壮大なるコンセプトアルバム〜プログレメタル/プログレハード編

HR/HMにプログレッシブな感性と、作品としてのコンセプチュアルなストーリーを持ち込んだ傑作といえば、
おそらくは誰もがまずQueensrycheを思い浮かべるだろう。SEを含ませた曲間の流れと、シンセとギターを巧みに組み立てて
ドラマティックなサウンドへと仕立て上げた、そのトータルな作りはいま聴いてもなお見事だと言わざるを得ない。
その10年後にはDREAM THEATERが、映画的なドラマ性とプログレッシブメタルとの完璧な融合をなし遂げたことで、
世界中のリスナーに衝撃を与え、そして、その後の多くのバンドたちに影響を及ぼすことになる。
もともとが、知的な構築センスを標榜するProgMetalというジャンルにおいて、そこにさらにコンセプト的なテーマを加えることで
アーティストの描き出す世界観は、いっそうの重厚さと広がりを持つことになるのである。
ここではとくにプログレッシブなメタル、ハードロック、プログレハード的なバンドにおける、
コンセプトアルバムの傑作たちを紹介したい。壮大かつ知的なサウンドに身を委ねて欲しい。

                                          
緑川 とうせい



QUEENSRYCHE 「Operation Mindcrime」1988年作
ストーリー仕立てのプログレッシブな手法をHR/HMと完璧に融合させた金字塔的なアルバム。
このアルバムを語る上で、言及せねばならない「コンセプト作」云々に関しては、歌詞や世界観よりも
あくまで楽曲至上主義である今の日本のリスナーにとっては、なかなか評価が分かれるところだと思うが、
あらためて聴き直してみるに、イントロからして音の重ね方がドラマティックで、
斬新なSEの使い方は流れの中でとても効果的だし、後のDREAM THEATERが取り入れるような
ギターとシンセによる音の広げ方も見事。そして、自在に声を使い分けるジェフ・テイトの歌唱はやはり素晴らしい。
Prog Metalとして聴くと物足りないかもしれないが、ドラマティックなロック作としては一級品だ。
80年代にこれほどの知性とアイディア、そしてドラマ的手法を盛り込んだというのは画期的である。
メロディアス度・・8 ドラマティック度・・9 知的ロック度・・8 総合・・8.5
Amazon.co.jp で詳細を見る Amazon.MP3

DREAM THEATER
 「METROPOLIS PT2:SCENES FROM A MEMORY」1999年作
「IMAGES AND WORDS」収録の“METROPOLIS”のストーリーを膨らませた、壮大なコンセプト作で、
新たに超絶鍵盤奏者、ジョーダン・ルーデスを迎え、最強ともいうべき演奏陣による隙のないアンサンブルで、
ときに効果音や語りなどを織りまぜながら、場面ごとに映像とシンクロするかのように楽曲を連ねてゆく。
この映画的手法こそ、まさに彼らのプログレッブな感性とセンスの集大成というべきものだ。
PINK FLOYDの「The Wall」を思わせる広がりのあるスケール感、ストーリーの流れにそった劇的なサウンドが
じわじわと蓄積し、ラストでの感動へとつながってゆく。鉄壁のリズム隊に乗るペトルーシのギターワークと、
ルーデスの巧みなシンセが重厚に重なり、部分ごとの濃密さもさることながら、楽曲の緩急の付けかたと、
コンセプト作としての強固なビジョンが素晴らしい。知的プログレッシブメタルの新たな歴史を刻んだドラマティックな傑作だ。
ドラマティック度・・10 テクニカル度・・9 楽曲センス・・9 総合・・9
Amazon.co.jp で詳細を見る

DREAM THEATER 「SIX DEGREES OF INNER TURBULENCE」2004年作
Disc2のコンセプト組曲のイントロが始まった瞬間、壮大でクラシカルなオーケストラアレンジに度肝を抜かれる。
40分以上の組曲は山あり谷あり。美しいキーボードメロディ、叙情Voパート、テクニカル変拍子と、
前作「METROPOLIS PT2」にも通じる作りでまざまざと彼らの楽曲構築能力を見せ付ける。
ここでもやはり素晴らしいのはジョーダン・ルーデスのシンセワークで、
クラシックに裏打ちされた繊細なピアノ、キーボードメロディはある意味前作以上に重要な位置を占めている。
ラブリエの歌と共にクライマックスを迎える盛り上がりでは、シンフォニックな荘厳さとダイナミズムに溢れている。
ドラマティック度・・9 テクニカル度・・9 楽曲センス度・・8 総合・・8.5
Amazon.co.jp で詳細を見る

