フランスのメタルとプログレ
〜2018ワールドカップ優勝記念特集〜



80年代のフランスのメタルシーンには、ADXTRUSTWARNINGなどのバンドが存在していたが、
英語圏に属さないこともあって、世界的にはメタル不毛の地というイメージがあり、ビッグネームはなかなか生まれなかった。
90年代には、独自の芸術的なデスメタルを標榜する、Misanthropeや、クラシカルで耽美なゴシック世界を描く、ELENDなどが、
アンダーグラウンドなマニアに人気を博す。1996年にデビューした、MANIGANCEは、やはりフランス語で歌っていたこともあり、
当初はあくまで物珍しさでしか話題にはならなかったが、2002年の1stフルアルバムから日本盤が発売されると、
クオリティの高いサウンドとともに着実に認知度を増してゆき、いまやフランスを代表するメロディックメタルバンドとなった。
2000年代に入ると、HEAVENLYADAGIO、さらにはFAIRYLANDといったシンフォニックメタル系のバンドも現れて、
ドイツやイタリア勢にも負けないレベルのサウンドで、しだいにフレンチ・メタルシーンへの関心も高まってゆく。
ブラックメタルでは、ANOREXIA NERVOSAがシーンを牽引しつつ、やがて、Deathspell Omegaが登場すると、
新たなブラックメタルブームの潮流から、シューゲイズ風味のポストブラックという、Alcestが現れて人気を得てゆく。
一方、プログレにおいては、70年代初頭からすでに多くのバンドが個性的な作品を生み出していて、
独自のジャズロックを標榜するMAGMAや、シアトリカルロックの雄、ANGE、さらにはATOLLTAI-PHONGといった、
日本でも人気のバンドが数多く存在、やや通好みのプログレ…フレンチ・ロックのイメージを形成していった。
80年代の世界的なプログレ冬の時代から、90年代に入ってからも、フランスにおいては、MUSEAレーベルを中心に、
新たなネオプログレ、シンフォニックロックのバンドたちが登場して、地道に活動を続けていったことも特筆すべきだろう。
ここでは、そんな優雅なるフランスのメタルとプログレバンドから厳選した作品を紹介したい。
                                     2018.7 緑川 とうせい



◆正統派メロパワ系

HEAVENLY「Carpe Diem」
フランスのメロディックメタル、ヘヴンリーの2009年作
2000年にデビュー、「フランス版GAMMA RAY」ともいうべき陽性のメロディのクサメロを聴かせたマニア好みの作風から
よりシンフォニックな壮大さを増した3rd、そして正統派のメロパワに接近した前作4thと、着実にクオリティを上げてきたが
5作目となる本作は、前作の正統派路線に、GAMMA RAY的なキャッチーなメロディを盛り込んだ作風で、
シンセによるシンフォニックな味付けもふんだんに効かせている。バラード曲ではQUEENを思わせる
(というかガマレーの“The Silence”的か)やわらかな叙情がなかなか素晴らしいし、美麗に疾走するメロスピ曲や
ベートーベンの“第九”風の曲もあったり、シンフォニックメタル作品としての密度と質、そしてバランスのとれた力作だ。
メロディアス度・・8 シンフォニック度・・8 疾走度・・7 総合・・8
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MANIGANCE 「Volte-Face」
フランスのメロディックメタル、マニガンスの2014年作
1996年にデビュー、フランス産のメタルバンドとしては、ADXなどを除けば最もキャリアのあるバンドだろう。
6作目となる本作は、きらびやかなシンセアレンジとフランス語によるヴォーカルを乗せた
優雅なシンフォニックメタルというべき作風で、メロパワ的な疾走感に加え随所に知的な展開力も覗かせる。
ギターワークの巧みさとメロディアスなフックはこれまでの作品以上で、楽曲ごとにしっかりと聴きどころがある。
英語歌詞以外が苦手という人でないなら、バンドとしての最高傑作というべき内容にうなずけると思う。
ADAGIOのステファン・フォルテ、HEAVENLYのオリヴィエ・ラパウゼなどがゲスト参加。
ドラマティック度・・8 フレンチ度・・8 構築度・・8 総合・・8
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ADX 「Non Serviam」
フランスのパワーメタルバンド、ADXの2016年作
80年代から活動するベテランバンドで、二度の復活をへての本作は10作目あたりだろうか。
王道のギターリフにパワフルなヴォーカルを乗せて疾走する、スラッシーなパワーメタルで、
フランス語の歌声が独特の浮遊感をかもしだす。随所にメロディックなフレーズも奏でるツインギターは
往年のジャーマンメタル的でもあり、初期のBLIND GUARDIANなどにも通じる味わいもある。
ベテランらしい堂々たる音の説得力が、フランス語云々を超えた迫力と魅力となっていて、
正統派パワーメタルを愛する人間なら存分に楽しめるだろう。フレンチメタルおそるべし。
ドラマティック度・・8 疾走度・・8 パワフル度・・8 総合・・8
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Lonewolf 「THE HEARTHEN DAWN」
フランスのメロディックメタル、ローンウルフの2016年作
90年代から活動する中堅バンドで、本作がすでに8作目となる。エピックな雰囲気のイントロから、
クサメロたっぷりのギターで心躍るが、おなじみ、RUNNING WILD直系のギターフレーズとともに
ダミ声ぎみのダーティなヴォーカルを乗せた、正統派のメロパワサウンドが展開される。
どっしりとしたミドルテンポのナンバーから、メロスピ的に疾走する軽快なナンバーまで、
パワフルかつ適度なクサメロ感が合わさった感触で、キャリアのあるバンドらしい音の説得力も十分。
男臭い勇壮なコーラスにもニヤりとしながら、オールドなジャーマン系の正統派メロパワが楽しめます。
ドラマティック度・・8 正統派度・・8 エピック度・・8 総合・・8 
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Lorraine Cross 「ARMY OF SHADOWS」
フランスのメロディックメタル、ロレーヌ・クロスの2016年作
ツインギターの5人編成で、抜けの良いハイトーンヴォーカルと正統派のギターリフを乗せた、
いかにも90年代を思わせるオールドスタイルなメロディック・パワーメタルをやっている。
ヴォーカルの声質はカイ・ハンセンあたりを思わせ、随所にツインリードによる叙情フレーズとともに、
少し前のジャーマンメタルというような感触で楽しめる。正統派メタルとしてのパワフルな部分と
エピックメタル的でもある勇壮な世界観、ヨーロピアンな湿り気を感じさせる聴き心地も日本人好みだろう。
リズムチェンジを含んだ展開力やアレンジセンスなどもしっかりとしていて、今後に期待の逸材だ。
ドラマティック度・・8 バワフル度・・8 正統派度・・8 総合・・8
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◆シンフォニックメタル系

ADAGIO「UNDERWORLD」
フランスのネオクラシカルメタル、アダージョの2nd。2003年作
若き天才ギタリスト、ステファン・フォルテ率いるこのバンド、2作目の本作では一聴して前作よりネオクラ度が薄まり、
センスのあるキーボードの音色がときにプログレ的でもあって、変則リズムの曲も、前作よりはずっと作り込まれている印象。
こうなるとネオクラシカル風プログレメタルといえる所まで接近しつつあり、ピアノ音色の美しさには、
むしろクラシックそのもののシリアスな情感がある。クラシカルでシンフォニックなProgMetalとしてもかなりの傑作だ。
シンフォニック度・・8 テクニカル度・・8 クラシカル度・・9 総合・・8
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KARELIA 「RAISE」
フランスのメロディックメタル、カレリアの2nd。2005年作
前作は、THERION的なゴシック風の大仰さをメロパワと融合させた傑作であったが
今作も崇高なクワイアを随所に盛り込んでいて、全体的にダーク目の雰囲気で重厚かつシンフォニックな音像に、
シリアスなコンセプトを盛り込んだアルバムとなっている。バンドの顔であるマシューの歌唱は、PAIN OF SALVATIONのダニエルのように
曲のテーマを自らの内面に重ねて歌い上げる。悲しげなピアノの音色や、女性Voの効果的な使用、シンセによる細かなエフェクトなどには、
彼らのサウンドに対するアートな感性が窺え、それはPINK FLOYDのカヴァーなどにも表れている。聴き込むほどに深遠なアルバムだ。
メロディアス度・・7 シンフォニック度・・8 重厚度・・9 総合・・8
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FAIRYLAND「The Fall Of An Empire」
フランスのシンフォニックメタル、フェアリーランドの2nd。2006年作
前作で歌っていたエリサ・マーティン(DARK MOOR〜DREAMAKER)に代わって、元MAGIC KINGDOMのVoが加入。
今作もファンタジックな物語をコンセプトにした、壮麗かつエピックなサウンドを聴かせる。男性ヴォーカルとなったことで、
楽曲におけるよりメタリックなエッジが引き立って、戦いに赴くようなエピックな勇ましさが音に溢れている。
シンフォニックなシンセの味付けやクワイアなどはやはりRHAPSODY的で、楽曲そのものの個性はともかくとして、
華麗でファンタジックなシンフォニックメタルの世界観が好きならば、充分に楽しめるクオリティの高さである。
シンフォニック度・・8 エピック度・・9 新鮮度・・7 総合・・8
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Operadyse 「Pandemonium」
フランスのシンフォニックメタル、オペラダイスの2013年作
シンセを含む5人編成で、美麗なアレンジとともにマイルドなヴォーカルを乗せて疾走する。
随所にネオクラ色も含んだギターはクサメロ感もたっぷりで、キャッチーなサビメロもなかなかいい。
壮麗なクワイアなども含んだサウンドは、RHAPSODY以後のいかにもなスタイルなのだが、
メロディの爽快な抜けの良さは聴いていてニンマリ。これぞクサ☆シンフォ☆メタルである。
ファンタジックな世界観は同郷のFairylandKerionあたりにも通じるだろう。起伏のある展開力に、
ときに女性ヴォーカルも加わるなど、どこを切っても華麗な聴き心地でクオリティ高い力作です。
シンフォニック度・・8 疾走度・・8 ファンタジック度・・8 総合・・8
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Qantice 「The Phantonauts」
フランスのシンフォニックメタル、カンタイスの2014年作
女性ベース、女性ヴァイオリン奏者を含む5人編成で、本作が2作目となる。
オーケストラルなシンフォニックアレンジにハイトーンヴォーカルを乗せて疾走する、
壮麗なメロディック・スピードメタルサウンドで幕を開ける。随所にネオクラ&クサメロ系のギタープレイも聴かせつつ
RHAPSODYのようにファンタジックで物語的な世界観を感じさせる、作品としてのゆるやかな流れも感じさせ、
クラシカルな優雅さも含んだメロディなどにも、疾走するだけではないバンドとしての懐の深さが窺える。
あとは、これだというインパクトのある曲が増えれば、中盤でもダレないと思う。傑作一歩手前という作品。
ドラマティック度・・8 疾走度・・7 ファンタジック度・・8 総合・・8
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Seyminhol 「Wayward Son」
