俺たちのエピックメタル特集



「エピック」とは、もともと「叙事詩」や「壮大」さなどを表す言葉であるが、ヘヴィメタルにおける「エピックメタル」の定義もまた、
神話の世界や中世の戦士たちの戦いを描くような、勇壮なドラマ性に包まれたサウンドを指すものである。
つまりは、演奏そのもののテクニックを主軸に置くのではなく、音楽が描く「それぞれの世界」の構築を大切にすることで、
聴き手との強固な「共同幻想」を築き、たとえマイナーなバンドであっても、かれらが生み出す魅力ある夢の王国に浸れるのである。
「コナン・ザ・グレート」のようなマッチョな戦士のごとき風貌で世界的な人気を博す、MANOWARを筆頭として、
勇壮な戦士たちや、壮大な神話の世界を題材にした、それらのエピックなメタルバンドは、しだいに世界中に増えてゆく。
テクニカルなバンドが賞賛される現代においても、そうした幻想的な空気をかもしだす古き良きスタイルのバンドは消えることなく、
たとえマイナーなB級バンドのレッテルを貼られようとも、己の矜持を貫くべく勇壮なるメタルサウンドを作り続けているのである。
ここでは、MANOWARをはじめとする、誇り高き戦士たち…世界のエピックメタルバンドを紹介してゆきたい。  2018.6 緑川とうせい


◆MANOWAR & 80〜90年代

MANOWAR「INTO GLORY RIDE」
アメリカのメタルバンド、マノウォーの1983年作
2作目となる本作からドラムがスコット・コロンバスに交代、サウンドの方も1曲目の「WARLORD」からマノウォーらしさが全開、
「Gloves of Metal」、「Gates of Vallhalla」とエピックな楽曲も増え、ゆったりとした曲調の中にも叙情を含んだ「Hatret」、
キャッチーなメロディの「Revelation」など、魅力的なナンバーが揃っている。ラストは8分を超える大曲「March for Revenge」で
ドラマティックに締めくくる。戦士を思わせる勇壮なエピックメタルスタイルが確立した強力なアルバムである。
ドラマティック度・・8 エピック度・・8 重厚度・・8 総合・・8
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MANOWAR 「Hail to England」
アメリカのメタルバンド、マノウォーの1984年作
冒頭の「Blood of My Enemies」からして、勇壮な世界観に胸躍る。この三連リズムの重厚なナンバーは
口ずさみたくなるキャッチーなサビのメロディも含めて個人的にもマノウォー最高の1曲である。
エリック・アダムスの歌唱にはますます表現力が加わり、戦士たちの雄たけびのようにパワフルに響き渡る。
「ダーイ、ダーイ!」の掛け声が強烈な「Kill With Power」、荘厳なコーラスのタイトル曲 「Hail to England」、
速弾きベースソロ曲から、ラストの大曲「Bridge Of Death」まで、アルバムとしては全34分足らずの短さながら、
マノウォーらしさがたっぷりと詰まった傑作である。バンドは本作に置いて、ヨーロッパにおける知名度をぐっと高めることとなる。
ドラマティック度・・8 エピック度・・9 重厚度・・8 総合・・8
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MANOWAR 「Kings of Metal」
マノウォーの1988年作
車のエンジン音から始まる「Wheels of Fire」の勢いあるパワフルな疾走メタルサウンドから幕を開け、
「Kings of Metal」での「マノウォー、キル!」のサビで文字通り殺られる。壮大なバラードナンバー「Heart of Steel」、
ファンタジックな「The Crown and the Ring 」、お得意のエピックなナンバー「Hail And Kill」など、楽曲も充実。
そして長い物語の語りから、「Blood of the Kings」という流れは、80年代マノウォーの総決算というべき濃密な世界観で
本作こそバンドの最高作とするリスナーも多いだろう。今作を最後にギターのロス・ザ・ボスが脱退する。
ドラマティック度・・8 エピック度・・9 重厚度・・8 総合・・8
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WARLORD DELIVER US
アメリカのエピックメタル、ウォーロードの1983年作
マニアの間ではカルトな人気を誇る伝説のエピックメタルバンド、そのデビュー作。
メロウなギターフレーズに、パワフル過ぎないハイトーンヴォーカルを乗せ、
湿り気を含んだ叙情性とともに幻想的な空気感を描く、ローカルなエピックメタルサウンド。
中でも「Child of the Damned」は、彼らの名曲の一つで、ヨーロピアンなメロディアス性を含んだ
ノリの良いキャッチーな感触は、マニアックなバンドでありながら、後の多くのバンドがカヴァーしている。
長いこと再発されない貴重盤であったが、2015年にめでたくリマスター再発されたことで、より多くのリスナーに聴いていただきたい。
ドラマティック度・・8 エピック度・・8 幻想度・・8 総合・・7.5
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Manilla Road
「Deluge」
アメリカのエピックメタル、マニラ・ロードの1986年作
現在も活動を続けるUSエピックメタルの重鎮、その80年代の最高傑作のひとつ。
いかにもマイナーバンド的な楽曲の煮え切らなさと、力強すぎない聴き心地は、
Cirith Ungol以上のファンタジーヲタク的世界観&エピックぶりの前には
さしたる問題にもならない。本作にいたっては、むしろダイナミックな展開力が見事ですらあり、
コンセプト的に小曲を挟んだり、叙情的なパートも含めてアルバムとしてのメリハリも充分。
これならB級メタルマニアでなくともそこそこ楽しめるくらいの出来かと思います。
ドラマティック度・・8 B級度・・8 エピック度・・9 総合・・7.5
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VIRGIN STEELE「Invictus」
アメリカのエピックメタルバンド、ヴァージン・スティールの1998年作
80年代初頭から活動する大ベテランで、MANOWARとともにアメリカエピックメタルの大御所である。
本作はおそらく8作目で、日本盤も出ていた「The Marriage of Heaven & Hell」の続きにあたる。
ジャケも含めて古代ローマを舞台にした世界観があるのだろう、物語的な壮大なイントロから曲が始まると
MANOWAR
ばりの正統派のヘヴィメタルが炸裂。エリック・アダムスばりのヴォーカルの歌声と、
シンプルながらも王道のギターワークで聴かせつつ、ときにシンセの入った美しさもあって
壮大な世界感を描こうとしているところは素晴らしい。1曲ごとのインパクトはさほどでもないが、
70分を超えるアルバムを通して聴けば、ドラマティックかつエピックな世界に浸れるだろう。
ドラマティック度・・8 正統派度・・8 エピック度・・9 総合・・8
