メタルCDレビュー
~HEAVY METAL CD REVIEW 2018  by 緑川 とうせい

★2018年に聴いたメタルCDレビュー
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12/28
今年のメタル収め(357)


Visions Of Atlantis 「The Deep & the Dark」
オーストリアのシンフォニックメタル、ヴィジョンズ・オブ・アトランティスの2018年作
2002年にデビュー、フルアルバムとしては6作目となる。適度にヘヴィなギターと美麗なシンセアレンジに、
前作ミニから加わったクレメンティーヌ嬢のフェミニンな歌声を乗せた、Nightwishタイプのサウンド。
キャッチーなメロディック性と壮麗なシンフォニック性のバランスのとれた聴き心地で、
ほどよいクサメロ感はEDENBRIDGEにも通じるか。随所にマイルドな男性ヴォーカルも加わるが、
女性声を邪魔しすぎない程度でよいアクセントになっている。楽曲は3~4分前後が主体で、
わりとシンプルかつ明快な作風なので、この手のシンフォニックメタル初心者にも楽しめるだろう。
メロディック度・・8 壮麗度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Dark Sarah 「The Golden Moth」
フィンランドのシンフォニックメタル、ダーク・サラの2018年作
AMBERIAN DAWNのシンガー、Heidi Parviainenをフロントにしたバンドの3作目。
Charon、Poisonblackなどでシンガーを務めた、Jp Leppaluotoが参加し、男女Voの編成となり、
美しい女性ヴォーカルに男性声が絡み、オペラティックな味わいのシンフォニックメタルを展開。
オーケストラルな壮麗さに包まれた世界観と、JPのパワフルな歌声とともにヘヴィな重厚さが同居し、
ハイジ嬢の美しいソプラノを引き立てている。NightwishEpicaにも匹敵する音の説得力で、
シネマティックなスケール感を備えた、男女声シンフォニックメタルの力作に仕上がっている。
シンフォニック度・・9 オペラティック度・・8 壮麗度・・9 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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ALCYONA 「TRAILBLAZER」
ベラルーシのシンフォニックメタル、アルシオナの2018年作
女性Vo、女性シンセ奏者を含む5人編成で、美麗なシンセアレンジに伸びやかな女性ヴォーカルを乗せた、
EDENBRIDGEにも通じる優美なシンフォニックメタル。メロディックなギターフレーズも随所に覗かせつつ、
なにより、なよやかで魅力的なソプラノ女性ヴォーカルの歌声が、このサウンドにとてもよくマッチしている。
これだという新鮮なものはないですが、ファンタジックなジャケやメロディのフックも含めて全体的にも高品質。
母国語でしっとりと歌われるラスト曲もよいですね。女性声シンフォメタル好きにはたまらない好作品です。
シンフォニック度・・8 優美度・・8 女性Vo度・・9 総合・・8
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ELEINE 「UNTIL THE END」
スウェーデンのシンフォニックメタル、エレインの2018年作
壮麗なオーケストラアレンジにヘヴィなギターと、美しい女性ヴォーカルの歌声を乗せ、
低音の男性デスヴォイスが絡む、EPICAを思わせるシンフォニック・ゴシックメタル。
適度に疾走する激しさもありつつ、美麗なアレンジと耽美で重厚な世界観に、
マデリン嬢の艶めいた歌声も伸びやかで魅力的。どの曲も雰囲気は悪くないのだが、
これという盛り上がりがなく、全体的にいまひとつ突き抜けきらないのが惜しい。
このバントならではの個性もまだ薄く、定型のシンフォニックメタルという印象。これからに期待。
シンフォニック度・・8 新鮮度・・7 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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LUCIFER 「LUCIFER II」
スウェーデンのヴィンテージハードロック、ルシファーの2018年作
The Oathのヨハナ・サドニスを中心に結成、2作目となる本作では、ヨハナ以外のメンバーが替り、
よりオールドな味わいで聴かせる、70年代ルーツのヴィンテージハードロックになっている。

やわらかなオルガンが鳴り響きつつ、アナログ感たっぷりのギターに女性ヴォーカルを乗せ
サバスやヒープ直系の古き良きブリティッシュハードロックの空気感を描き出す。
けだるげなヨハンの歌声は、より魔女めいた妖艶な雰囲気で、ぐっと魅力が増していて、
ヘヴィさが減った分、より多くのヴィンテージロック好きに楽しめる作風になった。
ドラマティック度・・7 ヴィンテージ度・・9 女性Vo度・・8 総合・・8
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Purson 「In the Meantime」
イギリスのサイケ・ドゥームロック、プルソンの2014年
デビュー作「The Circle & The Blue Door」に続く4曲入りのEPで、牧歌的なマンドリンの音色で幕を開け、
うっすらとしたシンセ、フルートの音色に女性ヴォーカルを乗せ、ゆったりとした聴き心地の1曲目から、
ドゥームな感触が後退してサイケロック色が強まった印象。オルガンやメロトロンの音色などは、
プログレ寄りのヴィンテージサイケとしても楽しめる。アンダーグラウンドな妖しさは薄れたが
よりレイドバックした、60~70年代ルーツのユルさと魔女系ロックとしての妖しさが絶妙に融合していて
ヴィンテージなサイケロックの傑作となる次作へと続く内容だ。個人的には大好きな路線です。
ヴィンテージ度・・8 サイケ度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Battle Beast 「Bringer of Pain」
フィンランドのメロディックメタル、バトル・ビーストの2017年作
2012年にデビューしてから4作目となるアルバムで、ツインギターにシンセを重ね、
ハスキーな女性ヴォーカルを乗せた、正統派メタルサウンドは本作も健在。
キャッチーでオールドな感触のハードロックから、パワフルに疾走するナンバーまで、
今作はメロディのフックにより明快な聴きやすさが感じられる。楽曲は3~4分前後とシンプルながら、
シンフォニックなアレンジのナンバーなど、ノーラ嬢の中性的な歌声の魅力も曲ごとに違った味わいで楽しめる。
バンドとしての可能性を見せつけるような、濃密で強力なアルバムに仕上がっている。
メロディック度・・8 パワフル度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Burning Point「The Blaze」
フィンランドのメロディックメタル、バーニング・ポイントの2016年作
2001年にデビュー、初期はネオクラ寄りのスタイルであったが、4作目からパワフルな説得力を強め、
本作は通算7作目。元BATTLE BEASTのニッテ・ヴァロが加入し、女性Vo体制での2作目であるが、
前作がセルフカヴァー中心だったので、オリジナルアルバムとしては4年ぶりとなる。
メロディックなツインギターにハスキーでパワフルな女性ヴォーカルを乗せて疾走する1曲めから
正統派のメロパワ好きはニンマリ。楽曲は3~4分台と比較的シンプルで、シンフォニックなアレンジを加えた
どっしりとしたミドルテンポのナンバーも、キャリアのあるバンドらしい重厚な聴き心地で楽しめる。
ドラマティック度・・7 疾走度・・7 正統派度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Hellcats 「Worrior Princess」
スロベニアのメタルバンド、ヘルキャッツの2013年作
女性4人によるバンドで、古き良きメタル感触のギターリフにハスキーな女性ヴォーカルを乗せた、
80年代ルーツのどっしりとした正統派HR/HMを聴かせる。曲は3~4分前後とわりとシンプルで、
ほどよくキャッチーな感触もあるので、かつてのVIXENあたりが好きな方にもイケるかと。
楽曲的にはこれといった新鮮味はないが、ガールズメタルがお好きな方はいかが。
メロディック度・・7 正統派度・・8 ガールズ度・・8 総合・・7
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Seventh Heaven 「Till The End Of Time」
日本のメロディックメタル、セブンス・ヘブンの2016年作
2009年以来となる3作目で、前作はテラ・ローザを受け継ぐような好作品であったが、
本作ではそのTERRA ROSAの岡垣正志がシンセでゲスト参加。美麗なイントロ曲から始まり、
伸びやかな女性ヴォーカルを乗せた、様式美テイストのジャパニーズメタルが広がってゆく。
きらびやかなシンセワークと随所に流麗なギターメロディも含みつつ、ヨシエ嬢による日本語歌詞の歌声が
かつてのSTARLESSのようなキャッチーな聴き心地となっていて、オールドなジャパメタ好きはにんまりだ。
音質的な部分での自主制作感がにじみ出ているのが惜しいが、内容は充実の出来です。
メロディック度・・8 様式美度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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Anneke Van Giersbergen & Danny Cavanagh 「In Parallel」
オランダの女性シンガー、アネク・ヴァン・ガースバーゲンとAnathemaのダニエル・カヴァナーのユニットによるライブ。2009年作
アコースティックギターとピアノをバックに、しっとりとしたアネクさんの歌声で聴かせる、アコースティックなライブで、
The Gatheringのナンバーや、アネク自身のソロ作にカヴァー曲、二人の歌を乗せたAnathemaのナンバーまで披露。
音数の少ないシンプルなアンプラグドなので、やわらかな歌声とともに、大人の味わいに包まれたゆったりとした聴き心地。
アンプラグ度・・9 しっとり度・・9 アネクの歌声度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Fallen Arise 「Adeline」
ギリシャのゴシック・シンフォニックメタル、フォールン・アライズの2015年作
男女Voにシンセを含む6人編成、映画的なナレーションで幕を開けるコンセプト的な作品で、
クラシカルなピアノに女性ヴォーカル、オーケストラアレンジによる優美なシンフォニック性と、
ヘヴィなギターにスクリームする男性声を乗せたアグレッシブな味わいを同居させたサウンド。
紅一点、Spyla嬢の歌声は、ソプラノというよりはウィスパリングな中音域なので、
オペラティックな魅力は薄く、全体的にややダークで耽美な世界観は悪くないのだが、
EPICAあたりに比べると、ややマイナー臭い雰囲気か。今後の成長に期待です。
シンフォニック度・・8 耽美度・・8 女性Vo度・・7 総合・・7.5
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TETRICONIA 「Eve」
メキシコのシンフォニック・ゴシックメタル、テトリコニアの2006年作
クラシカルなストリングスにメロウなギターと壮麗な男女コーラスが重なり、
美しいソプラノ女性ヴォーカルを乗せたシンフォニックなゴシックメタル。
魅力的な女性声は、DELAINのような優美な雰囲気で、ヴァイオリンやチェロ、
オーボエ、ホルンなど、本物の管弦楽を使った壮麗なクラシカル性も素晴らしい。ときおり入る男性デス声が
艶やかな女性ソプラノを引き立てつつ、緩急のある楽曲アレンジとともにドラマティックな味わいが楽しめる。
いくぶんのB級感はあるものの、クラシカル系のシンフォニック&ゴシックメタルが好きな方にはお薦めしたい。
シンフォニック度・・8 壮麗度・・9 女性Vo度・・8 総合・・8



12/21
マグナムは会心傑作!(344)


MAGNUM 「Lost on the Road to Eternity」
イギリスのドラマティックハード、マグナムの2018年作
1978年デビューの大ベテラン、2002年の再結成後も旺盛な活動を続け、本作は通算19作目となる。
おなじみ、ロドニー・マシューズのファンタジックなジャケも素晴らしいが、内容もまた充実の極地。
オルガンやピアノを含むオールドなシンセにほどよくハードなギター、そしてボブ・カトレイの歌声を乗せて、
古き良き英国の空気を継承するサウンドを聴かせてくれる。ここ数作の中では、プログレハード風味の強いウェットな作風で、
往年のファンにはたまらない。オリジナルメンバーである、トニー・クラーキンのギターも渋い味わいのブルージーな旋律を聴かせ、
レイドバックしたサウンドに確かな説得力を付加している。AVANTASIAで共演したトビアス・サメットが参加したシンフォニックなナンバーなど、
アルバムとしての聴かせどころも多く、誇り高き英国の香りに包まれた、大人の哀愁と叙情が味わえる。これぞベテラン健在の傑作だ。
ドラマティック度・・8 古き良き度・・9 英国度・・9 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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TEN 「GOTHICA」
イギリスのメロディアスハード、テンの2017年作
1995年にデビューしてから、英国らしいウェットなHR作品を作り続けるバンド。
通算13作目となる本作は、シャケやタイトルからしてダークな雰囲気だが、メロディックなギターにシンセを重ね、
ゲイリー・ヒューズのマイルドな歌声を乗せたサウンドは、オールドなHRの美学を重厚にアレンジしたという聴き心地。
厚みのあるツインギターにシンセやピアノによるシンフォニックなテイストを加えたことで、ときに耽美な味わいも感じさせる。
もちろん、これまでのTENのようにキャッチーで軽快なナンバーもあり、バラート的なウェットな叙情曲も魅力的だ。
打ち込みを使ったモダンなアレンジなどは新機軸で、古さと新しさを巧みに同居させた意欲的な力作になっている。
ドラマティック度・・8 重厚度・・8 英国度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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TEN 「Battlefield」
イギリスのメロディアスハード、テンの2016年作
バンド20周年の記念作である、2014年作「Albion」、2015年作「Isla De Muerta」に、
ミニアルバム「The Dragon & Saint George」の楽曲を2CDに収録した、いわば完全版。
サウンドの方は、ゲイリー・ヒューズのマイルドな歌声とともに哀愁の叙情に包まれた、
王道のテンサウンドがたっぷり詰まっていて、もはや新鮮味はないが、英国の香りを運ぶ
耳心地の良いメロディアスハードが全編で楽しめる。EP収録曲もキャッチーかつメロウな佳曲揃い。
メロディック度・・8 ドラマティック度・・8 英国度・・9 総合・・8
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RUNNING WILD 「RAPID FORAY」
ジャーマンメタルのベテラン、ランニング・ワイルドの2016年作
1984年にデビュー、ロックン・ロルフ率いる大ベテラン。2005年にいったん解散を宣言するも、2012年に復活し、
本作は復活後の3作目となる。「ランニングワイルド節」ともいえる、勇壮でパイレーツなギターリフに、
ロルフ船長の枯れた味わいのヴォーカルを乗せた、往年を思わせる正統派のスタイルは本作も健在。
楽曲における魅力的なフックと、ツインギターによる叙情的なフレーズという点でも前作以上で、
全盛期に比べると確かに歌の迫力は衰えたものの、愚直に年老いた海賊船長のイメージで楽しめる。
全体的にはミドルテンポが主体で、インパクトの点ではやや弱いが、この世界観を30年以上にわたって追求してきた
ロルフ船長には頭が下がる。ラストは11分を超える大曲で、「ラスト・オブ・モヒカン」のタイトルに老骨を重ねる思いか。
ドラマティック度・・7 パイレーツ度・・8 ランニングワイル度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Serenity 「Lionheart」
オーストリアのシンフォニックメタル、セレニティーの2017年作
2007年にデビューし、レベルの高いアルバムでまたたくまに人気バンドへと駆け上がった。
6作目となる本作は、イングランドのリチャード獅子心王をテーマにしたアルバムで、
荘厳なイントロから幕を開け、流麗なギターにシンセを重ね、伸びやかなヴォーカルを乗せた
壮大なシンフォニックメタルを展開する。キャッチーなメロディと重厚なメタル性の絶妙のバランス、
ウェットな叙情性を含んだドラマティックな味わいは、「ヨーロッパ版KAMELOT」というべきか。
今作では中世が舞台ということで、トラッド的な旋律が随所にエピックな味わいになっていて、
Thy Majestie
などが好きな方にも薦められる。ドラマ性のある流れで鑑賞できる力作です。
ドラマティック度・・8 壮大度・・8 エピック度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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SEBASTIEN 「ACT OF CREATION」
チェコのメロディックメタル、セバスチャンの2018年作
2010年デビューで本作が3作目、ヘヴィでメロディックなツインギターに美麗なシンセと、
伸びやかなヴォーカルで聴かせる、スタイリッシュで正統派のメロディックメタル。
SONATA ARCTICAを思わせるミドルテンポのキャッチーなナンバーなども含め、
北欧のバンドのような涼やかな感触と、ほどよいモダンな硬質感が合わさった欧州メロパワが楽しめる。
アポロ・パパサナシオ(Time Requiem、Firewind)、マヨ・ペトラニン(SIGNUM REGIS)らがゲスト参加、
女性コーラスも加えた厚みのあるヴォーカルパートも魅力的だ。今回もハイクオリティな出来です。
メロディック度・・8 モダン度・・8 高品質度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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MELTED SPACE 「DARKENING LIGHT」
フランス人ミュージシャンによるメタルオペラ・プロジェクト、メルテッド・スペースの2018年作
クレメンタイン・デラウニー(VISIONS OF ATLANTIS)、、アイリン・ギメネス(SIRENIA)、シリエ・ウェルゲランド(THE GATHERING)
オイヴィンド・ハイゲライド(ARCTURUS)、サキス・トリス(ROTTEN CHRIST)、ミカエル・スタンネ(DARK TRANQUILLITY)、
さらにはジェフ・スコット・ソートらがゲスト参加。シンフォニックなアレンジと、配役ごとの男女ヴォーカルの歌声を乗せ、
壮大なSFストーリーを描いてゆく。美しい女性ヴォーカルに、デスヴォイスも含む実力ある男性ヴォーカルが絡み、
シンフォニックメタルとしての壮麗なスケール感に包まれた重厚なサウンドは聴きごたえ十分。
激しい疾走感のあるナンバーも含んだ、メリハリのあるドラマティックな流れも見事な力作です。
ドラマティック度・・8 メタルオペラ度・・8 壮麗度・・9 総合・・8
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LABYRINTH 「RETURN TO LIVE」
イタリアのメロディックメタル、ラビリンスのライブ作品。2018年作
傑作と名高い1998年作「Return To Heaven Denied」再現ライブを収録したCD+DVD。
2016年イタリアでのステージで、曲順は異なるもののアルバム全曲を含む演奏を披露。
ツインギターに美麗なシンセとロベルト・ティランティのハイトーンヴォーカルを乗せて疾走する、
シンフォニックなメロスピサウンドで、20年前のイタリアンメタル全盛の頃が思い出される。
メロディアスなミドルテンポ曲や、叙情的なバラードなど、いま聴いても楽曲自体の質は高いのだが、
CDでは、録音の音質という点でエッジがややぼやけていて、ドラムのバスドラ連打の技量不足も含め、
迫力的には物足りなさも感じてしまう。DVDの方はわりとバランスがよいので、CDはオマケ程度に聴くべし。
ライブ演奏・・7 音質・・7 楽曲・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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WIND ROSE 「STONEHYMN」
イタリアのシンフォニックメタル、ウインド・ローズの2017年作
2012年にデビュー、1stはProgMetal風、2ndはシンフォニックメタルときて、3作目の本作は、
ヴァイキングメタル風のエピックなサウンドを展開。シンセによる壮麗なアレンジに包まれて、
勇壮なヴォーカル&コーラスとともに、北欧のバンドのような涼やかな土着性を含んだ聴き心地。
正統派メロパワ的な疾走感にフォーキーなメロディを乗せ、リズムチェンジを含んだ構築力で、
ドラマティックな空気を描き出す。アコースティックパートも含めて、しっかりとした説得力のある音楽性は、
バンドのセンスと地力が高いからだろう。1st~3rdまで、すべて方向性が違うが、次回作は果たしてどうなる。
ドラマティック度・・8 ヴァイキング風度・・8 壮麗度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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NIVIANE 「THE DRUID KING」
アメリカのメロディックメタル、ニヴィアネの2017年作
どっしりとしたツインギターにパワフルなハイトーンヴォーカルで聴かせる正統派のメタルサウンド。
勇壮なコーラスにはエピックな味わいもあり、うっすらとしたシンセも重ねた重厚な聴き心地で、
ギターは随所にメロディックなフレーズも奏でる。全体的にミドルテンポが主体ながら、
JUDAS PRIEST + BLIND GUARDIAN + KAMELOTという雰囲気でも楽しめるかもしれない。
ファンタジックなジャケのイメージのような、ウェットな叙情に包まれたナンバーもよい感じで、
インパクトのあるキラーチューンが加わったら、よいバンドに成長しそう。今後に期待です。
ドラマティック度・・8 重厚度・・8 正統派度・・8 総合・・7.5
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Sabaton 「The Last Stand」
スウェーデンのメロディックメタル、サバトンの2016年作
2005年にデビュー、いまや漢メタルの代表格となったこのバンド。本作は8作目で、
世界の歴史上の戦いを楽曲ごとにとりあげた、いわばバトル・コセンプトアルバム。
ツインギターにシンセアレンジを重ね、ヨアキム・ブローデンのパワフルな歌声を乗せた、
正統派のメタルサウンドが炸裂。北欧らしいメロディックなフックがキャッチーな聴き心地になっていて、
重厚なメロパワでありながら、ときにシンフォニックメタルのような壮麗さにも包まれる。
3~4分前後の楽曲は、間奏のギターソロも含めて、メロディが充実していて最後までダレさせない。
全37分と短めながら、エピックな勇壮さに包まれた濃密な力作に仕上がっている。
ドラマティック度・・8 パワフル度・・8 エピック度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Hammerfall 「(r)Evolution」
スウェーデンのメロディックメタル、ハンマーフォールの2014年作
1997年にデビュー、いまや正統派メロパワを代表するバンド。本作で9作目となる。
アンドレアス・マーシャルのジャケからして原点回帰を感じさせるが、1st、2ndを思わせる
メロディックなフックとともに疾走する1曲目からして、初期のファンはニンマリだろう。
ヨアキム・カンスの伸びやかなヴォーカルにエピックなコーラスが重なって勇壮な空気をかもしだし
ミドルテンポのナンバーでもドラマティックな世界観に包まれる。じっくりと聴かせるバラードなども、
表現力を増した歌声とともにウェットで重厚な味わいだ。これぞ北欧メロパワという力作である。
ドラマティック度・・8 エピック度・・8 正統派度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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THE PRIVATEER 「THE GOLDSTEEN LAY」
ドイツのフォーク・パワーメタル、プライヴェーターの2017年作
艶やかなヴァイオリンの音色にヘヴィなギターとノーマル&ダミ声ヴォーカルを乗せた、
フォークメタル風味の重厚なメタルサウンドを聴かせる。「私掠船」というバンド名からも、
海賊的なイメージを世界観にしているのだろう、勇壮な男女コーラスにフォーキーなヴァイオリンのメロディ、
随所にアコースティックなパートやブラックメタルばりの激しい疾走パートも含んだ緩急のある展開で、
暗黒の航海に挑むようなドラマティックなサウンドを構築してゆく。ALESTORMなどが好きな方にもお薦めの強力作。
ドラマティック度・・8 フォーキー度・・7 勇壮度・・8 総合・・8
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ARKONA 「Vozrozhdenie」
ロシアのペイガンメタル、アルコナの2015年作
いまやロシアを代表するバンドのひとつ。2004年のデビュー作をリレコーディングした作品で、
牧歌的なホイッスルが鳴り響き、美麗なシンセアレンジにクサメロなギターで疾走、
女性声&グロウルを使い分けるマーシャ嬢の歌声を乗せた、幻想的なペインガンメタル。
ブラストビートを含むエクストリームな激しさに、土着的でミステリアスな空気感を同居させ、
オリジナルの魅力を残した迫力あるサウンドに仕上げている。緩急あるリズムチェンジに、
フォーキーな牧歌性と神秘的なダークさが、よりダイナミックな演奏で蘇ったという強力作だ。
ドラマティック度・・8 ペイガン度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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12/15
ペイガン&フォークにブラックメタル(330)


Heidevolk 「Vuur Van Verzet」
オランダのペイガンメタル、ヘイデヴォルクの2018年作
2005年にデビュー、硬派で本格派のペイガン・フォークメタルを聴かせるバンドの6作目。
ヘヴィなギターリフに低音のヴォーカルを乗せ、どっしりと重厚なサウンドを描きつつ、
勇壮なコーラスやヴァイオリンなどが、エピックで土着的な空気をかもしだす。
ときに激しい疾走パートも現れつつ、ギターが奏でるメロディックなフレーズが
随所にアクセントになっていて、叙情性という点でもこれまで以上に楽しめる。
中世の闇と幻想的な世界観を描く、説得力たっぷりの傑作に仕上がっている。
ドラマティック度・・8 ペイガン度・・9 重厚度・・8 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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ABINCHOVA 「WELTENWANDERER」
スイスのフォークメタル、アビンコヴァの2018年作
女性シンセ、女性ヴァイオリン奏者を含む7人編成で、本作が3作目となる。
ツインギターにダミ声ヴォーカル、艶やかなヴァイオリンの音色とともに聴かせる、
土着的な叙情性とアグレッシブなメロデス感触が同居した、フォークメタルサウンド。
ときに女性ヴォーカルも加えた優雅さに、ドイツ語の男女声によるゲルマンな雰囲気と
随所にアグレッシブな疾走パートも含んだ、起伏に富んだ構築力もなかなかのもの。
優雅なヴァイオリンの音色と武骨なダミ声のコントラストでも楽しめる強力作です。
ドラマティック度・・7 フォーキー度・・7 武骨で優雅度・・8 総合・・7.5
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IVAR BJORNSON & EINAR SELVIK 「HUGSJA」
ENSLAVEDのイヴァー・ビヨンソンとWARDRUNAのエイナー・セルヴィクによるユニットの2018年作
前作も神秘的なトラッドメタル作品であったが、2作目となる本作もジャケからしてノルウェイジャンな雰囲気。
アコースティックギターに詠唱のような歌声を乗せ、フルートやフィドル、角笛の音色とともに、
本格派のトラッドサウンドを展開。うっすらとしたシンセにドラムを加えたロック色もいくぶんありつつ、
基本はアコースティック主体で、寒気しいノルウェーの空気を描くような土着性に包まれた聴き心地。
前作に比べるとメタル色は薄まったが、涼やかで幻想的なトラッドロックが楽しめる逸品です。
ドラマティック度・・8 メタル度・・2 北欧トラッ度・・9 総合・・8
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Mjod 「The Ash of Times /Пепел Времён」
ロシアのペイガンメタル、ムヨードの2018年作
女性パイプ奏者を含む5人編成で、重厚なギターにバグパイプの音色が重なり、
武骨な低音ヴォーカルを乗せた、オールドスタイルのヴァイキングメタルを聴かせる。
シンセが入らない分、武骨な荒々しさに包まれた感触で、激しい疾走パートもありつつ、
常に鳴らされるバグパイプの響きが、フォーキーで牧歌的な空気をかもしだしている。
クサメロや壮麗さはあまりないが、硬派な土着感は本格派の味わい。
媚びの無い本物のペイガン&ヴァイキングメタルが好きな方はいかが。
ドラマティック度・・7 ヴァイキング度・・8 重厚度・・8 総合・・7.5
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KAZKARIV 「Forest Spell」
オーストラリアのフォークロック、カズカリヴの2018年作
アコースティックギターのつまびきにマイルドなヴォーカルを乗せた叙情的なイントロから、
牧歌的なホイッスルの音色も加えた、素朴なフォークロックサウンドを聴かせる。
優雅なピアノにトランペットも鳴り響く、スカやジャズロック的なアプローチもあったり、
シアトリカルなヴォーカルも含めたコミカルな雰囲気や、とりとめのなさが面白いと言えなくもない
一方では、しっとりと聴かせる「スカー・ボローフェア」のカヴァーなど、哀愁の叙情も感じさせる。
全32分のミニアルバムということで、方向性も含めて今後の深化に期待したい。
ドラマティック度・・7 フォーキー度・・7 叙情度・・8 総合・・7
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CHAOSTAR 「THE UNDIVIDED LIGHT」
ギリシャのゴシックバンド、カオスターの2018年作
SEPTIC FLESHのクリストス・アントニオウを中心にしたユニットで、本作は6作目となる。
艶めいた女性ヴォーカルの歌声に、ヴァイオリンの音色を含むオーケストラルなアレンジを重ね、
耽美でシンフォニックなゴシックサウンドを聴かせる。ほとんどギターが入らない分、メタル要素は希薄ながら、
アンドロニキ嬢の妖艶でときにオペラティックな歌声が、妖しく秘教的な空気感を描き出している。
曲によってはモダンなアレンジも覗かせつつ、独自のゴシックミュージックを作り出すセンスは素晴らしい。
耽美度・・9 メタル度・・3 女性Vo度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Orphaned Land & Amaseffer 「KNA'AN」
イスラエルのドラマティックメタル、オルファンド・ランドとアマセファーの合同作。2016年作
同名のミュージカル用の作品のようだが、演奏は実質的にOrphaned Landのメンバーなので、
サウンド的にはアラビックなハードロックとして普通に楽しめる。楽曲は2~3分前後で、
通常のかれらの作品に比べるとシンプルな聴き心地で、重厚なメタル感触は控えめであるが、
アコースティックなナンバーに乗る、コビ・ファルヒのジェントルな歌声はよく引き立っている。
ブックレット内の劇の写真はかなりアヴァンギャルドな雰囲気だが、音楽自体は聴きやすいです。
ドラマティック度・・7 アラビック度・・8 壮大度・・7 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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DRUDKH 「THEY OFTEN SEE DREAMS」
ウクライナのブラックメタル、ドゥルドゥフの2018年作
2003年にデビュー、ネイチャーブラック系の元祖というべきバンドで、本作ですでに11作めとなる。
トレモロのギターリフにダミ声ヴォーカルを乗せて疾走する、プリミティブなブラックメタルサウンドで、
ときにフォークブラック的な土着性も感じさせる。ギターリフをメインにしたオールドスタイルの感触で、
8~9分前後の大曲を中心にした長尺感はあるものの、Wolves in the Throne Roomなどにも通じる、
幻想的な空気に包まれたサウンドが楽しめる。全5曲で43分。淡々としたリフレインに愛想はないが、
神秘的なネイチャーブラックメタルが好きな方は、この寒々しい神秘的な世界観に浸れると思う。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・7 プリミティブ度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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MALADIE 「OF HARM & SALVATION」
ドイツのアヴァン・ブラックメタル、マラディーの2018年作
トレモロのギターリフと絶叫ヴォーカルを乗せて激しくブラスト疾走する暴虐な感触に
エキセントリックな展開力とともにいくぶんモダンな叙情性も感じさせるアヴァンブラックメタル。
ときにサックスが鳴り響いたり、随所にメロディックなギターフレーズを覗かせつつ、
唐突なリズムチェンジなどのアヴァンギャルド性には、カオティックコアやテクニカルデス風味もある。
10分を超える大曲を緩急ある展開で構築するが、全体的にここぞという聴かせどころが弱いのと、
アヴァンギャルドな世界観を描くには、もうひとつ迫力に物足りなさがある。今後に期待です。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・7 アヴァンギャル度・・8 総合・・7
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Deadspace 「The Liquid Sky」
オーストラリアのポストブラックメタル、デッドスペースの2017年作
トレモロのギターリフにうっすらとしたシンセとダミ声&ノーマル声を乗せて激しいブラスト疾走しつつ
ときにメロウなギターフレーズとともに、メランコリックで叙情的なサウンドを描き出す。
Alcestあたりに通じるウェットな叙情美が耳心地よく、激しさの中も繊細な美意識が感じられ、
シンセによるシンフォニックなアレンジとともに、暴虐性よりもアトモスフェリックな幻想性に包まれた聴き心地。
ゲストによる女性声を乗せたナンバーなどには耽美な雰囲気もあり、ミステリアスな空気感に包まれた好作品だ。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・7 メランコリック度・・8 総合・・8

Al-Namrood 「Enkar」
サウジアラビアのブラックメタル、アル・ナムルードの2017年作
イスラム圏からの本格派ブラックメタルで、2009年にデビューして、すでに6作目となる。
アラビア語の野太いヴォーカルを乗せて、スラッシュメタル的に疾走するサウンドで、
前作同様、サイケな浮遊感を感じさせるダークな中近東メタルを聴かせる。
ドラムは打ち込みのようだが、ぼやけたような音質のせいで、さほど気にならず、
繰り返されるアラビックなギターの旋律とともに、プリミティブな妖しさに包まれている。
サウンド的な暴虐性はさほどではないが、にじみ出るアラビックな暗黒臭に浸れます。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・7 アラビック度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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WRATHPRAYER /FORCE OF DARKNESS 「Wrath of Darkness」
チリのブラック・スラッシュメタル、ワラスプレイヤーとフォース・オブ・ダークネスのスプリットアルバム。2018年作
WRATHPRAYERはノイジーなギターに低音系のヴォーカルを乗せて激しくブラスト疾走する、
地下臭漂うブラッケンなサウンド。ほどよいザリザリ感が荒々しくもプリミティブな空気感をかもしだし、
オールドなブラック・スラッシュメタルという感じもある。FORCE OF DARKNESSの方も、
ツインギターのリフと吐き捨てヴォーカルを乗せてたたみかける、初期KREATORのような
スピーディなブラッケン・スラッシユメタル。こちらは適度にメロディックな部分もって、
普通のスラッシュメタルリスナーにも楽しめそう。2バンドで全7曲入りのEPです。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・8 ブラッケン・スラッシュ度・・8 総合・・7.5
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11/30
今年もあと一か月!(318)


Fates Warning 「Live Over Europe」
アメリカのプログレメタル、フェイツ・ウォーニングのライブ。2018年作
オリジナルメンバーによる「Awaken The Guardian」の完全再現ライブも感動的であったが、
本作は現メンバーによるライブ作品で、2018年のヨーロッパツアーから、スロベニア、ドイツ、
ギリシャでのステージを2CDに合計23曲収録。2016年作「Theories of Flight」からのナンバーを中心に、
90年代のナンバーも披露。ボビー・ジャーゾンベクのテクニカルなドラムに、レイ・アルダーのパワフルな歌声と
ジム・マテオスの巧みなギターワークを乗せ、安定したアンサンブルで重厚なサウンドを構築してゆく。
ProgMetalとしてはやや派手さに欠けるのだが、玄人好みの確かな演奏力が光るライブ作品だ、
ドラマティック度・・7 ライブ演奏・・8 重厚度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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THRESHOLD 「Legends of Shires」
イギリスのプログレメタル、スレッショルドの2017年作
1993年にデビュー、初期はわりと地味なイメージであったが、7thあたりから着実にクオリティを増してきた。
本作は通算11作目でCD2枚組の大作。脱退したダミアン・ウィルソンに替わり、ヴォーカルにグリン・モーガンが復帰。
マイルドな歌声を乗せた叙情的な導入部から始まり、ハードなギターとシンセを重ねた重厚なサウンドが広がってゆく。
キャッチーなヴォーカルメロディはプログレハード的でもあり、英国らしいウェットなドラマ性に包まれた聴き心地で、
ほどよくテクニカルなインストパートも含めて、DREAM THEATERをコンパクトにした、というような雰囲気もある。
随所にメロウなギターによる泣きの叙情も含んだ、メリハリのある展開力で、コンセプト的な流れのある作風が楽しめる。
曲ごとの派手さやインパクトというのはさほどないのだが、全81分、どっしり安定の力作と言える。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 重厚度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Soul Secret 「BABEL」
イタリアのプログレメタル、ソウル・シークレットの2017年作
2008年にデビュー、本作は4作目で、アコースティックギターによるイントロから始まり、
ハードなギターとシンセを重ね、テクニカルなリズムによるモダンなサウンドが広がってゆく。
伸びやかなヴォーカルに美麗なシンセワーク、SEなどを含んだコンセプト的なドラマ性と、
スタイリッシュなセンスが合わさって、随所にDREAM THEATER的な味わいも感じさせ、
中堅バンドらしい演奏力と展開美で、メロデイと技巧の同居したサウンドを構築してゆく。
10分を超える大曲も、テクニカルになり過ぎず、適度な硬質感をキャッチーな優雅さで包み込む。
全67分の力作であり、モダンなProgMetalとして、バンドのレベルをひとつ上げたような傑作です。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 スタイリッシュ度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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DIABLO SWING ORCHESTRA 「Pacifisticuffs」
スウェーデンのプログレ・ジャズメタル、ディアブロ・スウィング・オーケストラの2017年作
メタルとスウィングジャズを大胆に融合した、遊び心たっぷりのサウンドを描くバンドの4作目。
トロンボーン、トランペット、チェロ奏者を含む8人編成で、今作はのっけからノリのよいファンキーなロック感触で、
ハードなギターにブラスが重なり、男女ヴォーカルを乗せた勢いのあるサウンドを聴かせる。
チェロを加えたクラシカルな感触に、とぼけた味わいのカントリー風味などを唐突に盛り込みつつ、
シアトリカルな壮大さとともに「本気のギャグ」を構築するようなセンスはこのバンドならではだろう。
曲によってはモダンなビート感とともに、確信犯的なポップ性も盛り込んだ振り幅の大きなアレンジも凄い。
女性Voの交替によりオペラティックな雰囲気は薄まったが、むしろ深化した「ごった煮系」の異色傑作である。
ドラマティック度・・8 ジャズメタル度・・7 アヴァン度・・9 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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CALIGULA'S HORSE 「In Contact」
オーストラリアのプログレメタル、カリギュラズ・ホースの2017年作
2011年にデビューし、本作がすでに4作目となる。ヘヴィなギターにうっすらとしたシンセを重ね、
Djent感覚も含んだモダンなテクニカル性で構築する、スタイリッシュなProgMetalサウンド。
マイルドなヴォーカルには、ポストプログレ的な感触があり、メタリックな硬質感とのコントラストになっていて、
繊細な叙情性に包まれたキャッチーなナンバーなどは、プログレ寄りのリスナーにも楽しめるだろう。
ラストは15分を超える大曲で、メロディックなギターとエモーショナルな歌声をシンフォニックなアレンジに乗せ、
じわじわとドラマティックに盛り上げる。モダンな技巧性とゆるやかな美意識が同居した力作だ。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 モダンサウン度・・8 総合・・8
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Prospekt 「The Colourless Sunrise」
イギリスのプログレメタル、プロスペクトの2013年作
メタリックなギターワークとうっすらとしたなシンセアレンジに、伸びやかなハイトーンヴォーカル乗せ、
モダンな硬質感に包まれたProgMetalサウンド。随所に流麗なギターフレーズを覗かせつつ、
メロパワ的な疾走感も含んだ緩急ある展開力もなかなかのもので、ヴォーカルの確かな表現力が
サウンドに説得力を付加していて、テクニカルな演奏力も一線級のバンドとすでに遜色ない。
ヘヴィなリフを変拍子に乗せたDjent風の味わいもあったりと、若いメタルリスナーにも対応。
10分を超える大曲などもスタイリッシュに構築してゆく。重厚かつシンフォニックな高品質作品だ。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 モダンサウン度・・8 総合・・8
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Gates of Winter 「Lux Aeterna」
カナダのプログレメタル、ゲイツ・オブ・ウインターの2008年作
うっすらとしたシンセアレンジに適度にヘヴィなギターを乗せ、マイルドなヴォーカルで聴かせる、
シンフォニックな味わいに、デスヴォイスを加えた重厚な迫力もある、高品質なProgMetal。
随所に美麗なシンセに技巧的なギターワークを加えて、知的な構築力で包み込んだ楽曲は、
ほどよくテクニカルな感触で、16分を超える組曲なども、緩急ある展開力で描いてゆく。
音の重ねやメロディのフックも含めて、インストパートの充実という点では高いレベルで楽しめる。
重厚でシンフォニックなプログレメタルとしては、掘り出し物的な逸品であろう。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 構築センス・・8 総合・・8
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THE NIGHT FLIGHT ORCHESTRA 「Amber Galactic」
スウェーデンのハードロック、ナイト・フライト・オーケストラの2017年作
SOILWORKのビョーン・ストリッド、デヴィッド・アンダーソン、ARCH ENEMYのシャーリー・ダンジェロらによるバンドで、
本作が3作目となる。きらびやかなシンセアレンジにほどよくハードなギターを重ね、パワフルなヴォーカルで聴かせる、
オールドなテイストのメロディアスハードロック。80年代ルーツのキャッチーな味わいに包まれつつ、
随所に聴かせる流麗なギターフレーズなどは、さすがの実力者による演奏力である。
かつてのLAメタルのようなグラマラスな味わいで、軽すぎないどっしりとしたアンサンブルは、
「メタリックなAOR」という聴き方もできる。単なるサイドプロジェクトという以上の完成度が素晴らしい。
メロディック度・・8 キャッチー度・・9 古き良きHR度・・9 総合・・8
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Moonspell 「1755」
ポルトガルのゴシックメタル、ムーンスペルの2017年作
1995年にデビュー、5th以降はより重厚なサウンドへと深化しながら、レベルの高い作品を作り続けている。
本作は11作目で、1755年のリスボン地震の悲劇をテーマにした作品で、オーケストラルなアレンジに、
ポルトガル語によるダミ声ヴォーカルを乗せ、重厚でシンフォニックなゴシック・デスメタルを描き出す。
ときに、ORPHANED LANDにも通じるようなアラビックな旋律も含んだ異国的な空気感も漂わせ、
シリアスな迫力に包まれた荘厳な世界観が味わえる。メランコリックで耽美な要素はやや希薄ながら、
その分、壮麗なスケール感とともに土着感を強めた、シンフォニック・ゴシック・デスの強力作です。
シンフォニック度・・8 ゴシック度・・7 重厚度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Meshuggah 「The Ophidian Trek」
スウェーデンのテクニカル・エクストリームメタル、メシュガーのライブ作品。2014年作
デビュー25周年を記念してのライブ作品で、2012~2013年のアメリカとヨーロッパのツアー音源と、
DVDにはWacken Open Airの映像も収録。8弦のツインギターによる有機的なリフを絡ませ、
変則リズムに乗せたサウンドは、硬質でありながら生々しいうねりを含んだグルーヴィな聴き心地。
咆哮するヴォーカルとともに、デスメタル的な激ししさを残しつつ、反復するギターリフによるトリップ感が味わえる。
ライブにおいても、この異色の世界観を完璧に再現するメンバーの演奏力は見事という他はない。
DVDでは、まるで客席から見ているような臨場感ある映像で、迫力のライブステージが楽しめる。
ライブ演奏・・9 テクニカル度・・9 暴虐度・・8 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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Lantlos
ドイツのポストブラックメタル、ラントロスの2008年作
2nd以降は、AlcestのNeigeが加入することでバンドの存在が知られるようになるのだが、
本作の時点はノイジーなギターとダミ声ヴォーカルを乗せて、随所に激しいブラストも含んだ、
オールドスタイルのブラックメタルで、ややこもり気味の音質がプリミティブな妖しさをかもしだす。
絶叫Voにノーマル声も交えつつ、ディプレッシブ・ブラック的でもあるダークで物悲しい叙情性と、
緩急ある展開で、8分、9分という大曲を構築するセンスは、本作においても十分魅力的だ。
再発盤のボーナスDiscには、デビュー前のデモ音源と未発曲を収録。
やや荒削りながら、よりプリミティブな叙情ブラックメタルが楽しめる。
ドラマティック度・・7 暗黒度・・8 叙情度・・7 総合・・7.5
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Lantlos 「Agape」
ドイツのポストブラックメタル、ラントロスの2011年作
本作は3作目で、妖しげなイントロから、ヘヴィなギターを乗せたドゥーミィな感触で始まり、
AlcestのNeigeのマイルドヴォーカルを乗せた、ゆったりとしたアンビエントなパートへと移行、
ダミ声ヴォーカルを交えつつ、適度なヘヴィさとアンニュイな浮遊感を同居したサウンドを聴かせる。
今作では、激しい疾走パートと静寂感のあるパートとが、いくぶん極端なコントラストになっていて、
Alcestとの差別化を図ろうとしているからか、トレモロ系のギターが少ないので泣きの叙情はやや薄めか。
全体的には、スローパートも多いのでわりと淡々としていて、もう少しドラマティックな盛り上がりが欲しかった気もするが、
激しさ控えめのドゥーム・ブラックとしても楽しめるかもしれない。ボーナスDiscには本作のデモ音源を収録。
ドラマティック度・・7 暗黒度・・7 叙情度・・7 総合・・7.5
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11/9
今年もメタル300枚達成!(306)


