〜HEAVY METAL CD REVIEW 2021 by 緑川 とうせい

★2021年に聴いたメタルCDレビュー
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12/24
デス&ブラック、ペイガンのクリスマス(439)


MEMORIAM 「To The End」
イギリスのデスメタル、メモリアムの2021年作
2017年にデビューし、4作目となる。重厚なギターに低音デスヴォイスを乗せた王道のデスメタルサウンドで、
スローからミドルテンポでのどっしりとした聴き心地に、ほどよくウェットなギターの叙情も覗かせる。
激しい疾走パートもありつつ、全体的に暴虐すぎないところがオールドな味わいになっていて、
OBITUARY
あたりに通じる、90年代のデスメタルのダークな雰囲気には、どこかなつかしさも感じられる
ドゥーミィなスローテンポでも、重厚な雰囲気をたたえており、音の迫力という点では申し分ない。
ジャケも含めて、これぞオールドスタイル・デスメタル。全9曲、44分というのもちょうどよい長さデス。
ドラマティック度・7 暴虐度・7 重厚度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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God Dethroned 「Illuminati」
オランダのデスメタル、ゴッド・デスローンドの2020年作
1992年デビュー、本作は11作目となる。オールドな感触を残したギターリフにデスヴォイスを乗せ、
うっすらとしたシンセアレンジとともに、ブラッケンな味わいのデスメタルサウンドを聴かせる。
甘すぎない叙を含むギターフレーズと暴虐な疾走感は、ときにブラックメタル寄りの感触もあって、
ベテランらしい荘厳な迫力に包まれる。どっしりとした重厚さと、激しいブラストビートにスラッシーな疾走と、
デスメタル、デスラッシュの王道をゆきながら、リズムチェンジやツインギターのメロディなどには、
メロデス風でもある構築力も覗かせる。全36分であるが、激しくも濃密な強力作デスよ。
ドラマティック度・8 暴虐度・8 重厚度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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FINNTROLL 「VREDESVAVD」
フィンランドのフォークメタル、フィントロールの2020年作
1999年にデビュー、Korpiklaaniとともにフォークメタルの代表格で、本作は7年ぶりとなる8作目。
オーケストラルなイントロで幕を開け、ダミ声ヴォーカルを乗せて暴虐にブラスト疾走するブラックメタル風味と、
シンフォニックなアレンジに土着的な旋律が合わさった、アグレッシブなフォーク・デスメタルを聴かせる。
楽曲も3〜4分前後が主体で、いつになくストレートで激しい作風であるが、シンセやヴァイオリンによる
フォーキーなメロディを随所に盛り込みつつ、エピックなコーラスや優雅さと重厚な迫力が同居したサウンドは、
ベテランらしい説得力に包まれている。シンフォニックなペイガンメタルとしても楽しめる見事な力作です。
ドラマティック度・8 フォーキー度・7 激しく重厚度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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King of Asgard 「Svartrvidr」
スウェーデンのヴァイキングメタル、キング・オブ・アスガルドの2021年作
2010年にデビュー、5作目となる本作は、土着的なギターの旋律に低音のダミ声ヴォーカルを乗せ、
北欧らしい空気に包まれた重厚なペイガンメタルを聴かせる。シンセをほとんど使わない硬派な作風で、
あくまでギターの旋律による涼やかな叙情に、ときに暴虐なブラスト疾走もあって、迫力充分である。
8分、9分という大曲も、どっしりとした武骨な味わいと疾走感、甘すぎない土着メロディのバランスも見事で、
緩急ある構築力とともに、ヴァイキング・ブラック的にも鑑賞可能。勇壮なコーラスなども加わった
エピックな雰囲気も覗かせつつ、物悲しいラストのインスト曲まで、北欧の寒々しい世界観を描く力作だ。
ドラマティック度・8 ヴァイキング度・8 重厚度・8 総合・8.5 過去作のレビューはこちら
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Hjelvik  「Welcome to Hel」
ノルウェーのヴァイキング・ブラックメタル、イェルヴェックの2020年作
Kvelertakのアーランド・イェルヴィック率いるバンドで、ほどよくオールドなギターにダミ声ヴォーカルを乗せ、
武骨で北欧らしい土着性を含んだ、ペイガン寄りのブラックメタルを聴かせる。サウンドはヘヴイ過ぎず、
あえてスカスカ感を含んだ、Bathoryをはじめとした90年代北欧ブラックメタルの感触を残している。
楽曲は3〜4分前後とわりとシンプルで、ときおりプラストビートで激しく疾走しつつ、北欧神話をテーマにした世界観や
メロディアスなギターフレーズが勇壮な正統派ヘヴィメタルとしての味わいをかもしだし、さほど暴虐性は感じない。
派手なインパクトはないが、このままバソリーのような独りヴァイキング・ブラックの道を突き進んでいってもらいたい。
ドラマティック度・7 ヴァイキング度・7 古き良き度・8 総合・7.5
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EMERALD NIGHT 「Magna Voice Ab Oblivione」
ロシアのペイガン・ブラックメタル、エメラルド・ナイトの2021年作
2008年にデビューし、5作目となる。美麗なシンセに叙情的なギターを重ねたイントロから、
ダミ声ヴォーカルを乗せて激しく疾走しつつ、英語&ロシア語の艶めいた女性ヴォーカルが加わって
幻想的なペイガンブラックを展開。激しい疾走パートでもメロディックなギターフレーズと
優美なシンセアレンジ、ソプラノもこなす美しい女性声を含めた耽美な世界観に包まれて、
暴虐さよりも優雅さが前に出ているので、男女声のゴシック・ブラック的にも楽しめる。
KING DIAMOND「Eye Of The Witch」のロシア語カヴァーもなかなかハマっている。
ドラマティック度・8 ペイガン度・7 耽美度・8 総合・8
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Sojourner 「Premonitions」
ニュージーランドなど多国籍メンバーによる、ペイガン・ブラックメタル、ソジョーナーの2020年作
2016年にデビユーし、3作目となる。美麗なシンセアレンジをギターに重ね、やわらかな女性ヴォーカルに
ダミ声ヴォーカルが絡む、神秘的なフォーク・ブラックメタル。ティン・ホイッスルの優雅な音色をまじえた
ケルティックな土着性も覗かせつつ、シンフォニックなシンセがサウンドを幻想的に包み込む。
ときに激しい疾走パートも含みつつ、暴虐さよりはあくまで優美な叙情性が前に出ていて、
男女声の壮麗なシンフォニック・ブラックメタルとしても楽しめる。楽曲は7〜8分前後が主体で、
わりと長めではあるが、緩急ある構築力と神秘的な空気感でじっくりと鑑賞できる。
シンフォニック度・8 ペイガン度・7 幻想度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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SOLSTAFIR 「ENDLESS TWILIGHT OF CODEPENDENT LOVE」
アイスランドのアヴァン・ブラックメタル、ソルスタフィアの2020年作
2002年にデビュー、本作は7作目。前作はサイケでブルージー、プログレッシブな力作であったが、
本作も、前作からのオールドなロック感触に、ポストロック的な空間性と静と動のメリハリある展開力で、
異色のアヴァン・ブラックメタルを聴かせる。母国語によるマイルドなヴォーカルで、ゆったりとした叙情性に包まれつつ、
にわかにギターの轟音とともにスリリングなサウンドが現れる。うっすらとしたシンセにピアノやヴァイオリンの音色など、
優雅なアレンジとポストプログレ寄りの繊細さの一方で、じわりとブラックメタルの不穏さがにじみ出てきて、
ときに激しい疾走パートとともに寒々しい荒涼とした北の空気が包み込む。まさに奔放なプログレッシブ・ブラックメタル。
ドラマティック度・7 アヴァンギャル度・8 涼やかな叙情度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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CONSTELLATIA 「The Language Of Limbs」
南アフリカのポスト・ブラックメタル、コンステラティアの2020年作
叙情的なギターにダミ声ヴォーカルを乗せて激しくブラスト疾走、スローパートでは優美なシンセアレンジと
メロウなギターの旋律に、女性ヴォーカルの歌声も加わって、やわらかな叙情性に包まれる。
Alcestなどにも通じる優雅さと、Wolves In The Throne Roomの神秘性と激しさを合わせた雰囲気で
8分、9分、11分という大曲をメインに、緩急ある構築力で、幻想的なポストブラックメタルが楽しめる。
ギターの泣きのメロディによる耳心地の良さという点では、上記したバンドを超えるセンスを感じさせる。
激しさをちゃんと残しつつ、ここまでメロディアスなのは素晴らしい。全4曲35分で、もっと聴いていたい逸品です。
ドラマティック度・8 暴虐度・7 優美な叙情度・9 総合・8
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In Cauda Venenum 「G.O.H.E.」
フランスのポスト・ブラックメタル、イン・カウダ・ヴェネナムの2020年作
2015年にデビューし、2作目となる。22分、21分という大曲2曲という構成で、ストリングスとシンセのイントロから、
トレモロのギターリフと絶叫するヴォーカルを乗せて激しくブラスト疾走する、耽美でミステリアスなサウンドを描く。
ピアノやチェロなどのクラシカルな優雅さを随所に加えつつ、激しさと叙情性との緩急ある構築力も見事。
後半の大曲では、スローテンポでのゴシックメタル的な耽美性から、トレモロ乗せてのブラスト疾走で、
物悲しくチェロが鳴り響き、ジャズ風味のピアノによる間奏パートまで、優雅でメランコリックな聴き心地。
ヴォーカルパートが少ないので、インスト中心の叙情派ポストブラックとして鑑賞するのがよいかと。
ドラマティック度・8 暴虐度・7 メランコリック度・8 総合・8
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FOSCOR 「ELS SEPULCRES BLANCS」
スペインのポストブラックメタル、フォスコーの2019年作
2004年にデビューし、すでに7作目。優美なピアノにギターを重ね、マイルドなヴォーカルを乗せた、
メランコリックな味わいのサウンドで、ゆったりとしたパートから激しい疾走へと緩急あるサウンドを描く。
ブラスト疾走するパートでも、ダミ声などは気入らないので、あくまで優雅な聴き心地。
繊細な叙情性とともに、曲によっては、むしろポストプログレとしても楽しめるだろう。
全7曲38分というのはやや物足りないが、このそっけなさもまた良いのかもしれない
ドラマティック度・7 暴虐度・3 叙情度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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VORNA 「Sateet Palata Saavat」
フィンランドのシンフォニック・ブラックメタル、ヴォルナの2019年
2013年にデビューし、3作目となる。美麗なシンセアレンジにメロディックなギターフレーズと
ダミ声ヴォーカルを重ねた、北欧らしい涼やかな叙情美に包まれたサウンドを聴かせる。
トレモロのギターフレーズが北の土着感を描き、ときにマイルドな母国語のヴォーカルとともに、
初期のMOONSORROWのような、壮麗なペイガンメタルとしての味わいでも楽しめる。
随所に激しい疾走パートも織り込みつつ、全体的には優美でシンフォニックなシンセワークに包まれた
幻想的な耳心地で、ここぞと聴かせる泣きのギターメロディは、いかにもフィンランド的である。
美麗系ペイガンメタルのファンから、シンフォブラック初心者にも対応した高品質な逸品です。
ドラマティック度・8 暴虐度・6 ペイガン度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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AETHER 「IN EMBERS」
ポーランドのメロディック・デスメタル、エーテルの2019年作
美しいシンセにメロディックなギター、吐き捨てヴォーカルを乗せて、北欧メロデスのような
涼やかな叙情に包まれたサウンドを聴かせる。随所に激しい疾走パートもありつつ、
基本的にはミドルテンポが主体で、優雅なメロディアス性が前に出ているので暴虐性はさほどない。
ETERNAL TEARS OF SORROWなどフィンランド系バンドに通じるメランコリックな泣きの美学とともに、
わりとキャッチーなメタルナンバーから、女性声を加えた優美なラスト曲まで、クオリティの高さが光る。
ポーランドというよりは、ほぼ北欧メロデス系のスタイルで、多くのリスナーが楽しめるレベルの好作デス。
ドラマティック度・7 暴虐度・7 叙情度・8 総合・8
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HALPHAS 「DAWN OF A CRIMSON EMPIRE」
ドイツのブラックメタル、ハルファスの2017年作
ほどよい叙情を含んだギターに吐き捨てヴォーカルを乗せて、激しくブラスト疾走、
緩急あるリズムチェンジに、トレモロのギターリフを含む甘すぎないメロディアス性で
禍々しくも幻想的なブラックメタルを聴かせる。激しくとも重すぎないサウンドは、ほどよくマイナーな
初期ブラックのプリミティブな怪しさも残していて、どっしりとしたスローパートでは荘厳な迫力がにじみ出る。
ラストの9分の大曲も、ゆったりとした中に、じわりと暗黒が香るようにして、その世界観に浸れます。
ドラマティック度・7 暴虐度・8 ブラッケン度・8 総合・8
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Alraune 「The Process of Self」
アメリカのブラックメタル、アルラウネの2014年作
ノイジーなギターにガナり声ヴォーカルを乗せて激しくブラスト疾走する、プリミティブなブラックメタルサウンド。
MAYHEMなど初期の北欧ブラックメタル的でもある、スカスカでチープな録音がいかにもオールドスタイルで、
8〜11分の大曲をメインに、激しくも神秘的な空気を描くところは、初期Wolves In The Throne Roomなど、
アトモスフェリック系の味わいもある。サウンドはスラッジブラック寄りのザラついた感触に包まれていて、
叙情性というよりは荒涼とした闇を感じさせるのが特徴だろう。ちなみにバンド名のアルラウネは、
魔術に用いられる植物であるマンドレイクの亜種で、ドイツには同タイトルのゴシックホラー小説もある。
ドラマティック度・7 暴虐度・8 プリミティブ・8 総合・7.5
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ALGHAZANTH 「SUBLIMINAL ANTENORA」
フィンランドのシンフォニック・ブラックメタル、アルガザンスの2000年作
1999年にデビューし、本作は2作目。美麗なシンセアレンジに絶叫ヴォーカルを乗せて激しく疾走しつつ、
リズムチェンジによる展開力と、メロディックなギターフレーズとシンセによる優雅な感触が合わさった、
DIMMU BORGIRあたりにも通じるサウンドである。3作目以降に比べると、楽曲アレンジの粗さや
こもり気味の音質などに、マイナー感を残しているのだが、そこが幻想的な味わいにもなっている。
インパクトや曲の完成度、音の迫力という点ではのちの作品に比べてやや物足りないが、
わりと唐突なリズム展開など、粗削りの魅力で楽しめる、シンフォニックブラックの好作品だ。
ドラマティック度・7 暴虐度・7 壮麗度・8 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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ALGHAZANTH 「Polarity Axiom」
フィンランドのシンフォニック・ブラックメタル、アルガザンスの2004年作
4作目の本作は、のっけから激しいブラスト疾走しまくりで、ほどよく叙情的なギターリフに
うっすらとしたシンセを重ね、絶叫ヴォーカルを乗せた、暴虐なシンフォブラックを展開する。
激しさの中にも、随所にメロディックなギターフレーズが光っていて、美麗なシンセアレンジとともに、
北欧らしい優雅さと激烈な激しさが融合した、高品質なメロディック・ブラックメタルが楽しめる。
激速のブラストにトレモロのギター、シンフォニックなシンセ、激しさと演奏力、美旋律と世界観が
完璧に同居しているという点でも見事という他にない。全39分というのも聴き疲れしなくて良いデスね。
ドラマティック度・8 暴虐度・8 激烈で壮麗度・9 総合・8 
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12/17
ゴシックとドゥームの師走(422)


MOONSPELL「HERMITAGE」
ポルトガルのゴシックメタル、ムーンスペルの2021年作
1994年デビューのベテランで、本作は通算13作目となる。ほどよくヘヴィなギターリフに、
マイルドなヴォーカルを乗せ、随所にデスヴォイスも加わった、ダークで翳りを帯びたサウンド。
うっすらとしたシンセアレンジにウェットな泣きのギターフレーズが、幻想的な世界観を描いていて、
物悲しい叙情という点では前作以上に楽しめる。メランコリックな美学を感じさせる作風で、
シンフォニックなシンセがメロウなギターを包み込む、優美なナンバーなども耳心地が良く、
重厚でアグレッシブだった前作に比べてインパクトは薄いものの、個人的にはこの路線が好み。
英国のPARADISE LOST、MY DYING BRIDEに並ぶ、王道のゴシックメタルが味わえる好作だ。
ドラマティック度・8 メランコリック度・8 ダークな叙情度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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TRIBULATION 「Where the Gloom Becomes Sound」
スウェーデンのゴシック・ブラックメタル、トリビュレーションの2021年作
2008年にデビューし、本作は5作目となる。3作目まではプログレッシブなブラックメタルであったが、
前作ではゴシックメタル路線へと深化し、本作はさらにそのスタイルをディープに推し進めてきた。
ほどよく叙情的で不穏なギターリフにダミ声ヴォーカルを乗せ、メランコリックなダークさを描きつつ、
ときにプログレッシブな展開力も覗かせる。ブラックメタルルーツのギターフレーズが味わいになっていて、
前作以上にミステリアスな空気をともなって、さほど激しさはないものの冷たい緊張感に包まれる。
いくぶん中途半端だった前作に比べて、サウンドの迫力と強固な世界観がともなった見事な力作である。
ドラマティック度・8 メランコリック度・8 ダークな叙情度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Anneke van Giersbergen 「The Darkest Skies Are the Brightest」
オランダの女性シンガー、アネク・ヴァン・ガースバーゲンの2021年作
The Gathering、現在はVUURなどで活躍。本作はアコースティックギターと、ヴァイオリン、チェロなどの
ストリングスをバックに美しい歌声を乗せたアコースティックアルバム。メタルではないので、伸びやかなアネクの歌声が、
いっそう引き立っていて、しっとりと優雅な魅力に包まれる。ドラムやパーカッションのリズムが入るので、
ロック感触もいくぶん感じられて、わりとキャッチーな聴き心地。素朴なフォーク調のナンバーから、
ストリングスの美しいクラシカルなアンビエント風まで、彼女の優しい歌声がじっくりと味わえる。
楽曲は3〜4分前後、総じて素朴でゆるやか作風で、あくまでアネクのファン向けの作品ではある。
アコースティック度・9 ロック度・2 女性Vo度・9 総合・7.5 過去作のレビューはこちら
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Draconian 「Under A Godless Veil」
スウェーデンのゴシックメタル、ドラコニアンの2020年作
2003年にデビュー、本作は5年ぶりとなる7作目。スローテンポに叙情的なギターとシンセを重ね、
美しい女性ヴォーカルの歌声に男性デスヴォイスが絡む、耽美なゴシックメタルサウンド。
どっしりとしたギターリフを乗せた重厚さも残していて、フューネラルなゴシック・ドゥームとしての
世界観もしっかり味わえ、全作から加入のHeike嬢のはかなげな歌声もサウンドによくマッチしている。
女性声をメインにした優美なナンバーもあり、全体的にダークさと叙情美のバランスのとれた作風なので、
ドゥーミィなゴシックが苦手な方でも入りやすいだろう。耽美派の王道ゴシックメタルです。
ドラマティック度・8 ゴシック度・8 メランコリック度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Hanging Garden 「Skeleton Lake」
フィンランドのゴシック・ドゥームメタル、ハンギング・ガーデンの2021年作
2007年にデビューし、7作目となる。重厚なギターにシンセを重ね、美しい女性ヴォーカルにデスヴォイスが絡む、
北欧らしい涼やかなメランコリック性に包まれたゴシックメタルを聴かせる。SWALLOW THE SUNなどにも通じる
ダークな寒々しさと、女性声によるなよやかな優雅さが同居していて、ときにマイルドな男性声も加わって、
本格派の男女声ゴシックメタルとしても出来が良い。ほどよくキャッチーな雰囲気のナンバーもあったり、
叙情的なギターやしっとりとした女性ヴォーカルをメインにしたパートなど、暗黒過ぎない聴きやすさもあるので、
わりと多くのリスナーに楽しめる作風だろう。キャリアのあるバンドらしい音の説得力もさすがです。
ドラマティック度・8 重厚度・8 メランコリック度・9 総合・8
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Profetus 「The Sadness of Time Passing」
フィンランドのフューネラル・ドゥームメタル、プロフェタスの2019年作
2007年にデビューし、4作目となる。沈み込むようなスローテンポにヘヴィなギターとシンセを乗せ、
唸るようなグロウルヴォイスとともに、重厚にして暗鬱な、まさにフューネラルなドゥームメタルを聴かせる。
10分を超える大曲をメインに、サウンドはとにかくスローで暗いのだが、ときに美しいシンセの旋律が
ゴシック寄りの耽美な感触を描いていて、暗闇の中にもうっすらとした叙情性を感じさせる。
なにせ曲が長いので、気が短い方には向かないが、この暗黒美に耽溺できる方には最高の作品だろう。
ドラマティック度・7 重厚度・8 フューネラル度・9 総合・8
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In The Woods... 「Cease The Day」
ノルウェーのゴシックメタル、イン・ザ・ウッズの2018年作
GREEN CARNATIONを母体にして1995年にデビュー、2000年以降は主にGREEN CARNATION名義で活動していたが、
2016年に、In The Woods...として復活、本作は復活後の2作目となる。ほどよくヘヴィなギターとマイルドなヴォーカルで
メランコリックなサウンドを描きつつ、1stの頃にあったダミ声を乗せてのブラックメタル要素も含んだ緩急ある展開力で
6〜9分の長めの楽曲をじっくりと構築する。北欧らしい物悲しい叙情性と涼やかな土着感も覗かせながら、
オルガンが鳴り響いたり、ときに激しく疾走したりと、OPETHなどに通じるプログレッシブな感触も味わえる。
単なるゴシックメタルではない知的なセンスと寒々しい叙情を求める方には、うってつけの作品となるだろう。
ドラマティック度・8 北欧度・8 メランコリック度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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DYING PASSION 「Secretly」
チェコのゴシックメタル、ダイイング・パッションの2020年作
2000年のデビュー作、20周年記念の新アートワークによるリマスター盤。
ほどよくメタリックなギターに艶めいた女性ヴォーカルを乗せ、ときにフルートやヴァイオリンも鳴り響く、
神秘的な浮遊感に包まれたゴシックメタルを聴かせる。辺境らしい粗削りのマイナー感触が、
ウェットな味わいになっていて、Zuzana嬢の歌声も上手すぎないところが妖しさをかもしだしている。
リズムチェンジなどによる緩急ある展開力に、ゆったりとしたクラシカルな優雅さも同居していて、
単なるゴシックメタルという以上に聴きごたえがある。6〜7分という長めの曲もわりと多く、
適度にユルい感触も案外に魅力的だったりする。ゴシックメタルは雰囲気モノですから。
ドラマティック度・7 ゴシック度・8 女性Vo度・7 総合・7.5
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THE LUST 「KARMALOVE」
ロシアのゴシックメタル、ラストの2018年作
2004年にデビューし、本作は6作目。ヘヴィ過ぎないギターに優美なシンセを重ね、
艶めいた女性ヴォーカルの歌声で、キャッチーな味わいのゴシックメタルを聴かせる。
ときにデジタルでモダンなアレンジも含ませつつ、耽美な雰囲気もしっかりと残していて、
EVANESCENCEあたりにも通じる、ゴシックロック風のストレートな聴きやすさがある。
楽曲は4〜5分前後で、ほどよくシンプル。反面、もう少し濃密な展開も欲しい気もするが。
2020年再発盤には、TYPE O NEGATIVE、MY DYING BRIDEのカヴァーなど4曲を追加収録。
ドラマティック度・7 ゴシック度・7 女性Vo度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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The Soundbyte 「Solitary IV」
ノルウェーのアヴァン・ゴシックメタル、サウンドバイトの2017年作
The 3rd And The Mortalのギター率いるバンドで、2004年にデビューし、4作目となる。
ほどよくヘヴィで叙情的なギターにうっすらとしたシンセ、トランペットやチェロなどを加え、
ゆったりとしたドゥーミィなインストパートから、女性のスキャットヴォイスを乗せて、
ときにエレクトロなアレンジなども加わったミステリアスなサウンドを聴かせる。
北欧らしい土着的なギターの旋律も覗かせて、涼やかな浮遊感に包まれながら、
女性声を乗せたしっとりとしたナンバーは、The 3rd And The Mortalに通じる味わいだ。
ドラマティック度・7 ゴシック度・7 ミステリアス度・8 総合・7.5
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HIGH PRIESTESS 「Casting the Circle」
アメリカのサイケ・ドゥーム、ハイ・プリーステスの2020年作
2018年にデビューし、2作目となる。ヘヴィ過ぎないギターに妖しい女性ヴォーカルを乗せ、
ほどよいユルさのサイケな浮遊感に包まれた、ヴィンテージな魔女系ロックを聴かせる。
17分の大曲を含む、全5曲という構成で、ときにオルガンも加えた70年代ロック感触と、
女性ヴォーカルを乗せた妖しい優雅さが合わさって、これという盛り上がりはないのだが、
ゆったりとした聴き心地で楽しめる。17分の大曲も、わりと長尺なリフレインが多いのだが、
そこも含めてのユルさが味わいにもなっている。女性声ヴィンテージロック好きはどうぞ。
ドラマティック度・7 サイケ度・7 魔女系ロック度・8 総合・7.5
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TROLL 「LEGEND MASTER」
アメリカのサイケ・ドゥームメタル、トロールの2019年作
2016年にデビューし、2作目。ほどよくヘヴィなギターに怪しげなヴォーカルを乗せ、
アナログ感たっぷりのアンサンブルとともに、リズムチェンジを含む知的な展開力も覗かせる。
サイケでプログレッシブなドゥームメタル。10分を超える大曲を主体に、音数は少ないものの、
北欧のバンドのような涼やかでミステリアスな空気を描くところは、プログレリスナーにも楽しめる。
重たすぎないサウンドにわりとユルめの叙情性も含ませつつ、いきなり激しく疾走したりと、
なかなか節操がないところも面白い。神秘的なプログレ・サイケドゥームの異色作。
ドラマティック度・7 サイケドゥーム度・8 ミステリアス度・8 総合・7.5
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Dark Buddha Rising 「Inversum」
フィンランドのスラッジ・ドゥームメタル、ダーク・ブッダ・ライジングの2015年作
2007年にデビューし、すでに6作目となる。本作は24分、23分という大曲2曲という構成で、
ドローン系にも通じるスローなリズムにノイジーなギターを乗せ、唸るようなヴォーカルも加わった、
怪しくサイケなドゥームメタルを聴かせる。ゆったりとしたパートが延々と続くと思いきや、
楽曲後半にはアグレッシブな緊迫感に包まれる。とはいえ、明快なリフやメロディが希薄なので、
執拗なリフレインによるサイケなトリップ感が楽しめる方でないと退屈かもしれない。
ドラマティック度・6 ドゥーム度・7 怪しさ度・8 総合・7
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Hour of 13 「The Ritualist」
アメリカのドゥームメタル、アワー・オブ・サーティーンの2010年作
2007年にデビューし、2作目となる。ほどよくヘヴィで叙情的なギターに朗々としたヴォーカルを乗せ、
カルトな浮遊感に包まれたオールドなドゥームメタル。かつてのPagan AltarWITCHFINDER GENERALなど、
70年代英国ルーツのヴィーテージな雰囲気を漂わせていて、ウェットで妖しい空気感なかなか魅力的だ。
随所にメロディアスなギターフレーズも覗かせて、80年代的なリフも含めて適度にハードなノリもありつつ、
ヘヴィ過ぎない聴き心地の良さも絶妙で、アナログ感たっぷりのアンサンブルとアンダーグラウンドな翳りに浸れる。
読みづらいバンドロゴとジャケの地味さを差し引いても、これは掘り出し物。カルトなドゥーム愛好家はぜひ。
ドラマティック度・8 ヴィンテージ度・8 妖しさ度・8 総合・8
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Hour of 13 「333」
アメリカのドゥームメタル、アワー・オブ・サーティーンの2012年作
3作目となる本作も、オールドな香りを漂わせたギターにどこかシアトリカルなヴォーカルを乗せ、
ほどよい叙情性とカルトな怪しさが同居した、古き良き感触のドゥームメタルを聴かせる。
スローパートだけでなく、リズムチェンジなどの展開力で、ノリのあるメタル感も随所にあって、
遅いだけのドゥームが苦手な方でも楽しめるだろう。全体的にダークな雰囲気は控えめで、
個人的にはもっと怪しさが欲しい気もするが、BLACK SABBATHルーツのヘヴィメタルして、
多くのリスナーにも鑑賞できる作風だ。ラストは9分の大曲で、正統派メタルとしても普通に格好良い。
ドラマティック度・7 ヴィンテージ度・8 怪しさ度・7 総合・8
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ARCANA COELESTIA 「Le Mirage De L'Ideal」
イタリアのブラック・ドゥームメタル、アルカナ・コーレスティアの2009年作
Absentia Lunaeなど、ブラックメタルバンドで活動するメンバーにより、2007年にデビュー、
本作は2作目となる。美麗なシンセのイントロから、トレモロのギターと絶叫ヴォーカルを乗せ、
いかにもブラックメタルをルーツにした、邪悪な香りのただようドゥームメタルを聴かせる。
こもり気味の音質も叙情的なトレモロのギターリフも、ブラックメタルそのものであるが、
ドラムは沈み込むようなスローテンポで、耽美な暗黒性に包まれたサウンドを描いてゆく。
フューネラルな暗黒の幻想美にどっぷりと浸れる、ブラックメタル好きのためのドゥームです。
ドラマティック度・7 耽美度・8 フューネラル度・8 総合・7.5
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12/3
12月のメロパワ&シンフォニックメタル(406)


Helloween 「Helloween」
ジャーマンメタルのベテラン、ハロウィンの2021年作
カイ・ハンセンとマイケル・キスクが復帰した「パンプキン・ユナイテッド」の流れから、7人編成新生ハロウィンの新作がついに完成。
メロディックなツインギターにマイケル・キスクの伸びやかな歌声を乗せて疾走すると、かつてのハロウィンの雰囲気が甦る。
アンディ・デリスにカイ・ハンセンという、声質の異なる3人がときにリードをとり、歌を重ねてゆくというのはなんともゴージャスだ。
デリス節というべきキャッチーな哀愁とも健在で、ミドルテンポでのオールドな中庸感から、華麗な疾走ナンバーも含めて
かぼちゃらしさたっぷり。完全に初期に寄せるのではなく、現在のバンドに往年の空気を加えたという作風なので、
突き抜けきらない感じもするのだが、ラストは先行シングルにも収録された、大曲「Skyfall」の12分の完全版で、
カイ・ハンセンらしい華麗な展開とともに、3人のヴォーカルを乗せたドラマティックなメタルサウンドが味わえる。
メロディック度・8 疾走度・8 かぼちゃ度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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DRAGONFORCE 「Extreme Power Metal」
イギリスのメロディック・スピードメタル、ドラゴンフォースの2019年作
2002年にデビュー、いまや世界的な人気となったメロディックスピードメタルの代表格、本作は8作目で、
流麗なギターにきらびやかなシンセを重ねて、キャッチーなヴォーカルメロディとともに疾走する、
華麗なるドラフォー・サウンドは健在。本作ではEPICAのコーエン・ヤンセンがシンセアレンジを担当し、
ときにシンフォニックに楽曲をカラフルに彩っている。ときおりミドルテンポのナンバーも織り込みつつ、
基本はたたみかける疾走メロスピで、メロディや楽曲自体にもはや新鮮味はさしてないのだが、
ピロピロ&キラキラで突き進む爽快さにやはりウキウキとしてしまう。元気になるゴージャスなメロスピです。
メロディック度・8 疾走度・9 華麗度・9 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Wind Rose「Wintersaga」
イタリアのメロディック・ペイガンメタル、ウインド・ローズの2020年作
2012年にデビューし、1作目はプログメタル路線であったが、2作目はシンフォニックメタルに深化、
前作ではフォーキーなペイガンメタル路線となり、4作目となる本作もその延長上のスタイルとなっている。
美麗なシンセアレンジに土着的なギターの旋律、ダーティなヴォーカルと勇壮なコーラスを重ね、
「ドワーフメタル」を標榜するように、エピックでファンタジックな世界観のペイガンメタルを展開する。
激しい疾走感も含んだ、ドラマティックな感触は、BLIND GUARDIAN的でもあり、フォーキーで愉快なノリのナンバーは、
FINNTROLL風でもあるという。オーケストラルな壮麗さがシネマティックなスケール感をかもしだし、
重厚なメロパワ感触と土着的な叙情性が同居した、まさにエピック・シンフォニックメタルというべき力作だ。
ドラマティック度・8 勇壮度・8 ペイガン度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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VEXILLUM 「WHEN GOOD MEN GO TO WAR」
イタリアのフォーク・パワーメタル、ヴィクシルムの2021年作
2011年にデビューし、本作は6年ぶりとなる4作目。のっけから11分の大曲で、バグパイプの音色にギターが重なり、
ケルティックな旋律にハイトーンヴォーカルを乗せて、勇壮でファンタジックなフォーク・メロパワを展開する。
同郷のELVENKINGにも通じるキャッチーなメロディアス性と女性コーラスなども加えた優雅な感触に、
メロパワらしい疾走感もあって、BLIND GUARDIANがフォークメタル化したような雰囲気も感じさせる。
一方で、どっしりとしたミドルテンポでは、MANOWARばりの勇壮なエピックメタルとしても楽しめ、
キャッチーなフォークメロディが自然体で融合されているという点では、バンドの最高作だろう。
ドラマティック度・8 フォーキー度・8 優雅度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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AMARANTHE 「MANIFEST」
スウェーデンのモダンメタル、アマランスの2020年作
2011年にデビュー、本作は6作目となる。前作に続き男女のトリプルヴォーカルの編成で、
メタリックなギターにデジタルなシンセを重ね、男女のクリーンヴォーカルに男性デスヴォイスが絡む
モダンでキャッチーなシンフォニックメタルを聴かせる。ヘヴィなギターリフときらびやかなシンセ、
伸びやかな女性ヴォーカルとデスヴォイスのコントラストも鮮やかで、メロディのフックや展開力もさすが。
楽曲は3〜4分前後とシンプルでキャッチーなところも明快で潔い。女性声をメインにしたナンバーも優美で、
LACUNA COILTEMPERANCEの間をつなぐ、このスタイルの完成形というべき高品質な内容だ。
元Arch Enemyのアンジェラゴソウ、Battle Beastのノーラ・ロウヒモなどがゲスト参加。
シンフォニック度・7 モダン度・8 女性Vo度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Fading Azalea 「Maze Of Melancholy」
スウェーデンのゴシック・シンフォニックメタル、フェーディング・アゼリアの2020年作
ヴォーカル、ギター、シンセをこなす女性マルチミュージシャンによるプロジェクトで、
シンフォニックでクラシカルなイントロから、ブラックメタルばりの激しさでたたみかけつつ
美しい女性ヴォーカルが乗ると、ゴシックメタルでもある耽美な空気にも包まれる。
激しいブラストビートが唐突に現れるなど、強引なリズムチェンジなどはマイナー臭いのだが、
涼やかでメランコリックな叙情と浮遊感を感じさせるところは、いかにも北欧らしい雰囲気だ。
ときにスクリームヴォイスも加えつつ、ほどよい激しさと美麗な味わいが同居した67分の力作です。
シンフォニック度・7 ゴシック度・8 女性Vo度・7 総合・・7.5
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Sanctorium 「Ornaments」
ロシアのシンフォニックメタル、サンクトリウムの2020年作
2014年にデビューし、3作目。男女Voを含む6人編成で、やわらかなフルートとオーケストレーションのイントロから、
メタリックなギターにシンセを重ね、ソプラノもこなす伸びやかな女性ヴォーカルと男性デスヴォイスが絡む、
EPICAばりの壮麗なサウンドを描いてゆく。女性奏者の奏でるクラシカルなシンセワークもセンス良く、
随所にピアノやストリングスなどが楽曲を優雅に彩る。Daria嬢の美しい歌声も、なよやかな魅力があって
歌詞は英語なので辺境的なマイナーさもさほど感じさせない。Disc2では、フォークメタル寄りのメロディも覗かせ、
しっとりとした優雅なナンバーなども耳心地がよろしい。こうなると、ときおり入ってくるデス声が耳障りにも思える。
CD2枚組ながら、Disc1が32分、Disc2はボーナス入れて46分と、長すぎないのも良いかと。
シンフォニック度・8 優美度・8 女性Vo度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Last Performance 「Allegiance to Fall」
ロシアのシンフォニックメタル、ラスト・パフォーマンスの2017年作
オーケストラルで壮麗なイントロから、メタリックなギターにシンフォニックなシンセを重ね、
美しいソプラノ女性ヴォーカルの歌声で華麗なサウンドを描きつつ、ときに激しく疾走する
ほどよくアグレッシブな激しさに、緩急あるリズムチェンジとともに知的な構築力も覗かせる。
ゴシックメタル寄りの耽美な世界観や、いくぶんProgMetal的でもある展開美も同居していて、
7〜8分前後の長め楽曲でも、流麗なギターと女性奏者によるクラシカルなシンセワークも美麗で、
インストパートも充実していて飽きさせない。Nadezhda嬢のソプラノも艶めいた美しさでなかなか魅力的。
しっとりと聴かせるアリアのような優美なナンバーにもウットリである。女性声シンフォメタル好きはぜひ。
シンフォニック度・8 壮麗度・9 女性Vo度・8 総合・8
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ALKASAR (АЛЬКАСАР)
ロシアのシンフォニックメタル、アルカサルの2014年作
ほどよくヘヴィでメロディックなギターに母国語の女性ヴォーカルを乗せた優雅なメタルサウンド。
シンフォニックというほどにはシンセが派手ではないで、全体的にわりとメロパワ寄りなのだが、
いくぶん翳りを帯びたウェットな雰囲気が、辺境なマイナー感と幻想的な味わいを描いている。
疾走感のあるナンバーから、ゆったりとした叙情パートまで、激しすぎない聴き心地で、
なよやかな巻き舌ヴォーカルを中心に、女性声メタルとしての優美なサウンドが楽しめる。
シンフォニック度・7 疾走度・7 女性Vo度・7 総合・7.5

HAMKA 「Multiversal」
フランスのシンフォニックメタル、ハムカの2017年作
FAIRYLANDのウィルドリック・リエヴィンと元DARK MOORのエリサ・マーティンによるプロジェクトで、
2005年作以来、12年ぶりとなる2作目。壮麗なイントロから始まり、メロディックなギターに
中性的なエリサのヴォーカルを乗せ、スケール感に包まれたシンフォニックメタルを展開する。
楽曲は3〜5分前後が主体で、ほどよい疾走感と重厚さ、キャッチーなメロディアス性で、
わりとシンプルに楽しめる。曲によってはオリエンタルな旋律も取り入れていて、
コンセプチュアルな香りも漂わせる。良い意味で女性らしさが希薄なエリサの歌声も、
サウンドに清涼感をもたらしていて、激しすぎないこの作風にはよくマッチしている。
シンフォニック度・8 疾走度・7 重厚度・8 総合・8 過去作のレビューはこちら
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Dunedain 「Memento Mori」
スペインのメロディックメタル、ダネダインの2019年作
ギタリストのトニー・ダネダイン率いるバンドで、2004年にデビューし、本作は7作目となる。
クサメロを含んだギターにスペイン語による伸びやかなハイトーンヴォーカルを乗せて疾走する、
正統派のメロパワサウンド。ミドルテンポのナンバーでは、スパニッシュらしい優雅な叙情と
キャッチーな牧歌性も感じさせ、同郷の先輩、AVALANCHなどに通じる雰囲気もある。
全体的に疾走ナンバーは少なめだが、力量あるヴォーカルと流麗なギタープレイ、
メロディックなフックもたっぷりなので、激しすぎない耳心地で楽しめる高品質作だ。
メロディック度・8 疾走度・7 スパニッシュ度・8 総合・8
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Serpencia 「SEDM」
チェコのメタルバンド、サーペンシアの2017年作
オールドなギターに母国語による艶めいた女性ヴォーカルを乗せた、ヴィンテージなメタルサウンド。
楽曲は3〜4分前後主体で、ほどよい疾走感もありつつ、わりとストレートな聴き心地で、
オールドなメタル感と、ソプラノを含むなよやかな女性ヴォーカルの歌声がややミスマッチで、
辺境らしい妖しさに包まれる。曲によっては、ゴシックメタル的な味わいでも楽しめ、
美しい女性声と母国語メタルが好きな方ならチッェクしてもよいかと。CDR仕様の自主制作。
ドラマティック度・7 辺境メタル度・8 女性Vo度・7 総合・7.5
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NeverStar 「I'll Be Waiting」
アメリカのシンフォニックメタル、ネヴァースターの2013年作
ほどよくヘヴィなギターに伸びやかな女性ヴォーカルの歌声を乗せ、シンセによる優美な味付けで
スタイリッシュな女性声シンフォニックメタルを聴かせる。シンフォニックな感触は控えめだが、
歌メロは比較的キャッチーで、魅力的な女性Voとともに優雅な雰囲気に包まれる。
楽曲は3〜4分前後とコントバクトな分、濃密な盛り上がりはさほどなく、あっさりした聴き心地。
この中庸感からひと皮向けるには、やはりメロディのフックと楽曲の充実が必要だろう。
シンフォニック度・7 キャッチー度・7 女性Vo度・8 総合・7.5
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SHADOWSIDE 「DARE TO DREAM」
ブラジルのメタルバンド、シャドウサイドの2010年作
2007年にデビューし2作目となる。メタリックなギターに女性らしからぬパワフルなヴォーカルを乗せた、
適度に疾走感のある正統派のメタルサウンド。紅一点、Dani嬢は、見た目はなかなかの美女なのに、
ドスの効いた歌声がなかなか強烈で、どっしりとしたサウンドにもよくマッチしている。
曲によっては、ゴシックメタル寄りの雰囲気も覗かせたり、キャッチーなノリのナンバーもあったりと、
それなりに聴きやすいのだが、インパクトのあるメロディや展開はさほどなく、もう少し華やかさが欲しいか。
女性らしい自然体の歌声を乗せた優美なバラードナンバーが個人的には一番気に入った。
ドラマティック度・7 パワフル度・8 女性Vo度・7 総合・7
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11/26
プログレメタルの冬(392)


