緑川 とうせいが選ぶ
プログレ初心者へ捧ぐ名盤35枚!+個性派プログレ35枚
  〜ここからすべてが始まる〜

キング・クリムゾンの登場以降、イギリスを中心にして、先進的なロックを志すバンドたちが次々に登場し、
それはやがてはイタリア、ドイツ、北欧などへも飛び火し、70年代はプログレ、アートロックのムーブがヨーロッパ中を席巻した。
その後70年代末から80年代に入ると、時代は産業ロック全盛となり、プログレバンドはポップ化を余儀なくされるなどして、徐々にその姿を消していった。
難解であったり、ときに芸術的、先鋭であることから、一般のリスナーからは認知されにくいジャンルであるプログレッシブロックであるが、
リスナーの知的好奇心をくすぐる音楽という点では、他に類をみない。クラシックやジャズ、ときには民俗音楽をも取り入れたロックという、
その幅の広さと、世界各国の地域性をもっともよく表した音楽として、いまなお多くのファンを魅了してやまない。
ここでは、主にその入り口となるべき70年代の名盤たちを厳選して紹介する。
なお、選別にあたっては、筆者の趣味、嗜好が優先させているので、そのあたりはお察しいただきたい。



KING CRIMSON「IN THE COURT OF THE CRIMSON KING」
キング・クリムゾンの不朽の名作「クリムゾン・キングの宮殿」 1969年作
ロック史上に燦然と輝く名作。ともかく、1曲目“21世紀の精神異常者”のインパクトたるやハンパではない。
サックスが不穏に鳴り響き、叫びのような歌声が狂気を振りまく、この始まりとジャケのインパクトがリンクして
1度聴いたらもう誰も忘れられない作品となる。続く“風に語りて”では、美しいフルートの音色とともに素朴な叙情を聴かせ、
名曲“エピタフ”の壮大かつ静謐な世界観にうっとりとなる。“ムーンチャイルド”でひと休みさせておいて、
ラストのタイトル曲のメロトロンの盛り上がりで圧倒される。楽曲ごとの不思議な魅力といい、アルバムとしての構成といい、
飽きることのない名盤に仕上がっている。60年代末に来た最初の衝撃。これがプログレ。すべてはまずはここから!
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KING CRIMSON「LARKS' TONGUES IN ASPIC」
キング・クリムゾンの5th。1973作
「太陽と戦慄」の邦題で知られる、第二期クリムゾンの傑作。
ジョン・ウェットンビル・ブラッフォードデヴィッド・クロスらの黄金メンバーが結集、
のっけから緊張感のあるヴァイオリンとギターの音で、聴き手はぐいぐい引き込まれる。
1973年というこの時期、にこまで重厚なロックを演奏したバンドはいまい。
変拍子を力強く叩くブラッフォードのドラムはで新たなバンドの核になっている。
静寂の中、張りつめたヴァイオリンの音色が響き渡る。身震いするくらいの傑作。
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PINK FLOYDAtom Heart Mother」
ピンク・フロイドの5th。1970作/邦題は「原子心母」
オーケストラを導入したフロイド最高のシンフォニック作。「狂気」のイメージが強いこのバンドだが
初期の最高作はこれ。オールインストの23分のタイトル曲は
オーケストラルな雄大さとドラマティックな美しさに満ちた見事な大曲だ。
もちろんフロイドらしい内的な情緒もあって、深みのあるコーラスワークに
ハモンドの音色が絡む部分などは、厳かな空気すらただよわせている。
実際のレシピが付いた“アランのサイケデリック・ブレックファスト”も洒落が効いている。
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PINK FLOYD「The Wall」
ピンク・フロイドの1979年作
ロジャー・ウォーターズが自身のコンセプトに基づいて作り上げた2枚組のロックオペラ作品。
「聴衆との間に存在する壁」という、コンセプトとしては難解なテーマかもしれないが、
曲単位で聴けばむしろメロディアスな小曲の連続として、叙情的なサウンドが楽しめる。
重厚なシリアスさと、アコースティカルな素朴さを同居させた楽曲は、
決して派手なものではないが、ゆるやかなギターフレーズの泣きのメロウさや、
うっすらとしたシンセ、オルガンに包まれて、メッセージ的な歌声がやわらかに響く。
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EMERSON,LAKE & PALMER「Tarkus」
エマーソン・レイク・アンド・パーマーの2nd。1971作
アルマジロ戦車こと「タルカス」の組曲はELPの最高傑作である。
LPでいうA面すべてを費やした7パートにな分かれた20分の長大な組曲は、
エマーソンのキーボードワークが縦横無尽に炸裂し、リズム面での緩急のつけ方や
ドラマティックな構成力が前作以上にプログレッシブロックとしての美学を感じさせる。
ムーグシンセを導入したことで、ハモンド、ピアノというそれぞれの異なる音を使い分け、
サウンドの幅が大きく広がっている。冒頭の組曲が凄すぎて2曲目以降の印象が弱いのだが、
なんにしてもこのアルバムで聴ける世紀のキーボード大曲は、時代を超えて輝き続けている。
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EMERSON,LAKE & PALMER「Brain Salad Surgery」
エマーソン・レイク・アンド・パーマーの5th。1973作/邦題は「恐怖の頭脳改革」
ギーガーの手によるジャケのインパクトもあいまって、一般的には最高作とされるアルバム。
“聖地エルサレム”の荘厳さに惹きつけられ、“TOCCATA”のプログレぶりに悶絶しつつ、
3、4曲目でひと息ついていると、極めつけの大曲“悪の教典#9”が襲いかかってくる。
3部構成、30分近くにおよぶこの長大な曲には、ELPというバンドの攻撃性とクラシカルな要素、
そしてハモンド、ムーグという鍵盤をロックのメイン楽器としたキース・エマーソンの野望、
そのすべてが詰まっており、まさにバンドとしての集大成的な作品である。
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Genesis「Nursery Cryme
ジェネシスの3rd。1971作
本作で彼らの幻想音楽は頂点に達した。新たにステファン(スティーブ)・ハケットを迎え、
黄金の体制となったバンドは、物語性をともなった強固な世界観を構築、
名曲中の名曲“The Musical Box”の妖しげな空気、ハケットのメロウなギターも素晴らしく、
後半からラストへの流れは泣きの叙情が押し寄せるじつに感動的。全体的な完成度からすれば、
Foxtrot」、「Selling England〜」の方が上かもしれないが、
この幻想的な物語世界はGENESISの作品中でも最高のものだろう。
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Genesis「Selling England by the Pound
ジェネシスの5th。1973作
GENESISの最高作をあえて選ぶなら本作となるだろう。
