クソ共の蛸壺に八海山を注げ
良識ある産婆が異を唱えたとしても
迷わず注げ

たゆたうように、
そして
冷たい眠りを前提とした猛暑日の寝付きのごとく
翳りある、秘めたる心のうちの
精神病棟の隔離された南京錠の向こうに
水攻めの苦しげな叫びをふと
夢うつつに感じ取ったなら、

たとえばそう
清らかな十八の日の思い出の
陽炎のなかにうずくまる
カマキリのようなあの人
あの、呪われた義父の帰りを待つ
やるせないまでの心の葛藤をしまいこんだ
その小さな胸
その蕾をはがされるときの
恐ろしさにも似た快感のような、
そのうずまく赤と黒の思いを
いまあなたに
届けたい

さしても光る
影なき朝には、
ただまぶしさに耐え
庭先の柳の前にうずくまり
ヤキトリの煙が立ち込める夕方を待つまでの間
ただそう、
泣きながら仇を討て

解決の道筋は
遠く、虚無の熱帯夜の向こう
ただし、
物憂げなフリをして形勢逆転を狙えば
志にはたがわずとも
よりより結果が得られる可能性もなきにしもあらずと
あのとき、君は言ったよね。

そんなロンギヌスの槍はいらない
軽薄なる真実か、誠実なる騙しあいか
どちらも同じでしょうと言いながら、
ただ騙されたフリをし続ける
その夢見の時間だけが
アナタを幸せにするでしょう

そうでなくては、
追い求める甲斐はない
真実は世界にはない
あやふやな共同幻想と
募金の詐欺に夢をたくす
通りすがりの錬金術師は君か。

札束はトイレに
殺意は台所に
物思いは裏庭に
病的な嫉妬は下の妹の部屋に
明日への希望は塀の外に
苦し紛れの一撃はシヤンデリアの光る応接室に
滞る回復の見通しは寝室に
止まった時間は風呂場に
返されない返事と、決まりきった常套句の説明は玄関に

ただそこに
消えゆく時間と思いがあるだけ
それなら気楽にいびろう
はてしない旅のような
ワクワクとした高鳴りとともに
決定的で壊滅的な一言で
ただお前をもてなそう

明日まで待つことなどない
ケルト人の生み出したあの呪文だっていい
整然としたまじないよりも、
土着的な怨念と、
黒々と煮詰まった魔女の鉄ナベのような
そんな言葉の羅列を求めているばず
そう信じて告げたのに
やはり魔法はかからなかったよ

ただ残ったのは
ぎらぎらと輝くような灰
その燃えカスに埋もれた逆説の愛
倦怠の無情にはぐくまれた明日への怒り
それこそが君の言葉
聖なる毒針をもってさえ
踏みとどまれない
エトルタの断崖に立つがいい

夕日が映り込む
白い骸骨の踊る先にある
その一点へ、すいと向かうように
泣けば夜になり
そして
朝がきてまた
立ちすくむ
小涌谷での衝動を待て

形式的な圧力のもと
想像を超える煙が立ち上るのを
ただ祈りながら
狂戦士(バーサーカー)の憂鬱と
岩の割れる轟音で眠りにつく
一昨日のあなたのために
いま、つつしんで
牢獄を燃やしてあげるのだ

オリハルコンが作るところの永遠の定めにのっとってゆけば
シロップの掛け合いを制して勝利者然と振る舞ったことが
のちの破滅的災禍へとつながるなどとは
思うに思うまい

あがないの効力はイソフラボンの生命線
それを信じ、ひたむきに摂取し
転びながら降りる右側通行で
ギギイと錆びた音を耳にして
驚怖して立ち止まる

そのときまで


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