HIDE BOUND 「THE CURSE REDEMPTION」
日本のメロディックデスメタル、ハイド・バウンドの2017年作
シンフォニックなイントロから幕を開け、北欧メロデス的なギターリフと、絶叫ヴォーカルを乗せて激しく疾走。
SLAYERなどの80年代スラッシュメタルや、オールドデスメタルからの影響を受けたというリードギターと
IN FLAMES、DARK TRANQUILLITYなど、イエテボリ系メロデスを嗜好するサイドギターという二人のプレイは、
随所にウェットでメロディックな叙情をかもしだしつつ、そこにヘヴィなブルータリィをしっかりと同居させている。
往年のAT THE GATESばりの強力な疾走感が爽快で、The Crownなどのデスラッシュ好きのリスナーにも対応。
中音域の絶叫型ヴォーカルは好みを分けるかもしれないが、バックの演奏は海外バンドと遜色ないレベルで、
ファーストアルバムにしてこの完成度は見事。全41分という長さもダレずに聴き通せる。国産メロデス強力作!
メロディック度・・7 疾走度・・9 メロデス/デスラッシュ度・・9 総合・・8
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Wolves in the Throne Room 「THRICE WOVEN」
アメリカのブラックメタルバンド、ウルヴズ・イン・ザ・スローン・ルームの2017年作
5作目となる本作は、前作でのアンビエントな路線から、再びネイチャーなブラックメタルへと回帰、
トレモロのギターリフとダミ声ヴォーカルを乗せて激しくブラスト疾走するスタイルで初期のファンもひと安心。
メロディックな叙情フレーズとシンフォニックなアレンジも引き立っていて、激しくも物悲しい泣きの美学に包まれている。
一方では、初期のEMPERORのようなノルウェイジャン・ブラックメタル的な不穏なコード展開も覗かせて、
オールドスタイルのプリミティブな味わいも魅力的だ。10分前後の大曲を主体にしたミステリアスなスケール感と、
アコースティックパートなども含んだ、緩急ある構築力もさすがで、聴きごたえのある見事な傑作に仕上がっている。
ドラマティック度・・8 叙情度・・8 壮大度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Die Apokalyptischen Reiter 「Der Rote Reiter」
ドイツのシアトリカル・ブラックメタル、ディ・アポカリプティシャン・レイターの2017年作
1997年にデビュー、ブラックメタルの激しさにゲルマンな勇壮さとシアトリカルな大仰さを合わせた、独自のスタイルを追求するバンド。
10作目の本作は、のっけからメロデス的な激しい疾走感で、ツインギターにドイツ語のダミ声ヴォーカルを乗せて、
アグレッシブにたたみかける。オーケストラルなアレンジも含んだ荘厳な重厚さは、本格派のシンフォニックブラック的でもあり、
楽曲は3~4分台を主体にした、今作はわりとシンプルな構成ながら、非常に濃密な迫力に包まれている。
ゲルマンな民族性を感じさせるフォークメタル的な味わいもありつつ、ときに激しくブラスト疾走する暴虐性も見せつける。
かつてのようなプログレッシブな展開が薄まったのは個人的には残念だが、一般的には分かりやすくなったかもしれない。
ドラマティック度・・8 重厚度・・8 ゲルマン度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Anciients 「Voice of the Void」
カナダのプログレッシブ・ドゥームメタル、エンシェンツの2016年作
前作は、いわばOPETHがストーナー化したような傑作であったが、2作目となる本作は
ツインギターの有機的なリフにデスヴォイスを乗せた、いくぶんアグレッシブなプログレッシブデスという雰囲気。
リズムチェンジを含む知的な構築力と、うねりを帯びたアンサンブルによる生々しいアナログ感が合わさって、
むしろMINSKあたりにも通じる重厚な味わいになっている。一方ではノーマル声を乗せたモダンな感触は、
MASTODONあたりのファンにもアピールするかもしれない。激しいツーバスにダミ声ヴォーカルを乗せた
ブラックメタルばりの邪悪なパートもありつつ、10分前後の大曲も含む、全66分の力作である。
ドラマティック度・・8 プログレッシブ度・・7 重厚度・・8 総合・・8
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Conorach 「Through the Ages」
オランダのエピック・フォークメタル、コノラクの2014年作
ツインギターにシンセを含む6人編成で、シンフォニックなアレンジに正統派のギターリフと
ジェントルなヴォーカルを乗せた、ほどよくローカルでエピックな味わいのメタルサウンド。
土着的な感触のメロパワという点では、FALCONERあたりに通じる聴き心地もあり、
ほどよい疾走感とツインギターによる甘すぎない程度のクサメロ感もよいですね。
アコーディオンやティンホイッスルなどの入った、フォーキッシュな叙情も覗かせつつ、
エピックな勇壮さとともに、正統派メロパワのリスナーにも楽しめる好作品だ。
ドラマティック度・・8 エピック度・・8 フォーキー度・・7 総合・・8
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Sleeping Woodland 「TO THE NORTHERN SEAS/К северным морям」
ロシアのフォークメタル、スリーピング・ウッドランドの2017年作
二人組のユニットで、オーケストラルなイントロから始まり、シンフォニックなアレンジに包まれた壮麗さと
ダミ声ヴォーカルを乗せた武骨さが合わさったサウンドで、随所に波の音などのSEを含んだ幻想的な世界観に、
ホイッスルの音色などフォーキーな牧歌性を含んだ聴き心地。オーケストラルなアレンジに包まれた楽曲は、
ときにサントラのような壮大さで、ゆったりとしたリズムとともに重厚で勇壮な空気を描いてゆく。
反面、ギターフレーズなどバンドサウンドとしての魅力的な展開というのはあまりないので、
むしろペイガンな雰囲気モノとして、のんびりと浸るのがよいのかもしれない。
ドラマティック度・・8 シンフォニック度・・8 ペイガン度・・8 総合・・7.5
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Angeli Di Pietra 「Anthems of Conquest」
ベルギーのエピック・フォークメタル、エンジェリ・ディ・ピエトラの2011年作
男女ヴォーカルの歌声をクサメロのギターに乗せ、デスヴォイスを含むアグレッシブなノリと
キャッチーなメロディで、ファンタジックな世界観を描く、辺境風味のローカルな聴き心地。
曲によっては異国的な土着感がミステリアスな空気感にもなっていて、アラビックな旋律とともに、
ORPHANED LANDあたりに通じるナンバーもあったり、適度にシンフォニックなアレンジで、
男女ヴォーカルのエピックなファンタジックメタルとしても楽しめる。疾走するメロスピナンバーも、
パワフルすぎないクサメタル感がGoodです。辺境でもいい…クサメロならば、という方はチェック。
ドラマティック度・・8 フォーキー度・・7 辺境度・・8 総合・・7.5
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ASENBLUT 「BERSERKER」
ドイツのペイガン・デスメタル、アセンブラットの2016年作
ツインギターのリフに低音デスヴォイスを乗せた、重厚なペイガンデスメタルで、
随所に激しいブラスト疾走にメロディックな叙情を含んだサウンドを聴かせる。
ヴォーカルはデス声であるが、ギターの旋律はむしろ正統派のメロパワ寄りであったりして、
案外聴きやすく、あるいはヴァイキング寄りのメロデスとしても普通に楽しめるだろう。
Amon Amarthあたりにも通じるどっしりとした迫力もあり、全体的にもクオリティは高いのだが、
メロディック性と暴虐さがややどっちつかずで、全13曲がどれも似たり寄ったりなのが惜しい。
メロディック度・・7 疾走度・・8 重厚度・・8 総合・・7.5
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Gjenferdsel 「Varde」
ノルウェーのペイガンブラックメタル、ギエンフェードセルの2010年作
二人組のユニットで、土着的なギターフレーズにダミ声ヴォーカルを乗せた、
ローカルな味わいのペイガンブラックメタル。こもり気味の音質もプリミティブな雰囲気で、
激しいブラスト疾走も入りつつ、暴虐性よりは荒涼とした寒々しさに包まれている。
楽曲は3~4分前後と比較的シンプルな味わいで、叙情的過ぎない素朴な硬派さは、
初期のWINDIRあたりが好きな方にもお薦めできる。トレモロのギターフレーズも心地よく、
北の大地を感じさせる、オールドスタイルのヴァイキング・ブラックが楽しめる好アルバムです。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・7 ペイガン度・・9 総合・・7.5
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Notre Dame 「Coming Soon To A Theatre Near You」
イギリスのシアトリカル・ヴァンパイア・ブラックメタル、ノートル・ダムの2002年作
元KING DIAMONDのドラムで、DREAM EVIL、DIMMU BORGIRにも参加する、スノーウィ・ショウに、
紅一点、VAMPIRELLA嬢を含む編成で、ダミ声ヴォーカルを乗せたインダストリアルなブラックメタル。
ヴァンパイアをテーマにしているという点では、CRADLE OF FILTHにも通じるホラーな世界観であるが、
激しいブラスト疾走はほとんどなく、ダークなインダストリアル・メタルというような聴き心地。
曲によっては、女性声を乗せた耽美な雰囲気やメロディックなギターによる叙情性も覗かせ、
シアトリカルなヴォーカルの歌声は、どことなくVDGGのピーター・ハミルっぽさも感じさせる。
シアトリカル度・・8 暴虐度・・6 ヴァンパイア度・・8 総合・・7.5
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TENHI 「Folk Aesthetic 1996-2006」
フィンランドのゴシック・フォーク、テンヒの2007年作
1999年にデビュー、本作は初期のデモやミニアルバム、未発音源などをCD3枚に収録。
Disc1は初期のデモ音源で、アコースティックギターにうっすらとしたシンセ、囁くようなヴォーカルによる、
物悲しいフォークロックサウンド。プリミティブな幻想性という点では、すでにその世界観は確立されていて、
こもり気味の音質にブラストビートなども入ってきて、デプレッシブ・ブラック的な雰囲気もある。
Disc2の未発曲や別バージョン音源は、ピアノやヴァイオリンなどのクラシカルな美しさと、
しっとりとした繊細で幻想的な叙情に包まれている。Disc3は、わりと音数を絞ったシンプルなサウンドで、
よりプリミティブなダークアンビエント・フォークが味わえる。ディープなゴシックフォークを愛する方はぜひ。
幻想度・・9 ゴシックフォーク度・・9 耽美度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Tethrippon
ギリシャのゴシック・フォーク、テスリポンの2009年作
オーケストラルなアレンジに朗々としたギリシャ語の歌声を乗せ、エピックな世界観を描き出す。
バックはシンセの重ねのみで、エレクトロなシーケーンサー的なリズムに
語り口調のような淡々としたヴォーカルがややミスマッチながら、
その愛想のなさが、むしろ映画サントラのようなスケール感になっている。
楽曲としての展開はあまりなく、フォーク的な要素も薄いので、
古代ローマを描くダークな雰囲気モノとして鑑賞する作品かと。
幻想度・・8 ゴシックフォーク度・・7 エピック度・・8 総合・・7
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11/2
来週はKOOL LIPSライブ!(294)
詳しくはこちら


Sleeping Romance「ALBA」
イタリアのシンフォニックメタル、スリーピング・ロマンスの2017年作
シンフォニックなアレンジに女性ヴォーカルの歌声を乗せ、壮麗な重厚さに包まれた
正統派の女性声シンフォニックメタル。紅一点、フェデリカ嬢の歌声はソプラノというよりは、
わりとストレートな地声をメインにしていて、女性らしいなよやかさと抜けの良さを同居させた感触で、
キャッチーなナンバーによく似合っている。オーケストラルな壮麗さとメロディックな聴きやすさが
スタイリッシュに同居するところは、DELAINWITHIN TEMPTATIONなどにも通じるだろう。
全体的にもクオリティは高いのだが、もうひとつ突き抜けたフックが欲しい気もする。
シンフォニック度・・8 楽曲・・7 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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IRON KINGDOM 「Ride For Glory」
アメリカのメロディックメタル、アイアン・キングダムの2015年作
女性ドラムを含む4人編成で、メロディックなギターにハイトーンヴォーカルを乗せ、
エピックな勇壮さに包まれた正統派のメタルサウンド。ラウドな音質はいかにも自主制作っぽいが、
ジェフ・テイトやトニー・ムーアばりのハイトーンヴォーカルや、随所に聴かせる流麗なギターフレーズは
単なるB級エピックメタル以上の魅力とパワーを感じさせる。ゆったりとした叙情パートなどを含む、
緩急のある楽曲アレンジもなかなか魅力的で、オールドスタイルのナンバーでは、
MANOWAR + RIOTというような味わいもある。今後の成長が楽しみなバンドですな。
ドラマティック度・・8 エピック度・・8 パワフル度・・8 総合・・7.5
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Within Silence 「Gallery of Life」
スロバキアのメロディックメタル、ウィズイン・サイレンスの2015年作
ツインギターに伸びやかなヴォーカルを乗せて、キャッチーなメロディアス性で聴かせる、
正統派のメロディックメタル。ほどよい疾走感とともに北欧的な優雅さに包まれた感触は
うっすらとしたシンセアレンジも含めて、CardiantSonata Arcticaあたりに通じる雰囲気もある。
初心者にも聴きやすいメロディのフックと、マイルドなハイトーンヴォーカルの表現力も一線級で、
安定したクオリティの高さは国籍を感じさせない。反面、中級以上のリスナーには新鮮なインパクトは薄いかも。
全体的にレベルの高いバンドなので、あとは突き抜けるようなキラーチューンが欲しい。
メロディック度・・8 疾走度・・7 新鮮度・・7 総合・・8
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ANGELSEED 「Crimson Dyed Abyss」
クロアチアのシンフォニックメタル、エンジェルシードの2015年作
女性Voにツインギター、シンセを含む6人編成で、シンフォニックなアレンジに流麗なギターと
美しい女性ヴォーカルの歌声を乗せた、優美なシンフォニックメタル。厚みのあるサウンドは、
適度にモダンなスタイリッシュ性にも包まれていて、地域的なローカルさはほとんど感じさせない。
紅一点、Ivana嬢の歌声は艶めいた美しさで、いくぶんゴシック的な耽美な空気感で楽曲を彩っている。
ゲストによるストリングスも加わった、クラシカルな優雅さとメタリックな重厚さが合わさって、
曲によってはアグレッシブな疾走感もあり、シンフォニックメタルとしての壮麗な迫力も備えている。
今後はさらに楽曲を充実させてゆけば、より素晴らしいバンドになってゆきそうだ。
シンフォニック度・・8 重厚度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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INFIDIA 「Reflections」
スロベニアのシンフォニックメタル、インフィディアの2009年作
女性Voに女性シンセ奏者を含む6人編成で、きらびやかなシンセアレンジに
美しい女性ヴォーカルの歌声を乗せ、キャッチーなメロディで聴かせるサウンド。
ほどよい疾走感と辺境的なクサメロ感触もよい感じで、楽曲自体はわりと正統派なのだが、
なよやかな女性声と突き抜けないメロディのフックで、B級メタル寄りの味わいもかもし出している。
しっとりとしたバラードでの、女性ヴォーカルのハーモニーは美しく、よりシンフォニックな路線にいって欲しい気も。
シンフォニック度・・7 疾走度・・7 女性Vo度・・7 総合・・7.5

Stormrider 「The Path Of Salvation」
ドイツのメロディックメタル、ストームライダーの2012年作
2005年デビューで本作が3作目。のっけからツインギターを乗せた激しい疾走感で、
まるで初期のBLIND GUARDIANのような勢いのあるサウンドに思わずニンマリ。
クサメロ気味のメロディックなギターフレーズも随所に良い感じで、疾走ナンバーのみならず、
ミドルからスローテンポのパートでも、どっしりとした説得力とフックのある展開で楽しめる。
古き良きジャーマンメタルのテイストを残しつつ、中音域のヴォーカルを乗せたパワフルなサウンドで、
過去2作に比べると、格段にクオリティが上がっている。これは掘り出し物的な一枚だろう。
メロディック度・・8 疾走度・・8 パワフル度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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DELANY 「Blaze and Ashes」
ドイツのメロディックメタル、デラニーの2009年作
WIZARDのベーシスト、ヴォルカー・レーソンによるプロジェクトで、PINK CREAM 69のデヴィッド・リードマンをはじめ、
ラナ・レーン、デイヴィ・ヴェインがヴォーカルで参加、どっしりとしたミドルテンポを主体に、
実力ある歌声を乗せた正統派のHRサウンド。古き良きHR感触を残したメロディアスハードとしても楽しめ、
うっすらとしたシンセアレンジとともに、ラナ・レーンの歌うナンバーは優美な叙情性に包まれていて、
彼女が参加するのは3曲だけだが、もっとこの路線で聴きたかったと思わせる、アルバムの中でアクセントになっている。
全体的には、派手な展開に欠ける中庸感が惜しい。いっそロックオペラのように壮大に仕上げて欲しかった。
メロディック度・・7 正統派度・・8 ラナ・レーンもっと度・・8 総合・・7.5
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Lord Kraven 「La Caída de Kildarum」
アルゼンチンのメロディックメタル、ロード・クラヴェンの2014年作
いかにもファンタジー厨なジャケからしてもうニンマリだが、語りやSE入りの映画のようなイントロから始まり、
わりと正統派寄りのギターにスペイン語のヴォーカルを乗せて、ローカルな味わいのエピックメタルが広がってゆく。
うっすらとしたシンセアレンジや随所にクサめのフレーズを奏でるギターとともに、どこか微笑ましい聴き心地。
ドタドタとしたドラムの技量やラウドな録音はいかにもB級臭いのだが、初期のThy Majesieのようなエピックな世界観と、
アコースティックパートなども含んだ起伏のある流れで描かれるドラマ性は、なかなか嫌いではないのである。
Disc2では、Blind Guardianのような勇壮なナンバーもあり悪くないのだが、全体的には疾走するナンバーや
クサメロなキラーチューンというのはあまりなく、CD2枚組なので、さすがに長いという…
ドラマティック度・・8 疾走度・・7 ファンタジック度・・9 総合・・7.5
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DESERT 「Star of Delusive Hopes」
イスラエルのドラマティックメタル、デザートの2010年作
ツインギターにシンセを含む6人編成で、ジェントルな味わいの低音ヴォーカルを乗せ、
シンフォニックな重厚さに包まれたドラマティックなサウンド。随所にデス声を含んだイーヴルな雰囲気と、
アラビックな旋律は、ORPHANED LAND的だが、こちらはもっとクサメタル寄りのローカルさを漂わせていて、
辺境メタル好きはニンマリ。勇壮なコーラスなどにはエピックな空気もまとわせて、
どっしりとしたミドルテンポを主体にきらびやかなシンセアレンジやメロディックなギターフレーズが楽曲を彩る。
ゴシック寄りウェットな叙情と重厚な世界観で描かれる、これぞ辺境メタルの力作だ。
ドラマティック度・・8 重厚度・・8 辺境度・・9 総合・・8
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DARK QUARTERER 「Symbols」
イタリアのエピックメタル、ダーク・クウォータラーの2008年作
ADRAMELCHなどとともに80年代から活動するバンドで、ヘヴィすぎないギターにハイトーンヴォーカルを乗せ、
うっすらとしたシンセで包み込んだ、オールドスタイルのエピックメタルを聴かせる。
6曲中、4曲が10分を超える大曲で、甘すぎない程度のクサメロと叙情フレーズに、オルガンが鳴り響く
オールドなHR風味をまぶしたという雰囲気で、シンセが前に出た部分などはプログレハード的でもあったりする。
スローからミドルテンポを主体にじっくり聴かせるスタイルなので、即効性を求めるリスナーには退屈かもしれないが、
エピックな空気はたっぷり感じられ、リズムチェンジや長めのインストパートなど、ProgMetalのリスナーにも楽しめるかも。
ドラマティック度・・8 エピック度・・8 古き良き度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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Tarchon Fist 「Fighters」
イタリアのエピックメタル、ターコン・フィストの2009年作
2008年にデビューし本作は2作目となる。ツインギターのリフにパワフルなヴォーカルを乗せた、
正統派のメタルサウンドを聴かせる。エピックな勇壮さは、Grave Diggerや、初期Blind Guardianなど、
古き良きジャーマンメタルの感触もあって、荒削りながらもなかなか魅力的。全体的にヘヴィすぎない聴き心地で、
疾走するパートもさほどはないものの、ほどよいB級風味という点では、ATTACKあたりが好きな方にもイケるかと。
一方では、IRON MAIDENJUDAS PRIESTなどを思わせる、いかにもオールドスタイルなナンバーもあって、
正統派メタル好きはニンマリだろう。ボーナスDiscにはライブ音源やカヴァー曲などを収録。
ドラマティック度・・7 エピック度・・7 正統派度・・8 総合・・7.5
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Rebellion 「Sagas of Iceland」
ドイツのメロディックメタル、レベリオンの2005年作
Grave Diggerのギターとベースを中心に、2002年にデビュー、本作が3作目となる。
叙情的なイントロからエピックなスケール感を感じさせ、王道のギターリフとパワフルなヴォーカルを乗せ、
どっしりとしたミドルテンポで聴かせる、MANOWARにも通じる正統派のメタルサウンドを展開。
ジャケのイメージのようにヴァイキングをテーマにした勇壮な空気感を漂わせながら、
ダーティなヴォーカルの雰囲気には、やはりGrave Diggerなどを思わせる部分もある。
コンセプトアルバムらしい叙情的なパートを織り込んだ、ドラマティックな味わいもよろしく、
伝統的なジャーマンメタルのスタイルを楽しめる、正統派エピックパワーメタルの力作です。
ドラマティック度・・8 エピック度・・8 正統派度・・8 総合・・7.5
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10/12
いよいよENDLANCEライブ!(282)


Orphaned Land 「Unsung Prophets & Dead Messiah」
イスラエルのドラマティックメタル、オーファンド・ランドの2018年作
1994年にデビュー、イスラエル最高のメタルバンドであり、世界的に見ても個性的な存在となった。
6作目となる本作は、美麗なシンセアレンジに女性ヴォーカルを乗せてしっとりと始まり、
アラビックなメロディにマイルドな男性ヴォーカルを乗せ、ノリの良いメロディックなサウンドを描いてゆく。
シンフォニックな壮麗さと、アコースティック楽器を含んだ中近東的な民族色を自然に融合させ、知的な展開力とともに
ときにデスヴォイスを含むアグレッシブな顔も覗かせる。雄大なスケール感に包まれた独自のドラマティックなサウンドは、
もはやスタイリッシュというべきセンスで昇華されている。まさにシンフォニック・エスニックメタルというべき傑作です。
ドラマティック度・・9 壮麗度・・8 民族度・・8 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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Day Six 「Solitary League」
オランダのプログレメタル、デイ・シックスの2017年作
メタリックなギターに美しいシンセアレンジを重ね、伸びやかなハイトーンヴォーカルを乗せた
重厚なProgMetalを聴かせる。コンセプト的なドラマ性を感じさせるシリアス空気感とともに、
DREAM THEATERをルーツにした知的な構築センスで、クオリティの高いサウンドを展開。
随所に叙情的なギターフレーズを乗せたメロディックなフックもなかなか魅力的で、
適度なテクニカルに、オルガンを含む大人のハードロック的な味わいも覗かせつつ、
8分、9分という大曲をじっくりと描く力量もある。派手さはないが正統派プログレメタルの力作だ。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 構築度・・8 総合・・8
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TENGGER CAVALRY「CIAN BI」
中国出身のペイガン・フォークメタル、テンガー・カヴァリーの2018年作
活動をアメリカに移しての2作目で、ヘヴィなギターを乗せたモダンな感触と、
モリン・ホール(馬頭琴)の素朴な音色を重ねた、オリエンタルなメタルサウンド。
淡々としたダミ声ヴォーカルはあまり迫力はなく、楽曲はほとんど2~3分台で、
1曲ごとの魅力やインパクトの点では物足りなさも。バンドの個性が馬頭琴というだけでは苦しい。
もっとヘヴィにするのか、よりフォーキーにするのか、停滞感を打破するような進化に期待したい。
ドラマティック度・・7 民族度・・7 楽曲度・・7 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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KREATOR 「Gods Of Violence」
ジャーマンスラッシュメタルのベテラン、クリエーターの2017年作
1985年にデビュー、初期の激しいスラッシュから、90年代にはモダンなサウンドへと変化しつつ、
2001年以降は、再び原点回帰したような強力なスラッシュメタル作品を作り続けている。
14作目となる本作は、荘厳なイントロから始まり、激しいギターリフを乗せて疾走開始、
ミレ・ペトロッツァの独特のダミ声ヴォーカルを乗せた、ダークなスラッシュメタルが炸裂する。
随所にツインギターの叙情的なフレーズを盛り込んだドラマティックな展開力も魅力で、
ミドルテンポのパートではメロディックな感触も強く、スラッシュ初心者にも聴きやすいだろう。
2014年のWACKENのステージを収録したDVD/Blu-ray付きの2枚組仕様もある。
ドラマティック度・・8 疾走度・・8 叙情度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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ANNIHILATOR 「For the Demented」
カナダのスラッシュメタル、アナイアレイターの2017年作
1989年のデビュー作から数えて16作目。本作も基本的にはジェフがギター、ベース、ヴォーカルを一人でこなし、
1曲目からアグレッシブにたたみかけるスピードナンバーで、クールなギターリフを乗せたスラッシーな勢いに、
テクニカルで流麗なギタープレイを嫌味なく盛り込みつつ、往年のアナイアの香りをしっかりと残している。
ジェフのヴォーカルも前に出すぎず、程よく楽曲にダーティな味わいを加えていて、なにも不満はないし、
正直、どこかの曲で聴いたようなギターフレーズもあるのだが、アナイアらしいサウンドという点では文句もない。
ゆったりとしたバラード調のナンバーもよいアクセントになっていて、楽曲ごとのカラーをハッキリとさせ、
クールなモダンさと古き良きアナイア節を巧みに融合させたという点では、じつに高品質な作品といえる。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・8 アナイア度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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ANNIHILATOR 「TRIPLE THREAT」
カナダのスラッシュメタル、アナイアレイターのライブ。2017年作
ライブ作品としては2009年以来となる。DIsc1には2016年ドイツでのステージを、Disc2にはスタジオセッションを収録。
叙情的なイントロの“Crystal Ann”に続き、アグレッシブなオールドナンバー“King of the Kill”でスタートし、
長年のアナイアファンはニンマリだ。音質的にもクリア過ぎないことで、むしろ古き良きメタルの味わいが感じられる。
新しい曲も挟みつつ、“Set The World On Fire”、“W.T.Y.D”、“Never,Neverland”など、往年のナンバーを盛り込んで、
ラストは、“Alison Hell”、“Phantasmagoria”で締めくくる。Disc2は、ギター2人を加えて、5人編成でのスタジオライブで、
アコースティカルな叙情とともに、一味違う優雅なアナイアサウンドが楽しめる。ラストの“Phoenix Rising”も実に美しい仕上がりです。
ライブ演奏・・8 Disc1はメタル・・8 Disc2はアコースティック・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Graveshadow 「Ambition's Price」
アメリカのメロディックメタル、グレイヴシャドウの2018年作
ツインギターのリフに女性ヴォーカルの歌声を乗せた、正統派のメタルサウンドで、
随所にデスヴォイスも交えたエクストリームな感触や、シンフォニックなアレンジも含んだ
ドラマテイックで重厚な聴き心地。メロディアスハード的なキャッチーな部分もありつつ、
カルトでエピックな妖しさも漂わせるという、ウェットな世界観はなかなかよろしい。
伸びやかな女性声は十分魅力的なので、個人的にはデス声はなくてもよい気もするが、
ゴシック的でもある耽美な空気感にはそれもいいのかも。3パートに分かれた15分の組曲など、
単なる正統派メロパワ以上の濃密な作品を作り込もうとするバンドの意欲は買いたい。
メロディック度・・7 重厚度・・8 女性Vo度・・7 総合・・7.5
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Rage of Romance 「Thunderborn」
ギリシャのメロディックメタル、レイジ・オブ・ロマンスの2017年作
今作では、元Visions of Atlantisのマキシ嬢をヴォーカルに迎え、メタリックなエッジのギターに
ハスキーな女性ヴォーカルを乗せて疾走する、パワフルなメタルサウンドを聴かせる。
いくぶんシンフォニックなテイストとモダンなヘヴィネスも感じさせつつ、楽曲はわりと硬派で
正統派のメロパワ路線。メロディのフックという点では、さほど新鮮味がないのだが、
むしろゆったりとしたナンバーでのマキシ嬢の歌声は、なかなか魅力的だったりする。
全体的にはやはりキラーチューンとなるようなインパクトのあるナンバーが欲しい。
メロディック度・・7 パワフル度・・8 女性Vo度・・7 総合・・7.5
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ALQUIMIA 「Espiritual」
スペインのメロディックメタル、アルキミアの2015年作
AVALANCHのギタリストを中心に結成されたバンドの2作目で、ルイス・ロヨによるジャケもいい感じだが、
1曲目からきらびやかなシンセにスペイン語のヴォーカルを乗せて疾走する、壮麗なメロディック・スピードメタルを聴かせる。
サビでの爽快なクサメロ感は、まさに初期のAVALANCHWARCRYを思わせる感触で、クサメタル好きはニンマリ。
ミドルテンポのナンバーでも哀愁を感じさせるスペイン語の歌メロとともに、キャッチーでフックのあるメロディによる
濃密な味わいが楽しめる。スパニッシュメタルの叙情とクサメロを正しく受け継いだ、高品質なアルバムです。
メロディック度・・8 疾走度・・7 スパニッシュ度・・8 総合・・8
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LUNDEN REIGN 「AMERICAN STRANGER」
アメリカのハードロック、ルンデン・レインの2015年作
女性Vo、女性Gを含む編成で、適度にハードなギターに女性ヴォーカルの歌声で聴かせる、
リタ・フォードやヴィクセンといった、80年代風味のオールドな香りが漂うハードロックサウンド。
楽曲は3~4分前後とシンプルな感触であるが、ツインギターにシンセやコーラスを含んだ
厚みのあるアレンジで、どの曲もキャッチーなメロディのフックをしっかりと感じさせる。
ニッキ・ルンデン嬢のヴォーカルは、艶めいた大人の色気も含んだハスキーなところが魅力的で、
堂々たる歌声と質の高い楽曲は、マイナー臭さをまったく感じさせない。今後が楽しみな逸材です。
メロディック度・・8 古き良きHR度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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INKUBUS SUKKUBUS 「BELTAINE」
イギリスのゴシックロック、インキュバス・サキュバスの1991年作
夢魔からとったバンド名や、「ビョールティナ」というサバトの名前のアルバムタイトルも含めて、
いかにも魔女臭ぷんぷんなバンドであるが、サウンドの方は女性ヴォーカルの歌声をメインに、
適度にロック色のあるギターを重ねた、わりとキャッチーな聴き心地。打ち込みによるリズムやシンセは
ややチープなのだが、女性声の妖しさとあいまって、エレトクロなサイケ風味をかもしだしている。
魔女寄りのマイナー感覚という点では、同じくイギリスのLEGENDなどに通じる雰囲気もある。
リズムが単調なのでゴシックとしてはやや迫力不足だが、この世界観自体はとても好みです。
ゴシック度・・7 魔女度・・8 女性Vo度・・7 総合・・7.5
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INKUBUS SUKKUBUS 「Heartbeat of the Earth」
イギリスのゴシックロック、インキュバス・サキュバスの1995年作
ボドランのリズムによるイントロから、ストリングス的なシンセアレンジとギターを重ね、
妖しい女性ヴォーカルで聴かせる、耽美な魔女系ロックが広がってゆく。
カンディア嬢の歌声も艶めいた魅力が増し、サウンドにぐっと説得力が加わった。
曲によっては、むしろSPRIGUNSのようなフォークロック的なナンバーもあって、
ゴシック的な要素は薄めながら、キャッチーな聴きやすさで楽しめる。曲自体は繰り返しが多いので
やや単調ではあるのだが、アコースティックなナンバーなどもいい感じで、けだるげな空気感が素敵です。
ゴシック度・・7 魔女度・・8 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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9/21
ダルリアダは傑作!(270)


