幻想フォーク特集
70年代アシッドフォーク〜現在形ネオフォークまで



7
0年代の英国フォークバンドは、Fairport Conventionのような、いわば大衆的な非トラッド系フォーク、
そして、STEELEYE SPANのような土着的な味わいのトラッド系フォーク、という分け方ができると思うのだが、

個人的には、その中間というような、適度に土臭く、適度にキャッチーなフォークサウンドが好みである。
もっといえば、日常ではなく幻想の世界を描くような、神秘性とミステリアスな雰囲気をもった作品を愛している。
英国フォーク三種の神器ではやはり、MELLOW CANDLEが一番で、次がSPIROGYRAの3rdであろうか。
さらにはアシッド・フォークとも呼ばれる、TREESあたりのミステリアスな叙情性などにとても惹かれるのだ。
70年代の英国フォークやアシッドフォークを原点に、プログレ、シンフォニック方面ともリンクしつつ、
現在でも、多くのフォーク系バンドが現れている。ここでは、そうした幻想美に包まれた作品を紹介したい。

                      2016.3  緑川 とうせい


◆70年代英国幻想フォークの原点


Forest
イギリスのフォークバンド、フォレストの1969年作
幻想的なジャケが印象的だが、サウンドの方もアコースティック楽器を主体にした牧歌的なフォークで、
12弦ギターやマンドリンのつまびきに、やわらかなヴォーカルハーモニーが重なり、
随所にオルガンの音色も加わった、古楽的な味わいも含んだ優雅な聴き心地。
演奏にしろ歌にしろ、ほどよくヘタウマなマイナー臭さが、むしろ幻想的なユルさになっていて、
のんびりと鑑賞できる。英国のアシッドフォークとしては、幻想サイケフォーク寄りの好作品。
アコースティック度・・8 牧歌的度・・8 優雅度・・8 総合・・7.5
Amazonで購入する

TREESOn the Shore」
イギリスのフォークロックバンド、トゥリーズの2nd。1970年作
ヒプノシスによる水撒き少女のジャケで有名な英国幻想フォークの傑作。
サウンドの方は、美しい女性ヴォーカルの歌声で聴かせるフォークロックで、
アコースティックを主体にしつつも、随所にエレキギターやドラムも入ってきて、
Renaissanceあたりを好むプログレファンなどにも聴きやすい作品だろう。
牧歌的でたゆたうような曲調の中に、翳りのあるミステリアスな質感が同居しているのも魅力。
1stジェーン・ドゥロウニーの庭も同様に質の高い作品だが、ジャケのインパクトではやはり本作か。
フォークロック度・・8 英国度・・9 女性Vo度・・8 総合・・8
Amazon.co.jp で詳細を見る

TRADER HORNE「Morning Way」
英国のフォークバンド、トレイダー・ホーンの1970年作
Fairport ConventionJudy DybleThemなどで活躍したJackie McAuley
を中心としたバンドで、これが唯一のアルバム。おとぎ話のようなジャケのイメージ通り、
牧歌的なフォークサウンドで、男女ヴォーカルのやわらかな歌声に、アコーステイックギターやフルートなどが
やわらかにメロディをつむいでゆきます。典雅なハープシコードの音色は古楽的でもあり、
古き良き英国の風を届けてくれる。うっとりと夢見心地で楽しめる好アルバムです。
アコースティカル度・・9 牧歌的度・・9 女性Vo度・・8 総合・・8
Amazon.co.jp で詳細を見る

Marie Celeste 「And Then Perhaps」
イギリスのフォークバンド、マリー・セレストの1971年作
幻のブリティッシュ・アシッドフォークバンド、唯一の作品で、航海中に無人船として発見された
謎の事件、マリー・セレスト号を名前にしていることからも、ミステリアスなイメージであるが、
サウンドの方はアコースティックギターを主体に、男女ヴォーカルの歌声を乗せた牧歌的な聴き心地。
シンプルな音数の中にも、英国らしいウェットな空気感を漂わせるところは、マニア好みの雰囲気で、
二人の女性ヴォーカルの美しいハーモニーにはウットリとなる。まさにレアアイテムの奇跡のCD化ですな。
アコースティック度・・9 牧歌的度・・8 英国度・・9 総合・・7.5
Amazonで購入する



MELLOW CANDLE「SWADDLING SONGS」
ブリティッシュフォークバンド、メロウ・キャンドルの1972年作
邦題は「抱擁の歌」。スパイロジャイラ、チューダーロッジと並び賞されるこのバンドであるが、
個人的な好みで言えば、メロディアスなフォークという点ではこのメロキャンが最高である。
ピアノやハープシコードで格調高く彩られた楽曲に、たおやかな女性ヴォーカルを乗せ
素朴な聴き心地でありながらも、優しいメロディアス性で楽しめるという、まさにフォークの理想形。
随所にロック的なリズム感覚もあって、クラシカルな優雅さはときにRENAISSANCEをも思わせる。
ブリティッシュフォークってどんなのだろう?という方には、まずはコレから聴くことを強くお勧めする。
アコースティカル度・・8 プログレ度・・8 女性Vo度・・9 総合・・8.5
Amazon.co.jp で詳細を見る

SPIROGYRA「Bells Boots & Shambles」
英国フォークの名バンド、スパイロジャイラの3rd。1973年作
Mellow CandleTudor Lodgeとともにブリティッシュフォーク三種の神器とも呼ばれ、
バンドの最高傑作と言われるのが本作である。アコースティックギターからフルートの音色で始まる1曲目は、
哀愁のトランペットにクラシカルなピアノも加わって、翳りのあるドラマティックさとともに
プログレといってもよい展開で聴かせる名曲。8分もあるこの曲だけでも聴く価値ありです。
バーバラ・ガスキンの美しくもはかない歌声にうっとりとなる2曲目や、叙情的な5曲目、
それにラストの13分にもおよぶ大曲も見事で、このアルバムの価値を高めている。
アコースティカル度・・8 プログレ度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
Amazon.co.jp で詳細を見る

ITHACA「Game for All Who Know」
イギリスのアシッド・フォーク系バンド、イサカの1973年作
女性Voを含む3人編成で、本作が唯一の作品。美しいピアノに導かれて、
アコースティックギターにマンドリンでゆったりと聴かせるサウンド。
そこに男女ヴォーカルが夢見ごちな歌声を乗せてゆく。たおやかなフルートの音色に女性ヴォーカル、
不思議な浮遊感といかにも英国らしい優しい叙情性に包まれた
牧歌的な耳心地の良さ。CD化にあたって3曲が追加収録されている。
アコースティカル度・・8 牧歌的度・・9 英国度・・8 総合・・7.5
Amazon.co.jp で詳細を見る

