スラッシュメタル傑作選
〜ドラマティックなスラッシュメタルを集めました〜




イギリスを発祥とするヘヴィメタルの波はやがてアメリカへと渡り、より激しさを追求するスラッシュメタルが生まれる。
METALLICAMEGADETHSLAYERANTHRAXという、いわゆる「スラッシュ四天王」を中心に、
西海岸からはEXODUSTESTAMENTという、後にベイエリアスラッシュと呼ばれるバンドたちが、シーンを牽引してゆく。
80年代後半になるとスラッシュメタルのムーブメントは、ドイツをはじめとするヨーロッパへも広がりをみせ、
KREATORSODOMDESTRUCTIONというジャーマンスラッシュ三羽ガラスをはじめとして、多くのバンドが次々に登場する。
その中にはどうにもならないB級バンドなどもいたが、それらも含めて当時のスラッシュシーンの懐の深さを物語っている。
90年代も半ばになると、より派手やかなメロディック・デスメタルなどの隆盛とともに、スラッシュメタルは役割を終えたように
いったんその影をひそめるが、2000年以降になると、そのメロデスを起源としたデスラッシュというムーブが北欧を中心に広がりだす。
また、ベテランバンドたちの地道な活動により、現在では再びオールドなスラッシュメタルにも光が当たり始め、
かつてのバンドたちが次々に復活、スラッシュシーンは新たな時代の中でまた勢いを盛り返しつつある。

ここではスラッシュメタルの原点である80年代の傑作から、デスラッシュを含め、現在までの傑作を掲載してゆくが、
個人的には、ハードコア寄りのものよりは、湿りけのあるドラマティックなスラッシュサウンドが好きなこともあり、
ただ激しいだけでなく、構築性やドラマ性を有した自分好みのバンドを厳選して紹介したいと思う。

                                             
2009.9.12 緑川 とうせい


◆原点はスラッシュメタル四天王

METALLICA 
「Kill 'Em All」
メタリカの記念すべきデビューアルバム。1983作
完成度の点では次作「Ride The Lightning」だが、スラッシュとしての原点は本作だ。
荒々しくもクールにリフとともに激しくたたみかけるサウンドは、
若さ溢れる勢いに満ちた、アグレッシブなパワーが感じられる。
後にMEGADETHを結成する、デイブ・ムステインの手による“The Four Horsemen”、
疾走スラッシュの名曲“Motorbreath”、“Whiplash”あたりのは今聴いても実に格好いいし、
“Seek & Destroy”の展開力も見事。1983年…すべてはこのアルバムから始まった。
ドラマティック度・・7 アグレッシブ度・・9 スラッシュ度・・8 総合・・8
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METALLICA 「RIDE THE LIGHTNING」
メタリカの2nd。1984作
前作での勢い溢れるスラッシュサウンドに、知的な整合性を盛り込んだ傑作。
優雅なイントロに続く“Fight Fire With Fire”は激しさの中にも、テクニカルなリズムや
ドラマ性を取り入れた作風で、当時は相当の衝撃だったのではないかと思われる。
カーク・ハメットの流麗なソロとザクザクとしたクールなリフの対比も斬新で、
どこかブリティッシュの香り漂う“For Whom Bell Tolls”や“Fade to Black”の叙情性、
“Creeping Death”の堂々たるヘヴィメタルサウンドに、“The Call of Ktulu”で聴かせる
プログレッシブなインストと、彼らにしか出来ないセンスに溢れた名作である。
ドラマティック度・・8 アグレッシブ度・・8 スラッシュ度・・7 総合・・8.5
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MEGADETH 「Peace Sells...But Who's Buying?」
メガデスの2nd。1986作
前作Killing Is My Business...」の破天荒さに整合性を付加して作り上げられた作品。
ドラマティックさを増したギターリフとともに、知的さを漂わせた楽曲構造は、
まさにインテレクチュアルスラッシュメタルというにふさわしいサウンドだ。
社会的皮肉を含んだ歌詞やジャケットワークとともに、バンドとしてのスタンスが確立し、
ムステインの目指す世界観のスケールが大きく広がったアルバムといえるだろう。
スラッシーでありながら、プログレッシブな完成度を誇る初期の最高傑作。
ドラマティック度・・8 インテレクチュアル度・・9 スラッシュ度・・8 総合・・8.5
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MEGADETH 「Rust in Peace」
メガデスの4th。1990作
ギターにマーティ・フリードマンが加わり、サウンドに一聴してテクニカルさと、
メロディアスな説得力とが増した。激しいギターで聴かせる1曲目に続き
“Hanger 18”のドラマティックなイントロは誰もが思い浮かべる名フレーズだろう。
しっかりとヘヴィさを聴かせつつ、豊富なメロディのアイデアを楽曲の中に盛り込み、
知的に展開されるメガデス節は、ここに完成を見たといってもいい。
もはやスラッシュというよりは、普遍的なヘヴィメタルとして扱う作品であるが、
総合的な質の高さでは本作をバンドの最高作としても不思議はないだろう。
ドラマティック度・・8 インテレクチュアル度・・8 スラッシュ度・・7 総合・・8.5
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ANTHRAX
 「Spreading the Disease」
アンスラックスの2nd。1985作
「恐気のスラッシュ感染」の邦題でも知られる初期の傑作。
ザクザクとしたメタリックなリフとスラッシーな勢いとともに、
伝統的なハードロック/ヘヴィメタルの感触も残しながらたたみかける。
しっかりと歌い上げるジョーイ・ベラドナのヴォーカルもバンドの顔としての存在感がある。
次作「Among the Living」も、よりハードコア的な激しさを増した傑作だが、
個人的には本作の正統的なメタル/スラッシュサウンドが好み。
ドラマティック度・・7 アグレッシブ度・・7 スラッシュ度・・8 総合・・8
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SLAYER
 「Reign in Blood」
スレイヤーの3rd。1986作
無機質かつ硬質なリフで聴かせる本作は、暗黒めいたジャケのイメージと相まって、
このバンドの名を世界中に知らしめることになった歴史的傑作である。
ともかく、徹頭徹尾スラッシーに疾走する強烈なサウンドは、
後のKREATORやVADERをはじめ、多くのバンドたちに影響を与えた。
デイブ・ロンバードの迫力あるドラムもサウンドの説得力を高めており、
全10曲で30分弱という短さだが、濃密なスラッシュサウンドがめいっぱい詰まった作品だ。
ドラマティック度・・7 疾走度・・9 スラッシュ度・・10 総合・・8
