〜HEAVY METAL CD REVIEW 2024 by 緑川 とうせい
★2024年に聴いたメタルCDレビュー
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10/19
姐御系メタルはステキです(215)
REXORIA「Imperial Dawn」
スウェーデンの女性声メロディックメタル、レクソリアの2023年作
2018年にデビューし、3作目。正統派の「姐御系メタル」を聴かせた過去2作から、今作ではよりきらびやかなシンセアレンジとともに、フリーダ嬢のパワフルな歌声が響き渡る。
キャッチーなメロディのフックと美麗なアレンジは、むしろシンフォニックメタル寄りとなり、オールドスタイルのメタル感触がやや薄れたことは、デビュー作からのファンには痛し痒しか。
モダンなシンフォニック性が増した一方で、ギタープレイはときにフォーキーなテイストも覗かせるなど、いくぶん野暮ったさも残していて、オールドメタラーでもわりと楽しめる。
楽曲は3分前後がほとんどで、ストレートでシンプル。全10曲34分というのがやや物足りないが、Frozen Crownなどのファンに対応した好作品です。
メロディック度・8 正統派度・7 女性Vo度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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VELVET VIPER 「PALE MAN IS HOLDING A BROKEN HEART」
ドイツのメタルバンド、ヴェルベット・ヴァイパーの2019年作
ZED YAGO時代を含め、80年代後半から90年代前半まで活動していた、女性Voフロントのメタルバンドで、2018年に復活し、本作は復活後2作目となる。
ミステリアスで叙情的なイントロから、ハスキーな女性ヴォーカルを乗せてゆったりと始まり、ほどよくヘヴィなギターとともに、ウェットな翳りに包まれたヨーロピアンな女性声メタルを聴かせる。
Jutta姐さんの歌声はベテランらしい魔女めいた表現力と、衰えぬ伸びやかさがあって、正統派メタル的なナンバーでも、楽曲に艶めいた彩りを添える。
全体的には、本作はスローナンバーが多いのだが、女性ヴォーカルと妖しい叙情性の取り合わせはよろしく、どっしりとした作風は個人的には気に入った。
メロディック度・7 叙情度・8 女性Vo度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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VELVET VIPER 「Cosmic Healer」
ドイツのメタルバンド、ヴェルベット・ヴァイパーの2021年作
復活後3作目で、通算5作目となる。今作はのっけから硬質なギターリフによるメタル感触を強く感じさせ、艶めいた女性ヴォーカルとともに、正統派のHMを聴かせる。
ほどよくキャッチーなフックのタイトルナンバーや、往年のジャーマンメタル的な雰囲気のナンバーなども、Jutta姐さんの歌声で、総じて優雅な妖しさに包まれて、随所に叙情的なギターメロディやリズムチェンジなども覗かせ、楽曲的にも一本調子ではない。
これだというインパクトは薄いものの、女性声の正統派ヘヴィメタルが好きなら、しっかりと楽しめる内容である。
メロディック度・7 叙情度・7 女性Vo度・8 総合・8
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VELVET VIPER 「Nothing Compares To Metal」
ドイツのメタルバンド、ヴェルベット・ヴァイパーの2023年作
2028年の復活以降は旺盛に活動を続け、早くも6作目が完成。ベースとドラムのリズムから始まり、ヘヴィなギターにハスキーな女性ヴォーカルで、いくぶんダークなヘヴィメタルを展開。
今作は、Judas Priestなどにも通じる正統派メタルの感触に、ジャーマンらしい叙情と疾走感も含んだスタイルであるが、どっしりとしたスローテンポのナンバーにも重厚な説得力があって、堂々たるJuttaの歌声が響き渡る。
ドイツ語によるナンバーを含む、ボーナストラック収録の2曲も含めて、楽曲はすべてが5分以上と非常に聴きごたえがある。これぞジャーマン・ヘヴィメタルという力作だ。
メロディック度・7 叙情度・7 女性Vo度・8 総合・8
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DEATHLESS LEGACY 「MATER LARVARUM」
イタリアのシンフォニックメタル、デスレス・レガシーの2022年作
DEATH SSのトリビュートバンドとして結成され、2013年にオリジナルバンドになって再デビュー、本作は5作目となる。
ヘヴィなギターにオルガンを含むシンセを重ね、女性ヴォーカルの歌声にグレゴリアンなチャントも加え、ゴシック寄りの耽美なメタルサウンドを聴かせる。
楽曲はミドルテンポが主体であるが、曲によってはほどよい疾走感もあり、Steva嬢は、ときにシアトリカルに、ときに艶めいた歌声をエモーショナルに響かせる。
随所にオーケストラルなアレンジや適度にキャッチーなメロディのフックも現れて、ダークになり過ぎない聴きやすさがあるのもポイントだろう。
ドラマティック度・7 耽美度・8 女性Vo度・7 総合・8 過去作のレビューはこちら
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TROVAO 「Prisioneiro do Rock n' Roll」
ブラジルのハードロック、トロヴァオの2021年
ベース&シンセ奏者を含む4人編成で、メンバー写真からも80年代のスタイルがぷんぶん匂ってくる。
美麗なシンセとギターによるインストから、オールドなギターにポルトガル語のヴォーカルを乗せた、Van Halenなどを思わせるハードロックを聴かせる。
巧みなギタープレイはなかなかのもので、母国語による辺境感はあるものの、サウンド自体はきらびやかなシンセも含めて、80年代LAメタル風に楽しめる。
7曲で27分という、EPなのかアルバムなのか微妙なところで、野太いヴォーカルの声質も好みは分けそうなところだが、流麗なギターやシンセアレンジはセンスが良く、南米版STEEL PANTHERになれそうなポテンシャルは感じさせる。
メロディック度・8 王道HR度・9 ヴィンテージ度・8 総合・7.5
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SENTINELS 「TRASCIENDE」
チリのメタルバンド、センティネルズの2020年作
オールドなツインギターで疾走するイントロ曲から、パワフル過ぎない女性ヴォーカルを乗せて、スラッシーなスピードメタルを聴かせる。
音程やリズム感も含めてヘタウマな女性シンガーは好みを分かれるところだが、昔のジャーマンメタルのように、とにかく疾走という、この潔いB級スピードメタルっぷりは微笑ましく、ほどよく叙情的なギターフレーズも悪くない。
ややこもり気味のサウンドも、いかにも80年代ルーツのヴィンテージ感があり、全34分、疾走まくりの女性声スピードメタルが楽しめます。
メロディック度・7 疾走度・9 女性Vo度・7 総合・7
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Scarlet Aura 「Falling Sky」
ルーマニアのシンフォニックメタル、スカーレット・オーラの2016年作
エッジの効いたヘヴィなギターリフにシンセを重ね、ハスキーな女性ヴォーカルとともに聴かせる、モダンな感触のメタルサウンド。
フロントのAura嬢は見かけはキュートで若いのだが、コブシの効いた歌声は、まるでベテランシンガーのよう。
楽曲の方は、メロディも展開も突き抜けきらず、いかにも辺境マイナーバンドという感じではあるが、キャッチーなミドルテンポのナンバーなどは悪くない。
ゴシックメタル、ヘヴィロック、シンフォニックメタルと、どっち付かずの方向性を、今後は確立していってもらいたい。
シンフォニック度・7 モダン度・7 女性Vo度・7 総合・7
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Winter Haze 「The Storm Within」
イタリアのシンフォニックメタル、ウインター・ヘイズの2009年作
美麗なシンセアレンジをギターに重ねて、伸びやかな女性ヴォーカルとともに、翳りを帯びたシンフォニックメタルを聴かせる。
随所にほどよい疾走感とキャッチーなノリも覗かせつつ、ストレートからソプラノも使い分けるジョルジア嬢の歌声が楽曲に彩りを添える。
いくぶんゴシックメタル感触も含んだ耽美でマイナーな空気感は嫌いではないが、もう少しフックのある展開や印象的なメロディなどが欲しいか。
ラストの疾走するするメロスピ風味などはよい感じなので、もっと取り入れてもよいのでは…と思いつつ、アルバムはこの1枚のみなんですね。
シンフォニック度・7 疾走度・7 女性Vo度・7 総合・7
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DARK AGES 「BETWEEN US」
イタリアのプログレメタル、ダーク・エイジズの2022年作
80年代に結成されたバンドで、2011年に復活し、本作は4作目となる。女性シンセ&フルート奏者を含む5人編成で、ほどよくヘヴィなギターにきらびやかなシンセを重ね、パワフルなヴォーカルとともに、モダンとヴィンテージが同居したサウンドを聴かせる。
オルガンが鳴り響くオールドなハードロック感触を、緩急ある展開で味付けしたというスタイルなので、テクニカルというよりはどっしりしてガチャガチャというイメージ。
メロディや盛り上がりの点で、楽曲としてはさほどインパクトはないのだが、後半の美麗なシンセによるシンフォニックなナンバーなどはよい感じで、ラストの12分の大曲も、起伏ある展開力でプログレッシブに構築してゆく。
ドラマティック度・7 テクニカル度・7 楽曲度・7 総合・7 過去作のレビューはこちら
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Masi 「Eternal Struggle」
イタリア出身のギタリスト、アレックス・マッシ率いるバンド、マッシの2001年作
ソロとしても活動するギタリストで、マッシ名義としては1987年のデビューから、本作は4作目となる。
ギター、ベース、シンセをマッシ自らが演奏。ドラムはカナダのプログレバンド、FMで活躍したポール・マランゴーニで、イングヴェイ直系のネオクラシカルなギタープレイをたっぷり盛り込んだ、王道の様式美メタルが炸裂。
伸びのあるヴォーカルを乗せたキャッチーな味わいと、きらびやかなシンセアレンジとともに、ゴージャスなハードロックとしても楽しめる。
全14曲65分で、後半はさすがに聴き疲れしてくるが、古き良きネオクラ様式美HRが好きな方はどうぞ。
メロディック度・8 ネオクラ度・8 様式美度・8 総合・7.5
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Kaira / Каира 「Колесо Фортуны」
ベラルーシの女性シンガー、カイラの2007年作
2006年にデビューし、2作目。ストリングスを含むオーケストラアレンジにギターを重ねたイントロから、ロシア語による彼女の艶やかな歌声を乗せて、壮麗なサウンドが広がってゆく。
叙情的なツインギターにシンフォニックなアレンジを重ねた、ほどよく疾走感のあるスタイルに、カイラ嬢のヴォーカルの存在感が、楽曲に魔女めいた妖しさを加えている。
ラストは、カルミナ・ブラーナのシンフォニックメタルアレンジで、荘厳に盛り上がる。
シンフォニック度・8 耽美度・8 女性Vo度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
MAGNUM 「Road to Paradise: Anthology 1978 - 83」
イギリスのドラマティック・ハード、マグナムのアンソロジー。1988/2000年作
1978年のデビューから、83年までのシングル曲、ライブ音源など全37曲を2CDに収録したアンソロジー作品。
フルートが鳴り響く「Kingdom Of Madness」から始まり、優美なシンセワークとともにプログレ感触を残したナンバーが続く。
EP収録の貴重なライブ音源もまとめて収録されて、ボブ・カトレイのエモーショナルな歌声も含め、往年のバンドの勢いあるライブ演奏が良好な音質で楽しめる。
「II」収録「Changes」のリミックスバージョンなども壮麗な味わいで、リマスターされたクリアな音質で過去の代表曲が楽しめるという点でも、マグナム入門用としてお薦めできる。
ドラマティック度・8 初期はプログレハー度・8 ブリティッシュハー度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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10/11
ゴシック&ダークアンビエントの秋(202)
The Gathering 「Beautiful Distortion」
オランダのアンビエント・ゴシック、ギャザリングの2022年作
1992年にデビュー、初期のドゥームメタル路線から、女性ヴォーカルをフロントにしたメランコリックなサウンドへと変化し、本作は9年ぶりとなる12作目。
エレクトロなアンビエントロックという前作の流れを受け継ぎつつ、優美なシンセをバックにしっとりとした女性ヴォーカルを乗せ、軽やかなリズムを加えたスタイルで、モダンでキャッチーな優雅さに包まれる。
深味を増したシルジュ嬢の歌声は、かつてのアネクを思わせる表現力で、楽曲を鮮やかに彩っており、曲によっては前作以上にダイナミックな味わいが楽しめる。
メランコリックな部分とエレクトロを同居させ、魅力的な女性Voを最大限に活かしたという点で、この路線での到達点というような逸品だろう。
ドラマティック度・8 メランコリック度・7 女性Vo度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Celestial Season 「The Merciful」
オランダのゴシック・ドゥームメタル、セレスティアル・シーズンの2020年作
バンドのデビュー前、1991年のデモと、1st発表後1994年のデモ音源を合わせてCD化したもの。
艶やかなヴァイオリンの音色から、女性スキャットを乗せた幻想的な空気に包まれ、ほどよくヘヴィなギターにデスヴォイスを乗せ、どっしりとしたドゥームメタルを展開。
物悲しくフューネラルな世界観は、初期のMy Dying Brideあたりに通じるスタイルで、ツインギターの叙情的なフレーズやヴァイオリンの響きが、ヨーロピアンな優雅さをかもしだす。
ラストの大曲も、メロウなツインギターとヴァイオリンで、物悲しい叙情を描きながら、わりと淡々とした聴き心地で、重すぎずダーク過ぎないところがミソ。
ドラマティック度・7 ゴシック度・8 優雅度・8 総合・7.5
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Lacrimosa 「Lichtjahre」
スイスのゴシックメタル、ラクリモーサのライブ。2007年作
1991年デビュー、耽美派のゴシックメタルとしてコアな人気を誇るバンドの、2005〜2006年に行われたヨーロッパツアーのライブを2CDに収録。
ほどよくヘヴィなギターに美麗なシンセワーク、ティロ・ウルフのしゃがれた歌声とともに、耽美でシアトリカルな世界観を描くスタイルはライブにおいても不変。
過去のアルバムからまんべんなく選曲されたナンバーは、ときに重厚に、ときに優雅な味わいで、随所に叙情的なギタープレイも覗かせつつ、じわりと盛り上げる。
女性シンセ奏者、アン・ヌルミの歌声を乗せ、艶めいたゴシックメタルを描くナンバーもアクセントになっていて、クラシカルなピアノに重なるメロウなギターもいい味わいである。
CD2枚で120分あまり。倦怠とロマン香りに包まれたヨーロピアンなゴシックメタルのステージに浸れる。同タイトルのDVDもあり。
ライブ演奏度・8 ゴシック度・9 耽美度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Kariti 「Covered Mirrors」
ロシアのゴシック・ネオフォーク、カリティの2020年作
魔女めいたジャケが良い感じだが、狂気じみた女性声から始まりつつ、アコースティックギターのつまびきに妖しい女性ヴォーカルを乗せて、わりと素朴で耽美なサウンドを聴かせる。
彼女の歌声は艶めいて美しく、英語歌詞のナンバーよりは、ロシア語の曲の方がより幻想的な神秘性を感じさせる。
ときおりエレキギターも加わるが、基本はアコギでシンセによるアレンジなどもないので、全体的にはフォーク寄りの素朴さが勝っている。もう少し濃密な世界観が欲しいような。
フォーク度・8 耽美度・8 女性Vo度・8 総合・7
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AUTUMN TEARS 「CONVALESCENE」
アメリカのゴシック・アンビエント、オータム・ティアーズの2018年作
本作は、1996年のデビュー作から、2007年作までから選曲された楽曲に、未発曲などを加えたベスト盤。
うっすらとしたシンセに美しいソプラノ女性ヴォーカルの歌声を重ね、しっとりとした幻想的なゴシックアンビエントを聴かせる。
ときにチェンバロやチャーチオルガンの音色に、オーケストラルなシンセの重ね、男性声も加えた混声チャントとともに、ときに教会音楽的な崇高なサウンドに包まれる。
シンセによるオーケストレーションをメインに、ELENDなどにも通じる耽美な幻想性を描きつつ、ダークになり過ぎない分、初心者にも聴きやすい。
重厚なコントラバスの響きや、クラリネットやフルートなどを加えたクラシカルなテイストも魅力的だ。全77分、その世界にたっぷり浸れます。
シンフォニック度・8 耽美度・9 女性Vo度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Autumn Tears / Zeresh? 「Widowing / Possessing」
アメリカのゴシック・アンビエント、オータム・ティアーズとゼレシュのカップリング。2022年作
1996年デビューの、AUTUMN TEARSは、ゴシックアンビエントとしてはすでにベテランの域である。
ヴァイオリンやチェロの重なりに美しいシンセとオーケストレーション、ソプラノ女性ヴォーカルの歌声で、オペラティックで幻想的なゴシックアンビエントを聴かせる。
クラシカルなピアノやストリングスの重ねで、シンフォニックというほどに厚みのあるサウンドは、壮麗にして優雅。
Zereshは2018年デビューの新鋭で、うっすらとしたシンセにアコースティックを含むギター、ストリングスに妖しい女性ヴォーカルで、夢見心地のダークアンビエントを聴かせる。
いくぶんサイケでアヴァンギャルドな雰囲気も覗かせつつ、幻想的な浮遊感に包まれた作風はプログ・アンビエントというべきか。
シンフォニック度・8 優雅度・9 幻想度・9 総合・8
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Day Before Us 「Crystal Sighs Of A Broken Universe」
フランスのゴシックアンビエント、デイ・ビフォー・アスの2014年作
美しいソプラノ女性ヴォーカルに、波や雨音などのSEや語りを含んだ物語的な幻想性に包まれてクラシカルなピアノやうっすらとしたシンセとともに、しっとりとダークな世界観を描いてゆく。
ネイチャーなイメージのSEが多いせいか、音楽というよりは雰囲気モノという味わいになっていて、ゴシックとしては耽美さが足りないし、女性ヴォーカルがちゃんと歌う部分がもう少し欲しい。
ドラマティック度・6 耽美度・7 女性Vo度・7 総合・7
Priscilla Hernandez「The Underliving」
スペインの女性アーティスト、プリシラ・ヘルナンデスの2011年作
2006年にデビューし、2作目となる。アコースティックギターにうっすらとしたシンセ、美しい女性ヴォーカルで幻想的なゴシック・フォークを聴かせる。
はかなげでメランコリックな空気感に包まれて、ホイッスルやヴァイオリンの音色に、バウロンのようなパーカッションが土着的な神秘性をかもしだす。
いくぶんデジタルなモダンさも覗かせつつ、ピアノやハープ、ダルシマー、カンテレなどのアコースティック楽器と上手く融合されていて、トラッド要素を含んだネオフォークとしての説得力を生み出している。
ちなみにCDは、絵本のような豪華ブックレット付の横長のトールケース仕様で、ラックからはみ出すこと請け合い。
ドラマティック度・8 幻想ネオフォーク度・9 女性Vo度・8 総合・8
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Ataraxia 「Nosce Te Ipsum」
イタリアのゴシック・フォーク、アタラクシアの1991/2008年作
1991年のカセット音源をCD化したもので、打ち込みのドラムにシンセを重ね、妖しい女性ヴォーカルに語りを加えた、耽美で幻想的な世界観を描く。
全体的にゆったりとした聴き心地で、楽曲的にはさほど展開はなく、雰囲気モノとしての退廃的な空気感が好きな方向けだろう。
クラシカルなアコースティックギターにスキャット的な女性声を重ねた、秘教的な土着感はよい感じで、サウンド的には自主制作感があるものの、すでにデビュー当初からブレない方向性を感じさせる。
クラシカル度・7 耽美度・8 女性Vo度・7 総合・7 過去作のレビューはこちら
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Ataraxia 「Lost Atlantis」
イタリアのゴシック・フォーク、アタラクシアの1999年作
1991年にデビュー。海に沈んだ伝説の古代帝国アトランティスをコンセプトに優美なシンセに牧歌的なアコースティックギター、妖しいソプラノ女性ヴォーカルで、耽美なゴシックフォークを聴かせる。
優美なハープやフルートの音色が優雅に楽曲を彩って、典雅なクラシカルギターのつまびきとともに、ダークになりすぎないネオフォークの幻想性に包まれる。
女性声がもう少しはかなげな方が個人的には好みではあるが、雰囲気モノ・ゴシックフォークが好きな方はいかが。
クラシカル度・7 耽美度・8 女性Vo度・7 総合・7
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Rising Shadows 「Falling Deep Within」
スウェーデンのゴシック・アンビエント、ライジング・シャドウズの2006年作
優美なシンセの重ねに、はかなげな女性ヴォーカルの歌声で、しっとりとした翳りに包まれたアンビエントなゴシック&ネオフォークを聴かせる。
ハープやフルート風の音色がクラシカルな優雅さをかもしだし、シンフォニックといってもよい耳心地で、幻想的なサウンドに浸れる。
1〜2分前後のインストによる小曲も多く、いわゆるダンジョンシンセ風のゴシックミュージックが好きな方にも楽しめるだろう。
全33分なので、わりとあっさりと聴き終えてしまうのだが、シンセたっぷりの幻想ネオフォークが好きな方はどうぞ。
クラシカル度・8 耽美度・8 女性Vo度・7 総合・7.5
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Lucus 「Cantiones Filicatae」
アルゼンチンのネオフォーク、ルカスの2006年作
やわらかなフルートの音色に異国的なサズの響きにハープのつまびき、美しいソプラノ女性ヴォーカルの歌声で、優雅なアコースティックサウンドを聴かせる。
物悲しいフルートや繊細なハープの響きが、翳りを帯びた哀愁を感じさせ、中世ヨーロッパの黄昏を感じさせる幻想美に包まれる。
楽曲は2〜3分前後の小曲主体で、シンセなどが入らない、純アコースティックサウンドなので、音数の少ない素朴さを楽しめるかどうか。
オペラティックなソプラノヴォーカルと異国的なサズの響きが、クラシカルと民族色のコントラストになっていて、個人的には面白い。
アコースティック度・9 優美度・8 女性Vo度・7 総合・7.5
LES SECRETS DE MORPHEE 「5 AVRIL 2000」
フランスのゴシック・アンビエント、レス・シークレッツ・デ・モルフィーの2000年作
1999年にデビューし、2作目となる。美麗なシンセの重ねに、なよやかな女性ヴォーカルの歌声で、シンフォニックなアンビエントサウンドを描く。
不穏なシンセの低音やいくぶん妖しげなスキャットヴォイスなどで、ほどよくダークな雰囲気もかもしだしつつも、あくまで優雅でクラシカルな聴き心地。
バックはシンセがメインなので、生楽器の説得力がない分、やや荘厳さに欠けるが、ドラムが入った曲などもあるのでそれはそれでよし。
ライブ録音のようで、ときおり観客の拍手も入ってくると臨場感がある。美しいソプラノヴォーカルを堪能できる、幻想的なシンフォニック・アンビエント作品です。
クラシカル度・8 耽美度・7 女性Vo度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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9/20
残暑のブラック&デスメタル(189)
Edge Of Sanity 「Nothing But Death Remains」
スウェーデンのプログレッシブ・デスメタル、エッジ・オブ・サニティの1991/2024年作
鬼才ダン・スワノ率いる伝説のスウェディッシュ・デスメタルバンドのデビュー作が、ダン・スワノの手に寄りリマスター&リミックスされ、CD2枚組で再発された。
優美なシンセのイントロで幕を開け、重厚なツインギターに迫力あるデスヴォイスとともに疾走しつつ、随所にリズムチェンジを含む知的な展開力で構築するスタイルは、本作の時点で充分個性的だ。
メロデスとしての最高作である4thや、5th以降のプログレッシブな作風に比べるとやや粗削りではあるが、EntombedやDismemberとは異なる、独自のデスメタルが楽しめる。