彼らの世界観である幻想美と、楽曲におけるドラマティックさが結実、
それがバンドの成熟とともに最高の形で組合わさったのが本作だ。
ガブリエルのヴォーカルの表現力も増し、ハケットの奏でるメロウなギターに
トニー・バンクスのシンセワークがもっとも素晴らしいのもまた今作だ。
そしてGENESIS最高の名曲“Firth of Fifth”はイントロのピアノから感涙必至。
これぞ英国が生んだ幻想のシンフォニックロック。繊細にして感動的な名作。
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YES「CLOSE TO THE EDGE」
イエスの5thアルバム。「危機」のタイトルで知られる1972年作の名作。
言わずと知れたYESの最高傑作であり、18分にもおよぶタイトル曲の素晴らしさは彼らの絶頂期の勢いと
あふれ出すセンスをすべて凝縮したものである。張りつめた緊張感と演奏のテンション、
そこにドラマティックな展開美と、爽快なメロディを盛り込んで練り上げたこの大作は、
そのままこのアルバムの価値となっている。12分過ぎに鳴り響く荘厳なチャーチオルガン、
リック・ウェイクマンのソロパートを含めて、盛り上がりを見せる間奏部は圧巻。
また本作の魅力として、もうひとつの大曲“And You And I”の美しい牧歌性も見逃せない。
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YES「YES SONGS」
イエスの名盤ライブアルバム2枚組(アナログ時は3枚)。1973作。
アルバムにおいては緻密なサウンドが際立つ彼らだが、やはりライブにおいても緻密である。
ジョン・アンダースンの高音ヴォーカル、スティーブ・ハウのセンス抜群のギターフレージング、
正確無比のビル・ブラッフォードのドラム、そしてリック・ウェイクマンのクラシカルなキーボードプレイ。
初期の名曲を網羅し、それを最高の演奏で再現したこのライブ作は、バンドの代表作とも言える完成度で
実際、YESがさほど好きでなかった自分をして、このバンドを再評価するきっかけともなった。
それだけの見事なライブ演奏。孤高のメロディアス、シンフォニックロックがここで聴ける。
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CAMELMirage」
イギリスのプログレバンド、キャメルの2nd。1974作
CAMELの最高作を挙げるなら、美しさでは次作「白雁」だろうが、メロディックロックとしては本作だ。
アンドリュー・ラティマーのメロディアスなギターが鳴り響く躍動的な1曲目は、
ギターフレーズで聴かせるプログレが好きな方ならにんまりだろうし、
しっとりとしたフルートの美しい2曲目や、ファンタジックな大曲“Nimrodel”など
聴き所は多いのだが、さらにラストには素晴らしき組曲“Lady Fantasy”が待ち構えている。
繊細なメロディと英国ロックとしての魅力が合わさった初期の傑作である。
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CAMELThe Snow Goose」
イギリスのプログレバンド、キャメルの3rd。1975作
ポール・ギャリコの小説「白雁」をテーマにしたコンセプトな大傑作。
雁たちの鳴き声から静かに始まり、ピアノをバックに美しいフルートがメロディを奏で出す。
インストの小曲を連ねて情景を描き出し聴かせてゆくという手法ながら、メロディを大切にした作りなので
難解さはまったく感じられない。アンディ・ラティマーのやわらかなギターメロディも素晴らしい。
2nd「Mirage」のような躍動感は薄いが、その分丁寧にまとめられたアルバムともいえる。
これはまさに聴く小説作品である。
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Renaissance「Ashes Are Burning」
英国のクラシカルロックバンド、ルネッサンスのアルバム。1973作/邦題は「燃ゆる灰」
美しいピアノが鳴り響く、1曲目の“Can You Understand”のイントロからして、
このバンドのクラシカルな叙情美がすべて味わえるという…もう最高である。
そこに瑞々しいアニー・ハズラムの歌声が加わると、世界はしっとりとした優しさに包まれる。
どこかまだフォーク的な牧歌性を残したメロディに、艶やかなストリングスが重なって
雄大でありながらも、英国の優雅な土臭さともいうべき感触がとても耳に優しい。
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Renaissance 「Scheherazade and other stories
イギリスのクラシカルロックバンド、ルネッサンスのアルバム。1975作
第二期Renaissance初期4作はどれもが必聴の傑作なのだが、
その中でもクラシカルな壮大さの点では本作こそが最高傑作であると断言できる。
クラシカルなピアノのイントロから、アニー・ハズラムの艶やかな歌声が加わると、
ファンタジックなシンフォニックロック的質感にぐいぐいと引き込まれてゆく。
名曲“Ocean Gypsy”の泣きの叙情で軽く昇天した後、24分を超える組曲
“Song of Scheherazade”はまさに本作のハイライトというべき、
ドラマティックかつ壮麗なクラシカルロックサウンドで感動させてくれます。
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MIKE OLDFIELD「Ommadawn」
マイク・オールドフィールドの3rd。1975作
とにかく、ここまで感動的な音楽というのは世界中探してもなかなかありはしない。
商業音楽に敢然と背を向け、自らの繊細な内的感性を見つめて生み出した、孤高の傑作。
民俗音楽を色濃く取り入れつつ、シンフォニックな音の重ねにも磨きがかかり、牧歌的にして壮大…
世界すべてを包み込むような大きさと、人間的な優しさにあふれている。
19分、17分という大曲2曲の構成の中に、当時のマイクの瑞々しい感性がすべて詰まっている。
アコースティック楽器に、ギターとシンセを巧みに融合させ、伝統的なトラッドを盛り込んだ楽曲は
希望に満ちた子供たちの歌声が加わってラストを迎える。泣かずにはいられない必聴作。
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MIKE OLDFIELDIncantations
マイク・オールドフィールドの4th。1978作
マイクのアルバムでどれかをお勧めするとしたら、前作「OMMADAWN」
本作「呪文」とで迷ったすえに、やむをえず2枚ともに差し出すだろう。
たおやかなフルートの音色に、美しいシンセ、メロウなギターワークが重なって
絶品の叙情を聴かせるサウンドは、リマスター効果で素晴らしい音質となっている。
LPでは2枚組みであった全4曲の大曲は、そのどれもが濃密にして清涼、
まるで爽やかな風のように、暖かで素朴なメロディが耳に優しく響いてくる。
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RICK WAKEMAN「Six Wives of Henry VIII」
