★ファンタジー冒険プログレ特集★




ァンタジックなコンセプト、物語のような世界観、心踊るような冒険…そんな音楽作品に心踊ります。
世知辛いこの世の中だからこそ、ささやかなロマンのかけらは本当に必要なものだし、
そうした幻想の作品にひたることは大いなる人生の喜びでもあります。
ここでは、物語的でファンタジーな冒険にあふれたようなプログレ作品を集めてみました。
さあ、しばし憂き世を忘れ、一緒に馥郁たるロマンの香りをかぎ、その音楽に耽溺しましょう〜♪    by 緑川 とうせい



◆イギリスのファンタジー

Mandalaband「The Eye of Wendor:Prophecies」
イギリスのシンフォニックロックバンド、マンダラバンドの2nd。1978年作
圧倒的な完成度を誇った1st「曼陀羅組曲」からメンバーが大幅に入れ替わった本作は
「魔石ウェンダーの伝説」というタイトル通り、ファンタジックな物語的コンセプトアルバム。
前作の濃密シンフォニック路線から一転、繊細かつメロディックな爽やかなサウンドで、
牧歌的なやわらかさと、オーケストレーションを含めた壮大な美しさが合わさった、
前作に勝るとも劣らぬ傑作だ。Woolly Wolstenholmeの美麗なシンセワークも素晴らしく、
流れるように曲が連なってゆく構成には、ついつい引き込まれてしまう。壮麗なるシンフォ傑作。
シンフォニック度・・8 ファンタジック度・・9 壮大度・・9 総合・・9
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RICK WAKEMAN 「Myths & Legends Of King Arthur & The Knights Of The Round Table」
YESのキーボード奏者、リック・ウェイクマンのソロ1975年作
「ヘンリー八世と六人の妻」、「地底探検」と、クラシカルで幻想的な作品を作り出してきた
ウェイクマンの極めつけのアルバム。「アーサー王と円卓の騎士たち」というタイトル通り、
アーサー王伝説をモチーフにしたファンタジックなシンフォニックロック作品である。
壮麗なオーケストラとともに、雄大でエピックな世界を描き出す手法は今作で完成されたといっていい。
中世を思わせる優美なチェンバロの音色や、リックの奏でるたおやかなピアノも美しい。
ヴォーカルパートのバランスもよく、いわゆる初期の文芸三部作の中では一番の完成度だろう。
クラシカル度・・8 プログレ度・・7 ファンタジック度・・9 総合・・8.5
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FRUUPP 「The Prince of Heaven's eyes」
アイルランド出身のプログレバンド、フループの3rd。1974年作
少年の冒険を思わせるファンタジックなジャケもステキだが、サウンドも美しいストリングスシンセに導かれて、
牧歌的な雰囲気のシンフォニックロックがゆるやかに展開されてゆく。一聴では地味ながらも、音の心地よさと涼やかな雰囲気から
聴き疲れがまったくしない。聴き込んでいくうちに、脳裏にはジャケの少年が繰り広げる冒険の物語が浮かんでくるのである。
いかにも旅の始まりを感じさせるワクワクとするような1曲目、7曲め“Seaward Sunset”のピアノとコーラスによるしっとりとした美しさ、
そして“The Perfect Wish”での後半の大盛り上がりからラストへの展開などは、いつ聴いても素晴らしく感動的だ。
エンディング的な“Prince of Heaven”で幕を閉じるまで、淡い色をした幻想の物語にゆったりと浸れるじつに素敵なアルバムである。
メロディアス度・・8 ほのぼの度・・9 ファンタジック度・・9 総合・・8.5
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Julian Jay Savarin「Waiters on the Dance」
ドミニカ共和国出身の小説家、ジュリアン・ジェイ・サバリンの1971年作
自身のSF小説を題材にした音楽を作ろうと英国でJulian's Treatmentを結成、
1970年に「A Time Before This...」を発表し、その翌年にソロ名義で出したのが本作。
サウンドは鳴り響くオルガンとメロトロン、美しい女性ヴォーカルによる幻想的なブリティッシュロック。
いかにもロック的なギターとやわらかなハモンドの音色が好対照で、そこに歌を乗せる
Catapillaの女性Voiは、歌唱力というよりもその物憂げな雰囲気の声質がとてもよろしい。
