〜PROGRESSIVE ROCK CD REVIEW 2023 by 緑川 とうせい

★2023年に聴いたプログレ(フォーク/トラッド・その他含む)CDレビュー
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12/8
師走のプログレ(290)

The Flower Kings 「Look At You Now」
スウェーデンのプログレバンド、フラワー・キングスの2023年作
前作から1年ですでに、16作目のアルバムが完成。ここのところ2枚組の作品が続いていたが、本作は久しぶりの1枚組で、
シンセのザック・カミンズが脱退し、本作では、ロイネ・ストルト自身がキーボードを担当、ラレ・ラーソンがゲスト参加している。
またベースのヨナス・レインゴールドが多忙により不参加で、マイケル・ストルトがベースを担当しているのも注目するところ。
サウンドは、前作でも見せたオールド・プログレへの接近が強まっていて、ヴィンテージなシンセとメロウなギターの旋律を重ね、
ハッセ・フレベリの歌声とともに、YESのような優雅でキャッチーなシンフォプログレを展開。4〜5分前後の小曲を主体にした、
大人の優しさに包まれたような聴き心地で、叙情的なインスト小曲や、KAIPAに通じる北欧らしい哀愁のナンバーも味がある。
11分のラストの大曲では、90年代の初期フラキンのような優美なサウンドが楽しめる。派手さはないが円熟の内容です。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 優雅な叙情度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Rick Wakeman 「A Gallery Of Imagination」
イギリスのキーボーディスト、リック・ウェイクマンの2023年作
近年も旺盛な活動を続ける、元YESのシンセ奏者、本作は2020年作に続くアルバムで、幼少期のピアノ講師の教えである、
「楽器を持ったミュージシャンは絵の具を持ったアーティストのようなもの」という言葉にインスピレーションを受けたという作品。
CARAVAN、IT BITESのリー・ポメロイや、女性シンガー、ヘイリー・サンダーソンなどが参加、優雅なピアノの旋律から、
ドラムとギターが加わったロックアンサンブルに、オルガンやムーグを含むキーボードを乗せて、美しい女性ヴォーカルとともに、
優雅でクラシカルなサウンドを聴かせる。随所に初期のソロ作のような雰囲気も覗かせつつ、全体的にはゆったりとした味わいで
優美なピアノをバックに女性シンガーの歌声を乗せた繊細なナンバーから、ラテン風のノリのナンバーなど、カラフルな聴き心地。
キーボー度・8 プログレ度・7 優雅度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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Djabe and Steve Hackett 「Life Is A Journey - The Budapest Live Tapes」
ハンガリーのエスノ・フュージョンバンド、ジャベとスティーブ・ハケットがコラボしたライブ作品。2018年作
2017年のハンガリーのステージをCD+DVDに収録。アコースティックギターにシンセを重ね、トランペットも鳴り響き、
軽やかなドラムとスラップの効いたベースとともに、インストをメインにした優雅なフュージョンロックを聴かせる。
ジャズタッチのエレピからプログレ寄りのオルガンまで、シンセワークもセンス良く、アンサンブルも含めてさすがの演奏力。
ハケットの登場は30分過ぎたあたりから。「Los Endos」、「Firth of Fifth」など、Genesisからのナンバーも披露。
これぞハケット節というメロウなギターの旋律に、トランペットが重なるという、なかなか新鮮な味わいで楽しめる。
全体的には、優雅なフュージョンロックという趣ながら、随所にプログレ感触もあるので、耳心地よく鑑賞できます。
ライブ演奏・8 プログレ度・7 優雅度・9 総合・8 ハケットの過去作のレビューはこちら
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David Longdon 「Door One」
イギリスのミュージシャン、デイヴィッド・ロングドンの2022年作
2021年、事故で急逝したBIG BIG TRAINのシンガーで、2004年以来の2作目のソロ。未完成だった音源が残されていたが、
FISHのステイーヴ・ヴァンシス、KING CRIMSONのジェレミー・ステイシー、テオ・トラヴィスなど多数のゲストを迎えて完成。
シンセとピアノの優美なイントロから、12弦ギターのつまびきにマイルドなヴォーカルを乗せ、ロックなアンサンブルとともに、
英国らしい優雅なサウンドを聴かせる。モダンなリズムには、ほどよいポップさを感じさせつつ、ジェントルな歌声をメインに、
じっくりと味わえる作風で、派手な展開はさほどないが、10分を超える大曲はポストプログレ的な繊細な美意識に包まれる。
全41分で、いくぶん物足りなさはあるが、故ロングドンが遺した音楽への愛情がじわりと感じ取れるような逸品です。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 英国の叙情度・8 総合・7.5
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Magenta 「The White Witch: A Symphonic Trilogy」
イギリスのプログレバンド、マジェンタの2022年作
本作は、ロバート・リード編曲によるオーケストラをフィーチャーした作品で、レス・ペニングスによるナレーションから、
クリス・フライのクラシックギターのつまびきに、クリスティーナ・ブースの美しい歌声と、オーケストレーションを合わせた
しっとりとしたシンフォニックサウンドを描く。ドラムなどは入らないのでロック色は薄いが、優美なシンフォニーとしては
THE ENIDなどにも通じる典雅な雰囲気で楽しめる。22分、15分、11分という構成で、シネマティックなスケール感と、
オーケストラルな美しさに包まれながら、英国的な美学を感じさせるセンスはさすが。クラシカルで優雅な逸品です。
クラシカル度・9 ロック度・1 女性Vo度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Bruce Soord 「All This Will Be Yours」
イギリスのミュージシャン、ブルース・ソードの2019年作
The Pineapple Thiefのシンガーで、ソロとしては2作目となる。アコースティックギターにマイルドなヴォーカルを乗せたイントロから、
ドラムとベースのアンサンブルも加わって、エレピなどのしっとりとしたシンセとともに、翳りを帯びたポストプログレを聴かせる。
優しくエモーショナルな歌声をメインにした作風で、アコースティックギターによるシンプルな弾き語り風のナンバーなど、
全体的にプログレ的な要素は薄めであるが、デジタルなシンセアレンジを含んだナンバーなど、モダンな味わいとともに
物悲しくドリーミィな叙情に浸れる作風だ。ゆったりとした歌もの系ポストプログレが好きな方はいかが。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 繊細度・8 総合・7.5
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Realisea 「Fairly Carefree」
オランダのプログレバンド、リアリシーの2022年作
Silhouetteのブライアン・デ・グレーヴを中心に、2020年にデビューし、2作目となる。美麗なシンセと泣きのギターのイントロから、
すでに叙情派シンフォニックロックが全開、マイルドなヴォーカルに女性声も加わって、ゆったりとした優美なサウンドが広がってゆく。
女性ヴォーカルがメインになったことで、FLAMBOROUGH HEADなどにも通じる感触もあり、ほどよい軽快なノリのナンバーでは、
男女声のプログレハード的にも楽しめる。しっとりとしたパートから、メロウなギターフレーズが現れる爽快感はなかなかよろしく、
15分という大曲では、コケティッシュな女性声と叙情的なギターの旋律で、じわじわと盛り上げる。泣きメロシンフォプログレの好作だ。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 泣きの叙情度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Karfagen 「Sandpipers Symphony」
ウクライナのシンフォニックロック、カルファゲンの2020年作
アントニー・カルギンによるプロジェクトで、本作は2010年作「Solitary Sandpiper Journey」、2011年作「Lost Symphony」に、
未発音源集を合わせたCD3枚組。2010年作は、CAMELばりの叙情的なギターと優美なシンセをメインにした
繊細なシンフォプログレで、インストを主体に、女性ヴォーカルも加わった、たおやかな聴き心地。全75分の力作だ。
2011年作は、組曲方式の流れで、プログレらしいスリリングな展開力に、アコースティックを含む繊細なパートも含んだ
緩急ある構築力でクラシカルなシンフォニックロックを描いてゆく。後半の18分、19分という大曲は特に素晴らしい。
Disc3の未発音源は、ライブやデモなども含んでいるが、アルバムに遜色ない完成度で楽しめる。全70分収録。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 優雅度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Karfagen「Land Of Green And Gold」
ウクライナのシンフォニックロック、カルファゲンの2022年作
アントニー・カルギンによるプロジェクトで、2006年にデビューし、本作はすでに13作目となる。
アコースティックギターとシンセによるイントロから、CAMELにも通じるメロウな泣きのギターとやわらかなシンセで、
ゆったりとしたシンフォプログレを展開する。インストパートをメインに、繊細な美意識とユートピア的な幻想性に包まれた
あくまで優雅なサウンドで、マイルドなヴォーカルも加わって、優しい叙情性とともにゆったりと楽しめる。
アルバム後半では、サックスも鳴り響き、ピアノとともにジャズ寄りのパートも覗かせる。円熟の好作です。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・9 総合・8
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ANTONY KALUGIN PROJECT「BREAKING FREE TOUR LIVE」
ウクライナのシンフォニックロック、AKP/アントニー・カルギン・プロジェクトのライブ作品。2017年作
Karfagen、Sunchildなどで活躍するミュージシャンのデビュー10周年を記念した、2016年ポーランドでのライブをCD+DVDに収録。
Karfagenのメンバーを中心に、それぞれにシンセとギターを兼任する2人の女性シンガーを含む6人編成で、
美麗なツインキーボードに叙情的なギターを重ね、コケティッシュな女性ヴォーカルとともに、Sunchildの大曲を披露。
ケイト・ブッシュを思わせる女性声のキャッチーなナンバーや、Karfagenの楽曲も含めて、CDは80分に及ぶライブ音源が楽しめる。
DVDの方はスタジオライブなどをボーナス収録した、106分のボリュームで、映像にはさほどお金がかかっていないのだが、
キュートな2人の女性シンガーの姿も含めて、視覚的にもバンドのステージが味わえる。ウクライナきっての才人のライブです。
ライブ演奏・8 ライブ映像・7 優美度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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ALBATROS 「URSUS」
スペインのプログレバンド、アルバトロスの2011年作
叙情的なギターの旋律にオルガンやピアノを含むやわらかなシンセと、スペイン語のジェントルなヴォーカルを乗せ、
サイケかがった浮遊感に包まれたサウンドを描く。ポストロック風でもある翳りを帯びたモダンな感触と、
プログレらしいシンセワークに、リズムチェンジを含む知的な展開力が同居した、優雅な聴き心地で、
ときにハード寄りのギターを含みつつ、エモーショナルな歌声とともに哀愁を感じさせる叙情に包まれる。
10分を超える大曲では、サイケなグルーブ感と薄暗い怪しさがほどよくブレンドして、のんびりと楽しめる。
ジャケの雰囲気とは裏腹に、わとキャッチーな聴きやすさと、プログレらしさをちゃんと含んだ好作品です。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 サイケな優雅度・8 総合・7.5
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Forever Twelve 「Home」
アメリカのプログレバンド・フォーエヴァー・トゥウェルブの2017年作
2002年にデビューし、4作目となる。前作までは女性シンガーがいたのだが、本作では男性声の編成になった。
のっけから16分という大曲で、オルガンやメロトロンなどを含むプログレらしいシンセに叙情的なギター、
MARS HOLLOWの中性的なヴォーカルを乗せて、キャッチーで軽快なシンフォプログレを聴かせる。
リズムチェンジなどの展開力と、どこかとぼけた味わいは、ECHOLYNなどにも通じるところもあり、
テクニカルな優雅さとダイナミックな展開に、いくぶん野暮ったいシンフォ感触が同居した好作品。
ドラマティック度・7 プログレ度・8 優雅度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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11/18
イタリアンプログレは良いですね♪(278)

Indaco 「Due Mondi」
イタリアのエスノ・ジャズロック、インダコの2022年作
BANCOの故ロドルフォ・マルテーゼを中心に結成し、1997年にデビュー、本作は17年ぶりとなる5作目。
サックスに女性ハープ奏者を含む6人編成で、ドラムとパーカッションのリズムにシタールやブズーキのつまびきを乗せ、
美しい女性ヴォーカルの歌声とともに、地中海〜中近東的でもある優雅なエスニックサウンドを描く。
随所にドラムとエレキギターも使っているので、わりとロック感触もあり、サックスが鳴り響くジャズロック風味に、
アコーディオンやハープの音色も加わりると、素朴な民族色に包まれる。渋い男性ヴォーカルのナンバーもあるが
基本的には女性声がメインで、しっとりと優美な耳心地。プログレ感は薄めですが、哀愁の民族系エスノロックという好作品。
ロック度・6 エスノ度・8 優雅度・8 総合・7.5
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Nathan 「Uomini Di Sabbia」
イタリアのプログレバンド、ネイサンの2022年作
2016年にデビューし、3作目。ほどよくハードエッジなギターにオルガンなどのシンセ、イタリア語のヴォーカルを乗せて
軽やかなリズムと優雅な叙情が同居したシンフォプログレを聴かせる。随所にメロウなギターの旋律と
優美なシンセワークがサウンドをカラフルに彩り、枯れた味わいのヴォーカルがオールドな雰囲気をかもしだし、
中盤の9分という大曲では、いかにもプログレらしい展開の緩急あるインストパートが味わえる。
後半は7パートに分かれた15分におよぶ組曲で、軽妙な流れからの叙情的な盛り上がりが白眉です。
ドラマティック度・7 プログレ度・8 優雅度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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GRAN TORINO 「THE DELPHIC PROPHECY」
イタリアのプログレバンド、グラン・トリノの2020年作
2011年にデビュー、本作は7年ぶりとなる3作目。オルガンやメロトロンなどのシンセにメロウな叙情ギターを重ね、
ゆったりとしたインストによる大人のシンフォプログレを聴かせる。派手さはないが巧みなドラムを中心とした
優雅なアンサンブルと、シンセの重ねによる幻想的な雰囲気が、なかなか日本人好みのサウンドとなっている。
前作に比べるとテクニカルな部分は減退し、叙情性を強めた作風で、ギターのメロディをじっくりと聴かせる部分など
よりシンフォニックロックに接近した聴き心地。全体的には盛り上がりはさほどないのだが、優雅なインストシンフォです。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 叙情度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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THE ONEIRA 「INJECTION」
イタリアのプログレバンド、オネイラの2020年作
2011年にデビューし、3作目となる。きらびやかなシンセにギターを重ね、マイルドなヴォーカルとともに
適度にハードでモダンな感触を含んだ、キャッチーなプログレハード的なサウンドを描く。
きらきらとしたシンセワークと叙情的なギターで聴かせる、壮麗なインストのナンバーや
優雅な歌メロでじわりと盛り上げるシンフォプログレらしいナンバーなど、なかなか楽しめる。
サウンドの雰囲気は良いのだが、全体的には、メロディのフックや展開がもうひとつ欲しいというところ。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・8 総合・7.5
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CAVALLI COCCHI, LAMZETTI & ROVERSI
イタリアのプログレミュージシャンによるユニット、CCLRの2011年作
元ACQUA FRAGILE、P.F.M、MANGALA VALLISのベルナルド・ランゼッティ、MOONGARDEN、SUBMARINE SILENCEのクリスティアーノ・ロベルシ、
MANGALA VALLISのジジ・カヴッァリ・コッチというトリオ編成で、優美なピアノにアコースティックギター、ジェントルなヴォーカルで
しっとりとした大人のアンビエントロックを聴かせる。やわらかなメロトロンが加わると、繊細なシンフォニックロックの感触も現れ、
英語歌詞によるベルナルド・ランゼッティの情感ある歌声とともに、優しい耳心地に包まれる。曲によっては、GENESISを思わせる部分もあったり、
アコースティックギターやピアノとメロトロンをバックにした、ゆったりと大人の歌ものシンフォとしても楽しめる。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 大人の優雅度・8 総合・7.5
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Cantina Sociale「Balene」
イタリアのプログレバンド、カンティナ・ソチャーレの2001年作/邦題「海神挽歌」
のちにARTIに加入するイアーノ・ニコロが参加、プロデュースはペッペ・クロヴェッラという、アルティ関連バンドのデビュー作が、
ボーナストラックを追加して2022年に日本盤で再発された。クジラの化石にインスピレーションを得たというコンセプト作で、
うっすらとしたシンセにイタリア語によるシアトリカルなヴォーカル、優雅なサックスやヴァイオリンも鳴り響き、
幻想的な浮遊感に包まれたシンフォプログレを聴かせる。オルガンやメロトロンなどを使ったオールドなイタリアンロックの空気と
ほどよくモダンなアレンジが同居し、ときにエキセントリックな展開も含んだ独自のサウンドは、1作目にして完成度が高い。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 イタリア度・8 総合・8
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Cantina Sociale「Cum Lux」
イタリアのプログレバンド、カンティナ・ソチャーレの2009年作
2作目となる本作は、やわらかなシンセにマイルドなヴォーカル、サックスの音色とともに、ゆったりと大人の叙情に包まれる。
2曲目からは、オルガンを含むヴィンテージな味わいに、叙情的なギターの旋律も織り交ぜ、表現力あるイアーノ・ニコロの歌声で、
往年のイタリアンプログレの妖しさを匂わせながら、緩急ある流れのドラマティックなシンフォプログレを聴かせる。
中盤の11分の大曲では優美な導入から、美しいシンセにサックスも鳴り響き、クリムゾン的なスリリングなインストパートを構築、
メロウなギターとピアノによる繊細なパートもよい味わいだ。タイトル曲でもある20分の大曲は、浮遊感のあるリズム展開に
イタリア語のエモーショナルな歌声が映え、濃密な叙情と怪しさが幻想的に交差する。これぞイタリアンロックという傑作だ。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 イタリア度・9 総合・8
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DFA 「Duty Free Area」
イタリアのプログレバンド、DFAの1999年作
1996年にデビュー、本作は2作目で、アルバムタイトルがバンド名にとながっているのかは定かではないが、
軽やかなドラムにやわらかなシンセとメロウなギターを重ね、HAPPY THE MANなどにも通じる
テクニカルなプログレ・ジャズロックを聴かせる。イタリア語によるヴォーカルが加わるナンバーでは、
イタリアンロックとカンタベリーの融合したような優雅味わいで楽しめ、ときにAREAからの影響もいくぶん覗かせる。
10分前後の大曲を主体に、基本はインストをメインにした軽妙なサウンドで、しっかりとプログレらしさもある。
ラストの女性ヴォーカル入りのナンバーは、しっとりとしたシンフォプログレとしても鑑賞できる。
ドラマティック度・7 プログレ度・8 優雅度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Grand Tour 「Heavy on the Beach
イギリスのプログレバンド、グランド・ツアーの2015年作
ABEL GANZ、COMEDY OF ERRORSのメンバーを中心にしたバンドで、荘厳なシンセのイントロから、
叙情的なギターに伸びやかなヴォーカルを乗せて、優美なシンフォニックロックを聴かせる。
ゆったりとしたパートから、ムーグやオルガンなどのプログレらしいシンセが鳴り響く、
緩急あるインストパートをじっくりと構築、スムーズな展開力はさすがキャリアのあるメンバーというところ。
後半は10分超える大曲が3曲続き、優しい歌声にメロトロン音色を含む美しいシンセアレンジを重ねて、
英国らしいウェットな空気感と、ポンプロックルーツのキャッチーな優雅さが合わさった王道のシンフォプログレが楽しめる。
ドラマティック度・8 ポンプ系シンフォ度・8 優雅度・8 総合・8
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King Of Agogik 「From A to A」
ドイツのハードプログレ、キング・オブ・アゴジックの2011年作
TRAUMHAUSのメンバーでもあるミュージシャン、ハンス・ヨルグ・シュミッツによるプロジェクトで
テクニカルなドラムにきらびやかなシンセ、適度にハードなギターを重ね、ミステリアスなシンフォプログレを展開。
2曲目は21分という大曲で、プログレらしいシンセワークを乗せて、オールインストの緩急あるサウンドを聴かせる。
中盤の4〜6分前後の小曲は、メロディのフックや明快な盛り上がりに欠けるので、もう少し引っかかりが欲しい気はするが、
後半の11分の大曲は、軽やかなアンサンブルで、キーボードをメインにした優雅なインストプログレが味わえる。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら

MIGLIORI AMICI & CO. 「BEST OF FRIENDS」
アメリカのプログレユニット、ミグリオリ・アミシ&COの2022年作
From The Fireなどで活躍するドラムのMichael Sciojoと、Paul Di'Anno's Killersなどに参加するギターのRay DeToneによるユニットで、
Mark Clarke (Colosseum)、Adam Holzman(Jane Getter Premonition)、David J Keyes(元Renaissance)らがゲスト参加。
適度にハードなギターにオルガンを含むシンセを重ねたHR的な感触から、優雅なピアノとシンフォニックなシンセワークに
流麗なギターメロディが重なると、インストのシンフォプログレという趣になる。あくまでギターのフレージングが主体であるが、
Ralph Meriglianoによる美しいシンセがサウンドを彩る、3曲目などの優美な叙情はCAMELあたりに通じる味わいである。
全34分というのが、やや物足りないのだが、オールインストであればこれくらいの長さで丁度よいのかもしれない。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優美度・8 総合・7.5
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Phideaux 「Chupacabras」
アメリカのプログレユニット、フィドーの2005年作
マルチミュージシャン、Phideaux Xavierを中心にしたユニットで、うっすらとしたシンセに怪しいスキャットを重ねたイントロから、
軽やかなドラムとメロウなギター、マイルドなヴォーカルを乗せて、スタイリッシュなシンフォプログレを展開する。
20分というタイトル組曲では、アコースティックギターやフルート、チェロなどによるしっとりとしたパートを織り込みつつ、
ゲストの男女ヴォーカルが楽曲を彩りながら、起伏のあるドラマ性をじっくりと描いてゆく。アルバム後半はポストプログレ的なインストから、
ハードなギターを乗せたマスロック感触や、オルガンを使ったオールドな味わいのナンバーなど、楽曲ごとのアレンジセンスが楽しめる。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 スタイリッシュ度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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Algebra Lineal 「Frota la Lampara」
メキシコのプログレバンド、アルジェブラ・リネールの2022年作
マルチプレイヤー、ガブリエル・マルティネスを中心にしたユニットで、オルガンを含むヴィンテージな味わいのシンセで
TRACEPAR LINDHにも通じる、クラシカルな鍵盤プログレを聴かせる。スペイン語によるヘタウマなヴォーカルも入ったり、
スカスカのドラムやヨレ気味のギターなど、演奏や録音面ではいかにもマイナー臭さもあるのだが、
スパニッシュな哀愁を感じさせるパートなど、独自の空気感があって、辺境的なひなびた怪しさが楽しめる方にはよいかも。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 鍵盤度・7 総合・7



11/11
ジャパニーズプログレを聴こう!(265)

Neo Atlantis
日本のプログレバンド、ネオ・アトランティスの2023年作
女性シンセ奏者に、男性ピアニストを含む編成で、未来の地球を舞台に戦いと冒険の物語を描くコンセプトアルバム。
プログレらしいきらびやかなシンセワークに叙情的な旋律を奏でるギターで、インストによるシンフォプログレを構築。
軽やかで巧みなドラムとともに、リズムチェンジを含む流れのある展開力で、桜庭統のような、RPG仕立ての世界観と共に
場面ごとの情景を想起させる作風が楽しめる。オルガンやムーグなどヴィンテージな音色のシンセアレンジも心地よく、
優美なピアノを盛り込んだナンバーや、8分、9分というラストの2曲では、起伏のあるドラマティックな展開力に、
シンフォニックロックとしての叙情性もしっかり織り込んで、優雅な耳心地で締めくくる。完成度高いデビュー作です。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 優雅度・8 総合・8
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AQUANESUSS
日本のプログレバンド、あかねさすの2022年作
高円寺百景などで活躍するドラマー吉田達也に、プロヴィデンスの塚田円、女性ベース、女性Voらで結成。
巧みなドラムとベースによる軽快なアンサンブルに、オルガンやムーグを含むシンセ、流麗なギターと
透明感のある女性ヴォーカルを乗せて、YESを思わせる優雅でキャッチーなプログレを聴かせる。
2曲目は、EL&Pばりに鳴り響くオルガンに吉田の怪しい歌声も加え、いくぶんアヴァンギャルドな展開とともに
スリリングにたたみかける。KBBの壷井氏が参加した、艶やかなヴァイオリン鳴り響くテクニカルなナンバーや、
メロトロンの美しいシンフォ大曲など、楽曲ごとにオールドプログレ好きはニヤリとするアレンジが楽しめる。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 優雅度・8 総合・8
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金属恵比須 「虚無回廊」
日本のプログレバンド、きんぞくえびすの2022年作
小松左京の未完の小説「虚無回廊」をテーマにし5曲をメインに、アニメや特撮などにインスパイアされた楽曲を収録。
メロトロンの美しいオープニング曲から、2曲目からはオルガンを含むシンセにハードなギターを重ね、
昭和感ある女性ヴォーカルで、歌謡プログレ的なサウンドを展開。後藤マスヒロのドラムも随所に暴れつつ、
サバスかクリムゾンかという感触も覗かせながら、コンセプト的な前半を終えると、アルバム後半では、
同年に逝去した作曲家、渡辺宙明が参加した、特撮ヒーロー風のテーマ曲や、不穏なインストの「ゴジラVSキングギドラ」、
ラストは14分という大曲で、静から動へと緩急ある展開力で、スケール感のあるドラマティックなプログレが炸裂する。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 昭和度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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那由他計画 「つみびとの記憶」
日本のプログレバンド、なゆたけいかくの2020年作
プロヴィデンスの塚田円を中心に、ALHAMBRAの世良純子と浪漫座の月本美香の女性ツインヴォーカルが参加、
16分、12分、26分という大曲による構成で、やわらかなオルガンに適度にハードかつ叙情的なギター、
伸びやかな女性ヴォーカルを乗せて、抜けの良いキャッチーなジャパニーズをプログレを聴かせる。
しっとりとしたパートでは、純子さんの歌声とともに昭和的な物語感に包まれるような優しい味わいで、
緩急あるプログレらしい展開があっても難解にならないのがポイント。元金属恵比須のベースの存在感や、
安定したドラムのプレイもしっかりとサウンドを支えている。ラストの26分の大曲「クリスタルドラゴン」は、
かつてのMARGE-LITCHのようなファンタジックな世界観で、ドラマティックな構築力が圧巻です。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 優雅度・8 総合・8
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那由他計画 「さざきおりてひかりあふれ」
日本のプログレバンド、なゆたけいかくの2021年作
前作はプロヴィデンス時代の楽曲をリメイクした作品であったが、2作目となる本作は、書下ろしのオリジナル作品で、
月本美香のキュートな女性ヴォーカルを乗せた、キャッチーな歌謡ロック風のナンバーで幕を開ける。
続く11分の大曲では、プログレらしいキーボードとリズム展開に、世良純子のソプラノヴォーカルを乗せ、
優雅なドラマ性に包まれたシンフォプログレが味わえる。タイトルナンバーでもある17分の大曲は、ゆったりとした
3拍子を基調に、優美なシンセワークとメロウなギターに、二人のヴォーカルが美しく重なる典雅なサウンドから、
YES風の爽快なシンフォプログレへと展開、テクニカルなインストパートも覗かせつつ、しっとりと幕を閉じる。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 優雅度・8 総合・8
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St.Claire 「Claire's Fantasy」
日本のプログレバンド、セントクレアの2021年作
女性Vo、女性Key、女性Vlnを含む編成で、情感豊かな女性ヴォーカルとシンセ、艶やかなヴァイオリンが鳴り響く序曲から、
巧みなベースとドラムのリズムに、きらびやかなシンセワークと、日本語歌詞による伸びやかな女性ヴォーカルを中心に、
ロマンティックなシンフォニックロックを展開する。この優雅な美意識は、かつてのMr.SIRIUSあたりを思い出す感触で、
クラシカルなピアノやヴァイオリンの音色も美しく、随所にメロウなフレーズを奏でるギターもなかなかよい味わいだ。
なにより、シンガーKikoのエモーショナルな表現力は、大木理沙顔負けの実力で、感動的な9分の大曲も素晴らしい。
音質の良さも含めて自主制作とは思えない完成度。今後も期待の日本産クラシカル・シンフォプログレです。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 優雅度・9 総合・8
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Romanesco 「神秘の夜 - ロマネスコ II」
日本のプログレバンド、ロマネスコの2019年作
2014年の1作目以前に活動休止していたが、金属恵比須の宮嶋健一を中心に、ギターにユウタロウ、ドラムに後藤マスヒロを迎えて復活。
2作目となる本作は、のっけから11分の大曲で、オルガンやメロトロンを含むシンセに、PINK FLOYD的なメロウなギターを乗せて
ゆったりとした叙情に包まれ、日本語歌詞による牧歌的なヴォーカルとともに、70年代のアナログ的なアートロックを蘇らせる。
ポップな感触の歌もの小曲も、確信犯的なサイケな浮遊感があって、昭和を感じさせるなつかしい聴き心地で楽しめる。
ラストは、1曲目の続編の大曲で、昭和プログレ的なキャッチーな歌メロと叙情性が合わさった、優しい余韻で幕を閉じる。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 古き良きアートロック度・9 総合・8
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Shusei's Project 「To The New World」
日本のシンセ奏者、塚本周成のプロジェクト。2019年作
OUTER LIMITS、VIENNAのシンセ奏者で、2017年に続く2作目。前作に続き、ギターには荒牧隆、ベースには永井敏巳、
ドラムには菅沼孝三、ヴァイオリンに藤本美樹、ヴォーカルは、相馬優 雅絢恵という女性声優が前作から続き参加。
ほどよくハードなギターにプログレらしいシンセアレンジ、コケティッシュな女性ヴォーカルの歌声にヴァイオリンも鳴り響く、
クリムゾン風のスリリングなナンバーから、ゆるやかなヴァイオリンとピアノの旋律に美しい女性ヴォーカルを乗せた、
しっとりと優雅な歌ものナンバーも耳心地よく、かつてのアウター・リミッツ的でもあるロマンの香りに包まれる。
オペラティックなコーラスも重なる壮麗な雰囲気やコンセプト的な流れで、前作に以上にドラマティックなシンフォプログレが楽しめる。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 優雅度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Electric Asturias  「Fractals」
日本のプログレバンド、エレクトリック・アストゥーリアスの2011年作
Acoustic Asturiasと対をなす、いわゆるエレアコ名義の1作目。軽やかなリズムにヴァイオリンが鳴り響く、
優雅でテクニカルなインストサウンド。ピアノやオルガンを含むシンセに、叙情的なギターの旋律も覗かせて、
ぼとよくアナログなロック感のあるアンサンブルで、ときおりヴィンテージなプログレ感触が見え隠れする。
ヴァイオリンが活躍するインストという点で、KBBなどにも通じるスタイルであるが、ジャズロック風のパートから、
シンフォニックに盛り上げるなど、自在のアレンジが見事。後半は3パートに分かれた16分超の組曲になっていて、
ヨーロピアンなクラシカル性から軽妙なプログレフュージョン風味、シンフォプログレと移り変わる展開力が白眉である。
ドラマティック度・7 プログレ度・8 優雅度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Electric Asturias  「Elementals」
日本のプログレバンド、エレクトリック・アストゥーリアスの2014年作
エレアス2作目となる本作も、軽やかなアンサンブルに優美なシンセとヴァイオリンが重なる、優雅なインストを展開。
クラシカルなピアノやメロウなギタープレイも織り込みながら、大山曜の存在感あるベースがサウンドの軸を支え、
前作以上に一体感のある躍動的な演奏が楽しめる。オルガンなどのやわらかなシンセと凛としたヴァイオリンのコントラストで、
気品ある空気感を生み出すところは、実力あるメンバーの素養であろう。後半はタイトルである四大精霊をテーマにした組曲で、
涼やかな味わいの「水」、カラフルなシンフォプログレの「火」、ゆるやかな叙情の「風」、テクニカルかつ優美なアンサンブルの「木」と、
オールインストながらも幻想的なイメージを描き出す、日本のバンドらしい繊細な構築美が冴える力作に仕上がっている。
ドラマティック度・7 プログレ度・8 優雅度・9 総合・8
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ASTURIAS 「Missing Piece Of My Life/欠落」
日本のプログレバンド、アストゥーリアスの2015年作
2008年作「樹霊」に続く、7年ぶりの作品で、エレクトロ色含むシンセの重ねにアコースティックを含むギター、
やわらかなクラリネットやリコーダーなども加わって、MIKE OLDFIELDにも通じる牧歌的な民族色を融合させた
優雅なプログレサウンドを描く。ヴァイオリンやチェロが艶かに鳴り響き、クラシカルなピアノの旋律とともに、
シンフォニーロック的なしっとりとした味わいに包まれつつ、流れのある楽曲構造でアルバムを構築。
エレアスのようなスリリングな所はないが、全体的にもゆったりと鑑賞できる好作品です。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・9 総合・8
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ASTURIAS 「Across The Ridge To Heaven/天翔」
日本のプログレバンド、アストゥーリアスの2018年作
「欠落」「極光」に続く3部作の完結編。12弦を含むアコースティックギターのつまびきから、うっすらとしたシンセに
エレキギターとヴァイオリンも重ね、繊細なフルートの音色とともに、典雅なシンフォニックロックを聴かせる。
今作では全体を2パートに分けた構成で、エレアスのメンバーも参加し、プログレらしいリズムチェンジなど
緩急あるドラマティックな展開とともに、優雅な叙情美に包まれたスケール感あるサウンドが描かれる。
牧歌的なマンドリンのつまびきや、リコーダー、クラリネットなどの音色がサウンドに優しい彩りを添えつつ、
後半の組曲では、繊細な美意識からダイナミックなアンサンブルで盛り上げる。この路線の集大成という極上の作品だ。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 優雅度・9 総合・8.5
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MIZUKI Da Fantasia 「Rainbow Chasers」
日本の女性アーティスト、ミズキ・ダ・ファンタジーアの2018年作
2017年にデビュー、本作は2作目で、前作からの流れの、マキ&オズ的な昭和歌謡ロックの雰囲気に、
優美なピアノやストリングスアレンジといった、クラシカルなシンフォニック性を付加したサウンドを描く。
日本語歌詞にによる情感的なミズキの歌声、アンナ・ハーディによるしっとりと優雅なピアノとシンセで、
プログレというよりは、壮麗な歌謡ポップという感じもあるのだが、クリムゾンばりのメロトロンが鳴り響く、
ヴィンテージな音色や、典雅なチェンバロの音色など、多彩なシンセアレンジも光っている。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 女性Vo度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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CHARISMA 「邂逅」
日本のプログレバンド、カリスマの2015年作
70年代に活動していたバンドの復活作で、DADAKENNEDYの泉陸奥彦を中心に、ドラムに菅沼孝三が参加。
流麗でメロウなギターに優美なシンセを重ね、故菅沼の巧みなドラムを軸にした軽妙なアンサンブルで、
シンフォニック・プログレ・ジャズロックというべき繊細で優雅な叙情美に包まれたサウンドを聴かせる。
テクニカルでありつつも、日本的なやわらかな美意識を描くところは、KENSOなどに通じる部分もあり、
ピアノやオルガン、メロトロンの音色を含むシンセに、泉の奏でるギターも随所に泣きの旋律で楽曲を盛り上げる。
オールインストながらもスリリングな流れと演奏の妙で、空間性のあるスタイリッシュなシンフォプログレとしても楽しめる。
ドラマティック度・7 プログレ度・8 巧みと叙情度・8 総合・8
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MILLPLAT
日本のプログレバンド、ミルプラットの1994年作
元ノヴェラの五十嵐久勝、元ケネディの泉陸奥彦、元ソフィアの細川博史らが集って、自主制作で作られた作品。
エフェクトのかかったドラムに美麗なシンセワーク、奔放に奏でられるギターを重ね、デジタルなモダンさと
シンフォニックな感触が同居したサウンドを聴かせる。雰囲気としてはわりとケネディに近いのだが、
そこに五十嵐のハイトーンヴォイスが乗ると、ドラマティックなプログレハード的な味わいになる。
KENNEDY!「Twinkling NASA」のヴォーカルバージョンや、ソフィアをリメイクした壮麗なインストもファンには嬉しい。
自主制作のため、音質面でのダイナミックさに欠けるが、メンバーのセンスが融合した隠れた逸品といえる。
ドラマティック度・7 プログレ度・8 優雅度・8 総合・8
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10/27
プログレの秋深まる(250)

