緑川とうせい 思い出のプログレ



そう、思えば、某B!誌の1991年11月号に掲載されていたプログレ特集を読んで、なにげなく興味を惹かれたことが始まりだったのだと思う。
プログレ、という言葉の意味すら知らなかった若かりし頃、記事にあったバンドのなかから、EL&PYESPINK FLOYDなどを試しに聴くが、
メタルしか知らない当時の自分にはいまひとつピンと来ず、いったんはプログレのことなどは棚に上げて、しばらく忘れたフリをしていた。
その翌年になって、DREAM THEATERの2ndがにわかに話題となると、それを試しに聴いてみるも、当時の自分にはやや難解に思えた。
だが、ほどなくして現れたSHADOW GALLERYは、その優雅な叙情美を一聴して気に入り、再びプログレへの興味が再燃することとなる。
アイルランドのFRUUPP「太陽の王子」を偶然にジャケ買い、その素朴な叙情美に涙し、PENDRAGONのロマンあふれるシンフォサウンドに浸った。
メロディックな叙情に惹かれる自分が、シンフォニックロックなるものを愛し始めたのは、いま考えればほとんど必然だったのだろう。
それまで難解だと聞いて敬遠していた、KING CRIMSONの「宮殿」は、美しいメロトロン、フルートの叙情性もあって、初めから心に響いた。
そして、「怪奇骨董音楽箱」と出会い、初期のGENESISの幻想性とダイナミズムに心を奪われ、私のプログレ道はいよいよ深まり始める。
すでにRICK WAKEMANのクラシカルな諸作に魅了されていた自分は、以前は苦手だったYESも、「イエスソングス」の素晴らしい演奏で再評価することとなり、
EL&Pは、ライブ作品「レディース・アンド・ジェントルメン」のアルバム以上の攻撃的な演奏に圧倒された。PINK FLOYD「原子心母」、CAMEL「ミラージュ」と、
お気に入りの作品が次々に増えていった。RENAISSANCE「燃ゆる灰」、「シェラザード夜話」、MIKE OLDFIELD「オマドーン」などもいたく私を感動させた。

当時は、現在のようにインターネットなどはなかったから、プログレに関しての貴重な情報は雑誌などの紙媒体に頼るほかなかったのだが、
我が地元のCD屋には、「ヨーロピアンロック・ハンドブック4」なるものが置かれていて、それを持ち帰って漁るようにして情報をインプットした。
そこにはイタリアンロックを中心に、フランスやドイツ、そして日本のプログレバンドなどに関する詳細な紹介が載っていて、
世界各国の作品と出会う契機というべき、まさに自分にとっての新大陸発見であった。イタリアのPFMは、英語盤「幻の映像」を買ったのだが、
のちに聴いたイタリア語盤「友よ」の方にはるかに魅力を感じ、BANCOOSANNAMUSEO ROSENBACHと、イタリアンロックへの探求も深めてゆく。
そして、OPUS AVANTRAとの出会いによって、アヴァンギャルドな芸術性にも開眼。フランスのTAI PHONG、オランダのFOCUS
ドイツでは、優美なるANYONE'S DAUGHTERが一番のお気に入りとなり、当時は貴重だったすべてのタイトルを必死に探し回った。
また、日本にもプログレバンドがいるのだと知り、NOVELAGERARDSTARLESSMr.SIRIUSといったバンドのCDを苦労しながら集め始める。
中でも自分が気にいったのは、ヴァイオリンが鳴り響き、ロマンあふれる世界観を描く本格派のシンフォニックロック、OUTER LIMITSであった。
当時、唯一のプログレ専門誌「マーキー」を頼りに情報を集めながら、やがてKAIPADICEによって北欧プログレに目覚めると、
これまた偶然ジャケ買いしたANGLAGARD「ザ・シンフォニック組曲」の完成度に狂喜した。どきどきとしながら、マーキーを発行する大元である、
目白のプログレ専門店「World Disque」を訪れ、そこで最初に買ったのがDEVIL DOLLであったというのも、いま思えばなんだか自分らしい。
やがて、あのKAIPAのROINE STOLTが復活し、ソロアルバムを発表、そのタイトルから名付けられたバンド、THE FLOWER KINGSを率いて登場すると、
90年代後半の北欧プログレブームが一気に加速してゆく。そう、自分にとっては、まさにこの時代こそがプログレ黄金の日々であったのだ。

2017年12月 緑川とうせい





◆思い出のプログレ作品20選

KING CRIMSON「IN THE COURT OF THE CRIMSON KING」
イギリスのプログレバンド、キング・クリムゾンの1969年作
「クリムゾン・キングの宮殿」として知られる、言わずと知れたロック史上に燦然と輝く名作。
ともかく、1曲目“21世紀の精神異常者”からして、そのインパクトたるやハンパではない。
サックスが不穏に鳴り響き、叫びのような歌声が狂気を振りまく、この始まりとジャケのインパクトがリンクして
1度聴いたらもう誰も忘れられない作品となる。続く“風に語りて”では、美しいフルートの音色とともに素朴な叙情を聴かせ、
名曲“エピタフ”の壮大かつ静謐な世界観にうっとりとなる。“ムーンチャイルド”でひと休みさせておいて、
ラストのタイトル曲のメロトロンの盛り上がりで圧倒される。楽曲ごとの不思議な魅力と、アルバムとしての構成も含め、
飽きることのない名盤に仕上がっている。60年代末に来た最初の衝撃。すべてはここから始まった!