いかにも英国然とした、まどろむようなファンタジックな音作りが素敵です。
シンフォニック度・・8 ハモン度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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HAWKWINDWarrior on the Edge of Time」
イギリスのサイケロックバンド、ホークウインドの1975年作
鳴り響くメロトロンに美しいフルートの音色でシンフォニック色が増したアルバム。
マイケル・ムアコックのファンタジー小説を題材にしていることもあって、
幻想的な世界観がマイルドなサイケロックとほどよく融合している。
そのムアコックもヴォーカルでゲスト参加。「Space Ritual」の頃のドラッギーな
高揚感は薄れたものの、エコーのかかったヴォーカルとシンセを中心に
スペイシーな壮大さは残しており、前作のシンフォ路線を進めた傑作と言っていい。
シンフォニック度・・8 ファンタジック度・・8 サイケ度・・7 総合・・8
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MARILLION「Misplaced Childhood」
イギリスのポンプロックバンド、マリリオンの3rd。1985年作
物哀しいイントロのメロディから始まる本作は、主人公が少年の時代の亡霊と出会い、
過去への記憶を甦らせるというストーリーのコンセプト作。邦題は「過ち色の記憶」
きらびやかなシンセとメロウなギター、そして物語を語るようなフィッシュのヴォーカルとともに、
ドラマティックに聴かせる傑作。シンフォニックロックという点ではバンドの最高傑作といえるだろう。
繊細な叙情美とメロディの合わさった英国的なシンフォサウンドだ。
メロディアス度・・8 ドラマティック度・・9 叙情度・・9 総合・・8.5
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CLIVE NORAN & OLIVER WAKEMAN「Jabberwocky」
クライブ・ノーラン(ARENA、PENDRAGON)、オリバー・ウェイクマンによるユニットの1999年作
「不思議の国のアリス」に出てくる怪物、「ジャバーウォック」をテーマにしたコンセプト作で、
クライブ、オリバーの他、PENDRAGONやSHADOWLANDの現メンバーなどに加え、
ヴォーカルにはボブ・カトレイ(MAGNUM)、トレイシー・ヒッチングス(LANDMARQ)らが参加。
リックの息子であるオリバー・ウェイクマンは、さすがに親譲りのクラシカルなプレイを聴かせ、
ベテランのクライブとともに、これぞ英国シンフォニックというサウンドを構築している。
ボブ・カトレイとトレイシー・ヒッチングスの男女ヴォーカルもストーリーによくマッチしていて、
ゆるやかに盛り上がる楽曲とともに、ジャケ通りのファンタジックなイメージで壮麗に聴かせてくれる。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 ファンタジック度・・9 総合・・7.5
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CAAMORA 「SHE」
ARENAPENDRAGONで活躍するクライブ・ノーランと、ポーランド人女性歌手、
アグネイスカ・スウィタ嬢を中心にしたユニット、カーモラのアルバム。2008年作
冒険小説「She-洞窟の女王」をコンセプトにした2枚組の大作で、ゲストにPALLASのアラン・リード、
MAGENTAクリスティーナ嬢、その他、IQTHRESHOLDなどのメンバーを迎え、
4人のVoが物語的に配役を担うという構成。壮麗なシンセワークに美声の女性ヴォーカル、そしてファンタジックなストーリーと、
この手の好きなリスナーにはたまらない要素が揃っているが、楽曲そのものはPALLASなどを思わせる、
しごく正統派のシンフォサウンド。ロックオペラ的な歌ものが主体なこともあり、曲自体の新鮮味は薄いが、
豪華なブックレットを眺めつつ物語を思い浮かべながら楽しめる作品だ。
シンフォニック度・・8 ファンタジック度・・9 物語度・・9 総合・・8
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◆イタリアの幻想

GoblinIl Fantastico Viaggio del Bagarozzo Mark
