繊細なるポストプログレ特集



「ポストプログレ」という通称が、この10年くらいでずいぶん広がってきたようだ。
かつてのプログレらしさ…メロトロンやオルガン、変拍子リズムといった要素ではなく、
繊細さ、モダンさ、薄暗さ、内的、マイルドな聴き心地、というキーワードがこの新たなジャンルの特徴として浮かんでくる。
それは鬱がはびこる現代においての癒しであったり、情報過多の喧騒からあえて離れた繊細な薄闇であるのかもしれない。

ポストプログレの誕生がいつなのかという議論には、明確な答えは見いだせないかもしれない。
原点はおそらくPINK FLOYDであったと思うが、それをよりスタイリッシュな叙情ロックに仕上げたのがMARILLIONだろう。
1994年作「Brave」での作風は、それ以前のプログレの概念にとらわれない、内的な世界観と繊細な叙情に包まれた作風で、
のちの多くのバンドに影響を与えることとなる。ゴシックメタルとしてスタートしたANATHEMAが、しだいにメタル色を希薄にし、
メランコリックなプログレ寄りの作風へと深化したのも、代表的なポストプログレ化の流れのひとつといえるだろう。

NO-MANのスティーヴン・ウィルソンのソロプロジェクトとしてスタートしたPorcupine Treeは、
1992年のデビュー作の時点では、エレクトロな味わいの薄暗いポップロックという趣のサウンドだったが、
バンド体制になると、やがてメタル系のリスナーも取り込んで、世界的な認知度を広げてゆく。
スティー・ヴン・ウィルソンの内的志向と音楽への探求心は、ポストプログレの旗手としての役割をにない、
後続のバンドに影響を与えながら、自身のソロも含めて数多くの作品を生み出してゆくことになる。

そのPTに続いてイギリスからは、the pineapple thiefが登場し、イタリアからはNosound、ドイツからはRPWLSYLVAN
北欧からはGAZPACHOといったバンドが現れ、ポストプログレシーンは静かにじわじわと世界的な広がりを見せている。
2008年には、このジャンルに特化したKscopeレーベルが誕生、いまや「Kscope系」と呼ばれる音楽を愛するリスナーも多いだろう。
ここでは、そのポストプログレ系バンドの作品を厳選して掲載した。この新たなジャンルの入り口になればと思う。

                         2016.Dec 緑川 とうせい



◆イギリスのポストプログレ

MARILLION「Marbles」
英国のプログレロック、マリリオンの2004年作
通算13作目のアルバムで、すでにプログレともポンプロックとも異なる、しっとりとした叙情で描かれる
薄暗系モダンロックというべき作風なのだが、今作では幻想的な情緒を漂わせたシンセワークと
メロウなギターに包まれて、不思議な浮遊感とゆるやかな叙情美が楽しめるサウンドになっている。
いくぶんシンフォニックロック的な感触も戻ってきて、かつての「BRAVE」あたりにも通じるコンセプト風味が見事。
1枚ものも出ているが、2CD盤の方が、よりドラマティックな流れを感じられるのでオススメです。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 ゆったりメロウ度・・9 総合・・8
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MARILLION「Sound That Can't Be Made」
英国のプログレロック、マリリオンの2012年作
2008年の「Happiness Is the Road」以来となるスタジオアルバム。ほの暗い叙情と繊細な感触はそのままに、
本作では楽曲におけるダイナミズムが増していて、随所にハードめのギターが入ったり、
オーケストラルなアレンジによる、スケール感のある壮大な雰囲気をサウンドに加えている。
スティーブ・ホガースのやわらかな歌声とともにに、泣きのギターを含んだ叙情美も素晴らしく、
17分、14分という大曲をゆるやかに構築するセンスはさすが。ポストプログレ的な聴き心地で楽しめる力作。
ドラマティック度・・8 繊細度・・8 壮大度・・8 総合・・8
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ANATHEMA「We're Here Beacuse We're Here」
イギリスのゴシックロック、アナシマの2010年作
初期のゴシックメタル路線から、しだいにゆるやかな浮遊感をまとったプログレ的な色合いを深め、
5th以降はPorcupine Treeにも通じるような薄暗系のマイルドな作風を確立したこのバンド。本作は
2008年の「Hindsight」以来となる9作目で、ミックスはPorcupine Treeのスティーブ・ウィルソンが手がける。
サウンドにはもはやメタル色はいっさいなく、ゆるやかな叙情で聴かせるマイルドな英国ロックという趣。
ジャケのイメージのように光を感じさせる爽やかさで、女性コーラスとうっすらとしたシンセが優しく包み込む。
どう考えてもプログレコーナーに置いた方がいいような内容ですな。じつに美しい作品だ。
メロウ度・・9 メタル度・・3 叙情度・・9 総合・・8
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Anathema「Weather Systems」
イギリスのメランコリックロック、アナシマの2012年作
初期のゴシックメタル路線から、ゆるやかな浮遊感をまとった作風へと進化し、
もはやメタルというよりは、マイルドな英国プログレロックというべきこのバンド。
本作も、前作までの路線に引き続き、ゆるやかな美しい叙情を聴かせてくれる。
ときに女性ヴォーカルの歌声も含んだ聴き心地はしっとりと耳に優しく、
ストリングスの優雅なアレンジなど、繊細な叙情性がさらに際立っている。
8〜9分という大曲もあり、どう考えてもプログレ側のリスナー向けだろう。
メロウ度・・9 メタル度・・2 叙情度・・9 総合・・8
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PORCUPINE TREE「DEADWING」
イギリスのモダンプログレ、ポーキュパイン・トゥリーの2005年作
通算では9作目となる。ゆるやかに静寂感をともなったマイルドだがクールなサウンド。
ときおり現れるメタリックなギターがいいアクセントになっていて、メロトロンの使用や
