最近の女性ヴォーカルプログレ事情



近年にわかに増えてきている、女性声シンフォプログレの傑作を厳選いたします♪ by 緑川 とうせい


◆イギリス

RenaissanceGrandine Il Vento」
英国のクラシカルロック、ルネッサンスの2013年作
スタジオアルバムとしては、2000年作「 Tuscany」以来、13年ぶりとなる作品で、
アニー・ハズラムの変わらぬ美声とシンフォニックな美意識に彩られたアレンジで聴かせる、
これぞルネッサンスという優雅なサウンド。プログレ的な構築美が素晴らしい12分のタイトル曲をはじめ、
やわらかなピアノやオーケストラアレンジを含んだクラシカルな感触と雄大なスケール感を
涼やかな風で包み込んだというべき耳心地で、うっとりと楽しめる。往年のファンも必聴の傑作でしょう。
シンフォニック度・・8 優雅度・・9 アニーの歌声度・・9 総合・・8
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Mostly Autumn 「The Ghost Moon Orchestra」
イギリスのシンフォニックロックバンド、モストリー・オータム2012年作
1998年にデビュー、いまや英国シンフォニックを代表するバンドとなった彼ら。
10作目となる本作は、フロントヴォーカルがオリビア嬢に替わっての2作目である。
しっとりと美しい女性ヴォーカルの歌声と、美しいシンセアレンジによる叙情性、
これまで以上にスケール感とダイナミズムが増した楽曲は、壮麗にして重厚だ。
男性ヴォーカルメインの曲もあるが、フォーキーな素朴さと古き良きロックの質感を
同居させたアレンジはじつに巧みで、曲ごとの男女ヴォーカルの配置もよく考えられている。
前作も素晴らしかったが、今作もバンドの力量と経験を発揮した見事な傑作である。
シンフォニック度・・8 壮麗度・・9 女性Vo度・・8 総合・・8.5
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MAGENTA 「The Twenty Seven Club」
イギリスのシンフォニックロック、マジェンタの2013年作
2001年にデビューしてから、女性Voをフロントにしたキャッチーなプログレサウンドで人気を博し
いまや英国シンフォを代表するバンドのひとつとなった。スタジオ作品としては7作目となる本作は
27歳の若さで亡くなったミュージシャン達…ジム・モリソン、ジミ・ヘンドリックス、ジャニス・ジョプリン、
ブライアン・ジョーンズ、カート・コバーン、ロバート・ジョンソン…をコンセプトにしたという作品で、
各楽曲ごとにそれぞれのアーティストをモチーフにしたドラマティックなシンフォニックロックを描いている。
10分を超える大曲を中心に、メロディックなフックと、ときにしっとりとした翳りのある叙情も含ませながら、
メリハリのある展開力とアレンジセンスを見せつける。いっそう円熟味を増したバックの演奏に、
艶めいた大人の香りを感じさせるクリスティーナ嬢の歌声も、ぐっと表現力を増してきている。さすがの力作です。
メロディック度・・8 プログレ・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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Thieves Kitchen One for Sorrow Two Fo Joy」
イギリスのシンフォニックロックバンド、シーブス・キッチンの2013年作
ANGLAGARDのトーマス・ヨハンソンをシンセ奏者をメンバーに迎えての2作目で
メロウなギターにメロトロンがかぶさり、しっとりとした
女性ヴォーカルの歌声で聴かせる、
優美なシンフォニックロックは本作も同路線。随所に変拍子を取り入れたリズムとともに、
適度にテクニカルに、そしてゆるやかに大曲を構築する力量は、さすが中堅バンドというところ。
やわらかなピアノやフルートの音色も美しく、全体的にも優雅な聴き心地に包まれた好作品。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 しっとり叙情度・・9 総合・・8
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LANDMARQ 「Entertaining Angels」
イギリスのシンフォニックロックバンドランドマークの2012年作
スタジオアルバムとしてはじつに14年ぶりとなる作品で、バンドが健在であることが嬉しいが
トレイシー・ヒッチングのハスキーな歌声とともに、メロディックに聴かせるサウンドも不変。
美しいシンセワークと、適度にハードさも含んだギター、そして艶のあるコケティッシュな歌声で
ポンプロックのキャッチーな部分を継承する作風には、古くからのリスナーも嬉しいだろう。
12分、16分という後半の大曲もドラマティックに構築され、適度にモダンな感触も加わった力作。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8

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Solstice 「Spirit」
イギリスのプログレバンド、ソルスティスの2010年作
1997年の「Circles」以来、実に13年ぶりとなるアルバムで、
当然ながらメンバーも一部替わっているようだが、女性ヴォーカルの歌声に
ヴァイオリンが鳴り響く優雅なサウンドは、かつてのサウンドを継承している。
ゆったりとした牧歌性の中にも、さりげなく変拍子を盛り込む演奏センスはさすがで
トラッド的なメロディも含ませるなど、聴き心地の良さを保ちながら、プログレとしての緊張感も
随所に感じさせる。優雅な構築美の力作です。2009年のライブ映像を収録したDVD付き。
メロディアス度・・8 プログレ度・・8 女性Vo度・・7 総合・・8
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IONA 「Another Realm」
イギリスのケルティック・シンフォニックロックバンド、アイオナの2011年作
前作から5年ぶりとなる今作はCD2枚組の大作となった。しっとりとしたジョアンヌ・ホッグの歌声に
雄大なケルティックの風を感じるようなサウンドは、これまで以上に世界観を強めていて、
うっすらとしたシンセをバックに、繊細なギターのつまびきと、ヴァイオリンやパイプの音色が重なり
シンフォニックなケルトロックを描き出す。民族的なフレーズを違和感なくバンドサウンドに取り入れる
コンテンポラリーなセンスはさすがだし、15分を超える大曲などもゆったりと神秘的に聴かせてくれる。
デイブ・ベインブリッジのギターも流麗なフレーズを奏で、ロック的な躍動感をサウンドに付加している。
ベテランならではの自信と確かなアンサンブルが構築する、壮大なダイナミズムにあふれた力作です。
シンフォニック度・・8 ケルティック度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8.5
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KARNATAKA 「Gathering Light」
イギリスのケルティックロックバンド、カルナタカの2010年作
かつて美声の女性Vo、レイチェル・ジョーンズを擁して3枚のアルバムを残したが、
その後、夫であるバンドリーダーのイアン・ジョーンズとの離婚もありレイチェルは脱退。
バンドはそのまま消滅したかに思えたが、新たにリサ・フューリィを迎えてここに復活作を完成させた。
サウンドの方は、シンフォニックな美麗さとケルティックなメロディが融合した、
まさにかつてのKARNATAKAを思わせるもので、いっそうダイナミックな音作りが素晴らしい。
躍動感のあるリズムに乗るきらびやかなシンセと、そこにかぶさる泣きのギター、
厚みのあるサウンドには新生バンドとしての意気込みが伝わって来る。これは素晴らしい傑作だ。
シンフォニック度・・9 ケルティック度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8.5
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Panic Room 「Satellite」
イギリスの女性Voロックバンド、パニック・ルームの2nd。2010年作
KARNATAKAMostly Autumnアン・マリー嬢を擁するこのバンド、KARNATAKAに比べると
ケルト色はほとんどなく、どちらかというとモダンさのあるアンニュイなロックサウンドだ。
かつてのAll About Eveにも通じる雰囲気で、アン嬢の歌声にも大人の艶が感じられる。
今作も後半以降の曲に魅力が多く、しっとりとしたバラード曲や、WITHIN TEMPTATIONを思わせる
いくぶんハードなシンフォニックナンバーも光っている。ラストの叙情曲にもうっとりだ。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8
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The Reasoning 「Adventures in Neverland」
イギリスの女性Voシンフォニックロック、リーゾニングの2012年作
KARNATAKAのレイチェル嬢を擁するこのバンド、ライブやアコースティック作を挟み、スタジオ作としては4作目。
美しい女性ヴォーカルで聴かせる、ほの暗い翳りを含んだメロディックロックという路線はそのままに、
今作ではシンフォニック寄りのアレンジで、むしろかつてのKARNATAKAにも接近したような印象。
きらきらとしたシンセアレンジとメロウなギターワークが、しっとりとした彼女の歌声を引き立てていて、
これまで以上に深みのある世界観を感じさせるサウンドとなった。女性声ハードシンフォニックの好作といえる出来です。
メロディック度・・7 プログレ度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8
