ハード・シンフォニック/プログレ特集
〜メタルファンでも楽しめるシンフォニック特集




昨今プログレとメタルとのボーダーレスがますます進行していて、たとえば、プログレファンでもDREAM THEATERが好きだったり、
メタルファンでありながらIT BITESRiversideを聴く、という人々がずいぶん増えてきている気がするのだ。
イギリスのハード・シンフォニック系はARENAPALLASなどをはじめとして、優秀なバンドが多く、
アメリカや南米などにはドラマティックなハードシンフォや濃密なコテコテ系シンフォ、
さらにはDREAM THEATERに影響受けたようなバンドも多く、質の高い作品が次々に生まれてきている。
ここでは、メタラーの方々にも馴染みやすいハード系のシンフォニックロック、プログレ作品を紹介したい。

                                          
緑川 とうせい


◆イギリスのハードシンフォニック

ARENA 「PEPPER'S GHOST」
90年代以降の英国シンフォシーンを牽引するアリーナの6th。2005作
KEYのクライブ・ノーランを中心に、デビューからついに10年目を迎えたこのバンドであるが、
初期からメンバーをチェンジしつつも、それぞれに重厚でシンフォニックなアルバムを作り続けてきた。
正直言って、彼らのアルバムはPENDRAGONなどに比べるとややダークで重たく
2nd以降はあまり愛聴していなかったのだが、今作はじつに内容の詰まった傑作だ。
ミステリーや冒険活劇など、それぞれ7つの物語を題材にした7曲という構成で
一曲ごとにストーリー性とドラマティックな高揚感がしっかりとあるのがよい。
重厚な音の厚みはメタルファンなどにも聴かせられるサウンドだと思う。
メロディアス度・・7 シンフォニック度・・8 重厚度・・8 総合・・8
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ARENAThe Seventh Degree Of Separation
イギリスのシンフォニックロック、アリーナの2011年作
1995年にデビューしてから、英国のネオプログレ/シンフォニックシーンを引っ張る存在のこのバンド、
本作は前作から6年ぶりとなる7作目で、これまでの薄暗いメロウな叙情性に加え
いくぶんレイドパックしたような古き良き質感を覗かせる作風になっている。
もはや職人技というべきクライブ・ノーランのシンセワークに、IT BITESでも活躍する
ジョン・ミッチェルのメロディックなギターで、大人のシンフォニックロックともいうべき
渋みのあるサウンドを描いてゆく。新加入のVo、ポール・マンズィのかすれた声質も
随所にハードロック的な聴き心地もある楽曲にマッチしている。メイキング映像を収録したDVD付き。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 大人のハードシンフォ度・・8 総合・・8
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PALLASThe Dreams of Men」
英国シンフォニックハードの雄パラスの復活3作目。2005作
前作「THE CROSS & THE CRUCIBLE」は壮大ながら、やや長尺感のある作品だった。
今作も物語的なコンセプト作で、プロローグのような出だしは静かに始まり、
ゆったりとしたヴォーカルを聴かせながら、それからじわじわと盛り上がってゆく。
シンフォニックなシンセワークとメロディアスなギターが重なり、女性コーラスなども配して
重厚な雰囲気を作りながら、あくまでメロディアスな質感にこだわるのがやはり彼ららしい。
ドラマティックに構築される、シンフォニックハードの力作である。
シンフォニック度・・8 ドラマティック度・・9 壮大度・・9 総合・・8
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PALLAS「XXV」
英国シンフォニックハードの雄、パラスの2011年作
なにやらSF映画的なジャケや、イントロのナレーションから始まる壮大なスケール感にわくわくする。
美麗なシンセワークとメロディックなギター、そしてヴォーカルによるキャッチーな聴き心地で、
これまで通りのPALLAS節というべき、ドラマティックな作風でぐいぐいと聴かせてくれる。
古き良きプログレハードの質感と構築性を融合させ、質の高いサウンドを描く力量はベテランならではで、
より重厚になったハードさが本作の特徴か。1曲ごとのインパクトはさほどではないものの、
ダイナミックさとメロディアスさを合わせた、まさしくシンフォニックハードの力作といえる。
シンフォニック度・・7 ドラマティック度・・8 重厚度・・8 総合・・8
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IQ「DARK MATTER」
イギリスのシンフォニック・ロックバンド、アイキューのアルバム。2004作
なにかが吹っ切れたような会心の一作で、シリアスかつ濃密なシンフォニックサウンドが描かれる傑作。
「SUBTERRANEA」にあったやや長尺な印象が、ここではタイトな曲展開と切れのある演奏により一掃され、
たとえればTRANSATLANTICあたりに通じる、メロディの明快さと、演奏と曲のバランスの良さが両立されている。
軽快さと説得力を併せ持ったリズムセクションや、とにかくシンフォニックに鳴り響くキーボード、
はっとするようなメロウなギターフレーズ、世界観を見事に表現するヴォーカル、どれもが一級品。至福の52分。
シンフォニック度・・9 メロディアス度・・8 楽曲・・8 総合・・・8.5
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GALAHAD「EMPIRES NEVER LAST」
イギリスのシンフォニックロックバンド、ギャラハドの2007年作。
90年代前半のポンプロックムーブメントの時期のバンドと思ったが、まさかまだ活動していたとは。
しかも、かつてのイメージよりもジャケといいサウンドといい重厚になっていて、
ARENAPALLASかというようなドラマティックなハードシンフォを展開している。
ときにメタリックなギターに壮麗なシンセが加わると、ProgMetal系の質感すらも垣間見せ、
