テクニカル系プログレ& メタルフュージョン特集



テクニカルであるということは、プログレッシブロックにおける知的さ、あるいは高度な構築性を象徴する一面であり、
古くは、KING CRIMSONやYES、EL&Pなどが、変則リズムを含めた複雑な楽曲構造によりそれを示して見せた。
続いて、ジャズ的な優雅さを取り入れた、SOFT MACHINE、CARAVANをはじめとしたバンドの登場により、
いわゆるカンタベリーミュージックの台頭とともに、プログレにおけるジャズロックバンドの数も増えてゆく。

90年代に入ると、DREAM THEATERの登場により、メタルにおけるプログレッシブ化の波が大きく動きだし、
それによるテクニカルメタル時代の到来と、今度はリスナーの側においての知的音楽への嗜好が広まってゆき、
やがては、アーティスト、リスナーともどもの、より細分化されたマニアック化をうながすことになった。

そうして、テクニカルなプログレが誕生してから40年、テクニカルなメタルが普遍化されて20年あまり、
リズムや楽曲構造における、高度でテクニカルなアプローチをしているバンドは続々と現れており、ジャズやクラシック、
フュージョンなどの要素を取り入れながら、独自の感性とセンスでディープな音楽リスナーたる我々を楽しませてくれている。

ここではとくに、テクニカルであることを軽妙かつ優雅なセンスと融合させたバンドを集めてみた。
また、ProgMetalのリスナーが聴くような、いわゆる「メタルフュージョン系」バンドの中からも、
プログレファンに聴けそうなものを選んだので、この手の好事家諸兄の参考になれば幸いである。

                                           緑川 とうせい


◆アメリカのテクニカル系

MASTERMIND「Excelsior!」
アメリカのプログレバンド、マスターマインドの5th。1998年作
MIDIギターを使いこなす、ベレンズ兄弟のハードシンフォニックサウンドは、
初期のELP風味から脱却し、Key奏者として新たにイェンス・ヨハンソンを迎えた本作では
テクニカルなインタープレイとジャズロックばりの軽やかなアンサンブルが際立った。
手数の多いドラムに乗るギターとシンセによる重なりは、サウンドにより厚みを与え、
初期のプログレヲタク的な質感を破り、ドラマティックなインストを展開させている。バンドはこの後女性Voを迎え、
再び方向性の模索を始めるが、アルバムとしての勢いと明確なスタイルの点では本作が最高傑作だろう。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・8 プログレ度・・8 総合・・8
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A Triggering Myth「The Sins of Our Saviours」
アメリカのプログレバンド、ア・トリガリング・ミスの4th。1998年作
冷徹なるチェンバー・シンフォニックロックともいうべきこのバンドのサウンドは今作も変わらず、
クラシカルなキーボードの音色には、メロディアスでありながらも冷たくシリアスな質感がある。
インスト中心でありながら、音の中にある緊張感はときに重厚な空間を描き出し、
決して攻撃的ではないが、ピアノの切迫した音色には美しさと同時に鋭利な硬質感を内包している。
DEUS EX MACHINAのVoが参加しての歌入り曲では、イタリアのAREAのようなジャズロック色もある。
シンフォニック度・・7 プログレ度・・8 クール度・・9 総合・・8
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HAPPY THE MAN「THE MUSE AWAKENS」
アメリカ伝説のテクニカルシンフォバンド、ハッピー・ザ・マンの2004年作
70年代に3枚の傑作アルバムを残して解散、キット・ワトキンスがCAMELに引き抜かれたことは有名。
25年ぶりとなるこの復活作、これがびっくりするくらいに「あの」ハッピーザマンである。
軽やかな変拍子に耳に馴染むメロディを載せ、たたみかけるように展開してゆく様は
まさに高密度なテクニカル・シンフォニックロックというに相応しい。
サウンド的にもワトキンス不在をまったく感じさせない。時代を超えて甦った、まさにハピマン節全開の傑作だ。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・8 ハピマン度・・10 総合・・8.5
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FROGG CAFE「Fortunate Observer of Time」
アメリカのプログレバンド、フロッグ・カフェの3rd。2005年作
ジャズロック的なリズムの上を伸びやかなヴァイオリンの音色が舞い、
フルートやマリンバなどもやわらかに彩りを添える。マイルドな演奏でありながら、
リズムや展開などにはひねたアレンジがあるのがチェンバーロック的な香りもする。
軽やかなアレンジセンスと適度に肩の力が抜けた大人のプログレといった感じで、
メロディアスなフュージョンとしてもテクニカルなプログレ・ジャズロックとしても楽しめる。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 なにげにテクニカル度・・8 総合・・8
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RING OF MYTH「WEEDS」
アメリカのシンフォニックロックバンド、リング・オプ・ミスの2nd。2005年作
YES風味もあった前作もかなりの傑作だったが、今作ではテクニカルな硬質性を強めた
スタイルできた。8分、9分という長曲を軸に、センスある展開力と演奏力で聴かせる。
もちろんキャッチーなメロディも随所に混ぜているので、複雑であっても聴き疲れはしない。
とくにリズム面での流れるような変化は見事で、変態ちっくなノリをさらりと混ぜこんでいてにやりとする。
偏屈さとセンスある構築性、そしてメロディが絶妙に組み合わさった、高品質なアルバムだ。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・8 変態度・・8 総合・・8
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THE UNDERGROUND RAILROAD「The Origin Consciousness」
アメリカのシンフォニックロックバンド、アンダーグラウンド・レイルロードの2nd。2005年作
A TRIGGERING MYTHSALEM HILLなどとともにアメリカの現在形シンフォニックシーンの代表。
オールドプログレ的質感に、シリアスさと硬質な感触を携えたサウンドは
ときにYESばりにメロディアスでありながら、どこかひねくれたアヴァンギャルドなものも感じさせる。
演奏力、構築力という点では上記したバンド中でも最高レベルにあり、
爽快なメロディにはクラシカルな部分を含みつつ、ジャズロックばりのテクニックも持ち合わせている。
まさに現代形のシンフォニックロックサウンド。インスト中心ながらとても聴かせてくれる。
メロディアス度・・8 プログレ度・・8 硬質度・・8 総合・・8
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Oblivion Sun
アメリカのプログレバンド、オブリビオン・サンの2007年作
2004年に復活したHAPPY THE MANのメンバー二人を含むバンドで、
サウンドは、ほぼハピマンの新作といってよい。軽やかなリズムの上をきらびやかなシンセとギターが絡み、
ジャズロック/フュージョン的な質感で聴かせるシンフォニックロック。テクニカルなインスト曲と、
歌入りのキャッチーな曲のバランスがよく、聴き疲れせずに楽しめる。ハピマンファンはまず必聴。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・7 ハピマン度・・8 総合・・8
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SYZYGY「Realms of Eternity」
アメリカのテクニカルプログレバンド、シジィギーの2009年作
前作はHAPPY THE MANあたりを思わせるインスト主体のテクニカルな好作であったが、
本作でもシンセとギターが絡み、しっかりとメロディアスさのあるプログレに仕上がっている。
のっけから10分の大曲で始まると、一聴して音のスケール感が増していて、
MAGELLANなどにも通じるシンフォニックな要素と抜けのいいヴォーカルメロディが印象的だ。
“The Sea”と題された8パートに分かれた28分の組曲は、アコースティカルな叙情をまぶしつつ、
ゆるやかに盛り上げるシンフォニックなサウンドで、随所に光るテクニカルなアンサンブルもさすが。
メロディアス度・・8 シンフォニック度・・8 テクニカル度・・8 総合・・8
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Cerebus Effect「Acts of Deception」
アメリカのテクニカル・プログレバンド、セレバス・エフェクトの2005年作
目まぐるしいテクニカルなリズムの変態プログレ。せわしない展開の中にあっても、
メロディがしっかりと感じられて、けっしてメタリックにならないというのが特徴。
変態的なリズム構造とシンセのシンフォニックな美しさとが巧みに組み合わさっている点では、
Leger De Mainあたりを思い出させる部分もあるが、こちらの方がより混沌とした音だ。
もちろん変態プログレメタルファンにも勧められるが、アヴァンギャルドなテクニカルロックでありながら、
硬質さよりも時代的なプログレ精神が前に出ているのが面白い。KeyとDrはこの後、Deluge Granderを結成。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・8 変態度・・9 総合・・8
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Deluge Grander「August in the Urals」
アメリカのプログレバンド、デリュージ・グランダーの2006年作
メロウでありながら涼しげな感触は、アメリカというよりもむしろ北欧のバンドを思わせる。
と、思っていると、どことなくヒネた曲展開はGENTLE GIANTあたりからの影響も感じさせ、
メロディアスなのだが曲調にはミステリアスな風味が加わって、一筋縄ではいかない。
A Triggering Myth + HAPPY THE MANというマニアックなたとえが当てはまるかはともかく、
ようするにクールなんだが、分裂ぎみにはじけているということで。そして演奏の質も高い。
25分の大曲から始まって、15、12、8、7と徐々に曲が短くなる構成もひねくれている(笑)
メロディアス度・・7 プログレ度・・8 ひねくれ度・・8 総合・・8
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Birds and Buildings「Bantam to Behemoth」
アメリカのプログレバンド、バーズ・アンド・ビルディングスの2008年作
Deluge GlanderのKeyによる別バンドで、浮遊感のある軽妙なプログレ作。
テクニカルなリズムの上をメロトロンが鳴り響くクリムゾン風味とともに
フリーキーなサックスが加わると、軽快なジャズロック風にもなる。
9分以上が5曲と長曲揃いだが、雰囲気で聴かせられる器の大きさが感じられ、
一筋縄でいかないサウンドながら、その演奏に思わず引き込まれてしまう。メロトロン入りの変態的ジャズロックでもあり、
サックス入りのヘヴィシンフォでもあり、これをMAGMA+KING CRIMSONといっていいものか。ともかくの力作。
シンフォニック度・・7 ジャズロック度・・8 プログレ度・・8 総合・・8
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LINDSEY BOULLT
「Composition」
アメリカのギタリスト、リンゼイ・ボルトの2007年作
MAHAVISHNU ORCHESTRAのジェリー・グッドマン、スチュアート・ハム、デレク・シェリニアンなどが参加、
メタリックな硬質感とフュージョン的な優雅さを合わせたインストサウンドで、PLANET Xに通じる聴き心地。
随所に12弦ギターなどを含んだアコースティックな要素も含んだ見事なギターワークに、
手数の多いドラムとどっしりとしたベースの存在感とともに、骨太のアンサンブルを描いてゆく。
ヴァイオリンが鳴り響くジャズロック風味や、エスニックなメロディを取り入れた感触もあって、
オールインストながら難解さはなくわりと耳に入りやすい。インストのプログレ・フュージョンが好きな方へ。
メロディック度・・8 テクニカル度・・8 優雅度・・8 総合・・7.5
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Steam Theory
「Enduring Delirium」
アメリカのミュージシャン、Jason Denkevitzによるソロユニット、スチーム・セオリーの2010年作
いかにも自主制作らしい、簡素な紙ジャケ&CD-R仕様の作品であるが、内容の方はこれがなかなか悪くない。
ゆったりとしたランドスケープ的なギターサウンドから、リズムが加わると、軽やかなフュージョンプログレになり、
テクニカルなリズムチェンジを含みながら、メロディックなフレーズを奏でるギタープレイは巧みなセンスが光る。
うっすらとしたシンセアレンジも含めて、HAPPY THE MANのような聴き心地もあって、プログレリスナーならば普通に楽しめる。
アコースティックな繊細な優雅さも含めて、全体的にもメロディックな叙情が前に出ているので、オールインストながらも
優美なテクニカル系シンフォプログレとして鑑賞できる。自主制作もあなどれないと思わせる高品質な作品だ。
メロディック度・・8 テクニカル度・・7 叙情度・・8 総合・・8
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4front
Malice in Wonderland
アメリカのプログレ・フュージョンバンド、フォーフロントの2012年作
復活したHAPPY THE MANにも参加していたメンバーによるバンドで、
ドラム、ベース、ギターというトリオ編成によるテクニカルなインストサウンド。
HTMに比べるとフュージョン/ジャズロック色がいくぶん強いが、随所にシンセを含んだ
シンフォニックな要素もあって、メロディアスさが前に出ることで硬質感を包み込んでいる。
PLANET Xあたりを思わせるハードフュージョン色を含んだ軽妙なアンサンブルで聴かせる好作。
メロディック度・・7 テクニカル度・・8 硬質度・・8 総合・・8
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Malcolm Smith
「We Were Here」
アメリカのミュージシャン、マルコム・スミスの2014年作
METAPHORのギタリストとしても活躍するミュージシャンで、本作はAnglagardやNECROMONKEYなどに参加する
マティアス・オルソンをドラムに迎えている。きらびやかなシンセアレンジによるモダンでクールな感触と、
Gentle GiantEcholynを思わせる軽妙な屈折感を同居させたサウンドで、インスト主体であるが知的な構築力と
うるさすぎないサウンドセンスが素晴らしい。随所に爽快なメロディを聴かせるギターがアメリカ的で、
ぱっと聴きには優雅なフュージョン風でもあるのだが、音数以上に作り込まれたアーティスティックな感性が見え隠れする。
オルガンやメロトロンの音色を使ったシンセも、プログレらしさを演出する確信犯的なアレンジだろう。
13分を超える組曲ナンバーも、HAPPY THE MANにも通じる軽快なテクニカル性と構築センスが絶妙だ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 優雅で軽妙度・・9 総合・・8
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PETER FERNANDES
 「Q.E.D.」
アメリカのシンセ奏者、ピーター・フェルナンデスのソロ。2014年作
ギターにリチャード・ハレビーク、ブレット・ガースド、ベースにリック・フィエラブラッチ、ジミ・ジョンソン
ドラムにはヴァージル・ドナティ、シェーン・ガラース、ジョエル・ローゼンブラット、ゲイリー・ハズバンド
そしてシンセにデレク・シェリニアンといった名うてのメンバー参加した、軽妙なフュージョンロックサウンド。
オールインストながら、ソロパートでは各メンバーがそれぞれにテクニカルなプレイを披露していて、
メロディックな優雅さとテクニカル性のバランスがとれた聴き心地。PLANET Xなどに比べると
ジャズロック的なやわらかな感触で、カンタベリー好きのプログレリスナーなどにも楽しめる好作品だ。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・8 フュージョンロック度・・9 総合・・8
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Blue Shift 「Levels of Undo」
アメリカのプログレバンド、ブルー・シフトの2015年作
1998年にアルハムを残して消えたYesタイプのバンド、じつに17年ぶりとなる復活作。
軽妙で優雅なアンサンブルはそのままに、女性ヴォーカルの歌声が加わった美しさと、
変則リズムを多用したHENRY COWばりの屈折感が合わさったサウンドで、なかなかよい感じである。
一聴して、Leger De Mainあたりを思い出させるような、唐突な展開を含むテクニカルな構築力と、
ジャズロック的でもある軽やかな演奏が、優雅なスリリング性というものを描いている。
美しいシンセワークに随所にメロウなギターも聴かせる、シンフォニックロックとしての魅力もあり、
ブランクを感じさせないクオリティの高い力作に仕上がっている。過去作を知らない方もぜひ。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 軽妙度・・9 総合・・8
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Nerve Institute
「Fictions」
アメリカのアヴァン・プログレ、ナーヴ・インスティチュートの2015年作
マルチミュージシャン、マイケル・S・ジャッジによるソロユニットで、本作がすでに3作目となる。
ヴォーカルも含めてすべての楽器を一人で演奏、軽妙なアンサンブルに屈折感のある薄暗さと
フランク・ザッパなどを思わせるアヴァンギャルドなセンスを盛り込んだ、一筋縄ではいかない作風。
Deluge Granderあたりに通じるミステリアスな空気感に、適度にモダンなポップ感触が加わった聴き心地は
ディープなプログレ者の耳を大いに楽しませてくれる。とぼけた味わいと倦怠の翳りが合わさった異色の力作。
White Willowのヤコブ・ホルム・ルポが、ギターとシンセで1曲ずつゲスト参加している。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 屈折度・・8 総合・・8
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Purposeful Porpoise
「The Water Games」
アメリカのプログレユニット、パーパスフル・ポーバスの2015年作
ギター&ヴォーカルのアレックス・コラを中心に、シンセにはPLANET Xのデレク・シェリニアン
ドラムにはフランク・ザッパをはじめ、多くのアーティストの作品に参加した、ヴィニー・カリウタ、
ベースにはU-Z Projectにも参加した、リック・フィエラブラッチ、ヴァイオリンにジニー・ルークという顔ぶれ。
CD2枚組、のっけから20分を超える大曲で、軽やかなアンサンブルでプログレフュージョン的なテクニカルさと
女性ヴォーカルにヴァイオリンの音色が花を添える。The Tangentあたりに通じる優雅な構築美に、
シンフォニックなジャズロック風味と軽妙なメタルフュージョン要素が融合したという感触で、
名うてのメンバーによる演奏そのものがキモになっている分、ドラマティックな高揚感というのは薄いのだが、
Disc2ではKANSASを思わせるキャッチーなナンバーもあって、全体的にもメロディックな力作と言える。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・8 演奏度・・9 総合・・8
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Thank You Scientist
「Stranger Heads Prevail」
アメリカのプログレ・モダンロックバンド、サンク・ユー・サイエンティストの2016年作
サックス、トランペット、ヴァイオリン奏者を含む編成で、前作もテクニカルな濃密作であったが、
2作目となる本作も圧巻の仕上がりだ。QUEENのような歌もの的な小曲で始まったかと思えば、
アヴァンギャルドなセンスを含んだテクニカル性に、ヴァイオリンやサックス、トランペットなどが鳴り響く、
ブラスロック的なアレンジと、Coheed and Cambriaあたりに通じるモダンでキャッチーな感触が交差する。
随所にメタリックなハードさや、ポップな歌もの、ジャズロック調、カオティックロックなど、多様な顔を覗かせながら、
結果としてメロディアスなテクニカルロックになっているという。全体的に濃密ながらも聴きやすい力作である。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・8 アヴァンギャル度・・7 総合・・8
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AN ENDLESS SPORADIC「Magic Machine」
アメリカのプログレバンド、アン・エンドレス・スポラディックの2016年作
マルチプレイヤー、ザック・カミンズを中心に、ベースにはTHE FLOWER KINGSのヨナス・レインゴールドが参加、
Djent的でもあるモダンなテクニカル性と、オルガンなどのシンセを含んだ往年のプログレ感触が融合したサウンド。
メロディックなギターフレーズに適度なヘヴィさを含んだProgMetal風味も覗かせ、ストリングスによる優雅なアレンジなど、
様々な要素をセンスよくまぶし、軽妙に仕上げたという聴き心地。オールインストであるが、起伏に富んだ展開力と
先の読めないスリリングな空気感も含めて、最後まで飽きさせない。とぼけた味わいの洒落っ気を巧みに盛り込みながら、
シンフォニック美しさも失っていない。まさにハイブリッドなモダンプログレである。ロイネ・ストルト、ジョーダン・ルーデスがゲスト参加。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 優雅で軽妙度・・9 総合・・8
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◆カナダのテクニカル系