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EXODUS 「PLEASURES OF THE FLESH」
ベイエリアスラッシュの代表格、エクソダスの2nd。1987作
スラッシーに疾走しつつも、ギターリフにおけるある種のメロディアスな部分が
1stに比べていっそう強調されていて、その分より聴きやすくなっている。、
METALLICATESTAMENTなどに比べると音自体はややイモ臭いのだが、
そこも含めて気に入れば、硬質なだけでないこのバンドの魅力が分かってくる。
80年代スラッシュの名作とされているだけあり、全体的にもレベルの高いアルバムだ。
ドラマティック度・・7 疾走度・・8 スラッシュ度・・8 総合・・8
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TESTAMENT
 「The Legacy」
テスタメントの1st。1987作
ベイエリアスラッシュというと、個人的にはEXODUSよりもTESTAMENTである。
当時、METALLICAくらいしか知らなかった初心者のころ、スラッシュというと「速くてやかましい」もの
という認識があったのだが、本作を聴いてこんなにもドラマティックな叙情ギターが入っているのか、
と驚いたものだ。激しく疾走しつつもアレックス・スコルニックの泣きのギターパートを含ませた楽曲は
初期のテスタメント像をリスナーの耳に植えつけた。続く2nd「The New Order」もさらに質の高い傑作だが
やはり本作の衝撃があってこそ。スラッシュ黎明期における、ドラマティックサウンドの体現を聴いてもらいたい。
ドラマティック度・・8 疾走度・・8 スラッシュ度・・8 総合・・8
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Dark Angel  「Darkness Descends」
アメリカのスラッシュメタルバンド、ダーク・エンジェルの2nd。1988作
ザクザクのギターリフでハートコア気味に激しく疾走するサウンドは、
当時にしては演奏力も抜群で、この手のバンドにありがちのB級臭さは微塵もない。
のちにDEATHに加入するジーン・ホグランの安定したドラムもさすがで、
全盛期のSLAYERにもひけをとっていないばかりか、疾走感という点では上をゆくだろう。
これでもかと駆け抜けてゆく、激烈爽快スラッシュの傑作。音にただようイーヴルな雰囲気もいい。
ドラマティック度・・8 疾走度・・9 スラッシュ度・・9 総合・・8.5
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DEATH ANGEL 「ACTV」
デス・エンジェルの3rd。1990作
平均年齢17歳という若さでデビュー、勢いだけだった印象の1stなどから比べると
今作では音がだいぶ整理され、疾走するだけでなくリフで聴かせる安定したノリとともに
メロディアスな聴きやすさが出てきていて、演奏的にも楽曲的にもずいぶん成長した。
もちろん、スラッシュメタルとしての突進力はしっかりと見せつけながら、
ブレイクなどの緩急をつけたアレンジや、ときにファンキーな要素を取り入れたりと
アルバムとしても飽きさせない。アコースティカルな叙情パートもいい味を出している。
ドラマティック度・・7 疾走度・・7 スラッシュ度・・7 総合・・8
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VIO-LENCEEternal Nightmare」
ベイエリアスラッシュの隠れた名バンド、バイオ-レンスの1st。1988作
ザクザクのギターリフで激しく疾走するサウンドで、EXODUSやTESTAMENTあたりと比べても
遜色のない演奏力とリフの魅力を持っている。やや調子外れなヴォーカルが好みを分けるが、
勢いある突進力とキレの良さは、多くのスラッシュメタルファンに称賛されるに足る質の高さである。
スラッシュメタルに斜陽が差しかけた時期もあって、バンドはレーベルとの折り合いも合わず、
3作を残して解散。ギターのロブ・フリンはのちにMACHINE HEADを結成する。
なお再発盤には2001年の再結成後のライブ音源を収録している。
ドラマティック度・・7 疾走度・・8 スラッシュ度・・9 総合・・8
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ANNIHILATOR 「Alice in Hell」
カナダのスラッシュメタルバンド、アナイアレイターの1st。1989作
今やテクニカルなスラッシュメタルの代表格である、ジェフ・ウォーターズ率いるこのバンド、
そのクールなリフと楽曲展開で、知的なスラッシュサウンドを生み出し続けているが
もっともプログレッシブで、ある種変態的な傑作といえるのが、このデビュー作だ。
美しいイントロ曲“Crystal Ann”で幕を開け、続く“Alison Hell”でのドラマティックな展開力は
このバンドがただものではないことを物語る、続く“W.T.Y.D”とともにまさにアナイア節ともいうべき
初期を代表するサウンドだろう。整合感を高めた2nd「Never,Neverland」も傑作であるが、
このデビューアルバムにこそ、彼らの本質が詰まっている。知的スラッシュとしては初期MEGADETHと双璧。
ドラマティック度・・7 疾走度・・7 知的スラッシュ度・・9 総合・・8
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HEATHEN
 「Victims of Deception」
アメリカのスラッシュメタル、ヒーゼンの2nd。1991作
スラッシュメタルとしての激しさと、ツインギターによるメロディックな叙情を併せ持ち、
1st「Breaking the Silence」の時点ですでにドラマティックなメタルサウンドを確立していたが、
本2ndはサウンドにより重厚な説得力をともない、パワフルに聴かせる傑作となっている。
サクザクのギターリフに、ときにメロディアスなフレーズをまじえながら疾走するスタイルを基本に、
ドラマティックなインスト曲“Heathen's Song”など、楽曲展開にもぐっと深みが増している。
RAINBOWの名曲“Kill the King”のカヴァーなど聴き所も多い。通好みの傑作といえる。
ドラマティック度・・8 疾走度・・8 スラッシュ度・・8 総合・・8
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The Company
アメリカのスラッシュメタル、カンパニーの1995年作
HEATHENのダグ・ピアシー率いるバンドで、ダミ声ヴォーカルと硬質感のあるギターリフを乗せて疾走する、
正統派のスラッシュメタルサウンド。随所にかつてのヒーゼンを思わせるメロディックな感触も覗かせつつ、
ベイエリアクランチのザクザク感に、ANNIHILATOR的な知的スラッシュの香りを感じさせるサウンドだ。
楽曲自体はわりと普通なのだが、激しすぎないところがパワーメタル的な味わいにもなっていて
やはりダグのギターリフのセンスが秀逸である。HEATHENファンにはお薦めの強力作!
