薄暗系プログレ特集



PORCUPINE TREEの登場後、薄暗系シンフォニック、静謐系プログレというものがにわかに広まり、しだいに認知され始めてきた。
メロディアスさと同時にどこか倦怠を感じる、たゆたうような翳りをともなったサウンドは、PINK FLOYD「アニマルズ」に端を発し、
80年代の商業音楽の時代を過ぎて90年代に入ると、PINK FLOYD「対」MARILLION「Brave」
ひとつの完成を見る。
おそらくこの2枚の傑作は、それ以降の多くのバンドに影響を与えることになったに違いない。

現在では、そうした音を継承するバンドたちは“薄暗系プログレ”、あるいは“オルタナシンフォ”などとも呼ばれたり、
さらに繊細な美意識をともなった“ポストプログレ”系のバンドもいまではその数を増やしている。
現代的な人間の内面にはびこる闇や病理、孤独などをテーマに、しっとりとした叙情を描く世界観…
それらの、ほの暗く、そして叙情的なサウンドを聴いていると、ある種の安らぎと癒しを得られる。
耳心地の良さ、メロウな情感、翳り、…そのようなキーワードを思い浮かべながら、それらの作品をゆるやかに紹介してみよう。

                              緑川 とうせい



◆イギリス

PINK FLOYD「ANIMALS」
ピンク・フロイドの10th/1977年作
「資本家」「インテリ」「小市民」を豚・犬・羊に例えるという、痛烈な社会批評が込められた作品だが、
サウンドの方には難解さはなく、おだやかな薄暗さというものが感じられるメロディアスなアルバム。
とくにデイブ・ギルモアの流麗なギターワークが全編楽しめるという点では一番かもしれない。
ヒプノシスの手によるジャケットも広げて見るとまた素晴らしい出来ばえだ。
最初とラストの小曲は、その優雅に空を飛んでゆくブタの光景が見えるようだ。
「炎」ではソフトすぎ、「狂気」では難解すぎ、という方にはうってつけの作品。
むしろPORCUPINE TREEなどを好む若いリスナーなどは本作から入るのもいいだろう。
メロウ度・・8 プログレ度・・7 薄暗度・・8 総合・・8
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PINK FLOYD
「Division Bell
「対」のタイトルで知られる、ピンク・フロイドの1994年作
しっとりとした美しいピアノの音色にかぶさる、デイブ・ギルモアの繊細なギタートーン、
静謐感に包まれたその作風は、ロックとしてのダイナミズムをモダンな翳りの中に紛れ込ませて、
オーケストレーションや女性コーラスなどを含んだ、広がりのある空間的な音作りにより、
しだいにその叙情世界に引き込まれてゆく。印象的なジャケに目を奪われがちだが、
やわらかな歌声も含めて音自体に難解さはなく、ゆったりと鑑賞できる耳心地の良さが素晴らしい。
美しいシンセの重なりの中に響きわたる、ギルモアのメロウな泣きのギターが存分に味わえる傑作だ。
メロウ度・・9 プログレ度・・7 薄暗叙情度・・8 総合・・8
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MARILLION「Brave」
イギリスのメロディアスロックバンド、マリリオンの7th。1994年作
前作「Holidays in Eden」でのポップな路線から一転、壮大なコンセプト作となった。
うっすらとしたシンセワークに、メロウなギタートーン、そしてスティーブ・ボガースの
もの悲しくも優しい歌声で聴かせる、しっとりとした叙情サウンドは、プログレというよりは
今で言う薄暗系ロックの先駆けでもあり、たとえば、同時期のDREAM THEATERにおける
テクニカルなドラマ性とは対照的な構築の仕方である。おそらくは後のARENAなどにも
大きな影響を与えたであろう、このモダン志向の叙情ロックのスタイルは、ひとつの金字塔である。
しっとりメロウ度・・9 プログレ度・・7 薄暗叙情度・・9 総合・・8
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MARILLION「Marbles」
英国のプログレロックバンド、マリリオンの2004年作
通算13作目のアルバムで、すでにプログレともポンプロックとも異なる
しっとりとした叙情の薄暗系モダンロックというべき作風なのだが、
今作では幻想的な情緒を漂わせたうっすらとしたシンセワークに包まれて
不思議な浮遊感とともにゆるやかなメロウさが楽しめるサウンドになっている。
いくぶんシンフォニックロック的なドラマティックさも戻ってきていて、
かつての「BRAVE」あたりにも通じるコンセプト風味の流れが見事だ。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 ゆったりメロウ度・・9 総合・・8
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ARENA「THE VISITOR」
イギリスのシンフォニックロックバンド、アリーナの3rd。1998年作
PENDRAGONのクライブ・ノーラン、元MARILLIONのニック・ポインターらによるバンドで
1st「SONGS FROM LION'S CAGE」は繊細なシンフォニック性と
メタリックなメロディアスギターが表裏一体となった傑作アルバムであったが、
本作は、1st、2ndよりも重厚さが増した、ダークな叙情性を追求したコンセプト作である。
今作からギタリストが交代したようだが、メロウでときにメタル的なフレーズを奏でていて
クライブ・ノーランのシンフォニックなキーボードワークにマッチしていてなかなかよろしい。
もう少し楽曲に爽快な抜けがあればとも思うが、ともかくも良質のシンフォニック作品である。
シンフォニック度・・8 メロディアス度・・7 薄暗度・・8 総合・・8
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PORCUPINE TREE「IN ABSENTIA」
イギリスのプログレ・ロックバンド、ポーキュパイン・トゥリーの2002年作
このバンドのサウンドはいうなれば、現代にマッチした憂鬱なメロディアスロック、ということになるのだろうか。
プログレメタルというほどテクニカルでもないし、厳密にいえばいわゆるプログレでもない音だが、そのクールな情感と
やや暗鬱な叙情をかもしだすサウンドには不思議な魅力がある。内的世界の描写を淡々とした演奏で表すところなどはポストロック的で、
