アメリカのネオプログレシーン 〜AMERICAN Neo Prog ROCK



ロックの母国たるイギリスに比べて、かつて、70年代のアメリカは、プログレは不毛の地とされていた。
大御所KANSASの存在を除けば、あとはPAVLOV'S DOGETHOSSTAR CASTLEHAPPY THE MANといったややマニアックバンドが
地道に活動を続けるくらいであったが、70年代後半になると、YEZDA ULFAMIRTHRANDERCATHEDRALといったバンドが、
多くは単発ながら良質なアルバムを残してゆく。メジャーとは無縁の自主制作ものの多いアメリカのプログレシーンにとっては、
SYN-PHONIC
Laser's edgeといったシンフォニック系に特化したレーベルの存在も重要な役割を果たしたのである。
90年代に入ると、DREAM THEATERの成功もひとつのきっかけとなり、主にProgMetal系を発掘するMAGNA CARTAレーベルが発足、
そこから生まれたMAGELLANSHADOW GALLERYCAIROといった、ハードロック/メタルともリンクするようなバンドの存在により、
アメリカにおけるプログレ復興の気配は、マニアックな支持層を中心にして少しずつ広がっていった。
さらには、MASTERMINDSPOCK'S BEARDといったバンドの登場が、アメリカのプログレシーンにさらなる一石を投じ、
いよいよ2000年代に入ると、インターネット時代の恩恵を受けて、自主制作であっても質が高いバンドであれば、世界中から評価を受けることも可能となり、
キャッチーで抜けの良いメロディをもった、質の高いアメリカンプログレバンドが次々に現れてゆく。
それらの多くはイギリスやイタリアなど、ヨーロッパのバンドの雰囲気とはやや異なり、より耳触りの良い聴きやすさと、
爽快でポップなメロディ、そしてときに偏屈でテクニカルな要素を巧みにに融合させているのが特徴だ。
そして現在では、アメリカはヨーロッパにもひけをとらないプログレの密かな宝庫になりつつある。
ここでは、主に2000年以降の作品から、新世代のアメリカン・プログレ/シンフォニックロックの傑作を紹介したい。

                                          緑川 とうせい


■グラス・ハマー
王道のシンフォニックロック系としては恐らく現在アメリカ最高のバンド。
美麗なシンセアレンジとドラマティックな展開力が絶妙にブレンド、かつてのYESをよりコテコテにしたような壮大さ。
濃密かつ大仰でありつつも、メロディはじつに爽やかでキャッチーなのがポイント。どれも素晴らしい傑作です。

GLASS HAMMER「CHRONOMETREE」
アメリカのシンフォニックロックバンド、グラス・ハマーの4th。2000年作。
90年代シンフォの新鋭とデビューして7年、ついにバンドとしての最高傑作が誕生した。
高度な演奏力と作曲能力に裏打ちされた彼らのサウンドは、ファンタジーへの傾倒と、
楽曲における確かな構築美とともに、素晴らしく強固な世界観を作り出した。
ELPばりの弾きまくりパートと、叙情重視のハーモニーパートが絶妙にブレンドし
まさにYESの名作「危機」を思わせる、濃密な作風で一気に聴かせる。
メロディと展開力を兼ねそろえた、見事なシンフォニック傑作である。
メロディアス度・・8 プログレ度・・9 楽曲度・・8 総合・・8.5
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GLASS HAMMER「The Inconsolable Secret」
アメリカのシンフォニックロックバンド、グラス・ハマーの8th。2005作
今回のジャケはロジャー・ディーンその人。Yesをリスペクトする彼らの夢がついに叶ったということか。
CD2枚組、計100分弱という本作は、これまでになく70年代風の質感を増した雰囲気で、
ELP風のキーボードにYES風コーラスワークなど…それらを現代のシンフォ感覚で構築し直したという作風。
大曲における密度は、傑作「CHRONOMETREE」あたりに比べるとやや薄いが、
その分ゴリ押しではないゆるやかな叙情とキャッチーなメロディアスさが際立っていて、
音色豊富なキーボードワークと美しいストリングス、それに女性コーラスに混声合唱などが合わさり、
壮大かつマイルドなシンフォニックロックを形作っている。ゆったりと聴ける大作です。
シンフォニック度・・8 ゆるやかに壮大度・・9 キーボー度・・8 総合・・8.5
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GLASS HAMMERCulture of Ascent
アメリカのシンフォニックロックバンド、グラス・ハマーの9th。2007作
曲ごとに男女Voをそれぞれをフロントにして、巧みなシンセワークと、山あり谷ありの
ドラマティックな構成で9分、9分、7分、16分、19分という長曲を飽きさせずに聴かせる。
ヴァイオリン、チェロなどの生のストリングスは説得力のある優雅さをサウンドにもたらし、
古くささのないモダンな重奏アレンジとともに、たんなるプログレ、シンフォというよりも、
もっと普遍性のある美しきドラマティックロックにまで昇華されたという印象だ。
ジョン・アンダースンのゲスト参加という話題性もあるが、それはただの要素にすぎない。
ゆるやかなる音の洪水に心地よく飲み込まれてゆける、これは素晴らしい傑作である。
シンフォニック度・・9 プログレ度・・8 ドラマティック度・・9 総合・・8.5
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■エコリン
GENTLE GIANT
的なへんくつさと高い演奏技術を持ちながら、単なる技巧のみに走らず、聴きやすいポップセンスを持っているのがアメリカ的。
歌心のあるキャッチーなメロディの裏には、ひねくれた楽曲センスが光っていて、にやりとする。