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Touchstone 「City Sleeps」
イギリスの男女Voシンフォニックロックバンド、タッチストーンの2011年作
ライブアルバムをはさんでの3作目で、美しい女性ヴォーカルの歌声で聴かせる、
シンフォニックハードサウンドは前作の延長上ながらよりダイナミックになっている。
この手のバンドにしては重厚さの効いたドラムとエッジのあるギターサウンドに、
美麗なシンセワークも含めて、PALLASあたりを思わせるドラマティックな雰囲気だ。
10分超の大曲も2曲あり、メリハリのある展開と、女性Voの美しさに惚れ惚れする。
ここぞというところで聴かせるメロディと盛り上げ方も上手くなった。なかなかの力作です。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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Mantra Vega 「The Illusion’s Reckoning」
イギリスのシンフォニックロック、マントラ・ヴェガの2016年作
Mostly Autumnのヘザー・フィンドレイをフロントにしたバンドで、モストリー・オータムのギター、ドラムも参加、
アコースティックギターを用いた牧歌的な感触に、やわらかな女性ヴォーカルと美しいシンセを加えた、
繊細で優美なシンフォニックロック。当然ながら、Mostly Autumnに通じる優雅な聴き心地であるが、
ヘザーさんの歌声をより前に出した作風で、やわらかなリコーダーの音色も含んだしっとりとしたフォークロック色に、
ときにギターを重ねた音の厚みや、メロトロンやオルガンを含むプログレらしいシンセアレンジも覗かせる。
魅力的な歌声とシンフォニックな美しさに包まれた、ラストの10分におよぶタイトル曲にはウットリとなる。
トロイ・ドノックリー(Nightwish)、イレーネ・ヤンセン、アルイエン・ルカッセンなどがゲスト参加。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8
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Kim Seviour 「Recovery Is Learning」
イギリスの女性シンガー、キム・セイヴィアーの2017年作
TOUCHSTONEのシンガーのソロで、ジョン・ミッチェル(It Bites)が全面プロデュース、演奏も手掛けている。
美麗なシンセアレンジに、伸びやかでフェミニンな女性ヴォーカルを乗せたメロディックロックで、
適度なプログレ感をシンフォニックに包み込んだという聴き心地。男女Voだったタッチストーンに比べると、
彼女の歌声の魅力がダイレクトに感じられ、楽曲は4〜5分とわりとシンプルながら、
壮麗な音の厚みとキュートでコケティッシュな女性ヴォーカルにぐぐっと引き込まれます。
随所にメロウなギターソロも含んだ楽曲アレンジのセンスはさすがジョン・ミッチェル。
KARNATAKALANDMARQなどが好きな方にもお薦めの、フィメール・シンフォニックロックの傑作です。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 女性Vo度・・9 総合・・8
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LAST FLIGHT TO PLUTO 「A DROP IN THE OCEAN」
イギリスのプログレバンド、ラスト・フライト・トゥ・プルートゥの2019年作
優美なシンセアレンジに適度にハードなギター、ハスキーな女性ヴォーカルを乗せて、
キャッチーな味わいのメロディックロックを聴かせる。ツインギターによる叙情性とともに
ほどよくメランコリックな雰囲気は、PANIC ROOMあたりに通じるところもあって、
紅一点、Alice嬢のキュートな歌声も魅力的だ。全6曲ながら、楽曲は7〜9分と長めで、
コケティッシュなフィメール・メランコリックロックがじっくり楽しめる。期待の新鋭です。
メロディック度・・7 プログレ度・・7 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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◆イタリア、フランス、スペイン、ポルトガル、ギリシャ

Aries 「Double Reign」
イタリアのシンフォニックロック、アリエスの2010年作
La Maschera Di Cera, Hostsonaten, Finisterreなどで活躍するファビオ・ズッファンティと
女性Voのユニットバンドで、美麗なシンセアとストリングスを含んだアレンジに
女性ヴォーカルの歌声で聴かせる、しっとりとしたシンフォニックロック・サウンド。
いわゆるプログレ色は薄めで、モダンな質感の女性声アンビエントロックという趣なので、
前作に比べるといくぶんあっさりとした感じではあるが、優しい聴き心地の好作です。
メロディック度・・7 プログレ度・・7 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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Conqueror「Stems」
イタリアのプログレバンド、コンカラーの2014年作
マタ・ハリをテーマにした前作はバンドの最高傑作となったが、5作目となる本作では
ぐっとアダルトな聴き心地となっていて、渋みのあるギターにオルガンを含んだシンセアレンジ、
そしてシモーナ嬢のイタリア語の歌声とともに、アンニュイな叙情に包まれたサウンドを描いている。
この薄暗い情感は、Paatosあたりにも通じる雰囲気で、そこにイタリアらしい妖しさが加わっている。
クラシカルなシンセワークはかつてのイルバレを思わせる部分もあり、ヴィンテージなプログレ好きにも楽しめる。
いわばオールドなロック色と女性ヴォーカル、イタリア的な芸術性が合わさったような好作品です。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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Materya 「Case」
イタリアのシンフォニックロック、マテリアの2012年作
やわらかなピアノの音色に女性ヴォーカルの歌声がやさしく重なり、
Renaissanceを思わせるような優雅で繊細な叙情美に包まれる。
アコースティックな素朴なフォークロック風味はMostly Autumn的でもあるが、
イタリア語の曲になると、とたんに哀愁が加わって、個人的には英語よりも好み。
派手な盛り上がりというのはあまりないのだが、繊細な美意識でゆったりと聴かせる好作品です。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8
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Enima 「Inconsapevole Viaggio」
イタリアのプログレバンド、エニマの2012年作
シンセを含む5人編成で、女性ヴォーカルによるイタリア語の歌声と、
美しいシンセアレンジ、随所にアコースティカルな叙情も含んだやわらかなサウンド。
全体的に派手な展開というのはないものの、フルートの音色なども含めて、
繊細な美意識に包まれた作風をゆったりと楽しめる。5分前後の楽曲が中心ながら、
ラストは10分を超える大曲でなかなか聴き応えあり。可愛らしいイタリアンシンフォという趣の好作品。
ドラマティック度・・7 叙情度・・8 イタリア度・・8 総合・・7.5
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Secret Tales 「L'Antico Regno」
イタリアのシンフォニックロック、シークレット・テイルズの2014年作
メロウなギターと美しいシンセアレンジ、そしてやわらかな女性ヴォーカルの歌声で聴かせる
幻想的な雰囲気に包まれたサウンド。ファンタジックなストーリーに基づいた作品のようで、
1、2分の小曲を挿入し、ときにアコースティックな牧歌性に包まれたフォーク風味もありつつ
ときにツーバスのドラムとハードなギターが入ってくるなど、案外に振り幅の広い作風となっている。
いかにもBlack Widowレーベルらしい垢抜けなさも、マイナー好きにはたまらないかもしれない。
ときに語りやスキャットなどを含んだイタリア語の女性ヴォーカルも、そのヘタウマ感が魅力ですな。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 幻想度・・8 総合・・7.5
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QUANAH PARKER 「Suite Degli Animali Fantastici」
イタリアのプログレバンド、クアナ・パーカーの2015年作
結成は80年代ながら作品を残さないまま解散、2005年になって復活したというバンド。
やわらかなシンセアレンジに、しっとりとした女性ヴォーカルの歌声を乗せた叙情的なサウンド。
流麗なギターを乗せたインストパートとクラシカルな繊細さも感じさせる軽妙なアンサンブルで、
紅一点、エリザベータ嬢の歌声は、イタリア語による語りから、コケティッシュなスキャットまでこなし、
サウンドにシアトリカルな空気感も加えている。楽曲的には濃密に盛り上がる部分はさほどないので、
案外さらりと聴けてしまうのだが、優雅なジャズロック風味のシンフォとしてもそれなりに楽しめる。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 優雅度・・8 総合・・7.5