STONE ANGE
イギリスのフォークバンド、ストーン・エンジェルの1975年作
アコースティックギターにやわらかなリコーダーとハープの音色が絡み
少し田舎くさい女性ヴォーカルが牧歌的に歌声を乗せる。
どことなくマイナーな薄暗さが魅力といえば魅力になっており、
この垢抜けなさがサウンドに英国の中世を感じさせる要因でもあろう。
素朴なヴァイオリンの音色に、どこか気の抜けたような男性ヴォーカルの歌声も、
「ゆったり生きてます」的な、ほのぼのとした雰囲気をかもし出している。
アコースティック度・・9 ゆったり英国度・・10 女性Vo度・・7 総合・・7.5
Amazon.co.jp で詳細を見る

SPRIGUNS「Time Will Pass」
イギリスのフォークロックバンド、スプリガンスの2nd。1977年作
サンディ・デニーに影響を受けたという女性シンガー、マンディ・モートンの伸びやかな歌声に
ロック的なドラムとエレキギター、ストリングスなども加わり、ドラマティックなサウンドを作り出している。
中世の魔女や騎士などを歌った世界観もファンタジックで魅力的だ。フォーク的な土臭さが薄いので
プログレリスナーにもお勧めできる英国フォークロックの逸品。次作「Magic Lady」も同様の傑作である。
アコースティカル度・・7 プログレ度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
Amazon.co.jp で詳細を見る


◆70年代、ドイツ、イタリアのアシッド・フォーク

HOELDERLIN「Hoelderlins Traum」
ドイツのプログレバンド、ヘルダーリンの1972年作/邦題「ヘルダーリンの夢」
ドイツの詩人、フリードリヒ・ヘルダーリンから名をとったバンドのデビュー作。
美しいピアノにアコースティックギター、艶やかなヴァイオリンとフルートが鳴り響き、
ドイツ語によるけだるげな女性ヴォーカルの歌声を乗せた、ドリーミィなサウンド。
アシッド・フォークロック風味の牧歌性に、ときにメロトロンを含むシンセも加えて
サイケな浮遊感も漂わせる。いわばフォーキーなクラウトロックとでもいうべきか。
POPOL VUEあたりが好きな方にも薦められる、土着的で神秘的な世界観も感じさせる好作品です。
ドラマテイック度・・7 プログレ度・・7 幻想度・・9 総合・・8
Amazonで購入する

EMTIDIsaat」
ドイツのサイケ・フォークプログレ、エムティディの1972年作
邦題は「芽生えの時」。男女のデュオで、ピアノやメロトロン、オルガンを含むシンセに、
アコースティックギターとたゆたうような女性ヴォーカルが歌を乗せる、しっとりとしたサウンド。
英国のサイケ、アシッドフォーク的な質感もあり、いくぶんSPIROGYRAあたりにも通じるが、
こちらの方がよりロマンティックで儚げな雰囲気に包まれた、茫漠とした幻想的な味わいである。
ジャーマン特有のシンセミュージック的な自由度と、たおやかなロマンが交差した素朴な作風だ。
10分を超える大曲もあり、夢見がちなシンフォニックロックとしても楽しめる好作品です。
シンフォニック度・・7 プログレ度・・7 夢見度・・9 総合・・7.5
Amazon.co.jpで詳細を見る

SAINT JUSTla casa del lago」
イタリアのプログレ・フォークバンド、サン・ジュストの2nd。1974年作。邦題は「湖畔の家」
前作よりもバンドとしての音になり、フォーク的な聴きやすさが増している。
アニー・ハズラム+ケイト・ブッシュといった声質のジェーン・ソレンティの歌声を中心に、
ヴァイオリンにアコギ、サックス、それにプログレ的なシンセが加わったサウンドは、
幻想的なイタリアンロックとしての側面と、素朴なアシッドフォークの質感を併せ持っている。
ミステリアスな静けさと狂気では前作だが、全体としてのまとまりの良さでは本作をとりたい。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る


◆イギリスの現在形・幻想フォーク

STONE ANGEL「Lonely Waters」
イギリスのフォークバンド、ストーン・エンジェルの2004年作
1975年に1枚のアルバムを残し消えたが、2000年に復活作を発表、本作は復活2作目となる。
美しい女性ヴォーカルの歌声を中心に、アコースティックギターと牧歌的なマンドリンの音色とともに
ゆったりと聴かせるサウンド。クラムホルンやリコーダー、オーボエなどがやわらかに鳴りつつ、
シンセやエレキギターなども使用していて、適度にフォークロック的な味わいもあるのが良い。
かつての英国フォークの幻想性を閉じ込めたしたような素晴らしいアルバムだ。
メロディアス度・・8 70's英フォーク度・・9 幻想度・・9 総合・・8
Amazon.co.jp で詳細を見る



Judy Dyble 「Talking with Strangers」
英国のフォークシンガー、ジュディ・ダイブルの2009年作
Fairport Conventionのオリジナルシンガーである彼女が、本作はNO-MANのTim Bownessとコンビを組み、
ロバート・フリップ、パット・マステロト、イアン・マクドナルドのKING CRIMSON組に、
FAIRPORT CONVENTION
のサイモン・ニコル、PENTANGLEのジャッキー・マクシー、
ALL ABOUT EVEのジュリアンヌ・リーガン、TREESのセリア・ハンフィリスらをゲストに迎え、
より70年代英国の世界に回帰したような、幻想的なアシッド・フォークを聴かせる。
ゆるやかに響くフルートの調べに、しっとりとしたシンセ、ときにメロトロンなども使いながら
KING CRIMSONの叙情部を思わせる美しさと、儚く夢見ごちの歌声でやわらかなサウンドを描いてゆく。
ラストにいたっては19分の大曲で、サックスも含んで変拍子アレンジのクリムゾン的なプログレ曲が炸裂。
英国度・・8 プログレ度・・8 女性Vo度・・7 総合・・8
Amazon.co.jp で詳細を見る

