ファンタジックメタル特集



HR/HMにおいて、ファンタジー性や、エピックな世界観というものは古くから使われてきたモチーフである。
80年代初頭、イギリスではSAXONDIOMAGNUM、アメリカではMANOWARVIRGIN STEELEなどを筆頭に、
さらにはCIRITH UNGOLMANILLA ROADといったカルトなバンドもマニアの間では密かに認知を得ていたし、
Meat LoafSAVATAGEなどはロックオペラの作風で、HR/HMをドラマティックに演出することを巧みになし遂げた。
80年代後半には、ジャーマンメタルのムーブとともにHELLOWEENが登場、のちのメロディック・スピードメタルの基礎を作り上げる。
エピックな雰囲気をたたえたATTACKや、海賊をトレードマークにしたRUNNING WILDなど、個性的なバンドも多かったが、
その中でも本格的なコンセプトとしてのファンタジー性を作品に持ち込んだのは、やはりBLIND GUARDIANであったろう。
トールキンの物語に傾倒し、その世界をメタルで再現するという、サウンドそのものをより重厚な質感へと深化させたのだ。
90年代後半には、RHAPSODYの登場で、大仰きわまりない、映画的なまでのシンフォニックメタルというものが可能であることをまざまざと見せつけた。
そうして、現在ではDARK MOORFairylandなど、世界各国におけるシンフォニックメタル、エピックメタルのムーブはますます勢いを増し、
「指輪物語」であったり、「アーサー王伝説」であったり、あるいはオリジナルのエピックストーリーを描き出すバンドたちが続々と現れている。
ここでは、そうした物語性を持った、ファンタジーメタル、エピックな世界観を押し出した作品たちを紹介したい。


                                            緑川 とうせい


◆ジャーマンメタル全盛期

HELLOWEEN「Keeper of the Seven Keys PartU
ジャーマンメタルの代表格、ハロウィンの3rd。1988年作。
前作と対になる「守護神伝」の第二章で、イントロの高揚感とともに、名曲“Eagle Fly Free”でもうすでにノックアウト。
伸びやかなマイケル・キスクの歌声を乗せて、メロディアスに疾走するこの曲は、後のいわゆるキーパーフォロワーたちを
星の数ほど生み出すことになる。楽曲は前作以上にバラエティに富んでおり、コミカルな佳曲“Dr.Srein”や
明快なハードロックナンバー“I Want Out”、さらにはドラマティックな疾走曲“March of Time”と聴き所は多いが、
なんといってもタイトル曲である“Keeper of the Seven Keys”の、物語の如き壮大なドラマ性には圧倒される。
現在も多くのファンがこのアルバムを最高作に挙げるのもうなずける。まさしく歴史的な傑作といえるだろう。
メロディアス度・・9 疾走度・・8 ドラマティック度・・10 総合・・9
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BLIND GUARDIANSomewhere Far Beyond
ジャーマンメタルのベテラン、ブラインド・ガーディアンの4th。1992年作
本作こそが初期ブラガーの最高傑作。まずこの幻想的なジャケットからして胸が踊る。
アコースティカルなイントロから続く“Time What is Time”の激しさ、ダイナミックさにまずやられる。
本作あたりからハンズィのヴォーカリストとしての成長も感じられ、世界観を歌い上げる説得力が加わった。
続く“Journey Through the Dark”の疾走感に拳をかざし、“Theatre of Pain”のクラシカルさに浸り、
“The Quest for Tanelorn”のサビでの大合唱、“The Bard's Song”では吟遊詩人の気分になって、
ファンタジーの世界にどっぷり。そして極めつけは、7分を越える“Somewhere Far Beyond”の
ドラマティックさに悶絶。曲ごとの密度も濃く、構成的にも完璧なファンタジックメタル作品である。
ドラマティック度・・9 疾走度・・8 ファンタジック度・・9 総合・・9
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ATTACK「Destinies of War」
ジャーマンエピックメタルバンド、アタックの4th。1989年作
ギター、ベース、ドラムにシンセも弾きこなす、リッキー・ヴァンヘルデンを中心に、
戦いに赴く戦士を描くようなエピックな世界観をジャーマンメタルに融合させた。
イントロから続くドラマティックな疾走曲“Wonderland”は、まさしくエピックメタルの王道、
キャッチーなクサメロを含んで、力強くないハイトーンヴォーカルとツインギターでたたみかけます。
9分を超える“Death Rider”あたりも名曲といってもよい出来で、ファンタジックな勇壮さにしびれます。
ドラマティックな“Blind Man”、軽快でキャッチーな“Way out of Hell”など好曲多数の力作。
メロディアス度・・8 疾走度・・7 エピック度・・8 総合・・8
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STORMWITCH
「War Of The Wizards」
ドイツのメタルバンド、ストームウィッチの6th。1992年作
1984年デビューという、キャリアではHELLOWEEN以上のベテランだが、知名度はからっきし。
私自身、これを輸入盤でジャケ買いしたのがマイナージャーマンメタル道傾倒へのきっかけだった。
ツインギターで軽快に聴かせる1曲めからしてメロディックかつキャッチーで素晴らしい。
パワフルさのないハイトーンヴォーカルと、80年代ジャーマン風味のヘヴィすぎないサウンド、
そこに欧州独特の湿りけとファンタジックな世界観が合わさって、とても聴き心地がよい。
今のテクニカル志向のメタルシーンとは一線を画す、ロマンの薫りにあふれたバンドである。
メロディアス度・・8 疾走度・・6 ファンタジック度・・8 総合・・8
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◆シンフォニックなエピックメタルの登場

RHAPSODY「Legendary Tales」
イタリアのシンフォニックメタルバンド、ラプソディーの1st。1997年作
壮麗きわまりない大仰さとファンタジックな世界観、そして思わず拳を握り締めるエピックな力強さ。
すべてにおいて、今で言うところのシンフォニックメタルの元祖的な存在であり、
メタルを映画的で壮大な作品へと仕立て上げ、それを完璧に成功させた1枚だ。
美しいシンセにクラシカルなオーケストレーション、大仰なコーラスワークはもとより、
ヴォーカルであるファビオ・リオーネの力量や、楽曲における緩急とメリハリ、
常にメロディがあふれ出す濃密なアレンジに、すべてのメタルファンはしびれたのだ。
ここから始まるエメラルドサーガの四部作、そしてシンフォニックメタル誕生の瞬間がここにある。
シンフォニック度・・9 壮大度・・9 ファンタジック度・・10 総合・・9
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RHAPSODY「POWER OF THE DRAGONFLAME」