そういう点では現代版PINK FLOYDと表現されるのもうなずける。やわらかだが冷たい質感と、しっかりとロックとしてのビートを感じるし、
メロトロン的なキーボードの使い方などはどこか北欧的で、ANEKDOTEN、さらにはOPETHなどの静寂部分に通じるものもある。
メロディアスでメランコリックな「雰囲気」が気に入れば心地よく聴ける音楽だろう。
メロディアス度・・7 プログレ度・・6 心地よい浮遊感度・・8 総合・・8
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the pineapple thief 「Tightly Unwound」
イギリスのプログレバンド、パイナップル・シーフの2008年作
いわゆるPorcupine Tree系のサウンドだが、本作においてはもっとプログレ色が強くなり、
変拍子入りの巧みなアンサンブルにポストロック的でもある深遠な世界観を折り込んでじっくりと構築してゆく。
それなりに技巧的でありつつも、サウンドのやわらかさを保っているのはマイルドなヴォーカルの歌声と、
静かなパートを自然に盛り込むアレンジのセンスだろう。メロトロンの音色の使い方などは
北欧のバンドのようでもあり、随所にプログレファンを唸らせるものが散りばめられている。
ポーキュパイン系のファンはもとより、RiversideANEKDOTENのリスナーなどにも勧められる。
メロディアス度・・8 プログレ度・・8 薄暗度・・8 総合・・8.5
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KINO「PICTURE」
イギリスのモダンプログレバンド、キノの2005年作
IT BITESARENAMARILLION、元PORCUPINE TREEのメンバーが集結したスーパーバンド。
薄暗く繊細な叙情を含んだ、ARENAから受け継がれた英国モダンプログレの完成形というべきサウンドで、
ARENA、IT BITESなどで活躍するジョン・ミッチェルのやわらかなヴォーカルを乗せたキャッチーな聴き心地に、
同じくIT BITESのジョン・ベックのプログレらしいシンセが重なり、うるさすぎないシンフォニック性と、
後のFROST*などにも通じる構築センスも覗かせる。繊細なピアノなどによるしっとりとした引きの叙情もよろしく、
ときにハード寄りにになるギターにからむキーボードの美しさにも、さりげないアレンジの細かさが垣間見える。
派手な展開やテクニカルの応酬はないものの、抜群の聴き心地の良さで楽しめる、まさに英国モダンプログレの傑作だ。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 叙情度・・9 総合・・8.5
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FROST*Experiments in Mass Appeal」
イギリスのプログレバンド、フロストの2nd。2009年作
英国ポップシーンのプロデューサーにしてキーボーディスト、Jem Godfreyを中心に
ARENAKINOでも活躍するJOHN MITCHELLらによるスーパーバンドとして結成された。
前作はダイナミズムとモダンなアレンジによるシンフォニックロックの傑作であったが、
今作では、いわゆるUKロック的なキャッチーさと、PORCUPINE TREE系の薄暗さを前に出した
作風になっている。もちろん多彩なシンセワークによるプログレ的なアレンジも聴けるが、
全体的にはより普遍的なメロディックロックへと接近、近年のMARILLIONKINOに通じる
やわらかみとモダンさが特徴的。プログレとして聴くよりは、シンフォニックなUKロックというべきか。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 UKロック度・・8 総合・・8
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Steven Wilson 「The Raven That Refused To Sing」
Porcupine Treeのステーィヴン・ウィルソンの2013年作
ここのところ、プロデュースやリミックスなどに大忙しというスティーヴン先生、
ソロの方も旺盛に制作しておりますな。3作目となる本作は、ギターにThe Aristocratsの
ガスリー・ゴーヴァン、ドラムにマルコ・ミネマンが参加、躍動感あるアンサンブルに、
フルートが鳴り軽やかなシンセワークが彩るという、これまで以上にプログレしているサウンド。
もちろんしっとりとした繊細な叙情も含んで、初期クリムゾンばりのメロトロンも聴かせてくれます。
ガスリーの奏でる泣きのギターも随所に素晴らしく、奥深い世界観の楽曲を彩っている。
10分を超える大曲も緩急のついたアレンジで構築される、優雅にして知的な傑作です。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 優雅度・・9 総合・・8.5
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The CuratorSometime Soon
NO-MANやJudy Dybleなどに参加したAlistair Murphyによるソロプロジェクト、キュレイターの2010年作
艶やかなヴァイオリンにしっとりとしたピアノ、妖しげな女性コーラスが合わさって、
彼自身のマイルドな歌声とともに、ゆるやかな味わいのサウンドを描き出す。
キャッチーなメロディアスさに哀愁を含ませながら、美しいシンセ、オルガンが鳴り響く
いかにも英国らしい叙情美にうっとりとなる。ロック色の薄いアンビエントな雰囲気ながら、
女性VoにJudy Dybleをはじめ、元ALL ABOUT EVE〜THE MICEのJulianne Reganらが参加していて、
モノトーンになりそうなサウンドを優しく彩っている。ドラムにはKING CRIMSONのPat Mastelotto、
ヴァイオリンで元NO-MANのSteve Binghamが参加、チェンバー風味の曲などもあり最後まで楽しめる。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 しっとり叙情度・・9 総合・・8
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North Atlantic OscillationGrappling Hooks」
