女性ヴォーカル・ケルト/トラッドの現在形


その昔、ケルト民族と呼ばれた人々は、アイルランドを中心に、スコットランド、ウェールズ、
さらにはスペインのガリシア、バスク地方、フランスのブルターニュなどへ渡り、多くの文化的遺産を残した。
彼らの血を引き継いだ人々による音楽は、長い年月を通り越しながら、現在呼ばれるケルトミュージックへとたどり着く。
60年代から活動するThe Chieftainsをはじめとして、ClannadAltanCapercaillieMary Blackといったアーティストたちが、
次々に登場し、アイリッシュミュージックとしての本流を確立してゆく。
またヒーリング系のサウンドを確立したENYAの存在も、後の多くのアーティストに影響を及ぼした。
90年代に入ると、ケルトサウンドをロックに融合させたIONAの登場や、The Corrsのヒットなども新たなケルト音楽のポピュラー化をうながした。
伝統的なアイリッシュミュージックを卓越した演奏で再構築するLunasaの登場も見逃せない。
スペインでは、ガリシア、バスク地方を中心に、ベテランのMilladoiroをはじめ、Luar Na Lubreや、ガイタ奏者のCarlos Nunezなどが
今も独自のカラーで素晴らしい音楽をつくり続けている。
一方の北欧においては、90年代に入ってから、GARMARNAHEDNINGARNAといったラジカルトラッド系のバンドが現れ、
北欧におけるトラッドミュージックのアップ・トゥ・デイトをもたらした。
また最近では、Celtic Womanの人気ぶりも、世界的にケルトミュージックへの再評価の流れとなってきており、
年代とともに変化、深化してゆく現在進行形のケルト、トラッドサウントがこれからも楽しめるだろう。
ここでは、とくに女性ヴォーカルのものに焦点をあて、幻想的で個性的な傑作を厳選して掲載したい。

                                                        
緑川 とうせい


◆アイリッシュ系

AltanIsland Angel」
アイルランドのトラッドバンド、アルタンの1993年作
鳴り響くフィドルにやわらかなフルートの音色、アコーディオンにブズーキ
アコースティックギターのつまびき、そして優しい女性ヴォーカルの歌声。
伝統的なケルティックサウンドを土台に、幻想的な美しさを描き出す初期の傑作。
幻想度・・8 ケルティック度・・9 女性Vo度・・7 総合・・8
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Altan 「Local Ground」
アイルランドのケルティックバンド、アルタンのアルバム。2005作
1987年のデビュー作から数えて10作目となる本作は、アイルランド北西部ドゴニール出身という
のバンドの原点に立ち返ったような、やわらかでアコースティカルな作風となっている。
女性ヴォーカル、マレードの美しい歌声に、ボドランのリズムに乗る艶やかなフィドルの音色、
軽快なダンスチューンからしっとりとしたバラッドまで、じつに自然体のサウンドだ。
いかにもアイリッシュなパイプの響きと、暖かな陽光を思わせるメロディにゆったりとまどろみたい。
アコースティック度・・9 ケルティック度・・9 女性Vo度・・8 総合・・8
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CLANNAD「BANBA」
アイルランドのトラッドバンド、クラナドの1993年作
ゲール語で「家族」を意味するバンド名をもつ、結成は1969年という大ベテラン。
ENYAの実姉であるモイヤ・ブレナンのヴォーカルを中心に、伝統的なケルト音楽と
ポップなメジャー性を融合させたサウンドで、1973年のアルバムデビュー以来、大きな人気を誇る。
80年代のポップ全盛の時代を過ぎ、時代が再びトラッド寄りの音を求め始めたことで、
本作はケルトとしての原点に立ち返ったかのような、ほの暗い叙情で聴かせる作品となった。
しっとりとしたモイヤの歌声と、幻想的なコーラス、うっすらとしたシンセが重なって、幽玄の美を描き出す。
フルートやマンドリンなどのアコースティック色と、現代的なポップ色が見事に融合されている。
幻想度・・8 ケルティック度・・8 女性Vo度・・7 総合・・8
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Clannad 「Live in Concert」
アイルランドのケルティックバンド、クラナドのライブアルバム。2006作
80年代から活動を続けるベテランバンド、これは1996年のライブを収録したもの。
アコースティック楽器にうっすらとしたシンセも加えたアレンジで、
歌姫モイア・ブレナンのしっとりとした歌声が響きわたる。
シンセとともにドラムが加わるとケルトロック的な雰囲気で聴けて、
コアなケルト音楽リスナーももちろん、プログレファンにお勧めだ。
メロディアス度・・8 ケルティック度・・8 ライブ演奏・・8 総合・・8
