イタリアンシンフォニック新世紀
  
〜レトロとモダンの狭間にあるロマン主義たち〜



イタリアという国はプログレファンにとってはもっとも特別な国だろう。
PFMBANCOといったバンドたちが活躍した70年代は、イタリアといえば芸術的なロックバンドの宝庫であり、
地中海的な美意識とおおらかさ、そして一方では濃密な狂気をも内包したサウンドは、映画や絵画と同様に、
それらを愛する人々たちにとって己の内的な多面性の吐露を仮託できるだけの世界観があったのだ。

    

80年代になると、世界的な現象ともいうべきプログレ衰退の波がイタリアにも押し寄せるが
90年代になると、Vinyl Magicレーベルの立ち上げるネオプログレッシブな指針に乗って、
CALIOPEIL CASTELLO DI ATRANTEといったバンドが、マニア層を中心に支持される。

そして、2000年代となった新世紀、
PFMやBANCOといったベテランが今だ現役として作品を生み出し続ける中、イタリアには新たなバンドたちが出現しつづけている。
それらは叙情的なシンフォニックロックであったり、回顧主義を打ち出したものであったりと、
それぞれに彼らの辿ってきたイタリアという国への愛着を思わせる音楽を表現している。
リスナーたる我々は、それらをときに懐かしく感じながら、プログレというロマンの幻影を追うことをやめない。

アメリカやイギリスで、ロックというものがモダン化してゆく現在において、
イタリアにおけるプログレッシブロックへの熱情は決して消えることがないと思われる。
私自身も、北欧と並んでもっとも好きなバンドの多い国であるから、
そうした新たなバンドたちの作品を常に関心をもって聴いてきたし、これからもそうするだろう。

ここでは、そんな新時代の作品を厳選して紹介したいと思う。
これを聴きながら、あなたもレトロとロマンの旅へと共に旅立ちましょう。

                           2007.5.23 緑川とうせい


新世代シンフォニック22選
5枚以上持っていたら立派なイタリアンシンフォマニア


◆メロディアス系
モダンさとレトロの融合

MANGALA VALLIS 
「THE BOOK OF DREAMS」
イタリアのシンフォニックロックバンド、マンガラ・ヴァリスの1st。2001作
Dr、Key、G & Bの3人組で、一聴した感じだとTRANSATLANTICあたりに似たサウンド。
ハモンド、ムーグ、メロトロン等のヴィンテージキーボードを使用した懐古主義的な音像に、
いっそうのGENESIS風味を付加したマニア好みの楽曲で演奏レベルも高い。
歌詞も英語なのでイタリア臭さはなく、軽快な部分はとても耳に心地よい。
ただし、イタリア的な個性は薄いかもしれない。トランスアトラン・ジェネシス(笑)
シンフォニック度・・8 GENESIS度・・8 イタリア度・・2 総合・・8


H2O「DUE」
イタリアのシンフォニックロックバンド、H2Oの2nd。2001作
キーボード主導のシンフォサウンドで、軽快な躍動感があり、リズム面もなかなかタイト。
Voの声質がGENESIS的なものを感じさせるが、メロディの方はむしろ
初期PFMのキャッチーな部分を思わせるところがある。
全4曲という大作主義だが、心地よいメロディとこなれたアレンジのセンスで
だれることなく聴き通せる。キーボードの音色、メロディが実によろしい。
シンフォニック度・・8 軽快度・・8 キーボー度・・8 総合・・8