DAMANEK 「MAKING SHORE」
イギリス、ドイツ、オーストラリアのメンバーによるプログレユニット、ダマネクの2023年作
THE TANGENTのガイ・マニングを中心に、SEVEN STEPS TO THE GREEN DOOR、SOURTHERN EMPIREのメンバーによるバンド、
3作目となる本作は3人編成となり、優美なシンセに軽やかにサックスが鳴り響き、マイルドなヴォーカルを乗せた、
ASIADBAなどに通じる優雅でキャッチーなプログレハードを聴かせる。カラフルなメロディアス性ともに、
英国シンフォプログレらしい叙情性と、ダイナミックな構築力を描くのはさすがに実力派のメンバーたちである。
アコースティックを含むメロウなギターの旋律に、味わいのあるガイ・マニングの歌声もよくマッチしていて、
中盤のJETHRO TULL風ナンバーなども良い感じ。後半は5パートに分かれた、31分におよぶ圧巻のシンフォプログレ組曲。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 優雅度・9 総合・8.5 過去作のレビューはこちら
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The Mighty RA 「All Secrets Known」
イギリスのプログレバンド、マイティ・ラーの2022年作
The Fyreworksのアンディ・エドワーズを中心にしたバンドで、美麗なシンセのイントロから、ダンディなヴォーカルと
ほどよくハードなギター、ピアノを含む優雅なシンセとともに、英国らしい正統派のシンフォプログレを聴かせる。
キャッチーなコーラスハーモニーなどは、IT BITES的でもあり、随所にメロディックなギターを奏でつつ、
TENなどにも通じるメロハー風味の爽快なノリとともにわりとストレートに楽しめる。6〜9分前後の楽曲を主体に、
曲によってはスペイシーな神秘性も覗かせつつ、じっくりと大人の叙情のプログレハードを描いてゆく。
ラストは12分の大曲で、シネマティックなセリフなどを挿入しながら、じわじわと盛り上がりそうでもうちょっと。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 大人の叙情度・8 総合・7.5
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BAND OF RAIN 「PETRICHOR」
イギリスのポストプログレ、バンド・オブ・レインの2020年作
ギターのクリス・ギルを中心に、元RENAISSANCEのジョン・キャンプ、ENGLANDのロバート・ウェッブ、Fellowshipのマシュー・コリーらが参加。
うっすらとしたシンセに叙情的なギター、マイルドなヴォーカルで、翳りを帯びた叙情に包まれた英国らしいサウンドを描く
スリリングな部分はほとんどなく、アコースティックギターを含んだ、いくぶんフォーキーな牧歌性も感じさせ、
エモーショナルなヴォーカルの歌声とともに、ゆったりとした繊細な聴き心地である。ラストの12分の大曲も盛り上がりそうで盛り上げない。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 叙情度・8 総合・7
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NICKLAS BARKER 「EPEKTASIS」
スウェーデンのミュージシャン、ニクラス・バーカーの2022年作
ANEKDOTENのギター&メロトロン奏者で、本作はストックホルムの山村にて、メロトロンとアープシンセで制作したという作品。
うっすらと鳴り響くメロトロン、アナログシンセの重ねで、北欧らしい涼やかな幽玄の空気を描き出すアンビエントサウンド。
フルートのような音も含めやわらかなアナログシンセをメインにしたサウンドは、Klaus Schulzeなどにも通じるところがあるが、
やはり北欧というお国柄か、ほんのりと土着的な優しさがあって、随所にパーカッションによるトライバルな感触も味になっている。
これという展開はないので、アンビエントなBGMとして楽しむものだが、物悲しいメロトロンに浸れる方はウットリとなるはず。
シンセ度・8 ロック度・1 幻想度・8 総合・7.5
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PROFESSOR TIP TOP 「LANES OF TIME」
ノルウェーのプログレバンド、プロフェッサー・ティプ・トップの2022年作
2012年にデビュー、本作は6作目となる。ゆったりとメロウなギターにシンセを重ね、けだるげな女性ヴォーカルで、
浮遊感ある牧歌的なサイケプログレを聴かせる。オルガン、メロトロン、ミニムーグというヴィンテージなシンセが
優しい耳心地でサウンドを包み込み、アナログ感たっぷりのアンサンブルに、叙情的なギターフレーズが響いてゆく。
今作は2〜5分の小曲が主体なので、わりとあっさりとした印象ではあるが、PINK FLOYDルーツの酩酊感は心地よく、
女性スキャットを乗せた幻想的なナンバーなども味わいがある。派手な展開などはないが、ゆったりと浸れる好作品です。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 幻想サイケ度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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BREIDABLIK 「OMICRON」
ノルウェーのエレクトロ・アンビエント、ブレイダブリクの2020年作
シンセ奏者、Morten Birkeland Nielsenによるユニットで、2017年にデビュー、本作は4作目となる。
JordsjoのHakon Oftungが参加、それぞれ20分を超える2パートに分かれたタイトル曲は、
アコースティックギターのつまびきにうっすらとしたシンセを重ね、エレクトロなシーケンサー風味に
土着的なエレキギターの旋律も加えた、北欧らしい涼やかな牧歌性を感じさせるインストサウンド。
きらきらとしたシンセの重ねと、スペイシーな空間性に浸りつつ、ときにフルートも鳴り響く優美な味わいで、
Tangerine DreamKlaus Schulzeのような幻想的なシンセミュージックが描かれてゆく。
シンセ度・8 ロック度・1 幻想度・8 総合・7.5
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BREIDABLIK 「ALDUORKA」
ノルウェーのエレクトロ・アンビエント、ブレイダブリクの2022年作
フェロー諸島をテーマにした作品のようで、デジタルなシンセの重ねをメインに、20分を超える大曲から始まる。
荒涼とした空気を感じさせるシンセミュージックは、やはりKlaus SchulzeERIK WOLLOなどを想起させるが、
メロウなギターフレーズが重なると、GANDALFのような自然派シンフォニックロック的な味わいにもなる。
2曲目は、ドラムのリズムが入り、とたんにロック感触が強まって、GONGのようなスペイシーなサイケロック風に。
やわらかなフルートの音色がうっすらとしたシンセにかぶさる、しっとりと幻想的なナンバーも耳心地よく、
全作に比べてネイチャーな叙情性を感じさせつつ、エレクトロとプログレ要素のバランスのよい作品に仕上がっている。
シンセ度・8 ロック度・5 幻想度・8 総合・8
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TUSMORKE 「INTETNETT」
ノルウェーのプログレバンド、タスメルケの2022年作
2012年にデビュー、10作目の本作は、前々作に続く、児童用ミュージカルとして制作された3作目の作品で、
2〜3分前後の小曲を主体に、スペイシーなシンセに母国語のジェントルなヴォーカル、児童コーラスも加えて、
物語的なサントラ風味のサウンドを聴かせる。ほどよくキャッチーなロック感触も覗かせつつも、
フルートが鳴り響き、どこか土着的で妖しい幻想性に包まれるところは、いかにもこのバンドらしい。
ときに児童音楽風のメロディが現れてほのぼのとしながらも、ヴィンテージなロック感は常にあるので
ユルめの北欧サイケプログレとしても楽しめる。全21曲57分という、ボリュームで聴きごたえありです。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 幻想サイケ度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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SONISK BLODBAD 「SHORES OF OBLIVION」
ノルウェーのプログレ・サイケロック、ソニスク・ブロドバッドの2022年作
2012年にデビューし、4作目となる。いかにもサイケでエレクトロなシンセのイントロから始まり、
北欧版FAUSTというような、SEやエフェクトを含むサウンドコラージュ的な世界観が広がってゆく。
スペイシーなシンセにヴァイオリンが鳴り響く、幻想的な叙情も覗かせて、夢見心地のサウンドは、
TANGERINE DREAMなどを思わせるところもあり、女性スキャットも加わった優雅な味わいも良いですね。
後半には、11分のアンビエントなサウンドから、ラストは23分の大曲で、のんびり夢見シンセに包まれる。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 サイケで夢見度・8 総合・7.5
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Opus Est 「Opus II」
スウェーデンのプログレバンド、オパス・エストの2006年作
1983年に1作を残して消えたバンドの未発音源集で、前半は、バンド初期の1979年に録音された組曲に、
新たなマテリアルを追加して完成させた、4パートに分かれた43分という大曲で、きらびやかなシンセにギターを重ね、
北欧らしい涼やかな叙情に包まれた、DICEなどにも通じる優雅でキャッチーなシンフォニックロックを聴かせる。
ややヘタウマなヴォーカルが、ローカルな味わいをかもしだしつつ、透明感のあるシンセや随所にメロウなギターが
優美な耳心地になっていて、オールドスタイルのシンフォプログレとしては正規アルバム以上に楽しめる。
後半は、1983〜84年の音源で、いくぶんスタイリッシュなYESルーツのポンプロック寄りサウンドになっている。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 優雅度・8 総合・7.5
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PRIME MOVER 「IMPERFEKT」
スウェーデンのプログレバンド、プライム・ムーヴァーの2007年作
2001年にデビューし、3作目となる。叙情的なギターに母国語によるジェントルなヴォーカルを乗せ
シンセに女性コーラスも加えた、キャッチーで牧歌的なプログレハードサウンドを聴かせる。
軽快なアンサンブルといくぶんコミカルな優雅さに、エレピなどの美しいシンセアレンジで、
ときにジャズロック的な感触も含みつつ、北欧らしい涼やかなシンフォニックロックとしても楽しめる。
スウェーデン語の響きが土着的な味わいになっていて、ラストの10分の大曲も牧歌的な優雅さに包まれる。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・8 総合・7.5

MAHOGANY FROG 「FAUST」
カナダのプログレバンド、マホガニー・フロッグの2022年作
2001年にデビュー、本作は8作目となる。1926年ドイツの無声映画「ファウスト」をテーマにした作品で、
厳かな鐘の音から幕を開け、轟音のギターがノイジーに鳴り響き、アナログ感のあるドゥームメタル風の迫力から、
一転してシンセをメインにしたエレクトロなサウンドへつながる。物悲しいシンセにギターが重なる優美な叙情性など、
インストをメインにしながら、次々に表情を変えてゆく楽曲の流れは見事で、舞台サントラ的な雰囲気に包まれる。
ダークな空間性という点では、ART ZOYDを思わせるところもあるが、こちらは巧みなドラムのプレイも含めて、
プログレとしての緩急とフックが随所にあり、場面ごとのドラマ性を描いている。サイレント映画を想起させる力作だ。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 シアトリカル度・8 総合・8
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RED SAND 「GENTRY」
カナダのプログレバンド、レッド・サンドの2005年作
2004年にデビューし、2作目。メロトロンなどの優美なシンセワークにアコースティックを含むギター
優し気なヴォーカルを乗せ、ゆったりとした叙情に包まれた王道のシンフォニックロックを聴かせる。
18分、19分という2つの大曲をメインに、ときにPENDRAGONばりの泣きのギターメロディや、
初期MARILLIONを思わせるシアトリカルなヴォーカルなど、90年代ポンプルーツのシンフォプログレを堪能できる。
ドラマティック度・8 ポンプ系シンフォ度・9 叙情度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら

HADDAD 「EROS & THANATOS」
ブラジルのプログレバンド、ハダッドの2009年作
1993年にデビュー、7作目となる本作は、2枚組の大作で、クラシカルなピアノと優美なシンセワークに
ポルトガル語によるジェントルなヴォーカルを乗せた、南米らしいやわらかな叙情美のシンフォニックロック。
繊細なフルートや艶やかなヴァイオリンの音色に、メロウなギターの旋律が重なりつつ、ときに緩急ある展開力で
シアトリカルなドラマ性を描いてゆく。クラシカルなシンフォプログレとしては、QUATERNA REQUIEMなどに通じる感じもある。
Disc2ラストは12分の大曲で、物語的な語りやSEを含みつつ、じわじわとあくまで優雅に盛り上げる。
シンフォニック度・8 プログレ度・7 優美度・9 総合・8
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10/1
プログレの秋!(236)

Heretic 「1984-88」
日本のプログレッシヴロックユニット、ヘレティックの1994年/2023年作
京都出身の河原博文によるプロジェクトで、1984年から現在までの作品がリミックスされ、Cuneiformレーベルより全作がデジタル配信された。
本作は1984〜88年までの活動期から、9曲を収録している。OSIRISとして活動していた初期のナンバーは、デジタルなドラムのリズムに、
叙情的なギターの旋律と優美なシンセを重ねたシンフォニックな味わいで、アナログシンセのやわらかな音色が心地よく響き渡る。
エフェクトをかけたギターをメインにした、21分の大曲は、怪しいヴォイスにパーカッション、ヴァイオリンも鳴り響く、たとえればFaustのような
ダークでアヴァンギャルドなサウンドコラージュ的な世界観。スペイシーなシンセの重ねによるサントラ的なイメージのナンバーや、
Anonymousのメンバーが参加した牧歌的な歌もの曲、Ain Sophのギター、山本要三が手掛けた軽妙なナンバーなども興味深い。
Golden Avant-Garde、Lacrymosa、Noaなどのメンバーが参加したセッション音源も非常にスリリングである。
優雅度・8 アヴァンギャル度・7 自由度・8 総合・7.5
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Heretic 「弥生幻想」
日本のプログレッシヴロックユニット、ヘレティックの1996年/2023年作
以前は、ベル・アンティークからCD化されていた作品で、36分の大曲を収録。エレクトロなシンセサウンドの重ねから
シーケンサー的なリズムとパーカッションに縦笛の音色が響き、古代の日本を感じさせる幻想的な空気に包まれる。
きらびやかなシンセワークによるシンフォニックロック的な優美さと、Tangerine Dreamのような夢見心地の味わいで
スペイシーなトリップ感とともにゆったりと鑑賞できる。後半は、素朴なブズーキのつまびきが郷愁の情緒を描きながら、ゆるやかに幕を閉じる。
幻想度・8 エレクトロ度・8 ロック度・3 総合・7.5
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Heretic 「Requiem」
日本のプログレッシヴロック・ユニット、ヘレティックの2010年作
1980〜99年までの作品からの楽曲を集めた、アンソロジー的な作品で、ボーナスとして80年代初頭の、
OSIRISAstral Tempel時期の音源が14曲追加されている。Hiro Kawahara名義の1999年スタジオライブの19分の大曲は
たゆたうようなシンセに叙情的なギターが重なり、ノイジーな音響サウンドへと収束してゆく。
4分にエディットされた「Yayoi Dream」や、Hereticとしての1作目である「Interface 1984」からの大曲も収録されていて、
とちらもシンフォニックな美しさを含んだ優雅な味わいなので、フルバージョンを聴きたい方は各アルバムへ手を伸ばすのもいいだろう。
1980〜82年のボーナス音源は、エレクトロなナンバーから、バンド編成でのライブ音源では、インプロを含む生々しい演奏が楽しめ、
後半に収録のOSIRIS時代のナンバーは、小曲主体ながら優美なシンセをメインした耳心地の良さが光っている。
幻想度・8 エレクトロ度・8 ロック度・5 総合・7.5
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This Winter Machine 「Kaites」
イギリスのプログレバンド、ディス・ウインター・マシンの2021年作
2016年にデビューし、3作目となる。優美なピアノとアコースティックギターによるイントロから、オルガンを含むシンセに
ほどよくハードなギターとマイルドなヴォーカルを乗せて、英国らしい翳りを帯びたシンフォニックロックを聴かせる。
叙情的な泣きのギターにうっすらとシンセが重なるところは、MARILLONなどにも通じる雰囲気もあり、
派手な展開などはないものの、ゆったりと耳心地よく楽しめる。2分前後のインストの小曲もアクセントになっていて、
ヴァイオリンも鳴り響く優雅なナンバーから、ラストのタイトル曲は、これぞ英国のシンフォプログレという味わいだ。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 英国度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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Doubt 「Never Pet A Burning Dog」
イギリスのジャズロック、ダウトの2010年作
Hatfield And The Northのアレックス・マグワイアが参加するバンドで、同バンドのリチャード・シンクレアがゲスト参加。
やわらかなエレピに軽やかなドラムのリズムとほどよくフリーキーなギターが鳴り響き、カンタベリー的な優雅さを覗かせつつ
アヴァンギャルドなジャズロックが広がってゆく。インプロを含んだスタジオライブのようなスリリングなアンサンブルで、
70年代初頭のような自由度の高い演奏は、かつてのSOFT MACHINEにも通じるだろう。さほど愛想はよくないので、
初心者向けではないのだが、メロトロンを使った叙情性も覗かせるなど、玄人好みのプログレ・ジャズロックが味わえる。
ジャズロ度・8 カンタベ度・7 インプロ度・8 総合・7.5
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YOCHK'O SEFFER Neffesh-Music「SUGARZO TEREP」
フランスのミュージシャン、ヨシコ・セファーの2019年作
MAGMA脱退後、ZAOをはじめ、ソロでも活躍するピアノ&サックス奏者で、ネフェッシュ・ミュージックの名義としては11年ぶりとなる作品。
クラシカルなピアノにサックス、ヴァイオリンやチェロが鳴り響き、軽妙なドラムとともに、ジャズとチェンバーの境をゆくような
スリリングなアンサンブルを構築。ヴァイオリンの音色が緊張感をあおり、軽やかなターロガトー(クラリネット風の楽器)が乱舞するように重なる。
10分前後の大曲を、緩急自在の流れとダイナミックな演奏でたたみかけるところはさすがという他なく、単なる室内楽でもジャズでも
この張り詰めた緊迫感は描けないだろう。クラシックの素養に裏打ちされた、ピアノとヴァイオリンをメインにした優雅なパートも素晴らしい。
即興的な不穏さと構築の美学を同時進行で突き詰めたというべき、高度な音楽性にゾクゾクする。素晴らしい傑作をありがとう。
クラシカル度・9 ジャズ度・7 優雅度・9 総合・8.5 過去作のレビューはこちら
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ZOIKHEM 「Vox Clamantis In Deserto」
フランスのチェンバーロック、ゾイケムの1997年作
4パートに分かれた、38分という組曲をメインにした作品で、優雅なピアノの旋律にフリーキーなドラムのリズム、
クラリネットの音色に、朗々としたバリトンヴォーカルで、UNIVERS ZEROを思わせるスリリングな空間性を描き出す。
怪しい言語によるヴォーカルとジャズロック的な感触は、やはり同郷の先人であるMAGMAをルーツにしていて、
アッパーなノリとダウナーな翳りが交差するような空気感は、上記2バンドが好きならけっこう楽しめるだろう。
フォロワー以上の迫力には欠けるのだが、クラリネットが奔放に鳴り響くインプロ性も含めて、ユルめに鑑賞できます。
ユニヴェル度・8 マグマ度・7 優雅度・7 総合・7.5
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WEIDORJE
フランスのジャズロック、ヴィドルジェの1978年作
MAGMAのベース、ベルナール・パガノッティを中心に、マグマ関連メンバーが参加したアルバムで、
うねりのあるベースとドラムに、奔放なギターを重ねた、インプロ的なフリーキーさを含むサウンドで、
サックスが鳴り響きコバイヤ風のヴォーカルが加わると、まさにマグマ系のジャズロックという聴き心地。
10分を超える大曲を主体に、優美なエレピやシンセを含むわりと優雅な感触で、ブイブイしたベースとともに
じわじわと高揚してゆく演奏は、まさに「MAGMA別働体」と言ってもよい完成度だろう。
優雅度・8 怪しさ度・7 マグマ度・9 総合・8
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Michael Riessler & Singer Pur With Vincent Courtois 「Ahi Vita」
ドイツのクラリネット奏者、ミハエル・リースラーに、ヴォーカルアンサンブルのシンガー・パー、
フランスのチェロ奏者、ヴィンセント・コートイスによるコラボ作品。2004年作
ゆったりとしたチェロの音色に、男女混声コーラスが讃美歌のように厳かに響き渡る、静謐感あるサウンド。
バックの演奏はチェロとクラリネットのミニマムの音数なので、ジャズというよりはチェンバー系にも近い感触で、
スリリングな部分はほとんどなく、グレゴリアンチャント系の宗教音楽と室内楽を合わせたような聴き心地である。
ロック度・0 クラシカル度・7 チャント度・8 総合・7 過去作のレビューはこちら


Mc Hacek 「Featuring Ourselves」
オーストリアのジャズロック、マク・ヘイサックの1999年作
アラン・ホールズワースとフランク・ザッパから影響を受けたという、アレックス・マカチェク率いるバンドで、
軽やかなリズムに優雅なヴィヴラフォンの響き、巧みでメロウなギタープレイを乗せたインストサウンドで、
随所にフリーキーなプレイも含んだ、軽妙なグルーヴのフュージョン/ジャズロックを聴かせる。
繊細なピアノを乗せたジャズ寄りのナンバーなど、ロック感触はわりと控えめであるものの、
マカチェクのギタープレイはもちろん、ドラムやベースも抜群で、玄人好みの技巧が味わえる逸品です。
ジャズ度・8 テクニカル度・9 優雅度・9 総合・8
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Daniel Denis 「Les Eaux Troubles」
ベルギーのミュージシャン、ダニエル・デニスの1993年作
UNIVERS ZEROのドラマーで、ソロとしては2作目となる。手数の多いフリーキーなドラムにエフェクトのかかったギターを重ね、
クラシカルなピアノやシンセも加わり、ミステリアスなインストサウンドを描く。うねりのあるベースとテクニカルなベースを軸に、
曲によっては、サックス、チェロ、クラリネット、マリンバなども加えて、ほどよくテクニカルとアンサンブルと、ダーク過ぎない
優雅な味わいもあるので、ユニヴァル・ゼロなどのファンはもちろん、チェンバーロックの初心者でもわりと楽しめるだろう。
ラスト近くの8分のナンバーは、ヴァイオリンやクラリネットが美しい、軽妙なクラシカル・チェンバーサウンドが白眉です。
ロック度・6 チェンバー度・8 優雅度・8 総合・8
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FINNEGANS WAKE 「YELLOW」
ベルギーのチェンバーロック、フィネガンンズ・ウェイクの1993年作
うっすらとしたシンセのイントロから、わりとハードなギターにダンディなヴォーカルを乗せ、艶やかなヴァイオリンの音色とともに
ヨーロピアンな翳りを帯びた優雅なプログレサウンドを展開。ドラムとギターにはロック感触が強めなので、さほど難解さはなく、
曲によってはオルガンを使ったプログレ感触と、コロコロとした軽妙なアヴァンギャルド性もあって、ほどよくスリリングな聴き心地。
中盤の11分の大曲は、フリーキーな奔放さとキャッチーなロック感が同居した、けっこう捉えどころのない作風で、
何故かブルージーなラスト曲まで、このデビュー作の時点では、またまだ方向性を模索しているような印象もある。
ロック度・7 チェンバー度・7 優雅度・7 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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Uz Jsme Doma 「Rybi Tuk」
チェコのアヴァンロック、ウジュ・ズマイ・ドマの2003年
1990年にデビューし、6作目となる。変則リズムを含むロックのノリにハード寄りのギターと母国語のヴォーカルを乗せ、
おちゃらけたユーモアと哀愁が交差する、アヴァンギャルドな辺境ロックを聴かせる。シンセを使っていないので
プログレ感触はさほどないものの、ゲストによるサックス、ホルン、トランペット、ヴァイオリンやバスーンなどが、
楽曲にカラフルな彩りを加え、ときに朗々とした歌声とともに、MAGMAのような怪しいアッパーな高揚感も覗かせる。
楽曲は3〜5分前後で、濃密な味わいながらも、ほどよくシンプルにまとまっている。もっと突き抜けてもよいかも。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 アヴァンギャル度・8 総合・7.5
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9/15
いよいよNOVELAでライブ!(223)