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LUNASA
アイルランドのケルティックバンド、ルナサの1st。1998作
鳴り響くパイプの音色に、フルートとホイッスルが絡む本格派のスタイル、
アコースティックギターをバックに聴かせる、キレのある演奏力が抜群で
古き良きケルトの伝統を、そのまま現代に甦らせたようなサウンドだ。
後のアルバムに比べて、メンバーの若さが意気込みとなって音に表れていて
清々しいまでのケルティック音楽が楽しめる。演奏力も素晴らしいという他ない。
アコースティック度・・9 ケルティック度・・9 演奏・・10 総合・・8.5
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grada
「Endeavour」
アイルランドとニュージーランドの混成バンド、グラーダの1st。2005作
LUNASAのメンバーに見いだされてデビューしたアイリッシュバンドで、
トラディショナルなアイリッシュソングを演奏しつつ、女性Voで聴かせる曲も半分ほどある。
インスト曲の方は、ギターにフルート、ホイッスル、ブズーキ、ヴィオラなどを中心にした
なかなか本格派のアイリッシュサウンドで、やはりルナサに通じるような軽やかな演奏が光る。
合間にヴォーカル曲が入るので、さほど硬派な印象もなく聴きやすい。
若手の本格派ケルティックバンドとしては非常に注目株だ。
アコースティック度・・8 ケルティック度・・9 女性Vo度・・7 総合・・8
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◆コンテンポラリー系

LOREENA MCKENNITT
「An Ancient Muse」
カナダ生まれの「彷徨えるケルト人」、ロリーナ・マッケニットのアルバム。2006作
今作はケルト民族と歴史をテーマに、ブリテン島から古代ギリシャ、ビザンチン、オスマントルコといった国々を旅する
壮大な内容。ロリーナの歌唱は、デビューから20年をへてますます深みを増し、ときに神々しいミューズのように、
ときに母性的にすべてを包み込むように、聴くものの耳にうったえかけてくる。アコースティカルで民族調の雰囲気と、
現代的なアレンジが合わさって、楽曲には研ぎ澄まされた無駄のなさを感じる。空気や風、大地の匂いをも感じさせる、
この音の説得力は本当に凄い。昨今の癒し系ケルトミュージックとは一線を画す、本物の重さと、うす暗さをともなった世界観。
歴史と民族と時間の流れを凝縮させたような、この溢れ出る音を聴きながら、放浪の旅にいざなわれよう。
ケルティック度・・7 中近東トラッ度・・8 女性Vo度・・9 総合・・8.5
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CONNIE DOVER 「THE BORDER OF HEAVEN」
アメリカ出身のケルト系女性ヴォーカリスト、コニー・ドーバーの4作目。2000作
とにかく、その絶品の歌声にはもううっとり。やわらかでありながらも、芯の通った強さと美しさ、
それでいて聴くものを包み込むような優しい母性をも感じさせるのだから。
曲の方も純粋なトラッド曲がメインで、彼女の歌声に実にマッチしている。
ケルト音楽としても、ヒーリングミュージックとしても私にとっては最高の歌い手である。
コニーの情報満載のこのページも発見。曲も聴けるようなので見に行ってみてください。
メロディアス度・・8 トラッ度・・8 女性Vo度・・10 総合・・8
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DARBY DEVON 「HIGHLANDS」
アメリカのケルト系女性ヴォーカリスト、ダービー・デボンのアルバム。2000作
とにかくこのジャケにつられて買ったのだが、これがなかなかの当たり。
この手のケルト系コンテンポラリー作としては、私の愛するコニー・ドーバーをはじめ
ロリーナ・マッケニット、ケイト・プライスなどが有名どころだが、このデボンさんも
美声度では負けていません。なによりシンセを使用した楽曲はとても聴きやすく、
ロリーナ、やケイトの作品にある「重さ」がなく、陽性の部分が大きいのでとても心地よいです。
シリアスすぎず適度にシンフォニック、という点で安心してお薦めできる女性Voアルバムです。
ケルティック度・・7 女性Vo度・・8 しっとり和めます度・・9 総合・・8
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CARA DILLON 「SWEET LIBERTY」
アイルランド出身の女性Vo、カーラ・ディロンの2nd。2003作
1stの時点からそのキュートな歌唱と、アイリッシュ風味をまじえた聴き易いポップな楽曲が、
なかなかだったが、この2ndでは可愛いらしさに加え、より深遠な歌唱力を身に着けている。
曲調もケルト風味を心地よく溶け込ませたしっとりとした雰囲気で、
彼女の歌唱を活かすべく方向性が練り込まれてきているようだ。
MIKE OLDFIELD「TUBULAR BELLS V」にも参加した経歴もあることから、