フランスのシンフォニックメタル、セイミンホルの2015年作
結成は90年代というなにげにキャリアのあるバンドで、本作はコンセプト的なストーリーに基づいた作品で、
ハイトーンヴォーカルを乗せた正統派メロパワのスタイルに、随所にオーケストラルなアレンジを盛り込んだ
シンフォニックなスケール感を漂わせる。楽曲の合間に小曲やSEを盛り込んだ構成とともに、
Thy Majestie辺りに通じるエピックな世界観がよい感じだ。ただ、楽曲ごとのメロディのフックという点では
いささか物足りなさもあり、細かなアレンジなどに詰めの甘さがあるので、まだB級から抜け切れていない。
ときに女性ヴォーカルが加わったりと、部分的にはぐっとくる部分もあるので、あとは全体の完成度を高めてもらいたい。
ドラマティック度・・8 重厚度・・8 楽曲・・7 総合・・7.5
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◆テクニカル&プログレメタル系

CYRIL ACHARD'S MORBID FEELING「...IN INCONSTSNCIA CONSTANS」
フランスのギタリスト、シリル・エイチャード率いるモービッド・フィーリングの2002年作
シリル・エイチャードはフランスの大御所プログレバンドATOLLARRAKEENなどへ参加した経歴をもつ。
サウンドは、DREAM THEATER的なテクニカルさとメロディアスな叙情とのバランスのとれた見事なもので、
インストパートの壮絶さはDT並である。キーボードとギターのコンビネーションも良く、
かすれ気味の声質のヴォーカルもなかなかアダルトなテイストでメロディを歌い上げている。
シリルのギターは緩急自在で、正確かつテクニカルでありながらも、しっかりムーディなセンスもある。
DTのジョン・ペトルーシに比肩できるギタリストといっても過言ではないだろう。楽曲的にもDTに通じるところもあるが、
聞き手をぐいぐいと引きこむ力強さと、メロウな繊細さを併せ持った素晴らしい傑作だ。フランスおそるべし。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・9 楽曲センス・・9 総合・・8.5

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Regency 「Awakening」
フランスのプログレメタル、リジェンシーの2001年作
変則リズムのテクニカルなアンサンブルに、きらびやかなシンセワークを乗せ、
DREAM THEATERを思わせる知的な構築性に包まれたインストサウンド。
ギターは随所にメロディックなフレーズを奏で、シンセによるシンフォニックな味付けと、
緩急に富んだ展開力で、オールインストながらも叙情性のバランスがよく飽きずに楽しめる。
ギターやシンセのセンスもなかなかで、ドラムも上手いので、ここに歌が入れば
あるいは一線級のバンドになれた気もするのだが。この一作のみで終わったのだろうか…
バンドについての情報はまったく分からない。掘り出しもの的なインストProgMetalの好作品。
メロディック度・・8 テクニカル度・・8 知的構築度・・8 総合・・8
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Spheric Universe ExperienceUnreal」
フランスのプログレメタル、スフェリック・ユニバース・エクスペリエンスの3rd。2009年作
モダンなシンセアレンジと適度な硬質感をもったテクニカルな展開力、
そしてプログレパワー的な分かりやいメロディで聴かせるサウンドは、
巧みな構築性をもちながらも難解さを感じさせないのが見事といえる。
そして、ドラマテイックであっても決して大仰になりすぎない余裕があるのもフランス的だ。
DREAM THEATERが現れてから20年。プログレッシブなメタルがここまでアップデートされようとは、
当時は誰も思わなかったに違いない。まぎれもなく「今」の音がする作品だ。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 モダン度・・9 総合・・8
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VENTURIA 「The New Kingdom」
フランスのプログレメタル、ベンチュリアの2006年作
DREAM THEATERを思わせる技巧的な構築美とモダンなシンセアレンジ、
手数の多いドラムに男女ヴォーカルの歌声で聴かせる、新世代のProgMetalスタイル。
曲は4〜6分台が中心でさして難解さは感じないが、随所に出てくる変拍子リズムや
展開力とともに実に濃密な印象である。単にテクニカルなものを見せつけるのではなく
しっかりとメロディやドラマティックな空間美もあって、高品質な完成度に仕上がっている。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・8 モダンセンス度・・9 総合・・8
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EtHERSENS 「Ordinary Days」
フランスのプログレメタル、エーテルセンスの2008年作
硬質なギターリフによるモダンなヘヴィネスとテクニカル性にマイルドなヴォーカルを乗せた
メランコリックな味わいを含んだスタイリッシュな作風。Pain of Salvationなどにも通じる知的なセンスに、
ヴォーカルはときにがなり立てるような激しく歌ったり、、シアトリカルな側面も垣間見せる。
派手な展開というのはあまりないが、ゴシックロック的な翳りのある叙情性に包まれた世界観で、
Wolverineなどが好きなリスナーにも楽しめるだろう。モダンでハイセンスな薄暗系メタルの好作品。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・7 メランコリック度・・8 総合・・7.5
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Continuum 「Lifeless Ocean」
フランスのプログレメタル、コンティニュームの2009年作
美麗なシンセと適度にヘヴィなギターを乗せ、テクニカルなアンサンブルと緩急ある展開力で、
DREAM THEATERばりのProgMetalを聴かせる。湿り気を含んだ叙情性は、ヨーロピアンな香りの
シンフォニックプログレ的な雰囲気もあって、ドラマティックな構築センスもなかなか見事。
ときに激しい疾走パートなども含んだリズムチェンジや、美しいシンセに包まれたシンフォニックな味わいの
ヴォーカルナンバーもあったりと、全体的にもメリハリに富んだ、高品質なプログレメタルが楽しめる。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 構築センス・・8 総合・・8
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KALISIA「CYBION」
フランスのシンフォニック・プログレメタル、カリシアの2009/2011年作
20パートに分かれた組曲方式で、シンフォニックなシンセアレンジとProgMetal的なテクニカルな展開力、
メロデス的な激しさも含みつつ、壮大なスケールと美意識を感じさせるサウンド。
美しい女性ヴォーカルに絡むデス声、細やかなコーラスの使い方も含めて
随所に知的でプログレ的な構築性が光っており、とくに美麗なシンセのセンスは相当なものだ。
モダンなインダストリアル要素を取り入れたり、質感としては同郷のVENTURIAにも通じるものある。
メロデスとしては激しさはやや足りないが、むしろ展開美のあるシンフォニックメタルとして楽しむ作品だろう。
シンフォニック度・・8 プログレメタル度・・8 壮大度・・8 総合・・8
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TormentaLa Ligne Apre
フランスのテクニカルメタルユニット、トーメンタの2011年作
Cheval De FriseやElusiv、Let Jesus Bleedといったバンドに参加していた
ギターとドラムによるユニットで、オールインストによるテクニカルロック/メタルサウンド。
メタリックなリフの反復による無機質さと、アナログ的なドラムが叩き出す変則リズム、
随所にミスティックなアヴァンギャルド性も盛り込んで、緊張感を漂わせる演奏だ。
MATS/MORGANやフレドリック・トーテンダルなどに通じる雰囲気もあるが、
こちらはもっとポストロック的なイメージ力を刺激するゆるやかな作風といえる。
メロディアス度・・7 メタル度・・7 緊張感・・8 総合・・8
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ORAKLE 「Eclats」
フランスのアヴァン・テクニカルメタル、オラクルの2015年作
ツインギターの複雑な絡みとうっすらとしたシンセアレンジ、変則リズムを含んだプログレッシブな味わいのサウンドで、
マイルドなノーマルヴォイスとデスヴォイスを使い分けたモダンな感触は、Between The Buried and Meなどの
カオティック・コア系の雰囲気にも近い。テクニカルで知的な構築力と、随所に激しいブラストパートも含んだ
緩急のついた展開はなかなか面白く、フランス語によるヴォーカルの優雅な味わいも個性になっている。
適度な叙情性も覗かせつつ、先の読めないアヴァンギャルド性と冷徹な知性がサウンドを巧みに彩っていてる。
ヨーロピアンなカオティックコア、あるいはモダンなプログレッシブ・メタルとしても楽しめる強力作だ。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 知的センス・・9 総合・・8
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◆女性ヴォーカルメタル

WILDPATH「NON OMNIS MORIAR」
フランスのシンフォニックメタル、ワイルドパスの2nd。2009年作
前作はややB級臭いサウンドであったが、今作は壮麗なイントロから期待させる。
美しい女性ヴォーカルの歌声でシンフォニックなシンセととも疾走するスタイルは、
EDENBRIDGEあたりに接近したような印象で、じつに優美なサウンドだ。
楽曲面でのアレンジの質が向上したことで、クサメロがより引き立つようになった。
コーラス入りで盛り上がるところなどは、RHAPSODYにも通じるファンタジックな世界観もあり、
クラシカルなシンセワークを軸に、新加入のマルジョレーヌ嬢の優雅な歌唱が響きわたる。
あまり期待していなかっただけに、これは予想外の好盤。女性Voシンフォメタル好きはぜひ。
シンフォニック度・・8 優美度・・9 女性Vo度・・8 総合・・8
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Auspex「Heliopause」
フランスのシンフォニックメタル、アウスペックスの2010年作
ProgMetal化したDARK MOORという感じの前作もかなりの出来であったが、
本作も美麗なシンセによるシンフォニック要素に、テクニカルな展開美、
そして女性ヴォーカルの歌声で聴かせる、メロディアスで質の高い作品だ。
メタル的な激しさや疾走感よりは、モダンかつやわらかな質感とセンスの良さで、
サウンドを構築しているという印象。KAMELOTの近作などにも通じるマイルドな聴き心地で、
知的なアレンジ力はいかにもフランスらしい。トレビアンなお洒落系シンフォメタル。
なぜか、つたない日本語で歌うバラード曲もあり。とりとめのなさが面白いバンドです。
シンフォニック度・・8 テクニカル度・・7 女性Vo度・・7 総合・・8
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WhyzdomBlind?