ThistletownRosemarie」
イギリスのフォークバンド、ティストレタウンの2008年作
2人の女性ヴォーカルを含む5人組みで、古き良き英国フォークの叙情を抽出したような
幻想的なサウンドをやっている。アコーステイックギターにマンドリン、アコーディオン、
フルートの音色に、けだるい女性ヴォーカルの歌声を乗せてしっとりと聴かせる。
到底現代の音とは思えないような、牧歌的な古めかしさが、ある意味では異色でもあり、
時の流れを封じ込めたようなドリーミィなフォークサウンドに浸れる。
アコースティック度・・8 幻想フォーク度・・9 女性Vo度・・8 総合・・8
Amazon.co.jp で詳細を見る



Pamela Wyn Shannon 「Courting Autumn」
イギリスのネオフォークアーティスト、パメラ・ウィン・シャノンの2007年作
アコースティックギターのつまびきに、素朴なリコーダーの音色、しっとりとした女性ヴォーカルで聴かせる、
古き良き英国フォークの叙情性を受け継いだサウンド。いくぶん翳りを含んだ幻想性もあって、
非トラッド系の作風ながら、古楽的な中世風味を感じさせるところは、なかなかに好みです。
ヴァイオリンやチェロなどのストリングスも随所に優雅な音の厚みを加えている。
近年の英国ネオフォーク系のバンド/ユニットでは、TapestryやThistletownなどがよかったが、
この作品も幻想的な叙情性と世界観で、ネオフォークの傑作というべき内容だと思う。
アコースティック度・・9 英国度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る


Tapestry 「Once Upon A String」
イギリスのフォークユニット、タペストリーの2010年作
男女二人のユニットで、アコースティックギターのつまびきに
女性ヴォーカルの歌声で聴かせる、しっとりとしたフォークサウンド。
ジャケはウィリアム・ホルマン・ハントの「シャーロットの女」で、
10分を超える大曲“Lady of Shalott”は、ストリングスアレンジなども加わって、
SPRIGUNSなどを思わせる幻想的なフォークプログレとしても楽しめる。
しっとり度・・8 幻想フォーク度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る



The Unthanks「Last」
イギリスのトラッド/フォークユニット、アンサンクスの2011年作
美しいストリングスにしっとりと響く二人の女性ヴォーカルの歌声、
前作同様の正統的なトラッド・フォークを基本にしつつ、より優雅な格調高さが加わっていて、
英国的なトラッドを宮廷風に仕上げたというような感触がなんとも絶妙である。
ストリングスに重なるトランペットもよろしく、チェンバーロック風味のクラシカルさも味わえる。
KING CRIMSONの“Starless”のカヴァーもハマってます。これは素晴らしい傑作。
アコースティカル度・・8 優雅な英国度・・9 女性Vo度・・8 総合・・8.5
Amazon.co.jp で詳細を見る



Odin Dragonfly「Offerings」
イギリスのフォークユニット、オーディン・ドラゴンフライの2007年作
Mostly AutumnのHeather FindlrayとAngela Gordonによるユニットで
美しいフルートの音色にピアノのつまびき、そしてしっりとした女性ヴォーカルの歌声で聴かせる
やわらかなネオ・フォークサウンド。アコースティカルなMostly Autumnという感じもあって
RENAISSANCEなどの英国プログレや繊細系シンフォニックロックの耳でも楽しめる好作品。
メロウ度・・8 繊細度・・9 女性Vo度・・8 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る Amazon.MP3





Trembling Bells「Constant Pageant」
スコットランドのフォークロック、トレンブリング・ベルズの2011年作
エレキギターにオルガンなども入った、フォークロックスタイルのサウンドで、
美しい女性ヴォーカルの歌声に、ときにケルティックな味わいも感じさせる牧歌的な聴き心地。
ギターにはサイケ的な感触もあって、70年代ロック的なおおらかなノリと浮遊感が楽しい。
ヴォーカルのラヴィニア嬢は歌って、シンセも弾いて、ときどきギターも弾くという美人さん。
中世音楽的なメロディもいい感じで、お酒を飲みながら楽しめる、ユル系のフォークロックです。
サイケフォーク度・・8 叙情度・・7 女性Vo度・・8 総合・・7.5
Amazon.co.jpで詳細を見る



MAGICFOLK
イギリスのフォークロック、マジックフォークの2007年作
アコースティックギターにフルート、シンセを含んだ美しいアレンジと
しっとりとした女性ヴォーカルの歌声で聴かせる、幻想的なフォークロック。
ドラムやエレキギターが入ったロック色があるので、IONAあたりもに通じる
ケルティックロックの感触で楽しめる。マイナー臭い野暮ったさも素朴な味になっていて、
全体的に派手さはないものの、ゆったりと神秘的な世界観で聴かせてくれる。
シンフォニック度・・7 叙情度・・8 女性Vo度・・8 総合・・7.5
Amazon.co.jpで詳細を見る



ARTORIUS
イギリスのネオフォーク、アルトリウスの2007年作
アーサー王伝説をテーマにした作品で、うっすらとしたシンセをバックに映画的なナレーションから始まり、
アコースティックギターの優美な音色にやわらかなシンセアレンジ、女性ヴォーカルの歌声とともに、
幻想的なネオフォークを聴かせる。随所にエレキギターや男性ヴォーカルを加えたり、
IONAあたりにも通じるケルティックでシンフォニックな感触もあり、リコーダーが鳴り響く、
Gryphonのような優雅な古楽風味も覗かせる。自主制作ながら、ファンタジックな幻想美に浸れる好作品です。
アコーステッィク度・・7 幻想度・・8 優美度・・8 総合・・7.5

Oceanfield「Stolen Time」
イギリスのアシッド・フォークロックバンド、オーシャンフィールドの2008年作
女性ヴォーカルのジェーン・バレットさんを中心に、ロック的なギターとドラムも入った
かつてのSPRIGUNSあたりを思わせる妖しげなフォークロックサウンド。
ハスキーな歌声にはエキセントリックな情感と魔女めいた艶っぽさがあり、
ドカドカとしたドラムに絡むギターなどにはサイケロック的な味わいもある。
一方ではマンドリンやホイッスルなどの牧歌的な質感も含んでいてなかなか面白い。
メロディアス度・・7 フォークロック度・・8 女性Vo度・・7 総合・・7.5
Amazon.co.jp で詳細を見る



