ヴァイキングメタル&ペイガン/フォークメタル

Viking Metal/Pagan Metal/Folk Metal   



◆トラッドメタルの変遷

スウェーデンのミューシャン、クォーソン氏の個人ユニットである、Bathoryは、80年代からすでに北欧神話に傾倒した幻想的な世界観を独自のダークメタルとして描き出していた。
それはのちの北欧ブラックメタルシーンに影響を与え、また世界観としてのヴァイキングメタルの原点ともいえるだろう。
90年代に入ると、ノルウェーのENSLAVEDが、ヴァイキングメタル色を色濃く含んだブラックメタルを標榜し、
現在に通じるようなペイガン/ヴァイキングメタルのスタイルを、EINHERJERMITHOTYNといったバンドが完成させてゆく。

トラディショナルな世界観という点では、フィンランドのAMORPHISなどもトラッドメタルの元祖のひとつといってよいし、
英国のSKYCLADは、早くからヴァイオリンによるフォーク/トラッド色を巧みにメタルサウンドと融合させていた。
また、スペインのMAGO DE OZなども、正統派のメタルサウンドにフルートやヴァイオリンなどのフォーク要素をいち早く取り入れていた。

フォーク、トラッドとメタルの融合という、この新たなジャンルは、90年代後半以降、後続のバンドを次々に生み出しながら、サウンドスタイルが確立されてゆく。
ポルカを取り入れたFINNTROLLや、愉快な酒飲み野郎たち…KORPIKLAANIなどは、今では日本でも人気を得ており、
MOONSORROWTURISASENSIFERUMなども含めたフィンランド勢は、勇壮な世界観とその質の高い音楽性から評価が高い。
ペイガンメタルという観点からすると、北欧やドイツのみならず、昨今ではロシアやウクライナなどからも、多くのバンドが出現するようになった。

ここでは、ヴァイキングメタル、フォークメタルなどを一括りにして、それらのバンドの中でも傑作と思われる、比較的聴きやすいものを厳選した。
このジャンルへの入り口に参考になれば幸いである。


                                   2008.7.1  
緑川 とうせい



◆90年代、ヴァイキングメタル、トラッドメタルの黎明

EnslavedVikingligr Veldi & Hordanes Land」
ノルウェーのヴァイキング・ブラックメタル、エンスレイヴドの1st+ミニのカップリング盤。1993/1994年作
Bathoryなどとともにヴァイキングメタルの元祖としても語られるこのバンド、
うっすらとしたシンセをバックに、ダミ声ヴォーカルと反復するトレモロのギターリフで聴かせるサウンドは
いまでいうヴァイキング系よりは、BURZUMやEMPERORなどの初期ノルウェイジャンブラックの雰囲気に近い。
随所に激しいブラスト疾走も含みつつ、邪悪なダークさよりも北欧神話の世界を描きだすような
ミスティックな雰囲気が特徴的。10分以上の大曲を中心にしたヴァイキングブラックの力作だ。
デビューミニの方は、こもり気味の音質とともにさらに荒々しい原初的なブラックメタルサウンドが聴ける。
ドラマティック度・・7 暴虐度・・7 北欧度・・9 総合・・8
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EINHERJERDragons of the North
ノルウェーのヴァイキングメタル、エインヘリヤルの1996年作
北欧の本格派ヴァイキングメタルの元祖というべきこのバンドのデビュー作。
土着的なギターリフと野卑なダミ声ヴォーカルで描き出すサウンドは、
辺境的な情緒を含んで勇壮で神秘的な世界観を構築してゆく。
いまのバンドのようなスタイリッシュさやきらびやかさとは無縁で、
あくまで武骨に北欧のヴァイキングたちの世界を語り描いている。
ドラマティック度・・8 ヴァイキング度・・8 ノルウェイジャン度・・10 総合・・8
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MITHOTYN 「In the Sign of the Ravens」
スウェーデンのヴァイキングメタルバンド、ミソティンの1st。1997年作
剣を手に中世風のコスチュームに身を包んで、イメージ的にも本格的なヴァイキングメタルを
作り上げたのはこのバンドといってよいだろう。牧歌的で土着的なメロディをギターフレーズで奏で
ダミ声による猛々しいヴォーカルを乗せたサウンドは、後のバンドの規範ともなった。
男臭い勇壮なコーラスに哀愁を漂わせた雰囲気は、剣を持つ戦士のロマンに満ちている。
この後3枚のアルバムを出したあとバンドは解散、メンバーは新たにFALCONERを結成する。
メロディアス度・・8 暴虐度・・6 ヴァイキング度・・9 総合・・8
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Forlorn 「The Crystal Palace」
ノルウェーのヴァイキングメタル、フォーローンの1st。1998年作
うっすらとしたシンセとギターの奏でるメロウなフレーズ、そして母国語の歌声で
土着的な美しいヴァイキングメタルを聴かせる。朗々としたコーラスもよい感じで
北欧神話のエピック性を表現するような作風で、同時期のEINHERJERに比べると
こちらはもっとやわらかな牧歌性が強い。ゆったりとした聴き心地の北欧土着メタルが楽しめる。
2nd以降は方向性が変わってゆくようで、ヴァイキングメタルとしては本作が代表作だろう。
ドラマティック度・・8 ヴァイキング度・・7 北欧度・・9 総合・・8
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THYRFING「UNKRAFT」
スウェーデンのヴァイキングメタルバンド、ティルフィングの3rd。2000作
田舎臭いフォーキーなギターリフにデス声ヴォーカルという、まさに王道のヴァイキングメタルサウンドだが、
本作に関しては、壮麗なキーボードの絡みを含めたキャッチーなほどのメロディアスさが心地よいのである。
かつてのMITHOTYNを思わせる武骨な勇壮さを含みつつ、メロディはそれ以上の聴きやすさで、サウンドの質も良好。
アコースティックギターやノーマル声も効果的に折り込むなどメリハリも効いていて、ヴァイキングメタル初心者にもお薦めの傑作。
メロディアス度・・8 田舎メロ度・・9 勇壮度・・8 総合・・8
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Menhir「Thuringia
ドイツのペイガン・ヴァイキングメタル、メンヒルの3rd。1999年作
クサメロたっぷりのギターフレーズで聴かせるシンフォニック・ヴァイキングメタルサウンドは、
1stの頃よりも音の説得力が増していて、ドラマティックな重厚さが備わってきた。
ダミ声ヴォーカルと朗々としたドイツ語のノーマルヴォーカルの掛け合いや
リズムチェンジによる楽曲アレンジなどもなかなかツボをついている。
美しいシンセに加え、随所にアコースティカルな牧歌性も取り入れていて
メリハリのある音作りでエピックな幻想美を描き出す。ゲルマン系ペイガンの傑作。
クサメロ度・・8 エピック度・・8 ゲルマン度・・8 総合・・8
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SKYCLAD 「IRRATIONAL ANTHEMS」
イギリスのトラッドメタルバンド、スカイクラッドの6th。1996年作
ヴァイオリン入りのトラッドメロディをメタルに融合させた元祖というべきバンド。
本作では初期のメタリックな粗雑さは薄れ、艶やかなヴァイオリンが鳴り響く、
本格的なトラッドメタルとしての雰囲気を漂わせて、マーティン・ウォルキーアの歌声も
かつてのダミ声よりもずっと聴きやすく歌っていて、牧歌的なバンドのイメージを確かなものにしている。
曲によってはシンセを取り入れていて、現在のフォークメタルへとつながる質感もある。
メロディアス度・・7 フォーキー度・・7 楽曲・・7 総合・・7.5
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AMORPHIS 「Tales From the Thousand Lakes」
フィンランドのトラディショナルメタルバンド、アモルフィスの2nd。1995年作
1stの頃は激しいデスメタルサウンドをやっていた彼らが、なにを思ったのか
本作では土着的な旋律を大胆に取り入れた傑作を作り出した。ちょうどこの頃北欧では
IN FLAMESやDARK TRANQUILLITYなどのメロデスバンドたちが次々に現れていたので、
初期のAMORPHISもそれらのバンドと同義に扱われていたが、むしら彼らの根本とするのは
フィンランドのトラディショナルに基づいた音楽で、それは後のミニアルバム「My Kantele」でも明らかだ。
まだ本作の時点ではヴォーカルこそデスヴォイスであるが、ギターのリフ、メロディには、フォーキーな香りとサイケな浮遊感が強く、
それが当時はえらく個性的に感じられた。このバンドの成功が、後のトラッドメタルバンドへ大きな影響を与えたのは間違いない。
メロディアス度・・8 トラッ度・・7 フィンラン度・・9 総合・・8
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◆正統派ヴァイキング系