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Dragonslayer
イギリスのマイナーメタルバンド、ドラゴンスレイヤーの2008年作
80年代に活躍していたマイナー系バンドの1982〜86年の間のデモ音源を収録。
ジャケからしてローカルなファンタジー臭がぷんぷんだが、音の方もじつに微笑ましく
古き良き正統派HRにエピックな世界観を付け足したような、王道のNWOBHMサウンド。
あまりパワフルでないギターリフと、適度に力の足りないヴォーカルの歌声、そして
ときにキャッチーなクサメロとともに、聴いていて思わずにやにやしてきてしまう。
80'sマイナーバンドの発掘音源としてはマニア向けだが、嫌いになれない魅力がある。
ドラマティック度・・7 B級度・・9 エピック度・・8 総合・・7.5
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KILLEN
アメリカのメタルバンド、キレンの1987年作
1985〜90年にかけて活動していたバンドで、本作は1987年の唯一のアルバムをCD化したもの
ジャケの雰囲気からはMANOWARのようなパワフルなサウンドを想像するが、実際はWARLOAD
Manilla Roadなどに通じるB級感あふれるエピックメタル。力強くないハイトーンヴォーカルを乗せ、
そこそこ疾走感のあるスタイルはヨーロピアンでウェットな叙情性も感じられて、マニアはにんまりだろう。
演奏力や音質なども含めて、B級臭さたっぷりなのだが、いまでいうNWOTHM的なヘナチョコ感覚と、
エピックメタル愛に包まれたシリアスなノリが恰好良さになっていて、これがけっこう悪くないのである。
ドラマティック度・・8 B級エピックメタル度・・8 古き良き度・・9 総合・・7.5
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Dark Quarterer
イタリアのエピックメタル、ダーク・クウォータラーの1987年作
ADRAMELCHWYVERNなどとともに、カルトなイタリアエピックメタルを聴かせるマニア好みのバンド、
さすがに80年代の録音には古めかしさがあって、ギターの音色にしてもチープなのだが、
朗々としたヴォーカルで聴かせる、ローカルでファンタジックな感触には思わずにんまりだ。
2013年再発盤のDisc2には2012年にリレコーディングされた全曲を収録、サウンド的にもぐっとダイナミックになっていて、
哀愁の叙情に包まれた正統派のエピックメタルが楽しめる。マニアはこの再録を聴くだけでも価値があるだろう。
ドラマティック度・・7 エピック度・・8 Disc2を聴くべし度・・8 総合・・7.5
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ADRAMELCH「Irae Melanox」
イタリア伝説のメタルバンド、アドラメルクの1988年作
ツインギターのメロディックなフレーズとエピックな香りを漂わせた世界観で、
たとえばCIRITH UNGOLあたりをよりドラマティックにしたという雰囲気のサウンドは、
マニア好みのマイナー臭さに満ちていて、これかどうしてけっこうよい感じなのだ。
6〜7分台という当時にしては長めの楽曲は、随所にプログレッシブな質感も感じさせ
どことなく混沌とした感じがいかにもイタリアのバンドらしい。随所にクサメロも含んだ好盤だ。
Disc2には1987年のデモ音源を収録。さらにダサい感じのクサいメタルぶりに悶絶♪
ドラマティック度・・7 エピック度・・8 マイナー度・・8 総合・・7.5
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ATTACK「Destinies of War」
ジャーマンエピックメタルバンド、アタックの4th。1989年作
ギター、ベース、ドラムにシンセも弾きこなす、リッキー・ヴァンヘルデンを中心に、
戦いに赴く戦士を描くようなエピックな世界観をジャーマンメタルに融合させた。
イントロから続くドラマティックな疾走曲“Wonderland”は、まさしくエピックメタルの王道、
キャッチーなクサメロを含んで、力強くないハイトーンヴォーカルとツインギターでたたみかけます。
9分を超える“Death Rider”あたりも名曲といってもよい出来で、ファンタジックな勇壮さにしびれます。
メロディアス度・・8 疾走度・・7 エピック度・・8 総合・・8
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VETO「Carthago」
ドイツのエピックメタル、ヴィートの1988年作
80年代のジャーマンメタル黎明期のバンドで、これが2作目のアルバム。
ツインギターにハイトーンヴォーカルで聴かせる、正統派スタイルのサウンドで、
当時のマイナー系バンドの中では、比較的しっかりとした演奏と楽曲でなかなか質が高い。
ジャーマンらしい疾走曲や、随所に泣きのメロディも含ませた楽曲には、B級っぽさはさほど感じない。
ジャケもよい感じですが、内容も激しすぎない80年代のエピックメタルが楽しめる好作です。
ドラマティック度・・7 正統派度・・8 初期ジャーマン度・・8 総合・・7.5
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BLIND GUARDIAN「Tales from the Twilight World」
ジャーマンメタルバンド、ブラインド・ガーディアンの1990年作
3作目となる本作は、一聴して音が厚くなり、ハンズィのヴォーカルの向上とともにサウンドの説得力が増したことで、
ここに独自のファンタジックメタルが完成。1曲目の“Traveler in Time”からその世界観に引き込まれる。
お得意のツインギターによるソロパートはいっそう魅力を増して、メリハリのある曲展開の中でメロディアスに輝きを放っている。
トーメンのドラミングもブチブチとしたバスドラが耳に心地よく、疾走感とともにパワフルな重厚さをサウンドに生み出している。
ゆったりと聴かせるファンタジーバラード“Lord of the Rings”や、ハイライトであるドラマティックな“Lost in the Twilight Hall”と、
楽曲も充実。アルバムとしての濃密さでは次作「Somewhere far Beyond」と並ぶ傑作といえるだろう。
メロディアス度・・8 疾走度・・8 ドラマティック度・・9 総合・・8.5
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LORDIAN GUARD
アメリカのエピックメタルバンド、ローディアン・ガードの1995年作
知る人ぞ知る伝説のエピックメタルバンド、WARLORDのリーダーである、
デストロイヤーことWilliam j.Tsamisが結成したクリスチャン・エピックメタルバンドで、
女性ヴォーカルの歌声と、叙情的なギターワーク、シンセによる壮麗さで聴かせる作風。
ドラムを含めた音作りはやや軽いものの、中世を思わせる神秘的な世界観と、
どこか中性的な女性の歌声が、メタルとはかけ離れたような不思議な質感を生み出している。
