プログレ/ 北欧・スウェーデン・ノルウェー・フィンランド・アイスランド
~PROGRESSIVE ROCK/SCANDINAVIA~Sweden,Norway,Finland,Iceland
by Tosei Midorikawa
掲載バンドはABC順になっています
M | N | O | P | Q | R | S | T | U | V | W | X |
A
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A.C.T 「Today's Report」
スウェーデンのプログレ・メロディアスハード、アクトの1st。1999年作
この作品を初めて聴いたときの衝撃というのは、それはもう凄いものだった。
ただのメロハーかと思いきや、1曲目のイントロでもう「これはプログレだ!」と直感的に感じると、
そのキャッチーでやわらかなメロディと優雅な変則リズム、そして細かなアレンジの妙にすっかり魅了されたのです。
いつ聴いても素晴らしい宝石のような楽曲…透明感のある優しいメロディはもちろん、その抜群の演奏力。
とくにドラムを中心にしたリズム面でのアプローチなどは、ProgMetal好きにもぜひ聴いてもらいたい。
どのアルバムも素晴らしいですが、まずはやはりこの驚異のデビュー作から。必聴というのはまさにこのこと。
メロディアス度・・9 隠れプログレ度・・9 楽曲センス・・10 総合・・9
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A.C.T「IMAGINARY FRIENDS」
スウェーデンのプログレハード、アクトの2nd。2001年作
このバンドの凄いところは、楽曲は一聴してキャッチ-でポップなメロディアスハードなのだが、
その実、非常にプログレ受けするサウンドなのだ。クイーンやヴァレンタインを想起させる歌メロとコーラスハーモニーを
起伏のある緻密なアレンジで構成、リズム面も非常によく練られており、この自然な変拍子はプログレファンを唸らせるもの。
全曲作り込まれ高密度な上に今作では生のストリングスも導入し、さらに壮大さも増している。
純粋にメロディを楽しめ、なおかつ複雑音楽としても高得点、というまったく恐ろしいバンドである。
メロディアス度・・10 プログレ度・・8 楽曲センス・・9 総合・・9 ◆メタル名盤特選入り
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A.C.T「LAST EPIC」
スウェーデンのプログレ・メロディアスハード、アクトの3rd。2003年作
今作からドラムが交代したことで多少心配されたが、内容はやはり期待通りだ。
QUEENにも通じるやわらかな歌メロ、コーラスワークを現代的な楽曲アレンジで作り込み、
リズム面にもこだわりと意外性を盛り込んで、緩急自在に展開する楽曲はもはやACT節といっても良い。
今回はギターのリフ、メロディにメタリックな部分が増した印象で、その分、むしろ硬質な部分と
ピアノを含むやわらかなメロディとの対比がくっきりとした。歌入りのメロディアスさ、キャッチーさとは対照的に
インストパートの部分には一瞬「プログレメタル」とさえいってよいところもあり、そこがこのバンドの大きな魅力となっている。
メロディアス度・・9 プログレ度・・7 楽曲センス・・9 総合・・8.5
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A.C.T「SILENCE」
スウェーデンのプログレ・メロディアスハード、アクトの4th。2006年作
技巧的な音楽を作り出せる知性とテクニックがありながら、難解さよりもあえて分かりやすさと
キャッチーなメロディを前に出すというやり方はかつてのIT BITESの精神性を継承するバンドといえる。
3年ぶりの新作となったこのアルバムは、まさしく彼らのそうしたセンスが爆発した傑作となった。
前作から参加のトーマス・レヨンも、楽曲の方向性を完璧に理解したプレイぶりがさすがである。
キャッチーでありながら哀愁の叙情を感じさせるメロディはいっそう引き立ち、ちょっとした細かなアレンジにも、
その類まれな知性を感じさせるのがやはり素晴らしく、歌メロにかぶさる絶品のストリングスアレンジなども、
泣きのつぼを刺激しまくりだ。ラストの9パートに分かれた20分の組曲は、ドラマティックでそしてしっかりとプログレしており、
これまでの彼らの大曲では最高の出来映え。メロディの充実という点でまさに傑作アルバムに仕上がっている。
メロディアス度・・9 プログレ度・・8 楽曲センス・・10 総合・・9
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A.C.T 「CIRCUS PANDEMONIUM」
前作から8年ぶりとなる5作目で、サーカスを舞台にしたミュージカル仕立てのコンセプト作。
きらびやかなアレンジと軽妙なアンサンブル、そしてキャッチーなメロディで聴かせる
そのサウンドはまったく変わっておらず、長いこと待たされたファンもひと安心だろう。
もちろん、随所にプログレ的な知的なセンスを垣間見せる、緻密な構築センスとともに、
シンフォニックな美麗さと、優雅かつユーモラスなパートを含めて、緩急自在に描かれる楽曲は
変化に富んだエンターテイメントを見せつける、まさにサーカスの舞台のようである。
壮麗にしてゴージャス、やさしくメロディックな、期待通りの傑作に仕上がっている。
メロディック度・・9 プログレ度・・8 きらびやか度・・9 総合・・8.5
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A.C.T 「Trifles and Pandemonium」
スウェーデンのプログレハード、アクトのライブ作品。2016年作
1999年にデビュー、現在までに5作のアルバムを発表。キャッチーなメロディアス性と知的な展開力で、
ProgMetalのリスナーからも支持されるこのバンド。本作は2014年、スウェーデンでのライブ音源を収録。
2014年作「CIRCUS PANDEMONIUM」からのみならず、1stを含む初期のナンバーもたっぷりと演奏。
美麗なシンセアレンジとマイルドなヴォーカルによるシンフォニックな感触に、随所に変則リズムを含んだ
プログレッシブな構築美が冴えていて、ライブにおいてもその演奏力の高さと、楽曲アレンジの妙が楽しめる。
1st収録“The Wandering”、“Waltz With Mother Nature”あたりは、15年以上前の楽曲なのだが、その豊穣なメロディと
緻密なアレンジにあらためて聴き惚れる。バンドのファンはもちろん、初めて聴く方にもオススメしたい素晴らしいライブ作品だ。
メロディック度・・9 ライブ演奏・・9 楽曲センス・・9 総合・・9
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Adventure 「Beacon of Light」
ノルウェーのプログレハードユニット、アドヴェンチャーの2009年作
適度にハードなギターワークとムーグやオルガンを含んだプログレ的なシンセアレンジ、
男女コーラスなどを配した、ダイナミックな厚みのあるシンフォニックハードサウンド。
組曲形式の大曲を中心にしたドラマティックな聴き心地は、Ayreonあたりにも通じる壮大さで、
物語的に進行してゆく流れもスケールを感じさせる。やわらかなフルートが美しい小曲もあったり、
ラストの組曲では北欧らしい土着的なメロディも覗かせる。メリハリのついた構成で描かれる力作です。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 壮大度・・8 総合・・8
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Adventure 「Caught In The Web」
ノルウェーのプログレハードユニット、アドヴェンチャーの2014年作
前作から5年ぶりとなる3作目で、オルガンやムーグシンセが鳴り響く古き良きスタイルに
北欧らしい土着的なメロディとキャッチーな聴き心地を併せ持ったハードプログレサウンド。
美しいピアノパートやフルートが鳴り響く優雅さと、ロック的なダイナミズムが同居して
コンセプト的な流れとともにドラマティックな構築が光る。ときに女性ヴォーカルが加わった
やわらかな叙情性も耳心地が良い。新鮮なインパクトはないが、やはり北欧ハードプログレの力作だ。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 壮大度・・8 総合・・7.5
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Adventure 「New Horizon」
ノルウェーのプログレバンド、アドヴェンチャーの2019年作
2000年にデビュー、本作は4作目となる。女性Vo&フルート奏者を含む6人編成で、
やわらかなオルガンに適度にハードなギター、朗々としたなヴォーカルを乗せた、
オールドな味わいのプログレハード風味のサウンド。北欧らしい哀愁を感じさせる叙情的なギターフレーズに、
優美なピアノや女性声も加えたシンフォニックロックとしての耳心地のよさもあって、わりとゆったりと楽しめる。
シアトリカルな雰囲気の歌声とともに、ときにフルートも鳴り響く、ヴィンテージロックとしての土着感は
Jethro Tullあたりにも通じるだろう。楽曲ごとの盛り上がりはさほどないが、大人の叙情に包まれた好作品だ。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 ヴィンテージ度・・8 総合・・7.5
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Adventure 「Tales Of Belle Part I - Across The Ocean」
ノルウェーのプログレバンド、アドヴェンチャーの2022年作
2000年にデビュー、本作は5作目で、女性版「青髭」として語り継がれる殺人犯、ベル・ガネスをコンセプトにした作品の前編。
オルガンが鳴り響き、ほどよくハードなギターに朗々としたヴォーカルを乗せて、ダークな味わいのプログレハードを聴かせる。
やわらかなピアノと女性ヴォーカルに、メロウなギター、ときにフルートなども加えてゆったりとした叙情を描きつつ、
ヴィンテージなシンセとともに北欧らしい翳りを帯びた空気に包まれる。コンセプトストーリーに基づいているので、
派手な盛り上がりというのはあまりなく、シンフォプログレとしてはいくぶん物足りない感じもするが、後編に期待。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 叙情度・7 総合・7.5
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AGENESS「Rituals」
フィンランドのプログレバンド、アジェネスの1995年作
90年代の北欧プログレというとスウェーデンというイメージなのだが、珍しいフィンランド産のバンド。
本作は2作目で、シンフォニックなシンセアレンジと、適度にハードなギターを乗せた軽快なサウンド。
ハイトーンのヴォーカルが入ると、初期Marillion的など、Genesisルーツの80年代ポンプロック風味も出てくるが、
こちらはよりキャッチーでモダンな聴き心地で、北欧というよりは、むしろアメリカ的な抜けの良さというべきか。
テクニカルな部分も含めてRUSHを思わせる部分もある。ラストは10分近い大曲で、知的な構築力がなかなか見事。
地域性を感じさせないセンスと、ドラムも含めて演奏のレベルも高いので安心して聴ける好作品である。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 北欧度・・7 総合・・7.5
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Agents of Mercy「The Fading Ghosts Of Twilight」
The Flower Kingsのロイネ・ストルト率いる、エージェンツ・オヴ・マーシーの2009年作
メンバーには、GENESIS系シンフォバンド、UnifaunのヴォーカルにTFKのヨナス、レインゴールド、
ドラムにはゾルタン・チョーズ(元TFK、KARMAKANIC)、Pat Mastelotto(KING CRIMSON)などが参加。
楽曲は、ガブリエルそっくりのヴォーカルの歌声に、フラキンのやわらかな部分が合わさったような雰囲気で、
ぱっと聴きの派手さはないが、じっくりと作り込まれた大人のシンフォニックロックという趣だ。
往年のGENESISの質感を、ロイネのセンスで色付けしたという感触の好アルバム。
シンフォニック度・・7 プログレ度・・7 フラキン度・・8 総合・・8
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AGENTS OF MERCY「Dramarama」
スウェーデンのシンフォニックロックバンド、エージェンツ・オブ・マーシーの2010年作
TFKのロイネ・ストルトとヨナス・レインゴールド、Unifaunのナッド・シルヴァンに加え、
本作ではシンセにラレ・ラーションらが加わった。前作はいかにも往年のGENESISを思わせる
ゆったりとした作風で案外地味であったのだが、今作では古き良き70年代風味に加えて
よりダイナミックなシンフォニック路線…つまりはThe Flower Kingsのイメージに近づいている。
一方では、牧歌的でゆるやかな叙情曲も素晴らしく、ロイネのギターワークはもちろんのこと、
ラレのシンセワークもなかなか見事で、まんまGENESISなVoの歌声がなにやら微笑ましいが、
ただレトロなだけではないセンスを感じさせる力作に仕上がっている。
シンフォニック度・・8 フラキン度・・8 叙情度・・8 総合・・8
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AGENTS OF MERCY「The Black Forest」
スウェーデンのシンフォニックロックユニット、エージェンツ・オブ・マーシーの2011年作
ロイネ・ストルト、ナッド・シルヴァン、ラレ・ラーションらによるGENESIS懐古風サウンドというべき
このバンドもすでに3作目となる。本作はこれまで以上にミスティックな雰囲気とシアトリカルな作風になっていて、
メロトロンを含んだ表情豊かなシンセワークと叙情たっぷりのギター、P.ガブリエルばりのヴォーカルで、
物語的なコンセプトを感じさせるほの暗いミステリアスさとともにゆったりと楽曲を盛り上げてゆく。
まさに、The Flower KingsとGENESISを合わせたような、ドラマティックなシンフォニックの傑作である。
シンフォニック度・・8 ドラマティック度・・8 ミスティック度・・8 総合・・8
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AGUSA 「Hogtid」
スウェーデンのサイケプログレ、アグサの2014年作
レトロなオルガンの音色に、サイケ寄りのギターがかもしだす浮遊感と、北欧らしい土着性で聴かせる
かつてのKEBNEKAJSEを思わせるようなサウンド。随所にクサいフレーズを含んだギターもよろしく、
インスト主体でありながら、やわらかなオルガンと耳心地の良いメロディでゆったりと楽しめる。
My Brother the Windなどに比べると、より素朴な空気感で、フォーキーな牧歌性が前に出ている。
11分、14分という大曲も、劇的に盛り上げるわけでもないユルめのダイナミズムでのんびりゆきます。
ドラマティック度・・7 サイケ度・・8 北欧度・・8 総合・・8
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AGUSA 「Agusa 2」
スウェーデンのサイケプログレ、アグサの2015年作
2作目となる本作では、女性フルート奏者が加わっての5人編成になり、やわらかなフルートにオルガンの音色、
フォーク風味の土着的メロディで聴かせるサウンドは前作の延長線上。20分、18分という大曲2曲の
アルバム構成であるが、展開を急ぐことなくのんびりゆったり聴かせるスタイルは、まさにユル系バンド。
相変わらずこれという盛り上がりはないのだが、オルガンにフルートが重なる優雅な浮遊感はじつに耳心地よく、
北欧からしか出てこないKebnekajseタイプのサウンドという点では、Kame Lokaなどと同様に愛聴したいバンドですな。
ドラマティック度・・7 サイケ度・・8 北欧度・・9 総合・・8
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AGUSA
スウェーデンのサイケプログレ、アグサの2017年作
かつてのKEBNEKAJSEを思わせる、土着的なサイケプログレで過去2作もじつによかったが、
3作目となる本作も、妖しいフルートの音色にオルガンが響き、土着的なギターの旋律を乗せた、
にんまりするほどに北欧らしい空気感に包まれた、トラッド・サイケプログレを聴かせる。
10分前後の大曲を中心に、オールインストであるが、フルートやオルガンの奏でるメロディは、
とても叙情的な味わいで、北欧プログレ好きならば飽くことなくゆったりと鑑賞できるだろう。
オルガン鳴り響くオールドなロック感触も含めて、70年代のSilenceレーベル発掘音源と言われても
信じてしまいそう。ケブネカイゼの後継者として今後ともこのヴィンテージすぎるサウンドを追及して欲しい。
ドラマティック度・・7 ヴィンテージ度・・9 北欧度・10 総合・・8
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AGUSA 「Ekstasis: Live in Rome」
スウェーデンのプログレバンド、アグサのライブ。2019年作
2018年イタリアのローマで行われたライブを収録。11~24分という大曲4曲というステージで、
フルートが鳴り響き、やわらかなオルガンに土着的な旋律を奏でるギターを重ねた、
北欧らしい涼やかなサイケプログレを聴かせる。アナログ感たっぷりのギターによる
ノリのよいオールドロック感触とともに、アルバム以上に躍動的な演奏が味わえる。
ラストは24分という大曲で、緩急ある展開で、妖しく濃密なアンサンブルを描いてゆく。
ライブ演奏・・8 プログレ度・・7 ヴィンテージ度・・9 総合・・8
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Airbag 「Identity」
ノルウェーのポストプログレ、エアバッグの2009年作
いまや北欧系の叙情派ポストプログレとしては、Gazpachoと並ぶバンドといってよいだろう。そのデビュー作。
うっすらとしたシンセにメロウな泣きのギターを重ねて、翳りを帯びた繊細な叙情を描くサウンド。
美しいシンセアレンジと扇情的なギターのフレーズは、シンフォニックといってもよい耳心地で、
やわらかなヴォーカルを加えた優美な感触は、SYLVANあたりのファンにも楽しめるだろう。
1作目にして、すでに世界観は完成されていて、デイブ・ギルモアのごとき甘美なギターと
シンセアレンジの美しさで、PINK FLOYDルーツのシンフォプログレとしても見事な出来である。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 叙情度・・9 総合・・8
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Airbag 「Greatest Show on Earth」
ノルウェーのプログレバンド、エアバッグの2013年作
本作はすでに3作目で、サウンドの方はドイツのSylvanあたりに通じる薄暗系のモダンプログレ。
Pink Floydルーツの浮遊感ある繊細な叙情性に、美しいシンセアレンジによるシンフォ要素もあって、
随所にメロウなギターの旋律も覗かせる。11分、16分という大曲をじっくりと構築するセンスも見事で、
マイルドなヴォーカルで聴かせる歌パートに、ギルモアばりの泣きのギターでうっとりとなるインストパートと、
濃密すぎず薄すぎないバランスのよさが光る。新鮮味は薄いが、この手の薄暗系シンフォが好きな方にはたまらないだろう。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 叙情度・・9 総合・・8
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Airbag「Disconnected」
ノルウェーのプログレバンド、エアバッグの2016年作
前作はドイツのSylvanあたりに通じる薄暗系の好作であったが、4作目となる本作もメロウなギターワークに
うっすらとしたシンセアレンジで、Pink Floydルーツのモダンな翳りを含んだ空気感に包まれたサウンドだ。
ますます「Kscope化」したというか、Gazpachoなどにも接近したような、薄暗い叙情と耳触りの良さで、
ポストプログレ的な繊細な聴き心地にゆったりと浸れる。随所にギターの泣きのフレーズもよろしく、
シンセによる適度にシンフォニックな味付けが、プログレとしての魅力もしっかり残している。
もはや新鮮味はないものの、このバランス感覚とマイルドな心地よさで、じわじわと染み入るように味わえる。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 薄暗度・・8 総合・・8
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ALAMAAILMAN VASARAT「VASARAASIA」
フィンランドのチェンバー・プログレバンド、アラメイルマン・ヴァサラットの1st。2000年作
サックス、トロンボーン、チェロを中心にフリーキーな旋律を奏でつつ、けっこう激しめのドラムに、
オルガン、ピアノなどが加わった面白いサウンド。メロディにはどこかサーカス的な愉快さと哀愁があり、
土着性も感じられる。変態系チェンバーロックバンド、Hoyry-koneのメンバーが結成しただけあって、
楽曲的にも一筋縄ではいかないアレンジで、ときに唐突に展開してゆくのがスリリングで楽しい。
そしていきなりヘヴィなギター入りの曲もあったりでびっくり…と思いきや、これは歪ませたチェロであるらしい。
むしろAPOCALYPTICA状態?ともかく、個性的なバンドが好きな方、激しめのチェンバーが好きな方はぜひ。
メロディアス度・・7 変態度・・8 サーカス度・・8 総合・・8
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ALAMAAILMAN VASARAT「KAARMELAUTAKUNTA」
フィンランドのチェンバー・プログレバンド、アラメイルマン・ヴァサラットの2nd。2003年作
本作も基本は前作からの延長ながら、チェロ奏者が一人増えて音に厚みが増した。
サックス、クラリネットの音色に絡むトロンボーンやチェロの響きにオルガンも加わり、
哀愁をただよわせたトラッド的な味わいの独自の音楽性はより深みを増してきている。
ゆったりとしたピアノを聴かせる曲など、前作よりも叙情性が増したぶん、
いくぶん落ち着いてきている印象もあるが、ザクザクとした歪ませチェロも健在で、
全体的には静と動のメリハリがついた力作に仕上がっている。
メロディアス度・・8 変態度・・7 哀愁度・・8 総合・・8
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ALAMAAILMAN VASARAT「MAAHAN」
アラメイルマン・ヴァサラットの3rd。2007年作
一聴してアンサンブル重視となった今作は、Hoyry-koneに近い雰囲気をただよわせる。
重々しいチェロの響きを土台にしつつ、軽やかなクラリネットにオルガンの音色を乗せ
土着的で薄暗くも、そこに浮遊感のあるサウンドを作り上げている。
ときにチェンバー/タンゴ的なノリの良さも加わり、サックスの演奏力も増している。
リズム面でのかっちりとしたロック的な整合性が増したことで、聴きやすさの面ではこれまでの作品で一番か。
メロディアス度・・8 変態度・・7 哀愁度・・8 総合・・8
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ALAMAAILMAN VASARAT「HUURO KOLKKO」
フィンランドのチェンバー・プログレバンド、アラマーイルマン・ヴァサラットの4th。2009年作
トロンボーン、サックス、チェロといった楽器を激しく鳴らして独自の音楽を追求してきたこのバンド
2009年にはついに来日公演も果たし、ますます勢いに乗ってきている。「消えた冒険家」という
意味不明なタイトルの今作でも、のっけから重厚なチェロの音色にサックス、トロンボーンが愉快に絡み、
もはやこのバンドでしか描き出せない、ユーモア溢れるダンディズムといったようなものを匂わせた
独自のサウンドを聴かせる。アヴァンギャルドな天然ポケ的感性の中に、哀愁をにじませているのがいかにも
フィンランド的な情緒であり、メロディカなどの使用も含めて前作以上に音のメリハリがついているのもよろしい。
メロディアス度・・7 変態度・・8 哀愁度・・8 総合・・8
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Alamaailman Vasarat 「Kinaporin Kalifaatti」
フィンランドのチェンバー・プログレバンド、アラマーイルマン・ヴァサラットの2009年作
Tuomari Nurmioとの競演名義であった2005年作品の再発盤で
ヘヴィなチェロの音色にトロンボーンやサックスが絡み、母国語によるヴォーカルとともに、
シアトリカルな異色のタンゴというようなサウンドを展開、土着的な怪しさたっぷりである。
いわばサーカス的な哀愁を含んだ奇妙なチェンバーロックでもあり、
ヘンタイを本気でやるというジェントルなマジメさすら漂わせたサウンドが楽しめる。
ドラマティック度・・ 7 プログレ度・・7 ヘンタイ度・・8 総合・・8
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Alamaailman Vasarat 「Valta」
フィンランドのチェンバー・プログレ、アラマーイルマン・ヴァサラットの2012年作
Hoyry-Koneを前身に2000年にデビュー、本作は5作目となる。トロンボーン奏者は脱退してしまったようだが、
サックス、トランペット、ホルン、チューバックスなどのブラスサウンドを、大胆にロックに融合させた作風は本作も不変。
歪んだチェロがヘヴィに鳴り響き、ロックなドラムの上に管楽器を乗せた独特の聴き心地に加えて、
ときに哀愁を含んだアコーディオンやメロディカの音色が、ユーモラスな響きで楽曲を彩ってゆく。
ヘヴィなタンゴ調のナンバーなども、ギャグではなく本気のそれで、ある意味では、チェロでメタルをやっている
Apocalypticaなどにも通じるセンスかもしれない。ギターもベースもおらずとも、どっしりと重厚なのがすごい。
ドラマティック度・・ 7 プログレ度・・8 ブラスロック度・・9 総合・・8
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ALGARNAS TRADGARD 「DELAYED」
スウェーデンのプログレバンド、エルヤーナス・トレッゴードの2nd。2001年作
1973~74年に録音されていたが、未発表のままとなっていた音源のCD化で、
メロトロンやムーグが鳴り響き、妖しい女性スキャットを乗せたサイケロックに、
ヴァイオリン、フルート、シタールなどが加わった、チェンバーロック的な質感を加えたサウンド。
ロック的な躍動感は1st以上のテンションで、ときに土着的なギターのメロディも含ませながら、
得体のしれぬスケール感もまとわせた、怪しげなトリップサイケが楽しめる。異色の力作。
メロディック度・・7 サイケ度・・8 妖しげ度・・9 総合・・8
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All Traps On Earth 「A Drop Of Light」
スウェーデンのプログレバンド、オール・トラップス・オン・アースの2018年作
元ANGLAGARDのメンバーを中心にしたバンドで、メロトロンやムーグ、オルガンといったヴィンテージなシンセに
やわらかなフルートの音色、妖しい女性ヴォーカルを乗せて、北欧らしい翳りを帯びたプログレサウンドを展開。
ハードなギターにサックスやトランペットが鳴り響き、クリムゾンを思わせるスリリングなアンサンブルとともに、
ときにチェンバーロック的なシリアスなクラシカル性も感じさせる。10分を超える大曲4曲を中心にした構成で、
優美なピアノやフルートなどの涼やかな叙情美を内包した、静と動の緩急ある展開力も素晴らしい。
まさに、かつてのアングラガルドを神秘的に深化させたような作品だ。あらたな傑作の誕生である。
ドラマティック度・・9 プログレ度・・8 アングラガル度・・9 総合・・8.5
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Alwanzatar 「Heliotropiske Reiser」
ノルウェーのエレクトロ・プログレ、アルワンザターの2017年作
TUSMORKEのKristoffer Momrakによるソロプロジェクト。フルートが妖しく鳴り響き、
シーケンサーによるデジタルなリズムとシンセの重ねで、神秘的なエレクトロプログレを聴かせる。
一聴して、Tangeline Dreamあたりを思わせるサウンドながら、ムーグやメロトロンを使った
ヴィンテージなシンセとともに、涼やかな翳りを帯びた北欧らしい土着性が感じられる。
10分、16分という大曲では、シンプルなフレーズのリフレインで、気の短い方には向かないが、
美しいメロトロンにフルートが重なる北欧プログレ風味に、オリエンタルなサイケ感触が融合した好作品。
ドラマティック度・・7 エレクトロ度・・8 北欧度・・8 総合・・8
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ALWANZATAR 「Fangarmer Gjennom Tid Og Rom」
ノルウェーのエレクトロ・プログレ、アルワンザターの2018年作
TUSMORKEのKristoffer Momrakによるソロプロジェクトの2作目で、エレクトロなシンセに、
フルートやギターによる東洋的な旋律を乗せた、サイケでスペイシーなサウンドを描いてゆく。
シーケンサー的なリズムに乗る、やわらかなフルートの音色や詠唱のようなヴォイスは、
神秘的な浮遊感をかもしだし、デジタルとアナログが同居したような不思議な感触が味わえる。
曲が長くてリフレインが多いので、普通のプログレを楽しむ向きには薦められないが、
怪しくスペイシーなエレクトロ・サイケがイケるという奇特な方はどうぞ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 スペイシー度・・8 総合・・7.5
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ALWANZATAR 「Helsfyr Terminal Ekspress」
ノルウェーのエレクトロ・プログレ、アルワンザターの2019年作
TUSMORKEのKristoffer Momrakによるソロプロジェクトの3作目で、エレクトロなシンセをメインに、
スペイシーで妖しげなインストサウンドを描く。今作では随所にフルートが鳴り響いて、
サイケな浮遊感の中にも、北欧らしい涼やかな叙情性を覗かせる。ロック要素は薄いものの、
シーケーサー的なリフレインによるデジタルトなトリップ感と、アナログなフルートの音色が、
よいあんばいでコントラストになっていて、ゆったりと耳心地よく鑑賞できる。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 浮遊感・・8 総合・・7.5
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ALWANZATAR 「DEN GLEMTE DALEN」
ノルウェーのエレクトロ・プログレ、アルワンザターの2021年作
TUSMORKEのKristoffer Momrakによるソロプロジェクトの4作目で、妖しくフルートが鳴り響き、
アナログシンセがスペイシーに重なって、いかにもサイケデリックなエレクトロ・プログレを展開。
シンセをメインにしつつ、シーケンサーや打ち込みによるドラムも入るので、前作よりはメリハリのある
いくぶんのロック感触とともに、8~11分前後の大曲をユルめに描いてゆく。サウンドを包み込む
幻想的な妖しさに強度が加わったことで、じっくりと浸れるようになった。Tangerine Dreamに
北欧の土着的な空気を加えたというような、異色のサウンドが楽しめる好作です。
スペイシー度・8 サイケ度・8 エレクトロ度・8 総合・8
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Alwanzatar 「Kosmisk Skrekk」
ノルウェーのエレクトロ・プログレ、アルワンザターの2022年作
TUSMORKEのKristoffer Momrakによるソロプロジェクトの5作目。10曲前後の大曲4曲という構成で、
ムーグやメロトロンを含むヴィンテージなシンセに、打ち込みによるドラム、フルートが怪しく鳴り響く、
ミステリアスなエレクトロサウンドを展開。今回は宇宙人がテーマなのか、いつも以上にムーグを使った
エフェクト的なサウンドも取り入れていて、こけおどし感が際立っている。オールインストであるが、
アナログシンセのやわらかな音が、単なるエレクトロとは異なる幻想的な空気をかもしだしていて、
北欧らしい涼やかな浮遊感も心地よい。スペイシーとヴィンテージが同居する異色作です。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 怪しさ度・8 総合・8
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AMPERA 「A Vulcanized Mingle」
ノルウェーのプログレバンド、アンペラの2006年作
けだるげな女性ヴォーカルの歌声を乗せて、サイケ気味の浮遊感と、ゴシック的な薄暗さに
メロトロンが鳴り響く、WHITE WILLOWなどに通じる北欧プログレ感触が合わさったサウンド。
随所に叙情的なフレーズを奏でるギターのセンスもよく、リズムチェンジも含むプログレ的な展開と
妖しげな空気感がバランスよく融合されている。全体的な雰囲気は悪くないので、
あとは楽曲ごとのフックや、インパクトのある展開がもう少しあれば傑作になると思う。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 妖しさ度・・8 総合・・7.5
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Anders Helmerson 「End of Illusion」
スウェーデン出身のシンセ奏者、アンダース・ヘルメルソンの1982年作
変拍子を含む軽妙なリズムにムーグやオルガンを含むきらびやかなシンセを乗せ、
1~3分前後の小曲を主体にしたインストサウンドを聴かせる。随所にギターも入ったり、
いくぶん唐突な展開やアヴァンギャルドなセンスもあり、そこにクラシカルな美意識が合わさった、
流れのある構成でキーボード組曲ふうに楽しめる。北欧らしい涼やかなメロディも感じさせる、
80年代キーボードプログレの逸品だ。本作を残した後、活動をブラジルに移して、2002年には、20年ぶりの作品を発表する。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 キーボー度・・9 総合・・8
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Anderson/Stolt 「Invention of Knowledge」
元Yesのジョン・アンダーソンとTHE FLOWER KINGSのロイネ・ストルトによるユニットの2016年作
まさかという組み合わせのユニットであるが、内容もまさしくジョン・アンダーソンの透明感のある歌声を活かした
繊細なシンフォニックロックサウンドで、トム・ブリスリンとラレ・ラーションによる美しいシンセアレンジに、
ロイネのメロウなギターワークが重なる優雅な聴き心地。ヨナス・レインゴールドとフェリックス・レーマンという、
フラキン組のリズム隊に、ダニエル・ギルデンロウ(Pain of Salvation)、ナッド・シルヴァンらがコーラスに参加。
ようするに、バックはほとんどTFK関連の北欧プログレ状態。キャッチーで涼やかな叙情性をジョンの歌声で包み込み、
ロイネの抜群のギターワークも楽しめるという。まさにYes+TFKという、プログレファンには桃源郷のような作品だろう。
10~20分ずつ4パートに分けられたアルバム構成も見事で、実力者たちが結集したジョンのための傑作に仕上がっている。
メロディック度・・9 繊細度・・9 ジョンの歌声度・・9 総合・・8.5
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ANEKDOTEN 「vemod」
スウェーデンのプログレバンド、アネクドテンの1st。1993年作
のっけからメロトロンの音色で始まり、続いてクリムゾン的なギターの重ねで
レトロな質感とともに、ヘヴィシンフォニックサウンドが始まってゆく。
この薄暗さと、ある種の終末的な雰囲気は、この後のバンドに大きく影響を与え、
懐古主義的な70年代へのオマージュとともに、北欧プログレの叙情性の指針ともなった。
バンドは2nd、3rdと、そのサウンドの密度を高めながら深化してゆき、現在では
もっとゆるやかな叙情美を追求してゆくことになるが、一聴してのインパクトの点では、
本作を最高作と挙げるファンも多いだろう。90年代北欧シーンの原点となる1枚だ。
シンフォニック度・・7 薄暗度・・9 北欧度・・9 総合・・8
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ANEKDOTEN「NUCLEUS」
スウェーデンのプログレバンド、アネクドテンの2nd。1995年作
1st「VEMOD/暗鬱」はリフの繰り返しの多さも含めて、いくぶん粗削りな作風であったのだが、
この2ndになると、楽曲アレンジが緻密になり、展開にドラマティックな起伏がついてきた。
ほとんどスタジオ一発録りだったという1stに比べて、計算されたダイナミズムにより、
メタルファンにも聴けるヘヴィパートがあるかと思うと一転、北欧的な静寂パートへの切り返しが見事。
そして、ここぞとばかりに盛り上がるメロトロンパートでは、「北欧のクリムゾン」と呼ばれる
面目躍如たる寒々しい叙情が襲いかかってくる。次作と並んでバンドの代表作である。
北欧叙情度・・8 重厚度・・8 メロトロン度・・8 総合・・8.5 ◆プログレ名作選入り
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ANEKDOTEN「From Within」
スウェーデンのプログレバンド、アネクドテンの3rd。1999年作
ANGLAGARDに続いて現れたこのバンドは、北欧のクリムゾンとも呼ばれるそのサウンドで
コアなリスナーからの支持とともに90年代プログレの復興に大きな存在感を示した。
本作は、傑作であった2nd「NUCLEUS」のドラマティックさに加え、1st「vemod」の
ヘヴィなダークさを併せたような最高傑作。鳴り響くメロトロンによる寒々しい叙情美と、
ゆるやかなダイナミズムが融合され、これぞアネクドテンというサウンドが展開される。
4th以降はゆったりとした薄暗系シンフォニックになってゆき、それはそれで好きなのだが
ぐいぐいと押し寄せてくる音のインパクトの点では、本作が絶頂期だったとも言えるだろう。
シンフォニック度・・8 重厚度・・9 北欧度・・9 総合・・8.5
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ANEKDOTEN「Official Bootleg Live in Japan」
スウェーデンのヘヴィシンフォニックバンド、アネクドテンのライブ作。
1997年の初来日公演の模様を収録。1st「Vemod」からの曲を中心に、
2nd「Nucleus」そして、この時点での新作「From Within」からの曲も先行演奏。
肝心のメロトロンは残念ながら空輸の関係からサンプリングとなっているが、
それでも北欧の寒々しい叙情を配した彼らならではのサウンドが堪能できる。
現在の彼らよりはややラフな荒々しさがあるが、それもむしろ魅力的で、
北欧のクリムゾンとも謳われるヘヴィシンフォニックサウンドが炸裂している。
CD2枚組で長尺感があり、音質的にも最高ではないのでファン向けのアイテムではあるが。
ヘヴィシンフォニック度・・8 ライブ演奏・・8 音質(臨場感)・・7 総合・・7.5
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ANEKDOTEN「GRAVITY」
スウェーデンのヘヴィシンフォバンド、アネクドテンの4th。2003作
初期~中期クリムゾン的ヘヴィネスに北欧的な寒々しい叙情を付加し、独自の地位を築いてきたこのバンド。
来日やアメリカでのライブなど、精力的な活動を続け、一時は休止状態だったらしいが、
こうして無事4thアルバムが完成した。結論から言うと、非常に聴きやすいアルバムである。
かつてのヘヴィさ、ダークさをやや抑え目に、バンドとして自然体で作り上げたという印象で、
いつも以上に心地よい歌メロは、プログレファンのみならず一般のリスナーにもアピールできるはず。
もちろん、彼らの最大の持ち味であるメロトロンもここぞという時には盛大に鳴らされ、
楽曲の叙情性に拍車をかけている。ヘヴィで暗鬱さを求めるリスナーには肩すかしだろうが、
純粋に気持ちよく聴けるという点で、評価できるアルバムであると思う。
シンフォニック度・・8 ヘヴィ度・・6 メロトロン度・・9 総合・・8◆プログレ名作選入り
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ANEKDOTEN「Waking The Dead Live In Japan 2005」
スウェーデンのヘヴィシンフォニックバンド、アネクドテンのライブ作。2005作
2005年2月の二度めの来日公演のベストテイクを収録したというだけあって、
その音の迫力と演奏のテンションは彼らのディスコグラフィー中でも最高のもの。
鳴り響くメロトロンの美しさ。北欧らしい薄暗いサウンドの中に聴きやすいメロディを封じ込め、
クリムゾン的なヘヴィさと、サイケロック的な浮遊感を同居させたこのバンドの神髄が味わえる。
曲は「From Within」、「Gravity」からのものを中心にしており、ステージ全体の統一感もあるので
アネクドテンをこれから聴くという方の入門用にもうってつけ。見事なライブ作品だ。
ヘヴィシンフォニック度・・8 メロトロン度・・8 ライブ演奏・・9 総合・・8.5
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ANEKDOTEN「A Time Of Day」
スウェーデンのヘヴィシンフォニックバンド、アネクドテンの2007作
5作目となる本作は、前作の延長上の音作りで、マイルドな薄暗さのあるメロトロン入りロックという趣だ。
プログレ的な要素はさらに減少していて、初期のファンからするとおとなしすぎるサウンドに思えるだろうが、
むしろ独特の内的な叙情美はさらに深まっているとも言え、このモダンさとゆるやかな音が心地よい人にはたまらないだろう。
ハモンドやピアノ、フルートなども効果的に使われ、暗がりのなかに漂う哀愁と、うすもやのような耽美な質感が巧みに表現されている。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 メロトロン度・・8 総合・・8
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ANEKDOTEN「Chapters」
スウェーデンのプログレバンド、アネクドテンのベストアルバム。2009作
1993年の衝撃のデビューから15年がたち、今や名実共に北欧のプログレシーンを代表する存在となったこのバンド。
これはバンドの歴史を綴る2枚組みのベストで、Disc1には3rd「From Within」以降のアルバムから11曲を収録。
メロトロンが鳴り響くレトロな感覚を北欧的な叙情性と合体させたサウンドは、これ以後の多くのバンドに大きな影響を与えることとなった。
Dusc2には未発音源や別バージョン、初期のデモなどの貴重なテイクを収録。
現在よりもクリムゾン色の強かった、初期の楽曲がまた違った雰囲気で楽しめる。
このバンドの入門用にはもちろん、コアなファンにも対応したベストである。
シンフォニック度・・8 メロトロン度・・9 北欧度・・9 総合・・8
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ANEKDOTEN 「Until All the Ghosts Are..」
スウェーデンのプログレバンド、アネクドテンの2015年作
1993年にデビュー、メロトロンを鳴り響かせるヴィンテージなスタイルで、LANDBERK、ANGLAGARDらとともに
北欧の新たなプログレシーンを活性化させた。今作は8年ぶりとなる6作目で、のっけからメロトロンの響きとともに
1stの頃のようなヘヴィな浮遊感に包まれたサウンドでにんまり。4th以降のマイルドな薄暗さをいくぶん凶暴にしたイメージで、
そこにサイケロック的な怪しさをたっぷりとまぶしたという聴き心地。70年代ハードロック的なギターリフもじつに確信犯的で、
1曲目は最近のOPETHあたりに接近したような感じもある。一方では、パンドとして熟成されたゆったりとした叙情性も耳に心地よく、
聴き手に世界に浸らせる強度がさらについてきた。フルートが鳴り響くゆるやかなパートは夢の中の桃源郷のごとし。見事な傑作だ。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 薄暗浮遊感・・9 総合・・8
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ANGLAGARD「Hybris」
スウェーデンのプログレバンド、アングラガルドの1st。1992年作
当時、ANEKDOTENに先駆けて現れたこのバンドが、90年代北欧プログレの
活性化の一端をになったことは間違いがない。個人的にも、当時「ザ・シンフォニック組曲」という
邦題で店頭に並んでいた本作を聴いたときには、かなりの衝撃を受けたものだ。
クリムゾン的な緊張感に北欧の土着メロディを加え、そこに鳴り響くメロトロン、フルートと
好事家にはたまらないサウンドで、北欧の薄暗い森を思わせる神秘的な雰囲気も素晴らしい。
10分台の曲が3曲もあるという大作志向にもしびれたし、ANEKDOTENのヘヴィネスに比べると
こちらはずっとトラディショナルで、メロディに素朴な土の香りが感じられるのも魅力的だ。
バンドはこの後2nd「Epiloge」、ライブ盤「Buried ALive」を発表後にいったん解散する。
彼らの残した2枚のアルバムは、これからも北欧プログレの遺産として語り継がれるだろう。
シンフォニック度・・8 メロトロン度・・9 北欧度・・10 総合・・9
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ANGLAGARD 「Epilog」
スウェーデンのプログレバンド、アングラガルドの2nd。1995年作
90年代の北欧プログレの先駆けとして、2枚のアルバムを残したこのバンド。
繊細でメロウな叙情美という点では、1st「Hybris」の方を挙げますが、
クリムゾン的なメロトロンにハモンドが鳴り響くヘヴィプログレとしてはむしろこちらか。
90年代以降のバンドらしいテクニカルな展開力とともに、後のANEKDOTENへと継承される
ヴィンテージな感触の懐古主義的味わいもある。また繊細なフルートの音色など、
静寂パートの美しさは息をのむほどで、本作もやはり名作といえるだけの出来ばえです。
シンフォニック度・・8 メロトロン度・・8 北欧度・・9 総合・・8.5
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ANGLAGARD 「Prog pa Svenska : Live in Japan 」
スウェーデンのプログレバンド、アングラガルドのライブ作品。2014年作
2012年に復活作「Viljans Oga」を発表、その後2013年に来日を果たした、そのステージをCD2枚に収録。
やわらかなフルートの音色に包み込むようなメロトロンの響き、クリムゾン的なヘヴィネスを
北欧らしい薄暗い叙情に溶け込ませた、見事なアンサンブルがライブにおいても再現されてゆく。
ほとんどの曲は10分以上ながら、緊張感漂う展開力と、随所に美しいメロディを盛り込んだ楽曲は、
他のバンドには真似のできない高い芸術性とともに土着的な香りも内包している。
1st~3rdまでのアルバムからまんべんなく選曲されているのも嬉しい。ファンは必聴のライブ作品。
ドラマテイック度・・9 プログレ度・・9 ライブ演奏・・9 総合・・8.5
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Anglagard 「23YEARS OF HYBRIS」
スウェーデンのプログレバンド、アングラガルドの1992年作「ヒブリス」23周年記念ボックスセット。2015年作
90年代北欧プログレを代表する名作の最新リマスター音源に、アルバム制作前後のデモ、ライヴ等の未発表音源、
さらにはリリース後のラジオインタビューを収録した、3CDボックスという豪華な商品である。500セット限定ナンバー入り。
アルバム自体の出来に関しては、薄暗い叙情性とセンスあふれる展開力で聴かせる問答無用の大傑作。別途レビューを参照。
Disc2には1993年のライブ音源4曲に、1991~92年録音のデモを4曲収録。番組用の音源なのか、宣伝ナレーションが入ってきて
少々わずらわしいのだが、「Buried Alive」以外での当時のライブ音源ということでファンはよしとしよう。その他、グレッグ・プットマンなる
人物の語りに曲ともいえない即興的な演奏のナンバーや、TRETTIOARIGA KRIGETのカヴァーなど、ある意味では貴重なテイクも収録。
デモ音源の方は、瑞々しい感性に彩られたアルバム収録曲のプロトタイプで、これだけでも本ボックスの価値があるかもしれない。
すでにアルバムを持っている方には高額なボックスだろうが、本作に幻想のロマンを描くような方ならば入手して損はない。
名作度・・9 アングラガル度・・9 お値段・・5 総合・・8.5
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Anima Morte「Face the Sea of Darkness」
スウェーデンのシンフォニックロック、アニマ・モルテの2007年作
北欧らしい薄暗い叙情とミステリアスな雰囲気で聴かせるシンフォニックロック。
たおやかなフルートの音色に、美しいシンセとメロウなギターがかぶさり
かつてのANGLAGARDに通じるような質感と、レトロなヴィンデージ風味も感じられる。
キーボードたっぷりで、MORTE MACABLEをより美しくしたという言い方もできるか。
オールインストなので濃密さの点ではやや物足りないが、メロディの豊穣さで飽きさせない。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・8 北欧度・・8 総合・・8
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Anima Morte「The Nightmare Becomes Reality」
スウェーデンのプログレバンド、アニマ・モルテの2011年作
前作はANGLAGARD+MORTE MACABLEというような薄暗い世界観の好作であったが、
本作もメロトロンが鳴り響き、メロウなギターとともに、ミステリアスな雰囲気を描くサウンド。
ダークな感触のヘヴィシンフォという点では、むしろANEKDOTENにも近づいたかもしれないが、
一方では美しいピアノやフルートの鳴る優雅な耳心地は、やはりANGLAGARD的でもある。
前作よりも、アーティスティックな思い切りが感じられることで、スケール感が増している。
北欧プログレ好きはぜひチェックすべし。ANGLAGARDのMattias Olssonがゲスト参加している。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 北欧度・・8 総合・・8
Anima Morte 「Upon Darkened Stains」
スウェーデンのプログレバンド、アニマ・モルテの2014年作
ANGLAGARDやANEKDOTENなどを思わせるサウンドで過去2作も力作だったが、3作目となる本作も、
優雅なピアノの音色にムーグシンセやメロトロン、オルガンといったヴィンテージなシンセが重なり、
適度にハードめのギターとともに、薄暗系のインストシンフォサウンドが広がってゆく。
フルートも鳴り響く北欧らしい涼やかな叙情と、ミステリアスな緊迫感も含んだ聴き心地は、
やはりMORTE MACABREにも通じるだろう。オールインストなので、ここぞという盛り上がりはないのだが、
このバンドらしい世界観が確立しているという点では、安心して浸れる作品と言ってよいだろう。
ドラマティック度・・8 薄暗度・・8 北欧度・・8 総合・・8
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ANJA 「Leaving The Alley Of The Dead Trees」
スウェーデンの女性SSW、アンジャの2007年作
アコースティックギターのつまびきに、いくぶんハスキーな女性ヴォーカルを乗せ、
随所にドラムにシンセも加えた、涼やかな味わいのフォークロックを聴かせる。
パル・リンダーが参加していて、メロトロンやオルガンなどを使ったプログレ寄りの感触もあり、
翳りを帯びた北欧らしい叙情性も味わえる。ANJA嬢の歌声は、しっとりと落ち着いた感じで
華やかさはないが、素朴な土着性を感じさせる。楽曲は3~4分前後とわりとシンプルで、
牧歌的なフォークと北欧風味が合わさった、ユルめのアシッド・フォークロックとしても楽しめる。
北欧度・・8 プログレ度・・7 女性Vo度・・7 総合・・7.5
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ANNOT RHUL 「LEVIATHAN」
ノルウェーのプログレバンド、アンノット・ルールの2014年作
のっけから14分におよぶ大曲で、ミステリアスなイントロから、メロトロンやオルガンを含むシンセに
メロウなギター、マイルドな男性ヴォーカルに女性ヴォーカルを加えた、幻想的なサウンドを聴かせる。
北欧らしい涼やかな叙情性とサイケ的でもある浮遊感が同居したサウンドは、ゆったりとした味わいながら、
ほどよい展開力とヴィンテージな空気感を含んでいて、同郷のD'accord あたりにも近い感触で楽しめる。
スペイシーなシンセとギターによるインストパートを中心に、随所に歌を乗せたユルめの叙情とともに、
まったりと鑑賞でき、ラストの12分の大曲では、女性コーラスやストリングスを加えた優美な叙情に浸りつつ、
うっすらとしたメロトロンにいくぶんハード寄りのギターが重なって、プログレらしいスリリングな展開も覗かせる。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 ヴィンテージ度・・8 総合・・8
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Anssi Tikanmaki 「Pizza A La」
フィンランドのミュージシャン、アンシ・ティカンマキの1994年作
牧歌的なアコーディオンの音色に軽やかなピアノ、PEKKAを思わせる北欧らしい繊細さと
軽妙なアンサンブル、随所にオーケストラルなアレンジも加わったサウンドは、
アカデミックで優雅でありながらも、どこか人懐こい温かみを感じさせる。
男女ヴォーカルの母国語の歌声が入ると、北欧トラッド的な感触も加わってなごめます。
ティカンマキ・オーケストラ名義になる前の、90年代の作品も素晴らしいんですね。ペッカのファンもぜひ。
メロディック度・・8 クラシカル度・・8 優雅度・・8 総合・・8
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Anssi Tikanmaki Orchestra「TUNTEMATON MAA」
映画音楽なども手がけるフィンランドのアンシ・ティカンマキによる2006作
ペッカ+エニドというタタキにつられ購入。北欧的な素朴なメロディにフルート、アコーディオンの
音色がからまり、そこに管弦楽隊が加わると、壮麗なオーケストレイションが現れる。
映画音楽的な1曲めから、続く2曲めは人を食ったようなユーモラスなメロディが確かにペッカ的。
しかしそこから泣きのギターが加わり、シンフォニックに展開する様はかなり極端だが面白い。
オールインスト作品ながら聴き所は多く、オーケストラの緻密なアレンジはもちろん
ときにはメタリックなギターも出てきたり、シリアスな重厚さとモダンな軽さとのギャップが楽しい。
現代クラシックの優雅さとシンフォニックロックのダイナミズムを融合させ、そこに
北欧トラディショナルの雰囲気をユーモアをまじえてセンスよく取り入れた大胆な作品だ。
シンフォニック度・・8 オーケストラ度・・8 北欧度・・9 総合・・8
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ANSSI TIKANMAKI ORCHESTRA「H2O」
フィンランドのミュージシャン、アンシ・ティカンマキの2009年作
映画音楽なども手がける才人ということであるが、前作「TUNTEMATON MAA」は
現代クラシックをプログレ化させたような素晴らしい作品であった。「知られざる国」シリーズの3作目である
本作もまた、美麗なオーケストレーションをたっぷりと取り入れ、それを北欧的な素朴な叙情と融合、
結果としてENID+ペッカ・ポーヨラというような、温かみのあるクラシカルシンフォになっている。
アコーディオンの音色などのユーモラスな雰囲気は、チェンバーロック的でもあり、
単なるシンフォニックロックとは異なるベクトルで生み出された、とても北欧らしい作品だ。
シンフォニック度・・8 オーケストラ度・・8 北欧度・・9 総合・・8
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ANSSI TIKANMAKI 「MAISEMAKUVIA SUOMESTA」
フィンランドのミュージシャン、アンシ・ティカンマキの2016年作
70年代から活動する作曲家で、1981年のデビュー作「フィンランドの風景」に、2004年のライブを加えた2枚組。
壮麗なオーケストラにサックスが鳴り響き、叙情的なギターの旋律が加わって涼やかな空気を描く、
北欧版THE ENID、あるいはMIKE OLDFILEDというような優美でシンフォニックなサウンド。
北欧らしい土着的なギターフレーズや、繊細なピアノにフルートの音色、美しいストリングスにうっとりしつつ、
軽妙でジャズロック的なとぼけた雰囲気もあり、TRIBUTEやPEKKAなどが好きな方にも楽しめるだろう。
Disc2のライブは、デビュー作全曲に5曲を加えた構成で、原曲を忠実に再現しつつ、オーケストラをツインシンセに変えて
サックスを加えたジャズロック寄りの軽快なアンサンブルで、エニド+ペッカというような優雅な演奏が味わえる。
シンフォニック度・・8 優美度・・9 北欧度・・9 総合・・8
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ANTI-DEPRESSIVE DELIVERY「FEEL MELT RELEASE ESCAPE」
ノルウェーのハードプログレバンド、アンチ・デプレッシブ・デリバリーの2004作
面白いことに、このバンドメンバーは皆デスメタル関係でバンド活動をしていた経緯をもつ。
したがってサウンドの方は、いわゆるDREAM THEATER系のProgMetalとも、
シンフォニック系のプログレハードとも異なり、変拍子リズムを使用したギターリフに
時々デスチックになるドラミング、そこにヴィンデージ調のキーボードが重なり
目新しくないようでいて、意外にこのタイプはいない、というものになっている。
時に古めかしいハモンドや、まるでANEKDOTENのようなメロトロンが盛大に鳴り響き、
メロディにはキャッチーさをかいま見せつつも北欧のバンドらしいさびれた風情をかもしだす。
難解さよりはプログレ・ロック的なノリがあるので、複雑すぎる変態系が苦手な人にも聴けるだろう。
ACT、ANEKDOTEN、PAIN OF SALVATION、MATS/MORGANあたりに通じる要素も感じられる。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・8 変態度・・7 総合・・8
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Antidepressive Delivery「Chain of Foods」
ノルウェーのプログレバンド、アンチデプレッシブ・デリバリーの2009年作
前作はレトロなプログレ感覚をプログレメタル的な演奏に融合させた力作であったが、
今作ではぐっと肩の力の抜けたヴィンテージなロックをやっている。鳴り響くオルガンの音色に
マイルドなヴォーカルの歌声で、古き良きブリティッシュロック的でもある演奏を聴かせる。
楽曲におけるメロディの盛り上がりもごく自然体なので、プログレうんぬんを考えずに聴き通せる。
前作のミスマッチProgMetalのヘンタイ感覚が好きだったリスナーには肩すかしかもしれないが、
これはこれと割り切って楽しめるのは、さすが技量の高いメンバーのやる音楽である。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 レトロロック度・・8 総合・・8
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aquaplan 「Old Waves New Seas」
フィンランドのシンフォニックロックバンド、アクアプランの2007作
変拍子入りの軽やかなアンサンブルに母性的な女性ヴォーカルの歌声で聴かせるサウンド。
メロウなギターフレーズなども含めて初期のQUIDAMなどを思わせる作風で、
そこに北欧らしい爽やかさと牧歌的な叙情を加味したようなアルバムである。
優雅なピアノで聴かせるジャズタッチの感触もあり、全体的に派手さよりも
繊細でやわらかなサウンドが耳心地よく、ゆったりと楽しめる。
シンフォニック度・・7 繊細叙情度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
ARABS IN ASPIC 「Pictures in a Dream」
ノルウェーのプログレバンド、アラブス・イン・アスピックの2013年作
70年代ロックのヴィンテージなアナログ感覚に包まれたサウンドで
メロトロンやオルガンを含んだシンセに、北欧的な叙情とサイケ風味の浮遊感が同居した
ゆるやかな聴き心地。牧歌的なヴォーカルの味わいとともにのんびりと楽しめる作風と、
70'sブリティッシュハードロックのブルージーな要素が前に出てきて、オールドなロックファンもにやり。
70年代ノルウェー伝説のバンド、RUPHUSのヴォーカルがゲスト参加しているのも興味深い。
ドラマティック度・・8 ヴィンテージ度・・8 北欧度・・8 総合・・8
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Arabs in Aspic 「Syndenes Magi」
ノルウェーのプログレバンド、アラブス・イン・アスピックの2017年作
妖しいジャケもいい感じだが、のっけからメロトロンが鳴り響き、ハード寄りのギターを乗せて
クリムゾン的な緊張感とサイケな浮遊感を同居させた、ヴィンテージなサウンドを聴かせる。
オルガンをバックにブルージーなギターを重ねた、古き良き70年代英国ロック風味に、
どことなく、グレッグ・レイクを思わせるマイルドなヴォーカルの味わいも確信犯的だ。
12分、9分、20分という全3曲で、ラストの大曲の後半はさすがに長尺感があるが、
のんびりとしたサイケ感が楽しめる方には、ヴィンテージプログレの力作となるだろう。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 ヴィンテージ度・・9 総合・・8
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Arabs In Aspic 「Live At Avantgarden」
ノルウェーのプログレバンド、アラブス・イン・アスピックのライブ。2018年作
2003年にデビュー、70年代ルーツのスタイルを標榜するバンドで、本作は2018年ノルウェーでのライブを収録。
のっけから、2017年作「Syndenes Magi」からの全3曲を再現、オルガン、メロトロンを含むシンセにブルージーなギター、
ジェントルなヴォーカルとともに、サイケがかったユルさとヴィンテージな空気に包まれたサウンドを構築してゆく。
ドゥームロック的でもある怪しさを含みつつ、随所に北欧プログレの涼やかな土着性も感じさせる楽曲は、
どこかなつかしいような味わいで、派手さはないがじっくりと楽しめる。全75分のヴィンテージなライブです。
ライブ演奏・8 プログレ度・7 ヴィンテージ度・8 総合・8
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ARSTIDIR 「NIVALIS」
アイスランドのポストプログレ、アルスティディアの2018年作
うっすらとしたシンセにやわらかなギター、マイルドなヴォーカルを乗せた繊細なサウンドで、
Sigur Rosあたりにも通じる涼やかな叙情性に包まれたゆったりとした耳心地。
ヴァイオリンやチェロなどのストリングスが優雅に重なるシンフォニックな質感に
キャッチーな歌もの感が同居したソフトな聴きやすさもある。楽曲は2~4分前後と
わりとシンプルなのでプログレ的な展開力というのはさほどないが、北の大地を思わせる
涼やかな空気感とともに、ストリングス入りのポストプログレとして楽しめる好作品です。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 叙情度・・8 総合・・7.5
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Art Deco 「Syvaan Uneen」
フィンランドのプログレバンド、アート・デコの2013年作
女性ヴォーカルの母国語の歌声と、やわらかなシンセアレンジ、メロディックなギターとともに聴かせる
いくぶんの土着性を含んだキャッチーなサウンド。変則リズムを含んだ軽妙なアンサンブルと、
北欧らしい叙情性はKAIPAあたりにも通じるが、こちらりはよりスタイリッシュでお洒落な雰囲気。
つまりライトなポップ性があるのだが、それを北欧のトラッド的旋律と融合させているのが絶妙のセンス。
13分を超える大曲では、アヴァンギャルドな展開とともにエキセントリックな側面も垣間見せる。
なかなかあなどれないセンスと懐の深さを感じさせるバンドである。今後の活動にも注目したい。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 北欧度・・8 総合・・8
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Arttu Takalo 「Dark. Dark. Dark.」
フィンランドのアーティスト、アトゥ・タカロのソロ、2006年作
XLのメンバーとして活躍したヴィブラフォン奏者で、ソロとしては3作目。ドラム、ギター、ベースを含むバンド編成に、優美なシンセとMIDIヴァイブを重ね、きらびやかなインストサウンドを聴かせる。
ギターやドラムなどは、わりとロック感触が強いので一般リスナーにも聴きやすく、優しいヴィブラフォンの響きも耳に心地よい。
楽曲は3~5分前後が主体であるが、叙情的なギターとシンセ、MIDIヴァイヴを重ねたラストナンバーまで、優雅で爽やかな味わいだ。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・8 総合・7.5
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ARTTU TAKALO 「Protocols of Dancing」
フィンランドのアーティスト、アトゥ・タカロのソロ、2008年作
XLのメンバーとして活躍したミュージシャンで、MIDIヴァイブ、シンセを操り、
モダンなエレクトロ風味に軽妙なフュージョンロックを融合させたというサウンド。
美しいストリングスをバックにコロコロとしたヴァイブの音色やサックスが鳴り響くなど、
クラシックやジャズなどの要素をミニマムに取り入れるセンスも心憎い。
一方では、PEKKAにも通じるやわらかな叙情性も垣間見せる。モダンな軽妙さと、
繊細な優雅さが同居した好作品。XLのヤルモ・サーリがゲスト参加。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 モダン度・・8 総合・・8
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ARTTU TAKALO「Truth in Dark Phrases」
元XLのアトゥ・タカロのソロ、2010年作
どっしりとしたドラム、ベースのリズムに、エレクトロなシンセやヴァイブ、シロフォンの音色を乗せた、
モダンなチェンバーロックサウンド。今作ではロック寄りのギターがより活躍していて、
メロウな旋律を奏でる部分では、美しいシンセアレンジも相まってシンフォニックな感触になる。
今作でもストリングスによる味付けがサウンドに優雅な厚みを与えていて、北欧らしい人懐こいメロディや
繊細な美意識というのは、やはり偉大なる先人、ペッカ・ポーヨラ譲りのセンスと言ってよいだろう。
スリリングな部分は少ないが、ジャズ色も含んだ優雅なサウンドが楽しめる。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 モダン度・・8 総合・・8
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Arttu Takalo 「Songsofsadpeople」
フィンランドのプログレバンド、元XLのアトゥ・タカロの2012年作
たおやかなピアノにストリングスが絡む1、2曲目は、まるでペッカのような美しさだが、
3曲目からはお得意のミディ・ヴァイブを使った、軽やかでモダンなナンバーが楽しめる。
コロコロとした軽妙な聴き心地の中にも知的な構築力を覗かせるところは、やはりかつてのXLを思わせ、
Pekka Pohjolaのアーティスティックな優雅さを現在に受け継ぐようなサウンドとも言えるだろう。
叙情的なギターも随所によい感じで、派手さはないがじわじわと繊細な感性が溢れ出す好作品だ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 軽妙度・・8 総合・・8
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ARTTU TAKALO「Sept.Naif」
アトゥ・タカロのソロ、2014年作/邦題「7つの純真」
XLの解散後は旺盛なソロ活動をしている印象であるが、本作はエレクトリック・ヴィブラファンの音色に
アコーディオンが重なり、ストリングスの響きとともに哀愁の叙情をより感じさせる作風になっている。
2~4分台の小曲を中心にしつつ、渋みのある男性ヴォーカルの歌声を乗せたタンゴ調のナンバーや
MIDIヴァイブの透明感のある響きを前に出したジャズ調のナンバーなど、それぞれに味わいがある。
ペッカ的なシンフォニックな美しさは薄れたが、内省的な大人の情緒を強めた好作となっている。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 哀愁度・・8 総合・・7.5
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ASOKA 「36 Years Later」
スウェーデンのプログレバンド、アソカの2007年作
1971年に唯一のアルバムを残したバンドの、なんと36年ぶりとなる作品。
ブルージーな味わいの古き良き70年代風味と、やわらかなエレピとオルガンが鳴り響き
スウェーデン語のヴォーカルで聴かせる、大人の味わいに包まれたサウンド。
随所にメロウなギターフレーズも入ってきて哀愁を含んだ叙情も感じさせる。
ジャジーな渋さもあるヴィンテージロック、オルガン入り北欧ロックとしても楽しめる好作。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 70's度・・9 総合・・7.5
B
BABY GRANDMOTHERS 「MERKURIUS」
スウェーデンのサイケロック、ベイビー・グランドマザーズの2018年作
Kebnekajseのメンバー3人によるバンドで、1968年のEP以来、じつに50年ぶりとなる作品。
わりとハードなギターを乗せたロック感触に、サイケな浮遊感とヴィンテージな味わいで、
アナログ感たっぷりのアンサンブルを聴かせる。ときおり覗く北欧らしい土着的な雰囲気は
やはりケブネカイゼに通じるような感触もあり、随所にオルガンなどのシンセを加えた、
フリーキーなユルさに包まれた聴き心地は、Dungenなどのファンにも楽しめるだろう。
これという展開もなく、全35分のスタジオセッション的な内容ですが、これぞサイケです。
サイケ度・・8 プログレ度・・7 北欧度・・8 総合・・7.5
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The Backstage 「Isolation」
スウェーデン&イギリスのメンバーによるプログレジャズロック、バックステージの2020年作
スティーヴ・ハケットのバンドでのツアーに参加した、ヨナス・レインゴールド、ロヴ・タウンゼント、クレイグ・ブランデル(元FROST*)が、リハーサルとジャムセッションをへて結成したバンドで、70年代風のジャズロック/フュージョンを指向した作品。ゲストに、スティーヴ・ハケット、ロイネ・ストルト、アンディ・ティリソン、パット・マステロット、テオ・トラヴィス、トム・ブリスリン、マルコ・ミンネマン、ニックベッグスという豪華メンバーが参加。
軽やかなリズムにサックスが鳴り響き、巧みなベースとともに軽妙なジャズロックを聴かせ、オルガンやエレピなどのシンセも加わって、プログレらしさも覗かせる。
オールインストながら各自の演奏力はさすがで、優雅な大人のアンサンブルが楽しめる好作です。
ドラマティック度・7 ジャズロ度・9 優雅度・8 総合・8
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BALTIK
スウェーデンのジャズロックユニット、バルティックの1973年作
ジャズ系のギタリスト、Jan Schafferを中心に、Bjorn Jason Lindh、LIFEのAnders Nordh、Paul Sundlin
さらには元QUATERMASSのJohn Gustafsonなど、多数のミュージシャンが参加、
ハード寄りのギターを乗せたインストナンバーから始まるが、その後は美しいピアノに女性ヴォーカルの
しっとりとしたナンバーや、男性ヴォーカルのフォーク風味のナンバーなど、ジャズタッチの優雅さや
アコースティックな牧歌性に包まれた味わいながら、ブルージーなギターが入ったノリのよいロックナンバーも現れて、
なかなか楽しめる。男女Voの歌唱力も含めて演奏陣のレベルも高く、一級品の作品に仕上がっている。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・6 ジャズ&ブルーズロック度・・8 総合・・8
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Barracuda Triangle 「Electro Shock Therapy」
スウェーデンのプログレバンド、バラクーダ・トライアングルの2014年作
The Flower Kingsのヨナス・レインゴールド、トマス・ボディーン、フェリックス・レーマンによるトリオバンドで、
のっけからメロトロンの音色を乗せて、KING CRIMSONを思わせるヘヴィなアンサンブルが広がる。
キーボードトリオの編成ながら、ヨナスがベースとギターを兼任しているので、インストながらも重厚な聴き心地で、
随所に北欧らしい叙情性を覗かせるのは、やはりトマスの美しいシンセワークによるところが大きいだろう。
リズム関しては空間を重視したフリーな感触もあって、その辺も含めてクリムゾン的な実験性も感じさせる。
いわば「クリムゾン化したTFK」というような作風であるが、一方ではヨナスのベースをじっくりと聴かせるパートや、
手数の多いフェリックスのドラムがタイトに躍動するパート、そしてトマスの繊細なシンセをメインにした小曲などもあり、
各メンバーの技巧とそれぞれのセンスをたっぷり味わえるのも嬉しい。フラキンファンはもちろん必聴ですよ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 アンサンブル度・・8 総合・・8
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BEARDFISH「fran en plats du ej kan se...」
スウェーデンのシンフォニックロックバンド、ビアードフィッシュの1st。2003作
メンバーは皆若そうであるが、音のほうは70年代テイスト溢れるレトロなロックサウンド。
シンフォニックというよりは、かつてのブリティッシュロックを思わせるブルージーな部分もあり、
そこに北欧的なメロディセンスをまぶしたという印象。ハモンド、ムーグなどのシンセワークは
いかにもプログレ的であるが、ギターやヴォーカルには古き良きロックの枯れた味わいがあり、
全体的に新人らしからぬ感性を感じる。最近の北欧ではレトロとモダンの融合がトレンドなのか。
ラストは15分の大曲で、これは北欧シンフォニック好きなら膝を叩く、なかなかの出来。
メロディアス度・・7 プログレ度・・7 70'sロック度・・8 総合・・7
BEARDFISH 「The Sane Day」
スウェーデンのプログレバンド、ベアードフィッシュの2005年作
本作は2作目で、CD2枚組の大作。ブルージーなレトロロックという印象だった1stから、
オルガンを含むシンセが前に出て来て、ぐっとプログレ寄りの作風になっている。
マイルドなヴォーカルを乗せた北欧らしい涼やかな叙情性とキャッチーなフックもありつつ、
サイケな感じのジャケが示すように、構築的すぎない適度なユルさがとぼけた味わいになっている。
巧みなインストパートは、ときにThe Flower Kingsを思わせる部分もあるが、こちらはさらに70年代ルーツの
ヴィンテージロック感漂わせていて、ブルージーなアンサンブル感を北欧プログレで解釈したというべき力作である。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 ヴィンテージ度・・8 総合・・8
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BEARDFISH「Sleeping in Traffic:Part One」
スウェーデンのプログレバンド、ビアードフィッシュの3rd。2007年作
1stを聴いた時点ではブルージーでレトロな70'sロック風という印象だったが、本作では一聴して音のダイナミズムが増している。
70年代を思わせる懐古的なロックを基盤にしているのは同じだが、北欧的な叙情が増し、メロトロンなどもより効果的に使われている。
曲におけるメリハリのつけ方や、聴かせ所をしっかりと盛り上げることで楽曲の説得力が増して、聴いていてぐいぐい引き込まれる。
ブリティッシュハードロック的なヘヴィさと、ブルージーでサイケな質感を上手に北欧プログレの要素にくるめたセンスが光っている。
メロディアス度・・8 レトロロック度・・8 北欧度・・8 総合・・8
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BEARDFISH「Sleeping in Traffic:Part Two」
スウェーデンのシンフォニックロックバンド、ビアードフィッシュの2008年作
前作の続編ということだが、どんなコンセプトなのかは詳細は不明。今作もハモンドオルガンなどを掻き鳴らし、
70's英国ロック風の演奏はより深みを増しており、やわらかなメロディをまじえながら、ほんのりと北欧風味も忘れないのが見事。
しかし、このレトロなセンスは、その本気ぶりもさることながら、ロックとしてのグルーブ感がしっかり曲を支えているのもなかなか素晴らしい。
これはもはやオルガンロックの傑作といってもよいほどだが、よくよく聴けば、ちゃんと現代的な構築性を持っているので、
決して古くさいだけではないのである。最後には35分の大曲が待ち構えていて、本作が大変な力作であると知れる。
メロディアス度・・8 レトロロック度・・10 オルガン度・・8 総合・・8
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BEARDFISH「Destined Solitaire」
スウェーデンのプログレバンド、ビアードフィッシュの2009年作
前作でやりすぎなまでの70年代懐古的なプログレサウンドを確立したこのバンド、
インパクトのある三面開きのジャケとともに内容もまた濃い濃い。鳴り響くハモンドの音色に、
70年代的なロックギターと唸るベース、一聴して音の存在感と説得力が一回り増したことを感じさせる。
今作ではそのレトロなサウンドに、The Flower Kings的なシンフォニックの構築性を加えて
緩急とメリハリを付けながらじっくりと盛り上げてゆく手法がなんとも心憎い。
グルーブ感たっぷりのシンプルな躍動感と、変拍子やシンセなどプログレとしてのお約束も
しっかりと盛り込みつつ、ときにユーモアある軽い脱力感や映画的な効果音なども含めて、
過去と現在、未来をリンクさせるようなコンセプチュアルなビジョンもかいま見える。大変な傑作。
メロディアス度・・8 レトロロック度・・8 濃密度・・9 総合・・8.5
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BEARDFISH「Mammoth」
スウェーデンのプログレバンド、ビアードフィッシュの2011年作
70年代的なヴィンテージ感覚を有したサウンドで、密かに北欧プログレの筆頭格にまで
上がりつつあるこのバンド、本作は大傑作となった2009年作に続く6作め。
いかにも70年代英国調のアナログ感覚で鳴り響くギターで、よりロック色が強くなった。
もちろんバックではメロトロンが鳴る、北欧プログレの質感もちゃんとあるが、