ヴォーカルハーモニーの美しさも魅力。9分の大曲から始まるので、前作よりもプログレ的な雰囲気が強まった。
根底にあるメランコリックな軽い鬱的部分が、浮遊感となって音に漂っていて、誤解を恐れずに言うと、
近年のDREAM THEATERの現代的なダークな部分に相通じるものも感じる。
けっして爽やかな音ではないが、身を任せるに心地よい空間を構築しているのは確かで、
しっとりとピアノが美しいバラードや、メロトロンの鳴り渡るシンフォニックなアレンジなど、
前作よりもやや音に温かみがあるところが英国的にも思える。プログレ、メタル、両方のリスナーに対応したアルバムだ。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 心地よい浮遊感度・・9 総合・・8
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Porcupine Tree「The Incident」
イギリスのモダン・プログレ、ポーキュパイン・トゥリーの2009年作
2002年のデビュー以降もコンスタントに作品を発表し、今や世界的な知名度を誇るこのバンド、
今作はなんと、14パートに分かれた55分に及ぶタイトル組曲をメインにした2枚組の大作。
鬱ぎみの薄暗ロック作品で賛否がはっきりとした前作に比べ、プログレッシブな雰囲気が戻り
クリムゾン風のヘヴィさとフロイド的な浮遊感を併せ、ポストロック的でもある内的志向の
ゆるやかな世界観構築を聴かせてくれる。派手な盛り上がりがほとんどない分、
前作以上に聴き手を選ぶ作品かもしれないが、この繊細な叙情とほの暗い雰囲気に
浸れる方にはこの上ない傑作となるかもしれない。Disc2はむしろオマケという感じか。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 内的叙情度・・8 総合・・8
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Steven Wilson「Grace for Drowning」
Porcupine Treeスティーブン・ウィルソンのソロ2011年作
PTの他にKING CRIMSONのリミックス、OPETHやORPHAND LANDなどのプロデュースなど
現在もっとも多忙を極めるミュージシャンの一人だろう。本作はVol.1、2に分けられたCD2枚組で、
しっとりとしたピアノやシンセと、繊細なヴォーカルで聴かせる、いわば静謐系の作風であるが、
アコースティカルな素朴さと、KING CRIMSONの静寂部分のような奥深い叙情性が素晴らしい。
もちろんプログレッシブな構築センスと、PT的な薄暗いモダンシンフォの要素も含んで
適度な緊張感とともにその世界観が描かれてゆく。Disc2の23分の大曲も見事な静かなる傑作。
メロウ度・・8 プログレ度・・8 静謐の叙情度・・9 総合・・8
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the pineapple thief「Tightly Unwound」
イギリスのプログレバンド、パイナップル・シーフの2008年作
薄暗い叙情で聴かせる、いわゆるPorcupine Tree系のサウンドだが、こちらはもっとプログレ色が強く、
変拍子入りの巧みなアンサンブルにポストロック的でもある深遠な世界観を折り込んでじっくりと構築してゆく。
それなりに技巧的でありつつも、サウンドのやわらかさを保っているのはマイルドなヴォーカルの歌声と、
静かなパートを自然に盛り込むアレンジのセンスだろう。メロトロンの音色の使い方などは
むしろ北欧のバンドのようでもあり、随所にプログレファンを唸らせるものが散りばめられている。
ポーキュパイン系のファンはもとより、RiversideANEKDOTENのリスナーなどにも勧められる。
メロディアス度・・8 プログレ度・・8 薄暗度・・8 総合・・8.5
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The Pineapple Thief 「All The Wars」
イギリスのプログレバンド、パイナップル・シーフ2012年作
Porcupine Tree以後の新世代薄暗系プログレとして、すでに活動は10年以上、
9作目となる本作も、モダンなセンスと知的な構築力が光る見事なサウンドを聴かせる。
キャッチーなヴォーカルメロディにほの暗い翳りをまとわせつつ、今作ではギターがより前に出た
アンサンブルを強めていて、お洒落で軽やかでありつつ、ロックとしての普遍的な格好良さも感じられる。
オーケストラルなアレンジによるシンフォニック性も含んだ、優雅な傑作に仕上がっている。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 繊細度・・8 総合・・8
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No-Man 「Together We're Stranger」
イギリスのポストプログレ、ノーマンの2003年作
スティーヴン・ウィルソンとトム・ボウネスによるユニットで、うっすらとしたシンセの重ねに、
マイルドなヴォーカルを乗せ、サウンドスケープ的なギターが鳴り響く、アンビエントなサウンド。
いわゆるロック的なノリはほとんどないのだが、ときにシンフォニックといってよい音の厚みで、
じわじわと泣きの叙情を描くところは、さすがのスティーヴン・ウィルソン先生、
ゲストによるクラリネットやトランペットの音色も加わった、ポストロック的なスケール感も見事で、
アコースティックギターを使用した素朴な暖かみもあって、耳心地よい優しい音に浸れます。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 アンビエン度・・8 総合・・8
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Memories of Machines 「Warm Winter」
No-ManのTim BownessとNosoundのGiancarlo Erraによる、メモリーズ・オブ・マシンズの2011年作
プロデュースはスティーブン・ウィルソンで、想像通りのしっとりとした薄暗い叙情のサウンド。
うっすらとしたシンセアレンジにもの悲しいヴォーカルの歌声が響きわたり、
アコースティックギターにピアノやチェロの音色が絡み、繊細な情感を描いてゆく。