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Trama 「Oscure Movenze」
イタリアのシンフォニックロック、トラマの2018年作
1998年に1作を残して消えたバンドの、じつに20年ぶりとなる復活作。艶めいた女性ヴォーカルの歌声に、
LA COSCIENZA DI ZENO、HOSTSONATENなどにも参加する、ルカ・スケラーニの美麗なシンセワーク、
適度にハードなギターとともに幻想的なシンフォプログレを聴かせる。繊細で優美だった前作の作風に、
いくぶんゴシック的な翳りが加わっていて、ときにPresenceのような魔女めいた妖しさも感じさせる。
12分、14分という大曲も、ゆったりとした叙情性から、ハードシンフォへと緩急ある展開を垣間見せつつ、
美しいシンセアレンジと女性声の魅力で、ダークなジャケのイメージとは異なる優雅な聴き心地に包まれる。
ドラマティック度・・7 優美度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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Karmamoi 「Day Is Done」
イタリアのプログレユニット、カルマモイの2018年作
2011年にデビュー、本作は4作目で、美しいピアノとシンセ、メロウなギターのトーンに
しっとりとした女性ヴォーカルを乗せて繊細な叙情を描く、ポストプログレ風のサウンド。
静寂感のあるスペイシーなポストロック的な味わいの中に、ロック寄りのドラムとギター、
やわらかなフルートの音色も加わると、イタリアらしい優雅なプログレ色に包まれる。
一方では、叙情的なギターにシンセを重ねた、涼やかなシンフォニックロックとしても楽しめ、
翳りを帯びたアンニュイな倦怠をまとわせるところは、PAATOSなどに通じる部分もある。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 叙情度・・8 総合・・7.5
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AMARTIA 「IN A QUIET PLACE...」
フランスのシンフォニックロック、アマルティアの2011年作
女性ヴォーカルのキュートな歌声に美しいピアノ、シンセアレンジ、アコースティカルな繊細さを含んだ優しい耳触りのサウンド。
ブリタ嬢の伸びやかな歌声が大きな魅力となっていて、しっとりとした曲でも飽きずに楽しめる。
ヴァイオリなども入ってくると、フォークロック、ケルトロック的な牧歌性も感じさせる。
元々はゴシックメタル的な作風であったらしいが、この女性声シンフォ路線は大当たりですな。
メロディック度・・8 繊細度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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Delusion Squared 「The Final Delusion」
フランスの女性Voメロウロック、デリュージョン・スカーレッドの2014年作
前作はPaatos+ALL ABOUT EVEというような好作だったが、3作目となる本作は
美麗なシンセアレンジと適度にハードなギターとともに、モダンな感触が強まっているが
ロレイン嬢の美しい歌声は楽曲にキュートな華やかさとアンニュイな香りを加えている。
いくぶん翳りをおびた叙情とともに、曲によってはゴシックロック的にも楽しめるかもしれない。
プログレ的な派手さはさほどないが、ゆったりと楽しめる女性声メロウ・ロックの好作品です。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8
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Remi Orts Project & Zara Angel 「State of Souls」
フランスのミュージシャン、レミ・オルツとベルギーの女性Voによるユニットの2013年作
美しい女性ヴォーカルの歌声と、キャッチーなメロディで聴かせる爽やかなサウンドで、
うっすらとしたシンセアレンジにメロウなギターフレーズも耳心地がよい。
初期のQUIDAMあたりにも通じるしっとりとした聴き心地であるが、
ときにシンフォニックメタル的な疾走パートもあったりして飽きさせない。
サウンドプロダクション的に物足りなさはあるが、キリスト教的なヨーロピアンで、
幻想的な世界観はよい感じで、女性声の美麗系シンフォとして楽しめる好作だ。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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PITCH 「Conquistador」
フランスのプログレバンド、ピッチの2012年作
オルガンを含むやわらかなシンセに、フェミニンな女性ヴォーカルを乗せた優雅なサウンドで、
軽妙なアンサンブルの中にもほどよいユルさと、アンニュイな香りを含んだ聴き心地。
ときにヴァイオリンも鳴り響き、リズムチェンジを含むエキセントリックな展開で、
いわば、シャンソンとプログレ、ジャズロックを同居させたような雰囲気というべきか。
盛り上がりや抜けの良さがないので、やや偏屈で玄人好みというか、BENT KNEEのように、
コケティッシュな女性声アヴァンポップとして楽しむのがよいのかも。全70分のなかなかの力作です。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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ECLIPSE SOL-AIR 「Schizophilia」
フランスのシンフォニックロック、エクリプス・ソル・エアーの2012年作
男女Voにシンセ、ヴァイオリン奏者を含んだ6人編成で、やわらかなフルートの音色にヴァイオリンが絡み、
男女ヴォーカルの歌声で聴かせる、しっとりとした優雅なサウンド。ヴォーカルは英語やフランス語、
ときにドイツ語も混じるのが独仏混成バンドらしい。いくぶんハードめのギターにオルガンの音色が合わさる
アグレッシブな部分もあって、楽曲事自体はそう長くはないものの、メリハリに富んだ聴き心地が楽しめる。
演劇的なドラマ性も含めて、濃密ながらも優雅な雰囲気と、ヨーロピアンな感性が詰まった力作に仕上がっている。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 優雅度・・8 総合・・8
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Saelig Oya 「Chaos - Chaos」
フランスのプログレバンド、サエリング・オヤの2015年作
重々しいチェロの音色にフランス語の女性ヴォーカルの歌声が妖しく響き、
ハード寄りのギターが加わって、メタリックな感触を含んだダークなサウンドが描かれる。
ゴシック的な耽美な空気感と、ときにチェンバーロック的でもあるエキセントリックなセンスが合わさって、
独特の浮遊感に包まれたアンニュイな世界観が味わえる。派手な展開というのはほとんどないのだが、
けだるげな女性ヴォーカルの歌声に、うっすらとしたシンセに包まれた涼やかな感触で、
Paatosなどの、倦怠のプログレ・フィメールロックが好きな方にはけっこう楽しめるのではなかろうか。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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CHILDREN IN PARADISE 「MORRIGAN」
フランスのシンフォニックロック、チルドレン・イン・パラダイスの2016年作
2011年にデビュー、本作は2作目となる。うっすらとしたシンセに女性ヴォーカルの歌声を乗せ、
Paatosあたりにも通じるアンニュイな翳りと浮遊感に包まれたサウンドを聴かせる。
適度にハード寄りのギターとともに、ゴシック寄りのメランコリックな空気感を描きつつ、
シンフォプログレの優雅さも含んでいて、コケティッシュな女性声もなかなか魅力的。
曲によってはホイッスルやイーリアンパイプなどのケルティックなテイストやアコースティックパートや、
ヘヴィなギターのゴシックメタル的な感触もあり、The Gatheringあたりのファンにも楽しめそう。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 メランコリック度・・8 総合・・8
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Weend'o「TIME OF AWAKENING」
フランスのハードプログレ、ウィーンドの2018年作
うっすらとしたシンセに適度にハードなギター、美しい女性ヴォーカルを乗せて、
アンニュイな翳りを帯びた、モダンでスタイリッシュなハード・プログレサウンドを聴かせる。
ほどよくテクニカルなリズムや、ときにプログレらしいきらびやかなシンセワークも覗かせつつ、
繊細なピアノによるしっとりとした叙情パートから、ProgMetal的な硬質なハードさまで、
緩急ある知的な展開力で描いてゆく。叙情的なフレーズを奏でるギターのセンスもなかなかで、
魅力的な女性声も含めて、Frequency Driftなどに通じるところもある。元PALLASのアラン・リードがゲスト参加。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 スタイリッシュ度・・9 総合・・8
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HARVEST「Chasing Time」
スペインのフィメールロック、ハーベストの2012年作
女性Voにシンセを含む5人編成で、しっとりとした叙情性とアンニュイな翳りを含んだ繊細な作風。
かつてのALL ABOUT EVEあたりにも通じる雰囲気で、随所にシンフォニック、プログレ的な感触もある。
