オルガンロック/プログレ傑作選



60年代後期に英国からNICEPROCOL HARUMをはじめとした、クラシカルなロックバンドが登場しだすと、
バンドにおける鍵盤の役割は、それまで以上に重要となり、のちにデジタルなシンセ楽器が作られるまでは
ピアノ、オルガン、メロトロンというものが、バンド単位におけるオーケストラの代役としての主要な鍵盤楽器であった。
クラシカルで端正な響きのピアノや、くぐもったような独特の響きのあるメロトロンの音色は魅力的であるが、
それ以上に、ロックにおける躍動感と優美なやわらかさを同時に表現できたのがオルガンであったろう。
とくにハモンドオルガンの名称で親しまれるロックオルガンの名器は、40年以上をへた現在においてもその音色を愛好するリスナーは多い。
キース・エマーソンを筆頭に、デイブ・スチュワート、デイブ・グリーンスレイド、パトリック・モラーツといった名手たちの存在が
いまなお語り継がれるのも、すぐれたプログレッシブロックのアルバムの中で、その鍵盤プレイが光り輝いていたからであり、
メロトロンやピアノ以上に、オルガンを弾きこなすプレイヤーたちの熱い演奏のインパクトは大きかったといえる。
ここでは、オルガンをふんだんに使ったプログレッシブロック系の作品を集めてみた。   緑川 とうせい


■古き良きオルガンロック29選
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Deep PurpleThe Book of Taliesyn
ブリティッシュロックバンド、ディープ・パープルの1968年作/邦題「詩人タリエシンの世界」
言わずと知れた英国ハードロックの元祖的な大御所バンドであるが、
この第一期のサウンドは、おおらかなアートロックというべきもので、オルガンが鳴り響き、
エフェクトのかかったヴォーカルとともにサイケ気味の浮遊感も感じさせる作風だ。
随所に感じさせるクラシカルな感触は、ときにプログレ的な香りも感じさせ、
ラストの10分を超える壮大な大曲も含めて、HRファンよりもむしろそちら向けかもしれない。
ドラマティック度・・7 アートロック度・・8 英国度・・8 総合・・7.5
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Procol Harum「Shine on Brightly」
英国のクラシカルロックバンド、プロコル・ハルムの1968年作
プロコルハルムといえば「青い影」の入った1stと、中期の傑作「グランド・ホテル」が有名だが
プログレッシブロックとして聴くとなると、本作「月の光」こそが最高傑作であると思う。
エレガントなハモンドオルガンの響きに、クラシカルな要素をもったコード進行、
どこをとっても英国らしさを感じる、気品と情緒に溢れたサウンドはじつに耳に心地よい。
アルバムのハイライトは17分にもおよぶ大作“IN HELD 'Twas IN I”で
プログレッシブな感性とクラシックのフレーズなどを取り入れた大胆な展開が素晴らしい。
TRANSATLANTICがカヴァーしたこの曲を含め、シンフォニックファンにもお薦めしたい作品だ。
クラシカル度・・8 プログレ度・・7 英国度・・9 総合・・8 
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Brian Auger & The Trinity 「StreetNoise」
イギリスの鍵盤奏者ブライアン・オーガー率いるトリニティの1969年作
女性シンガー、ジュリー・ドリスコールを迎えての2作目となる。鳴り響くオルガンは前作以上にプログレ的になり、
躍動感のあるアンサンブルとともに、ジャズとロックの境目をゆくような熱い演奏が繰り広げられる。
手数の多いドラムもほとんどロックのノリで、激しいオルガンがそこに重なるとNICEやELPにも近い感触すらある。
一方ではジュリーのハスキーな歌声で聴かせるナンバーも前作以上に魅力的で、張りつめた緊張感を含ませつつ、
ART BEARSばりにシアトリカルに歌い上げる2曲めなどは圧巻である。DOORSのカヴァーなども自分たちのアレンジにしていて、
LP時代は2枚組の大作ながら、どこを切っても勢いある演奏とテンションで、最後までぐいぐい耳を引きつけられる。
オルガンロックとしての躍動感と、優雅なジャズテイストを感性豊かに融合させたというべき大傑作である。
ジャズ度・・7 ロック度・・8 英国度・・9 総合・・8.5