より自然体の飾らなさがこのバンドの本質を浮き彫りにしているようだ。
一方では15分の大曲ではプログレファンにんまりの展開力を聴かせてくれる。
メロディアス度・・7 ヴィンテージ度・・9 北欧度・・7 総合・・8
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Beardfish 「Void」
スウェーデンのプログレバンド、ベアードフィッシュの2012年作
ヴィンデージ色ただようレトロな北欧プログレ・ロックを追求し続けるこのバンド、
アンディ・ティリソンによる語りから始まる本作は、いきなりヘヴィなギターを含んだアンサンブルで、
最近のPAIN OF SALVATIONやOPETHあたりにも通じる、アナログ風味のHRという雰囲気がある。
一方ではオルガンなどを含んだ、レトロな70年代プログレ風味も残っていており従来からのファンも安心。
15分のプログレ大曲もあり、これまで以上のダイナミズムがアナログ的ロック愛と融合したというべき力作だ。
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Beardfish 「+4626 Comfortzone」
スウェーデンのプログレバンド、ビアードフィッシュの2015年作
2003年にデビューしてから、オールドな香りの漂うヴィンテージロックを作り続けるこのバンド、
前作ではハードロック的なヘヴィさが増していたが、8作目となる本作ではマイルドな路線へと戻っている。
70年代スタイルのギターワークに、オルガンにメロトロンを含むシンセとマイルドなヴォーカルで、
確信犯的なレトロなサウンドを描き出す、オールドでやわらかな耳心地の良さは健在だ。
今作はこれまで以上にキャッチーな小曲やハードロック風味の曲まで、バラエティに富んだ作風で、
全体的にはキャリアのあるバンドらしい落ち着いた聴き心地。派手さはないが、じっくりと楽しめる力作だ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 古き良き度・・9 総合・・8
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BJORN JOHANSSON「DISCUS URSIS」
スウェーデンのマルチミュージシャン、ビヨルン・ヨハンソンのソロ作。1998年作
自身でピアノ、キーボード、ギター、ベースを始め、マンドリンやリコーダー、フルートなどのトラディショナルな古楽器まで演奏。
北欧の寒々しい叙情性をもったシンフォニックロックで、ギターとキーボードによるマイナーなメロディで曲を盛り上げる手法は、
いかにも北欧らしい味わい。精神的には初期のMIKE OLDFIELDや、オーストリアのGANDALFに近いものを感じるが、
やはり地域的な違いか、より土着的で冬めいた北欧の自然を音を通して感じる。メジャー思考とは無縁の作風だが、
「北欧の空気」を肌で感じたい人にはうってつけのシンフォ作品で、いくぶん野暮ったいが個人的には傑作といいたい。
ラスト曲などはほとんど北欧版「オマドーン」である。ゲストでパル・リンダーが参加。
シンフォニック度・・9 マイナー美旋律度・・9 北欧度・・10 総合・・8.5◆プログレ名作選入り
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BJORN J:SON LINDH「Svensk Rapsodi」
スウェーデンのミュージシャン、ビヨルン・J:SON・リンデの1989年作
Bo Hanssonと並ぶ、スウェーデンのジャズ/トラッド系ミュージシャンであり
フルート奏者でもある彼が、北欧シンフォニック的な叙情に接近した傑作。
繊細なピアノのつまびきも、どこか北欧の風を思わせるような涼しさがあり、
ジャケットのイメージ通りの世界観が広がる。メロディックなギターやシンセが加わると、
シンフォニックロック的な情感があふれる。美しすぎる北欧の感性の結集。うっとりです。
メロディアス度・・8 クラシカル度・・9 北欧度・・10 総合・・8.5
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Bjorn Lynne 「Witchwood」
ノルウェーのミュージシャン、ビョルン・リンの1996年作
ファンタジックな世界観で多数の作品を作っているアーティスト、本作はギタリストを招いて作られた作品で
シンセ中心にした幻想的なサウンドに、メロウなギターの旋律が重なる、GANDALFなどを思わせる作風。
フォーキーなメロディを取り入れた牧歌的な聴き心地は、プログレ的なスリリングさはないのだが、
映画かゲームサントラのように想像力をかきたてる雰囲気でゆったりと楽しめる。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 ファンタジック度・・8 総合・・7
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Bjorn Riis 「Lullabies in a Car Crash」
ノルウェーのミュージシャン、ヨルン・リースの2014年作
Airbagのギタリストであり、本作もうっすらとしたシンセアレンジにマイルドなヴォーカルを乗せ、
やはりポストプログレ寄りの薄暗く繊細な叙情と、空間的な静謐感に包まれたサウンド。
メロウなギターを含むウェットな感触は、ギルモア期のPINK FLOYDルーツの翳りと浮遊感を描いていて、
10分を超える大曲もじっくりと味わえる。北欧らしい涼やかな空気感は、GAZPACHOあたりにも通じるだろう。
メロトロンが鳴り響き、適度にハードなギターを乗せたインストナンバーなどもじつに味わい深い。
ギタリストとしてのセンスはもちろん、しっとりとした叙情作品を構築するアーティストとしての実力も感じさせる。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 薄暗度・・8 総合・・8
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BLACK BONZO
スウェーデンのプログレハードバンド、ブラック・ボンゾの1st。2005年作
ユーライア・ヒープ、ディープ・パープルや、70年代のヴァーティゴ・レーベル系などを彷彿とさせる
レトロなプログレ・ハードロックサウンド。鳴り響くハモンドに、古き良き…というコーラスワーク。
URIAH HEEP的な英国然とした音と、北欧独特の時間の止まったような叙情性が合わさって
古くさいのだが間違いなく現在のサウンド…というなんとも不思議な雰囲気が楽しめる。
思い入れのあるヒープファンなどよりはむしろ、こだわりのない最近のリスナーに受けるかもしれない。
メロディアス度・・8 プログレハー度・・8 レトロ&懐古度・・9 総合・・8
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BLACK BONZO「Sound of the Apocalypse」
スウェーデンのレトロ・プログレバンド、ブラック・ボンゾの2nd。2007年作
のっけからムーグとハモンドの音色が襲ってくるぅっ!!今作も70年代懐古主義をつらぬくレトロなサウンド炸裂している。
モロURIAH HEEP的な70'sブリティッシュサウンドを聴かせた1stから
基本的には同一路線ながら、今回はJETHRO TULLっぽい雰囲気も取り入れている。
やたらとキャッチーな歌メロに、わざわざ古くささをかもしだすかのようなギターフレーズ、
そして鳴り響くハモンドオルガンには、おじさんロッカーはたまらないものがあるだろう。
ここまでくると、いっそ紙ジャケで英ヴァーティゴレーベルから出してほしい気さえする(笑)
シンフォニック度・・7 プログレ度・・7 たまらなくレトロ度・・9 総合・・8
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BLACK BONZO「Operation Matnual The Guillotine model DRAMA」
スウェーデンのヴィンテージロックバンド、ブラック・ボンゾの3rd。2009年作
メロトロンやハモンドオルガンを掻き鳴らし、かつてのDEEP PURPLEやURIAH HEEPなど
70年代ブリティッシュロックを思わせるレトロなプログレハードサウンドで、マニアの心を掴んだ彼ら、
3作目となる本作はタイトル通り、ギロチン…つまり断頭台をテーマにしたアルバムであるらしい。
もちろんサウンドの方は、ヴィンテージなオルガンの音色に、古き良きギターリフで聴かせる
相変わらず70's懐古主義的な香りがぷんぷん。聴いていて思わずにんまりである。
今回はアコースティカルな要素も取り入れるなど、肩の力が抜けたより自然体の作風といえ、
前2作に比べるとややインパクトの点では薄いものの、よりやわらかみのあるレトロロックとなっている。
メロディアス度・・8 プログレハー度・・8 レトロ&懐古度・・9 総合・・8
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Bo Hansson 「Sagan om Ringen/Lord of the Rings」
スウェーデンのミュージシャン、ボ・ハンソンの1970/1972年作
トールキンの「指輪物語」をコンセプトにした作品で、オルガンを含むシンセにギターを重ね、
サックスやフルートの音色とともに、ゆったりとした牧歌的な味わいのサウンド。
オールインストながら、物語の場面ごとを描くような幻想的な聴き心地で、
北欧らしい土着的な叙情性と、サイケ気味のユルさが合わさったような好作品。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 北欧度・・8 総合・・8
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BO HANSSON「MAGICIAN'S HAT」
スウェーデンのミュージシャン、ボ・ハンソンの2nd。1972年作
ソロ2作目の今作は、「楽しいムーミン一家」を題材にした作品で、演奏陣にKEBNEKAISEのメンバーを加え、
優雅で素朴なサウンドを聴かせる。やわらかなサックスやフルートの音色に、パーカッション等が加わって、
ジャズ的な優雅さやサイケな浮遊感をかもしだしつつ、ケブネカイゼにも通じる土着的なギターの旋律が重なってゆく。
ボ・ハンソンのオルガン、シンセワークはゆったりとして決してうるさすぎず、むしろ他の楽器との調和を大切にしている。
全体としては、のんびりと聴ける北欧土着プログレといった幻想的な雰囲気の好アルバムに仕上がっている。
メロディアス度・・7 プログレ度・・7 北欧度・・8 総合・・7.5
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Bo Hansson 「Attic Thoughts」
スウェーデンのミュージシャン、ボ・ハンソンの1975年作
「指輪物語」を題材にした「LORD OF THE RINGS」、「楽しいムーミン一家」を題材にした「MAGICIAN'S HAT」に続く
ソロ3作目で、引き続きKEBNEKAISEのメンバーが参加、牧歌的なフルートにアコースティックギター、
オルガンやピアノが絡み、ゆったりと土着的なインストサウンドを描く。メロウなギターフレーズは
やはりケブネカイゼを思わせる部分もあり、北欧らしい優雅なトラッドロックとしても楽しめる。
美しいシンセワークと叙情的なギターで聴かせるシンフォニックロック的なナンバーの一方で、
パーカッションにサックスが鳴り響くジャズ風味もあったり、ほどよいユルさと幻想性も魅力です。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 北欧度・・8 総合・・7.5
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BO HANSSON「MUSIC INSPIRED BY WATERSHIP DOWN」
スウェーデンのミュージシャン、ボ・ハンソンの1977年作
ソロとしては4作目で、本作は日本でも知られる「WATERSHIP DOWN(のうさぎたち)」をテーマにしている。
今作でも北欧のトラッド系プログレバンド、KEBNEKAISEのメンバーも参加していて、
ボ・ハンソンのKeyを中心に、トラッドメロディを奏でるギターや、たおやかなフルートなど
ほのぼのとした幻想的なインストサウンドを描く。まどろみながらゆったりと聴けるような好作品だ。
メロディアス度・・8 プログレ度・・6 幻想度・・8 総合・・7.5
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THE BOLLENBERG EXPERIENCE「If Only Stones Could Speak」
スウェーデンのアーティスト、John 'Bo Bo' BollenbergとBJORN JOHANSSONを中心としたプロジェクト、ボーレンバーグ・エクスペリエンスの2002年作。
参加メンバーがものすごく、リック・ウェイクマン(YES)、ジョーダン・ルーデス(DREAM THEATER)、ロイネ・ストルト(THE FLOWER KINGS)、
パル・リンダー(PAR LINDH PROJECT)、ビヨルン・ヨハンソン、ブライアン・ジョシュ、ヘザー・フィンドレイ(Mostly Autumn)他、という大変豪華なメンツ。
サウンド自体はゆったりと牧歌的なシンフォニックロックで、フランス中世の都市、ボレンベルグテーマにしたコンセプト作らしい。
ウェイクマン、ルーデスによるシンセはさすがに華麗で、それがB.ヨハンソンの北欧的な土着系のギターメロなどと合わさって、
なかなか面白い味になっている。ドラムを叩くのは意外にもパル・リンダーで、シンセで参加するはずが、メンバーが豪華すぎて押し出されたのか(笑)
ヘザー嬢が歌をとる曲は実に美しく、いっそ彼女に全曲歌って欲しい。あまり派手さはないが中世的な世界観でロマンティックに聴かせる。
シンフォニック度・・7 ゆったりロマン度・・9 しっとり叙情度・・8 総合・・7.5
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BREIDABLIK 「OMICRON」
ノルウェーのエレクトロ・アンビエント、ブレイダブリクの2020年作
シンセ奏者、Morten Birkeland Nielsenによるユニットで、2017年にデビュー、本作は4作目となる。
JordsjoのHakon Oftungが参加、それぞれ20分を超える2パートに分かれたタイトル曲は、
アコースティックギターのつまびきにうっすらとしたシンセを重ね、エレクトロなシーケンサー風味に
土着的なエレキギターの旋律も加えた、北欧らしい涼やかな牧歌性を感じさせるインストサウンド。
きらきらとしたシンセの重ねと、スペイシーな空間性に浸りつつ、ときにフルートも鳴り響く優美な味わいで、
Tangerine DreamやKlaus Schulzeのような幻想的なシンセミュージックが描かれてゆく。
シンセ度・8 ロック度・1 幻想度・8 総合・7.5
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BREIDABLIK 「ALDUORKA」
ノルウェーのエレクトロ・アンビエント、ブレイダブリクの2022年作
フェロー諸島をテーマにした作品のようで、デジタルなシンセの重ねをメインに、20分を超える大曲から始まる。
荒涼とした空気を感じさせるシンセミュージックは、やはりKlaus SchulzeやERIK WOLLOなどを想起させるが、
メロウなギターフレーズが重なると、GANDALFのような自然派シンフォニックロック的な味わいにもなる。
2曲目は、ドラムのリズムが入り、とたんにロック感触が強まって、GONGのようなスペイシーなサイケロック風に。
やわらかなフルートの音色がうっすらとしたシンセにかぶさる、しっとりと幻想的なナンバーも耳心地よく、
全作に比べてネイチャーな叙情性を感じさせつつ、エレクトロとプログレ要素のバランスのよい作品に仕上がっている。
シンセ度・8 ロック度・5 幻想度・8 総合・8
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Brighteye Brison「Stories」
スウェーデンのシンフォニックロックバンド、ブライトアイ・ブライソンの2nd。2006作
やわらかみのある歌メロ、コーラスワークはQUEENあたりをも思わせ、プログレというよりは
しっとりとしたメロディアスロックとして鑑賞すると良いかもしれない。
FLAGSHIPにも参加しているKEY奏者によるたおやかなピアノ、メロトロンに
メロウなギターのフレーズ、そしてマイルドなヴォーカルとどこにも押しつけがましいところはなく、
ゆるやかに、うっとりと楽しむことができる。もちろん楽曲アレンジのセンスも見事で、
ときおりACTあたりを思わせる、ちょっとしたアクセントや洒落た展開があるので飽きることもない。
とても優しいメロディアスシンフォ作。紅茶でも飲みながらいかが。マイスペで試聴可能。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 たおやか度・・9 総合・・8
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BRIGHTEYE BRISON「BELIEVERS & DECEIVERS」
スウェーデンのシンフォニックロックバンド、ブライトアイ・ブライソンの3rd。2008年作
ツインキーボードを含む5人組で、キャッチーでやわらかなコーラスワークと、ピアノとメロトロンが絡む、
レトロめのプログレ感覚が組合わさったサウンドで、前作同様にメロディアスなシンフォニックロックを聴かせてくれる。
圧巻なのは20分、34分という大曲で、これが素晴らしい出来。心地よいヴォーカルメロディと適度にテクニカルな展開力で、
あくまでキャッチーな叙情を大切に構築される楽曲は、かつてのGENESISやTHE FLOWER KINGSなどを思わせるものもありつつ、
さらに明快で抜けがよい。インスト部分の充実は前作以上で、力作というにふさわしいアルバムだ。
メロディアス度・・9 シンフォニック度・・8 北欧度・・7 総合・・8
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Brighteye Brison「The Magician Chronicles -Part I」
スウェーデンのシンフォニックロックバンド、ブライトアイ・ブライソンの4th。2011年作
前作は大曲を含んだ力作であったが、今作もいきなり23分の大曲から始まる。
オルガンやムーグを含んだ古き良きプログレの香り漂うシンセワークと
キャッチーなヴォーカルメロディとともに、軽やかに展開するシンフォニックロックサウンドで、
これまで以上に肩の力の抜けた、大人の余裕を感じさせる曲展開が光っている。
インパクトの点ではやや薄まったが、安心して楽しめる北欧シンフォニック作だ。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・8 新鮮度・・7 総合・・8
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BRIGHTEYE BRISON「V」
スウェーデンのプログレバンド、ブライトアイ・ブライソンの2019年作
2003年にデビュー、本作は8年ぶりとなる5作目。12分、17分、36分という大曲3曲の構成で、
きらびやかなシンセワークに伸びやかなヴォーカルを乗せた優雅なアンサンブルで、
キャッチーなメロディアス性とともに、ダイナミックなシンフォプログレを展開する。
やわらかなコーラスハーモニーに、オルガンなどを含むオールドなプログレ感触と、
TRANSATLANTIC以降のスタイリッシュな構築センスに爽快な抜けの良さも魅力的。
そして、前作「The Magician Chronicles」の続編となる、36分の長大な組曲は、
MOON SAFARIばりのキャッチーな感触で、緩急に富んだドラマティックな聴き心地です。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 構築度・・9 総合・・8
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BRIMSTONE「Mannsverk」
ノルウェーのプログレロック、ブリムストーンの2014年作
モダンなジャケのイメージ通り、サウンドの方もプログレ風味のあるエモーショナルロックという感触。
手数の多いドラムに乗るゆったりとしたギターは、ときにサイケロック的な浮遊感をかもしだし、
うっすらとしたシンセにけだるげなヴォーカルの歌声とともに、キャッチーなポップさと知的ロックの構築性を
巧みに同居させたというスタイリッシュな聴き心地である。前半はわりとコンパクトな作風だが、
後半は、12分、9分という大曲が待っていて、ポストプログレ的なゆるやかな叙情と、
モダンロックのデジタル感に、北欧らしいやわらかな繊細さが合わさったサウンドが楽しめます。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 知的センス度・・8 総合・・8
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BROTHER APE「On the other side」
スウェーデンのプログレバンド、ブラザー・エイプの2005年作
北欧というよりは、むしろアメリカ寄りのキャッチーな抜けのよさがあるサウンド。
ほとんどが5分前後のコンパクト曲で、無用な大作志向に走っていないのも聴きやすい。
KANSASあたりのメロディアスさに、A.C.Tなどにも通じるさりげないテクニカル性を盛り込んだ
センスのよい現代風のメロディックロックで、ヴォーカルの爽やかな歌唱もあいまって、
SAGAあたりにも通じるプログレハード的な聴き方も可能。メロディ派は必聴の好作品。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 キャッチー度・・8 総合・・8
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BROTHER APE「SHANGRI-LA」
スウェーデンのメロディアス・シンフォニックロックバンド、ブラザー・エイプの2nd。2006作
前作はその素晴らしいメロディとキャッチーで爽快なサウンドが素晴らしかった。
本作も同路線で、基本はKANSASあたりに通じるプログレハード系のキャッチーさに
北欧らしい繊細なシンフォ感覚を取り入れたというような、とてもクオリティが高いものだ。
楽曲は5分前後と比較的コンパクトで、難解さはなく分かりやすいメロディにあふれている。爽快な好作品だ。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 爽快&キャッチー度・・8 総合・・8
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Brother Ape 「III」
スウェーデンのプログレバンド、ブラザー・エイプの2008年作
2003年にデビューし、3作目となる。適度にハードなギターにモダンなシンセアレンジを重ね、
マイルドなヴォーカルで聴かせる、キャッチーでスタイリッシュなプログレハード寄りのサウンド。
2作目までに比べると、いくぶんオルタナ寄りの翳りとともに、ポストプログレ的な深化を感じさつつ、
優美なシンセと叙情的なギターによる、優雅なシンフォプログレ風味も随所に残している。
楽曲も5~7分前後と長すぎず、ほどよくコンパクトな耳心地の良さで、爽快な味わいだ。
軽やかでメロディアス、モダンなセンスと涼やかな北欧プログレ感触が合わさった逸品です。
メロディック度・8 プログレ度・7 スタイリッシュ度・8 総合・8
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Brother Ape「Turbulence」
スウェーデンのプログレバンド、ブラザー・エイプの2009年作
過去2作はKANSASなどを思わせるキャッチーなメロディのプログレハードという作風であったが
本作ではそこにエモ的なヴォーカルメロディが加わって、よりスタイリッシュなサウンドになった。
メロウなギターとシンセの絡みには、うっすらともの悲しい叙情も含み、
いわば「Porcupine Tree以降」のモダンプログレの感触が強まってきている。
軽やかさの中にもシンフォニックな音像がしっかり残っているのも嬉しい。
これは新たな北欧プログレのひとつの形というべき、じつに完成されたサウンドだ。
メロディアス度・・8 モダンプログレ度・・8 スタイリッシュ度・・9 総合・・8
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BROTHER APE「A Rare Moment Of Insight」
スウェーデンのプログレバンド、ブラザー・エイプの2010年作
キャッチーなメロディをモダンなアプローチで聴かせた前作に続き、本作もスタイリッシュなセンスを押し進めた作風となっている。
キレのよいリズムに、まるでUKロック的な感触のほの暗い叙情が、ぱっと聴きにはプログレ離れしているかに思える。
あるいは、オルタナ風のアレンジが、かすかに残っている北欧シンフォ風味と合わさったというべきか、
完全に脱プログレしているわけではない絶妙さに思わずほくそ笑む。お洒落ですらあるサウンドは、
これみよがしなシンフォ系が苦手なリスナーにも一聴の価値あり。ハイセンスなプログレロックの傑作!
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 モダンセンス度・・9 総合・・8
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Brother Ape 「Force Majeure」
スウェーデンのプログレバンド、ブラザー・エイプの2013年作
モダンかつハイセンスのサウンドを聴かせた前作に続き、6作目となる本作も
エレクトロ的でもあるスタイリッシュなアレンジに、ポストプログレ的な繊細な感触を乗せた
まったくもってセンス抜群の作風である。メロディには分かりやすいキャッチーさがあるので、
シンフォ系リスナーの耳を裏切ることはなく、北欧らしい涼やかな優しさが感じられる。
楽曲は5、6分台中心で、知的な構築力を覗かせつつも、あくまでメロディックな聴き心地。
Moon Safariとは異なるモダン派のバンドだが、クオリティでは匹敵するような傑作である。
メロディック度・・9 プログレ度・・8 スタイリッシュ度・・9 総合・・8
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Brother Ape「Karma」
スウェーデンのプログレバンド、ブラザー・エイプの2017年作
2005年にデビューし、本作は7作目。流麗なギターにシンセを重ね、マイルドなヴォーカルとともに
キャッチーでスタイリッシュなサウンドを描く。叙情的なギターフレーズや優雅なシンセアレンジには、
シンフォプログレとしての感触を残しつつ、モダンな歌もの感の繊細さと、いくぶんの硬質さが合わさって
軽やかなリズムとともに普遍的なメロディックロックとしても楽しめる。10分を超えるような大曲こそないものの、
ラストのタイトル曲は、シンフォニックロックとしての叙情美に包まれていて、泣きのギターとともにウットリである。
全40分というコンパクトな仕上がりながら、北欧らしい涼やかさと優雅な耳心地で聴き通せる好作だ。
メロディック度・8 プログレ度・7 スタイリッシュ度・9 総合・8
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C
The Carpet Knights「Lost & So Strange Is My Mind」
スウェーデンのプログレバンド、カーペット・ナイツの2005年作
70年代風のヴィンテージロックながら、ハモンドやメロトロンは入らず、
ギターメインのサウンドながら、JETHRO TULLを思わせるフルートも美しく、
ゆるめのサイケロック的に楽しめるサウンドだ。ギターはときおりヘヴィになり、
URIAH HEEPなどにも通じるブリティッシュハードロックの質感もある。
メロディアス度・・7 プログレ度・・7 レトロ度・・9 総合・・8
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The Carpet Knights「According to Life」
スウェーデンのプログレバンド、カーペット・ナイツの2009作
ヴィンデージロックの盛んなスウェーデンからまたしてもレトロなバンドが登場。
鳴り響くフルートに、70年代的なギターで聴かせる、サイケロック風味のサウンドは
JETHRO TULLを思わせるブルージーな味わいもあり、シンセがない分だけ生々しさがある。
曲によってはメロトロン抜きのANEKDOTENという雰囲気もあり、レトロロック好きはもちろん、
サイケやストーナー好きの方にも楽しめるだろう。じつは結成は1998年で本作はもう6作目らしい。
メロディアス度・・7 プログレ度・・7 レトロ度・・9 総合・・8
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CARPTREE
スウェーデンのシンフォニックロックバンド、カープトゥリーの1st。2001作
中期以降のMARILLIONのうす暗い叙情性をシンフォ化したようなサウンドで
密かに人気の高いこのバンド。この1stの時点では、後の作品ほどの音の厚みはなく、
どちらかというと牧歌的でおおらかな雰囲気の音作りとなっている。
メロトロンやピアノなどの美しさと、キャッチーなヴォーカルメロディで、
比較的シンプルに聴かせるスタイルで、まだ北欧シンフォ的な味わいは薄い。
シンフォニック度・・7 プログレ度・・7 素朴度・・8 総合・・7
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CARPTREE「Superhero」
スウェーデンのシンフォニックロックバンド、カープトゥリーの2nd。2003作
この2ndは自主制作ということもあってか、GENESIS~MARILLIONからの影響をもろに感じさせるサウンド
そのくぐもったような薄暗い叙情が、よりディープに発揮されている。
ピーター・ガブリエルかフィッシュかという、やや情感過多のヴォーカルときおりがうざったいものの、
この手の湿りけのあるほの暗いシンフォサウンドが好きなら浸れるだろう。
全体的にはやはり北欧というよりは、ブリティッシュ・ポンプロックの音に近いか。
シンフォニック度・・7 マリリオン度・・8 ほの暗度・・8 総合・・7.5
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CARPTREE 「Man Made Machine」
スウェーデンのシンフォニックロック、カープトゥリーの3rd。2005年作
MARILLION+PORCUPINE TREEという雰囲気のサウンドは、薄暗い叙情とともに
ほのかにゴシック調の耽美さもあって、とくに美しいシンセワークの繊細なセンスが光る。
ヴォーカルの歌い方には、GENESISなどに通じる感触もあり、北欧というよりは、むしろ
かつてのブリティッシュプログレのウェットな翳りを感じることができる。
ポストプログレ的な繊細さとシンフォニックロックを自然に融合したという好作品だ。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 薄暗度・・8 総合・・8
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CARPTREE「Insekt」
スウェーデンのシンフォニックロックバンド、カープトゥリーの4th。2007作
今作では純粋にメロディと雰囲気に磨きがかかり、音の説得力がぐっと増している。
ゆるやかなシンセを中心にゆったりと聴かせる楽曲は、決して派手に盛り上がるわけではなく、
薄暗い叙情美をともなって、じわじわと耳に優しくしみこんでくるという印象だ。
北欧版ポストプログレというイメージだが、もっとやわらかな幻想の空気に包まれているのが良い。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 ゆったり薄暗度・・9 総合・・8
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CARPTREE「Nymf」
スウェーデンのシンフォニックロックバンド、カープトゥリーの5th。2010年作
美しいピアノ、シンセワークにマイルドなヴォーカルを乗せて、
北欧らしい薄暗い叙情を聴かせるサウンドは本作でも同様ながら、
Porcupine Tree的でもあるモダンで適度なヘヴィさも強まっている。
楽曲やメロディ自体に新鮮さはないものの、シンセを中心としたアレンジで
ドラマティックな雰囲気を味わう作品だ。個人的にはもう少しキャッチーさが欲しい。
シンフォニック度・・7 薄暗度・・8 北欧度・・7 総合・・7.5
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CARPTREE 「EMERGER」
スウェーデンのシンフォニックロック、カープトゥリーの2017年作
2001年にデビュー、本作は6作目で、オルガンやムーグを含むプログレなシンセアレンジに
マイルドなヴォーカルを乗せた、オールドスタイルのシンフォニックロックサウンドに、
Porcupine Tree以降の薄暗い翳りを含ませた、ほどよくハードな質感も絶妙だ。
いくぶん中途半端に思えた前作よりも、楽曲自体のドラマティックな空気感が強まって、
北欧プログレ的なキャッチーな叙情も残しつつ、ゆったり、どっしりとしたダイナミズムで
繊細かつ重厚に構築されるサウンドはここにきてついに完成をみたか。
ナッド・シルヴァンを思わせるような、ヴォーカルの表現力も見事な傑作です。
シンフォニック度・・8 ドラマティック度・・8 叙情度・・8 総合・・8
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Carptree 「Subimago」
スウェーデンのシンフォニックロック、カープトゥリーの2018年作
2001年にデビュー、本作はすでに7作目となる。オルガンやメロトロンを含むヴィンテージなシンセに、
マイルドなヴォーカルを乗せて、薄暗い翳りとモダンな構築性が同居したサウンドは健在。
本作ではこれまで以上に、ANGLAGARD以降の北欧らしい涼やかな叙情性に包まれていて、
それを濃密すぎないスタイリッシュなセンスで描くところは、さすがキャリアのあるバンドである。
メロウなギターフレーズや女性コーラスなどを加えた優雅な感触もあり、繊細な歌ものパートは、
「北欧化したMarillion」という雰囲気でも楽しめる。北欧シンフォの現在系というべき傑作。
ドラマティック度・・8 薄暗度・・8 北欧度・・8 総合・・8
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CATWEAZLE「Ars Moriendi」
スウェーデンのプログレバンド、キャットウィーズルの1996作
邦題は「死の芸術」。アヴァンギャルドなジャケのせいでスルーしていたが、聴いてみたらしごくまっとうなシンフォニックロックでした。
レトロなシンセワークと、北欧らしい叙情を感じさせつつSEや語りなどを挿入してシアトリカルに盛り上げようとしているが、
いかにも自主制作然としたローカルな雰囲気が微笑ましい。
シンフォニック度・・7 北欧度・・8 ローカル度・・8 総合・・7
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circles end「Hang on to That Kite」
ノルウェーのプログレ系ロックバンド、サークルズ・エンドの2nd。2004作
北欧のプログレシーンで期待の若手とされる7人組。オフィシャルサイトで試聴可能
プログレといってもコテコテのタイプではなく、今で言うPT系のオルタナシンフォの質感で
北欧らしいメロトロンなどによる味付けと、比較的軽快でキャッチーなメロディが同居している。
曲は3~5分台でどれもコンパクトで、難解さや鬱な部分はなく、モダンで洒落たセンスがあり、
プログレ/シンフォうんぬんというよりも、むしろただのロックとして聴けば、より味わい楽しめるだろう。
メロディアス度・・8 プログレ度・・9 北欧度・・7 総合・・7.5
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Larsen & The Coloured Dreams 「Bucket List」
ノルウェーのロックバンド、カラード・ドリームスの2022年作
RUPHUSのギター、キエル・ラーセンを中心としたバンドで、オールドな味わいのギターに枯れた味わいのヴォーカルで、
ヴィンテージなロックサウンドを聴かせる。シンセは入らず、女性ヴォーカルを加えたエモーショナルな優雅さと
60~70年代ルーツのユルめのおおらかさで、のんびりとしたギターの旋律も含め、いかにもレイドパックした聴き心地。
プログレというよりは普通のオールドロックであるが、女性声メインのナンバーでは北欧らしい涼やかな雰囲気に包まれ、
叙情的なギターメロディも随所に耳心地よい。とにかく渋めのヴィンテージロックなので、まったりと鑑賞です。
ドラマティック度・7 プログレ度・6 ヴィンテージ度・8 総合・7.5
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Contemporary Dead Finnish Music Ensemble 「Land of Hope」
フィンランドのハードプログレバンド、コンテンポラリー・デッド・フィニッシュ・アンサンブルの2009年作
ギター&シンセのアンティ・ぺソネン、元HÖYRY-KONEのシンセ奏者マティ・ヤラヴァを中心に、
KATAJAINEN KANSAのエーロ・ウーティモ、元STRATOVARIUSのトゥオモ・ラシラをドラムに迎えた編成で、
女性ヴォーカルのやわらかな歌声に、メロウなギターとオルガンが重なり、適度なハードさを含んだサウンドで
北欧らしい涼やかな叙情を描き出す。いくぶん屈折したアヴァンギャルド性も垣間見せつつ、
メタリックなハードさと女性声を乗せた浮遊感が交差する、なかなか個性的な聴き心地である。
ストリングスが艶やかに鳴り響くナンバーや、ラストの10分を超える大曲では、ドラマティックなな展開力が楽しめる。
一方では、プログレなのかシンフォなのかハードロックなのか、方向性的な曖昧さをもう少し突き詰めて欲しい。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 北欧度・・8 総合・・7.5
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Contemporary Dead Finnish Music Ensemble 「Dark Matters」
フィンランドのプログレユニット、コンテンポラリー・デッド・フィニッシュ・アンサンブルの2014年作
2004年にデビュー、本作は5年ぶりとなる3作目。ギター&シンセのアンティ・ぺソネンを中心に、
男女4人のVoにサックス、ウォーギターなどを含む編成で、ジェントルな男性声に艶めいた女性ヴォーカル、
適度にハードなギターに美麗なシンセを重ねた、ドラマティックなシンフォニックロックを聴かせる。
10分を超える大曲を主体に、女性声によるオペラティックな優雅さを含んだ起伏のある展開力に、
メロウな叙情を奏でるギターに、メロトロンなどを含む優美なシンセアレンジも随所に魅力的だ。
翳りを帯びた北欧らしいシンフォニックロックから、エキセントリックなジャズロック風の大曲も素敵です。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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CORVUS STONE
フィンランドのプログレバンド、コーヴス・ストーンの2012年作
ムーグやオルガンを含んだシンセに、70年代ブリティッシュロック的な質感のギターワークとともに聴かせる、
80分にも及ぶコンセプト的な大作。ときにサイケ気味の浮遊感や、エキセントリックな雰囲気も垣間見せつつ、
インスト主体のユルめのサウンドを展開。演奏力はさほどでもないし、メロディアス性やドラマ性の点では、
いまひとつ煮え切らないのだが、ヘンテコなセンスで無理やりつなげてゆくようなアルバムの流れが新鮮で面白い。
Black Widowのカヴァーもよい感じです。古き良きロック感触の北欧サイケプログレというべき力作です。
ドラマティック度・・7 サイケ度・・8 古き良き度・・8 総合・・7.5
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Crea 「Dwarves & Penguins」
スウェーデンのプログレバンド、クレアの2019年作
90年代に活動するもアルバムを残さず消滅したバンドの復活作。やわらかなシンセにメロウなギター、
マイルドなヴォーカルを乗せて、翳りを帯びた叙情に包まれたサウンドを聴かせる。
ギターの奏でる泣きのフレーズは随所に魅力的で、ほどよくキャッチーな感触もあるが、
楽曲自体はやや盛り上がりに欠け、雰囲気はよいのだが淡々とした印象になっている。
煮え切らない北欧シンフォという点では、初期のGALLEONなどにも通じるかもしれない。
アルバム後半のインスト曲などは、優美な味わいでよい感じだが、全体的にはやや淡白か。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 叙情度・・8 総合・・7
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CROS「Playgrounds」
スウェーデンのシンフォニックロックバンド、クロスの2004作
ドラム以外は全てこなすクロス氏の個人プロジェクト的なバンドらしい。
サウンドは北欧というよりは英国ポンプからの影響が強いもので、
ゆったりとしたシンセの上をメロウなギターと優しげなヴォーカルが乗るスタイル。
耳触りの良さは、PENDRAGONやPALLASあたりにも通じる雰囲気があり、
楽曲のメリハリの少なさがやや退屈だが、この手が好きな向きには受け入れられる音だろう。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 楽曲・・7 総合・・7
D
D'Accord「Helike」
ノルウェーのプログレバンド、ダッコルドの2011年作
伝説の古代都市ヘリケをテーマにしたコンセプト作で、20分を超える2つの大曲で構成されている。
フルートが鳴り響き、まるでOSANNAの「Palepoli」を思わせるような妖しげな雰囲気で幕を開け、
オルガンやメロトロン、ムーグの音色にシアトリカルに歌うヴォーカルを含めて、
70年代を思わせる雰囲気を漂わせる。モダンさではなく、牧歌的なやぼったさが魅力で
初期のKAIPAなどにも通じる垢抜けないメロウな聴き心地は、オールドファンの耳に優しいだろう。
英国や北欧、イタリアのバンドの感触を覗かせながら、次々に展開してゆく大曲はなかなか圧巻だ。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 ヴィンデージ度・・8 総合・・8
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D'accord 「D'accord III」
ノルウェーのプログレバンド、ダッコルドの2013年作
前作はオザンナの「パレポリ」を思わせるような力作であったが、2作目となる本作もオルガンが鳴り響く
レトロなヴィンテージ感に包まれた古き良き感触のサウンド。1曲目の大曲は、マイルドなヴォーカルに
叙情的なフレーズを奏でるギターとともに、前作以上に北欧プログレとしての魅力を感じさせる。
ゆったりとしたおおらかな聴き心地にはサイケ的なユルさも感じ取れるが、そこを適度な構築力で展開させる、
そのバランス感覚もなかなか絶妙だ。前作がイタリア的な妖しさとすると、本作は70'sブリティッシュロック寄りか。
モダンさや派手さとは正反対の、アナログ感ただようバンドが好きな方へお薦めのバンドです。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 古き良き度・・9 総合・・8
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DAI KAHT 「DAI KAHT II」
フィンランドのプログレバンド、ダイ・カートの2020年作
2017年にデビューし、2作目となる。軽やかなギターの旋律にシンセを重ね、独自の架空言語によるヴォーカルを乗せて
とぼけた味わいの軽妙でキャッチーなサウンドを描く。MAGMAからの影響を感じさせるジャズロック風味と
プログレらしいテクニカルなリズムに、メロディックなギタープレイによる優美なフュージョン感触が合わさって、
序盤はわりと爽快に楽しめる。アルバム中盤には、アヴァンロックとしての怪しげな雰囲気も漂わせ、
11分、12分という大曲では、緩急ある展開力とスリリングなアンサンブルで、異様なスケール感に包まれる。
全体的には、難解さよりも優雅なノリで楽しめる部分が多いので、アヴァンプログレ初心者にも薦められる。
ドラマティック度・7 プログレ度・8 優雅度・9 総合・8
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DEATHORGAN「9 to 5」
スウェーデンのオルガンロックバンド、デスオルガンの1995年作
ギターレスのオルガントリオ+2人のVoという特異な編成の通り、
レトロなハモンドオルガンの上にアグレッシブなヴォーカルが乗るという個性的なサウンド。
ヴォーカルは比較的ノーマル声と、低音デス声という割り振りで、
暴虐さをかもし出しつつも、やはりバックがオルガンなので音に硬質感はなく
愉快な雰囲気とともに、70'sブリティッシュ風のレトロな質感をかもし出している。
まるで1発ギャグ的なインパクトであるが、バンドはこの後2ndを出している。
メロディアス度・・7 ハモン度・・8 インパクト・・9 総合・・7.5
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Den Fule「Lugumleik」
スウェーデンのトラッドロックバンド、デン・フューレの1993年作
フィドルにサックス奏者を含む6人編成で、土着的な北欧メロディを
ロック的な躍動感と融合して聴かせるスタイル。 とくに叙情的なフィドルの音色は
KEBNEKAJSEにも近い雰囲気で、北欧的な音が好きな方ならにんまりだろう。
一方では、エレキギターを含んだ軽妙なジャズロック/フュージョン的感触もある。
メロディアス度・・8 トラッ度・・7 北欧度・・8 総合・・8
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Den Fule「Skalv」
スウェーデンのトラッドロックバンド、デン・フューレの1995年作
やわらかなフルートの音色にアコースティックギターやマンドリン、サックスの音色も加わって、
軽妙なドラムとベースがジャズロック色のあるアンサンブルを描きだす。
アコースティックをベースにしつつも、ときにエレキギターも入ってきて、
土着的なフレーズを奏でるフィドルの音色や母国語の歌声とともに、濃密なトラッド・ロックを聴かせる。
前作に比べて、土着性とジャズ、ロックなどの融合が深化したと思える好作品。
メロディアス度・・7 トラッ度・・7 北欧度・・8 総合・・8
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The Devil's Staircase
スウェーデン&メキシコのプログレユニット、デヴィルズ・ステアケースの2020年作
元Anglagardのドラマーで、Necromonkeyなどで活躍するマティアス・オルソンとSonus Umbraのメンバーによるユニットで、
繊細なアコースティックギターから、ハードでメロウなギターの旋律にエフェクトを加えたサックスが鳴り響き、
ときにエレクトロなアレンジも加えた、インストによるハードプログレを聴かせる。マティアス・オルソンのドラムを主体にした
軽やかなアンサンブルに、ときにメロトロンの音色も加わったミステリアスなシンフォ風味も覗かせつつ、
10分を超える大曲を中心に、スタイリッシュなサウンドを構築する。スペイシーなシンセを乗せたナンバーなども
優雅な聴き心地で、エレクトロとアナログの自然な融合がなされている。新感覚のインスト系ハードシンフォの逸品。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 優雅度・・8 総合・・8
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Diablo Swing Orchestra「The Butcher's Ballroom」
スウェーデンのプログレ・ジャズメタルバンド、ディアブロ・スウィング・オーケストラの1st。2006作
女性Voにチェロ奏者を含む6人組で、バンド名のようにスイングジャズを取り入れつつ、
オペラティックな女性ヴォーカルの歌声とともに、ゴシックメタル的な雰囲気を融合させた
とてもユニークな音楽性。一聴して思い出すのはフィンランドのALAMAAILMAN VASARATで
彼らのような「ユーモア溢れる本気」というような、大人の遊び的な強固な姿勢を感じさせる。
さらにこのバンドの場合、ジャズの素養がしっかりとしていることで、楽曲が嘘くさくなく
そこにメタリックなギターやチェロなどが割と自然に融合しているのがまた凄いところである。
ジャズメタル度・・8 オペラティック度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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Diablo Swing Orchestra「Sing Along Songs for the Damned & Delirious」
スウェーデンのプログレ・ジャズメタルバンド、ディアブロ・スウィング・オーケストラの2nd。2009年作
今作はジャケからしてユーモアたっぷりだが、サウンドの方もさらなるジャズとメタルの自然の融合がなされている。
ハネるリズムの上にザクザクとしたギターとサックスが絡み、そこに男女ヴォーカルが絡む濃密な作風で、
演奏自体のレベルも上がってきており、メタリックなスウィングジャズとしての完成度が無駄に高まっている。
軽やかなピアノの音色やら、ヴイヴイいわせるベースの巧みさやら、部分ごとの説得力が大変素晴らしく、
本気ジャズ的メタル遊び…ともいうべき強固な世界観に磨きがかかっているばかりか、
低音の男声とオペラティックな女性声という対比がコントラストとなって、作品としてのテンションも増している。
変態…というにもあまりに高い完成度と天晴れなまでの真摯な遊び心。敬服するしかない強力作である。
ジャズメタル度・・9 スウィング度・・8 女性Vo度・・7 総合・・8.5
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Diablo Swing Orchestra「Pandora's Pinata」
スウェーデンのプログレ・ジャズメタル、ディアブロ・スウィング・オーケストラの2012年作
メタルとスウィングジャズを融合させたような、遊び心たっぷりのサウンドで過去2作も素晴らしかったが、
今作もハジけてます。鳴り響くホーンセクションにヘヴィなギターが合わさり、女性ヴォーカルの歌声が
エキセントリックに響きわたる。お洒落で優雅でアダルトな濃密さに包まれて、メタリックなハードさと
軽やかなミクスチャー感覚が本気で合体。ときにオペラティックなアリアのようなナンバーもあって、
クラシカルな要素も楽しめます。極端さはやや薄まったが相変わらず素敵なバンドです。
ドラマティック度・・7 ジャズメタル度・・8 優雅なヘンタイ度・・8 総合・・8
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DIABLO SWING ORCHESTRA 「Pacifisticuffs」
スウェーデンのプログレ・ジャズメタル、ディアブロ・スウィング・オーケストラの2017年作
メタルとスウィングジャズを大胆に融合した、遊び心たっぷりのサウンドを描くバンドの4作目。
トロンボーン、トランペット、チェロ奏者を含む8人編成で、今作はのっけからノリのよいファンキーなロック感触で、
ハードなギターにブラスが重なり、男女ヴォーカルを乗せた勢いのあるサウンドを聴かせる。
チェロを加えたクラシカルな感触に、とぼけた味わいのカントリー風味などを唐突に盛り込みつつ、
シアトリカルな壮大さとともに「本気のギャグ」を構築するようなセンスはこのバンドならではだろう。
曲によってはモダンなビート感とともに、確信犯的なポップ性も盛り込んだ振り幅の大きなアレンジも凄い。
女性Voの交替によりオペラティックな雰囲気は薄まったが、むしろ深化した「ごった煮系」の異色傑作である。
ドラマティック度・・8 ジャズメタル度・・7 アヴァン度・・9 総合・・8.5
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Diablo Swing Orchestra 「Swagger & Stroll Down The Rabbit Hole」
スウェーデンのアヴァン・ジャズメタル、ディアブロ・スウィング・オーケストラの2021年作
2006年にデビュー、スウィング・ジャズとメタルを融合させた独自のスタイルで異彩を放つバンド。
5作目となる本作は、メタリックなギターにトランペットやトロンボーンなどのブラスを重ね、
男女ヴォーカルのシアトリカルな歌声とともに、モダンでとぼけた味わいのアヴァンロックを展開。
哀愁の女性ヴォーカルを乗せたメタルシャンソン風ナンバーなどもコケティッシュでお洒落な耳心地。
ストリングスを加えたクラシカルな優雅さは、シンフォニックなジャズロックとしても楽しめるだろう。
ジャズ度・7 優雅度・9 アヴァンギャル度・8 総合・8
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Dice
スウェーデンのプログレバンド、ダイスの1977年作
KAIPAとともに、個人的に北欧プログレの入り口となったのがこのバンドである。
「北欧の夢」という日本盤タイトルや幻想的な色合いのジャケットも印象的だった。
土着的な叙情のカイパに比べると、こちらはもっとスタイリッシュなサウンドで
Yesタイプといってもよい軽妙な演奏力と、人懐こいキャッチーなメロディが魅力。
2曲め“Annika”のメロウなギターの旋律は、ハケットかセバスチャン・ハーディかというほど。
22分の組曲“フォリーズ”も圧巻で、70年代の北欧の作品としては、素晴らしい完成度の作品だ。
メロディアス度・・8 プログレ度・・8 北欧度・・8 総合・・8
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DICE「The Four Riders of the Apocalypse」
スウェーデンのシンフォニックロックバンド、ダイスの1978年作
「北欧の夢」と題された1st以前に録音されたマテリアルで、 「黙示録の四人の御使い達」というタイトル通り
“戦い”、“疾患”、“貪欲”、“死”というテーマにそった、オールインストの組曲を作り上げている。
北欧らしい叙情を聴かせるギターフレーズと、オルガンやメロトロンなどのシンセワーク
そして軽やかに展開する楽曲構成は、土着的なKAIPAに比べて、YESやEL&Pに近い感触だろうか。
緩急を織りまぜた演奏の中に、涼やかメロディとファンタジックな雰囲気が楽しめる好作だ。
本作がメタルコーナーに偶然中古が置いてあって、ジャケ買いしたという、個人的にも思い出の1枚。
ドラマティック度・・8 ファンタジック度・・8 北欧度・・8 総合・・8
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DICE「LIVE 1977」
スウェーデンのプログレバンド、ダイスのライブ音源。2013年作
KAIPAと並び70年代北欧プログレを代表するバンドの、デビュー前1977年のラジオ出演時の音源。
「黙示録の四人の御使い達」からの全曲に、「北欧の夢」から2曲を収録。音質も良好で、
メロトロンやオルガンを含んだシンセワークに、メロウなギターと、Yesを思わせる軽やかなアンサンブルで、
インスト中心の大曲を構築してゆくセンスはやはり素晴らしい。純粋に音楽を楽しむリスナーには
曲間のインタビュー音源は余計かもしれないが、北欧プログレファンなら垂涎ものの音源だろう。
プログレ度・・8 ライブ演奏・・8 音質・・8 総合・・8
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DIM GRAY 「FIRMAMENT」
ノルウェーのプログレ・ポストロック、ディム・グレイの2022年作
2021年にデビューし、2作目となる。叙情的なギターにうっすらとしたシンセを重ね、マイルドなヴォーカルとともに
北欧らしい涼やかな空気に包まれた、ポストプログレ風味のサウンドを聴かせる。Sigur Rosあたりにも通じる
繊細な牧歌性が耳に優しく、わりとシンフォニック寄りのシンセアレンジも含んでいて、プログレ向けの作風といえる。
曲によってはエレクトロなアレンジやオーケストレーション、ゲストによるチェロやヴァイオリン、フルートなども加わり、
クラシカルで優雅なスケール感は、Efterklangなども思わせる。楽曲は3~4分前後とわりとシンプルなので、
派手な展開や盛り上がりなどはないのだが、しっとりとした優美な叙情に浸れる好作品です。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 叙情度・8 総合・7.5
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Discordia 「Season Changes」
フィンランドのプログレ、ディスコーディアの2014年作
詳細はまったく不明だが、メンバーの名前の感じからしておそらくフィンランドのバンドと思われる。
母国語のヴォーカルと適度にヘヴィなギター、随所に土着的なトラッドロック質感を含んだサウンドで、
キャッチーなメロディアス性が前に出ているのだが、曲によっては70年代ロック的な風味やサイケ的なユルさもあったり、
ときに女性ヴォーカルが加わったりと、なかなか面白い。反面、どこに着地したいのかよく分からない散漫さもあるのだが、
12分の大曲などのチェンバーロック的でアヴァンギャルドな芸術性にはバンドとしての可能性を感じさせる。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 北欧度・・8 総合・・7.5
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DIVINE BAZE ORCHESTRA「Dead But Dreaming」
スウェーデンのプログレバンド、ディヴァイン・ベイズ・オーケストラの2010年作
KING CRIMSON風味の薄暗い叙情に、チェンバーロック的なミニマム感覚を合わせた
個性的なシンフォニックプログレ。オルガン、メロトロンが鳴り、レトロめのギタートーンに
どこかとぼけた味わいのヴォーカルで、適度に力の抜けたシリアスとユーモアの境をゆく。
うっすらとした寂寥感は、クリムゾンの“Epitaph”的な世界観で、ANEKDOTENなどとはまた
異なるアプローチでそれをやっているのが面白い。ダークなシンフォニックが好きならチェック。
シンフォニック度・・7 プログレ度・・8 薄暗叙情度・・8 総合・・8
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dungen「1999-2001」
スウェーデンのサイケロックバンド、ドゥンエンの2001年作
ヴォーカル、ギター、ベース、ドラム、キーボード、フルート、ヴァイオリンをこなすマルチプレイヤー、
グスタフ氏をを中心にしたバンドで、本作は1999年から2001年までの初期のマテリアルを集めた作品。
70年代的なアナログ感と牧歌的なフォーク風味を含んだユルめの北欧サイケサウンドで、オルガンやフルートが鳴る
70'sプログレ風味に北欧らしい土着的な雰囲気が合わさり、例えればウマグマの頃のPINK FLOYDにも通じるような
ヒッピーな奔放さと、日だまりのようなキャッチーな叙情が同居した、のんびりと楽しめるサウンドだ。
14分、18分、11分という全3曲を収録。鳥の声も入っていて耳心地よくまどろめます。
メロディアス度・・8 プログレ風味度・・8 北欧サイケ度・・9 総合・・8
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Dungen 「Stadsvandringar」
スウェーデンのサイケロック、ドゥンエンの2002年作
2001年にデビュー、本作は2作目。牧歌的なギターとキャッチーなコーラスハーモニーで、
フォークルーツのユルめのサウンドを描く。母国語によるヴォーカルとともに、涼やかな土着性に包まれつつ
メロウなギターのトーンにメロトロンなどのシンセが合わり、北欧プログレ的な感触でも楽しめる。
楽曲は3~4分前後とシンプルだが、キャッチーなメロディのフックもあって、総じて耳心地が良いので、
肩の力を抜いてのんびりと鑑賞できる。優雅なフルートやヴァイオリンも鳴り響き、随所にオルガンや
メロトロンも加えての、シンフォプログレとしての魅力も覗かせる。これぞ北欧というサイケプログの逸品。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 北欧度・9 総合・8
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DUNGEN「Tio Bitar」
スウェーデンのサイケロックバンド、ドゥンエンの3rd。2007年作
今作は3~5分という比較的コンパクトな楽曲で、初期のユルさに比べると
1曲めなどはずいぶんロック的な激しさが増した、といっても2曲め以降は
やはり70年代風味のレトロさとサイケな感触は健在で、やわらかなオルガンや
ヴァイオリンの音色とともに、牧歌的なプログレロック風味が楽しめます。
ロックとしてのノリの良さが増した分、一般的には前作よりも聴きやすいかもしれない。
メロディアス度・・8 プログレ風味度・・7 北欧サイケ度・・8 総合・・8
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DUNGEN「Ta Det Lugnt」
スウェーデンのサイケロックバンド、ドゥンエンの4th。2007年作
自然派北欧サイケロックというべき、ユルくてプログレ的な歓声を有したこのバンド、
本作も70'sロックのフリーキーなアナログ感覚と、北欧らしい牧歌的な叙情で
センスの良いサウンドを描き出す。ときにヴァイオリンやサックスなども入って、
ゆるやかでありながらも多様性のあるアレンジと作り込みが素晴らしい。
優しいピアノのつまびきにフルートも加わると、ほとんどプログレの感触で楽しめる。
メロディアス度・・8 プログレ風味度・・8 北欧サイケ度・・8 総合・・8
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DUNGEN「4」
スウェーデンのサイケロックバンド、ドゥンエンの5th。2007年作
ヴァイオリンが鳴り響き、北欧的な叙情を含んだギターの旋律がじつに美しい。
前作に比べて、繊細な叙情美が前に出ており、やわらかなフルートの音色とともに、
これはスウェーデンのCAMELか?というような、うっとりとする聴き心地です。
曲によっては中近東的なサイケ質感も織り込みつつ、コンパクながらも味わいが深い。
プログレロックとしてもいくぶん洗練されてきた感触で、素敵な好作品に仕上がっています。
メロディアス度・・9 プログレ風味度・・8 北欧度・・8 総合・・8
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DUNGEN「Skit I Allt」
スウェーデンのサイケロックバンド、ドゥンエンの6th。2010年作
前作のしっとりとした流れを受け継ぎ、フルートの音色を優しく響かせつつ
やわらかなヴォーカルとともに古き良き感触の北欧ソフトロックが楽しめる好盤。
今作ではキュートな女性ヴォーカルも一部に加わったり、優雅なヴァイオリンや
ピアノの響きにうっとりしつつ、ロックとしての躍動感もしっかり残しているのが見事。
サイケなユルさをキャッチーに、北欧の自然の中に溶け込ませたようなサウンドだ。
メロディアス度・・8 プログレ風味度・・8 北欧度・・8 総合・・8
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Dungen 「Allas Sak」
スウェーデンのサイケロック、ドゥンエンの2015年作
2002年にデビュー、ユル系サイケと北欧らしい叙情を合わせたサウンドで、じわじわと人気を上げている。
7作目となる本作も、アナログ感あるギターにやわらかなシンセが重なる、プログレ寄りのサイケが楽しめる。
母国語によるヴォーカルもマイルドな味わいで、オールドスタイルのロック感触とともに、
3~4分前後の小曲をのんびりと聴かせる作風だ。アコースティックギターにパーカッションが鳴り響く、
フォーキーな牧歌性は、モダンに敢然と背を向けた「これでいいのだ」とばかりのユルさである。
吹き鳴らされるフルートもどこかけだるげで、プログレ的な展開をしそうでしない楽曲もある意味で確信犯的だ。
北欧らしい叙情をしっかりと含ませながら、「やわらかで涼やか」という独自の空気感を描く好作品である。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 ユル度・・9 総合・・8
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DUNGEN 「HAXAN」
スウェーデンのサイケロック、ドゥンエンの2016年作
2002年にデビュー、ユル系サイケと北欧らしい叙情を合わせたサウンドで、プログレファンにも人気のバンド。
8作目となる本作は、なんと世界初の長編アニメとして知られる「アクメッド王子の冒険」をコンセプトにしたインストアルバム。
うっすらとしたシンセに、サウンドスケープ的なギターサウンドを乗せて、ゆったりと聴かせる作風ながら、
メロトロンが鳴り響く北欧プログレ風味や、サイケロックとしての生々しいアナログ感も残していて、
アコースティックギターやフルートなども加わった、ユルめの叙情性と浮遊感はやはり絶妙だ。
1分前後の小曲を挟んだ構成で、オールインストながらも、曲によって空気感の変化があるので飽きずに楽しめる。
アルバム後半、優雅なピアノにメロトロンが重なり、ラスト曲のダイナミックなサイケになだれ込む展開も見事。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 北欧サイケ度・・8 総合・・8
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E
ELEPHANT PLAZA 「Momentum」
ノルウェーのプログレバンド、エレファント・プラザの2017年作
MAGIC PIEのシンセ奏者を中心にしたバンドで、厚みのあるキーボードアレンジにメロウなギター、
マイルドなヴォーカルで聴かせる、スタイリッシュでメロディックなシンフォニックロックサウンド。
いくぶんモダンな味わいを含んだ適度にハードな感触に、一方ではMARILLIONなどにも通じる、
ゆったりとした繊細な叙情も感じさせる。ヴォーカルのジェントルな雰囲気とウェットなメロディには、
PALLASあたりを思わせる部分もあり、随所に女性ヴォーカルも加わったキャッチーな優雅さも魅力的だ。
アルバム後半は20分におよぶ組曲で、きらびやかなシンセアレンジと優美な叙情でドラマティックに構築する。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 叙情度・・8 総合・・8
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Elonkorjuu 「Scumbag Goes to Theatre」
フィンランドのプログレバンド、エロンコルジューの2010年作
1972年にデビュー、78年に2作目を残して消えるも、2004年に復活、本作は2009年のライブを2CDに収録している。
エレピやオルガンを含むシンセに、ブルージーでメロウなギターを重ね、ジャズロック的な軽やかなインストパートとともに、北欧らしい涼やかな土着性も含んだサウンドを描く。
サックスがフリーキーに鳴り響くアダルトなジャズ感触に、やわらかなオルガンが巧みなギターに重なると、北欧版FOCUSというような味わいでも楽しめる。
ヤン・アッカーマンばりの流麗なフレーズを奏でるギターの実力も素晴らしい
後半は、枯れた味わいのヴォーカルも乗せて、70年代ブリティッシュロック的な雰囲気も覗かせる。
ジャズロ度・8 プログレ度・7 ライブ演奏度・8 総合・8
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ENSEMBLE NIMBUS 「Key Figures」
スウェーデンのチェンバーロック、アンサンブル・ニンブスの1994年
ヴァイオリン、クラリネット奏者を含む5人編成で、案外ロック色のあるギタートーンに
素朴なクラリネットの音色が絡み、コミカルさと薄暗さを同居させたようなサウンドが広がる。
サムラあたりに比べるともっと整合感が強いので、チェンバー初心者にも聴きやすいだろう。
キャッチーなおちゃらけの中にクラシカルで優雅なセンスも覗かせる。Hoyry-Koneなどよりも分かりやすいかも。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 アヴァンギャル度・・8 総合・・7.5
ENSEMBLE NIMBUS 「Scapegoat」
スウェーデンのチェンバーロック、アンサンブル・ニンブスの1998年作
Samla Mammas Mannaのドラマーで、THE FLOWER KINGSにも参加した、ハッセ・ブラニウソンが在籍するバンドで、
1994年にデビュー、本作は2作目となる。クラリネット、ヴィオラ&ヴァイオリン奏者を含む編成で、うっすらとしたシンセをバックに
巧みなドラムによるグルーヴィなリズムに、ヴィオラが妖しく鳴り響き、クラリネットの優雅な音色とともに、
薄暗くクラシカルなチェンバー・プログレを聴かせる。UNIVERS ZEROにも通じるミステリアスな世界観と、
サムラをルーツにしたとぼけた味わいが合わさって、涼やかな哀愁に包まれた独自のインストサウンドを描いてゆく。
いくぶん北欧シンフォ的な部分もあるので、チェンバー初心者にも聴きやすいだろう。TFKのトマス・ボディーンがゲスト参加。
クラシカル度・・8 チェンバー度・・8 優雅でダーク度・・8 総合・・8
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Erik Hammarstrom 「Glodhet Rytmisk Svarta」
スウェーデンのミュージシャン、エリク・ハマーストロムの2019年作
Anglagard、 Brighteye Brison、All Traps On Earthなどで活躍するドラマーで、本作はベースに管弦楽、
クラリネット、フルート、ハープ、ファゴット、チェレスタまで一人でこなしたという多重録音によるアルバム。
34分に及ぶ組曲と、後半は15分の組曲という構成で、クラリネットやストリングスによるクラシカルなシンフォニーに
自身のドラムプレイを融合させた、チェンバーロック的なサウンドを構築する。ヴァージル・ドナーティのような超絶さはないが
オーケストラルな優雅さに巧みなロックドラムを加えた、スリリングでいくぶんダークな味わいの聴き心地であるが、
テクニカル過ぎないところに北欧らしい牧歌性も感じる。前半の大曲はさすがに長尺感があるが、挑戦的な異色作である。
クラシカル度・・8 プログレ度・・7 優雅度・・8 総合・・7.5
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ERIK WOLLO 「GUITAR NOVA」
ノルウェーのミュージシャン、エリク・ウォーロの2000年作
TERJE RYPDALの後継者と言われるギタリストで、本作はタイトルのようにギターをメインにした作品。
アコースティックギターの優雅なつまびきで、ゆったりとした繊細な叙情を描きながら、
ときにエレキギターも使って北欧らしい涼やかなメロディを奏でる。楽曲は3~4分前後とシンプルながら、
民族的な雰囲気の旋律や、クラシック、ジャズの素養も覗かせる、そのセンスはさすが。
おおらかな自然を感じさせる繊細な雰囲気は、GANDALFあたりにも通じるかもしれない。
繊細度・・9 プログレ度・・5 ギター度・・8 総合・・7.5
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Erik Wollo 「Elevations」
ノルウェーのミュージシャン、エリク・ウォーロの2007年作
広がりのあるシンセサウンドに、ディレイの効いたギターが幻想的なフレーズを奏でる。
涼やかで荒涼とした空気感に包まれながら、繊細な美意識と空間性を感じさせるサウンドだ。
翳りを帯びた静謐感は、Klaus Schulzeをシンフォニック寄りにしたような雰囲気もあるが、
こちらはゆったりとしたメロディの流れがあって、ネイチャーな音で雄大さを描くようなところは、
GANDALFなどの世界観にも通じるだろう。ヒーリング系シンフォとしても、ゆったりと鑑賞できる。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 幻想度・・8 総合・・8
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STEVE ROACH/ERIK WOLLO「Stream of Thought」
アメリカとノルウェーのミュージシャン、スティーブ・ローチとエリク・ウォーロのユニット。2009年作
シーケンサーを含むエレクトロでスペイシーなシンセに、繊細なギターのつまびきが重なり、
涼やかな叙情性に包まれた、静謐感のある空間的なインストサウンドを描いてゆく。
これという展開はなく、シンセの重ねによるサウンドスケープ的な音響が連なってゆく感じなので、
気の短い方には向かないが、Klaus Schulzeなどの世界観が好きなら、それなりに楽しめる。
シンセによる曲がメインなので、もう少し、エリク・ウォーロのギターを活かしたパートがあれば嬉しかった。
ドラマティック度・・6 プログレ度・・7 空間度・・8 総合・・7
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Erik Wollo 「Gateway」
ノルウェーのミュージシャン、エリク・ウォロの2010年作
北欧のジャズロック&ニューエイジ界では、TERJE RYPDALの再来とも言われるギタリストで、
うっすらとしたシンセに包まれて、叙情的なギターがやわらかに響き渡る、涼やかで幻想的なサウンド。
曲によっては打ち込みのドラムも加わったロック色も覗かせて、ギターが奏でる旋律の美しさとともに、
GANDALFのようなニューエイジ、ヒーリング的なシンフォニックロックとしても楽しめる。
重ねられたシンセサウンドやシーケンサーのリフレインは、Klaus Schulzeを思わせるが、
そこにギターが加わると、ぐっと北欧シンフォ寄りになる。全70分の幻想ニューエイジ・シンフォ作品。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 幻想度・・9 総合・・8
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Erik Wollo 「Blue Radiance」
ノルウェーのミュージシャン、エリク・ウォーロの2015年作
1983年にデビュー、北欧ニューエイジ系を代表するアーティスト。本作もシーケンサーを含むシンセの重ねで、
Tangerine DreamやKlaus Schulzeなどにも通じる、幻想的でスペイシーなサウンドを描き出す。
シンセを主体にしたアンビエントな作風なのでロック感触は薄いものの、ギターを加えたナンバーもあり、
うっすらとしたシンセや優美なピアノの音色とともに、涼やかで物悲しい叙情に包まれる。
単なるニューエイジよりは楽しめるが、もう少しダークな空気や、奥行きのある世界観が欲しい気も。
シンセ度・・8 ロック度・・1 幻想度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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Erik Wollo 「Star's End 2015」
ノルウェーのミュージシャン、エリク・ウォロの2016年作
北欧のニューエイジ界ではすでにキャリアのあるアーティストで、本作はスタジオライブを収録した60分全1曲という大作だ。
Klaus Schulzeあたりに通じるスペイシーで空間的なシンセサウンドに、サウンドスケープ的なギターを乗せた、
アンビエントな叙情性がゆったりと耳に心地よい。のんびりとまどろみながら聴き入りつつ、気付けば暖かな日差しが差し込むような
美しい音の渦に飲み込まれている。あるいは水中から、きらきらとした頭上の陽光を眺めているという感じだろうか。
ロック色は皆無ながら、単なるニューエイジとも異なる繊細で深みのある世界観が、プログレ向きな一枚であろう。
ドラマティック度・・7 ロック度・・1 ヒーリング度・・8 総合・・7.5
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Erik Wollo 「Different Spaces」
ノルウェーのミュージシャン、エリク・ウォーロの2017年作
北欧のジャズロック&ニューエイジ界では、TERJE RYPDALの再来とも言われるギタリストで、
うっすらとしたスペイシーなシンセに繊細なギタートーンを重ねた、サウンドスケープ的な作風。
シンフォニックといってもよい美しさと空間的な静謐感は、単なるニューエイジの枠を超えた幻想性に包まれていて、
シーケンサーによるデジタルなアレンジも含めて、Klaus Schulzeなどにも通じるサウンドが楽しめる。
2CDで合計147分という大作なので、途中、さすがに長尺感はあるのだが、美しいシンセの重ねと
ゆったりとしたギター、ときにエレクトロな感触も加わったスペイシーなBGMとしてのんびりと聞き流せます。
スペイシー度・・8 シンセ度・・8 ギター度・・7 総合・・7.5
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ESA KOTILAINEN 「Perhosniitty」
フィンランドのミュージシャン、エサ・コティライネンの2012年作
TASAVALLAN PRESIDENTTIのシンセ奏者として活動し、WIGWAMやJukka Tolonenの作品にも参加している。
本作はやわらかなアコーディオンの音色を中心に、タンゴを基調にした哀愁を感じさせるインストサウンドを聴かせる。
3~4分台の楽曲は、プログレ的な展開というのはあまりなく、リズム的にもゆったりと優雅な耳心地で、
これという盛り上がりやフックは希薄なのだが、北欧らしいそこはかとない土着性と哀愁の翳りに包まれている。
ときにミニムーグやメロトロンなども覗かせるが、メインはアコーディオン系なので、少し単調と言えば単調か。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 哀愁度・・8 総合・・7
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Espoo Big Band with Pekka Pohjola「Yesterday's Games」
フィンランドのジャズロック、エスプー・ビッグ・バンドの1986年作
楽曲はペッカ・ポーヨラが手掛け、サックス、トランペット、トロンボーンで14名におよぶブラスセクションに、
ギター、ベース(ペッカ)、キーボード、ドラムが2名という大掛かりな編成。それぞれ4パートに分かれた、
7~10分の大曲で、ブラスが鳴り響くスウィングジャズを基本に、ギター、ドラムのロック色が加わったサウンド。
プログレとして聴くには、ブラスバンド色が強いのだが、そんな中でもペッカのベースの存在感はさすがで、
ソロパートでの巧みなプレイも含めて、スウィングジャズのノリとバンドアンサンブルを優雅に融合させている。
CD化にあたって、1998年のライブ音源(こちらはペッカは不参加)がボーナス収録されている。
ドラマティック度・・7 ロック度・・6 ジャズ度・・9 総合・・8
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ETCETERA「FIN DE SIECLE」
デンマークのシンフォニックロックバンド、エトセテラの1999作
おそらく1stだと思われるが詳細は不明。サウンドの方はゆったりとしたメロディを聴かせる
叙情タイプのシンフォニックロックで、雰囲気的にはTHE FLOWER KINGSを思わせる。
技巧的な部分は少ないが、たおやかなサウンドの中にもキーボードやギターには
なかなかのセンスの良さを感じる。しっとり、じっくりと聴ける北欧シンフォニックの好作だ。
シンフォニック度・・7 プログレ度・・7 ゆったりたおやか度・・9 総合・・7.5
ETCETERA「Tales of Ardour and Deceit」
デンマークのシンフォニックロックバンド、エトセテラの2003年作
ギター&ベース&シンセというマルチプレイヤーとドラムによる二人組ユニットらしいが、これがなかなか素晴らしい出来。
やわらかなメロトロンをはじめ、広がりのある北欧らしいキーボードワークでメロディアスに聴かせつつ、
どこかヒネた演奏と、先の読めない曲展開がなかなか個性的で、ダイナミックな聴き心地となっている。
10分以上の大曲を中心にじっくり聴かせるタイプの曲が多く、派手さよりも玄人好みの構築力が見事。
そして普通の北欧シンフォ系バンドとは一線を画す不思議なスケール感があり、しだいに引きこまれてゆくのである。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 北欧度・・7 総合・・8
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F
FARMERS MARKET「MUSIKK FRA HYBRIDENE」
ノルウェーの変態民族ロックバンド、ファーマーズ・マーケットの2nd。1997作
世界最強の馬鹿(笑)・・・もとい、馬鹿テク・民族ロック炸裂のバンド。本作は、007やインディージョンズなどの映画音楽や、
ポップソング、ロックの名曲、あげくの果てにはルパン三世あたりまでを取り込んだ、抱腹絶倒メドレー!!