MOONSORROW  「KIVENKANTAJA」
フィンランドのヴァイキングメタルバンド、ムーンソロウの3rd。2003年作
シンフォニックメタルとさえ言ってもいいほどの音像に、ゆったりとしたヴァイキングメロディ、
曲は長いながらもアコースティックを効果的に取り入れるなど静と動のメリハリもあり、
なにより音の重ねに説得力があるので、聴いていてその世界観にぐいぐい引き込まれる。
普通声とダミ声を使い分け、勇壮な男コーラスに加え、ここぞという場面ではシンセで盛り上げる。
母国語の歌唱もとても音に調和していて、メロディには北欧の寒々しさが込められている。
これぞシンフォニック・ヴァイキングメタルの歴史的傑作と断言できる。
シンフォニック度・・9 メロディアス度・・8 ヴァイキング度・・9 総合・・8.5
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MANEGARM 「Vargstenen」
スウェーデンのヴァイキングメタルバンド、マネガームの5th。2007年作
本物の香りをはなつヴァイキングメタル。のっけから土着性ぷんぷんの重厚なギターメロディで幕を開け、
期待通りのヴァイキングサウンドが炸裂する。かつてのMITHOTYNを思わせる
猛々しいヴォーカルの咆哮と、勇ましくも哀愁を含んだトラッド音階のメロディが胸にしみる。
激しさだけでなくノーマル声に女性コーラスも入った静のパートを盛り込むなど、
楽曲としてのメリハリも付けられて、ドラマ性の向上に大いに貢献している。
世界観と説得力をともなった本格派のヴァイキングメタル傑作だ。
メロディアス度・・8 ヴァイキング度・・9 ドラマティック度・・9 総合・・8.5
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「Fi'Mbulvntr」
スウェーデンのヴァイキングメタル、キング・オブ・アスガルドの2010年作
ギター、ベース、ドラムというシンプルなトリオ編成で、かつてのMITHOTYNを思わせる
オールドスタイルのヴァイキングメタルサウンド。古き良き質感のギターリフ、フレーズと
ダミ声ヴォーカルを乗せて勇壮な世界観を描き出しつつ、どこか牧歌的な田舎臭さもまた魅力。
今となっては新鮮味はないが、むしろモダンさに反骨するようなサウンドはとても耳心地がいい。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・7 古き良きヴァイキング度・・9 総合・・8
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Suidakra
「Book of Dowth」
ドイツのヴァイキングメタル、スイダクラの2011年作
デビューは90年代、本作はすでに10作目というキャリアのあるバンド。
前作Crogacht」はエピックな壮大さを漂わせた傑作であったが、今作も期待通りの力作である。
いくぶんメロデス的な質感もあるツインギターの重ねとケルティックな叙情メロディを合わせた作風は、
ファンタジックな世界観を含みつつ適度に激しい疾走感とともに、この手のバンドの中ではずいぶん洗練されている。
土着的な感触もイモ臭ささがない分、一般のリスナーにも楽しめるくらいの普遍性があり、
やや方向性は異なるがENSIFERUMなどと同様のクオリティを有しているといっていいだろう。
ゲストの女性ヴォーカルやアコースティカルな要素も効果的で、サウンドを叙情的に彩っている。
ドラマティック度・・9 エピック度・・9 ケルティック度・・8 総合・・8.5
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◆シンフォニック&エピック系