Disc2の最新リミックスバージョンは、音のバランスが良くなり、演奏パートがくっきりとした印象に。また、後半に収録された1991年のラフミックスは、プリミティブな荒々しさに包まれていて、デスメタルとしての原初的な迫力が味わえる。
なお、日本盤のライナー解説は緑川が担当しておりますので、どうぞよろしくデス。
ドラマティック度・7 暴虐度・7 北欧デス度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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VANSIDIAN「Reflecting the Shadows」
フィンランドのメロディック・デスメタル、ヴァンシディアンの2024年作
MOONLIGHT SORCERYのギタリストが率いるバンドで、コミック調のジャケットはパワーメタルかスラッシュメタルのようなイメージだが、サウンドは流麗な叙情フレーズを奏でるツインギターに咆哮するデスヴォイス、随所にノーマルヴォイスも使いながら、メランコリックな泣きと重厚なメタル感触が同居して、随所にCHILDREN OF BODOMに通じる雰囲気も覗かせる。
新鮮味はさほどないが、チルボド風のナンバーから、ときにIRON MAIDEN風の感触もあったり、正統派ヘヴィメタルへのリスペクトも感じさせる。
オールドスクールのヘヴィメタル、メロディックデスのスタイルを受け継ぎながら、激しさのみにとらわれず、ハイブリッドなメタルサウンドへと昇華させた好作だ。
日本盤のボーナスには、ANNIHILATOR“The Fun Palace”のカヴァーを収録。また日本盤のライナー解説は緑川が担当しています。
メロディック度・7 暴虐度・7 チルボ度・8 総合・8
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Akercocke 「Decades Of Devil Worship」
イギリスのアヴァン・ブラックメタル、アカーコッケのライブ作品。2023年作
1999年デビューのベテランで、本作は2007年ロンドンでのステージを収録。1st「Rape Of The Bastard Nazarene」と、2nd「The
Goat Of Mendes」からのナンバーを主体に、ブラストビートを含むリズムに喚きヴォイスを乗せ、随処に唐突なリズムチェンジとともに、アヴァンギャルドなブラックメタルを聴かせる。
力量あるドラムを中心に演奏面も安定しており、ときにデスメタル的でもあるブルータルな激しさとサタニックな暗黒性が同居していて、雰囲気モノとしても本格派の荘厳さを漂わせている。
「セイタン」と連呼するMCの叫びなどからも、アンチキリスト的な本気度が伝わってくる。ホンモノのブラックメタルが好きな方もどうぞ。
ライブ演奏・8 暴虐度・8 暗黒度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Mystic Circle 「Erzdamon」
ドイツのブラックメタル、ミスティック・サークルの2023年作
1997年にデビューし、9作目。16年ぶり復活作となった前作に続く復活2作目で、メロディックなギターに壮麗なシンセアレンジ、吐き捨てヴォーカルを乗せて、王道のシンフォニック・ブラックメタルを聴かせる。
随所に激しいブラスト疾走も覗かせつつ、悪魔をテーマにしたジャケのイメージに比べて、サウンドは全体的にメロディアスな聴きやすさが前に出ている。
一方では、荘厳な邪悪さが希薄なため、ブラッケンな迫力という点では少し物足りなさも。メロブラとしては普通にクオリティは高いです。
ドラマティック度・8 暴虐度・7 暗黒度・7 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Thulcandra 「A Dying Wish」
ドイツのメロディック・ブラックメタル、サルカンドラの2021年作
2010年にデビュー、本作は6年ぶりとなる4作目。叙情的なイントロから、DISSECTION風のツインギターとともに疾走、吐き捨てヴォーカルを乗せたアグレッシブな激しさと、メランコリックな泣きの美学が同居したサウンドは、まさにディセクションの後継者。
ゆったりとメロウなスローパートと疾走するメロブラパートの対比も鮮やかで、激しくともとにかく涼やかにメロディアスという、この完成度はもはやお家芸。
4作目にして、そろそろ新鮮味も欲しい気もするが、ファンにとっては安心の内容だろう。全体的にはスローパートがやや多い印象です。
ボーナスにライブ音源が2曲されていて、DISSECTIONの名曲“Night's Blood”を演奏しており、これはさすがの恰好良さ。
ドラマティック度・7 暴虐度・7 ディセクション度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Salacious Gods「Oalevluuk」
オランダのブラックメタル、サラシャス・ゴッズの2023年作
1999年にデビュー、本作は18年ぶりとなる4作目。トレモロを含むギターリフにダミ声ヴォーカルを乗せて疾走する、オールドスタイルのブラックメタル。
甘すぎない叙情を含んだギターフレーズとともに、激しいブラスト疾走も覗かせつつ、緩急ある展開とともにコールドでブラッケンな世界観を描き出す。
ミドルテンポによるどっしりとしたパートもわりとあって、疾走のみに頼らない、かつてのMAYHEMやBURZUMにも通じるプリミティブな空気も感じさせる。
10分近い大曲もあり、ブラックメタルとしての荒涼とした闇と、ほどよい叙情性が同居、激しいブラスト疾走のラストナンバーまで、濃密で聴きごたえのある内容となっている。
ドラマティック・8 暴虐度・8 暗黒度・8 総合・8
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BEHEMOTH「OPVS CONTRA NATVRAM」
ポーランドのブラックメタル、ベヒーモスの2022年作
1995年にデビュー、フルアルバムとしては12作目となる。おどろおどろしげなイントロから荘厳な空気をかもしだし、激烈なブラストビートに咆哮するデスヴォイスを乗せて、迫力たっぷりのブラックメタルを描き出す。
楽曲は4分前後が主体と、比較的コンパクトにまとめられていて、暴虐な暗黒性の中にも、ふと覗かせる叙情的なギターフレーズなどがアクセントになっており、ヘヴィネスを抑え目に、オーケストラルなアレンジを重ねるなど、激しい圧殺感はほどほどで、わりと聴きやすい。
日本盤デラックスエディション、Disc2には、2020年発表の4曲入りEP「A Forest」を収録。Shiningのニクラス・クヴァルホースをゲストヴォーカルに、アンダーグラウンドな香りのタイトル曲や、同ライブ音源など。
ドラマティック・8 暴虐度・8 荘厳度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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SATYRICON 「Live at the Opera」
ノルウェーのブラックメタル、サテリコンのライブ作品。2015年作
ノルウェイジャン・ブラックメタルの重鎮、本作は2013年にノルウェーで行われた、オペラコーラス隊との共演ライブを2CD+DVDに収録。
ダークな世界観のバンドサウンドに、重厚な男女混声合唱が重なって、THERIONにも通じるような優雅で荘厳なサウンドを展開する。
ミドルテンポ主体のナンバーも多いが、激しいブラスト疾走パートでも、オペラティックなコーラスが加わると、単なるブラックメタル以上の壮麗な感触になる。
同郷の人気ロックバンド、Madrugadaのシンガーがゲスト参加し、朗々とした歌声を聴かせるナンバーも味わいがあり、初期の疾走ナンバー“Mother
North”も激しくも美しい。
DVDの映像では、ステージ居並んだコーラス隊をバックに、メンバーたちの熱のこもった演奏が視覚的にも楽しめる。
ライブ映像・8 暴虐度・7 荘厳度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Necrophobic 「Dawn of the Damned」
スウェーデンのブラック・デスメタル、ネクロフォビックの2020年作
1993年にデビュー、本作は9作目となる。メロディックなギターのイントロから幕をあげ、トレモロを含む適度に叙情的なギターに吐き捨てヴォーカルを乗せて疾走する、ブラックメタル寄りのイーヴルな雰囲気に包まれたサウンド。
随所に流麗なギタープレイも覗かせて、ブラスト疾走する激しさの中にも、メロディアスな聴きやすさがあるのが日本人好みと言える。
ベテランらしいブラッケンな荘厳さを描きつつ、7分前後の長めの楽曲を構築する力量はさすがで、オールドなメロブラとメロデスの中間のような味わいで楽しめる力作デス。
ドラマティック・8 暴虐度・8 暗黒度・8 総合・8
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Iotunn 「Access All Worlds」
デンマークのプログレッシブ・デスメタル、イオトゥンの2021年作
叙情的なギターの旋律で幕をあげ、メタリックなギターリフに低音デスヴォイスとノーマルヴォーカルもまじえ、知的でスタイリッシュなサウンドを聴かせる。
ミドルテンポを主体に随所にアグレッシブなパートを織り込みつつ、10分を超える大曲をどっしりと構築するところは、OPETHなどにも通じるだろう。
叙情的なギターにシンセアレンジが重なり、ときに北欧らしいメランコリックな空気を覗かせ、スペイシーなスケール感に包まれた重厚な作風から、トレモロのギターのブラックメタル寄りのナンバーなどもあって、楽曲ごとに確かな構築センスを感じさせる。
ラストは13分を超える大曲で、ゆったりとした叙情パートとともにノーマルヴォーカルをメインにじっくり聴かせ、後半は激しいブラスト疾走も入って盛り上げる。
ドラマティック・8 暴虐度・7 知的デス度・8 総合・8
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TIWANAKU 「Earth Base One」
アメリカのデスメタル、ティワナクの2022年作
ペルー南部の古代遺跡からバンド名をとったというように、ミステリアスな世界観を標榜するバンドで、オールドスタイルのツインギターにデスヴォイスを乗せ、うっすらとしたシンセアレンジとともに、NOCTURNUSにも通じる神秘的なデスメタルを聴かせる。
随所に激しい疾走パートも含みつつ、スローパートを織り込んだ緩急ある展開力に、ほどよく叙情的なギターフレーズや詠唱めいた歌声も織り込んで、重厚ながらもわりと聴きやすい。
古代の神秘性を描くデスメタルという点では、NILEからブルータルさを減らした雰囲気という感じでも楽しめる。プログレッシブ・デスメタル好きにも対応した力作デス。
ドラマティック・8 暴虐度・7 神秘的度・8 総合・8
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Ordalion (Ордалион) 「Чёрный Мессия」
ロシアのシンフォニック・ブラックメタル、オラダリオンの2006年作
女性シンセ奏者を含む6人編成で、ツインギターにダミ声ヴォーカルを乗せ、美麗なシンセアレンジとともに、耽美な雰囲気に包まれたブラックメタル聴かせる。
トレモロを含むギターフレーズはわりとオールドな味わいで、低音ゲボ気味のヴォーカルも加わって、メロディック・デスメタル寄りの感触も覗かせる。
スローテンポのパートでは、ゴシック・デスメタル的な妖しい空気もまとわせて、緩急ある展開とシンフォニックな壮麗さで、Cradle Of Filthなどが好きな方にも楽しめるだろう。
シンフォニック度・7 暴虐度・7 耽美度・8 総合・7.5
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VAK 「The Islands」
スウェーデンのスラッジメタル、ヴァクの2023年作
2015年デビュー、3作目となる。ザラついたギターにスペイシーなシンセを重ね、喚き声ヴォーカルとともに、アグレッシブなノリとミステリアスな空気が同居した異色のサウンド。
緩急あるリズム展開にはプログレッシブな知的さも漂わせ、ドゥーミィな暗黒性と荒涼とした空気感が交差する。
ドラムを中心にした生々しいアンサンブルは、ときにキング・クリムゾン的だったりして、得体の知れない圧迫感に包まれる。
ラストは10分を超える大曲で、スラッジらしいギターにプログレ感あるシンセが絡み、インストを中心にしたわりとフリーキーなサウンドを展開する。
ドラマティック度・7 重厚度・8 ミステリアス度・9 総合・7.5
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Moonspell 「Under Satanae」
ポルトガルのゴシック・デスメタル、ムーンスペルの2007年作
本作は1994年の初期のEP「Under The Moonspell」に、デビュー前のデモ音源などを再録した作品。
メタリックなギターにシンセアレンジを重ね、咆哮するデスヴォイスと朗々としたノーマルヴォーカルで、耽美な妖しさと激しさが同居したゴシック・デスメタルを聴かせる。
1993年のデモも、1stへと至る重厚で耽美なサウンドはすでに完成されていて、迫力ある演奏や楽曲の構築力も含めて完成度は高い。
1992年のデモは、ブラックメタル的なダークな空気感とともに激しく疾走するパートもあって、現在のスタイルとの違いが楽しめる。
バンドの黎明期の楽曲ながら、サウンドは現在形ということで、ファンならば違和感なく楽しめるだろう。
ドラマティック度・7 ゴシックデス度・8 重厚度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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8/30
女性声シンフォメタルを聴こう(175)
THE DARK SIDE OF THE MOON 「Metamorphosis」
ドイツ、スイス、スウェーデン混合のシンフォニックメタル、ダーク・サイド・オヴ・ザ・ムーンの2024年作
ドイツのフォークメタル、FEUERSCHWANZのハンス・プラッツを中心に、同バンドの女性ハープ奏者、AD INFINITUMのメリッサ・ボニー、AMARANTHEのモルテン・ローヴェ・ソレンセンというメンバーが集まったバンドで、ケーム大会「リーグ・オブ・レジェンド」のテーマ曲から、映画、「ホビット」、「ロード・オブ・ザ・リング」劇中曲、「ハリー・ポッターと賢者の石」、「ゲーム・オブ・スローンズ」、さらにはアクションRPG「ウィッチャー3:ワイルドハント」といった、映画やゲームの楽曲を、壮麗なシンフォニックアレンジとメリッサの伸びやかな歌声で大胆にカヴァーしている。
オリジナル曲は11曲中で3曲のみであるが、壮大でシネマティック、優雅にしてエピックなサウンドは、シンフォニックメタルとして違和感なく昇華されていて、元曲と聴き比べたりしても楽しめる。
ELUVEITIEのファビエンヌ・エルニ、元DELAINのシャルロット・ウェッセルズがゲスト参加。ちなみに日本盤のライナー解説は小生が担当しておりますのでぜひ。
シンフォニック度・8 壮麗度・8 女性Vo度・8 総合・8
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Delain 「Dark Waters」
オランダのシンフォニック・ゴシックメタル、ディレインの2023年作
前作を最後に、リーダーでキーボードのマタイン・ウェスターホルトを除く全メンバーが脱退し、大幅なメンバーチェンジをへての7作目。
優美なシンセに透明感のある女性ヴォーカルを乗せたイントロから、重すぎないギターとともに、優雅なシンフォニックメタルを展開。
新ヴォーカルのダイアナ・リアの歌唱は、かつてのシャルロットに遜色ないコケティッシュな表現力でサウンドを彩っている。
楽曲は4〜5分前後で、シンフォニックなアレンジに随処に叙情的なギターフレーズも覗かせつつ、わりとストレートでキャッチーな聴き心地。
全体的にも高品質で壮麗な味わいなのだが、もう少しフックのある展開が欲しい気も。ともかくバンドの再出発に期待したい。
シンフォニック度・8 壮麗度・8 女性Vo度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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SINHERESY 「Event Horizon」
イタリアのシンフォニックメタル、シンヘレシーの2023年作
2013年にデビュー、本作は4作目で、硬質なギターリフにきらびやかなシンセアレンジ、パワフルな男性ヴォーカルにフェミニンな女性ヴォーカルが絡む、スタイリッシュなサウンドを聴かせる。
モダンなヘヴィネスとキャッチーなフックで、適度にアグレッシブなノリを描きつつ、セシリア嬢の歌声をメインにした優美なナンバーもアクセントになっている。
楽曲は3〜4分前後で、DELAINなどにも通じるわりとストレートな聴き心地で、歌唱の表現力も含めてクオリティの高さはさすが。
ただ、アルバムを通して、ドラマティックなフックがもっと欲しいし、全34分というのも少し物足りないか。
シンフォニック度・7 スタイリッシュ度・8 女性Vo度・7 総合・8 過去作のレビューはこちら
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THE ERINYES
フランス、イタリア、ブラジル出身の3人の女性シンガー擁するシンフォニックメタル、エリニュスの2023年作
Secret Sphereのアルド・ロノビレがプロデュースし楽曲も提供、優美なシンセアレンジをギターに重ね、伸びやかな女性ヴォーカルで、壮麗なシンフォニックメタルを聴かせる。
ジャケのイメージのような耽美な妖しさはさほどなく、王道のギタープレイとともにしっかりとメタル感触もあり、キャッチーなメロディアスハード風味も感じさせる。
なよやかな歌声から、伸びのあるストレートな歌声まで、3人それぞれの個性が楽曲を彩っていて、女性声メタル、女性声HR好きなら楽しめるだろう。
楽曲はメロディアスではあるが、新鮮味やこれというインパクトがないので、わりとさらっと聴けてしまうのが惜しいところ。
メロディック度・8 壮麗度・7 女性Vo度・8 総合・8
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Mystfall 「Celestial Vision」
ギリシャのシンフォニックメタル、ミストフォールの2023年作
クラシカルで壮麗なイントロから、メタリックなギターにオーケストラルなアレンジ、ソプラノ女性ヴーカルに男性グロウルが絡む、EPICAにも通じる重厚なシンフォニックメタルを聴かせる。
マリアレナ嬢のソプラノはオペラティックな抜けの良さで、サウンドに優雅に彩り、しっとりとした女性声メインのナンバーなども、表現力ある歌唱が素晴らしい。
楽曲は4〜5分前後がメインであるが、シンフォニックな音の厚みと女性声の存在感で、華麗にして濃密な味わいです。
シンフォニック度・8 壮麗度・8 女性Vo度・9 総合・8
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Coronatus 「Atmosphere」
ドイツのシンフォニックメタル、コロナタスの2021年作
2007年にデビューし、本作は10作目となる。優美なイントロで幕をあげ、ピアノとヴァイオリンによる前奏からメタリックなギターに、二人の女性ヴォーカルの歌声を重ねて、壮麗なシンフォニックメタルを展開。
楽曲は3〜5分前後とわりとシンプルで、ドラマティックな盛り上がりはさほどないのだが、声質の異なる二人の歌声の絡みや、ときにフォーキーな優雅さも覗かせるなど、幻想的な雰囲気は悪くない。
疾走感のあるアグレッシブなナンバーなども良い感じなのだが、ラスト曲は何故かジャズタッチと、方向性は定まらず、全体的にも突き抜けきらないフックの弱さはぬぐえない。
シンフォニック度・7 楽曲・7 女性Vo度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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Ethernity 「Human Rage Extinction」
ベルギーのシンフォニックメタル、エサーニティの2018年作
2006年に自主デビューし、4作目。ヘヴィなギターリフにきらびやかなシンセ、伸びやかな女性ヴォーカルで、メタリックな激しさと壮麗さが同居したモダンなシンフォニックメタルを聴かせる。
近未来SF的なコンセプトがあるのだろう、随所にデジタルなシンセアレンジや、Djent的な硬質なリズムを含みつつ、ほどよくダークなスケール感に包まれる。
全体的にはキャッチーなメロディがもう少し欲しい気もするが、スタイリッシュな女性声シンフォニックメタルが好きなら楽しめるだろう。全70分という力作です。
シンフォニック度・7 スタイリッシュ度・8 女性Vo度・7 総合・7.5
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Midnight Sorrow 「Pick A Tale」
フランスのシンフォニックメタル、ミッドナイト・ソロウの2017年作
オーケストラルで美麗なアレンジをギターに重ね、コケティッシュなソプラノ女性ヴォーカルに男性デス声が絡む、きらびやかなシンフォニックメタルを聴かせる。
ほどよい疾走感とともに、ゴシック的な耽美な雰囲気も覗かせつつ、クラシカルなピアノなどを含むゆったりとしたパートとのメリハリもあって、楽曲はドラマティックに展開する。
紅一点、マウリーン嬢のなよやかな歌声も魅力的で、Nightwish系のシンフォニックメタルから、ケルティックなフォークメタル風味のナンバーまで、その美声で華麗に楽曲を彩っている。
11分の大曲を含む全66分。王道のシンフォニックメタルを真摯に作り上げたというべき壮麗な力作。
シンフォニック度・8 壮麗度・9 女性Vo度・9 総合・8
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Darkest Sins 「The Broken」
ノルウェーのシンフォニックメタル、ダーケスト・シンズの2016年作
メタリックなギターにシンセ重ね、伸びのある男性ヴォーカルに女性ヴォーカルも重なり、スケール感のある重厚なサウンドを聴かせる。
女性シンガーがメインのナンバーでは、優雅な感触が強まり、シンフォニックなアレンジとともに壮麗に楽しめる。
一方では、わりとオールドなメタル感触のナンバーもあったり、ほどよくマイナーな雰囲気がマニア好みと言ってよい。
ラストは11分の大曲で、クサメロのギターとともに疾走、ドラマティックな展開とエモーショナルなヴォーカルで、キャッチーなメロスピが味わえる。
ドラマティック度・8 疾走度・7 優雅度・8 総合・7.5
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Smackbound 「Hostage」
フィンランドのゴシック・ハードロック、スマックバウンドの2023年
2020年にデビューし、2作目。適度にヘヴィなギターに伸びやかな女性ヴォーカルを乗せ、EVANESCENCEにも通じる翳りを帯びたゴシック・ヘヴィロックを聴かせる。
随所にモダンなシンセアレンジや巧みなギタープレイも織り込んで、キャッチーな女性Voロックとしても、オルタナ系のゴシックロックとしても楽しめる。
曲によってはノリのよい激しさも覗かせつつ、ゆったりとしたナンバーでは、メランコリックな空気に包まれて、Netta嬢のエモーショナルな歌唱が光る。
メロディック度・7 ゴシック度・7 女性Vo度・8 総合・7.5
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Ciryam 「Zamyslony Zapach...」
ポーランドのゴシック・ハードロック、シリアムの2023年作
2004年にデビュー、8年ぶりとなる5作目で、初期はゴシックメタルとプログレメタルの中間というような作風であったが、本作も適度にハードなギターにシンセを重ね、母国語による女性ヴォーカルで、東欧らしい翳りを帯びたサウンドを聴かせる。
一方では、ストレートでキャッチーなハードロックナンバーも増えていて、3〜4分前後の比較的シンプルな聴き心地の女性声ロックとしても楽しめる。
モニカ嬢の歌声にも艶めいた妖艶さが見え隠れして、その表現力も充分なのだが、やはりゴシックなのかハードロックなのか、楽曲の方向性が曖昧である。
メロディック度・7 ポーラン度・8 女性Vo度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
Sanctorium 「The Depths Inside」
ロシアのシンフォニックメタル、サンクトリウムの2014年作
ツインギターに壮麗なシンセアレンジとストリングス、美しいソプラノ女性ヴォーカルに男性デス声が絡む、耽美で重厚なシンフォニックメタルを構築する。
ノーマルの男性ヴォーカルが加わると、勇壮でエピックな雰囲気にもなり、女性声とのコントラストと緩急ある展開力で、幻想的な世界観に引き込まれる。
ゴシックメタル寄りの重厚なナンバーから、疾走感あるパートまで、EPICAにも通じるドラマティックな構築性と、実力ある女性シンガーの歌唱がサウンドに神秘的な説得力を付加している。
ドラマティック度・8 壮麗度・8 重厚度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
8/9
メタル暑中見舞い(163)
Evermore 「In Memoriam」
スウェーデンのメロディックメタル、エヴァーモアの2023年作
2021年にデビューし、2作目。壮麗なイントロ曲から、王道のギターにシンセアレンジを重ね、ハイトーンヴォーカルとともにシンフォニックなメロディックメタルを聴かせる。
ほどよいクサメロ感とマイナーな雰囲気を残しつつ、エピックでファンタジックな世界観はなかなか日本人好みで、曲によっては、HELLOWEEN風のキャッチーなサビのメロディも現れるなど、爽快な疾走ナンバーにはガッツポーズ。
きらびやかなシンセと、伸びのあるハイトーンヴォーカルを乗せての優雅な疾走感は、STRATOVARIUSのファンなどにも楽しめるだろう。
