感もありつつ、激しさだけに頼らないどっしりとした聴き心地は、かつてのボルト・スロワーや
オビチュアリーなどにも通じるものがあるだろう。メロディアス性や派手な展開というものはないので、
若いリスナーにはやや退屈かもしれないが、シンプルなリフ中心の古き良きデスメタルを愛する人へ。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・7 重厚度・・8 総合・・7.5
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MEMORIAM 「To The End」
イギリスのデスメタル、メモリアムの2021年作
2017年にデビューし、4作目となる。重厚なギターに低音デスヴォイスを乗せた王道のデスメタルサウンドで、
スローからミドルテンポでのどっしりとした聴き心地に、ほどよくウェットなギターの叙情も覗かせる。
激しい疾走パートもありつつ、全体的に暴虐すぎないところがオールドな味わいになっていて、
OBITUARYあたりに通じる、90年代のデスメタルのダークな雰囲気には、どこかなつかしさも感じられる
ドゥーミィなスローテンポでも、重厚な雰囲気をたたえており、音の迫力という点では申し分ない。
ジャケも含めて、これぞオールドスタイル・デスメタル。全9曲、44分というのもちょうどよい長さデス。
ドラマティック度・7 暴虐度・7 重厚度・8 総合・8
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METALLICA「Kill 'Em All」
メタリカの記念すべきデビューアルバム。1983年作
完成度の点では次作「Ride The Lightning」だが、スラッシュとしての原点は本作だ。
荒々しくもクールにリフとともに激しくたたみかけるサウンドは、若さ溢れる勢いに満ちた、アグレッシブなパワーが感じられる。
後にMEGADETHを結成する、デイブ・ムステインの手による“The Four Horsemen”、疾走スラッシュの名曲“Motorbreath”、
“Whiplash”あたりのは今聴いても実に格好いいし、“Seek & Destroy”の展開力も見事。1983年…すべてはこのアルバムから始まった。
ドラマティック度・・7 アグレッシブ度・・9 スラッシュ度・・9 総合・・8
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METALLICA「RIDE THE LIGHTNING」
メタリカの2nd。1984年作
前作での勢い溢れるスラッシュサウンドに、知的な整合性を盛り込んだ傑作。
優雅なイントロに続く“Fight Fire With Fire”は激しさの中にも、テクニカルなリズムやドラマ性を取り入れた作風で、
当時は相当の衝撃だったのではないかと思われる。カーク・ハメットの流麗なソロとザクザクとしたクールなリフの対比も斬新で、
どこかブリティッシュの香り漂う“For Whom Bell Tolls”や“Fade to Black”の叙情性、“Creeping Death”の堂々たるヘヴィメタルサウンドに、
“The Call of Ktulu”で聴かせるプログレッシブなインストと、彼らにしか出来ないセンスに溢れた名作である。
ドラマティック度・・8 アグレッシブ度・・8 スラッシュ度・・8 総合・・8.5
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METALLICA「MASTER OF PAPPETS」
メタリカの3rd。1986年作
「メタル・マスター」の邦題で知られる本作は、一般的にはバンドの最高作とされる。
1曲目“Battery”のインパクトは、メタルを聴く人間であれば通過儀礼であろうし、
このスラッシーな勢いと構成力をともなった名曲が、本作のイメージとなっているのは間違いない。
続くタイトル曲“Master of Pappets”のドラマ性は、4th「...And Justice For All」へと受け継がれるもので、
バラード的な美しさを聴かせる“Welcome Home”は、後の名バラード“One”へとつながってゆくことになる。
全体的聴けば、ヘヴィなミッドテンポを取り入れたり、モダン化のきざしもすでに現れているのだが、
プログレッシブで叙情的なインスト曲“Orion”、スラッシーにたたみかける“Damage,Inc”など、
幅広い楽曲を並べつつも、すべてにおいて質の高いアルバムであるのには違いない。
ドラマティック度・・8 アグレッシブ度・・7 知的スラッシュ度・・8 総合・・8.5
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METALLICA「...And Justice For All」
メタリカの4th。1988年作
事故死したクリフ・バートンに代わり、ジェイソン・ニューステッドが加入、
サウンドは前作「MASTER OF PAPPETS」でも覗かせていたプログレッシブな知的さと
大作志向がさらに強まり、6分〜9分といった長曲を中心にしたクールな作品に仕上がっている。
ドラムの音が軽いとか、ベースが聴こえないなど、賛否両論もある作品ながら、
自分にとっての初めてのメタリカ体験がこのアルバムであったから、思い入れは大きい。
1曲めの“Black End”の無慈悲なまでの硬質感に大いにしびれ、タイトルの曲の社会風刺的な歌詞や
その知的な構築センス、そして叙情的で悲しみにあふれた名曲“ONE”には心打たれたものだ。
アルバム全体を通して聴くとやや長尺感はあるが、バンドとしての過渡期に作られた異色の力作である。
ドラマティック度・・8 アグレッシブ度・・7 知的スラッシュ度・・9 総合・・8
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METALLICA「Cunning Stunts」
メタリカの2枚組ライブDVD。1998作
アメリカ、テキサスでの1997年のステージを収録。ちょうど「RELORD」を出す直前の時期か。
楕円形のステージを360度囲んだ大観衆は圧巻だが、登場したメンバー達の姿は全員短髪で、
ちょいワルオヤジ風のジェイムス、メタリカTシャツを着たジェイソン、顎にピアスをしてゲイみたいなカーク、
そしてラーズは短パン姿と、かつて長髪を振り乱してスラッシュしていた連中の面影はない。
演奏の方も、よく言えば安定していて聴きやすいが、かつての強烈なパワーはもう感じられない。
“Creeping Death ”、“One”、“Fade to Black ”という往年の代表曲に加え、1stからのメドレーまで演奏、
Disc2では“Master of Puppets ”、“Motorbreath”と、熱い曲たちを聴かせてくれるが、
彼らの音自体にもうメタルの神は宿っていないのか、それらはファンへの義務としての選曲にすら感じる。
メタルでなくなった、「ブラックアルバム」以降のファンにすれば、これがメタリカなのだろうが、
自分にとってのメタリカはそのアルバムですでに終わっていたのも事実。「RELORD」の曲は聴くに耐えない。
しかし観衆の熱狂ぶりはもの凄く、彼らが何を演奏しようとも大歓声と拍手と口笛で支える。
ここにいるのはメタリカではなく、ビッグになりすぎたメタリカという名のモンスターなのだと悟った。
そして衝撃的なのは、Disc2の“Enter Sandman”のラストで、この迫真のアクシデントシーンは
メンバーの演技を含めてやりすぎなほどの演出。会場で見ていたらかなりのインパクトだったことだろう。
ライブ映像・・8 ライブ演奏・・7 メタルパワー度・・7 総合・・7.5
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METALLICA 「S&M」
メタリカのオーケストラとの競演ライブアルバム。1999年作
「シンフォニー・アンド・メタリカ」と題された本作は、サンフランシスコ交響楽団を迎えてライブ音源で、
まさにフルオーケストラとメタルが融合した、「シンフォニック・メタリカ」ともいうべき壮麗なサウンドになっている。
ピンク・フロイドやエアロスミス、エリック・クラプトン、スティング、デヴィッド・ボウイなどともコラボした指揮者、
マイケル・ケイメンは、1991年のブラックアルバムでもストリングスアレンジを手掛けていて、今回も指揮を担当。
イントロに続く「The Call Of The Ktulu」の壮大なシンフォニックアレンジも素晴らしく、続いて「Master Of Puppets」でたたみかける。
かつての名曲に優美なオーケストラが合わされると、これが意外に違和感もなく、メタルバンドとしての硬質感とヘヴィさも残しながら、
重厚にして壮麗なサウンドが楽しめる。シンフォニーが単なるイロモノとして以上の効果を上げている点も価値が大きい。
シンフォニック度・・8 ライブ演奏・・8 壮大度・・9 総合・・8
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METALLICA「St. Anger」
メタリカの2003年作
賛否両論の問題作「LOAD」 、「RELOAD」に続く、通算8作目。新ベーシストに元スイサイダル・テンデンシーズ
オジー・オズボーンバンドのロバート・トゥルージロが加入。レコーディングのベースはプロデューサーのボブ・ロック。
ジャケやタイトルからはアグレッシブさが戻った雰囲気で、サウンドの方もわりとメタル寄りのギターリフが増えている。
音質的にはアナログ感を追及したのか、ドラムも含めてスカスカな感じが、80〜90年代的な雰囲気をかもしだしていて、
ジェイムズのダーティな歌声や、唐突で軽めの疾走感などには、スラッシーというよりはパンク寄りの匂いも感じさせる。
7〜8分という長めの曲はやや長尺な感じもあって、ルーズなリフレインにはけっこう散漫なところもあるが、
ともかく激しさを取り戻してきたという点では過去2作よりは楽しめる。しかし全75分というのは長すぎですな。
2004年公開のドキュメント映画「メタリカ 真実の瞬間」では、本作を生み出すまでの苦難の過程が分かり、興味深い。
ドラマティック度・・6 メタル度・・7 重厚度・・7 総合・・7.5
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METALLICA「Death Magnetic」
メタリカの2008年作
ベースにロバート・トゥールジロが加入して、初めてレコーディングから参加した作品。
サウンドの方は思った以上に往年の雰囲気にレイドバックしていて、鋭いリフで疾走する感覚には
80年代の「ジャスティス」〜90年代「ブラックアルバム」の中間あたりのスラッシーな雰囲気が漂っている。
ジェイムズの歌声にも、かつての頃のクールな怒りというものが感じられ、カークの抜群のギターワークとともに、
スラッシュメタルと呼ばれていたころの質感を随所に取り戻している。ラウドすぎる音質も確信犯的で、
この生々しいアナログ感は現在の彼らの、変わらぬロックへの熱情を示しているのだろうか。ともかく久々の力作だ。
ドラマティック度・・7 けっこうスラッシュ度・・8 かつてのメタリカ風味度・・8
総合・・8
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METALLICA 「Metallica Through the Never」
アメリカのベテランメタルバンド、メタリカの2013年作
映画用のサントラ作品であるが、劇中のメタリカのライブシーンをそのまま音源にしているので、通常のライブアルバムとしても楽しめる。
観衆の歓声とイントロに続いて「Creeping Death」でスタートし、パワフルな演奏とライブの臨場感は、近年のアルバムで聴ける以上に
かつてのメタリカを思わせる。「For Whom The Bell Tolls」、「Ride The Lightning」といった往年のナンバーはファンも嬉しいだろう。
「Reload」からのナンバーも織り交ぜつつ、Disc2では「…And Justice For All」、「Master Of Puppets」、「Battery」といった
オールドナンバーまくりでファンは歓喜だろう。「Enter Sandman」、「Hit The Lights」というラストへの流れに興奮しつつ。、
「Orion」でエンディングテーマ的に幕を閉じる。サントラの枠を超えて、本作はバンドのベストライブとして聴いてもよいだろう。
ライブ演奏・・8 臨場感・・9 メタリカ度・・9 総合・・8
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METALLICA 「S&M2」
メタリカとオーケストラの共演ライブ作品。2020年作
1999年の「S&M」から20年、再びサンフランシスコ交響楽団を迎えて録音されたライブ作品で、イントロに続く「The Call Of
Ktulu」というのは、
前作「S&M」と同じだが、よりシンフォニーに焦点を当てたシンフォニックな優雅さに包まれている。「For Whom The Bell Tolls」も前作同様
楽曲の持つ叙情性がオケと自然と融合されているが、あらたに加わった「Death Magnetic」からのナンバーなども激しい疾走感に
オケの美麗さが重なってなかなか楽しめる。一方で「HARDWIREDTO SELF-DESTR」の楽曲は、なんとなく淡白な印象で、
「LOAD」収録の大曲も個人的にはあまりピンとこない。Disc2では、プロコフィエフの「スキタイ組曲」、モソロフの「鉄工場」など、
クラシックのメタルカヴァーにも挑戦。クリフ・バートンのベースをコントラバスで再現した「Pulling Teeth」もなかなか面白い。
後半は、「One」、「Master Of Puppets」でお約束ながら盛り上げて、ラストは「Enter Sandman」で締めくくる。
クラシカル度・・8 メタル度・・7 壮大度・・8 総合・・8
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MONSTROSITY「Rise to Power」
アメリカのデスメタルバンド、モンストロシティーの2004年作
1992年デビューの中堅で、聴くのは久々なのだがまだ活動していたとは。
本作はおそらく4作目で、サウンドはVADERなどを思わせるオールドスタイルのデスメタル。
ツインギターのリフとブラスト入りで激しくたたみかけつつ、緩急のついた展開はテクニカルでもある。
スラッシーで重すぎない感触と、随所にメロディックなフレーズも盛り込んで、案外聴きやすいのも特徴。
そこそこブルータルでテクニカルな聴き心地の正統派のデスメタルが好きな方はぜひ。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・8 テクニカル度・・8 総合・・8
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MONSTROSITY「Spiritual Apocalypse」
アメリカのデスメタルバンド、モンストロシティーの2007年作
今作ではさらにテクニカル路線が強まり、ブルータルな突進力とともに
ドラマティックなスケール感が加わって、CRYPTOPCYばりの強力なサウンドだ。
荘厳な迫力とともにクールなギターリフと、随所にメロディックな質感も織り込んで
濃密なデスメタルサウンドを形成。NILEあたりが好きな方にも楽しめるだろう。
オールドスタイルのデスメタルを正統進化させたというべき力作デス。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・8 テクニカル度・・8 総合・・8
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Monstrosity 「The Passage of Existence」
アメリカのデスメタル、モンストロシティの2018年作
1992年にデビュー、本作は2007年以来、11年ぶりとなる6作目。オールドなギターリフに低音デスヴォイスを乗せて、
激しく疾走しつつ、リズムチェンジを含むテクニカルな展開力で聴かせるスタイルは、かつての作風を踏襲している。
MALEVOLENT CREATIONあたりに通じるオールドスタイルのデスメタルながら、激烈さはわりと控えめで、
叙情的なギターフレーズも覗かせるなど、プログレッシブ・デス的な感触は、DEATHなどが好きな方にも楽しめる。
一方ではトレモロのギターでブラスト疾走するブラッケンな激しさもあったりして、ほどよくメロディックな味わいも含めて、
重すぎない聴きやすさが良いですね。個人的には、もっと思い切った展開力で、さらにプログレデス化してもらいたい。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・8 テクニカル度・・7 総合・・8
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MORBID ANGEL「Altars of Madness」
デスメタルの帝王、モービッド・エンジェルの1st。1989作
リマスター、ボーナストラックに加え、デュアルディスクのDVDでは、
なんと1989年当時のライブ映像を収録とあって買い直しました。
2nd「病魔を崇めよ」での荘厳な雰囲気はまだなく、デスラッシュ的な若さと突進力が魅力。
リマスターで音質も向上していて、当時出てきた数あるデスメタルバンドの中でも
彼らにはピカイチの演奏と構成力があったことが、あらためて確認できます。
当時は怖かったドロドロのジャケも、よく見るとなかなか可愛かったり(笑)
DVDの方は1st発表直後のライブを収録。プロショットで画質、音質ともに良好。
まだ若いメンバーたちの勢い溢れる演奏が楽しめて、ファンなら見る価値ありです。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・8 買い直し価値あり度・・9 総合・・8
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MORBID ANGEL「Blessed Are the Sick」
アメリカのデスメタルバンド、モービッド・エンジェルの2nd。1991年作
「病魔を崇めよ」のタイトルで知られる歴史的名作。本作は私が最初に聴いたデスメタル作品であり、
当時はジャケ買いをして聴いて、あまりの強烈さに理解不能であったが、やがてこれがデスの名盤だと理解する。
妖しくも得体のしれないノイジーなイントロに続き、重々しいギターリフとともにゆったりと始まり
ブレイクののちに激しくブラストが始まってゆく…ここはいつ聴いてもしびれるほど格好いい。
咆哮するデスヴォイスと、ジャケのイメージ通り、まるで地獄へ迷い込んだような世界観…
このおどろおどろしさは一度ハマったら快感になる。また、ただ激しいだけではなく、
テクニックのある演奏力と構築された楽曲、その展開力が音の説得力ともなっている。
これ以降も、質の高い作品を生み出しつづけているが、自分にとっては本作こそ永遠の最高傑作であり、
デスメタルといえばまずこのアルバムなのだ。2009年のデラックス版、デュアルディスクのDVD面には、
アルバムメイキングやインタビューなど、貴重な映像を収録。リマスターで音質も向上している。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・8 暗黒度・・9 総合・・8.5
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MORBID ANGEL「COVENANT」
アメリカのデスメタルの帝王、モービッド・エンジェルの3rd。1993作
メジャーレーベルになっての1作目ということもあって音質が向上しており
歴史的名盤「BLessed are The Sick」に比べると、どろどろとした雰囲気はやや薄れているが、
その分しっかりと演奏を聴かせるという点で、雰囲気ものとしての前作との差別化になっている。
ピート・サンドヴァルのブラストビートに乗る、トレイ・アザトースの独特のギターリフ
そしてデビット・ヴィンセントの咆哮Voは、これぞモービッドエンジェル!という迫力がある。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・8 テクニカル度・・7 総合・・8
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MORBID ANGEL「Domination」
アメリカのデスメタルバンド、モービッド・エンジェルの4th。1995作
スラッシーな1stの作風から、2nd「病魔を崇めよ」では荘厳なる暗黒世界を描き出し
唯一無二の存在として語り継がれる、まさにデスメタル界の帝王たるこのバンド。
本作はのっけから強烈なブラストビートでたたみかけ、絡みつくようなギターリフを主体にした、
もっともデスメタルらしい作品と言えるだろう。エフェクトのかかったヴォーカルがやや惜しいが、
魔界を思わせる禍々しさと、迫力ある音圧で聴かせる濃密なアルバムだ。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・8 魔界度・・8 総合・・8
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MORBID ANGEL「Formulas Fatal to the Flesh」
アメリカデスメタルの帝王、モービッド・エンジェルの5th。1998作
脱退したデビット・タウンゼントに代わりスティーブ・タッカーを迎え、