これならば軽すぎるシンフォ系プログレがだめという人にも薦められる。
10分台の大曲3つを含む計60分の力作は、バンド史上最高傑作となった。
シンフォニック度・・8 重厚度・・8 ドラマティック度・・9 総合・・8
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FROST*  「MILLIONTOWN」
キーボーディストJEM GODFREYを中心に、ARENAKINOでも活躍するJOHN MITCHELL、
IQのJOHN JOWITT、ANDY EDWARDSらによるフロストのアルバム。2006作
のっけから、メロディアスかつ見事な展開美で聴くものを魅了する。
サウンドは、ARENA+IQとい基本系にTRANSATLANTIC的な陽性のキャッチーさを合わせた雰囲気。
かといって、レトロな部分よりもモダンさと、うっすらとした翳りがあるのはKINOにも通じる。
メンバーが実力者なだけに、音にはせこさというものがまったくなく、
プログレにしては珍しく堂々たるメジャー感すら漂うダイナミズムが素晴らしい。
中盤は今風のモダンな中庸曲もあるが、ラストのタイトル曲での見事な構成力はさすが。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 完成度・・9 総合・・8
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TANTALUS 「JUBAL」
イギリスのシンフォニックロックバンド、タンタルスの2nd。2000作
まず耳を引くのが同時代的なセンスの良いスタイリッシュな音作り。
かつてのシンフォニックのような泥臭さ、無理な大仰さとは決別し、
ある種クールとも思える自己を見つめる視点が音の中に感じられる。
つまりはDREAM THEATER以後のシンフォシーンのフィルターを確実に通ってきたバンド。
キーボード、ギターともメロディアスで流麗だが、どこかに情熱よりも知的さを優先させたものが聞こえる。
その決して感情的に爆発しない冷静さこそがこのバンドの持ち味で
すでに凡百のシンフォバンドが追いつけないものを持っている。
シンフォニック度・・8 クールな音作り度・・9 楽曲センス・・8 総合・・8

HAKEN「VISIONS」
イギリスのシンフォニックバンド、ヘイケンの2011年作
デビュー作にして新時代のハードシンフォニックの傑作と話題となったこのバンド、
本作も適度にヘヴィなギターワークと、メロディックな叙情性で構築される、
絶品のサウンドが楽しめる。プログレメタル的でもあるインストパートでの展開美は
テクニカルな要素とともに、いかにもプログレ的なシンセアレンジが融合され、
クールでありつつも古き良さもあるという感触が面白い。センスの良さという点では
The TANGENTにもすでに匹敵するだろう。ラストは22分の大曲も圧巻だ。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・8 楽曲センス度・・9 総合・・8
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Touchstone「City Sleeps」
イギリスの男女Voシンフォニックロックバンド、タッチストーンの2011作
ライブアルバムをはさんでの3作目で、美しい女性ヴォーカルの歌声で聴かせる、
シンフォニックハードサウンドは前作の延長上ながらよりダイナミックになっている。
この手のバンドにしては重厚さの効いたドラムとエッジのあるギターサウンドに、
美麗なシンセワークも含めて、PALLASあたりを思わせるドラマティックな雰囲気だ。
10分超の大曲も2曲あり、メリハリのある展開と、女性Voの美しさに惚れ惚れする。
ここぞというところで聴かせるメロディと盛り上げ方も上手くなった。なかなかの力作です。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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◆ドイツ、オランダ、スイス、フランス

EVERONFlood」
ドイツのシンフォニック・ハードバンド、エヴェロンの2nd。1995作
美麗なイントロから、哀愁を帯びた歌メロが始まり、ゆるやかに美しい展開美で聴かせる。
楽曲は前作以上にダイナミズムが増し、本格派のシンフォニックプログレとなった。
曲は5、6分台がメインで難解さはなく、キャッチーさとハードさのバランスも見事。
アメリカのMagellanなどと同じように、高品質シンフォニックハードのお手本のような一枚だ。
メロディアス度・・8 キャッチー度・・8 プログレ度・・7 総合・・8
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EVERON 「BRIDGE」
ドイツのシンフォニックハードバンド、エヴェロンの5th。2002作
1994年のデビューから地道に活動を続けるこのバンドだが、アルバム毎の高品質な完成度と
メロディアスでファンタジックなそのサウンドに比して、知名度がさほど上がらないのが残念である。
これは次作「Flesh」と対をなすアルバムとなっていて、全体的に以前よりもややヘヴィな作風となっているが、
曲は5分前後のものがメインなので難解さはまったくなく、綺麗な歌メロやメロディアスなギターなど、
じつにドラマティックな雰囲気に包まれている。これならプログレが苦手というメタルリスナーでも聴けるだろう。
これはいわば重厚なメロディックシンフォの傑作といってもいい。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 ドラマティック度・・8 総合・・8
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SubsignalTouchstones
ドイツのハードプログレバンド、サブシグナルの2011年作
SIEGES EVENのGとVoを中心にしたバンドで、シンセを含んだ美しいアレンジと
キャッチーなメロディが光る高品質なサウンド。IT BITESあたりにも通じる軽妙さと確かな演奏力で、
随所にProgMetal的なテクニカルな展開も織り込みつつ、あくまでメロディアスに聴かせる。