それも打ち込みなどは使わずすべて人力の生楽器でやっているのが凄い。素晴らしい演奏力をこんなことに使ってしまっていいのか(笑)。
他の曲も変拍子と馬鹿テク炸裂で、ある意味MATS/MORGANにも通じるどこかおちゃらけたユーモアとともに、
ジャンル分け不能の曲が並ぶが、それでも何曲かはバルカン音楽を基本とした比較的まともなトラッドロックをやっていて、
こちらも一線級の出来なのでよけいギャップがおかしい。ジャケに書かれているのはヨーロッパの地図だが、よく見ると国や都市の場所が変。
タイトルの「ハイブリッド諸島」という架空の地域の音楽という設定らしく、ジャケの地図にもその諸島がちゃんと記されている。これもセンスのあるギャグ。
テクニカル度・・10 すっとぼけ度・・10 トラッ度・・7 総合・・8
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Stian Carstensen Farmers Market
ノルウェーのアヴァン・トラッド/ジャズロックバンド、ファーマーズ・マーケットの3rd。2000作
アコーディオン奏者、スティアン・カシュテンセンを中心に、国籍にとらわれないフリーキーな
トラッドロックを追求するこのバンド。ブルガリアの音楽からの影響を覗かせつつ、
本作ではよりシリアスなバルカントラッドに接近した作風となっている。土着的な女性コーラスに
ガドゥルカ(弦楽器)、タパン、カヴァル(笛)、ガイダ(パイプ)といったブルガリアの民族楽器、
サックス、クラリネット、トランペットなども取り入れながら、牧歌的なバンジョーの音色や、
異国的なタブラやタンブーラの響きなども面白い。もちろん曲によってはこのバンドらしい
テクニカルなアンサンブルが聴け、その軽妙さとトラッドの融合具合が絶妙という。
プログレ度・・7 トラッ度・・8 変態度・・7 総合・・8
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Farmers Market「Surfin' USSR」
ノルウェーのアヴァン・トラッド/ジャズロックバンド、ファーマーズ・マーケットの4th。2008作
Stian Carstensenのソロ的な色合いが強かった前作から8年ぶりとなる本作は、
タイトルからして“サーフィンUSA”をもじった強烈なブラックジョークなのだが、サウンドの方は
ハネるリズムの上に、アコーディオンとサックスが鳴り響き、そこに異国的なタブラなども加わって、
相変わらず一種奇妙なアヴァン・ジャズロックを展開。おちゃらけたギャグに本気で取り組む姿勢は
ALAMAAILMAN VASARATなどに通じるものがあり、どことなく哀愁があるのもまた同様。
プログレ度・・8 軽妙度・・9 変態度・・8 総合・・8
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FATAL FUSION 「Land of the Sun」
ノルウェーのプログレバンド、フェイタル・フュージョンの2010年作
シンセを含む5人編成で、ムーグやオルガンの音色が鳴り響く、古き良き北欧プログレの香りを感じさせるサウンド。
かすれたヴォーカルの歌声とともに、70年代ハードロック的な感触もあり、
シンセ奏者のスペイシーなセンスや叙情的な泣きのギター入ったりと、これだという派手さはないが、
バンドとしてのキャリアを感じさせる渋い聴き心地。まさにヴィンテージプログレの好作だ。
メロディック度・・7 プログレ度・・7 古き良き度・・8 総合・・7.5
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Fatal Fusion 「The Ancient Tale」
ノルウェーのプログレバンド、フェイタル・フュージョンの2013年作
古き良き70年代ハードロック的な要素を含んだ前作からの流れで、
どこかブルージーなテイストのギターにオルガンが絡むサウンドであるが、
今作では、10分以上の大曲をメインにした壮大な雰囲気が強まっている。
野太い系の男性ヴォーカルの歌声とともに、ときに牧歌的なやわらかな叙情も含ませて
コンセプト的なドラマ性を含んだ70年代英国ルーツのハードプログレが楽しめる。
ドラマテイック度・・8 プログレ度・・8 古き良き度・・8 総合・・8
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FATAL FUSION 「TOTAL ABSENCE」
ノルウェーのプログレバンド、フェイタル・フュージョンの2016年作
前作は古き良き英国テイストのハードプログレであったが、3作目となる本作もハード寄りのギターに
朗々としたヴォーカルの歌声とオルガンやムーグを含むシンセアレンジで、どっしりとしたサウンドを聴かせる。
ヴォーカルの枯れた味わいの声質は、MAGNUMなどの英国プログレハードを思わせるところもあり、
ハードロック、ヴィンテージロックのファンにも受けそうな感触だ。メロディックなインストナンバーや、
メロトロンが鳴り響き、メロウなギターとともに北欧らしい哀愁の叙情に包まれたナンバーなども味わいがある。
11分、15分というアルバム後半の大曲は、オルガン、メロトロンとともに適度なハードさを含んでじっくりと盛り上げる。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 哀愁の叙情度・・8 総合・・8
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FINNFOREST「神秘の森」
フィンランドのプログレバンド、フィンフォレストの1996年作
1975年作「Finnforest」 と、 1976年作「Lahto Matkalle」をカップリングして「LASER'S EDGE」レーベルがCD化したもの。
オルガンやエレピを含むやわらかなシンセに叙情的なギターを重ね、まさにフィンランドの森を思わせるような、
涼やかなサウンドを聴かせる。土着的なギターの旋律とともに、ジャズロック的な軽やかなアンサンブルもあって、
優雅なインストプログレとして楽しめる。1976年の2作目の方は、いくぶんジャズロック色が強まっていて、
エレピの旋律とともにインプロ的なフリーキーな味わいもある。後半は2パートに分かれた20分近い大曲で、
軽快なアンサンブルとしっとりとした叙情が同居した、シンフォ・ジャズロックというサウンドが味わえる。
オールインストであるが、じつに北欧らしい逸品である。ちなみにバンドは1979年に3作目を残して消える。
ドラマティック度・・7 北欧度・・8 優雅度・・9 総合・・8
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FLAGSHIP「maiden voyage」
スウェーデンのメロディアスプログレバンド、フラッグシップの2005年作
一聴してKANSASからの影響を感じさせる、キャッチーなプログレハードサウンド。
難解な部分は微塵もなく、メロディに抜けの良さと哀愁が同居していて、
美しいピアノの音色やヴォーカルの歌い方もどこか古き良きロマンを感じさせる。
ヴァイオリン的なシンセの音色とギターの絡みもなかなか確信犯的で、
KANSASをはじめ70年代のアメリカ系プログレハードを現代に甦らせたかのようなサウンド。
クオリティも高いです。そして当のKANSASのケリー・リヴグレンもゲスト参加。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 KANSAS度・・8 総合・・8
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THE FLOWER KINGS「Back in the World of Adventures」
Roine Stoltのソロ名義の作品「The Flower King」からバンド名をとり、
新たにフラワー・キングスとしてのバンド体勢となっての1作目。1995年作
1曲目の13分のタイトル曲がまず素晴らしい。希望に満ちたキャッチーなメロディと
ロイネ・ストルトの泣きの叙情ギターが合わさった、まさにユートピア的なシンフォニックロック。
トマス・ボディーンによる温かみのあるシンセワークも随所に光っていて、北欧らしいメロディを盛り込んだ“Thema For A Hero”、
美しい叙情が詰まったラストの大曲“The Big Puzzle”まで、大人の構築センスと深みのあるメロディの流れが楽しめる。
新たなバンドのスタートを感じさせる、まさに爽快な傑作に仕上がっている。
メロディアス度・・9 シンフォニック度・・8 北欧度・・8 総合・・8.5
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THE FLOWER KINGS「Retropolis」
スウェーデンのシンフォニックロックバンド、フラワー・キングスの2nd。1996年作
前作とともに初期のフラキンを代表する傑作。ロイネ・ストルトのメロウなギターワークと、
トマス・ボディーンのシンセを中心に、ファンタジックな香りとともにゆるやかに構築されるサウンドで、
北欧的な素朴さとシンフォニックな質感が合わさった楽曲は、ゆったりと楽しめる聴き心地。
とくにタイトル曲を含め10分を超す大曲が素晴らしく、全体的には地味に思えるものの、
やわらかな叙情という点においては、フラキンの作品中でも屈指の出来だと思う。
メロディアス度・・8 シンフォニック度・・8 北欧度・・8 総合・・8.5
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THE FLOWER KINGS「STARDUST WE ARE」
北欧を代表するシンフォニックロックバンド、フラワー・キングスの3rd。1997年作
本作ではCD2枚組の大作となって、そのサウンドにはさらに雄大さが増している。
トマス・ボディーンの華麗なシンセワークにロイネ・ストルトのメロディアスなギターも全開。
とくにDisc2の楽曲がいい感じで、キャッチーなメロディとじわじわくる盛り上げ方が心憎い。
ラストを飾る25分のタイトル曲まで、トータルな流れで楽しめる見事なシンフォニック作品である。
メロディアス度・・8 シンフォニック度・・8 壮大度・・8 総合・・8
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THE FLOWER KINGS「Scanning the Greenhouse」
スウェーデンのプログレバンド、フラワー・キングスのベスト。1998年作
1995年のロイネ・ストルトのソロ名義「The Flower King」から、1997年作「Stardust We Are」までの4作から選曲された、
いわば初期フラキンのベスト。ロイネの叙情的なギターワークとトマス・ボディーンのプログレらしいカラフルなシンセを軸に
キャッチーなメロディアス性に包まれたシンフォニックロックが詰まっている。10分を超える大曲揃いであるが、
「World Of Adventures」での優美な叙情性はやはり白眉。ソロ名義での名曲「The Flower King」と、
「Stardust We Are/Part3」は本作にあたってのリレコーディング音源で、原曲と比べるなどして楽しめる。
「Retropolis」もなにげに良い曲ですな。初期フラキンの魅力をしっかりと感じ取れるベストアルバム。バンドの入門用にもぴったりだろう。
ドラマティック度・・8 フログレ度・・8 初期フラキン度・・9 総合・・8
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THE FLOWER KINGS「Flower Power」
スウェーデンのシンフォニックロック、フラワー・キングスの4th。1998年作
のっけからなんと59分の組曲“Garden of Dreams”で幕を開けるCD2枚組の大作。
1995年の1作目から毎年のように作品を作り続けるのも凄いが、それも内容の質あってのこと。
18パートに分かれた長大な組曲は、流れるような展開の中で、シンフォニックな美しさと
クラシカルな華麗さ、ときにジャズ的な軽やかさも含みながら、じわじわと盛り上がってゆく。
ロイネ・ストルトの絶品のギタートーンはもちろん、トマス・ボディーンの繊細なシンセワークも素晴らしく、
メンバーたちの伸びやかなアンサンブルは、確かな音の説得力と適度な緊張感を生み出している。
Disc1が68分、Disc2が73分という、相当な大作だが、心地よいサウンドに浸って聴き通せてしまう。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・8 大作度・・9 総合・・8.5
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THE FLOWER KINGS「ALive On Planet Earth」
スウェーデンのシンフォニックロック、フラワー・キングスのライブ。2000年作
初の公式ライブ音源で、Disc1には1998年アメリカでのステージを、Disc2には1999年日本でのステージを収録。
アメリカの音源では、トマス・ボディーンの代打として、ロバート・エングストランドがシンセを担当。
アルバム「Retropolis」収録の大曲で幕を開け、「Stardust We Are」からの叙情ナンバーでは、
美麗なシンセにロイネ・ストルとのメロウなギターが重なる、優美なシンフォニックロックが楽しめる。
再びレトロポリスからの大曲に、GENESIS「The Lamb Lies Down On Broadway」のカヴァーも披露。
Disc2では、「Back In The World Of Adventures」収録の大曲から、「Stardust We Are」からの代表曲に、
ソロ時代の傑作ナンバー「The Flower King」まで、初期フラキンの優美なサウンドがたっぷり楽しめる。
トマス・ボディーンの優しいシンセワークに、ロイネの哀愁のギターは絶品。総じてDisc2の出来がよいですな。
ライブ演奏・・8 プログレ度・・8 叙情度・・8 総合・・8
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THE FLOWER KINGS「SPACE REVOLVER」
スウェーデンのシンフォニックロック、フラワー・キングスの5th。2000年作
前作「が濃密なる大作だったのに対し、本作はゆったりとしたメロディアスなシンフォニックロック。
一聴するとやや地味な印象ながら、トマス・ボディーンのシンセワークがいつも以上に美しく、
アルバムの冒頭と最後に分けられた“I'am The Sun”をはじめ、ゆったりとした歌もの系のシンフォニックナンバーが楽しめる。
本作から加入したヨナス・レインゴールドのベースも、アンサンブルの中に上手く溶け込んでいて、その実力は見事。
ロイネのギターはいつもより控えめに思えるのだが、むしろ美しいシンセワークでゆるやかに聴ける好作といえる。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 トマス・ボディーン度・・9 総合・・8
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THE FLOWER KINGS「THE RAIN MAKER」
スウェーデンのシンフォニックロック、フラワー・キングスの6th。2001年作
2枚組の大傑作「The Flower Power」、ゆったりとしたメロディックな好作「Space Revolver」をへて、
6作目となる今作は、一言で言うと自然体なアルバムで、そのサウンドにはなんの気負いも感じられない。
1曲目冒頭のダークなメタリックなリフに驚くが、その後は適度に余裕のある楽曲がバンドの年季を感じさせる。
メロディの流れ、流麗な楽曲アレンジには無理や誇張がなく、演奏者の楽しさが伝わってくるようだ。
アルバムを重ねるごとに、アレンジとメロディの洗練度を上げて、ついにここまでの質に到達した。
現在シンフォニックの大作をここまでさらりと作ってしまえるバンドは、この「花王」をおいていまい。
メロディアス度・・9 シンフォニック度・・8 楽曲アレンジ・・9 総合・・9
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The Flower Kings 「Live in New York」
スウェーデンのプログレバンド、フラワー・キングスのライブ。2002年作
2002年ニューヨークでのステージを収録したオフィシャル・ブートレグで、メンバーは、
ロイネ・ストルト、トマス・ボディーン、ヨナス・レインゴールド、ハッセ・フレベリに、
ドラムはこの時点で新加入のソルタン・チョース。のっけから「FlowerPower」収録の大曲
“Garden of Dreams”を45分にわたって披露。軽やかなソルタンのドラミングに乗るロイネの奔放なギターワークも素晴らしく、
ブートレグならではのライブの生々しい躍動感が伝わってくる。フラキンファンならとても楽しめる全74分のライブ音源です。
シンフォニック度・・7 ライブ演奏・・8 音質・・8 総合・・8
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THE FLOWER KINGS「UNFOLD THE FUTURE」
スウェーデンのプログレバンド、フラワー・キングスの7th。2002年作
CD2枚組の大作で、いかにもプログレらしい、ある意味では玄人好みの作品といえるかもしれない。
CD1枚目の冒頭から堂々と30分の大曲をもってくるあたり、円熟の極みにあるこのバンドらしい。
楽曲自体は自然体の弾きまくりアンサンブルと構築性とが融合した、いつものフラキン節だが、
2枚目の方はよりジャズ風味の演奏で(今回ベースがとても効いている)、いくぶん評価が分かれるかもしれない。
とにかくも、やりたいことをやっているというロイネ・ストルトの奔放な音楽創造の楽しさが伝わってくるような作品だ。
シンフォニック度・・7 プログレ度・・8 ジャズロック度・・8 総合・・8
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The Flower Kings「Meet the Flower Kings」
フラワー・キングスのライブ作品。2003年作
同タイトルのDVDと同じく、2003年のスウェーデン、ウプサラでのステージを収録した2枚組。
アルバム 「Unfold the Future」収録の大曲“The Truth will Set You Free”で幕を開け、
トマス・ボディーンのきらびやかなシンセワークとロイネ・ストルトのギターワーク、
ソルタン・チョースの巧みなドラムとヨナス・レインゴールドの存在感あるベースが合わさり、
見事なアンサンブルを聴かせてくれる。「Flowerpower」収録の組曲“Garden of Dreams”では、
ハンス・フローベルグのマイルドな歌声とともに、起伏に富んだ展開力が楽しめる。
Disc2はソロ名義でのデビュー作「The Flower King」収録の“Humanizzimo”から始まり
ラストの“Stardust We Are”まで、大曲ばかりの素晴らしい演奏が楽しめる。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 ライブ演奏・・9 総合・・8.5
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THE FLOWER KINGS「MEET THE FLOWER KINGS」
フラワー・キングスのライブDVD。2003作
ライブにおいても見事なロイネのギターは当然として、改めて素晴らしいと思えるのがZ・チョースのドラムで、
手数の多さと確かなテクニックに加え、独自のセンスを持ったドラミングは楽曲の核を担っている。
また、もう一人のG/Voであるハンス・フレベリは、歌のみならずフロントマンとしてのルックス的にもバンドの「顔」となっている。
そしてツアー参加しているダニエル・ギルデンロウ(PAIN OF SALVATION)も、曲によってギター・キーボード・パーカッションと器用にこなし
裏方で大活躍。とにかく、この演奏とバンドアンサンブルを見ていれば、いかに彼かの音が緻密な重なりと
心地よい空間の構築で構成されているのかが再確認できるはず。まだフラキンを知らない方にも、
このDVDを見ることでこのバンドの素晴らしさがどこにあるかが理解できよう。必見のライブ作品。
ライブ映像・・9 ライブ演奏・・9 シンフォニック度・・8 総合・・9
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The Flower Kings 「Betcha Wanna Dance Stoopid!」
スウェーデンのプログレバンド、フラワー・キングスのライブ。2004年作
2003年、ニューヨークでのファンクラブでのセッションギグで、即興的なナンバーを主体にしたセットリスト。
ダニエル・ギルデンロウを加えての6人編成で、ソルタン・チョースの叩き出す軽やかなドラムに、
トマス・ボディーンのやわらかなシンセ、肩の力の抜けたロイネ・ストルトのギターを乗せて、
ジャズロック的でもある優雅な演奏が聴ける。ハッセ・フレベリのヴォーカルも即興的で、
アコースティックギターにオルガンを重ねた、18分の大曲など、通常のライブでは聴けない
バンドのリラックスした側面を覗かせる。ボーナスも含めて77分。フリーなフラキンが楽しめます。
ライブ演奏・・8 プログレ度・・7 即興度・・8 総合・・7.5
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THE FLOWER KINGS「ADAM & EVE」
スウェーデンのシンフォニックロックバンド、フラワー・キングスの8th。2004年作
今作は「世界の始まり、ときの流れ」といった壮大なテーマを組み入れた80分近い大作。
前回から加わったドラマー、ゾルタン・チョースの支える抜群のリズムはしっかりとサウンドの重心を支え
ロイネのメロウなギターフレーズと、トマス・ボディーンの多彩なKEYワークがいつも以上にしっとりと心地よい。
ライブのツアーメンバーであったPAIN OF SALVATIONのダニエル・ギルデンロウも引き続き参加。
また、DVDでも感じたがハッセ・フロバーグのVoの表現力も格段に増していて、楽曲のドラマ性を高めている。
全体的に力の抜け具合が落ち着いた印象のアルバムで、スリリングな要素は希薄ながらじっくりと聴ける。
メロディアス度・・7 シンフォニック度・・8 壮大度・・8 総合・・8
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CIRCUS BRIMSTONE LIVE「BRIMSTONE IN EUROPE」
バンド名は違うが内容はれっきとしたTHE FLOWER KINGSのライブ作です。2005作
Voなしのインスト曲のみということで、あえてTFKの名前を使わずに
わざわざ別バンドのようにしているのがなんとも彼ららしいシャレだが、
音の方はかつてのフラキンのなつかしの楽曲が楽しめるなかなか美味しい内容。
新ドラマーのプレイは前任者に比べれば取り立てて凄くはないが、無難にバンドに溶け込んでいる。
そして過去曲でのロイネのメロディアスなギタープレイはファンには嬉しいかぎり。
メロディアス度・・8 ライブ演奏・・8 音質・・8 総合・・8
THE FLOWER KINGS「PARADOX HOTEL」
スウェーデンのプログレバンド、フラワー・キングスの2006年作
今作はジャケからしてコミック調であるが、架空のホテルを舞台にしたファンタジックなコンセプト作品。
全体的にゆったりとした優雅なサウンドで、ロイネ・ストルトのメロウなギターフレーズに
トマス・ボディーンの包み込むような優しいキーボードワークで、優美なシンフォニックロックを聴かせる。
CD2枚組みの大作ながら、かつての「RETROPOLIS」のような自然体のやわらかさで、
Disc2ではブルージーな大人の哀愁も覗かせる。たたみかけるような派手さはないが、
メロディアスな質感という点では、ここ数作では一番のアルバムといってよいだろう。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 しっとり優雅度・・9 総合・・8.5
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THE FLOWER KINGS「Instant Delivery」
スウェーデンのプログレバンド、フラワー・キングスのライブDVD。2006年作
今回はメンバー5人による純粋なバンドサウンドで、「Paradox Hotel」からの曲を中心に、
ときおりブルーズロック色を感じさせるのは、現在のロイネの趣味なのだろうか、
ベテランとしての枯れた味わいをかもしだしつつも、ハンス・フローベルグのやわらかな歌声や
トマス・ボディーンのキーボードとともに、聴かせるところでは感動的に盛り上げる。
音の厚みやサウンドの厚みでは前作DVDよりもやや落ちるものの、 演奏は以前よりも自然体で、
バンドとしての成熟された境地を表している。新ドラマーのプレイもなかなかのものだ。
二度めのアンコールでは“Stardust We Are”を披露。MC入りのライブステージ完全収録。同タイトルのCD付き4枚組みもある。
シンフォニック度・・7 ライブ映像・・7 ライブ演奏・・8 総合・・8
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The Flower Kings「The Road Back Home」
フラワー・キングスのベストアルバム。2007年作
1994年のロイネ・ストルトのソロ名義「The Flower King」から、2006年の「Paradox Hotel」までから
セレクトされた2枚組で、合計153分という大ボリューム。比較的コンパクトな曲がセレクトされていて、
このバンドのキャッチーな軽やかさが味わえる内容となっている。GENESISのカヴァー“Cinema
Show”などもじつに美しく、
Disc2ラストでの“The Flower king”~“Stardust We Are”という流れは、このバンドのドラマティックな側面を覗かせる。
ロイネ・ストルトがプロデュース、全曲リミックスしてあるので、アルバム盤よりも音質が良く、
大曲は入っていないが、そのぶんゆるやかな聴き心地で、フラキンファンならば楽しめる内容になっている。
メロディック度・・8 コンパクトな選曲度・・8 ある意味フラキンのユルさ度・・8
総合・・8
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THE FLOWER KINGS「The Sum of No Evil」
スウェーデンのシンフォニックロックバンド、フラワー・キングスの10th。2007年作
今回はやや原点回帰したような シンフォニックロックサウンドが復活。トマス・ボディーンの絶品のシンセアレンジに
枯れた味わいも加わったロイネ・ストルトのギターワーク、そしてマイルドなハッセの歌声は、
バンドとしての一体感と、ゆるやかな希望的メロディを、陽光のように楽曲にもたらしている。
また、前ドラマーであったゾルタンの復帰も個人的には嬉しく、リズム面でのタイトさも素晴らしい。
13分の大曲から始まり、24分、13分、12分と、どれもシンフォニックロックとしての魅力を
詰め込んだ長曲を連ねた、まさにベテランバンドとしての充実ぶりを感じさせる力作だ。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・8 優美度・・9 総合・・8.5
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The Flower Kings 「Carpe Diem」
スウェーデンのプログレバンド、フラワー・キングスのライブ作品。2008年作
オフィシャル・ブートレグとして発表された、2006年のアメリカツアーの音源で、
「Paradox Hotel」からのナンバーから始まりつつ、「Flower Power」や「Stardust We Are」からの楽曲も演奏。
ラストは名曲“World of Adventures”、アンコールはカナダ公演からの「Adam & Eve」からの楽曲で締めくくる。
音質もおおむね良好で、正規ライブ作品に比べると少しラウドかなという程度。
なにより、脂の乗った演奏には、バンドとしての大人の余裕と表現力が感じられて、
軽妙にして優雅な聴き心地である。フラキンのファンならばチェックすべし。
ライブ演奏・・8 ドラマティック度・・8 音質・・7 総合・・8
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The Flower Kings 「“Tour Kaputt” Live」
スウェーデンのプログレバンド、フラワー・キングスのライブ作品。2011年作
2007年のヨーロッパツアーの音源をCD2枚に収録。ドラムにはKING CRIMSONのパット・マステロットを迎えた編成で、
ヨナス・レインゴールドのベースとともに安定したリズムを形成、トマス・ボディーンのやわらかなシンセに
ロイネ・ストルトの味わい深いギターワークを中心に、ベテランらしい肩の力の抜けた演奏を聴かせる。
Disc1は「The Sum Of No Evil」収録の大曲“Love is the Only Amswer”で幕を開け、「Retropolis」からのタイトル曲や
「Space Revolver」からの大曲“I Am The Sun”まで、叙情豊かなフラキン節がたっぷりと楽しめる。
Disc2は「The Sum Of No Evil」収録の大曲“Life In Motion”、“The Sum Of No Reason”を含む7曲を収録。
オフィシャル・ブートレグという扱いだが、音質もまず良好。同タイトルのDVDもあり、ファンはそちらも必見だ。
プログレ度・・8 ライブ演奏・・8 音質・・7 総合・・8
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The Flower Kings 「Desolation Rose」
スウェーデンのプログレバンド、フラワー・キングスの2013年作
2012年の来日公演を成功させ、名実共に現代シンフォニック/プログレの代表となったフラキンである。
13分の(彼らからしたら比較的控えめな長さの)大曲で幕を開ける本作は、前作と同じメンバーで作られた安定感と
バンドとしての良好なパワーを感じさせる。いまやバンドのイメージとなったハッセ・フレベリの歌声と、
土台を支えるヨナス・レインゴールドのベースに、トマス・ボディーンの巧みなシンセアレンジ、
そして、ロイネ・ストルトの奏でる芳醇なワインのような味わい深いギターのトーンとともに、
自信に満ちた鉄壁のアンサンブルを描いている。いくぶん翳りを含んでいた前作よりも、
キャッチーなメロディパートが増えているのも個人的には嬉しい。ベテランとしての円熟の中にも
プログレ/ロックとしてのスリリングさを失わず、構築センスに磨きをかけた力作に仕上がっている。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 構築センス・・9 総合・・8
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The Flower Kings 「Waiting For Miracles」
スウェーデンのプログレバンド、フラワー・キングスの2019年作
1995年にデビューし、本作は6年ぶりとなる13作目。長年シンセを務めてきたトマス・ホディーンが脱退し
ドラマーも交代して、バンドもリニューアル。やわらかなピアノとシンセに、ロイネ・ストルトのギターを重ね、
ハッセ・フレベリの味わいのあるヴォーカルを乗せて、ゆったりとした大人の叙情に包まれたサウンドを描く。
ロイネの豊饒なギターメロディにハッセの歌声があれば、そこはいつものフラキンの味わいになるので、
優美でキャッチーな安心の聴き心地。ストリングスアレンジを含んだシンフォニックなインストパートなど、
サントラのようなゆるやかなスケール感を含んだナンバーから優雅な歌ものまで、バランスのとれた作風で、
随所に名人ロイネの絶品のギターフレーズに聴き惚れる。2CDで合計84分。派手さはないが、大人の力作です。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 優雅度・・9 総合・・8
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The Flower Kings 「Islands」
スウェーデンのプログレバンド、フラワー・キングスの2020年作
1995年にデビュー、いまや北欧のみならず、プログレ界を牽引するバンドとなったフラキンの14作目。
ロジャー・ディーンによる幻想的なジャケに包まれて、サウンドの方もロイネ・ストルトの流麗なギターに
前作から加入のザック・カミンズの美麗なシンセワーク、ハッセ・フレベリの味わいのあるヴォーカルで、
優雅なシンフォプログレを聴かせる。これまでのような大曲はないものの、楽曲ごとが流れによって進み、
コンセプト的な味わいになっているのが素晴らしい。90年代的なオールドな雰囲気も甦っていて、
前作以上にバンドとしての一体感が強まった印象もある。ストリングスが加わった壮麗な小曲から、
軽やかなジャズロック風味など、楽曲ごとのバラエティも豊富。フラキンらしさたっぷりの2枚組の力作。
ドラマティック度・・9 プログレ度・・8 優雅度・・9 総合・・8.5
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THE FLOWER KINGS 「BY ROYAL DECREE」
スウェーデンのプログレバンド、フラワー・キングスの2022年作
1995年にデビュー、北欧プログレを代表するバンドの通算15作目。今作もまたCD2枚組の大作で、
優美なシンセにハッセ・フレベリの味わいのある歌声、ロイネ・ストルトのメロウなギターとともに、
ゆったりとした大人のシンフォニックロックが広がってゆく。オルガンやムーグなど、ヴィンテージなシンセの音色には
70年代プログレへのリスペクトも感じられ、優しいヴォーカルメロディは「Stardust We Are」の頃を思わせるところもある。
全体的には肩の力の抜けた味わいであるが、ヨナス・レインゴールドのベースの存在感がアンサンブルを支えていて、
軽やかなサウンドの中にどっしりとした芯を感じさせる。ドラマティックな大曲はないが、大人の優雅さに包まれた好作品だ。
ドラマティック度・7 プログレ度・8 優雅度・8 総合・8
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The Flower Kings 「Look At You Now」
スウェーデンのプログレバンド、フラワー・キングスの2023年作
前作から1年ですでに、16作目のアルバムが完成。ここのところ2枚組の作品が続いていたが、本作は久しぶりの1枚組で、
シンセのザック・カミンズが脱退し、本作では、ロイネ・ストルト自身がキーボードを担当、ラレ・ラーソンンがゲスト参加している。
またベースのヨナス・レインゴールドが多忙により不参加で、マイケル・ストルトがベースを担当しているのも注目するところ。
サウンドは、前作でも見せたオールド・プログレへの接近が強まっていて、ヴィンテージなシンセとメロウなギターの旋律を重ね、
ハッセ・フレベリの歌声とともに、YESのような優雅でキャッチーなシンフォプログレを展開。4~5分前後の小曲を主体にした、
大人の優しさに包まれたような聴き心地で、叙情的なインスト小曲や、KAIPAに通じる北欧らしい哀愁のナンバーも味がある。
11分のラストの大曲では、90年代の初期フラキンのような優美なサウンドが楽しめる。派手さはないが円熟の内容です。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 優雅な叙情度・9 総合・8
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Folque 「Kjempene Pa Dovrefjell」
ノルウェーのフォークロック、フォルケの1975年作
「北欧のSPRIGUNS」とも呼ばれるバンドで本作は2作目となる。母国語の女性ヴォーカルの歌声に、
マンドリンやダルシマーの素朴な音色と、ドラムとギターが入ったロック要素を合わせたサウンド。
確かにスプリガンズを思わせる部分もあるが、フィドルが鳴り響き、母国語の歌声を乗せた空気感には
やはり北欧らしい涼やかな土着性が強く感じられる。男性ヴォーカルによる素朴なフォークナンバーもありつつ、
全体的にはロック的なノリがわりとあるので、アコースティック系が苦手なリスナーにも楽しめるだろう。
ドラマティック度・・7 北欧度・・8 女性Vo度・・7 総合・・7.5
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Folque 「Vardoger」
ノルウェーのフォークロック、フォルケの1977年作
3作目となる本作も、前作の延長上の作風で、母国語の女性ヴォーカルに男性声が絡み、
フィドルの音色にアコースティックギター、フルートなどによる土着的な叙情性が、
適度なロック要素と融合した聴き心地。英国のフォークバンドからの影響も感じさせつつ、
北欧らしい神秘的な空気感と素朴な味わいがこのバンドの魅力となっていて、
随所にKebnekajseあたりにも通じる親しみやすいトラッドメロディがよい感じだ。
北欧のスプリガンズ、というよりは、男女Voのトラッド風フォークロックの逸品ですな。
ドラマティック度・・7 北欧度・・8 女性Vo度・・7 総合・・7.5
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THE FOUNDATION「DEPARTURE」
スウェーデンのメロディックプログレバンド、ザ・フォウンデーションの1984作
詳細は知らないが、メンバーが同郷のTRIBUTEとも関連があったらしい。
音の方は北欧らしい透明感のあるシンフォニックロックで、キーボード、ギターによるゆったりとしたメロディが心地よい。
CAMELやGENESISあたりのマイルドな部分を北欧風にしましたというサウンドでここぞという盛り上がりやインパクトには欠けるが、
これはなかなかの好作。年代にしては機材も良く音質も上々。産業ロック風のきらびやかなキャッチーさも魅力だ。
メロディアス度・・8 キャッチー度・・8 たおやか度・・8 総合・・7.5
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FreddeGredde 「Thirteen Eight」
スウェーデンのマルチプレイヤー、フレドリック・ラーソンによるプロジェクト、フレッディゲラダの2011年作
ギター、ベース、シンセにヴォーカルをすべて一人でこなす、期待の若手ミュージシャン、
美麗なシンフォニック性とキャッチーなメロディアスさで構築されるサウンドは、
聴き心地の良さと軽快な展開力を両立させていて、デビュー作にしては相当質が高い。
甘い歌メロとコーラスはMOON SAFARIあたりにも通じるような人懐こさがあり、アコーディオンなど
アコースティック要素も含め、北欧らしい叙情も素晴らしい。アレンジは凝っているのだが難解さは皆無。
精細さとダイナミック、性と動のメリハリという点では、プログレ化したQUEENともいうべきか。
あるいはACTなどのプログレハード好きにも楽しめるかと。今後に大期待のアーティストです。
シンフォニック度・・8 メロディアス度・・9 プログレ度・・8 総合・・8
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Fredde Gredde 「Brighter Skies」
スウェーデンのマルチプレイヤー、フレドリック・ラーソンによるプロジェクト、フレッディ・ゲラダの2014年作
前作はMOON SAFARI + QUEENというような好作であったが、本作も美麗なシンセにメロディックなギター、
マイルドなヴォーカルを乗せた、キャッチーな抜けの良さに包まれたシンフォニック・プログレが楽しめる。
ギター、ベース、シンセ、ヴォーカルは自身が担当し、ドラムとフルートにはゲストを起用、
QUEENを思わせるコーラスにゴージャスな楽曲アレンジ、若手らしい適度にモダンな構築センスは、
オランダのCHRISや英国のTiger Moth Talesなどにも通じるだろう。11分、18分という大曲も、
あくまで優雅で壮麗な聴き心地。きらびやかな光に溢れる遊園地のような雰囲気の好作品です。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 優雅で壮麗度・・9 総合・・8
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Fredrik Klingwall & Julia Black 「Sentience」
スウェーデンのミュージシャン、フレドリック・キングウェルと女性シンガー、ジュリア・ブラックのユニット。2019年作
ダークアンビエント系のRising Shadowsや、ヴィンテージプログレのAnima Morteなどでも活躍するシンセ奏者で、
ドラムには、元Anglagard、Necromonkey、Pixie Ninjaなどで活躍する、マティアス・オルソンが参加している。
オルガンやメロトロンを含むシンセに、ヴァイオリンやチェロが絡み、コケティッシュな女性ヴォーカルの歌声で、
しっとりと優美なサウンドを描く。ゴシック寄りの薄暗く耽美な空気と、美しい女性声がよくマッチしていて、
クラシカルなピアノやストリングス、ときにチャーチオルガンなども用いた、シンフォニックな優雅さにも包まれる。
キュートな女性ヴォーカルの魅力では、Pale Forestあたりが好きな方にもイケるだろう。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・6 女性Vo度・・9 総合・・8
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Frokedal 「Hold On Dreamer」
ノルウェーのアシッドフォークロック、フローケダルの2016年作
女性SSW、アン・リーズ・フローケダル嬢を中心にしたユニットで、ユルめのギターにシンセを重ね、
やわらかな女性ヴォーカルを乗せた、素朴でゆったりとした浮遊感に包まれたサウンド。
フィドルやマンドリンにパーカッションも鳴り響く、北欧らしい土着性も含んだゆるやかな味わいに、
エレキギターやドラムも加わったロック感触もいくぶん覗かせて、SPRIGUNSあたりにも通じる
幻想的なプログレ・フォークの雰囲気とともに、のんびりと夢見心地に楽しめる。
アナログ感ある70年代風の音質や、ときにトランペットなどを使ったアレンジもよい感じです。
幻想フォーク度・・8 ロック度・・6 女性Vo度・・8 総合・・8
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Fruitcake 「A Battle A Day....」
ノルウェーのプログレバンド、フルーツケーキの2000年作
1992年にデビューし、6作目。シンセとピアノによる優美なイントロから、メロウなギターの旋律にマイルドなヴォーカルで、北欧らしいシンフォプログレを聴かせる。
KAIPAなどにも通じる土着的な叙情も覗かせつつ、オルガンやメロトロンを含むヴィンテージなシンセとともに、GENESISルーツの幻想的なサウンドが楽しめる。
ほどよくキャッチーな小曲も聴き心地良く、叙情的なギターにクラシカルなシンセを重ねた、PAR LINDHにも通じる優雅なナンバーや、10分を超える大曲は、ゆったりとした流れの中にも、美しいシンセの旋律を盛り込んだ優しい味わい。
全体的に派手さはないが、70年代北欧プログレを受け継いだ、くぐもったような涼やかな空気感に包まれた北欧シンフォの好作品です。
涼やか叙情度・9 プログレ度・7 北欧度・9 総合・8
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「Man Overboard」
ノルウェーのプログレバンド、フルーツケーキの1997/2004年作
フルート奏者を擁するGENESISタイプのシンフォニックロックで、うっすらとしたシンセにたおやかなフルートの音色が重なり、
北欧らしい涼やかな叙情とともにやわらかみのあるサウンドを聴かせる。
スリリングな展開は希薄だが、ゆったりと楽しめる古き良き感触のシンフォニックロック作。
ボーナスDiscには旧作からの楽曲や、リーダーのPAL SOVIKのソロ・マテリアルを収録。
メロディアス度・・8 プログレ度・・8 北欧度・・8 総合・・7.5
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G
GALASPHERE 347
イギリス、ノルウェー、スウェーデンの混成バンド、ガラスフィアー347の2018年作
Henry Foolのステファン・ベネットを中心に、White Willowなどで活躍する、ヤコブ・ホルム・ルッポ、マティアス・オルソン、フルート奏者、ケティル・ヴェストラム・エイナーセンの4人編成で、優美なシンセにマイルドなヴォーカルを乗せ、繊細な叙情に包まれたポストプログレ風味もある作風。
10分、15分、15分という大曲3曲の構成で、ムーグやオルガン、メロトロンなどのヴィンテージなシンセとフルートも鳴り響く、北欧らしい涼やかな空気感で、シンフォプログレとしてのキャッチーな優雅さも覗かせる。
ポストプログレ寄りの歌もの感と、オールドなプログレ感触が同居した、まさに、White WillowとHenry Foolが合体したような味わいの逸品だ。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 涼やかな叙情度・8 総合・8
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GALLEON 「Mind Over Matter」
スウェーデンのプログレバンド、ギャレオンの1998年作
1994年にデビューし、本作は5作目となる。やわらかなシンセアレンジに叙情的なギターと
ジェントルなヴォーカルを乗せた、北欧らしい涼やかでキャッチーなシンフォニックロックを聴かせる。
10分を超える大曲も、決して派手さはないが、ゆったりとした叙情とほどよい展開力で優美に構築してゆく。
繊細なシンセワークとやわらかなヴォーカルメロディには、初期のTHE FLOWER KINGSにも通じる雰囲気もあり
過去作と比べて幻想的な世界観の強度が強まっている。ラストの21分という大曲も、あくまでゆったりとメロウに聴かせます。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 優美度・・9 総合・・8
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GALLEON 「Beyond Dreams」
スウェーデンのプログレバンド、ギャレオンの2000年作
1992年にデビュー、本作は6作目。初期作はZEROレーベルから日本盤も出ていたのでご存知の方もいるだろう。
美しいシンセに叙情的なギターを重ね、マイルドなヴォーカルで聴かせる優美なシンフォニックロック。
北欧らしい涼やかな透明感と、ポンプロックルーツのキャッチーなメロディアス性に包まれていて、
繊細な美意識と適度にハードな質感が同居したところは、ドイツのEVERONあたりにも通じるだろう。
派手な展開やスリリングな部分はないが、うっすらとしたシンセが幻想的な味わいを生み出していて
メロウなギターフレーズが加わると、じつに耳心地がよい泣きの叙情がじわじわと広がってゆく。
まさに90年代の正統派シンフォニックロックを受け継ぐスタイルで、本作がバンドの最高作だろう。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 優美度・・9 総合・・8
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GALLEON「FROM LAND TO OCEAN」
スウェーデンのメロディック・シンフォニックロックバンド、ギャレオンの2003作
かつてはZEROレーベルから日本盤も出ており、名前だけは知っている方も多いと思う。
初期のころは北欧的土着メロディがなかなか田舎くさくて良いメロディックロックだった記憶がある。
現在まで地道に活動をしていたとは驚きだが、今回はなんと2枚組の大作となっている。
緊張感の薄いゆったりとした曲調とメロディアスな部分はかつてのまま、歌メロのキャッチーさや、
キーボード、ギターのアレンジなどには初期のフラキンなどを思わせる部分もあり、
全体としてはなかなか心地よいサウンドになっている。ゆったり系シンフォが好きなら楽しめる。
シンフォニック度・・7 メロディアス度・・8 ゆったり度・・8 総合・・7
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GALLEON「In the Wake of the Moon」
スウェーデンのメロディック・シンフォニックロックバンド、ギャレオンの2010作
90年代から活動するバンドでこれが9作目。聴くのは2003年作以来だが、
美しいシンセワークとキャッチーなヴォーカルメロディで、北欧らしい涼やかさを含んだ
メロディアスなサウンドは健在。盛り上がり切らない煮え切らなさも相変わらずだが、
全体的な聴き心地の良さはプログレハード的な楽しみ方もできるだろう。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 北欧度・・8 総合・・7.5
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Gargamel 「Watch for the Umbles」
ノルウェーのプログレバンド、ガルガメルの2006作
チェロ奏者を含む6人組で、ハモンドやメロトロンなどが鳴り響くレトロなヘヴィプログレ。
ダークな部分はやはり初期のANEKDOTENからの影響が強いと思われるが、
こちらはギターの質感などに70's英国ロック的なものが感じられる。
全5曲のうち10分以上の大曲が3曲あり、多少歌も入るがインストパートが多いので
この手が好きでないと長尺感に聴き疲れするだろう。逆にいうと新人にしてはかなりの力作。
音にはサイケロック的な浮遊感もあり、チェロとフルートが絡むとチェンバーロック風味も顔を出す。
メロディアス度・・7 プログレ度・・8 レトロ度・・8 総合・・7.5
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Gargamel「Descending」
ノルウェーのプログレバンド、ガルガメルの2008年作
前作もANEKDOTENタイプのなかなかの力作であったが、本作もメロトロンや
ハモンド、ムーグなど、ヴィンテージな音色を響かせる70年代風の音作り。
ダークな緊張感をただよわせた作風はむしろMORTE MACABREにも近いか。
12分、18分という大曲を含む全4曲という構成で、さすがにやや長尺感があるが、
どこかサイケロック気味の浮遊感と、楽曲の盛り上げ方にメリハリがついたことで、
壮大な雰囲気に耳惹かれる。フルートやチェロ、トロンボーンなどの楽器も、
効果的に使われている。北欧ヴィンテージ系としてもなかなかの力作だ。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 ヴィンテージ度・・8 総合・・8
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GATE「Jygri」
ノルウェーのラジカルトラッド・ロックバンド、ゴーテの1st。2003作
2nd「ISELILYA」は日本盤も出て話題になったバンドの1stの再発盤。
土着的なメロディを大胆に取り入れたサウンドは、モダンなトラッドロックという趣で、
いくぶんメタリックなギターとシンセが合わさり、そこに艶めいた女性ヴォーカルの歌声が乗る。
母国語の歌声がいかにも北欧の空気を感じさせるが、土臭さをヘヴィなアレンジで包み込んでいて
ラジカルトラッドのリスナーはもとより、メタル、ハードロックのリスナーにも違和感なく聴けるだろう。
より北欧トラッドに接近した2ndよりも、むしろこちらの方がフォークメタルに近いかもしれない。
ボーナスディスクにはデモやライブ音源など4曲を収録。
メロディアス度・・8 北欧トラッ度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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GATE「ISELILYA」
ノルウェーのラジカルトラッド・ロックバンド、ゴーテの2nd。2004作
正統的な北欧トラッドをモダンに構築し直したというような面白いサウンドで、1作目はむしろフォークメタル寄りに楽しめたが、
本作も、艶のある女性ヴォーカルをフロントに、フィドルが鳴り響く北欧らしいトラッドメロディをバンドサウンドで解釈している。
いうなれば、GARMARNAあたりにも似た質感であるが、そこにキーボードによるシンフォニック性や、
ときにゴシックメタル的な部分を加味したような雰囲気もある。寒々しい静寂感と同時に、
ロック的なノリの良さ(ときにサイケ調)も併せ持っていて単なる自己満足ではない聴きやすさがあるのがよい。
メロディアス度・・8 北欧トラッ度・・9 女性Vo度・・8 総合・・8
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Gazpacho 「bravo」
ノルウェーのポストプログレ、ガスパチョの2003年作
自主制作によるデビューアルバムの2016年再発盤。いまやポストプログレの第一人者となった感のあるバンドだが、
本作の時点では、わりとハード寄りのギターを含んだロック色と、プログレ的なシンセによる味付けで、
モダンで繊細な薄暗系プログレというサウンドである。マイルドなヴォーカルにアコースティックギター、
オルガンなどのシンセが絡む繊細な聴き心地と、キャッチーな歌もの感触が合わさった作風は、
Porcupine Treeなどからの影響も感じさせる。3~6分ほどの楽曲を知的にスタイリッシュに構築するセンスは、
デビュー作ながらも光っていて、のちの作品に比べるとノリのあるロック感触も強いので、初心者にも入りやすいだろう。
ゲストによるヴァイオリンや女性ヴォーカルも加わったナンバーもあって、ゆったりと優しい聴き心地で楽しめます。
ドラマティック度・・7 薄暗度・・8 繊細度・・8 総合・・8
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Gazpacho 「When Earth Lets Go」
ノルウェーのポストプログレ、ガスパッチョの2004年作
シンセを含む5人編成で、モダンでエレクトロなアレンジとマイルドなヴォーカルに
シンフォニックな要素も含んだ、繊細な叙情サウンドはフ作目の本作ですでに確立している。
メロトロンやオルガンなどの美しいシンセアレンジに包まれつつ、のちのアルバムに比べると、
いくぶんハードなギターも入ってきたり、楽曲も4~5分台中心でわりとシンプルなので、
プログレというよりは、Marillionのようなメロウな叙情ロックとしても楽しめる。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 繊細度・・8 総合・・7.5
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Gazpacho 「FIREBIRD」
ノルウェーのポストプログレ、ガスパチョの2005年作
3作目となるアルバムの2016年再発盤。うっすらとしたシンセに包まれて、メロウなギターと
マイルドなヴォーカルを乗せた、薄暗系のポストプログレは、本作の時点で完成されたといえる。
前作でのMarillion的なスタイルから、北欧らしい涼やかで物悲しい空気感をまとわせ、
厚みのあるシンセアレンジやヴォーカルの表現力も含めて、ひとつモダンに推し進めたという感触。
アコースティックパートから、わりとハード寄りのギターや、女性コーラスを加えたパートなど
メリハリある構築センスも光っている。2パートに分かれた優美なナンバー「Orion」をはじめ、
楽曲ごとの魅力も十分。バンドとしては初期の傑作というべきアルバムだろう。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 薄暗度・・8 総合・・8
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Gazpacho 「Night」
ノルウェーのポストプログレ、ガスパッチョの2007年作
本作は4作目のアルバムで、シンセにヴァイオリン奏者を含む6人編成となっている。
いきなり17分の大曲から幕を開けるが、難解なところはなく、うっすらとしたシンセに包まれて、
マイルドなヴォーカルと適度にードな質感を残したギターで聴かせるやわらかなサウンド。
ドイツのSylvanなどにも通じる叙情的な耳心地に、PINK FLOYD的な浮遊感も含んでいる。
夜をテーマにした物寂しい静謐感とともに、しっとりと味わえる好アルバムです。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 繊細度・・8 総合・・8
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Gazpacho 「A Night at Loreley」
ノルウェーのプログレ・ロックバンド、ガスパッチョのライブアルバム。2009年作
薄暗い叙情のポストプログレ系バンドとしてはすでに中堅のキャリアのこのバンド、
このライブステージでは、スタジオ盤以上にロックとしての躍動感あるアンサンブルで、
Porcupine Tree以降のモダンなセンスのプログレ・ロックサウンドを聴かせてくれる。
うっすらとしたシンセアレンジにマイルドなヴォーカルの歌声、適度にハードなギターは
随所にメロウな旋律も含んでいて、安定した演奏力で楽曲を構築してゆく。
ヴォーカルの録音レベルが少し大きい感じもあるが、バンドのファンなら十分楽しめる内容だ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 ライブ演奏・・8 総合・・7.5
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GAZPACHO 「TICK TOCK」
ノルウェーのポストプログレ、ガスパチョの2009年作
2003年にデビュー、本作は5作目の2016年再発盤。適度にハードなギターにうっすらとしたシンセを重ね、
マイルドなヴォーカルを乗せた、わりとキャッチーな感触ながら、ときにメロトロンの音色が鳴り響く、
涼やかな幻想性とともに、しっとりと繊細な叙情美に包まれた聴き心地。2パート、3パートに分かれた
それぞれ13分、22分という組曲もあって、MARILLIONのような翳りを帯びた美しさに浸れます。
美しいシンセにストリングスも加えたシンフォニックロック的な優美な空間性に、泣きのギターフレーズを乗せ、
ゆるやかに盛り上げるところなどは、多くのシンフォ系リスナーが涙腺を緩ませることだろう。傑作。
シンフォニック度・・8 繊細度・・9 叙情度・・9 総合・・8
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GAZPACHO「Missa Atropos」
ノルウェーのプログレ・ロックバンド、ガスパッチョの2010年作
ヴァイオリンにシンセ奏者を含む6人編成で、2002年にデビューし本作ですでに6作目となる。
サウンドは、薄暗い叙情でゆるやかに聴かせるアンビエントなシンフォニックプログレで、
Porcupine Tree+ANEKDOTENというような、しっとりとした聴き心地と、ポストロック、エモ的でもある
マイルドなヴォーカルが耳に優しい。泣きのギターとうっすらとした美しいシンセが合わさると、
まるでポーランドのバンドのような翳りあるシンフォニックロックとしても楽しめる。
レトロなバンドが目立つ北欧であるが、モダン派の叙情系バンドとして今後も期待の存在である。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 薄暗度・・8 総合・・8
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GAZPACHO「London」
ノルウェーのプログレ・ロックバンド、ガスパッチョのライブアルバム。2011年作
ヴァイオリン&マンドリン奏者を含む6人編成のステージで、うっすらとしたシンセに包まれながら
案外ロック的なギターとドラムが加わって、そこにエモーショナルロック風のヴォーカルが乗ると、
最近のスタジオ作品よりずっと躍動感のあるアンサンブルとなる。随所に入るヴァイオリンやなども、
土着的なアクセントになっていて、浮遊感のあるポストプログレというべき演奏が楽しめる。
Disc2ではしっとりとした最近の作風も含んで、やわらかで薄暗い叙情美をじっくり味わえる。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 ライブ演奏・・8 総合・・8
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Gazpacho 「March of Ghosts」
ノルウェーのプログレ・ロックバンド、ガスパッチョの2012年作
ヴァイオリン、シンセ奏者を含む6人編成で、本作は7作目のアルバム。
うっすらとしたシンセに美しいヴァイオリンによるイントロ曲から始まり、
繊細な歌声とともに、ほの暗い叙情美に包まれたサウンドが広がってゆく。
今作はコンセプト的に進んでゆくようなドラマ性があり、ゆるやかなシンフォニック性の中にも、
さりげないドラムのリズムの入れ方など、細部のこだわりが感じられるアレンジで、
作品としての強度は前作以上に強まった。メロウな情感に心地よく浸れる傑作だ。
メロウ度・・8 プログレ度・・7 しっとり叙情度・・8 総合・・8
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GAZPACHO「DEMON」
ノルウェーのボストプログレバンド、ガスパチョの2014年作
2003年にデビュー、本作は8作目のアルバムで、うっすらとしたシンセに物悲しいヴァイオリンの音色から始まり、
淡々としたヴォーカルにギターが重なり、薄暗い叙情に包まれた、繊細でシンフォニックなポストプログレサウンドが広がってゆく。
アコーディオンが鳴り響くフォーキーなナンバーもありつつ、アルバム後半は12分、18分という大曲で、
美しいピアノにヴァイオリンが絡み、ギターとシンセによる厚みのある音作りでゆったりと盛り上げる。
これまで以上にメリハリのある聴き心地で、涼やかな北欧シンフォニックロックとしても楽しめる。
ドラマティック度・・8 薄暗度・・8 繊細度・・9 総合・・8
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GAZPACHO 「NIGHT OF THE DEMON」
ノルウェーのポストプログレ、ガスパチョのライブ。2015年作
2003年にデビュー、いまや北欧ポストプログレを代表するバンド。2014年作「Demon」のツアーより、
オランダでのライブをCD+DVDに収録。叙情的なギターにうっすらとしたシンセ、マイルドなヴォーカルとともに
翳りを帯びた繊細なサウンドを描く。いくぶんハードなギターや、オルガンなどのプログレらしさなども覗かせて
スタジオ盤以上にダイナミックな演奏が味わえる。しっとりとした静寂パートや、ときにヴァイオリンも加った
優雅なアレンジで、10分前後の大曲をゆるやかに構築してゆくセンスは、この手のバンドでは屈指だろう。
CDは全79分、DVDには100分超のフルライブ映像を収録。安定した演奏力と雰囲気のあるステージが楽しめる。
ライブ演奏・8 プログレ度・7 叙情度・8 総合・8
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Gazpacho 「Molok」
ノルウェーのプログレ・ロックバンド、ガスパチョの2015年作
いまやkscopeレーベルを代表するバンド、本作はおそらく9作目のアルバム。
ヴァイオリン、シンセ奏者を含む6人編成で、うっすらとしたシンセアレンジにマイルドなヴォーカルを乗せ
物悲しいヴァイオリンが鳴り響く、モダンで繊細なサウンドにはいっそう磨きがかかっている。
今作ではパーカッションによる民族的な味わいも随所にあって、ヴォーカルのシアトリカルな表現力とともに、
空間的な静謐感に吸い込まれるような薄暗く神秘的な世界観を描きながら、やわらかなピアノの音色に
メロウな泣きのギター、ときに美しい女性コーラスも入ってきたりして、サウンドを優美に彩っている。
20年近いキャリアを持つバンドらしい、細やかなセンスで構築された傑作に仕上がっている。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 繊細な叙情度・・9 総合・・8
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Gazpacho 「Soyuz」
ノルウェーのプログレ・ロックバンド、ガスパチョの2018年作
2003年にデビュー、いまや北欧ポストプログレを代表するバンドの通算10作目のアルバム。
メロウなギターにうっすらとしたシンセに優美なピアノ、エモーショナルなヴォーカルを乗せて、
エレクトロなアレンジを含んだスタイリッシュ性と、薄暗い繊細な叙情が同居したサウンドを描く。
ヴァイオリンも鳴り響く、北欧らしい涼やかで優雅な味わいに包まれつつ、ゆったりと静謐パートと
盛り上げるロック部分のダイナミズムもあって、プログレとしてもしっかりと楽しめるのがさすが。
13分という大曲もあくまで優美な雰囲気で、ゆったりと構築する。いつもながらに味わい深い逸品。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 優美度・・9 総合・・8
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Gazpacho 「Fireworker」
ノルウェーのポストプログレ、ガスパチョの2020年作
2003年にデビュー、本作は11作目で、人間の根源的本能、精神性をテーマにした深遠なコンセプト作品。
のっけから19分という大曲で、しっとりと美しいシンセアレンジにマイルドなヴォーカルを乗せ、
翳りを帯びた物悲しい叙情と、静寂の空間性を含んだ、ドラマティックなサウンドを構築する。
ときに壮麗な混声コーラスや、ヴァイオリンなどもを加えた、優雅で涼やかなシンフォニック性と
繊細なピアノをバックにしたゆるやかな歌パートなど、メランコリックな空気感を描きながらも、
メリハリある展開が合わさった聴き心地。中盤にはポストプログレらしい優しい小曲をはさみ、
ラストは15分の大曲で、美しいシンセにメロウなギターを重ねて、じわりと泣きの叙情で盛り上がる。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 しっとり優美度・8 総合・8
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Gazpacho 「Fireworking at St.Croix」
ノルウェーのポストプログレ、ガスパチョのライブ。2022年作
2003年にデビュー、北欧ポストプログレを代表するバンドで、本作は2020年のコロナ化で配信された無人ライブの模様を収録。
ヴァイオリン奏者を含む6人編成で、2020年作「Fireworker」完全再現を含むセットを演奏。しっとりとしたピアノとシンセに
マイルドなヴォーカル、優雅にヴァイオリンが鳴り響き、叙情的なギターとともに、緩急ある19分の大曲を構築してゆく。
後半には、過去作からのナンバーも演奏。基本的にはアルバム通りの再現性なので、インパクトは薄めながら、
じっくりとその翳りを帯びた叙情サウンドが味わえる。全75分、安定の好ライブ作です。
ライブ演奏度・8 プログレ度・7 優美度・8 総合・8
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GENTLE KNIFE 「CLOCK UNWOUND」
ノルウェーのプログレバンド、ジェントル・ナイフの2017年作
2015年にデビューし、2作目となる。女性Voにフルート、サックス奏者などを含む、11人という大編成で、
ピアノとトランヘ「ットによるしっとりとしたイントロ曲から、シンセを加えたスタイリッシュなアンサンブルに、
男女ヴォーカルの歌声を乗せて、ほどよくハードでモダンなプログレサウンドを聴かせる。
15分という大曲では、優雅なフルートやサックスやホルンが鳴り響くゆったりとしたインストパートとともに、
チェンバーロック風の空気もかもしだす。一方ではプログレらしいきらびやかなシンセワークも現れて
男女声を乗せたキャッチーなノリのナンバーもあったりと軽妙な作風が楽しめる。随所に叙情的なギターも覗かせて、
ぱっと聴きには派手さはないが、全体的に大人の余裕というものが感じられる、玄人好みのセンスを感じる好作だ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 優雅度・・8 総合・・8
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THE GIANT HOGWEED ORCHESTRA
フィンランドのプログレバンド、ジャイアン・ホグウィード・オーケストラの2004年作
サイケな雰囲気をかもしだすギターにやわらかなフルートの音色を重ね、ゆったりとしたアンサンブルで
叙情的なインストサウンドを聴かせる。楽曲は10分前後と長めであるが、これといった展開や
盛り上がる場面はさほどなく、フリーキーな演奏が淡々と続いてゆく感じなので長尺に感じてしまう。
優美なフルートが映える小曲などは、北欧らしい涼やかで叙情的な味わいでいいのだが、
20分近い大曲では、ユルめのサイケ路線が延々と続くので、人によっては退屈かもしれない。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 北欧度・・7 総合・・7
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Gosta Berlings Saga「Glue Works」
スウェーデンのプログレバンド、イエスタ・ベルリング・サーガの2011年作
ANGLAGARDのマティアス・オルソンがプロデュース、本作が3作目。
サウンドはムーグやメロトロンなどレトロなシンセが鳴る、ANEKDOTENなどを思わせる
いかにも北欧らしいシンフォニックロックにシリアスなチェンバーロック色が加わったもの。
そう派手さはないものの、じわじわと感じられる静かなダイナミズムと知的なアレンジ、
涼やかな叙情に含まれた硬質な意思のようなものが感じられる、これは通好みの作品だ。
アナログ的なギターサウンドとそのメロウなフレーズにもにんまり。オールインストです。
シンフォニック度・・7 ミステリアス度・・8 北欧度・・9 総合・・8
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GOSTA BERLINGS SAGA 「Sersophane」
スウェーデンのプログレバンド、イエスタ・ベルリング・サーガの2017年作
シンフォニックとチェンバーロックを融合させたようなセンス抜群のサウンドで、本作が4作目となる。
どっしりとしたベースとドラムのリズムに、ムーグシンセやメロトロン、そしてアナログ感あるギターを乗せて、
ANEKDOTENのような北欧らしい空気感に、KING CRIMSONの緊張感を加えたようなサウンドを描き出す。
オールインストであるが、甘すぎない程度の叙情性と、リフレインするフレーズのサイケな浮遊感も含んで、
玄人好みの味わいがディープなファンを楽しませる。アルバム後半の15分の大曲もスリリングな迫力に引き込まれる。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 知的センス度・・9 総合・・8
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GOSTA BERLINGS SAGA 「ET EX」
スウェーデンのプログレバンド、イエスタ・ベルリング・サーガの2018年作
2006年にデビュー、本作は5作目となる。エレクトロなシンセとメロトロンが幻想的な鳴り響くイントロ曲から、
不穏なギターが加わって、いくぶんヘヴィなアンサンブルとともにスリリングな空間性に包まれてゆく。
うねるようなベースと手数の多いドラムに、ハード寄りのギターを重ねた、クリムゾンばりの迫力に、
ダークな叙情性に包まれたスケール感が合わさった異色のヘヴィ・シンフォニックロックというべきか。
エフェクトがかったエレクトロなリズムに美しいシンセを乗せたナンバーやアコースティックな小曲など、
バンドとしてのアーティスティックなセンスが詰まった作風は、涼やかで荘厳な空気を描き出す。
北欧のクリムゾン…などという以上の壮大な迫力に包まれた、異色の傑作がここに誕生した。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 荘厳度・・9 総合・・8.5
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Gosta Berlings Saga 「Konkret Musik」
スウェーデンのプログレバンド、イエスタ・ベルリング・サーガの2020年作
2006年にデビュー、本作は6作目となる。前作は北欧のクリムゾンというような大変な傑作であったが、
今作は、モダンなエレクトロ性とうねりのあるグルーブが同居した、無機質な空気に包まれた感触。
一方ではメロトロンやピアノなどを使った、シンフォニック性と北欧らしい涼やかな叙情も残していて、
いくぶんチェンバーロック風味も含んだ、インダストリアル系シンフォというようなサウンドが楽しめる。
楽曲は3~5分前後が主体で、オールインストなので取っつきは良くないが、クールでスタイリッシュなセンスは、
Isildurs Baneの近作にも通じるものも感じさせる。まさに新時代の北欧モダン派プログレというべき作品だ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 スタイリッシュ度・・9 総合・・8
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Grand General
ノルウェーのロックバンド、グランド・ジェネラルの2013年作
シンセにヴァイオリン奏者を含む5人編成で、ドラムはMOTORPSYCHOでも活躍するメンバー。
アナログ感を感じさせるギターにヴァイオリンの音色が絡み、うねりのあるベースとドラムが
躍動的なグルーブ感を描き出す。ガレージロック的でもある生々しさとサイケな浮遊感、
プログレ的なスケール感が合わさった独自のサウンドありながら、結果してロックであるという、
説得力のある抜群の演奏は見事と言う他はない。オールインストであるが、どっしりとしたリズム隊が
重厚さと同時にノリのある緊張感わ作り出し、ヴァイオリンとギターが空間を彩る、その一体感に聴き惚れる。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 アンサンブル度・・10 総合・・8
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GRAND STAND 「Tricks of Time」
スウェーデンのプログレバンド、グランド・スタンドの2002年作
1998年デビューで、本作は2作目。VA「Kalevala」に参加していたことで知ったバンドであるが、
これがなかなか出来がいい。のっけから11分の大曲で、叙情的な泣きのギターにシンセを重ね、
北欧らしい涼やかな空気に包まれたシンフォニックロックを聴かせる。ヴォーカルはいくぶん野暮ったいが、
素朴な味わいを残したオールドスタイルの北欧シンフォという点では、DICEやKERRS PINKにも通じるだろう。
とりたてて派手なところはないが、美しいシンセワークとメロウなギターによる耳心地の良さは素晴らしく、
ラストの16分の大曲は、GENESISの「CINEMA SHOW」のような優美な展開力で楽しめる。
このジャケでなければ、北欧プログレの逸品として、もっと知られていて良い作品ですな。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 北欧度・・9 総合・・8
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Green Asphalt
スウェーデンのプログレバンド、グリーン・アスファルトの2021年作
やわらかなオルガンにアコースティックギター、女性声を含むキャッチーなコーラスハーモニーとともに幕を開け、GENTLE GIANTにも通じる優雅で軽妙なサウンドを展開。
フルートやサックスが鳴り響く、オールドなプログレ感触と、北欧らしい涼やかさが同居して、ときにKING CRIMSON的なアンサンブルも覗かせる。
女性ヴォーカルをメインにした優美なナンバーや、モダンなシンセアレンジにサックスやピアノが絡むスタイリッシュなジャズロック風など、なかなかとらえどころがない。
ラストの10分の大曲では、軽やかな歌もの感にオーケストラアレンジが加わり、とぼけたような優雅さとシンフォニックな美意識が交差する。