ドラマティック度・・9 プログレ度・・9 名盤度・・10 総合・・9 
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Genesis「Nursery Cryme
イギリスのプログレバンド、ジェネシスの3rd。1971年作
本作から新たにステファン(スティーブ)・ハケットとフィル・コリンズを迎え、黄金の体制となったバンドは、
物語性をともなった強固な世界観を構築、冒頭を飾る名曲“The Musical Box”の妖しげな世界観は、
ハケットのメロウなギターと、ガブリエルの濃密な歌声とともに、この時代でしかなしえない空気を作り出している。
とくに後半からラストへのダイナミックな流れなどは泣きの叙情が押し寄せてくるじつに感動的なものだ。
全体的な完成度からすれば、「Foxtrot」、「Selling England〜」の方が上かもしれないが、
この幻想的な物語世界はGENESISの作品中でも最高のものだろう。「怪奇骨董音楽箱」という邦題にもしびれた。
メロディアス度・・8 プログレ度・・8 幻想度・・10 総合・・8.5
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MARSUPILAMI「Arena」
ブリティッシュロックバンド、マルスピラミの2nd。1971年作
英国プログレの裏名盤ともいうべき完成度を誇る歴史的傑作。本作は古代ローマを舞台にした壮大なコンセプト作で、
まだ粗削りだった1stに比べサウンドの輪郭がはっきりしてきており、楽曲におけるメリハリのつけ方もドラマティックになった。
ヴォーカルはときに物語を語るように静かで、かと思うと戦闘をする戦士のように激しくもなる。
たたみかけるドラムに、ハモンドオルガン、それにメロトロンやフルートを聴かせる叙情パートもあり、
息つかせる暇もなく楽曲は展開してゆく。ジャズロック的な軽やかさと、ハードな質感が同居し、
シンフォニックな要素がなくとも、不思議と音には広がりと壮大さを感じるのが凄い。
ある意味これも英国からしか出て来ない音。普通のプログレで飽き足らない方にお勧め。
ドラマティック度・・9 プログレ度・・8 英国度・・9 総合・・8.5
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PFM「Per Un Amico」
イタリアのプログレバンド、PFMことプレミアータ・フォルネリア・マルコーニの1972年作
「友よ」のタイトルで知られるPFMの2作目にして初期の最高傑作。ともかく1曲め“Appena Un Po'”の美しさ。
のちに“River of Life”としてリメイクされるのだが、原曲のこちらの方がイタリア語の情感とともに、
はるかに叙情的に迫ってくる。繊細なフルートの音色、艶やかなヴァイオリン、アコースティカルでありつつ
ダイナミックな広がりも備えたPFM最高の名曲のひとつだ。テクニカルなリズムの上にピアノとヴァイオリンが鳴る
“生誕”は“MR. 9 `TIL 5”として「Photos of Ghosts」にてリメイクされる佳曲。間奏部のフルートが楽しい。
しっとりと叙情的な“友よ”、牧歌的でありながら展開に富んだ“晩餐会”、ラストの“ゼラニウム”まで全5曲35分弱であるが、
クラシカルな楽曲の美しさ、卓越した演奏力、どこをとっても質が高く、まさしく「甦る世界」と並ぶ彼らの代表作である。
叙情度・・10 プログレ度・・8 イタリア度・・10 総合・・9
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MUSEO ROSENBACH「ZARATHUSTRA」
イタリアのプログレバンド、ムゼオ・ローゼンバッハの1973年作
70年代に彼らが残したこの唯一のアルバムは、イタリアンヘヴィプログレの名盤として語られている。
ニーチェの「ツァラトゥストラはかく語りき」をテーマにした、哲学的かつ壮大な内容で、
メロトロンとギターによる重厚なサウンドは、プログレ好きのメタラーなどにも聴きやすいだろう。
かく言う筆者も、この作品とオザンナ「パレポリ」によってイタリアンロックの深みにどっぷりとハマったのである。
タイトル組曲の完成度はもちろんのこと、音自体に内包されたミステリアスな雰囲気が素晴らしい。
