緑川とうせい 思い出のメタル



自分をメタルの道にいざなったのは、高校時代に聴いた、エックス(XJAPAN)のメジャーデビュー作「BLUE BLOOD」であったと思う。
それまで、健全にTMNやZIGGYなどを聴いていた自分にとって、これほど激しく、そして美しい音楽があったのだと初めて思い知らされた。
その後、レンタルCDショップにて、METALLICAHELLOWEEENなどを借りて、しだいにジャーマンメタルやスラッシュメタルに目覚めてゆく。
当時の自分の基準で言うと、とにかく「疾走していて速い曲」が好きであった。その点、ジャーマンメタルは、メロディも日本人好みで、
なおかつ疾走するバンドが多かったこともあって、BLIND GUARDIANGAMMA RAYRAGEといったバンドを愛好するようになる。
ATTACKSTORMWITCHといった、マイナー系バンドの幻想的な空気感にも惹かれ、のちのクサメタル、エピックメタル愛好への契機となる。
アメリカのバンドだと、ツインギターの美しいRIOTが断然気に入りで、大仰でエピックなMANOWARの世界観にも魅力を感じたし、
さらにブラジルから現れたVIPERは、究極にクラシカルなサウンドで、優美な「クサメロ感」がたまらない、まさに自分の理想とする名作と言えた。
その後、ヴァイパーのアンドレ・マトスがANGRAを結成、北欧からは、STRATROVARIUSROYAL HUNTなどが登場してシーンを彩ってゆく。

スラッシュメタルに関しては、METALLICATESTAMENTKREATORなど、ドラマティックで湿り気のある叙情を含んだバンドが好みであったが、
ANNIHILATORMEKONG DELTAなどの、知的で個性的なサウンドにも強く惹かれた。デスメタルはいくぶん苦手だったのだが、
当時やっていたバンドメンバーのK君から、CARCASSMALEVOLENT CREATIONなどを聴かされているうちに慣れてゆき、
MORBID ANGEL
に目覚めると、SADISTの1stの美しさに衝撃を受け、のちにはVADERの恰好良さにしびれて普通に楽しめるようになる。
一方では、速さを追求していた自分にとってその真逆をゆくCATHEDRALは、重厚で病的なまでにスローなドゥームメタルサウンドが衝撃だった。

DREAM THEATERの出現は、プログレッシブ・メタルのブームに火を付け、SHADOW GALLERYPAIN OF SALVATIONなど、
素晴らしいバンドたちが続いてゆく。また、メロハーなぞ軟弱で聴けるかと思っていた自分が、LILLIAN AXEFAIR WARNINGTENなどの、
クオリティの高さとメロディの素晴らしさに考えを改めさせられることとなる。90年代も半ばになると、北欧からメロディック・デスメタルなるムーブが生まれる。
IN FLAMESDARK TRANQUILLITYを筆頭に、ツインギターの叙情性と激しく疾走するサウンドで、自分の好む新たなるジャンルが生まれたのだと知った。
それまで敬遠していたブラックメタルも、EMPERORCRADLE OF FILTHの、激しくも美しいドラマティックなサウンドに魅了される。
映画的なまでの壮大さでイタリアから登場したRHAPSODYは、ファンタジックかつ大仰なサウンドに圧倒され、後のシンフォニックメタルブームに火を付け、
ゴシックメタルの台頭とともに、美しい女性ヴォーカルを前面に押し出した、WITHIN TEMPTATIONの優美なる世界に浸りながら、90年代が過ぎていった。
こうして、気付けば我がメタル道は、少しずつ細分化を遂げながら、広く、深く、また深く、続いてきたのであった。