3人編成となって作られた本作は、全編ブルータルの嵐というべき激しい作品となった。
オールドスタイルの雰囲気をぷんぷんさせたギターリフを乗せて、ピート・サンドヴァルのマシンガンのような激速ドラムがたたみかけ、
魔界を召喚するかのような暴虐な歌詞とともに、デス声が咆哮する。これぞモービッドサウンドというべき、見事なデスメタルアルバムである。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・9 魔界度・・9 総合・・8
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MORBID ANGEL「Gateways to Annihilation」
アメリカのデスメタル帝王、モービッド・エンジェルの6th。2000作
カエルの鳴き声から始まる本作は、スピードを抑えて徹底したヘヴィネスと絡みつくような重厚なリフワークを押し出した、
ダークでミステリアスなアルバムだ。いつになく無機質な硬質感で叩かれる、ピート・サンドヴァルのドラムワークも
バスドラの1音までが実に素晴らしく、このバンドの核たる部分を支えている。曲のテンポがミドル中心なだけに、
これまで以上にギターリフの粘着性が脳を刺激するように迫ってきて、デスメタル=スピードという概念を見事に打ち破ってくれる。
もちろん展開の中で激しくブラスト部分もあり、それがこれまでにない展開力をかもしだし重厚でドゥーミーな部分とのコントラストとして
上手く機能している。ときおり聴かせるギターソロでのメロディも、不思議な浮遊感と狂気を感じさせ、
ジャケットワークのようなおどろおどろしい地獄めいた世界観を巧みに描き出している。
ドラマティック度・・8 遅いが暴虐度・・8 重厚度・・9 総合・・8.5
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MORBID ANGEL「Heretic」
アメリカ産デスメタルの帝王、モービッド・エンジェルの7th。2003作
バンド活動20年を数えるベテラン中のベテランであるが、そのアグレッションは今だ衰えず。
アルバムごとにアルファベット並びのアルバムをつけるという洒落た試みも8作目で「H」まできた。
前作では、スピードよりもヘヴィネスに重点をおいた作りだったのだが、今作はブラストビートもしっかりと聴かせる、
ブルータリティと重厚さのバランスのとれたサウンドである。モービッド節ともいうべきトレイ・アザトースのリフワークは、
ときに無慈悲なまでに硬質であるが、ときに聴かせるソロパートなどではミスティカルな世界観もかもし出しており、
ピート・サンドヴァルの激烈にして正確無比なドラミングも、このバンドの欠かせざる魅力である。
彼らに影響を受けたNILEなどの後続バンドも台頭してきたが、元祖であるこのバンドも
まだまだ現役だと知らしめるだけの作品だ。なお、2CD盤の2枚目は、ヴォーカルレスのデモ演奏を収録。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・8 重厚度・・8 総合・・8
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Morbid Angel「Illud Divinum Insanus」
デスメタルの帝王、モービッド・エンジェルの2011年作
前作から8年ぶり、スタジオ作としては8作目。オリジナルメンバーのデヴィッド・ヴィンセントが復帰、
反対にドラムのピート・サンドヴァルは腰の手術からのリハビリのため、いったんバンドを離脱しており、
臨時メンバー的にDIVINE HERESYのティム・ヤングが参加している。さて、サウンドの方はのっけから
なにやらインダストリアル風味で、あれれ?となるが、3曲めからは、デスメタルとしての本領発揮、
強烈なブラストビートと、トレイ節ともいうべきギターリフでたたみかけるサウンドに溜飲を下げる。
随所にモダンな硬質感を匂わせていて、これまでのファンからすると違和感もあるかもしれないが、
じっくり聴いていれば、知的で荘厳な邪悪ともいうべきモビエンらしさは楽曲の内面にしっかりと感じられ、
これも彼らの作品なのだと納得する。ただ音のみで聴くブルデス好きには問題作となるかもしれない。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・7 モダン風味度・・8 総合・・8
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Morbid Angel「Kingdoms Disdained」
アメリカのデスメタル、モービッド・エンジェルの2017年作
1989年デビュー、デスメタルの帝王による6年ぶりとなる9作目。前作で復帰したデヴィッド・ヴィンセントが再び離脱し、
替わってスティーヴ・タッカーがB&Voで復帰、ドラムには元Abysmal Dawnのスコット・フラーが加入している。
激しくたたみかけるドラムに重厚なギターリフと吐き捨てヴォーカルを乗せた、ブルータルなサウンドで、
賛否両論となった前作に比して、一貫したダークなデスメタルを聴かせる。暴虐なブラストビートとともに、
トレイ・アザトースによるうねるようなギターは、これぞモビエンという荘厳な迫力を感じさせるのだが、
バスドラムの音が機械的なのと、単調なリフレインのパートがいくぶんススリングさを削いでいる気も。
激しいデスメタル感触が戻ったのはいいとして、禍々しさと不穏な世界観をさらに描くような作風を期待したい。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・8 荘厳度・・8 総合・・8
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MORGOTH「ODIUM」
ドイツのデスメタルバンド、モーゴスの3rd。1993年作
90年代は意外と少なかったドイツ産ののデスメタルバンドとして、わりと知名度もあったこのバンド。
一般的には前作「Cursed」が最高作とされるが、本作はむしろデスラッシュ風味の傑作である。
前作までのダークな世界観から、ややドライになった作風ながら、むしろリフの切れ味は増していて
ザクザクとした硬質なサウンドが気持ちよい。ときおりメロディのあるフレーズを覗かせるのも
ヨーロッパのバンドらしい。デスメタルとして聴くにはやや物足りないが、スラッシュ好きにはたまらない1枚。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・7 むしろデスラッシュ度・・8 総合・・8
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MORGOTH 「CURSED TO LIVE」
ドイツのデスメタル、モーゴスのライブ作。2012年作
1989年にデビュー、1996年作を最後に解散したバンドの2011年の復活ライブ。
VoとG2人が当時のメンバーで、1991年作「Cursed」からのナンバーを中心に、
1989年作「Resurrection Absurd」、1990年作「The Eternal Fall」からも含む全15曲を演奏している。
アメリカのバンドとは若干異なる、絡みつくようなリフと吐き捨てヴォーカルを乗せ、
アグレッシブな勢いと緩急あるリズムで聴かせる、王道のヨーロピアン・デスメタルで、
VADERなどにも通じる感触であるが、そこまで暴虐な激しさではないのがポイント。
音質も良好で、演奏の迫力も十分。オールドなデスメタラーには歓喜の復活であろう。
ライブ演奏・・8 オールドデス度・・9 迫力デス度・・9 総合・・8
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N
NECRODEATH「ton(e)s of hate」
イタリアのデスラッシュバンド、ネクロデスの5th。2003作
SADISTの前身バンドとして活動していたことで知られるバンドだが、そのSADISTを脱退したDrのペソを中心に復活して、これが3作目となる。
サウンドは古き良き王道の疾走スラッシュを基本としつつ、絡みつくようなギターリフと、緩急を取り混ぜた展開で聴かせる。
ブラックメタル的なヴォーカルのガナり声と、ダークなリフによっていかにもイタリアらしいどろどろとした世界観を形作っている。
演奏力も高く、初期のKREATORを思わせるようなスラッシュサウンドを楽しめる。
ドラマティック度・・7 スラッシュ度・・8 ダーク度・・8 総合・・7.5
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NERVOSA 「Victim of Yourself」
ブラジルのスラッシュメタル、ネルヴォサの2014年作
女性の3人組という、ガールズバンドであるが、これがなかなか本格派のスラッシュメタルをやっている。
ヘヴィなギターリフと凶悪なダミ声ヴォーカルを乗せて疾走する、初期のKREATORなどを思わせる、
オールドスタイルのスラッシュで、音だけを聴けば女性バンドとは思えないかもしれない。
適度なリズムチェンジもあったりして、疾走するだけではないところもよいのだが、
楽曲の雰囲気がやや一本調子で、もう少しリフの種類に工夫が欲しいような気もする。
ともかく、女性による本格派のスラッシュメタルということで、注目したいバンドである。
ドラマティック度・・7 疾走度・・8 オールドスラッシュ度・・8 総合・・7.5
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NEVERMORE「Dead Heart, in a Dead World」
アメリカのヘヴィ・ダークメタルバンド、ネヴァーモアの4th。2000作
以前に5thを聴いた時は、ヘヴィさが前に出て楽曲の持つドラマティックな魅力が
やや伝わってこなかったのだが、このアルバムはもう少し分かりやすくてなかなか良い。
ザクザクとしたリフ攻勢をメインにしたサウンドは、オールドなスラッシュメタルと
モダンなヘヴィロックの両面を併せ持ち、そのダークで無機質な世界観を表現している。
元SANCTUARYのメンバーがいることもあってか、リフや展開力には知的さもあり、
単なるヘヴィなミドルスラッシュというのとも違う、このバンドならではの感触を伝えてくる。
ドラマティック度・・8 重厚度・・8 ダーク度・・8 総合・・7.5
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NEVERMORE「ENENIES OF REALITY」
アメリカのダークメタルバンド、ネヴァーモアの5th。2003作
かつてSANCTUARYというバンドで2枚のアルバムを残したメンバーたちによるバンド。
スラッシーで時にデスメタルを思わせるギターリフを中心にした、ダークかつヘヴィな混沌とした雰囲気のサウンドだ。
リフだけでなく時には叙情性を聴かせるギターのセンスが抜群で
単なるスラッシーなヘヴィメタルにはなっていないところがこのバンドの特徴。
ドラマティック度・・7 ヘヴィ&ダーク度・・8 ギターリフ度・・9 総合・・7.5
NEVERMORE「This Godless Endeavor」
アメリカのヘヴィ・ダークメタルバンド、ネヴァーモアの6th。2005作
今作はのっけからスラッシーな疾走で幕を開けるかなりのインパクト。
硬質なギターリフは相変わらずセンスよく、そして今作ではソロパートでのメロディも効果的で、
たたみかける押しのヘヴィさと歌を含めた叙情性とのコントラストもくっきりとした。
ツインギターの絡みはときにメロデスのように流麗で、甘くなりすぎない程度に耳に心地よく、
それぞれの楽曲もこれまでになく作り込まれているという印象。重厚でスラッシーでありながらも聴きやすいという、
絶妙のバランスを身に付けた本作は、間違いなくバンドの最高作たる一枚に仕上がっている。
ドラマティック度・・8 重厚度・・8 ダークな叙情度・・8 総合・・8
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Nevermore「The Year Of The Voyager」
アメリカのダークメタルバンド、ネヴァーモアのライブアルバム。2008作
モダンなへヴィさで聴かせるダークなスラッシュサウンドが通好みの人気を誇るこのバンド、
本作は2006年のドイツ、ボーフムでのステージをCD2枚に収録したライブアルバムだ。
1st〜6th+EPからまんべんなく選曲された楽曲は、アルバム以上に生々しい演奏で、
むしろ格好よくなっている。後にMEGADETHに加入するクリス・ブロデリックも参加し、
ツインギターのリフを主体に、ダークかつ重厚に聴かせるサウンドはじつに見事。
最近の若手のようにモダン化しずぎずに、ギターフレーズも含めてヘヴィメタルとしての絡みつくような湿りけを残しているのもいい。
ダークスラッシュ度・・9 ライブ演奏・・8 重厚度・・8 総合・・8
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Nevermore「The Obsidian Conspiracy」
アメリカのダーク・スラッシュ メタルバンド、ネヴァーモアの2010年作
2005年の「This Godless Endeavor」は、バンドの最高作ともいうべき出来であったが、
5年ぶりとなる本作は、古き良きスラッシーな感触を強めた傑作に仕上がっている。
これまでのモダンなヘヴィネスをいくぶん抑え、代わりにドラマティックな質感の叙情が増し、
ずいぶんと聴きやすくなっている。ツインギターのリフ、フレーズの重ねはセンス抜群で、
ミドルテンポが主体であるがダークなスラッシュとしての重厚さにあふれている。
ドラマティック度・・8 ダーク度・・8 重厚度・・8 総合・・8
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NILE「Amongst the Catacombs of Nephren-Ka」
アメリカのデスメタルバンド、ナイルの1st。1998年作
バンド名やジャケからして、いかにも「エジプト!」といった感じだか、
後のアルバムに比べるとまだアラビアンな要素が楽曲に溶け込んでいないので、
曲自体は普通の暴虐デスメタルの質感。ときおり垣間見せるそれ風のフレーズや
曲間のシンセやSEなどが古代エジプト調の雰囲気をかもしだしているが、
イメージの構築に曲がまだ追いついていないようで、スケール感はやや足りない。
もちろんMORBID ANGEL直系のデスメタルとしてはかなりの出来だ。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・9 エジプト度・・7 総合・・7.5
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NILE「Black Seeds of Vengeance」
古代エジプト風デスメタルバンド、ナイルの2nd。2000作。
演奏、楽曲とも前作から格段のスケールアップを果たした。
初期のMORBID ANGELを思わせる暴虐かつ邪悪な雰囲気をまき散らしつつ
演奏は非常にタイトかつテクニカル、そして彼らの目指す中東、チベット、エジプト的な世界観が
楽曲と有機的に融合しだしたことで、音の説得力がぐんと高まっている。
オリエンタルで秘教的な感触と、聴き手にイメージを喚起する世界観の強度が上がり、
ブルータルでありながら雰囲気ものでもあるという凄まじいエクストリームミュージックとなっている。
ドラマティック度・・9 暴虐度・・9 雰囲気度・・8 総合・・8 ◆メタル名盤特選入り
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NILE「In Their Darkened Shrines」
古代エジプト風デスメタルバンド、ナイルの3rd。2002作。
基本は前作の延長上ながら、今回は曲のアレンジがさらに細やかになり、
とくにドラムにおける手数の多さと、リズムチェンジなどが際立っていて
ブルータルでありながらも非常にテクニカルなサウンドになっている。
バックの効果的なシンセの使い方も、ときにサウンドを荘厳にしているが
雰囲気ものとしては前作の方が上か。ただし暴虐テクニカルなのはこちら。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・10 テクニカル度・・9 総合・・8
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NILE「Annihilation of the Wicked」
古代エジプト風デスメタルバンド、ナイルの4th。2005作
ドラマーが交代し、ギターのリフの絡みも若干メロディアスになり、聴きやすさが増している。
もちろん、ブルータルに疾走しつつ、楽曲は緩急自在でたたみかけてくれるのだが、
ミドルテンポのパートが増えたことでMORBID ANGEL的な雰囲気がより強まった感がある。
彼らの標榜するエジプト的なイメージの構築という点ではやや物足りないかもしれないが、
曲中の荘厳な雰囲気作りが見事で、デスメタルアルバムとしての完成度は相変わらず高い。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・8 テクニカル度・・8 総合・・8
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NILE「Ithyphallic」
アメリカのエジプト風デスメタルバンド、ナイルの5th。2007作
毎回、ブルータルな轟音と、深遠かつ難解な歌詞による世界観で、濃密なデスメタルを聴かせてくれるこのバンド。
今作も総じて変わらぬ内容で安心印のブルデスである。スローパートを増やすとともに効果的なシンセの使用は、
これまで以上に荘厳で神秘的な世界観を描き出しており、ブラストしまくり激速爆音の中にも聴きやすいギターリフや
ちょっとしたメロディを覗かせる部分などもあり、全体的な音のまとまりが良い気がする。
ラストの10分の大曲も彼らのコンセプチュアルな持ち味が効いていて、ただ暴虐なだけではない。
同時期に出たベスト盤とともに、このバンドのさらなる飛躍と認知度の向上を願うものである。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・8 荘厳度・・8 総合・・8
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NILE「LEGACY of the CATACOMBS」
アメリカのデスメタルバンド、ナイルのベストアルバム。2007作
これは1st〜4thまでのアルバムから各4曲ずつ、全12曲を選曲したベストアルバムであるが、
正直、どのアルバムも激烈にブルータルでブラストビートとデス声咆哮の嵐で、
違いという違いはあまりない(笑)…ただし、やはりサウンドと演奏の説得力は、
2nd以降に格段に高まっており、カール・サンダースの書くディープかつ探究的な歌詞とともに、
その暴虐にしてミスティックな雰囲気は構築を強化、完成していったのだろう。
本盤には残念ながら歌詞カードがないので、これを聴いて興味をもった方は
ぜひ各アルバムを手にとり、その恐るべきエジプト探究の精神を、歌詞と解説からも感じて欲しい。
DVDにはPVを3曲収録。低予算な映像ながらバンドの演奏風景が見られるのは貴重だ。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・9 古代エジプト度・・9 総合・・8
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NILE「Those Whom the Gods Detest」
アメリカのデスメタルバンド、ナイルの6th。2009作
古代エジプトの世界観を徹底的に追求したこのバンドもデビューから早10年、本作はベストアルバムを挟んで2年ぶりのアルバムとなる。
今作も今までどおり、激烈にブラストビートでたたみかけながら、テクニカルな緩急を織りまぜて、濃密なサウンド聴かせてくれる。
曲間のSEやミスティックなコーラスなども含めて、世界観の構築ぶりは見事。
もはや単なるデスメタルの枠を超えた、エジプティアン・デスというべきものである。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・8 エジプト度・・8 総合・・8
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NILE「At The Gate of Sethu」
アメリカのデスメタル、ナイルの2012年作
古代エジプトをテーマに、毎回荘厳なるデスメタルを聴かせてくれるこのバンド、
7作目となる本作も、激烈なブルータリティとダークな世界観が一体となった濃密作だ。
たたみかけるブラストビートと、そこに乗るギターリフの切れ味はますます冴え渡り、
テクニカルといってもよいフレージングの連続は過去最高の聴き応えかもしれない。
うねりのある邪悪さの中に、中近東的な旋律をまじえながら、古代エジプトの神秘性を描き出す、
激しくも知的で厳粛な空気を感じ取れるサウンドだ。期待通りの強力なアルバムである。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・8 テクニカル度・・8 総合・・8
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NILE 「WHAT SHOULD NOT BE UNEARTHED」
アメリカのデスメタル、ナイルの2015年作