NATHAN MAHL「HERETIK VOLUME V」
カナダのテクニカル弾き倒しシンフォプログレバンド、ネイサン・マールの5作目。2002年作
「HERETIK」シリーズ三部作の完結編は全一曲54分という気合の入った構成となった。
今回もほぼオールインストで、変拍子リズム込みの軽快でテクニカルな演奏を全編で堪能出来る。
HAPPY THE MANにも通じる切れ味にELPばりに弾きまくりのキーボードによる楽曲は
あきれる程にコテコテでありながらも、やはりこの手のプログレ者には受けることだろう。
ちゃんと聴き込む時間と体力があるリスナーにとっては、テクニカルシンフォとしては必聴クラス。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・8 コッテリ50分1曲度・・10 総合・・8
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Spaced Out「Evolution」
カナダのテクニカルプログレバンド、スペイスト・アウトの5th。2008年作
テクニカルに聴かせるハードフュージョン風のジャズロックサウンドで、
PLANET Xなどにも通じる技巧的なセンスを聴かせるこのバンド。
超絶なタッピングベースに、ザクザクとしたメタリックなギター、
基本的には変則リズムとキメの連続による技巧派のスタイルながら、
ギターのフレーズやシンセワークにはメロディアスな要素もあり、案外聴きやすい。
過去のアルバムよりも音の迫力が増していて、ミステリアスなスケール感も出てきた。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・8 メタリックフュージョン度・・8 総合・・8
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Karcius 「Episodes」
カナダのプログレ・ジャズロック、カルシウスの2008年作
ギター、ベース、ドラム、シンセの4人編成で、美しいピアノ&シンセにメロディックなギタートーンを中心にした、
優雅なアンサンブルを聴かせるインストサウンド。適度なテクニカル性と即興的な緊張感も覗かせつつ、
技巧的になりすぎで、あくまでメロディ重視であるところには好感が持てる。どっしりとボトムを支えるベースの存在感や、
メロウなフレーズとロック的な荒々しさを兼ねそろえたギターのセンスも見事。3パートに分けられた30分超の組曲も、
メリハリある展開でインストながらも決して飽きさせない。後半の楽曲はオマケ程度に感じるが前半の組曲だけでも必聴。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 テクニカル度・・8 総合・・8
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Mahogany Frog「DO5」
カナダのプログレバンド、マホガニー・フロッグの2008年作
ギター&シンセ奏者、ベース、ドラム、トランペット奏者という4人編成で、わりとハードなギター乗せた
ジャズロック風味の軽快なアンサンブルに、オルガンやミニムーグといったヴィンテージなシンセが合わさった、
インスト・プログレサウンド。テクニカルであっても、メロディのフックがあるのでプログレとしても聴きやすく、
適度にヘヴィ寄りのギターがサウンドに厚みを持たせていて、インストながらもどっしりとした感触である。
シンセが前に出るパートではシンフォニック系プログレの感触もあって、そこにトランペットの音色が加わると、
ぐっとドラマティックな雰囲気になる。ドカドカとしたドラムも含めて、テクニカルプログレとしてのアッパーなノリは
アメリカのMASTERMINDにも通じるものもある。ヘヴィなプログレ、ハードなジャズロックとしても楽しめる力作だ。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 わりとヘヴィめ度・・8 総合・・8
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The Rebel Wheel「We Are in the Time of Evil Clocks」
カナダのプログレバンド、レベル・ホエールの2010年作
女性サックス奏者を含む4人組で、テクニカルでヒネくれ気味のインストをメインにした
濃密なプログレをやっている。変則リズムに乗るサックスの音色などは変態系の
チェンバーロック的でもあるのだが、ときにキャッチーなヴォーカルが入ってくると、
GENTLE GIANTのようなとぼけた味わいの感触になる。かと思えばジャズ的な優雅さやしっとりと聴かせる
女性ヴォーカルパートなどもあって、なかなか一筋縄ではいかない。近年でいうとDeluge Granderのような
得体の知れない壮大なビジョンも感じさせつつ、30分を超える組曲などは圧巻だ。マイスペで試聴可能。
メロディアス度・・7 プログレ度・・8 ヒネくれ度・・8 総合・・8
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Dean Watson 「Imposing Elements」
カナダのマルチプレイヤー、ディーン・ワトソンの2012年作
多重シンセによるメロディと硬質感のあるリズムで構築される、オールインストのプログレサウンド。
変則リズムに乗せるテクニカルなギターフレーズとシンセの絡み方はメタルフュージョン的でもあるが、
HAPPY THE MANなどにも通じる屈折感やシンフォ系に通じるメロディアス性も含んでいて、
バランスのとれた聴きやすさがある。ときにProgMetal風味のハードさとともに、前作以上に重厚な感触で、
ジャズロック的な優雅さと知的な冷徹さを同居させた、クオリティの高い作品に仕上がっている。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 優雅な屈折度・・8 総合・・8
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HALF PAST FOUR
「Good Things」
カナダのプログレバンド、ハーフ・パスト・フォーの2012年作
東欧出身のギターとベース、女性Voにシンセを含む5人編成で、
軽やかなアンサンブルの中にどこか屈折したテクニカル性と洒落っ気を含んだサウンド。
カンタベリー的な優雅なシンセアレンジにときにハードめのギターが合わさり、
伸びやかな女性ヴォーカルの歌声とともに、軽妙な味わいを聴かせてくれる。
「女性Vo版エコリン」というような感触もあり、キャッチーな耳心地の良さの中に
玄人好みの演奏とひねくれ具合が見え隠れする好作品。
メロディアス度・・8 プログレ度・・8 ひねくれ度・・7 総合・・8
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Druckfarben
「Second Sound」
カナダのプログレバンド、ドラックファーベンの2014年作
きらびやかなシンセワークを含んだHAPPY THE MANあたりを思わせるテクニカルなアンサンブルに、
TALAS、CONEY HATCHなどで活躍したフィル・ナーロの枯れた味わいのヴォーカルを乗せた爽快なサウンド。、
軽妙な聴き心地はRUSHをシンフォ化したような感じでもあり、プログレハード的でもあるキャッチーなコーラスに、
ジャズロックやクラシカルなテイストを含んだ優雅なメロディック性も素晴らしい。伸びやかなギターワークと、
ムーグなどのプログレ的な音色のシンセも心地よく、北米らしい抜けの良いプログレ感を楽しめる。
ラストは18分を超える大曲で、ヴァイオリンが鳴り響きドラマティックな展開で描かれる、メロディックプログレの力作。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 優雅で軽妙度・・9 総合・・8
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◆イタリアのテクニカル系

