ロシアメタルプログレ特集
   Metal & Prog in Russia





1980年代から始まったペレストロイカ政策による共産圏の民主化は、やがてはソビエト連邦の崩壊をまねき、それは結果的に文化的側面でも大きな意義をもたらすことになる。
90年代に入ると、ロシアにはロックやメタルを含む西洋音楽が大量に流通しはじめ、2000年以降にはそれらを聴いて育った世代たちによるバンドが次々に誕生してゆく。
もともと広大な国土を持ち人口が多いこともあって、ロシアニおけるメタル系のバンドはこの10数年で瞬く間に増えてゆき、ロシア語による独特の発音の歌声とともに、
クオリティの高いサウンドを聴かせるバンドたちが続々と現れることとなる。とくにペイガン/フォークメタル系においては、いまやロシアは世界最高の宝庫といってもよいだろう。
一方のプログレ方面においても、2000年以降、Little Tragediesを筆頭に、濃密かつ高品質のバンドがずいぶん増えてきている。
欧米からは10年ほど遅れてロックとの出会いを果たした人々は、その新鮮な情熱とともに、今後も新世代のバンドを生み出してゆくだろう。
ここでは、そうした近年に誕生した高品質なロシアのバンドを紹介したい。                         緑川 とうせい


◆メロディックメタル系

CATHARSISWings (КРЫЛЬЯ)
ロシアのメロディックメタルバンド、カタルシスの3rd。2005年作
のっけからクサメロが爆発。まるで演歌泣きのクサクサメロディの波が…このイントロだけでもうやられます(笑)
恥ずかしげもない大仰な歌いっぷりのヴォーカルがまた凄くて、巻き舌のロシア語歌唱に、
クラシカルなキーボード、さらにはフォーキーなフルートもでてきてもう大変。
…いや素晴らしい。ここまでの吹っ切れぶりは前作からはとても予測できませんでした。
ロシア語が分かればサビのメロディを一緒に合唱したくなりますな。素晴らしき濃密傑作!
クサメロ度・・9 疾走度・・7 ロシア度・・9 総合・・8.5
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CATHARSIS「Светлый альбом(Svetly Albom)」
ロシアのシンフォニックメタル、カタルシスの2010年作
3rdkrylya (КРЫЛЬЯ)で大化けし、一気にロシア最高のクサメタルバンドとなった。
本作はなにやらデジタルなイントロから、曲が始まるとシンフォニックな濃密さと
ロシア語ヴォーカルによる暑苦しいクサメロまくりで、相変わらず素晴らしい。
フルートも含めた牧歌的なフォーキーな味わいと、大仰なシンフォニックメタルが融合され
ギターのフレーズも恥ずかしげもない叙情を炸裂させる。さすがだよカタルシス!
メロディアス度・・8 疾走度・・7 濃密度・・9 総合・・8
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EPIDEMIA「Elfiyskaya Rukopis / Эльфийская Рукопись
ロシアのシンフォニックメタル、エピデミアの2004年作
シンセとオーケストレーションによる壮麗なイントロから、勇ましくエピカルなシンフォニックメタルが始まってゆく。
RHAPSODYを思わせるファンタジックな世界観と、クサメロをたっぷり含ませたサウンドには
この手のマニアはもうにんまりだろう。AVANTASIAのような正統派メタルを軸にした聴き心地に
ロシア語による辺境臭さも味わいになっている。若干のローカルさと楽曲ごとのバラつきも含めて楽しむべき作品。
ドラマティック度・・8 エピック度・・8 クサメロ度・・8 総合・・7.5
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EPIDEMIA「Elfiyskaya Rukopis : Skazanie Na Vse Vremena」
ロシアのシンフォニックメタル、エピデミアの2010年作
2004年作品の第二章となるメタルオペラ作品で、壮麗なイントロから始まり、
メロディックなツインギターとロシア語の歌声を乗せて疾走する、正統派のスタイルはこれまで通り。
随所に牧歌的な叙情を含ませるファンタジックなストーリー性も含んで、ドラマティックに聴かせる。
クサメロは残しながら楽曲のB級臭さはほぼ払拭され、全体的にも音の説得力が増している。
ドラマティック度・・8 エピック度・・8 クサメロ度・・8 総合・・8
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TRUST X 「На Краю Вечности」
ロシアのシンフォニックメタル、トラスト・エックスの2011年作
壮麗なシンセをメタリックなギターに重ねたイントロから、ロシア語によるハイトーンヴォーカルとともに
ほどよい疾走感とクサメロの優雅なメロディックメタルを聴かせる。リズムチェンジを含む展開力や、
随所に叙情的なギターのフレーズもドラマティックな味わいになっていて、ProgMetalとまではいかないが、
コンセプト的なスケールの世界観を感じさせる。シンセとギターによるネオクラ風の旋律も覗かせるなど、きらびやかなメロパワとしても楽しめる。
ドラマティック度・8 疾走度・7 構築度・8 総合・8
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HARIZMA (ХАРИЗМА)「сила и вер」
ロシアのメロディックメタルバンド、ハリツマの2011年作
ツインギターにロシア語のヴォーカルで聴かせる正統派のメロディックメタル。
随所にきらびやかなシンセアレンジも入りつつ、パワフルに疾走するサウンドはなかなか高品質だ。
エピックな勇壮さとともに、ときにいくぶんのネオクラ風味やB級っぽいクサメロも感じさせる好作品。
メロディック度・・8 パワフル度・・8 正統派度・・8 総合・・7.5

VIKONT (Виконт)「Don't Obey the Destiny!(Не Покоряйся Судьбе!)」
ロシアのメロディックメタル、ヴィコントの2012年作
女性シンセ奏者を含む6人編成で、ツインギターのリフとシンセアレンジを乗せて疾走、
朗々としたロシア語の歌声とともに、エピックな勇壮さを聴かせるサウンド。
随所にクサメロぎみの旋律も含みつつもマイナーな辺境臭さはあまりなく、
古き良き王道メタル系のギターワークを含めて、正統派のメロディック・パワーメタルとして楽しめる。
メロディック度・・8 エピック度・・8 正統派度・・8 総合・・7.5