優しく翳りのあるアンビエントなサウンドが好きな方なら気に入る作品だろう。
ロバート・フリップ、ピーター・ハミル、さらにはジム・マテオスといった多数のゲストが参加。
メロウ度・・8 プログレ度・・7 しっとり度・・9 総合・・8
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Blackfield 「IV」
イギリスのポストプログレ、ブラックフィールドの2013年作
Porcupine Treeのスティーブン・ウイルソンとイスラエル出身のミュージシャン、アビブ・ゲフィンを中心としたバンドで、
モダンな質感と薄暗い叙情で聴かせる、ポストプログレサウンド。楽曲は2〜3分前後と比較的シンプルで、
むしろ淡々とした聴き心地なのだが、それぞれの楽曲を5人のメンバーがヴォーカルをとったり、
メロトロンの入ったシンフォニックなアレンジを含めて、玄人好みの歌ものサウンドが楽しめる。
Marillionのような繊細な情感と素朴なメロディが耳心地よく、のんびりと鑑賞できる好作品だ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 繊細度・・8 総合・・8
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Henry Fool 「Men Singing
イギリスのポストプログレ、ヘンリー・フールの2013年作
No Manのヴォーカルが在籍するバンドで、2001年作以来となる2作目。
お洒落なモダンさと、サイケな浮遊感に、フリーキーなジャズロック色も含んだサウンドで、
うっすらとしたシンセアレンジにサックスやフルートなども加わった、やわらかな聴き心地。
いまをときめく、ポストプログレ系レーベル、KScopeからの作品ということもあって、
それ系のもの哀しい叙情も入りつつ、13分を超える大曲2曲を中心にした全4曲という構成で、
随所にプログレらしい妖しげなエキンセトリックさも垣間見せる。フィル・マンザネラも2曲に参加。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 優雅な叙情度・・8 総合・・8
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Amplifier 「The Octopus」
イギリスのプログレ・ロックバンド、アンプリフィアーの2011年作
基本はギター/ヴォーカル、ベース、ドラム、ピアノ(シンセ)という4人編成であるが、
5人のバックヴォーカルやトランペット奏者も含んでいて、まるで大がかりなポストロックバンドのよう。
しっとりとしたピアノの音色に、マイルドなヴォーカル、メロウなギターで綴られるサウンドは
PINK FLOYDなどにも通じるような、叙情的でありつつ壮大なビジョンを感じさせるもので、
キャッチーなコーラスワークなど、聴き心地の良さの裏側に、知的なビジョンが見え隠れする。
ギターがヘヴィになると、古き良きオルタナ風味にもなるのだが、アナログ感覚はちゃんとある。
これはプログレ的なポストロックというのが正しいのか、ともかくただものではないセンスが
聴き手の想像力を刺激する。70'sロックの感触が、モダンな知性と融合したというべき力作。
内的プログレ度・・8 壮大度・・8 ポストロック風味度・・9 総合・・8
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North Atlantic Oscillation 「Fog Electric」
スコットランドのモダンプログレバンド、ノース・アトランティック・オシレーションの2012年作
ヴォーカル、ギター、シンセをこなすマルチプレイヤーとドラムという2人のユニットで、これが2作目。
やわらかなヴォーカルハーモニーと、いくぶんエレクトロがかったモダンなセンスを含み、
浮遊感のあるキャッチーな繊細さは、Sigur Rosあたりにも通じるほんわかとした聴き心地。
シンセの重なりによる美しさと、マイルドな歌声を中心に、あくまで叙情的なサウンドは、
最近のANATHEMASteven Wilson系のファンにも楽しめるだろう。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 繊細度・・9 総合・・8
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Storm Corrosion
Porcupine Treeのスティーヴン・ウィルソンとOPETHのミカエル・オーカーフェルドによるユニット、
ストーム・コロージョン
の2012年作。2人の才人による期待のユニットであるが、サウンドの方は想像通り
薄暗い叙情性と、プログレッシブな香りを漂わせたもので、ミカエルとステーィブンのマイルドな歌声に、
うっすらとしたシンセと、アナログ的に響くギターの音色、しっとりとしたピアノのつまびきなど、
静寂感を漂わせた繊細な聴き心地が楽しめる。OPETHの2011年作「Heritage」で聴かれた
70年代ロックへのオマージュ的な作風ともまた異なり、むしろPorcupine Treeの世界観に近いか。
メタル色はほぼ皆無で、派手さやドラマティックな展開もないのだが、プログレリスナーや
PTのファンなどには間違いなく楽しめるし、繊細でゆるやかな情感に浸れる好作品である。
ドラマティック度・・7 メタル度・・1 繊細な静寂度・・9 総合・・8
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Crippled Black Phoenix「(Mankind)the Crafty Ape」
イギリスのプログレ・ドゥームロック、クリップルド・ブラック・フェニックスの2012年作
第二次大戦「バストーニュの戦い」をテーマにした前作もドラマティックな傑作であったが、
本作は三章に分かれたCD2枚組の大作となった。PINK FLOYDを思わせるような
ゆったりとした叙情性の中に壮大なビジョンを描き出すポストロック的サウンドで、
ときおりシンセによる美しい味付けもあって、プログレファンにもアピールするだろう。
アナログ感をかもしだすギターワークに、ストーナーロック的な質感も織り込んで
ゆるやかなドラマを構築するようなスケール感が素晴らしい。じっくりと味わえる力作だ。
ドラマティック度・・9 壮大度・・9 プログレ度・・8 総合・・8.5