ドラマティック度・7 プログレ度・8 優雅度・8 総合・8
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Green Carnation「The Acoustic Verses」
ノルウェーのプログレ・ゴシックメタル、グリーン・カーネーションの2005年作
素晴らしいセンスとプログレッシブな知的さをただよわせたこのバンドのサウンドは、
OPETHの次に聴くならこれだといいたいほどのセンスの良さであるのだが、残念ながら知名度はまだ低い。
本作はアコースティックアルバムで、このバンドのゆるやかな叙情性を抽出したような作品となっている。
アコースティックギターにうっすらとしたシンセが絡み、そこにマイルドな歌声が乗ると
北欧の薄暗い幻想美をただよわせた、まるで耳心地のよいプログレ作品のように味わえる。
メロディアス度・・8 メタル度・・2 叙情度・・8 総合・・8
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GREGORY ALLAN FITZPATRICK「Snorungarnas Symfoni」
スウェーデンのミュージシャン、グレゴリー・アラン・フィッツパトリックの1976年作/邦題「北欧組曲」
SAMLA MAMMAS MANNAのメンバーが全面参加していて、「鼻垂れ小僧のシンフォニー」というタイトルで
4楽章からなるコンセプト的な作品となっている。北欧らしい涼やかなギターの旋律にクラシカルなピアノ、
トランペットやサックスなども加わった、優雅なインストサウンドを展開する。いくぶんコミカルな味わいと
哀愁を含んだ叙情性が同居した聴き心地で、サムラのメンバーの巧みな演奏力とともに、
軽妙なジャズロックと優美な北欧シンフォニックロックが合わさったサウンド楽しめる逸品です。
ドラマティック度・・7 優雅度・・9 北欧度・・9 総合・・8
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GREGORY ALLAN FITZPATRICK「BILDCIRKUS」
スウェーデンのミュージシャン、グレゴリー・アラン・フィッツパトリックの1978年作/邦題「孤独なサーカス」
大規模な総合芸術プロジェクト「ビルドサーカス」の疑似サウンドトラックとして制作された作品で、
フルートやサックス、クラリネットの音色にシンセを重ね、サーカスを思わせるコミカルな楽しさと、
涼やかな哀愁の叙情が同居したサウンドで、メロウなギターの旋律も加わるとシンフォニックに味わえる。
前半は小曲主体だが、後半は16分を超えるクラシカルなピアノ曲もあって、しっとりと優美に楽しめる。
ドラマティック度・・7 優雅度・・8 北欧度・・8 総合・・7.5
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groovector「ultramarine」
フィンランドのプログレバンド、グルーヴェクターの1st。2000作
キーボードにフルートを含む5人組で、曲はオールインスト。本作はハモンドオルガンが鳴り響く
レトロな質感と、リリカルなフルートの音色で聴かせる、ゆったりとしたシンフォニックロックだ。
涼やかな北欧の空気を描くような静寂感とともに、ハモンドオルガンとフルートが合わさった優美な感触に包まれて
10分以上の大曲であっても耳心地よく軽やかに聴かせてくれるる。しっとりとしたピアノもじつに美しい。
シンフォニック度・・8 フルート&ハモン度・・9 北欧度・・8 総合・・8
GROOVECTOR「ENIGMATIC ELEMENTS」
フィンランドのプログレバンド、グルーヴェクターの2nd。2003年作
涼やかなシンセワークを中心にメロウなギターを乗せた、北欧らしい涼やかな叙情性に包まれたサウンドで、
軽妙でスタイリッシュなアンサンブルと、オルガンが鳴り響く古き良きプログレ感触を同居させた、
優雅なシンフォニックロックが楽しめる。インストパートをメインにしつつ、ヴォーカルパートが加わると
やわらかな耳心地になって、アコースティックギターやサックス、ピアノなどの繊細な美しさも魅力的で、
ときおり聴かせるメロウなギターフレーズにもうっとりとなる。涼やかな美意識に包まれた北欧シンフォの逸品です
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 優雅度・・9 総合・・8
Groovector 「Darklubing at Tavastia」
フィンランドのプログレバンド、グルーヴェクターのライブ。2003年作
2001~2002年のライブ音源で、美しいシンセワークにメロウなギターとやわらかなフルートの音色を乗せた
優雅なシンフォニックロックを聴かせる。北欧らしい涼やかな叙情のメロディを乗せたインストパートを主体に、
ときおりヴォーカルも加わったキャッチーな味わいもある。16分、19という大曲もあくまで優美な耳心地で、
ロイネ・ストルトばりの叙情的なギターとともに、どこか翳りを帯びた空気感も、北欧シンフォ好きにはたまらないだろう。
彼らの残した2枚のスタジオアルバム、「ultramarine」、「ENIGMATIC ELEMENTS」も傑作なのでチェックすべし。
ライブ演奏・・8 優雅度・・9 北欧度・・8 総合・・8
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The Guardian's Office
ノルウェーのプログレバンド、ガーディアンズ・オフィスの2002年作
いくぶんハード寄りのギターで、ブルージーな味わいのヴィンテージサウンドを描きつつ、
ピアノやオルガン、メロトロンを含むシンセに、随所にメロウなギターフレーズも覗かせて、
マイルドなヴォーカルとともに、北欧らしい涼やかでくぐもったような空気感に包まれる。
派手な展開というものはないので、いささか地味な感触ながら、ヴィンテージなシンセが耳心地よく、
まるで70年代北欧プログレの生き残りのような聴き心地で、ゆったりと牧歌的に楽しめる。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 ヴィンテージ度・・8 総合・・7.5
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THE GUILDMASTER 「THE KNIGHT AND THE GHOST」
THE SAMURAI OF PROGのマルコ・ベルナルドとキンモ・ポルスティ、KAYAKのトン・スケルペンツェル、
スペイン人ミュージシャン、ラファエル・パシャによるシンフォニックロック・プロジェクト、ギルドマスターの2020年作
リコーダーやフルート、バグパイプの音色にギターとシンセが重なり、中世音楽的なメディーヴァルな世界観を、
シンフォプログレに仕立てたというサウンド。アコースティックギターやリコーダー、ヴァイオリンなどの優雅な旋律と、
ギターやドラムによるロック感触が融合したという点では、GRYPHONなどにも通じる感触で楽しめる。
美しい女性ヴォーカルでしっとりと聴かせるナンバーなども、優美で繊細なサウンドにゆったりと浸れる。
メロウな泣きのギターを奏でる、ラファエル・パシャ氏は、フルートやリコーダーの演奏も含めて主役級の活躍ぶり。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 優美度・・9 総合・・8
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THE GUILDMASTER 「LIBER DE DICTIS」
多国籍のシンフォニックロック、ギルドマスターの2022年作
THE SAMURAI OF PROGのマルコ・ベルナルドとキンモ・ポルスティ、スペイン人ギタリストのラファエル・パシャらによるプロジェクト、
本作が2作目となる。叙情的なギターの旋律に優美なシンセを重ね、ニッケルハルパやリコーダーの牧歌的な音色による
中世音楽風味を含んだシンフォプログレを構築する。 CICCADAの女性シンガーの歌声に艶やかなヴァイオリンも加わり、
キンモ・ポルスティの娘さんのヴォーカルも美しいケルティックなナンバーなど、繊細な耳心地でしっとりと楽しめる。
アコースティック要素とシンフォニックロックのバランスも良く、しっかりプログレに寄せているところは、さすが、ベルナルド&ポルスティである。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 優雅度・9 総合・8
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GUNGFLY 「Lamentations」
BEARDFISHのRikard Sjoblomによるソロプロジェクト、ギャングフライの2011年作
ビアードフィッシュの方も、ヴィンテージ色漂うプログレサウンドであったが、
本作ではその70年代ロックを前面に出した、LED ZEPPELINばりのハードロック。
オルガンやメロトロンといったシンセ類もときどき使われてはいるが、よりストレートな聴き心地で、
HR的なリフからブルージーなフレーズまでこなす巧みなギタープレイをバックに、
マイルドなヴォーカルを乗せたスタイルは、オールドロック好きにはなかなか楽しめる。
9分を超える大曲ではBEARDFISHばりの展開力も覗かせる。ライブ映像が収録したDVD付き。
メロディック度・・7 プログレ度・・7 オールドロック度・・9 総合・・7.5
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Gungfly 「On Her Journey to the Sun」
スウェーデンのプログレバンド、BEARDFISHのリカルド・ソーブロムによるプロジェクト、ギャングフライの2017年作
Big Big Trainでも活躍するマルチミュージシャンで、やわらかなシンセにジェントルなヴォーカル、
渋みのあるギターワークとともに、しっとりとした叙情を含んだヴィンテージなサウンドを聴かせる。
オルガンやメロトロンなどの古き良きプログレ感触と、随所に泣きのギターフレーズや、サイケ的な浮遊感も覗かせつつ、
やはりBEARDFISHを思わせる、ほどよく屈折した知的な雰囲気に包まれながら、10分を超える大曲を構築してゆく。
軽妙で優雅な味わいのナンバーもよい味わいで、彼のミュージャンとしてのセンスが散りばめられた傑作といえる出来だ。
Disc2は、2009年作「PLEASE BE QUIET」、2011年作「LAMENTATIONS」からの14曲を収録したベスト的な内容。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 優雅でヴィンテージ度・・9 総合・・8
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Gungfly 「Friendship」
スウェーデンのミュージシャン、リカルド・ソーブロムによるプロジェクト、ギャングフライの2018年作
BEARDFISH、Big Big Trainで活躍するマルチミュージシャンで、オルガンを含むやわらかなシンセに
ジェントルなヴォーカルを乗せ、軽やかなリズムとともに優雅でキャッチーなサウンドを聴かせる。
古き良きロックの感触をシンフォプログレに包み込んだ、BEARDFISHの続編といってもよい作風であるが、
流麗なギターフレーズやスタイリッシュなアンサンブルは、単なるヴィンテージプログレという以上の構築力だ。
10分を超える大曲では、ストリングスアレンジも加えたシンフォニック性や、哀愁の叙情に包まれた
ヴォーカルパートにじっくりと聴き入れる。オールドなプログレファンも満足させつつ、ほどよくモダンな味わいもあり、
キャッチーなナンバーは、IT BITESなどのファンにも楽しめるだろう。北欧と英国がブレンドしたような傑作です。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 叙情度・・9 総合・・8
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RIKARD SJOBLOM'S GUNGFLY 「Alone Together」
スウェーデンのミュージシャン、リカルド・ショーブロムのプロジェクト、ギャングフライの2020年作
元BEARDFISH、現在はBIG BIG TRIANのメンバーでもある。本作はのっけから13分という大曲で、
オールドなギターにオルガンなどのシンセとマイルドなヴォーカルで、キャッチーなサウンドを聴かせる。
叙情的なギターの旋律にヴィンテージなオルガンが重なる、70年代ルーツのロックスタイルに、
軽妙なリズムチェンジなどのプログレ要素が合わさった、かつてのBEARDFISHを継承する作風。
15分近い大曲も、わりとユルめのキャッチーなヴィンテージロックという趣から、優美なピアノの旋律に
泣きのギターフレーズが重なると、シンフォニックロックとしての盛り上がりも見せる。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 ヴィンテージ度・・8 総合・・8
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H
Hadal Sherpa
フィンランドのプログレバンド、ハダル・シェルパの2017年作
うっすらとしたシンセにやわらかなフルートの音色、メロウなギターの旋律を乗せて、
優雅でスペイシーなインストサウンドを描く。トレモロのギターなども織り込みつつ、
ゲストのフルートが活躍するアッパーなサイケロックから、アラビックな旋律を乗せたナンバー、
軽快なアンサンブルにシンフォプログレ的な叙情性が同居したナンバーなど、オールインストながら多様な味わいで
9分、11分という大曲も優雅な演奏で楽しめる。同郷の先輩、KINGSTON WALLなどに通じるセンスを感じさせる好作。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・8 総合・7.5
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HAGEN 「CORRIDORS OF TIME」
スウェーデンのフォークロック、ハゲンの1999年作
KAIPAのシンセ奏者、ハンス・ルンディンが参加、1曲目からからKAIPAの3rd「SOLO」からのカヴァーで、
美麗なシンセにフルートを重ねたゆったりとした叙情に包まれる。2曲目からはからはぐっとメタリックな感触になり、
美しいキーボードをバック疾走しつつ、北欧らしい土着的なメロディをたっぷり含みながら、
メタル的なヘヴィさとフォークメロディが一体になった優雅なサウンドを展開する。
これはSKYCLADの北欧版…いやむしろこちらの方が完成度は高いかもしれない。
フォーキーメタル好き、北欧の土着メロ好きにはぜひとも聴いてほしい作品だ。オフィシャルページで試聴できます
メロディアス度・・8フォーキー度・・9 北欧度・・10 総合・・8
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Haikara
フィンランドのプログレバンド、ハイカラの1972年作
サックスやトランペットなどの管楽器をメインにしたアンサンブルに母国語のヴォーカル、
民族的な土着性にユーモラスでとぼけた味わいを含んだ聴き心地はサムラにも通じるが、
こちらはオルガン入りの70年代ブリティッシュロック的な味わいも残している。
しっとりとしたフルートやチェロの音色も含みつつ、北欧の哀愁をただよわせたメロディが特徴的で、
10分を超える大曲も、むしろユルめのフリーな感触とともに構築されてゆく。70年代の北欧ロックとしては
とても個性派の作品だろう。傑作とされる2ndよりもプログレ風味ではこちらが強いと思われる。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 北欧度・・8 総合・・8
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HAIKARA「GEAFAR」
フィンランドのプログレバンド、ハイカラの2nd。1974作
本作のサウンドは、ジャズ、シンフォニック、ブルース、アヴァンギャルド、と色々な要素をもった
一筋縄では行かないもので、この年代の北欧プログレとしてはとても個性的な音といえる。
出色の出来の大曲を含むが、それ以外の楽曲にはむしろ、フリーキーでとぼけた要素が多く、
一般のプログレリスナーの耳からすると、アルバム全体としてはやや散漫な印象を受けるかもしれない。
メロディアス度・・7 プログレ度・・7 とぼけたセンス度・・8 総合・・7.5
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hallas 「EXCERPTS FROM A FUTURE PAST」
スウェーデンのヴィンテージハード、ハラスの2017年作
歪ませすぎないツインギターにオルガンを含むシンセ、朗々としたヴォーカルを乗せて、
URIAH HEEPなどにも通じる、70年代風味を受け継ぐヴィンテージロックを聴かせる。
全体的にハードな感触は少なく、随所に北欧的な涼やかな空気感も匂わせるあたりは、
BLACK BONZOなども思わせる。6~7分前後の長めの楽曲がメインなのもプログレ寄りで
ミステリアスな叙情性とサイケ風味のやわらかな牧歌性が合わさった耳心地で楽しめる。
ドラマティック度・7 ヒープ度・8 ヴィンテージ度・9 総合・8
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hallas 「Conundrum」
スウェーデンのヴィンテージハード、ハラスの2020年作
2作目となる本作も、ハード過ぎないツインギターにオルガンなどのシンセとマイルドなヴォーカルで
アナログ感たっぷりのヴィンテージロックを聴かせる。いくぶんサイケがかったユルめの叙情性に、
URIAH HEEPルーツのブリティッシュハードの匂いも合わさった作風で、どこかなつかしい聴き心地。
後半は7~8分前後の長めの曲をメインに、メロウなギターにシンセを重ねた、北欧プログレ的でもある
優美な叙情も覗かせる。これというインパクトはないのだが、心地よいオールドロックに浸れます。
ドラマティック度・7 ヒープ度・8 ヴィンテージ度・9 総合・8
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Hans Lundin 「House」
スウェーデンのシンセ奏者、ハンス・ルンディンの1989年作
KAIPAのメンバーとしても知られるキーボーディストで、本作はソロとしては3作目のアルバム。
やわらかなシンセワークをメインにした優美なサウンドで、キャッチーなシンセのメロディとともに、
ドラムが入るのでわりとロック色も感じさせる。80年代らしいAOR風味のビート感も覗かせつつ、
ロイネ・ストルトがゲスト参加して甘美なギターを聴かせるナンバーや、13分という大曲もあったり、
なかなかバラエティに富んでいる。メロディのフックがしっかりあるので、自己満足的なところはなく、
ほぼオールインストであるがとても聴きやすい。KAIPAとはまた違うシンセが楽しめる好作品です。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 優美度・・8 総合・・8
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HANSSON & KARLSSON
スウェーデンの鍵盤奏者、ボ・ハンソンとドラムのジャン・カールソンによるユニット。
1967年のデビュー作から全曲に、69年作「Man at the Moon」の前半を収録したベストアルバム。
1967年といえば、英国ではPROCOL HARUMやNICEがデビューした年であるが、
北欧の地にもそれに引けをとらないオルガンロックをやっている連中がいたのであった。
のちにソロ活動で有名になる、ボ・ハンソンの奏でるクラシカルなオルガンを中心に、
ロックやジャズの質感を含んだ作風は、ナイスを思わせる質の高いもので、
優雅さと北欧らしいメロウな聴き心地が楽しめる。オルガンロック好きならばたまらないだろう。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 オルガン度・・9 総合・・8
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Hasse Frberg & Musical Compation「Future Past」
The Flower Kingsのハッセ・フレベリのソロプロジェクト。2011年作
TFKにおいても、ロイネ・ストルトと並ぶフロントマンであるから、本作のサウンドも当然のように、
随所にフラキン風味を感じさせる、メロディックなギタープレイとキャッチーな歌メロを中心に、
そこに古き良きハードポップ/ロック要素も付加した作風。オルガンを含むヴィンテージな感触と
シンフォニックなシンセアレンジ、しっとりと叙情的なパートも含みつつ、
10分台の大曲も4曲もあり、全体的にもフラキンクラスの力作というべき仕上がりだ。
メロディアス度・・8 シンフォニック度・・8 フラキン風味度・・8 総合・・8
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Hasse Froberg & Music Companion 「Powerplay」
The Flower Kingsのハッセ・フレベリのソロプロジェクト。2012年作
前作もそうだったように、本作もハッセの歌声を中心にフラキンをハードにしたような作風で、
オルガンが鳴り響く古き良きプログレ/ロックの感触と、大曲を含んだ展開力で聴かせる。
キャッチーなメロディラインはやはりフラキン的なので、これという新鮮さはないのだが、
むしろシンプルな曲での爽快な聴き心地が魅力的かもしれない。フラキンファンはもちろん、
メロディックな北欧プログレハードとしても普通に楽しめる高品質な作品です。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 フラキン度・・8 総合・・8
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Hasse Froberg & Musical Companion「HFMC」
スウェーデンのミュージシャン、ハッセ・フレベリによるユニットの2015年作
The Flower Kingsのギター&ヴォーカルとして知られるミュージシャンで、
前作はプログレハード風味の好作だったが、3作目となる本作も適度にハードなギターと
オルガンを含むシンセアレンジに枯れた味わいのヴォーカルを乗せたサウンドで、
古き良きプログレハードの感触を描きつつ、今作ではよりTFKに接近したような
キャッチーで優雅なシンフォニックロック風味も強まっている。10分を超える大曲では、
プログレらしいドラマティックな展開力とともに、じっくりとメロウな叙情を描いてゆく。
フラキン好きはもちろん、新たにハッセ・フレベリの音楽を知る方にもお薦めの力作だ。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 TFK度・・8 総合・・8
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Hidden Lands 「Lycksalighetens O」
前作はかつてのKAIPAをテクニカルにしたようななかなかの好作であったが、本作も軽妙なアンサンブルと
北欧らしい涼やかな叙情性で聴かせる高品質なサウンド。存在感あるベースワークを軸に、
美しいシンセアレンジ、マイルドなヴォーカルを乗せて、前身のViolent Silenceにも通じる軽やかなアンサンブルで、
古き良きプログレ性を現代的な構築美の中に巧みに溶け込ませている。一方ではじっくりと聴かせる
叙情的なヴォーカルパートもあって、10分を超える大曲を耳心地よく描くところは、ポストプログレ的でもある。
前作のような土着的な雰囲気は薄まったが、よりマイルドに洗練された好作品だ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 叙情度・・8 総合・・8
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Hidden Lands 「Halcyon」
スウェーデンのプログレバンド、ヒドゥン・ランズの2016年作
VIOLENT SILENCEから分派したバンドの3作目で、テクニカルなアンサンブルと、
やわらかなシンセアレンジにマイルドなヴォーカルを乗せた、軽妙なプログレサウンド。
古き良きヴィンテージ感とポストプログレ風味の繊細さが融合し、カンタベリー的でもある優雅な耳心地で、
10分を超える大曲なども、適度にスリリングでミステリアスな感触を含ませながらじっくりと構築される。
シンセ兼任のギター奏者も、随所に味のあるフレーズやハード寄りのプレイでインストパートを彩っていて、
決してシンフォすぎたり濃密にならないクールな部分が、ある意味ではとてもモダンで、
テクニカルなポストプログレとしても楽しめるところもある。センスの良さが魅力のバンドです。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 優雅度・・8 総合・・8
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HIIDENSOINTI
フィンランドのプログレバンド、ヒデンソインティの2010年作
オルガンを含むシンセにメロウなギターを重ね、女性ヴォーカルの歌声を乗せた、
北欧らしい牧歌的な土着性を感じさせる、軽妙で優雅なサウンドを聴かせる。
母国語の女性Voがトラッド的な空気もかもしだしつつ、あくまで軽やかなアンサンブルは
ときにジャズロック的でもあり、オルガンやメロトロン、フルートなどの、ヴィンテージなアナログ感に、
ブルージーなギターのフレーズなどもなかなか魅力的。アコースティックなパートも含んだやわらかな土着メロディは、
素朴でありながら幻想的な聴き心地だ。いかにも北欧らしい空気に浸れる優雅な逸品です。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 北欧度・・9 総合・・8
HIIDENSOINTI 「Ovia Ja Aikoja」
フィンランドのプログレバンド、ヒデンソインティの2013年作
2作目の本作は、わりとハードなギターにオルガンやフィドルの音色を重ねた、厚みのあるアンサンブルに、
フィンランド語の女性ヴォーカルを乗せたサウンドで、プログレらしい展開力とミステリアスな空気感も覗かせる。
楽曲は3~5分前後とコンパクトで、全体的にも前作に比べていくぶんスタイリッシュになった感じはあるが、
ジャズロック的でもある優雅な感触とともに、ギターの奏でる土着的な旋律などは随所に残している。
幻想的なまでの北欧感は薄まったが、コケティッシュな女性声プログレとして楽しめる好作品。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 北欧度・・8 総合・・8
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Hidria Spacefolk 「Symbiosis」
フィンランドのサイケロック、ハイドリア・スペースフォークの2002年作
2001年にデビューし、2作目となる。アコースティックを含むギターの、オリエンタルな旋律に、
シンセアレンジを差ね、OZRIC TENTACLESにも通じるスペイシーなサイケロックを聴かせる。
オルガンを含むシンセワークやフルートも鳴り響いて、プログレ寄りの感触もわりと強めなので、
オールインストながら、カラフルなサウンドとほどよくアッパーなノリの良さで楽しめる。ラストは11分の大曲で、
これぞスペーストロックという味わいだ。オズテン系サイケロックが好きな方はチェックすべし。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 サイケ度・8 総合・8
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Hidria Spacefolk「Balansia」
フィンランドのサイケロック、ハイドリア・スペースフォークの2004年作
フリーキーなギターにスペイシーなシンセを重ねた、アッパーなノリのサイケロック。
グルーヴィなアンサンブルや、叙情的なフレーズを巧みに奏でるギターとともに、
OZRIC TENTACLESをややハードした感触もあり、よりロック的な勢いで楽しめる。
優美なシンセアレンジも随所に引き立っていて、オズテンほどエレクトロ寄りでないので、
いわば、北欧シンフォニック・サイケ的な聴き方もできる。ラストには14分という大曲もあり、
パーカッションのリズムも入った民族的な怪しさから、スリリングなアヴァン・サイケを展開する。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 サイケ度・8 総合・8
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Hidria Spacefolk 「Astronautica」
フィンランドのサイケロック、ハイドリア・スペースフォークの2012年作
2001年にデビューし、本作は5作目となる。本作もジャケからして怪しい香りがぷんぷんであるが、
キレ味のよいリズムにスペイシーなシンセを乗せた、OZRIC TENTACLESを思わせるサウンドは健在。
オールインストながらも厚みのあるアンサンブルで、初期に比べるとより硬質なハードさも感じさせつつ
巧みなギターのフレーズやきらびやかなシンセとともに、スケール感のあるスペース・サイケロックを聴かせる。
全5曲で45分という大曲志向で、わりとストレートなノリのリズムを軸にしながら、10分を超える大曲では、
メロウなギターと優美なシンセでプログレらしい叙情的な構築力も覗かせる。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 サイケ度・8 総合・8
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HILLS 「Master Sleeps」
スウェーデンのサイケロック、ヒルズの2011年作
いかにもサイケです!というようなヨレ気味のギターを乗せた、初期GONGのようなトリップ気味のサウンド。
ときおりエフェクトのかかった詠唱じみた歌声が遠くで聞こえてくる意外はほぼオールインストで、
ユルめの浮遊感に包まれながらも、なかなかパワフルなドラムとギターがそこそこ音圧をかもしだしているので
眠くなるというほどでもないのだが、これといった盛り上がりがないので、やはりぼんやりとトリップするしかない。
中近東的な音階が出てくると、同郷のIn the Labyrinthあたりを思わせたりもするが、幻想的な深みではあちらが上か。
ノリの良い曲はむしろオズテンっぽいのだが、やはりあそこまでアッパーではないので、いくぶん中途半端な印象。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 サイケです!度・・8 総合・・7.5
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HIMMELLEGEME 「Myth of Earth」
ノルウェーのポストプログレ、ヒメレジェムの2017年作
二本のギターにうっすらとしたシンセを重ね、マイルドヴォーカルを乗せた繊細な叙情で、
スペイシーな空間性を描くようなサウンド。ツインギターの重ねはときにメタリックな重厚さもあって、
北欧らしい涼やかな感触とミステリアスな空気感が、モダンな味わいになっているところが個性的。
歌もの的なパートでも、PINK FLOYDのような浮遊感に包まれていて、なかなか幻想的な聴き心地。
ラストは10分の大曲で、メロウなギターを乗せた繊細な美しさと、ランドスケープ的なスケール感も描き出す。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 スペイシー度・・8 総合・・7.5
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Himmellegeme 「Variola Vera」
ノルウェーのプログレバンド、ハイメレジェーメの2021年作
2017年にデビューし、2作目となる。叙情的なギターに優美なシンセを重ね、
マイルドなヴォーカルを乗せた、涼やかでモダンな感触のポストプログレサウンド。
北欧らしい翳りやサイケ風味に加えて、本作では、わりとポップな感じのナンバーもあり、
とらえどころがない作風であるが、ゆったりとしたメロウな部分はPINK FLOYD風だったりする。
7曲目あたりのシンフォプログレ寄りの泣きの叙情はよろしく、このあたりを伸ばしてもらいたい。
楽曲は3~5分前後と、わりとあっさりしているので、もう少し濃密な大曲があってもよいような。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 北欧度・8 総合・7.5
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HOLLOW EARTH 「Out of Atlantis」
スウェーデンのプログレバンド、ホロウ・アースの2017年作
ギター、ベース、ドラムのシンプルな構成に、オルガンの音色を乗せたヴィンテージなスタイルで、
いくぶんサイケロック寄りの浮遊感に、北欧的な涼やかさが合わさったという聴き心地。
ときおりヴォーカルも入るが、どちらかというとインストパートがメイン、シンセやギターが奏でる
メロディにはさほどフックがないので、全体的にぼんやりとした印象になっているのは確信犯的か。
16分を超える組曲は、アコースティックギターにオルガンが絡む妖しい空気から、メロトロンも鳴り響き、
マイルドなヴォーカルとともに、物悲しい叙情を描き出す。濃密すぎない北欧ヴィンテージプログレ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 ヴィンテージ度・・8 総合・・8
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HOLON 「The Time Is Always Now」
ノルウェーのミュージシャン、ロニー・ペデルソンによるソロプロジェクト、ホロンの2016年作
涼やかなシンセアレンジにギターリフを重ね、北欧らしい物悲しい叙情を描く、優美なサウンドで、
随所にマイルドなヴォーカルも加わる。Rhys Marshが全面参加する他、Wobblerのシンセ、Vo、フルート奏者、
女性シンガーのSilje Leirvikなどが参加。やわらかな男女ヴォーカルを乗せたポストプログレ的な繊細さと、
メロウなギターにメロトロンが重なる、White Willowなどにも通じる北欧シンフォ系の味わいも覗かせる。
10分前後の大曲も多く、全体的にゆったりとした味わいながら、北欧らしい涼やかな空気感に包まれて、
曲によってはプログレらしい展開力も現れる。ギタリストとしての自身のセンスも遺憾なく発揮された力作だ。
ドラマティック度・・8 優美度・・8 北欧度・・9 総合・・8
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Holy River Family Band 「Welcome to Riverhouse」
スウェーデンのサイケロック、ホーリー・リバー・ファミリー・バンドの1998年作
The Spacious Mindのメンバーによる別ユニットのようで、本作はCD2枚組の大作。
シタールやタブラなど、中近東的なフレイヴァーをたっぷりと含んだユル系のサイケと
オルガンを含むシンセアレンジが合わさり、浮遊感のあるミステリアスなサウンドを描いている。
ヴァイオリンやブズーキ、ハーディ・ガーディなど北欧トラッドの音色も顔を覗かせ、
やわらかにリコーダーが鳴らされる牧歌的な聴き心地とともに、ゆったりと楽しめる作風だ。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 サイケ度・・8 総合・・8
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HOLY RIVER FAMILY BAND 「EARTHQUAKE COUNTRY」
スウェーデンのサイケロック、ホーリー・リヴァー・ファミリー・バンドの2001年作
1996年にデビュー、本作は3作目。アコースティックギターにうっすらとしたシンセを重ね、
ジェントルなヴォーカルを乗せて、涼やかな土着性を含んだ北欧サイケロックを聴かせる。
ときに北欧フォークを思わせる素朴な味わいとともに、のちのDUNGENにもつながる、
繊細な叙情とロハスなユルさが同居していて、ゆったりとまどろむように鑑賞できる。
女性声を加えた妖しいアシッドフォーク風のナンバーから、パーカッションが鳴り響き、
東洋的なギターの旋律を乗せた、いかにもサイケらしい神秘的な大曲まで、全76分の力作です。
サイケ度・・7 プログレ度・・6 牧歌的度・・8 総合・・8
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HOYRY-KONE 「Hyoenteisiae Voi Rakastaa」
フィンランドのチェンバーロックバンド、ホイリーコーンの1995年作
ロックビートの上に、詠唱のような怪しげなヴォーカルを乗せ、シアトリカルでアヴァンギャルドな雰囲気をかもしだす異色のサウンド。
ヴァイオリンやチェロ、オーボエなどの音色が室内楽的に合わさりつつ、シリアスを装った中に冗談めいたシニカルな表情を覗かせる。
一方ではフィンランド語の歌声とともに哀愁を感じさせる叙情もあったりして、一筋繩ではいかない。
日本盤タイトルは「昆虫偏愛」。2作目の「偽理髪師」はさらに素晴らしきヘンタイまくりの傑作ですから。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 ヘンタイ度・・9 総合・・7.5
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HOYRY-KONE「HUONO PARTURI」
フィンランドのチェンバーロックバンド、ホイリーコーンの2nd。1997年作
のっけからいきなりグレゴリアンチャントみたく始まったかと思えば、続いてへヴィでノイジーな変拍子曲。
どの曲も途中から奇妙な展開をみせ、全体の音像としては非常にシリアスなのだが、
ねじくれた楽曲がこれがギャグであることを物語る。つまり大マジに変態をやったらこうなる、と。
しかし、ただの変なひと、ではなく「スーツを着た論理口調のインテリがキレたとき」、のような(笑)
抜群のテクニックと異常なセンスで聴かせる傑作。日本盤のタイトルは「偽理髪師」(なんなのコレ?)
ちなみに、後のALAMAAILMAN VASARATの前身となるバンドでもある。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・8 変態度・・10 総合・・8
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I
Infringement 「Transition」
ノルウェーのプログレバンド、インフリンジェメントの2017年作
叙情的なギターにシンセを重ね、エモーショナルなヴォーカルを乗せたスタイリッシュなサウンドを聴かせる。
同郷のAirbagなどに通じる翳りを帯びた叙情と、オルガンやメロトロンなどのヴィンテージな感触が同居し、クールな空気感はやはり北欧的だ。
モダンなオルタナ・シンフォというような涼やかな耳心地の一方では、どこかなつかしい土着的な雰囲気もあって、いくぶん唐突な展開などにマイナーな味わいも覗かせる。
楽曲ごとの盛り上がりという点ではやや物足りないが、女性声を加えての10分近い大曲など、クールで知的な新時代の北欧プログレを構築する好作である。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 叙情度・7 総合・7.5
Infringement 「Alienism」
ノルウェーのプログレバンド、インフリンジェメントの2019年作
2作目となる本作も、オルガンを含むシンセをメロウなギターに重ね、味わいのあるヴォーカルとともに、涼やかなシンフォプログレを聴かせる。
叙情的ではあるが決してキャッチーになり過ぎない、どこか醒めたような冷たさを感じさせる点では、モダンなオルタナ感ともいえるだろう。
今作では、10分以上の大曲においての、泣きのギターフレーズでじわじわと盛り上げるところは、シンフォニックロックとしての味わいを強めている。
ラストの16分の大曲も、美麗なシンセワークとギターの重ねで、北欧らしい叙情性を描いており、より優雅な聴き心地の作品に仕上がっている。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 叙情度・8 総合・8
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In The Labyrinth「THE GARDEN OF MYSTERIES」
スウェーデンの民族サイケロックバンド、イン・ザ・ラビリンスの1st。1996作
フルートに絡むアコースティックギター、マンドリンの音色が牧歌的な味わいをかもしだし、
異国的なパーカッションの響きとともに、不思議な静謐感を生み出している。
美しいピアノ、メロトロンなどがシンフォニックな質感も加えており、
連なるような22曲の小曲がミスティックでファンタジックな世界観をなしている。
「カナーンからの逃亡」、「ミノタウロスの瞑想」といった曲タイトルも想像力をそそる。
中近東的な要素を北欧の冷気と薄暗い叙情で包み込んだ作品だ。
意外とシンフォ度・・8 中近東度・・7 静寂サイケ度・・8 総合・・8
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In The Labyrinth「Walking on Clouds」
スウェーデンの民族サイケロックバンド、イン・ザ・ラビリンスの2nd。1999年作
うっすらとしたシンセをバックに、異国的なシタールの音色が鳴り響き、
タブラのリズムにアコースティックギター、マンドリン、フルートなどが乗る。
中近東的雰囲気をかもしだすサイケロックでありつつ、どこか北欧的な叙情も垣間見える。
やはりメロトロンを含めシンセの使用が空間的なスケール感を生み出していて、
ヴァイオリンやギターフレーズとの絡みでシンフォニックに聴ける部分もしばしば。
これならサイケが苦手な人にも中近東シンフォニックサイケ北欧風という感じで楽しめるだろう。
意外とシンフォ度・・8 中近東度・・8 サイケ度・・8 総合・・8
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In The Labyrinth 「Dryad」
スウェーデンの民族サイケロックバンド、イン・ザ・ラビリンスの3rd。2002年作
今作は舞台を中近東から深い森の中に移し、このジャケのようにミスティックな雰囲気になっている。
夜を思わせるシタール、マンドリン、アコギの繊細な響きと、フルート、ヴァイオリンの音色、
そこにかぶさるゆるやかなメロトロンがどこか魔術的な妖しさをかもしだしている。
ヴォーカルの歌メロもぐっと素朴になって、普通に牧歌系のプログレとして聴ける。
雰囲気ものとしては前作以上に気に入った。オフィシャルサイトで試聴可
シンフォニック度・・8 薄暗度・・8 サイケ度・・8 総合・・8
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INTROITUS「Elements」
スウェーデンのシンフォニックロック、イントロイタスの2011年作
Genesisルーツのキャッチーな好作であった前作に続き、2作目となる本作はいきなり14分の大曲で幕を開ける。
きらびやかなシンセアレンジと適度にハードなギターワーク、女性ヴォーカルの歌声で聴かせる、
正統派のシンフォニックロックサウンドで、やわらかなフルートの音色など、繊細な叙情も美しい。
ハケットばりのメロウなギターフレーズと、いくぶんあか抜けない展開力も含めて、シンフォ好きはにんまりだろう。
スリリングな要素や新鮮味は薄く、大曲ではいくぶんの長尺感もあるのだが、泣きのギターメロですべて許してしまいたくもなる。
全体的に安心して楽しめる力作なのは確か。どうでもいいが、ジャケの目玉オヤジがなにを意味しているのかは不明。
シンフォニック度・・8 ドラマティック度・・7 女性Vo度・・7 総合・・7.5
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INTROITUS 「Anima」
スウェーデンのシンフォニックロック、イントロイタスの2014年作
ベンダー夫妻と息子を含む、ファミリー型プログレバンドの3作目で、よほどシンフォ好きの一家なのだろう、
本作も、いかにもプログレ的な派手やかなシンセワークとともに、女性ヴォーカルの歌声を乗せて、
10分を超える大曲を中心に優美なシンフォニックロックを展開。MAGENTAあたりを思わせるキャッチーなテイストと
Genesisルーツのメロウなギターが合わさって、濃密でありながらも爽やかな聴き心地に磨きがかかっている。
楽曲アレンジと展開力という点でも、これまで以上にフックに富んだ聴き心地で、作品としてのレベルが上がった印象だ。
ドラマティック性と繊細な美意識が溶けあった力作に仕上がっている。
シンフォニック度・・8 ドラマティック度・・8 女性Vo度・・7 総合・・8
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Introitus 「Shadows」
スウェーデンのシンフォニックロック、イントロイタスの2019年作
ベンダー夫妻と息子を含む、いわばファミリー型プログレバンド。2007年にデビューし、本作は4作目となる。
きらびやかなシンセワークにメロウなギターを重ね、女性ヴォーカルで聴かせる優美なシンフォニックロック。
今作はジャケのイメージのように薄暗い叙情性も感じさせつつ、オルガンを含むヴィンテージな味わいに、
優雅でキャッチーな展開力とともに、MAGENTAやMOSTLY AUTUMNなどにも通じる感触で楽しめる。
10分を超える大曲も、美しいピアノやフルートによる繊細な叙情パートなど、しっとりとウェットな感触も覗かせて
じっくりと構築してゆく。新鮮味はさほどないが、女性声の正統派シンフォプログレが好きな方はぜひ。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 優美度・・8 総合・・8
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Iron Duke 「First Salvo」
デンマークのプログレバンド、アイアン・デュークの1974年作
ジャーマンメタルのプロデューサーとしての顔も持つ、トミー・ハンセンが在籍したバンドの1作目。
オルガンやムーグなどのきらびやかなシンセに叙情的なギターを重ね、優雅なフルートも鳴り響く、
PFMのような軽妙なナンバーで幕を開け、マイルドなヴォーカルも加わって、北欧らしいシンフォプログレを展開する。
YESルーツのキャッチーな味わいを涼やかに仕立て上げたという感触もあり、ときにクラシックのメロディも覗かせつつ、
ラストは15分の大曲で、展開力あるインストパートと叙情的な歌パートで、見事な構築力で描かれる。年代を考えれば、
北欧プログレの代表格、DiceやKAIPAなどにも引けを取らない内容だ。バンドは、1977年に2作目を出して消える。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 北欧度・9 総合・8
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ISILDURS BANE「Sagan Om Den Irlandska Algen/Sagan Om Ringen」
スウェーデンのシンフォニックロックバンド、イシルドゥルス・バーネの1st/4th。
1984年の1stと1988年の4thのカップリング盤。今でこそ北欧随一の知性派バンドとして
知られる彼らだが、初期の作品においては、よりファンタジックで繊細なサウンドを描いていた。
北欧神話をテーマにした1stは、美麗なピアノから、CAMELばりのメロディックなギター、
フルートの音色で聴かせる、じつに美しいインスト作品。素朴な暖かみと北欧的な爽やかさにうっとり。
4thは「指輪物語」をテーマに、シンフォニックな構築性を増した傑作。涼やかな叙情メロディがたまらない。
一方では、テクニカルなリズムを取り入れるなど後の作風の萌芽もかいま見える。初期の最高傑作。
シンフォニック度・・8 繊細度・・9 北欧度・・9 総合・・8
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ISILDURS BANE「Sea Reflections/Eight Moments of Eternity」
スウェーデンのシンフォニックロックバンド、イシルドゥルス・バーネの2nd/3rd。1992年作
1985年の2ndと1987年の3rdのカップリング盤で、これまでになくサックスやトランペットなど
管楽器を取り入れた軽やかな作風。シンフォニック・ジャズロックとでもいうのか、
繊細な北欧らしさとともに、それを楽しげに聴かせるサウンドだ。テクニックある演奏と、
楽曲の構築力は80年代の北欧のバンドの中では最高レベルといってよいだろう。
3rdではよりスタイリッシュな作風になり、メロディックなギターとフルートが軽やかに合わさり
日本のKENSOなどを思わせるようなプログレッシブ・フュージョン風味とクラシカルな優雅さが同居している。
シンフォニック度・・7 軽快度・・8 北欧度・・8 総合・・8
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Isildurs Bane 「Sagen Om Ringen/指輪物語」
スウェーデンのプログレバンド、イシルドゥルス・バーネの1988/2021年作
1981年のカセット音源を1988年に編集し直したという4作目で、2021年にリマスター、紙ジャケで日本盤がリリースされた。
最初のCD化の際には、1作目「Sagan Om Den Irlandska Algen」とカップリングで収録されていたが、今回はオリジナル版のジャケでの単体の再発。
うっすらとしたシンセとメロウなギターのイントロから、北欧らしい涼やかな幻想性に包まれて、CAMELを思わせる甘美なギターのトーンとともに、優雅なシンフォニックロックを展開する。
やわらかなフルートやアコースティックギターをセンス良く挿入し、1~4分前後の小曲を主体に、母国語のマイルドなヴォーカルとともに、北欧の土着性を含んだ美しく精細なサウンドが味わえる。
優美度・9 プログレ度・7 北欧度・10 総合・8
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ISILDURS BANE 「Cheval」
スウェーデンのシンフォニックロックバンド、イシルドゥルス・バーネの5th。1989年作
フェルディナンド・シェヴァルという一人の郵便配達員が長い年月をかけて独力で建設したという、
実在する芸術的建築物をテーマにしたコンセプト作。初期はいかにも北欧らしい繊細なシンフォニックロックだったが、
3rdあたりから管楽器を取り入れるなど、クラシカルなアプローチを加えだし、
本作においては、そうしたチェンバーロック的なシリアスさが前に出した傑作を作り上げた。
昨今のバンドのようにシンセに頼ることなく、オーケストラパートのように管弦楽を巧みに使い、
シンフォニックに構築してゆくサウンドは、静と動のメリハリとともにクラシカルな優雅さを漂わせる。
クラシカル度・・9 シンフォニック度・・8 優雅度・・9 総合・・8.5
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ISILDURS BANE 「The Voyage」
スウェーデンのシンフォニックロックバンド、イシルドゥルス・バーネの6th。1992年作
前作のチェンバーロック風味をさらに強化させ、いっそうの緊張感溢れる構成力でたたみかける。
鳴り響くヴァイオリンの音色に、クラシカルなピアノが重なり、シンフォニーのように優雅でありながらも
現代音楽的な硬質さを併せ持ったサウンドは、凡百のバンドにも真似のできないほどの強度がある。
旅をテーマにした幻想的なコンセプト作で、オールインストながら楽曲のドラマティックさは
90年代初頭のバンドの中でも際立っていた。このクラシカル路線は本作でやり尽くしたということか、
次作「Mind vol.1」からはバンドとしての新たな深化が始まる。底知れぬポテンシャルを秘めたバンドである。
クラシカル度・・9 シンフォニック度・・8 シリアス度・・9 総合・・8.5
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ISILDURS BANE「MIND Volume 1」
スウェーデンのシンフォニックロックバンド、イシルドゥルス・バーネの7th。1997年作
1989年のアルバム 「Cheval」から、よりシリアスでクラシカルなアプローチにシフトしてきたバンドが、
本作においてさらなる一歩を踏み出したというべき力作。ヴァイオリンやチェロにトランペット、トロンボーン、
ホルン、オーボエ、フルートといった楽器による室内楽的な優雅さと、テクニカルな構築性が一体となり、
じつに高度なアンサンブルを形成、そして楽曲の向こうにシリアスで壮大なビジョンがかいま見える。
まさしく新時代の北欧シンフォニック、そして新たなプログレの形を提示してみせた傑作です。
クラシカル度・・8 シンフォニック度・・8 壮大度・・9 総合・・8.5
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ISILDURS BANE「Mind Vol 2 Live」
北欧プログレの雄、イシルドゥルス・バーネのライブアルバム。2001年作
70年代から活動しているこのバンドだが、その音楽性はアルバムを重ねるごとに、どんどん細密化、そして深化を続けている。
今作は、CD2枚組のライブで、圧倒的高密度の楽曲群で音楽の芸術を冷徹に表現してゆく様は、まさに圧巻のひと言である。
オールインストの演奏ながらも、それを感じさせぬ生きた楽曲の数々に改めて感嘆し、そして圧倒されることしきり。
「シリアスかつアカデミックな北欧シンフォ」という呼び方はすでにこのバンドの代名詞であるだろう。
オーケストラ的な室内楽も導入しており、重厚にして緻密なサウンド…もはや全てが孤高の域に入った芸術音楽だ。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・9 北欧芸術度・・10 総合・・8.5
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ISILDURS BANE「MIND Vol.4:PASS」
スウェーデンのプログレバンド、イシルドゥルス・バーネの2003年作
「MIND」シリーズの第4弾で、今回はスタジオ作として「vol.1」以来の純粋なバンド作となる。
のっけからなにやらアンビエントな女性ヴォーカルの歌声から始まって、これまでのチェンバー路線とのギャップに驚くが、
歌パート以外のサウンドには彼ららしい独自の硬質性と、シリアス系シンフォとしての構築センスさが感じられる。
ヴァイオリンが鳴り響き、ギターとの絡みでのスリリングかつクラシカルな優雅さを描きつつ、
男性ヴォーカルが入った、キャッチーな歌もの感というのはバンドとしての新たなオプションだろう。
全体としてやはり歌入りのおかげでここ数作の中では最も聴きやすい作品になっていると言ってよい。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 クールな構築度・・8 総合・・8
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ISILDURS BANE「MIND vol.5」
スウェーデンのプログレッシブロックバンド、イシルドゥルス・バーネのライブDVD。2005年作
80年代から活動を続け、クオリティの高いアルバムを作り続けてきたこのバンド。
彼らの一大コンセブトとなった「MIND」シリーズ。その映像作品がついに見られるときがきた。
個人的には「MIND vol.4」はあまりぴんとこなかったのだが、ライブ演奏で見るとまた感触が違う。
まずイントロから音楽と映像とが一体化した、まるで映画のような演出で引き込まれる。
メンバーは女性チェリスト、男女Voを含む8人組(女性Voはギターも弾く)。キーボードはテレミンも使い、
ドラムの他にパーカッションもいて音が厚い。重厚な演奏には北欧らしいクールさと硬質感をただよわせつつ
男Voと女性2人(チェロとギター)が歌を重ねる部分ではしっとりとした温かみもある。
曲間に挿入される映像はツアードキュメンタリーにもなっているのだが、この緻密になされた映像のコラージュが、
非常にプログレッシブで、場面場面に何かの意味を想像させるような、ただならぬアートなセンスを感じる。
途中、別ライブでの「THE VOYAGE」の楽曲も披露。歌なしの5人編成ながらこれぞ北欧のシリアスシンフォという、
たたみかける見事な演奏で、見どころのひとつ。こうしてみると、彼らはバンドというよりも、ビジョンを映し出す音楽集団という趣があり、
非常に知的で緊張感のあるサウンドを構築しながら、これからも前進を続けてゆくに違いない。
最後のクレジットにいたるまで、作品としての作り込みが感じられる必見のDVD作品。
シンフォニック度・・8 ライブ演奏・・8 作品映像・・9 総合・・8.5
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Isildurs Bane「Off The Radar」
スウェーデンのプログレバンド、イシルドゥルス・バーネの2017年作
1984年にデビュー、初期の優雅なシンフォニック路線から、チェンバーロック色を取り入れながら独自に深化をとげ、
孤高の北欧プログレ作品を構築してきたこのバンド、2005年以降はぷっつりと音沙汰がなかったが、
2016年にMarillionのスティーヴ・ホガースとの共演作を発表、それに続く純粋なバンド名義のアルバムである。
艶やかなストリングスにシンセが重なり、軽やかなマリンバの音色など、チェンバー・ジャズロック的なサウンドを、
モダンなアレンジで包み込んだという作風で、空間的なスケール感を構築するこのバンドらしい聴き心地である。
エレクトロなシンセの重ねは、フィンランドのXLなどにも通じる感触で、ほどよく実験的でありつつ
モダンなシンフォニック性とアカデミックな重厚さが同居している。新たなイシルドゥルスの深化の始まりだ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 チェンバー&エレクトロ度・・8 総合・・8
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ISILDURS BANE & STEVE HOGARTH「COLOURS NOT FOUND IN NATURE」
スウェーデンのプログレバンド、イシルドゥルス・バーネとスティーブ・ホガースのコラボ作。2017年作
80年代から活動する北欧きっての知性派プログレバンドが、MARILLIONのシンガーを迎えてのアルバムを制作。
ホガースの表現豊かな歌声を、軽妙なアンサンブルに乗せたサウンドは、まさにイシルドゥルスとマリリオンの融合。
優雅なヴァイオリンにブラスサウンドも加わり、チェンバー系シンフォのスリリングな味わいと、繊細な歌もの感が同居して、
バンドとしての個性とヴォーカルの魅力も活かす、奇跡的な均衡をなしているのは、卓越した音楽センスというべきだろう。
ぱっと聴きにはキャッチーながら、各パートの緻密なアレンジに感心するという、玄人好みの味わいでも楽しめる。
クラシカルなピアノとストリングスをバックにホガースの歌声が響き渡る。歌ものチェンバー・シンフォというべき傑作だ。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 優雅度・・9 総合・・8.5
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Isildurs Bane & Peter Hamill 「In Amazonia」
スウェーデンのプログレバンド、イシルドゥルス・バーネとピーター・ハミルのコラボ作。2019年作
MARILLIONのスティーブ・ホガースとのコラボに続き、本作はVAN DER GRAAF GENERATORのピーター・ハミルを迎えた作品。
ハミルの味わいのあるヴォーカルと、薄暗いバンドサウンドが絶妙に合わさり、エレクトロなモダンさとインダストリアルな硬質感に、
トランペットやヴァイオリン、マリンバなどを加えた、チェンバーロック的な芸術性を感じさせる異色のプログレを展開する。
メロトロンも加えての涼やかなシンフォニック性も覗かせつつ、シアトリカルなハミルの歌声を存分に活かした世界観で、
ときに濃密にたたみかけつつ、美しき静寂の叙情も含んだアレンジの妙が光る。まさにVDGGとイシバネの融合という、異色の傑作。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 ハミル度・・9 総合・・8
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ISILDURS BANE & PETER HAMMILL 「IN DISEQUILIBRIUM」
スウェーデンのプログレバンド、イシルドゥルス・バーネとピーター・ハミルのコラボ作。2021年作
2019年作「In Amazonia」に続く2作目で、それぞれ3パート、4パートに分かれた大曲2曲という構成。
エレクトロなシンセアレンジにギターを重ね、優雅なマリンバの音色にトランペットも鳴り響き、
ピーター・ハミルの味わいのある歌声で、モダンでスタイリッシュなサウンドを描いてゆく。
ミステリアスでほどよくアヴァンギャルドというサウンドは、まさしく「VDGG+イシバネ」という感じながら、
メロトロンやムーグなどのヴィンテージなシンセや、ヴァイオリンやトランペットなども加わった、
シンフォニックなチェンバーロックとしても楽しめる。ハミルの歌声を活かした見事な逸品です。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 優雅度・8 総合・8
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It's the End
ノルウェーのフュージョン・プログレ、イッツ・ジ・エンドの2009年作
変則リズムたっぷりの軽妙なアンサンブルで聴かせる、インストのフュージョンプログレ。
ジャズロック的なエレピなどを含む鍵盤ワークが、サウンドをきらびやかに彩りつつ、
ギターは奔放なフレーズを奏でつつ、随所に適度にハードなプレイも織り込んできて、
メリハリのある展開力が面白い。緊張感とメロディックな柔軟性のバランスもよく、
ときにメタリックな感触も顔を出したりと、オールインストながらも飽きずに聴かせる力がある。
CABやPLANET Xなどのファンにも楽しめるだろう、テクニカルなフュージョンロックの好作だ。
メロディック度・・7 プログレ度・・8 テクニカル度・・8 総合・・8
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J
JEAVESTONE「Spices, Species & Poet」
フィンランドのサイケ・プログレバンド、ジェーブストーンの2008年作
フルートが鳴りながら、古き良きハードロック風味のギターにやや脱力気味のヴォーカルが絡み、
ときおりプログレらしいシンセも現れる。これは「北欧版GONG」かというようなヒッピーじみた感触であるが、
浮遊感がありながらも案外にしっかり構成させているという点では、OZRIC TENTACLESあたりにも近いか。
レトロな北欧プログレとしても楽しめるが、ぱっと聴きにはただのキャッチーなロックでもOK。
ともかく一筋縄ではいかない、ソフトな耳心地の向こうに玄人好みの奥深さがある。マイスペはこちら
メロディアス度・・8 隠れプログレ度・・9 遊び心度・・9 総合・・8.5
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Jeavestone「1+1=OK」
フィンランドのサイケ・プログレバンド、ジェーブストーンの2011年作
前作は「北欧版GONG」というようなレトロなサイケプログレの傑作だったが、
本作も70年代的なアナログ感覚に、メロディックな軽妙さを含んだセンス抜群のサウンド。
楽曲は3~5分台とコンパクトながら、うねりを効かせたギターとうっすらとしたシンセで
浮遊感のあるシンフォニック性をかもしだしつつ、そこに70年代ハードロックのフリーキーな要素と
得体のしれない妖しさを混ぜ合わせたような聴き心地であるのだが、力の抜け具合が素晴らしい。
BEARDFISHなどのリスナーにも楽しめるだろうし、ユルさを味わえる北欧プログレ風ロック作品です。
メロディック度・・8 サイケロック度・・8 北欧度・・8 総合・・8
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JEAVESTONE 「Human Games」
フィンランドのプログレバンド、ジェーブストーンの2016年作
2005年にデビュー、本作は4作目で、やわらかなピアノにマイルドなヴォーカルを乗せたイントロ曲から、
軽妙なリズムに美しいシンセを乗せ、キャッチーな味わいとともに躍動感あるアンサンブルを描き出す。
メロディックで爽快な抜けの良さは、傑作であった2ndに戻ったような聴き心地で、レトロなアナログ感と
ときにストリングスなどを加えたシンフォニックな音の厚みが、センスよく同居したサウンドが素晴らしい。
やわらかなメロディに包まれたナンバーは、MOON SAFARIあたりをサイケ寄りにしたという雰囲気もある。
4~5分前後の楽曲は、プログレを意識せずとも楽しめるシンプルなノリの良さもあって、北欧ロックとしても普通に傑作。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 優雅で軽妙度・・9 総合・・8.5
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JENS JOHANSSON 「FJADERLOSA TVAFOTINGAR」
スウェーデンのシンセ奏者、イェンス・ヨハンソンの1991年作/邦題「飛べない創造物」
ドラムにアンダース・ヨハンソン、ベースにヨナス・エルボーグというトリオ編成で、わりと激しめのドラムに
モダンな雰囲気のシンセを重ねて、ジャズロック的なスリリングな味わいのインストサウンドを聴かせる。
イェンスのシンセワークはときにギター風の音色になったり、ファンキーになったりと変幻自在。
10分を超える大曲主体に、テクニカルでありながら、ときに空間的な静寂感も含んだ作風は、イマジナリーな
プログレッシブ性を感じさせる。のちにSTRATOVARIUSに加入するイェンスのセンスが遺憾なく発揮された逸品。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 キーボー度・・8 総合・・8
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Anders Johansson,Jens Johansson, and Allan Holdsworth「Heavy Machinery」
スウェーデンのミュージシャン、アンダース&イェンスのヨハンソン兄弟とアラン・ホールズワースによる、1997年作
ドラム、シンセ、ギターというトリオ編成で、オルガンを含むシンセにメロウなギターを乗せた
優雅なプログレ・ジャズロックというサウンド。ホールズワースのギターは、奔放な技巧性とともに、
伸び伸びと叙情フレーズを奏でていて、テクニカル過ぎない楽器が、そのプレイを引き立てている。
ほどよくスリリングなアンサンブルとともに、抜群のギタープレイがやわらかな味わいになっていて、
案外ゆったりと耳心地よく楽しめる。ホールズワースのファンであれば外せない一枚といえるだろう。
ちなみに、ヨハンソン兄弟による次作「Last Viking」は、ネオクラシカルなメタル路線の傑作となる。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 優雅度・・9 総合・・8
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Jonas Lindberg & The Other Side 「Pathfinder」
スウェーデンのミュージシャン、ヨナス・リンドバーグによるプロジェクト。2016年作
ほどよくハードなギターにシンセを重ね、マイルドなヴォーカルとともにキャッチーなサウンドを描く、
古き良きプログレハード風味の聴き心地。優美なシンセワークと流麗なギターを乗せた軽やかなアンサンブルと
爽快で優雅なメロディアス性は、同郷の先輩であるTHE FLOWER KINGSあたりに通じる部分もあり、
ときに女性ヴォーカルも加わった、華麗なシンフォニックロックとしてもクオリティの高い出来栄えだ。
9分の大曲では、TRANSATLANTICのような展開力でドラマティックなシンフォプログレが味わえる。
メロディック度・8 プログレ度・7 優雅で爽快度・8 総合・8
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Jonas Lindberg & The Other Side 「Miles From Nowhere」
スウェーデンのミュージシャン、ヨナス・リンドバーグによるプロジェクト。2022年作
2016年にデビューし、本作は2作目。ソリッドなギターに優美なシンセ、キャッチーなヴォーカルメロディで
Brighteye Brisonなどにも通じる、ほどよくハードでスタイリッシュなシンフォプログレを展開。
中盤には10分を超える大曲が続き、女性ヴォーカルを乗せた優雅な味わいや、緩急ある展開力とともに、
随所に流麗なギタープレイを織り込んで、TRANSATLANTICのようなドラマティックなサウンドが楽しめる。
後半の25分の組曲では、ロイネ・ストルトがゲスト参加、これぞシンフォプログレという叙情美に包まれる。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 優美度・8 総合・8
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Jonathan Hulten 「Chants from Another Place」
スウェーデンのミュージシャン、ジョナサン・フルテンの2019年作
ブラックメタル系バンド、元TRIBULATIONのギタリストのソロであるが、本作はアコースティックギターにマイルドなヴォーカルを乗せた
フォーク風味のスタイル。随所にドラムやシンセも加わると、むしろシンフォプログレ的な優雅さと、北欧らしい翳りを帯びた叙情に包まれる。
楽曲は2~4分前後の小曲主体で、全体的にもメタル感触がほぼ皆無なのでわりとのんびりと鑑賞できる。
あるいは、RHYS MARSHあたりに通じる、繊細でジェントルな北欧ポストプログレとしても楽しめる。
ドラマティック度・7 プログレ度・6 繊細度・8 総合・7.5
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Jordsjo
ノルウェーのプログレユニット、ヨルドシオの2018年作
自主制作のカセットで発表された2015年のデビュー作をDisc1に、Disc2には2016年に発表された2作をまとめて収録。
メロトロンやオルガン、ムーグといったヴィンテージなシンセが鳴り響き、いくぶんサイケ気味のギターを乗せて、
北欧らしい涼やかな叙情と土着的な空気に包まれたサウンド。母国語によるヴォーカルも味わいがあって、
古ぼけたようなローカルな味わいを感じさせつつ、妖しくフルートが鳴り響く、TUSMORKEなどにも通じるような、
神秘的な北欧プログレが楽しめる。Disc2の方は、サイケな浮遊感が増しつつも、ドラムとベースのリズムが強固になり
メリハリのあるアンサンブルによるサウンドの説得力が高まった。アコースティックギターにフルートが鳴り響く優美な叙情に、
響き渡るメロトロン、そして、Kebnekaiseや、Kama Lokaなどにも通じる土着メロディが心地よい。これぞ北欧のプログレです。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 北欧度・・10 総合・・8
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JORDSJO 「JORD」
ノルウェーのプログレバンド、ヨルドシオの2018年作
Norsk Rakk、OLAFLYといったバンドにも参加するマルチミュージシャンを中心にしたユニットで、
土着的な旋律を奏でるギターに、オルガンやメロトロンを含むシンセ、やわらかなフルートも加わって、
いかにも北欧らしい空気を感じさせる、ヴィンテージな味わいのサウンドを聴かせる。
ヴォーカルはオマケ程度で、ほぼインストが中心の作風であるが、叙情的なギターのメロディに
フメートの音色も耳に心地よく、ANGLAGARDを少しユルめのサイケ寄りにしたような雰囲気もある。
全体的に派手な展開はあまりないものの、翳りを帯びた北欧らしい空気に包まれた逸品です。
ドラマティック度・・7 叙情度・・8 北欧度・・9 総合・・8
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Jordsjo 「Nattfiolen」
ノルウェーのプログレバンド、ヨルドシオの2019年作
2015年にデビューし、4作目となる。メロトロンやオルガン、クラヴィネットなどヴィンテージなシンセに
やわらかなフルート、アコースティックを含むギターに母国語によるマイルドなヴォーカルを乗せ、
北欧らしい翳りを帯びた、叙情的なサウンドを描く。涼やかな幻想性に包まれた空気感と、
緩急ある展開力は、Anglagardにも通じる感触で、これぞ北欧プログレという聴き心地。
ギター奏でる土着的な旋律にオルガンが重なり、鳴り響くフルートの音色も含め、アナログ感ある音作りも
じつに確信犯的である。インストパートがメインで、濃密な盛り上がりはさほどないが、北欧プログレ好きはマスト。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 北欧度・・9 総合・・8
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K
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KAIPA
スウェーデンのプログレバンド、カイパの1st。1975年作
現在はTHE FLOWER KINGSで活躍する若き日のロイネ・ストルトの在籍したバンドで、
70年代に発表した1st~3rdはどれもが北欧プログレを代表する名作と呼べるものである。
2nが初期の最高作として名高いがこと北欧らしい叙情メロディという点では本作も甲乙つけがたい。
メロウなギターフレーズとうっすらとしたシンセ、そしていくぶん野暮ったいヴォーカルとともに、北欧からしか生まれない
やわらかな薄暗さと湿りけを帯びた叙情、土着的なメロディをたっぷり含んだサウンドにうっとりと浸ろう。
メロディック度・・8 メロウな叙情度・・9 北欧度・・10 総合・・8.5
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KAIPA「Inget Nytt Under Solen」
スウェーデンのプログレバンド、カイパの2nd。1976年作
21分の組曲を含む本作の完成度はバンドの最高傑作というにふさわしいものだ。
北欧らしい土着的なメロディに薄暗い叙情性を感じさせるメロウなサウンドは、
いくぶんの野暮ったさとともに、どこか我々日本人の琴線に触れるような温かみがある。
そしてロイネ・ストルトの奏でるギターフレーズは、組曲の盛り上がりとともに泣きの旋律を響かせる。
70年代の北欧のイメージを決定付けた一枚。すべての叙情派プログレファンに聴いてもらいたい。
メロディック度・・8 メロウな叙情度・・9 北欧度・・10 総合・・8.5
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KAIPA 「SOLO」
スウェーデンのプログレバンド、カイパの3rd。1977年作
ファンタジックなジャケの可愛らしさでは本作が一番。サウンドの方も、北欧らしい叙情とメロディにあふれ
前作のような大曲はないものの、1曲ごとにコンパクトに聴かせる、むしろ洗練された明快さが魅力的な作品だ。
そして、若き日のロイネ・ストルトの瑞々しいギタープレイも随所に輝きを放っている。なんだかんだでこれも傑作です。
メロディック度・・8 メロウな叙情度・・9 北欧度・・10 総合・・8
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KAIPA 「Stockholm Symphonie」
スウェーデンのプログレバンド、カイパのライブ音源。
1974、76年に録音されたラジオ用のスタジオライブ音源で、おそらくオフィシャルブート的な作品。