PAIN OF SALVATION 「REMEDY LANE」2002年作
人間の内面を描き出した壮大なコンセプト作。既成のプロクレメタルの概念にとらわれないアレンジと
ある意味でゴシックメタルにも通じるようなメランコリックな叙情も含み、効果的なシンセアレンジや
変拍子リズムの上に乗るクールなリフや語りのような歌、一転して繊細かつメロウなギターメロディなど
コンセプト作でありながら、初期の作品よりも楽曲にさらに幅をもたせているという印象である。
おそらくサウンドの深化は、リーダーであるダニエル・ギルデンロウの人間としての深化にも関わっているのだろう。
歌唱の表現力が増したことでシアトリカルなドラマ性にも説得力が感じられるようになった。
こうしたレビューや数字の評価をしづらい、スピリチュアルなバンドになってきた。内的宇宙を感じさせる傑作。
メロディアス度・・8 プログレ度・・8 内的宇宙度・・10 総合・・8.5
Amazon.co.jp で詳細を見る購入

PAIN OF SALVATION 「BE」2004年作
我々がわれわれで「ある」ということ、つまり人間の存在意義そのものを問うという、
壮大なテーマに挑んだ渾身のコンセプト作。まるでSF映画のようなナレーションから始まり
古の人類を表現するような民俗音楽的な要素や、しっとりとしたピアノの鳴り響く繊細さなど、
単なるProgMetalというにはとどまらない作風で、静かなるドラマを含んで作品は淡々と進行してゆく。
演奏はもちろんだがとりわけダニエルのヴォーカルの表現力は見事という他はなく、ときに苦悩や怒りに満ちた
一人の人間の心情を吐露するように生々しい。歌詞を読みながら聴くと、よりこの世界に同調できるだろう。
人の精神の内面をえぐるようなおそるべきコンセプト作である。本作を完全再現したライブDVDもまた必見だ。
ドラマティック度・・9 ProgMetal度・・7 壮大度・・9 総合・・8.5
Amazon.co.jp で詳細を見る

SHADOW GALLERY 「ROOM V」2005年作
傑作である3rd「TYRANNY」の続編というストーリー付きのコンセプト作。
音だけを聴くと、スリリングな曲は今までよりは少なく、どちらかというとメロディアスで
ゆったりとした雰囲気の曲がメインとなっているので、やや物足りなさもあるが、
複雑な映画的な歌詞を読めば、おそらくサウンドとマッチしてこの世界をより楽しめるのだろう。
しかし、たたみかける部分での演奏はいつもながらに素晴らしい演奏を聴かせてくれるし、
今回専任キーボーディストは不参加ながら、いつものシャドウギャラリー節のメロディラインも健在。
情景を思い浮かべて楽しむような、奥深いプログレッシブメタル作品だ。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・7 壮大度・・8 総合・・8
Amazon.co.jp で詳細を見る

Seventh Wonder 「Mercy Falls」2008年作
過去2作とも質の高い見事なアルバムで、一気に北欧ProgMetalのトップに躍り出た感もあるが、
本作はそこにコンセプト作としてのシリアスなドラマ性が加わって、
ストーリー的なドラマティックさがいっそう増したじつに見事な傑作となった。
テクニカルなアンサンブルと叙情性とが高い次元で融合したインストパートは絶品で、
ヴォーカルパートがいくぶん弱く感じられてしまうのだが、それもまた贅沢な感想か。
ともかく、テクニックだけに頼らないメロディへのこだわりと、センスあるアレンジ力によって
巧みに構築されるサウンドは、静と動のバランスや世界観の描写も含めて隙がない。
ドラマティック度・・9 テクニカル度・・8 構築度・・9 総合・・8.5
Amazon.co.jp で詳細を見る