Judgement DayDark Prophecy
ロシアのシンフォニックメタル、ジャッジメント・デイの2008年作
シンセをバックにツインギターの流麗なフレーズと、女性ヴォーカルの歌声を乗せて疾走、
シンフォニックなアレンジといくぶんダークな世界観でパワフルに聴かせるサウンド。
母国語の歌声はいかにも辺境的ながら、歌メロのメロディアスさやギターのクサメロなどで
初期のDARK MOORを思わせる聴き心地がある。ファンタジックで壮麗な世界観と濃密な作風で
作品としてのクオリティもなかなか高い。CATHARSISに続いて期待のバンドがロシアから現れた。
メロディアス度・・8 疾走度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8

5 ELEMENTS( 5 Стихий) 「Phoenix (Феникс)
ロシアのメロディックメタル、ファイブ・エレメンツの2008年作
正統派のギターにうっすらとしたシンセ、母国語による女性ヴォーカルを乗せたメロディックメタルサウンド。
キャッチーなメロディと透明感のあるアレンジは、ストラト、ソナタ系の北欧メロパワの感触で、
ハスキーな女性ヴォーカルの伸びやかな歌声もなかなか魅力的だ。楽曲はミドルテンポ主体だが、
スローテンポのバラードなども、情感豊かなロシア語の歌声でじっくりと楽しめる。
演奏面での辺境臭さはなく、クオリティも高いので、ロシアンメタル入門用にもよい好作品です。
メロディック度・・8 正統派度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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D.I.V.A. (Д.И.В.А.) 「Angel of Light (Ангел Света)」
ロシアのメロディックメタル、ディーヴァの2008年作
メロディックなギターにハスキーな女性ヴォーカルの歌声を乗せて疾走する、正統派のメロディックメタル。
わりとハワフルなヴォーカル嬢の歌声は、ARKONAのマーシャさんを思わせる声質で、
楽曲は正統派メロパワながら、ロシア語による歌唱が、どことなくペイガンな趣をかもしだす。
ゆったりと聴かせるバラード曲も、彼女の歌声のシリアスな説得力でじっくりと楽しめる。
楽曲は3〜4分前後で、全37分というのは少し物足りないか。もう2曲くらいあれば力作と言えたのだが。
メロディック度・・8 正統派度・・8 女性Vo度・・8 総合・・7.5

Narwhal Tusk「In Despair」
ロシアのシンフォニックメタル、ナーワル・タスクの2010年作
クラシカルなシンセワークと美声の女性ヴォーカルで聴かせる壮麗なシンフォニックメタル。
Nightwishを思わせる美麗なシンセアレンジにクラシカルでやわらかな優雅さが加わって、
ゆったりとした聴き心地のサウンドだ。女性Voの歌唱も英語歌詞なので違和感なく楽しめる。
楽曲やメロディがいくぶんありきたりなことや、ときどき男性ヴォーカルもでてきたりと、
多少の不満はあるものの、シンフォニックな美しさは魅力であるし、今後に期待したいバンドだ。
シンフォニック度・・8 美麗度・・8 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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SOLAR「AT THE DAWN」
ロシアのシンフォニックメタル、ソラーの2011年作
2009年の作品にボーナストラックを加えて再発したもので、
女性ヴォーカルのロシア語の歌声と、シンセによる美しいアレンジで聴かせるサウンド。
クサメロのギターとともに、いくぶんローカルな辺境臭さも味わいになっていて、
フルートやヴァイオリンが入ったクラシカルな優雅さとフォーキーな感触もいくぶんある。
ドラムも含めて全体的に軽めの音なのだが、この手が好きな方ならにんまりだろう。
メロディック度・・8 辺境度・・8 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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Eihwaz 「Amadeus
ロシアのシンフォニックメタル、エイワズの2012年作
美麗なシンセアレンジと、美しい女性ヴォーカルの歌声で聴かせる、メロスピ的な疾走も含んだ優雅なシンフォニックメタル。
クラシカルなシンセがかもしだすロマンティシズムは、日本のCROSS VEINあたりにも通じる、
気品ある美意識を感じさせるが、歌にロシア語がまじってくると、ぐっと異国的な優美さに包まれる。
イントロとボーナス曲を除くと6曲しかないのが物足りないのだが、今後が楽しみなバンドですな。
美麗系のフィメール・シンフォメタルが好きならチェック。CatharsisのVoらがゲスト参加している。
シンフォニック度・・8 優雅度・・9 女性Vo度・・8 総合・・7.5


◆ゴシックメタル/ヘヴィロック系

MENTAL HOME 「Upon The Shores of Inner Seas」
ロシアのゴシックメタル、メンタル・ホームの2000年作
美麗なシンセアレンジと、いくぶんメロデス的なギターリフで聴かせるゴシックメタルサウンド。
ヴォーカルはデス声とまではいかないダミ声で、全体的にダークな耽美性に包まれた雰囲気は
ときに北欧ブラックメタル的でもある。随所にギターの奏でる泣きの叙情もよい感じで、
歌詞は英語ながらも、垢抜けない辺境臭さがいくぶんミスティックな神秘性になっている。
シンフォニック度・・7 耽美度・・7 辺境度・・8 総合・・7.5
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DARK PRINCESS(Olga Romanova)「Stop My Heart」
ロシアのゴシックメタルバンド、ダーク・プリンセスの2nd。2006年作
女性ヴォーカル、オルガ嬢の歌声を中心にした、モダンで聴きやすいゴシックロックサウンド。
一聴してWITHIN TEMPTATIONEVANESCENCE的な曲調には相変わらず個性はないが、
やはりどことなく西欧のバンドとは異なる質感があり、それが異国的な気配をもたらしている。
3〜5分台でコンパクトに聴かせるのは変わらないが、メロディの質も上がってきたので
メタルというには軽すぎるサウンドもある程度は許容できるようになった。突き抜けまでもう一歩。
メロディアス度・・8 ゴシック度・・7 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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DARK PRINCESS
「WORLD I'VE LOST」
ロシアのゴシックメタルバンド、ダーク・プリンセスの2012年作
ヴォーカルが交代しての本作は、モダンなヘヴィロック風味とメロディアスな叙情のバランスがよく、
随所にシンフォニックなアレンジとギターのメロウなフレーズも含んで、楽曲そのもののクオリティも上がっている。
曲は3、4分台が中心でシンプルな聴き心地であるが、ロシア語によるナタリア嬢の歌声も表現力充分で、
これまで以上にサウンドに説得力を付加している。ここにきてやっと好みのバンドになってきた。
メロディック度・・8 ゴシック度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8

