〜PROGRESSIVE ROCK CD REVIEW 2024 by 緑川 とうせい

★2024年に聴いたプログレ(フォーク/トラッド・その他含む)CDレビュー
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4/26
GWはプログレで(83)

Kebnekaise 「Ljus Fran Afrika」
スウェーデンのプログレ・サイケロック、ケブネカイゼの1976年作。邦題「アフリカの灯」
1971年にデビュー、本作は4作目となる。これまで未CD化だった後期の2作が、2022年に紙ジャケCD化されたのは嬉しい。
アフリカ音楽にも影響を受けていたバンドのアフロ志向を全面に出した作品で、ギニア出身のパーカッション奏者が参加している。
1曲目からアフリカンな歌声に面食らうが、2曲目からは、ヴァイオリン鳴り響き、ユルめのギターの旋律とパーカッションのリズムで、土着的でサイケなバンドアンサンブルを展開。
艶やかなヴァイオリンを乗せた軽快なナンバーや、フリーキーで怪しげなサイケなナンバーもあって、優雅な味わいのラスト曲までそれなりに楽しめる。
民族度・8 プログレ度・6 サイケ度・7 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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POPOL ACE 「Stolen From Time」
ノルウェーのプログレバンド、ポポル・エースの1975年作
Popol Vuhの名義で1972年にデビューし、2作を残してから改名しての1作目。長らく廃盤だった作品が、2023年にリマスター再発された。
優美なシンセのイントロで幕を開け、英語によるジェントルなヴォーカルとともに、プログレハード寄りのキャッチーなサウンドを聴かせる。
グルーヴィなベースによるノリのあるリズムと、ピアノやメロトロンを含むやわらかなシンセ、叙情的なギターによる優雅な耳心地。
楽曲は4〜5分前後が主体とコンパクトで、同時期のKAIPADICEに比べるとライトな味わいであるが、北欧らしい涼やかな空気感は随所にしっかりと感じられ、ブリティッシュロック寄りのナンバーや、ラストのポップなサイケ感の大曲まで、マニアでなくても楽しめるだけの好作です。
メロディック度・8 プログレ度・7 北欧度・8 総合・8
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POPOL ACE 「CURLY SOUNDS」
ノルウェーのプログレバンド、ポポル・エースの1978年作
改名後の2作目、アメリカ市場を意識したようなポップな作風となり、メンバーの脱退もあって、バンドは本作で解散する。
前作から交替したヴォーカルの声質もあいまって、1曲目からしてポップなアメリカンロックという趣ながら、メロトロンを使った優美なシンセにはシンフォプログレの名残も感じさせ、キャッチーなコーラスハーモーなど、聴き心地は決して悪くない。
もともと確かな演奏力があるので、音自体の質は高く、プログレを期待しなければ、優雅なAORとして楽しめるだろう。
メロディック度・8 プログレ度・6 北欧度・7 総合・7.5
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KERRS PINK 「Mellom Oss」
ノルウェーのプログレバンド、ケルス・ピンクの1981年作
1980年にデビュー、本作は2作目となる。2023年のリマスター再発盤で聴き直してみる。
メロウなギターにエレピやオルガンを含むシンセ、母国語によるヴォーカルを乗せた、素朴な1曲目は、プログレというにはポップなロック感触であるが、土着的なギターの旋律にオルガンが重なる3曲からはこのバンドらしい哀愁の叙情に包まれる。
CAMELばりの泣きのギターが耳心地よいタイトルナンバーなど、インストパートがほとんどながら、北欧らしい涼やかな空気感ゆったりと聴き入れる。
ラストは17分の大曲で、優美なフルートに男女ヴォーカルも加えて繊細な叙情を描いてゆく。派手さはないが、優しい味わいの好作品です。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 北欧度・9 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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Manticore 「Next Step: Flight 19」
スウェーデンのプログレバンド、マンティコアの2018年作
1994年に1作を残して消えたバンドの、24年ぶりとなる復活の2作目。ジャケにはオッサンになったメンバーの姿が。
メロトロン鳴り響くイントロから、叙情的なギターとヴィンテージなシンセで、優雅なシンフォプログレを展開する。
10分の大曲では、マイルドなヴォーカルを乗せたキャッチーなプログレハード風から、メロウなギターにメロトロンが重なり、GENESISばりの叙情を覗かせる。
YES「Release Release 」、JOHN WETTON「Cold Is The Night 」のカヴァーなども、70年代ブリティッシュロック風のやわらかな叙情を再現している。
オヤジになって復活した、北欧プログレの寡作バンド。2022年には新作となる「Elements」を発表している。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 北欧度・7 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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Ainur 「War of the Jewels」
イタリアのプログレバンド、アイヌルの2021年作
2007年にデビュー、トールキンの「シルマリルの物語」をコンセプトにした作品を作り続けるこのバンド、本作は8年ぶりの5作目。
女性2人、男性1人のヴォーカルに、チェロやヴァイオリン、ヴィオラのストリングストリオ、フルート、女性ホルン奏者を含む編成で、シネマティックな語りを乗せたイントロから幕を上げ、壮大なストーリーを予感させる。
ムーグやオルガンなどきらびやかなシンセにほどよくハードなギター重ね、戦いを思わせるアグレッシブなナンバーから、ヴァイオリンが鳴り響き、女性ヴォーカルによる優美なパートへと、緩急ある流れのファンタジックなシンフォプログレを構築。
アルバム後半は12分におよぶ大曲もあり、全体的にもハードさを増した、AYREONにも通じるロックオペラが楽しめる。デレク・シェリニアン、ロベルト・ティランティがゲスト参加。
ドラマティック度・8 ハードプログ度・8 優雅度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Fabio Zuffanti 「Ghiaccio」
イタリアのミュージシャン、ファビオ・ズファンティの2010年作
FINISTERRE、HOSTSONATEN、LA MASCHERA DI CERAなど、多くのプロジェクトで活躍するミュージシャン、ソロ2作目の本作は、うっすらとしたシンセにイタリア語のマイルドなヴォーカルで、前作のアンビエント路線を深化させたモダンなポストプログレを聴かせる。
わりとポップなビート感のデジタルなナンバーなど、プログレというよりは歌ものモダンロックという趣で、正直退屈なところもあるのだが、他のバンドでさんざんプログレやっているので、ソロくらいはこれでいいのだろう。
ラストの10分の大曲もあくまでしっとりと、アンビエントに夢見心地です。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 モダン度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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DONELLA DEL MONACO 「Venexia De Oro」
イタリアの女性シンガー、ドネラ・デル・モナコの1999年作
OPUS AVANTRAのシンガーである彼女が、詩人アンドレア・ザンゾットの詩を元に、“水の都ヴェニスの在りし日”をテーマにした制作した歌曲集。
パーカッションとアコースティックギターをバックに、オペラティックなドネラの歌声が響き渡る。
ロック色は皆無で、2〜3分前後の歌曲を連ねた、ほとんどクラシックのアリアを鑑賞しているような感触であるが、やわらかなフルートが鳴り響くあたりは、瑞々しいソプラノとともに優雅な耳心地で楽しめる。
クラシカル度・8 プログレ度・1 オペラティック度・8 総合・7 過去作のレビューはこちら
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Favni 「Windswept」
ドイツのプログレ・フォークロック、ファヴニの2016年作
Fauns名義で活動し、2007年、2011年にアルバムを発表、その後改名しての1作目となる
アコースティックギターにオルガンなどのシンセを重ね、美しい女性ヴォーカルに男性Voが絡む、牧歌的なフォークロックを聴かせる。
艶やかなヴィオラの音色や、随所にフルートやクラリネットも加わった優雅な感触に、ときにエレキギターも重なったハードな音の厚みも楽しめる。
2枚組のDisc2後半は、ライブ音源を収録していて、10分前後の大曲を男女Voや優美なシンセ、フルートの音色とともに、ゆったりと描いてゆく。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・8 総合・7.5
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Yenisei 「Last Cruise」
ポーランドのプログレ・ポストロック、イェニセイの2019年作
うっすらとしたシンセに繊細なギターのトーンを乗せて、ポーランドらしい翳りを帯びた叙情に包まれたインストサウンドを聴かせる。
ドラムによるリズムと、ギターのメロウなフレーズ、優美なシンセアレンジで、オールインストながらも流れのある構築力で楽しめ、ときにトレモロを含むギターなど、ほどよい激しさも覗かせるなど、優美なポストブラック風味も感じさせる。
ラストは8分の大曲で、全36分であるが、インストとしてはちょうどよいボリューム。幻想的な逸品です。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 叙情度・8 総合・8
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Lobate Scarp 「Time and Space」
アメリカのプログレバンド、ロバート・スカルプの2013年作
女性チェロ奏者を含む5人編成で、ほどよくハードなギターにオルガンやピアノを含むシンセ、エモーショナルなヴォーカルにチェロやヴィオラの音色も重なり、NEAL MORSEなどにも通じるキャッチーな優雅さとテクニカル性が合わさったサウンドを聴かせる。
のっけから15分という大曲で、緩急ある展開と、ほどよく偏屈なマニア好みの味わいで、初期のSPOCK'S BEARDをルーツに、Cryptic Visionなど、アメリカンな抜けの良いハードプログレが合わさったという作風。
後半は、わりと普通のメロディックロックという雰囲気も強いのだが、ラスト曲は、ドラマティックなシンフォプログレで締めくくる。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 優雅度・7 総合・7.5
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Lobate Scarp
「Spirals And Portals」
アメリカのプログレバンド、ロバート・スカルプの2019年作
新曲3曲に、同曲バージョン違い4曲を収録したEPで、優美なシンセにジェントルなヴォーカルを乗せ、アメリカらしい優雅でキャッチーなシンフォプログレを聴かせる。
テクニカルなリズムチェンジとオールドなプログレ感触の同居という点では、SPOCK'S BEARDにも通じるが、エモーショナルな歌声とともにわりとスタイリッシュな雰囲気も覗かせる。
インストバージョンはどうでもよいが、12弦ギターによるアコースティックアレンジなどは優美な耳心地で、今後のフルアルバムに期待したくなる。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 優雅度・8 総合・7.5


