ノルウェーのプログレバンド特集〜Norwegian Prog Rock
スカンジナビア半島の西岸に位置し、スウェーデン、フィンランドとともに「北欧」諸国として語られる王国で、
氷河やフィヨルドなどでも知られ、スポーツにおいては、スキー競技は勿論のこと、近年ではサッカー代表チームも躍進を遂げている。
音楽においては、ブラックメタルの発祥の国であり、またヴァイキングメタル、フォークメタルなど、ペイガンメタル系のバンドも数多い。
一方で、プログレッシブロックにおいては、隣国スウェーデンに比べマイナーな扱いながら、近年は素晴らしいバンドが次々に現れている。





◆70〜80'sアートロックからプログレへ

Aunt Mary 「Janus」
ノルウェーのアートロック、アント・マリーの1973年作
1970年にデビュー、3作目にしてバンドのラスト作。ブルージーなギターにオルガンが重なり、ジェントルなヴォーカルとともにブリティッシュロック寄りのサウンドを聴かせる。
軽やかなリズムのアンサンブルに、アコースティックを含む優雅なフォーク風味などのメリハリある展開で、プログレッシブな味わいも随所に覗かせる。
哀愁を感じさせるギタープレイや、オルガンなどの鍵盤のセンスもよろしく、巧みなドラムも含めて、当時のノルウェーロックを代表する1枚だろう。
ハードロック、ブルーズロック、フォークなどの要素を混ぜ込んで、北欧風味に仕立てたというような好作品です。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 北欧度・8 総合・7.5
Amazonで購入する

POPOL ACE 「Stolen From Time」
ノルウェーのプログレバンド、ポポル・エースの1975年作
Popol Vuhの名義で1972年にデビューし、2作を残してから改名しての1作目。長らく廃盤だった作品が、2023年にリマスター再発された。
優美なシンセのイントロで幕を開け、英語によるジェントルなヴォーカルとともに、プログレハード寄りのキャッチーなサウンドを聴かせる。
グルーヴィなベースによるノリのあるリズムと、ピアノやメロトロンを含むやわらかなシンセ、叙情的なギターによる優雅な耳心地。
楽曲は4〜5分前後が主体とコンパクトで、同時期のKAIPADICEに比べるとライトな味わいであるが、北欧らしい涼やかな空気感は随所にしっかりと感じられ、ブリティッシュロック寄りのナンバーや、ラストのポップなサイケ感の大曲まで、マニアでなくても楽しめるだけの好作です。
メロディック度・8 プログレ度・7 北欧度・8 総合・8
Amazonで購入する

RUPHUS 「Flying Colors」
ノルウェーのプログレバンド、ルーファスの1978年作
1973年にデビュー、本作は5作目で、ブルージーなギターにハスキーな女性ヴォーカルを乗せた1曲目から、3作目以降のジャズロック色を受け継いだ軽やかなアンサンブルで、クロスオーバーなサウンドを聴かせる。
その後は、北欧らしい涼やかなギターフレーズにエレピを含むシンセと、女性ヴォーカルの歌声を重ねた、優美なフュージョンロックを展開。
楽曲は4分前後のシンプルな味わいであるが、ジャズロックとしての優雅さとシンフォプログレのやわらかな叙情が同居した耳心地の良さで、初期に比べるとぐっと洗練されたという印象だ。
ラストは9分の大曲で、美しいシンセに女性声を乗せた、ゆったりとしたシンフォニックナンバー。優雅な好作品です。
メロディック度・8 優雅度・8 北欧度・8 総合・8 
Amazonで購入する

Host 「Live & Unreleased」
ノルウェーのプログレバンド、ホストの1994年作
1974年に「Pa Sterke Vinger」、1976年に「Hardt Mot Hardt」と、2作を残したバンドのライブ音源集で、1975年のライブ、1991年の復活ライブ、1978年のTV用ライブを収録。
軽やかなドラムに叙情的なギターとシンセを重ね、母国語によるヴォーカルで、北欧らしい涼やかなヴィンテージなアートロックを聴かせる。
手数の多い巧みなドラムに、随所にメロウでブルージーな旋律を奏でるギター、存在感あるベースと演奏力も高く、プログレ、サイケ、ジャズロックと、どの耳でも楽しめる。
70年代の録音も良好で、母国語のMCも含めて当時のライブの臨場感がよく伝わってくる。
90年代の音源は、ややハード感触を強めつつ、巧みなツインギターは健在で、2nd収録の大曲が聴けるのは嬉しい。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 北欧度・8 総合・8
Amazonで購入する

ALF EMIL EIK 「JOY AND BREATH OF ETERNITY」
ノルウェーのミュージシャン、アルフ・エミル・エイクの1979年作
音楽プロデューサーでもあるマルチミュージシャンのソロで、うっすらとしたシンセがメロウなギターを包み込み、涼やかに幻想的なサウンドを描く。
ビート感あるリズムにムーグシンセが鳴り響き、ピアノやサックスが加わったジャズ風味や、マイルドなヴォーカルを乗せた叙情曲など、楽曲ごとに異なる味わいがある。
メロトロンをバックに女性ヴォーカルが重なる優美なナンバーも耳心地よく、叙情的なギターの旋律は、ときにCAMELを思わせたりもする。
北欧らしい涼やかな優雅さという点では、Tributeあたりに通じる部分もあるだろう。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 北欧度・9 総合・8
Amazonで購入する