Liquid Tension Experiment 「LTE3」
アメリカのテクニカルメタル、リキッド・テンション・エクスペリメントの2021年作
ジョン・ペトルーシ、マイク・ポートノイ、ジョーダン・ルーデス、トニー・レヴィンによるテクニカルユニット。
1999年以来、じつに22年ぶりとなる3作目。手数の多いドラムにきらびやかなシンセと巧みなギターを重ね、
カラフルなインストパートを描いてゆく。ペトルーシのメロディアスなギターフレーズも随所に織り交ぜつつ、
緩急あるドラマティックな構築性は、かつてのDREAM THEATERのインストパートを抽出したようでもある。
テクニカル性でだけでなく、メロディにはキャッチーな聴きやすさがあって、各メンバーの成熟したプレイが自然体で融合し、
肩の力の抜けた大人のアンサンブルも楽しめる。13分という2つの大曲も含めて、優雅と技巧が交差する見事な内容だ。
Disc2には、ジャムセッションを収録。けっこう長尺感はあるが、メンバーたちの演奏が好きな方には嬉しいボーナスだろう。
メロディック度・・8 テクニカル度・・9 優雅度・・8 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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A.C.T. 「Heatwave」
スウェーデンのプログレハード、アクトの2021年作
1999年にデビュー、スタジオ作品としては、2014年までに5作のアルバムを発表。本作は前作EPに続く、
6曲入りのミニアルバムで、EP四部作の2作目。ほどよくハードなギターに優美なシンセワーク、
キャッチーなヴォーカルメロディを乗せた、いかにもA.C.T.らしい華麗なプログレハードを展開する。
インストパートでの軽やかなリズム展開はさすがで、スタイリッシュなプログレといった感触もあり、
きらびやかなシンセとともに楽曲をカラフルに彩ってゆく。ゆったりとしたバラード風ナンバーでは、
泣きのギターとマイルドなヴォーカルも耳心地良い。繊細なメロディのラスト曲も素晴らしい。次作も期待。
メロディック度・・8 キャッチー度・・9 優雅度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Konstantin Jambazov 「A Look Over My Shoulder」
ブルガリアのミュージシャン、コンスタンティン・ジャンバゾフの2021年作
VirtulHadesなどでも活躍する、ブルガリアきっての多彩なマルチミュージシャン。
本作は全パートを一人でこなしている、まさに完全なソロアルバムで、巧みなギターワークに
美しいシンセアレンジ、自身の味のあるヴォーカルを乗せた、キャッチーなメロディックロックを聴かせる。
ドラムはプログラミングであるが、随所にテクニカルなリズムやプログレッシブなアレンジを覗かせながら、
あくまで優雅なメロディアス性に包まれていて、ときにトニー・マカパインばりの流麗なギタープレイから、
ゲイリー・ムーアのような哀愁の旋律も弾きこなすところはさすが。10分近い大曲はプログレよりの構築センスで
じっくりと楽しめる。キャッチーな大人のメロディックロックにプログレハード的な味わいが加わった好作品だ。
メロディック度・・8 キャッチー度・・8 優雅度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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WHITE VOID 「ANTI」
ノルウェーのプログ・ハードロック、ホワイト・ヴォイドの2021年作
SOLEFALD、BORKNAGARのラーズ・ネッドランド、IN VAINのトビアス・ソルバックらによるユニットで、
オールドなギターにシンセを重ね、朗々としたヴォーカルで、70〜80年代ルーツのハードロックを展開。
ヴォーカルメロディや叙情的なギターフレーズ、オルガンを含むシンセが、北欧らしい涼やかな空気を描きつつ、
SOLEFALDのようなプログレッシプな知的さとミステリアスなスケール感もかもしだしている。
サウンドは重すぎずキャッチーな聴き心地で、どことなく土着的な味わいとマイルドな歌声も含めて、
VINTERSORGあたりを思わせるところや、日本のSIGHなどに通じるミクスチャー的センスも素晴らしい。
ブラックメタルルーツの北欧ヴィンテージロックであり、プログレ寄りのHRとしても楽しめる傑作である。
ドラマティック度・・8 ヴィンテージ度・・8 北欧度・・8 総合・・8.5
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DGM 「Tragic Separation」
イタリアのメロディックメタル、DGMの2020年作
1997年にデビュー、本作は通算10作目となる。流麗なギターにシンセを重ね、パワフルなヴォーカルとともに、
テクニカルな展開美とフックのあるメロディアス性が同居した、華麗で濃密なサウンドを描いている。
シモーネ・ムラローニの奏でる巧みなギターワークを中心に、叙情的な泣きのメロディが随所に現れて
硬質なモダンさと優雅な味わいが絶妙にブレンドされており、キャッチーなノリのナンバーでは、
マーク・バジルの歌声もエモーショナルに光っていて、メロハー寄りの爽快さも今作の魅力のひとつ。
卓越したギタープレイを含めてインストパートでの説得力も抜群で、全体的にも隙のない完成度の傑作だ。
メロディック度・・8 テクニカル度・・8 ゴージャス度・・9 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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Witherfall 「Curse Of Autumn」
アメリカのプログレッシブ・ダークメタル、ウィザーフォールの2021年作
2017年にデビューし、3作目となる。スラッシーなギターリフにダーティなヴォーカルを乗せて疾走する、
激しいパワーメタル感触に、リズムチェンジを含む展開力で、ドラマティックなサウンドを聴かせる。
BLIND GUARDIANなどにも通じるエピックなコーラスや、アコースティックを含む叙情的なパートなど、
緩急あるアレンジも光っていて、流麗なギタープレイとともにインストパートの充実にも成長が窺える。
ここぞと突き抜けるハイトーンを聴かせるヴォーカルの表現力も、サウンドに説得力を付加している。
ラストは、ProgMetalらしい構築性に重厚なメタル感、メランコリックな叙情が同居した15分を超える大曲。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 重厚度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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ODD DIMENSION 「THE BLUE DAWN」
イタリアのプログレメタル、オッド・ディメンションの2021年作
2011年にデビュー、本作は8年ぶりとなる3作目。SFは映画のような雰囲気のイントロで幕を開け、
きらびやかなシンセワークととともに、軽やかなリズムにかすれた味わいのヴォーカルを乗せて
DREAM THEATERルーツのメロディックなプログレメタルを展開。オルガンなどを含むシンセは、
オールドなプログレらしい感触もあって、ときにシンフォニックに楽曲を彩っていて主役級の働きぶり。
デレク・シェリニアン(Planet X)がシンセで参加した、キャッチーで優美な味わいの10分の大曲や、
ゲストの女性シンガーが歌うシンフォニックメタル風、ロベルト・ティランティ(Labyrinth)が参加しての
男女ヴォーカルの優雅なナンバーなども含めて、わりとバラエティに富んだサウンドが楽しめます。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 叙情度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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TURBULENCE 「FRONTAL」
レバノンのプログレメタル、タービュランスの2021年作
テクニカルなリズムに硬質なギターとカラフルなシンセ、エモーショナルなヴォーカルを乗せて
緩急ある知的な展開力とともに、モダンな感触のProgMetalサウンドを聴かせる。
随所にシンフォニックなアレンジや叙情的なギターによる、ウェットな感触も含ませつつ
DREAM THEATERのようなキャッチーなメロディアス性で、ドラマティックに盛り上げる。
10分前後の大曲をメインに、スタイリッシュに構築してゆくセンスと確かな演奏力もあって、
中東という辺境臭さはほとんど感じさせない。MYRATHのような民族色はないので、
クールでモダンなプログレメタルとして普通に楽しめる。今後の成長に期待のバンドです。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 スタイリッシュ度・・8 総合・・8
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MYRATH 「Live in Carthage」
チュニジアのプログレッシブメタル、ミラスのライブ作品。2020年作
2007年にデビュー、これまでに5作のアルバムを発表し、アラブ系PrpgMetalのトップへ踊り出したこのバンド。
本作は母国チュニジア、カルタゴでのライブをCD+DVDに収録。美麗なシンセワークにメタリックなギター
アラビックな旋律を含んだメロディとキャッチーな優雅さが合わさった、独自のサウンドを聴かせる。
ときにオルガンなどのオールドな味わいのシンセに流麗なギタープレイ、伸びやかなヴォーカルを乗せ、
ときにテクニカルに、そしてメロディアスに、確かな演奏力とともに、緩急ある楽曲をドラマティックに構築してゆく。
CDには17曲76分を収録。DVDは18曲92分で、ペルシア絨毯の敷かれた舞台に艶めいた踊り子が現れ
アラビックな踊りを披露するなど、視覚的にもゴージャスな躍動感に包まれたステージが鑑賞できる。
ライブ演奏・・9 ライブ映像・・9 アラビック度・・9 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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Derek Sherinian「The Phoenix」
アメリカの鍵盤奏者、デレク・シェリニアンの2020年作
PLANET Xなどで活躍する技巧派キーボーディスト、ソロ作としては2011年以来となる作品で、
サイモン・フィリップスをドラムに、スティーヴ・ヴァイ、ザック・ワイルド、ロン・サール、キコ・ルーレイロ、
ビリー・シーン、ジミー・ジョンソン、トニー・フランクリンといった名うてのギタリスト、ベーシストが参加。
巧みなギタープレイとシンセの掛け合いを軽やかなリズムに乗せた、フュージョンロックを描き出す。
各ギタリストのメロディやフレージングを活かした、デレクのアレンジャーとしてのセンスも冴えていて、
テクニカルでありながらも、技巧のみに走らない大人のハードフュージョンというべき優雅な聴き心地。
オルガンやエレピを含む鍵盤もさすがで、軽妙なドラムとともに素晴らしいギタリストたちのプレイに聴き惚れる。
メロディック度・・7 テクニカル度・・8 優雅度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Virgil Donati 「Ruination」
オーストラリア出身のドラマー、ヴァージル・ドナティの2019年作
PLANET XICEFISHなどで活躍する超絶ドラマーのソロ作品。前作はオーケストラとドラムを融合させた大傑作であったが、
本作には、オーストラリアのシンガー、イルウィン・トーマスをヴォーカルに迎え、ブラジルのジャズ系ギタリスト、アンドレ・ニエリをはじめ、
BRAND Xにも参加したクリス・クラーク、オーストラリアのピアニスト、ジョー・シンダモ、ICEHISHのメンバーなどがゲスト参加、
変則リズムたっぷりのテクニカルなドラムを軸に、メタリックなギターを重ねたDjent風味と、優美なピアノやシンセを加えた、
ジャズ/フュージョン要素が融合したサウンド。歌パートでのほどよくキャッチーな味わいと、随所に聴かせる巧みで流麗なギタープレイ、
ゆるやかであるが緊張感あるアンサンブルを生み出す恐るべきドラムテクニックが絶妙に融合されたプログ・メタルフュージョンが楽しめる。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・9 優雅度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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AZUSA 「Loop of Yesterdays」
アメリカ&ノルウェー混合のテクニカルメタル、アズサの2020年作
The Dillinger Escape Planのベースと、EXTOLのギター、ドラムによるユニットで、2018年にデビュー、
2作目となる本作は、のっけからスラッシュメタルばりの激しさでたたみかけつつ、女性ヴォーカルを乗せた
ゆったりとした叙情性に切り替わる、多重人格的なアヴァンメタルを聴かせる。凶悪なスクリームヴォイスと同時に
美しい女性声を使い分ける、Eleni嬢の歌声も存在感抜群で、2〜3分前後の小曲主体ながら、アグレッシブな激しさと
唐突な展開でなかなかスリリングに楽しめる。スクリームのパートがちょっと多いので耳障りに思う人もいるかも。
全35分でもけっこうお腹いっぱいです。TESTAMENTのアレックス・スコルニックがゲスト参加している。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・8 アヴァンギャル度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Wilderun 「Veil of Imagination」
アメリカのプログレッシブメタル、ウィルドランの2019年作
2012年にデビューし、3作目。アコースティックギターとマイルドなヴォーカルでゆるやかに幕を開け、
オーケストラルなアレンジや激しいブラストビート、ときにグロウルヴォーカルによるアグレッシブな感触と
ポストプログレ的な優美な叙情も垣間見せながら、緩急ある流れで14分の大曲を構築してゆく。
静と動の対比という点では、OPETHに通じる雰囲気もあるが、こちらはより極端で、ゆったりとしたパートでは
繊細な美しさに包まれ、オーケストラルな壮麗さはサントラ的に大仰で、そこにメタルの激しさが合体したという味わい。
9分、11分というラストの2曲は、それぞれ激しさと叙情とが対照的に表現され、アーティスティックなセンスが窺える。
日本盤のボーナスには、IRON MAIDEN「第七の予言」のシンフォニックなカヴァーを収録。
ドラマティック度・・8 壮大度・・8 壮麗度・・8 総合・・8
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North Of South 「The Dogma & The Outsider」
スペインのプログレッシブ・メタル、ノース・オブ・サウスの2020年作
マルチミュージシャン、チェチュー・ノスによるプロジェクトで、2018年にデビューし2作目。
メタリックなギターにマイルドなヴォーカルを乗せ、キャッチーな叙情と知的な展開力に、
ときにスクリームヴォイスも加えた、モダンでスタイリッシュなプログメタルを聴かせる。
スパニッシュ風のアコースティックギターなども取り入れたやわらかな叙情性や、
Diabulus in Musicaのズベロア嬢がゲスト参加した、男女ヴォーカルのナンバーなども含め、
つかみどころのないカラフルな味わい。全32分、インパクトのあるパートがもっと欲しいか。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・7 楽曲度・・7 総合・・7
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Shadowland 「Falling」
スウェーデンのプログレメタル、ジャドウランドの2007年作
メタリックなギターにうっすらとしたシンセ、伸びやかでパワフルなヴォーカルを乗せた、
VANDEN PLASなどにも通じる、重厚な正統派プログレッシブ・パワーメタルを聴かせる。
ほどよくキャッチーなヴォーカルメロディとともに、わりとストレートな聴きやすさがあって、
楽曲も4〜5分前後がメインで、全体的にもテクニカルというよりは、ドラマティックな雰囲気。
どっしりとしたメタル感と表現力あるヴォーカルの歌声のバランスも良く、じっくりと楽しめる一方、
インパクトのある展開やフックがもっと欲しいか。無名バンドながらもクオリティは高い好作品だ。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 重厚度・・8 総合・・7.5
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11/12
メロパワ系たっぷり(377)


Orden Organ 「Final Days」
ドイツのメロディックメタル、オルデン・オーガンの2021年作
1999年にデビュー、7作目となる本作は、サイバーなジャケのイメージ通り、ぐっとモダンなサウンドになっている。
随所に聴かせる流麗なギタープレイも硬質な感触で、リズムとユニゾンするエッジの効いたギターリフとともに、
モダンなヘヴィネスを強めたスタイリッシュな雰囲気である。一方では、キャッチーなメロディアス性も残していて、
勇壮なコーラスなどには以前の作風の名残も覗かせる。これまでのBLIND GUARDIAN+RUNNING WILDという作風から、
クールなシンフォニックメタル風に大胆にシフトしてきたという印象だ。作品の質自体は高いのだが、前作までの
オールドスタイルのメロパワが好きな方にはやや拍子抜けで、これが本作のみの変化なのかどうか気になるところである。
ドラマティック度・・7 王道メロパワ度・・5 モダン度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Iron Savior「Skycrest」
ドイツのメロディックメタル、アイアン・セイヴィアーの2020年作
ピート・シルク率いる正統派のジャーマンメタルバンド。12作目となる本作は、叙情的なイントロから、
メタリックなギターリフにパワフルなヴォーカルを乗せた、王道のパワーメタルを聴かせる。
サビでのキャッチーな歌メロとコーラスは、GAMMA RAYを思わせつつ、よりストレートなメタル感で
いくぶんダーティな歌声も、疾走感のあるアグレッシブなサウンドにはよくマッチしている。
疾走メロパワを基本に、ミドルテンポのキャッチーなナンバーまで、全60分、迷いのないサウンドが詰まっている。
90年代的なジャーマンメタルのスタイルを堅持し続ける、その頑固な姿勢には最敬礼である。
メロディック度・・8 疾走度・・8 王道ジャーマン度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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IRON MASK 「Master Of Masters」
ベルギーのメロディックメタル、アイアン・マスクの2020年作
外見も含めてベルジャンのイングヴェイというべき、ダッシャン・ペトルッシ率いるバンドの7作目。「鉄仮面の支配者」
本作も、様式美なギターにきらびやかなシンセを重ね、ネオクラシカルなメタルサウンドを展開する。
新加入のヴォーカルも伸びやかな歌声で楽曲を彩り、疾走するメロパワナンバーからどっしりとしたミドルテンポまで、
サウンドに力強い説得力を加えている。本作では、わりとオールドスタイルの80年代HR風のナンバーもあったりと、
よりレイドバックしたような聴き心地で、9分という大曲なども、往年のイングヴェイのようなサウンドが楽しめる。
もちろんギターソロでの流麗なプレイはさすがで、ネオクラだけでなく大人の叙情フレーズも随所に聴かせてくれる。
曲によってはシンフォニックメタル風の重厚さも覗かせつつ、正統派の様式美メタルとしてのクオリティを追及した好作品だ。
メロディック度・・8 様式美度・・8 大人のネオクラ度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Everdawn 「Cleopatra」
アメリカのシンフォニックメタル、エヴァードーンの2021年作
Midnight Eternalのメンバーを主体に、Symphony Xのマイク・レポンドも参加するバンド、
メタリックなギターに美麗なシンセアレンジ、美しいソプラノ女性ヴォーカルの歌声で、Nightwishタイプの
シンフォニックメタルを聴かせる。紅一点、Alina嬢の歌声は伸びやかで優美に楽曲を彩って、
随所に光る流麗なギタープレイなど、安定した演奏力も含めて、一線級のバンドにも引けを取らない。
楽曲は4〜5分前後とほどよくシンプルで、適度な疾走感もあるので、さほどダレることもない。
女性シンガーの実力と魅力は充分なので、あとはインパクトのあるキラーチューンを増やしてもらいたい。
シンフォニック度・・7 壮麗度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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HELION PRIME「Question Everything」
アメリカのシンフォニックメタル、ヘリオン・プライムの2020年作
2016年にデビュー、3作目となる本作は、White Empressの女性シンガー、メアリー・ズィマーが加入し、
アインシュタインや、ソクラテス、ガリレオ・ガリレイといった、学者や哲学者を楽曲ごとのテーマにおいて、
メタリックなギターにきらびやかなシンセと伸びやかな女性ヴォーカルを乗せたメロディックメタルを聴かせる。
キャッチーなメロディのフックとシンフォニックで壮麗なアレンジが、メアリーの歌声によくマッチしていて、
重厚でありながらとても耳心地が良い作風だ。アグレッシブ過ぎないヘヴィネスとメタル感も絶妙で、
全体的にも華やかな聴き心地で、女性声シンフォニックメタルとしてクオリティが高い。要チェックのバンドです。
シンフォニック度・・8 キャッチー度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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JUDICATOR 「LET THERE BE NOTHING」
アメリカのメロディックメタル、ジャディケイターの2020年作
2012年にデビューし、すでに5作目となる。叙情的なイントロから、どことなくBLIND GUARDUAN風の世界観を感じさせるが、
メタリックなギターにパワフルなヴォーカルを乗せて、エピックな勇壮さとともに、ドラマティックな正統派メロパワを展開。
ヴォーカルの乗せ方もブラガーのハンズィ風で、甘すぎないメロディアス性とアグレッシブな激しさを同居させ、
随所にウェットな叙情性を含ませながら、東ローマ軍の司令官、ベリサリウスをテーマにした歴史的なコンセプトによる
スケール大きなメタルサウンドを聴かせる。8分、9分という大曲も多く、緩急ある展開力でドラマ性を演出してゆく。
重厚かつエピックな空気感で、ブラガースタイルのメタルが好きな方はチェックのバンドです。
ドラマティック度・・8 王道メロパワ度・・8 ブラガー度・・8 総合・・8
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DRAGONY 「Viribus Unitis」
オーストリアのメロディックメタル、ドラゴニーの2021年作
2012年にデビューし4作目となる。オーストリアの国父と呼ばれた皇帝フランツ・ヨーゼフ1世をコンセプトに、
クラシカルで優美なイントロから幕を上げ、ツインギターにシンセを重ね、マイルドなヴォーカルとともに疾走する、
華麗なメロディックメタルを聴かせる。重すぎないキャッチーなメロディアス性と美麗なシンセワークで、
ほどよい疾走感のナンバーから、ゆったりとしたナンバーなども優雅なシンフォニックメタルとして楽しめる。
同郷のSERENITYに比べると、より壮麗で軽快、クサメロ寄りの耳心地は日本人好みといえるだろう。
楽曲自体は4〜5分前後が主体でわりとコンパクト。全49分で、濃密すぎないところがよろしいですな。
ドラマティック度・・8 疾走度・・7 壮麗度・・8 総合・・8
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MELODIUS DEITE 「Elysium」
タイのメロディックメタル、メロディウス・ダイテの2020年作
2008年にMELODIUS名義でデビュー、4作目となる本作はヴォーカルに元GALNERYUSのYama-Bが加入、
タイと日本の混合バンドとなった。流麗なギターでたたみかけるスタイリッシュなイントロから始まり、
英語歌詞による伸びやかなヴォーカルを乗せて、欧州スタイルのメロディック・パワーメタルを展開。
クールでドラマティックな感触は、初期のクサメタル路線から一皮むけた印象で、これはこれで悪くない。
随所にグロウルヴォイスも加えたアグレッジブな部分と、きらびやかなシンセワークのシンフォニック性が同居して
厚みのある堂々たるサウンドを描いてゆく。クサメロ感は薄らいだ分、重厚なメロパワとして深化してきた。
一方で、1s収録の再録曲はクサメロスピナンバーで、ボーナストラックはインストのメタルフュージョン風という。
ドラマティック度・・8 疾走度・・7 重厚度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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STARBLIND 「Black Bubbling Ooze」
スウェーデンのメタルバンド、スターブラインドの2020年作
2014年にデビューし、4作目となる。オールドなギターに伸びやかなハイトーンヴォーカルで、
IRON MAIDENルーツのトラディショナルなメタルサウンドを聴かせる。ほどよく叙情的なギターフレーズに、
手数が多すぎないドラムも含めた、アナログ感あるアンサンブルも確信犯的で、80年代感がたっぷりだ。
3〜5分前後の楽曲は、シンプルなノリの良さで、ヘヴィ過ぎないキャッチーな聴きやすさで楽しめる。
リズムチェンジなどの展開力もメイデン色が強いが、メロパワ寄りの疾走ナンバーもあって、
このタイプが好きな方ならニンマリだろう。全8曲、35分というのも、いかにも80年代アナログ的だ。
ドラマティック度・・7 オールドメタル度・・9 メイデン度・・8 総合・・7.5
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SHADOW WARRIOR 「CYBERBLADE」
ポーランドのメタルバンド、シャドウ・ウォリアーの2020年作
サムライやカタナを愛する日本マニアたちによるバンドで、2019年にデビュー、本作は初のフルアルバム。
日本語を含むナレーションのSEから、IRON MAIDENばりのオールドなツインギターに女性ヴォーカルを乗せて、
80年代ルーツの正統派メタルサウンドを聴かせる。日の丸に神風の文字入りの鉢巻をしめたアンナ嬢の歌声は
パワフル過ぎず艶っぽすぎずという、ほどよくハスキーで伸びやか。ドラムを含めた演奏力は並程度だが、
どの曲からもトラディショナルメタルへの情熱が感じられて、初々しい感じがなんとなく微笑ましい。
ボーナストラック除いて全35分。ボーナスの日本語曲にもくすり。666枚限定のナンバリング入り。
ドラマティック度・・7 正統派度・・8 古き良きメタル度・・8 総合・・7.5
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THERAGON 「WHERE THE STORIES BEGIN」
スペインのメロディックメタル、セラゴンの2021年作
ファンタジックな世界観のコンセプトアルバムで、壮麗なイントロで幕を開け、クサメロなギターに
カイ・ハンセン寄りのハイトーンヴォーカルを乗せて疾走する、華麗なメロディックメタルを展開する。
コーラスによるエピックな味わいと、キャッチーなメロディのフック、シンフォニックなアレンジで
INSANIADREAMTALEなど、北欧系メロパワの感触に近い爽快な聴き心地が楽しめる。
どっしりとしたミドルテンポのナンバーでの勇壮な雰囲気から、優美なシンセによるパートも挿入したり、
メリハリのある展開力にもセンスを感じさせる。ファンタジックなクサメロ感にニンマリとなりつつ、
ラストは11分近い大曲で、緩急あるドラマティックな構築力でストーリーを描いてゆく。これは傑作だ。
ドラマティック度・・9 ファンタジック度・・9 クサメロ度・・9 総合・・8
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SAEDIN 「ENTRE RIOS」
スペインのシンフォニックメタル、サエディンの2020年作
2017年にデビューし、2作目となる。女性Vo、女性シンセ奏者を含む5人編成で、やわらかなシンセをギターに重ね、
スペイン語による艶めいた女性ヴォーカルで聴かせる、アンダルシアな土着性を含んだサウンド。
哀愁を感じさせるメロディのスパニッシュロックとしては、女性声版MEDINA AZAHARAという雰囲気もあり、
メタル的な激しさよりも優雅な叙情性に包まれる。フロントのアンジェラさんのエモーショナルの歌声も、
サウンドを濃厚な薔薇のように暑苦しく彩っている。随所に美麗なシンセと泣きのギターフレーズも聴かせながら、
シンフォニックメタルとしての優美な味わいが前に出る。これぞスパニッシュというサウンドが楽しめる逸品です。
ドラマティック度・・8 スパニッシュ度・・9 哀愁の叙情度・・9 総合・・8
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MEDINA AZAHARA 「Origen Y Leyenda」
スペインのベテランハードロック、メディナ・アザーラの2009年作
1979年にデビュー、スペインを代表するロックバンドである。本作は15作目あたりだろうか。
クラシカルで優雅なイントロ曲から、様式美なギターに美しいシンセとスペイン語のヴォーカルで、
キャッチーなメロディと哀愁の叙情に包まれた、壮麗なハードロックサウンドを展開する。
オルガンを含むやわらかなシンセアレンジはときにけっこうプログレ寄りで、スパニッシュな哀愁とともに
アラビックなメロディや女性ヴォーカルを加えたナンバーなどもありつつ、しっかりとキャッチーに仕上げている。
全15曲、63分、ベテランらしい完成度の高さで聴き通せる。DVDにはビデオクリップ、メイキング映像を収録。
ドラマティック度・・8 スパニッシュ度・・9 哀愁の叙情度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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MEDINA AZAHARA 「LAS PUERTAS DEL CIELO」
スペインのベテランハードロック、メディナ・アザーラの2014年作
17作目の本作は、アラビックなイントロで幕を開け、ほどよくハードなギターにシンセを重ね、ヴァイオリンも加えた
厚みのあるサウンドに、スペイン語による哀愁を帯びたヴォーカルで、シンフォニックなハードロックを聴かせる。
キャッチーなメロディアス性とスパニッシュな叙情を、プログレハード的な優雅さで包み込んだという感触で、
ゆったりとしたバラードナンバーも、オルガンなどのシンセとともに優美な味わいだ。全体的にも激しさよりも、
やわらかな聴き心地なので、プログレ寄りのリスナーにも楽しめるだろう。全15曲62分という力作だ。
ドラマティック度・・8 スパニッシュ度・・9 哀愁の叙情度・・9 総合・・8
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MEDINA AZAHARA 「Paraiso Prohibido」
スペインのベテランハードロック、メディナ・アザーラの2016年作
18作目の本作は、わりとオールドな味わいのギターにシンセを重ね、スペイン語のヴォーカルを乗せた、
大人の叙情ハードロックという趣のサウンドから、優雅なキャッチーなナンバーまで、
ベテランらしいどっしりとした聴き心地で、哀愁をたたえたバラードなどもじつに耳心地よい。
随所に流麗なギターフレーズや美麗なシンセアレンジもまじえ、スパニッシュな叙情に包まれる。
メタル的な激しさはあまりないので、スペイン語による壮麗なメロハーとしても楽しめるだろう。
ドラマティック度・・8 スパニッシュ度・・9 哀愁の叙情度・・8 総合・・8 
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10/29
メロデス&ブラックメタルの秋(362)


Rising Sunset 「De Mysterium Tenebris」
マルタ共和国のシンフォニック・デスメタル、ライジング・サンセットの2020年作
2006年にデビューし、3作目となる。シンフォニックなアレンジにヘヴィなギターとデスヴォイスを乗せ、
ゴシック的な耽美な世界観と、ほどよくアグレッシブな重厚さが同居した美麗なサウンドを描く。
暴虐性よりもシンフォニックな壮麗さが前に出ていて、随所にダミ声を乗せた激しい疾走パートもありつつ、
流麗なギターフレーズやオーケストラルな優雅さが加わって、ダークでクラシカルなサウンドを構築する。
デスメタル要素とオーケストラルなシンフォニック性の同居という点では、初期のTHERIONなどが好きな方にも
わりと楽しめるだろう。あるいは、デス声入りのシンフォニックメタル…という感じでも聴ける強力作です。
シンフォニック度・・9 暴虐度・・6 重厚度・・8 総合・・8
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Kalmah 「Palo」
フィンランドのメロディック・デスメタル、カルマの2018年作
2000年にデビューし、8作目となる。甘すぎないメロディを含んだツインギターにグロウルヴォーカルを乗せて
激しく疾走する北欧メロデスの王道スタイル。ヴァイキング寄りの勇壮な感触とともに、涼やかな土着性を
メロディアス取り込みつつも、重厚な迫力をしっかり残している、キャリアのあるバンドらしい質の高さが光る。
楽曲も、4〜5分前後と短すぎず長すぎずで、ときにAT THE GATES風、ときにAMORPHIS風というような
確信犯的なギターフレーズも冴えを見せ、ゆったりとしたスローテンポのナンバーは、ほぼ初期アモルフィスのよう。
美しいシンセアレンジは、ETERNAL TEARS OF SORROWのようでもあり、正統派メロデスの生き残りとして
同郷バンドのエッセンスをすべて吸収しているような感じもある。新鮮味はないが高品質な作品デス。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・7 北欧メロデス度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Ulvedharr 「World Of Chaos」
イタリアのデスメタル、ウルヴェドハルの2019年作
2013年にデビューし、4作目。スラッシーなギターリフにデスヴォイスを乗せて激しく疾走しつつ、
ミドルテンポを含むリズムチェンジにトレモロのギターフレーズなども含んだ、暴虐過ぎない聴き心地。
VADERあたりをデスラッシュ寄りにしたような雰囲気もあり、激しくブラスト疾走する部分もあるが、
甘すぎないほどの叙情も覗かせる、全体的に重すぎないオールドスタイルのデスメタルである。
楽曲は3〜4分前後が主体で、濃密になり過ぎない程度にシンプルなので、わりと聴きやすいのだが、
激しさも重厚さも疾走感も、ほどほどなので、このバンドならではの個性がもっと欲しい気もする。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・7 重厚度・・7 総合・・7.5
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DODSFALL 「DODEN SKAL IKKE VENTE」
ノルウェーのブラックメタル、ドドスフォールの2019年作
2011年にデビューし、すでに5作目となる。トレモロを含むギターにダミ声ヴォーカルを乗せて疾走しつつ、
緩急あるリズムチェンジやメロデス的な叙情フレーズも覗かせる、わりとメロディックブラック寄りのサウンド。
激しいブラスト疾走するパートでも、軽すぎず重すぎずで、暴虐性をさほど感じさないのが良いですね。
全体的に派手な部分はないのだが、ほどよくノイジーなオールドスタイルと甘すぎない叙情性は、
DISSECTIONあたりが好きな方にも楽しめるだろう。ミドルテンポと疾走感のバランスも良いあんばいで、
ヴォーカルのガナり声も迫力がありすぎずちょうどよい。古き良き北欧ブラックメタルを受け継いだ強力作。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・7 オールドブラック度・・8 総合・・8
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Valkyrja 「Contamination」
スウェーデンのブラックメタル、ヴァルキリアの2010年作
2007年にデビューし2作目。本盤は10周年記念の2021年リマスター再発盤。トレモロを含むザラついたギターリフに
かすれたダミ声ヴォーカルを乗せて激しくしくブラスト疾走する、スペイシーな雰囲気のブラックメタルを聴かせる。
暴虐に疾走しつつも、音圧がさほどでもないので、案外聴きやすく、メロディックな部分は少ないが、
リズムチェンジなど緩急ある構築力に、タイトなドラムをはじめ確かな演奏力によるクオリティの高さが光る。。
楽曲は6〜7分と長めのナンバーも多いが、ほどよい暗黒性とともに強度のある空気感で長さを感じさせない。
スペイシーな神秘性と激しさが同居した強力作。再発盤のボーナスに2014年のライブ音源2曲を追加収録。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・8 スペイシー度・・8 総合・・8
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SVEDERNA 「HARD」
スウェーデンのブラックメタル、スヴェデルナの2020年作
2018年にデビューし、2作目となる。ザラついたギターリフにグロウル寄りのダミ声ヴォーカルを乗せ、
ブラッケンな迫力に包まれた本格派のブラックメタルを聴かせる。トレモロのフレーズによる北欧らしい
コールドな空気と重厚でダークな世界観を描く激しくも硬派な味わいで、荘厳な迫力を感じさせる。
激しい疾走パートも随処に配しつつ、どっしりとしたスロー〜ミドルテンポでもサウンドには説得力があり、
ときにペイガン寄りの涼やかな土着性も覗かせている。媚のない暗黒性は、MARDUKなどにも通じるが、
甘すぎない程度の叙情性とともに、激しさだけではないドラマティックな展開もある。堂々たる力作です。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・8 重厚度・・8 総合・・8
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EHLDER 「Nordabetraktelse」
スウェーデンのペイガンブラックメタル、エルダーの2019年作
2人組のユニットで、ノイジーなギターにシンセを重ねて、ダミ声ヴォーカルとともに荒々しくブラスト疾走する、
初期のWINDIRにも通じる雰囲気の神秘的なペイガンブラックメタル。楽曲は7〜9分という長めがメインで、
単調なリフレインも多いので、わりと大味なのだが、その分プリミティブな原初性がダイレクトに感じられて、
土着的なギターフレーズとともに、初期BURZUMのような、寒々しくも幻想的な空気が楽しめるかもしれない。
ミドルテンポのパートもわりと多いが、アナログ感ある音質も含めて、激しすぎないところがかえって魅力か。
ラスト曲はパーカッションのみ。初期SATYRICONなど、荒々しくプリミティブな北欧ブラックが好きな方はいかが。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・7 プリミティブ度・・8 総合・・7.5
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Verikyyneleet 「Ilman Kuolemaa」
フィンランドのブラックメタル、ヴェリキネレートの2020年作
90年代から活動する個人ユニット…いわゆる独りブラックメタルで、アルバムとしてはこれがデビュー作となる。
ブックレット内の手書き文字やイラストが微笑ましいが、サウンドの方はトレモロのギターにシンセを重ね、
わめき声ヴォーカルとともに軽やかにブラスト疾走する、プリミティブな味わいのブラックメタルを聴かせる。
北欧らしい叙情的なギターリフやうっすらとしたシンセにより、暴虐性よりは涼やかな土着性に包まれていて、
曲間に小曲を挟みつつ、美しいシンセをメインにした11分の大曲など、ダークで幻想的な世界観に浸れる。
音圧もあまりないので、やはりBURZUMなどに近い雰囲気だが、こちらはより美しい。全72分という力作だ。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・7 幻想度・・8 総合・・7.5
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(0)「SkamHan」
デンマークのポストブラックメタル、パーレン・ゼロ・パーレンの2020年作
とせことなくサイケなジャケに特異なバンドネーム。サウンドの方は、トレモロのギターにダミ声ヴォーカルを乗せ、
ほどよく激しさのあるポストブラックメタルというところ。叙情的なギターをじっくりと聴かせるナンバーなど、
暴虐さよりも独特の浮遊感に包まれていて、9分を超える大曲などもゆっりとした静謐感を描きつつ、
疾走パートでも低音ダミ声ヴォーカルとともに、メランコリックで物悲しい空気が重なってゆく。
曲によってはスラッジ寄りのうねりのある感触も覗かせ、タイトル曲ではメロウな泣きのギターが響き渡る。
激しさは控えめであるが、荒涼とした寒々しさで、独特のサイケ・ブラック的としても楽しめる異色作です。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・5 叙情度・・7 総合・・7.5
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AORATOS 「GODS WITHOUT NAME」
アメリカのブラックメタル、オーラトスの2019年作
Nightbringerのメンバーによるソロプロジェクトで、不穏な闇を感じさせるようなイントロナンバーから、
トレモロのギターリフに唸るようなヴォーカルを乗せてブラスト疾走する、荘厳な暗黒性に包まれたサウンド。
スローや静寂パートでのミステリアスな空気感は、アトモスフェリック系というべき世界観で、
暴虐な激しさとダークな暗黒美が同居する。楽曲は4〜7分前後と、Nightbringerに比べるとコンパクトながら、
すぶずぶと闇の中に引き込まれるような聴き心地で、雰囲気モノブラックとしてはなかなか出来がよい。
激烈なブラストもありつつシンセによる美しいアレンジなどもあって、漆黒の美学に浸れるような強力作。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・8 暗黒度・・9 総合・・8
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ARKHERON THODOL 「Rituals of the Sovereign Heart」
アメリカのポストブラックメタル、アーケロン・ソードルの2020年作
16分、17分という大曲を含む全4曲という構成で、ツインギターにうっすらとしたシンセを重ねて激しく疾走する、
叙情的なブラックメタル。メロディアスなギターフレーズや優美なピアノを乗せたゆったりとしたパートもあって、
プログレッシブなポストブラックという風に楽しめる。ときおりダミ声ヴォーカルも入るが、インストパートが多いので、
むしろシンセアレンジの美しさやトレモロのギターリフなどの叙情性が前に出ていて、暴虐さはあまり感じない。
激しいブラスト疾走パートもありつつ、緩急ある展開とともに、Alcestなどのファンでも耳心地よく楽しめるだろう。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・7 優美度・・8 総合・・8
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DECEM MALEFICIVM 「La Fin De Satan」
チリのブラックメタル、デセム・マレフィシウムの2019年作
ツインギターにシンセを含む編成で、ほどよく叙情的なギターに吐き捨てヴォーカルを乗せて、
激しくブラスト疾走しつつ、シンセによるシンフォニックな味付けで、優雅なブラックメタルを展開する。
朗々としたノーマルヴォーカルも加え、ゆったりとしたアンビエントなパートなども含む、緩急ある構築力で
ドラマティックな世界観を描いてゆく。随所に泣きのギターフレーズも耳心地よく、全体的に邪悪さよりも、
KRALLICE
のような優美な空気があるので、ポストブラックやカスカディアン・ブラックのファンにも楽しめるだろう。
王道のブラックメタルとしての激しさと、シンフォニック・ブラック寄りの華麗さが同居した強力なアルバムです。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・7 優雅度・・8 総合・・8
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Acherontas 「15 Years Anniversary Of Left Hand Path Esoterica」
ギリシャのブラックメタル、アケロンタスの2011年作
Disc1には、2007年のデビュー作「Tat Tvam Asi」全曲に、2009年のSPLIT CD収録曲を収録。
Disc2には、2010年の2作目「Theosis」全曲に、2008年のSPLIT CD収録の大曲を収録した、CD2枚組。
優雅なイントロで幕を開けるデビュー作は、トレモロを含むギターにガナり声ヴォーカルを乗せて激しく疾走、
ほどよい叙情性とともにミステリアスな空気に包まれた、プリミティブなブラックメタルを聴かせる。
シンセによる優美なアレンジも覗かせた、メロディックブラック寄りのスタイルは、1作目ですでに確立されている。
2作目になると、サウンドにぐっと迫力が増して、音質も良くなったことで、メロディックなギターフレーズが引き立ってきた。
シンセによるスぺイシーな雰囲気も覗かせつつ、激しさと叙情のバランスのとれたドラマティックなブラックメタルである。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・8 ミステリアス度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら


Atra Mustum 「Хаос (Chaos) 」
ロシアのシンフォニック・ブラックメタル、アトラ・ムスタムの2012年作
2004年にデビューし、2作目。女性シンセ奏者を含む5人編成で、美麗なシンセワークにギター重ね、
ガナり声ヴォーカルを乗せて疾走する、Dimmu Borgirタイプのシンフォニックブラックを聴かせる。
激しいブラストビートでも、きらびやかなシンセが優美な味わいになっていて、さほど暴虐性は感じさせない。
リズムチェンジ含む展開力のある構築性とともに、激しい疾走感とクラシカルな優美さのバランスも良く、
新鮮味はないが、女性奏者によるセンスあるシンセアレンジも含めて、質の高いシンフォブラが楽しめる。
ラスト曲の効果音入りのインスト曲は、なんとなく映画っぽいですね。全47分で長さもちょうどよい。
シンフォニック度・・8 暴虐度・・7 激しくも壮麗度・・8 総合・・8
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NOCTURNO CULTO 「THE MISANTHROPE」
ノルウェーのブラックメタル、ノクターノ・カルトの2007年作
初期DARKTHRONEのメンバー、Ted Skjellumによるプロジェクトで、CDの方は全20分のEPボリューム、
ノイジーなギターやシンセ、エフェクトを効かせたギターなどによる、スペイシーなインストサウンド。
ドラムなどは入らないのでメタル感触はゼロ。ほとんど曲にもなっていないので、ブラックメタルというよりは、
インプロ系のアンダーグラウンドな即興作品という味わいだ。DVDにはドキュメタンリー映像やスタジオセッション、
初期DARKTHRONE関連の映像などを収録。雪深いノルウェーの日常の景色から、来日時の東京での様子、
日本の女性ブラックメタル、GALLHAMMERや、AUR NOIRのステージ映像なども含む、なかなかレアな内容です。
ブラックメタル度・・6 マニア向け度・・9 CDはオマケ度・・8 総合・・6
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10/22
メタルの秋深し(347)


OPEROSE 「Oceans of Starlight」
イギリスのシンフォニックメタル、オペローズの2020年作
メタリックなギターにオーケストラルなアレンジを重ね、美しいソプラノ女性ヴォーカルの歌声で、
ほどよい激しさを含んだ、Nightwishタイプの優雅なシンフォニックメタルを聴かせる。
紅一点、ジェニファー嬢の歌声は、伸びのある艶めいたソプラノで、オペラティックで表現力ある歌唱は、
ターヤやフロール・ヤンセンにも引けを取らない。随所に流麗なギターフレーズも効いていて、
優美で壮麗なアレンジとともに、サウンド自体の説得力も新鋭バンドらしからぬ堂々たるものだ。
素晴らしい女性Voにウットリの逸品。ラストは12分の大曲で、クラシカルなインストサウンドを展開する。
シンフォニック度・・8 壮麗度・・9 女性Vo度・・9 総合・・8
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BIEST 「Stirb Oder Friss」
ドイツのメタルバンド、ビーストの2020年作
ヘヴィなギターリフにドイツ語によるパワフルな女性ヴォーカルを乗せた、正統派のメタルサウンド。
楽曲は3〜4分前後といたってシンプル。どっしりとしたミドルテンポを主体に、ほどよいキャッチーなノリもあり、
モダンな女性声ハードロックという趣も。ギターはオールドスタイルというよりはヘヴィロック寄りなので、
正直あまり燃える感じではないのだが、ドイツ語の響きが勇壮な空気をかもしだしつつ、
ジャケのような女戦士的なイメージに包まれる。ハードロックとしてはメロディのフックが足りず、
メタルとしては重厚さに欠けるので、ドイツ語の女性Voという以外の魅力がサウンドに欲しい。
ドラマティック度・・7 正統派度・・8 パワフル女性Vo度・・8 総合・・7.5
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IMPERIA 「FLAMES OF ETERNITY」
ノルウェーのシンフォニック・ゴシックメタル、インペリアの2019年作
2004年にデビュー、ANGEL名義でも活躍する女性シンガー、ヘレナ嬢擁するバンドの5作目。
シンフォニックで壮麗なアレンジにヘヴィなギター、伸びやかな女性ヴォーカルの歌声で、
どっしりとして優美なゴシックメタルを聴かせる。今作は、キャッチーなフックのナンバーも多く、
ゴシック的な耽美さよりも、シンフォニックメタルとして普通に聴きやすいスタイルになっていて、
ヘレナさんの歌声も艶めいた魅力は控えめなのだが、ゆったりとした叙情曲などは耳心地が良く、
アルバム中盤の疾走感のあるナンバーも美麗な味わい。脱ゴシックしつつも高品質な作品に仕上げてきた。
シンフォニック度・・8 ゴシック度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Beto Vazquez Infinity「Humanity」
アルゼンチンのシンフォニックメタル、ベト・ヴァイケス・インフィニティの2019年作
2001年にデビューし、本作は6作目。メタリックなギターを乗せたアグレッシブな激しさに、元SHAMANのチアゴ・ビアンキや
RENACERのクリスチャン・ベルトンセッリをはじめ多数のゲストが参加、パワフルな男性ヴォーカルとなよやかな女性Voで、
人類の存亡を描くストーリーとともにドラマティックなサウンドを展開する。女性シンセ奏者による優美なアレンジも加えつつ、
シンフォニックというよりはわりと正統派メロパワ寄りのスタイルで、デスヴォイスを加えたダークなヘヴィネスも覗かせる。
楽曲自体にメロディックなフックがもっと欲しいのと、全体的には壮麗な部分の魅力が薄いのが残念なのだが、
ボーナストラックの、女性ヴォーカル陣の美しい歌声が映える優美な疾走ナンバーは良いですな。
ドラマティック度・・7 壮麗度・・7 重厚度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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Beriedir 「The Path Beyond the Moon」
イタリアのメロディックメタル、ベライダーの2018年作
きらびやかなシンセをギター重ね、マイルドなヴォーカルとともに華麗に疾走する、
CONCEPTWONDERLANDなどにも通じるような、イタリアンなクサメロスピサウンド。
中音域のヴォーカルは、パワフル過ぎないところもよいあんばいで、ほどよい軟弱系な感じは、
かつてのイタリアンメロスピのマイナーな雰囲気をかもしだしていて、思わずニンマリだし、
キャッチーなメロディのフックで爽快に疾走しまくるので、初期のSONATA ARCTICAが好きな方にも薦められる。
とにかく最高のクサメロスピ。CDR仕様なのが残念だが、個人的にはクサメタルファンには必聴の出来だと思う。
メロディック・・8 疾走度・・9 クサメロ度・・9 総合・・8
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Skylark 「The Dragon's Gate (Divine Gates Pt. V -Chapter 2)」
イタリアのメロディックメタル、スカイラークの2017年作
本作は、1997年作「Dragon's Secrets」を新たに再録したバージョンで、シンガーにChiara Manese嬢が参加、
美しい女性ヴォーカルを乗せて、きらびやかに疾走する、ファンタジックなクサメロスピが楽しめる。
新ヴォーカル嬢のなよやかな歌声は、キアラの名は同じでも、かつてのキアラ嬢よりも表現豊かで、
優雅なソプラノも使いこなす逸材。エディ・アントニーニのクラシカルなシンセワークともよくマッチしている。
この編成での完全新作に期待したいところ。Disc2には、1997年作のリマスター音源を収録した2枚組仕様。
ちなみに、本作は2015年に「The Storm And The Horizon」というタイトルで発売された4枚組の、Disc4と同内容です。
メロディック度・・8 疾走度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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BLODWEN 「Winter Falls」
インドネシアのシンフォニックメタル、ブロドウェンの2016年作
オーケストラルなアレンジに美しいソプラノとストレートヴォイスを使い分ける女性ヴォーカルを乗せた、
壮麗なシンフォニックメタルを聴かせる。どことなくアジアンな香りを漂わせるなよやかな女性声は、
エモーショナルに歌い上げるシアトリカルな表現力もあり、随所にメタリックな激しさを含んだ楽曲は、
ほどよい疾走感も覗かせて濃密な味わいである。流麗なギターフレーズはときにクサメロ感も漂わせて
ストリングスなどのクラシカルなアレンジとともに、厚みのあるサウンドを構築する。全体的にはいくぶんのマイナー臭さと、
オリエンタルなクセの強さも好みを分けるところだが、本格派の女性声シンフォニックメタルの美麗作である。
シンフォニック度・・8 アジアン度・・8 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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Emphasis 「Revival」
エストニアのプログレメタル、エンファシスの2016年作
女性Vo、女性Bを含む5人編成で、ヘヴィなギターにシンセを重ね、美しい女性ヴォーカルの歌声とともに、
ほどよくテクニカルな展開力で聴かせる、シンフォニックメタル。きらびやかなシンセアレンジと、
魅力的な女性声が華やかに楽曲を彩っていて、5曲目などのシンフォニックな壮麗さも白眉。
随所に巧みなプレイを聴かせるギターの演奏力もかなりのもので、メタリックでモダンな硬質感を
サウンドに加えつつ、クラシカルな優雅さと女性ヴォーカルの美しさをしっかりと引き立てている。
次作「Soul Transfer」ではよりテクニカルなProgMetal路線へと移行して、充実の傑作となる。
シンフォニック度・・7 テクニカル度・・7 女性Vo度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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S91 「Behold The Mankind」
イタリアのシンフォニックメタル、S91の2016年作
2011年にデビューし、2作目となる。きらびやかなシンセに流麗なギターワークを重ね、
コケティッシュな女性ヴォーカルの歌声で聴かせる、ほどよくテクニカルなシンフォニックメタル。
インストパートでのリズムチェンジなどには、ProgMetal的な構築力も覗かせつつ、
ゴシックメタル寄りのダークな感触や、メロハー寄りのキャッチーなパートもあったりと、
良く言えば多様性があり、悪く言うと煮え切らない。モダンなヘヴィネスとともに、
美しいシンセアレンジや女性声の魅力もあるので、楽曲にもっと思い切りの良さが欲しい。
シンフォニック度・・7 テクニカル度・・7 女性Vo度・・7 総合・・7.5
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LACUNA COIL「Broken Crown Halo」
イタリアのゴシックメタル、ラクーナ・コイルの2014年作
1998年にデビューし、7作目。ヘヴィなギターに伸びやかな女性ヴォーカルと男性声を絡め、
モダンなヘヴィネスとキャッチーな叙情性が同居したサウンドを聴かせるところはこれまで通り。
楽曲にしろ演奏にしろ、これまで以上のインパクトがあるわけではないのだが、ほどよくダークで
アグレッシブなメタル感触と、マクリスティーナ嬢の美しい歌声がかもしだす優雅さのバランスは絶妙で、
さすが世界的な人気バンドとなった堂々たる聴き心地。男性声もグロウルからマイルドなノーマル声と使い分け、
曲によってはメランコリックなゴシックロック的にもなる。もはや新鮮味はないが、さすがの高品質作です。
ドラマティック度・・7 重厚度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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LACUNA COIL 「DELIRIUM」
イタリアのゴシックメタル、ラクーナ・コイルの2016年作
8作目の本作ではドラマーが交替し、セルフプロデュースで制作された作品となった。
のっけからアグレッシブな迫力が増していて、シンフォニックなシンセにヘヴィなギターを重ね、
男性グロウルと美しい女性ヴォーカルとともに、メタリックで重厚なサウンドを描いている。
パワフルなドラムによるリズム面でのダイナミックな感触と、シンセアレンジの美しさもあって、
前作よりもスケール感のある仕上がりになっている。楽曲自体は3〜4分前後でわりとシンプルながら、
モダンなヘヴィネスからの男女声によるキャッチーなゴシックロック感触へというフックはお家芸だろう。
ヘヴィなメタル感とシンフォニックな優美さの、どちらも際立たせたことで、よりパワーを感じる仕上がりだ。
ドラマティック度・・7 重厚度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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Cyrax「Reflections」
イタリアのプログレメタル、サイラックスの2013年作
メタリックなギターにシンセを重ね、パワフルでシアトリカルなハイトーンヴォーカルで聴かせる、
ほどよくアヴァンギャルドなプログレメタル。楽曲は4分前後主体で、ときにシンフォニックな優雅さも覗かせつつ、
メロディックというよりはヘンテコな展開力とネジが抜けたようなヴォーカルも含めて、一般受けはしないだろう。
一方では叙情的なインストナンバーもあったりと、まだ方向性を模索している感じもある。全33分と、わりと短めで
内容的にもまだ突き抜けきらないのだが、次作では、WATCHTOWERばりのテクニカルメタルの力作になる。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・7 アヴァンギャル度・・7 総合・・7
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Atlantida 「Put U Vecnost」
セルビアのメロディックメタル、アトランティダの2009年
2007年にデビューし2作目となる。ツインギターにシンセを含む6人編成で、きらびやかなシンセに
正統派のギターと母国語によるヴォーカルで聴かせる、どっしりとしたメロパワサウンド。
煮え切らない楽曲、アレンジも含めて、全体的なマイナーな辺境臭さが漂っているのだが、
ゲストによる女性ヴォーカルを加えたナンバーなどは、優美な雰囲気でよい感じだし、
キャッチーなハードロック風ナンバーなども、母国語の歌声が哀愁をかもしだしている。
疾走感はさほどないが、母国語メタル好き、辺境メタルマニアなら楽しめるだろう。
ドラマティック度・・7 疾走度・・6 辺境度・・8 総合・・7.5
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SEVENTH GATE 「A REIGN OF SHADOWS」
ドイツのメロディックメタル、セヴンス・ゲートの2001年作
女性Voにシンセを含む5人編成で、わりと正統派寄りのギターリフにシンセを重ね、
ハスキーな女性ヴォーカルの歌声を乗せた、ヨーロピアンなメタルサウンドを聴かせる。
オールドスタイルの女性Voメタルに、リズムチェンジなどの展開力のある構築力が加わって、
ProgMetal的な要素もいくぶん感じさせる。ただ、シンフォニックメタルというほどには壮麗ではなく、
プログレメタルというほどにはテクニカルでもないので、やはり女性声のパワーメタルなのだろう。
楽曲的にも疾走感はさほどなく、盛り上がりそうでそうならないマイナー感を漂わせているのだが、
Vo嬢の魔女めいた歌声も含めて雰囲気は悪くない。B級メタルファンがニヤニヤするくらいの好作です。
ドラマティック度・・7 疾走度・・6 女性Vo度・・7 総合・・7.5
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10/8
ヴィンテージなバンドはいかが(333)