5、6分の曲を中心にしながら、11分の大曲も含んで知的な構築センスも抜群だ。
メタル的なヘヴィさはあまりないので、モダンなハードシンフォニックとしても楽しめる傑作。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・8 楽曲センス・・9 総合・・8
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SHAKARY「THE LAST SUMMER」
スイスのシンフォニックユニット、シャカリーの2nd。2002作
CLEPSYDRAのGなどが中心となって作られたバンドで、2枚組大作の1stは、壮大さとキャッチーな質感が
かみ合ったかなりの傑作だった。続くこの2ndもやはりコンセプト作のようで、物語にそって曲が進んでゆく。
演奏力はもちろん、この手のシンフォバンドにしてはVoも力強く、ギターの奏でるメロディは非常に叙情味溢れている。
楽曲と音の重ねにはハードロック的なダイナミックさもあり、弱弱しいシンフォが苦手という
メタル系リスナーなども楽しめるだろう。コンセプト的なものだろうが、序盤はややダレ気味なところがあるが、
ラスト近くでの感動的な盛り上がりには、やはりぐぐっと引き込まれるのであった。
メロディアス度・・8 ハードシンフォニック度・・9 楽曲・・8 総合・・8

KNIGHT AREA 「THE SUN ALSO RISES」
オランダのシンフォニックロックバンド、ナイト・エリアの1st。2004作
ここのところ良質のシンフォ勢頻出のオランダだが、また新たなバンドが登場。
ゆったりとしたメロウな泣きのギターにシンフォニックなキーボードという、
まったく類型的なサウンドではあるが、音のまとまりがよくなかなか心地よい。
聴き易くなったARENAという感じで、シリアスすぎず軽すぎず、ときにハードエッジな部分もあるので、
メタル系のシンフォファンなどにも対応するだろう。
突き抜けた個性はないが、万人受けするシンフォニックロック作品といっていい。
しかし、ブックレットにはメンバーが11人も載っているが、誰がゲストで誰が正規メンバーなのかは不明。
シンフォニック度・・8 メロディアス度・・8 楽曲・・7 総合・・8
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PBII「Plastic Soup」
オランダのプログレバンド、プラックバンドの2010年作
元はPLACKBANDという名前で70年代後半から活動していたらしいが、
PBIIと名前を変えて、本作が正式なデビューアルバムとなった。
IT BITESSPOCK'S BEARDなどを思わせるキャッチーなメロディと
軽妙なアレンジで聴かせるサウンドは、むしろアメリカのバンドっぽいか。
シンセの入れ方などはいかにも年季のあるメンバーらしく、プログレ度を高めていて、
あるいはACTあたりに通じる、メロディックプログレハードとしても楽しめる。
ゲストに、ジョン・ミッチェル(ARENA、IT BITES)、ジョン・ジョウィット(IQ)などが参加。
メロディアス度・・8 プログレ度・・8 軽妙度・・8 総合・・8
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TAAL 「SKYMIND」
フランスのシンフォニック・チェンバーロックバンド、タールの2nd。2002作
1stもやや強引なメタルギターに管楽器をフィーチャーした、エセ壮大系の無茶なサウンドだったが、
この2ndにして、さらに楽曲のアレンジの細やかさが増し、サウンドのクオリティが高まった。
相変わらずのこけおどしメタルサウンドと管楽器、そしてストリングスの合体は素晴らしく、
時折聴かせるしっとり(?)とした叙情クラシカルパートも本物に聴こえるし、
おちゃらけたメロディや無茶な展開も、馬鹿にできずに、むしろシリアスに聴き通せる。
つまり、本物の音で壮大な悪ノリをしているのがこのバンドの魅力で、シンフォニックでありながら、
手の込んだいたずら心満載の大仰なシンフォニーロックに聴こえてしまう。びっくりでニヤリの傑作。
シンフォニック度・・8 クラシカル度・・8 本気の悪ノリ度・・10 総合・・8.5
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XANG 「DESTINY OF A DREAM」
フランスのシンフォニックロックバンド、クサングのアルバム。
サウンドは軽やかでメロディアスなシンフォニックロックだが、ギターの音色にはメタル色もある。
全編インストなので、その点では好みを分けるかもしれないが、
叙情的なギターフレーズに絡むシンフォニックなキーボードは耳に心地よい。
ときおりドラムがツーバスだったり、ギターがメタリックなことをやり始めたりと、
シンフォ好きのプログレメタルリスナーなどにも十分お薦めできる。
全体的にもクオリティは非常に高く、とくにギタリストのセンスの良さが魅力的だ。
メロディアス度・・8 シンフォニック度・・8 プログレメタル度・・7 総合・・8
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◆北欧、ポーランド、ロシア

PAR LINDH PROJECT「MUNDUS INCOMPERTUS」
スウェーデンのシンフォニックロックバンド、パル・リンダー・プロジェクトの2nd。1998作
1st「Gothic Impressions」は管弦楽、チャーチオルガン、合唱隊などを配したド級のシンフォニック作で、
初めて聴いたときは大変な衝撃だった。多数のゲストを集めたソロプロジェクト的な作品だった前作に比べ
本作では女性ヴォーカルを含む5人編成でのバンドサウンドとなって、前作の壮麗さに加えて
よりロックとしての躍動感がそなわった作品となった。メロディはクラシカルでありながらもキャッチーで
音に難解なところがなく、聴いた瞬間から濃密なシンフォニックロックとして完全に楽しめるという点も魅力。
楽曲を彩る女性ヴォーカルの歌声や、メタルドラマー並に手数の多いツーバスドラムも聴きどころ。
26分の圧巻の組曲を含めて、1990年代を代表するシンフォニックアルバムのマスターピースのひとつである。
シンフォニック度・・9 ダイナミック度・・9 キーボー度・・9 総合・・8.5