FOLQUE「LANDET DITT」
ノルウェーのフォークロック、フォルケの1981年作
1974年にデビュー、本作は5作目となる。チャーチオルガンによるイントロから、ロック的なギターに素朴なバンジョーの音色、艶やかなフィドルが重なり、優美なピアノに母国語による美しい女性ヴォーカルも加わり、涼やかな空気に包まれたフォークロックが広がってゆく。
フォーキーながらドラムとギターによるロック色もしっかりあるスタイルは、やはりSprigunsを思わせるが、土着的なギターの旋律はKebnekajseなどにも通じる北欧らしい味わいだ。
キーボードをメインにした小曲などは、プログレ的な味わいで、フィドルが鳴り響くトラッド風味など、北欧的なプログレが好きなら、かなり楽しめるだろう。
一部、男性ヴォーカル曲もあるが、魅力的な女性ヴォーカルをメインにした、プログ・フォークロックの逸品です。
ロック度・8 フォーク度・7 北欧度・9 総合・8 

Utopian Fields
ノルウェーのプログレバンド、ユートピアン・フィールズの1989年作
ANGLAGARDやANEKDOTENが現れ北欧プログレのブームとなる、90年代より早くに、ひっそりと活動していたバンドの作品が再発。
叙情的なギターにオルガンを含むシンセ、マイルドなヴォーカルを乗せた、北欧らしい涼やかなシンフォプログレ。
翳りを帯びた繊細な叙情性は、同郷のKerrrs Pinkなどにも通じる味わいで、素朴な土着性が耳心地よい。
後半は10分を超える大曲が続き、やわらかなフルートやハーモニカの音色、ときにアコースティックギターも加えた、緩急あるインストパートとともに優美な構築センスが光っている。優しい北欧の空気に包まれた好作品だ。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 北欧度・9 総合・8
Amazonで購入する

Thule 「Natt」
ノルウェーのプログレバンド、スーレの1990年作
Ultima Thule名義で、1985年にデビュー、その後Thuleに改名して、本作は2作目となる。
オルガンを含む優美なシンセをギターに重ね、母国語による朗々とした歌声とともに、ダイナミックなハードプログレを展開する。
ProgMetal的でもある緩急あるリズムチェンジと、北欧らしい翳りを帯びた空気に、シンフォニックなテイストが合わさった濃密なサウンド。
シアトリカルに歌い上げるヴォーカルに、ときにガナり声りのコーラスなど、パンキッシュな粗さも覗かせつつ、9分の大曲では、アヴァンギャルドな怪しさに包まれるなど、実験的な作風を随所に取り入れている。
まさに北欧アヴァンプログレの知られざる異色作である。バンドは2005年までに5作を発表している。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 北欧度・8 総合・8
Amazonで購入する



◆シンフォニック/メロディック系

RETROHEADS「Retrospective」
ノルウェーのシンフォニックロックバンド、レトロヘッズの2004年作
Vo、Key、G、Bを一人でこなすTore Bo Bendixenを中心としたバンドで、インストメインの流麗なシンフォサウンド。
CAMELのアンディ・ラティマーか、The Flower Kimgsのロイネ・ストルトかというようなメロウなギターが心地よく、まるでフラキンのメロディアスな部分を取り出したような印象もある。
北欧らしい涼やかな叙情とともに、温かみのある少し素朴なメロディが耳に優しい。北欧シンフォ好きはツボを突かれることうけあいの一作。
シンフォニック度・8 メロディアス度・8 プログレ度・7 総合・8
Amazon.co.jp で詳細を見る


KVAZAR「A GIANT'S LULLABY」
ノルウェーのプログレバンド、クヴァザールの2nd。2005年作
基本はインスト中心で、音にはさほど派手さはなく、むしろぱっと聴きには地味なのだが、よくよく聴けば、このバンドの作る世界観に引き込まれる。
70年代北欧的なレトロな質感と、中世音楽的なメロディラインが交わり、どこか靄がかかったような不思議な空間美を感じさせる。
女性ヴォーカルや、荘厳なチャント風なコーラス、あるいはジャズタッチのピアノ、ANEKDOTENもかくやというメロトロンに、ANGLAGARD風の土着的なギターフレーズ、それらが絶妙に顔を出し、決してうるさくならない程度に楽曲に彩りと深みとを与えている。
決して押しつけがましくない、派手すぎない、奥の深い北欧シンフォニックロックの傑作だ。
シンフォニック度・8 しっとり薄暗度・8 北欧度・9 総合・8.5
Amazon.co.jp で詳細を見る Amazon.MP3