イタリアンシンフォニックメタルバンド、ラプソディの5th。2002年作
エメラルドサーガ四部作の完結編ということもあり、これまでにも増して気合の入り方が違う。
繰り出されるメタル的パワーに壮大なクワイアをかぶせる手法はここに来てさらに円熟を極め、
MANOWARをさえ思わせる強烈な男のガッツメタルでありながらも、アレンジは実に細やかで
奥深く、かつクラシカルなもので、楽曲のスケール、シンフォニックさを見事に増幅させている。
また2ndの頃にあったトラッド的メロディを再び取り入れているのが個人的には嬉しい。
静と動展開のメリハリとオーケストラやコーラス、さらにフルートなどのトラッド要素により
ファンタジー世界の構築を強化させながらも、疾走感は過去最高といっていいものに仕上がっている。
シンフォニック度・・10 壮大度・・10 ファンタジック度・・10 総合・・9
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RHAPSODY「SYMPHONY OF ENCHANTED LANDS U-THE DARK SECRET-」
イタリアのシンフォニックメタルバンド、ラプソディの5th。2004年作
エメラルドサーガを4+1枚のアルバムで完結させ次はどんな方向で行くのか、と思っていたら…
拍子抜けするくらいにいつものラプソ節炸裂。50名のコーラス隊にフルオーケストラと、
そのサウンド作りはさらに大がかりになり、説得力を増したファビオの歌唱に加え、
有名俳優を配したナレーションやSEなど、今回は随所にそうした映画的な作りが見られる。
楽曲にも物語にそって緩急が多くつけられ、そうしたサントラ的要素も含め73分という長尺…
ある種プログレ的タイム感の作品になっている。音としては新鮮な感動はさほどなかったが、
大仰かつシンフォニックなサウンドで、ファンタジー世界を描く手法はさらなる熟練の境地に達している。
シンフォニック度・・9 壮大度・・9 ファンタジック度・・10 総合・・8.5
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LUCA TURILLI「King of The Nordic Twilight」
ラプソディルカ・トゥリッリによるソロアルバム。1999年作
のっけから壮麗きわまりないオーケストレーションとクワイアで盛り上げつつ
パワフルな疾走感と、クラシカルなテイストをふんだんに散りばめた楽曲が見事。
オラフ・ヘイヤーのハイトーンヴォーカルはファビオとはまた別の味わいがあり、
RHAPSODYのサウンドとはまた違った美麗なシンフォニックメタルが楽しめる。
女性ヴォーカルをゲストに迎えてのオペラティックな雰囲気も素晴らしい。
メロディアス度・・8 シンフォニック度・・8 ファンタジック度・・9 総合・・8
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THY MAJESTIE「HASTINGS 1066」
イタリアのシンフォニックメタルバンド、ザイ・マジェスティの2nd。2002年作
1stの時点からミニRHAPSODYとも形容できるような大仰さと、ファンタジックな部分とを併せ持っていたが、
続く今作はイングランド史における「ヘイスティングスの戦い」モチーフにした壮大なコンセプト作となった。
相当な時間をかけてレコーディングしたという通り、男女コーラスや曲のアレンジなどは非常に凝っていて、
RHAPSODY的なエピカルな要素に加え、今作ではRUNNING WILDMANOWAR的な勇壮さも感じさせる。
1曲ごとの派手さはさほどないが、歴史の中の戦いを追うようにひとつの作品としてじっくり聴き込める力作だ。
ドラマティック度・・9 疾走度・・8 エピック度・・9 総合・・8
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THY MAJESTIE「Jeanne D'arc」
イタリアのエピック・シンフォニックメタルバンド、ザイ・マジェスティの3rd。2005年作
フランス伝説の聖女、ジャンヌ・ダルクをテーマにしたコンセプト作で、映画的な奥行きとドラマ性を感じさせる傑作。
シアトリカルな世界観に加え、今回はより疾走感とメロパワ風の勢いが感じられ、メロディックメタルとしての明快さと、
ストーリー性を同居させることに成功している。ときにチャント風のコーラスが荘厳に響き、戦いの場面では勇壮なコーラスと、
曲ごとに物語は進行してゆき、聴き手である我々を英仏百年戦争の一場面へといざなってくれる。
Voが交代して、前任者の甘い声質が好きだったのでやや残念だが、アルバムのクオリティには影響なし。
悲劇の乙女ジャンヌ・ダルクの運命を最後まで描ききった力作。これはまさにストーリーメタルである。
シンフォニック度・・8 疾走度・・8 物語度・・10 総合・・8.5
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DARK MOOR「The Hall of The Olden Dreams」
スペインのシンフォニックメタルバンド、ダーク・ムーアの2nd。2001年作
1stの時点から、すでにスペイン産バンドの中でも壮麗さにおいては抜きに出ていたこのバンドだが、
日本盤デビューとなる本作では、シンフォニックな美しさに磨きがかかった、マニア歓喜の傑作となった。
きらびやかなシンセアレンジに、女性Vo、エリサ嬢の中性的な歌声を乗せて疾走するスタイルは、
RHAPSODYよりもややマイナーがかった、いうなればパワフルすぎないクサメロと
エピックかつファンタジックな世界観がマッチしていて、じつに素晴らしい。Voが代わる4th以降は徐々に
メジャー感のある堂々たる作風へとなってゆくが、ファンタジックメタルとしての魅力では本作が最高作だろう。
シンフォニック度・・8 疾走度・・8 クサメロ度・・8 総合・・8
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DARK MOOR「Ancestral Romance」
スペインのシンフォニックメタルバンド、ダーク・ムーアの2010年作
1999年のデビューから数え7作目となる本作も、クラシカルかつシンフォニックな力作に仕上がっている。
これまで以上にオペラティックで壮麗な世界観が聴き手をぐいぐいと引き込み、
ゲストによる女性コーラスも含めて、やわらかみのあるメロディとマイルドな聴き心地は、
KAMELOTあたりにも通じる完成度の高さである。かつてのようなメロスピ風に疾走する曲もあるものの、
基本的にはじっくりと聴かせる雰囲気なので、こうなるとヴォーカルの表現力の幅がやや狭く思えるが、
スペイン語で歌われる曲においては実に伸びやかで、今後はこの母国語路線にも期待したくなる。
曲自体のインパクトはいくぶん薄いのだが、クラシカルな作品としてトータルに鑑賞できる力作だ。
シンフォニック度・・8 疾走度・・7 オペラティックメタル度・・8 総合・・8
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FAIRYLAND「The Fall Of An Empire」
フランスのシンフォニックメタルバンド、フェアリーランドの2nd。2006年作
元DARK MOORのエリサ嬢が参加した前作もかなりの好作だったが、