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The CUSTODIAN「Necessary Wasted Time」
イギリスのプログレバンド、カストディアンの2013年作
マルチプレイヤーのリチャード・トンプソンを中心にした4人編成で、
オルガンなどを含むシンセなど古き良きプログレのやわらかな感触を継承しながら、
それをよりマイルドでスタイリッシュに仕上げたという、耳触りのいいキャッチーなサウンド。
ポストプログレ的な繊細な叙情と、アコースティカルな素朴さを、モダンに味付けしたという作風で
その落ち着いた聴き心地は、新鋭バンドとは思えぬ自然体のおおらかさと懐の大きさを感じさせる。
強いインパクトはないのだが、とにかく調和のとれたセンスの良さが光る好作品だ。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 繊細度・・9 総合・・8
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VLY 「I/[Time]」
イギリスのプログレバンド、VLYの2015年作
CRIPPLED BLACK PHOENIXのギタリストを中心に、元ANGLAGARDのマティアス・オルソン、
イタリアのIL TEMPIO DELLE CRESSIDREの女性シンセ奏者が参加したユニットで、
マイルドなヴォーカルと美しいシンセ、メロウなギターで繊細な叙情を聴かせるサウンド。
オルガンやメロトロンを含んだエリーザ嬢のやわらかなシンセワークが耳心地よく、
PINK FLOYD的な浮遊感に包まれた作風は、夢見心地のポストプログレというべきか。
オールドな感触のキャッチーさと、スタイリッシュなモダンさの融合された好作品。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 繊細度・・9 総合・・8
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◆イタリア、ドイツ、フランスのポストプログレ

NosoundLightdark
イタリアのアンビエント・プログレロック、ノーサウンドの2009年作
Giancarlo Erra氏による一人プロジェクト的なバンドで、本作がおそらく2作目。
うっすらと包み込むようなシンセとマイルドなヴォーカルで聴かせるアンビエントなサウンド。
メロトロンのような音色も含んだシンセアレンジが美しく、随所にはギターも入ってくるので、
やわらかでメロウなプログレとしてもちゃんと楽しめる。静かでもの悲しい叙情の中にも、
人間的な温かみがあって、タイトルのように薄暗さの向こうに光を感じ取れるような世界観だ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 繊細度・・9 総合・・8
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Nosound 「Afterthoughts」
イタリアのポストプログレ、ノーサウンドの2013年作
これまではジャンカルロ・エラ氏の一人ユニットというべきスタイルであったが、本作では
しっとりとした繊細系サウンドはそのままに、本作ではバンド編成での録音になったことで、
ドラムが入っている分ぐっとロック色が濃くなっている。ゆるやかなシンセに物悲しいチェロの音色、
やわらかなヴォーカルとともに描かれる世界観は、薄暗いだけでなく暖かな希望を感じさせる。
随所にメロウなギターフレーズもよい感じで、これまで以上にメリハリのあるドラマテイックな聴き心地だ。
最近のANATHEMAあたりに通じるスタイルになってきたが、この方向性は大歓迎である。傑作。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 繊細度・・9 総合・・8
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THE FORMER LIFE「Electric Stillness」
イタリアのプログレバンド、フォーマー・ライフの2012年作
シンセとギターの2人によるユニットバンドで、やわらかなピアノの旋律にマイルドなヴォーカルで聴かせる、
繊細なポストプログレ風味のサウンド。メロウなギターのフレージングやときににオルガンなどを含んだ
プログレ的なシンセも顔を覗かせ、古き良きプログレへの敬意も感じられるところがよい。
やわらかでキャッチーな聴き心地は、SylvanやMoon Safariなどが好きな方にもアピールするだろう。
繊細な叙情とともに、ゆるやかに盛り上げるドラマ性もしっかりと含んだ、新世代プログレの好作品
メロディック度・・8 プログレ度・・7 繊細度・・9 総合・・8
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METADRIVE 「OVER REALITY」
イタリアのモダンプログレ、メタドライブの2016年作
ギターレスのトリオ編成で、スペイシーなシンセの重ねにエモーショナルなヴォーカルを重ね、
エレクトロなアレンジで聴かせる、ポストプログレ風味のサウンド。グルーブ感のあるドラムが
程よいロック風味を作り出し、美しいシンセワークが、ある種シンフォニックな味わいとなっている。
薄暗く繊細な空気感は、ドイツのSYLVANなどに通じる感触もあり、2〜5分前後のコンパクトな楽曲の中に、
メロディのフックと泣きの叙情を溶け込ませるアレンジセンスも素晴らしい。ギターを使わなくても、
シンセの重ねが空間的な音の厚みを作り出し、物足りなさは感じない。美麗で繊細な傑作だ。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 繊細な叙情度・・9 総合・・8
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RPWL「world through my eyes」
ドイツのオルタナ・シンフォニックロックバンド、RPWLの4th。2005作
90年代に活動していたGENESIS系ポンプロックバンド、VIOLET DISTRICTを母体として結成。
PINK FLOYD的なゆったりとした内的世界にシンフォニックな味付けがなされ、基本的には歌ものながら、
メロトロンなどによる懐古主義とかすかなサイケ風味も加わった質感が耳に心地よい。
