〜HEAVY METAL CD REVIEW 2023 by 緑川 とうせい

★2023年に聴いたメタルCDレビュー
*過去のレビューはCDレビューTOPから各ジャンル別に見られます

*プログレ最新レビュー *特集ページ一覧


12/30
今年最後のメタルレビュー(268)
年間ベストはこちら

Dragonland 「The Power Of The Nightstar」
スウェーデンのメロディックメタル、ドラゴンランドの2022年作
2001年にデビュー、本作は11年ぶりとなる6作目。
語りを含むシネマティックなイントロから、壮大な世界観を予見させるが、SF的なストーリに基づいたコンセプト作のようで、メタリックなリフと叙情的なフレーズを奏でるギターにきらびやかなシンセを重ね、オリジナルメンバーである、ヨナス・ヘイジャートのエモーショナルなヴォーカルで、壮麗でシンフォニックなメロパワを展開する。
クサメロ感ある疾走メロスピナンバーには、初期からのファンもにんまり。ミドルテンポのナンバーでもキャッチーなメロディでなかなか爽快な聴き心地である。
抜群に上手くはないが味わいのあるヨナスの歌声も耳心地よく、サウンドにマッチしている。
これまで以上にスタイリッシュなシンフォニックメタル要素が加わって、クオリティの高さは過去最高か。ボーナス含めて全71分の力作。
メロディック度・8 疾走度・8 壮麗度・9 総合・8.5 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する

Twilight Force 「At The Heart Of Wintervale」
スウェーデンのメロディックメタル、トワイライト・フォースの2023年作
2013年にデビューし、4作目となる。きらびやかなシンセをギターに重ねて疾走、前作から加入の、アレッサンドロ・コンティの伸びやかな歌声で、壮麗なシンフォニック・メロパワを展開する。
サビでのクワイアを含んだ高揚感と、陽性のクサメロ感は、もはやこのバンドのお家芸である。
ストレートな疾走感と大仰なファンタジック性でたたみかけつつ、ときに優雅なピアノを取り入れたり、キャッチーなナンバーも織り込んで、10分を超える大曲では、緩急ある展開とシネマティックなスケール感に包まれて、RHAPSODYばりの濃密さでこれでもかと盛り上げる。
こいつらやべえ…ファンタジー厨だ、と失笑するも、ここまでやれば天晴というほかない。ブラストビート入りの激しい疾走も覗かせつつ、オーケストラルなアレンジと混声クワイアも含んだ、とにかくゴージャスな聴き心地。血沸き鼻つまむほどの華麗なるシンフォ・クサ・メロパワ傑作だ。
クサメロ度・9 壮麗度・9 ファンタジック度・9 総合・8.5 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する

Grimgotts 「Tales, Sagas & Legends」
イギリスのメロディックメタル、グリムゴッズの2021年作
2017年にデビューし、3作めとなる。壮麗なイントロから、メタリックなギターに朗々としたヴォーカルを乗せてMANOWARにも通じるエピックな勇壮さに包まれた、ファンタジックなシンフォニックメタルを聴かせる。
クサメロ感あるギターに美麗なアレンジを重ねて、爽快に疾走するメロスピから、NOCTURNAL RITESばりのキャッチーな歌メロを乗せたミドルテンポのナンバーまで、どこを切ってもメロディック&きらびやかな耳心地で、アコーディオンの音色を使ったフォーキーな味わいも覗かせたり、様々なバンドの要素を取り込んだごった煮感で、激しすぎないライトな感触は初心者にも対応。コテコテ好きにはお薦め、クサメロ祭りの全67分。
クサメロ度・8 疾走度・8 ファンタジック度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する

Northtale 「Welcome To Paradise」
スウェーデン&アメリカのメロディックメタル、ノーステイルの2019年作
AquariaやCellador、Circle II Circle、PowerQuestなどにも在籍したブラジル人ギタリスト、ビル・ハドソンを中心に結成したバンド。
のっけからクサメロ感あるギターで疾走し、元Twilight Forceのクリスチェン・エリクソンの伸びやかなハイトーンヴォーカルを乗せて、PowerQuestSonata Arcticaのような優美でキャッチーなメロパワを聴かせる。
北欧らしい透明感あるシンセアレンジに、メロハーばりの心地よいメロディアス性、HELLOWEEN風のジャーマンメタル色や、ときにネオクラ色を含む流麗なギタープレイも含んだまさに日本人好みのスタイル。
3〜4分前後の楽曲はストレートに爽快で、疾走曲を主体にしつつ優雅なバラードもアクセントになっている。
クサメロ度・8 疾走度・8 爽快度・8 総合・8
Amazonで購入する

Saint Deamon 「Ghost」
スウェーデンのメロディックメタル、セイント・ディーモンの3rd。2019年作
DIONYSUSのDrを中心に結成し2作を発表し、創設者であるドラムのロニーが脱退、本作は10年ぶりとなる3作目。
元HIGHLAND GLORYのヤンの伸びやかなヴォーカルを乗せ、ヴァイキングメタル風味の勇壮な感触と、キャッチーなメロディのフックが同居した、ほどよい疾走感を含んだ北欧らしい正統派メロパワを聴かせる。
陽性のクサメロ感という点では、初期のNOCTURNAL RITESを思わせるところもあり、疾走ナンバーから、メロハー風のミドルテンポなども含め、楽曲の充実という点でも過去2作を上回る。ボーナス含む全15曲75分の力作。
メロディック度・8 疾走度・7 北欧メロパワ度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する

Seventh Storm 「Maledictus」
ポルトガルのメロディックメタル、セヴンス・ストームの2022年作
元MOONSPELLのドラマーが在籍するバンドで、重厚なツインギターにシンセを重ね、いくぶんダーティなヴォーカルで、ヴァイキングメタル的でもある勇壮なメタルサウンドを聴かせる。
ドゥームメタル風味のどっしりとしたダークさに包まれつつ哀愁を含んだ甘すぎない叙情性とともに、メロスピ的に疾走するパートもあって、ヨーロピアンな正統派メロパワとしても楽しめる。
中近東的なメロディを含んだナンバーは、ORPHANED LANDあたりに通じる雰囲気もあり、エスニック系メタルが好きな方にも対応。
曲によってはアグレッシブな激しさやゴシックメタル寄りのダークな空気も覗かせるなど、MOONSPELLを彷彿とさせる部分も感じさせる。
全体的には、メロパワかヴァイキングか、アグレッシブかダークメタルなのか微妙な感じなので、今後はより方向性を絞っていってもらいたい。
ドラマティック度・7 勇壮度・8 哀愁度・7 総合・7.5
Amazonで購入する

SILVER TALON 「Decadence And Decay」
アメリカのメタルバンド、シルヴァー・タロンの2021年作
SPELLCASTERのギター2人を中心に結成したバンドで、トリプルギター編成の6人組。
SAVATAGEやNEVERMOREから影響を受けたという、アグレッシブなギターリフに伸びのあるヴォーカルで90年代をルーツにしたパワーメタルを聴かせる。
厚みのあるギターにうっすらとしたシンセも重なった、ミステリアスな翳りを帯びたサウンドで、随所にスラッシーな疾走感も覗かせる。
悪魔やオカルトをテーマにしている通り、シアトリカルでダークな世界観に包まれて、叙情的なギターフレーズも含んだヨーロピアンなテイストも味わいがある。
ラストの8分の大曲はメランコリックな空気と知的な構築力が交差する。KING DIAMONのアンディ・ラ・ロックがゲスト参加。
ドラマティック度・7 ダークメタル度・8 叙情度・7 総合・7.5
Amazonで購入する

Burning Witches 「Hexenhammer」
スイスのガールズパワーメタル、バーニング・ウィッチーズの2018年作
2017年にデビューし、2作目となる。のちにCRYPTAに加入するギターのソニアが加わって、ツインギターの女性5人編成でオールドなギターリフに伸びやかなヴォーカルを乗せた正統派のパワーメタルを聴かせる。
スラッシーな疾走感もありつつ、どっしりとした3連リズムのナンバーなどでは、MANOWARを思わせるような勇壮なメタル感に包まれる。
DIO「Holy Diver」のカヴァーもなかなか良い感じで、女性らしさをかすかに残しつつ、オールドメタルを追及する姿勢は見事。
ドラマティック度・7 疾走度・7 オールドメタル度・8 総合・8
Amazonで購入する

Wytch Hazel 「II: Sojourn」
イギリスのメタルバンド、ウィッチ・ハゼルの2018年作
2016年にデビュー、2作目となる本作も、80年代NWOBHMから飛び出してきたようなオールドなサウンドが炸裂。
ほどよい叙情を含んだツインギターと、朗々とした味わいのヴォーカルで、Wishbone Ashなどを思わせる古き良き英国ハードロックの雰囲気に包まれて、オールドなHR/HMリスナーにはたまらないだろう。
オルガン鳴り響く牧歌的なナンバーもあり、アナログ感たっぷりの確信犯的な生々しい音質も含めて、前作以上のヴィンテージな完成度。ウェットな哀愁の叙情ナンバーで、ゆったりと終わるのも心憎いですね。
ドラマティック度・8 英国度・9 ヴィンテージ度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する

Fates Prophecy 「The Cradle of Life」
ブラジルのメタルバンド、フェイツ・プロフェシーの2014年作
1998年にデビューし、4作めとなる。メタリックなツインギターにパワフルなヴォーカルを乗せて疾走する正統派のメロパワサウンド。
ほどよくB級ぎみのクサメロ感も覗かせつつ、ミドルテンポナンバーでは、シンプルなリフに終始する部分も多く、アレンジ面でのアイデア不足が散見されて、正直ギターは退屈だ。
疾走感も物足りないし、メロディのフックも弱いという、典型的な中庸以下のメタルサウンドで、なにも引っかかるところがないという。一番マシなのはメイデン風のナンバーか。とにかく曲作りから始めよう。
ドラマティック度・6 疾走度・6 楽曲・6 総合・6
Amazonで購入する

TEN 「Something Wicked This Way Comes」
イギリスのメロディアスハード、テンの2023年作
1995年デビューのベテラン、前作からわずか1年で発表された16作目。ツインギターにシンセを重ね、ゲイリー・ヒューズのジェントルな歌声を乗せた、英国らしい叙情に包まれたハードロックは本作も健在。
かつての名作「The Name Of The Rose」の続編のような1曲目から、翳りを帯びたウェットなメロディで、哀愁のゲイリー節が全開。
きらびやかなシンセアレンジによるシンフォニックなテイストも合わさり、ゆったりとしたパラードナンバーなども耳に優しく、全体的にも落ち着いた優雅な聴き心地。
前にも聴いたような歌いまわしもけっこうあるのだが、そこも含めて安心の出来ですね。
メロディック度・8 キャッチー度・8 哀愁の叙情度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する

TREAT 「The Endgeme」
スウェーデンのメロディアス・ハードロック、トリートの2022年作
1985年デビューのベテラン。1993年に解散するも2006年に復活、復活後は往年を超えるような質の高いアルバムを連発し、本作は復活後の4作目、通算9作目のアルバムとなる。
重すぎないギターにシンセを重ね、伸びやかなヴォーカルとともに北欧らしい透明感のあるハードロックを聴かせる。
80年代の北欧メタルをルーツにした優美な叙情性と、ベテランらしい骨太のサウンドが同居したスタイルは健在で、どの曲もキャッチーなメロディのフックが現れて北欧メロディアスハード好きにとってはたまらない。中盤のバラードナンバーも大人の叙情性に包まれたよい味わいだ。
メロディック度・9 北欧HR度・9 大人の叙情度・9 総合・8.5 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する

Harem Scarem  「United」
カナダのハードロック、ハーレム・スキャーレムの2017年作
1991年デビュー。2008年作を最後に解散するも、2013年にリメイク作である「Mood Swings II」を契機に復活を果たす。
本作は「THIRTEEN」に続く復活2作目で、アラビックな旋律のハードなギターで幕を開け、オールドロックなアンサンブルに味わいのあるヴォーカルを乗せた、キャッチーな大人のハードロックが広がってゆく。
耳に心地良いメロディのフックは、往年のサウンドを受け継ぐもので、このストレートな爽快さはじつに日本人好みだろう。
ノリのいいナンバーから、ゆったりとしたバラードまで、どの曲もサビでは叙情が溢れ出す。ハレスキャ健在、楽曲充実の傑作です。
メロディック度・9 キャッチー度・9 大人の叙情度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する

Harem Scarem  「Change the World」
カナダのハードロック、ハーレム・スキャーレムの2020年作
通算15作目となる本作も、ほどよくハードでメロディックなギターと、ハリー・ヘスのジェントルでエモーショナルな歌声で、哀愁の叙情味たっぷりの王道のハードロックを聴かせる。
キャッチーで爽快な歌メロと、骨太のロック感のバランスもさすがで、ベテランらしい堂々たる自信を感じさせる。
この路線を求めている我々からすれば、新鮮味の薄さなどは贅沢な言葉か。
スローテンポの叙情ナンバーなども、巧みなギタープレイを盛り込んだ、オールドスタイルの説得力があり、ストレートなノリの爽快なナンバーを引き立てている。前作に比べるとロックなハードさ強めている。
メロディック度・8 キャッチー度・8 大人の叙情度・9 総合・8 
Amazonで購入する

Syberia 「Statement On Death」
スペインのポスト・ハードロック、シベリアの2022年作
2012年にデビューし、4作目となる。うっすらとしたシンセとギターのアルペジオのイントロから、ハードなギターとトレモロのフレーズが重なりインストによる涼やかなポストメタル風のサウンドが広がってゆく。
やわらかなシンセアレンジにはプログレ的な感触もあり、クールで知的な空間性がインストのサウンドにミステリアスなスケール感を付加している。
7〜9分前後の大曲を主体に、耳心地の良いトレモロのギターやシンセで、厚みのあるアンサンブルを構築するあたり、バンドの懐の深さとセンスを感じる。
ラスト曲では、ブラストビート的なほどよい激しさも覗かせて、ポストブラックのファンなどにも楽しめるかもしれない。
ドラマティック度・7 クールな叙情度・8 知的なスケール感・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する

ROSALIE CUNNINGHAM 「Two Piece Puzzle」
イギリスの女性シンガー、ロザリー・カニンガムの2022年作
元PURSONのシンガーで、2作目のソロ。アナログ感あるギターにオルガンが鳴り響くイントロ曲から、艶めいた女性ヴォーカルとともに、70年代のサイケ感を漂わせる、ヴィンテージなロックが広がる。
ゲストによるヴァイオリンも加わって優雅な叙情に包まれつつ、ときに妖しい語りを織り込んだり、マンドリンやブズーキを使った秘教的なパートなど、PURSON以上にディープな雰囲気を感じさせる。
優雅なピアノを加えたジャズ調のナンバーもあったり、ロザリーの表現力ある歌声が堪能できる好作品だ。
サイケ度・8 ヴィンテージ度・9 女性Vo度・8 総合・8
Amazonで購入する

ExpiatoriA 「Shadows」
イタリアのドゥームメタル、エクスピアトリアの2022年作
結成は80年代というバンドで、重厚なツインギターにシンセを重ね、朗々としたヴォーカルを乗せて、BLACK SABBATHをルーツにしたダークな空気に包まれた、古き良き正統派のドゥームメタルを聴かせる。
ほどよい叙情を感じさせるギターに、ときにハイトーンを含めた歌声で、翳りを帯びたシアトリカルなドラマ性を感じさせるところは、エピックドゥームが好きな方にも楽しめるだろう。
重すぎないサウンドは、REVELATIONなどにも通じる、いくぶんマイナーでウェットな雰囲気に包まれていて、6〜9分という長めの楽曲を主体に、ときにフルートやサックスも加わったりと、プログレ風味も覗かせるのはイタリアらしい。
全体的には、これという派手さはないものの、ヨーロピアンなドゥームメタルが味わえる力作だ。
ドゥーム度・8 重厚度・8 翳りと叙情度・8 総合・7.5
Amazonで購入する

Cratophane
フランスのサイケ・ハード、クラトファネの2022年作
ハードなギターとうねりのあるベースを重ね、アナログ感に包まれた、ドゥームロックとサイケの中間のようなサウンド。
生々しいドラムとともに、いくぶんこもり気味の音質が、怪しげな空気感になっていて、うっすらとしたシンセアレンジも加わって、プログレ要素を含んだヴィンテージなドゥームロックとしても、オールインストのサイケロックとしても楽しめる。
スローテンポを基調に、ときに激しくたたみかけるパートやジャズロック風味もあったりと、一筋縄ではいかないヘンテコな味わいも面白い。
ドゥーム度・7 サイケ度・7 ヴィンテージ度・8 総合・7.5
Amazonで購入する


12/15
師走のメタルレビュー(250)

MOONLIGHT HAZE 「De Rerum Natura」
イタリアのシンフォニックメタル、ムーンライト・ヘイズの2019年作
元TEMPERANCEの女性シンガー、キアラ・トリカリコ擁するバンドで、壮麗なシンセアレンジにメタリックなギター、
美しい女性ヴォーカルの歌声で、華麗でスタイリッシュなシンフォニックメタルを聴かせる。
流麗なギタープレイやキャッチーなメロディのフックを、ほどよいモダンなヘヴィネスに融合させ、
きらびやかな疾走感とともに、どこを切っても美麗なサウンドが味わえる。ソプラノとストレートを使い分ける
キアラ嬢の表現力ある歌声も魅力的で、デビュー作にしてすでに完成度の高い逸品です。
シンフォニック度・8 壮麗度・8 女性Vo度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する

MOONLIGHT HAZE「Animus」
イタリアのシンフォニックメタル、ムーンライト・ヘイズの2022年作
3作目となる本作、壮麗なクワイアで幕を開け、透明感のあるキアラのヴォーカルと適度にヘヴィなギターと
やわらかなシンセアレンジで、DELAINなどにも通じる優雅でキャッチーなメロディに包まれたサウンドを描いてゆく。
楽曲的には3〜4分前後と、シンプルなナンバーが多く、聴き心地は良いのだが、もう少し深みのある盛り上がりも欲しいか。
全体的にも過去作に比して新鮮味に欠けるのだが、後半の疾走するメロスピ調ナンバーなどは壮麗な味わいで良いですね。
シンフォニック度・8 壮麗度・8 女性Vo度・8 総合・8
Amazonで購入する



Victoria K 「Kore」
アメリカのシンフォニックメタル、ヴィクトリアKの2022年作
2020年にデビューし、2作目となる。メタリックなギターに艶めいた女性ヴォーカルを乗せて、美しいシンセアレンジとともに、
ゴシック的でもある耽美な雰囲気に包まれたシンフォニックメタルを聴かせる。全体的にはシンセによる味付けは控えめで、
壮麗なシンフォニック性は控えめなのだが、ヴィクトリア・コキノス嬢の歌声は、はかなげでフェミニンな魅力があって悪くない。
ときおりデスヴォイスも絡んだでのアグレッシブなパートも覗かせつつ、楽曲自体は、ストレートな感じで普通に聴きやすい。
反面、もう少し壮大な盛り上がりや、キャッチーなフックが欲しいか。いっそこのままゴシックメタル寄りの妖しさを深めてもよいかと。
シンフォニック度・7 耽美度・8 女性Vo度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する


Angel Nation 「Aeon」
イギリスのシンフォニックメタル、エンジェル・ネイションの2017年作
LEAVES' EYESの女性シンガーでもあるエリナをフロントに、女性ベースを含む編成で、メタリックなギターにシンセを重ね、
伸びやかな女性ヴォーカルとともに、優美なシンフォニックメタルを聴かせる。適度な疾走感とキャッチーなメロディが同居しつつ、
クラシカルなピアノやストリングスアレンジによる美麗なナンバーや、しっとりとしたスローテンポのナンバーでは、
なよやかなソプラノを歌いこなすエリナ嬢の歌唱の魅力が際立って、Nightwishばりの優雅なサウンドか楽しめる。
楽曲的な部分での新鮮味は薄いのだが、フェミニンな女性シンガーの歌声に聴き惚れる好作品です。
シンフォニック度・7 優美度・8 女性Vo度・9 総合・8
Amazonで購入する


Moondive 「Dive With Me」
セルビアのシンフォニックメタル、ムーンドライヴの2004年作
ピアノを含む優美なシンセをギターに重ね、なよやかな女性ヴォーカルとともに、ほどよい疾走感のあるシンフォニックメタルを聴かせる。
刻みがメインのギターは物足りなさもあるが、疾走するサビでのキャッチーな歌メロには、辺境的なクサメロ感みあって悪くない。
ときおりコミカルなパートも覗かせるなど、アレンジ面での遊びも感じさせたり、ネオクラシカル的なきらびやかなシンセワークなど、
わりと聴きどころもあるのだが、どうしてもB級のマイナー感はぬぐえず。シンフォニックなシンセをバックに美しい女性声で、
ゆったりと聴かせるナンバーなどはなかなか魅力的だ。辺境系のフィメール・シンフォメタル好きの方はどうぞ。
シンフォニック度・7 疾走度・6 女性Vo度・7 総合・7.5
Amazonで購入する


Sede Vacante「Conium 」
ギリシャのゴシックメタル、セーデ・ヴァカンテの2022年作
2016年にデビューし、2作目となる。メタリックなギターに美麗なシンセアレンジを重ね、艶めいた女性ヴォーカルで、
オーケストラルな優雅さに包まれた、ほどよくダークなゴシックメタルを展開する。ほどよくモダンなデジタル感覚と、
クラシカルな美意識が同居してキャッチーなフックのあるところは、かつてのAFTER FOREVERなどにも通じるかもしれない。
ステファニー嬢の歌声は、ストレートなメゾソプラノで、抜けきらないところが、ほの暗い翳りのあるサウンドにマッチしている。
男性声が絡むナンバーもあるが基本は女性声メイン。これだというインパクトはないのだが、高品質なシンフォニック・ゴシックメタルです。
シンフォニック度・7 耽美度・8 女性Vo度・7 総合・8
Amazonで購入する


Paradise Lost「Obsidian」
イギリスのゴシックメタル、パラダイス・ロストの2020年作
1990年デビュー、英国ゴシックメタルの元祖で、本作は16作目となる。アコースティックギターにヴァイオリン、マイルドな歌声を乗せたイントロから、
重厚なギターに迫力あるデスヴォイスを加えて、どっしりとドゥーミィなゴシックメタルを聴かせる。傑作であった前作の路線を引き継ぎつつ、
ヘヴィなリフを際立たせたバックのサウンドはわりとシンプルで、初期の頃のダークなデスメタル要素を随所に残しつつ、
叙情的なギターフレーズが随所にアクセントになっている。楽曲的にも4〜5分前後がメインで、比較的ストレートな作風なので
聴きやすさの反面、前作ほどのディープな世界観は感じられない。いわばベテランが自然体で作ったというような好作である。
ドラマティック度・7 耽美度・7 叙情度・7 総合・8 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する


Paradise Lost「At The Mill」
イギリスのゴシックメタル、パラダイス・ロストのライブ。2021年作
2020年にイギリスで行われた無観客ライブを収録。最新作「Obsidian」、前作「Medusa」からのナンバーに加え、
過去作からのナンバーもたっぷりと披露。ヘヴィなギターに年季を経たニック・ホルムズのヴォーカルを乗せ、
ライブらしい生々しい音質とともに、翳りを帯びた叙情をまぶした重厚なゴシックメタルが味わえる。
初期のナンバー「Gothic」では、女性ヴォーカルも加わった耽美な雰囲気を再現していて、ファンには嬉しい。
過去曲と近年のナンバーが混在しつつも、ベテランらしい世界観で統一された、全16曲、73分という力作ライブ。
ライブ演奏・8 耽美度・8 重厚度・8 総合・8
Amazonで購入する


Valkiria 「Here The Day Comes」
イタリアのゴシック・ドゥームメタル、ヴァルキリアの2012年作
ゆったりとしたリズムに叙情的な泣きのギターを乗せ、デスヴォイス&マイルドなヴォーカルで、PARADISE LOSTなどに通じる
耽美で重厚なゴシックドゥームを聴かせる。どこを切っても扇情的なギターのフレージングが耳心地よく、物悲しいサウントであるが、
フューネラルというほどはダークではないので、わりと初心者にも聴きやすいだろう。うっすらとしたシンセアレンジも加わって、
泣きメロたっぷりのギターが哀愁の空気を描き出す。メランコリックな叙情性という点では、Foreshadowingなどが好きな方にもお薦め。
耽美度・8 メランコリック度・7 叙情度・8 総合・8
Amazonで購入する



Project Armageddon 「Tides of Doom」
アメリカのドゥームメタル、プロジェクト・アルマゲドンの2012年作
2009年にデビューし、2作目。女性Vo&Bを含むトリオ編成で、ゆったりとしたリズムにどっしりとしたベースとオールドなギターを乗せ
ハスキーな女性ヴォーカルとともに、サバスルーツの古き良きドゥームロックを聴かせる。わりとシンプルなギターリフが
70年代ルーツのアナログ感をかもしだし、Cathedralあたりに通じる感触もあって、妖しい女性声もよくマッチしている。
ラスト2曲は、9分を超える大曲が並び、これぞドゥームメタルというギターリフとともに、中性的なヴォーカルが響き渡る。
ドゥーム度・8 古き良き度・8 ヴィンテージ度・8 総合・7.5
Amazonで購入する



Black Math Horseman 「Wyllt」
アメリカのドゥームメタル、ブラック・マス・ホースマンの2009年作
いくぶん叙情を含んだイントロから、ヘヴィなギターに妖しい女性ヴォーカルを乗せ、ダークな浮遊感に包まれた世界観を描く。
アナログ感あるサウンドは、ヴィンテージなハードロック感触もあり、重くなりすぎないのでわりと聴きやすい。
ラスローテンポを基調にしつつ、BLACK SABBATHルーツのほどよいオールドロックのノリもあって、
スキャット的にぼやけたヴォーカルも、霧がかかったような妖しい幻想性をかもしだしている。
ストは11分の大曲で、ゆったりと始まりつつ、絶叫に近い歌声とともに、おどろおどろしげなギターでじわりと盛り上げる。
ドゥーム度・8 暗黒度・8 ヴィンテージ度・8 総合・7.5
Amazonで購入する


Die Happy 「Red Box」
ドイツのオルタナ・ハードロック、ダイ・ハッピーの2010年作
チェコ出身の女性シンガー、マルタ・ヤンドヴァをフロントに、2000年にデビュー、本作は7作目となる。
ヘヴィなギターに美しい女性ヴォーカルを乗せ、倦怠の翳りを漂わせたサウンドは前作の延長の作風で、
うっすらとしたシンセアレンジや、サビでのキャッチーなフックとともに、ゴシックロック的な味わいでも楽しめる。
エモーショナルなマルタの歌声は伸びやかな表現力で、ほどよくハードなノリのナンバーからしっとりとしたパートまで、
楽曲に艶やかな彩りを加えている。楽曲は、3〜4分前後とシンプルで、ストレートにメロディアスで聴きやすく、
EVANESCENCEなどのゴスロック系ファンから、女性声メロハーのリスナーまで幅広く楽しめるだろう。
メロディック度・8 倦怠の翳り度・8 女性Vo度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する

Die Happy 「EVERLOVE」
ドイツのオルタナ・ハードロック、ダイ・ハッピーの2014年作
隠れた実力派バンドの8作目。本作も、紅一点マルタさんのハスキーで情感的な歌声とともに、適度にヘヴィで翳りを帯びた
キャッチーなオルタナ・ハードロックを聴かせる。キャリアのあるバンドらしい安定の演奏や、メジャー感のある叙情性はもとより、
マルタ嬢の円熟の歌唱力はいよいよ際立って、シンプルなナンバーはもちろん、しっとりとしたバラードでもその存在感は抜群。
世界的に見ても素晴らしい実力派女性シンガーであろう。重すぎないギターは随所に叙情的で、キャッチーな耳心地の良さは、
オルタナのみならず多くのリスナーが楽しめる普遍性がある。バンドの実力とシンガーのレベルの高さが発揮された傑作である。
メロディック度・8 倦怠の翳り度・8 女性Vo度・9 総合・8
Amazonで購入する


Adagio 「The Birth of Misery」
ブラジルのゴシック・ドゥームメタル、アダージョの2001年作
1997年の1作目は女性声入りのゴシック寄りのサウンドであったが、本作ではクラシカルなシンセと重厚なギターに
男性ダミ声ヴォーカルを乗せた、耽美なドゥームメタルを聴かせる。叙情的な泣きのギターフレーズに
ピアノを含む優美なシンセワークが重なると、ゴシック・メロデス的な味わいで、喚き声を除けばわりと聴きやすい。
ここに女性声が加われば、1st以上の耽美派ゴシックメタル作品になったと思うのだが。叙情派ドゥームデスとしては悪くない出来です。
ドラマティック度・7 耽美度・8 叙情度・7 総合・7.5 過去作のレビューはこちら


11/24
冬のブラックメタル(236)

DARK FUNERAL 「We Are The Apocalypse」
スウェーデンのブラックメタル、ダーク・フューネラルの2022年作
1994年にデビュー、スウェディッシュ・ブラックメタルを代表するバンドの、6年ぶりとなるとなる7作目で、
ベテランになっても白塗りメイクを続けるサタニズム精神に敬服する。甘すぎない叙情を含むギターリフに
ダミ声ヴォーカルで暴虐にブラスト疾走する、禍々しきファストなブラックメタルは健在だ。
激烈なツーバスのドラムの圧殺感と、北欧らしいトレモロのギターがコールドな叙情を描いて、
この邪悪にして荘厳なる迫力というのは、キャリアのあるバンドにしか出せないものだろう。
北欧ブラックメタルを代表する1枚に加えてもいいほどの、じつに強力なアルバムですぞ!!
ドラマティック度・8 暴虐度・9 王道ブラック度・9 総合・8.5 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する

