ジャケットアートに見る西洋絵画



芸術としての音楽を語るとき、ジャケットアートの美しさは決して切り離せない。
とくに歴史的な重みを感じさせる絵画などを用いたアートワークには、聴き手のイメージを喚起させるだけでなく、
作品としての崇高さや荘厳さを高めるという役割も大きい。思わずジャケ買いしたくなったりするでしょう。
ここでは、メタルとプログレのアルバムジャケットに美しい西洋絵画をあしらった作品を紹介します。



MELLOW CANDLE
「THE VIRGIN PROPHET」
英国三大フォークバンドの1つ、メロウキャンドルのアウトテイクス。
スパイロジャイラ、チューダーロッジと並び称される彼らですが、私はスパイロよりこっちが好きです。
まだ聴いたことのない方はぜひ「抱擁の歌」を聴いてください。このアルバムですが、
その「抱擁の歌」のデモバージョンといってよい内容です。ウォーターハウスのジャケが印象的ですが、
サウンドの方は、完成前の素朴なアレンジで、聴き比べるとなかなか味が合ってこちらもよいです。
フォークでありながら実に当たりのよいメロディで、ようするにイモくさくなく、曲としてのアレンジも絶妙。
女性Voものとしても素晴らしく、ルネッサンスあたりのリスナーが聴いても違和感なく楽しめます。
メロディアス度・・8 フォーク度・・9 楽曲度・・8 総合・・8
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セイレーン  The Siren 1900
Jhon William Waterhouse

Angels of Venice「Music for Harp,Flute and Cello」
アメリカのケルティックバンド、エンジェルス・オブ・ヴェニスの1st。
チェロ、ハープ、フルートという女性の三人組で、しっとりとしたハープの音色に
フルートが合わさり、美麗かつ繊細に聴かせるアコースティカルサウンド。
クラシックやトラッド曲のメロディを取り入れながらそれを分かりやすいアレンジで
優雅に演奏するスタイルはじつに耳に優しく、うっとりとするほど心地よい。
オールインストであるが幻想美に溢れた作品だ。 ジャケはボッティチェッリの「プリマヴェーラ」の三美神。
アコースティカル度・・10 しっとり優雅度・・10 幻想度・・9
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THE JOHN RENBOURN GROUPA Maid in Bedlam
イギリスの古楽フォークバンド、ジョン・レンボーン・グループの1st。1977作
「ベドラムの乙女」というタイトルと、ロセッティの絵画を使った美しいジャケが印象的ですが、
サウンドの方は、アコースティックギターにフルート、リコーダーというシンプルな音数の上に
二人の女性Voの歌声が優しく響きわたる、じつに典雅な雰囲気で聴かせてくれます。
パーカッシブなタブラの響きは、伝統的なトラッドメロディをどこか異国的で、
古き良き空気とともに運んできてくれるようだ。ジョン・レンボーンの作品の中でも傑作とされる一枚。
メロディアス度・・8 古楽度・・8 女性Vo度・・7 総合・・7.5
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MYCHAEL DANNA & JEFF DANNA「A CELTIC TALE 〜THE LEGEND OF DEIRDRE」
カナダの作曲家、マイケル・ダンナジェフ・ダンナの兄弟による、1996作
ロセッティの美しいジャケにつられて購入。アイルランドの神話「ディルドーレの伝説」をモチーフにしたアルバムで、
てっきり女性Vo系かと思ったがヴォーカル入りの曲は1曲のみであとはオールインスト作品。
ダンナ兄弟自身のピアノ、キーボード、ギターにフルートやトランペット、ハープ、フィドル、チェロ
といった多彩な楽器群を加えてのサウンドは、映画サントラさながらに雄大にして叙情的、
ケルトミュージックの壮大版という感じで、悲恋の乙女ディルドーレの物語をつづってゆく。
シンフォニック度・・8 ケルティック度・・8 雄大度・・9 総合・・8
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Loreena McKennitt「To Drive the Cold Winter Away」
カナダのケルト系ヴォーカリスト、ロリーナ・マッケニットの2nd。1987作
アイルランド、スコットランドなどのトラッド曲をメインにした作品で、
バックの演奏はハープにアコーディオンなど音数が少ないシンプルなものだが、
静けさの中に響く彼女の歌声は、聖歌のように崇高で神秘的な聖夜を歌いあげる。
リチャード・ダッドによるバッコス信女とサテュロスの描かれたジャケはインパクト大だが、
実際の音楽は素朴で、ヨーロピアンな薄暗さと静かな神への祈りが、音を通して浮かび上がってくるようだ。
ケルティック度・・7 神秘的度・・9 女性Vo度・・9 総合・・8
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バッカス祭の情景 Bacchanalian Scene  1862
Richard Dadd 