2017年12月 緑川とうせい


◆思い出のメタル作品20選

X「BLUE BLOOD」
日本が誇る人気バンド、エックス(ジャパン)の2nd。1989年作
当時は派手派手しい髪形やメイクなどの外見ばかりが取り沙汰されていたが、彼らの本質は抜群のメロディによる美しくも激しい楽曲にあり、
出世作にして最高傑作であるのが本作だ。個人的にも高校生でリアルタイムで聴き、以後メタルにハマる原点となったアルバムだ。
イントロに続く“BLUE BLOOD”は疾走する永遠のメロスピ名曲であるし、“WEEK END”の哀愁溢れるメロディにはやはりぐっとくる。
ライブでの定番曲“X”の激しさから一転して美しいピアノで聴かせる泣きのバラード“ENDLESS RAIN”の叙情にはうっとりとなる。
ここまでですでにお腹いっぱいなのだが、ようやくアルバム後半で、泣きの哀愁のイントロとともに名曲“紅”がドカドカと攻めてくる。
強烈な疾走曲“オルガスム”、キャッチーな“CELEBRATION”から、クラシカルな美意識で聴かせる圧巻の大曲“ROSE OF PAIN”、
そしてラストの“UNFINISHED”まで名曲満載。20年近くたった今もなお色あせない名盤だ。
メロディアス度・・9 魂の激しさ度・・10 楽曲・・9 総合・・9
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METALLICA「...And Justice For All」
アメリカのスラッシュメタル、メタリカの4th。1988年作
事故死したベースのクリフ・バートンに代わり、ジェイソン・ニューステッドが加入、
サウンドは前作「MASTER OF PAPPETS」でも覗かせていたプログレッシブな知的さと
大作志向がさらに強まり、6分〜9分といった長曲を中心にしたクールな作品に仕上がっている。
ベースが聴こえないなど、賛否両論もある作品ながら、硬質なバスドラの音にしびれたし、
自分にとっての初めてのメタリカ体験がこのアルバムであったから、思い入れは大きい。
1曲めの“Black End”の無慈悲なまでの硬質感に大いにしびれ、タイトルの曲の社会風刺的な歌詞や
その知的な構築センス、そして叙情的で悲しみにあふれた名曲“ONE”には心打たれたものだ。
アルバム全体を通して聴くとやや長尺感は否めないが、バンドとしての過渡期に作られた異色の力作である。
ドラマティック度・・8 アグレッシブ度・・7 知的スラッシュ度・・9 総合・・8
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HELLOWEEN「WALLS OF JERICHO」
ジャーマンメタルの大御所、ハロウィンの1st。1986年作
個人的にHELLOWEENのアルバムで最も思い入れの深い作品で、コミカルなイントロに続いて始まる“Starlight”から震えが来る。
カイ・ハンセンのやや頼りなげなハイトーンと、まだ荒々しさの残る演奏は、若さにあふれた疾走感をともなって、ぐいぐいとたたみかけてくる。
怒濤の疾走曲“Murderer”、ドラマティックな三連リズムの“Victim of Fate”、キャッチーなサビメロの“Gurdians”などは個人的なフェイバリットソング。
ハイライトとなる大曲“How Many Tears”の泣きのメロディと疾走感は、ジャーマンメタル=ハロウィンという図式を決定づけた名曲。
この後、シーンの代表格として30数年にわたるかぼちゃの歴史の始まりを告げる重要な作品である。 カイ・ハンセン最高!