YESのキーボード奏者、リック・ウェイクマンのソロ作。1973作
「ヘンリー八世の六人の妻」という、いかにもリックの時代的なロマン主義が反映された本作は
鍵盤の魔術師リックのピアニストとしての魅力もたっぷりと味わえる逸品だ。
ムーグやハモンドなどの時代的な音色と、クラシカルなピアノの音色がゆるやかに交差し、
中世を思わせるロマンティックな世界観と、格調高い英国の気品が凝縮されている。
“Catherine Howard”の優雅なピアノの旋律には、誰もがうっとりとなるだろうし、
“Jone Seymour”での荘厳なパイプオルガンやハープシコードの雅びな響きも格別、
そして彼の代表曲ともなる“Catherine Parr”のハモンドの早弾きは圧巻である。
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THE ENIDAerie Faerie Nonsense」
英国のシンフォニックロックバンド、エニドの2nd。1977作
1984年の再録バージョンであるが、それでも、このバンドのシンフォニーロックとしての素晴らしさは
充分に味わえるわけで、優雅でクラシカルであり、そしてオーケストラのごとき雄大さをもった楽曲は
初めてこのバンドの音を聴く方にはかなりの衝撃となるだろう。
簡単に言えば、バンド編成でオーケストラのシンフォニーを再現したといっていい。
この2ndは彼らのディスコグラフィー中でも最もそれが顕著に出ている作品で、
とくに30分近くにも及ぶ長大な組曲“FAND”での高揚感はただごとではない。
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U.K.「Danger Money」
イギリスのプログレバンド、UKの2nd。1979作
テリー・ボジオを迎えて三人編成となったことで、方向性が明確化するとともに
バンドでのエディ・ジョブソンの役割が相対的に大きくなったのは必然だろう。
時代的なハモンドの音色も交えた絶品のシンセワークに、キャッチーなヴォーカルメロディ、
過去のプログレ感覚を要素のひとつとして取り入れたこのサウンドの心地よさは、
プログレ好きのためのプログレといえるだろう。きらびやかさでは1st以上の出来だ。
本作は、70年代最後の英国プログレの輝きであった。
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PFM「Photos of Ghosts」
イタリアのプログレバンド、PFMことプレミアータ・フォルネリア・マルコーニの1973年作/邦題は「幻の映像」
なんといっても、1曲目の“River of Life”が素晴らしい。やわらかなフルートとシンセが合わさり
ゆるやかに盛り上がってゆくこの美しさは筆舌に尽くしがたい。続く2曲目の“Celebration”のコミカルなキャッチーさ、
たおやかなピアノで始まる“Old Rain”の優しい情緒、マウロ・パガーニのヴァイオリンにアコースティカルな素朴さと
クラシカルな感触で聴かせる大曲“Il Banchetto”、テクニカルな演奏が見事な“Mr.9'til5”など、
どの曲もじつに味わい深く楽しめる。まさにイタリアンロック入門用にうってつけの名盤。
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PFM「The World Became The World」
プレミアータ・フォルネリア・マルコーニの1974年作
「甦る世界」のタイトルで知られる本作は、まさにPFM絶頂期の傑作。緑色のジャケがイタリア語盤で青ジャケは英語盤。
PFMの作品では自分は基本的にイタリア語のものが好きなのだが、本作に関してはこの英語版もお気に入り。
壮大な混声コーラスで幕を開ける“The Mountain”のダイナミズムにまず感動。ドラマティックに展開する楽曲に
ぐいぐいと惹きつけられる。イタリア語盤未収録のタイトル曲は美しいメロディに泣きまくり、
そして、本作ハイライト“Four Holes in the Ground”は、躍動する5拍子のリズムとメロディが合わさった名曲中の名曲
素晴らしい演奏テクニックとダイナミズム、そして叙情が同居した、まさに歴史的な名盤である。
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ARTI + MESTIERI「Tilt」
イタリアのプログレ・ジャズロックバンド、アルティ・エ・メスティエリの1st。1974作
「芸術と職人」というバンド名をもつこのバンド。
本作はイタリアンプログレ、そして美しいジャズロックとしての最高傑作である。
フリオ・キリコの手数の多いドラムと、艶やかなヴァイオリンの音色、鳴り響くサックス、
プログレ的なシンセとともに、優雅でメロディックな聴き心地と、たたみかける勢いに満ちた
圧倒的なアンサンブルに引き込まれる。一方ではイタリア語の歌唱で聴かせる叙情性もあって、
プログレ性と技巧的なジャズロックのバランスのとれたサウンドである。2nd「明日へのワルツ」も必聴。
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AREA「1978」
イタリアのジャズロックバンド、アレアの6th。1978作
ブルガリアントラッド的に跳ねるリズムの上に、デメトリオ・ストラトスの強力な歌声を乗せ、
のっけからたたみかけるジャズロックサウンドは、まったくもってインパクト充分。
アコースティック楽器が主体であるのに、このパワーには圧倒させるばかり。
変拍子入りのテクニカルなキメをさらりとこなし、それでいてまとまりのある聴き心地があるのは、
ある意味で驚異的であるし、中近東やバルカンテイストを巧みに取り入れつつ、イタリア的な情緒を
そこに重ね合わせるセンスというのは、ちょっと他のバンドには真似のできない芸当であろう。
本作発表の翌年、デメトリオ・ストラトスの病死により解散に至る。本作のきらめきは語り継がれる伝説となった。
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I POOH「Alessandra」
イタリアンロックバンド、イ・プーの5th。 1972作
「ミラノの映像」の邦題で知られる本作は、間違いなく初期の最高傑作
艶やかなストリングスに導かれて、ゆるやかな叙情が舞い降りる。
繊細でありながらも情熱的なイタリア語の歌声が響きわたり、
壮麗かつ雄大なオーケストレーションが一体となって、
哀愁のロマンが波のように押し寄せて、涙腺を刺激する。
イタリアからしか出て来ない泣きの叙情美に胸震わせろ。
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BANCO DEL MUTUO SOCCORSO「Darwin!」
イタリアのプログレバンド、バンコ・デル・ムトゥオ・ソッコルソの2nd。1972作
PFMとともにイタリアを代表するこのバンド、1st〜3rdはどれも甲乙つけがたい出来なのだが
もっともイタリア的な濃密さで聴かせるのが本作。個人的にもバンコの最高作だと思う。
クラシカルなピアノの響きにイタリア語の歌声。いかにもイタリア然とした混沌とした空気と
ジャコモ氏の存在感ある歌唱が合わさって、唯一無二の世界観を描き出している。これぞイタリアンロック!