GERARD「Empty Lie,Empty Dream/虚実の城」
日本のプログレバンド、ジェラルドの2nd。1985作
ミレーの絵画をあしらったジャケも美しい本作は、1st以上にインストパートのアンサンブルに力を入れた作風で、
テクニカルさに磨きがかかった楽曲を聴かせてくれる。永川氏のシンセワークも前作以上に音の厚みを増し、
ギターとの絡みで美麗なメロディを響かせる。ロマンにあふれた世界観が日本のプログレバンドにフィットすることを
証明するようなアルバムだ。今作の後、永川氏はハードロックバンドのEarthshakerに参加、その名をいっそう広めてゆく。
メロディアス度・・8 プログレ度・・8 キーボー度・・8 総合・・8
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オフィーリア Ophelia 1851-52
John Everett Millais

GERARD「Irony of Fate」
日本のプログレバンド、ジェラルドの3rd。1991作
ウォーターハウスの絵画が美しい本作では、ベースに永井敏巳が加入し演奏陣の布陣はより強化され、
同時にまた、歌やメロディにおけるキャッチーな明快さも併せ持った傑作となった。
タイトル曲でもある1曲目は、シンセの美しさとメロウなギターの絡みが絶品の流麗なインスト曲。
矢継ぎ早に続く“Last Night Forever”の壮麗さとメロディアスさには堂々たるメジャー感すら漂っているし、
ドラマティックな叙情美のバラード“Prelude”はライブでも定番の名曲だ。吹っ切れたような爽快さと
アーティストとしての積み重ねてきた自信のようなものが、サウンド全体から力強く感じられる。
メロディアス度・・9 プログレ度・・8 壮麗度・・9 総合・・8.5
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シャーロットの乙女  The Lady of Shallot  1888
Jhon William Waterhous

GERARD「The Pendulum」
日本のプログレバンド、ジェラルドの1996年作
ギターレスのキーボードトリオにカナダ人シンガーのロビン・スーシーを加えた編成で再始動しての1作目。
過去曲のリメイクである“Empty lie,Enpty Dream”や“Orpheus”などを含んだ楽曲は
きらびやかなシンセワークとテクニカルなリズムと、これまで持っていたロマン主義的な世界観に加え、
より攻撃的にたたみかける新たなジェラルド像を確立。タイトル曲である10分超の大曲も圧巻だ。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 キーボー度・・9 総合・・8
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オルフェウスの首を運ぶトラキアの娘 Jeune fille thrace portrait la tete d'Orphee 1865
Gustave Moreau

GERARD 「PANDORA'S BOX」
日本のプログレバンド、ジェラルドの1997年作
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オデュッセウスとセイレーン  Ulysses and the Sirens 1891
Jhon William Waterhous