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COLOSSEUMValentyne Suite
イギリスのジャズロックバンド、コロシアムの2nd。1969年作
前半こそ比較的オーソドックスなジャズロックという感じだが、アルバム後半の17分にも及ぶ“ヴァレンタイン組曲”は素晴らしい。
テクニックのあるメンバーたちによる緊張感のある演奏は、激しいリズム展開の中で、
デイブ・グリーンスレイドのハモンドオルガンが鳴り響くプログレッシブなアプローチに
激しめのギターとサックスが絡んで、ときにNICEばりのクラシカルさも聴かせる。
プログレッシブ・ジャズロックの最初の完成と言うべき作品だ。キーフによる神秘的なジャケも印象深い。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 オルガン度・・8 総合・・8
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ARCADIUMBreathe Awhile」
ブリティッシュロックバンド、アルカディウムの1969年作
ブルージーなギターにオルガンがかぶさる、古き良き英国ロックの感触に、
神秘的な浮遊感もまじえたサウンドは、年代を考えればなかなか個性的。
ヴォーカルのユルさも含めたサイケな味わいは、初期のPINK FLOYD的でもある。
やわらかなオルガンの音色をたっぷりと含んだ聴き心地で、10分以上の大曲2曲を中心に、
当時としてはむしろ濃密な味わいの作風だろう。オルガンロックとしても楽しめる好作品。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 英国度・・8 総合・・8
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CARAVAN「If I Could Do It All Over Again I'd Do It All Over You」
イギリスのカンタベリーロックバンド、キャラバンの2nd。1970年作
一般的には次作「グレイとピンクの地」が代表作とされるが、本作も決して劣らない。
カンタベリー的な軽やかさに、デイヴ・シンクレアのオルガンがやわらかに重なると、
ジャズロックというよりは、ブリティッシュロックとしての湿りけをかもしだす。
牧歌的なヴォーカルメロディで聴かせる素朴な耳心地のよさと、
大曲における軽妙な展開力とテクニックもバランスがよくとれていて、
普通にメロディアスなプログレとして楽しめる。ピアノやフルートの音色も美しい。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 英国度・・8 総合・・8
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egg
イギリスのプログレバンド、エッグの1st。1970年作
ELPと同様にトリオ編成で、デイブ・スチュアートのハモンドオルガンをメインに、少し古めかしいながらも
クラシカルな鍵盤ロックを聴かせる。ヴォーカル曲のやぼったさや、全体的に時代的な薄暗さも感じさせつつも、
後半の20分のインストの組曲などは、クラシカルな優雅さが詰まったプログレが楽しめる。
より演奏力と切れ味の増した2nd「優雅な軍隊の出来にはまだおよばないが、
ELPとはまた違った暗めのハモンドロック作品として、聴いてみて損はない好作です。
クラシカル度・・8 プログレ度・・7 オルガン度・・8 総合・・7.5
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Atomic Rooster
ブリティッシュロックバンド、アトミック・ルースターの1st。1970年作
オルガンを中心にしたギターレスのトリオ編成ながら、ELPのようなクラシカル志向ではなくて、
こちらはあくまでもハードロック、そしてブルーズロック的な質感で聴かせるサウンドである。
ドラムを叩くのは後にELPに加入するカール・パーマーで、その手数の多いドラミングは
このサウンドの核をになっていると言ってもよい。朗々とした歌声にかぶさる、
どこかほのぼのとしたオルガンの音色という、そのギャップがある意味個性的で、
フルート入りの曲もあったりと、プログレとハードロックの狭間を行き来するような作品だ。
オルガン度・・9 プログレ度・・7 英国度・・8 総合・・7.5