古代エジプトの世界観を追及するブルータルなデスメタルを標榜し、1998年にデビュー、本作は8作目となる。
激烈なブラストビーを含む激しさでたたみかける、オールドスタイルのブルデスサウンドは健在。
ギターリフ自体はわりとオーソドックスで、デスヴォイスの迫力も突き抜けるほどではない。
つまり音に新鮮味はさほどないのだが、やはり古代エジプトを描く世界観が個性となっていて、
暴虐な激しさからスローパートも含む緩急あるサウンドに、神秘的で荘厳な空気を生み出している。
ドラマティック度・7 暴虐度・9 荘厳度・8 総合・8
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KARL SANDERS「Saurian Meditation」
NILEのカール・サンダースによるソロ作。2004作
ナイルではエジプトをモチーフにした激烈なデスメタルサウンドをやっている彼だが、
この作品ではなんとメタル色のない本格的なエジプト音楽に挑戦している。
アコースティックギターに民族楽器のバグラマ、シンセ、パーカッションなどによる
静謐感のただようサウンドは、ときおりアラビックな雰囲気もかもしだしつつ、
古代エジプトの神々や伝説をテーマにした神秘的な世界観を描き出している。
メタルリスナーには退屈かもしれないが、中近東、エジプト色の漂う異国的な空気に浸れる作品。
ドラマティック度・・8 メタル度・・1 エジプト度・・9 総合・・7.5
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KARL SANDERS「Saurian Exorcisms」
デスメタルバンドNILEのカール・サンダースによるソロ作。2009年作
ナイルでは激烈なデスメタルをやっているが、本作はエジプトをモチーフにした静謐なサウンドで、
パーカッションのリズムに詠唱のなようヴォーカルを乗せ、シンセによる神秘的な味付けとともに
古代の儀式を思わせるような妖しい世界観を描いている。メタル色は皆無だがじっくり浸れる作品だ。
神秘的度・・8 メタル度・・1 エジプト度・・9 総合・・7.5
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Karl Sanders 「Saurian Apocalypse」
アメリカのミュージシャン、カール・サンダースの2022年作
デスメタルバンド、NILEのリーダーで、ソロとしては、2009年以来となる、3作目。古代エジプト舞台にした
民族サウンドは本作も同様で、パーカッションのリズムに、アコースティックギターやサズのつまびき、
シンセアレンジも加えつつ、神秘的な民族アンビエントを展開。曲によっては、呪術的なヴォーカルも加えて
アッパーなノリのアコースティックサウンドを聴かせ、鳴らされるドゥンベック(パーカッション)にシンセによる味付けで
幻想的な空間性を感じさせるところは、過去2作以上に濃密な味わい。ドラムが入ったロック感触もあったりと、
ほどよいメリハリもあるので、退屈せずに聴き通せる。単なるアンビエントという以上にディープな世界観に浸れる。
メタル度・1 幻想度・8 民族度・8 総合・8
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NOCTURNUS 「The Key」
アメリカのデスメタル、ノクターナスの1990年作
初期のMORBID ANGELに在籍していたドラムのマイク・ブロウニング率いるバンドのデビュー作。30周年での再発盤。
当時のデスメタルにしては珍しくキーボードを含む編成で、幻想的なイントロから始まり、スラッシーなギターリフと
ドカドカしたドラムに吐き捨てヴォイスを乗せて、DEATHにも通じる知的な展開力のデスメタルを聴かせる。
手数の多いドラムにやや唐突ともいえるリズムチェンジを含むプログレッシブな味わいで、激しすぎず、重過ぎず、
ラウドでノイジーな音質も、マイナー感があっていい味わいだ。うっすらとシンセが重なるとスペイシーな雰囲気にも包まれ、
複雑でせわしない展開に耳疲れしつつも、SFチックなSEを取り入れたりと、当時としては実験的なサウンドが楽しめる。
ドラマティック度・7 重厚度・7 テクニカル度・8 総合・8
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NOCTURNUS 「Ethereal Tomb」
アメリカのデスメタル、ノクターナスの1999年作
1992年の2作目以降休止していたバンドの3作目で、ドラム&Voのマイク・ブロウニングはすでに脱退している模様。
サウンドの方は、クールなギターリフに咆哮するデスヴォイスを乗せ、うっすらとしたシンセが包み込む、
オールドスタイルのテクニカルデスメタルは健在。音質も含めてクリアになった分、かつてのミステリアスな空気は薄まり、
わりとドライな感触で普通に楽しめるのだが、もう少し引っ掛かりのある展開、いわばヘンテコさが欲しい気もする。
確かな演奏力とともに、激しすぎないテクデスという好作ではある。本作をもってバンドは活動を休止するが、
マイク・ブロウニングを含むかつてのメンバーは、NOCTURNUS ADとして、2019年にアルバムを発表している
ドラマティック度・7 重厚度・7 テクニカル度・7 総合・8
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O
OBITUARY「Slowly We Rot/Cause of Death」
アメリカのデスメタルバンド、オビチュアリーの1st/2ndカップリング盤。1989/1990年作
フロリダを代表するデスメタルバンドの筆頭だある彼らだが、デビュー作である1stの時点では
スラッシュメタル的な質感が強く迫力の点ではまだまだ。ただ、彼らの特徴であるギターリフにおける
絡みつくようなヘヴィさと、爬虫類的なわめき声ヴォーカルは現時点でも充分に特徴的である。
2ndはギターにジェイムズ・マーフィーが参加、サウンドの構築性がぐっと上がってきていて、
ダークな中にも随所にメロディを含んだギターフレーズがコントラストになっている。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・7 ヘヴィなうねり度・・8 総合・・8
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OBITUARY「The End Complete」
アメリカのデスメタルバンド、オビチュアリーの3rd。1992年作
フロリダを代表するデスメタルバンドの初期の最高作と名高いアルバム。
絡みつくようなギターリフと吐き捨てヴォーカルを乗せてスラッシーに疾走しつつ、
スローパートを効果的に使ったドゥーミィなうねりのような質感がとても気持ち良い。
ただ激しいだけのデスメタルとは一線を画していたことがあらためて感じられる傑作だ。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・8 ヘヴィなうねり度・・8 総合・・8
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OBITUARY「World Demise」
アメリカのデスメタルバンド、オビチュアリーの4th。1994年作
本作はいくぶんモダンになったヘヴィさで、ひときわギターリフの重厚さが強まっている。
前作に比べると疾走感が薄れて、曲はミドルテンポ主体ながら、うねりを帯びたリフと
わめくようなヴォーカルによるダークな迫力は充分で、むしろこのバンドの個性がもっともよく現れている。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・7 重厚度・・8 総合・・8
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OBITUARY「Back From the Dead」
アメリカのデスメタルバンド、オビチュアリーの5th。1997年作
スピードは普通のスラッシュ程度の激しさなのだが、ストーナーやドゥームにも通じる
独特のうねりと生々しいギターリフでダークなヘヴィネスを描き出すのは彼らの個性だろう。
デスメタルとして聴くのではなく、独特のダークメタルとして楽しむバンドなのだ。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・7 ダークなヘヴィネス度・・8 総合・・7.5
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OBITUARY「Frozen in Time」
アメリカのデスメタルバンド、オビチュアリーの6th。2005年作
前作「Back From the Dead」から8年ぶりとなるアルバムであるが、
アンドレアス・マーシャルによるジャケも含めて、サウンドはさらに往年の雰囲気に近づいており、
おどろおどろしくダークなうねりを聴かせる、まさにオビチュアリー風デスメタルである。
生々しく絡みつくようなギターリフに、ダーティな吐き捨てヴォーカル、
暴虐さよりもドゥーミィな暗さを漂わせた作風はやはり唯一無二である。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・7 ダークなヘヴィネス度・・8 総合・・8
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OBITUARY「Xecutioner's Return」
アメリカのデスメタルバンド、オビチュアリーの7th。2007年作
飲酒運転で実刑判決を受けたアレン・ウェストの後任に、Deicideを脱退したラルフ・サントーラが加入、
サウンドは前作までのうねりの効いたダークなデスメタルに、ラルフのテクニカルなギターソロが加わって
ある種、OBITUARYらしからぬメロディがやや唐突にも思えるが、それはそれとして楽しめる。
こもり気味のドラムの音が古き良き時代のデスメタルを思わせ、アンドレアス・マーシャルによる
ジャケとともになつかしいような時代性を感じてしまう。激しさよりもおどろおどろしいデスメタルです。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・7 ダークなうねり度・・8 総合・・8
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OBITUARY「Darkest Day」
アメリカのデスメタルバンド、オビチュアリーの8th。2009年作
2005年に8年ぶりとなる復活作を出してから、バンドは順調に活動を続け本作が8作目となる。
前作でラルフ・サントーラ(MILLENIUM〜DEICIDE)がバンドに加入し、正式にメンバーに迎えてのアルバムとなる。
その爬虫類系のヴォーカルも含めてUSデスメタルでありながら、どこか粘着的なサウンドと
ダークな雰囲気はかつてのままで、ただ激しいだけでなく、古き良きスラッシーな質感をしっかり残しているのが嬉しい。
その中でサントーラの巧みなギタープレイは要所でギラリと光っており、この稀代のテクニカルギタリストが
このバンドにおいてもサウンドの質を一段高める、いわば職人的な役割を果たしているのが分かる。
どことなくストーナー色もあるギターリフとミドルテンポで聴かせるオールドメタルなスタイルは、
デスメタルとして聴くとやや激しさが足りない気もするが、ダークなヘヴィメタルとしては充分に楽しめる。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・7 古き良きうねり度・・9 総合・・8
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Obituary「Inked in Blood」
アメリカのデスメタル、オビチュアリーの2014年作
1989年にデビュー、本作は9作目。前作まで参加していたラルフ・サントーラに替わり、ケン・アンドリュースが加入、
のっけから重すぎないギターリフにダミ声ヴォーカルを乗せた、ハードコア風の疾走ナンバーで、
その後は、スローからミドルテンポを主体にした、3〜4分前後のわりとシンプルな作風であるが、
絡みつくようなリフの感触は、まさにオビチュアリーそのもの。随所にメロディックなギタープレイも聴かせつつ、
基本はリフが主体で、悪くはないのだが、前任のラルフ・サントーラに比べるとやや物足りなさも。
らしさはちゃんとあるものの、往年のファンからしては、やや中庸のアルバムという感じだろうか。
ドラマティック度・7 暴虐度・7 重厚度・8 総合・7.5
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Obituary
アメリカのデスメタル、オビチュアリーの2017年作
通算10作目のアルバムで、セルフタイトルを冠した、バンドとしての集大成的な作品といえるだろう。
オールドなギターリフに吐き捨てヴォーカルで疾走する、3rdあたりに回帰したような作風で、
甘すぎない程度の叙情を含んだギタープレイも随所にアクセントになっている。
楽曲は3分前後が主体ながら、激しめのナンバーが増えたことでアルバムとしても引き締まり、
ミドルやスローテンポでも、ツーバスのドラムとツインギターのリフがグルーヴィな味をかもしだす。
ジョン・ターディのグロウルの迫力も含めて、これぞオビチュアリーという力作デスな。
ドラマティック度・7 暴虐度・7 重厚度・8 総合・8
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Onslaught 「In Search of Sanity」
イギリスのスラッシュメタル、オンスロートの1989年作
本作は3作目で、Grim Reaperの、スティーブ・グリメットが参加したことでクオリティがアップ。
5分もある不穏なイントロはやや長すぎだが、2曲目からはザクザクとしたギターリフを乗せた
パワーメタル寄りのスタイルで、パワフルなハイトーンヴォーカルも含めて、勢いのあるサウンドが楽しめる。
適度に英国らしい湿り気を含んだ感触もあって、NWOBHMの延長上の作品ともいえるかもしれない。
METALLICAを思わせるスラッシーに疾走するナンバーや、12分を超える大曲など、中身の濃い力作だ。
AC/DCやAngel Witchのカヴァーもなかなかハマっている。本作を最後にバンドは活動を停止する。
ドラマティック度・・7 疾走度・・8 英国度・・8 総合・・8
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ONSLAUGHT 「KILLING PEACE」
イギリスのスラッシュメタルバンド、オンスロートの復活作。2007年作
80年代に3枚のアルバムを出して消えたこのバンド、20年の時をへてまさか復活するとは。
過去のアルバムは確か2ndを聴いていたような気がするが、昔のことなので手元には音源もない。
比べられないのだが、やはり音質的にも弱かった昔の作品よりは、スラッシーな硬質感が漂っている。
王道のスラッシュリフで疾走する、まさに往年のサウンドにはおもわずにんまりだ。
ただ、、このバンドならではの強烈な個性というのもあまりない気がするので、
復活を喜ぶオールドリスナーの内輪以外でどこまで盛り上がれるかはやや疑問だ。
ドラマティック度・・7 疾走度・・8 オールドスラッシュ度・・9 総合・・7.5
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Onslaught 「Generation Antichrist」
イギリスのスラッシュメタルバンド、オンスロートの2020年作
80年代に3枚のアルバムを出して消えるも、2007年に復活し、以降は旺盛に活動を続けているベテランバンド。
本作は7年ぶりとなる、通算7作目で、前作のあとドラムとギターが交替、ヴォーカルのサイ・キーラーも脱退したことで、
メンバーが一気に変わっているが、サウンドの方はオルドなギターリフにダーティにヴォーカルを乗せて疾走する
オンスロートらしさは失われていない。スラッシュらしいエッジの効いたリフに、ほのかにメロディを含んだフレーズも覗かせて
ダークな翳りを含んだアグレッシブなサウンドは、ベテランらしい迫力に満ちている。新加入のデイヴィッド・ガーネッドの歌声も
ドスの効いた迫力充分で、前任者のサイにもひけをとらない。ボーナスの「In Search Of Sanity」再録バージョンもファンには嬉しいだろう。
ドラマティック度・・7 疾走度・・8 迫力度・・8 総合・・8
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Orphalis 「The Birth Of Infinity」
ドイツのデスメタル、オルファリスの2016年作
ツインギターのリフと低音デスヴォイスを乗せてブラスト疾走するブルータルな激しさに、
随所にリズムチェンジを含んだテクニカルな展開力も覗かせる強力なサウンド。
昨今のバンドにしてはオールドスタイルの感触が強く、ゲボ声ヴォーカルもひと昔前のデスメタルっぽい。
ギターはザクザクのリフだけでなく、ときにテクデス風のピロピロフレーズも奏でていて
ときにブラックメタル風味のダミ声も入ってきたりもするが、基本はやかましくて激しい。
少々一本調子な感じもするが、オールドなブルデス好きにはたまらないかもしれない。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・9 テクニカル度・・7 総合・・7.5
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OVERKILL「The Electric Age」
アメリカのスラッシュメタル、オーバーキルの2012年作
80年代から活動する大ベテラン、最近の作品はチェックしていなかったが、おそらく17作目くらいだろうか。
切れ味のよいギターリフと独特のハイトーンのダミ声ヴォーカルとともに疾走するスラッシュメタルは
本作においてももちろん健在で、オールドスタイルの誇りを漂わせる力強いサウンドを繰り広げている。
全盛期と比べても勢いは衰えるどころか、パワフルさの点でも現在の方が勝っているのではと思わせる。
若手のスラッシュ系新人が続々と出てくる現在においても、ベテラン健在とリスペクトされるに足る内容だ。
ドラマティック度・・7 パワフル度・・8 スラッシュ度・・8 総合・・8
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P
PARADOX「Heresy」
ジャーマンスラッシュバンド、パラドックスの2nd。1989作
80年代ジャーマンスラッシュの裏傑作とも言われ、当時の玉石混合のマイナースラッシュの中では当たりの1枚であった。
叙情的なイントロから、ツインギターのフレーズと、スラッシーなリフで疾走開始、
ジャーマン特有の湿りけを含んだ質感は初期のBLIND GUARDIANにも通じる。
やはり1曲目のタイトル曲の出来が素晴らしく、中間部の静かなパートでの美しさなど、
コンセプト的なドラマティックさが光っている。2曲目以降はインパクトのあるナンバーは
さほどないのだが、80年代ヨーロッパのスラッシュ作品としてはやはり傑作の部類だろう。
バンドは2000年に復活をとげるまで、本作を最後に10年の眠りにつくことになる。
リマスター盤には、デモ音源2曲とライブ映像1曲をボーナス収録
ドラマティック度・・8 疾走度・・8 スラッシュ度・・8 総合・・8
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PARADOX「COLLISION COURSE」
ドイツのスラッシュメタルバンド、パラドックスの復活作。2000年作
かつて「HERESY」というジャーマンスラッシュの名作アルバムを残して消えた
あのパラドックスがなんと11年ぶりに復活。ザクザクとしたツインギターのリフを乗せて疾走する、
かつてを思わせるスタイルで、オールドスタイルのパワフルなスラッシュメタルに
甘すぎないメロディを加えた感触は、ジャーマン・スピードメタルとしての魅力もたっぷり。
ジャケ裏の写真には、今やおっさんになった元スラッシャーの写真が…哀愁です。
ドラマティック度・・7 スラッシュ度・・8 古き良き度・・8 総合・・8
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PARADOX「Electrify」
ドイツのメロディック・スラッシュメタルバンド、パラドックスの2008作
前作から8年ぶりとなる本作も、熱きオヤジスラッシャーの魂が炸裂だ!
サウンドはは、むしろドラマティックな質感が増していて、ツインギターで聴かせる重厚なメロパワとして
普通に楽しめる。かつてのアルバム「Heresy」にも通じるミステリアスな雰囲気とともに、
薄暗いメロディを感じさせる楽曲は、オールドスタイルの魅力をしっかりと伝えてくれる。
もちろんスラッシーに疾走するナンバーもあり、ザクザクのリフに首を振りつつ
ジャーマン特有の翳りある哀愁を感じ取ることができる。そんなアルバムだ。
ドラマティック度・・8 スラッシー度・・7 ダークなメロパワ度・・8 総合・・8
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PARADOX「Riot Squad」
ドイツのスラッシュメタルバンド、パラドックスの2009作
2000年の復活作から、前作「Electrify」までは8年もの月日が流れたが、
今作はなんと1年という短い期間で新作を出してきた。えらいよ、オヤジスラッシャー!