ドラマティック度・・7 正統派スラッシュ度・・8 ヒーゼン度・・8 総合・・8
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◆個性派多しジャーマン系

DESTRUCTION 「Eternal Devastation」
デストラクション
の2nd。1986作
ジャーマンスラッシュの中でも名実共に頂点に君臨するこのバンド、
デビュー当時はただ激しいだけの荒々しいサウンドであったのが、
本作ではドラマティックな構築性を身につけて、音の説得力がぐんと高まっている。
1曲目の“Curse The God”はチリチリとした切れ味のよいリフとともに、
シュミーアの不穏な歌声を乗せて疾走するバンドの代表曲。知的スラッシュ好きは
次作「Release From Agony」を、疾走スラッシュファンは本作を最高作に挙げるだろう。
ドラマティック度・・8 疾走度・・8 スラッシュ度・・9 総合・・8
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DESTRUCTION 「Release From Agony」
デストラクション
の3rd。1987作
前作において格段の成長をとげた彼らが、最高傑作ともいうべき本作を生み出した。
ミステリアスなイントロに続く“Release From Agony”はクールなリフと変則的な展開の中に、
ある種の知的さともいうべきメロディや、独自の世界観を感じさせる。
甲高いシュミーアのヴォーカルとともに、デストラクションサウンドを印象づける名曲だ。
リーダーであったシュミーアは本作の後、ライブアルバムを最後に脱退、Headhunterを結成するが、
1999年にバンドに復帰。デビューから20年を超えてもなお精力的に活動を続けている。
ドラマティック度・・8 疾走度・・8 スラッシュ度・・8 総合・・8.5
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KREATOR Terrible Certainty
クリエイター
の3rd。1987作
当時は怖いほどに速く感じたのだが、今になって聴くとこれが実に格好いい。
2ndまではただ勢いにまかせて突っ走るサウンドだったのが、本作においてはリフの一つ一つのキレが増し、
楽曲ごとに明確に個性がつけられている。ドラムを含めてリズム面でもずいぶんタイトになり、
バンドの技量が感性に追いついたという感じがする。絶叫するようなミレ・ペトロッツァの感情的なヴォーカルとともに、
激しくもどこか薄暗い情感を感じさせるのも、このバンドならではの世界観だろう。
初期を代表する傑作であり、ジャーマンスラッシュの中でも外せない作品だ。
ドラマティック度・・8 疾走度・・9 スラッシュ度・・9 総合・・8.5
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KREATOR 「Extreme Aggression」
クリエイター
の4th。1989作
前作において、初期の直毛突進サウンドにドラマティックな構成力を身につけ、
いよいよ波に乗り始めた彼らの勢いに溢れる傑作。曲はどれも比較的コンパクトであるが、
その分リフワークのキレが鋭く、この怒りに溢れた疾走感が聴いていても実に爽快だ。
1曲目のタイトル曲の激しさからしてもうやられてしまうが、その後も終始テンションは落ちず、
6曲目の「Betrayer!](裏切り者)」の叫びなどは、ミレの心の絶叫のようだ。
とにかく疾走しまくるクリーターサウンドを味わうには最高の一枚である。
ドラマティック度・・7 疾走度・・9 スラッシュ度・・9 総合・・8.5
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SODOM 「Agent Orange」
ドイツのスラッシュメタル、ソドムの3rd。1989年作
1984年デビュー、ジャーマンスラッシュを代表するベテランの代表作。エッジの効いたギターリフと
吐き捨てヴォーカルを乗せて突進する、ストレートなスラッシュメタルは、過去2作に比べて、
リズム面での演奏力の向上とともに、サウンドの迫力と硬質感を強めていて、枯葉剤を意味するタイトル通り、
戦争をテーマにしたシリアスなイメージとともに強固な説得力も加わった。疾走一辺倒だけでなく
リズムチェンジを含む展開力で、楽曲ごとのノリがあるので、スラッシュ入門用にも良いだろう。
トリオ編成でのソドムの完成形というべき強力なアルバムである。
ドラマティック度・・7 疾走度・・8 スラッシュ度・・9 総合・・8
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DEATHROW 「DECEPTION IGNORED」
ドイツのスラッシュメタルバンド、デスロウの3rd。1988作
2ndまではただマニア受けするだけのヘタクソ(失礼)というイメージだったのだが、
本作はツインギターによるドラマティックなフレーズが実に格好よくなり、
一皮むけた傑作となった。リズム面での唐突な展開はプログレメタル的でもあり、
8分、9分という大曲があるのもこの時代では異色。PARADOXDESTRUCTIONが合体した
ようなイメージで、変態ぎみの曲構造とジャーマンメタル的なメロディアスさが同居している。
ドラマティック度・・8 知的度・・8 スラッシュ度・・7 総合・・8
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PARADOX 「Heresy」

パラドックスの2nd。1989作
80年代ジャーマンスラッシュの裏傑作とも言われる作品で、
当時の玉石混合のマイナースラッシュ系の中では当たりの1枚であった。
叙情的なイントロから、ツインギターのフレーズと、スラッシーなリフで疾走開始、
ジャーマン特有の湿りけを含んだ質感は初期のBLIND GUARDIANにも通じる。
やはり1曲目のタイトル曲の出来が素晴らしく、中間部の静かなパートでの美しさなど、
コンセプト的なドラマティックさが光っている。2曲目以降はインパクトのあるナンバーは
さほどないのだが、80年代ヨーロッパのスラッシュ作品としてはやはり傑作の部類だろう。
バンドは2000年に復活をとげるまで、本作を最後に10年の眠りにつくことになる。
ドラマティック度・・8 疾走度・・8 スラッシュ度・・8 総合・・8
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CORONER
 「Punishment for Decadence」
コロナーの2nd。1989作
テクニカルかつプログレッシブな知性を感じさせる個性派バンド。