GERARD「SIGHS OF THE WATER」
日本が誇るキーボード・プログレバンド、ジェラルドの2002作。
キーボードトリオとしての新生ジェラルドとなっての4枚目となる。前作から完全に楽曲をインストメインにしぼり、
今回はよりヨーロピアンな情緒を強めたという印象で、とくに静のパートがいつにも増して凛々しい。
もちろんELPやBANCOに通じるクラシカルさとアグレッシブさは健在で、
ギターレスを補う様々な音色のベースの活躍や手数の多いドラムが一体となり、
緊迫感ある演奏パートは、思わず聴いていて「これだよ、コレ」とうなずいてしまう。
メロディアス度・・7 シンフォニック度・・8 演奏・・8 総合・・8
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ヒュラスとニンフたち  Hylas and the Nymphs 1896
Jhon William Waterhous

GERARDMeridian
日本のプログレバンド、ジェラルドの1998年作
本作は過去の楽曲を新編成で再アレンジ、再録音したもので、
初期GERARDのメロディアスなサウンドがたっぷり楽しめるベスト盤でもある。
テクニカルなリズムの上を縦横無尽に駆け巡る永川氏のシンセワークを中心に、
サウンドはきらびやかな爽快感と、これぞキーボードプログレという勢いに満ちている。
これからGERARDを聴くという方や、初期のアルバムしか知らないという方は必携だ。
シンフォニック度・・8 テクニカル度・・9 キーボー度・・9 総合・・8.5
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Night with her Train of Stars and her Great Gift of Sleep 1912
Edward Robert Hughes

夢幻
「レダと白鳥」
日本のシンフォニックロック、むげんの1986年作
ギター&シンセの林克彦を中心にしたバンドで、モローのジャケのように幻想的なシンフォニックロック。
英国のENIDを思わせるような、優雅で繊細なロマンティシズムに満ちたサウンドで、
メロトロンが響き、フルートやアコースティックギターも含んだ叙情美が素晴らしい。
モラトリアムなイメージの甘いヴォーカルも、この世界観によくマッチしている。
ドラムとベースは当時NOVELAで活躍していた、西田竜一と笹井りゅうじが参加、
ギターにはページェントの中嶋一晃、ヴァイオリンはOUTER LIMITSの川口貴、
フルートにMr.SIRIUSの宮武和広という、豪華なゲストたちが幻想の美を描くのに一役買っている。
シンフォニック度・・8 幻想度・・9 繊細度・・9 総合・・8
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レダと白鳥
Leda And The Swan 1875
Gustave Moreau

ALHAMBRA「FADISTA」
日本のシンフォニック・プログレメタルバンド、アルハンブラの2nd。2007作
2年ぶりとなる新作は、ギュスターヴ・モローの絵画をあしらった幻想的なジャケに包まれ、
そのサウンドはシンフォニックな美しさと同時に、いっそうメタリックな勢いが増している。
前作からB、Gが交代しており、一聴したところ新ギタリストはよりメタル的な匂いのする
テクニカルなフレーズを奏でており、バンドの核であるYUHKI氏の華麗なシンセワークと、
長倉氏の力強いドラミングとともに、これまで同様に質の高い演奏を聴かせてくれる。
一方で、JUNKO嬢の歌声はどこか懐かしく歌謡色のある歌詞とメロディでサウンドを彩り、
テクニカルなインスト曲なども含めて、ProgMetal系のリスナーにもアピールする力作だ。
メロディアス度・・8 シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 総合・・8
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岩の上のサッフォー Sapho sur le rocher 1872
Gustave Moreau

FINISTERRE PROJECT「HOSTSONATEN」
イタリアのシンフォニックロックバンド、フィニステッレ・プロジェクトの1st。1996作
FINISTERREの方ははジャズロック色などの多様さもあったバンドだか、
ジャケットのギュスターブ・モローの絵画が示す通り、今作はヨーロピアンなほの暗い情緒をかもしだす
しっとり系のシンフォニックロックとなった。たおやかなフルート、ピアノ、メロトロンなどのレトロな感触は
メロウなギターフレーズとも相まって、耳にしっとりとやさしく響く。ただ古めかしいだけでなく、
メロデイそのものに魅力があるので、41分の組曲を含め、幻想的な叙情美を満喫できる作品となっている。
シンフォニック度・・8 テクニカル度・・3 たおやか情緒度・・9 総合・・8