Leaves' Eyes 「Sign of the Dragon Head」
ドイツのシンフォニック・ゴシックメタル、リーヴズ・アイズの2018年作
結成以来フロントを務めていた、リブ・クリスティンが脱退、新たにフィンランド出身のエリナ嬢が加入した7作目。
オーケストラルなシンフォニック性と、モダンなヘヴィネスに、美しいソプラノヴォーカルを乗せた本作のサウンドは、
より壮麗なシンフォニックメタルへと接近した印象で、男性デスヴォイスが絡んだアグレッシブな迫力とともに、
重厚な聴き心地とフォーキーな土着性を合わせ持った作風だ。新ヴォーカルは、なよやかなリブの歌声とはやや印象が異なり、
EPICADELAINあたりに通じる華やかなソプラノなので、より一般のシンフォメタラー向けにはなったという気もする。
楽曲自体には手堅くまとまっているという感じもするが、ケルティックな感触のキャッチーなナンバーなどは魅力的で、
派手やかなシンフォニック性のみに頼らないところは好感が持てる。バンドの新たな深化に期待したい。
シンフォニック度・・8 ゴシック度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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DEVIN TOWNSEND PROJECT 「TRANSCENDENCE」
鬼才、デヴィン・タウンゼンドによるプロジェクトの2016年作
SF的なメタルオペラの前作「Z2-Dark Matters」に続き、本作は壮麗なオーケストレーションにギターを重ねたイントロから
シリアスなスケール感をともなったサウンドが広がってゆく。デヴィン本来のプログレッシブな構築センスと
メタリックな重厚さが合わさり、スペイシーで壮大な世界を描き出す。自身のマイルドなヴォーカルを中心に、
アネク・ヴァン・ガースバーゲン、チェ・エイミー・ドーヴァル、カトリーナ・ナターレの3人の女性コーラスを迎え、
歌ものとしてのメロディックな味わいも楽しめる。シンプルなリズムのリフレインがなにげに変拍子だったりと、
さりげない知的なセンスも散りばめられて、じっくりと鑑賞できるシンフォニックメタル的な作風でもある。
アグレッシブな要素は控えめながら、広がりのあるスケール感に包まれた力作です。
ドラマティック度・・8 重厚度・・9 壮大度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Esben And The Witch 「Older Terrors」
イギリスの魔女系ポストロック、エスベン・アンド・ザ・ウィッチの2016年作
2010年にデビュー、ゴシック、ドゥーム、ポストロックの要素を持つ独自の世界観を描くバンド。
4作目となる本作は、10分を超える大曲4曲という構成で、しっとりとした女性ヴォーカルの歌声と
ギータのつまびきで、静謐な夜の空気を感じさせる、アトモスフェリックなサウンドが広がってゆく。
アンビエントな感触に包まれながらも、歪んだギターとドラムを加えたロックなアプローチも随所に覗かせ、
大曲の中でも、ゆるやかな盛り上がりを作り出す。ゴシック的でもある耽美な空気感とともに、
魔女系ドゥームや女性声サイケ、さらにはポストブラックなどが好きな方にも楽しめる作風だ。
ドラマティック度・・7 妖しさ度・・8 魔女系度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Wardruna 「Runaljod - Ragnarok」
ノルウェーのペイガン・フォーク、ヴァードゥルナの2016年作
GORGOROTHのドラムと女性シンガーを中心にしたユニットで、本作が3作目となる。
ルーン文字の研究から、北欧神話やヴァイキングの歴史を基にしたという世界観を、
古代ノルン語による詠唱と、クラヴィクリラ(竪琴)、ブッケホルン(角笛)、ターゲルハルパ(擦弦楽器)
ルール(金管楽器)といった古楽器の音色とともに、プリミティブで神秘的なサウンドで表現している。
石や木をパーカッションにしたというトライバルなリズムに、素朴なホルンやルールの音色がかぶさり、
女性声のスキャットと男性の詠唱が響き渡る。愛想のない土着性は、一般のリスナーには取っつきづらいだろうが、
古代の神々、自然崇拝というものを想像できる方にとっては、ディープに浸れる異色の作品であるだろう。
ドラマティック度・・7 土着的度・・8 神秘的度・・9 総合・・8
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Dalriada 「Aldas」
ハンガリーのフォークメタル、ダルリアダの2015年作
2004年に、ECHO of DALRIADA名義でデビューしてから通算8作目。最高傑作となった前作の流れを受け、
艶やかにフィドルが鳴り響くイントロから、美麗なシンセアレンジに母国語の女性ヴォーカルを乗せた、
優雅なフォークメタルが広がる。適度にメタリックな激しさも含みつつ、ギターに重なるホイッスルやフィドルの
土着的なメロディと牧歌性が耳心地よく、この自然なメタルとフォークの融合はすでに職人技の域に達している。
速弾きギターを乗せたメロスピ的な疾走パートや、男性声を効果的に使ったエピックな勇壮さも覗かせるなど、
緩急ある展開力も冴えている。ジャケのイモ臭さに反して内容はきらびやか。辺境フォークメタルの枠を超えた傑作だ。
メロディック度・・8 フォーキー度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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Weeping Silence 「End of An Era」
マルタ共和国のゴシックメタル、ウィーピング・サイレンスの2008年作
ミステリアスなイントロから、ヘヴィなギターと美しいシンセに、女性ヴォーカルを乗せ、
どことなく辺境的な味わいに包まれた、耽美なゴシックメタルサウンドを聴かせる。
紅一点、レイチェル嬢のなよやかな歌声もなかなか魅力的で、シンフォニックなアレンジとともに
壮麗で優雅な世界観を描いてゆく。10分前後の大曲を中心にした、ゆったりとした作風なので、
気が短い方には向かないが、美麗なシンセにヴァイオリンが鳴り響くクラシカルなサウンドにじっくりと浸れる。
のちのアルバムほどには洗練されていない分、ゴシックメタルとしての純度の高い耽美な空気が味わえる。
シンフォニック度・・8 ゴシック度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Martiria 「R-Evolution」
イタリアのエピックメタル、マーティリアの2014年作
2004年にデビュー、古代ローマを舞台にした正統派エピックメタルを聴かせるバンドの、10周年となるアルバム。
本作では、再びヴォーカルが交代、ドラムには、Black SabbathやDioで活躍したヴィニー・アピスが参加している。
適度に大仰な世界観を描く、古き良き正統派のメタルサウンドは不変で、ミドルテンポを主体に、
ほどよくメロディックなギターとパワフル過ぎないヴォーカルを乗せ、ウェットな空気感に包まれた聴き心地は、
Virgin Steeleなどにも通じるだろう。アコースティックギターによる叙情パートもヨーロピアンな翳りを感じさせつつ、
勇壮に疾走するメロディック・パワーメタル風味も覗かせる。全体的にこれしいう新鮮味はないが、安心のエピックメタル。
ドラマティック度・・8 エピック度・・8 新鮮度・・7 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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WOLF 「DEVIL SEED」
スウェーデンのメタルバンド、ウルフの2014年作
2000年にデビュー、NWOTHMの先駆けともいうべきバンドの7作目。ツインギターのリフにパワフルなヴォーカルを乗せた
王道のメタルサウンドにはますます磨きがかかっている。ノリのよい疾走ナンバーからどっしりとしたミドルテンポまで、
ギターのフレーズやリズムチェンジなども含めて、初期に比べるとメタリックな硬質感が増した印象もある。
ソリッドな感触が強まったことで、曲によってはANNIHILATORを思わせるところもあったりしつつ、
オールドなメタル感触で疾走するナンバーもしっかりと残していて、これまでのファンもひと安心。
全体的には、これだというキラーチューンがないので、新鮮味の点ではやや物足りないかもしれないが。
ドラマティック度・・7 正統派度・・8 パワフル度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Alpha Tiger 「Man or Machine」
ドイツのメタルバンド、アルファ・タイガーの2011年作
ツインギターの王道のリフにハイトーンヴォーカルを乗せた、80~90年代テイストの正統派メタルサウンド。
ヴォーカルはジェフ・テイトや、かつてのRIOTのトニー・ムーアばりの伸びやかなハイトーンで
メロディックなギターフレーズとともに、古き良きメタルサウンドに確かな説得力を付加している。
楽曲はどっしりとしたミドルテンポを主体にしつつ、日本人好みに疾走するRIOT風のナンバーや、
IRON MAIDEN風のツインリードも覗かせたりと、オールドメタラーにはニンマリするところも多いだろう。
若手らしいキレのある演奏力で、伝統的な正統派メタルを再構築したというべき強力作ですな。
ドラマティック度・・7 正統派度・・8 ハイトーン度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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MARAUDER 「Face the Mirror」
ギリシャのメロディックメタル、マローダーの2008年作
90年代から活動するキャリアのあるバンドで、オーケストラルなイントロから始まり、
ツインギターにハイトーンヴォーカルを乗せた、どっしりとした正統派のメタルサウンドが広がってゆく。
勇壮なコーラスを乗せたエピックな味わいに、ジャーマンメタル風に疾走するナンバーや、
メロディックなツインギターを乗せた、IRON MAIDEN風のナンバーなども良い感じだ。
歌にしろ演奏にしろ、パワフル過ぎないところがマイナーなB級感をかもしだしているが、
そこも含めて、もっとクサさや勇壮さを前に出せば、もっと楽しめるバンドになりそうではある。
ドラマティック度・・8 パワフル度・・8 正統派度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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Brimstone Coven
アメリカのヴィンテージハードロック、ブリムストン・カヴンの2014年作
ブルージーなギターにジェントルなヴォーカルを乗せた、70年代の香り漂うハードロックサウンド。
LED ZEPPELINにも通じる1曲目から、2曲目以降は、BLACK SABBATHPENTAGRAMなど、
ほどよいドゥームロック色が加わって、カルトな怪しさとロックなノリが合わさったという感触。
楽曲は3~4分台が中心でわりとシンプルながら、重すぎず軽すぎずという聴き心地で、
「ツェッペリンがサバス化した」ようなサウンドで楽しめます。ボーナストラックに2012年のデビューEPを丸ごと収録。
ドラマティック度・・7 ドゥーム度・・7 ヴィンテージ度・・8 総合・・7.5
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The Order of Israfel 「Wisdom」
スウェーデンのドゥームメタル、オーダー・オブ・イスファエルの2014年作
アコースティカルなイントロから、重厚なツインギターのリフに朗々としたヴォーカルを乗せ、
アナログ感あるアンサンブルとエピックな味わいで聴かせる、正統派のドゥームメタル。
ノリのよいテンポのヴィンテージなハードロックナンバーもありつつ、15分という大曲では、
どっしりとした重さとともに、シリアスな迫力に包まれたドラマティックな世界観も感じさせる。
甘さの無い硬派な感触とスケール感のある神秘性が融合した、本格派のドゥームメタル強力作。
ドラマティック度・・8 ドゥーム度・・8 重厚度・・8 総合・・8
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9/7
気づけばもう9月…(258)


Arduini/Balich 「Dawn of Ages」
アメリカのドゥームメタル、アルドゥイニ/バリッチの2017年作
Fates WarningのVictor Arduiniと、ドゥームメタルバンド、ArgusのBrian"Butch"Balichのユニットで、
ミステリアスな空気に包まれた、浮遊感のあるエピックなドゥームメタルサウンドを聴かせる。
ギターリフには、やはりどことなくFates Warningのような独特のセンスとメロディをにじませていて、
80年代ルーツの正統派メタルの感触とともに、知的なプログレッシブ性を内包しているのが面白い。
10分以上の大曲を中心に、どっしりとした味わいの中にもリズムチェンジを含む展開力で、
スケール感に包まれた重厚な世界観を描きながら、正統派メタルとしてのハードなノリも生み出している。
そしてやはり、随所にヴィクターのギターワークが魅力的で、17分の大曲ではProgMetal的な構築性も楽しめる。
まさに「初期フェイツ・ウォーニングがドゥームメタル化した」というべき力作である。
ドラマティック度・・8 Progドゥーム度・・8 重厚度・・8 総合・・8
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Ruby the Hatchet 「Planetary Space Child」
アメリカのドゥームロック、ルビー・ザ・ハチェットの2017年作
前作もじつにオールドな感触の、ストーナー寄りの女性声ドゥームを聴かせてくれたが、
本作では、ぐっと魔女めいた妖しさを増したサウンドで、シンセによるアレンジも含めて、
サイケな浮遊感も漂わせる。紅一点、ジュリアン嬢の歌声も艶やかに美しく、
鳴り響くオルガンとともに、Blood Ceremonyにも接近したような雰囲気もあり、
これぞ魔女系ロックという世界観である。古き良きサイケドゥームに説得力も備わった力作だ。
ドラマティック度・・8 古き良き度・・8 妖しさ度・・9 総合・・8
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Solstice 「Blood Fire Doom」
イギリスのエピックドゥームメタル、ソルスティスのデモ音源集。2016年作
1994年作「Lamentations」、1998年作「New Dark Age」の2作を残して消えたバンドだが、2013年に復活。
本作は、1991~1998年までのデモ音源をCD3枚に収録、豪華ブックレットの付いたボックス仕様。
正統派のギターリフに朗々としたヴォーカルを乗せた、まさに王道のエピック・ドゥームで、
デモ音源ながら音質はおおむね良好、正規アルバムに至るプロトタイプのサウンドが楽しめる。
とくにヴォーカルは4人替わっているので、それぞれの歌声によっては若干の好みがあったり、
セッション音源などは音質がラウドなので、さすがにマニア向けだが、貴重な音源集ではある。
CANDLAMASSなどが気に入った方は、当然のようにこのバンドもチェックすべきだろう。
ドラマティック度・・7 エピックドゥーム度・・9 貴重度・・9 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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Year Of The Goat 「The Unspeakable」
スウェーデンのハードロック、イヤー・オブ・ザ・ゴートの2015年作
70年代ルーツのヴィンテージなロック感触と、妖しく耽美な空気感を漂わせたサウンドで、
オルガンやメロトロンが鳴り響き、ジェントルなヴォーカルで聴かせるオールドなハードロック。
ヴォーカルの歌声は、HIMあたりを思わせる部分もあって、BLACK SABBATHがゴシック化したような雰囲気や、
厚みのあるトリプルギターとともに、LED ZEPPELINにも通じるキャッチーなロックナンバーなどもよい感じ。
冒頭の12分の大曲では知的な構築センスも感じさせつつ、ラストはドゥームロックの味わいで締めくくる。
オールドスタイルながら古臭すぎない骨太の感触で、ほどよいノリの良さとメロディアス性も含んだ好作品だ。
ドラマティック度・・7 ヴィンテージ度・・8 耽美度・・7 総合・・8
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Ghost Bath 「Moonlover」
アメリカのポストブラックメタル、ゴースト・バスの2015年作
2013年にデビュー、本作は2作目となる。グアテマラの写真家、ルイス・ゴンザレス・パルマによるジャケも印象的だが、
物悲しいイントロ曲で幕を開け、トレモロのギターリフを乗せてブラスト疾走する、ミステリアスなブラックメタルを聴かせる。
随所に叙情的なフレーズも覗かせつつ、Alcestを激しくしたような聴き心地で、疾走しつつもメランコリックという味わいだ。
やわらかなピアノによるアンビエントなパートなど、静と動の緩急ある構成で、大胆なアレンジセンスも光っている。
泣き叫ぶように絶叫するヴォーカルはやや耳障りだが、さほどダークな暗黒性は感じられず、叙情性が前に出た作風は
ブラックメタルが苦手な方にも入りやすいだろう。激しさと幻想的な美しさが同居した、新たなポストブラックの形を描いた力作だ。
ドラマティック度・・7 激しくブラスト度・・8 しっとり叙情度・・8 総合・・8
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SAOR 「Roots」
スコットランドのポストブラックメタル、サオールの2013年作
元はArsaidhというバンド名だったらしいが、すぐに改名して本作をリリースし直したらしい。
のっけから16分という大曲で、ツインギターの叙情的なフレーズにヴァイオリンも鳴り響き
アトモスフェリックなサウンドを描き出す。トレモロのリフを乗せてのブラスト疾走パートなど、
ブラックメタルとしての激しさもしっかりと残していて、神秘的なネイチャーブラックとしても楽しめつつ、
バグパイプやホイッスルの音色も用いた、スコティッシュらしいケルティックな味わいもあって
フォーキッシュなペイガンブラックともいうべきか。曲は長いがメロディの流れがあってわりと聴きやすい。
ドラマティック度・・7 激しさ度・・7 叙情度・・8 総合・・8
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Hail Spirit Noir 「Oi Magoi」
ギリシャのアヴァン・ブラックメタル、ヘイル・スピリット・ノアールの2014年作
前作はオルガンにメロトロンも加えた、70年代風味のサイケなブラックを聴かせる異色作であったが、
2作目となる本作も、ヘヴィすぎないギターにオルガンが鳴り響く、ヴィンテージな感触に包まれたサウンド。
ダミ声で咆哮するヴォーカルはブラックメタル的ではあるが、邪悪な暗黒性はあまり感じられず、
曲によってはほとんどプログレ寄りのサイケ・ハードロックという聴き心地であるが、中盤にはブラスト疾走する
わりと激しいパートもあって、一応はブラックメタルとしての面目躍如というところ。6分前後の楽曲を中心に、
11分の大曲もあり、プログレ的な展開力とアヴァンギャルドなセンスが合わさった怪しい力作である。
ドラマティック度・・7 サイケハー度・・8 アヴァンギャル度・・8 総合・・8
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Meads Of Asphodel 「Sonderkommando」
イギリスのアヴァン・ブラックメタル、メイズ・オブ・アスフォデルの2013年作
2001年にデビュー、本作が5作目となる。ジャケからして怪しさを漂わせるが、サウンドの方も個性的。
ドゥーミィな暗鬱さに包まれつつ、優美なシンセアレンジやフォーキッシュな土着性も含んだ聴き心地で、
ゆったりとしたパートからダミ声ヴォーカルを乗せてブラスト疾走する激しさへと、アヴァンギャルドに展開する、
日本のSIGHにも通じるようなアーティスティックな作風である。耽美でダークなおどろおどろしさの中にも
叙情的なギターフレーズも覗かせるなど、異色であるがわりと聴きやすく、ときにインダストリアルな香りも漂わせる。
一般向けではないが、ヘンテコなアヴァン・ブラックが好きな方へ。SIGHの川嶋未来氏がシンセでゲスト参加している。
ドラマティック度・・7 アヴァンギャル度・・8 怪しげ度・・9 総合・・7.5
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Solstafir「Kold」
アイスランドのアヴァン・ブラックメタル、ソルスタフィアの2008年作
2002年にデビュー、本作は3作目となる。ツインギターの叙情的なフレーズにサイケな浮遊感と、
ポストブラック的でもある広がりのあるミステリアスなスケール感に包まれたサウンド。
リフレインされるギターフレーズがトリップ感をかもしだしつつ、ダミ声ヴォーカルを乗せて
激しいブラスト疾走しながら、オルガンが鳴り響くヴィンテージな感触も合わさった、
緩急のある構築力はなかなかあなどれない。プリミティブなブラックメタル要素も覗かせつつ、
12分の大曲では涼やかな寂寥感に包まれたアンビエントなサウンドを描き出す。
荒涼として寒々しい、アヴァンギャルドなポストブラックメタルが味わえる力作だ。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・7 荒涼度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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King Of Asgard 「Taudr」
スウェーデンのヴァイキングメタル、キング・オブ・アスガルドの2017年作
2010年にデビュー、本作は4作目となる。シンセを使わず、ギターリフとダミ声ヴォーカルで聴かせる硬派なサウンドは、
殺伐とした闇を描くブラックメタル寄りの感触を強めている。ギターは随所に北欧らしい叙情的なフレーズを奏でつつ、
土着的なパートでもペイガンメタルとしての重厚な漆黒をまとっていて、咆哮するヴォーカルの迫力もなかなかのもの。
いかにもヴァイキングメタルらしい三連リズムから、激しく疾走するブラッケンな暴虐性も覗かせて、
ときに勇壮なコーラスも加わると、北の大地を思わせるような荘厳な空気に包まれる。全5曲33分という短さだが、
媚びのない硬派さが潔い。ラスト曲は、同郷の元祖ヴァイキングメタル、MITHOTYNのカヴァーで、さすがにハマってます。
ドラマティック度・・7 ペイガンブラック度・・8 重厚度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Oakenshield 「Legacy」
イギリスのペイガンメタル、オーケンシールドの2012年作
マルチミュージシャン、Ben Corkhill氏による一人ユニットで、スコットランドやアイルランド、
ノルウェーなどのトラッドソング取り入れて、勇壮なペイガンメタルにアレンジした作品。
ヴァイオリンにホイッスルが鳴り響き、うっすらとしたシンセにクサメロなギターと、
ダミ声ヴォーカルを乗せた、土着的なペイガン/ヴァイキングメタルを聴かせる。
各国のトラッドやケルトがベースなので、耳馴染みのよいメロディで、クサメロ好きにも対応。
アコースティックギターやマンドリンなどの牧歌的なパートも含みつつ、そこにほどよく武骨な
ペイガンなメタル色が良い具合にブレンドされた、幻想的な味わいで楽しめる。
ドラマティック度・・8 ペイガン度・・8 トラッド&ケルト度・・8 総合・・8
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MORGOTH 「CURSED TO LIVE」
ドイツのデスメタル、モーゴスのライブ作。2012年作
1989年にデビュー、1996年作を最後に解散したバンドの2011年の復活ライブ。
VoとG2人が当時のメンバーで、1991年作「Cursed」からのナンバーを中心に、
1989年作「Resurrection Absurd」、1990年作「The Eternal Fall」からも含む全15曲を演奏している。
アメリカのバンドとは若干異なる、絡みつくようなリフと吐き捨てヴォーカルを乗せ、
アグレッシブな勢いと緩急あるリズムで聴かせる、王道のヨーロピアン・デスメタルで、
VADERなどにも通じる感触であるが、そこまで暴虐な激しさではないのがポイント。
音質も良好で、演奏の迫力も十分。オールドなデスメタラーには歓喜の復活であろう。
ライブ演奏・・8 オールドデス度・・9 迫力デス度・・9 総合・・8
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8/25
残暑のメタルレビュー!(246)


Virgil Donati 「The Dawn Of Time - Orchestral Works」
PLANET Xなどで活躍する凄腕ドラマー、ヴァージル・ドナーティのソロ。2016年作
前作「In This Life」は、プラネット・エックスの延長のようなプログレ・フュージョンメタルの傑作であったが、
本作は「オーケストラル・ワークス」というタイトルのように、クラシックのシンフォニーにドラムを融合させるというテーマで、
ヴァイオリンなどのストリングスにオーボエやフルート、クラリネットによる優美な管弦楽をバックに、
ドラムとベースによるロックアンサンブルを加えたサウンドを展開。技巧的で繊細なドナーティのドラムプレイは、
抑揚のあるシンフォニーに見事に融合し、緊張感のあるテクニカルなシンフォニーロックというべ聴き心地である。
変則リズムとダイナミズムの応酬ながら、オーケストラルな美しさに包み込まれて、優雅なる技巧美が味わえる。
リズムの探求を人生とする希代の天才ドラマーが果敢に挑んだ、プログレ、チェンバーロックのファンも必聴の一枚だ。
クラシカル度・・9 スリリング度・・9 ドラム度…10 総合・・9
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Arthemis 「Blood.Fury.Domination」
イタリアのメロディックメタル、アルテミスの2017年作
2001年にデビューのイタリアンメタルの中でもキャリアのある中堅バンドで、本作は7作目となる。
前作でのヘヴィな路線を受け継いだ作風で、硬質なギターリフにパワフルなヴォーカルを乗せた、
モダンなヘヴィネスに包まれたサウンド。初期のメロディアス路線からするとずいぶんな変わりようだが、
ヘヴィロック風味のモダンメタルとして聴けば、それなりに楽しめるクオリティの高さはある。
とくに随所に光る技巧的なギタープレイは、バンドのひとつの生命線といってよいだろう。
どっしりとしたミドルテンポのナンバーを主体にした、聴きごたえのある好作ではある。
メロディック度・・7 モダンヘヴィ度・・8 楽曲・・7 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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Mastercastle 「Wine of Heaven」
イタリアのメロディックメタル、マスターキャッスルの2017年作
Labylinthのギター、ピエル・ゴネラを中心に結成、2009年にデビューしてから本作で6作目。
きらびやかなシンセに適度にヘヴィなギターとハスキーな女性ヴォーカルの歌声を乗せた、
キャッチーなハードロックサウンドは変わらず。ほどよくシンフォニックな壮麗さも含みつつ、
疾走するでもなく、メロディのフックも物足りずで、盛り上がり切らないところも相変わらず。
紅一点、ジョルジア嬢の歌声も、可もなく不可もなくというところで、魅力が活かされきっていない。
ラスト2曲が「天空の城ラピュタ」と、イングヴェイのカヴァーというのも、なんだか意味不明。笑
メロディック度・・7 キャッチー度・・7 女性Vo度・・7 総合・・7 過去作のレビューはこちら
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Sailing To Nowhere 「Lost In Time」
イタリアのシンフォニックメタル、セイリング・トゥ・ノーウェアの2017年作
ツインギターにシンセ、男女トリプルヴォーカルという編成で、壮麗なシンフォニックアレンジに、
パワフルな男性ヴォーカルと2人の女性ヴォーカルの歌声を重ねた、わりと正統派のメロディックメタル。
ファビオ・リオーネ、ロベルト・ティランティがゲスト参加で、それぞれ1曲ずつ伸びやかな歌声を聴かせてくれ、
ミドルテンポの重厚なナンバーから、疾走するメロパワナンバーまで、全体的にもクオリテイはそこそこ高い。
メロパワ版AYREONとでもいうような、SFコンセプト的な世界観はよいのだが、楽曲そのものにはさほど新鮮味はなく、
全40分弱というのもやや物足りないか。今後のさらなるクオリティアップに期待です。
シンフォニック度・・7 疾走度・・7 重厚度・・8 総合・・7.5
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ALPHA TIGER
ドイツのメタルバンド、アルファ・タイガーの2017年作
2013年作はRIOTを思わせるような好作であったが、4作目となる本作では新たなシンガーを迎えている。
パワフルなギターリフにやわらかなオルガンが重なり、ハイトーンヴォーカルで聴かせる、
古き良き味わいのメタルサウンドは健在。ツインギターは随所に叙情的なフレーズも奏で、
音質も含めて、70~80年代ルーツのラウドなノリとともに、甘すぎないメロディアス性と
パワフルなメタル感触を同居させている。楽曲は4~5分前後とわりとシンプルながら、
オールドスタイルとしての潔さが感じられ、むしろヴォーカル交代がよりレイドバックした正統派路線へ
さらに接近させたという印象だ。普遍的なロック、メタルの魅力を内包した力作である。
メロディック度・・7 正統派度・・8 古き良きHM度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Astralion 「Outlaw」
フィンランドのメロディックメタル、アストラリオンの2016年作
シンセを含む5人編成で、王道のギターリフにバワフルなヴォーカルを乗せ、ほどよくキャッチーな聴き心地の
正統派メロディックメタル。クサメロたっぷりだった前作の作風に加え、よりオーセンティックなメロパワ感触をまとい、
ミドルテンポはGAMMA RAYにも通じる雰囲気だが、きらびやかなシンセを乗せて疾走するナンバーは、
かつてのSTRATOVARIUSを思わせるような、古き良きスタイルの爽快なメロスピサウンドが楽しめる。
このバンドならではの新鮮さというものは薄いものの、日本人好みのメロディのフックと疾走感は魅力的で、
ラストの10分の大曲も含めて、確かな演奏力とアレンジのレベルも高い。捨て曲無しの高品質なメロパワ作品だ。
メロディック度・・8 疾走度・・8 クサメロ度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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ZED YAGO 「...From the Twilight Zone」
ドイツのメタルバンド、ゼット・ヤーゴの2002年作
女性シンガー、JUTTAを中心に活動し80年代に2作を残したバンドの、ベスト盤的な2枚組コンピ作品。
1st「FROM OVER YONDER」、2nd「Pilgrimage」からのナンバーに、貴重なライブやデモ音源を加え、
さらには後身バンドというべき、VELVET VIPERの楽曲も収録。ハスキーでパワフルなJUTTA姐さんの歌声と、
正統派のギターワークを重ね、どっしりとした味わいのオールドなメタルサウンドを聴かせる。
ジャーマンらしいメロディックな感触と幻想性を含んだ世界観は、単なるマイナー系メタルという以上に魅力的で、
DOROWARLOCKあたりに比べても、よりウェットな叙情性を含んでいる。曲順的に新旧バラバラなのが残念だが、
過去のアルバムが貴重なので、本作でこのバンドの存在を知る方にもうってつけの2枚組コンピと言えるだろう。
正統派度・・8 姉御メタル度・・8 貴重度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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NIGHT VIPER 「Exterminator」
スウェーデンのメタルバンド、ナイト・ヴァイパーの2017年作
ツインギターのリフを乗せて疾走する、古き良き感触の正統派のスピードメタルに
パワフルな女性ヴォーカルを乗せたサウンドで、SISTER SINあたりにも通じるスタイルながら、
ときに、初期METALLICAEXODUSのようなスラッシーな味わいも加わった聴き心地。
一方で、ミドルテンポのナンバーでは、Vo嬢の歌声のいくぶん妖しい魔女感も加わって、
ジャケの雰囲気とともに、80年代NWOBHMのようなマイナーな香りも漂わせる。
全42分という長さもアナログ的で、オールドなメタルマニアもニンマリの強力作だ。
ドラマティック度・・7 古き良きHM度・・9 女性Vo度・・8 総合・・8
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INTO THE UNKNOWN 「Out of the Shadows」
イギリスの女性声ハードロック、イントゥ・ジ・アンノウンの2017年作
古き良き感触のギターワークにシンセアレンジ、ハスキーな女性ヴォーカルを乗せた、
VIXENなどにも通じるような、80年代感覚に包まれた女性声のハードロックサウンド。
わりとキャッチーな聴き心地で悪くないのだが、ラフな音質がいかにも自主制作然とした
アマチュア臭さとなっているので、今後は録音面も含めての向上を期待したい。
ラストは13分の大曲で、その意気込みは買うが、だらだらとした長尺感がいかんともしがたく、
アレンジの質も含めて、歌唱や演奏自体も、DANTE FOXのレベルへゆくにはまだまだ。
メロディック度・・7 古き良きHR度・・8 女性Vo度・・7 総合・・6.5
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Lacrimosa 「Testimonium」
スイスのゴシックメタル、ラクリモーサの2017年作
1990年にデビューしてから、一貫して翳りに包まれロマンティックなゴシックメタルを作り続けるこのバンド、
13作目となる本作は、4部構成に分かれたコンセプト的な作風で、渋みを増したティロ・ウルフの歌声に、
艶やかなストリングスと女性声が絡み、叙情的なギターとともに耽美な空気感が広がってゆく。
長年のパートナーである、アン・ナルミのシンセワークにオーケストラアレンジも加わった壮麗なスケール感に、
翳りを帯びた哀愁を、優雅なロマンで包み込んだという、このバンドの強固な世界観には一片の曇りもない。
今作は曲によってはわりとキャッチーだったり、泣きのギターフレーズも含めたシンフォニック寄りの聴き心地で、
メタル感触が薄まった分、プログレ寄りのリスナーにも楽しめるかと。ゆったりと耽溺するように鑑賞しましょう。
ドラマティック度・・8 ゴシック度・・9 優雅度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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RAINOVER 「Transcending The Blue And Drifting Into Rebirth」
スペインのゴシックメタル、レインオーヴァーの2014年作
うっすらとしたシンセアレンジに、適度にヘヴィなギターと美しい女性ヴォーカルの歌声を乗せた、
優美なゴシックメタルサウンド。伸びやかでキュートなアンドレア嬢の歌声もなかなか魅力的で、
モダンでキャッチーなメロディアス性と、しっとりと翳りのある叙情性を同居させた感触は、
WITHIN TEMPTASIONEVANESCENCEの中間という印象もある。楽曲は3~4分前後が主体で、
わりとシンプルではあるが、男性デス声が加わったナンバーは典型的なゴシックメタルという雰囲気で楽しめる。
全体的にはこれという新鮮味はないものの、Vo嬢の歌声はよいので、今後は楽曲の魅力をさらに高めていってもらいたい。
シンフォニック度・・7 ゴシック度・・7 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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BREATHLESS 「Everlasting Beyond Forever」
タイのゴシックメタル、ブレスレスの2012年作
美麗なシンセアレンジに適度にヘヴィなギター、男性デスヴォイスを乗せたシンフォニックなゴシックメタルで、
2曲目からは美しいソプラノ女性ヴォーカルの歌声も乗せて、男性声との絡みで優美なサウンドを展開する。
オーケストラルなシンセのアレンジや、ギターのフレージングなどもなかなかセンスが良く、
シンフォニックな優美さとメランコリックな叙情性を含んだ、壮麗なスケール感にも包まれている。
全体的には男性声がメインの部分が多いのが個人的には不満ながら、ほどよいマイナー加減と
アジアンな匂いも漂わせるところも好感が持てる。微笑みの国から、今後の成長に期待のバンドです。
シンフォニック度・・8 ゴシック度・・7 女性Vo度・・7 総合・・7.5
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ORPHEO 「ECHOES」
オランダのプログレメタル、オルフェオの2005年作
オルガンを含むシンセに適度にハードなギターとハスキーな女性ヴォーカルを乗せた、
ハードプログレ寄りのサウンド。きらびやかなシンセワークとメロウなギターの絡む技巧的な味わいと、
女性声を乗せたキャッチーなメロディアス性がよいあんばいで、ヘヴイ過ぎない聴き心地は
プログレとメタルどちらのリスナーにも楽しめる作風だ。紅一点、Wendelin嬢の歌声は、オーセンティックなロックを歌うような
伸びやかな魅力があってマイナー臭さがない。シンセの使い方はかなりプログレ/シンフォニック寄りで、
16分という大曲も、優雅で叙情的なパートを含んだ構築センスが光る。感動的なラスト曲まで、全70分の力作です。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8



8/10
お盆にはブラックメタル(233)


WATAIN 「Trident Wolf Eclipse」
スウェーデンのブラックメタル、ヴァーティンの2018年作
2001年にデビュー、オールドスタイルのカルトなブラックメタルを標榜するバンド。6作目となる本作も、
ブラッケンなダークさをまき散らしながら疾走する、いわばヴィンテージなブラックメタルを聴かせる。
楽曲は3~4前後と、これまでになくシンプルな作風で、いくぶんこもり気味の音質も含めて、
90年代初頭のようなローカルなプリミティブさを感じさせるのも、ブラックメタル好きにはニンマリだろう。
これまでよりも叙情的な展開は少ないが、ギターのリフとフレーズには随所に北欧らしい湿り気を感じさせる。
全34分というのはやや物足りないものの、その潔さも含めて本物のサタニック・ブラックというべきだろう。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・8 暗黒度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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DEVILISH IMPRESSIONS「The I」
ポーランドのブラックメタル、デヴィリッシュ・インプレッションズの2017年作
2005年にデビュー、本作は4作目で、トレモロのギターリフにダミ声ヴォーカルを乗せて激しくブラスト疾走する、
オールドスタイルのブラックメタル。ギターは随所にメロディックなフレーズも覗かせつつ、
スローパートも含んだ緩急ある展開で、甘すぎない叙情とともに、MARDUKあたりにも通じる、
荘厳な空気に包まれたサウンドを描いてゆく。スロ~ミドルテンポからじっくり展開する10分の大曲は、
エピックな神秘性にも包まれていて、全体的にも重厚さと激しさのバランスのとれた強力なアルバムである。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・8 荘厳度・・8 総合・・8
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Bloodhammer 「Kuusi Hymnia Syvyydesta」
フィンランドのブラックメタル、ブラッドハンマーの2016年作
ノイジーなギターリフに絶叫するヴォーカルを乗せた、オールドスタイルのブラックメタルで、
コンコンと軽めのドラムとこもり気味の音質も含めて、いかにもプリミティブ系の聴き心地。
ギターのコード進行には叙情的な感触があり、うっすらとしたシンセも入ったりして、
初期のBURZUMあたりがイケれば、わりと楽しめるかもしれない。全32分という短さも含めて、
とても近年の作品とは思えないが、これぞブラックメタルというべきか。笑
ドラマティック度・・7 暴虐度・・7 プリミティブ度・・8 総合・・7.5
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Ered Wethrin 「Tides of War」
アメリカのポストブラックメタル、エレド・ウェスリンの2017年作
トレモロのギターリフとダミ声のヴォーカルを乗せ、軽すぎず重すぎずほどよい激しさで聴かせる、
ミステリアスな空気感に包まれた、アトモスフェリックなブラックメタル。10分前後の大曲を中心に、
随所にメロディックな叙情性も含んだ構築性と、曲によってはシンフォニックな味付けもあって、
ダークな暴虐性が薄い分、Alcestなどにも通じる幻想的で優美なサウンドが楽しめる。
曲が長いので気が短い方には向かないが、雰囲気モノのポストブラックに浸れる方にはお薦めです。
ドラマティック度・8 暴虐度・・6 幻想度・・8 総合・・8
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Ancient Rites 「Laguz」
ベルギーのシンフォニック・ブラックメタル、エンシェント・ライツの2015年作
デビューは90年代というベテランで、本作は6作目。前作「Rubicon」は壮麗な傑作だったが、
9年ぶりとなる今作は、クラシカルで優雅なイントロで幕を開け、美麗なシンセアレンジに
ダミ声ヴォーカルを乗せて激しくブラスト疾走する、シンフォニックなプラックメタルが広がってゆく。
全体的に暴虐さよりも壮麗な美しさが前に出ているので、BAL-SAGOTHあたりにも通じる
ファンタジックで大仰な雰囲気にニヤニヤできる。シンフォニックまくりのエピック・ブラック強力作!
シンフォニック度・・8 暴虐度・・7 エピック度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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TRIBULATION 「Children of the Night」
スウェーデンのプログレッシブ・ブラックメタル、トリビュレーションの2015年作
プログレッシブ・ブラックとして見事な出来だった前作の流れをくみ、本作もシンセによる妖しげなイントロから始まり、
ヘヴィすぎないギターにダミ声ヴォーカルを乗せ、随所にプログレッシブなセンスを匂わせるサウンドを聴かせる。
リズムチェンジを含む知的な構築力と、甘すぎない程度にメロディックなフレーズを奏でるギターワークも含めて、
ブラックメタルというよりはむしろ、メランコリックなプログレッシブメタルという聴き心地で、暴虐さはさほど感じない。
一方で、翳りのあるダークな世界観は、あるいは「EMPERORがOPETH化」したような感じでも楽しめるだろう。
派手なインパクトこそないものの、単なるプログレブラックという以上に玄人好みの作風で、じっくりと味わえる。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・6 知的度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Secrets of the Sky 「Pathway」
アメリカのゴシック・デスメタル、シークレッツ・オブ・ザ・スカイの2015年作
コンセプトアルバム的なSEから始まり、マイルドなヴォーカルとダミ声ヴォーカルを乗せ、
ポストブラック的でもある物悲しい叙情と浮遊感に包まれたサウンドを聴かせる。
楽曲はスローテンポが主体なので、重厚なギターが入るとドゥームメタル風味にもなったりして、
フューネラルな空気感に覆われた、アトモスフェリックなゴシック・ブラックという感触でも楽しめる。
全体的には激しさはさほどないので、ミステリアスな雰囲気モノとして、ぼんやりと鑑賞するのがよいかも。
ドラマティック度・・7 フューネラル度・・8 重厚度・・8 総合・・7.5
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Pallbearer 「Heartless」
アメリカのドゥームメタル、ポールベアラーの2017年作
2012年にデビュー、新世代ドゥームメタルの旗手として期待されるバンドの3作目。
ツインギターのどっしりとしたリフと有機的に絡むフレーズにマイルドなヴォーカルを乗せ、
適度に知的な構築性を感じさせるドゥームメタルサウンド。リズムチェンジを含む展開力と、
甘すぎない程度のメロディックギターフレーズが、わりとエピックな聴き心地になっていて、
うっすらとしたシンセアレンジも加えた叙情性と、重厚な空気感のバランスも素晴らしい。
プログレッシブな知性すら漂わせる、これぞ新世代のポスト・ドゥームメタルというべき傑作だ。
ドラマティック度・・8 ドゥーム度・・7 重厚度・・8 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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GLERAKUR 「THE MOUNTAINS ARE BEAUTIFUL NOW」
アイスランドのシューゲイザー・ポストロック、グレラカーの2017年作
アンビエントなシンセアレンジにアコースティックギターを重ね、広がりのあるスケール感を描き出す、
ネイチャーな世界観のシューゲイザーロック。ランドスケープ的なギターにドラムも加わると、
重厚なポストロック風味にもなり、神秘的な迫力に包まれたインストサウンドに浸れる。
15分の大曲などは、寒々しいアイスランドの山々をイメージするように、目を閉じてゆったりと鑑賞できる。
一般のメタルリスナーにはやや退屈かもしれないが、涼やかな北の空気を感じさせる異色のシューゲイズロックである。
ドラマティック度・・7 メタル度・・3 重厚度・・8 総合・・7.5
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DIE APOKALYPTISCHEN REITER 「Tobuscht」
ドイツのシアトリカル・ブラックメタル、ディ・アポカリプティシャン・レイターのライブ。2008年作
1997年にデビュー、ブラックメタル的な激しさにゲルマンな勇壮さと、シアトリカルな濃密さで独自のサウンドを描くバンド、
本作は、2007年のドイツWACKENとPARTY.SANでのステージを収録した2枚組ライブ作品。
ツインギターにシンセを含む編成で、シンフォニックなアレンジとメロディックなギターフレーズに、
ダミ声によるドイツ語のヴォーカルとともに、随所に激しいブラスト疾走も含んだ濃密なサウンドを展開。
ペイガンなデスメタルとしても楽しめる一方では、ピアノやヴァイオリンやアコーディオンの音色などが、
優雅なフォークメタル風味になっていて、メリハリのある楽曲構成には、知的なセンスも感じさせる。
CD2枚聴くとヘトヘトになるのだが、濃密なるゲルマンなシアトリカルメタルが満喫できる。
ライブ演奏・・8 濃密度・・9 ゲルマン度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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ARTESIA 「Llydaw」
フランスのゴシック・アンビエント、アルテシアの2009年作
うっすらとしたシンセにヴァイオリンが鳴り響き、アコースティックギターのつまびきに
美しい女性ヴォーカルの歌声を乗せた、シンフォニックなゴシックサウンド。
同郷のDark Sanctuaryにも通じるが、こちらはもう少しシンプルな雰囲気で、
女性声の重ねもスキャット的なので、ふんわりとした幻想性に包まれている。
濃密さや耽美な空気感という点では物足りないが、その分、ゆったりとBGM的に聞き流せる。
ドラマティック度・・7 ゴシック度・・8 女性Vo度・・7 総合・・7.5
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MOON FAR AWAY 「Belovodie」
ロシアのゴシック・フォーク、ムーン・ファー・アウェイの2005年作
フォーキーな旋律を奏でるシンセの重なりと、ハーカッションとドラムのリズムに、
女性ヴォーカルの歌声を乗せた、妖しく秘教めいたゴシックフォークを聴かせる。
曲によってはアコースティックギターによる叙情性や、美しい女性声の魅力でゆったりと楽しめ、
耽美ではあってもダーク過ぎないサウンドなので、この手の中ではわりと聴きやすい部類だろう。
ラスト曲は、デジタルっぽいアレンジの異色のナンバーながら、秘教的な歌声とのアンバランスが面白い。
ドラマティック度・・7 ゴシック度・・8 女性Vo度・・7 総合・・7.5
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Nebelkorona 「Reminiszenzen an das Morgenrot / Relikte des Abendrotes」
ドイツのゴシック・アンビエント、ネベルコロナの2006年作
美しいシンセにクラシカルなピアノ、囁くような男ヴォーカルを乗せた耽美な世界観で、
ドラムは打ち込みのようだが、リズムがある分、この手ではわりと聴きやすい。
ほぼインストがメインで、わりと淡々としたメランコリックな雰囲気が続くので、
ダークアンビエント系が苦手な方には少し退屈かもしれない。個人的には女性声が欲しいですね。
ドラマティック度・・7 ゴシック度・・7 メランコリック度・・8 総合・・7
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8/4
猛暑にはペイガン&フォークメタル!(220)