ザクザクとしたクールなリフで聴かせつつ、細かなキメや楽曲の展開力には、
MEGADETHANNIHILATORと同様にセンスある構築力が光っている。
スラッシュ=低能という概念を完全に覆したバンドで、本作がその最高作。
当時はえらく新鮮に新鮮に思えたが、今聴いてもまったく古くさくないのが凄い。
当時のビクター盤は、ミニアルバム「No More Color」とのカップリングだった。
ドラマティック度・・8 知的度・・8 スラッシュ度・・7 総合・・8
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MEKONG DELTA
 「Dances Of Death」
メコン・デルタの3rd。1990作
鬼才ラルフ・ヒューベルトを中心に、クラシックとスラッシュメタルを融合させるという
無茶なテーマをかかげて結成されたこのバンド。メンバー名を伏せながらも、
STRATOVARIUSの名手ヨルグ・マイケルやLiving Deathのメンバーなどが参加していた。
本作は20分におよぶタイトル曲を含め、これまでのアルバム以上に細密に構築された大傑作。
変則リズムの嵐とクラシックの手法で作られた組曲は圧巻のひと言で、荘厳にして美しい。
スラッシーな激しさを失うことなく、これほどの知性と芸術性を兼ね揃えたバンドはそうはいない。
“はげやまの一夜”のカヴァーも見事。次作「Kaleidoscope」も完成度の高い傑作である。
ドラマティック度・・9 知的度・・9 スラッシュ度・・8 総合・・9
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DESPAIR 「Decay of Humanity」
デスペアーの2nd。1991作
プログレッシブともいうべき展開力と、ミステリアスでドラマティックな世界観、
そして後にGRIP.INCを結成するヴァルデマー・ゾリクタによる湿り気を含んだ
クールなギターリフとともに抜群のセンスで聴かせる傑作アルバム。
スラッシーな疾走よりも、重厚かつダークな雰囲気で聴き手を引き込むセンスは
他に類を見ない個性的なものがある。今でこそ再評価をうながしたいバンドである。
次作「BEYOND ALL REASON」も同様に素晴らしい傑作だ。
ドラマティック度・・8 知的度・・8 スラッシュ度・・7 総合・・8.5
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◆頑張るベテラン勢

ANNIHILATOR 「ALL FOR YOU」
ジェフ・ウォーターズ率いる、アナイアレイターの10th。2004作
個人的には近年のアルバムは、さして素晴らしいとは思えないものがあったのだが、
ヴォーカルの変わった今作は、いい具合にかつてのテクニカルスラッシュ路線と
現代的なアレンジが合わさった好盤になっている。1曲目こそヘヴィロック調の曲だが、
それ以降は不思議にメロディを感じる独特のクールなリフによるテクニカルなアナイア節が堪能出来る。
新Voの歌唱もときにマイルドにときに攻撃的にと表現力もあり、
メロディアスなバラードもアルバムのいいアクセントになっている。
ドラマティック度・・7 疾走度・・7 アナイア度・・8 総合・・8
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EXODUSThe Atrocity Exhibition:Exhibit A
ベイエリアを代表するスラッシュメタルバンド、エクソダスの2007年作
2004年の復活後3作目となるアルバムで。ドラムにトム・ハンティングが復帰している。
ザクザクとしたギターリフで聴かせる、いわゆるベイエリア・クランチは健在で、
適度な疾走感とミドルテンポのヘヴィさも含めて、ベテランらしい余裕のある安定感と
ダークな世界観が楽しめる。随所にMEGADETHを思わせるような知的さもあり、
速さだけにこだわらないリスナーであれば、この格好よさにしびれることだろう。
ドラマティック度・・8 疾走度・・8 スラッシュ度・・9 総合・・8.5
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SLAYER 「Christ Illusion」
スラッシュメタルの帝王、スレイヤーの9th。2007作
オリジナルドラマーのデイヴ・ロンバードが復帰し、ジャケのイメージも含めて
かつてのファストで異端的なスレイヤーが蘇ったようなアルバム。
のっけから往年を思わせる切れ味のリフと強力な疾走で聴かせる、
ハードコアスタイルの激烈なスラッシュサウンドが炸裂。
これでもかというようにたたみかけてくる無慈悲なまでの音圧は、
かつての名作「REIGN IN BLOOD」を思わせる凄まじい勢いがある。
ドラマティック度・・7 疾走度・・9 スラッシュ度・・9 総合・・8
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OVERKILL「The Electric Age」
アメリカのスラッシュメタル、オーバーキルの2012年作
80年代から活動する大ベテラン、最近の作品はチェックしていなかったが、おそらく17作目くらいだろうか。
切れ味のよいギターリフと独特のハイトーンのダミ声ヴォーカルとともに疾走するスラッシュメタルは
本作においてももちろん健在で、オールドスタイルの誇りを漂わせる力強いサウンドを繰り広げている。
全盛期と比べても勢いは衰えるどころか、パワフルさの点でも現在の方が勝っているのではと思わせる。
若手のスラッシュ系新人が続々と出てくる現在においても、ベテラン健在とリスペクトされるに足る内容だ。
ドラマティック度・・7 パワフル度・・8 スラッシュ度・・8 総合・・8
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TESTAMENT The Formation of Damnation
ベテランスラッシュメタルバンド、テスタメントの2008作
オリジナル作としては「The Gathering」以来、実に9年ぶりとなる。
オールドなリフでザクザクと聴かせつつ、ときにメロディアスなフレーズを奏でる
アレックス・スコルニックのギターに、チャック・ビリーのダミ声ヴォーカル、
そして新加入のポール・ボスタフのドラムも見事なタイトさで演奏を支える。
曲はミドルテンポ主体ながら、バンドとしての硬質な勢いとともに、往年の雰囲気を感じさせ、
かつてベイエリアスラッシュと呼ばれたそのアイデンティティを強固に主張している。
ドラマティック度・・7 疾走度・・7 スラッシュ度・・8 総合・・8
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KREATOR 「Enemy Of God Revisited」