WATAIN 「THE AGONY AND ECSTASY OF WATAIN」
スウェーデンのブラックメタル、ヴァーティンの2022年作
2001年にデビュー、オールドスタイルのブラックメタルを頑固なまでに追及するバンドの7作目となる。
オールドなテイストのギターリフとともに激しくブラスト疾走、邪悪なダミ声ヴォーカルを乗せて、
ほどよい叙情を感じさせる王道のブラックメタルが炸裂する。MARDUKなどにも通じる漆黒の空気と
古き良きサタニックな美学が合わさって、トレモロのギターフレーズが禍々しくも耳に心地よい。
曲によっては、DISSECTION風の雰囲気もあったりと、メロブラ好きのリスナーにも楽しめる。
また、スローテンポのパートも良いアクセントになっていて、激しいだけでない妖しさもGoodです。
ドラマティック度・8 暴虐度・8 王道ブラック度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する

MEFISTO 「PHOSPHORUS」
スウェーデンのデスメタル、メフィストの2022年作
結成は80年代で、2016年にアルバムデビューし、4作目となる。シンセによる不穏なイントロから、
メロデス的なギターリフにデスヴォイスを乗せ、オルガンなどのシンセを重ねて疾走する、
AT THE GATESEDGE OF SANITYなどをルーツにした、オールドな北欧デスメタルを聴かせる。
リズムチェンジなどの展開力や、スローテンポでのどっしりとしたドゥーミィ禍々しさもあって、
激しすぎないデスメタルが好きな方にも薦められる。全体的にはミドルテンポが主体なのだが
後半にはスラッシーな疾走ナンバーもあり、ほどよいメロディアス性とともに重厚なサウンドが味わえる。
ドラマティック度・8 暴虐度・7 北欧デス度・7 総合・8
Amazonで購入する

STILLA 「SYNVILJOR」
スウェーデンのブラックメタル、スティラの2018年
ノイジーなギターにシンセを重ね、喚きヴォーカルとともに疾走する、ネイチャー系ブラックメタル。
ラウドな音質とともにプリミティブな空気感と、北欧らしいコールドな土着性に包まれて
母国語による朗々とした語りも挿入するなど、随所にペイガンメタル的な神秘性も覗かせる。
美しいシンセにアナログ感あるザラついたギターがまとわり、激しすぎない粗野な幻想性を描く点では、
EMPERORの1stなどに通じるところもあるだろう。暴虐になり過ぎないブラストビートもよいあんばいで、
激しくともどこか優雅な感触で楽しめる。90年代に回帰したような北欧ブラックメタルの好作品である。
ドラマティック度・8 暴虐度・7 北欧ブラック度・8 総合・8
Amazonで購入する

FIRTAN 「MARTER」
ドイツのブラックメタル、ファータンの2022年作
2014年にデビューし、3作目となる。幻想的なジャケからしてそそられるが、トレモロのギターにシンセを重ね、
吐き捨てヴォーカルとともにブラスト疾走する、ほどよくプリミティブな正統派のブラックメタルを聴かせる。
スローテンポを含む緩急ある展開や、ときにアコースティックギターやヴァイオリンの導入など、
翳りを帯びたヨーロピアンな優雅な空気を感じさせ、ややこもり気味の音質も神秘的な味わいだ。
楽曲は6〜9分前後とわりと長めで、ブラックメタルとしての不穏な暗黒性と激しさはしっかりと含みつつ、
ヴァイオリンなど涼やかな叙情性をふっと挿入するセンスもなかなかのもの。これぞ幻想ブラックの逸品である。
ドラマティック度・8 暴虐度・8 漆黒の叙情度・8 総合・8
Amazonで購入する

Lord Agheros 「Of Beauty & Sadness」
イタリアのゴシック/ポストブラックメタル、ロード・アグエロスの2010年作
グラシモス・エヴァンゲロウ氏による個人ユニットで、2007年にデビューし、3作目となる。怪しげな語りの入ったイントロから、
打ち込みのリズムに壮麗なシンセやピアノを重ねたシンフォニックな感触と、迫力ある吐き捨てヴォーカルを乗せた、
ダークな耽美性で描かれるサウンドは、ブラックというよりは、むしろゴシックメタル寄りの聴き心地かもしれない。
激しいパートもあるのだが、ドラムが打ち込みなので、さほど迫力はなく、ダンジョンシンセ的な幻想的なインストは、
Summoningあたりに通じる世界観。クラシカルなピアノに女性ヴォーカルが重なる優美なナンバーなども良いですね。
ドラマティック度・7 耽美度・8 幻想度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する

Lord Agheros 「Koine」
イタリアのゴシック/ポストブラックメタル、ロード・アグエロスの2022年作
6作目となる本作は、しっとりとしたピアノのイントロから、エレクトロなシンセに艶めいた女性ヴォーカルの歌声を乗せ、
メタリックなギターも加わって、ゴシックメタル的な耽美さと、モダンなヘヴィネスが同居したサウンドを描く。
デスヴォイスを乗せた激しくブルータルなパートも覗かせるなど、いままで以上に緩急ある作風で、
サウンドの迫力という点では、むしろデスメタル寄りの部分もあるのだが、優美なシンセアレンジは幻想的で
シンセをメインにしたアンビエントなナンバーなども耳心地よい。全体的にはまとまりに欠ける感はいなめないが。
ドラマティック度・7 ゴシック&デス度・8 幻想度・8 総合・7.5
Amazonで購入する


Starforger 「Wreath Of Frost」
イギリスのメロディック・デスメタル、スターフォージャーの2021年作
ギターとヴォーカル&ベースによる二人組で、壮麗な雰囲気のイントロから、美しいシンセをギターに重ね、
低音デスヴォイスを乗せて、ときにブラストを含む激しい疾走感のシンフォニックなメロデスを聴かせる。
いくぶんペイガン寄りの土着メロディも覗かせて、かつてのCADACROSSなどフィンランド系メロデスに通じる感触で
涼やかなクサメロ感もなかなか良い味わいだ。ギターのメロディ以上に、きらきらとしたシンセが前に出ていおり、
6〜9分前後の長めの楽曲は、どこを切ってもシンフォニックで、ゲボ系デス声をの覗けばさほど暴虐性は感じさない。
美麗でシンフォニック、疾走感たっぷりの、涼やかな幻想メロデスが好みの方はチェックすべし。
美麗メロデス度・9 疾走度・8 北欧みたい度・8 総合・8
Amazonで購入する

Ill Tidings 「Signa Tenebris」
オーストリアのブラックメタル、イル・ティディングスの2020年作
トレモロのギターにうっすらとしたシンセを重ねて、迫力あるダミ声ヴォーカルで激しくブラスト疾走する、
王道のヨーロピアン・ブラックメタルを聴かせる。甘すぎない叙情を含んだギターフレーズに乗せる
ドイツ語のヴォーカルが勇壮な空気をかもしだし、エピックな幻想性も感じさせるメロブラ寄りの味わいも。
激しく暴虐であるが、緩急あるリズムやツインギターのメロディとともに、じっくりと構築するサウンドは、
なかなか日本人好みである。全7曲、38分であるが濃密な聴き心地で楽しめる幻想ブラックメタルの力作。
ドラマティック度・8 暴虐度・8 叙情度・7 総合・8
Amazonで購入する


Predatory Light 「Death and the Twilight Hours」
アメリカのブラックメタル、プレダトリー・ライトの2022年作
2016年にデビューし、2作目となる。のっけから13分という大曲で、トレモロ含む叙情的なギターにダミ声ヴォーカルを乗せ
アンダーグラウンドな香りのプリミティブなブラックメタルを聴かせる。ほどよくスカスカの音質もアナログ感を感じさせ、
ドラムもギターも重すぎないので、激しい疾走パートもありつつ、わりとライトな味わいで楽しめる。
ギターはアルペジオなどのメロディを奏でるところが多く、ゆったりとしたスローパートなども含めて
ポストブラック寄りの優雅な耳心地であるが、ダークな暗黒性と激しさは薄めなので人によっては物足りないかも。
10分を超える大曲2曲を含む、全4曲、この大作志向にさらに妖しい荘厳さをまとわせてもらいたい。
ドラマティック度・7 暴虐度・6 プリミティブ度・8 総合・7.5
Amazonで購入する

Cemetery Winds 「Unholy Ascensions」
フィンランドのメロディック・デスメタル、セメタリー・ウインズの2017年作
ドラム&ギターによる個人ユニットで、ヴォーカルとベースはゲスト。どことなく90年代北欧デスメタル風のジャケであるが、
オールドなギターリフに低音デスヴォイスを乗せ、ブラックメタル風の疾走感も含んだ古き良きメロデスサウンド。
ほどよく叙情的なギターうっすらとしたシンセが重なる雰囲気は、いかにも北欧らしいコールドな味わいで、
ブラストパートも含んだスタイルはブラックメタル寄りのなのだが、ヴォーカルがデス声なので、デスメタルなのかもしれない。
全33分と短めなのが少し物足りないか。サウンドは悪くないので、ぜひバンドを結成してこの路線を続けていただきたい。
ドラマティック度・7 暴虐度・7 北欧デス度・8 総合・7.5

Black March 「Praeludium Exterminii」
フランスのブラックメタル、ブラック・マーチの2017年作
オーケストラルで不穏なイントロから、ザリザリとしたギターリフにかすれたダミ声ヴォーカルを乗せてブラスト疾走する、
ヘヴィでブラッケンな迫力に包まれたサウンドを聴かせる。随所にギターソロ的なメロディを含みつつ
叙情性というよりは、たたみかける圧殺感で、殺伐としたモノトーンの世界観を描き出してゆく。
ときにピアノを導入したクラシカルなセンスも覗かせるが、全体的にはブラッケンロールぎみの勢いの良さと
ヨーロピアンな暗黒性が混然となった、ロウ・ブラックというスタイルの強力作だ。
ドラマティック度・7 暴虐度・8 ローブラ度・8 総合・7.5

Arcanorum Astrum 「Гимны Великому」
ロシアのシンフォニック・ブラックメタル、アルカノラム・アストラムの2019年作
2017年作「The Great One」のロシア語版で、激しいドラムにメタリックなギターと美麗なシンセを重ね、
ダミ声ヴォーカルとともに、DIMMU BORGIRにも通じる緩急ある展開のシンフォニックブラックを聴かせる。
激烈なブラストビートとともに、オーケストラルなシンセや随所に流麗なギターフレーズも覗かせるなど、
激しさと壮麗なアレンジが同居した、なかなかクオリティの高いサウンドである。ブルータルな激しさとサタニックな世界観という点では
初期のBEHEMOTHなどにも通じるかもしれない。全体的には、もう少し意外性やフックのあるメロディが欲しいかな。
シンフォニック度・8 暴虐度・8 壮麗度・7 総合・7.5
Amazonで購入する

Demons Of Guillotine 「Время Серпа」
ロシアのブラックメタル、デモンズ・オブ・ギロチンの2011年作
2004年にデビューし2作目となる。スラッシーなギターリフに吐き捨てヴォーカルを乗せ、
激しすぎない疾走感とともに聴かせる、オールドなデスラッシュ風の1曲目から、
2曲目はトレモロのギターにブラストビートを含む、メロブラ的なサウンドを展開。
ギターリフにかすかに叙情性を含んではいるが、基本は硬派なスタイルで、メロディアスな感触は薄め。
もう少し暴虐な激しさか、扇情的なメロディか、どちらかに舵をきってもらいたい気がする。
ドラマティック度・7 暴虐度・7 叙情度・6 総合・7
Amazonで購入する



11/3
メガデスよりメコンデルタ(222)

MEGADETH 「THE SICK, THE DYING... AND THE DEAD!」
アメリカの大御所メタルバンド、メガデスの2022年作
ギターにキコ・ルーレイロが加入しての2作目で、ベースは盟友デイヴ・エレフソンに替わって、ジェイムズ・ロメンゾが加入
ドラムにはSOILWORKのダーク・ヴェルビューレンという新体制となった。叙情的なギターのフレーズで始まりつつ、
クセのあるムステインの歌声が乗ると、いかにもメガデスらしくなる。ソリッドなドラムにエッジの効いたリフを乗せた2曲目からは
アグレッシブなナンバーが続き、これぞインテレクチュアル・スラッシュというサウンドには、オールドファンも納得だろう。
キコのギタープレイも前作以上にメロディのアクセントを担っており、ムステインの描く世界観にフィットしてきたという印象。
全体的には、ストレートに聴けるシンプルなナンバーが多いのだが、スラッシーな激しさを堪能できる好作品であろう。
ドラマティック度・7 アグレッシブ度・8 インテレクチュアル度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する

Mekong Delta 「Tales of a Future Past」
ドイツのテクニカルメタル、メコン・デルタの2020年作
1987年にデビュー、鬼才ラルフ・ヒューベルト率いる、プログレッシブ・スラッシュメタルのベテラン。
本作は6年ぶりとなる11作目で、ドラムは前作に続く、アレックス・ランデンバーグ、ギターには新たにピーター・レイクが加入。
シンセを使ったミステリアスなイントロから、テクニカルなリズムに複雑なギターリフを乗せた、独自の浮遊感あるサウンドは、
まぎれもなくメコン・デルタである。Tomorrow's Eveにも参加するマーティン・レマーのヴォーカルも、板についてきていて、
インテレクチュアルな楽曲にフィットしている。オーケストラアレンジを取り入れた荘厳なインストナンバーでは、
優雅なクラシックギターの旋律も披露。MEGADETHANNIHILATORをも凌駕する突き抜けたセンスは最高である。
ドラマティックな9分の大曲から、ラスト曲ではイサーク・アルベニスの組曲「エスパーニャ」を優雅に取り上げている。
ミステリアス度・8 テクニカル度・8 インテレクチュアル度・9 総合・8.5 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する

ABYSSIC 「BROUGHT FORTH IN INIQUITY」
ノルウェーのシンフォニック・ドゥームデスメタル、アビシックの2022年作
2016年にデビューし、3作目となる。オーケストラルなアレンジにブラッケンなギターリフを重ね、
低音デスヴォイスとともに、ゆったりと重厚にして壮麗なシンフォニック・デスメタルを聴かせる。
長めの楽曲は気が短い方には向かないが、咆哮するデス声と美麗なシンフォニック性が同居した、
この暗黒美に浸れる方には心地よく楽しめるだろう。ブラックメタルばりの激しさも含んだナンバーから、
ラストは18分の大曲で、フューネラルなドゥーム感とオーケストレーションで荘厳な世界観に包まれる。
シンフォニック度・8 重厚度・8 暗黒度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する


MARIUS DANIELSEN'S LEGEND OF VALLEY DOOM Part3
ノルウェーのミュージシャン、マリウス・ダニエルセンによるシンフォニックメタルオペラ。2021年作
3部作の完結編で、語りを含んだシネマティックなイントロから、壮麗なオーケストラアレンジをギターに重ねて、
ゲストによる伸びやかな男女ヴォーカルとともに、RHAPSODYを思わせるエピックなシンフォニックメタルを展開する。
ラルフ・シーパーズ(Primal Fear) 、ティム・リッパー・オーウェンズ (元Judas Priest) 、アレッサンドロ・コンティ(Trick Or Treat)、
ダニエル・ハイマン(Warrior Path)、ハービー・ランガンス (Firewind)、 オラフ・ヘイヤー (Dionysus)、エリサ・マーティン(Hamka)、
メリッサ・ボニー(Ad Infinitum)、ラファエル・メンデス(Icon Of Sin)、アレッシオ・ガラヴェーロ(元PowerQuest)、マティアス・ブラッド (Falconer) 、
トミー・ヨハンソン(ReinXeed)、アルイエン・ルカッセン (Ayreon)、デレク・シェリニアン(Planet X)など、多数のゲスト参加。勇壮なクワイアや、
クサメロ感あるメロスピナンバーなども含めて、ツボをついたサウンドで、ファンタジックな世界観を描く。全76分という力作だ。
ドラマティック度・9 ファンタジック度・9 壮麗度・8 総合・8.5 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する

Audrey Horne 「Devil's Bell」
ノルウェーのヴィンテージ・ハードロック、オードリー・ホーンの2022年作
2005年にデビュー、本作は7作目となる。オールドな味わいの適度な叙情性を含んだツインギターに
かつてのオジー・オズボーンを思わせる味のあるヴォーカルで、80年代ルーツのHR/HMを聴かせる。
爽快なコーラスを含めてキャッチーなメロディのフックも随所にあり、初心者にもわりと対応したスタイル。
曲によっては、いかにも70年代ルーツの英国ハードロック風でもあったりして、ここにオルガンでも入れば
個人的にはもっと楽しめそうなのだが。キャリアのあるメンバーなので、しっかり安定の完成度ですな。
ドラマティック度・7 オールドHR度・8 新鮮度・7 総合・8 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する

Audrey Horne 「Waiting For The Night」
ノルウェーのヴィンテージ・ハードロック、オードリー・ホーンのライブ。2020年作
2018年のノルウェー、ベルゲンでのステージで、同年作「Black Out」からのナンバーをー主体に、全16曲を収録。
オールドな感触のツインギターを乗せたノリのよいリズムに、朗々としたヴォーカルで、古き良きハードロックを聴かせる。
ロックとしての躍動感あるアンサンブルに包まれながら、ゆったりと歌い上げる大人の叙情を描くバラードナンバーや、
曲によってはオルガンも加わって、メロディアスなツインギターとともに、ヴィンテージメタル的な味わいでも楽しめる。
Blu-Rayの映像ではバックステージ映像をはさみつつ、盛り上がる観客たちとの一体感あるステージが鑑賞できる。
ライブ演奏・8 オールドHR度・8 新鮮度・7 総合・8 
Amazonで購入する


Stargazery 「Constellation」
フィンランドのメロディックメタル、スターゲイザリーの2020年作
2011年にデビューし、3作目となる。Burning Pointのギターとシンセ奏者を中心にしたバンドで、
正統派のギターに優美なシンセを重ね、伸びやかなヴォーカルとともに王道の北欧メタルサウンドを聴かせる。
3〜5分前後の楽曲はミドルテンポ主体ながら、キャッチーなメロディのフックと、透明感あるシンセワークが耳心地よく、
MSGにも参加していたというヴォーカルの実力も充分。中盤以降にはきらびやかな疾走ナンバーもあって、
メロパワリスナーも溜飲を下げる。新鮮味はさほどないが、北欧らしい古き良き様式美メタルが楽しめる高品質作だ。
メロディック度・8 疾走度・7 北欧度・8 総合・8
Amazonで購入する


Grimgotts 「Dragons Of The Ages」
イギリスのメロディックメタル、グリムゴッツの2019年作
2017年にデビューし、2作目となる。いかにもファンタジーヲタ風のジャケも良いのだが、サウンドも壮麗なイントロから
メタリックなギターにシンフォニックなシンセを重ね、朗々としたヴォーカルでエピックなシンフォニックメタルを展開する。
クサメロを奏でるギターとともに疾走するメロスピ風味に、ときに女性コーラスも加わった優雅な感触で、
PowerQuestRHAPSODYなどのファンタジー系クサメタルの世界観が好きな方にはニンマリだろう。
そこはかとなく漂うB級っぽさも含めて、マニア向けの域は出ていないが、この路線での成長を楽しみにしたい。
クサメロ度・8 疾走度・7 優雅度・8 総合・8
Amazonで購入する


Shadow's Mignon 「Midnight Sky Masquerade」
多国籍のメタルバンド、シャドウズ・ミグノンの2009年作
CHAIN.EXEのヘニング・ポウリーと、ドイツのシンガー、シンセ奏者によるユニットで、オールドな味わいのギターに
オルガンなどを含むシンセ、パワフルなヴォーカルを乗せて、80年代ルーツの古き良きヘヴィメタルを聴かせる。
PRETTY MAIDSあたりにも通じる、甘すぎないキャッチーな感触に、随所にやわらかなシンセも重なってきて、
ヨーロピアンな様式美HR風味に包まれる。ヘニング・ポウリーの奏でる、メロディックなギターはさすがで、
これという新鮮味はないものの、オールドメタラーであればわりと普通に楽しめる。大人のHM好作品です。
ドラマティック度・7 様式美度・7 古き良き度・8 総合・7
Amazonで購入する


Sacred Oath 「A Crystal Vision」
アメリカのカルトメタル、セイクレッド・オースの1987年作
本作はジャケを変更しての2001年の再発盤。ヨーロピアンな叙情を含んだツインギターに
軽めのハイトーンヴォーカルを乗せた、80年代NWOBHMをルーツにしたメタルサウンド。
ラウドな音質や演奏、わりと唐突な展開など、いかにもB級然としたカルトなメタルではあるが、
どことなく日本人好みの幻想性があって嫌いにはなれない。ボーナストラックには、1998年に再録したナンバーを4曲収録。
こちらは演奏力も向上して、よい感じになっている。本作を残してのち、バンドは2005年に復活している。
ドラマティック度・7 カルトメタル度・8 マイナー度・9 総合・7
Amazonで購入する

Anabantha 「Letanias Capitulo II」
メキシコのゴシックメタル、アナバンサの2007年作
2001年にデビューし、5作目となる。なよやかな女性ヴォーカルとシンセによるイントロから耽美な空気に包まれ、
メタリックなギターにデスヴォイスも加えて、わりとハードな疾走感も含んだ、緩急あるゴシックメタルを構築する。
スペイン語による女性ヴォーカルは艶めいた魅力があり、ゆったりとしたナンバーでも伸びやかな歌声が引き立っており、
「オペラ座の怪人」のカヴァーなどもなかなかハマっている。美麗なシンセにほどよいクサメロ感を覗かせるギターなど、
Dreams Of Sanityのような、マイナー系ゴシックメタルとしてのポイントも高く、
ドラマティック度・8 ゴシック度・8 女性Vo度・8 総合・7.5
Amazonで購入する


DARK EDEN 「The Darkness Of Fate」
ブラジルのゴシックメタル、ダーク・エデンの2000年作
ヘヴィなギターにピアノを含むシンセ、迫力あるデスヴォイスにソプラノ女性ヴォーカルも加えた
耽美でドゥーミィなゴシック・デスメタルを聴かせる。リズムチェンジを含む緩急ある流れと、
低音デスヴォイスを乗せた重厚な雰囲気は、初期のTHE GATHERINGあたりに通じる。
女性声パートが少なめなのが惜しい所だが、ヘタウマながら可憐な女性ヴォーカルやクラシカルなシンセ、
随所に聴かせる叙情的なギターなどはなかなかよい感じで、メランコリックな空気感に包まれた好作品だ。
ドラマティック度・7 ゴシック度・8 女性Vo度・6 総合・7
Amazonで購入する



10/20
女性Voメタル特集(210)

SCHYSMA
イタリアのシンフォニックメタル、シズマの2022年作
女性シンガー、女性シンセ奏者を含む編成で、きらびやかなキーボードにメタリックなギターを重ね、
伸びやかなストレートとソプラノを使い分ける女性ヴォーカルで、モダンなメタルサウンドを構築。
アグレッシブなノリと女性声による耽美な空気感に、デジタルなシンセ感触を含むアレンジで、
いくぶんPrpgMetal的な知的な感触も覗かせる。高音域のEliana嬢の歌声は、やや好みが分かれるところだが、
オペラティックなソプラノをメインにした曲では、Nightwish系に通じる壮麗な聴き心地で楽しめる。
楽曲は4分前後が主体で、もう少しフックのあるメロディ展開や、ドラマティックな盛り上がりなどが欲しいか。
ドラマティック度・7 モダン度・8 女性Vo度・7 総合・7
Amazonで購入する

HELLFOX 「THE CALL」
イタリアのガールズメタル、ヘルフォックスの2022年作
女性4人組のバンドで、ほどよくヘヴィなギターにシンセを重ね、伸びやかな女性ヴォーカルに
グロウルヴォーカルもまじえ、イタリアらしいカルトな妖しさに包まれたメタルサウンドを聴かせる。
ドゥームメタル的なダークな味わいも覗かせつつ、わりとキャッチーなメロディが同居していて、
美しい女性声の魅力もあってか、ときにゴシックメタル寄りの耽美な空気も感じさせる。
全32分というのがやや物足りないが、耽美派ガールズメタルとして期待の新鋭です。
ドラマティック度・7 キャッチー度・8 女性Vo度・8 総合・7.5
Amazonで購入する


UNIVERSOUND 「MOONLIGHT DRIVE」
イタリアのメロディックロック、ユニヴァーサウンドの2022年作
グルーヴィなリズムにやわらかなシンセ、艶めいた女性ヴォーカルを乗せた大人のAOR的なサウンドで、
ゆったりとしたジャズタッチの雰囲気や、美麗なシンセやピアノによる優雅なアレンジが耳心地よい。
紅一点、Cecilia嬢の歌声は、LANA LENEのようなエモーショナルな魅力とフェミニンな表現力があり
80年代的なポップ感を漂わせるタイトルナンバーなども、コケティッシュなヴォーカルがよく映えている。
全8曲、31分という短めの作品であるが、優雅な女性声ハードポップが好きな方には楽しめるだろう。
ポップ度・8 キャッチー度・8 女性Vo度・8 総合・7.5
Amazonで購入する


THE LONELY HARPS CLUB 「LONG GAME」
イギリスの女性ハープ奏者によるプロジェクト、ロンリィ・ハープス・クラブの2022年作
打ち込みによるリズムにデジタルなシンセ、優美なハープの音色を重ね、コケティッシュな女性ヴォーカルとともに、
しっとりと翳りを帯びたキュートなポップサウンドを聴かせる。ケイト・ブッシュに影響を受けたという通り、
エキセントリックな可愛らしさが、繊細なハープのつまびきと合わさり、ドリーミィな浮遊感に包まれる。
曲によってはエレキギターとドラムも加わったロック感触もあったり、ヴィオラや三味線を使ったナンバーなど、
ハープの音色が前に出すぎず、アレンジ的にもなかなか面白い。楽曲は3〜4分前後で、ライトに楽しめる好作だ。
優雅度・8 ロック度・7 女性Vo度・8 総合・7.5
Amazonで購入する


TEMTRIS 「RITUAL WARFARE」
オーストラリアのメロディックメタル、テムトリスの2021年作
Mortal Sinのドラムを中心に結成され、2003年にデビュー、本作は通算7作目となる。
正統派のギターリフに中音域の女性ヴォーカルを乗せて疾走する、オールドスタイルの女性声メロパワ。
ジャーマンメタル風味のツインギターの叙情性と、90年代のパワーメタルを受け継ぐほどよくマイナーな味わいが合わさり、
オールドメタラーはぐっとくる。紅一点、Rodda嬢の歌声も、艶めいたパワフルさがあって、オールドなメタル感によくマッチしている。
楽曲的にはこれといって新鮮味はないものの、古き良き正統派の女性声メタルが楽しめる好作品だ。
ドラマティック度・7 疾走度・8 古き良き女性声メタル度・8 総合・7.5
Amazonで購入する


HEL'S THRONE 「Ravens Flight」
ドイツのシンフォニックメタル、ヘルズ・スローンの2021年作
男女Voにシンセを含む6人編成で、壮麗なシンセアレンジにメタリックなギター、伸びやかな女性ヴォーカルに、
男性デスヴォイスも加わり、MAGICAあたりに通じる、ほどよくキャッチーなノリのシンフォニックメタルを聴かせる。
ミドルテンポを主体に美麗なシンセに包まれた優雅な味わいで、Bekka嬢の可憐な歌声もなかなか魅力的だ。
メロディックなギターの旋律は、ときにジャーマンメタル的でもあるクサメロ感をかもしだしている。
全6曲30分というのが、アルバムとしてはやや物足りないが、今後に期待の新鋭です。
シンフォニック度・8 キャッチー度・8 女性Vo度・8 総合・7.5
Amazonで購入する


KING BAAL 「CONJUREMENTS」
ポルトガルのシンフォニックメタル、キング・バアルの2021年作
重厚なギターにオーケストラルなアレンジを重ね、ソプラノ女性ヴォーカルにデスヴォイスが絡む、
ゴシックメタル的な耽美な雰囲気に包まれたサウンド。紅一点、Joanna嬢の声が裏返る音程の危うさや、
いくぶんラウドなギターが、マイナーな辺境感をかもしだしているが、それも案外味わいになっていて、
迫力あるデス声をギターに乗せるところは、初期のTHERIONなどに通じる雰囲気もあったりする。
曲によっては、アグレッシブなパートもあったり、ダークな世界観を緩急あるサウンドで描いてゆく。
全38分とわりと短めで、楽曲ごとの荘厳な盛り上がりなどがもう少しあればと思う。
シンフォニック度・7 耽美度・8 女性Vo度・7 総合・7.5
Amazonで購入する

KRAMP 「Gods Of Death」
スペインのメタルバンド、クランプの2021年作
女性シンガー、女性ギターを含む5人編成で、オールドな味わいのツインギターにハスキーな女性ヴォーカルを乗せた
80年代ルーツの正統派メタルを聴かせる。ほどよくマイナーな翳りを帯びた、往年のエピックメタル風味の空気は、
昨今のスタイリッシュなバンドとは真逆のスタイルで、ヨーロピアンな叙情性をかもしだすツインギターや
いくぶんローカルなスカスカ感も含めて、オールドメタラーはニンマリである。楽曲は3〜5分前後とシンプルで、
ゆったりとしたミドルテンポを主体に、スピードメタル的な疾走ナンバーもありつつ、パワフル過ぎないのがミソ。
日本盤ボーナスのWARLORDのカヴァーも、いかにもな感じで良いですね。
ドラマティック度・7 疾走度・7 女性Vo度・7 総合・7.5
Amazonで購入する