DEUS EX MACHINA「ciNque」
イタリアのテクニカルプログレ・ジャズロックバンド、デウス・エクス・マキーナの5th。2002年作。
好事家の間では「これぞイタリア!」といった感じの変態的でテクニカルな演奏が愛されているこのバンド。
演奏には今や堂々たる大人の余裕が感じられ、そんな中にも偏屈かつひねくれたリズム
曲展開などには相変わらずのユーモアがあり、聴いていてなかなか楽しい。
前作あたりより、突進力がやや抑え気味目になっていることもあり、かえって聴きやすくなっている。
プログレ的なシンセに、ヴァイオリン、そしてイタリア語の熱い歌唱と、とても濃いが、ときおりふっと現れる哀愁もまたイタリア的か。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・8 イタリア度・・9 総合・・8 
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D.F.A.「4TH」
イタリアのプログレバンド、DFAの4th。2008年作
1stの頃から、テクニカルなセンスあるサウンドをやっていたこのバンドだが今作では見事な傑作を作り上げた。
軽やかなフュージョン的な質感を聴かせつつ、たおやかなフルートやプログレ的なハモンドなどのシンセが鳴り響き、
テクニカルなギターに絡むと、日本のKENSOなどを思わせる雰囲気もある。10分以上の大曲が3曲もあるが、
単なるテクニック大会に終わらず、しっかりとした構成力とメロディアスさが備わっているので聴き疲れしない。
ラスト曲は女性ヴォーカル入りでシンフォニックなトラッド風味が耳に優しい。テクニカルなプログレ風味とジャズロック風味のバランスがとれた傑作。
メロディアス度・・8 ジャズロック度・・8 テクニカル度・・9 総合・・8.5
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JETLAG「DELUSIONE OTTICA」
イタリアのテクニカルシンフォバンド、ジェット・ラグの1st。2001年作
バンド名からしてPFMを思い出すが、音の方はそのPFMのテクニカルな部分を全面的に押し出し、
フルートを吹きまくったという印象。たたみかける変拍子たっぷりの見事なアンサンブルに
イタリア的な乗りの良さが加わり、メロディセンスと展開力も備わっていて新人とは到底思えない。
ジャズロック的な押しの部分と、時折引きのパートでの叙情性も見事でキーボードもハイセンス。
DFAあたりより聴きやすく、演奏面でもまったくひけをとっていない。PFM + BANCO + AREA…?イタリア恐るべし。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・9 楽曲・・9 総合・・8.5
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YUGEN 「Death By Water」
イタリアのチェンバー・プログレ、ユーゲンの2016年作
クラシカルでアヴァンギャルドなチェンバープログレとして過去の作品はライブも含めてどれも素晴らしかったが、
スタジオアルバムとしては4作目となる本作も圧巻の仕上がりだ。たたみかける変則リズムの上に、
優雅なマリンバやサックス、トロンボーンなどが重なり、フリーキーな音色たちがときに合わさり、また離れては、
アヴァンギャルドに乱舞する。ギターはわりとハードな音で、楽曲にどっしりとした重厚さを生み出していて、
目まぐるしく変化するリズムと音圧の中で、スリリングこの上ないアンサンブルを耳で追うだけで脳が楽しい。
ザッパが本気で高度なチェンバーサウンドを追及したらこうなる…というような、MATS/MORGANも真っ青の迫力である。
コロコロとしたマリンバの響きや美しいピアノ、ときに女性ヴォーカル、スキャットなども加わった繊細さも垣間見せつつ、
優雅なエキセントリック性とシリアスなダークさが絡まり交錯するという、おそるべき芸術性に包まれた傑作だ。
テクニカル度・・9 プログレ度・・8 アヴァンギャル度・・9 総合・・8.5 
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SLIVOVITZ「Hubris」
イタリアのトラッド・ジャズロック、スリボヴィッツの2009年作
サックス、ヴァイオリン、ハーモニカ奏者を含む編成で、軽妙なアンサンブルにサックスが鳴り響き、
女性スキッャトを乗せた、民族色もあるジャズロックを展開。変則リズムを含む屈折した即興性と
唐突感のあるアヴァンギャルド性を覗かせつつ、スリリングな演奏を繰り広げている。
テクニカルなアンサンブルの中に、フォルクローレ的でもある叙情も垣間見せ、
地中海、バルカン、スパニッシュなどのトラッド感触とジプシー的な無国籍感を漂わせた作風だ。
ヴァイオリン弾きまくりの軽快なトラッドナンバーから正統派のジャズロックまで、
確かな演奏力と優雅で知的なセンスで楽しませてくれる、玄人好みの力作だ。
プログレ度・・8 ジャズロック度・・8 トラッ度・・7 総合・・8
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HOMUNCULUS RES 「Limiti All'Eguaglianza Della Parte Con Il Tutto」
イタリアのプログレバンド、ホムンクルス・レスの2013年作
マルチ・ミュージシャンのDario D’Alessandroを中心にしたバンドで、ミニムーグやオルガン、メロトロンといったシンセが鳴り響き
コロコロとした可愛らしさと、アヴァンギャルドな感性をたっぷり含んだ、チェンバー風味のジャズロックというようなサウンド。
アコースティックギターやフルートによるやわらかな優雅さと、プログレ的なムーグシンセ、先の読めない変則リズムが楽しく、
ピッキオ・ダル・ポッツォあたりを思わせる部分もあるが、こちらの方がむしろ耳心地の良い、メロディアス性があるのがポイントで、
ヴォーカル入りのパートはキャッチーですらある。テクニカルではあるが硬質感はなく、MATS/MORGANがガンタベリーをやったらこうなる、
というのが分かりやすいかも。繊細な表現力を有するアヴァン・ジャズロック。YUGENのPaolo"Ske"Bottaがゲスト参加している。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 優雅なエキセントリック度・・9 総合・・8
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PropheXy「Improvviso」
イタリアのプログレバンド、プロフェクシーの2013年作
シンセを含む5人編成で、変拍子まくりのアンサンブルに、イタリア語のヴォーカルを乗せたスタイルで、
やわらかなフルートの音色が鳴り響く叙情性とイタリアらしい混沌とした妖しさに包まれたサウンド。
本作は2012年のライブ音源で、ややこもり気味の音質も含めて、むしろ70年代感を強く感じさせる。
現代版AREADEUS EX MACHINAかというようなアクの強さとテクニカル性に加えて、
アコースティカルな優雅さも含んだ楽曲には、往年のプログレファンもにやりとするだろう。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 イタリア度・・9 総合・・8
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Accordo dei Contrari 「AdC」
イタリアのプログレバンド、アッコルド・ディ・コントラリの2014年作
2006年にデビューしてから本作が3作目となる。ムーグシンセが鳴り響き、ジャズロック風味の軽やかなアンサンブルと
変則リズムを使った屈折感で聴かせるテクニカルプログレ。優雅なエレピの音色などはカンタベリー風であるが、
適度にハードなギターがアッパーなアクセントになっていて、軽妙であるのに濃密という聴き心地が面白い。
曲によってはヴァイオリンやチェロを含んだチェンバーロックの質感もあるが、それはあくまで味付け程度。
オールインストであるが、変拍子入りのテクニカルプログレ、ジャズロックが好きな方なら問答無用で楽しめるだろう。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・9 イタリア度・・7 総合・・8
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Ingranaggi Della Valle 「Warm Spaced Blue」
イタリアのプログレバンド、イングラナッジ・デラ・ヴァッレの2016年作
十字軍遠征をテーマにした個性的な力作であったデビュー作に続く2作目で、本作では「クトゥルー神話」をテーマにしている。
メロトロンやオルガンといったヴィンテージなシンセにフルートの音色、随所に艶やかなヴァイオリンが加わって、
チェンバープログレ的でもあるミステリアスな雰囲気が広がってゆく。メロトロンやピアノをバックに薄暗い叙情を描くところは、
AnekdotenやAnglagardなどの北欧プログレの空気感にも通じるが、タイトで軽妙なドラムを中心にしたアンサンブルには
Arti & Mestieriのようなジャズロック的な優雅さも感じさせる。そして今作では、イタリア語ではなく英語歌詞であるので、
北欧的な翳りと優雅な英国カンタベリー風味、そしてイタリアらしい濃密さが混在したような絶妙なサウンドとなっている。
10分前後の大曲を、緩急自在の展開でスリリングに聴かせるアレンジセンスと、それを支える確かな演奏力も素晴らしい。
メロトロンとヴァイオリンが鳴り響く叙情性に、ヘヴィプログレの濃密さとテクニカルな構築性が融合した見事な傑作である。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・9 構築センス・・9 総合・・8.5
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PROMENADE 「Noi Al Dir Di Noi」
イタリアのプログレ・ジャズロック、プロムナードの2016年作
若手の4人組で、軽やかなピアノにサックスが鳴り響き、変則リズムのテクニカルなアンサンブルで、
華麗なジャズロックサウンドを展開する。技巧的にたたみかけるせわしない曲調ながらも、
優雅なメロディアス性が前に出ているので、決して難解ではなく、イタリアらしい陽性のノリに包まれている。
一方では、イタリア語のヴォーカルを乗せ、ストリングスなども加えた繊細な叙情性はPFMのようでもあり、
やわらかなエレピにサックス、ヴァイオリンを加えたカンタベリー的でもある優美なサウンドを描いてゆく。
1曲目のテクニカルなテンションに圧倒されるが、全体的にはじっくりと味わえる叙情的なジャズロック作品である。
メロディック度・・8 テクニカル度・・9 優雅なジャズロ度・・9 総合・・8
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◆イギリスのテクニカル系

The Tangent「Down and out in Paris and London」
イギリスのプログレバンド、タンジェントの2009年作
CD2枚組だった前作は、シンフォニックと軽やかなジャズロックが融合された最高傑作であったが、
それに続く本作も1曲目から19分という大曲で始まり、スタイリッシュに構築されたモダンさが光る
プログレ/シンフォニックの傑作となった。アンディ・ティリソンの巧みなシンセ、そしてギターワークに、
フルートやサックスなども加わり、しっとりとした繊細さとクールな軽妙さが絶妙に交わるサウンドは
さすがのセンスの良さである。今回はメロディにほの暗い叙情が加わっていて、やわらかな歌で聴かせる
哀愁とともに、いくぶんレトロな空気を感じさせるシンセアレンジも心憎い。やはり質の高い作品だ。
メロディアス度・・8 プログレ度・・8 アレンジセンス・・9 総合・・8
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THIEVES KITCHEN「The Water Road」
イギリスのシンフォニックロックバンド、シーブス・キッチンの2008年作
前作はモダンな雰囲気のテクニカルシンフォという印象だったのだが、
今作ではなんとANGLAGARDのKeyをメンバーに迎えて、幽玄なメロトロンの響きと、
そこに絡むギターフレーズもどこか北欧的な感触で、とても叙情的だ。
女性ヴォーカルの歌唱も、前作よりもしっとりと聴かせるようになった。
のっけから20分の大曲で、テクニカルに展開しつつも、メロトロンやフルートなどによる幽玄な味わいが魅力的。
浮遊感のあるテクニカルシンフォニックにメロトロンをプラスした力作です。
シンフォニック度・・8 メロトロンいいねぇ度・・8 女性Vo度・・7 総合・・8
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HAKEN
「The Mountain」
イギリスのハードプログレバンド、ヘイケンの2013年作
過去2作もかなりの出来であったが、3作目となる本作はやわらかなヴォーカル曲で幕を開け、
美しいシンセワークに導かれて、適度なハードさとともにProgMetal的なテクニカルな構築力と、
キャッチーな軽快さを含んだサウンドが広がってゆく。そのアレンジセンスはやはり抜群だ。
メリハリのあるドラマティックな展開美とコンセプト的な壮大さに包まれたサウンドは、
あくまでメロディアスな聴き心地で、ときにGENTLE GIANTばりの遊び心も含んだ、
素晴らしい仕上がりには脱帽。シンフォニック、プログレ、ProgMetalと、どの耳でも楽しめる傑作。
ドラマティック度・・9 プログレ度・・9 楽曲センス・・9 総合・・8.5
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MASCHINE 「Naturalis」
イギリスのハードプログレバンド、マシーンの2016年作
The Tangentにも参加していたギタリスト、ルーク・マシン率いるバンドの2作目で、新たに加入した女性シンセ奏者による
モダンなシンセワークと巧みなツインギターを乗せた、適度にハードな硬質感と知的な構築性で聴かせるサウンド。
エモーショナルなヴォーカルに女性コーラスを重ねた浮遊感と、テクニカルなギタープレイの対比も含めて、
いわゆるDjent風味のカラフルな技巧性と優雅な叙情性が交差する。オールドなプログレ要素がない分、
メロディックな部分でもあくまでクールな感触で、良い意味で無駄をそぎ落としたスタイリッシュなセンスが光っている。
とてもモダンな作風だが男女声のキャッチーな歌メロが心地よいナンバーもあり、ProgMetal的というよりは、
フュージョン的でもあるアーバンなセンスと軽妙な優雅さが魅力だろう。これぞ新時代のテクニカルプログレだ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 モダン&スタイリッシュ度・・9 総合・・8
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KYROS 「VOX HUMANA」
イギリスのプログレバンド、キロスの2016年作
SYNAESTHESIAのメンバーによる新バンドで、本作はCD2枚に分かれたコンセプト的な大作。
エモーショナルなヴォーカルを乗せ、適度にハードな質感とエレクトロなシンセを加えたモダンなアレンジに、
キャッチーなプログレ風味を融合したサウンド。テクニカルな構築力とモダンでクールなセンスで、
アップデートしたシンフォプログレを聴かせるという点では、FROST*あたりに通じるかもしれない。
メロディックな歌もの感触とプログレらしい技巧的なインストパート、モダンなエモーショナルロック、
それらがほどよくブレンドされ、HAKENなどとも同様に新たな英国プログレの形を提示した力作です。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 クールどモダン度・・9 総合・・8
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◆フランス、スペインのテクニカル系