WARLORDをご存じの方はぜひともチェックしていただきたい。クサメロ&幻想的な作品です。
ドラマティック度・・8 重厚度・・7 女性Vo度・・7 総合・・7.5
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RHAPSODY「Legendary Tales」
イタリアのシンフォニックメタルバンド、ラプソディーの1st。1997年作
メタルの概念を覆すかのような、壮麗きわまりない大仰さ、壮大にしてファンタジックな世界観、思わず拳を握り締めるエピックな力強さ。
シンフォニックメタルの元祖的な存在であり、メタルを映画的で壮大な作品へと仕立て上げ、それを完璧に成功させた1枚だ。
美しいシンセにクラシカルなオーケストレーション、大仰なコーラスワークはもとより、
ヴォーカルのファビオ・リオーネの力量や、楽曲における緩急とメリハリ、常にメロディがあふれ出す濃密なアレンジ、
ここから始まるエメラルドサーガの四部作、そしてシンフォニックメタル誕生の瞬間がここにある。
シンフォニック度・・9 疾走度・・7 ファンタジック度・・10 総合・・9
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Heimdall「The Temple of Theil」
イタリアのエピック・メタルバンド、ヘイムダールの2nd。1999年作
ジャケからしてもうすでに、ファンタジーでエピックな香りがぷんぷんだが、
シンセによる壮麗なイントロから曲が始まると、RHAPSODYばりのファンタジックメタルが炸裂。
ヴォーカルの弱さも含めてあらゆる面でB級ながら、このクサクサの雰囲気と
エピックメタルの大仰さが好きな方にはたまらないものがあるだろう。
シンフォニック度・・8 B級度・・8 エピック度・・9 総合・・7.5
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◆正統派エピックメタルの系譜

MANOWAR「GODS OF WAR」
元祖ヒロイックメタルの雄、マノウォーの2007年作
本作は北欧神話を題材にしたコンセプト作で、壮大なオーケストレイションとともに幕を開ける。
映画的な語りやコンセプチュアルな雰囲気は、1992年作「The Triumph of Steel」あたりに通じるか。
やはりエリック・アダムスの見事な歌唱やジョーイ・ディマイオの存在感のあるベースには
年季をへたバンドのみがかもし出せる力強さがあり、その辺のエピックメタルバンドとは格が違う。
疾走曲が少なかったり、曲ごとに大仰なテーマやSEが入ったりと、気の短い方には向かないだろうが
なんにしてもこの大仰さと世界観は唯一無二のもの。勇壮なファンタジーが好きならば楽しめる力作である。
シンフォニック度・・8 メタリック度・・7 大仰度・・9 総合・・8
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VIRGIN STEELE「The Black Light Bacchanalia」
アメリカのエピックメタルバンド、ヴァージン・スティールの2010年作
結成は1981年という大ベテラン、そのキャリアもサウンドもMANOWARに匹敵するのだが、
いまだ日本での知名度は上がらず。12作目となる本作も前作同様になかなかの力作だ。
11曲中、7分以上が6曲、うち1曲は11分という大作志向で、いつもながにエピックな世界観と
ドラマティックな正統派の感触でじっくりと聴かせる。マイルドなヴォーカルの歌声は、
ときおりエリック・アダムスばりにシャウトもし、うっすらとしたシンセによる味付けなども含めて
とても日本人好みのメタルだと思う。派手な疾走曲とかもなければ、なにしろトータル70分以上と長いので、
気が短い人には向かないのたが、クオリティは高いし、安心して楽しめるエピックメタルの力作である。
ドラマティック度・・8 疾走度・・7 エピック度・・9 総合・・8
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WARLORD 「The Holy Empire」
アメリカのエピックメタル、ウォーロードの2013年作
2002年の復活作ではヨハキム・カンス(HAMMERFALL)がヴォーカル務めていたのだが、
本作では、オリジナルメンバーのリック・アンダーソン(MARTIRIA)が復帰、まさに本物のWARLORDが帰ってきた。
Lordian Guard名義でも活動していたウィリアム・チャミスを中心にした楽曲は、メロウなギターフレーズと
ミステリアスなシンセアレンジ、そしてエピックな歌声とともに、かつてのウォーロードサウンドが甦る。
適度なスカスカ感と幻想的な薄暗さ、湿りけを帯びたB級ぎみのクサメロに、もはや感涙である。
ラストの大曲でのやわらかなメロディと叙情美で紡がれる幻想の叙事詩…これがウォーロードだ!
ドラマティック度・・9 エピック度・・9 ウォーロー度・・9 総合・・8.5
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The Lord Weird Slough Feg 「Down Among the Deadmen」
アメリカのエピックメタル、ロード・ウィアード・スロウ・フェグの2000年作
B級エピックメタルの大御所、Manilla Roadに比べると、さらに知名度は落ちるものの
まさに正統派のエピックメタルという点では、このバンドも決して引けはとらない。
2作目となる本作では、ツインギターのリフがパワフルさを増し、メロディックなフレーズにより
描き出される勇壮かつドラマティックな聴き心地がぐっと強まっている。
一方では、古き良きブリティッシュHRのような雰囲気も残していて、激しすぎず重すぎず、
適度に田舎めいた叙情を覗かせるところもよい。中盤にややダレるような曲もあるのだが、
全体的には力作と呼べる出来だ。いまでいう、NWOTHMの先駆けといってもよいバンドだろう。
ドラマティック度・・8 エピック度・・8 正統派度・・8 総合・・7.5
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ROSS the BOSS「Hailstorm」
元MANOWARのギタリスト、ロス・ザ・ボスの2010年作
前作もMANOWARばりの正統派メタルを聴かせるなかなかの力作であったが、
今作ではさらなるエピックな世界観に磨きがかかり、イントロからもうにやにやである。
ときに泣きのフレーズも奏でるロスのギターを中心に、パワフルなヴォーカルと
うっすらとしたシンセワークもサウンドを彩る。古き良きジャーマンメタルの質感とともに、
まさに漢のメタルサウンドを聴かせてくれる。これもオールドメタル復興のひとつの形である。
ドラマティック度・・8 パワフル度・・8 正統派度・・9 総合・・8
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Jack Starr's Burning Starr「Land Of The Dead」
元VIRGIN STEELEのジャック・スターによるエピックメタル、バーニング・スターの2011年作