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QUATERMASS
ブリティッシュロックバンド、クォーターマスの1970年作
ヒプノシスによるこのプテラノドンジャケが有名だが、内容はハモンドオルガンが鳴り響くプログレ風味のハードロック。
ギターレスのトリオ編成でありながら、同じスタイルのELPとは違いあくまでヴォーカル重視で聴かせる分かりやすいサウンドだ。
オルガンをバックに歌われるパワフルな歌唱にはマイナー臭さはなく、9分、10分という大曲では
英国的な哀愁と叙情とを含んだ、プログレ的な展開美も楽しめる。年代を考えればかなりの傑作だろう。
オルガン度・・9 プログレ度・・8 英国度・・9 総合・・8
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URIAH HEEPVery 'Eavy...Very 'Umble」
ブリティッシュロックバンド、ユーライア・ヒープの1st。1970年作
オルガン入りのハードロックということで、プログレファンからも評価が高いこのバンドだが、
この1stの時点では、後のプログレッシブな構築性よりは、むしろ暴れ回るオルガンに
ヘヴィなギターで聴かせる、ときにBLACK SABBATHをも思わせる薄暗さを感じるスタイルで、
ほのかにブルージーな香りも残している。未完成な荒さの中にも英国然とした質感が魅力的だ。
メロディアス度・・7 プログレ度・・7 英国度・・9 総合・・8
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BLACK WIDOWSacrifice
ブリティッシュロックバンド、ブラック・ウィドウの1st。1970年作
Dr.Zなどとともに、70年代英国ロックのアンダーグラウンドシーンで、
異彩を放った、いわば黒魔術系の世界観をもったバンドとして語られる。
BLACK SABBATHほどのヘヴィさはなく、妖しげに鳴り響くオルガンの音色に
サックスが絡み、フルートなども入った、いかにも英国らしい湿りけのあるサウンド。
幻想的な雰囲気が耳心地よく、薄暗いプログレとしても普通に楽しめる作品だ。
メロディアス度・・7 プログレ度・・7 英国度・・8 総合・・8
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Marsupilami
ブリティッシュロックバンド、マルスピラミの1st。1970年作
2nd「ARENA」はブリティッシュプログレの裏名盤とも言うべき傑作だが、その彼らの1stがこれ。
オルガン、フルート奏者を含む5人組で、ややダークめのブリティッシュロックをやっている。
鳴り響くオルガンに絡む激しいギターとフルートがどこか妖しげな雰囲気をかもし出し、
どこかサイケロック的な底知れなさを感じさせるサウンドがなかなか通好みである。
古代ローマをテーマにした2ndほどの完成度と壮大さはないものの、おどろおどろしいオルガンの音色に、
シアトリカルなヴォーカルも含めて、英国のダークサイドというべき独特の世界観は充分に楽しめる力作。
メロディアス度・・7 プログレ度・・8 英国度・・9 総合・・8
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Julian's Treatment「A Time Before This」
ドミニカ共和国出身の小説家、ジュリアン・ジェイ・サバリンを中心にしたバンドで、
自身のSF小説を題材にしたコンセプト作品。1970年作
クラシカルなオルガンの優雅な響きに、メロウなギターと女性ヴォーカルが重なり、
妖しいサイケロック風味と英国的な情緒が混ざった、幻想的なサウンドを繰り広げる。
牧歌的なフルートの音色もよろしい。いわば英国シンフォニックロックの先駆けだろう。
本作のあと、1973年にJulian Jay Savarin名義で2ndを発表。そちらも同傾向の好作である。
シンフォニック度・・7 プログレ度・・7 オルガン度・・8 総合・・7.5
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RARE BIRDAs Your Mind Flies By
ブリティッシュロックバンド、レア・バードの2nd。1970年作
ギターレスのツインキーボードという個性的な編成で、ハモンドオルガンの鳴り響く
叙情的なブリティッシュロックを聴かせる。年代的にもプログレ前夜の牧歌的な味わいがあり、
ヴォーカルの粗さも含めてレトロな時代性を感じさせる音だ。