スコットランドのモダンプログレ・ロックバンド、ノース・アトランティック・オシレーションの2010年作
Porcupine TreePineapple Theifに続き、新時代のモダンプログレパンドがデビュー。
ヴォーカル、ギター、ベース、シンセをこなすマルチプレイヤーとドラムという2人のユニットで、
エモ的なやわらかな叙情と、エレクトロがかったモダンなセンスを合わせたサウンドをやっている。
Sigur Rosを思わせるしっとりとしたやわらかな歌声に、楽曲にはポストロック的な壮大さもあり、
デジタルとアナログの両立というべき、調和のとれた聴き心地のいいミクスチャーロックである。
知的なプログレ風味も随所に覗かせつつ、あくまでモダンなバランス感覚で仕上げられている。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 モダンロック度・・9 総合・・8
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Steve Thorne「Crimes & Reasons」
イギリスのマルチミュージシャン、スティープ・ソーンの2012年作
前作からのモダンなシンフォニックロック路線はそのままに、現代的なテーマにそったシリアスなコンセプトのもと、
今作ではARENAあたりにも接近したような印象で、うっすらとしたシンセにマイルドなヴォーカルで聴かせる、
やわらかでメロウな耳心地の良さが光る。叙情的なギターにシンフォニックなシンセアレンジもありつつ、
キャッチーなメロディやアコースティカルな素朴さも含んだ好作品。前作に続き、ゲイリー・チャンドラー(JADIS)、
ニック・ディヴァージォ(元SPOCK'S BEARD)、トニー・レヴィンマーティン・オーフォード(IQ)らがゲスト参加。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 薄暗度・・8 総合・・8
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Sound of Contact
「Dimensionaut」
フィル・コリンズの息子であるサイモン・コリンズのバンド、サウンド・オブ・コンタクトの2013年作
きらびやかなシンセアレンジと適度なハードも含んだモダンなプログレ・ロックサウンド。
IT BITESやFROSTにも通じる抜けのよい爽快さと、PINK FLOYDのような繊細な叙情が合わさり、
それをメジャー感のあるキャッチーなポップセンスで包み込んだという、完成度の高さが光っている。
父親譲りの鼻にかかったマイルドな歌声に、ドラムのセンスもなかなかのもの。
チェロが鳴り響く優雅なアレンジや、MARILLIONのようにいくぷん翳りを帯びた哀愁も含みながら、
メロディックロックとしての情感とダイナミズムも素晴らしい。ラストの19分の大曲も見事な傑作です。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 繊細度・・9 総合・・8
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ANATHEMA 
「Distant Satellites」 
イギリスのメランコリックロック、アナシマの2014年作
もはやメタル枠で掲載するにははばかられる、しっとり系ポストプログレ系のサウンドなのであるが、
本作もマイルドな男性ヴォーカルに女性ヴォーカルを絡め、物悲しく薄暗い叙情性を描き出すスタイルで
シンフォニックなオーケストレーションが楽曲を包み込む。曲によってはリー嬢のヴォーカルをメインにした、
繊細な女性声シンフォという感じにも楽しめる。楽曲ごとに深みのあるスケール感を生み出すだけの
世界観が強く感じられ、単なる薄暗系プログレというにはとどまらない、ドラマティックな雄大さが素晴らしい
8分を超えるタイトル曲ではエレクトロなアレンジも含んだモダンさも覗かせる。バンドとしてのさらなる深化が窺える意欲作だ。
ドラマティック度・・8 繊細度・・9 叙情度・・9 総合・・8 
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◆ドイツ、フランス、イタリア、オランダ

RPWL「Beyond Man & Time」
ドイツのモダン・プログレバンド、RPWLの6th。2012年作
SYLVANと並んでドイツのネオ・ブログレシーンを代表するこのバンド、
PINK FLOYDあたりにも通じる浮遊感でゆるやかに聴かせるサウンドには、
本作ではさらにポストロック的な壮大なテーマを感じさせる雰囲気が加わっている。
16分の大曲も含めて、楽曲の配置やつながりのある構成はコンセプチュアルで、
静かな盛り上がりを繰り返しながら、聴き手をしだいに音の世界に引き込んでゆく。
美麗なシンセワークをはじめ、プログレとしての感触も前作以上にあって、
アルバムとしての起伏のつけ方も見事。バンドとしての最高作というべき内容である。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・8 壮大度・・9 総合・・8
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Sylvan 「Force of Gravity」
ドイツのプログレバンド、シルヴァンの2009年作
RPWLとともにドイツの薄暗系シンフォとしては双璧というべきこのバンド、本作ももの悲しいピアノや、
美しいシンセとメロウなギターで聴かせるしっとりと叙情的な作品だ。
ヴォーカルの歌唱は悲しみの情緒をたたえつつUKロック的でもあるマイルドな質感と、
ときに激しいまでの感情を表現している。シンフォニック/プログレ的な要素とともに、
モダンロックとしてのエッジの付いたアレンジにこのバンドのバランス感とセンスを感じる。
歌と演奏の濃密さでは前作以上の出来。ラストの14分の大曲も含めて、繊細さとドラマティックさがかみ合った見事な傑作だ。
メロディアス度・・8 ドラマティック度・・8 繊細な叙情度・・9 総合・・8.5
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DEMIANSBuilding an Empire
フランスのミュージシャンNicolas Chapel氏の個人ユニット、デミアンズの2008年作
うっすらとしたシンセにいくぶんヘヴィめのギターとともに、メランコリックな叙情を描く