プログレを聴く人間であれば、せめてPFMの「友よ」とこの作品くらいはチェックすべきだろう。
シンフォニック度・・8 重厚度・・8 完成度・・9 総合・・8.5
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OPUS AVANTRA 「Introspezione」
イタリアンロックの輝ける芸術、オパス・アヴァントラの1974年作
アヴァンギャルドな感性とクラシックの気高さ、繊細かつ張りつめたような美意識に包まれ、
ピアノの一音さえもが空気を描きだすような意志をもっている、そんな孤高の傑作。
そして、歌姫、ドネラ・デル・モナコのオペラティックで崇高な歌声が胸を打つ。
クラシックを基盤にしつつ、ここまで革新的な音楽をいったい誰が創造できるだろう。
この時代、そしてこの国からでしか決して生まれえなかった音楽である。
プログレッシブロックを芸術とするのなら、本作こそまさにそれを体現した作品だ。
続く2nd「Lord Cromwell」とともに、イタリアの奇跡ともいうべき名作である。
クラシカル度・・9 アヴァンギャル度・・9 芸術度・・10 総合・・9
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EMERSON,LAKE & PALMER「Ladies and Gentlemen」
エマーソン・レイク・アンド・パーマーのライブアルバム。1974年作
EL&Pのロックバンドとしての側面を伝えるという点で、まずオススメしたいのが本作なのである。
個人的にもこのバンドのもつ勢いとパワーを見直すきっかけとなったライブ作品である。
スタジオアルバムでのクラシカルなキーボードロックはそのままに、ライブでのバンドの演奏は
凄まじい勢いに満ちており、たった3人とは思えない突進力でで聴き手を圧倒する。
“聖地エルサレム”から始まり、アルバムよりもスピード感のある“タルカス”、
そして35分にも拡張された“悪の教典”と、CD2枚にわたって濃密な演奏が楽しめる。
バンドの絶頂期ライブというのはこれほど凄いのだということを知らしめる、必聴の作品である。
メロディアス度・・8 キーボー度・・10 ライブ演奏・・9 総合・・9
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FRUUPP 「The Prince of Heaven's eyes」
アイルランド出身のプログレバンド、フループの3rd。1974年作
私が無人島に持ってゆくとアルバムを選ぶとしたら、GENESISの「月影の騎士」とPFMの「友よ」と一緒にまず最初に選ぶのが本作だ。
かつての邦題は「太陽の王子〜虹の果ての黄金伝説」。太陽を「Heaven's eye」と表したセンスもなんとなくグッとくるではないか。
当時の日本盤は今はなきテイチクの「ブリテイッシュ・プログレクラシックス」から出ており、ジャケに惹かれて本作を手にとったのが出会い。
ややチープな絵だが、いかにも少年の冒険を思わせるファンタジックな雰囲気と、帯に書かれた邦題が私の心をときめかせたのだ。
サウンドは、美しいストリングスシンセに導かれて、ジャケ通りの牧歌的な雰囲気のシンフォニックロックがゆるやかに展開されてゆく。
一聴した感じは地味ながらも、何度聴いても音の心地よさと涼やかな雰囲気から聴き疲れがまったくしないのが良い。
そうして聴き込んでいくうちに、脳裏にはジャケの少年が繰り広げる冒険の物語が浮かんでくるのである。
いかにも旅の始まりを感じさせるワクワクとするような1曲目、7曲め“Seaward Sunset”のピアノとコーラスによるしっとりとした美しさ、
そして“The Perfect Wish”での後半の大盛り上がりからラストへの展開などは、いつ聴いても素晴らしく感動的だ。
エンディング的な“Prince of Heaven”で幕を閉じるまで、淡い色をした幻想の物語にゆったりと浸れるじつに素敵なアルバムである。
メロディアス度・・8 ほのぼの度・・9 ファンタジック度・・9 総合・・8.5
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MIKE OLDFIELD「OMMADAWN」
マイク・オールドフィールドの3rd。1975年作
MIKE OLDFIELDの作品の中でも傑作中の傑作。初期の4枚のアルバムはどれも素晴らしいのだが、