TURISAS「Varangian Way」
フィンランドのヴァイキングメタルバンド、チュリサスの2nd。2007年作
今回はスカンジナヴィアからミクラガルド(コンスタンティノープル)までの旅をたどる壮大なコンセプト作。
前作にあったRHAPSODYばりの壮麗なシンフォニック性を引き継ぎつつ、今作はむしろ、MOONSORROWにも通じるような
雰囲気ものとしての「世界観の空気」を大切にしたという印象で、パッと聴きには地味に感じるかもしれない。
男達の勇壮なコーラスや、旅の途中での出来事をつづる旅行記のような雰囲気でイメージ音楽としての要素もあって、
派手すぎないアレンジが逆に説得力を生み出している。ヴァイオリン、アコーディオンなどのフォーキーな音色も、
戦いの勇壮さとの対比として効果的に使用され、大団円にいたるまでの過程を濃密に描き出す役目を果たしている。
1曲ごとのインパクトや派手さはないが、トータルに描かれた作品世界に浸って聴くべき作品だ。
シンフォニック度・・8 ヴァイキング度・・7 勇壮度・・9 総合・・8
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Ensiferum「Unsung Heroes
フィンランドのヴァイキングメタル、エンシフェルム2012年作
2001年のデビューから高品質な疾走型ヴァイキングメタルを作り続けるこのバンド、、
5作目となる本作も期待通りの出来ばえだ。シンフォニックといってもよいイントロに続き、
三連リズムの勇壮なサウンドが炸裂、荒々しいヴォーカルとギターの奏でる土着的フレーズに
女性シンセ奏者の奏でる美麗なシンセワークが合わさり、じつに重厚な聴き心地である。
ギターは随所ににメロディックなフレーズを折り込み、勇壮なコーラスがエピックな高揚感をあおる。
女性ヴォーカルで聴かせるフォーキーなナンバーや、ラストの大曲ではプログレッシブな展開が圧巻。
疾走感はやや抑えめながら、音の力強さと雄大なスケール感が合わさったドラマティックな傑作だ。
ドラマティック度・・8 ヴァイキング度・・8 フィンラン度・・8 総合・・8.5
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WINTERSUN 
フィンランド のヴァイキング・メタル・バンド、ENSIFERUMを脱退した
JARI MAENPAAのソロプロジェクト、ウインターサンのアルバム。2004作
ENSIFERUMの1stは疾走型のヴァイキングメタルとしては、非常に聴き易いアルバムだったが、
方向性としてはそれを受け継いだもの。思いの外キラキラとしたネオクラ風の曲調に「へ?」となるが、
シンフォニックメタル気味なメロデスとして聴けば非常に高品質。爆走するブラストビートに、
三連系のヴァイキングリフとメロディ、そして男臭いコーラスが重なり、勇壮でありながらも洗練されたサウンド。
アレンジをメロデス風にした、シンフォニック・ヴァイキングメタルだ。
メロディアス度・・8 暴虐度・・8 ヴァイキング度・・7 総合・・8
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EQUILIBRIUMSagas
ドイツのシンフォニック・ヴァイキングメタルバンド、エクリブリウムの2nd。2008作
今作ものっけから、ドシンフォニックなイントロに胸踊る。一聴して、フォークメタルとしての本気度が増し、
それとともに前作の作り物めいたきらびやかさがそのまま壮麗なる世界観を構築する強固な音圧へと格上げされた印象。
BAL-SAGOTH級のシンフォニックなクサメロに、ときにRHAPSODY的な勇壮さと、FINNTROLLにも通じるフォーキーメロディが合わさって、
濃厚サウンドでたたみかける。美麗なシンセにアコーディオンの音色で疾走する様は、暴虐さよりもひたすらメロディックで、
むしろ愉快な雰囲気だ。ただこのバンドの場合、本物の土の香りというよりも、作られたファンタジー世界を思わせるので、
硬派なヴァイキングメタル好きにはあるいは軟弱にも聴こえるかもしれない。むしろフォーク風味のシンフォニックメタルとして聴くべきだろう。
ラストは16分の大曲で、全79分の濃密絵巻。ともかく素晴らしき力作であるに違いない。
シンフォニック度・・9 ヴァイキング度・・7 壮麗度・・9 総合・・8.5
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Thrudvangar「Durch Blut Und Eis」
ドイツのヴァイキングメタルバンド、サルドヴァンガーの4th、2010年作
シンフォニックで大仰なイントロからしてまるで映画のような壮大さだが、
曲が始まるとブラストビートで激しく疾走、シンセを含んだ重厚なアレンジで、
これまで以上にドラマティックな雰囲気である。このバンドの場合、ギターリフにしっかりとヘヴィさがあるので、
正統派メタルの男臭さを随所に漂わせているがよいのだ。旅の休息を感じさせるような静かなパートや
ミドルテンポでの格好よさにもセンスを感じる。ENSIFERUMやTURISASにも負けないクオリティの傑作である。
ドラマティック度・・8 疾走度・・8 ヴァイキング度・・8 総合・・8.5
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]W Dark CenturiesDen Ahnen Zum Grusse」
ドイツのシンフォニックペイガンメタル、]Wダーク・センチュリーズの2003年作
アコギとフルートによるイントロから曲が始まると、土着的なクサメロを奏でるギターとシンフォニックなシンセに
ダミ声ヴォーカルと勇壮なコーラスを乗せて聴かせる。エピックな香りをぷんぷんと匂わせるサウンドは、
この手のペイガンメタル好きにはたまらないだろう。メンバー写真も含めて、中世の世界観を描き出そうとする
意気込みがあり、音質自体はややこみりぎみながら、それもかえって幻想的な雰囲気を強くしている。
まさに14世紀…中世のゲルマン戦士たちが森の中で戦うような、そんな光景が目に浮かぶようだ。
シンフォニック度・・7 クサメロ度・・8 エピック度・・8 総合・・8
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Bifrost「Heidenmetal」
オーストリアのペイガン/ヴァイキングメタル、ビフレストの2010年作
北欧神話のアースガルドとミッドランドをつなげる「虹の橋」を意味するバンド名で、
ツインギターの土着的な旋律で聴かせる、正統派のヴァイキングメタルサウンド。
うっすらとしたシンセアレンジもシンフォニックすぎることなく、
あくまで初期のMITHOTYNに通じる武骨な勇壮さを前に出しているのがよろしい。
牧歌的なクサメロやヴァイオリンの旋律が入ったフォーキーな味わいもあって、
全体的なクオリティもなかなか高い。北欧神話のエピカルな幻想美を感じさせる力作。
ドラマティック度・・8 フォーキー度・・8 エピック度・・8 総合・・8
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◆フォークメタル系