VA/ 70's West Japanese Rock Scene
日本のプログレ・ハードロックバンドのオムニバスアルバム
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The Cave of the Storm Nymphs 1903
Sir Edward Poynter  

Deep Purple
ブリティッシュロックバンド、ディープ・パープルの1969年作
第一期メンバーによるラスト作で、日本盤では「III」のタイトルがつけられている。
ジョン・ロード主導のもとで、本作ではさらに全体が統一感のある気配に包まれていて、
いくぶん薄暗さのともなったアートロックが楽しめる。優雅なチェンバロの音色に、やわらかなオルガンの響き、
サイケやブルーズなどの質感も含みながら、しっかりとロックとしての躍動感と、売れセンを狙わない、
バンドとしての硬派なビジョンが伝わってくる。ラストの12分の大曲はクラシカルかつプログレ的な構築センスが見事。
ジャケは、ヒエロニムス・ボスの「快楽の園」の地獄の一部。
ドラマティック度・・8 アートロック度・・8 英国度・・8 総合・・8
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快楽の園 Tuin der lusten 1503〜1504
Hieronymus Bosch

Klaus Schulze「Babel」
ドイツのシンセ奏者、クラウス・シュルツェの1987年作
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バベルの搭 The Towar of Babel  1563
Pieter Bruegel

FLEET FOXES
アメリカのロックバンド、フリート・フォクシーズの2008作
牧歌的な叙情でゆるやかに聴かせるサウンドは、古き良き70年代の香りをもっている。
アコースティカルな風味のあるゆったりとしたフォークロック的な質感に、
やわらかなシンセやオルガンのアレンジ、ヴォーカルの歌声も心地よく響く。
70'sブリティッシュロック/フォークのファンなどにも楽しめる作品だろう。
叙情度・・8 ロック度・・7 ゆるやか度・・9 総合・・8
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ネーデルラントの諺 Netherlandish Proverbs 1559
Pieter Bruegel

MARTIRIA「Age of the Return」
イタリアのエピックメタルバンド、マーティリアの2nd。2005年作
なんと元WARLORDのRick Andersonがヴォーカルを務めるバンドで、
かつてのLordian Guardの中世的な世界観といくぶんB級っぽい80年代風味で
古き良きエピックメタルサウンドを聴かせてくれる。軽めの音質とヘタウマのヴォーカル
泣きのギターフレーズが合わさると、もう最高…というかマニア歓喜のマイナー臭さである。
シンセによる適度な音の厚みも、たまらないこけおどし感で、エセシンフォニック感がよろしい。
アコースティカルな叙情性を織り込んだりと、雰囲気ものとして楽しめるエピカルな好作品だ。
ドラマティック度・・8 エピック度・・8 マイナー臭度・・8 総合・・7.5
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聖ミカエルとドラゴン San Michele ed il Diavolo 1504-1505
Raffaello Santi

ANGEL WITCH
イギリスのハードロックバンド、エンジェル・ウィッチの1980年作
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The Fallen angels Entering Pandemonium 1841
John Martin

ANGEL WITCH「As Above, So Below
イギリス伝説のメタルバンド、エンジェル・ウィッチの2012年作
980年にデビュー作を発表、その後1986年までに3作を出すも、シーンからもすっかり忘れ去られた彼らが、
なんとここに25年ぶりとなる新作で帰って来た。オリジナルメンバーは、ギター&ヴォーカルのケヴィン・ヘイボーンのみだが、
サウンドの方はまさしく80年代初頭のNWOBHMを思わせるマイナーな香り漂うブリティッシュHM。
いくぶんダークで湿りけを含んだギターリフとキャッチーな聴き心地は、あの1stの続編というべき世界観で、
聴いていてにんまりである。ジャケのアートワークもかつてと同じジョン・マーティンの絵画を使うというこだわりよう。
オードなファンはもちろん、アナログ臭さのあるカルトなメタルバンドが好きという若いリスナーにもぜひ聴いて欲しい。
メロディアス度・・8 NWOBHM度・・9 エンジェルウィッチ度・・9 総合・・8
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CANDLEMASS
「Ancient Dreams」
スウェーデンのドゥームメタル、キャンドルマスの1989年作
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The Voyage of Life :Youth 1840
Thomas Cole