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the Sundial「Transition」
ロシアのゴシック・デスメタルバンド、サンディアルの2008年作
美しいシンセに導かれて、艶やかなヴァイオリンの音色とともに耽美な世界観が包み込む。
この手にしては珍しいインスト部分に比重を置いたサウンドはシアトリカルな雰囲気で、
囁くようなダミ声ヴォーカルも入ると、ゴシック化したCRADLE OF FILTHという感じにもなる。
紅一点のアナスタシア嬢は基本的にはシンセ担当のようで、歌うパートは意外と少ないが、
クラシカルなピアノの音色などを聴いていると、彼女の確かな音楽的素養が感じられる。
シンフォニックブラック風味のシアトリカル・ゴシックメタルの力作。
シンフォニック度・・8 ゴシック度・・8 シアトリカル度・・8 総合・・8
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Forest Stream「The Crown of Winter」
ロシアのゴシックメタルバンド、フォレスト・ストリームの2009年作
シンフォニックなシンセワークに、薄暗い叙情でゆったりと聴かせるサウンドは
いくぶんの民俗調の雰囲気とともに、ツインギターのメロウなフレーズがとてもいい。
なによりドラムが加わったことでサウンドにはメリハリがつき、ときにシンフォブラック的な
激しさもまじえつつ、寒々しい美しさをかもしだすシンセと悲しみのデスヴォイスを乗せてゆく。
北欧のバンドとはまた違う感触で、北の大地を感じさせるシンフォニック・ゴシック作品である。
シンフォニック度・・8 耽美度・・8 北の叙情度・・9 総合・・8
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Heavenside
「Небо не оставит тебя」
ロシアのゴシックメタル、ヘブンサイドの2010年作
ジャケからは、てっきり女性声のゴシックメタルかと思いきや、どっこい、
男性ヴォーカルのロシア語によるマイルドな歌声で聴かせるバンドでした。
メロウなギターとうっすらとしたシンセアレンジで描かれる楽曲は、To/Die/ForENTWINEなどにも通じる
むしろフィンランド的なメランコリックでメロディックな聴き心地が悪くない。
随所に女性コーラスや男性デスヴォイスなども入ってきて、アレンジ的にも一本調子でないし、
泣きのギターフレーズも含めて、なかなか質の高い男性声のマイルド・ゴシックメタル作品です。
メロディック度・・8 メランコリック度・・8 ゴシック度・・7 総合・・8

Septem Voices「ДЛЯ ТЕБЯ」
ロシアのゴシックメタル、セプテム・ヴォイシズの2009年作
美麗なシンセ女性ヴォーカルのロシア語の歌声で聴かせるサウンド。
ストリングスのアレンジとともにクラシカルな優雅さがじつに美しい。
はかなげな
女性ヴォーカルが適度にマイナー臭さをかもしだしていて、
涼やかな翳りを含んだ叙情がとてもよろしい。優美なる好作品です。

シンフォニック度・・8 ゴシック度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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The SLOT
「The Best of...」
ロシアのヘヴィロックバンド、スロットの2011年作
ロシア語による男女ヴォーカルで聴かせるヘヴィロックバンド。2003年にデビューし、現在までに4作を発表。
本作は20曲入りのベストアルバム。男性ヴォーカルのラップ的な歌声と、EVANESCENCEあたりに通じる
ゴシックロック的な女性ヴォーカルが合わさったユニークな作風。ラップ的なノリはあまり好みではないが、
女性Voの歌声はなかなか魅力的で、モダンなヘヴィネスの中に、美しいシンセアレンジもあったりしてあなどれない。
ミクスチャー感のあるヘヴィロックという点では、ロシアからもこうしたバンドが出てきたことが面白い。
メロディック度・・7 ヘヴィロック度・・8 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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Amber Tears
「The Key to December」
ロシアのフォーキー・ドゥームメタル、アンバー・ティアーズの2011年作
うっすらとしたシンセアレンジと低音ダミ声ヴォーカルを乗せた、ゆったりと重厚なサウンド。
ギターは随所にメロウなフレーズを奏で、ときにバグパイプ的なフォーキーな旋律も入ってきて
いわば、フォーキー・ドゥームメタルというべき聴き心地。美しいシンセとともに、
寒々しい北の大地を感じさせる雄大な神秘性もあって、なかなか魅力的な作品である。
ドラマティック度・・8 フォークドゥーム度・・8 雄大度・・8 総合・・8

COLD SIGHT
「A/H1N1」
ロシアのゴシックメタル、コールド・サイトの2013年作
女性Voとベース&シンセ奏者のユニットで、適度な疾走感とシンフォニックな美しさに
ソプラノ女性ヴォーカルの歌声で聴かせるサウンド。ときおりデスヴォイスが絡みながら
美しいソプラノヴォイスがオペラティックな優美さを漂わせつつ、ギターは随所にクサメロを奏でたり、
いくぶんローカルなマイナー臭さも漂わせる。10分を超えるインスト曲など、なかなか構築力はあるので、
サウンド全体がもう少し重厚になると、もっと壮麗な聴き心地になるだろう。
シンフォニック度・・8 優美度・・8 女性Vo度・・8 総合・・7.5

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Witchcraft
「7」
ロシアのゴシックメタル、ウィッチクラフトの2013年作
モダンなヘヴィさを含んだ適度な激しさと美麗なシンセアレンジ、
女性ヴォーカルのロシア語の歌声で聴かせるサウンド。
全体的にゴシック的な耽美さよりはヘヴィロック気味の感触が前に出ていて、
ロシア版のLACUNA COILというような感じもある。ラップ調の巻き舌男性ヴォーカルなどが加わると、
正直げんなりなのだが、女性声は魅力的だし、ヴァイオリンが入ってしっとりと聴かせる部分などは
なかなか叙情的なので、今後はぜひともシンフォニック&耽美な路線を目指していって欲しい。
シンフォニック度・・8 ゴシック度・・7 女性Vo度・・7 総合・・7.5