Legacy 「Where We Go」
アメリカのプログレバンド、レガシーの2000年作
本作が唯一の作品で、美麗なシンセワークに伸びやかなヴォーカルを乗せ、メロウギターとともに、YESGENESISをルーツにしたキャッチーなシンフォプログレを聴かせる。
まるで80年代に録音されたようないくぶん古めかしい音質も含めて、アメリカンのプログレらしいマイナー感をかもしだしているが、優美なピアノやシンセの重ねによるシンフォニック性は耳心地よく、ILUVATARや、REALMあたりを知っている方なら楽しめるだろう。
リズムチェンジを含む展開力など、プログレとしてのスリリングな味わいも覗かせる。1作で消えたのが惜しまれる、なかなかの好作品だ。
シンフォニック度・8 プログレ度・8 優美度・8 総合・7.5
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Randy Lopez 「Trec3」
スペインのミュージシャン、ランディ・ロペスの2013年作
Mezquitaのオリジナルメンバーで、Medina Azaharaにも参加したベーシスト&シンガー。
ほどよくハードで叙情的なギターに優美なシンセ、スペイン語によるヴォーカルで、哀愁の叙情に包まれたサウンドを描く。
きらびやかなシンセによるシンフォニックな優雅さと、古き良きスパニッシュ・ハードロックが同居した味わいは、やはりMedina Azaharaを思わせるが、曲によってはMezquitaTRIANAのようなフラメンコロック風味も覗かせる。
メロウな泣きのギターややわらかなシンセワークもセンス良く、アンダルシアの哀愁の空気を描くスパニッシュロックが楽しめる。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 スパニッシュ度・9 総合・8

Seru Giran 「Yo No Quiero Volverme Tan Loco」
アルゼンチンのプログレバンド、セル・ヒランのライブ。2000年作
1978年デビュー、1981年までに4作を残して解散。本作は1981年のライブを2CDに収録。
観客の大歓声からも当時の人気が伝わってくるが、演奏の実力もさすがアルゼンチンを代表するバンド。
軽やかなリズムに、巧みなギターとチャーリー・ガルシアのシンセを重ね、スペイン語のヴォーカルとともに優雅なジャズロック聴かせる。
楽曲は、3〜5分前後の歌もの主体で、プログレ的な部分はさほどないのだが、南米らしい優雅なメロディアス性で、シンフォニックロックとしての魅力も随所に覗かせる。
ライブ演奏・8 プログレ度・7 優雅度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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4/12
プログレの新年度(68)

THE PINEAPPLE THIEF 「Abducted at Birth」
イギリスのポストプログレ、パイナップル・シーフの2017年作
1999年デビュー作、「ABDUCTING THE UNICORN」の、タイトルとジャケを変更したリマスター再発盤。
叙情的なギターにマイルドなヴォーカルを乗せ、モダンなシンセアレンジとともに、浮遊感のあるポストプログレを聴かせる。
現在のサウンドに比べるとリズム的な硬質感は控えめで、メロウなギターの旋律も耳心地よく、エモーショナルな歌声とともに、じっくりと楽しめる。
後半には19分という大曲もあるが、わりと雰囲気モノっぽい淡々とした味わい。
全体的にも、3作目以降に比べて完成度はいまひとつながら、バンドの原点たる方向性は垣間見える。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 叙情度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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THE PINEAPPLE THIEF 「GIVE IT BACK」
イギリスのポストプログレ、パイナップル・シーフの2022年作
いまや、Kscorpe系を代表するバンド、本作は過去の楽曲を現メンバーでリレコーディングした作品で、ギャヴィン・ハリソンの巧みなドラムにブルース・ソードのマイルドなヴォーカルで、モダンでスタイリッシュな歌ものポストプログレを聴かせる。
3〜5分前後の小曲がメインなので、わりと淡々とした作風で、プログレ的な展開力を好む方には物足りないかもしれないが、ほどよい硬質感とともに、このバンドの近年のストレートな作風が好きな方なら普通に楽しめるだろう。限定盤は5.1ch音源収録のブルーレイ付き2枚組。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 叙情度・7 総合・7.5
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Long Earth 「Once Around Sun」
イギリスのプログレバンド、ロング・アースの2020年作
ABEL GANZ関連のメンバーにより結成されたバンドで、2017年にデビューし、2作目となる。
メロウなギターにプログレらしい優美なシンセを重ね、ジェントルなヴォーカルで聴かせる、英国らしい正統派のシンフォプログレ。
YESにも通じる軽快なパートから、GENESIS的な叙情性も覗かせ、キャッチーな味わいと繊細な翳りが同居する。
後半は33分におよぶ四季をテーマにした組曲になっていて、ゆったりとした歌ものパートをメインに、さほど意外性はないが、往年のポンプロック的な優雅なサウンドが楽しめる。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 叙情度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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Voices From The Fuselage 「Odyssey: The Founder Of Dreams」
イギリスのプログレ・ロック、ヴォイセス・フロム・ザ・ファセラージの2018年作
TESSERACTのシンガー、Ashe O'Haraを中心に結成されたバンドで、2015年作の続編となる2作目。
うっすらとしたシンセとピアノに叙情的なギター、マイルドなヴォーカルを乗せた、ポストプログレ風味のサウンドに、ほどよくハードなギターも加わって、Djent的なテクニカル性も覗かせる。
モダンな歌ものエモーショナルロックにオルタナ的な翳りと、ときに優美なシンセによるアレンジにメロウなギターが繊細な叙情を描き出し、どこか中性的なアッシュの歌声は、ゆったりとした叙情ナンバーにもよくマッチしている。
ドラマティック度・7 テクニカル度・7 叙情度・8 総合・8
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NORTH ATLANTIC OSCILLATION 「Third Day」
スコットランドのポストプログレ、ノース・アトランティック・オシレーションの2014年作
2009年にデビューし、3作目となる。エレクトロな感触のシンセアレンジに、やわらかなヴォーカルハーモニーを乗せた作風は前作の延長で、アナログ感とデジタルの同居した耳心地の良い浮遊感に包まれる。
プログレ化したSigur Rosという感じもあるが、ロック寄りのアンサンブルがちゃんとあるので、ときにオルガンやピアノを含む優美なシンセとともに、モダン系プログレとして充分楽しめる。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優美度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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JOHN WETTON & GEOFFREY DOWNES 「ICON ZERO」
ジョン・ウェットンのジェフ・ダウンズのユニット、アイコンの2000/2017年作
1980〜90年代に録音されていた、ICONの先駆け的な音源で、2000年に発表された作品の、ジャケを替えての2017年再発盤。
優美なシンセに味わいのあるウェットンのヴォーカルを乗せた、いかにも80年代スタイルのプログレハードで、ASIAなどにも通じるキャッチーな優雅さと、哀愁を含んだ叙情が交差する。
音質的にはデモ音源的な粗さがあるものの、二人のケミストリーによる、良質のメロディックロックの原点というべき内容である。
メロディック度・8 プログレ度・7 哀愁度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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KOSMOGON 「Massan」
スウェーデンのプログレバンド、ANEKDOTENのNICKLAS BARKERと、ピアニストSOPHIE LINDERによるプロジェクト、コスモゴンの2021年作
25分、22分という大曲2曲の構成で、スウェーデンの森林における夕刻〜夜〜早朝までを表現したというミニマルなインスト作品。
メロトロンやムーグを含むうっすらとしたシンセの重ねに、鳥の鳴き声などが重なり、TANGERINE DREAMにも通じる幻想的なシンセサウンドを展開。
神秘的な幻想性の中に、涼やかな空気感を描くセンスは素晴らしく、単なる雰囲気モノという以上にその雄大な空間性に引き込まれる。
ヴィンテージなアナログシンセにこだわった、スペイシーなシンセミュージックが好きな方は必聴です。
ドラマティック度・6 シンセ度・9 幻想度・9 総合・8