今回はよりシンプルな疾走感で爽快なスラッシュメタルを聴かせつつ、
このバンドの特徴であるダークな湿りけある雰囲気もしっかり残していて
ツインギターのフレーズによるジャーマンメタル的なドラマティックさもGoodです。
これくらいメロディがあれば、スラッシュ苦手なリスナーにも楽しめるでしょう。傑作。
ドラマティック度・・8 疾走度・・8 ジャーマンスラッシュ度・・9 総合・・8
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PARADOX「Tales Of The Weird」
ドイツのスラッシュメタル、パラドックスの2012年作
2000年に復活してから4作目で、本作もメンバーがずいぶん変わった模様だが、
サウンドの方は安心のパラドックス印。イントロを含めて9分の1曲めからして、
初期の代表作「HERESY」を思わせる、疾走スラッシュが炸裂している。
随所に聴かせるツインギターの叙情と歌メロも含めたメロディックな聴き心地が、
これまで以上に強まっていて、初期BLIND GUARDIANばりのドラマティックな感触もある。
スラッシーでありつつも、ヘヴィすぎないプロダクションがむしろ耳に心地よい。今回も傑作です。
ドラマティック度・・8 疾走度・・9 オールドスラッシュ度・・9 総合・・8
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PARADOX 「Pangea」
ドイツのスラッシュメタル、パラドックスの2016年作
80年代から活動するベテランで、2000年に復活してから5作目、通算では7作目となる。
本作では、リーダーのチャーリー・スタインハウアー以外のメンバーが一新し、ベースはVICIOUS RUMORSから、
ギターとドラムにはギリシャのSUNBURSTのメンバーが参加している。スラッシーなリフを乗せて疾走する、
硬質かつパワフルな激しさと、ツインギターによるメロディックな要素が合わさった、バラドックス節は健在。
ガス・ドラックスのキレのよいギターワークも案外サウンドにマッチしていて、随所にテクニカルなフレーズも覗かせる。
演奏陣が一新したこともあってか、オールドスタイルのスラッシュをやっていながら、どこかモダンな硬質感が強まった感もある。
楽曲は、6〜7分前後の長めのものも多いのだが、個人的にはインパクトのあるナンバーがやや少ない気がした。
ドラマティック度・・7 疾走度・・8 新鮮度・・7 総合・・8
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Pavlin Neichev & Konstantin Jambazov「Samael - Angel Of Death」
ブルガリアのミュージシャン、パヴリン・ネイチェフのソロアルバム。2016年作
スラッシュメタルバンド、HADESのヴォーカリストとしても活動するミュージシャンで、本作には楽曲、演奏に
ClearLand、Virtulなどでも活動するマルチミュージシャン、コンスタンティン・ジャンバゾフが全面参加している。
パワーメタル、スラッシュ、メロディック、プログレッシブなどの要素を融合したパワフルな作風で、
スピードメタルとしての爽快さに、緩急のある展開力と緻密なアレンジを乗せた作曲センスも光っている。
母国語のヴォーカルが辺境的な質感をかもしだしつつ、随所にテクニカルなギターワークや、
プログレッシブでアヴァンギャルドな展開も見せつける。伸びやかなハイトーンからスクリームヴォイス、
ダミ声までこなすヴォーカルも迫力たっぷりで、スラッシュメタルの激しさに、KING DIAMONDのようなヨーロピアンな叙情と
ダークなドラマ性も内包させた濃密なサウンドに仕上がっている。ちなみにアルバムのライナー解説は私です。
ドラマティック度・・8 疾走度・・8 辺境度・・8 総合・・8
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Pestilence「Spheres」
オランダのデスメタルバンド、ペスティレンスの4th。1993年作
1988年にデビュー、激しいスラッシュメタルだった1stから、2ndになるとテスメタル色を増し、
さらに1991年の3rdになると、いくぶんメロディを含んだ知的なサウンドへと深化、
そして本作ではプログレッシブな要素がさらに強まってきていて、
変則リズムを含んだテクニカルな展開などは、DEATHあたりに近い雰囲気となった。
ヴォーカルのわめき声のDEATHのチャック・シュルディナーになんとなく似ている。
随所にシンセアレンジを効かせつつ、個性的なギターのリフとフレーズにより、
硬質でありながらどこかスペイシーな浮遊感のあるサウンドになっているのが面白い。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・8 知的デス度・・8 総合・・8
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PESTILENCE「Resurrection Macbre」
オランダのデスメタルバンド、ペスティレンスの2009年作
80〜90年代に4枚のアルバムを残して解散したと思っていたが、なんと15年ぶりに復活、
ここに新作を発表した。スラッシュ風味のデスメタルという初期のテイストをしっかり残しつつ
現代的なヘヴィさをまとわせたクールなリフで疾走する、なかなかの力作だ。
吐き捨て型のヴォーカルはやや一本調子だが、ダークでミステリアスな雰囲気は
かつてのままで、アメリカ産バンドとは異なるヨーロピアンなスラッシュ/デスが楽しめる。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・8 オールドデス度・・8 総合・・7.5
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PESTILENCE「Doctrine」
オランダのデスメタルバンド、ペスティレンスの2011年作
80〜90年代に4枚のアルバムを残し、その後2009年に15年ぶりに復活を果たした、
スラッシュ風味のデスメタルという前作のスタイルから、復活2作目の今作では、
よりブルータルにツインギターの重厚なリフを乗せて疾走、激しいドラムとともにヘヴィにたたみかける。
随所にクールなテクニカルさを織り込んだり、甘すぎないフレーズをまぶしつつ
あくまでオールドスタイルの絡みつくようなデスメタルを聴かせてくれる。
粘着質のわめき声ヴォーカルを含めて、OBITUARYあたりにも近い感触だ。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・8 オールドデス度・・8 総合・・8
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Pestilence 「Obsideo」
オランダのデスメタルバンド、ペスティレンスの2013年作
2009年に復活してからの3作目で、本作でもメンバーがずいぶんと替わっている。
サウンドの方はのっけからブルータルにたたみかけるオールドスタイルのデスメタルで、
吐き捨て形のヴォーカルはOBITUARYを思わせる。楽曲はほとんどが3分台とシンプルな作風で
リフやフレーズにこれといった新鮮味もないので、あまりこのバンドならではのインパクトは感じられない。
突進するところはハードコア風味で、激しくはあっても緻密さがないので、聴いていてどうも物足りない。
随所に知的な浮遊感を感じさせる部分は悪くないのだが、どうせならもっと極端な方向性にしてほしい。
ドラマティック度・・7 疾走度・・8 楽曲度・・7 総合・・7.5
PESTILENCE 「Reflections of the Mind」
オランダのデスメタルバンド、ペスティレンスのレア音源集。2016年作
1988年にデビュー、1993年の4th「Spheres」を最後に休止するも、2009年に復活。本作は1992年のデモ、
1991〜1993年のリハーサル音源を収録。テクニカルデスへと移行してゆく、デモは4作目前の音源で、
ツインギターのリフにダミ声ヴォーカルを乗せ、リズムチェンジを含む緩急ある展開力で聴かせる、
DEATHにも通じるサウンドである。リハーサル音源の方は、さすがに音質がラウドであるが、
スラッシーな疾走感と随所にメロディックな味わいを含んだギターとともに、生々しい当時のサウンドが味わえる。
テクニカルデス度・・8 貴重音源度・・8 音質・・7 総合・・7.5
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Pestilence 「Hadeon」
オランダのデスメタル、ペスティレンスの2018年作
1988年にデビュー、1993年までに4作のアルバムを出して消えるが、2009年に復活、
本作は復活後の4作目となる。オールドなギターリフと低音デスヴォイスを乗せて、
ストレートな疾走感でたたみかける、デスラッシュ気味の強力なサウンドを聴かせる。
楽曲は3分前後とシンプルであるが、90年代を思わせるスラッシーな突進力に、
スローパートでの重厚な迫力にはデスメタルとしての不穏な空気感も匂わせる。
曲によってはリズムチェンジを含む知的なアレンジセンスも覗かせる、さすがの強力作デス。
ドラマティック度・・7 疾走度・・9 重厚度・・8 総合・・8
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Possessed 「Revelations Of Oblivion」
アメリカのデスメタル、ポゼストの2019年作
「元祖デスメタル」として知られるこのバンド。アルバムとしては1986年以来、じつに33年ぶりの復活作。
オリジナルメンバーは、ヴォーカルのジェフ・ベセーラらのみであるが、かつてを思わせるツインギターのリフに
迫力あるダミ声ヴォーカルを乗せて疾走する、オールドなスラッシュメタル風デスメタルは健在。
当時はいくぶんつたなかったテクニック面は、タイトなドラムを含めた確かな演奏力とともに、
より硬質な迫力を感じさせ、オールドスタイルでありながらも古臭さを感じさせない。
適度にメロデッィクなギターソロも覗かせつつ、スラッシュメタルとしても普通に楽しめる強力作。
ドラマティック度・・7 疾走度・・9 オールドスタイル度・・8 総合・・8
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Power Trip 「Manifest Decimation」
アメリカのスラッシュメタル、パワートリップの2013年作
オールドスタイルのギターリフに喚きヴォーカルを乗せて疾走する、80年代ルーツのスラッシュメタルで
ラウドな音質も含めて、かつてのアンダーグラウンドなハードコア寄りの雰囲気を再現している。
突っ走りぎみのドラムも往年のB級スラッシュの勢いを感じさせ、こもり気味のヴォーカルも迫力たっぷり。
楽曲は3〜4分前後が主体でわりとシンプルながら、疾走ナンバーのみでなく、スローやミドルテンポのナンバーでの
どっしりとした味わいもよろしく、 Bolt Throwerなど、80〜90年代のスラッシュ寄りデスメタルのファンにもニンマリだ。
ドラマティック度・7 スラッシュ度・8 古き良き度・8 総合・7.5
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Power Trip 「NIGHTMARE LOGIC」
アメリカのスラッシュメタル、パワー・トリップの2017年作
2作目となる本作も、ザクザクとしたギターリフに喚き声ヴォーカルを乗せて激しく疾走する、
オールドなスラッシュメタルが炸裂する。疾走ナンバーはもちろん、ミドルテンポでの恰好良さも前作以上で、
エッジの効いたギターと激しいドラムの迫力も、往年のSLAYERやDARK ANGELなどにもひけをとらない。
疾走スラッシュとしての爽快さと、ハードコアルーツのおどろおどろしさが合致したというべき強力作だ。
ドラマティック度・7 スラッシュ度・8 古き良き度・8 総合・8
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PSYCROPTIC「Ob (Servant)」
オーストラリアのテクニカル・デスメタルバンド、サイクロプティックの4th。2008作
一時期はコア系バンドに押され、正統派のデスメタルバンドは消えかけていたが、最近ではまた
テクニカルなブルデスバンドが増えてきた。このバンドもなかなかクオリティの高いブルータルデスメタルをやっている。
ブラストビートで強烈に疾走しながら、テクニカルな切り返しやブレイクを多用し、
オールドデスメタルの質感と、ある程度のモダンな感覚をバランスよく取り入れてて、
これがなかなか格好よい。ギターリフも往年のバンドをよく研究しているような感触で、
コア系のモダンさに逃げないセンスがよろしい。久々にいいデスメタルが聴けた。
ドラマティック度・・7 ブルータル度・・8 テクニカル度・・8 総合・・8
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R
RAISE HELL 「Holy Target」
スウェーデンのメロディックデス/スラッシュメタルバンド、ライズ・ヘルの1st。1998年作
2nd以降はスラッシュメタル路線になるのだが、本作ではブラストビートでたたみかけるメロディックブラックなサウンド。
ツインギターのリフで疾走する激しさの中にほどよくメロディックな聴き心地があって、DISSECTIONなどのオールドスタイルの
メロブラ、メロデス好きならけっこう気に入るだろう。無名ながらこの質の高さはもっと多くのリスナーに知られるべき。
メロディアス度・・8 暴虐度・・8 オールドメロブラ度・・8 総合・・8
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RAISE HELL「Not Dead Yet」
スウェーデンのスラッシュメタルバンド、ライズ・ヘルの2nd。2000年作
1stではメロブラ的な激しさのサウンドだったが、本作ではむしろザクザクとしたリフで聴かせる
スラッシュメタル風味と古き良きパワーメタルの質感もあるという今どき硬派なサウンドになっている。
ヴォーカルはデスとまでいかないダミ声で、今作では楽曲は疾走感は控えめ。
あくまでギターによってノリを出すという、地味だがあくまで正統派のスタイルを守っている。
正直、これといってインパクトや耳を引く新鮮さはないのに、これかなかなか楽しめるのは、
たとえばKREATORやTESTAMENTなどのかつてのオールドなスラッシュスタイルに近いからだろう。
随所に聴かせるメロディックなギターフレーズもいい。地味だが味のある作品だ。
ドラマティック度・・8 疾走度・・7 古き良き度・・8 総合・・8
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Raise Hell 「Wicked Is My Game」
スウェーデンのスラッシュメタル、ライズ・ヘルの2002年作
1998年にデビュー、本作は3作目となる。1作目はメロブラ風の激しいサウンドサウンドであったが、
2作目ではスラッシュ寄りの作風に変化。本作もザクザクとしたギターリフに吐き捨てヴォーカルを乗せた、
スラッシーなスタイルで、ミドルテンポを主体にしつつ、KREATORのようなアレッシブな疾走感も覗かせる。
全体的には、メロディックな部分は希薄で、エッジが効いたギターリフで聴かせるの作風なので、
スラッシュメタルを志向してゆくのなら、もう少し激しい疾走ナンバーがあってもよい気もするが。
ドラマティック度・・7 疾走度・・7 スラッシー度・・8 総合・・7.5
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RAISE HELL「City of the Damned」
スウェーデンのデスラッシュメタルバンド、ライズ・ヘルの4th。2006年作
1stはDISSECTIONばりのメロブラで、2ndではKREATORみたいなスラッシュになったこのバンド、
4作目を聴いてみますと、やっぱりなかなか格好いいスラッシュメタルなのでした。
ザクザクとしたギターリフにダミ声ヴォーカルを乗せた、なかなかセンスのよいサウンドは
ANNIHILATORあたりにも通じるか。随所に聴かせるメロディックなフレーズもポイントで、
ダークなドラマ性と古き良きスラッシュの感触を合わせた高品質なアルバムだ。
ドラマティック度・・7 疾走度・・7 スラッシュ度・・8 総合・・8
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RavenWoods「Enfeebling the Throne」
トルコのデスメタル、レイヴンウッズの2011年作
ターキッシュデスメタルというのも珍しいが、クオリティはこれがなかなか高い。
ブラストビートで激烈にたたみかける迫力と、かもしだすダークな荘厳さは、
たとえばVADERやBEHEMOTHなどと比べても、まったく引けをとらない。
ツインギターのリフはときにテクニカルで、随所にアラビックなフレーズも覗かせるなど
そのセンスの良さも光っている。土着性を活かしたドラマティックなデスメタル傑作!
ドラマティック度・・8 暴虐度・・8 荘厳度・・8 総合・・8
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RAZORWYRE 「Another Dimension」
ニュージーランドのスラッシュメタル、レイザーワイアーの2012年作
ツインギターの5人編成で、ザクザクのギターリフとハイトーンヴォーカルを乗せて疾走する、
オールドスタイルのスラッシュメタルサウンド。激しいだけでなく、適度にフックある展開も含めて
楽曲や演奏のクオリティもなかなか高く、NZ産というマイナー臭さはほとんど感じさせない。
スピードチューンたっぷりの、古き良き正統派スラッシュメタルが好きな方はぜひ。
ドラマティック度・・7 疾走度・・8 オールドスラッシュ度・・8 総合・・8
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Reptilian Death 「The Dawn of Consummation & Emergence」
インドのデスメタル、レプティリアン・デスの2013年作
オールドスタイルのギターリフに吐き捨てヴォーカルを乗せて激しくたたみかける、王道のブルータルデスメタル。
楽曲は3〜4分前後とシンプルで、ときにリズムチェンジを含んだテクニカル寄りの構築力も覗かせつつ、
基本はザクザクとしたギターリフとともに疾走する、わりと分かりやすいブルデスサウンドが楽しめる。
全体的には、もっと荘厳な迫力か、圧倒するようなテクニカル性があれば、一段上にゆける実力はありそう。
演奏力も含めてインド産という地域性は感じさせない、確かなクオリティをもった強力作デスな。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・8 構築度・・8 総合・・8
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REVOCATION「Existence Is Futile」
アメリカのテクニカル・スラッシュメタル、レヴォケーションの2009年作
ギター、ベース、ドラムのトリオ編成で、激しく突進しつつも展開力のある
テクニカルなスラッシュメタルをやっている。クールなギターリフとともに
随所にメロディックなフレーズも織りまぜて、古き良きスラッシュの格好よさと
モダンな硬質感を同居させた、じつに質の高いサウンドだ。知的なアレンジ力に
プログレッシブといってもいい構築センス、そして激しさを併せ持った傑作アルバム。
ドラマティック度・・8 スラッシー度・・8 構築度・・8 総合・・8
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REVOCATION「Chaos of Forms」
アメリカのテクニカルスラッシュメタル、レヴォケーションの2011年作
前作同様、切れ味の鋭いリフを乗せて疾走するデスラッシュ的な突進力に
モダンなテクニカルさを備えたサウンドは、オールドスラッシュの質感を残しつつも
随所にプログレッシブな展開力を覗かせる、その思い切りの良いアレンジが素晴らしい。
激しさの中にもメロディックな味わいや洒落たフレーズを入れる余裕と知的なセンスが
聴き手をにやりとさせる。単なるスラッシュではない、器の大きさを感じさせるバンドである。
ドラマティック度・・8 スラッシー度・・8 構築度・・8 総合・・8
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REVOCATION
アメリカのテクニカル・(デス)スラッシュメタル、レヴォケーションの2013年作
4作目となる本作は、ツインギターの硬質なリフにダミ声ヴォーカルを乗せて疾走しつつ、
随所に激しいブラスト疾走を含んだモダンなデスコア風味が加わったサウンドになっている。
前作までのメロディックな部分が薄まって、デスメタル的でもあるブルータルな激しさが増していて、
リズムチェンジを含んだテクニカルな切り返しは、このバンドならではの知的な構築性を感じさせる。
もはやスラッシュというよりは、テクニカルなエクストリームメタルというべき感触であるが、
この路線を好むリスナーも多いのではなかろうか。個人的には前作までの路線が好みではあるが。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・8 ほぼテクデス度・・8 総合・・8
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REVOCATION 「Deathless」
アメリカのテクニカル(デス)スラッシュメタル、レヴォケーションの2014年作
5作目となる本作は、テクニカルデス寄りだった前作の延長上のサウンドで、
ツインギターのクールなリフを乗せた切れ味のよい、アグレッシブな聴き心地。
前作に比べるとメロディックなフレーズが増えていて、テクニカルな展開力をともなった
ドラマティックなスラッシュメタルという作風にやや立ち戻っている感もある。
一方では、モダンなヘヴィネスでたたみかける知的なデスコア風味も残していて、
プログレッシブ・テクニカルデスというナンバーもあるので、やはりこの路線でゆくのだろう。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・8 知的な構築度・・8 総合・・8
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REVOCATION 「GREAT IS OUR SIN」
アメリカのテクニカル(デス)スラッシュメタル、レヴォケーションの2016年作
2008年にデビューし、本作は6作目となる。ザクザクのギターリフに吐き捨てヴォーカルを乗せて激しく疾走しつつ
テクニカルなリズムチェンジを含んだ知的な構築力と、随所にメロデッィクなギターフレーズも含んだサウンド。
デスメタルというほどの暴虐さはないので、やはりプログレッシブなテクニカル・スラッシュメタルという作風で、
エッジの効いたリフと流麗なメロディを弾きこなすギターの実力もかなりのもの。スラッシーに疾走するパートから、
変則リズムまくりで知的に展開する、前作以上にプログレッシブな味わいで、今作ではノーマル声ヴォーカルを使ったりと、
ブルータルになり過ぎないという点で、テクデスとしてはとても聴きやすい。DEATHなどが好きな方にも楽しめる力作だろう。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 激しくも優雅度・・9 総合・・8.5
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S