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MAGIC PIE「Motions of Desire」
ノルウェーのシンフォニックロックバンド、マジック・パイの1st。2005作
70年代風のハモンドと、現代風のややハードなギターが合わさった構築性のあるメロディアスなサウンド。
テクニカルな展開の後に現れる、キャッチーなメロディが実に爽快で、アレンジの思い切りの良さも大きな魅力。
懐古主義と現代的なウィットという点ではSPOCK'S BEARDにも通じるものがあり、
とくにギターの奏でるメロディはTRANSATLANTICでのロイネ・ストルトをも思わせる。
しょっぱなに20分の大曲をもってきたり、ラストには組曲方式と、およそ新人離れした
自信に満ちていて、このシンプルなりんごジャケからは想像もつかない満腹感が味わえる。
また北欧からメロディアス/テクニカルシンフォの輝けるニューカマーが出現した。
メロディアス度・・8 プログレ度・・8 キャッチーかつテクニカル度・・9 総合・・8
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ANTI-DEPRESSIVE DELIVERY「FEEL MELT RELEASE ESCAPE」
ノルウェーのハードプログレバンド、アンチ・デプレッシブ・デリバリーの2004作
サウンドの方は、いわゆるDREAM THEATER系のProgMetalとも、シンフォニック系のプログレハードとも異なり、
変拍子リズムを使用したギターリフに時々デスチックになるドラミング、そこにヴィンデージ調のキーボードが重なり
目新しくないようでいて、意外にこのタイプはいない、というものになっている。
時に古めかしいハモンドや、まるでANEKDOTENのようなメロトロンが盛大に鳴り響き、
メロディにはキャッチーさをかいま見せつつも北欧のバンドらしいさびれた風情をかもしだす。
難解さよりはプログレ・ロック的なノリがあるので、複雑すぎる変態系が苦手な人にも聴けるだろう。
ACT、ANEKDOTEN、PAIN OF SALVATION、MATS/MORGANあたりに通じる要素も感じられる。
メロディアス度・・7テクニカル度・・8 変態度・・7 総合・・8
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LALLE LARSSON'S WEAVEWORLD「Infinity Of Worlds」
スウェーデンのプログレバンド、レイル・ラーソンズ・ウィーヴワールドの2010年作
ヘンタイメタル系のELECTROCUTION 250や、KARMAKANIC、AGENTS OF MERCYでも活躍する
才能豊かなシンセ奏者。本作はかつてのU.K.を思わせるようなスタイリッシュなアンサンブルで聴かせる
インストプログレの傑作。軽やかなフュージョン/ジャズロック風味と、ときにメタリックさを匂わせる
硬質な構築センスが冴え渡る。ジャズタッチのピアノを弾くかと思えば、古き良きプログレ風味や、
さらには壮麗でミステリアスな世界観も生み出す、ラレ・ラーションのシンセワークは絶品だ。
たとえばPLANET Xあたりにも通じる聴き心地もあり、ProgMetalのリスナーなどにも楽しめるサウンドだろう。
限定盤には「室内オーケストラとメタル・バンドの為の“7つの大罪”組曲」と題された大曲のライブ音源と
未発曲などを収録したボーナスCD付き。こちらだけでもお腹いっぱいになるほどのボリュームだ。
メロディアス度・・8 スリリング度・・9 構築センス・・9 総合・・8.5
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FreddeGredde 「Thirteen Eight」
スウェーデンのマルチプレイヤー、フレドリック・ラーソンによる個人プロジェクト作。2011年作
ギター、ベース、シンセにヴォーカルをすべて一人でこなす、期待の若手ミュージシャン、
美麗なシンフォニック性とキャッチーなメロディアスさで構築されるサウンドは、
聴き心地の良さと軽快な展開力を両立させていて、デビュー作にしては相当質が高い。
甘い歌メロとコーラスはMOON SAFARIあたりにも通じるような人懐こさがあり、アコーディオンなど
アコースティック要素も含め、北欧らしい叙情も素晴らしい。アレンジは凝っているのだが難解さは皆無。
精細さとダイナミック、性と動のメリハリという点では、プログレ化したQUEENともいうべきか。
あるいはACTなどのプログレハード好きにも楽しめるかと。今後に大期待のアーティストです。
シンフォニック度・・8 メロディアス度・・9 プログレ度・・8 総合・・8
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Riverside「Anno Domini High Definition」
ポーランドのハードプログレバンド、リヴァーサイドの2009年作
薄暗い叙情を聴かせるハードプログレとしてPorcupine Tree系のリスナーはもとより
OPETHなどを好むメタルリスナーをも振り向かせ、いよいよ人気も高まってきたこのバンド。
4作目となる本作もじつに見事な作品だ。ゆるやかな浮遊感を増した前作の流れにありつつも、
オルガンの音色も含めてプログレとしての美意識とメリハリのある展開力を強化させている。
しっとりとしたもの悲しさをたたえながら、ハードなところはよりハードに聴かせ、広がりのある音作りで
ミクスチャー的なモダンなアレンジと、レトロなロックの要素を巧みに同居させているのが見事。
ソリッドなセンスとアナログ的な生々しさが融合した現在形プログレの傑作。
メロウ度・・8 プログレ度・・8 アレンジセンス度・・9 総合・・8.5
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SATELLITE 「Into the Night」
ポーランドのシンフォニックロックバンド、サテライトの3rd。2007作
COLLAGEからの流れを受け継ぐ、正しく薄暗系シンフォニックの後継者であるこのバンド、
前作「Evining Game」は、素晴らしい叙情美の傑作だったが、それに続く本作である。
基本的には、前作からの流れで、しっとりとした美しいシンセワークに、
ここぞと盛り上げる泣きのギター、そしてやわらかなヴォーカルによる繊細なサウンド。