今作もファンタジックな物語をコンセプトにした、壮麗かつエピックなサウンドだ。
Voが男性に代わって、よりメタリックなエッジが引き立ち、戦いに赴くような勇ましさが溢れている。
シンフォニックなシンセの味付けやクワイアなどはやはりRHAPSODY的で、
楽曲そのものの個性を問われれば厳しいが、こうした華麗でファンタジックな
シンフォニックメタルの世界観が好きならば充分に楽しめるクオリティだ。
シンフォニック度・・8 エピック度・・9 ファンタジック度・・8 総合・・8
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FAIRYLAND「Score To A New Beginning」
フランスのシンフォニックメタルバンド、フェアリーランドの3rd。2009年作
本作では新たにメンバーを入れ換えて、中心人物のシンセ奏者フィリップ・ジョルダナを中心とした
プロジェクトバンドのようになっている。今作ではイタリアのProgMetal、PATHOSRAYのメンバーをはじめ、
多くの参加者が集結し、ジャケの雰囲気通りのファンタジックでエピックなシンフォニックメタルが炸裂している。
美麗なシンセワークに重なる勇壮なコーラスなどは、やはりRHAPSODY的であるが、
今回はむしろ疾走するバワフルさよりも、随所にプログレメタル的な要素も感じられ、
知的なドラマティックメタルとしての作風が光っている。濃密できらびやかな力作である。
シンフォニック度・・8 ドラマティック度・・8 ファンタジック度・・8 総合・・8
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BLIND GUARDIANNightfall in Middle Earth
ジャーマンメタルのベテラン、ブラインド・ガーディアンの6th。1998年作
かねてからハンズィが傾倒していたトールキンの「指輪物語」から「シルマルリの物語」をテーマとしたコンセプトアルバム。
映画的な語りや効果音を随所に散りばめ、場面ごとに物語を描くように楽曲を構成した力作。
明快な疾走ジャーマンメタルからは一線を画し、ぱっと聴きには散漫な印象もあるのだが、
これまで同様に荘厳なコーラスワークや緻密なツインギターのフレーズは随所で光っており、
とくに名曲と言うべき“Mirror Mirror”のドラマティックな盛り上がりにはやはり拳を握る。
物語を想像しながらファンタジックな世界観に浸れる方にはぜひお勧め。
ドラマティック度・・8 疾走度・・7 ファンタジック度・・9 総合・・8
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BLIND GUARDIAN「At the Edge of Time」
ジャーマンメタルのベテラン、ブラインド・ガーディアンの2010年作
初期の疾走メロパワ路線から壮大な作風へと変化し、よりシンフォニックなサウンドに磨きをかけてきたこのバンド。
前作から4年ぶりとなる今作も、壮麗なオーケストレーションによる映画的なイントロから幕を開け、
深みを増したハンズィの歌声とともに、物語を語るストーリーテラーのような曲調で始まる。
オーケストレーションにかぶさる流麗なツインギターと、壮大なクアイア、ファンタジックな世界を描き出す
ブラガースタイルはいよいよ本領を発揮、激しい疾走感は薄いものの、ベテランならではの音の説得力、
そして緻密なアレンジはやはり素晴らしい。メロディの流れも昨今バンドのようなお手軽な派手さではなく
しっかりとリフとフレーズの流れで勝負しているのがさすが。大人の耳で楽しめる素晴らしい完成度だ。
シンフォニック度・・9 壮大度・・9 ファンタジック度・・9 総合・・8.5
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TOBIAS SAMMET'S AVANTASIA 「THE METAL OPERA」
EDGUYのリトビアス・サメットによるメタルオペラ、アヴァンタジアの1st。2001年作
豪華メンツが集って作られたこの作品。キーボードやクワイアを多用したゴージャスな音作りで、
シンフォニックメタルとはかくあるべきという壮大華麗な楽曲群は一聴の価値ありだ。
歌い上げるメンバーもマイケル・キスクカイ・ハンセンアンドレ・マトスロブ・ロック
などなどの豪華な顔ぶれ。まさにオペラティックで濃密なシンフォニックメタルアルバムである。
シンフォニック度・・9 ゴージャス度・・9 ファンタジック度・・8 総合・・8
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AINA「DAYS OF RISING DOOM-THE METAL OPERA
HEAVENS GATEロバート・ヒューネッケによるメタルオペラ、アイーナの2003年作
マイケル・キスクグレン・ヒューズをはじめ、トビアス・サメット(EDGUY)アンドレ・マトスオリバー・ハートマン(元AT VANCE)
オラフ・ヘイヤー(DYONISUS)キャンディス・ナイト(BLACKMORE'S NIGHT)シモーネ・シモンズ(EPICA)サシャ・ピート(HEAVEN'S GATE)
イェンス・ヨハンソンデレク・シェレニアンエリク・ノーランダー他、多数のゲストが参加、
AYREONなどを思わせる配役ごとにVoを設定する手法で、壮大なファンタジックなストーリーを作り上げる。
楽曲そのものは、比較的正統派のメロディックメタルをシンフォニックに味付けした感じで、
サシャの片腕であるミロによるキーボード、オーケストラアレンジが、映画サントラ的に楽曲を彩っている。
壮大さという点でRHAPSODYにも通じるものがあり、曲によってはトラッド色もあったりと、ゆったりとした叙情も楽しめる。
シンフォニック度・・8 壮大度・・8 ファンタジック度・・9 総合・・8
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FREEDOM CALL「ETERNITY」
ドイツのメロディックメタルバンド、フリーダム・コールの3rd。2002年作
1st、2ndとクオリティの高いドラマティックメタルアルバムであったが、本作はまさに最高傑作というべき内容。
のっけから大仰なクワイアからクサメロで疾走と、まさしくシンフォニックメタルの王道をいっている。
とにかく、メンバーが実力者なので、そのサウンドには力強さと説得力があるのがポイント。
サビの分厚いコーラス、シンフォニックに疾走するときの爽快感が素晴らしく、そこいらのB級を聴くなら
まずこちらを聴いてと言いたくなる。ファンタジックな世界観とドラマティックな楽曲の数々は
GAMMA RAY+RHAPSODY+BLIND GUARDIANという印象か。今作における世界観の密度とクオリティは
バンドとしての決定打ともいうべき出来なので、日本盤がなぜ出ないのかと首をひねりたくなるほどだ。
メロディアス度・・8 大仰度・・9 ファンタジック度・・8 総合・・8.5
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MANOWAR「GODS OF WAR」
元祖ヒロイックメタルの雄、マノウォーの2007年作
本作は北欧神話を題材にしたコンセプト作で、のっけから壮大なオーケストレイションで幕を開ける。
映画的な語りや、コンセプチュアルな雰囲気、なかなか曲が始まらないもったいつけ方は、