フランスのシンフォニックメタル、ワイズダムの2012年作
前作はNightwishタイプの好作であったが、本作ではさらに壮大な作風となり、
オーケストラルなシンフォニック性と美しい
女性ヴォーカルの歌声で聴かせる
じつに美麗なサウンドに仕上がっている。スケール感を漂わせたドラマティックな雰囲気と
5〜7分台を中心にした楽曲の構築力もぐっと高まっていて、クラシカルな美意識とメリハリのついたアレンジは
EPICAなどにも通じる部分がある。新加入のエヴィン嬢の歌声はオペラティックというよりはむしろキュートな声質で、
バックが濃厚な分だけむしろ耳心地がよい。10分を超えるラスト曲まで濃密に聴かせる華麗なる力作だ。
シンフォニック度・・9 壮大度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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ADRANA 「Foreshadow」
フランスのシンフォニックメタル、アドラナの2015年作
前作はKERIONにも通じるクサメロで聴かせるシンフォニックメタルであったが、
本作ではソプラノ女性ヴォーカルの歌声に男性デス声が絡み、シンフォニックなアレンジとともに
いくぶんモダンなヘヴィネスが加わったという重厚な感触だ。アナ嬢のオペラティックなヴォーカルは
なかなか表現豊かで、ダークになったサウンドも含めて、むしろEPICAあたりにも接近したような印象。
クラシカルなテイストと随所に激しい疾走も盛り込んだメリハリに富んだ楽曲構成、ゴシカルな耽美さと
オペラティックな男女声で、濃密かつドラマティックなサウンドを構築してゆく。前作のクサメロ路線もよいが、
今作のシリアスで重厚な作風も捨てがたい。ますます今後が楽しみなバンドですな。
シンフォニック度・・8 重厚度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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TALVIENKELI 「Hybris」
フランスのシンフォニックメタル、トールヴェインケリーの2017年作
女性Voにシンセを含む5人編成で、ベースも女性奏者。美しいシンセと女性声を乗せたイントロから、
優美な世界観に包まれつつ、メタリックな激しさを加えた重厚なシンフォニックメタルを展開。
EPICAなどにも通じるクラシカルな優雅さと、硬質なギターリフのモダンなヘヴィネスが合わさり、
緩急のあるメリハリのある構築力とともに壮麗なサウンドを描いてゆく。カミーレ嬢の歌声は、
美しいメゾソプラノで、ヘヴィなバックとのコントラストがやわらかな浮遊感を楽曲に付加している。
10分におよぶ大曲も含めて、デビュー作としては堂々たる内容の力作です。
シンフォニック度・・8 重厚度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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◆ゴシック、ドゥームメタル系

ELEND「THE UMBERSUN」
フランスの暗黒クラシカルゴシック、エレンドの4th。1998年作
ルシファー三部作の最終章で、このバンドの集大成というべきドラマティックな大傑作。
壮大なオーケストレイションと混声合唱団、女性ソプラノヴォーカルに凄絶な男性デス声、
これらが闇の中で交じり合い、ある種叙情的な絶望音楽というべきサウンドを構築してゆく。
これはすでに暗黒のクラシックともいうべき地平である。暗黒映画サントラのようなスケール感と、
「本物」の空気を身につけたかれらは、この究極ともいうべき作品を完成させ、今後どこへ向かうのだろう。
シンフォニック度・・8 荘厳度・・10 暗黒叙情度・・10 総合・・9
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Dark Sanctuary「L'etre las-l'envers du miroir」
フランスのゴシックバンド、ダーク・サンクチュアリの3rd。2002年作
2人のヴァイオリンを含む男女3人ずつの6人編成で、うっすらとしたシンセと
美しい女性ヴォーカルの歌唱を中心にした静謐系のゴシックサウンド。
暗黒性よりも耽美な美しさで聴かせる作風なので、クラシカルなピアノの響きや、
オーケストラルなシンセの重ね、そしてしっとりと響く女性声にうっとりと耳を傾けられる。
シンフォニック度・・8 メタル度・・1 女性Vo度・・8 総合・・8
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PENUMBRA「THE LAST BEWITCHTCHMENT」
フランスのゴシックメタル、ペヌンブラの2nd。2002年作
壮大な合唱コーラスに続いてメロディアスなギターワーク、そこにデス声が乗り、バックには豪勢なオーケストラという、
クラシカルでゴージャスなサウンド。曲のアレンジもこなれていて、ギターの扇情的なフレーズといい、
それに絶妙に絡む女性コーラス隊や重厚なオーケストラといい、実に高密度なのである。
暗黒性よりもクラシカルさを重視した音作りで、デス声さえなければ「クラシカルメタル」と言っていいかもしれない。
3曲目のピアノとツインギターの絡みなどほとんどシンフォニックメタル。とにかく素晴らしい完成度の傑作です。
シンフォニック度・・9 クラシカル度・・9 楽曲・・8 総合・・8.5 
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AD VITAM AETERNAM「ABSTRACT SENSES」
フランスのゴシックメタル、アド・ヴィタム・エターナムの2004年作
男女ヴォーカルの歌声と、壮麗なシンセアレンジで聴かせる、シンフォニックかつ耽美なゴシックメタル。
ソプラノ女性ヴォーカルの歌声も美しく、デス声との対比が美と醜のコントラストを作り出していて、
全体的に「ゴシックメタルかくあるべし」、という絶妙の王道ゴシックサウンド。
ギターの煽情フレーズもなかなかよろしく、美麗なキーボードとの絡みは、
ハンガリーのEVEN SONGあたりを思い出すセンスの良さだ。掘り出し物です。
シンフォニック度・・8 ゴシック度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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AKINWay Things End」
フランスのゴシックメタル、アキンの2011年作
フルアルバムとしてはなんと10年ぶりとなる2作目。サウンドの方はメタル色は薄まり
2003年のミニアルバムの延長上と言える、モダンでプログレ的なアプローチが強まった。
艶やかなストリングスの音色も美しく、クラシカルでお洒落なゴシックロックという趣で、
キュートな女性ヴォーカルの歌声とともに、アンニュイな叙情を表現している。
ゴシックメタルというよりも、むしろPaatosWHITE WILLOWなど、
プログレ方面の女性Vo好きリスナーにもアピールする内容だろう。
クラシカル度・・8 ゴシック度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8
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AKPHAEZYA 「Anthology 4」
フランスのアヴァン・ゴシックメタル、アクファエズヤの2012年作
前作の過剰なヘンタイメタルぶりに比べて、一聴してメタル的な整合感が増していて、
ずいぶん聴きやすくなっている。アコーディオンにシンセもこなす、ヴォーカルのネル嬢の歌声を中心に、
シアトリカルでゴシック的でもある耽美な世界観は、いくぶん叙情性を強めていて、
モダンなアレンジ力を身につけたことで、楽曲の流れにおける説得力が増してきた。
スクリームを乗せた激しさも垣間見せつつ、それをジャズ風味もある優雅さの中に
今作では無理なく取り込んでいる。コロコロとした可愛らしさや毒々しさも含んだ力作だ。
ドラマティック度・・8 ヘンタイ度・・8 女性声度・・8 総合・・8
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EILERA 「FACE YOUR DEMONS」
フランス出身の女性シンガー、エイレラの2016年作
2007年作「Fusion」は、クラシカルな雰囲気の優雅なゴシックメタル作であったが、
本作は美麗なシンセアレンジに、適度にハードなギターとキュートな女性ヴォーカルを乗せた、
キャッチーなシンフォニックメタル風味のサウンド。ゴシック的な耽美さはあまりないが、
エイレラ嬢のやわらかな歌声にはどこか北欧的なフォーキーな空気感もあり、
ヘヴィさが希薄な分、むしろシンフォニックな女性声メロディアスハードとしても楽しめる。
メロディック度・・8 ゴシック度・・7 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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Soul Manifest 「White Season」
フランスのヴィンテージ・ドゥームロック、ソウル・マニフェストの2010年作
アナログ感たっぷりのギターにオルガンが鳴り響き、中性的でハスキーなヴォーカルを乗せ、
いかにも70年代を思わせるヴィンテージな空気感のドゥームロックを聴かせる。
ヴォーカルの声質も含めて魔女系ロック的な妖しさもありつつ、ギターはけっこうヘヴィなので、
どっしりとした骨太のサウンドには迫力も十分。サイケロック寄りのユルめのナンバーや、
ノリのよいキャッチーなナンバーなどもあって肩肘張らずに楽しめる。10分近い大曲も、
しっかりとした演奏力と柔軟なグルーブ感で聴かせる、サイケ・ドゥームな強力作です。
ドラマティック度・・7 ドゥーム度・・8 ヴィンテージ度・・9 総合・・8
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MONOLITHE 「Zeta Reticuli」
フランスのブラック・ドゥームメタル、モノリスの2016年作
2008年にデビューしてから、本作ですでに5作目となる。15分ジャストの大曲3曲という構成も異質だが、
サウンドの方も、ブラックメタル的なダークさに、ドゥームメタルの重厚さを合わせたというような
ミステリアスなスケール感に包まれている。ツインギターの絡みつくようなリフにうっすらとしたシンセアレンジ、
低音のデスヴォイスを乗せたフューネラル・ドゥームの感触に、ブラッケンな禍々しさを加えた闇の気配と、
スペイシーで神秘的な空気感がじわじわと広がってゆく。随所に叙情的なギターフレーズも覗かせて、