eclat「Le Cri de la Terre」
フランスのプログレバンド、エクラの2002年作
1998年には来日も果たすなど、コアなリスナーには認知度もあるバンド、
テクニカルなアンサンブルと、巧みなシンセワークによるシンフォニック要素が合わさり
知的な混沌ともいうべき、浮遊感のあるインストプログレを展開している。
一筋縄ではいかないひねくれた質感はいかにもフランス的で、大人の叙情的を聴かせる
メロディアスなギターワークと軽やかなフュージョン・ジャズロック的な聴き安さの中に、
不思議なスケール感をかもしだしている。クラシカルなシンセの入れかたもさりげなく見事だ。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・8 軽やかひねくれ度・・8 総合・・8
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Priam「3 Distances/Irregular Signs」
フランスのプログレバンド、プリアムの1st。1997年作
ギター、シンセ、ベース、ドラムの4人組で、清涼感のあるシンフォニックなフュージョン/ジャズロック
オールインストながらギターの奏でるメロディや美しいシンセのおかげで耳触りがよく、
テクニカルであっても案外聴きやすい。そういう点ではかつてのKENSOあたりに通じるセンスもあり、
モダンなプログレ感覚を嫌味なくさらりと聴かせられる演奏力も見事だ。
中盤の26分の組曲は、繊細なシンフォニックロック風のパートから、
ギターを中心にテクニカルに展開してゆき、見事な構築センスで聴かせてくれる。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・8 構築センス度・・8 総合・・8
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NeBeLNeST「NoVa eXPReSS」
フランスのヘヴィプログレバンド、ネベルネストの2nd。2002年作
マグマを思わせるスペイシーな雰囲気のジャズロック風味と、
クリムゾン的な叙情とヘヴィネスを合わせたようなインストサウンド。
10分を超える曲もあり、鳴り響くメロトロンの響きとともに、ミステリアスな世界観と
テクニカルな演奏とが一体となった、スケールの大きなサウンドを描いている。
クリムゾン好きはもちろん、ANEKDOTENなどのリスナーにも楽しめるだろう。
メロディアス度・・7 プログレ度・・8 壮大度・・8 総合・・8
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SCHERZOO
「01」
フランスのチェンバーロック、スケルズーの2011年作
マルチ・ミュージシャンFrancois Thollotを中心にしたバンドで、サックスがフリーキーに鳴り響き、
クラシカルなピアノを乗せた、テクニカルなアンサンブルで聴かせる、チェンバー・ジャズロック。
程よく即興的なアヴァンギャルド性と、ダークなチェンバー色が合わさった、静と動のメリハリある展開と
知的で空間的な構築力もさすがである。全体的にサックスがフレーズをとるパートが多いので、
チェンバーというよりはやはりジャズロック寄りの感触で、「MAGMAをクリムゾン化」させたという雰囲気もありつつ、
ミステリアスな怪しさという点では、「ジャズロック化したUNIVERS ZERO」という楽しみ方もできるだろう。
6〜8分前後の楽曲を中心に、スリリングな緊張感で描かれるラストの19分におよぶ大曲も圧巻だ。
ドラマティック度・・7 ジャズロック度・・8 チェンバー度・・7 総合・・8
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MICHEL AUMONT
「Le Grant Orchestre Armorigene」
フランスのクラリネット奏者、ミシェル・オーモンの2012年作
ピアノ、ヴァイオリン、チューバ、ヴィエレ・ア・ルー(ハーディ・ガーディ)、ドラムを含む7人編成で、
ブルターニュ地方のトラッドをモチーフにした楽曲を、ジャズオーケストラの編成で演奏。
軽やかなドラムの上に、チューバの低音とヴァイオリンが鳴り響き、優美なピアノの旋律に、
エレクトリック・ヴィエレ・ア・ルーも加わって、素朴なブルターニュの空気感に包まれた
技巧的なジャズロックが楽しめる。土着的なトラッド感触を軽妙に表現するという点では、
FLAIRCKにも通じるスタイルだろう。ジャズ、クラシック、トラッドの要素を絶妙に溶け込ませた傑作だ。
テクニカル度・・9 トラッド・ジャズ度・・8 優雅度・・9 総合・・8.5
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Alco Frisbass

フランスのチェンバー・ジャズロック、アルコ・フリスバスの2015年作
2人のマルチミュージシャンによるユニットで、やわらかなエレピの音色に艶やかなヴァイオリンが絡み、
テクニカルなアンサンブルとともに、ジャズロック的でもある軽妙なチェンバーロックサウンドを展開。
YUGENあたりにも通じるスリリングな雰囲気とクラシカルな優雅さに、エキセントリックなセンスをまぶした
緊張感と軽やかな同居したインストサウンドが楽しめる。オルガンなどを含むプログレ的な質感に
随所にメロウなギターフレーズもまぶし、10分前後の大曲も多いが、巧みな演奏力と構築力で聴かせる。
WHITE WILLOW、YUGEN、MINIMUM VITAL、STORMY SIXなどのメンバーがゲスト参加。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 軽妙度・・8 総合・・8
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Senogul
スペインのプログレバンド、セノガルの2007年作
ブックレットを見ると、基本メンバーはギターにベース、シンセなどの5人だが、
そこにトランペットや各種ホーン、パイプ、アコーディオンなどが多様に加わってくる。
たおやかなピアノでしっとりと聴かせながらも、その実、曲展開はかなり凝っていて
先の読めないような雰囲気がある。クラシカルな美しさを基本にしつつ、ときにタンゴ調になったり、
ジャズやファンク色あればバグパイプが鳴り出して、またチェンバロが優雅に奏でられたりと、とりとめがないのだが、
そこに不思議と整合感があるのである。決してうるさい音ではないのに楽曲は複雑という、クールでハイセンスなシンフォ作品だ。
シンフォニック度・・7 クラシカル度・・8 民族度もあり度・・8 総合・・8
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GLAZZ「CIRQUELECTRIC」
スペインのプログレ・ジャズロック、グラッツの2011年作
アンダルシア地方のバンドで、基本はギター、ベース、ドラムというトリオ編成で、
ときにムーグを含むプログレ的なシンセやピアノ、スパニッシュギターなどを加えた、
軽妙で優雅なアンサンブルを聴かせる。本作はサーカスをテーマにしたアルバムで
随所にSEやナレーションを含んだ、コンセプト的な空気感と哀愁の叙情も感じさせる。
クラシカルなヴァイオリンにピアノが絡み、技巧的なギターがまじわる味わいは、
テクニカルなジャズロックにフュージョン、室内楽を合わせたような上品な聴き心地である。
一方ではハード寄りのギターを乗せたロック感触や、ミゲル・リオスがゲスト参加した、
スペイン語によるヴォーカル入りのナンバーなど、バラエティに富んだ21曲、78分の力作だ。
メロディック度・・8 ジャズロック度・・7 優雅度・・8 総合・・8
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◆北欧のテクニカル系

KARMAKANIC「WHEEL OF LIFE
スウェーデンのシンフォ・ジャズロックバンド、カーマカニックの2nd。2003年作
THE FLOWER KINGSのヨナス・レインゴールドを中心にしたバンドで
軽快なジャズロック調に、メロディアスなシンフォの味付けをした雰囲気。
フラキンでも見事なドラムを叩いているソルタン・チョースと、ヨナスのリズム隊は
息の合ったアンサンブルを生み出し、長い曲でもさらりと軽妙に聴かせてくれる。
メロディの新鮮味という点ではさほどのものはないが、ほどよくメロディアスでテクニカルな味わいで、
北欧シンフォ・ジャズロックの良作である。ヴォーカル入りの曲はまるでフラキンのようですね。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・8 プログレ度・・7 総合・・8
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3rd World Electric「Kilimanjaro Secret Brew」
ロイネ・ストルト、ヨナス・レインゴールド、ソルタン・チョース、レイル・ラーソンといった
The Flower Kings、KARMAKANIC関連のメンバーによる、サード・ワールド・エレクトリックの2009年作
パーカッションを含めた軽やかなリズムに、サックスが鳴り響く、フュージョン、ジャズロック風味のサウンド。
さすがに実力あるメンバーだけに、余裕あるアンサンブルで、随所にテクニカルさも折り込みつつ、
肩の力を抜いたような、楽しげで軽快な演奏を聴かせてくれる。シンフォニックなテイストは薄めなので、
フラキンなどのイメージで聴くと拍子抜けかもしれないが、のんびりと大人のジャズ/フュージョンロックが楽しめる。
メロディアス度・・7 プログレ度・・7 ジャズロック度・・8 総合・・7.5
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Gosta Berlings Saga「Detta Har Hant
スウェーデンのプログレバンド、イエスタ・ベルリング・サーガの2nd。2009年作
テクニカルなアンサンブルによるスリリングなインストプログレを聴かせる力作。
センス抜群のギターワークを中心にした、巧みに静と動の緩急のついた楽曲は、
うっすらとした叙情とともにANEKDOTENにも通じるミステリアスな懐の深さを感じさせる。
随所にメロトロンやムーグなどのシンセも鳴り響き、ヴィンデージなプログレ感覚を
知的なアレンジ力で再構築したという雰囲気もある。いかにも北欧らしい薄暗さも魅力的だ。
メロディック度・・7 プログレ度・・8 アンサンブル度・・9 総合・・8.5
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MATS MORGAN BAND「The Music or the Money」
スウェーデンのアヴァンロックド、マッツ・モルガン・バンドの2010年作
全盲のシンセ弾きマッツの常人離れしたシンセワークと、モルガンの技巧的かつ軽妙なドラム、
そして、バンド編成になっての楽曲では、ベースを含めたアンサンブルにも磨きがかかり、
ただアヴァンギャルドなだけではなく、音楽的にもひとつ芯が通ってきたという印象がある。
本作では、マッツの曲とモルガンの曲、そしてバンド編成の曲がバラバラに入っていて、
アートな感性の宇宙人的奇妙さであったり、超絶でテクニカルかつコミカルであったりする…
一括りで言うなら「楽しいヘンタイ」というような、斬新なサウンドが目一杯詰まっている。
頭で理解しようとは思わず、ノリと感性、右脳で楽しむ、ワンダーなアヴァン・プログレ作品である。
テクニカル度・・9 アヴァンギャル度・・9 ヘンタイ度・・9 総合・・9
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Raoul Bjorkenheim, Bill Laswell, Morgan Agren
「Blixt」
ノルウェーのアヴァン・ジャズロック、SCORCH TRIOのギタリスト、ラウル・ビョーケンハイムと
Mats/Morganのモルガン・オーギュレン、そしてアメリカの大御所ベーシスト、ビル・ラズウェルによるユニットの2011年作
それぞれが鬼才というべき強烈な個性を持ったプレイヤーによるトリオであるから、当然のように超絶なバトルと、
テクニカルなアンサンブルでたたみかける。フリーなジャズロックといえばそれまでだが、型にはまらない奔放なギターに、
軽やかにして攻撃的なモルガンのドラム、そしてどっしりとしたベースを響かせるビルによるインタープレイは、
息もつかせぬ緊張感で、もはやジャンル分け不能。アヴァンギャルドでフリーキーでありながら、不思議とアンサンブルの一体感が
楽曲に方向性を与えていて、決してごちゃごちゃな感じにはならないところは、各メンバーのセンスと素養の豊かさだろう。
演奏度・・9 テクニカル度・・9 アヴァンギャル度・・8 総合・・8
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LALLE LARSSON'S WEAVEWORLD「Infinity Of Worlds」
スウェーデンのプログレバンド、ラレ・ラーソンズ・ウィーヴワールドの2010年作
かつてのU.K.を思わせるようなスタイリッシュなアンサンブルで聴かせるインストプログレの傑作。
軽やかなフュージョン/ジャズロック風味と、ときにメタリックさを匂わせる硬質な構築センスが冴え渡る。
ジャズタッチのピアノを弾くかと思えば、古き良きプログレ風味や、さらには壮麗でミステリアスな世界観も生み出す、
ラレ・ラーションのシンセワークは絶品だ。たとえばPLANET Xあたりにも通じるテクニカルな聴き心地もあり、
ProgMetalのリスナーなどにも楽しめるサウンドだろう。ボーナスディスクに収録の組曲も圧巻。
メロディアス度・・8 スリリング度・・9 構築センス・・9 総合・・8.5
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It's the End