紅一点、モニク嬢のやわらかな歌声もなかなか魅力的で、メロウなギターと繊細なシンセアレンジとともに
ロックとしての躍動感も適度に感じさせながら、ゆったりとした耳心地のよいサウンドが楽しめる。
8分を超えるラスト曲は、プログレ的なドラマティックな構築が見事。フィメール・メロウ・ロックの好作です。
メロウ度・・8 プログレ度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8
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Factory of Dreams「Melotronical」
ポルトガルの鍵盤奏者と女性Voによるユニット、ファクトリー・オブ・ドリームスの2011年作
これが3作めで、前作同様、女性ヴォーカルの歌声を中心に、シンフォニックな美麗さと
いくぶんのメタリックな質感で聴かせるサウンド。随所にプログレッシブな構成も取り入れつつ、
女性声と男性声の掛け合いも含めてオペラティックなテイストが増してきていて、
これまで以上にメリハリのついた濃密な作風だ。ジェシカ嬢の歌唱力もずいぶんと向上。
プログレ化したEDENBRIDGEというべきか…美麗にしてドラマティックな力作である。
シンフォニック度・・8 オペラティック度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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Ciccada 「The Finest of Miracles」
ギリシャのプログレバンド、シッカーダの2015年作
前作も優雅で繊細な作品であったが、2作目となる本作も美しいヴァイオリンの音色に
オルガンやメロトロンを含むシンセアレンジとともに、優美なシンフォニックサウンドを展開。
2曲目からは女性ヴォーカルの歌声も加わって、繊細なフルートの音色がやわらかに響き渡る。
コロコロとしたマリンバが鳴るエキセントリックな雰囲気など、軽妙な洒落たセンスも垣間見せ、
アコースティカルな要素を自然に取り入れる技量は、やはりメンバーの素養の高さだろう。
アルバム後半は18分におよぶ組曲で、インストパートをメインに、どことなく哀愁を含んだ大人の味わいは、
なにげに玄人好みの作風。派手さよりも優雅な素朴さでセンス良く仕上げたというような逸品です。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 優雅で繊細度・・9 総合・・8
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◆ドイツ、オランダ、北欧

Flamborough Head 「Lost in Time」
オランダのシンフォニックロック、フラムボロウ・ヘッドの2013年作
1998年にデビューした、蘭シンフォではすでに中堅バンド、本作は6作目となる。
10分以上の大曲3曲を含め、これまで以上に大作志向となっているが、
美麗なシンセアレンジとメロディックな泣きのギター、やわらかなフルートの音色に、
女性ヴォーカルの歌声も加わって、じつに叙情的でドラマティックな楽曲を聴かせてくれる。
メリハリのあるアレンジに、これまでよりひと皮向けたようなキャッチーな抜けのよさも手伝って、
随所にはっとするメロディやフレーズが入ってくると、その度にシンフォ好きでよかった…とウットリとなる。
どこを切っても優美な音の洪水で、まさにバンドとしての最高傑作というべき内容だ。
シンフォニック度・・9 優美度・・9 叙情度・・9 総合・・8.5
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Frequency Drift 「Last」
ドイツのプログレバンド、フリクエンシー・ドリフトの2016年作
女性Vo、女性ハープ奏者を含む6人編成で、しっとりとした翳りのある叙情性と
いくぶんハード寄りのギターが加わった、重厚な世界観も含んだシンフォニックロック。
アンニュイな繊細さをかもしだす、新たに加わったMelanie嬢の歌声もやわらかに耳心地よく、
随所に響くハープの優雅な音色も、浮遊感ある幻想性に包まれて聴こえる。
メロトロンが鳴り響く北欧プログレ的な涼やかさと、メランコリックな情感で構築される、
美意識あふれるサウンドだ。PaatosWhite Willowなどが好きな方にもお薦めできる。
一方でモダンなハードプログレの側面としては、Riversideなどに通じる部分もあったりする。
ドラマティック度・・8 薄暗度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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ELLEVEN 「TRANSFICTION」
ドイツのプログレハード、エレヴェンの2015年作
ハード寄りのギターとモダンなシンセアレンジを重ね、女性ヴォーカルの歌声で聴かせる、
翳りを帯びたメロディックロック。紅一点、ジュリア嬢の艶めいた歌声を前面に出した、
ウェットな叙情性にオルガンを含むシンセで、アダルトなプログレハードが味わえる。
キャッチーな抜けの良さよりは薄暗い空気感に包まれたサウンドは、ゴシックロック的でもあり、
メロウなギターの旋律にうっすらとしたシンセが重なる、アンニュイな倦怠の美が耳に心地よい。
楽曲は7〜8分前後を中心に、11分の大曲もあり、全体的にもゆったりとした聴き心地ながらも、
ほどよくプログレ的なアンサンブルも覗かせる。ふわりと吸い込まれるような魅力がある好作品だ。
ドラマティック度・・7 薄暗度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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GOLDEN CAVES 「Collision」
オランダのプログレバンド、ゴールデン・ケイヴスの2017年作
女性Vo、女性シンセ奏者を含む5人編成で、適度にハードなギターにオルガンを含むシンセと
伸びやかな女性ヴォーカルで聴かせる、シンフォニックでコケティッシュなハードプログレサウンド。
美麗なシンセアレンジとともに、ゴシック的でもあるほのかな翳りを含んだメランコリックな叙情美は、
Frequency Driftなどにも通じる感触で、ProgMetal要素もある女性声シンフォとしても楽しめる。
同郷の先輩である、元The Gatheringのアネクさんを思わせる、ROMY嬢の表現力ある歌声も見事で、
しっとりと聴かせる優美なナンバーも心地よい。アンニュイな翳りに包まれた好作品です。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 女性Vo度・・9 総合・・8
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LESOIR 「LATITUDE」
オランダのプログレ・ゴシックロック、レソールの2017年作
前作は、The Gatheringにも通じるような、メランコリックなゴシックロックの好作品であったが、
2作目となる本作も、やわらかなピアノの音色にしっとりと美しい女性ヴォーカルの歌声で、
繊細な叙情に包まれつつ、ドラムとギターが加わると物憂げなゴシックロック・サウンドを描き出す。
今作では、オーケストラアレンジを加えてのシンフォニックな優雅さも加わっていて、
前作以上にメリハリのある構築力と、ときに壮麗で厚みのあるサウンドが楽しめる。
倦怠系のゴシックメタルに優雅でプログレッシブな味わいを含ませたという逸品です。
シンフォニック度・・7 メランコリック度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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Mindspeak 「Pictures」
オーストリアのハードプログレ、マインドスピークの2013年作
女性Voにシンセを含む若手の5人組で、ProgMetal的でもあるテクニカルな構築力と
シンフォニックなアレンジで聴かせる、適度にモダンでハードなサウンド。
キュートな女性ヴォーカルの歌声に男性声が絡み、メロウなギターワークとともに、
ドラマティックに叙情性を描いてゆく。10分を超える大曲や6パートに分かれた30分におよぶ組曲など、
聴きごたえ十分で、Riversideのようなメタルとプログレのボーダーレスという感触に、
TRANSATLANTICにも通じるやわらかなメロディを含んだセンスの良さが光る。期待の新鋭である。
ドラマティック度・・8 テクニカル度・・8 構築度・・8 総合・・8
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White Willow 「Terminal Twilight」
ノルウェーのシンフォニックロック、ホワイト・ウィローの2011年作
前作
「Signal to Noise」は女性Voを全面に出したアンビエントなシンフォニックの傑作であったが、
今作でもヴォーカルが代わり、さらにドラムには元ANGLAGARDのマティアス・オルソンが参加している。
そのサウンドは浮遊感を漂わせたサイケ風味のシンフォニックロックで、メロトロンやオルガンなどの
レトロな雰囲気と、、かつてのANGLAGARDを思わせる、いかにも北欧的な薄暗さに包まれた作風。
しっとりとしたピアノにフルートの音色、女性ヴォーカルの歌声も優しく、アコースティカルな牧歌性もあって、
じつにやわらかな耳心地。アナログ感のある音作りはWobblerなどにも近いか。幻想的な北欧プログレの傑作です。
シンフォニック度・・8 やわらか叙情度・・9 北欧度・・10 総合・・8.5
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Paatos 「V」
スウェーデンのシンフォニックロック、パートスの2012年作