Wobbler「Afterglow」
ノルウェーのプログレバンド、ウォブラーの2nd。2009年作
70年代風のサウンドを聴かせた1stもなかなかの出来だったが、本作は格段に良い。
典雅なチェンバロやフルートの音色で始まるイントロから、続く15分の大曲では盛大にメロトロンが鳴り響き、ANEKDOTENばりに凄まじいプログレが炸裂している。
ハモンドに絡まるリコーダーの響きは中世の世界観を描き、ビブラフォンやチェロなども加わってインスト主体でありながらも起伏に富んだ展開と多彩な楽器の音色で飽きさせない。
テクニカルな軽やかさと、北欧的な叙情と土着性を同居させたアレンジも見事と言う他はない。
トレンドに敢然と背を向け、メンバーがひとつの幻想を描こうとする強度が音にはあり、それが強烈な説得力となって、このレトロかつ北欧的なプログレ/シンフォニックを構築している。
シンフォニック度・8 プログレ度・9 北欧度・9 総合・8.5
Amazon.co.jp で詳細を見る 

Kerrs Pink 「Mystic Spirit」
ノルウェーのシンフォニックロックバンド、ケルス・ピンクの2013年作
繊細系の叙情シンフォとして80年代に2作、90年代に2作、そして2002年作を最後に音沙汰のなかったバンドの、じつに11年ぶりとなる6作目。
音が鳴りだした途端、北欧らしい涼やかな風に吹かれたような錯覚にとらわれる。
オルガンやムーグ、メロトロンといったヴィンテージなシンセもそうだが、なにより土着的なメロディを奏でるギターは初期のKAIPAのような感触で、北欧でしかありえない叙情旋律にウットリなのである。
哀愁を帯びたアコーディオンややわらかなピアノの音色、そして枯れた味わいのヴォーカルもじつにいい味を出している。33年目の最高傑作。
ドラマティック度・8 叙情度・9 北欧度・10 総合・8.5
Amazon.co.jpで詳細を見る

White Willow「Terminal Twilight」
ノルウェーのシンフォニックロック、ホワイト・ウィローの2011年作
前作は女性Voを全面に出した傑作であったが、今作は女性ヴォーカルが代わり、さらにドラムには元ANGLAGARDのマティアス・オルソンが参加している。
そのサウンドは浮遊感を漂わせたサイケ風味のシンフォニックロックで、メロトロンやオルガンなどのレトロな雰囲気と、かつてのANGLAGARDを思わせる、いかにも北欧的な薄暗さに包まれた作風。
しっとりとしたピアノにフルートの音色、女性ヴォーカルの歌声も優しく、アコースティカルな牧歌性もあって、じつにやわらかな耳心地。
アナログ感のある音作りはWobblerなどにも近いか。幻想的な北欧プログレの傑作です。
シンフォニック度・8 やわらか叙情度・9 北欧度・10 総合・8.5
Amazon.co.jp で詳細を見る Amazon.MP3

The WindMill 「To Be Continued」
ノルウェーのプログレバンド、ウインドミルの2010年作
うっすらとしたシンセをバックにフルートやサックスの音色がかぶさりキャッチーなメロディとともに北欧らしい爽やかなサウンドを聴かせる。
随所オルガンなどのレトロなシンセアレンジやメロウなギターも盛り込んで、ときにKAIPAなどを思わせるような北欧らしい叙情もあってじつに耳に優しい。
10分、20分という大曲も軽妙でセンスのよいインストパートで飽きさせない。
シンフォニックな美しさと繊細さが合わさった、まさに北欧シンフォプログレの好作品である。
メロディック度・8 プログレ度・8 北欧度・8 総合・8
Amazon.MP3

Finn Arild「Testament」
ノルウェーのプログレユニット、フィン・アリルドの2010年作
前作はポップな雰囲気の作品であったが、本作はのっけから16分の組曲を持ってくるなどぐっとプログレ寄りの力作に仕上がっている。
曲名通り、GENESISルーツのシンセアレンジに、メロディックなギターのフレーズを含ませて、古き良きプログレの質感を再構築している。
歌メロを含んだキャッチーさも含めて、MOON SAFARIあたりに接近したというような感触もあり、センスのある明快なアレンジに好感が持てる。メロディ派のリスナーには必聴級の傑作だ。
メロディック度・8 プログレ度・8 GENESIS度・8 総合・8
Amazon.co.jp で詳細を見る Amazon.MP3


GALLERY「JAS GRIPEN」
ノルウェーのプログレバンド、ギャラリーの2007年作
適度にハードなギターにオルガンなどのシンセを重ね、マイルドなヴォーカルとともに、ブルージーな感触のプログレハードを聴かせる。
Beardfishにも通じるヴィンテージな感触に、プログレらしいリズム展開も覗かせて、涼やかな哀愁に包まれたサウンドが楽しめる。
うっすらとメロトロンが包み込む、翳りを帯びた叙情性は、White Willowを思わせる部分もあったりと、北欧シンフォ好きには心地よい。
4〜5分前後の楽曲をメインに、ストレートなオールドスタイルながらも、わりとクールでスタイリッシュなセンスも交わった好作品である。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 涼やか度・8 総合・8
AmazonMusic