December's End「Thirst for Rain
イギリスのフォークロックバンド、ディセンバーズ・エンドの2010年作
やわらかなアコースティックギターにヴァイオリンの音色、バウロンのリズムをバックに
女性ヴォーカルがしっとりと歌い上げる。かつてのAll About Eveのような翳りある叙情性と
アコースティカルな素朴さ、どこかもの悲しい雰囲気と切なさをかもしだす歌声が素敵です。
声質といい歌い方といい、このヴォーカルさんは本当にジュリアンヌ・リーガンのようですわ。
アコースティカル度・・8 切ない叙情度・・9 女性Vo度・・8 総合・・8
Amazon.co.jp で詳細を見る




IZZY'S DAUGHTER 「Autumn Flowers」
イギリスのネオフォーク、イジーズ・ドウターの2013年作
アコースティックギターのつまびきに、しっとりとした女性ヴォーカルの歌声、
うっすらとしたシンセに物悲しいチェロの音色も加わったゴシック寄りのネオフォーク。
翳りを帯びた倦怠感は、All About Eveなどにも通じる世界観で、そのたゆたうような歌声は、
ジュリアンヌ・リーガンとケイト・ブッシユを合わせたような雰囲気。楽曲は3分前後で、わりとあっさりしているのだが、
少ない音数で幻想的な世界を描くセンスという点では、今後に期待したいアーティストである。
幻想度・・8 ゴシックフォーク度・・7 女性Vo度・・8 総合・・7.5
Amazonで購入する



Galley Beggar 「Silence & Tears」
イギリスのフォークバンド、ギャリー・ベガーの2015年作
アコースティックギターのつまびきに女性ヴォーカルの歌声で聴かせる、古き良き感触のフォークサウンド。
Cathedralのリー・ドリアンのレーベルからの作品ということで、なるほど中世を思わせる妖しげな雰囲気や
いくぶん土着的な感触もあって、伝統的な英国フォークに幻想性を付加したような聴き心地である。
女性奏者が奏でるヴァイオリンの音色に素朴なマンドリンも耳心地よく、牧歌的なやわらかさに包まれた
英国らしい湿り気のあるサウンドで、ドラムも入った適度なロック風味もあり、フォーク初心者にも楽しめるだろう。
ドラマティック度・・8 英国度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る




◆アメリカ、オーストラリアの幻想フォーク

Joanna Newsom 「Ys」
アメリカの女性SSW、ジョアンナ・ニューサムの2006年作
ハープの弾き語りシンガーとして脚光を集めるアーティストで本作は幻の都市Ysをテーマにした作品。
やわらかなグランドハープのつまびきとオーケストラによるアレンジを含んだサウンドで、
どこか魔女めいた彼女の歌声が幻想的に響いてゆく。10分前後の大曲を中心に、
英国フォークルーツの素朴な牧歌性を神秘的に解釈したという世界観が魅力的だ。
ジョアンナの歌声は、ときにかつてのケイト・ブッシュのようなエキセントリックな表情も見せる。
単なる女性SSWという以上のアーティスティックな側面を感じさせる傑作です。
アコースティック度・・8 幻想度・・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る


White Magic 「Dat Rosa Mel Apibus 」
アメリカのアシッド・フォークバンド、ホワイト・マジックの2006年作
ピアノにギター、ドラムも入ったフォークロック的な演奏に、エキセントリックな女性ヴォーカルの歌声を乗せたスタイル。
どこか呪術的な妖しさと倦怠感を含んだ雰囲気は、近年でいうとJoanna Newsomなどの世界観にも通じるものがある。
楽曲自体はむしろシンプルでポップであるが、現代的フォーマットのバンドサウンドの中に、古めかしい土着性や、
毒々しい大衆性が感じられて、いわば古ぼけた100年前の空気を蘇らせるかのような聴き心地である。
リーダーであるミラ・ビロットの歌声が綺麗すぎないことも、このバンドの音にはよくマッチしている。
個人的には、さらにエキセントリックに、もっと妖しい作風へと深化していってもらいたい。
ドラマティック度・・7 フォーク度・・7 女性Vo度・・7 総合・・7.5
Amazon.co.jpで詳細を見る


Fern Knight「Castings」
アメリカのアシッドフォークバンド、フェーン・ナイトの2010年作
アコースティックギターにゆるやかなハープの音色、そこに夢見がちな女性ヴォーカル
浮遊感のあるスキャットが乗る幻想的なフォークロック。歪ませたギターはむしろサイケロック的の質感で、
前作に比べるとよりプログレ的になっている。イギリスのTreesあたりを思わせる素朴な雰囲気もあり
KING CRIMSONの“Epitaph”のカヴァーも含めて、プログレ系のフォークロックとして楽しめる出来だ。
アシッドフォーク度・・8 サイケ度・・8 女性Vo度・・7 総合・・8
Amazon.co.jp で詳細を見る




The Steals「Static Kingdom
アメリカのネオフォークバンド、ステールズの2009年作
たゆたうような女性ヴォーカルの歌声で夢見ごちに聴かせる、しっとりとしたサウンド。
アコースティカルな牧歌性にオルガンなどのシンセやドラムが入ったロック色も含みつつ、
All About Eveのような倦怠の翳りと、アシッド・フォークやサイケ的でもある浮遊感とともに、
まどろむような耳心地を味わえる好作品。8分以上の大曲もあり、プログレファンにも楽しめます。
メロウ度・・8 夢見度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
Amazon.co.jp で詳細を見る




Fursaxa 「Lepidoptera」
アメリカのフォークユニット、フルサクサの2005年作
オルガンが鳴り響き、美しいソプラノ女性ヴォーカルがしっとりとした歌声を響かせる、
幻想的で夢見心地のサウンド。妖しいフルートの音色に、魔女めいた呪文のようなつぶやき、
民族的なパーカッシヨンにアコースティックギター、詠唱じみたヴォーカルで聴かせる曲など、
アシッドフォークというよりもさらに神秘的でアヴァンギャルドな空気が広がってゆく。
アシッドフォーク版ドローンというか、ある種トリップ感のある作風。嫌いではないんです。
アコースティック度・・8 神秘的度・・8 女性Vo度・・7 総合・・7.5
Amazon.co.jpで詳細を見る



The Goblin Market 「Beneath Far Gondal's Foreign Sky」
アメリカのフォークロック、ゴブリン・マーケットの2012年作
The Green Pajamasにも参加するメンバーによるユニットで、やわらかなピアノやシンセによる美しいアレンジに
しっとりとした男女ヴォーカルの歌声を乗せた、シンフォニックで幻想的なフォークサウンド。
アコースティックギターのつまびきに乗る女性ヴォーカルの歌声は、アニー・ハズラムあたりを思わせ、
その伸びやかな美しさにうっとりとなる。オルガンやエレキギターも加わったフォークロックな感触は
プログレファンにも対応するだろう。男性ヴォーカルメインの曲もあるが、マイルドな歌声に女性声が絡む
繊細な叙情を描いていて、聴き心地が良い。これは掘り出し物的な好作品だ。
ドラマティック度・・8 幻想フォーク度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る