ANUBIS GATE 「The Detached2009年作
前作もSF的なストーリーを感じさせるドラマティックな力作であったが、
本作も重厚さとメロディアスな叙情に彩られた、じつに質の高いアルバムだ。
じっくりと聴かせる展開美に、効果的なギターのメロディとシンセによるシンフォニックな彩り、
そしてマイルドに歌いあげるヴォーカルが一体となって、見事な世界観を作り上げている。
楽曲のメリハリ、モダンなアレンジセンスも細心で隙がない。作り込まれた大作である。
ドラマティック度・・8 重厚度・・8 大作度・・9 総合・・8.5
Amazon.co.jp で詳細を見る

EVERWOOD 「The Raven's Nest」2008年作
正統派ProgMetalの新人として前作も濃密なサウンドでなかなかの出来だったが、
続く本作では、音自体にさらに骨太な力強さが増してきている。
テクニカルなリズムの上をメタリックなギターリフときらびやかなシンセが絡み、
プログレメタルとしての王道的な展開力でぐいぐい聴かせる。
弱点だったヴォーカルも自然体の歌唱になり、問題なくサウンドに溶け込んでいるし、
三部構成に分けられた物語的なコンセプトも作品をドラマティックに仕上げている。
ハンガリーという地域性を考えれば、これは傑作の名に値する力作だ。
メロディアス度・・8 ProgMetal度・・8 ドラマティック度・・8 総合・・8
Amazon.co.jp で詳細を見る

TIM DONAHUE 「MADMEN AND SINNERS」2004年作
独自に開発したハープギターを弾きこなす、ティム・ドナヒューが長年温めてきたコンセプト、
人類と未来、精神世界や宗教観というものを合わせた壮大なテーマをプログレメタル的な作風で構築。
テクニカルでありつつも、ハープギター特有の繊細な音色が通常のギターとは違った感触で、
暖かみのある叙情美とともに、音圧のうるさくない、いわば優雅なプログレメタルに仕立てている。
ティム自身によるシンセアレンジも美しく、ときにはグレゴリアンな荘厳な雰囲気も加わって、
そこに乗るラブリエの歌唱が楽曲のドラマ性をぐっと高める。ドラムは現DREAM THEATERのマイク・マンジーニ。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 優雅度・・8 総合・・8
Amazon.co.jp で詳細を見る

GENIUS A ROCK OPERA 「EPISODE 3 -The Final Surprise」2007年作
イタリアのマルチプレイヤー、ダニエル・リヴェラーニによるロックオペラ。
毎回多彩なゲストが話題を呼んでいるが、今作ではD.C.クーパー、ダニエル・ギルデンロウ、
ヨルン・ランデ、エリック・マーティンという、豪華なヴォーカル陣が集結した。
楽曲の方もやや地味だった前作に比べ、シンフォニックなアレンジが増していて、
テクニカルなプログレメタル的展開美が光る。そして実力あるヴォーカリストたちの歌唱も見事で、
サウンドの説得力を引き上げている。重厚かつ壮麗なシンフォニックメタルオペラ作品だ。
シンフォニック度・・8 ProgMetal度・・8 壮大度・・8 総合・・8
Amazon.co.jp で詳細を見る

VANDEN PLAS 「Christo 0」2006年作
過去の4作はどれも、まあ悪くはないが…というくらいのいわば中庸の出来であったのだが、
本作は「岩窟王」として知られるデュマの名作「モンテ・クリスト伯」をコンセプトにした、
ドラマティックな力作となった。メタリックなエッジと荘厳な叙情性で表現される楽曲は、
展開のメリハリという点でもこれまで以上で、ときにシンフォニックな厚みを感じさせながら
ストーリー的に構築されてゆく。決してテクニカルすぎず、しっかりと歌を聴かせる作風もはまっている。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 重厚度・・8 総合・・8
Amazon.co.jp で詳細を見る

TOMORROW'S EVE Mirror of Creation 22006年作
キーボード入りの5人組で、ドラマティックなプログレパワーメタルをやっている。
SF的なコンセプト作なのだろうか、シリアスな世界観と、適度にテクニカルな楽曲で
重厚かつ濃密なサウンドを描き出すあたりは、なかなかの実力派だ。
9分、17分という大曲もこなすあたりは、しっかりとした構成力もあり、
最近でいうと、SEVENTH WONDERをもう少し正統派よりにした感じだろうか。
曲調は変に複雑すぎず難解さも感じられないので、ProgMetal初心者でも楽しめるだろう。
メロディアス度・・7 プログレ度・・7 重厚度・・8 総合・・8
Amazon.co.jp で詳細を見る Amazon.MP3