◆ペイガン/フォークメタル系

ARKONA
「Go Rode Go」
ロシアのペイガンタルバンド、アルコナの5th。2009年作
フォーキーな土着性とエピックな壮大さを併せた作風で、前作も見事な傑作であったが、
本作も期待通りの出来。シンフォブラック的な疾走に、スクリームヴォイスを使い分ける
女性ヴォーカルの歌声、そしてパイプや笛などによるフォーキーな音色が融合し
牧歌的でありながら迫力のあるペイガンメタルの世界を構築している。
疾走する激しいパートから女性声で聴かせるゆるやかなパートまで、
起伏のある楽曲展開も見事。土着的で神秘的なエピック・ペイガンメタルの傑作だ。
シンフォニック度・・8 ドラマティック度・・8 フォーキー度・・8 総合・・8
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Arkona「Slovo」
ロシアのペイガンメタル、アルコナの2011年作
6作目となる今作は、壮大なイントロからして、これまで以上にドラマティックな香りを漂わせているが、
楽曲が始まるとブラックメタルばりに激しく疾走、女性Vo
マーシャ嬢のスクリームを含めたヴォーカルに、
ヴァイオリンやアコーディオン、ガイタ、ハーディ・ガーディなどのフォーキーな音色がかぶさり、
シンフォニックな美麗さと土着性を融合させた、見事なペイガン・フォークメタルを展開する。
荘厳なコーラスにヴァイオリンの艶やかな響き、随所に叙情性を織り込みながら疾走感を同居させた
楽曲のアレンジもさすがという隙のなさだ。物語的なエピックな世界観も感じさせる見事な傑作。
シンフォニック度・・8 フォーキー度・・8 壮大度・・8 総合・・8
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Alkonost「Stone Heart Blood」
ロシアのペイガンメタルバンド、アルコノストの6th。2007年作
ARKONAとともに、ロシアのペイガンメタルを代表するバンド。
本作ではギターの奏でる土着的メロディとともに、よりサウンドの質が上がってきている。
ロシア語による女性ヴォーカルも相変わらず優雅で美しく、デスヴォイスやコーラスと合わさり
シンセによる味付けも絶妙で、これまで以上に重厚な雰囲気で聴かせてくれる。
フォーキーな幻想美と崇高な世界観にうっとりとなる。過去最高の仕上がりだ。
メロディアス度・・8 フォーキー度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8.5
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ALKONOSTOn the Wings of the Call
ロシアのペイガンメタルバンド、アルコノストの2010年作
女性Vo、女性シンセ奏者を含む6人組で、ロシアのバンドとしてはトップクラスのバンド。
本作も男女ヴォーカルによるロシア語の歌声と、土着的なメロディをたっぷり盛り込んだ
辺境的なフォークメタルを聴かせてくれる。ヘヴィさよりも田舎臭いフレーズをメインに奏でるギターに
たおやかな女性声に男性デス声が絡みながら、うっすらとしたシンセによるアレンジも美しい。
ARKONAほどにドラマティックな壮大さはないが、メロディ充実のクオリティはさすがの出来だ。
メロディアス度・・8 フォーキー度・・8 辺境度・・8 総合・・8
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PAGAN REIGN「Отблески Славы и Возрождение Былого Величия」
ロシアのヴァイキング(ペイガン)メタルバンド、ペイガン・レインの2nd。2003年作
このバンドもロシア産ペイガンメタルを代表するひとつといってよいだろう。
無骨な土着性にシンセを加えた安っぽいシンフォニック性で疾走、
ややバタバタとしたドラムも微笑ましく、演奏もサウンドもいかにも辺境的なのだが、
ギターによるいかにもなクサメロフレーズが顔を覗かせると思わずにやりとなる。
イモ臭くてもとにかくクサいメロのペイガンが聴きたいという方は必聴…かも。
クサメロ度・・8 勇壮度・・7 辺境度・・9 総合・・8
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PAGAN REIGN「Уделы Былой Веры」
ロシアのヴァイキング(ペイガン)メタルバンド、ペイガン・レインの3rd。2004年作
前作よりもサウンドのクオリティが上がり、音にはずいぶん説得力が増してきている。
それによって初期MITHOTYN的な土着性が、寒々しい北の大地の薄暗い叙情とともに
目の前に広がるような印象を受ける。ドラムの演奏力も向上して、ブラックメタル的な疾走感も
前作以上にシリアスな音像で迫力がある。もちろん牧歌的なクサメロのフレーズも随所に聴け、
激しく疾走する部分はENSIFERUMを思わせるくらいの完成度がある。イモ臭さでは前作ですが。
クサメロ度・・8 勇壮度・・8 辺境度・・8 総合・・8
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BUTTERFLY TEMPLE「THE TIMES OF MARA」
ロシアのペイガン・フォークメタル、バタフライ・テンプルの5th。2005年作
シンフォニックなシンセアレンジと、ヘヴィなギターに、ダミ声のロシア語ヴォーカルで
勇壮に聴かせるペイガンメタルサウンドは、前作よりいくぶんシリアス度が強まった印象。
ノーマル男性声で聴かせる勇壮なパートのエピックな説得力が増して
女性ヴォーカルも加わった優雅さや、フルートなどのフォーキーな要素も含めて、
辺境フォークメタルとしての濃密さはこれまで以上の仕上がりだ。
メロディアス度・・8 フォーキー度・・8 辺境度・・8 総合・・7.5
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Troll Gnet El 「Hangoverlainen Juhlat」
ロシアのペイガンメタル、トロル・ネット・エルの2005年作
愉快な笛の音色にフィドルの音色が加わり、ダミ声ヴォーカルの歌声で
軽快に聴かせる楽しいフォークメタルサウンド。随所に女性ヴォーカルも加わって、
武骨さよりもキャッチーな質感が前に出ると、ケルティック・パンクの雰囲気にも通じる。
鳴り響くホイッスルに素朴なマンドリンの音色も優しく叙情的で、やわらかな耳心地である。
マイルドな男性ヴォーカルも含めて、ロシア語の響きとともにのんびりと楽しめる作品だ。
ドラマティック度・・7 フォーキー度・・8 愉快で軽快度・・8 総合・・8