SACROSANCT 「Tragic Intense」
オランダのスラッシュメタル、サクロサンクトの1993年作
1990年にデビュー、本作は3作目。甘すぎない叙情のツインギターにパワフルなヴォーカルと、
随所にリズムチェンジを含んだ構築力で、ダークな味わいの知的なパワーメタルを聴かせる。
ヴォーカルの声質なども含めて、初期のMEATALLICAなどにも通じる雰囲気もあり、
スラッシュというほどには激しい疾走感はないが、5〜8分という長めの楽曲を主体にした、
いくぶんプログレッシブな味わいとともに、どっしりとしたクールなサウンドが楽しめる。
CORONERやDESPAIRなど、インテレクチュアルなスラッシュが好きな方にもお薦めです。
ドラマティック度・・7 疾走度・・6 重厚度・・8 総合・・7.5
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SACROSANCT「NECROPOLIS」
オランダのスラッシュメタル、サクロサンクトの2018年作
1990〜93年までに3作を残して消えたバンドの、じつに25年ぶりとなる復活作で、
叙情的なツインギターにパワフルなヴォーカルを乗せた、重厚なパワーメタルは健在。
ヨーロピアンな翳りを帯びたダークな感触と、ほどよくメロディックなテイストが同居して、
スラッシーな疾走パートを含む緩急ある展開力とともに、ドラマティックなサウンドが楽しめる。
ちなみに、ギターは元PESTILENCEと知って納得。ときにMEGADETHを思わせるような部分もあり、
これぞインテレクチュアル・スラッシュという恰好良さ。復活作にして最高作ですな。
ドラマティック度・・8 疾走度・・7 重厚度・・8 総合・・8
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SADUS「A VISION OF MISERY」
アメリカのスラッシュメタルバンド、セイダスの1992年/2003作
ベイエリアスラッシュシーンの中でも通好みのバンドとして知られるこのバンド。
ザクザクのリフと吐き捨てヴォーカルで疾走するスタイルながら、
ブレイクや唐突な緩急をつけた混沌とした展開はなかなか変態的で楽しめる。
また、後にDEATHやTESTAMENTでも活躍するスティーヴ・ディジョージオのベースプレイは
ややもするとドタバタとしたB級スラッシュになりがちなサウンドの中で異彩を放っている。
今で言うテクニカルスラッシュの先駆けか。90年代初頭のヘンタイスラッシュをリマスターで。
ドラマティック度・・7 疾走度・・7 変態スラッシュ度・・8 総合・・7.5
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Sanctuary 「Refuge Denied / Into the Mirror Black」
アメリカのスラッシュ・パワーメタル、サンクチュアリの1st、2ndカップリング。1987/1990年作
NEVERMOREの前身バンドとしても知られるバンドで、1987年の1作目は、MEGADETHのデイブ・ムステインがプロデュース、
わりと王道のギターにハイトーンヴォーカルを乗せて、ミドルテンポを主体にした知的なスラッシュ・パワーメタルを聴かせる。
突出したインパクトはないが、随所に叙情的なギターフレーズも覗かせつつ、適度にダークな味わいで楽しめる好作品。
1990年の2作目になると、よりインテレクチュアルな感触になり、スラッシーな感触が薄まっているが、緩急ある展開力とともに
ProgMetal的にも楽しめるサウンドになっている。巧みなギターリフとフレーズのセンスも光っていて、ほどよい叙情性を含ませた
楽曲としてのクオリティもぐっと上がっている。本作を最後にバンドは解散するも、2014年になって、24年ぶりに復活する。
ドラマティック度・・7 スラッシー度・・7 インテレクチュアル度・・8 総合・・8
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SAVAGE MESSIAH 「Plague of Conscience」
イギリスのスラッシュ・パワーメタル、サヴェージ・メサイアの2012年作
ツインギターのリフで疾走する、古き良きスタイルのパワーメタルサウンド。
スラッシーな激しさでたたみかけながら、随所にドラマティックな展開力もあり、
かつてのHEATHENあたりに通じる雰囲気は、オールドメタラーには嬉しい聴き心地である。
中庸なミドルテンポ曲もあるが、全体的には完成度の高いスラッシュ・パワーメタル作品だ。
ドラマティック度・・8 パワフル度・・8 オールドスタイル度・・8 総合・・8
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SAVAGE MESSIAH 「The Fateful Dark」
イギリスのスラッシュ・パワーメタル、サヴェージ・メサイアの2014年作
スラッシュ風味の正統派パワーメタルとしてクオリティの高かった前作に続き、
本作もツインギターの硬質なリフで激しく疾走するスラッシーな感触に
いくぶんダーティなヴォーカルを乗せた、かつてのMETALLICAを思わせるような
勢いあるサウンドでたたみかける。随所にメロディックなギタープレイも覗かせつつ、
あくまで古き良きパワーメタルのマインドに包まれた聴き心地が心地よい。
英国のバンドらしいドラマティックな雰囲気も感じさせる、前作以上の傑作です。
ドラマティック度・・8 スラッシー度・・8 パワフル度・・8 総合・・8
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The Scourger 「Dark Invitation To Armageddon」
フィンランドのスラッシュメタル、スコージャーの2008年作
ツインギターのリフとダミ声ヴォーカルを乗せて疾走する、オールドスタイルのスラッシュメタルで、
KREATORやTANKARD、Artilleryのように、甘すぎないメロディックなテイストを含んだ聴き心地は、
アメリカ系ではなく、やはりヨーロピアンなスラッシュメタルサウンドと言えるだろう。激しく疾走しながらも、
緩急の付いたリズムチェンジや、知的なリフワークによるテクニカルな構築性を感じさせるところなどは、
いかにもフィンランドのバンドらしい。正統派スラッシユを基本に、適度にモダンなスケール感も備えた強力作だ。
ドラマティック度・・7 疾走度・・8 オールドスラッシュ度・・8 総合・・8
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SEPULTURA 「MACHINE MESSIAH」
ブラジルのメタルバンド、セパルトゥラの2017年作
1986年にデビュー、初期のスラッシュ路線からしだいに方向性を変えつつも、メタルとしての激しさも残したスタイルで
カヴァレラ兄弟脱退後も活動を続け、本作は14作目となる。ほどよく叙情的なギターにマイルドなヴォーカルを乗せ、
ゆったりとしたメロウなサウンドを描きつつ、グロウル寄りのダーティな歌声とともに、ダークな雰囲気に包まれる。
スラッシーに疾走するアグレッシブなナンバーなどは、初期からのファンにはなつかしい感触だろうし、
モダンなベヴィネスや曲によってはオーケストラルなシンフォニック性も覗かせるなど、意欲的なアレンジも光る。
スラッシュメタルとしての激しさも取り戻したことで、メタルとしての確かな強度も感じさせる。なかなかの力作だ。
ドラマティック度・7 重厚度・8 叙情度・7 総合・8
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SEVENTH ANGEL 「The Torment」
イギリスのスラッシュメタル、セヴンス・エンジェルの1990年作
その昔、ロドニー・マシューズによるジャケに惹かれて購入したバンド。2018年のリマスター再販盤。
ツインギターのザクザクとしたリフにダーティな吐き捨てヴォーカルを乗せた、ダークなメタルサウンド。
疾走する激しさよりは、エッジの効いたギターリフで、重厚な迫力を描くタイプで、スローパートなどでの
どっしりとした感じにはデスメタル的な雰囲気もあるが、随所にツインギターによる叙情性も覗かせたり、
テクニカルな展開力のナンバーもあったりと、ほどよいマイナーな翳りとともに、いま聴いても案外面白い。
90年代初頭の英国ダークメタルの隠れた逸品。いくぶん正統派寄りになる2作目もなかなか良い出来です。
ドラマティック度・・7 疾走度・・7 重厚度・・8 総合・・7.5
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SILENT SCYTHE「SufFer In SileNce」
スウェーデンのデスラッシュバンド、サイレント・サイスの2004年作
AT THE GATESを思わせるリフで疾走しつつ、ヴォーカルはスクリーム系のノーマルヴォイス、
オールドなメロディックデスやデスラッシュ的な雰囲気に加え、モダンなヘヴィロック風味も感じられる。
若手ながらツインギターの絡みにはセンスを感じるし、ときにIN FLAMESのメロディや、
あるいはMETALLICAをはじめ古き良き80'sメタル風の質感も垣間見せたりと、
曲のバラエティが豊かだ。ラスト曲はアコースティックの土着音楽で意表を突いてくるし。
反面、これだというパンドの確固たる方向性がないのが今後の課題か。
地味すぎるジャケも損をしている。個人的にはオールドなデスラッシュを目指していって欲しい。
ドラマティック度・・8 デスラッシュ度・・7 メロデス度・・7 総合・・7.5
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Skeletal Remains 「Devouring Mortality」
アメリカのデスメタル、スケルタル・リメインズの2018年作
2012年にデビュー、本作は3作目となる。G&Vo、B、Drというトリオ編成で、ザクザクとしたギターリフに
吐き捨てるデス声を乗せたオールドスタイルのデスメタルに、リズムチェンジを含む構築性を加えた
初期のDEATHなどにも通じるサウンド。随所に流麗なフレーズを聴かせるギターのセンスもなかなかのもので、
軽くならない程度のメロディを含ませつつ、デスメタルとしてブルータルな迫力をしっかり残したバランスの良さも光る。
激しい疾走パートもありつつ、ミドルテンポでのどっしりとした部分は、OBITUARYのようなグルーヴィな味わいで
絡みつくようなデスヴォイスも説得力十分だ。90年代のフロリダ系デスメタルが好きな方にはお薦めデス。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・8 重厚度・・8 総合・・8
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SLAYER 「Reign in Blood」
アメリカのベテランスラッシュバンド、スレイヤーの3rd。1986作
無機質かつ硬質なリフで聴かせる本作は、暗黒めいたジャケのイメージと相まって、
このバンドの名を世界中に知らしめることになった歴史的傑作である。
徹頭徹尾スラッシーに疾走する強烈なサウンドは、後のKREATORやVADERをはじめ、多くのバンドたちに影響を与えた。
デイブ・ロンバードの迫力あるドラムもサウンドの説得力を高めており、
全10曲で30分弱という短さだが、濃密なスラッシュサウンドがめいっぱい詰まった作品だ。
ドラマティック度・・7 疾走度・・9 スラッシュ度・・10 総合・・8
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SLAYER「Diabolus in Musica」
スラッシュメタルの帝王、スレイヤーの7th。1998作
モダンなヘヴィさを取り入れつつも、スラッシーな迫力をしっかりと残したスタイルは
「REIGN IN BLOOD」の頃の無慈悲なまでの強烈さはないものの、
ツインギターの巧みなフレーズと硬質なリフによる説得力は、さすがの貫祿である。
グルーヴィなアンサンブルを取り入れたヘヴィロック質感もあるのだが、
あくまでもダークな世界観を貫き、緊張感に溢れたモダン・スラッシュの力作だ。
ドラマティック度・・7 疾走度・・7 モダンスラッシュ度・・9 総合・・8
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SLAYER「God Hates Us All」
スラッシュメタルの帝王、スレイヤーの8th。2001作
ジャケやタイトルが表す通り、本作はより邪悪かつアグレッシブな怒りに溢れた
スレイヤーサウンドが戻ってきている。エッジの効いたオールドスタイルの硬質なリフと
咆哮するヴォーカルを乗せて疾走する様は、まさにスラッシュ界の帝王である。
ミドルやスローテンポでのヘヴィネスを活かしつつ、前作で取り入れたモダンさを残しながら、
力強いスラッシュメタルを聴かせる。ギターリフの面白さでは前作に軍配か。
ドラマティック度・・7 疾走度・・8 モダンスラッシュ度・・9 総合・・8
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SLAYER「Christ Illusion」
スラッシュメタルの帝王、スレイヤーの9th。2007作
オリジナルドラマーのデイヴ・ロンバードが復帰し、ジャケのイメージも含めて
かつてのファストで異端的なスレイヤーが蘇ったようなアルバム。のっけから往年を思わせる切れ味のリフと
強力な疾走で聴かせる、ハードコアスタイルの激烈なスラッシュサウンドが炸裂。
これでもかというようにたたみかけてくる無慈悲なまでの音圧は、かつての名作「REIGN IN BLOOD」を思わせる凄まじい勢いがある。
ドラマティック度・・7 疾走度・・9 スラッシュ度・・9 総合・・8
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SLAYER「World Painted Blood」
スラッシュメタルの帝王、スレイヤーの10作目。2009作
デイヴ・ロンバードが復帰して話題を呼んだ前作は、ハードコアスタイルの
激烈なスラッシュサウンドで、かつての「REIGN IN BLOOD」の頃を思わせる勢いがあったが、
本作はのっけからミドルテンポで始まり、おやと思うが、2曲目以降は古き良きスラッシュメタルとしての
変わらぬ音を聴かせてくれてひと安心。正直、楽曲自体にもはや新鮮味はないのだが、
これがスレイヤーと思える人にはいいアルバムだろうし、新機軸を求める人には物足りないだろう。
音質的にもやや軽め…というか古めかしい感じがして、破壊的な強烈さはあまり感じられない。
ドラマティック度・・6 疾走度・・7 スラッシュ度・・8 総合・・7.5
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SOILENT GREEN「A Deleted Symphony for the Beaten Down」
アメリカのグラインド・コア系デスメタルバンド、ソイレント・グリーンの2001作
激烈に疾走するブルータルなサウンドながら、変則的なリズムチェンジを取り入れるなど、
緩急のつけられた楽曲には知的な冷徹さも感じられ、絡みつくようなリフには
どことなくMORBID ANGEL的なミステリアスさも漂わせている。ブラストビートも爽快だ。
ちょうどオールドデスメタルとモダン化するデスコアの中間という雰囲気で、ヘヴィでありつつ
ときにドゥーミーなギターリフは説得力も充分。ストーナーロックのデスメタル風味という感触もある。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・8 ヘヴィリフ度・・8 総合・・8
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SODOM 「Agent Orange」
ドイツのスラッシュメタル、ソドムの3rd。1989年作
1984年デビュー、ジャーマンスラッシュを代表するベテランの代表作が、ボーナス追加で紙ジャケ再発された。
エッジの効いたギターリフと吐き捨てヴォーカルを乗せて突進する、ストレートなスラッシュメタルは、
過去2作に比べて、リズム面での演奏力の向上とともに、サウンドの迫力と硬質感を強めていて、
枯葉剤を意味するタイトル通り、戦争をテーマにしたシリアスなイメージとともに強固な説得力も加わった。
疾走一辺倒だけでなくリズムチェンジを含む展開力で、楽曲ごとのノリがあるので、スラッシュ入門用にも良いだろう。
トリオ編成でのソドムの完成形というべき強力なアルバムである。ギターのフランクは本作を最後に脱退するが、2018年に復帰を果たす。
ドラマティック度・・7 疾走度・・8 スラッシュ度・・9 総合・・8
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SODOM「'TIL DEATH DO US UNITE」
ドイツのスラッシュメタルバンド、ソドムの8th。1997作
KREATOR、DESTRUCTIONとともに80年代から活動を続け、ジャーマンスラッシュ三羽ガラスともいわれる彼らだが、
この3バンドの中では一番明快かつ単純な突進型スラッシュをやっているのが彼らだ。
聴くのはたぶん1992年の「Tapping the Vein」以来だろうか。印象はあまり変わらない、
ザクザクリフで疾走突進するサウンドだ。彼らの場合、ジャーマンらしい湿りけはほぼ皆無で、
今作ではMOTORHEADを激しくしたようなダーティな質感でたたみかけている。
ドラマティック度・・7 疾走度・・8 スラッシュ度・・9 総合・・7.5
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SODOM
ジャーマンスラッシュのベテラン、ソドムの2006作
かつては疾走一辺倒のハードコアなスラッシュメタルであったこのバンドだが、デビューから20数年を経て、
本作ではただ激しいだけでなくしっかりとした重厚なリフで聴かせる力作となっている。
もちろん彼らの持ち味であるマシンガンのようにたたみかける勢いも衰えは見せず、
そこにベテランのみがかもしだせる説得力が、ある種のドラマティックさとともに加わっている。
バンド名をセルフタイトルにした意気込みが伝わって来る、ソドムの集大成的なアルバムだ。
ドラマティック度・・7 疾走度・・8 スラッシュ度・・9 総合・・8
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SODOM「Final Sign of Evil」
ジャーマンスラッシュのベテラン、ソドムの2007年作
1984年のデビューミニ「IN THE SIGN OF EVIL」を未発曲とともに新たに再録した作品。
オリジナルメンバーである、クリス・ウィッチハンター、グレイブ・バイオレイターが参加し
こもり気味の音質も含めて往年の雰囲気を完全に再現している。
楽曲自体はいわゆるスラッシュというよりはVENONあたりから受け継がれた
ダークなメタル(当時はブラックメタルと呼ばれた)という感じで、ヨレ気味のクリスのドラムなども、
最近のリスナーにはえらく古くさいものに聴こえるだろう。個人的にはにやにやしてしまう。
ドラマティック度・・7 疾走度・・7 スラッシュ度・・8 総合・・7
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SODOM 「Epitome of Torture」
ドイツのスラッシュメタル、ソドムの2013年作
ジャーマンスラッシュメタルのベテラン中のベテラン、もはや何作めなのか分からないが、
激しく突進するパワフルなスラッシュサウンドは健在で、傑作となった2006年作からの流れで、
随所にメロディックなギターも含ませた聴き心地は、なかなかドラマティックでもある。
ベルネマンの奏でるギターリフとフレーズは、若手のバンドにも決して引けをとらないセンスで、
ソドム・サウンドの核をになっている。また、本作からドラムが替わっているが、新ドラマーのマカのタイトで
パワフルなドラムとトム・エンジェルリッパーのベースとの相性もよく、ヘヴィなリズムを叩き出している。
疾走もあり、ヘヴィなミドルテンポも格好いいという、また新たなソドムの進化を感じさせる力作である。
ドラマティック度・・7 ヘヴィ度・・8 スラッシュ度・・8 総合・・8
SODOM「Out Of The Frontline Trench + PARTISAN」
ドイツのスラッシュメタル、ソドムの2019年作
1984年デビューのジャーマンスラッシュのベテラン。本作は2作のEPをまとめた日本企画盤。
フランク・ブラックファイアが再加入、ヨーク・ゼーガツとのツインギター編成となり、
ストレートに突進する王道のスラッシュサウンドに、よりいっそうの迫力が加わった。
トム・エンジェルリッパーの吐き捨てヴォーカルも、ベテランらしい味わいがあり、
疾走するダークな説得力という点では、KREATORなどにもひけをとらないだろう。
過去の傑作「Agent Orange」の再録バージョンもファンには嬉しい。ソドマニアはチェック!
ドラマティック度・・7 疾走度・・8 スラッシュ度・・9 総合・・8
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SODOM 「Genesis XIX」
ジャーマンスラッシュメタルのベテラン、ソドムの2020年作
1984年デビューのベテラン、前作EPからツインギターの4人編成となり、ドラムは交替しているが、
激しすぎずソリッドすぎないオールドスタイルの疾走スラッシュメタルサウンドは健在。
ツインギターになったことでリフの重厚感が強まり、トム・エンジェルリッパーのダミ声ヴォーカルを乗せて
曲によってはかつてのブラックメタルのルーツのひとつであった頃の、サタリックな雰囲気もまとわせる。
6分、7分という長めのナンバーでは、スローテンポなども取り入れつつ、荘厳といってもよいダークな迫力に包まれて、
強固な世界観を描き出す。往年のソドムらしさをたっぷり残しつつ、しっかりとクオリティアップしたという力作です。
ダーク度・・8 疾走度・・8 スラッシュ度・・9 総合・・8
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SPACE EATER「Aftershock」
セルビアのスラッシュメタルバンド、スペース・イーターの2nd。2010年作
ツインギターのリフで疾走する古き良きスタイルのスラッシュメタルサウンド。
1st発表後にVoが死去し、それを乗り越えての2作目ということで非常に気合が感じられ、
EXODUS+ARTILLERYというような、つまりベイエリアのザクザク感にヨーロピアンな質感を加えた
じつに勢いのあるスラッシュメタル聴かせてくれる。リフはもちろん格好いいのだが、
随所にメロディックなソロを聴かせるなど、ギターのセンスもなかなかのもので、
単に突っ走るだけでなく楽曲にはフックがある。往年のスラッシュ好きはぜひチェック。
ドラマティック度・・7 疾走度・・8 往年のスラッシュ度・・9 総合・・8
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SPAWN OF POSSESSION「Cabinet」
スウェーデンのテクニカル・デスメタルバンド、スポーン・オブ・ポゼッションの2003作
ジャケの雰囲気はまるで90年代初頭のマイナー系デスメタルのようだが、
そのサウンドもかつてのオールドスタイルを踏襲したようなテクニカルなデスです。
ブラスト入りの激しいリズムと、どこかなつかしいような吐き捨てデスヴォイスは、
Malevolent Creationや、SUFFOCATION、Monstrosityなどを思わせる雰囲気。
最近のバンドのようなモダンさは皆無で、なんとなく昔っぽいスネアドラムの音も含めて
アナログ的なレトロさと、有機的な質感があるのもよい。オールドデスメタル好きはチェック!