若き日のロイネ・ストルトの叙情的なギターワークにオルガンを含むシンセを重ねた、
北欧らしいやわらかなサウンドで、音質はいくぶん平坦こもりこもり気味だがわりと良好。
1stアルバムの曲をメインに、後半には2ndからの楽曲も披露。スタジオライブということで、
生々しい躍動感はさほどないが、70年代カイパの貴重なライブサウンドが楽しめる。ファンの方はどうぞ。
ライブ演奏・・8 メロディック度・・8 音質・・7 総合・・7.5
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KAIPA「The Decca Years 1975-1978」
スウェーデンのシンフォニックロックバンド、カイパの70年代作品のボックスセット。
1st「KAIPA」、2nd「INGET NYTT UNDER SOLEN」、3rd「SOLO」の3作に加え
1974年の未発表デモ集、さらには1976~1978年のライブ音源の入った合計CD5枚組み。
やや土臭いが北欧トラッド的な叙情メロディが美しい1st、20分を超える組曲を収録した最高作と名高い2nd、
いくぶん洗練され聴きやすさを増した3rdと、どれもが70年代北欧シンフォ屈指の名作。
ROINE STOLTの瑞々しいギターメロディと、HANS LUNDINのたおやかなキーボードが美しい。
ライブ音源は音質も良好、1st~3rdまでの曲が楽しめる。未発表曲の方はデビュー前ということで、
やや粗削りながら情熱的なハモンドロックという感じで、サイケ色もありつつなかなか聴かせてくれる。
ロイネ・ストルトは、現在THE FLOWER KINGSで活躍中だが、彼の原点はやはりこの70年代の作品にある。
メロディアス度・・9 シンフォニック度・・8 北欧度・・10 総合・・8.5
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KAIPA 「HANDER」
スウェーデンのプログレバンド、カイパの1980年作
KAIPAといえば、ロイネ・ロストルトが在籍した初期3枚がすべてだと思っていたが、
その後の80年代の2作が2015年になってようやくCD化された。本作はジャケのイメージもがらりと変わり、
サウンド的にもポップな感触が強まっているが、枯れた味わいのスウェーデン語のヴォーカルに、
ハンス・ルンディンによる美麗なシンセワークで、キャッチーなプログレハード的な聴き方が出来る。
楽曲は長くても6分ほどとコンパクトになり、シンフォニックな盛り上がりというのはさほどないのだが、
北欧らしい叙情的なナンバーは残していて、新加入のマックス・オーマンのクールで技巧的なギターは、
前任のロイネ・ストルトのメロウなプレイとはまた違ったモダンなテイストを楽曲にもたらしている。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 北欧度・・8 総合・・8
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KAIPA 「Nattdjurstid」
スウェーデンのプログレバンド、カイパの1982年作
5作目となる本作は、ハンス・ルンディンによるきらびやかなシンセワークを前に出し、
80年代的なビート感とキャッチーなポップ性に包まれたサウンドである。
ヴォーカルは基本母国語なので、辺境感を含んだ感触が面白い味わいになっていて、
さほどプログレらしさを求めなければ、モダンなプログレハード的にも楽しめる。
アルバムとしては人気が出なかったのか、本作を最後にバンドは解散となる。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・6 北欧度・・8 総合・・7.5
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KAIPA「NOTES FROM THE PAST」
スウェーデンのプログレバンド、カイパの2002年作
復活KAIPAの1作目で、往年のメンバーが集ったという形ではないが、キーボードのハンス・ルンディンが参加、
非常に北欧的な土着めいた温かみのある彼らしいキーボードワークを聴かせてくれる好作。
そこにからむロイネ・ストルトのギターはフラワーキングスでの活動を経て洗練された音であるせいか、
全体としてはかつてのKAIPAにあった「田舎めいた雰囲気」「湿り気のある薄暗さ」はさほど感じない。
ドラムがMATS/MORGANのモルガン・オーギュレンであることも手伝って非常にリズムの切れがよく、
70年代の叙情美よりは現代的シンフォニックの作りである。90年代以降の作品でロイネを知り、
このアルバムでカイパという存在を知った方は、次にはぜひ70年代のKAIPAのアルバムを聴いてみて欲しい。
メロディアス度・・8 シンフォニック度・・8 北欧度・・8 総合・・8
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KAIPA「KEYHOLDER」
スウェーデンのプログレバンド、カイパの2003年作
前作と同じくドラムはMATS/MORGANのモルガン・アグレン、ベースはTHE FLOWER KINGSのヨナス・レインゴールドという編成。
今回はロイネ・ストルトとハンス・ルンディンの融合度がより増した印象で、サウンド的にもよりしっくりと聴けるシンフォニックロックである。
メロトロンなどを多用したゆるやかなキーボードワークもあって、北欧らしさとシンフォ度はむしろフラキンの近作よりも上かもしれない。
全体的にゆったりと楽しめる作風で、叙情豊かなメロディに包まれた傑作である。
シンフォニック度・・8 フラキン度・・8 北欧度・・8 総合・・8
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KAIPA「MINDREVOLUTIONS」
スウェーデンのシンフォニックロックバンド、カイパの2005年作
全79分、シンフォニックサウンドが目一杯詰まっている。初期のフラキンにあった陽性のメロディと聴きやすさを発揮しつつ、
決して古くさくならない現代風のポップセンスも取り込んでいるのもポイントであろう。モルガン・オーギュレンの巧みなドラムに、
存在感のあるヨナス・レインゴールドのベース、ロイネ・ストルトのメロアのギターも久しぶりにたっぷりと堪能出来る。
RITUALのパトリック・ランドストロムのヴォーカルに女性ヴォーカルが絡み、男女ツインVoによる壮麗な歌声は、
しっとりとした叙情パートではとても耳心地よく、ハンス・ルンディンのやわらかなシンセワークとともに楽曲を豊かに彩る。
ゆるやかな盛り上がりと爽やかさはまさに北欧プログレ特有の質感で、最近のフラキンより上かとすら思える会心のシンフォニックロック作品だ。
シンフォニック度・・8 北欧度・・8 しっとりゆるやか度・・9 総合・・8
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KAIPA「Angling Feelings」
スウェーデンのシンフォニックロックバンド、カイパの2007年作
新生KAIPAとなって4作目のアルバムであるが、今回はロイネ・ストルトは不参加。他のメンバーはHans Lundin以下、
Dr.Morgan Agren(MATS/MORGAN)、Vo.Patrik Lundstorm(RITUAL)、女性Vo.Aleena Gibson、B.Jonas Reingold(THE FLOWER
KINGS)という
おなじみの顔ぶれで、ギターにはハンスも参加していたフォークメタルバンドHAGENで弾いていたPer Nilssonが参加、
サウンドの方は、アレンジ面でややモダンになったかなという印象はあるが、クオリティ的にはロイネ不在を感じさせない出来。
ハンス・ルンディンのシンセワークに絡むパー・ニルソンのギターワークもなかなかよろしく、HAGENでも聴かせてくれた土着メロが心地よい。
モルガン・オーギュレンとヨナス・レインゴールドの鉄壁のリズム隊は強固なアンサンブルを作り出し、
ゆったりとしたパートにおいてもサウンドを適度に引き締めている。男女Voの絡み方も、アクセントを付けながら曲を引き立たせていて、
歌パートと演奏パートのメリハリがしっかりあって飽きさせない展開力となっている。メロディの充実度と内容の濃さという点で傑作といってよい出来だ。
メロディアス度・・8 意外とテクニカル度・・8 北欧度・・8 総合・・8
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KAIPA「In the Wake of Evolution」
スウェーデンのプログレバンド、カイパの2010年作
70年代に3枚の傑作を残した北欧を代表するプログレバンド、2002年に復活してから5作目となる。
ヨナス・レインゴールド(The Flower Kings)とモルガン・オーギュレン(MATS/MORGAN)の鉄壁のリズム隊に乗る
ハンス・ルンディンの美麗なシンセワークに、メロウなギターフレーズと男女ヴォーカルの歌声で、
今作も質の高いシンフォニックロックを存分に聴かせてくれる。10分以上が5曲といつになく大作であるが、
カッチリとした展開力とメロディで、プログレ初心者にも安心して楽しめるサウンドである。
シンフォニック度・・8 メロディアス度・・8 北欧度・・8 総合・・8
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KAIPA「Vittjar」
スウェーデンのプログレバンド、カイパの2012年作
ハンス・ルンディンの美しいシンセワークを中心に、北欧らしい叙情メロディたっぷりのシンフォニックサウンド。
ヨナス・レインゴールド、モルガン・オーギュレンの安定したリズム隊に支えられながら、メロウなギターワークが重なり、
パトリック・ルンドストルムの存在感あるヴォーカルが歌い上げる。メロディックな爽快さと北欧の土着的な感触が合わさり、
ときに女性ヴォーカルの歌声も含みつつ、12分、22分という大曲もあくまで叙情的に聴かせてくれる。
ゲストによるヴァイオリンやホイッスルの音色も美しい。これぞ北欧!というようなシンフォニックの力作。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・8 北欧度・・9 総合・・8
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KAIPA「Sattyg」
スウェーデンのプログレバンド、カイパの2014年作
2002年に復活してからすでに本作で7作目。すっかり新たな北欧ネオプログレの代表のひとつとなった。
本作はいきなり15分の大曲から始まり、叙情的な泣きのギターとハンス・ルンディンの味わい深いシンセワーク、
モルガン・オーギュレンとヨナス・レインゴールドが支える鉄壁のリズム隊とともに、素晴らしいシンフォニックロックが広がる。
男女ヴォーカルの歌声を乗せた華麗でキャッチーな感触と、繊細さとダイナミズムに富んだ構築力、
初期のカイパから引き継いだ北欧らしい哀愁の叙情性は、本作では随所により強く感じられ、
ゲストによるリコーダー、ホイッスルの素朴な音色も含めて、その土着旋律がじつに耳に心地よい。
10分を超える大曲がいくつもあるが、どこをとっても叙情的でメロディック、これぞ北欧プログレという傑作である。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 北欧度・・9 総合・・8.5
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Kaipa 「Children of the Sounds」
スウェーデンのプログレバンド、カイパの2017年作
ハンス・ルンディンを中心に復活した2002年からすでに15年、再結成カイパとしては本作で8作目となる。
今作もドラムにモルガン・オーギュレン(MATS/MORGAN)、ベースにヨナス・レインゴールド(THE FLOWER KINGS)が参加、
美麗なシンセワークに、女性ヴォーカルの歌声を乗せて優美に幕を開け、男性声にメロウなギターの旋律が加わって、
壮麗にして繊細な叙情美を描き出す。オルガンを含むやわらかなシンセアレンジに、ゲストによるヴァイオリン、
男女ヴォーカルの掛け合いとともに、物語的でもある幻想的な雰囲気に包まれていて、一方ではメリハリに富んだ楽曲は
いつも以上に弾きまくるペル・ニルソン(SCAR SYMMMMETRY)のテクニカルギターを乗せ、スタイリッシュな優雅さも感じさせる。
どちらかというとフラキン寄りの音で、綺麗に作られ過ぎている感じもなくもないが、10分前後の大曲を中心にした高品質な力作です。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・8 優雅度・・9 総合・・8
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KAIPA 「Urskog」
スウェーデンのプログレバンド、カイパの2022年作
2002年の復活後から数えて、すでに9作目。のっけから19分におよぶ大曲で、ハンス・ルンディンの優美なシンセに
パトリック・ルンドストロムの伸びやかなヴォーカルとペル・ニルソンの流麗なギターで、優雅なシンフォプログレを展開。
新加入のダービィ・トッドのドラムも巧みに軽やかで、ヨナス・レインゴールドのベースとともに屋台骨を支えつつ、
キャッチーなコーラスワークによる、爽快なメロディアス性と北欧らしい土着的な空気がスタイリッシュに融合、
緩急ある展開力で大曲を構築するバンドとしての力量は見事である。女性ヴォーカルを乗せた優美なナンバーは
メロウな泣きのギターとともにウットリで、艶やかなヴァイオリンも鳴り響く。ラストの15分の大曲まで素晴らしい完成度。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・8 優美度・・9 総合・・8.5
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Kaipa Da Capo 「Darskapens Monotoni」
スウェーデンのプログレバンド、カイパ・ダ・カーポの2016年作
復活KAIPAとは別に、ロイネ・ストルトが70年代の古き良きサウンドを再現するべく、オリジナルメンバーである、
トーマス・エリクソン、インジマー・ベルグマンとともに立ち上げたバンドで、ロイネの弟、マイケル・ストルトも参加。
サウンドは、ロイネのメロウなギターの旋律をたっぷりとまぶし、美しいシンセワークで包み込んだ、
かつてのKAIPAの素朴さに、初期のThe Flower Kingsを合わせたような、叙情豊かなシンフォニックロック。
大人の哀愁を感じさせる、マイケル・ストルトのどっしりとした歌声に、オルガンが鳴り響く70年代風味のやわらかさ、
そして繊細かつ優美なギターワークとともに、これぞ往年の北欧ロックという味わいが楽しめる。
10分を超える大曲も多数で、派手な展開や新鮮味は薄いもののじっくりと鑑賞できる。さすがの傑作です。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 北欧度・・8 総合・・8
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KAIPA DA CAPO 「Live」
スウェーデンのプログレバンド、カイパ・ダ・カーポのライブ。2017年作
復活KAIPAとは別に、ロイネ・ストルトが70年代の古き良きサウンドを再現するべく結成したバンドで、
オリジナルメンバーである、トーマス・エリクソン、インジマー・ベルグマンに、ロイネの弟、マイケル・ストルトも参加。
さらにはシンセにラレ・ラーションを迎えた編成での、2017年ストックホルムでのライブを収録している。
のっけから2nd収録の大曲“Skent Bedrar”で、往年のカイパファンはたまらない。ロイネのメロウなギターと
オルガンを含むシンセに、渋い味わいのマイケルの歌声が重なり、湿り気を帯びたかつての空気感を再現してゆく。
2016年作「Darskapens Monotoni」からのナンバーも、違和感なくオールドなセットリストに溶け込んでいる。
ラレの美しいピアノソロ、シンセソロなどもアクセントになっていて、古さと新しさを融合させたライブが楽しめる。
ライブ演奏・・8 ドラマティック度・・8 カイパ度・・9 総合・・8
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Kama Loka
スウェーデンとデンマークの混成バンド、カーマ・ロカの2013年作
母国語によるヴォーカルとフィドルの響き、ハーディガーディの素朴な音色とともに聴かせる
いかにも北欧らしい土着的なサウンド。サイケ気味のギターとともに、アシッドフォークの妖しさと
神秘的な懐古主義が凝縮されたような聴き心地は、プログレというよりトラッド・サイケロックというべきか。
これぞ北欧という寒々しい世界観と、かつてのKebnekajseばりの土着メロディににんまりすることしきり。
かのSILENCEスタジオで録音したというこだわりも含めて、北欧好きにはある種、たまらない怪作と思う。
トラッ度・・8 プログレ度・・7 北欧度・・10 総合・・8
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KARMAKANIC「ENTERING THE SPECTRA」
スウェーデンのプログレバンド、カーマカニックの1st。2002年作
THE FLOWER KINGSのヨナス・レインゴールドを中心に、ロイネ・ストルト、トマス・ボーディン、ソルタン・チョースらTFK組に
ヴォーカルにはヨラン・エドマンが参加。テクニカルなアンサンブルにオルガンを含むシンセワークとメロウなギターを乗せた、
ハード寄りのシンフォニックロックを聴かせる。ネット上の世界に埋没する人間ををテーマにしたコンセプト作らしく、
包み込むようなシンセアレンジと、随所にフラキン的なメロディラインを聴かせながら、壮麗なシンフォニックハード、
ジャズロック寄りのシンフォプログレとしても楽しめ、ときにプログレメタル的な味わいも含んだ力作だ。
シンフォニック度・・8 テクニカル度・・8 優雅度・・8 総合・・8
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KARMAKANIC「WHEEL OF LIFE」
スウェーデンのプログレバンド、カーマカニックの2nd。2003年作
THE FLOWER KINGSのヨナス・レインゴールドを中心にしたバンドで、
軽快なジャズロックに、メロディアスなシンフォニックロックの味付けをしたという雰囲気で
ソルタン・チョース、ヨナス・レインゴールドのフラキンのリズム隊は、息の合ったアンサンブルで、
長い曲でもさらりとスタイリッシュに聴かせてくれる。メロディの新鮮味という点ではさほどのものはないが、
ヴォーカルが加わるとまるでフラキンのような叙情性に包まれる。テクニカルで軽妙なアンサンブルで楽しめる
北欧シンフォニック・ジャズロックの逸品だ。ロイネ・ストルト、トマス・ボーディンらもゲスト参加している。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・8 優雅度・・8 総合・・8
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KARMAKANIC「Who's the Boss in the Factory」
スウェーデンのプログレバンド、カーマカニックの3rd。2008作
THE FLOWER KINGSのヨナス・レインゴールドを中心としたこのバンド、1stはハード寄りのフラキン風、
2ndはテクニカルなジャズロック寄りのサウンドであったが、本作はよりメロディアスさを前に出していて、
結果としてよりフラキンに近い雰囲気になった。少しレトロなプログレ的シンセワークにたおやかなピアノも美しく、
曲は適度にテクニカルでありつつ、じっくりと歌を聴かせる部分も多く、全体的にはやはりシンフォニック。
存在感あるヨナスのベースにソルタン・チョースのタイトなドラムも見事で、バンドの核をになっている。
テクニカルな演奏力と、メロディ聴かせるバランスのとれた高品質作だ。
メロディアス度・・8 プログレ度・・8 演奏度・・9 総合・・8
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KARMAKANIC & AGENTS OF MERCY「THE POWER OF TWO」
スウェーデンのプログレバンド、カーマカニックとエージェンツ・オブ・マーシーのライブアルバム。
ヨナス・レインゴールド率いるKARMAKANICと、ロイネ・ストルトのAgents of Mercyの合体バンドによる
2009年アメリカLAでのライブを収録。前半がエージェンツ、後半がカーマの曲という構成で、
ドラムにはSPOCK'S BEARDのニック・ディヴァージリオが参加、しっとりと聴かせるGENESISタイプの
Agents of Mercyはまさにシンフォニックの王道という感じで、叙情豊かな聴き心地はライブでも素晴らしい。
一転してKARMAKANICでは、軽妙な躍動感とアンサンブルの妙で、実力者たちの演奏にじっくり聞き入る。
とくに、ラレ・ラーソンの絶品の鍵盤さばきは、クラシカルにしてテクニカルな驚嘆のプレイぶりである。
シンフォニック度・・8 叙情度・・8 ライブ演奏・・8 総合・・8
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KARMAKANIC「In a Perfect World」
スウェーデンのプログレバンド、カーマカニックの2011年作
THE FLOWER
KINGSのヨナス・レインゴールドを中心に、ヴォーカルにはヨラン・エドマン、
シンセにラレ・ラーションンが参加。前作はわりとフラキンに近いイメージの傑作であったが、
本作も美麗なシンセワークでしっとりと始まりつつ、ジャズロック的な軽やかさとキャッチーなメロディも含んで、
大人のシンフォニックロックというべきクオリティの高さで聴かせる。楽曲のアレンジや盛り上げ方など、
フラキンとの差別化が難しいくらいに相通ずるものがあるのだが、そこも含めての雰囲気が好きな方なら、
今作も充分楽しめる作品だろうとは思うし、やはりジャスロック風味の軽妙さには、余裕とウイットに富んだ演奏が光っている。
メロディアス度・・8 プログレ度・・8 北欧度・・8 総合・・8
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KARMAKANIC 「Live in the US」
スウェーデンのプログレバンド、カーマカニックのライブ作品。2014年作
2012年アメリカ、ゲティスバーグでのステージをCD2枚に収録。
これまでに発表した4枚のスタジオ作品は、テクニカル性とメロディアスな要素を融合させた
高品質なサウンドであったが、ライブステージにおいても実力あるメンバーによるアンサンプルが楽しめる。
ヨラン・エドマンの存在感ある歌声に、古き良きプログレ性とモダンさを併せ持つラレ・ラーソンの巧みなシンセワーク、
ドラムには、モルガン・アグレンが参加し、ヨナス・レインゴールドとの鉄壁のリズム隊を構築する。
ジャズロック的な優雅さに、北欧シンフォの感触を溶け混ませたというべき、大人のプログレを聴かせてくれる。
モルガンの超絶ドラムソロも含め、スタジオアルバム以上の躍動感が味わえる、濃密なライブ作品だ。
メロディック度・・8 テクニカル度・・8 ライブ演奏・・8 総合・・8
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Karmakanic 「Dot」
スウェーデンのプログレバンド、カーマカニックの2016年作
THE FLOWER KINGSのヨナス・レインゴールドを中心にしたバンドで、ライブ作をはさんで、
スタジオアルバムとしては5年ぶりとなる5作目。ジャケはいつになく地味なのだが内容の方は、
テクニカルかつ軽妙なジャズロック風味と繊細なシンフォニック性が合わさった、いつも通りの質の高さ。
モルガン・アグレンの巧みなドラムに存在感のあるヨナスのベース、ラレ・ラーソンの美しいシンセワークと、
マイルドな情感に包まれたヨラン・エドマンの歌声を乗せ、大人の哀愁を含んだ叙情美をじっくりと描いてゆく。
The Tangentのアンディ・ティリソンがオルガンで参加、ゲストによるコーラスやフルート、サックスなども加わって
優雅な構築性とともに大人の味わいと、やはりフラキン的でもあるメロディックなシンフォニックロックを聴かせてくれる。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 大人の叙情度・・9 総合・・8
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KATAYA 「Canto Obscura」
フィンランドのプログレバンド、カタヤの2008年作
やわらかなシンセアレンジと繊細なアコースティックギターのつまびき、
そして北欧らしい土着的な旋律を奏でるギタートーンがじつに耳心地良い。
エフェクトのかかった女性ヴォーカルによるスキャットやサックスの音色も加わりつつ
随所にポストプログレ的なモダンさも感じさせながら、PEKKAやKebnekajseなどにも通じる
古き良き北欧のトラッド要素がセンスよく融合されている。楽曲自体は3、4分前後で、
プログレ的な展開美は物足りないものの、繊細な雰囲気ものとしてゆったり楽しめる。
繊細度・・8 プログレ度・・7 北欧度・・9 総合・・8
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KATAYA 「Voyager」
フィンランドのプログレバンド、カタヤの2010年作
2008年にデビュー、2作目となる本作は、組曲方式の3つのパートに分かれた作品で、
オルガンやメロトロンを含むやわらかなシンセに適度なハードさのギターワーク、
随所にアコースティックなパートも入りつつ、メロウな叙情を描くインストサウンド。
中盤には、ジェントルな歌声の入ったナンバーやポストプログレ的な繊細なインストなど、
派手さはないものの総じて耳心地の良い作風で、涼やかな北欧らしさと、大人の叙情をじっくりと味わえる。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 叙情度・・8 総合・・8
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Kathinka
ノルウェーのメロウロック、カティンカの2018年作
サイケロック的な浮遊感あるアンサンブルに、けだるげな女性ヴォーカルの歌声を乗せ、
北欧らしい涼やかな空気感に包まれた、メランコリックなサウンドを聴かせる。
ガレージロック的でもあるアナログ感に、うっすらとしたシンセアレンジが加わると、
プログレリスナーにも楽しめるドリーミーな味わいで、のんびりと鑑賞できる。
アシッドフォーク的な雰囲気もある、ゆったりキャッチーな女性声北欧ロックの逸品です。
夢見度・・8 プログレ度・・7 女性Vo度・・7 総合・・7.5
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KATZEN KAPELL
スウェーデンのチェンバー・タンゴグループ、カッツェン・カペルの1st。1994年作
複雑さと難解さを増した2ndにくらべ、この1stではゆったりとした叙情が楽しめる部分が多い。
アコーディオンやヴァイオリン、マリンバなどによるメロディアスでありながら切れがよく、
キャッチーでしかも高度な演奏(ドラムが入るととたんにテクニカルプログレになる)は素晴らしい。
タンゴなのにプログレ。ハイセンスでしっとりの好アルバム。
メロディアス度・・8 タンゴ度・・8 さりげなく技巧度・・9 総合・・8
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KATZEN KAPELL「ALLA HATAR MIN MAN」
スウェーデンのプログレ・チェンバーロックバンド、カッツェン・カペルの2nd。1998作
タンゴや室内楽をベースにした優雅さと、プログレッシブな構成力で聴かせるこのバンド、
コロコロとしたビブラフォンの音色にアコーディオンなどによるやわらかな質感と
ピアノやヴァイオリンなどのクラシカルなシリアスさが合わさって、予測不能の展開で聴かせる面白さは
このバンドならでは。1stに比べてよりチェンバー的な複雑さが増したような傑作だ。
現在は、ジャケが変更されて再発されている。
チェンバー度・・8 クラシカル度・・7 ハイセンス度・・9 総合・・8
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Katzen Kapell 「Si Tu Veux」
スウェーデンのプログレ・チェンバーロックバンド、カッツェン・カペルの2007年作
1994年にデビュー、3作目。優雅なアコーディオンの音色にヴァイオリンが重なり、ドラムのリズムに
軽やかなヴィヴラフォンの響きも加えて、タンゴ風味のジャズロックという軽妙なサウンドを聴かせる。
大人のジャズ風味のインストを主体にしつつ、女性ヴォーカルを加えたコケティッシュな雰囲気もあり、
母国語による歌声とともに、スリリングなアンサンブルによるチェンバーロック寄りの感触も覗かせる。
哀愁を含んだアコーディオンが鳴り響き、高い演奏力に裏打ちされた、お洒落なチェンバー・ジャズの逸品。
ジャズ風度・8 プログレ度・7 優雅度・8 総合・8
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KATZEN KAPELL「Maximalism」
スウェーデンのプログレ・チェンバーロックバンド、カッツェン・カペルの4th。2009年作
タンゴや室内楽をベースにした優雅さと、プログレッシブな構成力で品のよい音楽を聴かせるこのバンド、
本作も艶やかなヴァイオリンや、アコーディオンの音色を絡ませた、軽妙なサウンドが楽しめる。
しっとりとしたピアノの響きに、ヴァイオリンやビブラフォン、マリンバなどが合わさると
室内楽的な優雅さとクラシカルな情緒に包まれる。ドラムの入った変則リズムはプログレ的で、
相変わらずセンスの良いアレンシが絶妙だ。“上品な緊張感”ともいうべき面白さが漂う傑作。
クラシカル度・・8 軽妙プログレ度・・8 ハイセンス度・・9 総合・・8
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KAUKASUS 「I」
MOTORPSYCHOのケティル・ヴェストラム・エイナーソン、元ANGLAGARD~WHITE WILLOWのマティアス・オルソン、
そしてライス・マーシュという、ノルウェー、スウェーデン混合のユニット、コーカサスの2015年作
マティアス・オルソンといえば、NECROMONKEYを結成して話題を呼んだが、本ユニットの方はトリオ編成による、
アナログ感に包まれたシンプルなアンサンブルに、ライス・マーシュのマイルドな歌声を乗せた、
ダークな空気感に包まれたサウンド。メロトロンを含むスペイシーなシンセにフルートが妖しく鳴り響き、
モーターサイコのようなスケール感と、北欧らしい涼やかな聴き心地に、アヴァンギャルドなセンスも覗かせる。
クリムゾンやANEKDOTENなどを思わせる部分もありつつ、フルートとシンセをメインにしたアンビエントなナンバーや
モダンなポストプログレ風味も含んだ、古さと新しさを自然体で内包したような強力作です。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 北欧度・・8 総合・・8
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KEBNEKAJSE「RESA MOT OKANT MAL」
スウェーデンのトラディショナル・サイケバンド、ケブネカイゼの1st。1971作
この1stはまだトラッドメロディを導入する以前で、やや明るめのメロディアスサイケという雰囲気。
ヴァイオリン奏者も加入前なので、2nd以降の哀愁のトラッドメロディはあまり感じられない。
しかしギターの弾くメロディには北欧の田舎を想像させるような心地よさを持っている。
これがのちのサウンドへの下地になったのだろう。まず聴くのなら3rdあたりからどうぞ。
メロディアス度・・7 トラッ度・・2 サイケ度・・7 総合・・7.5
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KEBNEKAISE「Ⅱ」
スウェーデンのトラッドプログレバンド、ケブネカイゼの2nd。1973作
のっけから牧歌的なメロディでヴァイオリンが鳴り響き、北欧トラッド色全開。
楽曲的には次作ほどのダイナミックさはまだないのだが、ヴァイオリンに絡むギターのフレーズといい、
パーカッションの響きといいこのあまりに田舎くさく、土着的な音には思わず和んでしまう。
ラストの大曲もなかなか圧巻。ボーナスには貴重なライブ音源を収録。
メロディアス度・・8 北欧トラッ度・・9 ヴァイオリン度・・8 総合・・8
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KEBNEKAISE「Ⅲ」
スウェーデンのトラッドプログレバンド、ケブネカイゼの3rd。1975作
このバンドの素晴らしいところはズバリ、北欧的トラッドメロディを、ロックフォーマットで聴かせる点だ。
ギターとヴァイオリンがときに優雅にときに情熱的にトラッドメロディをユニゾンするさまは圧巻。
そして、そこに絡むパーカッションが言い知れぬ郷愁を聴く者に感じさせる。
この日本人の演歌心にも通じるような土着的メロディには、一聴して心を鷲づかみにされた。
トラッドというにはあまりにダイナミックで分厚い音。シンフォニック・トラッドロックとでも呼ぶしかない。
メロディアス度・・9 北欧トラッ度・・9 ヴァイオリン度・・8 総合・・8
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Kebnekajse 「III」
スウェーデンのフォーク・プログレ、ケブネカイゼの1975年作
北欧きってのトラッドロックバンドの作品が、全作リマスター&紙ジャケで再発された。
本作は3作目にしてバンドの最高傑作。土着的なギターの旋律に艶やかなヴァイオリンが重なり、
パーカッションが鳴り響く、伝統的な民族音楽の感触とサイケロックが融合した牧歌的な味わいは
北欧らしい涼やかな哀愁の叙情に包まれていて、じつに我々日本人好みのサウンドなのである。
基本的にはインストながら、母国語の歌声を乗せた、フォーク風味のナンバーにも味わいがあり、
一方で、13分での大曲ではプログレとしての構築センスも覗かせる。これぞ北欧の音楽という傑作。
ドラマティック度・8 優雅度・8 北欧度・9 総合・8
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Kebnekaise 「Ljus Fran Afrika」
スウェーデンのプログレ・サイケロック、ケブネカイゼの1976年作。邦題「アフリカの灯」
1971年にデビュー、本作は4作目となる。これまで未CD化だった後期の2作が、2022年に紙ジャケCD化されたのは嬉しい。
アフリカ音楽にも影響を受けていたバンドのアフロ志向を全面に出した作品で、ギニア出身のパーカッション奏者が参加している。
1曲目からアフリカンな歌声に面食らうが、2曲目からは、ヴァイオリン鳴り響き、ユルめのギターの旋律とパーカッションのリズムで、土着的でサイケなバンドアンサンブルを展開。
艶やかなヴァイオリンを乗せた軽快なナンバーや、フリーキーで怪しげなサイケなナンバーもあって、優雅な味わいのラスト曲までそれなりに楽しめる。
民族度・8 プログレ度・6 サイケ度・7 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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Kebnekajse 「Elefanten」
スウェーデンのフォーク・プログレ、ケブネカイゼの1977年作
これまでは、LPのみでしか聴けなかった後期の2作、「エレファント」「アフリカの灯」が紙ジャケCD化された。
5作目の本作は、全作のアフロ路線からまた変わり、艶やかなヴァイオリンをメロウなギターに絡ませた、
優雅なシンフォニック路線となっている。パーカッションも鳴り響く、かつての土着的な感触も残しつつ、
ときにジャズロック的でもある優雅なアンサンブルは、より洗練された印象である。12分の大曲では、
軽やかなリズムに叙情的なギターとヴァイオリンを重ねた、トラッド・ジャズロックというサウンドを聴かせる。
ボーナスのラスト曲は、「III」にも収録されていたスウェーデン民謡のアレンジであるが、より優雅な別バージョン。
ドラマティック度・7 優雅度・8 北欧度・8 総合・8
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KEBNEKAJSE「Electric Mountain」
スウェーデンのトラディショナル・プログレバンド、ケブネカイゼの1990年作
1stから3rdまでの曲がセレクトされた全11曲入りベスト盤で、以前はCD化されていたのは本作のみであった。
サウンドの特徴は、北欧らしい土着的なトラディショナルメロディをそのままプログレにさせたところで、
二本のヴァイオリンやフルートがギターとからみ、叙情的なメロディを奏でてゆく様はじつに牧歌的。
日本人の演歌的情緒にも通じる北欧トラッドメロディはとても親しみやすく、郷愁に包まれた空気がじんわりと胸にしみ込みます。
メロディアス度・・9 土着度・・10 叙情度・・9 総合・・8
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KEBNEKAJSE
スウェーデンのトラッド・プログレバンド、ケブネカイゼの復活作。2009作
70年代に5枚のアルバムを残して消えた異色のトラッドロックバンドがまさかの復活!
初期KAIPAをさらにクサくしたような北欧の民族メロディを、そのままサイケロック化したような
このバンドのサウンドは、一聴して日本人の情緒を鷲掴みにするくらいのインパクトがあった。
個人的にも大好きなバンドなので感無量である。さて、30余年ぶりの作品である本作であるが、
のっけからかつてを思わせる、ギターとヴァイオリンを中心にした土着メロディに思わずにんまり。
メンバーは少なくなったが、バンドの本質はなにも変わっていない。田舎くさく、土くさく、
まさに北欧の山林を思わせるような牧歌的な情感で素朴でありつつも雄大に聴かせてくれる
ギターとヴァイオリンがユニゾンして奏でるトラッドメロディと、パーカッションの響き、
これぞ北欧の音楽である。これを聴いて気に入った方は、かつての名作「Ⅲ」もぜひ。
メロディアス度・・8 土着度・・9 北欧メロ度・・10 総合・・8
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KEBNEKAJSE「Idioten」
スウェーデンのトラッドプログレバンド、ケブネカイゼの2011年作
70年代に5枚のアルバムを残して消えたこのバンドが2009年にまさかの復活をはたし、
本作は復活2作目である。北欧の土着トラッドのメロディとサイケ風味の浮遊感を合わせた
独自のサウンドは年月をへても健在。なごむようなギターの牧歌的フレーズとパーカッションの響き、
そしてヴァイオリンが重なり、まさに北欧の山林を思わせるような自然派の演奏がじつに耳心地よい。
オールインストでありながら歌うようなギターのメロディにのんびりと聴き入れる好作品です。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 北欧度・・10 総合・・8
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Kebnekajse「Aventure」
スウェーデンのトラッドプログレ、ケブネカイゼの2012年作
70年代から活動する、サイケ・トラッドロックバンド。2009年に活動を再開させてから3作目となる。
パーカッションを含んだリズムの上に、土着的な旋律を奏でるギターとヴァイオリンが重なる、
独自のスタイルは本作も健在。北欧の大地を感じさせる牧歌的な聴き心地にのんびりと浸れる。
前作以上に気負わないユルさというか、力の抜けた自然体の作風で、ぱっと聴きにはインパクトはないのだが、
これこそこのバンドの持ち味。暖かみのある土臭さをのんびりと楽しめる好作なのです。
ドラマティック度・・7 トラッドプログレ度・・8 北欧度・・9 総合・・7.5
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KERRS PINK 「Mellom Oss」
ノルウェーのプログレバンド、ケルス・ピンクの1981年作
1980年にデビュー、本作は2作目となる。2023年のリマスター再発盤で聴き直してみる。
メロウなギターにエレピやオルガンを含むシンセ、母国語によるヴォーカルを乗せた、素朴な1曲目は、プログレというにはポップなロック感触であるが、土着的なギターの旋律にオルガンが重なる3曲からはこのバンドらしい哀愁の叙情に包まれる。
CAMELばりの泣きのギターが耳心地よいタイトルナンバーなど、インストパートがほとんどながら、北欧らしい涼やかな空気感ゆったりと聴き入れる。
ラストは17分の大曲で、優美なフルートに男女ヴォーカルも加えて繊細な叙情を描いてゆく。派手さはないが、優しい味わいの好作品です。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 北欧度・9 総合・7.5
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KERRS PINK「A Journey on the Inside」
ノルウェーのシンフォニックロックバンド、ケルス・ピンクの3rd。1993年作
1980年にデビュー、本作は前作から11年ぶりとなる作品で、これまでにないスケール感を感じる
トータル的なコンセプトアルバムとなっている。北欧の土着性を感じさせるメロウなギターフレーズと
うっすらとしたシンセワーク、マイルドなヴォーカルで聴かせるシンフォニックロックはいよいよ完成され、
ゆるやかな叙情性とファンタジックな世界観とともに、優雅にしてドラマティックな聴き心地が楽しめる。
女性ヴォーカルやフルートのの入ったアコースティカルなパートなど、繊細な美しさにもうっとりです。
シンフォニック度・・8 北欧度・・8 繊細度・・9 総合・・8
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KERRS PINK「ART OF COMPLEX SIMPLICITY」
ノルウェーのシンフォニックロックバンド、ケルス・ピンクの4th。1997作
淡い水彩画のジャケのイメージ通り、繊細で透明感のある北欧らしいシンフォニックサウンド。
これまでのアルバムよりもややアコースティック色が強く、トラディショナルなメロディを奏でるヴァイオリンなどは
KEBNEKAISEにも通じる雰囲気で、北欧の土臭さと空気を運んでくれる。
派手な部分はまったくないが、ゆったりとなごめる北欧シンフォサウンド。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 北欧度・・9 総合・・7.5
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KERRS PINK「TIDINGS」
ノルウェーのシンフォニックロックバンド、ケルス・ピンクの5th。2002作
このバンドの魅力はいかにも北欧らしい清涼感とトラッドテイストのあるギターメロディ、
そしてなによりじつに繊細で淡い色彩を感じるその優しい音にある。
TFKやPLPなど、表舞台で活躍するメジャー級シンフォバンドの影で、
こうしたバンドが地道に活動を続けているというのは、なんともほっとする。
CAMELの繊細な部分を抽出して、北欧のメロディで淡く色付けしたサウンドは、
聴いていてなにか優しさに満ちた安らぎを感じさせてくれる。
シンフォニック度・・7 メロディアス度・・8 北欧度・・9 総合・・8
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Kerrs Pink 「Mystic Spirit」
ノルウェーのシンフォニックロックバンド、ケルス・ピンクの2013作
繊細系の叙情シンフォとして80年代に2作、90年代に2作、そして2002年作を最後に音沙汰のなかったバンドの、
じつに11年ぶりとなる6作目。音が鳴りだした途端、北欧らしい涼やかな風に吹かれたような錯覚にとらわれる。
オルガンやムーグ、メロトロンといったヴィンテージなシンセもそうだが、なにより土着的なメロディを奏でるギターは
初期のKAIPAのような感触で、北欧でしかありえない叙情旋律にウットリなのである。哀愁を帯びたアコーディオンや
やわらかなピアノの音色、そして枯れた味わいのヴォーカルもじつにいい味を出している。33年目の最高傑作。
ドラマティック度・・8 叙情度・・9 北欧度・・10 総合・・8.5
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KHADAVRA 「HYPNAGOGIA」
スウェーデンのプログレバンド、カダヴラの2019年作
2014年にデビューし、2作目となる。シンセによるサイケなイントロから、ギターのリフレインにシンセやピアノを重ね、
アナログ感たっぷりのアンサンブルで、ANEKDOTENをサイケ寄りにしたようなヴィンテージなサウンドを聴かせる。
母国語によるヴォーカルとともに、神秘的な土着性に包まれつつ、軽やかなリズムチェンジにオルガンが鳴り響き、
わりとハード寄りのギターが楽曲を彩る。北欧らしい涼やかな叙情性に包まれつつ、大曲でのメリハリのある構築力は
ANGLAGARDを思わせるところもあるが、もっとユルめの幻想性を感じさせるのが、このバンドの個性だろうか。
ラストは27分という大曲で、北欧シンフォとサイケの合間を行き来する、オールインストながらスリリングな展開が見事。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 北欧度・8 総合・8
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Khatsaturjan 「Armed Forces of Simantipak」
フィンランドのプログレバンド、ハチャトゥリアンの2005年作
クラシカルなものを想像させるバンド名だが、サウンドはキャッチーメロディで聴かせるシンフォニックロック。
QUEENや初期のKAYAKなどにも通じるやわらかなサウンドで、北欧独特の涼やかな叙情性も有している。
4人のメンバーが全員シンセも弾けて、しかもヴォーカルもとる。演奏、アレンジ面ともにそつがなく、
曲中におけるアイディアの多さも素晴らしい。美しいピアノやヴァイオリンなど、随所にクラシックの素養を見せつつも、
それを自分達の表現方法に上手く取り入れていて、この手にしては古くささも感じさせない。
ギターとキーボードの重ね方も凝っているのだが、うるさすぎず、むしろスッキリとした感触で心地よく聴ける。
ややクセのあるヴォーカルが好みを分けるかもしれないが、北欧プログレとしてはなかなかの力作だ。
メロディアス度・・8 プログレ度・・8 楽曲センス・・8 総合・・8
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Disconcerto Grosso」
フィンランドのプログレバンド、ハチャトゥリアンの2010年作
前作もキャッチーなメロディで聴かせる良質のシンフォニックロック作品であったが、
本作もQUEENを思わせるようなやわらかなメロディで叙情たっぷりの好作だ。
16分、18分というふたつの大曲を軸に、適度にハードなドラマティックさと、
ハモンドなどの古き良き音色のシンセワークと爽やかなコーラスが重なった
いうなれば北欧版Magellanというようなメロディックなサウンドである。
いくぶん唐突な曲展開がマイナー臭さをかもしだしているが北欧らしい力作だ。
メロディアス度・・8 プログレ度・・8 北欧度・・8 総合・・8
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Khatsaturjan 「Beast, Machine & Man」
フィンランドのプログレバンド、ハチャトゥリアンの2015年作
2005年にデビュー、本作は3作目で、シンセにストリングスを含んだシンフォニックな壮麗さに、
適度にハードなギターを乗せ、軽妙な展開力と優美なクラシカル性が同居したサウンド。
美しいピアノにキャッチーなコーラスなどは、MOON SAFARIなどにも通じる感触ながら、
こちらはよりマイナー寄りのくぐもったような空気感と、変化に富んだ展開の意外性が魅力的。
QUEENをルーツにしたオールドなロック感触を、シンフォプログレにしたという感じもあり、
10分を超える大曲も優雅な構築力で楽しめる。ジャケはイマイチだが内容は充実の傑作です。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 優雅度・・9 総合・・8
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Kimmo Porsti 「Wayfarer」
フィンランドのミュージシャン、キンモ・ポルスティによる2020年作/邦題「徒歩旅行者」
THE SAMURAI OF PROGのドラマーでもあるミュージシャンで、本作は、盟友のマルコ・ベルナルドをはじめ、
SEVEN STEPS TO THE GREEN DOOR、UPFのマレック・アーノルド、元IONA/CELESTIAL FIREのデイヴ・ベインブリッジ
ENTRANCEのロドリゴ・ゴドイ、ハイメ・ロサス、MARS HOLLOWのスティーヴ・モーク、STELLA LEE JONESの入山ひとみ他、
多数のゲストが参加。叙情的なギターにシンセやヴァイオリンを加え、優雅でクラシカルなシンフォニックロックを聴かせる。
やわらかなピアノやフルート、マイルドなヴォーカルが、繊細で涼やかな叙情を描き、MIKE OLDFIELDのようなケルティックな牧歌性も覗かせつつ、
サックスが鳴り響くジャズロック風の軽妙なナンバーなどもあり、大人の優雅さで楽しめる。全73分という力作です。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 優美度・・9 総合・・8
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Kimmo Porsti 「Past & Present」
フィンランドのミュージシャン、キンモ・ポルスティの2021年作
PAIDARIONやSAMURAI OF PROGでも活躍するドラマーで、マルチプレイヤー。本作は「過去と現在」というタイトル通り、
過去曲のリメイクと新曲を収録した作品。スペイン人ギタリストのラファエル・パシャ、KAYAKのトン・スケルペンツェルなどが参加、
叙情的なギターの旋律にシンセを重ねた、優美なシンフォニックロックを聴かせる。繊細なピアノとやわらかなフルートの音色で、
クラシカルな優雅さに包まれつつ、随所にオルガンなどのヴィンテージなプログレ感触も覗かせる。
ゲストによるエモーショナルなヴォーカルを乗せたナンバーや、フュージョン風味の軽妙なアンサンブルなど、
楽曲ごとの統一感がない分、バラエティ豊かな聴き心地で楽しめる。今作はフルートが活躍する曲も多く、
ケルティックなホイッスルにギターが絡む、ケルトロック風味のナンバーなども味わいがある。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 優美度・9 総合・8
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Rafael Pacha & Kimmo Porsti 「Views From The Inner World」
スペイン人ギタリスト、ラファエル・パチャと、THE SAMURAI OF PROGのキンモ・ポルスティのユニット。2022年作
メロウなギターの旋律に美麗なシンセ、ジェントルなヴォーカルも加わった、繊細なシンフォニックロックを聴かせる。
随所にアコースティックも含むギターに、プログレらしいきらびやかなシンセワークを重ね、ときにCAMELにも通じる
優雅なアンサンブルに、ヴァイオリンやホイッスル、フルートなどのやわらかな音色も加わった、優しい耳心地が味わえる。
ギターとシンセによるインストパートをメインに、ゲストの女性ヴォーカルが美しい歌声を響かせるナンバーなど、
THE SAMURAI OF PROGと同様に、優美で幻想的なサウンドを堪能できる好作品です。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・9 総合・8
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KINGS OF THE VALLEY
ノルウェーのサイケプログレ、キングス・オブ・ザ・ヴァレーの2021年作
オルガンが鳴り響き、わりとヘヴィなギターが重なって、ハイトーンのヴォーカルとともに、
70年代ハードロックルーツのサイケドゥーム風に始まり、10分を超える大曲では、リズムチェンジを含む
プログレ寄りの構築力と叙情性も覗かせながら、マイルドなヴォーカルがやわらかな歌声を乗せる。
ほどよいハードさとプログレな構築力という点では、URIAH HEEPなどのファンにも楽しめるだろう。
後半の12分超の大曲は、ゆるやかに始まりつつ、サイケなテンションで盛り上げる。全40分というのもアナログ的だ。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 ヴィンテージ度・8 総合・8
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KINGSTON WALL
フィンランドのサイケ・プログレ・ハードロックバンド、キングストン・ウォールの1st。1992年作
その昔ZEROレーベルから発売されていて、メタルとして聴いて拍子抜けしたという記憶があるが、
最近になってこのバンドの独自性を再評価する向きも密かに高まっているようだ。
ギター、ベース、ドラムというシンプルな三人編成で、古き良きロックの躍動感に溢れる演奏を聴かせるスタイル。
サイケロック的な生々しいアンサンブルは、彼らの演奏技術の高さを物語っており
メロディうんぬん、メタルうんぬんだけでは計れない独自の感性をその音に覗かせている。
ラストの21分の大曲は、8パートに分かれたプログレサイケ的な組曲でなかなか圧巻だ。
メロディアス度・・7 プログレ度・・7 サイケ度・・7 総合・・7.5
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KINGSTON WALL「Ⅱ」
フィンランドのサイケ・プログレ・ハードロックバンド、キングストン・ウォールの2nd。1993年作
サウンドは、前作にも感じられたアラビックなメロディをより前に押し出しつつ、
よりバンドとしての方向性を定めてきており、演奏のグルーブ感も増している。
ギターがかもし出す多彩なフレーズによりサイケロック的な浮遊感を深めていて、
手数の多いドラムのプレイも素晴らしく、三人編成とは思えない強固なノリがある。
また、前作にはなかったプログレ的な叙情性も聴かせてくれ、
アラビアンなPINK FLOYDとも言うべきスケール感を感じさせる。
メロディアス度・・7 プログレ度・・8 サイケ度・・8 総合・・8
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KINGSTON WALL「Ⅲ Tri-Logy」
キングストン・ウォールの3rd。1994年作
メンバーの死去により、バンドの最終作となった3作目。前作の延長上の音ながら、
さらなるアンサンブルの強化ととともに、曲の雰囲気にはシリアスな硬質感も出てきている。
アラビックなメロディに加え、ポストロック的でもある壮大さの中に混沌とした桃源郷が見え隠れする。
メンバーの描くビジョンへの到達か、それとも、これまもだ過程のひとつだったのか、
この深化の果てにこのバンドがどこまで高みにゆくのか、もう確かめられないのが残念だ。
ともかく、サイケの浮遊感を巧みな演奏で表現した個性的なハードロックという点で
彼らは90年代でじつに希有な存在であった。オフィシャルサイトはこちら
メロディアス度・・7 プログレ度・・8 サイケ度・・9 総合・・8
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KLOTET「En Rak Hoger」
スウェーデンのプログレバンド、クロテットの2008年作
オルガンの音色を含んだレトロさと、コロコロとした可愛いジャズロック風味で、
唐突に展開する楽曲は意外性たっぷりで面白い。アヴァンギャルドなセンスとともに、
古き良きロックの感触をポップに昇華したというような雰囲気で、難解さは感じない。
カンタベリー調の優雅さと、SAMLAのおちゃらけが合わさったようなインスト作品。
メロディアス度・・8 プログレ度・・8 アヴァンギャル度・・8 総合・・8
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Kong Lavring 「Den 2den」
ノルウェーのフォークロックバンド、コン・ラヴリングの1978年作
北欧のSPRIGUNSとも呼ばれるバンドで、美しい女性ヴォーカルの母国語の歌声に、
ホイッスルなどが鳴り響く土着的なトラッド/フォーク感触に、エレキギターやドラムによる
ロック的なアレンジを取り入れた作風。2、3分前後の小曲ばかりなので、楽曲ごとは割とあっさりしているが、
前作以上に神秘的な北欧の空気感に包まれた、牧歌的フォークロックが楽しめる好作品です。
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Kornmo 「Svartisen」
ノルウェーのプログレバンド、コルンモの2017年作
自主制作のデビューアルバムを、2022年にリミックスした再発盤で、優美なピアノに叙情的なギターと、メロトロンやムーグ、オルガンといったヴィンテージなシンセをメインに、涼やかなインストを描いてゆく。
アコースティックを含む牧歌的なギターやアナログ感あるドラムもうるさすぎず、派手な展開などもないので、わりとアンビエントな優しい耳心地でゆったりと楽しめる。
同郷の先輩であるKERRS PINKなどにも通じるが、より70年代志向のスタイルで、北欧らしい翳りを帯びた素朴な幻想性を描く好作品。
ドラマティック度・7 叙情度・8 北欧度・9 総合・8
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Kornmo 「Fimbulvinter」
ノルウェーのプログレバンド、コルンモの2021年作
Morildのギター、ベースを中心にしたバンドで、本作は3作目となる。叙情的なギターにオルガンを含む
ヴィンテージなシンセを重ね、涼やかな哀愁に包まれた、ゆったりとしたシンフォプログレを聴かせる。
メロウな泣きのギターも随所に覗かせ、Morlidにもあった北欧らしい素朴な土着性が耳心地よく、
全体的に派手な展開はないが、ゆったりとしたインストサウンドが味わえる。アルバム後半には、
19分、26分という大曲もあるが、あくまでユルめの構築性で、もっさりとした素朴な叙情に包まれる。
初期のKAIPAやKERRS PINKなど、これぞ北欧という空気感が好きな方は聴くべし。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 北欧度・9 総合・8
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KOSMOGON 「Massan」
スウェーデンのプログレバンド、ANEKDOTENのNICKLAS BARKERと、ピアニストSOPHIE LINDERによるプロジェクト、コスモゴンの2021年作
25分、22分という大曲2曲の構成で、スウェーデンの森林における夕刻~夜~早朝までを表現したというミニマルなインスト作品。
メロトロンやムーグを含むうっすらとしたシンセの重ねに、鳥の鳴き声などが重なり、TANGERINE DREAMにも通じる幻想的なシンセサウンドを展開。
神秘的な幻想性の中に、涼やかな空気感を描くセンスは素晴らしく、単なる雰囲気モノという以上にその雄大な空間性に引き込まれる。
ヴィンテージなアナログシンセにこだわった、スペイシーなシンセミュージックが好きな方は必聴です。
ドラマティック度・6 シンセ度・9 幻想度・9 総合・8
KOSMOS 「Ajan Peili」
フィンランドのプログレバンド、コスモスの2019年作
2005年にデビュー、本作は6年ぶりとなる5作目。メロトロンが幻想的に鳴り響き、繊細なギターを重ねて
母国語による女性ヴォーカルの歌声とともに、涼やかな叙情に包まれたサウンドを描く。
フォークロック寄りのキャッチーな牧歌性も覗かせるなど、楽曲自体に派手な展開はないが
北欧らしい物悲しい翳りを帯びた空気と、素朴な土着性はとても耳心地よく、魅力的だ。
ラストは11分の大曲で、メロトロンをたっぷり使いながら、アコースティックギターに乗せる
やわらかな女性ヴォーカルでしっとりとしつつ、後半は神秘的なサイケ感も加えてじわりと盛り上げる。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 北欧度・9 総合・8
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KULTIVATOR「Barndomens Stigar」
スウェーデンのジャズロックバンド、カルティヴェイターの1981年作
跳ねるような変拍子リズムの上に、プログレ的なシンセが鳴り響き、土着的なギターフレーズに重なるのんびりした笛の音が可愛らしい。
北欧のアヴァンギャルド系というと、SAMLAがまず思い出されるが、こちらはもっとカンタベリー的な優雅さがあり、ある意味メロディックだ。
どこかヨレた感じのキュートな女性ヴォーカルの歌声もいい感じで、北欧トラッド的な牧歌性を上手く取り入れた、変則ジャズロックの傑作である。
プログレ度・・8 アヴァンギャル度・・8 北欧度・・8 総合・・8
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Kvazar
ノルウェーのプログレバンド、クヴァザーの1999年作
先に聴いていた2005年の2nd「A GIANT'S LULLABY」はかなりの傑作であったが、ようやく1stをゲット。
メロウなギターとメロトロンを含んだ美しいシンセワーク、北欧らしい薄暗さをまぶしたサウンドは、
繊細にして精緻…この1stにおいても、やわらかな聴き心地の中に奥深い知的センスが光っている。
テクニックのある軽妙なドラムにしても、繊細なダイナミズムをサウンドにもたらしていて、
マイルドなヴォーカルの歌声に、決してうるさくはないが絶妙のギターワークが合わさり、
ANEKDOTENのような薄暗く幻想的な世界観を構築してゆく。じつに北欧らしい傑作だと思う。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 北欧度・・9 総合・・8.5
KVAZAR「A GIANT'S LULLABY」
ノルウェーのプログレバンド、クヴァザールの2nd。2005年作
基本はインスト中心で、音にはさほど派手さはなく、むしろぱっと聴きには地味なのだが、
よくよく聴けば、このバンドの作る世界観に引き込まれる。70年代北欧的なレトロな質感と、
中世音楽的なメロディラインが交わり、どこか靄がかかったような不思議な空間美を感じさせる。
女性ヴォーカルや、荘厳なチャント風なコーラス、あるいはジャズタッチのピアノ、
ANEKDOTENもかくやというメロトロンに、ANGLAGARD風の土着的なギターフレーズ、
それらが絶妙に顔を出し、決してうるさくならない程度に楽曲に彩りと深みとを与えている。
決して押しつけがましくない、派手すぎない、奥の深い北欧シンフォニックロックの傑作だ。
シンフォニック度・・8 しっとり薄暗度・・8 北欧度・・9 総合・・8.5
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KYTAJA 「II」
フィンランドのフォークプログレ、キタヤの2013年作
2006年にデビュー、本作は2作目。やわらかなフルートの音色にシンセを重ねたイントロ曲から、
北欧らしい涼しげな空気に包まれる。ドラムとベースを加えた2曲目は、男女ヴォーカルを乗せ、
ハーモニカの音色とともに哀愁の叙情を感じさせる、北欧らしいフォークロックが広がる。
ギターやサックスが入ると、かつてのKebneKajseにも通じるような雰囲気もありつつ、
うっすらとしたシンセが幻想的な味わいをかもしだす。楽曲は3~4分前後とシンプルで
基本はインスト中心であるが、曲によってはPEKKAのような繊細な優雅さも感じさせる。
北欧の涼やかな世界観にのんびりと浸れるような方にお薦めしたい好作品。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 北欧度・・8 総合・・7.5
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L
Lalle Larsson's Weaveworld
スウェーデンのプログレバンド、ラレ・ラーソンズ・ウィーヴワールドの2009年作
ヘンタイメタル系のELECTROCUTION 250や、KARMAKANICにも参加した才能豊かなシンセ奏者で、
Weaveworld名義でのデビュー作になる。ハードエッジなギターと適度な硬質感で聴かせる、
テクニカル・シンフォニックで、ときにジャズタッチのピアノなども含めて、センス抜群のシンセワークが素晴らしい。
フュージョンやジャズ、クラシックの素養を垣間見せつつ、クールな構築性をしっかりとメロディアスに聴かせる、
抜群のクオリティの高さが光る。ハードシンフォニックとしても、プログレフュージョンとしても楽しめる力作だ。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・8 構築センス・・9 総合・・8
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LALLE LARSSON'S WEAVEWORLD「Infinity Of Worlds」
スウェーデンのプログレバンド、ラレ・ラーソンズ・ウィーヴワールドの2010年作
かつてのU.K.を思わせるようなスタイリッシュなアンサンブルで聴かせるインストプログレの傑作。
軽やかなフュージョン/ジャズロック風味と、ときにメタリックさを匂わせる硬質な構築センスが冴え渡る。
ジャズタッチのピアノを弾くかと思えば、古き良きプログレ風味や、さらには壮麗でミステリアスな世界観も生み出す、
ラレ・ラーションのシンセワークは絶品である。たとえるならPLANET Xあたりにも通じる聴き心地もあり、
ProgMetalのリスナーなどにも楽しめる軽妙なセンスに包まれた傑作ですな。
限定盤には「室内オーケストラとメタル・バンドの為の“7つの大罪”組曲」と題された大曲のライブ音源と
未発曲などを収録したボーナスCD付き。こちらだけでもお腹いっぱいになるほどのボリュームだ。
メロディアス度・・8 スリリング度・・9 構築センス・・9 総合・・8.5
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LALLE LARSSON TRIO 「Ashen Lights」
スウェーデンのジャズロック、ラレ・ラーション・トリオの2018年作/邦題「アシェン光の神秘」
KARMAKANICなどで活躍するシンセ奏者、ラレ・ラーション率いるユニットで、ベースはTHE FLOWER KINGSのヨナス・レインゴールド、ドラムはヴァレ・ヴァールグレンが参加。
エレピを含む優美なシンセを軽やかなリズムに乗せたカンタベリー風のジャズロックから、シンセをメインにしたアンビエントなナンバーや、ヨナスの巧みなベースプレイを盛り込んだ大人のジャズ風味など、玄人好みのサウンドが味わえる。
空間性を活かすような、ラレの鍵盤さばきも涼やかでセンスが良く、うるさすぎないライブ感のあるドラムとともに、単なる技巧派ジャズロックとは異なる、あくまで優雅な聴き心地である。
ドラマティック度・7 ジャズロ度・8 優雅度・9 総合・8
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LANDBERK「Riktigt Akta」
スウェーデンのプログレバンド、ランドベルクの1st。1992年作
実のところ、昔、英語バージョンの「Lonely Land 」(ケルベロスのジャケ)を聴いたときには、
まったくピンと来なかったのだが、この母国語バージョンは土着性があってよいですね。
のっけから古めかしいメロトロンの音が鳴り響き、やわらかでもの寂しい叙情が溢れてくる。
いかにも北欧的なギターフレーズも、繊細なピアノの音も、この70年風のレトロなサウンドを
作りあげる役割を果たすために存在し、決して派手に主張しすぎることはない。
ドラマティックな盛り上がりや展開力とは無縁だが、薄暗い北欧の雰囲気をゆったりと楽しめる点で、
ANGLAGARD、ANEKDOTENへとつながる90年代以降の北欧シンフォニックのスタイルを
地味ながらも確立した作品といってもよいだろう。レトロサウンドの標榜と懐古主義の先駆け。
シンフォニック度・・7 レトロ度・・9 北欧度・・9 総合・・7.5
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LANDBERK「Indian Summer」
スウェーデンのシンフォニックロックバンド、ランドベルクの4th。1996年作
90年代北欧シンフォニック最初期に登場したこのバンド、本作はバンドの最終作にして、
ひとつの彼らの到達点を示している。ゆったりとした楽曲に、重すぎないギターが反復するコードを奏で
派手すぎないシンセワークと、そしてたゆたうような男性ヴォーカルの歌声。
もはやプログレというよりは、薄暗い質感のメロディックロックという感じのサウンドだが、
この時点ですでに後のPAATOSにつながる要素はある程度確立していると言っていい。
一聴して地味に思える音なのだが、その繊細な空気がじわじわと耳に心地よくなってくる。
プログレ度・・7 ゆったり繊細度・・9 うす暗度・・8 総合・・8
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LARS HOLLMER 「Siberian Circus」
スウェーデンのミュージシャン、ラーシュ・ホルメルの1993年作
サムラ・マンマス・マンナの中心人物として知られるアコーディオン&キーボード奏者で、
本作は、1981~88年までソロ作品からの楽曲を収録したベストアルバム的な作品。
やわらかなアコーディオンの音色に母国語の歌声を乗せた、北欧の土着的な哀愁と、
とぼけた味わいが同居する。2~3分前後の小曲主体なので、プログレ的なところはさほどないが、
1983年以降の楽曲にはシンセも使い始めていて、インストパートを優美に彩っている。
全体的には、アコーディオンをメインにした牧歌的なサウンドになごめます。全22曲、74分を収録。
アコーディオン度・・8 プログレ度・・6 北欧度・・8 総合・・7.5
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Lars Hollmer 「Viandra」
スウェーデンのミュージシャン、ラーシュ・ホルメルの2007年作
Samla Mammas Mannaのアコーディオン奏者として知られるミュージシャンで、
やわらかなアコーディオンの音色にシンセを重ねた、心安らぐような優しいインストサウンド。
哀愁を感じさせる大人の叙情や、ときにサムラを思わせるユーモラスなノリも含ませつつ
クラシカルなピアノやヴァイオリンも加わった優雅なナンバーや、チェンバーロック的な感触など
1~4分前後の小曲を主体に、飽きずに楽しめるのは、アレンジとメロディのセンスの賜物だろう。
あくまでアコーディオンをメインにしながら、涼やかで優美な空気を作り出す、才人の音楽である。
アコーディオン度・・9 プログレ度・・6 哀愁の叙情度・・8 総合・・7.5
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Laughing Stock 「ZERO ACTS 1 & 2」
ノルウェーのプログレバンド、ラッフィング・ストックの2021年作
2018年にデビューし、3作目となる。ZEROという名の少年を題材にしたオリジナルストーリーのコンセプトアルバムで、
物悲しいギターとマイルドなヴォーカル、うっすらとしたシンセとともに、ポストプログレ的な繊細な歌もの感触に包まれる。
泣きのメロディを奏でるギターとゲストによるヴァイオリン、チェロなどが加わった、シンフォニックな美しさもあり、
派手さはないものの、MARILLIONや、ドイツのSYLVANなどにも通じる叙情美で、しっとりと鑑賞できる。
女性ヴォーカルを迎えた優美なナンバーも含めて、夢見心地のサウンドにゆったりと浸れます。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優美度・8 総合・7.5
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Laughing Stock 「ZERO ACTS 3 & 4」
ノルウェーのプログレバンド、ラッフィング・ストックの2022年作
前作の続編となるコンセプト作の完結編で、うっすらとしたシンセと繊細なギター、ジェントルなヴォーカルによる、
ゆったりとした歌もの的なサウンドは前作同様。物悲しい空気に包まれながら、映画的でもある流れも感じさせ、
メロウなギターにシンセが重なると、シンフォニックでメロウな叙情美とともに耳心地よく鑑賞できる。
美しい女性ヴォーカルにストリングスも加えた、しっとりと優雅なナンバーや、10分を超える大曲では、
いくぶんのハードさとともにプログレらしい構築力でじっくりと聴かせる。2枚まとめて浸りたい作品です。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 優美度・8 総合・7.5
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Lauri Porra
現STRATOVARIUSのベーシスト、ラウリー・ポラーのソロ作。2006作
作曲家シベリウスを先祖にもつ彼は音楽院で学んだ才人でもある。
本作で聴けるのはメタルではなく、クラシカルなピアノやジャズテイストなどを織りまぜた
幅広い音楽性で、北欧的な涼やかな情緒も含めて、むしろプログレに近い感触である。
トランペットやサックスの音色などはいかにもジャズ調であるが、型にはまらない柔軟な感性と
フィンランドらしい土着性と哀愁を音に感じさせるあたりは、たとえばPEKKAあたりにも通じる
天才肌のセンスがあるかもしれない。彼の音楽的才能の豊かさを楽しめる一枚だ。
フィンラン度・・8 メタル度・・1 むしろプログレ度・・8 総合・・8
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LAURI PORRA「All Children Have Super Powers」
STRATOVARIUSのベーシスト、ラウリ・ポラーのソロアルバム。2008作
2005年からストヴァリに加わったこのベーシストは、実は音楽院出身であのシベリウスを先祖に持つ、
ジャズやクラシックの素養もある才人であった。一見して地味なジャケットながら、このアルバムにおける音楽性はじつに幅広く、
薄暗い叙情を聴かせるしっとりとした曲調はPINK FLOYD的でもあり、アコースティカルな素朴さとメロディには
北欧的な土着性も感じられて耳に優しい。トランペットの音色やクラシカルなピアノ、美しいシンセにメロウなギターが加わると
北欧シンフォニックロックの質感にもなる。女性コーラスの入ったヒーリング調の曲などもあり、
プログレリスナーにも勧められる繊細でやわらかな作品である。
むしろプログレ度・・8 メタル度・・3 薄暗叙情度・・8 総合・・8
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LIFE
スウェーデンのプログレバンド、ライフの1970年作
本作が唯一の作品で、2013年盤はスウェーデン語盤と英語盤の2枚組仕様になっている。
優雅なピアノのつまびきに、母国語の牧歌的なヴォーカルで聴かせる素朴にサウンドに、
ときにオーケストラアレンジが加わると、クラシカルロック的なスケール感に包まれる。
アートロック的な優雅さと、ロックとしての土臭いアナログ感覚が同居していて、
いわば、ブリティッシュロックの北欧的解釈というような聴き方でも楽しめる。
ブルージーでアートでクラシカルで素朴という、それぞれの要素を上手く融合させたセンスも、
年代を考えればじつに見事である。北欧初期プログレ、アートロックの大傑作。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 北欧度・・8 総合・・8.5
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Life on Earth! 「Look!! There Is Life on Earth!」
スウェーデンのサイケバンド、ライフ・オン・アースの2007年作
のっけからフルートが荒々しく吹き鳴らされ、パーカッションのリズムにどっしりとしたベース、
ユルめのヴォーカルが加わって、牧歌的な北欧サイケロックが広がってゆく。