Nordagust「In the Mist of Morning」
ノルウェーのシンフォニックロック、ノルダガストの2010年作
ギターにシンセ、ヴォーカルをこなすダニエル・ソルヘイムを中心にした3人組でうっすらとしたシンセ、メロトロンなどをバックにゴシック的なダークな世界観で聴かせるサウンド。
ゲスト参加のMADDER MORTEMの女性Voがスキャット的な声を加えていて、幻想的でミステリアスな雰囲気を盛り上げる。同郷のWHITE WILLOWあたりにも通じる作風で、ギターの土着的な旋律はANGLAGARD的でもある。暗がりの叙情をまとった北欧ゴシック・シンフォプログレだ。
シンフォニック度・8 ダークな叙情度・9 北欧度・8 総合・8
Amazon.co.jp で詳細を見る Amazon.MP3


Morild「Aves」
ノルウェーのプログレバンド、モリルドの2013年作
女性フルート奏者を含む6人編成で、やわらかなシンセとギターが絡み、牧歌的なフルートの音色が優しく響く、古き良き感触のシンフォ/プログレサウンド。
アコースティカルな繊細さと北欧らしい土着的なメロディも含んだ聴き心地で、10分を超える大曲をゆるやかに描いてゆく。
派手な盛り上がりや濃密さよりも、涼やかなメロディを素朴な叙情で包んだ作風は、KERRS PINKなどにも近いかもしれない。
ANGLAGARDの1stなどが好きな方にもお薦め。これぞ北欧プログレという好作品です。
ドラマティック度・7 素朴な叙情度・9 北欧度・9 総合・8
Amazon.co.jpで詳細を見る

ELEPHANT PLAZA 「Momentum」
ノルウェーのプログレバンド、エレファント・プラザの2017年作
MAGIC PIEのシンセ奏者を中心にしたバンドで、厚みのあるキーボードアレンジにメロウなギター、マイルドなヴォーカルで聴かせる、スタイリッシュでメロディックなシンフォニックロックサウンド。
いくぶんモダンな味わいを含んだ適度にハードな感触に、一方ではMARILLIONなどにも通じる、ゆったりとした繊細な叙情も感じさせる。
ヴォーカルのジェントルな雰囲気とウェットなメロディには、PALLASあたりを思わせる部分もあり、随所に女性ヴォーカルも加わったキャッチーな優雅さも魅力的だ。
アルバム後半は20分におよぶ組曲で、きらびやかなシンセアレンジと優美な叙情でドラマティックに構築する。
シンフォニック度・8 プログレ度・7 叙情度・8 総合・8
Amazonで購入する

SONIC SIGHT 「ANTHROPOLOGY」
ノルウェーのプログレバンド、ソニック・サイトの2017年作
ソロとしても活動する、マルチプレイヤーのFinn Arildを中心にしたバンドで、叙情的なギターにプログレらしいヴィンテージなシンセを重ね、フィル・コリンズを思わせるジェントルなヴォーカルで、70年代後期のGENESISにも通じるキャッチーなサウンドを聴かせる。
泣きのギターフレーズに優美なピアノで、大人の味わいの叙情に包まれたゆったりとした感触とともに、80年代風のメロディックロックとしても楽しめ、IT BITESあたりが好きなリスナーにも対応。
目新しさはないが、センスある構築力もさすがというところ。キャッチーなシンフォプログレが好きな方には、理想的なバランスのサウンドだと思う。
メロディック度・8 プログレ度・8 優雅な叙情度・8 総合・8
Amazonで購入する

Magic Pie 「Fragments of the 5th Element」
ノルウェーのプログレバンド、マジック・パイの2019年作
2005年にデビュー、過去作はいずれも高品質な傑作であったが、4年ぶり5作目となる本作も、美しいシンセアレンジに適度にハードなギターとマイルドなヴォーカルを乗せ、優美な叙情に包まれた、北欧らしいシンフォプログレを聴かせる。
前半は比較的コンパクトに仕上げられたナンバーで、キャッチーなコーラスハーモニーとともに、A.C.Tなどに通じるスタイリッシュな味わいで楽しめる。
随所に聴かせる流麗なギタープレイなども含めて、演奏力の高さもさすが。ラストは22分の大曲で、テクニカルな構築力とシンフォニックロックとしての優雅なメロディアス性が結実した見事なサウンド。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 優雅度・・9 総合・・8 
Amazonで購入する

ProgAtom 「Spiral」
ノルウェーのプログレバンド、プログアトムの2018年作
2015年にデビュー、本作は2作目となる。アコースティックギターとフルートの音色によるイントロから、母国語によるヴォーカルにメロウなギターを重ねた、涼やかなシンフォニックロックを展開。
ときに女性ヴォーカルも加わり、エレピやメロトロンを含む優美なシンセに叙情的なギターフレーズで北欧らしい幻想的な空気を描き出す。
一方では、キャッチーなヴィンテージロック的な味わいもあり、かと思いきや、しっかりとプログレらしいシンセワークが現れるという、ツボの付き方も心憎い。
10分を超える大曲も優雅な構築力が光る。CDR仕様なのが惜しいが、北欧プログレ期待の逸材です。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 北欧度・9 総合・8
Amazonで購入する