1992年のアルバム「The Triumph of Steel」あたりに通じるだろう。
しかし、やはりエリック・アダムスの見事な歌唱やジョーイ・ディマイオの存在感のあるベースには
年季をへたバンドのみがかもし出せる力強さがあり、その辺のエピックメタルバンドとは格が違う。
疾走曲が少なかったり、曲ごとに大仰なテーマやSEが入ったりと、気の短い方にはダメなアルバムだろうが
なんにしてもこの大仰さと世界観は唯一無二のもの。ファンタジーな世界が好きならば楽しめるだろう。
シンフォニック度・・8 メタリック度・・7 大仰度・・9 総合・・8
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VIRGIN STEELE「Visions of Eden」
アメリカのベテランメタルバンド、ヴァージン・スティールの2006年作
結成は1981年という大ベテランで、エピックメタルとしてのキャリアはMANOWARに匹敵するのだが、
どのアルバムも悪くないのに決定打がないということで、常にマニア好みの存在にとどまっていた。
11作目となる本作では、このエピックなジャケが物語るように、内容もなかなかの力作。
このバンドのサウンドはMANOWARに比べると、楽曲に普通にシンセも使っていて
ヴォーカルもさほどシャウトしない点もあり、もっとマイルドなやわらかさがある。その反面、
パワフルなメタルを期待すると長尺感があって、アルバムを聴き通すのはつらいのだが。
むしろバラード曲などでの雄大な美しさが魅力となっていて、ドラマティックな作風をじっくり楽しめる。
ドラマティック度・・8 疾走度・・6 エピック度・・8 総合・・8
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GRAVE DIGGER「The Clans Will Rise Again」
ジャーマンメタルのベテラン、グレイブ・ディガーの2010年作

80年代から活動を続ける大ベテラン。正統派メタルブームの復興とともに、
活動30年を数えるこのバンドにも再び注目が集まり出しているのは嬉しいかぎり。
中世をテーマにしたコンセプト作「Tunes of War」の続編ともいうべき本作は
長年彼らの貫いてきた正統派のメタルサウンドに、BLIND GUARDIANを思わせるような
エピックなコーラスワークやSE、ケルティックなメロディなどを随所に盛り込んだドラマティックな作風だ。
新たに加わったDOMAINのアクセル・リットとマンニ・シュミットのツインギターも鉄壁。
RUNNING WILDなき今となっては、本物のジャーマンメタルの存続は彼らにかかっている。
ドラマティック度・・8 パワフル度・・8 正統派度・・9 総合・・8
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Sonata Arctica「Days Of Grays」
フィンランドのメロディックメタルバンド、ソナタ・アークティカの2009年作
美しくももの悲しいイントロから女性声の語りが入って、まるで映画のような序曲から
いよいよ楽曲が始まると、壮麗なシンセをバックにしてRHAPSODYばりにきらびやかに疾走。
次々に押し寄せるドラマティックな高揚感と、緩急を付けたストーリー的な楽曲構成は
これまでの彼らには見られなかったもので、この吹っ切れたような大仰さが素晴らしい。
オペラティックなメタルという点ではKAMELOT的でもあるが、より繊細なファンタジーの表現が、
見事な結晶となって音に現れている。このバンドの新たな側面をまざまざと見せつけた傑作である。
シンフォニック度・・9 ドラマティック度・・9 壮麗度・・9 総合・・8.5
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DRAGONLANDAstronomy
スウェーデンのメロパワバンド、ドラゴンランドの4th。2007年作
壮大な雰囲気のイントロから始まる今作は、前作からあった大作志向が全面に出ており、
アルバムを通してコンセプト的な聴き方をすべき作品となっている。
後半の14分のインスト組曲をはじめ、すでにメロパワというよりはシンフォニックメタルとしての
方法論に近づいていて、ある種RHAPSODYにも通じるような雰囲気すら漂っている。
もちろん、もとからセンスのあったメロディアスな聴きやすさも健在なので、まったく難解さはない。
疾走メロパワを求める向きにはとっつきは悪いかもしれないが、クオリティの高さでは北欧勢でもトップクラス。
メロディアス度・・8 疾走度・・7 壮大度・・8 総合・・8
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OLYMPOS MONSMedievil
フィンランドのメロパワバンド、オリンポス・モンズの2nd。2007年作
1stは民族調のクサメロが心地よいなかなかの好作だったが、この2ndではサウンドの方も力強くなり
もちろん彼らの持ち味であるクサいまでの叙情メロディとともに、パワフルに疾走、
それでいて音にはどこかキャッチーなやわらかみも感じられる。
キャッチーなシンフォニック性、そこに古き良きジャーマンメタル的な懐かしさが加わり、
ある意味、この手の好き者にはタマらない雰囲気がぷんぷん。
中世の王国や騎士などを歌ったファンタジックな世界観も、
娯楽映画的なドラマ性をサウンドに付加していて、聴き手の気分を盛り上げる。
メロディアス度・・8 疾走度・・8 ファンタジック度・・9 総合・・8.5
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PYRAMAZE「Legend of the Bone Carver」
デンマーク人ギタリストを中心としたメロディックメタルバンド、ピラメイズの2nd。2006年作
前作は質は高いが、まとまった佳作という程度の印象だったが、本作ではシンフォニックなシンセに
ツインギターが絡む重厚なドラマティックサウンドにさらなる磨きをかけてきている。
物語的な語りで始まるイントロからしてファンタジックな雰囲気を漂わせ、
ミドルテンポを主体にどっしりとした正統派のメロディックメタルを展開してゆく。
エピックな世界観はシンフォニックになったBLIND GUARDIANというような質感もあり、
これだという個性は見当たらないものの、幅広いリスナーにアピールするだけの作品だと思う。
ドラマティック度・・8 重厚度・・8 ファンタジック度・・8 総合・・8
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LABYRINTH「Sons of Thunder」
イタリアンメタルバンド、ラビリンスの3rd。2000年作
ファンタジックなジャケにまず惹かれるが、内容の方も物語的なストーリーに基づいたコンセプト作で
知的な展開力とプログレッシブな感性が含まれた完成度の高い傑作である。
1曲目の“Chapter 1”のダイナミックな疾走感と、中間部でのはっとするような叙情パート、
テクニカルなギターを織り込みつつも、ただ激しいだけでない世界観の表現力が見事。
シンフォニックなシンセワークも光っていて、表現力のあるヴォーカルとともにサウンドの説得力を高めている。
ドラマティック度・・8 疾走度・・7 ファンタジック度・・8 総合・・8