DECUMAN WAVE「BEYOND THE LINES」
ロシアのシンフォニックメタル、デクマン・ウェーブの2005年作
美麗なシンセアレンジとロシア語のヴォーカルを乗せた、軽やかなシンフォニックメタルサウンド。
随所に哀愁を含んだクサメロを含んでいて、全体的にもメロティ重視のやわらかな聴き心地だ。
ときおり唐突な展開があったりして、辺境B級メタルの味わいもあるが、いちいちクサい歌メロや
ツインギターの叙情フレーズもいい感じで、クサメタル好きならばこれはたまらないだろう。
バンド名のロシア語表記は「ДЕВЯТЫЙ ВАЛ
メロディック度・・8 疾走度・・7 辺境度・・8 総合・・7.5

Nomans Land「Raven Flight」
ロシアのペイガンメタルバンド、ノーマンズ・ランドの2006年作
無骨なヴァイキングメタルに、フォーキーなメロディを取り入れてエピックな世界観を描き出すサウンドは、
ARKONAとはまた違った方向でなかなかの高品質。ヴォーカルはかつてのMITHOTYNを思わせるダミ声で、
ときにジェントルなノーマルヴォイスもまじえつつ勇壮に聴かせる。
フォーキーメタルとして聴くと土着メロの点でやや物足りないかもしれないが、
むしろ普通にエピックメタルのリスナーが楽しめるくらいの普遍性もある。
メロディアス度・・7 ヴァイキング度・・8 エピック度・・8 総合・・8
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NEVID「Ярга」
ロシアのペイガン・フォークメタル、ネヴィド(НЕВИДЬ)の2007年作
BUTTERFLY TEMPLEのメンバーが結成したバンドで、美しい女性ヴォーカルの歌声と、
優雅な笛の音色を乗せて疾走するサウンド。けっこう正統派のフレーズを奏でるギターと美麗なシンセアレンジで、
なかなかクオリティの高い演奏を聴かせてくれる。ダミ声ヴォーカルもまじえて
ときおりペイガンブラック的な激しい疾走もあるが、音自体にあまりヘヴィさはなく、
あくまでメロディックな聴き心地だ。シンフォニックでエピックな雰囲気もよろしい。
メロディアス度・・8 フォーキー度・・7 辺境度・・8 総合・・8

Kalevala「Kudel' Belosnezhnogo L'na」
ロシアのフォーキーメタルバンド、カレヴァラの2008年作
アコーディオンのやわらかな音色とともに疾走するKORPIKLAANIタイプのサウンドに、
女性ヴォーカルが母国語の歌声を乗せる。フォーキーな愉快さと哀愁を感じさせるメロディに、
アコースティカルな要素も取り入れた、適度なヘヴィさのサウンドはとても聴きやすい。
楽曲そのものは比較的コンパクト。軽快なノリのアコーディオン入り、女性声フォークメタル好作。
メロディアス度・・8 フォーキー度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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Kalevala 「ВЕДЬМА」
ロシアのフォーキーメタルバンド、カレヴァラの2010年作
牧歌的なパイプの音色とやわらかなアコーディオンのメロディで疾走、
女性ヴォーカルが母国語の歌声を乗せる、軽快なフォークメタルサウンド。
土着的な感触とともに、ギターには正統派メタル的な聴き心があるので、
辺境バンドが苦手な方にも楽しめるだろう。ロシア版KORPIKLAANIという雰囲気の好作。
メロディアス度・・8 フォーキー度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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ANABIOZ「...To Light」
ロシアのフォークメタルバンド、アナバイオスの2009年作
女性Vo/Vln奏者を含む5人組で、男性デス声をメインに、女性ヴォーカルの歌声と、
土着的な旋律で聴かせる、けっこうヘヴィめのフォークメタルサウンド。
ときおり絡むヴァイオリンの音色や美しい女性ヴォーカルはなかなかいい感じで
楽曲に幻想的な彩りを添えている。全体的には武骨な辺境臭さが強い感じ。
メロディアス度・・7 フォーキー度・・7 辺境度・・8 総合・・7.5
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TVERDFollow the Suns Way
ロシアのフォークメタルバンド、トヴァードの2009年作
男女ヴォーカルを含む6人組で、牧歌的なフォークメロディを取り入れた
田舎臭さたっぷりのサウンド。朗々とした歌声に絡むパイプや笛の音もよろしく、
ときおり武骨なダミ声も入ったり、女性声が加わったりして、なかなか飽きさせない。
ギターによるメタリックな部分もちゃんとあるので、陽気な曲でも軽すぎることなく、適度に勇壮さもある。
マンドリンなどのアコースティック要素も含め、フォーキーで辺境的でありつつバランスがとれた作品だ。
メロディアス度・・8 フォーキー度・・8 辺境度・・8 総合・・8
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RAROG「Vzoydi solntse」
ロシアのペイガンメタル、ラロッグの2011年作
鳴り響くフルートにヴァイオリンなどのアコースティックな叙情性もありつつ、
ダミ声男性ヴォーカルに、女性ヴォーカルも絡んで激しくたたみかけるパートと
メリハリのついた作風で、シンフォニックな音の厚みもある質の高さが光る。
パイプの音色も含めて、どこか愉快な感じもあるので、ブラストパートなどでも
暴虐性はあまり感じない。KALEVALAが激しくなった感じという雰囲気もあり、
近年のロシアのフォークメタルシーンのクオリティの高さを窺わせる作品だ。
ドラマティック度・・8 フォーキー度・・8 女性Vo度・・7 総合・・8
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VEDA
「TAJNYH DOROG POZABYTY SLEDY(Тайных дорог позабыты следы)」
ロシアのフォーク・ブラックメタル、ヴェーダの2012年作
女性Voにシンセを含む6人編成で、ダミ声男ヴォーカルに美しい女性ヴォーカルが絡み、
メロディックなギターフレーズとともに疾走、やわらかなフルートの音色とともに
土着的な牧歌性をかもしだす、なかなか高品質なフォークメタルサウンド。
美麗なシンセワークも含めて優雅な聴き心地で、ときにシンフォブラック的な激しさもありながら
メロディの流れやアレンジのセンスがあるので、ファンタジックな幻想性も感じさせてくれる。
個人的には、せっかくキュートな女性声なので、もっと彼女の出番を増やして欲しい。
メロディック度・・8 フォーキー度・・8 優雅度・・8 総合・・8
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FFERYLLT
 「Прорицание
ロシアのフォークメタル、フェリールトの2012年作
女性ヴォーカルの母国語の歌声に低音デスヴォイスが絡み、バグパイプやハーディガーディなどの土着的な音色が合わさった、
本格的なケルティック・ペイガンメタルが楽しめる。北欧神話をテーマにした壮大なドラマ性と、
ヴァイオリンやチェロなどのストリングスも含んだシンフォニックな美麗さも素晴らしい。
適度に激しさもある楽曲は壮麗にして重厚な聴き心地で、見事な力作に仕上がっている。
ドラマティック度・・8 フォーキー度・・8 辺境度・・8 総合・・8
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RUYAN「Heritage」