SKYCLAD 
「A SEMBLANCE OF NORMALITY」
イギリスのトラッドメタルバンド、スカイクラッドの2004年作
フォーク/トラッドをメタルと融合させた元祖といえばこのバンド。
本作は初期における曲作りのキーマンであったマーティン・ウォルキーアが脱退してからの2作目となる。
このVoはマーティンのようなダミ声タイプではなく、力まずに歌う無難な声質なので
初期にあった無骨さが取り払われており、以前よりもずっと聴きやすくなっている。
曲の方もケルトな雰囲気はそのままに、効果的にシンセを使用したり
オーケストラの導入などで、音が厚く、ある種シンフォニックにもなっている。
ギターも今風にヘヴィなリフを弾いたり、全体的にイモ臭さが減りややモダンな印象の傑作だ。
メロディアス度・・7 フォーキー度・・8 新生スカイクラッ度・・8 総合・・8
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FINNTROLL 「NATTFODD」
フィンランドのポルカ・メタルバンド、フィントロールの3rd。2004年作
北欧の舞踏音楽ポルカをブラックメタルと融合させるという無茶なアイデアを実践してしまったこのバンド。
そのサウンドはこの3rdにしてますますシンフォニックになり、ひどく完成度が高まっている(笑)
曲の途中で唐突に現れるコミカルとさえいえる陽気なメロディの上にダミ声ヴォーカルが乗るさまは、
初めてこのバンドを聴く者にはかなりのインパクトだろう。
今作はポルカメロディのアレンジ、シンフォニックな音の重ねにいっそうの説得力(?)が感じられ
愉快なメロディに壮麗な質感も加わって、非常に質の高い傑作となった。
シンフォニック度・・8 暴虐度・・7 陽気で楽しいポルカ度・・9 総合・・8.5
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KORPIKLAANI 「Korven Kuningas」
フィンランドのフォークメタルバンド、コルピクラーニの5th。2008年作
メインの旋律を奏でるアコーディオンの音色とともに愉快に疾走しつつ、
初期の頃よりもぐっとメタリックな力強さを増したサウンドは
「森界の王」という邦題通り、もはや単なる酒飲みメタルではない、
ファンタジックな世界観を描くだけの説得力とをまとわせている。
今後もFINNTROLLとともに森の住人メタルを突き進んでいってもらいたい。
メロディアス度・・8 フォーキー度・・8 幻想度・・8 総合・・8
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VINTERSORG 「Solens Rotter
スウェーデンのフォーキー(デス)メタルバンド、ヴィンターソーグの6th。2007年作
BORKNAGARWATERCLIMEなど、精力的に活動するvintersorg氏であるが、
メインバンドとなる本作もなかなかの力作となった。
いつもながらに、ブラック声とマイルドな歌声を使い分けつつ、激しさと牧歌性の
メリハリがついた楽曲はプログレッシブな質感もあり、いつも以上に聴き応えがある。
フォーキーなゆるやかな叙情と、ProgMetal的な展開力が一体となった傑作だ。
メロディアス度・・8 フォーキー度・・8 プログレ度・・7 総合・・8
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ELUVEITIE 「Spirit」
スイスのフォークメタルバンド、エルヴェイティの2006年作
鳴り響くフィドル(ヴァイオリン)に笛とパイプの音色、そこにヘヴィギターと絶叫Voが重なり、
田舎臭いフォーキーメロとヴァイキングメタル風の勇壮さが一体となったサウンド。
メンバーは大所帯で、ツインギターに女性二人のフィドル隊(!)を含む9人編成。
使用する楽器もアイリッシュフルート、ハーディガーディ、アコーディオンなど、かなり本格的だ。
曲は田舎メロをまった聴かせつつも、ときおりブラックメタル的に疾走したりもする。
この手としては曲の完成度、土着的な説得力ともに相当に高く、
濃密かつフォーキーなメタルサウンドがこれでもかとばかりに繰り出される。
メロディアス度・・8 フォーキー度・・8 ブラック/ヴァイキングも有り度・・8 総合・・8
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Falkenbach  「Heralding the Fireblade」
ドイツのペイガン・フォークメタルバンド、ファルケンバックの4th。2005年作
波の音に重なるシンセによるイントロから、もうその世界に引き込まれる。
前作同様、マイルドな歌声、フルート、シンセが牧歌的な土着性とともに
幻想的な世界観を描き出す。激しくもない、暗くもない、派手さもない音ながら
フォークメタルとしての強い説得力をともなっているのがじつに見事である。
今作では疾走するパートも入ってきたり、ときおりギターが煽情的なフレーズを奏でたりと
楽曲にはいくぶんメリハリが加わったことで、作品としての完成度も増している。
MOONSORROWあたりが好きな方にもお勧めできるバンドだ。
ドラマティック度・・8 フォーキー度・・7 幻想度・・9 総合・・8
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Finsterforst「Rastlos」
ドイツのフォークメタル、フィンスターフォルストの2012年作
アコーディオン入りのフォークメタルとして過去2作も高品質だったが、3作目めとなる本作は
ずいぶんと壮大なエピックメタル要素が増していて、10分以上の大曲をメインに重厚に聴かせる。
ヘヴィなギターリフにシンフォニックなアレンジが重なり、咆哮する低音デスヴォイスとともに
勇壮なコーラスなども含みながら、MOONSORROWなどを思わせる勇ましさと、
アコーディオンが鳴り響くフォーク要素が融合。ときに激しい疾走パートもあったりと、
長い曲でも確かなアレンジ力で聴き通せる。まさに壮大な力作というべき内容だ。
ドラマティック度・・9 フォーキー度・・8 壮大度・・9 総合・・8.5
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ELVENKING 「The Winter Wake」
イタリアのフォークメタルバンド、エルヴェンキングの3rd。2006年作
イタリアきってフォークメタルバンド、4thではパワフルなメタル路線にシフトするが、
本作ではまだフォーキーな叙情とやわらかさのあるサウンドで、
力強くないヴォーカルの歌声と、ヴァイオリンやチェロなども含めた愉快な
土着メロディが耳に心地よい。一方でメタルらしてギターリフ、フレーズの存在感も
しっかりとあり、バンドの最高傑作というにふさわしい出来である。
メロディアス度・・8 フォーキー度・・8 愉快度・・8 総合・・8
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Furor Gallico
イタリアのフォークメタル、フロー・ギャリコの2011年作
女性ヴァイオリン、女性ハープ奏者を含む8人編成で、バウロンの響きにホイッスルが吹き鳴らされ、
牧歌的な雰囲気で始まりつつ、低音デスヴォイスとノーマル声が絡んで、適度な激しさと
ときにペイガンブラック的な疾走もあったりする。ヴァイオリンやハープの美しい音色も含んで、
FINNTROLLあたりを思わせるエピックな世界観も覗かせながら、フォーキーな土着性を聴かせてくれる。
同じイタリアのELVENKINGに比べると、より辺境的な味わいで、つまりは本格派のフォークメタルである。
ドラマティック度・・8 フォーキー度・・8 辺境度・・8 総合・・8
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RUNIC 「LIAR FLAGS」
スペインのフォークメタルバンド、ルーニックのアルバム。2006年作
話題のKORPIKLANIに続いて、またしても愉快な森のメタル野郎どもが登場。
耳障りなダミ声ヴォーカルに、けっこうメタリックでまともなギターリフ、バックにはうっすらとしたシンセ、
そしてそこに絡むフルートやバグパイプが、ミスマッチな感触とともにフォーキーな雰囲気をかもしだす。
曲によってはギターリフが普通に格好良く、案外シンフォメタル的な部分もあったりして
そのあたりはコルピあたりよりもしっかりとメタルとしていて、格好いいのが嬉しい。
メロディアス度・・8 フォーキー度・・7 案外ちゃんとメタル度・・8 総合・・8
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Svartsot 「Maledictus Eris
デンマークのフォークメタル、スヴァートソットの2011年作
ホイッスル/バグパイプ奏者を含む5人組、本作はコンセプト的な雰囲気で聴かせる、重厚かつドラマティックな力作。
ヘヴィなギターリフとデスヴォイスに、牧歌的なホイッスルやパイプ、マンドリンの音色が合わさって、
力強いエピックさと土着性を濃密に融合させている。ゲボゲボ系のデス声はなかなか強烈だし、
デスメタル並にヘヴィであるから、軽めのフォークメタルが好きな方にはややつらいかもしれないが、
武骨な戦士たちの姿を思い起こさせるようなパワフルなサウンドこそがこのバンドの持ち味なのだ。
ドラマティック度・・8 重厚度・・9 フォーキー度・・7 総合・・8
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◆疾走ブラックメタル系