クラシカルな質感はPROCOL HALMあたりにも通じるものがあり、
とくに19分の組曲“Flight”は構成力の光る見事な出来である。
クラシカル度・・8 プログレ度・・7 英国度・・9 総合・・7.5
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EMERSON,LAKE & PALMER「Tarkus」
エマーソン・レイク・アンド・パーマーの2nd。1971年作
LPでいうA面すべてを費やした7パートに分かれた20分の長大な組曲は、鳴り響くオルガンとともに
エマーソンのキーボードワークが縦横無尽に炸裂し、リズム面での緩急のつけ方や
ドラマティックな構成力が前作以上にプログレッシブロックとしての美学を感じさせる。
ムーグシンセを導入したことで、オルガン、ピアノというそれぞれの異なる音を使い分け、
サウンドの幅が大きく広がっている。冒頭の組曲が凄すぎて2曲目以降の印象が弱いのだが、
後半もじっくりと聴けばクラシカルで優雅な味わいとともに、絶品の鍵盤さばきを堪能できる。
なんにしてもこのアルバムで聴ける世紀のキーボード大曲は、時代を超えて輝き続けている。
クラシカル度・・8 プログレ度・・9 キーボー度・・9 総合・・8.5 
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Cressida「Asylum」
ブリティッシュロックバンド、クレシダの2nd。1971年作
キーフのジャケが印象的な、ブリティッシュオルガンロックの傑作。
鳴り響くハモンドとともに、ドラマティックに展開する楽曲構造が見事で、
美しいストリングスも加わって盛り上がる部分は繊細にして壮麗だ。
またオルガンだけでなく、泣きのメロディやときにブルージーなフレーズもこなす
ギターもなかなか魅力的で、サウンドに厚みと奥深さを巧みに作り出している。
オルガンロック云々というよりもブリティッシュロックの傑作と呼べるだけの内容だ。
メロディアス度・・8 英国度・・9 オルガン度・・9 総合・・8
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STILL LIFE

ブリティッシュロックバンド、スティル・ライフの1971年作
怪盤の宝庫として知られる英ヴァーティゴレーベルの作品で、中でも本作は英国ハモンドロックの名盤とされる
その内容は、これ全篇オルガンが鳴りっぱなし。曲自体は特異な展開もないオーソドックスで
なかなか渋い感じのブリティッシュロックなのだが、聴き所はやはりハモンドオルガン!
懐かしくやわらかなこの音色はじつに耳に心地よく、何か古きよき郷愁を誘うのである。
また、エモーショナルなヴォーカルのせいもあって、音にはマイナー臭さがさほどない。
そしてこの美しいジャケだが、広げると花びらの下に現れる骸骨というセンスもお見事。
メロディアス度・・7 英国度・・9 オルガン度・・9 総合・・8
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MAINHORSE
ブリティッシュロックバンド、メインホースの1971年作
のちにRefugeeYesへ加入するパトリック・モラーツが在籍したバンドで、本作が唯一の作品。
サウンドはELPばりにオルガンを鳴り響かせつつ、ブルージーなギターとバトルするような
勢いのあるハードロックであるが、やはりモラーツのクラシカルな鍵盤さばきがアクセントになっている。
10分を超える大曲も2曲あり、プログレ的にも楽しめる。やわらかなオルガンの響きが素敵な逸品です。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 英国度・・9 総合・・8
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Indian Summer
ブリティッシュロックバンド、インディアン・サマーの1971年作
キーフによるジャケが印象的であるが、サウンドの方はオルガンが鳴り響く
比較的オーソドックスなブリティッシュロック。いくぶんのハードな質感と
ブルージーなヴォーカルの歌声とともに、いかにも英国らしい叙情を聴かせてくれる。
ギターが前に出過ぎることなく、あくまで優雅なオルガンの音色が心地よく広がってゆく。
ときにメロトロンも響かせつつ、派手さはないが哀愁を感じさせる好作品である。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 英国度・・9 総合・・8