2002年にデビュー、5作目となる本作は、女性ヴォーカルの歌声で聴かせる薄暗いサウンドだが、
ANEKDOTENなどを思わせるヘヴィな感触もあって、よりプログレ的に楽しめる。
アナログ的なギターの響きにうっすらとしたシンセアレンジが重なり、
どこかミステリアスな女性声がアンニュイな浮遊感をかもし出す。
北欧らしいしっとりとした叙情と、古き良きアナログ感が合わさった好作です。
ドラマティック度・・7 薄暗度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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OPUS SYMBIOSIS 「Nature's Choir」
フィンランドの女性Voプログレバンド、オパス・シンバイオシスの2012年作
童話的なジャケが可愛らしいが、サウンドの方は アンニュイな女性ヴォーカルの歌声と
キャッチーさの中にも薄暗い質感を含ませて、いくぶんモダンなアレンジも感じさせる。
サイケ的なギターのフレーズが、ときにポストロック的な浮遊感と幻想的な雰囲気をかもし出し、
北欧的な繊細な叙情という点ではPaatosあたりに接近する部分もしばしばある。
あるいは、女性声ではあるが、Porcupine Treeあたりのファンにも楽しめるかもしれない。
メロウ度・・8 北欧度・・8 女性Vo度・・7 総合・・8
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Paintbox 「The Night」
スウェーデンのポップロックユニット、ペイントボックスの2011年作
ISILDURS BANEのFredrik"Gicken"Johanssonと、女性シンガーLinneOlssonを中心にしたユニットで、
前作はゆったりとしたアンビエントな歌ものポップであったが、3年ぶりとなる本作も
チェロの音色を響かせながら、女性ヴォーカルの歌声を中心にポップ&キュートな聴き心地。
お洒落な可愛らしさの中にも、やはりどことなく知的な構築センスも覗かせていて、
アコースティカルな要素もまじえつつ、コケティッシュな浮遊感を描いてゆく。
いわばプログレファンにも楽しめるフィメール・スウェディッシュ・ポップである。
ポップ度・・8 プログレ度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8
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Tirill 「Um Himinjodur 」
ノルウェーの女性アーティスト、ティリルの2013年作
美しい女性ヴォーカルの歌声にアコースティックギターのつまびき、うっすらとしたシンセ、オルガン、
やわらかなリコーダーの音色にヴァイオリンも重なった、しっとりと優雅な聴き心地のサウンド。
White Willowの1stのような北欧らしい翳りと、フォーキーな質感を含んで涼やかな空気を描いてゆく。
薄暗い妖しさで魔女めいた神秘性も感じさせつつ、キュートな美声にうっとりと聴き入れる。
メロトロンが鳴り響き、エレキギターが加わると、Anglagardにも通じるようなシンフォニックな感触も現れて、
プログレファンにもかなり楽しめるだろう。北欧トラッドシンフォ+女性ヴォーカルという好作品。
ドラマティック度・・7 女性Vo度・・8 北欧の翳り度・・9 総合・・8
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Art Deco 「Syvaan Uneen」
フィンランドのプログレバンド、アート・デコの2013年作
女性ヴォーカルの母国語の歌声と、やわらかなシンセアレンジ、メロディックなギターとともに聴かせる
いくぶんの土着性を含んだキャッチーなサウンド。変則リズムを含んだ軽妙なアンサンブルと、
北欧らしい叙情性はKAIPAあたりにも通じるが、こちらりはよりスタイリッシュでお洒落な雰囲気。
つまりライトなポップ性があるのだが、それを北欧のトラッド的旋律と融合させているのが絶妙のセンス。
13分を超える大曲では、アヴァンギャルドな展開とともにエキセントリックな側面も垣間見せる。
なかなかあなどれないセンスと懐の深さを感じさせるバンドである。今後の活動にも注目したい。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 北欧度・・8 総合・・8
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Introitus 「Shadows」
スウェーデンのシンフォニックロック、イントロイタスの2019年作
ベンダー夫妻と息子を含む、いわばファミリー型プログレバンド。2007年にデビューし、本作は4作目となる。
きらびやかなシンセワークにメロウなギターを重ね、女性ヴォーカルで聴かせる優美なシンフォニックロック。
今作はジャケのイメージのように薄暗い叙情性も感じさせつつ、オルガンを含むヴィンテージな味わいに、
優雅でキャッチーな展開力とともに、MAGENTAMOSTLY AUTUMNなどにも通じる感触で楽しめる。
10分を超える大曲も、美しいピアノやフルートによる繊細な叙情パートなど、しっとりとウェットな感触も覗かせて
じっくりと構築してゆく。新鮮味はさほどないが、女性声の正統派シンフォプログレが好きな方はぜひ。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 優美度・・8 総合・・8 
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PAIDARION Finlandia Project 「Two Worlds Encounter」
フィンランドのシンフォニックロック、パイダリオンの2016年作
2009年にデビューし、本作は3作目。前作「Behind the Curtains」は優雅なる好作品であったが、
本作ではドラムとベース以外のメンバーがゲスト扱いとなった、いわばプロジェクト的なユニットらしい。
シンセにはロバート・ウェッブが参加し、ENGLANDのカヴァーや未発曲なども演奏していて、
バンドの過去曲の再録や、オーストラリアのWINDCHASEのカヴァーなどもマニア好み。
ハスキーな女性ヴォーカルの歌声に、やわらかなギターとメロトロンを含むシンセも美しく
どの曲も優美なアレンジで、シンフォニックロック好きにはとても楽しめる逸品です。
メロディック度・・8 フログレ度・・7 優美度・・9 総合・・8 
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THE OUTER SONICS 「VIOLET」
フィンランドのシンフォニックロック、アウター・ソニックスの2016年作
うっすらとしたシンセに美しい女性ヴォーカルの歌声を乗せ、北欧らしい涼やかな叙情と
MAGENTAのようなキャッチーな優雅さに包まれたサウンド。エレピやオルガンなどのシンセに、
ときにヴァイオリン、チェロなども加わったクラシカルなアレンジ、なによりコケティッシュな
Ninaさんの歌声はとても魅力で、PAATOSあたりが好きな方にも薦められる。
楽曲は3〜5分前後とわりとシンプルで、マニアックなプログレ感触がないので、
女性声の美麗系メロディックロックとしても普通に楽しめる好作品です。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8
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◆アメリカ、カナダ

DISTRICT 97 「Trouble With Machines」
アメリカのシンフォニックロックバンド、ディストリクト97の2012年作
女性Voにシンセを含む5人編成で、前作もなかなかの力作であったが、
今作も10分超の大曲を2曲含む濃密なハードシンフォニック作となっている。
けっこうヘヴィなギターと美麗なシンセワーク、 艶のある女性ヴォーカルの歌声を乗せ
適度にテクニカルで重厚なサウンドを構築。知的な展開力はProMetal的でもある。
切れ味のある演奏に緊張感も漂わせながら、随所にキャッチーなメロディや
モダンなスタイリッシュ性を含んだアレンジは、現在形ハードプログレの進化形を示している。
前作以上のスケール感と楽曲の充実ぶりにバンドとしての成長を覗かせた傑作だ。
ドラマティック度・・8 けっこうメタル度・・8 女性Vo度・・7 総合・・8
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Cirrus Bay 「Whimsical Weather」
アメリカのシンフォニックロックバンド、シラス・ベイの2012年作
ハケットを思わせる繊細なギタートーンと、うっすらとした美しいシンセアレンジ
二人の女性ヴォーカルの歌声でしっとりと聴かせるシンフォニックサウンド。
ロマンティックな美意識とGENESISルーツのプログレ性が融合した雰囲気で、
10分以上の大曲をたおやかに構築してゆく。優雅でやわらかな耳心地の好作品です。
シンフォニック度・・7 しっとり繊細度・・9 女性Vo度・・8 総合・・8
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All Over Everywhere 「Inner Firmaments Decay」
アメリカのフォークプログレバンド、オール・オーバー・エブリウェアの2010年作
Deluge Granderのシンセ奏者も参加しているバンドで、アコースティックギターに
うっすらとしたシンセがかぶさり、女性ヴォーカルの歌声がやわらかに乗るという、
ゆったりと夢見がちなアシッドフォーク・プログレ風味のサウンド。ヴァイオリンにビオラ、
チェロ、フルート、オーボエ、さらにはアコーディオンやシタール、ダルシマーなど、
豊富な種類のアコースティック楽器を織りまぜ、ときにメロトロンを含めたシンフォニックさも含めて、
単なるフォークではないミステリアスで壮大な雰囲気を描き出す。うっとりとする幻想的な美しさです。