BLUE OYSTER CULT 「THE SYMBOL REMAINS」
アメリカのハードロック、ブルー・オイスター・カルトの2020年作
1971年デビュー、元祖「ヘヴィメタル」とも言われるカルトなHRバンド。スタジオ作としては2001年以来、
じつに19年ぶりとなる新作。エリック・ブルーム、ドナルド・バックダーマ・ローザーの2人のオリジナルメンバーは健在で、
オールドな味わいのギターにエリック・ブルームのクセのあるヴォーカルが乗ると、まさにかつてのBOCサウンドが甦る。
2曲目以降は、ポップな味わいのキャッチーなロックナンバーや大人の哀愁を漂わせるバラードなども味わいがあり、
オルガンを含むシンセとともに、新たに加入したリッチー・カステラーノの叙情的なギタープレイも随所に光っている。
ブギウギ調のナンバーからサバス風HRまで、バラエティに富んだ内容で、新たにBOCを聴く方には、つかみどころがないかもしれないが
オールドなファンにとっては新作が出るだけでも嬉しいだろう。初心者の方はまず、70年代の傑作「Secret Treaties」
「Fire of Unknown Origin」、最高のライブ作「On Your Feet Or on Your Knees」あたりから入ることをオススメしたい。
ドラマティック度・・7 大人のロック度・・9 BOC度・・8 総合・・8
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Pallbearer 「Forgotten Days」
アメリカのドゥームメタル、ポールベアラーの2020年作
2012年にデビュー、前作「Heartless」は圧巻の傑作であったが、4作目となる本作もヘヴィなギターリフを乗せた
重厚なドゥームメタルを基本に、メロディックなギターの旋律とともに、やわらかな叙情パートなども含んだ、
ポスト・ドゥームというべき構築性で、ドラマティックなサウンドを描いてゆく。10分を超える大曲では、
マイルドなヴォーカルが表現する物悲しい世界観に、ツインギターの泣きのメロディとシンセが重なり、
ゴシック寄りのメランコリックな雰囲気も覗かせる。ここまでくると、逆に正統派のドゥーム感が希薄になり、
叙情的なゴシックドゥームというような聴き心地ではあるが、新たなファン層にもアピールしそうな力作です。
ドラマティック度・・8 メランコリック度・・8 ドゥーム度・・7 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Sanhedrin 「The Poisoner」
アメリカのヴィンテージメタル、サンヘドリンの2019年作
元AmberAsylumの女性Vo&Bを擁する3人編成で、オールドなギターリフにハスキーな女性ヴォーカルを乗せた、
アナログ感たっぷりのアンサンブルで、古き良きメタルサウンドを聴かせる。スラッジ的なザラついた感触や、
ときにドゥーミィな倦怠も漂わせつつ、基本は80年代ルーツの正統派の味わいで、わりとストレートなノリで楽しめる。
ベース&ヴォーカルのErica嬢の歌声は、抜群に上手いわけではないのだが、雰囲気のある表現力で、
ときにパワフルに、ときに魔女めいた艶っぽさも覗かせる。女性声ヴィンテージメタルの好作品だ。
ドラマティック度・・7 ヴィンテージ度・・8 女性Vo度・・7 総合・・7.5
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Dreadnought 「Emergence」
アメリカのプログレ・スラッジメタル、ドレッドノウトの2019年作
2013年デビューし、4作目となる。女性シンセ&Vo、女性G&Voを含む4人編成で、軽妙なドラムに優美なシンセ、
囁くような女性ヴォーカルとともに、アンニュイでプログレッシブな香りのただようサウンドを描いてゆく。
ギターはエッジの効いたリフから、トレモロや、ときにサウンドスケープ的に楽曲を彩り、ドラムもほどよい激しさで、
緩急あるリズムを描いている。3曲目以降は、10分を超える大曲が続き、ゆったりとしたポストロック的なパートから、
ブラックメタル風の激しさも覗かせつつ、優雅でクラシカルなシンセとともに、空間性を感じさせる作風でじっくりと構築する。
女性声と女性スクリームを乗せた、浮遊感のあるミステリアスなプログレメタルとしても楽しめる異色作だ。
ドラマティック度・・7 プログレッシブ度・・8 優雅度・・8 総合・・8
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MOLASSESS 「THROUGH THE HOLLOW」
オランダのヴィンテージロック、モラセスの2020年作
The Devil's Bloodのメンバーを母体にしたバンドで、サイケな浮遊感を描くようなギターにけだるげな女性ヴォーカルで、
魔女めいた妖しさのヴィンテージロックを聴かせる。ギターにさほどヘヴィさがないので、メタル感はあまりなく、
ドゥームというよりはサイケ寄りの感触で、10分を超える大曲でも、わりと淡々としたユルめの印象であるが、
ファリーダ嬢の歌声は、ときに伸びやかな表現力でサウンドを彩っている。全体的には、これという展開も少なく
さほど愛想のない聴き心地なので、もう少しキャッチーなところが欲しい気もするのだが、CD2枚組、64分という力作です。
ドラマティック度・・7 ヴィンテージ度・・8 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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RYMDSTYRELSEN 「LUNAR MOUNTAINS」
スウェーデンのサイケ・ドゥームロック、リムドスティレルセンの2020年作
2018年にデビューし、本作は2作目。アナログ感たっぷりのハードなギターにシンセを重ね、
HAWKWINDルーツのアッパーなスペース・サイケロックから、ヴォーカルも加わって怪しいダークさも含んだ
ミステリアスなドゥームロック調にもなる。延々と単調なリフレインが続いたり、トリップ感のあるナンバーなど、
ユルさとヘヴィネスの狭間で、わりと硬派なサイケドゥームを聴かせる。全体的にはやや単調なので、
もう少しフックのある展開や、シンセを活かしたスペイシーで壮大な大曲などが欲しい気もする。
ドラマティック度・・6 サイケ度・・7 ドゥーム度・・7 総合・・7
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Anchorite 「Further From Eternity」
スウェーデン、マルタ、デンマークのメンバーによるドゥームメタル、アンコライトの2020年作
オールドなギターリフに朗々としたヴォーカルを乗せた、ゆったりとした正統派のドゥームメタルサウンド。
CADLEMASSSOLITUDE AETURNUSなどに通じる、エピックドゥームらしいウェットな空気に包まれつつ、
わりとメロディアスな歌メロやギターの旋律もあって、ダークな重厚感というのはそれほど感じない。
反面、サウンドの迫力という点では物足りなさもあって、楽曲自体にこれというインパクトもないので、
遅めのメタルとして普通に聴き流せてしまう。ミドルテンポの正統派ナンバーや、10分近い大曲も
IRON MAIDEN
のようなキャッチーなメタル感触で、むしろ、NWOTHM寄りの作風にしてもよいような。
ドラマティック度・・7 重厚度・・7 ドゥーム度・・7 総合・・7.5
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The Neptune Power Federation 「Memoirs of A Rat Queen」
オーストラリアのカルト・ハードロック、ネプチューン・パワー・フェデレーションの2019年作
2012年にデビューし、4作目となる。オールドなテイストのギターに女性ヴォーカルを乗せた、
ヴィンテージでどこかシアトリカルなハードロック。紅一点、Loz嬢の歌声は、魔女めいた妖しさから、
ハスキーなシャウトまで、なかなか変幻自在。ギターはヘヴィ過ぎず、ときにオルガンも鳴り響く。
ジャケのイメージのようなカルトな雰囲気はさほどないので、全体的にもほどよいノリとともに、
キャッチーな女性声HRとしてわりと普通に楽しめる。全8曲38分というのがいささか物足りないが。
ドラマティック度・・7 ヴィンテージ度・・8 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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Black Moth 「Condemned to Hope」
イギリスのドゥームメタル、ブラック・モスの2014年作
2012年にデビューし、2作目となる。オールドなギターリフに女性ヴォーカルの歌声を乗せた、
サバスルーツのドゥームメタルを聴かせる。紅一点、Harriet嬢の歌声はほどよくハスキーで、
バックに負けないくらいにパワフルで、どっしりとしたサウンドを伸びやかに彩っている。
全体的にはスラッジ寄りのザラついた感触とともに、魔女めいた妖しさはさほど感じないので、
個人的にはややもの足りなさもあるのだが、本格派の女性声ドゥームというべき強力作です。
ドラマティック度・・7 ドゥーム度・・8 古き良き度・・8 総合・・7.5
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Velvet Viper 「From Over Yonder」
ドイツのメタルバンド、ヴェルベット・ヴァイパーの1988/2020年作
1992年に2作目を出して消えるも、2018年に復活、本作は前身である、ZED YAGO名義で、1988年に発表された作品の再発盤。
オールドなギターにハスキーな女性ヴォーカルの歌声で聴かせる、しごく正統派の80'メタルサウンドで、
スロ〜ミドルテンポを主体にした、どっしりとした作風であるが、フロントのJutta女史のかもしだす妖しさが、
どこか翳りを帯びたヨーロピアンな幻想性をかもしだしている。これという強いインパクトはないのだが、
Warlockなどの陰に隠れた、80年代のマイナー系女性声メタルとしては、なかなか出来が良いのです。
リマスターにより音質も良くなっていて、マニアはゲットすべし。ボーナスに1989年のライブ音源などを追加収録。
ドラマティック度・・7 正統派度・・8 女性声HM度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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Velvet Viper 「Pilgrimage」
ドイツのメタルバンド、ヴェルベット・ヴァイパーの1989/2020年作
ZED YAGO名義の、1989年発表作品の再発盤。叙情的なギターにオーケストラ、コーラスを乗せた華麗なイントロで幕を開け、
Jutta姐さんの妖しい歌声と流麗なギターフレーズで、前作以上に厚みを増したヨーロピアンなメタルサウンドを展開。
ギターによるキャッチーな旋律が増えたことで、前作にあったマイナーな空気は薄まって、様式美HM色が強まった。
男性顔負けのシャウトをかますJutta姐さんの歌声もパワフルで、叙情的なバラードではエモーショナルに歌い上げる。
80年代の女性声HMとして再評価すべき内容です。ボーナストラックに、1991年の1作目収録のリマスター音源を追加収録。
ドラマティック度・・8 正統派度・・8 女性声HM度・・8 総合・・7.5
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Speed Night 「El Mago」
チリのメタルバンド、スピード・ナイトの2014年作
女性Voを擁するトリオ編成で、5曲入りのデビューミニアルバム。
オールドなギターリフに女性ヴォーカルを乗せて疾走するスピードメタル。
ときにシャウトをかますVo嬢のヘタウマな歌声と、こもり気味の音質も含めて、
80年代ルーツのアナログ感と、いかにもなマイナー臭さに包まれている。
マニア以外にはまったくオススメできないが、B級メタルが楽しめるなら微笑ましく聴けるはず。
ドラマティック度・・7 疾走度・・8 マイナー度・・8 総合・・7

Angeles & Demonios「Resurreccion」
メキシコのメタルバンド、エンジェルス・アンド・デモニオスの2012年作
ツインギターのリフにスペイン語のハイトーンヴォーカルを乗せた、オールドスタイルの正統派で、
随所に様式美的なギターの旋律も覗かせる。楽曲的には、さほどの疾走感もなく、
全体的にメロディックなのか、パワフルなのか、ややどっちつかずという印象で、
これというインパクトやフックもない。ヴォーカルも演奏力も平均かやや下という程度なので、
平凡なスパニッシュメタルという程度。バンドとしての個性と楽曲の魅力を上げていってもらいたい。
ドラマティック度・・7 疾走度・・6 正統派度・・7 総合・・7
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Secret Signs 「For a Lifetime」
スペインのゴシックメタル、シークレット・サインズの2011年作
ヘヴィなギターにクラシカルなシンセを重ね、伸びやかな女性ヴォーカルに男性デスヴォイスが絡む、
耽美な空気に包まれた重厚なゴシックメタルサウンド。シンフォニックで壮麗なシンセアレンジと
エモーショナルな女性ヴォーカルも魅力的で、楽曲を優美に彩っている。曲によっては、ノーマル声の男性Voや、
ピアノやストリングスによるクラシカルなアレンジ、リズムチェンジを含む起伏に富んだ構築力とともじっくりと聴かせる。
女性声の確かな実力とともに、全体的に楽曲自体の雰囲気はいいのだが、メロディの抜けきらなさが
物足りなさにつながっているので、アレンジや展開面でのさらなるクオリティアップに期待したい。
シンフォニック度・・8 ゴシック度・・7 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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10/1
10月のメタル(319)


DARK TRANQUILLITY 「Moment」
スウェーデンのメロディックデスメタル、ダーク・トランキュリティの2020年作
1993年にデビュー、IN FLAMESとともに北欧メロデスの元祖というべきバンド、12作目となる本作も、
ゴシック寄りのメロデスという近年の作風を引継ぎ、叙情的なツインギターにデスヴォイスを乗せた、
ほどよくアグレッシブでメランコリックなサウンドを聴かせる。楽曲は4分前後で比較的シンプルながら、
クリストファー・アモットが正式に加わったことで、メロディックなギターフレーズの扇情力がアップ、
うっすらとしたシンセアレンジを重ねつつ、ミカエル・スタンネの悲哀を帯びた歌声が響き渡る。
マイルドなノーマル声を使ったメロウなゴシックメタル寄りのナンバーなどもありつつ、どっしりとした重厚さと
説得力のあるサウンド作りは、さすがベテランの力量だろう。この路線でのひとつの完成形というべき力作だ。
ドラマティック度・・8 メランコリック度・・8 重厚度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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MASTER MASSIVE 「BLACK FEATHERS ON THEIR GRAVES」
スウェーデンのヴィンテージメタル、マスター・マッシヴの2020年作
2015年にデビューし、2作目となる。オルガン奏者を含む5人編成で、ほどよくメタリックなギターに
オルガンが鳴り響き、パワフルなヴォーカルを乗せた、ヴィンテージなメタルを聴かせる。
18分、11分という大曲をメインにした全3曲という構成で、オールドメタルの勇壮な空気感に、
緩急ある展開と知的な構築力が加わった、わりとプログレ寄りの感触もあるのが面白い。
なにせ曲が長いので、聴いているうちに序盤がどんな感じだったのか忘れてしまうのだが、
プログレなヴィンテージメタルと思えば優雅に楽しめる。いっそもっとプログレまくってもらいたい。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 ヴィンテージ度・・8 総合・・8
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Wytch Hazel 「III: Pentecost」
イギリスのヴィンテージメタル、ウィッチ・ハゼルの2020年作
2016年にデビューし、3作目となる。本作も、80年代を思わせる古き良きメタルサウンドで、
叙情的なギターの旋律にキャッチーなヴォーカルメロディは、Wishbone Ashなどにも通じる、
英国らしいウェットなハードロックとしても楽しめる。ときににブルージーな感触も含みつつ、
メタル過ぎないほどよいハードさとともに、SAXONのような勇壮なドラマ性も覗かせる。
ギターのメロディックなフレーズとオールドなリフが耳心地よく、さほどパワフルでないヴォーカルが、
絶妙のマイナー感をかもしだしているのも良いですね。ゆったりとした叙情性が増した好作品。
ドラマティック度・・8 叙情度・・8 ヴィンテージ度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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RISING STEEL 「Fight Them All」
フランスのパワーメタル、ライジング・スティールの2020年作
2016年にデビューし2作目となる、前作はジューダスやアクセプトなどを思わせるオールドな正統派であったが
今作はのっけからスラッシーなギターリフとともに疾走開始、いくぶんダーティなハイトーンヴォーカルとともに、
80〜90年代のオールドメタルの感触をたっぷりまぶした聴き心地だ。随所にツインギターによる叙情メロディとともに、
ほどよくキャッチーに疾走するメロパワナンバーもあって、前作以上に楽曲自体の魅力が増してきている。
リズムチェンジなどによる、ドラマテイックな展開も含め、決してヘヴィ過ぎない、激しすぎないというのも、
この手のトラディショナルメタルの王道といえるだろう。古き良き正統派メタルを受け継ぐ強力作だ。
ドラマティック度・・7 疾走度・・7 正統派度・・8 総合・・8
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ILLIMITABLE DOLOR 「LEADEN LIGHT」
オーストラリアのゴシック・ドゥームメタル、イリミタブル・ドラーの2019年作
2017年にデビューし、2作目となる。のっけから15分近い大曲で、叙情的なギターにオルガンが鳴り響き、
低音デスヴォイスを乗せて、どっしりと耽美な空気感に包まれた、フューネラルなサウンドを描く。
ゆったりとしたギターの旋律がウェットな聴き心地になっていて、優美なシンセアレンジとともに、
ドゥームというよりは、ゴシック寄りの幻想的な世界観を描いている。中盤も10分を超える大曲が続き、
スローテンポのリフレインも多いので、気が短い方には向かないが、耽美な叙情性に浸れる逸品です。
ドラマティック度・・7 ゴシック耽美度・・8 フューネラル度・・8 総合・・8
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The Lurking Fear 「Out of the Voiceless Grave」
スウェーデンのデスメタル、ラーキング・フィアの2017年作
At The Gatesのヴォーカルとドラムを擁する編成で、メタリックなギターリフにデスヴォイスを乗せて激しく疾走する、
オールドなデスメタルサウンド。楽曲は、3〜4分前後が主体で、わりとストレートでアグレッシブなナンバーが多く、
メロディックな要素もわずかに覗かせるが、基本は硬派なスウェディッシュ・デスメタルといったところ。
全体的にも、At The Gates的な感じはさほどなく、無機質に疾走するあまり愛想のない作風なので、
緩急ある展開やもう少しウェットな叙情が欲しい気もするのだが、このデスラッシュ寄りの潔さは痛快でもある。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・8 硬派度・・8 総合・・7.5
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Morbid Angel「Kingdoms Disdained」
アメリカのデスメタル、モービッド・エンジェルの2017年作
1989年デビュー、デスメタルの帝王による6年ぶりとなる9作目。前作で復帰したデヴィッド・ヴィンセントが再び離脱し、
替わってスティーヴ・タッカーがB&Voで復帰、ドラムには元Abysmal Dawnのスコット・フラーが加入している。
激しくたたみかけるドラムに重厚なギターリフと吐き捨てヴォーカルを乗せた、ブルータルなサウンドで、
賛否両論となった前作に比して、一貫したダークなデスメタルを聴かせる。暴虐なブラストビートとともに、
トレイ・アザトースによるうねるようなギターは、これぞモビエンという荘厳な迫力を感じさせるのだが、
バスドラムの音が機械的なのと、単調なリフレインのパートがいくぶんススリングさを削いでいる気も。
激しいデスメタル感触が戻ったのはいいとして、禍々しさと不穏な世界観をさらに描くような作風を期待したい。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・8 荘厳度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Mirror 「Pyramid of Terror」
イギリスのヴィンテージメタル、ミラーの2019年作
元2015年にデビュー、Electric Wizard、Satan's Wrath、プログレバンドのMessenger などのメンバーによるバンドで、
本作は2作目となる。オールドなギターにハイトーンヴォーカルを乗せた、ノリのあるヴィンテージなメタルサウンドで、
いくぶんドゥーム寄りの妖しさと、キャッチーな味わいが同居している。激しすぎずユル過ぎずという、
NWOBHMルーツの古き良きマイナーメタルの感触に包まれつつも、比較的ストレートな聴き心地。
これというインパクトはないのだが、オールドスタイルの英国メタルが味わえる好作品です。
ドラマティック度・・7 ドゥーム度・・7 古き良き度・・8 総合・・7.5
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Armortura
イギリスのスラッシュメタル、アーマーチュラの2018年作
ツインギターのザクザクとしたリフにダーティなヴォーカルを乗せた、オールドスタイルのスラッシュメタル。
初期のEXODUSのような激しい疾走感とともに、随所に叙情的なギターソロも覗かせる。
ミドルテンポのパートも含んだ激しすぎない聴き心地は、80〜90年代スタイルのスラッシュで
これという新鮮味はないのだが、複雑すぎないギターリフを主体にしたわりとシンプルな作風。
オールドなリスナーが喜ぶ正統派のスラッシュメタルではあるが、リフのキレや勢いの点でも
80〜90年代の偉大なバンドたちと比べるとインパクトは足りないか。次作以降にに期待。
ドラマティック度・・7 疾走度・・7 オールドスラッシュ度・・8 総合・・7.5
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REVOCATION 「GREAT IS OUR SIN」
アメリカのテクニカル(デス)スラッシュメタル、レヴォケーションの2016年作
2008年にデビューし、本作は6作目となる。ザクザクのギターリフに吐き捨てヴォーカルを乗せて激しく疾走しつつ
テクニカルなリズムチェンジを含んだ知的な構築力と、随所にメロデッィクなギターフレーズも含んだサウンド。
デスメタルというほどの暴虐さはないので、やはりプログレッシブなテクニカル・スラッシュメタルという作風で、
エッジの効いたリフと流麗なメロディを弾きこなすギターの実力もかなりのもの。スラッシーに疾走するパートから、
変則リズムまくりで知的に展開する、前作以上にプログレッシブな味わいで、今作ではノーマル声ヴォーカルを使ったりと、
ブルータルになり過ぎないという点で、テクデスとしてはとても聴きやすい。DEATHなどが好きな方にも楽しめる力作だろう。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 激しくも優雅度・・9 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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EXODUS 「Blood In Blood Out」
アメリカのスラッシュメタル、エクソダスの2014年作
1985年にデビュー、ベイエリアスラッシュを代表するバンドの4年ぶりとなる、通算12作目。
過去2作「Exhibit A/B」はインテレクチュアルな傑作だったが、本作では、スティーヴ "ゼトロ" ザウザが
10年ぶりにヴォーカルに復帰し、サウンドは、クランチの効いたリフにダミ声ヴォーカルを乗せて疾走する、
オールドスタイルのストレートなスラッシュメタルに回帰している。スティーヴのクセのある高音ダミ声は、
正直さほど好きではないのだが、ゲイリー・ホルトと元HEATHENのリー・アルタスによるツインギターはさすがのキレで、
ノリのある疾走感はファンには嬉しいだろう。初期のメンバーでもあったMETALLICAのカーク・ハメットがゲスト参加している。
ドラマティック度・・7 疾走度・・8 オールドスラッシュ度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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HOLOSADE 「HELL HOUSE」
イギリスのスラッシュメタル、ホロセードの1988年作
元SABBATやDARK HEART、ACID REIGNのメンバーを中心にしたバンドで、本作が唯一のアルバム。
ツインギターのリフにハイトーンヴォーカルを乗せ、リズムチェンジを含むほどよい展開力で聴かせる、
パワーメタル寄りのスラッシュメタル。ギターソロはわりとメロディアスだったり、アグレッシブな激しさよりは
じっくりと構築するスタイルで、巧みなドラムを中心に演奏力もしっかりしている。ミドルテンポのナンバーなどは、
NWOBHMの名残を感じさせる雰囲気も。再発盤には1987年のデモと、1988年のBBC用のライブ音源をボーナス収録。
まさに知られざる80'sメタルの好作品。バンドは2021年になって、じつに33年ぶりとなる復活作を発表している。
ドラマティック度・・7 疾走度・・7 オールドメタル度・・8 総合・・7.5
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SEVENTH ANGEL 「The Torment」
イギリスのスラッシュメタル、セヴンス・エンジェルの1990年作
その昔、ロドニー・マシューズによるジャケに惹かれて購入したバンド。2018年のリマスター再販盤。
ツインギターのザクザクとしたリフにダーティな吐き捨てヴォーカルを乗せた、ダークなメタルサウンド。
疾走する激しさよりは、エッジの効いたギターリフで、重厚な迫力を描くタイプで、スローパートなどでの
どっしりとした感じにはデスメタル的な雰囲気もあるが、随所にツインギターによる叙情性も覗かせたり、
テクニカルな展開力のナンバーもあったりと、ほどよいマイナーな翳りとともに、いま聴いても案外面白い。
90年代初頭の英国ダークメタルの隠れた逸品。いくぶん正統派寄りになる2作目もなかなか良い出来です。
ドラマティック度・・7 疾走度・・7 重厚度・・8 総合・・7.5
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ICED EARTH
アメリカのメタルバンド、アイスド・アースの1990年作
いまやデビュー30年を超えるベテランバンド、その1作目の30周年リマスター再発盤。
当時はテイチクから日本盤が出ていたが、2作目「Night of THe Stormrider」の評価が高かったので、
後追いで1作目を聴いた記憶がある。王道のメタルリフにガナり気味のハイトーンヴォーカルを乗せた
正統派のメタルサウンドで、ジャケのイメージほど激しくなかったという当時の感想そのままの印象。
硬質なリフが切り込んで来てのリズムチェンジという展開は、2作目以降と同様、このバンドの特徴だろう。
ほどよい叙情性も覗かせつつ、ドラマティックなメタルサウンド描くところは、30年間まったくブレていない。
改めて聴き直しても、リフ主導のメタルの恰好良さを思い出させてくれる。アイスド・アースの原点の1枚。
ドラマティック度・・7 正統派度・・8 リフ度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Raise Hell 「Wicked Is My Game」
スウェーデンのスラッシュメタル、ライズ・ヘルの2002年作
1998年にデビュー、本作は3作目となる。1作目はメロブラ風の激しいサウンドサウンドであったが、
2作目ではスラッシュ寄りの作風に変化。本作もザクザクとしたギターリフに吐き捨てヴォーカルを乗せた、
スラッシーなスタイルで、ミドルテンポを主体にしつつ、KREATORのようなアレッシブな疾走感も覗かせる。
全体的には、メロディックな部分は希薄で、エッジが効いたギターリフで聴かせるの作風なので、
スラッシュメタルを志向してゆくのなら、もう少し激しい疾走ナンバーがあってもよい気もするが。
ドラマティック度・・7 疾走度・・7 スラッシー度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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9/25
我が誕生日のメタル(304)


Aquaria「Alethea」
ブラジルのメロディックメタル、アクアリアの2020年作
2005年にデビュー、本作は13年ぶりとなる3作目で、シンフォニックで壮麗なアレンジと伸びやかなヴォーカルで、
優美なメロディックメタルを聴かせるところは、1stの頃のイメージをそのまま受け継いでいるようだ。
クラシカルなピアノやオーケストラアレンジ、叙情的な泣きのギター、QUEENばりのヴォーカルハーモニーなど、
フックのある展開とともに聴きどころもたっぷりで、かつてのANGRAのようなプログレッシブな構築力を感じさせる。
ENDLESSでも活躍する、ヴィトール・ヴェイガの優しい歌声とともに、華やかな楽曲の魅力が戻ってきていて、
緩急あるリズムチェンジと展開美で、優雅にしてスリリングなサウンドが味わえる。メロスパー悶絶の華麗な疾走ナンバーなど、
傑作であった1作目の完成度を超えてきた。ボーナストラックを含めて、全72分という、まさに見事な力作だ。
シンフォニック度・・8 疾走度・・8 優美度・・9 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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Arion「Vultures Die Alone」
フィンランドのメロディックメタル、アリオンの2021年作
2014年にデビュー、本作は3作目となる。メタリックなギターにパワフルなヴォーカルを乗せた
疾走感あるナンバーで幕を開ける本作は、前作に比べてストレートな作風となった感じはあるが、
随所にシンフォニックアレンジも残しながら、北欧系らしい壮麗なメロパワサウンドを描いてゆく。
楽曲は3〜4分前後が主体で、全体的に疾走するナンバーはさほどないのだが、SONATA ARCTICAにも通じる
キャッチーなメロディック性とモダンな硬質感も同居した、若手らしいアレンジセンスで、わりとシンプルに楽しめる。
ゲストに女性シンガーが参加したナンバーなどもアクセントになっていて、これというインパクトはないが安定の好作だ。
メロディック度・・7 疾走度・・7 新鮮度・・7 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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Adagio 「Archangels in Black」
フランスのシンフォニックメタル、アダージョの2009年作
2001年にデビュー、本作は4作目。モダンなヘヴィネスを感じさせるイントロから、いつになくダークな雰囲気であるが、
ステファン・フォルテによる巧みなギターの旋律に、随所にクラシカルなピアノの旋律も含んだシンセワークとともに、
重厚な味わいのサウンドを構築する。ギターとシンセがきらびやかに絡むネオクラシカル要素も随処に覗かせつつ、
今作ではそれのみにとどまらない、ときにグロウルヴォーカルを乗せるなど、アグレッシブにたたみかける部分もあったり、
新たな作風を模索しつつ、ダークなバロック・メタルというような深化を進んでいるようにも思える。9分の大曲では、
2ndの頃のようなプログレッシブな展開力とともに、優雅なクラシカル性とヘヴィネスが同居した聴き心地が楽しめる。
ドラマティック度・・8 疾走度・・6 クラシカル度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Adagio 「Life」
フランスのシンフォニックメタル、アダージョの2017年作
前作から8年ぶりとなる5作目で、ヴォーカルにはかつてのライブ用メンバー、ケリー・サンダウン・ペーンターが加入、
のっけから9分の大曲で、メタリックで流麗なギターに優美なシンセアレンジ、パワフルなヴォーカルとともに、
重厚なスケール感に包まれたサウンドを描く。前作のダークな雰囲気にプログレッシブな展開力を加えた感触で、
テクニカルなリズムの中にも、随所にきらびやかなクラシカル性を覗かせながら、歌唱力のあるヴォーカルが
楽曲に深みのあるドラマ性をもたらしている。前作でも見せたモダンなヘヴィネスも受け継いでいるが、
アグレッシブな部分よりは優雅なところが増えて、どちらかというとProgMetalに近づきつつある印象だ。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 クラシカル度・・8 総合・・8
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SELENSEAS「The Outer Limits」
ロシアのメロディックメタル、セレンシーズの2020年作
2017年のデビュー作を英語歌詞でリレコーディングした作品で、女性Key、女性Dr含む6人編成。
流麗なツインギターにシンセを重ね、パワフル過ぎないヴォーカルを乗せた、正統派のシンフォニックメタルを聴かせる。
全体的にパワフル過ぎず、ほどよくキャッチーな味わいで、美麗なシンセアレンジが随所に光っているが、
楽曲的にはミドルテンポが主体で、疾走感がそれほどないため、メロスピリスナーにはやや物足りなさも。
エピックな勇壮さとともに、曲によってはペイガン寄りの土着的な匂いも感じさせるが、キャッチーでゆくのか
シンフォニックでゆくのか、エピックなのか、どっちつかずという印象なので、今後の方向性を明確にして欲しい。
シンフォニック度・・7 疾走度・・6 楽曲・・7 総合・・7
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BLAME ZEUS「SEETHE」
ポルトガルの女性声メタル、ブレイム・ゼウスの2019年作
ヘヴィなギターに伸びやかな女性ヴォーカルを乗せ、緩急ある展開とともに、モダンな味わいのメタルを描きつつ、
曲によってはブルージーな雰囲気もあったりして、オールドな女性声ハードロックとしても楽しめるという。
紅一点、Sandra嬢の歌声は、ほどよくシリアスで、いくぶん魔女めいたところもあって表現力も充分。
ときおりプログレッシブな雰囲気も漂わせつつ、楽曲は4〜5分前後と長すぎず、わりとシンプルに聴けるが、
メロパワでもゴシックでもシンフォニックでもないので、展開にさほど引っ掛かりがなく、全体的にもプログレメタルなのか、
ヴィンテージハードなのか、ややどっちつかずという印象も。女性声の実力はあるので、今後は方向性の確立を願いたい。
ドラマティック度・・7 ヴィンテージ度・・7 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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CONSTRAINT 「ENLIGHTENED BY DARKNESS」
イタリアのシンフォニックメタル、コンストレイントの2017年作
壮麗なシンセアレンジにギターを重ね、美しいソプラノ女性ヴォーカルの歌声で聴かせる、Nightwishタイプのサウンド。
メタリックなリフとともに随所にメロディックな旋律を奏でるギターと、クラシカルなピアノを含むシンセ、
そして紅一点、ベアトリス嬢の歌声は、ターヤを優しくしたようななよやかな魅力があり、サウンドを優美に彩る。
楽曲は3〜4分前後とわりとシンプルなので、ドラマティックな盛り上がりというまではゆかないのだが、
美しい女性声をメインに聴かせる作風は間違っていない。ピアノをバックにしっとりと歌い上げるナンバーなど、
オペラのアリアを思わせるような優雅なヴォーカルにウットリ。女性声シンフォニックメタルの期待の逸材です。
シンフォニック度・・8 優美度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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THY SHADE 「THE LAST GOODBYE」
アメリカのシンフォニックメタル、ザイ・シェイドの2016年作
女性シンガーと男性マルチミュージシャンの二人組で、巧みなギターに美麗なシンセアレンジ、
美しいソプラノ女性ヴォーカルで聴かせる、わりと王道のシンフォニックメタルのスタイル。
Nightwish風の優美なナンバーから、キャッチーに疾走する、Edenbridgeあたりに通じる雰囲気もある。
Diana Shade嬢の歌声は艶やかなソプラノで、クラシカルなメロディの曲にもよくマッチしていて、
メロスピ風の疾走ナンバーでも、メタリックになり過ぎない優雅な聴き心地。全体的には新鮮味は薄いが、
オペラ曲のカヴァーなどもじつに典雅で、美しい女性声が好きな方ならじっくり楽しめるだろう。
シンフォニック度・・7 優雅度・・8 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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RAVENSCRY「100」
イタリアのゴシックメタル、レイヴンス・クライの2020年作
2011年にデビューし、4作目となる。メタリックなギターに伸びやかな女性ヴォーカルを乗せた、
わりとオルタナ寄りのメタルサウンドで、ゴシック的な耽美さというよりは、もっと硬質な聴き心地。
楽曲も3〜4分主体で、シンセによるアレンジもときおり加わるが、全体的にはストレートなノリの
モダンなヘヴィロック風味で、ジュリア嬢の美しい歌声だけが優美で艶めいた彩りを放っている。
シンフォニックとしてもゴシックとしてもやや中途半端なので、今後の方向性はどうなる。
ドラマティック度・・7 ゴシック度・・7 女性Vo度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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Victoria K 「Essentia」
オーストリアのゴシック・シンフォニックメタル、ヴィクトリア・Kの2020年作
2人の女性Voに女性ギターを含む編成で、メタリックなギターと壮麗なシンセアレンジ、美しい女性ヴォーカルに
女性によるグロウルヴォイスを重ねた、ほどよくヘヴィでキャッチーなシンフォニックメタルを聴かせる。
バンド名でもある、ヴィクトリア.K嬢の伸びやかな歌声は、WITHIN TEMPTATONのシャロンを思わせ、
艶めいた魅力でサウンドを包み込む。楽曲は3〜4分前後が中心で、比較的ストレートなノリで分かりやすいが、
随所にゴシック寄りの耽美な雰囲気も覗かせて、しっとりとしたナンバーなども女性声の魅力にウットリとなる。
新鮮なインパクトはさほどないが、実力ある女性ヴォーカルをフロントにした期待のバンドです。
シンフォニック度・・8 ゴシック度・・7 女性Vo度・・9 総合・・8
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Aleah
フィンランドの女性シンガー、アレアの2020年作
2016年に他界したTREES OF ETERNITYのヴォーカル、Aleah Starbridgeの未発音源をCD化したもので、
アコースティックギターにしっとりとした彼女の歌声を乗せた、アンビエントなサウンドを聴かせる。
シンセなどのアレンジがほとんどないため、透明感のある物悲しいヴォーカルの魅力がダイレクトに伝わり、
涼やかな北欧の空気に包まれたネオフォークとしても楽しめる。Disc1は、ロック、メタル色は皆無なので、
ゴシックメタルのファンが聴くには少々つらいかもしれないが、Disc2の方は、シンセやギターを加えた、
優美で幻想的な女性声ゴシックロックという雰囲気が味わえる。いまは亡き、Aleah嬢の歌声に涙である。
メタル度・・1 ゴシック度・・6 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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Sea of Despair 「Море отчаяния」
ロシアのゴシックメタル、シー・オブ・デスぺアーの2009年作
叙情的なギターの旋律にヴァイオリンやチェロが絡み、美しい女性ヴォーカルに男性デスヴォイスが絡む、
メランコリックな味わいの正統派ゴシックメタルを聴かせる。フューネラルな重厚さも感じさせつつ、
ギターの奏でるメロディとクラシカルなストリングス、母国語によるソプラノ女性Voが耽美な優雅さをかもしだし、
ほどよく辺境らしいマイナーな空気にも包まれる。10分前後の大曲もいくつかあって、ゆったりとした聴き心地の中に、
美しいピアノとメロウなギターフレーズが物悲しい叙情を描き、はかなげな女性ヴォーカルがしっとりと彩りを添える。
デス声パートがわりと多めなのが惜しいが、これぞゴシックメタルという耽美な世界観が味わえる好作品だ。
ドラマティック度・・7 ゴシック度・・8 女性Vo度・・8 総合・・7.5

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TIARRA 「Post Scriptum」
ルーマニアのゴシックメタル、ティアラの2008年作
女性Vo、女性ヴァイオリン、女性チェロ奏者を含む編成で、物悲しいヴァイオリンとチェロの音色にギターを重ね、
母国語による女性ヴォーカルに男性声が絡む、クラシカルな優雅さと辺境的な空気が同居したゴシックメタル。
叙情的なギターフレーズにヴァイオリンが重なるメランコリックな聴き心地と、随所に男性デス声も加わって、
重厚にしてシンフォニックな優美さと耽美な世界観を描くところは、HAGGARDあたりに通じるかもしれない。
曲によってはフォークメタル寄りの土着性も覗かせ、艶やかなストリングスとシンセが合わさった優雅なクラシカル・ゴシックが楽しめる。
シンフォニック度・・8 ゴシック度・・8 女性Vo度・・7 総合・・7.5

ASRA 「Maha Pari NIRVANA」
日本の女性声ハードロックバンド、アスラの2013年作
2011年にデビュー、仙台出身で、女性Vo、夢華の情感ある歌声と東洋的な旋律で個性的なサウンドを描くバンド。
ツインギター編成となったこの2作目は、よりエッジの効いたメタリックな感触に、激しい疾走感も覗かせつつ、
日本語歌詞の伸びやかな女性ヴォーカルとともに、独特の浮遊感とオリエンタルな空気を漂わせる。
一方では、日本的なキャッチーな叙情性も残していて、メロディックで爽快なフックにほどよいポップ感があるのも、
これはこれで良いのかと思う。ゲストによるドラムは軽快で、グルーヴィなベースのプレイも存在感抜群だ。
疾走するナンバーでもわりとライトな味わいで、民族的な要素が薄めため聴きやすいサウンドになっている。
メロディック度・・8 メタル度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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ASRA「Sifartin Akashic」
日本の女性声ハードロックバンド、アスラの2016年作
3作目となる本作は、イントロに続き硬質感あるギターによるモダンなメタル感触に包まれて、
夢華嬢の伸びやかな歌声が乗ると、陰陽座あたりに通じる和風メタルといったサウンドになる。
キャッチーなメロディのフックはいかにも日本のバンドらしく、ほどよい疾走感とともに爽快に楽しめる反面、
初期の頃のオリエンタルな雰囲気はほぼ無くなったので、個性という点では薄まってしまった印象も。
ポップで軽快なナンバーも、前作で聴いたような感じで、楽曲自体にインパクトが弱いのも惜しい。
演奏、歌唱ともにクオリティは高いのだが、今後の確かな方向性が定め切れていない感じもする。
メロディック度・・8 メタル度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8
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9/11
9月のメタル(289)


House Of Lords 「New World - New Eyes」
アメリカのメロディアスハード、ハウス・オブ・ローズの2020年作
1988年にデビュー、3枚のアルバムを残し、活動休止をへて2004年に復活、本作は通算12作目のアルバム。
ジェイムズ・クリスチャンの味のある歌声とともに、哀愁の美学に包まれた王道のハードロックは健在。
きらびやかなシンセはときにプログレハード風でもあり、随所に聴かせる流麗なギタープレイとともに、
アメリカンロックらしいキャッチーなナンバーから叙情的なバラードなども、ベテランらしい巧みなアレンジで聴かせる。
全体的にはドラマティックなナンバーが減ったため、突き抜けきらないもどかしさもあるが、出来がそう悪いわけではない。
クリスチャンの妻であるロビン・ベックがゲスト参加、前作に続き、ミケーレ・ルッピもシンセで1曲参加している。
メロディック度・・7 キャッチー度・・7 哀愁度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Dead Venus「Bird Of Paradise」
スイスの女性声ハードロック、デッド・ヴィーナスの2020年作
女性Vo、ベース、ドラムという3人組で、優美なピアノのイントロから、ベースとドラムのグルーヴィなリズムに
シンセとピアノを重ね、コケティッシュな女性ヴォーカルの歌声で、しっとりとアンニュイなサウンドを聴かせる。
エレキギターを使わず歪ませたベースでハードな部分を表現していて、エモーショナルな女性声を引き立てる。
Seraina嬢の歌声はほどよくパワフルなロック感があって、どっしりとしたサウンドにもよくマッチしている。
一方では、エキセントリックな味わいやジャズタッチのナンバー、アコースティックギターを使った優雅さなど、
なかなか多彩な作風で、クラシカルな感触のピアノも含めて、プログレッシブといってもよい雰囲気も覗かせる。
単なる女性声ハードロックという以上に、ボーダーレスの個性が光っている。今後のさらなる深化を楽しみにしたい。
ドラマティック度・・7 優雅度・・8 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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GLASYA 「Heaven's Demise」
ポルトガルのシンフォニックメタル、グラシヤの2019年作
ほどよくヘヴィなギターに壮麗なシンセアレンジ、美しいソプラノ女性ヴォーカルで聴かせる、
Nightwishタイプのシンフォニックメタル。適度な疾走感とキャッチーなメロディアス性もあり、
やわらかな女性声とストリングスを加えたアレンジなどで、全体的に優雅な耳心地で楽しめる。
同郷のバンド、AIRFORCE、Shadowsphereの男性ヴォーカルが1曲ずつゲスト参加していて、
男女ヴォーカルのナンバーもアクセントになっている。オーケストラルなシンフォニック性は良いのだが、
この手のバンドとしては楽曲の個性という点では物足りなさもある。今後の成長に期待したい。
シンフォニック度・・8 新鮮度・・7 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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THE LUST 「HONEST」
ロシアのゴシックメタル、ラストの2020年作
2004年にデビュー、本作は7作目となる。メタリックなギターリフに美麗なシンセを重ね、
艶めいた女性ヴォーカルの歌声で聴かせる、シンフォニックなゴシックメタルサウンド。
楽曲は3〜4分前後とわりとシンプルであるが、メロディックなギタープレイやクラシカルなピアノなど、
壮麗な音の厚みとともにサウンドの説得力もあるのは、さすがキャリアのあるバンドというところ。
モダンでキャッチーなノリと耽美な雰囲気が同居したところは、WITHIN TEMPTATIONEVANESCENCEなどに通じるところもあり、
歌詞が英語であるので多くのリスナーにアピールするだろう。さほど新鮮味はないが、メロディックな聴きやすさで楽しめる好作品だ。
ドラマティック度・・7 ゴシック度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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HARVEST TIME (Время Жатвы)「To rise Tomorrow The Sun」
ロシアのシンフォニックメタル、ハーヴェスト・タイムの2018年
メタリックなギターに美麗なシンセを重ね、なよやかなソプラノ女性ヴォーカルの母国語の歌声で、
優美なシンフォニックメタルを聴かせる。巻き舌発声の美しい女性声とシンセが奏でる土着的なメロディ、
ほどよく辺境的でマイナーな空気感とともに、ときにゴシック寄りの耽美な世界観も感じさせつつ、
後半にはメロスピばりの激しい疾走ナンバーもあったりと、なかなか緩急ある作風で楽しめる。
どちらかというと、ARKONAが優雅になったようなイメージか。これぞロシアンなシンフォニックメタル。
シンフォニック度・・7 辺境度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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Sanctorium「Tessellation Of The Universe」
ロシアのシンフォニックメタル、サンクトリウムの2017年
女性Vo、女性Keyを含む7人編成で、クラシカルなピアノを含むシンセにツインギターを重ね、
美しい女性ヴォーカルに男性デスヴォイスが絡む、壮麗なシンフォニックメタルを聴かせる。
耽美なクラシカル性と重厚な迫力が同居したサウンドは、EPICAなどを思わせるが、
随所に混声コーラスも加えた、HAGGARDTHERIONなどに通じる大仰な雰囲気もある。
Daria嬢の伸びやかな歌声には爽快な魅力があって、Delainのシャルロッテさんを思わせるところも。
正直デスヴォイスはあまりいらない気もするのだが、ほどよくアグレッシブな展開力とともに、
ドラマティックな荘厳さとモダンなヘヴィネスが同居した濃密な作風で楽しめる強力作。
シンフォニック度・・9 クラシカル度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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TAKEN
スペインのメロディックメタル、テイクンの2016年作
ツインギターにツインキーボードを含む7人編成で、流麗なギターにハイトーンヴォーカルを乗せて疾走、
美麗なシンセアレンジを加えた、北欧のバンドに通じる爽快なメロディック・スピードメタルを聴かせる。
サビでのキャッチーな盛り上がりは、初期のSONATA ARCTICADRAGONLANDばりの
爽快にして壮麗なクサメロ感に包まれていて、この手のクサメロスピ☆マニアはニンマリだろう。
どの曲も、とにかく華麗でフックのあるメロディが心地よく、伸びやかなハイトーンヴォーカルもかなりの逸材。
ラストの12分近い大曲は、シンフォニックメタル的なスローテンポからミドルテンポの優美でドラマティックなナンバー。
ハンド名が単純すぎてスルーしていた方は、ぜひとも聴くべし。美麗系メロスピの傑作というべき会心の出来でしょう。
メロディック度・・9 疾走度・・9 クサメロ度・・9 総合・・8.5
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Thy Symphony 「All New Beginning」
ブラジルのシンフォニックメタル、ザイ・シンフォニーの2013年
2009年にデビューし、2作目となる。メタリックなギターにオーケストラルなアレンジを重ね、
美しいソプラノ女性ヴォーカルと男性声を乗せた、壮麗なシンフォニックメタルを聴かせる。
曲によってはアグレッシブに疾走するパートとともに、緩急ある展開力と適度に粗削りのマイナー感もあって、
クラシカルな優雅さとのコントラストになっている。紅一点、Karina嬢の歌声はなよやかなソプラノと
ハイトーンを使い分けていて、線は細いがなかなか魅力的。全体的には、ギターサウンドよりもむしろ
シンフォニックなオケアレンジが前に出ていて美麗な聴き心地。15分の大曲含む、全76分の力作です。
シンフォニック度・・8 壮麗度・・8 女性Vo度・・7 総合・・7.5
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Kattah 「Lapis Lazuli」
ブラジルのメロディックメタル、カタの2014年作
2010年デビュー、本作2作目となる。メタリックなリフと流麗なフレーズを奏でるギターにハイトーンヴォーカル、
リズムチェンジを含む展開力で知的な雰囲気のメロディックメタルを聴かせる。ジャケのイメージのように
随所にオリエンタルな雰囲気を覗かせるところは、同郷のEYES OF SHIVAなどにも通じるかもしれない。
疾走感というよりは、プログレッシブな構築力で聴かせるスタイルで、キャッチーなメロディのフックも含めて、
激しさよりも優雅な聴き心地に包まれる。あとは抜けの良い爽快なナンバーがあればアクセントになるのだが、
あるいはプログレッシブな路線をもっとディープに追及するなど、さらに方向性を定めて行ってもらいたい。
メロディック度・・8 疾走度・・6 優雅度・・8 総合・・7.5
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ElvenStorm「Blood Leads To Glory」
フランスのメロディックメタル、エルヴェンストームの2014年作
2011年にデビューし、2作目となる。クサメロたっぷりのギターと女性ヴォーカルを乗せて疾走する、
オールドスタイルのメロパワスタイル。紅一点、Laura嬢の歌声は伸びやかな魅力があって、
ほどよくフェミニンな優雅さとともに、正統派の疾走メロスピサウンドを華やかに彩っている。
ヘヴィ過ぎない軽快な疾走感と、初期HELLOWEENRUNNING WILD風味など、
80〜90年代ルーツのギターリフも含めた、ほどよいクサメロ感も絶妙で、思わずニヤニヤとなる強力作。
メロディック度・・8 疾走度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら


PERTNESS 「SEVEN TIMES ETERNITY」
スイスのメロディックメタル、パートネスの2008年作
メロディックギターにかすれ気味のヴォーカルを乗せて疾走する、オールドな感触のメロパワで、
キャッチーなフックと勇壮さが同居した、PHOENIX RIZINGNOT FRAGILEあたりにも通じる、
王道のクサメロスピとしても楽しめる。ほどよいクサメロを奏でるギターの土着感とともに、
ヴォーカルがややダーティなこともあり、ヴァイキングメタル風の武骨さも感じさせるのがポイント。
華麗というよりは、垢抜けない勇壮さが持ち味で、歌唱も演奏力は並程度なのであるが、
どの曲もとにかくクサめのギターの旋律が重なってくるので、クサメタラーなら必聴でしょう。。
メロディック度・・8 疾走度・・8 正統派度・・8 総合・・7.5
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Tuezmadar 「Almok」
ハンガリーのメロディックメタル、タズマダーの2007年作
ツインギターにシンセを含む6人編成で、メタリックなギターリフにきらびやかなシンセを重ね
母国語のパワフルなヴォーカルを乗せた正統派のメロパワサウンド。メロディのフックもわりとクサメロ寄りで
ミドルテンポを主体にしつつ、随所に疾走するパートもあって、リズムチェンジなどの構築力もなかなかのもの。
美麗なシンセワークの叙情的なバラードなども良い感じで、ヴォーカルの力量も含めて演奏力もあるので、
この手の辺境系のメロパワとしては比較的クオリティは高い部類だろう。次作「Almok」も同様の好作品。
メロディック度・・8 疾走度・・7 辺境度・・8 総合・・7.5