いわゆるPorcupine Tree系のサウンド。PTに比べるとシンフォニックな要素が強く、
暗すぎない程度のメロウさや、ストリングスなどのアレンジも入った泣きもよろしい。
16分の大曲も含めて、ゆったりと聴かせる耳心地の良さがいい感じですね。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 薄暗メロウ度・・8 総合・・8
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Moongarden 「Round Midnight」
イタリアのプログレバンド、ムーンガーデンの2003年作
日本かどこかのターミナルのようなジャムも印象的だが、サウンドの方も初期の王道シンフォ路線から
モダンな翳りを含んだ今でいうポストプログレ的な感触になっている。英語によるマイルドなヴォーカルに、
うっすらとしたシンセアレンジ、むしろ英国やポーランド系バンドのような薄暗い叙情性に包まれていて、
一聴してプログレ感は薄いのだが、随所にメロトロンやムーグ、オルガンなどのシンセも加わって、
GENESISルーツの泣きのギターも覗かせつつ、うるさすぎないセンスの良さでじっくりと鑑賞できる。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 モダンで薄暗度・・8 総合・・8
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Nosound 
「The Northern Religion Of Things」
イタリアのポストプログレ、ノーサウンドの2011年作
ジャンカルロ・エラ氏の一人ユニットというべきスタイルで、イギリスのNO-MANと同じく
しっとりとしたアンビエントなサウンドを聴かせる。うっすらと包み込むようなシンセと、
アコースティックギター、ピアノのつまびきに、マイルドなヴォーカルで描かれる、
優しく繊細な作風は本作でも同様。広がりのある空間的な音の重なりと寂しげな叙情性、
静寂感の中にある暖かな人間味が交差する、ゆったりなごめるような美しい作品です。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 繊細度・・9 総合・・8
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◆北欧

ANEKDOTEN
「Until All the Ghosts Are..」
スウェーデンのプログレバンド、アネクドテンの2015年作
1993年にデビュー、メロトロンを鳴り響かせるヴィンテージなスタイルで、LANDBERK、ANGLAGARDらとともに
北欧の新たなプログレシーンを活性化させた。今作は8年ぶりとなる6作目で、のっけからメロトロンの響きとともに
1stの頃のようなヘヴィな浮遊感に包まれたサウンドでにんまり。4th以降のマイルドな薄暗さをいくぶん凶暴にしたイメージで、
そこにサイケロック的な怪しさをたっぷりとまぶしたという聴き心地。70年代ハードロック的なギターリフもじつに確信犯的で、
1曲目は最近のOPETHあたりに接近したような感じもある。一方では、パンドとして熟成されたゆったりとした叙情性も耳に心地よく、
聴き手に世界に浸らせる強度がさらについてきた。フルートが鳴り響くゆるやかなパートは夢の中の桃源郷のごとし。見事な傑作だ。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 薄暗浮遊感・・9 総合・・8
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CARPTREEInsekt
スウェーデンのシンフォニックロックバンド、カープトゥリーの4th。2007年作
薄暗系シンフォとしてマニアにはすでに人気の高いこのバンドだが、
これまでのアルバムは完成度としてはそこそこという程度だった。
今作では純粋にメロディと雰囲気に磨きがかかり、音の説得力がぐっと増している。
ゆるやかなシンセを中心にゆったりと聴かせる楽曲は、決して派手に盛り上がるわけではなく、
薄暗い叙情美をともなって、じわじわと耳に優しくしみこんでくるという印象だ。
いわゆるポーキュパイン系の北欧版というイメージだが、もっとやわらかな幻想の空気に包まれているのが良い。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 ゆったり薄暗度・・9 総合・・8
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PAATOS 「silence of another kind」
スウェーデンの女性Voバンド、パートスの3rd。2006年作
ゆるやかなメロトロンの調べとたゆうたような女性ヴォーカル…
北欧らしい寒々しさと倦怠を感じるサウンドは、音数はシンプルで一聴して地味な印象だが、
内的な強度…というか彼らの目指す密度を減らした薄暗い叙情の表現という意味では
いままでのアルバムよりもむしろ徹底しており、ほぼ完全に成功しているといっていい。
昨今のPORCUPINE TREE系サウンドにも通じるつかみ所のなさが、
好きな者にはたまらず、嫌いなものには退屈とも感じられるだろうが、
この鬱屈した美意識を生み出せるのは北欧ならではなのは確かだろう。
メロディアス度・・7 プログレ度・・7 北欧的薄闇度・・9 総合・・8
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Opium CartelNight Blooms」
WHITE WILLOWのギター、Wobblerのシンセ奏者、元ANGLAGARDのドラマーらが参加した
シンフォニックロックバンド、オピウム・カルテルのアルバム。2009年作
またレトロな北欧プログレの猛者が集結したものだが、サウンドの方はゆったりとした曲調に
ほの暗い質感で聴かせる、いわゆるポーキュパイン系といえるもの。
牧歌的なアコースティックギターに、フルート、そしてほのかにメロトロンが鳴りつつ、
倦怠ぎみの男ヴォーカルが歌を乗せる。美しい女性ヴォーカルで聴かせる曲も含めて、
やはり北欧からしか出て来ないような、ロハスな叙情というものに包まれた作品だ。
ほの暗度・・8 プログレ度・・7 ゆったりメロウ度・・9 総合・・8
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Makajodama