WINDIR 「LIKFERD」
ノルウェーのヴァイキング・ブラックメタルバンド、ウインダーの4th。2003年作
基本は激烈に疾走しつつ、北欧らしい雰囲気を撒き散らすサウンドで、
演奏や音の雰囲気は一線級のバンドに引けをとらないし、ジャケを含めて漂わせるこのミステリアスな雰囲気も悪くない。
ただ、このバンドの場合音に媚びがないので、メロディの煽情度に「あと一歩感」がつきまとうのだが、
反対に言えば、こうした「我が道を行く」バンドこそが本物のブラックメタラーであるという気もする。
北欧の寒々しさと薄暗さをたっぷりと味わえるアルバム。ただし愛想はあまり良くない。
メロディアス度・・7 暴虐度・・8 北欧度・・9 総合・・8
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Borknagar「Universal」
ノルウェーのフォーク・ブラックメタルバンド、ボークナガーの7th。2010年作
アコースティックアルバムにベストアルバムをはさむと6年ぶりとなる新作である。
アコースティカルなイントロから曲に入ると、いつになくシンフォニックな質感で疾走、
壮麗なコーラスはどことなくTHERION的でもあり、重厚なサウンドは説得力充分。
デスヴォイスと対をなすVintersorgのマイルドな歌声も今作でも楽曲に彩りを添えていて
曲間にアコースティカルな静寂パートを折り込むなど、アレンジ面での工夫も素晴らしい。
ややレトロなシンセの音色も確信犯的で、ほのかにプログレッシブな雰囲気を匂わせる。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 フォーキー度・・7 総合・・8.5
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CrimfallThe Writ of Sword
フィンランドのシンフォニック・ヴァイキングメタルバンド、クリムフォールの2011年作
まるでNightwishTURISAS化したような前作もなかなかの好作であったが、
本作も女性ヴォーカルとデスヴォイスが絡みながら、前作以上に力強い激しさと勇壮な雰囲気で
むしろメロデス風味が増したような印象もある。一方ではシンセによるシンフォニックなアレンジや、
随所にヴァイキング風味とフォーキーな土着性も織り込みつつ、エピックかつドラマティックな世界観を
描いてゆく様はなかなか圧巻である。前作に比べより重厚な作風で、これは予想外の力作となった。
シンフォニック度・・8 エピック度・・9 フォーキー度・・7 総合・・8
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BLACK MESSIAH 「Oath of a Warrior
ドイツのペイガン・ヴァイキング・ブラックメタルバンド、ブラック・メサイアの2nd。2005年作
シンフォニックなシンセと、クサメロフレーズを掻き鳴らすギターで疾走。
メロディにはヴァイキングメタル色があり、田舎臭い悶絶メロディを連発する。
ブラストの疾走パートにはプリミティブなブラックメタルの雰囲気が漂い
音質の悪さも手伝って、どこか古き良き幻想性を内包しているのが耳に心地よい。
ヴァイオリンやマンドリンなどによる、フォーキーな要素も効果的で
ローカルな質感を上手く魅力にしている点も見事。ベルギーのANCIENT RITESよりさらにクサい。
クサメロディアス度・・9 暴虐度・・7 ヴァイキング度・・8 総合・・8
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BRAN BARR「Sidh」
フランスのフォーク・ブラックメタル、ブラン・バールの2010年作
ホイッスル奏者を含む6人組で、イントロからボドラムの響きとともに素朴なハーディーガーディの音色、
ホイッスルやフルートが絡み、牧歌的なパイプを鳴らしながら、本格的なフォークメタルが展開される。
ブラックメタルばりの激しい疾走感の中を、ホイッスルが響きわたるさまはなかなか圧巻。
アコースティカルな叙情パートとブラスト入りの激しさのコントラストが見事な力作だ。
ドラマティック度・・8 フォーキー度・・8 ホイッスル度・・9 総合・・8
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Claim the Throne 「Triump & Beyond」
オーストラリアのペイガンブラック、クライム・ザ・ソーンの2010年作
女性シンセ奏者を含む5人編成で、シンフォニックなアレンジと勇壮な世界観で聴かせる、
ヴァイキングメタルサウンド。フォーキーなメロディも含んだ美麗なシンセワークに、
クサメロ入りのギター、女性コーラスも入って激しく疾走する様はENSIFERUMなどを思わせる。
楽曲の質も高く、豪州産とは思えない、本格的ヴァイキング/フォークメタルの力作である。
シンフォニック度・・8 疾走度・・8 ヴァイキング度・・8 総合・・8
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YGGDRASIL「Vedergallning
スウェーデンのフォーク・ブラックメタル、イグドラシルの2009年作
ギター/シンセ/ヴォーカルとベースの2人組で、これが2作目らしい。
うっすらとしたシンセを含んだ幻想的な美しさと、土着的なギターリフ、
ときにブラックメタルばりの激しいブラストビートも聴かせるサウンド。
北欧の森を思わせる神秘的な雰囲気がプリミティブな魅力となっていて
激しくはあってもヘヴィではなく、メロディと叙情が全体をマイルドな聴き心地にしている。
アコースティカルな静けさと美しさも含んで、北欧の涼やかな空気を感じさせる作品だ。
ドラマティック度・・8 幻想度・・9 北欧度・・9 総合・・8
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◆メロパワ系