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MAXOPHONE
イタリアンロックの名作の1枚、マクソフォーネのアルバム。1975作
イタリアらしい叙情性を保ちながらも躍動感に溢れる演奏力の高さはPFMにも通じ、
美しいコーラスメロディやリリカルなフルートなどもバランスよく曲を彩っている。
対位法の使われ方なども非常に巧みで、バランスが自然であるので音にはまったく嫌味がない。
聴きやすいが奥も深い。イタリアンプログレ入門用としてはマストアイテムの一枚である。
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OPUS AVANTRA
 「Introspezione」
イタリアンロックの輝ける芸術、オパス・アヴァントラの1st。1974作
アヴァンギャルドな感性と気高さ、繊細かつ張りつめたような美意識、
ピアノの一音さえもが空気を描きだすような意志をもっている。
そして、歌姫ドネラ・デル・モナコの崇高な歌声が胸を打つ。
クラシックを基盤にしつつ、ここまで革新的な音楽をいったい誰が創造できるだろう。
この時代、この国からでしか決して生まれえなかった音楽である。
プログレッシブロックを芸術とするのなら、本作こそまさにそれを体現した作品だ。
続く2nd「Lord Cromwell」とともに、イタリアの奇跡ともいうべき名作である。
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OSANNA「PALEPOLI」
イタリアのプログレバンド、オザンナの3rd。1973作
妖しい鈴の音とともに太古の儀式を思わせるような雰囲気から、フルートが鳴りだし、
うねるようなギターとメロトロンが合わさって、祝祭めいたサウンドが作られると
やがて幻想都市パレアポリスが目に浮かぶ。イタリア語の歌声による叙情と、
濃密な空気がかもしだす特有の迫力は、このバンドならではのものだ。
吹き鳴らされるフルート、荒々しいギター、フェリーニの映画のような破天荒さと
呪術的な幻想性…すべてにおいてイタリアからしか出て来得ない傑作だ。
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CERVELLO「Melos」
イタリアンロックの名作、チェルヴェッロのアルバム。1973作
のっけから神秘的なスキャットコーラスとアコースティックギターの調べで、不思議な幻想世界へといざなわれる。
キーボードがいないというのが信じられないほど、バンドの音には広がりがあり
アコースティックギターに絡む、エフェクトされたサックス、フルート、ヴィヴラフォンなどが
ときにやわらかく、ときに刺激的に鳴らされ、ときに爆発し、独自のサウンドを形成しています。
神秘的で呪術的…神話をモチーフにした歌詞も文学的で、ある種、崇高さと毒気を併せ持っています。
絶品の演奏力と情景描写力をもったこの作品は、イタリアンロックに生まれた芸術とさえ言えるでしょう。
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TAI PHONG「Windows」
フランスのメロディックロックバンド、タイ・フォンの2nd。1976作
1st「恐るべき静寂」は、日本の武士をデザインした美しいジャケのインパクトとともに、
絶品の叙情とメロディにあふれた名盤として知られるが、2ndとなる本作もまた素晴らしい。
1曲目の“憧憬と失意の季節”でのダイナミックな叙情へのメロディアスな展開美は、
個人的にはタイ・フォンの曲の中でももっとも好きなものだ。センスあるギターワークとシンセが絡み、
そこに哀愁を感じさせるヴォーカルが重なると、プログレうんぬんというよりも絶品のメロディックロックとして
一般の方にも大いに楽しめるはず。しっとりとしたピアノなど、やわらかで繊細な叙情も胸をうつ。
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ANYONE'S DAUGHTERPiktors Verwandlungen
ドイツのシンフォニックロックバンド、エニワンズ・ドウターの3rd。1981作
ヘルマン・ヘッセの詩をモチーフにした作品でバンドの最高傑作ともされる。
イントロからもう、泣きのギターとシンセが合わさった、まさにドイツのロマンが集約されたような
シンフォニックサウンドが炸裂。曲間にドイツ語によるヘッセの詩の朗読を挟みつつ
その見事なメロディセンスと演奏力で、何度も盛り上がりを迎えながら組曲は進行してゆく。
ドラマーをはじめ、ギターもシンセも、ライブ録音とは思えない巧みな演奏がまったく素晴らしく、
美しいジャケも含めて、ドイツのみならず欧州シンフォニックの語り継ぐべき名盤である。
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TRIUMVIRAT「OLD LOVES DIE HARD」
ドイツのELPといわれたトリアンヴィラートの4th。1976作。
よく比較されるELPよりはずっとポップでキャッチー、じつに美しくメロディアスなシンフォ作品。
個人的にはむしろこちらのほうがこのバンドにとっては自然な感じでよろしいのではとも思う。
ギターがないのに音の薄さを感じさせないのは、キーボードの重ね方のセンス、無駄のない楽曲によるものだろう。
キャッチーな曲、繊細なピアノ曲、壮大なシンフォニック曲とそれぞれに焦点が絞り込めている。
繊細でポップ、しかもシンフォニックという点では、もしかして当時のドイツでは
ANYONE'S DAUGHTERと並び立つクオリティであったかもしれない。
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FOCUS「FOCUS 3」
オランダの名バンド、フォーカスの3rd。1972作
クラシックの素養をもつオルガン&フルート奏者タイス・ファン・レアーの作曲能力と
ジャズとロックのテクニックを兼ね揃えた名ギタリスト、ヤン・アッカーマンのセンスが合わさり
奇跡的な均衡をなしながら、クラシカルかつ躍動感のあるサウンドを描き出す。
アッカーマンのメロディアスなギターが光るキャッチーな名曲“SYLVIA”をはじめ、たおやかな叙情の“FOCUS V”、
クラシカルとジャジーな要素が見事に融合した大曲“ANSWERS? QUESTIONS! QUESTIONS? ANSWERS!”、“ANONYMUS U”など、
聴きどころが多く、67分間濃密な演奏がたっぷり楽しめる。タイスのピアノ、オルガン&フルートが美しい小曲も、
効果的に導入され、全体的に格調のあるクラシカルでメロディアスなアルバムとなっている。
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TRACE

オランダのプログレバンド、トレースの1st。1974作
EKSEPTIONで活躍したリック・ヴァン・ダー・リンデン率いるクラシカル・キーボードロックバンド。
これでもかとばかりにクラシカルに弾き鳴らされるオルガンにメロトロンがかぶさり、
素朴でありつつもコテコテという、聴いていて思わずにやにやしてしまうサウンド。