Face Off 「The Colour Of Rain」
セルビアのゴシックメタル、フェイス・オフの2013年
ヘヴィなギターリフにコケティッシュな女性ヴォーカルの歌声を乗せた、翳りを帯びたゴシックメタルサウンド。
シンセなどのアレンジが入らず、バックはギターがメインなので、女性声とのコントラストで浮遊感を描くところは、
かつてのThe Gatheringあたりにも通じる雰囲気。紅一点、Marija嬢の歌声も伸びやかな表現力があって、
ヘヴィなサウンドを魅力的に彩っている。楽曲そのものにさほど愛想がない分、女性声の魅力が引き立っていて、
壮麗なアレンジを使わずとも耽美の表現はできるのだと再認識。どことなく90年代のゴシック思い出させる好作です。
ドラマティック度・・7 ゴシック度・・7 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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Ashes You Leave「Desperate Existence」
クロアチアのゴシックメタル、アッシィズ・ユー・リーヴの1999年作
1998年にデビューし、2作目となる。女性Voに女性ヴァイオリン奏者を含む6人編成で、
フルートが鳴り響き、幻想的なシンセに美しい女性ヴォーカル、そしてメタリックなギターを加えて、
ヨーロピアンな翳りに包まれたゴシックメタルを聴かせる。やわらかなフルートにヴァイオリンの音色が
クラシカルな優雅さを加えていて、サウンドに辺境的な暗がりを感じさせるという点では、
まさにゴシックメタルの王道といえる。ときにデスヴォイスも加わり、リズムチェンジなども含めて
耽美な空気の中にほどよくアグレッシブな部分も覗かせる。粗削りであるが、これぞゴシックである。
ドラマティック度・・8 ゴシック度・・9 女性Vo度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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Black Fabula 「Running Through The Ages」
イタリアのプログレメタル、ブラック・ファブラの2003年
女性シンセを含む5人編成で、変則リズムにギターとシンセを重ね、煮え切らないハイトーンヴォーカルで聴かせる、
いくぶんヘンテコなセンスのプログレメタル。キレのないドラムやこもり気味の音質も含めて、
いかにもアマチュアの自主制作然としていて、正直、デモ音源レベルといって差し支えない。
ときに疾走したり、リズムチェンジを多用したアレンジは唐突な部分も多く、この垢抜けなさは
イタリアらしい混沌とした味わいというべきか。優美なシンセワークはなかなか良い感じだし、ギターもテクニックはある。
全5曲であるが、7〜8分という長めの曲も含めて34分もあるので、いちおう1stアルバムということなのだろう。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・7 楽曲・・6 総合・・6.5



8/28
パラリンピック開幕(274)


ELEINE 「DANCING IN HELL」
スウェーデンのシンフォニックメタル、エレインの2020年作
2015年にデビュー、本作は3作目となる。ヘヴィなギターにオーケストラルなアレンジを重ね、
妖艶な女性ヴォーカルの歌声で聴かせる、ほどよくダークで重厚なシンフォニックメタルサウンド。
ときに疾走するメロパワ寄りの激しさも含んだ楽曲は、デスヴォイスも加えたアグレッシブな部分とともに、
EPICAなどにも通じる壮麗な迫力に包まれている。マデリン嬢のヴォーカルは、艶めいたフェミニンな魅力と
パワフルな表現力で、厚みのあるバックに負けない伸びやかな歌声で、優美に楽曲を彩っている。
サウンドの説得力は充分、あとはNightwishあたりに比肩できるメロディやインパクトのある楽曲を期待したい。
シンフォニック度・・8 重厚度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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LESOIR 「MOSAIC」
オランダのプログレ・ゴシックロック、レソールの2020年作
2015年にデビューし、3作目となる。女性Vo、女性Gを含む編成で、ほどよくハードなギターに
伸びやかな女性ヴォーカルを乗せ、しっとりとした叙情に包まれた優美なサウンドを聴かせる。
メロウなギターの旋律とともに、Maartjeの表現力ある歌声が、ときにアンニュイな翳りを描きつつ、
キャッチーで涼やかなメロディアス性も含んだ、なよやかなゴシックロックが楽しめる。
派手な盛り上がりはさほどないが、魅力的な女性声による好作品に仕上がっている。
ドラマティック度・・7 アンニュイ度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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SCARLET STORIES 「Necrologies」
オランダのゴシック・ハードロック、スカーレット・ストーリーズの2019年作
ジュール・ヴェルヌ「海底二万里」、エドガー・アラン・ポー「告げ口心臓」など、SF/怪奇小説をモチーフにした
12の楽曲からなるコンセプト作品で、ほどよくヘヴィなギターとコケティッシュな女性ヴォーカルの歌声で、
翳りを帯びたメランコリックなサウンドを聴かせる。ときにクラシカルなストリングスアレンジも加わって
伸びやかな女性ヴォーカルの歌唱の表現力とともに、優美な雰囲気を描きつつ、曲によっては重厚で、
フューネラルなダークさにも包まれる。ゴシックメタルとしても楽しめるが、個人的にはメタル感触の薄めな、
しっとりとしたパートの方が気に入った。魅力的な女性声による耽美なゴシック・ハードロックの逸品です。
ドラマティック度・・7 耽美度・・8 女性Vo度・・9 総合・・8
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ANGEL 「A Woman's Diary (The Hidden Chapter)」
ノルウェーのゴシックメタル・プロジェクト、エンジェルの2020年作
TRAIL OF TEARSの初代シンガーで、IMPERIAでも活躍する、ヘレナ嬢によるユニットで、
本作は、Motorhead、 Leonard Cohen、Sissel Kyrkjebo、Rick Emmett、Prince、Beth Hartなどの楽曲や
オペラのアリアなどをクラシカルにアレンジ、優美なピアノをバックに艶めいた歌声でしっとりと聴かせる。
バックはピアノのみであるが、ときにオペラティックに歌い上げるヘレナ嬢の歌唱の表現力はさすがで、
優雅で格調高い聴き心地。「虹の彼方へ」や「メモリー」のようなメジャーな曲から、わりとマイナーな曲まであるが、
どれも彼女の色で統一されていて、単なるメタルシンガーという以上のエモーショナルな歌声にゆったりと浸れる。
優美度・・9 メタル度・・0 女性Vo度・・9 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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Ancient Bards 「Origine -The Black Crystal Sword Saga Part2」
イタリアのシンフォニックメタル、エインシェント・バーズの2019年作
2010年にデビュー、本作は5年ぶりとなる4作目。デビュー作の続編となるコンセプトストーリーで、
壮麗なオーケストレーションとナレーションによるシネマティックなイントロから幕を上げ、
伸びやかな女性ヴォーカルを乗せた、優美でエピックなシンフォニックメタルを展開。
ときにデスヴォイスを含むアグレッシブな激しさと、RHAPSODYばりのクワイアを重ねて、
壮大なスケールのファンタジックな世界観を描いてゆく。サラ嬢のなよやかな歌声が映える、
しっとりとしたパートもアクセントになっていて、ラストの14分の大曲では3部構成のドラマ性とともに、
緩急ある構築力で雄大なファンタジーメタルを締めくくる。まさに女性声版ラプソというべき力作だ。
シンフォニック度・・9 壮麗度・・9 女性Vo度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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AMENTI 「FUERZA VITAL」
スペインのメロディックメタル、アメンティの2019年作
ツインギターにシンセを含む6人編成で、叙情的なギターフレーズに美麗なシンセを重ね、
スペイン語のハイトーンヴォーカルを乗せた、初期AVALANCHを思わせるクサメロ感とともに
壮麗なサウンドを聴かせる。キャッチーなメロディのフックときらびやかなシンセアレンジで、
シンフォニックメタル的な雰囲気でも楽しめ、スパニッシュメタルの濃密さもしっかり同居。
ミドルテンポからの疾走する爽快なメロスピ風味も含めて、日本人好みのサウンドに仕上がっている。
メロディック度・・8 疾走度・・7 スパニッシュ度・・8 総合・・8
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AVALANCH 「El Secreto」
スペインのメロディックメタル、アヴァランチの2019年作
1993年デビューの、スパニッシュメタルを代表するバンドのひとつ。2012年に活動休止に入るも、
2017年に、AVALANCH All Star Band名義でベストアルバムを発表、本作はそれに続く復活作となる。、
メタリックなツインギターにシンセを重ね、スペイン語の伸びやかなヴォーカルを乗せて、メロディックに疾走する
まさに王道のメロパワサウンド。初期の頃のようなキャッチーなフックがたっぷりで、ほどよいクサメロ感とともに
じつに爽快な聴き心地。疾走するナンバーからミドルテンポまで、どの曲も総じてメロディアスな優雅さに包まれていて、
スローナンバーでの哀愁の歌声や泣きのギターフレーズなども、スパニッシュらしい濃密な味わいで楽しめる。
メロディック度・・8 疾走度・・7 スパニッシュ度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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GateKeeper 「EAST OF SUN」
カナダのメタルバンド、ゲートキーパーの2018年作
物語の一場面のようなジャケに惹かれるが、サウンドの方もオールドな味わいのギターに
かすれたハイトーンヴォーカルを乗せて疾走する、80〜90年代ルーツの正統派メタル。
かつてのマイナー系NWOBHMのようなウェットな怪しさに、朗々としたヴォーカルを乗せた
エピックドゥーム寄りの雰囲気も覗かせつつ、随所にメロディックなギターフレーズも含んだ
ドラマティックな聴き心地で楽しめる。全体的にはリフ主体の骨太のメタル感触が強いので、
どっしりとした硬派の味わいです。ボーナスにOMENSAVATAGEのカヴァーを収録。
ドラマティック度・・8 古き良き度・・8 エピック度・・8 総合・・8
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Dimorfia 「Utopia」
ギリシャのシンフォニックメタル、ディモルフィアの2017年作
女性Voにシンセを含む6人編成で、メタリックなギターに美麗なシンセアレンジを重ね、
ソプラノ女性ヴォーカルを乗せた、Nightwishタイプの優美なシンフォニックメタルを聴かせる。
ストリングスを重ねたクラシカルな味わいと、オペラティックな女性声のかもしだす優雅さで、
アコースティックギターを使った繊細な叙情パートなども含めて、表現豊かに構築してゆく。
民族テイストのある素朴さも覗かせつつ、後半にはデスヴォイスを乗せたアグレッシブなパートもあり、
わりと振り幅の大きな作風で楽しめる。いくぶん辺境的なマイナーな雰囲気も残した壮麗作だ。
シンフォニック度・・8 優美度・・8 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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KRYPTERIA 「LIBERATIO」
ドイツのシンフォニックメタル、クリプテリアの2005年作
2作目以降は聴いていたが、本デビュー作をようやく入手。美麗なシンセアレンジに
美しい女性ヴォーカルの歌声で、EDENBRIDGEにも通じる優雅なサウンドを描く。
男性ヴォーカルによるAOR的なナンバーもあったり、全体的にメタル感触はわりと薄めで、
クラシカルな美しさと、キャッチーなメロディックロックが同居したというような聴き心地。
3〜4分前後の楽曲は比較的シンプルで、曲は女性声と男性声のナンバーが半々というところ。
次作以降は女性ヴォーカルメインになってゆくことを思うと、まだ方向性が固まり切れていない。
シンフォニック度・・7 優美度・・8 女性Vo度・・7 総合・・7 過去作のレビューはこちら
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LAST PROPHECY  「SHADOWS OF THE PAST」
フランスのメタルバンド、ラスト・プロフェシーの1995/2020年作
1995年の1stのリマスターに、デモやライブ音源を収録したポーナスDisc付きの2枚組仕様。
ドタドタとしたドラムにオールドなギターリフ、弱めのハイトーンヴォーカルを乗せた、
いかにもマイナーな雰囲気のヨーロピアンメタル。80年代ルーツの正統派メタルの感触に、
初期BLIND GUARDIANのようなファンタジックな空気を乗せたという作風で、録音の弱さも演奏面も、
ありていにいってB級なのだが、どこか嫌いになれないロマンの香りがある。10分を超える大曲は、
IRON MAIDEN
風のドラマティックな味わいで、そのIRON MAIDEN「Fear Of The Dark」のカヴァーも収録。
ボーナスDiscの1993年のデモも粗削りながら、古き良きジャーマンメタルのような日本人好みのサウンドだ。
ドラマティック度・・8 疾走度・・7 マイナー度・・9 総合・・7.5
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Lonewolf 「March Into the Arena」
フランスのメロディックメタル、ローンウルフの2001年作
本作がデビュー作で、メロディックなギターにパワフルなヴォーカルを乗せて疾走する
オールドスタイルのメロパワサウンド。エピックで勇壮な雰囲気と、ほどよいクサメロ感、
リズムチェンジを含むドラマティックな展開力もあって、バンドとしての方向性はすでに感じさせる。
のちの作品に比べるといくぶんB級臭さはあるものの、いくぶんダーティなヴォーカルも含めて、
RUNNING WILDMANOWARにも通じる世界観と、ツインギターによる叙情性が合わさった、
日本人好みのメロパワが味わえる。粗削りながら、期待を感じさせる魅力を含んだデビュー作だ。
ドラマティック度・・8 疾走度・・7 勇壮度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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Night Viper
スウェーデンのメタルバンド、ナイト・ヴァイパーの2015年作
ツインギターのオールドなリフにハスキーな女性ヴォーカルの歌声を乗せて、
80年代ルーツのほどよい疾走感の古き良きメタルサウンドを聴かせる。
ゆったりとしたパートでは、魔女系ロック的な妖しい雰囲気にも包まれつつ、
疾走するスピードメタルの感触は、オールドメタラーには心地よいだろう。
ストレートなナンバーがほとんどであるが、シンプルなギターリフと伸びやかな女性声で、
爽快なオールドメタルが楽しめる。スラッシーなスピードメタル感が強まる次作もお薦めです。
ドラマティック度・・7 古き良き度・・8 女性Vo度・・7 総合・・7.5
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ROBERTA/Роберта 「Wizards/Магьосници」
ブルガリアの女性シンガー、ロベルタ の1999年作/邦題「魔法使いたち」
優美なシンセアレンジに適度にハードなギター、ハスキーな女性ヴォーカルの歌声を乗せた、
キャッチーなメロディアスロックで、FSBのメンバー、R.ボヤジェフが前面参加している。
母国語で歌われるエモーショナルな歌声が魅力的で、叙情的なギタープレイとともに、
哀愁のに包まれたナンバーなども良い感じだ。全体的にはハードさはあまりないので、
歌ものAORという感じで、楽曲自体も3〜4分前後と比較的シンプルな味わい。しっとりとしたバラードなども
かすれた女性声がアダルトな叙情美をかもしだしていて、優雅な母国語プログレハード的にも楽しめる。
メロディック度・・7 キャッチー度・・8 女性Vo度・・8 総合・・7.5



8/6
暑中お見舞いメタル(260)


ANCIENT MYTH「ArcheoNyx 」
日本のシンフォニックメタル、エンシェント・ミスの2021年作
2016年の欧州デビュー盤というべき「Aberration:Pt」はさみ、アルバムとしては、2012年以来、9年ぶりとなる3作目。
VoのMichal以外はメンバーが交替しているが、オーケストラルで壮麗なアレンジに叙情的なギターワーク、
コケティッシュな女性ヴォーカルを乗せて疾走する、クラシカルなシンフォニックメタルはさらにスケールアップ。
THE GENIUS ORCHESTRATIONでも活躍する、Koheiの巧みなギタープレイもサウンドを流麗に彩っていて、
Versaillesのオーケストラアレンジも手掛けた、Halによるシンフォニックなオーケストレーションともよくマッチしている。
激しい疾走感と優雅なメロディアス性の緩急ある展開に、生のストリングスも含めて、これまで以上にクラシカルな雰囲気を漂わせ、
今作では随所にソプラノを使い分けるMichal嬢の歌唱の表現力も増したことで、モーツァルトのオペラのカヴァーなども優美に楽しめ、
本格的なクラシック要素の説得力も備わった。アルバム後半もテンションは落ちず、「和」を感じさせるクサメロ疾走曲の「天狼大神」や、
スペシャルゲストにHIZAKI (Versailles/Jupiter)が参加したラストナンバーまで、まさに日本産シンフォニックメタルの底力を見せる傑作だ。
元メンバーで現Early Crossの女性シンセ奏者、Puzzyもゲスト参加している。オーケストラバージョンを収録したデラックスエディションもあり。
シンフォニック度・・9 壮麗度・・9 女性Vo度・・8 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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ALL IMAGES BLAZING「LIFE」
日本のプログレメタル、オール・イメージズ・ブレイジングの2019年作
ISIS、L’evolzioneのシンセ奏者を擁するバンドの2作目で、VoとKey以外のメンバーが前作から交替している。
テクニカルなリズムにほどよくハードなギターとオルガンなどを含む優美なシンセ、伸びやかな女性ヴォーカルの歌声で、
翳りを帯びた叙情に包まれたハードプログレ的なサウンドを聴かせる。キャッチーな優雅さと技巧的なアレンジが同居しつつ、
古き良きプログレ感をかもしだすシンセワークも秀逸で、Atsuko嬢の英語の歌唱力がいくぶん向上したことで、
楽曲そのものの魅力も増した。ジャズタッチのファンキーなナンバーやメロハー寄りのキャッチーなナンバーなど、
わりとバラエティに富んでいるが、総じて優雅でメロディックな耳心地の良さで、ラストの12分の大曲までじっくりと楽しめる。
メロディック度・・8 テクニカル度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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OCEANS OF SLUMBER
アメリカのシンフォニックメタル、オーシャンズ・オブ・スランバーの2020年作
2013年にデビューし4作目となる。黒人系女性Voをフロントにした6人編成で、テクニカルなリズムに
メタリックなギターとシンセを重ね、エモーショナルな女性ヴォーカルで、スケール感のあるスタイリッシュなサウンドを描く。
随所にデスヴォイスを絡めたアグレッシブな重厚さと、オーケストレーションを重ねた壮麗な優雅さが同居した味わいで、
デスメタル的な激しい疾走パートから、ゆったりとした優美なシンフォニックメタルのパートが交差する。
インストの小曲なども含めて、コンセプト的な流れがドラマティックな世界観を描いていて、Cammie嬢の歌声も
ときに妖しい表現力に包まれる。女性声メインのエクストリームなメタルとしては、CRETURAなどにも通じるだろう。
プログレッシブな展開力と重厚な迫力、力量ある女性ヴォーカルで聴かせる、全71分という力作デス。
ドラマティック度・・8 重厚度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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PAIN OF SALVATION 「PANTHER」
スウェーデンのプログレッシブメタル、ペイン・オブ・サルヴェイションの2020年作
1997年にデビュー、通算10作目となるスタジオアルバムで、豹人のジャケに「グイン・サーガ」を思い出したが、
それとは関係ないらしい。一時期のヴィンテージロック路線から、前作からは再びプログレメタルに回帰していたが、
本作も、モダンなシンセアレンジにエモーショナルなヴォールカルで、スタイリッシュなProgMetalを聴かせる。
テクニカルな部分よりも、薄暗くキャッチーな歌もの感が前に出ていて、楽曲的にとっつきはあまりよくないが、
ダニエル・ギルデンロウの表現力ある歌唱を中心に、「Scarsick」の頃のようなデジタルなアレンジも盛り込みつつ
人間の深層に分け入るような悲哀を含んだ情感が感じられる。ラストは13分の大曲で、じっくりとダークな叙情を描いてゆく。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 スタイリッシュ度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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EYEVORY 「AURORA」
ドイツのシンフォニックメタル、アイヴォリーの2019年作
2013年にデビューし、3作目となる。女性Vo&B、女性フルート&ピアノ奏者を含む編成で、
ほどよくハードなギターにシンセを加え、優美なフルートの音色に伸びやかな女性ヴォーカルで、
キッャチーで爽快なサウンドを聴かせる。しっとりとしたパートではゴシックメタル的な雰囲気もありつつ、
ダークな部分はなく、むしろメタル感のないしっとりとしたナンバーなどにも優しい魅力がある。
メロディックな聴き心地の良さという点では、女性声のメロハーやハードプログレとしても楽しめる。
ラストは10分を超える大曲で、美麗なシンセと叙情的なギターが重なり、じわじわと盛り上げてゆくのは
シンフォニックロック的でもある。前作よりもメタル感触が控えめなので、今後の方向性にも注目したい。
メロディック度・・8 キャッチー度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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False Memories 「Last Night of Fall」
イタリアのゴシックメタル、ファルス・メモリーズの2021年作
女性Voにツインギターを含む5人編成で、メタリックなギターになよやかな女性ヴォーカルを乗せた
かつてのTHE GATHERINGにも通じる優雅な浮遊感に包まれた、正統派ゴシックメタルを聴かせる。
紅一点、Rossella嬢の歌声は、アネク・ヴァン・ガースバーゲンのように伸びやかな表現力で魅力たっぷり。
シンセアレンジはさほど使われていないが、ほどよい叙情を奏でるギターと美しい女性声によって、
しっかりと耽美なサウンドを描く、演奏と歌唱の実力がある。楽曲は4分前後と比較的シンプルながら、
随所にキャッチーなフックが感じられて、ゴシックメタルとして重厚さを保ちつつも、メロディアスな聴き心地。
ドラマティック度・・8 ゴシック度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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Walk in Darkness 「In The Shadows Of Things」
イタリアのゴシックメタル、ウォーク・イン・ダークネスの2017年作
重厚なギターにデスヴォイスと美しい女性ヴォーカルを乗せた、耽美なゴシックメタルを聴かせる、
ピアノを含む優美なシンセと、KALIDIAにも参加するニコレッタ嬢のなよやかな歌声も魅力的で、
DRACOINIANなどにも通じるドゥーミィなスローテンポから、ほどよくアグレッシブな激しさも含んだ、
メリハリある構築力で、イタリアらしい壮麗さとダークな耽美性が同居した世界観を描いてゆく。
アレンジ面での派手さはないが、翳りを帯びた叙情に包まれていて、泣きのギターフレーズも耳心地よく、
デス声の入らないナンバーも多いので、フィメール系シンフォニックメタルのリスナーにも楽しめるだろう。
ラスト曲でのキャッチーなメロディアス性は、ニコレッタの歌唱によくマッチしていて、優雅にアルバムを聴き終える。
シンフォニック度・・7 ゴシック度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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Celestial Crown 「Suicidal Angels」
エストニアのゴシックメタル、セレスティアル・クラウンの2006年作
2002年にデビューし、3作目となる。叙情的なフレーズを奏でるギターにクラシカルなシンセを重ね、
女性ヴォーカルと絶叫する男性声を乗せた、ほどよい辺境感に包まれたゴシックメタル。
男性声は、ジェントルなノーマル声から、低音グロウル、耳障りなダミ声といろいろ入って来て、
女性ヴォーカルがほとんど入らない曲もあるので、もっと女性声メインにして欲しいという気もする。
全体的にも辺境的な粗削りさを感じさせるが、随所に泣きの叙情ギターにピアノなどのシンセが
耽美な空気を描いていて、女性ヴォーカルによるしっとりとしたナンバーなども美しい。
シンフォニック度・・7 ゴシック度・・7 女性Vo度・・7 総合・・7
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APPEARANCE OF NOTHING 「All Gods Are Gone」
スイスのプログレメタル、アピアランス・オブ・ナッシングの2011年作
2005年にデビューし、本作で3作目。メタリックなギターをテクニカルなドラムに乗せ、パワフルなヴォーカルで聴かせる、
プログレ・パワーメタルというサウンド。オルガンなどのシンセアレンジを加えたほどよくキャッチーな感触と
Psychotic Walzのデヴォン・グレイヴス、元Edge of Sanityのダン・スワノがゲストヴォーカルで参加して、
デスヴォイスをまじえたアグレッシブな部分が同居しているのも特徴だろう。9分の大曲でも難解さはなく、
重厚さと知的な展開力の同居という点では、VANDEN PLASなどのファンにも楽しめるだろう。
曲によってはダークなナンバーもあり、ドラマティックな空気に包まれる。なかなかの力作である。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 重厚度・・8 総合・・7.5
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APPEARANCE OF NOTHING 「In Times of Darkness」
スイスのプログレメタル、アピアランス・オブ・ナッシングの2019年作
5作目となる本作も、重厚なギターにシンセを重ね、伸びやかなヴォーカルを乗せて、適度にダークでテクニカル、
そしてドラマティックなプログレ・パワーメタルを聴かせる。Djent的でもあるモダンなヘヴィネスと硬質感に、
デスヴォイスを加えたアグレッシブな迫力、ゲストによる物悲しいチェロの音色を加えた、メランコリックな9分の大曲や、
Cellar Darlingのアンナ・マーフィがゲストで参加した男女Voのナンバーなど、ゴシックやデスメタルの要素も随所に含んだ
スタイリッシュなミクスチャー感覚は、若いリスナーなどにも楽しめると思う。ダーク寄りのモダンProgMetalというべき力作だ。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 重厚度・・8 総合・・8
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ANTHRIEL 「The Pathway」
フィンランドのプログレメタル、アンスリエルの2010年作
きらびやかなシンセに流麗なギター、伸びやかなハイトーンヴォーカルを乗せて、
随所に変則リズムを含む適度なテクニカル性で、メロパワ寄りのProgMetalを聴かせる。
ヘヴィ過ぎない優雅さと、キャッチーなメロディアス性は、いかにも北欧のバンドらしく、
SONATA ARCTICAなどが好きな方にも楽しめるだろう。優美なシンセワークとともに
シンフォニックな味わいもありつつ、全体的に濃密すぎない聴き心地で楽しめる。
ラストは13分の大曲で、緩急ある展開力とドラマティックな叙情性に包まれる。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 優美度・・8 総合・・8
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Leviathan 「Riddles Questions Poetry & Outrage」
アメリカのプログレメタル、リヴァイアサンの1996年作
1994年にデビュー、本作は2作目で、ツインギターのリフにうっすとしたシンセ、ハイトーンヴォーカルを乗せて、
ほどよくテクニカルな展開力で聴かせる、FATES WARNINGにも通じるスタイルのProgMetalを聴かせる。
随所に叙情的なメロディアス性も覗かせながら、わりと唐突なリズムチェンジなどもあって、
煮え切らないマイナー臭さがなかなか楽しい。9分の大曲などもゆったりとした味わいで、
DRERAM THEATERなどど比較すると、楽曲自体にさほどスリリングなところはないが、
90年代の頃には、この手のインテレクチュアルなバンドを求めていたリスナーも多いだろう。
バンドは1997年の3作目を最後に解散するも、2010年になって復活する。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・7 マイナー度・・8 総合・・7.5
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BETOKEN 「VENOM EMPIRE」
イタリアのメロディックメタル、ベトケンの2009年作
2004年にデビューし3作目となる。王道のギターリフにハイトーンヴォーカルを乗せて疾走する
オールドスタイルのメロパワサウンド。楽曲は3〜4分前後主体で、どの曲もわりとストレートな感触。
クサメロがあるわけでもなく、フックのある展開力もさほどないので、これというインパクトもない。
疾走感のあるナンバーはまだしも、ミドルテンポやどっしりとしたナンバーでは、正統派であるという以外に
魅力的な要素がないので、全体的にも普通のB級メタルです。それ以上でもそれ以下でもないという。
メロディック度・・7 疾走度・・7 正統派度・・8 総合・・7
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7/24
東京オリンピック開幕!(247)


Frozen Crown「Winterbane」
イタリアのメロディックメタル、フローズン・クラウンの2021年作
BE THE WOLFのフェデリコ・モンデッリ率いるバンドで、2018年にデビューしすでに3作目となる。
ヘヴィで流麗なギターリフにパワフルかつ妖艶な女性ヴォーカルを乗せて疾走する、
正統派のメロディックメタル・サウンドは本作も不変。モダンな硬質感と伝統的なメタル感触を
キャッチーなフックで包み込んだ巧みな楽曲アレンジは、さすが多才なフェデリコというところ。
スピーディな疾走ナンバーから、どっしりとした勇壮なミドルテンポまでバランスのとれた構成で
ジェイド嬢のエモーショナルな歌声が、激しいナンバーにおいてもほどよく優美な味わいになっている。
JUDAS PRIEST「Night Crawler」のカヴァーもなかなかハマっている。もはや安定の完成度だ。
メロディック度・・8 疾走度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Heart Healer「The Metal Opera」
マグナス・カールソンによるメタルオペラ、ハート・ヒーラーの2021年作
ノーラ・ロウヒモ(Battle Beast)、 アネット・オルゾン(The Dark Element)、エイドリアン・カワン(Seven Spires)、
マルガリータ・モネ(Edge of Paradise)、アイリン(Her Chariot Awaits)、ネッタ・ローレン(Smackbound)といった
多数の女性ヴォーカルが参加し、オーケストラを含む壮麗なアレンジの、シンフォニックメタルを展開する。
配役ごとに分かれた各シンガーたちの美しく伸びやかな歌声には、フィメール・メタルファンはウットリだろう。
マグナス・カールソンによる流麗なギタープレイも随所に光っていて、キャッチーな歌もの感触とインストパートの
バランスがとれたアレンジはさすが。全体的には、それほど意外性がないストレートな聴き心地であるが、
エイドリアン・カワンのエモーショナルな歌声を乗せたナンバーなどはじつに美しい仕上がりだ。
シンフォニック度・・8 キャッチー度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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THE DARK ELEMENT「Songs The Night Sings」
フィンランドのシンフォニックメタル、ダーク・エレメントの2019年作
Nightwishのアネット・オルソンと元SONATA ARCTICAのヤニ・リマタイネンによるユニットの2作目で、
美麗なシンセアレンジに伸びやかな女性ヴォーカルで、華麗なシンフォニックメタルを聴かせる。
Nightwishにも通じる優雅で涼やかな雰囲気と、キャッチーでメロディックなフックが同居していて、
ほどよくヘヴィなメタルとしての激しすぎない聴き心地が、ストレートなアネットの歌声ともよくマッチしている。
楽曲は4〜5分前後と長すぎない明快さで楽しめて、とくに爽快なメロディのナンバーは魅力的で、
シンガーとしてのアネットの実力を感じさせる。新鮮味はさほどないが、バランンスの良い好作だ。
シンフォニック度・・7 キャッチー度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Tarja Turunen 「Ave Maria」
フィンランドの女性シンガー、ターヤ・トゥルネンの2015年作
Nightwishのシンガーとして知られる彼女であるが、本作はメタル色のない純クラシックを歌うアルバムで、
フランチェスコ・パオロ・トスティ、アクセル ・フォン・コーテン、サン・サーンス、シャルル・グノー、バッハ、
ピエトロ・マスカーニ、ジュリオ・カッチーニなどによる、それぞれの「アヴェ・マリア」を集めたという内容。
ストリングスやオーケストラをバックに、オペラティックなターヤの歌声が優美に響き渡る。
当然ながらメタル色は皆無で、しっとりと美しいヴォーカルで讃美歌を鑑賞するという趣だ。
高音質のSACDハイブリッド盤で聴くと、彼女の歌声がより鮮明な響きで味わえます。
クラシカル度・・8 メタル度・・0 女性Vo度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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KISS THE GUN 「NIGHTMARES」
イギリスの女性声ハードロック、キス・ザ・ガンの2017年作
英国の女性声メロハーといえば、DANTE FOXが思い浮かぶが、このバンドもハスキーな女性ヴォーカルの歌声を乗せた
キャッチーなサウンドで、古き良き80年代の香りを漂わせた聴き心地。古き良き感触のギターワークに、
うっすらとしたシンセアレンジを重ねたウェットな感触も、ダンテ・フォックスに通じるところがある。
紅一点の美女シンガー、ナディン嬢の歌声は、適度にフェミニンでパワフル過ぎず、なかなか魅力的。
楽曲は3〜4分前後と、わりとシンプルながら、随所に聴かせるメロディックなギターフレーズもいい感じで
全体的にはこれという新鮮味はないものの、爽快な女性声ハードが楽しめるなかなかの好作品だ。
キャッチー度・・8 王道HR度・・8 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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KISS THE GUN 「WE SEE YOU」
イギリスの女性声ハードロック、キス・ザ・ガンの2020年作
3年ぶりとなる2作目で、今回は自主制作のCDR仕様。今作では女性シンガーが交替しているが、
古き良きハードロックを感じさせるギターにシンセを重ね、キュートな女性ヴォーカルを乗せた
キャッチーなサウンドは前作からの路線のまま。新加入のアビゲイル嬢の歌声は、
前任者以上にフェミニンな声質の魅力があって、楽曲に華やかな艶を加えている。
キャッチーで爽快なナンバーを主体にしつつ、曲によってはシンフォニックなアレンジも覗かせて、
叙情的なギターのフレーズも随所に耳心地よい。前作以上にバラエティが増したという好作品です。
キャッチー度・・8 王道HR度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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Raintimes
カナダのメロディアスハード、レインタイムズの2017年作
VON GROOVEのマイケル・ショットンを中心としたバンドで、ツインギターにシンセを含む6人編成。
叙情的なギターにシンセを重ね、マイルドなヴォーカルとともに、JOURNEYなど、80年代ルーツの
キャッチーな王道のメロハーを聴かせる。あくまでメロディックな泣きのギターソロも日本人好みで、
哀愁の叙情に包まれたバラードから、爽快なメロディックロックまで、魅力的なメロディのフックと
楽曲の質の高さで、かつてのFAIR WARNINGなどにも通じるような雰囲気もある。
実力あるヴォーカルとギターの叙情メロディで、どこを切っても耳心地の良い傑作だ。
メロディック度・・9 キャッチー度・・9 哀愁度・・8 総合・・8.5
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Nemesea 「White Flag」
オランダのゴシックメタル、ネメシーの2019年作
2004年にデビュー、本作は5作目となる。本作から女性シンガーが交替していて、おやと思ったが、
モダンなシンセアレンジに、ほどよいヘヴィネスとメロディアスで優雅な感触が同居した、
ゴシックロック・サウンドは健在。全体的にもキャッチーなメジャー感を描くようなナンバーが多く、
新加入のサンネ嬢の歌声は伸びやかで、ストレートな表現力がサウンドによくマッチしている。
楽曲は3〜4分前後と、わりとシンプルであるが、メロディのフックが明快で総じて聴きやすく、
デジタルなアレンジからしっとりとしたバラードまで優美な味わいで楽しめる。高品質な女性声メタルです。
メロディック度・・8 ゴシック度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Eilera 「Waves」
フランスの女性シンガー、エイレラの2020年作
2003年にデビューし、本作は5作目となる。前作まではゴシックやシンフォニックメタル色を含んだ作風であったが、
本作はケルティックなトラッド色を強めたサウンドで、アコースティックギターのつまびきに美しい女性ヴォーカルで、
しっとりとした優雅で素朴なトラッド・フォークを聴かせる。うっすらとしたシンセにドラムも加わったロック感触もあり
エレキギターの叙情的なフレーズやコケティッシュな女性声とともに、優美なケルトロックとしても楽しめる。
楽曲はわりとシンプルながら、エイレラ嬢の歌唱の表現力を活かしたうるさすぎないサウンドで、
メタル感触がないので盛り上がる部分は薄いが、ケルトやネオフォークのリスナーにはお薦めの逸品です。
ケルティック度・・7 ロック度・・3 女性Vo度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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AURA 「Evil Magic (Злая магия)」
ロシアのシンフォニックメタル、オーラの2019年作
2013年にデビュー、2作目となる本作器、二人の女性Vo、女性フルート奏者を含む8人編成となり、
メタリックなギターに美麗なシンセ、母国語による女性ヴォーカルにダミ声ヴォーカルが絡む、
優美なシンフォニックメタルを聴かせる。きらびやかな優雅さと激しい疾走感もある楽曲に、
二人の女性シンガーの美しいソプラノと伸びやかなコケティッシュヴォイスという対比も楽しめる。
アコースティックギターにやわらかなフルートが鳴り響き、ソプラノヴォーカルとともに聴かせる
しっとりとしたナンバーもアクセントになっていて、一方ではアグレッシブな展開のナンバーもあり
前作以上にメリハリに富んだ内容になっている。華やかな女性声シンフォニックメタルの好作品。
シンフォニック度・・8 優雅度・・9 女性Vo度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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Svarun (Сварун)「 Slavija (Славиjа)」
セルビアのシンフォニックメタル、スヴァランの2010年作
メタリックなギターにオーケストラルなアレンジを重ね、男女ヴォーカルの歌声を乗せた
THERIONなどにも通じる神秘的なスケール感のシンフォニックメタルを展開する。
ゆったりとしたナンバーでは、美しい女性声とともにゴシックメタル的でもある空気感と、
涼やかな土着性が同居した壮麗なサウンドを絵が急いてゆく。母国語による歌唱も含めて
ほどよくマイナーなローカル感もよい味わいで、9分の大曲を多数含む、全75分という力作だ。
シンフォニック度・・8 壮麗度・・8 女性Vo度・・7 総合・・7.5
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SINSID 「Enter the Gates」
ノルウェーのメタルバンド、シンシドの2020年作
ツインギターのリフに、かつてのウド・ダークシュナイダーのようなダーティなヴォーカルを乗せた、
しごく正統派のメタルサウンドを聴かせる。重すぎない演奏といい、突き抜けきらない楽曲といい、
80〜90年代のマイナーなエピックメタルの香りを漂わせていて、なかなか微笑ましくもある。
3連リズムのどっしりとしたナンバーは、初期のMANOWARなどに通じる雰囲気もあるが、
こちらはもう少しヘナチョコな印象で、演奏もいまいち、勇壮さもほどほどのB級感触に包まれている。
これというキラーチューンもなく終わるという全39分。いまの時代にこの内容ではきついかな。
ドラマティック度・・7 正統派度・・8 楽曲・・7 総合・・7
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ATTACK 「RETURN OF THE EVIL」
ドイツのメロディックメタル、アタックの1985/2019年作
1984〜1995年までに6作を出し、日本にも密かにファンが多いこのバンド。本作は1985年の2作目の再発盤。
王道のギターリフに線の細いハイトーンヴォーカルを乗せ、欧州の翳りを含んだエピックなメタルサウンドは、
本作で確立したと言ってよいだろう。勇壮な正統派ナンバー「Warrior In Pain」、ゆったりとした序盤から、
リズムチェンジをへてキャッチーなサビへと展開する「Diarty Mary」、「Hateful And Damned」あたりも魅力的で、
イントロのフレーズがIROM MAIDENを思わせる「Hard Times」まで、オールドな正統派メタルが楽しめる好作品。
再発盤はジャケも変更されている。ボーナスに、3曲の再録バージョンを追加収録されているのも嬉しい。
ドラマティック度・・8 正統派度・・8 古き良き度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Silver Fist 「Fe Ciega」
スペインのメタルバンド、シルヴァー・フィストの2016年作
2004年にデビューし、3作目となる。ツインギターのメタリックなリフにスペイン語の歌声を乗せて、
激しい疾走感とほどよくメロディックな味わいが同居した、正統派のメロパワサウンドを聴かせる。
ときにスラッシーなほどの疾走感は、初期のBLIND GUARDIANなどにも通じる雰囲気で
パワフルなヴォーカルとともに勇壮でドラマティックな味わい。随所にシンセによるアレンジも加えた
モダンなテイストもありつつ、全体的にこ甘さは控えめの硬派なパワーメタル寄りの聴き心地である。
これというキラーナンバーはないのだが、ラストのRAINBOW「A Light In The Black」のカヴァーはなかなか。
ドラマティック度・・7 疾走度・・7 パワフル度・・8 総合・・7.5
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7/10
7月のメタル(233)


IRON ANGEL「EMERALD EYES」
ドイツのスピードメタル、アイアン・エンジェルの2020年作
1985年デビュー、2作を残して解散するも、2018年に32年ぶりとなる復活作を発表、本作は復活2作目となる。
オールドなツインギターにダーク・シュローダーのダーティなヴォーカルを乗せて疾走する、
勢いのあるスピードメタルは本作でも健在。80年代ルーツのほどよいマイナー臭さも残しつつ、
スラッシーな疾走感と、ジャーマンメタルのメロディアス性が融合したというサウンドは、
オールドメタラーの胸を熱くする。スラッシュメタルというには、リフのエッジが弱い感じもするのだが、
耳に痛くない迫力というのが持ち味で、やはりジャーマン・スピードメタルと呼ぶのが正しいのだろう。
ドラマティック度・・7 疾走度・・8 古き良き度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Demons & Wizards「III」
BLIND GUARDIANのハンズィ・キアシュと、ICED EARTHのジョン・シェイファーによるユニット、
ディーモンズ・アンド・ウィザーズの2020年作
2005年以来、15年ぶりとなる3作目で、どっしりとしたギターリフにパワフルなハンズィのヴォーカルを乗せて
重厚な正統派のメタルサウンドを聴かせる。エピックなコーラスなどは、BLIND GUARDIAN的で、
派手すぎないオールドスタイルのギターフレーズの恰好良さとダークで荘厳な世界観とともに、
シンフォニックメタルになる前のブラガーといった趣でも楽しめる。8分、9分という大曲も含めて、
全体的にゆったりとしたナンバーが多いので、スリリングな展開はさほどないが、ラストの10分を超える大曲では、
アコースティックパートを含む翳りを帯びた叙情性とともにドラマティックなサウンドが味わえる。
ドラマティック度・・7 正統派度・・8 重厚度・・8 総合・・7.5
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ALESTORM 「Sunset On The Golden Age」
スコットランドのパイレーツメタル、エイルストームの2014年作
2008年にデビューし、本作は4作目。正統派のギターにキャッチーなメロディを奏でるシンセを重ね、
ダミ声ヴォーカルを乗せた、ほどよい疾走感のあるフォーキーなメロパワサウンドは本作も健在。
海賊をテーマにした冒険活劇的な世界観と、パワフルな勇壮さにかすかにコミカルな感触も加えた
独自の作風はその強度を増して、ドラマティックなフォーク・パワーメタルというべき聴き心地に。
ギターに重なるアコーディオンの音色も含めて、メロパワ化したTURISASというような感じもあり、
11分を超えるタイトル曲は、壮大なヴァイキングメタルの味わいで楽しめる。
ドラマティック度・・8 勇壮度・・8 フォーキー度・・7 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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ALESTORM 「NO GRAVE BUT THE SEA」
スコットランドのパイレーツメタル、エイルストームの2017年作
5作目の本作も、勇壮かつフォーキーなメロディとパワフルなダミ声ヴォーカルを乗せた、
ほどよくキャッチーな海賊パワーメタルが炸裂。ファミコン的なチープなシンセ音を取り入れるなど
ときにゲーム的なコミカルな味わいも覗かせつつ、勇壮なコーラスやアコーディオンの音色とともに、
TURISASにも通じるヴァイキングメタル寄りの雰囲気も味わえる。クサメロなギターも含めて、
フォーキッシュなメロディアス性が増したことで、楽曲に哀愁の叙情も感じられるようになった。
アコースティックによる牧歌性や、愉快な酒飲み系ナンバーなどもアクセントになっている。
ドラマティック度・・8 勇壮度・・8 フォーキー度・・8 総合・・8
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ALESTORM 「Curse Of The Crystal Coconut」
スコットランドのパイレーツメタル、エイルストームの2020年作
6作目となる本作は、80年代のMANOWARを思わせる正統派メタルナンバーで幕を開けるが、
キャッチーかつ勇壮なスタイルにはまったくブレがない、冒険活劇的な海賊メタルを展開。
肩の力が抜けたキャッチーなナンバーの一方で、パンキッシュな疾走曲や、ラップ的な歌声を乗せた
異色のナンバーなどもわりとハマっていて、女性ヴォーカルを加えた優雅なパートもあったりと、
これまでのアルバムよりもバラエティに富んだ内容に。その反面、勇壮なメタル感はやや薄まったので
そこは痛しかゆしだが、日本語のナレーションが入った8分の大曲も含めて、聴きごたえのある力作です。
ドラマティック度・・8 勇壮度・・7 フォーキー度・・8 総合・・8
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Gwydion
ポルトガルのペイガン/フォークメタル、グウィディオンの2020年作
2008年にデビュー、本作は5作目となる。ほどよい叙情を含んだギターにシンセを重ね、
武骨なダミ声ヴォーカルとともに、重厚なペイガン・フォークメタルを聴かせる。
ときに激しい疾走感も現れつつ、優美なシンセアレンジが包み込み、リズムチェンジなどの
わりと唐突な展開力も含めて、どことなくマイナーで神秘的な辺境感をかもしだしている。
メロディックなギターフレーズに、TURISASのようなバトルメタル寄りの勇壮さも覗かせて、
ストーリー的な流れを感じさせるエピックなヴァイキングメタルとしても楽しめる。全68分の力作。
ドラマティック度・・8 勇壮度・・8 辺境度・・8 総合・・8
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VARG 「Zeichen」
ドイツのヴァイキング・デスメタル、ヴァーグの2020年作
2007年にデビュー、本作は7作目となる。硬派なギターリフにドイツ語による低音デスヴォイスを乗せて
随所に激しい疾走感を含んだ、アグレッシブな本格派のヴァイキング・デスメタルを聴かせる。
アコースティックなパートなどを含む緩急ある展開や、ときに美しい女性ヴォーカルも加わって、
これまで以上に幻想的なドラマ性を感じさせ、ギターが叙情的なフレーズを奏でるところも、
なかなか魅力的であるが、全体的には盛り上がりきらないのが惜しい。全41分というのもやや物足りないか。
ドラマティック度・・8 勇壮度・・8 重厚度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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EREB ALTOR 「JARTECKEN」
スウェーデンのヴァイキング・ブラックメタル、エレブ・アルターの2019年作
2008年にデビュー、本作は7作目となる。北欧のペイガンメタルとしてはすでに中堅の存在。
重厚なギターリフにうっすらとしたシンセ、ダミ声ヴォーカルを乗せた本格派のヴァイキングメタルで、
涼やかで土着的な空気感と、甘すぎないほどよい叙情を含んだ神秘的なサウンドが楽しめる。
ときにブラックメタル的なアグレッシブな疾走パートも覗かせつつ、ノーマル声を使ったヴォーカルや
勇壮なコーラスなどがかつてのBATHORYにも通じる、幻想的でペイガンな雰囲気をかもしだす。
全体的にメロディックな要素は薄いので、あくまで硬派なペイガンブラックが好きな方へお薦めだ。
ドラマティック度・・7 勇壮度・・8 重厚度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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CELTACHOR 「FIANNAIOCHT」
アイルランドのペイガン・ブラックメタル、セルタコーアの2018年作
2012年にデビューし、3作目となる。女性ドラム、ヴァイオリン奏者を含む6人編成で、
ツインギターのトレモロのリフにダミ声ヴォーカルを乗せて激しくブラスト疾走しつつ、
ホイッスルやホルン、ヴァイオリンやハープの音色が随所にケルティックな香りを加える、
優雅で土着的なブラックメタルサウンドを聴かせる。素朴なブズーキに朗々とした歌声を乗せた
アコースティックなナンバーなどもアクセントになっていて、緩急ある展開で構築する知的なセンスも覗かせる。
アイリッシュの神秘的な空気に包まれた幻想的なケルティック・ブラックメタルが楽しめる力作です。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・7 神秘的度・・8 総合・・8
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IHSAHN 「Pharos」
ノルウェーのブラックメタル、EMPERORのイーサーンの2020年作
アレクサンドリアの大灯台として知られるファロス島を起源とする「灯台」をテーマにしたEPで、
叙情的なギターとシンセにマイルドなヴォーカルを乗せた、メタル感触はやや薄めのサウンド。
キャッチーな歌もの主体であるが、オーケストラルなアレンジやスタイリッシュなアンサンブルが、
知的で優雅な聴き心地になっていて、Leprousのようなモダンなプログレメタルとしても楽しめる。
激しさは抑え目ながら、イーサーンの歌唱の表現力とともにプログレッシブなスケール感を描いていて、
メランコリックな叙情とポップな味わいが絶妙に同居しているのもさすが。全5曲24分を収録。
ドラマティック度・・7 メタル度・・5 優雅度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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ENTARTUNG 「Maleficae Artes」
ドイツのブラックメタル、エンタータングの2020年作
2012年にデビューし、4作目。ノイジーなギターに迫力あるダミ声ヴォーカルを乗せて疾走する、
プリミティブなブラックメタルに、うっすらとしたシンセアレンジとリズムチェンジなど緩急ある構築力を加えた、
荒々しくも禍々しいサウンドを聴かせる。わりと単調なギターのリフレインが続くところなども、
いかにも初期のブラックメタル的で、暴虐過ぎない疾走感と甘すぎない叙情性なども含めて、
ほどよくダークな世界観を保っている。全5曲であるが、9分、9分、12分という大曲を主体に、
じっくりと妖しく荘厳な暗黒美を描いてゆくところは、ディープなブラックメタル好きにはたまらないだろう。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・7 プリミティブ度・・8 総合・・7.5
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ENSOM 「CIVILIZATION」
スペインのシンフォニック・ブラックメタル、エンサムの2020年作
オーケストラルなシンフォニックアレンジにダミ声ヴォーカルを乗せて激しく疾走するサウンドで、
クラシカルなストリングスや混声コーラスなども加わって、壮麗なスケール感に包まれた聴き心地。
随所に叙情的なギターフレーズやピアノの旋律が現れて、激しさの中にも優雅な感触を描きだす。
10分を超える大曲では、暴虐性よりもシンフォニックメタルとしての華麗なオーケストラアレンジが前に出て、
THERIONあたりに通じる雰囲気にもなる。全78分という長さなので、後半はわりとお腹いっぱいです。
シンフォニック度・・9 暴虐度・・8 壮麗度・・10 総合・・8
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SHYLMAGOGHNAR 「TRANSIENCE」
オランダのメロディック・デスメタル、シルマゴーゴナーの2018年作
2014年にデビューし、2作目となる。全パートをこなすマルチプレイヤーとヴォーカルの二人ユニットで、
メロディックなフレーズを奏でるギターにデスヴォイスを乗せ、美麗なシンセアレンジとともに
激しい疾走感とリズムチェンジによる知的な構築力が同居した、適度にプログレッシブなメロデスサウンド。
扇情的な泣きのギターにピアノが重なる優美な感触と、Dark Tranquillityあたりに通じるメランコリックな空気が
ドラマティックな聴き心地になっていて、インスト主体のナンバーはメロディックなギターの旋律にウットリとなる。
ブラックメタルばりのブラストビートなど随所に激しさも現れるが、全体的には流麗なメロディアスに包まれている。
10分を超える大曲が4曲あるなど、大作志向の濃密な味わいで楽しめる、優雅なるメロディック・デスの傑作。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・7 叙情度・・9 総合・・8
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6/25
メロハー系たくさん(220)