Devin Townsend 「Infinity1998年作
STRAPPING YOUNG LADの活動を一段落させたデヴィンが、今一度、己自身の内面と向き合うことで作り上げた力作。
メタリックなハードさとプログレッシブな知的さ、そこにいくぶんのユーモアを合わせたそのサウンドは、
芸術的な音楽家であり、孤高の道化師でもあるような、デヴィン自身の人生が投影されたような作風だ。
内的な吐露という点ではPAIN OF SALVATIONのダニエル・ギルデンロウなどに通じるものも思わせる。
連なってゆく楽曲の中にある、苦悩や悲しみや楽しさ、そのきらめきを、音として聞き取ることができたなら、
これはまさに彼の人生のテーマのようなアルバムであり、ひとつの自伝書ともいうべき濃厚な作品である。
おそろしく内的なパワーに溢れている。このアルバム完成後、彼は1、2年ぐったりとしていたというのもうなずける。
ドラマティック度・・8 内的プログレ度・・8 内的表現度・・9 総合・・8.5
Amazon.co.jp で詳細を見る

DEVIN TOWNSEND 「Ziltoid The Omniscient2007年作
2006年の「Synchestra」は優しく内的なプログレッシブ作品であったが、
本作はSFコメディー的なストーリーを盛り込んだ壮大な(?)コンセプト作となった。
時間を操る燃料であるコーヒーを手に入れようと地球を侵略にかかる宇宙人、
ジルトイドを主役にした、壮大かつちょっぴりおバカなストーリーを、セリフなども含んだ
メタルオペラ的な世界観で構築、ヘヴィなギターリフと変則リズムを盛り込んだテクニカル性は
いわばGjent的な聴き心地もあり、スペイシーなシンセアレンジがそれを包み込んでゆく。
いかにもデヴィンらしいアヴァンギャルドなセンスと、緻密なアレンジ力が合わさった力作です。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 壮大度・・8 総合・・8
Amazon.co.jp で詳細を見る

AYREON 「THE HUMAN EQUATION」2004年作
今作のテーマは人間の内的精神世界らしく、サウンドの方はややシリアスで硬質感のあるもので
例によって豪華なゲスト陣…ジェイムス・ラブリエをはじめ、デヴィン・タウンゼント、
MOSTLY AUTUMNのヘザー嬢らによる歌唱がこの壮大な世界観にしっかり説得力をもたせている。
メタリックでエッジが効いた部分と歌唱をメインにしたメロディアスな部分のメリハリがよく、
ヴァイオリン、チェロなどを導入したクラシカルでシンフォニックなパートなどが交錯し、
全体の空間的な曲構成はDREAM THEATERの「METROPOLIS PT2」を思わせる雰囲気もある。
ルカッセン自身のギター、キーボードも今回は実にメロウにやわらかに鳴り響いており
メタリックなトラッドメロディやデス声なども効果的で、最後まで密度のあるアルバムだ。
シンフォニック度・・8 壮大度・・9 楽曲・・8 総合・・8
Amazon.co.jp で詳細を見る

Ayreon 「01011011」2008年作
ハンズィ・キアシュ(BLIND GUARDIAN)、ヨルン・ランデ、スティーヴ・リー(GOTTHARD)、ボブ・カトレイ(MAGNUM)、
タイ・テイバー(KINGS X)、ダニエル・ギルデンロウ(PAIN OF SALVATION)ヨナス・レンクセ(KATATONIA)、
アネク・ヴァン・ガスバーゲン(元THE GATHERING)、フロール・ヤンセン(AFTER FOREVER)、シモーネ・シモンズ(EPICA)、他
豪華メンバーが参加。サウンドは、ルカッセンのこれまでの音楽キャリアを集結させたような雰囲気で、
メロディアスハード風、プログレメタル風、ゴシックメタル風というように、様々な要素が入りつつ
SFファンタジー的なコンセプトを映画的な壮大さで構築している。全体的には派手な展開よりは、ゆるやかに聴かせる部分が多く、
とくに女性ヴォーカルの曲ではゴシック的な雰囲気が強いかもしれない。Disc2の方が少しプログレ度が高く、
後半に向かってじわじわと盛り上がってゆく。映画的に楽しめる壮大、壮麗なシンフォニック・プログレ・ハードロック作品である。
シンフォニック度・・8 メタル度・・7 壮大度・・9 総合・・8
Amazon.co.jp で詳細を見る