スウェーデンのチェンバー・プログレバンド、マカジョダマの2009年作
バンド名も面白いが、「Post Rock meets Prpg Rock」といううたい文句通り、ポストロック的な世界観と
レトロなプログレ感覚が合わさったようなインスト主体のサウンドも、これがなかなか面白い。
ヴァイオリン、チェロ、サックスなどがギターやシンセと絡み、薄暗いチェンバーロックを基本にしつつ、
クリムゾン的なヘヴィプログレの質感もあるという。 どことなく日本の美狂乱っぽくもあったりする。
この妖しさと暗さは聴いていて引き込まれます。 彼らのマイスペにはメンバーが影響を受けたバンドとして、
Dmitri Shostakovich、King Crimson、Can、Univers Zero、Algarnas Tradgard、Godspeed You! Black Emperor、
Third Ear Bandなどの名が。ちなみにANEKDOTENのメンバーが数曲でミックスを担当しているとか。
メロディアス度・・7 チェンバー度・・8 薄暗度・・9 総合・・8
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GAZPACHOMissa Atropos」
ノルウェーのプログレ・ロックバンド、ガスパッチョの2010年作
ヴァイオリンにシンセ奏者を含む6人編成で、2002年にデビューし本作ですでに6作目となる。
サウンドは、薄暗い叙情でゆるやかに聴かせるアンビエントなシンフォニックプログレで、
Porcupine Tree+ANEKDOTENというような、しっとりとした聴き心地と、ポストロック、エモ的でもある
マイルドなヴォーカルが耳に優しい。泣きのギターとうっすらとした美しいシンセが合わさると、
まるでポーランドのバンドのような翳りあるシンフォニックロックとしても楽しめる。
レトロなバンドが目立つ北欧であるが、モダン派の叙情系バンドとして今後も期待の存在である。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 薄暗度・・8 総合・・8
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Rhys Marsh And The Autumn Ghost 
「Dulcima」
英国出身のアーティスト、ライス・マーシュによるプロジェクト・ユニットの2作目。2009年作
ヴォーカル、ギター、シンセ、プログラミングをこなす北欧で活動するマルチミュージシャン。
本作は、しっとりとしたメロトロンが響く、レトロで北欧プログレ的な質感に
男女ヴォーカルが歌を乗せるという、いわゆる薄暗系シンフォニックの作風。
アコースティカルな叙情は英国フォーク風味でもあり、やわらかな耳心地にうっとりだ。
ANGLAGARDのMattias Olsson他、多数のゲストが参加している。
シンフォニック度・・7 薄暗度・・8 しっとり叙情度・・9 総合・・8
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Airbag
「Greatest Show on Earth」
ノルウェーのプログレバンド、エアバッグの2013年作
本作はすでに3作目で、サウンドの方はドイツのSylvanあたりに通じる薄暗系のモダンプログレ。
Pink Floydルーツの浮遊感ある繊細な叙情性に、美しいシンセアレンジによるシンフォ要素もあって、
随所にメロウなギターの旋律も覗かせる。11分、16分という大曲をじっくりと構築するセンスも見事で、
マイルドなヴォーカルで聴かせる歌パートに、ギルモアばりの泣きのギターでうっとりとなるインストパートと、
濃密すぎず薄すぎないバランスのよさが光る。新鮮味は薄いが、この手の薄暗系シンフォが好きな方にはたまらないだろう。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 叙情度・・9 総合・・8
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◆薄暗の国ポーランド

Riverside「Shrine of New Generation Slaves」
ポーランドのハードプログレ、リヴァーサイドの2013年作
いまや薄暗系ハードプログレの旗手というべき存在となったこのバンド、ミニアルバムを挟んでの5作目となる本作は、
前作にもあったヴィンテージな感触をまとわせ、アナログ的なギターにオルガンの鳴り響く、
古き良きハードロック的な感触がいくぶん強まっている。こうした回帰性は、たとえばOPETHや
PAIN OF SALVATIONの近作などもに通じるアプローチであるが、そこに薄暗い叙情が合わさり、
もの悲しい哀愁をただよわせたサウンドは、やはり唯一無二のものだ。初期のハードプログレ路線に比べて、
音作りは比較的シンプルなため即効性が薄いかもしれないが、 Porcupine Treeにも通じる深遠な世界観とともに
じわじわとくる聴き心地で、彼らの自然体の深化を見せつける作品といえるだろう。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 哀愁叙情度・・9 総合・・8

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SATELLITE 「EVENING GAME」
ポーランドのシンフォニックロックバンド、サテライトの2nd。2004年作
ポーランド最高のシンフォニックバンドCOLLAGEの中心メンバーたちが結成したバンド。
1stに続く今作も、かつてのCOLLAGEから継承された泣きのシンフォサウンドは健在で
メロウなギターのフレーズにピアノが重なる部分などは実に美しい。
ゆったりとした中にもほんのりとした薄暗さが感じられるのはポーランドというお国柄か、
そうした音にこもった黄昏のような哀愁こそがこのバンドの大きな魅力だろう。
シンフォニック度・・8 哀愁度・・8 ポーラン度・・8 総合・・8
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BELIEVE「This Bread Is Mine」
ポーランドのプログレバンド、ビリーヴの2009年作
COLLAGEのMirek Gilを中心に、ヴァイオリン入りの叙情的なサウンドを聴かせるこのバンド。
3作目となる本作ではヴォーカルが交代し、新たにシンセやフルートもこなせるヴォーカルが加入、