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BRAM STOKER
「Heavy Rock Spectacular」
ブリティッシュロックバンド、ブラム・ストーカーの1972年作
オルガンがたっぷりと鳴り響き、適度なハードかつブルージーなギターを乗せた、
音数の多いアンサンブルで聴かせる。年代を考えれば、楽曲にはエキセントリックなセンスを感じさせ、
先の読めない展開のフックを含めて、アートロック的でもある怪しい雰囲気が楽しめる。
オルガンのフレーズにはNICEにも通じるクラシカルなテイストがあって、インストパートだけでも魅力がある。
一方では歌入りの曲での味わいも捨てがたい。当時の英国シーンの奥深さをうかがわせる傑作である。
オルガン度・・9 プログレ度・・8 英国度・・9 総合・・8
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Greenslade
デイヴ・グリーンスレイド率いるブリティッシュロックバンド、グリーンスレイドの1st。1973年作
ギターレス、ツインキーボードという編成で、レトロなオルガンを鳴らしながら
軽やかに聴かせるサウンドで、英国らしい湿りけとキャッチーな聴き心地が魅力的。
クラシカルな優雅さを含みつつも、大仰にはならないシンプルなポップ感覚というものがあって、
濃密にプログレ、プログレしていないところが70年代前半の作品ではかえって珍しい。
オルガンにかぶさるメロトロンの響きも美しい。英国鍵盤ロックの名バンドである。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 オルガン度・・8 総合・・8
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Refugee
イギリスのプログレバンド、レフュジーの1974年作
後にYESに加入するパトリック・モラーツと、元NICEのメンバーによる唯一のアルバム。
きらびやかなモラーツのシンセワークを中心にした、NICEやELPを思わせるクラシカルな鍵盤プログレ。
いくぶんドタドタとしたドラムに、強引なまでにムーグシンセで押しまくりつつ、オルガンやピアノも鳴り響き
ときに歌もので盛り上げたりもするサウンドは、オランダのTRACEをやや粗削りにしたという雰囲気もある。
とくに長い組曲の出来が白眉で、クラシカルな優雅さと暑苦しい濃密さが同居した傑作である。
クラシカル度・・8 プログレ度・・8 キーボー度・・8 総合・・8
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HANSSON & KARLSSON
スウェーデンの鍵盤奏者、ボ・ハンソンとドラムのジャン・カールソンによるユニット。
1967年のデビュー作から全曲に加え、69年作「Man at the Moon」の前半を収録。
1967年といえば、英国ではPROCOL HARUMNICEがデビューした年であるが、
北欧の地にもそれに引けをとらないオルガンロックをやっている連中がいたのであった。
のちにソロ活動で有名になる、ボ・ハンソンの奏でるクラシカルなオルガンを中心に、
ロックやジャズの質感を含んだ作風は、ナイスを思わせる質の高いもので、
優雅さと北欧らしいメロウな聴き心地が楽しめる。オルガンロック好きならばたまらないだろう。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 オルガン度・・9 総合・・8
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Ache「Green Man
デンマークのプログレバンド、エイクの1971年作
前作同様、ほの暗いミステリアスな雰囲気とともに聴かせるオルガンロックサウンドだが、
より演奏のキレが増したことで、プログレ的な構築力がより強まっている。
鳴り響くオルガンはもちろん、随所にチェンバロやピアノの音色も入ったり
ときにヴォーカルパートも加わったりと、サウンドのメリハリとスケール感が増した。
オルガンロックとしてはもちろん、初期の北欧プログレを代表する傑作と言ってよい。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 オルガン度・・8 総合・・8