プログレ関係の支持者も多い。次作以降はロック色は後退し、アコースティカルな作風となる。
ケルティック度・・7 女性Vo度・・9 しっとり度・・9 総合・・8
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SHEODA 「CONTEMPORARY & TRADITIONAL IRISH LOVE SONGS」
アイルランドの女性Vo、シェオダのアルバム。2004作
これはジャケの雰囲気からしていい感じですが、内容も素晴らしい。
しっとりとした美声の女性Voがアイリッシュソングを歌うのですが、
うっすらとしたシンセや、ピアノ、ヴァイオリン、フルートなどが素敵に彩る楽曲は、、
伝統的な要素と、現代的なアンビエントなシンフォニック性が合わさった感じで
とても聴きやすいです。アコースティックな響きも典雅で素晴らしく、
ケルト音楽好きはもちろん、IONAあたりが好きな方にもお勧めしたいアルバムです。
ケルティック度・・8 しっとり典雅度・・9 女性Vo度・・9 総合・・8.5
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RUA 「DREAM-TELLER」
アイルランドの女性Voケルティックユニット、ルアの2nd。2003作
女性ヴォーカリストLIZ MADDENGLORIA MULHALLの二人によるユニット。
このジャケを見たらもう…これも買わざるを得んでしょう(笑)内容の方も1s以上に素晴らしい出来。
アコースティックギター、ピアノ、ヴァイオリンをバックに、二人がしっとりとした美声を聴かせてくれる。
たおやかなフルートや、ここぞとばかりに盛り上げるストリングスオーケトラもたまらない。
また、単なるコンテンポラリーケルトではなく、キーボードの使用による音の広がりも感じさせ、
ケルト初心者の女性ヴォーカル好きにも対応。聴いてうっとり、じわじわ…じーんという傑作。
シンフォニック度・・8 ケルティック度・・8 女性Vo度・・9 総合・・8.5
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Cecile Corbel 「Songbook 1」
フランス、ブルターニュ出身のハープ奏者/シンガー、セシル・コルベルのアルバム。2006作
キュートでコケティッシュな歌声と、美しいケルティック・ハープにヴァイオリンの音色
そこに適度なシンセアレンジも加わったシンフォニックな味付けもいい。、
しっとりとしたハープの響きで聴かせる歌もの曲も絶品で、伝統的なケルト色を
モダンかつポップにアレンジするセンスは実に見事だ。パーカッションの使い方などには
ラジカルトラッド的な先鋭さもあるが、全体としては爽やかに聴き通せる作品になっている。
女性ヴォーカルものとしてもケルティック・シンフォとしても楽しめる素敵なアルバムだ。
ケルティック度・・7 ポップ度・・8 女性Vo度・・9 総合・・8.5
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Heather Dale 「The Road to Santiago」
カナダ出身のケルト系シンガー、ヘザー・デールのアルバム。2005作
美しいピアノに艶やかなヴァイオリンの音色、そこに乗る歌声は
同じくカナダの大御所、ロリーナ・マッケニットを彷彿とさせる。
適度な土着性をコンテンポラリーなアレンジで仕上げた楽曲には
音数の少ないシンプルな質感と、やわらかみのある素朴さとが感じられる。
「サンティアゴへの道」というタイトル通り、サウンドにはときにスパニッシュな趣もあり
深みのある優しい歌声とともに、ゆったりと聴き入れる好作である。
ケルティック度・・7 素朴度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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JOANNE 「LOOKING INTO LIGHT」
ケルティックロックバンド、IONAの歌姫、ジョアンヌホッグのソロアルバム。1999作
基本路線はアイオナと同様、静謐なケルト色溢れるトラッドを軸に、
シンセ、弦楽によるシンフォニック性を付加したもの。
ジョアンヌの絶品の歌声が全篇に渡って楽しめるという点で、非常に嬉しい。
この、のびやかで美しく、素直で清浄、そして魂の深遠さえも覗かせる雄大な音楽を、
なんと賛辞すればいいのか知らない。現在は「Celtic Hymns」というタイトルで再発されている。
メロディアス度・・9 ケルティック度・・9 雄大深遠度・・10 総合・・9
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Michelle TUMES 「Center Of My Universe」
オーストラリア出身の女性Vo、ミッシェル・トゥームスの2nd。2000作
1st「Listen」でも素晴らしい歌声を聴かせてくれた彼女だが、この2ndも快心の出来。