わりと起伏のある展開で大曲を構築してゆく力量もなかなかのものだ。3曲目はノーマル声のヴォーカルを乗せた
ポストロック的な壮大さも感じさせつつ、シンセも含む厚みのあるアレンジで説得力ある音像を描いている。
ドラマティック度・・8 重厚度・・8 ミステリアス度・・9 総合・・8
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◆デス&ブラックメタル、ペイガンメタル系

MISANTHROPE
「Visionnaire」
フランスのプログレ・デスメタル、ミサントロプの4th。1998年作
日本盤タイトルは「誇大妄想者」。吐き捨てヴォーカルも含めてメロデス的な質感と、効果的にシンセを使った美意識と、
プログレッシブな楽曲構造が個性的。フランス語特有の優雅さが、クラシカルなメロディと合わさると、
シンフォニックな美しさも前に出てくる。声を使い分けるヴォーカルなどシアトリカルな要素と、
いくぶん風変わりで変態的な展開も面白い。HOLYレーベル代表のバンドとしても知られる。
メロディアス度・・7 フランス度・・8 変態度・・8 総合・・7.5

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ANOREXIA NERVOSA「Redemption Process」
フランスのブラックメタル、アノレクシア・ネルヴォサの4th。2004年作
1997年にデビュー、「神経性無食欲症」を意味するバンド名や、ファンの女性が自殺するなど、カルトな人気を誇る。
前作は疾走一辺倒のシンフォニックブラックだったが、今作では楽曲にメリハリがついていて、
美しいシンセをバックに荘厳に疾走しつつも、重厚でドラマティックな要素も増しているという感じです。
これという新鮮味はないものの、迫力あるサウンドに浸れる、シンフォニックブラックの力作です。
日本盤ボーナスにはX(JAPAN)の“I'll Kill You”のブラックメタルカヴァーを収録。
シンフォニック度・・7 暴虐度・・8 新鮮度・・7 総合・・8
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MYSTIC FOREST「ROMANCES」
フランスのシンフォニック・ブラックメタル、ミスティック・フォレストの4th。2004年作
ドラムは打ち込みながら、美麗な感触で疾走するシンフォブラックで、曲間にSEや女性の囁きを入れたり
ピアノによるクラシックのメロディを導入したりと、なかなかアイディアが豊富である。
随所に知的でアーティスティックな感性を感じさせるところはプログレ・ブラック的なサウンドだろう。
ゆったりとした部分でのギターのメロウなフレージングも実に心地よく、演歌泣きのクサメロに軽く悶絶する。
アコーディオンの音色が土着的な質感を生み出していて、優雅に疾走する感触などはけっこう新鮮だし、
クラシカルなピアノの音色に乗るフランス語の囁きなども含めて、フレンチらしい上品なシンフォブラック作品だ。
メロディアス度・・8 暴虐度・・7 芸術度・・9 総合・・8
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Alcest「Les Voyages De L'ame
フランスのシューゲイザー・ブラック、アルセの2012年作
ブラックメタルと呼ぶにはあまりにもの悲しく美しいサウンドで、多くのファンを虜にするNeige氏による一人ユニット、
その3作目である。幻想的なジャケも素晴らしいが、サウンドのほうもやわらかなヴォーカルと、
叙情たっぷりのギターワークで聴かせる、まるでポストロックのような耳心地だ。
ブラックメタル的な疾走も随所にあるのだが、それすらもはかない叙情を含んだ
しっとりとした雰囲気で、哀愁のトレモロリフとともに聴き手の涙腺を刺激する。
癒し系ブラックという言い方よりもさらに美しい。プログレファンもこれはぜひ。
メロディアス度・・8 ブラック度・・6 幻想叙情度・・9 総合・・8.5
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Les Discrets「Ariettes Oubliees
フランスのポスト・ブラックメタル、レス・ディスクレッツの2012年作
AMESOEURSのFursy Teyssierを中心にした3人組で、ゆったりとした叙情性と
男女ヴォーカルのフランス語の歌声で聴かせる、アンニュイなポストロック風サウンド。
激しい疾走は少ないが、薄暗い翳りを含んだ世界観とメロウなギターのフレーズが
メランコリックな味わいをかもしだしていて、Alcestにも通じるやわらかな聴き心地だ。
一方では、ギターリフの組み立て方にはオールドスタイルのアナログ感覚があり、
プログレ、ポストロックのリスナーにも楽しめるかもしれない。
メロウ度・・8 激しさ度・・5 アンニュイ度・・9 総合・・8
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ANTAGONISTE 「The Myth of Mankind」
フランスのアヴァン・ブラックメタル、アンタゴニステの2015年作
適度にモダンなツインギターに、囁くような吐き捨てヴォーカルを乗せ、随所に暴虐なブラスト疾走を含ませつつ、
プログレッシブで知的な構築センスも感じさせるサウンド。絡みつくようなギターリフは、ノイジーではあっても
重すぎることなく、むしろテクニカルで整然とした冷徹さをまとわせている。スペイシーなスケール感とともに
どこか殺伐とした不穏な邪悪さを描くような、得体のしれない迫力というものが見え隠れする。
一方ではスローテンポのドゥームめいたナンバーもあったりと、一筋縄ではいかない。
アヴァンギャルドでアーティスティックなセンスに覆われた異色のアヴァン・ブラックメタル作品。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・8 知的センス・・8 総合・・8
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Ave Tenebrae 「Tandis Que Les Perjures Se Meurent」
フランスのブラックメタル、アヴェ・テネブレの2016年作
トレモロを含むメロディックなツインギターにいかにもブラックらしいダミ声ヴォーカルを乗せてブラスト疾走、
緩急のあるリズムチェンジと激しくも叙情的な味わいで、ほどよくプリミティブな世界観を描き出す。
軽すぎず重すぎずというバランスに、曲によっては優雅と言ってよいリズム展開とともに知的な味わいも感じさせる。
ブラックメタルとしての暴虐な激しさの中に、ふっとアコースティックなパートを挿入するなど、
メロディックな叙情性を取り入れたアレンジセンスも見事。フレンチな優雅さに包まれた高品質作。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・8 激しくも優雅度・・8 総合・・8
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AU CHAMP DES MORTS 「Dans La Joie」
フランスのブラックメタル、チャンプ・デス・モーティスの2017年作
ANOREXIA NERVOSAのVo&Gであるステファン・ベイル率いるバンドで、
ダークな叙情性を感じさせるギターリフにうっすらとしたシンセアレンジとダミ声ヴォーカルを乗せ
寒々しい空気感の中に物悲しい叙情を含ませたサウンド。ときにジェントルなノーマルヴォイスも加わって、
随所にAlcestを思わせる美しさも垣間見せる。激しくブラスト疾走しつつも、トレモロのギターリフなど、
メロディックな感触が前に出ているので、暴虐な感じはさほどなく、8〜10分という大曲も緩急のある展開で、
Wolves in the Throne Roomにも通じるミステリアスな気配とともに、メランコリックなブラックメタルが味わえる力作だ。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・7 メランコリックな叙情度・・9 総合・・8
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The GREAT OLD ONES「EOD - A Tale of Dark Legacy」
フランスのブラックメタル、グレート・オールド・ワンズの2017年作
名前の通りクトゥルフ神話をコンセプトにするバンドで、アルバムタイトルは「Esoteric Order of Dagon(ダゴンの難解な命令)」の略。
厚みのあるギターリフを乗せて激しいブラスト疾走する、オールドスタイルのブラックメタル感触とともに、
遠くから霞むような邪悪な絶叫ヴォーカルを乗せ、かつてのEMPERORのような荘厳なスケール感を描き出す。
9分、11分という大曲を、スローテンポを含んだ緩急ある展開力で構築する、アレンジセンスも一級品だ。
不穏な空気感に甘すぎない程度の叙情性も盛り込んで、ダークでドラマティックなブラックメタルが楽しめる傑作。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・8 荘厳度・・9 総合・・8.5
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BRAN BARR「Sidh」
フランスのフォーク・ブラックメタル、ブラン・バールの2010年作
ホイッスル奏者を含む6人組で、イントロからボドラムの響きとともに素朴なハーディーガーディの音色、
ホイッスルやフルートが絡み、牧歌的なパイプを鳴らしながら、本格的なフォークメタルが展開される。
ブラックメタルばりの激しい疾走感の中を、ホイッスルが響きわたるさまはなかなか圧巻。
アコースティカルな叙情パートとブラスト入りの激しさのコントラストが見事な力作だ。
ドラマティック度・・8 フォーキー度・・8 ホイッスル度・・9 総合・・8
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Belenos 「KORNOG」
フランスのペイガンブラックメタル、ベレノスの2016年作
物悲しいフィドルの音色によるイントロから、重厚なギターリフが重なり、低音のダミ声ヴォーカルを乗せて
ミステリアスなスケール感に包まれた、ペイガンなブラックメタルを聴かせる。激しい疾走パートもありつつ、
スローからミドルテンポでどっしりとした重厚さでもって、ゆったりとした叙情パートなど、緩急ある展開力とともに、
キャリアのあるバンドらしいサウンドの説得力を感じさせる。朗々としたコーラスを乗せた勇壮な雰囲気と
霧に包まれたような音作りが神秘的な空気感をかもしだす。ドラムの高速ブラストもMARDUKあたりに引けを取らない迫力。
12分の大曲も含めて、荘厳でドラマティックな世界観を描く、ペイガン・ブラックメタルの強力作である。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・8 ペイガン度・・8 総合・・8