イタリアンロックバンド、ゴブリンのアルバム。1978年作
「マークの幻想の旅」というタイトルで知られる本作は、ゴブリンの作品中最もシンフォニックで
一番好きなアルバムだ。美しい色彩のジャケのイメージ通り、幻想的なコンセプト作となっていて、
ムーグシンセの音色にメロディアスなギターが重なり、物語を歌いあげるかのようなヴォーカルとともに、
叙情たっぷりに聴かせる。「サスペリア」や「ゾンビ」といったサントラ作品が有名なこのバンドだが、
そうしたインスト曲を作る方法論も本作中に活かされており、ヴォーカル曲の合間に小曲をはさむことで、
物語的な世界観を演出している。まるで物語のエンディングのようなラスト曲も素晴らしい。
メロディアス度・・8 幻想度・・9 イタリア度・・9 総合・・8
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ERIS PLUVIA「Rings of Earthly Lights」
イタリアのシンフォニックロックバンド、エリス・プルーヴァの1991年作
指輪物語をコンセプトにした繊細な作品で、美しいフルートの音色にサックスが合わさり
メロウなギターに、しっとりとしたピアノ、うっすらとしたシンセでゆったりと聴かせるサウンドは、まさに夢見心地。
ヴォーカル曲における牧歌的な叙情も耳に優しく、一方ではしっかりとした演奏面での表現力が備わっているのも見事。
美しいジャケのセンスも素晴らしいが、やわらかな音作りでこれだけ世界観を表現できるというのが素晴らしい。
GANDALFなどを思わせる自然派のヒーリング感覚と、アコースティカルな美意識にうっとりの傑作です。
やわらかシンフォ度・・9 繊細度・・9 イタリア度・・7 総合・・8
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Latte Miele「Marco Polo(sogni e viaggi)
イタリアのプログレバンド、ラッテ・ミエーレの復活2009年作
本作は「東方見聞録」で知られる冒険家、マルコ・ポーロをテーマにしたコンセプト作で、
のっけから壮大なオーケストレーションで幕を開け、華麗なシンセとメロウなギターが交差し
とてつもなくドラマティックなその音に一気に引き込まれる。やわらかなハモンドにフルートの音色、
オーケストラによるシンフォニックな音の厚みと、このバンドならではのやわらかなメロディが耳に優しい。
繊細なヴァイオリンが艶やかに奏でられ、優雅にしてクラシカルな、まさにイタリアの音である。
イタリア語の歌唱も含めて、どこかなつかしいような70年代の香りを、現代のダイナミズムで再構築したような
感触の感動的なサウンド。ラッテのファンは当然、イタリアンロック愛好家は全員必聴の歓喜の復活作だ。
シンフォニック度・・8 クラシカル度・・8 イタリア度・・10 総合・・8.5
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AinurLay of Leithian」
イタリアのシンフォニックロックバンド、アイヌルの2010年作
4人のソプラノヴォーカルに、ヴァイオリン、チェロ、ハープ、フルート、フレンチホルン奏者、
さらにはオーケストラも加えた、大人数によるシンフォニックロックプロジェクトの3作目で、
本作は指輪物語の「レイシアンの歌」をテーマにしたコンセプト作である。
物語的な語りなども挿入したり、映画のような構成で聴かせる幻想的な世界観で、
クラシカルな叙情とやや粗めのハードプログレ要素が合わさった大仰な作風。
起伏のある楽曲展開に男女の歌声が重なると、AYREONのような壮大さで、
イタリアのバンドらしいらしい妖しげな感触もありつつ濃密なサウンドを描いている。
シンフォニック度・・8 壮大度・・8 ファンタジック度・・9 総合・・8
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Phaedra「Ptah」
イタリアのプログレバンド、フェードラの2010年作
二人のヴァイオリン奏者、フルート奏者を含む7人編成で、90年代から活動しているらしい。
優雅なチェンバロの旋律にたおやかなフルート、艶やかなヴァイオリンも加わって、
クラシカルな美意識に包まれた、アコースティカルなプログレが展開される。
リリカルなピアノの音色にアコースティックギター、イタリア語による歌声も牧歌的で、
ときにかつてのPFMを思わせるようなうっとりとする叙情美が楽しめる繊細系クラシカルプログレ作品。
エジブトの創造神“Ptah”をテーマに、組曲方式に紡がれたロックオペラ的な構成も見事。