Seven Kingdoms 「Decennium」
アメリカのメロディックメタル、セブン・キングダムズの2017年作
2007年にデビュー、2作目まではB級臭さ丸出しのサウンドであったが、4作目となる本作でめでたく日本盤デビュー。
前作からいくぶんパワフルになったサウンドは、本作ではさらにそのクオリティをともなってきていて、
正統派のギターリフに伸びやかな女性ヴォーカルを乗せて疾走する、爽快なメロディックメタルを聴かせる。
紅一点、サプリナ嬢の歌声はパワフルすぎず、女性としての艶めいた魅力も感じさせ、フィメールメタル好きにもしっかり対応。
メタリックな疾走感の中にも、随所にツインギターの流麗なフレーズを覗かせて、楽曲におけるメロディのフックもぐっと向上、
HELLOWEENなどのジャーマンメタル好きのリスナーにも楽しめるだろう。このバンドがここまで成長するとは!
女性Voフロントの正統派メロパワとして、いよいよ一線級の存在に上ってきたというべき傑作だ。
メロディック度・・8 疾走度・・9 女性Vo度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Elvenking 「Secrets of the Magick Grimoire」
イタリアのフォークメタル、エルヴェンキングの2017年作
2001年にデビューしてからすでに9作目。フォークメタルとしてはベテランのキャリアを誇るバンド。
物語的なスケール感を感じさせるイントロから、ツインギターのフォーキーなフレーズと
ハイトーンヴォーカルを乗せて、適度な疾走感を含んだエピックなフォークメタルを展開。
厚みのあるサウンドにはかつてのマイナー臭さはみじんもなく、壮麗なシンフォニック性と
勇壮なコーラスなどは、RHAPSODYをフォークメタル化したような雰囲気も感じさせる。
もちろん彼らの魅力である、フォークメタルとしての牧歌的なクサメロ感も残していて、
ベテランならではの安定感と説得力はさすが。キャッチーかつ重厚な楽曲充実の力作です。
ドラマティック度・・8 フォーキー度・・8 壮麗度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Black Messiah「Walls of Vanaheim」
ドイツのペイガンブラックメタル、ブラック・メサイアの2017年作
1998年にデビュー、クサメロたっぷりのペイガンブラックで毎作楽しませてくれるこのバンド、
7作目となる本作は、語りによる映画的なイントロで幕を開け、メロディックなギターワークに
ダミ声ヴォーカルを乗せて疾走する、ほどよく武骨なペイガンメタルが広がってゆく。
随所に美麗なシンセアレンジやヴァイオリンも加わって、クサメロのギターとともに聴かせる
メロスピ的なナンバーなど、適度に激しく、フォーキーな叙情性とエピックなスケール感も含んで、
多くのペイガンメタルリスナーに楽しめる内容だ。TURISASEQUILIBRIUMあたりのファンもどうぞ。
ドラマティック度・・8 ペイガン度・・8 クサメロ度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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LOST IN GREY 「The Grey Realms」
フィンランドのシンフォニック・ペイガンメタル、ロスト・イン・グレイの2017年作
女性Vo、女性ヴァイオリン奏者を含む6人編成で、美麗なシンセアレンジに男女ヴォーカルを乗せて、
ゴシックメタル的でもある耽美な世界観に包まれた、シンフォニックメタルを描いてゆく。
随所に激しい疾走パートも含みつつ、美しい女性ヴォーカルによる優美な聴き心地は、
EPICAあたりにも通じるか。ヴァイオリンの音色も加わったペイガンメタル的な感触と、
適度にフォーキーな味わいとともに、12分を超える大曲をドラマティックに構築する力量も見事。
女性声の壮麗なシンフォニック・ゴシック・ペイガンメタルとして、今後も期待のバンドです。
シンフォニック度・・8 ペイガン度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8
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YE BANISHED PRIVATEERS「First Night Back in Port」
スウェーデンの海賊フォーク、イェ、バニシッド・プライヴェーターズの2017年作
自ら「パイレーツ・フォーク」と名乗るバンドで、アコースティックギターにマンドリン、リコーダーにフィドル、
男女ヴォーカルにコーラスなど、20人を超えるメンバーによる、アコースティックなフォークサウンドを聴かせる。
酒飲み海賊たちを想像させるような武骨で陽気な歌声に、哀愁を含んだアコーディオンの音色、
ときに愉快に踊り、ときに物悲しい叙情に浸る、幻想的な世界観にしだいに引き込まれる。
メタル色はほとんどないものの、海賊時代の世界を描く、その本気度にはロマンすら感じさせ、
曲間には会話や笑い声なども含んでいて、映画かミュージカルのような空気感に包まれている。
フォーク度・・8 メタル度・・3 海賊度・・9 総合・・8
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GRAI 「Ashes」
ロシア連邦、タタールスタン共和国のフォークメタル、グライの2017年作
2009年にデビュー、本作は4作目となる。牧歌的なリコーダーの音色にギターが重なり、
なよやかな女性ヴォーカルの歌声を乗せた、幻想的なフォークメタルを聴かせる。
今作はジャケのイメージのように、わりとダークな妖しさも感じさせる作風で、
ゴシックメタル風の耽美さと、魔女めいた神秘性に包まれた世界観が楽しめる。
曲によっては男性デスヴォイスを乗せたアグレッシブなヘヴィネスも含みつつ、
シンフォニックなきらびやかさやメロディのフックという点ではやや物足りなさも。
ドラマティック度・・7 フォーキー度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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FFERYLLT 「Achanterez」
ロシアのフォークメタル、フェリールトの2015年作
前作はシンフォニックかつ重厚な力作だったが、3作目となる本作もケルティックなバグパイプの音色から始まり、
優美なホイッスルの音色にシンセが重なる幻想的なイントロから引き込まれる。美しい女性ヴォーカルの歌声に
迫力あるデスヴォイスが絡み、ほどよいヘヴィさとシンフォニックな味わいの美麗なペイガンメタルを展開する。
ストリングスによるアレンジなども含めて、スケール感のあるドラマ性も感じさせ、パイプやホイッスルによる
本格派のフォーク要素が見事に融合されたクオリティの高さは、この手のバンドの中では屈指といってよい。
男性デス声メインの勇壮な重厚さと、女性声メインの優美さとのコントラストも含めて、聴きごたえのある力作だ。
ドラマティック度・・8 フォーキー度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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VEDA 「В краях былин」
ロシアのフォークメタル、ヴェーダの2017年作
女性Voにシンセを含む6人編成で、過去2作も優雅さと激しさが同居した力作であったが
3作目となる本作も、美麗なシンセにロシア語の女性ヴォーカルを乗せたシンフォニックな壮麗さと
武骨なデスヴォイスを加えた重厚な激しさが合わさった、質の高いフォークメタルサウンドを聴かせる。
やわらかなフルートの音色をオーケストラルなアレンジが包み込み、辺境的な牧歌性を覗かせながら、
美しい女性声とデス声のコントラストで、随所に激しい疾走パートも含んだ迫力のある聴き心地。
この手のバンドの中でもシンフォニックなフォークメタルとしては、非常に高い完成度の傑作である。
ドラマティック度・・8 フォーキー度・・8 壮麗度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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TROIN 「С другой стороны земли」
ロシアのフォークメタル、トロインの2017年作
武骨なロシア語のヴォーカルにバグパイプが鳴り響く、ノリのよい陽気なフォークメタル。
ほどよくメタリックなギターに、愉快なコーラスと掛け声を乗せたキャッチーな聴き心地で、
適度な疾走感とともに、エピック系とは反対の酒飲み系フォークメタルの楽しさに包まれている。
ヴァイオリンの音色も加わると、Korpiklaaniなどにも通じる感触になるが、こちらの方がもっとライトで
アイリッシュパンクにも通じるようなポップ性がある。本格派のフォークメタル好きにはやや物足りないかもしれないが、
重厚な感触がない分、シンプルな聴きやすさで、アコースティックな部分も含んだ哀愁も漂わせた好作といえる。
ドラマティック度・・7 フォーキー度・・8 愉快でキャッチー度・・8 総合・・7.5
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LADUSHKA / Ладушка 「SUNRISE /Солнцеворот
ロシアのフォークメタル、ラドゥシュカの2018年作
アコーディオンの音色にロシア語の女性ヴォーカルを乗せて疾走する、
キャッチーなノリの良さに包まれた、陽気なフォークメタルサウンド。
メロディには哀愁を感じさせる叙情や、メディーヴァルな幻想性も感じられ、
伸びやかな女性ヴォーカルもなかなか魅力的。楽曲は3~5分前後と比較的シンプルで、
重厚すぎない聴きやすさがあって、わりと初心者にも楽しめるだろう。
愉快な牧歌性と適度な疾走感が合わさった、ロシアン・フォークメタルの好作品。
ドラマティック度・・8 フォーキー度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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ARKONA 「Noch Velesova」
ロシアのペイガンメタル、アルコナのライブ作品。2009年作
2004年にデビュー、いまやロシアを代表するペイガンメタル。本作は2007年モスクワでのステージを2CD+DVDに収録。
激しいブラスト疾走を含むブラックメタル風味に、迫力あるグロウルを使い分けるマーシャ嬢の歌声を乗せ、
ホイッスルやイーリアンパイプの牧歌的な音色とともに、重厚なペイガン・フォークメタルを聴かせる。
女性コーラスを加えての詠唱的な歌声には神秘的な世界観も感じさせ、メタルとしてのアグレッシブなヘヴィさと
土着的なフォーク要素を融合させたサウンドの説得力はさすがというところ。とくにフロントを務めるマーシャ嬢は
デス声&ノーマル声の使い分けとともに、バンドの核となる存在感を放っている。全140分、濃密なライブが味わえます。
ライブ演奏・・8 ペイガン度・・9 重厚度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Folkearth 「Valhalla Ascendant」
多国籍フォークメタルプロジェクト、フォークアースの2012年作
2004年に始まったプロジェクトで、本作は11作目。今作も、ギリシャ、モナコ、イタリア、フランス、スイス、ドイツ、ロシア
ポーランド、リトアニア、アルゼンチンなどから多数のメンバーが集結。牧歌的なホイッスルやアコーディオンの音色を乗せて
激しくブラスト疾走、低音デス声ヴォーカルに朗々としたコーラスを加えた、勇壮なペイガンメタルを聴かせる。
本作はわりとアグレッシブなメロデス風味の感触もあるが、随所にクサメロを奏でるギターもよい感じで、
ときに女性ヴォーカルも加わったりと、ほどよく辺境的なマイナー臭さも相変わらずよい味わいとなっている。
今作は、激しめのナンバーが多いので、ぺイガン・ブラックメタルが好きな方にも対応するかと。
ドラマティック度・・8 ペイガン度・・8 わりとアグレッシブ度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Folkodia 「Battle of the Milvian Bridge」
多国籍フォークメタルプロジェクト、フォーコディアの2017年作
モナコ、ギリシャ、イタリア、アルゼンチン、ドイツ、リトアニア、フランスと世界各国のメンバーが集結。
Folkearthとメンバーがかぶるので、もはや区別しなくてもよい気もするが…ともかく、7作目となる本作も
クサメロ寄りのギターに、男性デス声&女性ヴォーカルを乗せた、勇壮なエピック・ペイガンメタルで、
随所にヴァイオリン、アコーディオン、リコーダーなどのフォーキーな音色が鳴り響く。
今作は、比較的正統派のメロパワ要素が前に出ているが、曲によってはアグレッシブなメロデス的なナンバーもあり、
全体的にも重厚な迫力と疾走感でたたみかける。クオリティ的にも高品質なペイガンメタル作品です。
ドラマティック度・・8 ペイガン度・・7 わりと正統派度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら



7/28
台風接近!(207)


ANGRA 「Omni」
ブラジルのメロディックメタル、アングラの2018年作
いまや世界的な人気を誇るビッグネーム。本作は通算9作目で、ファビオ・リオーネを迎えての2作目となる。
MEGADETHに加入したキコ・ルーレイロはゲストで参加、オリジナルメンバーはラファエル・ビッテンコートのみとなったが、
サウンドの方は1曲目からメロディックな疾走路線に回帰していて、流麗なツインギターに伸びやかなファビオの歌声を乗せた、
アングラらしいスケール感のある聴き心地。シンフォニックで華麗なアレンジと知的な展開力はさすがの説得力で、
コンセプチュアルなドラマ性も感じさせる流れも見事。アリッサ・ホワイト(Arch Enemy)がゲスト参加したナンバーでは、
美しい女性声&グロウルを乗せながら、いつになくモダンなヘヴィネスも取り入れている。随所に南米らしいメロディも覗かせ、
ゆったりとした叙情ナンバーもわりと楽しめる。キコ不在を感じさせない巧みなギターワークも含めて、隙の無い力作といえる。
ドラマティック度・・8 疾走度・・8 壮大度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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CORONATUS 「Secrets of Nature」
ドイツのシンフォニックメタル、コロナタスの2018年作
2007年にデビュー、本作ですでに8作目となる。オーケストラルなアレンジに3人の女性ヴォーカルの歌声を乗せた、
壮麗なシンフォニックメタルサウンドは本作も同様。美しいソプラノヴォーカルから、中音域のメゾソプラノと、
絶妙に異なった声域の女性声が絡み、ヴァイオリンも鳴り響くクラシカルな優雅さとほどよいヘヴィネスが合わさって、
Nightwishなどが好きな方にはウットリの聴き心地である。反面、楽曲そのものの新鮮さという点では、
これといった個性は感じられず、どことなく中庸感が漂っているのも、ある意味らしさというべきか。
曲によっては男性voも加わったり、フォークメタル風味もあったりと、それなりに飽きずに楽しめます。
シンフォニック度・・8 壮麗度・・8 女性Vo度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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REXORIA 「Queen of Light」
スウェーデンのメタルバンド、レクソリアの2018年作
伸びやかな女性ヴォーカルの歌声を乗せた、古き良き感触のハードロックサウンド。
ギターのフレーズにはウェットな叙情性も感じさせ、うっすらとしたシンセアレンジとともに、
80年代の北欧メタルのような涼やかな空気感に包まれている。紅一点、Frida嬢の歌声は、
パワフル過ぎない艶めいた美しさで、この王道のHR/HMサウンドにじつによくマッチしている。
ジャケのイメージのように、いくぶんの魔女感も漂わせつつ、楽曲はあくまでキャッチーな聴き心地。
オールドな女性声メタルとしてはもちろん、湿り気のある北欧メロハーとしても楽しめる好作品です。
メロディック度・・8 古き良きHR度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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SIRENIA 「Dim Days of Dolor」
スウェーデンのシンフォニック・ゴシックメタル、シレニアの2016年作
2002年にデビュー、元TRISTANIAのモルテン・ヴェランドによるプロジェクトで、本作が8作目となる。
4作目以降フロントを務めていたアイリン嬢が脱退し、今作から新たな女性シンガーが加入している。
ヘヴィなギターにオーケストラルなアレンジを重ね、美しい女性ヴォーカルで聴かせる美麗なシンフォニックメタル。
新加入のエマニュエル嬢の歌声は、Nightwishのフロール・ヤンセンにも通じる伸びやかなソプラノで、
楽曲を華麗に彩っていて、ゴシック的な耽美さは薄めながら、キャッチーなナンバーにもよく似合っている。
ときにデスヴォイスも加えつつ、全体的には女性声を活かした優美な作風で、楽曲アレンジも含めてさすがの高品質作。
シンフォニック度・・8 ゴシック度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Voyager 「Ghost Mile」
オーストラリアのモダン・プログレメタル、ヴォイジャーの2017年作
2003年にデビュー、モダンな構築性でハイセンスなサウンドを描く、実力派の中堅バンド。
6作目となる本作はよりモダンな感触を強めた作風で、ときにDjent的でもあるテクニカル性を含みつつ、
マイルドなヴォーカルを乗せたキャッチーな感触を融合した、スタイリッシュなサウンドを聴かせる。
ギターリフはけっこう硬質であるが、うっすらとしたシンセアレンジがサウンドに浮遊感をもたらしていて、
モダンなヘヴィネスと優雅なメロディック性、そして知的な構築センスのバランスが絶妙である。
テクニカルでありながら、ほどよくキャッチーなポスト・プログレメタルとしても楽しめるアルバムです。
メロディック度・・8 テクニカル度・・8 スタイリッシュ度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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WINTERSTORM 「Cube of Infinity」
ドイツのヴァイキング・メロディックメタル、ウインターストームの2017年作
2010年にデビューして、本作は4作目。前作もEquilibriumばりの好作であったが、今作も美麗なイントロから、
エピックな雰囲気を漂わせつつ、クサメロ感たっぷりのギターを乗せて疾走開始。正統派メタルのパワフルさに加え、
ペイガンな土着性とシンフォニックな壮麗さと勇壮なコーラスなどを加えた、エピックなメロパワサウンドを聴かせる。
全体的にはヴァイキング風味がやや薄まって、ミドルテンポのどっしりとしたナンバーやわりとキャッチーなナンバーなど
同郷のMajetiyあたりにも通じる正統派のスタイルで、一般のジャーマンメタルファンにも十分楽しめる内容だろう。
メロディック度・・8 疾走度・・7 正統派度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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THE SIGN OF AMPERSAND 「Dark Shades of Mystery」
ロシアのシンフォニックメタル、サイン・オブ・アンパーサンドの2017年作
適度にヘヴィなギターと美麗なシンセアレンジに、美しい女性ヴォーカルの歌声を乗せ、
ゴシックメタル的でもある耽美な世界観も感じさせる。ヴォーカルは英語のため辺境的な味わいは薄く
ギターにはモダンな硬質感もあって、「マイナーなNightwish」という感じでも楽しめるかもしれない。
紅一点、DINA嬢の歌声は、優雅なメゾフプラノでよいのだが、楽曲的には、どうも盛り上がり切らない
煮え切らなさがあって、メロディや展開にもう少し魅力が欲しい気もする。今後に期待しましょう。
シンフォニック度・・7 ゴシック度・・7 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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ADX 「Non Serviam」
フランスのパワーメタルバンド、ADXの2016年作
80年代から活動するベテランバンドで、二度の復活をへての本作は10作目あたりだろうか。
王道のギターリフにパワフルなヴォーカルを乗せて疾走する、スラッシーなパワーメタルで、
フランス語の歌声が独特の浮遊感をかもしだす。随所にメロディックなフレーズも奏でるツインギターは
往年のジャーマンメタル的でもあり、初期のBLIND GUARDIANなどにも通じる味わいもある。
ベテランらしい堂々たる音の説得力が、フランス語云々を超えた迫力と魅力となっていて、
正統派パワーメタルを愛する人間なら存分に楽しめるだろう。フレンチメタルおそるべし。
ドラマティック度・・8 疾走度・・8 パワフル度・・8 総合・・8
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ANTHOLOGY「The Prophecy」
スロバキアのシンフォニックメタル、アンソロジーの2014年作
女性Voにシンセを含む6人編成で、シンフォニックなアレンジと伸びやかな女性ヴォーカルの歌声を乗せ、
美麗に疾走する、シンフォ・メロスピサウンド。ヨーロピアンな空気感のほどよいクサメロ感触もあって、
オーケストラルなアレンジや、楽曲の質、演奏力も含めて、辺境レベルにとどまらない内容である。
紅一点、Lubica嬢の歌声にさらなる表現力が加われば、一皮むけたレベルにゆけるかも。ちなみに本作はCDR作品です。
シンフォニック度・・8 疾走度・・8 女性Vo度・・7 総合・・7.5

WITCHCRYER 「Cry Witch」
アメリカの女性声ドゥームロック、ウィッチクライヤーの2018年作
アナログ感たっぷりのギターにハスキーな女性ヴォーカルを乗せた、サバスルーツの古き良き感触のハードロック。
Blood Ceremonyあたりに比べるともっとシンプルな作風で、むしろCastleなどに近いスタイルだろうか。
紅一点、スージー嬢の歌声は、適度に伸びやかで上手すぎず下手すぎず、この路線によくマッチしていて、
曲によっては妖しい魔女感もかもしだす。楽曲は3~4分前後で、これという新鮮味はないものの、
王道のギターリフも含めて、この手のヴィンテージロックとしてのお約束の安定感で気持ちよく聴ける。
Witchfinder Generalのカヴァーもなかなかハマっている。魔女系ロックとして今後の深化に期待したい。
ドラマティック度・・7 古き良き度・・9 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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TALESIEN
スペインのプログレメタル、タレシエンの2016年作
ツインギターにシンセを含む6人編成で、ハードエッジなギターに美麗なシンセワークと、
スペイン語のヴォーカルを乗せ、メロディックな叙情性とモダンなテクニカル性に包まれた聴き心地。
オルガンなども含んだきらびやかなシンセはプログレ寄りのシンフォニックな味わいもあってて、
ギターは硬質感のあるリフから随所に流麗なフレーズも奏で、スタイリッシュで技巧的なサウンドを描いてゆく。
一方では、スペイン語による歌メロは、キャッチーな哀愁の叙情も感じさせ、モダンな作風の中にも、
スパニッシュメタルとしての情感もしっかりと表現している。これは掘り出し物的な高品質作ですね。
メロディック度・・8 テクニカル度・・8 スタイリッシュ度・・9 総合・・8
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PERFECT SMILE 「ERASE UNA VEZ...」
スペインのプログレメタル、パーフェクト・スマイルの2013年作
シンセを含む5人編成で、ストーリー的な雰囲気のイントロから、きらびやかなシンセにスペイン語の歌声を乗せ、
キャッチーなメロディアス性と緩急ある構築力で聴かせるサウンド。伸びやかなヴォーカルに美麗なシンセアレンジに、
A.C.Tなどにも通じるような優雅な軽妙さと、いくぶん唐突な展開力で、プログレ寄りのリスナーにも楽しめるだろう。
楽曲自体は4~5分前後と、あくまでメロディックな明快さが前に出ていて、ときおり聴かせるギターの流麗なフレージングや
プログレ寄りのシンセワークもなかなかセンスがよい。爽快かつテクニカル、そしてキャッチーな聴き心地の逸品です。
メロディック度・・・8 プログレ度・・8 優雅度・・9 総合・・8
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Sun Caged 「Artemisia」
オランダのプログレメタル、サン・ケイジドの2007年作
2003年作に続く2作目で、テクニカルなアンサンブルに美麗なシンセアレンジ、
伸びやかなヴォーカルを乗せた、DREAM THEATERルーツのProgMetalを基本にした、
クールでモダンなサウンドを聴かせる。前作に比べるとテクニカルな展開力と楽曲アレンジにぐっと磨きがかかり、
翳りを帯びた叙情性とともに、ドラマティックな味わいに包まれている。甘すぎないメロディアス性と
リズムチェンジを含む確かな構築力で、7~9分前後の長めのナンバーもじっくりと楽しめるクオリティがある。
全70分あるので、さすがせに長尺感は否めないが、確かな成長を見せたつけた見事な力作に仕上がっている。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 スタイリッシュ度・・8 総合・・8
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7/13
いよいよワールドカップも決勝!(194)


Ayreon 「Ayreon Universe」
オランダのシンフォニックハード・プロジェクト、エイリオンのライブ作品。2018年作
1995年の1作目から始まったアルイエン・ルカッセンによる壮大なロックオペラの集大成的なライブ作品で、
フロール・ヤンセン、マルコ・ヒエタラ(Nightwish)、ダミアン・ウィルソン、ハンズィ・キアシュ(Blind Guardian)、
トミー・カレヴィック(Kamelot)、アネク・ヴァン・ガースバーゲン(VUUA)、マルセラ・ボヴィオ(Stream of Passion)
ヨナス・レンクス(Katatonia)、エドワード・リーカース(Kayak)といった、世界各国のメンバーが集結、
過去作からのナンバーを新たに再構成、多数の男女ヴォーカルの歌声を乗せ、シンフォニックな壮麗さで
ドラマティックなロックオペラを描いてゆく。この豪勢なステージはDVDでの映像でも楽しむべきだろう。
ドラマティック度・・9 ライブ演奏・・8 壮麗度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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GALACTIC COWBOYS 「Long Way Back to the Moon」
アメリカの個性派メタルバンド、ギャラクティック・カウボーイズの2017年作
メタリックなヘヴィネスとポップなキャッチーさの融合から、「メタリカ、ミーツ、ビートルズ」とも評され、
2000年までに6作を残して消えたこのバンドが、17年ぶりにまさかの復活。マイク・ポートノイも大喜びだ。
ヘヴィなギターリフを乗せたオルタナ風味に、キャッチーなコーラスを乗せたこのバンドならではのサウンドは健在。
ただもミクスチャーなバンドが多様を極めるいまとなっては、楽曲そのものにさほど新しさがない分、
90年代を思わせる作風にむしろなつかしい感じもする。復活は嬉しいが、もう少し極端なインパクトが欲しいか。
このバンドを初めて知るという若いリスナーには、かつての2nd、5thあたりをまず聴いていただきたい。
ドラマティック度・・9 ヘヴィ&キャッチー度・・8 新鮮度・・7 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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TALVIENKELI 「Hybris」
フランスのシンフォニックメタル、トールヴェインケリーの2017年作
女性Voにシンセを含む5人編成で、ベースも女性奏者。美しいシンセと女性声を乗せたイントロから、
優美な世界観に包まれつつ、メタリックな激しさを加えた重厚なシンフォニックメタルを展開。
EPICAなどにも通じるクラシカルな優雅さと、硬質なギターリフのモダンなヘヴィネスが合わさり、
緩急のあるメリハリのある構築力とともに壮麗なサウンドを描いてゆく。カミーレ嬢の歌声は、
美しいメゾソプラノで、ヘヴィなバックとのコントラストがやわらかな浮遊感を楽曲に付加している。
10分におよぶ大曲も含めて、デビュー作としては堂々たる内容の力作です。
シンフォニック度・・8 重厚度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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Old Season 「Beyond the Black」
アイルランドのメタルバンド、オールド・シーズンの2017年作
ツインギターにシンセを含む6人編成で、ハイトーンヴォーカルを乗せた古き良き正統派メタルを聴かせる。
ミドルテンポを主体に、美しいシンセアレンジにツインギターが重なり、メロディックなフックが耳心地よく、
湿り気を帯びたマイナーな空気感と、曲によっては、CANDLEMASSのようなエピックドウーム的な感触もある。
叙情的なギターフレーズを乗せてどっしりと聴かせる、エピックメタルとしての醍醐味も詰まっていて、
NWOBHMの空気感にシンセアレンジを加えてメロディックに仕上げたサウンドは、捨てがたい魅力がある。
MARTIRIAあたりのファンにもお薦めしたい、これぞ正統派エピックメタルの好作品だ。
ドラマティック度・・8 古き良き度・・8 エピック度・・8 総合・・8
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Next to None 「Phases」
アメリカのプログレメタル、ネクスト・トゥ・ノーンの2017年作
Mike Portnoyの息子、Max Portnoyが在籍するバンドで、2作目となる本作は、モダンなヘヴィネスと、
アヴァンギャルドな感触を増した聴き心地で、スクリームするヴォーカルを乗せたメタルコア風味が強まった。
シンセアレンジを含んだ音の厚みと、テクニカルな展開力が合わさって、いくぶん唐突な味わいが面白い。
手数の多い父親譲りのドラムに重量感のあるベースのリズム隊は、ときにDjent的な感触も描いていて、
いかにも若手バンドらしい勢いと激しさに包まれている。10分前後の大曲では、知的な展開力とともに、
DREAM THEATERを思わせる雰囲気も覗かせる。ラストは20分に及ぶ大曲で、全78分という力作。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・8 モダンヘヴィ度・・8 総合・・7.5
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THE GREAT DISCORD 「THE RABBIT HOLE」
スウェーデンのゴシック・プログレメタル、グレート・ディスコードの2017年作
女性Voにツインギターを含む5人編成で、前作はテクニカルかつモダンな好作品であったが、
続く本作は3パートに分かれたコンセプト的なアルバムで、適度にモダンなヘヴィネスと
ハスキーな女性ヴォーカルの歌声を乗せ、翳りを帯びたゴシックロック風味で始まりつつ、
アグレッシブな迫力やときなテクニカルな展開も盛り込んだ、スリリングなサウンドを聴かせる。
前作に比べるとダークなゴシックヘヴィロック調が強まり、全体的にはProgMetal的な感触は薄まったが、
ソフィア嬢改め、フィア嬢の歌声には中性的な妖しい雰囲気があって、この路線にもマッチしている。
ドラマティック・・7 テクニカル度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8
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MINDMAZE 「RESOLVE」
アメリカのメロディックメタル、マインド・メイズの2017年作
メロディックなギターに伸びやかでハスキーな女性ヴォーカルを乗せ、パワフルな疾走感と重厚さに
ProgMetal的でもある知的な展開力も含んだ聴き心地。テクニックのあるギターによる
流麗なフレージングも随所に光っていて、ダイナミックな構築センスとともにインストパートの充実が
楽曲に確かな説得力を付加している。美しいシンセアレンジも加わって、女性声の魅力を活かした、
しっとりとしたナンバーなどもよい感じで、11分を超えるラストの大曲は、緩急のあるドラマティックな展開で、
女性声入りプログレメタルの味わいが楽しめる。テクニカルでメロディック、今後が楽しみなバンドです。
ドラマティック度・・8 構築度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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MADAME MAYHEM 「READY FOR ME」
アメリカの女性声ハードロック、マダム・メイヘムの2017年作
自らマダム・メイヘムを名乗る女性シンガーのソロ作品で、彼女の伸びやかな歌声を乗せ、
Evanescenceなどにも通じるモダンな感触と、わりと王道のハードロックを合わせたサウンド。
ほどよくキャッチーで聴きやすく、ヴォーカルも含めて全体的にも高品質なのだが、
どの曲もなんとなくどこかで聴いたような感じがして、新鮮さやインパクトはやや希薄。
この手のエヴァネッセンス風の女性声ヘヴィロックがお好きならどうぞ。
ドラマティック・・7 エヴァ度・・8 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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EARTH ELECTRIC 「Vol 1: Solar」
ポルトガルのヴィンテージ・ハードロック、アース・エレクトリックの2017年作
AVA INFERIの女性シンガーと、元MAYHEMのギター、ルネ・エリクセンを中心にしたバンドで、
程よくハードなギターにオルガンが鳴り響く、なかなかオールドな味わいのハードロックに、
美しい女性ヴォーカルを乗せたサウンド。カルメン嬢の歌声はやはりゴシック寄りの感触なのだが、
サイケなヴィンテージハードとのミスマッチが、わりと面白い味わいの浮遊感となっている。
厚みのあるギターサウンドはさすがブラスフェマーというところで、オールドなスタイルであっても、
しっかりとメタリックなヘヴィさを保っている。全35分という短さもアナログ盤的ですな。
ドラマティック度・・7 ヴィンテージハー度・・8 女性Vo度・・7 総合・・8
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VOLUR「Ancestors」
アメリカのドゥームメタル、ヴォラーの2017年作
Blood Ceremonyのベーシストを中心としたユニットで、詠唱のような男女声を乗せ、
プリミティブな暗黒性に包まれたドゥームサウンド。ドローン的な重々しさの中、ヴァイオリンが妖しく鳴り響き、
がなり立てるヴォーカルとともに、ブラックメタルばりの原初的な闇を感じさせる寂寥とした空気感と、
得体の知れない神秘性に包まれた聴き心地で、曲調はスローテンボながら迫力たっぷりである。
ヴァイオリンの音色が不穏な気配をまき散らすところは、チェンバーロック的でもあり、単なる暗黒ドゥームではない、
キワモノ系を愛するリスナーにこそ薦めたい。10分を超える大曲4曲という構成の異色の力作である。
暗黒度・・9 ドゥーム度・・8 寂寥度・・9 総合・・8
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MAEL MORDHA 「Manannan」
アイルランドのエピックドゥームメタル、マエル・モルダの2010年作
重厚なギターリフに朗々としたヴォーカルを乗せた、神秘的なドゥームメタルサウンドに、
スローすぎない正統派メタル寄りのノリと、適度にメロディックな感触も加えた聴き心地。
アイルランドというお国柄か、ホイッスルが鳴り響くケルティックな味わいも覗かせて、
翳りを帯びた土着的な空気感に包まれた、独自のエピックドゥームが味わえる。
あるいは、CANDLEMASSをいくぶん辺境臭くしたような雰囲気でも楽しめるだろう。
ドラマティック度・・8 重厚度・・8 神秘的度・・8 総合・・7.5
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GAMMA RAY 「Lust For Live」
ジャーマンメタルゴッド、ガンマ・レイのライブ作品。2016年作
1993年にVHSで発売されたライブのリマスターCDで、3rd「Insanity & Genius」発売直後のツアーから、ドイツ、ハンブルグでのステージを収録。
トーマス・ナックの手数の多いツーバスドラムにラルフ・シーパーズのパワフルなハイトーンヴォーカルを乗せた、
勢いのある演奏で、2nd、3rdからのナンバーを主体にしつつ、「I Want Out~Future World~Ride The Sky」という、
HELLOWEENメドレーも披露。音質的には、ややこもり気味で最高とは言い難いが、初期のライブ音源のCD化は嬉しいですな。
ライブ演奏・・8 音質・・7 あの頃のガマレー度・・9 総合・・8
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HERCULES/海克力斯 「WILDEST DREAM/遊園驚夢」
中国のシンフォニックメタル、ヘラクレスの2006年作
大曲3曲、全28分弱というミニアルバムで、シンフォニックで壮麗なイントロから、適度にハードなギターと
中国語の美しい女性ヴォーカルを乗せてじっくりと聴かせる、シンフォニックメタルサウンドが広がる。
随所に中華メロディ的を乗せたやわらかな味わいに、ときにダミ声ヴォーカルを加えたり、
男性声による語りを乗せたドラマ性も感じさせ、展開力のある構築性という点ではProgMetal的でもある。
女性声の雰囲気やきらびやかなシンセアレンジはよい感じなのだが、重厚な迫力や盛り上がりという点では
まだまだ物足りなさもあるので、楽曲構成やメロディも含めてのクオリティアップを期待したい。
ドラマティック度・・7 中華度・・8 楽曲・・7 総合・・7.5
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6/29
日本決勝トーナメント進出!(181)
ベルギーのメタルとプログレ特集ページはこちら