ドラマティック度・・7 暴虐度・・8 テクニカル度・・8 総合・・8
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SPAWN OF POSSESSION「Noctambulant」
スウェーデンのデスメタルバンド、スポーン・オブ・ポゼッションの2nd。2007年作
前作もなかなか強力なテクニカルデス作品であったが、本作ではブラストする激しいデスメタル質感と
テクニカルな展開力とともに、モダンな雰囲気が備わってきた。ブレイクを多用したせわしないリズムに
スイープによる早弾きギターが重なる雰囲気は、Braindrillなどにも通じるものがあるだろう。
オールドなデスメタル風味であった前作よりも、現代的な硬質さとキレ味がついたことで、
テクニカルなデスコア好きのリスナーにも対応。聴いていてヘトヘトになる強力作。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・9 ヘンタイ度・・8 総合・・8
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Spawn of Possession 「Incurso」
スウェーデンのテクニカル・デスメタル、スポーン・オブ・ポゼッションの3rd。2012年作
過去2作も濃密なテクニカルデスの力作であったが、本作ではシンセを取り入れたイントロカら
荘厳な雰囲気で、全体的にもプログレッシブ・デスというような感触がついてきた。
ツインギターのクールなリフと変則リズム、ブレイクをまじえたテクニカル性とブルータリティが合わさり、
せわしなくたたみかけるヘンタイ系デスメタルが炸裂する。メロディックなフレーズが増したことで、
緩急のつけ方とアレンジのメリハリが際立ち、個人的にはより楽しめるバンドになった。
Decrepit Birthあたりが好きな方もぜひ。知的変態系テクニカルデスメタルの傑作。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・9 ヘンタイ度・・8 総合・・8
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Speedtrap 「Powerdose」
フィンランドのスピードメタル、スピードトラップの2013年作
オールドなギターリフを乗せて疾走する、スラッシーでシンプルなスタイル。
80年代のNWOBHMサウンドを、より激しいスピードメタルにしたという雰囲気は、
初期のMETALLICAに通じるものがあるだろうが、こちらはよりパンキッシュでストレート。
パワフル過ぎないほどよいローカルさとともに、オールドメタラーには心地よいノリで、
スラッシュというより、古き良き正統派メタルとして楽しめる。全8曲、全29分という爽快作。
ドラマティック度・・7 疾走度・・8 古き良き度・・8 総合・・7.5
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SPEEDTRAP 「Straight Shooter」
フィンランドのスピードメタル、スピードトラップの2015年作
80年代の古き良き香りを漂わせながら、勢いよく疾走するスラッシーなスピードメタルサウンド。
ギターリフは硬質すぎず、スラッシーなヘヴィさよりもむしろパンキッシュな粗さを覗かせながら、
オールドなロック感触を取り込んだ聴き心地で、いわばこれもNWOTHMのひとつというべきか。
ハイトーンのヴォーカルにしても、どことなくローカルなマイナー臭さを漂わせていて、
メロディックというほどではないがフックを感じさせる楽曲はけっこう聴きやすい。
スラッシュとしての激しさではなく、あくまでオールドスタイルのメタルというべき強力作だ。
ドラマティック度・・7 疾走度・・8 古き良き度・・9 総合・・8
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SUBLIME EYES 「Sermons & Blindfolds」
ノルウェーのデスメタル、サブライム・アイズの2015年作
2010年にデビューし、本作は2作目となる。ツインギターのリフにダミ声ヴォーカルを乗せ、
どっしりとした重厚さで聴かせる、わりとオールドスタイルの北欧デスメタルサウンド。
ミドルテンポのデスラッシュ風ナンバーから、かつてのAT THE GATESのような疾走曲もあり、
いくぶんメロディックな感触も含ませつつも、甘すぎないアグレッシブな迫力に包まれる。
4〜5分前後の楽曲は激しすぎず、メロディアス過ぎずというところで、突き抜けたインパクトはなく、
個人的には、より疾走感を強めるか、よりメロディックにするかの極端さが欲しい気がする。
ドラマティック度・・6 暴虐度・・7 重厚度・・8 総合・・7
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SUFFOCATION「Effigy of the Forgotten/Pierced from Within」
アメリカのデスメタルバンド、サフォケイションの1st、3rdのカップリング盤。1991/1995作
ブルデス系の名バンドとして人気のこのバンド、メンバーに黒人がいることも当時は話題だった。
1stフル「Effigy of the Forgotten」の激烈なサウンドは、まさにオールドなデスメタルの王道的スタイルながら、
緩急のついた複雑な曲展開は、ある意味でけっこうテクニカルでもある。
ブレイクを多用したリズムへのこだわりを聴かせる点では、後のCRYPTOPSYなどにも通じるものがあるが、
こちらはもっとどろどろとした暗さがあり、ザクザクのギターリフを乗せた暴虐なブラストが心地よい。
3rd「Pierced from Within」ではDEATHを激しくしたようなテクニカル変則リズムサウンドがまた凄い。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・9 テクニカル度・・8 総合・・8
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SUFFOCATION「Close of a Chapter」
アメリカのデスメタルバンド、サフォケイションのライブアルバム。2009作
アメリカの伝説的なデスメタルバンドとして多くのファンからリスペクトされるこのバンド、
1990年にデビューしてから、ミニアルバムを含め1998年までに5作を発表するも解散、
そして2004年についに復活を飾ると、その後2009年までに3作を発表、
本作はその復活後の2005年のステージを収録したライブアルバムだ。
デビュー作から2004年の復活作までのアルバムからまんべんなく演奏し、
迫力たっぷりのブルータルかつテクニカルなデスメタルを楽しませてくれる。
ライブ演奏・・8 ブルータル度・・9 オールドデス度・・9 総合・・8
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SUFFOCATION「Blood Oath」
アメリカのデスメタル、サフォケイションの2009年作
1991年デビューのベテランバンド、一時期の解散から復活し、本作は通作6作目のアルバム。
強烈なツーバスのドラムに低音グロウルヴォイス、そして有機的なツインギターのリフを乗せ、
適度に知的な構築性を含んだ緩急あるデスメタルサウンドを聴かせる。ただ激しいだけでない、
メリハリのある展開と、どっしりとした荘厳さな空気感は、ベテランならではの説得力ある聴き心地。
うねるようなベースの存在感と、巧みなギターリフが合わさって、テクニカルデス的な耳でも楽しめる。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・8 荘厳度・・9 総合・・8
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Suffocation 「Pinnacle of Bedlam」
アメリカのデスメタル、サフォケイションの2013年作
1991年にデビューし、一時期の解散から復活をへて、通作7作目のアルバム。
低音のグロウルヴォーカルとテクニカルなギターリフを乗せて突進するブルータルな感触と
適度にメロディックなフレーズも含んだ、知的な展開力で濃密なサウンドを描き出す。
オールドスタイルにこだわったおどろおどろしくグルーヴィな圧迫感、リズムチェンジによる
緩急ある構築力で、緊張感に包まれたデスメタルの強度を維持しているのはさすがベテランである。
クリアすぎないサウンドプロダクションも絶品だ。元祖テクニカルデスの面目躍如たる傑作。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・8 テクニカル度・・8 総合・・8
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Sunless 「Ylem」
アメリカのテクニカル・デスメタル、サンレスの2022年作
G/Vo、B、Drというトリオ編成で、ブラスト疾走するドラムに重すぎないギターとデスヴォイスを乗せ、
緩急あるリズムチェンジで、激しすぎないオールドスタイルの知的なテクニカルデスを聴かせる。
不穏なギターリフとともに、どこかミステリアスな空気を描きつつ、わりと軽めのドラムも含め、
ヘヴィ過ぎないサウンドは、かつてのDEATHなどが好きな方にも楽しめるだろう。
3〜5分前後の楽曲を主体に、ラストの7分のナンバーでは、プログレッシブデス的な構築力も覗かせる。
ドラマティック度・7 暴虐度・7 テクニカル度・8 総合・8
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Swashbuckle「Back to the Noose」
アメリカのスラッシュメタルバンド、スワッシュバックルの2009作
ジャケやメンバー写真からしても、海賊の世界観になりきっている、まさにパイレーツ・スラッシュメタルともいうべきバンドの登場だ。
スクリームヴォイスのヴォーカルを乗せてパンキッシュに疾走するサウンドはデスというにはやや軽すぎる気がするし、
フォークメタルともまた違う。もちろんスラッシュメタルの質感も充分あり、演奏技術うんぬんよりも、
とにかく自分たちのやりたいように突き進むゾ…的なスタイルは微笑ましくもある。
ときおり挿入されるほのぼのとした牧歌的な間奏曲も、ギャップがあって面白く、
ドイツのビアスラッシャー、TANKARDの精神にも近いものを感じる。しかし、20曲は多すぎ…笑
メロディアス度・・7 疾走度・・8 海賊度・・8 総合・・7.5
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T
TANKARD「B-Day」
ドイツのスラッシュメタルバンド、タンカードの10th。2002年作
デビューは1986年のベテラン、90年代まではB級スラッシュに甘んじてきた彼らだが、
本作で聴けるのは、これまで以上にパワフルかつヘヴィなサウンドで、
鋭角なギターリフで疾走する、非常に格好いいスラッシュメタルである。
KREATORやSODOMなどの影に隠れていまひとつ認知度のないバンドであるが、
今作ではそれらのバンドと遜色のないレベルにまで来ている。
ドラマティック度・・7 疾走度・・8 スラッシュ度・・9 総合・・8
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Tankard 「Beast of Bourbon」
ドイツのスラッシュメタル、タンカードの2004年作
1986年デビューのベテランで、本作は11作目となる。ザクザクとしたギターリフと吐き捨てヴォーカルを乗せて
アグレッシブに疾走する、オールドスタイルのスラッシュメタルを聴かせる。基本は疾走しまくりの爽快な聴き心地で、
随所にリズムチェンジや甘すぎないメロディのギターフレーズも覗かせ、ベテランらしい構築センスもさすがである。
新鮮味はないものの、3〜4分前後の楽曲を中心に、とにかく疾走スラッシュでたたみかける、痛快なまでの強力作。
ドラマティック度・・7 疾走度・・9 スラッシュ度・・9 総合・・8
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TANKARD「Beauty & the Beer」
ドイツのスラッシュメタルバンド、タンカードの2006年作
SODOM、DESTRUCTION、KREATORなどと比較してもキャリアではまったくひけをとらない。
本作は12作目くらいになるのだろうか、20年たっても活動を続けていたとは驚きであるが、
相変わらず、「ビール大好き」なジャケやタイトルが、バンドの本質が変わっていないことを物語る。
しかしサウンドの方は、年季を経たパワフルさと説得力をともなって疾走する見事なスラッシュで、
ザクザクのギターリフとともに、B級がかっていたかつてのころよりもよほど格好よくなっている。
ジャケこそ「美女とビアー」だが、音はKREATORに匹敵するほどの強力なスラッシュメタルである。
ドラマティック度・・7 疾走度・・8 スラッシュ度・・9 総合・・8
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TANKARD「Best Case Scenario: 25 Years in Beers」
ドイツのスラッシュメタルバンド、タンカードのベストアルバム。2007年作
1982年に結成、ビールとスラッシュを愛し続けて25年、本作は彼らの1986年のデビューから
1995年までの10年間の楽曲を集めたいわば初期のベストアルバムだ。
とにかく、疾走…疾走しまくり、という彼らのサウンドは1stの頃からまったく変わらず、
単純で単細胞といってしまえばそれまでだが、ここまでビールを愛するメタルバンドは
世界中にだっていやしない。2000年代になってからは、このままではいけないと一念発起したのか、
演奏も含めてクオリティの高さで勝負し始める彼らだが、もちろんビール愛と疾走感は変わらない。
本作にはそんな彼らの若かりし日のサウンドが全15曲たっぷり詰まっている。さあタンカードに乾杯だ!
ドラマティック度・・5 疾走度・・9 タンカー度・・10 総合・・7.5
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TANKARD「VOL(L)UME 14」
ドイツのベテランスラッシャー、タンカードの2010年作
1986年にデビューしてから地道に活動を続け、本作でじつに14作目となる。
なにやら叙情的なイントロから、おお…と思うが、曲が始まればなにも変わらない、
変わりようがないイケイケのスラッシュメタルが炸裂。古き良き王道のギターリフと
ガナリ声ヴォーカルを乗せて疾走、そしてドイツのバンドらしいメロディックな質感もあり
オールドメタラーならにやにやしっぱなしだろう。どこかMETALLICAっぽいリフの味わいも良いね♪
ドラマティック度・・8 疾走度・・8 往年のスラッシュ度・・9 総合・・8
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TANKARD「Girl Called Cerveza」
ドイツのベテランスラッシャー、タンカードの2012年作
1986年デビューの大ベテラン、15作目となる本作もオールドスタイルのスラッシュサウンドが、
たっぷり詰まっている。ダーティなヴォーカルとザクザクのギターリフを乗せて疾走しつつ、
随所にツインギターのメロディックな感触もあって、前作同様にドラマティックな叙情も感じさせる。
楽曲は4、5分台で、あくまでシンプルながら、初期のように決して突進一本調子ではなく、
フックに富んだ聴き心地だ。ベテランらしい安定感と、古き良きスラッシュの勢いを両立させたというべき力作。
ドラマティック度・・8 疾走度・・8 オールドスラッシュ度・・9 総合・・8
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TANKARD 「R.I.B」
ドイツのスラッシュメタル、タンカードの2014年作
1986年にデビュー、SODOM、DESTRUCTION、KREATORなどと並ぶジャーマンスラッシュのベテラン。
16作目となる本作も、ジャケやタイトル(レスト・イン・ビアー)こそ相変わらずギャグめいているが、
ザクザクとしたギターリフを乗せて激しく疾走する、オールドなスラッシュメタルに一点の翳りも無し。
3〜4分台の楽曲を中心に、シンプルかつパワフルな聴き心地で強力にたたみかけてくるさまは、
これぞスラシュメタルという痛快さである。一方ではベテランらしい音の説得力と、随所に甘すぎないメロディも盛り込んで
決して一本調子にならない楽曲のクオリティはさすが。日本盤ボーナスDVDには2013年ベルギーでのライブを収録!
ドラマティック度・・7 疾走度・・9 タンカー度・・9 総合・・8
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Tankard 「One Foot in the Grave」
ドイツのスラッシュメタル、タンカードの2017年作
1986年にデビュー、SODOM、DESTRUCTION、KREATORなどと並ぶジャーマンスラッシュのベテランバンド。
17作目となる本作も、1曲目からザクザクとしたギターリフにダミ声ヴォーカルを乗せて疾走する、
オールドスタイルのスラッシュメタルで、90年代かのサウンドをそのままアップトゥデートしたような聴き心地。
ミドルテンポのノリの良いナンバーや正統派メタル風のリズムチェンジ、ほどよくメロディックなギターソロなども
随処にアクセントになっていて、全体的に激しすぎないところにもベテランらしい余裕を感じさせる。
ギターリフやフレーズの恰好良さもさすがで、オールドスタイルのパワーメタル的にも楽しめる強力作だ。
ドラマティック度・・7 疾走度・・8 オールドメタル度・・8 総合・・8
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TESTAMENT 「The Legacy」
アメリカのベテランスラッシュバンド、テスタメントの1st。1987作
ベイエリアスラッシュというと、個人的にはEXODUSよりもTESTAMENTである。
当時、METALLICAくらいしか知らなかった初心者のころ、スラッシュというと“速くてやかましい”もの
という認識があったのだが、本作を聴いてこんなにもドラマティックな叙情ギターが入っているのか、
と驚いたものだ。激しく疾走しつつもアレックス・スコルニックの泣きのギターパートを含ませた楽曲は
初期のテスタメント像をリスナーの耳に植えつけた。続く2nd「The New Order」もさらに質の高い傑作だが
やはり本作の衝撃があってこそ。スラッシュ黎明期における、ドラマティックサウンドの体現を聴いてもらいたい。
ドラマティック度・・8 疾走度・・8 スラッシュ度・・8 総合・・8
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TESTAMENT「Live at the Fillmore」
アメリカのスラッシュメタルバンド、テスタメントのライブ作。1995作
アレックス・スコルニックに代わって、名手ジェイムス・マーフィが加わった
6th「LOW」発表後のツアーから、サンフランシスコでのステージを収録。
「The Legacy」「The New Order」等、初期作からまんべんなく披露してくれており、
ややデス声寄りになったチャック・ビリーのヴォーカルをはじめ、
非常に勢いのあるサウンドが聴ける。音質の方は素晴らしいとは言えないが、
スラッシュメタルの大御所による90年代の輝ける演奏がたっぷりと楽しめるライブ作だ。
ドラマティック度・・7 スラッシュ度・・9 ライブ演奏・・8 総合・・8
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TESTAMENT「FIRST STRIKE STILL DEADLY」
アメリカのスラッシュメタルバンド、テスタメントの2002作
名盤として名高い1st「LEGACY」、2nd「THE NEW ORDER」から選ばれた、かつての楽曲をリメイクしたアルバム。
これは熱い!!私もテスタメントといえば初期の2枚、というイメージが強かったもので
久々に聴くなつかしの楽曲たちに思わず時の流れを感じる…。音質演奏技術ともに磨きがかかった現在のサウンドは
曲の良さも手伝って迫力倍増。疾走スラッシュとしての彼らの原点を垣間見る。
ギターは当時のメンバーアレックス・スコルニックであるから、当然ながらリフやメロディの再現度が高いので、
そのときにメロディアスなプレイにニンマリとなる。オールドファンはこれを聴いて80年代ベイエリアスラッシュに思いを馳せよう。
ちなみに本作録音当時、チャック・ビリーは癌の手術を控えた闘病中だったという…。
ドラマティック度・・8 疾走度・・8 あの頃のスラッシュ度・・9 総合・・8
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TESTAMENT「The Formation of Damnation」
ベテランスラッシュメタルバンド、テスタメントの2008作
オリジナル作としては「The Gathering」以来、実に9年ぶりとなる。
オールドなリフでザクザクと聴かせつつ、ときにメロディアスなフレーズを奏でる
アレックス・スコルニックのギターに、チャック・ビリーのダミ声ヴォーカル、
そして新加入のポール・ボスタフのドラムも見事なタイトさで演奏を支える。
曲はミドルテンポ主体ながら、バンドとしての硬質な勢いとともに、往年の雰囲気を感じさせ、
かつてベイエリアスラッシュと呼ばれたそのアイデンティティを強固に主張している。
これで4曲目のような疾走曲がもう1、2曲あったら最高のアルバムだった。
ドラマティック度・・8 疾走度・・7 スラッシュ度・・8 総合・・8
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TESTAMENT「Live at Eindhoven '87」
アメリカのスラッシュメタルバンド、テスタメントのライブアルバム。2009作
1987年、オランダ、アイントホーフェンでのステージを収録。
87年といえば、ほぼデビュー直後の音源で、まさにバンド初期の勢い溢れる時代だろう。
1st「The Legacy」の曲を中心に、すでに2nd「The New Order」からの曲も1曲やっている。
年代を考えれば音質もまずまず良好で、まだ荒々しさの残るアレックスのギターワークに
若々しい勢いに満ちた演奏が聴ける。今や大御所スラッシュバンドとなった彼らの黎明がここに。
初期スラッシュ度・・9 ライブ演奏・・7 音質・・7 総合・・7.5
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TESTAMENT「Dark Roots of Earth」
ベテランスラッシュメタルバンド、テスタメントの2012年作
エリック・パターソンとアレックス・スコルニックの強力なツインギターのリフに、
チャック・ビリーのダミ声ヴォーカル、そして新加入のジーン・ホグランの強力なドラムでたたみかける、
まさに王道のスラッシュメタルサウンド。ザクザクとした硬質とレイドバックしたような聴き心地は、
かつての「Practice What You Preach」あたりの感触を思い出させる。変わらぬチャックのヴォーカルと、
随所に聴かせるギターのメロディックなフレーズは、まさしく往年のテスタメントであるが、
一方ではブラストビートを含んだ激しさもあり、古くささはまったく感じさせない。勢いのある力作だ。
ドラマティック度・・7 疾走度・・8 スラッシュ度・・9 総合・・8
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TESTAMENT 「Brotherhood of the Snake」
アメリカのスラッシュメタル、テスタメントの2016年作
1987年デビューの大ベテラン、エリック・パターソンとアレックス・スコルニックのツインギターに、
ドラムはジーン・ホグランという、前作からのメンバーで作られた本作は、ソリッドなギターリフと、
チャック・ビリーのダミ声ヴォーカルを、強力なドラムに乗せてたたみかけるアグレッシブなサウンド。
かつてを思わせる疾走感と、適度にメロディックなテイストを含ませたギターフレーズに、
スラッシュメタルとしての硬質感が合わさり、これぞ現在形テスタメントという聴き心地だ。
突進力とタメを兼ねそろえたジーン・ホグランのドラムもさすがで、モダン過ぎないグルーブ感を作り出し、
ミドルテンポのどっしりとしたナンバーでもベテランらしいリフを乗せた音の説得力で聴かせる。前作同様の力作だ。
ドラマティック度・・7 疾走度・・7 重厚度・・8 総合・・8