Gary Hughes 「Waterside」
イギリスのメロディアスハード、TENのシンガー、ゲイリー・ヒューズの2021年作
ソロ名義としては14年ぶりの作品で、やわらかなピアノやシンセをギターに重ね、
深みを増したゲイリーのマイルドな歌声を乗せた、英国らしい叙情的なサウンド。
メロディはキャッチーでありながら、ウェットな哀愁を含んでいるという点では、
やはりTENに通じる聴き心地であるが、本作ではよりパーソナルな歌詞とともに、
ゆったりとしたナンバーを主体に、ゲイリーの内面的な暖かさを感じさせる作風だ。
随所にメロウなギターの旋律も覗かせながら、大人の叙情ロックを描く好作品である。
メロディック度・・8 キャッチー度・・8 叙情度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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CHEZ KANE
イギリスの女性シンガー、シェイ・ケインの2021年作
CRAZY LIXXのダニー・レクソンがプロデュース、ほどよくハードなギターにきらびやかなシンセ、
伸びやかな女性ヴォーカルで聴かせる、80年代ルーツのメロディックロックサウンド。
リー・アローロンやリタ・フォードなどに通じる、古き良きアメリカン女性声ロックの系譜にありつつ、
ケイン嬢の歌声はもう少しフェミニンな魅力があり、艶めいたハスキーさは日本人好みだろう。
楽曲はキャッチーなメロディのフックでどれも爽快でハッピーな聴き心地。実力ある女性ヴォーカルを乗せた、
オールドスタイルのメロハーという点では、DANTE FOXなどのファンにもアピールする出来だ。
メロディック度・・8 キャッチー度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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ISSA 「Queen of Broken Hearts」
ノルウェーの女性シンガー、イッサの2021年作
2010年にデビューし、本作はすでに5作目となる。今作もアレッサンドロ・デル・ヴェッキオがプロデュース
ギターにシモーネ・ムラーニ(DGM)、ベースにアンドレア・トリッチーニ(VISION DIVINE)らが参加している。
美麗なシンセアレンジと適度にメタル感のあるギター、そして彼女の美しいヴォーカルを乗せた、
華やかなメロディアスハードは本作も健在。楽曲は3〜4分前後とコンパクトにまとまっているが、
随所に聴かせる流麗なギータプレイも見事で、ハードポップ寄りのライトでキャッチーなナンバーから
ゆったりとしたバラード風味なども含めて、表現力あるイッサの歌声に優美に包まれる。
メロディック度・・8 キャッチー度・・8 女性Vo度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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CREYE 「II」
スウェーデンのメロディックロック、クレイの2021年作
2018年にデビュー、本作は2作目となる。美麗なシンセアレンジにマイルドでエモーショナルなヴォーカル、
キャッチーでありながら、涼やかな叙情美に包まれたサウンドは、まさに北欧メロハーの理想郷だ。
楽曲は3分前後とシンプルであるが、フックの効いたメロディやメロウな泣きのギターソロもアクセントになって、
伸びやかなヴォーカルの実力も含めて、日本人好みの透明感ある魅力的なサウンドを描いている。
80年代の産業ロックやハードポップを思わせる耳心地の良さで、ハードロックファンでなくても楽しめ、
全12曲を爽快に聴き終えるという。ここまで良質の楽曲を揃えたという点でも傑作に値するだろう。
メロディック度・・9 キャッチー度・・9 優美な叙情度・・9 総合・・8.5
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Art of Illusion 「X Marks The Spot」
スウェーデンのメロディアスハード、アート・オヴ・イリュージョンの2021年作
Grand Illusionのアンダース・リドホルムと、Work Of ArtLionvilleのラーズ・サフサンドによるユニット
かつてのグランド・イリュージョンを思わせる、キャッチーでドラマティックな雰囲気とドライブ感に、
サフサンドのエモーショナルな歌声とコーラスハーモニーで聴かせる、王道のメロハースタイル。
心地よいメロディと涼やかな叙情が、90年代らしい空気感になっていて、どこか抜けきらないところも含めて、
わりとなつかしい感じで鑑賞できる。ゆったりとしたバラードやノリのよいアップテンポまで、しっかりとクオリティがあるのは
実力あるヴォーカルのおかげだろう。全体的に新鮮味はさほどないが、心地よく楽しめる好作です。
メロディック度・・8 キャッチー度・・8 涼やかな叙情度・・8 総合・・8
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W.E.T.「RETRANSMISSION」
スウェーデンのメロディックロック、ウェットの2021年作
Work Of Artのロバート・サール、ECLIPSEのエリック・モーテンソン、TALISMANのジェフ・スコット・ソート、
3人が属するバンドの頭文字をとった名前で、2009年にデビュー、本作は4作目となる。
存在感あるジェフ・スコット・ソートの歌声にキャッチーなコーラスハーモニーで、80年代産業ロックをルーツにした
王道のメロディックロックを聴かせる。壮麗なシンセアレンジに随所に流麗なギタープレイを含ませた、
往年のプログレハード的な優雅さとドラマティックな雰囲気は、さすが実力者たちによるサウンドで、
ときにTENMAGNUMのように英国的な空気も感じさせる。哀愁と叙情が心地よい大人のメロハーです。
メロディック度・・8 キャッチー度・・8 叙情度・・8 総合・・8
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LIONVILLE 「Magic Is Alive」
イタリアのメロディアスハード、ライオンヴィルの2020年作
ギターのステファノ・リネッティを中心に、2011年にデビュー、本作は4作目となる。
キャッチーなコーラスハーモニーと優美なシンセアレンジで聴かせるメロディックロックで、
北欧系メロハーにも通じるようなウェットな泣きの叙情は、とても日本人好みだろう。
Work Of Artでも活躍する、ラーズ・サフサンドのエモーショナルな歌声も楽曲によくマッチしていて
どの曲も哀愁を含んだメロディのフックに包まれており、全体的な質の高さという点では、
Autumn's Childなどにも通じるだろう。キャッチーな爽快さと優雅なロマンで聴かせる逸品です。
メロディック度・・8 キャッチー度・・9 優雅で爽快度・・9 総合・・8
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AUTUMN'S CHILD「Angel's Gate」
スウェーデンのメロディアスハード、オータムズ・チャイルドの2020年作
ミカエル・アーランドソンによる、Last Autumn's Dreamの続編というべきバンドの2作目。
キャッチーでありながら、哀愁を含んだ叙情メロディというのは前作の同路線で、
メロウなギターの旋律や美しいシンセアレンジと、味わいのあるヴォーカルで、
北欧らしい涼やかさをまとった日本人好みのメロディアスハードが楽しめる。
ゆったりとしたバラードでは、伸びやかなミカエルの歌声がよく映えていて、
前作同様、かつてのLADのファンならばとても楽しめる好曲多数の傑作です。
メロディアス度・・8 キャッチー度・・8 哀愁度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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ALIEN 「Into The Future」
スウェーデンのメロディックハードロック、エイリアンの2020年作
1987年デビューのベテランで、1995年までにアルバム4枚を残して休止するも、2005年に復活し、
本作は6年ぶりとなる7作目。のっけからヘヴィなギターを乗せたモダンな感触に包まれるが、
ジム・ジットヘッドのマイルドなヴォーカルにうっすらとシンセアレンジ、キャッチーなメロディのフックには、
北欧らしい空気感もしっかり感じられる。叙情的なギターの旋律などにもかつてのエイリアンらしさも残していて
ベテランらしい枯れた味わいも含みながら、メロディックハードとしての成熟した説得力はさすがというところ。
サビのメロディが爽快なタイトル曲をはじめ、かつてよりも骨太になった分、むしろ新たな魅力が備わったように思う。
メロディアス度・・8 キャッチー度・・8 哀愁度・・8 総合・・8
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Seventh Crystal 「Dellium」
スウェーデンのメロディアスハード、セヴンス・クリスタルの2020年作
マルチプレイヤーでヴォーカルのクリスティアン・フィールを中心にしたバンドで、これがデビュー作。
ハード過ぎないギターとうっすらとしたシンセ、マイルドなヴォーカルを乗せた、透明感のある
メロディックロックを聴かせる。楽曲は3〜4分前後と比較的シンプルで、王道のAORというような
キャッチーなポップ性に包まれつつ、北欧らしい涼やかなメロディアス性もしっかり感じさせる。
かつてのFORTUNEなどにも通じる、古き良き北欧メロハーの感触を基本にしながらも、
随所にほどよくモダンなテイストも覗かせる。単にオールドなだけではないセンスもある好作品。
メロディック度・・8 キャッチー度・・8 叙情度・・8 総合・・8
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Persuader 「Necromancy」
スウェーデンのメロディックメタル、パースエーダーの2020年作
2000年にデビュー、本作は7年ぶりとなる5作目で、ツインギターのリフにパワフルなヴォーカルを乗せて疾走する、
初期BLIND GUARDIANを思わせる、アグレッシブなパワーメタルを聴かせる。メロディックなギターフレーズと、
ドラマティックな展開力、そしてかつてのハンズィ・キアシュにも似た、イェンス・カールソンの歌声に、
ブラガーファンならばニヤリとなるだろう。楽曲は5〜6分前後で、スラッシーな疾走パートからどっしりとしたミドルまで、
90年代ジャーマンメタルをルーツにしながら、激しさと重厚さが同居した濃密な聴き心地で楽しめる。
ラストは8分を超える大曲で、叙情的なギターとシアトリカルに歌い上げるヴォーカル、パワフルな疾走感と
エピックな壮麗さで、「あれ、これブラガじゃないの?」と思ってしまうほどのサウンドを展開。これは力作です。
ドラマティック度・・8 疾走度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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ELIXIR 「Voyage of the Eagle」
イギリスのヘヴィメタル、エリクサーの2020年作
1986年にデビュー、NWOBHM後期に活動し、1990年に2作目を出して消えるも、2002年に復活、
本作は10年ぶりとなる6作目。ツインギターのオールドなリフにいくぶんダーティなヴォーカルを乗せた
古き良き味わいの正統派メタルサウンドで、英国らしいウェットなメロディも随所に覗かせる。
アナログ感ただようややラウドな音質も含めて、80〜90年代ルーツのマイナーメタルの雰囲気に包まれていて、
DESOLATION ANGELSでも活躍するポール・タイラーの上手すぎないヴォーカルもいい味を出している。
スローテンポのナンバーでは、妖しい女性ヴォーカルも加わって、サバス風のドゥームメタル風味も覗かせる。
これというインパクトはないのだが、枯れた味わいのオールドな英国メタルが楽しめる好作品だ。
ドラマティック度・・7 正統派度・・8 古き良き度・・9 総合・・7.5
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LEATHER 「II」
アメリカのメタル女性シンガー、レザー・レオネの2018年作
Chastainにも参加していた女性シンガーで、ソロ名義としては、1989年作「Shock Waves」以来の2作目。
正統派のギターリフにダーティな彼女の歌声を乗せた、オールドスタイルのメタルサウンドで、
随所に様式美的なギタープレイも覗かせる。80年代ルーツのパワフルかつストレートなヘヴィメタルに、
ほどよい疾走感と叙情性を含んだ作風で、オールドなメタルファンならなつかしい味わいで楽しめる。
スローテンポのどっしりとしたナンバーなども、レザー姐さんの歌声のドスの効いた迫力が際立っていて、
さすがキャリアのあるシンガーの説得力。30年のときをへてもメタルへの情熱が衰えないというのは素晴らしい。
メロディック度・・7 正統派度・・8 古き良きHM度・・8 総合・・8
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Juicio de Dios 「Mares de Dolor」
スペインのシンフォニックメタル、ジュイシオ・デ・ディオスの2007年作
女性Voにシンセを含む6人編成で、正統派のギターにシンセを重ね、
スペイン語の伸びやかな女性ヴォーカルを乗せて疾走するメロパワサウンド。
激しすぎないキャッチーな抜けの良さと、リズムチェンジを含む緩急ある構築力に、
ほどよいクサメロ感をまぶしたサウンドは、なかなか日本人好みといえる。
しっとりとしたバラードナンバーでは、紅一点Neus嬢の歌唱も魅力的で、
疾走メロスピからミドルテンポまでメロディックなフックをしっかりとまとった好作品。
メロディック度・・8 疾走度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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6/19
パワメタにスラッシュ、ドゥームも(206)


Gloryhammer 「Legends From Beyond The Galactic Terrorvortex」
スコットランドのメロディックメタル、グローリーハンマーの2019年作
ALESTORMのシンセ奏者、スイスのEMERARDのヴォーカルを擁するバンドで、2013年にデビューし、本作は3作目となる。
映画的な雰囲気の壮大なイントロから、オーケストラルなアレンジにパワフルなヴォーカル、勇壮なクワイアとともに、
エピックでシンフォニックなメタルサウンドを展開する。RHAPSODYにも通じる壮麗なシンフォニックメタルを基調に、
ときにデジタルなシンセアレンジも取り入れるなど、DRAGONFORCEのようなモダンでキャッチーな部分も覗かせる。
ミドルテンポと疾走ナンバーのバランスもよく、ときに陽性のオーケストラアレンジに、ほどよいクサメロ感も日本人好み。
ラストの12分という大曲は、語りを挿入したシネマティックな構築力で、BAL-SAGOTHがラプソ化したような感じもある。
ドラマティック度・・8 疾走度・・7 壮麗度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Vicious Rumors 「Celebration Decay」
アメリカのパワーメタル、ヴィシャス・ルーマーズの2020年作
1985年にデビューのベテラン、本作は通算13作目で、リーダーのジェフ・ソープとドラムのラリー・ハウを除いた
メンバーが交替している。ツインギターのリフにパワフルなヴォーカルを乗せて、スラッシーなアグレッシブ性と
ほどよい叙情を同居させたオールドスタイルのパワーメタルサウンドは健在。新加入のニック・コートニーの歌声は
ダーティな迫力とともに随所にハイトーンも使い分けていて、いかにもオールドなメタル感をかもしだしている。
ときにツインギターのメロディックなフレーズも覗かせつつ、楽曲はどっしりとしたダークな重厚さに包まれていて、
ミドルテンポのナンバーなども、これぞヘヴィメタルという味わいだ。ICED ERTHあたりが好きな方もどうぞ。
ドラマティック度・・8 疾走度・・6 重厚度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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The Crown「Royal Destroyer」
スウェーデンのデスメタル、クラウンの2021年作
CROWN OF THORNES名義で1995年にデビュー、一時期の解散をへて復活し、本作は通算11作目となる。
のっけからハードコアばりの突進力で、ブラストビートを含んだ激烈なイントロ曲が聴き手を圧倒する。
その後も、切れのよいギターリフを乗せたブルータルなアグレッションと甘すぎないメロディも覗かせて、
かつてのデスラッシュをデスメタルへと昇華したような激しさに、デスロールとしてのノリの良さも含んだ
痛快なサウンドでたたみかける。本作ではこれまでよりもデスメタルとしての激しさが際立ったパートが多く、
ほどよい疾走感のデスラッシュが好きだった方には、やや圧殺感が強いかもしれない。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・8 デスラッシュ度・・7 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Heathen 「Empire of the Blind」
アメリカのスラッシュメタル、ヒーゼンの2020年作
1987年にデビュー、2作を残して消えるも、2010年に復活、本作はさらに10年ぶりとなる復活2作目。
EXDUSでも活動する、ギターのリー・アルタスが多忙のせいか、本作で楽曲を手掛けているのは、
前作から加入していたギターのクラーゲン・ラムである。叙情的なギターのイントロで幕を開け、
ザクザクとしたリフを乗せて疾走する、かつてのベイエリアクランチを踏襲したスラッシュメタルを展開。
随所にツインギターの叙情メロディも盛り込んだスタイルは、まさに日本人好みといえるだろう。
ミドルテンポの正統派メタル寄りのナンバーや叙情的なバラード、いくぶんモダンなノリの硬質感もありつつ、
全体的にしっかりヒーゼンらしさを保った作風。EXODUSのゲイリー・ホルトや、元メンバーのダグ・ピアシーがゲスト参加。
ドラマティック度・・7 疾走度・・7 叙情度・・7 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Onslaught 「Generation Antichrist」
イギリスのスラッシュメタルバンド、オンスロートの2020年作
80年代に3枚のアルバムを出して消えるも、2007年に復活し、以降は旺盛に活動を続けているベテランバンド。
本作は7年ぶりとなる、通算7作目で、前作のあとドラムとギターが交替、ヴォーカルのサイ・キーラーも脱退したことで、
メンバーが一気に変わっているが、サウンドの方はオルドなギターリフにダーティにヴォーカルを乗せて疾走する
オンスロートらしさは失われていない。スラッシュらしいエッジの効いたリフに、ほのかにメロディを含んだフレーズも覗かせて
ダークな翳りを含んだアグレッシブなサウンドは、ベテランらしい迫力に満ちている。新加入のデイヴィッド・ガーネッドの歌声も
ドスの効いた迫力充分で、前任者のサイにもひけをとらない。ボーナスの「In Search Of Sanity」再録バージョンもファンには嬉しいだろう。
ドラマティック度・・7 疾走度・・8 迫力度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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SODOM 「Genesis XIX」
ジャーマンスラッシュメタルのベテラン、ソドムの2020年作
1984年デビューのベテラン、前作EPからツインギターの4人編成となり、ドラムは交替しているが、
激しすぎずソリッドすぎないオールドスタイルの疾走スラッシュメタルサウンドは健在。
ツインギターになったことでリフの重厚感が強まり、トム・エンジェルリッパーのダミ声ヴォーカルを乗せて
曲によってはかつてのブラックメタルのルーツのひとつであった頃の、サタリックな雰囲気もまとわせる。
6分、7分という長めのナンバーでは、スローテンポなども取り入れつつ、荘厳といってもよいダークな迫力に包まれて、
強固な世界観を描き出す。往年のソドムらしさをたっぷり残しつつ、しっかりとクオリティアップしたという力作です。
ダーク度・・8 疾走度・・8 スラッシュ度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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DREAM THEATER 「The Broadcast Archives」
ドリーム・シアターのライブアーカイブ作品。2019年作
「NEW MILLENNIUM」、「ANOTHER DAY IN TOKYO」、「DYING TO LIVE FOREVER」、それぞれ2枚組のライブ音源集で、
合計6枚組のボックスセット。「DYING TO LIVE FOREVER」は、1993年ミルウォーキーのライブで、ケヴィン・ムーア在籍時、
「Images And Words」からのナンバーを中心に、若々しい躍動的な演奏を披露。ラブリエのヴォーカルはやや危ういところもあるが、
バンドの初期の貴重なライブが楽しめる。「ANOTHER DAY IN TOKYO」は、1995年埼玉でのでのライブを収録。
「AWAKE」発売後の日本公演で、キーボードがデレク・シェリニアンに替わっているが、演奏はさすがに安定していて、
2nd、3rdの楽曲を巧みに再現してゆく。来日中に起きた阪神・淡路大震災への追悼のMCなども収録している。
「NEW MILLENNIUM」は、1999年オランダでのライブで、デレク・シェニリアン在籍時期としては最後のライブ音源。
音質はややこもり気味であるが、「Metropolis Pt. 2」からのナンバーもいち早く披露するなど、ファンなら充分楽しめる。
ライブ演奏・・9 音質・・7 ドリムシ好きは買い度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Lunar 「Eidolon」
アメリカのプログレメタル、ルナーの2019年作
2017年にデビューし、2作目となる。メタリックなギターと存在感あるベースに、エモーショナルなヴォーカルを乗せ
モダンなヘヴィネスとテクニカルなアンサンブルに、グロウルヴォイスも絡めたアグレッシブなプログレメタルを聴かせる。
とき流麗なフレーズを奏でるギターは、わりとオールドなメタルリフも弾くなど、ヴィンテージメタルの感触もあり、
アコースティックパートなどを含む緩急ある展開で、10分を超える大曲を描いてゆく。グロウルヴォーカルを乗せた
デスメタル的な雰囲気のパートから、ノーマルヴォーカルのキャッチーな叙情まで振り幅が広く、むしろエモーショナルロックを
テクニカルメタルに仕立てたという聴き心地かもしれない。センスは面白いのだが、オールドスタイルなのかスタイリッシュなのか、
方向性がやや微妙なので、突き抜けきらないものかしさのようなものを感じる。潜在力はありそうなので大化けに期待。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・8 楽曲・・7 総合・・7.5
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Anubis Gate 「Covered in Black」
デンマークのプログレメタル、アヌビス・ゲートの2017年作
2004年にデビューし、本作は7作目。毎作質の高い作品を聴かせる北欧ProgMetalの中堅バンドである。
のっけから硬質なギターを乗せたモダンなヘヴィネスを感じさせつつ、エモーショナルなヴォーカルを乗せて
スタイリッシュなサウンドを展開。ほどよくテクニカルで知的な展開力に、シンセを加えた厚みのあるサウンドで、
Djent的でもあるモダンな感触に随所にキャッチーな歌パートも含みつつ、現在形のプログレメタルが楽しめる。
全体的には、もう少しドラマティックな盛り上がりやメロディアスな部分が欲しい気もするが、さすがの高品質作です。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・7 スタイリッシュ度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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King Witch 「Body of Light」
イギリスのドゥームメタル、キング・ウィッチの2020年作
2018年にデビューし2作目となる。アナログ感たっぷりのギターにハスキーな女性ヴォーカルを乗せ、
ノリのよいヴィンテージなドゥームメタルを聴かせる。パワフルな歌声とともに、正統派メタル寄りの感触もあり、
むしろオールドなハードロックという勢いのあるスタイルは、スローなドゥームが苦手な方にも楽しめるだろう。
10分を超える大曲では、本格派ドゥームの重厚さに包まれながら、Laura嬢の表現力ある歌声とともに、
リズムチェンジを含む展開力でたたみかける。ぼとよい激しさで疾走する3分前後の小曲などもあり、
うねりのあるギターリフも格好良い。しっかりメタルしている女性声ドゥームの強力作だ。
ドラマティック度・・8 ドゥーム度・・7 ヴィンテージ度・・8 総合・・8
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HIGH PRIESTESS
アメリカのサイケ・ドゥーム、ハイ・プリーステスの2018年作
アナログ感あるヘヴィなギターに女性ヴォーカルの歌声を乗せて、ゆったりとした浮遊感に包まれた
魔女系サイケドゥームを聴かせる。10分、8分という大曲も、リフレインするユルめのドゥーム感触と、
ときにスクリームも使った女性声の妖しさで、ほどよく重厚かつ幻想的な味わいで楽しめる。
全体的にこれという新鮮味はないが、ヴィンテージ過ぎず軽すぎずというサウンドで、
Blood CeremonyWitch MountainWucanあたりが好きな方は楽しめるだろう。
ドラマティック度・・7 ドゥーム度・・8 魔女度・・8 総合・・7.5
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PALACE OF THE KING 「GET RIGHT WITH YOUR MAKER」
オーストラリアのサイケ・ハードロック、パレス・オブ・ザ・キングの2018年作
2014年にデビューし、4作目となる。オルガンが鳴り響き、ほどよくハードなギターとハイトーンヴォーカルで
アナログ感たっぷりのサイケハードを聴かせる。70年代ルーツのキャッチーなロック感触は
前作同様に「ストーナー化したツェッペリン」という雰囲気でも楽しめるノリの良さがある。
3分前後のシンプルな楽曲を主体にしていて、全体的にこれという新鮮味はないのだが、
ほどよいサイケ感とともに、オールドなロックが好きな方なら充分楽しめるだろう。
ドラマティック度・・7 サイケ度・・7 古き良き度・・8 総合・・7.5
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Self Hypnosis 「Contagion Of Despair」
イギリスのプログレッシブ・ドゥームメタル、セルフ・ヒプノシスの2020年
変拍子を含むテクニカルなリズムに、ほどよくヘヴィなギターとオルガンなどのシンセを重ね、
グロウルヴォーカルを乗せた、ダークでミステリアスなスラッジ・ドゥームメタルを聴かせる。
不穏な空気感とプログレッシブな構築力という点では、Inter Armaあたりに通じる雰囲気もあり、
10分を超える大曲をじっくりと構築する。うっすらとしたシンセに包まれた幻想的なスケール感や、
インダストリアルな雰囲気の小曲など、なかなか一筋縄ではいかない。アルバム後半は16分、18分という大曲もあり、
クラシカルなピアノや優雅なシンセパートなども含みつつ、ダークでスペイシー、重厚なサウンドが楽しめる。
ドラマティック度・・7 プログレッシブ度・・8 重厚度・・8 総合・・8
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Ashtar 「Kaikuja」
スイスのドゥーム・ブラックメタル、アシュターの2020年作
2015年にデビューし2作目となる。マルチプレイヤー2人組のユニットで、不穏なギターリフに
ダミ声ヴォーカルで激しくブラスト疾走しつつ、スローテンポではドゥーミィな暗黒性に包まれる。
物悲しくヴァイオリンが鳴り響く静寂パートから、ブラッケンなスラッジドゥームに展開してゆく、
13分の大曲もなかなか圧巻。ドゥーム部分でのリフレインはやや単調なところもあるのだが、
ときおりブラックメタルの激しさが同居していて、ほどよい緊張感と不穏な空気を描いている。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・7 重厚度・・8 総合・・7.5
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6/5
ブラック&デスメタルの6月(192)


CREATURE 「EX CATHEDRA」
フランスのアヴァン・ブラックメタル、クリーチャーの2020年作
Raphael Fournier氏による個人ユニットで、流麗なギターにシンセを重ね、フルートやトロンボーンが鳴り響く
プログレッシブなブラックメタルを聴かせる。デスヴォイスを乗せた、激しくブラスト疾走する暴虐なパートもありつつ
トロンボーンの音色やうっすらとしたシンセアレンジとともに、優雅でスぺイシーなスケール感に包まれる。
テクニカルなリズムチェンジや、随所に叙情的なギターメロディやクラシカルなピアノの旋律も覗かせる、
知的なセンスと自由度の高い構築性は、Solefaldや日本のSighなどに通じるようなところもある。
ラスト2曲は、10分を超える大曲で、優雅でほどよくアヴァンギャルド。プログレッシブなブラック好きは必聴の出来。
ドラマティック度・・8 アヴァンギャル度・・8 構築センス・・9 総合・・8.5
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Misanthropia 「Convoy of Sickness」
オランダのシンフォニック・ブラックメタル、ミサントロピアの2020年作
2006年にデビューし、本作は4作目となる。ツインギターにダミ声ヴォーカルを乗せ、オーケストラルなアレンジを加えた
オールドスタイルのブラックメタルで、Dimmu BorgirCradle of Filthに通じるような耽美な世界観とともに、
激しいブラスト疾走でたたみかけつつ、緩急あるリズムチェンジで楽曲を構築する、クオリティの高いサウンドだ。
メロディアスなギターフレーズやシンフォニックなアレンジが激しい疾走感と同居していて、激しく暴虐ながらも
どこか優雅な聴き心地なのが特徴だろう。クレイドル、ディムボルとも遜色ないシンフォブラックの高品質作。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・8 耽美度・・8 総合・・8
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LUCTUS 「UZRIBIS」
リトアニアのブラックメタル、ラクタスの2020年作
2003年にデビューし、本作は4作目。ミステリアスなイントロからトレモロのギターを乗せて激しくブラスト疾走、
低音グロウルヴォイスとともに、荘厳な闇を感じさせる迫力あるブラックメタルを聴かせる。
ギターリフにはほどよい叙情も感じさせるので、ときにメロブラ的な感触でも楽しめつつ、
シンセを使った幻想的なパートなども含めて、ミスティックな神秘性が同居した味わいだ。
ブラッケンロール的なミドルの疾走感やスローパートも効果的に使った緩急ある聴き心地は、
さすがキャリアのあるバンドらしい説得力で、ダーティなゲボ声ヴォーカルも迫力たっぷり。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・8 神秘的度・・8 総合・・8
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KING 「Reclaim The Darkness」
オーストラリアのペイガン・ブラックメタル、キングの2016年作
ギター、ベース、ドラムというトリオ編成で、ヴァイキングメタル寄りのギターフレーズにグロウルヴォーカルを乗せ、
涼やかな叙情性を含んだ重厚なサウンドを聴かせる。ミドルテンポを基本に随所に激しい疾走パートも折り込みつつ
ミステリアスな土着性を描くところは、MOONSORROWをアグレッシブにしような雰囲気もある。
楽曲は4〜6分前後と長すぎず、リズムチェンジなどの緩急ある構築力も含めて完成度は高い。
ブラックメタルとしての暴虐性とペイガンな叙情が同居したという強力なアルバムです。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・7 重厚度・・8 総合・・8
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KING 「Coldest of Cold」
オーストラリアのペイガン・ブラックメタル、キングの2019年作
2作目となる本作はのっけから暴虐に疾走、クールなギターリフに迫力あるデスヴォイスで、
スケール感のあるブラックメタルを展開する。知的なセンスを感じさせるギターフレーズと
激しい疾走感とどっしりとしたミドルテンポの緩急あるリズムチェンジで、重厚なサウンドを描き出す。
前作に比べて、ヴァイキングメタル色は薄まっているが、激しさが増した分、ミステリアスで荘厳な空気が強まり、
硬派なペイガンブラックを聴かせてくれる。プログレッシブなブラックメタルが好きな方にもお薦めの強力作デス。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・8 重厚度・・8 総合・・8
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Dragonlord 「Dominion」
アメリカのブラックメタル、ドラゴンロードの2018年作
TESTAMENTのエリック・ピーターソン率いるバンドで、2001年にデビューし、本作は13年ぶりとなる3作目。
エッジの効いたギターに美麗なシンセアレンジ、ダミ声ヴォーカルを乗せて激しくブラスト疾走する、
ブルータルなシンフォニック・ブラックメタルを聴かせる。スローパートでの叙情的なギタープレイなど、
随所にギタリストとしてのセンスも織り込みつつ、リズムチェンジなどの展開力とともに、激しさとシンフォニック性が同居した
Dimmu Borgirなどにも通じる感触にデスメタル要素も加わった作風。エリック自身の咆哮するヴォーカルも迫力たっぷりだ。
ミドルテンポではメロデス的な雰囲気もあったり、ゲストの女性ヴォーカルが加わった優雅なパートなど、
過去2作に比べると叙情性と聴きやすさも増していて、スラッシュメタル的なギターリフも覗かせる強力作。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・7 叙情度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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MAYAN 「Dhyana」
オランダのシンフォニック・デスメタル、マイアンの2018年作
EPICAのマーク・ヤンセン率いるバンドで2011年にデビュー、本作は4年ぶりの3作目となる。
今作には、元STREAM OF PASSIONのマルセラ・ボヴィオも参加し、男女4人のVo含む10人編成となり、
オーケストラルなアレンジにメタリックなギター、ダミ声ヴォーカルを乗せて激しくブラスト疾走しつつ、
女性ヴォーカルを加わった耽美なゴシックメタル要素が同居したスタイルで、重厚にして壮麗な聴き心地。
激しいナンバーを主体にしつつ、女性ヴォーカルによる優美な小曲がアクセントになっていて、
重厚でありつつも耽美なデスメタルという点では、SepticFleshなどが好きな方にも楽しめるだろう。
シンフォニック度・・8 暴虐度・・7 重厚度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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SERENITY IN MURDER 「THE ECLIPSE」
日本のシンフォニック・デスメタル、セレニティー・イン・マーダーの2017年作
女性シンガーをフロントに、2011年にデビュー、世界基準の高品質なサウンドを聴かせるバンド。
3作目となる本作は、壮麗なイントロで幕を上げ、巧みなギターフレーズにオーケストルなアレンジを重ね、
咆哮する女性グロウルヴォーカルとともに、激しい疾走感とリズムチェンジを含む展開力で
これまで以上に優雅なシンフォニック・デスメタルを聴かせる。楽曲は3〜4分前後とシンプルながら
壮麗なシンフォニックアレンジに包まれていて、メロデス要素が減退した分、叙情美が増している。
これならクリーンな女性Voにした方がよいような気もするが、ともかく美麗まくりの力作デス。
シンフォニック度・・8 暴虐度・・7 壮麗度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Cretura 「FALL OF THE SEVENTH GOLDEN STAR」
ノルウェーのゴシック・ブラックメタル、クレチュラの2016年作
女性Voに女性シンセ奏者を含む6人編成で、激しいツーバスのドラムに美麗なシンセアレンジ、
ブラックメタルばりのダークな世界観と激しさに、美しい女性ヴォーカルを乗せたというスタイル。
男性ダミ声ヴォーカルも加えてブラスト疾走するところは、Dimmu Borgirにも通じる聴き心地で、
暴虐な男性声ブラックメタルから、女性声が加わるとEPICAのような耽美な雰囲気にシフトする。
男女声ゴシックブラックでは、DISMAL EUPHONYが元祖だろうが、このバンドはより重厚な世界観を描いている。
女性声メインのゴシックメタル寄りのナンバーもありつつ、そこに激しいブラックメタルが同居した強力作♪
ドラマティック度・・8 暴虐度・・7 女性Vo度・・7 総合・・8
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Ashes Of Moon 「Darkness Where The Past Lay Sleeping」
オーストリアのプログレッシブ・デスメタル、アッシズ・オブ・ムーンの2014年作
2011年にデビューし、2作目となる。ウェットな叙情を含んだギターフレーズにデスヴォイスを乗せて、
ほどよい疾走感と知的な展開力で聴かせる、プログレッシブなメロディック・デスメタル。
ギターはヘヴィ過ぎず、メロディを奏でるパートも多いので、デスメタルとしての激しさよりは、
叙情的な感触が前に出ていて、いうなればポスト・メロデスという味わいで楽しめる。
ときに疾走する激しさも垣間見せつつ、7〜8分という大曲もわりと優雅でスタイリッシュに構築するところは、
OPETHなどにも通じるセンスも感じさせる。もう少しメロディや展開力にインパクトが加われば面白いと思う。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・5 叙情度・・8 総合・・7.5
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ENNOVEN 「REDEMPTION」
ポーランドのポストブラックメタル、エンノヴェンの2015年作
全4曲ながら、全34分の作品で、叙情的なギターにうっすらとしたダミ声ヴォーカルを乗せて
ネイチャー・ブラックメタル的な神秘的なサウンドを聴かせる。ブラスト疾走などはあまりなく、
全体的にもゆったりとした聴き心地なので、さほど暴虐性は感じず、のんびりと鑑賞できる。
ノイズのように彼方から聴こえてくるヴォーカルも含めて、サウンドスケープ的な雰囲気もあり、
つかみどころがないのだが、叙情的なギターフレーズのリフレインが耳心地よい。幻想ポストブラック。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・6 神秘的度・・8 総合・・7.5
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EVOCATION 「THE SHADOW ARCHETYPE」
スウェーデンのデスメタル、エヴォケーションの2017年作
2007年にデビューし、本作は5作目となる。ツインギターに低音デスヴォイスを乗せて、
どっしりとした重厚なデスメタルを聴かせる。メロデス寄りだった前作に比べて、
叙情性はいくぶん薄まったが、AT THE GATESを思わせる疾走ナンバーもあって、
迫力あるスウェディッシュメタルが味わえる。ダークな重さと疾走感のバランスもよくて、
激しすぎない、不愛想過ぎないという、デスメタルとしての聴きやすさがこのバンドの魅力だろう。
ドラマティック度・・7 疾走度・・7 重厚度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Azooma 「The Act of Eye」
イランのデスメタル、アゾーマの2016年作
2014年にデビューし、2作目となる。巧みなギターリフに低音デスヴォイスを乗せて、テクニカルなリズムチェンジとともに
緩急あるプログレッシブなデスメタルを聴かせる。存在感あるベースを含む、確かな演奏力のリズムパートと、
ギターのセンスあるリフとフレージングで、地域性を感じさせない知的なテクニカルデスが楽しめる。
暴虐過ぎないメロディアス性も覗かせながら、随所にシンセアレンジも加えた荘厳なスケール感を描くところは、
Decrepit BirthSpawn of PossessionMonstrosity などが好きな方にもお薦めできる。
8〜11分という大曲も、激しいだけでない知的な構築センスを感じさせ、プログレ・デス好きはニンマリ。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・8 テクニカル度・・8 総合・・8
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Nightbringer 「Death and the Black Work」
アメリカのブラックメタル、ナイトブリンガーの2008/2012年作
2008年のデビュー・フルアルバムの再発盤で、未発音源を加えてのCD2枚組仕様になっている。
不穏でミステリアスなイントロから、ノイジーなギターにオーケストラルなアレンジを重ねてブラスト疾走、
唸るようなヴォーカルとともに、禍々しくも荘厳な幻想性に包まれた本格派のブラックメタルを展開する。
7〜10分台の長めの楽曲を、雰囲気たっぷりに描いてゆく暗黒美は、初期のEMPEROR以上のものがある。
14分におよぶ大曲も、激烈な疾走パートに、トレモロのギターリフによる叙情性を含んだ緩急ある展開で
ダークサイドの迫力に覆われたドラマティックなブラックメタルが味わえる。1stからこんなに凄いバンドだったのね。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・8 幻想度・・9 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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Blackcount Baalberith 「Kingdom Of Hebruk」
チェコのアンビエントブラック、ブラックカウント・バールベリスの1999年作
オーケストラルなシンセの重ねに、女性スキャットや男性ヴォーカル乗せて幻想的なサウンドを描く、
SUMMONINGなどに通じる作風。どことなく素人臭い男性声も含めて、ショボめの宅録感が強く、
ファンタジーゲーム的な世界観をチープに表現したという聴き心地。刑務所時代のBURZMあたりの、
アンダークラウンドな幻想感も感じさせる。美しい女性声が耳心地よいのが救いです。
ドラマティック度・・7 ファンタジック度・・8 幻想度・・8 総合・・7



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女性声シンフォニック&ゴシックメタル(177)


RAVENWORD 「TRANSCENDENCE」
イタリアのシンフォニックメタル、レイヴンワードの2020年作
TEMPERANCEMOONLIGHT HAZEのキアラ・トリカーリコをフロントにしたバンドで、
美麗なシンセにメロディックなギター、美しい女性ヴォーカルで聴かせる、優雅でキャッチーなサウンド。
軽やかなミドルテンポから、メロディック・スピードメタル的な疾走ナンバー、しっとりとしたバラードまで
わりと曲調は幅広いが、キアラの伸びやかな歌声の魅力が前面に出ていて、あくまで優美な聴き心地。
Choirs Of Veritasでも活躍するダヴィデ・スクテーリの華麗なシンセワークもさすがというところで、
WITHN TEMPTATIONなどのファンにもお薦めの美麗作。バンドは本作のみで活動停止とか。涙
メロディック度・・8 壮麗度・・8 女性Vo度・・9 総合・・8
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MIRACLE FLAIR 「Synchronism」
スイスのシンフォニックメタル、ミラクル・フライアの2020年作
2016年にデビュー、本作は2作目となる。メタリックなギターにシンセアレンジを重ね、
伸びやかな女性ヴォーカルで聴かせる、スタイリッシュなシンフォニックメタル。
随所に叙情的なフレーズを奏でるギターが、サウンドにキャッチーな感触を加えていて
ほどよいメランコリック性とメロディアスさが同居した楽曲は、4〜5分前後とコンパクトで聴きやすい。
派手なシンフォニック性はさほどないが、紅一点、ニコル嬢のやわらかな歌声も魅力的で、
ノリのある疾走ナンバーなども含めて、ヴォーカルを活かしたキャッチーな作風が功を奏している。
メロディック度・・8 壮麗度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Earnest-Eros 「Resonance of Souls」
日本のメロディックメタル、アーネスト・エロスの2019年作
2010年にデビュー、本作は2作目のEP。女性Vo、女性シンセ奏者を擁する編成で、
正統派のギターにハスキーな女性ヴォーカルを乗せた、オールドスタイルのサウンドで、
シンセアレンジを加えたシンフォニックな味わいも加わった感触。楽曲は3〜4分前後とシンプルであるが、
キャッチーなノリの良さと日本的な情感を含んでおり、随所に流麗なギタープレイも織り込んだ聴き心地。
Emi嬢の歌声は、浜田麻里を思わせる伸びやかなハイトーンで、古き良きジャパメタ的な楽曲によく似合っている。
全6曲入りのEPながら、どの曲にもメロディのフックがあって、なかなか楽しめる。フルアルバムに期待したい。
メロディック度・・8 ジャパメタ度・・8 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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Seventh Heaven 「The Gate of Seventh Heaven」
日本のメロディックメタル、セブンス・ヘヴンの2005年作
先に2作目以降から聴いていたが、デビューアルバムをようやくゲット。正統派のギターにシンセを重ね、
エモーショナルな女性ヴォーカルで聴かせる、80年代ルーツの様式美色を残した、叙情豊かなメロディックなメタル。
ジャパメタらしいキャッチーな味わいとほどよい疾走感、そして浜田麻里にも通じるような
YOSHIE嬢の清涼感のあるハイトーンヴォイスで、ゆったりとしたバラーどなども魅力的。
全35分と、フルアルバムにしては少しボリュームが足りないが、クラシカルなシンセワークによる
優雅な感触とともに、古き良き女性声ジャパメタが味わえるなかなかの好作です。
メロディック度・・8 正統派ジャパメタ度・・8 女性Vo度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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SOLREID 「OPENING PRICE (Цена Открытий)」
ロシアのシンフォニックメタル、ソルレイドの2016年作
オーケストラルで壮麗なイントロから、メタリックなギターにきらびやかなシンセアレンジ
母国語による美しいソプラノ女性ヴォーカルとともに、疾走感のあるシンフォニックメタルを聴かせる。
紅一点、Victriel嬢の歌声は、なよやかな高音のソプラノで、楽曲を華やかな彩っており、
ゴージャスなシンセアレンジとともに随処にメロディックなギタープレイも光っている。
メロディック・スピードメタルばりの疾走感もあるので、激しめのシンフォニックメタルが好きな方にも対応。
全25分というEPであるが、演奏力、歌唱の実力ともに充分で、今後のフルアルバムに期待したい。
シンフォニック度・・8 壮麗度・・9 女性Vo度・・8 総合・・8

LIGHTLESS MOOR 「THE POEM」
イタリアのゴシックメタル、ライトレス・ムーアの2013年作
メタリックなギターに美麗なシンセアレンジを重ね、美しい女性ヴォーカルに男性デス声が絡む、
重厚にして耽美なゴシックメタルを聴かせる。紅一点、イラリア嬢の歌声はいくぶん線の細いソプラノで
デスヴォイスとの対比でなよやかな美しさが際立っている。楽曲はわりと王道のゴシックメタルで、
LEAVES' EYESや初期のTRISTANIASIRENIAなど、北欧系ゴシックメタルにも通じるような
涼やかな雰囲気に包まれつつ、ときにアグレッシブな激しさも覗かせる。12分という大曲では、
優美な叙情と重厚さが同居した、メリハリのある構築力でじっくりと聴かせる。男女声ゴシックの力作です。
ドラマティック度・・8 ゴシック度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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DEVA 「MURTHER」
イタリアのシンフォニックメタル、ディーヴァの2014年作
2010年にデビューし、2作目となる。硬質感のあるギターにシンセアレンジを重ね、
伸びやかな女性ヴォーカルで聴かせる、スタイリッシュなシンフォニックメタルサウンド。
随所男性Voも加わって、メロディックなギタープレイも含むモダンなキレの良さと
美麗なシンフォニック性が同居したスタイルで、ProgMetal的な味わいでも楽しめる。
ときおり小曲を挟んだ流れのある構成は、コンセプト的なドラマ性も感じさせて、
優美なピアノやフルート、ヴァイオリンの音色にオーケストラルなアレンジも取り入れながら、
優雅に構築してゆく。実力ある女性ヴォーカルの表現力も含めて完成度の高い作品だ。
シンフォニック度・・8 スタイリッシュ度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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SAVN
ノルウェーのゴシックメタル、サヴンの2014年作
MIDNATTSOLの女性シンガーに、元THE SINS OF THY BELOVEDのギターらによるバンドで
ほどよくヘヴィなギターに優美なシンセを重ね、美しい女性ヴォーカルに艶やかなフィドルや
ハーディングフェーレの音色を加えた、北欧トラッド的な土着性も含んだ幻想的なサウンドを聴かせる
MIDNATTSOLに比べるとより優美でキャッチーな味わいに包まれていて、カルメン嬢の魅力的な歌声と
シンフォニックなアレンジがよくマッチしていてウットリとなる。END OF GREEENの男性Voがゲスト参加しての
男女ヴォーカル曲や、カルメンの姉であるリブ・クリスティンが参加した、ツインヴォーカルのナンバーなど、
美麗なシンフォニック性と北欧らしい涼やかな雰囲気で、メロディアスな女性声メタルが楽しめる逸品。
シンフォニック度・・8 ゴシック度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8
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ELYOSE 「IPSO FACTO」
フランスのシンフォニックメタル、エルヨスの2015年作
メタリックなギターにモダンなシンセアレンジを加え、フランス語による美しい女性ヴォーカルを乗せた
キャッチーなシンフォニックメタル。エレクトロな感触を含んだデジタルな感触とほどよいヘヴィさに、
ジャスティン嬢のキュートな歌声も魅力的で、ポップなノリの良さとともに軽やかに楽しめる。
一方では、ARKANの男性ヴォーカルが参加してのデス声入りの、ゴシックメタル調のナンバーもあったり
メタルとしての重厚さも残しつつ、表現力ある女性声によるコケティッシュなモダンサウンドを味わえる。
ドラマティック度・・7 スタイリッシュ度・・8 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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THE A.X.E. PROJECT 「STORIES FROM A LOST REALM: PART TWO」
ブルガリアのシンフォニックメタル、AXE・プロジェクトの2015年作
2010年にデビュー、本作は続編となる2作目で、美麗なシンセにギターを重ね、
なよやかな女性ヴォーカルに男性声が絡む、優雅でキャッチーな聴き心地のサウンド。
ほどよい疾走感にメロディックなギターフレーズも覗かせて、きらびやかなシンセと
美しいソプラノヴォーカルで、ときにNightwishをB級にしたような雰囲気もありつつ、
やわらかなフルートも加わった優美なクラシカル性と、ドラマ性を感じさせる流れでゆったりと構築する。
シンフォニック度・・7 優雅度・・8 女性Vo度・・7 総合・・7.5
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Norhod 「Voices from the Ocean」
イタリアのゴシックメタル、ノーオッドの2016年作
2013年にデビューし、本作は2作目となる。メタリックなギターにオーケストラルなアレンジを重ね、
美しい女性ヴォーカルに男性グロウルが絡む、壮麗なシンフォニック・ゴシックメタルを聴かせる。
随所にストリングスやピアノなどを使ったクラシカルな優雅さと、アグレッシブな重厚さが同居した、
EPICAなどにも通じる雰囲気で、緩急ある展開力とともに濃密なサウンドを描いてゆく。
紅一点、カラーラ嬢の魅力的なソプラノと、低音グロウルの対比もコントラストになっていて、
前作に比べて激しいナンバーも増えている。全36分のアルバムながら、濃密な作風でお腹いっぱい。
シンフォニック度・・8 壮麗度・・9 女性Vo度・・8 総合・・8
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Purple Nail 「Embrace The Dark」
スウェーデンのゴシックメタル、パープル・ネイルの2015年作
シンフォニックなシンセと妖しい女性声によるイントロから、どこか魔女めいた雰囲気も感じさせつつ、
メタリックなギターに美しい女性ヴォーカルを乗せた、北欧らしい涼やかなゴシックメタルを聴かせる。
レディ・クロウ嬢の歌声は艶めいた魅力があって、メロディックなギターフレーズとシンセとともに
さほど重すぎないキャッチーな聴き心地で楽しめる。デス声なども入らないので、女性声ゴシック好きの方はどうぞ。
なお、海外版のジャケはホラー感が強すぎるのか、日本盤仕様では独自のジャケシートが加えられている。
ドラマティック度・・7 ゴシック度・・8 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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I MISS MY DEATH「IN MEMORIES」
ウクライナのゴシックメタル、アイ・ミス・マイ・デスの2014年作
クラシカルなピアノとシンセのイントロから、ソプラノ女性ヴォーカルに男性デス声が重なり、
重厚なギターリフとバロック的なシンセの旋律で、どっしりと耽美なゴシックメタルを描いてゆく。
東欧らしい翳りを帯びた空気感に包まれつつ、スローテンポだけではないほどよく激しいノリもあって、
7〜8分前後の長い曲を起伏に富んだ展開で構築する力量もある。エレーナ嬢の美しいソプラノは
楽曲のクラシカルなアレンジによく似合っていて、デス声との対比で可憐に引き立っている。
ボーナスのモーツァルト「レクイエム-涙の日」のカヴァーを含む、全75分という力作です。
クラシカル度・・8 ゴシック度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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MIZANTROPIA 「OBLIVION (Забвение)」
ウクライナのゴシックメタル、ミザントロピアの2015年作
2010年にデビューし2作目となる。女性Vo、女性Drを含む編成で、ツインギターに美しいシンセ、
妖艶な女性ヴォーカルにスクリームが絡む、妖しくもダークなゴシックメタルサウンド。
母国語による美しいソプラノヴォーカルに優美なピアノ、男女のスクリームヴォイスとともに、
東欧らしい翳りを帯びた耽美な空気に包まれる。ときにアグレッシブな激しさも覗かせつつ、
クラシカルなシンセアレンジが優雅に加わって、魅力的な女性声がやわらかに歌い上げる。
シンフォニックな美しさとダークな耽美性で描かれる、母国語女性Voゴシックの逸品です。
ドラマティック度・・8 ゴシック度・・9 耽美度・・9 女性Vo度・・8
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Moonlight
ポーランドのゴシックメタル、ムーンライトの2003年作
1996年にデビュー、本作は7作目となる。バンド名をタイトルにしているが実質全30分のEPで、
いくぶんデジタルなシンセアレンジに、母国語によるはかなげな女性ヴォーカルの歌声を乗せた、
倦怠の翳りに包まれたサウンドを描く。メタル的な感触はあまりなく、浮遊感のある女性声ロックという点では
The Gatheringなどに通じる雰囲気も覗かせつつ、インダストリアルなアレンジも現れたりと
バンドとしてゴシックメタルからの脱却を計ろうとしていたのか、つかみどころのない作風である。
アヴァンギャルドな空気も感じるが、突き抜けるまでには至らず、ゴシックにも戻れず、もどかしさが残る。
ドラマティック度・・6 ゴシック度・・7 女性Vo度・・7 総合・・7 過去作のレビューはこちら
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5/14
女性声シンフォニックメタル(162)