ノルウェーのフュージョン・プログレ、イッツ・ジ・エンドの2009年作
変則リズムたっぷりの軽妙なアンサンブルで聴かせる、インストのフュージョンプログレ。
ジャズロック的なエレピなどを含む鍵盤ワークが、サウンドをきらびやかに彩りつつ、
ギターは奔放なフレーズを奏でつつ、随所に適度にハードなプレイも織り込んできて、
メリハリのある展開力が面白い。緊張感とメロディックな柔軟性のバランスもよく、
ときにメタリックな感触も顔を出したりと、オールインストながらも飽きずに聴かせる力がある。
CABPLANET Xなどのファンにも楽しめるだろう、テクニカルなフュージョンロックの好作だ。
メロディック度・・7 プログレ度・・8 テクニカル度・・8 総合・・8
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MAGIC PIE「The Suffering Joy」
ノルウェーのシンフォニックロックバンド、マジック・パイの3rd。2011年作
過去2作も素晴らしい内容の傑作だったが、本作も24分の組曲で幕を開け、
ProgMetal的なテクニカルな構築センスとドラマティックな展開美で聴かせてくれる。
適度にハードなギターのセンスあるフレーズや、しっかりとプログレしているシンセワークに
キャッチーなヴォーカル、コーラスハーモニーでメロディックな聴き心地と叙情性を描き出す。
緩急のついた構成力とメロディの魅力で、現在北欧シンフォニックの筆頭格といえるバンドです。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・8 構築度・・9 総合・・8
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Violent Silence
「A Broken Truce」
スウェーデンのプログレバンド、ヴァイオレント・サイレンスの2013年作
10分以上の大曲4曲というアルバム構成で、軽妙なアンサンブルと美しいシンセアレンジで
メロディックかつ適度にテクニカルなサウンドを聴かせる。知的で軽やかな感触は
HAPPY THE MANあたりも思わせるが、こちらはもう少し北欧的な湿り気のある叙情も含んでいる。
もう少しメロディの盛り上がりが欲しい気もするが、長曲を構成する技量もしっかりとしていて
クールな屈折感覚も垣間見せるセンスはさすがというところ。濃密すぎない味わいの好作品です。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 北欧度・・8 総合・・8
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Hidden Lands
「Halcyon」
スウェーデンのプログレバンド、ヒドゥン・ランズの2016年作
VIOLENT SILENCEから分派したバンドの3作目で、テクニカルなアンサンブルと、
やわらかなシンセアレンジにマイルドなヴォーカルを乗せた、軽妙なプログレサウンド。
古き良きヴィンテージ感とポストプログレ風味の繊細さが融合し、カンタベリー的でもある優雅な耳心地で、
10分を超える大曲なども、適度にスリリングでミステリアスな感触を含ませながらじっくりと構築される。
シンセ兼任のギター奏者も、随所に味のあるフレーズやハード寄りのプレイでインストパートを彩っていて、
決してシンフォすぎたり濃密にならないクールな部分が、ある意味ではとてもモダンで、
テクニカルなポストプログレとしても楽しめるところもある。センスの良さが魅力のバンドです。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 優雅度・・8 総合・・8 
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◆東欧のテクニカル系

The GOURISHANKAR「2nd Hands」
ロシアのシンフォニックロックバンド、グリシャンカールの2nd。2007年作
ドラム、ギター、ヴォーカル、キーボードという変則の四人編成で、
ゲストにヴァイオリン、フルートなども加わって、涼やかなシンフォニックサウンドを聴かせる。
基本はインストメインで、モダンな質感の美しいシンセアレンジにかすかな民族色を加え
適度にテクニカルな軽やかさとデジタリィなサンプリングを付加して楽曲を構築している。
Voが加わった曲ではDREAM THEATER的な質感も加わり、プログレメタリックフュージョンとでも
表現したくなるような現代的なサウンドに包まれる。オールドプログレファンには理解しづらいかもしれないが
このこだわりのなさ、雑多なパーツの再構築は、むしろ若いリスナーのプログレへの窓口になるかもしれない。
シンフォニック度・・8 雑食プログレ度・・9 モダンアレンジ度・・9 総合・・8
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MINDFLOWERS「NUANCES」
ハンガリーのテクニカル系プログレバンド、マインド・フラワーズの2nd。
メタリックなDREAM THEATER風味もあった前作から、続く今作では肩の力が抜けた感じの
テクニカルなジャズ/フュージョンロックとなっている。落ち着いた余裕を感じさせる演奏に、
PLANET Xばりのリズミカルなたたみかけもあり、方向性を模索していたような印象だった1stに比べて
ずっと作品としての味がある。メンバーはみなまだ若そうなのだが、演奏力はかなりのもので、
センスのあるドラムにベース、ジャズタッチのピアノも弾きこなすキーボード、メタリックな色合いをかもしだすギターもなかなか。
全曲インストなので、この手のジャズロック的音楽演奏が楽しめる人にお勧めしたい。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・8 フュージョンロック度・・8 総合・・8
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Special Providence 「Essence of Change」
ハンガリーのプログレ・フュージョンロック、スペシャル・プロヴィデンスの2015年作
過去3作はセンス抜群のプログレ・フュージョン作品であったが、4作目となる本作はメタリックなギターを乗せて、
やたらとハードに始まりつつ、実力あるドラムの叩き出す、PLANET Xばりのテクニカルなアンサンブルで、
軽妙なフュージョンロックを展開。ホールズワースばりに優雅なフレージングを乗せるギターのセンスも抜群で、
スペイシーに重ねられたシンセワークがサウンドを壮麗に彩る。テクニカル集団がここにきてさらにアンサンブルを強化、
かいとって硬質すぎず、適度なハードさを覗かせつつ、あくまで優雅な聴き心地。フュージョン・ジャズロックとしても楽しめ、
Djent系リスナーにも対応。プログレ感触のシンセアレンジも随所に心憎いばかり。もはや世界最高レベルの傑作でしょう。
メロディック度・・8 テクニカル度・・8 優雅で軽妙度・・9 総合・・8.5 
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X-Panda 「Flight of Fancy」
エストニアのプログレバンド、エックス・パンダの2012年作
適度にハードなギターとともに、テクニカルなアンサンブルで構築されるProgMetal的な質感と、
キャッチーなヴォーカルメロディによる抜けのよい爽快さが合わさった高品質なサウンド。
辺境的な雰囲気はまったくなく、メロウなフレーズを奏でるギターやシンセによる巧みなアレンジ、
混声合唱隊が加わったスケール感も含ませて、10分を超える大曲を構築するセンスは見事。
NEAL MORSEやTRANSATLANTICなどのファンにも楽しめる、シンフォニックハードとしての側面と、
軽妙なフュージョン風味やヘンタイ的なリズムのキメなどもさらりとこなす、器の大きさも感じさせる。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 構築センス・・9 総合・・8
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CTHULHU RISE「42」
ウクライナのアヴァン・プログレ、クトゥルー・ライズの2012年作
バンド名のように、クトゥルー神話をテーマにしているようだが、サウンドはエレピを主体にした美しいシンセに
ややメタル寄りのギターを乗せ、アヴァンギャルドなテクニカル性と優雅なフュージョン色が合わさったというもの。
オールインストながら、切り返しやリズムチェンジの多さと、コロコロとした軽やかな質感があって、
メタリックなチェンバー・ジャズロック的にも楽しめる。重すぎない音質も、硬質過ぎずにかえって聴きやすい。
程よくテクニカルでヘンタイでありつつ、軽妙なユーモアと遊び心を感じさせる、どこか繊細なセンスも含んでいて、
楽曲も3〜5分台と長すぎず、アヴァンギャルドな作品が苦手な方でもわりと楽しめるかもしれない。
本作には曲名というものがなく、それぞれ番号がふられた小曲「24〜32」を収録というのも無機質で面白い。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・8 アヴァンギャル度・・8 総合・・8
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FROMUZ「Seventh Story」
ウズベキスタンのシンフォニックロックバンド、フロムズの2010年作
前作は全曲が10分以上という大作であったが、本作も20分、16分、18分という
大曲を含む全6曲78分という力作である。まるで映画的のようなイントロから始まり、、
ときにハードフュージョン/ジャズロック的な軽やかさと、シンフォニックな音の厚みが合わさった
濃密なサウンドが展開される。これまで以上にコンセプト的なシリアスさが出ていて
ミステリアスな雰囲気が壮大な質感となり、ギターによる叙情フレーズでここぞと盛り上げる。
インストが中心ながらも細かなアレンジによる楽曲構築が見事で、聴き手を飽きさせないだけの
音の説得力もついた。ドラマティックなセンスで、辺境性を感じさせない力作に仕上がっている。
シンフォニック度・・8 ドラマティック度・・9 濃密度・・9 総合・・8.5
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◆南米のテクニカル系