メロディック度・8 疾走度・7 ストラトハロウィン度・8 総合・8
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METAL DE FACTO 「LAND OF THE RISING SUN PART I」
フィンランドのメロディックメタル、メタル・オブ・ファクトの2024年作
2019年にデビューし、2作目。ジャケやタイトルのように日本をテーマにした作品で、ツインギターのヘヴィなリフに美麗なシンセアレンジ、伸びやかなヴォーカルを乗せた、正統派のメロパワを聴かせる。
サビでのキャッチーなフックや随所に流麗なギタープレイも盛り込んで、疾走感のあるナンバーからどっしりとしたミドルテンポまで、ゴージャスで厚みのあるメタルサウンドが楽しめる。
王道のメロパワを基本にしつつも、わりとモダンな感触もあるという点では、Powerwolfあたりに通じる部分もあるだろう。
ラストは忠臣蔵をモチーフにした12分の大曲で、疾走パートを含むドラマティックな展開力で、勇壮なメタルサウンドを描いてゆく。
ドラマティック度・8 重厚度・8 正統派度・8 総合・8
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Iron Savior 「Firestar」
ドイツのメロディックメタル、アイアン・セイヴィアーの2023年作
1997年にデビュー、本作は15作目。壮麗なイントロナンバーから幕をあげ、王道のギターリフに伸びのあるパワフルなヴォーカルで疾走する、正統派のジャーマン・パワーメタルを聴かせる。
サビでのキャッチーな歌メロやメロディックなギターソロなどは、ときにGAMMA RAY風で、シンセアレンジも含むゴージャスなサウンド作りは、さすがピート・シールクというところ。
疾走ナンバーはもちろん、軽快なミドルテンポから、どっしりとした三連リズムのナンバーも、メタルとしての勇壮さとフックのあるメロディで、どこをきっても楽しめる貫録の内容。ここにきて最高作ですか。
メロディック度・8 疾走度・8 ジャーマン度・9 総合・8.5 過去作のレビューはこちら
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Archon Angel 「II」
アメリカ&イタリアのメタルバンド、アーコン・エンジェルの2023年作
元SAVATAGEのザック・スティーヴンス、Secret Sphereのギター、アルド・ロノビーレ、ドラムのマルコ・ラザリーニらによるバンドで、2020年作に続く2作目。
メタリックなギターに優美なピアノとシンセとオーケストラルなアレンジ、朗々としたヴォーカル乗せて、サバタージをシンフォニックにしたような重厚なサウンドを描く。
いくぶん翳りを帯びた世界観に、表現力あるザックの歌声がよくマッチしていて、随所に巧みなギタープレイも覗かせつつ、ドラマティックな正統派ヘヴィメタルを聴かせてくれる。
これだという新鮮味こそないが、優雅でキャッチーなラストナンバーまで、ザッカリー・スティーブンスの味わいのある歌声が楽しめるという点ではファンは嬉しいだろう。
ドラマティック度・8 重厚度・8 サバタージ度・8 総合・8
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Winterage 「Nekyia」
イタリアのシンフォニックメタル、ウインターエイジの2023年作
2015年にデビュー、本作3作目となる。前作はRHAPSODYばりの壮麗作であったが、今作も、オーケストラルなイントロで幕を開け、ストリングスを含むシンフォニックなアレンジをギターに重ね、伸びやかなヴォーカルとともに、シネマティックで壮麗なサウンドを展開する。
大仰な混声クワイヤといい、クラシックを基にしたメロディといい、いかにもRHAPSODYを思わせるスタイルであるが、激しい疾走感やときにフォーキーなテストも含むクサメロ寄りの味わいはどうあっても日本人好みなのは間違いない。
ファンタジックでエピック、壮大なラプソ風シンフォニックメタルの力作。クオリティ高いので、新鮮味や個性については目をつぶろう。
シンフォニック度・9 疾走度・8 ラプソ度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Beriedir 「Aqva」
イタリアのメロディックメタル、ビリーディアの2022年作
2018年にデビューし、2作目。きらびやかなシンセに硬質なギターを重ね、ハイトーンヴォーカルとともに疾走しつつ、ProgMetal的な質感も含んだシンフォニックメタルを展開。
緩急あるテクニカル性とキャッチーな歌メロが同居し、モダンなヘヴィネスと爽快なメロディアス性が合わさり、軽快に疾走するメロスピ風味もなかなか魅力的だ。
優美なピアノを含む華麗なシンセアレンジもセンスが良く、透明感あるヴォーカルの歌声によくマッチしている。シンフォニックでモダンな高品質作です。
メロディック度・8 疾走度・8 きらびやか度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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MARCH TO DIE 「Tears Of The Gorgon」
キプロスのエピックメタル、マーチ・トゥ・ダイの2023年作
ほどよくヘヴィなギターにガナり気味のヴォーカルを乗せ、どっしりとした重厚なエピックドゥーム寄りのサウンドを聴かせる。
うっすらとしたシンセによるアレンジなど、神秘的な香りと土着感は、BATHORYなどに通じる雰囲気もあり、随所に叙情的なギターも覗かせつつ、MANOWARあたりを思わせる勇壮な空気にも包まれる。
いくぶんマイナー臭いB級感触も味になっていて、オールドな感触のドゥーミィな正統派ヨーロピアンメタルが好きな方にも楽しめるだろう。
ドラマティック度・7 重厚度・8 正統派度・8 総合・7.5
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MIND DOORS 「THE EDGE OF THE WORLD」
スペインのプログレメタル、マインド・ドアーズの2019年作
優美なシンセを叙情的なギターに重ね、マイルドなヴォーカルとともに、ほどよいハードさとテクニカル性の同居したスタイリッシュなサウンドを描く。
オルガンやピアノを用いたシンセはシンフォプログレ寄りの繊細さがあり、しっとりと聴かせる叙情パートから流麗なギタープレイとともにじわじわと盛り上げる。
一方ではモダンな硬質感でテクニカルなパートを構築するあたりは、HAKENあたりにも通じる感触もあるが、全体としての優雅な叙情性はこちらの方が強い。
メロディアスな優雅さとハードさのバランスも良く、きらびやかなシンセが包み込む、シンフォニックなProgMetalが味わえる好作品だ。
ドラマティック度・8 テクニカル度・7 優美度・8 総合・8
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Dawnlight 「Until The Dark Sun Rises」
スペインのメロディックメタル、ダウンライトの2019年作
壮麗なイントロから、クサメロ感あるギターにシンセを重ね、マイルドなヴォーカルとともに疾走する、透明感あるメロディックメタルを聴かせる。
歌詞は英語なのでスペイン臭さはなく、きらびやかなシンセアレンジとキャッチーなメロディで爽快に疾走する辺りは、初期のSONATA ARCTICAを思わせる。
これという新鮮味はないのだが、シンフォニックなシンセアレンジやネオクラシカル風味の優雅さとともに、メロディック・スピードメタルとしての魅力は充分。
サビでのクサめの歌いまわしには、やはりスパニッシュ系らしい濃密さも感じさせる。きらきら系メロスピが好きなかたはどうぞ。
メロディック度・8 疾走度・8 美麗度・8 総合・8
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Ankhara 「Sinergia」
スペインのメタルバンド、アンクハラの2018年作
1999年にデビュー、2003年までに3作を残し消えるが、本作はそれから15年ぶりとなる復活作。
メタリックなツインギターにハイトーンヴォーカルで、Judas Priestなどにも通じる古き良き正統派ヘヴィメタルを聴かせる。
かつてのサウンドよりも硬派なメタル感触を強めているが、スペイン語による歌いまわしや叙情的なギターソロなど、スパニッシュな濃密さは健在。
かつてのようなキャッチーなクサメロ感もいくぶんあるが、全体的には、インパクトのあるメロディのナンバーがもう少し欲しいか。ボーナスにライブ音源を3曲収録。
メロディック度・7 疾走度・6 スパニッシュ度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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Arkania 「Serena Fortaleza」
スペインのメロディックメタル、アルカニアの2015年作
2007年にデビューし、4作目。ツインギターにシンセを含む6人編成で、メタリックなギターにシンセを重ね、スペイン語のハイトーンヴォーカルを乗せて疾走する、王道のメロディックメタル。
スペインらしいサビでの情感ある歌メロとともに、初期AVALANCHなどにも通じる爽快なスパニッシュ・メロスピから、メロディアスハード的なキャッチーなナンバーなども、質の高い演奏と歌声で楽しめる。
女性ヴォーカルが参加したバラードなども叙情的で、中盤以降は疾走曲がないのがやや物足りないが、優雅なスパニッシュメタルの好作です。
メロディック度・8 疾走度・7 スパニッシュ度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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Tierra Santa 「Medieval & Legendario」
スペインのメロディックメタル、ティエラ・サンタの2012年作
1997年の1stと、1999年の2ndをリマスターし、カップリングした2CD再発盤。
デビュー作は、重すぎないギターにスペイン語のヴォーカルを乗せた、牧歌的なハードロックという感触で、垢抜けないサウンドもいかにも自主制作然としている。
随所にIRON MAIDEN的なツインギターも覗かせたり、シンセによる優美なアレンジも加わって、スパニッシュらしい叙情性もしっかりと聴かせてくれる。
2ndになると、演奏がタイトになり、メロディックなフックにエピックな幻想性が合わさり、スパニッシュメタルとしての優雅な味わいがぐっと増している。
メロディック度・8 疾走度・7 スパニッシュ度・9 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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Patente De Corso 「MMX」
スペインのメタルバンド、パテンテ・デ・コルソの2010年作
オールドな感触のギターにダーティなヴォーカルを乗せた、ほどよい疾走感のある正統派のヘヴィメタルを聴かせる。
ガナり気味の武骨なヴォーカルの声質もあって、ACCEPTあたりに通じる80年代風味に、RUNNIG WILDなどをルーツにしたパイレーツメタル的な世界観が合わさったような味わい。
ギターのフレージングはオールドなハードロック的ながら随所に巧みなプレイを披露しており、スペイン語の歌声による勇壮な雰囲気も悪くはないのだが、全体的にはメロディックなフックは弱めで、メタルとしてのパワーもさほど感じない。スパニッシュらしい叙情がもう少し欲しいか。
メロディック度・7 疾走度・6 オールドHR度・8 総合・7
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STEEL AGGRESSOR 「Mourning Star... Total Eclipse」
アメリカのパワーメタル、スティール・アグレッサーの2013年作
2011年にデビューし、2作目となる。スラッシーなギターリフにダーティなヴォーカルを乗せて疾走する、オールドなパワーメタルは本作も健在。
随所にほどよい叙情を含んだ味わいは、初期のBLIND GUARDIAN風でもあったり、エピックな世界観のウェットなスラッシュメタルとしても楽しめる。
7〜9分という長めの楽曲もけっこうあるが、緩急あるリズム展開やメロディックなギターフレーズも覗かせつつ、なかなかドラマティックに構築してゆく。
ドラマティック度・7 疾走度・8 オールドパワメタ度・8 総合・7.5
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6/27
メロデスにポストブラックなど(149)
Beyond The Veil 「Terminus」
日本のプログレッシブ・デスメタル、ビヨンド・ザ・ヴェイルの2024年作
2020年に結成された、東京を拠点にするバンドで、本作は全3曲のデビューミニアルバム。
PINK FLOYDを思わせるメロウなギターの旋律で幕を開ける、2パート分かれた、15分の大曲は、美麗なシンセアレンジにメタリックなギターに迫力あるデスヴォイスとノーマルヴォイスを使い分け、OPETHにも通じる緩急ある展開で構築される。
クラシカルな優雅さから、ときにブラックメタルばりのアグレッシブな疾走感、繊細なアコースティックギターの旋律へという極端な流れも、決してアヴァンギャルドにはなり過ぎず、メロトロンを含むシンセなどにはプログレッシブな香りと美意識を感じさせる。
デスメタルやブラックメタルにとらわれない、ボーダーレスのプログ・エクストリームメタルというべきか。ちなみにシンセのDB Karmaは、TYRANTのシンガーを務めていたキャリアの持ち主。今後の活動に注目のバンドである。
ドラマティック度・8 プログレッシブ度・8 優雅度・8 総合・8
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AT THE GATES 「THE NIGHTMARE OF BEING」
スウェーデンのメロディック・デスメタル、アット・ザ・ゲイツの2021年作
1992年にデビュー、95年までに4作を残して消えるも、The Hauntedでも活動するヨナス・ビョーラーを中心に2008年に復活、2014年の復活アルバムからは順調な活動をへて、本作は通算7作目となる。
アコースティックなイントロから、扇情的なツインギターにデスヴォイスを乗せて疾走する、オールドスタイルのイエテボリ系メロデスが炸裂する。
トレモロから泣きのフレーズまで、北欧らしさたっぷりのギタープレイもさすがという他なく、オリジナルメンバーであるトーマス・リンドバーグの叫びにも似た歌声も、このバンドのひとつの個性となっている。
かつてを思わせるオールドな疾走ナンバーから、今作では、スローテンポのナンバーなども、メランコリックな味わいになっている。ベテラン健在の強力なアルバムだ。
ボーナスDiscには2018〜2019年のライブを収録、いきなりKING CRIMSON「Red」のカヴァーで驚くが、その後もストリングカルテットをゲストに優雅な感触も覗かせる。
ドラマティック度・8 激しさ度・7 叙情度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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The Haunted「Strength in Numbers」
スウェーデンのデスラッシュメタル、ホーンテッドの2017年作
AT THE GATESのビョラー兄弟を中心に結成、1998年にデビューし、本作は9作目となる。マルコ・アロとエイドリアン・アーランドソンが復帰して、激しさを取り戻した前作に続き、本作ものっけから、これぞデスラッシュという突進力でたたみかける。
一方では、激しさのみにとらわれないダークな叙情性も感じさせ、前作のモダンな感触に比べると、初期の頃に戻ったような味わいで、オールドファンには嬉しい所。
ザクザクとした硬質なギターリフと、メロディアスなソロプレイの対比もあって、激しくも聴きやすく、デスラッシュ初心者にも楽しめるだろう。3rd以来の傑作デスら。
ドラマティック度・8 激しさ度・8 叙情度・7 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Wolfheart 「Shadow World」
フィンランドのメロディック・デスメタル、ウルフハートの2015年作
2013年にデビューし、2作目となる。優美なピアノのイントロから、重厚なツインギターを乗せて激しいブラスト疾走、咆哮するデスヴォイスとともに迫力あるサウンドを聴かせる。
叙情的なギターにシンセを重ねたスローパートも随所に覗かせて、いくぶんペイガンメタル寄りの土着性も含んだ、勇壮なメロデスが味わえる。
ヘヴィなギターと暴虐な疾走感で、甘すぎないメロディアス性と北欧らしいコールドな空気感に包まれてた、硬派なペイガン・デスメタルとしても楽しめ、一方では、初期AMORPHISのようなどっしりとした土着的な叙情も覗かせる。
ドラマティック度・8 激しさ度・8 叙情度・7 総合・8
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Wolfheart 「CONSTELLATION OF THE BLACK LIGHT」
フィンランドのメロディック・デスメタル、ウルフハートの2018年作
4作目となる本作は、のっけから10分を超える大曲で、素朴なアコースティックギターのイントロから、シンフォニックなアレンジをヘヴィなギター重ね、デスヴォイスとともに激烈にブラスト疾走、緩急ある展開力で、激しくも重厚なメロデスが炸裂する。
美麗なシンセアレンジや泣きの叙情を含むメロディックなパートとともに、随所にほどよく土着感も覗かせつつ、INSOMNIUMにも通じるドラマティックで高品質なサウンドが楽しめる。
中盤はミドルテンポのパートでじっくり聴かせつつ、アルバム後半は疾走するオールドスタイルのメロデスでたたみかける。まさに、強力な出来栄えデス。
ドラマティック度・8 激しさ度・8 叙情度・8 総合・8.5
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Wolfheart 「King Of The North」
フィンランドのメロディック・デスメタル、ウルフハートの2022年作
6作目の本作は、クラシカルなピアノで幕を開け、叙情的なギターを乗せたゆったりとした導入から、暴虐なブラスト疾走へと、振り幅の大きな展開力はすでにこのバンドの持ち味だ。
ギターは随所にメロディックな泣きのフレーズを奏で、ブラストに乗せるトレモロのリフなど、オールドなメロデスらしさをしっかりと受け継ぎつつ、今作ではノーマル声によるコーラスなどもアクセントになっている。
ほどよいシンセアレンジを加えた北欧らしいメランコリックな美意識と、硬派なデスメタル感触が同居し、重厚にして叙情的なメロデスが味わえる力作に仕上がっている。
Killswitch Engageのジェシー・リーチや、NILEのカールサンダースがゲスト参加、それぞれに迫力あるヴォーカルを披露している。
ドラマティック度・8 激しさ度・8 叙情度・8 総合・8
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Night In Gales 「The Last Sunsets」
ドイツのメロディック・デスメタル、ナイト・イン・ゲイルスの2018年作
1997年にデビュー、2011年に10年ぶりの復活を遂げ、本作は復活2作目となる通算6作目のアルバム。
ほどよく叙情的なツインギターにデスヴォイスを乗せて疾走する、かつてのAT THE GATESやDARK TRANQUILLITYなどにも通じる、オールドなメロデスサウンド。
扇情的なギターフレーズを随所に奏でつつも、甘すぎないメロディアス性と激しい疾走感が同居したスタイルは、初期のスタイルを受け継ぎながらもよりパワーアップした感触で、往年のメロデス好きにはたまらないだろう。
楽曲は3分前後がメインで、ストレートで爽快であるが、贅沢を言えばもう少しドラマティックな展開なども欲しいか。
メロディック度・8 疾走度・8 オールドメロデス度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Night In Gales 「Dawnlight Garden」
ドイツのメロディック・デスメタル、ナイト・イン・ゲイルスの2020年作
通算7作目のアルバムで、ほどよく叙情的なツインギターに吐き捨てヴォーカルを乗せて疾走する、オールドスタイルのメロデスサウンドは本作も健在。
スローテンポを挟んだ緩急ある流れも覗かせつつ、咆哮するデスヴォイスは、DARK TRANQUILLITYのミカエルを思わせるときもあり、随所に聴かせる扇情的なギターフレーズもメロデス好きのツボをつく。
激しく疾走するナンバーが多いものの、ギターは常に叙情的なので暴虐さはさほど感じない。爽快に楽しめるオールドメロデスの強力作。
メロディック度・8 疾走度・8 オールドメロデス度・9 総合・8
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ACOD 「Fourth Reign Over Opacities And Beyond」
フランスのブラック・デスメタル、アコドの2022年作
2009年デビュー、5作目となる。オーケストラルな雰囲気のイントロ曲から、激しいブラストビートに吐き捨てヴォーカルを乗せた、ブラックメタル寄りのデスメタルを聴かせる。
甘すぎない程度のギターフレーズやシンフォニックなアレンジなど、わりと優雅な美意識も随所に感じさせ、暗黒性というよりは荘厳な雰囲気をかもしだす。
ザラついたギターリフのオールドなデスメタル感触と、ストリングスを含むオーケストラアレンジが同居した重厚なサウンドで、ミドルテンポのパートもどっしりとした味わいのブラッケンなデスメタルが楽しめる。
ドラマティック度・8 暴虐度・7 重厚度・8 総合・8
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Gravestone 「Ars Arcana」
イタリアのプログレッシブ・デスメタル、グレイヴストーンの2021年作
1994年にEPのみを残して消えたバンドが、2017年に復活し、本作は初のフルアルバムとなる。
シンセを含む5人編成で、シネマティックな語りの入ったイントロから、メタリックなギターに美麗なシンセを重ね、咆哮するデスヴォイスとともに、緩急ある展開力のデスメタルを聴かせる。
リズムチェンジを多用したドラマティックな構築力に、きらびやかなシンセワークが楽曲を彩り、イタリアらしい濃密でシアトリカルなサウンドが味わえる。
ときにブラックメタルばりの暴虐なブラスト疾走に、優美なピアノや女性ヴォーカルを加えたシンフォニックなパートも覗かせて、Ebonylakeあたりにも通じる混沌としたアヴァンギャルド性は好き者にはたまらないだろう。STORMLORDのクリスティアーノ・ボルチ、Rhapsody Of Fireのジャコモ・ヴォイルがゲスト参加。
ドラマティック度・8 暴虐度・7 アヴァンギャル度・8 総合・8
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RISE TO FALL 「Into Zero」
スペインのメロディック・デスメタル、ライズ・トゥ・ヘルの2018年作
2008年にデビューし、4作目。シンセによるデジタル感触のイントロから、メタリックなギターに吐き捨てヴォーカルを乗せて疾走、ノーマル声によるキャッチーなコーラスなど、メタルコアとメロデスの要素を融合させた聴き心地。
楽曲は3〜4分前後とわりとシンプルながら、随所にミドルテンポを取り入れた緩急ある構築性で、メロディックなギターの旋律とともに、ほどよく激しすぎないのでメロデス初心者にも楽しめるだろう。
全体的には、オールドスタイルかモダンなのか、これという新鮮味がなく、ドラマティックなフックがもう少し欲しい気もするが、なかなか高品質な好作デス。
メロディック度・7 疾走度・7 叙情度・7 総合・7.5
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LASTER 「Andermans Mijne」
オランダのポストブラックメタル、ラスターの2023年作
2012年にデビューし、本作は4作目となる。不穏なギターフレーズに母国語による語りのような歌声を乗せ、随所に激しい疾走パートも含んだ緩急あるサウンドを展開。
楽曲は3〜5分前後が主体でわりとシンプルではあるが、ブラックメタルをルーツにしたミステリアスな空気感にとぼけたような優雅さも漂わせ、ときにデジタルでスタイリッシュなアレンジも覗かせる。
唐突でアヴァンギャルドな展開も確信犯的で、単なるポストブラックというよりは、プログレッシブな香りが漂う異色作である。
ドラマティック度・7 激しさ度・6 スタイリッシュ度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Asphodele 「Jours Pales」
フランスのポストブラックメタル、アスフォデーレの2019年作
Amesoeursにも在籍する女性ミュージシャンのソロプロジェクトで、ベートーベンの月光のメロディを用いたクラシカルなイントロから、トレモロを含むギターにコケティッシュな女性ヴォーカルを乗せ、フランス語の男性声も絡む優雅なポストブラックを聴かせる。
激しい疾走感の中にもメランコリックな叙情がにじみ出ていて、ザラついたギターのフレーズはBURZUMあたりを思わせるが、アンダーグラウンドというよりは幻想的な雰囲気に包まれる。
Alcestの女性声版という感じでも楽しめるが、後半はけっこう男性ダミ声メインの曲もあるので、全曲女性声にして欲しかった。
ドラマティック度・7 激しさ度・6 優雅度・8 総合・8
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DEAFHEAVEN 「ORDINARY CORRUPT HUMAN LOVE」
アメリカのポストブラックメタル、デフヘヴンの2018年作