70年代のヒッピー的なおおらかさと、東洋的な世界観を感じさせるスケール感が合わさって、
しっかりとしたアンサンブルを構築する演奏力とともに、ゆったりと聴き入れるサウンドだ。
同郷のDungenのプログレ寄りの叙情に比べると、こちらはよりフリーキーなセンスを覗かせつつ、
フォーク寄りの素朴さも含んでいて、ヴァイオリンが優雅に鳴り響きフルートの音色も美しい。
ラストの28分に及ぶ、シューゲイズ的なノイズにはサイケデリックバンドとしての矜持が感じられる。
ドラマティック度・・8 サイケ度・・8 ユルく深く度・・8 総合・・8
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Life on Earth! 「A Space Water Loop」
スウェーデンのサイケバンド、ライフ・オン・アースの2009年作
やわらかなシンセによるアレンジも加わった、ゆったりとした叙情で聴かせるサイケロックで、
初期Gongあたりを思わせるユルさに、いくぶんアッパーな感触もまじえたサウンドが楽しめる。
ドラム入りの曲が増えたことでロック色が増し、前作のフォーキーないかがわしさに比べると
ある意味、ずいぶん聴きやすくなったと言える。雰囲気としては、よりDungenに近づいたかもしれない。
曲によってはフォークルーツのアコースティカルな素朴さも残していて、男女ヴォーカルが入ってきたり、
フルートやヴァイオリンの音色になごみつつ、のんびりまったり耳を傾けられる好作品です。
ドラマティック度・・7 サイケ度・・7 ユル叙情度・・8 総合・・8
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LIQUID SCARLET
スウェーデンのプログレバンド、リキッド・スカーレットの2004年作
女性シンセ奏者を含む5人編成で、オルガンやメロトロンなどのヴィンテージなシンセにギターを重ね、
マイルドなヴォーカルを乗せて、ANEKDOTENなどにも通じる翳りを帯びた北欧らしいサウンドを描く。
よく牧歌的なユルさと、アナログ感あるアンサンブルとともに、スリリングなプログレ感が同居していて、
7~8分前後の長曲もじっくりと聴かせる懐の深さがある。随所にメロウなギターの旋律も覗かせて、
メロトロンにフルートも鳴り響く、KING CRIMSONを思わせるようなパートもあってニヤりとなる。
派手なところはさほどないが、アネクド&クリムゾン系の北欧プログレが好きな方はチェックですな。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 ヴィンテージ度・・8 総合・・8
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Lucifer Was 「Underground and Beyond」
スウェーデンのヴィンテージロック、ルシファー・ワズの1997年作
ブルージーなギターにフルートが鳴り響く、70年代テイストたっぷりのサウンドで、
JETHRO TULLを思わせるような、ブルーズロックとしても楽しめる。
なにせフルート奏者が二人にいるので、キーボードの代わりというように
叙情的なフルートが吹き鳴らされ、ギターとのよいアクセントになっている。
楽曲はほとんどが3~4分前後で、プログレというには少し物足りなさもあるが、
レトロなヴィンテージロックが好きな方にはたまらないサウンドだろう。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 古き良き度・・9 総合・・7.5
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LUCIFER WAS「In Anadi's Bower」
ノルウェーのヴィンテージロックバンド、ルシファー・ワズの2000年作
二人のメロトロン奏者にフルート二人を含む8人編成で、70年代を思わせるレトロなロックをやっている。
ブルージーなギターに絡むフルートが鳴り響くと、やはりJETHRO TULLを思わせるような音だが、
そこにメロトロンが加わると北欧的な薄暗い叙情がほのかに加わるのが良い。
近作に比べるといくぶん大味ながら、フルート、メロトロン入りのレトロロックが好きな方はどうぞ。
メロディアス度・・7 プログレ度・・7 ヴィンテージ度・・8 総合・・7.5
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Lucifer Was 「Blues From Hellah」
ノルウェーのヴィンテージロック、ルシファー・ワズの2004年作
1997年にデビュー、本作3作目。艶やかなヴァイオリン、チェロの音色にフルートが絡み、
ブルージーなギターにジェントルなヴォーカルを乗せた、ヴィンテージなサウンドが広がってゆく。
ほどよくハードなギターをバックにフルートが鳴り響くところは、Jethro Tullなどにも通じる感触で
キャリアのあるバンドらしいどっしりとした演奏にはマイナー臭さはほとんど感じさせない。
ときにメロトロンなどのシンセも加え、ストリングスによる優雅なアレンジも含んだ、
いわば「シンフォニックなヴィンテージロック」という聴き心地でも楽しめる。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 ヴィンテージ度・・9 総合・・8
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Lucifer Was「The Divine Tree」
ノルウェーのヴィンテージロック、ルシファー・ワズの2007年作
4作目となる本作も、オールドな感触のギターに吹き鳴らされるフルート、オルガンを含むシンセに
ジェントルなヴォーカルを乗せて、70年代スタイルのヴィンテージなサウンドを聴かせる。
プログレというよりは、やはりブルージーなブリティッシュロック風の感触ではあるが、
ラストは11分近い大曲で、マイルドなヴォーカルにアコースティックギターとオルガンで、
牧歌的な叙情性に包まれる。大人の哀愁を感じさせる北欧ヴィンテージロックの逸品だ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 ヴィンテージ度・・9 総合・・8
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LUCIFER WAS「The Crown of Creation」
ノルウェーのヴィンテージロックバンド、ルシファー・ワズの2010年作
結成は70年代でありながらいったん解散し、1997年に復活したというこのバンド、
本作はフルートやハモンド、メロトロンなどを使用したレトロなサイケプログレに、
男女ヴォーカルとオーケストラ入りのロックオペラ的な壮大さを付加した、異色の力作だ。
2部構成に分かれたシアトリカルな大作主義と、決して嘘くさくないヴィンテージロック感覚、
そこに優雅なクラシカルさが盛り込まれているのだから、濃密なことこのうえない。
大仰なレトロ系プログレとしても懐古的なシンフォニックロックとしても楽しめる。
シンフォニック度・・8 レトロプログレ度・・8 ロックオペラ度・・9 総合・・8
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Lucifer Was 「Dies Grows」
ノルウェーのヴィンテージロック、ルシファー・ワズの2014年作
結成は70年代というベテランで、二人のフルート奏者にツインギター、キーボードを含む大所帯の編成。
70年代的なブルージーなギターに、やわらかなフルートの音色、オルガンやメロトロンが加わった、
オールドな北欧ロックというサウンド。サイケロック的な浮遊感に妖しげな雰囲気もいくぶん漂わせつつ、
ヴォーカルはそれなりに力量があって、ハードロック的でもあるキャッチーな聴きやすさもあるという。
今回は楽曲は3~4分台と比較的シンプルなこともあって、プログレ方面のリスナーにはやや物足りないかもしれないが、
かつてのBLACK WIDOWあたりが好きな方には、古き良きオルガン入りロックとしてけっこう楽しめるだろう。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 オールドロック度・・9 総合・・7.5
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LUCIFER WAS 「Morning Star」
ノルウェーのヴィンテージロック、ルシファー・ワズの2017年作
1997年にデビュー、本作は7作目となる。アナログ感たっぷりのハードなギターにオルガンを含むシンセ、
ジェントルなヴォーカルを乗せた、70年代英国ハードロックルーツのヴィンテージなサウンドを聴かせる。
やわらかなオルガンにフルートが鳴り響くところは、JETHRO TULLなどを思わせる感触もあり、
叙情的なギターフレーズを乗せた厚みのあるサウンドで、牧歌的なハードプログレとしても楽しめる。
チェンバロやピアノが優雅に鳴り響くナンバーはシンフォニックロック的でもあり、ラストの15分を超える大曲は、
オルガンに泣きのギターが重なり、朗々としたヴォーカルとともにドラマティックな味わいに包まれる。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 ヴィンテージ度・・9 総合・・8
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LUGNORO「Annorstades」
スウェーデンのヴィンテージロック、ルグノロの2012年作
レトロなオルガンの音色が鳴り響き、アナログ感たっぷりのグルーヴィな演奏で、
Black BonzoやDiagonalあたりを思わせる、英国70'sロックを継承する古き良きスタイル。
サイケ気味の浮遊感と、プログレ、アートロック的な奔放な雰囲気もあって、
8分、9分、11分という大曲も、起伏に富んだリズムと演奏力で飽きずに楽しめる。
メロディック度・・7 プログレ度・・8 アナログ度・・9 総合・・8
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M
MAGIC PIE「Motions of Desire」
ノルウェーのシンフォニックロックバンド、マジック・パイの1st。2005年作
オルガンなどの古き良きシンセに、現代風のややハードなギターが合わさった構築性のあるメロディアスなサウンド。
テクニカルな展開の後に現れる、キャッチーなメロディが実に爽快で、アレンジの思い切りの良さも大きな魅力。
懐古主義と現代的なウィットという点ではSPOCK'S BEARDにも通じるものがあり、
とくにギターの奏でるメロディはTRANSATLANTICでのロイネ・ストルトをも思わせる。
しょっぱなに20分の大曲をもってきたり、ラストには組曲方式と、およそ新人離れした
自信に満ちていて、このシンプルなりんごジャケからは想像もつかない満腹感が味わえる。
メロディアス度・・8 プログレ度・・8 キャッチーかつテクニカル度・・9 総合・・8
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MAGIC PIE「Circus of Life」
ノルウェーのシンフォニックロックバンド、マジック・パイの2nd。2007年作
今作はのっけから45分の一大組曲で、人生のサーカスというテーマのもと、
メロディックな叙情を聴かせつつ、ときにテクニカルにたたみかける、濃密なサウンドを展開。
このバンドのサウンドには、美しいメロディの中にもどこかとぼけた味わいや哀愁があり、
人間味を感じさせる知的さと確かな演奏力、そしてセンスとが備わっているのが素晴らしい。
二人の専任ヴォーカルのやわらかな歌声や、キャッチーなコーラスワークも心地よく、
そこにハードシンフォニック的な構築性と展開力が合わさった、これぞまさに力作。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・8 構築度・・9 総合・・8
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MAGIC PIE「The Suffering Joy」
ノルウェーのシンフォニックロックバンド、マジック・パイの3rd。2011年作
過去2作も素晴らしい内容の傑作だったが、本作も24分の組曲で幕を開け、
ProgMetal的なテクニカルな構築センスとドラマティックな展開美で聴かせてくれる。
適度にハードなギターのセンスあるフレーズや、しっかりとプログレしているシンセワークに
キャッチーなヴォーカル、コーラスハーモニーでメロディックな聴き心地と叙情性を描き出す。
緩急のついた構成力とメロディの魅力で、現在北欧シンフォニックの筆頭格といえるバンドです。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・8 構築度・・9 総合・・8
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Magic Pie 「King for a Day」
ノルウェーのシンフォニックロックバンド、マジック・パイの2015年作
過去三作はいずれもクオリティの高い傑作であったが、4作目となる本作も美しいシンセに
キャッチーなヴォーカルメロディを乗せて、爽快なフックと展開力で描かれる見事なサウンドだ。
適度なハードさと抜けの良いメロディアス性は、Neal Morseなどのアメリカ系プログレの感触であるが、
こちらはより起伏のある展開力と切り返しの多さで、知的な構築センスと緻密なアレンジが素晴らしい。
本作からシンセ奏者も替わっているようだが、ムーグシンセの音色など古き良きプログレ性がUPしていて、
バンドのカラーに上手く融合させている。ラストは27分を超える大曲で、テクニカルかつキャッチーな
このバンドの魅力がすべて詰まった軽妙な展開力が味わえる。濃密な傑作と言う他にない。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 構築センス・・9 総合・・8
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Magic Pie 「Fragments of the 5th Element」
ノルウェーのプログレバンド、マジック・パイの2019年作
2005年にデビュー、過去作はいずれも高品質な傑作であったが、4年ぶり5作目となる本作も、
美しいシンセアレンジに適度にハードなギターとマイルドなヴォーカルを乗せ、優美な叙情に包まれた、
北欧らしいシンフォプログレを聴かせる。前半は比較的コンパクトに仕上げられたナンバーで、
キャッチーなコーラスハーモニーとともに、A.C.Tなどに通じるスタイリッシュな味わいで楽しめる。
随所に聴かせる流麗なギタープレイなども含めて、演奏力の高さもさすが。ラストは22分の大曲で、
テクニカルな構築力とシンフォニックロックとしての優雅なメロディアス性が結実した見事なサウンド。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 優雅度・・9 総合・・8
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Magnolia 「Falska Vagar」
スウェーデンのロックバンド、マグノリアの2008年作
ギター、ベース、ドラムというトリオ編成で、ブルージーな味わいの
70年代的なハードロックを聴かせる。スウェーデン語の歌声も含めて
TRETTIOARIGA KRIGETにも通じる感触だが、こちらはよりシンプルなスタイルで
ときおりオルガンの音色も含みながら、ハード・サイケデリックな味わいもある。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・6 70's度・・8 総合・・7.5
MAJOR PARKINSON 「TWILIGHT CINEMA」
ノルウェーのプログレ・アートロック、メジャー・パーキンソンの2014年作
2008年にデビューし、3作目となる。ツインギターにシンセを含む6人編成で、ジャズロック調の優雅なアンサンブルに
ピアノを含む優美なシンセにオーケストラルなアレンジも加え、語りのようなジェントルなヴォーカルとともに、
独自のアートロックを展開。ほどよいヴィンテージ感とハード過ぎないサウンドが耳心地よく、
随所にプログレ的な展開力や、演劇的な歌声も含めたシネマティックなストーリー性も感じさせる。
インダストリアル調のナンバーや、ロックオペラ的な優雅さもあって、ミクスチャーなロックが楽しめる。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 シアトリカル度・8 総合・7.5
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Makajodama
スウェーデンのチェンバー・プログレバンド、マカジョダマの2009年作
バンド名も面白いが、「Post Rock meets Prpg Rock」といううたい文句通り、ポストロック的な世界観と
レトロなプログレ感覚が合わさったようなインスト主体のサウンドも、これがなかなか面白い。
ヴァイオリン、チェロ、サックスなどがギターやシンセと絡み、薄暗いチェンバーロックを基本にしつつ、
クリムゾン的なヘヴィプログレの質感もあるという。 どことなく日本の美狂乱っぽくもあったりする。
この妖しさと暗さは聴いていて引き込まれます。 メンバーが影響を受けたバンドとして、Dmitri Shostakovich、
King Crimson、Can、Univers Zero、Algarnas Tradgard、Godspeed You! Black Emperor、Third
Ear Bandなどの名が。
ちなみにANEKDOTENのメンバーが数曲でミックスを担当しているとか。
メロディアス度・・7 チェンバー度・・8 薄暗度・・9 総合・・8
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Malady 「Toinen Toista」
フィンランドのプログレバンド、マラディの2018年作
2015年にデビュー、本作は2作目。メロトロンやオルガンなどヴィンテージなシンセに叙情的なギターの旋律、
母国語によるジェントルなヴォーカルを乗せて、北欧らしい涼やかな土着性に包まれたサウンドを聴かせる。
ときにヴァイオリンなどのストリングスや、やわらかなフルートの音色も加わった優雅な耳心地で
濃密すぎない素朴さを含んだ、Kerrs Pinkあたりにも通じる幻想的なシンフォニックロックが楽しめる。
後半は23分におよぶ大曲で、メロウなギターにエレピやハモンドなどを乗せて、ゆったりと構築する。
派手さはあまりないが、優しい味わいの北欧プログレが好きな方にはお薦めの逸品です。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 北欧度・・9 総合・・8
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Malady 「Ainavihantaa」
フィンランドのプログレバンド、マラディの2021年作
2015年にデビュー、3作目となる。幻想的なシンフォニックロックだった前作から、今作はクリムゾン風の出だしで、
オルガンやメロトロンにムーグシンセも鳴り響く、ヴィンテージな感触がぐっと強まっている。
マイルドな大人のヴォーカルにサックスや、ときにやわらかなフルートの音色も加わって、
哀愁を含んだ涼やかな叙情に包まれながら、随所に北欧らしい土着性も感じさせる。
全37分と少々短めだが、クリムゾン風の北欧プログレという感じで楽しめる逸品だ。
ドラマティック度・7 プログレ度・8 叙情度・8 総合・8
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MANGROVE 「A Distant Dream Of Tomorrow」
スウェーデンのヴィンテージロックバンド、マングローブの2010年作
オランダのプログレバンドとは同名異バンド、こちらはギター、ベース、ドラムのトリオ編成で
いかにも70年代スタイルのレトロなサイケ・ハードロックをやっている。
アナログ感たっぷりのギターとノリのよいリズムアンサンブルでたたみかける
往年のツェッペリンばりのサウンドである。ここにオルガンが入るなど、個人的には
もう少しプログレ寄りだと嬉しいのだが。70'sスタイルが好きな方はチェックすべし。
メロディック度・・7 プログレ度・・6 レトロロック度・・9 総合・・7.5
MANTICORE 「Time to Fly」
スウェーデンのプログレバンド、マンティコアの1993年作
AnglagardやAnekdotenといったバンドが登場し、にわかに活気づき始めた北欧の90年代シーンにおいて、
続いて登場したのがこのバンド。いかにもファンタジックなジャケとマニア受けしそうなバンド名、
そしてサウンドの方もメロトロンやオルガンをたっぷりと使った、マイナー臭いシンフォニックロック。
古き良きプログレ復興のロマンを感じさせるという点では、イタリアのカリオペやイル・カステッロ・ディ・アトランテなどにも通じる、
つまりは上等なB級バンドであり、こうしたバンド登場こそがじつは厚みのあるムーブメントには必要だったわけだ。
随所にYesやEL&P風味も含みつつ、スリリングさの希薄な牧歌的な雰囲気は、なかなか心地よく聴ける。
このバンドを発掘したのがアメリカのレーベルLasers Edgeであったことも、時代的に考えるととても興味深い。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 北欧度・・7 総合・・7.5
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Manticore 「Next Step: Flight 19」
スウェーデンのプログレバンド、マンティコアの2018年作
1994年に1作を残して消えたバンドの、24年ぶりとなる復活の2作目。ジャケにはオッサンになったメンバーの姿が。
メロトロン鳴り響くイントロから、叙情的なギターとヴィンテージなシンセで、優雅なシンフォプログレを展開する。
10分の大曲では、マイルドなヴォーカルを乗せたキャッチーなプログレハード風から、メロウなギターにメロトロンが重なり、GENESISばりの叙情を覗かせる。
YES「Release Release 」、JOHN WETTON「Cold Is The Night 」のカヴァーなども、70年代ブリティッシュロック風のやわらかな叙情を再現している。
オヤジになって復活した、北欧プログレの寡作バンド。2022年には新作となる「Elements」を発表している。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 北欧度・7 総合・7.5
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Mantric Muse
デンマークのサイケプログレ、マントリック・ミューズの2013年作
シーケンサー的なエレクトロアレンジと、メロディックなギターを乗せて聴かせる、カラフルなサイケプログレ。
OZRIC TENTACLESあたりに通じる雰囲気であるが、スペイシーというよりは海の中を感じさせるような
どこかおおらかな聴き心地で、アッパーすぎないところがポイントか。10分を超える大曲もあり、
オールインストなのでいくぶん長尺感はあるが、オズテンスタイルのサイケロックが好きならば楽しめるだろう。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 サイケ度・・8 総合・・7.5
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MARCO BERNARD & KIMMO PORSTI 「Gulliver」
フィンランドのミュージシャン、マルコ・ベルナルドとキンモ・ポルスティによる2020年作
THE SAMURAI OF PROGの中心人物として知られる二人で、本作はガリバー旅行記をテーマにしたコンセプト作。
LATTE E MIELEのオリヴィエロ・ラカニータ、SEVEN STEPS TO THE GREEN DOOR、UPFのマレック・アーノルド
PAIDARIONのフルート奏者や、HOSTSONATENのルカ・スケラーニ、MUSEO ROSENBACHのステファノ・ガリフィなど
多数のゲストが参加。プログレらしい優美なシンセワークとメロウなギター、ジェントルなヴォーカルを乗せて、
ゆったりとした叙情に包まれたシンフォプログレを展開。小人国、巨人国、飛び島、馬の国という、物語の四つの冒険を
それぞれの大曲で表現。ときにフルートやヴァイオリンの優雅な音色も加わって、物語的なドラマ性を描くような
じっくりとした構築性とともに、ほのぼのとしたファンタジックなサウンドが楽しめる。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 優美度・・9 総合・・8
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MARCO BERNARD & KIMMO PORSTI 「La Tierra」
フィンランドのミュージシャン、マルコ・ベルナルドとキンモ・ポルスティによる2020年作
Samurai of Progでも活躍する二人のユニットで、この名義としては「GULLIVER」に続く2作目。
地球をテーマにした雄大なシンフォニックロックで、やわらかなシンセにピアノ、ヴァイオリンも鳴り響き、
女性ヴォーカルの歌声を乗せた1曲目から、優雅でキャッチーなシンフォプログレに浸ることができる。
LATTE E MIELEのオリヴィエロ・ラカニータ、Senogulのエドゥアルド・サルエナ、 Mad Crayonのアレッサンドロ・ディ・ベネデティ
ション・ハケット、Jinetes Negrosのオクタヴィオ・スタンパリアなど、多数のゲストが参加。ラストは30分を超える大曲で、
元ENTRANCEのハイメ・ロサスのきらびやかなシンセに、ハイメ・スカルペオの歌声を乗せて優美な叙情に包まれる。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 優美度・・9 総合・・8
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MARCO BERNARD & KIMMO PORSTI「Robinson Crusoe」
フィンランドのミュージシャン、マルコ・ベルナルドとキンモ・ポルスティによる2021年作
THE SAMURAI OF PROGの中心人物で、本作は「ロビンソン・クルーソー」をテーマにしたコンセプト作。
元LATTE E MIELEのオリヴィエロ・ラカグニア、Jinetes Negrosのオクタヴィオ・スタンパリダ、スティーブ・ハケット、ジョン・ハケット
MAD CRAYONのアレッサンドロ・ベネデッティ、HOSTSONATENのルカ・シェラーニ、Museo Rosenbachのステファノ・ガリフィ、
Ubi Maiorの女性ギタリスト、Greenwallのアンドレア・パヴォーニなど、多数のゲストが参加。優美なフルートにヴァイオリン、
メロウなギターの旋律にシンセを重ね、優雅なシンフォプログレを展開する。クラシカルなピアノによる小曲から、
10分を超える大曲では、KAYAKのバート・シュワートマンの歌声も加わり、ドラマティックな叙情を描いてゆく。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 優雅度・8 総合・8
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MARIUS LEIRANES 「LANGTIDSPERSPEKTIV」
ノルウェーのミュージシャン、マリウス・レイラネスの2021年作
PIXE NINJAのベース&シンセ奏者による初のソロ作品で、うっすらとした涼やかなシンセに叙情的なギターを乗せた
優美なインストサウンドを聴かせる。ヴィンテージでエレクトロなシンセによるスペイシーな味わいは、PIXE NINJAや、
マティアス・オルソン関連作に通じる聴き心地であるが、こちらはより内省的な世界観で、北欧らしい涼やかな空気を描く。
全33分とやや短いが、ラストは10分の大曲で、Klaus Shulzeばりの幻想的なシンセミュージックが味わえる。
Panzerpappaのドラムや、Suburban Savagesのギター、WHITE WILLOWのフルート奏者などがゲスト参加。
ドラマティック度・6 プログレ度・7 涼やか度・9 総合・7.5
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Mater Thallium「Abandoned By the Sun」
ノルウェーのプログレバンド、マーテル・タリウムの2014年作
オルガンやメロトロンが鳴り響き、ハードなギターとともに聴かせる70年代回帰型のスタイル。
かつてのBlack Sabbathを受け継ぐドゥーミィでダークな世界観と、北欧らしい薄暗い叙情が合わさった聴き心地で
BLACK BONZOやLUCIFER WASなどに比べると、ホラーやオカルト的な匂いが強いという点では、
MORTE MACABREやGoblin、あるいはBlack Widowレーベル系のファンなどにはとても楽しめるだろう。
北欧のハードプログレシーンにまたしても期待の新鋭が現れた。ANEKDOTENやAnima Morteなどが好きな方もぜひ。
ドラマティック度・・8 ハードプログレ度・・8 妖しげ度・・8 総合・・8
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MATS GLENNGARD 「KOSTENLAGE」
スウェーデンのミュージシャン、マッツ・グレンガードの1972年作
Kebnekajseのヴァイオリン&ギターとして知られるミュージシャンで、70年代唯一のソロアルバム。
アコースティックギターに母国語による歌声を乗せた牧歌的なナンバーから始まりつつ、
土着的な旋律を奏でるヴァイオリンとともに、北欧らしい涼やかな空気を描いてゆく。
フリーキーなギターが加わると、サイケな浮遊感に包まれ、初期のケブネカイゼを思わせつつ、
バンジョーのつまびきやピアノの旋律も加わって、優しく牧歌的な聴き心地が楽しめる。
ラストは10分を超える大曲で、オルガンも加えたアンサンブルでプログレ風味も覗かせる。
牧歌的度・9 プログレ度・7 北欧度・9 総合・7.5
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MATS/MORGAN「TRENDS AND OTHER DISEASES」
北欧の変態・・・もとい超絶コンビ、マッツ・アンド・モルガンの1st。1996年作
軽やかな変拍子をたたき出すモルガ・アグレンンのドラムに、全盲のキーボーディスト、マッツ・オーベリの奏でる
不思議な反復メロディが乗る、ポップな浮遊感とエキセントリックな感性に包まれたじつに新鮮な音楽をやっている。
楽曲はアヴァンギャルドであるが、人懐こいメロディも多く、本人たちの言葉を借りれば「火星のヒットソング」をやっているという通り、
常人離れしたセンスによるアヴァン・ポップが楽しめる。MESHUGGAHのフレドリック・トーテンダルがゲスト参加したナンバーは、
ザクザクのギターが加わった異様なメタル感で、ある意味異色の出来である。ちなみに再発盤では曲順も変更され、
楽曲も一部入れ替わりジャケも変更されていて、ずいぶん印象が変わっている。右はオリジナル盤のジャケ。
メロディアス度・・7 プログレ度・・8 アヴァンギャル度・・9 総合・・8
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MATS/MORGAN「LIVE」
スウェーデンの超絶テクニカルコンビ、マッツ・アンド・モルガンのライブ作、2001年作
ザッパと共演したことでも知られる彼らだが、このライブでも期待にたがわぬ圧倒的な演奏を披露。
テクニカルで高度な変拍子バリバリの楽曲を、ユーモラスに、余裕すら感じる演奏で突っ走る。
あえてジャンル分けするのなら、ジャズロックだが、メロディが前に出ているので退屈することなく聴け、
しかも真剣に聴けば聴くほどその驚愕の演奏力に腰を抜かす、という具合。
モルガンのドラムはマイク・ポートノイばりに手数が多く、正確で豊かな表現力は素晴らしい。
多様な音色を操るマッツのキーボードも歌がなくとも十分フロント楽器たりえている。
メロディアス度・・6 テクニカル楽曲度・・10 演奏力・・10 総合・・9
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MATS/MORGAN「ON AIR WITH GUESTS」
スウェーデンの変態アヴァンデュオ、マッツ・アンド・モルガンのライブアルバム。2002作。
彼らの作り出す異常にして人智を超えたような楽曲群はライブでこそ本領が発揮されるらしく
「本当にコレライブでやってんの?」と尋ねたくなるような演奏が繰り広げられている。
コロコロとした可愛らしいメロディをとんでもない変拍子に乗せたり、反復するリズムをずらし、
聴覚を麻痺させるようなアレンジをこなすかと思えばMESHUGGAHのフレドリック・トーテンダルをゲストに、
ゴリゴリギターの変態メタルまで「なんだコリャ」の連続で、聴き終える頃にはあっけにとられている。
とくにモルガンのドラムはものすごく、手数、切れ味ともに信じがたいレベル。
これを本当に曲として覚えて叩いているのなら、彼は宇宙人といってよいかもしれない。
変態音楽愛好家、テクニカルプログレ好きはまず聴くこと。悶絶してください。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・10 変態度・・10 総合・・9
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MATS/MORGAN BAND「THANKS FOR A FLYNG WITH US」
スウェーデンのアヴァンプログレバンド、マッツ・アンド・モルガン・バンドの2005年作
今回から正式にギター、ベースが加わり、5人編成でのバンド名義のアルバムとなった。
サウンドの方はこれまでと変わらず、たたみかける変拍子リズムやコミカルなキーボードの音色、
反芻するメロディなどをまじえたほどよく変態気味のチェンバー、アヴァンロック。
ずっと聴いていると脳内トリップできそうな感覚にも陥る、どこかスペイシーなサウンドで
既成のロックの枠組みにはまったくとらわれない独創的な(異常な)音楽が楽しめる。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・8 変態度・・9 総合・・8
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MATS/MORGAN BAND「Heat Beats Live」
スウェーデンの超絶アヴァン・レコメンバンド、マッツ・アンド・モルガン・バンドのライブ音源集。2008作
全盲のシンセ奏者マッツと、KAIPAなどでも活躍する凄腕ドラマー、モルガンのユニットとして
1996年にデビュー、アルバムを2作出した後、2005年バンド編成となり現在までに2作を発表。
本作はライブ音源としては3作目で2005、2007年のライブを収録。とぼけた味わいと緊張感が同居した、
曲になっているのか、なっていないのかと、一聴して理解に苦しむようなアヴァンギャルドさと
即興感たっぷりの演奏を繰り広げている。DVDには1991~2007年までのライブ映像などを収録。
モルガンの超絶的なドラムプレイを中心に、視覚的にもこの個性的な連中の演奏が楽しめる。
ライブ演奏・・8 即興度・・8 アヴァンギャル度・・9 総合・・8.5
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MATS MORGAN BAND「The Music or the Money」
スウェーデンのアヴァン(ポップ)ロックバンド、マッツ・モルガン・バンドの2010作
もともとが2枚組であった2ndにボーナス12曲を追加し、ジャケや曲順も変更した2010年新装盤。
全盲のシンセ弾きマッツの常人離れしたシンセワークと、モルガンの技巧的かつ軽妙なドラム、
そして、バンド編成になっての楽曲では、ベースを含めたアンサンブルにも磨きがかかり、
ただアヴァンギャルドなだけではなく、音楽的にもひとつ芯が通ってきたという印象がある。
本作では、マッツの曲とモルガンの曲、そしてバンド編成の曲がバラバラに入っていて、
アートな感性の宇宙人的奇妙さであったり、超絶でテクニカルかつコミカルであったりする…
一括りで言うなら「楽しいヘンタイ」というような、斬新なサウンドが目一杯詰まっている。
頭で理解しようとは思わず、ノリと感性、右脳で楽しむ、ワンダーなアヴァン・プログレ作品である。
テクニカル度・・9 アヴァンギャル度・・9 ヘンタイ度・・9 総合・・9
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Mats/Morgan 「Schack Tati」
スウェーデンのアヴァンデュオ、マッツ・アンド・モルガンの2015年作
ここ数作はバンド名義での作品だったので、純粋なユニットとしてはずいぶん久しぶりのアルバムとなる。
2~3分前後の小曲を中心に、きらきらとしたシンセにデジタリィなアレンジを含んだドラムを中心に聴かせるサウンド。
モルガン・オーギュレンはドラムだけでなく、ギターにベースも担当、息子のアルヴィン(10歳)もヴォーカルで参加、
可愛らしい歌声を披露している。いつものような軽快で、アヴァンギャルドなポップ性もありつつ、マッツのシンセとハーモニカで
しっとりと聴かせるアンビエントなナンバーなど、不思議にメロディアスな曲も多く、全体的にもメリハリのある曲構成と共に
成熟された大人の余裕が感じられる。Simon Steenslandが参加したナンバーでは、そのテクニックのあるギタープレイも楽しめる。
コロコロとしたポップなアヴァンロックの中に、北欧らしいゆったりとした空気感が感じ取れるような好作品だ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 アヴァンギャル度・・8 総合・・8
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MATS/MORGAN「35th Anniversary Collection」
スウェーデンのアヴァン・ユニット、マッツ&モルガンの2016年作
結成35周年を記念して、1996年のデビュー作から、2014年までの作品から選ばれた全42トラックを収録した
2枚組のベストアルバム。やわらかなシンセに味わいのあるマッツの歌声を乗せた牧歌的な1曲目から、
モルガンの巧みなドラムにエレクトロなシンセを重ね、テクニカルにたたみかけるアッパーなナンバーへ、
軽やかなポップ性をアヴァンギャルドに溶け込ませた、まさに「火星のヒットソング」というべき異色のサウンドを展開。
ときにライブでのMC音源も加えた遊び心や、MESHUGGAHのフレドリック・トーテンデルを迎えてのメタル感触に、
軽やかなジャズタッチのナンバーなど、単なるフリーミュージック以上のセンスと卓越した演奏力が随所に現れる。
入門用にしてはあまりに濃密であるが、この超絶ユニットの全貌を味わえるCD2枚、全152分である。
テクニカル度・8 プログレ度・8 アヴァンギャル度・9 総合・8.5
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MATS/MORGAN 「Live With Norrlandsoperan Symphony Orchestra」
スウェーデンのアヴァン・ユニット、マッツ&モルガンのライブ作品。2018年作
マッツ・エーベリ(キーボード)とモルガン・オーギュレン(ドラム)に、ベースとキーボードを加えたバンド編成で
2016年の結成35年イベントとして行われた、ノールランド歌劇場交響楽団との共演ライブをCD+DVDに収録。
美しいストリングスにブラスが鳴り響く、壮麗なオーケストラと軽やかなドラムが合わさり、エレクロなシンセを重ねた、
優美なチェンバーロックが広がってゆく。アヴァンギャルドな味わいは希薄であるが、ほどよくスリリングでありながら、
とぼけたようなセンスも随所に感じさせる。DVDの映像では、フルオーケストラを含む豪華なステージのもと、
モルガンの巧みなドラムや、ハーモニカとシンセを自在にこなす、盲目のマッツの楽しげなプレイぶりが見られる。
CD2には、本作のデモである、モルガン・オーギュレン名義での「Through The Eyes Of Morgchestra」を収録。
シンフォニー度・8 プログレ度・7 ライブ演奏・9 総合・8
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Maze of Time「Tales from the Maze」
スウェーデンのシンフォニックロック、メイズ・オブ・タイムの2006年作
メロディックなギターとシンセワークで聴かせる、GENESIS系のシンフォニックサウンド。
やわらかみのあるキャッチーな感触は、MOON SAFARIあたりにも通じるが、
こちらももっとやぼったく、洗練されきれないマイナーさが少々じれったいかもしれない。
曲は8~9分台と長めで、全体的にスリリングさは希薄ながら安心して楽しめる作品だ。
シンフォニック度・・8 ドラマティック度・・7 新鮮度・・7 総合・・7.5
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Maze of Time「Lullaby for Heroes」
スウェーデンのシンフォニックロック、メイズ・オブ・タイムの2009年作
いくぶんメタリックな感じもあるメロディックなギターと美麗なシンセワークで聴かせる、
シンフォニックサウンド。ときにGENESISを思わせるフレーズが出てきてにやりとさせられたり、
古き良きプログレのロマンを継承するようなスタイルで、なかなか楽しめる。
8分以上の曲が4曲、うち10分以上が2曲という大作指向であるが、音そのものに北欧らしさはあまりなく、
展開的にもスリリングさに欠ける点では、やや長尺感は否めない。ゆったりと聴ける叙情派の力作だ。
シンフォニック度・・7 プログレ度・・8 北欧度・・7 総合・・7.5
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MEER 「PLAYING HOUSE」
ノルウェーのポストプログレ、ミーアの2021年作
やわらかなピアノに艶やかなヴァイオリン、美しい女性ヴォーカルの歌声に男性声が絡む、
優美で繊細なシンフォニックロックを聴かせる。基本はゆったりとした歌もの的な感触だが、
ときにリズムチェンジを含むプログレ的な展開力も覗かせる。北欧らしい涼やかな空気感と、
翳りを含んだ繊細な叙情美に包まれるところは、Opium Cartelなどにも通じる作風だろう。
楽曲も4~6分前後と長すぎず、ストリングスとともに美しく盛り上がるところも良いですね。
キャッチーな聴きやすさと、男女声によるしっとりとした優美さが合わさった好作品。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 優美で繊細度・・9 総合・・8
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MERIT HEMMINGSON 「TROLLSKOG」
スウェーデンの女性ミュージシャン、メリット・ヘミングソンの1972年作
ソロとしては4作目で、ドラム、ギターを含む編成で、オールドなオルガンが鳴り響き、ときにフルートやヴァイオリンなどのストリングスも加わった優美なサウンド。
メリットはオルガンのみならず、典雅なチェンバロや、ムーグシンセも使っていて、母国語による彼女のやわらかな歌声とともに、北欧らしい土着性に包まれる。
1~3分前後の小曲を主体に、インストパートではオルガンやシンセの哀愁のメロディが、KAIPAあたりにも通じる涼やかな雰囲気をただよわせている。
決してポップミュージックにはならない、素朴な叙情性と北欧の空気をまとった、優雅なオルガンフォークロックというべきか。素敵な一枚です。
フォークロック度・7 プログレ度・7 北欧度・9 総合・8
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Merit & Dana「fran Orup till Bellman」
スウェーデンのミュージシャン、メリット・ヘミングソンとダナ・ドラゴミルによる1989作
トラッドをベースにした楽曲に、鍵盤奏者として名高いメリットのシンセワークと、
アコースティカルな笛の音や女性スキャットなどが合わさったサウンド。
単なるトラッドでもシンセ音楽でもない、モダンとレトロの同居した不思議な質感で
聴いていてしっとりと癒されます。プロデュースはあのBjorn J:son Lindh。
メロディアス度・・8 シンセ度・・8 トラッ度・・7 総合・・7.5
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Merit「Queen of Swedish Hammond Folk Groove」
60年代末期から活動するスウェーデンの女性鍵盤奏者、Merit Hemmingsonのベストアルバム。2005作
サイケロック的な曲調や、民俗調、さらにはジャズなども取り込んだ70年代的なサウンドに、
やわらかなオルガンの音色が響く。そして土着的な北欧の空気を感じさせるサウンドは、
彼女自身のスキャット的な歌声も含めて、やわらかな優しい質感で楽しめる。
メロディアス度・・7 プログレ度・・7 土着北欧サイケ風味度・・8 総合・・7.5
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Merit Hemmingson「TOUCH THE SOUND」
スウェーデンの女性鍵盤奏者、メリット・ヘミングソンの2006年作
60年代から活躍するアーティストで、写真を見ると立派なおばさまであるが、
サウンドの方は美しいシンセワークを中心にした、じつに優しいもので、
オルガンの音色が響くレトロな質感に温かみのあるメロディが合わさり、
ゆったりとコーラス風に歌う女性ヴォーカルに包まれて、ふんわりとした気分でまどろめる。
アコーディオンやフルートなども美しく北欧らしいトラディショナルな雰囲気もある。
プログレというよりは北欧のヒーリング系サウンドとして聴ける。そんなアルバムだ。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 ふんわり温か度・・9 総合・・7.5
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MERIT HEMMINGSON 「Huvva! Vad Tiden Gar」
スウェーデンの女性ミュージシャン、メリット・ヘミングソンの2021年作
60年代から活動する女性オルガン奏者で、ソロとしては本作は10作目あたり。フィドルが鳴り響くトラッド感触から始まり、やわらかなオルガンにドラムも加えて、ヴィンテージな味わいと、北欧らしい涼やかな空気に包まれる。
軽やかなアンサンブルにギターも加わったロック感触と、暖かみのある土着的なオルガンのメロディに、スキャット的な女性ヴォーカルも入って来て、結果としてサイケ風の北欧プログレとしても楽しめる。
フィドルがメロディを奏でる部分は、牧歌的な北欧トラッド・フォーク風味で、そこにオルガンなどのシンセが重なると、Kebnekajseにも通じる味わいになる。
トラッドロック度・8 プログレ度・7 北欧度・9 総合・8
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METROGNOM「Twangyluck」
ノルウェーのヘヴィプログレバンド、メトロノームの2006作
若手の5人組で、メロトロンやハモンドオルガンを弾きならしながら、
初期ANEKDOTENをラフにしたような雰囲気で、レトロなプログレロックを聴かせる。
全4曲で64分という通り、楽曲は即興ぎみの演奏で押しと引きをまじえつつたたみかける。
手数の多いドラムをはじめ、演奏力もありバンドとしてのグルーブも感じられるので、
今後はさらに曲単位での聴かせ所を構築してゆくとよいだろう。
メロディアス度・・7 プログレ度・・7 レトロロック度・・8 総合・・7.5
Michael Stolt 「En Hedonist Utan Skam」
スウェーデンのミュージシャン、マイケル・ストルトの2016年作
ご存知、ロイネ・ストルトの弟であり、Kaipa Da Capoのヴォーカル&ギター。「破廉恥な快楽主義者」とと題された本作は、
そのロイネ・ストルトをはじめ、トマス・ボディーン、マーカス・リリークィストら、The Flower Kings関連のメンバーがゲスト参加、
渋みのあるアダルトな歌声で聴かせる、3~4分前後のシンプルな歌ものが中心であるが、美しいシンセによるアレンジに
ロイネによる泣きのギターが加わると、初期のフラキンを思わせる感触にもなる。2曲目以降は、キャッチーな雰囲気も含んだ
大人の叙情ロックという聴き心地で、プログレ的な要素は薄めだが、母国語による味わいのあるヴォーカルを乗せた、
メロウなサウンドが楽しめる。北欧らしい翳りと哀愁の空気感は、さすがへてきたキャリアを物語るような深みがあります。
メロディック度・・8 プロクレ度・・6 叙情度・・8 総合・・7.5
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MIKLAGARD 「Edge」
スウェーデンのフログレバンド、ミクラガルドの1979年作
名前は知っていたが、ずっと聴けなかった北欧プログレバンドの唯一の作品が、2020年についにCD化された。
ギターレスのキーボードトリオで、オルガンを含むやわらかなシンセに母国語のマイルドなヴォーカルを乗せて
THE NICEにも通じる優雅でキャッチーなサウンドを描く。リズム面や歌声も良く言えば牧歌的で、
野暮ったく垢抜けないマイナー感が漂っているが、そこも含めて微笑ましく楽しめるユルさがある。
ふわふわとした幻想性に、コミカルな雰囲気も覗かせつつ、オルガンやエレピ、ムーグシンセが、
やわらかなサウンドを彩ってゆく。ラストは13分の大曲で、ドラムソロのパートなども入りつつ、
やっぱりユルめに構築される、北欧らしい味わいの「なごみ系鍵盤ロック」というべき作品です。
ドラマティック度 プログレ度・・7 キーボー度・・8 総合・・7.5
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MIKROMIDAS「Brennende Drommer」
ノルウェーのシンフォニックロックバンド、ミクロミダスの1st。1999作
先に2ndの方を聴いていたかず、この1stもまるで70年代を思わせるレトロなサウンド。
鳴り響くハモンドにメロトロン、そこに北欧独特の土着的なメロディが乗る。
演奏のキレや楽曲のメリハリはあまりなく、もったりとした印象なのが惜しいが
レトロな感じの北欧プログレが好きな方なら、心地よく聴けるだろう。
シンフォニック度・・7 レトロ度・・8 北欧度・・8 総合・・7
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Mikromidas「Faunus」
ノルウェーのシンフォニックロックバンド、ミクロミダスの2nd。2004年作
ハモンドオルガン、メロトロンなどを使ったレトロな感触のシンフォニックロックで、
ANGLAGARDやSINKADUSあたりに通じる、北欧特有の涼やかさを持ったサウンド。
派手な部分や意外性のある展開はなく、淡々としたヴォーカルと優しげなメロディが
全体的にしっとりゆったりとした流れを作っている。あまりに古めかしい音作りだが、
70's北欧プログレの風と土着性が感じられて、マニアには嬉しい作品だろう。
シンフォニック度・・7 レトロ度・・9 北欧度・・9 総合・・7.5
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Mist Season 「Reflections」
フィンランドのプログレバンド、ミスト・シーズンの2011年作
2004年にデビューし、3作目。サックス奏者を含む5人編成で、優美なピアノのイントロから、軽やかなリズムに
アダルトなサックスの音色ときらびやかなシンセを重ねて、優雅なジャズロックサウンドを描く。
アコースティックギターや美しい女性ヴォーカル、リコーダーの音色も加わった、繊細な叙情性も覗かせて
北欧らしい涼やかなシンフォニックロックとしても楽しめる。メロウなギターの旋律とオルガンやエレピを含むシンセ、
シンフォとジャズが同居した優雅にして軽妙な聴き心地は、ときにPEKKA POHJOLAを思わせるところもある。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・9 総合・8
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MOLESOME 「SONGS FOR VOWELS AND MAMMALS」
スウェーデンのエレクトロプログレ、モールソムの2015年作
元ANGLAGARDのドラマーで、Necromonkeyをはじめ多くのプロジェクトに参加するマティアス・オルソンのソロ。
1998~2001年に録音された物で、メロトロン、ムーグシンセのやわらかなメロディを、デジタルなリズムに乗せた、
エクスペリメンタルなエレクトロサウンドを聴かせる。曲によっては、ドラムやギターを使ったロック色も覗かせ、
無機質なサウンドの中に、素朴で涼やかなアナログ感を溶け込ませているのが、さすがのセンスというところ。
ビープ音のような古めかしいデジタル音が哀愁をともなって聴こえるというのも面白い。ネクロモンキーなどが好きな方もチェックすべし。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 デジタルでアナログ度・・9 総合・・8
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MOLESOME 「Are You There?」
スウェーデンのエレクトロプログレ、モールソムの2021年作
元ANGLAGARDのドラマー、Necromonkeyなどでも活躍するマティアス・オルソンのプロジェクトで、
本作はすでに5作目となる。メロトロンをはじめとしたヴィンテージなシンセを、エレクトロに鳴り響かせ、
ときに日本語による語りを取り入れるなど、ストリーリー風のミステリアスな雰囲気に包まれる。
ドラムが加わったインダストリアル調のロック感触から、女性ヴォーカルを乗せたアンビエントなナンバー、
ストリングスを取り入れつつ、ポップなビート感で聴かせるナンバーなど、バラエティ豊かな作風である。
うっすらとしたシンセをバックにした、女性声入りポストプログレという趣もある。エレクトロ・ヴィンテージな好作。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 エレクトロ&ヴィンテージ度・8 総合・7.5
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Mollmaskin 「Heartbreak in Stereo」
ノルウェー出身のミュージシャン、アンダース・ベルムレランドによるプロジェクト、モルマスキンの2015年作
ギター、ベース、ドラム、シンセ、サックス、フルートなどを一人でこなすマルチミュージシャンで、
うっすらとしたシンセとギターに、マイルドなヴォーカルを乗せた、ジャズロック的な軽やかなアンサンブルに、
翳りを帯びたポストプログレ風味を加えたようなサウンド。あえて25分ずつのCD2枚組となっていて、
Leftサイドは、サックスが鳴り響くフリーキーなジャズ色も覗かせつつ、比較的キャッチーな聴き心地。
Rightサイドの方は、より繊細な歌もの感に包まれていて、やわらかなシンセアレンジやピアノが美しい。
巧みなドラムによる優雅なリズムとともに、涼やかなポスト・プログレ・ジャズロックが楽しめる好作。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・8 総合・7.5
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Montgolfiere 「The Fall」
スウェーデンのプログレバンド、モントゴルフィエーレの2017年作
ジャケからしてブラックメタルかなにかかと思いきや、実際は女性Vo入りのサイケなプログレロックであった。
アナログ感あるギターにうっすらとシンセが重なり、70年代ルーツのブルージーなアンサンブルを聴かせつつ、
2曲目からはけだるげな女性ヴォーカルが加わって、男女Voにオルガンやメロトロンの音色を重ねた、
北欧らしい涼やかなヴィンテージプログレの感触になる。派手な盛り上がりはなく、わりと淡々とした印象で、
11分の大曲も、エレピを含む優雅なやわらかさと、オールドロックの味わいが合わさった、のんびりとした聴き心地。
個人的には、女性声のパートを増やすか、さらにシンセの重ねなどを強化してもらいたい。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 ヴィンテージ度・・8 総合・・7.5
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MOON SAFARI「A Doorway To Summer」
スウェーデンのシンフォニックロックバンド、ムーン・サファリの2005年作
若手バンドのデビュー作。自主盤ながらもプロデュースはTHE FLOWER KINGSのトマス・ボーディン。
サウンドの方もそのTFKからの影響が大きく感じられる、メロディアスシンフォ作。
アコースティック色もけっこう強く、全体的にゆったり、しっとりとした作風で、
最近のフラキンよりも分かりやすく、純粋で素朴な雰囲気に好感がもてる。
若者らしからぬレトロな質感が叙情性とともに哀愁をかもしだしているのは、
最近のバンドの特徴かもしれない。フラキンのメロウな部分が好きな方にはオススメ。
シンフォニック度・・8 ゆったりメロディアス度・・9 フラキン度・・8 総合・・8
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Moon Safari「Blomljud」
スウェーデンのシンフォニックロックバンド、ムーン・サファリの2nd。2008年作
彼らの1stはThe Flower Kingsのメロディアスさを抽出したような、シンフォニックの好作だったが、
今作も牧歌的なコーラスや、
アコースティカルな素朴さを取り入れた、じつに美しく繊細なアルバムだ。
つややかなピアノの音色にオルガンが重なり、どこかなつかしいようなレトロさとともに
温かみのあるヴォーカルメロディが爽やかに響く。大曲の盛り上げ所では
ロイネ・ストルトばりのギターに思わずにんまりだし、Disc1のラスト曲などはじつに感動的だ。
派手さよりもフォーク的な素朴な情感で聴かせる、とても素敵なメロディアスシンフォ。
鳥の鳴き声を聴きながら日だまりでまどろむような、そんな優しい気分になれる作品です。
CD2枚組みで曲も長いが何度でも聴きたくなる。メロディ派は必聴。マイスペでチェックすべし!
メロディアス度・・10 繊細度・・9 素朴度・・9 総合・・9
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MOON SAFARI「Lover's End」
スウェーデンのシンフォニックロックバンド、ムーン・サファリの2010年作
前作の2枚組アルバムが泣くほど素晴らしかったのだが、3作目の本作も繊細な叙情美が素晴らしい傑作となった。
やわらかなヴォーカルハーモニーと、美しいピアノとシンセワーク、そして、ロイネ・ストルトかアンディ・ラティマーかという泣きのギターで、
涼やかな北欧の風を運ぶような、この耳心地の良さには、またしてもうっとりとなること請け合い。
誤解を恐れずにいえば、かつての70年代のヒッピー世代におけるユートピア志向を、感動的なまでの叙情性を込めて、
心温まる青春偶像ドラマに仕立て上げたというべき、ちょっぴり甘酸っぱい思い出を脳裏に甦らせるような、
どこかなつかしいメロディがたまらない。フラキンファンもきっと泣く。優しい叙情に感動。北欧繊細系シンフォニックの大傑作。
メロディアス度・・9 繊細度・・9 青春度・・9 総合・・9
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MOON SAFARI「Gettysburg Address」
スウェーデンのプログレバンド、ムーン・サファリのライブアルバム。2012年作
まるでThe Flower Kingsをより牧歌的にしたようなデビュー作から、2nd「Blomljud」の
繊細なる絶品の叙情美、そして、それを押し進めた傑作「Lover's End」と、
3枚のアルバムで美メロ系シンフォニックファンの心を虜にしたこのバンド。
本作は2011年のアメリカRosfestでのライブステージを収録したCD2枚組。
やわらかなギターメロディと繊細なシンセワークで、しっとりと楽曲を組み立てる
そのサウンドは、ライブにおいても魅力充分で、30分を超える大曲においても、
あくまでメロディックな明快さを忘れないところが素晴らしい。インストパートでは、
よりギターフレーズに輪郭を当てた音作りでアルバムとはまた違った聴き心地で楽しめる。
メロディアス度・・8 プログレ度・・8 ライブ演奏・・8 総合・・8
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MOON SAFARI 「Himlabacken Vol 1」
スウェーデンのシンフォニックロック、ムーン・サファリの2013年作
その素晴らしいメロディと構築美で、プログレリスナー以外も巻き込んで人気上昇中のこのバンド、早くも4作目が登場。
見事なまでの完成度であった前作からの流れはそのままに、美しいコーラスハーモニーとキャッチーなメロディで、
爽快なるシンフォニックロックが楽しめる。メロウなギターの旋律と、ピアノやオルガンを含むセンスある鍵盤アレンジ、
北欧らしい涼やかな叙情を感じさせる雰囲気を、ポップなテイストに溶け込ませた絶品のバランスはさすがという他はない。
QUEENをGENTLE GIANT風味にしたというような曲や、前作にはなかったヘヴィな部分やシンプルな小曲もあったりと、
多様性に富んでいるのも意図的だろう。過去2作ほどの感動はないが、なんにしてもメロディ充実の傑作ではある。
メロディック度・・9 プログレ度・・8 北欧度・・8 総合・・8
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MOON SAFARI 「Live in Mexico 」
スウェーデンのプログレバンド、ムーン・サファリのライブ作品。2014年作
いまやメロデイ派プログレの代表格となりつつあるこのバンドの、2014年メキシコでのライブステージをCD2枚に収録。
やわらかなシンセアレンジとメロウなギター、マイルドなヴォーカルにキャッチーなコーラスワークで聴かせる、
繊細かつ叙情的なサウンドは、すでに二度も来日しているのでご存じの通り、ライブ演奏でもじつに素晴らしい。
2010年の傑作「Lover's End」、現時点での最新作「Himlabacken Vol 1」からの楽曲を中心に、
Disc2では25分におよぶ大曲「Lover's End Pt III」を演奏。ファンならチェックのライブ作品でしょう。
メロディアス度・・9 プログレ度・・7 ライブ演奏・・8 総合・・8
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Moon Safari 「Himlabacken Vol.2」
スウェーデンのプログレバンド、ムーン・サファリの2023年作
2005年にデビュー、本作は10年ぶりとなる5作目で、前作の続編。きらびやかなシンセワークに叙情的なギター、マイルドなヴォーカルとキャッチーなコーラスハーモニーで、これまで通りの優雅でメロディアスなサウンドを聴かせる。
10分の大曲では、ほどよいハードな感触も覗かせながらスタイリッシュに構築し、優しいメロディと泣きのギターフレーズをたっぷりと含んだ叙情ナンバーもさすがの出来。
21分という大曲も繊細な叙情パートから、ProgMetal的なテクニカル性へと緩急ある展開力も見事で、じわりと盛りあげつつ優しいメロディへと帰結する。
全体的にも10年という月日を感じさせないバンドの魅力が詰まった、ボーナス含む全70分の力作だ。
ドラマティック度・9 プログレ度・8 叙情度・9 総合・8.5
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MORGAN AGREN 「Batterie Deluxe」
スウェーデンのミュージシャン、モルガン・オーギュレンのソロ。2015年作
Mats/Morganのドラマーとして活躍する彼の初のソロアルバムで、本作ではドラムだけでなく、ギター、ベース、
ヴァイオリンなども演奏。デジタリィなシンセによるテクノロック的な感触に、エフェクトのかかったドラム、ヴァイオリン、
ときに怪しげな語りやヘヴィなギターも加わって、アヴァンギャルドなセンスに包まれた先鋭的なサウンド。
モルガンの超絶なドラムプレイを期待すると少々肩透かしなのだが、(もちろん曲によっては圧巻のプレイを披露)
あえてドラムにフォーカスするわけでなく、フランク・ザッパばりのアヴァンロックの極北を描くセンスというのは、
さすがマッツ/モルガンの片割れというべきか。その相棒であるマッツ・エーベリをはじめ、鬼才、サイモン・スティーンスランド、
デヴィン・タウンゼンド、フレドリック・トーデンダルなどがゲスト参加。鬼才は鬼才を呼ぶということか。Mats/Morgan好きはマスト。
ドラマティック度・・6 プログレ度・・7 アヴァンギャル度・・9 総合・・8
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Morgan Agren 「Through The Eyes Of Morgchestra」
スウェーデンのミュージシャン、モルガンオーギュレンの2016年作
MATS/MORGAN結成35年イベントとして行われたノールランド歌劇場交響楽団との共演ライブのために書き下ろされた楽曲集。
クラシカルで優雅なアプローチと軽妙でとぼけた味わいを、巧みに融合されたチェンバーロックというサウンドで、
オーケストラパートをキーボード、ヴァイオリン、クラリネット、バスーンなどで過不足なく表現している。
モルガンのドラムは前に出すぎることなく、今作では作曲者としてのサウンドの構築を主眼に置いた感じで、
オケパートの旋律を引き立たせるアレンジは、彼の新たな才能を垣間見る思い。アヴァンギャルド性が薄めな分、
わりと初心者にも聴きやすいかもしれない。相方であるマッツ・エーベリ、サイモン・スティーンスランドも参加。
優雅度・・8 チェンバー度・・9 アヴァンギャル度・・7 総合・・8
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Morild 「Time To Rest」
ノルウェーのプログレバンド、モリルドの2010年作
CD2枚組の大作で、オルガンやムーグシンセが鳴り響き、ジェントルなヴォーカルを乗せ、
北欧らしい涼やかな叙情美に包まれた、ヴィンテージなシンフォプログレを聴かせる。
くぐもったような翳りとマイナーな空気感は、KERRS PINKあたりにも通じる雰囲気で、
アコースティックギターやフルートの音色など繊細な叙情性と、随所に泣きのギターフレーズも加え、
10分を超える大曲をじっくりと構築してゆく。Disc2の後半は、3パート、28分におよぶ組曲になっていて、
展開力のあるサウンドで聴かせる。2CDで全100分、これぞ北欧プログレという優美な味わいの逸品。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 北欧度・9 総合・8
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Morild「Aves」
ノルウェーのプログレバンド、モリルドの2013年作
女性フルート奏者を含む6人編成で、やわらかなシンセとギターが絡み、
牧歌的なフルートの音色が優しく響く、古き良き感触のシンフォ/プログレサウンド。
アコースティカルな繊細さと北欧らしい土着的なメロディも含んだ聴き心地で、
20分を超える大曲をゆるやかに描いてゆく。派手な盛り上がりや濃密さよりも、
涼やかなメロディを素朴な叙情で包んだ作風は、KERRS PINKなどにも近いかもしれない。
ANGLAGARDの1stなどが好きな方にもお薦め。これぞ北欧プログレという好作品です。
ドラマティック度・・7 素朴な叙情度・・9 北欧度・・9 総合・・8
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Moron Police 「A Boat on the Sea」
ノルウェーのプログレバンド、モーロン・ポリスの2019年作
2012年にデビューし、3作目となる。初期はメタル寄りのスタイルだったようだが、本作はきらびやかなシンセに、
マイルドなヴォーカルを乗せた、MOON SAFARIのような優雅でキャッチーなサウンドで、
ほどよくテクニカルな構築性が加わった聴き心地。サックスやヴァイオリンなどを加えた軽妙な味わいや、
プログレハード的なポップ感、日本のゲームミュージックにも影響を受けたというファンタジックな雰囲気も覗かせる。
楽曲は3~5分前後がメインで、わりとシンプルな爽快さで楽しめるが、とぼけたような唐突な展開や、
突然のメタル感触も現れたりと、いかにも若手らしいボーダーレスの詰め込み方にもニヤりとなる。
キャッチーなメロディアス性と適度にテクニカルなところは、A.C.T.あたりのファンにもアピールするだろう。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 優雅度・・8 総合・・8
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MORTE MACABRE「Symphonic Holocaust」
ANEKDOTENとLANDBERKが合体したユニット、モルト・マカブルの1998年作
元はホラー映画のために作られたサントラということだが、のっけから壮大にメロトロンが鳴り響き、ほぼANEKDOTEN状態。
ヴォーカルのないインスト作ながら、薄暗い叙情と不穏な空気に包まれたサウンドは雰囲気ものとしてはなかなかのもの。
生々しいドラムと即興的なギターの音もなかなか恐ろしげで、メロトロンの音をこうも恐ろしく使っているのが面白い。
中盤はいかにもサントラ的な曲もあるが、17分を超えるラストのタイトル曲は圧巻の仕上がり
シンフォニック度・・7 薄暗度・・9 メロトロン度・・8 総合・・8
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Motorpsycho「Trust Us」
ノルウェーのロックバンド、モーターサイコの1998作
デビューは1991年というかなりのベテランバンド。日本での知名度はさほど高くないが
その個性派のロックバンドとしてのセンスと質の高さには驚異的なものがある。
本作はCD2枚組みで、ガレージロック的なラフな生々しさを感じさせつつ
随所にポストロック的な壮大さと知的な構築力が光る好作。「Phanerothyme」以降のような
やわらかなメロディアスさは希薄だが、その分ロックとしての純粋な躍動感が感じられる。
メロディアス度・・7 ロック度・・9 壮大度・・8 総合・・7.5
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Motorpsycho「Phanerothyme」
ノルウェーのロックバンド、モーターサイコの8th。2001作
コアなファンの間ではポップすぎると論議を呼んだアルバムのようだが、
確かに全体的にメロディの良さが光る、これまでになく明快な雰囲気のサウンドだ。
曲によっては優雅なオーケストレーションを使用したり、あるいは北欧のバンドらしく
メロトロンの音色を鳴らしながら、やわらかでキャッチーな歌メロで聴かせる。
ある意味ポストロック的な難解さや長尺の楽曲が持ち味でもあった彼らだが
本作ではぐっと分かりやすい音楽をやっていて、これが純粋に楽しめるのだ。
演奏力については折り紙つきのバンドであるから、こうしたコンパクトなサウンドでも
その音の説得力はその辺の有象無象のバンドとは格が違う。よく聴くとアレンジも緻密。
メロディアス度・・8 ロック度・・8 壮大度・・7 総合・・8
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Motorpsycho「It's a Love Cult」
ノルウェーのロックバンド、モーターサイコの9th。2002作
前作同様、キャッチーなメロディをしっとりとした叙情に包み込んだ耳心地のいいサウンドで、
70'sロック、プログレ、ポストロックという色々な要素取り入れた器の大きさを随所に感じさせる。
基本はあくまでも3ピースによる、グルーブのある演奏を聴かせるシンプルなものだが、自然体のやわらかさと、
知的なセンス、細やかなアレンジを楽曲の中で効かせていて、結果として非常に完成度の高い作品に仕上がっている。
今作ではアコースティカルな素朴さもあって、繊細で優しい歌メロとともに、叙情的な北欧ロックとして楽しめるのがよろしい。
メロディアス度・・8 繊細度・・8 壮大度・・7 総合・・8
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Motorpsycho PresentsThe International Tussler Society
ノルウェーのロックバンド、モーターサイコがジ・インターナショナル・タスラー・ソサエティ名義で発表した作品。2005年作
いかにもオールドなギターにピアノ、ジェントルなヴォーカルを乗せた、古き良きカントリーロック風味のサウンド。
西部劇をコンセプトに、ウエスタンを思わせる雰囲気で、キャッチーな牧歌性に包まれた聴き心地であるが
モーターサイコらしいグルーヴィな生々しさを随所に感じさせる。アコースティックギターを使った優雅な味わいと
開放感のあるおおらかなロック性も含めて、のんびりと気持ちよく楽しめる。何本ものギターを重ねた音の厚みや
コーラスハーモニー、哀愁を含んだ叙情も覗かせて、北欧のバンドらしいやわらかなメロディアス性にも包まれる。
ノルウェーの実力派が、ヴィンテージでアメリカンなカントリーロックを再現したという好作品です。
キャッチー度・・8 プログレ度・・3 叙情度・・8 総合・・8
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MOTORPSYCHO「Black Hole/Blank Canvas」
ノルウェーのロックバンド、モーターサイコの2006年作
2005年にドラマーのホーコンが脱退し、本作はベント(B,Vo,Dr)とハンス(G,Vo)の二人で作られた。
10作目のアルバムとなる本作はCD2枚組の大作であるが、1998年の「Trust Us」などに比べると
同じ2枚組でもより輪郭がくっきりとした、ロックとしてストレートな激しさが感じられる。
といっても、たんなるロックの範疇に入りきらないスケール感と、生々しい躍動感、
そして知的なセンスに包まれた、彼らならではのサウンドがたっぷり楽しめる。
Disc2の7曲目などは、泣きのギターのリフレインが北欧シンフォ的で感動的だ。
メロディアス度・・8 知的ロック度・・9 壮大度・・8 総合・・8
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MOTORPSYCHO「Little Lucid Moments」
ノルウェーのロックバンド、モーターサイコの2008年作
デビューは1991年というキャリアの長いバンドながら、日本ではあまりメジャーでないのが不思議。
前作「Black Hole/Blank Canvas」は彼らの作品にしてはドライでストレートな作風であったが、
本作は正式にドラマーを迎えて作られたということもあり、再び心地よいアンサンブルの妙が聴ける。
サイケ、ガレージロック的な生々しさと、抜群の演奏力からくる余裕ある軽やかさで、
大曲におけるビジョンの描き方はプログレ、ポストロック的な深みを感じ取れる。
レイドバックしたような古き良きロックのたたみかける勢いの良さと、自然体の浮遊感が合わさり、
知性的な構築と即興のバランス、甘すぎない叙情を含んだ、一体感の感じられる傑作だ。
壮大度・・8 古き良きロックの塊度・・9 アンサンブル度・・10 総合・・8.5
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MOTORPSYCHO「Heavy Metal Fruit」
ノルウェーのベテランロックバンド、モーターサイコの2010年作
本作では、タイトルのように、よりヘヴィなアプローチを効かせた音作りになっている。
絡みつくようなヘヴィなギターに、メロトロンを含むシンセによるシンフォニックさが加わると
ANEKDOTENばりの重厚なシンフォニックサウンドに包まれる。もちろん彼らの持ち味である、
アンサンブルとしての一体感とサイケロック的な浮遊感覚もあり、自由度のある「ユルさ」を含めた
壮大さとメリハリも魅力となっている。大曲におけるじわじわくる盛り上がりは感動的ですらある。
北欧プログレ、北欧サイケ、北欧ポストロック…なんでもいいので、とにかく聴いていただきたい!