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TESTAMENT「Titans Of Creation」
アメリカのスラッシュメタル、テスタメントの2020年作
1987年にデビュー、ベイエリア・スラッシュを代表するベテランバンド。本作は4年ぶりとなる通算12作目。
アレックス・スコルニック、エリック・ピーターソンによるツインギターに、チャック・ビリーのダーティな歌声を乗せ、
ジーン・ホグラン巧みでのパワフルなドラムとともに、どっしりとした重厚なスラッシュメタルを聴かせる。
随所に疾走感も含んだ初期を思わせる雰囲気に、甘すぎないメロディックなギターフレーズも覗かせつつ、
あくまでオールドスタイルのスラッシュメタルに回帰した作風で、重すぎないザクザクのリフが心地よい。
ミドルテンポのナンバーでも、激しいツーバスのドラムやヴォーカルの迫力も含めて、スラッシーな勢いは失わず、
ベテランらしい荘厳な音の説得力はさすが。往年のファンにも安心して楽しめる痛快作ですな。
ドラマティック度・7 疾走度・7 スラッシュ度・9 総合・8
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TIWANAKU 「Earth Base One」
アメリカのデスメタル、ティワナクの2022年作
ペルー南部の古代遺跡からバンド名をとったというように、ミステリアスな世界観を標榜するバンドで、オールドスタイルのツインギターにデスヴォイスを乗せ、うっすらとしたシンセアレンジとともに、NOCTURNUSにも通じる神秘的なデスメタルを聴かせる。
随所に激しい疾走パートも含みつつ、スローパートを織り込んだ緩急ある展開力に、ほどよく叙情的なギターフレーズや詠唱めいた歌声も織り込んで、重厚ながらもわりと聴きやすい。
古代の神秘性を描くデスメタルという点では、NILEからブルータルさを減らした雰囲気という感じでも楽しめる。プログレッシブ・デスメタル好きにも対応した力作デス。
ドラマティック・8 暴虐度・7 神秘的度・8 総合・8
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TRIPTYKON 「Eparistera Daimones」
スイスのダークスラッシュメタル、トリプティコンの2010年作
CELTIC FROSTのトム・ゲイブリエル・ウォリアー率いるバンドで、ギーガーのジャケからして
かつてのセルティック・フロストを思い出させるが、サウンドの方もヘヴィなギターリフと
迫力あるヴォーカルを乗せた、「MONOTHEIST」の路線の延長というべき作風で
ドゥームメタル的な感触も含んだダークなスラッシュメタルという禍々しさはかつてのまま。
もちろん曲によっては激しい疾走パートもあって、暗黒の重厚さに包まれた聴き心地は
オードなCFファンから、ドゥーム、スラッシュ、デスメタルのファンなどにも楽しめる内容である。
ドラマティック度・・7 暗黒度・・8 セルフロ度・・8 総合・・8
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TRIPTYKON 「Melana Chasmata」
スイスのダークスラッシュメタル、トリプティコンの2014年作
4年ぶりとなる2作目で、今回もギーガーのジャケのインパクトからして強烈だ。
ドゥームとダーク・スラッシュの融合された、禍々しい暗黒性に包まれたサウンドは、
7〜8分の長めの楽曲を中心に、どっしりとした重厚な聴き心地だ。迫力あるダミ声ヴォーカルに
随所に女性声も絡んで、神秘的な雰囲気を描いてゆく。全体的に前作よりも湿り気のある空気感が
ブラックメタルに通じるようなドラマティックな暗黒美をかもしだしていて、じっくりと聴き入れる。
前作に比べるとドゥーミーな曲調がやや強まった感はあるが、CFからの深化を感じさせる力作である。
ドラマティック度・・8 暗黒度・・8 セルフロ度・・7 総合・・8
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TYRANEX 「Unable to Tame」
スウェーデンのスラッシュメタル、ティラネックスの2014年作
女性Vo&G、B、Drというトリオ編成で、疾走感あふれるオールドスタイルのスラッシュサウンド。
Destructionのシュミーアばりのヴォーカルを乗せる、リネア嬢のインパクトがとにかく強烈で、
楽曲自体には目新しさはないのだが、古き良きB級スラッシュのスカスカ感もあって、
アタマの悪そうな感じに思わずにやにやする。人によっては最高に恰好いいとも思うだろうし、
チープすぎて古臭いと思うかもしれない。ジャケやバンドロゴも含めてピンと来た人だけ聴いてください。
ドラマティック度・・7 古き良き度・・8 B級スラッシュ度・・8 総合・・7.5
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U
Ulvedharr 「World Of Chaos」
イタリアのデスメタル、ウルヴェドハルの2019年作
2013年にデビューし、4作目。スラッシーなギターリフにデスヴォイスを乗せて激しく疾走しつつ、
ミドルテンポを含むリズムチェンジにトレモロのギターフレーズなども含んだ、暴虐過ぎない聴き心地。
VADERあたりをデスラッシュ寄りにしたような雰囲気もあり、激しくブラスト疾走する部分もあるが、
甘すぎないほどの叙情も覗かせる、全体的に重すぎないオールドスタイルのデスメタルである。
楽曲は3〜4分前後が主体で、濃密になり過ぎない程度にシンプルなので、わりと聴きやすいのだが、
激しさも重厚さも疾走感も、ほどほどなので、このバンドならではの個性がもっと欲しい気もする。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・7 重厚度・・7 総合・・7.5
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Unleashed「Across the Open Sea」
スウェーデンのデスメタルバンド、アンリーシェッドのリマスター再発盤。1993/2006作
デスメタルというよりはスラッシュ的な古き良きギターリフで聴かせるサウンドは、
暴虐さよりも時代を感じさせるアンダーグラウンドな香りも漂わせたヘヴィメタルだ。
スウェディッシュ独特の薄暗い叙情のようなものもかいま見せ、
激しいインパクトはないものの、この雰囲気自体は嫌いではない。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・7 スラッシー度・・8 総合・・7.5
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V
VADER「Ultimate Incantation」
ポーランドのデスメタルバンド、ヴェイダーの1st。1992作
このバンドのデビューはもう15年も前だったのだ。私が本格的にメタルを聴きはじめた年である。
当時はデスなど聴けなかったのだが、今は大好き。とくにこのバンドの格好良さは図抜けている。
2nd「De Profundis」はデスメタル史上に禍々しく輝く歴史的傑作だと思うが、それ以降も
クオリティの高いアルバムを出し続け、ドラマーのDoc亡きあとも着実な活動を続けている。
彼らの原点であるこのアルバムは、スラッシュ魂に溢れた痛快なサウンドが閉じ込められている。
一聴してSLAYERからの影響を思わせる、硬質なリフで突進する様は、若きパワーに満ちあふれ、
それでいてすでに凡百のバンドとは一線を画すだけの、構成力と演奏の力を有していたのが分かる。
後の作品のような荘厳なまでの雰囲気はまだないが、破壊力のあるスラッシュデスとして聴く価値がある。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・8 突進度・・9 総合・・8
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VADER「THE PROFUNDIS」
ポーランドのデスメタルバンド、ヴェイダーの2nd。1996作
SLAYERと初期MORBID ANGELの暴虐性を正しく受け継ぐサウンドは
邪悪さとブルータリティに包まれながらも、どこか知的で、ぬかるんだ泥のような濃密さがある。
神話や宗教などをモチーフにした歌詞の深遠さにも恐るべきものがあるが、
それをデスメタルとしての高度な殻に封入して表現する彼らのセンスもただごとではない。
ギターのリフの流れ、プレイクやリズムチェンジなどの曲運びも自然で
ただ暴虐なだけではなく、デスメタル…音楽としての完成度の高さが光っている。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・8 完成度・・9 総合・・8.5 ◆メタル名盤特選入り
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VADER「Future of the Past」
ポーランドのデスメタルバンド、ヴェイダーによるカヴァーアルバム。1997作
SODOM、KREATOR、TERRORIZER、POSSESSED、DARK ANGEL、CELTIC FROST、
SLAYER、BLACK SABBATH等の楽曲を、彼らならではのブルータルなカヴァーで再現。
どの曲も原曲以上の突進力で、演奏の確かさもあってその迫力はものすごい。
デスラッシュバンドとしての彼らの精神的ルーツもかいま見えるようだ。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・8 突貫スラッシュ度・・9 総合・・7.5
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VADER「Black To The Blind」
ヴェイダーの3rd。1997作
ポリッシュデスメタルシーンの中心バンドとして名を馳せる彼らだが、日本デビュー作となったのが今作。
名作、2nd「De Profundis」に続くアルバムということで、内容の方も期待を裏切らない完成度。
彼らの場合、暴虐デスでありながら、疾走一辺倒に頼らない聴かせる展開力があるのがポイントで
ギターリフのひとつひとつ、ブレイク、スローパートなどがしっかりと曲の流れを作っているのが見事なのだ。
ある意味SLAYER、KREATORなどのスラッシュメタルの進化形態のサウンドともいえ、
「これぞメタル!」と膝を叩く部分もしばしば。歌詞における神学、哲学的な深遠さも見逃せない。
演奏力も非常に高く、この手のバンドの中でも汚らしい部分はあまりないので、デス初心者にもお勧めできる。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・8 演奏度・・9 総合・・8
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VADER「Darkest Age: Live '93」
今やポーランド最強のデスメタルバンドとなった、ヴェイダーのライブアルバム。1998作
1993年、地元ポーランドでのライブ音源を収録。この初期のライブ音源には1stからの曲も多く含まれており、
現在のような超絶的な技巧のカチッとした音よりはもっと荒々しい勢いが感じられる。
もちろん、この手の凡百のバンドに比べれば、この時点でも相当のテクニックのある演奏なのだが、
音質の悪さも手伝ってか、今よりも若さと突進力にものを言わせたデス/スラッシュ魂が炸裂している。
スレイヤーのカヴァーを含む13曲に加え、日本盤ボーナスはミニアルバム「SOTHIS」の7曲を収録。
暴虐度・・8 ライブ演奏・・8 音質・・7 総合・・7.5
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VADER「LIVE IN JAPAN」
ポーランドのブルータルデスメタルバンド、ヴェイダーのライブアルバム。1998作
1998年の初来日でのステージを収録。イントロのSEからすでに観客の熱気が物凄い。
そして演奏が始まると、そこからはもう怒濤のVADERワールドが20曲。
やはりライブ盤で聴いてもDOCの超絶なドラミングも素晴らしく、ブラストから金物系まで
その手数の多さと、リズム感はこの手のブルデスバンドの中でもピカイチの腕前。
Voがやや小さめなので、暴虐な迫力にはやや欠けるが、二本のギターリフの絡みを含め
演奏の質はやはり高く、テクニカルデスとしての彼らの側面もしっかり味わえる。
怒濤の演奏のあとの「ドモ、ドモアリガト」のMCは、少々笑ってしまうが(笑)
暴虐度・・8 ライブ演奏・・9 音質・・7 総合・・8
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VADER「LITANY」
ポーランドのデスメタルバンド、ヴェイダーの4th。2000作
じつはこのアルバムが自分のVADER初体験でしたが、意外とすんなり楽しめました。
音のツブがはっきりしているせいか、禍々しさというものはあまりないし、
ツインギターのリフはそれほど重いわけでもなく、案外に聴きやすかった。
ドラムは手数、スピードとも物凄いんですが、エフェクトされたバスドラの音はやや耳障り。
この手のデスメタルの中では中身の詰まったいいアルバムだと思います。
ドラマティック度・・7暴虐度・・9 重厚度・・8総合・・8
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VADER「Reign Forever World」
ポーランドのデスメタルバンド、ヴェイダーのミニアルバム。2000作
ミニといっても新曲3曲に、カヴァー3曲、ライブ音源4曲の全10曲入りで、聴き応えがある。
@〜Bは新曲。いつもながら、スラッシーなリフ主導で暴虐に疾走し、ときに聴き手を圧殺しつつも、
荘厳な雰囲気を感じさせるのはさすがベテランならでは。ドラムの金物系のプレイも素晴らしい。
C〜Eはそれぞれ、DESTRUCTION、JUDAS PRIEST、MAYHEMのカヴァー。
どれも見事に自分の曲にしている。F〜Iは2000年ポーランドでのライブ音源。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・8 カヴァーも格好良い度・・9 総合・・8
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VADER「REVELATIONS」
ポーランドのデスメタルバンド、ヴェイダーの5th。2002年作
今作ものっけからザクザクとしたスラッシーなリフと、突進力を持った彼らならではの
テクニカルなスラッシュ直系のデスメタルサウンドが満喫できる。
印象としては音がややドライになったという感じもしないでもないが、
逆に言うと今まで以上にザクザクのギターリフが目立っているということか。
なんにしても、この演奏の迫力と音の密度は並のデス系バンドの追随を許さないものがある。
また、フルアルバムとしては先に夭逝したドラマー、Docのラスト作でもある。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・8 ザクザク度・・9 総合・・8
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VADER「The Beast」
ポーランドのデスメタルバンド、ヴェイダーの6th。2004年作
怪我をしたDOC(その後死去)に代わり、新ドラマーが加入してのアルバム。
誤解を恐れずに言うと、とても聴きやすいサウンド。全体的にまとまりがよく
リフの重ねにしろとてもカッチリとしていて、ミドルテンポの部分が効果的に使われている。
もちろん暴虐な疾走パートもあるが、やはりDocほどにはドラムに手数がないのは仕方がないか。
サウンドプロダクションのせいか、かつての彼らの魅力だった荒々しい突進力は薄まり、
依然としてクオリティは高いのだが、どこか中庸感漂うような雰囲気がもどかしい。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・7 楽曲・・7 総合・・7.5
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VADER「XXV」
ポーランドのデスメタルバンド、ヴェイダーの2枚組みベストアルバム。2008作
デビュー15周年を記念してのベストアルバムは、現メンバーで過去曲を録音し直したもの。
正直、Doc亡きあとのアルバムは、どうもいまひとつのめり込めなかったのであるが、
ここではブルータルに疾走する楽曲の中で、後任のダレイのドラムが大変頑張っている。
このバンドの魅力は大変暴虐的なデスメタルでありながらも、あまりドロドロにならない、
スラッシュ的な鋭さが感じられるところで、あくまでリフの切れ味で聴かせるところに誇りを感じるのだ。
ポーランドを代表するデスメタルバンドの歴史を振り返るには、充分に濃密な2枚組み。
DVD付きの日本盤はひどく高いので、よほど熱心なファンでなければこの輸入盤で充分だろう。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・9 楽曲・・8 総合・・8
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VADER「Necropolis」
ポーランドのデスメタルバンド、ヴェイダーの2009作
結成25周年のベストアルバムを出したと思ったら、ピーター以外のメンバーが脱退、
ほぼピーターのソロバンド的となってしまったVADERであるが、サウンドの方は不変。
絡みつくようなギターリフを2〜3分台のコンパクトな楽曲に詰め込んだ、
非常に濃密かつスラッシーなデスメタルが楽しめます。咆哮するピーターのヴォーカルとともに、
最近のバンドでは表現できない、この有機的な硬質感は、まさにこのバンドならではのもの。
ファンが求める変わらぬVADERサウンドがここにある。強力な再出発作だ。ライブDVD付きの限定盤には、
ボーナスとしてVENONの“Black Metal”とMETALLICAの“Fight Fire with Fire”を収録
ドラマティック度・・7 暴虐度・・8 ヴェイダー度・・9 総合・・8
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VADER「Welcome To The Morbid Reich」
ポーランドのデスメタルバンド、ヴェイダーの2011年作
1本作でフルレンスとしては9作目となる。前々作のツアー中にメンバーが相次いで脱退し
前作はほぼリーダーのピーターのソロ的な作品であったが、本作では新たにメンバーを決定し、
新生VADERの船出となった。荘厳なイントロから、曲に入ると暴虐にブラスト疾走、
ヘヴィかつスラッシーな、もはやVADER節ともいえるギターリフは相変わらず切れ味抜群だ。
不穏なムードを漂わせる暗黒の帝王じみた迫力とともに、今作ではギターにおける
メロディックなフレーズも効果的で、激しさの中にもダークな叙情というものを感じることができる。
曲は3分前後と比較的シンプルであるが、このバンドのなんたるかを知るには分かりやすい力作だ。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・8 VADER節度・・9 総合・・8
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VADER 「Tibi Et Igni」
ポーランドのデスメタル、ヴェイダーの2014年作
1992年にデビューし、本作はちょうど10作目となる。いつになく荘厳なイントロから幕を開け、
スラッシュルーツのリフとともに激しく疾走する、オールドスタイルのデスメタルは健在だ。
暴虐なブラストも含みつつ、随所にいくぶんメロディのあるギターフレーズをまじえて、
激烈ながらもあくまで正統派デスの聴き心地を保っているのは、さすがにベテランである。
20年以上もこの路線で続けてきたリーダーであるピーターの強固な信念と情熱が
音の迫力となって現れ出ている。新しさはないが安心二重丸ベーダー印の強力作デス。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・8 オールドデス度・・9 総合・・8
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VADER「MORE VISION AND THE VOICE」
ポーランドのデスメタルバンド、ヴェイダーのライブDVD。2002作
998年、地元ポーランドでのライブを収録。元がビデオ作品だっだけに、映像、音質共にいまひとつだが
演奏の方はまったく見事で、Docの超人的なドラムをはじめ暴虐かつテクニカルな楽曲が繰り広げられる。
メインとなるライブは50分ほどでやや物足りないが、ボーナスにビデオクリップが3曲
2001年のブートレグのライブステージや、インタビュー等も収録されている。
暴虐度・・8 ライブ映像・・6 ライブ演奏・・9 総合・・7.5
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VADER「Night of Apocalypse」
ポーランドのデスメタルバンド、ヴェイダーのライブDVD。2004作
2002年の地元ポーランドでのライブ映像で、演奏は4人編成とは思えぬほどのすさまじさ。大抵この手のデスメタルバンドの場合は
専属Voのケースが多いのだが、デス声で歌いつつ、髪を振り乱してギターを弾くPeterの姿は、まさにバンドのフロントマン。
そして、クールな顔で猛烈なブラストビートを叩き出すドラムのDocentも、このバンドの核を担っている。
彼らの音は激烈でありながらもスラッシュの延長上にあるような雰囲気なので、ツインギターの重なるリフの格好よさや、
ときおり聴かせるメロディなども聴きやすさの一因だろう。もちろん演奏力も抜群で、ブレイクにおけるユニゾンの統一感などはさすがのひとこと。
これだけ暴虐な音であっても、メタルとしてひとつひとつのリフがちゃんと機能しているのが凄いし、それが彼らの格好よさなのだろう。
SLAYER+MORBID ANGELといった形容が正しいかはともかく現在においてそうした偉大なバンドの名を堂々と挙げられるのは、
このバンドの他にはそう多くはない。テクニカルデスとしても、そして王道デスメタルとしても、実に見応えのあるライブ映像だ。
ボーナス映像には、2003年の“Metalmania”フェス、2004年のMetallica &
Slipknotのサポートアクト時のステージを収録。
こちらも気合入りまくりの物凄い演奏が堪能出来る。デスメタルに少しでも興味があるなら見るべきだろう。
激烈度・・9 ライブ演奏・・10 ライブ映像・・7 総合・・8.5
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Vallenfyre「Fragile King」
イギリスのドゥーム・デスメタルバンド、ヴァレンファイアの2011年作
PARADISE LOSTのグレコール・マッキントッシュ、MY DYING BRIDEのハミッシュ・グレンクロスら
によるバンドで、アナログ感たっぷりのオールドテイストのドゥーム・デスメタルサウンド。
ヘヴィなギターリフと低音デスヴォイスによる、古き良きデスメタル風味のおどろおどろしさと
ストーナー的な荒々しさを合わせたような雰囲気は、OBITUARYなどにも通じる感触がある。
沈み込むようなドゥーミィな暗さと、随所にデスメタル的な激しさも盛り込んだ
いわばMOTORHEADをデスメタル化したかのような、暗黒重低音の一枚。
ドラマティック度・・7 ドゥーミィ度・・8 古き良き度・・8 総合・・8
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VANHELGD 「Temple of Phobos」
スウェーデンのブラッケン・デスメタル、ヴァンヘルグドの2016年作
ツインギターのトレモロなリフに低音ダミ声ヴォーカルを乗せ、ブラックメタル的なダークさと、
90年代の北欧デスメタルを思わせる、オールドな香りに包まれたサウンドを聴かせる。
激しい疾走パートもあるが、スローからミドルテンポでのどっしりとした感触もよい感じで、
かつてのEdge of SanityやEntombedなどにも通じる、くぐもったような空気感と
甘すぎない叙情性も味わえる。古き良き北欧デスメタルの雰囲気を残した強力作。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・7 オールドデス度・・8 総合・・8
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VANHELGD 「DEIMOS SANKTUARIUM」
スウェーデンのデスメタル、ヴァンヘルグドの2018年作