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FOCUS「FOCUS 3」
オランダのプログレバンド、フォーカスの3rd。1972年作
タイス・ファンレアーのオルガンとフルート、そして、ヤン・アッカーマンの類まれなギタープレイが魅力のバンド。
本作は、そのアッカーマンのメロディアスなギターが光るキャッチーな名曲“SYLVIA”をはじめ、
たおやかな叙情で聴かせる“FOCUS V”、クラシカルとジャジーな要素が見事に融合した
大曲“ANSWERS? QUESTIONS! QUESTIONS? ANSWERS!”、“ANONYMUS U”など、聴きどころが多く、
67分間濃密な演奏がたっぷり楽しめる傑作。タイスの奏でるピアノとオルガン&フルートが美しい小曲も、
効果的に導入され、全体的に格調のあるクラシカルでメロディアスなアルバムとなっている。
一般的には2nd「MOVING WAVES」が名盤とされているが、内容の濃さでは本作が最高だろう。
メロディアス度・・8 クラシカル度・・8 熱き演奏度・・9 総合・・8.5
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Twenty Sixty Six and Then「Reflections!」
ドイツのプログレバンド、2066・アンド・ゼンの1972年作
ハモンドが鳴り響く、やや古めかしいハードプログレサウンド。たたみかけるような曲調に、
ハードロック風のややダーティなヴォーカル、鳴り響くフルートも叙情というよりもアグレッシブな質感で聴かせる。
10分以上の曲も多く、大作志向のスケールを感じさせる点ではGrobschnittなどにも通じるものがあるが、
押すだけではなくアコースティックなパートもあり、構成力の点でもあなどれない。
全体的にはハードロックの人たちがプログレ風味のアルバムを作ってみましたという感じで
むしろ70'sブリティッシュロックのリスナーに受けそうな音である。
メロディアス度・・7 プログレ度・・7 オルガン度・・8 総合・・7.5
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SANDROSE
フランスのプログレ・ロックバンド、サンドローズの1972年作
ジャズやクラシックの素養をもつJean-Piere Alarcenを中心に、EDEN ROSEを母体に結成される。
オルガンを基調にした70'sロックサウンドに、表現力豊かな女性ヴォーカル、ローズのソウルフルな歌声が重なると
プログレというよりはむしろ、SAVAGE ROSEなどに通じる女性声R&Bという質感に包まれるが、
ここぞと鳴り響くメロトロンなどはシンフォニックな叙情性を付加しており、思わずうっとりとなる。
アラルサンのメロウなギターワークもやはり見事で、この時代にしか作り得なかったであろう
熱情と美学がアルバムの中には溢れている。フレンチロックの名盤というに足る作品だ。
メロディアス度・・8 叙情度・・9 女性Vo度・・9 総合・・8.5
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TRACE

オランダのプログレバンド、トレースの1st。1974年作
EKSEPTIONで活躍したリック・ヴァン・ダー・リンデン率いるクラシカル・キーボードロックバンド。
これでもかとばかりにクラシカルに弾き鳴らされるオルガンにメロトロンがかぶさり、
素朴でありつつもコテコテという、聴いていて思わずにやにやしてしまうサウンド。
オランダのバンドらしいメロディへのこだわりと、良い意味での分かりやすい大衆感覚があり、
ELPのストイックさに比べて肩肘張らすに楽しめます。ドイツのTRIUMVIRATと並ぶ鍵盤プログレの代表。
2nd「鳥人王国」も素晴らしい傑作ですが、まずは熱きクラシカルロックの本作から。
クラシカル度・・9 プログレ度・・7 キーボー度・・9 総合・・8.5
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FLIED EGGドクター・シーゲルのフライド・エッグ・マシーン
日本のプログレ/ロックバンド、フライド・エッグの1972年作
成毛しげる、角田ヒロ(つのだ☆ひろ)、高中正義からなるトリオバンドで、
前身であるストロベリー・パスを継承するブリティッシュロック色を打ち出した作品。
DEEP PURPLEURIAH HEEPあたりに通じる洋楽指向を取り入れたサウンドで