ドイツのスラッシュメタルバンド、クリエイターの2006作
往年の名作「Extreme Aggression」あたりを思わせる、爽快な疾走感と
絶品のリフワークが戻ってきた。ミレ・ペトロッツアのヴォーカルも
変わらぬ吐き捨てスタイルながら、かつてよりも深みと表現力が増している。
ときおり聴かせるツインギターの叙情性も効果的で、硬質なサウンドの中にも
ヨーロピアンな美しさを漂わせているのが素晴らしい。
ドラマティック度・・8 疾走度・・8 スラッシュ度・・9 総合・・8.5
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SODOM
ジャーマンスラッシュのベテラン、ソドムの2006作
かつては疾走一辺倒のハードコアなスラッシュメタルであったが、デビューから20数年を経て、
本作では激しいだけでなくしっかりとした重厚なリフで聴かせる力作となっている。
もちろん彼らの持ち味であるマシンガンのようにたたみかける勢いも衰えは見せず、
そこにベテランのみがかもしだせる説得力が、ある種のドラマティックさとともに加わっている。
バンド名をセルフタイトルにした意気込みが伝わって来る、ソドムの集大成的なアルバムだ。
ドラマティック度・・7 疾走度・・8 スラッシュ度・・9 総合・・8
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DESTRUCTION 「Thrash Anthems
ドイツのベテランスラッシュメタルバンド、デストラクションの2007作
これは彼らの初期作を中心とした楽曲を現メンバーで再録したアルバム。
熱きスラッシュ魂そのままの演奏で、かつての名曲たちが蘇る。
ザクザクのギターリフに、ときに個性的な複雑さを垣間見せつつ疾走するサウンドは、
攻撃的でありつつも、やはりどこか知性的な構成力を感じさせる。とくに彼らの代表曲、
“Release from Agony”“Curse the Gods”あたりは、オールド・スラッシャーは感涙。
ドラマティック度・・7 疾走度・・9 スラッシュ度・・10 総合・・8
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TANKARD 「Beauty & the Beer」
ドイツのスラッシュメタルバンド、タンカードの2006年作
デビューは1986年、ジャーマンスラッシュ三羽ガラスと比較してもキャリアではまったくひけをとらない。
本作は12作目くらいになるのだろうか、20年たっても活動を続けていたとは驚きであるが、
相変わらず、「ビール大好き」なジャケやタイトルが、バンドの本質が変わっていないことを物語る。
しかしサウンドの方は、年季を経たパワフルさと説得力をともなって疾走する見事なスラッシュで、
ザクザクのギターリフとともに、B級がかっていたかつてのころよりもよほど格好よくなっている。
ジャケこそ「美女とビアー」だが、音はKREATORに匹敵するほどの強力なスラッシュメタルである。
ドラマティック度・・7 疾走度・・8 スラッシュ度・・9 総合・・8
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PARADOX 「Electrify」
ドイツのメロディック・スラッシュメタルバンド、パラドックスの2008作
サウンドはスラッシュというよりは、むしろドラマティックな質感が増していて、
ツインギターで聴かせる重厚なメロパワとして普通に楽しめる。
かつてのアルバム「Heresy」にも通じるミステリアスな雰囲気とともに、
薄暗いメロディを感じさせる楽曲は、オールドスタイルの魅力をしっかりと伝えてくれる。
もちろんスラッシーに疾走するナンバーもあり、ザクザクのリフに首を振りつつ
ジャーマン特有の翳りある哀愁を感じ取ることができる。そんな作品だ。
ドラマティック度・・8 スラッシュ度・・7 ダークなメロパワ度・・8 総合・・8
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HOLY MOSES 「AGONY OF DEATH」
ドイツのスラッシュメタルバンド、ホーリー・モーゼスの2009作
初期KREATORばりの疾走感に、サビーナの迫力あるスクリームヴォイスが重なり
サウンドはますますパワーアップ。ザクザクとした本道のスラッシュスタイルであるが、
ツインギターによるドラマティックな要素も増していて、アルバムとしての密度が上がった。
女性声というものを抜きにしても、純粋に格好いいジャーマンスラッシュメタルである。
スラッシュ度・・8 疾走度・・8 強烈女性声度・・8 総合・・8
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Artillery 「When Death Comes」
デンマークのスラッシュメタルバンド、アーティレリーの2009作
2000年の復活作「B.A.C.K.」以来しばらく沙汰がなかったが、ここに無事新作が届けられた。
元CRYSTAL EYESのヴォーカルを新たに迎えているが、ステュッツァー兄弟のツインギターによる
ザクザクのリフで疾走するオールドスタイルのスラッシュサウンドはなにも変わらず
ヴォーカルのハイントーンも、むしろ往年のスラッシュ色をかもしだしていて、激しさの中にも
どこか知的さを感じさせるリフワークとともに、勢いに溢れたヨーロピアンスラッシュが満喫できる。
ドラマティック度・・7 疾走度・・8 スラッシュ度・・9 総合・・8
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Deceased「As the Weird Travel on
アメリカのスラッシュメタル、ディケースドの2005年作
デビューは90年代初等というベテランで、初期はB級のデスメタルだったようだが、
本作ではメロディアスなギターを盛り込んだパワーメタル風のスラッシュで、これがなかなか格好いい。
ヴォーカルは野太いダミ声で、ツインギターのオールドなリフとともに激しく疾走しつつ、
叙情的ともいってよいフレーズを盛り込んで、ダーティでありながら聴き安いサウンドだ。
たたみかける突進から、古き良き正統派メタル風味に切り替わる極端さにもにやにや。
メロディアス度・・8 疾走度・・8 オールドメタル度・・9 総合・・8
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WHIPLASH「Unborn Again」
アメリカのベテランスラッシュメタルバンド、ウィップラッシュの2009作