EXXPLORERA Recipe for Power」
アメリカのメタルバンド、エクスプローラーの1994年作
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The Course of Empire :Destruction 1836
Thomas Cole

ATLANTEAN KODEXGolden Bough
ドイツのエピック・ドゥームメタル、アトランティーン・コデックスの2010年作
ツインギターによるヘヴィなリフと、朗々としたヴォーカルで聴かせる、
CANDLEMASSを思わせるエピックな雰囲気を漂わせたドゥームメタル。
メロディアスなフレーズは正統派メタル寄りで、中世を思わせる世界観とともに
10分、15分という大曲も含んで、重厚でドラマティックな香りを漂わせる。
ドラマティック度・・8 ドゥーム度・・7 重厚度・・8 総合・・8
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Isle of the Dead 1883
Arnold Bocklin

AUTUMN TEARS「THE GARDEN OF CRYSTALLINE DREAMS」
アメリカの女性Voゴシックユニット、オータム・ティアーズの2nd。
"死せる子供たちに贈るの愛の詩"と題されたシリーズの二作目。バーン=ジョーンズのジャケも美しいが
母親と子供の異様な問答から幕を開け、シンセをバックにしっとりとした母性的な女性Voが歌い上げるサウンド。
メタル色は皆無。たゆたうような心地よい、癒し系の音楽に聞こえるかもしれないが、歌詞を読んだり、
曲をじっくり聴いていると、その辺の暗黒系ゴシックよりもかえって恐ろしくなってくる。
心の深遠に愛とともに同居する闇というか、美しい母性の裏に潜む悪魔をかいま見る心地というか、
音自体はシンセのみなので、へたをすると眠ってしまいそうなのだが。陰鬱な午睡のひとときに。
静謐度・・10 耽美度・・9 女性Vo度・・8 総合・・8
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AUTUMN TEARS「WINTER and the BROKEN ANGEL」
アメリカの女性Voゴシックバンド、オータム・ティアーズの3rd。2000作
2人のソプラノ女性Voとキーボードで作曲者兼男コーラスの3人組。本気系の中世風ゴシック世界を目指す
このバンド、西洋絵画を使ったジャケにしろインナーの文字や印刷にしろ世界観へのこだわりが徹底している。
母性的なソプラノVoの歌唱をメインにした曲は静謐さと美しさを備え、その背後にある暗闇を間接的に表現している。
歌詞をちらりと見ただけでも、そこにある陰鬱さ、寓話的な悲哀の色を見い出すことができる。
メタル色は皆無で、バックはほとんどピアノとKEYのみという、ELENDあたりにも通じる本気系のゴシック作品。
静謐度・・9 耽美度・・10 女性Vo度・・9 総合・・8

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聖エウラリア  St Eulalia 1885
Jhon William Waterhous

Bathory 「Blood Fire Death」
スウェーデンのブラック・スラッシュメタル、バソリーの1988年作
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Wild Hunt of Odin
1872
Peter Nicolai Arbo