PINK FLOYD、GENESIS、MARILLION、最近でいうと、PORCUPINE TREEKINOあたりにも通じる
やわらかみと、倦怠、ほの暗い叙情、内的世界観、現代的なモダンさ、そしてどこか懐かしい質感、
そうした要素が絡まり合い、とても聴きやすいが、どこかもの悲しく、哀愁があるサウンドである。
ゆったりとした哀愁シンフォニックロックとしても、モダンなユーロロックとしても楽しめる。
メロディアス度・・8 ゆったり叙情度・・8 シンフォ・ピンクフロイ度・・8 総合・・8
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RPWL「A Show Beyond Man and Time」
ドイツのプログレバンド、RPWLのライブ作品。2013年作
SYLVANと並び、ドイツの繊細系ポストプログレの代表というべきこのバンド、
本作は2013年ポーランドでのライブステージを収録したCD2枚組。
うっすらとしたシンセアレンジにマイルドなヴォーカル、メロウなギターとともに
2012年の傑作「Beyond Man and Time」を曲順通りに完全再現している。
浮遊感の中にシンフォニックな叙情を含んだやわらかな聴き心地は、
Kscope系、あるいはANATHEMAあたりが好きな方にもオススメです。
レイ・ウィルソンがヴォーカルでゲスト参加。同タイトルのDVDもあり。
プログレ度・・7 ライブ演奏・・8 繊細度・・9 総合・・8 
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Sylvan「Sceneries」
ドイツのプログレバンド、シルヴァンの2011年作
RPWLとともに、ドイツの薄暗系プログレの代表格というべきこのバンド、
本作は5部構成で、15〜20分の組曲を中心にしたたCD2枚組の大作。
やわらかなヴォーカルとうっすらとしたシンセアレンジ、メロウなギターで聴かせる
翳りを含んだサウンドはこれまで通りで、優しい叙情の中にもキャッチーな味わいを感じさせる。
このバンドの持ち味である、シアトリカルで繊細なドラマ性も存分に発揮され、
ゆるやかな盛り上がりとともに、泣きのメロディで聴き手をうっとりとさせてくれる。
前作「Force of Gravity」も素晴らしかったが、本作も叙情派リスナーには必聴の傑作です。
ドラマティック度・・8 繊細度・・9 泣きの叙情度・・9 総合・・8.5
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Sylvan 「Home」
ドイツのプログレバンド、シルヴァンの2014年作
1998年にデビューし、ポストプログレ寄りのシンフォニックロックとして地位を確立したこのバンド、
9作目となる本作も、物悲しい叙情を繊細に描き出す、しっとりと美しい作品となっている。
ヴァイオリンやチェロなどストリングスを使ったクラシカルな優雅さと、優しいヴォーカルの歌声で
あふれるような情感をあくまでやわらかに聴かせてくれる。随所にモダンなアレンジも取込みつつ
10分前後の大曲も含めて、泣きの叙情を織り込みながらゆったりとしたドラマを構築する作風は、
15年以上のキャリアを誇るだけの安定感である。突出したところはないが、さすがの完成度だ。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 叙情度・・9 総合・・8
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t 「psychoanorexia」
ドイツのプログレユニット、ティーの2013年作
SCYTHEのリーダーThomas Thielenによるソロユニットで、やわらかなシンセアレンジに
デイブ・ギルモアばりのメロウなギタートーン、マイルドなヴォーカルの歌声で聴かせる、
Noosoundあたりにも通じる繊細な叙情サウンド。20分前後の大曲3曲を中心に、
全体的にはゆったりとした耳心地であるが、ポストプログレ的なモダンな翳りを含ませながら、
ときにギターによるラウドな感触やエモーショナルロック風味も現れるなど、
意外とメリハリもある構成力が光っている。ラスト曲9分過ぎからのあふれ出る叙情は白眉。
メロウ度・・8 モダンプログレ度・・8 繊細度・・8 総合・・8
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Demians「Mute」
フランスのミュージシャンNicolas Chapel氏の個人ユニット、デミアンズの2010年作
ほの暗い翳りを含んだポストロック風味のモダンプログレ作品で、Porcupine Tree的な叙情とともに、
キャッチーなヴォーカルメロディはRPWLなどにも通じるサウンド。前作よりもギターが前に出ていて、
オルタナ的な雰囲気がやや強まっていて、ロック的な躍動感とともに厚みのあるサウンドを描いている。
一方ではうっすらとしたシンセアレンジがもの悲しい繊細さをかもしだしていて、シンフォニックな味わいもある。
メロウ度・・8 プログレ度・・7 薄暗度・・8 総合・・8
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LAZULI 「Tant Que L'herbe Est Grasse」
フランスのプログレバンド、ラズリの2014年作
90年代から活動していたキャリアのあるバンドで、本作はおそらく5作目となる。
美麗なシンセアレンジにフランス語のヴォーカルを乗せ、エレクトロでモダンなアレンジに包まれた、
ポストプログレ寄りのサウンド。シンセの音も出せるという独自の弦楽器「Leode」奏者を含む編成も面白いが、
適度にハードなギターも加わって薄暗い叙情を描くところは、Porcupine Treeのフランス版というような感じもある。
一方では、オルガンが鳴り響くプログレ感触やキャッチーな抜けの良さも垣間見せ、メロウなギターフレーズを重ねた
シンフォニックロックとしての味わいもある。楽曲は長くても6分ほどと比較的コンパクトで、スリリングな展開はない分、
フランス語の優雅な味わいとともに、繊細や優しさに包まれた大人のモダンプログレとして楽しめる。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 繊細な叙情度・・8 総合・・8
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◆北欧、東欧のポストプログレ

