猫を飼う夢を見た

類まれなるロシアンブルー
手の上から逃げ出した

こそばゆいまでの砂漠の砂の流れは
枯山水の砂紋の示す宇宙にも似た

滔々とした呪縛のような
ゆるやかな広がりを時の中に生み出す

あの日の定めし夕刻に
姿を見せなかったのはなにゆえ?

失意の中で志す高みは
まぎれもなく時計塔のはるか空の彼方へ

立ち止まってよく考えよう
時間はあと3年ある

のっぺりとしたチーズクリームをすくい
指にとり、舐め、丹念に味わったのち

満足の微笑で冷徹に僕を射るとき
心もとない嘆きの歪んだひだを隠し

まさぐるため川を渡り終えぬうちに
呆然と立ちすくむことになる

猫を飼う夢を見た

類まれなるロシアンブルー
目覚めたら消えた膝のぬくもり

ろくすっぽ選別もせずに不幸をつかむ
かと思えば、めざとくも滑り落ちる幸運を楽しむ

長いくせっ毛が床に広がる
香を焚きしめた回廊の奥にて

僕はただ一人、夕暮れを待つだろう
与えられた時間のうちに問題が解決しなくとも

生きるすべの可能性の限りない低さに
涙することもなく、ただ時計の針を見つめて

さすらい出る喜びは、
はたして平等な命にあるか

とてつもなく霞んで遠い、
あの地平までゆけるかと

迷ったなら
風に訊け

もし声が聞こえれば
鼻先を吹き過ぎるその風の方向へ

サンダルを履いて

出かければいい



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