メロディアス度・・8 ジャーマン疾走度・・9 原点度・・10 総合・・8.5
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GAMMA RAY「Heading for Tomorrow」
カイ・ハンセン率いるガンマ・レイの記念すべき1st。1990年作
「守護神伝」の2作を残してHELLOWEENを脱退したカイ・ハンセンが戻ってきたということで、
当時のCDの外箱には、バンド名ではなく、「KAI HANSEN」の文字がソロアルバムのように書かれていたものだ。
ドラマティックなイントロから続く“Lust For Life”の格好良さには、すべてのジャーマンメタルファンがしびれただろう。
キャッチーなメロディの“Heaven Can Wait”は個人的にはGAMMA RAYのミドルテンポ曲でもっとも好きな1曲だし、“Monney”での
コミカルな疾走サウンドにはカイの遊び心が溢れている。そして絶品のパラード“The Silence”の荘厳なまでの美しさに胸うたれ、
ラストの大曲“Heading For Tomorrow”まで、バラエティに富みながらも、しっかりとカイ・ハンセン印が押された好曲満載。
ラルフ・シーパーズの素晴らしいハイトーンとともに、爽やかなジャーマンメタルが楽しめる。
メロディアス度・・8 疾走度・・7 カイ・ハンセン度・・9 総合・・8.5
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BLIND GUARDIANSomewhere Far Beyond
ジャーマンメタルのベテラン、ブラインド・ガーディアンの4th。1992年作
個人的には本作こそがブラガーの最高傑作であるし、発売日に購入して聴きまくった思い入れの強いアルバムである。
幻想的なジャケットからして胸が踊るが、アコースティカルなイントロから続く“Time What is Time”の激しさ、ダイナミックさにやられる。
本作あたりからハンズィのヴォーカリストとしての成長も感じられ、世界観を歌い上げる説得力が加わった。
続く“Journey Through the Dark”の疾走感に拳をかざし、“Theatre of Pain”のクラシカルさに浸り、
“The Quest for Tanelorn”のサビでの大合唱、“The Bard's Song”では吟遊詩人の気分になって、
ファンタジーの世界にどっぷり。そして極めつけは、7分を越える“Somewhere Far Beyond”の
ドラマティックさに悶絶。曲ごとの密度も濃く、構成的にも完璧なファンタジックメタル作品である。
ドラマティック度・・9 疾走度・・8 ファンタジック度・・9 総合・・9
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RAGE「Trapped!」
ジャーマンメタルのベテラン、レイジの6th。1992年作
オリエンタルなイントロから始まる今作は、ジャケの雰囲気同様ぐっとヘヴィさが増し、
ザクザクのギターと低音ぎみのピーヴィのヴォーカルで聴かせるサウンドとなった。
続く2曲目の“Solitary Man”のアグレッシブな勢いとメロディの融合は魅力的で、
シンプルな三人編成でもここまでの迫力あるメタルが描けるのだと証明してみせた。
重厚な三連リズムのナンバー“Enough is Enough”や、ACCEPTのカヴァー“Fast As A Shark”も
見事な出来で、ラストのドラマティックなインスト“行進する英雄たち”までダレることなく楽しめる。
パワフルな勢いに満ちたジャーマンメタルの傑作である。次作「Missing Link」も同様の傑作。
ドラマティック度・・8 疾走度・・7 重厚度・・9 総合・・8
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RIOT「The Privilege of Power」
アメリカのメロディックメタル、ライオットの1990年作
名作「Thundersteel」に続くアルバムであるが、内容的には同等の完成度を誇る。
ジャケのイメージのように、リアルな現実における世界情勢などをコンセプトににし、よりシリアスなサウンドで、
SEを多用して聴き手に想像力を喚起させつつ、楽曲は複雑なインストパートを聴かせる。
とくに名手ボビー・ジャーゾンベクのドラムは縦横無尽にそのテクニックを見せつけ、まさにバンドの屋台骨を支えている。
またホーンセクションの大胆な導入も個性的なサウンドに彩りを与えている。本作のハイライトは“Thundersteel”を超える名曲
“Storming the Gates of Hell”で、トニー・ムーアのハイトーンヴォーカルを乗せて疾走、ツインギターのドラマティックなソロも素晴らしい。
一聴しての分かりやすさは前作ほどではないが、濃密なライオットサウンドが楽しめる、これも傑作なのだ。
ドラマティック度・・8 疾走度・・7 シリアス度・・8 総合・・8