ロシアのタタールスタン共和国出身のフォークメタル、ルーヤンの2010年作
フルートの鳴る異国的なイントロから、曲が始まるとけっこうヘヴィに疾走、
美しいソプラノとスクリームを使い分ける女性ヴォーカルの歌声が響きわたる。
牧歌的なガイタの響きと武骨なギターリフが合わさり、艶のある女性声の母国語の歌声で
メロディアスに聴かせつつも、サウンドには幻想的でミステリアスな土着性が感じられて
けっこう新鮮な耳心地である。女性でありながらグロウルの迫力もなかなかすごいが、
あくまで辺境的な牧歌性がヘヴィさを上回っていて、のんびりと聴けるのが魅力。
メロディアス度・・8 フォーキー度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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GRAI「O Zemle Rodnoy」
タタールスタン共和国(ロシア)のフォークメタル、グライの2011年作
女性ヴォーカル、女性シンセ奏者、女性フルート奏者を含む6人組で、フルートの音色を乗せて
メロスピばりに疾走、母国語による女性ヴォーカルの歌声で聴かせる、異国情緒漂うサウンド。
三人の女性によるコーラスワークも美しく、たおやかなフルートの音色が優しく包み込み
じつに耳心地のいいフォークメタルである。しっとりとした叙情と魅力的な女性声にフルート、
疾走するメロスピ要素を融合させた、新しくも美しい土着メタルの傑作。マイスペはこちら
メロディアス度・・8 フォーキー度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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◆ネオフォーク系

MELNITSA「Перевал (MOUNTAIN PASS)」
ロシアのフォークロックバンド、メルニッサの2005年作
アコースティックギターに繊細なフルートの音色、艶やかなヴィオラの響きに
母国語による女性ヴォーカルの歌声で聴かせる、異国的なフォークロック。
曲によってはドラムが入っているので、フォーキーなプログレとしても楽しめる。
クラシカルな優雅さと、しっとりとしたやわらかな聴き心地にうっとりです。
アコースティカル度・・8 フォーキー度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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VELESLAVA (Велеслава)「Guest of the Kind(ость Рода)」
ロシアのペイガン・フォークロック、ヴェレスラヴァの2006年作
女性ヴォーカルのロシア語の歌声を中心に、ゆったりと聴かせるサウンドで
シンセによるシンフォニックなアレンジと、打ち込みによるポップな感触が
トラッド的なメロディと合わさって、なかなか面白い味わいになっている。
メタル色はあまりなく、曲は3分前後がほとんどなので、わりあいあっさりと聴き通せるが、
随所にロックなギターが鳴らされたり、男性ヴォーカルが入ったりと、曲によってのメリハリもあり
モダンなポップロックとペイガンフォークの融合された好作品になっている。
メロディック度・・8 トラッド・ポップ度・・8 女性ヴォーカル度・・8 総合・・7.5

SBITEN「У ворот」
ロシアのフォークロック、セビテン(СБИТЕНЬ)の2010年作
やわらかな女性ヴォーカルの歌声に優美なヴァイオリンの音色、
アコースティックギターなどでしっとりと聴かせるサウンドは、
のんびりとした牧歌的なフォークロック。キャッチーな軽快さに
アコーディオンの音色を響かせる素朴な叙情性もあり、
北欧のトラッド系バンドにも近い感触で、ゆったりとなごめる作品です。
フォーキー度・・8 牧歌的度・・9 女性Vo度・・8 総合・・8

VETER VODY
「Vodovorot Vremen」
ロシアのフォークロックバンド、ヴェター・ヴォディの2009年作
牧歌的な笛の音色とアコースティックギター、母国語の女性ヴォーカルの歌声が爽やかに響く。
艶やかなヴァイオリンの音色など、クラシカルな雰囲気もあり、しっとりと鑑賞できる。
ジェントルな男ヴォーカルも入ります。辺境ペイガンメタルリスナーの箸休めにもいかがかと。
ちなみにロシア語でのバンド名表記は“Ветер ВОДЫ”
フォーキー度・・8 牧歌的度・・9 女性Vo度・・7 総合・・7.5


◆デスメタル/ブラックメタル系

SATARIAL「HEIDENLARM」
ロシアのフォーク・ブラックメタルバンド、サタリアルの2nd。2001年作
インナーには裸満載!!(爆)十字架でオ○ニーする全裸の女性の連続ショットが!…それはさておき(笑)。
肝心の音の方ですが、のっけから前回で散漫な感じだった民族色が見事にメタルサウンドにはまり、
ギター、シンセに絡むフルートがじつに自然に融合。ぴーひゃらしてます。
美しい女性ヴォーカルと野郎のわめき声の対比もくっきりと見事になった。
曲間に入る女性声のロシア民謡独唱もなんだか説得力を帯びてます。
ううむ・・しかしこの裸のおねえさんが踊り狂うステージを生で見てみたいものです。
シンフォニック度・・7 暴虐度・・6 民族度・・8 総合・・8
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TVANGESTE「FIRESTORM」
ロシアのシンフォニック・ブラックメタルバンド、トヴァンジェステの2nd。2003年作
二人の女性Keyを含む5人組みで、女性ヴァイオリン奏者、女性ヴォーカルをゲストに、
さらにはオーケストラも導入しているという、本格派のシンフォニックブラックサウンド。
VoはCRADLE OF FILTHタイプのダミ声で、曲は暴虐性よりはゴシック風の耽美性が高く、
初期のGRAVEWORMあたりにも近いか。時折現れるトラッド的なメロディやフルートもなかなか良いし、
楽曲を彩る艶やかなヴァイオリンも非常に魅力的だ。また男女コーラスによる妖しい荘厳さもなかなかのもの。
バタバタとしたドラムがサウンドの整合感をやや落としているが、そうしたマイナー臭さが辺境的な味でもある。
シンフォニック度・・8 暴虐度・・7 耽美度・・8 総合・・7.5
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STIGMATIC CHORUS「AUTODAFE...」
ロシアのシンフォニックブラックメタル、スティグマティック・コーラスの2005年作
壮麗なシンセワークで疾走する、CRADLE OF FILTHを思わせるシンフォブラック。
甲高いわめき声もダニ・フィルスを思わせる雰囲気があり、ドラマティックな曲の展開なども
かつてのCOFにそっくり。ただ物真似に終わるのできないクオリティの高さがあり、
美形の女性Key奏者、カリ嬢のシンフォニックな音作りは素晴らしいし、
こちらも美女のエミリー嬢のコーラスも耽美な世界観を描き出している。
美しいシンフォブラックが好みなら、ぜひとも聴いて欲しい作品だ。
シンフォニック度・・8 暴虐度・・7 クレイドル度・・9 総合・・8