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DOMINE「Ancient Spirit Rising」
イタリアのメロディックメタルバンド、ドミネの5th。2007年作
エピックな世界観で正統派のメタルを聴かせるこのバンド、前作から3年ぶりとなる本作では、
「アーサー王伝説」のシャーロットの乙女をテーマに、ファンタジックな世界観を描き出している。
疾走するメロスピ曲から、より叙情的なやわらかさをもった曲まで、コンセプト作らしい
場面ごとのストーリーを感じさせる雰囲気作りがなかなか見事。また今作ではいつになく
トラッド調のメロディを取り入れたり、シンフォニックな味付けも増していて、聴き心地もいい。
パワフルな勢いは薄まったが、むしろ完成度の点では最高傑作といってもいい出来だろう。
ファンタジック度・・9 疾走度・・8 エピック度・・8 総合・・8
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Heimdall「The Temple of Theil」
イタリアのエピック・メタルバンド、ヘイムダールの2nd。1999年作
ジャケからしてもうファンタジーでエピックな香りぷんぷんだが、
シンセによる壮麗なイントロから曲が始まると、RHAPSODYばりのファンタジックメタルが炸裂。
ヴォーカルの弱さも含めてあらゆる面でB級ながら、このクサクサの雰囲気と
エピックメタルの大仰さが好きな方にはたまらないものがあるだろう。
シンフォニック度・・8 B級度・・8 エピック度・・9 総合・・7.5
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KALEDON「Chapter VI: the Last Night on the Battlefield
イタリアのクサメタルバンド、カレドンの2010年作
本作は長く続いてきたクサメタルストーリーの最終章らしい。きらびやかなシンセとともに疾走するメロスピサウンドは、
初期のどうしょうもなさに比べると、ようやくようやくSKYLARKのレベルにまではきた感じで、
ファンタジックかつエピックな世界観にも、6作目にして、ごくわずかにでも説得力がともなわれてきた。
相変わらずメロディの魅力や曲の展開には煮え切らなさもあるが、そのマイナーっぽさも今となっては
このバンドを聴くようなリスナーにとっては魅力なのかもしれない。
クサメロ度・・7 疾走度・・8 ファンタジック度・・8 総合・・7.5
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Derdian「New Era 3: Apocalypse」
イタリアのシンフォニックメタルバンド、ダーディアンの2010年作
正直、このバンドに関しては過去の2作とも、イモ臭いB級のシンフォメタルという認識だった。
いや、本作も厳密にいえばまだB級といって内容なのだが、なんというか今作はもの凄い。
美麗なシンセアレンジで疾走する楽曲の、そのクサメロっぷりが半端ではないのである。
軟弱系のエセクラシカル風味と、恥ずかしげもないロマン溢れるメロディの嵐…
ついにここまで吹っ切れたか…という、ある意味、天晴れなまでのクサメタル作品だ。
シンフォニック度・・8 クサメロ度・・9 クサロマン度・・9 総合・・8
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POWER SYMPHONY「EVILLOT」
イタリアのメロスピバンド、パワー・シンフォニーのアルバム。1999年作
ルイス・ロヨによるこのファンタジックなジャケにつられて買ってしまう人がほとんどだろうが、
内容の方もそう捨てたものではない。ハスキーな味のあるヘタウマの女性ヴォーカルの歌声で
軽めに疾走するスタイルで、古き良きメタルのやぼったさの中にクサメロもたっぷり入っている。
なによりローカルなサウンドながら、幻想的な雰囲気を感じさせてくれるのがなかなか好みなのだ。
シンセ入りの美しさや、組曲的な大曲もあり、あながちB級と片づけるには惜しい内容です。
クサメロ度・・8 疾走度・・7 ファンタジック度・・8 総合・・7.5
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FORGOTTEN TALES「ALL THE SINNERS」
カナダの女性Voシンフォニックメタルバンド、フォーゴットン・テールズの2nd。2004年作
2001年のデビュー作に続く本作では、いくぶんメタリックな質感が増して音が骨太になってきた。
一聴して、GAMMA RAYの曲を女性が歌っているというようなジャーマンメタル風味もありつつ、
中世の魔女狩りをモチーフにした組曲的なコンセプトで、随所にクラシカルなメロディを配したり、
時にシンフォニックに、ときにメロスピ的に疾走したりと、作品としての密度はなかなか濃い。
全体的には垢抜けないB級っぽさが味わいになっていて、微笑ましく楽しめるファンタジックメタルだ。
メロディアス度・・8 シンフォニック度・・7 女性Vo度・・7 総合・・7.5
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Ancient Bards「Alliance of the Kings」
イタリアのシンフォニックメタルバンド、エンシェント・バーズの2010年作
いくぶんB級ぎみに疾走するメロスピ曲に、パワフルすぎない女性ヴォーカルの歌声、
メロディにはときおりネオクラシカル風味もあったりと、それなりに楽しめる内容。
「The Black Crystal Sword Saga Pt.1」という副題がついているので、
物語的なコンセプト作なのだろう。初期のDARK MOORを思わせる部分もあって、
シンフォニックさとクサメロで聴かせるあたりは、なかなか好みなのだが、
現段階ではまだまだメロディの魅力も含めてアレンジの面の弱さが残る。
個人的にはさらにエピックな雰囲気を伸ばしていってもらいたい。
シンフォニック度・・8 クラシカル度・・7 女性Vo度・・7 総合・・7.5
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WILDPATH「NON OMNIS MORIAR」
フランスのシンフォニックメタルバンド、ワイルドパスの2nd。2009年作
前作はややB級臭いサウンドであったが、今作は壮麗なイントロから期待させる。
美しい女性ヴォーカルの歌声でシンフォニックなシンセととも疾走するスタイルは、
EDENBRIDGEあたりに接近したような印象で、じつに優美なサウンドだ。
楽曲面でのアレンジの質が向上したことで、クサメロがより引き立つようになった。
コーラス入りで盛り上がるところなどは、RHAPSODYにも通じるファンタジックな世界観もあり、
クラシカルなシンセワークを軸に、新加入のマルジョレーヌ嬢の優雅な歌唱が響きわたる。
あまり期待していなかっただけに、これは予想外の好盤。女性Voシンフォメタル好きはぜひ。
シンフォニック度・・8 女性Vo度・・8 優美度・・9 総合・・8
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KERION「The Origins」
フランスのシンフォニックメタル、ケリオンの2010年作