Necromonkey 「Show Me Where It Hertz」
スウェーデンのプログレユニット、ネクロモンキーの2015年作
ANGLAGARDのマティアス・オルソンと、GOSTA BERLINGS SAGAのデヴィッド・ルンドバーグによるユニットで、2013年にデビューし、3作目となる。
エレクトロなシンセとフリーキーなドラムを融合させ、ヴィンテージなアナログ感と電子音楽の無機質感を同居させたという独自の聴き心地。
アナログシンセの重ねによる、シンフォニックな優雅さも覗かせつつ、全体的には媚のないエクスペリメンタルなサウンドで、ほどよくアヴァンギャルドなセンスとともに淡々とした音像が描かれる。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 アヴァンギャル度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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Infringement 「Transition」
ノルウェーのプログレバンド、インフリンジェメントの2017年作
叙情的なギターにシンセを重ね、エモーショナルなヴォーカルを乗せたスタイリッシュなサウンドを聴かせる。
同郷のAirbagなどに通じる翳りを帯びた叙情と、オルガンやメロトロンなどのヴィンテージな感触が同居し、クールな空気感はやはり北欧的だ。
モダンなオルタナ・シンフォというような涼やかな耳心地の一方では、どこかなつかしい土着的な雰囲気もあって、いくぶん唐突な展開などにマイナーな味わいも覗かせる。
楽曲ごとの盛り上がりという点ではやや物足りないが、女性声を加えての10分近い大曲など、クールで知的な新時代の北欧プログレを構築する好作である。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 叙情度・7 総合・7.5

Infringement 「Alienism」
ノルウェーのプログレバンド、インフリンジェメントの2019年作
2作目となる本作も、オルガンを含むシンセをメロウなギターに重ね、味わいのあるヴォーカルとともに、涼やかなシンフォプログレを聴かせる。
叙情的ではあるが決してキャッチーになり過ぎない、どこか醒めたような冷たさを感じさせる点では、モダンなオルタナ感ともいえるだろう。
今作では、10分以上の大曲においての、泣きのギターフレーズでじわじわと盛り上げるところは、シンフォニックロックとしての味わいを強めている。
ラストの16分の大曲も、美麗なシンセワークとギターの重ねで、北欧らしい叙情性を描いており、より優雅な聴き心地の作品に仕上がっている。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 叙情度・8 総合・8
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Kornmo 「Svartisen」
ノルウェーのプログレバンド、コルンモの2017年作
自主制作のデビューアルバムを、2022年にリミックスした再発盤で、優美なピアノに叙情的なギターと、メロトロンやムーグ、オルガンといったヴィンテージなシンセをメインに、涼やかなインストを描いてゆく。
アコースティックを含む牧歌的なギターやアナログ感あるドラムもうるさすぎず、派手な展開などもないので、わりとアンビエントな優しい耳心地でゆったりと楽しめる。
同郷の先輩であるKERRS PINKなどにも通じるが、より70年代志向のスタイルで、北欧らしい翳りを帯びた素朴な幻想性を描く好作品。
ドラマティック度・7 叙情度・8 北欧度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Salva 「Left To Burn」
スウェーデンのプログレバンド、サルヴァの2007年作
2004年にデビューし、2作目。わりとハード寄りのギターに優美なシンセアレンジ、朗々としたヴォーカルを乗せた、キャッチーなノリのプログレハード。
シンフォプログレというよりは、古き良き北欧ハードロックをルーツにした作風で、随所に涼やかな土着性を覗かせつつ、全体的にはわりとストレートな聴き心地。
10分前後の大曲も多いが、母国語の歌声を乗せた哀愁ただよう小曲などもいい味わいで、オルガンを使ったURIAH HEEP風のナンバーなど、楽曲ごとに異なる雰囲気も楽しめる。
これという派手さはないが、哀愁の叙情とヴィンテージな空気が同居した好作です。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 哀愁度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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Xinema 「Different Ways」
スウェーデンのプログレバンド、シネマの2002年作
美麗なシンセとほどよくハードなギターにマイルドなヴォーカルで、ASIAなど、往年のプログレハードに北欧らしい涼やかな空気を加えたキャッチーなサウンド。
カッチリとしたリズム面も含め、のちのBROTHER APEなどにも通じるスタイリッシュなモダンさもあって、優雅なメロディックロックという聴き心地は、A.C.T.あたりのファンにも楽しめる。
随所に、ロイネ・ストルトばりの叙情的なギターフレーズも耳心地よく、プログレ的な緩急はさほどないが、美しいシンセワークとともにゆったりと優美な味わいの好作です。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・8 総合・8
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Aamunkoite
フィンランドのプログレバンド、アームンコイテの2022年作
エレピやオルガンを含むシンセに、母国語による艶めいた女性ヴォーカルを乗せた、優雅でヴィンテージな味わいのサウンド。
サイケ的な浮遊感とシャンソン的なけだるげな情感が合わさり、叙情的なギターや優美なフルートも加わって、北欧らしい涼やかな叙情も覗かせる。
ラスト曲では、女性声の妖しい詠唱のようなパートも入りつつ、プログレらしい緩急ある展開で13分におよぶ大曲を構築。
魔女めいた幻想性に包まれた、夢見心地のユルめの女性声シンフォプログレとしても、のんびりと楽しめる好作品です。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 妖しく優雅度・8 総合・7.5
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Scarlet Thread 「Psykedeelisia Joutsenlauluja」
フィンランドのプログレバンド、スカーレット・スレッドの2003年作
土着的なギターの旋律にオルガンを含むシンセを重ね、艶やかなヴァイオリンが鳴り響く、フォークロック寄りの涼やかなサウンド。
アコースティックギターにフルートの音色が重なる優雅な牧歌性と、エレキギターのメロウな旋律と泣きのヴァイオリンで、オールインストながらも叙情豊かな味わいだ。
ドラムも含めたほどよいロック感触もあるので、わりと起伏のあるアンサンブルとともに、北欧らしい空気感に包まれた土着プログレとして楽しめる。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 北欧度・9 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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3/15
プログレの春近し(53)