Infringement 「Alienism」
ノルウェーのプログレバンド、インフリンジェメントの2019年作
2作目となる本作も、オルガンを含むシンセをメロウなギターに重ね、味わいのあるヴォーカルとともに、涼やかなシンフォプログレを聴かせる。
叙情的ではあるが決してキャッチーになり過ぎない、どこか醒めたような冷たさを感じさせる点では、モダンなオルタナ感ともいえるだろう。
今作では、10分以上の大曲においての、泣きのギターフレーズでじわじわと盛り上げるところは、シンフォニックロックとしての味わいを強めている。
ラストの16分の大曲も、美麗なシンセワークとギターの重ねで、北欧らしい叙情性を描いており、より優雅な聴き心地の作品に仕上がっている。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 叙情度・8 総合・8
Amazonで購入する

JORDSJO「Salighet」
ノルウェーのプログレバンド、ヨルドショの2023年作
2015年にデビューし、5作目となる。オルガンにフルートが鳴り響くイントロから、すでにヴィンテージ感がたっぷりで、変拍子を含むリズムにギターを乗せて、母国語のヴォーカルとともに、北欧らしいプログレを展開。
ピアノやフルートによる繊細な優美さと、土着的なフレーズを奏でるギターフレーズで涼やかな叙情を描くあたりは、ANGLAGARDKERRS PINKなどにも通じるが、こちらはより北欧の空気を感じさせる。
ときに軽妙に、ときに静謐観も覗かせながら、緩急ある展開で構築されるアレンジセンスも見事。ラストの10分の大曲は、しっとりと優雅な叙情美にうっとりとなる。これぞ北欧プログレという傑作です。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 北欧度・10 総合・8.5 
Amazonで購入する

CHRONICLES OF FATHER ROBIN「The Songs & Tales Of Airoea - Book 1」
ノルウェーのプログレバンド、クロニクルズオブ・ファーザー・ロビンの2023年作
WOBBLER、Fangorn、THE SAMUEL JACKSON FIVEのメンバーによるバンドで、WOBBLERのラーシュ・フレドリック・フロイスリー、JORDSJOのシンセ奏者などがゲスト参加。
ノルウェーの神話/ファンタジー小説に着想を得た、ファーザー・ロビンの旅を描いたコンセプトストーリーの第1章。
優雅なチェンバロにジェントルな歌声を乗せたイントロ曲から、軽やかなリズムにオルガンやメロトロン、フルートが鳴り響き、北欧らしい涼やかな空気に包まれたヴィンテージなサウンドが広がる。
アコースティックなパートなどを織り込みつつ、物語的な流れで展開してゆく大曲は、ときに静かに、ときにアッパーにと緩急あるアレンジで構築される。
いくぶんのサイケ感とともに幻想的な世界観を描き出す、BEARDFISHあたりにも通じるヴィンテージな北欧プログレが楽しめる逸品。よりサイケな2作目へつづく。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 北欧度・9 総合・8 
Amazonで購入する

LARS FREDRIK FROISLIE 「GAMLE MESTER」
ノルウェーのミュージシャン、ラーズ・フレドリック・フロイスリーの2025年作
Tusmorke、White Willow、Wobblerなどに参加するシンセ奏者で、ソロとしては2作目となる。オルガン、メロトロンを含むシンセにフルートの音色を重ね、北欧らしい土着性を感じさせる、ヴィンテージなサウンドを描く。
Anglagardにも通じる涼やかな幻想性と、やわらかなエレピやうっすらとしたメロトロンの響きが楽曲を包み込み、朴訥なヴォーカルもむしろ味わいになっている。
ゆったりとした展開力の中にスリリングな空気をかもしだし、12分の大曲では、Par Lindh Projectにも通じるバロックな優雅さとともに、北欧らしい鍵盤プログレを構築する。
アナログ感ある音質もよろしく、ヴィンテージな北欧シンフォプログレが好きな方には必聴の傑作です。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 北欧度・9 総合・8.5 
Amazonで購入する

Kornmo 「Vandring」
ノルウェーのプログレバンド、コルンモの2019年作
AdventureMorildのメンバーを擁し、2017年にデビューし、2作目となる。オルガンやメロトロンなどのシンセに叙情的なギターを重ね、涼やかな空気を感じさせるシンフォプログレを聴かせる。
オールインストであるが、優美なピアノのパートなども含む、緩急あるリズム展開で、北欧らしい土着性ある叙情美を描いてゆくところは、Kerrs Pinkなどにも通じるだろう。
12分の大曲では、わりとハードなドラムとギターで重厚なパートも現れたりと、プログレらしいドラマティックな構築センスも光る。
牧歌的なギターの旋律とヴィンテージなシンセが融合し、これぞ北欧プログレというサウンドを堪能できる逸品です。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 北欧度・9 総合・8 
Amazonで購入する