CRYSTAL GATES 「TORMENT & WONDER」
ラトビアのシンフォニックメタル、クリスタル・ゲイツの2023年作
ペイガンな味わいの壮麗なイントロから、シンフォニックなシンセをギターに重ね、伸びのある女性ヴォーカルとともに疾走する、
美麗なシンフォニック・メロスピを展開する。随所に流麗なギタープレイやシンセワークがほどよいクサメロ感も覗かせつつ、
魅力的なソプラノを主体にした、Carolina嬢の歌声も、かつてのNightwishのように、なよやかな気品を漂わせる。
ときにフォーキーなフレーズも感じさせつつ、メロディのフックはわりとキャッチーで、辺境臭さはほとんどない。
ラストは12分のタイトル曲で、ゴージャスなシンフォニック性と、ほどよい疾走感、ドラマティックな構築力で盛り上げる。
シンフォニック度・8 壮麗度・9 女性Vo度・9 総合・8
Amazonで購入する


EVERLUST 「DIARY OF EXISTENCE」
ラトビアのゴシックメタル、エヴァーラストの2021年作
ほどよくヘヴィなギターにうっすらとしたシンセ、美しい女性ヴォーカルの歌声で聴かせるメランコリックなゴシックメタル。
曲によっては男性ヴォーカルがメインの、ENTWINEのようなゴシックロック的なキャッチーなナンバーもありつつ、
基本は女性声メインで、Sam Smithのカヴァー曲なども含め、Kate嬢の妖しくコケティッシュな歌声が魅力的だ。
楽曲的には、ゆったりとしたナンバーを淡々と聴かせる感じで、派手な盛り上がりなどはないものの、
物悲しい叙情とシアトリカルな耽美性に包まれたサウンドは、しっとりとした涼やかな耳心地で楽しめる。
ドラマティック度・7 耽美度・8 女性Vo度・7 総合・7.5
Amazonで購入する


Belle Morte「Crime Of Passion」
ベラルーシのシンフォニック・ゴシックメタル、ベッレ・モルテの2021年作
耽美で壮麗なイントロから、適度にヘヴィなギターに美麗なシンセアレンジを重ね、美しい女性ヴォーカルの歌声とともに、
しっとりと優雅なゴシックメタルを展開。ときに激しすぎない疾走感も覗かせつつ、オーケストラルなアレンジとともに
ヨーロピアンな翳りを帯びた世界観を描いてゆく。Anastasia嬢の歌声は、母国語なまりの英語がコケティッシュな魅力になっていて、
ヴァイオリンやピアノなどのクラシカルな優雅さによくマッチしている。メリハリのある構築力には、マイナー臭さは感じられず、
表現力ある女性声の実力を含めて、EPICADELAINなどのファンにも楽しめるだろう。これぞシンフォ・ゴシメタの快作である。
シンフォニック度・8 壮麗度・8 女性Vo度・8 総合・8
Amazonで購入する


SIRAKH 「CRISIS OF FAITH」
フィンランドのゴシックメタル、シーラクの2021年作
男女Voを擁し、「ダーク・オルタナティブ」を標榜するバンドで、重すぎないギターに涼やかなシンセを重ね、
美しい女性ヴォーカルにマイルドな男ヴォーカルが絡む、メランコリックな倦怠に包まれたゴシック・ハードロック。
キャッチーなメロディに耽美な翳りを含んだ作風は、HIMの女性Vo版という感じもあり、総じて聴き心地が良く、
メロディアスハード的な優雅なノリのリズムと、フィンランド的な倦怠の叙情がバランスよく合わさっている。
透明感あるMarina嬢の歌声もこのサウンドにはぴったりで、フックのあるメロディを優美に歌い上げる魅力は充分。
後半には男性声がメインのナンバーもあるが、全体的には女性声メインなのも良いですね。
メロディック度・7 耽美度・8 女性Vo度・8 総合・8
Amazonで購入する


10/13
玄人好みの力作多数(198)

HAKEN 「Fauna」
イギリスのプログレメタル、ヘイケンの2023年作
2010年にデビューし、7作目となる。今作はのっけから硬質なギターでハードに幕を開けつつ、マイルドなヴォーカルにシンセも加え、
軽妙でテクニカルリズムとともに、モダンでキャッチーな新時代のProgMetalを描く。随所に流麗なギタープレイも織り込んで
曲によってはヘヴィなメタル感触や、Djent的なテクニカル性、エモーショナルな叙情も含ませて変幻自在の聴き心地である。
優雅なアレンジセンスと巧みな演奏による構築力という点では、Caligula's Horseと双璧と言えるかもしれない。
IT BITES風のメロディックな小曲から、11分の大曲では、GENTLE GIANT的なとぽけた感じも覗かせつつ、
DREAM THEATER以降のドラマティックなプログメタルへと展開。バンドとしての熟成を感じさせるハイセンスなアルバムだ。
ドラマティック度・8 テクニカル度・8 優雅度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する

Threshold「Dividing Lines」
イギリスのプログレメタル、スレッショルドの2022年作
1993年にデビュー、本作は12作目となる。ヴォーカルにグリン・モーガンが復帰しての2作目で、
ヘヴィなギターにシンセを重ね、マイルドなヴォーカルとともに、モダンな硬質感とキャッチーな叙情性が同居したサウンドを描く。
叙情的なギターフレーズとシンフォニックなシンセアレンジに、パワフル過ぎない歌声も、爽快なメロディアス性となっていて、
軽妙なインストパートも含めて、これまで以上に抜けの良いフックが味わえる。10分を超える大曲でも、起伏のある展開の中に、
英国らしい叙情性を織り込んでいて、オルガンなどのシンセとともにプログレらしさが増したという、個人的にも好みの作風だ。
重厚なドラマティック性と知的でプログレッシブな香りがバランスよく同居した、ベテランらしい説得力ある力作である。
ドラマティック度・8 叙情度・8 重厚度・8 総合・8.5 過去作のレビューはこちら
Amazonでの購入する

Hammers of Misfortune「Overtaker」
アメリカのサイケ・プログレメタル、ハマーズ・オブ・ミスフォーチュンの2022年作
2001年にデビュー、本作は6年ぶりの7作目となる。スラッシーな激しさにオルガンが鳴り響き、女性ヴォーカルの歌声と共に
いつになくアグレッシブなサウンドを展開。ストリングスよるシンフォニックなアレンジが怪しいスケール感を描き出しつつ、
いくぶんこもり気味の音質も含めて、確信犯的な80年代風のアナログ感にも包まれる。浮遊感ある女性声と激しい疾走感で、
いわばスラッシーなサイケメタルというべきか、型にとらわれない自由さがこのバンドの強みだろう。楽曲自体は3〜5分前後と、
わりと短めなのだが、脳内のインパクトはかなりのもの。得体の知れない音楽を楽しめる方にはぜひお薦めしたい。
ドラマティック度・7 サイケスラッシュ度・8 怪しさ度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する


DOOMOCRACY 「UNORTHODOX」
ギリシャのプログレメタル、ドゥーモクラシーの2022年作
2014年にデビューし、3作目となる。ヘヴィなギターにほどよく叙情的なフレーズをまじえ、歌い上げるヴォーカルを乗せた、
ドゥームメタル寄りの感触に、リズムチェンジなどの知的な展開力で、CONCEPTIONあたりにも通じるサウンドを聴かせる。
朗々とした伸びのあるヴォーカルの表現力もサウンドにマッチしていて、ときに混声コーラスが重なる荘厳なアレンジも覗かせる。
甘すぎない叙情性とダークでドゥーミィな世界観とともに、CANDLEMASSなどのエピックドゥームとしても楽しめつつ、
たとえばPSYCHOTIC WALTZなど、個性派のProgMetalが好きな方にお薦めできる。
ドラマティック度・8 テクニカル度・7 重厚度・8 総合・8
Amazonで購入する


Floating Worlds 「Battleship Oceania」
ギリシャのシンフォニックメタル、フローティング・ワールズの2019年作
2007年にデビューし3作目。女性シンセ奏者を含む5人編成で、本作は戦艦をテーマにしたコンセプト作。
オーケストラルで壮麗なアレンジに、伸びのあるハイトーンヴォーカル、叙情的なギターとともにゆったりと始まり、
ミドルテンポを主体にした勇壮なサウンドを聴かせる。いくぶんダークな雰囲気もありつつ、重すぎずモダン過ぎず、
ほどよくキャッチーな味わいとともに、シリアスなドラマ性を描くところは、KAMELOTあたりに通じるところもある。
メロディのフックや盛り上がりにいまひとつインパクトが弱いのが惜しいが、女性ヴォーカルによる優美なナンバーから、
ゆったりとした11分という大曲へとドラマティックな流れで楽しめる。ボーナスを含めて全75分という力作です。
ドラマティック度・8 重厚度・8 叙情度・7 総合・7.5
Amazonで購入する

Arcanum XII 「Evening Lights」
イタリアのプログレメタル、アルカナン12の2015年作
きらびやかなシンセをギターに重ね、ハイトーンのヴォーカルを乗せて、リズムチェンジを含む展開力のある
ドラマティックなProgMetalを聴かせる。イタリアンメタル特有の粗削りなマイナーな味わいとともに、
翳りを帯びたヨーロピアンな叙情と、ほどよくテクニカルな味わいで、7〜9分前後の楽曲を構築してゆく。
盛り上がり切らないメロディや、インストパートにおける唐突な展開などには、いくぶんB級臭さも感じさせるが、
BLACK JESTER
あたりに通じるロマンの香りは、きっとカルトなファンには届くことだろう。
ドラマティック度・8 テクニカル度・7 叙情度・8 総合・7.5
Amazonで購入する


AVEM 「Meridiem」
オーストリアのシンフォニックメタル、エーヴンの2018年作
美麗なシンセをギターに重ね、伸びやかでハスキーな女性ヴォーカルを乗せたサウンドは、
リズムチェンジを含むProgMetal的な展開力と、翳りを帯びたヨーロピアンな叙情が同居した、
スタイリッシュなシンフォニックメタルとしても楽しめる。紅一点、Nora嬢の歌声には、
エモーショナルな表現力があり、ときにメランコリックにときにパワフルに歌い上げる。
曲によっては、モダンなヘヴィロック感触もありつつ、全体的に優雅な味わいの好作品。
ドラマティック度・7 スタイリッシュ度・8 女性Vo度・7 総合・7.5
Amazonで購入する


The DREAMSIDE 「Lunar Nature」
オランダのゴシックメタル、ドリームサイドの2009年作
1994年にデビュー、5作目。重すぎないギターにデジタルなアレンジ、なよやかな女性ヴォーカルを乗せた
耽美なゴシックメタルを聴かせる。紅一点、Kemi嬢の歌声はときおり声が裏返ってわりと不安定なのだが、
ポーランドのARTROSISあたりが好きな方には、優雅な浮遊感は楽しめるのではないだろうか。
楽曲は3〜4分前後と短めで、ほどよくキャッチーながら、ときにジェントルな男性声も加わると、
Lacrimosa
にも通じる男女声ゴシックの雰囲気になる。耽美な幻想性に包まれた好作品です。
ドラマティック度・7 耽美度・8 女性Vo度・7 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する


Deathbell 「A Nocturnal Crossing」
フランスのサイケ・ドゥームロック、デスベルの2022年作
2018年にデビューし、2作目となる。アナログ感あるギターに魔女めいた女性ヴォーカルの歌声で、
Blood CeremonyPURSONなどに通じる、女性声のサイケなドゥームロックを聴かせる。
軽すぎないツインギターとうっすらと鳴り響くオルガンもいいあんばいで、翳りを帯びた叙情性に
紅一点、Lauren嬢のけだるげな歌声も妖しい雰囲気たっぷり。7〜8分という長めのナンバー主体で、
ゆったりとした夢見心地と、70年代ルーツのドゥームロック感触が同居した好作品である。
ドラマティック度・7 ドゥーム度・8 女性Vo度・8 総合・8
Amazonで購入する


DISASTROID 「Mortal Fools」
アメリカのストーナーロック、ディスアストロイドの2020年作
2009年デビュー、5作目となる。G&Vo、B、Drのトリオ編成で、適度にハードなギターにかすれたヴォーカルを乗せ
アナログ感に包まれたアンサンブルで、比較的ストレートなノリのストーナーロックを聴かせる。
うねりのあるベースがヘヴィなドゥーム感触をかもしだし、キャッチーな要素はあまりないので、
硬派のストーナー/ドゥームロックですな。個人的には、怪しいスケール感がもっと欲しいか。
スペイシーなジャケのイメージで買ってみたら、印象がちょっと違ったというパターンですね。
ドラマティック度・7 ストーナー度・8 アナログ度・8 総合・7
Amazonで購入する


FER DE LANCE 「THE HYPERBOREAN」
アメリカのエピック・ドゥームメタル、ファー・デ・ランスの2022年作
幻想的なイントロから、重厚なツインギターに叙情的なアコースティックギターを重ね、朗々としたヴォーカルとともに、
BATHORYのような北欧的な土着性と、ペイガンな神秘性に包まれたエピック・ドゥームメタルを聴かせる。
7〜8分前後の大曲を主体に、ときにほどよい激しさを含んだパワメタ感触も覗かせるなど、
オールドなエピックメタル好きにも対応。アコギの音色が随所に素朴な味わいになっていて、
重すぎないドゥーム感とフォーキーな叙情が合わさり、ジャケのようなミステリアスなイメージに包まれる。
ラストはアコースティックなパートから勇壮なドゥームへと展開する。面白いバンドが出てきたなあ。
ドラマティック度・8 重厚度・8 神秘的度・8 総合・8
Amazonで購入する

DOOM SIDE OF THE MOON
アメリカのプログレ、ドゥームメタル、ドゥーム・サイド・オブ・ザ・ムーンの2017年作
The Swordのメンバーを中心に、PINK FLOYDの名作「狂気」をドゥームメタルに仕立てたという作品で、
怪しいイントロから、アコースティックギターとマイルドなヴォーカルで、わりと忠実にカヴァーしつつ、
轟音のギターとともに様相が一転、ダークな空気に包まれ、ヘヴィなドゥーム感触が広がってゆくが、
これがなかなかマッチしていて、ときにサックスやオルガンも鳴り響くなどプログレ的な雰囲気も感じさせる。
オリジナルの空間的なスケール感をしっかり残しつつ、メリハリに富んだプログレ・ドゥームに仕上げた異色作だ。
ドゥーム度・8 プログレ度・7 ちゃんと狂気度・8 総合・8
Amazonで購入する



10/7
秋のメタル日より(186)

Blind Guardian 「The God Machine」
ジャーマンメタルのベテラン、ブラインド・ガーディアンの2022年作
前作がオーケストラとの共演作だったので、バンド作としては7年ぶりの作品、のっけからアグレッシブなメタルサウンドに回帰した、
エッジの効いたツインギターに、ハンズィのシアトリカルなヴォーカルとともに、疾走感のあるパワーメタルを展開する。
荘厳なクワイアを重ねたシネマティックなスケール感と、往年のスラッシーな激しさが同居したという聴き心地で、
メロディや展開に新鮮なインパクトはないのだが、ファンタジックなバラードナンバーも含めて、ブラガーらしい世界観は、
オールドなファンには嬉しいだろう。アルバムとしてはよく出来ているのだが、もうひと山くらい盛り上がりが欲しかった気もする。
ドラマティック度・8 疾走度・8 ブラガ度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する


JUDAS PRIEST 「FIREPOWER」
イギリスのベテランメタルバンド、ジューダス・プリーストの2018年作
通算18枚目のアルバムで、ギターのリッチー・フォークナーが加入しての2作目。古き良き味わいのギターリフに
ロブ・ハルフォードのパワフルな歌声を乗せて、ジューダスらしいヘヴィメタルの王道というスタイルで幕を開ける。
スコット・トラヴィスの叩き出す力強いドラムとともに、随所にツインギターによる叙情性も織り込みつつ、
3〜4分前後をメインにした、ストレートなメタル感触は、往年のファンが膝を叩く作風だろう。一方では、
どっしりとしたミドルテンポのナンバーや、ハルフォードがジェントルに歌い上げる叙情ナンバーも魅力的で、、
激しすぎなオールドな雰囲気もいい。新鮮味はないのだがジューダス以外の何物でもないという好作です。
ドラマティック度・8 ジューダス度・8 ハルフォー度・7 総合・8 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する

PelleK 「Bag Of Tricks」
ノルウェーのシンガー、ペル・フレデリック“ペルケイ”アシュリーことペルケイのソロ。2012年作
壮麗なイントロから、美麗なシンセをクサメロ感あふれるギターに重ね、伸びやかなハイトーンヴォーカルを乗せ、
初期のSONATA ARCTICAにも通じる疾走感とともに、きらびやかなメロディックメタルを展開する。
トミー・レインエクシード(ReinXeed)、オリヴァー・ハートマン、トミー・カレヴィック(KAMELOT)、アマンダ・サマーヴィルなどがゲスト参加、
華麗なメロスピナンバーから、男女ヴォーカルで優雅に聴かせるバラードや、シンフォニックメタル的な壮麗なナンバーなど、
楽曲アレンジのクオリティの高さが光る。パワフル過ぎないペルケイの歌声も、日本人好みでサウンドによくマッチしている。
メロディック度・8 疾走度・8 華麗度・8 総合・8
Amazonで購入する


Ego Absence 「Serpent's Tongue」
ブラジルのメロディックメタル、エゴ・アブセンスの2020年作
クラシカルで壮麗なイントロから、メタリックなギターにシンフォニックなシンセアレンジ、パワフルなヴォーカルを乗せ
アグレッシブな疾走感を含んだサウンド。いくぶんダーティな歌声と、ジャケのイメージのようなダークな翳り、
モダンなヘヴィネスも感じさせつつ、ほどよい激しさとともにスタイリッシュなメロパワを聴かせる。
メロディックなギターの旋律も随所にセンス良く、甘すぎない程度のキャッチーな感触も含みつつ、起伏に富んだサウンドが楽しめる。
メロディック度・7 疾走度・7 壮麗度・8 総合・7.5
Amazonで購入する

Lucifer's Hammer 「Victory Is Mine」
チリのメタルバンド、ルシファーズ・ハマーの2017年作
2016年にデビュー作に続く4曲入りのEPで、いかにもオールドなギターに朗々としたヴォーカルを乗せ、
WARLORDなど、80年代ルーツのカルトなエピックメタルを甦らせたようなサウンドを聴かせる。
トリオ編成ながら、ウェットな叙情を感じさせるギターワークなど、幻想的な世界観は日本人好みで
往年のNWOBHMのファンから、ローカルなエピックメタル好きもニンマリの作風だろう。
ラストは、アメリカ70年代のマイナーなHRバンド、LEGENDのカヴァーというのもマニアック。
ドラマティック度・8 オールドメタル度・9 カルトメタル度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する


Lorihen 「Aun Sigo Latiendo」
アルゼンチンのメロディックメタル、ローリエンの2015年作
2000年にデビューし、5作目。ほどよくヘヴィなギターにうっすらとシンセを重ね、スペイン語のヴォーカルとともに
オールドスタイルの正統派メタルを聴かせる。ミドルテンポ主体の楽曲は、メロディックなギターフレーズと優美なシンセによる
ほどよいキャッチーな感触で、スパニッシュな叙情に包まれる。疾走感がさほどないので、これというインパクトはないのだが、
じわじわとくる優雅な大人のメロディックメタルという感じで、わりとのんびりと楽しめる。歌メロはメロハー的な爽快さもあって、
全体的にも耳心地は良いのだが、個人的にはもう少し南米らしいクサメロ感が欲しいかな。
メロディック度・8 疾走度・6 優雅度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する


Aquelarre 「Requiescat In Pace」
スペインのメロディックメタル、アケラーレの2014年作
美麗なシンセアレンジにクサメロなギターを重ね、スペイン語によるマイルドなヴォーカルを乗せて疾走するメロスピサウンド。
シンフォニックメタル的な華麗さと、キャッチーなクサメロスピが融合した聴き心地で、リズムチェンジによる展開力とともに、
ほどよくB級寄りながらも、この手のサウンドが好きなリスナーにはたまらないだろう。ミドルテンポを織り交ぜつつ、
激しすぎない疾走感がよい感じで、中音域からハイトーンまでこなすヴォーカルもサウンドによくマッチしている。
全7曲というのがやや物足りないが、クサメタラー愛好家、スパニッシュメロパワ好き諸氏はチェックすべし。
メロディック度・8 疾走度・8 スパニッシュ度・8 総合・7.5

EVETH 「La Gondena Del Tiempo」
スペインのメロディックメタル、エヴェスの2012年作
シンセを含む5人編成で、ネオクラ色も含んだギターにきらびやかなシンセを重ね、スペイン語のハイトーンヴォーカルとともに、
初期AVALANCHなどにも通じる、王道のメロディックメタルを聴かせる。ミドルテンポのナンバーではキャッチーな優雅さと
美麗なシンセアレンジで、DARK MOORをマイナーにしたようなシンフォニックメタルとしても楽しめるだろう。
どの曲も爽快なメロディのフックが秀逸で、疾走するナンバーからゆったりとしたスローテンポまで、どこを切っても優雅な聴き心地。
音質がいくぶんラウドであることを除けば、クサメタラー、スパニッシュメタル好きは要チェックの好作といえるだろう。
メロディック度・8 疾走度・7 スパニッシュ度・8 総合・8

Invictus 「Persecution」
フランスのメロディックメタル、インヴィクタスの2009年作
2003年にデビューし、2作となる。メタリックなギターにマイルドなヴォーカルを乗せ、勇壮なコーラスとともに
HAMMERFALLなどにも通じる正統派のメロパワを聴かせる。ときに疾走を含むエピックメタル寄りの感触から
いくぶんモダンな硬質感や、キャッチーなミドルテンポ、叙情的なバラードなど、曲ごとに違った雰囲気を見せる。
ハイトーンを含む伸びやかなヴォーカルや、随所にメロディックなギターフレーズもあって、それなりに楽しめるが、
全体的には、もう少し疾走する激しさやクサメロ感、インパクトのあるキラーチューンが欲しいですな。
メロディック度・7 疾走度・6 正統派度・8 総合・7
Amazonで購入する


BLACK DIAMOND 「LAST MAN STANDING」
スロベニアのメタルバンド、ブラック・ダイアモンドの2013年作
クロアチア出身で旧ユーゴのDivlje Jagodeに在籍していた、Zanil Tatajがシンガーを務めていて、
古き良き感触のギターリフに朗々としたヴォーカルを乗せた、正統派のヘヴィメタルを聴かせる。
いくぶんダークな雰囲気に包まれつつ、随所に甘すぎない叙情を含ませたギターフレーズも覗かせて
エモーショナルなハイトーンヴォーカルとともに、ヨーロピアンメタルらしいドラマティックな味わいも良い感じだ。
歌詞が英語なので辺境臭さはほとんどなく、確かな演奏力も含めて、どっしりとした王道のヘヴィメタルが楽しめる。
ドラマティック度・8 疾走度・5 正統派度・8 総合・8
Amazonで購入する

Metalsteel 「Bad In Bed」
スロベニアのメタルバンド、メタルスティールの2007年作
ゴシックメタル風のジャケであるが、サウンドはオールドなギターリフにハイトーンヴォーカルで聴かせる
しごく正統派のヘヴィメタル。歌詞は英語なので、そこまで辺境臭さはなく、ミドルテンポを主体に、
ほどよい疾走感も含んだオールドスタイルのメタルが楽しめる。これという盛り上がりや新鮮味はなく、
メロディのフックも凡庸なので、B級のNWOTHMのひとつとして、辺境メタルマニアの方はどうぞ。
ドラマティック度・7 疾走度・6 正統派度・8 総合・7
Amazonで購入する


Manilla Road 「Voyager」
アメリカのエピックメタル、マニラ・ロードの2008年作
1980年デビューのベテランで、本作は14作目。ジャケの感じからヴァイキングをテーマにしているようで、
シンセによる幻想的なイントロから、ほどよくヘヴィなギターとかすれた味わいのヴォーカルにデスヴォイスも絡み、
いつになくおどろおどろしい感じのメタルサウンドを聴かせる。こもり気味の音質がいかにもカルトな雰囲気で、
だいたい曲が6分以上と無駄に長い所も含めて、いつまでたってもローカルなB級エピックメタルのスタイルにに微笑ましくもなる。
中盤の9分のタイトル曲などは、なかなかドラマティックな味わいで、アルバム後半にはアグレッシブなメタル感も覗かせる。
ドラマティック度・7 エピック度・7 B級度・8 総合・7 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する

Kaira (Каира) 「Воля Рока」
ベラルーシのシンフォニックメタル、カイラの2006年作
シンフォニックなアレンジに母国語による女性ヴォーカルで、ゴシックメタル的な耽美さと
ペイガンな涼やかさも含んだサウンドを聴かせる。カイラ嬢の伸びやかな歌声は、
シアトリカルな表現力で楽曲を妖しく彩り、クラシカルなピアノや優美なシンセアレンジに
叙情的なギターも重なって、ジャケのイメージよりも本格派のシンフォニックメタルが味わえる。
シンフォニック度・8 優雅度・8 女性Vo度・8 総合・7.5


9/1
メタル残暑お見舞い(173)

Scorpions 「Rock Believer」
ドイツのベテランバンド、スコーピオンズの2022年作
1972年にデビュー、2010年にバンド解散がアナウンスされるも、翌年には復活、本作は2015年作に続く、7年ぶりのアルバム。
ドラムにスウェーデン人のミッキー・ディーが加入、マティアス・ヤプス、ルドルフ・シェンカーの奏でる古き良き味わいのギターに
伸びのあるクラウス・マイネのヴォーカルを乗せ、キャッチーでありつつもどっしりと骨太のハードロックサウンドを聴かせる。
ほどよい疾走のドライブ感とオールドロックのヴィンテージ感触に、哀愁の叙情も含んだ大人のスコーピオンズという作風だが、
ゆったりとしたナンバーでも魅力的なギタープレイと衰え知らずの歌声が素晴らしく、粒揃いの楽曲がベテラン健在を示している。
ジャケのインパクトに比して内容は大人の叙情ロックです。ボーナスDiscには、未発曲、アコースティックバージョンなど、5曲を収録。
キャッチー度・8 古き良きHR度・9 ベテラン健在度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する

Diamond Head
イギリスのベテランバンド、ダイアモンド・ヘッドの2016年作
1980年にデビュー、NWOBHMを象徴するバンドのひとつで、1985年にいったん解散するも、90年代に復活しまた解散、
その後、2005年になると復活のアルバムを発表し、本作は2007年以来、9年ぶりとなる7作目。デンマーク出身のシンガー、
ラスマス・ボム・アンダーセンを新たに迎え、ブライアン・タトラーのオールドな味わいのギターにパワフルなヴォーカルを乗せた、
英国らしい古き良きHM/HRサウンドを聴かせる。ほどよい疾走感も含んだ、いかにも80年代ルーツのスタイルで、
シャウトし過ぎない中音域の歌声もよくマッチしている。派手さはないが、往年のブリティッシュメタルが甦ったような好作だ。
ドラマティック度・7 古き良き度・8 英国HM度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する


Sipario 「Eclipse Of Sorrow」
イタリアのシンフォニックメタル、シパリオの2016年作
壮麗なシンセアレンジをメタリックなギターに重ね、伸びやかな女性ヴォーカルに男性デスヴォイスも加え、
リズムチェンジを含む知的な展開力で、ProgMetal的な感触も含んだ優雅なシンフォニックメタルを構築。
いくぶんラウドな音質やアレンジ面での粗さなど、マイナーなB級臭さが随所に感じられるのだが、
メガネをかけたヴォーカル嬢のキュートな歌声はなかなか魅力的で、優美なシンフォニック性にマッチしている。
中盤には、3部構成の13分の組曲もあり、アグレッシブな激しさと優美な叙情性が同居した味わいが楽しめる。
全体的にはあと一歩突き抜けきらない楽曲が惜しいが、随所にサウンドの魅力はあるので、今後に期待です。
シンフォニック度・7 壮麗度・7 女性Vo度・7 総合・7.5
Amazonで購入する

Headline 「Escape」
フランスのメロディックメタル、ヘッドラインの1997年作
女性Voにシンセを含む5人編成で、正統派メタル寄りのギターにシンセを重ね、ハスキーな女性ヴォーカルで聴かせる
ProgMetal風味もあるメロデックメタル。随所に流麗なギタープレイも盛り込みつつ、ほどよいズムチェンジと構築力で、
80年代ルーツのキャッチーなハードロックの感触も感じさせる。一方で、ゆったりとしたバラードナンバーでは、
紅一点、Sylvie嬢のコケティッシュな歌声がなかなか魅力的だ。全体的には、これという新鮮味はなく、
シンフォニックメタルなのか、プログレメタルなのかが微妙なところで、突き抜けきれないもどかしさもある。
メロディック度・7 キャッチー度・8 女性Vo度・7 総合・7.5
Amazonで購入する


FREAKY JELLY 「REVERSE」
ブラジルのプログレメタル、フリーキー・ジェリーの2017年作
DREAM THEATER的なテクニカルなリズムに巧みなギターと優美なシンセワーク、ハイトーンのヴォーカルを乗せて
ドリムシを優雅にしたようなProgMetalを聴かせる。かつてのアンドレ・マトスにも通じる、エモーショナルなヴォーカルや
美麗なシンセアレンジは魅力的で、知的でメリハリのある楽曲の構築力には、マイナー臭さを感じさせない。
テクニカルなインストパートとキャッチーな歌パートのバランスも良く、正統派のプログメタルとしては出色の出来。
中盤の11分の大曲も緩急あるドラマティックな味わいだが、アルバム後半は4部構成、31分超の組曲になっていて、
テクニカルとヘヴィネス、キャッチーな軽やかさが交差しながら巧みに構築されてゆく。全69分の力作だ。
ドラマティック度・8 テクニカル度・8 優雅度・8 総合・8
Amazonで購入する