2008年にデビューし、本作が5作目となる。重厚なギターリフに迫力あるデスヴォイスを乗せ、
かつてのENTOMBEDなどにも通じる、オールドスタイルの北欧デスメタルを聴かせる。
どっしりとしたスローパートからの激しい疾走感は迫力たっぷりで、スウェディッシュらしい
ダークでウェットな世界観に包まれながら、随所に甘すぎない程度のフレーズも覗かせる。
全体的には激しさはやや抑え目であるので、疾走系が好きな方にはやや物足りないかもれないが、
ドゥーミィなスローテンポでの重厚な説得力には、バンドとしての力量を感じさせる。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・7 重厚度・・8 総合・・8
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VEKTOR「Black Future」
アメリカのオールドスラッシュメタル、ヴェクターの2009作
このジャケからしてすでに、かつてのVOIVODを思わせるようなレトロな代物だが、
サウンドの方もいかにも時代的なスラッシュメタルで、初期のDESTRUCTIONのように
ダミ声ヴォーカルを乗せて激しく疾走する。唐突なリズムチェンジやクールなリフなど
楽曲には知的な展開力が感じられ、80〜90年代的な古めかしさを絶妙に甦らせながらも、
単なる懐古主義に終わらないだけのセンスがある。ラストは13分を超える大曲で、
シアトリカルな構築性がなかなか見事。オールドスタイルのテクニカルスラッシュ力作。
メロディアス度・・7 疾走度・・8 知的スラッシュ度・・9 総合・・8
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VEKTOR「Outer Isolation」
アメリカのスラッシュメタル、ヴェクターの2011年作
80年代を思わせるアナログ感たっぷりの古き良きスラッシュメタルが炸裂した前作に続き
2作目となる本作も、ザクザクとしたギターリフで疾走する往年のスラッシュ風味に
DESTRUCTIONあたりを思わせる、ある意味知的でクールなアレンジセンスにも磨きがかかっている。
金切り声を含んだヴォーカルもシュミーアを思わせる変態的な感じで、個性的なリフによくマッチしており、
ときにブラストビートも含んだ激しさもありつつ、アナログ感のある音作りで、やかましすぎないのもよい。
随所に変則リズムを含んだ気持ちの悪さ(良さ)と、前作以上にスケール感と説得力が備わったのも素晴らしい。
ドラマティック度・・8 古き良きスラッシュ度・・9 クールなスラッシュ度・・9
総合・・8.5
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Vektor 「Terminal Redux」
アメリカのスラッシュメタル、ヴェクターの2016年作
VOIVODを思わせるバンドロゴを含めて、80年代の古き良き知的スラッシュを聴かせるこのバンド、
3作目となる本作も、オールドナギターリフにダミ声ヴォーカルを乗せて疾走しつつ、
変則リズムを盛り込んだテクニカルな感触で、激しくもクールなスラッシュメタルを展開する。
よりプログレッシブになったDESTRUCTIONというような感触に加え、随所にブラスト的な疾走も含んだ
カオティックコア的な激しいリズムチェンジにも磨きがかかり、ときにスペイシーなスケール感も漂わせながら
7分、9分という大曲を構築してゆく。ラストは13分の大曲で、合計73分というヘトヘトになる濃密な傑作。
ドラマティック度・・8 プログレスラッシュ度・・9 ある意味壮大度・・9 総合・・8.5
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VENOM「METAL BLACK」
イギリスのカルトメタルバンド、ヴェノムの2006年作
タイトルといい、ジャケといい、まるで1982年の伝説的怪作「Black Metal」の続編のよう。
サウンドの方も、ラウドな音質も含めて時代錯誤なまでのダーティなスラッシュンロールで、
粗い演奏と勢いとノリのみの低能かつ極悪ぶりは、ある意味期待通りであろうが、
このバンドを初めて聴くような方には、彼らの存在価値すらも分からぬに違いない。
正直、自分も彼らのファンではないし、音楽だけを取り出せば、CELTC FROSTの方が
はるかに上だとは思うが、これこそがベノンなのだと言われれば「ハイ」としか言えぬ。
メロディアス度・・6 ラウ度・・8 ベノン度・・9 総合・・7.5
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VIOLATOR 「Chemical Assault」
ブラジルのスラッシュメタル、ヴァイオレイターの2006年作
ジャケのB級臭さと、いかにもメタル小僧風のメンバー写真はともかく、サウンドは古き良き感触の
疾走スラッシュメタルが炸裂。重すぎないギターとドラムに、ハイトーンのヴォーカルも含めて、
かつてのDESTRUCTIONやKREATORなどを思わせる、スピード・スラッシュメタルが楽しめる。
80年代を手本にしたようなギターリフのセンスもよいし、随所にウェットなフレーズを聴かせるところもにやり。
オールドなスラッシュファンはもちろん、最近のモダンなヘヴィネスに疲れたリスナーにも楽しめるだろう。
ドラマティック度・・7 疾走度・・8 古き良きスラッシュ度・・9 総合・・8
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VIO-LENCE「Eternal Nightmare」
ベイエリアスラッシュの隠れた名バンド、バイオ-レンスの1st。1988作
ザクザクのギターリフで激しく疾走するサウンドで、EXODUSやTESTAMENTあたりと比べても
遜色のない演奏力とリフの魅力を持っている。やや調子外れなヴォーカルが好みを分けるが、
勢いある突進力とキレの良さは、多くのスラッシュメタルファンに称賛されるに足る質の高さである。
スラッシュメタルに斜陽が差しかけた時期もあって、バンドはレーベルとの折り合いも合わず、
3作を残して解散。ギターのロブ・フリンはのちにMACHINE HEADを結成する。
なお再発盤には2001年の再結成後のライブ音源を収録している。
ドラマティック度・・7 疾走度・・8 スラッシュ度・・9 総合・・8
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VOIVOD「Killing Technology」
カナダのテクニカルスラッシュメタルバンド、ヴォイヴォドの3rd。1986作
パンクぎみのノイジーなギターで疾走する感じは、「Nothingface」以降のサウンドとはだいぶ異なる。
音質の悪さも手伝って、知的というよりも、この時点ではむしろまだ野蛮なスラッシュサウンドで、
SFをテーマにしたストーリーがあるようだが、曲自体にそういう雰囲気はあまりない。
後で聴かれるプログレ的な世界観を身に付ける前の勢い重視のスタイルで
風変わりなハードコア風スラッシュという言い方が正しいサウンドだ。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・6 パンキッシュスラッシュ度・・8 総合・・7
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VOIVOD「Dimension Hatross」
カナダのテクニカル・スラッシュメタルバンド、ヴォイヴォドの4th。1988作
前作の延長線ながらサウンドに整合感が出てきた。のっけからの変拍子リズムと
それに乗るリフからして、我々の好むテクニカルメタルの質感で、たまらず頭を振りたくなる。
ギターの硬質感が増して、よりメタリックになったせいで、サウンドとしての説得力が増し、
スラッシーに疾走する部分にも軽さがなくなり、リフの切れ味が研ぎ澄まされた感がある。
初期のMEKONG DELTAにも通じる変幻自在で、風変わりなスラッシュサウンドは
しだいに知的さをまとい、テーマとなるSFへの接近が音自体からも感じられるようになった。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 知的スラッシュ度・・8 総合・・8
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VOIVOD「ANGEL RAT」
カナダのテクニカル(スラッシュ)メタルバンド、ヴォイヴォドの6th。1991作
前作「Nothingface」で、知的なスラッシュメタルとしてのソフィスケイトを完成させた彼らは
今作からメタルではなく、ロックとしてのプログレッシブな方向性を模索し始める。
次作「The Outer Limits」への布石的なサウンド作りは、一聴して初期のサウンドに比べ
ややインパクトには欠けるものの、知的なメタルとしての整合感は確かに感じられる。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・7 知的度・・8 総合・・7.5
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VOIVOD「The Outer Limits」
カナダのテクニカルスラッシュメタルバンド、ヴォイヴォドの7th
宇宙人の出てくるSF仕立てのストーリーで、ジャケや内ジャケのイラストもいかにもな雰囲気。
サウンドの方は初期に聴かれたスラッシーな雰囲気はここにきてやや影をひそめ、
全体的にプログレッシブな香りを漂わせたテクニカルロックといったおもむき。
ギターリフの硬質感もあまり前に出ることなく、ときおりANNIHILATOR的なクールなものを
覗かせつつも、あくまでバランスのとれた音作りに主眼が置かれているという印象。
歌メロなどにはメロディアスな聴きやすさもあって、難解さはあまり感じられない。
17分の大曲を配するなど、知的メタルバンドとしての彼らの中期の集大成的なアルバムだろう。
付属の3Dメガネを使うと、ブックレットのイラストが浮き出て見えるというオマケ付き。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 SF度・・8 総合・・7.5
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Voivod「Katorz」
カナダのベテランメタルバンド、ヴォイヴォドの2006年作
1984年のデビュー作きら数えて11作め、ジェイソン・ニューステッドが加入しての2作目となる。
サウンドはグルーブ感のある古き良きハードロック/メタルという感じで、スラッシュというほどには激しくない。
むしろこのバンドのもっていたパンク的な部分を、ベテランらしい演奏力で仕上げたという感じである。
自然体のユルさも含めて枯れた味わいのする大人のグルーブメタルだ。
ドラマティック度・・7 スラッシュ度・・6 大人のメタル度・・8 総合・・7.5
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VOIVOD 「Target Earth」
カナダの知的スラッシュメタル、ヴォイヴォドの2013年作
1984年デビューという大ベテラン。オリジナルギタリストのピギーの遺志を残した「KATORZ」、「INFINI」に続く
通算13作目となる本作では、吹っ切れたようなかつての怪しげな知的スラッシュサウンドが戻ってきた。
オリジナルベーシストのブラッキーが復帰、正式加入となった、ダニエル“チューウィー”モングレインのギターは
エキセントリックで個性的なリフを連発していてなかなか素晴らしい。MEGADETHやANNIHILATORのような
インテレクチュアルなメタルサウンドが好きな方なら、先の読めないリフの流れにゾクゾクするだろう。
大ベテランはまだ死なず。往年のヴォイヴォドファンも納得する力作である。
ドラマティック度・・8 インテレクチュアル度・・8 ヴォイヴォ度・・8 総合・・8
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VOIVOD 「The Wake」
カナダのベテランメタルバンド、ヴォイヴォドの2018年作
1984年にデビュー、インテレクチュアルなスラッシュ、ハードコア、サイケなどを同居させた独自のサウンドで、
コアなファンも多いベテランバンド。本得は5年ぶりとなる15作目。重すぎないギターとダーティなヴォーカルを乗せて、
オールドスタイルで疾走する、80年代ルーツのサウンドに、奇妙な浮遊感を含んだ独自のサウンドは健在。
スラッシュ一歩手前というほどよい激しさと、クールなギターリフ、メロディック過ぎない偏屈な叙情性とともに、
ベテランにしか出せないスペイシーな世界観と、知的でプログレッシブな展開力も随所に覗かせる。
ラストは12分の大曲で、リズムチェンジや適度にメロディックな味わいも含んで、緩急自在に構築される。
前作「Target Earth」をさらにディープにしたような、これぞヴォイヴォド!という強力作である。
ドラマティック度・・8 インテレクチュアル度・・8 ヴォイヴォ度・・9 総合・・8
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VOODOOCULT「Jesus Killing Machine」
スラッシュメタルユニット、ヴードゥーカルトの1st。1994作
ドイツのパンク系ヴォーカリスト、フィリップ・ボア(詳細不明)を中心としたプロジェクトで
デイブ・ロンバート(SLAYER〜GRIP INC.)、ウォルデマー・ソリクタ(DESPAIR〜GRIP
INC.)
故チャック・シュルディナー(DEATH)、ミレ・ペトロッツァ(KREATOR)、という豪華なメンバーが集結。
サウンドの方はモダンなインダストリアル色とオールトなスラッシュメタルが合体したような雰囲気で、
ザクザクとしたヘヴィなリフにコア系のヴォーカルが乗り、ある種の屈折感とともに
CATHEDRALあたりに通じるストーナー色も感じられる。デイブとウォルデマーのGRIP INC.組の存在も
アルバムとしてのスラッシュメタル色を高めるのに大きく貢献していると思われるが、
このパンク系(?)のVoが、どうにも気が抜けてしまっていてパワフルさに欠けるのが残念。
ドラマティック度・・7 スラッシュ度・・7 ヴォーカル以外は・・8 総合・・7
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W
WARBRINGER「Waking into Nightmares」
アメリカのスラッシュメタルバンド、ウォーブリンガーの2009作
ここのところアメリカでは、 、 、Bonded by Bloodといった
いわゆる若手によるピュアスラッシュメタルが増えてきているが、このバンドもまた
そうした80年代のオールドスタイルを蘇らせるようなサウンドをやっている。
いかにも往年の雰囲気を伝えるギターリフとともに勢いよく疾走し、リズムのメリハリをつけながら、
ヘヴィすぎずに生々しいという、オールドリスナーの喜ぶサウンドを繰り広げている。
ときにパワーメタル的なメロディアスさがあるのもいい。現時点ではこのバンドならではの個性や
世界観は薄いものの、懐古主義ともいうべきスタイルには多くのオヤジメタラーが快哉を叫ぶだろう。
ドラマティック度・・8 疾走度・・8 オールドメタル度・・9 総合・・8
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WARBRINGER「Worlds Torn Asunder」
アメリカのスラッシュメタルバンド、ウォーブリンガーの2011年作
古き良き正統派スラッシュメタルサウンドを追求するこのバンド、3作目となる本作も
ザクザクとしたギターリフで勢いよく疾走する、かつてのベイエリアクランチを再現するような
ピュア・スラッシュメタルが炸裂。メロディアスさを抑えた硬質感はEXODUSにも近い感触か、
楽曲自体に個性があるかと問われればやや首をかしげるが、演奏面でのレベルの高さと
ヴォーカルも含めてスラッシーにたたみかける迫力はやはり若手の中では抜きん出ている。
ドラマティック度・・7 疾走度・・8 スラッシュ度・・9 総合・・8
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WHIPLASH「Power & Pain/Ticket to Mayhem」
アメリカのスラッシュメタルバンド、ウィップラッシュの1st/2nd。1986/87作
TESTAMENTやEXODUSなどと同時期のデビューながら、このジャケのせいもあってか
マニア寄りのバンドとして日本ではさほど知名度も高くなかったバンドであるが、
サウンドの方は当時にしてはしっかりとした演奏力のある質の高いスラッシュメタル。
耳障りなダミ声ヴォーカルを乗せて、これぞスラッシュというリフで疾走しながら、
ときおりリズムチェンジなどのクールなアプローチもあって、決して一本調子ではない。
2ndになると音質も良くなり、リフの緻密さも加わって硬質感が増している。傑作というには曲調に
いくぶんマイナー臭さが漂っているものの、オールドなスラッシュ好きなら押さえておいて損はない。
メロディアス度・・7 疾走度・・8 スラッシュ度・・9 総合・・7.5
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WHIPLASH「Unborn Again」
アメリカのベテランスラッシュメタルバンド、ウィップラッシュの2009年作
1985年にデビュー、1990年の3rd「Insult to Injury」は確か日本盤も出ていたが、
その後は1998年の「Thrashback」を最後に音沙汰がなかったのだが、
11年ぶりに復活作を発表。ジャケにもかつてのキャラを登場させていることからも、
原点回帰したかのような強力なスラッシュメタルが楽しめる。ザクザクとしたギターリフを中心に、
それでもドライになりすぎず、メロパワ風味の聴きやすさがあるのがこのバンドらしい。
メロディアス度・・7 疾走度・・7 スラッシュ度・・9 総合・7.5
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Whorion 「The Reign of the 7th Sector」
フランスのテクニカルデスメタル、フーリオンの2015年作
低音のデスヴォイスを乗せてブラストビートでたたみかけるデルータルな激しさと、
テクニカルなリズムチェンジを含んだモダンな感触のデスメタルサウンド。
ギターのピロピロ系のスイープ奏法や、随所にシンフォニックなアレンジによる
荘厳なスケール感も漂わせている。インスト曲を除くと6曲しかないのが少し物足りないが、
Fleshgod Apocalypseなどが好きな方なら楽しめるテクデス・サウンドだ。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・8 テクニカル度・・8 総合・・7.5
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WITCHBURNER「DEMONS」
ドイツのスラッシュメタルバンド、ウィッチバーナーの6th。2010年作
結成は1992年と意外と古いのだがいままでまったく知らなかった。よほどB級だったのか。
サウンドはSLAYERを思わせる疾走スラッシュで、どこかヨーロピアンな感触のギタープレイや
ヴォーカルのガナり方なども含めてKREATORにも近い雰囲気だ。ジャケも含めてこちらは
もう少しお馬鹿系だが…笑。ともかくコテコテのオールドスラッシュサウンドににんまり。
ドラマティック度・・7 疾走度・・8 オールドスラッシュ度・・9 総合・・7.5
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Witchburner 「Bloodthirthty Eyes」
ドイツのスラッシュメタル、ウィッチバーナーの2013年作
結成は90年代というベテランで、本作がすでに7作目になるらしい。
ダミ声ヴォーカルと古き良きギターリフを乗せて疾走する、しごく普通のスラッシュメタル。
勢いはあるのに迫力はあまり感じないというのは、やはりKREATORなどに比べると、
演奏面でのキレが聴き劣りする、要するに完全なるB級スラッシュなのだな。
ヴォーカルの低音なダミ声も一本調子で、聴いていてメリハリがないんですよ。
キャリアはあるんだから、もう少し向上心をもってスラッシュに取り組んでいこう。
ドラマティック度・・7 疾走度・・7 楽曲・・7 総合・・7
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WITCHERY「SYMPHONY FOR THE DEVIL」
スウェーデンのスラッシュメタルバンド、ウィッチリーの3rd。2001作
THE HAUNTEDのGでもあるヤンセンの別バンドで、伝統的な欧州スラッシュサウンドに、
古き良きメタルテイストを感じさせるリフとメロディを取り込んだ、どこかなつかしいようなサウンド。
ダミ声Voとともに疾走しつつも、暴虐性よりはヘヴィメタルとしての雰囲気を重視しているスタイルで、
世界観としては“Grave”、とか“Reaper”とか、“Evil”とか…そういう単語が思い浮かびます。
分かる人には分かる、つまらない人には古くさくてつまらない、そういうサウンドですね。
ドラマティック度・・7 疾走度・・7 欧州的メタル度・・8 総合・・7.5
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Witchery「Witchkrieg」
スウェーデンのスラッシュメタルバンド、ウィッチリーの2010作
THE HAUNTEDのギタリスト、ヤンセン率いるこのバンド、1998年にデビューしてから
古き良き質感のデスラッシュ作品を作り続けているが、5作目となる本作では元MARDUKのVoを迎え、
これまで以上に激しく重厚なサウンドを聴かせる。オールドなスラッシュ風味と、モダンなヘヴィさのバランスもよく、
コンセプト的なシリアスさとともにドラマティックな雰囲気が増したことで、疾走する曲はより激しく、
ミドルテンポの曲は重厚になり、最後まで聴き通せる。ゲストにはEXODUSのゲイリー・ホルト、
SLAYERのケリー・キング、MERCYFUL FATEのハンク・シャーマン、KING DIAMONDのアンディ・ラロックらが参加。
ドラマティック度・・8 重厚度・・8 デスラッシュ度・・8 総合・・8
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WRATHPRAYER /FORCE OF DARKNESS 「Wrath of Darkness」
チリのブラック・スラッシュメタル、ワラスプレイヤーとフォース・オブ・ダークネスのスプリットアルバム。2018年作
WRATHPRAYERはノイジーなギターに低音系のヴォーカルを乗せて激しくブラスト疾走する、
地下臭漂うブラッケンなサウンド。ほどよいザリザリ感が荒々しくもプリミティブな空気感をかもしだし、
オールドなブラック・スラッシュメタルという感じもある。FORCE OF DARKNESSの方も、
ツインギターのリフと吐き捨てヴォーカルを乗せてたたみかける、初期KREATORのような
スピーディなブラッケン・スラッシユメタル。こちらは適度にメロディックな部分もって、
普通のスラッシュメタルリスナーにも楽しめそう。2バンドで全7曲入りのEPです。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・8 ブラッケン・スラッシュ度・・8 総合・・7.5
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WRETCHED 「Son of Perdition」
アメリカのテクニカルデスメタル、レチェッドの2012年作
ジャケの感じはいかにもブルデスかテクニカルデスという雰囲気だが、サウンドの方は激しく疾走しつつも、
ツインギターによるリフと適度にメロディックなフレーズを乗せ、ブラストを含むリズムチェンジの緩急がついた
テクニカルデスにメロデス要素が融合したという感触。低音のグロウルヴォイスは迫力たっぷりであるが、
ギターサウンドがわりとクリアなクールさで構築され、激しくともブルータル過ぎない聴き心地である。
荘厳なサウンドでドラマティックな世界観を感じさせるところは、Fleshgod Apocalypseなどにも通じるか。
楽曲も3〜5分前後と長すぎないところも、濃密なテクニカルデスとしては、聴き疲れしなくてよいデスね。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・8 荘厳度・・8 総合・・8
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