古き良き感触の正統派メタルサウンドで、MANOWARVIRGIN STEELEを思わせる、
勇壮かつメロディックな聴き心地。ドラムには元MANOWARのライノが参加していて、
どっしりとしたリズムを支えている。ミドルテンポ主体の楽曲はこれといった新鮮味はないのだが、
随所に泣きのギターメロディなども入ってきて、ウェットでドラマティックな雰囲気は好みです。
ケン・ケリーのジャムも含めてエピックメタラーは歓喜でしょう。元MANOAWARのG、ロス・ザ・ボスがゲスト参加。
メロディック度・・8 パワフル度・・7 正統派度・・8 総合・・8
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DoomSword「Resound the Horn」
イタリアのエピックメタル、ドゥームソードの2002年作
シンフォニックメタルでもクサメタルでもない、ギターリフを中心とした正統派のメタルサウンドを
ヒロイックでエピカルな世界観とともにドラマティックに聴かせる。ミドルテンポを主体にした
どっしりとした聴き心地で、いくぶんくぐもったような叙情性はエピック・ドゥーム的な味わいだ。
MANOWAR
Virgin Steelあたりにも通じるエピックメタルを、ドゥーミィに仕上げたというべき力作。
ドラマティック度・・8 重厚度・・8 エピック度・・9 総合・・8
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ADRAMELCH「Broken History」
イタリアのエピックメタル、アドラメルクの2005年作
80年代に活動していた知る人ぞ知るマイナー系カルトバンドの復活作。
ツインギターのリフで聴かせる、古めかしいまでの正統派サウンドはかつてのままで、
MARTIRIAにも通じるエピカルな世界観とクサメロを含ませた聴き心地は、じつに素晴らしい。
昨今のバンドに比べて、どこかのんびりとした牧歌性が耳に心地よく、雰囲気は勇ましいのだが
ヘヴィすぎないのがミソ。中世的な欧州の翳りと叙情性を封じ込めたようなエピックメタルです。
ドラマティック度・・8 クサメロ度・・8 エピック度・・10 総合・・8
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MARTIRIA「Age of the Return」
イタリアのエピックメタルバンド、マーティリアの2nd。2005年作
なんと元WARLORDのRick Andersonがヴォーカルを務めるバンドで、
かつてのLordian Guardの中世的な世界観といくぶんB級っぽい80年代風味で
古き良きエピックメタルサウンドを聴かせてくれる。軽めの音質とヘタウマのヴォーカル
泣きのギターフレーズが合わさると、もう最高…というかマニア歓喜のマイナー臭さである。
シンセによる適度な音の厚みも、たまらないこけおどし感で、エセシンフォニック感がよろしい。
アコースティカルな叙情性を織り込んだりと、雰囲気ものとして楽しめるエピカルな好作品だ。
ドラマティック度・・8 エピック度・・8 マイナー臭度・・8 総合・・7.5
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WOTAN
「Epos」
イタリアのエピックメタル、ヴォータンの2007年作
本作が2作目で、前作のいかにもB級な雰囲気からすると、いくぶんパワフルになり
MANOWARを思わせる大仰な聴き心地のエピックメタルが炸裂している。
ヴォーカルの中途半端なハイトーンがやや好みを分けるかもしれないが、
どっしりとしたミドルテンポを軸に勇壮に聴かせつつ、随所に疾走するところもあって、
単調にはならない楽曲のメリハリを感じさせる。ゲストにはロス・ザ・ボスが参加。
メロディック度・・7 パワフル度・・7 エピック度・・8 総合・・7.5
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DARK FOREST
「Beyond the Veil」
ドイツのエピックメタル、ダーク・フォレストの2016年作
2009年にデビューしてから本作は4作目となる。ファンタジックなジャケから目を引くが、
サウンドはツインギターの叙情フレーズと、マイルドなヴォーカルを乗せて聴かせる正統派。
イタリアのMARTIRIAADRAMELCHなどにも通じる適度なマイナー臭さを漂わせつつ、
ヘヴィすぎない耳心地の良さとメロディアス性で、ヨーロピアンなエピックメタルが味わえる。
わりとキャッチーであっても、爽快になりきらない湿り気を含んだ叙情性がよいですな。
曲によっては、Wuthering Heightsにも通じるようなケルティック寄りの土着性も感じさせる。
ラストは13分の大曲で、壮大な叙情性とともにドラマティックな世界観を描き出す。
メロディック度・・8 古き良き度・・8 エピック度・・8 総合・・8
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SUMERLANDS
アメリカのメタルバンド、サマーランズの2016年作
正統派のツインギターにパワフル過ぎないハイトーンヴォーカルを乗せた、古き良きメタルサウンドで、
80年代NWOBHMのウエットな翳りを含んだ感触と、かつてのCRIMSON GLORYのような怪しい空気感と
構築センスを感じさせる。楽曲は3〜4分前後とシンプルで、ミドルテンポを主体にしたどっしりとした感触に、
WARLORDにも通じるマイナー系エピックメタルのような適度なB級臭さを漂わせているのもいかにも確信犯的だ。
随所にツインギターの泣きのメロディやときにシンセも加わったりと、激しさは控えめで叙情性重視なので、
わりとゆったりと楽しめる。全8曲32分というのも80年代のアルバム並みの短さだ。笑
ドラマティック度・・8 古き良き度・・9 正統派度・・8 総合・・7.5
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WYTCH HAZEL 「Prelude」
イギリスのメタルバンド、ウィッチ・ハゼルの2016年作
いかにも80年代NWOBHMを思わせる、古き良き正統派のHR/HMサウンドで、
力強くないヴォーカルにヘヴィすぎないギターを乗せた、4〜5分前後の楽曲は
わりとシンプルな音数ながら、適度にウェットでエピックメタル寄りの感触もある。
随所にツインギターのメロディックなフレーズも入って来たり、曲によってはケルト寄りのメロディや
フックのあるリズムチェンジなどもあって、なかなかツボを突く部分も多くてにやりとする。
往年のブリティッシュメタルの質感を、アップデートさせたような、うるさすぎない好作品です。
メロディック度・・8 正統派度・・8 古き良き度・・9 総合・・8
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Old Season 「Beyond the Black」
アイルランドのメタルバンド、オールド・シーズンの2017年作
ツインギターにシンセを含む6人編成で、ハイトーンヴォーカルを乗せた古き良き正統派メタルを聴かせる。