◆ヴィンテージ系

Gargamel「Descending」
ノルウェーのプログレバンド、ガルガメルの2008年作
前作もANEKDOTENタイプのなかなかの力作であったが、本作もメロトロンやハモンド、ムーグなど、ヴィンテージな音色を響かせる70年代風の音作り。
ダークな緊張感をただよわせた作風はむしろMORTE MACABREにも近いか。
12分、18分という大曲を含む全4曲という構成で、さすがにやや長尺感があるが、どこかサイケロック気味の浮遊感と、楽曲の盛り上げ方にメリハリがついたことで、壮大な雰囲気に耳惹かれる。
フルートやチェロ、トロンボーンなどの楽器も、効果的に使われている。北欧ヴィンテージ系としてもなかなかの力作だ。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 ヴィンテージ度・8 総合・8
Amazon.co.jp で詳細を見る Amazon.MP3

D'Accord「Helike」
ノルウェーのプログレバンド、ダッコルドの2011年作
伝説の古代都市ヘリケをテーマにしたコンセプト作で、20分を超える2つの大曲で構成されている。
フルートが鳴り響き、まるでOSANNAの「Palepoli」を思わせるような妖しげな雰囲気で幕を開け、オルガンやメロトロン、ムーグの音色にシアトリカルに歌うヴォーカルを含めて、70年代を思わせる雰囲気を漂わせる。
モダンさではなく、牧歌的なやぼったさが魅力で初期のKAIPAなどにも通じる垢抜けないメロウな聴き心地は、オールドファンの耳に優しいだろう。
英国や北欧、イタリアのバンドの感触を覗かせながら、次々に展開してゆく大曲はなかなか圧巻だ。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 ヴィンデージ度・8 総合・8
Amazon.co.jp で詳細を見る Amazon.MP3

TUSMORKE 「Hinsides」
ノルウェーのプログレバンド、タスメルケの2017年作
2012年にデビュー、本作は4作目となる。のっけからヴィンテージなシンセにフルートが鳴り響き、母国語のヴォーカルを乗せたノリの良さで、OSANNAのような妖しく濃密なサウンドを展開。
北欧らしい薄暗さと土着性を、ダークな祝祭感覚で包み込んだという、おどろおどろしさがたまらない。
オルガンやムーグシンセの音色も、どこか恐ろしげで、ジャケのイメージのようなドゥーミィや闇を感じさせつつ、プログレとしてキャッチーなノリを溶け込ませるセンスが素晴らしい。
黒死病をテーマにした20分を超える大曲では、悲しみと哀愁を乗せた空気感に、激しく展開する緩急ある構築性に引き込まれる。これまでよりもさらに一歩踏み込んだ傑作だ。
ドラマティック度・8 ヴィンテージ度・8 妖しさ度・9 総合・8.5
Amazonで購入する

Arabs In Aspic 「Madness and Magic」
ノルウェーのプログレバンド、アラブス・イン・アスピックの2020年作
アコースティックを含むギターにオルガンなどのシンセを重ね、やわらかなヴォーカルとともに、優雅で牧歌的なヴィンテージロック聴かせる。
北欧らしい涼やかな叙情性に包まれつつ、サイケな幻想性と妖しさも混じった、独自のヴィンテージサウンドは、いよいよ円熟の域に到達している。
アコースティックギターにうっすらとしたシンセ、マイルドなヴォーカルでしっとりと聴かせるナンバーは、KING CRIMSON的でもあったりしてよい感じだ。
ラストは16分の大曲で、軽やかなアンサンブルのキャッチーなパートから、北欧らしい翳り帯びた妖しいサイケ感へと展開。ユルくも濃密な力作です。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 ヴィンテージ度・8 総合・8
Amazonで購入する

FATAL FUSION 「DISSONANT MINDS」
ノルウェーのプログレバンド、フェイタル・フュージョンの2020年作
2010年にデビューし、4作目となる。オルガンを含むシンセにほどよくハードなギターを重ね、かすれた味わいのヴォーカルとともに、70年代英国ルーツのヴィンテージなサウンドを聴かせる。
叙情的なギターの旋律なども、アナログ感に包まれたオールドロックの空気感に包まれていて、これという派手さはないのだが、安心できる耳心地の良さ。
14分、16分という大曲をメインに、インストによる小曲などもアクセントになっていて、ラストの大曲はキャッチーな叙情性と、ヴィンテージなプログレ感が融合したサウンドをじっくりと楽しめる。大人の好作品。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 ヴィンテージ度・9 総合・8 
Amazonで購入する


PROFESSOR TIPTOP 「Tomorrow Is Delayed」
ノルウェーのプログレバンド、プロフェッサー・ティプトップの2020年作
4作目となる本作は、新たに女性Vo&シンセ奏者が加入していて、ムーグやオルガン、メロトロンといったヴィンテージなシンセとほどよくユルめの叙情ギターに、けだるげな女性ヴォーカルで聴かせる、優美なサイケ・プログレサウンド。
70年台寄りのアナログ感とともに、やわらかな女性声が優しい聴き心地で、ギターなメロウな旋律にメロトロンが重なると、シンフォニックロックの味わいに。
全体的にこれという盛り上がりはないが、女性声になったことで優雅さが増している。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 女性Vo度・8 総合・8
Amazonで購入する