壮麗なオーケストレーションをバックに、優しい歌声と天上のコーラスがハーモニーを奏で、
シンフォニックな雄大さとともに、聴きやすいメジャー感を両立させているのが見事。
曲におけるシンセなどのアレンジも抜群で、ほのかなケルト風味を織りまぜつつも、
変にコンテンポラリーになりすぎず、決してうす暗くならない陽性の雰囲気が心地よい。
ポツプな感覚でも聴ける、万人受けするシンフォニック・ヒーリング・フィメール作品だ。
シンフォニック度・・8 ケルティック度・・6 女性Vo度・・9 総合・・8.5
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Celtic Legend-Lyonesse
ケルトミュージックのプロジェクト、ケルティック・レジェンドのアルバム。2008作
作曲家クリス・ペインを中心にした、音楽におけるケルト伝説の復興を目指したプロジェクト。
伝説の島「リオネス島」をテーマに、壮大なイントロから物語を語るような雰囲気で始まると
壮麗なシンセによるシンフォニックな作風と、美しい女性ヴォーカルの歌声が響きわたる。
パイプやホイッスルなどのアコースティカルな要素もあるが、むしろ全体を包むのはシンセワークで、
ケルティック・ウーマンに比べると、よりコンセプチュアルで雄大な雰囲気は、プログレリスナー向き
と言えるかもしれない。Mediaeval Babesのメンバーであるエミリー嬢の歌声もとても魅力的だ。
ケルティック度・・7 シンフォニック度・・8 女性Vo度・・9 総合・・8
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◆ケルティック・ロック/プログレ系

IONAThe Circling Hour
スコットランドのケルティック・シンフォニックロックバンド、アイオナの6th。2006作
バンド作としては「OPEN SKY」以来6年ぶりとなる。前作はどちらかというとインスト重視だったが
今回はヴォーカルと演奏とのバランスがとれた、とても聴きやすい作品となっている。
ジョアンヌ・ホッグの歌唱は、歳月を経てかいっそう大人の落ち着きと調和を感じさせ、
バンドの要であるデイブ・ベインブリッジのギター、そしてキーボードでの活躍ぶりもさすがだが、
ドラマーの腕前もかなりのもので、ロックとしての躍動感とダイナミズムを曲に与えている。
また11分を超える大曲のCのように、ケルトミュージックへの回帰を思わせるナンバーもあり、
バンドとして原点を見直しながら、じっくりと作り上げられたようなアルバムに仕上がっている。
シンフォニック度・・8 ケルティック度・・8 雄大度・・8 総合・・8
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KARNATAKA 「THE STORM」
ウェールズの女性ヴォーカルロックバンド、カルナタカの2nd。2000作
イギリスではIONAに次ぐ逸材として注目を集めたバンドの2ndは、
たゆたうような女性ヴォーカルの歌声に、モダンなシンセアレンジによる
幻想的な美しさで聴かせるしっとりとしたサウンドが素晴らしい。
ケルト的な要素はIONAよりも薄く、ギターにしてもロックフィールドに近い音を出していて、
ALL ABOUT EVEあたりの翳りある世界観を上手くアップデートに表現できている。
シンフォニックな壮大さではIONAに一歩譲るが、聴きやすさの点ではむしろこちらがお勧め。
メロディアス度・・8 ケルティック度・・7 女性Vo度・・9 総合・・8
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MERMAID KISS 「Etarlis」
イギリスの女性Voロックバンド、マーメイド・キスの2nd。2007作
IONA、KARNATAKAに続くフィメール系ケルトロックバンドとして期待されているこのバンド、
前作2ndミニアルバムもなかなかの出来だったが、続くこの2ndフルはかなりの力作となった。
3人いた女性Voのうち、今回はEvelyn嬢をメインヴォーカルに、Kate嬢がサポートする形の
ツインヴォーカル体制になったようだ。サウンドは一聴したシンフォニックな厚みが増しており
プログレリスナーを意識したように、7分、10分という大曲も配されている。
ピアノやフルートなどによるアコースティックな質感と、ケルティックでミステリアスな雰囲気が合わさり
そこに美声の女性ヴォーカルの歌声が乗ると、それだけでうっとりと引き寄せられる。
シンフォニック度・・8 ケルティック度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8
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Maddy Prior 「Arthur the King」
Steeleye Spanのヴォーカル、マディ・プライアのアルバム。2001作
本作はタイトル通り、アーサー王伝説をもとにしたコンセプト作で、
トラッドとシンフォニックを融合したような幻想的な作風が光る。