2011年にデビューし、4作目となる。前作は激しさを取り戻した力作であったが、本作はピアノと叙情的なギターのイントロでゆったりと始まり、メロディックな優雅さに包まれる。
2曲目以降は、激しいブラストビートにトレモロのギターとダミ声ヴォーカルでたたみかける、ブラックメタルとしての激しさも現れるが、ギターのフレーズはあくまで叙情的なので暗黒性はさほど感じさせない。
10分を超える大曲も多く、緩急ある展開はときにプログレッシブでもあり、女性ヴォーカルを加えた叙情的な小曲などもよいアクセントになっている。
疾走する激しさもしっかりと同居させつつ、優雅な哀愁する感じさせる、現在形ポストブラックの逸品です。
ドラマティック度・7 激しさ度・7 叙情度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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ESBEN & THE WITCH「NOWHERE」
イギリスの魔女系ポストロック、エスベン・アンド・ザ・ウィッチの2018年作
2010年にデビュー、4作目となる本作は。ザらついたギターの旋律とともにスラッジ的な感触で幕を開け、美しい女性ヴォーカルで妖しい歌声を響かせる。
翳りを帯びた静謐なパートから、ポストロックらしい轟音ギターとともに、ネイチャーで神秘的な迫力に包まれてゆくサウンドは、ぐっと説得力を増している。
しっとりとした囁きからシアトリカルな歌い上げまで、レイチェル嬢のヴォーカルの表現力も見事で、楽曲にこれという展開はないものの、雰囲気モノとしての強度でドゥーミィな空気感が楽しめる。
ドラマティック度・7 妖しさ度・8 神秘的度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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SLOW 「UNSLEEP」
アメリカのドゥームメタル、スローの2014年作
ドラムを除く全パートをこなす、マルコム・ソロカ氏によるプロジェクトで、重すぎないギターをスローテンポに乗せて、咆哮するデスヴォイスとともに、アンダーグラウンドな怪しさに包まれたフューネラルなドゥームメタルを聴かせる。
わとチープなドラムの音質や、ヨレめのギターを乗せたアンビエント風のパートなど、10分前後の大曲をメインに、スローに淡々とした聴き心地で、ほとんどの人は退屈になってしまうかも。
サイケドゥーム寄りの雰囲気や、ややつたないトレモロのギターを乗せた、ポストブラック風味もあるが、総じて中途半端という。メンバー見つけよう。
ドラマティック度・6 フューネラル度・7 重厚度・7 総合・7
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6/9
ロックの日はメタルで!(133)
Degrees Of Truth 「Alchemists」
イタリアのシンフォニックメタル、ディグリース・オブ・トルゥースの2023年作
2016年にデビューし、3作目となる。オーケストラルなイントロ曲から、なよやかな女性ヴォーカルをメタリックなギターとシンセに重ね、優雅なシンフォニックメタルを展開。
ヘヴィ過ぎないほどよくモダンな感触と、随所に流麗なギタープレイやきらびやかなシンセアレンジで、スタイリッシュな女性声シンフォメタルが楽しめる。
紅一点、クラウディア嬢の歌声は、元DELAINのシャルロットにも通じる艶めいた美声で、ゆったりとしたバラードなども魅力的だ。
爽快なメロディのキャッチーなナンバーでも、クラシカルなシンセや叙情的なギターが彩りを添えていて、アレンジ面での繊細さも含めてクオリティの高い完成度。
シンフォニック度・8 優雅度・8 女性Vo度・8 総合・8
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Kerion「Cloudriders: Age Of Cyborgs 」
フランスのシンフォニックメタル、ケリオンの2022年作
2008年にデビュー、本作は7年ぶりとなる5作目。クラシカルな優雅さからデジタルに変化するイントロからコンセプト的な世界観を感じさせ、硬質なギターにきらびやかなアレンジを重ね、なよやかな女性ヴォーカルに男性Voが絡む、モダンなシンフォニックメタルを展開する。
男女声を乗せた優雅でスタイリッシュなサウンドという点では、TEMPERANCEなどに通じるところもあるだろう。
ゲストシンガーにエリサ・マーティン(元DARK MOOR)、ヴィター・ヴェイガ(AQUARIA)が参加。エリサの中性的な歌声も随所にアクセントになっている。
セリフやSEを含む小曲を挟みながらストーリー的な流れを描きつつ、しっとりとしたバラードパートからメロスピ寄りの疾走感まで、緩急あるサウンドを描いてゆく。
まさに華麗なモダン派シンフォニックメタルへと変貌を遂げた力作だ。
シンフォニック度・8 華麗度・8 女性Vo度・7 総合・8 過去作のレビューはこちら
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ANNIKEN 「Climb Out Of Hell」
ノルウェーの女性シンガー、アニケン・ラスムッセンの2022年作
夫でもある、LEGEND OF VALLEY DOOMのマリウス・ダニエルセンがプロデュース、楽曲提供に加えてギターとベースも演奏している。
正統派のギターにシンセを重ね、伸びやかな女性ヴォーカルを乗せた、北欧らしい涼やかでキャッチーなメタルサウンドを聴かせる。
曲によってはいくぶんペイガンの土着感も匂わせつつ、どっしりとしたメタル感触から女性らしい優しい歌声のバラードなども、なかなか爽快に楽しめる。
楽曲自体にこれという新鮮味がないので、女性Voメタルとしてはさほど派手さはないが、安心して聴ける正統派HR/HMの好作である。
ReinXeedのトミー・ヨハンソン、NORTHTALEのビル・ハドソン、SIRENIAのニルスロコールバロン、FALCONERのジミー・ヘドランドなどがゲスト参加。
ドラマティック度・8 正統派メタル度・8 女性Vo度・7 総合・7.5
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Operus 「Score Of Nightmares」
カナダのシンフォニックメタル、オペルスの2020年作
2017年デビュー、2作目となる。ツインギターにチェロ奏者を含む6人編成で、オーケストラルなイントロから、メロディックなツインギターにパワフルなヴォーカルを乗せて、エピックなスケール感に包まれたシンフォニックメタルを聴かせる。
チェロが鳴り響く優雅なクラシカル性と、歌い上げるシアトリカルなヴォーカルの味わいに、ほどけよいクサメロ感に壮麗なコーラスも加わったサウンドは、ダークになったRHAPSODYという感じもある。
後半にはわりとアグレッシブなナンバーもあったりと、メタルとしての迫力も充分。翳りを帯びたドラマティックな世界観は、KEMELOTあたりのファンにも楽しめるだろう。
シンフォニック度・8 疾走度・6 壮大度・8 総合・8
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Triosphere「The Heart of the Matter 」
ノルウェーのメロディックメタル、トリオスフィアーの2014年作
GRIFFINのギタリストと、ベースも兼ねる女性ヴォーカルを中心に、2006年にデビューし、本作は3作目となる。
シンセとギターによる叙情的なイントロから、メタリックな硬質感をまとわせて、中性的な歌唱を乗せた、知的でスタイリッシュなサウンドを展開する。
北欧らしい涼やかな翳りを帯びたキャッチーなフックは耳心地よく、モダンなヘヴィネスとの鮮やかな対比は、ProgMetal的な味わいもある。
楽曲は3〜5分前後と難解さはなく、ストレートな展開は明快なメロディアス性があり、DGMのシモーネ・ムラローニや、LUMSKのシンセ奏者などがゲスト参加していて、叙情的なギタープレイや優美なシンセも随所に覗かせる。
スタイリッシュな女性声シンフォニックメタルとしても楽しめる逸品です。
ドラマティック度・8 スタイリッシュ度・8 女性Vo度・7 総合・8
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FLESH
カナダのメタルバンド、フレッシュの2014年作
B&Vo、G、Drのトリオ編成で、オールドなギターにヘタウマなハイトーンヴォーカルを乗せた、80年代ルーツのトラディショナルなヘヴィメタル。
どっしりとしたミドルテンポのナンバーは、初期のMANOWARあたりに通じる勇壮な感じもあったり、サウンドはシンプルながら、巧みなギターもパワフルなドラムも安定した演奏力があるので、わりと楽しめる。
疾走感のあるスピードメタルナンバーもはさみつつ、10分を超える大曲では、リズムチェンジを含むいくぶん知的な展開力も覗かせる。
WHITE WIZARDなど、IRON MAIDEN寄りのトラディショナルメタルが好きな方もどうぞ。
ドラマティック度・7 疾走度・7 正統派度・8 総合・7.5
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Alchemia 「Inception」
ブラジルのシンフォニック・ゴシックメタル、アルケミアの2020年作
白塗りメイクをほどこした5人組で、重すぎないギターにオーケストラルなアレンジで、ホラー映画的なダークさとインダストリアルな硬質感が合わさったサウンドを聴かせる。
ダミ声ヴォーカルを用いたゴシックデス風味や、キャッチーなノリが混在して、ゴシックというよりはスクリーモ系のヘヴィロックという雰囲気もある。
楽曲は3〜4分前後とシンプルで、ギターはときに叙情的なフレーズも奏でるが、全体的にはもう少し濃密な盛り上がりなどが欲しいか。
ドラマティック度・7 ゴシック度・7 重厚度・8 総合・7
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Rhevan 「One More Last Attempt」
ブラジルのシンフォニックメタル、レーヴァンの2012年
ダークで壮麗なイントロから、メタリックなギターにシンセを重ねて、なよやかな女性ヴォーカルを乗せた、ほどよい疾走感のあるNightwish風のシンフォニックメタルを聴かせる。
随所にデスヴォイスも絡んで、翳りを帯びた耽美な空気感はゴシックメタル寄りでもあるが、シンフォニックなアレンジや美しい女性声には優雅な魅力がある。
ラストは13分という大曲で、緩急ある流れとともに優美なシンフォニックメタルを展開する。全73分という力作だ。
シンフォニック度・7 耽美度・8 女性Vo度・8 総合・7.5
Yawarhiem 「The Rebirth of the Empire」
ペルーのシンフォニックメタル、ヤワリエムの2009年作
男女Voを含む6人編成で、語りを乗せたシネマティックなイントロで幕を開け、牧歌的なフルートの音色をギターに重ね、男女ヴォーカルを乗せて疾走する、優雅なシンフォニック・メロパワを聴かせる。
きらびやかなシンセアレンジにサンポーニャなどの南米らしいフルートによるフォーキーなメロディが合わさり、流麗なギターを乗せたメロスピ的な疾走感とマイナーなクサメロ要素も含んだサウンドは、この手の辺境メロパワ好きならニンマリだろう。
1〜2分前後の小曲を挟んだ構成で、全36分というのは少し物足りないが、華麗なシンフォニックなフォーク・メロパワとしても楽しめる逸品だ。
メロディック度・8 疾走度・8 優雅度・8 総合・8
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The Legion Of Hetheria 「Choices...」
メキシコのゴシックメタル、リージョン・オブ・ヘセリアの2005年
ヘヴィなギターに美麗なシンセを重ね、迫力あるデスヴォイスに美しい女性ヴォーカルが絡む、耽美なゴシックメタルを聴かせる。
ややラウドな音質には、ローカルなマイナー臭さが漂うが、朗々としたノーマルヴォイスを含む男性Voに、なよやかなソプラノ女性Voがコントラストになっていて、幻想的な空気感も悪くない。
物悲しいチェロが鳴り響き、女性ヴォーカルがしっとりと歌い上げるナンバーなどは、ゆったりとした耳心地で楽しめる。
モーツァルトの歌曲のカヴァーなども、オペラティックな歌声とともにクラシカルな優雅さに包まれる。
ドラマティック度・8 ゴシック度・8 女性Vo度・7 総合・7.5
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Sadauk 「A New Dawn」
スウェーデンのゴシックメタル、サダウクの2017年作
元Morifadeのギター、Starblindのベースなどが在籍。ファンタジックなストーリーを思わせるイントロから、重すぎないギターに優美なシンセを重ね、男性デスヴォイスに女性ヴォーカルが絡む涼やかなゴシックメタルを描く。
楽曲はスロー過ぎないほどよいノリがあって、わりとキャッチーな作風であるが、序盤は男性声がメインなので、むしろメロデスに近い聴き心地。
ときにパイプオルガンが鳴り響き、叙情的なギターフレーズも覗かせつつ、土着的なメロディを乗せたフォークメタル寄りのパートもあったりと、それなりに楽しめる。
やはり女性ヴォーカルが加わったナンバーは優雅な味わいなので、今後はぜひとも女性声をメインにしていただきたい。
ドラマティック度・7 ゴシック度・7 重厚度・7 総合・7.5
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6/2
ZIGGYコピバンKOOL LIPS ライブ!(122)
6/15(土)御徒町JAM SESSION詳しくはこちら
LIV MOON 「OUR STORIES」
日本のシンフォニックメタル、リヴ・ムーンの2022年作
2009年にデビュー、元タカラジェンヌのシンガー、Akane Liv嬢を中心にしたバンド。2014年のソロ、2016年のEPをはさみ、オリジナルアルバムとしては10年ぶりとなる5作目。
壮麗なイントロから、メロディックなギターに伸びやかなリヴ嬢の歌声を乗せて、優雅でキャッチーなシンフォニックメタルを聴かせる。
どことなく陰陽座風のメロディや、アニソン的なライトな雰囲気に、ほどよいメタル感触が合わさった、日本語歌詞の歌謡HRという趣もある。
激しく疾走するパートはあっても、ストリングスのアレンジなどであくまで優雅な耳心地で、全体的にも高品質な演奏と歌唱が楽しめるが、反面、きれいにまとまり過ぎているとも感じられる。
シンフォニック度・7 疾走度・7 女性Vo度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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INCURSION「BLINDING FORCE」
アメリカのメタルバンド、インカージョンの2022年作
80年代に活動しアルバムを残さず消えたバンドが、2018年に復活、本作はデビューアルバムとなる。
オールドな感触のギターに朗々としたヴォーカルを乗せ、MANOWARにも通じるどっしりとした勇壮な正統派ヘヴィメタルを聴かせる。
疾走するスピードナンバーでは、80年代ルーツのジャーマンメタル風味も覗かせ、ほどよいマイナー臭さも味になっている。
これという突き抜けた部分はないのだが、エピックな雰囲気のトラディショナルメタルが好きな方はどうぞ。
ドラマティック度・8 疾走度・7 正統派度・8 総合・7.5
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Dragon Nation
アメリカのメタルバンド、ドラゴン・ネイションの2015年作
ネオクラシカルなギタープレイで幕を開け、パワフルなヴォーカルとともに、80〜90年代ルーツの様式美メタルが広がってゆく。
イングヴェイに影響を受けたとおぼしき華麗なギターの旋律を随所に織り込んで、IRON MASKやMAGIC KINGDOMなどが好きな方はニヤニヤだろう。
歌い上げるハイトーンヴォーカルもパトリック・ヨハンソンばりで(それは褒め過ぎか)、きらびやかにギタープレイにも負けていない。
こうなるとジャケの地味さが残念。内容は濃厚な王道ネオクラ系メロパワの好作品ですぞ。
ドラマティック度・7 ネオクラ度・8 様式美度・8 総合・8
Signum Draconis 「The Divine Comedy: Inferno」
イタリアのシンフォニックメタル、シグナム・ドラコニスの2021年
LIONE / CONTIでシンセを務めるフィリッポ・マルティグナーノを中心としたバンドで、メタリックなギターにオーケストラルなアレンジを重ね、シアトリカルなヴォーカルとともに、重厚なシンフォニックメタルを展開。
マーク・ボールズ、シモーネ・ムラローニなどがゲスト参加し、配役ごとの男女ヴォーカルとともに、壮大なストーリーを描くダークなメタルオペラが楽しめる。
アグレッシブなパワーメタル感触や、ダミ声を乗せたダークな雰囲気も含めて、重厚なドラマ性が味わえるコンセプト作品だ。
ドラマティック度・8 壮大度・8 重厚度・8 総合・8
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Daniele Mazza 「Immortals」
イタリアのミュージシャン、ダニエレ・マッツァの2021年
ANCIENT BARDSのシンセ奏者としても活躍するミュージシャンで、本作はシネマティックなストーリーをコンセプトにした作品で、オーケストラルなインストを主体に、女性スキャットを乗せたサントラ風のファンタジックなサウンドを描く。
ANCIENT BARDSのサラ・スクワラドーニ、クラウディオ・ピエトロニックがゲスト参加し、何曲かで女性ヴォーカルやギターも加わる。
曲によってはケルト的な民族色も覗かせつつ、全体的にはメタル感触は薄めなので、ファンタジックなシネマ系サントラなどが楽しめる方はどうぞ。
シンフォニック度・8 メタル度・2 壮麗度・7 総合・7
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MINDFAR 「The Dark Tower」
イタリアのメロディックメタル、マインドファーの2017年作
Armando De Angelis氏によるプロジェクトで、本作はスティーヴン・キングの小説をモチーフにしたコンセプト作。
正統派のギターにシンセを重ね、マイルドなヴォーカルとともに、緩急あるドラマティックな展開のサウンドを聴かせる。
オールドな感触のギターや軽やかなリズムチェンジ、ときにアコースティックパートや女性ヴォーカルも加えた優雅なアレンジで、いくぶんB級っぽさもあるのだが、そこも含めてなかなか楽しめる。
ラストは15分の大曲で、男女ヴォーカルにキャッチーなコーラスハーモニー、緩急ある流れでプログレメタル的な構築性も覗かせる。
ドラマティック度・8 疾走度・7 優雅度・8 総合・7.5
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Dark Horizon 「Angel Secret Masquerade」
イタリアのメロディックメタル、ダーク・ホライズンの2010年作
2001年にデビュー、本作は3作目となる。ほどよくヘヴィなギターにきらびやかなシンセ重ね、パワフル過ぎないハイトーンヴォーカルとともに、シンフォニックメタル寄りの優雅なメロパワを聴かせる。
楽曲はミドルテンポ主体で疾走感はさほどないのだが、過去2作に比べてどっしりとした安定感があり、スローテンポの叙情的なナンバーなどにも味がある。
アルバム後半には疾走するメロスピナンバーもあって、キャッチーなクサメロ感に包まれる。この路線でいった方がよいですぜ。
ドラマティック度・7 疾走度・7 優雅度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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Perpetual Fire 「Endless World」
イタリアのメロディックメタル、パーペチュアル・ファイアの2006年作
Pandaemoniumのメンバーを中心にしたバンドで、クサメロ感あるギターにパワフル過ぎないハイトーンヴォーカルを乗せ、優美なシンセとともに疾走感のあるキャッチーなメロディックメタルを展開する。
透明感あるシンセアレンジやネオクロ風味もあるギターで疾走するあたりは、STRATOVARIUSなどが好きな方にも楽しめるだろう。
このバンドならではの個性は希薄だが、LABYRINTHなど、90年代ルーツのイタリアンメタルらしさを受け継いだ好作である。
メロディック度・8 疾走度・8 クサメロ度・8 総合・7.5
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NERGARD 「A Bit Closer to Heaven」
ノルウェーのシンフォニックメタル、ネルガルドの2015年作
マルチプレイヤー、アンドレアス・ネルガルドによるプロジェクトで、本作は2作目となる。
ヘヴィなギターにパワフルなヴォーカルを乗せた、SAVATAGEやICED EARTHなどを思わせる正統派のヘヴィメタルを展開。
Thaurorodのアンディ・クラヴラチャ、Circus Maximusのマイケル・エリクセン、Pagan's Mindのニルス・K・ルー、Primal
Fearのラルフ・シーパーズを含む男女シンガーが参加、楽曲ごとに歌声を披露。
随所にピアノやシンセ、曲によっては女性ヴォーカルを加えた優美な味わいで、シンフォニックメタル感触や、ときにProgMetal風味も覗かせる。
明快な盛り上がりやフックのある展開がもう少しあればと思うが、重厚なメタル感と優雅な叙情が同居した好作です。
ドラマティック度・8 正統派度・8 重厚度・8 総合・7.5
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Distant Past 「Rise Of The Fallen」
スイスのメロディックメタル、ディスタント・パストの2016年
2010年にデビューし、3作目となる。叙情的なギターのイントロから、メタリックなギターリフにパワフルなヴォーカルを乗せて、正統派のパワーメタルを展開。
ときにスラッシーな疾走感から、スローパートを効果的に配したドラマティックな構築性も覗かせ、二人のシンガーを配役ごとに割り当てた神や堕天使をコンセプトにした壮大な世界観を感じさせる。
全体的にも高品質であるが、もう少しストーリー的な強度と楽曲自体の明快なフックがあれば、BLIND GUARDIANクラスになれたかもしれない。
ドラマティック度・8 疾走度・8 重厚度・8 総合・7.5
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The Erkonauts 「I Want It To End」
スイスのプログレメタル、エルコナウツの2020年作
2014年にデビューし、3作目となる。硬質なギターにスクリームとノーマルヴォーカルを乗せ、モダンなヘヴィネスとテクニカル性が融合したサウンド。
ゆったりとした哀愁に包まれたポストプログレ風のパートや、巧みなペースプレイにヘヴィなギターリフでたたみかけるアグレッシブなハートなどメリハリはあるのだが、メロディや叙情性という部分ではわりと薄味。
ProgMetalというよりは、スクリーモ寄りのテクニカルなヘヴィロックというべきか。
ドラマティック度・7 テクニカル度・7 モダンヘヴィネス度・8 総合・7
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ACRON
ブラジルのプログレメタル、アクロンの1997年作
チープなシンセのイントロから、軽めのドラムにオールドな感触のギター、ヘナチョコなヴォーカルを乗せた、いかにも自主制作然としたサウンド。
ほどよい疾走感からスローテンポへのリズムチェンジやうっすらとしたシンセを重ね、いくぶんメロディアスなギタープレイなど、音質も含めてB級以下の代物だが、よくこれでCD化したものだと感心はする。
楽曲は4〜5分前後が主体で、多少の展開力はあるものの、むしろProgMetalというよりは、80年代ルーツのマイナーなエピックメタルに近いかもしれない。
バンドは1999年に2作目を出して消える。
ドラマティック度・6 テクニカル度・6 楽曲度・6 総合・5.5
Saurom 「La Magia De La Luna」
スペインのフォークメタル、サウロムの2017年作
Saurom Lamderth名義で2001年にデビュー、アルバム3枚残したのちに、バンド名をSAUROMに改名する。
本作はアコースティックアルバムで、アコースティックギターにマンドリンのつまびき、ガイタにヴァイオリン、フルートなどの優雅な音色を加え、スペイン語のマイルドなヴォーカルで牧歌的なサウンドを聴かせる。
3〜4分前後の楽曲を主体に、メタル感触は薄いものの、ドラムなどのリズムは入るので、幻想的なフォークロックとして優雅に楽しめる。
女性ヴォーカルメインにしたナンバーなどもしっとりと優しい聴き心地。フォーク要素にしっかりと説得力があるのが素晴らしい。
フォーキー度・8 メタル度・2 優雅度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Saurom 「Musica」
スペインのフォークメタル、サウロムの2020年作
優美なフルートやホイッスル、アコースティックで牧歌的なイントロから、ガイタやヴィイオリンの音色をギターに重ね、スペイン語のヴォーカルにシンセを重ねて、壮麗なフォークメタルを展開。
今作ではメロハー寄りのキャッチーなナンバーもあったり、曲によってはバンジョーを使ったカントリー調の雰囲気や、キュートな女性ヴォーカルが加わったりと、全体的に明るめのナンバーが多く、初期のようなエピックな部分は薄めながら、メディーヴァルな世界観が味わえる。
フォーキー度・8 メタル度・7 優雅度・8 総合・8
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5/18
エルヴェロンのライナー書きました!(108)
ELVELLON 「ASCENDING IN SYNERY」
ドイツのシンフォニックメタル、エルヴェロンの2024年作