今回はより、楽曲にダイナミズムがつけられ、ときにモダンな質感を感じさせつつも、
ポーランドならではのほの暗い叙情とともに、ハードシンフォニック的な聴き方も可能。
より一般のシンフォファンにも好まれる作風になったというべきだろう。
シンフォニック度・・8 ほの暗叙情度・・8 ポーラン度・・9 総合・・8
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Indukti「Idmen」
ポーランドのヘヴィ・プログレバンド、インダクティの2nd。2009作
1stS.U.S.A.R.はポーランド版ANEKDOTENというような傑作であったが、
本作ではのっけからギターによるメタリックなヘヴィさが増している。
その後はやはり独特の薄暗さを内包した叙情をともないながら、
女性ヴァイオリニストの奏でるもの悲しい旋律とともに、重厚に聴かせる。
今回のコンセプトなのか、土着的な闇の中に太古の神秘性を感じさせる世界観が
モダンなプログレと巧みに融合されていて、とくに大曲での迫力には圧倒される。
同郷のRiversideがPINK FLOYDなら、こちらは土着化したメタル・クリムゾンか。
シンフォニックな美しさは薄れたが、重厚なる音世界で構築された力作である。
メロディアス度・・7 プログレ度・・8 重厚度・・9 総合・・8
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LITTLE TRAGEDIES「NEW FAUST」
ロシアのシンフォニックバンド、リトル・トラジェディーズの4作目。2006作
前作も思わず笑ってしまうほどの大盛り上がり大会であったが、この新作はそれをも上回る。
タイトル通り、ゲーテの「ファウスト」を新解釈したコンセプト作で、
クラシックのメロディや古典の文献からの引用など、気合の入った大がかりなCD2枚組となった。
弾きまくりのキーボード、クラシカルかつ優雅なメロディ、むせび泣くギターに怒濤の盛り上がり。
どこを切っても、手抜きなしの濃密シンフォニックサウンドで大変気合入ってます。
そして、物語的に進んでゆく楽曲構成は、2枚組み作品としての流れも見事にかみ合っていて
まるで壮麗な古典絵巻を聴いているかのよう。血湧き肉躍るメロディの大洪水に顔がにやけっぱなし。
シンフォニック度・・9 プログレ度・・8 ドラマティック度・・10 総合・・9
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LITTLE TRAGEDIES「The Six Sense」
ロシアのシンフォニックバンド、リトル・トラジェディーズの5th。2006作
今作は従来のコテコテ路線からやや感触を変え、
キレのある展開と、ときおり聴かせるメジャー感のあるキャッチーさがポイント。
もちろんクラシカルに弾きまくり、盛り上げるシンセは相変わらずだが、
ハードエッジな部分と、メロディアスな部分とのメリハリがついている。
ロシア語の歌唱によるシアトリカルな響きに、優雅なチェンバロの音色、
泣きのギターと優しげなサックスの音色がドラマティックに絡まり合う。
今回は濃密でありながらも口当たりがよい傑作。やはりロシア恐るべし。
シンフォニック度・・8 メロディアス度・・8 ドラマティック度・・9 総合・・8.5
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The GOURISHANKAR「2nd Hands」
ロシアのシンフォニックロックバンド、グリシャンカールの2nd。2007作
LITTLE TRAGEDIESの出現以降、ハイクオリティなバンドの宝庫となった感のあるロシアだが、
またシンフォ系の有望株が現れた。ドラム、ギター、ヴォーカル、キーボードという変則の四人編成で、
ゲストにヴァイオリン、フルートなども加わって、涼やかなシンフォニックサウンドを聴かせる。
基本はインストメインで、モダンな質感の美しいシンセアレンジにかすかな民族色を加え
適度にテクニカルな軽やかさとデジタリィなサンプリングを付加して楽曲を構築している。
Voが加わった曲ではDREAM THEATER的な質感も加わり、プログレメタリックフュージョンとでも
表現したくなるような現代的なサウンドに包まれる。オールドプログレファンには理解しづらいかもしれないが
このこだわりのなさ、雑多なパーツの再構築は、むしろ若いリスナーのプログレへの窓口になるかもしれない。
シンフォニック度・・8 雑食プログレ度・・9 モダンアレンジ度・・9 総合・・8
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◆アメリカ、カナダ

MAGELLAN 「IMPOSSIBLE FIGURES」
アメリカのシンフォニック・プログレバンド、マジェランの5th。2003作
2nd以降物足りない出来が続いたが、このアルバムは軽快なシンフォニック性と
マジェラン節ともいえるキャッチーな歌メロが復活した傑作となった。
トレント・ガードナーのシンセの多彩な音色はもちろん、どこかレトロなピアノの使用法や
やや時代的なコンセプトに基づいた雰囲気作りなど、深遠な部分を音に感じることができる。
また、レーベルがINSIDE OUTに変わったことも作用しているのだろう、
これまでのもったり感が払拭されていてプログレメタル、プログレハードとしても充分に聴ける。
シンフォニックでキャッチーだが、全体的に締まった感じの密度の高さがある。
シンフォニック度・・8 キャッチー度・・8 プログレハー度・・8 総合・・8
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CAIRO 「CONFLICT AND DREAMS」
アメリカのシンフォニック・プログレバンドカイロの2nd。1998作。
1stの時点ではあまりにもYES/ELP色が強すぎたが、この2ndでは彼ら独自の色が出始めている。
Voの歌いまわしには今だYES臭さがのこるし、KEYのELP好きは顕著に音に表れているが、曲が良くなった。
同じレーベルの先輩であるSHADOW GALLERYにも通じる、メタリックなプログレアレンジが功を奏して、
長い曲でもだれることなく緊張感と叙情を保たせることに成功しているのが大きい。
以前はシンセに押されて目立たなかったギターのフレーズも効果的になり、シンフォニックに音を厚くしている。