アニー・ハズラムを思わせるマディの歌声は、まるで物語を語るようにゆるやかで、
母性的な優しさをたたえながら、悠久の彼方へ吹く風のように響きわたる。
IONAのニック・ホランドによるピアノ、シンセアレンジも素晴らしく、
ファンタジックな空間美が壮大な世界観を描き出している。
ドラムが入る曲では、ケルティックなシンフォニックロックとしても楽しめる。
シンフォトラッ度・・8 幻想度・・9 女性Vo度・・8 総合・・8
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GLAZ Holen AR Bed/Le Sel De La Terre」
フランスのケルトロックバンド、グラッツの3rd。1998作
1stの頃から、ファンタジックなジャケや、素敵な女性ヴォーカルの歌声が好みで、
とても気に入っていたバンドなのだが、残念なことにこの3作目がラスト作となってしまったようだ。
サウンドの方は、キャッチーだった前作「Ar Gest」よりもぐっとメロウになり、トラッド風味が増している。
フランス語による女性ヴォーカルの歌声も美しく、シンセをバックにしたバグパイプの響きとともに、
しっとりと聴かせてくれる。ピアノやフルートなども効果的に使われ、ギターとドラムが入ってくると、
シンフォニックロックとしても爽やかに楽しめる。派手さはないがずっと愛聴したいアルバムだ。
メロディアス度・・8 ケルティック度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8
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Seven Reizh Strinkadenn'Ys
フランスのトラッドロックバンド、セブン・レイズのアルバム。2001作
エレキギターとシンセを基調とした、シンフォニックロック的な華麗さと、
パイプやフルートなどによるトラッド要素が混ざり合ったサウンド。
アコースティックな部分でのしっとりとした叙情に、美声の女性Voによる歌声も耳に心地よく、
バックのうっすらとしたシンセとともにケルティックミュージック的な爽やかさもかもし出している。
インスト曲での幻想的な雰囲気は、雰囲気ものとしても楽しめ、呪術的な男Voも出てきたり
けっこうシアトリカルな質感もある。全体的なまとまりには欠けるが質の高いトラッドシンフォ作だ。
シンフォニック度・・7 トラッ度・・7 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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GANBARA 「Itsas Zabalean」
スペインのトラッドロックバンド、ガンバラの5th。1995作
美しいシンセにフルート、アコーディオンにマンドリン、そして清涼な女性Voの歌声。
トラッド的な素朴さと現代的な聴きやすさを融合させたシンフォニックトラッドは、
同じくスペインのAMAROKにも通じる質の高さで、じつに心地よく聴かせてくれる。
スペイン語で歌われる女性Voの歌唱はうっとりとするほど美しく<
ポーランドのQUIDAMもかくやというほど。アコースティックとシンセのバランスも良く
素朴でありながらも、やわらかでシンフォニックな質感がとても耳に優しい。
メロディアス度・・8 しっとりやわらか度・・9 女性Vo度・・9 総合・・8.5
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AMAROK 「Quentadharken」
スペインのトラッドプログレバンド、アマロックの6th。2004作
たおやかなフルートにサックス、ヴァイオリンにアコギ、そこにキーボードが絡み、
プログレ的なドラムが加わると、ある種、摩訶不思議なトラッドロックサウンドとなる。
そして、音には嘘臭さがなく、本物のバスクの香り漂うトラッドとプログレとの
驚嘆すべき完全なる融合を成し遂げている。スパニッシュで歌われる女性Voの歌唱も素晴らしく、
曲によってはエレキギターも加わり、スペイシーなシンセワークも現れる。一方ではピアノ、フルート、
アコーディオンなどの音色が実に繊細で、一筋縄ではいかない器の大きさを感じさせる。
たおやかにして大胆、そして異国的で優美なシンフォニックプログレトラッド最高の1枚
シンフォニック度・・8 プログレ度・・9 トラッ度・・8 総合・・9.5
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◆スパニッシュ系

LUAR NA LUBRE 「ESPIRAL」
スペインのケルティックバンド、ルア・ナ・ルブレの2002作
ガリシア地方にはMILLADOIROをはじめ、センス溢れるケルティックバンドが多いが、
このバンドも実に素晴らしい。ギターに、ヴァイオリン、アコーディオン、バグパイプなどが重なった
音の洪水のようなゴージャスで躍動感溢れるケルトサウンドから幕を開ける。
スペイン語による美しい女性ヴォーカルも絶品で、アコギとフルートをバックにしっとりと歌い上げる曲などは