Finisterre 「La Meccanica Naturale」
イタリアのプログレバンド、フィニステッレの4th。2004作
PFMのディチョチョプロデュースということもあってか、今作は肩の力が抜けた自然体の音作りで
イタリアらしい叙情性と、ほどよいレトロな質感に現代風のアレンジを加えたバランス感が冴えている。
コテコテのシンフォにはならない薄味の中に、イタリア語の歌唱とゆるやかなメロディが活きていて
派手さはないもののじっくりと楽しめる繊細な作品となっている。
もちろんメロトロンやメロウなギターによるお約束の質感もあり、聴き終えての満足度も高い。
メロディアス度・・8 ゆったり薄味度・・8 イタリア度・・9 総合・・8
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TAPROBAN 「POJIDONIAN FIELDS」
イタリアのプログレバンド、タプロバンのアルバム。2006作
最近ではむしろ珍しくなったトリオ編成のバンドで、ELPタイプかと思いきや、そうでもなく、
むしろGENSISを基本に、かもしだすレトロさを現代的に再構築した、というサウンド。
鳴り響くハモンドの音色に乗せるヴォーカルの歌唱は英語なので、さほどイタリア臭さはない。
アルバムは3部構成に分かれていて、それぞれ組曲形式となっているのだが、
壮麗なシンフォニックの中にもアコースティカルな歌ものパートなどもあり、
濃厚さと爽やかさが両方楽しめる。ここぞとメロトロンの叙情も入ってきて、
かゆいところに手が届くシンフォ作品。クオリティ高いです。
シンフォニック度・・8 メロディアス度・・8 イタリア度・・7 総合・・8

MOONGARDEN 「Songs From the Lighthouse」
イタリアのシンフォニックロックバンド、ムーンガーデンの5th。2008作
活動は90年代前半からとけっこう長く、聴くのは2001年の3作目以来になるが、
雰囲気的にはずいぶんモダンなシンフォニックロックになった。
もちろんGENESIS系をベースにした叙情メロディや、鳴り響くメロトロンはそのままだが、
ファンタジックな中にも大人の哀愁を漂わせ、しっとりとした薄暗さを聴かせながら、
じわじわと盛り上げてゆく。かすれた声質のヴォーカルが英語で歌い上げるさまは、
イタリアというよりもむしろ英国のバンドのような雰囲気だ。
メロトロンをバックにした泣きのギターにうっとり。ドラマティックなハードシンフォの力作だ。
シンフォニック度・・8 ドラマティック度・・9 イタリア度・・7 総合・・8
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◆たおやか系〜しっとり耳に優しい音

ARIES 
イタリアの女性Voシンフォニックロックバンド、アリエスのアルバム。2004作
たおやかなピアノ、キーボードに美しい女性ヴォーカルのシンフォサウンド。
この女性声がまた素敵で、繊細な歌声にはフィメール好きはくらくらすること請け合い。
しっとりとしたピアノの音色も良いが、キーボードをバックにメロウに鳴るギターもなかなかで、
静かなパートとシンフォロックパートとのメリハリもしっかりついている。
時折ゴシック的な雰囲気も垣間見せ、世界観としての奥深さもあるのが素晴らしい。
サウンドとしてはQUIDAMあたりにも通じる部分もあり、女性Voシンフォとしては久々の会心作!
メロディアス度・・8 シンフォニック度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8

DORACOR 「TRANSIZIONE」
イタリアのシンフォニックロックユニット、ドラコールの4th。2001作
以前のアルバムは未聴だが、今作は9人ものメンバーによる大組曲をやっている。
やわらかなシンセをメインにギター、ヴァイオリン、フルート、女性Voが長大な楽曲を
ゆるやかに盛り上げてゆく。イタリアものにしては引きのパートの叙情が秀逸。
この手のマイナー系シンフォの中でもメロディの質はかなり高く、
甘い声質の男Voもこの音楽によくマッチしている。ジャケの美しさもよろしい。
プロダクション的に低音(ドラム関係)が弱く、サウンドの迫力が半減しているのが惜しまれる点か。
シンフォニック度・・9 楽曲・・8 サウン度・・6 総合・・7.5