エピックかつファンタジックな世界観で聴かせるシンフォニックメタルで、
女性ヴォーカルの歌声とシンセによる壮麗なオーケストレーション、そして
いくぶんB級ぎみのクサメロも覗かせる、同郷のFairylandにも通じる濃密な作風だ。
肝心のフローラ嬢の歌声は、はかなげなタイプなので、女性声がメインの曲では
シンフォニックなバックに比してどうしても弱々しい印象になるのが微妙なところ。
ゲストにそのFairylandのヴォーカルが参加していて、男女Voの曲だとエピックな雰囲気が強まり
シンフォニックメタルとしてバランスがとれているように思う。そのあたりが今後の課題だろうか。
シンフォニック度・・8 疾走度・・7 ファンタジック度・・9 総合・・7.5
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Crystallion 「Hundred Days」
ドイツのメロスピバンド、クリスタリオンの3rd。2010年作
前作「Hattin」の潔いまでのクサメロっぷりには悶絶しきりであったが、
今作はナポレオンをテーマにしたコンセプト作らしく、いつになく映画的なイントロから始まる。
あの陽性クサメロスピのクサリスタリオンがThy Majestie化したか?と…やや微妙な感じだが、
こうしうシリアスなシンフォメタル風味も悪くはない。ザイマジェやラプソほど音が壮麗でないので、
むしろSONATA ARCTICAの2009年作などと同様、軽めのシンフォニックメタルとして身構えずに聴ける。
随所に聴かせるメロディは相変わらずクサいし、Power Questあたりに近いキャッチーさもある。
シンフォニック度・・8 疾走度・・7 クサメロ度・・8 総合・・8
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HUMAN FORTRESS「Lord of Earth and Heavens Heir」
ドイツのシンフォニックメタルバンド、ヒューマン・フォートレスの2001年作
シンセを含む6人組で、エピックな世界観の正統派メロパワをやっている。
どことなく80年代風のギターリフと、うっすらとしたシンセによるシンフォニックな味付けが合わさり
ときおりRHAPSODY的な壮大さも感じさせるサウンドだ(そこまで分厚い音ではないが)
サビでのキャッチーな歌メロもなかなかいい感じで、全体的にもう一段説得力が増せば
かなりいいバンドになると思う。ジャーマンメタル的な味わいもしっかりとあり、
いくぶんただようマイナー臭いつたなさも、このバンドの場合はむしろ味になっている。
エピック度・・8 疾走度・・7 ジャーマン度・・8 総合・・7.5
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SIX MAGICS「The Secrets of An Island」
チリのメロディックメタルバンド、シックス・マジックスの2nd。2004年作
1stはチープなメロスピでB級臭い印象だったが、この2ndではやや方向性を変えている。
疾走感はそのままに、大幅にシンフォニック度、クラシカル度がアップしていて
サビでの大仰なコーラスはRHAPSODYTHY MAJESTIEあたりを思わせる。
コンセプト作ということも手伝ってか、全体的に重厚でドラマテイックな音作りになっていて、
小曲やSEを混ぜながらつないでゆくやり方にも、1stにあった軽さとB級感は感じられない。
ギターワークやヴォーカルはやや弱く、シンフォニックでクワイア重視の壮麗なサウンドだ。
シンフォニック度・・9 疾走度・・8 ファンタジック度・・7 総合・・7.5
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SAUROM LAMDERTH「SOMORAS DEL ESTE」
スペインのフォーキーメタルバンド、サウロム・ラムダースの2nd。2002年作
大仰なイントロからフルートがぴーひゃら入ってフォーキーに曲が始まると、
スペイン語の歌唱もあいまって、田舎くさいトラッド&フォークメタルが全開。
楽曲のアレンジやプロダクションの甘さはあるものの、泣きのヴァイオリンなども加わり、
サウンドのドラマティックさにはクサメタルファンは悶絶する場面も多数。
「指輪物語」をテーマにしたファンタジックさという点においても、その手のマニアには受けるだろう。
情熱的な女性ヴォーカル入りの曲もあり、CD2枚組で長尺ながらも盛り上がりどころは多い。
メロディアス度・・8 フォーキー度・・8 ドラマティック度・・8 総合・・8
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PATHFINDER「Beyond The Space Beyond The Time」
ポーランドのシンフォニックメタルバンド、パスファインダーの2010年作
クラシカルで壮麗なイントロから、曲が始まるとDRAGONFORCEばりに疾走、
シンフォニックなシンセとネオクラ色もあるギターに、さほど力強くないヴォーカルで、
美麗なメロスピサウンドを聴かせる。随所にクラシカルな風味を織り込みつつ、
シアトリカルなSEや小曲によるつなぎ、オペラ風の女性コーラスなどもファンタジックに華を添える。
装飾過多ぎみの濃厚さがやや鼻につくが、X JAPAN的なキャッチーな疾走感覚と
クリアなトーンのギターメロディは耳心地がよく、全体的には出来のいいメロスピだと思う。
シンフォニック度・・8 疾走度・・8 ファンタジック度・・8 総合・・8
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KNIGHTS OF ROUNDThe Book Of Awakening」
日本のメロスピバンド、ナイツ・オブ・ラウンドのアルバム。2010年作
ファンタジックなジャケも含めてRPGのような世界観のシンフォメタルであるが、
2007年の前作は、いかにもB級臭いメロスピで、正直なところ印象に薄かった。
壮麗なイントロからSTRATOVARIUSばりの疾走曲で始まる本作も、個性という点では弱いのだが、
そのクサいメロディにはさらに磨きがかかり、力強さのないハイトーンヴォーカルとともに、
これぞファンタジー・メロスピ!というサウンドを恥ずかしげもなく繰り広げている。
きらびやかに疾走するそのクサメロぶりには、思わずにやにやしてしまう。
クサメロ度・・8 疾走度・・8 ファンタジック度・・9 総合・・7.5
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SERENITYDeath and Legacy
オーストリアのシンフォニックメタルバンド、セレニティーの2011年作
過去2作とも質の高いドラマティックなアルバムでにわかに人気を高めているこのバンド、
本作もKAMELOTを思わせるような知的な構築美で聴かせるドラマティックメタルの力作だ。
美麗なシンフォニックアレンジにも磨きがかかり、ときにRHAPSODYを思わせるクワイヤで
映画的な壮大さを演出するなど、サウンドにはもともとあったセンスに加えスケールの大きさが出てきた。
ヴォーカルの表現力やメロディの魅力という点でもさらに向上していて、モダン派のシンフォニックメタルとして
いよいよその地位を確立する傑作となった。DELAINのシャルロッテ嬢、SIRENIAのアイリン嬢がゲスト参加。