オランダらしいメロディへのこだわりと、良い意味での分かりやすい大衆感覚があり、
ELPのストイックさに比べて肩肘張らすに楽しめます。ドイツのTRIUMVIRATと並ぶ鍵盤プログレの代表。
2nd「鳥人王国」はよりスタイリッシュに構築される傑作ですが、まずは熱きクラシカルロックの本作から。
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KANSAS「Leftoverture」
70年代アメリカを代表するプログレバンド、カンサスの4th。1976作
1曲目の“Carry On Wayward Son”は誰もが口ずさめるメロディで印象に残る1曲、
そして2曲目の“The Wall”は、泣きのヴァイオリンにギターとシンセが合わさり
感動的に聴かせる、バンド史上でも美しさの点では最高の名曲だ。
ラストの“Magnum Opus”はプログレ的な大曲だが、全体的には明るめのキャッチーさと
ドラマ性とのバランスがとれたアルバムだ。スタジオアルバムでどれか1枚となると、
やはり本作ということになるだろう。
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個性派プログレ傑作35枚
上の35枚を聴いたら次はこのあたりをどうぞ


VAN DER GRAAF GENERATOR「Pawn Hearts」
イギリスのプログレバンド、ヴァン・ダー・グラフ・ジェネレーターの4th。1971作
一般的にVDGGの最高作とされるアルバム。どこかスペイシーなハモンドの音色に、
ピーター・ハミルの個性的な歌声が響きわたり、不思議な壮大さが広がってゆく。
サックスも入ってジャズロック的な要素もありながら、絡みつくような濃密さが音にあり、
気持ち悪い一歩手前という雰囲気が、つまりはとても個性的でもある。
KING CRIMSONにも匹敵する音の強度と、アヴァンギャルドな感覚、
たたみかけるこの質感は唯一無二のもの。全3曲という大作志向で、とくに後半の23分の組曲が圧巻だ。
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MARSUPILAMI「Arena」
ブリティッシュロックバンド、マルスピラミの2nd。1971作
英国プログレの裏名盤ともいうべき完成度を誇る歴史的傑作。古代ローマを舞台にした
壮大なコンセプト作で、まだ粗削りだった1stに比べサウンドの輪郭がはっきりしてきており、
楽曲におけるメリハリのつけ方もドラマティックになった。ヴォーカルはときに物語を語るように静かで、
かと思うと戦闘をする戦士のように激しくもなる。たたみかけるドラムに、ハモンドオルガン、
メロトロンやフルートを聴かせる叙情パートもあり、息つかせる暇もなく楽曲は展開してゆく。
ジャズロック的な軽やかさと、ハードな質感が同居し、シンフォニックな要素がなくとも、
不思議と音には広がりと壮大さを感じるのが凄い。ある意味これも英国からしか出て来ない音。
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COLOSSEUM「Daughter of Time」
イギリスのジャズロックバンド、コロシアムの3rd。1970作
前作「ヴァレンタイン組曲」がバンドの代表作として名高いが、本作もひけをとらないばかりか
演奏のテンションの高さに関してはむしろ上回っている。ジョン・ハイズマンの激しいドラムに、
クリス・ファーロウの歌声がかぶさり、吹き鳴らされるデイブ・グリーンスレイドのオルガン、
吹き鳴らされるサックスなどが一体となった、じつに熱いプログレ・ジャズロックを繰り広げている。
また楽曲におけるドラマティックな構築性はいかにも英国的な雰囲気をかもしだしていて、
単なるジャズロックの枠を超え、ブリティッシュロックとしての普遍的なスケール感も感じさせる。
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ESPERANTO「DANSE MACABRE」
プログレバンド、エスペラントの2nd。1974作/邦題は「死の舞踏」
2人のヴァイオリンにチェロを含む10人編成という大がかりなスタイルで
イギリス、ベルギーなど多国籍のメンバーが織りなす名盤中の名盤。
不穏なヴァイオリンの音色から始まり、ブレイクを多様した複雑な楽曲構成で
テクニカルにたたみかける。ピート・シンフィールドのプロデュースも相まって、
1stに比べてメンバーの力量と奔放なセンスが遺憾なく発揮されている印象だ。
クラシカルな硬質さがプログレッシブロックとの融合を奇跡的に果たしており、
絶妙の緊張感と均衡を生み出している。この優雅なアヴァンギャルドさは必聴級。
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EGG「THE POLITE FORCE」
エッグの2nd。1970作/邦題は「優雅な軍隊」
いわゆるカンタベリーシーンのバンドだが、要はELPスタイルのキーボードトリオで、
メロディにはクラシカルな要素がたっぷり。後にスチュワート&ガスキンで名を馳せるデイブ・スチュワート
オルガンとピアノは、クラシカルなメロディから、ジャジーで前衛的なタッチまで多彩で素晴らしい。
タイトル通りの優雅な雰囲気でありながら、変拍子リズムやアヴァンギャルドな要素も混ざり
1970年という年代を考えるとかなり先鋭的で、今聴いても曲にさほど古くささがないのが凄い。
とくにB面全てを使った組曲が白眉。またブラス入りの曲もアルバムの中でいいアクセントになっている。
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JETHRO TULL「Thick As A Brick」
最高作とも名高い、ジェスロ・タルの5th。1972作
邦題は「ジェラルドの汚れなき世界」。20分以上の大曲が2曲というコンセプトアルバム。
アコースティックギターとともに、イアン・アンダーソンのフルートの音色がしっとりと美しい。
案外ヘヴィなベースと時にハードなギターが合わさり、曲はドラマティックに進行してゆく。
ピアノやハモンドも効果的に使われていて、ヴォーカルメロディの叙情性を助長しつつ、
アコギとフルートによるフォーキーなパートでは牧歌的なやわらかみが耳に心地よい。
初期のアルバムよりもずっとプログレしていて、まさにバンドの代表作と呼ぶにふさわしい出来だ。
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GREENSLADE「BEDSIDE MANNERS ARE EXTRA」
ブリテイッシュオルガンロックの名作、グリーンスレイドの2nd。1973作
一般的に1stの方が知名度が高いが、冷静に判断すればこちらの2ndの方が完成度は上だろう。
ブリティッシュの香り漂うメロディアスかつやわらかみのあるサウンドは前作以上に洗練され、
デイヴ・グリーンスレイドの奏でるクラシカルなピアノとハモンドオルガンの音色がしっとりと美しい。
幻想的なメロトロンの響きにたおやかなフルートの音色、そしてプログレ的に鳴り響くオルガンとともに、