A Tribute To Pink Floyd 「Still Wish You Were Here」2021年作
ピンク・フロイドの名作「炎」を多数のゲストが集って再現した作品で、ジェイムス・ラブリエ、ジェフテイト、トッド・ラングレン、
ロッド・アージェント、リック・ウェイクマン、スティーブ・ヒレッジ、ジョー・サトリアーニ、スティーヴ・ハケット、スティーヴ・スティーヴンス、
ビリー・シーン、トニー・レヴィン、パトリック・モラーツ、メル・コリンズ、エドガー・フローゼ、イアン・ペイス、という超豪華メンバーが集結。
1曲め「狂ったダイアモンド」からして、ハケットのギターにビリー・シーンのベース、イアン・ペイスのドラムにジェフ・ダウンズのシンセ、
メル・コリンズのサックスが鳴り響く、夢のメンバーによる演奏が素晴らしい。リック・エメットが歌う「あなたがここにいてほしい」も良い感じで、
ジョー・サトリアーニの哀愁あるギタープレイも見事。ラストはロッド・エージェンの渋い歌声と、スティーヴ・ヒレッジのギターが哀愁を漂わせる。
カヴァー度・8 フロイ度・8 豪華ゲスト度・9 総合・8 オムニバスアルバム特集はこちら
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EMERSON LAKE & PALMER 「Live at Nassau Coliseum '78」
エマーソン・レイク・アンド・パーマーのライブ音源。2011年作
「ラヴ・ビーチ」発表前、1978年ニューヨーク公演のステージを収録した公式音源。「Hoedown」で軽やかな幕を開け、
観客の歓声とMCに続いて「タルカス」に突入。70年代初頭のようなダイナミックな迫力には欠けるが、音質はなかなか良好で、
バンドらしい勢いと円熟味の同居した演奏が楽しめる。「石をとれ」から、「ピアノ協奏曲第1番 第1楽章」では、
エマーソンの卓越したピアノプレイを堪能、そして15分にまとめられた「展覧の絵」で前半のDisc1を締めくくる。
Disc2は、「WORKS」からの楽曲をメインに、ドラムソロをはさみ、「海賊」〜「庶民のファンファーレ」で華麗に盛り上げる。
70年代後半のEL&Pの公式フル音源は希少なので、ファンであれば聴いて損なしのCD2枚組ライブです。
ライブ演奏・8 音質・7 名曲度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Eclection
イギリスのフォークロック、エクレクションの1968年作
後にFOTHERINGAY、FAIRPORT CONVENTIONに参加するトレヴァー・ルーカスとジェリー・コンウェイによるバンドで、
唯一の作品がリマスターで再発された。12弦ギターのつまびきにストリングスアレンジを重ね、男女ヴォーカルの歌声とともに、
牧歌的なフォークロックを聴かせる。ドラムやエレキギター、オルガンなども加わったわりとロック寄りの感触は、
のちのSPRIGUNSなどにも通じる雰囲気で、オーストラリア人の女性シンガー、Kerrilee嬢のやわらかな歌声も魅力的。
牧歌的でキャッチーなポップ性とともに、ときにRenaissanceにも通じるような優美なクラシカル性も感じさせる。
曲によってはブラスも入ったり、オーケストラルなアレンジも含めて厚みのあるサウンドが優雅なフォークロックの逸品。
アコースティック度・7 ロック度・7 英国度・8 総合・8
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CLOUD ATLAS 「BEYOND THE VALE」
イギリスのプログレバンド、クラウド・アトラスの2014年作
Stolen Earthにも在籍する女性シンガーを擁するバンドで、いくぶんハードなギターにオルガンを含むシンセを重ね、
ストレートな女性ヴォーカルの歌声で、KARNATAKAなどにも通じる優美なシンフォニックロックを聴かせる。
ときにブルージな感触も含んだ叙情的なギターは、古き良き英国ロックの味わいもかもしだしていて、
7〜10分前後の大曲を主体に、伸びのある女性ヴォーカルとともに、じっくりとウェットなサウンドを描いてゆく。
アコースティックなパートを含んだ英国らしい叙情美は、MOSTLY AUTUMNなどが好きな方にも楽しめるだろう。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 女性Vo度・8 総合・7.5
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Eden's Bridge 「Celtic Worship Live」
イギリスのケルティックロック、エデンズ・ブリッジのライブ。2009年作
アコースティック編成でのライブ作品で、美しい女性ヴォーカルをアコースティックギターのつまびきに乗せて、
バウロンのリズムにホイッスルも鳴り響く、しっとりと優雅なケルティック・フォークを聴かせる。
うっすらとしたシンセアレンジも加わったシンフォニックなサウンドに、SARAH嬢の優しく母性的な歌声は
ときにLoreena Mckennittのようなエモーショナルな表現力もあって、その美声にウットリとなる。
優雅度・8 ケルティック度・8 女性Vo度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Ryo Okumoto 「The Myth of The Mostrophus」
SPOCK'S BEARDのシンセ奏者、リョウ・オクモトの2022年作
ソロとしては20年ぶりの作品で、ニック・ディヴァージリオ、アラン・モーズ、デイヴ・メロスらスポビ関連のメンバーから、
マーク・ボニーラ、スティーブ・ハケット、ランディ・マクスタイン、ライル・ワークマンといった名うてのギタリストに、
SAGAのマイケル・サドラー、I Am The Manic Whaleのマイケル・ホワイトマンなどのシンガーも参加している。
きらびやかなシンセワークにメロディックなギターを重ね、ゲストによる楽曲ごとのヴォーカルを乗せた、
ほどよくハードでキャッチーなサウンド。爽快な抜けの良さとテクニカルな構築力という点では、MAGELLAN
TRANSATLANTICなどにも通じる味わいで、シンフォプログレ好きなら無条件で気に入るだろう。
ラストは22分の大曲で、オルガンやピアノなど自在のシンセワークで、緩急あるゴージャスな聴き心地。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 ゴージャス度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Siena Root 「Revelation」
スウェーデンのヴィンテージロック、シエナ・ルートの2023年作
2004年にデビューし、本作は8作目。女性Vo&Keyを含む編成で、オールドなギターにオルガンが鳴り響き、
倦怠を含んだ女性ヴォーカルの歌声とともに、70年代ルーツのサイケでブルージーなロックを聴かせる。
ドラムも含めたアナログ感たっぷりのアンサンブルと、ほどよいユルさが耳心地よく、3〜5分前後の楽曲は
軽すぎず、重すぎで、ときにアコースティックギターやシタール、フルートなどもまじえて、妖しい叙情性も覗かせる。
紅一点、Zubaidaさんの歌唱の表現力も上がっていて、民族的なナンバーなどもなかなか堂に入っている。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 ヴィンテージ度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Ranestrane 「Apocalypse Now」
イタリアのプログレバンド、ラネストラーネの2022年作
2009年にデビュー、「ノスフェラトゥ」や「シャイニング」、「2001年宇宙の旅」など、映画作品をコンセプトにアルバムを作ってきたバンド、
本作は「地獄の黙示録」をテーマにしていて、オールドな味わいのシンセに叙情的なギターワーク、イタリア語の歌声を乗せ、
繊細なピアノなど、クラシカルな優雅さと、翳りを帯びたドラマ性が同居した、幻想的なシンフォプログレを聴かせる。
英語による語りを挿入したシネマティックな流れの中に、オールドロック的な哀愁も覗かせ、中盤の20分の大曲もじっくりと構築。
後半の16分の大曲では、優美な叙情性を織り込んで、じわじわと盛り上げてゆく。まさに映画的イタリアン・プログレの力作です。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 叙情度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Hunka Munka 「Foreste Interstellari」
イタリアのプログレバンド、フンカ・ムンカの2021年作
1972年に便座のジャケでおなじみの唯一のアルバムを出して以来、じつに39年ぶりとなる新作で、
Vo&Keyのロベルト・カルロットを中心に、ヴィンテージなオルガンにわりとハードなギターとドラムで、
厚みのあるシンフォプログレを構築する。枯れた味わいのイタリア語のヴォーカルが加わると、
とたんに70年代の香りが甦り、軽やかなアンサンブルとキャッチーな叙情のバランスもよく、
随所に女性コーラスも彩りを添える。11分の大曲では優雅な叙情性と、ドラマティックな構築力が光る。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 イタリア度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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SYRINX 「Reification」
フランスのプログレバンド、シリンクスの2003年作
のっけから19分という大曲で、オルガンやメロトロンを含むシンセに、アコースティックを含む繊細なギターのトーンで、
インストによる優雅なサウンドを描き出す。随所に変則リズムを含む、知的な屈折感も覗かせつつも、
あくまで叙情的な聴き心地で、プログレらしいムーグシンセも鳴り響いて、軽妙なテクニカル性に、
ミステリアスな空気をまとわせたという作風。ときに優美なフルートの音色や、アコースティックギターのつまびきをシンセに重ねた、
やわらかな耳心地で、夢見心地のインストプログレが楽しめる。歌がないでドラマティックな盛り上がりには欠けるが、幻想的な好作です。
ドラマティック度・7 プログレ度・8 優雅度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら

WhiteChapel 「Le Masque D'arlequin」
フランスのハードプログレ、ホワイトチャペルの2006年作
きらびやかなシンセをほどよくハードなギターに重ね、フランス語によるハイトーンヴォーカルを乗せて、
ときにProgMetal的でもあるシンフォニックロックを聴かせる。随所に流麗なメロディも奏でるギターに、
オルガンを含むたプログレ感のあるシンセワークとともに、優雅でキャッチーなサウンドを構築する。
ゆったりとしたバラードナンバーは、シンフォプログレ的に楽しめ、プログレメタル寄りのインストナンバーでは、
華麗なキーボードが活躍している。全体的にこれというインパクトはないが、ジャケのイメージよりも優美な好作。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・8 総合・7
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Inquire 「Melancholia」
ドイツのプログレバンド、インクワイアの2003年作
1999年に自主デビュー、本作は4作目で、フランスの哲学者、ジャン・ポール=サルトルと、音楽家、ルイ・ヴィエルヌをモチーフにした作品。
哀愁漂うアーディオンの音色で幕を開け、優美なシンセと叙情的なギターを重ね、翳りを帯びたシンフォニックロックを展開する。
ときにフランス語による語りを挿入したコンセプト的なストーリー性に包まれつつ、シアトリカルな男ヴォーカルに、
随所に妖しい女性ヴォーカルも加わるなど、耽美な幻想性も感じさせる世界感に、メロウな泣きのギターフレーズや
オルガンを含むシンセワークもなかなか魅力的。中盤には9分の大曲が続き、後半には、13分という大曲が2曲もあって、
どうしても長尺な感じはするが、ドラマ性の強い全76分の力作だ。Disc2には、17分の組曲を収録。こちらはオールインストで、
オルガンなどの華麗なシンセとほどよくハードなギターで、日本のARS NOVAなどにも通じる耽美なシンフォプログレが味わえる。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 叙情度・8 総合・7.5
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8/26
プログレ残暑お見舞い(211)

Rocking Horse Music Club 「Circus Of Wire Dolls」
イギリスのシンフォニックロック、ロッキング・ホース・ミュージック・クラブの2022年作
Vo&Gのジャスティン・コーンとシンセ奏者のブライアン・コンバースを中心に、ジョン・ハケット、デヴィッド・クロス、ロブ・タウンゼンドなど
多数のゲストが参加。模型のサーカスにおける想像上のパフォーマーを通して人生を重ね見るという、CD2枚組のコンセプト作品。
メロウなギターの旋律にシンセを重ね、マイルドなヴォーカルとともに、PENDRAGONなど、90年代英国ネオプログレルーツの
優美なシンフォプログレを展開。キャッチーな爽快さは、かつてのポンプロックを思わせつつ、楽曲によっては女性ヴォーカルも加わったり、
オルガンを含むシンセにサックスが鳴り響く、ゆったりとした大人の叙情美も耳心地よい。ポストプログレ風の繊細な歌もの感触や、
ときにQUEENにも通じるポップな雰囲気も覗かせつつ、総じて優雅なサウンドで、派手なインパクトはないがじっくり楽しめる好作だ。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・8 総合・7.5
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Mater a Clivis Imperat 「Atrox Locus」
イタリアのプログレ・ゴシック、マター・ア・クリヴィス・インペラットの2022年作
ブラックメタルバンド、Evolのメンバー、サマエル・フォン・マーティンを中心にしたユニットで、
チャーチオルガンによるイントロから、女性シンガーの妖しい歌声を乗せて、JACULAにも通じるような
ゴシックホラー的な世界観を描いてゆく。オルガンにムーグシンセも鳴り響く、プログレらしいインストから、
ピアノと女性スキャットだけのロック色の薄いナンバーなどもあり、わりととらえどころがないのだが、
ギターが加わると音に厚みが出て、チャーチオルガンと女性声によるこけおどし感はよい感じです。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 妖しさ度・8 総合・7.5
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The Rome Pro(G)Ject 「IV Beaten Paths Different Ways」
イタリアのシンフォニックロック、ローマ・プロ・グ・ジェクトの2020年作
シンセ奏者のヴィンセンツォ・リッカによる古代ローマをテーマにしたプロジェクトで、2012年にデビュー、本作は4作目となる。
スティーブ・ハケット、ニック・マグナス、デヴィッド・ジャクソン、ビリー・シャーウッド、リチャード・シンクレアなどがゲスト参加、
メロウなギターにオルガンやムーグなどのきらびやかなシンセワークを重ねた、美麗なシンフォプログレを展開する。
ベルナルド・ランツェッティ(Acqua Fragile)の渋い歌声を乗せたナンバーや、故フランチェスコ・ジャコモ(Banco)のイタリア語の語りなどは、
イタプロファンには嬉しいし、リチャード・シンクレアが参加したナンバーはやわらかなフルートの音色など、どことなくカンタベリー風だったり、
デヴッィド・クロスのヴァイオリンが艶やかなナンバーなど、未発曲と、過去曲のリアンジが主体であるが、充実の内容である。
ドラマティック度・7 プログレ度・8 優美度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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The Samurai of Prog 「Anthem To The Phoenix Star」
フィンランドのプログレユニット、サムライ・オブ・プログの2022年作
2011年から始まったプロジェクト、今作はSF的なコンセプトで、イタリアのミュージシャン、Marco Griecoを準メンバーに迎え、
クライブ・ノーラン(PENDRAGON)、バート・シュワートマン(KAYAK)、ヨギ・ラング(RPWL)、カム・ブロックランド(Southern Empire)などのゲストが参加、
叙情的なギターとオルガンを含むプログレらしいシンセワーク、マイク・アーノルドによるサックスも加わった、大人のシンフォプログレを展開。
ラファエル・パチャによる繊細なアコースティックギターやイーリアンパイプ、ゲストのフルート、シロフォンなども優雅な音色を響かせる、
しっとりとした女性ヴォーカルのナンバーも美しい。泣きのギターと、Moonshotのジョン・ウィルキンソンの渋い歌声でじわじわと盛り上げる
11分の大曲から、優雅なピアノの小曲、ラストは13分の大曲で、ドラマティックな展開の中で、クライブ・ノーランの歌声が朗々と響き渡る。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 優美度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Rafael Pacha & Kimmo Porsti 「Views From The Inner World」
スペイン人ギタリスト、ラファエル・パチャと、THE SAMURAI OF PROGのキンモ・ポルスティのユニット。2022年作
メロウなギターの旋律に美麗なシンセ、ジェントルなヴォーカルも加わった、繊細なシンフォニックロックを聴かせる。
随所にアコースティックも含むギターに、プログレらしいきらびやかなシンセワークを重ね、ときにCAMELにも通じる
優雅なアンサンブルに、ヴァイオリンやホイッスル、フルートなどのやわらかな音色も加わった、優しい耳心地が味わえる。
ギターとシンセによるインストパートをメインに、ゲストの女性ヴォーカルが美しい歌声を響かせるナンバーなど、
THE SAMURAI OF PROGと同様に、優美で幻想的なサウンドを堪能できる好作品です。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・9 総合・8
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LIZARD 「HALF-LIVE」
ポーランドのプログレバンド、リザードの2018年作
1996年にデビュー、本作は6作目で、44分におよぶ大曲を収録した異色のアルバム。優美なピアノとヴァイオリンのイントロから、
グルーヴィなベースとギターが加わり、KING CRIMSONを思わせる軽妙にしてスリリングなアンサンブルが広がってゆく。
優雅なインストパートを主体にしつつ、母国語によるヴォーカルが随所によいアクセントになっていて、全体的にはシンフォというより、
クールで知的な聴き心地に包まれているが、後半はきらびやかなシンセパートも現れたりオルガン鳴り響くオールドなロック感触から、
優雅なジャズロック調まで変幻自在。キャリアのあるバンドらしい自由度の高い作風で、玄人好みのプログレを構築する。
ドラマティック度・7 プログレ度・8 知的度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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PROGRES 2 「Tulak Po Hvezdach」
チェコのプログレバンド、プログレス2の2018年作
結成は1968年、当初はPROGRESSIVE ORGANIZATIONとして活動、1977年にはBARNODAJと名前を変え、
1980年に、PROGRES 2名義でデビュー、88年までに4作を残して消えたが、30年ぶりにここに復活作を発表。
アコースティックギターとフルートのイントロから、ジェントルな母国語の歌声を乗せて、ゆったりと大人の叙情に包まれる。
3〜4分前後の小曲を主体に、オルガンを含むシンセワークをメロウなギターに重ねたキャッチーな聴き心地から、
ブルージーなロック感触まで、オールドな渋さとポップ感が同居した作風で、プログレとしてはいささか物足りないか。
ドラマティック度・6 プログレ度・6 楽曲・6 総合・7
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Indrek Patte 「Cinemanic」
エストニアのミュージシャン、インドレック・パッテの2017年作
エストニアではレジェンドのベテランロックバンド、Rujaで活躍するシンセ奏者で、ソロとしては3作目となる。
東欧らしい透明感あるシンセにほどよくハードなギターを重ね、ミステリアスな翳りを帯びたインストサウンドを展開。
曲によってはハードロック的なギターを乗せたノリの良さもありつつ、シンフォニックなシンセアレンジが包み込み、
空間的な幻想性が現れる。10分を超える大曲では、シンセをメインにした、Klaus Schulzeのような雰囲気もありつつ、
一転、ムーグシンセがきらびやかなキャッチーなナンバーなども、メロウなギターの旋律も含めてなかなか楽しめる。
アルバム後半には、歌入りのAOR風味のナンバーもあり、全体的にも辺境臭さのない叙情的な好作である。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優美度・8 総合・8
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No Name 「20 Candles」
ルクセンブルグのプログレバンド、ノー・ネームの2009年作
90年代から活動するベテランで、本作は5作目となる。美しいシンセをギターに重ね、マイルドなヴォーカルとともに、
ヨーロピアンな叙情に包まれたシンフォプログレを聴かせる。軽やかなリズムなど、ライトでキャッチーな爽快感と、
メロウな泣きのギターとシンセによるウェットな優雅さが同居し、90年代マイナー系シンフォの雰囲気も残している。
楽曲は4〜6分前後を主体に、プログレハード的な感触で楽しめつつ、12分の大曲では、ドラマティックな展開力で
ARENAのようなシリアスなハード・シンフォが味わえる。全体的にキャッチーな耳心地の良さが光る、全71分の力作。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 優美度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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The Neal Morse Band 「The Similitude Of A Dream - Live In Tilburg 2017」
アメリカのプログレ職人、ニール・モーズ率いるバンドのライブ作品。2018年作
2016年作「The Similitude of a Dream」完全再現した、オランダ、ティルブルフでのライブを2CD+2DVDに収録。
盟友マイク・ポートノイに、ランディ・ジョージ、エリック・ジレット、ビル・ヒューバウアーという不動のメンツで、
厳かなンントロから、美麗なシンセとメロディックなギターとともに、キャッチーで軽やかなアンサンブルを展開、
躍動感あるポートノイのドラムとともに、スタジオ盤以上にダイナミックで華麗なシンフォプログレを構築してゆく。
ときに12弦ギターを奏でながら、渋みの増した歌声を聴かせるニールに、エリック・ジレットの巧みなギタープレイ、
厚みのあるコーラスハーモニーも見事で、息の合ったメンバーたちの演奏が映像的にも楽しめる。計145分の壮大なライブです。
ドラマティック度・8 ライブ演奏・9 壮大度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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The Neal Morse Band 「Great Adventour - Live In Brno 2019」
アメリカのプログレ職人、ニール・モーズ率いるバンドのライブ作品。2020年作
2019年の2枚組大作「THE GREAT ADVENTURE」完全再現したチェコでのライブを、2CD+2BDに収録。
今作も、マイク・ポートノイ、ランディ・ジョージ、エリック・ジレット、ビル・ヒューバウアーというおなじみの編成で、、
ポートノイの手数の多いドラムに、きらびやかなツインキーボード、情感豊かなニールの歌声を乗せて
ときにツインギターとともに、テクニカルでキャッチー、緩急ある展開力で、ロックオペラ的に楽曲が連なってゆく。
フードをかぶったり仮面をつけたりと、ニールの役者っぷりの一方で、巧みなギターに爽やかな歌声も聴かせるエリックや
むしろメインのシンセパートを務めるビルも随所に渋い歌声を披露するなど、バックのメンバーの有能さが際立っている。
アンコールの24分およぶメドレーまで、合計2時間の濃密なステージ。当然ながらブルーレイはCDよりも音質が良いです。
ドラマティック度・8 ライブ演奏・9 壮大度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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8/12
イタリアとフランスと(200)

DE ROSSI E BORDINI
イタリアのプログレユニット、デ・ロッシ・ボルディーニの2022年作
Taprobanのシンセ奏者、ジャンルカ・デ・ロッシと、CHERRY FIVEのドラム、カルロ・ボルディーニによるユニットで、
2007年の結成から、15年をかけて満を持して発表されたデビュー作。のっけから19分という大曲で、
イタリア語の語りで幕を開け、オルガンやムーグなどのヴィンテージなシンセが鳴り響き、生々しいドラムとともに
インストを主体にした濃密なキーボードプログレを聴かせる。2曲目も18分の大曲で、Taprobanの楽曲のリメイク。
曲が長いので部分的にダレるところもあるのだが、Le Ormeにも通じる古き良きイタリアらしい鍵盤プログレが味わえる。
後半2曲のボーナスはライブ音源になっていて、ルスティッケリ&ボルディーニのリメイクなど、往年のファンには嬉しいだろう。
ドラマティック度・7 キーボー度・8 イタリア度・8 総合・7.5
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AMBIGRAM
イタリアのプログレバンド、アンビグラムの2021年作
叙情的なギターに優美なピアノとシンセ、英語によるマイルドなヴォーカルを乗せて、
キャッチーなプログレハードを聴かせる。イタリアらしいシアトリカルな世界観の中にも、
わりとコミカルな雰囲気もあったり、いくぶんハードなギターにオルガンを重ねたヴィンテージな味わいなど
オールドなロック感触の向こうに優雅な屈折感が見え隠れするという点で、一筋縄ではいかない。
奔放なギターフレーズが鳴り響くナンバーや、70年代的な歌ものハードロック風のナンバーなど、
プログレとして聴くには物足りなさもあるが、ヘンテコなヴィンテージロックとして楽しむのが良いだろう。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 イタリア度・7 総合・7.5
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Morreale 「Appunti Di Viaggio」
イタリアのシンセ奏者、マッシミリアーノ・モレアーレのソロプロジェクト。2020年作
オルガンを含むシンセにわりとハードなギター、イタリア語によるシアトリカルなヴォーカルとともに、
オールドな味わいのハードプログレを聴かせる。どこか狂気を含んだエキセントリックな世界観は
オザンナやチェルベッロなどを現代的にしたような雰囲気もあり、濃密なイタリアらしさ全開である。
中盤には、22分という大曲もあり、スペイシーなシンセパートやアコースティックな叙情性などを含んだ
スケール感のあるインストサウンドを展開、メロウな泣きのギターとともにじわじわと盛り上げる。
妖しくフルートが鳴り響き、サックスも加えたアダルトな味わいのナンバーなどもよい感じです。
ドラマティック度・7 プログレ度・8 イタリア度・8 総合・7.5
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ELISA MONTALDO 「FISTFUL OF PLANETS PART II」
イタリアの女性シンセ奏者、エリサ・モンタルドのソロ。2021年作
Il Tempio Delle Clessidreのシンセ奏者で、2015年のソロに続く2作目。
ラジオから聴こえるようなシャンソン的なイントロ曲で幕を開け、優美なピアノとシンセの重なりに
英語による自身の美しい歌声を乗せて、幻想的なサウンドを描く。やわらかなフルートの音色に
クラシカルなピアノ、ストリングスやハープが絡み、メロトロンなどのシンセが加わった、優雅な耳心地にうっとりとなる。
日本のSSW、富山優子の詠む俳句から始まる美麗なナンバーや、12分の組曲では、しっとりと繊細かつコケティッシュな幻想性から、
エキセントリックな世界観も覗かせるなど、前作以上にアーティスティックな魅力に溢れている。Mandalabandのホセ・マヌエル・メディナ、
Anglagard、White Willowのマティアス・オルソン、スペイン人ギタリスト、ラファエル・パシャなどがゲスト参加。
クラシカル度・8 プログレ度・7 優美度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら

Magnesis 「Legendes De Nos Campagnes」
フランスのプログレバンド、マグネシスの2021年作
結成は80年代というベテランで、本作は12作目となる。フランスの怪奇伝説をテーマにした楽曲で構成されたトータル作で、
優美なシンセワークにメロウなギターの旋律が絡み、ゆったりとしたインストのシンフォニックロックを展開、
2曲目からは、フランス語のダンディな歌声を加え、メロトロンを含むやわらかなシンセとともに優雅なサウンドが広がる。
後半は、27分におよぶ組曲で、16世紀シャンパーニュ地方で起きた児童大量殺人鬼事件から産まれた「狼男伝説」を題材に、
優美なメロトロンに叙情的なギター、女性声の語りを挿入したシアトリカルな世界観で、PULSAR「Halloween」あたりに通じる
幻想的なシンフォプログレが楽しめる。スリリングなところはないが、ANGEルーツのテアトリカル・プログレの力作です。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 優美度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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ANGE 「EMILE JACOTEY RESURRECTION LIVE」
フランスのプログレバンド、アンジュのライブ作品。2015年作
1975年作「EMILE JACOTEY」の2014年リメイク作「EMILE JACOTEY RESURRECTION」完全再現ライブを2CD+DVDに収録。
きらびやかなシンセワークをバックに、御大クリスチャン・デカンのフランス語による濃密な歌声は健在で、
シアトリカルなドラマ性とともに、優雅なシンフォニックロックを展開。息子であるトリスタン・デカンのシンセワークに
随所に奏でられるメロウなギタープレイもよろしく、緩急ある展開と巧みな演奏力は、若手メンバーらしい勢いにも溢れている。
DVDでは、スティーヴン・ウィルソンのメッセージから始まって、わりとこじんまりとしたステージに御大の熱唱が響き渡り、
シンセを弾きながらのトリスタンの歌声も父親譲りの雰囲気で、ときに向き合った親子のツインキーボードが美しく重なり、
華麗なるテアトリカルロックが繰り広げられる。ラストは「新ノア記」からのナンバーで壮麗に締めくくる。
ライブ演奏・8 ライブ映像・8 テアトリカル度・9 総合・8.5 過去作のレビューはこちら
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ANGE 「Escale Heureuse」
アンジュのライブ作品。2019年作
2018年作「Heureux!」にともなうツアーのステージを2CD+DVDに収録。同作からのナンバー主体にしつつ、
1973年作「Le Cimetiere Des Arlequins」、1980年作「Vu D'un Chien」、1983年作「La Gare De Troyes」など、
過去作品からのナンバーも披露。渋みを増したクリスチャン・デカンの歌声と息子トリスタンの優美なシンセワーク
ときにハードにときに叙情的なギターの旋律が楽曲を優雅に彩る。ゆったりとしたナンバーでは、
エモーショナルなデカンの歌声とともに、年季を経たバンドらしい芳醇なワインのような味わいが楽しめ、
「Heureux!」収録の17分の大曲も素晴らしい。後半には1980年の傑作「Guet-Apens」からの大曲も披露。
DVDの映像では、立派なホールでのステージに、貫録たっぷりのデカンの姿が見られるだけで有難いというもの。
ライブ演奏・8 ライブ映像・8 テアトリカル度・9 総合・8
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Gens De La Lune 「Epitaphe」
フランスのシンフォニックロック、ジェンス・デ・ラ・ルネの2013年作
元ANGEのシンセ奏者、フランシス・デカンを中心にしたプロジェクトで、本作は3作目となる。
若くして命を絶った詩人、L・ルイス・ドゥーベルの詩編をテーマにしたCD2枚組のロックオペラ作品で、
美麗なシンセワークをメロウなギターに重ね、シアトリカルな味わいのヴォーカルとともに、
ANGEに通じるドラマ性のある優雅なシンフォニックロックを聴かせる。ヴァイオリンやアコーティオンも加え
哀愁を含んだ叙情に包まれつつ、曲によってはオルガンが鳴り響く、ほどよくハードなオールドなロック感触も覗かせる。
Disc2のラストは12分の大曲で、優美なシンセと叙情的なギターでじわじわと盛り上げる。CD2枚で85分という力作である。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 優雅度・8 総合・7.5