Isildurs Bane 「Sagen Om Ringen/指輪物語」
スウェーデンのプログレバンド、イシルドゥルス・バーネの1988/2021年作
1981年のカセット音源を1988年に編集し直したという4作目で、2021年にリマスター、紙ジャケで日本盤がリリースされた。
最初のCD化の際には、1作目「Sagan Om Den Irlandska Algen」とカップリングで収録されていたが、今回はオリジナル版のジャケでの単体の再発。
うっすらとしたシンセとメロウなギターのイントロから、北欧らしい涼やかな幻想性に包まれて、CAMELを思わせる甘美なギターのトーンとともに、優雅なシンフォニックロックを展開する。
やわらかなフルートやアコースティックギターをセンス良く挿入し、1〜4分前後の小曲を主体に、母国語のマイルドなヴォーカルとともに、北欧の土着性を含んだ美しく精細なサウンドが味わえる。
ボーナストラックは前身バンド時代の楽曲をリメイクしたもので、ほどよくキャッチーな聴き心地。
優美度・9 プログレ度・7 北欧度・10 総合・8 過去作のレビューはこちら
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CAIRO 「$@Y (SAY)」
イギリスのプログレバンド、カイロの2016年作
Touchstoneのシンセ奏者を中心にしたバンドで、The Paradox Twinのドラムなどが参加。
ストーリー的な語りから始まり、きらびやかなシンセにハードなギター、女性ヴォーカルに男性Voも絡み、ProgMetal的なテクニカル性も含んだスタイリッシュなサウンドを聴かせる。
3〜4分前後の小曲を主体に、9分の大曲ではクールな硬質感の中に、叙情的なギターにシンセが重なるシンフォニックな感触も覗かせて、ゆったりとした繊細な歌ものナンバーなども、コンセプト的な流れとともに、じっくりと聴かせてくれる。
美しい女性声をメインにしたしっとりとしたナンバーは、MAGENTAにも通じる優美な味わいで楽しめる。男女声モダンシンフォの期待の新鋭です。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 スタイリッシュ度・8 総合・8
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CAIRO 「Nemesis」
イギリスのプログレバンド、カイロの2023年作
7年ぶりとなる2作目で、女性シンガーが交替しているが、サウンドは前作の延長で、いくぶんメタリックなギターにプログレらしいカラフルなシンセワーク、男女ヴォーカルの歌声で、モダンなハードプログレを展開する。
コケティッシュな女性ヴォーカルを乗せたキャッチーなハードロック風味や、シンセをバックにしたしっとりとしたナンバーでは、泣きのギターフレーズとともに優雅なシンフォニックロックが味わえて、わりと振り幅の広い作風。
ラストの8分の大曲は、男女ヴォーカルに美麗なシンセで、ポストプログレ風味の優美な叙情に包まれる。スタイリッシュなシンフォプログレの逸品です。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 叙情度・8 総合・8
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Stuckfish 「Days Of Innocence」
イギリスのプログレバンド、スタックフィッシュの2022年作
2018年にデビューし、3作目。叙情的なギターにプログレらしいシンセを重ね、キャッチーなヴォーカルメロディとともに、英国らしい優美なシンフォプログレを聴かせる。
楽曲は5〜8分前後で、どのナンバーもしっかりとした構築力で、PALLASなどにも通じるウェットな叙情と大人の優雅さに包まれる。
硬質にならず、重厚すぎない耳心地の良さは、時代と逆光するアレンジながらも、派手過ぎないサウンドにどこか落ち着くのも事実。
印象的な盛り上がりなどがもう少しあれば傑作になっただろうが、この質の高い中庸さこそ愛すべきものかもしれない。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 叙情度・8 総合・8
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PORCUPINE TREE 「LIGHTBULB SUN」
イギリスのプログレバンド、ポーキュパイン・トゥリーの2000年作
7作目となる本作は、アコースティックギターにマイルドなヴォーカルを乗せたゆったりとした叙情から、ハードなギターを加えたオルタナ風味も覗かせつつ、翳りを帯びた歌ものポストプログレというサウンドを展開。
優美なピアノやシンセによる繊細なアレンジに、ほどよくオールドな英国ロック感触も織り込んでいて、Marillionあたりにファンにも楽しめるだろう。
13分の大曲では、メロウなギターの旋律にプログレ感触のあるシンセを重ね、後半にはハードなギターを加えてモダンな重厚さが現れる。
明快な盛り上りが薄いので物足りなさはあるが、ラストのしっとりとした叙情ナンバーまで、コンセプト的な流れでも楽しめる好作である。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 薄暗叙情度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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The Spacelords 「Water Planet」
ドイツのサイケロック、スペースローズの2017年作
2010年にデビューして、5作目となる。ギター、ベース、ドラムのトリオ編成で、Schwoisfuasのシンセ奏者がゲスト参加。
11分、11分、19分という大曲3曲の構成で、スペイシーなシンセをギターに重ね、HAWKWINDにも通じるアッパーなサイケロックを聴かせる。
GrobschnittのEROCがマスタリングを手掛けていることもあって、クラウトロック的なユルめの幻想性とともに、随所に叙情的なギターフレーズも覗かせる。
オールインストなので、これという盛り上がりはないのだが、酩酊感のあるサウンドにじっくりと浸れる。
サイケ度・8 プログレ度・7 クラウト度・8 総合・7.5
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NEEDLEPOINT「DIARY OF ROBERT REVERIE」
ノルウェーのジャズロック、ニードルポイントの2018年作
2010年にデビューし、4作目となる。オルガンやクラヴィネットなど、オールドなシンセを軽やかなリズムに乗せ、マイルドなヴォーカルとともに、アナログ感たっぷりのジャズロックを聴かせる。
スカスカなドラムやフリーキーなギターなど、70年代アートロック風の牧歌性を軽妙なアンサンブルで仕立てという作風で、ヴィンテージなサウンドが好きならたまらない。
ヴォーカルやコーラスなども、どこか60〜70年代風の味わいで、随所に北欧らしい涼やかな空気感も覗かせる。
楽曲は3〜4分前後。ユル系であるが演奏はけっこう巧みという、マニア好みのサイケ・ジャズロックを展開する逸品です。
ジャズロ度・7 プログレ度・7 ヴィンテージ・9 総合・8
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Fruitcake 「A Battle A Day....」
ノルウェーのプログレバンド、フルーツケーキの2000年作
1992年にデビューし、6作目。シンセとピアノによる優美なイントロから、メロウなギターの旋律にマイルドなヴォーカルで、北欧らしいシンフォプログレを聴かせる。
KAIPAなどにも通じる土着的な叙情も覗かせつつ、オルガンやメロトロンを含むヴィンテージなシンセとともに、GENESISルーツの幻想的なサウンドが楽しめる。
ほどよくキャッチーな小曲も聴き心地良く、叙情的なギターにクラシカルなシンセを重ねた、PAR LINDHにも通じる優雅なナンバーや、10分を超える大曲は、ゆったりとした流れの中にも、美しいシンセの旋律を盛り込んだ優しい味わい。
全体的に派手さはないが、70年代北欧プログレを受け継いだ、くぐもったような涼やかな空気感に包まれた北欧シンフォの好作品です。
涼やか叙情度・9 プログレ度・7 北欧度・9 総合・8
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REFORM 「REFORMED」
スウェーデンのプログレジャズロック、リフォームの2009年作
巧みなベースとドラムを土台にした軽妙なアンサンブルに、エレピやサックス、メロウなギターが彩りを添える、オールインストのジャズロック。
歌が入らないので、どうしてもBGMになってしまいがちだが、やわらかなギターのトーンなどには、北欧らしい涼やかな叙情性も感じさせ、派手すぎないシンセも含めて耳心地の良いサウンドだ。
全体的にはこれというインパクトや個性はなく、全36分というのも物足りないのだが、優雅な北欧ジャズロックが好きな方はどうぞ。
ジャズロ度・8 プログレ度・7 北欧度・8 総合・7
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Elonkorjuu 「Scumbag Goes to Theatre」
フィンランドのプログレバンド、エロンコルジューの2010年作
1972年にデビュー、78年に2作目を残して消えるも、2004年に復活、本作は2009年のライブを2CDに収録している。
エレピやオルガンを含むシンセに、ブルージーでメロウなギターを重ね、ジャズロック的な軽やかなインストパートとともに、北欧らしい涼やかな土着性も含んだサウンドを描く。
サックスがフリーキーに鳴り響くアダルトなジャズ感触に、やわらかなオルガンが巧みなギターに重なると、北欧版FOCUSというような味わいでも楽しめる。
ヤン・アッカーマンばりの流麗なフレーズを奏でるギターの実力も素晴らしい
後半は、枯れた味わいのヴォーカルも乗せて、70年代ブリティッシュロック的な雰囲気も覗かせる。
ジャズロ度・8 プログレ度・7 ライブ演奏度・8 総合・8
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TAYLORS UNIVERSE WITH KARSTEN VOGEL 「Experimental Health」
デンマークのプログレジャズロック、タイラーズ・ユニヴァースの1998年作
マルチプレイヤーのロビン・タイラーを中心に、1994年にデビューし、3作目となる。
本作はサックス奏者のカーステン・ヴォーゲルを迎えた編成で、優美なシンセ巧みなギターを軽やかなリズムに乗せ、いくぶんアヴァギャルドな感触も含んだスタイル。
随所に叙情的なギターフレーズや、優雅なサックスの音色とともに、先の読めないスリリングな展開もまじえて、まさにプログレッシブなジャズロックが楽しめる。
ラスト曲は、セリフとSEが延々と続き、ウンザリしてきた頃にフリーキーなインプロが現れる。わりとヘンテコなセンスが好きな方はどうぞ。
ジャズロ度・8 プログレ度・8 優雅度・8 総合・7.5
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PRESENT 「C.O.D. Performance」
ベルギーのチェンバーロック、プレザンのライブ。1993年
1993年のスタジオライブ音源で、2本のギターをメインにしたミニマムな編成でのアンサンブルに、怪しいヴォーカルを乗せた即興的な演奏で、静謐な緊張感の中に、フリーキーなエレキギターの旋律が重なり、随所にドラムも加わって、UNIVERS ZEROをルーツにしたミステリアスなチェンバーロックを聴かせる。
後半は25分に及ぶ、インプロヴィゼーションで、ギターのみのゆったりとした叙情から、不穏な空気も覗かせつつ詠唱のような歌声も入って、やがて狂気を帯びた叫びへと。
ロック色はかなり薄めなので、フリーキーな雰囲気モノが楽しめる方へ。
スリリング度・8 ロック度・3 インプロ度・9 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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MANEIGE「LES PORCHES LIVE」
カナダのプログレバンド、マネイジュのライブ作品。2006年作
1975年の未発ライブ音源のCD化で、2nd「Les Porches」全曲に、1stの楽曲や未発表の大曲も演奏した発掘ライブ作品。
「サックスとクラリネットの冒険」と題された16分の大曲は、優美なピアノを軽やかなリズムに乗せ、クラリネットとサックスが優雅に鳴り響く、クラシカルなチェンバーロックを展開。
年代を思えば音質もとても良好で、巧みなドラムとベースを軸にした、ライブならではの躍動的なアンサンブルが楽しめる。、
フルートとクラリネット、サックスが有機的に絡む即興的な未発曲や、2nd収録の17分の大曲では、クラシカルなピアノにフルートが絡み、叙情的なギターの旋律とともに、優美なサウンドを聴かせてくれる。
バンドの全盛期の貴重なライブ音源としてファンなら必聴でしょう。
クラシカル度・9 プログレ度・7 ライブ演奏・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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AFTER THE FALL 「In A Safe Place」
アメリカのプログレバンド、アフター・ザ・フォールの1997年作
G&Vo、Key、Drというトリオ編成で、きらびやかなシンセワークに叙情的なギターを重ね、ジェントルな味わいのヴォーカルとともに、優雅なシンフォプログレを聴かせる。
アメリカらしいキャッチーな抜けの良さは、のちのNEAL MORSEなどにも通じるが、こちらはまだ90年代スタイルのマイナーな叙情性を残している。
一方では、軽やかなインストナンバーは、HAPPY THE MANばりの優雅で軽妙な味わい…といったら言い過ぎか。
ラストは13分の大曲で、優美なシンセとメロウで扇情的なギターが重なり、プログレらしい緩急ある展開でじっくりと楽しめる。
ドラマティック度・7 プログレ度・8 優雅度・8 総合・7.5
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日本バンドもよいもんです(39)