サウンド自体は薄暗い叙情で聴かせるいかにもポーランドらしいシンフォニックには変わりないが、
これまでよりもギターとシンセの絡みが増えたことで、いっそうSATELLITEあたりの音に近づいた。
もちろんこのバンドの特徴である、もの悲しいヴァイオリンの音色も随所に聴かれ、
アコースティカルな繊細さとともに、しっとりとセンシティブな叙情美をかもしだしている。
メロディアス度・・8 薄暗度・・8 ポーラン度・・8 総合・・8
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QUIDAM 「ALONE TOGETHER」
ポーランドのシンフォニックロックバンド、クィダムの5th。2007年作
初期の女性Voシンフォ路線から、男性Voのバンドとなってこれが2作目となる。
メロウなギターに、繊細なシンセワークで聴かせるしっとりとした薄暗さは
昨今のオルタナシンフォ系と言われる質感に近い、哀愁を漂わせたサウンドだ。
ゆるやかなピアノと力みのないギターのフレーズが重なり、フルートの音色も加わって
もの悲しくも美しい叙情美にうっとりとできる。過去にとらわれなければ
バンドとしての新たな方向性を確立した作品として、じっくり楽しめる好作だ。
シンフォニック度・・7 プログレ度・・7 ほの暗度・・9 総合・・8
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Votum 「Time Must Have a Stop」
ポーランドのプログレメタルバンド、ヴォーテムの2008年作
またしてもポーランドから期待の新人が登場。PORCUPINE TREEを思わせる薄暗い叙情に
適度なハードさとモダンな質感を加え、メランコリックに聴かせるサウンドは、
哀愁に包まれてなかなかいい雰囲気で、とくに美しいシンセワークが素晴らしい。
マイルドに歌うヴォーカルのかもしだす翳りあるやわらかみも耳に心地よく、
全体的にはRIVERSIDEをさらに叙情的に仕立て上げたという感触だ。
ときおり静寂パートを折り込むアレンジセンスも新人にしてはこなれており、
後半ややダレるのが惜しいが、今後に大いに期待できるバンドだと思う。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 薄暗叙情度・・9 総合・・8
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Lunatic soul
RIVERSIDEのMariusz Dudaを中心としたユニット、ルナティック・ソウルの2008年作
薄暗い叙情と浮遊感で聴かせる、ゆったりとしたサウンドに、けだるげなヴォーカルを乗せた作風は、
RiversideINDUKTIの静寂部分を取り出したようなイメージもある。アコーステイックギターにシンセ、
パーカッションが絡み、フルートの音色が響く中を、モノクロームの暗がりに包まれた幽玄な世界観を描き出す、
その世界観はよりPINK FLOYD的なアプローチとも言えるかもしれない。
エスニックな旋律をハードプログレ的に聴かせる部分もあって、上記したバンドに興味があるリスナーなら聴いてみて損はない。
メロディアス度・・7 暗がり度・・8 叙情度・・8 総合・・8
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Osada Vida「Uninvited Dreams」
ポーランドのハード・プログレバンド、オサダ・ヴィダの2010年作
新人ながら様々な要素をセンス良く盛り込んだ前作に続き、今作もレトロさとモダンさを両立させたハイブリッドなサウンドで、
こうした第三世代的というべきボーダーレスな感性は、やはりRiversideにも通じる部分がある。
本則ではさらに、メロトロンの響きを含めたANEKDOTEN的な叙情性と薄暗い浮遊感が耳心地よく、
やや雑多に思えた前作よりも方向性を絞ってきたという印象だ。こうなるとPorcupine Tree系のリスナーでも楽しめそう。
メロディアス度・・8 薄暗度・・8 ハイブリッ度・・8 総合・・8
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Strawberry Fields「Rivers Dry Gone」
ポーランドのシンフォニックロック、Satelliteのメンバーによるユニット、ストロベリー・フィールズの2009年作
ゴシック的な倦怠感のある女性ヴォーカルの歌唱を中心に、モダンロック的な楽曲で聴かせる。
ときおりSatelliteを思わせるような薄暗いシンフォ風味もあるが、
やはりもっと素朴で肩の力が抜けたような、アンニュイな優雅さが前に出ている。
音数的には少ないながらも、退屈かというとそうでもなく、キャッチーな耳馴染みの良さもあって、
ゆったりとした女性声の入ったオルタナ・シンフォとしても楽しめる作品だ。
メロディアス度・・7 薄暗シンフォ度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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Millenium
「Ego」
ポーランドのシンフォニックロック、ミレニウムの2013年作
90年代から活動する、ポリッシュ・シンフォ系のバンドとしては中堅〜ベテランのキャリアのあるバンド。
美しいシンセアレンジとメロウなギターワークで、薄暗い叙情を描く繊細なシンフォニックロックサウンド。
適度にハードエッジでモダンな感触と、ポリッシュらしい泣きの美学が合わさった聴き心地で、
10分前後の大曲をゆったりと描いてゆく。PENDRAGONにも通じるギターの叙情メロディもよろしく、
やわらかな男性ヴォーカルの歌声に女性声コーラスも加わって、しっとりとした美しさに包まれる。
QuidamやSylvanなど、繊細系叙情シンフォが好きな方にはたまらないだろう傑作です。
シンフォニック度・・8 繊細度・・8 叙情度・・9 総合・・8
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Mr.Gil
Skelling」
ポーランドのミュージシャン、ミレック・ギルのソロ。2010年作
COLLAGE〜現在はBELIEVEで活躍する彼のソロ2作目。
メロウなギタートーンが鳴り響き
うっすらしたシンセアレンジに、マイルドな母国語のヴォーカルを乗せた、薄暗い叙情に包まれたサウンド。