HOSTSONATEN 「SPRINGSONG」
FINISTERREのメンバーによるプロジェクト、ホストソナーテンのアルバム。2002作
紙ジャケで、曲ごとに動物が描かれた美しいカードが封入されているという豪華仕様。
まず冒頭から繊細なフルートとヴァイオリンの音色にうっとりと引き込まれる。
アコースティックの合間にはキャメルばりのメロディアスギターが顔を出す。
全体としてロックというよりはシンフォニックトラッド寄りのサウンドで、
「春の歌」という通り、たおやかできらきらとした叙情が詰め込まれている。
ヴァイオリンやフルート入りの繊細系シンフォが好きならまず聴くべきクオリテイ。
メロディアス度・・9 シンフォニック度・・8 アコースティカル度・・8 総合・・8.5
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NARROW PASS 「A Room of Fairy Queen's」
イタリアのシンフォニックロックユニット、ナロウ・パスのアルバム。2006作
ERIS PLUVIAに参加していた、Mauro Montobbioというマルチプレイヤーを中心に
LA MASCHERA DI CERAのメンバーなども参加。美しいシンセワークにメロウなギター、
たおやかなフルート、そして女性Voと、これはもうシンフォニック好きにはたまらないサウンド。
ゆったりとした優しいメロディと繊細な感触は、HOSTSONATENあたりにも通じるもので、
すべての面で予定調和ながらとても日本人好みであり、癒し系シンフォとしてのんびりと鑑賞できる。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 しっとりたおやか度・・9 総合・・8
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L'ESTATE di san MARTINO 「febo」
イタリアのシンフォニックロックバンド、レスターテ・ディ・サン・マルティノのアルバム。
たおやかなピアノの音色にイタリア語の叙情的なヴォーカル、
それをうっすらとしたシンセが包み込む、じつに繊細なシンフォニックサウンド。
イタリア的なメロディにこだわりながらも、音には押しつけがましいところはなく、
時間の流れを忘れるようなゆるやかな幻想美にはうっとりとなる。
アコースティカルな風味もあり、美しいピアノ、フルートなどに耳を傾けつつ
10曲目には女性ヴォーカルもでてきて、しっとりと聴かせてくれる。
シンフォニック度・・8 たおやか度・・9 イタリア度・・9 総合・・8

Il Giardino delle Delizie (GAN EDEN) 「Lavori In Corso
イタリアのシンフォニックロックバンド、イル・ジャルディーノ・デッレ・デリージのアルバム。2007作
美しいシンセとイタリア語によるヴォーカルを中心にした叙情的なサウンドで、
ハモンドなどの70年代風のレトロさと、現代的なシンフォニックが融合した雰囲気。
6〜8分台の長めの楽曲はドラマティックに展開するものも多く、
美しいピアノに絡むプログレ的なシンセワークも聴きどころだ。
B級バンドの多い最近のイタリアのシンフォシーンの中では、かなりの力作だろう。
シンフォニック度・・8 イタリア度・・8 新鮮度・・7 総合・・8
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◆テクニカル系〜矢継ぎ早と濃密さ