秋葉龍「Cities in People」
日本のミュージシャン、あきば・たつの2023年作
2021年作に続く2作目で、ビートルズを思わせるオールドな雰囲気の序曲から、軽快なリズムにオルガンやムーグなどのヴィンテージなシンセとギターを重ね、カンタベリー・ジャズロック風の優雅なサウンドを展開。
英語によるジェントルなヴォーカルもあいまって、ほとんど70年代英国のプログレバンドのような聴き心地で、Gentle Giantの軽妙さに、Jethro Tullのような牧歌性も感じさせつつ、GENESISばりの優美な叙情に包まれる。
10分前後の大曲を、緩急あるインストパートとともに構築するセンスも見事で、歌入りの部分でも巧みな変則リズムで、偏屈ながらも優雅な味わいは、まさにジェントル・ジャイアント。
かと思えば、フルートなどアコースティックを含む土着的な歌もの感はジェスロ・タルと、往年の英国プログレのリスナーならニヤリとなること請け合い。
23分の大曲は、メロトロンに叙情的なギターでじわじわ暖めつつ、軽やかなリズム展開のプログレ・ジャズロックを融合させるという抜群のアレンジ。まさに期待のアーティストです。
ヴィンテージ度・8 プログレ度・8 優雅度・9 総合・8.5
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MARGE LITCH  「Fantasien / ファンタージェン」
日本のハードプログレバンド、マージュ・リッチの1991年作
のちのALHAMBRAへとつながるメンバーが在籍していたバンドで、1991年に自主制作で録音されたデビュー作が、2023年にリマスター再発された。
幻想的なファンタジーストーリーに基づくコンセプト作で、優美なシンセと叙情的なギター、伸びやかな女性ヴォーカルとともに、展開力のあるシンフォニック・ハードが味わえる。
1998年のリメイクバージョンに比べると、デモ音源のようなこもり気味の音質など、まだアマチュア臭さが感じられるが、若き日の世良純子の清純な歌声や、変拍子を多用したテクニカルな構築など、バンド黎明期のきらめきが随所に感じられる。
物語の大団円を思わせるラストの「ファンタージェン」まで、強固な幻想の美学に包まれた世界観は、NOVELAに始まる日本プログレのロマンを継承したスタイルであった。
ドラマティック度・8 ファンタジック度・8 女性Vo度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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ACB(K) 「SIBLINGS / シブリングズ」
日本のプログレバンド、ACB(K)こと、あらんちゃんバンド(仮)の2022年作
OUTER LIMITSの荒牧隆(子)を中心としたバンドで、オルガンやメロトロンを含むシンセに、男女ヴォーカルの歌声で、ドラマティックなシンフォプログレを聴かせる。
荒牧のジェントルな歌声とほどよくハードなギターにプログレらしいシンセ、月本美香(那由他計画)の優美なヴォーカルが重なって、ジャケのイメージとは異なる優雅で濃密なサウンドが楽しめる。
「古事記」における「衣通姫伝説」をコンセプトにした37分の組曲では、艶やかなヴァイオリンも鳴り響き、男女Voで聴かせるロックオペラ的なスケール感と、上代日本語と万葉仮名を用いた牧歌的な情緒も覗かせながら、かつてのMARGE LITCHにも通じるような幻想的ハードプログレを繰り広げる。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 優雅度・8 総合・8
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ALL IMAGES BLAZING 「CHANGE!」
日本のプログレ・ハードロック、オール・イメージズ・ブレイジングの2022年作
2015年にデビュー、4作目となる本作は、ゴダイゴのスティーブ・フォックスがマスタリングを担当。
軽やかなリズムにオルガンを含む優美なシンセと叙情的なギターを重ね、伸びやかな女性ヴォーカルとともに優雅でキャッチーなハードプログレを展開する。
英語歌詞をメインにしたヴォーカルや、ポップなメロディアス性と、適度にテクニカルなアンサンブル、さらにはサックスなどを加えたアダルトなジャズ感触など、楽曲ごとに彩りの異なるサウンドで、これまで以上にアレンジの幅が広がっている。
ProgMetal寄りのナンバーも、日本らしいやわらかなメロディアス性に包まれていて、ラストの8分のナンバーなども優雅で軽妙な真骨頂。
全体的にも聴きやすく、それでいて玄人好みのセンスが味わえるという見事な好作品である。
メロディック度・8 プログレ度・7 優雅度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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XOXO EXTREME 「Le Carnaval des animaux 動物学的大幻想曲」
日本のプログレ・アイドルグループ、キス・アンド・ハグ・エクストリームの2021年作
2016年にシングルデビュー、5人編成となって、2作目のフルアルバムとなる。わりとハードなギターにシンセを重ね、英語歌詞のヴォーカルによる1曲目は、キャッチーなロック感触で普通に楽しめ、続く2曲目はデジタルでポップなキュートさと、オルガンなどのヴィンテージなアレンジが同居してニヤり。
8パートに分かれた組曲では、フォルクローレ風の哀愁と歌謡ロック風味が融合し、インストパートも含めた緩急ある展開力でなかなか楽しめる。
過去曲のニューバージョンなども含め、いかにもアイドル的なポップなナンバーや、フルートやオルガンなどを使ったオールドロック風味など、楽曲ごとに味があるのだが、録音やミックスが曲ごとに異なるのもやや気になるところ。
個人的には「虎とアリス」のようなきらびやかでノリの良いナンバーも気に入った。方向性としては面白いので、さらにインパクトのある攻めた曲を増やしていってほしい。
アイドル度・8 プログレ度・7 エキセントリック度・8 総合・8
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e:cho「Carpe diem」
日本の女性声ロックバンド、エコーの2018年作
2007年にデビューし、7作目となる。適度にハードなギターにシンセアレンジを重ね、日本語歌詞による伸びやかな女性ヴォーカルで、優雅でキャッチーなJ-ROCKを聴かせる。
ときにハードロック的な部分や、プログレッシブな感触もほのかに覗かせつつ、あくまでメジャー感あるストレートな作風で、一般のJ-POP系リスナーでも普通に楽しめるだろう。
サビでの爽快なメロディアス性や、モダンなビート感によるポップな要素など、正直、メタルやプログレリスナーにはどっちつかずのサウンドなのだが、表現力あるヴォーカル嬢のおかげでそこそこ心地よく聴けてしまう。3〜4分前後が主体で、全35分というのは少し物足りないか。
メロディック度・8 キャッチー度・8 女性Vo度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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Tadashi Goto 「Innervisions」
日本のミュージシャン、後藤忠司の2005年作
ソロとしては2005年に続く2作目で、元MEGADETHのクリス・ポーランド、KING CRIMSONのトニー・レヴィン、KING'S Xのタイ・テイバー、Poverty's No Crimeのマルミ・アーレンズ、THE NEAL MORSE BANDのランディ・ジョージ、元NELSONのブレッド・ガースド、Blue Murderのトニー・フランクリンなどが参加、
メタリックなギターにきらびやかなシンセを重ね、打ち込みのドラムとともに、テクニカルなインストのメタルフュージョンを聴かせる。
クリス・ポーランドのギターソロはメタル寄りであるが、キーボードをメインにしたナンバーは、優雅なシンフォニック性に包まれたり、アヴァンギャルドになったりと、楽曲ごとに違った顔を見せる。
トニー・レヴィンが参加したジャズタッチのナンバーや、テクニカルメタル風味など、つかみどころのない内容であるが、ゲストを活かすソロ作という点では、デレク・シェリニアに近いセンスも感じる。
ドラマティック度・7 テクニカル度・8 優雅度・8 総合・7.5
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Neal Morse Band  「Innocence & Danger」
ニール・モーズ・バンドの2021年作
盟友、マイク・ポートノイに、ランディ・ジョージ、エリック・ジレット、ビル・ヒューバウアーというおなじみの編成で、Disc1を「Innocence」、Disc2を「Danger」というコンセプトで仕立てた2枚組作品。
ほどよいハードなギターときらびやかなシンセ、ジェントルなヴォーカルにキャッチーなコーラスハーモニーで描かれるサウンドは、エリックがメインヴォーカルをとるオールドな味わいのポップなロックナンバーなど、全体的に肩の力の抜けた優雅な聴き心地ながら、ラストはじわじわと盛り上げてゆく。
Disc2の方は、19分、31分という大曲2曲の構成で、いかにもニール・モーズらしいドラマティックな構築力で、TRANSATRANTICにも通じる緩急ある流れで、壮麗なシンフォプログレが楽しめる。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 壮大度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Francis Dunnery 「Live in Japan」
IT BITESのフランシス・ダナリーのライブ。2018年作
2016年の来日公園を2CDに収録。セッションメンバーを主体にしたバンド編成で、ECHOLYNのメンバーでもあるブレッド・カルがKEY&Gで参加している。
5人編成のバンドの演奏力も申し分なく、ライブらしい臨場感を感じさせる音質もGoodで、なにより、かつてのIT BITESのナンバーが、フランシスのヴォーカルで再び甦るのだから、ファンには感動もひとしおだろう。
キャツチーな代表曲“Yellow Christian”や、3rdからの“Underneath Your Pillow”あたりも、ツインギターとキーボードの重ねで厚みのあるアレンジになっていて、1st収録の“You'll Never Go To Heaven”も優雅な耳心地で楽しめる。
Disc2では優雅な叙情美の“Still Too Young To Remember”、そしてラストは、大曲“Once Around The World”で感動的に締めくくる。
スタジオアルバム、「Vampires」を気に入った方は必聴のライブだろう。
ライブ演奏・8 音質・8 イット・バイツ度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Sophya Baccini's Aradia  「Runnin With The Wolves」
イタリアの女性シンガー、ソフィア・バッチーニのプロジェクト、アラディアの2023年作
今作は、ヴァイオリンを含む、女性6人のバンド編成で、うっすらとしたシンセに艶めいた女性ヴォーカルを乗せ、ヴァイオリンも鳴り響く、クラシカルなシンフォニックロックを聴かせる。
アラディアの名のように、魔女めいた妖しさと、ヴァイオリンが鳴り響く優雅さの同居は、初期のCurved Airにも通じる雰囲気で、ソフィアさんの歌声もどことなくソーニャ・クリスティーナっぽかったりする。
優美なピアノや、サックスが鳴り響くアダルトな雰囲気とともに、ヴィンテージな女性声ものとしてもしっとりと楽しめる好作品です。
クラシカル度・8 プログレ度・7 妖しさ度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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BERNARDO LANZETTI 「HORIZONTAL RAIN」
イタリアのミュージシャン、ベルナルド・ランゼッティの2021年作
Acqua FragileやPFMで活躍したシンガーで、本作にはデイヴィッド・クロス、テヴィッド・ジャクソン、トニー・フランクリン、トニー・レヴィン、デレク・シェリニアンなどがゲスト参加。
叙情的なギターにうっすらとしたシンセを重ね、エモーショナルなヴォーカルを乗せて、オールドな味わいのプログレハード的サウンドを聴かせる。
サックスが鳴り響く大人のジャズロック風味やサイケなポップ性も覗かせつつ、シアトリカルな歌声が楽曲を濃密にしていて、歌詞は英語のはずなのに、やはりイタリア的な雰囲気になる。
全体的にはプログレな要素はさほどないのだが、シンセやストリングスのアレンジなど、曲の振り幅の大きさでわりと楽しめる歌もの好作。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 イタリア度・8 総合・7.5
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CORAL CAVES 「MITOPOIESI」
イタリアのプログレバンド、コーラル・ケイヴスの2008年作
ムーグやオルガンなどのヴィンテージなシンセに、イタリア語による野太いヴォーカルを乗せ、叙情的なギターとともに聴かせるシンフォプログレサウンド。
70年代ルーツの牧歌的な素朴さは、LOCANDA DELLE FATEあたりを思わせるところもあるが、そこまで感動的ではなく、あくまでマイナー系シンフォの香りに包まれている。
曲によってはフルートも加え、泣きのギターとともに繊細な叙情美を描いていて、ジャケはいかにもB級臭いのだが、シンフォ好きにはなかなか楽しめるのである。
ドラマティック度・8 叙情度・8 イタリア度・8 総合・7.5
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S.O.T.E.(SONGS OF THE EXILE) 「REASONS」
オランダのハードプログレ、ソングス・オブ・ザ・エグザイルの、2008年作
G&Vo、B、Drのトリオ編成で、2000年にデビューし、3作目となる。一人の老人の過去の人生の分岐点をコンセプトにした作品で、適度にハードなギターにシンセを重ね、ラブリエばりの伸びのあるハイトーンヴォーカルとともに、翳りを帯びた重厚なサウンドを展開する。
随所に叙情的なギターのフレーズも覗かせつつ、全体的にはテクニカルな派手さはさほどなく、わりとどっしりとした聴き心地。
ラストは12分におよぶ大曲で、ダークなハードプログレという雰囲気に包まれる。全78分と長いわりに聴きどころが少ないというのが正直な感想。
ドラマティック度・7 テクニカル度・7 重厚度・8 総合・7
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世界のプログレ聴きましょう(26)