繊細な美意識と泣き泣きのギターは、かつてのCOLLAGEの名作「Moonshine」を思わせるほどで、
そこにいくぶんモダンなハードさや、やわらかなポストプログレ風味も加わった美味しい作風である。
ともかく、全曲に泣きの叙情メロディが顔を出し、やさしくメロディックな聴き心地にはうっとりすること請け合い。
これぞまさにポーランドという物悲しい美旋律に酔いしれるべし。泣きの叙情傑作。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 泣きの叙情度・・9 総合・・8
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◆メタル人脈からの薄暗系

ANATHEMA「A Fine Day to Exit」
イギリスのゴシックロックバンド、アナシマの6th。2001年作
4thあたりからメタリックな要素を薄め、倦怠の叙情を聴かせるゆるやかなサウンドへと進化をとげ
ここに来てメタル色はほぼなくなり、むしろプログレ的なサウンドになった。
ヴォーカルの歌声もやわらかくなり、浮遊感のあるシンセとギターを中心に
ゆったりと聴かせるブリティッシュロックとでも言うべき雰囲気である。
しかしながら、彼らならではのほの暗い叙情性はちゃんとあり、
これはこれでちゃんと楽しめる世界観がある。しっとりと耳に心地よいこの音は、
案外PORCUPINE TREE系のリスナーなどにも勧められるものがあるかもしれない。
メロディアス度・・8 メタル度・・1 ゆるやか叙情度・・9 総合・・8
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OPETH「DAMNATION」
スウェーデンのプログレッシブ・デスメタルバンド、オーペスの7作目。2003年作
以前から北欧的な薄暗い叙情にプログレ的な感性をまじえていたが、
今回のアルバムは前作「DELIVERRANCE」と対になる作品ということで、
彼らの持つ静謐なプログレ的部分を全面に押し出した内容になっている。
アコースティックギターにメロトロン、ノーマルヴォイスをメインにした
サウンドはデス色は皆無で、むしろプログレ方面の作品といってよい。
長尺に感じる部分もあるが、こうした極端なアルバムを出しても違和感がないというところがこのバンドの懐の深さを示している。
メロディアス度・・7 メタル度・・1 静寂の叙情度・・8 総合・・8
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KATATONIA「Dead End Kings」
スウェーデンのゴシックメタル、カタトニアの2012年作
9作目となる本作は、前作のシンフォニックなプログレ的な作風の延長で、
マイルドなヴォーカルと繊細なシンセアレンジによる、しっとりとした聴き心地だ。
モダンな薄暗さにもの悲しい叙情を含ませた、ゴシックロック的なサウンドに、
エモーショナルなキャッチーさを溶け込ませたような耳触りのよさで、
メタルというよりはむしろ、プログレ的な質感が楽しめる好作である。
メロウ度・・8 ゴシック度・・7 メランコリック度・・8 総合・・8
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Storm Corrosion
OPETHのミカエル・オーカーフェルドとPorcupine Treeのスティーヴン・ウィルソンによるユニット、
ストーム・コロージョンの2012年作。2人の才人による期待のユニットであるが、サウンドの方は想像通り
薄暗い叙情性と、プログレッシブな香りを漂わせたもので、ミカエルとステーィブンのマイルドな歌声に、
うっすらとしたシンセと、アナログ的に響くギターの音色、しっとりとしたピアノのつまびきなど、
静寂感を漂わせた繊細な聴き心地が楽しめる。OPETHの2011年作「Heritage」で聴かれた
70年代ロックへのオマージュ的な作風ともまた異なり、むしろPorcupine Treeの世界観に近いか。
メタル色はほぼ皆無で、派手さやドラマティックな展開もないのだが、プログレリスナーや
PTのファンなどには間違いなく楽しめるし、繊細でゆるやかな情感に浸れる好作品である。
ドラマティック度・・7 メタル度・・1 繊細な静寂度・・9 総合・・8
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Aeon Spoke
CYNICのメンバーによるプログレバンド、アエオン・スポークの2007年作
メロウなギターとヴォーカルメロディで薄暗い叙情を描くゆったりとしたサウンド。
メタル的なヘヴィさはあまりなく、やはり最近のCYNICのような内面的な情感表現で
繊細な聴き心地の作風だ。キャッチーな耳心地はモダンなエモロック的でもあるが、
随所に聴かせるギターのセンスはやはり見事で、ひとつひとつのリフやフレーズが
世界観を巧みに構築してゆく。Porcupine Tree系のリスナーにもオススメの作品です。
メロディアス度・・8 メタル度・・5 プログレ度・・8 総合・・8
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CYNICCarbon Based Anatomy
アメリカのプログレッシブメタル、シニックのミニアルバム。2011年作
2009年に25年ぶりの復活作Traced in Air」を発表し、そのプログレッシブな美しさでファンを喜ばせ、
続くミニ
「Re-Tracedでは意表をついたアレンジで賛否両論を呼んだ。これはそれに続くミニアルバムで、
のっけからしっとりとしたシンセと女性ヴォーカルによるアンビエントな雰囲気で驚かされるが、
2曲めからは彼ららしい知的で芸術的なサウンドを聴かせてくれる。やわらかな聴き心地の中に
もの悲しい情感と未来的なセンスのスケール感を内包し、巧みなアンサンブルで構築してゆく。
ProgMetalとしての質感を残しつつ、ほのかな民俗要素やモダンプログレのアンニュイさも取り込んでいて
そのセンスの良さは、Porcupine Treeなどにも通じるかもしれない。早くフルアルバムが聴きたい。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 芸術度・・9 総合・・8
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OSI「Fire Make Thunder
Fates Warningのジム・マテオスと、ケヴィン・ムーアによるユニットOSIの4作目。2012年作