CARDIANT「MIRRORS」
フィンランドのメロディックメタル、カーディアントの2017年作
2005年にデビュー、初期のメロスピ路線から、前作ではよりキャッチーな路線へと深化し、
4作目となる本作では女性Voが加入し、男女Voの編成となった。きらびやかなシンセアレンジに、
伸びやかなヴォーカルを乗せて疾走する1曲目は、初期を思わせるメロスピ路線のナンバー。
ミドルテンポのモダンな感触も織り込みつつ、キャリアのあるバンドらしいアレンジセンスで、
メロディックな味わいをしっかりと前に出したサウンドが楽しめる。女性ヴォーカルを乗せた、
ゆったりと聴かせるナンバーもアクセントになっていて、全体的にもさすがの高品質である。
個人的には女性ヴォーカル入りのパートがもっと増えると嬉しいですな。
メロディック度・・8 疾走度・・7 高品質度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Almanac 「Kingslayer」
元RAGEのヴィクター・スモールスキによるプロジェクト、アルマナックの2017年作
Pink Cream 69のデイヴィッド・リードマン、女性Vo、ジャネット・マルヒェフカ、BRAINSTORMのアンディ・B・フランクら
前作同様のメンバーで、男女ヴォーカルを乗せた正統派のメロディック・パワーメタルを聴かせる。
基本的にはどっしりとした味わいの重厚なメタルサウンドで、随所にお得意のテクニカルなギタープレイや
シンフォニックなアレンジを取り入れて、ドラマティックな流れでコンセプト的なスケール感を描いてゆく。
疾走感はさほどないものの、わりとキャッチーな歌メロなど、古き良きメタルのエッセンスも感じられ、
新鮮味はないが安心して楽しめる。女性声パートや壮麗なシンフォニック性を増やしてもらうともっと嬉しいのだが。
ドラマティック度・・8 重厚度・・8 新鮮度・・7 総合・・8
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SERIOUS BLACK 「MIRRORWORLD」
元BLOODBOUNDのアーバン・ブリード、EDENBRIDGEのドミニク・セバスチャンらによるメタルバンド、シリアス・ブラックの2016年作
脱退したローランド・グラポウ、トーメン・スタッシュに代わり、ボブ・カティオニス(FIREWIND)、アレックス・ホルツワース(元RHAPSODY OF FIRE)が加入
2作目となる本作も、きらびやかなシンセアレンジにパワフルなヴォーカルを乗せ、メロディックに疾走する正統派のメロパワサウンドで、
前作に比べてわりとキャッチーでスタイリッシュな作風になっている。ギターリフは古き良き王道の様式美系の感触があって、
美麗なシンセとの絡みで随所にネオクラ風味も覗かせる。疾走ナンバーからミドルテンポのキャッチーなナンバーまで、
総じてクオリティは高いのだが、メロディのフックに新鮮味は薄く、安定して楽しめるメロパワという程度にとどまっているのが惜しい。
メロディック度・・7 疾走度・・7 様式美度・・8 総合・・8
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SERIOUS BLACK 「MAGIC」
多国籍メンバーによるメロディック・メタル、シリアス・ブラックの3作目。2017年作
元BLOODBOUNDのアーバン・ブリード、EDENBRIDGEのドミニク・セバスチャンを中心に、
前作から参加のFIREWINDのボブ・カティオニス、元RHAPSODY OF FIREのアレックス・ホルツワース、
元DREANSCAPEのヤン・ヴァシックというメンバーで、前作以上にシンフォニックなアレンジと、
緩急に富んだ展開力で、正統派のメロディックメタルを聴かせる。伸びやかでパワフルなヴォーカルと
随所にテクニカルなフレーズを奏でるギターワークもさすがで、キャッチーなコーラスワークも含めて
最後までクオリティの高いサウンドが楽しめる。メロディのフックという点でも過去最高の出来だろう。
メロディック度・・8 疾走度・・7 キャッチー度・・8 総合・・8
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Crystal Viper 「Queen of the Witches」
ポーランドのメタルバンド、クリスタル・ヴァイパーの2017年作
2006年にデビュー、女性ヴォーカルを乗せた古き良き正統派メタルを聴かせるこのバンド、
6作目となる本作も、マルタ・ガブリエル嬢のパワフルなハスキーヴォイスを乗せ、
ほどよくメロディックな味わいの、正統派のパワーメタルが炸裂する安定の作風だ。
もはや新鮮味というのはないのだが、ギターのリフやフレーズにはツボをつく王道の感触があって、
NWOTHM関連が好きなリスナーには、80年代的な感触で心地よく楽しめること請け合い。
かつてのZED YAGOあたりを思わせる、魔女系メタルの感触もよいですね。
ドラマティック度・・8 正統派度・・8 古き良き度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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ADAMANTIA 「U.N.O: Una Nueva Odisea」
スペインのメロディックメタル、アダマンティアの2017年作
壮麗なシンフォニックアレンジとクサメロのギター、スペイン語のヴォーカルを乗せて疾走する、
初期AVALANCHにも通じるメロスピサウンド。スパニッシュ特有の哀愁をまとわせた歌いまわしと、
クワイアなどを含んだ、初期DARK MOORなどを思わせる美麗なアレンジで、濃密かつ爽快な聴き心地。
ギターのフレーズもクサメロ感たっぷりで、疾走ナンバーが多いのもメロスパーには嬉しい限り。
全体的にも、楽曲、演奏ともに、この手の中ではクオリティの高いアルバムに仕上がっている。
シンフォニック度・・8 疾走度・・8 スパニッシュ度・・8 総合・・8
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Warcry 「Donde El Silencio Se Rompio」
スペインのメロディックメタルバンド、ウォークライの2017年作
元AVALANCHのメンバーによるバンドで2000年にデビュー、本作はおそらく9作目となる。
きらびやかなシンセアレンジに、適度にモダンなギターとスペイン語のヴォーカルを乗せた
スパニッシュなハードロックサウンドで、哀愁の叙情を含んだベテランらしい味わいだ。
初期の頃のようなメロスピ的な疾走感はあまりないのだが、どっしりとした大人の落ち着いた感じと、
シンフォニックなアレンジが合わさっていて、シンプル過ぎない濃密な聴き心地はさすが。
ミドルテンポを主体にしつつほどよい疾走ナンバーもあるので、全体的にもバランスの取れた好作品だ。
メロディック度・・8 疾走度・・6 スパニッシュ度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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ENDLESS「The Truth,The Chaos,The Insanity」
ブラジルのメロディックメタル、エンドレスの2016作
AQUARIAのVo、ヴィトール・ヴェイガ率いるバンドの3作目。ツインギターにシンセを含む6人編成で、
ドラマ性を感じさせる壮麗なイントロから、ネオクラシカル風味もあるギターと伸びやかなヴォーカルを乗せて、
適度に疾走感も含んだ展開力とともに、ANGRAなどにも通じる、高品質なメロディックメタルを聴かせる。
コンセプト的なストーリー性を想像させる、ドラマティックな空気感がサウンドに重厚な説得力を生み出していて、
かつてのアクアリアばりの疾走するメロスピナンバーはもちろんのこと、ミドルテンポやバラードナンバーも、
実力のあるヴォーカルの歌声でじっくりと楽しめる。コンセプチュアルなシンフォニックメタルとしても見事な力作である。
ドラマティック度・・8 疾走度・・7 重厚度・・8 総合・・8
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Morning Dwell 「Guardians of Time」
スウェーデンのメロディックメタル、モーニング・デュエルの2016年作
REINXEEDやGOLDEN RESURRECTIONで活躍するドラマー、Alfred Fridhagenが在籍するバンドで、
前作もマニアにんまりのクサメロスピであったが、今作もツインギターにきらびやかシンセアレンジを乗せて疾走する、
Dragonforceばりのメロディック・スピードメタルが炸裂。パワフル過ぎないハイトーンヴォーカルや、
ややラウドな音質がマイナー臭さをかもしだしているが、メロスパーならそこも含めてニヤりとできる。
ミドルテンポのどっしりとしたナンバーよりは、やはりクサメロを乗せて疾走するナンバーは魅力的。
13分を超える大曲はやや長尺すぎだが、A級になり切れないクサメタルという点ではこれでよいのかも。
メロディック度・・8 疾走度・・8 クサメロ度・・8 総合・・7.5
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Lord Thanatos 「Legends of Ipheria」
コロンビアのメロディックメタル、ロード・タナトスの2016年作
美麗なシンセアレンジに、ほどよく軽めのツインギターとハイトーンヴォーカルをのせて疾走する、
いかにもクサメロ系のメロスピサウンド。歌詞は英語なので辺境感はさほどないが、
ファンタジックでクサクサの雰囲気と、適度なヘナチョコ感がマイナー臭さをかもしだし
この手のB級メロスピマニアにはたまらない聴き心地だろう。軽めの疾走ナンバーが多いのも楽しいし、
ギターといいシンセといい、とにかくクサメロをまき散らす。潔いまでのファンタジー・メロスピぶりが素敵です。
メロディック度・・8 疾走度・・8 クサメロ度・・9 総合・・7.5
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ARRAYAN PATH 「Chronicles Of Light」
キプロスのメロディックメタル、アラヤン・パスの2016年作
2010年にデビュー、本作は4作目で、ヘヴィなツインギターにパワフルなヴォーカルで聴かせる、
正統派のメロパワサウンド。エピックメタルとしての勇壮で硬派な世界観に包まれながら、
ほどよく中近東的な辺境性も感じさせる。以前の作品に比べると硬質なギターサウンドによる
モダンな感触も増しているので、正統派メタル好きの若いリスナーにもアピールするだろう。
疾走するナンバーもあるが、基本はどっしりとしたミドルテンポが中心で、重厚なメロパワが楽しめる。
メロディック度・・7 パワフル度・・8 正統派度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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Marauder 「Elegy of Blood」
ギリシャのメロディックメタル、マローダーの2012年作
90年代から活動するキャリアのあるバンドで、ツインギターにハイトーンヴォーカルを乗せ、
メロディックなフックのある正統派のメタルを聴かせる。90年代から引き継がれた王道の路線ながら、
ほどよいクサメロ感がキャッチーな感触にもなっていて、随所に勇壮なコーラスなども含めて、
エピックな空気感に包まれたサウンドは、ときにMANOWARのような聴き心地でも楽しめる。
疾走ナンバーからどっしりとしたミドルテンポ、日本をテーマにしたインストナンバー「Hiroshima」など、
甘すぎない叙情性とともに、ドラマティックなエピックメタルが味わえる好作品だ。
メロディック度・・8 正統派度・・8 エピック度・・8 総合・・8
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Van Canto 「Break the Silence」
ドイツのアカペラメタル、ヴァン・カントの2011年作
ドラム以外はすべて声でこなすという異色のアカペラメタルバンド。2006年にデビューしてから4作目となる。
ギター役、ベース役の巧みな「ヴンヴン」「タカタン」に、バワフルな男性ヴォーカルと美しい女性ヴォーカルを絡ませ、
一種エピックなまでのメタルサウンドを聴かせる、その声技巧はすでに円熟の域へ到達している。
ハミングによるギターソロ声などもじつに絶品で、もはや笑うどころではない、ひとつの音声芸術といってよい。
実際にヨアキム・ブローデンが参加した、SABATONのカヴァーに、キャッチーな、ALICE COOPERのカヴァー、
ラストは、MANOWARのバラード「Master of the Wind」で、やわらかなピアノと女性ヴォーカルでしっとりと聴かせる。
限定盤のボーナスには、RUNNING WILDのカヴァーを含む3曲を追加収録。アカペラメタルの深化は続く。
ドラマティック度・・8 アカペラ度・・9 ちゃんとメタル度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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6/15
いよいよワールドカップ開幕!(168)


VUUR 「In This Moment We Are Free - Cities」
The Gatheringのアネク・ヴァン・ガースバーゲンによるプロジェクト、フーアの2017年作
Amorphis、Anathema、Peripheryなどのメンバーが楽曲提供で参加していて、世界各国の都市をテーマに、
モダンなヘヴィネスとテクニカル性に、伸びやかなアネクの歌声を乗せた、ゴシック風味のモダンメタルというサウンド。
ヘヴィなギターリフをバックに、倦怠の空気感をかもしだす彼女の歌声は、やはりゴシックメタル寄りの感触で、
そのはかなげな浮遊感と硬質なテクニカル性が、ある意味で不思議なコントラストにもなっている。
しっとりと聴かせるラストの叙情ナンバーまで、シンガー、アネクの魅力たっぷりに楽しめるアルバムだ。
メロディック度・・7 モダン度・・8 女性Vo度・・9 総合・・8
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Cellar Darling 「This is the Sound」
スイスのフォーク・ゴシックメタル、セラー・ダーリンの2017年作
ELUVEITIEのアナ・マーフィ、イーヴォ・ヘンツィ、メルリン・スッターによるバンドで、
美しい女性ヴォーカルと適度にモダンなヘヴィさに、ハーディ・ガーディの音色などの
ほどよくフォーキーな要素も含んだサウンド。楽曲自体はわりとシンプルな構成で、
エルヴェイティに比べると激しさがさほどないので、ゴシック・ヘヴィロック的に普通に楽しめる。
ゆったりとした叙情的なナンバーから、ヘヴィなギターリフを乗せた重厚なナンバーまで、
クオリティの高さはさすがで、全体的にもキャッチーな聴き心地でバランスのとれた好作品です。
メロディック度・・8 ゴシック度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8
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ISA 「Departure At Sunset」
ロシアのネオフォーク系ゴシック・ブラック、イサの2015年作
絵画のようなジャケが美しいが、サウンドの方はうっすらとしたシンセにギターを乗せた
ネオフォーク的な幻想性と、ダミ声ヴォーカルを乗せたポストブラック風味を融合した聴き心地。
ゆったりとした楽曲は、耳心地は良いがメロディのリフレインが多いのでスリリングさには欠け、
世界観の強度という点でもいまひとつか。アンビエントな雰囲気にブラックメタル要素を合わせるという
異色の試みは面白いが、いまのままだとどっちつかずという印象で、ブラックな暗黒性をもう少し上げるか、
反対にネオフォークとしての美しさに磨きをかけるか、今後の進化に期待したい。
ドラマティック度・・7 ポストブラック度・・7 優美度・・8 総合・・7.5
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Locus Titanic Funus 「Castus Lacrima」
ロシアのゴシックメタル、ロカス・タイタニック・ファヌスの2013年作
美しいシンセアレンジとブラックメタルばりのガナリ声ヴォーカルにロシア語の可憐な女性声が絡み、
クラシカルな優雅さとメランコリックな叙情に包まれた、耽美なゴシックメタルを描き出す。
ときにブラックメタルばりの激しい疾走パートも顔を出し、低音グロウルヴォイスとともに
ダークな暗黒性も覗かせつつ、しっとりとしたダークアンビエントな雰囲気もあったりする。
個人的には女性ヴォーカルをメインにした部分をもっと増やして欲しい気もするが。
ドラマティック度・・7 ゴシック度・・8 耽美度・・8 総合・・7.5
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Void of Silence 「Human Antithesis」
イタリアのゴシック・ドゥームメタル、ヴォイド・オブ・サイレンスの2004年作
うっすらとしたシンセをバックに、ドラマ性を描くような語りやSE、神秘的な女性コーラスなどを織り込み、
朗々とした男性ヴォーカルにダミ声を交えて、ダークでフューネラルな世界観を描いてゆく。
ギターはわりと単調なリフやフレーズなのだが、バックのシンセアレンジがなかなか美しく、
雰囲気モノのゴシックドゥームという感触は、むしろELENDあたりの作風に近いかもしれない。
20分の組曲をはじめ、11分、15分という大曲を中心に、ゆったりと聴かせるサウンドは、
気が短い方には向かないが、耽美な世界観を好む方ならそれなりに心地よく楽しめるだろう。
ドラマティック度・・7 耽美度・・8 重厚度・・7 総合・・7.5
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NOEKK 「The Water Sprite」
トイツのフォーク・ゴシックメタル、ノエックの2005年作
EMPYRIUMのメンバーによるバンドで、メロトロンが美しく鳴り響き、適度にヘヴィなギターと
ジェントルでマイルドなヴォーカルを乗せた、耽美で叙情的なゴシックメタルを聴かせる。
ムーグやオルガンの音色を含んだシンセはプログレ的で、リズムチェンジを含む知的な展開力も
むしろプログレリスナー向けのサウンドである。一方ではフォーキーで素朴な味わいは、
かつてのエンピリウムを思わせる。ラストは10分を超える大曲で、緩急ある構築性と、
メロトロン鳴り響く叙情性に包まれた、プログレッシブなゴシック・フォークが味わえる。
ドラマティック度・・8 プログレなセンス度・・8 叙情度・・8 総合・・8
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NOEKK 「Grimalkin」
ノエックの2006年作
2作目となる本作は、11分、10分、20分という大曲3曲という構成で、物悲しいイントロから
オルガンにメロトロンが鳴り響くヴィンテージな感触と、適度にヘヴなギターが重なり
ジェントルなヴォーカルを乗せた、プログレッシブなゴシックメタルサウンドを展開。
優雅なチェンバロにクラシカルなピアノの音色や、アコースティックなパートも含んだ
メリハリのある構築力は、まさに「ゴシックなプログレ」というべき聴き心地だ。
後半の20分の大曲は、ドゥーミィなゴシックメタル要素と、薄暗系プログレ的でもある
メロトロン入りのメランコリックな叙情がほどよく混じっていて、じっくりと楽しめる。
ドラマティック度・・8 プログレなセンス度・・8 叙情度・・8 総合・・8
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NOEKK 「The Minstrels Curse」
ノエックの2008年作
3作目となる本作は、のっけからこれまでになくメタリックなギターリフを乗せたヘヴィなノリで、
オルガンを含むシンセに朗々とした歌声を乗せた、エピック・ドゥーム的な聴き心地。
今作は、フォーキーな部分が薄まった分、メタル感が増している印象ではあるが、
リズムチェンジを含む知的な展開力で、ドラマティックな味わいはさすがというところ。
ラストは14分の大曲で、アグレッシブなパートを含む激しさも覗かせつつ、緩急のある展開に
メロトロンを含むシンセアレンジとともに重厚なサウンドを聴かせる。
ドラマティック度・・8 プログレなセンス度・・7 叙情度・・8 総合・・8
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TROBAR DE MORTE 「Fairydust」
スペインのゴシックフォーク、トロバー・デ・モルテの2004年作
本作はデビュー作で、美麗なシンセアレンジに女性ヴォーカルを乗せた、
幻想的なゴシック・フォークサウンドは、この時点ですでに確立されている。
やわらかなハープの音色にアコーステッィクギター、フルートなどを含んだケルト&フォーク要素と
オーケストラルなシンフォニック性が合わさって、この手としては世界観の強度がしっかりとあって、
とてもクオリティの高い聴き心地である。再発盤は2011年のライブ音源を収録のCDを加えた2枚組。
ドラマティック・・7 耽美度・・9 幻想度・・9 総合・・8
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TROBAR DE MORTE 「Beyond the Woods」
スペインのゴシックフォーク、トロバー・デ・モルテの2011年作
本作はシンセを使わないアコースティックスタイルの作品で、バグパイプが鳴り響き、
アコースティックギターに艶やかなヴァイオリンが重なり、美しい女性ヴォーカルの歌声を乗せた
優美なネオフォークサウンドを聴かせる。シンフォニックな味付けがない分、トラッド的な繊細さが前に出ているが
やわらかなフルートの音色にヴァイオリン、ときにブズーキやハーディ・ガーディなども加えた、
案外厚みのあるサウンドで、本格派のケルティック・フォークが楽しめる。
ドラマティック・・7 耽美度・・8 幻想度・・8 総合・・8
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ORDO FUNEBRIS 「Cantar a La Morte:Fabra Triste」
フランスのゴシックフォーク、オルド・フューネブリスの2003年作
女性Vo、女性ヴァイオリン、シンセという3人編成で、パーカッションの妖しいリズムに、
うっすらとしたシンセと、男性のダミ声&ソプラノ女性ヴォーカルの歌声が響き渡る、
耽美な幻想性に包まれたゴシックサウンド。フルートや素朴なマンドリンの音色、
艶やかなヴァイオリンに、スキャット的な女性ヴォーカルが、美しくも神秘的な空気感を描いてゆく。
SEや小曲も含んで全35分というのが少し物足りないが、幻想的なゴシックフォークが好きならどうぞ。
ドラマティック・・7 耽美度・・9 幻想度・・9 総合・・7.5
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ORDO FUNEBRIS 「Songs from The Enchanted Garden」
フランスのゴシックフォーク、オルド・フューネブリスの2004年作
シンセによる優美なシンフォニック性に、神秘的な女性ヴォーカルを乗せた、
幻想的なサウンドは、オーストリアのDAGAARDあたりにも近づいたかもしれない。
やわらかなフルートの音色に、艶やかなヴァイオリンがクラシカルな優雅さを付加し
中世を感じさせるしっとりとした空気感に包まれる。曲によっては男性ヴォーカルにパーカッションも加わって、
サウンドに厚みをもたらしている。幻想ゴシックとしての世界観の説得力を強めた逸品です。
ドラマティック・・7 耽美度・・9 幻想度・・9 総合・・8

LES SECRETS DE MORPHEE「Chuchotements」
フランスのゴシック・アンビエント、レス・シークレッツ・デ・モルフィーの1999年作
オーケストラルなシンセアレンジに艶やかなヴァイオリンが鳴り響き、美しい女性ヴォーカルの歌声が
まさにヘヴンリーに響き渡る、天上の癒し系サウンド。クラシカルな優雅さに包まれながら、
曲によっては妖しい耽美性も垣間見せる。二人の女性声のトーンがいくぶん合ってないところもあるのだが、
艶めいた歌声は嫌いではないし、垢抜けないマイナー臭さも含めて、この手の雰囲気モノの魅力と言えなくもない。
クラシカル度・・8 耽美度・・7 幻想度・・8 総合・・7.5
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LES SECRETS DE MORPHEE 「Chimeres」
フランスのゴシック・アンビエント、レス・シークレッツ・デ・モルフィーの2012年作
オーケストレーションによるイントロから始まり、シンフォニックなシンセアレンジをバックに
二人の女性ヴォーカルが美しい歌声を乗せる。耽美な空気感もあるもののダークなほどではなく、
ヘヴンリー・ヴォイス系のアンビエントとしては初心者にも聴きやすい部類だろうと思う。
2~3分前後の小曲を主体に、インストナンバーも多いので、ついBGMになってしまいそうにもなるが、
オーケストラルな壮麗さにはうっとりと浸ることができる。個人的にはもっと妖しくディープなのが好みなのですが。
ドラマティック・・7 耽美度・・7 幻想度・・8 総合・・7.5
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6/1
ブラック&デス系をたっぷり(154)


HALLATAR「No Stars Upon the Bridge」
フィンランドのドゥームゴシックメタル、ハラターの2017年作
SWALLOW THE SUNのユハ・ライヴィオ、AMORPHISのトミ・ヨーツセン、元HIMのガス・リップスティックによるユニットで
2016年に39歳の若さで亡くなった、TEARS OF ETERNITYのAleah Starbridge嬢が生前に書いた詩を基にした作品。
スローなテンポに重厚なギターとダミ声ヴォーカルを乗せた、フューネラルなドゥームゴシックサウンドで、
トミ・ヨーツセンの悲痛な歌声は表現力たっぷりで、息苦しいまでの絶望感をゆったりとした楽曲の中に植え込んで、
やはりSWALLOW THE SUNMY DYING BRIDEにも通じる、悲しみに包まれた漆黒の世界を描き出しす。
一方では、うっすらとしたシンセアレンジや曲間の女性声の語りなど、ゴシックメタルとしての耽美な美しさも覗かせて、
DRACONIANのヘイケ嬢の歌声を加えたメランコリックなナンバーなども味わい深く、ラスト曲では故Aleah嬢の歌声に涙。
ドラマティック度・・8 暗黒度・・8 重厚度・・8 総合・・8
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MYRKUR 「Mareridt」
アメリカのポストブラックメタル、ミシュクルの2017年作
デンマーク出身のアマリエ・ブルーン嬢による女性の独りブラックメタルユニットで、本作が2作目となる。
うっすらとしたシンセアレンジに美しい歌声を響かせる、北欧トラッド的な涼やかな空気感に包まれつつ、
突然人が変わったように絶叫ヴォイスとともに激しくブラスト疾走。確かにこれはブラックメタルですよ。
そうはいいつつも、また美しい女性声に戻ったり、ヴァイオリンが鳴り響くトラッド風味のナンバーもあって、
その極端な二面性はなかなかのインパクト。ゆったりとしたナンバーでは、ゴシックメタル的な耽美さもあって、
女性Voのトラッドロックやゴシック好きにも対応。はかなく神秘的な空気感に包まれた世界観とともに、
いままでになかった女性によるブラックメタルという点でも、注目のアーティストですな。
ドラマティック度・・8 神秘的度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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Fellwarden 「Oathbearer」
イギリスのポストブラックメタル、フェルワーデンの2017年作
Fenのメンバーによるユニットで、うっすらとしたシンセにトレモロのギターを乗せて、
ダミ声ヴォーカルとともに疾走する、アトモスフェリックなブラックメタルサウンド。
ギターフレーズには北欧ブラックメタルからの影響も感じさせつつ、Alcestのような癒し系の優雅さと
シンフォニックと言ってもよいアレンジとともに、幻想的な叙情美に包まれた聴き心地。
10分を超える大曲も厚みのある空間的な音の説得力で、じわりと世界観に引き込まれる。
激しくも美しい幻想的なポストブラックが楽しめる力作です。
シンフォニック度・・8 暴虐度・・7 幻想度・・8 総合・・8
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Foscor 「Les Irreals Visions」
スペインのポストブラックメタル、フォスコーの2017年作
2004年にデビュー、本作は4作目で、メロウなギターにマイルドなヴォーカルを乗せ、
メランコリックな空気感とともに、ときに激しくブラスト疾走するパートも含んだ
ゴシック的なポストブラックサウンド。ジャケのイメージのようなモノトーンの無機質さと
やわらかなピアノによるクラシカルな美しさが合わさった、物悲しい叙情も感じさせ、
雰囲気としては、KATATONIAあたりの世界観にも近いかもしれない。トレモロギターを乗せた、
Alcestにも通じるようなナンバーもあり、じっくりと味わえるポストブラック作品です。
ドラマティック度・・7 叙情度・・7 メランコリック度・・8 総合・・8
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Dark Funeral 「Where Shadows Forever Reign」
スウェーデンのブラックメタル、ダーク・フューネラルの2016年作
1996年にデビュー、MARDUKなどとともに、スウェディッシュ・ブラックメタルを代表するこのバンド、
2009年以来となる7作目で、今作はジャケの雰囲気からして初期を思わせる感じがよいですね。
ツインギターの叙情的なイントロから、激烈なツーバスドラムにトレモロりリフを乗せてブラスト疾走、
いかにもオールドスタイルの北欧ブラックメタルを聴かせる。激しく突進しながらもメロディックなところは
DISSECTIONあたりにも通じる感触で、甘すぎない叙情性が物悲しくもダークなサウンドに融合している。
ブラックメタルとしての王道の邪悪さを残しつつ、メロブラ寄りにも楽しめるさすがの強力作。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・8 北欧ブラック度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Entrails「World Inferno」
スウェーデンのデスメタル、エントレイルズの2017年作
2010年にデビュー、オールドスタイルの北欧デスメタルを貫くサウンドで、本作が5作目となる。
ザリザリのギターリフと低音デスヴォイスを乗せて疾走する、ブルータルなデスメタルサウンドで、
オールドなデスラッシュ風味も含んだ聴き心地。以前のようなスウェディッシュな叙情性が薄まった分、
より硬派な感触になっていて、個人的には少し残念だが、迫力あるスラッシーなデスメタルが味わえる。
90年代デスを引き継ぐ空気感はよいのだが、このバンドならではの個性をそろそろ確立させて欲しい気も。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・8 オールドデス度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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GOD DETHRONED 「The World's Ablaze」
オランダのデスメタル、ゴッド・デスローンドの2017年作
1992年デビューのベテランバンドで、最高傑作というべき前作から、7年ぶりとなる10作目。
強力なツーバスドラムに、ツインギターのリフとダミ声ヴォーカルを乗せて疾走する、
オールドスタイルのデスメタルサウンド。随所にブラストを含んだブルータルな暴虐性と、
甘すぎない程度にメロディを感じさせるギターのフレージングも相変わらず絶妙で、
ベテランらしい荘厳なまでの音の説得力はさすが。デスラッシュ的でもある疾走パートをメインに、
叙情的なスローパートを織り込んで、緩急あるドラマティックなデスメタルを聴かせる強力作。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・8 荘厳度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Yomi 「Genpei」
ラトビアのペイガンデスメタル、黄泉の2016年作
タイトル通り、源平の合戦をテーマにした作品で、重厚なギターに低音デスヴォイスを乗せて疾走する、
激しいデスメタルサウンドに、琴の音色などの和風メロディや日本語の語りなどを取り入れた異色の作風。
歴史的なドラマ性を感じさせる曲間のSEなども、思わずくすりとしてしまいつつ、日本の歴史への愛を感じさせる。
キーボードのメロデイは、ペイガン、フォークメタル的な感触もあって、激しい疾走パートでもさほど暴虐さはなく、
和風メロによって我々にとってはむしろ愉快な聴き心地になっている。「壇ノ浦~!」の連呼には思わずニヤリ。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・7 ジャポネスデス度・・8 総合・・7.5
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Claymore 「Vengeance Is Near」
ブルガリアのシンフォニック・ブラックメタル、クレイモアの2014年作
セルビアにも同名のバンドがいたのでお間違えのないよう。オーケストラルなアレンジを含んだ
Dimmu Borgirにも通じる壮麗なシンフォブラックを聴かせる。ほどよくメロディックなギターに、
きらびやかなシンセアレンジ、クワイアなどを加えた厚みのあるサウンドは、暴虐な激しさよりは
クラシカルな優雅さが前に出ていて、初期のDark Lunacyあたりを好む方にもお薦めできるかと。
適度なクサメロ感が辺境的な味わいにもなっていて、激しすぎない美麗なシンフォニックブラックが楽しめる。
シンフォニック度・・8 暴虐度・・7 壮麗度・・8 総合・・8
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Caina 「Christ Clad in White Phosphorus」
イギリスのポストブラックメタル、カイナの2016年作
アンドリュー・カーティス・ブリグネル氏による個人ユニットで、本作がすでに6作目となる。
インダストリアルで不穏なイントロから、ノイジーなギターリフとわめき声ヴォーカルを乗せて激しくブラスト疾走、
こもり気味の音質も含めたプリミティブな怪しさを漂わせる、無機質なブラックメタルサウンドを展開。
モノトーンの宇宙空間のような、無慈悲な神秘性に包まれた雰囲気で、壮大かつ邪悪な世界観を描く。
ジャーマンロックのようなサウンドエフェクトによるアヴァンギャルドなナンバーや、インダストリアル調のナンバー、
スペイシーなシンセミュージックというべき12分の大曲まで、単なるブラックメタル以上の実験性も感じさせる。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・7 暗黒度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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Ahamkara 「The Embers of the Stars」
イギリスのポストブラックメタル、アームカラの2015年作
10分を超える大曲4曲という構成で、ややノイジーなギターを乗せて激しくブラスト疾走、
邪悪なわめき声ヴォーカルを響かせつつ、アトモスフェリックな叙情性に包まれたサウンド。
緩急ある流れで大曲を構築するセンスと、ミスティックな空気感と説得力も備わっていて、
うっすらとしたシンセアレンジや、ときにメロディックなギターフレーズも耳心地よい。
暴虐性よりも神秘的なスケール感を描くところは、Wolves in The Throne Roomにも通じるか。
激しい疾走感を含んだ叙情派のネイチャーブラックメタルとしては、なかなかの力作と言える出来だ。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・7 アトモスフェリック度・・8 総合・・8
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Fen 「Epoch」
イギリスのポストブラックメタル、フェンの2011年作
うっすらとしたシンセに、トレモロのギターリフ、かすれたダミ声ヴォーカルを乗せ、
薄暗い叙情性に包まれた、涼やかな味わいのポストブラックメタルを聴かせる。
ブラスト疾走する激しさもありつつ、邪悪さよりもネイチャーな神秘性が前に出ていて、
ゆったりとメロウなスローパートなど、緩急の付いた構築力には知的なセンスも感じさせる。
8~10分という大曲も、プログレッシブとも言えるような展開力と、ストリングスを加えたシンフォニックなアレンジで
叙情美たっぷりに鑑賞できる。ほどよくダークで美しい、激しいブラックが苦手という方にもお薦めの逸品だ。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・7 叙情度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Atrum Tempestas 「Neant」
フィンランドのポスト・ブラックメタル、アトラム・テンペスタスの2014年作
14分、11分という大曲を中心に全3曲という構成で、叙情的なギターフレーズにダミ声ヴォーカルを乗せた
メランコリックな雰囲気のサウンド。トレモロのギターリフとともに、Alcestのような物悲しい美しさが前に出ていて、
リズムチェンジなども適度にありつつ、基本的にはゆったりとした聴き心地。暴虐さや暗黒性はあまり感じないが、
ラスト曲の後半には激しいブラスト疾走も現れる。ただ全31分というのはやや物足りないかな。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・6 メランコリック度・・8 総合・・7.5
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FLESHGOD APOCALYPSE 「Labyrinth」
イタリアのシンフォニック・デスメタル、フレッシュゴッド・アポカリプスの2013年作
クラシカルなシンフォニック性とブルータルな激しさを融合したサウンドで人気のこのバンド、3作目となる本作は
ミノタウロスの迷宮をテーマにした作品で、オーケストラルなアレンジと、激烈なツーバスドラムでブラスト疾走する、
暴虐かつ壮麗なシンフォニックデスメタルを聴かせる。ソプラノ女性ヴォーカルを含むコーラスも美しく、
低音デスヴォイスとのコントラストで極端なまでの美と醜を描き出す。随所に流麗なギターの旋律も覗かせて、
前作以上にメロディックな感触を強めたことで、より多くのリスナーに楽しめるようになった。
曲間をつないでたたみかけるような流れも迫力たっぷりで、壮麗にして濃密なシンフォデスの傑作。
シンフォニック度・・9 暴虐度・・9 荘厳度・・9 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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SUFFOCATION「Blood Oath」
アメリカのデスメタル、サフォケイションの2009年作
1991年デビューのベテランバンド、一時期の解散から復活し、本作は通作6作目のアルバム。
強烈なツーバスのドラムに低音グロウルヴォイス、そして有機的なツインギターのリフを乗せ、
適度に知的な構築性を含んだ緩急あるデスメタルサウンドを聴かせる。ただ激しいだけでない、
メリハリのある展開と、どっしりとした荘厳さな空気感は、ベテランならではの説得力ある聴き心地。
うねるようなベースの存在感と、巧みなギターリフが合わさって、テクニカルデス的な耳でも楽しめる。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・8 荘厳度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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5/18
ドゥーム&ヴィンテージメタル!(139)