ミドルテンポを主体に、美しいシンセアレンジにツインギターが重なり、メロディックなフックが耳心地よく、
湿り気を帯びたマイナーな空気感と、曲によっては、CANDLEMASSのようなエピックドウーム的な感触もある。
叙情的なギターフレーズを乗せてどっしりと聴かせる、エピックメタルとしての醍醐味も詰まっていて、
NWOBHMの空気感にシンセアレンジを加えてメロディックに仕上げたサウンドは、捨てがたい魅力がある。
MARTIRIAあたりのファンにもお薦めしたい、これぞ正統派エピックメタルの好作品だ。
ドラマティック度・・8 古き良き度・・8 エピック度・・8 総合・・8
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Lucifer's Hammer 「Beyond the Omens」
チリのメタルバンド、ルシファーズ・ハマーの2016年作
正統派のギターリフにパワフルすぎないハイトーンヴォーカルを乗せて、IRON MAIDENにも通じる
80年代スタイルに、ANGEL WITCHWARLOADなど、カルトメタルの香りを加えたという作風。
湿り気を帯びた叙情的なギターフレーズもじつに良い感じで、ほどよいB級らしいマイナー臭さとともに
なかなか素敵な味わいになっている。楽曲自体にはとくに新鮮味はないのだが、
80年代メタルへの愛情に包まれた世界観は、オールドなメタルファンには心地よいことこの上ない。
後半にはRIOTを思わせるナンバーや、ラストはWARLORDのあの曲みたいでにんまり。
ドラマティック度・・7 古き良き度・・8 カルトメタル度・・8 総合・・8
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◆ジャーマンメロパワ系

GRAVE DIGGER「The Clans Will Rise Again」
ジャーマンメタルのベテラン、グレイブ・ディガーの2010年作

80年代から活動を続ける大ベテラン。中世をテーマにしたコンセプト作「Tunes of War」の続編ともいうべき本作は
長年彼らの貫いてきた正統派のメタルサウンドに、BLIND GUARDIANを思わせるような
エピックなコーラスワークやSE、ケルティックなメロディなどを随所に盛り込んだドラマティックな作風だ。
新たに加わったDOMAINのアクセル・リットとマンニ・シュミットのツインギターも鉄壁。
RUNNING WILDなき今となっては、本物のジャーマンメタルの存続は彼らにかかっている。
ドラマティック度・・8 パワフル度・・8 正統派度・・9 総合・・8
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STORMWARRIOR「Heading Northe」
ドイツのメロパワバンド、ストームウォリアーの3rd。2008年作
初期HELLOWEENを思わせる勢いのあるサウンドで、オールドなジャーマンメタルファンを喜ばせたこのバンド、
3作目となる本作では、そのサウンドにパワフルな説得力が出てきている。
GAMMA RAYを思わせるメロディックな質感と、ツインギターに勇壮なコーラスワーク、
ときにMANOWARばりのエピックな世界観で、ぐいぐいとたたみかける。
カイ・ハンセンを思わせるヴォーカルスタイルに思わずにやりとしつつも、
そのサウンドにはこれまでのような単なるフォロワー以上の重厚さを感じさせ、
オールドスタイルを貫き通す姿勢には、メタル愛に満ちた一徹さが垣間見える。
メロディアス度・・8 疾走度・・7 ジャーマン度・・9 総合・・8
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Stormhunter「Crime And Punishment」
ドイツのメロパワバンド、ストームハンターの2011年作
ツインギターの勇壮なフレーズと力強いリフで疾走する、古き良きジャーマンメタルサウンド。
バンド名もそうだが、初期のSTORMWARRIORとか、かつてのHELLOWEENに通じる音で、
微妙にヘタなヴォーカルも含めて、オールドメタルの熱さと微笑ましさを濃密に漂わせている。
RUNNING WILDにも通じるエピックな雰囲気もたまらない。オールドなジャーマンファンはもうにんまりでしょう。
ちなみにギターの片割れはかなりの美女。ところで、どうしてジャケはカラーでなくグレースケールなのだろう?
メロディアス度・・8 疾走度・・8 古き良きジャーマン度・・9 総合・・8
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Majesty 「Reign in Glory」
ドイツのメロパワバンド、マジェスティの2003年作
自主制作のデビュー作から数えて3作目のアルバムで、ツインギターの正統派のリフに
かすれ気味のヴォーカルを乗せて疾走する、MANOWARを思わせる古き良きメタル感触のサウンド。
エピックでファンタジックな雰囲気ぷんぷんで、シンセを含むアレンジが大仰な世界観を描き出す。
ミドルテンポのナンバーも、キャッチーなメロディのフックと勇壮なパワフルさのバランスがよく、
激しすぎず硬派すぎずというスタイルで、ジャーマンタルとしてのウェットな叙情も垣間見せる。
7分や8分、10分という大曲もあって、ラストはMANOWAR“Battle Hymn”のカヴァーときた。お腹いっぱいの力作です。
ドラマティック度・・8 正統派度・・8 エピック度・・8 総合・・8
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Orden Ogan「To The End」
ドイツのメロパワバンド、オルデン・オーガンの2012年作
前作からの重厚に聴かせる正統派のメロパワサウンドは本作も健在、
昨今珍しくなったシンセに頼らないツインギター主導のスタイルで、BLIND GUARDIANを思わせる
エピックな世界観を描いてゆく。壮大なクワイヤも含めて前作以上に音のスケール感がぐっと増していて、
ときにヴァイキングメタル風味も含んだ勇ましさも感じさせつつ、楽曲のメロディアス度もアップ。
パワフルかつドラマティックな仕上がりには、多くの漢メタラーが膝を叩くことだろう。
ボーナスのRUNNING WILDのカヴァーもしっかりとハマっている。
ドラマティック度・・8 パワフル度・・8 正統派度・・8 総合・・8
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CUSTARD 「Infested By Anger」
ドイツのメロディックメタルバンド、カスタードの2012年作
1997年にデビュー、伝説的なまでにダサイいジャケとクサメロ感あふれるサウンドで
マニアのみに愛されたこのバンド、まだ地道に活動していたということを心より嬉しく思う。
サウンドの方は前作から新たに加わった、ヘタウマなハイトーンヴォーカルととも疾走する、
まさに古き良きクサジャーマンメタル。片割れに女性ギタリストを含むツインギターのクサメロや
エピックなコーラスなどもじつによろしい。初期に比べるとパワフルな勇壮さも加わってきていて、
ファンタジックな世界観も含めてまさに鬼に金棒、ゲルマン人にハルバートというところ。グッドです!