Cactus Peyotes
ブラジルのハードプログレバンド、カクタス・ペヨテスの2001年作
シンセを含む5人編成で、ProMetal的なテクニカルさも含んだ軽妙なサウンドを聴かせる。
ハイトーンのヴォーカルやツーバスのドラムなどはメタル寄りなのだが、軽やかなシンセアレンジと
テクニックのあるクリアなギターフレーズがフュージョンメタル的な爽やかな聴き心地となっている。
南米らしいアコースティカルな叙情性も含ませつつ、ときにアヴァンギャルドな展開も見せたりと、
なかなか面白いセンスをしている。むしろヴォーカルはオマケとして聴いた方がよいかもしれない。
メロディック度・・7 テクニカル度・・8 メタルフュージョン度・・8 総合・・7.5
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MATRAZ「GRITARE」
チリのシンフォニックロックバンド、マトラスの2nd。2004年作
今やシンフォニック大国となりつつあるチリだが、このバンドもワールドクラスの実力を持つ。
スリリングでテクニカルな演奏はメタル色の薄いDREAM THEATERといった印象もあり、
音はけっしてやかましくならないが流れるような演奏はまるでKENSOのように優雅で、
たたみかける場面でもどこかクールな「静けさの美」を持つセンスが素晴らしい。
クラシカルなピアノはサウンドに格調高さをもたらし、スペイン語の女性Voの歌唱は、
インストだけでは硬質になりすぎるところを、上手い具合にやわらかなバランスを保たせている。
南米なのに涼やかで、適度に硬質で、シンフォニックかつクラシカル。傑作アルバムです。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・8 クールな叙情度・・9 総合・・8.5
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Mar de Robles
Indigena
チリのプログレバンド、マール・デ・ロブレスの2007年作
前作「MdR」は、テクニカルで多様性に富んだ異色の傑作であったが、
今作も適度に偏屈がかったインスト重視の見事なプログレアルバムだ。
サックス、フルート奏者で歌も歌えるメンバーや、スティックベースを弾きこなす凄腕、
妖しくサイケなフレーズも奏でるギター、手数の多いドラムにパーカッショニストという、
個性とセンスあるメンバーたちが織りなすのは、ときにアラビックだったり、南米的だったりする
無国籍感たっぷりのインストで、ごった煮感の中にも壮大な世界が見え隠れするのが凄い。
誤解を恐れずにいうと、南米版THE MARS VOLTAというところか。吹っ切れの良さが凄い。
メロディアス度・・7 プログレ度・・8 演奏センス・・9 総合・・8
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PIG FARM ON THE MOON「ORBITAL」
ヴェネズエラのプログレバンド、ピッグ・ファーム・オン・ザ・ムーンの2002年作
ツインギターにキーボード入りの5人組みで、サウンドはプログレメタリックな質感も漂わせつつ、
基本はメロディアスな聴きやすさにあり、展開の多い楽曲は濃密でアレンジの質もなかなか高い。
のっけから16分の組み曲ではじまり、その後も9分、12分、18分と続く大曲揃いの力作であるが、
メリハリのある展開力や、巧みな叙情パートの配し方などもセンスが良く、飽きさせない。
清涼感のあるシンセワークや、英語による歌唱もあって、地域的なマイナーさもあまり感じないし、
ゲストによるヴァイオリンやチェロなども楽曲に壮大さを加味している。曲によってはもろにDREAM THEATER風な部分もあり、
チリのMATRAZあたりとともにプログレメタル好きなシンフォニックリスナーにも勧められる作品だ。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・8 Prog Metal度・・8 総合・・8
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SONUS UMBRA 「Beyond the Panopticon」
メキシコのプログレバンド、ソナス・ウンブラの2016年作
2000年にデビュー、前作はProgMetal風味のハードシンフォの力作だったが、5作目となる本作は
変拍子を盛り込んだテクニカルなアンサンブルと、フルートなどによる優雅な叙情性を盛り込んだ、
軽妙な味わいのサウンドを聴かせる。マイルドな男性ヴォーカルに美しい女性ヴォーカルも絡んで、
優美でラテン的なやわらかな繊細さを強めた感触で、随所に適度にハードな部分も残しつつ、
純粋にシンフォニックロックのファンに楽しめる作風になった。フルートやピアノのやわらかな音色と、
アコースティックなギターを含んだ叙情は、ときにPFMなどイタリアンロック寄りの雰囲気もある。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 優雅な叙情度・・8 総合・・8
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◆日本のテクニカル系

KENSO「天鳶絨症綺譚」
日本が誇るプログレッシブロックバンド、ケンソーの7th。2002年作
“ビロード症”という精神分裂的病をコンセプトにカラフルかつ奇天烈な世界観をインストサウンドで描き出している。
初期のプログレ的なプログレであったケンソーの呪縛から今だ抜けられないでいる方も多いだろうが、
たとえヘヴィになったとしても、彼らの前進、進化し止まることはない。それこそが真のプログレだ。
ときにHR的ですらある清水氏のヘヴィなギターに、ロック的なグルーブをもった村石氏のドラムは
変拍子入りまくりの楽曲にあっても、「全てはロックなのだ」と語ってでもいるかのようだ。
キーボードの味付けはシンフォニックというよりは、異国的で、モダンさとレトロさが混在しており
テクニカル一辺倒になりがちなサウンドに、しなやかで眩惑的な質感を与えている。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・8 ヘヴィプログレ度・・9 総合・・8
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MONGOL 「Doppler 444」
日本のプログレバンド、モンゴルの1997年作
結成は70年代というバンドで、本作は8年の歳月をかけて完成させた唯一のアルバム。
バンド名やジャケの雰囲気から、とぼけたような意味不明感を漂わせているのだが、
ROSE BAND、OOLA、NOAといった、知る人ぞ知るバンドのメンバーが集ったサウンドは、
優雅にしてテクニカル。アラン・ホールズワースばりの流麗なギターに美しいシンセワーク、
変拍子を含むジャズロック的なアンサンブルでたたみかける、スペース・サーカスばりのインストプログレを展開。
メロディックでスペイシーな感触と、ときにMAGMAEL&P風味も覗かせる、濃密な味わいの傑作である。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 優雅で流麗度・・9 総合・・8.5
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L'EVOLUZIONE「ANTIBIOTIC RHYTHM」
日本のプログレバンド、レヴォルツィオーネの1999年作
テクニカルで展開の多い曲調に、プログレ風のきらびやかなシンセワーク、そして
癖のあるハイトーンヴォーカルが独特のメロディを英語の歌唱で聴かせるサウンドは、
DREAM THEATER的な構築部分とともに、FATES WARNING的なアンバランス性を持った
なかなか深いところを目指しているように感じる。つまりマニアックかつ濃密な音楽性だ。
女性コーラスを導入した劇的な叙情バラード曲や、ときにKENSOなどにも通じる変拍子インストを
繰り広げるなど、内容盛り沢山。歌唱の力みかたがちょっとわざとらしいという点以外は好感が持てる。
特にキーボードの充実ぶりと、リズムアプローチへのこだわりが嬉しい。隠れた傑作です。
メロディアス度・・7 プログレ度・・8 テクニカル度・・8 総合・・8
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IGZIT-NINE
日本のプログレ・ジャズロックバンド、イグジット・ナインの2003年作
KENSOあたりにも通じるインストのジャズロックで、軽快かつテクニカルなサウンド。
変拍子リズムを多用しながらも、ギターの分かりやすいメロディが主導なので
とても聴きやすく、ハードめのメロディアスなフュージョンとしても楽しめる。
この手のジャズロックとしては軽すぎない適度なヘヴィさもあり、
ロックとしての硬質さと、キーボードを含めての音の重ねによる空間的なサウンドが特徴的。
プログレファン向けのジャズロックとしてはとても出来のいいアルバムだ。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 テクニカル度・・8 総合・・8
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KBB 「Proof of Concept」
日本のヴァイオリン・プログレバンド、KBBの3rd。2007年作
壺井彰久氏のヴァイオリンをフロントに、軽やかなプログレを聴かせるこのバンド、
本作はのっけから10分の大曲で、ムーグシンセの音色にエフェクトのかかったヴァイオリンが響き、
よりプログレ的なエキセントリックなセンスとともに、バンドとしてのアンサンブルも力強くなっている。
存在感のあるベースと手数の多いドラムの上に、ときに激しく、そして優雅にヴァイオリンが弾き鳴らされ、
一体となった演奏には歌心を感じる聴き心地で、インスト主体ながら硬質すぎることなく、気持ちよく楽しめる。
シンセの活躍が増したことで、ヴァイオリンとのバランスが音の広がりとなって機能し、しっとりとした叙情曲やコミカルで
軽妙なナンバーも含めて、クラシックやジャズ、フュージョンなどの要素が巧みに融合された力作に仕上がっている。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 テクニカル度・・8 総合・・8
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interpose+ 「INDIFFERENT」
日本のシンフォニックロックバンド、インターポーズの2nd。2007年作
BにKBBのDani氏が正式加入した本作は、ジャズロックタッチの軽やかな曲調が前に出てきている。
それとともにアンサンブル重視のスタイルで、女性ヴォーカルの歌唱からも力みがなくなり、
前作の「シンフォニックハード歌謡」っぽい感触がかすかに薄まっているようだ。
ただ、2、5曲目などの歌パートには、古き良き情感とともに懐かしさを感じさせるメロディが、
品のよいジャズ風味とともに挿入されていてじつにしっとりと聴ける。全体的に静と動のメリハリが付き、
じっくりと情感をつむぐ部分と、テクニカルなジャズロック部分とのコントラストがバンドの個性として機能しており、
細かな曲アレンジや演奏面においては、確実にクオリティを上げてきたという印象。
懐かしき日本の香りのするプログレバンドとして一聴の価値がある作品だ。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・8 懐かし情感もあり度・・9 総合・・8
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Lu7 「Efflorescence」
日本のプログレユニット、エルユーセブンの2006年作
キーボードの梅垣ルナとギターの栗原務によるインスト・ユニットで、ベースには永井敏己、バカバン鈴木がゲスト参加。
打ち込みのリズムの上に、きらびやかなシンセとメロウなギターを乗せた、優雅なフュージョン・ロック。
オールインストながら、クラシカルな旋律を奏でるシンセの美しさと、叙情豊かなギターフレージングで、
歌心を感じさせる聴き心地で、やわらかな耳心地のサウンドが楽しめる。ゲストによるベースの存在感もさすがで、
モダンなアンサンブルによる大人の味わいと、各パートの表現力が単なるBGM以上の幻想的な世界観をかもしだす。
シンセもギターも確かなセンスと技巧を感じさせる、優雅でメロディアスなフュージョン・プログレの好作品です。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 優雅度・・9 総合・・8
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◆プログレメタル・フュージョン系