Lucifer's Hammer 「Beyond the Omens」
チリのメタルバンド、ルシファーズ・ハマーの2016年作
正統派のギターリフにパワフルすぎないハイトーンヴォーカルを乗せて、IRON MAIDENにも通じる
80年代スタイルに、ANGEL WITCHWARLOADなど、カルトメタルの香りを加えたという作風。
湿り気を帯びた叙情的なギターフレーズもじつに良い感じで、ほどよいB級らしいマイナー臭さとともに
なかなか素敵な味わいになっている。楽曲自体にはとくに新鮮味はないのだが、
80年代メタルへの愛情に包まれた世界観は、オールドなメタルファンには心地よいことこの上ない。
後半にはRIOTを思わせるナンバーや、ラストはWARLORDのあの曲みたいでにんまり。
ドラマティック度・・7 古き良き度・・8 カルトメタル度・・8 総合・・8
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Royal Thunder 「Wick」
アメリカの女性声ドゥームロック、ロイヤル・サンダーの2017年作
2012年にデビュー、本作は3作目となる。前作までの骨太のハードロック感触はやや薄まり、
代わりに、ハスキーな女性ヴォーカルを乗せた、魔女系ロックとしての妖しさがぐっと増している。
楽曲はゆったりとしたナンバーを中心に、ツインギターはヘヴィ過ぎず、ヴィンテージなアナログ感触とともに、
B&Voのミルニー嬢の歌声を引き立てる。Blood Ceremonyあたりにも接近したような作風であるが、
マイナー臭さがない分、どっしりとしたオールドロックの普遍性と、ノリのあるハードロック要素も残している。
なにより表現力を増したミルニー嬢の歌声が、楽曲にパワフルな説得力をもたらしている。
ドラマティック度・・8 ヴィンテージ度・・8 魔女系ロック度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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PSYCHEDELIC WITCHCRAFT 「Sound of the Wind」
イタリアのヴィンテージロック、サイケデリック・ウィッチクラフトの2017年作
前作はアナログ感たっぷりの歌もの系サイケポップという趣だったが、2作目となる本作も
妖しく叙情的なイントロから始まり、ハスキーな女性ヴォーカルを乗せたヴィンテージなサウンドが炸裂。
重すぎず軽すぎずというギターリフとともに、より70年代ドゥームへの懐古主義が強まった聴き心地。
サウンドと世界観の説得力という点でも、前作以上にディープな空気感を漂わせていて、
紅一点、ヴァージニア嬢のけだるげな歌声も、このヴィンテージなサウンドによくマッチしている。
ドラマティック度・・8 ヴィンテージ度・・8 魔女系ロック度・・8 総合・・8
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Bad Acid 「Revelations Of The Third Eye」
スウェーデンの女性声サイケドゥーム、バッド・アシッドの2016年作
アナログ感たっぷりのギターに女性ヴォーカルの歌声を乗せた、ストーナー寄りのサイケハードで、
いくぶんこもり気味の音質とともに、うっすらとオルガンも鳴り、Blood CeremonyPURSONのような
魔女系ロック的な妖しさも含んだ聴き心地が楽しめる。ユル過ぎず、重すぎずというギターも絶妙で
ほどよくサイケな浮遊感と、ヴィンテージなドゥームメタルの質感を融合させたサウンドと言える。
いくぶんマイナー臭さを残した空気感もよろしく、これから期待の女性声サイケドゥームバンドです。
ドラマティック度・・7 ヴィンテージ度・・8 魔女系ロック度・・8 総合・・8
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Switchblade
スウェーデンのプログレ・ドゥームメタル、スウィッチブレイドの2016年作
8~11分の大曲を主体に全4曲という構成で、アナログ感たっぷりのギターに、
オルガンやメロトロンが鳴り響く、いかにも70年代スタイルのヴィンテージなサウンド。
ダミ声とノーマル声を使い分けるヴォーカルに、リズムチェンジを含むプログレ的な感触もあって、
近年のOPETHがドゥーム化したようなところもある。重厚であるがヘヴィ過ぎず、軽すぎない聴き心地は
まさに往年のドゥームメタルを体現した作風だ。Atomic Roosterのカヴァーも妖しくて良い感じです。
ドラマティック度・・7 ドゥーム度・・8 ヴィンテージ度・・8 総合・・8
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Cardinals Folly 「Holocaust of Ecstasy & Freedom」
フィンランドのドゥームメタル、カージナルズ・フォリーの2016年作
過去作もカルトな妖しさぷんぷんの強力なサウンドだったが、3作目となる本作も
古き良き感触のギターを乗せ、ヘタウマなヴォーカルとともにサタニックなドゥームメタルを聴かせる。
ハードロック寄りの遅すぎないノリもありつつ、アンダーグラウンドな妖しさに包まれたマイナー臭さが
このバンドの持ち味であり、今作では初期Black Sabbathの世界観を突き詰めたような感じが強まった。
正直、これといった新鮮味はないのだが、この頑固一徹なドゥーム愛こそあっぱれというものだろう。
ドラマティック度・・7 ドゥーム度・・8 古き良き度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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SLEGEST「VIDSYN」
ノルウェーのドゥームメタル、スレジェストの2016年作
WINDIRVREIDのメンバーによるプロジェクトで、オールドな味わいのギターにダミ声ヴォーカルを乗せた、
ブラックメタル風味のストーナーロック。楽曲は3分前後といたってシンプルな聴き心地で、スロー過ぎない
ハードロックなノリと、ヘヴィさを保ちながらアナログ感に包まれた、ヴィンテージなサウンドが楽しめる。
ダミ声によるブラッケンなダークさと重厚なメタル感触もあるので、ストーナーロックが苦手な方にもイケるかと。
いわば、ブラックメタル化したサバスというべきか。媚びのなさも含めて硬派な感触。全33分という短さも潔い。
ドラマティック度・・7 古き良き度・・8 ブラッケンなドゥーム度・・8 総合・・7.5
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Plateau Sigma「Rituals」
イタリアのドゥームメタル、プラテアウ・シグマの2016年作
ローマ神話の神々をテーマに、重厚なツインギターにジェントルなヴォーカルを乗せ、ゆったりと聴かせる、
エピックな感触のドゥームメタル。空間的な静けさと叙情性を含んだ、神秘的な空気感を漂わせながら、
曲によっては低音デスヴォイスを乗せた、フューネラルな暗黒性も垣間見せる。8~11分の大曲を主体に
どっしりとしたスローテンポで、ときに甘すぎない程度にメロディを奏でるツインギターとともに、心地よくサウンドに浸れる。
派手さはないのだが、雰囲気モノとしての強度もなかなかで、これぞドゥームメタルという本格派の味わいの強力作だ。
ドゥーム度・・8 重厚度・・8 神秘的度・・8 総合・・8
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Ixion 「To the Void」
イタリアのドゥームメタル、イクシオンの2011年作
スペイシーなシンセアレンジに包まれて、叙情的なギターと唸るような低音ヴォーカルを乗せて、
ゆったりと聴かせる重厚ななドゥームメタル。ジャケのイメージのように宇宙を感じさせるような、
空間的な広がりと神秘的な雰囲気で、靄に包まれたようなミステリアスな世界観を描いている。
シンセによる美しさが前に出ていて、ヴォーカルが奥に引っ込んだいくぶんこもり気味の音作りも、
宇宙の暗がりに放り込まれたような、スケール感のある聴き心地になっている。個人的には好きなのだが、
どの曲も同じようなもったりとした感じなので、この手の雰囲気モノが苦手な方にはちと退屈かも。
ドラマティック度・・7 スペース・ドゥーム度・・8 重厚度・・8 総合・・8
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ThunderStorm 「Nero Enigma」
イタリアのドゥームメタル、サンダー・ストームの2010年作
どっしりとヘヴィなギターリフに、オジーを思わせるヴォーカルを乗せた王道のドゥームメタルで、
いかにもBlacK Sabbathルーツのオールドスタイルのサウンドを聴かせる。
単なる古臭いドゥームというだけでなく、メタリックな重さとほどよい疾走感も覗かせ、
イタリアのバンドらしい程よくカルトな妖しさも感じさせる濃密な雰囲気がよろしいです。
これという新鮮味はないものの、ドゥームメタル好きなら安心して楽しめる一枚だ。
ドラマティック度・・7 サバス度・・8 重厚・・8 総合・・8
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Soul Manifest 「White Season」
フランスのヴィンテージロック、ソウル・マニフェストの2010年作
アナログ感たっぷりのギターにオルガンが鳴り響き、中性的でハスキーなヴォーカルを乗せ、
いかにも70年代を思わせるヴィンテージな空気感のドゥームロックを聴かせる。
ヴォーカルの声質も含めて魔女系ロック的な妖しさもありつつ、ギターはけっこうヘヴィなので、
どっしりとした骨太のサウンドには迫力も十分。サイケロック寄りのユルめのナンバーや、
ノリのよいキャッチーなナンバーなどもあって肩肘張らずに楽しめる。10分近い大曲も、
しっかりとした演奏力と柔軟なグルーブ感で聴かせる、サイケ・ドゥームな強力作です。
ドラマティック度・・7 ドゥーム度・・8 ヴィンテージ度・・9 総合・・8
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Valkyrie 「Shadows」
アメリカのドゥームメタル、ヴァルキリーの2015年作
BARONESS、EARTHLINGのメンバーを含むバンドで、ヘヴィなツインギターに
朗々としたヴォーカルを乗せた、オールドな感触の正統派のドゥームメタルサウンド。
アナログ感たっぷりのアンサンブルながら、メタリックな重厚さとキレのある演奏で、
古臭さはさほど感じさせない。随所にツインギターのメロディックなフレーズも含んで、
どっしりとしたサウンドの中にも、叙情的なギターフレーズを聴かせるところはさすが。
ギター主導のスラッジ系ドゥームとしてはかなりレベルの高い作品である。
ドラマティック度・・7 ドゥーム度・・8 重厚度・・8 総合・・8
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Sacred Few 「Beyond the Iron Walls」
アメリカのメタルバンド、セイクレッド・フューの1985年作
当時としてはまだ珍しい、女性シンガーをフロントにしたバンドで、いかにも古き良き味のギターに
ハスキーな女性ヴォーカルを乗せた、しごく正統派のメタルサウンド。演奏力は並程度で、
楽曲も2~3分前後といたってシンプル、ジャケのショボさも含めてB級感が漂っているが、
ほどよいマイナー臭さも含めて、80'sメタルマニアにはわりとたまらないかもしれない。
曲によっては、いまでいう魔女系ドゥームメタルの味わいもあって、個人的にもけっこう好きです。
2015年の再発盤ボーナストラックに、1982年のシングル曲、1983~84年のデモ音源を収録。
メロディック度・・7 古き良き度・・8 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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5/12
女性声HR&シンフォニック&ゴシックメタル!(126)


DANTE FOX 「SIX STRING REVOLVER」
イギリスのメロディアスハード、ダンテ・フォックスの2017年作
1996年にデビュー、女性声メロハーとしてはすでにキャリア20年を超えるこのバンド、
本作は過去の楽曲をリレコーディングしたアルバムで、1st、2ndのナンバーを中心に全10曲を収録。
透明感のあるシンセアレンジに、適度にハードなギターとスー・ウィレッツの伸びやかなヴォーカルを乗せ、
キャッチーなメロディのフックで聴かせる、爽快なメロディアスハードサウンドは年季を経た大人の味わいに。
楽曲はどれも魅力的なメロディがあり、ヴォーカルの素晴らしい表現力とアレンジも含めたクオリティも高く、
最後まで安心して楽しめる。はじめてこのバンドを知る方にも、うってつけのアルバムだろう。
メロディック度・・8 キャッチー度・・9 女性Vo度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Guitar Force 「Different Universe」
ポーランドのメロディアスハード、ギター・フォースの2016年作
ギタリストのソロ作のようなバンド名だが、女性G/Vo、女性B/Vo、女性ヴァイオリン奏者を含む6人編成で、
伸びやかな女性ヴォーカルを乗せた、古き良き感触のハードロックサウンドを聴かせる。
トリプルギター編成なので、ときに様式美色も含んだ厚みのあるギターサウンドに加え、
随所にヴァイオリンが鳴り響き、単なるキャッチーなメロハーという以上の優雅な味わい。
楽曲そのものに新鮮味はさほどないのだが、女性Voの力量もしっかりとしていて、
ゆったりとしたナンバーでは東欧らしい湿り気のある叙情も覗かせる。女性声HR好きはチェック。
メロディック度・・8 キャッチー度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8
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AKOMA 「REVANGELS」
デンマークのシンフォニックメタル、アコマの2017年作
美麗なアレンジに美しい女性ヴォーカルを乗せ、適度なヘヴィさを含んだシンフォニックメタルで、
WITHIN TEMPTATIONLeaves' Eyesにも通じるような翳りを帯びた叙情性を含んだサウンド。
紅一点、ターニャ嬢の歌声はやわらかな優しさと表現力あるソプラノで、楽曲に優雅な世界観を付加している。
楽曲そのものには、派手なインパクトないのだが、その分、ゴシックメタル寄りの耳でも楽しめる。
この手としては、久々に期待のバンド登場です。元Leaves' Eyesのリブ・クリスティンがゲスト参加。
シンフォニック度・・8 優雅度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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AEVUM 「DISCHRONIA」
イタリアのシンフォニックメタル、アーヴムの2017年作
男女Voにツインギター、シンセを含む8人編成で、前作もオペラティックで壮麗な作品だったが、
美しいソプラノ女性ヴォーカルにパワフルな男性声が絡み、程よいヘヴィなモダンさとともに
シアトリカルで濃密な世界観を描き出す、オペラティックなシンフォニックメタルを聴かせる。
10分を超える大曲では、クラシカルなピアノの旋律とともに、男女声を乗せた優雅なサウンドが楽しめる。
反面、楽曲ごとのインパクトやメロディのフックなどは、相変わらず「もう一歩」な感じなので、
一線級バンドにのし上がるには、もう少しレベルアップが必要かと。壮麗な雰囲気は良いのです。
ドラマティック度・・8 壮麗度・・8 男女Vo度・・8 総合・・7.5
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SOUND STORM 「VERTIGO」
イタリアのシンフォニックメタル、サウンド・ストームの2017年作
5年ぶりとなる3作目で、前作はオペラティックな雰囲気の力作であったが、今作も美麗なシンセアレンジにツインギター、
マイルドなヴォーカルを乗せたモダンでスタイリッシュなサウンドを聴かせる。随所に女性コーラスも加えた、
オペラティックな壮麗さと、ストーリーを感じさせるドラマティックな構築力もこのバンドの魅力だろう。
新加入の女性奏者による優美なシンセワークも素晴らしい。曲によっては激しい疾走パートも含みつつ、
全体的にはどっしりとした華麗なシンフォニックメタルで、KAMELOTあたりのファンにもイケるかと。
シンフォニック度・・8 オペラティック度・・8 壮麗度・・9 総合・・8
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Chrysilia 「Et in Arcadia Ego」
ギリシャのシンフォニックメタル、クリシリアの2017年作
シンセにヴァイオリン奏者を含む6人編成で、美麗なシンフォニックアレンジに
美しい女性ヴォーカルの歌声を乗せた、NightwishDelainにも通じる壮麗なサウンド。
随所にフルートやハープ、ヴァイオリンの音色も加わった、フォークメタル風味もあって、
クリソ嬢の可憐で伸びやかな歌声が、楽曲に優美な味わいを付加している。
クサメロのギターフレーズにシンセが重なり、キャッチーなメロディアス性とともに聴かせる
シンフォニック・フォークメタルというべきか。今後は楽曲の質をさらに高めていってもらいたい。
シンフォニック度・・8 優美度・・9 女性Vo度・・8 総合・・8
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CLAYMOREAN 「Sounds from a Dying World」
セルビアのメロディックメタル、クレイモアンの2017年作
CLAYMOREが改名したバンドで、ハスキーな女性ヴォーカルの歌声を乗せエピックな世界観を描く、
正統派のメロパワスタイル。Crystal Viperのようなオールドなメタル感触とともに、
どこか翳りを含んだ妖しさも感じさせる、ドラマティックな空気感もなかなかよろしい。
ミドルテンポのどっしりとしたナンバーを中心に、疾走ナンバーもあり、ヨーロピアンなメロパワが好きな方なら
かなり楽しめるだろう。ラストはNWOBHMのカルトなバンド、CLOVEN HOOFのカヴァーというマニアックぶり。
ドラマティック・・8 正統派度・・8 女性Vo度・・7 総合・・8
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The Murder of My Sweet 「Echoes of the Aftermath」
スウェーデンのゴシックメタル、マーダー・オヴ・マイ・スウィートの2017年作
2010年にデビューしてから本作で4作目となる。きらびやかなアレンジと、適度にモダンなヘヴィさに、
伸びやかな女性ヴォーカルを乗せた、シンフォニックなゴシックメタルサウンドはすでに安定の高品質。
従来のようなシネマティックなドラマ性を感じさせる作風に、キャッチーなメロディのフックも魅力的で、
楽曲の質とサウンドの説得力という点では、Within TemptationDelainなどにも十分比肩できる。
ゴシック的な耽美さよりも壮麗なシンフォニック性が前に出た作風で、全体的には新鮮味はないが、
どの曲もアレンジのレベルは高く、アンジェリカ嬢の表現豊かな歌声とともに最後まで安心して楽しめる。
シンフォニック度・・8 ゴシック度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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The Lust「Black Dahlia Poem」
ロシアのゴシックメタル、ラストの2017年作
2004年にデビュー、本作は6年ぶりとなる5作目で、美麗なシンセアレンジに
メロディックなギターと美しい女性ヴォーカルを乗せた、わりとキャッチーなゴシックメタル。
ジャケのような耽美な空気感もありつつ、適度にノリのあるリズムにメロディックな聴きやすさがあって、
以前の作品よりも一皮むけたような印象だ。アンナ嬢のなよやかでキュートな歌声も魅力的で、
サウンドが描く世界観にやわらかな美しさを加えている。DELAINなどにも通じる優美なナンバーから、
メロスピ的な疾走ナンバーまで、楽曲ごとのメリハリもあってなかなか飽きさせない。
ボーナストラックの、My Dying BrideTheatre of Tragedyのカヴァーもハマっている。
メロディック度・・8 ゴシック度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Batalion D'Amour「Fenix」
ポーランドのゴシックメタル、バタリオン・ド・アムールの2016年作
2005年作以来、じつに11年ぶりとなる復活作で、メンバーもやや変わっているようだが、
サウンドの方は、ポーランド語による美しい女性ヴォーカルを乗せ、適度にモダンな感触を含んだ、
優雅なゴシックメタルで、フロントを務めるキャロライナ嬢の妖艶な歌声もなかなか魅力的だ。
4~5分のコンパクトな楽曲を中心にしつつ、わりとキャッチーな感触のゴシックロック風のナンバーや
しっとりと聴かせる9分の大曲もあって、キャリアをへたバンドとしての自信と実力が発揮されている。
ボーナストラックにはシングル曲のアコースティックVer、英語Ver、リミックス、エディットVerを収録。
メロディック度・・8 ゴシック度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8
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EILERA 「FACE YOUR DEMONS」
フランス出身の女性シンガー、エイレラの2016年作
2007年作「Fusion」は、クラシカルな雰囲気の優雅なゴシックメタル作であったが、
本作は美麗なシンセアレンジに、適度にハードなギターとキュートな女性ヴォーカルを乗せた、
キャッチーなシンフォニックメタル風味のサウンド。ゴシック的な耽美さはあまりないが、
エイレラ嬢のやわらかな歌声にはどこか北欧的なフォーキーな空気感もあり、
ヘヴィさが希薄な分、むしろシンフォニックな女性声メロディアスハードとしても楽しめる。
メロディック度・・8 ゴシック度・・7 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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EX ANIMO 「Neverday」
ウクライナのゴシックメタル、エクス・アニモの2016年作
ツインギターに美麗なシンセアレンジ、美しい女性ヴォーカルに男性テスヴォイスが絡む、
シンフォニックで重厚なゴシックメタルサウンド。ジャケのイメージのように耽美な世界観と、
適度にモダンなヘヴィネスが合わさり、どっしりとした本格派の聴き心地が楽しめる。
反面、楽曲の展開にはこれというインパクトがないので、耳に残るメロディがあまりなく、
紅一点、ジュリア嬢の歌声を活かした、しっとりとした叙情ナンバーの方がずっと魅力的。
今後は、楽曲自体の魅力を高めるとともに、サウンド全体の説得力を強めていって欲しい。
ドラマティック度・・7 ゴシック度・・8 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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Tears of Martyr「Entrrance」
スペインのシンフォニックメタル、ティアーズ・オブ・マーティアの2010年作
シンフォニックなアレンジにダミ声ヴォーカルを乗せ、美しいソプラノ女性ヴォーカルの歌声が絡む、
ゴシックメタル風味もある耽美なシンフォニックメタル。オペラ歌手でもあるベレニス嬢の歌声は、
Nightwishのターヤばりの力量で、デスヴォイスとのコントラストでサウンドに説得力を付加している。
次作に比べると、男性ダミ声パートが多い点や、楽曲的にもまだナイナー臭さが漂っていて、
垢抜けなさも残るのだが、ほどよいB級感が楽しめる方であれば問題なく楽しめるだろう。
ともかくソプラノの美しさという点では折り紙付き。ゴシック寄りのシンフォメタル好作品である。
シンフォニック度・・7 耽美度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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Epica 「The Score」
オランダのシンフォニックメタル、エピカの2005年作
本作はバンド名義ではあるが、ジム・ギレスピー監督による映画「JOYRIDE」のサントラ作品で、
ストリングスを含む優美なオーケストレーションを主体にした、シンフォニックなインスト作品。
1~4分前後の小曲が主体なので、単なるBGMになりそうなのだが、壮大な空気感に包まれた
ドラマティックな感触が随所にあって、聴き手の想像力を刺激するところはさすがというところ。
シモーネ嬢の美しい歌声を乗せたナンバーもあり、ゆったりと鑑賞できる美麗な作品です。
シンフォニック度・・8 メタル度・・2 壮麗度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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5/4
プログレ&テクニカルメタル!(112)


Sons of Apollo 「Psychotic Symphony」
アメリカのプログレメタル、サンデ・オブ・アポロの2017年作
DREAM THEATERのマイク・ポートノイ、デレク・シェリニアン、元GUNS N` ROSESのロン・“バンブルフット”・サール、
MR. BIGのビリー・シーン、イングヴェイなどに参加したシンガー、ジェフ・スコット・ソートという名うてのメンバーが集結。
手数の多いポートノイのドラムにグルーヴィなシーンのベースと、デレクのきらびやかなシンセワークを乗せ、
ロン・サールの派手やかなギターとソートの渋みのあるヴォーカルで聴かせる、大人のプログレッシブメタル。
古き良き王道のHR/HM風味を感じさせつつ、10分前後の大曲では、DTを思わせるテクニカルな展開力を含んだ
インストパートも覗かせる。歌ものとしてのどっしりとした聴き心地と、各メンバーの技巧が融合された強力作である。
メロディック度・・7 テクニカル度・・8 重厚度・・8 総合・・8
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SCALE THE SUMMIT 「In a World of Fear」
アメリカのプログレメタル、スケール・ザ・サミットの2017年作
2007年にデビュー、DREAM THEATER的な構築力をメタルフュージョン的な軽妙さに融合したサウンドで
6作目となる本作は、ギター、ベース、ドラムというトリオ編成となったが、方向性はおおむねそのまま。
テクニカルなリズムに、メロディックなギターフレーズを乗せ、優雅なメタルフュージョンを聴かせる。
楽曲は3~5分台と長すぎず、オールインストながら、ギターの奏でるメロディのセンスとともに、
リズム面での展開力もあって飽きずに楽しめる。全体的には軽やかな聴き心地ながら、
随所にメタリックなヘヴィさも覗かせ、そのバランス感覚も見事。突出した曲はないが安定の好作品。
メロディック度・・8 テクニカル度・・8 優雅度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Thee Final Chaptre 「It Is Written」
アメリカのプログレメタル、スリー・ファイナル・チャプターの2016年作
1991年に発表したミニアルバムに、デモとライブ音源9曲を加えた再発盤。
メタリックなギターリフにハイトーンヴォーカルを乗せたどっしりとした正統派の感触に、
リズムチェンジを含む知的な展開力で聴かせる、Queensrycheを思わせるサウンド。
伸びやかなハイトーンとマイルドな表現力を兼ねそろえたヴォーカルの実力もなかなかのもので、
緩急のあるアレンジとドラマティックな味わいは、Crimson Gloryに通じる雰囲気もある。
ライブ音源はブート程度の音質ながら、フルアルバムを聴いてみたかった幻のバンドですな。
メロディック度・・8 重厚度・・8 クリグロ&ズライチ度・・8 総合・・7.5
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VOLA「INMAZES」
デンマークのプログレメタル、ヴォラの2016年作
Djent的なモダンなテクニカル性に包まれた演奏に、エモーショナルなヴォーカルを乗せた
キャッチーな感触を融合したサウンド。美しいシンセアレンジに、プログレ的な知的な構築力
そして変則リズムのキメに乗せる硬質なギターリフは、エモーショナルロック化したMESHUGGAHのよう。
全体的には重すぎず、激しすぎずというバランスで、ときにエレクトロなデジタル感覚も含めて、
Animals As Leadersともまた違った、「新時代のテクニカルProgMetal」というべき作品である。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・8 モダン度・・8 総合・・8
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Lucid Dream Syndrome 「ROAD TO THE MOUNTAIN TOP」
タイのプログレメタル、ルシッド・ドリーム・シンドロームの2012年作
シンセ、ギター、ドラムという若手3人組で、テクニカルなリズムに美麗なシンセアレンジを乗せ、
適度なヘヴィネスとモダンな感触に、随所にアジアンな旋律を含んだ、オリエンタルなProgMetal。
ほぼオールインストであるが、DREAM THEATERなどを思わせる技巧性もなかなかのもので、
リズムチェンジを含む展開力とともに、テクニカルな遊び心を盛り込んで、大曲を構築してゆく確かな力量もある。
一方ではオルガンやムーグシンセを使ったオールドなプログレ感触も覗かせるなど、多様なセンスが光っていて、あなどれない。
ゲストの女性ヴォーカルを加えた、ラストのしっとりとした叙情ナンバーもよいですね。タイ王国から登場した、期待の若手バンドですな。
メロディック度・・8 テクニカル度・・8 構築度・・8 総合・・8

Continuum 「Lifeless Ocean」
フランスのプログレメタル、コンティニュームの2009年作
美麗なシンセと適度にヘヴィなギターを乗せ、テクニカルなアンサンブルと緩急ある展開力で、
DREAM THEATERばりのProgMetalを聴かせる。湿り気を含んだ叙情性は、ヨーロピアンな香りの
シンフォニックプログレ的な雰囲気もあって、ドラマティックな構築センスもなかなか見事。
ときに激しい疾走パートなども含んだリズムチェンジや、美しいシンセに包まれたシンフォニックな味わいの
ヴォーカルナンバーもあったりと、全体的にもメリハリに富んだ、高品質なプログレメタルが楽しめる。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 構築センス・・8 総合・・8
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Atmosfear 「Zenith」
ドイツのプログレメタル、アトモスフィアーの2009年作
デビューは90年代というキャリアのあるバンドで、シンセを含む5人編成。
いくぶんダークなイントロから、ヘヴィなギターリフを乗せた適度にテクニカルなアンサンブルに、
美しいシンセワークにパワフルなハイトーンヴォーカルを乗せた重厚なサウンドを聴かせる。
派手なテクニカル性はないのだが、ゆったりとした叙情パートを含んだ大人の味わいで、
随所にプログレ的なシンセやメロウなギターフレーズ覗かせつつ、10分を超える大曲を構築する。
ラストは23分におよぶ組曲で、緩急ある流れで、どっしりとした大人のProgMetalを描き出す。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 重厚度・・8 総合・・7.5
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Dorian Opera 「No Secrets」
ドイツのプログレメタル、ドリアン・オペラの2008年作
ロシア人シンセ奏者を含む4人編成で、きらびやかなシンセワークにヘヴィなギターを乗せ、
適度にテクニカルな展開力とメロディックな叙情を併せ持った、わりと正統派のProgMetalサウンド。
ギターは随所にテクニカルなフレーズも覗かせ、美麗なシンセワークもプログレ的でよいのだが、
ヴォーカルの歌声がやや不安定で弱いので、結果としてB級プログレメタルの域を脱せず。
インストパートはときおり優雅な叙情性に包まれていて、なかなか悪くないんですがねえ。
ちなみにギタリストは元STORMWITCHのメンバーとか。なるほどマイナーなわけだ!
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・7 楽曲・・7 総合・・7
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Between The Buried And Me 「Future Sequence: Live at the Fidelitorium」
アメリカのテクニカル・アヴァンメタル、ビトウィーン・ザ・バリード・アンド・ミーの2014年作
2002年のデビュー以来、カオティックコアの枠を超え、いまやテクニカルメタルの代表格というべきバンド。
本作は2012年作を完全再現したスタジオライブ作品。マイルドなヴォーカルを乗せたエモーショナルな叙情パートから、
テクニカルな切り返しとともにグロウルヴォイスを加えた、矢継ぎ早の展開で緩急に富んだサウンドを描く、
もはやBTBAM節というべき完成されたスタイルで、ライブ演奏とは思えないクリアなアンサンブルもさすが。
ライブ的な荒々しさはないので、スタジオ盤との差別化という点では物足りないかも。DVDもスタジオライヴ映像収録。
ライブ演奏・・8 テクニカル度・・8 アヴァンギャル度・・7 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Between The Buried And Me 「The Anatomy of 」
アメリカのテクニカル・アヴァンメタル、ビトウィーン・ザ・バリード・アンド・ミーの2006年作
本作はカヴァーアルバムで、METALLICA、MOTLEY CRUE、SOUNDGARDEN、QUEEN、KING CRIMSON、PINK FLOYD、
The Smashing Pumpkins、Earth Crisis、SEPULTURA、Blind Melon、FAITH NO MORE、DEPECHE MODE、PANTERAと
幅広いバンドからの選曲。暴虐なブラスト疾走を含んだメタリカ「Blackend」から始まり、わりと正当なアレンジのモトリー・クルー、
ほどよくハードなクイーン「Bicycle Race」、キング・クリムゾン「Three of a Perfect Pair」などもなかなか恰好いい。
高度な演奏力で、原曲の雰囲気を活かしつつ独自のアレンジセンスで聴かせる、見事なカヴァーアルバムである。
激しさ度・・7 メタルからプログレまで度・・9 カヴァーセンス・・9 総合・・8
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Dysrhythmia 「Pretest」
アメリカのテクニカルメタル、ディスリズミアの2003年作
GORGUTSのメンバーを含むバンドで、変則リズムたっぷりのテクニカルなリズムに、
うねりのあるベースとフリーキーなギターを乗せてたたみかけるインストサウンド。
トリオ編成のシンプルなスタイルながら、ジャズロック的な軽妙さとアヴァンギャルドな空気感も含んだ
スリリングなアンサンブルには、モダンにならない生々しいアナログ感もあって、そういう点では、
かつてのWATCHTOWERなどにも通じるところもあるが、メタル的な激しさというのはさほどでもない。
のちのアルバムに比べるとまだおとなしいので、ヘンタイ系としてもちと物足りないか。
ドラマティック度・・6 テクニカル度・・8 ヘンタイ度・・7 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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4/20
デス&ブラックメタル!(101)


Akercocke 「Renaissance in Extremis」
イギリスのアヴァン・デスメタル、アカーコックの2017年作
2001年にデビュー、2007年までに4作を出して後沈黙、本作は10年ぶりとなる5作目である。
スラッシーなギターリフと低音のデスヴォイスを乗せて激しく疾走、リズムチェンジを含む知的な感触で
テクニカルなデスメタルサウンドを聴かせる。かつてのような暴虐なブラックメタル色はやや薄まったものの、
随所に覗かせるアヴァンギャルドなセンスは健在で、ときにメロディックで叙情的なパートも含んだ
プログレッシブなデスメタルとしても楽しめる。楽曲によってはブルータルなブラスト疾走も残しつつ、
オールドスタイルのデスメタル感触と知的な展開力のバランスがとれた強力なアルバムに仕上がっている。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・7 知的デス度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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The Order of Apollyon「Flesh」
イギリスのブラックメタル、オーダー・オブ・アポロンの2010年作
ABORTED、元CRADLE OF FILTH、AKERCOCKEといったバンドのメンバーが集まったバンドで、
ザリザリとしたギターを乗せて激しくブラスト疾走する、荘厳な暗黒性に包まれたブラックメタル。
ヘヴィなギターリフはときにデスメタル的でもあり、低音の吐き捨てヴォーカルを乗せて、
リズムチェンジによる緩急ある展開とともに、迫力たっぷりのサウンドを描いてゆく。
クレイドルのようなシンフォニックな華麗さはないが、硬派なブラックメタルという点では、
MARDUKなどが好きな方にもイケるかと。英国産にしては稀な本格派ブラックの強力作。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・8 荘厳度・・8 総合・・8
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HEIMDALLS WACHT 「GEISTERSEHER」
ドイツのブラックメタル、ヘイムダルズ・ワハトの2016年作
2005年にデビューしてから、本作ですでに7作目となる。ツインギターによるトレモロのリフに
迫力ある低音のダミ声ヴォーカルを乗せた、オールドスタイルのブラックメタルサウンド。
ギターフレーズには甘すぎない叙情性も覗かせながら、ブラストを含む激しさと緩急ある展開で、
ブラッケンな空気感を描き出す。中盤はミドルテンポのどっしりとしたナンバーも多いが、
キャリアのあるバンドらしい確かな演奏力が、暗黒性を描くサウンドの説得力となっている。
ラストは14分におよぶ大曲で、激しくブラスト疾走しながら、神秘的なスケール感に包まれた味わい。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・7 ゲルマン度・・8 総合・・7.5
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Ave Tenebrae 「Tandis Que Les Perjures Se Meurent」
フランスのブラックメタル、アヴェ・テネブレの2016年作
トレモロを含むメロディックなツインギターにいかにもブラックらしいダミ声ヴォーカルを乗せてブラスト疾走、
緩急のあるリズムチェンジと激しくも叙情的な味わいで、ほどよくプリミティブな世界観を描き出す。
軽すぎず重すぎずというバランスに、曲によっては優雅と言ってよいリズム展開とともに知的な味わいも感じさせる。
ブラックメタルとしての暴虐な激しさの中に、ふっとアコースティックなパートを挿入するなど、
メロディックな叙情性を取り入れたアレンジセンスも見事。フレンチな優雅さに包まれた高品質作。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・8 激しくも優雅度・・8 総合・・8
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Cvinger 「Embodied In Incense」
スロベニアのブラックメタル、クヴィンガーの2016年作
コープスペイントを施した凶悪なメンバー4人編成で、ジャケの雰囲気もいかにもダークで怪しげだが、
呪術的な語りによるイントロから、デスメタル的なギターリフと低音デスヴォイスを乗せて、
激しいドラムでたたみかける、BEHEMOTHばりのブルータルなブラックメタルサウンドを展開。
激烈なブラストビートで突進しつつ、リズムチェンジによる展開力には知的な雰囲気も漂わせ、
トレモロのギターやときに神秘的なコーラスを乗せて、荘厳な暗黒の世界を描き出す。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・9 暗黒度・・9 総合・・8
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Venhelgd 「Temple of Phobos」
スウェーデンのブラッケン・デスメタル、ヴェンヘルグドの2016年作
ツインギターのトレモロなリフに低音ダミ声ヴォーカルを乗せ、ブラックメタル的なダークさと、
90年代の北欧デスメタルを思わせる、オールドな香りに包まれたサウンドを聴かせる。
激しい疾走パートもあるが、スローからミドルテンポでのどっしりとした感触もよい感じで、
かつてのEdge of SanityEntombedなどにも通じる、くぐもったような空気感と
甘すぎない叙情性も味わえる。古き良き北欧デスメタルの雰囲気を残した強力作。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・7 オールドデス度・・8 総合・・8
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Wallachia 「Carpathia Symphonia」
ノルウェーのブラックメタル、ワラキアの2016年作
Disc1には2015年のEPに、1999年作「FROM BEHIND THE LIGHT」のリマスター音源を収録、
Disc2には2009年作「CEREMONY OF ASCENSION」を収録した2枚組。美しいシンセアレンジに
低音ダミ声ヴォーカルを乗せた、どっしりとしたブラックメタルで、暴虐な疾走感はあまりない。
1999年作は、ややラウドな音質とともに、ヨーロピアンなマイナー臭さを強く感じさせるサウンドで、
ザクザクとしたギターはむしろデスメタル寄りなのだが、美麗なシンセがミスマッチな感触で、
シンフォブラック的な味わいもかもしだしている。ヴォーカルのゲボ声は好みが分かれるところか。
2009年作では、アクレッシブな迫力が増していて、メロデス風味のシンフォブラックが楽しめる。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・7 マイナーブラック度・・8 総合・・7.5
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Decrepit Birth 「Axis Mundi」
アメリカのテクニカルデスメタル、デクレピッド・バースの2017年作
2003年にデビュー、本作は7年ぶりとなる4作目。強烈なツーバス連打と変則リズムのドラムに、
デスメタルらしいギターリフと低音ゲボ声ヴォーカルを乗せてたたみかける、テクニカルデスメタル。
激しいブラストビートとともにオールドなブルデスの味を残しつつ、スウィープのギターフレーズを乗せたり、
テクデスとしての知的な展開力も備わっていて、緩急のあるじつに濃密な聴き心地である。
ラストのSuffocationカヴァーもハマっていて、モダン過ぎるテクデスが苦手という方にも楽しめる作品だろう。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・8 テクニカル度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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EXIST 「SO TRUE, SO BOUND」
アメリカのテクニカルデスメタル、イグジストの2017年作
モダンな硬質感とテクニカル性に包まれた、Djent的なサウンドで、ノーマル&ダミ声ヴォーカルを乗せて、
アヴァンギャルドな浮遊感と知的なアレンジで聴かせる。全体的にデスメタル的な暴虐性よりも、
CYNICのようなプログレッシブなセンスが光っていて、随所にやわらかな叙情性も感じさせる作風だ。
10分前後の大曲も、リズムチェンジを含む緩急ある展開で、Between The Buried And Meにも通じる、
濃密なサウンドを構築する。テクニカルであっても激しすぎないので耳疲れしないのもよいデスね。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・8 知的センス・・8 総合・・8
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Denominate 「Those Who Beheld the End」
フィンランドのデスメタル、デノミネートの2016年作
ツインギターのリフに低音デスヴォイスを乗せて激しく疾走、リズムチェンジを含めてキメの多い、
テクニカルデスメタルで、随所にメロディックなギターフレーズも覗かせる濃密なサウンドだ。
マスタリングをダン・スヴァノが手掛けていることもあり、激しくともヘヴィすぎない音作りには
オールドスタイルの感触もあるが、手数の多いドラムをはじめ、演奏力の高さはいかにも若手らしい。
11分の大曲では、ポストブラック的なモダンな雰囲気も垣間見せる。北欧テクデスの高品質作。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・8 テクデス度・・8 総合・・8
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Al-Namrood 「Heen Yadhar Al Ghasq」
サウジアラビアのブラックメタル、アル・ナムロードの2014年作
2009年にデビュー、イスラム発祥の地からの本格派ブラックメタルとして注目され、
4作目となる本作は、いかにもアラビックな旋律を乗せたインスト曲で幕を開ける。
アラビア語の野太いヴォーカルを乗せたダークなサウンドは、打ち込みのリズムも含めて
ブラックメタルとしての激しさは控えめだが、民俗色のあるメロディを含ませたアレンジで
中近東的な空気感はより強まっている。リフレインが多いので耳を惹くような展開はないが、
その分、サイケ的なトリップ感があって、中近東メタルとしての味わいを楽しめます。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・6 アラビック度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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4/13
ペイガン・ブラック特集!(90)