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Heimsgard 「Ordrag」
フランスのペイガンメタル、ヘイムスガルドの2016年作
土着的なツインギターにダミ声ヴォーカルを乗せ、フォーキーなメロディとともに疾走する、
ENSIFERUMなどに通じるサウンド。美麗なシンセアレンジに、優美な叙情を含ませた
緩急ある展開力で、クサメロ感漂う感触とともに高品質なペイガンメタルを聴かせる。
勇壮なコーラスなどヴァイキングメタルとしての幻想性も感じさせつつ、重厚な迫力は薄い分、
あくまでメロディ重視の作風で初心者にも聴きやすいだろう。
メロディック度・・8 ペイガン度・・8 重厚度・・7 総合・・8
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◆フランスのプログレバンド

SANDROSE
フランスのプログレ・ロックバンド、サンドローズの1972年作
ジャズやクラシックの素養をもつJean-Piere Alarcenを中心に、EDEN ROSEを母体に結成される。
オルガンを基調にした70'sロックサウンドに、表現力豊かな女性ヴォーカル、ローズのソウルフルな歌声が重なると
プログレというよりはむしろ、SAVAGE ROSEなどに通じる女性声R&Bという質感に包まれるが、
ここぞと鳴り響くメロトロンなどはシンフォニックな叙情性を付加しており、思わずうっとりとなる。
アラルサンのメロウなギターワークもやはり見事で、この時代にしか作り得なかったであろう
熱情と美学がアルバムの中には溢れている。フレンチロックの名盤というに足る作品だ。
メロディアス度・・8 叙情度・・9 女性Vo度・・9 総合・・8.5
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ATOLL「L'AraignUE-Mal」
フランスのプログレバンド、アトールの1975年作
その昔、プログレ初心者の頃に本作を聴いたのだが、当時は難解な作風があまり理解できず、
むしろ「サードアルバム」の方が好みだったのだが、こうしてあらためて聴いてみると、
よりアーティスティックで、いかにもフランスらしいシアトリカルな魅力を発見できる。
浮遊感のあるシンセワークにフランス語による歌声、メロウなギターとヴァイオリンの優雅な響きが
幻想的なサウンドを描き出す。躍動的なリズムセクションを中心に、ジャズロック的なテクニカルさも覗かせつつ、
後半の22分におよぶ“組曲「夢魔」”ではヨーロピアンなセンスと構築美が合わさった圧巻のサウンドを展開する。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 フランス・・8 総合・・8.5
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TAI PHONG
フランスのメロディックプログレバンド、タイ・フォンの1975年作
「恐るべき静寂」のタイトルと日本の武士をあしらった美しいジャケが魅力的。
サウンドの方も、キャッチーなコーラスハーモニーに日本人好みの繊細な叙情で、
絶妙のアンサンブルとともにメロディアスに聴かせる。メロウなギターに美しいシンセワークも
あまりプログレ、プログレしていない点で、一般のリスナーにも聴きやすいメジャー性がある。
2曲め“SisterJane”の美しさにはうっとり。2nd「ウインドウズ」も甲乙つけがたい傑作。
メロディアス度・・9 プログレ度・・7 叙情美度・・9 総合・・8.5
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CLEARLIGHT「Les Contes Du Singe Fou」
フランスのシンフォニックロック、クリアライトの3rd。1976年作
「狂った猿の物語」というタイトル通り、カラフルな衣装をまとったチンパンジーのジャケが
やや異色な感じを与える。サウンドとしては、前2作よりもヴォーカルの頻度が高く、
GENESIS的な質感の分かりやすいシンフォニックロックサウンドになっている。
MAGMA LIVEにも参加したDidier Lockwoodが奏でるヴァイオリンが
Cyrille Verdeauxのピアノと絡まりあい、美しいコントラストを描きつつ曲を盛り上げる。
しっとりとしたクラシカルさとメロディアスな歌メロのバランスがとれた好作だ。
メロディアス度・・8 シンフォニック度・・7 プログレ度・・7 総合・・8
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ANGE「Guet-apens」
フレンチ・シアトリカルプログレのベテラン、アンジュの6th。1977年作。邦題「異次元への罠」
歌詞による語りがメインだった前作よりも、ぐっと音のダイナミズムが増している。
シンフォニックなキーボードをバックにデカンのフランス語のヴォーカルが乗ると、
まさにこれぞフレンチロックという濃密で優雅な独特の高揚感が押し寄せる。
一方では、しっとりとした叙情性も備えていて、オーケストラルなシンセにフルートの音色も美しく、
サウンドの完成度で言うならばこれぞバンドの代表作というべきアルバムかもしれない。
もちろんデカンのシアトリカルな歌唱も健在で、ラストの大曲ではその劇的さが炸裂する。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・8 シアトリカル度・・8 総合・・8
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PULSAR「Halloween」
フランスのプログレバンド、ピュルサーの3rd。1977年作
女性Voによる“ダニーボーイ”で幕を開ける本作は、フランスプログレ史上においても5指に入るべき名作。
美しいフルートに幽玄なメロトロンの響き、アコースティックギターのつまびきに包まれて、
ゆったりと曲は進んでゆく、ヘヴィーなギターが加わりダイナミックなリズムとともに、
薄暗い叙情とエクセントリックな夢見心地の狂気のようなものが交差してゆく。
メロウなギターワークとメロトロンの重なりは絶品で、たとえば初期のGENESISの叙情をフランス的な
アートな感性で仕立て上げたという感じか。A、B面をいっぱいに使った全2曲の構成も思い切っているが、
カッチリとした展開というものではなく、むしろ広がりのある幻想的感性を楽しむ作品だと思う。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・8 幻想度・・9 総合・・8.5
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CARPE DIEM「Cueille le Jour」
フランスのシンフォニックロックバンド、カルプ・ディアンの2nd。1977年作
サックスを中心にしたジャズロック風のシンフォニックロックという個性的なバンド。
のっけから21分の組曲で、1stをより洗練させた叙情美でしっとりと聴かせる。
インストをメインにしながら決してうるさすぎない演奏で、ハモンドなどの音色も
どこか薄暗い雰囲気で、サウンドにヨーロピアンな幻想美をまとわせる。
点描のジャケが美しい1stの方が有名だが、全体の完成度ではこちらだろう。
シンフォニック度・・7 プログレ度・・8 しっとり薄暗度・・8 総合・・8
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WAPASSOU「Ludwig,Un Roi Pour L'Eterni」
フランスのシンフォニックロック、ワパスーの1979年作
ルートヴィヒ二世をテーマにした34分の大曲は、チェンバロやヴァイオリンの音色が優雅に響きわたる、
バンドの最高傑作。ひたすら静謐感をただよわせていた「ミサ・ニ短調」、やや散漫な印象だった「サランボ」に比べ
本作では、このバンドのロマン主義が、強固に結実したというべき幻想美に溢れていて、
ワーグナをこよなく愛したというルートヴィヒ王の、クラシカルな美意識が、そのままメロディとなって
ちりばめられたように感じられる。ドラムレスのサウンドであるが、決して退屈にはならない。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 優美度・・9 総合・・8
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HELDON 「Stand By」
フランスのプログレバンド、エルドンの1979年作
7作目にしてラスト作は、のっけから22分の大曲から始まる。ヘヴィなドラムとスペイシーなシンセ、
そしてピナスによるクリムゾンライクなギターサウンドで、これまでになくドラマティックなスケール感とともに、
独自のエレクトロなアヴァンプログレを展開する。Klaus SchulzeTangerine Dreamを思わせる
シーケンサー・ロックとしての浮遊感と、フリーキーなギターフレーズが延々と続く即興的なセンスが融合した
このバンドの個性がスタイリッシュに凝縮した作風である。ラストのタイトル曲は、バンドアンサンブルを全面に出し、、
重厚なベースにロバート・フリップばりのギターワークを乗せた、まさにKING CRIMSON的なサウンドを聴かせる。
プログレファン、クリムゾンファンを喜ばせるこの1曲の存在が、一般向けには本作を最高作に押し上げているともいえる。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 エレクトロでクリムゾン度・・8 総合・・8
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Emmanuel Booz「Dans Quel Etat J'erre」
フランスのシンガー、エマニュエル・ブーズの1979年作
4作目である本作は、3つの大曲からなるもっともプログレッシブな大傑作。
ムーグシンセが鳴り響き、スペイシーでサイケな浮遊感と屈折した展開は
エキセントリックなヴォーカルともに非常に濃密かつ異様な迫力をもって迫ってくる。
ヴァイオリンが響きわたるクラシカルな大仰さを、宇宙的な壮大さでサイケに包み込んだというべきか、
この圧倒される感じというのは、方向性は異なるがアルテミエフの名作にも通じるかもしれない。
振り幅の大きさ、劇的なパワーを詰め込みながら、奔放な優雅さも失っていない。すごい作品です。
ドラマティック度・・8 怪しげ度・・9 シアトリカル度・・8 総合・・8.5
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Alan Stiveil「Symphonie Celtique」