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VIPER「Theatre of Fate」
ブラジルのメロディックメタルバンド、ヴァイパーの2nd。1991年作
後にANGRAを結成することになるアンドレ・マトスの在籍したバンドだが、なにせ当時ブラジルのメタルといえば
SEPULTURAくらいしかいなかったわけで、当然ながらこのアルバムでの成功なくしてはANGRAは生まれなかっただろう。
そして繊細で美しいイントロに続く、クラシカルなメロディで疾走するそのサウンドには
HELLOWEENよりもメロディアスで美麗なメタルがあったのかと、大変な衝撃を受けた記憶がある。
演奏技術的には、今のANGRAを基準にするといかにもつたないが、シンフォニックメタルという言葉すら
なかったこの当時に、ここまでのクラシカルな旋律を疾走サウンドに取り込んだバンドはいなかったし、
若々しいアンドレ・マトスのハイトーンも含めて、すべてが日本人好みのスタイルであった。
QUEEN的なコーラスとキャッチーなメロディの“Prelude to Oblivion”、ドラマティックな名曲“Theatre of Fate”、
そしてベートーベンの月光をモチーフにした“Moonlight”まで、まさに全曲捨て曲なしの美旋律が楽しめる名作だ。
メロディアス度・・9 疾走度・・8 クラシカル度・・9 総合・・8.5
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KREATOR Terrible Certainty
ジャーマンスラッシュメタル、クリエイターの3rd。1987年作
自分が最初に聴いたKREATORのアルバムが本作である。当時は怖いほどに速く感じたのだが、
今になって聴くとこれが実に格好いい。2ndまではただ勢いにまかせて突っ走るだけのサウンドだったのが、
本作においてはリフの一つ一つのキレが増し、楽曲ごとに明確に個性がつけられている。
ドラムを含めてリズム面でもずいぶんタイトになり、バンドとしての技量が感性に追いついたという、
そんな感じがする。絶叫するようなミレ・ペトロッツァの感情的なヴォーカルとともに、
激しくもどこか薄暗い情感を感じさせるのも、このバンドならではの世界観だろう。
初期を代表する傑作であり、ジャーマンスラッシュの中でも外せない作品だ。
ドラマティック度・・8 疾走度・・9 スラッシュ度・・9 総合・・8.5
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ANNIHILATORNever, Neverland
カナダのスラッシュバンド、アナイアレイターの2nd。1990年作
今作からヴォーカルが代わり、ギター、ベースが加入して事実上のバンド編成となった。
ジェフ・ウォーターズのクールかつ奇妙なギターリフはいよいよ本領を発揮しているが、
それでいて歌えるヴォーカルのおかげで、サウンドはある種メロディアスに聴きやすくなった。
1曲目の“The Fun Palace”、タイトル曲の“Never,Neverland”をはじめ、
初期の代表曲“Phantasmagoria”など、プログレッシブなアナイア節が詰まった作品だ。
スラッシーな激しさはやや薄いが、その分初心者でも聴きやすいサウンドになっている。
個人的には最高傑作としたい。アナイア初体験の思い出のアルバムでもある。
ドラマティック度・・8 濃密度・・8 知的スラッシュ度・・9 総合・・8
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MORBID ANGEL「Blessed Are the Sick」
アメリカのデスメタルバンド、モービッド・エンジェルの2nd。1991年作
本作は私が最初に聴いたデスメタル作品であり、そのときはジャケ買いをして聴いてみて
あまりの強烈さに理解不能であったが、やがてこれがデスの名盤だと理解することになる。
妖しくも得体のしれないノイジーなイントロに続き、重々しいギターリフとともにゆったりと始まり
ブレイクののちに激しくブラストが始まってゆく…ここはいつ聴いてもしびれるほど格好いい。
咆哮するデスヴォイスと、ジャケのイメージ通り、まるで地獄へ迷い込んだような世界観…
このおどろおどろしさは一度ハマったら快感になる。また、ただ激しいだけではなく、
テクニックのある演奏力と構築された楽曲、その展開力が音の説得力ともなっている。
このアルバム以降も、質の高い作品を生み出しつづけているこのバンドだが、自分にとっては
本作こそ永遠の最高傑作であり、デスメタルといえばまずこのアルバムなのだ。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・8 暗黒度・・9 総合・・8.5
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LILLIAN AXE「Poetic Justice」
アメリカのメロディアスハード、リリアン・アクスの3rd。1992年作
この一見ダメそうなジャケにだまされないで欲しい。メロディアスハード史に輝く名盤がこれだ。