シンフォニック度・・8 ドラマティック度・・9 壮大度・・9 総合・・8.5
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XYSTUSEquilibrio
オランダのシンフォニックメタルバンド、ジスタスの2009年作
オーケストラを導入したクラシカルなシンフォニーメタルの大作。メタル的なパワフルさや疾走感はあまりなく、
華麗なオーケストラをバックに、シアトリカルな雰囲気で聴かせる、デス声や女性Voも入ったオペラテイックな作風だ。
ドイツのHaggardあたりを思わせる壮大さもあるが、こちらは暗黒性よりはもっと優雅な
メタルオペラという趣で、ときおりRHAPSODYなどにも通じるエピックな世界観も垣間見せる。
ただし、オーケストラに頼りすぎていてバンドサウンドそのものの魅力がいまひとつだったり、
むしろこの作風なら女性ヴォーカルをもっと聴かせろとか、いろいろと不満はあるものの、
クラシカルで優雅なシンフォニックメタルのコンセプト作を作り上げたこの意気込みは買いたい。
シンフォニック度・・8 オーケストラ度・・9 メタル度・・7 総合・・8
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LorenguardEve of Corruption
アメリカのシンフォニックメタルバンド、ローレンガードの2011年作
ツインギターにシンセを含む7人編成で、「エピック・ファンタジーメタル」を名乗るように、
ゲームか映画のようなファンタジックな世界観で、RHAPSODYばりの壮大さで聴かせるサウンド。
シンフォニックな美麗さに適度なクサメロを含んで疾走するところなどは、聴いていてにやにやします。
勇壮な感触もどちらかというと、“ファンタジーメタル・ヲタク”的な二次元のゲームやアニメ的な感じで、
小奇麗なディフォルメ感がいかにも若者らしい。クオリティとしてはすでにB級とは呼べないレベルにはある。
シンフォニック度・・8 疾走度・・7 エピック度・・8 総合・・8
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◆ファンタジーなゴシック&ブラック系

BATTLELOREThe Last Alliance
フィンランドのエピック・ゴシックメタルバンド、バトルローの2008年作
コスプレメンバーによるファンタジックなゴシックメタルもこれで5作目。
前作で過去最高ともいうべき音の説得力を身に付け、本作も期待していたが
うむ、素晴らしい。のっけからシンフォニックなシンセワークが耳を惹きつけ、
女性ヴォーカルの歌声が入ると、もうウットリ。ギターもシンセもそしてドラムも、
すべての音がかみ合って、厚みのあるサウンドが見事な世界を作り出している。
デス声入りのアグレッシブな部分は、ときにヴァイキングメタル的な勇壮さも覗かせ、
単なるゴシックではない激しさと、優雅な幻想性との融合が果たされている。
シンフォニック度・・8 バトル・ゴシック度・・9 ファンタジック度・・9 総合・・8.5
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BATTLELOREDoombound
フィンランドのファンタジー・ゴシックメタル、バトルローの2011年作
2002年のデビューから、男女ヴォーカルのファンタジー・エピックメタルを標榜するこのバンド、
最高傑作となった前作に続く6作目で、今回はトールキンの物語をテーマにしているようだ。
ツインギターの重厚さと、男女Voの使い分け、シンセによるシンフォニックな味付けが合わさり、
フルートが鳴り響く土着的なトラッド要素も含めて、本格派のファンタジックメタルを展開、
ヴァイキングメタラーをも唸らせる世界観の描写に磨きがかかっている。
メンバーのいでたちも含めて、コスプレ・エピックメタル最高峰の地位は揺るがない。
ドラマティック度・・8 エピック度・・9 ファンタジック度・・9 総合・・8
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BAL-SAGOTH
「BATTLE MAGIC」
イギリスのエピック・ブラックメタルバンド、バル・サゴスの3rd。1998年作
大仰シンフォブラックの元祖たるこのバンド、1stの時点ではずいぶんショボかったものの、
2nd「Starfire Burning upon Ice Veiled」において、まるでファンタジーゲームのような
壮麗な世界観で聴かせるシンフォブラックサウンドを確立、そして続く本作で決定打となった。
シンセによる美麗なイントロは映画のような雰囲気だが、曲が始まるとクサメロまくりで疾走開始、
美しいシンセとクサフレーズを奏でるギターににんまりしつつ、彼らのファンタジー絵巻にどっぷり浸る。
ヴォーカルはダミ声ながらちっとも暴虐ではなく、曲間に入る語りなどはとてもエピックな感じである。
とにかくこの、笑っちゃうほど大仰かつ勇壮、そしてクサく、シンフォニックなサウンドは一聴の価値ありだ。
シンフォニック度・・9 暴虐度・・6 ファンタジック度・・10 総合・・8.5
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STORMLORDSupreme Art of War
イタリアのシンフォニック・ブラックメタルバンド、ストームロードの1st。1999年作
ファンタジーな世界観をシンフォニックなブラックメタルで再現するこのバンド、
壮麗きわまりないシンセワークとペイガンメタル風味のギターフレーズ、
ときに女性コーラスなども含んで、ドラマティックなサウンドを展開。激しいブラストも入りつつ、
勇壮な男性コーラスなどとともに中世を思わせる世界観には、エピックメタルの香りが漂う。
大仰なファンタジックブラックとしてはBAL-SAGOTHと双璧だろう。
シンフォニック度・・8 暴虐度・・7 ファンタジック度・・9 総合・・8
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Elvira Madigan「Regent Sie」
スウェーデンの一人ブラックメタル、エルヴィラ・マディガンの2009年作
Marcus H Madigan氏の一人プロジェクトで、過去作もきらびやかなシンセで軽めに疾走する
ファンタジックな打ち込み系シンフォブラック作品であったが、本作ではストーリー的なコンセプトをともなって
さらに壮大な作風で攻めてきた。相変わらず打ち込みによるドラムパターンは軽いのだが、
慣れればむしろゲーム音楽的な感覚で楽しめる。きらきらとしたシンセの重ねとメロディックなギターに、
ブラック声のヴォーカルが絡み、ファンタジックな世界観も含めて、打ち込み版Cradle of Filth、という雰囲気もある。
ルイス・ヨロのジャケにつられて毎作買ってしまうのだが、濃密かつ美麗な作風はやはり嫌いではない。
シンフォニック度・・8 暴虐度・・7 ゲームミュージック風シンフォブラ度・・8 総合・・7.5
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◆ファンタジーなメロディアスハード/プログレハード系

AYREON「The Final Experiment」
VENGENCEアルイエン・ルカッセンによるプロジェクト、エイリオンの1作目。1996年作