FALCONER 「CHAPTERS FROM A VALE FORLORN」
スウェーデンのヴァイキングメタルバンド、ファルコナーの2nd。2002年作
Mithotynのメンバーによるバンドで、ノーマル声ヴォーカルの正統派メロパワ系のヴァイキングメタルとして、
1stはなかなかの出来だった。続くこの2ndも同路線。ギターのみによるシンプルな音像ながらメロディは土着的で人懐こく、
マイルドな声質のヴォーカルも、この音楽にはよくマッチしている。
トラッド音階のメロディは疲れた耳にも優しく、疾走してもけっしてやかましくならないのがよろしい。
キーボードキラキラのクラシカルなメロスピが増える中、こうしたバンドは貴重な存在だと思う。
メロディアス度・・8 ヴァイキング度・・7 マイル度・・9 総合・・8
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THE STORYTELLER 「TALES OF A HOLY QUEST」
スウェーデンのメロディックメタルバンド、ザ・ストーリーテラーの3rd。2003年作
元々トラッド風のメロディを疾走メロパワに取り入れていたバンドだったが、
ここにきてその度合いは高まり、サウンド的にはFALCONERくらいに通じるまでになっている。
もちろん疾走する時のメロスピ風味も損なわれておらずファンには嬉しいかぎり。
歌や演奏に飛び抜けた部分はないものの、きらきらしすぎないマイルドなメロディが
耳に心地よく、メロスピ〜ヴァイキングメタル好きにまで楽しめる好作だ。
メロディアス度・・7 疾走度・・7 ヴァイキング度・・8 総合・・8
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WUTHERING HEIGHTS 「TO TRAVEL FOR EVERMORE」
デンマークのシンフォニックメタルバンド、ワザリング・ハイツの2nd。2002年作
1stの頃からちよっとやぼったいがなかなかメロディの聴かせるバンドだったが、
この2ndからはいっそうケルト風のメロディを強めたサウンドになっている。
シンフォニックな大仰さと疾走感、そしてヴァイキングメタルにも通じるメロディという点で、
イタリアでいうとTHY MAJESTIEあたりに近いか。アコギやピアノなども効果的。
FALCONERにも通じる田舎臭いシンフォメタルが好きならまず喜ぶバンドだろう。
シンフォニック度・・8 疾走度・・8 クサメロ度・・8 総合・・8
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MAGO DE OZ 「GAIA U」
スペインのフォーキーメタルバンド、マゴ・デ・オズの6th。2005年作
のっけから、今までにないシリアスかつ壮大なイントロが荘厳に響きわたり「おおっ」と唸る。
美しいヴァイオリンに女性コーラスが絡み、シンフォニックして大仰な雰囲はRHAPSODYのようだ。
楽曲は力強さと疾走感をともない、メタリックなギターリフにスペイン語の歌唱が映える。
バンドの特徴であるフルート、ヴァイオリンの音色も、以前よりもずっとシリアスな雰囲気で
フォーキーな脱力メロはいくぶん抑え気味となったぶん、シンフォニックメタルとしての質感が増した。
疾走曲での高揚感は彼ら史上最高で、スパニッシュでキャッチー、フォーキーでいながら壮大。
CD2枚組みのラストは21分の大曲だ。これは胸を張って「傑作」と言えるアルバムかもしれない。
メロディアス度・・9 シンフォニック度・・8 フォーキー度・・8 総合・・8.5
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SAUROM LAMDERTH 「LEGADO DE JUGLARES」
スペインのエピック・フォーキーメタルバンド、サウロム・ラムダースの3rd。2004年作
ファンタジックな世界観と、フォーキーなメロディをメタルに融合させたサウンドで
フルートにアコギ、女性コーラスによる牧歌的なイントロからファンタジーの世界に入り込める。
彼らの場合は同郷のMAGO DE OZよりはずっとシリアスでエピックな雰囲気があり、
まるで物語を読んでいるような幻想空間へといざなってくれるのが魅力。
メロディにはスパニッシュ特有のやわらかみがあり、スペイン語の歌唱で疾走しつつ
壮大なコーラスワークやヴァイオリン、フルートによるフォークメロディが心地よく耳に響く。
スペイン臭さと同時に、優雅さ、エピック、ファンタジー、これらを併せ持った個性的なバンドだ。
メロディアス度・・8 疾走度・・7 フォーキー度・・8 総合・・8
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ALESTORM 「Black Sails at Midnight」
スコットランドの海賊メタルバンド、エイルストームの2nd。2009年作
海賊をバンドキャラクターに、“パイレーツメタル”なる肩書でデビューしたこのバンドであるが、
前作はまだまだサウンド自体の方向性が中途半端であるような感じがあった。
ミニアルバムに続く今作では、楽曲の魅力が増すと同時に、勇壮な雰囲気に磨きがかかって
バンドとしての確かな成長を遂げている。フォーキーなメロディを正統的なメタルに上手く融合させ、
ときにシンフォニックメタル的な華麗さも覗かせるサウンドには、確かな説得力がついてきた。
ジャケやブックレットの作りも含めて物語風に聴かせる手法も、そのイメージとしての強度が増し
男たちの冒険活劇が目の前に見えるようだ。そういう点ではTURISASなどにも通じる雰囲気である。
ドラマティック度・・8 勇壮度・・8 海賊度・・9 総合・・8
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TYR 「By the Light of the Northern Star」
フェロー諸島出身のヴァイキングメタルバンド、テュールの4th。2009年作
ヴァイキングメタルといってもこのバンドの場合はデス色はなく、
パワーメタル的な正統派メタルサウンドに、土着的なフレーズを織り込んだもの。
男臭いコーラスに、ジャケの戦士のイメージのようなエピックな世界観を漂わせ
パワフルかつドラマティックに聴かせる。ヴァイキング・パワーメタルの力作。
ドラマティック度・・8 ヴァイキング度・・8 重厚度・・8 総合・・8
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VIATHYN「The Peregrine Way」
カナダのケルティック・メロパワバンド、ヴィアティンの2010年作
シンフォニックかつエピックなイントロからワクワクとするが、楽曲の方も
フォーキーなギターフレーズと美麗なシンセで聴かせるなかなか質の高いものだ。
マイルドなメロパワ風味はどことなくFALCONERなどにも近い雰囲気か。
エピックかつドラマティックな聴き心地と、ProgMetal的な展開力もあり、
WUTHERING HEIGHTSあたりのファンにも勧められる。ケルティック・メロパワの好作。
シンフォニック度・・8 ドラマティック度・・8 ケルティック度・・7 総合・・8
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◆ゲルマン系