BESS OF BEDLAM「Dance Until The Crimes End」
フランスのフィメール・ポップ、ベス・オブ・ベドラムの2022年作
女性シンガー、Fanny L'Heritierと、G&B奏者によるユニットで、2019年にデビューし、2作目となる。
優雅なギターの旋律にコケティッシュな女性ヴォーカルを乗せて、ドリーミィな幻想性に包まれたサウンドを描く。
アコースティックギターと女性声による牧歌的なフォーク風味も耳心地よく、いくぶんサイケな浮遊感をまぶした
ロバート・ワイアットの女性版という雰囲気もあり、ケイト・ブッシュ的な世界観のアシッドフォークとしても楽しめる。
楽曲3〜4前後がメインで、濃密すぎないところもキュートな味わいでよい。夢見系フィメールポップの逸品です。
ドラマティック度・7 幻想度・8 女性Vo度・8 総合・7.5
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KLO PELGAG 「L'etoile thoracique」
カナダの女性SSW、クロ・ペルガグの2016年作/邦題「あばら骨の星」
ケベック州出身の女性アーティストで、2014年にデビューし、本作は2作目となる。優雅なピアノやシンセに、、
フランス語によるコケティッシュな歌声を乗せ、ケイト・ブッシュにも通じる、可愛らしくもエキセントリックなサウンドを描く。
曲によってはトランペットやトロンボーンなどのブラスや、ヴァイオリンなどストリングスによる優雅なアレンジも加えつつ、
あくまで美しいヴォーカルの響きをメインにした、シンプルなポップ性が耳心地の良さになっている。
エレキギターやドラムなどは入らないのでロック感触は希薄だが、クラシカルな優雅さとやわらかな女性声で
幻想的な世界観を描くところは、プログレリスナー向きといえるだろう。ラストは10分のアンビエントなナンバー。
キャッチー度・8 優雅度・9 女性ヴォーカル度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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KLO PELGAG 「Notre-Dame-des-Sept-Douleurs」
カナダの女性SSW、クロ・ペルガグの2020年作/邦題「悲しみの聖母」
3作目となる本作は、聖母マリアをテーマにしているのかと思いきや、タイトルは自身の育った町の名前であるらしい。
幻想的なインストのタイトルナンバーで始まり、2曲目からはうっすらとしたシンセにギターやドラムも加えて、
フランス語のキュートな歌声とともに、やはりケイト・ブッシュ的なしっとりとしたストレンジポップを展開。
今作ではいくぶん物悲しいアンビエントな空気感も漂わせ、ピアノをバックにしっとりと歌を聴かせるナンバーなど、
2〜4分の小曲を主体に、キャッチーな歌もの感とポップ性、幻想的な浮遊感のバランスが良く、のんびり楽しめます。
キャッチー度・8 優雅度・8 女性ヴォーカル度・8 総合・8
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7/28
8/13浦和ナルシスでJCライブ!!(189)
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GALAHAD ELECTRIC COMPANY「SOUL THERAPY」
イギリスのプログレバンド、ガラハド・エレクトリック・カンパニーの2021年作
GALAHADのシンセ奏者、ディーン・ベイカーと、シンガーのスチュアート・ニコルソンによるユニットで、2020年に続く3作目。
デジタルな感触のビートに優美なシンセを重ね、マイルドなヴォーカルを乗せて、モダンなシンフォニックロックを聴かせる。
4〜6分前後の楽曲は、翳りを帯びた叙情に包まれた歌もの系メロディックロックという趣ではあるが、
エレクトロな要素がシンフォプログレと自然体で融合されているという点では、とてもセンスを感じるし、
ときにポストプログレ寄りの繊細な叙情美も覗かせるなど、英国らしい味わいの好作である。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 叙情度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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Mordecai Smyth 「Things Are Getting Stranger On The Shore」
イギリスのミュージシャン、モルデカイ・スミスの2022年作
2011年にデビューし、本作は5年ぶりとなる3作目。前作は古き良きサイケな英国ロックという趣であったが、
本作は叙情的なギターにシンセを重ね、味のあるヴォーカルにサックスも絡む、優美なアートロックを聴かせる。
70年代初頭を思わせるようなサイケでアナログな浮遊感とともに、キャッチーでポップ味わいもあり、
ときにクラネットなどの優雅な音色もアクセントになっている。RENAISSANCEのジョン・キャンプがゲスト参加し、
女性ヴォーカルを加えたナンバーは、ルネッサンスのような美しさ。15分の大曲では、やわらかなフルートの音色や
優美なシンセに男女ヴォーカルの歌声を乗せ、幻想的なシンフォニックロックを展開する。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 古き良き英国度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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HATS OFF GENTLEMEN IT'S ADEQUATE 「NOSTALGIA FOR INFINITY」
イギリスのモダンプログレ、ハッツ・オフ・ジェントルメン・イッツ・アデクイットの2020年作
2012年にデビュー、本作は4作目となる。優美なシンセとフルートのイントロから、マイルドなヴォーカルとギターを加え
翳りを帯びたドラマ性を描くような、スタイリッシュなメロディックロックを展開。ポストプログレ的でもある繊細な叙情性と、
メロウな泣きのギターと美しいシンセワークによる、シンフォニックロックとしての優美な味わいが合わさって、
10分前後の大曲も、ゆったりとした構築美でじつに耳心地がよい。中盤の5パートに分かれた20分の組曲では、
デジタルでモダンなアレンジを取れ入れた近未来的なイメージも広がる。優雅なモダンシンフォ。全68分の力作です。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 叙情度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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RED BAZAR 「CONNECTIONS」
イギリスのプログレバンド、レッド・バザーの2020年作
2008年のデビュー作をリレコーディングした作品で、軽やかなリズムにほどよくハードで巧みなギターを乗せ、
エレピやオルガンを含むシンセも加えて、インストによるハード・フュージョン的なサウンドを聴かせる。
メロディックな旋律を奏でるギターに、Tiger Moth Talesでも活躍するピーター・ジョーンズによる優美なシンセを重ねた、
優雅な耳心地で楽しめつつ、曲によってはいくぶんダークな部分も覗かせたりと、オールインストながらも楽曲ごとの表現力と
確かな演奏力も見事。ラストは14分という大曲で、ゆったりとしたリズムで叙情的なギタープレイをたっぷりと聴かせる。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・8 総合・8
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Alwanzatar 「Kosmisk Skrekk」
ノルウェーのエレクトロ・プログレ、アルワンザターの2022年作
TUSMORKEのKristoffer Momrakによるソロプロジェクトの5作目。10曲前後の大曲4曲という構成で、
ムーグやメロトロンを含むヴィンテージなシンセに、打ち込みによるドラム、フルートが怪しく鳴り響く、
ミステリアスなエレクトロサウンドを展開。今回は宇宙人がテーマなのか、いつも以上にムーグを使った
エフェクト的なサウンドも取り入れていて、こけおどし感が際立っている。オールインストであるが、
アナログシンセのやわらかな音が、単なるエレクトロとは異なる幻想的な空気をかもしだしていて、
北欧らしい涼やかな浮遊感も心地よい。スペイシーとヴィンテージが同居する異色作です。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 怪しさ度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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DIM GRAY 「FIRMAMENT」
ノルウェーのプログレ・ポストロック、ディム・グレイの2022年作
2021年にデビューし、2作目となる。叙情的なギターにうっすらとしたシンセを重ね、マイルドなヴォーカルとともに
北欧らしい涼やかな空気に包まれた、ポストプログレ風味のサウンドを聴かせる。Sigur Rosあたりにも通じる
繊細な牧歌性が耳に優しく、わりとシンフォニック寄りのシンセアレンジも含んでいて、プログレ向けの作風といえる。
曲によってはエレクトロなアレンジやオーケストレーション、ゲストによるチェロやヴァイオリン、フルートなども加わり、
クラシカルで優雅なスケール感は、Efterklangなども思わせる。楽曲は3〜4分前後とわりとシンプルなので、
派手な展開や盛り上がりなどはないのだが、しっとりとした優美な叙情に浸れる好作品です。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 叙情度・8 総合・7.5
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MIRAGE 「BORDERLINE」
フランスのプログレバンド、ミラージュの2008年作
2001年にデビューし、3作目。叙情的なギターに優美なフルートの音色、ジェントルなヴォーカルの歌声に
オルガンを含むシンセを重ね、CAMELにも通じるやわらかな耳心地のシンフォニックロックを聴かせる。
序盤は、10分前後の大曲がずらりと並び、インストパートの長尺感はあるのだが、ときにEL&Pばりに鳴り響くオルガンや
わりとハードなギターを乗せたオールドロック感触もあったりと、楽曲ごとの方向性で飽きずに楽しめる。
ラスト曲は、どことなくGENESISっぽかったりと、全体的にはもう少しだけ方向性を絞ると良い気もする。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 叙情度・8 総合・7.5
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DOCTOR NO 「Guerriers De Mitjanit」
スペインのプログレバンド、ドクター・ノーの2011年作
2003年に、Dr.No名義でデビューし、本作は2作目となる。きらびやかなシンセワークにメロウなギターを重ね、
スペイン語によるマイルドなヴォーカルとともに、優雅でキャッチーなシンフォプログレを展開する。
アコースティックギターやピアノによる繊細な味わいと、スペイン語の相性もよろしく、やわらかな耳心地で楽しめ、
アルバム後半には、14分、24分という大曲もあって、優美なインストパートと歌パートのバランスもよく、
ゆるやかな盛り上がりとともにドラマティックに構築される。重厚さにはやや欠けるが、総じて優雅な好作品です。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 優美度・8 総合・8
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ELLEVEN 「INSIGHT」
ドイツのプログレハード、エレヴェンの2007年作
メロウなギターにうっすらとしたシンセ、美しい女性ヴォーカルを乗せて、ALL ABOUT EVEにも通じる
翳りを帯びた優雅なサウンドを描く。ピアノを含む優美なシンセと泣きのメロディを奏でるギター、
エモーショナルな女性ヴォーカルが、シンフォニックに盛り上げつつ、しっとりと繊細なパートも含んで、
ときにKARNATAKAや初期QUIDAMのような優雅な味わいにもなる。魅力的な女性声は良いのだが、
全体的に爽快さよりは薄暗い翳りを感じさせ、シンフォプログレとしてはもう少しフックのある展開が欲しいか。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 女性Vo度・8 総合・7.5
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HARMONIUM 「L'heptade XL」
カナダのプログレバンド、アルモニウムの1976/2016年作
1976年の3rdアルバム、40周年記念のリマスターで、5.1ch音源を収録したDVD付きの限定盤。
優美なシンセとフルートやストリングスを含むオーケストラを重ねた序曲から、アコースティックギターのつまびきに
フランス語によるヴォーカルを乗せ、クラシカルなピアノとともにしっとりと繊細なサウンドを描いてゆく。
アコギとフルートによる牧歌的なフォーク風味や、QUEENのようなキャッチーなポップロックも覗かせつつ、
10分を超える大曲では、メロウなギターとシンセを重ね、シンフォニックロックとしての壮麗な盛り上がりも見せる。
オーケストラルなエピローグまで、クラシカルな美意識と繊細な叙情に包まれたサウンドに浸れる逸品です。
クラシカル度・8 プログレ度・7 優雅度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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7/15
夏きたるプログレ(179)

Dave Bainbridge 「To The Far Away」
イギリスのミュージシャン、デイヴ・ベインブリッジの2021年作
IONA、Celestial Fire、Lifesignsなどで活躍するミュージシャンで、純粋なソロ名義としては4作目。IONAのドラムや、
Lifesignsのベース、Celestial Fireの女性シンガー、サリー・ミネアが参加、叙情的なギターにうっすらとしたシンセ、
ホイッスルの音色が優雅な旋律を描き、美しい女性ヴォーカルに男性声も加えた、シンフォニックなケルトロックを展開。
アコースティックギターにマンドリン、ブズーキ、イーリアンパイプなどの、素朴なアコースティック要素と、
MIKE OLDFIELDなどにも通じるエレキギターの旋律と優美なシンセ、ときにヴァイオリンも艶やかに鳴り響く。
14分の大曲も含めて、Celestial Fireにも通じる壮麗なケルティック・シンフォニックロックが楽しめる傑作です。
優雅度・9 ケルティック度・8 女性Vo度・8 総合・8.5 過去作のレビューはこちら
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GALAHAD 「The Last Great Adventurer」
イギリスのプログレバンド、ギャラハドの2022年作
1991年デビューのベテランで、本作は2018年以来となる11作目。オリジナルロンバーはVoのスチュアート・ニコルソンと
ドラムのスペンサー・ラックマンのみであるが、ほどよくモダンなアレンジを含んだ美麗なシンセワークと、
ソロでも活躍する、リー・エイブラハムのギターにマイルドなヴォーカルを乗せた、華やかなシンフォプログレは健在。
キャッチーといってもよいメロディのフックや、英国らしいウェットな叙情と、コンセプト的なスケール感が合わさり、
それでいて古臭くならない現在形のシンフォとして味わえるのはさすが。10分を超えるタイトル曲も含めて、
ドラマティックな英国シンフォニックロックとしては、ARENAPENDRAGONに並ぶ存在だろう。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 叙情度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Faust 「Punkt.」
ジャーマンロックバンド、ファウストの2021年作
1974年に録音された未発音源の単体リリース。「IV」に続く作品であるが、サウンド的には初期を思わせる
不穏なサウンドコラージュが散りばめられ、生々しいドラムのリズムにノイジーなギター、詠唱めいた歌声を重ね、
混沌とした音の塊となって、ドラッギーにリフレインされてゆく。フリーキーなドラムを中心とした11分の大曲から、
どことなくユーモラスなノリもあったり、ファーストからIVまでのエッセンスを詰め込んだような味わいであるが、
優美なピアノが響くジャズロック調の10分のナンバーなども含め、バンドとしての素養の深さを再認識できる。
まさに70年代のファウストを締めくくるような、ファンは必聴の秘蔵音源です。
アヴァンギャル度・8 ロック度・7 サイケ度・7 総合・8 過去作のレビューはこちら
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HARMONIUM 「EN TOURNEE」
カナダのプログレバンド、アルモニウムのライブ。1980年作
1976年作「L'heptade」のツアーとして行われた、1977年バンクーバーでのライブを2CDに収録。
フルート、サックス、2人の鍵盤奏者を含む7人編成で、フランス語による語りから始まり、
やわらかなピアノにフルートの音色、アコースティックを含むギターにエモーショナルなヴォーカルを乗せ、
繊細なシンフォニックロックを展開する。メロトロンやムーグなどのシンセと牧歌的な味わいのギター、
シアトリカルなフレンチの歌声が合わさって、優雅でありつつも濃密なサウンドを描いてゆく。
20分の大曲も、サックスが鳴り響く、ジャズロック的なアンサンブルを含んだ緩急ある展開が見事で
アルバム以上にダイナミックな演奏を聴かせてくれる。傑作3rdの楽曲をほぼ再現しているのも嬉しい。
ドラマティック度・8 ライブ演奏・9 優雅度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Maneige 「Live A L'eveche」
カナダのプログレバンド、マネイジュのライブ音源。2005年作
1975年モントリオールでのライブ音源を収録。優美なピアノにやわらかなクラリネットの音色が重なり、
シンセとギター、ドラム加わって、室内楽的な優雅さのアコースティカルなシンフォニックロックを聴かせる。
優しいフルートの音色にサックスも鳴り響き、ときにジャズロック的な軽やかなアンサンブルを描きつつ、
クラシカルな美意識の繊細なパートもしっとりと心地よい。各メンバーの演奏力の高さもあって、
29分という大曲も、ピアノやフルート、マリンバの響きにクラリネットも重なり、スリリングな優雅さに包まれる。
年代を考えれば音質も良好で、ボーナスには、1974年のライブ音源を収録。
クラシカル度・8 ライブ演奏・8 優雅度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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THEATRE「NO MORE RHYMES BUT MR.BRAINSTORM」
イタリアのプログレバンド、テアトルの1993年作
優美なシンセにジェントルなヴォーカルを乗せた、PALLASなどに通じる英国ポンプロック寄りのシンフォニックロックで、
随所にPENDRAGONのような泣きのギターメロディも覗かせる。歌詞が英語なので、イタリアっぽさはあまりないが、
いくぶんくぐもったようなマイナーな香りを感じさせるところは、90年代イタリアンシンフォ的でもある。
10分を超える大曲はドラマティックな展開で、GENESISルーツの叙情とシアトリカルな世界観は、その手のファンにはけっこう楽しめる。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 ジェネシポンプ度・8 総合・7.5

Robert Santamaria & Ensemble Spatium 「Jaume I - Musica de Fets i Llegendes」
スペインで活動するミュージシャン、ロベルト・サンタマリアによるプロジェクト。2021年作
Aベネズエラ出身、MAROKの中心人物でもあるミュージシャンで、本作はアラゴン王ハイメ1世をテーマにしたコンセプト作品。
AMAROKの女性シンガーに、フルート奏者、DAFNIAのヴァイオリン、コントラバス奏者が参加、優美なフルートにヴァイオリン、
パーカッションのリズムに、12弦ギター、サントゥール、オートハープの典雅な音色、スペイン語の女性ヴォーカルを乗せ、
中世風の古楽トラッドサウンドを聴かせる。オーボエやフルートの繊細な音色など、アコースティックをメインにしつつ、
随所にシンセやピアノによる味付けもあるので、単なるトラッド以上の幻想的なサウンドが味わえる。
アコースティック度・8 プログレ度・7 典雅度・10 総合・8
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Angel Ontalva 「Angel Of A Tower」
スペインのミュージシャン、アンヘル・オンタルヴァの2021年作
OCTOBER EQUUSのギタリストでもあり、ソロとしては5作目となる。軽やかなリズムにサックス、バスーンが鳴り響き、
ピアノを含むシンセにフルートも加わって、インストによる優雅なチェンバーロックを聴かせる。
OEに比べるとわりとキャッチーな聴き心地で、アンヘルのギターも随所にメロディックな旋律を奏でており、
シンセによるやわらかな味付けもあって、チェンバー初心者にも楽しめるだろう。アヴァンギャルド性は控えめながら、
曲によっては、HENRY COW のようなスリリングで不穏な雰囲気も覗かせる。総じて優雅で軽妙な逸品です。
ドラマティック度・7 スリリング度・8 優雅度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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JEAN-LUC PAYSSAN Pierrots & Arlequins」
フランスのミュージシャン、ジャン・ルーク・パイサンの2006年作
MINIMUM VITAL、VITAL DUOでも活躍するミュージシャンで、クラシックギターの典雅なつまびきに、
フランス語による男女ヴォーカルを乗せた、中世の宮廷音楽風のアコースティックサウンドを聴かせる。
シターン、テオルド、マンドリンなど古楽器による優美な旋律に、ゲストのヴァイオリンも加わって、
クラシカルな格調高さと優しい耳心地に包まれる。1〜4分前後の小曲を主体にした優雅な作品です。
アコースティック度・8 プログレ度・7 典雅度・9 総合・8
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ARANIS 「II」
ベルギーのチェンバーロック、アラニスの2007年作
本作は2作目で、想像上の映画音楽をテーマにした作品。2人のヴァイオリン奏者、フルート、アコーディオン奏者を含み、
ベースとギター以外は女性という編成で、艶やかなヴァイオリンにフルート、アーコディオンが絡み、ピアノも加わって、
優雅でクラシカルなアンサンブルの中にスリリングな空気を漂わせる。ちなみに1曲目「Kitano」は北野武作品なのかな。
ゲストによるトランペットも加えた哀愁を感じさせるナンバーや、ストリングスをメインにしたクラシカルなナンバーなど、
同郷の先輩UNIVERS ZEROに比べると、より室内楽的な純度が高く、ロック色が希薄な分、優雅に鑑賞できる。
チェンバー度・9 プログレ度・7 スリリング度・7 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Present 「Great Inhumane Adventure」
ベルギーのチェンバーロック、プレザンのライブ。2005年作
UNIVERS ZEROのロジェ・トリゴーを中心に結成されたバンドで、1980年にデビュー、
本作は1998年アメリカツアーを収録。エレピを含むシンセに不穏な旋律を奏でるギター、
フリーキーなヴォーカルを乗せて、変則リズムたっぷりのリズムとともに、独自のアヴァンロックを展開。
管弦楽などは使っていないので、UNIVERS ZEROに比べると、より生々しいロック寄りの演奏が味わえる。
近年はARANISにも参加する、デイヴ・カーマンの巧みなドラムとともにインプロ的なパートもまじえつつ、
10分を超える大曲ばかりを、スタジオ盤以上にダイナミックに描いてゆく。全71分という濃密なライブ作である。
ライブ演奏・8 スリリング度・8 アヴァンギャル度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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The Nerve Institute 「Architects Of Flesh-Density」
アメリカのアヴァン・プログレ、ナーヴ・インスティチュートの2011年作
ギター、ベース、ドラム、シンセ、ヴォーカルをこなす、マルチプレイヤー、マイケル・S・ジャッジによるソロプロジェクトで、
先に2015年作「Fictions」を聴いていたのだが、こちらの1作目も同様のアヴァンプログレが炸裂している。
軽妙なリズムに、アコースティックを含むギター、オルガンやメロトロンなどのシンセに倦怠感のあるヴォーカルで、
屈折感のある独自の世界観を描く。ジャズロックやレコメン系の感触に、ほどよくシンフォプログレ要素が合わさり
叙情的でありつつヘンテコで薄暗いという、個性的なサウンドが楽しめる。10分を超える大曲も、優雅でスリリング、
とぼけたセンスとダークな空気感が同居していて、Simon Steenslandなどのファンにも楽しめる異色作です。
ドラマティック度・7 プログレ度・8 優雅でアヴァンギャル度・8 総合・8
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6/24
イタリアンプログレで衣替え(167)

Arti & Mestieri 「Live 1974」
イタリアのプログレ・ジャズロック、アルティ・エ・メスティエリの2021年作
2003年リリース「Live/1974-2000」Disc2の音源に、1975年の未発ライブ5曲をボーナス収録した再発盤。
1974年のデビュー作「Tilt」からのナンバーを主体にしたステージで、卓越したフリオ・キリコのドラムに、
オルガン含むシンセ、サックスも加わって、テクニカルなアンサンブルの優雅なジャズロックを聴かせる。
メンバーの演奏力の高さは言うまでもなく、手数の多いキリコのドラムは圧巻で、サウンドの核をになっていて、
ベッペ・クロヴェラの繊細なシンセワークにジジ・ヴェネゴーニのギター、ときにヴァイオンリンも鳴り響く叙情性は、
単なるジャズロック以上の優雅さに包まれる。ボートラの音源は音質はやや落ちるが、バンド全盛期の記録ということで。
プログレ度・8 ライブ演奏・9 音質・7 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Arti & Mestieri 「Prog Day」
イタリアのプログレ・ジャズロック、アルティ・エ・メスティエリの2021年作
スタジオライブ4曲を収録した、2003年リリースのEPに、同時期の未発ライブ音源をボーナス収録した再発盤。
90年代に再結成したアルティは、ドラムのフリオ・キリコとシンセのベッペ・クロヴェラを中心に、ライブなども旺盛にこなす。
2003年、アメリカの「プログ・デイ」に招待されたことを機に録音されたという本作は、キリコのテクニカルなドラムに、
美しいシンセワークとメロウなギター、艶やかなヴァイオリを重ね、優雅で巧みなシンフォ・ジャズロックを聴かせる。
1st収録の大曲のリメイクも含め、生き生きとした躍動感はさすがである。ボーナスのライブ音源、「ティルト組曲」、
「明日へのワルツ組曲」は、ややラウドな音質ながらも、第二の全盛期というような勢い溢れる演奏が味わえる。
プログレ度・8 ライブ演奏・9 優雅度・8 総合・8
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Rovescio Della Medaglia 「La Bibbia: 50th Anniversary」
イタリアンロックバンド、RDMこと、ロヴェッショ・デッラ・メダーリャの2021年作
1971年のデビュー作を、50周年記念でリメイク。オルガンやムーグシンセにハードなギターを重ね、
イタリア語による朗々としたヴォーカルを乗せた、ブルージーなイタリアンロックを聴かせる。
「CONTAMINAZIONE 2.0」のメンバーを中心に、オリジナルメンバーはギターのエンツォ・ヴィータのみであるが、
往年の雰囲気をしっかりと描きつつ、シンセアレンジを加えた分、オリジナルよりもプログレらしい味わいで楽しめる。
クラシカルなピアノパートを含むラスト曲も美しい。ボーナストラックに英語バージョンの3曲を収録。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 イタリア度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Nathan 「Era」
イタリアのプログレバンド、ネイサンの2018年作
GENESISのトリビュートバンドを前身に、2016年にデビューし、2作目となる。オルガンやメロトロンを含むシンセに
叙情的なギターの旋律を重ね、枯れた味わいのヴォーカルとともに、優美なシンフォプログレを聴かせる。
ヴォーカルはいくぶん野暮ったいのだが、メロウな泣きのギターとプログレらしいヴィンテージなシンセが心地よく、
GENESIS+CAMLというような優雅な叙情美に浸ることができる。スリリングな展開などはさほどないのだが、
イタリア語の歌声とオールドなプログレ感がよくマッチしていて、オヤジシンフォ的な哀愁にも包まれた好作品。
ドラマティック度・7 プログレ度・8 叙情度・9 総合・8
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ERRATA CORRIGE 「SIEGFRIED, IL DRAGO E ALTRE STORIE」
イタリアのプログレバンド、エッラータ・コッリジェの1976年作/邦題「ジークフリート、ドラゴンとその他の物語」
アコースティックギターに優美なフルート、ピアノの音色、イタリア語による優しいヴォーカルを乗せた牧歌的なサウンドで、
10分に及ぶ組曲「騎士たちの城塞とルカノールの森のドラゴン」では、ムーグを含む美しいシンセワークとともに、
幻想的なシンフォニックロックを展開する。アコースティックによるパートも多いので、派手な盛り上がりはないのだが、
やわらかなフルートの音色など、チェレステなどにも通じる繊細な美意識に包まれた世界観に、しっとりと浸ることができる。
2015年には本作をリメイクした作品も発表していて、こちらもじつに素晴らしい出来である。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 優美度・9 総合・8
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ERRATA CORRIGE 「Mappamondo」
エッラータ・コッリジェの1992年作/邦題「世界地図」
1976年以来、16年ぶりとなる2作目で、1975年に録音していたマテリアルをもとに作られたコンセプト作品。
1st発表後、シンセ奏者のマルコ・チミーノはアルティ・エ・メスティエリに参加、さらにはエザーゴノを結成して活躍、
本作には、それら関連メンバーも参加。フルートやアコーディオンを使ったイントロから、アコースティックを含むギターにシンセを重ね、
シンフォニックなジャズロックという優雅なインストを展開。アルバム後半では、アルティのアルトゥーロ・ヴィターレがヴォーカル&サックス、
ヴェネゴーニ&Coのベース、エザーゴノのドラムが参加して、よりジャズロック色の濃いサウンドを聴かせる。
ドラマティック度・7 ジャズロ度・8 優美度・8 総合・8
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Patrizio Fariselli 「100 Ghosts」
イタリアのミュージシャン、パトリツィオ・ファリセッリの2018年作
AREAのシンセ奏者でもあるミュージシャンで、本作は再編AREAのメンバーを含む、AREA OPEN PROJECTとして制作、
日本の民間伝承「百鬼夜行」をテーマに、ピアノを含むシンセに、シーケンサー的なデジタルでインダストリアルなアレンジを重ねた、
アヴァンギャルドなサウンドを展開。ヴォーカルを加えたナンバーでは、エスノ風の優雅で牧歌的な味わいも覗かせる。
民族音楽とジャズ要素の融合という点では、AREAに通じる世界観でもあり、トライバルなエレクトロサウンドでもある。
クラシカルなピアノに女性声を乗せた妖しいナンバーは、OPUS AVANTRAに通じる雰囲気もあったりして、なかなか面白い。
エスノジャズ度・8 ロック度・3 優雅でアヴァンギャル度・8 総合・7.5
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The Winstons
イタリアのサイケ・ジャズロック、ウインストンズの2016年作
ウインストン姓の3人(兄弟?)によるトリオバンドで、オルガンを含むシンセに3人のキャッチーなコーラスハーモニーで、
70年代ルーツのサイケなヴィンテージ感に包まれたサウンドを描く。2曲目は何故か日本語で、サックスも加わった
ジャズロック風の感触と怪しい浮遊感が同居しながら、あくまでキャッチーな優雅さでヘンテコな味わいが面白い。
いわばビートルズ的なオールドなポップ性に、ジャズとサイケを混ぜ合わせたという感じか。曲によってはフルートや
トランペットも鳴り響き、初期クリムゾン的な叙情も感じさせる。大人のジャズ風味から、オルガン鳴り響くサイケへと
何事もないようにシフトしているのが、ある意味凄いセンスである。ラスト曲も日本語のヘンテコ・プログレが炸裂。
ドラマティック度・7 プログレ度・8 優雅でヘンテコ度・8 総合・8
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Calomito 「Cane Di Schiena」
イタリアのチェンバー・ジャズロック、カロミトの2011年作/邦題「背中の犬」
2005年にデビューし、2作目となる。ヴァイオリン、トロンボーン奏者を含む編成で、変拍子を含む軽やかなリズムに
艶やかなヴァイオリンとトロンボーンが重なり、ジャズロック寄りの優雅なチェンバーロックを聴かせる。
ドラムやギター、エレキベースを使っているのでロック色がある分、アンサンブルとしてもわりと聴きやすく、
トロンボーンにサックスなどのブラスやシンセも加わった音の厚みもある。アヴァンギャルド過ぎず、コミカル過ぎず、
ほどよくスリリングなインストサウンドは、これといって突出した展開はない分、チェンバー初心者にも鑑賞可能だろう。
チェンバー度・8 ロック度・6 アヴァンギャル度・7 総合・8
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Utopian Fields
ノルウェーのプログレバンド、ユートピアン・フィールズの1989年作
ANGLAGARDやANEKDOTENが現れる90年代より早くに、ひっそりと活動していたバンドの作品が再発。
叙情的なギターにオルガンを含むシンセ、マイルドなヴォーカルを乗せた、北欧らしい涼やかなシンフォプログレ。
翳りを帯びた繊細な叙情性は、同郷のKerrrs Pinkなどにも通じる味わいで、素朴な土着性が耳心地よい。
後半は10分を超える大曲が続き、やわらかなフルートやハーモニカの音色、ときにアコースティックギターも加えた、
緩急あるインストパートとともに優美な構築センスが光っている。優しい北欧の空気に包まれた好作品だ。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 北欧度・9 総合・8
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6/9
X-JAPANコピバンでライブやります(157)

Antony Kalugin/Karfagen 「Rebirth」
ウクライナのミュージシャン、アントニー・カルギンの2022年作
Karfagen、Sunchildなどでも活躍するミュージシャンで、ロシアによる侵攻後はポーランドへ避難し創作を継続している。
本作は、バンド結成以前のマテリアルを形したというソロ名義の作品で、戦火からの復興の願いを込めた内容になっている。
優美なシンセワークに泣きのギターを重ね、Mike Oldfileldにも通じる繊細な叙情に包まれたシンフォニックロックを展開。
アコースティックを含む素朴な牧歌性も覗かせつつ、あくまで優雅で優しいサウンドにウットリと浸ることができる。
Disc2には、Karfagen名義の作品「Land of Green」に関連した楽曲を収録。華麗なシンセとメロウなギターを主体に、
よりプログレらしい構築力で楽しめ、クラシカルなピアノ曲から、ラストの19分の大曲まで、シンフォプログレらしい味わいだ。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 優美度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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MILLENIUM 「THE SIN」
ポーランドのプログレバンド、ミレニアムの2020年作
1999年デビュー、本作は14作目で、キリスト教における七つの大罪をテーマにした、全7曲を収録している。
サウンド自体は叙情的なギターに優美なシンセアレンジ、マイルドなヴォーカルで聴かせる、
PINK FLOYDルーツの翳りを帯びたシンフォニックロックで、いつも通りの優雅な耳心地。
罪を題材にしている分、いくぶんダークな感触もあるのだが、メロウなギターの旋律やフルートの音色など
随所に耳に残る叙情美やフックのある流れとともに構築するところは、さすがベテランの実力というところだろう。
ラストの「Envy(妬み)」は10分の大曲で、ゆったりとした優しいサウンドに繊細な美意識が光る。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 叙情度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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MILLENIUM 「VOCANDA 2000 & 2013 Live」
ポーランドのプログレバンド、ミレニアムの2021年作
本作は、2000年発表の2ndと、それを再現した、2013年のスタジオライブを収録した2CD盤。
アコースティックギターにマイルドなヴォーカルを乗せたイントロから、美しいピアノにシンセが重なり
叙情的なギターとともに翳りを帯びたシンフォニックロックを展開する。メロウな旋律を奏でるギターと、
美麗なシンセアレンジ、表現力あるヴォーカルも含めて、MARILLIONなどのファンも楽しめるだろう。
ときに女性ヴォーカルも加わった優美な耳心地と、コンセプト的な流れでドラマティックに構築される。
Disc2では、女性Vo、サックス奏者を含む編成で、スタジオライブでアルバムを忠実に再現する。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 叙情度・8 総合・8
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Albion 「You'll Be Mine」
ポーランドのプログレバンド、アルビオンの2018年作
1995年にデビュー、本作は6作目となる。叙情的なギターにコケティッシュな女性ヴォーカルを乗せ、
うっすらとしたシンセとともに、しっとりと翳りを帯びたサウンドを聴かせる。ときにアコーステッィクも挟みつつ
泣きのギターメロディと優美なシンセアレンジで、シンフォニックな厚みのある叙情を描くところはさすが。
パーカッション的なリズムが鳴り響く、トライバルな感触も覗かせつつ、美しい女性ヴォーカルと
包み込むようなシンセが幻想的な空気を描く。ラスト曲の最期ではヘヴィな重厚さも現れる。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 叙情度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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XANADU 「FOLLOW THE INSTINCT」
ポーランドのプログレバンド、ザナドゥの2014年作
90年代から活動するバンドで、2011年作に続く2作目。ほどよくハードなギターに優美なシンセを重ね、
かすれた味わいのマイルドなヴォーカルとともに、スタイリッシュなシンフォプログレを展開する。
リズムチェンジを含む、ProgMetal的な感触も覗かせつつ、ポリッシュらしい翳りを帯びた世界観で、
Riversideにも通じるモダンなハードプログレとしても楽しめる。もうひとつ盛り上がるナンバーが欲しいが、高品質な内容です。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 叙情度・8 総合・8