DEUS EX MACHINA 「ciNque」
イタリアのテクニカルプログレバンド、デウス・エクス・マキーナの5th。2002作。
好事家の間では「これぞイタリア!」といった感じの変態的でテクニカルな演奏が愛されているこのバンド。
演奏には今や堂々たる大人の余裕が感じられ、そんな中にも偏屈かつひねくれたリズム
曲展開などには相変わらずのユーモアがあり、聴いていてなかなか楽しい。
前作あたりよりも、突進力がやや抑え気味目になっていることもあり、かえって聴きやすくなっている。
プログレ的なシンセに、ヴァイオリン、そしてイタリア語の熱い歌唱と、とても濃いのであるが、
ときおりふっとやわらぐ部分で感じる哀愁もまたイタリア的か。
メロディアス度・・7 テクニカル度・・8 イタリア度・・9 総合・・8 
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JETLAG 「DELUSIONE OTTICA」
イタリアのテクニカルシンフォバンド、ジェット・ラグの1st。2001作
バンド名からしてPFMを思い出すが、音の方はそのPFMのテクニカルな部分を全面的に押し出し、
フルートを吹きまくったという印象。たたみかける変拍子たっぷりの見事なアンサンブルに
イタリア的な乗りの良さが加わり、メロディセンスと展開力も備わっていて新人とは到底思えない。
ジャズロック的な押しの部分と、時折引きのパートでの叙情性も見事でキーボードもハイセンス。
DFAあたりよりもずっと聴きやすく、それでいて演奏面でもまったくひけをとっていない。
PFM+BANCO+AREA?・・・イタリア恐るべし。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・9 楽曲・・9 総合・・8.5
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YUGEN 「Labirinto d'acqua」
イタリアのシンフォニック・チェンバーロックユニット、ユーゲンのアルバム。2006作
THE WATCHと元STORMY SIXのメンバーらによるバンドで
ヴァイオリン、クラリネット、サックスなどの管楽奏者も加わった10人以上の編成。
サウンドはたおやかでほの暗いピアノの音で幕を開け、軽やかな室内楽ロック風アンサンブルで
シンセとピアノ、クラリネット、マリンバなどが絡み合い、クラシカルなジャズロック的演奏を構築する。
オールインストでありながら、テクニカル硬質感とやわらかみが同居している部分は
バンド名の「幽玄」を表現しているのか、シリアスなのだが適度に力が抜けていて叙情的な面も出てくる。
シンフォニックロックとジャズ、チェンバーサウンドが高い次元で融合された一作だ。
シンフォニック度・・7 テクニカル度・・8 チェンバー度・・8 総合・・8
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D.F.A. 「4TH」
イタリアのプログレバンド、DFAの4th。2008作
軽やかなフュージョン的な質感を聴かせつつ、たおやかなフルートや
プログレ的なハモンドなどのシンセが鳴り響き、そこにテクニカルなギターに絡むと、
日本のKENSOなどを思わせる雰囲気にもなる。
10分以上の大曲が3曲もあるが、単なるテクニック大会に終わらず、
しっかりとした構成力とメロディアスさが備わっているので聴き疲れしない。
ラスト曲は女性ヴォーカル入りでシンフォニックなトラッド風味が耳に優しい。
テクニカルなプログレ風味とジャズロック風味のバランスがとれた傑作。
メロディアス度・・8 ジャズロック度・・8 テクニカル度・・9 総合・・8.5
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◆レトロ系懐古主義にひたりませう

LA TORRE DELL' ALCHIMISTA
イタリアの懐古的プログレバンド、ラ・トッレ・デル・アルケミスタの1st。2001作
「錬金術師の塔」というバンド名通り、古きよき幻想を現代で蘇らせたようなサウンドで、
BANCOCORTE DEI MIRACOLIのように当時のイタリアをそのまま音にしたようなバンド。
叙情的なキーボードにフルートはもちろんサンプリングなどではなく生楽器、
ハモンドやメロトロンまでちゃんと本物を使うというこだわりよう。
バンコほど攻撃性がなく、しっとりとしたイタリア的叙情が満喫できる。
演奏、アレンジなどの現代的手法と、70年代の空気を融合させた、
ただのものまねには終わらぬ優れたバンドであるように思う。
メロディアス度・・8 ハモン度・・9 70'sイタリア度・・10 総合・・8
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LA MASCHERA DI CERA 「IL GRANDE LABIRINTO」
イタリアのシンフォニックロックバンド、ラ・マスケーラ・ディ・チェラの2nd。2003作
古き良きイタリアンロックの質感をベースにしながら、ミステリアスな音世界を作り上げている。
艶やかなピアノ、吹き鳴らされるフルート、そして郷愁漂うようなイタリア語の歌唱。
メロトロンの響きをバックにしつつ、美しさと翳りを含んだ音像は、
ジャケ通りの雰囲気の妖しさを内包しながら、絡みつくように紡がれてゆく。
13分、9分、12分、22分という大曲を聴かせる世界観には、イタリアらしい深い闇と
狂気、そして芸術とが垣間見える。往年のイタリアンヘヴィシンフォも真っ青の1枚。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・8 70'sイタリア度・・9 総合・・8.5
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SUBMARINE SILENCE
イタリアのシンフォニックロック・プロジェクト、サブマリン・サイレンスのアルバム。2002作
MOONGARDENのメンバーを中心にしたプロジェクトで、
ジャケットといい音楽性といい初期GENESISへのオマージュといった雰囲気。
オールインストで、トニー・バンクス的なキーボードとメロウギターを中心にした
まろやかなシンフォニックロック。ゆるやかに鳴り響くメロトロン!
ハケットみたいなメロディアスギター!「この手」が好きな方にはにんまりのサウンド。
メロディアス度・・8 しっとりシンフォ度・・9 メロトロン度・・9 総合・・8
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◆オペラティック系演劇的にドラマティック