Solstafir「Berdreyminn」
アイスランドのアヴァン・ブラックメタル、ソルスタフィアの2017年作
2002年にデビュー、ペイガンなブラックメタルにサイケ、ポストロックの要素を加えた独自の作風で、
本作はすでに6作目となる。オルガンが鳴り響き、適度にヘヴィなギターと母国語の武骨なヴォーカルによる
土着的な質感が合わさった、プログレッシブなペイガンメタルでありつつ、70年代的なブルージーな渋みや
オールドロックの感触も加わっている。また今作ではジャケのイメージのように、ゆったりと聴かせる
アンビエントな雰囲気のパートもあり、全体的にもメタルというよりはハードロック寄りの聴き心地である。
反対に、重厚なペイガンメタルを期待するとやや肩透かしか。土着的なサイケメタルとして聴くのが良いかと。
ドラマティック度・・7 ペイガン度・・7 重厚度・・7 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Arstidir Lifsins 「Aldafoor Ok Munka Drottinn」
アイスランドのペイガン・ブラックメタル、アルスティダー・ライフサインズの2014年作
2010年にデビュー、本作は3作めでCD2枚組の大作。ストリングスが鳴り、神秘的な語りを乗せたイントロから、
重厚なギターにダミ声ヴォーカルを乗せ、荘厳でミステリアスなペイガン・ブラックメタルを聴かせる。
激しいブラスト疾走を含む緩急ある流れで、10分前後の大曲を主体に、じっくりと展開してゆくサウンドには、
メロディックな要素や派手さはほとんどないのだが、どっしりとした硬派な作風は迫力たっぷりである。
Disc2にはメタル色のないトラッド的なナンバーもあったりと、寒々しいアイスランドの空気を漂わせる。
単なるブラック、ペイガンの枠を超えた、濃密な土着メタルというべきか。CD2枚、80分を超える力作デス。
ドラマティック度・・8 ペイガン度・・9 重厚度・・9 総合・・8
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ARSTIDIR LIFSINS 「HELJARKVIDA」
アイスランドのペイガン・ブラックメタル、アルスティダー・ライフサインズの2016年作
20分、24分という大曲2曲の構成で、今作もストリングスによるイントロからミステリアスな空気感を漂わせ、
重厚なギターに低音ダミ声ヴォーカルを乗せて激しく疾走する、ペイガンブラックメタルが広がってゆく。
荘厳なコーラスも加わったヴァイキングメタル的な勇壮な世界観と、硬派な土着性に包まれたサウンドは、
MOON SORROWあたりにも通じる本格派の聴き心地。荒涼とした北の大地を感じさせる空気感は、
まさに本物のペイガンメタルの味わいである。なにせ曲が長いので、気の短い方には向かないが、
じっくりと描かれるドラマティックな音の説得力は見事で、世界に浸れるタイプのリスナーには傑作です。
ドラマティック度・・8 ペイガン度・・9 重厚度・・9 総合・・8
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Craving 「By The Storm」
ドイツのヴァイキング・デスメタル、クラヴィングの2016年作
フォーキッシュなイントロから、ツインギターにダミ声ヴォーカルを乗せて激しく疾走、
重厚なヘヴィネスとメロディックな叙情性が合わさったペイガンなメロデスサウンド。
前作よりもヴァイキングなクサメロ感が強まった分、激烈な疾走パートであっても
勇壮なコーラスなども含めたエピックなスケール感が増している。8分を超える大曲もあり、
メロディのフックーやリズムチェンジを含む楽曲の構築性とアレンジの力量も着実にアップした。
ボーナストラックを入れて全78分、迫力たっぷりのヴァイキング・メロデスが味わえる濃密作。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・8 ヴァイキングデス度・・8 総合・・8
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FIMBULVET 「HEIDENHERZ」
ドイツのペイガン・ブラックメタル、フィンバルヴェットの2016年作
2006年作「Ewiger Winter」 と2008年作「Der Ruf In Goldene Hallen」をカップリング、ボーナスを加えた2枚組。
フォーキーなギターフレーズにダミ声ヴォーカルを乗せて激しく疾走するペイガンなブラックメタルで、
2006年作は、ややスカスカ感のあるプリミティブなサウンドながら、ゲルマンらしい勇壮さを含んだ聴き心地。
ドイツ語によるダミ声ヴォーカルも独特の味わいで、ほどよく武骨なギターのクサメロ感とともに、
随所にアコースティックパートやノーマル声も含みつつ、ドカドカとしたドラムがB級臭さをかもしだす。
2008年作になると、サウンドにスケール感が加わっていて、激しく疾走パートを含む緩急ある展開力と、
ヴァイキングブラックとしての重厚な迫力に包まれている。ボーナスのリレコーディングVerも良いですね。
ドラマティック度・・7 ペイガン度・・8 ゲルマン度・・8 総合・・7.5
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Heimsgard 「Ordrag」
フランスのペイガンメタル、ヘイムスガルドの2016年作
土着的なツインギターにダミ声ヴォーカルを乗せ、フォーキーなメロディとともに疾走する、
ENSIFERUMなどに通じるサウンド。美麗なシンセアレンジに、優美な叙情を含ませた
緩急ある展開力で、クサメロ感漂う感触とともに高品質なペイガンメタルを聴かせる。
勇壮なコーラスなどヴァイキングメタルとしての幻想性も感じさせつつ、重厚な迫力は薄い分、
あくまでメロディ重視の作風で初心者にも聴きやすいだろう。
メロディック度・・8 ペイガン度・・8 重厚度・・7 総合・・8
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Belenos 「Yen Sonn Gardis」
フランスのペイガン・ブラックメタル、ベレノスの2010年作
デビューは1996年とキャリアのあるバンドで、本作がすでに7作目となる。
トレモロを含んだギターフレーズとダミ声ヴォーカルを乗せて、激しいブラスト疾走を含む緩急のある展開とともに、
エピックなスケール感に包まれたペイガンブラックメタル。ときに美しいヴァイオリンの旋律も現れたり
随所に土着的な叙情性も覗かせながら、ネイチャーブラック的でもあるうっすらとした神秘性も感じさせる。
ヘヴイすぎないほどよくこもり気味のサウンドもよい感じで、ペイガンなブラックメタルとしての魅力たっぷりの力作。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・7 ペイガン度・・8 総合・・8
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Belenos 「KORNOG」
フランスのペイガンブラックメタル、ベレノスの2016年作
物悲しいフィドルの音色によるイントロから、重厚なギターリフが重なり、低音のダミ声ヴォーカルを乗せて
ミステリアスなスケール感に包まれた、ペイガンなブラックメタルを聴かせる。激しい疾走パートもありつつ、
スローからミドルテンポでどっしりとした重厚さでもって、ゆったりとした叙情パートなど、緩急ある展開力とともに、
キャリアのあるバンドらしいサウンドの説得力を感じさせる。朗々としたコーラスを乗せた勇壮な雰囲気と
霧に包まれたような音作りが神秘的な空気感をかもしだす。ドラムの高速ブラストもMARDUKあたりに引けを取らない迫力。
12分の大曲も含めて、荘厳でドラマティックな世界観を描く、ペイガン・ブラックメタルの強力作である。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・8 ペイガン度・・8 総合・・8
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Thundra 「Angstens Salt」
ノルウェーのペイガン・ブラックメタル、ツンドラの2014年作
2000年にデビューしてから本作で4作目となる。ツインギターにシンセを含む6人編成で、
ややメロデス寄りのギターフレーズに低音グロウルヴォーカルを乗せた、ヴァイキング寄りのブラックメタル。
楽曲は7~9分と長めで、ミドルテンポを主体に、ときおり激しい疾走パートも含ませた、重厚な聴き心地はなかなか悪くないが
ペイガンメタルとしての神秘性やメロディのフックの点ではやや物足りないので、どうしても中庸な聴き心地に留まっている。
全体的に雰囲気は悪くないので、楽曲やメロディ自体にもっと濃密さと魅力が欲しい。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・7 ペイガン度・・7 総合・・7.5
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Tsar Stangra(Цар стангра) 「Небесният ковач」
カナダのペイガンメタル、ツアー・スタングラの2017年作
バンド名や曲名がキリル文字になっているのは、ブルガリア系メンバーのバンドということらしい。
うっすらとしたシンセアレンジにツインギターとダミ声ヴォーカルを乗せた、辺境的なペイガンメタルで、
激しすぎない適度な疾走感を含んだ楽曲には、美しいシンセのメロディとともに、
ほどよいクサメロ感を漂わせつつ、マイナーな味わいと神秘的な空気感も感じさせる。
ラストは14分の大曲でブラスト疾走を含む緩急ある展開で、土着的なペイガンブラックが炸裂する。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・7 ペイガン度・・8 総合・・7.5
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Sig:Ar:Tyr「Sailing the Seas of Fate」
カナダのペイガンメタル、シグ・アー・ティアの2005年作
波のSEのイントロから、壮大な雰囲気を感じさせるが、アコースティックギターを取り入れた楽曲は
涼やかで神秘的な空気感に包まれた聴き心地。叙情というよりは荒涼とした物悲しさで、
ヴォーカルらしいヴォーカルはほとんど入らず、淡々と物語を描くようなサントラ的な感触でもある。
アコースティックのパートが多いこともあって、重厚なペイガンメタルを期待すると肩透かしだが、
暗黒の海のイメージを想像しながら、茫漠とした寂寥感に浸れるような作品である。
ドラマティック度・・7 ペイガン度・・7 重厚度・・7 総合・・7.5
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Balfor 「Barbaric Blood」
ウクライナのペイガン・ブラックメタル、バルフォーの2010年作
重厚なツインギターにダミ声ヴォーカルを乗せ、エピックなスケール感を漂わせる
デスメタル寄りのプラックメタルサウンド。ブラスト疾走するブルータルな激しさと、
甘すぎない程度のメロディックな叙情も含んだ作風は、演奏面でのクオリティの高さもあって、
辺境臭さをあまり感じさせない。あるいはブラックメタル寄りのメロデスとしても楽しめるかも。
ペイガンな要素や土着的なメロデイはあまりないので、わりと硬派寄りの強力作デス。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・8 ペイガン度・・7 総合・・8
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3/31
メタルの春が来た(78)


Iced Earth 「Incorruptible」
アメリカのパワーメタル、アイスド・アースの2017年作
1990年デビューのベテランバンド、12作目の今作は、荘厳なイントロからダークなドラマ性を感じさせ、
メタリックなツインギターにパワフルなヴォーカルを乗せた、正統派のメタルサウンドで、
エピックな勇壮さに湿り気を含んだ適度な叙情性が合わさった、重厚な世界観を描き出す。
新たに加わった、ジェイク・ドレイヤーのリードギターは、随所にメロディックなフレーズも覗かせ、
ミドルからハイトーンまで出せるステュー・ブロックのヴォーカルともよくマッチしている。
個人的にはドラムのモダンな音作りが好きではないのと、楽曲そのものにもっとフックが欲しい気もするが、
全体としてはどっしりと貫録の安心作だろう。ただ、長年このバンドを聴いてきたリスナーには新鮮味は薄いか。
ドラマティック度・・7 重厚度・・8 正統派度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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FOGALORD 「Masters of War」
イタリアのシンフォニックメタル、フォガロードの2017年作
SYNTHPHONIA SUPREMAのメンバーを含むバンドの2作目で、エピックなクサメタルが炸裂した前作に続き、
本作もケルティックな雰囲気のイントロから、勇壮なコーラスを含むシンフォニックな美麗さに包まれて、
程よく力弱いヴォーカルを乗せた、クサメロ系のメロディックメタル・サウンドが炸裂してゆく。
ファンタジックな世界観は、BLIND GUARDIANなどを思わせるが、もちろんそこまで重厚ではなく、
微笑ましいマイナーさに包まれているところがこのバンドの魅力だろう。ゆったりとした3拍子の叙情ナンバーや、
疾走するメロスピナンバーまで、日本人好みのクサめのメロディアス性に包まれていて、
ラストの12分の大曲は、ヴァイキングメタルばりの勇壮なドラマ性を描き出す。クサエピックな力作です。
メロディック度・・8 エピック度・・8 クサメロ度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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LONEWOLF 「RAISED ON METAL」
フランスのメロディックメタル、ローンウルフの2017年作
90年代から活動する中堅バンドで、本作がすでに9作目となる。パワフルなヴォーカルと
クサメロ寄りのギターフレーズを乗せて疾走する、オールドなジャーマンメタルスタイルで、
潔いまでの正統派メロパワサウンドににんまりだ。今作ではさらに古き良きメタル感が増していて、
RUNNING WILDACCEPTを思わせるナンバーもあったりと、まるで80~90年代のバンドのよう。
楽曲はあくまでシンプルで、メタルとしての明快な気持ちよさに包まれている。新鮮味はないものの、
エピックな勇壮さも含めて、ドイツのMAJESTYあたりが好きな方にもお薦めのバンドですな。
メロディック度・・7 パワフル度・・8 正統派度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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WITHERFALL 「Nocturnes and Requiems」
アメリカのプログレッシブ・パワーメタル、ウィザーフォールの2017年作
ジェイク・ドレイヤー(元Kobra and the Lotus)、ジョセフ・マイケル(White Wizzard)、アダム・サガン(White Empress)
といったメンバーが集結したバンドで、ヘヴィなギターリフをテクニカルなリズムに乗せたプログレメタル感触に、
パワフルなヴォーカルの歌声で聴かせる、ダークなパワーメタルを融合したサウンド。スラッシーな疾走パートや
薄暗い叙情性も覗かせる知的な展開力で、重厚なサウンドは「テクニカルになったICED EARTH」という感じもある。
表現力のあるハイトーンヴォーカルとともに、8分、9分という大曲をじっくりと構築してゆく。聴きごたえのある力作だ。
尚、ドラムのアダムはアルバムの発表を待たずに、2016年に悪性リンパ腫で他界したそう。R.I.P.
ドラマティック度・・8 パワフル度・・8 重厚度・・8 総合・・8
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ANKOR 「Beyond The Silence Os These Years」
スペインのメロディックメタル、アンコールの2017年作
前作はメタルコア的なモダンさとキャッチーなメロディアス性が合わさったなかなかの好作であったが、
3作目となる本作も、キュートな女性ヴォーカルの歌声を乗せ、モダンでメロディックなサウンドを聴かせる。
伸びやかな歌声のジェシーは、ときにスクリームヴォイスも使い分け、その表現力を遺憾なく発揮、
マイルドな男性ヴォーカルも随所にアクセントになっている。楽曲は3~4分前後と、全体的にコンパクトで
キャッチーな聴き心地にも磨きがかかっている。個人的には女性のスクリームは苦手なのだが、イケる方はどうぞ。
メロディック度・・7 モダンヘヴィ度・・8 女性Vo度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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ENZO AND THE GLORY ENSEMBLE 「IN THE NAME OF THE SON」
イタリア人ミュージシャン、エンゾ・ドナルマによるクリスチャン・メタルオペラ・プロジェクト、2017年作
マーティ・フリードマンをはじめ、ラルフ・シーパーズ(PRIMAL FEAR)、コビ・フールヒ(ORPHANED LAND)、
マーク・ゾンダー(FATES WARNING)、ゲイリー・ワーカンプ、ブライアン・アシュランド(SHADOW GALLERY) らが参加、
シンフォニックなアレンジとゴスペル的なコーラスも含んだ、優美なクリスチャンメタルの感触に、
オルファンド・ランドあたりにも通じる、アラビックな香りに包まれた壮麗なサウンドを描いてゆく。
女性ヴォーカルも加わったオペラティックなナンバーや、メロパワ的な疾走ナンバーから、
9分を超えるドラマティック大曲まで、なかなかメリハリのある構成で楽しめます。シリーズ化に期待。
シンフォニック度・・8 クリスチャン度・・9 壮麗度・・8 総合・・8
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MARIUS DANIELSEN'S LEGEND OF VALLEY DOOM
ノルウェーのミュージシャン、マリウス・ダニエルセンによるシンフォニックメタルオペラ。2015年作
ヴォーカルには、ティム・リッパー・オーウェンズ、エドゥ・ファラスキ(元ANGRA)、マーク・ボールズ、ヨナス・ヘイドガート(Dragonland)
エリサ・マーティン(元Dark Moor)他が参加、ギターには、クリス・カッフェリー(Savatage)、ティモ・トルキ、ロス・ザ・ボス、
トビ・カースティング(Orden Organ)、ジミー・ヘドランド(Falconer)、オリヴァー・ラパウゼ(Heavenly)、フェリペ(Twilight Force)他、
ベースには、マイク・レポンド(Symphony X)他、ドラムには、アレックス・ホールズワース(Rhapsody of Fire)他が参加、
壮麗なイントロから、メロディックなギターを乗せて疾走、エピックなスケール感で描かれる、RHAPSODYばりのシンフォニックメタル。
なにしろゲストが多すぎて、誰がどこで歌って、弾いているのかも分からないが、疾走するメロスピ寄りのナンバーが多いので、
この手が好きな方はニンマリであろう。ともかく世界各国のメンバーが集結した、AVANTASIAのような豪華プロジェクトである。
シンフォニック度・・8 疾走度・・8 豪華ゲスト度・・9 総合・・8
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SOULSPELL 「Hollow's Gathering」
ブラジル人のドラマー、エレノ・ヴァーリを中心にしたメタルオペラプロジェクト、ソウルスペルの2012年作
3作目となる本作も、ティム・リッパー・オーウェンズ、マイク・ヴェセーラ、アマンダ・サマーヴィル、イウリ・サンソン(HIBRIA)
ブレイズ・ベイリー(元IRON MAIDEN)、ナンド・フェルナンデス(HANGAR)、マリオ・パストーレ(PASTORE)、
マーカス・グロスコフ(HELLOWEEN)をはじめとした大勢のメンバーが参加、女性ヴォーカルを乗せた美しいイントロから、
きらびやかなシンセとともに疾走する派手やかなサウンドで、実力あるヴォーカルたちの歌声を乗せた、
壮麗なシンフォニックメタルが広がってゆく。過去2作以上に楽曲のダイナミックなスケール感が増していて、
男女ヴォーカルを含んだ華やかな聴き心地とともに、ドラマティックなメタルオペラが楽しめる。3作目にして最高傑作。
シンフォニック度・・8 壮麗度・・9 豪華ゲスト度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Adramelch「Opus」
イタリアのエピックメタル、アドラメルクの2015年作
デビューは80年代というベテランで、2005年に復活してからの3作目となる。
メロウなギターにマイルドなヴォーカルを乗せた叙情的なハードロックという感触で、
かつてのようなエピックメタルの面影はやや薄まり、大人の味わいに包まれている。
一方ではツインギターの湿り気を含んだ旋律には、幻想的な味わいも残していて、
うっすらとしたシンセアレンジとともに、じっくりと聴かせる耳心地の良さに包まれている。
メタリックな部分は少ないものの、メロディックな叙情のドラマティックハードというべき好作品。
ドラマティック度・・8 エピック度・・7 大人の叙情度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Antonello Giliberto 「Journey Through My Memory」
イタリアのミュージシャン、アントネロ・ジルベルトの2015年作
ギターとシンセをこなすミュージャンで、ドラム、ベースを加えた編成で聴かせる、インストによるメロディックメタル。
ネオクラシカル色もある流麗なギターワークを乗せて、程よい疾走感に包まれたサウンドは、
歌無しの正統派メロスピという感じで、日本のGaia Preludeなどにも通じる雰囲気もある。
ベースとドラムの腕前もかなりのもので、ギターのフレーズにもクサメロ的なセンスを感じさせるので、
オールインストであってもシンフォニックなシンセアレンジも含めて、メロディと展開力で飽きさせない。
メロディック度・・7 インストメタル度・・9 ギターワーク度・・8 総合・・7.5
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Ghost City 「Tragic Soul Symphony」
イタリアのメロディックメタル、ゴースト・シティの2015年作
シンセを含む5人編成で、美麗なアレンジにハイトーンヴォーカルを乗せた、ややダーク寄りのシンフォニックメタルサウンド。
疾走するメロスピ風味のナンバーもあるが、むしろミドルテンポやスローナンバーでの、じっくりと聴かせる叙情美に
味があるような気がする。ヴォーカルの力量と表現力はそれなりにあるので、B級臭さはあまり感じないが、
メロディのフックという点ではどの曲も「あと一歩」感に包まれている。ラスト曲のクラシカルな感触はなかなか良いので、
今後は、楽曲そのものの魅力とともに、突き抜けるようなインパクトのあるナンバーを増やしい欲しい。
ドラマティック度・・7 疾走度・・5 重厚度・・7 総合・・7.5
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Axe Vyper 「Angeli O'acciaio」
イタリアのメロディックメタル、アックス・ヴァイパーの2011年作
ジャケからしてもう「聖闘士星矢」のパクりみたいなB級臭さがぷんぷんであるが、
メロディックなツインギターにイタリア語のヴォーカルを乗せた正統派のメタルサウンドで、
適度なヘナチョコ感とクサメロ要素を含んでいて、これがなかなか悪くないのである。
80~90年代的なオールドなクサメタル感触と、イタリア語による響きがマッチしていて、
正統派のB級メタルとして普通に楽しめる。Heavy Loadのカヴァーも含めて、マニアにんまり。
メロディック度・・8 正統派度・・8 古き良き度・・8 総合・・7.5
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Sunrunner 「Heliodromus」
アメリカのNWOTHM系メタルバンド、サンランナーの2015年作
トリプルギター編成による、厚みのあるギターにダーティなヴォーカルを乗せて疾走する、
オールドな味わいのメタルサウンド。アコースティックなパートや、ドゥームメタル風味もあったりと、
楽曲ごとの振り幅もけっこうあって、確信犯的なアレンジの違いをニヤりとして楽しめたりもする。
プログレメタル的な変則リズムも覗かせたと思えば、80年代風味のオールドメタルへ戻ったりと、
とりとめのない怪しさがある意味面白い。B級っぽいのだが、あえてヘタウマ感を描くような感触。
ラストは21分の大曲で、ほどよいヘナチョコ加減とともに、無駄に展開の多い楽曲を構築する楽しさ。
ドラマティック度・・7 古き良き度・・8 怪しさ度・・8 総合・・7.5
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3/17
ペイガン、ブラック、ドゥームにサイケ!(65)


ENSLAVED「E」
ノルウェーのプログレッシブ・ブラックメタル、エンスレイヴドの2017年作
90年代初頭から活動する、ヴァイキング・ブラックメタルの元祖ともいわれるベテランバンド、
本作はいつになく優雅なポストプログレ的な叙情に包まれてゆったりと始まる。
うっすらとしたシンセにノーマルヴォイスとダミ声が絡み、リズムチェンジを含む展開力には
知的でプログレッシブな香りがぷんぷん。もちろんブラックメタルとして激しさも随所に残していて、
荘厳でミステリアスな空気を、緩急ある楽曲の中に自然に融合させるセンスは素晴らしい。
7~10分の大曲を中心に、じっくりと構築される楽曲は、オルガンを含むシンセアレンジや、
変拍子リズムなど、ぐっとプログレリスナー寄りの作風といえる。この路線は大歓迎です。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・6 プログレ寄りです度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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CRIMFALL 「AMAIN」
フィンランドのシンフォニック・ペイガンブラックメタル、クリムフォールの2017年作
6年ぶりとなる3作目で、壮麗なイントロから始まり、オーケストラルなアレンジに女性ヴォーカルの歌声に
男性デスヴォイスが絡む、シンフォニックなペイガンメタルサウンドは、さらにエピックかつ壮大なサウンドに。
ヴァイキングメタル風味の土着的な感触もいくぶん残しつつ、RHAPSODYあたりを思わせる勇壮なクワイアとともに、
今作ではシンフォニックメタルとしてのシネマティックなスケール感にいっそう磨きがかかっている。
4パートに分かれた16分を超える組曲は、しっとりとしたフォーキーな叙情やキャッチーなメロディアス性も含む、
メリハリある構築力でじっくりと聴かせ、映画「ランボー」のテーマ曲も、シンフォニックなバトルメタルになっていて
これが案外ハマっている。TURISASあたりが好きな方にも対応。壮麗なるエピック・ペイガンメタルの傑作。
ドラマティック度・・8 ペイガン度・・7 壮麗度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Vinsta 「Wiads」
オーストリアのペイガン・ブラックメタル、ヴィンスタの2017年作
適度にヘヴィかつメロディックなギターに低音デスヴォイスを乗せ、ミドルテンポ主体で聴かせる、
ヴァイキングメタル寄りのペイガンブラック・サウンド。アコースティックギターやヴァイオリンなどによる
優雅な叙情性も織り込みつつ、随所に激しい疾走パートも含んで、8~10分という大曲を描いてゆく。
フォーキーな土着性は薄い分、ペイガンメタルとしての濃密さではやや物足りないのだが、
ツインギターの流麗な旋律にヴァイオリンが鳴り響く、叙情豊かなナンバーはなかなかよろしい。
もう少し重厚な迫力と神秘性が加わればよい作品を作ってくれそう。美しい自然のジャケはよいですね。
ドラマティック度・・7 ペイガン度・・7 重厚度・・7 総合・・7.5
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Fornhem 「Ett Fjarran Kall」
スウェーデンのペイガン・ブラックメタル、フォルンヘムの2017年作
荒波のSEから始まり、土着的なギターフレーズにダミ声ヴォーカルを乗せたミドルテンポのサウンドで、
かつてのBATHORYBURZUMを受け継ぐような、ローカルな空気感も漂わせるペイガン・ブラックメタル。
10分を超える大曲を中心にした全4曲という構成で、わりとリフレインの多い、悪く言えば単調な感じなのだが、
激しい疾走ナンバーでも暴虐過ぎず、手数の少ないドラムやくぐもった音質も含めて、むしろ心地よかったりもする。
北欧らしい牧歌的なフレーズや、トレモロのギターを乗せた叙情性に、ときにアコースティックなパートもまじえ
物悲しい叙情と翳りを含んだサウンドをゆったりと楽しめる。ほどよいスカスカ感のオールドな味わいがGoodです。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・7 北欧度・・9 総合・・7.5
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DER WEG EINER FREIHEIT 「Finisterre」
ドイツのブラックメタル、ダー・ヴェグ・エイナー・フレイヘイトの2017年作
ドイツ語による語りから始まり、トレモロのギターリフとともにブラスト疾走開始、
そこに乗るダミ声ヴォーカルもドイツ語のようで、適度にメロディックなフレーズも織り込みながら
アトモスフェリックかつゲルマンなブラックメタルサウンドを聴かせる。暴虐な疾走パートをメインに、
ゆたりとした叙情パートを含む、緩急あるリズムチェンジとともに、10分を超える大曲を構築してゆく。
ストリングスも鳴り響くラスト曲のメランコリックな味わいも含めて、激しくもミステリアスで、
どこか知的な香りを漂わせたアレンジセンスは見事。今後もさらに期待したいバンドである。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・8 構築度・・8 総合・・8
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SUN OF THE SLEEPLESS 「To the Elements」
ドイツのブラックメタル、サン・オブ・ザ・スリープレスの2017年作
EMPYRIUMのUlf Theodor Schwadorfによる個人プロジェクトで、ジェントルなヴォーカルを乗せたイントロ曲から、
続く2曲目は激しくブラスト疾走、トレモロのギターリフにダミ声ヴォーカルを乗せた、わりとオールドなブラックメタルで、
随所にシンセによるアレンジも含んだ叙情性も覗かせる。ギターのフレーズには適度にペイガンな土着性を匂わせ、
それがミステリアスな味わいとなっている。楽曲も7~8分前後が中心で長すぎず、全41分というのも聴きやすい。
アコースティックを取り入れた、得意のフォーク風ナンバーもよろしく、神秘的なネイチャーブラックとしても味わえる。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・8 ミステリアス度・・8 総合・・8
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TENGGER CAVALRY 「Die on My Ride」
中国出身のペイガン・フォークメタル、テンガー・カヴァリーの2017年作
前作はリーダーのNature氏によるソロ作品という内容であったが、活動をアメリカに移し、
今作は新たにアメリカ人メンバーを含む編成となった。モリン・ホール(馬頭琴)の素朴な音色に
ヘヴィなギターが重なり、朗々としたヴォーカルを乗せた、アジアンなペイガンメタルは健在。
楽曲は2~3分前後とわりあいシンプルで、適度に激しさもあるのだが、ドゥーム寄りのスローテンポや、
モリン・ホールにイギルが鳴り響くアコースティックなナンバーなど、全体的には勢いは抑え目か。
ヴォーカルは英語なのだが、ホーミーに通じる唸るような独特の歌い方は、やはりモンゴル的でもある。
ドラマティック度・・7 ペイガン度・・7 アジアン度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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ALUNAH「SOLENNIAL」
イギリスのドゥームメタル、アルナーの2017年作
前作はサバスルーツのオールドなドゥームロックに女性声を乗せた力作であったが、
4作目となる本作は、女性ヴォーカルの歌声を乗せた魔女めいた妖しさに磨きがかかり、
ドゥーミィなギターとともに、カルトな女性声ドゥームとしての強固な世界観を描いてゆく。
楽曲そのものに、これといった目新しさはないのだが、魔女系ロックとしての王道というべき、
重すぎずユルすぎずの聴き心地で、Blood Ceremonyなどが好きな方にも大満足の出来でしょう。
ドラマティック度・・7 ドゥーム度・・8 魔女系ロック度・・9 総合・・8
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ATRIARCH「DEAD AS TRUTH」
アメリカのドゥーム・ブラックメタル、アトリアーチの2017年作
ノイジーなギターに呻き叫ぶようなヴォーカルを乗せた、ダークで怪しい空気に包まれたサウンド。
ゆったりとしたテンポのドゥーム寄りのスタイルながら、モノトーンのような無慈悲な世界観には
ブラックメタル的な暗黒性が充満している。メロディやドラマティックな盛り上がりというのはないが、
テンポチェンジを含む激しい疾走パートもあったりと、全体的に単調過ぎるということもない。
全32分というのが少し物足りないが、暗黒のドゥーム・ブラックを求める方はいかが。
ドラマティック度・・7 ドゥーム度・・8 暗黒度・・9 総合・・7.5
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Bald Anders 「Sammler」
ドイツのサイケメタル、バルド・アンダースの2017年作
やわらかなオルガンのんびりとしたイントロから、メタリックなギターが重なり、ドイツ語のヴォーカルを乗せ、
哀愁漂う浮遊感と適度なヘヴィさが合わさった、ゲルマンなサイケデリック・メタルサウンド。
楽曲にこれという盛り上がりはないのだが、どことなくシアトリカルな世界観には惹かれるものがあり
オルガンやマリンバ、ときにサックスも鳴り響き、ユルめのけだるさと、翳りを帯びた妖しさにのんびりと浸れる。
メタル的な感触はさほど強くないので、サイケでカルトなゲルマンロックとして味わうのがよいかと。
ドラマティック度・・7 サイケ度・・8 ゲルマン度・・8 総合・・7.5
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SABBATH ASSEMBLY 「Rites Of Passage」
アメリカのサイケ・ドゥームロック、サバス・アセンブリーの2017年作
2010年にデビューして本作が5作目。前作からの流れのサバスルーツのオールドなドゥームメタルに
妖しい女性ヴォーカルを乗せた、いわゆる魔女系ロックのド真ん中というサウンドだ。
Kevin Hufnagel (GORGUTS)を含むツインギターのリフやフレーズもさすがのセンスで、
単なるヴィンテージなドゥームという以上に、巧みなメタル感を感じさせる場面もしばしば。
カルトなおどろおどろしさも控えめなので、この手の初心者にも聴きやすいかもしれないが、
反面、ディープなカルトロック愛好者にはちと物足りなさも。普通に好作品ではありますよ。
ドラマティック度・・7 ドゥーム度・・7 魔女系ロック度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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USNEA 「Portals Into Futility」
アメリカのスラッジ・ブラック・ドゥームメタル、ウスニアの2017年作
前作はヘヴィな暗黒ドゥームの強力作であったが、詠唱めいた妖しい歌声で始まる本作も、
スローテンポに重厚なギターリフと絶叫ぎみのヴォーカルを乗せた、フューネラルなサウンドを聴かせる。
このバンドの場合、スペイシーでミステリアスなスケール感を描くところが魅力でもあり、
おどろおどろしい音の説得力という点でも、前作からさらに深化しているという印象だ。
ブラックメタルも顔負けの暗黒性に包まれながら、ラストの19分という大曲では、神秘的な空気感に
ほのかな叙情も垣間見せつつ、スラッジ的な荒々しさも含んだ迫力あるサウンドが味わえる。
ドラマティック度・・8 重厚度・・8 おどろおどろ度・・9 総合・・8
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WITCHFYNDE 「DIVINE VICTIMS」
NWOBHMのカルトバンド、ウィッチファインドの1st~3rdカップリング。2017年作
1980年作「GIVE'EM HELL」、「STAGEFLIGHT」、1983年作「CLOAK & DAGGER」を収録した3枚組ボックス。
Black Sabbathの世界観を継承する、ANGEL WITCHWITCHFINDER GENERALと並ぶ存在だろう。
1stは、70年代の牧歌性を含んだ、わりとノリのよハードロックサウンドであるが、ギターのフレーズなどに
マイナーな湿り気を感じさせるところはいかにも英国らしい。2ndは、音質も含めてサウンドの説得力がぐっと増しつつ
一方ではキャッチーなノリのナンバーもあって、わりと普通に叙情的な英国ハードロックとして楽しめる。
3rdからヴォーカルが交代、独特のハイトーンヴォーカルを乗せた、カルトなサタニックロックとしての味わいもありつつ、
キャッチーな普遍的ハードロックへの接近も感じさせる。通なマニアには必携の3枚組ボックスですな。
ドラマティック度・・7 古き良き度・・9 カルトロック度・・8 総合・・8
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3/10
そろそろ春ですね(52)


Avatarium 「Hurricanes and Halos」
スウェーデンの女性Voドゥームメタル、アヴァタリアムの2017年作
CANDLEMASSのレイフ・エドリングを中心に結成したが、2nd発表後にそのエドリングは脱退、
本作はベースとシンセが新メンバーとなっての3作目である。オルガンが鳴り響き、女性ヴォーカルを乗せた
70年代ルーツのヴィンテージなロック感触はそのままで、適度なノリの良さと妖しさを含んだサウンドを聴かせる。
前作までのカルトなドゥーム感も残しつつ、オールドなハードロックとしてのキャッチーな味わいも増していて、
マニアックすぎない初心者にも聴きやすい作風だろう。一方では9分の大曲でのドゥームとしての重厚さと、
音の迫力、説得力はさすがで、PURSONを骨太にしたような前作をさらに強固なサウンドに仕上げた力作だ。
ドラマティック度・・8 ヴィンテージ度・・8 重厚度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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NE OBLIVISCARIS「URN」
オーストラリアのプログレッシブ・デスメタル、ネ・オブリヴィスカリスの2017年作
アグレッシブな激しさと知的な構築力を合わせたモダンなプログレッシブ・デスメタルを聴かせるこのバンド、
3作目となる本作も、ヘヴィなギターリフを乗せた激しい疾走感に、クリーンヴォーカル&デスヴォイスを乗せ、
重厚な迫力に包まれたサウンドを描き出す。随所にヴァイオリンが鳴り響く優雅な叙情性も覗かせつつ、
テクニカルなリズムチェンジを含むインストパートの知的な展開力は、よりスタイリッシュな聴き心地になった。
一方では、デスメタルとしてのブルータルな激しさもしっかり残していて、メリハリのあるアレンジ力も見事。
ヴァイオリンの活躍が多いので、今作はクラシカルな美意識を強めた感触で、じっくりと聴かせる部分もしばしば。
優雅背な構築力をデスメタルサウンドと巧みに融合させた、まさにハイブリッドなプログレデス強力作です。
ドラマティック度・・8 重厚度・・9 構築度・・9 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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Eluveitie 「Evocation II - Pantheon」
スイスのフォークメタル、エルヴェイティの2017年作
タイトル通り、2009年作の続編で、メタル要素のないケルト/フォークロック寄りの作品。
アコースティックギターにホイッスル、バグパイプ、フィドルにハーディ・ガーディなどの素朴な音色に
女性ヴォーカルを乗せた優美なフォークロックサウンド。エレキギターは使われていないのだが、
躍動感あるドラムに、多数のアコースティック楽器を乗せた音の厚みと説得力はさすがというところ。
2~4分前後の小曲をメインに、SEや語りなどを挿入しながら、コンセプト的な流れで連なる構成もよいですね。
ファビエネ嬢の歌唱の表現力も含めて、メタルに疲れた耳にはうってつけの幻想フォークロックの傑作。
ドラマティック度・・8 メタル度・・5 フォークロック度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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WINTERSUN「The Forest Seasons」
フィンランドのペイガンメタル、ウインターサンの2017年作
ENSIFERUMのJARI MAENPAA率いるバンドで、3作目となる本作は、タイトル通り、森の四季を描いた、
それぞれが12~14分の大曲を連ねた四部構成のアルバム。美麗なシンセアレンジにダミ声ヴォーカルを乗せ、
流麗なギターフレーズとともに聴かせるサウンドは、暴虐さよりもミドルテンポを主体にした味わいで、
ARCTURUS
にも通じる知的な構築力が光っている。ときにフォーキーなメロディも覗かせつつ、
アルバム後半の「秋」には、ブラスト疾走も含んだシンフォニック・ブラックメタルとしての激しさも現れる。
ラストの「冬」のメランコリックな味わいもよいですね。北欧らしい寒々しい空気感を描く力作です。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・7 美麗度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Wolfhorde 「Towards the Gate of North」
フィンランドのフォーク・メロデス、ウルフホードの2016年作
シンフォニックで優美なイントロから始まり、土着的な旋律にダミ声ヴォーカルを乗せて疾走開始、
フィンランドのバンドらしいきらびやかなシンセアレンジに、知的な構築力も覗かせるサウンドだ。
古き良きメロディックデスメタルの感触と、フォーキーなクサメロが合わさったスタイルは、重すぎず激しすぎずと
適度な聴きやすさがあって、フォーク化したチルボドという感じで初心者にもライトに楽しめるだろう。
反面、フォークメタルとして土着的な神秘性というものは薄く、メロデスとしても魅力が物足りない気もする。
今後は楽曲におけるメロディのフックや、アレンジの質を高めていってもらいたい。
ドラマティック度・・7 疾走度・・7 フォーキー度・・7 総合・・7.5
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Darkestrah 「Turan」
キルギスタンのペイガン・ブラックメタル、ダーケストラの2016年作
前作は女性によるダミ声Voであったが、本作ではすでに脱退していて、ギターとベースも新たに加わっている。
美麗なシンセに包まれた神秘的なイントロから、ツインギターとダミ声ヴォーカルを乗せて激しくブラスト疾走、
シンフォニックかつ幻想的なペイガン・ブラックメタルを聴かせる。ときにヴァイオリンも鳴り響く優雅な感触と、
ブラックメタルとしてのプリミティブな土着性と迫力が合わさって、激しくも美しいサウンドを描き出す。
9分、10分という大曲を主体に、スローパートも含んだ緩急ある展開力でドラマティックに聴かせるところは
さすが6作目というキャリアである。シンフォブラックとしての音の厚みも前作以上。説得力十分の力作だ。
ドラマティック度・・8 ペイガンブラック度・・9 幻想度・・8 総合・・8
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Folkearth 「Balder's Lament」
多国籍フォークメタルプロジェクト、フォークアースの2014年作
2004年に始まったこのプロジェクトも、すでに10年をかぞえ、すでに12作目となる。
クサメロなギターにダミ声ヴォーカルを乗せて疾走する、アグレッシブなサウンドに
勇壮なコーラスや女性ヴォーカルが加わって、ENSIFERUMあたりにも通じる聴き心地。
随所にアコーディオン、ヴァイオリン、リコーダーなどのフォーキーな音色もアクセントになっていて、
激しくもエピックなスケール感を匂わせる。このシリーズの中でもかなりクオリティの高い部類だろう。
ドラマティック度・・8 ペイガン度・・9 クサメロ度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Brain Tentacles
アメリカのアヴァン・メタル、ブレイン・テンタクルスの2016年作
YAKUZA、MUNICIPAL WASTE、KEELHAULといったバンドのメンバーが集結、軽妙なリズムに
サックスがフリーキーに鳴り響く、ジャズメタル的なアプローチの異色のインストサウンドを聴かせる。
3~4分前後の小曲を主体に、9分を超える大曲では、シンセも加わっても、どことなくスペイシーで
サイケなスケール感も覗かせる。ギターレスなので、メタル的なヘヴィさは控えめだが、
その分、これでもかとサックスが鳴りまくり、グルーヴィなベースの存在感も際立っている。
曲によってはハードコア的な激しさもあるのだが、やはりサックスのおかげでほどよい脱力感に包まれる。
ドラマティック度・・7 サックス度・・8 アヴァンギャル度・・8 総合・・7.5
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GENTLEMANS PISTOLS 「HUSTLER'S ROW」
イギリスのハードロック、ジェントルマンズ・ピストルズの2016年作
2007年にデビュー、前作はいかにも70年代スタイルの英国ロックであったが、3作目となる本作も
往年のヴィンテージ感に包まれたハードロックサウンドを聴かせる。ブルージーな渋みと、
キャッチーなノリの良さが合わさった感触は、よりシンプルになった分、間口が広がったともいえる。
FIREBIRDのビル・スティアを含むツインギターが、骨太のサウンドを作り出していて、どっしりとした
音の説得力となっている。これという目新しさはないが、心地よくオールドロックに耳を傾けられる。
ドラマティック度・・7 オールドロック度・・8 ブルーズロック度・・8 総合・・8
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Menace Ruine 「Venus Armata」
カナダのサイケ・ドゥームメタル、メナス・ルーインの2014年作
前作はポストブラックとドローンが合わさったような、まさに呪術的な力作であったが、
5作目となる本作も、鐘の音が鳴り響くようなイントロから、魔術的な非現実世界に入り込める。
1曲目は延々と11分間も単調なドローンなのであるが、妖しい女性ヴォーカルの歌声も加わって、
雰囲気モノとしての強固な空気感は素晴らしいというほかない。チャーチオルガンが響きわたる中、
魔女めいた女性声が乗る2曲目などは、JACULAばりにカルトな魔女系サウンドでウットリである。
その後も、秘教的で殺伐として艶めいた、倦怠の魔女系(サイケ)アンビエントが繰り広げられる。
ラストは16分に及ぶ大曲で、ロックもドゥームも超越した、ただただ妖しい聴き心地。もう最高です。
ドラマティック度・・7 妖しげ度・・10 魔女度・・9 総合・・8
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Indian 「From All Purity」
アメリカのドゥームメタル、インディアンの2014年作
ドローン気味のギターリフに、絶叫するヴォーカルを乗せ、邪悪な暗黒性に包まれたスラッジ・ドゥームサウンド。
展開らしい展開というのはあまりなく、6~7分前後の楽曲は、ノイジーなギターと咆哮するヴォーカルによる、
不気味な空気感を味わうという感じで、ノイジーなギターが延々と垂れ流されるナンバーなどもあり、
雰囲気モノが苦手な方にはややツラいかもしれない。迫力あるスラッジに圧殺されたいような方はどうぞ。
ドラマティック度・・7 スラッジ・ドゥーム度・・8 重厚度・・8 総合・・7
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The Vintage Caravan 「Voyage」
アイスランドのヴィンテージロック、ヴィンテージ・キャラバンの2014年作
G&Vo、B、Drというトリオ編成のバンドで、メンバーは若手ながらいかにも70年代的なアナログ感に包まれた
オールドなハードロックをやっている。ドカドカとしたドラムにキャッチーな歌メロを乗せた、LED ZEPPELINにも通じる
骨太のロック感触をまとわせつつ、ときにブルージーで、メロディックなギターのセンスもなかなかのもの。
単なる古めかしいロックというだけでなく、70年代英国的な空気感までも再現するようなセンスと演奏力も見事。
12分におよぶ大曲では、サイケでドゥームな感触も含んだメリハリある展開力で濃密にたたみかける。
ドラマティック度・・8 アナログ度・・8 ヴィンテージ度・・9 総合・・8
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CINQ ELEMENT「Shining」
日本のヘヴィロック、サンク・エレメントの2013年作
2012年にミニアルバムでデビュー、本作は初のフルアルバムとなる。硬質なギターを乗せたヘヴィさと、
女性ヴォーカルの歌声を乗せたキャッチーなメロディアス性が合わさった、わりと聴きやすいサウンド。
Maju嬢のヴォーカルは鼻にかかったようなキュートな声質で、バックのヘヴィさに埋もれがちではあるが、
個人的には嫌いではない。一方、モダンなヘヴィロック風味のナンバーや激しい疾走ナンバーは、
正直、ヘヴィネスと歌とのミスマッチ感があって、舌足らずの彼女の歌声には合っていない気もする。
この路線で行くなら、今後もヴォーカルに対しては厳しい声が付かざるを得ないだろう。
個人的には、無理にメタルにせず、よりメロディックな方向に舵をきってよい気もする。
メロディック度・・7 モダンヘヴィ度・・7 女性Vo度・・7 総合・・7.5
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2/13
春遠からじ(39)