楽曲におけるメリハリとシンフォニックな質感という点でもバンドの最高傑作だろう。
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GENTLE GIANT「In a Glass House」
ジェントル・ジャイアントの5th。1974作
一般的には、前作「オクトパス」の人気が高いようだが、よりテクニカル志向なのはむしろ本作。
ガラスの壊れる音がしだいにリズムになってゆくイントロから惹きつけられるが、
演奏もエッジの立った硬質さが増し、ハードなたたみかけと小洒落たユーモア、
そして叙情性とが、それぞれに際立って聴こえるようになった。
曲も7〜8分台と長めになり、より我々の想像するプログレをやってくれていて、
「ガラスの家」というタイトル通り、涼やかな心地よさが作品に統一感を持たせている。
知性をともなった演奏力と、構築センスが見事に一体となった傑作だ。
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CARAVAN「For Girls Who Grow Plump in the Night」
カンタベリー系を代表する、キャラヴァンの5th。1973作/邦題は「夜ごと太る女のために」
一般的には、3rd「グレイとピンクの地」が代表作とされているが、
メロディの魅力という点では、むしろこちらを最高作にしてもよいと思う。
キャッチーでややポップな歌メロに、ジャズロック風の軽やかな演奏と
フルートなどのたおやかな叙情性や、オーケストラ入りの大曲もあり、
ポップでありながらも作品としては充分に聴きごたえがある。
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Hatfield and the North 「The Rotters' Club」
カンタベリー系ジャズロックバンド、ハットフィールド・アンド・ザ・ノースの2nd。1975作
基本は上品で軽やかなジャズロックながら、リチャード・シンクレアの歌には、
キャッチーなポップセンスがあり、そのメロディは1st以上により明快になってきている。
デイブ・スチュワートのシンセワークはプログレ的で、フィル・ミラーのギターとともに
ややもすると地味になりがちな軽やかなアンサンプルに彩りを与えている。
テクニカルな構築感をさりげなく聴かせつつ、決して力まない上質のセンスがさすがで、
ラストの20分の組曲では見事なプログレ・ジャズロックを繰り広げる。
カンタベリーサウンドを代表する1枚として語り継がれるに足る作品だ。
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NATIONAL HEALTH
イギリスのジャズロックバンド、ナショナル・ヘルスのアルバム。1978作
Hatfield and the Northのデイブ・スチュワートとフィル・ミラー、GILGAMESHのアラン・ガウエンを
中心に結成された、まさにカンタベリーシーンのスーパーグループともいうべきバンド。
軽快なリズムの上を、デイヴのオルガン、ガウエンのシンセが鳴り響き、テクニカルなインストを聴かせつつ
途中にはしっとりと美しいピアノに女性ヴォーカルも入ってきたりと、展開力も見せつける。
クラシックの要素もあったEGGをさらに優雅に繊細にしたという雰囲気もあり、
ジャズロックとしての名作という以上にメロディアスな美しさがあるのが素晴らしい。
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ART BEARS「Winter Songs」
HENRY COW
のクリス・カトラー、フレッド・フリス、ダグマー・クラウゼによるアート・ベアーズの2nd。1979作
アヴァンギャルドなクラシカルロックという方向性はそのままに1stよりも音の焦点が絞れてきて、
同時に美しさと毒気が増した。ダグマー・クラウゼの歌声はときにオペラティックに
ときにヒステリックに響きわたり、その存在感とインパクトはものすごい。
暗がりの中の呪術性と、クラシカルな格調高さが混在しているようなサウンドは
より迫力ある強度をともなっている。濃密なる静寂。ジャズロック的な混沌。優雅な闇。
各メンバーの引き出しの多さが、無秩序の中にもひとつの引力をともなって音を組み立てている。
前作にも増してキレたような鋭い展開が痛快に思える、これは音による先鋭芸術だ。
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Mandalaband
イギリスのシンフォニックロックバンド、マンダラバンドの1st。1975作
異色にして壮大なるスケール感。この大曲を演奏するためにバンドが結成されたという
その“曼陀羅組曲”は、4部構成に分かれた、まさに一大叙事詩ともいうべき濃密な完成度を誇る。
泣きのギターと壮麗なるシンセ、オーケストレーションが重なって、チベット語で歌われる歌唱と
混声コーラスなどが一体となった重厚なるシンフォニックロックを展開。また押しだけではなく、
クラシカルなピアノの響きなど、繊細な叙情美も兼ね揃えていて、感動的なまでに美麗なサウンドだ。
バンドは、1978年に2作目となる「The Eye of Wender」を発表、こちらもファンタジックな傑作である。
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FRUUPP 「The Prince of Heaven's eyes」
アイルランド出身のプログレバンド、フループの3rd。1974作
美しいストリングスシンセに導かれて、ジャケ通りの牧歌的な雰囲気のシンフォニックロックがゆるやかに展開されてゆく。
一聴した感じは地味ながらも、何度聴いても音の心地よさと涼やかな雰囲気から聴き疲れがまったくしないのが良い。
そうして聴き込んでいくうちに、脳裏にはジャケの少年が繰り広げる冒険の物語が浮かんでくるのである。
いかにも旅の始まりを感じさせるワクワクとするような1曲目からエンディング的な“Prince of Heaven”で幕を閉じるまで、
淡い色をした幻想の物語にゆったりと浸れるじつに素敵なアルバムである。
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NEKTAR「Recycled」
イギリス出身のプログレバンド、ネクターの6th。1975作
11パートに分かれた組曲方式の大作で、シンフォニックなシンセとギターが
絶品のバランスで組合わさり、ヴォーカルがまたドラマティックに歌を乗せる。
テーマや曲をつなげるプログレ的なアイディアも多く、たくさんのパートがやがて
スケールの大きな流れを生み出してゆく様は圧巻だ。適度な緊張感とともに、
濃密に聴かせる理想的なハードシンフォニックサウンドが繰り広げられる。
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NEW TROLLS「CONCERTO GROSSO PER T」
イタリアンロックバンド、ニュー トロルスの3rd。1971作
クラシックとロックが華麗に融合した奇跡の一枚。とにかく、この美しすぎるストリングの音色!