ECHOLYN「mei」
アメリカのプログレバンド、エコリンの6th。2002作
本作は全1曲49分というえらく気合の入ったアルバムで、のっけからなにやら美しいイントロでじわじわと始まってゆく。
鳴り響くハモンドに、マイルドなヴォーカルメロディが加わり、エコリン節ともいうべきキャッチーかつテクニカルなサウンドが繰り広げられる。
曲が長いだけにゆるやかな盛り上がりと展開を何度も繰り返しながら、ときにSPOCK'S BEARDDREAM THEATERすらも思わせる
巧みな構成力と叙情性で聴き手をぐいぐいと惹きつけてゆく。さすがに途中からは長尺感を感じてしまうが、
ドラマティックという点だけならばECHOLYNの最高傑作と言っていいかもしれない。
メロディアス度・・8 プログレ度・・8 ドラマティック度・・9 総合・・8
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ECHOLYN「THE END IS BEAUTIFUL」
アメリカのプログレバンド、エコリンの7th。2005作
アルリカンな陽気なメロディアスさとたたみかける技巧、そしてややヒネくれた楽曲センスとで、
昔から玄人受けするバンドであったが、このアルバムではかつてよりも音にはこなれた上品さを感じる。
といっても、SPOCK'S BEARD的にメロディアスでありながら、しっかりとロックとしての躍動感を兼ね揃えた
彼らならではのサウンドは変わらず、叙情パートでは大人の余裕を感じさせてくれるし、
楽しげにたたみかける演奏はやはり見事といってよい。まさに現代のGENTLE GIANT
メロディアス度・・7 プログレ度・・8 大人の技巧ロック度・・9 総合・・8
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Echolyn
アメリカのプログレバンド、エコリンの2012年作
すでに活動20年以上のベテラン、前作から7年ぶりとなる8作目となる。
セルフタイトルのCD2枚組で、のっけから16分の大曲という気合の入りよう。
切れ味のある絶品のアンサンブルと、プログレらしさを忘れないシンセワークも素晴らしい。
ヴォーカルが加わると、とたんにキャッチーな味わいに包まれるのはエコリン節であるが、
シンフォニックロックとしての優美さもあり、メロウなやわらかさでじっくりと聴かせる実力も素晴らしい。
しっとりとした癒し系としても楽しめるというDisc2に分けた意味が分かりますな。じわじわ優しい傑作。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 アンサンブル度・・9 総合・・8.5
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■マジェラン
MAGNA CARTAレーベルからデビューした、アメリカの新世代プログレハードの象徴的バンド。
Key奏者トレント・ガードナーを中心に、キャッチーなコーラスワークと、耳触りの良いシンフォニックなメロディで聴かせる。

MAGELLAN「IMPOSSIBLE FIGURES」
アメリカのシンフォニック・プログレ・ハードバンド、マジェランの5th。2003作
中心人物のトレント・ガードナーは、EXPLORE'S CLUBなどへの参加から評価が上がってきたようで、
本作は軽快なシンフォニック性とマジェラン節ともいえるキャッチーな歌メロが見事に融合した傑作となった。
多彩なシンセの音色はもちろん、どこかレトロなピアノの使用法や、時代的なコンセプトに基づいた世界観なども見事。
また、これまでにないドラムの手数の多さもポイントで、レーベルがINSIDE OUTに変わったことも作用しているのだろう、
プログレメタル、プログレハードとしても充分に聴ける。シンフォニックでキャッチーだが、全体的に締まった密度の高さがある。
シンフォニック度・・8 キャッチー度・・8 プログレハー度・・8 総合・・8
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MAGELLAN「SYMPHONY FOR A MISANTHROPE」
アメリカのハードプログレバンド、マジェランの通算6作目。2005作
前作でなにか吹っ切れた感があるサウンドに変化したが、今回もさらなる力作を作り込んできた。
ジャケやブックレットからは映画的なコンセプト作であることが垣間見えるが、曲だけでも充分ドラマティック。
ややメタリックなギターと、今回はやたら美しいキーボードによるシンフォニックな音圧が、厚みを増して押し寄せてくるという印象。
トレント・ガードナーお得意のキャッチーな歌メロもバックの壮大さに乗って、いつも以上にドラマティックに盛り上げている。
とにかく音のダイナミックさが心地よい。とくにシンフォニックさの点では同時期に出たSHADOW GALLERYの「ROOM V」を上回る。
シンフォニック度・・9 メロディアス度・・8 プログレハー度・・8 総合・・8
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■スポックス・ビアード & ニール・モーズ
レトロかつポップな感性を現代的な手法で再構築した、このバンドの登場は衝撃だった。
70年代のプログレの質感とキャッチーなメロディをまとった彼らの作品は、3rd「The Kindness Of Strangers」で完成され、
よりシンフォニックロックとしてのサウンドにこだわった「X」はバンドの最高傑作となる。 その後、中心メンバーのニール・モーズの脱退もあったが、
バンドは存続し、クオリティの高い作品を生み出し続けている。一方のニール・モーズも多数のソロやTRANSATLANTICなどで活躍を続けている。