中でもとくにメロディの美しさと幻想的な牧歌性、民族音楽とロックの融合、大曲としての完成度、
そのすべての部分で奇跡的な結合を生み出しているのが本作である。
このアルバムのあと、精神的な疲労から次作「呪文」を発表するまで3年のブランクが
あったというのもうなずける。それだけの力を注ぎ完成された世界観がこの作品にはあったのだ。
サウンドの方は、ケルティックなメロディや、アフリカンなパーカッションなど、民族色が濃いもので
そこに幻想的なキーボード類と、繊細なギターを重ねて、ときにシンフォニックに聴かせる。
全体的に当時の彼の精神状態が窺い知れるような、靄のかかったようなほの暗く、湿った質感があり、
19分、17分というふたつの大曲の中で、何度も高揚と降下を繰り返しながら、音そのものとしての緊張感は
「チューブラー・ベルズ」に譲るが、幻想世界と現実、自然とが一体となった彼の世界観が織り込まれてゆく。
子供達の歌声が響きわたるラストの大団円は、マイク自身の世界との出会いを示しているかのようで、
何度聴いても感動的だ。商業音楽にとらわれない音楽を愛する人間なら必ず聴くべき名作である。
民族シンフォニック度・・9 ドラマティック度・・9 世界融合度・・10 総合・・9 
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THE ENIDAerie Faerie Nonsense」
英国のシンフォニックロックバンド、エニドの2nd。1977/1984年作
先に聴いたのは1977年のオリジナル盤ではなく、CD化されていた1984年の再録バージョンであるが、
それでも、このバンドのシンフォニーロックとしての素晴らしさは充分に味わえるわけで、優美でクラシカル、
そしてオーケストラのごとき雄大さをもった楽曲は、初めてこのバンドを聴く方にはかなりの衝撃となるだろう。
簡単に言えば、バンド編成でオーケストラのシンフォニーを再現したといっていい。
とくに本作は、彼らのディスコグラフィー中でも最もそれが顕著に出ている作品で、
30分近くにも及ぶ長大な組曲“FAND”での優雅なる高揚感はただごとではない。
エニドをまだ知らないシンフォニックロックファンは、再録版でも十分なので急いで手に入れてほしい。
シンフォニック度・・10 クラシカル度・・9 雄大かつ優雅度・・10 総合・・9 
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TAI PHONG「Windows」
フランスのメロディックプログレバンド、タイ・フォンの2nd。1976年作
このバンドの1st「恐るべき静寂」は、日本の武士をデザインした美しいジャケのインパクトとともに、
絶品の叙情とメロディにあふれた名盤として知られるが、2ndとなる本作もまた素晴らしい。
1曲目の“憧憬と失意の季節”でのダイナミックな叙情へのメロディアスな展開美は、
個人的にはタイ・フォンの曲の中でももっとも好きなものだ。センスあるギターワークとシンセが絡み、
そこに哀愁を感じさせるヴォーカルが重なると、プログレうんぬんというよりも絶品のメロディックロックとして
一般の方にも大いに楽しめるはず。しっとりとしたピアノなど、やわらかで繊細な叙情も胸をうつ。
なお、紙ジャケリマスター盤ではこのジャケがエンボス仕様でさらに美しくなっているのも素晴らしい。
メロディアス度・・9 プログレ度・・7 叙情美度・・9 総合・・8.5
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FOCUS「FOCUS 3」
オランダの名バンド、フォーカスの3rd。1972年作
クラシックの素養をもつオルガン&フルート奏者タイス・ファン・レアーの作曲能力と
ジャズとロックのテクニックを兼ね揃えた名ギタリスト、ヤン・アッカーマンのセンスが合わさり
奇跡的な均衡をなしながら、クラシカルかつ躍動感のあるサウンドを作り続けたこのバンド。
本作は、アッカーマンのメロディアスなギターが光るキャッチーな名曲“SYLVIA”をはじめ、
たおやかな叙情で聴かせる“FOCUS V”、クラシカルとジャジーな要素が見事に融合した
大曲“ANSWERS? QUESTIONS! QUESTIONS? ANSWERS!”、“ANONYMUS U”など、聴きどころが多く、