メロディック度・・8 疾走度・・8 エピック度・・8 総合・・7.5
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Rebellion 「Arminius: Furor Teutonicus」
ドイツのメロディックメタル、レベリオンの2012年作
ツインギターの5人編成で、正統派のギターリフにダーティなヴォーカルを乗せた
Grave Diggerなどを思わせる、どっしりとした聴き心地のヘヴィメタルサウンド。
エピックで勇壮な世界観などは、MANOWARあたりに通じるところもあり、
目新しさは何もないが、オールドスタイルの正統派メタル好きはにんまりだろう。
そこそこキャリアのあるバンドらしいパワフルなサウンドの説得力も十分だ。
曲に寄ってはメロディアスな叙情性もあって、ジャーマンメタル好きにも対応した力作だ。
ドラマティック度・・8 正統派度・・9 重厚度・・8 総合・・8
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Gloryful 「Ocean Blade」
ドイツのメロディックメタル、グローリーフルの2014年作
前作は、Grave DiggerACCEPTあたりに通じる古き良きジャーマンメタル的なサウンドだったが、
2作目となる本作も、ツインギターのリフにパワフルなヴォーカルを乗せた、しごく正統派のメタルサウンド。
ダーティな歌声にエピックなコーラスも重なって、ヴァイキングメタル的でもある勇壮な世界観は、
RUNNING WILDなどが好きな方にもアピールするだろう。いかにもジャーマンメタルらしい疾走ナンバーから、
ミドルテンポのどっしりとしたナンバーまで、古き良きメタルの感触と適度なクサメロ要素が合わさっていて、
新鮮味はないものの安心して楽しめる。正統派寄りの力強さとエピックな叙情を併せ持った強力作だ。
ドラマティック度・・8 疾走度・・8 正統派度・・8 総合・・8
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SACRED GATE 「Tides of War」
ドイツのヘヴィメタル、セイクレッド・ゲートの2013年作
ジャケのイメージからてっきりギリシャのバンドかつ思ったら、じつはドイツだったのね。
IRON MAIDENあたりを思わせる古き良きギターリフを乗せた正統派のメタルサウンド。
ややダーティな感じのヴォーカルとともに、戦士を思わせるパワフルな勇壮さもあって、
MANOWARあたりのファンにも楽しめそうだ。ミドルテンポを主体にした楽曲には
目新しさはさほどないので、正統派のエピックメタルが好きな方でないとつらいかもしれないが、
テルモピュライの戦いをテーマにしたラストの12分の大曲など、気合の入った力作です。
ドラマティック度・・7 正統派度・・8 エピック度・・8 総合・・7.5
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◆イタリアメロパワ系

THY MAJESTIEHASTINGS 1066」
イタリアのシンフォニックメタルバンド、ザイ・マジェスティの2nd。2002年作
1stの時点からミニRHAPSODYとも形容できるような大仰さと、ファンタジックな部分とを併せ持っていたが、
続く今作はイングランド史における「ヘイスティングスの戦い」モチーフにした壮大なコンセプト作となった。
相当な時間をかけてレコーディングしたという通り、男女コーラスや曲のアレンジなどは非常に凝っていて、
RHAPSODY的要素に加え、今回はRUNNING WILDMANOWAR的な勇壮さも感じさせる。
変拍子を使ったリズム面やアコースティカルな叙情も含め、曲展開もなかなか凝っていて、
やわらかな歌メロやトラッド的なメロディなどには聴くべき部分が多く、それがはまった曲は非常に出来がよい。
ずば抜けて上手くはないがヴォーカルの親しみやすい声質は好感が持てるし、
RHAPSODYのような派手さはないがじっくり聴き込むとこのバンドの良さが分かってくるだろう。
ドラマティック度・・9 疾走度・・8 エピック度・・9 総合・・8
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DOMINE「Ancient Spirit Rising」
イタリアのメロディックメタルバンド、ドミネの5th。2007年作
エピックな世界観で正統派のメタルを聴かせるこのバンド、前作から3年ぶりとなる本作では、
アーサー王伝説のシャーロットの乙女をテーマに、ファンタジックな世界観を描き出している。
疾走するメロスピ曲から、より叙情的なやわらかさをもった曲まで、コンセプト作らしい
場面ごとのストーリーを感じさせる雰囲気作りがなかなか見事。また今作ではいつになく
トラッド調のメロディを取り入れたり、シンフォニックな味付けも増していて、聴き心地もいい。
パワフルな勢いは薄まったが、むしろ完成度の点では最高傑作といってもいい出来だろう。
ファンタジック度・・9 疾走度・・8 エピック度・・8 総合・・8
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WYVERN「Lords Of Winter」
イタリアのメロディックメタル、ワイバーンの2011年作
1990年に1stをリリースしてからまったく音沙汰のなかったバンドであるが、
本作は98〜02年に録音した未発曲を収録したアルバムということになる。
B級気味のローカルさでクサメロとともに疾走するそのサウンドは、やっぱりヘナチョコなのだが、
いうなればマイナーなエピック小説でも読むような気分で、どうにも嫌いになれない。
本作ではさらに美しいシンセアレンジや唐突な展開などで楽しませてくれ、
11分超の大曲が2曲もあったりと、とても気合が入っている。いとおしいバンドです。
メロディアス度・・8 疾走度・・8 B級度・・8 総合・・7.5
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Fogalord「Legend to Believe in」
イタリアのシンフォニックメタル、フォガロードの2012年作
SYNTHPHONIA SUPREMAのシンセ奏者とドラムが在籍する新たなバンドで、
大仰なンイトロからして期待させるが、サウンドは力強くないハイトーンヴォーカルと
壮麗なシンフォニックアレンジで、ひと昔前のイタリアンメタルのようなクサさたっぷり。
適度な貧弱さでクサフレーズととも疾走されると、もうたまりません。これだよ…これなんだよ!
初期Thy Majestie的なエピックな世界観とあいまって、その筋を悶絶させ、にやけさせること請け合い。
最近のバンドはクサメタルを卒業して地味にまとまってしまってつまらない、というアナタはぜひ!