MALAAVIA 「DANZE D'INCENSO」
イタリアのシンフォニックロックバンド、マラーヴィアのアルバム。2003作
いかにもプログレ的なキーボードが鳴り響き、たおやかなフルート、女性Voの歌唱と、
この手のシンフォものが好きな方には美味しい要素が揃っている。
全体的にイタリアらしい陽気な雰囲気で、時にサックスやラテンの乗りのパーカッションが鳴り響く。
曲は組曲形式で進行してゆき、舞台っぽい物語性も感じさせながら
女性Voものシンフォとしても普通に聴ける。緊張感はないが明るく楽しいアルバム。
クラシカルなキーボードが前に出てくる場面は「これぞイタリアシンフォ!」という感じですな。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 愉快爽快度・・8 総合・・7.5

PFM 「DRACULA OPERA ROCK」
イタリアのベテランバンド、PFMのアルバム。2005作
今作はタイトル通りロックオペラ「ドラキュラ」のサントラという形の作品だが、
全編PFMによる演奏で、プログレッシブ・オペラともいうべき内容。
オーケストラや合唱入りで、いつになく壮大な作りだが、メロディアスな叙情は健在で
ムッシーダのギターはややハードめな音色でメロウなフレーズを奏で、イタリア語の歌唱もオペラティックだ。
全体的にロック度が高めで、往年のPFMサウンドからすると別物だが、
内容としては密度も濃く、クラシカルなロックオペラアルバムとして楽しめる。
メロディアス度・・8 ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 総合・・8
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RANDONE 「Hybla ActT」
イタリアのシンフォニックロックバンド、ランドーネの3rd。2005作
イタリア語による情感たつぷりの歌唱に鳴り響くメロトロン、
ときおり出てくる土着的で暑苦しいメロディとコーラスにいくぶん苦笑しつつ、
サックスにヴァイオリンも入ってゆるやかなアコースティカル要素あり、
かと思えばオペラティックな男性バリトンに女性ヴォーカルが絡んだりと、
とにかく無駄なまでに濃密、そしてコテコテに作られた作品。
好き者にはたまらないだろうが、いくぶんイモ臭さもあって胃もたれも必至か(笑)
ちなみに神話をもとにしたコンセプト作らしく、曲間の小曲を含めて全25曲。
シンフォニック度・・7 コテコテ度・・9 イタリア度・・10 総合・・7.5
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Ainur 「From Ancient Times」
イタリアのシンフォニックユニット、アイヌルのアルバム。2006作
トールキンのシルマリリオンの物語をコンセプトにした作品でG、Key、Drの3人組みがメインメンバー
男女5人のヴォーカル隊にヴァイオリン、チェロ、フルートなどの管弦楽もゲストに加わったプログレオペラ
アコースティカルな質感に優しい女性Voの歌声、そこにフルートの音が加わると、
この手のゆるやかシンフォ好きにはたまりません。オペラティックなバリトンVoもいい味を出しており、
曲間には物語的なSEも挿入されるなど、ファンタジックな世界観を形成している。
ただ、テクニック的にはさして見る部分はなく、曲におけるハードエッジな部分はなくてもいいような気がするが。
全体的にはゆったりとした広がりのあるシンフォニックサウンドだ。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 ゆったりゆるやか度・・9 総合・・7.5
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◆ベテラン系〜オヤジになってもプログレ