Tabula Smaragdina 「Szavakon Tul」
ハンガリーのプログレバンド、タブラ・スマラグディナの2009年作
Yesterdaysのギタリストを擁するバンドで、プログレらしいシンセワークに叙情的なギター、
母国語による中性的なヴォーカルを乗せて、展開力のある優雅なサウンドを聴かせる。
アコースティックギターや優美なピアノを織り込むなど、繊細な美意識も随所に感じさせ、
メロトロンやムーグなどを含む華麗なシンセもセンスがよい。オールドなロック感触も織り交ぜつつ、
全体的にゆったりとした耳心地の良さに包まれた、東欧的なシンフォプログレが味わえる。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・8 総合・8
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Ueberschaer 「Flow Of Time」
ドイツのミュージシャン、ヘイコ・ウェベルシャーによるプロジェクト。2022年作
シンセにアダム・ホルツマン、ベースにラーズ・レーマンが参加、3部構成の17分の組曲から幕を開け、
ほどよくハードなギターに、クラシカルなピアノ、オルガンなどのシンセにジェントルなヴォーカルを乗せ、
シアトリカルなハードプログレを展開する。ProgMetal的でもあるテクニカルな展開力も随所に織り込んで、
ダークでスタイリッシュなサウンドを描くところは、Porcupine Treeあたりのファンにも楽しめるかもしれない。
歌ものナンバーをメインにロックオペラ的にドラマを描きながら、曲によってはジャズロック風味も覗かせたりと、
アーティストとしての深みも感じさせ、後半の10分を超える大曲では、シンフォプログレとしての壮麗さも発揮する。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 重厚度・8 総合・7.5
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MARQUETTE 「Into The Wild」
ドイツのプログレバンド、マーケットの2020年作
シンセ奏者Markus Rothによるプロジェクトで、2015年にデビュー、本作は2作目となる。優美なシンセワークと
適度に硬質なギター、随所にクラシカルなピアノやサックスも加わった、優雅なインストサウンドを描く。
14分、19分という大曲もあり、ハードなギターや美しいシンセパートも含ませながら、じっくりと聴かせる。
曲によってはヴォーカルも加わるが、基本的にはインストがメイン。スリリングな部分はさほどないので、
やや物足りなさもあるが、ラストのタイトル大曲では、メロウなギターにやわらかなフルートの音色、
トランペットなども加わり、シンフォニックな優雅さに包まれながら、緩急ある流れでプログレらしい味わいだ。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 叙情度・8 総合・7.5
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MOTORPSYCHO 「ANCIENT ASTRONAUTS」
ノルウェーのプログレ・ロックバンド、モーターサイコの2022年作
90年代初頭にデビュー、ノルウェーを代表するロックバンドで、アルバムは優に20枚以上を超える。
本作は22分の大曲を含む、全4曲という構成で、シンセによる怪しいイントロから、ブルージーなギターが加わり、
アナログ感たっぷりのアンサンブルで、70年代を彷彿とさせるヴィンテージなハードロックが広がってゆく。
たたみかけるドラムとうねるベース、ノリのよいリズムとともに、音の塊となって押し寄せてくるような迫力は
このバンドならではで、メロトロン的なシンセにジェントルな歌声を乗せた、初期クリムゾンを思わせる素朴な叙情性など、
プログレリスナーにアピールする場面も多い。後半の22分の大曲は、即興的なインストパートを盛り込んでじわじわと盛り上げる。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 アンサンブル度・9 総合・8.5 過去作のレビューはこちら
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Mist Season 「Reflections」
フィンランドのプログレバンド、ミスト・シーズンの2011年作
2004年にデビューし、3作目。サックス奏者を含む5人編成で、優美なピアノのイントロから、軽やかなリズムに
アダルトなサックスの音色ときらびやかなシンセを重ねて、優雅なジャズロックサウンドを描く。
アコースティックギターや美しい女性ヴォーカル、リコーダーの音色も加わった、繊細な叙情性も覗かせて
北欧らしい涼やかなシンフォニックロックとしても楽しめる。メロウなギターの旋律とオルガンやエレピを含むシンセ、
シンフォとジャズが同居した優雅にして軽妙な聴き心地は、ときにPEKKA POHJOLAを思わせるところもある。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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WHEN 「Psychedelic Wunderbaum」
ノルウェーのアヴァンロック、ウェンの1999年作
鬼才、ラーズ・ペデルセンによるプロジェクトで、パーカッションのリズムにギターがかぶさり、
わりとポップ感のあるヴォーカルを乗せて、ヘンテコなサウンドを描く。オルガンやメロトロンなどを使った、
70年代風のロック感触に、サイケな怪しさを盛り込んでサウンドコラージュ的に仕上げているところは、
ダークさは薄れていても、まぎれもなく暗黒大魔王の所業である。コミカルにしてアヴァンギャルドなところは、
MATS/MORGANにも接近したか。ラストは暗黒のコラージュナンバーで、まさに軽妙と不穏が同居した異色作。
ドラマティック度・6 プログレ度・7 アヴァンギャル度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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Iron Duke 「First Salvo」
デンマークのプログレバンド、アイアン・デュークの1974年作
ジャーマンメタルのプロデューサーとしての顔も持つ、トミー・ハンセンが在籍したバンドの1作目。
オルガンやムーグなどのきらびやかなシンセに叙情的なギターを重ね、優雅なフルートも鳴り響く、
PFMのような軽妙なナンバーで幕を開け、マイルドなヴォーカルも加わって、北欧らしいシンフォプログレを展開する。
YESルーツのキャッチーな味わいを涼やかに仕立て上げたという感触もあり、ときにクラシックのメロディも覗かせつつ、
ラストは15分の大曲で、展開力あるインストパートと叙情的な歌パートで、見事な構築力で描かれる。年代を考えれば、
北欧プログレの代表格、DiceKAIPAなどにも引けを取らない内容だ。バンドは、1977年に2作目を出して消える。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 北欧度・9 総合・8
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Haddad 「Ars Longa Vita Brevis」
ブラジルのプログレバンド、ハダッドの2004年作
シンセとギターのHaddad兄弟を中心に、1993年にデビュー、本作は6作目となる。きらびやかなシンセワークに
叙情的なギターを重ね、母国語によるマイルドなヴォーカルとともに、優美なシンフォニックロック聴かせる。
クラシカルなピアノに優雅なサックスが鳴り響き、耳心地の良いシンフォプログレ・サウンドを描きつつ、
アコースティックな小曲など、素朴な味わいも覗かせる。メロウなギターの旋律とおおらかな歌メロで、
ゆったりとした叙情に包まれて、壮大過ぎない分のんびりと鑑賞できる。南米らしいシンフォプログレの好作だ。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・8 総合・7.5
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NARR 「Oxymore Dans La Chrysalide Des Reves」
フランスのサイケプログレバンド、ナールの2008年作
フルート奏者を含む4人編成で、うねりのあるベースを含むアナログ感あるアンサンブルに、
朗々としたヴォーカルを乗せ、フルートが怪しく鳴り響く、牧歌的なサイケロックを聴かせる。
ダウナーな味わいながらも、リズムチェンジなどのプログレらしい展開や神秘的な浮遊感に、
うっすらとしたシンセも加わった叙情的な部分も覗かせて、わりとのんびりと楽しめる。
6〜9分という大曲が主体だが、これという盛り上がりもなく、淡々とした怪しさが魅力といえば魅力か。
ドラマティック度・6 プログレ度・7 怪しさ度・8 総合・7
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EROC 「Eroc's Wolkenreisen」
ドイツのミュージシャン、エロックのソロコンピレーション。1998年作
Grobschnittのリーダーでドラマーとして活躍、本作は70年代から90年代までの楽曲を、2CDに収録。
序盤はやわらかなシンセと叙情的なギターで聴かせる、牧歌的なインストナンバーが続くので
優雅なサントラのような聴き心地であるが、80年代的なキャッチーなAOR風味もあったりと、
ドラムよりは、むしろシンセをメインにしたきらびやかなサウンドだ。Disc2では、いくぶん下世話で
演劇的な歌を乗せたアヴァンロックという感触で、クラウトロック的な味わいも。全34曲、140分強。
ドラマティック度・6 プログレ度・6 優雅度・8 総合・7
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5/20
JCライブに行こう!(142)

Magenta 「Songs from the Big Room」
イギリスのプログレバンド、マジェンタの2021年作
2020年に亡くなったウェールズのある熱心なファンに向けて作られたというEPで、内ジャケにも彼の写真がある。
新曲3曲に、同3曲の別ミックスを収録した、全43分。オルガンやエレピを含むシンセに、美しい女性ヴォーカル、
アコースティックを含むメロウなギターとともに聴かせる、優雅な叙情に包まれた英国らしいシンフォプログレサウンド。
しっとりとした2曲では、表現力を増したクリスティーナの歌声に、Tiger Moth Talesのピーター・ジョーンズが参加し、
エモーショナルなサックスの音色も素晴らしい。キャッチーな3曲めは、マジェンダらしいYESルーツの王道のナンバー。
よりオールドな味わいの別ミックスも味わいがあり、ラストのChinpan Aミックスは、エレクトロな感触で面白い。
メロディック度・8 プログレ度・8 優雅度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Big Hogg 「Pageant Of Beasts」
イギリスのプログレ・ジャズロック、ビッグ・ホッグの2021年作
2015年にデビューし、3作目。トロンホーン、トランペット、フルートという金管楽器を軽妙なアンサンブルに乗せて、
伸びやかな女性ヴォーカルに男性声も加え、サイケがかった浮遊感も含んだエキセントリックなジャズロックを聴かせる。
優美なフルートにエレピ、メロディックなギターフレーズも覗かせて、カンタベリー風の優雅さに包まれながら、
カヴァー曲の「Willow's Song」では、美しい女性ヴォーカルとともに、しっとりと素朴な叙情を描き出す。
楽曲は3〜5分前後と、プログレとしてはやや物足りないものの、優雅な英国ジャズロックが楽しめる。
ドラマティック度・7 ジャズロ度・8 優雅度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Greenslade 「2001 - Live」
イギリスのプログレバンド、グリーンスレイドのライブ。2001年作
鍵盤奏者のデイヴ・グリーンスレイドを中心に、1973年にデビュー、1975年までに4作を残して解散するが、
2001年に復活作「Large Afternoon」を発表、本作はそのメンバーを軸とした2001年のライブを収録。
同作からのナンバーを主体に、過去の楽曲も演奏。壮麗なツインキーボードをメインにした優雅なサウンドで、
随所にオルガンを含むきらびやかなシンセワークとともに、かつての楽曲もわりとキャッチーな感触だ。
シンセも兼ねるジョン・ヤングの歌声は、ジョン・ウェットンを思わせるようなジェントルな声質で、
英国らしい叙情ロックによくマッチしており、3rd収録の大曲「Joie De Vivre」なども古き良き味わいで楽しめる
ライブ演奏・8 プログレ度・7 優雅度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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SOFT FFOG
ノルウェーのジャズロック、ソフト・フォッグの2022年作
軽やかなドラムの上に叙情的なギターとうっすらとしたシンセを重ねた、優美なインストサウンドで、
ほどよくオールドロック寄りのギタープレイも覗かせる。リズムチェンジを含む屈折感のある展開で、
優美なエレピが響くフュージョン・ジャズロックと、ヴィンテージロックが同居したという聴き心地。
曲のタイトルを見ると「チュン・リー」「ザンギエフ」「ケン」…これは「ストリート・ファイターII」がテーマだったのか。笑
全4曲ながら、7〜9分という大曲ばかりで、オールインストながらも起伏に富んだジャズロックが楽しめる。
ラスト曲「ダルシム」はテクニカルな展開と、とぼけた味わいが合わさって、なかなかスリリングです。
ドラマティック度・7 ジャズロ度・8 優雅度・8 総合・8
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Laviantica 「The Experience」
イタリアのプログレバンド、ラヴィアンティカの2018年作
2013年にデビューし、2作目となる。2人のシンセ奏者にフルートも擁する5人編成で、
メロティックなギターの旋律にエレピを含むシンセを重ね、やわらかなフルートのも音色も加えて
優美なインストサウンドを聴かせる。8分、11分という、インストにしては長めの大曲も、
泣きのギターフレーズと細やかなシンセアレンジで、大味にならない繊細な叙情美に包まれる。
歌がないので、ドラマティックな盛り上がりは薄めであるが、耳心地の良いインストシンフォが楽しめる。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・8 総合・7.5
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CLEPSYDRA 「GAP」
スイスのプログレバンド、クレプシドラの2019年作
1991年にデビュー、本作は18年ぶりとなる復活の5作目で、のっけから10分を超える大曲が連なる。
わりとハードなギターに朗々と歌い上げるヴォーカル、きらびやかなシンセワークを重ねて、
重厚なハード・シンフォニックロックを聴かせる。いくぶん翳りを帯びたヨーロピアンな叙情に
随所に抜けの良いメロウなギターフレーズを織り込みつつ、ドラマティックなサウンドを構築する。
後半には15分におよぶ優美な大曲もあり、18年をへてもバンドとしての健在ぶりを示している。
全62分の力作ながら、ラストまで優雅な耳心地に包まれる。これぞシンフォプログレですな。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 叙情度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Demon Thor 「Anno 1972 / Written In The Sky」
スイスのプログレバンド、デモン・トールの2022年作
シンセ奏者のトミー・フォートマンを中心に、70年代に2作を残したバンドで、本作は1973年作「Written In The Sky」全曲に
1972年のデビュー作「Anno 1972」からの4曲を加えたコンピレーション。優美なピアノにメロトロンが重なり、
叙情的なギターと朗々としたヴォーカルで、クラシカルな優雅さに包まれたシンフォプログレを展開。
随所に女性ヴォーカルも加わったゴージャスな味わいと、70年代初頭のアートロックの牧歌性が同居して
ほどよくキャッチーな聴き心地だ。18分の大曲のあとはわりポップな感触ではあるが、1st収録のナンバーは、
オルガンが鳴り響くいくぶんサイケがかったウェットな空気感とともに、男女Voのアートロックが楽しめる。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 叙情度・8 総合・7.5
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Mourning Knight
アメリカのアートロック、モーニング・ナイトの2021年作
2人組のユニットで、アコースティックを含む叙情的なギターにオルガンを含む優美なシンセを重ね、
マイルドなヴォーカルとともに、70年代を思わせるオールドなシンフォプログレを聴かせる。
女性コーラスも加わった牧歌的なヴォーカルメロディと、随所にリリカルな叙情美も覗かせつつ、
アナログ的な録音も含めて、Moody BluesBarclay James Harvestあたりに通じる古き良きサウンドが味わえる。
13分を超える大曲を、1曲目とラストに配するなどドラマティックな構成と、プログレらしい展開力も随所に覗かせる。
ドラマティック度・8 古き良きプログレ度・8 叙情度・8 総合・8

Orpheus Nine 「Transcendental Circus」
アメリカのプログレバンド、オルフェウス・ナインの2017年作
きらびやかなシンセとマイルドなヴォーカルで、アメリカらしいキャッチーな味わいのシンフォプログレを聴かせる。
オルガンやムーグなどのプログレらしいシンセワークと、リズムチェンジを含む緩急ある展開力で、
ほどよいハードさと抜けの良いメロディアス性が同居した、ドラマティックな構築センスも覗かせる。
21分というタイトル組曲では、優雅なインストパートをメインにしつつ、シネマティックな世界観も感じさせ、
ラストの10分の大曲も、メリハリある展開の中に、オランダのCHRISにも通じる美しいシンセアレンジが光る。
シンフォニックロックとして高品質な内容であるが、楽曲ごとの明快な盛り上がりがもう少しあれば傑作だったろう。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 優雅度・8 総合・7.5
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Finneus Gauge 「One Inch of the Fall」
アメリカのプログレバンド、フィネウス・ガウジの1999年作
ECHOLYNのシンセ奏者を中心にしたバンドで、1997年作に続く2作目。いくぶんハードなギターに
美麗なシンセワーク、コケティッシュな女性ヴォーカルを乗せて、テクニカルなハードプログレを聴かせる。
ProgMetal寄りのスリリングな演奏は、LEGER DE MAINなどにも通じるが、こちらはジャズロック的な優雅さも覗かせ
ソロでも活躍するスコット・マッギルのギターも、ハードなプレイから軽やかなフレーズまで華麗に弾きこなしている。
ドラムとベースもなにげに技術が高く、軽妙なアンサンブルといくぶんアヴァンギャルドな構築力とともに、
プログレ・ジャズロックをシンフォニックに融合したというべき、独自のサウンドを描く力作である。
テクニカル度・8 プログレ度・8 優雅度・9 総合・8
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Mystery 「Theatre Of The Mind」
カナダのプログレバンド、ミステリーの1996年作
1992年にEPデビュー、本作は1stフルアルバムで、長らく廃盤だったが、2018年に再発された。
きらびやかなシンセにほどよくハードなギター、ハイトーンのヴォーカルとともに、プログレハード風味の
キャッチーなシンフォニックロックを聴かせる。アコースティックギターや優美なフルートなど、繊細な叙情美と
メロディアスハード的でもあるストレートな爽快さが同居していて、本作の時点でもサウンドの魅力は充分。
プログレ的な展開力はさほどないが、確かな演奏力で厚みのあるシンフォニック・ハードが楽しめる。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 叙情度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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5/6
GWはプログレで(131)

Cirkus 「Page 12」
イギリスのプログレバンド、サーカスの2021年作
1973年に「One」という1作を残し、90年代に一時的に再結成するも解散したバンドが、2017年に復活、本作は復活後3作目となる。
オリジナルメンバーはシンセのみ、フルート、サックス奏者を含む7人編成で、優美なシンセワークにロックなギターを重ね、
やわらかなフルートやサックスが鳴り響く。ジェントルなヴォーカルも加わると、英国らしい牧歌的な叙情に包まれる。
曲によってはいくぶんモダンなアレンジも覗かせつつ、基本は優雅で素朴な味わいで、シンフォニックというよりは
英国的な哀愁の美学を感じさせる。繊細なピアノやフルーの音色、アコースティックギターなどもよい味わいで、
楽曲には派手さはないものの、優雅な大人の英国プログレというような味わい深い好作である。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 英国の叙情度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Three Colours Dark 「Love's Lost Property」
イギリスのシンフォニックロック、スリー・カラーズ・ダークの2021年作
元KARNATAKA、The Reasoningの女性シンガー、レイチェル・コーエンと、元KARNATAKA、PANIC ROOMのシンセ奏者、
ジョナサン・エドワーズのユニットで、2020年作に続く2作目。艶やかなヴァイオリンのイントロから、やわらかなシンセに
メロウなギター、しっとりとした女性ヴォーカルを乗せて、翳りを帯びた叙情のシンフォニックロックを描いてゆく。
オルガンを使ったオールドな味わいや、反対にいくぶんデジタルなアレンジも覗かせつつ、あくまで女性声をメインにした
ストレートな作風で、初期のKARNATAKAALL ABOUT EVEにも通じる、優雅なメロウ・ロックという耳心地でも楽しめる。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 女性Vo度・8 総合・8
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BLACKFIELD
イギリスのポストプログレ、ブラックフィールドの2004年作
Porcupine Treeのスティーブン・ウイルソンとイスラエル出身のミュージシャン、アビブ・ゲフィンによるユニットで、
アコースティックギターのつまびきに、マイルドな二人のヴォーカルを重ね、ほどよくハードなギターとシンセも加えて
優しい翳りを帯びた叙情を描き出す。ときにメロトロン風のシンセが、シンフォニックに鳴り響き、
モダンとヴィンテージが同居したような耳心地で、優美なピアノやストリングスの音色もしっとり美しい。
楽曲は3〜4分前後とわりとシンプルで、全37分というのも少し物足りないが、大人の哀愁に包まれた好作だ。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 叙情度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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MOONSHOT「WORLDS OF YESTERDAY」
イギリスのプログレバンド、ムーンショットの2020年作
No-ManTim Bownessによるプロジェクトで、1968年から活動する架空のバンドの、1971〜1992年までの楽曲集という設定で、
ジャケットには架空のジャケ、レコードなどのデザインが散りばめられている。サウンドの方は、優雅なアコースティックギターから
オルガンやムーグシンセが鳴り響く、いかにも70年代を意識したようなアートロック風で、いくぶんこもり気味の音質も確信犯的。
ヴォーカルの歌いまわしは、ときにピーター・ガブリエル的で、GENESISへの憧憬も設定に入っているのかもしれない。
80年代設定の曲はわりとキャッチーで、90年代設定の音源はシンセサウンドがよりシンフォニックになっているという凝りよう。
未発曲設定で作られたにしては、シンフォプログレとして出来が良すぎるというのがツッコミどころか。ティム・ボウネスの才能を再発見。
ドラマティック度・8 シンフォプログレ度・8 叙情度・8 総合・8
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Led Bib 「It's Morning」
イギリスのプログレ・ジャズロック、レッド・バイブの2019年作
2005年にデビュー、8作目となる。2人のサックス奏者に女性Voを含む6人編成で、やわらかなエレピとシンセに
サックスやヴァイオリンが絡み、美しい女性ヴォーカルの歌声を乗せて、優雅で軽妙なジャズロックを聴かせる。
フリーキーなサックスが鳴り響く、スリリングな即興性とアヴァンギャルドな味わいに、今作では女性声による
コケティッシュな雰囲気が加わって、ときにArt Bearsにも通じるような妖しさとともに、メリハリあるサウンドを描いている。
全40分と、前作に比べるとわりとあっさりしているが、スッキリとした潔さで聴き疲れしない。英国アヴァン・ジャズロの逸品。
ジャズロック度・8 プログレ度・8 優雅でアヴァンギャル度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Larsen & The Coloured Dreams 「Bucket List」
ノルウェーのロックバンド、カラード・ドリームスの2022年作
RUPHUSのギター、キエル・ラーセンを中心としたバンドで、オールドな味わいのギターに枯れた味わいのヴォーカルで、
ヴィンテージなロックサウンドを聴かせる。シンセは入らず、女性ヴォーカルを加えたエモーショナルな優雅さと
60〜70年代ルーツのユルめのおおらかさで、のんびりとしたギターの旋律も含め、いかにもレイドパックした聴き心地。
プログレというよりは普通のオールドロックであるが、女性声メインのナンバーでは北欧らしい涼やかな雰囲気に包まれ、
叙情的なギターメロディも随所に耳心地よい。とにかく渋めのヴィンテージロックなので、まったりと鑑賞です。
ドラマティック度・7 プログレ度・6 ヴィンテージ度・8 総合・7.5
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RUPHUS 「Manmade」
ノルウェーのプログレバンド、ルーファスの1979年作
1973年にデビュー、本作は6作目でラスト作。軽やかなドラムにエレピやオルガンなどのシンセ、
しっとりとした女性ヴォーカルを乗せて、優雅でスタイリッシュなフュージョン・ロックを聴かせる。
グルーヴィなベースとタイトなドラムを軸にした高い演奏力と、メロウなギターフレーズを奏でるギター、
きらきらきとしたシンセも含めて、やはり北欧のバンドらしい透明感のある叙情に包まれる。
ときにエモーショナルに歌い上げる女性ヴォーカルも魅力的で、10分を超える大曲は、
ゆったりとした繊細なシンフォプログレとしても楽しめる。バンド解散が惜しまれる好作です。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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The Samurai of Prog 「The Spaghetti Epic 4」
フィンランドのプログレユニット、サムライ・オブ・プログの2022年作
MUSEAレーベルのオムニバスとして、これまでに3作出ていた、イタリア西部劇をテーマにしたアルバムの4作目。
マルコ・ベルナルド、キンモ・ポルスティを中心に、KAYAKのギターや、Museo Rosenbachのステファノ・ガリフィ、
ラファエル・パシャ、デヴィッド・メイヤーズなど多数のゲストが参加。優美なシンセにヴァイオリンも鳴り響き、
渋めのギターとともに哀愁を感じさせるシンフォプログレを構築。20分を超える大曲も、わりとゆったりとした展開で、
イタリア語のヴォーカルとともに、往年のヴィンテージなイタリアンロックに寄せた雰囲気が味わえる。
アコースティックギターにフルートが美しい叙情ナンバーやクラシカルなピアノ曲など、濃密すぎない繊細さもGood。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 イタリア度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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LUCA ZABBINI 「ONE」
イタリアのミュージシャン、ルカ・ザッビーニの2021年作
Barock Projectを率いるシンセ奏者で、本作は初のソロ作品。ギター、ベース、ドラム、ヴォーカルを一人でこなし、
クラシカルなピアノとシンセに、自身のマイルドなヴォーカルを乗せて、優雅なシンフォニックロックを聴かせる。
アコースティックギターによる素朴な味わいや、ピアノとオルガンをバックにした、QUEENのような歌ものナンバーなど、
プログレというよりはキャッチーなオールドロックという感じで楽しめる。作風は異なるが、クラシックを基盤に優雅なセンスで
楽曲を構築するところは、ROBBY VALENTINEにも通じるかもしれない。クラシカルなピアノナンバーもさすがの説得力。
シンセ奏者のソロではあるが、全体的には優しい歌もの系ロックという感じで、個人的にはもう少しマニアックな側面も聴きたかった。
ドラマティック度・7 プログレ度・6 優雅度・8 総合・7.5
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RICCARDO ROMANO LAND 「SPECTRUM」
イタリアのミュージシャン、リカルド・ロマノによるプロジェクト。2022年作
RANESTRANEのシンセ奏者でもあるミュージシャンで、ソロとしては2017年作に続く2作目となる。
芸術家の人生を描くようなコンセプト作で、優美なシンセワークにマイルドな歌声を乗せて、しっとりとした叙情に包まれた
繊細なシンフォニックロックを展開。MARILLIONのスティーブ・ロザリーがゲスト参加、随所にメロウな泣きのギターフレーズや、
エモーショナルのヴォーカルの表現力も見事で、シンフォニックなシンセとともにじわじわと楽曲を盛り上げてゆところは、
マリリオンなどのファンにも楽しめるだろう。流れるような組曲方式で、繊細なドラマ性を描くように楽曲を連ねてゆく。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 優美度・9 総合・8.5 過去作のレビューはこちら
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Quel Che Disse Il Tuono 「Il Velo Dei Riflessi」
イタリアのプログレバンド、クエル・チェ・ディッセ・イル・トゥオノの2020年作
Unreal Cityのギターを中心としたバンドで、メロトロンやオルガン、ムーグを含むシンセにメロウなギターの旋律、
イタリア語のヴォーカルとともに、ヴィンテージな味わいの幻想的なシンフォプログレを聴かせる。
やわらかなフルートの音色や優美なピアノによる、しっとりとした叙情を描くパートも覗かせつつ、
10分前後の大曲を主体に、往年のイタリアンプログレを受け継いだ、翳りを帯びた幻想性が味わえる。
鳴り響くメロトロンに、ほどよくハードなギターを加えた緩急ある展開力も魅力的。これぞイタプロという逸品だ。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 イタリア度・9 総合・8
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Doracor 「Passioni Postmoderne Di Un Musicista Errante…」
イタリアのシンフォニックロック、ドラコールの2016年作
シンセ奏者のコラドセ・サルデラを中心としたプロジェクトで、1997年にデビュー、本作は5年ぶりとなる9作目。
アメリカの医学博士、ロバート・ランザの理論、世界の全ては人間の意識の産物であるという提唱をもとにした
2枚組のコンセプト作で、シネマティックなSEのイントロから、艶やかなヴァイオリンが鳴り響き、
きらびやかなシンセワークにイタリア語のヴォーカルを乗せて、優雅なシンフォプログレを展開する。
ときにオーケストラアレンジや、やわらかにサックスが鳴り響き、泣きの叙情ギターが甘美に奏でられる。
Disc2のラストは14分の大曲で、軽やかなアンサンブルとシンフォプログレの優美さが同居した聴き心地。
La Maschera Di Ceraのアレサンドロ・コルヴァグリア、Labyrinthのロベルト・ティランティなどがゲスト参加。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 優美度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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4/21
MEDEAParzivals Eyeは大穴的好作(119)