とても耳に優しい。アレンジにはときおりシンセも加えた適度なモダン感覚もあって、
伝統的なガリシアのトラッドにポップなメジャー感を加味した聴きやすさが見事だ。
ラストはオーケストラ入りで壮大に盛り上げる。シンフォニック系リスナーにもオススメ。
ケルティック度・・9 アレンジセンス・・9 女性Vo度・・9 総合・・9
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AVALON 「魔女の月/LUA MEIGA」
スペインはガリシアのコンテンポラリートラッドバンド、アヴァロンの1st。2000作
若い女性6名によるバンドだが、トラッドとしてもなかなか本格的。
ヴァイオリンやチェロ、リコーダーの美しくも優雅な響きにケルト風味もプラスされ
極上のアコースティックサウンドを構築している。
メロディが暖かく、分かりやすいので、トラッドでありながらもどこかにポップ性も感じられる。
さわやかな女性Voも華を添えている。元気の出る陽性トラッドの傑作。
メロディアス度・・9 トラッ度・・9 さわやか度・・10 総合・・8
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MALAGUERO 「LATITUDES」
スペインのトラッド・ロックバンド、マラグエロの1st。2001作
フィドルやマンドリン、フルートといったトラディショナル楽器に、エレキギターと
ロックドラムを融合し、そこに女性Voを乗せたなんとも私好みのサウンド。
曲によっては純トラッド的で、演奏力もありトラディショナル音楽としても本格派だが、
やはりそこにピアノやギターなどが絡まると、なんともいえぬ素敵な音楽になる。
女性Voの歌唱ものびやかで力強く、スペイン語の歌が実によく映えている。
トラッ度・・9 ロック度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8.5
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iRtio 「Mar De Pedra」
スペインのトラッドバンド、イルティオのアルバム。2002作
やわらかなアコーディオンの音色にヴァイオリン、パイプ、フルートなどが絡み、
女性ヴォーカルが歌を乗せる、爽やかなサウンド。ケルティックな味わいの中に
ほのぼのとした温かみが感じられるのが、やはりガリシア地方のバンドらしい。
ピアノやクラリネットなどの入れ方はどこかクラシカルだし、
ロック的なドラムも入っているのでプログレファンにも充分楽しめる。
メロディアス度・・8 ケルティック度・・8 トラッ度・・8 総合・・8
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L'ham de Foc Cor de Porc」
スペインの個性派トラッドバンド、ラム・デ・フォクの3rd。2006作
前作もミステリアスなトラッドサウンドでなかなか見事なアルバムであったが、
本作ではさらに一歩踏み込んだような、強い土着性が感じられる作品となった。
アコースティックギターを中心に、ブズーキ、ハーディーガーディなどの古楽を大胆に取り入れ
妖艶な女性ヴォーカルの歌声とともに、中世を思わせる不思議な世界観を描き出している。
またバルカン、ギリシャ的ともいえる地中海色もあり、パーカッションの躍動的なリズムなども含めて
ラジカルトラッドのリスナーも唸らせるだけのインパクトと、サウンドの強度がある。
土着度・・9 トラッ度・・9 女性Vo度・・9 総合・・8.5
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FUXAN OS VENTOS 「Sempre E Mais Despois」
スペインのトラッドバンド、フサン・オス・ヴェントスのアルバム。1999作
70年代から活動するガリシア地方のベテランで、男女2名ずつのヴォーカルに
ギター、マンドリン、ブズーキ、アコーディオン、フルートなどによる土着的なトラッドサウンド。
同じガリシアのベテランMilladoiroがアコースティカルな演奏に重点を置いているのに対し、
このバンドはあくまで歌を大切にした曲調で、その分田舎臭さ、そして土の香りが強い。
ヴォーカルの歌声には美しさと力強さがあり、たおやかなメロディを奏でる演奏の中で
その存在感が引き立っている。アイリッシュとは異なる濃密なトラッドが楽しめる。
アコースティカル度・・9 トラッ度・・9 土着度・・10 総合・・8
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Xeito Novo Xanelas」
アルゼンチンのケルティックバンド、シェイト・ノボのアルバム。2005作
フォルクローレ、タンゴというイメージの強いこの国でケルト系バンドというのは
意外な感じがするが、アルゼンチンにはガリシア系のスペインからの移民も多いらしい。
ゆるやかにつまびかれるアコースティックギターの音色に、たおやかなフルートとアコーディオンが絡み、