SPOCK'S BEARD「X」
アメリカのメロディアスプログレバンド、スポックス・ビアードの5th。2000作
のっけから16分の大作、小曲を3つはさんで27分の大曲という構成の本作は、キャッチーでポップな感性をまじえながら、
よりシンフォニックロックとしての本格的なアルバム作りにこだわったという印象の傑作となった。
TRANSATLANTICとの相互作用か、ニール・モーズの生み出すメロディや、
曲展開には堂々たる吹っ切れが感じられ、バンドの絶頂期はこうあるべきという力強さに溢れている。
相変わらず70年代テイストのハモンド・メロトロンのキーボードサウンドはニールの歌うやさしげな歌メロとともに、
なにか郷愁に満ちた古き良き音を感じさせ最近の硬質系シンフォとは一線を画した暖かな叙情が胸を打つ。バンドの代表作たる傑作だ。
メロディアス度・・8 シンフォニック度・・8 楽曲・・8 総合・・8
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SPOCK'S BEARD「OCTANE」
アメリカのプログレバンド、スポックス・ビアードの8th。2005作
今作はのっけからドラマティックイントロで、ぐつと期待感が高まる。
鬱屈していたものを爆発させたような前作に比べ、サウンドから感じられる世界観がしっかりとあり、
全体を流れるシンフォニックロックとしての空間美と、コンセプチュアルなトータル感がうれしい。
やや力みすぎだったヴォーカルの歌唱にもやわらかみがついて、安心して聴けるし、
前作のようなヘヴィな曲もあるが、流れの中でのアクセントとなっているので、むしろ好感が持てる。
ソリッドな演奏とロックとしての躍動感をともないながら、従来のシンフォファンも満足させてくれ、
バンドの全ディスコグラフィーを通して「X」とともに代表作となれるだけのアルバムだ。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・8 空間美度・・8 総合・・8
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NEAL MORSE「TESTIMONY」
SPOCK'S BEARDのVo/KEY、ニール・モーズの2003年作
宗教活動を理由にスポックス・ビアードを脱退したニールだが、それから1年もたたずしてプログレ界に復帰。
これも神の啓示なのか(笑)どうかはともかく、内容は長大な5つの組曲を連ねたCD2枚組の大作
SPOCK'S BEARD時代以上にシンフォニックしており、ある種の吹っ切れさえも感じられるサウンドである。
マイク・ポートノイがドラムを叩いていることもあって、かなりTRANSATLANTICに接近した音で
もしギターがロイネだったら、まんまトランスアトランティックの新作になっていたかもしれない。
ニールの歌唱は、やはり神に触れて感化されたのか(笑)やさしさと温かさとに満ちており、
自身のピアノ、キーボードワークもやわらかなレトロさと壮大なシンフォニック性のバランスが見事。
宗教しながらこんないいアルバムを作れるのなら、ファンにとってはスポビ脱退もOKだろう。
メロディアス度・・8 シンフォニック度・・9 楽曲・・8 総合・・8
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NEAL MORSELifeline
アメリカのシンフォニック職人、ニール・モーズの2008年作
スポビ脱退後5作目となる本作も、相変わらずドラマティックなプログレ、シンフォニックで、
メロトロンの音色を含めてレトロかつきらびやかなシンセワークを中心に、
キャッチーな歌メロと、ときにProgMetal的なテクニカルさも見せつける。
今作もドラムを叩くのはマイク・ポートノイで、やはり随所にDREAM THEATER的な雰囲気もある。
タイトルからして命綱を伝って生還するというようなコンセプトがあるのだろうか。
ラストは感動的に盛り上げる。ともかく28分の大曲も含めて濃密なシンフォニックロック作だ。
シンフォニック度・・8 テクニカル度・・8 安心クオリティ度・・9 総合・・8
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■セーラム・ヒル
ハードプログレ的なキレの良さと、KANSASあたりを彷彿させるキャッチーなメロディ。
英国シンフォ的な香りを残しつつも、決してレトロなだけでなく、現代的なアレンジセンスと新鮮味のある曲作りが素晴らしい。

SALEM HILL「Not Everybody's Gold」
アメリカのシンフォニックロックバンド、セーラム・ヒルの3rd。2000作
ハードプログレ的なキレの良さと、KANSASあたりを彷彿させるキャッチーなメロディで聴かせる
新時代のアメリカンシンフォニックロック。随所に英国のプログレ的な香りを残しつつも、
決してレトロなだけでなく、現代的なアレンジセンスと新鮮味のある曲作りが素晴らしい。
メロディアス度・・8 シンフォニック度・・7 KANSAS度・・8 総合・・8
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SALEM HILLMimi's Magic Moment
セーラム・ヒルの5th。2005作
アメリカらしいキャッチーさと同時に、NEAL MORSEあたりに通じる哀愁味のあるヴォーカルメロディが素晴らしく、
(と思ってブックレットを見たら、そのニール・モーズもゲスト参加してました)、しっとりとしたピアノに巧みなキーボードアレンジ、、
そしてすっかりゲストにはおなじみとなった、デビッド・ラグスデイルのヴァイオリンも鳴り響く。
派手な華麗さよりも、たおやかな質感が心地よいシンフォニックロックアルバムだ。
メロディアス度・・8 シンフォニック度・・7 NEAL MORSE的な質感度・・8 総合・・8
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■イズ
テクニックもあり、メロディアス…だが一筋縄ではいかないというサウンド。
キャッチーなメロディのおかげで分かりやすいのだが、その実曲調はコロコロと変わり、案外節操がなく、そのひねくれ方がじつに面白い。