Mike Oldfield 「Live Knebworth 1980」
マイク・オールドフィールドのライブ音源。2020年作
かつて「The Essential Mike Oldfield」のタイトルで映像でリリースされていた、1980年イギリスでのライブ音源。
Pierre Moerlen' Gongのメンバーを中心にした編成で、女性シンガーに、マギー・ライリーも参加。
1979年のシングル「Guilty」で軽快にスタート。きらびやかなシンセにサックスが鳴り響くゴージャスな聴き心地で、
マイクのギターワークも流麗に響き渡る。「チューブラー・ベルズ」もライブ用にアレンジされ、ビート感のあるノリと、
優美な叙情パートとのメリハリで、アルバムとはずいぶん印象が変わる。「オマドーン」パート1の美しさと
ダイナミックな展開に、後半のピエール・ムーランのドラムソロなど聴きどころも多い。音質もまずまず良好。
ライブ演奏・8 プログレ度・7 音質・7 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Robin A Smith 「Tubular Bells: Reimagined - 50th Anniversary Recording」
イギリスのミュージシャン、ロビン・A・スミスの2022年作
本作は、MIKE OLDFIELDの「Tubular Bells」50周年記念として大胆にカヴァーした作品で、
美麗なシンセとオーケストラアレンジに、叙情的なギターの旋律を重ね、美しい女性スキャットも加わって
壮大にして優美なシンフォニー・ロックを描いてゆく。原曲にあった英国らしい牧歌性と繊細な美意識を残しつつ、
よりダイナミックにアレンジを加えたサウンドは、まさに現代版チューブラー・ベルズといったところ。
楽器紹介のパートはさすがにオリジナルのアナログ感に及ばないが、聴き比べて楽しむのも一興だ。
ドラマティック度・8 オールドフィール度・8 優美度・9 総合・8 
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LES PENNING & ROBERT REED 「THE LAST BELLS OF WINTER」
イギリスのミュージシャン、レス・ペニングとロバート・リードのユニット。2022年作
Mike Oldfieldの名作「オマドーン」に参加したリコーダー奏者と、MAGENTAのロバート・リードによるコラボ作で、
本作はクリスマスをコンセプトにした全23分のミニアルバム。素朴なリコーダーの音色に、アコースティックギターやマンドリン、
シンセアレンジを重ねて、優雅なトラッド・シンフォを聴かせる。ときにMike Oldfieldばりのギターの旋律も覗かせつつ、
マンドリンによるトレモロの旋律や、優しいリコーダーとピアノの響きで、しっとりと繊細な耳心地に包まれる。
小曲を連ねたインストによる全7曲なので、ボリュームの物足りなさはあるが、英国らしい叙情美が味わえる逸品です。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優美度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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The Tangent 「Songs From The Hard Shoulder」
イギリスのプログレバンド、タンジェントの2022年作
2003年にデビュー、アンディ・ティリソン率いるバンドの通算12作目。ヨナス・レインゴールド、ルーク・マシン、スティーブ・ロバーツ、
テオ・トラヴィスと、前作同様のメンバーで、メロウなギターにオルガンやエレピなどのヴィンテージなシンセ、やわらかなフルートや
サックスの音色に、マイルドなヴォーカルを乗せて、優雅な大人のシンフォプログレを展開。17分、17分、21分という大曲を主体に、
ジャズロック寄りの軽やかなアンサンブルからアコースティックによるパートなども含め、各メンバーの技量の高さでじっくりと楽しめる。
渋みのある歌パートから、きらびやかなシンセとともにプログレらしい展開力を見せる大曲はさすがのセンス。これぞ大人の英国シンフォです。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 優雅度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Tim Bowness 「Butterfly Mind」
イギリスのミュージシャン、ティム・ボウネスの2022年作
No-Man、Henry Foolなどでも活躍するミュージシャンで、本作にはイアン・アンダーソン、ピーター・ハミルなどがゲスト参加、
従来の繊細な歌もの系ポストプログレの路線から、より多様なアレンジを含んだ作風となっている。
躍動的なアンサンブルにマイルドなヴォーカルを乗せた、キャッチーな味わいと翳りを帯びた叙情に
エレクトロなモダンさが同居し、フルートやサックスを取り入れた優雅さや、ときにいくぶんハードなギターによるロック感など、
わりと振り幅のあるアレンジを見せている。しっとりとした小曲や、従来のエモーショナルな歌もの路線も残しながら、
新たなセンスを加えた好作だ。Disc2には、全曲の別バージョンを収録。よりデジタルなアレンジで聴き比べるのもよし。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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MEDEA 「A Fate Symphony」
オランダのシンフォニックロックオペラ、メデアの2022年作
CASUAL SILENCEのギタリストによるプロジェクトで、2002年にデビュー。4作目となる本作は、16世紀オランダを舞台に、
タイムループ・サスペンス的な壮大なオリジナルストーリーに基づいたロックオペラで、KAYAKXystusDay SixZinatra
Praying Mantisなどのシンガーをはじめ、多数の男女Voやゲストが参加、きらびやかなシンセにハードかつ叙情的なギターを重ね、
配役ごとの男女ヴォーカルで厚みのあるサウンドを構築する。ProgMetal的な展開力や、AYREONにも通じるスケール感ともに、
随所に優美なフルートの音色や、オルガンを含むシンセとメロウなギターによる、キャッチーなメロディアス性も耳心地よい。
女性声メインのナンバーは華麗なシンフォニックメタル的でもあり、流れのあるストーリー性でハードなシンフォプログレを描く力作だ。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 壮麗度・8 総合・8
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Parzivals Eye 「Fragments」
RPWLのベース、クリス・ポストルによるプロジェクト、バーツィヴァルズ・アイの2009年作
のっけから13分という大曲で、コンセプチュアルな雰囲気のイントロから、叙情的なギターにうっすらとしたシンセアレンジ
マイルドなヴォーカルで大人のシンフォニックロックを展開。ヨギ・ラング(RPWL)、クリスティーナ・ブース(MAGENTA)、
アラン・リード(PALLAS)などがゲスト参加、男女ヴォーカルによる優雅な味わいに包まれる。曲によってはいくぶんモダンな味わいや、
アコースティックを用いた優美なパート、ハードギターによる重厚な展開などメリハリある作風で、女性Voメインのナンバーは、
MAGENTAに通じる雰囲気もある。キャッチーでスタイリッシュなシンフォプログレが楽しめる、全78分という力作です。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 優雅度・8 総合・8
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Parzivals Eye 「Defragments」
RPWLのベースによるプロジェクト、バーツィヴァルズ・アイの2015年作
6年ぶりとなる2作目で、前作に続き、MAGENTAのクリスティーナ・ブースが参加、1曲目が12分という大曲で、
オルガンなどのやわらかなシンセとメロウなギター、マイルドなヴォーカルで翳り帯びたシンフォニックロックを展開。
前作以上にヴィンテージなプログレ感が増していて、クリスティーナの歌声が加わると、もはやMAGENTAのよう。
YES「Long Distance」のカヴァーもアコースティックギターと女性ヴォーカルの歌声で、なかなか優美な仕上がりだ。
ラストは16分という大曲で、メロウな泣きのギターをたっぷりと盛り込んでじわじわと盛り上げる。全69分の力作。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 優雅度・8 総合・8
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Gazpacho 「Fireworking at St.Croix」
ノルウェーのポストプログレ、ガスパチョのライブ。2022年作
2003年にデビュー、北欧ポストプログレを代表するバンドで、本作は2020年のコロナ化で配信された無人ライブの模様を収録。
ヴァイオリン奏者を含む6人編成で、2020年作「Fireworker」完全再現を含むセットを演奏。しっとりとしたピアノとシンセに
マイルドなヴォーカル、優雅にヴァイオリンが鳴り響き、叙情的なギターとともに、緩急ある19分の大曲を構築してゆく。
後半には、過去作からのナンバーも演奏。基本的にはアルバム通りの再現性なので、インパクトは薄めながら、
じっくりとその翳りを帯びた叙情サウンドが味わえる。全75分、安定の好ライブ作です。
ライブ演奏度・8 プログレ度・7 優美度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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MYTHOPOEIC MIND 「HATCHLING」
ノルウェーのプログレバンド、ミソポエイク・マインドの2021年作
2019年にデビュー、2作目となる本作は女性Voをフロントとした編成となり、オルガンやムーグを含むシンセに
サックスやトランペットの音色が重なり、女性ヴォーカルの歌声とともに、優雅で軽妙なサウンドを聴かせる。
インストメインの曲では、軽やかなリズムやブラスの響きとともに、カンタベリー風味のジャズロックに近づいたり
わりとユルめの作風で、スリリングな展開などはさほどない。ラストの大曲ではアコースティックを含むギターに、
やわらかなシンセにサックスの音色、美しい女性Voを乗せて、ゆったりと牧歌的な空気に包まれる。全5曲43分。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・8 総合・7.5
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Subspace Radio「AIKA」
フィンランドのプログレバンド、サブスペース・レイディオの2022年
2004年にデビュー、本作は15年ぶりとなる3作目。壮麗な雰囲気のイントロから、わりとハードなギターにシンセを重ね、
伸びやかな女性ヴォーカルも加えて、随所にProgMetal的なパートも含んだ、展開力のあるシンフォプログレを展開する。
3曲目からは男性ヴォーカルも加わって、モダンなハードプログレを基本にしつつ、曲によっては男女Voを乗せた
シンフォニックメタル風味から、流麗なギタープレイやアグレッシブなメタル感触も覗かせた、ボーダーレスな作風で楽しめる。
オルガンやピアノとともに軽やかに展開する、アヴァンプログレ的なナンバーなどもあり、全体的にもとらえどころがないが、
このごった煮感こそが面白いのかもしれない。ラストは12分の大曲で、先の読めない緩急ある展開でじっくりと聴かせる。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 ごった煮度・8 総合・7.5
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Hadal Sherpa
フィンランドのプログレバンド、ハダル・シェルパの2017年作
うっすらとしたシンセにやわらかなフルートの音色、メロウなギターの旋律を乗せて、
優雅でスペイシーなインストサウンドを描く。トレモロのギターなども織り込みつつ、
ゲストのフルートが活躍するアッパーなサイケロックから、アラビックな旋律を乗せたナンバー、
軽快なアンサンブルにシンフォプログレ的な叙情性が同居したナンバーなど、オールインストながら多様な味わいで
9分、11分という大曲も優雅な演奏で楽しめる。同郷の先輩、KINGSTON WALLなどに通じるセンスを感じさせる好作。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・8 総合・7.5
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Pekka Pohjola 「Jokamies Everyman」
フィンランドのミュージシャン、ペッカ・ポーヨラの1983年作
優美なシンセを80年代的なビート感と融合さ、初期のジャズロック路線からモダンに深化したサウンドを聴かせる。
3〜5分前後の小曲を主体にした作品で、メロウなギターにピアノが絡む、北欧らしい哀愁の叙情性も覗かせながら、
シンフォニックなシンセアレンジが優雅に包み込む。オールインストでシンセとベースみの曲も多いので、
ゆったりと優美に楽しめる一方、スリリングなアンサンブルを期待すると、いくぶん肩透かしとなるだろう。
ペッカの作品ではわりと異質であるが、THE ENID的なクラシカルなシンフォニックロックというべき好作品だ。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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MAGICK BROTHER & MYSTIC SISTER
スペインのサイケロック、マジック・ブラザー・アンド・ミスティック・シスターの2020年作
バンド名からしてGONGからの影響を感じさせるが、サウンドの方も、エレピやオルガンを含むシンセに、
フルートが妖しく鳴り響き、スキャット的な女性ヴォーカルを乗せた、スペイシーな浮遊感に包まれる。
叙情的なギターにンセが重なるあたりは、ときにPINK FLOYD的であるが、神秘的な世界観の一方で、
曲によってはカンタベリー的な優雅な感触も覗かせる。楽曲的には3〜5分前後のものが中心で、
これという展開はないのだが、70年代ルーツのヴィンテージなユルさに心地よく浸れる好作だ。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 妖しくサイケ度・8 総合・7.5
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4/15
PTなどを再評価(105)


VA /THE MANY FACES OF EMERSON LAKE & PALMER
イギリスのプログレバンド、EL&Pことエマーソン・レイク・アンド・パーマーのCD3枚組アンソロジー。2014年作
Disc1は「BEFORE & AFTER ELP」」と題し、THE NICEをはじめメンバーがELP結成前に在籍したバンド関連の楽曲を収録。
「ロンド」などのナイスの楽曲は、やはりELPのプロトタイプとして聴け、カール・パーマーが在籍したATOMOC ROOSTER
オルガン入りのブリティッシュ・ハードロックで、パーマーの手数の多いドラムはさすが。ピート・シンフィールドの楽曲には
グレッグ・レイクがヴォーカルで参加していて、マイルドな歌声を乗せた、初期クリムゾンにも通じる牧歌的な叙情に包まれる。
Disc2は「MANTICORE RECORDS & INFLUENCES」、PFMBANCOなど70年代のマンティコアレーベル所属バンドや、
エマーソンが影響を受けたアーティストの楽曲を収録。PFMの素晴らしさは言うに及ばず。Keith Christmasなどはだったが、
サイケな英国フォークロックでよい感じだし、黒人オルガン奏者、ジミー・スミスの11分におよぶジャズナンバーなども興味深い。
Disc3は「THE ORIGINALS」と題し、ELPが取り上げたクラシックやジャズのオリジナル楽曲を収録。「聖地エルサレム」や
「庶民のファンファーレ」「Hoedown」「展覧会の絵」など、馴染みのあるクラシック曲をまとめて聴けるのが良いですね。
ELPのルーツ度・9 プログレ度・7 新鮮度・8 総合・8 ELPのレビューはこちら
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ESP Project「Anarchic Curves」
イギリスのプログレバンド、ESPプロジェクトの2022年作
ギター&シンセのトニー・ロウを中心にしたプロジェクトの6作目で、オルガンを含むやわらかなシンセワークに
マイルドなヴォーカルを乗せて、しっとりと幻想的な浮遊感に包まれたシンフォプログレを聴かせる。
本作からドラムとVoが交替していて、Voのピーター・コイルは歌詞のコンセプトも担うなど重要な役割を果たし、
その優しい声質はポストプログレ的でもある繊細な味わいになっている。ジョン・レノンへ捧げた9分の大曲など、
メロウなギターと優美なシンセによる叙情豊かな作風から、モダンなアレンジを取り入れたナンバーなど、
なかなかバラエティに富んでいて、ラストの9分のシンフォニックロック大曲まで耳心地よく味わえる。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 叙情度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Porcupine Tree 「The Sky Moves Sideways」
イギリスのプログレバンド、ポーキュパイン・トゥリーの1995年作
3作目となる本作は、バンドとしてのPTをいよいよ強固にした作品で、コリン・エドウィン、ギャビン・ハリソンなどが参加
のっけから18という大曲で幕を開け、うっすらとしたシンセにメロウなギター、マイルドなヴォーカルとともに
ゆったりとした浮遊感に包まれた、PINK FLOYDルーツのサウンドを描く。テオ・トラヴィスのフルートが鳴り響き、
スペイシーなシンセが重なったサイケな感触から、アコースティックギターなどの繊細な叙情も同居していて、
のちのポストプログレの先駆けのような雰囲気も覗かせる。小曲を挟んで、ラストはタイトル曲の後半となる16分の大曲で、
優美なシンセにフリーキーにギターが鳴り響き、ポストロック的なスケール感に、女性スキャットなども加わった優雅な味わい。
Disc2には、タイトル曲を34分につなげた長大なナンバーやインプロ曲などを収録、聴き応えのある内容です。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 フロイ度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Porcupine Tree 「Coma Divine」
イギリスのプログレバンド、ポーキュパイン・トゥリーのライブ。1997/2004年作
1997年イタリア、ローマでのライブを収録。CD2枚組で再発されたバージョンで、4th「Signify」からのナンバーを主体に、
叙情的なギターにシンセを重ね、アルバム以上に躍動的なアンサンブルを描く。スティーブン・ウィルソンのマイルドな歌声に、
リチャード・バルビエリのうっすらとしたシンセもセンス良く、3rd「The Sky Moves Sideways」からの大曲も含めて、
ほどよいハードさとPINK FLOYD的な浮遊感で、翳りを帯びた独自のPTサウンドをダイナミックに構築してゆく。
Disc2は、ゆったりとしたナンバーが主体であるが、ラスト曲は2nd収録のサイケハードなナンバーで締めくくる。
ライブ演奏・8 プログレ度・7 フロイ度・8 総合・8
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Porcupine Tree 「Octane Twisted」
イギリスのプログレバンド、ポーキュパイン・トゥリーのライブ。2012年作
2010年のツアーから、アメリカとイギリスでのステージを2CDに収録。Disc1は、2009年作「The Incident」完全再現で
ギャヴィン・ハリソンの巧みなドラムにほどよくハードなギターと、スティーヴン・ウィルソンのマイルドなヴォーカルで、
翳りを帯びたサウンドを描いてゆく。叙情的なギターにうっすらとしたシンセで、12分の大曲なども耳心地よく、
確かな演奏力とともに、ラスト曲までコンセプト的な流れでじっくりと味わえる。Disc2は、過去作品からのナンバーで、
10分前後の大曲を主体に、適度にハードでテクニカルなパートも覗かせながら、スタイリッシュなモダンプログレを聴かせる。
ライブ演奏・8 スタイリッシュ度・8 叙情度・8 総合・8
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Crippled Black Phoenix 「Great Escape」
イギリスのプログレ・ドゥームロック、クリップルド・ブラック・フェニックスの2018年作
2007年にデビュー、プログレ、サイケ、ドゥーム、ポストロックなどを融合した独自の世界観で、本作は9作目あたり。
全73分のコンセプト作品で、うっすらとしたシンセに語りを含んだイントロから、ほどよくハードなギターに
マイルドなヴォーカルを乗せて、ゆったりと叙情的で翳り帯びたポストプログレ・サウンドを聴かせる。
ザラついたロック感触を残しながら、PINK FLOYD的な優雅さとミステリアスなスケール感に包まれ、
女性声を加えてメランコリックな叙情美も覗かせる。ラストは2パートに分かれた、計20分のタイトル曲で、
しっとりとした歌もの感からトランペットなども重ねた雄大なポストロック感触に、シンフォプログレの優美さで盛り上げる。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 ミステリアス度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Crippled Black Phoenix 「Banefyre」
イギリスのプログレ・ドゥームロック、クリップルド・ブラック・フェニックスの2022年作
11作目の本作は、CD2枚組のミュージカル風コンセプト大作。奇妙な詠唱のようなイントロから、
ドゥーミィなギターに女性声を含む魔女めいたヴォーカルを乗せて、妖しいドゥームロックを展開する。
今作では、ヘヴィなギターが重厚なサウンドを描きつつ、随所に美しい女性ヴォーカルとともに、
メランコリックなゴシック・ドゥーム的な空気感に包まれ、曲によってはAnathemaなどを思わせる。
トレモロのギターやトランペットなどが優雅な叙情をかもしだし、全体的にはドゥーム寄りの作風ながら、
Disc2では10分を超える大曲を連ねて、ゆったりとダークな物語的な流れで楽しめる。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 メランコリック度・8 総合・8
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Tony Patterson, Doug Melbourne 「The Devied」
イギリスのミュージシャン、トニー・パターソンとダグ・メルボルンの2019年作
ReGenesisのメンバー2人によるユニットで、デジタルなリズムにうっすらとしたシンセ、マイルドなヴォーカルを乗せた
しっとりとした翳りを帯びたサウンドを聴かせる。Steven Wilson以降の世界観というべき薄暗いポストプログレに、
シンフォルーツの叙情的なギターや優美なピアノを含むシンセアレンジ、女性コーラスなども加えた優雅な味わいで、
ゆったりとした耳心地の良さに包まれる。楽曲は4〜6分前後で、派手な展開などはないが、
美しいシンセの重ねと優しい歌声で、じわじわと繊細な叙情美を味わえる好作です。
ドラマティック度・7 プログレ度・6 叙情度・8 総合・7.5
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Tony Patterson, Doug Melbourne 「Dark Before Dawn」
イギリスのミュージシャン、トニー・パターソンとダグ・メルボルンの2022年作
このコンビの2作目となる本作は、のっけからオルガンが鳴り響き、軽快なリズムとキャッチーなヴォーカルメロディで
優美なシンフォニックロックを展開。叙情的なギターの旋律とともに、前作に比べてしっかりとロックのノリがあって、
YES系のシンフォプログレとしても楽しめる。いくぶんデジタルなアレンジやアコースティックギターとシンセによる
繊細なナンバーなど、モダンとヴィンテージの融合された聴き心地で、ゆったりと鑑賞できる逸品です。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 叙情度・8 総合・8
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MAX HUNT 「HOPE」
イギリスのミュージシャン、マックス・ハントの2021年作
Fragileを率いるマルチミュージシャンのソロで、ギター、ベース、ドラム、シンセ、ヴォーカルと全パートをこなしている。
オルガンを含むプログレらしいシンセに叙情的なギターとジェントルなヴォーカルで、YESをルーツにした
優雅でキャッチーなサウンドを聴かせる。一方では、モダンなビート感のポストプログレ風の味わいもあり、
歌もの的なポップな聴き心地から、しっとりとしたシンセによるアンビエントなナンバーなどもはさみつつ、
ラスト2曲は9分の大曲が続き、スリリングな展開は希薄ながら、YES系のシンフォプログレが楽しめる好作。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・8 総合・7.5
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M-OPUS 「ORIGINS」
アイルランドのプログレバンド、エム・オパスの2019年作
マルチプレイヤーのジョナサン・ケイシーを中心としたトリオ編成で、2015年にデビューし、2作目となる。
本作は1978年作品という設定(?)の、CD2枚組の大作で、男女6人のシンガーを配役にしたロックオペラ作品。
シンセとナレーションによるイントロから、ジェントルなヴォーカルとともにノリのよいロック感触に包まれつつ、
スペイシーでモダンなアレンジや、叙情的なギターにメロトロンやオルガンも加わるなど、ヴィンテージなプログレ感と
スタイリッシュなポストプログレが同居、語りによるストーリーを織り込んだシネマティックな味わいで進んでゆく。
楽曲ごとの盛り上がりなどは薄いので、CD2枚全135分という長尺感は気の短い方には向かないかもしれないが、
CD2ラストの23分という大曲では、PINK FLOYDルーツのメロウなシンフォニックロックが味わえる。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 スタイリッシュ度・8 総合・7.5
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FERNANDO PERDOMO 「Out to Sea 4」
アメリカのミュージシャン、フェルナンド・ペルドモの2022年作
叙情ギターインスト・シンフォシリーズの4作目で、今作もメロウな泣きの叙情ギターをたっぷりとかき鳴らし、
オルガンなどのシンセを重ねて、優美なインストサウンドを聴かせる。流麗なギターフレーズはアンディ・ラティマーか
ヤン・アッカーマンか、はたまたマリオ・ミーロか、というセンスで、そのメロディックなプレイは大変日本人好み。
ゆったりとした叙情ナンバーから、軽快なアンサンブルまで、どこを切っても甘美なギターメロディが味わえて、
耳心地の良さは折り紙付き。ラストは10分の大曲で、ほどよくハードでリズムチェンジを含む展開力で構築する。
メロディック度・9 プログレ度・7 優雅な叙情度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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The Psychedelic Ensemble 「Mother's Rhymes」
アメリカのミュージャンによるプロジェクト、サイケデリック・アンサンブルの2019年作
2009年にデビューし、すでに6作目となる。アルバム全体を3章に分けたコンセプト的な作品で、
アコースティックを含むギターにオルガンなどを含むシンセを差ね、ジェントルなヴォーカルとともに
JETHRO TULLにも通じる牧歌的なサウンドを描きつつ、優雅でサイケな浮遊感にも包まれる。
ヴァイオリンなどのストリングスも加わると、クラシカルなシンフォニックロックの感触で楽しめ、
ときに女性ヴォーカルが妖艶な歌唱を乗せる。キャッチーなサイケロックとしてもGoodです。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・8 総合・7.5
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The Moon Pierrot「Illusion」
アメリカのプログレバンド、ムーン・ピエロの2015年作
1991年にロシアでデビュー、復活作となる本作は、G&B&VoのArthur Mountaniolと、Key&Drの2人組ユニットとなっている。
ほどよくハードなギターを変則リズムに乗せ、ユルめのヴォーカルに優雅なシンセも加えて、偏屈なアヴァンギャルド性と
コミカルな味わいが同居したサウンド。10分を超える大曲では、優美なシンセワークとともにプログレ寄りの叙情も覗かせつつ、
9分、11分という大曲なども、とらえどころのない展開とエキセントリックなセンスに包まれる。クラシカルなシンセをバックに
シアトリカルに歌い上げるヴォーカルは、翳りをおびたピーター・ハミル的な雰囲気も感じさせ。ヘンテコなアヴァンプログレ。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 アヴァンギャル度・8 総合・7
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SAGA 「GENERATION 13」
カナダのブログレハード、サーガの1995年作
1978年デビューのベテラン。本作は11作目となるコンセプト作で、優美なピアノとジェントルな歌声のイントロから、
ほどよくハードなギターにシンセを重ね、ProgMetal的でもある重厚なプログ・ハードロックを展開する。
マイケル・サドラーの歌声はときにシアトリカルで、コンセプトストーリー的な流れを感じさせる小曲を連ね、
壮麗なオーケストラルなアレンジも含んだスケール感にも包まれる。楽曲ごとのインパクトはさほどないものの、
ボーナスを含めて74分、従来のキャッチーなプログレハードのイメージから、シリアスな作風へと挑戦した力作といえる。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 重厚度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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3/18
桜咲いてプログレ(90)


Ghost of the Machine「Scissorgames」
イギリスのプログレバンド、ゴースト・オブ・ザ・マシンの2022年作
THIS WINTER MACHINEのメンバーによる新バンドで、きらびやかなシンセと適度にハードなギター、
マイルドなヴォーカルで、ARENAなどにも通じる英国らしいドラマティックなシンフォプログレを聴かせる。
ときにMARILLIONなどにも通じる優美な叙情を含んだ流れのある展開で、のっけから17分という大曲を構築。
90年代シンフォの流れをくむキャッチーな抜けの良いナンバーや、しっとりした叙情的な小曲なども挟んで、
ラストの10分の大曲は、メロウな泣きのギターと優美なシンセでやわらかな叙情美に包まれながら、爽快に盛り上げる。
ドラマティック度・8 叙情度・8 英国シンフォ度・8 総合・8
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REGAL WORM 「THE HIDEOUS GOBLINK」
イギリスのプログレバンド、リーガル・ワームの2021年作
Henry Foolなどにも参加するシンセ奏者、Jarrod Goslingによるプロジェクトで、2013年にデビュー、4作目となる本作は、
とぼけた味わいのアヴァンプログレにアッパーな浮遊感を加えた、初期GONG風味のサイケプログレを聴かせる。
メロトロンやオルガンなどのヴィンテージなシンセも使いつつ、ノリのよいリズムも含めた軽妙なサウンドは、
前作までのスタイルをより奔放にしたような聴き心地であるが、ラストの19分の大曲では、アヴァンギャルドな優雅さと
サイケロックのユルさが混在した、独自のセンスを遺憾なく発揮。屈折サイケプログレというべき好作品である。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 サイケ度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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REGAL WORM 「WORM!」
イギリスのプログレバンド、リーガル・ワームの2022年作
前作の路線がよほどしっくりきたのか、1年ほどで5作目が完成。前作の延長のアッパーなサイケロックで、
ノリのよいリズムにオルガンなどのシンセを重ね、ユルめのヴォーカルとともにスペイシーなサウンドを展開。
カラフルなイメージは、Ozric Tentaclesにも通じるが、こちらはもう少しヴィンテージな妖しさがあって、
メロトロンなども効果的に使われている。ときにエスニックな旋律やサックスなどのブラスを取り入れたりと、
前作以上に奔放なアレンジで、独自のサイケ路線を深化させている。英国サイケロックの新たな潮流となるか。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 サイケ度・9 総合・8
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SANGUINE HUM 「NOW WE HAVE POWER」
イギリスのプログレバンド、サンガイン・ハムの2018年作
2010年にデビュー、本作は4作目となる。マイルドなヴォーカルとピアノによる叙情的なイントロから、
やわらかなシンセとギターを加え、優雅なアンサンブルとともにスタイリッシュなサウンドを描いてゆく。
どことなくカンタベリーをルーツにしたような優しく繊細なサウンドで、シンフォプログレ的な優美なシンセと
メロウなギターワークも心地よく、ゆったりとした感触の中に軽妙なテクニカル性を覗かせるのも心憎い。
モダンとレトロを巧みに融合させて、あらたな英国プログレの優雅さを作り上げた。見事な傑作である。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 優雅度・9 総合・8.5 過去作のレビューはこちら
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ANTOINE FAFARD 「Sphere」
カナダのミュージシャン、アントワーヌ・ファファールの2016年作
Spaced Outのベーシストで、ソロとしては4作目となる。シンセ奏者でドラマーのゲイリー・ハズバンドが参加、
軽やかなリズムに巧みなベースプレイ、ジュリー・デ・ヴィリエ・ジュニアによるメロウなギターを乗せた、
優雅なフュージョン・ジャズロックサウンド。歌心を感じさせるアダルトなベースのフレージングに、
ホールズワースばりのギタープレイも随所に素晴らしく、派手なインパクトはないがじっくりと聴き入れる。
うるさすぎないシンセワークに、さりげなく軽妙なテクニックのドラムもサウンドをしっかり支えていて、
オールインストで64分は少々長いが、演奏力の高さも含めて玄人好みの味わいの逸品だ。
テクニカル度・8 ジャズ/フュージョン度・9 優雅度・9 総合・8
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ANTOINE FAFARD「BORROMEAN ODYSSEY」
カナダのミュージシャン、アントワーヌ・ファファールの2019年作
Spaced Outのベーシスト、5作目のソロ。シンセにゲイリー・ハズバンド、ドラムに現STYXのトッド・スチェルマンが参加、
巧みなドラムとベースによるグルーヴィーなリズムにスペイシーなシンセワークで、ディストピア的なストーリーをコンセプトに
インストによるテクニカルなプログレ・ジャズ・フュージョンロックを聴かせる。歌うように奏でられるベースプレイはさすがで、
PLANET Xばりのスリリングなアンサンブルの中にも優雅な叙情を垣間見せる。軽やかなリズムに優美なエレピが鳴り響くと、
英国的なジャズロックの質感にもなって、ほどよいプログレらしさも嬉しい。ベースのみならず随所にメロウなギターも奏でる、
ミュージシャンとしてのファファールの実力とセンスが遺憾なく発揮された優雅なる傑作である。
テクニカル度・8 ジャズ/フュージョン度・9 優雅度・9 総合・8.5
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Jonathan Hulten 「Chants from Another Place」
スウェーデンのミュージシャン、ジョナサン・フルテンの2019年作
ブラックメタル系バンド、元TRIBULATIONのギタリストのソロであるが、本作はアコースティックギターにマイルドなヴォーカルを乗せた
フォーク風味のスタイル。随所にドラムやシンセも加わると、むしろシンフォプログレ的な優雅さと、北欧らしい翳りを帯びた叙情に包まれる。
楽曲は2〜4分前後の小曲主体で、全体的にもメタル感触がほぼ皆無なのでわりとのんびりと鑑賞できる。
あるいは、RHYS MARSHあたりに通じる、繊細でジェントルな北欧ポストプログレとしても楽しめる。
ドラマティック度・7 プログレ度・6 繊細度・8 総合・7.5
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Katzen Kapell 「Si Tu Veux」
スウェーデンのプログレ・チェンバーロックバンド、カッツェン・カペルの2007年作
1994年にデビュー、3作目。優雅なアコーディオンの音色にヴァイオリンが重なり、ドラムのリズムに
軽やかなヴィヴラフォンの響きも加えて、タンゴ風味のジャズロックという軽妙なサウンドを聴かせる。
大人のジャズ風味のインストを主体にしつつ、女性ヴォーカルを加えたコケティッシュな雰囲気もあり、
母国語による歌声とともに、スリリングなアンサンブルによるチェンバーロック寄りの感触も覗かせる。
哀愁を含んだアコーディオンが鳴り響き、高い演奏力に裏打ちされた、お洒落なチェンバー・ジャズの逸品。
ジャズ風度・8 プログレ度・7 優雅度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Univers Zero 「Heatwave」
ベルギーのチェンバーロック、ユニヴェル・ゼロの1987年作
「Uzed」に続く5作目で、2人のピアノ&シンセ奏者、クラリネット、ヴァイオリン奏者を含む7人編成で、
やわらかなクラリネットの音色にうっすらとシンセが重なり、艶やかなヴァイオリンも加わって、
変則リズムを叩くドラムとともに、クラシカルな緊張感をただよわせたアンサンブルを構築する。
初期に比べると暗黒性は控えめながら、室内楽の優雅さにほどよくロックの感触を混ぜ込み、
スリリングな空気を描くスタイルは円熟の域。ラストは20分という大曲で、スケール感のある構築美が見事。
クラシカル度・8 優雅度・8 スリリング度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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DANIEL DENIS 「SIRIUS AND THE GHOSTS」
ベルギーのミューシジャン、ダニエル・デニスの1991年作
Univers Zeroのドラムのソロ作品で、Aka Moonのベースや、Univers Zeroのクラリネット奏者、サックス奏者が参加。
自身の奏でるシンセにクラリネットの音色、フリーキーなドラムを加えた、エクスペリメンタルなインストサウンドを描く。
空間的なダークさと優雅なクラシカル性は、やはりユニヴァル・ゼロに通じる世界観であるが、チェロやサックスも鳴り響き、
より自由度の高いスタイルに、ドラムのビート感を融合させている。ミシェル・ハイズィージョウジューの巧みなベースも
なにげに存在感を放っていて、随所にジャズ寄りのアンサンブルも覗かせる。シンセのみのラスト曲も雰囲気がある。
クラシカル度・7 優雅度・8 スリリング度・8 総合・8
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2/24
スペインのトラッド&女性シンガー(80)