Marissa Nadler 「For My Crimes」
アメリカの女性SSW、マリッサ・ナドラーの2018年作
2004年にデビューし、本作で8作目となる。アコースティックギターのつまびきに、
はかなげな彼女の歌声を乗せた、シンプルな味わいのネオフォークサウンド。
チェロやヴァイオリンなどのストリングスを加え、寒々しい叙情性と倦怠の幻想性に包まれた
物悲しい世界観で、美しいヴォーカルとともにウットリしながら浸れること請け合い。
楽曲は2〜4分前後で、全34分という作品なので、飽きずに聴き通せるのもよいですね。
アコースティック度・・8 儚げ度・・9 女性Vo度・・8 総合・・7.5
Amazonで購入する



Louisa John-Krol 「Djinn」
オーストラリアの女性アーティスト、ルイサ・ジョン-クロルの2009年作
1996年にデビュー、6作目の本作は、ジャケのイメージのように妖精の猫をテーマにしたコンセプト作。
アコースティックギターにハープシコードの優雅な音色、いくぶんエレクトロなシンセアレンジに
女性ヴォーカルを乗せた、モダンなネオフォークサウンド。キャッチーなポップ性も含ませつつ、
ときにシンフォニックなシンセの重ねや艶やかなヴァイオリンとともに、マジカルで幻想的な世界観を描いてゆく。
どこか童話的なイメージもある雰囲気とコケテッィシュな歌声は、KATE BUSHなどのセンスにも通じるだろう。
小曲を織り込んだ流れのある楽曲の連なりで、じっくりと優雅な幻想フォークを楽しめる。
ドラマティック度・・8 幻想度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
Amazonで購入する


Hamacas Al Rio
アルゼンチンのフォークロック、ハマカス・アル・リオの2004年作
うっすらとした幻想的なシンセワークとアコースティカルな繊細な叙情、
そして女性ヴォーカルのスペイン語の歌声が優しく合わさったサウンドは、
ゆったりとした優美な耳心地。たおやかなフルートの音色やメロトロン的なシンセが混じると、
プログレリスナーにも楽しめるような雰囲気になる。この女性声の魅力もあいまって、
英国フォークのドリィミーさを南米的に叙情豊かに仕上げたというような好作品になっている。
叙情度・・9 繊細度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る




◆イタリア、ドイツ、ポルトガル、スイスの幻想フォーク

Middle Aging 「The Call」
イタリアのフォークロック、ミドル・エイジングの2003年作
いかにも素人臭いジャケが微笑ましいが、サウンドの方はアコースティックギターにチェンバロが響き
やわらかなフルートの音色で聴かせる、中世バロック的な雰囲気の優雅で繊細なサウンド。
美しい女性ヴォーカルの歌声に男性ヴォーカルが絡み、ときにオルガンが加わったり
エレキギターやドラムも入るなどして、フォーク・プログレ的な感触でも楽しめる。
ケルトの定番曲である、“Greensleeves”や“Scarborough Fair”なども取り上げている。
Blackmore's Nightあたりをもっとマイナー臭くしたという感じか。この手が好きな方はいかが。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 優雅度・・8 総合・・7.5
Amazon.co.jpで詳細を見る


Reverie 「Revado」
イタリアのプログレフォーク、レヴェリーの2011年作
今作は「ESPERANTO」、「ITALIANO」とテーマ別に分けられたCD2枚組で、
Disc1では、アコースティック楽器を主体にした、バルカン、中近東風味の異国的な作風。
おそらくエスペラント語とイタリア語による女性ヴォーカルの歌声と、クラシックギターにマンドリン
やわらかなフルートやクラリネットなどの音色も含んだ、民族色豊かなサウンドを描いてゆく。
ヴォーカル嬢の表現力もぐっと増していて、ときにアニー・ハズラムを思わせる歌声がいいですね。
Disc2の方は、よりイタリア的な叙情性を感じさせ、美しい女性声とともにうっとりとなる。
民族度・・8 プログレ度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る


Marcello Capra 「Fili Del Tempo」
PROCESSIONのメンバーでもあった、マルセロ・カプラのソロ。2011年作
Artiのシンセ奏者、ベッペ・クロヴェッラに、Circus 2000の女性Voが参加している。
アコースティックギターと美しいシンセワーク、女性ヴォーカルで聴かせる牧歌的なサウンド。
シルヴァナ嬢の歌声は大人の艶を感じさせ、アダルトな味わいのアシッドフォークという趣もあり、
中世を思わせるドリーミーな情感を感じることができる。ドラムは入らないのでロック的な要素は薄いが
オルガンを含んだベッペの鍵盤はさすがのセンスで、ときにサウンドをプログレ的に彩っている。
牧歌的度・・8 プログレ度・・7 女性Vo度・・7 総合・・7.5




CORDE OBLIQUE 「BACK THROUGH THE LIQUID MIRROR」
イタリアのクラシカル・フォーク、コーデ・オブリケの2018年作
LupercaliaのギタリストRiccardo Prencipe率いるバンドで2005年にデビュー、本作は7作目。
ヴァイオリン、ピアノを含む編成で、アコースティックギターのつまびきに美しい女性ヴォーカルを乗せ、
艶やかなヴァイオリンの音色とともに、優雅でクラシカルなアコースティックサウンドを聴かせる。
ドラムも加わる適度なロック色も覗かせて、ゴシックというよりは地中海的な優美な叙情に包まれる。
シンセがいないぶん幻想的な空気は希薄だが、巧みなアコギをバックに女性声の美しさが味わえる。
アコースティック度・・8 優雅度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
Amazonで購入する



NightWatch
ドイツのフォークロックバンド、ナイト・ウォッチの1998年作
男女ヴォーカルの歌声でゆったりと聴かせる、むしろ70年代英国風のフォークサウンド。
幻想的な薄暗さと、SPRIGUNSあたりに通じるプログレッシブな感覚で、とても耳心地のよい音だ。
アコースティックギターに絡むやわらかなフルートや、リコーター、オーボエなどの音色もじつに美しい。
とくに女性声メインの曲は繊細な叙情美にうっとりとなる。ドイツ語で歌われる曲はなかなか新鮮な耳心地。
古き良き幻想フォークの香りを感じさせる作風で、これは掘り出し物的な好作ですわ。
アコースティック度・・8 しっとり度・・9 幻想度・・8 総合・・8
Amazon.co.jp で詳細を見る