Erik Norlander 「Music Machine」2003年作
作られたスーパー・スター、“ジョニー・アメリカ”を主役にした、2枚組の壮大なコンセプト作。
マーク・ボールズ、ケリー・キーリング、ヴァージル・ドナーティ他、多くのゲストが参加した
サウンドは、壮麗かつシンフォニックなシンセとメタリックなギターを融合させた
ProgMetal的な質感で、ストーリーにそった歌詞とともにドラマティックに構築されてゆく。
古き良きプログレの感触を残しつつ、単なる懐古主義にはならないセンスが見事で、
メタリックな作品だった「Into The Sunset」よりも広がりのある楽曲を聴かせてくれる。
シンフォニック度・・8 ProgMetal度・・7 壮大度・・8 総合・・8
Amazon.co.jp で詳細を見る

LANA LANE 「Lady Macbeth」2005年作
純粋なスタジオ作としては7作目で、本作はマクベス夫人をテーマにしたコンセプト作。
今回は壮麗なシンフォニック性とメタリックな勢いとのメリハリがさらについて、
やはりストーリー性を持たせたせいか、サウンドにはシリアスな雰囲気が漂い、
全体的にも重厚感とドラマティックな要素が強くなっている。
エリク・ノーランダーのアレンジ力も冴えを見せ、パワフルなメタル曲から
ラナの歌声をじっくりと聴かせるシンフォニックなバラードなど、変幻自在。
これはハードシンフォニックファンにも勧められる、聴き応えのあるの濃密作だ。
メロディアス度・・8 ドラマティック度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
Amazon.co.jp で詳細を見る

ROSWELL SIX 「Terra Incognita:A Line in the Sand2010年作
SF小説家Kevin J. Andersonの小説と連動したロックオペラプロジェクトの2作目。
前作ではエリク・ノーランダーが中心となっていたが、今回はCHAINやFRAMESHIFTで活躍する
ヘニング・ポウリーをソングライターに迎えている。サウンドの方はダイナミックなProgMetal色が増して
ヘヴィなメタリックさと壮麗なシンフォニックアレンジでドラマティックに聴かせる。
スティーヴ・ウォルシュ(KANSAS)、マイケル・サドラー(SAGA)、チャーリー・ドミニシなどが参加、
楽曲ごとにそれぞれの魅力的なヴォーカルが楽しめる。AYREONなどのファンにもお勧めだ。
シンフォニック度・・8 ドラマティック度・・8 壮大度・・8 総合・・8
Amazon.co.jp で詳細を見る Amazon.MP3

GARY HUGES 「ONCE AND FUTURE KING PART U」2003年作
TENのゲイリー・ヒューズによるアーサー王伝説をテーマにしたロックオペラの第二弾。
本作もゲスト陣がまた豪華。当のボブ・カトレイをはじめ、Voに、D.D.クーパー、ラナ・レーン
イレーレヤンセン(AFTER FOREVER)、サビーネ・エデルスバッカー(EDENBRIDGE)他、
Keyにはアルイエン・ルカッセン(AYREON)、ポール・ホドソン(TEN)など。
歌い手それぞれに配役を定め、物語にそって楽曲が進むというやり方はAYREONなどでもそうだが、
この作品はプログレというよりは、やはり歌もののメロディアスハード+シンフォニックというサウンドで、
全編に英国的な気風と伝統、TENにも通じる哀愁、叙情とが漂っている。
正統派ロックオペラとしても、多様なVoが味わえるメロディアスハードとしても出来が良い。
メロディアス度・・8 英国度・・9 豪華メンバー度・・9 総合・・8
Amazon.co.jp で詳細を見る