アシッドフォーク度・・8 幻想度・・9 女性Vo度・・7 総合・・8
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HALF PAST FOUR 「Good Things」
カナダのプログレバンド、ハーフ・パスト・フォーの2012年作
東欧出身のギターとベース、女性Voにシンセを含む5人編成で、
軽やかなアンサンブルの中にどこか屈折したテクニカル性と洒落っ気を含んだサウンド。
カンタベリー的な優雅なシンセアレンジにときにハードめのギターが合わさり、
伸びやかな女性ヴォーカルの歌声とともに、軽妙な味わいを聴かせてくれる。
「女性Vo版エコリン」というような感触もあり、キャッチーな耳心地の良さの中に
玄人好みの演奏とひねくれ具合が見え隠れする好作品。
メロディアス度・・8 プログレ度・・8 ひねくれ度・・7 総合・・8
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MoeTar 「From These Small Seeds」
アメリカのプログレ・ロック、モーターの2012年作
レーベルがMAGNA CARTAなので、プログレメタル系かと思いきや、
表現豊かな女性ヴォーカルの歌声を中心にしたポップなサウンド。
ただ、楽曲には屈折感を漂わせたアヴァンロック的なセンスを垣間見せ、
随所にレコメン系の匂いも感じさせる。とくに巧みなシンセワークはポップでありながら、
MATS/MORGANあたりに通じる、プログレ的なとぼけた味わいもかもしだしている。
確かな演奏力に支えられた説得力に包まれた、プログレ・アヴァンロックの傑作です。
キャッチー度・・8 プログレ度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8
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Squonk Opera 「Mayhem and Majesty」
アメリカのアヴァン・ロックバンド、スクォンク・オペラの2010年作
ステージではアーティスティックなパフォーマンスを行うバンドで、本作は7作目。
女性ヴォーカルの歌声と、ピアノやフルート、サックス、アコーディオンなどが絡む
民族的なテイストを、演劇的な雰囲気に融合させた、なかなか個性的な作風。
オータム嬢の美しい歌声にうっとりしつつ、さりげない演奏力の高さと先の読めない
エキセントリックなセンスが新鮮な耳心地だ。シアトリカルでオペラティックな傑作。
シアトリカル度・・8 プログレ度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8
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KLO PELGAG 「L'Alchimie Des Monstres」
カナダの女性SSW、クロ・ペルガグの2014年作
ケベック州出身の女性アーティストで、アコースティックギターにフランス語による歌声を乗せ、
クラリネットやバスーン、ヴァイオリンなどを加えたチェンバーロック色を加えた個性的なサウンド。
アコースティックを主体にした優雅な耳心地と、エキセントリックなセンスが合わさって、
ほどよいアヴァンギャルド性も含みつつも、わりとキャッチーな歌ものである点では、
Joanna Newsomなどにも通じる雰囲気もあるかも。フランス語による優雅な歌声に、
クラシカルなピアノ、ヴァイオリンが鳴り響く、サロン系チェンバーの流れでも楽しめます。
チェンバー度・・8 優雅度・・9 女性Vo度・・8 総合・・8
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HILDEGARD
アメリカのプログレバンド、ヒルデガルドの2015年作
わりとハードなギターにモダンなシンセアレンジ、フェミニンな女性ヴォーカルを乗せて、
優雅でコケティッシュなサウンドを聴かせる。ほどよくテクニカルなリズムチェンジと
カンタベリー的でもある軽妙な展開力で、やわらかなジャズロック風味も含んだ作風は、
BENT KNEEなどにも通じるいくぶんエキセントリックで、スタイリッシュなセンスを感じさせる。
ストリングスアレンジを加えたクラシカルなナンバーなど、しっとりとした耳心地の良さに包まれ、
エレピを含む優雅なシンセと美しい女性声をメインにしたサウンドが味わえる好作品。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 優雅度・・9 総合・・8
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BENT KNEE 「Land Animal」
アメリカのアヴァンロック、ベント・ニーの2017年作
前作はKATE BUSHがチェンバーロック化したような個性的な好作であったが、続く本作も、
女性Vo&Key、女性Bに、ヴァイオリン奏者を含む編成で、キュートな女性ヴォーカルの歌声を中心に、
とぼけた味わいのレコメン系サウンドを融合、美しいシンセやヴァイオリンを加えたアレンジとともに、
エキセントリックなアヴァンロックを聴かせる。シンセ&ヴォーカルのコートニー嬢の歌声も表現力十分で、
ときにエモーショナルな情感を加えて、グルーヴィな演奏とともにサウンドに躍動感を加えている。
曲によっては、チェンバーロック的なクラシカルでスリリングな空気感にも包まれつつ、あくまでキュートで
どこかオシャレですらあるセンスは、プログレ、ポップ、レコメンの垣根を超えて評価されるべき内容だ。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 女性Vo度・・9 総合・・8.5
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◆東欧、南米、その他

TRAVELLERS 「A JOURNEY INTO THE SUN WITHIN」
ポーランドの女性Voロックバンド、トラヴェラーズの2011年作
COLLAGESATELLITEのWOJTEK SZADKOWSKIを中心に結成したバンドで、
女性ヴォーカルの歌声で聴かせるゆるやかなシンフォニックロックサウンド。
10分以上が2曲に8分が2曲という大作志向で、モダンなシンセアレンジと
アンニュイな翳りがミックスされて、独特の浮遊感をまとわせた作風になっている。
しっとりとした女性声が耳に優しく、初期のQUIDAMなどを思わせる部分もあり、
随所にプログレ的な感触を匂わせながら、さらりとクールなお洒落さを感じさせる作品だ。
シンフォニック度・・7 プログレ度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8
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LOONYPARK 「Unbroken Spirit Lives In Us」
ポーランドのシンフォニックロック、ルーニーパークの2014年作
適度にモダンでハードエッジな感触を含んだサウンドに、情感豊かな女性ヴォーカルの歌声、
ホーランドらしいほの暗い叙情性と、ネオプログレ以降のダイナミックな展開美も備わっている。
NEMESISやLIQUID SHADOWにも参加したシンセ奏者による多彩なアレンジも光っていて、
しっとりとしたメロウな要素とハードシンフォのドラマ性が同居したクオリティの高さはさすが。
各楽曲ごとのフックのある構成も見事な傑作だ。現在形女性声シンフォの代表になれるだけの逸材ですな。
ドラマテイック度・・8 プログレ度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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ARCHANGELICA 「Tomorrow Starts Today」
ポーランドのハードプログレ、アーチャンゲリカの2016年作
女性Vo、女性Bを含む5人編成で、いくぶんメタル寄りのギターとうっすらとしたシンセに
伸びやかな女性ヴォーカルを乗せた、タイトでモダンな感触のハードプログレを聴かせる。
ポーランドらしいメランコリックな味わいと、しっとりとした浮遊感に包まれて、美しい歌声が
響き渡るところは、かつてのThe Gatheringのアネク・ヴァン・ガースバーゲンなどを思わせる。
8分、9分という大曲も、プログレというよりはメランコリック・ロックという趣ではあるが、
同郷のLOONYPARKあたりと同様、女性声ハードシンフォとしても楽しめる好作だ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8
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YESTERDAYS 「SENKI MADARA」
ハンガリーのシンフォニックロック、イエスタデイズの2018年作
2007年のデビュー作「Holdfenykert」は、美声の女性ヴォーカルで聴かせる優美な傑作であったが、
本作は2012年作に続く3作目となる。やわらかなフルートの音色に、ピアノやムーグを含むシンセと
メロウなギター、やわらかな女性ヴォーカルの母国語の歌声で、優雅なシンフォニックロックを描く。
アコースティックなパートでは、スペインのAMROKのようなトラッド・プログレ的な感触もあり、
艶やかなヴァイオリンにフルートの音色、そして女性声が重なる、繊細な叙情美にウットリとなる。
全体的に派手な展開というのはないのだが、しっとりと落ち着いた味わいの優美なる逸品です。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 優美度・・9 総合・・8
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Musica Ficta 「A Child & A Well」
イスラエルのプログレバンド、ムジカ・フィクタの2012年作