Leger de Main 「THE CONCEPT OF OUR REALITY
アメリカのプログレメタルバンド、レガー・デ・メインの1st。1995年作
RH FACTORMYTHOLOGICなどでも活動する、、ロドラー兄弟を中心としたバンドで、
美しい女性ヴォーカルをフロントに、テクニカルにたたみかける楽曲展開と、
シンフォニックなプログレ感覚を融合させたサウンドはとても濃密だ。
DREAM THEATER的な構築性と、破天荒な変則リズムの嵐に耳疲れしそうなところだが、
女性声の優雅さもあってか、むしろ美麗な質感なのも面白い。現在は1st、2ndのカップリング2枚組みで再発されている。
シンフォニック度・・8 テクニカル度・・8 女性Vo度・・7 総合・・8
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RH FACTOR「RODLER /HULTBERG
アメリカのプログレメタル、RHファクターの1998年作
LEGER DE MAINのクリス&ブレッドのロドラー兄弟とケヴィン・ハルトバーグによるトリオ編成。
軽やかなリズムの上に、適度にハードなギターとキャッチーなヴォーカルを乗せて、
随所に変則リズムのテクニカル性を含ませながら構築される玄人好みのサウンド。
癖のあるヴォーカルはやや好みを分けるかもしれないが、メタルフュージョン的な軽妙な演奏力と
独自の浮遊感を感じさせるセンスは素晴らしい。個性派テクニカルメタル好きにはうってつけの作品だ。
メロディアス度・・8 軽妙度・・8 テクニカル度・・9 総合・・8
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TONY MACALPINE「MASTER OF PARADISE」
アメリカの技巧派ギタリスト、トニー・マカパインの9作目。1999年作
マカパインといえば、1st「EDGE OF INSANITY」、2nd「MAXIMUM SECURITY」
頂点を究めたクラシカルなインスト作が記憶に残るが、今作ではプログレッシブな構築センスが炸裂。
マカパインはギターの他にキーボードも弾き、自らヴォーカルもとっているが、これが意外にハマっていて
変拍子を多用したリズムに、テクニカルリフとハイトーンの歌が乗り、プログレ的なシンセが曲を彩る。
この後デレク・シェリニアンのPLANET Xへ参加するのだが、これはその布石となった作品だったのだろう。
メロディアスでクラシカルな部分を残しつつ、プログレアプローチを始めた進化が感じられるアルバムである。
メロディアス度・・7 プログレ度・・8 テクニカル度・・8 総合・・8
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RUDESS MORGENSTEIN PROJECT
ジョーダン・ルーデスロッド・モーゲンステインによるユニットの1997年作
「豪技」という邦題の通り、DREAM THEATER加入前のルーデスのキーボードプレイがたっぷりと堪能できる。
LIQUID TENTIONあたりに比べるとよりルーデスの遊び感覚と、豊富な素養がかいま見える音で、
手数の多いモーゲンステインのドラムの上を楽しそうに弾きまくっている。
最近のルーデスのソロ作よりもメタル色は薄く、プログレキーボードが好きなら間違いなく楽しめる。
全編インストであるが二人の豪技が冴える一枚。このプロジェクトのオフィシャルブートCDも出ている。
メロディアス度・・8 キーボード・・9 テクニカル度・・8 総合・・8
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Liquid Tension Experiment 2
テクニカルメタルユニット、リキッド・テンション・エクスペリメントの1999年作
トニー・レヴィン、マイク・ポートノイ、ジョーダン・ルーデス、ジョン・ペトルーシによるユニットで、
ジャムセッション的であった1作目に比べ、楽曲的な構築性が増し、各メンバーの技量がより際立った
質の高い作品となった。4人のうち3人までがDREAM THEATERのメンバーということで、
サウンド的にもDTのインスト部分を軽やかにしたような雰囲気であるのだが、
ルーデスの巧みなシンセワークとペトルーシのギターの絡みはやはり絶品だし、
屋台骨を支えるポートノイのドラムも手数たっぷりでパワフルに張り切っている。
緊張感の漂う即興的な要素とともに、技巧派メンバーたちのよるバトルが楽しめる。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・9 緊張感・・8 総合・・8
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JODAN RUDESS
「Rhythm of Time」
DREAM THEATERのシンセ奏者、ジョーダン・ルーデスのソロ。2004年作
ソロ名義としては4作目となり、今作もプログレッシブで超絶技巧たっぷりの力作だ。
盟友ロッド・モーゲンスタインをドラムに迎え、イスラエル出身の新鋭ギタリスト、ダニエル.Jをはじめ、
ジョー・サトリアーニ、グレッグ・ハウ、ヴィニー・ムーア、スティーヴ・モーズ、キップ・ウインガーら
名うてのゲストが参加し、ハードフュージョンがかった軽やかさとプログレ的な遊び心たっぷりで
楽しませてくれる。テクニカルなことをさらりとやってのけるセンスは相変わらず素晴らしく、豪華メンバーを従えて、
これだけ自由に質の高い作品を作れるシンセ奏者は、おそらくDEREK SHERINIANとこのルーデスくらいのものだろう。
メロディアス度・・8 プログレ度・・8 キーボー度・・9 総合・・8
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DEREK SHERINIAN「PLANET X」
元DREAM THEATERのシンセ奏者、デレク・シェリニアンのソロ作。1999年作
DTを解雇されたデレクが目覚めたのは、超絶テクニカル・プログレメタル・フュージョンだった!
本作の広告の文句には「これが奴らへの答えだ」とあったが…奴ら、というのがDTであるのは明白、
それはともかく、ここで聴けるサウンドは、変拍子に次ぐ変拍子の、強烈なテクニカルプログレである。
天才ドラマー、ヴァージル・ドナーティの叩き出す、ありえないような変幻自在のリズムに、
吹っ切れたようなデレクのシンセワークが重なり、ヒねくれ気味のヘヴィ・フュージョンが構築される。
モダンなテクニカルさの裏には、ELPなどの古き良きプログレッシブロックへの憧憬もかいま見える。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・9 キーボー度・・8 総合・・8.5
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PLANET X
「MOONBABIES」
デレク・シェリニアン率いるハイテク・インストバンド、プラネット・エックスの2作目。2002年作
DREAM THEATER脱退後のソロプロジェクト作「PLANET X」から始まったテクニカルなインスト追求は、
超絶ドラマー、ヴァージル・ドナーティに加え、前作に続き天才ギタリスト、トニー・マカパインも参加。
プログレ・フュージョン的なサウンドをより強く押し出し、マイルドな聴き心地でありながら、素晴らしく切れがよく
じつに緻密な演奏を繰り広げている。マカパインのギターは技巧的かつメロディアスでときにメタリックなヘヴィリフを奏で、
ドナーティの変幻自在な変拍子を刻むリズムの中で、デレクの変幻自在のシンセワークが冴え渡る。
プログレかテクニカルメタルか…このバンドの音はそうした論議を軽々と超越している。フュージョン・メタルのひとつの完成形。
メロディアス度・・7 プログレフュージョン度・・9 テクニカル度・・9 総合・・8
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ON THE VIRG
「SERIOUS YOUNG INSECTS」
現在PLANET Xで活躍するヴァージル・ドナーティが在籍していたオン・ザ・ヴァーグの1999年作
PLANET Xへの加入前はまったく無名だったドナーティだが、こんな素晴らしいアルバムを残していたとは。
基本はオールインストの(やや変態入った)メタルフュージョンというサウンドで、
テクニカルかつ軽やかな演奏は、やはりPLANET Xに通じる質感が多分にある。
変幻自在のドナーティのドラムとそのリズムセンスは、やはり素晴らしいという他ないが、
ときおりメタリックな色も見せるギターのテクニックも相当のものだし、
デレク + ケヴィン・ムーアという感じのKeyもなかなか良い仕事をしている。
PLANET X系のテクニカル・フュージョンメタルが好きなら、これは聴くべし。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・8 ドナーティ度・・9 総合・・8
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LOOSE CHANGE
「Live at the Grainstore」
世界最高のテクニカルドラマー、ヴァージル・ドナーティが80年代に活動していたバンド、
ルース・チェンジの唯一の音源であるライブアルバムのCD化。2004年作
ヴァージル・ドナーティといえばPLANET Xでの超絶なドラミングが印象的だが、
この音源は1987年の録音で、若き日のドナーティのプレイが聴ける。
サウンドはギター、ベース、シンセ、ドラムの4人編成による、フュージョン・ジャズロックで、
やはりPLANET X的なテクニカルさもある。ドナーティのドラミングは当然に見事だが、ギタリストの腕前もかなりのもので、
聴きやすいメロディフレーズと、リズム面でのキメが合わさった質の高い演奏だ。
PLANET X、そしてドナーティのファンであれば文句なしに楽しめる1枚。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・8 ライブ演奏・・9 総合・・8
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BOZZIO LEVIN STEVENS「SITUATION DANGEROUS」
テリー・ボジオトニー・レヴィンスティーブ・スティーブンスの三人によるユニット。2000年作
のっけからのヘヴィプログレ的な演奏は音に迫力があり、即興ぎみだった前作に比べて、2作目の本作は
1週間のリハーサルをとったというだけあって、各メンバーがイメージを共有できているようなリラックスした部分も感じる。
スティーブ・スティーブンスの奏でるギターにもメロディアスなものが増え、
曲の聴かせ所と演奏のメリハリが備わったことで、アルバムとしての完成度もずっと高まっている。
GORDIAN KNOTLIQUID TENTIONなどが好きな方にもぜひ聴いて欲しい。
メロディアス度・・7 プログレ度・・8 演奏・・9 総合・・8
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CONDITION RED「CONDITION RED」
フィンランドのプログレメタルユニット、コンディション・レッドの2000年作
テクニカル系ギタリスト、ラーズ・エリック・マットソンアレックス・マシを中心にしたユニットで
変拍子を多用したテクニカルなインストパートに男女ヴォーカルを乗せ、フュージョン的な軽快さで聴かせるサウンド。
楽曲の組み立てのセンスの良さは、フランスのシリル・エイチャードなどが思い出される優雅さがあり、
無理にメタルにしようとせず、テクニカルになりすぎないところも秀逸だ。じっくり聴き込むことも出来れば
BGM的に気楽に楽しめもする。メタル・ジャズロックとしても一級品の出来である。デレク・シェリニアンも参加している。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・8 楽曲センス・・9 総合・・8
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EVENT「HUMAN CONDITION
アメリカのプログレメタルバンド、イヴェントの2nd。2001年作
今作ではメタル色はずいぶん薄くなり、代わって演奏にはフュージョン、テクノ、ジャズ色が増した。
どこかすっとぼけた曲構成や、あえて王道を避けるかのようなひねくれ加減はMATS/MORGANなども思わせる。
シンフォニック/メロディアスなプログレメタルが好みの私としてはどっちかというと苦手な音なのだが、
このバンドの音には、それでもどこかにメロディを感じる部分とハードロックにリンクしている部分があり、
ときどき引き込まれるように演奏を聴いてしまう。そこが魅力なのかもしれない。
メロディアス度・・7 プログレ度・・9 演奏度・・9 総合・・8
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GORDIAN KNOT「EMERGEMT」
CYNICショーン・マローンを中心としたユニット、ゴーディアン・ノットの2nd。2002年作
自身で本も書き、大学で音楽理論についての教鞭もとるという、学者肌のミュージシャンである彼が、
FATES WARNINGやDREAM THEATERのメンバーとも交流があるというのは、自然なことのようにも思える。
スティーブ・ハケットビル・ブラッフォードといった大物がゲスト参加しているのも見逃せないが、
そのサウンドには媚がなく、ぱっと聴きには地味にも思える、一聴するとメタルとは程遠い音なのだが、
インプロ的なグルーブ感をかもし出しつつ、リズムアレンジにはPLANET Xあたりを思わせる、
探求的なアプローチを感じさせ、プログレッシブ・ジャズロック的なテイストで演奏を楽しむことができる。
マローンのベースはもちろん、自身が弾くスティックやキーボードの音色も美しい。
メタル度・・6 プログレ度・・8 アンサンブル度・・9 総合・・8
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Cyril AchardConfusion」
フランスのギタリスト、シリル・エイチャードのソロアルバム。2002年作
シリル・エイチャードというと、プログレメタルユニット、MORBID FEELINGが思い出されるが、
本作はそれより前、1996年に録音されたもので、メタルというよりはフュージョン的な作品。
おそらく、プログレバンドArrakeenを脱退してからのものだろう。随所にプログレ的な構築性や
ギターのみならずシンセを含んだシンフォニックな味わいもあって、そのセンスと才能を発揮している。
メロディアスなギタープレイでの泣きのセンスは素晴らしく、クラシック、ジャズなどの素養も覗かせて
単なるギターインスト以上の魅力ある楽曲が楽しめる。ボーナスに2002年のデモやArrakeen時代の曲も収録。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 ギターメロ度・・8 総合・・8
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HOURGLASS
「Subconscious」
アメリカのプログレメタル、アワーグラスの2004年作
シンセを含む5人編成で、きらびやかなシンセアレンジとともにメロディックなギターと
マイルドなヴォーカルを乗せて、テクニカルな展開力で聴かせるサウンド。
のっけから17分の大曲で、その後も20分、32分という組曲を構築する力量もあり、
メロディのキャッチーな感触と、フュージョン・メタル的な軽やかさが同居した演奏は
遊び心も含んだクールな耳心地で、いうなれば、DREAM THEATERとPLANET Xの中間というところか。
メロディック度・・8 テクニカル度・・8 キャッチー度・・8 総合・・8
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CABTheatre De Marionnettes
アメリカのフュージョンロックバンド、キャブの2011年作
トニー・マカパイン、バニー・ブルネル、ヴァージル・ドナーティという凄腕3人による
ハード・フュージョンサウンド。マカパインのギターは随所にメロディックでテクニカルなフレーズを
聴かせつつ、あくまで軽妙にさらりと弾き鳴らす。ドナーティのタメの効いたドラムも素晴らしく、
大人の余裕を感じさせるアンサンブルが楽しめる。今回、ブライアン・オーガーは1曲のみの参加で、
代わりにチック・コリア、ミシェル・ポルナレフ他、ゲストによるエレピやオルガンなどが楽曲を優しく彩る。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・8 軽妙度・・9 総合・・8
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Scale The SummitCollective」
アメリカのテクニカルメタルバンド、スケール・ザ・サミットの2011年作
いかにもDREAM THEATERのインスト版という感じだった前作から、
本作ではよりアンサンブルが強固になり、どこかスペイシーな浮遊感と
フュージョン的な軽妙さが融合された、テクニカルなサウンドが楽しめる。
歌なしながら、ギターのリフとメロディフレーズで聴かせるセンスはやはり絶品で
適度な緊張感に包まれた奥深いビジョンが楽曲を通してかいま見えてくる。
モダンな味わいの薄暗い叙情とメロウな哀愁を含んだ世界観を抜群の演奏で表現した傑作だ。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 構築センス・・9 総合・・8
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THOUGHT CHAMBERAngular Perceptions
アメリカのプログレメタルト、ソート・チェンバーの2007作
ベテランギタープレイヤー、マイケル・ハリスと、ENCHANTのテッド・レオナードを中心としたバンドで
メンバー全員がテクニックの持ち主であるので、その演奏力は抜群。
緩急自在のリズムとテクニカルな展開力で、メタリック・フュージョン的な質感も含めて
ギターとシンセ、ベースが巧みに絡み、ときに同調し、見事な構築美を生み出している。
テッド・レオナードの歌声は楽曲をテクニカル一辺倒にならないメロウな叙情で彩り、
ENCHANTよりもさらにダイナミックなProgMetalを存分に聴かせてくれる。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・8 ドラマティック度・・8 総合・・8
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ALEX ARGENTO「EGO」
イタリアのシンセ奏者、アレックス・アルジェントの2007年作
ジョーダン・ルーデス主催のキーボードコンテストで最優秀賞に輝いたという経歴の持ち主。
本作のサウンドは、シンセとギターを中心にしたテクニカルなハード・フュージョン
PLANET Xほどまでは超絶ではなく、むしろメロディを大事にしている部分は
T.マカパインのCABに近いか。アレックスの鍵盤は、時にジャズタッチのピアノなども聴かせ、
軽やかなリズムの上で、こちらもかなりのテクニックのギターとの掛け合いも光る。
楽曲の独自性の点ではさして目新しさはないが、演奏力はさすがのメタル・フュージョン作。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・8 フュージョンロック度・・8 総合・・8
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Aphelion「Franticode」
イタリアのハードフュージョン・プログレメタルバンド、アフェリオンの2009年作
PLANET X
のデレク・シェレニアンがプロデュース、サウンドの方も、いかにも初期のプラネット・エックスを思わせる
テクニカルなメタルフュージョン。ときにDREAM THEATERを思わせるような美麗なシンセワークと、
メタリックなギターが絡み、テクニカルなリズムとともに、プログレメタル的なアンサンブルを構築している。
このバンドの場合、シンセの音がどちらかというとプログレ寄りの感触であるので、PLANET Xのファンはもちろん、
Spaced Outなどテクニカルプログレのリスナーでも楽しめると思う。華麗なるプログレメタルフュージョン作品。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・8 プログレ・フュージョン度・・8 総合・・8
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Virgil Donati 「In This Life」
PLANET Xなどで活躍する凄腕ドラマー、ヴァージル・ドナーティのソロ。2013年作
アレックス・マカチェク、マルコ・スフォーリ(CREATION'S END)、ラファエル・モレイラといった
玄人好みの超絶ギタリストに、ベースに、ダグ・シュリーヴ、アンソニー・クロフォード、
鍵盤には、ダリオ・アルジェント、ルスラン・シロタ、ジェフ・バブコという凄腕プレイヤーが参加、
サウンドの方も、ドナーティの超人的なドラムがたっぷりと楽しめるテクニカル・フュージョンメタルで、
変則リズムまくりの軽やかなアンサンブルによる優雅さは、PLANET Xにも通じる聴き心地だ。
実力あるギタリストたちのプレイも素晴らしい。テクニカルメタル&ドナーティファンは必聴の作品。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・9 メタルフュージョン度・・8 総合・・8
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7 for 4「Difusion」
ドイツのテクニカルメタル、セブン・フォー・フォーの2008年作
Sieges Evenで活躍したギタリスト、ウォルフガング・ツェンク率いるバンドの3作目。
前作同様、メタルフュージョン的な軽妙なアンサンブルで、テクニカルな変拍子をまじえつつ、
メロディックかつ巧みなギターワークを中心にしたクオリティの高いインストサウンドを聴かせる。
ネオクラシカル風味からラテン風味、哀愁の泣きまで表現する、ツェッンクのギターはさすがという存在感で
随所に気の利いたシンセを乗せたアレンジとともに、クールな構築美と濃密さのバランスがとれた内容である。
今作ではゆったりとした叙情パートやクラシカルなアプローチなどもあって、聴きどころの多い力品となっている。
メロディック度・・8 テクニカル度・・8 メタルフュージョン度・・8 総合・・8
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The Fractured Dimension「Towards the Mysterium」
アメリカのテクニカルプログレ(メタル)バンド、フラクチャード・ディメンションの2008年作
ドラム、ベース、シンセというトリオで、シンセをメインにしたテクニカルメタルというサウンド。
フュージョン、ジャズ的な軽妙な優雅さとプログレッシプな知的さが合わさった楽曲は、
緊張感がありながらも、美麗なシンセワークが音の硬質感をやわらげている。
ギターはすべてゲストであるが、ネオクラシカルなプレイも含めてなかなか効果的。
ゲストの中にはあのロン・ジャーゾンベクの名前もある。PLANET Xなどのファンにもオススメ。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・8 優雅にヘンタイ度・・8 総合・・8
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Animals as Leaders
アメリカのテクニカルメタルバンド、アニマルズ・アズ・リーダーズの2009年作
8弦ギターを駆使する黒人ギタリストを擁する4人組で、プログラミング専門のメンバーもいるという、
少し変わったインストのテクニカルメタルバンド。変則リズム入りのフュージョンメタル的な
質感はPLANET X的でもあり、手数の多いドラムも含めてメタリックな硬質感は
DREAM THEATERを思わせたりもする。全編インストであるのだが、このギタリストのプレイがじつに巧みで、
フレーズには歌ごごろがあって、じっくり聞き入ってしまう。バックのシンセの空間的なアレンジもセンスがよく、
テクニカルなサウンドの難解さを緩和してくれている。演奏、センスとも抜群のインスト・プログレメタル作品。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・9 演奏センス・・9 総合・・8
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Canvas SolarisIrradiance」
カナダのテクニカルメタルバンド、カンバス・ソラリスの2009年作
毎作、濃密なテクニカル(ヘンタイ)メタル作品で楽しませるこのバンド、
5作目となる本作も、変則リズムの嵐による強力なインストを聴かせる。
ツインギターにシンセを絡めた音の厚みと、メロディアスな聴き心地を含めて
隙のない音象がうねりをまとって展開されてゆく。今作では押しばかりでなく、
メリハリのある構成と叙情的な要素も強まり、メタルフュージョン的な軽やかさに加えて、
ある種の得体の知れないミステリアスさも随所に感じさせるようになった。
文句なしの力作であるが、ただどうしても全編インストという長尺感はあるが。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・8 構築度・・9 総合・・8
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Lye by Mistake「Fea Jur」
アメリカのテクニカメルタルバンド、ライ・バイ・ミステイクの2009年作
ギター、ベース、ドラムのトリオ編成で、インストによるテクニカルかつ
アヴァンギャルドなサウンドを繰り広げている。唐突なまでのリズムと、
ヤケクソ気味の変態さが合わさった、濃厚なテクニカルメタルでありつつ、
遊び心とユーモアを感じさせる余裕もあり、フュージョン的な軽やかさも特徴か。
デス色を抜いたMeshuggahというか、MATS/MORGAN的センスというか…そんな感じ。
CANVAS SOLARISやELECTROCUTION 250あたりが気に入った方ならぜひにというヘンタイぶり。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・8 ヘンタイ度・・8 総合・・8
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TETRAFUSION「Altered State」
アメリカのテクニカルメタルバンド、テトラフュージョンの2010年作
ギター、ベース、ドラム、シンセ/ヴォーカルの4人組で、メロディアスな聴き心地の
テクニカルメタルをやっている。ギターのフレーズやリズム面でのアプローチには
いくぶんDREAM THEATER的な雰囲気もあるが、どこか淡々したヴォーカルを含めて
熱すぎないクールな構築感覚は、バンド名のようなフュージョン的な聴き心地もある。
いわば、メタルフュージョン的な優雅さをProgMetalと融合させているという感じもするのだが、
美しいシンセにうっとりしていると、唐突な曲展開でいきなり激しくなったりと、カオティックコア風味もある。
Scale The Summitといい、このバンドといいアメリカからは面白いバンドが出てくるものだ。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・8 ヘンタイ度・・8 総合・・8
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ALEX MACHACEK
「24 Tales」
オーストリア出身のテクニカル系ギタリスト、アレックス・マカチェクの2010年作
UKZでもメンバー同士であるマルコ・ミネマンのドラムをフィーチャーした作品で
変則リズムまくりのドラムの上に、さらりと超絶技巧なギターフレーズが乗り、
シンセなどで味付けされた聴き心地は、優雅なハードフュージョン的に楽しめる。
1、2分台の小曲が連なる形式で、場面ごとに弾むような軽やかさや緊張感がやってきて、
なかなか息つく暇がない。テクニカルでありながらフリーなジャズ色も強く、マカチェクのギターは
ホールズワースの再来と言われるように、天才肌の奔放なセンスとクールな知的さを感じさせる。
テクニカル度・・9 プログレ度・・8 ジャズ的優雅度・・9 総合・・8
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SEMANTIC SATURATION「Solipsistic」
テクニカルメタルユニット、セマンティック・サテュレーションの2012年作
カナダ在住のギタリスト、シャント・ハゴピアンを中心にしたユニットで、ドラムにはヴァージル・ドナーティ(PLANET X)、
ベースにリック・フィエラブラシ(PLANET X)、ゲストヴォーカルはアンディ・カンツ(VANDEN PLAS)が参加。
凄腕のメンバーによるテクニカルなインストパートは、随所にメロディックなギターフレーズも覗かせながら、
PLANET Xを思わせるメタルフュージョン的な軽妙さとともに、
プログレッシブで知的な構築センスが光る。
さらにゲストでデレク・シェリニアンが参加…って、ほぼ、PLANET X じゃん!…などという突っ込みはさておき、
スリリングなアンサンブルとメロディックな聴き心地を巧みに同居させていて、全体的にも難解さは感じない好作品。