70年代的プログレの香りを受け継ぐテクニカルシンフォサウンドは傑作と呼べるクオリティになった。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・8 キーボー度・・9 総合・・8.5
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SPOCK'S BEARD「OCTANE」
アメリカのプログレバンド、スポックス・ビアードの8th。2005作
今作はのっけからドラマティックイントロで、ぐつと期待感が高まる。
鬱屈していたものを爆発させたような前作に比べ、サウンドから感じられる世界観がしっかりとあり、
全体を流れるシンフォニックロックとしての空間美と、コンセプチュアルなトータル感がうれしい。
やや力みすぎだったヴォーカルの歌唱にもやわらかみがついて、安心して聴けるし、
前作のようなヘヴィな曲もあるが、流れの中でのアクセントとなっているので、むしろ好感が持てる。
ソリッドな演奏とロックとしての躍動感をともないながら、従来のシンフォファンも満足させてくれ、
バンドの全ディスコグラフィーを通して「X」とともに代表作となれるだけのアルバムだ。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・8 空間美度・・8 総合・・8
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SPOCK'S BEARD 「same」
アメリカのプログレバンド、スポックス ビアードのアルバム。2006作
今作は前作から見られたヘヴィなサウンドをそのままに、そこに哀愁の泣きを盛り込むことに成功。
もちろん従来からのレトロなプログレ感覚も捨てきることはせず、それを風味程度に活かして
モダンな硬質感と上手く同居させている。楽曲の方も比較的コンパクトであるが、11分の大曲や
17分の組曲を織り込むなど意欲的にメリハリをつけ、それがアルバムとしての密度にもつながっている。
メタリックな質感を前に出したこともあり、HRファンからも受け入れられるサウンドだろうし、
NEAL MORSE時代を好む向きにも対応をした、ベテランらしい隙のない作品といえる。
メロディアス度・・8 ドラマティック度・・8 キャッチー度・・7 総合・・8
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NEAL MORSELifeline
アメリカのシンフォニック職人、ニール・モーズの2008年作
スポビ脱退後5作目となる本作も、相変わらずドラマティックなプログレ、シンフォニックで、
メロトロンの音色を含めてレトロかつきらびやかなシンセワークを中心に、
キャッチーな歌メロと、ときにProgMetal的なテクニカルさも見せつける。
今作もドラムを叩くのはマイク・ポートノイで、やはり随所にDREAM THEATER的な雰囲気もある。
タイトルからして命綱を伝って生還するというようなコンセプトがあるのだろうか。
ラストは感動的に盛り上げる。ともかく28分の大曲も含めて濃密なシンフォニックロック作だ。
シンフォニック度・・8 テクニカル度・・8 安心クオリティ度・・9 総合・・8
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TRANSATLANTIC「BRIDGE ACROSS FOREVER」
シンフォニックハードのスーパーバンド、トランスアトランティックの2nd。2001作
1stではいきなり1曲目から30分の大曲だったが、今回も全4曲うち25分以上が2曲という大作志向。
サウンドの方は、もはやメンバーがメンバーだけになんの心配もない。
全篇高密度かつ叙情的な、メロディアスシンフォニックのオンパレード。
恐らく前回よりも録音に金がかけられたのか、音質も向上し、曲の盛り上がりはよりド迫力に。
ロイネのメロディアスなギターフレージングは相変わらず素晴らしく、
ニール・モーズのキーボードワークも音色、メロディともに冴え、HRファンには不評な彼の歌も
バックの美しいコーラスハーモニーの中で問題なく聴ける。まさにシンフォニックの理想郷。
メロディアス度・・9 シンフォニック度・・9 プログレ度・・7 総合・・9
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MASTERMIND「ANGELS OF THE APOCALYPSE」
アメリカのプログレバンド、マスターマインドの6th。1999作
デビュー時から、MIDIギターによるキーボード音の再現や、テクニカルでクラシカルな楽曲で
マニアックなプログレファンの間では認知度も高いこのバンド。
しかし、何を思ったのかこのアルバムでは突如女性Vo入りのメタリックなサウンドへと変化している。
ツーバスで疾走するドラムに、ヤンス・ヨハンソンのキーボード、そして流麗なギターと、
歌い上げるリサ嬢のヴォーカルという、これはまさにシンフォニックメタルの音像だ。
ただし、インスト部分でのプログレッシブなアプローチは健在で、ベレンズ兄弟のギターとドラム、
そしてヤンスのキーボードが一体となったテクニカルな側面を存分に見せつけてくれる。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・7 女性Vo度・・7 総合・・8
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CRYPTIC VISION 「IN A WORLD」
アメリカのプログレハードバンド、クリプティック・ヴィジョンの2nd。2006作
今回はいきなり16分を超える組曲から始まるという気合の入り方で、
いっそうのシンフォニックかつドラマティックさを増したサウンドが素晴らしい。
また、部分部分ではしっとりとした叙情も聴かせ、巧みに緩急を配した曲構成も心憎い。
トッド・プラント(MILLENIUM)の歌うやわらかみのあるヴォーカルメロディとともに
NEAL MORSETRANSATLANTICあたりにも接近したような雰囲気で、
キャッチーさとシンフォニックのバランスも絶妙だ。録音の質も上がっていてマイナー臭さも消えた。
センスとメリハリのある、ドラマティックなプログレシンフォ傑作。コレ買いです!