TEMNOZOR (Темнозорь)「Folkstorm of the Azure Nights(Вольницей в Просинь Ночей)」
ロシアのペイガンブラック、テムノゾールの2005年作
シンセを含んだ美麗なアレンジと、ロシア語による朗々としたヴォーカル、
随所に激しい疾走感も含みつつ、むしろ浮遊感のあるミスティックな聴き心地である。
随所に素朴なフルートの音色も入ったり、土着的な叙情性もよい感じで、
いくぶんこもり気味の音質も含めて、神秘的なペイガン・ブラックが楽しめる。
ドラマティック度・・8 ペイガン度・・8 ミスティック度・・8 総合・・7.5


ARCANE GRAIL「Ninefold Path to the Innocence」
ロシアのシンフォニック・ブラック、アルカン・グレイルの2009年作
女性Vo、女性シンセ奏者を含む6人編成で、シンフォニックな美麗さと男女Voの歌声を乗せて疾走、
雰囲気としては韓国のDark Mirror Ov Tragedyや台湾のChthoniCにも通じるような感じで、
ダークな暴虐性はむしろ薄い。美しいシンセとともにストリングスなども含んだ優雅なアレンジと、
ソプラノ
女性ヴォーカルの歌声が優美な感触を強めていて、随所にゴシック・ブラック的な耽美性も含んでいる。
歌詞は英語がメインなので辺境的な感じもあまりない。高品質なシンフォブラック作品です。

シンフォニック度・・7 暴虐度・・7 美麗度・・8 総合・・8
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GRAILIGHT 「Sic Luceat Lux」
ロシアのシンフォニック・デスメタル、グレイライトの2019年作
艶やかなヴァイオリンの音色に美しい女性ヴォーカルで幕を開け、ヘヴィなギターにグロウルを乗せて激しくブラスト疾走、
美麗なシンセアレンジやストリングスを乗せたシンフォニック性に、緩急あるリズムチェンジによるテクニカル性と、
随処にソプラノ女性ヴォーカルによる優美な味わいも含んだ、クラシカルでアヴァンギャルドなデスメタルを聴かせる。
Ebonylakeあたりにも通じる、せわしない展開とオペラティックな美意識が混在したスタイルで、たたみかける激しさの中にも、
オーケストラルな壮麗さに包まれた優雅な味わい。アルバム後半には7〜9分の大曲がずらりと並び、シンフォブラック風から、
THERIONHAGGARDのような壮麗なナンバーなど、濃密すぎるクラシカル・デスメタルが楽しめる全75分の力作デス。
シンフォニック度・・9 暴虐度・・8 壮麗で濃密度・・9 総合・・8.5
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◆個性派メタル系

MECHANICAL POET「WOODLAND PRATTLERS」
ロシアのメタルバンド、メカニカル・ポエットの2005年作
物語風のジャケやブックレットのコミックなどからファンタジックなストーリーを感じさせる。
美しいインストから、曲に入ると案外ヘヴィなメタルサウンドになり、
けっこう力強い中低音のヴォーカルと、ギター、キーボードともに演奏陣もなかなかいい仕事をしている。
間奏部にしっとりとした叙情パートを入れたり、楽曲にはプログレメタル的な質感もあるが、
全体的にはテクニカルに押すタイプではなく、重厚さと静と動のメリハリで聴かせる構成だ。
いわゆるロシアのバンド的な土着性はあまりなく、音に現代的な視点が感じられるところは
PAIN OF SALVATIONなどの持つミクスチャー感覚とも通じる部分がある。派手さはないが力作だ。
メロディアス度・・7 ファンタジック度・・8 壮大度・・8 総合・・7.5
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AZAZELLO 「UPSTAIRS」
ロシアのプログレメタルバンド、アザゼロの2nd。2000年作
ジャケからして怪しいが、内容もまた怪しい(笑)アコースティカルなイントロでほのぼの始まったかと思えば、
曲が始まるとせわしない変拍子リズムの演奏で、ヘナ気味のB級調プログレメタルになる。
けっこう展開も凝っているし、キーボードも入って、なかなかドラマティックなハズ…なのだが、
テクニカルなのにあまり力強くないギターリフと、このヴォーカルの声がどうも脱力系なのだな。
こういう辺境っぽいイケてなさは、自分はけっこう好きなので、にやにやしながら楽しめる。
上手い下手の問題でなく、志向とセンスのせいだろう、聴きようによっては、
少し前の中南米…とくにメキシコあたりのシンフォ系バンドのショボい質感にもダブる。
10分以上の大曲も3曲あり、プログレ側のリスナーにも辺境ものとして楽しめるかもしれないが、
ともあれ、ダメっぽさを楽しめる余裕のある方にだけ、密かにオススメしたい(笑)
メロディアス度・・7 B級系プログレメタル度・・8 辺境度・・10 総合・・7.5
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◆プログレ系