Gazpacho 「March of Ghosts」
ノルウェーのプログレ・ロックバンド、ガスパッチョの2012年作
ヴァイオリン、シンセ奏者を含む6人編成で、本作は7作目のアルバム。
うっすらとしたシンセに美しいヴァイオリンによるイントロ曲から始まり、
繊細な歌声とともに、ほの暗い叙情美に包まれたサウンドが広がってゆく。
今作はコンセプト的に進んでゆくようなドラマ性があり、ゆるやかなシンフォニック性の中にも、
さりげないドラムのリズムの入れ方など、細部のこだわりが感じられるアレンジで、
作品としての強度は前作以上に強まった。メロウな情感に心地よく浸れる傑作だ。
メロウ度・・8 プログレ度・・7 しっとり叙情度・・8 総合・・8
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Gazpacho 「Molok」
ノルウェーのプログレ・ロックバンド、ガスパチョの2015年作
いまやkscopeレーベルを代表するバンド、本作はおそらく9作目のアルバム。
ヴァイオリン、シンセ奏者を含む6人編成で、うっすらとしたシンセアレンジにマイルドなヴォーカルを乗せ
物悲しいヴァイオリンが鳴り響く、モダンで繊細なサウンドにはいっそう磨きがかかっている。
今作ではパーカッションによる民族的な味わいも随所にあって、ヴォーカルのシアトリカルな表現力とともに、
空間的な静謐感に吸い込まれるような薄暗く神秘的な世界観を描きながら、やわらかなピアノの音色に
メロウな泣きのギター、ときに美しい女性コーラスも入ってきたりして、サウンドを優美に彩っている。
20年近いキャリアを持つバンドらしい、細やかなセンスで構築された傑作に仕上がっている。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 繊細な叙情度・・9 総合・・8
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Rhys Marsh & The Autumn Ghost「The Blue Hour」
英国出身、ノルウェーで活動するアーティスト、ライス・マーシュの2012年作
OPIUM CARTELやWHITE WILLOW、Wobbler関連のメンバーも参加した本作は
前作にも増してアーティスティックな繊細さと、骨董屋のような素朴な情緒で聴かせる
ほの暗い叙情ロックに仕上がっている。男女ヴォーカルの歌声はあくまでやわらかく、
オーボエやクラリネットのもの悲しい音色が、チェンバーロック的な味わいをかもしだす。
全体を通して淡々とした聴き心地なので、派手な盛り上がりというものはないのだが、
じわりとくる繊細な情感にうっとりと鑑賞できる。物憂げな秋や冬にはぴったりの作品だろう。
メロディック度・・7 プログレ度・・7 繊細で素朴度・・9 総合・・8
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Rhys Marsh 「Sentiment」
英国出身、ノルウェーで活動するアーティスト、ライス・マーシュの2015年作
メロトロンを含むやわらかなシンセに、マイルドなヴォーカルとアコーステッィクギターを乗せて
アナログ感に包まれた温かみのある叙情と、薄暗い翳りに包まれた、ポストプログレ的なサウンド。
楽曲は3〜5分前後とわりとコンパクトで、プログレ的な派手な展開というのはあまりなく、
ゆったりと聴かせる歌ものという印象だが、英国と北欧を合わせたような湿り気を含む空気感と、
メロトロンが鳴り響くと、ANEKDOTENあたりに通じるシンフォニックな聴き心地が楽しめる。
アーティスティックで繊細な感性にスタイリッシュなポストプログレ要素をまぶしたという好作品。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 繊細度・・8 総合・・8
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KOI 「In Tomorrow Hid Yesterday」
スウェーデンのポストプログレバンド、コイの2010年作
シンセを含む5人編成で、キャッチーなヴォーカルメロディで聴かせるポストプログレサウンド。
Porcupine Tree以降のモダンプログレのセンスと、うっすらとしたシンセアレンジとともに
エモ的なやわらかな感触も含んだ耳心地のよさが光る。一方ではシンフォニックロックとしての
繊細な叙情も含んでいて、しっとりと楽しめる好作品。GAZPACHOなどが好きな方もぜひ。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 繊細度・・9 総合・・8
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Airbag「Disconnected」
ノルウェーのプログレバンド、エアバッグの2016年作
前作はドイツのSylvanあたりに通じる薄暗系の好作であったが、4作目となる本作もメロウなギターワークに
うっすらとしたシンセアレンジで、Pink Floydルーツのモダンな翳りを含んだ空気感に包まれたサウンドだ。
ますます「Kscope化」したというか、Gazpachoなどにも接近したような、薄暗い叙情と耳触りの良さで、
ポストプログレ的な繊細な聴き心地にゆったりと浸れる。随所にギターの泣きのフレーズもよろしく、
シンセによる適度にシンフォニックな味付けが、プログレとしての魅力もしっかり残している。
もはや新鮮味はないものの、このバランス感覚とマイルドな心地よさで、じわじわと染み入るように味わえる。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 薄暗度・・8 総合・・8
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BRIMSTONE「Mannsverk」
ノルウェーのプログレロック、ブリムストーンの2014年作
モダンなジャケのイメージ通り、サウンドの方もプログレ風味のあるエモーショナルロックという感触。
手数の多いドラムに乗る、ゆったりとしたギターはサイケロック的な浮遊感をかもしだし、
うっすらとしたシンセにけだるげなヴォーカルの歌声とともに、キャッチーなポップさと
知的ロックの構築性を同居させたという聴き心地である。前半はわりとコンパクトな作風だが、