ANNOT RHUL 「LEVIATHAN」
ノルウェーのプログレバンド、アンノット・ルールの2014年作
のっけから14分におよぶ大曲で、ミステリアスなイントロから、メロトロンやオルガンを含むシンセにメロウなギター、マイルドな男性ヴォーカルに女性ヴォーカルを加えた、幻想的なサウンドを聴かせる。
北欧らしい涼やかな叙情性とサイケ的でもある浮遊感が同居したサウンドは、ゆったりとした味わいながら、ほどよい展開力とヴィンテージな空気感を含んでいて、同郷のD'accord あたりにも近い感触で楽しめる。
スペイシーなシンセとギターによるインストパートを中心に、随所に歌を乗せたユルめの叙情とともに、まったりと鑑賞でき、ラストの12分の大曲では、女性コーラスやストリングスを加えた優美な叙情に浸りつつ、うっすらとしたメロトロンにいくぶんハード寄りのギターが重なって、プログレらしいスリリングな展開も覗かせる。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 ヴィンテージ度・8 総合・8
Amazonで購入する

LUCIFER WAS 「EN FIX FERDIG MANN」
ノルウェーのヴィンテージロック、ルシファー・ワズの2024年作
結成は70年代、1997年にアルバムデビュー、本作は7年ぶりの8作目となる。
適度にハードでブルージーなツインギターにオルガンを含むシンセ、母国語によるジェントルなヴォーカルで、ヴィンテージな北欧ロックを聴かせる。
今作は全編ノルウェー語で歌われていて、叙情的なギターとともに、涼やかな土着性がオールドなロックの哀愁を包み込む。
朗々と歌い上げるヴォーカルに女性コーラスも重なり、優美なピアノやメロトロンなども加わった厚みのあるサウンドは、シアトリカルでドラマティック。
プログレ的な展開はあまりないが、涼やかな哀愁の美学を感じさせる、URIAH HEEPを北欧プログレにしたような逸品です。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 ヴィンテージ度・8 総合・8 
Amazonで購入する

KINGS OF THE VALLEY
ノルウェーのサイケプログレ、キングス・オブ・ザ・ヴァレーの2021年作
オルガンが鳴り響き、わりとヘヴィなギターが重なって、ハイトーンのヴォーカルとともに、70年代ハードロックルーツのサイケドゥーム風に始まり、10分を超える大曲では、リズムチェンジを含むプログレ寄りの構築力と叙情性も覗かせながら、マイルドなヴォーカルがやわらかな歌声を乗せる。
ほどよいハードさとプログレな構築力という点では、URIAH HEEPなどのファンにも楽しめるだろう。
後半の12分超の大曲は、ゆるやかに始まりつつ、サイケなテンションで盛り上げる。全40分というのもアナログ的だ。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 ヴィンテージ度・8 総合・8
Amazonで購入する

Ring Van Mobius 「Commissioned Works Pt Ii - Six Drops Of Poison」
ノルウェーのプログレバンド、リング・ヴァン・モービウスの2023年作
2018年にデビュー、シンセ、ベース、ドラムのトリオ編成で、本作は3作目となる。優美なピアノにメロトロンを含むシンセ、情感的なヴォーカルを乗せて、スペイシーな味わいのサウンドを展開。
軽やかなドラムを中心にしたアナログ感あるアンサンブルと、オルガンなどのヴィンテージな感触はEL&P的でもあり、70年代のバンドのような怪しさも感じさせる。
ピアノをバックにエモーショナルな歌声を乗せる小曲など、緩急あるコンセプト的な流れとともに楽曲を連ねてゆく作風で、大曲こそないのだが神秘的なスケール感を描き出す。
手数の多いドラムにムーグシンセが鳴り響くあたりもたまらない。オールドな味わいの鍵盤プログレ好きなら必聴の内容です。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 ヴィンテージ度・9 総合・8 
Amazonで購入する 

The Flying Norsemen
ノルウェーのプログレバンド、フライング・ノースマンの2024年作
Arabs in Aspicのメンバーが在籍するバンドで、適度にハードさを含んだギターに、オルガンやテルミンの響きが重なり、マイルドなヴォーカルを乗せたヴィンテージロックを聴かせる。
ブルージーなギターは、70年代ブリティッシュロックをルーツにした感触で、ドゥーミィな翳りを帯びたところは、Black Widowあたりのファンにも楽しめるだろう。
8〜12分の大曲を4曲という構成で、テルミンがスペイシーに鳴り響き、どっしりとギターが重なって、サイケなドゥームロックとしても楽しめる。
4パートに分かれた12分の大曲も、ユルめのサイケ感に怪しげなヴォーカルで、幻想的な空気に包まれる。ヴィンテージ・プログ・ドゥームというべき怪作だ。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 ヴィンテージ度・9 総合・8
AmazonMusic