LITTLE TRAGEDIES「PORCELAIN PAVILION」
ロシアのシンフォニックロック、リトル・トラジェディースの2000作
一曲目のクラシカルかつ壮大なシンセが鳴り出した瞬間に衝撃が走りました。
二人組のユニットということですが、多彩なキーボード、シンセ、ピアノをメインにした
格調高いアカデミックなメロディと、ときにポップかつキャッチーな歌を聞かせてくれます。
壮大華麗に弾きまくったかと思えば、しっとりとした叙情もあり、ロシアのバンドにしては硬質な印象は受けません。
母国語の歌唱もいい感じ。しっかりとしたクラシックの素養を持ちながら、独自のセンスで音楽を作っているという印象で
楽曲には余裕と自信とがうかがえ、ありがちなシンフォニックに陥っていないのが凄いです。
シリアスさとクラシカルさ、そして温かみを持ったキーボードシンフォの傑作です。
シンフォニック度・・9 キーボー度・・9 音楽センス・・9 総合・・8.5
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LITTLE TRAGEDIES「NEW FAUST」
リトル・トラジェディーズの4作目。2006年作
毎回、「超」がつくほどのド級のシンフォニック作を聴かせてくれるこのバンド、
本作はタイトル通り、ゲーテの「ファウスト」を新解釈したコンセプト作で、
クラシックのメロディや古典の文献からの引用など、気合の入った大がかりなCD2枚組となった。
弾きまくりのキーボード、クラシカルかつ優雅なメロディ、むせび泣くギターに怒濤の盛り上がり。
どこを切っても、手抜きなしの濃密シンフォニックサウンドで大変気合入ってます。
そして、物語的に進んでゆく楽曲構成は、2枚組み作品としての流れも見事にかみ合っていて
まるで壮麗な古典絵巻を聴いているかのよう。血湧き肉躍るメロディの大洪水に顔がにやけっぱなし。
シンフォニック度・・9 プログレ度・・8 ドラマティック度・・10 総合・・9
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LITTLE TRAGEDIES「The Six Sense」
リトル・トラジェディーズの5th。2006作
今作は従来のコテコテ路線からやや変わり、キレのある展開とメジャー感のあるキャッチーさがポイント。
もちろんクラシカルに弾きまくり、盛り上げるシンセは相変わらずだが、
ハードエッジな部分と、メロディアスな部分とのメリハリがついている。
ロシア語の歌唱によるシアトリカルな響きに、優雅なチェンバロの音色、
泣きのギターと優しげなサックスの音色がドラマティックに絡まり合う。
今回は濃密でありながらも口当たりがよい傑作。やはりロシア恐るべし。
シンフォニック度・・8 メロディアス度・・8 ドラマティック度・・9 総合・・8.5
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Little Tragedies「Cross」
リトル・トラジェディーズの2008年作
ムーグにハモンドで弾きまくり鳴りまくりのシンセと、クサメロたっぷりのギターを中心に、
きらびやかに盛り上げまくりのシンフォニックロックがこれでもかと炸裂してます。
それでいて古くさいわけではなく、しっかりと楽曲としてよくできているというのは、
基本に作曲センスの良さがあるからなのでしょうな。濃厚な1曲目のあとは、
しっとりとした叙情を聴かせる曲もあり、クラシカルで優雅な趣もなかなか心憎い。
巻き舌ヴォーカルもいい感じです。19分の大曲含む72分のロマン大作。マイスペはこちら
シンフォニック度・・9 クラシカル度・・8 キーボー度・・8 総合・・8.5

The GOURISHANKAR「2nd Hands」
ロシアのシンフォニックロックバンド、グリシャンカールの2nd。2007作
LITTLE TRAGEDIESの出現以降、ハイクオリティなバンドの宝庫となった感のあるロシアだが、
またシンフォ系の有望株が現れた。ドラム、ギター、ヴォーカル、キーボードという変則の四人編成で、
ゲストにヴァイオリン、フルートなども加わって、涼やかなシンフォニックサウンドを聴かせる。
基本はインストメインで、モダンな質感の美しいシンセアレンジにかすかな民族色を加え
適度にテクニカルな軽やかさとデジタリィなサンプリングを付加して楽曲を構築している。
Voが加わった曲ではDREAM THEATER的な質感も加わり、プログレメタリックフュージョンとでも
表現したくなるような現代的なサウンドに包まれる。オールドプログレファンには理解しづらいかもしれないが
このこだわりのなさ、雑多なパーツの再構築は、むしろ若いリスナーのプログレへの窓口になるかもしれない。
シンフォニック度・・8 雑食プログレ度・・9 モダンアレンジ度・・9 総合・・8
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LOST WORLD「AWAKENING OF THE ELEMENTS」
ロシアのシンフォニックロックバンド、ロスト・ワールドの2nd。2006作
ロシアから、またハイクオリティなバンドが登場。三人編成でDrは打ち込み、オールインストながら
ヴァイオリン、フルート入りでクラシカルなメロディを奏でるサウンドは説得力充分。
一方、押すだけではなくアコースティカルな格調高さも有り、リトトラに比べて優雅さも備えている。
シリアスな雰囲気はAFTER CRYINGに通じる重厚さをかもしだしていて、
硬質感のあるピアノとエレクトリックヴァイオリンがハードシンフォな質感でたたみかける。
尖ったギターとフルートで聴かせる、ハードなSOLARISという感じの曲もあり、案外幅広い音楽性を聴かせてくれる。
シンフォニック度・・8 クラシカル度・・9 楽曲・・8 総合・・8
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AvivA Omnibus「Nutcracker in Fury」
ロシアのプログレバンド、アヴィヴァ・オムニバスの2008作
前作はシンセ奏者AvivA氏のソロ的なアルバムであったが、
本作ではバンド編成での作品となっている。ELP的なシンセにギターが絡み
けっこうヘヴィめのシンフォニックロックを展開しつつ、クラシカルなテイストを盛り込み
優雅でキャッチーな作風に仕立てている。シリアスになりすぎない童話的なファンタジー性が
オールインストの楽曲において、気楽に楽しめる雰囲気を作り出していて、硬質な印象はない。
反面、Little Tragediesのような分かりやすい派手さは薄いので、プログレ中級者以上向けかもしれない。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・8 ドラマティック度・・7 総合・・8
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*ウクライナのメタルとプログレ特集
*プログレCDレビュー東欧 も合わせてご覧ください

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