Burzum「The Fallen」
ノルウェーのブラックメタル、バーズムの2011年作
2009年に出所したカウント・グリシュナックのシャバ復活2作目となる。
前作で聴かれたメロディックな路線を引き続き、より普遍的なメタル感触がともなってきている。
ノイジーなギターフレーズで激しく疾走する部分は、かつてのブラックメタル質感がちゃんとあるが、
より有機的なリフとフレーズが目立ってきていて、わめき声とともにノーマルヴォイスも使われたりと
プログレッシブ・ブラック的なモダンなアプローチへの意欲も随所に感じられる。いわばかつての寂寥感を卒業し、
楽曲、音楽としての表現手法が強まったことで、一般的にも聴き安い作品となっているように思う。
メロディアス度・・8 暴虐度・・6 暗黒度・・7 総合・・8
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エレジー Elegie (Elegy) 1899
William-Adolphe Bouguereau

BURZUMUmskiptar
ノルウェーのブラックメタル、バーズムの2012年作
カウント・グリシュナック出所後3作目となるアルバムで、毎年作品を作り続ける創作意欲は、
あるいは彼の人生において現在がもっとも充実している時なのかもしれない。
前作で聴かせたプログレッシブな構築美とメロディ志向を引き継ぎつつも
本作ではむしろ拡散志向の芸術センスが強まり、北欧らしい土着的なメロディをまじえた
もの悲しいギターフレーズと語りのような歌声を乗せて、ゆったりと聴かせるサウンドだ。
ノイジーなギターはいかにもブルズム節であるが、9分、10分という大曲も含めて、
全体的にメタル的な激しさよりも静謐感の強い作品である。
メロディック度・・8 暴虐度・・5 北欧叙情度・・8 総合・・8
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ノート Nott
Peter Nicolai Arbo

MORBID ANGEL「Blessed Are the Sick」
アメリカのデスメタルバンド、モービッド・エンジェルの2nd。1991作
ジャン・デルヴィルによるジャケットアートと、「病魔を崇めよ」のタイトルで知られる歴史的名作。
妖しくも得体のしれないノイジーなイントロに続き、重々しいギターリフとともにゆったりと始まり
ブレイクののちに激しくブラストが始まってゆく…ここはいつ聴いてもしびれるほど格好いい。
咆哮するデスヴォイスと、ジャケのイメージ通り、まるで地獄へ迷い込んだような世界観…
このおどろおどろしさは一度ハマったら快感になる。また、ただ激しいだけではなく、
テクニックのある演奏力と構築された楽曲、その展開力が音の説得力ともなっている。
ドラマティック度・・8 暴虐度・・8 暗黒度・・9 総合・・8.5
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The Treasures of Satan 1894
Jean Delville

OBSIDIAN GATE「COLOSSAL CHRISTHUNT」
ドイツのシンフォニックブラックメタルバンド、オブシディアンゲートの2nd。
このバンドの特徴はやりすぎなまでにシンフォニックなキーボードが美しいところ。
ゴージャス、メロディアスでセンスの良いシンセが、時に重厚に時に華麗に鳴りまくる。
ほぼ真性のブラックメタルサウンドだが、このシンセとの合体で凶悪度は中和され、
結果として非常に聴きやすいドラマティックブラックとなっている。
初期エンペラーをさらにメロディアスにするとこうなるという具合。これは傑作。
シンフォニック度・・9 暴虐度・・8 楽曲・・8 総合・・8.5
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指し降ろされた親指 Pollice Verso 1872
Jean-Leon Gerome

ORNETree of Life
フィンランドのプログレバンド、オルネの2011年作
オルガンやメロトロンが響く古き良き質感に、マイルドな男性ヴォーカルの歌声で
素朴な叙情を聴かせるサウンド。いくぶんゴシック的でもある耽美な世界観と
サックス、フルートの音色なども含んだアコースティカルな牧歌性もあって、
フォークロック的なゆるやかな聴き心地の中にはサイケな幻想性も感じさせる。
プログレというよりは牧歌的なレトロロックというべきか。のんびり楽しめます。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 ゆるやか叙情度・・9 総合・・7.5
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Eve Tempted 1887
John Roddam Spencer Stanhope


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