先日再発された2nd「Love + War」も必聴だが、それ以上に本作は楽曲充実の傑作である。
アメリカのバンドでありながら、陽性の中にも哀愁を漂わせるメロディラインに、
スティーヴィー・ブレイズの素晴らしいギターワークが合わさった見事なバランス感覚。
最高の泣きのパラード“See You Someday”の素晴らしさは言葉に尽くせない。
とどめは“The Promised Land”の叙情である。個人的にもメロハー嫌いを克服させてくれた一枚です。
メロディアス度・・8 哀愁の叙情度・・8 楽曲・・8 総合・・8.5
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DREAM THEATER「IMAGES AND WORDS」
アメリカのプログレメタル、ドリーム・シアターの2nd。1992年作
言わずと知れたProgMetalの流れを決めた歴史的傑作。すべてはこのアルバムの成功から始まった。
1st「When Dream and Day Unite」が時代に早すぎたため、さして話題にならなかったが、
バンドはカナダ人シンガー、ジェイムス・ラブリエを迎えてこの勝負作を完成させた。
全8曲中、4曲が8分以上という、当時にしては異色の大作志向であるが、
メタリックな重厚さを失わず、ドラマティックなスケール感と緻密きわまりないアレンジで
ぐいぐいと聴かせる説得力が音にはある。メロディアスとテクニカルの奇跡的なバランス、
代表曲となる“Take theTime”、そして“Metropolis”の構築美は芸術的なまでの完成度だ。
ラブリエの見事にな歌唱が映える絶品のバラード“Another Day”や“Sorrounded”といったキャッチーな楽曲も
作品としてのバランスに貢献しており、“Wait for Sleep”からラストの“Learning to Live”への流れには、
彼らのプログレッシブなセンスが凝縮されている。まさに歴史に残る、全てにおいて完璧な名作だ。
ドラマティック度・・9 テクニカル度・・8 楽曲センス・・10 総合・・9
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DARK TRANQUILLITYSkydancer
スウェーデンのメロディックデスメタル、ダーク・トランキュリティの1st。1993年作
現在はびこる全てのメロディックデスの元祖的存在であり、私にメロデスの世界を教えてくれた歴史的傑作。
激しい荒々しさと疾走につぐ疾走に北欧のもの悲しいメロディ折り込んだ、この1stこそが我が最高作なのである。
とにかく、ツインギターによる北欧的な叙情美を、ここまでデスメタルサウンドに融合させたのは
彼らが初めてであったし、その激しさと美しさに当時の私は激しく魅了されたのだ。
バンドは3rd以降、少しずつ方向性を変えてゆくが、このデビュー作は今なお輝きを放っている。
メロディアス度・・8 暴虐度・・8 歴史的偉業度・・10 総合・・8.5
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SADIST 「Tribe」
イタリアのプログレッシブ・デスメタルバンド、サディストの2nd。1995年作
1st「Above the Light」は、絶品のメロディを取り入れた叙情派デスメタルの傑作として名高いが、
それに続く本作では、シンセを大胆に取り入れたプログレッシブなスタイルへと進化した。
ミステリアスなイントロから、ギターではなくシンセをメインにしたフレーズにデス声が絡み、
やがて美しい絶品のギターソロへと続く、インパクトのあるこの1曲目には、初めて聴いたときに震えがきた。
これまでのデスメタルの概念を覆すかのなような、革新的な感性をこのバンドに感じたのである。
その後も、およそデスとは思えないグルーヴィーな演奏と、美しいシンセを絡ませながら、
不思議な浮遊感覚で聴かせてくれる。まさしくプログレッシブなセンスに満ちた傑作である。
メロディアス度・・8 プログレ度・・8 芸術度・・9 総合・・8.5
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DISSECTION「Storm of the Light's Bane」
スウェーデンのメロディック・ブラックメタル、ディセクションの2nd。1996年作
個人的にも、このアルバムは北欧メロブラの金字塔として長年愛聴していた作品で、
名曲“Night's Blood”をはじめ、後のチルボドなどにも影響を与えた、流麗なギターメロディで疾走するサウンド。
曲と演奏のクオリティの高さの点でも、数あるメロデス系バンドのアルバムでもトップの1枚だと思う。
残念ながら、バンドのリーダーであったジョンは、2006年の解散ツアーの後、自殺という形で永遠にバンドを去ってしまったが、
葬送の意味でこのアルバムを聴き返すにつれ、メロディのもの悲しさと、北欧的な暗い叙情性を有した楽曲には、
あらためて彼の音楽センスとその才能が惜しまれる。この名盤をまだ聴いたことがないリスナーは即買いだ!