フランスのトラッドミュージシャン、アラン・スティーベルの1979年作
ケルティックハープの奏者であり作曲家である彼の代表作というべき作品で、
ハープをはじめフルート、バグパイプ、ギター、マンドリン、ヴァイオリン、オーボエ、サックス、パーカッション、
それにシンセといった、20名以上の演奏者と、男女ヴォーカル、コーラス隊も参加した壮大なアルバムだ。
3つのパートに分かれた組曲的な構成で、アコースティカルな美しさと土着性、そこに多くの楽器が絡み、
ときにしっとりと美しく、ときに雄大な、まるで伝説を語るように、幻想的なサウンドを描き出している。
シンセやピアノの味付けなどによるシンフォニックな壮麗さと、ケルティックな神秘性が同居していて
フランス語によるアランの歌声も味わいがある。タイトル通り、シンフォニックなケルティックの傑作。
シンフォニック度・・8 ケルティック度・・8 雄大度・・10 総合・・8.5
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ASIA MINOR 「Between Flesh and Divine」
フランスのプログレバンド、アジア・ミノールの2nd。1980年作
本作ではベース&シンセが加入して四人編成となり、一聴してアンサンブルがさらに強固になっている。
テクニカルなクールさが際立ちながら、美しいフルートが鳴り響く、CAMELばりの叙情は健在。
シンセによるシンフォニックなテイストも増し、アレンジには静と動のダイナミズムが強まっていて、
緊張感を含んだ心地よい叙情美が素晴らしい。随所に覗かせる中近東的なエキゾシズムも
個性的な味わいになっている。80年代初頭のシンフォ系プログレとしては、名作といえる作品だろう。
メロディアス度・・9 プログレ度・・8 クール度・・9 総合・・8.5
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TERPANDRE
フランスのプログレバンド、テルパンドルの1980年作
二人の鍵盤奏者にヴァイオリンを含む6人編成で、ジャズロック的でもある軽快なリズムに
シンセやピアノが重なり、そこに艶やかなヴァイオリンが加わると、じつに優雅なサウンドになる。
「叙情と技巧が鳴り渡る時」という日本盤タイトル通り、変拍子を含んだ軽やかなアンサンブルと、
メロトロンを含むメロディアスな叙情が合わさった、とても優美なシンフォニックロックである。
しっとりと聴かせる小曲や、クラシカルな優しさにあふれた13分の大曲など、アルバムとしての構成も見事で、
80年代初頭の作品としては世界的に見てもレベルの高い逸品である。本作のみを残して消えるには惜しいバンドであった。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 優美度・・9 総合・・8
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WURTEMBERG「Rock Fantasia Opus 9」
フランスのトラッドロックバンド、ウルタンベールの1980年作
フランスのトラッド系プログレというと、GWENDALなどが思い浮かぶが、
このバンドの特徴は、ジャケにもあるように古楽ハープのプサルテリオンの導入で、
その雅な音色には中世的な(それでいて日本の琴のような)なんともいえぬ趣がある。
全体的にアコースティックな質感ながら、ときにロック的なアンサンブルもかいま見え、
たおやかなピアノやフルートも美しく、格調高く典雅な気分にひたれる。
ラスト2曲はそれぞれバッハとベートベンをモチーフにしたクラシカルなシンフォ曲でこれも白眉。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 古楽トラッ度・・8 総合・・8
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STEP AHEAD
フランスのプログレバンド、ステップ・アヘッドの1982年作
美しいピアノの旋律から、曲が始まると軽快なリズムとともにキャッチーなシンフォニックロックが広がってゆく。
よくYesタイプとも言われるように、英語によるハイトーンの繊細なヴォーカルとともに、
あくまでメロディアスで叙情的な聴き心地で構築された、優雅なサウンドが楽しめる。
随所にメロウなギターの旋律もセンスがよく、美麗なシンセとともにアレンジのセンスも素晴らしい。
1枚のみで消えるには惜しいバンドだったが、本作は80年代のシンフォとしてはフランス屈指の一枚だろう。
メロディアス度・・8 プログレ度・・8 優雅度・・9 総合・・8
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JEAN PASCAL BOFFO「Carillons」
フランスのギタリスト、ジャン・パスカル・ボフォの1987年作
このファンタジックなジャケからして惹かれるものがあるが、サウンドの方も素晴らしい。
まるで、Steve Hackettの叙情性とGANDALFの幻想性を合わせたような傑作である。
メロウなギターを中心にしたインストサウンドは、爽やかにしてファンタジックな聴き心地で、
どこを切っても優しい叙情にあふれている。メロディ派のリスナーは必聴ですな。
1stの素朴さも捨てがたいが、完成度の点では、やはり本作が彼の最高傑作だろう。
メロディック度・・9 プログレ度・・7 ファンタジック度・・9 総合・・8.5
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MINIMUM VITAL「Ssrabandes」
フランスのプログレバンド、ミニマム・ヴァイタルの1990年作
メロディックなギターの旋律に、美しいシンセによる味付けにフルートの音色が加わり、
より洗練された叙情的なインストプログレを聴かせる傑作。のちの作風へとつながる
アコースティカルな優雅さも随所に垣間見せるなど、演奏力の高さも光っていて、
いわば80年代のからのポンプ勢とは一線を画す、クールな構築センスを持っている。
本作を持って、TIEMKOと並び、90年代フランスのネオプログレを代表するバンドとなった。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 スタイリッシュ度・・9 総合・・8
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TIEMKO「PARADE」
フランスのプログレバンド、ティアンコの1992年作
ややとっつきが悪かった前作に比べて、3作目となる本作はいくぶんメロディアスな聴き心地になった。
とはいっても、変拍子まくりのクリムゾン的な屈折感と、先の読めないミステリアスな展開は
このバンドの知的なアレンジセンスを感じさせ、ギターとシンセが対位法的に絡んだりと
チェンバーロック的でもあるクールなサウンドがじつに見事。シンセのきらびやかなアレンジが、
偏屈な作風に優雅な聴き心地をもたらしていて、ヘンテコなシンフォ系としても楽しめる。
とぼけた味わいはペッカのようで、奇妙な屈折感はイエッダ・ウルファを思わせる。傑作です。
メロディック度・・7 プログレ度・・9 アレンジセンス・・9 総合・・8.5
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ARRAKEEN「MOSAIQUE」
フランスのシンフォニックロック、アラキーンの2nd。1992年作
清涼感のある女性ヴォーカルの歌声が実に美しいシンフォニックロック作。
メロウなフレーズを奏でるギターは、Prog Metalファンには名の知れたシリル・エイチャード
ギターの音色にはメタル色もあるのでプログレハードとしても案外楽しめます。
それにしても、この女性Voはとても私好みの声質で、透明感のある綺麗な歌声にうっとりです。
美しいフランス語の響きに、メタリックなギターフレーズが印象的な、90年代フランス屈指の傑作。
シンフォニック度・・8 けっこうメタリック度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8
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ATRIA 「Boulevard of Broken Dreams」
フランスのプログレバンド、アトリアの1992年作
きらびやかなシンセワークにメロディックなギターとハイトーンのヴォーカルを乗せて、
PALLASあたりにも通じるキャッチーで爽快なプログレハードサウンドを聴かせる。
90年代のシンフォニックロックバンドらしいロマンティシズムとポンプロックルーツのメロディアス性で
8分、9分という大曲をじっくりと構築する。フランスというよりは英国のバンドに近い雰囲気で、
泣きの叙情美とダイナミックな展開力も含めて、正統派のシンフォプログレとしてはクオリティも高い部類だろう。
シアトリカルでドラマティックな幻想性も魅力で、濃密でありながら抜けの良いサウンドが楽しめる力作だ。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 正統派シンフォ度・・8 総合・・8
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Halloween 「Le Festin」
フランスのプログレバンド、ハロウィーンの2001年作
フランス語による女性ヴォーカルの歌声に、艶やかなヴァイオリンの音色が絡み、
ミステリアスな世界観を描いてゆく、いかにもフレンチらしい優雅な空気感の中に、
芸術的な狂気をはらんだ演劇性が垣間見える。かつてのAngeの過剰なまでのドラマ性を
よりアーティスティックに構築したというような、匂い立つようなヨーロピアンな美意識に圧倒される。
一方では、パーカッションが鳴り響く中近東的な雰囲気の曲もあったり、バンドとして芸術への探求心と
拡散志向がかろうじて保たれているという緊張も感じ取れる。本作を最後にバンドは沈黙。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 フレンチ度・・9 総合・・8
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PRIAM 「Diffraction」
フランスのプログレバンド、プリアムの2001年作
オールインストの軽妙な好作だった前作から4年ぶりとなる2作目で、
モダンなシンセアレンジとメロディックなフレージングのギターを乗せた
プログレフュージョン風味もあるテクニカルなアンサンブルを聴かせる。
オールインストながら、10分を超える大曲も多く、サツクスが加わったジャズロック風味や、
どこかトボけた味わいのセンスとミステリアスな雰囲気も加わって構築される、なかなか面白いサウンドだ。
同郷のNeBeLNeSTをジャズロック寄りにしたという感じもある。フランスのケンソーというべき傑作。