クラシカル度・・9 叙情度・・9 イタリア度・・9 総合・・8
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FAVERAVOLA「La conta dei cento castagni」
イタリアのシンフォニックロックバンド、ファヴェラヴォーラの2006年作
このいかにもなジャケのイメージ通りの、ファンタジー風のコンセプト作で。
たおやかなフルートやヴァィオリン、70年代の香りただようシンセワークとイタリア語の歌唱…
全体的にイタリアのマイナー系らしい繊細な幻想美につつまれていて、
この手が好きな人間にはたまらず、ダメな人間にはただ退屈というサウンドだろう。
マニアックなところだと、BLACK JESTERASGARDといったバンドのメンバーも参加していて
かつてのLE ORMEあたりに通じる、幻想的な音が好きなら、きっと心地よく聴けるだろう。
シンフォニック度・・8 ファンタジック度・・9 繊細度・・9 総合・・7.5

The Yleclipse「TRAILS OF AMBERGRIS」
イタリアのシンフォニックロックバンド、イルクリプスの2008年作
前作もGENESIS系のシンフォとしてはなかなかの出来であったが、
今作ではさらに幻想的な作風を増し、美しいシンセとメロウなギターで聴かせるサウンド。
演奏力はさほど高くはないのだが、イタリア語によるヘタウマなヴォーカルと
牧歌的でファンタジックな世界観がけっこう好みなんですなあ。
同様の愛らしいイタリアンシンフォにはFAVERAVOLAというバンドもいますが、
MONTEFELTOROとか、そのあたりの幻想的なB級シンフォがお好みの方はぜひ。
シンフォニック度・・8 幻想度・・9 イタリア度・・8 総合・・7.5


◆フランス、ドイツ、オランダ、北欧の冒険

PULSAR 「Halloween」
フランスのプログレバンド、ピュルサーの3rd。1977年作
女性Voによる“ダニーボーイ”で幕を開ける本作は、フランスプログレ史上においても5指に入るべき名作。
美しいフルートに幽玄なメロトロンの響き、アコースティックギターのつまびきに包まれて、
ゆったりと曲は進んでゆく、ヘヴィーなギターが加わりダイナミックなリズムとともに、
薄暗い叙情とエクセントリックな夢見心地の狂気のようなものが交差してゆく。
メロウなギターワークとメロトロンの重なりは絶品で、たとえば初期のGENESISの叙情をフランス的な
アートな感性で仕立て上げたという感じか。A、B面をいっぱいに使った全2曲の構成も思い切っているが、
カッチリとした展開というものではなく、むしろ広がりのある幻想的感性を楽しむ作品だと思う。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・8 幻想度・・9 総合・・8.5
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Halloween「Merlin」
フランスのプログレバンド、ハロウィーンの1994年作
フランスのシンフォニックシーンではベテランと言ってよいバンド。
本作はタイトル通りアーサー王伝説に登場する魔術師マーリンをコンセプトにしたアルバム。
ヴァイオリンが鳴り響くクラシカルな質感と、フランスらしいどこかとぼけたシアトリカルなサウンドで、
フランス語による女性ヴォーカルの歌声も、どこかミステリアスで、ほの暗い叙情と不思議な緊張感が漂う。
MINIMUM VITALTIEMKOなど、90年代フランスには質の高いシンフォプログレバンドが多かった。
シンフォニック度・・7 シアトリカル度・・8 フランス度・・8 総合・・8
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Grobschnitt「Rockpommel's Land」
ドイツのプログレバンド、グローブシュニットの4th。1977年作
なんとなくロジャー・ディーン風のファンタジックなジャケからそそるものがあるが
内容的にも彼らの作品中もっともシンフォニックロック的な作風となっている。
Yesを思わせる繊細なギターワークと美しいシンセが絡み、やわらかに歌が乗る。
そこにやはりドイツ特有の土臭さも含んで、ファンタジックなストーリーが広がってゆく感じは
このバンドならではの濃密な雰囲気だ。全4曲でラストは20分近い大曲。
2007年リマスター盤にはラストの大曲のライブ音源をボーナス収録。
シンフォニック度・・8 ドラマティック度・・8 ファンタジック度・・8 総合・・8