IZZ「my river flows」
アメリカのプログレバンド、イズの3rd。2005作
前作はテクニックとメロディに加えヒネたセンスを兼ね揃えた傑作であったが、
今作は一聴するとシンプルなロック化したような雰囲気もある。しかしECHOLYNの近作などと同様、
よくよく聴けばリズムのひねくれ方や細かなアレンジなどにはやはり唸らされる部分が多い。
リフとメロディを巧みに使い分けるギターのバックには、レトロな質感をかもしだすキーボードの音色、
そしてテクニックのあるドラムのプレイも見事で、ぐいぐいと演奏でたたみかける場面もある。
キャッチーなコーラスワークの奥には、むしろイギリス的な叙情も垣間見せたりと、
さらりとしているようで聴き所は多く、見方によってはSPOCK'S BEARDを超えているとも。
ラストは20分の大曲で、女性ヴォーカルも含めてドラマティックな展開美で聴かせる。
メロディアス度・・7 プログレ度・・8 演奏センス度・・9 総合・・8
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IZZ「Crush of Night」
アメリカのプログレバンド、イズの2012年作
すでにSPOCK'S BEARDECHOLYNなどと並ぶ実力といってよいだろう、
5作目となる本作もまた素晴らしい出来。男女ヴォーカルのやわらかな歌声と、
グルーブの効いた大人のアンサンブルで、メロディックに聴かせるモダンプログレを展開。
GENTLE GIANTのゲイリー・グリーンがゲスト参加しているが、キャッチーな聴き心地の向こうにある
リズムの遊びも含めた玄人好みの余裕とセンスは、なるほど「現代的なGG」というような感じもある。
2部に分かれた26分を超える大曲も圧巻。スタイリッシュなアレンジと高い演奏力が合わさった見事な作品。
メロディック度・・8 プログレ度・・9 アンサンブル度・・9 総合・・8.5
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■デリュージ・グランダー
メロウでありながら涼しげな感触は、アメリカというよりもむしろ北欧のバンドを思わせるかな…などと、思っていると、
どことなくヒネた曲展開はGENTLE GIANTなどからの影響も感じさせ、メロディアスなのだが、曲調にはミステリアスな風味が加わって面白い。

Deluge Grander「August in the Urals」
アメリカのプログレバンド、デリュージ・グランダーの2006作
基本的にはG、Key、B、Drの四人を中心とした新人バンドで、のっけから25分の大曲。
メロウでありながら涼しげな感触は、アメリカというよりもむしろ北欧のバンドを思わせる。
と、思っていると、どことなくヒネた曲展開はGENTLE GIANTあたりからの影響も感じさせ、
メロディアスなのだが曲調にはミステリアスな風味が加わって、一筋縄ではいかない。
A Triggering Myth + HAPPY THE MANというマニアックなたとえが当てはまるかはともかく、
ようするにクールなんだが、分裂ぎみにはじけているということで。そして演奏の質も高い。
25分から始まって、15、12、8、7と徐々に曲が短くなる構成もひねくれている(笑)
メロディアス度・・7 プログレ度・・8 ひねくれ度・・8 総合・・8
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Deluge Grander「Form of the Good」
アメリカのプログレバンド、デリュージ・グランダーの2nd。2009作
期待の2作目となる本作は、しっとりとしたメロトロンが鳴り響き、幻想的に始まるが、それも束の間、リズムが加わると
ヴァイオリンの音色とともに、ミステリアスな世界観と先の読めないヒネくれたセンスが炸裂、
おちゃらけと幽玄な叙情とが合体し、まるで不思議の迷宮に入り込んだような錯覚にとらわれる。
音自体はやわらかみのあるシンフォニックといってもいいものなのだが、それをこうも奇妙に仕上げる才能には
ただ感嘆するばかり。得体の知れない器の大きさは着実に磨かれてきている。ゲストによるフルート、チェロや
サックス、トランペット、オーボエといった管弦楽器による味付けはチェンバーロック的でもあり、
壮大な迷宮感覚を描くビジョンの豊かさはポストロック風でもある。ともかく濃厚な幻想プログレの傑作だ。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・9 サウンドセンス・・9 総合・・8.5
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Birds and Buildings「Bantam to Behemoth」
アメリカのプログレバンド、バーズ・アンド・ビルディングスの2008作
Deluge GlanderのKeyによる別バンドで、浮遊感のある軽妙なプログレ作。
テクニカルなリズムの上をメロトロンが鳴り響くクリムゾン風味とともに
フリーキーなサックスが加わると、軽快なジャズロック風にもなる。
9分以上が5曲と長曲揃いだが、雰囲気で聴かせられる器の大きさが感じられ、
一筋縄でいかないサウンドながら、その演奏に思わず引き込まれてしまう。
メロトロン入りの変態的ジャズロックでもあり、サックス入りのヘヴィシンフォでもあり、
これをMAGMA+KING CRIMSONといっていいものか。マイスペにて試聴可能。
シンフォニック度・・7 ジャズロック度・・8 プログレ度・・8 総合・・8
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■アメリカのシンフォニック系傑作