Estrella 「Unseen Velocity」
日本のメロディックメタル、エストレアの2018年作
きらびやかなシンセをギターを重ね、女性ヴォーカルを乗せて疾走する正統派のメロディック・スピードメタル。
ギターソロでの流麗なプレイやクラシカルなシンセワークもなかなかのもので、どかこ中性的なハイトーンの
女性ヴォーカルも含めて、バンドとしてのカラーはしっかりと感じられる。ファンタジックな雰囲気とシンフォニックで
壮麗なクサメロ感触は、MINSTRELIXなどに通じるところもある。一方では、ゆったりとしたスローテンポのナンバーなども
優美な感触で楽しめる。ややラウドな音質がいかにも自主制作っぽいのと、英語歌詞の発音がややつたないのが気になるので、
むしろ日本語で歌った方が受ける気もする。サウンド自体の世界観はとても良いので、今後のさらなる成長に期待したいところ。
メロディック度・・8 疾走度・・8 女性Vo度・・7 総合・・7.5

ELESSAR 「Dark Desires」
アルゼンチンのシンフォニックメタル、エレサーの2013年作
美麗なシンセアレンジにギターを重ね、美しいソプラノ女性ヴォーカルを乗せた、
EDENBRIDGEあたりに通じる優美でキャッチーなシンフォニックメタルサウンド。
メロウなギターの旋律やきらびやかなシンセワークもセンス良く、歌詞も英語のため、
さほどマイナー臭さも感じさせない。フロントのアレハンドラ嬢のなよやかな歌声も魅力的で、
さらに成長すれば、Delainのシャルロットさんばりになれるかもしれない。楽曲的には目新しさはないが、
ラストのスペイン語によるナンバーも良いですね。歌唱と演奏の実力はあるので今後が楽しみな逸材です。
シンフォニック度・・7 美麗度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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Eynomia 「Break Free」
アメリカのシンフォニックメタル、エイノミアの2018年作
美しいシンセワークに正統派寄りのギター、ハスキーな女性ヴォーカルを乗せたキャッチーなメタルサウンド。
随所に流麗なギターフレーズも覗かせつつ、どっしりとしたミドルテンポやメロディアスハード的な味わいもあり、
ゆったりとしたバラードナンバーでは、紅一点、フィリス嬢のエモーショナルな歌声が楽しめる。
楽曲は4〜5分前後で、全体的にはオールドな女性声HRにシンセを加えたという感触で、疾走感もさほどない
わりとストレートなノリであるが、ゴシックメタル風の3拍子のナンバーなどはなかなか良い感じ。
こというインパクトのあるナンバーがあればと思うが、キャッチーな女性声メタルとして普通に楽しめる。
シンフォニック度・・7 正統派度・・8 女性Vo度・・7 総合・・7.5
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EVOLUCIJA 「HUNT」
セルビアのシンフォニックメタル、エヴォルシヤの2018年作
2007年にデビューし、本作が3作目。正統派寄りのギターにやわらかなシンセ、美しい女性ヴォーカルを乗せた
キャッチーで壮麗なシンフォニックメタル。楽曲は3〜5分前後とわりとシンプルな聴きやすさで、
ギターリフなども、80年代ルーツのオールドなメタル感を漂わせている。紅一点、Ilana嬢のヴォーカルは、
いくぶんなまりぎみの英語ながらも、ほどよい辺境感を含んだキュートな魅力があって、よいですね。
メロハー的なナンバーから、疾走感のあるナンバーまで、悪くはないのだが突き抜けた部分もさほどない。
シンフォニック度・・7 正統派度・・8 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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Storyum 「We Are The Fire」
スロヴァキアのシンフォニックメタル、ストリウムの2018年作
2010年にデビュー、本作は2作目となる。ヘヴィなギターにシンセを重ね、エモーショナルな女性ヴォーカルで、
どっしりと重厚なシンフォニックメタルを聴かせる。ハスキーで伸びやかな女性声もなかなか魅力的で、
ヘヴィでありながらキャッチーなサウンドに、曲によってはエレクトロなアレンジも取り入れている。
3〜4分前後の楽曲はわりとシンプルな作風なので、もう少し展開力があってもよいとは思うが、
ヴォーカルの実力があるので、ストレートな女性声メタルとしても普通に楽しめる。
ドラマティック度・・7 壮麗度・・7 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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Selene 「The Forgotten」
イギリスのシンフォニックメタル、セレネの2015年作
メタリックなギターに美麗なシンセを重ね、伸びやかなソプラノ女性ヴォーカルを乗せて
優雅なシンフォニックメタルを聴かせる。オーケストラルなアレンジは、EPICAなどにも通じる雰囲気で、
紅一点、SHONAGH嬢の歌声は、DELAINのシャルロット嬢を思わせるキュートな魅力と表現力がある。
随所に聴かせるメロディックなギターフレーズがキャッチーな味わいになっていて、楽曲も3〜5分前後と、
ほどよくコンパクトで聴きやすい。ラストは9分の大曲で、きらびやかなシンセと見事なヴォーカルを乗せて
緩急ある展開で壮麗に構築する。自主制作のCD-R仕様ながら、素晴らしい女性Voも含めてレベルの高い逸品です。
シンフォニック度・・8 美麗度・・8 女性Vo度・・9 総合・・8
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Selene 「The Ravages Of Time」
イギリスのシンフォニックメタル、セレネの2017年作
自主制作2作目の本作も、壮麗なシンフォニックアレンジと美しい女性ヴォーカルの歌声を乗せ、
Nightwishなどにも通じる優美なサウンドを聴かせる。オーケストラルな優雅さと適度な疾走感に、
ほどよくキャッチーなノリもあって、魅力的な女性声とともに、Edenbridgeなどが好きな方にもお薦めできる。
今作もラストは10分を超える大曲で、しっりとした始まりから、ドラマティックに展開してゆく構築力はなかなか見事。
全体的には、前作同様に自主制作のレベルを超えるクオリティだが、インパクトのある楽曲がもう少しあればと思う。
シンフォニック度・・8 美麗度・・8 女性Vo度・・9 総合・・8
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Athlantis 「Chapter IV」
イタリアのメロディックメタル、アトランティスの2017年作
2002年にデビュー、本作は4作目となる。王道のギターにハイトーンヴォーカルを乗せて疾走する
90年代スタイルの正統派メロパワサウンド。軽やかな疾走感とクサメロは、かつてのSKYLARKなどにも通じる
古き良きイタリアンメロスピの聴き心地で、これという新鮮味はないのだが、オールドなファンはニンマリ。
ミドルテンポのキャッチーなナンバーなども、ほどよい中庸感と、いくぶんマイナーな味わいを残した雰囲気で、
シンセが入らない分派手さはないのだが、なかなか楽しめる。90年代ルーツのイタリアンメタルを継承するような好作品です。
メロディック度・・8 疾走度・・7 イタリアンメタル度・・8 総合・・7.5
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Teodasia「Metamorphosis」
イタリアのシンフォニックメタル、テオダシアの2016年作
前作は女性Voフロントのスタイルであったが、本作は男性ヴォーカルとなっている。シンフォニックなイントロから
メタリックなギターを加え、のちにRHAPSODY OF FIREに参加するジャコモ・ヴォリのハイトーンヴォーカルを乗せて
オーケストラルなアレンジとともに壮麗なシンフォニックメタルを展開する。疾走する激しさはあまりないが、
むしろゆったりとした優雅なナンバーが魅力的で、TEMPERANCEのキアラ嬢が参加しての男女Voのナンバーなども
キャッチーで優美な味わいだ。演奏やアレンジのレベルもそれなりに高いが、インパクトのある展開はさほどなく、
これというキラーチューンがあれば全体の印象も上がると思うのだが。ジャコモ氏は本作のあとラプソディーに加入。
シンフォニック度・・8 疾走度・・8 優美度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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LORD SYMPHONY 「LORD'S WISDOM」
インドネシアのメロディックメタル、ロード・シンフォニーの2014年作
壮麗なイントロから始まり、ツインギターにきらびやかなシンセを乗せて疾走する、ほどよいクサメロ感のある
メロデッィク・スピードメタル。なかなかヴォーカルが入らないが、3曲目からようやくハイトーンが加わり、
疾走メロスピからミドルテンポのキャッチーなナンバーなども含んだ、シンフォニックなサウンドを展開する。
楽曲は6〜8分前後が中心で、どれもリズムチェンジなどの緩急ある展開で聴かせるが、いくぶんバタついた展開に
適度にマイナーなB級感触も匂わせる。ProgMetal的な知的なアレンジをアピールしたいのかもしれないが、
結果として煩雑な印象になっていて、むしろシンプルなスピードナンバーなどを増やした方がいいような。
ドラマティック度・・8 疾走度・・7 楽曲度・・7 総合・・7.5
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Kerion 「Holy Creatures Quest」
フランスのシンフォニックメタル、ケリオンの2008年作
国内盤も出ていた2作目から先に聴いていたのだが、こちらはバンドのデビュー作。
壮麗なイントロで幕を上げるファンタジックなコンセプト作で、メタリックなギターに美麗なシンセを重ね
伸びやかな女性ヴォーカルの歌声とともに、壮麗でエピックなシンフォニックメタルを聴かせる。
クワイアを含む壮大なスケール感と、ファンタジーな世界観はRHAPSODYなどにも通じるが、
こちらはヨーロピアンなマイナー臭さがよい味わいになっていて、疾走するメロスピナンバーなどは、
初期DARK MOORにも通じる雰囲気に。2作目以降に比べてもクサメロ度の点では上でしょう。
シンフォニック度・・8 ファンタジック度・・9 女性Vo度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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Wildpath 「Disclosure」
フランスのシンフォニックメタル、ワイルドパスの2015年作
2006年にデビュー、本作は4作目となる。デジタルなシンセにオーケストラルなアレンジを加えたイントロから、
コケティッシュな女性ヴォーカルを乗せて、優雅でスタイリッシュなシンフォニックメタルを聴かせる。
軽やかなリズムにはモダンなDjent風味もあったりと、デジタルなアレンジを随所に覗かせつつ、
緩急のある構築力とともに、ProgMetal的な雰囲気も感じさせる。ときにメロスピ的な疾走感に
激しいツーバスの連打、男性声も加えたり、壮麗なオーケストラアレンジなど、メリハリのある流れで
硬質さと優美さを同居させたサウンドを描いてゆく。キャッチーであるがクールという感触で、
メロディが濃密になり過ぎないつかみどころのなさも、バンドの意図するところなのだろう。
シンフォニック度・・7 スタイリッシュ度・・8 女性Vo度・・7 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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Enemy of Reality 「Arakhne」
ギリシャのシンフォニックメタル、エネミー・オブ・リアリティの2016年作
MEDEN AGANのヴォーカリスト擁するバンドで、2014年にデビュー、本作は2作目となる。
ヘヴィなギターにオーケストラルなアレンジを重ね、美しい女性ヴォーカルの歌声を乗せた、
重厚なシンフォニックメタルサウンド。ときにデスヴォイスを加えたアグレッシブな激しさも覗かせつつ、
SepticFleshにも参加したイリアナ嬢のオペラティックな女性声とともに、ゴシックメタル寄りの耽美さと、
神秘的な世界観に包まれる。壮麗な疾走感も含んだメリハリあるサウンドが楽しめる、ゴシック・シンフォメタルの逸品。
ファビオ・リオーネ(ANGRA)、ジェフ・ウォーターズ(ANNIHILATOR)、キアラ・マルヴェスティテイ(Crysalys)がゲスト参加。
シンフォニック度・・8 重厚度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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Fortaleza 「El Ojo De La Tormenta」
メキシコのシンフォニックメタル、フォータレザの2010年作
美しいシンセアレンジをギターに重ね、スペイン語によるやわらかな女性ヴォーカルを乗せて、
ほどよい疾走感とともにゴシック寄りの耽美な空気とキャッチーな優美さが同居したサウンド。
紅一点、Helena嬢の艶めいた歌声もフェミニンな魅力たっぷりで、クラシカルなピアノなどの優雅さと、
ときに男性デス声も加わった美醜のコントラストで、マイナーな翳りを帯びた雰囲気も味わいがある。
楽曲自体のメロディのフックや抜けがもう少し欲しい気もするが、ほどよい辺境感が楽しめる方ならどうぞ。
シンフォニック度・・8 耽美度・・8 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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4/30
GWはおうちでメタル(148)


Katatonia「City Burials」
スウェーデンのメランコリックメタル、カタトニアの2020年作
1993年にデビュー、本作は11作目となる。うっすとしたシンセにメロウなギター、マイルドなヴォーカルを乗せて
寒々しい空気感に包まれたメランコリックなゴシックロックを聴かせる。知的な感触のギターフレーズとともに
OPETHなどにも通じるプログレッシブな構築力も覗かせつつ、メタル感のないしっとりとしたナンバーなども含めて
全体的にゆったりとした聴き心地。ときにシンフォニックといってもよいシンセが重なり、エモーショナルな歌声が
やわらかくサウンドを包み込む。メタル的な要素は残しているが、プログレッシブ・ダークロックというべきサウンドで、
女性ヴォーカルが加わった叙情ナンバーなども優美な味わいがある。彼らの世界観がじっくりと味わえる好作品だ。
ドラマティック度・・8 プログレッシブ度・・7 メランコリック度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Darzamat「A Philosopher At The End Of The Universe」
ポーランドのゴシック・ブラックメタル、ダルザマットの2020年作
1996年にデビュー、本作は2009年以来、11年ぶりとなる6作目。ミステリアスなコンセプトストーリーに基づいた作品で
ヘヴィなギターなシンセを重ね、ダミ声Voに女性ヴォーカルが絡む、妖しくも重厚なサウンドを聴かせる。
ブラックメタルとしてのダークでアグレッシブな雰囲気に、ゴシックメタルの耽美さが同居したという作風で、
どことなく、SepticFleshあたりにも通じる世界観である。随所に暴虐な疾走パートも覗かせつつ、
全体的には、激しさと妖しさのバランスのとれた聴き心地で、キャリアのあるバンドらしいクオリティの高さが光る。
個人的には女性声がもっと活躍して欲しいのと、ボーナストラックを除けば全38分というのがいささか物足りないが。
ドラマティック度・・8 暴虐度度・・7 耽美度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Madder Mortem「Mercury」
ノルウェーのアヴァン・ゴシックメタル、マダー・モーテムの2019年作
1999年にデビュー、2018年までに7作を出しているバンドで、本作はデビュー作の20周年記念再発盤。
ほどよくヘヴィなギターにうっすらとしたシンセ、妖しい女性ヴォーカルで聴かせるゴシックメタルで、
ときにしっとりとしアコースティックパートなどもあって、はかなげでメランコリックな空気に包まれる
The 3rd And The Mortalあたりにも通じる翳りを帯びた叙情と、リズムチェンジを含む展開力で、
随所にプログレッシブな雰囲気も感じさせつつ、女性声の美しいしっとりとしたナンバーもよい感じだ。
倦怠と耽美に覆われた好作品。ボーナスには、2019年の再録バージョンなど5曲を追加収録。
ドラマティック度・・7 耽美度・・8 女性Vo度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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Oblivion Gate「Wisdom Of The Grave」
イタリアのドゥームメタル、オブリヴィオン・ゲートの2020年作
Matron Thorn氏による個人ユニットで、アナログ感ある重厚なギターに詠唱のようなヴォカールを乗せ、
霧に包まれたような妖しくミステリアスなドゥームメタルを聴かせる。ジャケの雰囲気も含めて、
ホラー映画的な耽美な世界観で、こもり気味の音質が怪しいおどろおどろしさを演出している。
楽曲は6〜8分前後とわりと長めで、耳を引くような展開はさほどないが、混然となった轟音の渦に
飲み込まれるような聴き心地には、雰囲気もの系ドゥームとしての強度が感じ取れる。
ドラマティック度・・7 重厚度・・8 怪しげ度・・9 総合・・7.5
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The Riven
スウェーデンのヴィンテージロック、リーヴェンの2017作
アナログ感あるギターに伸びやかな女性ヴォーカルで聴かせる、70年代風のロックサウンド。
サイケやドゥーム感触はさほどなく、比較的ストレートなオールドロックという感触であるが、
ゆったりとしたナンバーではPURSONなどにも通じる魔女系ロック的な妖しい雰囲気もただよわせる。
オルガンなどが入らないのでサウンド自体はシンプルで、楽曲は3〜5分前後とわりとさらりと聴ける。
ブルージーなナンバーなど、全体的にも渋い味わいで、全40分というのもアナログっぽくて良いですな。
ドラマティック度・・7 ヴィンテージ度・・8 女性Vo度・・7 総合・・7.5
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KYLESA「Spiral Shadow」
アメリカのスラッジ系ドゥームメタル、カイリサの2010年作
2002年にデビュー、本作は5作目となる。ツインドラム、ツインギター、ツインヴォーカルという編成で
ヘヴィなギターに男女ヴォーカルを乗せ、シンセアレンジとともにサイケな浮遊感に包まれた、
ドゥームメタルという感触に、スクリーモ風味のアグレッシブさが合わさったようなスタイル。
楽曲は3〜4分前後が主体で、さほど展開力はないのだが、スラッジ特有のアナログ感に包まれていて
ヘヴィな曲よりはむしろ、女性ヴォーカルを乗せたサイケ寄りの妖しげなドゥームナンバーが魅力的。
ドラマティック度・・7 重厚度・・8 ドゥーム度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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GRAI (Грай) 「MLADA」
ロシアのタタールスタン出身のフォークメタル、グライの2014年作
2009年にデビュー、本作は3作目となる。メタリックなギターにやわらかなフルートが重なり、
男性グロウルに母国語によるなよやかな女性ヴォーカルを乗せた、牧歌的なフォークメタル。
ほどよくアグレッシブな激しさと辺境的な土着性に、リコーダーやバグパイプ、ヴァイオリンなどの
フォーキーな優雅さと、ヘヴィなメタル感触が同居していて、幻想的な空気をかもしだす。
楽曲は3〜4分前後とわりとシンプルなので、もう少し濃密な展開があればとは思うが、
さらりと聴ける優雅さという点ではこれでよいのかもしれない。女性声フォークメタル好きはどうぞ。
優雅度・・8 フォーキー度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Satanakozel (СатанаКозёл)「Rogatiya (Рогатыя)
ロシア、カレリア共和国のフォークメタル、サタナコツェルの2008年作
メタリックなギターに武骨なデスヴォイスを乗せた、辺境感のあるペイガンメタルで、
アコーディオンの音色も加わりつつ、ときにデスメタル的な激しい疾走感も覗かせる。
朗々としたコーラスやうっすらとしたシンセとともに、幻想的な空気感に包まれながら、
Finntrollあたりに通じるポルカ風の愉快なノリや、クサメロなギターの旋律も現れる。
これという新鮮味はないが、ほどよくアグレッシブな武骨系フォークメタルが好きならいかが。
ドラマティック度・・7 フォーキー度・・8 武骨度・・8 総合・・7.5
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Thokkian Vortex「Thy Throne Is Mine」
アメリカのブラックメタル、ソキアン・ヴォルテックスの2020年作
オールドなギターリフにダミ声ヴォーカルを乗せて疾走する、ブラッケンなサウンドで、
リズムチェンジを含む展開力やスラッジブラック的なザラついたアナログ感が同居した作風。
ミドルテンポのパートも多いので、暴虐系ブラックが好きな方にはやや退屈なところもあるが、
うっすらとしたシンセアレンジや、激しすぎないダークさというのは、BURZUMなどに通じるところも感じさせ、
トレモロのギターリフで激しくブラスト疾走しつつ、クラシカルなピアノやフルートを使ったナンバーなど、
優美な叙情性も覗かせる。いわばブラッケン・ロールと知的なプログレッシブ性が混在した異色作である。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・6 度・・8 総合・・7.5
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AVSLUT「Tyranni」
スウェーデンのブラックメタル、アヴスラットの2019年作
2018年にデビューし、2作目となる。ツインギターのリフにダミ声ヴォーカルを乗せて激しくブラスト疾走する、
寒々しくブルータルなブラックメタルを聴かせる。トレモロを含む適度に叙情的なフレーズも覗かせつつ、
コールドな暴虐性に包まれたサウンドで、甘すぎない北欧メロブラ的な感触でも楽しめる。
パワフルなドラムも重厚な迫力で楽曲を彩っていて、MARDUKあたりと比べてもひけをとらない。
ラスト曲では叙情的なメロディアス性に包まれる。激烈な激しさと北欧ブラックらしい空気が同居した強力作。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・8 北欧度・・8 総合・・8
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Erebos「Flame That Pierces With A Deadly Cold」
ポーランドのシンフォニック・ブラックメタル、エレボスの2019年作
トールキンの「指輪物語」をコンセプトにしているようで、優美でシンフォニックなイントロから、
オーケストラルなアレンジにドラムとダミ声ヴォーカルを乗せた、サントラ風のブラックメタルを展開。
なんとなくBAL-SAGOTHにも通じるファンタジックな世界観であるが、暴虐な激しさとはほとんどなく、
シンフォニックなオーケストレーションにやわらかなフルートが鳴り響く、薄暗く幻想的な聴き心地は、
Summoningあたりを思わせる。全体的にはダークファンタジーのサントラという雰囲気であるが、
ときに叙情的なギターメロディやトレモロのリフを乗せた疾走パートも現れる。ジャケに惹かれた方はどうぞ。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・7 幻想度・・8 総合・・7.5
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ULTAR「KADATH」
ロシアのブラックメタル、ウルターの2016年作
クトゥルー神話をテーマにした作品で、曲名も「ナイアルラトテップ」「アザトース」「ザスター」などでニヤり。
シンセとギターによる不穏なイントロから、トレモロのギターリフとダミ声ヴォーカルを乗せて疾走しつつ、
ポストブラック的な叙情を含んだ展開力で、暴虐さよりもミステリアスな雰囲気に包まれる。
ゆったりとした静寂パートやスペイシーなシンセパートもあり、ときにAlcestなどに通じるような
優雅な感触も覗かせる。ラストの「カダス」は13分の大曲で、激しい疾走ブラックを基本にしつつ、
シンセを重ねたシンフォニック性やアコースティックギターによる叙情を含んで幻想的に構築される。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・7 幻想度・・8 総合・・7.5
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Pagan Reign 「Древние Воины」
ロシアのペイガンメタル、ペイガン・レインの2002/2004年作
シンセによる優美なイントロから、土着的なギターフレーズにダミ声ヴォーカルを乗せた
フルートやパイプのフォーキーな音色とともに、牧歌的なペイガンメタルが広がってゆく。
ときに激しい疾走感も覗かせつつ、暴虐性よりも辺境的なクサメロ感に包まれていて、
シンセによるシンフォニックな感触も現れたりと、粗削りながらも和めるサウンドです、。
7分を超える長めの曲も多く、緩急ある展開と叙情メロディをほどよい激しさで楽しめる。
ドラマティック度・・8 クサメロ度・・8 辺境ペイガン度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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4/16
メロパワにジャパニーズメタル!(135)


Helloween 「United Alive」
ドイツのメロディックメタル、ハロウィンのライブ。2019年作
カイ・ハンセン、マイケル・キスクが参加した、2017年の「PUMPKINS UNITED」ツアーのステージを3CDに収録。
往年のメンバー勢ぞろいということでオールドファンには胸熱だが、曲の方ものっけから大曲「Helloween」で、
マイケル・キスクの歌声とともにかつてのハロウィンが甦る。「Dr.Stein」、「I'm Alive」と「守護神伝」ナンバーで盛り上がり、
その後も曲によって、アンディ・デリスがヴォーカルをとったり、カイ・ハンセンがリードをとる初期曲のメドレー、
「Starlight〜Ride The Sky〜Judas〜Heavy Metal Is The Law」も嬉しいところ。DIsc2では、「Sole Survivor」、「Power」など
デリス時代の好曲から、「How Many Tears」、「Eagle Fly Free」、「Keeper Of The Seven Keys」、「Future World」と、80年代の名曲も多数。
ボーナスのDisc3は別会場の音源であるが、「March Of Time」が聴けるのが嬉しい。この曲はやはりキスクの歌声がよく似合う。
ライブ演奏8 音質・・8 かぼちゃ名曲度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Riot V「Live in Japan 2018」
アメリカのメロディックメタル、ライオットVのライブ。2019年作
2018年の来日公演を2CDに収録。マーク・リアリ亡きあとは、RIOT V名義で活動を続けていて、
2作のスタジオアルバムを発表している。本ライブのDisc1は、新旧織り交ぜたナンバーのセットで、
「On Your Knees」〜「Metal Soldiers」という流れなどはオールドファンにはたまらないだろう。
軽めのドラムなど、音質的にはレンジが狭い感じもあるが、日本人好みのメロディックなツインギターに
トッド・マイケルホールの伸びやかなハイトーンヴォーカルで、往年のライオットを蘇らせるサウンドが楽しめる。
Disc2では、1988年作「Thundersteel」完全再現を披露。20年の時を経てかつての傑作が再現されるのは胸熱だ。
アンコールの「Road Racin'」、「Warrior」まで、2CDで全23曲という、ライオット祭りライブです。
ライブ演奏・・8 ライブ音質・・7 ライオット度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Gladenfold 「When Gods Descend」
フィンランドのメロディックメタル、グラデンフォルドの2019年作
硬質なギターに美麗なアレンジを重ね、グロウル声&ノーマル声ヴォーカルを乗せた、
メロデス風味も含んだシンフォニック・パワーメタルというサウンド。疾走するメロスピ感に
ほどよいクサメロの香りも漂わせつつ、きらびやかなアレンジとモダンな感触で、
そこにデス声が入るという点では、チルボドがメロパワ化したようなイメージか。
激しい疾走ナンバーから、ミドルやスローテンポの叙情曲までバランスのとれた内容で、
デス声以外は普通に聴きやすい、壮麗なシンフォニックメタルが味わえる高品質作デス。
シンフォニック度・・8 疾走度・・7 壮麗度・・8 総合・・8
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Orden Ogan 「Ravenhead」
ドイツのメロディックメタル、オルデン・オーガンの2015年作
1999年にデビューし、本作は5作目となる。壮大な雰囲気のイントロから、パワフルなギターリフと
叙情的なフレーズにかすれた味わいのヴォーカル、勇壮なコーラスとともに、RUNNING WILD
BLIND GURDIAN風にしたような、正統派のジャーマンメロパワサウンドを聴かせる。
壮麗なクワイアを乗せて疾走するところは、わりとシンフォニックメタル的な雰囲気もあって、
過去作よりもさらにキャッチーな感触をまとっている。パワフルな正統派の疾走メタルナンバーから、
ゆったりとしたケルティックなパートなどもあり、王道のエピックメタルとしてバランスのとれた力作だ。
ドラマティック度・・8 疾走度・・7 重厚度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Elvenpath 「Gateways」
ドイツのメロディックメタル、エルヴェンパスの2004年作
自主制作のデビューアルバムで、楽曲は全5曲ながら、すべて7〜9分という大曲志向。
ツインギターのオールドなリフにハイトーンヴォーカルを乗せて疾走する、初期HELLOWEEN
NOT FRAGILEなどにも通じる、マイナー臭さを残した古き良きジャーマンメタルスタイル。
叙情的なスローパートなど、緩急ある展開力で構築するところも、なかなかいい感じで
音はわりと軽めであるが、歌メロのキャッチーなクサメロ感や技巧的すぎないツインギターのフレーズに、
思わずにやにやとしてしまう。垢抜けないほどよいダサさも含めて、オールドスタイルのジャーマンメタルが楽しめる。
メロディック度・・8 疾走度・・8 ジャーマン度・・9 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら

Viuda Negra 「Al Final / In The End」
スペインのメロディックメタル、ヴィウダ・ネグラの2019年作
80年代から活動するバンドの復活作にしてデビュー作で、スペイン語、英語版の両方を2CDに収録。
オールドなギターにパワフルなハイトーンヴォーカルを乗せた、古き良き正統派のメタルサウンド。
楽曲は3〜5分前後と比較的シンプルで、シングルギターなので、ヘヴィ過ぎない聴きやすさと
80年代HR的なノリの良さでわりとライトに楽しめる。スロー〜ミドルテンポのナンバーも叙情的で、
ブルージーなロックナンバーもあったりと、メタル感触は薄めながらスパニッシュらしい哀愁を感じさせる。
SARATOGAあたりに比べると全体的にメロパワ感は弱いのだが、大人のスパニッシュHRとしてどうぞ。
ドラマティック度・・7 疾走度・・7 スパニッシュ度・・8 総合・・7.5
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Scarleth 「The Silver Lining」
ウクライナの女性Voシンフォニックメタル、スカーレスの2015年作
2011年にデビューし、2作目となる。女性ツインヴォーカルにツインシンセという編成で、
美麗なシンセアレンジに伸びやかな女性ヴォーカル、女性グロウルを乗せて疾走する、
アグレッシブなシンフォニックメタルを聴かせる。激しい疾走感もある一方で、曲によってはゴシックメタルや
フォークメタル寄りの雰囲気もあったり、翳りを帯びた雰囲気は東欧のバンドらしい。モダンなヘヴィネスと
メロスピ的な疾走感、クラシカルなシンセワーク、魅力的な女性声が同居したなかなかの好作品です。
ドラマティック度・・7 疾走度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8
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Venia 「Victory By Surrender」
フィンランドのメタルバンド、ヴェニアの2009年作
艶やかなヴァイオリン鳴り響くイントロから、フォークメタル寄りの土着性を感じさせつつ、
メタリックなギターを乗せて疾走する激しさと、コケティッシュな女性ヴォーカルの歌声による
優雅な味わいが同居したサウンド。シンセを使っていないので、シンフォニックな感触はないが、
随所にヴァイオリンが鳴り響き、曲によっては母国語で歌っているので、適度に辺境的な空気感と
涼やかな土着性も感じさせる。ときおりメロスピ的な疾走感も覗かせながら、緩急ある展開とともに
ほどよく武骨なマイナーな味わいのサウンドが楽しめる。なにげにクリスチャンメタルであるらしい。
ドラマティック度・・7 疾走度・・7 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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Mary's Blood「Bloody Palace」
日本のレディースメタル、メアリーズ・ブラッドの2015年作
メジャー2作目のアルバムで、メタリックなギターリフとともに激しく疾走するパワフルなサウンドで
日本語歌詞による情感豊かなヴォーカルも含めて、甘すぎない硬派な聴き心地に包まれる。
随所にメロディックな旋律や流麗なソロなど、ギターのSAKIのセンスとテクニックも光っていて、
ミドルテンポのキャッチーなナンバーなども、ドラムをはじめとする演奏力の高さで、どっしりとした味わい。
スラッシュメタルばりのスピードナンバーから、ほどよくダークで耽美なナンバー、叙情的なバラードなど、
バラエティに富んだ楽曲とともに、表情を変えるヴォーカルの表現力も見事。高品質なメタルアルバムです。
メロディック度・・8 パワフル度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Mary's Blood 「CONFESSiONS」
日本のレディースメタル、メアリーズ・ブラッドの2019年作
通算5作目のアルバムで、のっけからヘヴィなギターにシンフォニックなアレンジを重ね、
日本語歌詞のエモーショナルなヴォーカルを乗せて、激しく疾走するダークな味わいの作風。
ときにスクリーム気味のシャウトも含んだ伸びやかな歌声は、どこか中性的なイメージで、
パワフルなドラムやギターリフとともに、単なるガールズメタルとは一線を画す迫力がある。
楽曲は3〜4分前後と比較的ストレートな聴き心地で、日本的な情感をメタリックに表現した味わいから、
アラビックな旋律を取り入れたり、モダンなアレンジのキャッチーなナンバー、わりと普通のハードロックなど、
メジャー感のある多様性が同居する。演奏はしっかりメタルなのだが、楽曲的には方向性の定まらさが微妙なところ。
メロディック度・・7 パワフル度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8 
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Shiver of Frontier 「Can You See The World?」
日本のメロディックメタル、シヴァー・オブ・フロンティアの2019年作
2016年にデビューし、フルアルバムとしては2作目となる。シンフォニックなイントロナンバーから始まり、
ツインギターにハイトーンヴォーカルを乗せて疾走する、壮麗なメロディック・スピードメタルを聴かせる。
日本語歌詞の歌声には古き良きロマンの香りを感じさせ、どことなく、かつてのNOVELAの五十嵐氏を思わせる、
ほんのり恥ずかしいところがとても日本的。叙情的なツインギターのフレーズや随所に存在感を見せるベースなど、
演奏力もしっかりしていて、クサメロを奏でつつも、さほどB級っぽくはならないキャッチーな味わいに包まれている。
キーの高いハイトーンヴォーカルとともに、ノヴェラをシンフォニックメタル化したようなナンバーもあったりと、
優美で壮麗なサウンドが楽しめる。疾走メロスピと華麗なシンフォニックハードが同居したような力作です。
メロディック度・・8 疾走度・・8 華麗度・・9 総合・・8
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KNIGHTS OF ROUND 「The Meaning of Life」
日本のメロディックメタル、ナイツ・オブ・ラウンドの2016年作
2007年にデビュー、本作は4作目のフルアルバム。のっけからクサメロのギターを乗せて疾走開始、
かすれた味わいのヴォーカルを乗せて、シンフォニックできらびやかなメロスピサウンドを聴かせる。
勢いのある疾走感とキャッチーな透明感は、初期SONATA ARCTICAなど北欧系バンドにも通じる感触で
ヘヴィ過ぎない爽快なサウンドも含めて、この手のキラ・メロスピを好むリスナーにはアピールするだろう。
ギターのメロディにはどこかで聴いたようなフレーズもあるのだが、美麗なシンセアレンジとライトなクサメロ、
日本語歌詞の歌声とともに、MinstreliXなどにも通じる、優美でファンタジックな世界観が楽しめる好作品だ。
メロディック度・・8 疾走度・・9 美麗度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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MAVERICK
日本のメロディックメタル、マヴェリックの2005年作
札幌出身のバンドで、ツインギターのリフにパワフルなヴォーカルを乗せた正統派のパワーメタル。
80〜90年代ルーツのオールドスタイルの味わいで、随所に叙情的なツインギターのメロディとともに
甘すぎない程度のキャッチーな部分も覗かせて、日本人らしいクサメロ感ある疾走ナンバーもいい感じだ。
ACCEPT + HELLOWEENというような、90年代ジャーマンメタル感覚に、適度なジャパメタ風味も感じさせ、
英語歌詞のヴォーカルも良い意味での野暮ったさが、むしろ味わいになっている。ラストの疾走曲も格好よく、
重すぎず激しすぎないという、まさに古き良き王道の日本産メロパワが楽しめる強力作だ。
メロディック度・・8 疾走度・・7 正統派度・・8 総合・・8
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MAVERICK 「Natural Born Steel」
日本のメロディックメタル、マヴェリックの2012年作
7年ぶりとなる2作目で、リーダーの堀田勝彦とドラム以外のメンバーが替わっているが、
のっけから疾走感のある王道のメロパワで、叙情的なツインギターやキャッチーなコーラスを含む
勇壮な聴き心地は前作の延長上のスタイルだ。どっしりとしたミドルテンポのナンバーでも
メロディックなギターフレーズが光っていて、勢いのある疾走ナンバーとのバランスもとれている。
楽曲は3〜4分前後と、ストレートな感触で、やはりジャーマンメタルをジャパメタ寄りにしたという聴き心地。
IRON SAVIORのピート・シルク、GAMMA RAYのカイ・ハンセンがゲスト参加しているのも見逃せない。
メロディック度・・8 疾走度・・7 正統派度・・8 総合・・8
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Tankard 「Beast of Bourbon」
ドイツのスラッシュメタル、タンカードの2004年作
1986年デビューのベテランで、本作は11作目となる。ザクザクとしたギターリフと吐き捨てヴォーカルを乗せて
アグレッシブに疾走する、オールドスタイルのスラッシュメタルを聴かせる。基本は疾走しまくりの爽快な聴き心地で、
随所にリズムチェンジや甘すぎないメロディのギターフレーズも覗かせ、ベテランらしい構築センスもさすがである。
新鮮味はないものの、3〜4分前後の楽曲を中心に、とにかく疾走スラッシュでたたみかける、痛快なまでの強力作。
ドラマティック度・・7 疾走度・・9 スラッシュ度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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4/2
新年度のメタル(120)


Ayreon「Transitus」
オランダのシンフォニック・ロックオペラ、エイリオンの2020年作
1995年にスタートしたアルイエン・ルカッセンによる壮大なプロジェクトも、本作で通算10作目を数える。
19世紀を舞台にしたゴシック・ホラーストーリーに基づく、CD2枚組の大作で、KAMELOTのトミー・カレヴィック、
OCEANS OF SLUMBERのカミー・ギルバート、元STREAM OF PASSIONのマルセラ・ボヴィオ、EPICAのシモーネ・シモンズ、
アマンダ・サマーヴィル、ディー・スナイダー、ARENAのポールマンズィ、THRESHOLDのジョアンヌ・ジェームスなど、
配役ごとのシンガーに、ジョー・サトリアーニ、マーティー・フリードマンなど演奏陣にも多数のメンバーが参加している。
トム・ベイカーによるナレーションから、壮麗なシンセアレンジにギターを重ね、男女ヴォーカルの歌声を乗せて、
随処にプログレ的な展開力も含んだ、ドラマティックなサウンドを描いてゆく。楽曲自体は3〜4分前後とわりとシンプルながら、
曲間のナレーションが多く、長尺に感じるかもしれないが、プログレのコンセプト作が好きな方ならじっくり楽しめるだろう。
ドラマティック度・・8 メタル度・・6 壮麗度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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FOREIGN 「The Symphony of the Wandering Jew, Pt. II」
フランスのメタルオペラプロジェクト、フォーレインの2020年作
元SAVATAGEのザッカリー・ス ティーヴンス、EVERGREYのトム・イングランド、VANDEN PLASのアンディ・クンツ
STEVE HACKETT BANDのアマンダ・レーマン、SYMPHONY Xのマイケル・レポン ド、PAIN OF SALVATIONのレオ・マーガリットなど、
多数のゲストが参加。磔にされたキリストを侮辱した報いとして、「最後の審判」が訪れる日まで永遠に世界をさすらう運命を背負った
ユダヤ人にまつわる伝承を題材に したロックオペラの続編で、男女ヴォーカルの歌声と叙情的なギターに、ピアノやストリングスを加え
じっくりと優雅でドラマティックなサウンドを描いてゆく。ときにケルティックな雰囲気も織り込みつつ、メタル的な激しさはさほどないので、
AYREONなどのシンフォニックロック的な味わいでも楽しめる。楽曲自体に派手なインパクトはないので、トータルで鑑賞する作品ですね。
ドラマティック度・・8 メタル度・・6 壮大度・・8 総合・・8
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PAIN OF SALVATION 「The Perfect Element Pt.1(Anniversary Mix 2020)」
スウェーデンのプログレッシブメタル、ペイン・オブ・サルヴェイションの2020年作
3作目である2000年作の20周年リミックス盤で、ボーナスDiscにはライブ音源を収録した2枚組。
サウンドは一聴してダイナミックになり、ギターやドラムなどの分離が良くなったことで奥行きが増した。
ダニエル・ギルデンロウのエモーショナルな歌声とともに、重厚さとキャッチーなメロディアス性を同居させ、
翳りに包まれた叙情性と知的な構築力で描かれるコンセプト大作が、壮大な空気をまとわせて甦った。
全76分の映画のようなドラマティックな傑作。PoSのコアなファンはもちろん、初めて聴くリスナーにもお薦めしたい。
ボーナスのDisc2には、2017〜2018年のライブ音源や別バージョン、未発曲などを収録。
ドラマティック度・・8 知的構築度・・9 壮大度・・8 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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Vanden Plas「The Ghost Xperiment - Illumination」
ドイツのプログレメタル、ヴァンデン・プラスの2020年作
1994年デビューのベテラン。本作は通算10作目で、前作の続編となるコンセプトアルバム。
重厚なギターにシンセを重ね、マイルドなヴォーカルを乗せて、どっしりとしたサウンドを構築。
ヴォーカルメロディはキャッチーで、いくぶんダークな雰囲気をまとわせたKAMELOTなどにも通じる感触に、
随所に叙情的なギターフレーズを盛り込んで知的な展開力も覗かせる。8分前後の長めの曲でも、
オルガンなどを含むシンセとエモーショナルなヴォーカルで、モダンなヘヴィネスとメロディックなフックが同居。
13分という大曲では、美麗なシンセとともにじわじわと盛り上げる。派手なインパクトはないものの安定の力作である。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 重厚度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Warrior Path
ギリシャのメタルバンド、ウォリアー・パスの2019年作
FIREWINDのボブ・カティオニス、BEAST IN BLACKのヤニス・パパドプロスが参加するバンドで、
王道のギターリフにハイトーンヴォーカルを乗せた、エピックな味わいの正統派メタルを聴かせる。
MANOWARにも通じる勇壮な雰囲気に、アコースティックパートを含んだ叙情性と泣きのギターフレーズなどで、
ウェットなドラマ性も感じさせつつ、軽快な疾走ナンバーも聴かせるところはなかなか日本人好み。
楽曲はわりとストレートでシンプルながら、8〜9分という大曲では、ゆったりとした叙情性も覗かせて
ほどよいマイナーな香りとともに、Manilla RoadVirgin Steeleあたりが好きな方にも薦められる。
初期WARLORDのようなクサメロ感もあって、正統派のエピックメタルながら武骨すぎないところも良いですね。
ドラマティック度・・8 疾走度・・7 エピック度・・8 総合・・8
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TRI STATE CORNER 「HERO」
ギリシャのメタルバンド、トライ・ステイト・コーナーの2018年作
現RAGEのドラマー、ヴァシリオス・マニアトプロスがシンガーを務め、元RAGEのクリスがドラムで参加するバンド。
メタリックなギターにパワフルなヴォーカルを乗せ、ギリシャの民族楽器であるブズーキの素朴な音色を加えた、
キャッチーなメタルサウンドを聴かせる。楽曲自体はわりとオーソドックスなハードロックであるが、
マンドリンに似たブズーキのトレモロの旋律などが、随所に素朴で異国的な情緒を感じさせている。
ゆったりとしたナンバーでは、エモーショナルのヴォーカルの歌声に、ブズーキのアコースティック感が合わさり、
大人の叙情ロックという感じでも楽しめる。楽曲は3〜4分前後とシンプルで、さらりと聴きとおせる好作です。
メロディアス度・・7 メタル度・・7 優雅で素朴度・・8 総合・・8
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Major Denial 「Duchess Of Sufferings」
ギリシャのプログレメタル、メジャー・デニアルの2017年作
適度に叙情を帯びたツインギターに伸びやかなヴォーカルを乗せて、KAMELOTにも通じるような、
スタイリッシュでダークな味わいのサウンドを聴かせる。リズムチェンジを含む知的な展開力も覗かせつつ、
テクニカル過ぎない聴きやすさで、ときにシンセを加えた優美な味わいもあって、耳心地よく楽しめる。
メランコリックな薄暗さにはゴシック的な感じもあり、メロウな泣きのギターフレーズもサウンドをウェットに彩っている。
ラストは女性ヴォーカルに美麗なシンセも加えたナンバーで、派手なインパクトはないが、じっくりと世界観に浸れるような好作品だ。
本作で歌っているエモーショナルなヴォーカルはゲストらしいので、早く正規メンバーにしてください。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 薄暗度・・8 総合・・7.5
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King Wraith 「Of Secret And Lore」
イタリアのメタルバンド、キング・レイスの2015年作
Bejelitのメンバーを主体にしたバンドで、ジャケの雰囲気からもマイナー系エピックメタルの香りがぷんぷんだが、
サウンドの方も、RUNNING WILD風味のギターリフに、朗々としたヴォーカルを乗せた正統派メタルで、
ローカルな音質も含めてパワフル過ぎないマイナー臭さがGoodです。勇壮なコーラスなども加わりつつ、
決して重厚にならない、いわゆるヘナチョコ感が微笑ましい。これもB級エピックメタルの条件でしょう。
曲によっては、いかにも「ランニング・ワイル度」が強すぎるが、そこも含めて楽しめる方はどうぞ。
ドラマティック度・・7 正統派度・・8 勇壮度・・7 総合・・7.5
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TEZZA F. 「A Shelter from Existence」
イタリアのシンフォニックメタル、テッツァ.Fの2018年作
CHRNOSFEARのヴォーカリスト Filippo Tezzaのソロ作品で、美麗なシンセアレンジにクサメロのギター、
ハイトーンヴォーカルを乗せて疾走しつつ、リズムチェンジなどの緩急ある構築力で聴かせるサウンド。
優雅でクラシカルなシンフォニックメタルに、随所にProgMetal的な展開美を加えたという作風で、
ほどよくマイナーな香りを感じさせるところは、少し前のイタリアンメタルらしい感触だ。
ときにデスヴォイスもまじえたモダンな雰囲気や、フォークメタル的な牧歌的な土着性も覗かせながら、
ファンタジックな世界観を描いてゆく。ラストは15分という大曲で、起伏に富んだ展開でドラマティックに構築する。
メロディック度・・8 疾走度・・7 優雅度・・8 総合・・7.5

Venice in Vain
イタリアのプログレメタル、ヴェニス・イン・ヴェインの2003年作
クラシカルで壮麗なイントロから、シンフォニックなシンセワークにギターを重ね、
シアトリカルに歌い上げるヴォーカルとともに、適度にテクニカルで優美なProgMetalを聴かせる。
メタル的な重厚さはさほどなく、ヴォーカルのヘタウマ感も含めたマイナーな翳りと、
優美なロマンティシズムに包まれるところは、同郷のBlack Jesterにも通じる雰囲気がある。
アルバム後半は、28分を超える組曲になっていて、緩急ある展開でドラマティックに構築されてゆく。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 優美なロマン度・・9 総合・・7.5