前作に引き続きドラムにPorcupine TreeのGavin Harrisonを迎え、
モダンなヘヴィさとダークな浮遊感を漂わせたサウンドを描いてゆく。
メロディアスでもなければ派手さもないという、愛想の良くなさは相変わらずながら
楽曲における構築性ではこれまでで一番テクニカルなメリハリを感じるし、
あえて通好みを脱却しない作風には、頑固でアーティスティックな美意識を内包している。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 モダン&ダーク度・・8 総合・・8
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ULVERWars of the Roses
ノルウェーのダークメタルバンド、ウルヴェルの2011年作
初期のブラックメタル路線から、インダストリアルやトリップ要素を取り入れて、
現在ではほぼ脱メタルしている。おそらく本作は8作目だろうか、
エレクトロニカ的なシンセ、シーケンサーとを使用したそのサウンドは、
むしろプログレ要素が強く、浮遊感のあるエレクトロ・ロックといっていいものだ。
そんな中にも、うっすらとした北欧的な叙情をかもしだしているのが個性的で、
ARCTURUSがさらにマイルドになったようであるが、それ以上にアーティスティック。
もはやメタルではなく静寂感を内包したアートロックとして聴くべき作品だろう。
メロディアス度・・8 メタル度・・3 プログレ/エレクトロ度・・8 総合・・8
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LAURI PORRA「All Children Have Super Powers」
STRATOVARIUSのベーシスト、ラウリ・ポラーのソロアルバム。2008年作
音楽院出身であのシベリウスを先祖に持つ、ジャズやクラシックの素養もある才人。
一見して地味なジャケットながら、このアルバムにおける音楽性はじつに幅広く、
薄暗い叙情を聴かせるしっとりとした曲調はPINK FLOYD的でもあり、
アコースティカルな素朴さとメロディには北欧的な土着性も感じられて耳に優しい。
トランペットの音色やクラシカルなピアノ、美しいシンセにメロウなギターが加わると
北欧シンフォニックロックの質感にもなる。女性コーラスの入ったヒーリング調の曲などもあり、
プログレリスナーにも勧められる繊細でやわらかな作品である。
むしろプログレ度・・8 メタル度・・3 薄暗叙情度・・8 総合・・8
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◆アメリカ&日本

Ephemeral Sun「Harvest Aorta」
アメリカのプログレバンド、エフェメラル・サンの2009年作
ヘヴィなギターにメロトロンがかぶさるダークめのハードシンフォニックサウンド。
メロウなギターが薄暗い叙情をかもしだしつつ、ときにメタリックな部分も含めて
Riversideあたりにも通じる展開美を聴かせる。全4曲でラストは40分超という大曲であるが
起伏のある構築性がなかなかセンスよく、シンセやギターのフレーズもツボを押さえている。
ポストロック的な茫漠とした壮大さ、得体の知れぬミステリアスな雰囲気もいい感じだ。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・8 薄暗叙情度・・9 総合・・8
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PANGAEA 「UNU」
日本のプログレユニット、パンゲアの2004年作
プロデュースはなんとMOONDANCER〜VOWWOWの厚見玲衣
基本は女性ヴォーカルと、アコギ&ベースの男性によるデュオで、のっけから「これはクリムゾンの宮殿か?」という
叙情的なメロトロンが鳴り響き、思わずうっとり。イアン・マクドナルド参加、ということでこれは本人かと思いきや、
イアンはフルートでの参加。このメロトロンの嵐はクリムゾンフリークでもある厚見玲衣氏によるものだった。
どこかなつかしさを感じさせるような女性Voの歌唱は、ときに内向的に響き渡り、
全体的には薄暗さと情緒のある日本的な歌謡シンフォニックという雰囲気。ラストの組曲ではイアンのフルートが鳴り響く。
シンフォニック度・・8 薄暗度・・8 メロトロン度・・8 総合・・7.5
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Presence of soulBlinds
日本のポストロックユニット、プレゼンス・オブ・ソウルの2008年作
メロトロンが叙情的に鳴り響き、夢見がちな女性ヴォーカルの歌声とともに
ゆったりと聴かせる作風は、ANEKDOTENやPorcupine Treeなど、
薄暗系プログレの感触で楽しめる。10分以上の大曲もありながら、
ヘヴィさと静寂感を合わせたメリハリあるサウンドが、空間的なスケールを感じさせ
聴き手を神秘的な世界へ引き込んでゆく。音質のラウドさがやや惜しいが、
倦怠を含んだもの悲しい叙情はAlcestなどのリスナーにもオススメできる。
薄暗叙情度・・8 プログレ度・・7 女性Vo度・7 総合・・8
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Early Cross「Pathfinder」
日本のプログレッシブメタル、アーリー・クロスの2013年作
薄暗い叙情とともに知的でプログレッシブな構築センスを聴かせるサウンドはよりダイナミックとなり、
ウクライナ人とのハーフである
女性ヴォーカルの浮遊感のある歌声とともに、独自の世界観を描き出す。
ときにOPETHあたりにも通じる起伏のあるメタリックサウンドに、 古き良きブリティッシュロックのような感覚を融合させ、
いわばプログレッシブ・メタル/ハードロックのひとつの方向性を示すような、重厚にして繊細、叙情的な聴き心地である。
有機的なギターの重なりと、随所にうっすらとしたシンセも加えて、アレンジの細やかさが絶妙のダイナミクスを生み出している。
14分の大曲も含めて、プログレ、メタルの垣根を超えるような、日本人離れしたスケール感を内包した力作というべき仕上がりだ。
ドラマティック度・・8 プログレッシブ度・・8 構築センス・・9 総合・・8
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