メロディック度・・7 プログレ度・・8 テクニカル度・・8 総合・・8
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eclat「Le Cri de la Terre」
フランスのプログレバンド、エクラの2002作
テクニカルなアンサンブルと、巧みなシンセワークによるシンフォニック要素が合わさり
知的な混沌ともいうべき、浮遊感のあるインストプログレは、本作で完成の域に到達した。
一筋縄ではいかないひねくれた質感はいかにもフランス的で、大人の叙情的を聴かせる
メロディアスなギターワークと軽やかなフュージョン・ジャズロック的な聴き安さの中に、
不思議なスケール感をかもしだしている。クラシカルなシンセの入れかたもさりげなく見事だ。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・8 軽やかひねくれ度・・8 総合・・8
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XANG「DESTINY OF A DREAM」
フランスのシンフォニックロックバンド、クサングの1999年作
G、B、Key、Drの四人組で、全編インスト作品(なのに何故かブックレットには歌詞が載っている)。
サウンドは随所にメタル色もある軽やか、メロディアスなシンフォニックロック作品。
叙情的なギターフレーズに、バックではいかにもシンフォ的なキーボード、時にドラムがツーバスだったり、
ギターがメタリックなことをやり始めたりと、シンフォ好きのプログレメタルリスナーにもお薦めできる。
クオリティは非常に高く、ギタリストのセンスの良さも非常に魅力的。ハードシンフォの傑作だ。、
メロディアス度・・8 シンフォニック度・・8 プログレメタル度・・7 総合・・8
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CHANCE「ESCAPE TO HORIZON」
フランスのシンフォニックロックト、チャンスの2nd。2000年作
KEY、B、Drをこなす、ローラン・シモネッティ氏のソロユニットで、7年ぶりとなる2作目。
広がりのあるシンセサウンドをメインにした、ゆったりとしたシンフォニックサウンドは健在で
GANDALFあたりにも通じる作りだが、こちらの方がややマニア受けするシンフォプログレ寄り。
ゲストの奏でるメロウなギターも、ときに華麗に弾きまくるキーボードに乗って曲に彩りを添えている。
全編インストであるが、シンフォパートの後にはゆるやかな静寂パートも多く、展開にメリハリが効いていて
なかなか楽しめる。ちなみに四人のゲストギタリストのうちの一人はロイネ・ストルトである。
メロディアス度・・8 シンフォニック度・・8 流麗度・・8 総合・・8
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DOUZE (DOUZE) ALFONSO「Claude Monet, Vol.1 1883-1889」
フランスのシンフォニックロックバンド、ドゥーゾ・アルフォンソの2001年作
印象派を代表する画家、クロード・モネの生涯をテーマにしたコンセプト作。
ゆるやかなアコーディオンとフランス語の語りで始まる、ロマンティックな美しさに包まれた作品。
クラシカルなピアノ、12弦ギターのアコースティックな響き、ゲストも含めた男女ヴォーカルの歌声、
どれもがしっとりと優雅な雰囲気で、フランスからしか出て来ないやわらかなサウンドを描いている。
ハープやフルートも美しい。エスプリの効いた洒落た味わいが、繊細なシンフォニックと絶妙に融合された傑作だ。
モネの絵画をたっぷりとあしらったブックレットも素晴らしい。2005年には続編となるアルバムを出している
シンフォニック度・・8 フランス度・・9 しっとり繊細度・・9 総合・・8.5
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SKEEM
フランスのシンフォニックロック、スキームの2001年作
まったく知らないバンドだったのだが、聴いてみてこれはなかなかのシンフォニックぶり。
美しいシンセワークを中心に、メロウなフレーズを奏でるギターもいい感じで、
曲は7〜9分台で、比較的ゆったりとした展開で聴かせるシンフォサウンドだ。
同郷のバンドでいうとCHANCEあたりに近い感じだろうか、じつに耳心地がいい。
ヴォーカルが英語なのであまりフランス臭さはない。ジャケに比べて内容は高品質。
シンフォニック度・・8 ゆったり度・・8 フランス度・・7 総合・・8
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RAISON DE PLUS「ICI EST AILLEURS」
フランスのシンフォニックバンド、レイソン・デ・プラの2nd。2002年作
1sはクサメロのシンフォニック作品だったが、今作も同傾向のリリカル系シンフォニック全開の逸品だ。
レトロなツインキーボードの音色は80年代を思わせ、メロウなギターもつぼを押さえてセンスが良い。
曲には適度な疾走感と展開のメリハリがあり、盛り上がりではあくまでメロディアス&シンフォニック。
引きの叙情パートではやさしいフルートの音色でうっとりとなる。フランス語によるヴォーカルの力弱さも、
むしろこの繊細でソフトなシンフォサウンドにはマッチしている。やっぱり実によい感じの好作です。
シンフォニック度・・9 リリカル度・・9 フレンチ度・・9 総合・・8
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TAAL「SKYMIND」
フランスのシンフォニック・チェンバーロック、タールの2nd。2002作
1stの方も強引なメタルギターに管楽器をフィーチャーした、エセ壮大系の無茶なサウンドだったが、
この2ndにして、さらに楽曲のアレンジの細やかさが増し、サウンドのクオリティが高まった。
相変わらずのこけおどしメタルサウンドと管楽器、ストリングスの合体は素晴らしく、
時折聴かせるしっとり(?)とした叙情クラシカルパートも本物に聴こえるし、
おちゃらけたメロディや無茶な展開も、馬鹿にできずに、むしろシリアスに聴き通せる。
「本物」なのだ。本物の音で壮大な「悪ノリ」をしているのがこのバンドの魅力なのだ。
結果、まったくもって、シンフォニックでありながら、手の込んだいたずら心満載の
大仰なシンフォニーロックに聴こえてしまう。びっくりでニヤリ。オペラチックな女性Vo曲もある。
シンフォニック度・・8 クラシカル度・・8 本気だから度・・10 総合・・8.5
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SAENS「PROPHET IN A STATISTICAL WORLD」
フランスのシンフォニックロックバンド、サエンスの3rd。2004年作
今作はSF的コンセプトなのか近未来的な雰囲気のキーボードワークに包まれ、メロウなギターフレーズと
シアトリカルな男性ヴォーカルで聴かせる、かつての英国シンフォニックロックの流れにあるサウンド。
ムーグシンセが鳴り響く古き良きフログレ感触に、ヴォーカルをメインにしたキャッチーな聴き心地もありつつ、
10分を超える大曲をゆるやかに構築してゆく。フランスなまりの英語がいくぶん野暮ったさを感じさせるものの
混声合唱などをが壮麗に盛り上げるスケール感もよろしく、73分のシンフォニック大作というべき内容である。
ボーナスDISCには1sからの再録等を収録した全3曲50分。こちらはもう少し分かりやすいハードシンフォ路線。
ドラマテイック度・・8 プログレ度・・8 壮大度・・9 総合・・8
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SENSITIVE TO LIGHTAlmost Human
フランスのシンフォニックロックバンド、センシティブ・トゥ・ライトの2006年作
SAENSのメンバーによるバンドで、ミステリアスで荘厳なイントロから始まるのは、
ハケットばりのメロウなギターに壮大なシンセワークの一大シンフォニックサウンド。
女性ヴォーカルの歌声に導かれながら、曲はあくまでメロディアスかつドラマティックに進行してゆく。
かつてのSAENSよりもサウンドにはダイナミズムが増していて、楽曲構成も自然になり
肩の力が抜けた分だけ、ひとつずつのメロディ、音の重ねに説得力が加味されている。
長い曲においても、しっとりとしたパートからの盛り上がりが聴き手に高揚感を与えてくれ、
繊細でありながら壮大さとダイナミックさを有した見事なシンフォニック作だ。
シンフォニック度・・9 ドラマティック度・・9 女性Vo度・・7 総合・・8
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NIL「novo sub sole」
フランスのヘヴィシンフォニックバンド、ニルの2nd。2005年作
前作も初期クリムゾン的なヘヴィシンフォサウンドでなかなか面白かったが、
今作はのっけから女性ヴォーカルの比重が増し、妖しいスキャットヴォイスに耳を奪われる。
ある種ゴシック風味も含んだ、たゆうたようなほの暗さと美しさが増していて、
サウンドを通してエキセントリックで芸術的な雰囲気が感じられる。
北欧のPAATOSあたりに通じる浮遊感と倦怠の魅力がある。なかなかの傑作です。
メロディアス度・・7 ほの暗シンフォ度・・9 女性Vo度・・7 総合・・8
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NeBeLNeST「ZePTO」
フランスのプログレバンド、ネベルネストの3rd。2006年作
重厚なジャズロック風味をミステリアスに聴かせる「マグマ+クリムゾン」というべき
壮大なサウンドは本作も健在。随所にメロディックなギターの旋律も含みながら、
うっすらとしたメロトロンの響きも美しく、うねりのあるベースとともに抜群のアンサンブルで構築する楽曲は、
インストでありつつも、張りつめた緊張感を漂わせていて実に素晴らしい。スペイシーなスケール感を
アヴァンギャルドかつフリーキーな表現力で描き出すセンスは見事。硬派なる傑作です。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 壮大度・・9 総合・・8
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Eye 2 Eye「After All...」
フランスのシンフォニックロックバンド、アイ・トゥ・アイの2nd。2008作
美しいピアノにシンセワーク、ギターの奏でるメロウなフレーズ、
10分台の曲をメインにした大作志向やロマンティックな雰囲気も含めて
かつてのPENDRAGONを思わせるような王道のシンフォニックロックである。
翳りある叙情はポーランドなどのバンドにも近いイメージであるが、