METALLICA  「Metallica Through the Never」
アメリカのベテランメタルバンド、メタリカの2013年作
映画用のサントラ作品であるが、劇中のメタリカのライブシーンをそのまま音源にしているので、通常のライブアルバムとしても楽しめる。
観衆の歓声とイントロに続いて「Creeping Death」でスタートし、パワフルな演奏とライブの臨場感は、近年のアルバムで聴ける以上に
かつてのメタリカを思わせる。「For Whom The Bell Tolls」、「Ride The Lightning」といった往年のナンバーはファンも嬉しいだろう。
「Reload」からのナンバーも織り交ぜつつ、Disc2では「…And Justice For All」、「Master Of Puppets」、「Battery」といった
オールドナンバーまくりでファンは歓喜だろう。「Enter Sandman」、「Hit The Lights」というラストへの流れに興奮しつつ。、
「Orion」でエンディングテーマ的に幕を閉じる。サントラの枠を超えて、本作はバンドのベストライブとして聴いてもよいだろう。
ライブ演奏・・8 臨場感・・9 メタリカ度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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METALLICA 「S&M2」
メタリカとオーケストラの共演ライブ作品。2020年作
1999年の「S&M」から20年、再びサンフランシスコ交響楽団を迎えて録音されたライブ作品で、イントロに続く「The Call Of Ktulu」というのは、
前作「S&M」と同じだが、よりシンフォニーに焦点を当てたシンフォニックな優雅さに包まれている。「For Whom The Bell Tolls」も前作同様
楽曲の持つ叙情性がオケと自然と融合されているが、あらたに加わった「Death Magnetic」からのナンバーなども激しい疾走感に
オケの美麗さが重なってなかなか楽しめる。一方で「HARDWIREDTO SELF-DESTR」の楽曲は、なんとなく淡白な印象で、
「LOAD」収録の大曲も個人的にはあまりピンとこない。Disc2では、プロコフィエフの「スキタイ組曲」、モソロフの「鉄工場」など、
クラシックのメタルカヴァーにも挑戦。クリフ・バートンのベースをコントラバスで再現した「Pulling Teeth」もなかなか面白い。
後半は、「One」、「Master Of Puppets」でお約束ながら盛り上げて、ラストは「Enter Sandman」で締めくくる。
クラシカル度・・8 メタル度・・7 壮大度・・8 総合・・8
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Tankard 「One Foot in the Grave」
ドイツのスラッシュメタル、タンカードの2017年作
1986年にデビュー、SODOM、DESTRUCTION、KREATORなどと並ぶジャーマンスラッシュのベテランバンド。
17作目となる本作も、1曲目からザクザクとしたギターリフにダミ声ヴォーカルを乗せて疾走する、
オールドスタイルのスラッシュメタルで、90年代かのサウンドをそのままアップトゥデートしたような聴き心地。
ミドルテンポのノリの良いナンバーや正統派メタル風のリズムチェンジ、ほどよくメロディックなギターソロなども
随処にアクセントになっていて、全体的に激しすぎないところにもベテランらしい余裕を感じさせる。
ギターリフやフレーズの恰好良さもさすがで、オールドスタイルのパワーメタル的にも楽しめる強力作だ。
ドラマティック度・・7 疾走度・・8 オールドメタル度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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LOST SOCIETY「Braindead」
フィンランドのスラッシュメタル、ロスト・ソサイエティの2016年作
2013年にデビュー、本作は3作目。オールドスイルの疾走スラッシュメタルだった過去2作から、
本作はミドルテンポのどっしりとしたナンバーで幕を開け、ダークなメタル感に包まれた印象。
ギターのリフはわりとオーソドックスなので、疾走感がない曲だと、これという特徴がなく
喚き散らすヴォーカルも好みが分かれるかも。曲によってはメタリカっぽかったり、アンスラックスっぽかったり、
中盤以降はアグレッシブに疾走するナンバーもあり、8分の大曲などもなかなかドラマティックな仕上がり。
全体的にはスラッシュというよりは、ダークメタルとして楽しむのがよいのかもしれない。
ドラマティック度・・7 疾走度・・6 オールドスラッシュ度・・7 総合・・7.5
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3/19
メロデス、ブラック、ペイガンメタル(106)


NAGLFAR「CERECLOTH」
スウェーデンのメロディック・ブラックメタル、ナグルファーの2020年作
1995年にデビュー、本作は8年ぶりとなる7作目。叙情的なギターフレーズにダミ声ヴォーカルを乗せて
激しく疾走するスタイルは、かつてのDISSECTIONを思わせる王道の北欧メロブラのスタイルで、
いくぶんこもり気味の音質も含めて、まるで90年代に原点回帰したような聴き心地だ。
スローからミドルテンポにおける叙情的なメロディや不穏なギターフレーズなども魅力的で、
北欧ブラックらしい涼やかな空気感と暗黒性が同居したサウンドをじっくりと味わえる。
重すぎない暴虐過ぎないという、いわば古き良き正統派メロブラを楽しめる強力作だ。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・8 王道メロブラ度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Omnium Gatherum「The Burning Cold」
フィンランドのメロディック・デスメタル、オムニウム・ギャザルムの2018年作
2003年にデビューし、本作は8作目。硬質なギターに美麗なシンセを重ねたイントロから説得力充分、
ギターが流麗な叙情メロディを奏でだすと、シンフォニックなプログレメタル風な聴き心地にもなる。
低音デスヴォイスも含めて、メロデス的なヘヴィネスをしっかりと保ちつつ、モダンでスタイリッシュな作風に
さらに磨きがかかっていて、ここぞと泣きメロでたたみかける展開力もさすがという他にない。
曲によっては激しく疾走するアグレッシブなデスメタル感も残しながら、メロディックなギターフレーズが
どの曲にも散りばめられていて、楽曲は4〜5分前後であるが満足度は高い。今作も見事な完成度デス。
メロディック度・・8 暴虐度・・7 泣きメロ度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Dark Lunacy 「The Rain After The Snow」
イタリアのメロディック・デスメタル、ダーク・ルナシーの2016年作
1998年にデビューし、本作は6作目となる。ストリングスによるクラシカルなイントロから、
ヘヴィなギターに吐き捨てヴォーカルを乗せて、アグレッシブなデスメタルを聴かせる。
随所に優美なヴァイオリンやクラシカルなピアノの旋律を絡ませつつ、メランコリックな叙情と
ダークなヘヴィネスが同居した味わいで、重厚にして耽美なサウンドが楽しめる。
激しい疾走パートでは、初期のDARK TRANQUILLITYにも通じる雰囲気もありつつ、
スローナンバーはゴシックメタル的な味わいでも聴ける、クラシカルデスメタルの逸品だ。
クラシカル度・・8 暴虐度・・7 重厚度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Arcturus 「Arcturian」
ノルウェーのブラックメタル、アークチュラスの2015年作
1994年にデビュー、10年ぶり5作目となる本作も、ヘルハマーの叩き出すパワフルでグルーヴィなドラムに
シンフォニックなシンセアレンジとシアトリカルなヴォーカルを乗せ、随所に激しい疾走パートを含んだ
緩急ある展開力でスペイシーなブラックメタルを展開する。ときにヴァイオリンを加えた優雅な叙情美と
プログレッシブなリズムチェンジとともに壮大な世界観を描きつつ、今作では激しいブラスト疾走による
ブラックメタルとしての禍々しさも戻ってきた。一方では、モダンでキャッチーなインダストリアル風味もあったり、
単なるブラックメタルの枠を超えた知的なセンスが散りばめられた、スケールの大きなサウンドが味わえる。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・7 構築度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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ARMAGEDDA 「SVINDELDJUP ATTESTUP」
スウェーデンのブラックメタル、アルマゲッダの2020年作
2001年にデビュー、本作は2004年以来16年ぶりの復活作。トレモロのギターリフを乗せてブラスト疾走、
ダミ声ヴォーカルとともに、ミドルの疾走感も含んだオールドな雰囲気のブラックメタルを聴かせる。
緩急あるリズムチェンジに母国語によるヴォーカル、スウェディッシュらしい適度な叙情性も感じさせて
プリミティブなスタイルながらけっこう聴きやすい。スローテンポ主体のナンバーなど、激しいだけでなく、
ブラッケン・ロール的な味わいもあって、アナログ感に包まれた音質も含めて、いい塩梅のサウンドです。
6〜8分の楽曲を主体に、ラストは11分の大曲で、リフレイン長めでほどよい激しさを含んで展開する。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・7 オールドブラック度・・8 総合・・7.5
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Fellwarden 「Wreathed in Mourncloud」
イギリスのポストブラックメタル、フェルワルデンの2020年作
FENのメンバーによるユニットで、アコースティックギターのイントロから、三拍子の土着的なギターフレーズに
彼方から響いてくるようなヴォーカルを乗せた、ミステリアスな空気に包まれたアトモスフェリックなサウンド。
ダミ声を乗せて激しいブラスト疾走するパートも、暴虐性よりもネイチャーブラック的な神秘性を感じさせ、
トレモロを含むギターリフにうっすらとしたシンセアレンジも加えて、ウェットで幻想的な世界観を描き出す。
後半は10分を超える大曲が並び、美しいシンセとピアノによる優美なパートなど、緩急ある展開力とともに、
ほどよい激しさと叙情性が同居した雄大なポストブラックが楽しめる。神秘的な幻想美に包まれた逸品です。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・6 神秘的度・・8 総合・・8
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NECRONAUTICAL「APOTHEOSIS」
イギリスのブラックメタル、ネクロナウティカルの2019年作
2014年にデビューし、3作目となる。ほどよい叙情を含んだギターフレーズにダミ声ヴォーカルを乗せて
激しく疾走するスタイルで、メロデス寄りの感触も含んだ、適度にメロディックなブラックメタルを聴かせる。
楽曲は6〜8分で、ミドルやスローテンポも含んだ緩急ある構築力で、暴虐性がさほど強くない分、
わりと初心者にも楽しめるだろう。美しいシンセアレンジも加えて、EMPERORあたりに通じるような、
激しく幻想的なナンバーもあり、ほどよく聴きやすいのだが、暗黒寄りの荘厳さがもう少し欲しいか。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・7 暗黒度・・7 総合・・7.5
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REGARDE LES HOMMES TOMBER
フランスのスラッジ・ブラックメタル、レガーデ・レス・ホメス・トンバーの2012年作
トレモロを含むツインギターに低音デスヴォイスを乗せ、激しさの中にも知的な展開力を描く、
重厚でミステリアスなサウンドを聴かせる。荘厳な闇を感じさせるスケール感に包まれて、
スラッジドゥーム的などっしりとしたスローパートなど、緩急ある構築力で、迫力たっぷりに味わえる。
激しさという点では、疾走系ブラックが好きな方には少し物足りないかもしれないが、
10分近い大曲も含めて、硬派な暗黒性というべき世界観が楽しめる強力作です。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・7 重厚度・・8 総合・・7.5
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REGARDE LES HOMMES TOMBER 「ASCENSION」
フランスのスラッジ・ブラックメタル、レガーデ・レス・ホメス・トンバーの2020年作
2012年にデビュー、3作目となる本作は、ミステリアスなスケール感がより強固になった感触で、
ほどよく叙情的なツインギターに絶叫するようなヴォーカルを乗せた、暗黒ブラックメタルを聴かせる。
8〜9分前後の大曲を主体に、激しい疾走パートに加え、スローパートでの荘厳な空気感が、
サウンドに重厚な説得力を加えている。ときに詠唱のようなヴォーカルが秘教的な妖しさをかもしだし、
暴虐さよりも暗黒美に包まれたような雰囲気で楽しめる。漆黒の闇を描くスラッジ・ブラックの逸品。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・7 重厚度・・8 総合・・8
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Xul Ov Kvlten 「Entropic Increase From The Omega Aeon」
チリのブラックメタル、スール・オヴ・クヴルテンの2019年作
ジャケのイメージからして怪しげな雰囲気がぷんぷんだが、サウンドの方もトレモロのギターリフに
ダミ声ヴォーカルを乗せてブラスト疾走する、プリミティブなブラックメタルを聴かせる。
激しく疾走しつつもリズムチェンジなどの緩急ある展開力とともに、暴虐性よりはむしろ、
スペイシーで、ミステリアスな世界観を描いている。激烈なドラムを含めて演奏力もあり、
トリオ編成ながらも迫力あるサウンドを構築。随所にシンセアレンジを加えた荘厳な叙情も覗かせる。
アナログ感ある聴き心地も神秘的な空気感を高めていて、オールドスタイルのブラックメタルが味わえる強力作だ。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・8 神秘的度・・8 総合・・8
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Irdorath 「Denial of Creation」
オーストリアのブラックメタル、イルドラスの2017年作
ザクザクとしたギターリフにダミ声ヴォーカルを乗せて疾走する、スラッシュ風味のブラックメタルというサウンドで
トレモロを含むギターフレーズに甘すぎない程度の叙情も覗かせながら、激しいブラストでたたみかける。
スローからミドルテンポを含むどっしりとしたところは、オールドなスラッシュメタルの雰囲気を感じさせ、
重すぎない暴虐過ぎないという感じで、ブラックメタルとスラッシュの両方の耳で楽しめる。
演奏力も高いので全体的にカッチリとした硬質感があるのだが、ヴォーカルがやや一本調子で、
中盤で少し聴き飽きてくる。ギターリフもわりと普通なので、耳を引くインパクトがもう少し欲しい。
ドラマティック度・・7 重厚度・・7 暗黒度・・7 総合・・7.5
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Adversvm 「Dysangelion」
ドイツのスラッジ・ブラック・ドゥームメタル、アドヴァースヴムの2019年作
2018年にデビューし、2作目となる。どっしりとしたベースに不穏なギター、かすれた低音デスヴォイスを乗せ、
禍々しい暗黒性に包まれた、ブラッケンなドゥームメタルサウンド。ほどよく叙情的なギターのフレーズとともに、
ゆったりとした聴き心地で、10分を超える大曲をおどろおどろしく描いてゆく。ツーバスの連打なども含めて
わりとブラックメタル寄りの雰囲気もあるので、荘厳な暗黒系スラッジブラックとしても楽しめるだろう。
アルバム後半は、My Dying Brideのような耽美でフューネラルなゴシックメタル風味の味わいもありつつ、
ラストはシンセにギターを重ねたドローン風のナンバーと、とにかくミステリアスな世界観を追及している。
ドラマティック度・・7 暗黒度・・8 重厚度・・8 総合・・7.5
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XIV Dark Centuries 「Waldvolk」
ドイツのペイガンメタル、14ダーク・センチュリーズの2020年作
1999年にデビュー、本作は9年ぶりとなる7作目。美麗なシンセにヴァイオリンが鳴り響くイントロから、
メタリックなギターリフとダミ声ヴォーカルを加えて、Ensiferumにも通じる勇壮なペイガンメタルを聴かせる。
叙情的なギターフレーズとメロスピ的な疾走感という点では、Equilibriumにも通じる雰囲気があるが、
こちらりよりオールドスタイルのエピックなヴァイキングメタルを踏襲した、幻想的な土着感に包まれている。
クサメロ感たっぷりながら、サウンドは軟弱にはならず、キャリアのあるバンドらしい説得力があって、
ペイガンメタルとしては理想的なバランスだろう。ほどよい激しさと土着的な叙情メロが同居した高品質作。
ドラマティック度・・8 ペイガン度・・8 クサメロ度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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VANIR 「Aldar Roek」
デンマークのヴァイキングメタル、ヴァニルの2016年作
2011年にデビューし、4作目。ヘヴィなギターにオーケストラルなシンセアレンジを重ね、
ダミ声ヴォーカルで聴かせる、ほどよくアグレッシブで武骨なヴァイキングメタルを聴かせる。
クサメロ感のあるギターフーレズとともに、随所にフォーキーな土着性も覗かせつつ、
全体的に硬派なペイガンメタル感触に包まれていて、雰囲気は悪くないのだが、
盛り上がりそうで盛り上がり切らないのがもどかしい。ボーナス入れて全31分なので、
本作はミニアルバムという扱いだろうか。日本盤の出る次作に比べるとやや中途半端か。
ドラマティック度・・7 ペイガン度・・7 重厚度・・7 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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VORGRUM 「PARTY IN THE DEEP」
アルゼンチンのペイガンメタル、ヴォルグルムの2018年作
ヘヴィなギターにダミ声ヴォーカルを乗せ、朗々としたコーラスとともに武骨なペイガンメタルを聴かせる。
随所にアコーディオンの音色がフォーキーに絡んで、土着的な辺境の空気をかもしだし、
とにアグレッシブな疾走感や、初期のFintrollあたりにも通じるコミカルなノリも覗かせる。
楽曲は2〜4分前後を主体とわりとシンプルで、メロディのフックやドラマティックな展開がさほどないので
あまり盛り上がり切らないのがもどかしい。武骨系フォークメタルが好きな方はどうぞ。
ドラマティック度・・7 ペイガン度・・7 武骨度・・8 総合・・7
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Vetten Aparat 「Syntyi Talven Kyynelista」
フィンランドのペイガンメタル、ヴェーテン・アパラットの2016年作
メタリックなギターリフに低音デスヴォイスを乗せて、デスメタル寄りの激しい疾走感とともに、
土着的な神秘性に包まれたサウンドを聴かせる。やわらかなフルートの音色などフォーキーな叙情性と
アグレッシブな激しさが同居していて、野卑なデス声はやや耳障りだが、武骨な迫力はなかなかのもの。
アコースティックによる小曲などもありつつ、うっすらとしたシンセも加えて、ペイガンで辺境的な幻想性と
ヴァイキングメタル的な勇壮さも感じさせる。アグレッシブなフォークメタルとしても楽しめる好作品だ。
ドラマティック度・・7 ペイガン度・・8 武骨度・・8 総合・・7.5
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Azmodan 「Evil Obscurity」
ドイツのブラックメタル、アズモダンの1998年作
ほどよく叙情的なギターにうっすらとしたシンセアレンジ、ダミ声ヴォーカルを乗せて疾走する
シンフォニック・ブラックメタル。マイナー感のあるB級っぽさがカルトな味わいになっていて、
随所に妖艶な女性コーラスを加えた耽美な雰囲気にはゴシック的な味わいもあり、
優美なシンセアレンジとともに、暴虐過ぎない激しすぎない聴きやすさで楽しめる。
楽曲は6〜9分前後とわりと長めなので、即効性を求める方には物足りなさもあるだろうが、
いくぶん煮え切らない耽美なシンフォブラックをだらだらと聴ける方はどうぞ。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・7 耽美度・・8 総合・・7
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3/5
ゴシック、ドゥームに女性声メタル(89)


Katatonia 「Dead Air」
スウェーデンのゴシックメタル、カタトニアのライブ。2020年作
1993年にデビュー、メランコリック系のゴシックメタルを代表するバンド。本作は2020年に行われた
スタジオライブを2CD+DVDに収録。ほどよくヘヴィなツインギターにシンセアレンジを加え、
マイルドなヴォーカルを乗せたメランコリックなサウンドを展開。手数の多いドラムとともに、
プログレッシブな知的さも感じさせる、その演奏力の高さはさすがにベテランらしい説得力で、
ウェットな叙情を描くギターフレーズの泣きの美学も含め、バンドとしての強固な世界観を感じさせる。
2020年作「City Burials」からの3曲も含む、20曲、全88分の演奏で、音質もクリアな見事なライブです。
ライブ演奏・・8 メランコリック度・・8 翳りと叙情度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Lucifer 「Lucifer III」
スウェーデンのヴィンテージハードロック、ルシファーの2020年作
The Oathのヨハナ・サドニスを中心に結成、3作目となる本作も、オールドなギターにオルガンを重ね、
やわらかな女性ヴォーカルの歌声で、70年代ルーツの耳心地の良いヴィンテージロックを聴かせる。
ギターが前に出すぎないので、けだるげ女性声が際立っていて、ハード過ぎないロック感と、
倦怠の浮遊感をまとわせたサウンドを心地よく楽しめる。しっとりとしたバラード寄りのナンバーなど、
今作はより肩の力が抜けた自然体の雰囲気で、飾り過ぎないストレートなキャッチーさが良いですね。
ツインギターなので音がスカスカにならないところもGood。全39分というのもアナログレコード的ですな。
ドラマティック度・・7 ヴィンテージ度・・9 女性Vo度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Grand Magus 「Wolf God」
スウェーデンのヘヴィメタル、グランド・メイガスの2019年作
2001年にデビュー、本作が9作目となる。チェロとオーケストラルな優雅なイントロから、
ヘヴィなギターに元SPIRITUAL BEGGARSのJBの朗々としたヴォーカルを乗せて、
エピックな重厚さに包まれたオールドなメタルサウンドを聴かせる。ドゥームメタル要素も含んだ
遅すぎず速すぎずというどっしりとしたミドルテンポを主体に、勇壮な正統派メタルが楽しめるが、
これという新鮮味はないので、即効性のインパクトを求める方には向かないだろう。
楽曲は3〜5分前後で、トータル38分というのも、いかにもアナログ的な長さだ。
ドラマティック度・・7 重厚度・・8 正統派度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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TETHRA 「Empire of the Void」
イタリアのゴシック・ドゥームメタル、テスラの2020年作
2013年にデビューし、本作が3作目となる。ほどよい叙情を含んだ重厚なツインギターに
低音グロウルヴォイスを乗せて、ウェットでダークな味わいのドゥームメタルを聴かせる。
朗々としたノーマルヴォーカルもまじえつつ、ゴシック寄りの耽美な空気感も描いていて、
どっしりとしたスローテンポの楽曲はフューネル・ドゥーム的でもあるが、ときにリズムチェンジによる
メロデス的な激しい展開も覗かせる。随所にメロディックなギターフレーズも盛り込んみながら、
3部構成に分かれた16分では、ドラマティックなゴシック・ドゥームというべきサウンドが楽しめ、
女性ヴォーカルを加えたナンバーなどは、重厚な男女声ゴシックメタルという雰囲気もある。
ドラマティック度・・8 耽美度・・8 重厚度・・8 総合・・7.5
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In Aevum Agere 「Canto III」
イタリアのドゥームメタル、イン・アウヴム・アゲーレの2019年作
2012年にデビュー、本作は2作目となる。G&Vo、B、Drのトリオ編成で、ほどよくヘヴィなギターに
朗々としたヴォーカルを乗せた、オールドスタイルのエピックなドゥームメタルを聴かせる。
エッジの効いたギターリフに激しいツーバス連打を含むアグレッシブな感触も覗かせつつ、
随所に叙情的なフレージングとともにウェットな正統派メタル感も加えたところは、
Candlemass
にも通じる雰囲気で、古き良きヨーロピアンなエピックドゥームが楽しめる。
ドラマティック度・・8 エピックドゥーム度・・8 重厚度・・8 総合・・7.5
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Stygian Crown
アメリカのドゥームメタル、スティジャン・クラウンの2020年作
ツインギターのヘヴィなリフに朗々とした女性ヴォーカルを乗せ、ダークな妖しさに包まれた
初期のCANDLEMASSなどにも通じる、王道のエピック・ドゥームメタルを聴かせる。
どっしりとしていながら、スローテンポからミドルへのリズムチェンジなど、正統派メタル寄りの感触もあり、
女性をあまり感じさせない中世的な歌声もサウンドによくマッチしている。楽曲は6〜8分前後と比較的長めで、
濃密な味わいで重厚な世界観が楽しめる。オールドスタイルの正統派ドゥームメタルが好きな方はぜひ。
ドラマティック度・・8 エピックドゥーム度・・8 重厚度・・8 総合・・8
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Year of the Cobra 「Ash and Dust」
アメリカのドゥームメタル、イヤー・オブ・ザ・コブラの2019年作
女性Vo&B、男性Drという2人組で、歪ませたヘヴィなベースの上に女性ヴォーカルを乗せて
どっしりとしたスローテンポの中にも浮遊感を描くような、ミステリアスなドゥームメタルを聴かせる。
ギターがあまり入らないのでメタル感はさほどないのだが、アップテンポのノリのナンバーなどもあって、
ガレージロック的な雰囲気も覗かせる。アンニュイな女性声とうねりのあるベースがコントラストになっていて、
ヘヴィでありながらも、どこか物悲しい妖しさにも包まれている。楽曲自体はわりと淡々としているので、
この手の雰囲気モノが苦手な方には退屈かもしれない。個人的にはこの世界観はなかなか好みです。
ドラマティック度・・7 ドゥーム度・・8 妖しさ度・・8 総合・・7.5
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Savage Master 「Myth, Magic And Steel」
アメリカのメタルバンド、サヴェージ・マスターの2019年作
2014年にデビュー、本作は3作目。女性ヴォーカルに赤い覆面のメンバーが4人という、アホなアー写はともかく、
サウンドの方も、ハスキーな女性ヴォーカルと重すぎたなギターで聴かせる、いかにも80年代ルーツのB級メタル。
アナログ感ある録音も含めてほどよいスカスカ感がいい味を出していて、ドロ・ペッシュが在籍したWarlock
よりマイナー臭くしたような雰囲気もある。スピードメタル的な疾走ナンバーや、ドゥーミィなスローテンポでは
魔女系ロック的な妖しさも覗かせていて、ファンタジックなマイナーメタルが好きな方にも楽しめるだろう。
ドラムをはじめ演奏力はしっかりしていて、ステイシー・サヴェージ嬢の魔女めいた歌声もなかなか魅力的だ。
メロディック度・・7 古き良き度・・8 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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Street Lethal 「Welcome To The Row」
スペインのメタルバンド、ストリート・レーサルの2019年作
女性Voにツインギターを含む5人編成で、オールドなキターリフにハスキーな女性ヴォーカルを乗せた
80年代を思わせる古き良きメタルサウンド。ツーバスのドラムは適度に激しく、ツインギターもほどよく叙情的ながら、
キャッチーに抜けきらないところは、マイナー臭さを残したB級感覚に包まれていて微笑ましかったりするし、
紅一点、Hell Rose嬢の歌声も、さほど迫力のない可愛らしさで、パワフルにならないところもまた微笑ましい。
どっしりとしたスローテンポから、疾走感のあるスピードメタル風味まで、新鮮味はないがわりと楽しめる。
6曲入り、全30分という短さなので、今後はせめて40分くらいある作品を作っていただきたい。
メロディック度・・7 古き良き度・・8 女性Vo度・・7 総合・・7
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Chevalier 「Call To Arms」
フィンランドのメタルバンド、シェヴァリエの2017年作
本作は6曲入りのデビューEPで、オールドな味わいのギターにヒステリックな女性ヴォーカルを乗せ、
ほどよい疾走感とともに、80年代NWOBHM的なヴィンテージなメタルサウンドを聴かせる。
こもり気味の音質が、いかにもマイナーなアンダーグラウンド性をかもしだしていて、
前に出すぎない妖しい女性声も含めて、ミステリアスな魔女系ロック的にも楽しめる。
ヴィンテージなB級メタルという点では、Angel Witchがスピードメタル化したような味わいもある。
ドラマティック度・・7 疾走度・・7 古き良き度・・9 総合・・7.5
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Chevalier 「Destiny Calls」
フィンランドのメタルバンド、シェヴァリエの2018年作
デビューEPのスタイルをさらにアンダーグラウンドにしたような雰囲気で、軽めのツインギターに
女性ヴォーカルを乗せて、スカスカの音質で疾走する妖しいスピードメタルが炸裂する。
スラッシーな疾走感にリズムチェンジを含む緩急ある聴き心地で、わりと走り気味のドラムなど、
80〜90年代のマイナーメタルが好きならにんまりすること請け合いだ。こもり気味のサウンドは、
80年代バンドの未発音源と言われても信じてしまいそう。この確信犯的なチープさに慣れてくると、
しっかりツボを押さえたスピードメタルが楽しめるようになります。このままでいて欲しい。
ドラマティック度・・7 疾走度・・8 古き良き度・・9 総合・・8
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Venia 「In Our Weakness」
フィンランドのメタルバンド、ヴェニアの2005年作
女性Vo&ヴァイオリン奏者を含む5人編成で、本作は5曲入りのデビューEP。
メタリックなツインギターに美しいソプラノ女性ヴォーカルを乗せて、いくぶんペイガン寄りの
涼やかな辺境性に包まれたサウンドを聴かせる。アグレッシブな疾走感にデスヴォイスも加えた
ダークな雰囲気も覗かせつつ、なよやかな女性声が優雅な感触になっていて、マイナーな武骨さと
土着的な神秘性が同居したという作風だ。シンセが入らないので、シンフォニックな味わいはなく、
雰囲気はゴシックとペイガンの中間という感じなのだが、ギターはわりと正統メタル寄りという。
母国語で歌われるナンバーは、ペイガン的な雰囲気でなかなか良い感じです。
ドラマティック度・・7 辺境度・・8 女性Vo度・・7 総合・・7
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Poison Sun 「Virtual Sin」
ドイツのメタルバンド、ポイズン・サンの2010年作
正統派のギターにハスキーな女性ヴォーカルを乗せた、どっしりとしたHR/HMサウンド。
ギターを務めるのは、ACCEPTVICTROYにも参加したハーマン・フランクで、
ヴォーカルのマルティナ・フランクはおそらく奥方だと思われる。メタリックなリフに
巧みなギターソロも含めて、演奏はさすがという安定感で、パワフルな女性声とともに、
DOROあたりにも通じる姉御系メタルが楽しめる。ジャーマンメタルらしい疾走曲から、
キャッチーなミドルテンポ、The Pointer Sistersのカヴァーなども、堂々たる仕上がりだ。
メロディック度・・7 パワフル度・・8 女性Vo度・・7 総合・・7.5
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Momentum 「The Freak Is Alive」
アイスランドのアヴァン・ドゥームメタル、モーメンタムの2015年作
2010年にデビューし2作目となる。メタリックなギターリフに咆哮するデスヴォイスをを乗せ、
変則リズムを含む緩急ある展開力で聴かせる、ミステリアスなプログレッシブ・ドゥームメタル。
随所にピアノやシンセアレンジを加え、ノーマル声を乗せたゆったりとした叙情パートから、
ドゥーミィでダークな部分も垣間見せ、知的な構築センスという点では、OPETHあたりに通じるところもある。
全体的にはノーマル声が主体なのでデスメタル色はさほどなく、淡々とした不穏な空気感に包まれた作風で、
シタールなどを使った独特の世界観が味わえる。派手な展開はないが、じつに怪しげな雰囲気の異色作です。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・7 不穏で怪しげ度・・8 総合・・7.5
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Dark Castle 「Spirited Migration」
アメリカのドゥームメタル、ダーク・キャッスルの2009年作
ヘヴィなギターリフにデス声気味のヴォーカルを乗せて、重厚に聴かせる本格派のドゥームメタル。
ダークな世界観はドローンやスラッジ・ドゥーム的でもあるが、随所にメロディ感のあるギターフレーズや
アコースティックギターによる小曲などもあったりと、ヘヴィなサウンドの中にもにアクセントを付けている。
二人組というユニットながら、グルーブと手数を兼ねそろえたドラムの力量が、サウンドの説得力を高めていて、
エッジの効いたリフからサバスルーツのオールドスタイルの感触も覗かせるギターのセンスも見事。
妖しいイメージのジャケもよい感じで、迫力あるドゥームに禍々しい暗黒性も加わった強力作である。
ドラマティック度・・8 重厚度・・8 暗黒度・・8 総合・・8
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2/19
女性声ゴシック&シンフォニックメタル♪(74)


Delain「Apocalypse & Chill」
オランダのシンフォニックメタル、ディレインの2020年作
2006年にデビュー、いまやWITHIN TEMPTATIONEPICAと並ぶ、オランダの人気バンド。
6作目となる本作も、透明感のある女性ヴォーカルを乗せて、ぼどよくヘヴィで美麗なサウンドを聴かせる。
楽曲は3〜4分前後と、キャッチーなシンプルさに磨きがかかり、モダンなヘヴィネスを含ませつつ、
どこかポップな感触とともに、EVANESCENCEにも接近したような、堂々たるメジャー感も漂わせる。
正直、もはやゴシックでもなければ、シンファニックメタルとしての独自の個性も希薄なのであるが、
シャルロット嬢の魅力的な歌声で耳心地よく聴けてしまう。良くも悪くもシンプルな質の高さが心憎い。
シンフォニック度・・7 モダンでキャッチー度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Leaves' Eyes 「Last Viking」
ドイツのシンフォニックメタル、リーヴズ・アイズの2020年作
2004年にデビューして、8作目。フィンランド人女性シンガー、エリナ・シーララが加入しての2作目となる。
2005年作「Vinland Saga」、2015年作「King of Kings」から続く、ヴァイキングをテーマにした物語の完結編で
メロディックなギターに美麗なシンセ、美しい女性ヴォーカルに低音デスヴォイスを重ねた、シンフォニックかつ
勇壮なペイガン風味のゴシックメタルを聴かせる。エリナ嬢の伸びやかなソプラノも魅力的で、曲によっては
Within TemptationNightwisなどにも通じる優美な味わいが楽しめる。随所にほどよい疾走感もありつつ、
全体的にヘヴィネスは控えめでメロディックで壮麗な聴き心地。10分を超える大曲を含めて充実の力作です。
シンフォニック度・・8 壮麗度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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LACUNA COIL 「BLACK ANIMA」
イタリアのゴシックメタル、ラクーナ・コイルの2019年作
1998年にデビュー、本作は9作目となる。エレクトロなシンセにピアノ、キュートな女性ヴォーカルのイントロ曲から
すでに本作の耽美な世界観に引き込まれる。ヘヴィなギターに迫力あるデスヴォイス、伸びやかな女性声を乗せ、
ゴシック的なダークな倦怠と優雅さを、モダンに解釈したというサウンドは、メタリックな説得力とともにまさに円熟の域。
クリスティーナ嬢の表現力ある歌声にも堂々たる輝きが感じられ、楽曲は3〜4分前後でわりとシンプルながらも、
どっしりとした重厚さに包まれていて非常に聴きごたえがある。デスメタルばりのアグレッシブなヘヴィネスから、
キャッチーに歌い上げる女性ヴォーカルへという、爽快なメリハリが効いている。男女声メタルの一つの到達点だろう。
ドラマティック度・・8 重厚度・・9 女性Vo度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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LEAH 「Ancient Winter」
カナダのシンフォニックメタル、リアの2019年作
女性シンガー、リア・マクヘンリーによるプロジェクトで、2012年にデビュー、本作は4作目となる。
うっすらとしたシンセアレンジに、フィドルやチェロなどの艶やかなストリングスを重ね、美しいヴォーカルを乗せた
タイトルのように冬をイメージしたようなサウンドを聴かせる。リア嬢の歌声は、優しくはかなげで、その表現力も素晴らしく、
トロイ・ドノクリー(Nightwish)によるイーリアンパイプやホイッスル、アナ・マーフィ(Cellar Darling)のハーディ・ガーディなど
ケルティックな旋律を含んだメロディと、バンドサウンドを融合させつつ、あくまでしっとりとした幻想性に包まれる。
全34分とやや短めで、メタルというよりもケルティックなシンフォニックロックとして楽しめるような優美な逸品です。
シンフォニック度・・8 優美度・・9 女性Vo度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Ardours 「Last Place on Earth」
イタリアのゴシックメタル、アーダーズの2019年作
TRISTANIAの女性ヴォーカル、マリアンジェラ・デムルタスとマルチ・プレイヤー、クリス・ローレントのユニットで、
TRISTANIAのタラルド・リー・ジュニアがドラムで参加、ベースに元AMORPHISのニコ・エテラヴオリがゲスト参加している。
美麗なシンセにヘヴィ過ぎない叙情的なギターを重ね、美しい女性ヴォーカルで聴かせる、シンフォニックなゴシックメタル。
ゴシック的な耽美さは控えめで、80年代ニューウェイブ的でもあるような、わりとキャッチーな聴きやすさがあって、
伸びやかで魅力的な女性声とともに、曲によってはWITHIN TEMPTATIONなどのファンにも楽しめるだろう。
楽曲は4〜5分前後と比較的シンプルであるが、実力のある女性ヴォーカルを活かしたスタイルなのでこれで正解。
シンフォニック度・・8 ゴシック度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8
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VETRAR DRAUGURINN 「HINTERLANDS」
オランダのゴシックメタル、ヴェトラル・ドラウグリンの2019年作
Stream Of Passionのギターや、Autumnの女性シンガーが参加するバンドで、
ほどよくヘヴィなギターに浮遊感のある女性ヴォーカルを乗せ、倦怠の翳りに包まれたサウンドを描く。
シンフォニックな味付けはあまりないので壮麗なサウンドではないが、Marjan嬢の表現力ある歌声は、
かつてのアネクにも似ていて、The Gatheringにも通じる雰囲気をところどころにかもしだしている。
しっとりとしたバラードナンバーなども、魅力的なヴォーカルでじっくりと楽しめ、これという新鮮味はないが
メランコリックな空気感が耳心地よい。倦怠系のゴシックメタルを受け継いだなかなかの好作品です。
ドラマティック度・・7 ゴシック度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8
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SIRENIA 「ARCANE ASTRAL AEONS」
ノルウェーのゴシックメタル、シレニアの2018年作
2002年にデビューし、すでに9作目。名実ともに北欧を代表する女性声ゴシックメタルバンドである。
オーケストラルなシンセアレンジにヘヴィなギター、美しいソプラノ女性ヴォーカルを乗せた、
壮麗なゴシックメタルは本作も健在。随所にデスヴォイスを絡めつつ、ときに激しい疾走パートもあったりと
緩急ある楽曲展開はこれまで以上にドラマティックな聴き心地。前作から加入のエマニュエル嬢は、
PENUMBRAなどにも参加していたフランス出身のシンガーで、その美しくも妖艶な歌声は魅力的だ。
中盤はわりと中庸のナンバーもあるのだが、全体的にはシンフォニックゴシックメタルの高品質作だ。
シンフォニック度・・8 ゴシック度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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LOVELORN DOLLS 「DARKER AGES」
ベルギーのゴシックメタル、ラヴローン・ドールズの2018年作
2013年にデビュー、本作は3作目となる。男女2人組のユニットで、美しいシンセアレンジにほどよくハードなギター、
やわらかな女性ヴォーカルを乗せて、倦怠の浮遊感に包まれた耽美なゴシックロックを聴かせる。
楽曲は3〜4分前後で、随処にエレクトロな感触も含みつつ、メタル的な重さがさほどないので、
コケティッシュな女性声の魅力もあって、わりとキャッチーな耳心地とともにシンプルに楽しめる。
Disc2には、Nine Inch Nailsのカヴァーや既存曲のリミックスなど12曲を収録。こちらはよりエレクトロな仕上がり。
耽美度・・8 ゴシック度・・7 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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SUBTERRANEAN MASQUERADE 「Vagabond」
イスラエルのプログレ・ゴシックメタル、サブテラニアン・マスカレードの2017年作
2005年にデビューし、本作は3作目。ツインVo、ツインG、シンセを含む8人編成で、
ほどよくヘヴィなギターにシンセを重ね、サックスやフルートも鳴り響く優雅な味わいに
マイルドなヴォーカルで聴かせる、Orphaned Landにも通じるエスニックな味わいのサウンド。
随所にゲストによるヴァイオリンやアコーディオなども加えて、オルガン鳴り響くプログレ感触と
アラビックな旋律も含んだ中近東色が混ざった、多国籍風のプログレハードロックとしても楽しめる。
デス声を加えたナンバーもあるが、バックのメタル感はさほどないので、優雅なエスノロックとして鑑賞可能。
ドラマティック度・・8 エスニック度・・8 優雅度・・8 総合・・8
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Lord Agheros 「Nothing at All」
イタリアのゴシックメタル、ロード・アグエロスの2016年作
ゲラシモス・エヴァンゲロウ氏の個人ユニットで、2007年にデビュー、本作は5作目となる。
クラシカルなピアノの旋律に、美しい女性ヴォーカルを乗せ、オーケストラルなアレンジを重ねた
シンフォニックなナンバーから、アコースティックギターをエレキに重ねた牧歌的な叙情など、
ときにポストブラック的でもある幻想的な世界観を描いてゆく。曲によって入るドラムは打ち込みっぽいが、
ほどよく激しいパートもあったりと、ピアノやチェロによるアンビエントなナンバーとのコントラストになっている。
男女声によるゴシックロック的なナンバーなどもよい感じだが、ゴシックなのかアンビエントかやや中途半端な印象。
クラシカル度・・7 ゴシック度・・7 優美度・・7 総合・・7.5
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AURA 「Вдохновение」
ロシアのシンフォニックメタル、オーラの2013年
美麗なシンセになギターを重ね、ダミ声男性ヴォーカルとソプラノ女性ヴォーカルで聴かせる、
優雅なシンフォニックメタル。メロスピ的でもある疾走感に美しい女性声を乗せるところは
台湾のSeraphimあたりに通じる感触もあり、クラシカルなピアノやフルートの旋律など優美な味わいと、
野卑なデス声を含んだアグレッシブな激しさが、緩急ある楽曲の中でコントラストになっている。
EMERALD NIGHTにも参加する女性シンガーのなよやかなソプラノもなかなか魅力的で、
後半のNightwishの某名曲を思わせるナンバーなども優美な仕上がりだ。今後にさらに期待のバンドです。
シンフォニック度・・8 激しくも優雅度・・8 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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Atrox 「Monocle」
ノルウェーのアヴァン・ゴシックメタル、アトロックスの2017年作
1997年にデビュー、本作は9年ぶりとなる6作目。かつては女性ヴォーカルのアヴァン・ゴシックメタルであったが、
前作から男性Voがメインになり、サウンドもインダストリアルな感触が強まっていたが、本作もその延長上の作風。
ヘヴィなギターに武骨な男性ヴォーカルを乗せ、モダンな硬質さに包まれたインダストリアルメタルを聴かせる。
モノクロームのような無機質な空気を描きつつ、わりと唐突な展開など、ほどよく混沌とした部分は残していて、
ときにシンセを加えた音の厚みと、サックスなどのアレンジが随所に楽曲にほどよく彩りを加えている。
ドラマティック度・・7 インダストリアル度・・8 アヴァンギャル度・・7 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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Funeral 「To Mourn Is a Virtue」
ノルウェーのゴシック・ドゥームメタル、フューネラルの2011年作
1995年にデビュー、初期は女性声入りだったが、3作目以降は男性声の本格派フューネラルドゥームになり、
本作は5作目。重厚なギターに朗々としたヴォーカルを乗せた、スローテンポのドゥームメタルサウンド。
ツインギターによる叙情的なフレージングに、随所にシンセによるアレンジも加わった耽美な空気感で、
6〜9分前後の楽曲をゆったりと構築してゆく。楽曲が長めのわりにはこれという展開はないのだが、
フューネラルな倦怠に包まれた耽美な世界観に、どっぷりと浸れる方にはたまらないだろう。
ラスト曲での美しいソプラノ女性ヴォーカルにもウットリ。これぞゴシックドゥームである。
ドラマティック度・・8 ゴシック度・・8 耽美度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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GOTHICA 「The Cliff of Suicide」
イタリアのゴシックアンビエント、ゴシカの2003年作
シンセによるオーケストレーションに美しい女性ヴォーカルを乗せた、幻想的なゴシックアンビエント。
パーカッションのリズムなども入るが、基本はシンセと女性声をメインに、ときに男性声も加わって
ゆったりと耽美な世界観を描いてゆく。随所にストリングスやフルートなどによるクラシカルなアレンジも
優雅な感触を加えていて、ダークな暗黒性というよりは、AUTUMN TEARSにも通じる倦怠の美に包まれる。
女性ヴォーカルの表現力が増したことで、前作に比べて世界観の強度がぐっと上がっていて、
薄暗い幻想の空気に埋没するように楽しむことができる。ロック感触は皆無なので、アンビエント好きの方へ。
ゴシック度・・8 耽美度・・9 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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2/5
女性声シンフォニックメタル!(60)