1985年にデビュー、1990年の3rd「Insult to Injury」は確か日本盤も出ていたが、
その後は1998年の「Thrashback」を最後に音沙汰がなかったのだが、
11年ぶりに復活作を発表。ジャケにもかつてのキャラを登場させていることからも、
原点回帰したかのような強力なスラッシュメタルが楽しめる。ザクザクとしたギターリフを中心に、
それでもドライになりすぎず、メロパワ風味の聴きやすさがあるのがこのバンドらしい。
メロディアス度・・7 疾走度・・8 スラッシュ度・・9 総合・・8
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◆クールな新世代スラッシュバンド

VEKTOROuter Isolation
アメリカのスラッシュメタル、ヴェクターの2011年作
80年代を思わせるアナログ感たっぷりの古き良きスラッシュメタルが炸裂した前作に続き
2作目となる本作も、ザクザクとしたギターリフで疾走する往年のスラッシュ風味に
DESTRUCTIONあたりを思わせる、ある意味知的でクールなアレンジセンスにも磨きがかかっている。
金切り声を含んだヴォーカルもシュミーアを思わせる変態的な感じで、個性的なリフによくマッチしており、
ときにブラストビートも含んだ激しさもありつつ、アナログ感のある音作りで、やかましすぎないのもよい。
随所に変則リズムを含んだ気持ちの悪さ(良さ)と、前作以上にスケール感と説得力が備わったのも素晴らしい。
ドラマティック度・・8 古き良きスラッシュ度・・9 クールなスラッシュ度・・9 総合・・8.5
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REVOCATIONChaos of Forms
アメリカのテクニカルスラッシュメタル、レヴォケーションの2011年作
前作同様、切れ味の鋭いリフを乗せて疾走するデスラッシュ的な突進力に
モダンなテクニカルさを備えたサウンドは、オールドスラッシュの質感を残しつつも
随所にプログレッシブな展開力を覗かせる、その思い切りの良いアレンジが素晴らしい。
激しさの中にもメロディックな味わいや洒落たフレーズを入れる余裕と知的なセンスが
聴き手をにやりとさせる。単なるスラッシュではない、器の大きさを感じさせるバンドである。
ドラマティック度・・8 スラッシー度・・8 構築度・・8 総合・・8
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EXMORTUSBeyond the Fall of Time
アメリカのメロディック・スラッシュメタルバンド、エクスモータスの2011年作
前作はまあまあという程度の出来であったが、今作はなにやらドラマティックなイントロからして違う。
オールドなギターリフで疾走するアナログ的な古き良きメタル感覚にますます磨きがかかり、
随所にメロディを効かせたギターフレーズとともに、まるでArtilleryばりのヨーロピアンなスラッシュサウンドだ。
一連のNWOTHM系バンドのような80年代正統派の質感も多分にあって、オールドファンもにんまり。
前作にはあまりなかった緩急を使った展開や、ドラマティックな世界観もGoodな力作です。
ドラマティック度・・8 スラッシュ度・・8 古き良き度・・8 総合・・8
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WARBRINGERWaking into Nightmares
アメリカのスラッシュメタルバンド、ウォーブリンガーの2009作
ここのところアメリカでは、Municipal WasteMerciless DeathBonded by Bloodといった
いわゆる若手によるピュアスラッシュメタルが増えてきているが、このバンドもまた
そうした80年代のオールドスタイルを蘇らせるようなサウンドをやっている。
いかにも往年の雰囲気を伝えるギターリフとともに勢いよく疾走し、リズムのメリハリをつけながら、
ヘヴィすぎずに生々しいという、オールドリスナーの喜ぶサウンドを繰り広げている。
ときにパワーメタル的なメロディアスさがあるのもいい。現時点ではこのバンドならではの個性や
世界観は薄いものの、懐古主義ともいうべきスタイルには多くのオヤジメタラーが快哉を叫ぶだろう。
ドラマティック度・・8 疾走度・・8 オールドメタル度・・9 総合・・8
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SPACE EATERAftershock
セルビアのスラッシュメタルバンド、スペース・イーターの2nd。2010年作
ツインギターのリフで疾走する古き良きスタイルのスラッシュメタルサウンド。
1st発表後にVoが死去し、それを乗り越えての2作目ということで非常に気合が感じられ、
EXODUS+ARTILLERYというような、つまりベイエリアのザクザク感にヨーロピアンな質感を加えた
じつに勢いのあるスラッシュメタル聴かせてくれる。リフはもちろん格好いいのだが、
随所にメロディックなソロを聴かせるなど、ギターのセンスもなかなかのもので、
単に突っ走るだけでなく楽曲にはフックがある。往年のスラッシュ好きはぜひチェック。
ドラマティック度・・7 疾走度・・8 往年のスラッシュ度・・9 総合・・8
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Angelus Apatrida「Clockwork
スペインのスラッシュメタル、エンジェラス・アパトリダの2010年作
ザクザクとしたツインギターのリフで疾走するオールドスタイルのスラッシュメタルで、
切れ味のよいクールなリフにはDESTRUCTIONあたりに通じる知的な感触がある。
若手らしい勢いの良さとオールドスラッシュへの敬意を感じさせつつ、
モダンな構築感とのバランスもよく、激しさだけではないセンスの良さが光る。
デイブ・ムステインとシュミーアの中間といった感じのヴォーカルのがなり声も
サウンドによくマッチしていて、すべてのスラッシュ好きが気に入るだろう好作である。
ドラマティック度・・7 疾走度・・8 オールドスラッシュ度・・8 総合・・8
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◆ヘヴィ&ダーク系

GRIP INC. Solidify
SLAYERのデイブ・ロンハードと、元DESPAIRのウォルデマー・ソリクタによる
モダン・スラッシュメタルバンド、グリップ・インクの3rd。1999作
曲はミドルテンポ主体ながら、やはりデイブ・ロンバードのドラミングの存在感は見事で、
ウォルデマーのセンス溢れるギターリフとともに、勢いあるヘヴィサウンドを聴かせてくれる。