女性Vo、フルート奏者を含む6人編成で、オルガンやピアノを含んだ美しいシンセアレンジに
女性ヴォーカルのキュートな歌声とともに軽やかなアンサンブルを聴かせる傑作。
4〜6分という比較的短めの曲が中心だが、フルートの音色がやわらかに響き、
アコースティカルな優雅さを中世音楽的な幻想性で構築するセンスがじつに素敵である。
軽妙でいて繊細、しっとりとした耳心地の良さは、ある意味でPFMなどにも通じるかもしれない。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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Soul Enema 「Of Clans And Clones And Clowns」
イスラエルのプログレバンド、ソウル・エネマの2017年作
女性Voにシンセを含む5人編成で、前作はテクニカルなハードシンフォニックの傑作だったが、
7年ぶりとなる本作も、女性ヴォーカルの歌声に、適度にハードなギターときらびやかなシンセを乗せ、
軽妙な展開力とともに、ときにアラビックな旋律を含む民族色を融合したサウンドを聴かせる。
優雅で知的なアンサンブルは、曲によってはシンフォニックなジャズロック的でもあったり、
程よくエキセントリックなセンスも覗かせたり、レベルの高い演奏で辺境臭さも感じさせない。
3パートに分かれた20分を超える組曲も素晴らしい。優雅で軽妙な女性声プログレの傑作である。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 優雅で軽妙度・・9 総合・・8
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Iamthemorning 「Lighthouse」
ロシアのシンフォニックロック、アイアムザモーニングの2016年作
ピアノ&シンセ奏者と女性Voによる二人組ユニットで、美しい女性ヴォーカルの歌声に
ストリングスによる優美なアレンジ、繊細なピアノなど、クラシカルな味わいに包まれたサウンド。
ドラムやギターが加わると、ほの暗い叙情と女性声の美しさに包まれたシンフォニックロックになり、
やわらかなフルートの音色も美しくゴシック的な耽美さもあってしっとりとした耳心地で鑑賞できる。
ゲストヴォーカルにはRiversideのマリウスツ・ドゥラが参加、マイルドな歌声を披露している。
ドラムには、Porcupine TreeやKing Crimsonにも参加するギャビン・ハリソンが参加、
ベースには同じくPTからコリン・エドゥィンが参加していて、さすがのグルーブを聴かせてくれる。
シンフォニック度・・8 繊細で優美度・・9 女性Vo度・・8 総合・・8
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CRISALIDA「Solar」
チリのハードプログレ(メタル)、クリサリダの2012年作
2006年にデビューしてから、本作は3作目となる。メタリックなギターにシンセが重なり、
スペイン語の女性ヴォーカルを乗せた、しっとりとした叙情性が合わさったサウンドで
いわば、メタリックなシンフォニックハードという聴き心地。やや微妙だった前作に比べ、
楽曲におけるダイナミックなスケール感や、女性ヴォーカルの表現力も増していて、
全体的にもぐっとレベルアップしたという印象だ。南米らしい優雅な叙情とメタル寄りの重厚さを同居させた
バランスのよいアレンジで構築された、女性声ハード・シンフォプログレ(メタル)の力作である。
ドラマティック度・・8 重厚度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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Septum 「Quiet Listen!」
キューバのシンフォニックハード、セプタムの2013年作
女性Voにヴァイオリン奏者を含む7人編成で、美しいソプラノ女性ヴォーカルの歌声を乗せて
壮麗でクラシカルなシンセアレンジとツインギターによる重厚なソウンドを描き出す。
いくぶん軽めのドラムなどが適度なB級感をかもしだしているが、変化に富んだリズムチェンジなど
ProgMetal的な展開と構築性も感じさせるところはなかなかよい。各楽曲自体は3〜4分前後と、
むしろ濃密さで物足りないのだが、全体的にシンフォニックな優雅さと女性声の魅力も含めた
クラシカル美意識に包まれていて、今後に期待したくなる可能性をもったバンドだと思う。
シンフォニック度・・8 優雅度・・8 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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SINAGOGA ZEN
ブラジルのプログレバンド、シナゴーガ・ゼンの2014年作
女性Voにシンセを含む5人編成で、適度にハードなギターにオルガンを含むシンセ、
ポルトガル語の女性ヴォーカルを乗せた、叙情的なシンフォニックロックを聴かせる。
のっけから20分を超える大曲で、クラシカルなピアノやヴァイオリンが鳴り響く繊細な優雅さとともに、
プログレらしいメリハリある展開力で、チェンバーロック的でもあるスリリングな構築力で描いてゆく。
ヴォーカル嬢のなよやかな歌声は、初期のQUIDAMあたりを思わせ、アコースティックパートなどを含む
南米らしいやわらかな叙情美も良いですね。しっとりとした優美さに包まれた、女性声プログレの逸品です。
優美度・・8 プログレ度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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RETSAM SURIV 「Danger」
アルゼンチンのハードプログレ、レトサム・スリヴの2014年作
前作は女性声ハードシンフォの傑作というべきアルバムであったが、2作目となる本作も
ムーグやピアノ、オルガンを含むきらびやかなシンセアレンジに適度にハードなギターを乗せて、
随所にProgMetal的なテクニカル性も含ませた構築美を聴かせるハードプログレサウンド。
母国語による女性ヴォーカルの歌声も加わりつつ、全体的には前作よりもいくぶんダークになった感触であるが、
中盤には美しい女性声と爽快なメロディを乗せたシンフォ曲もあって、やはりよい感じなのである。
メロディック度・・7 ハードシンフォ度・・8 女性Vo度・・7 総合・・8
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◆トラッド/フォーク/コンテンポラリー系

JUDY DYBLE 「EARTH IS SLEEPING」
英国のフォークシンガー、ジュディ・ダイブルの2018年作
Fairport Conventionのオリジナルシンガーとしても知られる、英国フォーク界伝説の女性シンガーのソロ。
前作に続きTHE CURATORのアリスター・マーフィがプロデュース、パット・マステロット、マーク・フレッチャー、ジェレミー・サルモンなど、
多くのメンバーが参加している。アコースティックギターのつまびきに、しっとりとした歌声を乗せた叙情ナンバーで幕を開け、
ドラムにエレキギター、シンセも加えた、どこかなつかしい70年代風のキャッチーなナンバーでは、あの頃の英国の香りが蘇るかのよう。
ヴァイオリンやチェロなどのストリングスを加えた優美なアレンジに、年を経ても魅力的なジュディの優しい歌声にウットリとなる。
フルートやシンセが入ると、KING CRIMSONの1stにも通じる幻想的な翳りに包まれる。これぞ英国の空気。繊細にして優美な傑作だ。
繊細で優美度・・9 英国度・・9 女性Vo度・・9 総合・・8.5 
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Florence + The Machine「Ceremonials」
イギリスの女性Voポップバンド、フローレンス・アンド・ザ・マシーンの2011年作
前作はキャッチーなポップ感覚と古き良き英国ロックの要素が融合したような傑作だったが、
本作もその表現豊かな歌声と、適度にモダンなポップセンスを英国らしいアートな感性と融合させた
素晴らしいサウンドを聴かせてくれる。オーケストレイテッドなアレンジを含めて、広がりのある音作りと
かつてのQUEENKATE BUSHなどの偉大な先人から受け継がれたアーティスティックなセンスを垣間見せつつ、
すでに唯一無二というべき彼女の世界を確立させている。ゴージャスにして感性豊かな傑作だ。
ドラマティック度・・8 サウンドセンス・・9 女性Vo度・・9 総合・・8.5
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The Unthanks「Last」
イギリスのトラッド/フォークユニット、アンサンクスの2011年作
美しいストリングスにしっとりと響く二人の女性ヴォーカルの歌声で聴かせる、前作同様の作風ながら、
より優雅な格調高さが加わっていて、英国トラッドを宮廷風に仕上げたというような感触がなんとも絶妙。
ストリングスに重なるトランペットもよろしく、チェンバーロック風味のクラシカルさも味わえる。
KING CRIMSONの“Starless”のカヴァーもハマってます。これは素晴らしい傑作。
アコースティカル度・・8 優雅な英国度・・9 女性Vo度・・8 総合・・8.5
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Kelsey Lindstrom 「Reading Room」
イギリス出身の女性シンガー、ケルシー・リンドストームの2011年作
アコースティックギターのつまびき、しっとりとしたピアノに乗る繊細かつ表現豊かな歌声、
うっすらとした広がりのあるシンセアレンジが神秘的な静謐感でサウンドを包み込む。
女性ヴォーカルの魅力ももちろんながら、ときにエキセントリックなセンスを感じさせるアレンジで、