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KAYAK「MERLIN-BARD OF THE UNSEEN」
オランダのメロディアス(プログレ)ロックバンド、カヤックの2003年作
復活後の3作目となる本作は、彼らが1981年に発表したアルバム「マーリン」の続編、というか完全版となっている。
もともとはアナログのA面のみだった楽曲を今回は新たに曲を書き起こし、全70分の作品に仕上げている。
そういえばメンバーは同郷のシンフォニックプロジェクトAYREONなどにも参加したことがあり、
そうしたシリアス系のコンセプト作に触発されたのかどうか、内容も妥協のないものになっている。
元曲のイメージを崩さぬままに、効果的な女性Voやキーボードの重ね
それにオーケストラも加わり、優雅にしてメロディアス、そして壮大な世界観を描いている。
もちろんメロディには彼ららしい人懐こさがあり、難解さよりは爽快さが前にでて聴きやすい。
メロディアス度・・8 シンフォニック度・・9 壮大度・・8 総合・・8.5
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ISILDURS BANE「Sagan Om Den Irlandska Algen/Sagan Om Ringen
スウェーデンのシンフォニックロックバンド、イシルドゥルス・バーネの1st/4th。
1984年の1stと1988年の4thのカップリング盤。今でこそ北欧随一の知性派バンドとして
知られる彼らだが、初期の作品においては、よりファンタジックで繊細なサウンドを描いていた。
北欧神話をテーマにした1stは、美麗なピアノから、CAMELばりのメロディックなギター、
フルートの音色で聴かせる、じつに美しいインスト作品。素朴な暖かみと北欧的な爽やかさにうっとり。
4thは「指輪物語」をテーマに、シンフォニックな構築性を増した傑作。涼やかな叙情メロディがたまらない。
一方では、テクニカルなリズムを取り入れるなど後の作風の萌芽もかいま見える。初期の最高傑作。
シンフォニック度・・8 繊細度・・9 北欧度・・9 総合・・8
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PAR LINDH & BJORN JOHANSSON「Bilbo」
スウェーデンのミューシシャン、パル・リンダービヨルン・ヨハンソンによる1996年作
トールキンの「指輪物語」の一作「ホビットの冒険」をコンセプトにした作品で、北欧らしい寒々しい叙情美と
フルートやクラリネットなどのアコースティカルな繊細さに、シンフォニックな美しいが加わった傑作。
中世的なチェンバロの音色や、荘厳なパイプオルガンなど、PLPとしての1作目である「GOTHIC IMPRESSIONS」
通じる雰囲気もあり、薄暗い叙情性と幻想美にうっとりだ。また、北欧トラッド的なメロディを散りばめているところが
いかにもBJORN JOHANSSONらしい。PLPのマグダレーナ嬢がヴォーカルで参加、ファンタジックな世界観に華を添えている。
シンフォニック度・・8 しっとり繊細度・・9 ファンタジック度・・9 総合・・8
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PAR LINDH & BJORN JOHANSSON「DREAMSONGS FROM MIDDLE EARTH」
北欧シンフォニックの名コンビ、パル・リンダービヨルン・ヨハンソンによる2004年作
前作「BILBO」に続き、今回もトールキンの「指輪物語」をテーマにしたコンセプト作。
ギター、マンドリン、ブズーキ他、トラッド楽器もこなすビヨルン・ヨハンソンの作曲能力と
マルチミュージシャンぶりは、彼のソロ作「DISCUS URSI'S DUI」で証明済み。
一方、 PLPでは弾きまくりのバロックシンフォをやっているパル・リンダーだが、
ここではやや抑え気味にしっとりとしたピアノ、キーボードを聴かせてくれる。
ストーリーにそって、曲はゆったりと、たゆたうように流れてゆき、北欧トラディショナル的な
やわらかなメロディが耳に心地よい。アコースティカルで清涼感のあるシンフォサウンド。
シンフォニック度・・8 しっとり繊細度・・9 ファンタジック度・・9 総合・・8.5
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PICTORIAL WAND 「A sleeper's awakening」