Meat LoafBat Out of Hell 3-Th Monster Is Loose」2006年作
世界的な大ヒットを記録した前作「地獄のロックライダー2」から13年ぶりとなる本作は
「最後の聖戦」と題されたシリーズ完結編となる77分の大作。Julie Bellによるジャケからしてもう濃いのだが、
内容もオーケストレーションを含めた壮麗なハードロックオペラで、よりシンフォニックな作風になっている。
ミート・ローフのオペラティックな歌声はもちろん、ときに女性ヴォーカルを含んだ美しいバラードも感動的で、
デスモンド・チャイルドとジム・スタインマンによる鉄壁の楽曲コンポーズによるメジャー志向の聴きやすさで、
メタル的な重厚さこそ薄いものの、メロディアスかつダイナミックに切り広げられる壮大なる傑作となっている。
壮麗度・・9 メタル度・・7 ロックオペラ度・・9 総合・・8.5
Amazon.co.jp で詳細を見る

Uli Jon Roth 「Under A Dark Sky」2008年作
人類への警告を含んだメッセージとともにクラシカルに幕を開ける、壮麗なオーケストラをバックにしたロックオペラ作品。
バンドパートでの男性Voはマーク・ボールズが、女性Voは元SAHARAのリズ・ヴァンダルがつとめる。
古き良きロック風味とオーケストラアレンジが融合した、優雅でクラシカルな作風であるが、
そこに人間的で温かみのある演奏を聴かせるのはさすが。ウリの奏でるスカイギターはときに優しく、
ときに人類を叱咤するように激しく、宇宙における地球の物語を悲しみと希望の音によって織りなしてゆく。
メタル的なモダンさを求める若いリスナーには、あるいは古くさく感じるかもしれない。しかしこれがロックであり、
これが本物の音楽なのだ。音の向こうに世界が見えるかどうか。紡がれるメロディの意味を感じるかどうか。
18分の大曲のラストは唐突だが。類まれな天才の手による、音楽と世界の融合がここにまたひとつ完成した。
シンフォニック度・・9 壮大度・・10 人類と地球度・・10 総合・・9
Amazon.co.jp で詳細を見る

IT BITES 「Map of the Past2012年作
2008年の復活作に続く、通算5作目のスタジオアルバムで、ある英国家族の人生をテーマにしたコンセプト作。
流れにそって聴かせるストーリー的な作風でありながら、一曲ごとは彼ららしい明快なメロディをもった
キャッチーな聴き心地なので難解さはまったくない。大人の味わいをかもしだすジョン・ミッチェルのヴォーカルは
いよいよ円熟味を増し随所に美麗なシンセアレンジや適度なテクニカル性をまじえつつ、ゆるやかに盛り上がり、
MAGELLANあたりにも通じる緩急のついたドラマティックなサウンドが展開してゆく。
後半はむしろシンフォニック・プログレ的な構築性も見せ、叙情的なドラマ性が素晴らしい。
聴きやすさと完成度が両立した、シンフォニックなプログレハードとして楽しめる力作。
メロディック度・・8 ドラマティック度・・8 プログレハー度・・8 総合・・8
Amazon.co.jp で詳細を見る

RUSHClockwork Angels
2012年作
スタジオアルバムとしては5年ぶりとなる作品で、ドラマティックな雰囲気の1曲めからして
ハードな力強さと知的なアレンジセンスで、これまで以上にProgMetal的な風味を感じさせる。
全体的にヘヴィな質感が増していて、ベテランらしい巧みなアンサンブルも含めた聴き心地は
ときにDREAM THEATER的でもある。楽曲ごとのインパクトやスリリングさ、メロディなどには、
いくぶん物足りなさもあるのだが、コンセプトアルバムとしての流れを感じさせる壮大な世界観はさすがだし、
70年代後半の作風を現代的に甦らせたという感じもある。プログレメタルファンにも楽しめるだろう力作だ。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 壮大度・・8 総合・・8
Amazon.co.jp で詳細を見る


MAGELLAN 「HUNDRED YEAR FLOOD」2002年作
SHADOW GALLERYとともにMAGNA CARTAレーベルからデビューし、
キャッチーかつドラマティックなハードシンフォニックサウンドでネオプログレシーンを牽引するこのバンド。
本作は、ベトナム戦争で戦死した兄弟をテーマにしたコンセプト作で、のっけから34分という長大な組曲で始まる。
歌メロに比重が置かれていることもあって、大作でありながらもコーラスワークや、メロディアスな歌のせいかとても聴きやすい。
もちろんバンドの核であるトレント・ガードナーの多彩なキーボードワークも光っており、
EXPLORER'S CLUBなどにおける曲作りの経験がフィードバックされているのだろう、
適度にスリリングな展開も盛り込んだ楽曲は、シンフォニックなプログレハードとして楽しめる。
メロディアス度・・8 ドラマティック度・・8 重厚度・・7 総合・・8
Amazon.co.jp で詳細を見る Amazon.MP3