メロディック度・・8 テクニカル度・・8 構築センス・・8 総合・・8
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Trioscapes 「Separate Realities」
Between the Buried and Meのベーシストを中心にしたユニット、トリオスケープの2012年作
ベース、サックス、ドラムという変則的なトリオ編成で、サックスの音色がリードをとる
ジャムセッション的なテクニカルサウンド。手数の多いドラムとうねりのあるベースのアンサンブルが、
けっこうヘヴィなグルーブ感をかもしだしていて、ジャズともフュージョンとも異なる聴き心地だ。
鳴り響くサックスにエフェクトをかけたベースも絡んだりして、変則リズムと切り返しの応酬は
さすがというべき演奏である。カオティックな雰囲気も含めて、キワモノ系テクニカルメタルとしても楽しめる。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・8 アンサンブル度・・9 総合・・8
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Alessandro Bertoni 
「Keystone」
イタリアのシンセ奏者、アレッサンドロ・ベルトーニの2013年作
彼のバンド、APHELIONの方もなかなか素晴らしい作品であったが、初のソロ作となる本作は
ドラムにヴァージル・ドナーティが参加、デレク・シェリニアンがプロデュースということで、
サウンドの方はやはりPLANET Xを思わせるテクニカルなメタルフュージョンとなっている。
ときにジャズタッチの鍵盤さばきも織り交ぜたベルトーニの華麗なシンセワークを中心に、
ドナーティのどっしりとしながらもグルーヴィなドラムと、ブレット・ガーストのセンスあるギターワーク、
リック・フィエラブラッチのベースも存在感を覗かせる。一流のメンバーによるアンサンブルは見事である。
オールインストであるが、ときにムーグやオルガンなどプログレな味わいもあるシンセと
随所にメロディックなギターが、やわらかな聴き心地となっている。
メロディック度・・8 テクニカル度・・8 メタルフュージョン度・・8 総合・・8
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Exivious
「Liminal」
テクニカルメタルユニット、エグジビオスの2013年作
元CYNICや、元Pestilence、オランダのブラックメタルDodecahedronのメンバーらによるユニットで、
テクニカルなアンサンブルによるプログレッシブな味わいのサウンド。
CYNICのインスト部分をメタルフュージョン風味にしたという聴き心地もあり、
変則リズムまくりのDjent的な感触とともに、クールで知的な構築センスが楽しめる。
一方では、叙情的な浮遊感も漂わせていて、アーティスティックな楽曲構築も見事。
最近のCYNICよりも、即効的なテクニカル性が強めなので、その手のファンはオススメです。
メロディック度・・7 テクニカル度・・8 知的&クール度・・9 総合・・8
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Skyharbor
「Guiding Lights」
インドのテクニカルメタル、スカイハーバーの2014年作
2枚組の力作であったデビュー作に続き、本作も変則リズムを多用した、いわゆるDjent系というべきサウンドに
エモーショナルなヴォーカルを乗せた、モダンなテクニカルメタルを聴かせる。今作ではさらに優雅なアンサンブルで
フュージョンメタル的なやわらかな感触が強まっていて、失礼ながらインド出身とはとても思えない洗練された作風だ。
楽曲は5〜9分と、比較的長めの曲もあるのだが、緩急のついたリズムとインストパートの展開力に、
やわらかなヴォーカルの歌声で聴き疲れしない。メタルというよりはフュージョンプログレ的にも楽しめる力作。
メロディック度・・8 テクニカル度・・8 優雅度・・8 総合・・8
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Profusion
「Phersu」
イタリアのプログレメタル、プロフュージョンの2015年作
本作はタイトルなどから古代イタリアのエトルリア人をテーマにした作品のようだが、サウンドの方は
ハード寄りのギターときらびやかなシンセをテクニカルなアンサンブルに乗せた、モダンでキャッチーな作風。
前作よりもヘヴィな部分をスタイリッシュにを強めた感触で、HAKENFROST*あたりにも通じるような、
優雅な構築センスが光る。一方では、エモーショナルなヴォーカルと美しいシンセによる叙情性は、
イタリアのバンドらしい繊細さを感じさせ、メリハリのあるドラマ性とスケール感を描くのも素晴らしい。
プログレ的な展開美とやわらかなメロディを同居させ、モダンなセンスで仕上げたという傑作です。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 構築度・・9 総合・・8.5
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