CAIRO「TIME OF LEGENDS」
アメリカのプログレバンド、カイロの3rd。2001作。
ELPYESなどの70年代の音を再構築し、そこに90年代以降のプログレメタルの構築性を加味した、
ある意味懐古主義ともいえるバンドであるのだが、前作2ndで有無を言わせぬ完成度の作品を作り上げた。
続く今作では、前作のようなダイナミックさは若干抑えられた、とても落ち着いた感じのサウンドである。
同レーベルの先輩、MAGELLANにも通じるキャッチーなコーラスワーク、しっとりとした美しいキーボード、
センスの良いギターと、どれもが高品質。70年代の音を融合させ、今や違和感なく自分たちのサウンドに溶け込ませている。
シンフォニック度・・9 テクニカル度・・8 キーボー度・・8 総合・・8
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TEN POINT TEN「12 25」
アメリカのシンフォニックロツクバンド、テン・ポイント・テンの2005年作
クリスマスアルバムであるらしいが、サウンドは一級品のシンフォニックロックとして楽しめる。
キャッチーな希望的メロディとともに華麗に弾き鳴らされるキーボードを含め、曲のアレンジも見事で
マイルドな声質の男ヴォーカルに、ときおり絡む女性Voの歌声も耳に優しく響く。
派手すぎる音でもなく、適度にテクニカルでありつつも実に素直なメロディで聴かせるシンフォニック傑作。
疲れ気味のアナタにも、シンフォニック好きのアナタにもうってつけのアルバムです。
シンフォニック度・・8 メロディアス度・・9 優しげ度・・9 総合・・8.5
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ADVENT「Cantus Firmus」
アメリカのシンフォニックロックバンド、アドベントの2006年作
結成は80年代と古く、1997年にデビューアルバムを出して以来9年ぶりの作品。
サウンドは軽快な抜けの良さがある爽やかなメロディが魅力のシンフォニックロックで、
ジャケの雰囲気などにも表れているように、ところどころに中世音楽的な色合いもある。
やわらかなヴォーカルライン、コーラスワークなど、キャッチーな耳心地と
古楽的な格調高さに加え、しっとりとした質感も併せ持っているのが個性的だ。
オフィシャルサイトにて試聴可能。KENSOのBが一曲でゲスト参加している。
メロディアス度・・8 シンフォニック度・・7 しっとり&爽快度・・8 総合・・8
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K2「Black Garden」
アメリカのシンフォニックロックバンド、K2の2010年作
前作はアラン・ホールズワースの参加が話題となったが、6年ぶりとなる本作は
前作にもあったGENESIS的なシンフォニック路線をより重厚に仕上げたという力作。
SPOCK'S BEARDでも活躍するリョウ・オクモトのシンセワークに、メタリックなキレのあるギター、
そしてガブリエル調のヴォーカルで、古き良き濃密なシンフォニックロックを構築している。
シンフォニック度・・8 重厚度・・8 GENESIS度・・8 総合・・8
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Supernal Endgame「Touch the Sky」
アメリカのプログレバンド、スーパーナル・エンドゲームの2010年作
オヤジ3人によるトリオバンドで、美しいシンセとメロディックなギターで、
TRANSATLANTICあたりを思わせる、キャッチーかつダイナミックに聴かせるサウンド。
やわらかなメロディが耳に優しく、ゲストによるヴァイオリンなども楽曲に彩りを添える。
難解さのない陽性のシンフォニックロック。ロイネ・ストルトが1曲でゲスト参加。
メロディアス度・・8 キャッチー度・・8 ドラマティック度・・8 総合・・8
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Phideaux「Snowtorch
アメリカのミュージシャンPhideaux Xavierを中心にしたフィドーの2011年作
美麗なシンセワークとマイルドなヴォーカルで聴かせるシンフォニックロック。
たおやかなピアノやフルートの音色に、ときに女性ヴォーカルも加わった優雅な質感と
起伏に富んだ展開で、19分、16分という大曲を構築するセンスはなかなか素晴らしく、
アメリカというよりはむしろクラシカルな美意識を含んでヨーロピアンシンフォの感触をただよわせる。
変拍子を使った適度なテクニカル性もあって、よく練られたインストパートも見事。質の高い作品です。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・8 構築度・・8 総合・・8
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i and thou「speak」
アメリカのシンフォニックロック、アイ・アンド・ソウの2012年作
RENAISSANCEのシンセ奏者、JASON HARTを中心にしたバンドで、
やわらかな叙情で聴かせるじつに繊細なシンフォニックロック作品。
男性ヴォーカルの甘い歌声と、ピアノのつまびき、うっすらとしたシンセとともに
クラシカルな優雅さと、Yesあたりに通じる軽やかな構築センスを感じさせる。
10分以上の大曲ばかりだが、全体的に優しくキャッチーな聴き心地で耳疲れしない。。
ちなみに本作のジャケはアニー・ハズラムが手がけている。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 繊細度・・9 総合・・8
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■アメリカのテクニカル系傑作