Eneritz Furyak 「Emadan」
スペイン、バスク地方出身の女性SSW、エネリツ・フルヤクの2021年作
アコースティックギターのつまびきに、バスク語によるキュートな女性ヴォーカルを乗せ、
シンセによるアレンジも加えた、コンテンポラリーなトラッド・ポップを聴かせる。
バスク地方の伝統に根ざした空気感に包まれながら、メロディ自体はキャッチーなので、
エモーショナルなヴォーカルとギターのつまびきを主体に、わりとライトな感触で楽しめる。
ポストフォーク以降の若手世代による、新たなスパニッシュ・トラッドの解釈というべき逸品だ。
アコースティック度・7 モダントラッ度・8 女性Vo度・8 総合・8
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LUAR NA LUBRE 「SOLSTICIO」
スペイン、ガリシアのケルティック・トラッド、ルアル・ナ・ルブレの2010年作
1988年にてデビュー、スタイリッシュなスパニッシュ・ケルトを聴かせるバンドで、本作はすでに10作目。
アコースティックギターのつまびきにやわらかなフルート、バグパイプの音色を重ね、パーカッションのリズムとともに、
優雅なアンサンブルで、牧歌的なガリシアン・ケルトを聴かせる。3曲目からは、美しい女性ヴォーカルの歌声に
ときに男性声も加わって、メディーヴァルな空気感とともに、どことなくコンセプト的な流れのドラマ性も感じさせる。
ほぼアコースティックなので、サウンド的な派手さはないが、深みのある素朴さとおおらかな幻想切に包まれた作品。
アコースティック度・9 ケルティック度・8 優雅度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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LUAR NA LUBRE「Extra: Mundi」
スペイン、ガリシアのケルティック・トラッド、ルアル・ナ・ルブレの2015年作
12作目となる本作も、バウロンのリズムにフルートやバグパイプの音色、アコースティックギターに
アコーディオンも加わり、ガリシア語による美しい女性ヴォーカルとともに、優雅なサウンドを聴かせる。
インストによるナンバーも多いのだが、艶やかなヴァイオリンやバグパイプの響きも重なった、
厚みのあるアンサンブルは、さすがキャリアのあるバンドの説得力。アコースティックギターに
やわらかなフルートと女性声によるしっとりとしたナンバーも耳に優しい。これぞガリシアン・ケルト。
アコースティック度・9 ケルティック度・8 優雅度・9 総合・8
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Ialma「Simbiose」
スペインのトラッドポップ、イアルマの2011年作
女性5人によるユニットで、2000年にデビューし、4作目。軽やかなドラムにトランペット、アコーディオンの響き、
スペイン語による女性ヴォーカルとコーラスを重ねた、ジャズ風味も含んだ大人のトラッドポップを聴かせる。
フィドルが鳴り響き、パーカッションのリズムにやわらかな女性声の重ねた、土着的な優雅さも覗かせて、
トラッドとポップが軽やかな同居した味わいは、フィンランドのVarttinaあたりに通じる趣もある。
全体的には、わりとライトに楽しめる一方、ディープなスパニッシュトラッドを求める向きには物足りなさも。
アコースティック度・8 トラッ度・8 優雅度・8 総合・7.5
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MILLADOIRO 「IACOBUS MAGNUS」
スペインのトラッドバンド、ミジャドイロの1994年作
1978年デビューのベテラン。1990年作「時を超えるガリシア」、1996年作「ガリシアの輝き」は日本盤も出ているので
プログレリスナーからも認知度が高いだろう。マンドリン、ブズーキなどの素朴なつまびきにシンセを重ね、
ヴァイオリン、フルート、クラリネット、オーボエなど、オーケストラルな優雅さも加わったサウンドを聴かせる。
ガイタ(バグパイプ)の音色がケルテイックな情緒をかもしだし、優美なハープの響きにうっとりとなる。
随処にシンセが加わるので、プログレリスナーにも楽しめるようなシンフォニックな味わいもあって、
哀愁の叙情美に包まれた、クラシカルなトラッドサウンドが楽しめる。耳心地の良い作品です。
アコースティック度・8 ケルティック度・8 優雅な叙情度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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MILLADOIRO「O Nino Do Sol」
スペインのトラッドバンド、ミジャドイロの2002年作
1978年デビューの、ガリシアを代表するトラッドバンド。本作も、やわらかなアコーディオンの音色に
アコースティックギター、バグパイプの牧歌的な響きとともに、素朴な叙情に包まれたサウンドを聴かせる。
ガイタやマンドーラの素朴なつまびきや、フルートやクラリネットハープなどの優美な音色も耳心地よく、
アコーディオンやヴァイオリンも加わっての優雅なアンサンブルを楽しめる。インストナンバー主体ながら、
ときにシンセを使ったアレンジや、女性ヴォーカル入りのナンバーもあり、しっとりと繊細な味わいで、
素朴ながらもじつに洗練された、ガリシアらしいケルティック・トラッドが味わえる逸品です。
アコースティック度・9 ケルティック度・8 優雅な叙情度・9 総合・8
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MILLADOIRO 「Unha Estrela Por Guia」
スペインのトラッドバンド、ミジャドイロの2006年作
アコースティックギターにピアノを乗せ、ガイタやイーリアンパイプ、ホイッスルの音色などを加え、
ガリシア語によるヴォーカルを乗せた、スタイリッシュな優雅さに包まれたアコースティックサウンド。
本作はヴォーカル入りのナンバーがメインになっていて、ジェントルな男性ヴォーカルの歌声に、
女性ヴォーカルのナンバーもしっとりと美しく、繊細でスパニッシュな叙情性に包まれながら、
ヴァイオリンやフルート、ハープ、クラリネットなどのやわらかな旋律が優美に楽曲を彩っている。
土着的な女性コーラスを乗せたトラッド曲や、ケルティックなイーリアンパイプの響きも魅力的だ。
アコースティック度・9 ケルティック度・7 素朴な叙情度・9 総合・8
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MILLADOIRO 「Atlantico」
スペインのトラッドバンド、ミジャドイロの2018年作
アコースティックギターに艶やかなヴァイオリン、アコーディオンの旋律が重なり、優雅で軽やかなケルトサウンドが広がる。
ホイッスルの音色に、ガイタやブズーキ、イーリアンパイプなど、多くの伝統的な楽器が使われていて、
ベテランらしい巧みな演奏力で、厚みのあるアコースティックサウンドが楽しめる。
哀愁を感じさせるヴァイオリンやガイタの響きに、うっすらとシンセが重なるところは、
優美なシンフォニック・トラッドという趣にもなり、マイルドなヴォーカルを乗せたナンバーなども、
やわらかなアクセントになっている。ケルトの雰囲気を強めた傑作である。
アコースティック度・9 ケルティック度・8 素朴な叙情度・9 総合・8.5
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BERROGUETTO「Viaxe Por Urticaria」
スペイン、ガリシアのトラッドバンド、ベルグエトの1999年作/邦題「ウルティカリアへの旅」
1996年にデビューし、2作目。アコースティックギターにヴァイオリン、ブズーキなどの音色も加え、
ガリシア語による女性ヴォーカルとともに、優雅で素朴なトラッドサウンドを聴かせる。
軽やかなサックスにアーディオンの旋律、随所にピアノやシンセ、ドラムも加わっての
コンテンポラリーなアレンジと伝統的なスパニッシュトラッドの空気が融合した作風が楽しめる。
演奏のレベルは高くインストパートも良いのだが、個人的には女性声パートがもっと欲しかった。
アコースティック度・8 ケルティック度・8 優雅度・8 総合・8
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Maria Del Mar Bonet 「Sempre」
スペインのシンガー、マリア・デル・マール・ボネットの1981年作
カタルーニャ、マジョルカ島出身の歌姫で、本作は、自作曲からスティーヴィー・ワンダー、カエターノ・ヴェローゾ
バルバラ「黒い鷲」などのカタルーニャ語によるカヴァーを収録した、初期のベストアルバム的な作品。
70年代の楽曲では、ピアノとストリングスによる美しいアレンジに、若かりし彼女の瑞々しい歌声が美しい。
ビリー・ホリデイのカヴァーは優雅な大人のジャズナンバーながら、カタルーニャ語の哀愁が加わった独特の味わい。
カエターノ・ヴェローゾのカヴァーでは、シンフォニックなストリングスとともに、泣きの叙情に包まれる。
近年の作品に比べるとトラッド感触は薄めであるが、表現豊かな彼女の歌声が堪能できるコンピ盤です。
アコースティック度・8 トラッ度・7 女性Vo度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Maria Del Mar Bonet 「Anells D'aigua」
スペインのシンガー、マリア・デル・マール・ボネットの1985年作
やわらかなピアノの旋律に、しっとりとしたカタルーニャ語の美しい歌声が耳に心地よく、
12弦ギターやマンドリンのつまびきとともに、素朴な優しさに包まれるサウンドが味わえる。
タブラによるエスニックなリズムや、ハープシコード、ハーディ・ガーディなどの古楽器による、
土着的な雰囲気も含めて、スパニッシュトラッドとしての優雅な哀愁の空気に包まれている。
そして、表現力豊かな彼女の絶品の歌声は、カタルーニャの息吹を聴き手に感じさせる。
アコースティック度・9 トラッ度・8 女性Vo度・9 総合・8
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Maria Del Mar Bonet 「RAIXA」
スペインのシンガー、マリア・デル・マール・ボネットの2001年作
1970年にデビュー、マジョルカの歌姫とうたわれるシンガーで、本作はバルセロナで行われる定期コンサートの
25周年を記念してのステージを収録。独唱で始まる1曲目から、すでにその表現豊かな歌声に聴き惚れる。
アコースティックギターにチェロやヴァイオリンなどのストリングスを重ねた、しっとりと優美なナンバーから、
パーカッションにスパニッシュギターを乗せた躍動的なナンバーまで、ときに情感的に、ときに優しく母性的に、
彼女の歌声はしっかりと主役となっている。キャリア30年の実力が発揮された素晴らしい歌唱に浸るべし。
アコースティック度・9 トラッ度・8 女性Vo度・9 総合・8
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ELENA LEDDA 「INCANTI」
スペイン、サルデーニャの女性シンガー、エレーナ・レッダの1993年作
アコースティックギターのつまびきにサルデーニャ語による伸びやかな女性ヴォーカルを乗せた牧歌的なサウンド。
ときにダンディな男性声も絡むが、基本は彼女一人の歌声がメインで、バックは必要最低限の音数なので
シンプルな聴き心地であるが、サルデーニャの空気がそのまま伝わってくるような素朴な味わいだ。
ドラムの入る曲では、トラッドロック的な雰囲気でも楽しめ、同郷のバンド、AMAROKなどに通じる空気感もある。
アコースティック度・9 スパニッシュ度・9 女性Vo度・8 総合・7.5
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ELENA LEDDA 「MAREMANNU」
スペイン、サルデーニャの女性シンガー、エレーナ・レッダの2000年作
1979年デビュー。本作はソロとしては7年ぶりとなる5作目で、うっすらとしたシンセにアコースティックギター、
サルディーナ語によるやわらかな歌声で、パーカッションのリズムなど、中東的な味わいも含んだサウンド。
母性的な優しさを感じさせる歌声とともに、ドラムやエレキギターも加わった曲ではキャッチーな感触もありつつ、
ラスト2曲では伝統的なサルディーニャのトラッドを聴かせる。情感豊かな彼女の歌声にじっくり浸れる一枚だ。
アコースティック度・9 スパニッシュ度・9 女性Vo度・8 総合・7.5
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2/17
イタリア、北欧、ドイツのプログレ(56)

PFM 「I DREAMED OF ELECTRIC SHEEP」
イタリアのプログレバンド、プレミアータ・フォルネリア・マルコーニの2021年作
1972年デビュー、名実ともにイタリアンプログレを代表するバンドで、本作は映画「ブレードランナー」の原作として知られるSF小説
「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」にインスパイアされたという作品。いつになくモダンなビート感にオーケストラルなアレンジ、
オルガンやピアノなどのシンセにわりとハードなギターを重ね、いくぶんProgMetal的なテクニカル性も覗かせつつ、
フランツ・ディ・チョチョの枯れた味わいのヴォーカルが加わると、一転して大人の叙情に包まれる。軽やかなアンサンブルと
PFMらしいキャッチーなメロディアス性も随処に現れ、近未来的なコンセプト性で、ドラマティックなサウンドを描いてゆく。
英語版、イタリア語版の2枚組仕様で、やはりイタリア語の方が味わい深い。イアン・アンダーソン、スティーブ・ハケットがゲスト参加。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 大人の叙情度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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RAVEN SAD 「THE LEAF THE WING」
イタリアのポストプログレ、レイヴン・サッドの2021年作
2008年にデビューし、4作目となる。叙情的なギターの旋律にオルガンやエレピなどの優美なシンセを重ね、
ジェントルなヴォーカルとともに、ゆったりとした繊細なシンフォニックロックを聴かせる。
10分前後の大曲をメインに、ポストプログレ的なしっとりと優雅な歌もの感に包まれつつ、
インストパートでは泣きのギターや軽妙なリズムを含んだプログレらしさもしっかりある。
エモーショナルのヴォーカルの表現力は、ときにMARILLION時代のフィッシュを思わせ、
むしろ英国的なシンフォプログレとして楽しめる。ラストまで泣きのギターに浸れる逸品です。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 優雅な叙情度・9 総合・8
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FUFLUNS 「REFUSES」
イタリアのプログレバンド、フフルンズの2021年作
Il Bacio della Medusaのシンガー、The Watchのベース、元La Maschera Di Ceraのドラム、Daalのシンセらによるバンドで、
5年ぶりとなる2作目。本作は、17体の彫像にインスパイアされたという作品で、クラシカルなピアノによるイントロから、
ムーグシンセやメロトロン、オルガンなどヴィンテージなキーボードに、イタリア語によるアクの強いヴォーカルを乗せ、
70年代の古き良きイタリアンロックを蘇らせるようなサウンドを聴かせる。曲調自体は、わりと牧歌的だったりするのだが、
シアトリカルな歌声がサウンドを濃密にしていて、哀愁の叙情と往年のイタリアンプログレの妖しさが同居した好作である。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 イタリア度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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The Rome Pro(G)Ject 「Of Fate And Glory」
イタリアのシンフォニックロック、ローマ・プログジェクトの2016年作
本作は2作目で、古代ローマをテーマにしたアルバム。シンセ奏者のヴィンセンツォ・リッカを中心に、スティーブ・ハケット、
デヴィッド・ジャクソン、ビリー・シャーウッドらが参加。美しいシンセとメロウなギター、女性声の語りによるイントロ曲から
ロマンの香りに包まれ、ムーグを含むきらびやかなシンセと叙情的なギターの旋律を重ねたシンフォプログレを展開。
13分という大曲も、メロトロンなどの優美なシンセをメインに、ゆったりと優雅な聴き心地で、サックスやフルートが鳴り響く
軽妙なアンサンブルのナンバーはいかにも往年のイタリアンロック的である。泣きとギター&美麗シンセのシンフォプログレです。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 優美度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Notturno Concertante 「News From Nowhere」
イタリアのプログレバンド、ノットゥルノ・コンセルタンテの1993年作
1990年にデビュー、本作は3作目で、アコースティックギターとピアノによる優美なイントロから、
メロウなギターの旋律に優美なシンセ、英語によるマイルドなヴォーカルで、繊細なシンフォプログレを聴かせる。
GENESISルーツの叙情性にマイナーな翳りを感じさせる点では、90年代のイタリアンシンフォらしい味わいで、
クラシックギターによる優雅なアコースティックなナンバーなどは、ANTHONY PHILLIPSを思わせたりする。
ヴォーカルのヘタウマ感も含めて、抜けきらないくぐもったような叙情が楽しめたら、立派なマイナーシンフォ好きです。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優美度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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Venus Principle 「Stand in Your Light」
イギリス&スウェーデンのサイケプログレ、ヴィーナス・プリンシプルの2022年作
ハード過ぎないギターにメロトロンやオルガンを含むシンセ、しっとりとした女性ヴォーカルにジェントルな男性声が重なる
涼やかで牧歌的なサウンドを聴かせる。優美なシシセにメロウなギター、男女声を乗せた優雅な叙情性という点では、
MOSTLY AUTUNM
などに通じる感触もあり、浮遊感のあるヴィンテージなシンフォプログレとしても楽しめる。
一方では、女性声をメインにメロトロンが鳴り響く妖しいナンバーもよい雰囲気で、WHITE WILLOWを思わせたりする。
涼やかな空気とドゥーミィな翳りに包まれた、まさに北欧と英国の融合というべき好作品である。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 翳りと叙情度・9 総合・8
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MARIUS LEIRANES 「LANGTIDSPERSPEKTIV」
ノルウェーのミュージシャン、マリウス・レイラネスの2021年作
PIXE NINJAのベース&シンセ奏者による初のソロ作品で、うっすらとした涼やかなシンセに叙情的なギターを乗せた
優美なインストサウンドを聴かせる。ヴィンテージでエレクトロなシンセによるスペイシーな味わいは、PIXE NINJAや、
マティアス・オルソン関連作に通じる聴き心地であるが、こちらはより内省的な世界観で、北欧らしい涼やかな空気を描く。
全33分とやや短いが、ラストは10分の大曲で、Klaus Shulzeばりの幻想的なシンセミュージックが味わえる。
Panzerpappaのドラムや、Suburban Savagesのギター、WHITE WILLOWのフルート奏者などがゲスト参加。
ドラマティック度・6 プログレ度・7 涼やか度・9 総合・7.5
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SUBURBAN SAVAGES 「DEMAGOGUE DAYS」
ノルウェーのプログレバンド、サバーバン・サヴェージスの2021年作
PANZERPAPPAのメンバーを中心にしたバンドの2作目で、軽やかなリズムに優美なシンセとギターを乗せ、
マイルドなヴォーカルとともに、優雅でキャッチーなサウンドを描く。1作目以上に肩の力の抜けた作風で
北欧らしい涼やかな叙情を覗かせつつ、ヴィンテージなシンセによるレトロ&エレクトロな味わいもまじえて、
やわらかなインストパートを構築する。女性ヴォーカルも加わった優しい耳心地や、メロウなギターの旋律が、
シンフォプログレ的な色合いも覗かせながら、音を重ねすぎないセンスも素晴らしい。まさに軽妙で優雅な逸品。
ドラマティック度・7 プログレ度・8 優雅度・9 総合・8
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MAJOR PARKINSON 「TWILIGHT CINEMA」
ノルウェーのプログレ・アートロック、メジャー・パーキンソンの2014年作
2008年にデビューし、3作目となる。ツインギターにシンセを含む6人編成で、ジャズロック調の優雅なアンサンブルに
ピアノを含む優美なシンセにオーケストラルなアレンジも加え、語りのようなジェントルなヴォーカルとともに、
独自のアートロックを展開。ほどよいヴィンテージ感とハード過ぎないサウンドが耳心地よく、
随所にプログレ的な展開力や、演劇的な歌声も含めたシネマティックなストーリー性も感じさせる。
インダストリアル調のナンバーや、ロックオペラ的な優雅さもあって、ミクスチャーなロックが楽しめる。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 シアトリカル度・8 総合・7.5
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ALITHIA 「THE MOON HAS FALLEN」
オーストラリアのポストプログレ、アリシアの2018年作
2014年にデビューし2作目となる。のっけから10分を超える大曲で、適度にハードで叙情的なギターに優美なシンセを重ね、
マイルドなヴォーカルとともにスタイリッシュなサウンドを描く。エモーショナルな歌声と、ポストロック的な空間性が
結果的にプログレッシブな味わいを作り出していて、繊細な叙情性とProgMetal的な展開力が同居したような味わいだ。
ときにシンフォニックなシンセアレンジがサウンドに厚みを与えていて、翳りを含んだ歌もの感と轟音系のコントラストで、
なかなかメリハリある聴き心地である。モダンな叙情ロックとしても、ハードなポストプログレとして楽しめる好作です。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 スタイリッシュ度・8 総合・7.5
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FORCELAND 「DRIVEN PACE」
チリのプログレバンド、フォースランドの2020年作
元SUBTERRAのシンセ奏者と、元ENTRANCEのギターを中心にしたバンドで、ほどよくハードなギターに
プログレらしい優美なシンセワークとマイルドなヴォーカルで、叙情的なシンフォプログレを聴かせる
曲調はわりとストレートでプログレハード的であるが、随所にメロウなギターの旋律も覗かせつつ、
ゆったりとした味わいの大人のシンフォニックロックというサウンド。これという新しさはないが安心して楽しめる好作だ。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 大人の叙情度・8 総合・7.5

PANZERBALLETT「TANK GOODNESS」
ドイツのアヴァン・ジャズ・メタル、パンツァーバレットの2012年作
2006年にデビュー、本作は4作目で、バンドの認知度をぐっと高めた力作。テクニカルなリズムにサックスが鳴り響き、
硬質なギターリフを重ねて、メタリックなジャズロックを聴かせる。スウィング・ジャズ調のサックスプレイに、
メタル寄りのギターでプログレッシブにサウンドを描くところは、Diablo Swing Orchestraにも通じるが
こちらはよりテクニカル嗜好で、緩急あるリズムチェンジを含むアヴァンギャルド性が強い。基本はインストながら、
男女ヴォーカルを乗せたナンバーもアクセントになっている。ギターと同程度にサックスが活躍するのも個性的だ。
ジャズメタル度・8 テクニカル度・8 優雅度・8 総合・8
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PANZERBALLETT「BREAKING BRAIN」
ドイツのアヴァン・ジャズ・メタル、パンツァーバレットの2015年作
サックスが優雅に鳴り響き、ヘヴィなドラムにメタリックなギターが加わって、テクニカルなジャズロックを展開。
硬質なリズムとサックスのアナログ感がコントラストになっていて、ゆるやかでとぼけた味わいから、
メタリックにたたみかけるパートへの展開も含めて、スリリングに味わえる。オールインストながら、
6〜8分前後の長めの楽曲をメインに、Djent寄りのテクニカルメタルと優雅なジャズが合体したという
緩急ある構築力とアヴァンギャルドなセンスも含んだ濃密な聴き心地。今後の深化に期待です。
ジャズメタル度・8 テクニカル度・8 優雅度・8 総合・8
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MYTHOS
ドイツのプログレバンド、ミトスの1972年作
マイナー系クラウトロックの中でも評価の高いこのデビュー作を、2019年のリマスター盤で聴き直し。
フルートが鳴り響く牧歌的なイントロ曲からはじまり、その後は、17分を超える大曲2曲という構成で、
ジャーマンロックらしいフリーキーな味わいに、ときにシタールの音色など東洋的な空気も匂わせて
AMON DUUL IIにも通じる雰囲気もあるが、サイケなユルさの中に、フルートやメロトロンが鳴り響き、
神秘的な叙情を描くあたりは、スペイシーな作風への深化を予感させる。アルバム後半の大曲はとにかくユルい。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 サイケ度・8 総合・7
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2/10
雪の日のプログレ(42)

LONELY ROBOT「A MODEL LIFE」
イギリスのモダンプログレ、ロンリー・ロボットの2022年作
IT BITESなどで活躍するジョン・ミッチェルによるプロジェクト。本作は5作目で、FROST*のクライグ・ブランデルがドラムで参加、
80年代的なビート感に優美なシンセとうるさすぎないギターを乗せ、ジョン・ミッチェルの味のある歌声とともに、
キャッチーなサウンドを描く。かつてのROXY MUSICのようなセンスの良いポップ感覚とモダンなプログレが合体し、
スタイリッシュに仕上がったという作風ながら、エモーショナルなヴォーカルとシンフォニックなシンセアレンジで聴かせる、
繊細な叙情ナンバーもあって、前作までのファンもひと安心。キャッチーな歌ものと優美な叙情が同居したさすがの好作品。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 叙情度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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FREEDOM TO GLIDE 「SEED」
イギリスのプログレバンド、フリーダム・トゥ・ギルドの2019年作
2013年にデビューし、3作目となる。優美なピアノにマイルドなヴォーカルを乗せたイントロから、MARILLIONを思わせる
ウェットな英国メロウロックの感触が広がる。アコースティックを含む繊細なギターに物悲しいチェロの音色など、
翳りを帯びた叙情性に包まれたポストプログレ寄りのサウンドに、エモーショナルな歌声もよくマッチしている。
全体的は、淡々とした流れで進んでゆくコンセプト的な味わいで、派手に盛り上がりや展開はないものの、
うるさすぎないシンセアレンジをバックに、歌ものを基調にしたゆったりとした作風で耳心地よく楽しめる。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 叙情度・8 総合・7.5
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Adventure 「Tales Of Belle Part I - Across The Ocean」
ノルウェーのプログレバンド、アドヴェンチャーの2022年作
2000年にデビュー、本作は5作目で、女性版「青髭」として語り継がれる殺人犯、ベル・ガネスをコンセプトにした作品の前編。
オルガンが鳴り響き、ほどよくハードなギターに朗々としたヴォーカルを乗せて、ダークな味わいのプログレハードを聴かせる。
やわらかなピアノと女性ヴォーカルに、メロウなギター、ときにフルートなども加えてゆったりとした叙情を描きつつ、
ヴィンテージなシンセとともに北欧らしい翳りを帯びた空気に包まれる。コンセプトストーリーに基づいているので、
派手な盛り上がりというのはあまりなく、シンフォプログレとしてはいくぶん物足りない感じもするが、後編に期待。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 叙情度・7 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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KINGS OF THE VALLEY
ノルウェーのサイケプログレ、キングス・オブ・ザ・ヴァレーの2021年作
オルガンが鳴り響き、わりとヘヴィなギターが重なって、ハイトーンのヴォーカルとともに、
70年代ハードロックルーツのサイケドゥーム風に始まり、10分を超える大曲では、リズムチェンジを含む
プログレ寄りの構築力と叙情性も覗かせながら、マイルドなヴォーカルがやわらかな歌声を乗せる。
ほどよいハードさとプログレな構築力という点では、URIAH HEEPなどのファンにも楽しめるだろう。
後半の12分超の大曲は、ゆるやかに始まりつつ、サイケなテンションで盛り上げる。全40分というのもアナログ的だ。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 ヴィンテージ度・8 総合・8
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Hasse Froberg & Musical Companion「Paralell Life」
THE FLOWER KINGSのハッセ・フレベリ率いる、HFMCの2019年作
本作は4年ぶりとなる4作目で、のっけから21分の組曲で幕を開ける。ほどよくハードなギターにオルガンなどのシンセを重ね、
ハッセ・フレベリの味わいのあるヴォーカルとともに、オールドな感触に包まれたキャッチーなサウンドを描いてゆく。
1作目から参加する、アントン・リンドショーのギターも、随所にロイネばりの流麗なメロディを奏でていて、
もうひとつのフラキンというような味わいで楽しめる。大人の叙情に包まれた全65分の力作です。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 フラキン度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Vespero 「Songo」
ロシアのサイケプログレ、ヴェスペロの2021年作
2007年にデビュー、本作はすでに13作目あたりか。艶やかなヴァイオリンをシンセに重ね、パーカッションが鳴り響くイントロから、
軽やかなリズムにグルーヴィなベースを重ね、ムーグ的なスペイシーなシンセとともに浮遊感のある神秘的なサイケロックを展開する。
基本はインストながら、随所に女性のスキャットヴォイスが美しく、クラシカルなヴァイオリンの音色が優雅に鳴り響く。
ブックレットに載せられた曲ごとに描かれた緻密な線画も含め、アートなセンスを感じさせる、サイケプログレの逸品だ。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Angel Ontalva & Vespero 「Carta Marina」
スペインのギタリスト、アンヘル・オンタルヴァとロシアのサイケプログレ、ヴェスペロのコラボ作。2018年作
アコースティックギターの素朴なイントロから、二本のエレキギターにシンセを重ね、軽やかなアンサンブルとともに、
サイケな浮遊感と優雅さが同居したサウンドを描く。OCTOBER EQUUSでも活躍する、オンタルヴァの巧みなギターは、
ロックのみならず、ジャズからの影響も匂わせるフリーキーな旋律を奏で、サウンドには叙情性と緊張感が同居する。
オールインストながら、楽曲は8〜12分と長いものが多く、インプロ的な即興性も含んでいて、やや長尺感もあるのだが、
スペイシーなシンセパートにアコースティックを含む優雅なギターの絡みは、まさに両者の融合という味わいである。
ジャズ度・8 サイケ度・7 優雅度・8 総合・8
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Angel Ontalva & No Grooves 「Blood Moon Tonight」
スペインのギタリスト、アンヘル・オンタルヴァとロシアのジャズロック、ノー・グルーヴズのコラボ作。2017年作
叙情的なギターの旋律が絡み、軽やかなアンサンブルとともに、優雅でアダルトなジャズロックを聴かせる。
テクニカルというよりはゆったりとした感触ながら、うるさすぎないが巧みなドラムに乗せる、オンタルヴァの奏でる
耳心地の良いメロウなギターをじっくりと味わえる。アナログ感ある音質も、ライブに近いような生々しさで良いあんばい。
派手さがないので、玄人好みのジャズロックという印象ではあるが、素朴な優雅さの中にアーティスティックなセンスが光る。
ジャズ度・9 プログレ度・7 優雅度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Gleb Kolyadin
ロシアのミュージシャン、グレブ・コルヤディンの2018年作
Iamthemorningでも活躍する鍵盤奏者で、本作は初のソロ作。ベースにニック・ベッグス、ドラムにKING CRIMSONのギャヴィン・ハリソン、
フルート&サックスでセオ・トラヴィスが参加、さらにはMARILLIONのスティーヴ・ホガース、DREAM THEATERのジョーダン・ルーデスもゲスト参加。
クラシカルなピアノとシンセを主体に、ヴァイオリンなどのストリングスも加え、サックスも鳴り響くジャズタッチの軽妙なアンサンブルや
ときにプログレ的なテクニカル性も現れる。ピアノをメインにしたクラシック寄りのナンバーや、ドラムなどを加えた、ジャズやフュージョン、
チェンバーロック風味も感じさせるクロスオーヴァーな作風で、10分を超える大曲もいたって優雅な味わいだ。
クラシカル度・7 プログレ度・7 優雅度・9 総合・8
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LOST WORLD BAND 「LOST WORLD 1992 」
ロシアのプログレバンド、ロスト・ワールド・バンドの2020年作
デビューより前の1992年に企画されていた音源をもとに、あらたな録音音源を合わせて完成された作品で、
艶やかなヴァイオリンに優美なシンセを重ね、マイルドなヴォーカルとともに、やわらかなシンフォプログレを聴かせる。
現在のバンドのサウンドに比べると、レトロなオルガンやフルートなどフォークロック風味の素朴な牧歌性も感じさせ、
楽曲自体も2〜5分前後とわりとコンパクトなので、ドラマティックな展開などはさほどないのだが、これはこれで
ゆったりと味わえる。ラスト曲は、のちの作風に通じるような、ヴァイオリン鳴り響くクラシカルプログレが楽しめる。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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ALGABAS 「Angels And Demons」
ロシアのプログレバンド、アルガバスの2014年作
きらびやかなシンセを叙情的なギターに重ね、ロシア語によるシアトリカルなヴォーカルとともに
優雅な味わいのシンフォプログレを聴かせる。ヴィンテージな感触のシンセワークを中心に、
ときに奔放なギターを前に出しながら、ほどよくテクニカルで軽妙なインストパートを構築。
歌入りパートでは、GENTLE GIANTのロシア版というようなキャッチーな偏屈さも感じさせる。優雅な好作品。
ドラマティック度・7 プログレ度・8 軽妙度・8 総合・7.5