Scardust 「Strangers」
イスラエルのシンフォニックメタル、スカーダストの2020年作
2017年にデビュー、前作も女性声シンフォニックメタルとして近年まれにみる傑作であったが、2作目となる本作も
ストリングスにメタリックなギターとシンセを重ねたイントロ曲から、壮麗にしてクラシカルなサウンドが広がってゆく。
起伏に富んだ知的な展開力には、ProgMetal的なセンスも感じさせ、テクニカルでいてじつに優雅な聴き心地。
そして、美しい女性ヴォーカルを乗せた、キャッチーな味わいがサウンドを華やかに彩っていて、
ソプラノからデスヴォイスもこなす、Noa嬢の歌声はやはり魅力的だ。ときにジャズタッチのパートなど、
前作に比べると軽やかな楽曲が増えていて、ベースやギターの流麗なプレイも随所に聴きどころになっている。
全体的には優雅で軽妙な味わいなので、壮大な大曲なども聴いてみたい。早くも次作を楽しみに待ちたい。
ドラマティック度・・8 優雅度・・9 女性Vo度・・9 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
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Seven Spires「Emerald Seas」
アメリカのシンフォニックメタル、セヴン・スパイアーズの2020年作
AVANTASIAやサシャ・ピートのMASTERS of CEREMONYにも参加する女性シンガー、エイドリアン・カワンをフロントに
バークリー音楽院出身のギタリストなどを含むバンドで、ほどよくヘヴィなギターに伸びやかな女性ヴォーカルを乗せ、
オーケストラルなアレンジも加えた、モダンなシンフォニックメタルを基本に、彼女自身のスクリームヴォイスや
随所に流麗なギターフレーズなどを盛り込んだ、ドラマ性を感じさせる緩急ある展開力で聴かせる。
適度にアグレッシブな若手らしいメタルコア風のモダンさも覗かせつつ、メロディのフックはキャッチーで、
テクニックのあるギターとエイドリアン嬢の表現豊かな歌声がサウンドの説得力をぐっと高めている。
ヴォーカルとギターをはじめとしたポテンシャルの高さも含めて、今後に大きな期待を寄せたいバンドです。
ドラマティック度・・8 壮麗度・・8 女性Vo度・・9 総合・・8
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AD Infinitum 「Chapter I: Monarchy」
スイスのシンフォニックメタル、アド・インフィニトゥムの2020年作
メタリックなギターにオーケストラルなアレンジを重ね、伸びやかな女性ヴォーカルで聴かせる、
壮麗でスタイリッシュなシンフォニックメタル。ゴシックメタル的な耽美な雰囲気にほどよい疾走感もあり、
優美でキャッチーなメロディアス性とともに、DELAINをアグレッシブにしたような聴き心地で楽しめる。
ときにデスヴォイスを加えてのモダンなヘヴィネスも覗かせつつ、メリッサ嬢の表現力ある歌声は
近年のWITHIN TEMPTATIONあたりに通じるような堂々としたメジャー感もかもしだしている。
楽曲は3〜4分前後とわりとシンプルで、濃密な展開がもう少し欲しい気もするが、今後に期待の実力派だ。
シンフォニック度・・7 ゴシック度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8
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Coronatus 「The Eminence of Nature」
ドイツのシンフォニックメタル、コロナタスの2019年作
2007年にデビュー、本作はすでに9作目。艶やかなヴァイオリンが鳴り響き、美しいソプラノ女性ヴォーカルに、
もう1人の女性ヴォーカルも加わって、ときにフォーキーな感触も含んだ優美で壮麗なサウンドを聴かせる。
ときおり男性も加わりつつ、女性2人も合わせた3人のヴォーカルを乗せて、メディーヴァルな優雅さに包まれた
NIGHTWISHにも通じるオペラティックな味わいで、ファンタジックな世界観を描いてゆく。楽曲は3〜5分前後が主体で、
トータル全39分ほどなので、ドラマティックな濃密さの点では物足りなさはあるが、優美な女性声シンフォメタルの好作品だ。
シンフォニック度・・8 壮麗度・・8 女性ヴォーカル度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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Edge of Paradise 「Universe」
アメリカのシンフォニックメタル、エッジ・オヴ・パラダイスの2019年作
2011年にデビューし、本作は3作目となる。ヘヴィなギターリフにエモーショナルな女性ヴォーカルを乗せ、
ほどよくキャッチーでストレートなノリの女性声メタルを聴かせる。シンフォニックなアレンジはさほどなく、
曲によってはオルタナやインダストリアル風の、モダンな感触を含んでいるところが特徴だろう。
楽曲は3〜4分前後とわりとシンプルで、ギターリフも比較的普通のメタルという感じなので、
メロディのフックや盛り上がりという点では、いくぶん物足りない。紅一点、マルガリータ嬢の歌声は、
コケティッシュなウィスパーとストレートなハイトーンを使い分ける表現力もあって、なかなか魅力的。
あとは、フェミニンなヴォーカルを活かすための、楽曲そのものの魅力がもっと欲しい。
シンフォニック度・・6 優美度・・7 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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BROCELIAN 「GUARDIANS OF BROCELIANDE」
ドイツのシンフォニックメタル、ブロセリアンの2019年作
2014年にデビューし、2作目となる。女性ヴォーカル、女性ヴァイオリン奏者を含む編成で、
ほどよくヘヴィなギターにシンフォニックなアレンジ、伸びやかな女性ヴォーカルで聴かせる優雅なサウンド。
ゆったりとした優美なナンバーなどは、魅力的な女性声もあって、WITHIN TEMPTATIONにも通じる感触であるが、
一方では疾走するメロスピ風のナンバーもあったりと、曲によってややイメージが異なる。全体的にはキャッチーな聴き心地で
楽曲は3〜4分前後とわりとシンプル、これという展開や大仰な盛り上がりがさほどないので濃密さの点では少し物足りなさもある。
オーケストラルなアレンジもやや中途半端なので、今後は魅力的なメロディのフックとともに楽曲を磨いていってもらいたい。
シンフォニック度・・7 優美度・・8 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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ANGELWINGS「The Edge Of Innocence」
スペインの南端にある、ジブラルタルのシンフォニックメタル、エンジェルウイングスの2017年作
美麗なシンセアレンジにギターを重ね、コケティッシュな女性ヴォーカルの歌声で聴かせる、
優雅なシンフォニックメタル。ゴシック寄りの倦怠の空気も覗かせつつ、ヘヴィさは控えめなので
全体的にはキャッチーな耳心地。楽曲自体に派手な盛り上がりはさほどないものの、
Davinia嬢のなよやかな歌声はなかなか魅力的で、サウンドをしっとりと艶めかせている。
8分を超える大曲では、EDENBRIDGEあたりに通じる優美な雰囲気に包まれるので、
このクラスのナンバーがもう何曲かあれば、アルバムとしての完成度もさらに上がると思う。
シンフォニック度・・7 優雅度・・8 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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HORIZONS EDGE 「LET THE SHOW GO ON」
オーストラリアのメロディックメタル、ホライズンズ・エッジの2018年作
ツインギターに伸びやかな女性ヴォーカル乗せて疾走する、きらびやかなメロディックメタル。
紅一点、KAT嬢の歌声は、フェミニンな女性らしさよりは、中性的でパワフルなハイトーンで、
正統派のメロパワサウンドによくマッチしている。専任のシンセ奏者はいないものの、
随所にゴージャスなシンセアレンジが加わって、シンフォニックメタル的にも楽しめる。
ときに唐突なリズムチェンジがマイナーメタルの感触を匂わせるが、叙情的なスローパートでは
女性らしいやわらかな歌声も覗かせるなど、メリハリある展開力もなかなかのもの。
日本では「スクールウォーズ」でおなじみ、ボニー・タイラーのカヴァーもけっこうハマっている。
メロディック度・・8 疾走度・・7 女性Vo度・・7 総合・・7.5
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Exit Eden 「Rhapsodies in Black」
多国籍の女性シンフォニックメタル、イグジット・エデンの2017年作
Trilliumのアマンダ・ソマーヴィル、Visions Of Atlantisのクレメンタイン・デラウネを含む、
女性4人によるユニットで、Depeche mode、MADONNA、RIHANNA 、BACKSTREET BOYS、
Bryan Adams、Bonnie Tyler、Lady Gagaなどのヒット曲を、4人の女性ヴォーカルの歌声とともに、
シンフォニックメタル風にカヴァーしている。ゲストにEPICAのシモーネ・シモンズも参加して、
2曲でその美声を披露してくれる。原曲を知らなくても壮麗なアレンジと実力ある女性ヴォーカルの歌唱で
それなりに楽しめてしまう。メタルではなく、あえてメジャーアーティストを選曲したのも意図的なのだろう。
シンフォニック度・・8 メタル度・・7 女性Vo・・9 総合・・8
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The Longing 「Bleed」
アメリカのシンフォニックメタル、ロンギングの2015年作
メロディックなツインギターにフェミニンな女性ヴォーカルを乗せたサウンドで、シンセがさほど入らないので
シンフォニックメタルというよりは、ときにメロハー的なキャッチーな味わいやゴシック風の倦怠の香りも感じさせる。
楽曲は3〜4分前後とわりとシンプルで、ドラマティックな濃密さの点では物足りないのだが、
紅一点、Laura嬢の奏でる優美なピアノや、彼女のキュートな女性声の魅力もあって耳心地よく楽しめる。
全体的にメタル的なヘヴィさは控えめなので、女性声ハードシンフォが好きな方にもオススメだ。
ヴォーカルの実力は十分なので、あとは楽曲そのものやメロディのフックを伸ばしていってもらいたい。
シンフォニック度・・7 キャッチー度・・8 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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The Longing 「Tales of Torment」
アメリカのシンフォニックメタル、ロンギングの2017年作
2作目となる本作も、キュートな女性ヴォーカルの歌声にツインギターと優美なピアノを重ねた、
ほどよくキャッチーで優雅なサウンドを聴かせる。随所に流麗なギターフレーズも覗かせながら、
前作に比べるとメタリックな重厚さが加わっていて、Laura嬢のフェミニンな歌声とのコントラストになっている。
楽曲は3〜4分前後で前作同様シンプルであるが、壮大さよりもメロディックな歌もの感が前に出ていて、
わりとストレートに楽しめるのが良いのかもしれない。派手なシンセによる味付けはさほどないが、
魅力的な女性声を活かしたキャッチーなサウンドには好感が持てる。今後にさらに期待です。
シンフォニック度・・7 キャッチー度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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Choirs of Veritas 「I Am The Way, The Truth And The Life」
イタリアのシンフォニックメタル、クワイヤ・オブ・ヴェリタスの2017年作
Holy Shireの女性Vo、フルート奏者、Ravenwordのベース、シンセ奏者などによるバンドで、
美麗なシンセアレンジに、伸びやかな男性ヴォーカルとソプラノ女性ヴォーカルを乗せて、
Sonata Arcticaなど、北欧系バンドのようなキャッチーできらびやかなサウンドを聴かせる。
ときにやわらかなフルートの音色も加わって、優美で幻想的な雰囲気に包まれるが、
楽曲そのものには新鮮味はあまりなく、女性声の活躍するパートも少ないのが残念。
シンフォニック度・・8 メロディック度・・7 楽曲・・7 総合・・7
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SECRET RULE「MACHINATION」
イタリアのシンフォニックメタル、シークレット・ルールの2016年作
2015年にデビュー、本作は2作目となる。SONATA ARCTICAのヘンリク・クリンゲンベリがシンセで参加、
ドラムには元DELAINのサンダー・ゾアーが参加している。美麗なシンセアレンジに重すぎないギター、
美しい女性ヴォーカルを乗せた、キャッチーなシンフォニックメタルを聴かせる。紅一点、ANGELA嬢の歌声は
ジャケのイメージ通りのフェミニンな魅力があって良いのだが、インスト部分のフックや展開がいまひとつ物足りず、
普通のメロハー風のナンバーから、ほどよく疾走感のあるメロパワ風味まで、わりとどっち付かずの聴き心地という。
WITHIN TEMPTATIONのステファン・ヘルブラド、DELAINのティモ・ソマーズ、SERENITYのファビオ・ド・アモーレがゲスト参加。
シンフォニック度・・7 メロディック度・・7 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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Emerald Mind「Civilization」
ロシアのシンフォニックメタル、エメラルド・マインドの2015年作
適度にメタリックなギターにシンセを重ね、美しいソプラノ女性ヴォーカルを乗せたキャッチーで優美なサウンド。
ときにメロスピ的な疾走パートも含みつつ、あくまで優雅な聴き心地で、ヘヴィになり過ぎないところがよろしい。
メロディックなギターフレーズも随所にアクセントになっていて、なよやかな女性ヴォーカルの魅力とともに、
Nightwishをややライトにしたような感じでも楽しめる。重厚なドラマ性と言うのはあまりないのだが、
オペラティックな女性声でキャッチーなシンフォニックメタルが味わえる、これはなかなかの逸品です。
シンフォニック度・・7 キャッチー度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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Evils Desire「Initium」
オランダのシンフォニックメタル、イーヴルズ・デザイアの2010年作
エピックな雰囲気のイントロから、メタリックなギターにオーケストラルなアレンジ重ね、
オペラティックな女性ヴォーカルを乗せた、Nightwishタイプのシンフォニックメタルを聴かせる。
紅一点、Daphne嬢の歌声は、伸びやかなメゾソプラノで歌唱の実力はしっかりとあるので、
随所に加わる男性声はなくてもよいような気もするが、いくぶんゴシック的な耽美な雰囲気もあって、
サウンドの方向性は悪くない。あとは楽曲ごとの魅力がもっと上がればよいバンドになると思う。
シンフォニック度・・7 壮麗度・・8 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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1/22
デス、スラッシュ、ブラック、ペイガン!(45)


CRY「壱」
日本のデスメタル、クライの2021年作
HIDE BOUNDのメンバーを中心としたバンドで、2016年のデビューEPに続くフルアルバム。
絡みつくようなギターリフと絶叫するヴォーカルを乗せて激しく疾走する、ブルータルなデスメタルであるが、
悲哀や苦悶、怨念を感じさせる日本語による歌詞や、ほのかにメロデス風味も残した流麗なギターフレーズも覗かせて、
ウェットでダークな世界観を描き出す。激烈なドラムとうねるようなベースを基盤にした、アナログ感ある生々しいアンサンブルは、
オールドスタイルのスラッシュやデスメタルを通過した迫力ある聴き心地で、楽曲は3分前後ながらも、突進するだけでない
テクニカルなリズムチェンジなどの確かな演奏力も含めて、非常に濃密かつ強度のあるサウンドを構築している。
Disc2は、2015年に急逝した三重のドラマー、Hee chungの率いたバンド、naqroの楽曲とCRYによるカヴァーを収録。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・8 悲哀度・・9 総合・・8
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Destruction 「Under Attack」
ドイツのスラッシュメタル、デストラクションの2016年作
1984年デビュー、ジャーマンスラッシュメタルを代表するバンドの、4年ぶりとなる14作目。
今作は叙情的なイントロで幕を開け、切れ味のいいクールなギターリフとともに疾走開始、
ドスの効いたダミ声ヴォーカルを乗せて、オールドスタイルのスラッシュメタルを聴かせる。
軽すぎず重すぎずというリフに、随処にほどよくメロディックなギターフレーズも覗かせつつ、
適度にミドルテンポも織り交ぜながら、トリオとしてのシンプルなノリと疾走感が楽しめる。
爽快なスラッシュサウンドが楽しめるという点では最高だと言うしかない。ベテラン充実の強力作。
ドラマティック度・・7 疾走度・・8 デストラ度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Destruction 「Born To Perish」
ドイツのスラッシュメタル、デストラクションの2019年作
本作はツインギターの4人編成となり、ドラムも交代。エッジの効いたギターリフにダミ声ヴォーカルを乗せて
疾走するスタイルはそのままに、ダークなジャケのイメージも含めて、より重厚で攻撃的なサウンドを聴かせる。
ストレートな迫力が強まったことで、前作にあったメロディックなフレーズは、今作ではさらにビターな味わいで、
激しさの中で甘すぎない程度に光っている。反面、硬質なダークさが強まった分、オールド感が薄くなったのは痛しかゆしか。
スローテンポを含む緩急あるドラマティックな雰囲気は、Kreatorなどにも接近した印象もある。新生デストラの力作だ。
ドラマティック度・・8 疾走度・・8 デストラ度・・8 総合・・8
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AarA 「En Ergo Einai」
スイスのブラックメタル、アアラの2020年作
2019年にデビュー、本作は2作目となる。トレモロを含む叙情的なギターを乗せて激しくブラスト疾走、
絶叫系ダミ声ヴォーカルを加えつつ、KRALLICEにも通じる優美で叙情的なサウンドを聴かせる。
激しい疾走感の中でも、とにかくギターのメロウな叙情リフと泣きのフレーズが際立っていて、
暴虐性よりは優雅な味わいに包まれている。ブラストしつつ金物系の手数の多いドラムも見事で、
全33分という短さだが、アトモスフェリックな泣きメロ系疾走ポスト・ブラックメタルが好きならチェックです。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・7 叙情度・・9 総合・・8
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The Great Old Ones 「Cosmicism」
フランスのブラックメタル、グレート・オールド・ワンズの2019年作
2012年にデビューし、4作目。バンド名「古きものたち」のようにクトゥルー神話をコンセプトにしていて、
叙情的なイントロから、トレモロを含む不穏なギターリフにダミ声ヴォーカルを乗せて激しくブラスト疾走する
ミステリアスなスケール感に包まれたブラックメタルを展開。暴虐に疾走しつつも、ツインギターのフレーズと
うっすらとしたシンセアレンジがほどよい叙情をかもしだし、涼やかでスペイシーな幻想性を感じさせる。
10分前後の大曲も荘厳な迫力と緩急ある展開力で、激しいだけでないドラマティックな世界観を描いていて、
不穏なラスト曲のタイトルは「ナイアーラトテップ」で、クトゥルーファンにはたまらない。暗黒幻想ブラックの強力作。。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・8 荘厳度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Borknagar 「True North」
ノルウェーのフォーク・ブラックメタル、ボルクネイガーの2019年作
1996年にデビュー、本作ですでに11作目となる。前作を最後にVintersorgは脱退したようだが、
マイルドなノーマル声とARCTURUSでも活躍するVortexのダミ声ヴォーカルを乗せ、土着的なギターフレーズに
シンセを重ねて激しく疾走するスタイルはそのまま。北欧らしい涼やかな叙情性を含んだ緩急ある構築力で、
今作ではスローやミドルテンポのキャッチーなナンバーやプログレッシブな展開なども随所に覗かせる。
9分の大曲も、ゆったりとした叙情と激しい疾走感が同居した聴き心地で、メロディックなギタープレイも光る。
これまで以上の何かがあるというわけではないが、ベテランらしい自然体と説得力が感じられる力作だ。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・7 叙情度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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GRIMA 「Will of the Primordial」
ロシアのペイガン・ブラックメタル、グリマの2020年作
2015年にデビューし、3作目となる。やわらかなアコーディオンの音色から叙情的なギターとシンセが加わり、
ダミ声ヴォーカルを乗せてブラスト疾走する、ペイガン&フォークブラック的な土着性を感じさせるサウンド。
クリーントーンのギターにアコーディオンを乗せた叙情性と、トレモロのギターで疾走する激しさが同居して
緩急ある構築力とともに、幻想的なペイガン・ブラックメタルが楽しめる。迫力ある低音グロウルのヴォーカルなど、
美しいシンセアレンジやメロディックなギターとのコントラストで、ドラマティックで重厚な音の説得力も素晴らしい。
物悲しいトレモロギターやアコーディオン、激しくも涼やかで優美なサウンドに浸れる傑作です。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・7 叙情度・・9 総合・・8.5
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GRIMNER 「Vanadrottning」
スウェーデンのフォークメタル、グリムナーの2018年作
2014年にデビューして3作目となる。フルート&マンドリン&バグパイプ奏者を含む編成で
ツインギターにシンセを重ね、ダミ声ヴォーカルを乗せて激しく疾走しつつ、ノーマル声もまじえて
やわらかなフルートの音色がフォーキーな優雅さをかもしだす。アグレッシブな疾走感はありつつ、
ペイガンなダークさよりは、フルートやバグパイプなどのキャッチーな土着性が前に出ていて、
KORPIKLAANIあたりにも通じるわりと陽性の聴き心地。一方ではヴァイキングメタル的な勇壮さもあって、
エピックでメディーヴァルな世界観に包まれた、ほどよく激しいフォークメタルが楽しめる好作品。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・7 フォーキー度・・8 総合・・8
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Vinsta 「Drei Deita」
オーストリアのペイガン・ブラックメタル、ヴィンスタの2019年作
2014年にデビューして、3作目。土着性を含んだギターフレーズに朗々としたヴォーカルとデスヴォイスを乗せ
ときに女性コーラスやヴァイオリンも加えた優雅さと、ブラックメタル的な激しさが同居したサウンドを描く。
優雅な土着性のマイルドなフォークブラックという点では、Vintersorgなどにも通じる聴き心地であるが、
こちらはもう少し辺境寄りの武骨な雰囲気もある。6〜9分という長めの楽曲を主体に、男女声を乗せた
ゆったりとした叙情ナンバーなどもアクセントになっていて、涼やかで幻想的な世界観を描いている。
これだというインパクトはさほどないが、ゆったりとしたヨーロピアンな土着性を感じれる好作品だ。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・7 叙情度・・8 総合・・7.5
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KEYS OF ORTHANC「A Battle in the Dark Lands of the Eye...」
カナダのエピック・ブラックメタル、キーズ・オブ・オルサンクの2019年作
バンド名の「オルサンク」とは、「ロード・オブ・ザ・リング」に登場する魔法使いサルマンの居城。
当然ながら「指輪物語」をコンセプトにしていて、SEやケルティックな旋律を含んだイントロから、
ノイジーなギターに優美なシンセとダミ声&低音グロウルヴォーカルを乗せて、激しいブラスト疾走を含んだ
緩急あるブラックメタルを展開。美麗なシンセアレンジによるシンフォニックブラック的な聴き心地と、
アトモスフェリックで神秘的なスケール感が同居しているが、ギターリフがやや単調だったりと、
もう少し楽曲に明快な盛り上がりが欲しい。むしろ雰囲気モノとして楽しむのがよいのかも。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・7 壮大度・・8 総合・・7.5
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The Ember, The Ash 「Consciousness Torn From The Void」
イタリアのブラックメタル、エンバー・ジ・アッシュの2019年作
ノイジーなギターにダミ声ヴォーカルを乗せて疾走する、アトモスフェリックなブラックメタルサウンド。
ほどよくシンセアレンジを加えた幻想的な空気とともに、激しすぎず叙情的過ぎずという聴き心地で、
ダークな世界観を描くところは、BURZUMや初期のEMPERORなどが好きな方にも楽しめるだろう。
ゆったりとしたスローパートでは物悲しい叙情性も覗かせ、シンセをメインにした美麗な小曲も挟みつつ、
全体的に暗黒性よりもネイチャーブラック的な神秘性も感じさせる作風だ。幻想ブラックが好きな方はぜひ。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・7 幻想ブラック度・・8 総合・・8
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CAINA「Gentle Illness」
イギリスのポストブラックメタル、カイナの2019年作
アンドリュー・カーティス・ブリグネル氏による個人ユニットで、2006年にデビューし、本作は7作目。
ドラマのようなSEのイントロから始まり、ノイジーなギターリフにダミ声ヴォーカルを乗せた、
不穏な空気に包まれた暗黒サウンドを展開。激しいブラストビートも覗かせつつ、ぼんやりとラウドな音質が
プリミティブな妖しさになっていて、ほどよく叙情的なギターフレーズとともに、ミステリアスな聴き心地を描き出す。
ブラックメタルの邪悪さというよりは、ホラー映画のようなおどろおどろしさで、シンセやSEを含むサントラのような感触は、
楽曲というよりは雰囲気モノというべきか。アヴァンギャルドなセンスの暗黒ポストロックとしても楽しめそうな異色作。
ドラマティック度・・7 暗黒度・・8 アヴァンギャル度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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Unmensch 「Scorn」
ベルギーのブラックメタル、アンメンスクの2019年作
叙情的なギターを乗せたイントロから、トレモロのリフにダミ声ヴォーカルを乗せて激しくブラスト疾走、
ペイガンメタル的でもある涼やかな空気感とともに、メロディックブラックとしても楽しめるサウンドだ。
激烈なブラストビートを主体にしつつ、うっすらとしたシンセやメロウなギターの旋律、ときにストリングスも加えるなど
暴虐性よりはコールドな叙情性が前に出ていて、EMPERORあたりにも通じる幻想的な聴き心地で楽しめる。
全体を通して、いくぶん変化には乏しいが、確かな演奏力も含めて、デビュー作とは思えないクオリティで
ほどよくメロディックで、激しくも神秘的なブラックメタルが好きな方にはお薦めです。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・8 神秘的度・・8 総合・・8
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Aethernaeum 「Wanderungen Durch Den Daemmerwald」
ドイツのブラックメタル、エーテルナームの2013年作
ノイジーなギターに美麗なシンセを重ね、ダミ声ヴォーカルとドイツ語によるノーマル声も加わった、
シンフォニックなネイチャー系ブラックメタルという聴き心地。優雅なストリングスや女性コーラスなども加えて、
激しくも神秘的なサウンドを描くところは、Wolves in the Throne Roomあたりにも通じるだろう。
8〜12分という大曲をメインに、叙情的なギターフレーズやゆったりとした静寂感、ときに女性コーラスなど含む
メリハリある展開力で、幻想的な世界観を味わえるのだが、さすがに大曲が多くて後半は少しダレてしまう。
暴虐性はあまりないので、雰囲気モノとしてのネイチャーブラックが好きな方にはわりとお薦めです。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・7 神秘的度・・8 総合・・7.5
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Nachtmystium 「The World We Left Behind」
アメリカのブラックメタル、ナクトミスティアムの2014年作
2002年にデビュー、本作は8作目にして解散前のラストアルバム。軽めのドラムに適度に叙情的なギターと
ダミ声ヴォーカルを乗せた、わりとキャッチーなサウンドで、序盤のミドルからスローテンポのナンバーには
ブラックメタルとしての激しさや暗黒性はさほど感じない。ブラスト疾走するナンバーでは、プリミティブな匂いも残すが、
XASTHURなどに比べると地下臭さもあまりなく、メロディックなギターフレーズやうっすらとしたシンセアレンジとともに
ウェットな叙情に包まれるところは、むしろポストブラックに接近したような聴き心地。リフレインの多い所はやや長尺な感じだが、
激しさは控えめでゆったりと聴けるブラックが好きな方はどうぞ。バンドはメンバーを交替して2018年に復活する。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・7 叙情度・・8 総合・・7.5
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1/8
コロナに負けぬメタル!(30)


Magnum 「The Serpent Rings」
イギリスのドラマティックハード、マグナムの2020年作
1978年デビューのベテラン、2002年の再結成後は旺盛な活動を続け、本作は通算20作目となる。
ほどよくハードなギターに美麗なシンセアレンジ、ボブ・カトレイの味わいのあるヴォーカルを乗せた
英国らしいドラマティックなプログレハードは健在。オルガンを使ったオールドなブリティッシュロック風味や
リック・ベントンのきらびやかなシンセによるシンフォニックな味わいも魅力的で、楽曲を壮麗に彩っている。
ベテランらしいにじみ出る音の説得力で、プログレハード、英国ハードロック、どちらの耳に聴いても見事な出来。
ロドニー・マシューズによるファンタジックなジャケの世界観も含めて、王道のマグナムサウンドが詰まった傑作だ。
ドラマティック度・・8 叙情度・・9 英国度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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MAGNUM 「ESCAPE FROM THE SHADOW GARDEN LIVE 2014」
イギリスのドラマティックハード、マグナムのライブ。2015年作
2014年に行われたヨーロッパツアーの音源を収録。「Escape from the Shadow Garden」からのナンバーに
過去のナンバーもたっぷり演奏。枯れた味わいのボブ・カトレイの歌声を乗せて、哀愁を帯びた英国らしい
メロディックハードを聴かせる。トニー・クーキンの叙情的なギターフレーズも随所に光っていて、
やわらかなシンセワークとともに、ベテランらしい安定した演奏が味わえる。「How Far Jerusalem」
「Vigilante」「Kingdom Of Madness」あたりはオールドなファンにも嬉しいだろう。全74分の好ライブ作。
ライブ演奏度・・8 叙情度・・8 英国度・・9 総合・・8
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Timo Tolkki's Avalon「Return To Eden」
ティモ・トルキによるシンフォニックメタル、ティモ・トルキズ・アヴァロンの2019年作
3作目の本作は、SECRET SPHEREのギターとベースをメンバーに迎え、RIOT Vのトッド・ミッチェル・ホールをはじめ、
アネク・ヴァン・ガースバーゲン、TRISTANIAのマリアンジェラ・デムルタス SAVATAGEのザッカリー・スティーヴンス、
ELEGYのエドゥアルド・フォヴィンガといった名うてのシンガーが参加。イントロに続くのはネオクラシカルなギターに
きらびやかなシンセを重ね、伸びやかなヴォーカルを乗せて疾走する、かつてのSTRATOVARIUSを彷彿とさせるナンバー。
その後もケルティックな旋律を取り入れたキャッチーなミドルテンポや、アネクの歌うゆったりとした優美な叙情ナンバー、
中庸のミドルテンポ曲など、強いインパクトはないものの、わりと普通に楽しめる。個人的にはストラト的な疾走曲よりも、
女性声による優雅なシンフォニックナンバーの方に魅力を感じるので、さらにスケールの大きなメタルオペラを期待したい。
シンフォニック度・・7 疾走度・・7 優美度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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SoulSpell 「The Second Big Bang」
ブラジル人のドラマー、エレノ・ヴァーリによるメタルオペラプロジェクト、ソウルスペルの2017年作
4作目となる本作も、アンドレ・マトス、ファビオ・リオーネ、オリヴァー・ハートマン、ラルフ・シーパーズ、ティモ・コティペルト、
ティム・リッパー・オーウェンズ、ブレイズ・ベイリー(元Iron Maiden)、アルイエン・ルカッセン、をはじめとした豪華なゲストが集結、
パワフルなヴォーカルを乗せた正統派のメロパワサウンドを基本に、初期AVANTASIA路線の壮麗なメタルオペラを聴かせる。
Vandroyaのダイサ・ムニョスをはじめとした女性シンガーも楽曲に華を添えていて、男女声のシンフォニックメタルとしても楽しめる。
マトス&ラルフのコラボナンバーや、ファビオ&ハートマンの豪華なコンビ曲など、聴きどころも多く、楽曲も充実の仕上がりです。
ドラマティック度・・8 壮麗度・・8 豪華ゲスト度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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ARION 「LIFE IS NOT BEAUTIFUL」
フィンランドのシンフォニックメタル、アリオンの2018年作
2014年にデビュー、本作は2作目となる。壮麗なイントロから、メタリックなギターにオーケストラルなアレンジ、
マイルドなヴォーカルを乗せて、ほどよくモダンな味わいの美麗なシンフォニックメタルを聴かせる。
きらびやかなシンセに随所に流麗なギターフレーズを重ね、北欧らしい透明感とメタリックなヘヴィネスが同居した
厚みのあるサウンドを展開する。AMARANTHEのエリーゼ・リードが参加した男女ヴォーカルのナンバーなど、
ほどよくキャッチーな感触や、ときに激しい疾走パートもあり、前作よりも楽曲の幅が広がったという印象だ。
パワフル過ぎないヴォーカルも個人的にはOK。SONATA ARCTICAを重厚にしたような強力作に仕上がっている。
シンフォニック度・・8 壮麗度・・9 重厚度・・8 総合・・8
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Signum Regis 「The Seal Of A New World」
スロバキアのメロディックメタル、シグナム・レジスの2019年作
2008年デビュー、本作は6作目となる。ツインギターに伸びやかなヴォーカルを乗せて疾走する、
王道のメロディック・パワーメタルで、サビでのきらびやかなクサメロ感には思わずニヤり。
どっしりとしたミドルテンポなども中堅バンドらしい安定感で、キャッチーなメロディのフックとともに、
随所に流麗なギターフレーズも覗かせつつ、ほどよいマイナー臭さを残しているのもむしろ魅力である。
新鮮味はそれほどないが、辺境系メロパワの中ではトップレベルのバンドと言ってよいだろう。
メロディック度・・8 疾走度・・7 正統派度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Witherfall 「A PRELUDE TO SORROW 」
アメリカのプログレッシブ・パワーメタル、ウィザーフォールの2018年作
ジェイク・ドレイヤー(元Kobra and the Lotus)、ジョセフ・マイケル(White Wizzard)を中心に2017年にデビュー、本作は2作目となる。
前作発表直前に死去したアダム・サガンに代わり、Death Dealerのスティーヴ・ボログネスが参加していて、
ヘヴィなギターにハイトーンヴォーカルを乗せ、知的な構築力で聴かせるダークなメタルサウンドは前作同様。
手数の多いドラムと巧みなギターワークを中心にしたテクニカル性と、アコースティックパートなども含む緩急ある構成で
重厚な世界観を描いてゆく。ときに激しく疾走するスラッシュメタル風味もあつつ、スローパートでは耽美な叙情も垣間見せる。
メロディックなフックはあまりないが、10分を超える大曲も含めて、メリハリある展開力でドラマティックな聴き心地が楽しめる。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 ダークで重厚度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Seyminhol 「Ophelian Fields」
フランスのシンフォニックメタル、セイミンホルの2018年作
2002年にデビュー、5作目となる本作は、コンセプト的な流れになっていて、オーケストラルなアレンジに
ほどよくヘヴィなギターと伸びやかなヴォーカルを乗せた、優美なシンフォニックメタルを展開する。
派手な展開はさほどないものの、ゆったりとした叙情パートなどを含む、緩急ある構築力と、
エモーショナルなヴォーカルで、重厚なドラマ性を描くという点ではKAMELOTなどにも通じるだろう。
楽曲ごとの明快な盛り上がりやメロディのフックが弱いので、全体的にこれといって印象に残らないのと、
全35分という短さも含めて物足りなさも感じる。今後はより壮麗なサウンドを目指していってもらいたい。
ドラマティック度・・8 壮麗度・・7 楽曲度・・7 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
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TRIARCHY 「SAVE THE KHAN」
イギリスのメタルバンド、トリアーキーの2015年作
70〜80年代にかけて活動、シングルのみで消えたバンドで、79年作「SAVE THE KHAN」、81年作「METAL MESSIAH」
2枚のシングルに加えて、80年代のデモ音源や未発表音源、95年再結成時のスタジオ音源を収録している。
バンドの特徴としてはツインギターに加えて、きらびやかなシンセアレンジ随所に加わっていて、
ときにリズムチェンジを含む展開力とともに、いくぶんプログレハード寄りのキャッチーな感触もある。
ヘタウマ感のあるヴォーカルはいかにもB級な雰囲気だが、NEOBHMのマイナーバンドに慣れている方には
とくに問題にはならないだろう。デモも含めて年代を考えれば音質も良好。往年のフルアルバム的に楽しめる。
ドラマティック度・・7 マイナー度・・8 古き良き度・・8 総合・・7.5
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TRAITORS GATE 「FALLEN 」
イギリスのメタルバンド、トライトース・ゲートの2018年作
1985年にEPを1作残して消えたバンドが再結成し、33年の年月を経て初のフルアルバムを完成させた。
キャッチーながら英国らしいウェットな味わいと、ほどよいマイナー感覚を残したかつてのサウンドの延長で、
オールドなギターにパワフル過ぎないハイトーンヴォーカルを乗せ、80年代ルーツのブリテイッシュメタルを聴かせる。
随所にメロディックなギターも覗かせながら、ANGEL WITCHあたりに比べると、正統派寄りの聴きやすさがあって、
わりと一般のリスナーにも普通に楽しめるだろう。ミドルテンポ主体で、疾走感はさほどないのが地味な印象だが、
ほどよくスカスカな古き良きメタルサウンドは耳疲れしない。オールドスタイル好きのメタルリスターはチェックです。
ドラマティック度・・7 正統派度・・8 古き良き度・・9 総合・・7.5
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SALAM UK 「Win Lose Or Draw」
イギリスのメタルバンド、セイラムの2019年作
80年代から活動するベテランで、2011年に復活、フルアルバムとしては復活後の4作目となる。
オールドな味わいのギターにパワフルなハイトーンヴォーカルを乗せた、ストレートなHR/HMサウンドを聴かせる。
NWOBHMというよりは、80年代アメリカンHR的なキャッチーな雰囲気もあって、マイナーな感触はさほどない。
ミドルテンポ主体のどっしりたとした聴き心地で、これという新鮮味もないので正直地味な印象ではあるが、
テクニックのあるギターをはじめ安定した演奏力で、DEEP PURPLEや初期のJUDAS PRIESSTなどにも通じる
正統派のナンバーから、ブルージーなバラードなど、大人のハードロックというべき味わいで楽しめる。
ドラマティック度・・7 正統派度・・8 古き良き度・・8 総合・・7.5
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Cuarto Oscuro 「Fenix」
スペインのメロディックメタル、クアルト・オスキュロの2016年作
2008年にデビューし、3作目となる。重厚なギターにスペイン語によるマイルドなヴォーカルを乗せた、
正統派のメロパワサウンド。JUDAS PRIESTをルーツにした、どっしりとしたミドルテンポを中心に、
オールドなメタルの味わいで聴かせつつ、随所にスパニッシュらしい哀愁とキャッチーな叙情性も覗かせる。
楽曲は3〜4分前後で比較的シンプル。これという欠点はないが、これといって突出したところもないという。
個人的には、もっとクサメロ感や疾走パートが欲しい気も。スペイン語Voの正統派メタルが好きな方はいかが。
メロディック度・・7 正統派度・・8 パワフル度・・8 総合・・7.5
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SAPHET 「Vychod Z Temnoty」
チェコのパワーメタル、サフェットの2016年作
男女Voに女性シンセ奏者を含む7人編成で、メタリックなギターリフに母国語による男女ヴォーカルで疾走する、
わりと正統派のパワーメタルサウンド。いくぶん素人臭い女性ヴォーカルが、硬質なギターとのミスマッチで、
マイナーな辺境感に包まれた味わいになっている。男性声の方もパワフルというよりは、ジェントルなヘナチョコ感で、
80年代スタイルの正統派メタルなのに、牧歌的な土着性を感じさせるという。唐突に入ってくるシンセアレンジも、
とってつけたような感じで、センスというものを感じさせない。ジャケの地味さも納得の辺境B級メタルというべき一枚。
ドラマティック度・・6 疾走度・・7 辺境度・・8 総合・・6.5
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VA/ The Revivalry : A Tribute To Running Wild
ランニング・ワイルドのトリビュートアルバム。2005年作
Stormwarrior、Paragon、Not Fragile、Dark Age、Airborn、Logar's Diary、Icarus Witch、Crossfireをはじめ、
33バンドが参加したCD2枚組。メロパワ系バンドを中心に、Burden Of Griefなどメロデス系バンドも参加、
パワフルにアレンジされた楽曲は、それぞれに味があって面白く、スラッシーな迫力のDark Ageや、
女性ヴォーカルでのLigeia、ブラックメタル寄りにカヴァーしたAsaru、疾走メロパワのRiviver
これぞジャーマンメタルというNot Fragile、日本のMAVERICKによる名曲「Blazon Stone」や、
Logar's Diaryによるメロスピ疾走名曲「Riding the Storm」などもなかなか恰好いい仕上がりだ。
マイナーなバンドも多いのだが、CD2枚で150分超えるRUNNING WILD祭りが味わえます。
アレンジ度・・8 参加バン度・・7 ランニング・ワイル度・・9 総合・・7.5
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VA/ REUNATION: A Tribute To Running Wild
ランニング・ワイルドのトリビュートアルバム。2009年作
Powerwolf、Orden Ogan、Custard、Heavenly、Burning Point、Evertale、Hellish War、Chinchilla
Magica、Crystal Viper、Deadlock、Skiltron、Suidakra、など、31バンドが参加したCD2枚組。
POWERWOLFによる名曲「Riding the Storm」で幕を開け、FATEのオルガン入りのオールドHR風味や、
ORDEN ORGANの「ワーテルローの戦い」もドラマティックな仕上がり。Deadlockのヘヴィロック仕立ては異色ながら、
Skiltronのホイッスル鳴り響くフォークメタル風味や、Motorjesusのどっしりとしたストーナー系ハードロックの感触、
Suidakraの激しいペイガンメタルなども面白い。Chinchillaのパワフルのメタル感、Custardのジャーマンメタル魂、
ハスキーな女性ヴォーカルで聴かせるCrystal ViperEvertaleによる「Blazon Stone」もなかなか格好良いし、
Heavenlyのきらびやかなメロスピっぷりも最高です。CD2枚で150分超、RUNNING WILD祭りパート2。
アレンジ度・・8 参加バン度・・8 ランニング・ワイル度・・9 総合・・8
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1/1
本年もメタルでよろしくお願いいたします(15)

Magnus Karlsson's FREEFALL 「We Are the Night」
元MIDNIGHT SUNで、LAST TRIBE、STARBREAKER、PRIMAL FEAR、THE FERRYMENなど、数々のバンドに参加する
スウェーデン出身のギタリストでコンポーザー、マグナス・カールソンによるプロジェクト、フリーフォールの2020年作
3作目の本作には、元BLACK SABBATHのトニー・マーティンをはじめ、ロニー・ロメロ(LORDS OF BLACK〜RAINBOW)、
ノーラ・ロウヒモ(BATTLE BEAST)、マイク・アンダーソン、ディノ・ジェルシック、リナン・ゾンタといったシンガーが参加し、
楽曲ごとにリードをとる。美麗なシンセアレンジにネオクラシカル風味も含んだ流麗なギター、そして実力あるヴォーカルを乗せ
王道のメロディックメタルを聴かせる。ノーラ・ロウヒモ嬢の歌声を乗せた優美な叙情ナンバーなどもアクセントになっていて、
全体的にも質の高い楽曲が並ぶ。新鮮味な部分さしてないが、往年の様式美好きメタラーなどにもお薦めです。
メロディック度・・8 王道メロパワ度・・8 様式美度・・8 総合・・8
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Shining Black Featuring Mark Boals & Olaf Thorsen
マーク・ボールズとオラフ・トーセンによるユニット、シャイニング・ブラックの2020年作
LABYRINTH、VISION DIVINEのギタリストと、イングヴェイやRING OF FIREで知られる名シンガーという
意外な組み合わせであるが、サウンドの方は、ミドルテンポを主体にしたわりと正統派のHR/HMで、
伸びやかなマーク・ボールズの歌声を乗せた、キャッチーな大人のメロディアスハードロックという感じもある。
随所に疾走するメロパワ風味も覗かせつつ、ネオクラ風味はあまりないので、じっくりと落ち着いて鑑賞できる。
全体的に新鮮味やインパクトはさほどないが、LABYRINTH風のメロスピナンバーなども良い感じで、
力量あるヴォーカルと質の高い楽曲で、王道のメロディックメタルが楽しめるなかなかの好作品です。
メロディック度・・8 新鮮度・・7 正統派度・・8 総合・・8
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Conception 「State of Deception」
ノルウェーのプログレッシブメタル、コンセプションの2020年作
1991年にデビュー、97年までに4作を残して消えたバンドが、じつに23年ぶりに復活。シンフォニックなイントロ曲から、
知的なギターリフにシンセを重ね、KAMELOTを脱退してバンドに復帰したロイ・カーンのエモーショナルな歌声を乗せて
独特の浮遊感と適度なテクニカル性が同居したサウンドを構築してゆく。随所にシンフォニックなスケール感も感じさせ、
トゥーレ・オストビーによるセンスあるギターワークも光っていて、全体的にスリリングな展開力はさほどないものの、
女性声を加えたゆったとりとした大人のバラードナンバーや、モダンでキャッチーなロックナンバーなど、自然体の作風で、
力量あるヴォーカルが楽曲に説得力を加えている。大曲などはないので物足りなさはあるが、復活後のさらなる傑作に期待したい。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 コンセプション度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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NOVENA 「Eleventh Hour」
イギリスのプログレメタル、ノヴェナの2020年作
HAKENのヴォーカル、ロス・ジェニングスも参加、Slice The CakeのVoとのツインヴォーカル編成で、
メロディックなギターにマイルドなヴォーカルを乗せたキャッチーな優雅さに、ときに低音グロウルも加えた
モダンなヘヴィネスも覗かせたスタイリッシュなサウンドを聴かせる。伸びやかなヴォーカルに優美なピアノ、
ポストプログレ的でもある繊細な歌もの感から、メタルコア的なヘヴィさまで、振り幅の大きな構築力が楽しめる。
10分、15分という大曲を含む、全73分という力作であるが、個人的にはもう少しシンプルな盛り上がりが欲しいかも。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 スタイリッシュ度・・8 総合・・7.5
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CLEARLAND 「Gift from Time」
ブルガリアのメロディアスハード、クリアランドの2004年作
マルチミュージシャン、コンスタンティン・ジャンバソフとシンガーのニコライ・ライコフのユニットで、2020年版のリマスター仕様。
きらびやかなシンセとメロディックなギター、マイルドなヴォーカルで聴かせるキャッチーかつ爽快なサウンドで、
古き良きハードポップ的感触の中にも、随所に流麗なギターフレーズが光っていて、ギタリストとしての技巧も覗かせる。
きらびやかなシンセアレンジはプログレ的な雰囲気もあって、曲によってはASIAのような優美な味わいもあり、
伸びやかなヴォーカルの実力も含めて、叙情的なバラードなども耳心地よい。英語歌詞を基本にしつつ、
ジャンバゾフ自身が歌う母国語によるナンバーなども異国的な聴き心地で、ゆったりと鑑賞できる。
大人のプログレハードというべき逸品です。ダウンロード版ではボーナスとして新たにデモ音源を8曲追加。
メロディック度・・8 キャッチー度・・8 爽快度・・8 総合・・8
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CLEARLAND 「The Right Direction」
ブルガリアのメロディアスハード、クリアランドの2020年作
2004年に唯一の作品「Gift from Time」を発表したユニットの発掘音源集というべき作品で、
1999〜2003年までに録音されたデモ音源を新たにリマスターしたもの。きらびやかなシンセアレンジに
叙情的なギターの旋律を乗せ、伸びやかなヴォーカルで聴かせるサウンドは、デモといえども高品質で
シンフォニックといってよい優美な味わいに包まれている。打ち込みなのでドラムはどうしても薄っぺらいが、
プログレ的でもある優雅な展開力に、メインヴォーカルのニコライ・ライコフに、Virtuelのローセン・アンゲロフも参加していて、
表現力ある歌声がエモーショナルに楽曲を彩り、むしろ正規アルバム以上にシンフォプログレ寄りで、日本人好みといってよい。
コンスタンティン・ジャンバソフの巧みなギタープレイも聴きどころで、9分を超える大曲での構築センスも見事である。
メロディック度・・8 キャッチー度・・8 優雅度・・9 総合・・8
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White Widdow 「Crossfire」
オーストラリアのメロディアスハード、ホワイト・ウィドウの2014年作
2010年にデビュー、本作は3作目。前作も80年代メロハーを蘇らせたような好作であったが、
本作も適度にハードギターにシンセを重ね、マイルドなヴォーカルとともに、80年代ルーツの
キャッチーでアダルトな王道のメロディアスハードを聴かせる。ゴージャス過ぎないサウンドや
随所に聴かせる流麗なギターソロなども、どこか80年代の様式美風だったりしてにやりとなる。
これという新鮮味はないのだが、耳心地の良いコーラスハーモニーにやわらかなシンセが重なり、
優美なメロディアス性に包まれたナンバーが並び、じつに高品質な王道メロハーが堪能できる。
メロディアス度・・8 キャッチー度・・8 王道メロハー度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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BABYMETAL 「METAL GALAXY」
日本のカワイイメタル、ベビーメタルの2019年作
ポップなアイドルとメタルを融合させた衝撃の1st、よりディープなメタル要素を加えた2nd、そして3作目の本作は
日本盤CD2枚組という豪華仕様。Disc1は3〜4分前後の小曲主体で、モダンできらびやかなイントロ曲から、
4つ打ちリズムのヘヴィのダンスナンバー、インド風の旋律を取り入れた新機軸も覗かせつつ、キャッチーなポップ性と
ヘヴィなメタル感が合わさったスタイルで、過去2作ほどのインパクトはないが、それなりには楽しめてしまう。
Disc2は、アゲアゲなノリのお祭りナンバーや、デスメタル風の異色のラップ風ナンバーなども含みつつ、
壮麗なシンフォニックメタルの「Starlight」、前作の「The One」を思わせる優美なバラードの「Shine」、
そして、「Rord of The Resistance」の続編というべきメロディックスピードメタル「Arkadia」で締めくくる。
ドラマティック度・・7 メタル度・・7 カワイイ度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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GRAILIGHT 「Sic Luceat Lux」
ロシアのシンフォニック・デスメタル、グレイライトの2019年作
艶やかなヴァイオリンの音色に美しい女性ヴォーカルで幕を開け、ヘヴィなギターにグロウルを乗せて激しくブラスト疾走、
美麗なシンセアレンジやストリングスを乗せたシンフォニック性に、緩急あるリズムチェンジによるテクニカル性と、
随処にソプラノ女性ヴォーカルによる優美な味わいも含んだ、クラシカルでアヴァンギャルドなデスメタルを聴かせる。
Ebonylakeあたりにも通じる、せわしない展開とオペラティックな美意識が混在したスタイルで、たたみかける激しさの中にも、
オーケストラルな壮麗さに包まれた優雅な味わい。アルバム後半には7〜9分の大曲がずらりと並び、シンフォブラック風から、
THERIONHAGGARDのような壮麗なナンバーなど、濃密すぎるクラシカル・デスメタルが楽しめる全75分の力作デス。
シンフォニック度・・9 暴虐度・・8 壮麗で濃密度・・9 総合・・8.5
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DISILLUSION 「Liberation」
ドイツのプログレッシブ・デスメタル、ディスイリュージョンの2019年作
2004年作「Back to Times of Splendor」はプログレデスの傑作として名高いが、2作目を残したのちに沈黙、
本作は13年ぶりとなる復活の3作目。叙情的なイントロで幕を開け、メタリックなギターにシンセを重ね、
デス声&ノーマル声を使い分けながら、リズムチェンジを含むテクニカルな展開力で構築してゆくところは、
まさに1stの延長上のサウンド。随所にデスメタル的なアグレッシブな疾走感や激しいブラストビートも覗かせつつ、
メロディックなギターフレーズを盛り込むなど、適度な叙情性と緩急ある知的なアレンジセンスも光っている。
10分を超える大曲をドラマティックに構築する力量はさすがで、今作では成熟したスケールの大きさを感じさせる、
重厚なスローなパートなども効果的で、1stからのファンはもちろん新たなリスナーも惹きつける強力な復活作である。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 叙情度・・7 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Fleshgod Apocalypse 「Veleno」
イタリアのシンフォニック・ブルータルデスメタル、フレッシュゴッド・アポカリプスの2019年作
2009年にデビュー、本作は5作目となる。前作でのオーケストラルな壮麗さはいくぶん控えになっていて、
ヘヴィなギターリフにクラシカルなピアノを重ね、低音デスヴォイスを乗せた迫力あるテクニカルデスを聴かせる。
ブルータルな感触は2ndの頃に接近した感触ながら、適度にメロディックなギタープレイも覗かせつつ、
緩急ある濃密なサウンドを描くところはこのバンドならではだろう。楽曲は4〜5分前後が主体であるが、
随所にオーケストラルなアレンジや美しいソプラノ女性コーラスも織り込んだ、シンフォニックな優雅さも残している。
新たなインパクトはないが、ブルータルデスメタルの激しさとクラシカル性のバランスの取れた強力作デス。
シンフォニック度・・7 暴虐度・・8 濃密度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
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Rings of Saturn 「ULTU ULLA」
アメリカのテクニカル・デスメタル、リングス・オブ・サターンの2017年作
2010年にデビュー、本作は4作目となる。ピロピロ系のギターにヘヴィなリフとシンセを重ね、低音グロウルを乗せた
テクニカルなサウンドで、超絶なツーバスドラムの上に、トランス風のシンセを乗せたりと好き放題。
本作はきらびやかでキャッチーな感触が強まっていて、ギターリフもわりとメロディアスだったりと
案外聴きやすく(といっても変態だが)、いわば陽性の「エイリアン・デスコア」というべき作風である。
激しくテクニカルではあるが、シンセやギターによる叙情パートやスペイシーな味付けもあって、
さほど暴虐性は感じない。アゲアゲなBGMとしても最適(?)な変態サウンドが楽しめる超絶作デス。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・8 ヘンタイ度・・9 総合・・8
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Rings of Saturn 「Gidim」
アメリカのテクニカル・デスコア、リングス・オブ・サターンの2019年作
5作目となる本作は、前作のキャッチーな部分を薄めて、テクニカルデスとしての迫力が戻っている。
超絶なブラストを含むテクニカルなドラムの上に、流麗なギターとシンセアレンジを加え
低音グロウル&スクリームとともに激しくたたみかけつつ、矢継ぎ早の展開で壮絶な変態デスを構築。
カラフルなシンセによるスペイシーな味付けと強烈なデスコア要素がバランス良く(?)同居しており、
楽曲は3〜4分前後ながらヘトヘトになる濃密さ。超人級のヘンタイ☆デスコアに悶絶して果てる。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・9 ヘンタイ度・・9 総合・・8
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Cerebrum 「Iridium」
ギリシャのテクニカルデスメタル、セレブラムの2018年作
2009年にデビューし、3作目となる。変拍子を含むテクニカルなリズムに重すぎないギターリフと
低音デスヴォイスを乗せた、DEATHATHEISTなどにも通じるオールドスタイルのテクニカルデス。
ブルータルな暴虐性はさほどなく、デス声を除けば、むしろクールななアンサンブルなので、
プログレッシブ・デスメタル寄りのサウンドと言ってよいかもしれない。リズムチェンジは多いが、
ヘンタイにはなり過ぎず、この手としてはわりと聴きやすいが、反面、濃密さの点では物足りなさも。
楽曲は3〜4分前後で、全34分。もっと突き抜けるような展開力か、新鮮なセンスが欲しいというところ。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・7 テクニカル度・・7 総合・・7.5
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Aleph 「in tenebra」
イタリアのプログレメタル、アレフの2006年作
美麗なシンセアレンジにツインギターを重ね、ガナり気味のダーティなヴォーカルとともに、
緩急ある展開で聴かせる、ダークな味わいのプログレメタル。随所に語りなどを含んだ、
ホラー映画的なシアトリカルな空気感に包まれつつ、ギターリフなどはわりと正統派で、
ときにスラッシーなパートもあったりしつつ、楽曲にこれという派手さがないところが惜しい気もする。
ドラムをはじめとした演奏力はしっかりしていて、9分、10分という大曲をじっくりと構築する力量もあり、
あとはヴォーカルの表現力が上がればというところか。世界観は悪くないので精進してください。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・7 楽曲・・7 総合・・7
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