HAPPY THE MAN「THE MUSE AWAKENS」
アメリカ伝説のテクニカルシンフォバンド、ハッピー・ザ・マンの2004作
メロディメーカーであったキット・ワトキンスがCAMELに引き抜かれたことは有名だが、
2004年になってから完全な新作を発表するとは。肝心の音の方だが、これがびっくりするくらいに「あの」ハッピーザマン。
軽やかな変拍子に耳に馴染むメロディを載せ、たたみかけるように展開してゆく様は
まさに高密度なテクニカル・シンフォニックロックというに相応しい。
また、引きの部分のシンセの美しさは、現代の機材のおかげでいっそう奥行きを増し
キット・ワトキンス不在をまったく感じさせない。時代を超えて甦った、まさにハピマン節全開の傑作だ。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・8 ハッピーザマン度・・10 総合・・8.5
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Oblivion Sun
アメリカのプログレバンド、オブリビオン・サンの2007作
2004年に復活したHAPPY THE MANのメンバー二人を含むバンドで、
サウンドの方は、ほぼハピマンの新作といってよい。軽やかなリズムの上をきらびやかなシンセとギターが絡み、
ジャズロック/フュージョン的な質感で聴かせるシンフォニックロック。テクニカルなインスト曲と、
歌入りのキャッチーな曲のバランスがよく、聴き疲れせずに楽しめる。ハピマンファンはまず必聴といっていいだろう。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・7 ハピマン度・・8 総合・・8
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FROGG CAFE「Fortunate Observer of Time」
アメリカのプログレバンド、フロッグ・カフェの3rd。2005作
ジャズロック的なリズムの上を伸びやかなヴァイオリンの音色が舞い、
フルートやマリンバなどもやわらかに彩りを添える。マイルドな演奏でありながら、
リズムや展開などにはひねたアレンジがあるのがチェンバーロック的な香りもする。
軽やかなアレンジセンスと適度に肩の力が抜けた大人のプログレといった感じで、
メロディアスなフュージョンとしてもテクニカルなプログレ・ジャズロックとしても楽しめる。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 なにげにテクニカル度・・8 総合・・8
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RING OF MYTH「WEEDS」
アメリカのシンフォニックロックバンド、リング・オプ・ミスの2nd。2005作
YES風味もあった前作もかなりの傑作だったが、今作ではテクニカルな硬質性を強めた
スタイルできた。8分、9分という長曲を軸に、センスある展開力と演奏力で聴かせる。
もちろんキャッチーなメロディも随所に混ぜているので、複雑であっても聴き疲れはしない。
とくにリズム面での流れるような変化は見事で、変態ちっくなノリをさらりと混ぜこんでいてにやりとする。
偏屈さとセンスある構築性、そしてメロディが絶妙に組み合わさった、高品質なアルバムだ。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・8 変態度・・8 総合・・8
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SYZYGY「Realms of Eternity」
アメリカのテクニカルプログレバンド、シジィギーの2009作
前作はHAPPY THE MANあたりを思わせるインスト主体のテクニカルな好作であったが、
本作でもシンセとギターが絡み、しっかりとメロディアスさのあるプログレに仕上がっている。
のっけから10分の大曲で始まると、一聴して音のスケール感が増していて、
MAGELLANなどにも通じるシンフォニックな要素と抜けのいいヴォーカルメロディが印象的だ。
“The Sea”と題された8パートに分かれた28分の組曲は、アコースティカルな叙情をまぶしつつ、
ゆるやかに盛り上げるシンフォニックなサウンドで、随所に光るテクニカルなアンサンブルもさすが。
メロディアス度・・8 シンフォニック度・・8 テクニカル度・・8 総合・・8
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■アメリカの偏屈系傑作

SOMNAMBULIST「THE PARANORMAL HUMIDOR」
アメリカのテクニカル・シンフォバンド、ザムナンビュリストの2nd。2001作
GENTLE GIANT的なテクニカルでとぼけた部分に、現代風のヘヴィさとモダンさを加えつつ、
ところによってはメロトロンなども使用。キャッチーなメロディラインはSPOCK'S BEARD的か。
シンフォニックな音像を失わないまま、独自の現代感覚で彩られたサウンドである。
DREAM THEATERやTRANSATLANTICあたりのリスナーも聴けるだろう。これは掘り出し物。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・8 楽曲センス・・8 総合・・8
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THE UNDERGROUND RAILROAD「The Origin Consciousness」
アメリカのプログレバンド、アンダーグラウンド・レイルロードの2nd。2005作
オールドプログレ的質感に、シリアスさと硬質な感触を携えたサウンドはときにYESばりにメロディアスでありながら、
どこかひねくれたアヴァンギャルドなセンスも感じさせる。演奏力、構築力という点では上記したバンド中でも最高レベルにあり、
爽快なメロディにはクラシカルな部分を含みつつ、ジャズロックばりのテクニックも持ち合わせている。
まさに現代形のシンフォニックロックサウンド。インスト中心ながらとても楽しませてくれる作品だ。
メロディアス度・・8 プログレ度・・8 硬質度・・8 総合・・8
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Mars Hollow「World in Front of Me」
アメリカのプログレバンド、マーズ・ホロウの2nd。2011作
GENTLE GIANTルーツのテクニカルな展開美にキャッチーなメロディをまぶし、
レトロなシンセワークとともに、アメリカンプログレの王道ともいうべき抜けの良さと
濃密な質の高さで聴かせる、せせこましさのないダイナミズムにあふれるサウンドが素晴らしい
のっけから12分の大曲というのも自信の現れだろう、ジャズやフュージョン的な優雅さと
爽やかなメロディアスさが合わさって、Frogg Cafeあたりにも通じる抜群のセンスを感じさせる。
正直いって、面白さではSPOCK'S BEARDよりも上をゆく。新時代アメリカンプログレの必聴作。
メロディアス度・・8 プログレ度・・9 楽曲センス・・9 総合・・8.5
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Discipline「To Shatter All Accord」

アメリカのプログレバンド、ディシプリンの2011年作
90年代に2作を出して消えたと思っていたバンドの、14年ぶりとなる復活作。
リーダーであるマテュウ・パーメンターのシアトリカルな独特のヴォーカルと、
ピアノを含んだ美しいシンセアレンジに、GENESISルーツのメロウなギターワークが合わさって、
古き良きプログレの構築美を聴かせてくれる。以前の作品に比べると音には大人の落ち着きが感じられ、
歌もの色が強まったという点では、あるいはMATTHEW PARMENTERのソロに近い感触かもしれない。
艶やかなヴァイオリンが鳴り響く13分の大曲や、メロトロンとともにゆるやかに盛り上げる24分の組曲は
クリムゾン的なスケール感を漂わせた見事さで、全体的に鑑賞すればやはり傑作と言うべき内容である。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 大人の味わい度・・8 総合・・8
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■アメリカのヴィンテージ系傑作