67分間濃密な演奏がたっぷり楽しめる。タイスのピアノ、オルガン&フルートが美しい小曲も、
効果的に導入され、全体的に格調のあるクラシカルでメロディアスなアルバムとなっている。
一般的には2nd「MOVING WAVES」が名盤とされているが、内容の濃さでは本作が最高だろう。
メロディアス度・・8 クラシカル度・・8 熱き演奏度・・9 総合・・8.5
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KAIPA「Inget Nytt Under Solen」
スウェーデンのプログレバンド、カイパの2nd。1976年作
21分の組曲を含む本作の完成度はバンドの最高傑作というにふさわしいものだ。
北欧らしい土着的なメロディに薄暗い叙情性を感じさせるメロウなサウンドは、
いくぶんの野暮ったさとともに、どこか我々日本人の琴線に触れるような温かみがある。
そしてロイネ・ストルトの奏でるギターフレーズは、組曲の盛り上がりとともに泣きの旋律を響かせる。
70年代の北欧のイメージを決定付けた一枚。すべての叙情派プログレファンに聴いてもらいたい。
メロディック度・・8 メロウな叙情度・・9 北欧度・・10 総合・・8.5
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ANYONE'S DAUGHTERPiktors Verwandlungen
ドイツのシンフォニックロックバンド、エニワンズ・ドウターの3rd。1981年作
「ピクトルの変身」のタイトルで知られる、ヘルマン・ヘッセの詩をモチーフにした作品で
ライブ録音ながらも、その抜群の演奏と叙情美で、本作はバンドの最高傑作ともされている。
イントロからもう、泣きのギターとシンセが合わさった、まさにドイツのロマンが集約されたような
シンフォニックサウンドが炸裂。曲間にドイツ語によるヘッセの詩の朗読を挟みつつ
その見事なメロディセンスと演奏力で、何度も盛り上がりを迎えながら組曲は進行してゆく。
ドラマーをはじめ、ギターもシンセも、ライブ録音とは思えない巧みな演奏がまったく素晴らしく、
リマスター盤ではさらに音質もダイナミックになっている。ボーナスにはこの組曲の貴重なデモ音源を収録。
美しいジャケも含めて、ドイツのみならず欧州シンフォニックの語り継ぐべき名盤である。
シンフォニック度・・8 メロディアス度・・9 ロマン度・・10 総合・・9
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OUTER LIMITS「ペール・ブルーの情景」
日本のシンフォニックロックバンド、アウター・リミッツの3rd。1987年作
ヴァイオリン入りの本格シンフォニックロックバンドとして、フランスなどでもかなりの人気を博したバンド。
前作「少年の不思議な角笛」の方がトータルコンセプト作としての人気があるようだが、
自分としては、このアルバムの旧B面を全てついやした大曲“The Scene of Pale Blue”の
ロマンティシズムに強く惹かれた。クラシカルなヴァイオリンとシンセが優雅に絡まり、
ゆるやかに盛り上がっていく様はまさに感動的だ。まだアウター未聴の方もぜひ聴いて欲しい。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 ロマンティック度・・9 総合・・8
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SHADOW GALLERY
アメリカのプログレメタルバンド、シャドウ・ギャラリーの1st。1992年作
DREAM THEATERの名作「IMAGES AND WORDS」と同時期に出たこの作品は、
私にとってプログレッシブロックへの入り口を開いてくれた思い出の作品だ。
星空の回廊に舞い降りるイカルスという幻想的なこのジャケにまず想像が膨らむ。
やわらかなメロディと美しいシンセで聴かせる大曲は、ロマンの香りに満ちていて
その繊細な叙情性にうっとりとなる。本作ではドラムが打ち込みであることもあって、
メタリックな硬質感は薄く、むしろプログレ/シンフォニックロックとして鑑賞できる。
ラストの大曲“The Queen of the City of Ice”の幻想的な美しさは筆舌に尽くしがたい。
シンフォニック度・・8 ドラマティック度・・9 幻想度・・9 総合・・8.5