しっとりと聴かせつつ、そこにガイタ(ガリシアン・パイプ)が加わると、本格的なガリシアのトラッドサウンドになって、
たとえばMilladoiroあたりと比べても遜色ない雰囲気。あくまでインスト主体のバンドながら、
数曲で歌う女性ヴォーカルもいい感じだし、ドラムやピアノが入って来るとシンフォニックロック的にも聴けたりする。
また、本作はリト・ヴィターレがミックス、マスリングを手がけている点も見逃せない。
アコースティック度・・8 ケルティック度・・8 しっとりたおやか度・・9 総合・・8
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◆北欧系

GARMARNA 「VENGEANCE」
スウェーデンのラジカルトラッドバンド、ガルマルナの3rd。1999作
2nd「主なるヴァイオリン弾き」で日本デビューを果たしたこのバンドだが、
この3rdになると伝統音楽と現代の融合は、さらに大胆になされている。
楽曲にはデジタリィなテクノ色が現れ、打ち込み風リズムと北欧トラッドが合体し
トラッドなのに現代音楽という、非常に面白いサウンドになっている。
エマ嬢の歌声は、曲においてさらに重要な位置を占めるようになり、
トラッドシンガーでありながらロック、そしてアンビエント的な役をになう。
たとえばVARTTINAと同様、プログレファンにもお薦めできるアルバムである。
先鋭度・・9 北欧トラッ度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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VARTTINA 「ILMATAR」
フィンランドのトラディショナル・ポップ・グループ、ヴァルティナの8th。2000作
北欧の伝統的なトラッドをエレクトロニクスを加えた現代風アレンジで聞かせるこのグループ。
作りこまれたアレンジ、民族楽器を本格的に使用しながらビート感にあふれた
メジャーな普遍性で毎回高品質、高密度のアルバムを作り続けるのは素晴らしい。
前作「ヴィヒマ」においてトラッドとポップとの絶妙の融合を成し遂げた傑作を作り、
続く今作である。今回は前作における壮大華麗さを控えめにして、より内省的な
深みのある音作りになっている。一聴すると「落ち着いた」印象であるが、
変即リズムや起伏にとんだ民族コーラスなど、相変わらず密度は濃い。
ポップ度・・6 トラッ度・・9 演奏・・9 総合・・8.5
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GJALLARHORN 「Rimfaxe」
フィンランドのトラッドバンド、ヤァラルホーンの4th。2006作
プログレファン受けする北欧トラッドバンドとして、毎回密度の高い作品を作っている彼らだが、
今作はよりプログレッシブな質感を増したアルバム。ヒステリックに歌い上げるジェニー嬢の歌声は
いっそうの貫祿を増し、ヴァイオリン、フィドル、フルートに、リズミカルなパーカッション、ドラム、
さらにはシンセによる味付けもなされていて、シンフォニックでエレクトリックな要素も加わっている。
もちろん、しっかりと本格派のトラッド要素も健在で、ミスティックな雰囲気をかもし出しつつも、
モダンと伝統の融合
を感じさせるアレンジ面での成長がうかがえる傑作だ。
プログレ度・・8 トラッ度・・8 北欧度・・9 総合・・8
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Tva Fisk Och en Flask 「Jungfruburen」
スウェーデンのトラッドバンド、トヴァ・フィスク・オク・アン・フラスクの2nd。2000作
ヴァイオリン、ギター、パーカッションを中心にした躍動感溢れる演奏に、
女性ヴォーカルによる母国語の歌唱で聴かせる北欧トラッドサウンド。
土着的なトラッド要素をモダンなアレンジで再構築し、
緊張感に満ちた勢いある演奏が繰り広げられる。
この手のバンドの中でも曲のメリハリとインパクトがあるので、
トラッド系初心者の若いリスナーなども退屈せずに聴き通せるだろう。
プログレ度・・7 北欧トラッ度・・9 女性Vo度・・8 総合・・8
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Ranarim 「Morning Star」
スウェーデンのトラッドバンド、ラーナリムの3rd。2007作
二人の女性ヴォーカルの歌声にやわらんなアコースティックギター、
そして素朴なニッケルハルパの音色で聴かせるサウンドは、
本作にして完全な融合を果たしたといってもいいだろう。
自然体のトラッドサウンドでありながら、それをモダンとは言わないほどの聴き易さで
アレンジした楽曲は、ジャケのように陽光の差す森に包まれたような優しい質感だ。
アコースティカル度・・9 トラッ度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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GATE 「ISELILYA」
