あとがき


この作品は今から3年ほど前に完成していたものです。
当時、仲のよかったMさんと一緒に考えた物語で、
少年、少女向けのしごくまっとうなファンタジー小説を目指したものです。



なので、悪の魔法使いやらドラゴンやら、魔法の鍵など、
いかにもという王道な設定なのですが、
あらためて見返してみて、こうした夢と希望に溢れた
素直な物語というのもなかなかいいものですね。

ネコのようなドラゴンのような、にゃードラゴンのアイデアも
Mさんと一緒に考えた、物語のマスコット的な役割です。
あとは、魔力を持った4つの鍵を集めるという設定もあって、
じつは当初は「マスター・マジック・キー」というタイトルだったのですが、
今回の掲載にあたって、「にゃーどとドラゴン」と、ちょっとかわいらしく変えてみました。

気の弱い少年王子ペトル(セトール)が、にゃーどや仲間たちと冒険をともにし、
喜び、悲しみながら、世界を知り、成長してゆく物語でもあります。
最後についに4つの鍵を手に入れたペトルは、何でも好きな願いをひとつだけ叶えられることになります。
そこでペトルが選択したのは、大好きだった両親を生き返らせることではなく、にゃーどの命でした。

作者として好きなシーンは、やはり生き返ったにゃーどとの再会の場面、
そして、ラストでの新たな旅立ちのエンディングなのですが、
もうひとつ、
前半に、吟遊詩人のレファルドがペトルを裏切ったあと、
月を見上げて竪琴を弾くという場面があるのですが、
ひねくれものの作者としては、じつはこれも大好きな場面なんです。
「月がきれいだ」と詩人らしくのたまいながらも、
彼の心にはペトルを裏切って金を手にしたことの後ろめたさや
なんとはない悲しみ、やりきれない気分もあったはずなんです。
だからこそ、彼はペトルたちの前に戻ってきて、旅を共にする事になった。
そうした、複雑な心情描写を作り出し、読み取るのも小説の醍醐味なんですよね。

ともかく、この作品は、純粋に少年の気持ちになって冒険することで、
物語の展開に頭を悩ませつつも、清々しい気持ちで書き上げることができました。
きっと、これをサイトに載せたいと思ったいまも、そのような気分だからなのでしょう。
この3年間でいろいろなことがありましたし、いまもまた、いろいろなことがあります。

人は変わってゆき、また時間は流れてゆく。
ただ、こうして物語という、変わらないひとつの形を残すことで、
それをまた後の誰かが読んだり、楽しんだりすることがあるのなら、
これは、時間を超えた喜びの大きなひとつになるのであります。



                       2010.9.2 緑川 冬星

                   


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