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ANGLAGARD「Hybris」
スウェーデンのプログレバンド、アングラガルドの1st。1992年作
当時「ザ・シンフォニック組曲」という邦題で店頭に並んでいた本作を聴いたときには衝撃を受けたものだ。
クリムゾン的な緊張感に北欧の土着メロディを加え、そこに鳴り響くメロトロン、フルートと
好事家にはたまらないサウンドで、北欧の薄暗い森を思わせる神秘的な雰囲気も素晴らしい。
10分台の曲が3曲もあるという大作志向にもしびれたし、ANEKDOTENのヘヴィネスに比べると
こちらはずっとトラディショナルで、メロディに素朴な土の香りが感じられるのも魅力的だ。
バンドはこの後2nd「Epiloge」、ライブ盤「Buried ALive」を発表後にいったん解散する。
彼らの残した2枚のアルバムは、これからも北欧プログレの遺産として語り継がれるだろう。
シンフォニック度・・8 メロトロン度・・9 北欧度・・10 総合・・9
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DEVIL DOLL「Sacrilegium」
スロヴェニア出身のシアトリカル・ゴシックバンド、デヴィル・ドールの3rd。1992年作
最高傑作ともいうべき暗黒の異色作。とにかく、本作「宗教冒涜」を最初に聴いたときの衝撃というのは大変なものだった。
鬼才Mr.Doctorの描き出す豊穣な闇と美しき狂気…一歩踏み込んだら二度とは抜け出せないような
妖しく耽美なその世界。荘厳なチャーチオルガンと混声コーラスで幕を開け、もの悲しいピアノをバックに
老婆のようなしわがれ声から甲高い絶叫まで声を使い分けるヴォーカルが暗闇のオペラを語り上げてゆく。
クラシカルな優雅さとゴシックホラー的な漆黒の芸術性が合わさった異常ともいうべき全1曲の長大な構成。
もはや演劇か映画か、ともいうべき濃密なドラマ性を有したその音に、衝撃を受けないものはいまい。
アヴァンギャルドな感性を解するものであるほど、この前代未聞の音楽芸術に引き込まれるはずだ。
クラシカル度・・8 暗黒オペラ度・・9 シアトリカル度・・10 総合・・9
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PENDRAGONThe Window of Life
イギリスのシンフォニックロックバンド、ペンドラゴンの4th。1993年作
前作「WORLD」でのメロディックかつキャッチーなシンフォニック路線をそのまま引き継いだ作品で、
美しいシンセワークに、ニック・バレットの味わいのあるヴォーカルと泣きのギターとともに描かれる
ロマンあふれる世界観はやはり素晴らしい。シンフォニックロックとしての優美な躍動感と繊細なドラマ性を同居させ、
なおかつ明快でシンプルな聴き心地を保つバランス感覚こそが、のちのネオ・プログレブームのひとつの指針ともなっただろう。
10分、14分という大曲を構築する力量も含めて、バンドとしてのキャリアの充実が窺える傑作に仕上がっている。
メロディック度・・8 ドラマティック度・・8 幻想とロマン度・・9 総合・・8.5
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ROINE STOLT「The Flower King」
The Flower Kingsを率いるロイネ・ストルト、その原点が1994年に発表したこのソロ名義のアルバムである。
かつてのKAIPAを愛していた自分にとっては、ロイネがシンフォニックロックへと帰って来たことが嬉しかったし、
それだけにこのアルバムの素晴らしさには当時いたく感激したものだ。とくに1曲めのタイトル曲の
泣きのギターフレーズとキャッチーなヴォーカルメロディは、この後のフラキンへの橋渡しをするような名曲である。
全体的にはプログレというよりはメロデックなロックという趣ではあるが、20分の大曲などには
後の作品につながる大作志向もあり、ともかく、ここに花王が誕生したという歴史的意義も大きな作品である。
メロディアス度・・9 プログレ度・・7 ロイネのギター度・・9 総合・・8.5
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