Arch Enemy 「Deceivers」
スウェーデンのメロディック・デスメタル、アーチ・エネミーの2022年作
1996年にデビュー、本作は12作目で、The Agonistの女性シンガー、アリッサが加入してからの3作目となる。
パワフルなドラムにメロディックなツインギター、咆哮するデスヴォイスとストレートな女性声を乗せたサウンドは、
アグレッシブに疾走しつつ、ほどよくダークでキャッチーな感触とともに、ぐっと洗練された聴きやすさがある。
ツインギターによる叙情的なフレーズは、激しさの中で、ときにはっとなるようなコントラストとなっていて、
極端な緩急の付け方などは初期を思わせるところもある。楽曲は3〜4分前後が主体で、わりとシンプルであるが、
ラスト曲のようなミドルテンポのどっしりとしたナンバーも味わいがある。激しさとメロディのバランスのとれた好作。
ドラマティック度・7 暴虐度・7 叙情度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する

NumenoR 「Draconian Age」
セルビアのメロディック(ブラック)メタル、ヌメノールの2021年作
2013年デビュー、初期はブラックメタル寄りの世界観と、シンフォニックなメロパワ要素が同居したスタイルであったが、
4作目となる本作では、BLIND GUARDIANのハンズィ・キアシュがゲスト参加し、ダミ声&ストレートヴォーカルを乗せた
軽やかに疾走するメロスピ寄りのスタイルで、キャッチーなクサメロ感とともに、ほどよくマイナーな味わいに包まれる。
曲によってはシンフォニック・ブラックメタルの名残や、いくぶんメロデス風味もあるが、そこまで激しくはなく、
随所にクラシカルなシンセアレンジやクサメロなギターフレーズも覗かせるなど、ダミ声Voを除けばわり優雅に楽しめる。
楽曲は3〜4分前後と、わりとシンプルなので、もう少し濃密な展開などが欲しい気もするが。
ドラマティック度・7 疾走度・7 辺境度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する

Skylord 「Frostcraft」
ロシアのシンフォニック・ブラックメタル、スカイロードの2019年作
優美なシンセによるイントロから、トレモロを含むギターにシンセアレンジを重ね、ダミ声ヴォーカルとともに激しく疾走、
メロブラ寄りのコールドな叙情性に包まれたサウンドを聴かせる。クサメロ感もあるメロディックなツインギターや
シンフォニックなシンセ、随所にノーマル声ヴォーカルも織り込むなど、激しくも壮麗なブラックメタルが楽しめる。
後半は、20分におよぶ四季をテーマにした組曲となっていて、叙情美たっぷりのギターフレーズを散りばめながら
シンフォニックなアレンジとともに疾走する、優雅といってもよいほどの華麗なメロブラが展開される。
ドラマティック度・8 暴虐度・8 叙情度・8 総合・8
Amazonで購入する


TREMOR 「Heresy - Ересь」
ロシアのシンフォニック・ブラックメタル、トレモルの2018年作
2006年にデビューし、3作目となる。壮麗なシンセアレンジをギターに重ね、ダミ声ヴォーカルとともに疾走する、
DIMMU BOGIRばりの高品質なシンフォニック・ブラックメタル。トレモロを含むギターとオーケストラルな優雅さで
激しくも美麗なサウンドを構築。ヴォーカルのダミ声は、CRADLE OF FILTHのダニを思わせる雰囲気もある。
随所にブラスト疾走を織り込みながら、スローパートなどリズムチェンジを含めた知的な展開力も覗かせ、
幻想的なインストナンバーも悪くない。このバンドならではの個性は薄いが、クレイドルやボルギル好きの方はどうぞ。
シンフォニック度・8 暴虐度・7 壮麗度・8 総合・8
Amazonで購入する


Black Forest 「Dream」
オーストリアのシンフォニック・ブラックメタル、ブラック・フォレストの2017年作
シンセとピアノ、ストリングスによる優美なイントロから、メロディックなツインギターにシンセアレンジを重ねて疾走、
ダミ声ヴォーカルとともに、ほどよく激しくも壮麗なサウンドを展開。シンフォニックなオーケストレーションが包み込む、
涼やかな叙情性は、BAL-SAGOTHSTORMLORD、日本のTYRANTなど美麗系シンフォブラックにも通じるだろう。
アルバム後半は8分、9分という大曲もあり、激しい疾走パートからクラシカルなシンセのゆったりとした叙情美まで、
リズムチェンジを含む展開力で、ドラマティックに構築する。全34分というのがやや物足りないが、質の高いシンフォブラです。
シンフォニック度・8 暴虐度・7 叙情度・8 総合・8
Amazonで購入する


Retribution 「Corpus Antichristi Y3k」
スペインのシンフォニック・ブラックメタル、リトリビューションの2014年作
壮麗なオーケストラアレンジとツインギターを重ね、迫力あるダミ声&ノーマルヴォーカルを乗せて、
CRADLE OF FILTHタイプのシンフォニック・ブラックメタルを聴かせる。オペラティックなコーラスに
美しいソプラノ女性ヴォーカルも加わると、EPICAのような美麗なサウンドに包まれる。
ときにメロディックなギターフレーズも現れるなど、全体的にも激しさと優雅さのバランスで、
重厚にして華麗な聴き心地。とにかくシンフォニックなブラメタが好きな方はチェックすべし。
シンフォニック度・9 暴虐度・7 壮麗度・9 総合・8
Amazonで購入する


NOCTURNUS 「The Key」
アメリカのデスメタル、ノクターナスの1990年作
初期のMORBID ANGELに在籍していたドラムのマイク・ブロウニング率いるバンドのデビュー作。30周年での再発盤。
当時のデスメタルにしては珍しくキーボードを含む編成で、幻想的なイントロから始まり、スラッシーなギターリフと
ドカドカしたドラムに吐き捨てヴォイスを乗せて、DEATHにも通じる知的な展開力のデスメタルを聴かせる。
手数の多いドラムにやや唐突ともいえるリズムチェンジを含むプログレッシブな味わいで、激しすぎず、重過ぎず、
ラウドでノイジーな音質も、マイナー感があっていい味わいだ。うっすらとシンセが重なるとスペイシーな雰囲気にも包まれ、
複雑でせわしない展開に耳疲れしつつも、SFチックなSEを取り入れたりと、当時としては実験的なサウンドが楽しめる。
ドラマティック度・7 重厚度・7 テクニカル度・8 総合・8
Amazonで購入する

NOCTURNUS 「Ethereal Tomb」
アメリカのデスメタル、ノクターナスの1999年作
1992年の2作目以降休止していたバンドの3作目で、ドラム&Voのマイク・ブロウニングはすでに脱退している模様。
サウンドの方は、クールなギターリフに咆哮するデスヴォイスを乗せ、うっすらとしたシンセが包み込む、
オールドスタイルのテクニカルデスメタルは健在。音質も含めてクリアになった分、かつてのミステリアスな空気は薄まり、
わりとドライな感触で普通に楽しめるのだが、もう少し引っ掛かりのある展開、いわばヘンテコさが欲しい気もする。
確かな演奏力とともに、激しすぎないテクデスという好作ではある。本作をもってバンドは活動を休止するが、
マイク・ブロウニングを含むかつてのメンバーは、NOCTURNUS ADとして、2019年にアルバムを発表している
ドラマティック度・7 重厚度・7 テクニカル度・7 総合・8
Amazonで購入する

ENTRAILS 「TALES FROM THE MORGUE」
スウェーデンのデスメタル、エントレイルズの2010年作
デビューアルバムのジャケを変更した再発盤で、グロいアートワークがデスコアっぽい雰囲気だが、
サウンドはオールドなギターリフと吐き捨てヴォーカルでスラッシーに疾走する、初期Entombedなどを思わせる
古き良き北欧デスメタル。ザリザリとしたリフとともに、随所にほどよく叙情的なギターフレーズも覗かせて、
激しすぎずわりと聴きやすい。スローテンポもまじえたリズムチェンジや、クールなギターリフなどは、
Pestilenceあたりを思い出すかも。90年代ヨーロピアン・デスメタルの生き残り的なバンドでしょう。
ドラマティック度・7 暴虐度・7 オールドデス度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する



8/19
復活シャーマン良いです(159)

Katatonia 「Sky Void Of Stars」
スウェーデンのメランコリックメタル、カタトニアの2023年作
1993年にデビュー、しだいにプログレッシブなメランコリックロックへと深化をとげ、本作は12作目となる。
OPETHをキャッチーにしたようなノリのよいナンバーで幕を開けつつ、うっすらとしたシンセや叙情的なギターが
北欧らしい物悲しい翳りを描いてゆく。随所に変拍子を含んだリズムや、シンフォニックなシンセアレンジなど、
これまで以上に優雅な感触で、マイルドなヴォーカルによる歌もの感触も含めて、耳心地の良いサウンドが光る。
楽曲としては、4〜5分前後が主体で、わりとシンプルながら、ほどよいノリのリズムと重すぎないバランスが良く、
メロウな味わいで初心者にも普通に楽しめそう。今後はよりプログレッシブな大曲なども期待したい。
ドラマティック度・7 叙情度・8 メランコリック度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する

TEN 「Here Be Monsters」
イギリスのメロディアスハード、テンの2022年作
1995年デビュー、本作は15作目となる。優美なシンセのイントロから、ブルージーなギターリフとともにオールドなロック風味に包まれる。
ゲイリー・ヒューズの枯れた味わいのヴォーカルが加わると、そこは英国らしい哀愁に包まれた、TENのサウンドが広がってゆく。
前にも聴いたような歌メロも含めて、これぞゲイリー流のブリティッシュハードであり、全体的に落ち着いたミドルテンポを主体に
くレイドバックしたような優しい懐かしさを感じさせる。随所に奏でられる叙情的なギターの旋律が泣きの美学を感じさせつつ、
決して派手にはならない大人のハードロックを描きつつ、シンセをたっぷり使った、キャッチーなAOR風味のナンバーなど、
ライトな耳心地の良さもベテランの余裕というところか。新鮮味こそさほどないが、安定のゲイリー節が楽しめる好作だ。
メロディック度・8 哀愁度・8 英国度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する

SHAMAN 「Rescue」
ブラジルのメロディックメタル、シャーマンの2022年作
2002年にデビュー、本作は2010年以来となる、12年ぶりの復活作で、ドラムのリカルド・コンフェッソーニを除くメンバーが交替し、
ギターとベースにはオリジナルメンバーのマリウッティ兄弟が復帰、元AGE OF ARTEMISのアリリオ・ネットをシンガーに迎え、
シンセには初期から関わるファビオ・ヒベイロが参加。SAGRADOのマルクス・ヴィアナがヴァイオリンでゲスト参加している。
叙情的なイントロから始まり、メタリックな疾走感とともに、いくぶん民族色を含んだ雄大なメロディックメタルを展開。
アリリオのハイトーンはかつてのアンドレ・マトスを思わせ、疾走するメロパワナンバーから、ゆったりとした叙情曲まで
初期のANGRAにも通じる優雅なサウンドを描いてゆく。マトスの世界観を受け継いだ、シャーマン完全復活の力作です。
ドラマティック度・8 疾走度・7 優雅度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する

LALU 「Paint Of Sky」
フランス出身のシンセ奏者、ヴィヴィアン・ラルーによるプロジェクト。2022年作
2005年にデビュー、9年ぶりとなる3作目。ヴォーカルにダミアン・ウィルソン(ARENA)、ドラムにジェリー・カルダデッリ(Adagio)が参加。
アレッサンドロ・デルヴェッキオ、ゲイリー・ワーカンプ(SHADOE GALLERY)、イェンス・ヨハンソン(STRATOVARIUS)、ジョーダン・ルーデス(DREAM THEATER)、
サイモン・フィリップス、シモーネ・ムラーニ(DGM)、スティーヴ・ウォルシュ(元KANSAS)、トニー・フランクリンといった多数のゲストが参加している。
前作はモダンなプログレメタルであったが、今作では美麗なシンセワークと伸びやかなヴォーカルを主体にした、優雅でシンフォニックな
プログレハードというスタイルで、巧みなギタープレイやほどよい硬質さも覗かせつつ、華麗でスタイリッシュなサウンドを構築する。
しつとりと美しいナンバーから、曲によってはテクニカルなパートもあり、HAKENあたりに通じるモダンプログレとしても楽しめるだろう。
ドラマティック度・7 スタイリッシュ度・9 優雅度・9 総合・8
Amazonで購入する

ACOLYTE 「ENTROPY」
オーストラリアのプログレメタル、アコライトの2021年作
2016年にデビューし、2作目となる。ほどよくヘヴィなギターにきらびやかなシンセを重ね、
中音域の女性ヴォーカルとともに、モダンでシンフォニックな味わいのハードプログレを展開する。
10分前後の大曲も多く、優美なシンセと女性声によるゆったりとした浮遊感に包まれながら、
ときにポストロック的な空間性や、ProgMetal寄りの重厚なパートも覗かせる。これという派手な展開がないので、
わりとつかみどころがないのだが、ラスト曲では、しっとりとしたピアノをバックに美しい女性ヴォーカルを乗せ、
メタリックなギターにシンセを加えて、翳りを帯びたドラマティックなサウンドを構築する。この路線での深化を期待。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 女性Vo度・7 総合・7.5
Amazonで購入する

Adamantis 「Far Flung Realm」
アメリカのメロディックメタル、アダマンティスの2020年作
いかにもエピックな雰囲気のイントロから、メロディックなツインギターに朗々としたヴォーカルを乗せて疾走する、
正統派のメロパワサウンドが炸裂。勇壮なコーラスやクサメロ感あるツインギターなどは、HAMMERFALLなどを思わせ、
重すぎず激しすぎず、ほどよくB級感触も残していて、90年代ヨーロピアンスタイルのメロパワファンはニンマリだろう。
随所にリズムチェンジを含めたドラマティックな展開力もあり、ミドルテンポから疾走へとつなげるアレンジも堂に入っている。
元DARK MOORのエリサ・マーティンが参加した男女Voのゴージャスなメロスピナンバーなどもよい感じだ。
クサメタル好きも満足する、オールドスタイルの正統派エピック・メロパワの高品質作です。
ドラマティック度・8 疾走度・7 正統派メロパワ度・8 総合・8
Amazonで購入する

Lycanthro 「Mark Of The Wolf」
カナダのメタルバンド、ライカントロの2021年作
2018年にデビューし、2作目となる。いかにもオールドなギターリフにダーティなヴォーカルを乗せ、
80年代NWOBHMスタイルのヘヴィメタルを聴かせる。演奏もヴォーカルもパワフル過ぎない所が
ほどよくマイナーな味わいになっていて、叙情的なギターソロなどもメロディックになり過ぎない。
楽曲的にも新鮮味は薄く、メイデンやジューダスになり切れないという感じで、これというインパクトもないのだが、
この中庸感こそがB級メタルというべきか。ラスト曲は、どっしりとしたナンバーながら、なかなか楽しめました。
メロディック度・7 オールドメタル度・8 B級度・8 総合・7

Millennium 「Caught In A Warzone」
イギリスのメタルバンド、ミレニアムの2016年作
1984年に1作を残して消えたバンドで、2018年には34年ぶりの復活アルバムを発表するのだが、
本作は1985年に録音された未発曲を収録した作品。わりと正統派のギターに伸びのよいヴォーカルを乗せた、
古き良きヘヴィメタルで、音質はややラウドであるが、当時のNWOBHMシーンのバンドの若き勢いが伝わってくる。
楽曲は3〜4分前後とシンプルながら、随所に聴かせる叙情的なツインギターなどもよい味わいで、
英国らしいウェットな雰囲気は日本人にも受けるだろう。80年代の香りを閉じ込めた全12曲です。
メロディック度・7 オールドメタル度・9 英国メタル度・8 総合・7.5
Amazonで購入する


Dreamtone & Iris Mavraki's Neverland 「Ophidia」
トルコのメタルバンド、ドリームトーンとギリシャのシンガー、イリス・マヴラーキによるプロジェクト、ネヴァーランドの2010年作
2008年作に続く2作目で、物語的な語りで幕を開け、メタリックなギターにきらびやかなシンセを重ね
男女ヴォーカルの歌声とともに、ファンタジックな世界観のシンフォニックなメタルオペラを展開する。
ジョン・オリヴァ(SAVATAGE)、エドゥ・ファラスキ(元ANGRA)、アーバン・ブリード(Serious Black)がゲスト参加し、
それぞれ1曲ずつで歌声を披露している。ほどよくメロディックでほどよく重厚という、高品質なサウンドであるが、
疾走感やクサメロ感はさほどないので、即効性は薄めかもしれない。女性声の活躍がもっとあっても良かった。
ドラマティック度・8 疾走度・6 重厚度・8 総合・7.5
Amazonで購入する


WildeStarr 「Arrival」
アメリカの女性Voメタル、ワイルド・スターの2009年作
ギターのデイヴ・スターと女性シンガー、ロンドン・ワイルドによるユニットで、本作がデビュー作。
様式美的な感触もあるギターにハスキーな女性ヴォーカルを乗せた、オールドなメタルサウンドで、
80〜90年代ルーツの様式美メタルという点では、初期のCHASTAINなどに通じる雰囲気もある。
ときにパワフルにシャウトする、ロンドン嬢の中性的な歌声は、なかなかの表現力で、
楽曲自体はわりとオーソドックスながらも、巧みなギタープレイとともにそれなりに楽しめる。
メロディック度・7 オールドメタル度・8 女性Vo度・7 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する


DOXA 「LUST FOR WONDER」
スペインのシンフォニックメタル、ドクサの2017年作
2010年にデビューし、3作目となる。メタリックなギターにうっすらとしたシンセ、キュートな女性ヴォーカルを乗せて、
ほどよくキャッチーな疾走感のある、優雅なシンフォニックメタルを聴かせる。随所に奏でる流麗なギターフレーズや
フックのあるメロディ展開、紅一点Rita嬢の歌声もフェミニンでなかなか魅力的だ。楽曲によってはゴシックメタル寄りの
メランコリックな雰囲気もあって、美しい女性声と耽美な世界観が好きな方にも楽しめるだろう。
中盤以降は男性Voメインのナンバーもあって、フォーキーな感触の疾走するクサメロスピ風味も現れたりと、
とらえどころがないのだが、アルバム後半は再び優美な女性声シンフォニックメタルに戻ってひと安心。
シンフォニック度・7 優美度・8 女性Vo度・8 総合・8
Amazonで購入する

WARCRY 「Inmortal」
スペインのメロディックメタル、ウォークライの2013年作
AVALANCHのメンバーによって、2000年にデビュー、本作は8作目となる。正統派のギターにシンセを重ね、
スペイン語によるパワフルなヴォーカルを乗せほどよい疾走感のある王道のメロパワを聴かせる。キャッチーなメロディのフックと
スパニッシュな哀愁の叙情が同居して、激しすぎない耳心地の良さで楽しめる。楽曲は4〜5分前後を主体にしつつ、
8分の大曲ではしっとりとしたパートを含んでドラマティックな展開を見せる。メロディアス性、疾走感、濃密さ、いずれも「ほどほど」なので、
新鮮なインパクトはないのだが、キャリアのあるバンドらしい堂々たる内容で、正統派スパニッシュメロパワの高品質作と言えるだろう。
メロディック度・8 疾走度・7 スパニッシュ度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する


RISK ZONE (Зона Риска) 「 ALEKSEYEVSKAYA PLOSHCHAD(Алексеевская Площадь)」
ロシアのメロディックメタル、リスク・ゾーンの2014年作
メタリックなギターにシンセを重ね、ロシア語によるヴォーカルを乗せた、ミドルテンポ主体のどっしりとしたメロパワサウンド。
疾走する激しさはほとんどなく、優美なシンセアレンジや、巻き舌ヴォーカルを含めた異国的な哀愁を感じさせ、
叙情的なギターの旋律とともに、ウェットなドラマ性を描いてゆくところは、同国のEPIDEMIAにも通じるだろう。
曲によってはデジタルなシンセアレンジなどのモダンな雰囲気も覗かせる。ボーナストラックでは、元IRON MAIDENのブレイズ・ベイリーが参加。
ドラマティック度・8 疾走度・5 叙情度・8 総合・7.5
Amazonで購入する



7/22
ガルネリと陰陽座久々に聴いた(146)

Angel Vengeance
タイのメロディックメタル、エンジェル・ヴェンジェンスの2020年作
クラシカルなイントロから、クサメロ感たっぷりのギターにハイトーンヴォーカルで疾走する、
INSANIAばりの古き良きキーパーメタルを聴かせる。いくぶんこもり気味の音質も含めて、
マイナー臭さはあるものの、線の細いハイトーンやツインリードのギターメロディは魅力的で、
キャッチーなクサメロを含んだ楽曲は、HELLOWEEN風だったり、STRATOVARIUS風だったりと、
クサメタルマニアのツボを突くこと請け合い。タイトル曲も含めて、インストパートもわりと展開が多く、
全体的にアジア臭さも薄いので、オールドスタイルのメロパワとしても普通に楽しめる出来だ。
メロディック度・8 疾走度・8 クサメロ度・8 総合・8
Amazonで購入する

Blazon Stone 「Return To Port Royal」
スウェーデンのメロディックメタル、ブレイズン・ストーンの2013年作
ジャケやバンド名からして、いかにもRUNNING WILD直系のスタイルを想起させるが、サウンドの方も
パイレーツ感漂うギターフレーズに、かすれたハイトーンヴォーカルで疾走する、王道のジャーマンメタル。
ギターリフもコーラスも、ほぼランニング・ワイルド以外の何物でもないという、フォロワー感丸出しであるが、
いっそ潔いスタイルで微笑ましくもある。キャッチーなフックと勇壮なメタル感のバランスも良いので、
正統派のメロパワとして普通に完成度が高く、RWファンはもちろん、それ以外のリスナーでも楽しめるだろう。
メロディック度・8 疾走度・8 ランニングワイル度・9 総合・8
Amazonで購入する


KRUK 「Be There」
ポーランドのハードロック、クラックの2021年作
2006年にDeep Purpleなどのカヴァー作品でデビュー、本作は5作目のオリジナルアルバムで、
オールドな味わいのギターにオルガンが鳴り響き、枯れた味わいのヴォーカルで聴かせる、
URIAH HEEPなどを思わせるヴィンテージなハードロックサウンド。英語歌詞による渋みのある歌声は、
70年代英国ロックの哀愁に包まれていて、確かな演奏力も含めて、辺境臭さはほとんど感じられない。
10分を超える大曲では、メロウなギターや優美なピアノ、ときにプログレ的なシンセワークも覗かせて、
ほどよく叙情的な味わいで楽しめる。後半の大曲では、MAGNUMのようなウェットな雰囲気も現れる。
ドラマティック度・7 オールドロック度・8 英国ロック風度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する

GLENN PROUDFOOT 「FIRE & RAIN」
オーストラリアのギタリスト、グレン・プラウドフットの2018年作
ソロとしては3作目。メタリックなギターにかすれた味わいのヴォーカルを乗せたハードロックで、
随所にシュレッド的なテクニカルなプレイを織り込みながら、派手すぎないキャッチーな作風。
自身のエモーショナルな歌声も、わりとオーソドックスなハードロックによくマッチしていて、
楽曲自体にこれというインパクトはないのだが、随所に叙情なギターフレーズをまぶしつつ、哀愁を描くところは
LILLIAN AXEなどにも通じるかもしれない。ギタリストのソロというよりは、メロハーとしても普通に楽しめる。
メロディアス度・8 哀愁度・8 ギタリスト度・8 総合・8

PANTALEON 「Virus」
ドイツのプログレメタル、パンタレオンの2017年作
Masterplanのドラム、ケヴィン・コットが在籍するバンドで、ヘヴィなギターにハイトーンヴォーカルを乗せ
緩急あるリズムチェンジとともに、ほどよくテクニカルなプログレ・パワーメタルを構築する。
叙情的なフレーズを奏でるギターに、ときにネオクラシカル風のきらびやかなシンセも重なって、
パワフルなヴォーカルとツーバスの激しいドラムも含めて、重厚にして濃密な聴き心地である。
10分前後の大曲もあり、とくにラストのナンバーはProgMetalらしいドラマティックな展開力が光る。
ドラマティック度・7 テクニカル度・7 重厚度・8 総合・7.5
Amazonで購入する


GALNERYUS 「UNDER THE FORCE OF COURAGE」
日本のメロディックメタル、ガルネリウスの2015年作
2003年にデビュー、いまや日本を代表するメタルバンド。本作は10作目で、オリジナルストーリーによるコンセプトアルバム。
叙情的なギターによるイントロから、きらびやかなシンセとテクニカルなギターが絡む、プログレッシブなインストナンバー、
そして、SHOこと小野正利のハイトーンヴォーカルを乗せて疾走する、華麗なメロデッィク・スピードメタルが炸裂する。
楽曲はほとんどが6分以上で、YUHKIによるシンフォニックなシンセアレンジに、ときにProgMetalばりの巧みなインストパートを含んで、
濃密にして爽快な盛り上がりを見せ、ラストは14分の大曲で、壮麗でドラマティックなシンフォニックメタルを展開する。
ドラマティック度・8 疾走度・8 壮麗度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する


GALNERYUS 「ULTIMATE SACRIFICE」
日本のメロディックメタル、ガルネリウスの2017年作
前作の続編となる、コンセプト作品の完結編。今作もドラマティックなイントロナンバーからエピックな雰囲気に包まれて、
Syuの奏でる巧みなギターに美麗なシンセアレンジ、伸びやかなハイトーンヴォーカルを乗せて疾走する、
シンフォニックなメロパワを聴かせる。ときにオルガンも含む、YUHKIのキーボードはプログレ的な味わいもあり、
緩急ある展開力の中で、きらびやかな彩りを放っている。じっくりとヴォーカルを聴かせるキャッチーなナンバーなども、
ほどよくアクセントになっていて、超絶ハイトーンだけではない、SHOの歌唱力の高さも再認識できる。
ラスト2曲は10分超えの大曲が続き、壮大なドラマのクライマックスというべき大団円で幕を閉じる。
ドラマティック度・8 疾走度・8 壮麗度・9 総合・8
Amazon.co.jpで詳細を見る

陰陽座 「風神界逅」
日本の和風メタルバンド、おんみょうざの2014年作
「風神・雷神」をコンセプトに、2作同時リリースするという試みで、本作はアコースティックギターとシンセによるイントロから、
ミドルテンポの軽快なビート感に叙情的なギターを重ね、伸びやかな黒猫のヴォーカルに瞬火の男性声が絡み、
キャッチーなメロディアス性に包まれたサウンドを描く。黒猫さんの歌声をメインにした歌謡ロック風のナンバーから
和風のアリーナロック的な「無風忍法帖」、ゆったりと優美な味わいの大曲「八百比丘尼」など、メタル感触は薄めで、
全体的にもとにかく聴きやすい楽曲が揃っている。JPOPロックのリスナーでーも楽しめそう。クオリティはさすがです。
メロディック度・8 メタル度・5 和風度・7 総合・8 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する


陰陽座 「雷神創世」
日本の和風メタルバンド、おんみょうざの2014年作
「風神界逅」の対となる作品で、瞬火のヴォーカルを乗せた序曲で幕を開け、メタリックなギターと黒猫の歌声で、
疾走感のある2曲目へとつながってゆく。風神のポップ感に比べると、ヘヴィなギターサウンドが前に出た感触で、
メタルファンには一安心というところ。黒猫が歌い上げるハイトーンはときに、浜田麻里を思わせるパワフルさと、
エモーショナルな表現力も備わっていて、いかにも和風メタルらしいナンバーから、しっとりと優美な「神鳴忍法帖」など
曲によって声色を変化させながら魅力を発揮している。13分におよぶ大曲では、優雅なドラマ性に包まれて、
ハードさを残しつつ、メロディックなフックをしっかりと織り込んだ、このバンドらしいサウンドがたっぷり味わえる。
メロディック度・8 メタル度・8 和風度・8 総合・8.5
Amazonで購入する

陰陽座 「迦陵頻伽」
日本の和風メタルバンド、おんみょうざの2016年作
比類なき美声で鳴くという、人頭鳥身の架空の生物をテーマにしたアルバムで、スローテンポの優雅なナンバーで幕を開け、
続く2曲目も、陰陽座らしいキャッチーなミドルテンポで、メロディアスなギターと伸びやかな黒猫の歌声が映える。
シンフォニックなシンセによるアレンジとともに壮麗な聴き心地で、楽曲的にもJ-POP風のナンバーもあったりと
メタル的な激しさは抑え目なのでライトに聴ける。中盤での疾走感ある「氷牙忍法帖」は良いアクセントで、
メロディのフックは前にも聴いたことがあるような感じだが、さすがの質の高さです。パチスロのタイアップ曲、
「愛する者よ、死に候え」も優美にしてドラマティックなナンバーで、全体的にも爽快な聴き心地の好作品だ。
メロディック度・8 メタル度・6 和風度・8 総合・8
Amazonで購入する

陰陽座 「覇道明王」
日本の和風メタルバンド、おんみょうざの2018年作
前作に比べジャケのイージもダークであるが、イントロのピアノに続き、ヘヴィなギターサウンドが切れ込んで来て、
瞬火のヴォーカルにデスヴォイスも加えた重厚な聴き心地に、黒猫の美しい歌声が入ると優美な叙情に包まれる。
このバンドらしいミドルテンポのキャッチーなナンバーでは、いつも通りのメロディと歌い方で、既視感がぬぐえないのだが
出来は良いので悪しからず。曲によっては激しく疾走するメタルパートも戻ってきているので、サウンド的なメリハリはあるし、
黒猫がメインヴォーカルの美麗ナンバーでも、どっしりとしたギターでライトになり過ぎないところも良いのでないかと。
新鮮味という点では皆無だが、アルバム後半「鉄鼠の黶」のドラマティックな展開は見事。激しさと叙情が同居した力作です。
メロディック度・7 メタル度・8 和風度・8 総合・8
Amazonで購入する