POETA MAGICA 「edda vol.1」
ドイツのトラッド・ネオフォーク、ポエタ・マジカの2006年作
スウェーデン在住のフンケ夫妻を中心にしたユニットで、本作は北欧神話の歌謡集「エッダ」をコンセプトにした作品。
多数のニッケルハルパ奏者をはじめ多くのメンバーが参加していて、うっすらとしたシンセに素朴なニッケルハルパの音色を乗せ、
ときにモダンでエレクトロなアレンジを含んだ、ラジカルトラッド的でもあるサウンドを聴かせる。語りのような男性声に、
スウェーデン語による女性ヴォーカルも加わって妖しくも幻想的な世界観を描いてゆく。低音から高音まで重ねたニッケルハルパは、
ときにオーケストラルな味わいで、涼やかな北欧の空気感を表現している。曲によってはギターにドラムも加えたロック感触もあり、
神秘的なトラッドロック風にも楽しめる。メディーヴァルな幻想性に包まれた北欧トラッドを、独自の解釈で構築したという逸品です。
アコースティック度・・8 北欧トラッ度・・8 幻想度・・8 総合・・8
Amazonで購入する


Fauns 「Awaiting the Sun」
ドイツのフォーク・プログレバンド、ファウンズの2010年作
うっすらとしたシンセにアコースティックギター、男女Voのやわらかな歌声で聴かせる
幻想的なフォークロックサウンド。随所にドラムやエレキギターも加わったロック色もあり、
オルガンが鳴り響くところなどはプログレリスナーにも対応。序盤は男性声メインだが、
中盤以降の女性ヴォーカル曲の方にやはりうっとりで、アシッド・フォーク的にも楽しめる。
一方で、10分を超える大曲などは、シンフォニックロック風味の構築力もあって、懐の深さも感じさせる。
メロウ度・・8 プログレ度・・7 幻想度・・8 総合・・7.5




FAUN 「MIDGARD」
ドイツの古楽ネオフォーク、フォウンの2016年作
2001年にデビュー。9作目の今本は、タイトルのように北欧神話をテーマにした作品で、
素朴なリュートのつまびきにやわらかなフルート、ドイツ語による美しい女性ヴォーカルを乗せて、
優美でメディーヴァルなサウンドが広がってゆく。ほどよくキャッチーなビート感を含んだアレンジに
ニッケルハルパ、ハーディ・ガーディ、ブズーキ、ガイタ、といった古楽器の音色も織り込んで、
モダンなスタイリッシュ性とアコーステッィクなトラッドを巧みに融合させたサウンドは円熟の域だ。
物悲しいチェロや繊細なハープの音色、素朴なマンドリン、男女ヴォーカルで描かれる幻想トラッドの逸品。
中世トラッド度・・8 幻想度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
Amazonで購入する


SAVA 「LABYRINTH」
ドイツのネオフォーク、サヴァの2012年作
2004年にデビュー、本作は3作目。ヴァイオリンに女性フルート&バグパイプ奏者、女性ハープ奏者を含む編成で、
優美なハープの音色にヴァイオリンやバグパイプが重なり、ドラムのリズムとともに、典雅なフォークロックを聴かせる。
素朴なフルートの音色に、フランス語や英語によるやわらかな女性ヴォーカルを乗せて、しっとりとした叙情を描きつつ
バウロンのリズムも鳴り響くケルティックな土着性に、曲によってはバルカン、中近東風味の感触も覗かせる。
インスト曲メインなので、女性声の活躍がもっとあればと思うが、アコースティックによる優雅なサウンドが楽しめる。
アコースティック度・・9 優雅度・・9 女性Vo度・・7 総合・・8
Amazonで購入する



ANNWN 「Enaid」
ドイツのトラッド/ネオフォーク、アンウンの2016年作
物悲しいチェロやヴァイオリンの音色に、美しい女性ヴォーカルの歌声を乗せ、ハープやフルートなどの
アコースティック楽器を重ね、バウロンのリズムとともに、幻想的なケルティック/トラッドを聴かせる。
中近東やケルトなどを融合させた民族色と表現豊かな歌声は、ロリーナ・マッケニットなどにも通じる雰囲気があり、
ホイッスルやイーリアンパイプ、サズ、ニッケルハルパなどの、多彩な民族楽器による優雅なサウンドは、
本格派の説得力に包まれている。魅力的な女性ヴォーカルで、しっとりとしたケルティック・トラッドが味わえる。
アコースティック度・・9 ケルティック度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
Amazonで購入する



Estampie 「Amor Lontano」
ドイツのトラッド/ネオフォーク、エスタンピエの2016年作
本作は、神聖ローマ帝国、フリードリヒ二世の世界をテーマにした作品で、
パーカッシヨンのリズムに、サズやシタールによるアラビックな音色を乗せ、
フィドルの音色に女性ヴォーカルを加えた、異国的なトラッドサウンドを描く。
ドイツ語、フランス語、アラビア語による歌声に、ハーディ・ガーディ、ニッケル・ハルパなど、
本格的なトラッド感触が、中世の空気感をかもしだす。躍動感あるアンサンブルもさすがで、
スペインのAMAROKあたりが好きな方にも楽しめるだろう。中近東系トラッドの傑作だ。
アコースティック度・・9 中近東トラッ度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
Amazonで購入する


Fairytale 「Autumn's Crown」
ドイツのネオフォーク、フェアリーテールの2018年作
女性Vo、女性ヴァイオリン&Vo、女性チェロ奏者を含む編成で、アコースティックギターにマンドリン、
艶やかなヴァイオリンが鳴り響き、しっとりと美しい女性ヴォーカルを乗せた幻想的なネオフォーク。
ドラムによるリズムが加わると、BLACKMORE'S NIGHTにも通じるような、わりとキャッチーで
メディーヴァルなフォークロックとしても楽しめる。2人の女性声が重なると、ウットリするような優美な聴き心地で、
チェロやヴァイオリンの響きとともに、アコースティックでありながら厚みのあるサウンドに引き込まれる。
全体的には薄暗さや翳りが無い分、一般のリスナーにも取っつきやすく、ややライトな感触ではあります。
アコースティック度・・8 幻想フォーク度・・8 女性Vo度・・9 総合・・8
Amazonで購入する