ノルウェーのラジカルトラッド・ロックバンド、ゴーテの2nd。2004作
メタルコーナーなどに置いてあるので、てっきりゴシックメタルかと思いきや
メタル色はあまりなく、正統的な北欧トラッドを今風に構築し直したというサウンド。
艶のある女性Voをフロントに、いかにも北欧らしいトラッドメロディをバンドサウンドで解釈している。
いうなればGARMARNAあたりにも似た質感でそこにキーボードによるシンフォニック性や、
ときにゴシックメタル的な部分を加味したような雰囲気もある。
寒々しい静寂感と同時に、ロック的なノリの良さ(ときにサイケ調)も併せ持っていて
単なる自己満足ではない聴きやすさがあるのがよい。
メロディアス度・・8 北欧トラッ度・・9 女性Vo度・・8 総合・・8
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FAUN 「Renaissance」
ドイツのモダントラッドバンド、ファウンの1st。2005作
ホイッスルやリコーダー、ブズーキ、ハーディ・ガーディ、バグパイプにハープといった
古楽器の音色に、うっすらとしたシンセの味付けと、美声の女性ヴォーカルの歌声が乗る。
中世的な世界観とモダンなアレンジの聴きやすさが融合したサウンドは、
幻想的な美しさに満ちている。ジャケ裏の女性メンバーの衣装にも萌え(笑)
薄暗いゴシック色を増した2ndもいいが、まずはしっとりと美しい本作から。
メロディアス度・・8 古楽トラッ度・・8 しっとり幻想度・・8 総合・・8
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◆オススメのオムニバスアルバム

The Celtic Circle
ケルト系アーティストのオムニバスアルバム、ケルティック・サークル。2003作
CD2枚組みで全32曲を収録、参加アーティストはクラナド、カパーケリー、チーフタンズといった正統派から、
ロリーナ・マッケニット、モイア・ブレナン、メアリー・マクラフリン、サラ・マクラクラン、ザ・コアーズなどの
コンテンポラリー系、さらにはケイト・ブッシュや、ヴァンゲリス、スティーヴ・ハウ&アニー・ハズラム、
アラン・スティーヴェル、そしてメタル系のナイトウィッシュ、ウィズィン・テンプテーションといったバンドまでを収録。
本格派のケルトミュージックのみならず、さまざまな角度からアレンジされた楽曲が楽しめる。
女性ヴォーカルものが多いのでフィメール好きや、幻想的な世界観が好きな方にもお勧めだ。
ケルティック度・・8 幻想度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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The Celtic Circle 2
ケルト系アーティストのオムニバスアルバム、ケルティック・サークルの2作目。2003作
CD2枚組みで全32曲を収録、クラナド、チーフタンズ、カパーケリー、ロリーナ・マッケニット、ザ・コアーズといった
前作からのおなじみのアーティストに加え、今回はジェフ・ベック、ゲイリー・ムーアなどの大御所ギタリストや、
マイク・オールドフィールド、ギャラハド、アイオナといった、プログレッシブ方面のアーティストや、
パメラ・モーガン、コニー・ドーバー、フィオナ・ジョイスなど、新世代のケルト系女性ヴォーカルの楽曲も入っていて
美しい歌ものからインスト、シンフォニック系まで、幅広いサウンドが楽しめる。
ケルトのみならず、プログレファンなどにもお勧めできるオムニバスCDだ。
ケルティック度・・8 幻想度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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BILL WHELAN RIVERDANCE
アイリッシュダンスを芸術的なエンターテイメントに仕立てたリバーダンスのサントラ。1998(1995)作
映像の方は先にDVDで見ており、その超絶な足技と、アイリッシュミュージックとの融合に
うっとりと釘付けになったものだが、これはそのサントラアルバム。
曲に乗せるダンサーのタップ音がばっちり入っていてその華麗な足の神業を耳でも堪能できる。
音楽の方にも躍動と静謐の対比があり、現代風ケルトミュージックとしてもなかなかの出来。
女性Voとコーラスがとても美しい曲もあり、映像抜きでも単体として楽しめます。
シンフォニック度・・7 ケルト度・・9 映像も見るべし度・・9 総合・・8
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Riverdance関連のDVD



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*女性ヴォーカルのシンフォニックロック特集
*北欧トラッド特集
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