メロディアス度・・8 ドラマティック度・・8 キャッチー度・・8 総合・・8
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Presto Ballet「Invisible Places」
アメリカのプログレバンド、プレスト・バレットの3rd。2011作
METAL CHURCHのカート・ヴァンダーホーフを中心としたバンドであるが、
キャッチーなメロディアスさで聴かせるサウンドは本作も変わらず。
オルガンやムーグの音色など、レトロなシンセワークもふんだんに使い、
メロディアスでやわらかみのあるサウンドは、TRANSATLANTICなどのファンにも楽しめる。
曲はほとんどが7分以上であるが、アレンジ、構築性の点でも高品質で、
SPOCK'S BEARDなどにも通じる、爽やかなハードシンフォニックの力作だ。
シンフォニック度・・8 メロディアス度・・8 プログレ度・・8 総合・・8
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Signs of One「Innerlands」
カナダのプログレバンド、サイン・オブ・ワンの2007年作
いかにも北米のバンドらしいキャッチーなメロディで軽快に聴かせるサウンドで、
YES的な構築性とモダンなアレンジが合わさった、プログレハード的な質感もある。
ヴォーカルの声質も含めてRUSHからの影響もそこはかとなく感じさせるが、
それは演奏力の高さとキレの良さ、楽曲のアレンジセンスにも表れている。
適度なテクニカル性と叙情性によるメリハリの効いた構成も見事で、
シンフォニックな美しさとともにProgMetal的なスケールの大きさも感じさせる。
メロディアス度・・8 プログレ度・・8 アレンジセンス・・8 総合・・8
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◆南米、その他

CAST 「NIMBUS」
メキシコのシンフォニックロックバンド、キャストの2004作
今回は、シリアスなハードシンフォサウンドで組曲的な大曲もあることから、どうもコンセプトアルバムのようだ。
ベテランらしく聴かせどころはツボを心得ていて、メロウな泣きのフレーズを奏でるギターに、音色豊かなシンセ、
哀愁をまとわせたヴォーカルと、フルート、それにゲストの女性Voもよいアクセントになっている。
昨今勢いのあるチリのMylodonレーベルからの配給ということもあってか、
しっとりとした部分は繊細に、ハードな部分はプログレメタル的にもなり、
同レーベルの新鋭MATRAZを思わせるドラマティックな構成美が光る。
メロディアス度・・8 ドラマティック度・・8 プログレメタル的度・・8 総合・・8.5
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CAST「Com.Union」
メキシコのシンフォニックロックバンド、キャストの2007作、
今作もベテランらしい充実の完成度。いかにもプログレ的な軽やかなリズムにシンフォニックなシンセと
ギターが絡み、そこに重なるフルートの音色はイタリアンプログレ的な叙情を感じさせる。
軽快かつメロディアスで、非常に濃密な作風ながらも、かっちりと合わさったアンサンブルが
抜群の一体感となっていて音に煩さを感じさせないのが見事だ。
スペイン語の歌唱が加わると、分厚いサウンドはときにハードシンフォニック的な
重厚さをかもし出しつつも、ピアノによる艶やかな叙情パートでは泣きの哀愁も覗かせる。
これだけ詰め込んでいながらも、全体的にはしっかりとメロディアスで聴きやすく、
ぱっと出の新人では作れない貫祿がある。世界基準で見ても傑作といい得る内容だ。
シンフォニック度・・9 プログレ度・・8 濃密度・・10 総合・・8.5
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ENTRANCE「entre dos mundos」
チリのシンフォニックロックバンド、エントランスの3rd。2008作
アルバム2枚とライブ作1枚を出してから解散していたと思われていたこのバンドが、
ソロ活動から戻ってきたシンセ奏者ハイメ・ロサスを迎えて復活した。
サウンドの方は相変わらずのコテコテのハードシンフォニック全開。
縦横無尽のロサスのシンセワークを中心に、ときにProgMetal的なハードさと、
スペイン語の歌声とともに濃密に聴かせる。全体的に優雅さよりも暑苦しさを感じさせるところは
イタリアンのバンドにも通じる勢いがあり、この手が好きなリスナーなら間違いない。
シンフォニック度・・8 濃密度・・9 南米度・・9 総合・・8
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Nexus「Metanoia」
アルゼンチンのシンフォニックロックバンド、ネクサスの2nd。2001作
前作も濃密なシンフォ作であったが、本作もオルガンをまじえたELPを思わせる
華麗なシンセワークを中心に、コテコテに弾き倒す72分の濃厚力作。
もちろんたたみかけるだけでなく、南米らしいやらわかな叙情もあり、
メロウなギターフレーズにシンセが絡み、女性声が歌を乗せる美しさも味わえる。
そのスペイン語による女性ヴォーカルの活躍が少し増えているのも嬉しい。
14分の大曲を含めて、総じて「シンフォでしかありえない」というこのサウンドには
少々うんざりする方もおるかもしれないが。胃もたれしないようにお聴きください(笑)
シンフォニック度・・8 濃密度・・9 南米度・・9 総合・・8
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ANIMA MUNDI「The Way」
キューバのシンフォニックロックバンド、アニマ・ムンディの2010年作
前作が大変素晴らしかったこのバンドだが、3作目となる今作もまた大変な力作。
女性シンセ奏者を含む5人編成で、メロディアスかつ繊細な叙情と、見事な展開力で、
キューバという地域性を吹き飛ばすような濃密なシンフォニックロックをやっている。
なにしろ1曲目から14分の大曲で、2曲目が26分の組曲という気合の入りようだ。
ときにゆったりとしたスペイシーな壮大なビジョンを描きつつ、アコースティックな素朴さも織り込みながら、
あくまでやわらかなメロディでじわじわと盛り上げて行くサウンドは、TRANSATLANTICにも負けていない。
泣きのギターと美麗なシンセが重なってゆく瞬間は、すべてのシンフォニックロックファンが降参するだろう。
シンフォニック度・・8 ドラマティック度・・9 総合・・8.5
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TOCCATA  「CIRCE」
メキシコのシンフォニックロックバンド、トッカータのアルバム。2005作
確か店のタタキにはCAST+ALHAMBRAとか書かれていた気がするが、
なるほどシンフォニックかつテクニカルで、ところによりハードというサウンド。