ノルウェーのシンフォニックロックユニット、ピクトリアル・ワンドの2006年作
チェロやフルートに男女8人のVoを含む大編成によるCD2枚組み大作。
のっけから、フルートとアコースティックギターの響きが美しく、物語的な語りから曲に入ると
シンフォニックなキーボードにややメタリックなギターも加わり、民族的なゴシックシンフォというサウンドになる。
ナレーション入りのストーリーを配した壮大な作風とファンタジックな雰囲気に加えて北欧フォークロワ的な要素も耳に心地よい。
メタリックな要素もうるさすぎない程なので、ハードめの北欧シンフォとしても聴け、アコースティカルな静寂パートから
シンフォニックパートへの切り返しなども効果的。幻想的なイラスト群も含めて、ファンタジー作品としての構築には相当気合が入っている。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 ファンタジック度・・9 総合・・8
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◆南北アメリカのロマン

MAGELLAN「Hour of Restoration」
アメリカのネオプログレバンド、マジェランの1st。1991年作
プログレッシブロックが死に絶えたと思われていた90年代初頭に突如としてアルリカからネオプログレ復興の旗手が現れた。
マイク・ヴァーニーによるその名もMagna Cartaレーベルからデビューしたこのバンドは、偉大な航海者マゼランの名を冠し、
まるでYesの「こわれもの」のジャケにでも飛んでいそうなレトロな宇宙船を描いたジャケからしても、
ワクワクするようなロマンに満ちているではないか。サウンドの方もかつてのプログレッシブ・ロックを
ルーツにしながらも、それをモダンなアレンジと融合、1曲目から14分の大曲を構築させる力作で、
ハードなシンフォニックロックともいうべききらびやかさに溢れている。このマグナ・カルタレーベルからは
SHADOW GALLERY、CAIRらといった素晴らしい後続を生み出し、新たなプログレシーンに貢献した。
シンフォニック度・・8 ドラマティック度・・8 ロマン度・・9 総合・・8
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SHADOW GALLERY
アメリカのプログレメタルバンド、シャドウ・ギャラリーの1st。1992年作
Magellanに続くMagna Cartaレーベルの第二弾バンドとしてデビュー。
星空の回廊に舞い降りるイカルスという幻想的なこのジャケにまず想像が膨らむが、
やわらかなメロディと美しいシンセで聴かせる大曲は、ロマンの香りに満ちていて
その繊細な叙情性にうっとりとなる。本作ではドラムが打ち込みであることもあって、
メタリックな硬質感は薄く、むしろプログレ/シンフォニックロックとして鑑賞できる。
ラストの大曲“The Queen of the City of Ice”の幻想的な美しさは筆舌に尽くしがたい。
シンフォニック度・・8 ドラマティック度・・9 幻想度・・9 総合・・8.5
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GLASS HAMMER 「journey of the dunadan」
アメリカのシンフォニックロックバンド、グラス・ハマーの1st。1993年作
今やアメリカシンフォニックロックの最高峰にまで成長している彼らのこれがデビュー作。
ファンタジックなジャケもそうだが、曲間に映画的な語りを導入するなど、
この時点からすでに濃密な作風で、「指輪物語」をテーマにしたシンフォニックロックが展開されてゆく。
かつてのYESにあったキャッチーな聴きやすさと、シンセによる派手な盛り上がりを聴かせつつ
アコースティカルで素朴な曲もあったりで、適度な力の抜け具合がよろしい。
後の4作目の完成度には及ばないまでも、十分高品質なシンフォニック作品と言えるだろう。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・8 ファンタジック度・・8 総合・・8

BARROQUEJON「CONCERNING THE QUEST,THE BEARER AND THE RING」
チリの一人シンフォニックもの、バロックエジョンの2003年作
「指輪物語」をモチーフにしたドラマティックな作風で、民謡的なメロディをたっぷりと折り込んだサウンドは、
なかなか大仰かつファンタジック。キーボード、ピアノ、オーケストレイション、ヴォーカルを一人でこなしていて、