Dwelling 「Ainda E Noite」
ポルトガルのネオフォーク系バンド、ドウェリングの2007年作
クラシックギターのやわらかな響きに、艶やかなヴァイオリンの音色がかぶさり、、
女性ヴォーカルの母国語の歌声で聴かせる、ラテン風味のネオフォークサウンド。
適度に翳りを含んだ、ゴシック・フォーク色も含みながら、あくまで優雅な聴き心地なのは
ヴァイオリンとアコースティックギターの美しさからだろう。3、4分前後の小曲中心で、
優しい耳心地で楽しめる。暗さは薄めのラテン系クラシカル・ネオフォークの好作品。
アコースティカル度・・9 妖しさ度・・7 女性Vo度・・8 総合・・7.5
Amazon.co.jpで詳細を見る



Nucleus Torn「Andromeda Awaiting」
スイスのネオフォークバンド、ニュークリアス・トーンの2010年作
男女Voにヴァイオリン、チェスロ、フルートを含む7人組で、中心人物のFredy Schnyderは、
ギターにベース、ピアノ、マンドリン、ブズーキ、ハンマーダルシマーまで弾くというマルチプレイヤー。
美しいピアノの調べにフルートが重なり、はかなげな女性ヴォーカルの歌が乗る。
ダークな暗黒性は薄く、艶やかなヴァイオリンの音色など、クラシカルで優雅なサウンドだ。
中世的な世界観も魅力的で、静寂感ただよわせる幻想的な雰囲気にうっとりです。
クラシカル度・・8 幻想度・・9 女性Vo度・・8 総合・・8
Amazon.co.jp で詳細を見る



Lot Lorien 「Elsewhere」
ブルガリアのフォークロック、ロット・ローリエンの2012年作
やわらかなアコーディオンの音色に美しいシンセ、アコースティックギターにマンドリンのつまびき、
そして伸びやかな女性ヴォーカルの歌声を乗せた、ジャケのイメージ通りに幻想的なフォークロックサウンド。
辺境臭さやマイナー臭さはほとんどなく、適度にキャッチーな優雅さと、素朴なフォーク/トラッドメロディが
じつにセンスよく融合していて、アコースティック部分の説得力もしっかりと備えている。
自主制作のCD-R流通なのが惜しい。世界規模で配信したいような幻想フォークの傑作です。
メロディック度・・8 幻想度・・9 女性Vo度・・8 総合・・8


◆北欧の幻想フォーク

SHINE DION「KILLANDRA」
ノルウェーのトラッドフォーク、シャイン・ディオンの1st。1998年作
ヴァイオリンやフルート、マンドリンなどの牧歌的な音色に美しい女性ヴォーカルの歌声で聴かせる、
やわらかな北欧トラッド・フォークサウンド。メロディが適度に田舎くさく、キャッチーなクサさというか、
曲によってはシンセメロトロンまで使用していて、プログレ/シンフォ系のリスナーにも楽しめる音だろう。
女性ヴォーカルの歌声も絶品とはいかぬが、なかなか綺麗な歌唱でむしろ田舎っぽくてなごみます。
メロディアス度・・9 トラッ度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
Amazon.MP3




Lisa O Piu「When This Was the Future」 
スウェーデンのアシッドフォークユニット、リサ・オ・ピウの2009年作
女性ヴォーカル、リサの表現力ある歌声と、アコースティックギターやフルートなどで聴かせる
しっとりとしたフォークサウンドで、どこか神秘的な薄暗さと古楽的な雰囲気も感じさせる。
曲によってはヴァイオリンやフィドル、ハープ、それに1曲メロトロンなども使用していて
ほのかにプログレッシブな味わいもあるのがいい。うっとりする聴き心地の絶品の傑作。
アコースティック度・・8 しっとり叙情度・・9 女性Vo度・・8 総合・・8.5
Amazon.co.jp で詳細を見る




Greenrose Faire 「My Home Is Where My Heart Is」
フィンランドのフォークロック、グリーンローズ・フェアーの2013年作
女性ヴォーカルに女性ヴァイオリン奏者、マンドリン奏者なども含む編成で、
前作はBlackmore's Nightのような中世の雰囲気を感じさせる好作であったが、
本作もやわらかな女性ヴォーカルの歌声に、美しいシンセアレンジも含んだシンフォニック色と
艶やかなヴァイオリンが鳴り響く、中世トラッドの質感が合わさったサウンドが楽しめる。
楽曲は3〜4分台が中心で比較的シンプルな味わいながら、メロディの良さと幻想的な世界観で
これまでの作品以上にサウンドの強度を感じさせる。中世トラッド・フォークロックの好作品です。
ドラマティック度・・8 中世トラッ度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る


Tirill「Dance With the Shadows」
ノルウェーの女性アーティスト、ティリルの2003年作
WHITE WILLOWにヴァイオリンで参加したこともある彼女だか、本作ではヴォーカルにヴァイオリン、
シンセ、パーカッションもこなしている。サウンドはしっとりとした女性ヴォーカルに、
うっすらとしたシンセにつまびかれるギターなどによる、薄暗くアンビエントなもの。
北欧らしい翳りと土着性は、WHITE WILLOWやANGLAGARDあたりの雰囲気にも通じる。
フルートやチェロなどの音色とともに、静謐感を漂わせたたゆたうような叙情にうっとりです。
アコースティカル度・・8 北欧度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
Amazon.co.jp で詳細を見る Amazon.MP3



Unni Lovlid 「Rite」
ノルウェーの女性シンガー、ユンニ・ローヴリの2008年作
エレクトロなシンセアレンジにしっとりとした女性ヴォーカルの歌声を乗せ、
物悲しいチェロの音色とともに、幻想的な味わいのフォークサウンドを聴かせる。
土着的なパーカッションの響きや、ホルン、フィドルなどの音色も加えたトラッド感触に
美しくもはかなげな女性声で、涼やかな薄暗さに包まれた神秘的な世界観を描きだす。
デジタルなアレンジを北欧トラッドに大胆に取り入れながら、空間的な静寂感に浸れる逸品です。
アコースティック度・・7 しっとり幻想度・・9 女性Vo度・・8 総合・・7.5
Amazonで購入する