「アーサー王伝説」を壮大なSF仕立てにした本作は、元VENGENCEのレオン・グーヴィー、イアン・パリーをはじめ
多数のゲストを招いて、組曲仕立てに繰り広げられる壮大なロックオペラとなっている。
物語を語るナレーションから、スペイシーなシンセワーク、ドラマティックに盛り上げる泣きのギター、
そして映画の配役のようなヴォーカルの歌声で、ときに重厚に、そしてプログレッシブな香りとともに展開する。
女性コーラスも含んだシンフォニックな美麗さと、静と動のメリハリのついたシアトリカルな構成力は圧巻。
メタルとプログレの垣根を超えた世界規模の壮麗なプロジェクト…その記念すべき一作目である。必聴。
シンフォニック度・・8 ファンタジック度・・9 壮大度・・9 総合・・8.5

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AYREON「Into the Electric Castle」
アルイエン・アンソニー・ルカッセンのシンフォニックプロジェクト、エイリオンの3作目。1998年作
1st「The Final Experiment」において多数のゲストを迎えた壮大な一大コンセプト作を作り上げたルカッセンは、
いよいよその本領を発揮。本作は「光の宮殿」と題されたCD2枚組の大作となった。今回も、フィッシュ(元MARILLION)、
エドワード・リーカース(元KAYAK)、アネク・ヴァン・ガースバーゲン(元Gathering)、シャロン・デル・アデル(WITHIN TEMPTATION)、
ロビー・ヴァレンタイン、クライブ・ノーラン(ARENA)、タイス・ファン・リール(FOCUS)といった
名うてのゲストたちが集結。ヴォーカルやソロプレイなどで華を添えている。SFストーリーに基づいた映画的な流れで
プログレッシブに楽曲が連なってゆき、部分ごとにはスリリングさは薄いものの、CD2枚全体を通して鑑賞すれば、
ひとつの物語を読み終えたような気分になる。壮大なプログレハードロック作品である。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・8 壮大度・・10 総合・・8
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MAGNUM「Into the Valley of the Moon King」
ブリティッシュ・プログレハードのベテラン、マグナムの2009年作
前作「Princess Alice & the Broken Arrow」が久しぶりにファンタジックな世界観の傑作であったので
本作も同様に期待していた。まずロドニー・マシューズのジャケとアルバムタイトルからしてもう幻想的ではないか。
ストーリー的な広がりを感じさせるイントロから曲が始まると、ボブ・カトレイの枯れた味わいの歌声とともに
往年を思わせるようなやわらかみのあるプログレハードサウンドで思わずにんまりだ。
サウンド的にもいくぶんレトロな味わいがあり、派手すぎないシンセの使い方もいかにもこのバンドらしく、
キャッチーなメロディとファンタジックな雰囲気が合わさって、耳心地のいい楽曲にじっくり耳を傾けられる。
メロディアス度・・8 往年のサウン度・・8 ファンタジック度・・8 総合・・8
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BOB CATLEY「MIDDLE EARTH」
MUGNAMのヴォーカリスト、ボブ・カトレイのソロアルバム3作目。2001年作
同じ英国の叙情派ハードロックバンド、TENゲイリー・ヒューズがプロデュース、作曲も手がけている。
ボブ・カトレイのしっとりとした歌声をメインにしたドラマティックで落ち着きのあるサウンド。
「指輪物語」をコンセプトにしていて、うっすらとしたシンセとメロウなギターの重ねによる音像は
シンフォニックでありつつも、渋みのあるボブの声質ともあいまって、押し付けがましさのない
繊細なドラマ性を構築している。ファンタジックなメロディアスハードとして楽しめる。
メロディアス度・・8 ドラマティック度・・8 大人の歌声度・・9 総合・・8
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GARY HUGHES「ONCE AND FUTURE KING PART T」
TENのVoにしてソングライターである、ゲイリー・ヒューズのソロ2003年作
「アーサー王伝説」をモチーフにしたロックオペラの第一弾で、
TENのメンバーを演奏陣に据え、配役ごとにゲストVoを多数迎えた豪華な作品。
基本はTENでもやっている叙情味溢れるメロディアスなハードロックであるが
シンフォニックなバラードや、時折ケルト風のメロディを用いるなど、アーサー王の世界観を見事に
サウンドで描き出している。ゲスト参加のラナ・レーンやイレーネ・ヤンセン(AFTER FOREVER)ら
女性Vo陣に加え、ボブ・カトレイの落ち着いた声の存在感もさすがで、ゲイリーのマイルドな歌唱を引き立てる。
メロディアス度・・8 壮大度・・8 ドラマティック度・・9 総合・・8
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Meat LoafBat Out of Hell 3-Th Monster Is Loose」
世界的な大ヒットを記録した前作「地獄のロックライダー2」から13年ぶりとなる本作は
「最後の聖戦」と題されたシリーズ完結編となる77分の大作。Julie Bellによるジャケからしてもう濃いのだが、
内容もオーケストレーションを含めた壮麗なハードロックオペラで、よりシンフォニックな作風になっている。
ミート・ローフのオペラティックな歌声はもちろん、ときに女性ヴォーカルを含んだ美しいバラードも感動的で、
デスモンド・チャイルドとジム・スタインマンによる鉄壁の楽曲コンポーズによるメジャー志向の聴きやすさで、
メタル的な重厚さこそ薄いものの、メロディアスかつダイナミックに切り広げられる壮大なる傑作となっている。
壮麗度・・9 メタル度・・7 ロックオペラ度・・9 総合・・8.5
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MECHANICAL POET「WOODLAND PRATTLERS」
ロシアのメタルバンド、メカニカル・ポエットのアルバム。2005年作
ファンタジーメタルというタタキだが、確かに物語風のジャケやブックレットのコミックなどから
ファンタジックなストーリーを感じさせる。美しいインストから、曲に入ると案外ヘヴィなメタルサウンドになり、
けっこう力強い中低音のヴォーカルと、ギター、キーボードともに演奏陣もなかなかいい仕事をしている。
間奏部にしっとりとした叙情パートを入れたり、楽曲にはプログレメタル的な質感もあるが、
全体的にはテクニカルに押すタイプではなく、シンフォニックな重厚さと静と動のメリハリで聴かせる構成だ。
いわゆるロシアのバンド的な土着性はあまりなく、音に現代的な視点が感じられるところは
PAIN OF SALVATIONなどの持つミクスチャー感覚とも通じる部分がある。派手さはないが力作だ。
シンフォニック度・・8 ファンタジック度・・8 壮大度・・8 総合・・7.5
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