1stの頃よりも、曲的にも演奏的にも絞れてきた印象で、サウンドの質が高まった。
全体的に薄暗い雰囲気に包まれているのもなかなかよく、
ギターフレーズにはときおりオリエンタルな雰囲気も現れる。
ドラマティック度・・8 スラッシー度・・7 クールリフ度・・8 総合・・8
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NEVERMORE 「This Godless Endeavor
アメリカのヘヴィ・ダークメタルバンド、ネヴァーモアの6th。2005作
今作はのっけからスラッシーな疾走で幕を開けるかなりのインパクト。
硬質なギターリフは相変わらずセンスよく、そして今作ではソロパートでのメロディも効果的で、
たたみかける押しのヘヴィさと歌を含めた叙情性とのコントラストもくっきりとした。
ツインギターの絡みはときにメロデスのように流麗で、甘くなりすぎない程度に耳に心地よく、
それぞれの楽曲もこれまでになく作り込まれているという印象。重厚でスラッシーでありながらも
聴きやすいという、絶妙のバランスで、間違いなくバンドの最高作たる一枚に仕上がっている。
ドラマティック度・・8 重厚度・・8 ダークな叙情度・・8 総合・・8
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CELTIC FROST 「MONOTHEIST」
スイスの伝説的メタルバンド、セルティック・フロストの復活作。2006作
後のエクストリーム系のバンドたちに与えた影響は計り知れないバンドだが、実のところ
彼らが純粋に暴虐なサウンドを目指していたのは2ndまでで、3rd「Into the Pandemonium」では
スラッシュサウンドの中にモダンな要素を取り入れるなど、アルバムごとに異なる顔を見せていた。
この復活作であるが、過去のどのアルバムとも異なる質感で、聴きようによってはもっともヘヴィな作品となった。
昨今のテクノロジーに頼った若手バンドでは決して表現できない本物の硬質感と暗黒性、
そしてドゥームメタル的な重厚さをまとい、ジャケのイメージするモノクロームの世界観を描き出している。
スラッシュでもデスでも、ブラックでもないが、ヘヴィな邪悪さの点ではとてつもなく強烈な作品だ。
ドラマティック度・・8 暗黒度・・8 重厚度・・8 総合・・8
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◆テクニカルなキワモノ系

VOIVOD Dimension Hatross
カナダのテクニカル・スラッシュメタルバンド、ヴォイヴォドの4th。1988作
前作「Killing Technology」の延長線ながらサウンドに整合感が出てきた。
のっけからの変拍子リズムとそれに乗るリフからして、我々の好むテクニカルメタルの質感で、
たまらず頭を振りたくなる。ギターの硬質感が増して、よりメタリックになったことで、
サウンドとしての説得力が増すとともにスラッシーに疾走する部分にも軽さがなくなり、
リフの切れ味が研ぎ澄まされた感がある。初期のMEKONG DELTAにも通じる変幻自在で、
風変わりなスラッシュサウンドは本作あたりからしだいに知的さをまとい、
彼らの描くテーマとなるSFへの接近が音自体からも感じられるようになった。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 知的スラッシュ度・・8 総合・・8

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WATCHTOWER
「Control and Resistance」
元祖超絶テクニカルメタルバンド、ウォッチタワーの1st。1989作
とにかく、この変拍子とキメの連続のような楽曲は聴いていてほとほと呆れる。
甲高いヴォーカルとともに、スラッシュというにはヘヴィさには欠ける音なのだが、
鬼才ロン・ジャーゾンベクを中心にした演奏陣のキレは当時としては信じがたいものであったろう。
なんというか、予測のつかない展開と何度聴いても覚えられない曲に、イライラしつつもニヤリとさせられ
じつに脳が活性化されるのである。変態メタル好きならばその元祖として必ず押さえておくべき作品だ。
ロンはこの後、兄のボビーとともにSPASTIC INCを結成する。そちらもまた呆れるほど凄い。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・9 変態度・・10 総合・・8
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THOUGHT INDUSTRY 「mOds carve the Pig: assassins, tOads and gOd's Flesh」
アメリカの変態系スラッシュメタルバンド、ソート・インダストリーの2nd。1993作
知的で破壊的、テクニカルで叙情もある…つまりは分裂症の変態メタルフリークを満足させる、素晴らしいバンド。
ダリのジャケで有名な1stに続くこのアルバムは、破天荒だった前作を引き継ぎつつも
より整合感(なのか?)の増した変態スラッシュサウンドを繰り広げている。
勢いのある唐突な展開と硬質なリフ攻勢をかけておいて、いきなりの引きが表れる様は
GALACTIC COWBOYSあたりを思い出させるが、プログレッシブな構成力はこちらが上。
3rd以降は、ダークな叙情を増した翳りあるロックサウンドにシフトして、そちらも良い出来であるが
スラッシーな質感を残した馬鹿げたまでの変態精神を味わいたいのなら本作を聴くべきだろう。
メロディアス度・・7 プログレ度・・8 変態度・・9 総合・・8
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◆北欧デスラッシュ系

EBONY TEARS 「A HANDFUL OF NOTHING」
スウェーデンのメロデスバンド、エボニー・ティアーズの2nd。1999作
1stの時点ではありふれた北欧メロデスをやっていたこのバンドだが、
本作のサウンドは、メロデスというよりはAT THE GATESの名作、
「SLAUGHTER OF THE SOUL」を思わせる突進型のデスラッシュだ。
曲もシンプルで、日本盤ボーナスを入れても全9曲35分という潔さ。
もちろんギターリフにはメロディを感じさせる部分も多いので、AT THE GATESや
今でいうTHE HAUNTEDが好きであれば、これは要チェックのアルバムだろう。
ドラマティック度・・7 疾走度・・8 デスラッシュ度・・9 総合・・8