LEONARDO THE ABOSOLUTE MAN 2001年作
アメリカのプログレメタル専門レーベル、MAGNA CARTA関連ミュージシャンが集い
芸術家レオナルド・ダヴィンチの生涯をテーマにしたハードシンフォニック大作。
MAGELLANのトレント・ガードナーが作曲、メインVoにDREAM THEATERのジェイムス・ラブリエを起用、
時にQUEENを思わせるコーラスハーモニーに、シンフォニックかつ壮麗な盛り上がりで聴かせるサウンドは、
しっかりとメタル的なエッジも効かせつつ、表現豊かな歌唱と優雅なオーケストレイション、
そしてプログレメタル的な展開美が冴える、見事な力作に仕上がっている。
シンフォニック度・・9 プログレ度・・8 楽曲・・8 総合・・8
Amazon.co.jp で詳細を見る Amazon.MP3

COHEED AND CAMBRIA 「NO WORLD FOR TOMORROW」2007年作
もともとがただのエモーショナルロックとは思えないドラマ性をもったバンドだったが、
ここに来てそれに拍車がかかり、今作の音には風格すらただようようになった。
前作からその傾向はあったのだが、全体を包むコンセプチュアルな物語性がいっそう機能し、
近未来SF的なジャケとともに、イメージとしてのスケール感が増している。
キャッチーな歌メロと絡むギターもかっこいいフレーズを連発、ときにDREAM THEATERをも思わせる
プログレッシブなドラマ性で聴かせてくれる。中盤はややだれる感じもするが、ラストの24分の組曲は圧巻。
メタル、プログレ、エモ、ポストロック、全てのリスナーが聴ける見事な作品だ。
メロディアス度・・8 ドラマティック度・・8 プログレッシヴエモ度・・9 総合・・8
Amazon.co.jp で詳細を見る

...And You Will Know Us By the Trail of Dead 「Tao of the Dead」2011年作
まるで映画作品のようなジャケや豪華なブックレットだけでもワクワクするが、
サウンドの方も前作からの流れで、壮大なドラマ性を描くようなスケール感が素晴らしい。
アルバムは2部構成となっていて、PART1は35分、PART2は16分におよぶ組曲で、
起伏に富んだ展開と、叙情性、そしてもちろんロックとしての躍動感に富んだダイナミズムが光る。
この手法はまるでプログレッシブロックのスタイルであるのだが、プログレ、ポストロックのリスナーなどにも
楽しめるだけの普遍性を有している。大作を描ききる実力とセンスとは、やはり並のバンドではない。
音に難しさはない。つまりは、ひとつのロックバンドが偉大なドラマを作り上げたということである。
ドラマティック度・・9 プログレな感性度・・8 壮大度・・9 総合・・8.5
Amazon.co.jp で詳細を見る

Crippled Black Phoenix「I,Vigilante」2010年作
MOGWAIのドミニク・アイチソンとElectric Wizardのジャスティン・グリーヴスを中心にしたバンドで、
サウンドは古き良きドゥームロックの感触に、ポストロック的な広がりのある壮大さが加わったもの。
オルガンの音色を含めアナログ感たっぷりのアンサンブルが心地よく、薄暗い叙情を内包しつつ、
知性的な構築も感じさせるのがプログレ的か。第二次大戦バルジの戦いにおけるバストーニュの戦いを
テーマにするなど、コンセプト風味のストーリー性も感じられる。むしろプログレ、ポストロックのファン向けの力作。
ドラマティック度・・8 ドゥームロック度・・7 アナログ度・・8 総合・・8
Amazon.co.jp で詳細を見る Amazon.MP3


*ファンタジーメタル/エピックメタル特集
*ファンタジーな冒険プログレ特集
*メタラー向けハードシンフォニック特集
*イタリアン・プログレメタル特集
*シアトリカル&ロックオペラ特集も合わせてご覧ください

音楽ページトップへ