後半は、12分、9分という大曲が待っていて、ポストプログレ的なゆるやかな叙情と、
モダンロックのデジタル感に、北欧らしいやわらかな繊細さが合わさったサウンドが楽しめます。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 知的センス度・・8 総合・・8
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Motorpsycho 「here be monsters」
ノルウェーのロックバンド、モーターサイコの2016年作
90年代初頭から活動するベテランバンドで、すでに何作目なのかもわからないが、
2008年以降は圧巻の傑作を出し続けている。今作はピアノによるリリカルなイントロで幕を開け、
メロウなギター、うっすらとしたシンセアレンジを乗せて、ゆったりとしたサウンドが広がってゆく。
繊細なヴォーカルの歌声も含めて、前作から続くポストプログレ風の聴き心地であるが、
存在感のあるベースを中心にしたアンサンブルと、ひとつひとつの音の重ねが説得力のある
強力なスケール感を生み出していて、じわじわとその世界観に引き込まれてゆく。
ときにアッパーなノリのあるサイケ要素も覗かせつつ、アコースティックな小曲もさらりと入れてきたりと、
バンドの懐の深さには恐れ入る。プログレファンには普通にお薦めできる力作に仕上がっている。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 繊細で壮大度・・9 総合・・8
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The Opium Cartel 「Ardor」
スウェーデン&ノルウェーのポストプログレ系バンド、オピウム・カルテルの2014年作
WHITE WILLOW、Wobbler、元ANGLAGARD、RHYS MARSHといったメンバーが参加、
男女ヴォーカルのやわらかな歌声で、しっとりとした繊細な叙情を聴かせるサウンドは前作同様で、
ムーグやメロトロンといったヴィンテージなシンセを使いつつ、ポストプログレ的なモダンな翳りとともに、
決して古臭くならないエレクトロなアレンジが合わさったセンスは実に見事。
基本的には歌ものでありながら、バックの細やかな一音一音にはじつに計算された構築美を感じさせる。
北欧らしい涼やかな雰囲気とうっすらとしたプログレ風味も含んだ傑作。妖しいジャケもじつによいですね。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 繊細度・・8 総合・・8
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Taipuva Luotisuora 「IV」
フィンランドのプログレバンド、タイプヴァ・ルオティスオラの2009年作
シンセやチェロ奏者などを含む6人編成で、適度にヘヴィめのギターを含んだ、
いわゆる薄暗系プログレを基本に、エレクトロ的なモダンさも合わさったサウンド。
ほぼオールインストで、変拍子によるDjent的なテクニカルな要素もありつつ、
随所に美しいヴァイオリンなども入って、北欧らしい叙情性も含ませたボーダーレスの味わい。
いかにも若手バンドらしい柔軟な感性で作られた北欧モダン&ポストプログレの好作です。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 モダンセンス度・・9 総合・・8
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Efterklang 「Piramida」
デンマークのポストロック、エフタークラングの2012年作
4作目となる本作も、多重シンセによる空間的な音作りと、やわらかなヴォーカルを乗せた
アンビエントなサウンドで、ドラムのリズムによるロック色を融合させた絶妙のサウンド。
デジセリィなモダンさとオーケストラルなアレンジを混在させたセンスの良さは見事で、
クラシカルでエレクトロな感触も含んだ、ポストプログレとしても楽しめるだろう。
サックス、トランペットなどの管楽器の響きが哀愁をともなってサウンドに混ざり込み、
シンフォニックでもあるシンセに包み込まれる、美しくもメランコリックな味わいが楽しめる。
クラシカル度・・8 プログレ度・・7 壮大度・・8 総合・・8
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Quidam 「Saiko」
ポーランドのプログレバンド、クィダムの2012年作
1996年にデビュー、初期は女性Voのバンドであったが、4作目から男性Voの薄暗系にシフト、
本作では、よりシンプルなサウンドになっていて、母国語のエモーショナルな歌声を中心に、
繊細でキャッチーな聴き心地に包まれた、近年のMarillionを思わせるメロウな叙情ロックである。
やわらかなエレピにフルートの音色、サステインの効いた優美なギタートーンとともに、
ポストプログレ的なしっとりとした美しさを描いてゆく。軽妙なドラムとベースの存在感も
なにげに巧みなアンサンブルを作り出していて、玄人好みの感触はさすがキャリアのあるバンドである。
全体的に派手さというものはないが、ドイツのSylvanあたりが好きな方にも楽しめる好作品です。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 繊細な叙情度・・8 総合・・7.5
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Riverside
「Love, Fear & the Time Machine」
ポーランドのプログレバンド、リヴァーサイドの2015年作
2003年にデビューしてから、薄暗くモダンなセンスのハードプログレ作品で、ずいぶんと認知度を高めてきたこのバンド、
6作目となる本作は、マイルドなヴォーカルとメロウなギター、うっすらとしたシンセで聴かせる繊細な作風を強めている。
オルガンやムーグを含んだ古き良きシンセワークも入りつつ、PINK FLOYD的な薄暗い叙情性と浮遊感で描かれる、
心地よい耳触りのサウンドはポストプログレ的でもある。もちろん従来通りの適度にハードな感触も含めて、