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THE HAUNTED 「MADE ME DO IT」
スウェーデンのデスラッシュバンド、ホーンテッドの2nd。2000作
さすが、元AT THE GATESのビョラー兄弟率いるバンドだけあって、ギターリフが格好いい。
スラッシーに疾走しつつ、ときおりメロディを奏でるギターはいかにも北欧的だし
それを支えるドラムの確かな演奏力も光る。クオリティの高いスラッシュメタルであるが、
同時にまたAT THE GATES的なオールドメロデスの質感も残っているのが嬉しい。
また今作は、疾走するだけでなく、曲の中にちゃんと聴かせるパートがあるのが素晴らしい。
ドラマティック度・・7 疾走度・・8 ギターリフカッコいい度・・9 総合・・8 
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THE CROWN 「DEATHRACE KING」
スウェーデンのデスラッシュバンド、ザ・クラウンの4th。2000作
CROWN OF THORNEから改名後2作目の本作は、彼らのアルバムの中でも代表作との呼び声が高い。
初期の暴虐メロデススタイルから、やがてスラッシュ色を濃くしてゆくのだが、このアルバムにおいては、
特攻デスラッシュサウンドに加え、MOTORHEADあたりを思わせるダーティなロックンロール魂を見せて爆走。
フレドリック・ノルドストロームのプロデュースも加わってか、音には以前よりも力強さと説得力が増している。
そして矢継ぎ早のリフには、そのフレーズの節々に北欧らしいメロディが若干残っているのもポイントで、
ドライな疾走デスラッシュでありながらも、かすかな叙情も感じられるのがまた良い。
ドラマティック度・・7 疾走度・・10 デスラッシュ度・・9 総合・・8.5
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DEFLESHED 「ROYAL STRAIGHT FLESH」
スウェーデンのデスラッシュバンド、デフレッシュドの4th。2002作
スラッシーなギターリフを乗せ、ブラストしつつ激烈に疾走するサウンドはまさにデスラッシュ。
オールドスタイルなスラッシュの暴虐さを持っていて、リフにしろリズムにしろ実に切れ味のよい疾走感。
ドラマーはブラックメタルバンドDARK FUNERALなどでも叩いている人物なので、
なるほど手数も多いしブラストも見事なもの。久々にもの凄いスラッシュメタルを聴いた感じがする。
ドラマティック度・・・6 疾走度・・9 デスラッシュ度・・10 総合・・8
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DARKANE Layers of Lies
スウェーデンのデスラッシュバンド、ダーケインの4th。2005作
それなりに質は高かったが、アルバム的な統一感は薄かった2ndの頃に比べ、
本作は全編勢いのある北欧デスラッシュ色に染められたアルバムだ。
ザクザクとした硬質感あるリフで聴かせつつ、曲展開にはドラマティックさがあり、
ギターのフレーズなどにもメロディアスな部分が増している。
激烈でありながらある意味聴きやすくもなり、硬派に疾走するサウンドは
素直にカッコいいと思える。デスラッシュ好きはヘドバン必至の高品質作。
ドラマティック度・・8 激烈度・・8 デスラッシュ度・・9 総合・・8
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The Forsaken Traces of the Past」
スウェーデンのデスラッシュバンド、フォーセイクンの3rd。2004作
THE HAUNTEDThe CROWNらの登場以降、北欧はデスラッシュバンドの宝庫となった感があるが
このバンドも非常に質の高いサウンドを聴かせてくれる。ときにブラストをまじえた激烈な楽曲と
限りなくデス声に近い吐き捨てヴォーカル、そして、いかにもスウェディッシュらしいツインギターのリフの絡みで
モダンなタイトさと古き良きデス/スラッシュの質感を融合させている。このバンドの場合、単に疾走に頼るだけでなく
ミドルテンポで重厚に聴かせたり、ギターのフレーズにメロデス風味の叙情を挿入したりとなかなか懐も深く、
ドラムをはじめとした演奏力の高さも光っている。METALLICAの“Blackend”のカヴァーも格好いい。
メロディアス度・・7 疾走度・・7 激烈度・・8 総合・・8
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RAISE HELLNot Dead Yet
スウェーデンのメロデスラッシュバンド、ライズ・ヘルの2nd。2000年作
1stではメロブラ的な激しさのサウンドだったが、本作ではむしろザクザクとしたリフで聴かせる
スラッシュメタル風味と古き良きパワーメタルの質感もあるという今どき硬派なサウンドになっている。
ヴォーカルはデスとまでいかないダミ声で、今作では楽曲は疾走感は控えめ。
あくまでギターによってノリを出すという、地味だがあくまで正統派のスタイルを守っている。
正直、これといってインパクトや耳を引く新鮮さはないのに、これかなかなか楽しめるのは、
たとえばKREATORTESTAMENTなどのかつてのオールドなスラッシュスタイルに近いからだろう。
随所に聴かせるメロディックなギターフレーズもいい。地味だが味のある作品だ。
ドラマティック度・・8 疾走度・・7 古き良き度・・8 総合・・8
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IMPIOUS 「Holy Murder Masquerade」
スウェーデンのデスラッシュバンド、インピオスの5th。2007作
北欧デスラッシュとしてはすでに中堅に位置するくらいのキャリアはあるが、日本での知名度はまだ低い。
THE CROWN
を思わせる突進力とザクザクのリフに北欧らしい叙情美をまとわせたサウンドは、
新鮮味はないが単純に格好いい。またスピード一辺倒ではなく、緩急をつけた楽曲には
オールドなメタルとしての魅力も感じられる。ヴォーカルのデス声がやや一本調子なのと、
リフの魅力という点ではまだまだ頑張って欲しいのだが、質の高さで聴き通せるアルバムだ。
ドラマティック度・・7 疾走度・・7 デスラッシュ度・・8 総合・・8
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*CDレビュー・ブルデス/スラッシュメタル
*テクニカルなスラッシュ/デスメタル傑作選
も併せてご覧ください

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