HFMC 「We Are the Truth」
THE FLOWER KINGSのハッセ・フレベリ率いる、Hasse Froberg & Musical Companionの2021年作
4作目となる本作も、オルガンやムーグなどのヴィンテージなシンセに、味わいのあるハッセの歌声、メロウなギターとともに、優雅なシンフォプログレを構築。
12分という大曲では、ゆったりとした叙情性を含ませつつ、ゆるやかに盛り上げてゆく展開力は、フラワー・キングスのファンにも大いに楽しめるだろう。
ラストも10分超の大曲で、叙情的なギターにオルガンが重なり、ほどよくキャッチーなノリも見せながら、やわらかな大人のプログレを描いてゆく。
全体的に意外性は薄いのだが、北欧プログレやフラキン好きには安心の内容です。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 フラキン度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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The Backstage 「Isolation」
スウェーデン&イギリスのメンバーによるプログレジャズロック、バックステージの2020年作
スティーヴ・ハケットのバンドでのツアーに参加した、ヨナス・レインゴールド、ロヴ・タウンゼント、クレイグ・ブランデル(元FROST*)が、リハーサルとジャムセッションをへて結成したバンドで、70年代風のジャズロック/フュージョンを指向した作品。ゲストに、スティーヴ・ハケット、ロイネ・ストルト、アンディ・ティリソン、パット・マステロット、テオ・トラヴィス、トム・ブリスリン、マルコ・ミンネマン、ニックベッグスという豪華メンバーが参加。
軽やかなリズムにサックスが鳴り響き、巧みなベースとともに軽妙なジャズロックを聴かせ、オルガンやエレピなどのシンセも加わって、プログレらしさも覗かせる。
オールインストながら各自の演奏力はさすがで、優雅な大人のアンサンブルが楽しめる好作です。
ドラマティック度・7 ジャズロ度・9 優雅度・8 総合・8
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LALLE LARSSON TRIO 「Ashen Lights」
スウェーデンのジャズロック、ラレ・ラーション・トリオの2018年作/邦題「アシェン光の神秘
KARMAKANICなどで活躍するシンセ奏者、ラレ・ラーション率いるユニットで、ベースはTHE FLOWER KINGSのヨナス・レインゴールド、ドラムはヴァレ・ヴァールグレンが参加。
エレピを含む優美なシンセを軽やかなリズムに乗せたカンタベリー風のジャズロックから、シンセをメインにしたアンビエントなナンバーや、ヨナスの巧みなベースプレイを盛り込んだ大人のジャズ風味など、玄人好みのサウンドが味わえる。
空間性を活かすような、ラレの鍵盤さばきも涼やかでセンスが良く、うるさすぎないライブ感のあるドラムとともに、単なる技巧派ジャズロックとは異なる、あくまで優雅な聴き心地である。
ドラマティック度・7 ジャズロ度・8 優雅度・9 総合・8
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GALASPHERE 347
イギリス、ノルウェー、スウェーデンの混成バンド、ガラスフィアー347の2018年作
Henry Foolのステファン・ベネットを中心に、White Willowなどで活躍する、ヤコブ・ホルム・ルッポ、マティアス・オルソン、フルート奏者、ケティル・ヴェストラム・エイナーセンの4人編成で、優美なシンセにマイルドなヴォーカルを乗せ、繊細な叙情に包まれたポストプログレ風味もある作風。
10分、15分、15分という大曲3曲の構成で、ムーグやオルガン、メロトロンなどのヴィンテージなシンセとフルートも鳴り響く、北欧らしい涼やかな空気感で、シンフォプログレとしてのキャッチーな優雅さも覗かせる。
ポストプログレ寄りの歌もの感と、オールドなプログレ感触が同居した、まさに、White WillowHenry Foolが合体したような味わいの逸品だ。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 涼やかな叙情度・8 総合・8
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Arttu Takalo 「Dark. Dark. Dark.」
フィンランドのアーティスト、アトゥ・タカロのソロ、2006年作
XLのメンバーとして活躍したヴィブラフォン奏者で、ソロとしては3作目。ドラム、ギター、ベースを含むバンド編成に、優美なシンセとMIDIヴァイブを重ね、きらびやかなインストサウンドを聴かせる。
ギターやドラムなどは、わりとロック感触が強いので一般リスナーにも聴きやすく、優しいヴィブラフォンの響きも耳に心地よい。
楽曲は3〜5分前後が主体であるが、叙情的なギターとシンセ、MIDIヴァイヴを重ねたラストナンバーまで、優雅で爽やかな味わいだ。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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Wired Ways
ドイツのプログレバンド、ワイアード・ウェイズの2022年作
マイルドなヴォーカルとコーラスハーモニーでビートルズを思わせるキャッチーな味わいと、サイケなユルさが耳に心地よいサウンド。
叙情的なギターの旋律やピアノを含むシンセ、曲によってはブラスやストリングスのアレンジも加わって、単なるポップロックではないプログレ寄りの感触が良いですね。
ドラマティックな歌メロで盛り上げるところは、NEAL MORSEなどに通じる部分もあったり、オルガンを使ったヴィンテージな英国ロック風味に、ストリングスを重ねたシンフォニックな聴き心地もある。ポップな優しさとプログレの同居という点では、STACKRIDGEなどのファンにもお薦めの好作です。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 ヴィンテージ度・8 総合・8
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Inventions 「Logica」
オランダのミュージシャン、CHRISのプロジェクト、インヴェンションズの2019年作
ストリングスによる壮麗なイントロから、きらきらとしたシンセにやわらかなフルートの音色、ナレーションによる語りを乗せた、映画サントラ的なサウンドを展開。
ノイジーなギターや、テオ・トラヴィスが参加してフリーキーにサックスが鳴り響く、インプロ的な要素も盛り込みつつ、キャッチーな歌ものにもってゆくセンスはさすがというところ。
ストリングスが加わってのシンフォニックなアレンジや、ハケットばりの泣きのギターで聴かせる、GENESIS風の叙情ナンバーなども味わいがあり、モダンになり過ぎないプログレ感触が良いですな。
ラストの大曲は、ストリングスを含むクラシカルなアレンジで、翳りを帯びた物悲しい世界観を描いてゆく。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・8 総合・8
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MADELGAIRE 「(IM)PATIENCE」
ベルギーのプログレバンド、マデルガイレの2010年作
叙情的なギターにプログレらしい優美なシンセワーク、エモーショナルなヴォーカルを乗せた、90年代ルーツのシンフォプログレ。
繊細なアコースティックギターのパートも含みつつ、ムーグやメロトロンなどのヴィンテージな味わいとともに、リリカルなサウンドを聴かせる。
10分を超える大曲も、緩急ある展開力と、フランス語を含む優雅なヴォーカルに優しいメロディアス性で、じわじわと耳心地のよさが広がってゆく。
ほどよくスリリングで、ヨーロピアンな翳りを含んだドラマ性を描く。オールドスタイルのシンフォニックロックが好きな方は必聴の出来ですな。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 優雅な叙情度・9 総合・8
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STREGA TRA NOI 「CORRELAZIONI」
イタリアのプログレバンド、ストレガ・トラ・ノイの2023年作
2017年にデビューし、2作目。ピアノやオルガンなどのシンセにイタリア語による年季を感じる女性ヴォーカルで、キャッチーな歌ものサウンドを聴かせる。
70年代ルーツのイタリアンポップ的な艶めいた雰囲気に包まれて、シャンソン風のナンバーからゆったりとした叙情曲なども味わいがある。
楽曲は3〜4前後で、プログレ的な展開はさほどないのだが、曲によってはストリングスも加わったゴージャスなアレンジや、ムーグシンセなどのヴィンテージな味わいも楽しめる。
キャッチー度・8 プログレ度・7 女性Vo度・7 総合・7.5