鳴り響くハモンドオルガンに、手数の多いドラム、そして英詞の歌詞が本格的だ。
美しいピアノにメロトロンも入ったパラード曲などは、時代を考えると相当のクオリティで
日本のバンド云々というものを超えた普遍的なロックとしての魅力が備わっている。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 ブリティッシュ度・・9 総合・・8
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■現代のバンドもオルガン使ってます

DEATHORGAN 「9 to 5」
スウェーデンのオルガンロックバンド、デスオルガンの1st。1995年作
ギターレスのオルガントリオ+2人のVoという特異な編成が物語る通り、
レトロなオルガンの上にアグレッシブなヴォーカルが乗るというなかなか個性的なサウンド。
比較的ノーマルな声と、低音デス声という二人のヴォーカルの歌声とともに、暴虐さをかもし出しつつも、
やはりバックがオルガンなので音に硬質感はなく、どこか愉快な雰囲気とともに、
70'sブリティッシュロック風でもあるレトロな質感をかもし出している。
まるで1発ギャグ的なインパクトであるが、バンドはこの後2ndを出している。
メロディアス度・・7 インパクト・・9 オルガン度・・9 総合・・7.5
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BLACK BONZO
スウェーデンのヴィンテージロックバンド、ブラックボンゾの1st。2005年作
ユーライア・ヒープ、ディープ・パープルや、70年代のヴァーティゴ・レーベル系などを彷彿とさせる
レトロなプログレ・ハードロックサウンド。鳴り響くオルガンに、古き良き…というコーラスワーク。
URIAH HEEP的な英国然とした音と、北欧独特の時間の止まったような叙情性が合わさって
古くさいのだが間違いなく現在のサウンド…というなんとも不思議な雰囲気が楽しめる。
思い入れのあるヒープファンなどよりはむしろ、こだわりのない最近のリスナーに受けるかもしれない。
メロディアス度・・8 古き良き度・・9 オルガン度・・9 総合・・8
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BEARDFISH「Sleeping in Traffic:Part Two」
スウェーデンのプログレバンド、ビアードフィッシュの2008年作
オルガンなどを掻き鳴らす、70's英国ロック風の演奏は本作ではより深みを増しており、
やわらかなメロディをまじえながら、ほんのりと北欧風味も忘れないのが見事。
このレトロなセンスは、その本気ぶりもさることながら、ロックとしてのグルーブ感がしっかり曲を支えているのも
なかなか素晴らしい。これはもはやオルガンロックの傑作といってもよいほどだが、
よくよく聴けば、ちゃんと現代的な構築性を持っているので、決して古くさいだけではないのである。
最後には35分の大曲が待ち構えていて、本作が大変な力作であると知れる。
メロディアス度・・8 古き良き度・・10 オルガン度・・8 総合・・8
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ExCubus「Memoires incubussiennes」
カナダのプログレバンド、エクスキュブスの2008年作
1974年の幻のマテリアルに加え、2008年にメンバーが新たに録音した音源を収録したもの。
鳴り響くオルガンにメロトロン、70sブリティッシュロック的なギターの音色による
アンダーグラウンドな質感と、カナダらしいどこかとぼけた曲展開で聴かせるサウンドは、
発掘音源というには出来がよく、ELP+Atomic Roosterという感じで、なかなかの迫力だ。
2008年の新録の方はいくぶん妖しさは薄れたが、基本的には同路線で、たっぷりと鳴らされるオルガンの響きに
レトロな風味のギター、やわらかなヴォーカルが合わさって、70年代懐古主義というべきプログレが楽しめる。
メロディアス度・・7 古き良き度・・9 オルガン&メロトロン度・・8 総合・・8
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*キーボードプログレ特集
*クラシカルなプログレ特集
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