Pain of Salvation 「In The Passing Light of Day」
スウェーデンのプログレッシブメタル、ペイン・オブ・サルヴェイションの2017年作
1997年デビュー、初期のテクニカル路線からしだいに内的な深化をとげ、ここ数作では70年代的な
オールドロックへと傾倒していたが、9作目となる本作はのっけから硬質なギターを乗せたヘヴィなサウンドで、
初期の頃に回帰したようなテクニカル性と、ProgMetalとしての知的な構築センスが蘇ってきている。
物語を語るような、ダニエル・ギルデンロウの表現豊かな歌声を乗せ、メリハリある展開力で大曲を構築しつつ、
一方では、ヴァイオリンやブラスを含んだ叙情性や、ゆったりともの悲しい哀愁を感じさせるナンバーもあって、
コンセプト的な世界観をじっくりと描いてゆく。派手なインパクトがない分、キャリアのあるバンドらしい音の説得力で
ラストの15分の大曲まで、大人の味わいを含んだ重厚なサウンドが楽しめる。ここ数作で離れていたリスナーもチェックです。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 大人の哀愁度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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VIPASSI 「SUNYATA」
オーストラリアのテクニカルメタル、ヴィパシーの2017年作
NE OBLIVISCARISのメンバーも参加するバンドで、変則リズムたっぷりのテクニカルなインストサウンドで、
デスメタル的な激しさも含みつつ、Djent系の優雅なアンサンブルとミステリアスな空気感が合わさった聴き心地。
いわゆるヘンタイ系のテクニカルメタルなのだが、アヴァンギャルド過ぎず、ダークな感触を保っている点では
わりと聴きやすい部類だろう。随所に叙情的なパートを含んだメリハリのある知的な展開力も良いですね。
全7曲で、30分という短さだが、濃密なテクニカルメタルという点では、ちょうどよいも長さかも。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・8 ヘンタイ度・・7 総合・・7.5
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Watchtower
「Concepts of Math: Book One」
アメリカのテクニカルメタル、ウォッチタワーの2016年作
80年代に2作を残して消えた、伝説のテクニカルメタルバンドがじつに27年ぶりに復活作を完成させた。
ロン・ジャーゾンベクを含む往年のメンバーが集結、サウンドの方もかつてを思わせる変則リズムと
テクニカルなキメの応酬で、せわしないインストパートとヴォーカルを乗せたヘンタイ気味の感触も往年のままだ。
現在ではこの手のバンドも増えてきているので、もはや新鮮さというのはないのだが、スラッシュメタルをルーツにした
オールドスタイルのテクニカルメタルという点では、じつに楽しい聴き心地。全5曲29分のミニアルバムながら、
軽やかで濃密な聴き心地は、まぎれもなくウォッチタワーそのものだ。フルアルバムの完成に期待したい。
メロディック度・・7 テクニカル度・・8 ヘンタイ度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Sacred Steel「Heavy Metal Sacrifice」
ドイツのメロディックメタル、セイクレッド・スティールの2016年作
1997年デビュー、すでにキャリア20年におよぶバンドであるが、サウンドの方は変わらぬスタイルで、
ツインギターのリフとハイトーンヴォーカルを乗せて疾走する、古き良き王道のジャーマンメタル。
パワフルすぎず、クサメロ過ぎずという絶妙の聴き心地は、頑固一徹のメタル愛を感じさせる硬派さと、
マイナーな微笑ましさに包まれたB級感触がほどよくブレンドされていて、けっこう心地よいのである。
今作ではミドルテンポのナンバーもどっしりとした味わいで、これまでのヘナチョコ感は払拭されていて、
良い意味でのオールドな90年代スタイルを貫いた、Grave Diggarばりに強力な正統派メタルですよ。
ドラマティック度・・7 正統派度・・8 ジャーマン度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Neopera 「Destined Ways」
ドイツのシンフォニックメタル、ネオペラの2014年作
男性デス声&ノーマル声、女性Voという3人のヴォーカルを含む編成で、壮麗なシンフォニックアレンジと
男女ヴォーカルを乗せた、THERIONにも通じるサウンド。オペラティックなソプラノヴォーカルの力量もあって、
優雅なスケール感とともに音の説得力もなかなかのもの。適度にモダンなヘヴィネスとクラシカルな美意識が同居して
デス声と女性声の対比によるダイナミズムも含めて、華麗にしてドラマティックな世界観を描いてゆく。
楽曲そのものに新鮮味というのは薄いものの、オペラティックメタルとしての優美な味わいと重厚なスケール感で、
最後までじっくり楽しめるだけのクオリティの高さがある。今後の飛躍に期待大の男女声シンフォニックメタルですよ!
シンフォニック度・・9 壮麗度・・9 セリオン度・・8 総合・・8
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Paco Ventura「Black Moon」
スペインのメロディックメタル、MEDINA AZAHARAのギタリスト、パコ・ヴェンチュラのソロ。2015年作
メディナ・アザーラといえば、1980年デビューの大ベテラン、スパニッシュ・ハードロックの大御所である。
本作は、そのギタリストの初ソロアルバムで、ブルース・キューリック(KISS)、ローランド・グラポウ(HELLOWEEN)、
ジョン・ノーラム、パトリック・ロンダット(ELEGY)、キコ・ルーレイロ(ANGRA)といったギタリストが参加、
スペイン語の歌声にオルガンが鳴り響く、わりとオールドな味わいの様式美ハードロックを聴かせる。
スパニッシュな哀愁を感じさせるメロディセンスと、サウンドの説得力はさすがベテランらしい空気感である。
アルバム後半には、ヨラン・エドマン、ジョー・リン・ターナー、ファビオ・リオーネ(ANGRA)がヴォーカルで参加、
それぞれにパワフルな歌声を乗せた正統派のメタルナンバーが楽しめる。
メロディック度・・8 様式美度・・8 スパニッシュ度・・8 総合・・8
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SHORES OF NULL「BLACK DRAPES FOR TOMORROW」
イタリアのゴシック・ドゥームメタル、ショーズ・オブ・ナルの2016年作
前作はOPETH+Swallow the Sunというような好作たったが、本作もツインギターのリフに
朗々としたヴォーカルを乗せ、メランコリックな味わいの重厚なゴシック・ドゥームを聴かせる。
随所にデス声も加わったダークな迫力と、ギターの奏でる泣きのフレーズとともに、
湿り気のある叙情的な味わいも含んだサウンドで、楽曲の魅力も前作以上の出来である。
どっしりとした重厚さとダークで物悲しい叙情性が同居した、なかなかの好作です。
ドラマティック度・・8 メランコリック度・・8 重厚度・・8 総合・・8
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The Knell 「harm」
イスラエルのゴシック・ドゥームメタル、ネルの2007年作
ツインギターにシンセを含む5人編成で、重厚なギターに囁くような低音ヴォーカルを乗せた、
スローでフューネラルなドゥームメタル。オルガンなどを含むシンセがゴシック的な耽美さをかもしだし、
初期のMy Dying Brideにも通じる、物悲しくメランコリックな空気感が味わえるサウンドだ。
楽曲はほとんどが7~8分前後と長めで、わりと淡々としているので、もう少し荘厳な迫力か、
メロディのフックがあればとは思うが、逆に言えば、これこそがゴシック・ドゥームたるものなのだろう。
ドラマティック度・・7 耽美度・・8 重厚度・・8 総合・・7.5

WitchSorrow 「No Light Only Fire」
アメリカのドゥームメタル、ウィッチソロウの2015年作
2010年デビューで本作が3作目となる。ヘヴィなギターリフを乗せた重厚なサウンドだが、
スロー過ぎないミドルテンポのノリもあって、わりとオールドなメタル感触も感じさせる。
一方ではスローテンポのフューネラルな暗黒性とヘヴィネスは、甘さの無い硬派な空気感を描いていて、
説得力ある音の迫力に包まれている。10分前後の大曲も多いのだが、スローからミドルへのテンポチェンジなどを含めて、
一方調子ではない構築性もあるので飽きさせない。初期のCATHEDRALをより重くしたような力作ドゥームです。
ドラマティック度・・7 ドゥーム度・・9 重厚度・・9 総合・・8
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Mammoth Storm 「Fornjot」
スウェーデンのドゥームメタル、マンモス・ストームの2015年作
DRACONIANのメンバーも参加するバンドで、ドローン気味のギターリフにダミ声ヴォーカルをのせ、
どっしりとした重厚なドゥームメタルを聴かせる。スローテンポのドゥームを主体に、適度に叙情的な部分も覗かせつつ、
ミステリアスな神秘性を含んだスケール感もあって、10分前後の大曲をリフレインとともにじっくりと描いてゆく。
これという新鮮味はないものの、音の迫力と強度が、ドゥームメタルとしての幻想性をしっかりと生み出していて、
繰り返されるリフに耳を傾けながら、しだいにトリップというか、アストラルな気分に入り込めたりするのである。
重厚にして荘厳な空気感に浸れる、これぞドゥームメタル!という力作です。
ドラマティック度・・8 ドゥーム度・・9 重厚度・・9 総合・・8
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ABORYM 「Shifting.Negative」
イタリアのサイバー・ブラックメタル、アボリムの2017年作
1999年にデビュー、かつては元EMPERORのFAUSTやMAYHEMのメンバーが参加していたことでも知られる。
7作目となる本作は、よりエレクトロなアレンジを強めていて、デジタルなシンセに硬質なギターが重なり、
モダンでインダストリアルなサウンドを聴かせる。ブラックメタル的な激しさは薄めで、囁くようなヴォーカルに
ときにメランコリックなフレーズを奏でるギターを乗せた薄暗い叙情性は、むしろゴシックメタル的でもあるが、
一方ではアヴァンギャルドな展開や、知的なアレンジセンスも感じさせ、一筋縄ではいかない。
ドラムが打ち込みなので、激しいブラストパートも暴虐さはさほど感じない。インダストリアルなブラックが好きな方はどうぞ。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・6 インダストリアル度・・8 総合・・7.5
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In Flames 「Siren Charms」
スウェーデンのメロディック・デスメタル、イン・フレイムスの2014年作
1994年のデビューから本作で11作目となる。モダンなヘヴィロック調だった前作の流れを汲んだ作風で、
適度にメロディックなギターフレーズとエレクトロなシンセアレンジに、マイルドなヴォーカルを乗せた、
メタルコア風味の聴き心地。楽曲は3~4分前後とシンプルで、曲によってはキャッチーな感触もあって聴きやすく、
スクリームヴォイスを乗せて、かつてのメロデス的なギターリフも現れたりと、単なるヘヴィロックという以上には
クオリティが高いのでわりと楽しめる。ほどよい激しさも含んだモダンなメタルというイメージなら入りやすいかと。
メロディック度・・7 メロデス度・・6 モダン度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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2/2
期待の日本産プログレメタル登場!(27)


ALEVAS「Greed of White Lily」
日本のプログレッシブメタル、アリーヴァスの2018年作
2016年に結成された、東京の新鋭プログレッシブ・メタルバンド。テクニカルな展開美とダークな世界観、
随所にクラシカルなオーケストラアレンジに包まれた優雅な叙情性が融合したハイブリッドなサウンド。
モダンでアグレッシブなヘヴィネスと、日本語歌詞による歌声を乗せたドラマティックな聴き心地に加え、
扇情的なフレーズを奏でるギターは、さすが音大出身というメロディのセンスと確かな技巧を感じさせる。
後半の16分の大曲は、プログレッシブなシンセアレンジと変拍子リズムによる、DREAM THEATER風味に、
シアトリカルなヴォーカルを乗せた日本的な情感が合わさって、スリリングな展開力がまた素晴らしい。
メロデイとテクニカルのバランスのとれた、ダークでスタイリッシュな日本産プログレメタル期待の新鋭である。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 楽曲センス・・8 総合・・8
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THOR 「Beyond The Pain Barrier」
カナダのヘヴィメタル、ソー(トール)の2017年作
1978年にデビュー、マッチョな風貌で話題となったJon Mikl Thor氏によるプロジェクト。本作は2年ぶりとなる19作目。
名前通り、雷神トールを描いたジャケからしてエピックな雰囲気たが、サウンドの方もほどよくマイナー臭さを残した、
オールドスタイルの正統派ヘヴィメタル。メロスピ的な激しい疾走ナンバーから、ミドルテンポのわりとキャッチーなナンバーまで、
80年代テイストのいたってありがちなメタルサウンドなのがいっそ微笑ましい。Thorのヴォーカルはお歳のわりには頑張っているが、
MANOWARあたりのパワフルさに比べたら、バックのサウンドも含めてアマチュア感がにじみ出てしまっていて、少々つらい。
よっぽどのB級メタルファン以外には薦められないですが、ラスト曲はこれぞエピックメタルというナンバーで救われました。
ドラマティック度・・7 古き良き度・・8 正統派度・・8 総合・・7
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Twilight Force 「HEROES OF MIGHTY MAGIC」
スウェーデンのメロディックメタル、トワイライト・フォースの2016年作
前作もクサメロたっぷりの疾走メロパワの好作であったが、2作目となる本作もきらびやなシンセに、
伸びやかなヴォーカルとエピックなコーラスを乗せて疾走する、キャッチーかつ華麗なメロスピサウンド。
陽性のファンタジー色に覆われた雰囲気は、Power QuestDragonlandなどにも通じるかもしれないが、
こちらはより大仰でシンフォニック、クサいメロディを奏でるギターも含めた濃密さは天晴なほどである。
個性的な部分での新鮮さはさほど感じないが、この爽快な突き抜け方というのは、ファンには歓迎するところだろう。
10分を超える大曲も、とにかく壮麗でクサく盛り上げ、そしてどこまでもファンタジックという。
映画的なストーリー性も含めて、まるでRHAPSODYがメロスピ化したような濃密作ですわ。
シンフォニック度・・9 疾走度・・8 ファンタジック度・・9 総合・・8.5
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MIRACLE FLAIR 「ANGELS CAST SHADOWS」
スイスのシンフォニックメタル、ミラクル・フライアの2016年作
チェロ奏者を含む5人編成で、ヘヴィなギターに女性ヴォーカルの歌声を乗せ、
適度にモダンな感触とキャッチーなメロディアス性が同居したサウンド。
専任のシンセ奏者がいないので、シンフォニックな感触は希薄だが、メタルとしての重厚な味わいと
ヨーロピアンな薄暗い世界観をしっかりと描いている。紅一点、ニコル嬢の歌声は高すぎない中音域で
フェミニンな魅力の点では控えめだが、どっしりとしたバンドのサウンドにはよくマッチしている。
楽曲はすべて3~4分前後で、聴きやすいものの、魅力的なメロディやインパクトのある展開がいまひとつ弱い。
今後はゴシック寄りの質感を強めるのか、メロディを重視するのか、もう少し極端になってもよい気もする。
ドラマティック度・・7 重厚度・・7 女性Vo度・・7 総合・・7.5
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ALARION 「Waves Of Destruction」
オランダのシンフォニックメタルプロジェクト、アラリオンの2016年作
名前からしてAYREONの弟みたいだが、オランダ人ギタリストを中心にしたプロジェクトで、
THRESHOLDのダミアン・ウィルソンをはじめ、イレーネ・ヤンセン、ポール・グランドルフなど、
エイリオン関連のミュージシャンも参加。美しいシンセアレンジとメタリックなギターによる重厚なサウンドに、
ダミアン・ウィルソンを中心にしたパワフルなヴォーカルを乗せた、壮麗なシンフォニックメタルを聴かせる。
シンフォニックハード的な優美な叙情に包まれたナンバーや、女性ヴォーカルを乗せたナンバーなど、
全体的にそこそこ楽しめるのだが、楽曲自体に耳を惹きつけるフックや目新しいインパクトは乏しいので、
どこか物足りなさも感じる。ドラマティックなストーリー性を描くようなスケール感がもっと欲しいですね。
シンフォニック度・・8 壮麗度・・8 楽曲・・7 総合・・7.5
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Pagan's Mind 「Full Circle」
ノルウェーのプログレメタル、ペイガンズ・マインドのライブ。2015年作
すでにキャリア15年を超える中堅バンドで、本作は2014年アメリカ「ProPower Festival」でのステージを2D+DVDに収録。
きらびやかなシンセアレンジと重厚なギターに、パワフルなハイトーンヴォーカルを乗せたサウンドで、
どっしりとした聴き心地はアルバム同様。ProgMetalとしてのテクニカル性や派手な展開はさほどないので、
ミドルテンポの正統派シンフォニックメタルとしても楽しめるが、2パートに分かれた13分の大曲や、
後半の15分の大曲などは、メロディックな叙情性と緩急ある展開のインストパートが魅力的だ。
中堅バンドとしての音の説得力も含めて、合計150分超の濃密なステージでお腹いっぱい。
ライブ演奏・・8 テクニカル度・7 重厚度・・8 総合・・8
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Demon Lung 「A Dracula」
アメリカのドゥームメタル、デーモン・ラングの2015年作
アコースティックで牧歌的なイントロから始まりつつ、ヘヴィなギターリフが重厚に鳴り響き、
けだるげな女性ヴォーカルの歌声を乗せた、重々しいドゥームメタルが広がってゆく。
カルトで妖しい空気感と、メタリックなヘヴィネスが合わさった迫力のあるサウンドで、
神秘的な浮遊感に包まれた聴き心地は、叙情性は控えめながら説得力は十分。
Witch Mountainなどにも通じる、重量感のある本格派ドゥームメタルが楽しめる力作だ。
ドラマティック度・・7 ドゥーム度・・9 重厚度・・8 総合・・8
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Scorpion Child
アメリカのハードロック、スコーピオン・チャイルドの2013年作
アナログ感たっぷりのギターに枯れた味わいのヴォーカルを乗せた、いかにも70年代を思わせる、
ブルージーなハードロックサウンドで、まさしくLED ZEPPELINが蘇ったような聴き心地である。
4~5分前後のわりとシンプルなロックナンバーを中心に、現時点では個性的とは到底言えないが、
オールドロック、ツェッペリンへの愛を感じさせるという点では、その筋のロックファンには受けるだろう。
ラストのゆったりとした叙情ナンバーまで、ブルージーな哀愁に包まれたなかなかの好作品だ。
よりキャッチーで爽快な味わいになって進化&パワーアップする2作目も良いですぞ。
ドラマティック度・・7 古き良き度・・9 ツェッペリン度・・8 総合・・7.5
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Sabbath Assembly 「Restored to One」
アメリカのサイケ・ドゥームロック、サバス・アセンブリーの2010年作
1960~79年代に活動していたカルト教団「The Process Church of the Final Judgment」の思想をテーマにかかげ、
妖しい女性ヴォーカルの歌声を乗せた、Blood CeremonyPURSONを思わせる、ユルめの魔女系ドゥーム。
サイケ・ドゥームロックバンド、Jex Thothのヴォーカルでもある、ジェックス嬢のけだるげな歌声は、
いかにも妖しく倦怠的な空気感で、アナログ感たっぷりのアンサンブルによくマッチしている。
オルガンが鳴り響き、ときに叙情的なギターフレーズを乗せた、ドラマティックな雰囲気もよいですな。
カルトなヴィンテージロックとしても、女性声サイケロックとしても楽しめる。妖しい聴き心地に浸れます。
ドラマティック度・・8 ヴィンテージ度・・8 妖しさ度・・9 総合・・8
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Sabbath Assembly 「Ye Are Gods」
アメリカのサイケ・ドゥームロック、サバス・アセンブリーの2013年作
本作から、HAMMER OF MISFORTUNEWOLVES IN THE THRONE ROOMにも参加したJamie Myers嬢が新たに加入。
妖しい女性ヴォーカルを響かせる、カルトな魔女系サウンドはそのままに、ヴィンテージなドゥーム色が薄れ、
男性声の語りによるシアトリカルな空気感に、チェンバロが鳴り響く、耽美なゴシック感触が強まった。
アコースティカルなゴシックフォーク風のパートから、ハードなギターが加わったメタル質感も覗かせたり、
オルガンが鳴り響くユルめのキャッチーなロック風味もあったりと、今作は案外振り幅が大きいので、
カルトな暗さや迫力はさほど感じないのだが、のんびりと浸れる魔女系ネオフォークとしては良いですね。
ドラマティック度・・7 耽美度・・8 妖しさ度・・8 総合・・8
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Sabbath Assembly
アメリカのサイケ・ドゥームロック、サバス・アセンブリーの2016年作
メタリックなギターと女性ヴォーカルを乗せた、怪しげなゴシック・ドゥームメタルサウンドは、
これまでよりもヘヴィで重厚な作風となった。サバスルーツのオールドスタイルのドゥームメタル感触に
ダークな禍々しさを含んだサタニックでカルトな雰囲気を加え、メタリックな音の説得力がぐっと高まっている。
前作から加入した、Kevin Hufnagel (GORGUTS、DYSRHYTHMIA)の巧みなギターリフが随所に光っていて、
ときにテクニカルですらある演奏も聴きどころ。今作はわりとハードロック寄りのノリのあるナンバーも多く、
むしろ一般のメタルリスナーにも聴きやすいかもしれない。正しく魔女系ドゥームの王道というべき好作品。
ドラマティック度・・8 ドゥーム度・・8 妖しさ度・・8 総合・・8
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Jex Thoth
アメリカのサイケ・ドゥームロック、ジェックス・トースの2008年作
Sabbath Assemblyにも参加した女性Vo率いるバンドで、アナログ感たっぷりのギターに
ハスキーでけだるげな女性ヴォーカルを乗せた、ヴィンテージな魔女系ドゥームロック。
オルガンが加わった妖しい空気感に、ゆったりとしたスローテンポから唐突なリズムチェンジなど、
適度にマイナー臭いB級感もあって、どんよりとした音質も含めて、オールドでカルトなドゥームに浸れる。
ジェックス嬢の歌声は、抜群に上手くはないのだが、いかにも魔女めいた表現力が不思議な魅力となっていて、
このサウンドにはよくマッチしている。適度にサイケなユルサも含めて、わりとのんびり楽しめます。
ドラマティック度・・7 ドゥーム度・・8 妖しさ度・・8 総合・・7.5
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Jex Thoth「Blood Moon Rise」
アメリカのサイケ・ドゥームロック、ジェックス・トースの2013年作
今作もイントロ曲から魔女感たっぷりで、ジェックス嬢の歌声からしてカルトな雰囲気がぷんぷん。
どっしりとヘヴィなリフに、サイケ的な旋律を重ねるツインギター、浮遊感ある女性ヴォーカルを乗せた、
けだるくも妖しいドゥームサウンドには磨きがかかっていて、その世界観にどっぷりと浸れる。
もちろん、ドゥームメタルとしての重厚な迫力もしっかりとあって、オルガンを含むシンセアレンジに加え、
今作では随所にチェロも鳴り響く。ゆったりとした叙情的なナンバーも、表現力を増したジェックスさんの歌声が
幻想的な強度となっていて最後まで楽しめる。これぞ魔女系ドゥームという強力作だ。
ドラマティック度・・8 ドゥーム度・・8 妖しさ度・・9 総合・・8
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The Devil's Blood 「Come Reap」
オランダのサイケ・ドゥーム、デヴィルズ・ブラッドの2009年作
デビュー作となった、5曲入り27分のEPで、アナログ感に包まれたアンサンブルに女性ヴォーカルの歌声を乗せた、
ヴィンテージなサイケハードは、すでに確立されている。ヘヴィ過ぎないギターに、オルガンの音色が合わさり、
ヘタウマな女性声による良い意味でのマイナー臭さが、妖しい魔女系ロックの世界観を描いている。
のちのアルバムのような、プログレ的なスケール感はまだないが、ザラついた音質も含めてBlack Widowなどに通じる、
70年代ルーツの空気感がほどよいユルさになっている。10分を超えるラスト曲では、叙情的なギターも響かせながら
艶めいた女性ヴォーカルも加わって、浮遊感のある妖しくヴィンテージなサイケロックが楽しめる。
ドラマティック度・・7 ヴィンテージ度・・8 魔女系サイケ度・・8 総合・・7.5
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1/5
本年もよろしくお願い致します!(13)


Cradle of Filth 「Cryptoriana」
イギリスのシンフォニック・ブラックメタル、クレイドル・オブ・フィルスの2017年作
1994年デビュー、いまや世界的なエクストリームメタルの代表格ともなったこのバンド。
通算12作めとなる本作は、「ヴィーナスの誕生」をもじったジャケも印象的だが、サウンドの方は、
オーケストレーションを乗せた壮麗なアレンジとともに激しく疾走する、まさにクレイドル節全開。
ダニ・フィルスの絶叫ヴォーカルの迫力も全盛期に迫る迫力で、美しい女性コーラスとの対比で、
まさに美と醜を描き出す濃密な聴き心地である。メロディックなギターが耽美な味わいをかもしだし、
激しくブラスト疾走しながらも優美ですらあるというのは、単なるブラックの域を超えたバンドの世界観であろう。
ときにメロディック過ぎるメイデンばりのツインギターも含めて、初心者にも楽しめる出来でしょう。
むろん、2nd、3rdの頃のクレイドルが好きだった方も必聴。激しくも美麗な傑作デス。
ボーナストラックにANNIHILATORのカヴァーというのは意外だったが、ダニの歌声が案外ハマっている。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・8 耽美で壮麗度・・9 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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Ensiferum 「Two Paths」
フィンランドのヴァイキングメタル、エンシフェルムの2017年作
2001年にデビュー、MOONSORROWらとともに北欧ヴァイキングメタルを代表するバンド。
7作目となる本作も、壮麗なイントロからして、エピックなスケール感を漂わせ、クサメロのギターが加わり、
ダミ声ヴォーカルを乗せた武骨さと勇壮なコーラスとともに、重厚なヴァイキングメタルが広がってゆく。
女性アコーディオン奏者の奏でるフォーキーなメロディも取り入れながら、北欧らしいペイガンな神秘性と
激しくもパワフルなノリにメロディックなフックを同居させたアレンジは、さすがベテランの説得力である。
一方では、壮麗に疾走するナンバーなどは、Equilibriumにも通じるシンフォニックなメロスピ感触で楽しめる。
女性ヴォーカルをフロントにしたフォーキーなナンバーなど、メリハリある構成で最後まで捨て曲なしの傑作です。
ドラマティック度・・8 ヴァイキング度・・8 重厚度・・9 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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Bifrost 「Mana Ewah」
オーストリアのペイガン・ブラックメタル、ビフロストの2016年作
ツインギターのリフとダミ声ヴォーカルを乗せ激しくブラスト疾走、フォーキーなメロディを盛り込んだ
牧歌的なクサメロ要素と武骨な辺境性が、よいあんばいで合わさった、ペイガン・フォークメタルを聴かせる。
シンセをあまり使わずあくまでギターをメインにしたサウンドで、ブラックメタルとしての激しさを随所に覗かせつつ、
一方では、メロデス的な聴きやすいミドルテンポのナンバーもあって、マニア向け過ぎないのもよろしい。
個人的には、もう少し神秘的なスケール感があればと思うが、ツインギターの叙情メロディをたっぷり含んだ
フォーキーなメロデスというふうにも楽しめる。全体的にもクオリティの高さが光る好作だ。
メロディック度・・8 暴虐度・・7 ペイガン度・・7 総合・・8
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Ex Deo 「The Immortal Wars」
カナダのシンフォニック・デスメタル、イーエックス・デオの2017年作
KATAKLYSMのメンバーを中心にしたバンドで、古代ローマをテーマにした世界観とデスメタルを融合したサウンドで、
前作もなかなかの力作だったが、今作もジャケのイメージ通り、ハンニバルが戦象を率いたアルプス超えやザマの戦いなど
歴史的な場面をテーマにしたコンセプト作。ヘヴィなギターにシンフォニックなアレンジと、デス声ヴォーカルを乗せた重厚なサウンドは、
適度にメロディックな感触も含ませて、正統派メロパワのデスメタル寄りという雰囲気で、ドラマティックな世界観を描き出す。
壮麗な音の厚みと、戦いの場面を思わせるでエピックな勇壮な空気感も素晴らしく、まるで映画の一場面を思い起こさせるような
迫力あるメタルサウンドに引き込まれる。ヴォーカルはデス声ながら、楽曲自体は重ためのシンフォ・パワーメタルという趣なので、
正統派メロパワ好きにも楽しめるかと思う。適度に激しさもあり、前作以上に音の強度を感じる力作です。
ドラマティック度・・8 エピック度・・9 重厚度・・9 総合・・8
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ANCIENT MYTH「ABERRATION:PT」
日本のシンフォニックメタル、エンシェント・ミスの2016年作
日本のフィメール系シンフォメタルの中ではすでに中堅というべき存在で、本作は欧州でのデビュー盤であり、
過去曲のリアレンジを含むベスト盤的な作品。美麗なシンセアレンジとテクニカルなギターを乗せて疾走する、
メロスピ的なシンフォニックメタルで、凛とした女性ヴォーカルの歌声とともに、優雅な美意識に包まれたサウンドは、
デビューから一貫している。初期に比べて演奏力、楽曲アレンジの質が向上し、本作では録音の良さも含めて
ダイナミックな聴き心地が増したことで、世界レベルのシンフォニックメタルとも遜色ないところにまで来つつある。
楽曲も粒ぞろいで疾走曲もたくさん。エンシェント初体験の日本のリスナーも、本作から入るのがよいでしょう。
シンフォニック度・・8 疾走度・・8 優雅度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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WINDZOR 「ACCEPT THE FOLKLORE OF GUARDIAN'S FLAME」
日本のシンフォニックメタル、ウインザーの2016年作
女性Vo、女性シンセ奏者を含む5人編成で、前作は古き良きスタイルの正統派メタルという好作だったが、
本作はのっけから壮麗なイントロで幕を開ける。シンフォニックなシンセアレンジに様式美テイストのギター、
女性にしてはパワフルな声質の英語の歌声を乗せ、ファンタジックな世界観に包まれたサウンドが広がってゆく。
適度な疾走感とオールドな様式美テイストに、シンフォニックな音の厚みを加えたという聴き心地で、
正統派のジャパメタを好む方にも対応。FATIMA HILLをきらびやかにした感じというと分かりやすいか。
全体的にも高品質な作品であるが、突き抜けるようなラーチューンがあれば、さらに飛躍できるだろう。
ドラマティック度・・8 シンフォニック度・・8 女性Vo度・・7 総合・・7.5
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DIVINE WIND 「FRONT CRASH -最前線の激突」
日本のメロディックメタル、ディヴァイン・ウインドの2014年作
まるでアキバ系の同人ソフトのようなジャケが恥ずかしくて一般のメタラーは敬遠する方も多いだろうが、
ネオクラシカルなギターとハイトーンヴォーカルを乗せて疾走する、きらびやかなメロスピサウンドで、
マシンガンのようなドラムはドラフォー以上に速くてびっくりする。音質がラウドなのがいかにも自主制作らしいが、
甲高いハイトーンヴォーカルに、バンドの演奏力もわりとしっかりしていて、ただのアマチュアの域は超えている。
日本語の歌メロはわりと古き良きジャパメタやV系メタルの感触もあって、キャッチーなクサさがわりと楽しめる。
全22曲入り、79分という長さも凄いが、それが定価\1000というのも、まさに同人音楽並みのコストパフォーマンス。笑
メロディック度・・8 疾走度・・9 ネオクラ度・・8 総合・・7.5
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ZDAN「Svietlaja Pamiac, Viecny Spako」
ベラルーシのデプレッシブ・ゴシック・ブラックメタル、ズダーニの2017年作
日本語で幽霊を意味する名をもつというバンド。美しいシンセアレンジに重厚なギターと
泣き叫ぶような女性ヴォーカルの歌声を乗せた、ゴシック的な耽美な世界観と、
絶望的な悲哀が同居したサウンド。美麗なシンセアレンジと、メロウなギターフレーズは
ブラックメタルというよりは、どちらかというとシンフォニック・ゴシックの感触で、
楽曲そのものは展開力はあまりなく、雰囲気モノとしてぼんやりと聴くのがよいのだろう。
ヒステリックに叫びまくる女性ヴォーカルがやや耳障りながら、この路線というのは今までにない、
新しいデプレ・ゴシックといえるだろう。泣き叫ぶ女性声に耳が癒されるか、疲れるかはアナタ次第。
シンフォニック度・・8 ゴシック度・・8 デプレ度・・8 総合・・7.5
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Tomorrowillbeworse 「Down the Road of Nothing」
イギリスのポストブラック、トゥモロウィルビーワースの2013年作
ケノシス氏による個人ユニットで、ノイジーかつヘヴィなギターにダミ声ヴォーカルを乗せ、
ダークで不穏な空気感を描くサウンド。同じく独りポストブラックのCAINAなどに比べると、
疾走する激しさはあまりなく、ずっしりとしたベースとともにデプレッシブな暗鬱さが強めなので、
ブラックメタルの激しさ求める方には向かないが、ドゥーミィな闇に包まれた重厚な作風には、
吸い込まれるような迫力と説得力がある。強烈なインパクトはないものの、ミドルテンポで
メタリックなノリのあるナンバーなど、デプレッシブ初心者にもわりととっつき安い内容かもしれない。
ドラマティック度・・7 暗黒度・・8 重厚度・・8 総合・・7.5
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Kathaarsys 「Verses in Vain」
スペインのペイガン・ブラックメタル、カタールシスの2008年作
女性ベース奏者を含む3人編成で、本作は、ACT I & II に分かれたCD2枚組の大作。
Discは19分、16分、13分、Disc2は15分、20分という、大曲5曲の構成で、語りの入った怪しげなイントロから、
ドゥーミィなギターリフと男性デス声&ノーマルヴォーカルを乗せ、ゆったりとゴシックメタル的に始まりつつ、
しだいにデスメタル的な激しい疾走パートが現れて、フォーキーとまではいかない叙情性も含んだ緩急ある展開力で聴かせる。
随所にブラストするブラックメタル要素もあるのだが、邪悪な暴虐性は薄めで、さりとてペイガンメタルというほどの土着性もないので、
悪く言えばどっちつかずの方向性。曲が無駄に長いわりにはメロディの魅力が乏しいので、盛り上がりにも欠けるという。
大作を作り出した意気込みは買うが、楽曲の練り込みとともに、リフやフレーズひとつひとつの扇情力を高めてもらいたい。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・6 叙情度・・7 総合・・7.5
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Yearning 「Frore Meadow」
フィンランドのゴシックメタル、ヤーニングの2001年作
過去2作も耽美派ゴシックの力作であったが、3作目となる本作は、わりとアップテンポな1曲目から、
SENTENCEDあたりにも通じる雰囲気だが、マイルドなヴォーカルを乗せたメランコリックな雰囲気は、
いかにもフィンランドのバンドらしい。ツインギターによる泣きのフレーズにうっすらとしたシンセが合わさり、
メリハリのあるリズムチェンジを含んだ構築力というのは、他のバンドとは一線を画した個性でもある。
重すぎず、暗すぎない世界観に、ときにシンフォニックといってもよいほどの美麗なシンセアレンジも覗かせ、
随所に現れる扇情的でメロウなギターフレーズも、叙情性を好むリスナーにはうっとりであろう。
一転してラスト曲などは、妖しくアンビエントなノイズミュージックで、アヴァンギャルドなセンスも感じさせる。
ドラマティック度・・7 ゴシック度・・8 メランコリック度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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AGORA 「Zona De Silencio」
メキシコのプログレメタル、アゴラの2005年作
ツインギターにシンセを含む6人編成で、きらびやかなシンセにヘヴィなギターと、
スペイン語のハイトーンヴォーカルを乗せ、モダンな構築センスで聴かせるProgMetal。
音質はややラウドながら、演奏自体はテクニカルなアンサンブルとキャッチーなメロディアス性で、
マイナー臭さというのはさほど感じさせない。楽曲も5分前後が中心で、わりとシンプルな作風で、
モダンな雰囲気のナンバーの中、アコースティックを用いたスパニッシュな哀愁を感じさせるパートなどもなかなか魅力的。
メロディと技巧を同居させた厚みのあるサウンドとスタイリッシュな構築力で描かれる、メキシカンな高品質作です。
メロディック度・・8 テクニカル度・・7 スタイリッシュ度・・8 総合・・7.5
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AGORA「Segundo Pasado」
メキシコのプログレメタル、アゴラの2007年作
重厚なツインギターの重なりと美しいシンセアレンジ、伸びやかなスペイン語のヴォーカルを乗せ
適度にテクニカルでキャッチーなProgMetalサウンドで、今作も4~5分前後の楽曲を主体に、
シンプルなノリの良さとメロディックな感触で、随所に知的な技巧性を織り込んだ聴き心地。
ツーバスのドラムがややうるさめではあるが、ツインギターによる叙情的なフレーズと、
きらびやかなシンセによるインストパートも耳心地よく、スパニッシュな歌声が哀愁を乗せる。
全体的にクオリティは高いのだが、あとはドラマティックな大曲などがあればと思う。
メロディック度・・8 テクニカル度・・7 スタイリッシュ度・・8 総合・・7.5
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