GALLILEOUS 「FOSFOROS」
ポーランドのストーナーロック、ガリエオスの2021年作
2008年にデビューし、6作目。ゆったりとしたリズムに重すぎなギター、中性的な女性ヴォーカルを乗せて、スペイシーな浮遊感に包まれたサウンドを描く。
ブルージーな味わいのギターに、オルガンなどのシンセもうっすらと重なり、ストレートながらも厚みのあるアンサンブルは、キャリアのあるバンドらしい。
ゴーレムやフランケンシュタイン、透明人間、化け猫、バシリスクなど、空想の怪人、怪物をテーマにしているのも興味深く、どこか神秘的な世界観を感じさせる。
紅一点、Anna嬢の歌声は、さほどフェミニンではないので、女性声ロックが苦手な方でも普通に楽しめそう。
ラスト曲では、母国語による歌声とともに、どっしりとしたドゥームロックを聴かせる。
ドラマティック度・7 ヴィンテージ度・8 女性Vo度・7 総合・8

After... 「Hideout」
ポーランドのプログレバンド、アフターの2008年作
QUIDAMのベースが在籍するバンドで、2005年にデビューし、2作目となる。叙情的なギターにシンセを重ね、マイルドなヴォーカルとともに、ほどよくノリのあるロック感触に東欧らしい翳りが同居したサウンドを聴かせる。
随所にオルタナ風のハードさも含みつつ、優雅なピアノやオルガンを含むシンセなど、シンフォニックロックの要素もあるので、わりと聴きやすい。
全体的には、もう少し明快な盛り上がりが欲しいのだが、ラストは11分の大曲で、モダンなハードプログレ的な感触で楽しめる。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 翳りと叙情度・7 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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FARMHOUSE ODYSSEY
アメリカのプログレバンド、ファームハウス・オデッセイの2015年作
のっけから12分の大曲で、アコースティック含む叙情的なギターにピアノを含むやわらかなシンセを重ね、軽やかなアンサンブルとマイルドなヴォーカルで、優雅でキャッチーなサウンドを構築する。
オルガンやメロトロンといったシンセによるヴィンテージな味わいに、ECHOLYNなどに通じる軽妙なメロディアス性といくぶん偏狭な展開力で、なかなか玄人好みの聴き心地だ。
巧みなドラムに流麗なギタープレイを乗せて、ジャズロック的でもあるテクニカル性もよろしく、インストパートも充実。
ラストの10分の大曲も、プログレらしさとキャッチーな優雅さに包まれて爽快に幕を閉じる。なかなか大穴的な好作品です。
ドラマティック度・7 プログレ度・8 軽妙度・9 総合・8
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Hermetic Science 「Prophesies」
アメリカのシンフォニックロック、ハーメティック・サイエンスの1999年作
音楽大学の教授でもあるシンセ奏者、エド・マッキャンによるプロジェクトで、1曲目はヴィヴラフォンやマリンバの優雅な響きに、リコーダーの音色とムーグシンセが重なり、牧歌的なサウンドを描く。これがRUSHのカヴァーとは気づかない。笑
2曲目以降はオリジナルで、軽妙なアンサンブルに鳴り響くヴィブラフォンやリコーダーがメインで、シンフォニックというにはどこか煮え切らないインストサウンドを展開。
ピアノによる小曲から、後半は、9分、8分という大曲が続き、クラシカルなピアノやオルガンとともに、どこかエキセントリックなインストを聴かせる。
ラストは、EL&P「タルカス」のカヴァーのライブ音源で、ピアノをメインにしたクラシカルなアレンジで楽しめる。
クラシカル度・7 プログレ度・7 優雅度・7 総合・7

SONUS UMBRA 「A SKY FULL OF GHOSTS」
メキシコ出身のプログレバンド、ソナス・アンブラの2020年作
200年にデビューし、6作目となる。アコースティックギターにオルガンを重ね、チェロやフルートが鳴り響き、マイルドなヴォーカルを加えた哀愁の叙情と、テクニカルなリズムにヘヴィなギターを乗せたProgMetalの質感が同居。
リズムチェンジによる巧みな展開力でスリリングなサウンドを描きつつ、フルートやアコギが優雅な叙情をかもしだす。
物悲しいチェロを効果的に用いたメランコリックなシンフォナンバーや、20分という大曲では、妖しくスペイシーなサイケプログレ風味に包まれる。
優雅と重厚が行き来する、キャリアのあるバンドらしい堂々たる力作に仕上がっている。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 叙情度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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プログレで新年おめでとうございます(12)