ALICETOPIA 「In Dreams」
日本のシンフォニックメタル、アリストピアの2023年作
2021年のデビューEPに続く、初のフルアルバム。メタリックなギターに壮麗なアレンジを重ね、
フェミニンな女性ヴォーカルを乗せて疾走する、耽美な世界観に包まれたシンフォニックメタルを聴かせる。
随所に巧みなギタープレイも覗かせながら、楽曲は3〜4分前後が主体でわりとシンプルに楽しめつつ、
フロントを務める、Mariaの日本語歌詞によるキュートな歌声は、その美女っぷりも含めて魅力充分である。
メロディのフックや楽曲展開にもうひとひねり欲しい気もするが、耽美な萌え系シンフォニックメタル期待の新鋭です。
メロディック度・7 耽美度・8 女性Vo度・8 総合・7.5
Amazonで購入する



7/7
メタルの七夕(134)

Kings of Mercia
FATES WARNINGのジム・マテオスとFMのスティーヴ・オーヴァーランドによるユニット、キングス・オブ・メルシアの2022年作
ドラムにはサイモン・フィリップス、ベースにはジョーイ・ヴェラ(FATES WARNING、Armored Saint)が参加していて、
わりとオーソドックスなギタープレイに、味わいのあるスティーヴのヴォーカルを乗せたキャッチーなハードロックを聴かせる。
巧みなギターワークには、ときおりFW的な部分も覗かせ、いくぶん変拍子も含んだ楽曲は、単なるブルージーなHRという以上に
知的なセンスを感じさせる。モダンなヘヴィロック風味や、叙情的なバラードなどでも、力量あるヴォーカルがサウンドに説得力を付加していて、
職人的なサイモンのドラムも含めて、質の高いハードロックに仕上がっている。派手さはないが、実力あるメンハーによる大人のHRが味わえる。
ドラマティック度・7 大人のHR度・8 実力派度・8 総合・8
Amazonで購入する


OCTOBER THORNS「CIRCLE GAME」
アメリカのプログレメタル、オクトーバー・ソーンズの2022年作
ツインギターにシンセを含む6人編成で、流麗なギタープレイにきらびやかなシンセを重ね、伸びやかなヴォーカルとともに
DREAM THEATERにも通じるドラマティックなProgMetalを聴かせる。リズムチェンジを含むテクニカルな構築力と
美麗なシンセワークと巧みなギターが厚みのあるサウンドを描いて、ヴォーカルのラブリエばりのハイトーンもなかなか魅力的。
モダンでクールなアレンジも随所に覗かせて、単なるフォロワー以上のセンスの良さを感じさせる。楽曲自体は5〜6分前後と長くはないが、
ほどよくアグレッシブで非常に濃密な聴き心地。爽快でキャッチーなラストナンバーも悪くない。ProgMetalに期待の新鋭である。
ドラマティック度・8 テクニカル度・8 構築センス・8 総合・8
Amazonで購入する


KENN NARDI 「TRAUMA」
アメリカのミュージシャン、ケン・ナルディの2022年作
スラッシュメタルバンド、AnacrusisのG&Voでもあるミュージシャンで、ソロとしては2014年に続く作品となる。
ギタ、ベース、ドラム、ヴォーカルをすべて一人でこなしていて、クールなギターリフにダーティなヴォーカル乗せた
スラッシーなパワーメタル感触に、ANNIHILATORなどにも通じるインテレクチュアルなセンスが同居した作風。
曲によってはシンセアレンジを取り入れたり、ガナり声Voを乗せたアグレッシブなナンバーから、スローテンポまで、
スラッシュメタルを基にした独自のサウンドが楽しめる。ラストは11分の大曲で、プログレメタル的なドラマティックな聴き心地。
全74分という力作です。ボーナスDiscには、Anacrusisの過去曲のリメイクを含む6曲、全34分を収録。
ドラマティック度・7 スラッシュ度・8 インテレクチュアル度・8 総合・8
Amazonで購入する

Leaving Eden 「As Above So Below」
アメリカのメタルバンド、リヴィング・エデンの2022年作
女性Vo、女性Keyを含む5人編成で、ほどよくヘヴィなギターにハスキーな女性ヴォーカルを乗せた
キャッチーなメタルサウンドで、随所に男性声も加わってのアグレッシブな感触も覗かせる。
男性Voをメインにした、ジョン・レノン「Working Class Hero」のカヴァーなど、メタル的には「?」であるが、
シンフォニックメタル寄りの優雅なナンバーから、ヘヴィロック風の感触もあったりと、とらえどころがなく
総じて中庸な印象がぬぐえない。ギターサウンドとしては、わりと王道のハードロック感触なのだが、
後半の男女ヴォーカルのゴシックメタル風のナンバーはなかなか良かった。この路線で行って欲しい。
メロディック度・7 キャッチー度・7 女性Vo度・7 総合・7
Amazonで購入する

SYLENT STORM 「THE FIRE NEVER DIES」
アメリカのメタルバンド、サイレント・ストームの2020年作
古き良きギターリフにハイトーンヴォーカルを乗せ、JUDAS PRIESTなど、80年代ルーツの正統派ヘヴィメタルを聴かせる。
パワフル過ぎないヴォーカルと、ほどよい疾走感にエピックメタル的でもあるクサメロ感も漂わせるあたりは、
WARLORDなどのファンにも楽しめそう。さほどインパクトもないミドルテンポのナンバーもけっこうあるのだが、
マイナーなB級感に包まれた捨て曲風味も、なんだかなつかしい味わいだ。NWOTHMの王道的なスタイルです。
ドラマティック度・7 疾走度・7 正統派度・8 総合・7.5
Amazonで購入する



VA/Stormspell 「10th Anniversary Tribute」
アメリカのメタルレーベル、ストームスペルのオムニバス。2018年作
Prince Emerald、Breitenhold、Claymorean、ROCKA ROLLAS、Masquerage、Blazon Stone、NUMENOR、Cloven Altar、Roadhogなど、
レーベルに在籍するバンドが参加し、KING DIAMOND、MANOWAR、GAMMA RAY、BLIND GUARDIAN、STORMWITCH、SATAN、
RUNNING WILD、CRIMSON GLORYなどの楽曲をカヴァー。Prince Emeraldによるキング・ダイアモンド5曲から濃密に始まり、
ガンマ・レイ、ブラインド・ガーディアン、ストームウィッチ、ランニング・ワイルドと、90年代ジャーマンメタル好きにはなかなかたまらない。
Claymoreanによるマノウォー「Blood of My Enemies」、ROCKA ROLLASによるブラインド・ガーディアン「Mirror Mirror」、
Masquerageによるストームウィッチ「Rats In The Attic」あたりは、原曲に忠実な実に格好いい仕上がりだ。
王道メロパワ度・9 ジャーマン万歳度・8 マニア好みカヴァー度・9 総合・8
Amazonで購入する

Celtic Hills「Mystai Keltoy」
イタリアのパワーメタル、セルティックヒルズの2021年作
2020年にデビューし、2作目となる。バンド名やトリオ編成など、CELTIC FROSTからの影響も想起させるが、
サウンドの方は、オールドなギターにダーティなヴォーカルを乗せた、スラッシーな味わいのパワーメタルで、
どことなくアンダーグラウンドなマイナー感を漂わせている。バックにうっすらとシンセの味付けがあったり、
随所に甘すぎない叙情を奏でるギターなど、初期BLIND GUARDIANのようなエピックな幻想性も感じさせる。
ペイガン風の土着感も匂わせつつ、いくぶんこもり気味の音質も含めて、うすらぼんやりしたB級メタルが味わえる。
ゲストの女性ヴォーカルが歌うナンバーは、シンフォニックなゴシックメタル風で、この路線もありなのでは。
ドラマティック度・7 疾走度・7 幻想度・8 総合・7
Amazonで購入する

ART X 「THE REDEMPTION OF CAIN」
イタリアのメタルオペラ、アート・エックスの2016年作
Clairvoyants、Mirrormazeにも参加するミュージシャン、ガブリエル・ベルナスコーニによるプロジェクトで、
スティーヴ・ディジョルジオ(TESTAMENT)、オリヴァー・パロタイ(KAMELOT)、アンドレ・マトス、ブレイズ・ベイリー(元IRON MAIDEN)、
ロベルト・ティランティ(Labyrinth)、アマンダ・サマーヴィル、ザッカリー・スティーヴンス(Savatage)他、多数のゲストが参加、
旧約聖書「創世記」のカインとアベルをテーマに、緩急ある展開に配役ごとの男女ヴォーカルを乗せたメタルオペラを展開する。
どっしりとした重厚さはSAVATAGEなどに通じる雰囲気もあり、AVANTASIAあたりに比べると華麗さでは物足りないものの、
実力あるシンガーたちの存在感はさすがで、ときにプログレッシブな香りも含んだ、ドラマティックな世界観が楽しめる。
ドラマティック度・8 疾走度・6 重厚度・8 総合・7.5
Amazonで購入する

Karl Sanders 「Saurian Apocalypse」
アメリカのミュージシャン、カール・サンダースの2022年作
デスメタルバンド、NILEのリーダーで、ソロとしては、2009年以来となる、3作目。古代エジプト舞台にした
民族サウンドは本作も同様で、パーカッションのリズムに、アコースティックギターやサズのつまびき、
シンセアレンジも加えつつ、神秘的な民族アンビエントを展開。曲によっては、呪術的なヴォーカルも加えて
アッパーなノリのアコースティックサウンドを聴かせ、鳴らされるドゥンベック(パーカッション)にシンセによる味付けで
幻想的な空間性を感じさせるところは、過去2作以上に濃密な味わい。ドラムが入ったロック感触もあったりと、
ほどよいメリハリもあるので、退屈せずに聴き通せる。単なるアンビエントという以上にディープな世界観に浸れる。
メタル度・1 幻想度・8 民族度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する

Constellatia 「Magisterial Romance」
南アフリカのポストブラックメタル、コンステラティアの2022年作
2019年にデビュー、本作は2作目となる。10分前後の大曲4曲という構成で、トレモロを含む叙情的なギターに
ダミ声ヴォーカルを乗せた、カスカディアンブラック寄りのサウンドで、随所に激しくブラスト疾走しつつ、
うっすらとしたシンセを重ねた、どこか夢見心地の世界観。ときにメロウなギターの旋律も覗かせて
激しくも優雅な味わいと叙情的な扇情力の高さは、Alcestばりであろう。女性ヴォーカルを加えた3曲目などは、
ブラックメタルとは思えぬ優美な聴き心地で、この路線での新機軸というような美しさにウットリとなる。
ドラマティック度・8 激しさ度・7 幻想度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する


Ofdrykkja 「After The Storm」
スウェーデンのポストブラックメタル、オフドリキアの2022年作
2017年にデビューし、3作目となる。アコースティックギターによるイントロから、艶やかなヴィオラに女性ヴォーカル、
うっすらとしたシンセやハープの音色を加え、ケルト風味の土着性とともにしっとりとした幻想的なサウンドを描く。
メタル的な激しさというのはほとんどなく、淡々とした男性ヴォーカルを乗せたメランコリックな空気を描きつつ、
アコギに重なる優美なシンセとヴィオラがサウンドを優しく包み込むという、ゴシックアンビエント寄りの聴き心地です。
メタル度・1 メランコリック度・8 幻想度・8 総合・7.5
Amazonで購入する



SYLVAINE 「ATOMS ALIGNED, COMING」
アメリカのポストブラックメタル、シルヴァインの2018年作
女性アーティスト、Kathrine Shepardのプロジェクトで、これが3作目となる。AlcestのNeigeがドラムとベースでゲスト参加。
物悲しい叙情を含んだギターの旋律に、はかなげな女性ヴォーカルを乗せ、涼やかで幻想的なサウンドを描きつつ、
ときに激しいブラスト疾走も覗かせる。美しい女性声から、ダミ声も使い分け、トレモロのギターリフを乗せて疾走する、
ブラックメタル感触を随所に織り込みながら、緩急ある構築力で聴かせるセンスは、Alcestに通じるものがある。
アンビエントな癒し系ナンバーもありつつ、激しさとメランコリックな空気が同居した、幻想的なポストブラックが味わえる。
ドラマティック度・8 暗黒度・7 幻想度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する



6/30
女性Voシンフォニックメタル(122)

Edenbridge 「The Chronicles of Eden Part 2」
オーストリアのシンフォニックメタル、エデンブリッジの2021年作
2000年にデビュー、いまやキャリア20年を超える、フィメール・シンフォニックメタルを代表するバンド。本作はベストアルバム第二弾で、
2008年6th〜2019年10thの楽曲に、未発の別バージョン曲を加えた全26曲を2CDに収録。サビーネ・エデルスバッカーの美しい歌声を中心に、
優雅にしてキャッチーなサウンドが詰まっている。2017年作収録「The Great Momentum」収録、12分の壮大な大曲や、
2013年作「The Bonding」収録、15分のドラマティックな大曲も収録していて、Disc1だけでも74分というボリューム。
Disc2は、ヘヴィ寄りのナンバーから、アコースティックによるナンバーまで、シンプルな楽曲を主体に構成しつつ、
10年間のバンドの成熟が感じ取れる内容だ。ラストは2008年作「MyEarthDream」の壮麗なタイトル組曲で締めくくる。
壮麗度・8 優美度・9 女性Vo度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する

SHEWOLF
ギリシャ人女性シンガーをフロントにしたシンフォニックメタル、シーウルフの2022年作
Bare Infinity、Vivaldi Metal Projectにも参加した女性シンガー、エンジェル・ウルフ=ブラックをフロントに、
ホイッスルの音色にギターが重なり、美しい女性ヴォーカルを乗せた、優美なシンフォニックメタルを展開。
ほどよくヘヴィでアグレッシブなパートも含みつつ、メロディのフックが爽快な疾走メロスピナンバーや、
エモーショナルなバラードなども含めて、歌メロはキャッチーで、伸びやかな歌声もじつに魅力的だ。
Edenbridgeなどのファンにもお薦めの、壮麗なる女性声シンフォメタルの逸品です。
メロディック度・8 優美度・8 女性Vo度・8 総合・8
Amazonで購入する


BARE INFINITY 「Always Forever」
ギリシャのシンフォニックメタル、ベア・インフィニティの2009年作
のちにSHEWOLFでも活躍する女性シンガー、エンジェル・ブラックが在籍したバンドで、壮麗なイントロから、
重すぎないギターにシンセを重ね、伸びやかな女性ヴォーカルを乗せた、優美なサウンドを聴かせる。
適度に疾走感もある楽曲は、エンジェル嬢の美声とともに優雅な味わいで、ゆったりとしたナンバーから、
ミドルテンポでのキャッチーなメロディのフックまで、Edenbridgeにも通じる華麗な聴き心地で、
これという新鮮味はないのだが、力量あるヴォーカルとアレンジの質の高さで最後まで楽しめる。
シンフォニック度・8 壮麗度・8 女性Vo度・8 総合・8
Amazonで購入する


Endless Chain 「Forthcoming Past」
フィンランドのゴシックメタル、エンドレス・チェインの2021年作
ほどよくヘヴィなギターにうっすらとしたシンセを重ね、朗々とした男性ヴォーカルを乗せ、
翳りを帯びた叙情と涼やかな空気に包まれた、神秘的な雰囲気のゴシックメタルを聴かせる。
曲によってはストリングスによるアレンジも加えた優雅な美意識も覗かせつつ、叙情的なギターの旋律に、
ときにデス声を乗せたメロデス風のパートや、ゲストの女性ヴォーカルも加えた優美なナンバーなど、
アレンジ面での緩急もあってなかなか楽しめる。ダーク過ぎない聴きやすさなので、ゴシック初心者もどうぞ。
ドラマティック度・7 ゴシック度・8 重厚度・8 総合・7.5
Amazonで購入する


Winter In Eden 「Echoes of Betrayal」
イギリスのシンフォニックメタル、ウインター・イン・エデンの2012年作
ほどよくヘヴィなギターに優美なシンセを重ね、伸びやかな女性ヴォーカルで聴かせる正統派シンフォニックメタル。
甘すぎないメロディのフックと涼やかな叙情性で、わりとさらっと聴けてしまうのだが、曲によってはほどよい疾走感もあり、
紅一点、ヴィッキー嬢のクールビューティ的な歌声もサウンドによくマッチしていて、盛り上がり切らないのも魅力なのかも。
ときにNightwishのようなオーケストラルなアレンジや優美なピアノを含むシンセが、華麗に楽曲を彩っていて、
美しい女性声を引き立たせている。これというキラーチューンがないのが物足りないが、クオリティは充分の好作品だ。
ドラマティック度・7 優美度・8 女性Vo度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する


ShadowIcon 「Empire In Ruins」
スロベニアのシンフォニックメタル、シャドウアイコンの2011年作
壮麗なシンセアレンジにキュートな女性ヴォーカルを乗せた、優雅でキャッチーなシンフォニックメタルを聴かせる。
メロディックなツインギターはときにメロパワ的な感じもあり、メタルとしての音の厚みもしっかりあって
優美なシンセとコケティッシュな歌声を重ねたシンフォニックな味わいには、マイナー臭さは感じさせない。
2〜3分前後の小曲から、10分前後の大曲まで、バランスのとれた構築力で、きらびやかでキャッチーなメロディのフックと
ヨーロピアンな叙情が同居した、キュートな女性声シンフォメタルが味わえる。全70分を超える力作です。
ドラマティック度・8 優美度・8 女性Vo度・8 総合・8
Amazonで購入する

APERION「Act Of Hybris」
スロベニアのゴシックメタル、アペリオンの2010年作
ヴィオラ、チェロ、女性フルート奏者を含む編成で、艶やかなストリングスの音色に女性声を乗せたイントロから、
メタリックなギターにチェロなヴィオラが鳴り響く、物悲しくもヘヴィなサウンドに、美しい女性ヴォーカルで、
クラシカルなゴシックメタルを展開。ソプラノを使い分けるZala嬢の歌声は、オペラティックな優雅さで実力も充分、
バックのフルートの音色にもよくマッチしている。楽曲的にも、リズム面でのほどよいノリと疾走パートを含む緩急があり、
なによりチェロやビオラの音色がサウンドを優雅に盛り上げる。ヨーロピアンな翳りと美意識に包まれた逸品です。
ドラマティック度・8 優美度・8 女性Vo度・8 総合・8
Amazonで購入する


Rabies 「Капля в Бесконечность」
ロシアのシンフォニックメタル、ラビースの2012年作
メタリックなギターに壮麗なシンセアレンジを重ね、美しいソプラノ女性ヴォーカルにデスヴォイスが絡む、
ゴシックメタル寄りの耽美なシンフォニックメタルを聴かせる。楽曲は3〜4分前後と比較的シンプルで、
もう少し壮大な展開やフックのあるメロディが欲しい気もするが、なよやかなソプラノはなかなか魅力的で
ときにNightwish的でもある優雅な雰囲気は悪くない。全9曲32分という短さがやや物足りないですかね。
ドラマティック度・7 壮麗度・8 女性Vo度・8 総合・7.5

WITCHCRAFT 「The Voice from Inside...」
ロシアのゴシックメタル、ウィッチクラフトの2008年作
わりと正統派のギターにシンセを重ね、美しい女性ヴォーカルに男性ヴォーカルが絡む、
ほどよい激しさと耽美な味わいが同居したシンフォニック・ゴシックメタルを聴かせる。
叙情的なギターの旋律によるインストパートや、随所に緩急ある展開力も覗かせるなど、
単なるゴシックメタル以上のセンスも感じさせる。反面、メロディのフックや盛り上がりがもう少し欲しいか。
ドラマティック度・7 耽美度・8 女性Vo度・7 総合・7.5

UNCREATED LIGHT 「Чья вина… / Whom Should I Blame」
ウクライナのシンフォニックメタル、アンクリエイテッド・ライトの2009年作
オーケストラルなシンセアレンジにソプラノヴォーカルを乗せ、クラシカルなピアノやストリングスも加えた
美麗なシンフォニックメタルを展開。ときにネオクラシカル寄りのシンセとギターワークも覗かせて、
きらびやかなサウンドを描いてゆく。美女ヴォーカル、エレーナ嬢のフェミニンな歌声も素敵です。
ボーナスに英語バージョン4曲を含む、全68分の力作。バンドは本作ののち、Валькирия (Valkyria)に改名。
ドラマティック度・8 壮麗度・8 女性Vo度・8 総合・7.5

Hada De Beng 「El Canto De Las Hadas...」
メキシコのシンフォニックメタル、ハダ・デ・ベングの2009年作
女性Vo、女性シンセ奏者を含む6人編成で、美麗なシンセによるイントロから、ほどよく激しいドラムにギターを乗せ、
美しいソプラノ女性ヴォーカルに男性ダミ声が絡む、マイナー感のあるシンフォニック・ゴシックメタルを聴かせる。
演奏は野暮ったく音質はややラウドながら、クラシカルな素養を感じさせるシンセや、コケティッシュな歌声は魅力的で、
サウンドのB級臭さのなかでも艶めいた輝きを放っている。ミドルテンポを主体に、随所に疾走する激しさも覗かせて、
美しいソプラノヴォーカルとドタバタした展開のコントラストという点では、台湾のSeraphimあたりに通じる感触もある。
中盤には、朗々とした男性声をメインにしたナンバーもあるが、正直いらないですな。初々しい女性VoはGoodです。
ドラマティック度・7 壮麗度・7 女性Vo度・7 総合・7.5
Amazonで購入する

NOSTRA MORTE 「Un Cuento Antes De Morir」
メキシコのシンフォニック・ゴシックメタル、ノストラ・モルテの2009年作
男女Voを含む8人編成で、メタリックなギターに壮麗なシンセとストリングスを重ね、美しいソプラノ女性ヴォーカルに
男性ダミ声ヴォーカルが絡む、HAGGARDなどにも通じる美麗にしてクラシカルなゴシックメタルを構築する。
女性シンガーの伸びやかでオペラティックな歌唱力も含めて、美麗なシンフォニック性とクラシカルな優雅さが合わさり、
重厚にして耽美なドラマ性に包まれる。スペイン語による朗々とした男性Voがいくぶん暑苦しいのだが、
男女3人のVoが重なると、THERIONばりに壮大になる。次作「Sin Retorno」も同様に素晴らしいのでチェック。
シンフォニック度・9 壮麗度・9 女性Vo度・8 総合・8
Amazonで購入する


CARAVELLUS 「Lighthouse And Shed」
ブラジルのシンフォニックメタル、カラヴェラスの2007年作
きらびやかなシンセをギターに重ね、女性ヴォーカルを乗せて疾走する、優雅なメロスピサウンドで、
随所に聴かせる流麗なギタープレイとともに、いくぶんネオクラ風味も感じさせる作風。
疾走時のツーバスが硬質でやや耳障りなのが惜しいが、華麗なシンセアレンジや
なよやかな女性Voはなかなか魅力的。ちなみに次作では、男性Voのプログレメタル路線へと深化する。
メロディック度・7 疾走度・8 女性Vo度・8 総合・7.5
Amazonで購入する


6/16
梅雨のメタル(109)

Ardours 「Anatomy Of A Moment」
イタリアのゴシックメタル、アーダーズの2022年作
TRISTANIAの女性ヴォーカル、マリアンジェラ・デムルタスとマルチ・プレイヤー、クリス・ローレントのユニットで、
2019年作に続く2作目となる。デジタルなシンセにギターを重ね、艶めいた女性ヴォーカルを乗せた
NEMESEAなどにも通じるキャッチーで優雅なサウンド。美麗なシンセアレンジによるシンフォニック性と
美しい女性ヴォーカルが合わさった耳心地の良さで、楽曲も4〜5分前後とコンパクトで無駄がない。
タイトル曲でのモダンなエレクトロ感触など、前作に比べるとゴシックメタル的な耽美さは薄まっているが、
優雅な女性声シンフォニックメタルとしては、より多くのリスナーにアピールする出来だろう。
ドラマティック度・8 ゴシック度・7 女性Vo度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する

ELEINE 「Acoustic In Hell」
スウェーデンのシンフォニックメタル、エレインの2022年作
2015年にデビュー、本作は過去の楽曲をアコースティックにアレンジしたアルバムで、アコースティックギターに
妖艶な女性ヴォーカルを乗せ、デスヴォイスも絡む耽美なサウンドを聴かせる。ベースやドラムは使われているので、
リズム面にはわりとロック感触を残しており、シンセが入らないので、シンフォニックな壮麗さはないものの、
シンプルな音数の演奏をバックに、マデリン嬢の伸びやかな歌声の魅力が引き立っている。
デス声はなくても良かった気もするが、バンドの新たな側面も感じられる。全8曲、33分を収録。
ドラマティック度・7 優雅度・7 女性Vo度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する


KING WOMAN 「CELESTIAL BLUES」
アメリカのドゥームメタル、キング・ウーマンの2021年作
イラン系の女性シンガー、クリス・エスファンディアリをフロントに、2015年にデビュー、本作は2作目となる。
ほどよくヘヴィなギターにたゆたうような女性ヴォーカルを乗せ、アンニュイな浮遊感に包まれたサウンドを描く。
フューネラルというほどではないダークさとミステリアスな空気感に、スラッジ的でもあるザラついた重たさと、
トライバルな神秘性が同居した味わい。ポストロック風味の空間性も含め、楽曲性というよりは雰囲気モノに近いので、
好みは分かれるかもしれないが、曲によってはアグレッシブな展開も覗かせるという、わりと振り幅の大きな異色作だ。
ドラマティック度・7 重厚度・8 女性Vo度・7 総合・7.5
Amazonで購入する


DEREK SHERINIAN 「VORTEX」
アメリカのシンセ奏者、デレク・シェリニアンの2022年作
サイモン・フィリップスがドラムで全面参加、ギターは、スティーヴ・スティーヴンス、スティーヴ・ルカサー、ヌーノ・ベッテンコート、
マイケル・シェンカー、ザック・ワイルド、マイク・スターン、ロン・サール、ベースには、アーネスト・ティブス、トニー・フランクリン、
ジェフ・バーリン、リック・フィエラブラッチ、といったビッグネームが参加。軽快なリズムにきらびやかなシンセと巧みなギターを重ね、
フュージョンプログレとハードロックが融合したというべきカラフルなサウンドを聴かせる。大人のジャズタッチのナンバーでは、
ジェフ・バーリンのベースプレイが素晴らしく、マイケル・シェンカー&ザック・ワイルドの豪華ギターのハードロックナンバーも感涙もの。
ラストの11分の大曲では、テレミン奏者も加えて、緩急あるプログレッシブなサウンドを構築。コンポーザーとしてのデレクの力量も見事です。
ドラマティック度・7 テクニカル度・9 豪華メンツ度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する

Soulsplitter 「Salutogenesis」
ドイツのプログレメタル、ソウルスプリッターの2019年作
艶やかなヴァイオリンの音色で幕を開け、語りを乗せたシアトリカルな雰囲気に包まれて、
クラシカルなピアノやアコースティックギター、オルガンを含むシンセを加えた展開力のあるサウンドに、
ときに女性ヴォーカルの歌声も重なる。ゆったりとした叙情パートから、硬質なギターにダミ声を乗せた
テクニカルな可変性と、先の読めないアヴァンギャルドなセンスはなかなか個性的で、Pain Of Salvation「Be」などにも通じる、
ディープで内面的な世界観を描いてゆく。美しいヴァイオリンにピアノが絡むシンフォプログレ的な優雅さから、メタリックなギターを加えた
スタイリッシュな構築をみせる、10分を超える大曲なども白眉。モダンでエキセントリックなProgMetalが楽しめる力作だ。
ドラマティック度・8 テクニカル度・7 構築センス度・8 総合・8

DELFINIA 「DEEP ELEVATION」
ウクライナのメロディックメタル、デルフィニアの2019年作
元W. Angels CONQUEST、SUNRISEのシンガー、Laarsこと、コンスタンティン・ナウメンコ率いるユニットで、
SUNRISEの女性シンガー、ベースをはじめ、PATHFINDERのギターや、ローランド・グラポウ(Masterplan)、
オラフ・トーセン(LABYRINTH/VISION DIVINE)、アルド・ロノビエ(SECRET SPHERE)、Van Cantoのヴォイスギター、
TWILIGHT FORCEのギターらがゲスト参加。美麗なイントロから、メタリックなギターにきらびやかなシンセ、伸びやかなヴォーカルを乗せ、
SONATA ARCTICAなどにも通じるキャッチーなメロパワを聴かせる。楽曲はミドルテンポが主体で、これといって新鮮味はないのだが
メロディアスな味わいは万人受けするだろう。アルバム後半の叙情的なバラードなどもよい味わいです。
メロディック度・8 疾走度・6 新鮮度・7 総合・7.5

MASQUERAGE 「HANGMAN'S REVELATIONS」
フィンランドのメタルバンド、マスカレージの2018年作
2007年にデビューし、5作目となる。正統派のギターにシンセ重ね、ハイトーンヴォーカルとともに疾走する
キャッチーなメロパワサウンド。EDGUYなどに通じるオールドなジャーマンメタル風味の聴き心地で、
美麗なシンセの味付けに、ほどよいクサメロ感も良い感じだ。ヴォーカルのハイトーンはマイケル・キスク的で、
ミドルテンポのキャッチーなナンバーでは、GAMMA RAYっぽいという、ジャーマン好きにはわりとたまらない。
全体的にヘヴィさは控えめでライトな聴き心地なので、メロパワ初心者にも楽しめるだろう。掘り出し物的好作品。
メロディック度・8 疾走度・7 心はジャーマン度・8 総合・8
Amazonで購入する