単なる歌ものを超えたスケール感を生み出しているのが素晴らしい。ゆったりと雄大な傑作。
メロウ度・・8 女性Vo度・・8 サウンドセンス・・9 総合・・8
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Fern Knight「Castings」
アメリカのアシッドフォークバンド、フェーン・ナイトの2010年作
2003年にデビューしてからこれがすでに4作目となる。今作も前作同様に、
アコースティックギターにゆるやかなハープの音色、そこに夢見がちな女性ヴォーカル
浮遊感のあるスキャットが乗るスタイルであるが、歪ませたギターはサイケロック的で、
よりプログレ的にも楽しめる内容になっている。イギリスのTreesあたりを思わせる雰囲気もあり
KING CRIMSONの“Epitaph”のカヴァーも含めて、プログレ系のフォークロックとして楽しめる出来だ。
アシッドフォーク度・・8 サイケ度・・8 女性Vo度・・7 総合・・8
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Shiloh Sheray & Marco Minnemann 「s.m.」
U.K.のツアーメンバーなどで活躍するドラマー、マルコ・ミネマンと女性シンガー、シロー・シレイのユニットの2011年作
サウンドは2〜3分台の楽曲を中心にしたキャッチーなポップロックという趣ながら、やわらかな女性ヴォーカルの歌声と、
マルコ・ミネマンの軽妙なドラムセンスが楽しめる。エキンセトリックな浮遊感を含んだふわふわとした雰囲気に包まれながら、
それを巧みに構築するミネマンのセンスはさすが。お洒落なポップ性にプログレ的な香りをほのかに溶け込ませたという好作。
ゲストギタリストとして、Andy Kodiwein、ポール・ギルバートなどが参加している。
キャッチー度・・8 プログレ度・・7 女性Vo度・・8 総合・・7.5
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ELECTRIK GEM 「Radiopolic Projekt」
フランスのラジカル・トラッドロック、エレクトリック・ジェムの2012年作
3人の女性ヴォーカルに、トロンボーン、クラリネット、アコーディオンなども含む、総勢14名のビッグバンドで
女性ヴォーカルの歌声に、トロンボーンやクラリネットの音色が絡み、トラッド的な土着感とキャッチーなノリを合わせた、
VARTTINAあたりを思わせるスタイルで、そこにギターやドラムも加えてロックアレンジされたサウンドを聴かせる。
パーカッションのリズムに女性声で聴かせる、アコースティック主体のバルカントラッド寄りのナンバーもあったり、
ガドゥルカ(縦型フィドル)が鳴り響く、中近東的なノリも含めて、変則リズムを含む巧みなアンサンブルで表現してゆく。
ロックアレンジが加わるとかなりハードな耳心地ながら、トラッド部分にしっかりと説得力があるので、絶妙の融合と言ってよいかと。
トラッ度・・8 ロック度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8
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Faun 「Von Den Elben」
ドイツのゴシック古楽トラッドバンド、ファウンの2013年作
2001年にデビューし、本作ですでに7作目くらい。女性ヴォーカルのドイツ語の歌声に、
艶やかなフィドルが響き、牧歌的なブズーキの音色を含んだ、中世トラッド風味のサウンド。
トラッド的な土着性とシンセやドラムなども入ったモダンなロック色も巧みなアレンジで融合されていて
Blackmore's Nightあたりにも通じるキャッチーな聴き心地が前に出たことで、以前の幻想的な薄暗さよりは
ぐっと一般受けしやすい作風になった。曲によってはフォークロック的にも楽しめる好作品だと思う。
ドラマティック度・・8 中世風味度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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Estampie 「Secrets of the North」
ドイツのトラッド/ネオフォーク、エスタンピエの2013年作
90年代から活動するバンドで、艶やかなフィドル音色に、美しい女性ヴォーカルの歌声を乗せ、
アコースティック楽器を主体にメディーヴェルな世界を描く、幻想的なトラッドサウンドを聴かせる。
本作は中世の北欧バラッドを再現するというコンセプトで、ブズーキやガイタ、ニッケルハルパ、
ハーディ・ガーディといった北欧の古楽器に、サントゥールやサズといった中近東系の楽器や、
ポルタティフ、ハルモニウムといった中世の鍵盤楽器、チェロやトローボーンなども加えた厚みのあるサウンドで、
スウェーデン語で歌われているところもなかなかの本格派だ。曲によってはわりとモダンなアレンジもありつつ、
北欧的な寒々しさと土着的なメロディなど、トラッドとしての説得力が高いので、その世界観にうっとりと聴き入れる。
アコースティック度・・8 幻想トラッ度・・9 女性Vo度・・8 総合・・8.5
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Greenrose Faire「Neverending Journey」
フィンランドのフォークロック、グリーンローズ・フェアーの2011年作
女性ヴォーカルに女性ヴァイオリン奏者、シンセにマンドラ奏者などを含む6人組で、
1曲めから軽快に聴かせるフォークロックサウンドが楽しめる。ロック的なドラムのリズムにヴァイオリンが鳴り響き、
いくぶんプログレ風味もあるシンセを含んだ聴き心地は、土着的なシンフォニックロックとしても楽しめる。
Blackmore's Night
のように中世を感じさせる幻想的な雰囲気もよろしい。
メロディック度・・8 フォーキー度・・8 女性Vo度・・7 総合・・7.5
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ELIN KAVEN 「Eamiritni - Rimeborn」
スウェーデンの女性シンガー、エリン・カヴェンの2015年作
うっすらとしたシンセにアコースティックギターのつまびき、母国語よる女性ヴォーカルを乗せて、
しっとりと聴かせるネオフォーク/トラッドサウンド。フィドルが鳴り響く北欧らしいトラッド感触を、
優雅で幻想的な空気感に包み込み、モダンなアレンジで仕立て上げたという作風は、
サーミ語による独特の歌唱も(ヨイク)含めて、ラップランドのラジカルトラッドという趣であろうか。
ときにエレキギターも加わったりと、打ち込みを含めた聴きやすいアレンジセンスとともに、
プログレリスナー向きの北欧トラッドポップとしても楽しめる。
幻想度・・8 北欧トラッ度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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Jenny Hval「Apocalypse, Girl」
ノルウェーの女性SSW、ジェニー・ヒヴァルの2015年作
2011年作の出来が素晴らしかったので期待したが、本作はジャケの感じからしてサイケな雰囲気。
なにやら妖しい語りによるイントロから始まり、少女めいた囁きのようなキュートな歌声を乗せ、
浮遊感のあるシンセアレンジと、エキセントリックな空気感に包まれたサウンドを展開。
向こう側に倦怠の闇を匂わせる、危うくけだるげな狂気が、スリリングに漂ってくるような、
いわば、ケイト・ブッシュを暗黒寄りに包み込んだというような、アーティスティックなセンスが素晴らしい。
ラストの10分におよアヴァンギャルドなナンバーまで、単なる女性声サイケポップの域を超えた異色作。
ドラマティック度・・8 倦怠の狂気度・・9 女性Vo度・・9 総合・・8.5
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Caprice 「Masquerade」
ロシアのゴシックフォーク、キャプライスの2010年作
艶やかなヴァイオリンにやさしいハープのつまびき、女性ヴォーカルの母国語の歌声を乗せた美しい聴き心地。
初期のケイト・ブッシュのようなエキセントリックな感触に、いくぶんモダンなロック/ポップ要素も加わっていて、
いわばクラシカルなゴシックポップというような雰囲気である。ときにチェンバーロック的な緊張感に包まれたり
エレキギターが加わったゴスロック風味も出てきたりと、本作ではそのアレンジの多彩さも光っている。
繊細なピアノにフルートやオーボエの音色も耳に優しい。女性声の美しさとストリングスアレンジにうっとり。
クラシカル度・・8 エキセントリック度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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WARSAW VILLAGE BAND 「Nord」
ポーランドのラジカルトラッド、ワルシャワ・ヴィレッジ・バンドの2012年作
新たに三人の女性ヴォーカル&ヴァイオリン奏者を含む6人編成となった本作は、

Varttinaなどを思わせる母国語による女性のコーラスワークに、フィドルの音色や
トランペットが響きわたり、Hedningarnaがゲスト参加したこともあって、ぐっと重厚になった
ラジカルトラッドを聴かせる。モラハルパやスウェデッシュ・バグパイプといった楽器も入ると
北欧トラッド的な感触に包まれて、伝統的なポルスカが新たな形になって躍動するようだ。
プログレ度・・8 トラッ度・・8 ラジカル度・・9 総合・・8
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*女性ヴォーカルシンフォニックロック特集
*女性ヴォーカルケルト/トラッド特集

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