この泣きの旋律の前には言葉を失う。バンドの演奏パートが無骨に思えてしまうほどに美しい…
映画用のサントラとして作られたとはいえ、この作品がバンドの名を
イタリアンロックを語る上で一段引き上げたことは確かだろう。
バロックとロックの合体。これを聴かずしてクラシカルロックを語るなかれ。
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QUELLA VECCHIA LOCANDAIl Tempo Della Gio
イタリアンロックバンド、クエラ・ヴェッキア・ロカンダの2nd。1974作
ストリングス入りの名盤とされる本作は、イントロのクラシカルなピアノからして美しいのだが、
続いて入って来るアコースティックギターと泣きのヴァイオリンの絡みはまさに絶品。
そして盛り上がりでの艶やかなストリングスによる大叙情にはただもううっとりだ。
ここまで泣きの叙情を聴かせてくれるヴァイオリン入りロックはそうあるものではない。
やや粗削りだった1stに比べて音自体が洗練されたことで、バンドとしてのアンサンブルも向上している。
ラストのヘヴィな大曲2曲も聴きどころ。NEW TROLLSの「コンチェルト・グロッソ」に匹敵する名作である。
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IL BALLETO DI BRONZO「Ys」
イタリアのプログレバンド、イル・バレット・ディ・ブロンゾの2nd。1972作
イタリアンロックの中でもシンセをメインにしたヘヴィプログレとしては筆頭の名作。
妖しい女性スキャットとクラシカルなオルガンの音色からして、すでに引き込まれるが
5つの楽章に分かれた組曲方式で展開される緻密な楽曲は、ELPなどとはまた違った
イタリア独自の濃密な薄暗さに包まれていて、神秘的なまでに妖しく、そして美しい。
ジャンニ・レオーネのシンセプレイは日本のARSNOVAなどにも大きな影響を与えている。
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IL ROVESCIO DELLA MEDAGLIA
 「Contaminazione」
イタリアのプログレバンド、RDMことロベッショ・デッラ・メダーリャのアルバム。1973作
「汚染された世界」と題された本作は、このバンドのキャリアの中でも異色ともいうべき
壮麗なクラシカル作品となっている。ルイス・エンリケス・バカロフをプロデューサーに迎え
バッハの曲をモチーフに、オーケストラを大胆に取り入れたサウンドは華麗にして濃厚。
きらびやかなシンセに典雅に鳴り響くチェンバロ、躍動するリズムと泣きのストリングス、
そこにイタリア語の歌唱が濃密に合わさり、感動的に盛り上げてゆく。
まさにイタリアからしか出て来ないバロックな傑作である。
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LATTE E MIELE「PAPILLON」
イタリアのプログレバンド、ラッテ・エ・ミエーレの2nd。1973作
ラッテといえば、荘厳な雰囲気のトータル作「受難劇」が有名であるが
ノンフィクション小説をテーマにした7部構成の“組曲:パピヨン”を含む本作は、
トータル的な完成度ではむしろ上をゆく。ELPばりに鳴り響くオルガンの音色に
イタリアらしいやわらかでクラシカルなメロディが合わさって、
映画的な語りやアコースティカルなパートを含めて、ドラマティックに楽曲は展開してゆく。
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LOCANDA DELLE FATE「Forse Le Lucciole」
イタリアのプログレバンド、ロカンダ・デッレ・ファーテのアルバム。1977作
この美しいジャケのイメージ通り、ロマン溢れだすような、美麗なメロディが満載の名作。
美しいピアノに導かれて、メロウなギターと繊細なシンセワークに、しっとりとしたフルートが加わると、
やわらかな情感に包まれた極上のシンフォニックロックとなる。まさに妖精のような優しいサウンドだ。
また、アンサンブル的にも優れた展開力で、リズミカルな軽やかさがキャッチーな聴き心地となっている。
これぞイタリアが生み出した美の結集。ヴォーカルの太めの歌声が粗暴に思われるほどだ。
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AMON DUULU「Tanz der Lemminge」
ドイツのサイケロックバンド、アモンデュール2の3rd、1971作
LPでは2枚組だった本作は、15分、19分、18分という大曲で聴かせる力作だ。
うっすらとしたシンセに包まれて、ヴァイオリンが鳴り渡り、楽曲は荘厳に始まる。
ゆるやかなアコースティックギターをシンフォニックですらあるキーボードが包み、
ときに薄暗い静謐感をもって、ときに東洋的な雰囲気でもって長曲が綴られてゆく。
サイケロック的な浮遊感と、なにか壮大なヴィジョンが目の前に現れるような感覚、
インプロ的な解放感と楽曲性とが見事なパランスで調和して、すべての音に緊張感をもたらしている。
おそらくドイツという国からしか出て来ないだろう、シンフォニック・サイケロックの傑作である。
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Faust
ジャーマンロックバンド、ファウストの1st。1971作
ヴュンメという町の廃校にコミューンを形成し、そこでレコーディングされた作品。
テープの切り貼りでつなげられコラージュされた楽曲は、不思議な薄暗さをかもしだしつつも、
部分部分の演奏自体は決して難解なものでなく、案外感覚で聴いて楽しめる。
ドラムに乗せるギターと管楽器のフレーズはサイケロックとしてはむしろシンプルであるが、
効果音や意味不明の語りなど、予測のつかない曲の編集によって聴き手を不安にさせる。
ただ決してダイレクトに混沌を表現したものではなく、アヴァンギャルドさの中にも作品としての整合感を覗かせており、
それがある種の静謐感や美しさを作り出している。ジャーマンロックのひとつの金字塔。
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Klaus Schulze「Irrlicht」
ジャーマン・シンセミュージックの巨匠、クラウス・シュルツの1st。1972作
元はTANGERINE DREAMASH RA TEMPELのドラマーであったクラウス・シュルツが
シンセによる多重録音でここまでの世界を作り上げたのは驚嘆すべきことだ。
キリストの生誕をテーマにした本作は、シュツルがシンセに初めて触れてから
たった3週間後に作られたという作品ながら、すでに後のアルバムと同等の完成度を誇る。
どこまでも暗く、一条の光すらも見えない世界ながら、奥深い空間性を感じさせるサウンドには
シンセ楽器に無限の可能性を求めた、シュルツの内的志向の冒険心を感じとれる。
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POPOL VUH「LETZTE TAGE-LETZTE NACHTE」
ジャーマンロックバンド、ポポル・ヴーの7th。1976作
芸術家肌のアーティスト、フローリアン・フリッケにより、Tangeline Dreamに通じる
実験的なシンセ音楽からスタートしたこのバンドだが、本作は、一聴してサウンドのダイナミズムが増し、
それとともに原初的な神秘性と不穏なサイケデリック要素が音に現れてきている。
いくぶんこもり気味の音の中に、壮大さを詰め込んだ作り方はやはりAMON DUUL2的で、
そのAD2のレナーテ・クナウプが加わってこれまでにない妖艶な歌声を聴かせながら、
明確なフレーズを奏でるギターの重ねによりスケール感のあるサウンドが構築されてゆく。
神秘的なサイケロックとして聴けば、ドイツ屈指の名作と言っても過言ではないだろう。
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TANGERINE DREAMphaedra
ジャーマンロックバンド、タンジェリン・ドリームの5th。1974作
このバンドの最高作をひとつだけ挙げるとするなら、本作ということになるだろう。