ASTRA「The Weirding」
アメリカのプログレバンド、アストラの2009作
なにやらJethro Tullのようなフルートが鳴りつつ、曲が始まると、こもり気味のドラムを含めて
まるでスタジオで一発録りしているような音質にまたにやり。サイケかがった浮遊感に
メロトロンやオルガンもたっぷりと鳴らしつつ、70年代英国風味のレトロロックを繰り広げる。
曲はどれも長いのだが、古めかしいファズギターの音色とともに演奏の力の抜け具合が耳に心地よく、
ときに二台の音色が重なる美しいメロトロンの響きに耳を傾けつつ、まったりとした気分で聴けてしまう。
Bigelf
に続いてやりすぎなまでのレトロなアナログ・プログレバンドが現れた。
メロディアス度・・7 アナログ度・・8 レトロ度・・9 総合・・8
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The Tea Club「Rabbit」
アメリカのプログレロックバンド、ティー・クラブの2010年作
メンバーが一人増えて4人になり、ゲストにシンセ奏者を加えたことで、
前作よりも音の厚みが増し、シンフォニックといってもよいサウンドになった。
70年代風味のレトロさと、Porcupine Treeに通じる薄暗系ロックのセンスが合わさり、
クリムゾンやANEKDOTEN的な叙情プログレとして楽しめる音像である。
楽曲的なダイナミズムが強まったことで、適度な緊張感も出てきた。
メロディアス度・・8 プログレ度・・8 薄暗叙情度・・8 総合・・8
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Ephemeral Sun「Harvest Aorta」
アメリカのプログレバンド、エフェメラル・サンの2009年作
ヘヴィなギターにメロトロンがかぶさるダークめのハードシンフォニックサウンド。
メロウなギターが薄暗い叙情をかもしだしつつ、ときにメタリックな部分も含めて
Riversideあたりにも通じる展開美を聴かせる。全4曲でラストは40分超という大曲であるが
起伏のある構築性がなかなかセンスよく、シンセやギターのフレーズもツボを押さえている。
ポストロック的な茫漠とした壮大さ、得体の知れぬミステリアスな雰囲気もいい感じだ。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・8 薄暗叙情度・・9 総合・・8
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EdensongThe Fruit Fallen
アメリカのシンフォニックロックバンド、エデンソングの2008作
美しいピアノの音色にメロトロン、ハモンドなどのヴィンテージシンセがかぶさり、
フルートやアコースティックギターなどとともに、しっとりとした叙情を聴かせる。
優しいヴォーカルの歌声とともに素朴でキャッチーなメロディが耳心地がよく、
この繊細な音作りは、アメリカというよりもむしろ英国のバンドの質感に近いか。
艶やかなヴァイオリンなども加わるとクラシカルな雰囲気が増して、ほのかに薄暗い美意識は、
日本のOuter Limitsなども思い出させる。トラッド的な質感も取り入れたしっとりとした部分もありつつ、
意外とヘヴィなパートもあったり、ややとりとめがない感じもあるが、おそらくコンセプトのストーリィに基づいた流れなのだろう。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・8 繊細度・・8 総合・・8
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■アメリカのプログレハード系傑作

CRYPTIC VISION「IN A WORLD」
アメリカのプログレハードバンド、クリプティック・ヴィジョンの2nd。2006作
前作はKANSASを思わせるなかなかの好き作であったが、今回はいきなり16分を超える組曲という気合の入り方で、
いっそうのシンフォニックかつドラマティックさを増したサウンドが素晴らしい。
また、部分部分ではしっとりとした叙情も聴かせ、巧みに緩急を配した曲構成も心憎い。
トッド・プラント(MILLENIUM)の歌うやわらかみのあるヴォーカルメロディとともに
NEAL MORSETRANSATLANTICあたりにも接近したような雰囲気で、
キャッチーさとシンフォニックのバランスも絶妙だ。録音の質も上がっていてマイナー臭さも消えた。
センスとメリハリのある、ドラマティックなプログレシンフォ傑作。コレ買いです!
メロディアス度・・8 ドラマティック度・・8 キャッチー度・・8 総合・・8
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AJALON「On The Threshold Of Eternity」
NEAL MORSEのソロ作でベースを務める、Randy Georgeのバンド、アジャロンの2005年作
サウンドは爽やかなメロディが心地よいプログレハードで、キャッチーで叙情的な好作品。
Randyはベースの他、ギター、キーボードもこなしていてマルチプレイヤーぶりを発揮している。
ラスト2曲はそれぞれ10分を超える大作で、NEAL MORSEのアルバムにも通じる
アメリカ的な爽快さとメロディアスな盛り上がりが光る、なかなかドラマティックな曲。
ゲストにはNEAL MORSEの他、RICK WAKEMANも参加。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 爽やか叙情度・・8 総合・・8
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THE LIFELINEReflections of Hope
アメリカのハードプログレバンド、ライフラインの2010年作
ヴァイオリン奏者を含む4人組で、キャッチーなヴォーカルメロディと
ドラマティックな展開力で聴かせる、なかなかセンスのよいサウンド。
艶やかなヴァイオリンの音色とともに、ほの暗いモダンな叙情性もあり
現在形プログレとしても楽しめるし、ProgMetal的な構築力も備えている。
あくまでメロディにこだわった難解さのない作風に好感が持てる。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 ヴァイオリン度・・8 総合・・8
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Presto Ballet「Invisible Places」
アメリカのプログレバンド、プレスト・バレットの3rd。2011作
METAL CHURCHのカート・ヴァンダーホーフを中心としたバンドであるが、
キャッチーなメロディアスさで聴かせるサウンドは本作も変わらず。
オルガンやムーグの音色など、レトロなシンセワークもふんだんに使い、
メロディアスでやわらかみのあるサウンドは、TRANSATLANTICなどのファンにも楽しめる。
曲はほとんどが7分以上であるが、アレンジ、構築性の点でも高品質で、
SPOCK'S BEARDなどにも通じる、爽やかなハードシンフォニックの力作だ。
シンフォニック度・・8 メロディアス度・・8 プログレ度・・8 総合・・8
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OZ KNOZZ「True Believer」
アメリカのプログレバンド、オズ・ノズの2011年作
結成は古く、70年代に活動していたらしいが活動休止、その後2008年に復活し、本作は復活2作目となる。
キャッチーなメロディとシンセを含んだきらびやかなアレンジで聴かせる、古き良き王道のプログレハードスタイルで、
かつてのKANSASやNEW ENGLAND、AMERICAN TEARSなどを思わせる、70〜80年代的な感触がなつかしい。
適度にハードなギターや、ヴォーカルの歌声にしてもどこかマイナー臭いのもよろしいですな。
これといった新鮮味はないのだが、アメリカン・プログレハード好きはチェックの作品です。
メロディック度・・8 古き良き度・・8 プログレハー度・・9 総合・・8
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Primitive OverflowHonor Waydown」
アメリカのプログレバンド、プリミティブ・オーバーフロウの2012年作
ジャケは怪しいが、サウンドはキャッチーなメロディで聴かせる、ポップ感の漂うプログレハードで、
適度にハードなギターと美しいシンセワーク、コーラスハーモニーが合わさったやわらかな聴き心地。
楽曲は5分前後が中心だが、随所に泣きのギターを含んだ叙情美やプログレ的な展開もあって、
インスト部分でのアレンジにもなかなかセンスを感じさせる。歌メロのキャッチーさはIT BITES
SPOCK'S BEARDにも通じる抜けの良さがあって、総じて爽やかに楽しめる好作品となっている。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 キャッチー度・・9 総合・・8
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■アメリカの女性ヴォーカル系傑作