Jenny Hval「Viscera」
ノルウェーの女性SSW、ジェニー・ヒヴァルの2011年作
静謐感に包まれたミステリアスな空気のなかを、しっとりとした女性ヴォーカルの歌声が響く、
じつに北欧らしい寒々としたサウンド。ときにフォークやトラッド風味も取り入れつつ
繊細なはかなさを感じさせながら、アーティスティックな感性で描かれる独特の世界観は
プログレリスナーにも充分アピールするだろう。神秘的な浮遊感にアンニュイな寂寥感、
エキセントリックなセンスが巧みに合わさった、静かなる北欧アンビエントの傑作。
アーティスティック度・・9 北欧度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る



Gudrid Hansdottir 「Beyond the Grey」
フェロー諸島の女性ヴォーカル、グドリッド・ハンスドティアの2011年作
しっとりとした女性ヴォーカルの歌声に、マンドリンやリコーダーなどの素朴な音色と、
幻想的な美しさで聴かせるサウンド。うっすらとシンセを含んだアレンジもあって
アコースティカルではあるが土着性は薄めなので、キャッチーなフォークとしても楽しめる。
英語歌詞がメインだが、ときに母国語による歌声がトラッドな雰囲気をかもしだしている。
アコースティカル度・・7 北欧トラッ度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8
Amazon.co.jp で詳細を見る




ELIN KAVEN 「Eamiritni - Rimeborn」
スウェーデンの女性シンガー、エリン・カヴェンの2015年作
うっすらとしたシンセにアコースティックギターのつまびき、母国語よる女性ヴォーカルを乗せて、
しっとりと聴かせるネオフォーク/トラッドサウンド。フィドルが鳴り響く北欧らしいトラッド感触を、
優雅で幻想的な空気感に包み込み、モダンなアレンジで仕立て上げたという作風は、
サーミ語による独特の歌唱も(ヨイク)含めて、ラップランドのラジカルトラッドという趣であろうか。
ときにエレキギターも加わったりと、打ち込みを含めた聴きやすいアレンジセンスとともに、
プログレリスナー向きの北欧トラッドポップとしても楽しめる。
幻想度・・8 北欧トラッ度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
Amazonで購入する


HAVNATT「Etterlatte」
ノルウェーのトラッド・フォーク、ハヴナットの2013年作
アコースティックギターにやわらかな女性ヴォーカルを乗せた、幻想的な味わいのネオフォークで、
前作ミニに比べると、随所にヴァイオリン、チェロの音色が絡むなど、クラシカルな優雅さが強まった。
Cecille嬢の母国語による歌声は相変わらずしっとりと美しく、涼やかな北の空気を運んでくれる。
アコースティックを主体にした伝統的なトラッドとしての素朴な叙情と、コンテンポラリーで
優雅なアレンジセンスを同居させた、北欧らしいネオフォークサウンドにゆったりと浸れる。
アコースティック度・・8 涼やか度・・8 女性Vo度・・9 総合・・8
Amazonで購入する



◆東欧の幻想フォーク

The Moon and The Nightspirit「Of Dreams Forgotten and fables untold」
ハンガリーのゴシック・フォークバンド、ザ・ムーン・アンド・ナイトスピリットの2005年作
アコースティックギターのつまびきにヴァイオリンやフルートの音色をバックに、
美しい女性ヴォーカルの歌声で幻想的に聴かせるしっとりとしたフォークサウンド。
薄暗い叙情が神秘的な雰囲気をかもしだし、どこかファンタジックな物語性を感じさせる。
女性声の美しさにうっとりとなりながら、耽美な幻想ネオフォークまどろめます。
フォーキー度・・8 薄暗度・・8 女性Vo度・・9 総合・・8
Amazon.co.jp で詳細を見る

Caprice 「Girdenwodan Part 2」
ロシアのゴシックフォーク、キャプライスの2014年作
前作の続編となるアルバムで、ケルティックハープのつまびきにフルートやオーボエ、クラリネットのやわらかな音色と
美しい女性ヴォーカルの歌声が重なり、森の精霊めいた幻想的な世界観が広がってゆく。
ケイト・ブッシュを思わせるようなキュートな可愛らしさと、ヴァイオリンやチェロ、ハープシコードなども加わった
クラシカルな優雅さが融合し、アコースティック楽器がメインなのだが音の厚みのあるアレンジセンスが素晴らしい。
曲によってはドラムも入ったりして、プログレファンやシンフォニックロック好きの方にも楽しめるだろう。
女性ヴォーカル系ファンにはたまらないクラシカル系幻想ネオフォークの傑作です。
アコースティック度・・8 幻想度・・9 女性Vo度・・8 総合・・8.5
Amazon.co.jpで詳細を見る


Мельница(MELNITSA)「Перевал (MOUNTAIN PASS)」
ロシアのフォークロックバンド、メルニッサの2005年作
アコースティックギターに繊細なフルートの音色、艶やかなヴィオラの響きに
母国語による女性ヴォーカルの歌声で聴かせる、異国的なフォークロック。
曲によってはドラムが入っているので、フォーキーなプログレとしても楽しめる。
クラシカルな優雅さと、しっとりとしたやわらかな聴き心地にうっとりです。
アコースティカル度・・8 フォーキー度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
Amazon.MP3




Sunset Wings 「Shining Thro' the Veil of Night」
ロシアのネオフォーク、サンセット・ウイングスの2013年作
2009年にデビュー、本作は3作目となる。アコースティックギターにヴァイオリン、チェロの音色、
ジェントルな男性ヴォーカルと美しい女性ヴォーカルで、クラシカルなネオフォークを聴かせる。
シンセはあまり使わずにアコースティックがメインなので、わりと素朴な聴き心地であるが、
やわらかなフルートやホイッスルに、クラシックギターのつまびきが重なり、物悲しい叙情に包まれて、
しっとりした優雅なサウンドに浸れる。個人的には男性声よりも女性Voメインの曲の方が嬉しいのだが、
男性ヴォーカルメインの曲も、艶やかなヴァイオリンやリコーターなどがサウンドを彩る。優美で繊細な好作品です。
クラシカル度・・7 優美度・・8 幻想度・・8 総合・・8
Amazonで購入する



*こちらも併せてご覧ください♪
◆耽美なるゴシック・ネオフォーク特集
◆女性ヴォーカル/ケルト/トラッドCDレビュー
◆女性ヴォーカルのシンフォニックロック特集
◆女性ヴォーカルのケルト/トラッドの現在形特集

◆ブリティッシュフォーク名作選
◆プログレファン向け北欧トラッド特集

■音楽ページトップへ