フランスにおける優雅なアンニュイさとも通じているのかもしれない。
メロディの良さという点でも近年のフランスシンフォではトップクラスだろう。
シンフォニック度・・8 優雅な翳り度・・8 総合・・8
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Demians「Mute」
フランスのミュージシャンNicolas Chapel氏の個人ユニット、デミアンズの2010年作
ほの暗い翳りを含んだポストロック風味のモダンプログレ作品で、Porcupine Tree的な叙情とともに、
キャッチーなヴォーカルメロディはRPWLなどにも通じるサウンド。前作よりもギターが前に出ていて、
オルタナ的な雰囲気がやや強まっていて、ロック的な躍動感とともに厚みのあるサウンドを描いている。
一方ではうっすらとしたシンセアレンジがもの悲しい繊細さをかもしだしていて、シンフォニックな味わいもある。
メロウ度・・8 プログレ度・・7 薄暗度・・8 総合・・8
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ECLIPSE SOL-AIR 「Schizophilia」
フランスのシンフォニックロック、エクリプス・ソル・エアーの2012年作
男女Voにシンセ、ヴァイオリン奏者を含んだ6人編成で、やわらかなフルートの音色にヴァイオリンが絡み、
男女ヴォーカルの歌声で聴かせる、しっとりとした優雅なサウンド。ヴォーカルは英語やフランス語、
ときにドイツ語も混じるのが独仏混成バンドらしい。いくぶんハードめのギターにオルガンの音色が合わさる
アグレッシブな部分もあって、楽曲事自体はそう長くはないものの、メリハリに富んだ聴き心地が楽しめる。
演劇的なドラマ性も含めて、濃密ながらも優雅な雰囲気と、ヨーロピアンな感性が詰まった力作に仕上がっている。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 優雅度・・8 総合・・8
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LAZULI 「Tant Que L'herbe Est Grasse」
フランスのプログレバンド、ラズリの2014年作
90年代から活動していたキャリアのあるバンドで、本作はおそらく5作目となる。
美麗なシンセアレンジにフランス語のヴォーカルを乗せ、エレクトロでモダンなアレンジに包まれた、
ポストプログレ寄りのサウンド。シンセの音も出せるという独自の弦楽器「Leode」奏者を含む編成も面白いが、
適度にハードなギターも加わって薄暗い叙情を描くところは、Porcupine Treeのフランス版というような感じもある。
一方では、オルガンが鳴り響くプログレ感触やキャッチーな抜けの良さも垣間見せ、メロウなギターフレーズを重ねた
シンフォニックロックとしての味わいもある。楽曲は長くても6分ほどと比較的コンパクトで、スリリングな展開はない分、
フランス語の優雅な味わいとともに、繊細や優しさに包まれた大人のモダンプログレとして楽しめる。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 繊細な叙情度・・8 総合・・8
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Riviere「Heal」
フランスのプログレ・ポストロック、リヴィエーレの2016年作
うっすらとしたシンセアレンジに、存在感あるベースと適度にハードなギターを乗せて、
モダンな硬質感と繊細な叙情性を同居させ、ProgMetal的な感触も含んだサウンド。
マイルドなヴォーカルを乗せたエモーショナルな聴き心地とやわらかな浮遊感も含めて、
ドイツのSYLVANをメタル寄りにしたという雰囲気もあり、プログレなエモロックとしても楽しめる。
2本のギターが複雑に絡む厚みのあるアレンジや、リズム面でのテクニカルなセンスにも
知的な構築性を感じさせる。スタイリッシュなプログレ風モダンロックの好作品。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 モダン度・・8 総合・・8
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Qantum 「Le Passage」
フランスのプログレバンド、クァンタムの2016年作
美麗なシンセにメロウなギターが重なり、フランス語によるマイルドな歌声を乗せた、
ANGE影響下にあるシンフォニックロック。リズムチェンジによるドラマティックな展開力と、
シアトリカルな空気感に包まれた、いかにもフランスのバンドらしい優雅な聴き心地。
ヴォーカルの野暮ったさが好みを分けるかもしれないが、クラシカルなシンセワークに、
ときにフルートの音色も加わったやわらかな叙情は耳に優しく、プログレらしい変則リズムも含め
どことなく90年代の香りを残したローカルな味わいもまた魅力。ANGEVersaillesなど、
フレンチ・シンフォの濃密な優雅さが好きな方にはお薦めの逸品です。
ドラマティック度・・8 フレンチ度・・9 優雅度・・9 総合・・8
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◆女性ヴォーカル&トラッド系

GLAZ「AR GEST」
フランスのケルトロックバンド、グラッツの1996年作
本作は2作目で、鳴り響くヴァイオリンの音色がケルティックな雰囲気をかもしだしつつ、
キュートな女性ヴォーカルの歌声も入って、メロディは実にキャッチーでポップ。
シンセやギターによるロック的なアレンジと適度なトラッド風味が絶妙に融合して、
聴きやすく爽快なサウンドを作り出している。ときにパイプなども鳴りながら、適度な土着性と
ファンタジックな世界観で聴かせる。普通に女性声のメロディックロックとしても楽しめる作品だ。
メロディアス度・・8 ケルティック度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8
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Rajna 「Hidden Temple」
フランスのゴシック・アンビエント、ライナの2004年作
本作はおそらく5作目で、ジャケのイメージからは古代エジプトをモチーフにしているのだろう。
シタールの響きにタブラのリズム、ウィスパーな女性声による、神秘的なエスノゴシックである。
うっすらとしたシンセをバックに、ダルシマーやブズーキ、マンドリンなどの豊富な古楽器の組み合わせで、
アコースティック部分での音の厚みがサウンドの説得力となっている。ダークな感触は薄めで、
むしろ幻想的な静謐感と美しい女性ヴォーカルにうっとりとなる。エジプトの香りを運ぶような傑作だ。
ドラマティック度・・7 エスニック度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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Elise Caron 「Eurydice Bis」
フランスの女性シンガー、イリース・キャノンの2006年作
やわらかなピアノに、フランス語による美しい女性ヴォーカルを乗せて、しっとりと優雅に聴かせるサウンド。
Michael Riesslerのアルバムにも参加している彼女だけあって、語りを含んだエキセントリックな表現力は
ダグマー・クラウゼにも通じるような魅力があって、クラリネットも加わるとチェンバーロック的な味わいになる。
バックはピアノがメインなので、音数的にはシンプルなのだが、変拍子入りのスリリングな部分などは、
プログレファンにも十分楽しめるだろう。繊細さの中にもフランスらしい優雅な毒気を覗かせる、
クラシック、ジャズ、シャンソンの要素も含んだ、アーティスティックな女性ヴォーカル作品である。
クラシカル度・・8 フレンチ度・・9 女性Vo度・・9 総合・・8
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Cecile Corbel「Songbook Vol.3」
フランス、ブルターニュ出身のハープ奏者/シンガー、セシル・コルベルの2008年作
フランス語によるキュートな歌声と、美しいハープの音色、ヴァイオリンやチェロ、フルートなども加わった
繊細で優雅なケルティックサウンドを聴かせる。アコースティックが主体ながら、
どことなくコンテンポラリーな雰囲気がただようのは、若手アーティストのセンスだろう。
しっとりとした幻想的な空気感は、中世やケルトのロマンを現在に蘇らせたようだ。
曲によってはエレキギターやドラムも加わったりと、トラッドにとらわれないアレンジも楽しい。
アコースティック度・・8 ケルティック度・・8 優雅で繊細度・・9 総合・・8
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Maria Laura Baccarini 「Furrow」
フランスの女性シンガー、マリア・ローラ・バカリーニの2011年作
美しい女性ヴォーカルに、ヴァイオリン、クラリネットの音色が絡み、ジャズ的な優雅さと
ギターも入ったロック色が合わさって、適度にポップな感触もあるというサウンド。
ときに唐突なリズムチェンジを含んだエキセントリックなアレンジセンスも面白く、
キュートで伸びやかな歌声は表現力豊かでなかなか魅力的だ。SLAPP HAPPY
KATZEN KAPELLなどにも通じるような軽妙なチェンバー・ポップ的な味わいもあって、
7〜8分という長めの楽曲を構築する知的なセンスは、プログレファンにも十分楽しめる。
プログレ度・・7 優雅度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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Delusion Squared 「The Final Delusion」
フランスの女性Voシンフォニックロック、デリュージョン・スカーレッドの2014年作
前作はPaatos+ALL ABOUT EVEというような好作だったが、3作目となる本作は
美麗なシンセアレンジと適度にハードなギターとともに、モダンな感触が強まっているが
ロレイン嬢の美しい歌声は楽曲にキュートな華やかさとアンニュイな香りを加えている。
いくぶん翳りをおびた叙情とともに、曲によってはゴシックロック的にも楽しめるかもしれない。
プログレ的な派手さはさほどないが、ゆったりと楽しめる女性声メロウ・ロックの好作品です。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8
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