All Over Everywhere「Inner Firmaments Decay」
アメリカのフォークプログレバンド、オール・オーバー・エブリウェアの2010年作
Deluge Granderのシンセ奏者も参加しているバンドで、アコースティックギターに
うっすらとしたシンセがかぶさり、女性ヴォーカルの歌声がやわらかに乗るという、
ゆったりと夢見がちなアシッドフォーク・プログレ風味のサウンド。ヴァイオリンにビオラ、
チェロ、フルート、オーボエ、さらにはアコーディオンやシタール、ダルシマーなど、
豊富な種類のアコースティック楽器を織りまぜ、ときにメロトロンを含めたシンフォニックさも含めて、
単なるフォークではないミステリアスで壮大な雰囲気を描き出す。うっとりとする幻想的な美しさです。
アシッドフォーク度・・8 幻想度・・9 女性Vo度・・7 総合・・8
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Cirrus Bay「Step Into Elsewhere」
アメリカのシンフォニックロックバンド、シルス・ベイの2008作
二人の女性ヴォーカルの歌声でしっとりと聴かせるシンフォニックロック。
随所にアコースティカルな要素もあって、初期のQUIDAMあたりにも通じる雰囲気。
美麗なシンセワークにメロウなギターが絡むさまは、やはりGENESISルーツの
シンフォニックサウンドで、その繊細さにはアメリカのバンドとは思えない情緒がある。
ラストは16分の大曲で美しく盛り上げてくれる。女性声系シンフォ好きは要チェック。
シンフォニック度・・8 繊細度・・9 女性Vo度・・8 総合・・8
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New Eden Orchestra
「Vikings」
アメリカのプログレバンド、ニュー・エデン・オーケストラの2012年作
前作から9年ぶりのアルバムで、まだ活動していたのかと驚くが、 美麗なシンセに導かれて始まる本作は
ヴァイキングをテーマにしたコンセプトアルバム。男女ヴォーカルの歌声でしっとりと聴かせる叙情と、
北欧的な世界観を描き出すようなドラマティックさで聴かせるサウンド。曲自体は2〜4分台の小曲が中心で、
プログレ的な展開力というよりは、曲を連ねた流れの中で、リコーダーなどのアコースティカルな音色も含ませつつ
メロウな叙情美をやわらかに作り出す作風で、ある意味では異色作というべきだろう。しっとりと幻想的な好作です。
シンフォニック度・・7 プログレ度・・7 しっとりドラマティック度・・8 総合・・8
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DISTRICT 97Trouble With Machines
アメリカのシンフォニックロックバンド、ディストリクト97の2012年作
女性Voにシンセを含む5人編成で、前作もなかなかの力作であったが、
今作も10分超の大曲を2曲含む濃密なハードシンフォニック作となっている。
けっこうヘヴィなギターと美麗なシンセワーク、 艶のある女性ヴォーカルの歌声を乗せ
適度にテクニカルで重厚なサウンドを構築。知的な展開力はProMetal的でもある。
切れ味のある演奏に緊張感も漂わせながら、随所にキャッチーなメロディや
モダンなスタイリッシュ性を含んだアレンジは、現在形ハードプログレの進化形を示している。
前作以上のスケール感と楽曲の充実ぶりにバンドとしての成長を覗かせた傑作だ。
ドラマティック度・・8 けっこうメタル度・・8 女性Vo度・・7 総合・・8
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