2018年のデビューアルバムから、6年ぶりとなる2作目で、壮麗でオーケストラルなアレンジにほどよくヘヴィなギターを重ね、伸びやかなソプラノ女性ヴォーカルで聴かせる、Nightwishタイプのシンフォニックメタル。
キャッチーなメロディアス性とともに、ほどよい疾走感もありつつ、決してヘヴィになり過ぎないスタイルは、DELAINやXandriaあたりにも通じる雰囲気で、フィメールフロンテッドの王道というべきサウンドが楽しめる。
フロントを務めるネレ嬢の歌声も魅力充分で、ストレートとソプラノを使い分ける表現力は、ターヤ・トゥルネンやフロール・ヤンセンにもひけをとらない。
優美なピアノにヴァイオリン、アコースティックギターによるしっとりとしたナンバーや、ときにフォーク/トラッド要素も含んだ優雅な幻想性も覗かせながら、あくまで優美なシンフォニックメタルへのこだわりが見事な逸品です。
ちなみに、日本盤CDのライナー解説は緑川が担当しておりますのでよろしく。
シンフォニック度・8 壮麗度・9 女性Vo度・9 総合・8
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Dreamslave 「Rest In Phantasy」
フランスのシンフォニックメタル、ドリームスレイヴの2015年作
壮麗なイントロから、ネオクラ風味のギターにオーケストラルなアレンジを重ねて疾走、ソプラノ女性ヴォーカルとともに、華麗なシンフォニックメタルを聴かせる。
随所にデスヴォイスも絡んで、モダンでアグレッシブなヘヴィネスも覗かせつつ、Nightwishを思わせるシネマティックなスケール感と、激しい疾走感が同居したきらびやかなサウンドを構築する。
紅一点、Emma嬢は、ときにストレートとオペラティックなソプラノを歌い分ける、その表現力もなかなかのもの。
起伏のある展開力とクラシカルな美意識という点では、EPICAなどのファンにも楽しめるだろう。
シンフォニック度・8 壮麗度・8 女性Vo度・8 総合・8
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The Aquarius 「Melody Of The Planet」
ロシアのメロディックメタル、アクエリアスの2013年作
2010年にデビューし、3作目となる。きらびやかなシンセアレンジをメロディックなギターに重ねて疾走、ロシア語によるハイトーンヴォーカルを乗せた、シンフォニックなメロパワサウンド。
ときに艶めいた女性ヴォーカルも加わって、女性声がメインのパートでは、壮麗なシンフォニックメタル風味でも楽しめるの。
全体的には、メロディのフックや盛り上がりが抜けきらず、疾走ナンバーそうも多くないので、中庸な印象にとどまっているのが残念。
むしろアコースティックパートでの、ペイガン的な神秘性が覗くところは魅力的で、このあたりの土着性を伸ばしてもいいような気もする。
メロディック度・7 疾走度・7 優雅度・8 総合・7.5
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ARD 「Take Up My Bones」
イギリスのゴシック・ドゥームメタル、ARDの2022年作
WINTERFYLLETHなどに在籍するミュージシャン、Mark Deeksによるソロプロジェクトで、ノーザンブリアの聖人カスバートの伝説の聖遺物をめぐる旅をコンセプトにした作品。
重厚なギターに詠唱的なコーラスと倦怠のヴォーカルを乗せ、物悲しいチェロの音色とともに、ダークな幻想性に包まれたドゥームメタル聴かせる。
甘すぎない程度の叙情を奏でるギターや、クラシカルなピアノにチェロが重なり、荘厳な詠唱がヨーロピアンな宗教性をかもしだし、初期のMy Dying Brideなどにも通じるゴシカルな味わいもある。
アコースティックギターを用いた優美な叙情性や、トレモロのリフなどにはポストブラックメタル的な感触も残しつつ、ゆったりとドゥーミィな闇の空気に浸れる異色作。
ドラマティック度・8 重厚度・8 幻想度・8 総合・8
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Dread Sovereign 「Alchemical Warfare」
アイルランドのドゥームメタル、ドレッド・ソヴェレインの2021年作
2014年にデビューし、3作目となる。どっしりとしたリズムにオールドなギターを重ね、ガナりを含んだヴォーカルで、BLACK SABBATHルーツの王道のドゥームメタルを聴かせる。
スローテンポからミドルまで、ほどよくハードなノリもあり、勇壮なコーラスなども加わって、わりと正統派メタル寄りにも楽しめる。
叙情的な部分は希薄だが、ヨーロピアンな翳りを含んだギターフレーズなど、随所にウェットな幻想性も垣間見せる。
8分を超えるナンバーなど、ほどよく大曲志向ながら、ラストの疾走ナンバーまで、ストレートなオールドメタル感をさらけ出した力作だ。
ドラマティック度・7 重厚度・8 オールドドゥーム度・8 総合・7.5
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LOTUS THIEF 「Oresteia」
アメリカのサイケドゥーム・ブラック、ロータス・シーフの2020年作
2014年にデビュー、3作目となる本作では、ほどよく叙情的なギターにうっすらとしたシンセ、妖しい女性ヴォーカルの歌声とともに、秘教的な闇に包まれたドゥーム・ブラックを聴かせる。
ダミ声ヴォーカルを乗せたブラックメタル要素や、シンセをメインにしたアンビエントなナンバーなど、緩急のある構成で、エクスペリメンタルなスラッジ、ポストブラックメタルとしても楽しめる。
ミステリアスな浮遊感に包まれた、魔女めいた女性Voを乗せたスタイルを好む方なら、このダークな夢見心地の世界観に浸れるだろう。
暗黒度・8 激しさ度・6 神秘的度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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SHADOWPLAY
オーストラリアのゴシックメタル、シャドウプレイの2007年作
女性Vo、シンセを含む5人編成で、壮麗なシンセアレンジにヘヴィなギターを重ね、はかなげな女性ヴォーカルを乗せて、ゆったりとメランコリックなサウンドを描く。
ギターは随所に叙情フレーズを奏でたり、ときにピアノを含む優美なシンセのセンスもよろしいが、なにより紅一点、Alitia嬢の歌声はキュートな魅力とともに倦怠の翳りを感じさせ、サウンドに美しくも幻想的な空気感を加えている。
スローテンポを主体にしつつ、曲によってはわりとテクニカルな展開力も覗かせて、ProgMetal風味になったりするボーダーレスな味わいもある。
9分の大曲は、美しい女性声によるしっとりとした叙情性と、重厚なメタル感触が合わさった聴き心地で、王道ゴシメタ好きなら満足の内容だろう。
ドラマティック度・7 ゴシック度・8 女性Vo度・8 総合・7.5
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Eluveitie「Ategnastos」
スイスのフォークメタル、エルヴェイティの2019年作
2004年にデビュー、すでにキャリア20年を数えるフォークメタル界の中堅バンド、8作目となる本作は、シネマティックな語りの入ったSEで幕を開け、うっすらとしたシンセにホイッスルが鳴り響き、ハーディ・ガーディの素朴な音色にギターが重なり、女性スキャットとともに幻想的な空気を描きつつ、デスヴォイスを乗せたアグレッシブなメロデス風味が現れる。
艶やかなフィドルにバグパイプ、ホイッスルがケルティックなフォーク感触を描きながら、激しさと優雅さの緩急ある展開で、濃密なサウンドを描いてゆく。
随所に、疾走メロパワや正統派メタル的な雰囲気も覗かせつつ、神秘的な土着性にしっかりと説得力があるのは、キャリアのあるバンドならではだろう。
ファビエンヌのフェミニンな歌声が映える優美なナンバーなど、キャッチーなメロディアス性と激しさがバランスよく配合された高品質作である。
ドラマティック度・8 フォーキー度・8 重厚度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Hildr Valkyrie 「Revealing The Heathen Sun」
ギリシャのペイガンメタル、ヒルダー・ヴァルキリアの2017年作
Folkearth、Folkodiaにも参加していた女性ミュージシャンで、2004年にデビューし、本作は9年ぶりとなる3作目。
土着的なイントロナンバーから、打ち込みのドラムにギターを重ね、フォーキーなシンセのメロディに、女性ヴォーカルを乗せた、神秘的なペイガンメタルを聴かせる。
優美なシンセアレンジと叙情的なギター、なよやかな女性声による幻想的な味わいに、ときおり自身によるデスヴォイスも入った勇壮なパートや、ブラックメタル寄りのブラスト疾走も覗かせる。
ホイッスルが鳴り響く牧歌的なラスト曲も含めて、ネオフォークがメタル化したような感じもあり、女性Voのフォークメタルが好きな方にもお薦めです。
ドラマティック度・8 ペイガン度・8 女性Vo度・7 総合・7.5
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GYRDLEAH 「SPELLBINDER」
イギリスのブラックメタル、ギルドレアの2023年作
Flagrum氏による個人ユニットで、2017年にデビューし、2作目。不穏なギターフレーズに吐き捨てヴォーカルを乗せ、ドゥーミィな暗黒性に包まれたスローテンポから、激しくブラスト疾走するプリミティブなブラックメタルを聴かせる。
涼やかな叙情性を含んだギターのトーンとともに、カスカディアンブラック的でもある荒涼とした幻想的な空気に包まれながら、トレモロを盛り込んだり、ゆったりとした曲調から暴虐なブラストへといういう緩急ある展開力なども、なかなかドラマティック。
甘すぎない、暗黒すぎない、激しすぎないという、バランスの良さもあって、わりと耳心地よく楽しめる。全41分という長さもちょうどよい。
ドラマティック度・8 暴虐度・7 暗黒度・8 総合・8
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NATTEHIMMEL 「Mourningstar」
ノルウェーのブラックメタル、ナッテヒンメルの2023年作
元In the Woods...のメンバー3人を擁するバンドで、アナログ感を感じさせる90年代風のギターリフに朗々としたヴォーカルとダミ声を乗せ、うっすらとしたシンセアレンジに包まれた、EMPERORにも通じる荘厳で叙情的なサウンドを聴かせる。
ミドルテンポを主体に、随処に激しいブラスト疾走も覗かせつつ、ノーマル声の割合が高いこともあってさほど暴虐性は感じさせない。
緩急ある展開力の中に、スペイシーな神秘性とスケール感のある重厚な聴き心地は、ARCTURUSあたりに通じるところもある。
ドラマティック度・8 暴虐度・7 荘厳度・8 総合・8
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KAMRA 「CEREBRAL ALCHEMY」
スロヴェニアのブラックメタル、カムラの2022年作
不穏なギターが鳴り響くイントロから禍々しさを漂わせ、激しく疾走するドラムにトレモロのギターリフ、邪悪な吐き捨てヴォーカルで、荒涼とした空気に包まれたブラックメタルを聴かせる。
過剰な装飾を排したソリッドなスタイルであるが、アナログ感ある生々しさと、ヨーロピアンな暗がりを思わせるミステリアスな雰囲気に包まれる。
9分という大曲では、スローパートを挟んだ緩急あるドラマティックな展開で、プリミティブな迫力の幻想的なブラックメタルが味わえる。
ドラマティック度・8 暴虐度・7 プリミティブ度・8 総合・8
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De Magia Veterum 「The Divine Antithesis」
オランダのアヴァン・ブラックメタル、デ・マジア・ヴェテラムの2011年作
2008年デビューし、3作目となる。7パートに分かれたコンセプト的な作品で、ノイジーにギターの音の塊に、語りのようなヴォイスと絶叫が重なり、激しいブラスト疾走とともにたたみかける、アヴァンギャルドなサウンド。
楽曲展開というよりは、激しいリズムの上にノイジーな音が重なっているという感じなので、叙情性やドラマティックな部分は希薄。
正直、音楽として楽しむのはきついので、この激烈な塊に神秘性を感じ取れるような方はどうぞ。
ドラマティック度・6 暴虐度・8 アヴァンギャル度・8 総合・7
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Xythlia 「Immortality Through Quantum Suicide」
アメリカのテクニカルデスメタル、ザイスリアの2020年作
Nick Stangerによるソロプロジェクトで、スウィープを含む巧みなギターリフにデスヴォイスを乗せて、グラインドコア風にたたみかける。
リズムチェンジを含むテクニカルな部分と、不穏なアヴァンギャルド性で、BRAIND RILLなどのカオティックなデスメタル好きならそこそこ楽しめるだろう。
激しく濃密なテクデスであるが、楽曲は1〜3分前後で、全23分という短さ。これをわざわざトールケース仕様にしなくても。
ドラマティック度・5 暴虐度・8 アヴァンギャル度・8 総合・7
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Infection 「Beheaded Children Contest」
ペルーのデスメタル、インフェクションの2020年作
2009年にデビュー、本作は6曲入りのEPで、90年代ルーツのギターリフに低音ゲボデス声を乗せて疾走する、オールドスタイルのデスメタル。
激しいけれどもパタパタとした重すぎないドラムや、リズムチェンジを含みつつもテクニカル過ぎない感触は、初期のMalevolent Creationなどに通じる聴き心地。
ブルータルすぎないオールドなデスメタルが好きな方ならわりと楽しめると思うが、全6曲で、インスト2曲を除けば実質4曲と、ボリューム的に全12分は物足りない。
ドラマティック度・7 暴虐度・7 オールドデス度・8 総合・7
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5/3
GWは正統派メタル(93)
Majesty 「Back To Attack」
ドイツのメロディックメタル、マジェスティの2023年作
2002年にデビュー、本作は10作目となる。オーケストラに語りの入ったシネマティックなイントロから、いつになく壮大な世界観に包まれて、パワフルなヴォーカルをツインギターのリフに乗せて疾走する、正統派のメロパワが展開する。
MANOWARにも通じるエピックな勇壮さに、ほどよくフックのあるメロディで、ジャーマンメタルらしさを覗かせるところでこのバンドの魅力だろう。
曲によっては、わりとキャッチーなナンバーもあって、ガチの正統派メタルというよりは、HAMMERFALL系のヨーロピアンなメロパワスタイルで、8曲目あたりのクサメロな疾走ナンバーにはやはりぐっとくる。
楽曲は4分前後が主体で、全体的にさほど新鮮味はないのだが、安定の正統派メロパワです。
ドラマティック度・8 疾走度・6 正統派度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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DISPYRIA 「THE STORY OF MARION DUST」
ドイツのミュージシャン、ユルゲン・ワルザーによるメタルプロジェクト、ディスピリアの2023年作
ザッカリー・スティーヴンス(SAVATAGE,) 、ラルフ・シーパーズ(Primal Fear)、カーステン・シュルツ(Lazarus Dream)をシンガーに迎え、悪魔との戦いを描いたコンセプト作品。
シアトリカルな語りから幕を開け、メタリックで流麗なギターにオーケストラルなアレンジ、ザック・スティーブンズをメインにしたヴォーカルとともに、SAVATAGEをシンフォニックメタル寄りにしたようなドラマティックなサウンドを展開。
メタルオペラ的な流れのあるストーリー性で聴かせる、ドラマティックなメタル作品です。
ドラマティック度・8 疾走度・5 重厚度・8 総合・8
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PRYDAIN 「The Gates of Aramore」
アメリカのメロディックメタル、プリダインの2023年作
いかにもコテコテのジャケであるが、語りを含むシネマティックなイントロから、すでにファンタジー臭がぷんぷん。
クサメロ感のあるギターに美麗なシンセアレンジ、強すぎないハイトーンヴォーカルとともに疾走感あるシンフォニックな王道メロパワを聴かせる。
バグパイプが鳴り響くケルテイックなインストや、三連リズムの勇壮なナンバーなど、楽曲ごとのアレンジの質も高く、爽快なメロディの優雅なクサメロスピという点でも、DERDIANあたりが好きな方にも楽しめるだろう。
10分近い大曲では、緩急ある展開で物語的なストーリー性を感じさせる。シンフォニックなクサメタル好きはチェックすべし。
ドラマティック度・8 疾走度・8 クサメロ度・8 総合・8
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GateKeeper 「From Western Shores」
カナダのメタルバンド、ゲートキーパーの2023年作
2018年にデビューし、2作目のフルアルバム。叙情的なギターとハイトーンヴォーカルで、ヨーロピアンな空気を感じさせるオールドメタルを聴かせる。
サウンド自体は比較的シンプルで、ギターリフもいたって普通、これという新鮮味はないのだが、朗々とした味わいのヴォーカルを含めて、MANOWARやVIRGIN STEELEとはまた違った勇壮で幻想的な世界観を描き出している。
ラストの8分の大曲はなかなかドラマティックな展開力で、随所に甘すぎない叙情フレーズを奏でるギターとともに、王道のエピックメタルが楽しめる。
ドラマティック度・8 疾走度・5 正統派メタル度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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EXISTANCE 「Wolf Attack」
フランスのメタルバンド、イグジスタンスの2021年作
2014年にデビューし3作目となる。叙情的なツインギターのイントロから、正統派のギターリフに突き抜けるようなハイトーンヴォーカルを乗せて、オールドスタイルのメタルサウンドを聴かせる。
ヨーロピアンな叙情性はさほどないのだが、ほどよくキャッチーな歌メロなどは日本人好みで、80年代HR的な激しすぎない耳心地は、RIOTなどが好きな方にも楽しめるだろう。
ミドルテンポを主体にしたどっしりとした味わいから、いかにも「Thunder Steel」を思わせるツインギターの疾走ナンバー、IRON MAIDEN風のナンバーまで、往年のメタル感触に包まれた味わいで、ボーナス収録の、RIOT、RAINBOWのカヴァーも演奏も含めてほぼ完コピでハマっている。
ドラマティック度・8 疾走度・7 正統派メタル度・9 総合・8
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Shadowland 「The Necromancers Castle」
アメリカのメタルバンド、シャドウランドの2021年作
オールドなギターのリフにハスキーな女性ヴォーカルを乗せた、ほどよい疾走感ある80年代ルーツのヴィンテージなメタルサウンド。
Crystal Viverよりもさらにマイナー臭いスタイルで、随所に叙情的なフレーズを奏でるツインギターとともに、古き良き様式美メタル的な叙情も覗かせる。
Tanya嬢のどこか魔女めいた歌声も、楽曲の雰囲気にぴったり似合っていて、パワフル過ぎない艶めいた味わいがよろしい。
アナログ感ある音質も含めて、NWOTHMのど真ん中をゆく、女性声オールドメタルの好作である。
ドラマティック度・7 疾走度・8 女性Vo度・7 総合・7.5
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APHRODITE 「Lust And War」
カナダのメタルバンド、アフロディーテの2019年作
DEMONAでも活躍する女性シンガーに、IRON DOGS、ICE WAR、CANNIBALなど多数のバンドで活躍するB&Drを擁するトリオ編成で、重すぎないギターに女性ヴォーカルを乗せて疾走する、オールドなスピードメタルを聴かせる。
楽曲は3分前後とシンプルで、アナログ感たっぷりのサウンドにはマイナーなB級感が漂い、スカスカの疾走感はスラッシーというよりはむしろパンキッシュな軽さ。
わりとキュートでヘタウマな女性声と、爆走するスピード感のミスマッチがなかなか面白く、さほど激しさを感じさせないのもミソ。
ドラマティック度・6 疾走度・9 女性Vo度・7 総合・7.5
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Serpent Lord 「Towards the Damned」
ギリシャのメタルバンド、サーペント・ロードの2018年作
オールドなツインギターにハイトーンをまじえた朗々としたヴォーカルを乗せて、CANDLEMASSのような欧州的な翳りを含んだ、エピックな味わいの正統派メタルを聴かせる。
ダークで重厚な世界観と、ときにリズムチェンジを含んだ展開力で、シアトリカルな歌声とほどよく叙情的なギターで、ドラマティックなヘヴィメタルが楽しめる。
いくぶんのマイナー感はあるものの、演奏の実力や歌唱もしっかりとあり、カルトなNWOBHMやヨーロピアンなエピックメタルが好きな方にはニンマリだろう。
パワフルに疾走するパートもあるが基本はミドルテンポで、3〜4分前後の楽曲をじっくりと聴かせるサウンドの説得力もある。
ドラマティック度・8 重厚度・8 エピック度・7 総合・8
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IRON KOBRA 「Might & Magic」
ドイツのメタルバンド、アイアン・コブラの2015年作
2009年にデビューし、3作目。バンド名もジャケもアルバムタイトルも、いかにもコテコテであるが、サウンドもオールドなギターにパワフル過ぎないヴォーカルを乗せて疾走する、80年代ルーツのジャーマンメタルで、リズムチェンジを含むドラマティックな展開力も覗かせる。
重すぎないツインギターとヘナチョコ感あるハイトーンヴォーカル、ほどよいマイナーな味わいの垢抜けなさがなつかしく、この手のヨーロピアンなヴィンテージメタルが好きならけっこう楽しめるだろう。
ミドルテンポのナンバーはエピックメタル風でもあり、ジャーマンメタル、スピードメタル好きはどうぞ。全36分という短さもアナログ的でいっそ潔い。
ドラマティック度・7 疾走度・8 古き良き度・8 総合・7.5
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Dark Forest 「The Awakening」
イギリスのエピックメタル、ダーク・フォレストの2014年作
2009年にデビューし、3作目となる。語りの入ったミステリアスなイントロから、ペイガン風のクサメロ感あるギターフレーズに朗々としたヴォーカルを乗せて、勇壮なメタルサウンドを聴かせる。
どっしりとしたリズムの上に、ツインギターによる叙情フレーズが泣きの美学を描いていて、この手のバンドの中でもメロディアス度が高い。
80年代NWOBHMルーツのヴィンテージな香りをまとわせつつ、ときに疾走するナンバーや、随所にリズムチェンジなどを含む、5〜7分の楽曲構築力も見事。
DOOMSWORDなどが好きな方にもお薦めできる、幻想ブリティッシュ・メタルの強力作です。
ドラマティック度・8 疾走度・7 古き良き度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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BORROWED TIME
アメリカのメタルバンド、ボロウド・タイムの2013年作
バンド名はDIAMOND HEADのアルバムからとったと思われるが、サウンドの方もNWOBHMの生き残りかというようなオールドなスタイル。
重すぎないツインギターにハイトーンヴォーカルを乗せて、ほどよい疾走感のある80年代ルーツのヴィンテージメタルを聴かせる。
IRON MAIDENをマイナーにしたようなウェットな叙情性と、スピードメタル寄りの勢いの良さも覗かせて、結果として日本人好みのスタイルに。
インストによるメロディックな小曲も挟みつつ、6分を超える長めのナンバーなども、扇情的なフレーズを奏でるギターのセンスも含めて、なかなか濃密な味わいで楽しめる。
ドラマティック度・8 疾走度・7 古き良き度・8 総合・7.5
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STEEL AGGRESSOR 「From Ruins to Dust」
アメリカのメタルバンド、スティール・アグレッサーの2011年作
スラッシーなギターリフにダーティなヴォーカルを乗せて疾走する、スラッシュ寄りのパワーメタルで、リズムチェンジや叙情的なギターフレーズも含んだ、なかなかドラマティックな聴き心地。
80年代ルーツのオールドな感触ながら、90年代をへたような構築性も感じさせて、HEATHENやHOLY TERRORあたりのファンにも楽しめるだろう。
とくにザクザクとしたリフから、突如クサメロ気味になるギターの極端さは萌え度が高く、スラッシュメタルとクサメタルの同居という点でも面白い。
ドラマティック度・8 疾走度・8 スラッシーな叙情度・8 総合・8
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Thy Listless Heart 「Pilgrims On The Path Of No Return」
イギリスのミュージシャン、サイモン・ビビイによるプロジェクト、ザイ・リストレス・ハートの2022年作