ムーグシンセの導入により、表現的にもサウンドに奥行きが増し、リハーサルテープの編集で作られたという
本作の楽曲には音楽としての起承転結の流れのようなものが感じられる。
シーケンサー的なリズムを聴かせるシンセ音はKlaus Schulzeにも近い質感で、
それまでのイメージを音に投影するような作風から、よりデジタリィなシンセサウンドへと
変化が見られるが、それでいて奥深い幻想空間をちゃんと残しているのが素晴らしい。
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MAGAMA「.M.D.K.」
フランスのプログレッシブロックバンド、マグマのアルバム。1973作
壮大なコンセプトストーリー「トゥーザムターク」の第三楽章で、マグマの最高作といえば本作だろう。
ジャズロックを基盤にしながらも、コバイヤ語による呪術的なヴォーカルと男女コーラスが、
宇宙的で異色の世界観を形成し、脅迫的に盛り上がってゆくそのサウンドには圧倒される。
多くのバンドにも影響を与えたであろう、ブラスの使い方なもサウンドに壮大な効果を与えていて、
いわゆる後のポストロックや、チェンバー系のようなクラシカルな質感も有している。
文字にして解説のしようがない音楽であり、その芸術的な音のうねりに触れていただくのが一番だろう。
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GONG「YOU」
フランスで結成されたサイケロックバンド、ゴングの5th。1974作
ラジオ・ノーム・インヴィジブル三部作の完結編で、初期GONGを代表する傑作。
優雅なフルートの音色と、物語を語るようなナレーションで幕を開ける本作は、
サウンド面でのメリハリがいっそうついて、サイケなストーリーものでありながら
音楽作品としての完成度がぐっと高まった。中近東的なテイストで聴かせる
サイケプログレとしてのノリはOZRIC TENTACLESの原型ともいえるだろう。
そして壮大な(?)ストーリーの完結となる10分を超えるラストの2曲は圧巻だ。
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Canarios 
「Ciclos」
スペインのアーティスト、ロス・カナリオスのアルバム。1974作
ヴィヴァルディの「四季」をロック化した驚異の名作である。
なにやらたたごとではないイントロから、オペラティックな女性声が歌いだし、まるで生まれ落ちるかのように
“春”のテーマが始まると、壮麗にしてクラシカルなサウンドがすべてを支配する。
きらびやかなシンセにオーケストラルなストリングスが合わさり、ギターが叙情メロディを重ねる。
この躍動感、ダイナミズムといったら、冬眠していた動物たちもいっせいに目を覚ますに違いない。
クラシックのロック化という点でも歴史的な作品であり、完成度という点でも奇跡的なアルバムだ。
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KAIPA「Inget Nytt Under Solen」
スウェーデンのシンフォニックロックバンド、カイパの2nd。1976作
現在はFLOWER KINGSで活躍するロイネ・ストルトの在籍したバンドで、
70年代に発表した1st〜3rdはどれもが北欧プログレを代表する名作として名高い。
なかでも、21分の組曲を含む本作の完成度は最高傑作というにふさわしいものだ。
北欧らしい土着的なメロディに薄暗い叙情性を感じさせるサウンドは、
いくぶんの野暮ったさとともに、どこか我々日本人の琴線に触れる温かみがある。
そしてロイネの奏でるギターフレーズは、組曲の盛り上がりとともに泣きの旋律を響かせる。
70年代の北欧のイメージを決定付けた一枚。すべての叙情派プログレファンに聴いてもらいたい。
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KEBNEKAISE「V」
スウェーデンのトラッドプログレバンド、ケブネカイゼの3rd。1975作
このバンドの素晴らしいところはズバリ、北欧的トラッドメロディを、ロックフォーマットで聴かせる点だ。
ギターとヴァイオリンがときに優雅にときに情熱的にトラッドメロディをユニゾンするさまは圧巻。
そして、そこに絡むパーカッションが言い知れぬ郷愁を聴く者に感じさせる。
この日本人の演歌心にも通じるような土着的メロディには、一聴して心を鷲づかみにされた。
トラッドというにはあまりにダイナミックで分厚い音。シンフォニック・トラッドロックとでも呼ぶしかない。
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Zamla Mammaz MannaFamiljesprickor」
スウェーデンのプログレバンド、サムラ・ママス・マンナの1980年作
1976年まではSamla Mammaz Mannaとして活動、その後バンドの頭文字をSからZに変えて復活。
本作はバンド第二期のラスト作にして最高傑作である。「家庭のひび割れ」と題されたタイトルやジャケも個性的だが、
サウンドの方も、土着的な民族色とテクニカルなアンサンブルが一体になった、他に類を見ないもの。
ユーモアに富んだアヴァンギャルドさは、チェンバーロック、ジャズロックなどの要素も含んでいるが、
ときに北欧的な叙情性をもかいま見せる本作は、このバンドのアルバムの中でもっとも構築させた完成度の高いものだろう。
メロディアスなギターや美しいシンセワークなど、シンフォニック的な味わいもある名盤である。
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Mahavishnu Orchestra「Birds of Fire」
アメリカのジャズロックバンド、マハビシュヌ・オーケストラの2nd。1973作
「火の鳥」と題された本作は、前作以上にスリリングなアンサンブルを見せつける傑作。
1曲目から、うなりを上げるようなジョン・マクラフリンのギターも冴え渡り、
シリアスなヴァイオリンが絡むサウンドは、ジャズロックというにはあまりに重厚。
今作では、楽曲におけるクラシック的な構築美が増していて、緊張感あふれる演奏と
強固なアンサンブルが、聴き手を圧倒するように押し寄せてくる。
音の切れ味という点では最高傑作とも言える。張りつめた創造性が生み出した傑作。
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HAPPY THE MAN「CRAFTY HANDS」
アメリカのプログレバンド、ハッピー・ザ・マンの2nd。1978作
インストをメインにしながら、キレのよいリズムアンサンブルにギターとシンセの重なる叙情味溢れるメロディが素晴らしい。
その絶妙に洗練されたサウンドには、アメリカのバンドらしからぬ吹っ切れを感じさせ、
とくにリーダーであるキット・ワトキンスの巧みなシンセワークは、繊細なクラシカルさと同時に
フュージョン的でもあるモダンな感触を生み出していて、今聴いてもそのセンスは輝いている。
プログレ後進国といわれたアメリカの70年代でこのクオリティは奇跡的。
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Eduard ARTEMIEV「Warmth of Earth」
旧ソ連の音楽家、エデュアルド・アルテミエフのアルバム。1984作
アルテミエフの代表作にして、80年代東欧シンフォニックの名作とされるアルバム。
なにやらただ事でない雰囲気のSEから、曲が始まるや、疾走するリズムに炸裂する怒濤のシンセ。
静寂パートに響く美しい女性ヴォーカル…そして、泣きの大叙情。クラシカルな硬質感と
オペラティックな壮大さが合わさり、ときにまるで映画音楽のようにドラマティックな音像になる、
かと思えば、プログレ的なシンセとギターが躍動感溢れるロックのダイナミズムを構築する。
血涌き肉踊るとはまさにこのこと。、壮大かつ緻密に作られた東欧のシンフォニックロック史上に残る大傑作。
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*これら35+35枚を聴けば、どんな方でもプログレの魅力の一端は感じられると思います。

*プログレ名作選
*CDレビュー/プログレ・イギリス70年代
*CDレビュー/プログレ・イタリアンロック
も併せてご覧ください