シンフォニック度・・8 疾走度・・7 クサエピック度・・9 総合・・8
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Kaledon 「Antillius: The King of The Light」
イタリアのシンフォニックメタル、カレドンの2014年作
2002年にデビューしてから、マニア向けのB級クサメタル街道を走り続けてきたこのバンド、
今作もRhapsodyばりの壮麗なイントロから、すでにエピックなファンタジー臭がぷんぷん。
前作での完成度の高さを受け、サウンドはさらに重厚になり、シンフォニックなアレンジとパワフルな疾走感で、
まるでラプソ+ブラガのような聴き心地…といったら言い過ぎか、とにかくさらにクオリティが上がってます。
ヴォーカルの力量は並程度なのだが、楽曲の方の魅力が向上しているので、良質のクサメタルでありつつ
正統派のシンフォニックメタル、メロパワとしても十分楽しめる。ついにカレドンに総合8を付けるときがきたか。涙
ドラマティック度・・8 ファンタジック度・・8 重厚度・・8 総合・・8
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HOLY MARTYR 「Darkness Shall Prevail」
イタリアのメロディックメタル、ホーリー・マーターの2017年作
ツインギターの5人編成で、前作は日本の歴史をテーマにした作品で話題を呼んだが、
4作目となる本作は、ヨーロピアンな世界観の純エピックメタルへと深化を遂げている。
ツインギターの叙情的なフレーズと朗々としたヴォーカルを乗せ、同郷のMARTIRIAにも通じる
エピックな幻想性に包まれた、どっしりとした正統派のヘヴィメタルを描いてゆく。
スローからミドルテンポ主体の楽曲は、派手さやクサメロ感というものは希薄なのだが、
サウンドにはオールドスタイルにこだわる正統派エピックメタルとしての誇りが感じられ、
ディープなメタルリスナーはニンマリだろう。前作よりも音の強度はむしろ上がっている。
ドラマティック度・・8 正統派度・・9 重厚度・・8 総合・・8 
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◆フランス、ギリシャ他

SEYMINHOL 「Northern Recital」
フランスのメロディックメタル、セイミンホルの2002年作
3部構成に分かれたエピックなファンタジーストーリーに基づいたコンセプト作で、
いくぶん軟弱気味のハイトーンヴォーカルといくぶん単調なギターリフに美しいシンセを乗せた、
しごく正統派のエピックメタルサウンド。シンセはときおりメロディを奏でたりとなかなか貢献している印象で
初期Thy Majestieを思わせる声質のヴォーカルがクサメロ的なメロディを歌っているのも魅力と言えば魅力か。
スコンスコンと軽めのドラムも含めて、あまり重厚にならないのが残念なのだが、逆にいうとパワフル過ぎない
ひ弱なB級感覚こそが、クサめのエピック感触を心地よくしているとも。ともかく嫌いではないんです。
ドラマティック度・・8 エピック度・・8 楽曲・・7 総合・・7.5
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FAIRYLAND「The Fall Of An Empire」
フランスのシンフォニックメタルバンド、フェアリーランドの2nd。2006年作
前作のシンガー、エリサ嬢(DARK MOOR〜DREAMAKER)が抜け、代わりに元MAGIC KINGDOMのヴォーカルが加入。
前作はRHAPSODYばりの大仰さな力作だったが、今作もファンタジックな物語をコンセプトにしたエピックなサウンドだ。
Voが男性に代わったことで、メタリックなエッジが引き立ち、サウンドは戦いに赴くような勇ましさに溢れている。
シンフォニックなシンセの味付けやクワイアなどはやはりRHAPSODY的な壮麗さで、
華麗でファンタジックなシンフォニックメタルの世界観が好きならば充分に楽しめるクオリティだ。
シンフォニック度・・8 エピック度・・9 新鮮度・・7 総合・・8
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LONEWOLF「Army of the Dammed」
フランスのメロパワバンド、ローンウルフの2012年作
前作同様、RUNNING WILD系のギターリフで聴かせる正統派サウンド。
メロスピばりの疾走感と、男臭いヴォーカルで、古き良きメタルの勇壮さと
エピックな雰囲気がぷんぷんで、聴いていてやはりにんまりである。
ケルティックなメロディアスさも含めて、漢のためのクサメロバンドというべき力作。
ドラマティック度・・8 正統派度・・8 ランニングワイル度・・8 総合・・8
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Lorraine Cross 「ARMY OF SHADOWS」
フランスのメロディックメタル、ロレーヌ・クロスの2016年作
ツインギターの5人編成で、抜けの良いハイトーンヴォーカルと正統派のギターリフを乗せた、
いかにも90年代を思わせるオールドスタイルなメロディック・パワーメタルをやっている。
ヴォーカルの声質はカイ・ハンセンあたりを思わせ、随所にツインリードによる叙情フレーズとともに、
少し前のジャーマンメタルというような感触で楽しめる。正統派メタルとしてのパワフルな部分と
エピックメタル的でもある勇壮な世界観、ヨーロピアンな湿り気を感じさせる聴き心地も日本人好みだろう。
リズムチェンジを含んだ展開力やアレンジセンスなどもしっかりとしていて、今後に期待の逸材だ。
ドラマティック度・・8 バワフル度・・8 正統派度・・8 総合・・8
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Silver Wind 「Legion of the Exiled」
フランスのメロディックメタル、シルヴァー・ウインドの2017年作
ツインギターのリフにパワフルなヴォーカルを乗せた、古き良き正統派のメロパワサウンドで、
RUNNING WILDMANOWARにも通じる、勇壮でエピックな世界観を描き出す。
どっしりとしたミドルテンポを主体にしつつ、ほどよく疾走するナンバーもあり、これという新鮮味はないのだが、
スウェーデンのThe Storytellerなどを思わせるヴァイキング風味のナンバーもあり、
オールドスタイルのエピック系メロパワが好きな方なら十分楽しめる出来だろう。
アメリカ幻のエピックメタル、Medieval Steelのカヴァーもじつにマニア好みですな。
ドラマティック度・・8 エピック度・・8 正統派度・・8 総合・・7.5
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MARAUDER「1821」
ギリシャのメロディックメタル、マラウダーの1999年作
クサメロたっぷりのツインギターと野太いヴォーカルを乗せて疾走する、正統派のメロパワスタイル。
おそらくタイトルである年号から、ギリシャ独立戦争をテーマにしているのだろう、
エピックな勇壮さを感じさせる雰囲気もなかなかよろしい。ミドルテンポのナンバーは
Judas Priestなど古き良きヘヴィメタルの感触で楽しめたり、正統派メタル好きはにんまりだろう。
荒々しい野太いヴォーカルは好みをわけるところだろうが、叙情的な小曲を配置したりと、
アルバムとしてのドラマティックな流れもあって、パワフルなエピックメタルが楽しめる強力作だ。
ドラマティック度・・8 パワフル度・・8 正統派度・・8 総合・・7.5
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BattleroaR「To Death and Beyond...」
ギリシャのメタルバンド、バトルロアの3rd。2008年作