Seventh Angel、My Silent Wakeで活躍するギター&キーボーディストで、ゆったりとしたリズムに、ほどよくヘヴィなギターとシンセを重ね、朗々としたヴォーカルとともに、エピックドゥーム寄りの幻想的なサウンドを聴かせる。
叙情的なギターフレーズに荘厳なコーラス、ときにデスヴォイスも加えて、CANDLEMASSなどにも通じる重厚さとクリスチャンメタル的な世界観を描きだしてゆく。
全体的に派手な展開はないのだが、ラストは14分という大曲で翳りを帯びたメランコリックな空気に包まれながら、じっくりとドゥーミィなサウンドを構築する。
ドラマティック度・7 重厚度・8 幻想度・8 総合・7.5
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Wolftooth
アメリカのドゥームメタル、ウルフトゥースの2019年作
叙情的なギターのイントロから、ツインギターのヘヴィなリフにハイトーン寄りのヴォーカルを乗せて、オールドなアナログ感に包まれたドゥームメタルを聴かせる。
甘すぎない程度の叙情的なギターフレーズも随所に覗かせて、曲によってはエピックドゥーム的なウェットな雰囲気にも包まれる。
BLACK SABBATHをルーツにした、ヴィンテージなハードロック感触と、ほどよくノリのあるキャッチーなスタイルがバランスよく融合していて、重すぎず軽すぎず、ドゥームメタル初心者にも聴きやすいだろう。
ドラマティック度・8 ドゥーム度・8 古き良き度・8 総合・8
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Wolftooth 「Blood & Iron」
アメリカのドゥームメタル、ウルフトゥースの2021年作
3作となる本作も、アナログ感たっぷりのギターに、パワフル過ぎないヴォーカルを乗せて、古き良き王道のドゥームメタルを展開。
スローテンポを基調にしつつ、ミドルテンポや疾走する正統派メタル風味もあり、DOOMSWORDなどに通じるエピックメタル寄りのファンでも楽しめるだろう。
ツインギターによるウェットな叙情性も覗かせながら、どっしりとした勇壮なメタル感触と、サバスルーツのオールドなハードロックが同居したという強力作だ。
ドラマティック度・8 ドゥーム度・7 エピックメタル度・8 総合・8
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4/19
女性Voメタル祭り(78)
ELETTRA STORM 「Powerrose」
イタリアのシンフォニックメタル、エレットラ・ストームの2024年作
SINHERESYでも活躍するB&Keyのダヴィデ・スポルティエッロを中心に、モデルとしても活動する女性シンガー、クリスタル・エミリアーニをフロントにしたバンドで、ツインギターにきらびやかなシンセアレンジ、伸びやかな女性ヴォーカルを乗せて、疾走感のある正統派のメロディックメタルを聴かせる。
ANCIENT BARDSにも通じるファンタジックな疾走ナンバーから、SONATA ARCTICAのようなキャッチーな優雅さに、POWERQUESTあたりを思わせるクサメロ感が合わさった、イタリアンメタルらしい濃密な味わい。
クリスタルのフェミニンな歌唱が映えるバラードや、ゲスト参加のシモーネ・ムラローニ(DGM)が巧みなギタープレイを披露する、ラスト曲でのエピックな盛り上がりなど、女性声メロパワ好きには聴きどころたっぷりの好作品です。
ちなみに、本作のライナー解説は、緑川が担当しておりますので、ぜひCD購入よろしくです。
メロディック度・8 壮麗度・8 女性Vo度・8 総合・8
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Dark Sarah 「Attack of Orym」
フィンランドのシンフォニックメタル、ダーク・サラの2023年作
元AMBERIAN DAWNのシンガー、Heidi Parviainenをフロントにしたバンドで、2015年にデビューし、すでに5作目となる。
壮麗なイントロからヘヴィなギターに、オーケストラルなアレンジを重ね、なよやかな女性ヴォーカルとともに、重厚にして美麗なサウンドを聴かせる。
ときにデスヴォイスを加えてのアグレッシブな激しさも覗かせつつ、NIGHTWISHばりの華やかなシンフォニックメタルを展開。
デジタルな感触のシンセアレンジとともにキャッチーなノリの良いナンバーもあったりと、楽曲ごとにバラエティ豊かな味わいだ。
爽快なメロディのフックという点でも、この手のバンドの中では最高クラスで、フィメール・シンフォニックメタル好きは必聴の出来でしょう。
シンフォニック度・8 壮麗度・9 女性Vo度・8 総合・8.5 過去作のレビューはこちら
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LIV KRISTINE 「River of Diamonds」
ノルウェーの女性シンガー、リブ・クリスティンのソロ、2023年作
元THEATRE OF TRAGEDY、元Leave's Eyesのシンガーで、ソロとしては6作目となる。
ほどよくヘヴィなギターにきらびやかなシンセ、艶めいた女性ヴォーカルに男性声も加わった1曲目は、かつてのTHEATRE OF TRAGEDYを思わせる優雅な倦怠に包まれた、ゴシックロック寄りの聴き心地。
シンフォニックなシンセアレンジや翳りを帯びたサウンドに、リブの歌声も美しく、メランコリックではかなげな空気にしっとりと浸れる。
楽曲を手掛けるのが、初期THEATRE OF TRAGEDYのギタリスト、トミー・オルソンということもあって、なるほど納得。この作風はTOTファンには嬉しいだろう。
MIDNATTSOL、SAVNでも活躍する妹のカルメンもゲスト参加している。
ドラマティック度・8 倦怠の叙情度・8 女性Vo度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Ravenlight「Immemorial」
イギリスのシンフォニックメタル、レイヴンライトの2023年作
2020年にデビューし、2作目となる。重すぎないギターに美麗なシンセアレンジ、ソプラノ女性ヴォーカルを乗せて、NIGHTWISHタイプの優雅なシンフォニックメタルを聴かせる。
楽曲は3〜5分前後が主体で、深みのある展開力というのはさほどないのだが、ラストは8分を超える大曲で、緩急ある流れで壮麗な世界観を描き出す。
ナイトウィッシュのレベルにはほど遠いが、美しい女性声とともに、ほどよくシンプルでキャッチー、そして優美なサウンドが楽しめる好作品です。
シンフォニック度・8 壮麗度・7 女性Vo度・8 総合・7.5
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DESILLUSVE PLAY 「SONGS FOR THE NON-EXISTENT」
ギリシャのシンフォニックメタル、デシリューシヴ・プレイの2022年作
メタリックなギターに壮麗なシンセアレンジを重ね、艶めいたハスキーな女性ヴォーカルとともに、スタイリッシュなシンフォニックメタルを聴かせる。
ProgMetal的でもあるリズムチェンジとドラマティックな展開力に、Antigoni嬢のいくぶん中性的なハイトーンヴォイスで、随所にアグレッシブな疾走感も覗かせながら、優雅で知的なサウンドを構築する。
随所にメロディックなフレーズを奏でるギターやシンフォニックなアレンジで、スケール感のある味わいはよいのだが、全体的にはもうひとつインパクトに欠けるのが惜しい。
シンフォニック度・8 壮麗度・7 女性Vo度・7 総合・7.5
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Hidden Lapse 「Butterflies」
イタリアのシンフォニック・プログレメタル、ヒドゥン・ラプスの2019年作
2017年にデビュー、2作目となる本作はのっけからメロパワ風の疾走感で始まり、硬質なギターリフに優美なシンセと伸びやかな女性ヴォーカルを乗せ、シンフォニックな味わいのプログレメタルを聴かせる。
テクニカルなモダンさに、曲によってはゴシック寄りの倦怠の叙情も覗かせるなど、激しさと優雅が同居した現在形のシンフォニックメタルとしても楽しめる。
楽曲は4〜5分前後で、ドラマティックな大曲などが欲しい気もするが、エモーショナルな表現力のある女性声とともに、知的なスタイリッシュ性ときらびやかなシンセアレンジが同居した、美麗派ProgMetalの好作品です。
シンフォニック度・8 スタイリッシュ度・8 女性Vo度・7 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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L'Endevi 「Don't Go Back」
スペインの女性声メタル、ルエンデヴィの2015年
メタリックなギターに、ハスキーな女性ヴォーカルの歌声を乗せたモダンなヘヴィネスを含んだサウンドで、随所に優美なシンセも加わるが、基本的にはギターリフがメインで、シンフォニックメタルというほどではない。
ときおりアコースティックパートなどもあったりして、スパニッシュ風の叙情も覗かせるナンバーもあるが、全体的にはメロディックな叙情性は希薄で、女性声の魅力が活かしきれていないのが惜しい。
個人的にはモダンヘヴィネスよりはキャッチーな優雅さの方に舵を切ってもらいたい気がする。むしろスペイン語で歌うラスト曲には、なかなか味わいがある。
ドラマティック度・7 メロディック度・7 女性Vo度・8 総合・7.5
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5 ELEMENTS / V Стихий 「Cradle of Time / Колыбель времен」
ロシアのメロディックメタル、ファイブ・エレメンツの2016年作
2008年にデビューし、3作目となる。クラシカルで壮麗なイントロから、正統派のギターにシンセを重ね、ロシア語による女性ヴォーカルを乗せ、ほどよく疾走感のあるキャッチーなメロディックメタルを聴かせる。
どっしりとしたミドルテンポのナンバーや、ゆったりとしたシンフォニックなバラードも、今作から加入したOlesya嬢の艶めいたフェミニンな歌声で、エモーショナルな味わい。
全体的には、もう少しメロディのフックによる高揚感やクサメロが欲しいのだが、ラスト曲は無音を挟んでからの、HELLOWEEN「Forever And
One」のカヴァーを収録。
メロディック度・7 疾走度・7 女性Vo度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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Kaira /Каира 「Дитя Огня」
ベラルーシのシンフォニックメタル、カイラの2009年作
2006年にデビューし、4作目となる。メタリックなギターに美麗なシンセを重ね、母国語による朗々とした女性ヴォーカルとともに、耽美なシンフォニックメタルを聴かせる。
ときに、Nighwishを思わせる壮麗なアレンジや、ほどよい疾走感のあるナンバーなど、それなりには楽しめるのだが、メロディのフックや盛り上げが、もうひつ突き抜けきらないという印象。
ゴシック寄りの耽美性でゆくのか、美麗なシンフォニック路線か、方向性を定めていってもらいたい。ラストは「カルミナ・ブラーナ」のメタルアレンジ。
シンフォニック度・7 メロディアス度・7 女性Vo度・7 総合・7
Kaira /Каира「Late Stone Age」
ベラルーシのシンフォニックメタル、カイラの2010年作
5作目となる本作も、ほどよくヘヴィなギターに美麗なシンセアレンジ、艶めいた女性ヴォーカルを乗せて、モダンなシンフォニックメタルを聴かせる。
本作では英語歌詞のため、辺境っぽさはさほどなく、わりとストレートな作風もあって、あまり引っ掛かりどころがない。
モダンなヘヴィロック調のナンバーなども、LACUNA COIL風を目指して中途半端になったという感じも。
シンフォニック度・7 メロディアス度・7 女性Vo度・7 総合・7 過去作のレビューはこちら
Sad Alice Said 「Yesterday's Tomorrow」
ウクライナのゴシックメタル、サッド・アリス・セッドの2013年作
女性Vo、女性シンセ奏者を擁する編成で、2022年のシングルとEPに新曲を加えて作られた作品。
優美なピアノとシンセをギターに重ね、美しい女性ヴォーカルで、ほどよくメランコリックな空気に包まれたゴシックメタルを聴かせる。
Alisa嬢の魅力的な歌声とともに、楽曲にはキャッチーな優雅さもあって、クラシカルなヴィオラや繊細なピアノの音色に、重すぎないギターは随所に流麗なフレーズも覗かせる。
ほどよいマイナー感も味になっていて、涼やかな美しさに包まれたサウンドは、ヨーロピアンなゴシックメタル好きにはアピールするだろう。ただ、バンドは本作発表後に活動停止。
ドラマティック度・7 ゴシック度・8 女性Vo度・8 総合・7.5
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E-L-R 「Vexier」
スイスのドゥームメタル、イー・エル・アールの2022年作
女性G&Vo、女性B&Voを擁するトリオ編成で、2019年にデビューし2作目となる。
のっけから12分という大曲で、うっすらとしたシンセに重すぎないギターを重ね、スキャット風の女性ヴォーカルとともに、ゆったりとした幻想的なドゥームメタルを展開する。
2曲めになると、疾走感あるポストブラックメタル風のパートも覗かせるなど、わりと緩急ある作風で、ドゥーム、スラッジ、ポストブラックを好む方なら神秘的なサウンドを楽しめるだろう。
基本的にはインストメインなので、ドゥーミィなBGMになりがちではあるが、雰囲気モノとしてのディープな世界観に浸れる異色作。
ドラマティック度・7 ドゥーム度・8 幻想度・8 総合・7.5
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RAMROD 「Jet Black」
イタリアの女性声ヴィンテージロック、ラムロッドの2019年作
2016年にデビューし、2作目となる。オールドなギターにオルガンが鳴り響き、艶めいた女性ヴォーカルとともに、PURSONなどに通じるヴィンテージな女性声ロックを聴かせる。
ブルージーなギターにオルガン、フルートの音色も重なるあたりは、70年代英国ロック、プログレファンにも楽しめるだろう。
楽曲は3〜4分前後が主体で、わりとストレートな作風であるが、曲によってはエモーショナルなシャウトなど、Martina嬢の表現力ある歌声が光っていて、ラストの8分のナンバーでは、オリエンタルな旋律やサイケ寄りの浮遊感も含んだ味わいで楽しめる。
ドラマティック度・7 ヴィンテージ度・8 女性Vo度・8 総合・7.5
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4/5
新年度のメタルレビュー(65)
Embrace Of Souls 「The Number Of Destiny」
イタリアのメロディックメタル、エンブレイス・オブ・ソウルズの2021年作
Rhapsody of Fireのジャコモ・ヴォイルをフロントに、Chronosfearのドラム、ベースを含む編成で、壮麗なイントロから、きらびやかなシンセをギターに重ね、伸びのあるハイトーンヴォーカルとともに、Secret Sphereなどにも通じるシンフォニックなイタリアンメロパワを聴かせる。
クサメロ感ある疾走メロスピから、優美なバラードナンバーまで、表現力あるジャコモのヴォーカルの実力が光っている。
全体的にはこれだという新鮮味は薄いのだが、シンフォニックメタルとしてのクオリティの高さは見事。
Visions Of Atlantisのミケーレ・グアリトリ、Vision Divineのイヴァン・ジャンニーニ、Labyrinthのロベルト・ティンラティなどがゲスト参加。
シンフォニック度・8 壮麗度・8 ヴォーカル度・8 総合・8
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HYPERION「INTO THE MAELSTROM」
イタリアのメタルバンド、ハイペリオンの2020年
2017年にデビューし、2作目となる。流麗なツインギターにハイトーンヴォーカルを乗せ、リズムチェンジを含む緩急ある構築力で聴かせる、オールドスタイルのメタルサウンド。
エッジの効いたギターリフはANNIHILATOR的な感触もあり、JUDAS PRIESTを思わせる王道のメタル感触とともに、80年代ルーツでありながらも、どこかスタイリッシュな聴き心地。
前作の路線からいくぶん硬質なサウンドに変化しているが、9分の大曲などはドラマティックな展開を見せるなど、パワフルなオールドメタルが好きならば間違いなく気に入るだろう。
ドラマティック度・8 正統派度・8 古き良き度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Helvetets Port 「From Life... to Death」
スウェーデンのメタルバンド、ヘルヴェテッツ、ポートの2019年作
2009年にデビュー、10年ぶりとなる2作目。元Portraitのギターとベースを擁する編成で、重すぎないツインギターに朗々としたヴォーカルを乗せた、いかにも80年代風のメタルサウンド。
曲によっては母国語による歌詞を乗せた、土着的な神秘性も垣間見せ、垢抜けない野暮ったさを確信犯的に描き出す。
一方では、エピックメタル風の勇壮なナンバーもあって、ほどよい叙情性とマイナーな空気感にニンマリとなる。
EnforcerやWolf、Portrait、In Solitudeなど、北欧系ヴィンテージメタル、NWOTHMのファンはチェックすべし。
ドラマティック度・7 正統派度・8 古き良き度・8 総合・7.5
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Dragon Sway 「Bloodlust Awaken」
ノルウェーのメタルバンド、ドラゴン・スウェイの2021年
オールドなギターリフにハイトーンヴォーカルを乗せた、80年代ルーツの古き良きヘヴィメタルスタイル。
全体的にミドルテンポ主体の、どっしりとした聴き心地で、ギターとベースが日本人であることもあり、LOUDNESSなど、昭和のジャパメタに通じるような雰囲気もある。
日本人ギタリスト、ワージーのプレイはストレートなリフから、テクニカルなフレーズまで巧みに弾きこなし、ボーナストラックにラウドネスのカヴァーが収録されていることからも、高崎晃をリスペクトしているのかもしれない。
ラストのタイトルナンバーは、疾走感のあるメロディックな味わいで、このタイプの爽快な楽曲が増えれば、より魅力的なバンドになるだろう。
メロディック度・7 疾走度・8 オールドメタル度・8 総合・7.5
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Invasion 「Barbarian Invasion」
スペインのメタルバンド、インヴェイションの2021年作
2000年、2003年のデモ音源を収録。ストレートなギターリフにスペイン語のダーティなヴォーカルで疾走する、オールドスタイルのメタルサウンド。
なにせデモなので、音質は薄っぺらく、メロディのフックもあまりない、いわゆる古き良きヘヴィメタルであるが、ジャケのイメージのようなエピックな勇壮さもいくぶん覗かせる。
ジューダスとマノウォーの中間といえば聴こえはいいが、どっちつかずのB級メタルであるのが正しいところだろう。ちなみにバンドの正規音源はなし。
ドラマティック度・7 正統派度・8 勇壮度・7 総合・6
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Santelmo 「Mamifero」
スペインのメロディックメタルバンド、サンテルモの2014年作
2009年にデビューし、3作目となる。オールドなツインギターにスペイン語のヴォーカルを乗せて疾走する、正統派のメロパワサウンド。
オルガンを含むうっすらとしたシンセアレンジや、サビでのキャッチーな歌メロには、スパニッシュな優雅さも感じさせる。
伸びのあるヴォーカルの実力もなかなかで、演奏面やメロディックな楽曲は、AVALANCHあたりと比べても遜色ない。
ソロなどでの流麗なギタープレイも見事で、王道のメロディック・スパニッシュメタルが好きな方はチェックすべし。
メロディック度・8 疾走度・8 スパニッシュ度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Soulreaper 「Segador De Almas」
メキシコのメタルバンド、ソウルリーパーの2021年作
2018年にCDRで自主リリースされたアルバムのプレス盤。ツインギターのリフにスペイン語のパワフルなハイトーンヴォーカルを乗せ、どっしりとした正統派ヘヴィメタルを聴かせる。
ギターソロでは流麗なフレーズも覗かせるが、楽曲的にはメロディックなフックよりはストレートなメタル感触が強く、曲によってはスラッシーな疾走感も現れる。
全体的には、これという新鮮味はなく、正統派メタルという以上の魅力が足りない。
ドラマティック度・7 正統派度・8 スパニッシュ度・7 総合・7
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Cannibal 「Fire Meets Steel」
カナダのメタルバンド、カンニバルの2020年作
ジャケの感じからして自主制作の香りがぷんぷんだが、サウンドの方も御多分に漏れず80'sど真ん中。
オールドなギターリフにハスキーなヘタウマ女性ヴォーカルを乗せて疾走する、80年代風B級スピードメタル。
音程のあやうい舌足らずのヴォーカル嬢といい、なんとなくメイデン風のミドルテンポなど、学生バンドがCDを作ったというような微笑ましさがあるが、曲によってはツインギターが叙情的な、WARLORD風だったりと、このひなびた感じが何故か嫌いにはなれないのもミソ。
2020年にこんなん作るだけでも応援してみたい。次のフルアルバムが少しだけ楽しみだ。
オールドメタル度・9 疾走度・7 女性Vo度・6 総合・7
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Mandragora 「Steel Metal Attack」
ペルーのメタルバンド、マンドラゴラの2015年作
ツインギターに女性Voの編成で、本作には2014年のEPと2010年のデモ音源を収録。
正統派のギターにハスキーな女性ヴォーカルを乗せて、疾走感のあるオールドなヘヴィメタルを聴かせる。
存在感のあるベースに、味のあるギターリフ、そしてパワフルな歌声のFatima嬢と、NWOTHM系バンドとしての実力は充分。
ほどよく様式美的な雰囲気も覗かせて、日本のTERRA ROSAあたりが好きな方にも楽しめそうだ。
デモ音源の方は、音質がこもり気味ではあるが、突き抜けるFatima嬢のハイトーンともに、バンドの原点というべきサウンドが聴ける。
オールドメタル度・9 疾走度・7 女性Vo度・8 総合・7.5
Human Fortress 「Thieves Of The Night」
ドイツのメロディックメタル、ヒューマン・フォートレスの2016年作
2001年にデビュー、5作目となる。壮麗なシンセアレンジをギターに重ね、パワフルなハイトーンヴォーカルとともに、RHAPSODYにも通じるエピックな世界観のシンフォニックメタルを聴かせる。
クサメロ感のあるギターフレーズとともに、往年のジャーマンメタルを受け継ぐほどよくB級なテイストを残した感触は、HAMMERFALLなどのファンにも受けるだろう。
過去作に比べると、メロディのフックも魅力的になってきており、エピックなメロパワが好きな方であれば、けっこう気に入るかも。
ドラマティック度・8 クサメロ度・8 エピック度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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Athorn 「Phobia」
ドイツのメタルバンド、アソーンの2010年作
Galloglass、Human Fortressにも参加したシンガー率いるバンドで、ヘヴィなギターにパワフルなヴォーカルとデスヴォイスも絡む、NEVERMOREなどにも通じるダークで重厚なメタルサウンド。
曲によってはほどよくウェットな叙情性も感じさせ、翳り帯びたどっしりとした味わいは、RAGEなどを思わせる部分もある。
ツインギターによる叙情的なフレーズとともに、随所にドラマティックな味わいも覗かせる。あまり愛想はよくないが重厚なサウンドが好きな方はどうぞ。
ドラマティック度・7 ダーク度・8 重厚度・8 総合・7.5
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Mausoleum Gate 「Into a Dark Divinity」
フィンランドのプログレメタル、マウソレウム・ゲートの2017年作
2014年にデビューし、2作目となる。叙情的なギターのイントロから、オルガンやメロトロンを含むシンセに朗々としたヴォーカルを乗せ、ヴィンテージな味わいのハードロックを聴かせる。
10分前後の大曲も多く、ゆったりとしたナンバーでは、エピックドゥーム的な感触とともに、オルガンも鳴り響き、怪しい幻想性に包まれる。
ノリのよい小曲は、70年代のブリティッシュ・ハードロックのようで、ヘヴィ過ぎない聴き心地は、プログレファンにも楽しめるだろう。
ラストの10分の大曲は、メロトロンに優美なピアノが重なり、しっとりと優雅な味わいは、ほぼシンフォプログレですな。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 ヴィンテージ度・8 総合・8
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Amethys 「Asmethee」
フランスのシンフォニックメタル、アメシスの2006年
2003年にデビューし、2作目となる。オーケストラルなアレンジをギターに重ね、パワフル過ぎない男性ヴォーカルに女性ヴォーカルが絡み、リズムチェンジを含むProgMetal的でもあるシンフォニックメタルを聴かせる。