SUBWAY TO SALLY 「Nord Nord Ost」
ドイツの古楽メタルバンド、サブウェイ・トゥ・サリーの2005年作
ヘヴィなリフに重なる勇壮なドイツ語の歌唱の響きに、胸がときめく。
そこへシンセと、ヴァイオリンが加わり、サウンドをシンフォニックに彩りだす。
モダンでヘヴィな質感と、トラディショナルな要素が見事に融合し、
楽曲は過去最高のアレンジで、オーケストラルな重厚さとともに説得力を帯びる。
トラッドメタルというよりは、壮大なシンフォニックメタルとしても聴ける傑作。
シンフォニック度・・8 トラッ度・・7 壮大度・・9 総合・・8.5
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IN EXTREMO 「VEREHRT UND ANGESPIEN」
ドイツの古楽トラッドメタルバンド、イン・エクストレモの2nd。1999年作
このバンドのアルバムは何枚か聴いているが、このアルバムはなかなかいい。
のっけから美しいハープの音色、そして無骨な野郎Voの語り。バックにはうっすらとシンセ。
曲に入るとヴァイキングメタル的な勇壮さが現れ、メタリックなギターとハープやバグパイプなどとの
音色が対照的で、ややデジタリィなリズム感覚など、中世と現代の音の融合といった感覚が面白い。
全体的にはケルテイックな繊細さよりは、ゲルマン的な無骨さが持ち味のバンドかと思う。
メロディアス度・・8 メタル度・・7 トラッ度・・9 総合・・8
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Saltatio Mortis「Wer Wind Sat」
ドイツの古楽メタルバンド、サルタティオ・モーティスの2009年作
インダストリアル色の強かった初期の作風から、2007年の「Aus der Asche」では
メタリックな部分が強まり、SUBWAY TO SALLYに並ぶくらいのレベルにきた。
本作もモダンなヘヴィさと土着的な旋律、ドイツ語による歌唱のバランスのとれた作風で
独特の叙情表現に磨きをかけている。勇壮なコーラスにかぶさるパイプの音色、
そしてエピックな雰囲気をかもしだす世界観で、フォーキーなゲルマンロックを作り上げている。
エピック度・・8 メタル度・・7 ゲルマン度・・9 総合・・8
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NachtgeschreiAm Rande der Welt
ドイツのフォークメタルバンド、ナハトゲシュレイのアルバム。2009年作
アコーディオン、フルート奏者を含む7人組で、重厚でドラマティックなフォークメタルをやっている。
ゆるやかなアコースティックギターのイントロから、メタリックなギターリフにパイプの音色が絡まり、
ドイツ語のヴォーカルが歌を乗せる。雰囲気としてはSUBWAY TO SALLYに近いが、
こちらの方がエピックなメタル質感が強く、好みかもしれない。やわらかなアコーディオンの音色が
ツインギターと自然に融合されていて、厚みのあるサウンドはこの手のバンドの中でも素晴らしい。
メロディアス度・・8 フォーキー度・・8 エピック度・・8 総合・・8
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ODROERIR「Gotterlieder II」
ドイツのフォーク・ペイガンメタルバンド、オドロエリアーの2010年作
フォーキーなフィドルに笛の音色、そしてドイツ語の歌声で牧歌的に聴かせる
なごみ系フォークメタル。アコースティカルなのんびりとした叙情はまさに森の音楽。
音に派手さはないのだがまったりと楽しめます。ときおり絡む女性ヴォーカルもいい感じ。
ラストは19分の大曲で、本格派のトラッド質感から、メタル色が加わってドラマティックに盛り上げる。
メロディアス度・・7 フォーキー度・・8 森の叙情度・・9 総合・・8
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Schandmaul 「Anderswelt」
ドイツのフォークメタルバンド、シャンドマウルのアルバム。2008作
ドイツにはSUBWAY TO SALLYやIN EXTREMO、SALTATIO MORTISなど、
古楽を取り入れたメタルバンドがけっこういるのだが、このバンドもまたそのひとつ。
ヘヴィすぎないギターに、ヴァイオリンや笛の音色が重なり、朗々としたドイツ語の歌声で、
メタリックな激しさのあまりない、マイルドでやわらかなサウンドを聴かせてくれる。
アコースティカルな牧歌性の中に、物語的な幻想美を感じさせる耳心地のよいアルバムだ。
牧歌度・・8 メタル度・・7 ゲルマン度・・8 総合・・8
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◆トラッド、フォーク系

LUMSK 「TROLL」
ノルウェーのトラッドメタルバンド、ラムスクの2nd。2005年作
女性Voに女性Vin入りの7人組みで、北欧の土着的な要素を強く打ち出したサウンドをやっている。
メタル色や攻撃性よりは、トラッド的なメロディと北欧の寂寥感を聴かせるバンドで、
今回は前作よりも分かりやすい、聴きやすくやわらかみのある雰囲気になっている。
女性Voの活躍頻度も大幅に増し、チェロやフルートなどの管弦楽隊もゲストに
ある種シンフォニックな北欧プログレ的なものも感じさせてくれる。
激しさよりもゆったりとした涼しげな北欧の風景…それらが目に浮かぶ音だ。
シンフォニック度・・8 トラッ度・・8 ゆったり北欧度・・9 総合・・8
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LYRIEL 「Autumntales」
ドイツのトラッド・ゴシックメタルバンド、リリエルの2006年作
艶やかなヴァイオリンの音色に可憐な女性ヴォーカルのフォークメタル。
演奏はやややぼったく田舎臭いのだが、好きな人にとってはそこもむしろ魅力かもしれない。
ときに男性Voとの絡みや、チェロ兼コーラス担当の女性声も加わって美しく聴かせる。
メタル的な重厚さやドラマティックさはあまりなく、LUMSKあたりが好きな人にもお勧めできる。
録音面での弱さや演奏、曲におけるマイナー臭さはあるが、それを上回る優美なメロディと
美しい女性ヴォーカルが味わえるので、その手が好きな方は充分聴く価値ありだ。
メロディアス度・・8 フォーク/トラッ度・・8 女性Vo度・・9 総合・・8
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hardingrock 「grimen」
EMPERORIhsahn夫妻参加のフォークメタルユニット、ハーディングロックの2007年作
ゆるやかなフィドルの音色と物語的な語り、そこに女性ヴォーカルが重なって
しっとりと聴かせつつ、2曲目ではエレキギターも加わって一気にメタル色が濃くなる。
イーサーンのヴォーカルが入ると、やはり彼の色が強くなり、プログレッシブな味わいのある
フォークメタルが炸裂。ブラック声入りのアグレッシブさと、本物のトラッド色が合わさった、
一種独特の世界観が面白く、フォークメタルと北欧トラッドを交互に聴いている気分になる。
奥方Starofash(Ihriel)さんの可憐な歌声もよいアクセントになっており、ゴシック風味とフォーク
トラッドが入り交じり、そこに暗黒ブラック風味をかすかに加えたような不思議なサウンドが楽しめる。
メロディアス度・・8 メタル度・・7 北欧トラッ度・・8 総合・・8
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FEJD 「Storm」
スウェーデンのフォークメタルバンド、フェイドの2009年作
のっけから幻想的な縦笛の音色に引き込まれるが、ブズーキやバグパイプ、
ハーディガーディ、ニッケルハルパなどを使用した、これは本格派のトラッドメタルだ。
母国語による歌声と伝承的な北欧トラッドの質感が合わさったサウンドは雰囲気たっぷりで、
まるで吟遊詩人の歌うサーガを聴いているような気分に浸れること請け合い。
フィドルにも似たハーディガーディ、ニッケルハルパの素朴な音色に耳を傾けると、
寒々しい北欧の森を吹き抜ける風を感じられるようだ。ゲストによる女性コーラスなども美しく、
幻想的な土着性をたっぷり楽しめる見事なフォークメタル傑作だ。
メロディアス度・・8 メタル度・・7 本格トラッ度・・9 総合・・8.5
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◆辺境マイナー系