Spellwitch 「The Witching Hour」
フィンランドのメロディックメタル、スペルウィッチの2018年作
MASQUERAGEのVo&GとBによるユニットで、オールドなギターにハイトーンヴォーカルを乗せ
ウェットな叙情性に包まれた、STORMWITCHなど、往年のジャーマンメタルを受け継いだサウンド。
Vo、G、Dr、Keyまでこなす、キンモ・ペラマキのマルチプレイヤーぶりは、ATTACKのッキー・ヴァン・ヘルデンばりで、
きっとジャーマンメタルを聴きまくって育った世代なのだろう。HELLOWEENの名曲を思わせるイントロもあったり、
6曲目などはいかにもSTORMWITCH風でニンマリ。全32分というのはやや物足りないが、愛すべき好作品です。
メロディック度・8 疾走度・6 心はジャーマン度・9 総合・8
Amazonで購入する


RUNELORD 「The Battle For Greatne」
スウェーデンのメタルバンド、ルネロードの2018年作
正統派のギターにパワフルなヴォーカルを乗せた、80年代ルーツの勇壮なメタルサウンドを聴かせる。
甘すぎない叙情性とエピックな世界観は、MANOWARに通じるところもあるが、こちらはいくぶんマイナーな
B級メロパワとしての味わいも残している。キャッチーなクサメロ感はさほどなく、ミドルテンポを主体にした
あくまで正統派メタルとしてのどっしりとした作風。派手さはないが、勇壮なメタルサウンドが味わえる強力作。
ドラマティック度・7 疾走度・6 正統派度・8 総合・7.5
Amazonで購入する



Fire Strike 「Slaves of Fate」
ブラジルのメタルバンド、ファイアー・ストライクの2017年作
2014年にデビュー、本作はフルアルバムとしての1作目で、いかにもオールドなツインギターに
ハスキーな女性ヴォーカルを乗せ、Crystal Viperなどにも通じる正統派の女性声メタルを聴かせる。
疾走感のあるナンバーからほどよくキャッチーなミドルテンポまで、80〜90年代ルーツのトラディショナルな味わいに包まれ
紅一点、Aline嬢のパワフル過ぎない歌声も、この激しすぎないメタルサウンドによくマッチしている。
これという新鮮味はないものの、IRON MAIDEN風のラスト曲まで、オールドメタラーは心地よく楽しめる好作だ。
ドラマティック度・7 疾走度・7 正統派度・8 総合・7.5
Amazonで購入する


In the Woods 「A Return to the Isle of Men」
ノルウェーのゴシックメタル、イン・ザ・ウッズの1996年
デビュー前の1993年、カセットでリリースされたデモ音源のCD化で、シンセによる美しいイントロから
ノイジーなギターに絶叫ヴォーカルを乗せて、BURZUMを思わせるプリミティブなブラックメタルを展開。
スローパートからほどよい疾走感へと、緩急ある展開には、プログレッシブな味わいもあり、
10分を超える大曲もあって、この時点でもすでにバンドとしての独自のセンスを感じさせる。
ヒステリックなヴォーカルは耳障りで、音質もラウドではあるが、ドゥームメタル的な重厚さと、
神秘的なブラックメタルを同居させた作風は、いうなれば原初の迫力を有している。
ドラマティック度・7 わりと激しさ度・8 ミステリアス度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する

The Equinox Ov The Gods 「Fruits And Flowers Of The Spectral Garden」
スウェーデンのゴシックメタル、イクイノクス・オヴ・ザ・ゴッズの1997年作
1996年にデビュー、本作は2作目で、シンセによるイントロから、ほどよくヘヴィなギターとクラシカルなシンセに、
デスヴォイスを乗せて、初期のTHERIONTIAMATあたりにも通じる、優雅なゴシックメタルを聴かせる。
楽曲はスロー過ぎないほどよいノリがあって、耽美でドゥーミィな雰囲気ながらもわりと聴きやすい。
シンフォニックなシンセアレンジに、曲によっては女性ヴォーカルやサックスの音色も加わるなど、優美な叙情とともに
全体的にもダークになり過ぎない作風で、後半には疾走感のあるナンバーなどもアクセントになっている。
ドラマティック度・7 ゴシック度・8 耽美度・8 総合・7.5


5/26
6/17錦糸町でX-JAPANコピバンのライブやります!(97)
詳しくはこちら

KREATOR 「Hate Uber Aless」
ドイツのスラッシュメタル、クリエイターの2022年作
1985年デビュー、ジャーマンスラッシュを代表するベテランバンド、本作は5年ぶりとなる15作目で、
元Dragonforceのフレデリクが新たにベースで加入している。オーケストレーションを含む叙情的なイントロから、
ソリッドなギターリフに吐き捨てヴォーカルを乗せて激しく疾走する、クリエイター・サウンドが炸裂する。
随所に甘すぎないメロディを奏でるギターも含めて、本作はこれまで以上に叙情的なパートも多く、
ミドルやスローテンポでの聴きやすさもあって、スラッシュメタル初心者にも楽しめる内容だろう。
重厚なラストナンバーもなかなか魅力的。限定盤のDisc2には、2021年のライブを全12曲収録。
ドラマティック度・8 疾走度・7 スラッシュ度・7 総合・8 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する

Visions of Atlantis 「Pirates」
オーストリアのシンフォニックメタル、ヴィジョンズ・オブ・アトランティスの2022年作
NAPALMレーベルのCEOでもあるドラムのトーマス・カッサーを中心に、2002年にデビュー、
8作目の本作は、タイトル通り、海賊をテーマにしたコンセプト的な作品で、壮麗なシンセアレンジに、
美しい女性ヴォーカルに男性ヴォーカルが絡む、華麗なシンフォニックメタルを展開する。
紅一点、クレモンティーヌ嬢の歌声は、ときになよやかなソプラノを使いながらサウンドを彩り、
オーケストラルなアレンジやクワイアとともに、Nightwishを彷彿とさせる部分もしばしば。
キャリア20年を誇るバンドらしいサウンドのスケール感で、全58分の濃密な力作である。
シンフォニック度・・8 壮麗度・9 女性Vo度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する

Immortal Guardian 「Psychosomatic」
アメリカのメロディックメタル、イモータル・ガーディアンの2021年作
G&Keyのガブリエル・ガーディアン率いるバンドで、2018年にデビューし、本作は2作目となる。
東洋的なギターの旋律にシンセを重ね、ハイトーンヴォーカルを乗せた知的なサウンドは、Conseptionなどにも通じる味わいで、
ほどよくモダンなヘヴィネスと、テクニカルな展開力も同居する。流麗なギタープレイときらびやかなシンセワークも随所に光っていて、
疾走感のあるメロパワ系のナンバーや、元White EmpressHelion Primeの女性シンガーをゲストに迎えた、
男女Voのドラマティックなナンバーなども含めて、全体的にも華麗で濃密な聴き心地で楽しめます。
ドラマティック度・8 疾走度・7 濃密度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する


Majestica 「A Christmas Carol」
スウェーデンのメロディックメタル、マジェスティカの2020年作
SABATONのギタリストでもあるトミー・ヨハンソンを中心にした、Rein Xeedが発展したバンドで、2019年にデビュー、
2作目となる本作はタイトル通り、ディケンズの「クリスマス・キャロル」をコンセプトにしていて、オーケストラルなイントロから、
きらきらとしたシンセにハイトーンヴォーカルを乗せて疾走する、華麗なメロスピサウンドを展開。
随所にクリスマスソングのメロディを引用しながら、同郷の先輩であるSTRATOVARIUSを思わせる
北欧らしい透明感のあるキャッチーな聴き心地。シンフォニックなメタルオペラ的にも楽しめる好作品だ。
ドラマティック度・8 疾走度・7 華麗度・8 総合・8
Amazonで購入する


Besvarjelsen 「Atlas」
スウェーデンのドゥームメタル、ベスヴァーイェルセンの2022年作
2018年にデビューし、2作目となる。ほどよくヘヴィなツインギターに妖しい女性ヴォーカルを乗せ、
Black Sabbathルーツの、ヴィンテージな味わいのサイケ・ドゥームメタルを聴かせる。
紅一点、Lea嬢の歌声は、アンニュイな浮遊感を感じさせ、わりと重厚なバックとのコントラストになっており、
曲によってはツインギターが叙情的な旋律も奏で、ドラマティックな世界観を描いている。新鮮さはさほどないが、
歌い上げる女性ヴォーカルと確かな演奏力で、本格派の魔女系ドゥームメタルが楽しめる強力作です。
ドラマティック度・7 重厚度・8 女性Vo度・7 総合・8
Amazonで購入する


Octopus 「Supernatural Alliance」
アメリカのストーナー・ハードロック、オクトパスの2018年作
アナログ感たっぷりのギターにハスキーな女性ヴォーカルを乗せて、ほどよくノリのあるストーナーロックを聴かせる。
70年代ルーツのブルージーなロック感触に、オルガンを含むシンセが鳴り響き、ヴィンテージな味わいと
いくぶんサイケな浮遊感も覗かせる。曲によっては、PURSONなどに通じる魔女系ロックの感触もあって、
女性声ドゥームロックのリスナーにも楽しめるだろう。楽曲は3〜5分前後とわりとシンプルなので、
もう少しディープな濃密さがあってもよいとは思うが、女性声のヴィンテージロック好きはどうぞ。
ドラマティック度・7 ヴィンテージ度・8 女性Vo度・7 総合・7.5
Amazonで購入する


Enslaved 「Roadburn Live」
ノルウェーのプログレッシブ・ブラックメタル、エンスレイヴドのライブ。2017年作
2015年オランダでのライブを収録、同年発表のアルバム「In Times」からのナンバーに過去作からも演奏、
ゲストのシンセを含む5人編成のステージで、いくぶん土着的な感触のギターリフに、ダミ声&ノーマルヴォーカルを乗せて、
ミドルテンポを主体にした激しすぎないサウンドを描く。スタジオアルバムに比べるとプログレッシブな感触は薄いのだが、
ときおりオルガンを含むシンセを加えた優雅な叙情や、トレモロのギターを含むブラックメタルとしての感触も覗かせる。
9分、10分の大曲ではもう少し盛り上がりが欲しい気もするが、この硬派な作風こそが彼らのスタイルなのだろう。
ラストは何故かツェッペリンの「移民の歌」で、これがペイガンブラックな味わいになっていてなかなか格好良い。
ドラマティック度・7 暴虐度・6 ライブ演奏・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する

Enslaved 「Utgard」
ノルウェーのプログレッシブ・ブラックメタル、エンスレイヴドの2020年作
90年代初頭から活動する、ヴァイキング・ブラックメタルの元祖で、近年はプログレッシブな指向を強めている。
北欧神話の巨人族の都市をタイトルにした本作は、神秘的な詠唱と、アコースティックギターのつまびきから、
重厚なツインギターに朗々としたヴォーカルを乗せて、涼やかな空気に包まれた独自のサウンドを展開。
リズムチェンジを含む知的でな展開力に、シンセによるアレンジも加わりつつ、甘すぎない叙情性とともに
ときにポストプログレ的な優雅さも覗かせる。プログレッシブ・ブラックとしては、SOLEFALDにも通じる聴き心地で、
ブラックメタルとしての激しさもいくぶん残しつつ、よりスタイリッシュな構築性が光る内容になっている。
ドラマティック度・8 暴虐度・6 壮大度・8 総合・8
Amazonで購入する

EREB ALTOR 「VARGTIMMAN」
スウェーデンのペイガンメタル、エレブ・アルターの2022年作
2008年にデビュー、本作は9作目となる。土着的なギターの旋律に朗々としたヴォーカルを乗せ、北欧神話をテーマに
涼やかな空気に包まれた重厚なペイガンメタルを聴かせる。叙情的なギターの旋律にうっすらとしたシンセを重ねた、
いつになくメロディックな感触に、ダミ声ヴォーカルも加えて、ときにブラックメタル寄りの激しい疾走パートも覗かせる。
エピックな勇壮さと、ダークな神秘性に包まれたサウンドは迫力充分で、どっしりとしたベテランらしい説得力をかもしだす。
武骨で不愛想なナンバーも本格派の証だろう。暗黒のヴァイキングメタル、ペイガンブラックメタルとしても見事な力作だ。
ドラマティック度・8 ペイガン度・8 重厚度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する


MANEGARM 「Ynglingaattens Ode」
スウェーデンのヴァイキングメタル、モーネガルムの2022年作
1998年デビュー、本作は10作目となる。土着的なギターの旋律にダミ声ヴォーカルを乗せて疾走する、
迫力たっぷりのペイガンメタルで、トレモロを含むメロディックなギターや母国語のノーマルヴォーカルとともに、
涼やかな叙情性に包まれながら、ときにブラストビートを含むブラックメタル的な激しさも覗かせつつ、
10分を超える大曲もドラマティックに構築する。ヴァイオリンが鳴り響くフォーキーな感触や、
叙情的なギターメロディが随所にサウンドを彩り、女性ヴォーカルによる優雅なナンバーもアクセントになっている。
キャリアのあるバンドらしい堂々たる音の説得力が、神秘的な世界観を描き出す。これぞペイガンな傑作である。
ドラマティック度・8 ペイガン度・9 勇壮度・8 総合・8.5 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する

Verikalpa「Tunturihauta」
フィンランドのフォーク・ブラックメタル、ヴェリカルパの2022年作
2018年にデビューし、3作目となる。のっけからトレモロのギターにダミ声ヴォーカルを乗せて激しく疾走しつつ、
アコーディオンの音色が優雅なメロディを奏でる、初期のFinntrollをブラックメタル寄りにしたようなスタイル。
迫力のある母国語の吐き捨てヴォーカルや朗々としたコーラスなど、Korpiklaaniなどに比べると、より勇壮なイメージで、
軽快なポルカのフォーキーな叙情性にエピックなヴァイキング・ブラックメタルが合体したというような聴き心地である。
軽すぎない本格派のサウンドで、コルピだとキャッチーすぎるという激しいフォークメタルが好きな方はチェックです。
ドラマティック度・8 疾走度・8 フォーキー度・8 総合・8
Amazonで購入する


Folkearth 「A Nordic Poem」
多国籍のフォークメタルプロジェクト、フォークアースの2004年作
Yggdrasilのマグナス・ウォルハートを中心に、スウェーデン、ギリシャ、リトアニア、イギリス、スイス、オートスリアと
世界各国からメンバーが参加、バグパイプが鳴り響くイントロから、クサメロなギターにシンフォニックなシンセ、
ダミ声ヴォーカルを乗せて疾走する、幻想的なフォーク・ブラックメタルを聴かせる。ホイッスルやフィドル、
パイプの音色がフォーキーな旋律を奏でつつ、ほどよい激しさと疾走感に美麗なシンセアレンジ、ときに女性コーラスも加わって
ややこみりぎみの音質も幻想的な味わいになっている。優雅に楽しめる記念すべき1作目である。
幻想度・8 疾走度・8 フォーキー度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら

Folkearth「Songs of Yore」
多国籍のフォークメタルプロジェクト、フォークアースの2008年作
本作はアコースティックアルバムで、やわらかなフルート、ハープの音色に女性ヴォーカルを乗せたイントロ曲から
優雅な美しさに包まれる。アコースティックギターのつまびきにアコーディオンの奏でるフォーキーなメロディ、
ソロでも活躍するHildr Valkyrie嬢の妖しい歌声とともに、神秘的なネオフォークサウンドが広がってゆく。
男性声によるナンバーもあるが、勇壮なメタル感触はなく、素朴な牧歌性に包まれていて、のんびりと味わえる。
艶やかなヴァイオリンや物悲しいチェロが鳴り響き、美しい女性声でしっとりと聴かせる
アコースティック度・9 メタル度・1 優雅で牧歌的度・8 総合・7.5
Amazonで購入する


Barka Vall 「Skogsfelot」
フィンランドのフォークロック、バルカ・ヴァルの2000年作
フィドルが鳴り響き、ハード過ぎないギターに母国語による2人の女性ヴォーカルの歌声を乗せて
オルガンなどのシンセとともに、ペイガンな味わいの土着的なフォークロックを聴かせる。
メタル的な激しさはないので、あくまで優雅な聴き心地で、北欧らしいトラッドメロディと
重すぎないロック感触が融合されている。男性声による勇壮なナンバーもアクセントになっていて、
キュートな女性声トラッドロックをメインに、ほどよいハードさも覗かせてフォークメタル好きにも楽しめる。
ドラマティック度・7 トラッ度・8 女性Vo度・8 総合・7.5
Amazonで購入する




5/12
5.21は錦糸町でJCライブ!!詳しくはこちら(83)

Great Master 「Skull and Bones」
イタリアのメロディックメタル、グレート・マスターの2019年作
2009年にデビューし、4作目。ツインギターにシンセを含む6人編成で、重すぎないギターに朗々としたヴォーカルを乗せ
適度にフォーキーな旋律も含んだ、RUNNING WILDなどを思わせる勇壮な雰囲気の正統派メタルを聴かせる。
ジャケやタイトルから海賊船をテーマにしているようで、ミドルテンポが主体ながらも、優美なシンセアレンジとともに
重厚でドラマティックな世界観を描いている。マイナー臭かった1作目に比べると、どっしりとした力強さが加わり、
疾走ナンバーではパワフルな演奏と歌唱の実力も充分。今後はさらに楽曲に磨きをかけていって欲しい。
ドラマティック度・8 疾走度・7 勇壮度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する


Season of Dreams 「My Shelter」
フランス、スウェーデン混成のメタルバンド、シーズン・オブ・ドリームスの2020年作
叙情的なギターにシンセを重ね、パワフルなハイトーンヴォーカルを乗せて、KAMELOTなどにも通じる
ドラマティックなシンフォニックメタルを聴かせる。コンセプト的なストーリー性を感じさせる流れなどは日本人好みで、
ファビオ・リオーネばりに歌い上げるヴォーカルとともに、RHPSODY OF FIREのような壮麗な味わいもある。
全体的には、ほどよくメロディックで重厚なサウンドであるが、楽曲単位でのインパクトはもうひとつというところ。
ドラマティック度・8 疾走度・7 壮麗度・8 総合・7.5
Amazonで購入する



Legionnaire 「Dawn Of Genesis」
フィンランドのメタルバンド、リージョンナーレの2017年作
2015年にデビューし、2作目となる。ジャケからしてマイナーなエピックメタル感触を漂わせているが
サウンドもオールドなツインギターに野太いヴォーカルを乗せて疾走する、古き良きスピードメタル。
楽曲は3〜4分前後でいたってシンプル、初期のENFORCERなどよりもさらにストレートで、
重すぎないカッチリしすぎない、適度なスカスカ感も含めて、80〜90年代のB級ヨーロピアンメタルらしい
音の粗さもまた愛好家ならたまらない作風だ。全30分というのも潔ぎ良すぎる短さですね。
ドラマティック度・7 疾走度・7 オールドメタル度・9 総合・7.5
Amazonで購入する


Majesty 「Hellforces」
ドイツのメロディックメタル、マジェスティの2006年作
2000年にデビューし、4作目となる。正統派のギターにパワフルなヴォーカルを乗せた、MANOWARを思わせる
勇壮な正統派メタルを聴かせる。どっしりとしたスローテンポやミドルテンポのナンバーを主体にしつつ、
ジャーマンメタルらしい疾走ナンバーもあり、ほどよくキャッチーなメロディアス性をオールドなメタルに織り込んだ、
80〜90年代的なサウンドは、テクニカルやモダンなスタイリッシュ性の真逆をゆく、ダサ恰好良さに包まれている。
楽曲も3〜5分前後といたってシンプルで、エピックなバラードナンバーから疾走メロスピまで、バランスのとれた内容だ。
ドラマティック度・7 疾走度・7 正統派度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する


Adagio 「Romantic Serenades」
ブラジルのゴシックメタル、アダージョの1999年作
叙情的なギターの旋律に、ストリングスのような艶やかなシンセを重ね、低音デスヴォイスとともに
初期MY DYING BRIDEなどに通じる、メランコリックなゴシック・ドゥームメタルを聴かせる。
ゆったりとしたナンバーを主体にしつつ、ほどよいミドルテンポのノリもあり、メロウなギターのフレーズと
美しいシンセアレンジが優雅な叙情性を描き、ときに儚げな女性ヴォーカルも加わったいかにも耽美な世界観は、
これぞゴシックメタルという雰囲気だ。バンドは2001年に、いくぶンアグレッシブになった2作目を残して消える。
ドラマティック度・8 ゴシック度・8 耽美度・9 総合・8

Autumn Tears 「Absolution」
アメリカのゴシックアンビエント、オータム・ティアーズの1999年作
クラシカルなシンセの重ねに、艶めいた女性ヴォーカルを乗せて耽美な世界観を描く。
バックはシンセとピアノのみであるが、3曲目はドラムによるリズムと男性声も加わって、
いくぶんゴシックロック的にもなる。3曲入りのEPなので、物足りなさはあるが、
しっとりと夢見心地のサウンドで、美しくも妖しい耽美な幻想に耽溺できる。
クラシカル度・8 ゴシック度・8 耽美度・9 総合・7.5 過去作のレビューはこちら

Empyrium 「Uber Den Sternen」
ドイツのゴシック・フォークメタル、エムピリウムの2021年作
1996年にデビュー、7年ぶりとなる6作目。3作目以降はメタル色の薄いペイガン・フォーク路線となっていたが、
本作もアコースティックギターのつまびきから、チェロやヴァイオリンの物悲しい音色や優美なフルートにシンセを重ね、
ジェントルなヴォーカルとともに、幻想的なフォークロックを聴かせる。エレキギターやダミ声ヴォーカルも加わると、
初期のようなフォーク・ゴシックメタルの感触も覗かせて、ここ数作ではメリハリのあるプログレッシブな展開が楽しめる。
叙情的なアコースティックパートと、ほどよいメタル感とがドラマティックな多重構造となっていて、振り幅のある構成は
OPETHのフォーク版という感じもあり、ラストは10分の大曲で、神秘的な空気と重厚さが同居した見事なサウンドを描く。
ドラマティック度・8 メタル度・7 幻想フォーク度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する

Darkwoods My Betrothed 「Angel Of Carnage Unleashed」
フィンランドのブラックメタル、ダークウッズ・マイ・ビトローズドの2021年作
Nightwishのツォーマス・ホロパイネンが在籍していたバンドで、1995年にデビュー、1998年までに3作を残して解散するも
ここにきて23年ぶりに復活作が完成。ラウドなギターにダミ声ヴォーカルを乗せて、激しくブラスト疾走するファストなスタイルで、
随所に優美なシンセアレンジも加えつつ、プリミティブな迫力をしっかりと残した、王道のブラックメタルを聴かせる。
シンフォニックな感触は、Dimmu Borgirを思わせるところもあるが、こちらはより硬派な作風で、メロディックなフックは控えめ。
ペイガンメタル寄りのナンバーでは土着的な叙情性も覗かせつつ、寒々しくダークな空気に包まれたミステリアスなサウンドだ。
ドラマティック度・7 暴虐度・8 プリミティブ度・8 総合・8
Amazonで購入する


HELHEIM 「WoduridaR」
ノルウェーのペイガン・ブラックメタル、ヘルヘイムの2021年作
1995年デビューのベテランで、本作は11作目となる。不穏なギターの旋律とともに暴虐にブラスト疾走、
吐き捨てるダミ声ヴォーカルとともに、ブラッケンな気配に包まれたサウンドを展開。随所にリズムチェンジと
ノーマルヴォーカルを乗せ、トレモロのギターや涼やかなシンセアレンジも加えた甘すぎない叙情も覗かせつつ、
90年代ノルウェイジャン・ブラックメタルを彷彿とさせる疾走ナンバーなども含め、あくまで硬派な聴き心地。
ラストは12分の大曲で、ゆったりとしたパートを軸にじわじわとドラマティックに構築する。これぞ大人のペイガンメタル。
ドラマティック度・8 暴虐度・7 ペイガン度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する


Havamal 「The Shadow Chapter」
スウェーデンのペイガン・ブラックメタル、ハヴァマルの2021年
2019年にデビューし、2作目となる。シンフォニックなシンセアレンジをギターに重ね、デスヴォイス寄りのヴォーカルを乗せて、
激しく疾走するシンフォニック・ブラックメタル。ギターのリフにはメロデス的な感触があり、クワイアを含む美麗なシンセに、
随所にメロデッィクなギターフレーズも覗かせて、暴虐さよりも叙情美めの作風で、いわばペイガンな北欧メロデスという作風だ。
ときおりブラスト疾走も現れるが、全体的にはミドルテンポのパートも多く、激しすぎるシンフォブラックが苦手な方にも楽しめるだろう。
勇壮にして壮麗なシンセアレンジは、TURISASなどにも通じるところもある。北欧神話をテーマにした、きらびやかな高品質作である。
ドラマティック度・8 暴虐度・7 ペイガン度・7 総合・8
Amazonで購入する


Helsott 「Will & The Witch」
アメリカのペイガンメタル、ヘルソットの2022年作
2014年にデビューし、3作目となる。ジャケやタイトルからアメリカ開拓時代の魔女狩りをテーマにしたコンセプトなのだろう、
オールドなギターリフにダミ声ヴォーカルを乗せて疾走するスラッシュメタル的な感触に、随所にシンセアレンジも加えた、
ペイガン・メロデスサウンド。ヴァイオリンが鳴り響くとフォーキッシュな雰囲気も覗かせるが、バンジョーの音色が牧歌的で、
むしろオールドなアメリカンの空気に包まれる。激しすぎない疾走感に、メロディックなギターフレーズを含んだ味わいは
普通にメロデスとしても楽しめる。3〜4分前後の小曲が主体で、9分の大曲もあるが、これという盛り上がりもないので、
全体的にはいまひとつ高揚感に欠けるか。フォークメタル的な土着性をもっと強めても良い気もするが、さてどうなる。
ドラマティック度・7 メロデス度・7 フォーキー度・7 総合・7.5 
Amazonで購入する

Untamed Land 「Like Creatures Seeking Their Own Forms」
アメリカのブラックメタル、アンタームド・ランドの2021年作
Emerald Rageのパトリック・ケーンによるソロプロジェクトで、自主デビューの2018年作に続く2作目となる。
優美なシンセのイントロから、叙情的なギターにダミ声ヴォーカルを乗せて、ゆったりと幻想的なサウンドを展開。
スローテンポを主体に、トレモロのギターやバンジョーなどのアコースティックパートも含んだ牧歌的な叙情性と
シンフォニックなシンセアレンジ、ときにトランペットなども加えた、ドラマティックなエピック・ブラックを聴かせる。
14分、15分という大曲をメインに、随所にブラスト疾走も現れつつ、全体的には激しさよりは神秘的な幻想性に
包まれたサウンドで、カスカディアンブラックなどのリスナーにも楽しめるだろう。幻想ポストブラックの好作品。
ドラマティック度・8 暴虐度・7 幻想度・8 総合・7.5
Amazonで購入する

Walsung 「Perpetual Blood」
ブラジルのペイガン・ブラックメタル、ワルサングの2016年作
2人組のユニットで、叙情的なギターにうっすらとしたシンセを重ね、ダミ声ヴォーカルを乗せた
勇壮なヴァイキング・ブラックメタルを聴かせる。ミドルテンポのナンバーからブラスト疾走する
ブラックメタルパートまで、ほどよくメロデッィクなギターフレーズにシンセアレンジも加えて
適度な激しさと叙情性が同居したサウンドが味わえる。辺境臭さもさほどないので、案外聴きやすい内容です。
ドラマティック度・7 暴虐度・7 勇壮度・8 総合・7.5

Ithilien 「From Ashes to Frozen Land」
ベルギーのフォーク・デスメタル、エティーリーエンの2013年作
バグパイプ奏者を含む5人編成で、バグパイプの音色によるイントロから、メロタリックなギターにデスヴォイスを乗せて疾走、
メロデス風味のほどよい叙情性とブラストを含む激しさが合わさりつつ、随所にフォーキーな旋律も覗かせる。
きらびやかなシンセアレンジも加えつつ、適度な土着性とスタイリッシュな感触が同居したフォーク・メロデスという作風で、
わりとクサメロ感もあるので激しくとも聴きやすい。疾走ナンバーを主体にしつつ、いかにもペイガンメタルらしい三連リズムの
勇壮なナンバーなどもなかなか良いですね。バグパイプの牧歌的な音色とアグレッシブな激しさのコントラストで楽しめる好作デス。
ドラマティック度・7 疾走度・8 フォーキー度・7 総合・7.5
Amazonで購入する



4/29
ジュリアンついにデビューです!(69)

Julien Concasser 「THE DAY OF RECKONING」
日本のロックバンド、ジュリアン・コンカッセの2023年作
埼玉を拠点とする新鋭バンド。ツインギターにシンセを含む編成で、叙情的なギターのイントロから、優美なシンセアレンジを重ね、
ほどよいハードさとキャッチーなメロディ、表現力あるヴォーカルを乗せて、スケール感のあるロックサウンドを構築する。
メッセージ性を感じさせる日本語歌詞と甘く伸びやかな歌声、随所にリズムチェンジを含む展開力のある楽曲には、
ハードロック/メタル的な疾走感や、V系ロックのきらびやかさも覗かせ、まさにハイブリッドな邦ロックが味わえる。
ドラムを含む音質面での迫力はやや物足りないものの、楽曲ごとのメロディのフックやドラマティックな世界観は充分に魅力的。
モダン過ぎず、激しすぎず、という絶妙の路線は、ロックやHRの枠を超えて、多くのリスナーが楽しめる聴きやすさがある。
ドラマティック度・8 メロディック度・8 きらびやか度・8 総合・8
Amazonで購入する 配信での購入はこちら