男女声によるオペラティックな優雅さと、わりと唐突な楽曲展開が合わさり、マイナーなB級感も含めて起伏のあるストーリー的な流れを感じさせる。
軽めのドラムなどが、重厚さにかけるのが惜しいが、随所にクラシカルな美意識を覗かせつつ構築される、全66分の力作だ。
ドラマティック度・8 壮麗度・7 重厚度・7 総合・7
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Symbolic 「Dreamend」
ボスニアのメロディックメタル、シンボリックの2008年作
2002年にデビューし、2作目となる。シンセとギターによるダークなイントロから、ネオクラ風のギターフレーズとともに疾走、味わいのあるヴォーカルを乗せて、オールドスタイルの様式美メタルにリズムチェンジを含む展開力が合わさったサウンド。
軽めの音質も含めてマイナー臭さはに包まれているが、ヨーロピアンな翳りを帯びた雰囲気とメロディックなギタープレイは、けっこう日本人好み。
楽曲は4〜5分前後で、ProgMetalというほどのテクニカル性はないが、古き良き様式美疾走メタルとしては、なかなかの好作である。
ドラマティック度・7 疾走度・7 様式美度・8 総合・7
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3/8
女性声シンフォニックメタル特集(51)
ILLUMISHADE 「Another Side Of You」
スイスのシンフォニックメタル、イルミシェードの2024年作
ELVEITIEの女性シンガー、ギタリストに、映画音楽家としても活躍する女性シンセ奏者を擁する新鋭バンド。
メタリックなギターにオーケストーションを含む美麗なシンセアレンジ、伸びやかな女性ヴォーカルを乗せたスタイリッシュなシンフォニックメタルで、WITHIN TEMPTATIONにも通じるキャッチーな優雅さとヘヴィネスが同居したサウンド。
AMARANTHEのような硬質なモダンさや、曲によっては、MESHUGGAH的でもある、Djent風のギターも覗かせるなど、楽曲ごとのアレンジの幅にもセンスを感じさせる。
しっとりとした幻想的なナンバーでは、ファビエンヌ嬢のなよやかな歌唱が際立っており、随処に知的なリズムチェンジや流麗なギタープレイも盛り込むなど演奏陣のレベルも高い。
まさに新時代のフィメール・シンフォニックメタルというべき力作だ。なお、日本盤のライナー解説は緑川が担当しておりますのでよろしく。
シンフォニック度・8 スタイリッシュ度・8 女性Vo度・8 総合・8
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ELEINE 「We Shall Remain」
スウェーデンのシンフォニックメタル、エレインの2023年作
2015年にデビュー、本作は4作目で、ほどよくヘヴィなギターにシンセを重ね、伸びのある艶めいた女性ヴォーカルを乗せたモダンなサウンド。
マデリン嬢の妖艶の歌声を主体に、随所に流麗なギタープレイやときに男性声も絡んで適度にアグレッシブなシンフォニックメタルを展開する。
楽曲は3〜4分前後とわりとシンプルで、ストレートなノリで楽しめるが、個人的にはもう少し壮麗な美しさが欲しいか。全36分というのも少しもの足りない。
シンフォニック度・7 重厚度・8 女性Vo度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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ELENA VOLKOVA & ALEX K. STRANGEL NOVA
ロシアのシンフォニックメタル、ノヴァの2023年作
SOLAR CROWNの女性シンガー、エレナ・ヴォルコヴァと、CRIMSON CRYのアレックスK・ストランゲルによるユニットで、きらびやかなシンセとオーケストレーション、美しい女性ヴォーカルで聴かせる、優雅なシンフォニックメタル。
歌詞は英語のため、ロシア臭さはあまりなく、エレナ嬢の伸びやかな歌声は、元DELAINのシャルロットのようになよやかで魅力的だ。
しっとりとしたシンフォニックなバラードでは、クラシカルなピアノやストリングスも美しく、オペラティックなソプラノが響き渡る。
全体的に激しさは控えめで、Nightwishのスローナンバーを集めたような、優美なフィメール・シンフォニックメタルが楽しめる。
シンフォニック度・8 優美度・8 女性Vo度・8 総合・8
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AFTER EVOLUTION 「WAR OF THE WORLDS」
チェコのシンフォニックメタル、アフター・エヴォリューションの2022年作
メタリックなギターにオーケストラルなアレンジを重ね、伸びやかな女性ヴォーカルとともに、ヨーロピアンな翳りを帯びたシンフォニックメタルを聴かせる。
楽曲のメインコンポーサーでもある、Nikolette嬢の歌声は美しくも物憂げで、物悲しいピアノの旋律などクラシカルな叙情と、ゴシックメタル的でもあるメランコリックな空気に包まれる。
全体的には、キャッチーなフックよりは薄暗い翳りに包まれていて、壮麗な盛り上がりなどはさほどないのだが、東欧らしい涼やかな味わいの好作である
シンフォニック度・8 薄暗度・8 女性Vo度・8 総合・7.5
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Celtian 「En Tierra de Hadas」
スペインのシンフォニック・フォークメタル、セルティアンの2019年作
2018年にデビューし、2作目となる。優美なシンセに素朴なガイタの音色、メタリックなギターにヴァイオリンやフルートを加え、なよやかな女性ヴォーカルを乗せて疾走する、MAGO DE OZを女性Voにしたような幻想的なフォーク・メロパワを聴かせる。
キャッチーなクサメロ感とスペイン語によるキュートな女性Voは大変魅力的で、元MAGO DE OZのフルート&ホイッスル奏者の優雅なプレイも楽曲を彩る。
本格派のケルト&フォーク要素と、シンフォニックなメタル感触が自然体で融合しており、重すぎず軽すぎず、サウンドのバランス感も見事だ。
スパニッシュなフォークメタルとしても、女性声シンフォニックメタルとしても期待の逸材が登場したといえる。
メロディック度・8 フォーキー度・8 女性Vo度・8 総合・8
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Celtian 「Sendas De Leyenda」
スペインのシンフォニック・フォークメタル、セルティアンの2021年作
3作目となる本作も、幻想的なジャケのように、しっとりとしたピアノやシンセをギターに重ね、フルートやガイタのフォーキーな響きに、スペイン語の女性ヴォーカルで、優美なフォーク・メロパワを展開する。
キャッチーなメロディのフックがスペイン語の響きに良くマッチしていて、Xana嬢のフェミニンな声質にも、フィメールメタル好きなら萌え必至だろう。
サウンド的には壮麗なアレンジとともに、NightwishやWithin Temptationにも通じるような重厚な説得力も備わって、そこにフォーキーな牧歌性が優雅な彩りを添える。
フォーキーなシンフォニックメタルとしても、多くのリスナーを虜にするだけの高品質な壮麗作です。
シンフォニック度・8 フォーキー度・8 女性Vo度・8 総合・8.5
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Beneath My Sins 「I Decide」
フランスのシンフォニックメタル、ビニース・マイ・シンズの2020年作
2017年にデビューし、2作目。美麗なイントロナンバーから、ヘヴィなギターリフにシンセを重ね、伸びのある女性ヴォーカルで、スタイリッシュなシンフォニックメタルを聴かせる。
いくぶんメランコリックなゴシックメタル風味や、スクリームを加えたアグレッシブなパートもあって、ほどよく激しいモダンな感触に包まれる。
なよやかなソプラノとストレートを使い分ける、EMMA嬢の存在感ある歌声も、適度に硬質なサウンドにマッチしている。
アルバム後半には、フォークメタル調のナンバーもあったりして、むしろその方向性でも良いような。
シンフォニック度・7 スタイリッシュ度・8 女性Vo度・8 総合・7.5
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SinHeresy 「Domino」
イタリアのシンフォニックメタル、シンヘレシーの2017年作
2013年にデビューし、2作目となる。男女Voの6人編成で、メタリックなギターにパワフルな男性ヴォーカル、フェミニンな女性ヴォーカルが絡み、美麗なシンセアレンジとともにモダンなシンフォニックメタルを展開。
デジタルな感触の男女声シンフォニックメタルという点では、TEMPERANCEなどにも通じる感触であるが、曲によっては、LACUNA COILのような雰囲気もあって、女性声がメインのナンバーでは優美な叙情にも包まれる。
全体的なクオリティは高いものの、楽曲的に3〜4分前後で、もう少し壮大な盛り上がりが欲しい気もする。
シンフォニック度・7 スタイリッシュ度・8 女性Vo度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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Tigersclaw 「Force Of Destiny」
ドイツのシンフォニックメタル、タイガースクローの2019年作
2017年にデビューし、2作目となる。メタリックなギターに美麗なシンセを重ね、美しい女性ヴォーカルの歌声を乗せて、ほどよい疾走感のある壮麗なサウンド。
なよやかなソプラノと伸びやかなストレートヴォイスを使い分ける、Elena嬢の表現力もなかなかのもので、Nightwishのフロール・ヤンセンにもひけをとらない。
楽曲的には、疾走ナンバーから、スローテンポまで幅広いのだが、もう少しメロディのフックや盛り上がりが欲しいか。
全15曲、73分という長さなので、全部聴くにはちょっと大変。ヴォーカルが良いので、楽曲の質を向上していただきたい。
シンフォニック度・7 壮麗度・7 女性Vo度・8 総合・7.5
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Solitude Within 「Disappear」
ベルギーのシンフォニックメタル、ソリチュード・ウィズインの2017年作
ほどよくヘヴィなギターリフに壮麗なシンセアレンジ、透明感のあるコケティッシュな女性ヴォーカルの歌声で、WITHIN TEMPTATIONあたりに通じる優雅なサウンド聴かせる。
スローからミドルテンポを基調にしつつ、ダークな翳りや妖しさはあまりなく、シンセも兼任する、EMMELIE嬢の魅力的な歌声とともに、優美で爽やかな耳心地。
聴きやすさの反面、3〜4分前後の楽曲は、これという盛り上がりに欠けるので、強固な世界観やフックのある展開がもう少し欲しい所。
アルバム後半の、いくぶん耽美なゴシックメタル寄りのナンバーなどは、美しい女性声がよく映えてしっとりとした味わいで楽しめる。
シンフォニック度・7 優美度・8 女性Vo度・8 総合・7.5
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Narwhal Tusk 「My Absolution」
ロシアのシンフォニックメタル、ナーワル・タスクの2017年作
2010年作「In Despair」はNightwishタイプの好作であったが、本作は新曲4曲に、1stのリメイク曲や、収録曲の別バージョンなどを加えたEP。
きらびやかなシンセをギターに重ね、ソプラノを使い分ける美しい女性ヴォーカルで、優雅なシンフォニックメタルを聴かせる。
やわらかに伸びのあるValentine嬢の歌声は、英語の歌詞とともに楽曲にエモーショナルな説得力を付加していて、マイナー臭さはほとんどない。
オーケストラバージョンの壮麗なアレンジはもとより、新曲4曲もどれも魅力的で、今後のフルアルバムを期待したくなる。
シンフォニック度・8 優美度・8 女性Vo度・8 総合・7.5
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Arshenic 「Final Collision」
ポーランドのゴシックメタル、アルシェニックの2019年作
2011年にデビューし、2作目。ヘヴィなギターに艶めいた女性ヴォーカルを乗せて、かつてのThe Gatheringにも通じる、倦怠の空気に包まれたゴシックメタルを聴かせる。
ときにデスヴォイスをまじえたダークな感触とゲストによるチェロやヴァイオリンも加わった、メランコリックな叙情性も覗かせつつ、ほどよいキャッチーなノリも含んだスタイル。
Oliwia嬢のエモーショナルな歌声は魅力たっぷりであるが、楽曲的にはもうひとつディープさというか、同郷の先輩である、Moonlightのような繊細な美意識がもう少しあれば。
ドラマティック度・7 耽美度・8 女性Vo度・8 総合・7.5
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Markize 「Transparence」
ロシア出身の女性シンガー擁するフランスのゴシックメタル、マーカイズの2007年作
ヘヴィなギターにシンセを重ね、フェミニンな女性ヴォーカルの歌声とともに、初期のEVANESCENCEにも通じるモダンな味わいのゴシックメタルを聴かせる。
フランス語と英語によるAina嬢の歌声は、艶めいた美しさと表現力があり、とくにしっとりとしたスローナンバーではその魅力が際立っている。
全体的には、これという新鮮味はないものの、エモーショナルな女性声とともに、ほどよくキャッチーなゴシックロツクが楽しめる好作だ。
キャッチー度・8 耽美度・7 女性Vo度・8 総合・7.5
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2/23
オールドスタイル万歳!(38)
Uriah Heep 「Chaos & Colour」
イギリスのハードロック、ユーライア・ヒープの2022年作
1970年デビューの大ベテラン。本作は通算25作目あたり。メンバーは前作から変化なしで、サウンドの方も、ほどよくハードなギターにオルガンを重ね、バーニー・ショウの伸びやかな歌声とともに、キャッチーなノリのあるヒープらしいハードロックは健在。
叙情的な
ミック・ボックスの奏でる叙情的なギタープレイも随所にアクセントになっていて、フィル・ランゾンのオルガンも、もはやヒープの一部というべき見事なアレンジで楽曲を彩っている。
ヴィンテージなスタイルであるが、古めかしさではなく現在形のレイドバックというような、大人の優雅さに包まれていて、今作はどの曲もメロディのフックが秀逸だ。ここにきて最高のアルバムが完成。
ドラマティック度・8 ヴィンテージ度・8 英国度・9 総合・8.5 過去作のレビューはこちら
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Cloven Hoof 「A Sultan's Ransom」
イギリスのメタルバンド、クローヴェン・フーフの1989年作
1984年にデビュー、NWOBHMを代表するバンドのひとつ。本作は3作目で、DVD付きの2022年再発盤。
ツインギターのリフにハイトーンヴォーカルを乗せ、ほどよく疾走感のあるヨーロピアンなメタルサウンドを展開。
緩急あるリズムチェンジやウェットな叙情を含んだスタイルは日本人好みで、楽曲も演奏も、当時のIRON MAIDENなどと比べても遜色ない。
いくぶんのマイナー感を漂わせつつ、ドラマティックでエピックな空気感は、多くのメタルファンに気に入られるはずだ。
ツインリードの叙情性と随所に疾走感を盛り込んだ知的な展開力で聴かせる、80年代ブリティッシュメタルの隠れた傑作である。
再発盤DVDには1989年のライブ映像やビデオクリップを収録。年代を考えれば画質と音質も良好で当時のバンドの姿が楽しめる。
ドラマティック度・8 エピック度・8 英国度・8 総合・8
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Cloven Hoof 「Time Assassin」
イギリスのメタルバンド、クローヴェン・フーフの2022年作
1989年までに3作を残して消えるも、2006年に復活、その後は順調にアルバムを発表し、本作は復活後5作目となる。
オリジナルメンバーは、ベースのリー・ペインのみであるが、ツインギターにハイトーンヴォーカルを乗せて、オールドスタイルのメタルサウンドを聴かせるところはかつてのまま。
ときにシンセによるアレンジも加わるなど、わりと現在形のスタイルも覗かせつつ、パワフルなハイトーンでシャウトする部分などは、マイナーになったJUDAS PRIESTという感じもある。
タイトルナンバーは、リズムチェンジを含む往年を思わせるドラマティックな聴き心地で、ほどよい疾走感とともに叙情的なツインリードも随所に覗かせる。
メンバーが変わってもこの路線を続ける心意気はあっぱれだ。
ドラマティック度・7 古き良き度・8 英国度・8 総合・8
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Protean Shield
ギリシャのエピックメタル、プロティアン・シールドの2023年作
ジャケやバンド名など、いかにもマイナーな雰囲気であるが、サウンドはオールドなギターに朗々としたヴォーカルを乗せた王道のエピックメタル。
ツインギターによる叙情性も、どことなくうらぶれた味わいで、勇壮さと哀愁が同居した聴き心地は、DOOMSWORDやMARTIRIAなどが好きな方ならニヤりとなる。
8分を超える大曲も、ゆったりとした叙情を含んだ緩急ある展開で、ドラマティックな空気感に包まれた古き良き正統派メタルが楽しめる。
まさにマニア好みのヨーロピアン・エピックメタルの逸品です。ジャケにピンと来たら聴くべし。
ドラマティック度・8 エピック度・8 古き良き度・8 総合・8
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MIRROR 「Day Bastard Leaders Die」
キプロスのメタルバンド、ミラーの2022年作
イギリス、アメリカのメンバーを含む編成で、2015年にデビューし、3作目となる。
いかにもB級ドゥーム臭ただようようなジャケであるが、オールドなツインギターにハイトーンヴォーカルを乗せた、80年NWOBHM的なカルトなメタルサウンドを聴かせる。
ほどよくスカスカなアナログ感とともにウェットな叙情を含んだ聴き心地は、ANGEL WITCHなどが好きな方はニヤリとすること請け合い。
曲によっては、初期IRON MAIDENのような雰囲気もあったりして、全体的にもジャケのイメージに比してわりと聴きやすい好作品です。
ドラマティック度・7 ヴィンテージ度・8 カルト度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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ACCEPT 「Too Mean to Die」
ドイツのベテランメタルバンド、アクセプトの2021年作
1979年デビューのベテランで、2010年に復活してからの5作目となる。ベースに元Darkseedのマーティン・モートニックが加入、ツアーメンバーのフィニップ・ショウズも正式メンバーとなり、トリプルギターの6人編成に。
メタリックなギターリフにマーク・トーニロのダーティなヴォーカルを乗せた王道のヘヴィメタルで、ほどよいノリの疾走感に、甘すぎない程度の叙情を織り込んだギタープレイ、そしてウドを思わせる歌いまわしなど、どこをとっても往年のアクセプトを思わせる。
全体的には、これという新鮮味はないのだが、王道のヘヴィメタルとしてのACCEPTファンであれば納得の内容だろう。
ドラマティック度・7 正統派度・8 アクセプト度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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MENTALIST 「Empires Falling」
ドイツとスウェーデンのメンバーによるメロディックメタル、メンタリストの2022年作
2020年にデビューし、すでに3作目となる。ドラムは元BLIND GURDIANのトーマス・スタックで、ジャケの雰囲気も往年のジャーマンメタルばりにイモ臭いのだが、サウンドの方も王道のツインギターに、カイ・ハンセンばりのハイトーンヴォーカルで聴かせる、オールドなメロパワでにんまり。
どっしりとしたミドルテンポと、随所に疾走する激しさも盛り込んで、軽すぎず、重すぎずという、GAMMA RAY路線のスタイルで、キャッチーなフックも覗かせる。
トーマスのドラムもときにブラガーを思い出させるパワフルさは健在。これだというキラーチューンはないものの、ジャーマンメタル好ききチェックすべし。
ドラマティック度・8 疾走度・7 王道ジャーマン度・8 総合・8
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Gauntlet Rule 「Plague Court」
スウェーデンのメロディックメタル、ゴーントレット・ルールの2022年作
Vo、G、Bのトリオ編成で、ドラムはゲスト扱い。バンド名やジャケのイメージからしてマイナーなエピックメタルを想起するが、オールドなギターに朗々としたヴォーカルを乗せて、90年代ジャーマンメタルをルーツにした正統派メロパワを聴かせる。
疾走ナンバーの一方、どっしりとしたミドルテンポでは、男臭いヴォーカルとともに、CANDLEMASSのようなエピック・ドゥーム的な重厚な味わいも覗かせる。
楽曲自体にこれという新鮮味はなく、ヴォーカルの野太い声質も好みを分けるところだが、古き良きヨーロピアンメタルが好きなかたはどうぞ。
ドラマティック度・7 疾走度・7 エピック度・8 総合・7.5
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BOMBER 「Nocturnal Creatures」
スウェーデンのヴィンテージメタル、ボマーの2022年作
70〜80年代NWOBHM、グラムロックから影響を受けて結成されたというバンドで、ほどよくハードなギターに伸びのあるヴォーカルを乗せて、オールドスタイルのキャッチーなハードロックを聴かせる。
オールドなリフの一方、随所にメロディックなフレーズを奏でるギターのセンスもよろしく、パワフル過ぎないヴォーカルもサウンドによくマッチしている。
往年のグラムロック的なアダルトな雰囲気もかもしだしつつ、80年代北欧メタルの叙情性も含んだ味わいで、オールドロック好きも心地よく楽しめる。
いかにもアナログ感を覚える音質も含めて、ヴィンテージHR/HMのあらたな形を提示した新鋭バンドです。
メロディック度・8 ヴィンテージ度・8 総合・7.5
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MANTICORA 「TO KILL TO LIVE TO KILL」
デンマークのメロディックメタル、マンティコラの2018年作
1999年にデビュー、北欧メロパワの中堅バンドで、8作目となる本作は、書き下ろされたオリジナルのサイコホラー小説を基にしたコンセプトアルバム。
クラシカルなイントロから幕を上げ、メタリックなギターにクセのあるハイトーンヴォーカルを乗せ、スラッシーな激しさを含んだパワーメタルを聴かせる。
ツインギターによる叙情性と激しい疾走感は、初期のBLIND GUARDIANにも通じる感触もありつつ、グロウルヴォーカルを使ったアグレッシブなパートや、9分の大曲ではProgMetal的でもある緩急ある展開力も光る。
疾走メロパワとしてのストレートな魅力はさほどないのだが、ダークなドラマ性を描き出すような重厚な世界観が味わえるという点では力作といえる。
ドラマティック度・8 疾走度・8 重厚度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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Dark Horizon 「Aenigma」
イタリアのメロディックメタル、ダーク・ホライズンの2018年作
2001年にデビュー、本作は8年ぶりとなる4作目。美麗なシンセをギターに重ね、ハイトーンヴォーカルを乗せて、ほどよく疾走感のある優雅なシンフォニックメタルを聴かせる。
初期のB級さからはずいぶん成長してきてはいるが、反面、楽曲的なインパクトやクサメロ感は薄まって、疾走感もさほどなく、メロディのフックもいまひとつと、突き抜けきらないもどかしさも。
クラシカルなピアノを含む優美なシンセや、いくぶんダークなナンバーなどにはわりと魅力があるので、その路線に舵を切ってもよいのかもしれない。
メロディック度・7 疾走度・7 楽曲度・7 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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Blessdivine 「Between Sin & Sacrifice」
ウクライナのメロディックメタル、ブレスディヴァインの2021年作
壮麗なイントロで幕開け、クサメロ感あるギターにシンセを重ね、朗々としたヴォーカルとともに、エピックなスケール感に包まれたサウンドを展開。
RHAPSODYのような勇壮なシンフォニックメタルと、マイナーなヨーロピアンな香りが同居していて、初期のTHY MAJESTIEあたりが好きな方ならニンマリだろう。
楽曲は4〜5分前後が主体で、ミドルテンポを基本にしつつ、随所に疾走パートもあって、わりとメリハリも効いている。
いくぶんのB級感触がOKならば、幻想的でファンタジックなクサメロのヨーロピアンメタルとして楽しめるだろう。
ドラマティック度・8 壮麗度・8 エピック度・8 総合・7.5
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White Stones 「DANCING INTO OBLIVION」