LE ORME 「ELEMENTI」
イタリア70年代を代表するキーボードシンフォバンド、レ・オルメのアルバム。2001作
内省的で繊細な叙情美を体現してきた彼らだが、今作ではダイナミックなイントロに耳を奪われる。
ギターの音色をキーボードによって再現しながら、カラフルで見事なシンフォニック空間を彩っている。
タイトル通り「元素」をテーマにしたコンセプト作で、短めの曲が連なってアルバム全体を構築してゆく。
ときに優雅なヴァイオリンも顔を出し、やわらかなヴォーカルとともにナイーブな「静」を演出、
そしてダイナミズム溢れるパートへと移行してゆく流れは見事。
たとえ70年代のオルメを知らずとも、単体で楽しめるシンフォニックの逸品である。
メロディアス度・・9 シンフォニック度・・8 繊細度・・9 総合・・8.5
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METAMORFOSI 「PARADISO」
70年代に2枚のアルバムを残したイタリアン・プログレバンド、メタモルフォシの復活作。2004作
「INFERNO」から30年余、こうして、バンドがまた活動を始めるとは。VoとKeyはかつてのメンバーで
イタリアらしい熱情をともなった歌声は充分瑞々しく、むしろかつてよりもオペラティックでさえある。
他のメンバーは変わっても、キーボードのこのクラシカルなセンスは、やはりメタモルフォシ。
音色が現代的になった分、クラシカルシンフォとしてのサウンドがよりくっきりとなった。
押しだけでなく、たおやかなピアノパートやアコギなどの音色も美しく、
名バンドへの贔屓目を抜きにしてもクラシカル系イタリアンシンフォの傑作である。
シンフォニック度・・8 クラシカル度・・8 イタリア度・・9 総合・・8
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TONY CARNEVALE 「LIVE ROCK SYMPHONIC CONCERT」
イタリアのシンフォ・プログレキーボーディスト、トニー・カルネヴァーレのライブアルバム。2003作
元RDMのKEYであるらしいが、ソロ作になってからのそのクラシカルかつ大仰な音楽性は
イタリアのロバート・ジョン・ゴドフレイ(ENID)か北欧のパル・リンダーかというほど。
このライブ作では1995年作のソロ2作目「LA VITA CHE GRIDA」からの曲を中心にしつつも、
のっけから「展覧会の絵」で攻めてくるあたりが、いかにもプログレを意識した構成。
優雅でクラシカルなスタジオ版の音に比べ、このライブではギターやドラムもかなりロックしており、
イタリア然とした躍動感に満ちた熱い演奏が繰り広げられている。BANCOのジャコモ氏も歌入り曲で参加。
シンフォニック度・・8 クラシカル度・・8 熱情度・・9 総合・・8
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NEW TROLLS 「Concerto Grosso The Seven Seasons」
イタリアのプログレバンド、ニュートロルスのアルバム。2007作
イタリアンロックのクラシカルサイドの頂点を極めた「コンチェルトグロッソ」の続編。
まず聴いてみての印象は、オーケストラとパンドとの融合が見事に自然になされている点。
かつてのパート1では、バンドサウンドの部分ではやや粗さがあったのだが、
今作においてはすべての音が完璧に楽曲にそった調和の中に存在していて、
実にスムーズに音に浸れるのだ。また、思いの他ギターが活躍しているのもポイントで、
ロックとしての躍動感がしっかりとあるのが素晴らしい。過去のグロッソ1、2を知らない方でも、
この素晴らしきクラシカルロックには感銘を受けずにはおかないだろう。
シンフォニック度・・9 プログレ度・・7 クラシカル度・・10 総合・・9
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PFM 「Stati Di Immaginazione」
イタリアンプログレの大御所、Premiata Forneria Marconiのアルバム。2007作
今作はなんとオールインストで、しかもコンセプト映像の入ったDVD付きの2枚組仕様という力作。
映像と一緒に聴くことで初めて完成されるという、サントラに近い方法論で作られているようだ。
美しいヴァイオリンやシンセもふんだんに使われ、ときにシンフォニックに、ときにアコースティカル
そしてジャジーに紡がれる演奏はじつに流麗で、まさにベテランバンドならではの貫祿がある。
年齢を感じさせないムッシーダのギターワークも素晴らしく、バンドのサウンドに緩急をつけているし、
プログレ的なシンセワークの一方では、たおやかでクラシカルなピアノもしっとりと美しい。
むしろ歌がない分、彼らの素晴らしい演奏を最後まで楽しめる、あるいはお得な一枚とも言える。
メロディアス度・・8 叙情度・・8 映像度・・10 総合・・8.5
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*イタリアンプログレ名作選
*CDレビューイタリアも併せてご覧ください


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