ZIGGY 「SDR」
日本のベテランロックバンド、ジギーの2021年作
国内最高のR&Rバンド、2017年以降は新たなメンバーでコンスタントに活動を続け、本作は通算18作目となる。
ハードなイントロナンバーから始まりつつ、深みを増した森重樹一のヴォーカルとともに、キャッチーなメロディの
ノリのよいロックサウンドを展開。ほどよいギターのハードさと随所に激しいドラムを聴かせながら、哀愁の叙情に
爽快なフックが同居して、どの曲も日本語歌詞による知的なロマンを歌い上げる、「森重節」は健在である。
いかにもオールドな味わいのロックナンバーや、ポップなライトナンバーも、レイドバックしたような渋さとともに、
アルバムに彩りを添えている。勢いの良かった前作から、色気ある大人のロック感を強めた強力作ですね。
メロディック度・8 キャッチー度・8 ジギー度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する

LOVEBITES 「GLORY, GLORY, TO THE WORLD」
日本のガールズメタル、ラヴバイツの4曲入りEP。2021年作
壮麗なイントロから始まる1曲目は、メロディックなツインギターとともに疾走するきらびやかなスピードメタルで、
サビでのクラシカルなメロディを歌い上げるAsamiの歌声が映える。2曲目は、オールドなスタイルのミドルテンポながら
キャッチーとアグレッシブが同居したノリの良さが楽しめる。3曲目は、スラッシーな疾走感と甘すぎないメロディが同居して、
巧みなギターソロも聴きどころ。4曲目は北欧メロスピ的な美麗なアレンジで、サビでの爽快な歌メロが素敵です。
コロナ禍の世界を鼓舞するような、パワフルな4曲入り。いずれもアルバム未収録なのでファンはマストです。
メロディック度・8 疾走度・8 女性Vo度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する

LOVEBITES 「HEAVY METAL NEVER DIES - LIVE IN TOKYO 202」
日本のガールズメタル、ラヴバイツのライブ作品。2021年作
ベースのMihoの最後のステージとなった、2021年の東京公演を2CDに収録。DVDやBru-ray盤もあり。
イントロに続き、3rd収録「When Destinies Align」のきらびやかな疾走感で幕を開け、メイデンライクな「The Crusade」、
オールドでスラッシーな「Shadowmaker」、アニメの主題歌にもなった「Winds Of Transylvania」など、新旧織り交ぜたセットで
随所に巧みなツインリードも覗かせつつ、女性メタルバンドとは思えぬ演奏力の高さで、楽曲を迫力たっぷりに再現する。
後半は、壮麗な疾走ナンバー「Swan Song」から、Asamiの感涙のMC、EP収録の「Glory To The World」と聴き手もウルウルです。
激しくも美しい「Holy War」「Thunder Vengeance」から、ラストの「Under The Red Sky」まで、MCを含め116分の必聴ライブ作品。
ライブ演奏度・8 疾走度・9 女性Vo度・8 総合・8.5
Amazonで購入する ブルーレイ盤はこちら

LOVEBITES 「Judgement Day」
日本のガールズメタル、ラヴバイツの2023年作
2017年にデビュー、いまや日本のみならず世界のガールズメタルのトップに躍り出たこのバンド。本作は4作目で、
脱退したベースのMihoに替わり、新たにFamiが加わってのアルバム。ツインギターのメタリックなリフととも疾走し、
Asamiの伸びやかなヴォーカルを乗せたアグレッシブなナンバーで幕を開ける。随所に巧みなギタープレイを盛り込んだ
正統派のメロパワ感触に、きらびやかなアレンジ加えたスタイルは、パワフルな疾走感のタイトルナンバーをはじめ、
いっそう強力な勢いを感じさせる。ドラムを含めての演奏力も男性顔負けで、ミドルテンポのオールドメタル路線も覗かせつつ、
一転してスラッシーな激しさまで、どこを切っても濃密な疾走メタルサウンドが詰まっていて、全10曲があっという間という強力作。
メロディック度・8 疾走度・9 女性Vo度・8 総合・8.5 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する

Mary's Blood「Mary's Blood」
日本のガールズメタル、メアリーズ・ブラッドの2021年作
2012年にデビュー、アニソンカヴァーに続く、通算6作目のアルバムで、セルフタイトルを冠したことからバンドの勝負作なのだろう。
メタリックなギターを激しいドラムに乗せ、日本語歌詞の伸びやかな女性ヴォーカルとともに、強力なメタルサウンドを聴かせる。
ときにコブシの効いたEYEの歌声は、昭和的な和の匂いを感じさせつつ、ときにスラッシーな激しさと、モダンなヘヴィネス、
NEMOPHILAでも活躍するSAKIの巧みなギタープレイで、男性顔負けの迫力あるヘヴィメタルを構築している。
メロディックな疾走ナンバーやキャッチーなミドルテンポなど、メリハリに富んだ楽曲アレンジは、さすが10年のキャリア。
方向性が定まり切らなかった過去2作から見事に復活したと思いきや、バンドは本作の後、ベストアルバムを残し、無期限の活動休止へ。
メロディック度・8 疾走度・7 女性Vo度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する

KNIGHTS OF ROUND 「IN THE LIGHT OF HOPE」
日本のメロディックメタル、ナイツ・オブ・ラウンドの2019年作
2007年にデビュー、いまや日本クサメタルの中堅バンド、5作目のフルアルバムで、優美なイントロで幕を開け、
ツインギターに美麗なシンセを重ね、英語歌詞のヴォーカルとともに疾走する、ファンタジックなメロスピサウンド。
キャッチーなクサメロ感を描くきらびやかなサウンドは、北欧系のメロパワバンドに通じる感触もあり、
重すぎないドラムやパワフル過ぎないヴォーカルも含めて、古き良きメロディックメタルを継承する味わい。
ゆったりとした叙情ナンバーなど、ミドルテンポのナンバーもわりと多いが、あくまで優雅なメロディアス性で楽しめ、
ラスト2曲は怒涛のクサメロスピで華麗に疾走する。デビューからプレないスタイルに拍手である。
メロディック度・8 疾走度・8 優雅でキャッチー度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する

Chaos Magic 「Emerge」
チリのシンフォニックメタル、ケイオス・マジックの2022年作
女性シンガー、カテリーナ・ニックスをフロントに、ティモ・トルキらがバックアップした1作目から替わって、
2作目では、チリのミュージシャン、ナッソン・コルバランを中心に南米系ミュージシャンがバックを務め、
3作目の本作も、前作同様のメンバーで作られている。ほどよくヘヴィなギターに美麗なシンセアレンジを重ね、
伸びやかな女性ヴォーカルとともに、いくぶんモダンでキャッチーなシンフォニックメタルを聴かせる。
楽曲は3〜5分台で、カテリーナ嬢の魅力的な歌声を主体に、WITHIN TEMPTATIONなどに通じる
わりとストレートな作風なので、多くのリスナーが楽しめるだろう。壮麗な女性声メタルが好きな方はぜひ。
シンフォニック度・8 壮麗度・8 女性Vo度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する

Shield of Wings 「Unfinished」
アメリカのシンフォニックメタル、シールド・オブ・ウイングスの2022年作
壮麗なシンセアレンジをギターに重ね、伸びやかな女性ヴォーカルとともに、優雅なシンフォニックメタルを聴かせる。
ときにデスヴォイスも加わったほどよくアグレッシブな激しさと、いくぶん翳りを帯びた耽美な空気が同居して、
Nightwishなどに比べるとややマイナーな香りと、涼やかな土着性も覗かせる。随所にキャッチーなメロディのフックも聴かせつつ、
全体的には靄のかかったような雰囲気で、ゴシックメタルのファンにも楽しめそう。ストレートとソプラノを使い分けるLara嬢の歌声は、
表現力という点ではまだこれからという印象だが、幻想的な世界観にはよくマッチしていているので、今後に期待のバンドです。
シンフォニック度・8 幻想度・8 女性Vo度・7 総合・7.5
Amazonで購入する


Tales and Legends 「Struggle Of The Gods」
イタリアのメロディックメタル、テイルズ・アンド・レジェンズの2021年作
シンセを含む5人編成でこれがデビュー作。シネマティックな語りによるイントロから、メタリックなギターに美麗なシンセ、
ハイトーンのヴォーカルを乗せて、エピックなシンフォニックメタルを展開する。サビでのキャッチーな歌メロに、
クワイアを重ねた壮麗さは、RHAPSODY OF FIREを彷彿とさせ、ミドルテンポの透明感あるナンバーは
STRATOVARIUSなどを思わせる。ネオクラ風のインストナンバーなども、90年代の雰囲気を感じさせるなど、
わりとオールドなメロパワファンに受けが良い作風であるだろう。いかにも初期ラプソディー的なナンバーから、
これぞイタリアンメタルというクサメロな疾走ナンバー、ラストはスメタナの「モルダウ」を取り入れた大曲で締めくくる。
ドラマティック度・8 壮麗度・8 ラプソでストラト度・8 総合・8
Amazonで購入する

Lonewolf 「Division Hades」
フランスのメタルバンド、ローンウルフの2020年作
2002年にデビュー、いまやフレンチを代表するメロパワバンド。10作目となる本作も、叙情的なギターリフにパワフルなヴォーカルを乗せて、
RUNNING WILD
+ ACCEPTというような、ほどよい疾走感の正統派メタルを聴かせる。メロディックなツインリードを随所に覗かせつつ、
派手すぎない激しすぎない、オールドスタイルのメロパワをつらぬくスタイルは、HAMMERFALLなどにも通じるだろう。
ヴォーカルの声質は、ウド・ダークシュナイダーあたりを思わせるけっこうダーティなタイプなので、好みを分けるところか。
ラストは勇壮でエピックな9分の大曲。ボーナスDiscには、90年代のデモ音源や、自主デビュー作からのナンバーなどを収録。
ドラマティック度・8 疾走度・8 正統派度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する


Dhaliax 「Blood on Fire」
スペインのメタルバンド、ダリアックスの2020年作
ツインギターの5人編成で、叙情的なギターのイントロから幕を開け、オールドなギターリフにハイトーンヴォーカルを乗せた
80年代ルーツの正統派ヘヴィメタルを聴かせる。歌詞は英語なのでスパニッシュな雰囲気はさほどなく、
IRON MAIDEN的な感触もあるほどよくキャッチーな味わいは、EnforcerMEANSTREAKなどに通じる、
NWOTHMのスペイン版という感じだろう。ミドルテンポが主体なので疾走感はさほどなく、クサメロも控えめなので
これという派手なインパクトはないのだが、激しすぎない古き良き正統派メタルが好きな方はいかが。
ドラマティック度・7 疾走度・7 古き良き正統派度・8 総合・7.5
Amazonで購入する


Sisteria 「Dark Matter」
アメカのサイケ・ドゥームロック、システリアの2022年作
ほどよくヘヴィなギターにオルガンが鳴り響き、妖しい女性ヴォーカルの歌声とともに、PURSONBLOOD CEREMONYなど、
アナログ感たっぷりのヴィンテージ・ロックを聴かせる。紅一点、Katie嬢の歌声は、魔女めいた雰囲気を描いていて
ゆったりとしたナンバーや、ユルめのサイケロックナンバーなども、どこかカルトな怪しさに包まれる。
70年代ルーツのブルージーなオールドロック感触と、サイケなドゥームロックがほどよく混ざっていて、
艶めいた女性ヴォーカルの魅力もなかなかのもの。ラストはスペイシーで即興的なサイケ風味で幕を閉じる。
ドラマティック度・7 ヴィンテージ度・8 魔女系ドゥーム度・8 総合・7.5
Amazonで購入する


Book Of Wyrms 「Occult New Age」
アメリカのドゥームロック、ブック・オブ・ワームスの2021年作
2017年にデビューし、3作目。アナログ感っぷりのギターに、妖しい女性ヴォーカルを乗せて、サイケな浮遊感も含んだ
ヴィンテージなドゥームロックを聴かせる。スローからミドルテンポを主体にしつつ、女性声ははかなげであるが、
スペイシーなシンセやツーバスのドラムによるアグッレシブなノリもあって、わりとアッパーな感じでも楽しめる。
アコースティックギターによる小曲から、8分の大曲、ヘヴィなギターを乗せたこれぞドゥームというナンバーまで、
魔女めいた女性ヴォーカルとともに、なかなかディープな空気を描いている。プレスCDR仕様です。
ドラマティック度・7 ヴィンテージ度・8 魔女系ドゥーム度・8 総合・7.5
Amazonで購入する


SIMULACRUM 「GENESIS」
フィンランドのプログレメタル、シムラクラムの2021年作
2012年にデビューし、3作目となる。ツインギターにツインVoを含む編成で、メタリックなギターリフにシンセを重ねた
モダンで硬質なサウンドに、ハイトーンを含むパワフルなヴォーカルを乗せ、重厚なProgMetalを展開する。
ほどよくテクニカルなリズムとスタイリッシュなヘヴィネスに、流麗なギタープレイときらびやかなシンセで、
激しくも濃密な聴き心地。アルバム後半は、4部構成の組曲になっていて、ツインギターに壮麗なシンセアレンジで
緩急あるリズムチェンジやシンセによる優雅な叙情パートなども含む、厚みのあるサウンドを構築する。
ドラマティック度・7 テクニカル度・7 モダンで重厚度・8 総合・7.5
Amazonで購入する


Caligula's Horse 「Moments from Ephemeral City」
オーストラリアのプログレメタル、カリギュラズ・ホースの2011年作
アコースティックを含む叙情的なイントロから、うっすらとしたシンセに流麗なギター、エモーショナルなヴォーカルを重ね、
優雅な叙情に包まれたスタイリッシュなサウンドが広がってゆく。序盤はメタル的な激しさはさほどなく、
随所にメロディックなギターの旋律や、ポストプログレ的でもある繊細な歌ものパートがゆったりと耳心地よい
テクニカルなギターを乗せた軽妙なインストナンバーから、11分の大曲では、優美な叙情とDjent的な硬質感が行き来する。
2作目以降に比べると、ProgMetalとしては作風が曖昧な感じもあるが、演奏力の高さはすでに一級品である。
ドラマティック度・7 テクニカル度・8 スタイリッシュ度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する



4/7
新年度のメタル(53)

AMAHIRU
多国籍のメタルユニット、アマヒルの2020年作
日本の女性ギタリスト、SAKI(Mary's Blood)と、KREATORのフレデリク・ルクレールによるユニットで、
EPICAのクーン・ヤンセンがシンセで、ドラムにはFEAR FACTORYのマイク・ヘラーが参加。
和風の旋律を織り込んだイントロから、メタリックなギターにきらびやかなシンセ、
バワフルなヴォーカルを乗せたメロディックメタルを聴かせる。モダンなヘヴィネスと
キャッチーなノリが同居した楽曲は、わりとストレートな洋楽メタルといった感じなので、
新鮮なインパクトはないが、重厚なミドルテンポから激しくスラッシーなナンバーもあり、
ときに尺八の音色を用いたりと、和洋の融合というハイブリッドなメタルが味わえる。
ドラマティック度・7 疾走度・7 ほぼ洋楽メタル度・8 総合・8
Amazonで購入する

Saeko 「Holy Are We Alone - 我等独尊」
日本人の女性シンガー、サエコの2021年作
元FAIRY MIRRORの女性ヴォーカルで、単身ドイツへと渡り、2005年にデビュー、本作は2006年以来、15年ぶりとなる3作目。
ギド・ベネデッティ(Trick Or Treat)、アレッサンドロ・サーラ(Rhapsody Of Fire)、マイケル・エーレ(Primal Fear/Gamma Ray)が参加、
メタリックなギターに優美なシンセアレンジ、そして伸びやかな彼女のヴォーカルを乗せた、メロディックなサウンドを聴かせる。
楽曲ごとに、日本、シリア、イングランド、ドイツ、インド、ブラジル、ハワイ、ロシアなど世界の国々をモチーフに、
日本的な和の旋律を取り入れたり、ときにソプラノヴォーカルを使ったクラシックへのオマージュなども覗かせつつ、
キャッチーな優雅さと適度な疾走感が同居した、バラエティに富んだ楽曲が詰まっている。デレク・シェリニアン(Planet X)などがゲスト参加
メロディック度・8 疾走度・7 優雅度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する

ALL IMAGES BLAZING「CRIMSON RED」
日本のプログレハードロック、オール・イメージズ・ブレイジングの2021年作
2015年にデビュー、3作目となる本作は前作と同じメンバーで制作、美しいシンセに叙情的なギター、
英語歌詞による女性ヴォーカルを乗せた、エルトン・ジョンのような洋楽ポップ的なナンバーで始まる。
その後も、オルガンを含むシンセにメロディックなギター、キュートな女性ヴォーカルとともに、
優雅でキャッチーなサウンドを聴かせる。中盤にはファンキーなポップナンバーもあったりと、
今作はよりポップロック的な作風ながら、プログレ寄りのシンセワークが随所に光っていて、
ラストの10分を超える大曲などは、緩急あるドラマティックな構築力で楽しめる。
メロディック度・8 プログレ度・7 女性Vo度・7 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する

Eleanor 「Downhearted」
日本のゴシック・ハードロック、エレノアの2021年作
2008年にデビュー、4作目となる本作は、叙情的なツインギターに艶めいた女性ヴォーカルを乗せ、
ヴァイオリンも重ねた優雅なアレンジとともに、ほどよいキャッチーなノリを含んだサウンドを聴かせる。
メロウなフレーズを奏でるギターや優美なシンセ、日本語歌詞による情感あるShioriの歌声は、
ときに昭和歌謡的な雰囲気も覗かせて、語りを含んだ演劇性など、和風ゴシックメタルというべき
独自の世界観を確立している。派手さはないが、耽美な倦怠の香りが心地よい逸品です。
ドラマティック度・8 ゴシック度・7 日本度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する


GRAND FINALE「Descent With Modification」
日本のメロディックメタル、グランド・フィナーレの2018年作
美麗なシンセアレンジをギターに重ね、伸びやかな女性ヴォーカルの歌声でキャッチーなサウンドを聴かせる。
曲調はわりとストレートで、フックのあるメロディと日本語歌詞による魅力的な歌声が映える、
いわゆる歌謡メタル的な聴きやすさに包まれているが、クラシックをモチーフにした歌メロなど、
シンフォニックメタルとしての壮麗な味わいもある。YOKO嬢の歌声はいくぶん線が細いので、
突き抜けるような迫力はないぶん、日本的な繊細な情感を表現している。全体的にヘヴィさは控えめ、
オーケストラルなアレンジとキャッチーな歌メロが前に出た作風だ。デビュー作としては充分な完成度。
シンフォニック度・8 キャッチー度・8 女性Vo度・8 総合・8
Amazonで購入する

GRAND FINALE 「Quantum Moment」
日本のメロディックメタル、グランド・フィナーレの2020年作
ドラムとシンセ奏者が正式加入して、2作目となる本作も、壮麗なシンフォニックアレンジに
日本語歌詞による伸びやかな女性ヴォーカルを乗せた、優雅な疾走感で聴かせる。
前作に比べて、曲によってはいくぶんダークになった感じもあるが、キャッチーなメロディのナンバーもあり、
クラシカルなピアノなど美麗なシンセワークとともに、シンフォニックメタルとしての艶やかな叙情に包まれる。
歌謡ロック風のキャッチーなナンバーから、疾走するメロスピナンバーまでバランスのとれた好作品だ。
シンフォニック度・8 キャッチー度・8 女性Vo度・8 総合・8
Amazonで購入する


GRAVESHADOW 「The Uncertain Hour」
アメリカのメロディックメタル、グレイヴシャドウの2022年作
2015年にデビューし、3作目となる。女性Vo、女性Bを擁する5人編成で、メタリックなツインギターに
ハスキーな女性ヴォーカルを乗せ、デスヴォイスも加えて疾走感を含んだパワーメタルを聴かせる。
ラックス嬢の歌声は、伸びやかでパワフル過ぎず、女性的な艶めいた感じもあるのが魅力的で、
随所にシンセアレンジも加えたシンフォニックメタル的な感じも覗かせる。オールドメタル風味の
どっしりとしたミドルテンポのナンバーには、MANOWARのような勇壮な雰囲気もあって、
全体的にはさほど疾走パートはないのだが、サウンドにはぐっと説得力が備わってきた。
ドラマティック度・8 疾走度・7 女性Vo度・7 総合・8 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する

Fugatta 「The Darkest Planet」
メキシコのメロディックメタル、フーガッタの2021年作
2011年にデビュー、本作は3作目となる。混声コーラスを含む壮麗なイントロから、メロディックなギターに
きらびやかなシンセを重ね、ハイトーンヴォーカルとともにシンフォニックなメロパワサウンドを聴かせる。
疾走するメロスピナンバーでは、キャッチーなメロディのフックとほどよいクサメロ感も覗かせて、
華麗なシンセワークを含め軽快で優雅な作風は、ガルネリウスなどにも通じる日本人好みの聴き心地。
これだというキラーチューンがもう1曲くらい欲しいが、ラストの疾走クサメロスピナンバーにはニンマリだ。
Derdian、Vision Divineのイヴァン・ジャンニーニがVoで参加したナンバーをボーナス収録。
ドラマティック度・8 疾走度・7 壮麗度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する

Mandragora 「Waves of Steel」
ペルーのメタルバンド、マンドラゴラの2017年作
ツインギターに女性シンガーを含む編成で、古き良き感触のギターリフにハスキーな女性ヴォーカルを乗せた、
80年代ルーツのメタルサウンド。紅一点Fatima嬢の歌声は、かつてのDOROなどに通じる感じもあり、
随所に叙情的なツインギターを織り込んだ、ヨーロピアンな正統派のNWOTHMが楽しめる。
全体的にはミドルテンポが主体で、IRON MAIDENなどに影響を受けたとおぼしき、わりとキャッチーな聴きやすさがある。
激しい疾走感はあまりないのだが、後半にはスピードメタルナンバーもあり、女性声のオールドメタルが好きな方はいかが。
ドラマティック度・7 疾走度・7 古き良き度・8 総合・7.5

DEVOID 「Cup of Tears」
フランスのプログレメタル、デヴォイドの2017年作
Shadyonのギターを中心にしたバンドで、同バンドのシンセも参加。ほどよくヘヴィなギターにきらびやかなシンセ、
パワフルなハイトーンヴォーカルを乗せて、どっしりとしたプログ・パワーメタルというサウンドを聴かせる。
DomainやEvidence Oneなども参加した、ドイツ人シンガー、カーステン・シュルツの歌声も力強く、
サウンドにマイナー臭さは感じない。楽曲は4〜5前後がメインで、テクニカルな展開というのはさほどないが、
VANDEN PLASなどにも通じる重厚な作風で、メロディックな盛り上がりがもう少し増えれば良いバンドになりそう。
マグナス・カールソン、マティアス・エクルンド(Freak Kitchen)、ヘンリク・ダンヘージ(Evergley)などがゲスト参加。
ドラマティック度・7 テクニカル度・7 重厚度・8 総合・7.5
Amazonで購入する

L'Anima 「Departures」
イギリスのプログレメタル、ル・アニマの2017年作
THE YARDBIRDSのVoと、Breed 77のGを中心にしたバンドで、重すぎないギターにやわらかなシンセ、
マイルドなヴォーカルを乗せて、ほどよくモダンでテクニカルなProgMetalを聴かせる。
メロディックなギターの旋律やキャッチーな歌メロなど、随所に爽快な抜けの良さもあって、
いくぶんのマイナー臭さも含めて、マニア向けでありながらもわりと聴きやすい。楽曲は6〜9分前後で、
派手な盛り上がりはさほどないが、全体的に優雅な聴き心地。これというインパクトに欠けるのが残念。
ドラマティック度・7 テクニカル度・7 優雅度・8 総合・7

Lost In Thought 「Opus Arise」
イギリスのプログレメタル、ロスト・イン・ソウトの2011年作
メタリックなギターにきらびやかなシンセを重ね、伸びやかなヴォーカルを乗せたサウンドに
ほどよくテクニカルな展開力で、DREAM THEATERタイプの重厚なProgMetalを聴かせる。
随所に流麗なギタープレイも覗かせつつ、手数あるヘヴィなドラムも含めたモダンな硬質感と、
叙情的なバラード曲などキャッチーなメロディのバランスも良く、ヴォーカルの表現力も備わっている。
楽曲は5〜7分前後と長すぎず短すぎず、全体的にもクオリティの高い濃密な聴き心地の力作だ。
ドラマティック度・8 テクニカル度・7 重厚度・8 総合・8
Amazonで購入する


Silent Stream of Godless Elegy 「Behind The Shadows」
チェコのゴシックメタル、サイレント・ストリーム・オブ・ゴッドレス・エレジーの1998年作
1996年にデビュー、本作は2作目。メタリックなギターリフに渋い男性ヴォーカルとデスヴォイスを乗せた、
どっしりとした重厚なサウンドに、ヴァイオリンやチェロも鳴り響くクラシカルなテイストも覗かせる。
ときに、My Dying Brideあたりに通じるドゥーミィな物悲しさに包まれていて、野太い低音デス声に
わめき声Voも加わって迫力もたっぷり。後半には民族的な旋律に女性ヴォーカルを乗せたナンバーもあり、
のちの作品に通じる雰囲気も垣間見せる。現時点ではいくぶん粗削りながら、バンドの個性は確立している。
ドラマティック度・7 耽美度・7 重厚度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する



3/10
WBC開幕!(40)

VEONITY 「Elements of Power」
スウェーデンのメロディックメタル、ヴェオニティの2022年作
2015年にデビュー、5作目となる。王道のギターリフにパワフルヴォーカルを乗せた、疾走感ある正統派のメロパワで、
サビのキャッチーなメロディには、INSANIAなどを愛するクサメタラーもにんまりだろう。中音域とハイトーンを使い分ける
ヴォーカルの実力もなかなかで、ジャーマンメタルをルーツにした陽性の歌メロは、FREEDOM CALLにも通じるか。
随所にシンセによるシンフォニックなアレンジも含ませつつ、どのナンバーも爽快なメロディのフックでストレートに楽しめる。
とにかくクサメロで、とにかくキャッチーという、まさに日本人好みの北欧メロパワが詰まった強力作。ここまでやれば天晴。
ドラマティック度・8 疾走度・8 クサメロ度・9 総合・8.5 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する


Gladenfold 「Nemesis」
フィンランドのメロディックメタル、グラッデンフォールドの2022年作
2014年にデビューし、3作目。メタリックなツインギターにきらびやかなシンセを重ね、ジェントルなヴォーカルに
デスヴォイスを乗せて激しく疾走するメロデス的な要素が同居した、シンフォニック・パワーメタルを聴かせる。
やはりフィンランドのバンドらしい涼やかさとキャッチーなメロディ、知的な構築力が合わさったスタイルで、
いうなれば、チルボド+ソナタというような激しくも壮麗な聴き心地。エピックな勇壮さも覗かせつつ、
メロパワ、シンフォニックメタル、そしてメロデスの要素が融合したハイブリッドな高品質作品です。
ドラマティック度・8 疾走度・8 壮麗度・8 総合・8
Amazonで購入する


Burning Witches 「Dance with the Devil」
スイスのガールズパワーメタル、バーニング・ウィッチーズの2020年作
2017年にデビューし、本作は3作目。新たにヴォーカルが交替、王道のツインギターととも疾走し、
ヒステリックな女性ヴォーカルを乗せた、アグレッシブなパワーメタルサウンドを聴かせる。
DESTRUCTIONのシュミーアがプロデュースしていて、声の裏変える歌声はどことなくシュミーア風?
ツーバスのパワフルなドラムも含めて演奏力も安定しており、どっしりとしたオールドメタルに
ツインギターの叙情性と魔女めいた妖しさを加えたというスタイルは強固に確立している。
ラストは、MANOWAR「Battle Hymn」カヴァーで、ギターのロス・ザ・ボスかゲスト参加。
正統派パワメタ度・8 疾走度・8 女性Vo度・7 総合・8
Amazonで購入する

Dragonrider 「Scepter Of Domination」
ヨルダンのメロディックメタル、ドラゴンライダーの2020年作
叙情的なギターに語りを乗せたイントロから、クサメロのギターにパワフルなヴォーカルを乗せて疾走する、
オールドなエピック・メロパワスタイル。ほどよいスカスカ感がマイナー臭さをかもしだしていて、
ファンタジックな世界観に包まれた雰囲気は、初期のBLIND GUARDIANをヘナチョコにしたような味わいで、
ときにハイトーンでシャウトするヴォーカルはMANOWAR風であったりもする。ラストの疾走メロスピナンバーも
なかなか良い感じで、いっそヘナチョコのまま、B級の辺境メタル道を進んでいってもらいたい気もする。
ドラマティック度・7 疾走度・7 辺境度・8 総合・7
Amazonで購入する


TRAXILIUM 「Contra El Abismo」
スペインのメロディックメタル、トラキシリウムの2016年作
クサメロなツインギターにパワフル過ぎないスペイン語のヴォーカルを乗せてライトに疾走する
AVALANCHなどにも通じる、古き良きスタイルの正統派スパニッシュ・メロパワサウンド。
いくぶんユルめのギターの旋律には、どことなくアマチュア臭さも漂わせつつも、
あくまでメロディックな正統派メタルにこだわる姿勢は嫌いではない。全体的に中庸な感じなので、
今後はこのバンドならではのインパクトある展開やメロディをもっと増やしていってもらいたい。
メロディック度・7 疾走度・7 スパニッシュ度・8 総合・7
Amazonで購入する