メロディアス度・・8 暴虐度・・8 北欧的薄闇度・・9 総合・・8.5
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CRADLE OF FILTH「Dusk and Her Embrace」
イギリスのシンフォニックブラックメタルバンド、クレイドル・オブ・フィルスの2nd。1996年作
壮麗に聴かせるシンフォニックなシンセワーク、ヴァンパイアをテーマにした耽美な世界観、
そして絶叫としわがれ声を巧みに使い分けるヴォーカルのダニ・フィルスの存在感。
あらゆる点で1stからスケールアップを遂げ、本作ではその激烈かつドラマティックなサウンドに
説得力を付加し、闇の幻想美を彩っている。たとえば、ノルウェーのバンドとは異なるベクトルで
ブラックメタルをエンターテイメントミュージックにまで仕立て上げたこのバンドの功績は大きい。
現在におけるシンフォニック・ブラックシーンの発展の布石ともなった傑作といっていいだろう。
そして次作「Cruelty And The Beast(鬼女と野獣)において、彼らはその地位を不動のものにする。
シンフォニック度・・8 暴虐度・・8 幻想美度・・9 総合・・8.5
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EMPEROR「Anthems to the Welkin at Dusk」
ノルウェーのブラックメタルバンド、エンペラーの2nd。1997年作
本作こそブラックメタルの歴史における輝ける金字塔的な傑作である。
教会への放火容疑で逮捕されたギターのサモスが出所し、殺人容疑で逮捕されたファウストに代わって、
ドラムには超絶なブラストビートを叩くタリムを迎えて作られた本作は、1stをはるかに上回る傑作となった。
荘厳なるイントロに導かれ、暴虐なる地獄の音楽が始まるや、黙示録の戦いを思わせる激しさとともに、
ときにシンフォニックな美しさをたたえたシンセワークや、プログレッシブなリズム展開なども素晴らしく、
リーダー、イーサーンの美意識がとことんまで発揮された本作のサウンドは、単なるブラックメタルの枠を超え、
闇の芸術ともいうべき境地に達している。激烈にして耽美、暗黒にして知性と狂気をともなった名作だ。
シンフォニック度・・8 暴虐度・・9 荘厳度・・10 総合・・9

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RHAPSODY「Legendary Tales」
イタリアのシンフォニックメタルバンド、ラプソディーの1st。1997年作
とにかく、このアルバムを最初に聴いたときの衝撃は、ただ事ではなかった。
それまでのメタルの概念を覆すかのような、壮麗きわまりない大仰さ、壮大にしてファンタジックな世界観、
そして思わず拳を握り締めるエピックな力強さ。すべてにおいて、今で言うところのシンフォニックメタルの元祖的な存在であり、
メタルを映画的で壮大な作品へと仕立て上げ、それを完璧に成功させた1枚だ。
美しいシンセにクラシカルなオーケストレーション、大仰なコーラスワークはもとより、ヴォーカルであるファビオ・リオーネの力量や、
楽曲における緩急とメリハリ、常にメロディがあふれ出す濃密なアレンジに、すべてのメタルファンはしびれたのだ。
ここから始まるエメラルドサーガの四部作、そしてシンフォニックメタル誕生の瞬間がここにある。
シンフォニック度・・9 疾走度・・7 ファンタジック度・・10 総合・・9
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WITHIN TEMPTATION「MOTHER EARTH」
オランダのゴシックメタルバンド、ウィズイン・テンプテーションの2nd。1999年作
1stではまだデス声入りのいくぶん垢抜けないゴシックサウンドであったのだが、
今作は全篇が美声のシャロン嬢の歌になりデス色は全面撤廃。これが大成功。
楽曲はしっとりと美しいケルト/フォーク色を増し、泣きのシンフォニック要素が満載になった。
これならメタル聴かないシンフォファンでも聴けます。美しく優しい歌声。曲もどれも素晴らしい。
全体的にはゴシック的ダークさは後退したが、癒しのシンフォニックという新たな地平を確立した。
3rd以降も良いが、本作は今なお女性声ゴシックの頂点に輝く1枚。新しいファンもまずはこれを聴くべし!
メロディアス度・・9 ゴシック度・・8 女性Vo度・・10 総合・・9 
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