Big Big Train 「Welcome To The Plannet」
イギリスのプログレバンド、ビッグ・ビッグ・トレインの2022年作
前作から、わずか半年で完成した作品で、ジャケからは、コロナ禍における人類の団結への希望が伺われる。
女性シンセ奏者のカーリー・ブライアント、Mr.So & Soのギター、デイヴ・フォスターを順メンバーに迎えた編成で、優美なシンセに叙情的なギター、マイルドなヴォーカルを重ね、ストリングスやブラスを加えたゴージャスなアレンジで、優雅なシンフォプログレを聴かせる。
ニック・ディヴァージリオの安定感あるドラムや、オルガン、メロトロンにギターもこなすリカルド・ショブロムの活躍ぶりもさすがで、GENESISを思わせる繊細な叙情性や英国らしい牧歌性に包まれる。
ヴィンテージをリスペクトしつつも、現在形のプログレを構築する傑作。本作を遺して、Voデヴィッド・ロングドンが急逝。
ドラマティック度・8 叙情度・8 優雅度・9 総合・8.5 過去作のレビューはこちら
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Kite Parade 「The Way Home」
イギリスのプログレユニット、カイト・パレードの2022年作
マルチミュージシャン、アンディ・フォスターによるプロジェクトで、BIG BIG TRAINのニック・ディ・ヴァージリオがドラムで参加。
オールドなプログレ感触のシンセにジェントルなヴォーカルで、IT BITESを思わせるキャッチーなプログレハードを聴かせる。
80年代ルーツの優美なポップ性と、ほどよくモダンなスタイリッシュ性が同居した、メロディックロックとしても楽しめ、きらびやかなシンセワークが優雅なシンフォニック性となっていて、耳心地のよい爽快な味わいだ。
古き良きプログレをスタイリッシュに昇華している点では、BIG BIG TRAINなどのファンにもお薦め。
ラストは14分という大曲で、サックスも加わった大人の叙情と、ドラマティックな構築力でじわりと盛り上げる。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 優雅度・8 総合・8
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Banco del Mutuo Soccorso 「Orlando: Le Forme dell'Amore」
イタリアのプログレバンド、バンコ・デル・ムトゥオ・ソッコルソの2022年作
フランチェスコ・ジャコモの死を乗り越えて、新生バンコとしての2作目となる。
アコースティックを含む叙情的なギターにクラシカルなピアノを重ね、前作から加入のトニー・ダレッシオのイタリア語のエモーショナルなヴォーカルを乗せて、大人の味わいに包まれた優雅なサウンドを描きつつ、プログレらしいスリリングな展開力も覗かせる。
オルガンを使ったオールドな味わいと、ほどよくスタイリッシュなモダンさも同居させた作風は、ただのベテランではない、バンドとしての深化を感じさせる。
ピアノやストリングスによるクラシカルなアレンジとともに、巧みな演奏力と繊細な叙情が同居したサウンドは、時代が変わってもやはりバンコである。11分の優美な大曲も含めて、全76分の見事な傑作だ。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 優雅度・9 総合・8.5 過去作のレビューはこちら
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Il Buco Del Baco 「Sotto Il Segno Della Lampreda」
イタリアのプログレバンド、イル・ブコ・デル・バコの2021年作
巨大な猛獣「Great Lampreda」との戦いを描くコンセプト作で、ムーグやオルガンなどのヴィンテージな鍵盤に、イタリア語によるヴォーカルを乗せ、古き良き感触の優雅なシンフォニックロックを聴かせる。
派手すぎず盛り上がり過ぎないサウンドは、いかにも70年代ルーツのイタリアンロックの趣で、優美なフルートの音色や情感的な表現力ある歌声とともに、繊細にして幻想的な味わいだ。

全32分という短さも、まるで70年代のアルバムのようだ
ドラマティック度・8 プログレ度・7 優雅度・8 総合・8
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IL SOGNO DI RUBIK 「TENTACLES AND MIRACLES」
イタリアのプログレバンド、イル・ソグノ・ディ・ルビクの2020年作
メロトロンなどの優美なシンセにトロンボーンなどのブラスが鳴り響き、英語歌詞のヴォーカルを乗せ、エキセントリックな雰囲気に包まれたシンフォニックロックを聴かせる。
サイケデリックでヘンテコな展開とアコースティック含む叙情が交差し、ときにヘヴィなギターを加えた重厚な味わいで、アヴァンギャルドなハードプログレを描いてゆく。
9分を超える大曲では、語り上げるようなシアトリカルな歌声とともに濃密なドラマ性を構築。かなりヘンテコという点では、かつてのGARDEN WALLなどに通じる部分も感じる。
ラスト曲は、普通に優雅で軽妙なインストパートから、語りが加わって、混沌とした展開の中にも、爽やかな叙情を覗かせる。このごった煮センスはある意味すごい。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 ヘンテコ度・8 総合・8
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Insomnia 「Brainshock」
イタリアのプログレバンド、インソムニアの2019年作
優美なシンセに叙情的なギターの旋律、マイルドなヴォーカルとともに、GENESISルーツのシンフォプログレを聴かせる。
90年代ルーツのMUSEAレーベルなどマイナー系シンフォのような翳りを帯びた空気感とともに、8〜9分前後の大曲をじっくりと構築する。
やわらかなフルートの音色に扇情的な泣きのギターがかぶさるあたりは、この手のシンフォ好きにはニンマリである。
PALLASなどを思わせる、軽快なポンプロック調のナンバーや、ゆったりとした叙情のシンフォニックロックまで、どこを切っても優雅なメロディアス性に包まれている。
イタリアというよりは、PENDRAGONなどの英国シンフォが好きな方にお薦め。これぞ王道のシンフォニックロックいう逸品です。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 叙情度・9 総合・8
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Sunchild 「Exotic Creatures & A Stolen Dream」
ウクライナのシンフォニックロック、サンチャイルドの2023年作
Karfagenでも活動する、マルチミュージシャン、アントニー・カルーギン率いるもうひとつのバンドの8作目。
26分、14分という2つの大曲からなる構成で、軽やかなリズムに美しいシンセワークとメロウなギターを乗せ、優雅でファンタジックなシンフォプログレを構築する。
やわらかなヴォーカルメロディと泣きのギターフレーズは、MOON SAFARIにも通じる優しい耳心地で、キャッチーでありながらもダイナミックな展開力が光る。
女性シンガーを加えての優美な叙情性の組曲「Northern Skies」は、うっとりとなる幻想的な味わい。
ボーナスには大曲のシングルエディションなどを収録。濃縮されたアレンジでこちらも見事な出来です。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 優美度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Solaris 「Nostradamus 2.0 - Returnity」
ハンガリーのプログレバンド、ソラリスの2020年作
1984年デビュー、ハンガリーを代表するバンドのひとつ。本作は1999年作「ノストラダムス」の続編で、通作5作目となる。
「なされなかった予言」をコンセプトに、6パートに分かれた23分の組曲で幕を開け、優美なピアノに壮麗なシンセと男女コーラス、涼やかなフルートの音色とともに、優雅にしてどこか翳りを帯びたシンフォニックロックを展開する。
リズムチェンジによる緩急あるダイナミックな展開力と、知的でドラマティックな雰囲気は、まさに往年の東欧プログレを継承する聴き心地。
コラー・アッティラによるフルートとメロウなギターの絡みは、サウンドにおけるクールな叙情性を担っていて、インストをメインにしながらも、緊張感ある飽きさせない構築力はベテランならではだろう。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 優雅度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Montecristo 「A Deep Sleep」
インドネシアのプログレバンド、モンテクリストの2016年作
2010年にデビューし、2作目。圧巻の傑作を残したDISCUSをはじめ、インドネシアには良いバンドが多いのだが、この若手5人組は、DREAM THEATERのライブ会場で出会って結成したという。
優美なピアノとシンセに、英語によるエモーショナルなヴォーカルを乗せ、ほどよくハードなギターとともに、カラフルでキャッチーなサウンドを描く。
プログレらしいきらびやかなシンセワークと、やわらかなメロディのフックにコーラスハーモニー、ほどよくスタイリッシュなハードさも織り込んで、ときにMOON SAFARIのような優雅な耳心地で楽しめる。
かすかなイモ臭さはあるものの、演奏力アレンジセンスともにレベルが高く、今後に期待の新鋭といえる。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 優雅度・8 総合・8
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Anamor 「Za Witrazem」
ポーランドのシンフォニックロック、アナモールの2018年作
2003年にデビュー、本作は15年ぶりとなる2作目。美麗なツインキーボードに叙情的なギターを重ね、母国語による美しい女性ヴォーカルとともに、東欧らしい翳りを帯びたサウンドを描く。
優雅な女性声シンフォという点では、初期のQUIDAMにも通じる聴き心地であるが、ほどよくハードなギターが加わると、ゴシック系シンフォニックロックというような味わいにもなる。
ラストの9分のタイトル曲では、泣きのギターフレーズに優美なシンセで、じわじわと盛り上げる。WHITE WILLOWのファンにもお薦めの逸品だ。
ドラマティック度・7 翳りと叙情度・8 女性Vo度・8 総合・8
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ALMS 「BEYOND」
スペインのシンフォニックロック、アルムスの2013年作
マルチミュージシャン、Aitor Lucena氏によるプロジェクトで、14分前後の大曲3曲という構成で、オーケストラルで壮麗なアレンジと、オルガンを含むプログレらしいシンセに、優美なフルートの音色とともに、緩急ある展開力で描かれるインストのシンフォプログレ。
リズムが打ち込みなので、ダイナミックさにはやや欠けるが、アコースティックギターに物悲しいチェロやヴァイオリンの響きなど、繊細な叙情美も織り込んで、幻想的なサウンドを描いてゆく。
わりと唐突な展開力はときにゲームミュージック風でもあるが、優雅なストリングスにピアノが重なる部分などは、じわじわと泣きの空気に包まれる。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 叙情度・8 総合・7.5
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PATRICK BROGUIERE 「ICONES」
フランスのミュージシャン、パトリック・ブログイエーレの1996年作
ギター、シンセ、ヴァイオリンフルートをこなすマルチミュージシャンで、1994年作に続く2作目となる。
「想像上の展覧会音楽」をテーマに、優美なシンセの重ねにクラシカルなピアノ、打ち込みによるリズムで、オーケストラルな味わいのインストのシンフォニックロックを展開する。
美麗なシンセアレンジをメインにしつつ、ときにギターを加えたロック感触もあり、モダンなビートにフランス語の女性スキャットとヴァイオリンを乗せた、スタイリッシュなセンスも覗かせる。
サックスが鳴り響く大人の叙情から、シンフォプログレらしいラストまで、ほぼインストながらアーティスティックな味わいの好作品。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・8 総合・7
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