CRUACHAN 「The morrigans call」
アイルランドのフォークメタルバンド、クルアチャンの5th。2006年作
毎回やや脱力系のマイナー臭さがなかなか好もしいのだが、今作も方向性は同様。
メタリックな楽曲に唐突にヴァイオリン、フィドルなどによる愉快なフォークメロが分け入って来る。
あまり上手くない女性Voとデス声の掛け合いもどこか田舎くさく、この垢抜けなさがまたいい(笑)
ゲストによるアイリッシュフルート、ティンホイッスル、アイリッシュハープなどもマニアックな聴き所。
真剣に聴くよりはややゆるい感じで楽しむと良いだろう。個人的にはKORPIKLAANIよりも好みかな。
メロディアス度・・7 フォーキー度・・8 アイルラン度・・9 総合・・7.5
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WAYLANDER 「REAWAKING PRIDE ONCE LOST」
アイルランドのケルトメタルバンド、ウェイランダーの1st。1998年作
先に2ndを聴いていたのだが、ようやく1stも発見。のっけからティンホイッスルの響きににんまり。
ホイッスルの音色とヴォーカルのデス声のミスマッチ感がなかなか楽しく、
昨今人気のフォークメタル勢と比べると、より土着性というか薄暗い無骨さが感じ取れる。
同郷のCRUACHANに近いとは思うが、より重い歴史込みの世界観と攻撃性が音に表れており、
ヴァイキングメタル的な勇ましさも感じられる。
メロディアス度・・7 ケルティック度・・8 無骨度・・8 総合・・7.5
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PAGAN REIGN 「Уделы Былой Веры」
ロシアのヴァイキング(ペイガン)メタルバンド、ペイガン・レインの3rd。2004年作
前作よりもサウンドのクオリティが上がり、音に説得力が増してきている。
それによって初期MITHOTYN的な土着性が、寒々しい北の大地の薄暗い叙情とともに
目の前に広がるような印象を受ける。ドラムの演奏力も向上して、ブラックメタル的な疾走感も
前作以上にシリアスな音像で迫力がある。もちろん牧歌的なクサメロのフレーズも随所に聴け、
激しく疾走する部分はENSIFERUMを思わせるくらいの完成度がある。イモ臭さでは前作ですが。
クサメロ度・・8 勇壮度・・8 辺境度・・8 総合・・8
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Arkona「Slovo」
ロシアのペイガンメタル、アルコナの2011年作
6作目となる今作は、壮大なイントロからして、これまで以上にドラマティックな香りを漂わせているが、
楽曲が始まるとブラックメタルばりに激しく疾走、女性Voマーシャ嬢のスクリームを含めたヴォーカルに、
ヴァイオリンやアコーディオン、ガイタ、ハーディ・ガーディなどのフォーキーな音色がかぶさり、
シンフォニックな美麗さと土着性を融合させた、見事なペイガン・フォークメタルを展開する。
荘厳なコーラスにヴァイオリンの艶やかな響き、随所に叙情性を織り込みながら疾走感を同居させた
楽曲のアレンジもさすがという隙のなさだ。物語的なエピックな世界観も感じさせる見事な傑作。
シンフォニック度・・8 フォーキー度・・8 壮大度・・8 総合・・8
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ECHO of DALRIADA 「FERGETEG」
ハンガリーのフォークメタルバンド、エコー・オブ・ダルリアダの1st。2004年作
のっけからいかにも辺境臭いフルートの音色、マイナー系特有の音質、そして
クサメロに乗って歌う母国語の女性ヴォーカルと、まさに誰もが望むサウンド(笑)
シンセ入りで疾走しだすと、壮麗なクサシンフォメタルへと早変わり。
「ららら〜ななな〜」と、適当に歌っている感じの女性声スキャットもたまらない。
先に2ndを聴いていたが、土着的なクサさではむしろこちらが上だろう。
クサメロ度・・9 フォーキー度・・8 女性Vo度・・7 総合・・8
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ALKONOSTOn the Wings of the Call
ロシアのペイガンメタルバンド、アルコノストの2010年作
女性Vo、女性シンセ奏者を含む6人組で、ロシアのバンドとしてはトップクラスのバンドのひとつ。
本作も男女ヴォーカルによるロシア語の歌声と、土着的なメロディをたっぷり盛り込んだ
辺境的なフォークメタルを聴かせてくれる。ヘヴィさよりも田舎臭いフレーズをメインに奏でるギターに
たおやかな女性声に男性デス声が絡みながら、うっすらとしたシンセによるアレンジも美しい。
ARKONAほどにドラマティックな壮大さはないが、メロディ充実のクオリティはさすがの出来だ。
メロディアス度・・8 フォーキー度・・8 辺境度・・8 総合・・8
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Metsatoll「Aio」
エストニアのペイガン/フォークメタルバンド、メトサトルの2010作
母国語の歌声と無骨な辺境臭さで聴かせるペイガンメタルで、
けっこうヘヴィなギターリフを中心にしながら、笛やパイプの音色が絡むスタイル。
シンセはないので派手さやクサメロはあまりないが、勇壮にかぶさるコーラスなど、
いかにも田舎めいた雰囲気がある意味魅力となっている。この手のバンドの中では
メタリックなパワフルさがあって、パワフルなフォークメタル=「パワフォー」として楽しめる。
メロディアス度・・7 フォーキー度・・8 辺境度・・8 総合・・8
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FOLKEARTH 「Drakkars in the Myst」
世界中各国のメンバーによるフォーク/ペイガンメタルプロジェクト。フォークアースの2007年作
クサクサのギターリフを乗せて疾走するサウンドは、辺境的な雰囲気がぷんぷん。
シンセによるシンフォニックなアレンジもなかなかツボを押さえていて、
曲間のSEや語りなどもエピックかつドラマティックな空気をかもしだす。
ギリシャ、スペイン、イタリアをはじめ、ベルギー、ドイツ、ロシア、スウェーデン、ノルウェー
アメリカ他、多くの国から参加者がいるためか、異国的な情緒がふんだんに感じられ、
アコースティックギターやフルートなどの素朴な音色と、暴虐なデス声などが混濁して合わさり、
音質のラフさも手伝ってかそのB級的な世界観がなかなかたまらない。
ヴァイキング度・・8 暴虐度・・7 辺境ペイガン度・・10 総合・・7.5
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*CDレビュー・ヴァイキングメタル
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