ENVINYA「THE HARVESTER」
ドイツのシンフォニックメタル、エンヴィンヤの2016年作
2013年にデビューし2作目。メタリックなギターに女性ヴォーカルの歌声を乗せて疾走する1曲目は
正統派派のメロパワスタイルで、シンセによるシンフォニックなアレンジも含んだサウンドを聴かせる。
ときにデスヴォイスも加えたアグレッシブな感触も覗かせつつ、本作から加入したMery嬢の歌声は、
ハスキーに魔女めいていて妖しく楽曲を彩る。メロディックなフックや壮麗なパートがさほどないので、
全体的には硬質な女性声メタルという味わいで、シンフォニックメタルとしてはやや物足りないか。
メロパワとしても疾走系なのかヘヴィ系なのか、今後は方向性を絞っていってもらいたい。
ドラマティック度・7 壮麗度・7 女性Vo度・7 総合・7
Amazonで購入する

Emerald Mind 「Tales Of Soveena」
ロシアのゴシックメタル、エメラルド・マインドの2009年作
ほどよくヘヴィなギターに美麗なシンセアレンジ、美しいソプラノ女性ヴォーカルを乗せて
Nightwishにも通じる優雅でシンフォニックなサウンドを聴かせる。随所に適度な疾走感や
流麗なギターフレーズも覗かせて、緩急ある展開と共に、幻想的な翳りを帯びた世界観を描いてゆく。
フロントを務めるSvetlana嬢のソプラノはオペラティックな素養も感じさせ、伸びやかな歌声は表現力も素晴らしい。
ラストは9分の大曲で、ドラマティックな展開美となよやかな女性声で、優美なシンフォニックメタルを構築する。
ドラマティック度・8 優美度・8 女性Vo度・8 総合・7.5

Lentera 「Light Of The Universe」
インドネシアのメロディックメタル、レンテラの2010年作
壮麗なイントロから、クサメロ感たっぷりのギターにハイトーンヴォーカルを乗せて疾走する、
初期HELLOWEENを思わせる古き良きメロディック・パワーメタルを聴かせる。
ラウドな音質も含めて、B級感もけっこうあるのだが、随所に覗かせる叙情的なメロディは
なかなか日本人好みで、さほどパワフルではないものの母国語による歌声にも味わいがある。
メロディック度・8 疾走度・8 アジアン度・8 総合・7

Myth Of I
アメリカのテクニカルメタル、ミス・オブ・アイの2020年作
ギターのアルペジオによる叙情的なイントロから、テクニカルで硬質なリズムに流麗なツインギターを乗せ、
Djent的なモダンでテクニカルなメタルサウンドを聴かせる。歌の入らないオールインストなので、
BGMになりがちであるが、変則リズムを含むテクニカル性の中に、ほどよい叙情的なギターフレーズも覗かせ
起伏のある展開力で構築してゆく。楽曲は4〜5前後であるが、インストなのでこれくらいで丁度よいか。
全体的にはやはり歌があった方が、もう少しドラマティックな感じにはなると思うのだが。
ドラマティック度・7 テクニカル度・8 スタイリッシュ度・8 総合・7.5
Amazonで購入する


DANTE 「SATURNINE」
ドイツのプログレメタル、ダンテの2010年作
2007年にデビュー、本作は2作目。12分の大曲で幕を開け、硬質なギターにモダンで優雅なシンセアレンジ、
マイルドなヴォーカルとともに、ほどよくテクニカルな展開と、翳り帯びたドラマ性に包まれたサウンドを聴かせる。
やわらかなピアノにヴァイオリンも鳴り響くゆったりとした叙情ナンバーや、オルガンを使ったプログレ寄りのアレンジなど、
随所にセンスの良さも覗かせつつ、ヨーロピアンな構築性とともに、スタイリッシュなProgMetalが楽しめる。
ラストも19分の大曲で、壮麗なオーケストレーションから、メロディックなギターやきらびやかなシンセとともに
起伏のある展開力でドラマティックなサウンドを描いてゆく。重厚にしてスタイリッシュな高品質プログメタルです。
ドラマティック度・8 テクニカル度・7 スタイリッシュ度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する

MEGADETH「Killing Is My Business...And Business Is Good! - The Final Kill」
アメリカのインテレクチュアル・スラッシュメタル、メガデスの1st。1985年/2018年作
2002年のリマスター盤でもけっこう音質は改善されていたが、今回は新たに発見されたドラム音源パーツを加えた完全新リミックス。
発掘されたライブ音源7曲を追加収録しての、まさに新装版「キリング・イズ・マイ・ビジネス」。イントロの優雅なピアノから、
続く2本のギターリフの音もクリアになり、軽かったドラムの迫力も増していて、リズムチェンジによる展開力の多い、
インテレクチュアルなメタルサウンドがよりソリッドな聴き心地になった。過激な歌詞で自主規制となった「These Boots」は
ヴォーカルを差し替えて収録。ライブ音源は、1986〜87年のものがメインで、音質もそれなりに良好、当時の勢いある演奏が聴ける。
激しさ度・8 インテレクチュアル度・8 リミックス度・9 総合・8.5 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する


Pagan Altar 「Boom Of Shadows」
イギリスのカルト・ドゥームメタル、ペイガン・アルターの2017年作
70年代から活動するバンドで、本作は2006年以来、11年ぶりとなるアルバム。Voのテリー・ジョーンズと
ギターのアラン・ジョーンズ以外のメンバーが交替、新たにMoon Chamberのドラムが加わっている。
ほどよい叙情を含んだオールドなギターに朗々としたヴォーカルを乗せた、ウェットなドゥームメタルは本作も健在。
重すぎずダーク過ぎない、Witchfinder Generalをよりミスティックにしたようなサウンドには、何とも言えぬ魅力があり、
ヴィンテージなサウンドを愛する者にはたまらない。6〜8分の楽曲をメインに、10分の大曲もあるが、適度にユルめ楽しめる。
ドラマティック度・8 ドゥーム度・7 ヴィンテージ度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら

Funeral 「Praesentialis in Aeternum」
ノルウェーのフューネラル・ドゥームメタル、フューネラルの2021年作
1995年にデビュー、本作は9年ぶりとなる7作目。ギターの一人が交替している以外はメンバーは変わらず。
重すぎないギターリフにダミ声&ノーマルヴォーカルを乗せて、北欧らしい涼やかな空気に包まれたドゥームメタルで
ダークでありながらほどよい叙情性も含ませて、ゆったりとしたサウンドを聴かせる。母国語によるジェントルな歌声が、
ペイガンな味わいをかもしだし、メランコリックな寒々しさの中に、どことなくプログレッシブな雰囲気も覗かせる。
スローテンポ主体で10分前後の大曲も多く、Swallow The Sunなど、重厚なゴシックドゥームが好きな方はどうぞ。
ドラマティック度・7 メランコリック度・8 叙情度・7 総合・8 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する


Devlin 「Grand Death Opening」
スウェーデンのゴシックメタル、デヴリンの2002年作
ブラックメタルバンド、Siebenburgenのギターと女性Voによるユニットで、1999年にデビューし本作は2作目となる。
ヘヴィ過ぎないギターに女性ヴォーカルと男性デスヴォイスを乗せ、うっすらとしたシンセによる味付けも加えた、
キャッチーなゴシック・ハードロックというサウンド。重さや暗さはほどほどで、ニューウェイヴっぽいモダンな感触は、
To/Die/Forの男女Vo版という雰囲気もあり、ダークすぎるゴシメタが苦手という方でもわりとライトに楽しめるだろう。
Lexi嬢の歌号もほどよくフェミニンで、スローテンポのナンバーでは、艶めいた耽美な雰囲気をかもしだしている。
ドラマティック度・7 耽美度・8 女性Vo度・8 総合・7.5
Amazonで購入する



2/3
シンフォニック、ゴシック、ブラック(26)


Rhapsody Of Fire「Glory For Salvation」
イタリアのシンフォニックメタル、ラプソディー・オブ・ファイアの2021年作
ヴォーカルがジャコモ・ヴォーリに替わっての2作目で、前作は正直、新鮮味のない中庸な出来であったが、
続編となる本作も、アレックス・スタロポリによる壮麗なシンセとオーケストレーションに包まれて幕を開ける。
伸びやかなハイトーンヴォーカルに荘厳なクワイヤが重なり、シネマティックなスケール感を描き出すサウンドは、
変わらぬラプソ節と言ってよい。ときに民族調の優雅さも含ませつつ、随所に疾走感も覗かせながら緩急ある流れで、
ファンタジックな世界観を構築してゆくという安定の内容ではある。三部作ということなので、次作が完結編となるのだろう。
シンフォニック度・8 壮麗度・8 新鮮度・7 総合・8 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する


Song of Anhubis 「Reversed Reflection」
スペインのゴシックメタル、ソング・オブ・アヌビスの2020年作
ヘヴィなギターにシンセを重ね、妖しい女性ヴォーカルとともに、ミステリアスな浮遊感に包まれたサウンドを描く。
スペイシーなシンセワークとほどよく激しいドラムのコントラスト、ドゥームやサイケの雰囲気も含んだスタイルで、
魔女系ロック的な世界観も感じさせる。一方ではモダンなヘヴィネスにはインダストリアルな感触もあったりと、
なかなかつかみどころがない。後半には、わりとアグレッシブなシンフォニックメタル寄りのナンバーなどもあって、
適度にキャッチーでモダンとオールドが混在した、妖艶な女性声メタルとして、なかなか楽しめる内容だ。
シンフォニック度・7 妖しさ度・8 女性Vo度・8 総合・8
Amazonで購入する


Deep Sun 「Das Erbe Der Welt」
ドイツのシンフォニックメタル、ディープ・サンの2019年作
2016年にデビュー、2作目となる。ヘヴィなギターに美麗なシンセアレンジ、なよやかな女性ヴォーカルで、
ほどよくモダンな感触のシンフォニックメタルを聴かせる。紅一点、Debora嬢の歌声は高音域のソプラノで
初期のNightwishや、韓国のISHTARあたりを思わせる雰囲気もある。楽曲は3〜5分前後が主体で、
適度にキャッチーな耳心地ながら、ラストは15分という大曲で、激しい疾走感も含むリズムチェンジで、
緩急あるドラマティックな展開力をみせる。美しい女性ヴォーカルの優雅なシンフォニックメタルの好作品。
シンフォニック度・7 優美度・8 女性Vo度・8 総合・7.5
Amazonで購入する


A Sound Of Thunder 「Out Of The Darkness」
アメリカのシンフォニックメタル、サウンド・オブ・サンダーの2012年作
2011年にデビューし、2作目となる。メタリックなギターに伸びやかな女性ヴォーカルを乗せ、
リズムチェンジを含む構築力で、パワフルなサウンドを聴かせる。ときおりシンセやピアノなどは加わるが、
全体的にはギターをメインにしているので、シンフォニックメタルというよりはパワーメタル寄りのスタイル。
いくぶんハスキーなNina嬢の歌声もなかなか魅力的で、8分を超える大曲では、ドラマティックな展開も覗かせるなど、
重厚なメロパワとしても楽しめる。メロディのフックや壮麗なアレンジが増えれば、より良くなりそうなバンドです。
シンフォニック度・7 パワフル度・8 女性Vo度・8 総合・7.5
Amazonで購入する


Shining Fear 「Apocalife」
イタリアのシンフォニックメタル、シャイニング・フィアーの2010年作
硬質なギターリフにシンセを重ね、伸びやかな女性ヴォーカルの歌声とともに、ほどよく疾走感も含んだ
パワーメタル寄りのサウンドに、リズムチェンジによるProgMetal的なテクニカル性も含んだスタイル。
ときにスラッシーな激しい疾走感から、叙情的なスローパートへと、極端な緩急も随所に覗かせつつ、
ハイトーンの爽快な女性声が楽曲を優雅に彩っている。シンセのアレンジは派手すぎないので、
全体的にはメロパワ要素が強い感じながら、いくぶんプログレッシブな香りも含んだサウンドは悪くない。
シンフォニック度・7 パワフル度・8 女性Vo度・8 総合・7.5
Amazonで購入する


Sphinx 「Призрак」
ロシアのシンフォニックメタル、スフィンクスの2009年
2人の女性Voを含む編成で、オーケストラルなアレンジをギターに重ね、美しいソプラノ女性ヴォーカルとともに
壮麗なシンフォニックメタルを描く。マイルドな男性声も加わりつつ、随所に叙情的なギターの旋律や
きらびやかなシンセワークも光っている。楽曲は、3〜4分前後が主体で、比較的シンプルであるが、
なよやかな女性声と美麗なシンフォニック性で耳心地よく楽しめる。全38分なので、もう1、2曲あっても良かった気が。
シンフォニック度・8 壮麗度・8 女性Vo度・8 総合・7.5

Uriah Heep 「Living the Dream」
ブリティッシュ・ハードのベテラン、ユーライア・ヒープの2018年作
1970年デビューのベテラン、オリジナルメンバーは、ギターのミック・ボックスのみであるが、
適度なハードなギターにオルガンが鳴り響き、バーニー・ショウの味のあるヴォーカルを乗せて、
往年のヒープをしっかりと受け継いだサウンドは本作も健在。反面、これだという目新しさはないのだが、
ドラムを中心にした演奏陣の安定感はさすがで、ミックによる泣きのギタープレイも随所に覗かせつつ、
哀愁の叙情を含んだ大人の英国ハードに浸れる。オールドファンからヒープ初心者にも楽しめる好作品。
ドラマティック度・8 古き良き度・8 英国ハー度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する


LILLIAN AXE「Poetic Justice」
アメリカのメロディアスハード、リリアン・アクスの3rd。1992年作
長いこと廃盤だったこの名作が、2022年についに日本盤SHM-CD仕様で待望の再発を果たした。
この一見ダメそうなジャケにだまされないで欲しい。メロディアス・ハードロック史に輝く名盤がこれなのだ。
2nd「Love + War」も日本人好みのウェットなハードロックであったが、、本作はさらに楽曲充実の内容である。
アメリカのバンドらしいキャッチーなロック感触の中に、スティーヴィー・ブレイズの叙情的なギターワークとともに、
哀愁を漂わせるメロディフレーズが散りばめられており、どこかヨーロピアンな翳りを感じさせるのが見事。
ノリのよい叙情ロックナンバー「True Believer」から、最高の泣きのパラードである「See You Someday」、
とどめは「The Promised Land」の優美な叙情である。再発盤には1989年のデモ音源を2曲追加収録。さあ買え!
メロディアス度・8 キャッチー度・8 哀愁の叙情度・8 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
Amazon.co.jp で詳細を見る

VALENTINE 「Andrognius」
オランダの貴公子、ロビー・ヴァレンタインの2008年作
1993年にデビュー、ここまでのキャリア15年を総括する、2枚組ベスト版で、Disc1「Future?」、Disc2「Past」と、
それぞれ未来へ向かう現在系のナンバーと、過去の楽曲からセレクトされた、全28曲を収録している。
Disc1は、初期に比べると、モダンなヘヴィネスがいくぶん強まっているが、きらびやかなアレンジで聴かせる
壮麗なハードロックとして普通に楽しめるが、名曲「Over & Over...Again」の新バージョンはいかがなものか。
Disc2は、「バックトゥ・ザ・フューチャー」のテーマでタイムスリップ、「The Magic Breeze」をはじめとした、
過去のメロディックな美麗なナンバーがたっぷり楽しめて、往年のファンにはこちらが嬉しいだろう。
メロディック度・8 壮麗度・8 ベスト度・7 総合・8 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する

Shape of Despair 「Return to the Void」
フィンランドのゴシック・ドゥームメタル、シェイプ・オブ・デスペアーの2022年作
2000年にデビューし、本作は6作目。ヘヴィなギターにシンセを重ね、低音グロウルヴォイスに女性ヴォーカルが絡み
ゆったりとした寒々しいフューネラル・ドゥームを聴かせる。じっとりとした重厚さと暗黒の世界観に、
随所に泣きのギターフレーズも含ませて、8〜11分という長めの楽曲をじっくりと描いてゆく。
スローテンポを基本にしているので、気が短い方には向かないが、説得力のある音の厚みとともに
耽美でダークな空気を愛する者なら心地よく浸れることだろう。女性声パートがもっとあっても良かった。
ドラマティック度・8 フューネラル度・9 重厚度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する


Last Universal Common Ancestor 「Into The Core」
ポーランドのサイケ・ハードロック、ラスト・ユニヴァース・コモン・アンサーの2021年作
ほどよくハードなギターにシアトリカルに歌い上げるヴォーカルを乗せ、スペイシーなシンセアレンジとともに
怪しい浮遊感に包まれたクールなサイケ・ハードロックというサウンドを聴かせる。SE的的な小曲を挟みつつ、
10分前後の大曲ではドラマティックなスケール感も含んで、どっしりとしたドゥームメタル寄りの重厚さも覗かせる。
メロディックなフックや盛り上がりなどはさほどないので、全体的にモノトーンの世界観で、淡々とした聴き心地である。
ドラマティック度・7 重厚度・8 サイケハー度・8 総合・7.5
Amazonで購入する



Black Void 「Antithesis」
ノルウェーのヴィンテージ・ブラックメタル、ブラック・ヴォイドの2022年作
SOLEFALD、BORKNAGARのラーズ・ネッドランド、IN VAINのトビアス・ソルバックによる、WHITE BOIDと対をなすバンドで
オールドなギターリフにダミ声ヴォーカルを乗せ、アグレッシブなヴィンテージ・メタルを聴かせるスタイルで、
随所にノーマル声を乗せて、北欧らしい涼やかな空気を感じさせるところは、SOLEFARDにも通じるだろう。
ときにブラックメタルばりの激しいブラスト疾走も覗かせつつ、叙情的なギターフレーズを含ませながら、
緩急ある展開でたたみかけるあたりは、日本のSighなどを思わせる部分もある。楽曲は3〜4分前後で、
ブラッケン・ロール的なストレートな勢いも楽しめる。全38分というのもアナログっぽいですな。
ドラマティック度・7 暴虐度・7 暗黒度・8 総合・8
Amazonで購入する

Lucifer's Child 「The Order」
ギリシャのブラックメタル、ルシファーズ・チャイルドの2018年作
2015年にデビューし、2作目となる。ノイジーなギターに絶叫ヴォーカルを乗せて激しく疾走しつつ、
甘すぎない叙情メロディも随所に覗かせる、サタニックな迫力に包まれたブラックメタルを聴かせる。
ミドルテンポのパートにも荘厳な雰囲気を漂わせ、ときにブラッケンロール的な味わいも覗かせるなど、
全体的には暴虐な激しさよりは、どっしりとした暗黒性に浸れる作風ながら、トレモロのギターで疾走する
オールドスタイルのブラックメタルナンバーはやはり痛快だ。ラストはフューネラルなスローナンバーで締めくくる。
ドラマティック度・7 暴虐度・7 暗黒度・8 総合・7.5
Amazonで購入する


Arcane Grail 「Mysteries of the Ancient Charnel」
ロシアのシンフォニック・ブラックメタル、アルカン・グレイルの2006年作
男女Voと女性シンセ奏者を擁する6人編成で、高音ダミ声ヴォーカルに美しい女性ソプラノが絡み
クラシカルなピアノやシンセをギターに重ねて、ミドルテンポを主体にした激しすぎないサウンドを描く。
初期Cradle Of Filthにも通じる耽美な世界観を、より優雅にしたような感触で、クラシカルなピアノの旋律や
随所にメロディックなギターフレーズも覗かせるなど、暴虐さは控えめで、9分の大曲も適度な疾走感を含みつつ
リズムチェンジによる緩急ある展開力で楽しめる。女性声入りの耽美派シンフォブラックの好作品です。
ドラマティック度・8 暴虐度・7 優雅度・8 総合・7.5
Amazonで購入する


Sed Lex 「De Viris」
フランスのプログレメタル、セッド・レックスの2003年作
シンセを含む5人編成で、重すぎないツインギターにシンセを重ね、ハイトーンのヴォーカルとともに、
わりとオールドスタイルのサウンドを聴かせる。テクニカルな展開というのはあまりないので、
むしろキャッチーなハードロック寄りの感触で、ときにきらびやかなシンセが楽曲を彩っている。
ややラウドな音質面も含めて、ほどよくマイナーなB級っぽさが味わいになっていて、マニア好みの聴き心地です。
ドラマティック度・7 テクニカル度・7 マイナー度・8 総合・7
Amazonで購入する


1/7
メタルであけおめです(11)

ELDRITCH 「EOS」
イタリアのプログレメタル、エルドリッチの2022年作
1995年にデビュー、イタリアンメタルを代表するバンドのひとつで、本作は通算12作目となる。
メタリックなツインギターにシンセを重ね、ハイトーンヴォーカルを乗せてメロパワ的に疾走しつつ、
リズムチェンジを含む緩急ある展開力とともに、知的でキャッチーなサウンドを構築する。
このバンドらしい引っ掛かりのある独自のプログレッシブなセンスを随所に覗かせながら、
初期の頃に回帰したイタリアらしい濃密な味わいもかもしだしている。6〜7分前後の楽曲を主体に、
11分という大曲では、重厚でドラマティックなスケール感に包まれる。全65分の力作だ。
ドラマティック度・8 テクニカル度・7 濃密度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する

Dianthus 「Realms」
アメリカのプログレメタル、ダイアンサスの2022年作
G、B、Vo、Keyをこなすジャッキーと、Dr、Key、Voをこなすジェシカの、パリー姉妹によるユニットで、
2020年にデビューし、2作目。硬質なギターをテクニカルなリズムに乗せ、伸びやかな女性ヴォーカルで
スタイリッシュなProgMetalサウンドを聴かせる。二人の女性声によるエモーショナルな歌メロと、
知的なテクニカル性が同居していて、モダンでありながらも優美でメロディックな聴き心地。
楽曲は3〜5分前後が主体で、技巧的になり過ぎず、あくまでキャッチーなフックで楽しめる。
姉妹によるメタルユニットは珍しいので、今後はよりドラマティックな展開の大曲なども期待したい。
ドラマティック度・7 テクニカル度・7 女性Vo度・8 総合・8
Amazonで購入する

Zero Hour 「Agenda 21」
アメリカのプログレメタル、ゼロ・アワーの2022年作
1999年にデビュー、2008年までに5作を残して沈黙、本作は14年ぶりの復活作。ギター以外はメンバーが交替、
ヴォーカルには初期メンバーだったElikが復帰、新たにSeventh Wonderのベース、Powerwolfのドラムが加入している。
のっけから14分という大曲で、ハードエッジなギターリフにパワフルなヴォーカルを乗せ、テクニカルなリズムとともに
スタイリッシュなProgMetalを聴かせる。シンセなどはさほど入らないので、メロディックなフックという点では不愛想だが、
実力あるリズム隊を屋台骨にしたモダンなテクニカル性に、ゆったりとしたナンバーでの叙情性もあってバランスのとれた味わいだ。
全体的には、ドラマティックな展開などがもっと欲しい気もするが、ともあれバンドの再始動に今後を期待したい。
ドラマティック度・7 テクニカル度・8 叙情度・7 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する

Centrica
イタリアのプログレメタル、セントリカの2008年作
美麗なシンセをメタリックなギターに重ね、ほどよいテクニカル性とシンフォニックな優雅さが合わさった
インストによるProgMetalを聴かせる。流麗なギターフレーズやプログレ寄りのきらびやかなシンセワークなど、
オールインストながらも優美な叙情性が前に出ていて、シンセをメインにした2部構成の大曲などでは、
シンフォニックロック的な耳心地の良さが味わえる。メロウなギターにオルガンやムーグシンセなどを重ねた
ヴィンテージ感触など、キーボーディストのプログレっぷりが素敵である。叙情的なギターの小曲も良い感じで、
ヴォーカルがいないことをさほど感じさせない、実力者たちによるインストサウンドである。
ドラマティック度・7 テクニカル度・7 優美度・8 総合・8
Amazonで購入する

Sign of the Jackal 「Mark of the Beast」
イタリアのメタルバンド、サイン・オブ・ジャッカルの2013年作
ツインギターに女性シンガーを含む5人編成で、オールドな味わいのギターにハスキーな女性ヴォーカルを乗せ、
ほどよい疾走感のある、80年代ルーツのヴィンテージなメタルサウンドを聴かせる。フロントのローラ嬢の歌声は、
中性的でパワフル過ぎないヘタウマ感もあり、アナログ感たっぷりの音質と、適度なスカスカな耳心地も含めて、
Angel Witchなど、NWOBHMのファンにも楽しめるだろう。楽曲も3〜4分前後とシンプルで、わりとキャッチーで
軽快な味わいなので、メンバーが嗜好しているというホラー映画的なカルトな怪しさがもっとあっても良いかもしれない。
ドラマティック度・7 疾走度・7 オールドメタル度・9 総合・7.5
Amazonで購入する


hallas 「EXCERPTS FROM A FUTURE PAST」
スウェーデンのヴィンテージハード、ハラスの2017年作
歪ませすぎないツインギターにオルガンを含むシンセ、朗々としたヴォーカルを乗せて、
URIAH HEEPなどにも通じる、70年代風味を受け継ぐヴィンテージロックを聴かせる。
全体的にハードな感触は少なく、随所に北欧的な涼やかな空気感も匂わせるあたりは、
BLACK BONZOなども思わせる。6〜7分前後の長めの楽曲がメインなのもプログレ寄りで
ミステリアスな叙情性とサイケ風味のやわらかな牧歌性が合わさった耳心地で楽しめる。
ドラマティック度・7 ヒープ度・8 ヴィンテージ度・9 総合・8
Amazonで購入する


hallas 「Conundrum」
スウェーデンのヴィンテージハード、ハラスの2020年作
2作目となる本作も、ハード過ぎないツインギターにオルガンなどのシンセとマイルドなヴォーカルで
アナログ感たっぷりのヴィンテージロックを聴かせる。いくぶんサイケがかったユルめの叙情性に、
URIAH HEEPルーツのブリティッシュハードの匂いも合わさった作風で、どこかなつかしい聴き心地。
後半は7〜8分前後の長めの曲をメインに、メロウなギターにシンセを重ねた、北欧プログレ的でもある
優美な叙情も覗かせる。これというインパクトはないのだが、心地よいオールドロックに浸れます。
ドラマティック度・7 ヒープ度・8 ヴィンテージ度・9 総合・8
Amazonで購入する


Lucifer's Hammer 「Time Is Death」
チリのメタルバンド、ルシファーズ・ハマーの2018年作
2016年にデビューし、3作目となる。IRON MAIDENルーツのメロディックなツインギターに
パワフル過ぎないハイトーンヴォーカルを乗せた、オールドスタイルのエピックメタルサウンド。
いかにも80年代的なフックやリズムチェンジを含む展開に、ほどよくマイナーな味わいを残しているところも
NWOBHMファンにはニンマリだろう。ミドルテンポが主体ながら、楽曲によっては適度な疾走感もあり、
ヘヴィ過ぎないサウンドと全37分というのもいかにもアナログ的。どこ切ってもオールドメタルという強力作。
ドラマティック度・7 メイデン度・8 オールドメタル度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
Amazonで購入する


Nullingroots 「Malady's Black Maw」
アメリカのブラックメタル、ナリングローツの2019年作
2014年にデビューし、5作目。トレモロのギターリフにダミ声ヴォーカルを乗せてブラスト疾走しつつ
緩急ある展開力とともに聴かせる、カスカディアンブラック寄りのサウンド。8〜11分という大曲を主体に
随所に流麗なギターフレーズを盛り込んで、激しさの中に泣きの叙情をたっぷりと描くところは、
KRALLICEなどにも通じるだろう。ほどよくこもり気味の音質も、神秘的でミステリアスな空気感になっていて、
土着性を感じさせる自然派ブラックメタルとしては、Wolves in the Throne Roomあたりのファンにも楽しめるだろう。
ドラマティック度・8 暴虐度・7 神秘的度・8 総合・8
Amazonで購入する


Lesath 「Sacred Ashes」
ロシアのブラックメタル、レサスの2020年作
ATLANTEAN KODEXにも使われた、アルノルト・ベックリンの絵画をあしらったジャケが良い感じだが、
サウンドの方は、アコースティックギターによる叙情的なイントロナンバーから、ノイジーなギターと
ダミ声ヴォーカルを乗せて疾走するプリミィブなブラックメタルを聴かせる。ほどよくスカスカなサウンドとともに、
激しすぎない、暗黒過ぎない叙情性に包まれていて、ミステリアスな雰囲気ながらもわりと聴きやすい。
シンセアレンジを加えた優雅な味わいも覗かせるなど、全体的にはもう少し激しさと迫力が欲しいような。
ドラマティック度・7 暴虐度・7 ミステリアス度・8 総合・7.5
Amazonで購入する


Claret Ash 「The Great Adjudication」
オーストラリアのブラックメタル、クラレット・アッシュの2018年作
2013年にデビューし、4作目となる。トレモロのギターにダミ声で、のっけから暴虐にブラスト疾走しつつ
リズムチェンジを含む緩急ある展開力で、プログレッシブなブラックメタルを聴かせる。
ドラムを含めリズム面での演奏力もしっかりしていて、激しい疾走パートでも軽さはない。
6〜8分という長めの楽曲でも、激しくたたみかけるパートや叙情的なパートなどが同居したスリリングな構築力に
迫力ある音像と荘厳な暗黒性も有している。いくぶんテクニカルデスメタルの雰囲気もある。全75分という力作です。
ドラマティック度・8 暴虐度・8 荘厳度・8 総合・8


 *音楽ページトップへ   *2022年のメタルCDレビューへ