ANDREW ROUSSAK 「NO TRESPASSING」
ロシアの鍵盤奏者、アンドリュー・ロウサクの2008年作
エレピやオルガンなどのやわらかなシンセに優雅なフルートの音色、叙情的なギターとマイルドなヴォーカルで、
キャッチーで軽妙な味わいのシンフォプログレを聴かせる。サックスの音色も加わった大人の叙情性から、
優美なピアノにムーグシンセが鳴り響く、THE NICEのようなクラシカルな感触に包まれながら、
ときにEL&Pのようなダイナミックな展開も覗かせる。バッハのカヴァーから、ジャズタッチのピアノ曲など、
鍵盤奏者としての素養の深さも感じさせる。総じて優雅なクラシカルロックが楽しめる逸品です。
クラシカル度・8 プログレ度・7 優雅度・8 総合・8
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1/27
トラッド、ネオフォーク、女性シンガー(30)
女性シンガー/ケルト/トラッドのレビューページはこちら

МРФ 「Вальсирующие Во Тьме」
ウクライナのネオフォーク、Мой Розовый Фашистикの2012年作
Flёurにも参加するメンバーによるユニットで、本作はCD2枚組の大作。アコースティックギターに優雅なピアノの旋律、
母国語による美しい女性ヴォーカルを乗せて、しっとりと幻想的な空気に包まれたクラシカルなネオフォークを聴かせる。
トラムも加わったロック的なリズムに、デジタルなシンセなど、ポップな味わいも覗かせるところは、Flёurを思わせる。
ヴァイオリンやチェロなどのストリングスも随所に加わり、物悲しい叙情美に包まれる。やわらかな女性声とシンセによるアンビエントな美しさに、
ほどよくモダンでキャッチーな要素も含んだ、クラシカルなゴシックポップ・ネオフォークというべき逸品です。
クラシカル度・8 優美度・9 女性Vo度・8 総合・8
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Louise Patricia Crane 「Deep Blue」
イギリスの女性シンガー、ルイス・パトリシア・クランの2020年作
THE EDEN HOUSEにも参加していた女性シンガーで、メロウなロック感触に艶めいた女性ヴォーカルの歌声で
倦怠の翳りを帯びたサウンドを聴かせる、ALL ABOUT EVEにも通じる作風。THE EDEN HOUSEのギターや、
KING CRIMSONのジャッコ・ジャクジク、JETHRO TULLのイアン・アンダーソンがゲスト参加していて、
フルートが鳴り響く優雅な感触と、叙情的なギターにシンセを重ねた、シンフォニックなテイストも覗かせる。
イーリアンパイプを用いたケルティック風味やしっとりとしたアンビエントな叙情、いくぶんプログレなテイストも含ませて、
単なるフィメールロックという以上にアーティスティックな聴き心地である。AAEなどが好きな方はまず必聴です。
優美度・8 叙情度・8 女性Vo度・8 総合・8
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Talitha Rise 「An Abandoned Orchid House」
イギリスの女性SSW、タリサ・ライスの2018年
自らピアノにシンセ、ベースもこなす女性シンガーで、うっすらとしたシンセにアコースティックギター、
清涼感のある美しい女性ヴォーカルにヴァイオリンも鳴り響き、ドラムも加えたほどよいロック感触と
優雅なフォーク風味が同居したサウンドを聴かせる。コケティッシュな女性声の魅力はもちろん、
楽曲ごとに変化するその表現力が幻想的な世界観を描いていて、ときに静謐感に包まれながら、
ケルティックな神秘性も覗かせる。アコースティックなナンバーは、ネオフォークとしても楽しめる。
優美度・8 幻想度・8 女性Vo度・9 総合・8
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Maple Bee 「Hello Eve」
イギリスの女性SSW、メイプル・ビーの2006年作
本名はメラニー・ガーサイド、彼女のキュートな歌声で聴かせる、ゴシックポップ風のサウンドで、
ギターやドラムも加わったロック感触もあり、物悲しいチェロも加わりつつ、わりとキャッチーな耳心地。
アコースティックギターと女性声による幻想的なフォーク風ナンバーや、デジタルなシンセによる浮遊感もあったり、
楽曲ごとにコケティッシュなヴォーカルが違う表情を見せていて、これがなかなか魅力的なのである。
エキセントリックなセンスを感じさせつつも、モダンとポップとゴシック感がほどよく同居した好作品。
耽美度・8 ゴスポップ度・7 女性Vo度・8 総合・7.5
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Kate Teague
アメリカの女性SSW 、ケイト・ティアグの2019年作
自然体のジャケ写真に、そこはかとない翳りを感じさせるが、アンニュイな女性ヴォーカルを乗せた素朴なロックサウンドで、
All About Eveのようなしっとりとウェットな耳心地。フォークやケルトの要素はさほどないので、わりとポップなのだが
曲調はマイナー寄りで、透明感のある彼女の歌声はエモーショナル過ぎずに優しく耳に心地よいのである。
全7曲20分という短さはやや物足りず、インディロック系期待の女性シンガーということで、フルアルバムを期待したい。
素朴度・8 倦怠度・8 女性Vo度・8 総合・7.5
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Erin McNamee 「Whores & Fishermen」
アメリカの女性シンガー、エリン・マクナミーの2010年作
アコースティックギターのつまびきにキュートな女性ヴォーカルで、アイリッシュソングやカントリーをカヴァー。
パーカッションのリズムに、艶やかなフィドルやホイッスルの音色も加わって、ケルティックな味わいと
アメリカンなキャッチーな雰囲気が同居していて、魅力的な女性とともに心地よく楽しめる。
ドラムも入ったフォークロック的な感触に、やわらかなアコーディオンやピアノ、物悲しいチェロや、
イーリアンパイプの音色など耳に優しく、素朴な味わいの中にウェットな叙情を感じさせるところも良い。
アコースティック度・8 ケルト度・7 女性Vo度・8 総合・7.5
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Anielka 「Nightingale」
フィンランドの女性SSW、アニエルカの2008年作
やわらかなピアノに透明感のある美しい女性ヴォーカルを乗せ、ギターにドラムも加わって
キャッチーで涼やかなポップロックを聴かせる。歌詞は英語なので土着感はさほどないが、
翳りを帯びた雰囲気には北欧の空気を感じさせ、ポップ過ぎないところがGood。
しっとりとしたアンビエントなナンバーからロック寄りのナンバーも、魅力的な女性声がじつに耳に優しく、
フルートやヴァイオリンも加わると、ケルティック風のシンフォニックロックとしても楽しめる。女性Voファンはぜひ。
優美度・9 幻想度・7 女性Vo度・9 総合・8
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Agnetha Faltskog 「Som Jag Ar」
スウェーデンの女性シンガー、アグネタ・フォルツコッグ の1970年作
後にABBAへの加入で知られる彼女であるが、本作のサウンドはアコースティックを含むギターに
母国語による女性ヴォーカルで聴かせる北欧ポップという作風で、ストリングスによるアレンジも美しい。
優しく清涼な彼女の歌声はやはり大変魅力的で、ABBAへとつながるキャッチーな感触も覗かせつつ、
より素朴な空気感に包まれている。アバのファンはもちろん、北欧女性声ポップ好きもチェック。
ポップ度・8 北欧度・8 女性Vo度・9 総合・7.5
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Antrabata 「Elephant Reveries」
フランスのゴシックポップ、アントラバタの2007年作
うっすらとしたシンセにチェロの音色、やわらかな女性ヴォーカルにフルートの音色も加わり、
しっとりとした優雅さに翳り帯びたゴシック感触が同居したサウンド。優美なフルートにブラスも重なると
どこか室内楽風の味わいにもなり、軽めのドラムとともに浮遊感のあるアンサンブルを描いている。
民族的なフォーク風味も覗かせつつ、わりとモダンな無国籍感もあって、なかなかつかみどころがない。
全体的にはフランスらしい優雅さに包まれているのだが、楽曲自体にもう少し聴きどころが欲しい気も。
優美度・7 フレンチ度・7 女性Vo度・7 総合・7.5
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Shirel 「Tous Les Chemins」
フランスのシンガー、シレールの2003年作
イスラエル系の女性シンガーで、アコースティックを含むギターに、コケティッシュな女性ヴォーカルを乗せ、
シンセによるアレンジとともに、ほどよいロック感触も含んだキャッチーなサウンドを聴かせる。
ポップに寄り過ぎない素朴な楽曲に乗る、優しく伸びやかな彼女の歌声は魅力たっぷりで、
フランス語による優雅な耳心地にはウットリとなる。全体的にフォーク感触は薄めなので、
ライトに味わえる反面、曲調的な物足りなさはいくぶんある。清涼な女性声を楽しみましょう。
ポップ度・7 フォーク度・7 女性Vo度・9 総合・7.5
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InChanto 「Citta' Sottili」
イタリアの古楽フォーク、インチャントの2005年作
キタラのつまびきに艶かなヴァイオリン、クラリネットやホイッスルの音色、イタリア語による女性ヴォーカルで、
中世トラッド的な優雅なフォークサウンドを聴かせる。ダルシマーやカンテレなど古楽器を使った素朴な味わいと
メディーヴァルな幻想性が合わさって、ロック色のないアコースティックサウンドながらも、
わりとプログレリスナー向けの世界観である。ヴァイオリンとホイッスルによるケルティックな旋律もじつに優美です。
優雅度・8 アコースティック度・8 女性Vo度・7 総合・8
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Crystal 「Fujja El A Szel」
ハンガリーのトラッドポップ、クリスタルの2002年作
本作は2作目で、デジタルなビートに美麗なシンセアレンジと母国語による女性ヴォーカルを乗せ、男性声も絡んで
キャッチーな東欧ポップロックを聴かせる。マンドリンやホイッスルなどのケルティックな味わいも覗かせて
Mike Oldfield「To France」のカヴァーも、ハンガリー語の女性ヴォーカルとともにじつに優美な仕上がりだ。
随所にストリングスによるシンフォニックなアレンジも美しく、魅力的な女性声にウットリとなる好作品です。1作目もぜひ。
ポップ度・7 ケルト度・7 女性Vo度・8 総合・8

Crystal 「Trilogia」
ハンガリーのトラッドポップ、クリスタルの2004年作
優美なハープにホイッスルの音色でケルティックに始まりつつ、ポップなビート感に母国語の女性ヴォーカルに、
マイルドな男性ヴォーカルも加えて、これまで通り、キャッチーなノリのケルトポップを聴かせる。
全体的にはポップな感触が前に出ているが、随処にオーケストラによるシンフォニックな壮麗さもあって、
単なる女性声ポップロックという以上の美しさを感じさせる。男性声パートがやや多い感じもあるが、男女声東欧ポップの好作だ。
ポップ度・8 ケルト度・7 女性Vo度・8 総合・7.5
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ILGI 「Kaza Kapa Debes?s」
ラトビアのトラッドフォーク、イルギの2003年作
デビューは80年代というベテランで、パグパイプが鳴り響き、母国語による女性ヴォーカルの妖しい歌声に、
アコースティックギターやフルートが重なる、土着的なトラッドをコンテンポラリーに仕立てたというサウンド。
GARMANAのような躍動的なラジカルトラッドの質感に、ドラムも加わったほどよいロック感触もあり、
ヴァイオリンの音色とともに、ダンサブルなポップ風味も覗かせるところは、Varttinaにも通じるかもしれない。
朗々とした男性ヴォーカルによるナンバーもアクセントになっていて、涼やかな土着性とキャッチーなノリのバランスもよい。
トラッ度・8 キャッチー度・8 女性Vo度・7 総合・8
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NOR DAR「In the Land of Frozen Water」
アルメニアのクラシカルトラッド、ノル・ダーの2003年作
女性作曲家、Kora Michaelianを中心にしたユニットで、本作は神話や妖精物語をコンセプトにした壮大な作品。
アルメニア語によるナレーションが物語を語りながら、アコースティックギターにうっすらとしたシンセを重ね、
ホイッスルに似た民族楽器、ドゥドゥクの優しい音色に、ヴァイオリン、ビオラなどのストリングスが優美に彩り、
素朴な土着性とクラシカルなシンフォニック性が交差する。演奏部分はオールインストであるが、ときにプログレッシブと言ってよい
スリリングなパートもあったり、単なるトラッド、フォークという以上に作り込まれた世界観を感じさせる。コンセプチュアルな力作だ。
優雅度・9 トラッ度・8 幻想度・9 総合・8
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VA/ ShadeLynx 「Фолк и Фолк-Рок (Лучшее за год)」
ロシアのネオフォーク/フォークロック系のオムニバス。2008年作
13アーティストの楽曲を収録していて、ダミ声ヴォーカルにヴァイオリンやバグパイプが鳴り響くフォークロックのTintal
妖しい女性ヴォーカルにヴァイオリンとハードなギターの、Конец Летаはアルバムを持っておりました。
ジェントルな男性声にフルート、ヴァイオリンが美しいフォークロックの、Дорога Водана
魅力的な女性ヴォーカルのペイガンフォーク、Семиречье、ハスキーな女性声とプログレ風の、Бергтора
女性ヴォーカルにストリングス、フルートの優美なネオフォーク、Сильфы、男女声の幻想的ネオフォーク、Тол Мириам
それぞれに味わいのあるスタイルで楽しめる。気になったバンドがいても、それぞれの作品が入手困難なのが残念か。
優雅度・8 幻想度・8 女性Vo度・7 総合・7.5
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1/20
今年もプログレでよろしくお願いいたします。(15)


AMANDA LEHMANN 「Innocence & Illusion」
イギリスの女性ミュージシャン、アマンダ・レーマンの2021年作
Steve Hackettのツアーメンバーにも参加するなど、公私ともにハケットファミリーである女性ギタリスト&シンガーで、
ソロとしては初のアルバム。スティーブ・ハケット、ニック・マグナス、ロジャー・キングといったハケットバンドの面々が参加、
どことなくアニー・ハズラムを思わせる美しい歌声に叙情的なギターとシンセを重ねた、優美なサウンドを聴かせる。
ニック・マグナスのシンフォニックなシンセアレンジも素晴らしく、アマンダの泣きのギターもときにハケットを思わせる。
ロブ・タウンゼンドのサックスが鳴り響くジャズタッチのナンバーや、繊細なアコースティックギターのバラードも美しい。
ときにハード寄りのギタープレイも覗かせつつ、魅力的な女性声を活かした優雅な味わいの好作品です。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 女性Vo度・8 総合・8
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Phi Yaan-Zek 「Holotropic Guitar (20th Anniversary Edition)」
イギリスで活躍するインド系のミュージシャン、ファイ・ヤーン・ゼクの2020年作
90年代から活動する技巧派ギタリストで、本作は2000年作に新緑パートを加えてリミックスした20周年バージョン。
優雅なフレーズを奏でるギターにシンセを重ね、軽妙なリズムとともに、スペイシーなサイケ感も含んだ
とぼけた味わいのインストサウンドを描く。エスニックなテイストも含んだ旋律や、デジタルなアレンジによる
MATS/MORGAN風味のコミカルなアヴァンギャルド性も覗かせるなど、とらえどころのない作風ながら、ギターのプレイ自体は、
わりとメロディがあったりして聴きやすい。FROST*のアンディ・エドワース、KARMAKANICのラレ・ラーションなどがゲスト参加。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 アヴァンギャル度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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THE CURATOR 「TWENTY-SIX/12」
イギリスのミュージシャン、アリスター・マーフィによるソロプロジェクト、キュレイターの2019年作
NO-MANJudy Dybleの作品にも参加するミュージシャンで、本作にも関連メンバーが参加。
優雅なヴィブラフォンの音色にやわらかなシンセとピアノ、しっとりとした女性ヴォーカルの歌声に
サックスも鳴り響き、ジェントルな男性ヴォーカルも加えた、ジャズタッチの大人のナンバーから、
ときに優美でシンフォニックな感触も覗かせる。ギターやドラムなどはほとんど入らないので、ロック感触は希薄だが、
後半は24分の大曲で、クラシカルな優雅さとポストプログレ的な繊細な歌もの感触が同居したアレンジセンスは見事。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優美度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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MAGENTA 「LIVE AT ACAPELA 2016 & 2017」
イギリスのプログレバンド、マジェンタのライブ作品。2019年作
ウェールズのアカペラ・スタジオで行われた、2016/2017年のアコースティックライブを2CD+2DVDに収録。
アコースティックギターにチェロを重ねたインスト曲から、TIGER MOTH TALESのピーター・ジョーンズによるピアノと
クリスティーナ・ブースの美しい歌声でしっとりと聴かせる。ロブ・リード、クリス・フライ、クリスティーナ各メンバーのソロや、
KOMPENDIUMの楽曲も披露。アダルトなジャズタッチのナンバーや、牧歌的なリコーダーによるフォーク風のナンバー、
ドラムにエレキギターも加えたロック寄りの感触も覗かせつつ、音数を絞ったシンプルな音像で各曲をアレンジしている。
2017年の方では、10分前後のMAGENTAの大曲も優美なアレンジで披露。バンドの懐の深さを味わえるライブ作品である。
ライブ演奏・8 プログレ度・6 優雅度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Dave Brons 「Based On A True Story」
イギリスのミュージシャン、デイヴ・ブロンズの2015年作
Celestial Fireのギタリストで、本作には元IONAのデイヴ・ベインブリッジ、トロイ・ドノクリーがゲスト参加。
ケルティックな雰囲気も感じさせるメロウなギターの旋律に優美なシンセやオーケストラアレンジを重ね、
インストによる優雅なシンフォニックロックを展開する。トロイ・ドノクリーによるイーリアンパイプがギターに重なると、
ケルティックな幻想性に包まれて、Celestial Fireやデイヴ・ベインブリッジの諸作に通じる味わいにもなる。
オールインストなので耳心地の良いBGMになってしまいそうだが、ときにMIKE OLDFIELDを思わせるような
センス良いギターのフレージングがしっかりと泣きの魅力になっている。優雅なるケルト風シンフォの逸品です。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・9 総合・8
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IL MITO NEW TROLLS 「TR3 - Special Live Conecrto Grosso」
イタリアンのプログレバンド、イル・ミト・ニュー・トロルスのライブ作品。2007年作
UT NEW TROLLS、LA LEGGENDA NEW TROLLS、NICO DI PALO/GIANNI BELLENO OF NEW TROLLSと、いくつも分派があってややこしいが、
本作は、Nico De Palo、Ricky Belloni、Gianni Bellen、Giorgio Usaiという歴代メンバーによる編成で、名作「Concerto Grosso」 1と2を完全再現した
2004年のライブをCD+DVDに収録。CDには、バンドによる新曲を前半に収録していて、わりとキャッチーなポップ感に包まれつつ
イタリア語によるヴォーカルが哀愁の情感を描いている。「コンチェルト・グロッソ」再現ライブは、壮麗なストリングをバックに
叙情的なギターが鳴り響き、マイルドなヴォーカルとともに、クラシカルなシンフォニーとバンドが一体となったサウンドに聴き惚れる。
DVDの映像では、ツインキーボード編成のバンドとストリングス隊によるゴージャスなステージが視覚的にも味わえる。
ライブ演奏・8 クラシカル度・8 優美度・9 総合・8 ニュートロルス関連バンドのレビューはこちら
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Doracor 「Lady Roma」
イタリアのシンフォニックロック、ドラコールの2008年作
シンセ奏者のコラド・サルデラによるプロジェクトで、1997年にデビューし、本作は7作目となる。
イタリア語の語りによるイントロから、叙情的なギターの旋律に華やかなシンセを重ね、
軽やかなリズムにイタリア語のヴォーカルを乗せて、優美なシンフォプログレを聴かせる。
ときに優雅なサックスの音色も加わり、哀愁ある大人の叙情とともに、メロウな泣きのギターが響き渡る。
ムーグなどを含むいかにもプログレらしいシンセワークをメインに、リズム面での演奏力や緩急ある展開で、
前作までにあったマイナー臭さは払拭され、イタリアらしい優雅なシンフォニックロックが堪能できる逸品だ。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 優美度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら

Fabio Zuffanti 「Ruggine, 1992-2011」
イタリアのミュージシャン、ファビオ・ズファンティのレアトラックス集。
FINISTERRE、HOSTSONATEN、LA MASCHERA DI CERAなど、多くのプロジェクトで活躍するミュージシャン、
本作は1992〜2011年までに作られたデモや未発音源など14曲を収録したCDR仕様で、世界100枚の限定盤。
ソロの未発曲をメインに、HOSTSONATENのデモや、ロックオペラ、MERLINの日本盤収録ボーナスの大曲、
さらには女性Voシンフォ、Ariesの音源なども収録。メロウなギターにメロトロンなどの優美なシンセ、サックスやフルートなどを加えての
室内楽色なども含みつつ、モダンなポストプログレ風味やアンビエントなナンバーなど、ミュージシャンとしての懐の深さが窺える内容だ。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優美度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら

BARBARA RUBIN 「UNDER THE ICE」
イタリアの女性シンガー、バーバラ・ラビンの2010年作
Arcansielなどに参加する、女性シンガー&鍵盤奏者で、優美なピアノやシンセの重ねに、ハスキーな女性ヴォーカルを乗せた
シンフォニックな歌ものサウンドを聴かせる。楽曲は1〜4分前後と小曲メインで、プログレ的な展開などはさほどないが、
自身の奏でるヴァイオリンやチェロやフルートなどのクラシカルな優雅さに、ドラムが加わるロック感触も同居していて
オルガンやムーグシンセなどのプログレ風味も覗かせるなど、女性声のシンフォプログレとして楽しめる部分も多い。
全33分というのがやや物足りないが、単なる歌ものという以上のクラシカルな美意識に包まれた好作品。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 女性Vo度・8 総合・7.5
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Melanie Mau & Martin Schnella 「Through The Decades」
ドイツのプログレバンド、Frequency Driftの女性シンガーとギターによるユニットの2020年作
本作は、アコースティック編成で、Genesis、Kate Bush、Kansas、Queen、Flying Colors、Peter Gabriel、Yesから
Blind Guardian、Pain Of Salvation、Metallica、In Flamesといったメタル系までを幅広くカヴァーした作品。
アコースティックギターのつまびきに、ホイッスル、女性ヴォーカルの歌声で聴かせる牧歌的な「月影の騎士」から、
男女ヴォーカルでキャッチーな仕上がりのカンサス「奇跡」、イエス「And You And I」もじつに優雅な味わいです。
メタリカ「Creeping Death」はアコースティックに絶妙に変化していてなかなか面白い。センスを感じさせるカヴァー集です。
優美度・9 プログレ度・7 女性Vo度・8 総合・8

STERN MEISSEN 「FREIHEIT Ist」
ドイツのプログレバンド、シュテルン・マイセンの2020年作
1977年にデビュー、東ドイツ時代から活動するバンドで、本作は2011年の復活作以来、9年ぶりのスタジオアルバム。
オルガンやエレピなどを含む優美なシンセワークにドイツ語によるマイルドなヴォーカルを乗せ、
やわらかな叙情に包まれた大人のシンフォニックロックを聴かせる。3〜4分前後の楽曲を主体に
比較的シンプルでキャッチーな楽曲は、プログレというよりは優雅なメロディックロックというべきか。
わりとポップな歌もの感も強いが、美しいシンセアレンジにはプログレの香りも残している。
オリジナルメンバーはドラムのみとなったが、歴史あるバンドが活動を継続しているのは嬉しいかぎり。
メロディック度・7 プログレ度・7 優雅度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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Christiaan Bruins's INVENTIONS 「META」
オランダのミュージシャン、CHRISによるプロジェクト、インヴェンションズの2017年作
優美なピアノやエレクトロなシンセの重ねでスペイシーな空間美を描きつつ、マイルドなヴォーカルを乗せた
繊細でキャッチーなサウンド。ほどよいロック感触とともに、エレクトロ系シンフォプログレとしても楽しめる。
ポストプログレ寄りの優しい歌もの感に、ストリングスアレンジなどを加えた美麗なシンフォニック性もあり、
スリリングな展開はさほどないものの、作品全体を通じて大変耳心地の良いサウンドである。
うるさすぎないシンセの重ねも絶妙で、ゆったりと鑑賞できる。ボーナス含めて全75分という力作です。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優美度・9 総合・8
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Metaphor 「The Pearl」
アメリカのプログレバンド、メタファーの2018年作
1999年にデビュー、本作は11年ぶりとなる4作目。テクニカルな変拍子リズムにギターとシンセを乗せ、
伸びやかなヴォーカルも加え、キャッチーな優雅さと偏屈な展開力が同居した、シンフォプログレを聴かせる。
いかにもプログレらしいムーグ系シンセの音色や、キャッチーなメロディアス性はKANSAS風であったり、
メロトロンなども含めてオールドなプログレ感触に包まれつつ、ECHOLYNや初期SPOCK'S BEARDにも通じる
90年代以降のドラマティックな構築性が融合している。さらに濃密な大曲などがあれば、堂々たる傑作になっただろう。
なお、シンセ奏者、マルコム・スミスによるソロ「We Were Here」も同様の優雅なシンフォプログの好作品である。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 優雅度・8 総合・8 
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PI2 「Retorn」
スペインのプログレバンド、パイ・ツーの1998年作
叙情的なギターの旋律にやわらかなシンセを重ねた、インストをメインにした優美なシンフォニックロック。
13分の大曲では、アコースティックギターにクラリネットの音色も加わって、繊細なクラシカル性も覗かせつつ、
オルガンなどのシンセとともにプログレらしい緩急ある展開力で、日本人好みのシンフォプログレを聴かせる。
サックスが鳴り響き、きらびやかなシンセワークが重なるナンバーも、ゆったりとした繊細な叙情美が耳心地よく、
オールインストながらも起伏のあるサウンドが楽しめる。古き良きプログレの感触を残した優雅な好作品です。
ドラマティック度・7 プログレ度・8 優美度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら

Albion
ポーランドのシンフォニックロック、アルビオンの1995年作
デビュー作、25周年記念の再発盤で、メロウなギターにシンセを重ね、コケティッシュな女性ヴォーカルとともに
優美なシンフォプログレを聴かせる。Anna嬢の歌声は、かつてのトレイシー・ヒッチングスにも通じるハスキーな魅力で
女性声の繊細系シンフォとしては、同郷のQUIDAMの1作目にも通じるような清涼な耳心地で楽しめる。
全体的に派手さはないものの、ときにアコースティックを含んだやわらかな叙情性や、うっすらとしたシンセによる
幻想的な空気感が、キュートな女性ヴォーカルを引き立てている。ボーナスに1994年のデモ音源を追加収録。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 女性Vo度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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