QUEENばりのコーラスの重ねも全て一人でやっているのだから、よほど友達がいな…いや、こだわりがあるのだろう。
ジャケの雰囲気のようなダークさはあまりなく、むしろ爽やかに聴き通せる。打ち込みやオーケストレイションがメインなので
サウンドはやや平坦だが、この手のケルトな雰囲気が好きなメタルリスナーにもお勧め出来る。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 ファンタジック度・・9 総合・・7.5


◆日本のファンタジープログレ

平山照継「ノイの城」
テルズシンフォニア平山照継のソロアルバム。1983年作
NOVELAのギタリストだった平山照継がノヴェラからテルシンに活動を移行する時期に、
自身のファンタジックな世界観をコンセプトストーリーにした作品。
女性Voを含め、後のテルシンを感じさせる部分が大きいが、リズム隊がNOVELAなので
音的にはノヴェラのアルバム「最終戦争伝説U」からの流れでも聴ける。
ジャケットや歌詞などには童話的な可愛らしさ、コミカルさもあり、
それらを敬遠するような人には向かないがドリーミーなシンフォ作として良質な作品。
メロディアス度・・8 シンフォニック度・・8 ファンタジック度・・8 総合・・8
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OUTER LIMITS「少年の不思議な角笛」
日本のシンフォニックロックバンド、アウターリミッツの2nd。1986年作
日本きってのロマン派プログレバンド、本作は少年と魔力を持った角笛をめぐる
冒険ファンタジーコンセプト作で、バンドの最高傑作とも名高い。
塚本周成氏の美しいシンセに絡む川口貴氏の艶やかなヴァイオリンの音色、
そしてヌメロ・ウエノ氏の弟である上野知己のオペラティックなバリトンヴォイス。
物語的に展開してゆく楽曲は、最後の大団円に至るまで息をつかせぬ世界観で、
これほどのヨーロピアンなロマンティシズムを持った日本のプログレを僕は知らない。
3rd「ペールブルーの情景」と甲乙つけがたい日本シンフォニックロックの傑作だ。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 ファンタジック度・・9 総合・・8
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TERU'S SYMPHONIA「7つの夜の物語」
NNOVELAの平山照継は、ソロ活動で「ノイの城」「シンフォニア」の2作を発表後、ノヴェラを脱退、
テルズ・シンフォニアとしての活動を開始する。本作はその3作目となる。1990年作
「おっ姫様逃げた〜」で始まる可愛いらしい歌に当時はズッコケタものだが、
童話的でファンタジックな世界観は、本作でひとつの完成を極めたといえる。
シンフォニックなアレンジと徳久恵美の伸びやかな歌声による優しい聴き心地で
スリリングな部分は薄いが、幻想的で微笑ましく楽しめる作品に仕上がっている。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 ファンタジック度・・9 総合・・8
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MARGE LITCH「Fantasien 1998」

日本のシンフォニック・プログレハードロックバンド、マージュリッチの4th。1998年作
1991年の自主制作の1stをリメイクしたアルバムで、少々マンガチックなファンタジー世界を
壮大なシンフォニックサウンドで表現したという作品。展開力のあるテクニカルな楽曲と、
キャッチーなメロディが噛み合わさった独自の音楽性は、NOVELAをより壮大にしたイメージとも言えるか。
のちのALHAMBRAの母体となるメンバーだけあり、演奏の実力も充分で、
見事な歌唱の女性ヴォーカルに、手数の多いドラム、凄まじいテクニックのベース、そして華麗なキーボードと、
たとえればRHAPSODYあたりのシンフォニックメタルファンにも聴かせたいような質の高い内容だ。
ロマンと幻想の日本語歌詞を照れずに聴ければ、めくるめくファンタージェンの世界に浸れます。
シンフォニック度・・9 プログレ度・・7 ファンタジック度・・10 総合・・8
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*大曲、大作、組曲プログレ特集
*シアトリカル&ロックオペラ特集 も併せてご覧ください