実力あるアンサンブルと円熟のアレンジセンスも見事。強いインパクトはないものの、じっくりと鑑賞できる好作品です。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 繊細度・・8 総合・・8
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Lunatic Soul 「Lunatic Soul 2」
RIVERSIDEのVo&B、Mariusz Dudaによるソロユニット、ルナティック・ソウルの2010年作
うっすらとしたシンセアレンジに、やわらかなヴォーカルで聴かせる、繊細なポストプログレ系サウンド。
アコースティカルなギターには前作にもあったようなエスニックな感触も混じり、薄暗い叙情に包まれた楽曲は、
ときにミステリアスな浮遊感も漂わせる。ほとんどドラムが入らないのでロック的なダイナミズムは薄いが、
パーカッション的なリズムが入った民族要素も覗かせるなど、モダンさと人間味がバランスよく昇華された
アーティスティックなセンスが光っている。いかにもKScopeらしい好作品。Nosoundあたりが好きな方もチェック。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 繊細度・・8 総合・・8
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KATATONIASanctitude
スウェーデンのゴシックメタル、カタトニアのライブ作品。2015年作
2014年ロンドンのユニオンチャペルで行われたアコースティックライブを収録。
2009年作あたりからメタル要素を薄め、しっとりとしたプログレ的な感触を強めていたが、
このライブでは、そうしたバンドの繊細な叙情性が前面に出ていて、アコースティックギターの重なりに
うっすらとしたシンセ、メランコリックなヴォーカルの歌声で、物悲しく涼やかなサウンドを描いてゆく。
アコースティック主体でも音の薄さを感じさせないのは、チャペルホールの音響の良さもあるのだろうが、
各メンバーの演奏の表現力も見事。The Gatheringの女性シンガー、シリェ・ヴェルヘラントを加えての
美しいナンバーで締めくくる。ANATHEMAのファンなどにも楽しめる、メロウで繊細なライブです。
ライブ演奏・・8 メタル度・・1メランコリック度・・9 総合・・8
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ULVER「Messe I.X-VI.X 」
ノルウェーのエクスペリメンタルバンド、ウルヴァーの2013年作
カヴァーアルバムをはさんで、エレクトロなアートロック的であった2011年作に続くアルバムで、
今作ではオーケストラを大胆に導入し、静謐感を漂わせた異色作になっている。
ストリングスやピアノを含んだクラシカルな優雅さと、暗く沈み込むような闇を感じさせる、
チェンバー系のプログレのような作風で、美しくも緊迫感に包まれたサウンドが広がってゆく。
ピアノのつまびきに、もの悲しいヴァイオリンが響き、ゆるやかな旋律の流れの中に、
シアトリカルでオペラ的なドラマ性と美意識を描きながら、エレクトロなアレンジが加わってゆく。
ロック色はまったくもって希薄だが、まるでやわらかな漆黒にまとわりつかれるような心地がする傑作だ。
クラシカル度・・8 メタル度・・1 チェンバーロック度・・8 総合・・8
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◆アメリカ、南米のポストプログレ

Slow Six 「Tomorrow Becomes You」
アメリカのポストプログレ、スロー・シックスの2010年作
エレクトロな音響アレンジと、ディレイの効いたギターに、ヴァイオリンが鳴り響く、
クラシカルなテイストを盛り込んだ、繊細なオルタナ・ポストロックというような聴き心地。
インスト主体の演奏は、変拍子を取り入れたプログレ的な感触もあったり、
一方ではランドスケープ的な叙情をゆったりと聴かせる曲などもあって、なかなか面白い。
ヴァイオリン入りのポストプログレとしてもモダンなエレクトロ・ポストロックとしたも楽しめる好作。
プログレ度・・7 叙情度・・8 繊細度・・8 総合・・7.5
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HOUR OF THE SHIPWRECK 「The Hour Is Upon Us」
アメリカのモダンプログレ、アワー・オブ・シップレックの2008年作
シンセを含む5人組で、うっすらとしたシンセに適度にハードなギターとエモーショナルなヴォーカルを乗せ、
ポストプログレ的な繊細な叙情に包まれたサウンド。メロウな泣きのギターは、ドイツのSYLVANあたりに通じる感触で
物悲しい哀愁の空気を漂わせながら、あくまで優し気な聴き心地。楽曲は5〜8分前後と長すぎず短すぎず、
スリリングな展開や盛り上がりはさほどではないが、アコースティックなパートなども含めてゆったりと楽しめる。
裏声が主体の男性ヴォーカルはもしかしたら好みを分けるかもしれないが、繊細なポストプログレがお好きな方はどうぞ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 繊細度・・9 総合・・8
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AUTUMN MOONLIGHT 「Alter Reality」
アルゼンチンのシンフォニックロック、オータム・ムーンライトの2012年作
メロウなギターワークとやわらかなシンセで聴かせる、ポストプログレ的な繊細さに包まれたサウンド。
あるいはポーランドのバンドを思わせるような翳りを含んだ雰囲気と、Alcestあたりにも通じるような
シューゲイザー風味のモダンな浮遊感に包まれた叙情美がじつに耳に優しい。
プログレというよりは、薄暗系のメロウ・ロックというべきか。オールインストながら、
ギターの泣きのフレーズにピアノの音色が重なって、しっとりとしたやわらかな叙情に癒されます。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 叙情度・・9 総合・・8
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*薄暗系プログレ特集も併せてご覧ください

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