OPETHのマーティン・メンデス率いるプログレッシブ・デスメタル、ホワイト・ストーンズの2021年作
2作目となる本作も、うねりのあるオールドなギターリフにダミ声ヴォーカルを乗せ、ミステリアスな空気に包まれたダークなメタルサウンドを聴かせる。
激しい疾走パートでは、ときにブラックメタル的な禍々しさも感じさせつつ、全体的にはミドルやスローテンポの、どっしりとドゥーミィな部分も多く、OPETHの叙情を削ぎ落したような味わい。
緩急あるリズムチェンジなどには、プログレッシブな知的さも漂わせ、流麗なギターフレーズも現れたりと、前作以上にフックのあるアレンジで楽しめる。
全35分というのがやや物足りないので、次回は重厚な大曲なども聴きたい。
ドラマティック度・7 暴虐度・7 知的デス度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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2/9
メロパワ、ゴシック、ヴィンテージ(25)
Krilloan 「Emperor Rising」
スウェーデンのメロディックメタル、クリロアンの2022年作
スウェーデン人のギターを中心に、ドイツ、ポルトガル、アルゼンチン、エクアドルという世界各国のメンバーが集結した、多国籍バンドで、メロディックなツインギターにパワフルなヴォーカルを乗せて疾走する、王道のメロディック・パワーメタルを聴かせる。
朗々としたなコーラスを含む勇壮な歌メロは、ときにRHAPSODYを思わせるが、こちらはあくまで古き良きメロパワの感触を残していて、HAMMERFALLあたりをルーツにしたスタイルといえる。
楽曲は3〜5分前後とわりとシンプルで、ストレートな疾走感と垢抜けないクサメロで楽しめる。全36分という潔さも含めて、まさにオールドスタイルのエピック・メロパワです。
ドラマティック度・8 疾走度・8 正統派メロパワ度・・8 総合・8
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Bloodline 「KING VAMPIRE」
チリのメロディックメタル、ブラッドラインの2018年作
エピックで壮麗なイントロで幕を開け、叙情的なツインギターとともに疾走開始、味わいのあるハイトーヴォーカルとともに、ドラマティックな正統派メロパワを聴かせる。
ほどよくクサメロを含んだマイナーな感触は、南米というよりはむしろヨーロピアンなメロスピ感触で、ウェットな世界観はB級気味のエピックメタル好きにも対応。
ヘヴィ過ぎない、パワフル過ぎないスタイルは、現在形のメタルバンドとは違い、90年代ルーツの感触で、かつてのジャーマンメタルやトラディショナル・メタルのファンにも薦められる。
楽曲そのものに、強烈なインパクはないのだが、その中庸感がむしろ良いのかもしれない。派手すぎないオールドなメロパワが好きな方はぜひ。
ドラマティック度・8 疾走度・8 古き良きメロパワ度・・8 総合・8
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Hellraiser 「Revenge Of The Phoenix」
イタリアのメロディックメタル、ヘルレイザーの2014年作
若手4人組バンドのデビュー作で、オールドなギターリフにハイトーンヴォーカルを乗せて、Judas Priestあたりに通じる80年代ルーツの正統派メタルを聴かせる。
ミドルテンポからリズムチェンジを含む展開力は、CRIMSON GLORY風の部分もあり、8〜9分を超える大曲や、随所にシンセによるアレンジも加わるなど、単なるNWOTHMという以上に構築力を感じさせる。
オールドスタイルの重すぎないサウンドには好感が持てるのだが、全体的にはこれというキラーチューンもなく、もっと疾走ナンバーなどがあれば、より楽しめるバンドになると思う。
ドラマティック度・7 疾走度・6 古き良き度・8 総合・7.5
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MINDAHEAD 「6119: Part I」
イタリアのプログレメタル、マインドアヘッドの2022年作
2016年にデビューし、2作目。男女Voの6人編成で、硬質なツインギターにコケティッシュな女性ヴォーカルと男性ヴォーカルが絡み、スタイリッシュなメタルサウンドを展開。
知的なテクニカル性と壮麗なアレンジが同居して、SINHERESYなどにも通じるモダンなシンフォニックメタルとしても楽しめる。
ときにイタリア語による語りが、SF的でシネマティックな世界観を演出し、17分という大曲ではシアトリカルな男女ヴォーカルの掛け合いと緩急ある構築力で、ドラマティックな味わいに包まれる。
後半の楽曲ではアグレッシブな激しさも覗かせつつ、エモーショナルなKyo嬢の歌声も魅力的だ。コンセプト的なスケール感で聴かせる、モダンな男女声ProgMetalの力作です。
ドラマティック度・8 スタイリッシュ度・8 女性Vo度・・7 総合・8
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Hexed 「Pagans Rising」
スウェーデンのシンフォニックメタル、ヘクストの2022年作
2018年にデビューし、2作目となる。メタリックなギターに美麗なシンセアレンジを重ね、パワフルな女性ヴォーカルに男性デスヴォイスが絡む、重厚なシンフォニックメタルを聴かせる。
Nightwishなどに比べると、中性的なTina嬢の歌声も含めてアグレッシブな作風で、ときにペイガンメタル的でもある涼やかな空気感も覗かせつつ、全体的にはモダンなヘヴィネスに包まれる。
楽曲は4〜5分前後が主体で、メロディのフックや楽曲としての盛り上がりがもう少し欲しい気もするが、音の厚みのある壮麗なメタル感が好きな方には楽しめるだろう。
シンフォニック度・8 重厚度・8 女性Vo度・7 総合・7.5
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CAP OUTRUN 「High On Deception」
スウェーデンのプログレ・ハードロック、キャップ・アウトランの2021年作
マルチミュージシャン、アンドレー・テアンダーを中心にしたバンドで、OUTLOUDのシンガー、チャンドラー・モーゲルが参加。
メロディックなギターに優美なシンセと伸びやかなヴォーカルを乗せて、カラフルなジャケのイメージのようなキャッチーなメロディックロックを聴かせる。
きらびやかなシンセアレンジやリズム面でのテクニカルな感触はプログレ寄りながら、メロハー寄りの抜けの良さを感じさせる点では、A.C.T.などのファンにも楽しめるだろう。
随所に流麗なギタープレイも覗かせる演奏力の高さも含めて、優雅で軽妙なセンスとクオリティの高さは、さすがキャリアのあるミュージシャンたちである。
メロディック度・8 プログレ度・7 優雅度・8 総合・8
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The Wring 「SPECTRA」
カナダのプログレメタル、リングの2023年作
ギタリストのドン・デュールフを中心にしたプロジェクトで、3作目の本作には、ドラムにマルコ・ミンネマンが参加。
軽やかなリズムにほどよくハードなギターを乗せ、マイルドなヴォーカルとともに、RUSHにも通じるキャッチーなプログレメタルを聴かせる。
随所にテクニカルな展開も覗かせつつ、全体的にはアンサンブル志向で、難解なインストパートなどはなく、わりとストレートな作風で初心者でも楽しめる。
楽曲は4〜5分前後で、アルバムとしても全38分と短め。大曲などがないこともあって、ProgMetalとしてはやや物足りなさもあるが。
ドラマティック度・7 テクニカル度・7 楽曲・7 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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SilentLie 「Equilibrium」
イタリアのゴシックメタル、サイレントライの2022年作
2015年にデビューし、2作目。ヘヴィなギターにシンセを重ね、中性的な女性ヴォーカルの歌声で、ダークなメタルサウンドを聴かせる。
ミドルテンポの適度なノリもあって、モダンなゴシックロック風味の感触に、SINHERESYでも活躍する、ダヴィデ・スポルティエッロの優美なシンセアレンジも随所に加わって、メランコリックながらもわりとキャッチーな耳心地で、Giorgia嬢の女性にしては線の太い歌声も印象的だ。
全体的には、メロディアスでゆくのか、シンフォニックか、ダークなのかがどっちつかずという印象もある。
ドラマティック度・7 ゴシック度・7 女性Vo度・7 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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Raving Season 「Amnio」
イタリアのゴシックメタル、レイヴィング・シーズンの2013年作
二人の女性Voを擁する5人編成で、優美なシンセをギターに重ね、キュートな女性ヴォーカルと美しいソプラノに、グロウルヴォイスが絡む、ゆったりと耽美なゴシックメタル。
ドゥーミィでメランコリックな雰囲気は、Swallow The Sunなどにも通じるが、こちらは女性声がメインで、ヘヴィ過ぎず暗黒過ぎず、ゴシックとフューネラルドゥームの中間という聴き心地。
随所に叙情的なギターフレーズや物悲しいチェロの音色も加わったり、ほどよくデジタルなシンセのアレンジも含めて、ほどよくアップデートされたサウンドの中にも、イタリアらしい耽美な妖しさを感じることができる。
楽曲は6〜8分前後で、わりと長めであるが、魅力的なソプラノヴォーカルや、クラシカルなピアノなどの優雅な感触とともに、じっくりと楽しめるゴシック・ドゥームの好作品だ。
ドラマティック度・8 耽美度・8 女性Vo度・8 総合・7.5
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Lucifer 「Lucifer IV」
スウェーデンのヴィンテージ・ハードロック、ルシファーの2021年作
元The Oathの女性シンガー、ヨハナ・サドニスを中心にしたバンドの4作目。歪ませすぎないギターのトーンに、妖しい女性ヴォーカルを乗せ、オルガンを含むヴィンテージなアレンジで、70年代スタイルのサウンドを聴かせる。
いくぶんこもり気味の音質も味になっていて、随所ブルージーなギターフレーズもよい感じで、過去3作以上にオールドなブリティッシュロック感触を強めている。
どこかけだるげなヨハナの歌声もこのスタイルによくマッチしていて、ほどよくキャッチーなナンバーなどでも、マイナーな翳りを感じさせるのがGood。
3〜5分前後の楽曲は、わりとストレートで特筆すべきところはないのだが、飾り過ぎないアレンジもバンドの世界観もしっかりと完成されている。
ドラマティック度・7 ヴィンテージ度・9 女性Vo度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Rosalie Cunningham
イギリスの女性シンガー、ロザリー・カニンガムの2019年作
元PURSONのシンガーのソロで、アナログ感たっぷりのギターにオルガンなどのシンセを重ね、魔女めいた女性ヴォーカルとともに、まるで70年代にトリップしたようなヴィンテージなサイケロックを聴かせる。
楽曲は4〜5分前後で、妖しい浮遊感に包まれつつも、ほどよくキャッチーな感触で、PURSONやBlood Ceremonyなど、この手の女性声ヴィンテージが好きな方には大変楽しめるだろう。
アコースティックギターとピアノをバックに、妖艶な歌声を乗せたナンバーなども味わいがあり、メロトロンが鳴り響き、プログレ的な展開とユルめのサイケ感が合わさった、ラストの13分の大曲も素晴らしい。
ドラマティック度・8 ヴィンテージ度・9 女性Vo度・8 総合・8
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BLUES PILLS 「LADY IN GOLD - LIVE IN PARIS」
スウェーデンのヴィンテージロック、ブルーズ・ピルズのライブ。2017年作
2016年フランスでのステージを2CDに収録。2nd「Lady In Gold」からのナンバーを中心に、1stからのナンバーも演奏。
アナログ感あるギターにオルガンやエレピを重ね、Elin嬢のハスキーな歌声とともに、ヴィンテージなブルース・ハードロックを聴かせる。
ややラウドな音質も生々しさがあって、アルバム以上に躍動感のある演奏は、まるで70年代のライブ音源のようである。
Disc1が40分、Disc2が34分と、収録時間もアナログ的であるが、ブルーレイ付きの3枚組もあり、映像を見たい方はそちらをゲット。
ライブ演奏・8 ヴィンテージ度・9 女性Vo度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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1/19
本年もメタルでよろしくお願いいたします(13)
PHANTOM ELITE 「Blue Blood」
オランダ、ブラジル混成のシンフォニックメタル、ファントム・エライトの2023年作
2017年にデビューし、3作目。硬質なギターに壮麗なアレンジを重ね、コケティッシュな女性ヴォーカルを乗せて、スタイリッシュなシンフォニックメタルを聴かせる。
モダンなヘヴィネスのアグレッシブな激しさから、スロ〜ミドルテンポのシンフォニックな叙情ナンバーなど、楽曲ごとにメリハリのある作風で、EXIT EDENやAVANTASIAにも参加した、ブラジル出身のマリナ嬢のエモーショナルな歌声も光っている。
全体的には、これだという新鮮味はないものの、TEMPERANCEなどのモダンなシンフォニックメタルが好きな方はどうぞ。
シンフォニック度・7 モダン度・8 女性Vo度・8 総合・7.5
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Twilight Aura 「For A Better World」
ブラジルのメロディックメタル、トワイライト・オーラの2022年作
メタリックなツインギターにキュートな女性ヴォーカルの歌声を乗せ、適度に疾走感のあるメロディックメタルを聴かせる。
爽快感のあるサビのメロディは、初期のHELLOWEENなどに通じる部分もあるが、激しすぎず重すぎないスタイルで、わりとライトに楽しめる。
ミドルテンポのキャッチーなナンバーから、しっとりとしたバラードでは、Daisa嬢の伸びやかな歌唱の魅力が光っている。
中盤には男性VoメインのHIBRIA風のナンバーもあるが、美しい女性声を乗せた軽やかなサウンドはなかなか耳心地が良く、ラストは10分を超える大曲で、GAMMA RAYをライトにしたようなクサメロと疾走感でニンマリ。
メロディック度・7 疾走度・7 女性Vo度・8 総合・7.5
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BATTLELORE 「The Return Of The Shadow」
フィンランドのファンタジー・ゴシックメタル、バトルローの2022年作
男女Vo、女性シンセ奏者擁するバンドで、2002年にデビュー、本作は11年ぶりとなる復活の7作目。
壮麗なシンセをツインギターに重ね、男女ヴォーカルの歌声とともに、重厚にしてシンフォニックなファンタジー・バトルメタルを展開する。
迫力あるデスヴォイスと可憐な女性ヴォーカルの掛け合いという点では、LEAVES' EYESなどに通じる部分もあるだろう。
楽曲は4〜5分前後でほどよくシンプルであるが、美しい女性声を活かした優美なパートなど、フックのあるドラマティックな聴き心地だ。
ボーナスCDには「Lost Lands」と題された3曲入りEPを収録。女性声メインのしっとりとした味わいの2曲と、デス声入りの勇壮な1曲が楽しめます。
シンフォニック度・8 壮麗度・8 女性Vo度・7 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Dream Theater 「A View From The Top Of The World」
アメリカのプログレメタル、ドリーム・シアターの2021年作
通算15作目となる本作は、テクニカルなリズムにヘヴィなギターを乗せた導入から爽快なメロディへと展開、ラブリエのヴォーカルとともに、DTらしいドラマティックなProgMetalを聴かせる。
ペトルーシによる流麗なギタープレイ、ルーデスのプログレなキーボード、それを支えるマイアングのベース、手数の増えたマンジーニのドラムと、すべてが高次元で融合し、卓越したインストパートを描いてゆく。
ラブリエのヴォーカルも楽曲のキーに合っていてしっかり耳に心地よいし、複雑なインストからの抜けのあるメロディの流れも、もはやお家芸だ。
ラストは20分を超える大曲で、優美な叙情と華麗な緩急ある流れで、じわじわと盛り上げるドラマ性はさすが。インパクトはさほどないがなんだかんだで力作です。
ドラマティック度・8 テクニカル度・9 ドリムシ度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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JOHN PETRUCCI 「TERMINAL VELOCITY」
Dream Theaterのギリスト、ジョン・ペトルーシの2020年作
ソロとしては2005年以来となる2作目で、ドラムにマイク・ポートノイ、ベースにデイヴ・ラルー(元Dixie Dregs、Planet X)が参加、ポートノイの叩く巧みなドラムに、メロディックで技巧的なギタープレイで、随所にProgMetal的なキメを含んだインストを展開する。
聴きやすいノリのキャッチーなメロディや正統派のリフも含んだペトルーシのプレイは、テクニカルではあるが嫌味がなく、軽やかなポートノイのドラムによくマッチしていて、かつてのDTを想起させるナンバーも良い感じ。
楽曲5〜7分前後と、この手のインストにしては長めであるが、技巧に走り過ぎないロックギターが爽快な味わいで、ドライブのお供などにもうってつけですな。
メロディック度・8 テクニカル度・8 優雅度・9 総合・8
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Tony Macalpine「Death of Roses」
アメリカのテクニカルギタリスト、トニー・マカパインの2017年作
1985年にデビュー、元祖シュレッド系ギタリストの重鎮。本作は12作目のアルバムで、硬質なギターリフと流麗なフレージングを同居させた、マカパインらしいインスト作品。
CABやPLANET Xでも活躍した経験値からの、メタルフュージョン的な軽妙なテクニカル性に、よりソリッドなヘヴィネスも加えた作風で、巧みなギタープレイとヘヴィなメタルリフが同時に味わえる。
自身によるクラシカルなピアノも織り込みつつ、優雅さと激しさを対比させたような、巧みなギターインストを繰り広げる。全7曲30分というのがやや物足りないが、ベテラン健在を感じさせる好作である。
メロディック度・8 テクニカル度・8 優雅度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Joviac 「Here & Now」
フィンランドのプログレメタル、ジョヴィアクの2020年作
2017年デビュー、本作は2作目で、美麗なシンセアレンジを叙情的なギターに重ねた、シンフォニックな感触のイントロ曲から、マイルドなヴォーカルを加えて、ほどよくテクニカルな展開力とともに、キャッチーでスタイリッシュなProgMetalを聴かせる。
エモーショナルなヴォーカルとモダンなヘヴィネスには、若手らしい雰囲気を覗かせて、8分の大曲も優雅なメロディアス性と軽妙なリズムで、緩急あるサウンドを構築する。
全体的に、テクニカル過ぎず、重すぎずで、耳心地のよいサウンドであるが、もう1曲くらいドラマティックな大曲が欲しかったか。全41分の好作品。
ドラマティック度・7 テクニカル度・7 スタイリッシュ度・8 総合・7.5
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THE WRING 「PROJECT CIPHER」
カナダのプログレメタル、ザ・リングの2020年作
2017年にデビューし、2作目。巧みなドラムとうねりのあるベース、流麗なギターによるテクニカルなアンサンブルに、マイルドなヴォーカルを乗せ、ENCHANTにも通じるほどよくキャッチーなProgMetalを聴かせる。
変拍子などの引っ掛かりのある展開はあまりなく、わりとノリのよいストレートなロック感に包まれているので、一般のハードロックファンにも抵抗なく楽しめるだろう。
楽曲は4分前後と比較的シンプルで、ProgMetalとしてはインストパートでのインパクトが弱いか。全7曲で30分というのも、アルバムとしてはやや物足りない。
ドラマティック度・7 テクニカル度・7 楽曲度・7 総合・7.5
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GAUPA 「Myriad」
スウェーデンのヴィンテージロック、ガウパの2022年作
2020年にデビューし2作目で、ヘヴィなツインギターに女性ヴォーカルを乗せた、PURSONなどに通じるアナログ感たっぷりのサイケ・ハードロックを聴かせる。
ブルージーなテイストとドゥームロック感触も含んだ軽すぎない演奏と、紅一点、エンマ嬢の表現豊かな妖しい歌声も魅力的で、そこにサイケデリックな酩酊感も加わった本格派のサウンドだ。
楽曲は3〜5分前後と、わりとストレートなので、これという盛り上がりはないのだが、サイケとストーナー、ハードロックの真ん中へんという感じで、70年代スタイルが好きな方には普通に聴きやすいだろう。
ドラマティック度・7 サイケハー度・8 女性Vo度・7 総合・7.5
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Solstice 「White Horse Hill」
イギリスのドゥームメタル、ソルスティスの2018年作
1994年にデビュー、1998年までに2作を残して消えるも、2013年に復活のEPを発表、本作は通算3作目のアルバム。
ほどよく叙情を含んだツインギターに朗々としたヴォーカルを乗せ、英国らしいウェットな空気に包まれたエピック・ドゥームを聴かせる。
どっしりとしたスロー〜ミドルテンポを主体にしたアナログ感たっぷりのスタイルは、20年前の作品を継承したサウンドで、オールドなリスナーもニンマリ。
13分を超える大曲は、叙情的なツインギターとともに、CANDLEMASSにも通じる重厚でドラマティックなドゥームメタルが味わえる。
ドラマティック度・8 エピックドゥーム度・8 オールドスタイル度・8 総合・8
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DEEP PURPLE 「Infinite」
ブリティッシュ・ハードロックのベテラン、ディープ・パープルの2017年作
前作「NOW What?!」の出来も良かったが、本作はさらに往年のスタイルに回帰したようなサウンドになっている。
鳴り響くオルガンに、スティーブ・モーズの巧みなギター、イアン・ギランの枯れた味わいの歌声で、70年代スタイルのハードロックが味わえる。
ドン・エイリーのオルガンさばきもさすがの説得力で、若手では決して出せない優雅さと、真のヴィンテージなサウンドを聴かせてくれる。
ゆったりとレイドバックしたナンバーも、モーズのブルージーなギターとギランの衰えぬ歌声で、哀愁の美学に包まれる。
まさに大ベテラン健在である。オールドファンも納得の、これぞブリティッシュ・ハードいうべき会心の内容です。
ドラマティック度・8 ヴィンテージ度・8 英国度・9 総合・8
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SAXON 「Unplugged and Strung Up」
ブリティッシュメタルのベテラン、サクソンの2013年作
CD2枚組で、Disc1には既存曲のリミックスやオーケストラアレンジ、アコースティックバージョンなどを全14曲収録。
初期のナンバーが迫力あるリミックスで聴けたり、壮麗なオーケストラを加えたアレンジも、エピックな雰囲気でよくマッチしている。
後半のアコースティックアレンジは、味のあるビフ・バイフォードの歌声とともに、大人の哀愁を感じさせる雰囲気で、じっくりと聴き入れる。
Disc2には、2002年作「Heavy Metal Thunder」を収録。こちらは過去の楽曲をリレコーディングした問答無用の強力な内容で、サクソンのベストアルバムとしても対応。未聴の方には嬉しいセットだろう。
ドラマティック度・8 オケアレンジもGoo度・8 大人のメタル度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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SAXON「St. Georges Sacrifice」
ブリティッシュメタルのベテラン、サクソンのライブ。2014年作
2013年マンチェスターでのライブで、同年作「Sacrifice」からのナンバーに加え、過去作からのベスト的な選曲で、CD2枚、全21曲を収録。
王道のメタル感ただようツインギターにビフ・バイフォードのパワフルな歌声を乗せて、これぞ英国ヘヴィメタルというサウンドを披露。
初期のナンバーでは、ブルージーなギターとともに、往年のブリティッシュハードロックが甦る。
途中にドラムソロを挿入した「Conquistador」や、ドラマティックな「Crusader」、そしてDisc2後半の、「Wheels Of
Steel」、「Strong Arm Of The Law」、「Denim And Leather」という流れはオールドファンは胸熱だろう。ラストは「Princess
Of The Night」で締めくくる。
ライブ演奏・8 セットリスト・8 ブリティッシュメタル度・9 総合・8
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