壮大度・・8 サイケ/プログレ度・・9 アンサンブル度・・10 総合・・8.5
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ノルウェーのロックバンド、モーターサイコの2012年作
91年から活動するベテランバンド、前作「Heavy Metal Fruit」も素晴らしい傑作であったが、
本作は、トロンドハイム・ジャズオーケストラをフューチャーした2枚組の大作となった。
サックスやトロンボーンが鳴り響くイントロから、バンドサウンドが合わさると、
オーケストラをバックにした壮大なロックオペラ風味の世界観が広がってゆく。
このバンドならではのスケールのあるグルーブ感はしっかりと残しつつ、
艶やかなストリングスやホーンセクションなどに彩られたゴージャスなアレンジは、
これまでになく壮麗だ。10分を超える大曲も多く、プログレ的な構築センスも見事。
ドラマティック度・・9 プログレ度・・7 壮大度・・9 総合・・8.5
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Motorpsycho 「Still Life With Eggplant」
ノルウェーのロックバンド、モーターサイコの2013年作
90年代初頭から活動するベテランバンド、オーケストラ入りの2枚組の大作であった前作から、
本作ではバンドアンサンブルに重点を置いた作風に立ち返り、重厚なギターリフを乗せた
どっしりとしたグルーヴィなヴィンテージロックの感触が楽しめる。ときにメロトロンが鳴り響き、
サイケロック的な浮遊感とプログレ的な知的な構築力も随所に覗かせつつ、
キャリアのあるバンドしか描くことのできない強力な音の説得力が素晴らしい。
バンドらしい躍動感の一方で、キャッチーな歌メロによる牧歌的な叙情性もあって、
17分という大曲も、適度なユルさとハードなノリを同居させて、ANEKDOTENばりの恰好良さ。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 オールドロック度・・8 総合・・8
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Motorpsycho 「Behind the Sun」
ノルウェーのロックバンド、モーターサイコの2014年作
90年代初頭から活動するベテランバンド、オーケストラと組んだ前々作からは一転、
シンプルなバンドスタイルへと立ち返った本作は、マイルドなヴォーカルで聴かせる、
やわらかな叙情性を前に出したサウンドで、ポストプログレ的な繊細な耳心地である。
一方では70年代的な荒々しいロック感も随所に残していて、ハードロック、ポストロック、
プログレなどの要素を含みつつも、どれに偏ることもない、かれららしいグルーヴィなロックが楽しめる。
前作からの続編となる12分の組曲なども含め、あらためて器の大きさを感じさせる力作だ。
メロディック度・・7 プログレ度・・7 グルーブ度・・9 総合・・8.5
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Motorpsycho 「here be monsters」
ノルウェーのロックバンド、モーターサイコの2016年作
90年代初頭から活動するベテランバンドで、すでに何作目なのかもわからないが、
2008年以降は圧巻の傑作を出し続けている。今作はピアノによるリリカルなイントロで幕を開け、
メロウなギター、うっすらとしたシンセアレンジを乗せて、ゆったりとしたサウンドが広がってゆく。
繊細なヴォーカルの歌声も含めて、前作から続くポストプログレ風の聴き心地であるが、
存在感のあるベースを中心にしたアンサンブルと、ひとつひとつの音の重ねが説得力のある
強力なスケール感を生み出していて、じわじわとその世界観に引き込まれてゆく。
ときにアッパーなノリのあるサイケ要素も覗かせつつ、アコースティックな小曲もさらりと入れてきたりと、
バンドの懐の深さには恐れ入る。プログレファンには普通にお薦めできる力作に仕上がっている。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 繊細で壮大度・・9 総合・・8
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Motorpsycho 「The Tower」
ノルウェーのプログレ・ロックバンド、モーターサイコの2017年作
1990年代初頭にデビュー、ノルウェーを代表するロックバンドであり、プログレリスナーからも評価の高いこのバンド。
本作は通算22枚目のアルバムで、CD2枚組の大作。アナログ感あるギターにメロトロンを含むシンセ、
ブラスなどを重ねた、KING CRIMSON風味から、LED ZEPPELINのようなオールドなロック感触と、
変幻自在のヴィンテージロックを展開。ほどよいユルさと涼やかなスケール感が同居した独自の作風は、
高い演奏力に裏打ちされた説得力があればこそ。Disc2は、アコースティックを含む牧歌的な15分の大曲や、
メロトロン鳴り響くアネクド・クリムゾン風ナンバー、サイケ・シンフォ的なラストの大曲まで、じっくりと楽しめる力作だ。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 ヴィンテージ度・・8 総合・・8.5
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MOTORPSYCHO 「THE CRUCIBLE」
ノルウェーのプログレ・ロックバンド、モーターサイコの2019年作
90年代初頭にデビュー、アルバムは20作を超える、いまやノルウェーを代表するロックバンドと言える。
今作は8分、10分、20分という大曲3曲の構成で、オールドな味わいのギターにメロトロンを含むシンセを乗せ、
アナログ感あるアンサンブルとともに、サバス+クリムゾンというような、より70年代に回帰したサウンドを聴かせる。
ブリティッシュロックルーツの感触と、クールで知的な構築力が合わさって、プログレやポストロックの耳でも楽しめる、
ミステリアスなスケール感も魅力的だ。大曲においてもさほど難解にはならず、随所に北欧らしい叙情性も感じさせつつ、
ときにテクニカルな軽妙さも覗かせる。メロトロンの鳴るヴィンテージな北欧プログレとしても傑作といえる見事な出来だ。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 ヴィンテージ度・・8 総合・・8.5
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Motorpsycho 「The All Is One」
ノルウェーのプログレ・ロックバンド、モーターサイコの2020年作
1990年代初頭にデビュー、プログレッシブな知性とガレージロックが同居したノルウェーを代表するロックバンド。
本作は2枚組で、42分におよぶ組曲を含んだ大作。オールドなギターにマイルドなヴォーカルを乗せた
LED ZEPPELINなどに通じる、70年代ルーツのヴィンテージロックに、北欧らしい涼やかな空気を含ませた、
自然体のロックサウンドは健在。メロトロンやオルガンなどのシンセがプログレ寄りの叙情を描いていて、
メロウなギターの旋律とともに、単なるロック以上のスケール感を聴き手に感じさせる技量は素晴らしい。
2CDにまたがる長大な組曲「N.O.X.」は、ヴァイオリンも鳴り響き、混沌としたフリーキーなパートから、
メロディアスな叙情、そしてスペースサイケ風のリフレインまで内包した異色のナンバーである。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 壮大度・8 総合・8
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Motorpsycho 「Kingdom of Oblivion」
ノルウェーのプログレ・ロックバンド、モーターサイコの2021年作
2019年からの3年間でアルバム3枚という、多作ぶりを発揮するノルウェー最高のロックバンド。
今作は、オールドなハードロック風のギターにマイルドなヴォーカルを乗せた、渋いノリで始まり、
これまで以上にギターのエッジが立った、ツェッペリン風の70年代ハードロックを受け継ぐ味わい。
もとろん、シンセを重ねた涼やかな空気感も随所に覗かせつつ、今作ではアナログ感あるギターをメインに、
ヴィンテージなロック感触が際立っている。一聴してシンプルなノリから、ふわりとキャッチーなフックが現れたり、
メロトロンを用いてゆったりとした叙情に包まれた、プログレ寄りのナンバーも心地よい。全70分の力作です。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 ヴィンテージ度・9 総合・8
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MOTORPSYCHO 「ANCIENT ASTRONAUTS」
ノルウェーのプログレ・ロックバンド、モーターサイコの2022年作
90年代初頭にデビュー、ノルウェーを代表するロックバンドで、アルバムは優に20枚以上を超える。
本作は22分の大曲を含む、全4曲という構成で、シンセによる怪しいイントロから、ブルージーなギターが加わり、
アナログ感たっぷりのアンサンブルで、70年代を彷彿とさせるヴィンテージなハードロックが広がってゆく。
たたみかけるドラムとうねるベース、ノリのよいリズムとともに、音の塊となって押し寄せてくるような迫力は
このバンドならではで、メロトロン的なシンセにジェントルな歌声を乗せた、初期クリムゾンを思わせる素朴な叙情性など、
プログレリスナーにアピールする場面も多い。後半の22分の大曲は、即興的なインストパートを盛り込んでじわじわと盛り上げる。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 アンサンブル度・9 総合・8.5
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Mr Brown「Mellan tre ogon med Mr Broun」
スウェーデンのシンフォニックロックバンド、ミスター・ブラウンの1977作
これまでCD化されていなかったが、幻の傑作というにはいささか地味な内容。
北欧らしい繊細なメロディと、ピアノやハモンドなどが美しいサウンドで、
耳触りのよい雰囲気は初期のDICEなどに通じる質感もある。
これといった盛り上がりやひっかかりのあるメロディなどは少ないが、
アコースティックギターやフルートなどによるしっとりとした叙情はじつに美しい。
メロディアス度・・7 シンフォニック度・・7 北欧度・・8 総合・・7.5
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My Brother the Wind
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I Wash My Soul in the Stream of Infinity」
スウェーデンのプログレバンド、マイ・ブラザー・ザ・ウインドの2011年作
ANEKDOTEN、MAGNOLIA、MAKAJODAMAなどのメンバーが集まったバンドで、
基本は2本のギターに、ベース、ドラムによるインスト演奏であるが、うっすらとしたメロトロンや
オルガンが鳴り響き、サイケロック風味のアナログ感覚と浮遊感とともに神秘的な叙情美を描いてゆく。
10分以上が3曲あり、スリリングさよりもゆったりとした味わいで、オリエンタルな世界感も含めて
Amon Duul IIやASHRAなどに通じるような感触もある。70年代スタイルの北欧サイケの力作。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 サイケ度・・8 総合・・8
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My Brother the Wind 「Once There Was a Time When Time & Space Were One」
スウェーデンのサイケプログレバンド、マイ・ブラザー・ザ・ウインドの2014年作
ANEKDOTEN、MAGNOLIA、MAKAJODAMAなどのメンバーが集まったバンドで、
過去2作同様、本作もオリエンタルなイメージを取り入れたサイケプログレを聴かせる。
叙情的な12弦ギターの響きに、ユルくメロウなエレキギター、包み込むようなメロトロンで、
Amon Duul IIなどの古き良きジャーマンサイケ的な浮遊感をただよわせたアンサンブルが楽しめる。
70年代的なアナログ感覚と神秘的な世界観が合わさった、オールインストの見事なサイケプログレ作品。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 サイケ度・・8 総合・・8
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MYTHOPOEIC MIND 「HATCHLING」
ノルウェーのプログレバンド、ミソポエイク・マインドの2021年作
2019年にデビュー、2作目となる本作は女性Voをフロントとした編成となり、オルガンやムーグを含むシンセに
サックスやトランペットの音色が重なり、女性ヴォーカルの歌声とともに、優雅で軽妙なサウンドを聴かせる。
インストメインの曲では、軽やかなリズムやブラスの響きとともに、カンタベリー風味のジャズロックに近づいたり
わりとユルめの作風で、スリリングな展開などはさほどない。ラストの大曲ではアコースティックを含むギターに、
やわらかなシンセにサックスの音色、美しい女性Voを乗せて、ゆったりと牧歌的な空気に包まれる。全5曲43分。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・8 総合・7.5
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N
Nad Sylvan 「Courting the Widow」
スウェーデンのミュージシャン、ナッド・シルヴァンの2015年作
元々はUNIFAUNというバンドで活動していたが、ロイネ・ストルトとともにAGENTS OF MERCYを結成、
さらにはSteve Hackettバンドのツアーにも同行するなど、にわかに知名度が上がりつつある。
本作も、P.ガブリエルにそっくりというそのヴォーカルを存分に披露して、Genesisルーツの優美な
シンフォニックロックが存分に味わえる。ヴォーカルの他にも、シンセやギターなども自らこなしながら、
スティーヴ・ハケットや、ロイネ・ストルト、ヨナス・レインゴールドといった、名うてのミュージャンがゲスト参加、
キャッチーなメロディアス性と繊細や叙情を盛り込んだ、あくまでやわらかで優雅な聴き心地のサウンドだ。
22分におよぶ組曲を含め、難解なところはなく、BIG BIG TRAINなどにも通じる優雅なセンスに包まれている。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 叙情度・・8 総合・・8
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Nad Sylvan 「Bride Said No」
スウェーデンのミュージシャン、ナッド・シルヴァンの2017年作
AGENTS OF MERCYやSteve Hackettバンドのツアーメンバーとしても活躍するヴォーカリストでもあり、
本作は2015年作に続く2作目のソロ作品。コンセプト的な雰囲気の幻想的なイントロから、わりとハード寄りのギターに
きらびやかなシンセアレンジ、そしてP.ガブリエルを思わせるヴォーカルを乗せた、シンフォニックロックを展開。
自身の歌声によるシアトリカルな雰囲気を前に出した歌もの的な作風と、冬を思わせる薄暗く物悲しい世界観で、
涼やかでメロディックな聴き心地。スティーヴ・ハケット、トニー・レヴィン、ガスリー・ゴーヴァンをはじめ、
盟友、ロイネ・ストルト、ヨナス・レインゴールド、ニック・ディヴァージリオなどがゲスト参加。
ラストは12分の大曲で、女性ヴォーカルの歌声も加わって、ゆったりと盛り上げる展開力も見事。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 冬の叙情度・・8 総合・・8
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Nad Sylvan 「The Regal Bastard」
スウェーデンのミュージシャン、ナッド・シルヴァンの2019年作
スティーブ・ハケット、ガスリー・ゴーヴァン、トニー・レヴィン、ヨナス・レインゴールド、ニック・ディヴァージリオ、
ニック・ベッグスなどがゲスト参加。ピーター・ガブリエルを思わせるエモーショナルな歌声を乗せた、
かつてのGENESISやIQなどをルーツにした、翳りを帯びたシンフォニックロックを聴かせる。
表現力あるヴォーカルをメインに、英国的な雰囲気のシアトリカルなドラマ性を描きつつ、
随所にメロウな泣きのギターを盛り込んで、ゆったりとしたウェットな叙情美に包まれる。
キャッチーなナンバーから、優美な12分の大曲まで、派手なインパクトはないがじっくりと楽しめる好作品。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 叙情度・・8 総合・・8
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NAD SYLVAN 「SPIRITUS MUNDI」
スウェーデンのミュージシャン、ナッド・シルヴァンの2021年作
Agents Of Mercy、Unifaun、スティーブ・ハケットのGENESISツアーなどで活躍するシンガーで、
本作には、カナダのギタリスト、アンドリュー・ライトレスを迎え、ベースにはトニー・レヴィンが参加。
優美なシンセアレンジにアコースティックを含むギターと、ナッドの独特の味のある歌声を乗せた、
しっとりとしたキャッチーなサウンド。プログレ的な展開はさほどなく、牧歌的な大人の叙情性に包まれた
繊細な耳心地で、12弦ギターの響きとともに、ときにGENESISにも通じる幻想的な空気も感じさせる。
派手さはないが、優雅な味わいの好作品。ボーナストラックのナンバーにはスティーブ・ハケットもゲスト参加。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優美な叙情度・8 総合・8
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Necromonkey 「Necroplex」
スウェーデンのプログレバンド、ネクロモンキーの2013年作
元ANGLAGARDのマティアス・オルソンと、GOSTA BERLINGS SAGAのシンセ奏者によるユニットで、
メロトロンを含むシンセの重ねに、エフォクトを加えたエレクトロなアレンジで、空間的なサウンドを描きつつ、
ドラムを加えたロック色と、トランペット、チェロなどのチェンバー風味が融合した、スリリングなインストを聴かせる。
アナログシンセであるメロトロンやオルガンを、デジタルなモダンさの中に存在させるという手法で、
KING CRIMSONにも通じるような実験性と、新たなプログレへの挑戦が感じられる作風だ。
クラシカルなピアノにフルートが重なる小曲や、重たいベースとドラムをメインにした曲など、
定型にとられれない自由度で、優美で混然としたノイズ(プログレ)を表現したというような傑作だ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 アナログとエレクトロ度・・8 総合・・8
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Necromonkey 「A Glimpse of Possible Endings」
スウェーデンのプログレバンド、ネクロモンキーの2014年作
ANGLAGARDを脱退したマティアス・オルソンと、 のシンセ奏者によるユニット編成で、
サントラ風のモダンな民族ポップ的な1曲目から、薄暗いポストプログレ風味の2曲目、小曲の3曲目と、
プログレというにはいささか物足りない聴き心地であるが、後半の15分の大曲は静謐感に包まれた始まりから
チェロやオーボエが加わったチェンバーロック的な展開と、ミステリアスな緊張感で構築されるアルバムのハイライト。
媚びのないそっけなさが好みの割れるところだが、エレクトロなモダンさと、無垢質な薄暗さを含んだ実験精神を感じさせる異色作。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 モダン度・・8 総合・・8
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Necromonkey 「Live At Pianos,NYC」
スウェーデンのプログレバンド、ネクロモンキーのライブ作、2015年作
元アングラガルドのマティアス・オルソンと、GOSTA BERLINGS SAGAのシンセ奏者によるユニット、
2014年ニューヨークでのライブを収録。エレクトロな感触を含むシンセと、手数の多いドラムを中心に、
ギターとベースが加わったことでアルバム以上に、クリムゾン的なヘヴィな質感を強めている。
スリリングなアンサンブルに、北欧らしい薄暗い空気感を含ませながら独自のサウンドを描いてゆく様は、
じつにクールで、ややラウドな音質が生々しいライブ感を伝えてくる。150枚限定という希少盤につき早めにゲットすべし。
ライブ演奏・・8 プログレ度・・8 クールでスリリング度・・9 総合・・8
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Necromonkey 「Show Me Where It Hertz」
スウェーデンのプログレユニット、ネクロモンキーの2015年作
元ANGLAGARDのマティアス・オルソンと、GOSTA BERLINGS SAGAのデヴィッド・ルンドバーグによるユニットで、2013年にデビューし、3作目となる。
エレクトロなシンセとフリーキーなドラムを融合させ、ヴィンテージなアナログ感と電子音楽の無機質感を同居させたという独自の聴き心地。
アナログシンセの重ねによる、シンフォニックな優雅さも覗かせつつ、全体的には媚のないエクスペリメンタルなサウンドで、ほどよくアヴァンギャルドなセンスとともに淡々とした音像が描かれる。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 アヴァンギャル度・8 総合・7.5
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NEEDLEPOINT「DIARY OF ROBERT REVERIE」
ノルウェーのジャズロック、ニードルポイントの2018年作
2010年にデビューし、4作目となる。オルガンやクラヴィネットなど、オールドなシンセを軽やかなリズムに乗せ、マイルドなヴォーカルとともに、アナログ感たっぷりのジャズロックを聴かせる。
スカスカなドラムやフリーキーなギターなど、70年代アートロック風の牧歌性を軽妙なアンサンブルで仕立てという作風で、ヴィンテージなサウンドが好きならたまらない。
ヴォーカルやコーラスなども、どこか60~70年代風の味わいで、随所に北欧らしい涼やかな空気感も覗かせる。
楽曲は3~4分前後。ユル系であるが演奏はけっこう巧みという、マニア好みのサイケ・ジャズロックを展開する逸品です。
ジャズロ度・7 プログレ度・7 ヴィンテージ・9 総合・8
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NEPHILA
スウェーデンのサイケロック、ネフィラの2021年作
女性ツインVoを擁する7人編成で、オールドなギターにオルガンを重ね、やわらかな女性ヴォーカルを乗せた、
70年代ルーツのヴィンテージなサウンドを聴かせる。二人の女性声が重なる、艶めいた妖しさとともに、
キャッチーなポップ感触もあり、アナログ感たっぷりの耳心地は、PURSONやSIENA ROOTあたりに通じる。
楽曲は3~5分前後とわりとシンプルで、インパクトのある展開はないのだが、サイケ寄りの浮遊感やほどよいユルさも含めて、
全体的にものんびりと楽しめる。ちなみにツインギターの片割れも女性で、うるさすぎないギターの重ねも良い感じだ。
ラストは9分の大曲で、スウェーデン語による歌声が土着感をかもしだす。全35分というのも、アナログ時代っぽい。
ドラマティック度・7 ヴィンテージ度・9 女性Vo度・8 総合・7.5
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THE NEW GROVE PROJECT「FOOLS JOURNEY」
スウェーデンのプロジェクトバンド、ザ・ニュー・グローヴ・プロジェクトの1997年作
THE FLOWER KINGSのロイネ・ストルトにパル・リンダー、さらには元ENGLANDのドラマーが参加。
メンバーがメンバーなだけに物凄いシンフォニックな音かと思いきや、曲の雰囲気は意外と素朴で、
素直な流れるようなサウンド。無理に盛り上げようとはしていない分、さわやかさで自然体の雄大さに包まれた、
涼やかな耳心地の良さで楽しめる。ロイネのギター、ハル.リンダーのKeyはさすがに流麗かつハイセンス。
ENGLANDのドラマーもさすがに見事な腕前で、全体としてのびのびとした演奏で鑑賞できる好作品だ
メロディアス度・・8 シンフォニック度・・7 のびのび度・・9 総合・・8
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THE NEW GROVE PROJECT 「BRILL」
ザ・ニュー・グローヴ・プロジェクトの2作目。2004年作
前作ではロイネ・ストルトも参加していて話題になったが、残念ながら今作では不参加。
前作に引き続き、PAR LINDH PROJECTのパル・リンダーにに、元ENGLANDのドラマーが参加、
さらには、Nucleus Tornのフレディ・シュナイダー、元THE FLOWER KINGSのハッセ・ブラニウソンが参加している。
美しいピアノや、北欧らしい清涼感のあるシンセによるインストをメインに決して大仰にならない、
どこか牧歌的な雰囲気がただようサウンドで、派手さはないが聴いていてなごめるようなアルバムだ。
PLPよりはやや控えめながらも、パル・リンダーの優美なシンセワークがやはり効いていて、
全体的な完成度では、ややラフな印象だった前作よりもしろ高いかもしれない。
シンフォニック度・・8 北欧度・・8 ゆったりなごめます度・・8 総合・・8
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NICKLAS BARKER 「EPEKTASIS」
スウェーデンのミュージシャン、ニクラス・バーカーの2022年作
ANEKDOTENのギター&メロトロン奏者で、本作はストックホルムの山村にて、メロトロンとアープシンセで制作したという作品。
うっすらと鳴り響くメロトロン、アナログシンセの重ねで、北欧らしい涼やかな幽玄の空気を描き出すアンビエントサウンド。
フルートのような音も含め、やわらかなアナログシンセをメインにしたサウンドは、Klaus Schulzeなどにも通じるところがあるが、
やはり北欧というお国柄か、ほんのりと土着的な優しさがあって、随所にパーカッションによるトライバルな感触も味になっている。
これという展開はないので、アンビエントなBGMとして楽しむものだが、物悲しいメロトロンに浸れる方はウットリとなるはず。
シンセ度・8 ロック度・1 幻想度・8 総合・7.5
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Nordagust「In the Mist of Morning」
ノルウェーのシンフォニックロック、ノルダガストの2010年作
結成は90年代とけっこう古いらしいが、満を持してのデビュー作となった。
ギターにシンセ、ヴォーカルをこなすダニエル・ソルヘイムを中心にした3人組で
うっすらとしたシンセ、メロトロンなどをバックにゴシック的なダークな世界観で聴かせるサウンド。
ゲスト参加のMADDER MORTEMの女性Voがスキャット的な声を加えていて、
幻想的でミステリアスな雰囲気を盛り上げる。同郷のWHITE WILLOWあたりにも通じる作風で、
ギターの土着的な旋律はANGLAGARD的でもある。暗がりの叙情をまとった北欧ゴシック・シンフォだ。
シンフォニック度・・8 ダークな叙情度・・9 北欧度・・8 総合・・8
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NOVA 「ATLANTIS」
フィンランドのプログレバンド、ノヴァの1976年作
北欧プログレの隠れた逸品とされるバンドの唯一のアルバム、40周年記念で、2017年に2枚組で再発された、
優美なピアノの旋律に導かれ、オルガンを含むやわらかなシンセに母国語によるヴォーカルを乗せた、
優雅なサウンドが広がってゆく。15分、10分という大曲を主体にしながら、さほど派手な展開はなく
フィンランドの歌声による素朴な響きが牧歌的な味わを描きつつ、ときにジャズロック的な感触も覗かせる。
ラストの10分の大曲は、北欧らしい涼やかな空気に包まれた物悲しいシンフォニックロックが味わえる。
Disc2には、2016年ミックス音源と未発のシングル曲を収録。新たなミックスはよりクリアなサウンドで良いですね。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 北欧度・9 総合・8
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O
OBERON「Dream Awakening 」
ノルウェーのメロディックロック、オベロンの2014年作
バード・オベロン氏による個人ユニットで、フルアルバムとしては1998年以来となる、2作目。
叙情的なギターにマイルドなヴォーカルを乗せ、翳りを帯びた叙情に包まれたサウンドで、
随所にうっすらとしたシンセも重ねて、ポストプログレ的でもある繊細な空気感と
ジャケのイメージのような優美な幻想性を描き出す。アコースティックギターをメインにした
ネオフォーク的な雰囲気もあって、ポストロックとフォーク、プログレの中間という聴き心地。
楽曲は3~4分前後で、全37分と、やや物足りなさもあるが、のんびりと鑑賞できる好作品だ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・6 叙情度・・8 総合・・7.5
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OBERON 「AEON CHASER」
ノルウェーのプログレロック、オベロンの2018年作
バード・オベロン氏による個人ユニットで、本作は3作目となる。前作に比べてバンド感触が増していて、
二本のギターに美しいシンセを重ね、マイルドなヴォーカルを乗せた、キャッチーな叙情サウンドを聴かせる。
涼やかな翳りを帯びた空気感と、スタイリッシュなアンサンブルで、わりとハードなポストプログレとしても楽しめつつ
エモーショナルな歌声とメロウなギターで、繊細な優雅さに包まれた感触は、MARILLIONなどにも通じるだろう。
楽曲は3~4分前後でシンプルで、プログレらしさはさほどないのだが、アコースティックギターやピアノ、ストリングスなど、
優美なアレンジを取り入れた耳心地の良さと、ほどよくハードなロック感が同居したハイブリッドな叙情ロックの逸品です。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 叙情度・・8 総合・・8
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Octopie 「The Adventure of Harry and Walrus Kane」
ノルウェーのプログレバンド、オクトパイの2015年作
ムーグやオルガンを含むヴィンテージなシンセアレンジに、キャッチーなメロディアス性で聴かせる、
MAGIC PIEあたりに通じる軽快なプログレサウンド。Moon Safariあたりにも通じるやわらかな歌もの寄りの部分と
わりと唐突な展開もあったりするB級的な未完成感がなかなか面白い。コンセプト作らしいシアトリカルな雰囲気も随所に感じさせつつ、
裏声を使ったヴォーカルを乗せて、QUEENなどを思わせる優雅なメロディや、ときに70年代オールドロックの感触も覗かせたりと、
気づけばアルバム後半に差し掛かっているという楽しい作風であるが、メロディや楽曲そのものにもう少し魅力が欲しい気もする。
GENESISの「魅惑のブロードウェイ」あたりがお気に入りの方には、きっとお薦めできるキャッチーなトータル作品だ。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 優雅でキャッチー度・・8 総合・・7.5
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OCTOPUS 「Thaerie Wiighem」
ノルウェーのプログレバンド、オクトパスの1981年作
アルバム1枚のみを残して消えた、幻の北欧プログレ作品が、2021年にCD化された。
繊細でメロウなギターの旋律に優美なシンセを重ね、母国語によるマイルドなヴォーカルで、
北欧らしい涼やかなシンフォプログレを聴かせる。初期のKAIPAなどに比べてもさらに牧歌的で、
翳りを帯びたマイナー感たっぷりの雰囲気であるが、これぞ北欧プログレというサウンドである。
メロディ自体はキャッチーで耳心地よく、随所にプログレらしいリズムチェンジを含んだ展開と、
流れのある構成で楽しめる。ジャケの雰囲気は辺境系そのものであるが、全45分の好作品です。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 北欧度・9 総合・8
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OPETH「Heritage」
スウェーデンのプログレッシブメタル、オーペスの2011年作
1995年にアルバムデビューを果たしてから15年余り、その独自の美学を知的でプログレッシブな方法論で構築し、
激しさと静寂の同居ともいうべき個性的なサウンドを描き続けてきたこのバンド。
ちょうど10作目となる本作は、前作でも聴かれた70年代プログレの要素を前面に出した異色作となった。
やわらかなピアノの音色に導かれ、レトロなオルガンの響きをバックにアナログ的なギターリフが
リズミカルなアンサンブルを描き出す。ミカエルの歌声も70年代英国ロックを意識したような、
ジェントルでやわらかな感触だ。楽曲には70'sプログレ、サイケロックの怪しさもぷんぷん漂う。
静寂の中の張りつめた空気、メロトロンも鳴り渡る、KING CRIMSONもかくやという静かなダイナミズム…
とくにドラム、ベースはじつに生々しいサウンドで、70年代ロックを好む人間にはたまらないだろう。
このバンドの美意識とこだわりが、究極的なレイドバック作品を作り上げた。LPで聴きたくなる。
フルートでBJORN J:SON LINDHが参加しているのも北欧プログレマニアにはにやり。
ドラマティック度・・8 メタル度・・5 70'sプログレ風味度・・9 総合・・9
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OPETH 「Pale Communion 」
スウェーデンのプログレッシブ・ハードロック、オーペスの2014年作
70年代ロックに傾倒したような前作からの流れで、今作も古き良きプログレッシブロックの感触に包まれている。
アナログ的なドラムサウンドに鳴り響くオルガン、ミステリアスなピアノややわらかなフルートの音色に、
バックにうっすらと響くメロトロンもじつに美しい。前作が70'sブリティッシュロックのスタイルだとするなら、
今回はかつての北欧プログレの薄暗さと叙情性をたっぷり含んだ聴き心地で、思わずにやにやとしてしまう。
ミカエル・オーカーフェルドのジェントルな歌声もいよいよ含みを増して、繊細な楽曲をマイルドに彩っている。
デスメタル的な激しさはほとんどないが、案外緩急のついた展開と、しっかりとしたテクニックのアンサンブルは、
プログレメタル系のリスナーにも充分楽しめ、10分を超える大曲での美しいドラマ性は、このバンドのひとつの到達点だろう。
メタル云々を抜きにして、素晴らしい完成度の音楽作品だ。プログレファンはむろん必聴。スティーヴン・ウィルソンがゲスト参加。
ドラマティック度・・8 メタル度・・5 プログレ度・・8 総合・・8.5
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Opeth 「Sorceress」
スウェーデンのプログレッシブ・ハードロック、オーペスの2016年作
1995年にデビュー、メロデス要素もあった初期からプログレッシブに深化し、2011年作からは大胆にメタル色を薄めた、
70年代回帰型のプログレッシブロック路線を追求し始めたこのバンド。12作目となる本作もアコースティックギターに
メロトロンが鳴るやわらかなイントロから、曲が始まるとオールドなサイケロック風味の浮遊感あるアンサンブルで、
マイルドなヴォーカルを乗せた、アナログ感に包まれたサウンドは、ほとんど70年代ブリティッシュロックというもの。
変則リズムを含んだプログレ質感もすでに堂に入ったもので、薄暗い妖しさと湿り気のある叙情をゆったりと描きつつ、
随所に切り返すような展開も覗かせる、その構築センスは素晴らしい。曲によってはJethro Tullのような土着的な味わいもあり、
フルートの音色などアコースティカルなフォーク風味も耳に優しい。濃密さの点ではなんとなく物足りないという、
この堂々たる中庸感こそ、自信とともにバンドが行きついた境地といえるかもしれない。
ドラマティック度・・8 ほぼプログレ度・・9 古き良き度・・9 総合・・8
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Opeth「In Cauda Venenum」
スウェーデンのプログレッシブメタル、オーペスの2019年作
1995年にデビュー、本作は13作目で、スウェーデン語と英語、それぞれのバージョンを収録した2枚組となっている。
シンセによる幻想的なイントロから、ハードなギターにオルガンやメロトロンを重ね、ジェントルなヴォーカルとともに、
10作目以降からのヴィンテージなプログレ路線を受け継ぎつつも、随所にメタル寄りの激しさも残している。
アコースティックな静寂パートなどを含む、メリハリのある展開力に、スウェーデン語による土着的な雰囲気もよろしく、
ときにオーケストラを加えた壮麗なアレンジも覗かせる。後半にはジャズタッチの優雅なナンバーもあったりと、
なかなかバラエティに富んだ作風ではあるが、強烈なインパクトはないというのが、自然体のサウンドということか。
英語版の方は、いくぶん優雅な味わいで、よりオールドなブリティッシュ・ハードロック風味を感じさせる。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 ヴィンテージ度・8 総合・8
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The Opium Cartel「Night Blooms」
ノルウェーのシンフォニックロックバンド、オピウム・カルテルの2009年作
WHITE WILLOWのギター、Wobblerのシンセ奏者、元ANGLAGARDのドラマーらが参加、
北欧プログレの猛者が集結したものだが、サウンドの方はゆったりとした曲調にほの暗い質感で聴かせる、
いわゆるポストプログレ系といえるもの。牧歌的なアコースティックギターに、フルート、ほのかにメロトロンが鳴りつつ、
倦怠ぎみの男性ヴォーカルがマイルドな歌を乗せる。美しい女性ヴォーカルで聴かせる曲も含めて、
やはり北欧からしか出て来ないような、ゆったりとしたロハスな叙情というものに包まれた好作品だ。
ほの暗度・・8 プログレ度・・7 ゆったりメロウ度・・9 総合・・8
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The Opium Cartel 「Ardor」
ノルウェーのポストプログレ系バンド、オピウム・カルテルの2013年作
WHITE WILLOW、Wobbler、元ANGLAGARD、RHYS MARSHといったメンバーが参加、男女ヴォーカルのやわらかな歌声で、
しっとりとした繊細な叙情を聴かせるサウンドは前作同様で、ムーグやメロトロンといったヴィンテージなシンセを使いつつ、
ポストプログレ的なモダンな翳りとともに、決して古臭くならないエレクトロなアレンジが合わさったセンスは実に見事。
基本的には歌ものでありながら、バックの細やかな一音一音にはじつに計算された構築美を感じさせる。
北欧らしい涼やかな雰囲気とうっすらとしたプログレ風味も含んだ傑作。なにやら妖しいジャケもじつによいですね。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 繊細度・・8 総合・・8
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The Opium Cartel 「Valor」
ノルウェーのポストプログレ、オピウム・カルテルの2020年作
WHITE WILLOWのヤコブ・ホルム・ルーポを中心にしたユニットの7年ぶりとなる3作目。
エレクトロな感触を含む美麗なシンセに、コケティッシュな女性ヴォーカルを乗せて、
しっとりとした涼やかなサウンドを描く、キャッチーなシンフォニック・ポストプログレ。
サックスが鳴り響く優雅な大人の叙情に、優しい女性声によるどこかなつかしいような哀愁と
倦怠の空気が耳に心地よい。80年代風味のエレクトロなナンバーなども味わいがあって、
女性声オンリーになったので、アンビエントな女性声北欧ポップとしても楽しめる優美な逸品です。
ドラマティック度・・7 優美度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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OPUS EST「OPUSⅠ」
スウェーデンのポンプロックバンド、オパス・エストの1983作
サウンドは北欧的な叙情よりは、むしろけっこうバタバタしているサウンドで、
80年代という微妙な時期ということもあり、やはりGENESIS系ポンプロックの質感が強い。
メロディアスでキャッチーな楽曲と、ややハードめの曲が混在しており、
全体の完成度としてはさほどでもないが、美しいシンセなどにはやはり北欧らしい透明感がある。
メロディアス度・・7 北欧度・・7 楽曲・・7 総合・・7
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Opus Symbiosis 「Monster」
フィンランドのプログレバンド、オパス・シンバイオシスの2013年作
2009年にデビュー、本作は4曲入りのEPで、美麗なシンセアレンジにほどよくハードギター、
伸びやかな女性ヴォーカルを乗せて、キャッチーでスタイリッシュなサウンドを聴かせる。
翳りを帯びた叙情とモダンな感触の同居という点では、Frequency Driftなどにも通じるが、
北欧らしい涼やかな空気感は、Paatosなどを思わせる。楽曲は4分前後とコンパクトにまとまっていて、
全4曲ということもあり、濃密さの点では少し物足りなさもあるが、優雅で軽妙なセンスに包まれている。
この路線でのフルアルバムが聴きたかったところ。パット・マステロット(KING CRIMSON)などがゲスト参加している。
ドラマティック度・・7 スタイリッシュ度・・8 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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Orjan Strandberg 「The Saga of the Nordic Gods」
スウェーデンのミュージシャン、オルヤン・ストランドベルグのソロ。1993年作
Diceのギタリストとしても知られるが、本作はシンセを中心にしたサントラ的な作風で、
北欧神話をテーマに、静謐感に包まれた神秘的なサウンドを描いている。
オーケストラルなアレンジを含んだ壮麗なクラシカル性も含んでいて、
ロック色はほとんどないが、シンフォニックな味わいは随所に感じられる。
アルバム後半には、ドラムにオルガンを乗せたプログレ風味や、モダンなシンフォニック風味もあり、
ゆったりと気長に聴けば、それなりな楽しめる。全72分という大作です。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・6 北欧度・・8 総合・・7.5
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ORNE「Tree of Life」
フィンランドのプログレバンド、オルネの2011年作
オルガンやメロトロンが響く古き良き質感に、マイルドな男性ヴォーカルの歌声で
素朴な叙情を聴かせるサウンド。いくぶんゴシック的でもある耽美な世界観と
サックス、フルートの音色なども含んだアコースティカルな牧歌性もあって、
フォークロック的なゆるやかな聴き心地の中にはサイケな幻想性も感じさせる。
プログレというよりは牧歌的なレトロロックというべきか。のんびり楽しめます。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 ゆるやか叙情度・・9 総合・・7.5
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OUR SOLAR SYSTEM 「ORIGINS」
スウェーデンのサイケ・ロック、アワー・ソーラー・システムの2018年作
2013年にデビュー、本作は5作目となる。ジャケやバンド名もカルトな感じでいかにも妖しいが、
サウンドの方ものっけから20分の大曲で、ノイジーな轟音にアナログ感あるドラムが鳴り響き、
AMON DUULばりのサイケロックを展開。スペイシーなシンセが加わると、TANGERINE DREAMにも通じる
幻想的な雰囲気になりつつ、やわらかなフルートが鳴り響き、ユルめのギターに妖しい女性声を乗せた、
神秘的な浮遊感に包まれる。フリーキーでありながら、怪しいスケール感を描き出す異色作です。
サイケ度・・9 プログレ度・・7 怪しげ度・・9 総合・・7.5
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THE OUTER SONICS 「VIOLET」
フィンランドのシンフォニックロック、アウター・ソニックスの2016年作
うっすらとしたシンセに美しい女性ヴォーカルの歌声を乗せ、北欧らしい涼やかな叙情と
MAGENTAのようなキャッチーな優雅さに包まれたサウンド。エレピやオルガンなどのシンセに、
ときにヴァイオリン、チェロなども加わったクラシカルなアレンジ、なによりコケティッシュな
Ninaさんの歌声はとても魅力で、PAATOSあたりが好きな方にも薦められる。
楽曲は3~5分前後とわりとシンプルで、マニアックなプログレ感触がないので、
女性声の美麗系メロディックロックとしても普通に楽しめる好作品です。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8
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The Outer Sonics 「Dance A Little Light」
フィンランドのプログレバンド、アウター・ソニックスの2020年作
2016年にデビューし3作目となる。メロウなギターにコケティッシュな女性ヴォーカルを乗せて
北欧らしい翳りとキャッチーな叙情に包まれた、Paatosなどにも通じるサウンドを聴かせる。
ほどよいハードさを含んだギターワークに、オルガンなどを含むうるさすぎないシンセアレンジで、
あくまで女性声を主体にした、やわらかなメロディックロック的な作風でゆったりと楽しめる。
プログレ的な展開はあまりないので物足りなさはあるが、すっきり優美に仕上げた好作品です。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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OVERHEAD「ZUMANTHUM」
フィンランドのシンフォプログレバンド、オーバーヘッドの1st。2002作
基本はGENESIS系のシンフォサウンドだが、そこに北欧的な叙情とメロディセンス、
それにDREAM THEATER以後の構築性とリズムアプローチを付加した雰囲気。
メンバーはみな若そうだが、安定した演奏としっとりとしたメロディアスな部分には
まるでベテランバンドのような落ち着きと余裕とが感じられる(①からして20分の組曲だし)。
ロックとしての陽性の跳ね方にはTRANSATLANTIC的なものもあり、
多くのシンフォニックファンが楽しめるサウンドだろう。バンドのサイトで試聴可能。
メロディアス度・・8 シンフォニック度・・7 軽快&北欧度・・8 総合・・8
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OVERHEAD「METAEPITOME」
フィンランドのシンフォプログレバンド、オーバーヘッドの2nd。2004作
今作ものっけから19分の大曲。2作目にしてすでに音には自信と余裕すら感じられる。
レトロでありながらも現代的というTRANSATLANTIC(NEAL MORSE)系の感覚はいっそう顕著になり、
キャッチーなメロディセンスとGENESIS系のたおやかシンフォの要素を上手く融合させている。
楽曲におけるダイナミズムの付けかたがこなれてきたせいで、流れの中でドラマティックなメリハリがあり
もともと高かった演奏レベルでの表現力もぐんと上がっている。北欧のTRANSATLANTICという傑作。
メロディアス度・・8 シンフォニック度・・8 ドラマティック度・・8 総合・・8
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OVERHEAD「And We're Not Here After All」
フィンランドのシンフォニックロックバンド、オーバーヘッドの3rd。2008年作
前作までは「北欧版TRANSATLANTIC」という雰囲気のキャッチーで軽快なサウンドだったが、
今作ではぐっとメロウな雰囲気が増し、ゆったりとした質感に包まれたほのかな薄暗さと
モダンな感触を折り込んだ音作りになっている。7分~11分の大曲をメインに
派手な展開よりは、むしろゆるやかに流れてゆく構成で、なかなか耳心地がよい。
シンフォニックロックとしての濃密さは薄まったが、スタイリッシュな聴きやすさと
北欧的な叙情性はそのままに、じつにセンスよくまとめられたアルバムである。
メロディアス度・・8 ゆったり叙情度・・8 スタイリッシュ度・・8 総合・・8
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OVERHEAD「Live After All」
フィンランドのシンフォニックロックバンド、オーバーヘッドのライブ。2009年作
本作は2009年のポーランドでのステージを収録。3rd「And We're Not Here After All」からの曲をメインに、
しっとりとしたシンセワークやフルートなどで、メロディアスでゆるやかな叙情を聴かせる演奏が楽しめる。
サウンド的には、最近のバンド特有の翳りのあるメロウなやわらかさが前に出ていて、
SATELLITEやRiversideなど、ポーランドのバンドにも通じる感触もあるが、
2nd以前の曲の方がキャッチーなシンフォニック性が残っていて好みだったりする。
ライブステージの映像が楽しめる、DVD付きの2枚組限定盤もあり。
シンフォニック度・・7 叙情度・・8 ライブ演奏・・8 総合・・7.5
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OVERHEAD 「Of Sun and Moon」
フィンランドのシンフォニックロック、オーバーヘッドの4th。2012年作
これまでもセンスのよいスタイリッシュなシンフォニックロックをやっていた彼らだが、本作はのっけから、
ポストプログレ的なモダンさがぐっと増していて、やわらかな叙情と重厚なハードさが合わさった聴き心地。
キャッチーなメロディアス性は残しつつ、ソリッドなモダンプログレに包み込んだその思い切ったアプローチは
バンドとしての前進力の強さを感じさせる。メロディの抜けの良さは健在。確かな演奏力で描かれた高品質なアルバムだ。
メロディック度・・8 モダン度・・8 アレンジセンス・・9 総合・・8
Overhead 「Tellepathic Minds」
フィンランドのプログレバンド、オーヴァーヘッドの2022年作
2002年にデビュー、6作目となる本作は2枚組の大作で、優美なシンセにアコースティックを含むギターにフルート、マイルドなヴォーカルでしっとりと幕を開ける。
しっかりプログレらしいシンセワークとスタイリッシュな構築力が同居し、キャッチーなメロディのフックとともに、優雅なシンフォプログレを構築。
THE FLOWER KINGSにも通じる肩の力の抜けた叙情ナンバーから、オルタナ風のメロディックロックまで、わりとつかみどころがないが、Disc2では17分という大曲もあり、緩急あるドラマティックな展開力のシンフォニックロックが楽しめる。
全体的にはモダン路線かキャッチーな路線かがやや微妙なので、もう少し明確な方向性になれば、バンドの実力がもっと発揮できそうだが。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 スタイリッシュ度・8 総合・8
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P
PAATOS「TIMELOSS」
スウェーデンのシンフォニックロック、パートスの1st。2002年作
元LANDBERKのメンバーによるバンドで、ANEKDOTENを思わせるメロトロンがうっすらと鳴り響き、
いくぶんサイケ風の浮遊感とともに、はかなげな女性ヴォーカル(チェロ奏者兼)が歌い出す。
静寂パートでは、WHITE WILLOWにも通じる静謐感がただよっていて、この寒々しい雰囲気というのは、
やはり北欧からしか出て来ないサウンドだ。ラストの大曲ではジャジーかつアヴァンギャルドに暴れるのが
いくぶん好みの分かれるところかもしれないが、北欧プログレの新たな形を提示する完成度の高い作品だ。
シンフォニック度・・7 静寂叙情度・・8 北欧度・・8 総合・・8
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PAATOS「KALLOCAIN」
スウェーデンのシンフォニックロックバンド、パートスの2nd。2004年作
艶やかなヴァイオリンが鳴り響き、うっすらとしたメロトロンにやわらかな女性ヴォーカルの歌声が重なる、
北欧らしい薄暗い叙情美に包まれたサウンド。今回はしっとりとした女性声の魅力をより前に押し出した、
アンビエントな空気感も強まっていて、プログレといわれるともの足りない気はするが、路線も悪くはない。
効果的に使用されるメロトロンも随所に美しく、ANGLAGARDやWHITE WILLOWにも通じる北欧らしい涼やかな叙情がたままらない。
いまでいうところのポストプログレ的な繊細さも感じさせる傑作だ。限定版DVDではライブ映像も楽しめる。
シンフォニック度・・7 薄暗度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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PAATOS「silence of another kind」
スウェーデンの女性Voシンフォバンド、パートスの3rd。2006年作
ゆるやかなメロトロンの調べとたゆうたような女性ヴォーカル…北欧らしい寒々しさと倦怠を感じるサウンドは、
音数はシンプルで一聴して地味な印象だが、内的な強度…というか彼らの目指す「密度を減らした薄暗い叙情の表現」という意味では
いままでのアルバムよりもむしろ徹底しており、ほぼ完全に成功しているといっていい。
昨今のPORCUPINE TREE系サウンドにも通じるつかみ所のなさが、好きな者にはたまらず、
嫌いなものには退屈とも感じられるだろうが、この鬱屈した美意識を生み出せるのは北欧ならではなのは確かだろう。
メロディアス度・・7 プログレ度・・7 北欧的薄闇度・・9 総合・・8
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Paatos「SENSORS」
スウェーデンのシンフォニックロックバンド、パートスのライブアルバム。2007年作
元はLPのみでの販売だったもので、2006年のツアーからオランダ、ドイツ、フランスでの演奏を収録。
これまでにアルバム3枚を発表し、そのレトロな懐古性と北欧ロックの原初的な翳りを閉じ込めた作品で、
シンフォファンから注目されているこのバンド。このライブ作でも、アルバム以上に伸びやかな歌声を聴かせるペトロネラ嬢の歌唱と、
バックに鳴り響くメロトロンが幽玄な世界観を作り上げている。ゆるゆかな中にも内に秘めた情感を感じさせる演奏だ。CD盤はボーナス2曲入り。
シンフォニック度・・8 ライブ演奏・・8 女性Vo度・・9 総合・・8
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Paatos「Breathing」
スウェーデンの女性ヴォーカル・シンフォバンド、パートスの2011年作
前作から5年ぶりとなる4作目で、しっとりとした女性ヴォーカルの歌声と
どこかアンニュイな薄暗さで聴かせる独自のサウンドはこれまで通り。
とことなく、後期のThe Ghateringを思わせるような倦怠感とともに、
メロトロンが鳴るANEKDOTEN風味の北欧プログレ要素がゆるやかに混ぜ合わさり、
さりとて決して濃い口にならないクールさもまたこのバンドの魅力だろう。
シンフォニック度・・7 薄暗叙情度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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Paidarion「Hauras Silta」
フィンランドのシンフォニックロックバンド、パイダリオンの2009年作
たおやかなフルートの音色に女性ヴォーカルの歌声でしっとりと聴かせるシンフォニック。
母国語による歌唱も含めて、土着的な雰囲気がサウンドのやわらかさとなっていて、
メロウなギターにやわらかなシンセを加えた幻想的な作風はとても耳心地がよい。
一転してサックス入りの曲では、ジャズロック的なアンサンブルを聴かせるなど
曲調にややとりとめがないのだが、男女ヴォーカルによる牧歌的なプログレという点では
なかなか楽しめる。個人的には女性声を全面に出した作風を期待したいが。
シンフォニック度・・7 プログレ度・・7 優美度・・9 総合・・7.5
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Paidarion 「Behind the Curtains」
フィンランドのシンフォニックロック、パイダリオンの2011年作
女性Voにサックス奏者を含む6人組で、前作もシンフォ、ジャズロックを合わせたような
好作であったが、本作ではゆるやかな叙情美と幻想的な世界観に磨きがかかっている。
うっすらとした優美なシンセにサックスの音色が絡み、軽快さと叙情性を併せ持った楽曲に
男女ヴォーカルの歌声が乗る、北欧らしい涼やかな聴き心地の優雅なシンフォニックロックである。
メロウなギターのフレーズもセンス良く、大仰にならないキャッチーな明快さがなかなか素晴らしい。
10分の大曲を構築するアレンジ力も含めて、知的な美意識に包まれたモダンシンフォニックの傑作。
メロディアス度・・8 プログレ度・・8 優雅度・・9 総合・・8
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PAIDARION Finlandia Project 「Two Worlds Encounter」
フィンランドのシンフォニックロック、パイダリオンの2016年作
2009年にデビューし、本作は3作目。前作「Behind the Curtains」は優雅なる好作品であったが、
本作ではドラムとベース以外のメンバーがゲスト扱いとなった、いわばプロジェクト的なユニットらしい。
シンセにはロバート・ウェッブが参加し、ENGLANDのカヴァーや未発曲なども演奏していて、
バンドの過去曲の再録や、オーストラリアのWINDCHASEのカヴァーなどもマニア好み。
ハスキーな女性ヴォーカルの歌声に、やわらかなギターとメロトロンを含むシンセも美しく
どの曲も優美なアレンジで、シンフォニックロック好きにはとても楽しめる逸品です。
メロディック度・・8 フログレ度・・7 優美度・・9 総合・・8
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Paintbox「bright gold and red」
スウェーデンの女性Voロックユニット、ペイントボックスの2008年作
ISILDURS BANEのFredrik"Gicken"Johanssonと、女性シンガーLinneOlsson嬢を中心にしたユニットで、
サウンドはアコースティカルでアンビエントな雰囲気の歌もの。ゆったりとした素朴な楽曲は
プログレでもシンフォでもないが、EPHEMERAあたりに通じるやわらかなロハスな感覚と、
うっすらとしたシンセやチェロなども加わった、北欧らしい翳りある叙情が耳に優しい。
ゆったりと心地よくまどろめる、歌もの系女性ヴォーカルの好作品です。
メロディアス度・・8 素朴度・・9 女性Vo度・・8 総合・・8
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Paintbox 「The Night」
スウェーデンのポップロックユニット、ペイントボックスの2011年作
ISILDURS BANEのFredrik"Gicken"Johanssonと、女性シンガーLinneOlssonを中心にしたユニットで、
前作はゆったりとしたアンビエントな歌ものポップであったが、3年ぶりとなる本作も
チェロの音色を響かせながら、女性ヴォーカルの歌声を中心にポップ&キュートな聴き心地。
お洒落な可愛らしさの中にも、やはりどことなく知的な構築センスも覗かせていて、
アコースティカルな要素もまじえつつ、コケティッシュな浮遊感を描いてゆく。
いわばプログレファンにも楽しめるフィメール・スウェディッシュ・ポップである。
ポップ度・・8 プログレ度・・6 女性Vo度・・8 総合・・8
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Pale Forest「Layer One」
ノルウェーのゴシック・シンフォニックロック、ペール・フォレストの1998年作
4曲入りのデビューミニで、後のアルバムと同様に美声の女性ヴォーカルのコケティッシュな歌声をメインにした、
しっとりと優美なサウンド。ゴシック的な雰囲気は薄めで、アンピエントなフィメールロックとして楽しめる好作品。
メロディアス度・・8 メタル度・・3 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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PALE FOREST「TRANSFORMATION HYMNS」
ノルウェーのゴシック・シンフォニックロック、ペール・フォレストの1st。1998年作
キュートな女性ヴォーカルの歌唱で聴かせる、繊細にしてキャッチーなサウンドで、
美少女系フィメール・シンフォニックロックという、このバンドの魅力はすでに備わっている。
メンバー写真を見るとあまり柄は良さそうではないのに、音楽の方は清涼にして清純という。
2nd以降に比べて、曲のメリハリや効果的なメロディなどは少々控えめだが、
しっとりと心地よく聴ける音楽であることには違いない。後半に良い曲多いです。
メロディアス度・・8 優美度・・9 女性Vo度・・8 総合・・8
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PALE FOREST「OF MACHINES AND MEN」
ノルウェーのゴシック・シンフォニックロック、ペール・フォレストの2nd。2000作
キュートで清純なこの魅力的な女性ヴォーカルの歌唱だけでもう降参いたします(笑)。
曲のほうももちろんなかなかセンスがよく、メタル色も若干覗かせつつ、基本は女性声メインで
シンセアレンジも加えた叙情性は、北欧の森を思わせる清涼感をかもしだしています。
ゴシック的な耽美色はほぼ皆無ですが、幅広く女性Vo愛好者にアピールする傑作です。
メロディアス度・・8 優美度・・9 女性Vo度・・9 総合・・8
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PALE FOREST「EXIT WOULD」
ノルウェーのゴシック・シンフォニックロック、ペール・フォレストの3rd。2001年作
曲調はかつてのTHE GATHERINGをぐっとさわやかにしたような感じだが、
女性ヴォーカルの歌声がずっと「可愛い系」なこともあって、だいぶ印象は異なる。
とにかくこのキュートな歌唱、歌声だけで個性になっているのがまず素晴らしい。
曲はキーボード、ピアノなどを控えめに使いながら、アンニュイさと優しさを表現出来ていて
暗黒度はかなり薄いのだが(ゴシックよりはアンビエント寄りか)、決して軽いわけではない。
このまま成長してゆけばさらに素晴らしい女性Voバンドになるに違いない。
メロディアス度・・8 優美度・・9 女性Vo度・・9 総合・・8
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PALE FOREST「ANONYMOUS CAESAR」
ノルウエーの女性Vo、ゴシック・シンフォニックロック、ペール・フォレストの2003年作
キュートな女性ヴォーカルの歌声をメインにしたサウンドは、この5曲入りミニアルバムでも変わらずに一安心。
クリスティン嬢の歌声は("嬢"というよりは"ちゃん"と呼びたくなるな)ますます可愛く、
バックの演奏は、一応のロック感触度は保ちつつも、いっそうシンプルになっている。
新曲は1曲のみであとはライブ2曲にインスト曲が1、そしてもう1曲は、なんと
PINK FLOYDのカヴァー。これが意外とサイケな感じでハマッていて良いかも。
メロディアス度・・7 優美度・・8 女性Vo度・・9 総合・・8
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PANZERPAPPA 「Pestrottedans」
ノルウェーのチェンバーロック、パンザーパッパの2016年作
結成は90年代というバンドで、ムーグなどのプログレ的なシンセにサックスが鳴り響き、
わりとメロディックなギターフレーズを乗せた、ジャズロック色もある軽妙なサウンドを聴かせる。
とぼけた味わいはSAMLA MAMMAS MANNAにも通じる雰囲気で、カンタベリー的な優雅さもある。
ベースとドラムの生み出すわりとストレートなノリの良さと、屈折感をほどよく同居させたセンスもなかなかで、
アヴァンギャルド過ぎずダークな要素も薄いので、チェンバー・ジャズロック初心者にも聴きやすい作風だろう。
オールインストで演奏が流麗なため、聞き流してしまいそうになるのだが、アンサンブルのレベルは高く、
メロディも分かりやすいためキャッチーな爽快さもあって、軽快なプログレ・ジャズロックとしても楽しめる。
メロディック度・・8 チェンバー度・・7 ジャズロック度・・8 総合・・8
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Panzerpappa 「Summarisk Suite」
ノルウェーのアヴァンプログレ、パンザーパッパの2019年作
メロトロン、ムーグを含むシンセにギターを重ね、サックスが優雅に鳴り響く、叙情的なジャズロック風味に、
緊張感ある展開力でミステリアスな空気を描き出す。クリムゾンなどが好きな方にも楽しめそうなサウンド。
一方では、サムラのようなトボけた味わいもあって、肩の力が抜けたユルめのアヴァンプログレというべきか。
オールインストなので、明確な盛り上がりというのはないが、軽やかなアンサンブルをシンセが涼やかに包み込み、
曲によっては北欧らしいメロウな叙情性も含んだ作風で、チェンバー、アヴァンロック問わずゆったりと鑑賞できる好作品。
ドラマティック度・・7 アヴァンギャル度・・7 北欧度・・8 総合・・8
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PAR LINDH PROJECT「GOTHIC IMPRESSIONS」
スウェーデンのシンフォニックロック、パル・リンダー・プロジェクトの1st。1994年作
90年代北欧シンフォニックの金字塔的作品というべきPLPの名作。
鳴り響くメロトロン、幽玄なるパイプオルガン、北欧独特のもの悲しいメロディと薄暗い叙情美、
混声合唱やゲストによるたおやかなフルートの音色などもじつに美しい。
タイトル通り、ゴシック的なほの暗い美しさに包まれた世界観にうっとりと浸れます。
北欧シンフォとしてはまず外せない一枚。世界的に見てもド級のシンフォニック作品である。
シンフォニック度・・9 荘厳度・・10 北欧度・・10 総合・・8.5◆プログレ名作選入り
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PAR LINDH PROJECT「MUNDUS INCOMPERTUS」
スウェーデンのシンフォニックロックバンド、パル・リンダー・プロジェクトの2nd。1998年作
1st「Gothic Impressions」は管弦楽、チャーチオルガン、合唱隊などを配したド級のシンフォニック作で、
初めて聴いたときは大変な衝撃だった。多数のゲストを集めたソロプロジェクト的な作品だった前作に比べ
本作では女性ヴォーカルを含む5人編成でのバンドサウンドとなって、前作の壮麗さに加えて
よりロックとしての躍動感が備わった。オルガンをメインにしたヴィンテージキーボードに、手数の多いドラム、
美しい女性ヴォーカルにヴァイオリンの音色も加えた、クラシカルな優雅さは、THE NICEを北欧プログレ化したようでもあり、
THE ENIDのような優美なロマンティシズムも感じさせる一方では、濃密すぎない清涼感はやはり北欧らしさというところ。
起伏に富んだ26分の組曲も圧巻だ。まさに1990年代を代表するシンフォニックロックのマスターピースのひとつである。
シンフォニック度・・8 クラシカル度・・9 キーボー度・・9 総合・・8.5◆プログレ名作選入り
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PAR LINDH PROJECT「LIVE IN AMERICA」
スウェーデンのシンフォニックロックバンド、パル・リンダー・プロジェクトのライブ。2002年作
やりすぎとも言えるド級の壮大キーボードシンフォを打ち鳴らすこのバンドだが、ライブにおいてもその志は変わらず。
スタジオ盤の重厚さに比べると音数はいささか減るが、それを補ってあまりあるメンバーのプレイは素晴らしい。
パル・リンダーの多彩なKEYワークはもちろんのこと、マグダレーナ嬢の歌声もアルバム以上に魅力的。
そしてやかましいまでにハードロック的な手数の多いドラムと、各プレイヤー熱のこもった演奏が楽しめる。
EL&P「聖地エルサレム」「ロンド」、KING CRIMSON「21世紀の精神異常者」のカヴァーを含め、
THE NICEをバロック化したようなクラシカルなシンフォプログレを聴かせるCD2枚組のライブ作品。
シンフォニック度・・8 クラシカル度・・8 ライブ演奏・・8 総合・・8
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PAR LINDH PROJECT「VENI,VIDI,VICI」
スウェーデンのシンフォニックロッ、パル・リンダー・プロジェクトの3rd。2001年作/邦題「幻想のノスタルジア」
荘厳なイントロに続くのは、かつてのE&LPもかくやという躍動的なキーボードサウンド。
クラシックの基盤に裏打ちされたパル・リンダーのシンセワークは、ただの物真似には終わらず、
フレーズの一つ一つに説得力がある。また、手数の多いドラムもメタル的なツーバスなどを使ったりと面白い。
毎回オーケストラやストリングスなどのゲストで分厚い音を作り出す彼らだが、
今回は基本的にはバンドでの演奏というものにこだわっているようで、音数は意外にシンプル。
ヴァイオリンも弾きこなすマグダレーナ嬢のヴォーカルが曲にアクセントをつけている。
全体としてクラシカル、シンフォニックでありながら北欧らしさを失っていないのが素晴らしい。
シンフォニック度・・8 クラシカル度・・9 北欧度・・8 総合・・8
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PLP「LIVE IN ICELAND」
スウェーデンのシンフォニックロックバンド、PAR LINDH PROJECTのライブアルバム。2002作
今やTHE FLOWER KINGSとともに北欧シンフォニックの第一人者、パル・リンダー率いるこのバンド。
3rd「VENI,VIDI,VICI」でハードかつバロック的なシンフォサウンドを確立させたが、
その演奏はライブにおいても熱情的なダイナミズムを損ねていない。パル・リンダーのキーボードは言うに及ばず、
手数の多いドラム(ツーバス)のプレイやツアーメンバーであるギターも効果的に曲に彩りを添えているし、
ヴァイオリンもこなすマグダレーナ嬢の歌唱は、北欧的なけだるげな情感を曲にもたらしている。
全盛期のELPのごとき攻撃性と、優雅なクラシカルさとを北欧テイストで包み込んだ音、である。
数々のライブをこなし、バンドとして円熟されてきたこの大仰シンフォバンドの現在系のライブ。
シンフォニック度・・9 クラシカル度・・8 ライブ演奏・・8 総合・・8
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Par Lindh Project「In Concert-Live in Poland」
スウェーデンのシンフォニックロックバンド、パル・リンダー・プロジェクトのライブアルバム。2009作
ライブアルバムとしてはこれが2作目となり、2007年のポーランドでのステージを収録している。
一曲目から“はげ山の一夜”でELPばりのクラシカル・キーボードプログレを聴かせる。
パル・リンダーの鍵盤さばきは、エマーソンほどにテクニカルではないものの、
彼の奏でるメロディには北欧のアーティストらしい温かみが感じられる。
ただトリオのみでの演奏は、やはりアルバムのサウンドに比べると音が薄いのだが、
そこも含めてローカルなキーボードロックとして聴けば楽しめる。同タイトルのDVDもあり。
クラシカル度・・8 キーボー度・・8 ライブ演奏・・7 総合・・7.5
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PAR LINDH PROJECT「Time Mirror」
スウェーデンのシンフォニックロックバンド、パル・リンダー・プロジェクトの2011年作
90年代にデビュー、The Flower Kingsとともに北欧のシンフォニックシーンを牽引してきたPLP、
Voのマグダレーナ嬢の死を乗り越え、スタジオアルバムとしては10年ぶりとなる復活作である。
いきなり17分の大曲で幕を開け、ムーグシンセを使用した時代的なキーボードプログレが全開、
クラシカルかつ荘厳なPLPサウンドに翳りなしである。チャーチオルガンの音色とともに、
1st「Gothic Impressions」に回帰したような雰囲気で、ヴォーカルが加わったことで聴きやすさも増した。
いまとなってはいくぶん古めかしさもあるが、北欧版TRACEというような鍵盤プログレが堪能できる。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・8 キーボー度・・8 総合・・8
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PAR LINDH & BJORN JOHANSSON「Bilbo」
スウェーデンのミューシシャン、パル・リンダーとビヨルン・ヨハンソンによる1996年作
トールキンの「指輪物語」の一作「ホビットの冒険」をコンセプトにした作品で、北欧らしい寒々しい叙情美と
フルートやクラリネットなどのアコースティカルな繊細さに、シンフォニックな美しさが加わった傑作。
中世的なチェンバロの音色や、荘厳なパイプオルガンなど、PLPとしての1作目である「GOTHIC IMPRESSIONS」に
通じる雰囲気もあり、薄暗い叙情性と幻想美にうっとりだ。また、北欧トラッド的なメロディを散りばめているところが
いかにもBJORN JOHANSSONらしい。PLPのマグダレーナ嬢がヴォーカルで参加、ファンタジックな世界観に華を添えている。
シンフォニック度・・8 しっとり繊細度・・9 ファンタジック度・・9 総合・・8
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PAR LINDH & BJORN JOHANSSON「DREAMSONGS FROM MIDDLE EARTH」
スウェーデンのアーティスト、パル・リンダーとビヨルン・ヨハンソンによるユニットの2004年作
前作「BILBO」に続き、今回もトールキンの「指輪物語」をテーマにしたコンセプト作で、
ギター、マンドリン、ブズーキ他、トラッド楽器もこなすビヨルン・ヨハンソンの作曲能力とマルチミュージシャンぶりは、
ソロ作「DISCUS URSI'S DUI」で証明済み。一方、 PLPでは弾きまくりのバロックシンフォをやっているパル・リンダーだが、
ここではやや抑え気味にしっとりとしたピアノ、キーボードを優雅に聴かせてくれる。
ストーリーにそって、曲はゆったりと、たゆたうように流れてゆき、ときに北欧トラディショナル的な
やわらかな土着メロディが耳に心地よい。アコースティカルで清涼感のあるシンフォサウンド。
シンフォニック度・・8 しっとり繊細度・・9 ファンタジック度・・9 総合・・8.5
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Pax Romana 「Trace of Light」
フィンランドのプログレバンド、パックス・ロマーナの2005年作
結成は70年代ながら作品を残さぬままに解散、本作は復活してからの作品となる。
うっすらとしたシンセとメロウなギターで聴かせる、いかにも北欧らしい叙情的な雰囲気で
ヴォーカルが入るとキャッチーでありながらも、物悲しく哀愁を感じさせる聴き心地だ。
とくにギターの泣きのフレーズは魅力的で、いわば北欧化したCAMELというか、
フルートやチェロなども入って繊細な叙情性でしっとりと描かれる大人の北欧プログレです。
メロディック度・・8 叙情度・・8 北欧度・・9 総合・・8
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Pekka Pohjola「B the Magpie」
フィンランドの音楽家、ペッカ・ポーヨラの1974年作
WIGWAMのベーシストとしても知られるペッカの2枚めのソロアルバムで、
「Harakka Bialoipokku/ カササギ鳥の一日」という別題もついている。
クラシカルなピアノの小曲で幕を開け、WIGWAMに通じるジャズロック色と
優雅さを兼ね揃えた軽妙なサウンド。叙情的なサックスの音色が重なりつつ、
アカデミックな知的さと演奏力がありながらもどこかとぼけたような味わいはペッカならでは。
次作「The Mathematician's Air Display」に比べるといくぶんジャズ色の強い作品である。
メロディアス度・・8 ジャズロック度・・8 北欧度・・8 総合・・8
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Pekka Pohjola「KEESOJEN LEHTO (The Mathematician's Air Display)」
フィンランドの音楽家、ペッカ・ポーヨラの1977年/邦題「数学家の空中広告」
WIGWAMのベーシストとしても知られるペッカの3枚めのソロアルバムで、
マイク・オールドフィールド、サリー・オールドフィールドが参加していることでも知られる。
右側のジャケはUKヴァージン盤のもので、タイトルも英語表記となっている。
北欧らしいメロウなギターと、シンセを中心にした、メロディックなジャズロックで、
素朴な叙情の中にも、どこかとぼけた味わいがあるのがいかにもペッカらしい。
土着的なメロディが美しいタイトル曲や、15分の大曲など聴きどころも多い傑作。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 北欧度・・8 総合・・8
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PEKKA POHJOLA「Urban Tango」
フィンランドのアーティスト、ペッカ・ポーヨラの1982年作
「都会のタンゴ」という、いかにも洒落っけのあるタイトルだが、サウンドの方も
クラシックやジャズなどの古き良き作曲理論と、ペッカ特有のとぼけた味わいも含んだ
現代的なモダンさを上手く融合させたもので、ボーナスを除く4曲は9分~15分という大曲。
プログレッシブな知的さを随所に覗かせつつ、派手さよりも繊細さとユーモアに富んだ楽曲は、
哀愁をただよわせたメロディと、ギターによるロック的な躍動感、アンサンブルが心地よい。
“New Impressionist”、“Heavy Jazz”といったペッカ自身も気に入っている曲を含んだ好作である。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 アンサンブル度・・8 総合・・8
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Pekka Pohjola 「Jokamies Everyman」
フィンランドのミュージシャン、ペッカ・ポーヨラの1983年作
優美なシンセを80年代的なビート感と融合さ、初期のジャズロック路線からモダンに深化したサウンドを聴かせる。
3~5分前後の小曲を主体にした作品で、メロウなギターにピアノが絡む、北欧らしい哀愁の叙情性も覗かせながら、
シンフォニックなシンセアレンジが優雅に包み込む。オールインストでシンセとベースみの曲も多いので、
ゆったりと優美に楽しめる一方、スリリングなアンサンブルを期待すると、いくぶん肩透かしとなるだろう。
ペッカの作品ではわりと異質であるが、THE ENID的なクラシカルなシンフォニックロックというべき好作品だ。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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PEKKA POHJOLA「Space Waltz」
フィンランドのアーティスト、ペッカ・ポーヨラの1985年作
美麗なシンセに彩られた繊細な叙情でやわらかに聴かせる傑作。歌うようなペッカのベースに、
メロディアスなギターがかぶさり、しっとりとしたシンフォニックな聴き心地に思わずうっとりとなる。
独特のコミカルな味わいも含めて、力の抜けた自然体のサウンドはあくまで優しく、
プログレ/シンフォニックとしての要素なら、ペッカの作品中でも3本の指に入るだろう。
タイトル曲はもちろん、13分を超える“Risto”もじつに美しい。80年代の傑作である。
メロディアス度・・8 プログレ度・・8 繊細度・・9 総合・・8.5
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PEKKA POHJOLA「Flight of the Angel」
フィンランドのアーティスト、ペッカ・ポーヨラの1986年作
80年代の最後の作品で、1曲目はジャズロック風味のぐっと軽妙になったサウンドであるが、
続く2曲目は、ペッカらしい繊細な聴き心地で、美しいストリングスがシンフォニックに響き渡る。
メロウなギターのフレーズも随所に入ってきて、クラシカルなピアノ曲などもしっとりと心地よい。
後半は大曲2曲で、存在感のあるベースラインにギターが絡むスリリングなアンサンブルと、
ラスト曲ではサックスを含んだチェンバーロック的なパートから、ダイナミックに展開してゆく構築センスが見事。
全体的にはやや地味な印象だが、ジャズ、クラシック、ロックという要素がバランスよく組み合わさった好作品だ。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 繊細度・・8 総合・・8
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PEKKA POHJOLA 「New Impressionist」
フィンランドのアーティスト、ペッカ・ポーヨラのベストアルバム。1987年作
1979年作「Visitation」から1984年作「Everyman」までのアルバムから選曲された8曲入り。
美しいシンセアレンジや北欧らしい涼やかなメロディ、クラシックやジャズの素養を感じさせる、
ペッカならではの優雅なサウンドが楽しめる。80年代ペッカの入門用にもよい作品です。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 優雅度・・8 総合・・8
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PEKKA POHJOLA「Changing Waters」
フィンランドのアーティスト、ペッカ・ポーヨラの1992年作
美しさと繊細さ、芸術性が極まった、ペッカを代表するというような傑作。
北欧の涼やかな風を感じさせる繊細なピアノで始まり、優しくやわらかな情感と、
ほのかなユーモアに包まれたサウンドには、ただうっとりと聴き入るのみ。
プログレ、シンフォニックなどという言葉ではとても表現しきれない、
人間ペッカの作品…その暖かく、はかなく、優美な旋律には感動を覚える。
静かな情緒がじわじわと心を満たしてくれる。これが芸術家の音楽である。
メロディアス度・・9 プログレ度・・7 繊細度・・10 総合・・8.5
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PEKKA POHJOLA 「Heavy Jazz」
フィンランドのアーティスト、ペッカ・ポーヨラの1995年作
母国フィンランド、ヘルシンキでのライブを収録したCD2枚組で、「Space Waltz」、「Urban Tango」、
「Changing Waters」あたりからのナンバーを主体にしつつ、70年代の楽曲も取り上げていて、
年季を感じさせる優雅で軽妙なアンサンブルが繰り広げられる。メロウで叙情的なギターワークと
それを支えるペッカの優しく歌うようなペースプレイとともに、10分前後の大曲が即興を含んだ演奏で描かれてゆく。
ジャズタッチのピアノに寄り添うペッカのベースも絶妙で、ジャズとクラシック、ロックを自然に融合させた
北欧の才人の音楽をたっぷり楽しめる素晴らしいライブ作品である。
ライブ演奏・・9 プログレ&ジャズロック度・・8 優雅な叙情度・・9 総合・・8.5
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PEKKA POHJOLA「Pewit」
フィンランドのアーティスト、ペッカ・ポーヨラの1997年作/邦題「タゲリ鳥の不思議な旅」
元WIGWAMのベーシストという肩書を持つ、ペッカは間違いなくフィンランド最高の音楽家の一人である。
ジャズ、クラシックをプログレッシブに解釈し、独自の人間哲学を自然なやわらかさで音に反映させるサウンドは、
優しく、人間的で、そして深い。決して派手ではないのだが、彼の作品には芸術の魂が存在している。
このアルバムも、前作「Changing Waters」、次作「VIEWS」と並ぶ傑作であり、代表作というべき一枚となった。
1曲めからして、シンフォニックな味わいと、どこか北欧の黄昏を感じるような叙情が絶品で、
メロウなギターと繊細なピアノ、キーボードにより、楽曲はゆるやかな盛り上がりを見せてゆく。
“平凡な音楽”などとシニカルに題されたラストは19分の大曲で、ときにアヴァンギャルドな側面を見せながら、
鳴り渡るドラムを空間的なシンセが包み込んでゆき、ラストはむせび泣くギターも加わってゆく。
シンフォニック度・・8 雄大度・・8 内的芸術度・・9 総合・・8
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PEKKA POHJOLA「VIEWS」
フィンランドの音楽家、ペッカ・ポーヨラの2001年作
シンフォニックでジャズでプログレ…時代に流されない素敵な作品を生み出し続けている天才肌のアーティスト。
「CHANGING WATERS」、「タゲリ鳥の不思議な旅」といった素晴らしいアルバムたちと同様に、
今作もしっとりとした上品で繊細なアルバムだ。壮麗なオーケストラを配し、北欧らしい涼やかな叙情とともに
ゆるやかに盛り上がりを見せる楽曲はクラシックを素養にしたアカデミックさと、人間的な温かみの両方を内包し、
じわりと静かな感動を呼ぶ。本物の音楽家が作り出す音楽…そして人間ペッカの心の音楽がここにある。
ゆったりと自然体でありながら、ダイナミズムとリリシズムが合わさったシンフォニックアルバムだ。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 北欧度・・8 総合・・8◆プログレ名作選入り
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PETER BRYNGELSSON 「Wunderbaum」
スウェーデンのミュージシャン、ペーター・ブリンゲルソンの2011年作
RAGNAROKのギタリストで、本作はそのラグナロクに通じる、北欧らしい涼やかな土着性に包まれた、
フォークロック的でもあるゆったりとした牧歌的なサウンド。ギターの旋律は北欧特有の哀愁の叙情を描いていて、
随所にシンセやアコーディオンの音色も加わって、メロウな北欧サイケフォークとしても楽しめる。
2~4分前後の小曲によるインストを連ねた構成なので、楽曲ごとの盛り上がりというのはない分、
スローでロハスなBGM的にも聞き流せてしまうのだが、素朴な北欧の空気感が心地よく感じ取れる好作品だ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 北欧度・・9 総合・・7.5
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THE PHASE「REVIEWS」
フィンランドのプログレバンド、フェイズの2007作
詳細は不明だが、ギター/ヴォーカル、ベース、ドラムという3人組みで、
本作は1998年~2007年までに作られたマテリアルであるらしい。
堅実なアンサンブルと、キャッチーな歌メロで聴かせるサウンドは、
プログレというよりはややレトロなメロディアスロックという趣で、
白クマのジャケほどには音のインパクトはないが、ゆったりと楽しめる。
ときおり聴ける北欧的な透明感のある叙情もなかなか耳心地がよく、
むしろキャッチーなプログレハード的な曲がいい感じである。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 北欧度・・7 総合・・7.5
PICTORIAL WAND 「A sleeper's awakening」
ノルウェーのシンフォニックロックユニット、ピクトリアル・ワンドの2006年作
チェロやフルート奏者や男女8人のVoを含む、大編成によるCD2枚組みのコンセプト大作。
のっけから、フルートとアコースティックギターの響きが美しく、物語的な語りから曲に入ると
シンフォニックなキーボードにややメタリックなギターも加わり、民族的なゴシックシンフォというサウンドになる。
WDのタタキでは「ゴシック版AYREON」とも記されていたが、ナレーション入りのストーリーを配した壮大な作風と
ファンタジックな雰囲気は確かに重なる部分があり、それに加えて北欧フォークロワ的な要素も耳に心地よい。
メタリックな要素もうるさすぎない程なので、ハードめの北欧シンフォとしても聴け、
アコースティカルな静寂パートからシンフォニックパートへの切り返しなども効果的。
内ジャケのダークで幻想的なイラスト群も含めて、ファンタジー作品としての構築には相当気合が入っている。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 ファンタジック度・・9 総合・・8
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Pictorial Wand「Face of Our Fathers」
ノルウェーのシンフォニックロックユニット、ピクトリアル・ワンドの2nd。2009作
前作はCD2枚組みの大作で、北欧版AYREONともいうべきドラマティックな作品であったが、
今作も物語的なストーリィのあるファンタジックなコンセプト作となっている。
ギター、ベース、シンセをこなすMattis Sorum氏を中心にして、フルート、チェロ、ヴァイオリン、
そして配役にしたがって男女2名ずつがヴォーカルをとるという大所帯の構成で、
北欧的な叙情とともにゴシック的な薄暗さもあるシンフォニックロックを展開する。
楽曲には前作以上にメリハリがあって、土着的でもったりとした部分と
プログレとしてハードに盛り上げる部分とが、上手く噛み合わさっている。
幻想的なシンフォニックロック、北欧的な世界観が好きならチェックすべし。
シンフォニック度・・8 北欧度・・8 ファンタジック度・・9 総合・・8
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Pixie Ninja 「Ultrasound」
ノルウェーのモダンプログレ、ピクシィ・ニンジャの2017年作
元ANGLAGARDのマティアス・オルソンが参加、スペイシーなシンセの重ねによる
ランドスケープ的な空間性に、シーケンサー的なエレクトロなアレンジを加えたサウンドで、
テクノ風の聴き心地の中にも、NECROMONKYにも通じるモダンで知的なセンスを感じさせる。
アナログなドラムにフルートが鳴り響き、メロトロンが加わると、一気に北欧プログレの感触が強まって、
オールインストながら、クリムゾンばりのミステリアスな緊張感を描き出して、思わずにんまりである。
美しいピアノの小曲や、薄暗い叙情とプログレらしい展開力で聴かせる11分の大曲など、
モダンとレトロが同居した、これぞ北欧の新時代プログレというべき逸品です。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 北欧度・・8 総合・・8
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PIXIE NINJA 「COLOURS OUT OF SPACE」
ノルウェーのプログレバンド、ピクシィ・ニンジャの2020年作
元ANGLAGARDのマティアス・オルソンが参加するバンドの2作目。エレクトロな感触もある優美なシンセの重ねに