きらきらとしたキーボードにメロウなギター、そして情熱的な女性Voの母国語の歌唱と、
どれもが濃くそして熱い、いかにも中米らしいシンフォニックロックである。
やや唐突ながら次々に展開してゆく楽曲は、この手のハードシンフォ好きにはたまらないし、
新人にしては演奏力も問題なし。ジャケがダサすぎるのが玉に傷であるが…。
8曲中8分以上の曲が5曲と大作志向であるが、なにせ展開が多いので飽きさせない。
メロディアスで大仰、テクニカルかつ情熱的なシンフォニックアルバム。たっぷり濃厚です。
シンフォニック度・・8 メロディアス度・・8 熱情度・・9 総合・・8

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CRISALIDA 「same」
チリのハードシンフォニックバンド、クリサリダのアルバム。2006作
MATRAZをはじめ、ハードめのシンフォニックバンドの多いこの国だが、
このバンドもDREAM THEATERに影響を受けたとおぼしきメタリックなテイストと
スペイン語の女性Voの情熱的な歌唱が特徴的な、クオリティの高いサウンドをやっている。
かなりハードエッジなギターワークは、メタルファンでも普通に楽しめるくらいにテクニカルだし、
きらきらとしたシンセワークもなかなかのもの。曲は3〜6分台で比較的シンプルにまとまっていて
聴きやすく、プログレメタルとしても充分出来が良い。オフィシャルサイトで試聴可能。
シンフォニック度・・7 メタリック度・・8 女性Vo度・・7 総合・・8
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Mar de Robles 「MdR」
チリのテクニカルシンフォバンド、マール・デ・ロブレスのアルバム。2003作
ENTRANCE一派やMATRAZなど、高品質なシンフォニックバンドが続出しているこの国だが、
このバンドもかなりのクオリティと個性を持ったバンドだ。
RUSHDREAM THEATERからの影響を感じさせる展開の多さに、
フルート、サックスなどのジャズロック的な味付けと、民族性を付加したようなサウンドで、
一聴してガチャガチャとしているのだが、硬質感よりは南米的な味わいが前に出ている。
変態的シンフォニックロックというか、飽きさせない多様性の点でDISCUSあたりにも通じるものがあり、
演奏の確かさもあって、ハードめのドライブ感と叙情性が同居しているのも苦にならない。
メロディアス度・・7 プログレ度・・8 変態度・・8 総合・・8

MATRAZ 「GRITARE」
チリのシンフォニックロックバンド、マトラスの2nd。2004作
今やシンフォニック大国となりつつあるチリだが、このバンドもワールドクラスの実力を持つ。
スリリングでテクニカルな演奏はメタル色の薄いDREAM THEATERといった印象もあり、
音はけっしてやかましくならないが流れるような演奏はまるでKENSOのように優雅で、
たたみかける場面でもどこかクールな「静けさの美」を持つセンスが素晴らしい。
クラシカルなピアノはサウンドに格調高さをもたらし、スペイン語の女性Voの歌唱は、
インストだけでは硬質になりすぎるところを、上手い具合にやわらかなバランスを保たせている。
南米なのに涼やかで、適度に硬質で、シンフォニックかつクラシカル。傑作アルバムです。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・8 クールな叙情度・・9 総合・・8.5
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PIG FARM ON THE MOON 「ORBITAL」
ヴェネズエラのプログレバンド、ピッグ・ファーム・オン・ザ・ムーンのアルバム。2002作
ツインギターにキーボード入りの5人組みで、サウンドはプログレメタリックな質感も漂わせつつ、
基本はメロディアスな聴きやすさにあり、展開の多い楽曲は濃密でアレンジの質もなかなか高い。
のっけから16分の組み曲ではじまり、その後も9分、12分、18分と続く大曲揃いの力作であるが、
メリハリのある展開力や、巧みな叙情パートの配し方などもセンスが良く、飽きさせない。
清涼感のあるシンセワークや、英語による歌唱もあって、地域的なマイナーさもあまり感じないし、
ゲストによるヴァイオリンやチェロなども楽曲に壮大さを加味している。
曲によってはもろにDREAM THEATER風な部分もあり、チリのMATRAZとともにプログレメタルリスナーにも勧められる作品だ。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・8 Prog Metal度・・8 総合・・8
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DISCUS 「...tot licht!」
インドネシアのプログレバンド、ディスクスの2nd。2003作
聴きはじめたとたん、無節操で高度な演奏と矢継ぎ早の展開に唖然となる。
やや変態入ったジャズロックかと思いきや、なにげにバックではギターがメタルリフを弾いているし、
かと思うとガムランの詠唱みたいのが始まってゆったりとしたサックスのメロディ〜
シンフォチックなキーボード、美声の女性Voのたおやかな歌声などにうっとりしていたら
次の曲では、アヴァンギャルドな変則リズムに乗せて歪み系男Voがガナってますよ(^^;)
プログレ…ジャズ、シンフォ、メタル、民族音楽と、様々な要素を叩き込み
彼らのセンスにおいてゴッタ煮にして仕上げましたという感じで、
結果として恐るべきプログレッシブな作品になっています。楽しみ所満載で怖いほど。
テクニカル、メロディアス度・・9 プログレ度・・10 ごった煮度・・10 総合・・9
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IMANISSIMO「Z's Diary」
インドネシアのプログレバンド、イマニシモのアルバム。2004作
恐るべき完成度を誇ったDISCUSの2ndを聴いてからというもの、インドネシアのシーンへの
興味はかなり高まっていたのだが、そんな中現れたこのバンドもまたしても驚異のクオリティだ。
基本は、ギター、ベース、ドラム、キーボードという編成なのだが、
メロディアスでシンフォニック、テクニカルで適度にメタリックというサウンドは、
たおやかなフルートやパーカッション、そして民族的な色合いをかもし出しつつのきらびやかな
プログレッシブハード系作品となっている。DISCUSほどにはたたみかけるようなインパクトはないが、
組曲形式の43分の大曲では、メロウな旋律とシンフォニックでゆるやかな盛り上がりが相まって、
内的宇宙のスケールを感じるまでに壮大な世界観を感じさせてくれる。おそるべしインドネシア…
シンフォニック度・・8 プログレ度・・8 壮大度・・9 総合・・8


*薄暗系プログレ特集
*90年代シンフォニックロック特集
上記ページも併せてご覧ください


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