戦いは終わったが、霊になっても戦っているというジャケが凄い(笑)
さて、サウンドの方は音質、演奏ともに格段に質が上がっている。
ツインギターのリフの魅力が向上し、楽曲の展開にも無理がなくなったことで、
前作までのB級臭さはほぼ払拭された。ヴォーカルの歌唱もやや上達しており、
演奏も全体的にパワフルになって、エピックな世界観に説得力が加わっている。
8分、10分という大曲においてもドラマティックに聴かせる力量がついてきた。
メロディアス度・・7 パワフル度・・8 エピック度・・9 総合・・7.5
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WISHDOOM「Helepolis」
ギリシャのエピックメタルバンド、ウィッシュドゥームの2011年作
ジャケからしてエピカルな香りがぷんぷんだが、サウンドの方もなかなかのもの。
ミドルテンポを中心に聴かせる勇壮な正統派メタルで、MANOWARなどを思わせるパワフルさとともに、
随所に語りなどを含んで、勇ましい戦士たちの姿を描き出すような世界観である。
ギターリフにはヘヴィなドゥームメタル風味もいくぶんあり、重厚で硬派なエピックメタルが楽しめる。
ちなみに、タイトルの「ヘレポリス」というのは、ギリシャ軍が誇った攻城塔のような兵器のこと。
ドラマティック度・・8 正統派度・・8 エピック度・・9 総合・・8
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Sacred Blood「Alexandros」
ギリシャのエピックメタル、セイクレッド・ブラッドの2012年作
タイトル通りアレクサンダー大王をテーマにした作品で、映画的なナレーション入りのイントロから
曲が始まるとミドルテンポを主体にした、MANOWARを思わせる正統派のメタルサウントが炸裂。
エリック・アダムスのような戦士系ハイトーンヴォーカルを乗せた、どっしりとした勇壮さに加え
随所にメロディックなギターフレーズや、オーケストラルなアレンジも含んだ壮大な雰囲気もGood。
ときにフォークメタル風味の旋律も覗かせながら、小曲やSEを挿入した構成で、
ドラマティックな流れを描いてゆく。いかにもエピックな世界観に包まれた力作ですな。
ドラマティック度・・8 エピック度・・9 正統派度・・8 総合・・7.5
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CLAYMORE「Lament of Victory」
セルビアのシンフォニックメタル、クレイモアの2013年作
きらびやかなシンセアレンジと、RHAPSODYを思わせるエピックな世界観に、
女性ヴォーカルの歌声で聴かせる、ファンタジックなシンフォニックメタル。
2曲目からは男性Voも加わって、男女ヴォーカルによるゴージャスなサウンドで、
MANOWARのような正統派のエピックメタル要素や、パワフルな疾走感もあり、
メロディックで重厚な雰囲気が楽しめる。辺境的なマイナー臭さはあまりないので
B級バンドが苦手な人でも大丈夫。随所にクサメロも含んだファンタジーな力作です。
ドラマティック度・・8 ファンタジック度・・8 エピック度・・8 総合・・8
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◆北欧メロパワ系

THE STORYTELLER「CROSSROAD」
スウェーデンのメロディック・メタルバンド、ザ・ストーリー・テラーの2nd。2001作
HAMMERFALLの成功以降、クサメロを配した泣きの疾走メタルバンドが
数々デビューする北欧であるが、これらのバンド群において評価をする重要事項となるのは、
なりよりメロディの質/扇情度に他ならない。そうした意味においてこのバンドは優れていると言っていい。
1stの頃から、そのサウンドには普通のジャーマン系クサメロ疾走メタルとは
微妙に異なるメロディの質感があった。それは北欧の土着的なトラッド要素である。
もともとはこのバンドは非メタル系のフォーク/トラッドバンドからスタートしたという経緯があり
そこが他のこの手のバンド群とのメロディ/アレンジの質感の違いとなっているのだろう。
スタイリッシュなセンスの良さよりは、田舎臭い哀愁が感じられる。そこがいい。
メロディアス度・・8 疾走度・・8 北欧土着哀愁メロ度・・8 総合・・8
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IRON FIRE「To the Grave」
デンマークのメロパワバンド、アイアン・ファイアの5th。2009作
毎作質はそこそこながら、これまではいまひとつという感があったのだが、
本作ではシンフォニックな音の厚みと重厚さをまとった傑作に仕上げてきた。
エピックな世界観に誇り高き正統派としてのパワーを乗せて、
力強く聴かせるサウンドは、楽曲、メロディともに過去最高の説得力だ。
かつてのDREAM EVILにも匹敵するクオリティ。ここにきてついにひとつ皮がむけた。
ドラマティック度・・8 パワフル度・・8 正統派度・・8 総合・・8
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OLYMPOS MONS「Medievil」
フィンランドのメロパワバンド、オリンポス・モンズの2nd。2007作
1stはややマイナー臭いながらも、民族調のクサメロが心地よいなかなかの好作だった。
本作は、その彼らの持ち味であるクサいまでのメロディとともにパワフルに疾走しながら、
キャッチーなシンフォニック性と古き良きジャーマンメタル的な懐かしさが加わって、
この手の好き者にはタマらないシンフォメロスピ的な雰囲気をたっぷりと漂わせる。
中世の王国や騎士などを歌ったファンタジックな世界観も、娯楽映画的なドラマ性を
サウンドに付加していて、聴き手の気分を盛り上げてくれる。濃密な傑作です。
メロディアス度・・8 疾走度・・8 ファンタジック度・・9 総合・・8.5
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SABATON「Carolus Rex」
スウェーデンのメロディックメタル、サバトンの2012年作
毎作これでもかという熱いメタルを繰り広げる北欧の漢メタル野郎、
今作もヨアキム・ブローデンの暑苦しい男ヴォーカルとともに、パワフルかつエピックに聴かせる、
正統派のメロパワサウンドが炸裂。作を重ねるごとにその説得力は増していて、今作では壮麗なシンセアレンジや
クワイアなども含んで、ときにシンフォニックメタルといってもよいほどの耳心地だ。
濃厚系の北欧メロパワとしてはついにトップに立ったかという強力な出来ばえである。
ドラマティック度・・8 パワフル度・・8 濃厚度・・9 総合・・8
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VEONITY
「Gladiator's Tale」
スウェーデンのメロディックメタル、ヴェオニティの2015年作
ジャケからしてエピックな雰囲気がぷんぷんであるが、サウンドの方はキャッチーなクサメロ感をたっぷりまぶした
正統派のメロディックメタル。男くさいヴォーカルの声質もなかなかよろしく、重すぎないギターリフを乗せた正統派の感触に、
メロディックなフックと疾走感で、FREEDOM CALLINSANIAなどにも通じるキーパー属性のクサさににんまりだ。
これといって新鮮味はないのだが、とにかくクサく生きよう!クサく戦おう!…という強いメッセージが伝わってくる。
力強さよりも微笑ましさに満ちたやわらかなエピックメタルというべきか。クサメロファンはとりあえず聴いとけ!
雰囲気としては、かつてのPhoenix Rizingあたりに一番近いかもしれない。知らない?まあ、そうですか…
メロディック度・・8 疾走度・・8 クサキャッチー度・・8 総合・・8
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