ギターとドラムを加えて、北欧プログレらしいクールな空気感に包まれた、インストによる音響サウンドを展開。
エレクトロな雰囲気がアナログ感につながっているという点では、むしろヴィンテージといってよい聴き心地で、
ときにチェロやホルンなども加えた、わりとチェンバープログレ風味のスリリングな優雅さも覗かせる。
前作以上にギターがヘヴィにうなる部分もあって、シンセとの重なりとハードなドラムサウンドが合わさって
重厚なスケール感を描いている。10分前後の大曲を主体に、涼やかな景色を音で表現するような傑作だ。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 北欧度・8 総合・8.5
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Pluto and the Planets 「360 Degrees of Wonder」
ノルウェーのプログレバンド、プルト・アンド・ザ・プラネッツの2010年作
男女ヴォーカルの歌声と、メロウなギターワーク、うっすらとしたシンセアレンジで聴かせる、
わりと正統派のシンフォニックロックスタイル。楽曲は3~5分前後と比較的シンプルで、
歌もの中心なのでスリリングな展開などはあまりなく、しっとりとした聴き心地の中に
北欧らしいマイナーなローカルさも漂わせている。曲によってはキャッチーなポップ性や
土着的な素朴さもあり、つかみどころのなさも含めて、なんとなく微笑ましい好作である。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 女性Vo・・7 総合・・7.5
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POPOL ACE 「Stolen From Time」
ノルウェーのプログレバンド、ポポル・エースの1975年作
Popol Vuhの名義で1972年にデビューし、2作を残してから改名しての1作目。長らく廃盤だった作品が、2023年にリマスター再発された。
優美なシンセのイントロで幕を開け、英語によるジェントルなヴォーカルとともに、プログレハード寄りのキャッチーなサウンドを聴かせる。
グルーヴィなベースによるノリのあるリズムと、ピアノやメロトロンを含むやわらかなシンセ、叙情的なギターによる優雅な耳心地。
楽曲は4~5分前後が主体とコンパクトで、同時期のKAIPAやDICEに比べるとライトな味わいであるが、北欧らしい涼やかな空気感は随所にしっかりと感じられ、ブリティッシュロック寄りのナンバーや、ラストのポップなサイケ感の大曲まで、マニアでなくても楽しめるだけの好作です。
メロディック度・8 プログレ度・7 北欧度・8 総合・8
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POPOL ACE 「CURLY SOUNDS」
ノルウェーのプログレバンド、ポポル・エースの1978年作
改名後の2作目、アメリカ市場を意識したようなポップな作風となり、メンバーの脱退もあって、バンドは本作で解散する。
前作から交替したヴォーカルの声質もあいまって、1曲目からしてポップなアメリカンロックという趣ながら、メロトロンを使った優美なシンセにはシンフォプログレの名残も感じさせ、キャッチーなコーラスハーモーなど、聴き心地は決して悪くない。
もともと確かな演奏力があるので、音自体の質は高く、プログレを期待しなければ、優雅なAORとして楽しめるだろう。
メロディック度・8 プログレ度・6 北欧度・7 総合・7.5
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PORCELAIN MOON「...as it were.Here and there」
フィンランドのプログレバンド、ポルセライン・ムーンの2011年作
女性Vo、ツインギター、女性奏者を含むツインシンセを擁するの7人編成で、
オルガンが鳴り響くレトロな感触にハスキーな女性ヴォーカルの歌声とともに、
いくぶんサイケロック気味の浮遊感もあるサウンド。かっちりとした構築性よりも
古き良きロックのユルさ、アナログ感のある音なので、一聴したインパクトはないが、
Curved Airなど70'ブリティッシュロック的な聴き心地でゆったりと楽しめる。
メロディアス度・・7 オルガン度・・8 女性Vo度・・7 総合・・7.5
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Positive Wave
フィンランドのプログレバンド、ポジティブ・ウェイブの2010年作
ハスキーな女性ヴォーカルの歌声を中心に、70年代的なポップなレトロさで聴かせるサウンド。
ブルージーな味わいのギターとサイケ気味のヨレ加減がとても今のバンドとは思えない感じで、
それが北欧トラッド的な土着風味と合わさって、そのユルめの感触がなかなか面白い。
サックスが加わるとジャズロック的な雰囲気にもなったりと、ややとりとめがないが、そこが魅力か。
プログレ度・・7 ゆる系度・・8 女性Vo度・・7 総合・・7.5
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PRIME MOVER 「IMPERFEKT」
スウェーデンのプログレバンド、プライム・ムーヴァーの2007年作
2001年にデビューし、3作目となる。叙情的なギターに母国語によるジェントルなヴォーカルを乗せ
シンセに女性コーラスも加えた、キャッチーで牧歌的なプログレハードサウンドを聴かせる。
軽快なアンサンブルといくぶんコミカルな優雅さに、エレピなどの美しいシンセアレンジで、
ときにジャズロック的な感触も含みつつ、北欧らしい涼やかなシンフォニックロックとしても楽しめる。
スウェーデン語の響きが土着的な味わいになっていて、ラストの10分の大曲も牧歌的な優雅さに包まれる。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・8 総合・7.5
Procosmian Fannyfiddlers 「The Rolling Court Massacre」
ノルウェーのプログレバンド、プロコスミアン・ファニーフィドラーズの2001年作
ギター、ドラム、ヴォーカル、シンセをこなす、フィスト・アナル氏を中心にした4人編成で
本作はACT I、II に分かれたロックオペラ的な壮大なる(たぶん)コンセプト作品。
軽快なリズムにカントリー的なギターとアコーディオン、プログレ的なシンセが乗り、
アヴァンギャルドな展開に、男女ヴォーカルの歌声…女性Voメインの部分も多いです。
語りによる寸劇も含んだシアトリカルな雰囲気と、コミカルでありつつもどこか哀愁を感じさせる作風は
まぎれもなく本気のヘンタイである。メロトロンをバックに歌が重なるところは妙に感動的であったり、
おちゃらけとエキセントリックな感性が壮大に合わさった、一筋繩ではいかない異色の力作だ。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 ヘンタイ度・・9 総合・・8
PROCOSMIAN FANNYFIDDLERS 「Return Of The Sweaty Owl」
ノルウェーのアヴァン・プログレ、プロコスミアン・ファニーフィドラーズの2003年作
ヘンタイ過ぎてのけぞった2001年作から、本作ではヴァイオリン、女性シンセ奏者を含む6人編成となり、
優雅なフルートの音色にアコースティックギター、美しい女性ヴォーカルを乗せてしっとりと始まりつつ、
変拍子にリズムチェンジを含むプログレ的な展開力とともに、のっけから20分の大曲を描いてゆく。
北欧らしい涼やかな叙情のシンセアレンジも含めて、マイナー臭くなったANGLAGARDという雰囲気もあり、
シアトリカルなドラマ性とともに妖しい垢抜けなさもかえっておもしろい。女性声の北欧アヴァン・プログレとして楽しめる力作だ、
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 北欧度・・9 総合・・8
PROFESSOR TIPTOP 「Exobiology」
ノルウェーのプログレバンド、プロフェッサー・ティプトップの2016年作
ムーグやメロトロンを含むシンセにメロウなギターの旋律と牧歌的なヴォーカルで
サイケな浮遊感と北欧らしい涼やかな空気に包まれたサウンドを描く。
プログレ的な展開というのはさほどなく、メロトロンなどのヴィンテージなシンセと
ギターのユルめの叙情フレーズを重ねた、全体的にゆったりとした耳心地。
10分を超える大曲では、スペイシーなシンセの重ねから、アッパーすぎないノリで
OZRIC TENTACLESの北欧版というような優雅なサイケロックを聴かせる。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 北欧度・・8 総合・・7.5
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PROFESSOR TIPTOP 「Life Is No Matter」
ノルウェーのプログレバンド、プロフェッサー・ティプトップの2017年作
2作目となる本作も、うっすらとしたシンセとギターの旋律を重ねて、
ほどゆくユルめの浮遊感とともに涼やかなシンフォニックロックを聴かせる。
マイルドなヴォーカルを乗せた、繊細な叙情美が前作よりも際立っていて、
サイケというよりもむしろ、ポストプログレ的な優美な雰囲気で楽しめる。
哀愁を帯びたメロウなギターは、ときにPINK FLOYD的でもあり、
派手な部分はないが、ゆったりとした耳心地で鑑賞できる好作品です。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 北欧度・・8 総合・・8
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Professor TipTop 「Hybrid Hymns」
ノルウェーのプログレバンド、プロフェッサー・ティプトップの2019年作
オルガン、メロトロンを含むシンセに、メロウなギター、マイルドなヴォーカルを乗せ、
翳りを含んだ叙情に包まれたサウンドを聴かせる。いわゆるヴィンテージな北欧プログレではあるが、
ポストプログレ以降のスタイリッシュな雰囲気と、DUNGENのようなユルめの浮遊感が同居していて、
サイケ寄りの歌ものシンフォという感じでも楽しめる。楽曲は長くても6分と、わりとコンパクトなので、
プログレというよりは、サイケな北欧ポストロックという感じで、肩の力を抜いてのんびりと聴けます。
もう少しメロディやフックのある展開があればと思うが、ユル系の北欧サウンドが好きな方はどうぞ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 ユル度・・8 総合・・7.5
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PROFESSOR TIPTOP 「Tomorrow Is Delayed」
ノルウェーのプログレバンド、プロフェッサー・ティプトップの2020年作
4作目となる本作は、新たに女性Vo&シンセ奏者が加入していて、ムーグやオルガン、
メロトロンといったヴィンテージなシンセとほどよくユルめの叙情ギターに、
けだるげな女性ヴォーカルで聴かせる、優美なサイケ・プログレサウンド。
70年台寄りのアナログ感とともに、やわらかな女性声が優しい聴き心地で、
ギターなメロウな旋律にメロトロンが重なると、シンフォニックロックの味わいに。
全体的にこれという盛り上がりはないが、女性声になったことで優雅さが増している。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8
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PROFESSOR TIP TOP 「LANES OF TIME」
ノルウェーのプログレバンド、プロフェッサー・ティプ・トップの2022年作
2012年にデビュー、本作は6作目となる。ゆったりとメロウなギターにシンセを重ね、けだるげな女性ヴォーカルで、
浮遊感ある牧歌的なサイケプログレを聴かせる。オルガン、メロトロン、ミニムーグというヴィンテージなシンセが
優しい耳心地でサウンドを包み込み、アナログ感たっぷりのアンサンブルに、叙情的なギターフレーズが響いてゆく。
今作は2~5分の小曲が主体なので、わりとあっさりとした印象ではあるが、PINK FLOYDルーツの酩酊感は心地よく、
女性スキャットを乗せた幻想的なナンバーなども味わいがある。派手な展開などはないが、ゆったりと浸れる好作品です。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 幻想サイケ度・8 総合・8
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ProgAtom 「Spiral」
ノルウェーのプログレバンド、プログアトムの2018年作
2015年にデビュー、本作は2作目となる。アコースティックギターとフルートの音色によるイントロから、
母国語によるヴォーカルにメロウなギターを重ねた、涼やかなシンフォニックロックを展開。
ときに女性ヴォーカルも加わり、エレピやメロトロンを含む優美なシンセに叙情的なギターフレーズで
北欧らしい幻想的な空気を描き出す。一方では、キャッチーなヴィンテージロック的な味わいもあり、
かと思いきや、しっかりとプログレらしいシンセワークが現れるという、ツボの付き方も心憎い。
10分を超える大曲も優雅な構築力が光る。CDR仕様なのが惜しいが、北欧プログレ期待の逸材です。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 北欧度・・9 総合・・8
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PROGELAND 「Gate to Fulfilled Fantasies」
フィンランドのプログレバンド、プロゲランドの2014年作
オルガンを含むシンセにハード寄りのギターと、マイルドなヴォーカルを乗せた、オールドな味わいのサウンド。
Uriah HeepやBlack Bonzoあたりに通じる、70'sブリティッシュルーツのヴィンテージなロックを、
北欧らしい涼やかな空気で包み込んだという雰囲気で楽しめる。楽曲におけるメロディや展開に、
さほど盛り上がりはないので、プログレやシンフォニックロックとしてはやや物足りなさもあるが、
渋めの叙情で聴かせる大人のヴィンテージ・ハードとして、のんびり鑑賞するのがよいかと。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 古き良き度・・8 総合・・7.5
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PROGELAND 「Harmony Of The Universe」
フィンランドのプログレバンド、プロゲランドの2018年作
2014年作に続く2作目で、やわらかなシンセにオールドなテイストのギターを重ね、
ジェントルなヴォーカルを乗せた、ゆるやかな叙情のシンフォニックロックを聴かせる。
メロウなギターの旋律にフルートの音色が、北欧らしい涼やかな空気を描き出しつつ、
オルガンが鳴り響く、70年代風味のヴィンテージロックの味わいにも包まれる。
マイルドなヴォーカルは、どことなく、Vintersorgにも通じる雰囲気があって、
ほどよくハードな感触ともに、哀愁を含んだ北欧らしい叙情に浸れる逸品です。
ドラマティック度・・7 ヴィンテージ度・・8 北欧度・・8 総合・・8
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Q
QOPH「Pyrola」
スウェーデンのロックバンド、クォフの2004作
メンバーはG、B、Dr、Voのオーソドックスな4人組で、肝心の音の方は一筋縄ではいかない、
どちらかというとプログレというよりは、サイケやアシッドといった言葉が最初に浮かぶ。
古いのか新しいのか、一聴しただけでは判別しずらい音だ。ライブではインプロやジャムのノリで熱い演奏を繰り広げそうな、
そんな自然体のスタイルと楽しさとが伝わってくるようだ。曲によってはキャッチーでポップですらあるメロディも出てくるが、
多面性のある音の表情からはポストロック的な広がりも垣間見える。
メロディアス度・・7 プログレ度・・7 雑食度・・8 総合・・7.5
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Qoph 「Freaks」
スウェーデンのサイケ・ハードロック、クォフの2012年作
1998年にデビュー、本作は2004年以来、8年ぶりの3作目。ハードなギターを乗せたアナログ感あるアンサンブルで
LED ZEPPELINなどを思わせる、70年代ルーツのヴィンテージなロックサウンドを聴かせる。
ストーナーロック的なハードさとサイケな浮遊感が同居した感触で、シンセもさほど入らないので、
プログレ的な要素はさほどないがどことなく翳りを帯びた妖しい感じは、やはり北欧のバンドらしい。
個人的には、ラスト曲での牧歌的なユルさが、北欧サイケロックらしくてとてもよいと思うのだが。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・6 ヴィンテージ度・・8 総合・・7.5
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QUMMA CONNECTION 「Arabesque」
フィンランドのプログレバンド、クマ・コネクションの2011年作
アート・デザイナーでもあるRami "Qumma" Taljaを中心に、ALAMAAILMAN VASARATのチェロ奏者などが参加、
12弦のウォーギターの旋律にプログレらしいシンセワークが絡み、随所に北欧らしい叙情メロディも含んだ
ハードプログレサウンド。ベースレスながら、低音までカヴァーするウォーギターとチェロの響きで、
むしろ重厚な聴き心地である。オールインストながら、クリムゾン的でもあるアーティスティックな構築センスと、
堂々たる音の強度がなかなか見事だ。10分を超える大曲ではアヴァンギャルドな破天荒さも覗かせる。
いわばチェンバーロックの緊張感にシンフォの叙情性を加えたような、ダイナミックな力作です。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 重厚度・・8 総合・・7.5
R
RADIANT FREQUENCY 「ABANDONED」
ノルウェーのプログレ・ポストロック、ラディアント・フリクエンシーの2010年作
叙情的なギターにうっすらとしたシンセを重ね、マイルドなヴォーカルの歌声で、
ほどよくキャッチーながら、物悲しい空気に包まれたサウンドを描く。15分という大曲では、
リズムチェンジを含む展開力に、ブルージーなギターを乗せたオールドロック的なノリも覗かせつつ、
やわらかなメロトロンにトランペット、トロンボーンも加えた、北欧らしい涼やかな叙情性に包まれる。
プログレとポストロックの中間というような好作品だ。White WillowのJacob Holm-Lupoがゲスト参加。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 北欧度・・8 総合・・7.5
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Radiomobel 「Gudang Garam」
スウェーデンのプログレバンド、レディオモービルの1978年作
1975年にデビュー、本作が2作目でラスト作となる。メロトロンを含むうっすらとしたシンセに
メロウなギターのトーンを重ね、北欧らしい翳りを帯びた叙情に包まれたサウンドを聴かせる。
くぐもったような湿り気に、RAGNAROKあたりを思わせるユルさをまぶしたという聴き心地であるが、
美しいシンセに女性ヴォーカルの歌声も加わった優美な感触は、北欧シンフォ的にも楽しめるだろう。
KAIPAやKEBNEKAISEなどにも通じる土着的なギターフレーズも魅力的で、この涼やかな空気感は、
まさに北欧からしか出てこない音だろう。15分という大曲もあり、サイケとプログレの狭間がよい感じ。
自主制作らしいマイナーな香りとともに、まさに北欧プログレの幻の逸品です。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 北欧度・・9 総合・・8
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RAGNAROK「RAGNAROK」
スウェーデンのアコースティック系シンフォニック、ラグナロクの1st。1976年作。
アコースティック系といってもエレキギターも使っているが、要は雰囲気がたおやかなアコースティック風。
涼しげなフルートの調べに、透明感のある静かなメロディの曲に耳を傾けると、
バンド名同様、ゆったりとした暮れなずむ北欧の黄昏が目に浮かぶようだ。繊細なる好作品。
メロディアス度・・8 ゆったり度・・9 北欧度・・9 総合・・7.5
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RAGNAROK「Well」
スウェーデンのプログレバンド、ラグナロクの1991年作
1976年~83年までに4作を残して消えたバンドの復活作で、うっすらとしたシンセの重ねに
シーケンサー的なリズムとエフェクトを加え、フリーキーにギターが鳴り響く、ランドスケープ的な1曲目から、
やわらかなフルートの音色を加えた繊細な叙情性も覗かせるナンバーは、北欧らしい涼やかな聴き心地。
オールインストで、デジタリィでモダンなアプローチを取り入れつつも、土着的な空気感は残していて、
モノトーンのジャケのように、愛想はないが淡々としたミステリアスな味わいが、むしろ個性的かもしれない。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 北欧度・・8 総合・・7.5
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RAGNAROK「PATH」
スウェーデンのプログレバンド、ラグナロクの2008年作
70~80年代に活動していたこのバンドが、地味に復活。かつてと同様に、アコースティカルな素朴な叙情と
いかにも北欧的な土着性を感じるギターフレーズを乗せたゆったりとした作風で、
サイケ的なゆるやかな浮遊感なとともに、のんびりとしたインストサウンドを楽しめる。
プログレ的な展開や抜けの良さとは無縁の、自然体の「北欧スローロック」というべき好作品。
メロディアス度・・7 プログレ度・・7 ゆったり北欧度・・8 総合・・7.5
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RAGNAROK 「Live in Tokyo」
スウェーデンのプログレ・フォークロック、ラグナロクの2012年作
2011年東京でのライブステージを収録。まさかこんなマイナーバンドが来日していたとは。
アコースティックを含んだ繊細な叙情を描き出すサウンドは、かつてのアルバムの雰囲気そのままで、
味わいのあるメロウなギタートーンに素朴なフルートの音色が重なり、哀愁を帯びた空気感とともに
北欧らしい涼やかな聴き心地にゆったりと浸れる。ラストは意外にもKing Crimson“21st Century Schizoid man”のカヴァー。
女性ヴォーカルの歌声を乗せた牧歌的なアレンジが素敵です。しかし、このジャケはなんとかならなかったんですかね。笑
ライブ演奏・・8 繊細度・・9 北欧度・・9 総合・・8
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Raoul Bjorkenheim, Bill Laswell, Morgan Agren 「Blixt」
フィンランドのアヴァン・ジャズロック、SCORCH TRIOのギタリスト、ラウル・ビョーケンハイムと
Mats/Morganのモルガン・オーギュレン、そしてアメリカの大御所ベーシスト、ビル・ラズウェルによるユニットの2011年作
それぞれが鬼才というべき強烈な個性を持ったプレイヤーによるトリオであるから、当然のように超絶なバトルと、
テクニカルなアンサンブルでたたみかける。フリーなジャズロックといえばそれまでだが、型にはまらない奔放なギターに、
軽やかにして攻撃的なモルガンのドラム、そしてどっしりとしたベースを響かせるビルによるインタープレイは、
息もつかせぬ緊張感で、もはやジャンル分け不能。アヴァンギャルドでフリーキーでありながら、不思議とアンサンブルの一体感が
楽曲に方向性を与えていて、決してごちゃごちゃな感じにはならないところは、各メンバーのセンスと素養の豊かさだろう。
演奏度・・9 テクニカル度・・9 アヴァンギャル度・・8 総合・・8
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Ravana 「Common Daze」
ノルウェーのプログレバンド、ラヴァナの1996年作
物悲しいチェロの音色に、うっすらとシンセが絡み、ややヘタウマなヴォーカルを乗せ
メランコリックな雰囲気に包まれた、ポストロック的でもある味わいのサウンドを聴かせる。
やわらかなフルートやメロトロンが加わると、北欧プログレらしい涼やかな聴き心地になるが、
ギターはわりとハード寄りだったり、一方ではエレピを乗せたジャズロック風味もあったりと、ややとりとめがない。
これという展開力がないので、薄暗系の叙情ロックというか、全体的な方向性も微妙なところ。
ラストの9分の大曲は、オルタナ系ポストプログレという雰囲気もある。バンドは本作のみで消えたらしい。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 北欧度・・7 総合・・7
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REFORM 「REFORMED」
スウェーデンのプログレジャズロック、リフォームの2009年作
巧みなベースとドラムを土台にした軽妙なアンサンブルに、エレピやサックス、メロウなギターが彩りを添える、オールインストのジャズロック。
歌が入らないので、どうしてもBGMになってしまいがちだが、やわらかなギターのトーンなどには、北欧らしい涼やかな叙情性も感じさせ、派手すぎないシンセも含めて耳心地の良いサウンドだ。
全体的にはこれというインパクトや個性はなく、全36分というのも物足りないのだが、優雅な北欧ジャズロックが好きな方はどうぞ。
ジャズロ度・8 プログレ度・7 北欧度・8 総合・7
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REFORM 「Reveries of Reform」
スウェーデンのプログレバンド、リフォームの2011年作
CD2枚組で、エレピを含むやわらかなシンセにメロウなギターを乗せて、カンタベリー的な優雅さを感じさせる、
インストのシンフォニックロック。北欧らしい涼やかな叙情美に包まれたやわらかなメロディが心地よく、
CAMELをアンビエントなジャズロック寄りにしたという雰囲気もある。北欧を代表するシンセ奏者、
RALPH LUNDSTENがアレンジを務めていて、軽妙なアンサンブルと幻想的な空気が絶妙に同居。
ロイネ・スルトばりのギターフレーズもよろしく、まさに「カンタベリーな北欧シンフォ」というべき逸品です。
メロディック度・・8 優雅度・・9 北欧度・・9 総合・・8
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RETROHEADS「Retrospective」
ノルウェーのシンフォニックロックバンド、レトロヘッズの2004年作
Vo、Key、G、Bを一人でこなすTore Bo Bendixenを中心としたバンドで、インストメインの流麗なシンフォサウンド。
CAMELのアンディ・ラティマーか、The Flower Kimgsのロイネ・ストルトかというようなメロウなギターが心地よく、
まるでフラキンのメロディアスな部分を取り出したような印象もある。北欧らしい涼やかな叙情とともに、
温かみのある少し素朴なメロディが耳に優しい。北欧シンフォ好きはツボを突かれることうけあいの一作。
シンフォニック度・・8 メロディアス度・・8 プログレ度・・7 総合・・8
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RETROHEADS「Introspective」
ノルウェーのプログレバンド、レトロヘッズの2nd。2006年作
メロトロンやオルガン、ムーグを含むヴィンテージなシンセに、マイルドなヴォーカル、女性コーラスを乗せたサウンドで、
いかにも北欧シンフォ然とした1stに比べて、キャッチーで分かりやすいプログレハード的な感触が強まった。
レトロなハモンドの音色に、ややブルージーでハードめのギターが重なると、ロック的なノリの良さが前に出てとても聴きやすい。
もちろん北欧シンフォニック特有の涼やかな叙情美も残していて、軽やかな優雅さで楽しめるヴィンテージな好作品に仕上がっている。
シンフォニック度・・7 プログレ度・・7 北欧度・・8 総合・・8
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Rhys Marsh And The Autumn Ghost「Dulcima」
英国出身、ノルウェーで活動するアーティスト、リーズ・マルシュの2009年作
リズ・マルシュはヴォーカル、ギター、シンセ、プログラミングをこなすマルチミュージシャンで、
北欧系のミュージシャンが集ったプロジェクト、Opium Cartelにも参加している。
本作は、しっとりとしたメロトロンが響く、レトロで北欧プログレ的な質感に
男女ヴォーカルが歌を乗せるという、いわゆる薄暗系シンフォニックの作風。
アコースティカルな叙情は英国フォーク風味でもあり、やわらかな耳心地にうっとりだ。
元ANGLAGARDのMattias Olsson他、多数のゲストが参加している。
シンフォニック度・・7 薄暗度・・8 しっとり叙情度・・9 総合・・8
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Rhys Marsh & The Autumn Ghost「The Blue Hour」
英国出身、ノルウェーで活動するアーティスト、ライス・マーシュの2012年作
OPIUM CARTELやWHITE WILLOW、Wobbler関連のメンバーも参加した本作は
前作にも増してアーティスティックな繊細さと、骨董屋のような素朴な情緒で聴かせる
ほの暗い叙情ロックに仕上がっている。男女ヴォーカルの歌声はあくまでやわらかく、
オーボエやクラリネットのもの悲しい音色が、チェンバーロック的な味わいをかもしだす。
全体を通して淡々とした聴き心地なので、派手な盛り上がりというものはないのだが、
じわりとくる繊細な情感にうっとりと鑑賞できる。物憂げな秋や冬にはぴったりの作品だろう。
メロディック度・・7 プログレ度・・7 繊細で素朴度・・9 総合・・8
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Rhys Marsh and The Autumn Ghost 「Trio」
ノルウェーで活動するアーティスト、ライス・マーシュの2013年作
自身のギターに、ドラムとシンセを迎えたトリオ編成でのライブをCD2枚に収録。
スタジオアルバムはポストプログレ的な繊細な作風であるが、ライブではより躍動感のあるアンサンブルと、
エモーショナルなヴォーカルを乗せたサウンドで、やわらかな叙情とロックとしてのダイナミズムが同居した聴き心地だ。
抑揚のついた巧みなドラムにジャズタッチのやわらかなピアノ、翳りを含んだ空間的な静寂が緊張感をかもしだし、
トリオ編成でありながら、一体となった演奏が音の迫力を生み出している。ゲストによるフルートが響き渡ると、
サイケな浮遊感にも包まれる。CD2枚で合計66分ほどなのだが、あえて2枚組にしたセンスも洒落ている。
薄暗度・・8 プログレ度・・8 ライブ演奏・・9 総合・・8
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Rhys Marsh 「Sentiment」
英国出身、ノルウェーで活動するアーティスト、ライス・マーシュの2015年作
メロトロンを含むやわらかなシンセに、マイルドなヴォーカルとアコーステッィクギターを乗せて
アナログ感に包まれた温かみのある叙情と、薄暗い翳りに包まれた、ポストプログレ的なサウンド。
楽曲は3~5分前後とわりとコンパクトで、プログレ的な派手な展開というのはあまりなく、
ゆったりと聴かせる歌ものという印象だが、英国と北欧を合わせたような湿り気を含む空気感と、
メロトロンが鳴り響くと、ANEKDOTENあたりに通じるシンフォニックな聴き心地が楽しめる。
アーティスティックで繊細な感性にスタイリッシュなポストプログレ要素をまぶしたという好作品。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 繊細度・・8 総合・・8
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Rhys Marsh 「October After All」
イギリス出身、ノルウェーで活動するミュージシャン、ライス・マーシュの2019年作
2008年にデビュー、いまや北欧のポストプログレ系を代表するアーティストの一人だろう。
やわらかなシンセに繊細なトーンのギター、マイルドなヴォーカルを乗せた、キャッチーなサウンドに、
涼やかで物悲しい叙情をまとわせた聴き心地。優美なシンセワークはシンフォニックロック的で、
楽曲は3~5分前後のわりとシンプルな歌もの風であるが、ときにサックスが鳴り響き、
優しいコーラスハーモニーとともに、アダルトな哀愁とセンシティブな空気感に包まれてゆく。
ヴィンテージなシンセによるオールドな感触で、レイドバックした味わいの叙情美溢れる逸品だ。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 叙情度・・9 総合・・8
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RIKARD SJOBLOM 「THE UNBENDABLE SLEEP」
スウェーデンのミュージシャン、リカルド・ショーブロムの2016年
BEARDFISH、GUNGFLY、BIG BIG TRAINでも活躍するアーティストで、オルガンを含むシンセに
ロックな味わいのギター、自身のジェントルなヴォーカルを乗せて、キャッチーなオールドロックを聴かせる。
牧歌的な大人の叙情性は、BIG BIG TRAINにも通じる雰囲気であるが、ブルージーなギタープレイなど、
より70年代ロックへの憧憬を感じさせる内容になっていて、かつてのBEARDFISHを思わせる部分も多い。
全体的には肩の力の抜けた作風で、プログレというよりはわりとストレートなロックナンバーもあったりと
もう少しフックも欲しい気がするが、ラストの11分の大曲は、叙情性を含んだ緩急ある展開力で構築する。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 オールドロック度・8 総合・7.5
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RING VAN MOBIUS 「Past The Evening Sun」
ノルウェーのプログレバンド、リング・ヴァン・モビウスの2018年作
シンセ、ベース、ドラムのトリオ編成で、ハモンドオルガンにムーグ、メロトロンが鳴り響き、サックスの音色に
ジェントルなヴォーカルも加わって、いかにも70年代を思わせるヴィンテージなサウンドを聴かせる。
21分という組曲をメインに、スペイシーな浮遊感とともに、どこか混沌とした雰囲気はサイケ感触もあるが、
クリムゾンの名曲「Starless」を思わせるような叙情曲など、アナログシンセが好きな方にはたまらないだろう。
全3曲の構成で、ラストの11分のナンバーは、VDGGのようなシアトリカルな優雅さに包まれてにんまり。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 ヴィンテージ度・・9 総合・・8
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Ring Van Mobius 「The 3rd Majesty」
ノルウェーのプログレバンド、リング・ヴァン・モビウスの2020年作
2018年にデビュー、2作目となる。ギターレスのトリオ編成で、のっけから22分という長さの組曲で、
オルガンを含むヴィンテージなシンセをかき鳴らす、EL&Pばりのキーボードプログレを展開。
ハモンドオルガンの音色も本物なので、いかにもアナログ感に包まれたサウンドが楽しめ。
ときおり加わるマイルドなヴォーカルも、どことなくグレッグ・レイク風だったりしてニヤリとする。
後半にも、11分、9分という大曲が続き、ほどよい妖しさとユルさも含んだ世界観とともに、
オルガンたっぶりの鍵盤プログレが味わえる。ヴィンテージなシンセが好きな方は必聴です。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 ヴィンテージ度・・9 総合・・8
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RITUAL
スウェーデンのプログレバンド、リチュアルの1st。1996年作
基本はG、B、Dr、Keyという4人組で、テクニカルでメロディアスなプログレをやっている。
KAIPAでも歌うPatrik Lundstormの歌唱を中心に、北欧的な牧歌的メロディとウィットに富んだキャッチーさをもちつつ、
ときにテクニカルにも聴かせるというサウンド。マンドリンやブズーキ、ハンマー・ダルシマー、リコーダーなど、
土着的な要素も織りまぜつつシンフォニックに盛り上げたかと思えば、軽やかな切り返しで着地したりと、
力の抜け具合も楽しい。バンドは2nd以後、若干ハードでラフな方向に行ってしまうが、そういう点では
バランスのとれた本作は、90年代北欧シンフォニックの新世代を象徴するようなアルバムといってよいかと思う。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・7 北欧度・・8 総合・・8
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Ritual 「Superb Birth」
スウェーデンのプログレバンド、リチュアルの2nd。1999年作
テクニカルシンフォの傑作だった前作から、がらりと方向性を変え、ハードなモダンさに包まれたサウンドになっている。
ヴォーカルメロディはキャッチーな聴き心地ながら、エッジの効いたギターと硬質感のあるアンサンブルで、
そのミスマッチがなかなか面白い味わいになっている。いうなれば、RUSH風味のアプローチということなのかもしれないが、
前作から続けて聴いたリスナーは戸惑うだろう。モダンなハードプログレとして聴けば、けっこう楽しめます。
メロディアス度・・7 プログレ度・・7 モダン度・・8 総合・・7.5
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RITUAL「Think Like a Mountain」
スウェーデンのプログレバンド、リチュアルの3rd。2003年作
1996年に出たデビュー作は北欧のバンドらしいメロディセンスと高い演奏力が合わさった傑作だったが、
続く2ndではモダンな音楽性に方向を変え、それは今作でも同じ。普遍的なロック性を増したギター主導のスタイルは、
もはやシンフォニックとは呼べないが、現在はKAIPAでも歌うパトリック・ルンドストルムの伸びやかな歌唱には、
北欧らしい人懐こさがあり、曲にはときおり民族的な色合いも感じられてこれはこれで悪くない。根っからのプログレファンには
評価の難しいアルバムかもしれないが、演奏力の高さと気取らない自然体の音楽性には好感が持てる。
メロディアス度・・7 プログレ度・・7 北欧度・・8 総合・・7.5
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RITUAL の2007年作
1996年デビューと、北欧プログレの中では中堅といってよいのだが、知名度的にはいまひとつのこのバンド。
本作はムーミンの関連作に登場するマーチングバンドテーマにした力作アルバムとなっている。
古き良きロックの躍動感とアナログ感覚のあるアンサンブルに、ユーモアのあるメロディラインを含んだ
いかにも北欧的な情緒で描かれるサウンドは、いわゆるシンフォニックロックとはひと味違う耳心地だ。
現KAIPAのヴォーカルでもあるパトリック・ルンドストルムの伸びやかな歌声と、美しいシンセワークも含ませながら、
大人味わいのプログレを聴かせてくれる。ラストは26分の大曲で、哀愁を含んだ繊細な叙情でじわりと盛り上げる。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 北欧度・・8 総合・・8
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Riveryman 「Views, Fears & Stories」
フィンランドのシンフォニックロック、リヴァリーマンの2018年作
ゴシックメタル系バンドのThroes Of Dawnに在籍していたマルチミュージシャンのソロプロジェクトで、
オルガンを含むやわらかなシンセにメロディックで技巧的なギターを重ねた、優美なシンフォニックロック。
自身のヘタウマなヴォーカルはオマケ程度として、メロウなギターフレーズとシンセークもなかなかセンスが良く、
北欧らしい涼やかなメロディアス性に包まれるところは、ときにThe Flower Kingsなどに通じる雰囲気もある。
アコースティックによる小曲や、プログレらしい10分を超えるシンフォ大曲など、ミュージシャンとしての才能はしっかり感じられる。
次回はぜひ専任ヴォーカルを入れていただきたい。アレックス・アルジェント(IceFish)がシンセでゲスト参加している。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 優美度・・8 総合・・8
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ROINE STOLT「The Flower King」
スウェーデンのギタリスト、ロイネ・ストルトの1994年作
のちのThe Flower Kingsの原点がこのソロ名義のアルバムである。
かつてのKAIPAを愛していた自分にとっては、ロイネがシンフォニックロックへと帰って来たことが嬉しかったし、
それだけにこのアルバムの素晴らしさには当時いたく感激したものだ。とくに1曲めのタイトル曲の
泣きのギターフレーズとキャッチーなヴォーカルメロディは、この後のフラキンへの橋渡しをするような名曲である。
全体的にはプログレというよりはメロデックなロックという趣ではあるが、20分の大曲などには
後の作品につながる大作志向もあり、ともかく、ここに花王が誕生したという歴史的意義も大きな作品である。
メロディアス度・・9 プログレ度・・7 ロイネのギター度・・9 総合・・8.5
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ROINE STOLT「HYDROPHONIA」
THE FLOWER KINGSのギタリスト、ロイネ・ストルトのソロ。1998年作
KAIPA解散後、長いブランクを経て、90年代に入りプログレ界に復活、フラワーキングスを結成しする。
これは彼がフラキンのアルバム発表の合間に制作したソロ作である。なんと多作な人よ。
内容は歌なしのインストアルバム。つまりはロイネのメロディアスなギタープレイが全編楽しめる。
自身ギター以外にベース、キーボードも弾きこなす。基本は盛り上がり形シンフォニックだが、
ときにジャジーに時に繊細に鳴り響くロイネのギターは、それだけでひとつの表現者たりえている。
北欧的叙情メロディは70年代彼自身か在籍したKAIPAの音を思わせ、また
パッショネイディブな時の熱いプレイは、オランダの名バンドFINCHをも想起させる。
メロディアス度・・9 シンフォニック度・・8 楽曲度・・8 総合・・8
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ROINE STOLT「WALL STREET VOODOO」
THE FLOWER KINGSのロイネ・ストルトのソロ作。2005作
ソロ名義のアルバムということでは1998年の「HYDROPHONIA」以来だと思うが、その間、
TFKの他、TRANSATLANTICやTHE TANGENTと、まさにプログレ界では八面六臂の活躍ぶり。
さて、今作だがCD2枚組みの大作で、ウォール街を舞台にした物語的なコンセプト作らしい。
音のほうは、プログレでシンフォニックなものを期待すると肩すかしを食う、
肩の力が抜けたジャズロック風の雰囲気で、TFKの新ドラマーMarcus Liliequistや、
おなじみのNeal Morseも参加。全体的にリラックスした大人のコンセプトロック作品だ。
シンフォニック度・・7 プログレ度・・7 大人のロック度・・8 総合・・7.5
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Roine Stolt's The Flower King 「Manifesto Of An Alchemist」
スウェーデンのシンフォニックロック、ロイネ・ストルトズ・フラワー・キングの2018年作
フラキンのロイネ・ストルトが「ロイネ・ストルトのフラキン」名義でアルバムを出すというのもややこしいが、
メンバーの方は、ドラムにマルコ・ミンネマンが参加、ベースはヨナス・レインゴールド、マイケル・ストルト
ヴォーカルはハッセ・フロベリ、ナッド・シルヴァン、シンセには、マックス・ロレンツ(Kaipa Da Capo)、ザック・ケイミンズが参加。
メロウなギターにオルガンを含むシンセとジェントルなヴォーカルを乗せ、ゆったりと優雅な叙情で聴かせる、
フラキンをよりレイドバックしたような聴き心地。ロイネ自身でギター、ベース、シンセをこなす12分の大曲や
軽やかなミンネマンのドラムにメロディックなギターと美麗なシンセ聴かせるインストナンバーなども素晴らしい。
大人の味わいの優しい叙情に溢れた、まさに1994年のロイネのソロ「The Flower King」の続編というべき傑作だ。
ドラマティック度・・8 フラキン度・・9 優雅度・・9 総合・・8.5
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THE ROOTS OF ECHO「NOTHING BETWEEN YOU AND THE SUN」
スウェーデンのサイケロック、ルーツ・オブ・エコーの1997年作
1993年にデビュー、本作は3作目。シンセを含む5人編成で、ジャケからしてサイケ以外の何物でもないが、
初期PINK FLOYDをルーツに、ユルめのギターにジェントルなヴォーカルを乗せたスペイシーなサウンド。
オルガンを含むシンセに、ときにアコーステックギターや、女性コーラスなども加えて、
適度なプログレ感とともに、涼やかな叙情を含んだ幻想的なサイケロックが楽しめる。
随所に聴かせるメロウな泣きのギターの旋律も、フロイド感があって良いですね。
サイケ度・・8 プログレ度・・6 ユル度・・8 総合・・7.5
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RUPHUS「NEW BORN DAY」
ノルウェーのプログレバンド、ルーファスの1st。1973年作
KAIPA、DICEより古い作品にはあまり魅力を感じないのは、70年代前半の北欧シーンにおける機材や録音の厳しさと、
この時期のバンドの粗削りな演奏や曲アレンジが思い浮かぶからなのだが、このバンドは当時にしてはなかなか聴ける。
繊細なフルート、メロトロンと少々ジャジーなギターが合わさり、シンフォニック性とハードロック的要素が組み合わされたサウンドだ。
曲によってはハスキーな女性ヴォーカルが加わり、楽曲に華を添えている。素朴な味わいのハードシンフォの好作です。
メロディアス度・・7 プログレ度・・7 北欧度・・8 総合・・7.5
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Ruphus 「Let Your Light Shine」
ノルウェーのプログレバンド、ルーファスの1976年作
わりと貴重だったこのバンドの諸作が、2019年にリマスター再発された。1973年にデビュー、本作は3作目で、
エレピを含むシンセにギターを重ねた優雅なアンサンブルに、ハスキーな女性ヴォーカルを乗せたサウンド。
オルガン鳴り響くハードなサイケシンフォという趣の1作目に比べると、ジャジーな軽やかさに包まれているが、
どこかくぐもったような北欧らしい涼やかな味わいも残している。シンセとピアノによる叙情的な小曲や、
フュージョン風の優美なナンバーなど、ぐっとスタイリッシュな味わいで、メロウなギターの旋律も耳心地よい。
8~9分の大曲もうるさすぎない優雅さで、派手さはないが女性声入りの繊細なジャズロックとしても楽しめる好作品。
ドラマティック度・・7 優雅度・・8 北欧度・・8 総合・・7.5
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RUPHUS 「Flying Colors」
ノルウェーのプログレバンド、ルーファスの1978年作
1973年にデビュー、本作は5作目で、ブルージーなギターにハスキーな女性ヴォーカルを乗せた1曲目から、
3作目以降のジャズロック色を受け継いだ軽やかなアンサンブルで、クロスオーバーなサウンドを聴かせる。
その後は、北欧らしい涼やかなギターフレーズにエレピを含むシンセと、女性ヴォーカルの歌声を重ねた、
優美なフュージョンロックを展開。楽曲は4分前後のシンプルな味わいであるが、ジャズロックとしての優雅さと
シンフォプログレのやわらかな叙情が同居した耳心地の良さで、初期に比べるとぐっと洗練されたという印象だ。
ラストは9分の大曲で、美しいシンセに女性声を乗せた、ゆったりとしたシンフォニックナンバー。優雅な好作品です。
メロディック度・8 優雅度・8 北欧度・8 総合・8
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RUPHUS 「Manmade」
ノルウェーのプログレバンド、ルーファスの1979年作
1973年にデビュー、本作は6作目でラスト作。軽やかなドラムにエレピやオルガンなどのシンセ、
しっとりとした女性ヴォーカルを乗せて、優雅でスタイリッシュなフュージョン・ロックを聴かせる。
グルーヴィなベースとタイトなドラムを軸にした高い演奏力と、メロウなギターフレーズを奏でるギター、
きらきらきとしたシンセも含めて、やはり北欧のバンドらしい透明感のある叙情に包まれる。
ときにエモーショナルに歌い上げる女性ヴォーカルも魅力的で、10分を超える大曲は、
ゆったりとした繊細なシンフォプログレとしても楽しめる。バンド解散が惜しまれる好作です。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・9 総合・8
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S
Salva 「Left To Burn」
スウェーデンのプログレバンド、サルヴァの2007年作
2004年にデビューし、2作目。わりとハード寄りのギターに優美なシンセアレンジ、朗々としたヴォーカルを乗せた、キャッチーなノリのプログレハード。
シンフォプログレというよりは、古き良き北欧ハードロックをルーツにした作風で、随所に涼やかな土着性を覗かせつつ、全体的にはわりとストレートな聴き心地。
10分前後の大曲も多いが、母国語の歌声を乗せた哀愁ただよう小曲などもいい味わいで、オルガンを使ったURIAH HEEP風のナンバーなど、楽曲ごとに異なる雰囲気も楽しめる。
これという派手さはないが、哀愁の叙情とヴィンテージな空気が同居した好作です。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 哀愁度・8 総合・7.5
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Salva 「Thirst」
スウェーデンのプログレバンド、サルヴァの2011年作
ヘヴィなギターによるメタル的な感触と、美麗なシンセアレンジが合わさったハードプログレサウンド。
ヴォーカルの雰囲気は70年代ハードロック風で、オルガンの音色とともにヴィンテージな質感をかもしだす。
一方では、北欧らしい土着的なメロディも顔を覗かせるなど、いくぶん方向性が定まっていない感じもあるが、
適度にハードで適度に叙情的という聴き心地は悪くない。10分前後の大曲も多いが、カッチリとした構築というよりは
大味なロックのノリが持ち味といえば持ち味か。今後はヴィンテージ系プログレとしての強度をより高めていってもらいたい。
ドラマティック度・・7 ハードプログレ度・・8 北欧度・・8 総合・・7.5
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Samla Mammas Manna
スウェーデンのプログレバンド、サムラ・ママス・マンナの1971年作
北欧を代表する個性派バンドのデビュー作で、やわらかなエレピが鳴り響く、ジャズロック的な軽妙さと、
北欧らしい土着的な味わいが合わさったというサウンドで、のちの作品ほどのテクニカルな部分はないものの、
むしろ素朴な味わいで楽しめる。ときにおちゃらけた奇声を含むヴォーカルを乗せて、アヴァンギャルドな展開も覗かせつつ
オルガン入りのアートロックに遊び心を盛り込んで演劇的に仕立てたという、独自のスタイルはすでに確立されている。
フォーキーな味わいを含んだ叙情的な小曲など、インストナンバーの優雅な魅力というのも本作の特徴だろう。
プログレ度・・7 北欧度・・8 アヴァンギャル度・・8 総合・・8
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Samla Mammas Manna 「Maltid」
スウェーデンのプログレバンド、サムラ・ママス・マンナの1973年作/邦題は「ごはんですよ」
1stの時点でも個性的であったが、本作ではアヴァンロックとしての奔放なセンスがさらに開花、
北欧らしい土着的なトラッドメロディを軽妙なアンサンブルに乗せつつ、ジャズロック的な優雅さと
とぼけた味わいの飄々とした自由さで聴かせる。素朴な暖かみを感じさせる哀愁のメロディと
おちゃらけたヴォーカルを含めた脱力感が、巧みな演奏力で描かれるのだから、楽しくないはずはない。
鳴り響くエレピにメロトロンを乗せたシンフォ感触もあるので、サムラの初心者にもわりと聴きやすいかと。
プログレ度・・8 北欧度・・9 アヴァンギャル度・・8 総合・・8
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Samla Mammas Manna 「Klossa Knapitatet」
スウェーデンのプログレバンド、サムラ・ママス・マンナの1974年作
本作は3作目で、「踊る鳥人間」の邦題とジャケのインパクトが強烈な一枚。
優雅なピアノを乗せた軽快なインスト曲から、哀愁を漂わせた北欧らしい叙情とユーモラスなセンスを感じさせつ、
テクニカルな変則リズムの2曲目は、のちのMATS/MORGANなどにも通じるコロコロとした可愛らしさが楽しい。
フリーキーなギタープレイなど、即興的なアヴァンギャルド性も見事で、北欧的な土着性をジャズロック的でもある
軽妙なアンサンブルに溶け込ませたセンスは、このバンドならではの個性だろう。演奏力の高さも含めて素晴らしい傑作ですな。
プログレ度・・8 北欧度・・8 アヴァンギャル度・・8 総合・・8
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ZAMLA MAMMAZ MANNA 「Sclagerns Mystik」
スウェーデンのプログレバンド、サムラ・ママス・マンナの1977年作
バンド名の文字をSからZに変えての1作目で、「親しみ易いメロディの神秘」「初老の新来者の為に」と
それぞれにタイトルが付けられた2枚組作品。1~3分前後の小曲主体で、オルガンやアコーディオン、
サックス、クラリネットなどを含んだ演奏に、母国語の歌声を乗せて、北欧らしい哀愁の叙情と
意味不明のSEや調子っぱずれのコーラスなど、陽気でいい加減なフリーキーさが合わさった作風。
肩の力抜き過ぎだろうと苦笑しつつも、ラストは17分におよぶアヴァン・プログレの大曲で締めくくる。
Disc2はライブ録音で、フリーキーでアヴァンギャルド全開の、とぼけた味わいと技巧が混在した演奏が味わえる。
プログレ度・・8 北欧度・・8 アヴァンギャル度・・9 総合・・8
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Zamla Mammaz Manna「Familjesprickor」
スウェーデンのプログレバンド、サムラ・ママス・マンナの1980年作
1976年まではSamla Mammas Mannaとして活動、その後バンド名の文字をSからZに変え、1977年に「Sclagerns Mystik」を発表、
本作はバンド第二期のラスト作にして最高傑作である。「家庭のひび割れ」と題されたタイトルやジャケも個性的だが、
サウンドの方も、土着的な民族色とテクニカルなアンサンブルが一体になった、他に類を見ない個性的なもの。
ユーモアに富んだアヴァンギャルドさは、チェンバーロック、ジャズロックなどの要素も含んでいるが、
ときに北欧的な叙情性をもかいま見せる本作は、バンドの作品中もっとも構築させた完成度の高いものだろう。
メロディアスなギターや美しいシンセワークなど、シンフォニック的な味わいもある名盤である。
メロディアス度・・8 プログレ度・・8 アヴァンギャル度・・7 総合・・8.5
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Samla Mammas Manna 「kaka」
スウェーデンのプログレバンド、サムラ・ママス・マンナの1999作
「S」のSamla名義としては1974年の「踊る鳥人間」以来の作品。その後、頭文字を「Z」にしたZamla名義で、
傑作「家庭のひび割れ」を出して解散、1982年にVon Samlaとして2作を発表するが、それ以降の音沙汰はあまりなく、
これが久々の再結成作となった。まるでライブを思わせるようなアナウンスで始まり、相変わらずおちゃらけぶりににやりとなるが、
演奏の方はさすがに切れ味鋭く、タイトなリズムの上を、意外とエッジの効いたギターワークとピアノが絡み、
ラーシュ・ホルメルのアコーディオンがやわらかく重なる。哀愁のメロディや土着的な要素を折り込みながら、
ときに愉快に、ときに泣きを入れつつ、まるで年季の入ったメロドラマのような古き良き情感を聴かせてくれる。
馬鹿げたおちゃらけやアヴァンギャルドな即興を折り込みながら、ベテランらしい余裕と、かつてのサムラ節を満喫できるアルバムだ。
メロディアス度・・8 プログレ度・・8 哀愁度・・9 総合・・8
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Samla Mammas Manna「Dear Mamma」
スウェーデンの土着プログレバンド、サムラ・マンマス・マンナのライブアルバム。2002作
2002年スウェーデンでのステージを収録。日本の超絶ドラマー、吉田達也が参加していて、
その強力なドラミングとサムラの軽妙な土着的プログレサウンドが融合している。
故ラーシュ・ホルメルのキーボードに、ギター、ヴァイオリンがテクニカルに絡み、
GENTLE GIANTなどを思わせる絶妙の演奏と、北欧的な叙情とが合わさり、
野卑な歌声を絡めながら、一種アヴァンギャルドなサウンドを描き出している。
アヴァンギャル度・・8 ライブ演奏・・9 北欧度・・8 総合・・8
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The Samurai of Prog「Undercover」
フィンランドのファンジン「Colossus」の主催者らによるプログレ・ユニットの2011年作
GENESIS、YES、EL&P、PINK FLOYD、ARTI E MESTIERI、MARILLION、THE FLOWER KINGS
などの楽曲をカヴァーしていて、どの曲もやわらかな聴き心地のアレンジで楽しめる。
TFKのロイネ・ストルト、ヨナス・レインゴールド、ギー・ルブラン(Nathan Mahl)などがゲスト参加。
フラキンの名曲'World Of Adventures'なども原曲のキャッチーな良さを活かしながらアレンジしていて
どのカヴァーにもメンバーたちのプログレへの敬愛が感じられる。聴いて損のないカヴァー集です。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・8 名曲カヴァー度・・8 総合・・8
THE SAMURAI OF PROG「SECRETS OF DISGUISE」
フィンランドのミュージシャンを中心にしたプログレユニット、サムライ・オブ・プログの2013年作
KING CRIMSON、YES、GENESIS、ENGLAND、GENTLE GIANT、PFM、SANDROSE、VDGG、RUSH、CRACKなどのカヴァーに
一部オリジナルを含む全15曲を2CDに収録。ロバート・ウェッブが自ら参加した、ENGLANDの大曲で幕を開け、メロウなギターに
オルガン、メロトロン、男女ヴォーカルで優美なアレンジを聴かせる。CRACKのMento Heviaがチェロで参加したセルフカヴァーに、
GENESIS「Dancing With The Moonlit Knight」、KING CRIMSON「One More Red Nightmare」、男ヴォーカルのSANDROSE、
そして、元GLASS HAMMER、現YESのJon Davisonが参加しての、YES「Time And A Word」なども、なかなかハマっている。
Disc2では、ロイネ・ストルト、故ガイ・ルブラン(Nathan Mahl)などが参加した、Todd Rundgren's Utopiaの大曲から、
女性ヴォーカルの、RUSH「Jacob's Ladder」のカヴァーもよい感じだ。ラストはラブクラフトのオムニバス収録のオリジナル大曲。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 カヴァー度・・8 総合・・8
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THE SAMURAI OF PROG「The Imperial Hotel」
フィンランドのミュージシャンを中心にしたプログレユニット、サムライ・オブ・プログの2014年作
過去2作のカヴァー路線から、本作ではついにオリジナルの楽曲による作品となり、ENGLANDのRobert Webbをはじめ、
JINTES NEGROSのOctavio Stampalia、BRIGHTEYE BRISONのLinus Kase、といったメンバーが楽曲を担当。
やわらかなシンセにキャッチーな歌メロを乗せたYesを思わせるナンバーから、KENSOの清水義央も参加して
メロウなギターを奏でつつ、艶やかなヴァイオリンも鳴り響く優雅なインストパートなど、なかなか濃密な聴き心地。
28分を超えるタイトル曲では、ガブリエル似のヴォーカルを乗せたGENESIS風の作風で、フルートやピアノも美しい
繊細な叙情にゆったり浸ることができる。どこを切っても、シンフォプログレ愛に溢れたサウンドが楽しめる逸品です。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・8 優美度・・8 総合・・8
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The SAMURAI of Prog 「Lost And Found」
フィンランドのメンバーを中心にしたプログレユニット、サムライ・オブ・プログの2016年作
本作はアメリカンプログレ黄金期の再現を目指すというコンセプトで、CD2枚組で濃密なサウンドが繰り広げられる。
1曲目はPAVLOV'S DOGの1stのナンバーを当時のギタリスト、スティーヴ・スコルフィナが参加してアレンジ、
美しいヴァイオリンにフルート、ピアノ、オルガン、ムーグシンセなどが合わさった、きらびやかに仕上がりだ。
アメリカのLIFTの未発曲では当時のシンセ奏者がアレンジ、メロトロンが鳴り響きメロウなギターで聴かせる、
20分を超える優美な大曲に。CATHEDRALの前身バンド、ODYSSEYの未発曲では、カテドラルのシンセ奏者が参加、
ヴォーカルにはYESのジョン・ディヴィソンが参加し、イエスばりのキャッチーな聴き心地が楽しめる。
Disc2には、QUILLの未発曲で、なんと57分に及ぶ全1曲。クイルのシンセ奏者とシンガーも参加して、
きらびやかなシンセとヴァイオリン、マイルドなヴォーカルを乗せてドラマティックな組曲が広がってゆく。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 往年のアメリカンシンフォ度・・9 総合・・8
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THE SAMURAI OF PROG 「On We Sail」
フィンランドのミュージシヤンを中心にしたプログレユニット、サムライ・オブ・プログの2017年作
LATTE E MIELE、LA CONSCINZA DI ZENO、SIMONS SAYS、WHITE WILLOW、ECHOLYN、PRESTO BALLET、
JINETES NEGROS、UNITOPIA、Michelle Youngなど、世界各国のメンバーが集結、楽曲ごとに作曲者を替えながら、
オルガンやメロトロンなどのシンセワークをたっぷりと盛り込み、伸びやかなヴォーカルにヴァイオリンも鳴り響き、
爽快なシンフォニックロックを展開する。プレスト・バレットやユニトピアのシンセ奏者が作曲のナンバーは、
Yesのようなキャッチーな感触で、ラッテ・エ・ミエーレのシンセ奏者作曲ナンバーは、美しいピアノにフルート、
ストリングスを加えた優雅でクラシカルなシンフォニックロックが楽しめる。9分、10分という大曲もあくまでメロディックで
叙情的な味わいに包まれている。スリリングな部分は少ないが、聴き心地の良いシンフォプログレを愛する方は必聴だろう。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 爽快度・・8 総合・・8
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THE SAMURAI OF PROG 「ARCHIVIARUM」
フィンランドのミュージシャンを中心にしたプログレユニット、サムライ・オブ・プログの2018年作
過去作用マテリアルと新曲4曲から構成されたアルバムで、LATTE E MIELEのオリヴィエロ・ラカーニーナ、
MUSEO ROSEMBACHのステファノ・ガリフィをはじめ、LA TORRE DELL'ALCHIMISTAのミケーレ・ムッティ、
TAPROBANのステファノ・ヴィカレーリといったイタリア人脈に、ECHOLYN、PRESTO BALLETT、Michelle Young、
元UNITOPIA、NEXUS、SENOGUL、SOUTHERN EMPIREと、世界各国のバンドから多数のメンバーが参加。
オルガンにヴァイオリン、フルートが鳴り響く優美なインストナンバーから叙情的な歌ものまで、
ほどよいヴィンテージ感とともに大人のプログレが楽しめる。CAMELの名曲“Ice”のカヴァーは
サックスが鳴り響く大人の叙情に包まれた仕上がり。ラストはDavid Bowie“Heroes”のカヴァー。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 大人の叙情度・・8 総合・・8
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THE SAMURAI OF PROG 「OMNIBUS:The Early Years」
フィンランドのミュージシャンを中心にしたプログレユニット、サムライ・オブ・プログの2018年作
2011年作「Undercover」、2013年作「SECRETS OF DISGUISE」2CD、2014年作「The Imperial Hotel」を収録したCD4枚組のボックス。
GENESIS、YES、EL&P、PINK FLOYD、ARTI E MESTIERI、MARILLION、THE FLOWER KINGSなどを比較的忠実にカヴァーした1作目、
KING CRIMSON、YES、GENESIS、ENGLAND、PFM、SANDROSE、RUSH、CRACKなどをよりマニアックにカヴァーした2作目では、
ロバート・ウェッブなど、自らが参加してのセルフカヴァーが楽しめる。ボーナスに、EL&P「悪の教典#9第二印象」などを追加収録。
3作目では、初のオリジナルに挑戦、多くのゲストとともに優美なプログレ/シンフォニックロックを作り上げた。ボーナスとして
HOSTSONATENのLuca Scheraniが作曲、MUSEO ROSENBACHのステファノ・ガリフィがヴォーカルを取るイタリアンなシンフォ曲や、
IL TEMPIO DELLE CRESSIDREのエリサ・モンタルド嬢がキーボード&ヴォーカルもとる優美なナンバー、さらには
LATTE E MIELEの名作「パピヨン」からのセルフカヴァーも追加収録。初期の作品は入手困難なのでファンには嬉しいだろう。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・8 お買い得度・・9 総合・・8.5
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THE SAMURAI OF PROG 「Toki No Kaze (時の風)」
フィンランドのミュージシャンを中心にしたプログレユニット、サムライ・オブ・プログの2019年作
2011年にスタートしたプロジェクトで、7作目となる本作は、宮崎駿とジブリアニメをテーマにした作品。
Jinetes NegrosのOctavio Stampalia、Mad CrayonのAlessandro Di Benedetti、LATTE E MIELEのOliviero Lacagnina、
KARFAGENのAntony Kalugin、HOSTSONATENのLuca Scherani、La Torre Dell'AlchimistaのMichele Mutti、
IL TEMPIO DELLE CRESSIDREのElisa Montaldo、などが参加し作曲を担当。「天空の城ラビュタ」をイメージにした1曲目から、
「風立ちぬ」をテーマにした3曲目、日本のSSW、富山優子さんが作曲、自ら日本語の歌声を乗せる優美なナンバーなどが続き、
美麗なシンセにヴァイオリンが鳴り響く、ファンタジックなシンフォニック・プログレが描かれる。「もののけ姫」をテーマにしたナンバーでは、
Interpose+の田中ケンロウがギターで参加、イントロからそれと分かる「風の谷のナウシカ」では美しい女性ヴォーカルにうっとり。
エリサ・モンタルド嬢が日本語歌詞で歌うラスト曲まで、全74分の力作。プログレファンでないジブリ好きもにもぜひ聴いていただきたい。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 優美度・・9 総合・・8
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The Samurai of Prog 「The Demise Of The Third King's Empire」
フィンランドのシンフォニックロック、サムライ・オブ・プログの2020年作/邦題「三代目国王帝国の終焉」
2016年作「Lost And Found」収録、QUILLの未発曲をもとにした57分に及ぶ組曲を再録音した作品で、
ナレーションを含む物語的なコンセプトストーリーに、随所にストリングスを含む壮麗なアレンジと
ヴィンテージなプログレ感触が同居したドラマティックな大曲を展開する。インストパートの緩急ある展開に、
ゲストを含むヴォーカルも加わり、メロウなギターの旋律に繊細なフルートも彩りを添えながら、
GENESISにも通じる優雅な味わいが楽しめる。元バージョンと聴き比べるのもいいだろうが、
なにしろ曲が長大なので、この手のシンフォプログレを愛する人だけにお薦めしたい。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 優雅度・・8 総合・・8
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THE SAMURAI OF PROG 「Beyond The Wardrobe」
フィンランドのプログレユニット、サムライ・オブ・プログの2020年作
2011年から始まったプロジェクト、本作も、KAYAKのトン・スケルペンツェルはじめ、LATTE E MIELEのオリヴィエロ・ラカニータ、
IL TEMPIO DELLE CLESSIDREのエリサ・モンタルド、SEVEN STEPS TO THE GREEN DOOR、UPFのマレック・アーノルド、
Caravela Escarlateのロナウド・ロドリゲス、Mad Crayonのアレッサンドロ・ディ・ベネデッティ、など多数のメンバーが参加、
サックスやフルートが鳴り響く優雅なナンバーで幕を開け、モーツァルトをテーマにヴァイオリン鳴り響く壮麗なナンバーや、
Jinetes Negrosのオクタヴィオ・スタンパリアが手掛けるクラシカルなシンフォプログレ曲、日本の女性SSW、富山優子による
日本語歌詞によるしっとりと優しい楽曲なども魅力的だ。エリサ・モンタルドがシンセと歌を手掛ける優美なラスト曲まで、
派手さや意外性は薄めながら、優れた作曲家と演奏者による、クラシカルなシンフォニックプログレが堪能できる。
クラシカル度・・8 プログレ度・・7 優美度・・9 総合・・8
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The Samurai of Prog 「The Lady and the Lion」
フィンランドのプログレユニット、サムライ・オブ・プログの2021年作
2011年から始まったプロジェクトで、いまやシンフォプログレ代表格のひとつ。本作はグリム童話をコンセプトにした作品で、
KAYAKのトン・スケルペンツェル、SOUTHERN EMPIREのカム・ブロックランド、JINETE NEGROSのオクタヴィオ・スタンパリダ
PHIDEAUXのヴァレリー・グラシアス、MAD CRAYONのアレッサンドロ・ベネデッティ、LAST KNIGHTのラファエル・パシャなど、
多数のメンバーが参加。優美なシンセに叙情的なギター、艶やかなヴァイオリンも鳴り響く優雅なサウンドで、
オールドなプログレ感触を残しながら、ストーリーを語るようなヴォーカルとともに物語的な流れを感じさせる。
流麗なギターフレーズもいつも以上に際立っていて、随所に泣きのメロディを乗せてくるところはにんまりである。
まさに幻想シンフォプログの逸品。全41分とわりとコンパクトにまとめられていて、次作へ続く…というところだろう。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 優美度・9 総合・8
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The Samurai of Prog 「The White Snake」
フィンランドのシンフォニックロック、サムライ・オブ・プログの2021年作
前作に続くグリム童話をコンセプトにした作品の続編で、The Tripのカルミネ・カパッソ、Il Tempio Delle Clessidreのエリサ・モンタルド、
Ubi Maiorのマルセラ・アルガネッセ、元Latte E Mieleのオリヴィエロ・ラカグニア、MAD CRAYONのアレッサンドロ・ベネデッティ、
HOSTSONATENのルカ・シェラーニ、La Maschera Di Ceraのアレッサンドロ・コルヴァギラ、La Coscienza Di
Zenoのアレッシオ・カランドリエロ、
Museo Rosenbachのステファノ・ガリフィ他、多数のゲストが参加。艶やかなヴァイオリンが鳴り響く、優雅なナンバーで幕を開け、
ピアノやオルガンを含むやわらかなシンセや叙情的なギター、フルートの音色で、しっとりと繊細なシンフォニックロックを展開する。
中盤は10分を超える大曲が続き、男女ヴォーカルを乗せたストーリー性のある世界観で、あくまで優美なサウンドを描き出す。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 優美度・9 総合・8
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The Samurai of Prog 「The Spaghetti Epic 4」
フィンランドのプログレユニット、サムライ・オブ・プログの2022年作
MUSEAレーベルのオムニバスとして、これまでに3作出ていた、イタリア西部劇をテーマにしたアルバムの4作目。
マルコ・ベルナルド、キンモ・ポルスティを中心に、KAYAKのギターや、Museo Rosenbachのステファノ・ガリフィ、
ラファエル・パシャ、デヴィッド・メイヤーズなど多数のゲストが参加。優美なシンセにヴァイオリンも鳴り響き、
渋めのギターとともに哀愁を感じさせるシンフォプログレを構築。20分を超える大曲も、わりとゆったりとした展開で、
イタリア語のヴォーカルとともに、往年のヴィンテージなイタリアンロックに寄せた雰囲気が味わえる。
アコースティックギターにフルートが美しい叙情ナンバーやクラシカルなピアノ曲など、濃密すぎない繊細さもGood。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 イタリア度・8 総合・8
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The Samurai of Prog 「Anthem To The Phoenix Star」
フィンランドのプログレユニット、サムライ・オブ・プログの2022年作
2011年から始まったプロジェクト、今作はSF的なコンセプトで、イタリアのミュージシャン、Marco Griecoを準メンバーに迎え、
クライブ・ノーラン(PENDRAGON)、バート・シュワートマン(KAYAK)、ヨギ・ラング(RPWL)、カム・ブロックランド(Southern
Empire)などのゲストが参加、
叙情的なギターとオルガンを含むプログレらしいシンセワーク、マイク・アーノルドによるサックスも加わった、大人のシンフォプログレを展開。
ラファエル・パチャによる繊細なアコースティックギターやイーリアンパイプ、ゲストのフルート、シロフォンなども優雅な音色を響かせる、
しっとりとした女性ヴォーカルのナンバーも美しい。泣きのギターと、Moonshotのジョン・ウィルキンソンの渋い歌声でじわじわと盛り上げる
11分の大曲から、優雅なピアノの小曲、ラストは13分の大曲で、ドラマティックな展開の中で、クライブ・ノーランの歌声が朗々と響き渡る。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 優美度・9 総合・8
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San Michael's
スウェーデンのサイケロック、サン・ミカエルズの1971年作
のちにKAIPAを結成する、トーマス・エリクソンとハンス・ルンディンが在籍したバンドで、
サウンドはオルガン鳴り響き、おおらかなヴォーカルを乗せたヒッピーなサイケロック風味。
プログレというよりは、60年代からの流れの素朴なアートロックという聴き心地なのだが、
随所に北欧らしい叙情的なメロディを含ませるところは、さすがカイパの前身と思える。
ハンス・ルンディンのオルガンワークがたっぷり楽しめる、70年代北欧ロックの好作品。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 北欧度・・8 総合・・7.5
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San.Michael's 「Nattag」
スウェーデンのアートロック、サン・マイケルズの1972年作
のちにKAIPAを結成する、トーマス・エリクソンとハンス・ルンディンが在籍したバンドで、
ピアノやオルガンが鳴り響き、キャッチーなヴォーカルで聴かせるアートロックを基本に、
本作では1曲目から、後のカイパへとつながる土着的な北欧メロディを随所に覗かせる。
ドラムとベース土台にしたリズム面での充実ぶりも前作以上で、ジャジーでブルージーな要素も含みつつ、
シンプルでノリのよい聴き心地は、英国のオルガンロックを北欧寄りに仕立て上げたという感触だ。
2~3分の小曲が多いので、プログレとしてはいくぶん物足りないかもしれないが、北欧プログレ黎明期の好作です。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 北欧度・・8 総合・・7.5
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The Savage Rose 「In the Plain」
デンマークのブルースロック、サヴェージ・ローズの1968年作
1968年にデビュー、本作は同年に発表された2作目。オールドなロックアンサンブルにピアノやオルガンがかき鳴らされ、ハスキーな女性ヴォーカルを乗せたスタイルはサイケロック的でもある。
若き日のアニッセッテの歌声は、後のようなソウルフルな深味はまだないが、ゆったりとしたナンバーでの表現力には輝くものがあり、野性的な躍動感をサウンドにもたらしている。
フォーク風味の牧歌的な味わいや、ユルめのサイケ感触の中にも、ドリーミィなかぎろいを感じさせるあたりは、このバンドらしい個性が確立しつつある作品と言える。
サイケ度・7 プログレ度・7 女性Vo度・8 総合・7.5
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The Savage Rose 「Wild Child」
デンマークのブルースロック、サヴェージ・ローズの1973年作
本作は8作目で、1975年の解散前の最後のアルバム。ゆったりとしたアンサンブルにオルガンを重ね、艶めいた表情を増したアニセッテの絶品のヴォーカルが、楽曲を生き生きと彩る。
初期のサイケ風味は薄まり、ブルージーな哀愁の叙情と、エモーショナルな高揚感が強まったことで、歌ものとしてのレベルがぐっと高まった。
渋みのあるギターフレーズと優美なオルガンの重なりが、バンドとしての成熟を感じさせ、安定したアンサンブルも最大限にアニセッテの歌声を活かすためだろう。
そして、これより80年代以降、孤高の女性シンガーの域に達する彼女のきらめきが本作にもすでに詰まっている。
バンドは1978年に「THE」をはずした「SAVAGE ROSE」として復活を遂げ、80年代からは左翼的メッセージを標榜した作風となってゆく。
ブルース度・7 プログレ度・7 女性Vo度・9 総合・8
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SAVAGE ROSE「Vi Kaemper For At Sejre!」
デンマークのブルース・フォークロック、サヴェージ・ローズの1984年作
フォークやブルース、民俗音楽などを取り入れた独自のサウンドで、
70~80年代のデンマークでは最も有名なバンドのひとつだった。
本作では初期の頃よりも楽曲はシンプルになり、アコーディオンの音色をバックに
歌姫、アニセッテの歌声が響きわたる。政治色の強まったメッセージ性があるようだが、
そのなにかをうったえかけるような魂の歌声は、それだけでインパクト充分。
ハスキーにして母性的、表現力豊かな感情表現、まさに天衣無縫の歌い手である。
メロディアス度・・8 哀愁度・・9 魂の歌唱度・・10 総合・・8.5
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Savsge Rose「Kejserens Nye Klader」
デンマークのブルース・フォークロック、サヴェージ・ローズの1986年作
デンマークのアイス・スケート協会の依頼で製作された楽曲を収めた作品で
哀愁漂うアコースティックの音色を聴かせるインスト曲が中心の異色作。
他の作品のような重い雰囲気ではなく、北欧らしい叙情が楽しめる1枚だが、
もちろんアニセッテのハスキーな歌唱が魅力的な歌ものも素晴らしい。
プログレ度・・7 北欧度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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The Savage Rose 「Sangen For Livet」
デンマークのブルースロック、サヴェージ・ローズの1988年作
アコーディオンの物悲しい音色で幕を開け、悲哀と情熱のエモーションが同居した、アニセッテの圧倒的な歌声が響き渡る。
優美なピアノやパーカッションなど、ジャズや民族色が混在したスタイルながら、そのすべてを包み込表現力あるヴォーカルはさすがで、アコースティックギターをバックににした、シンプルなナンバーでも、その切々とした歌声は聴き手に何事かを訴えてくる。
プログレやロック感触は希薄なので、あくまで情感的な歌もの作品として楽しむのが良いだろう。
ブルース度・7 プログレ度・6 女性Vo度・9 総合・8
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SAVAGE ROSE「GADENS DRONNING」
デンマークのブルース・フォークロック、サヴェージ・ローズの1990年作
キャリアのあるこのバンドがたどり着いた、究極ともいうべき必聴の作品がこれだ。
紅一点、アニセッテの歌唱をメインにした比較的シンプルな楽曲であるが、
オルガン、アコーディオンなどのバックにして、まさに魂を振り絞るような彼女の歌唱がとどろきわたる。
日本でいえば、カルメンマキか中島みゆきか…という、とにかくこの歌声は強烈なインパクトである。
ブルースなどからの下地を感じさせる表現豊かなその歌唱は、聴き手の魂に突き刺さり、
やさしさと強さ、すべてを飲み込んだ命の賛歌となる…人間的な命の叫びがここにある。
メロディアス度・・8 ノスタルジック度・・9 魂の歌唱度・・10 総合・・9◆プログレ名作選入り
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SAVAGE ROSE「25」
デンマークの女性Voロックバンド、サヴェージ・ローズのベストアルバム。1993年作
25周年を振り返る2枚組アンソロシーで、1968年のデビュー作から、1993年までのナンバーを2CDに全23曲収録。
代表曲というべき“Wild Child”から幕を開け、プルージーなギターにオルガンやピアノ、アニセッテのハスキーなヴォーカルと、このバンドの魅力がここに全て詰まっている。
Disc1に収録された初期のナンバーは、サイケ的な雰囲気も残したロック感触があって、プログレやヴィンテージロックのリスナーには入りやすいだろう。
Disc2に収録の80年代のナンバーになると、貫録の表現力をまとったアニセッテの圧倒的な歌唱を全面に出した作風で、バックはシンプルなサウンドながら、アコーディオンの響きとともに哀愁の情感に包まれる。
躍動感あるライブ音源なども含めて、バンドとしての25年の深化が分かる2CD。入門用にもどうぞ。
ブルース度・7 プログレ度・7 女性Vo度・9 総合・8
SAVAGE ROSE
デンマークのサヴェージ・ローズ、韓国版のBESTアルバム。
古くは60年代から活動していたこのバンド、基本はアニセッテの魂の熱唱をメインに
アコーディオン、オルガンなどが素朴でノスタルジックな音色をそえます。
それにしてもこの歌は一聴の価値有りです。まさに命の賛歌。
メロディアス度・・8 ノスタルジック度・・9 魂の歌唱度・・10 総合・・8.5
SAVAGE ROSE「Black Angel」
デンマークの女性ヴォーカルR&Bバンド、サヴェージ・ローズの1998作
70年代初頭からブルースを基盤に、ときにプログレファンにも受けるシリアスな世界観と、
素晴らしき歌姫アニセッテのヴォーカルで聴かせる作品を作り続けるこのバンド。
今作は1曲目がなにやらポップでファンキーな雰囲気で、「ありゃ」と思ったが、
2曲目以降は、ピアノやアコーディオンによるしっとりとしたバラードや、
サックスの入ったジャズナンバーなど、幅の広い作風だ。ポップな味わいの中でも、
年季をへてさらなる表現力をその声にまとわせるアニセッテの歌唱はやはり絶品だ。
メロディアス度・・7 ポップ度・・8 女性Vo度・・9 総合・・7.5
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THE SAVAGE ROSE 「Universal Daughter」
デンマークのブルースロック、サヴェージ・ローズの2007年作
1968年にデビュー、1975年にいったん解散するも、1978年に復活、1998年作からバンド名に再び「THE」がつけられ、本作は通算20作目あたりだろう。
アコースティックを含むギターにアニセッテの存在感あるハスキーな歌声を乗せ、うっすらとしたシンセアレンジも加えて、哀愁の叙情に包まれたサウンドを描く。
メロウなギターを含んだブルージーなロック感触と、北欧的な涼やかさが同居して、情感豊かな女性ヴォーカルが歌い上げる、このベテランにしか出せない圧倒的な表現力は見事というほかない。
ジャズタッチのシャンソン風ナンバーから、オルガン鳴り響くラスト曲まで、ゆったりとした味わいの中にも、堂々たるキャリアの説得力を覗かせた好作品だ。
ブルース度・7 プログレ度・7 女性Vo度・9 総合・8
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THE SAVAGE ROSE 「HOMELESS」
デンマークのブルースロック、サヴェージ・ローズの2017年作
デビューは1968年という大ベテランで、アルバムは優に20枚を超える。
トロンボーンやトランペットの音色に、オルガンやピアノ、メロトロンを含むシンセ、
そしてソウルフルな女性ヴォーカルを乗せた、味わいのあるプログレ・ブルースロック。
アニセッテ姐さんのかすれ気味のハスキーヴォイスは、往年に比べるとやや魔女めいてきてはいるが、
魂の叫びにも似た歌声のパワーは健在だ。アコースティックギターにアコーディオンの音色が響く、
哀愁に包まれたナンバーなどもいい感じで、アニセッテの歌の迫力に圧倒される。ベテラン健在の逸品です。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 アニセッテ姐さんの歌声・・9 総合・・8
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Scarlet Thread 「Psykedeelisia Joutsenlauluja」
フィンランドのプログレバンド、スカーレット・スレッドの2003年作
土着的なギターの旋律にオルガンを含むシンセを重ね、艶やかなヴァイオリンが鳴り響く、フォークロック寄りの涼やかなサウンド。
アコースティックギターにフルートの音色が重なる優雅な牧歌性と、エレキギターのメロウな旋律と泣きのヴァイオリンで、オールインストながらも叙情豊かな味わいだ。
ドラムも含めたほどよいロック感触もあるので、わりと起伏のあるアンサンブルとともに、北欧らしい空気感に包まれた土着プログレとして楽しめる。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 北欧度・9 総合・7.5
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SCARLET THREAD「Valheista Kaunein」
フィンランドのシンフォニックロックバンド、スカーレット・スレッドの2nd。2005作
ツインギターにヴァイオリン入りの5人組で、全編インストの作品になっている。
ややブルージーなギターに絡むヴァイオリンの音色にはトラッド要素が強く
ときおりKEBNEKAISEを思わせるような北欧の土着性を感じられる。
楽曲は4~6分台で比較的コンパクト。全体的に派手な盛り上がりというものはなく、
トラッド音楽を現代的なロックフォーマットでアレンジしたという雰囲気だ。。
メロディアス度・・8 シンフォニック度・・7 トラッ度・・8 総合・・7.5
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Scarlet Thread 「Never Since」
フィンランドのプログレバンド、スカーレット・スレッドの2013年作
聴くのは2005年作以来なのだが、もしやそれ以来のアルバムなのかもしれない。
艶やかなヴァイオリンやフルートの音色とともに北欧トラッド的な土着メロディを聴かせつつ、
今作では美しい女性ヴォーカルが加わって、サウンドにリリカルな彩りを添えている。
ギターはいくぶんサイケ的な浮遊感をかもしだしているが、むしろ重厚なシンフォではなく
このユルさが女性声の美しさを引き立たせている。繊細にして北欧らしいシンフオ好作品。
ドラマティック度・・7 北欧度・・9 女性Vo度・・8 総合・・8
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SCENARIO 「Alter ego」
スウェーデンのプログレバンド、シナリオの1999年作
イタリアにも同名のProgMetalバンドがいたが、こちらは同名の異なるバンド。CD-R仕様の自主制作。
35分という長大なタイトル組曲を含む構成で、優美なシンセワークにいくぶんハードなギター、
マイルドなヴォーカルを乗せて、緩急ある展開力のドラマティックなサウンドを聴かせる。
キャッチーな歌メロとシンフォニックなシンセアレンジ、ときにアコースティックを含む叙情性など、
全体的にも優雅な聴き心地で、MAGELLANなどのハードシンフォ系プログレが好きな方にも楽しめるだろう。
スケールの大きな世界観を描くポテンシャルは感じるので、本作のみで消えたのが惜しまれる。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 叙情度・・8 総合・・7.5
Scorch Trio「Luggumt」
フィンランドのテクニカル・ジャズロックバンド、スコーチ・トリオの2nd。2005年作
フィンランド出身のギタリスト、ラウル・ビューケンヘイムとノルウェーのベース、ドラムによるトリオで、
単なるフリージャズというには、あまりにアヴァンギャルドでテクニカルな演奏をやっている。
手数の多いドラムに、ジャズというよりは70年代ロック風のアナログ感覚をもったギタートーンで、
録音の生々しさも含めて、むしろ変態プログレ系のリスナーなどにも聴いて欲しいようなサウンドだ。
フリージャズロック度・・8 テクニカル度・・8 アヴァンギャル度・・8 総合・・8
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