◆ハードプログレ系

PICTORIAL WAND 「A sleeper's awakening」
ノルウェーのシンフォニックロックユニット、ピクトリアル・ワンドの2006年作
チェロやフルート奏者や男女8人のVoを含む、大編成によるCD2枚組みのコンセプト大作。
のっけから、フルートとアコースティックギターの響きが美しく、物語的な語りから曲に入るとシンフォニックなキーボードにややメタリックなギターも加わり、民族的なゴシックシンフォというサウンドになる。
ナレーション入りのストーリーを配した壮大な作風とファンタジックな雰囲気は確かに重なる部分があり、それに加えて北欧フォークロワ的な要素も耳に心地よい。
メタリックな要素もうるさすぎない程なので、ハードめの北欧シンフォとしても聴け、アコースティカルな静寂パートからシンフォニックパートへの切り返しなども効果的。
シンフォニック度・8 プログレ度・7 ファンタジック度・9 総合・8
Amazon.co.jp で詳細を見る

Adventure 「Beacon of Light」
ノルウェーのプログレハード、アドヴェンチャーの2009年作
適度にハードなギターワークとムーグやオルガンを含んだプログレ的なシンセアレンジ、男女コーラスなどを配した、ダイナミックな厚みのあるシンフォニックハードサウンド。
組曲形式の大曲を中心にしたドラマティックな聴き心地は、Ayreonあたりにも通じる壮大さで、物語的に進行してゆく流れもスケールを感じさせる。
やわらかなフルートが美しい小曲もあったり、ラストの組曲では北欧らしい土着的なメロディも覗かせる。メリハリのついた構成で描かれる力作です。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 壮大度・8 総合・8
Amazon.co.jpで詳細を見る


Mater Thallium「Abandoned By the Sun」
ノルウェーのプログレバンド、マーテル・タリウムの2014年作
オルガンやメロトロンが鳴り響き、ハードなギターとともに聴かせる70年代回帰型のスタイル。
かつてのBlack Sabbathを受け継ぐドゥーミィでダークな世界観と、北欧らしい薄暗い叙情が合わさった聴き心地で、BLACK BONZOやLUCIFER WASなどに比べると、ホラーやオカルト的な匂いが強いという点では、MORTE MACABREやGoblin、あるいはBlack Widowレーベル系のファンなどにはとても楽しめるだろう。
北欧のハードプログレシーンにまたしても期待の新鋭が現れた。ANEKDOTENやAnima Morteなどが好きな方もぜひ。
ドラマティック度・8 ハードプログレ度・8 妖しげ度・8 総合・8
Amazon.co.jpで詳細を見る

GENTLE KNIFE 「CLOCK UNWOUND」
ノルウェーのプログレバンド、ジェントル・ナイフの2017年作
2015年にデビューし、2作目となる。女性Voにフルート、サックス奏者などを含む、11人という大編成で、ピアノとトランペットによるしっとりとしたイントロ曲から、シンセを加えたスタイリッシュなアンサンブルに、男女ヴォーカルの歌声を乗せて、ほどよくハードでモダンなプログレサウンドを聴かせる。
15分という大曲では、優雅なフルートやサックスやホルンが鳴り響くゆったりとしたインストパートとともに、チェンバーロック風の空気もかもしだす。
一方ではプログレらしいきらびやかなシンセワークも現れて男女声を乗せたキャッチーなノリのナンバーもあったりと軽妙な作風が楽しめる。
随所に叙情的なギターも覗かせて、ぱっと聴きには派手さはないが、全体的に大人の余裕というものが感じられる、玄人好みのセンスを感じる好作だ。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・8 総合・8
Amazonで購入する

Moron Police 「A Boat on the Sea」
ノルウェーのプログレバンド、モーロン・ポリスの2019年作
2012年にデビューし、3作目となる。初期はメタル寄りのスタイルだったようだが、本作はきらびやかなシンセに、マイルドなヴォーカルを乗せた、MOON SAFARIのような優雅でキャッチーなサウンドで、
ほどよくテクニカルな構築性が加わった聴き心地。サックスやヴァイオリンなどを加えた軽妙な味わいや、プログレハード的なポップ感、日本のゲームミュージックにも影響を受けたというファンタジックな雰囲気も覗かせる。
楽曲は3〜5分前後がメインで、わりとシンプルな爽快さで楽しめるが、とぼけたような唐突な展開や、突然のメタル感触も現れたりと、いかにも若手らしいボーダーレスの詰め込み方にもニヤりとなる。
メロディック度・8 プログレ度・7 優雅度・8 総合・8
Amazonで購入する

LUMSK 「Fremmede Toner」
ノルウェーのトラッドプログレ、ラムスクの2023年作
2003年にデビュー、本作は16年ぶりとなる4作目。女性シンガーが交替したが、それ以外のメンバーはそのままで、うっすらとしたシンセとピアノに美しい女性ヴォーカルを乗せ、いくぶんハードなギターとともに、涼やかな土着性に包まれたサウンドを描く。
プログレ的な構築性も覗かせつつ、北欧らしい翳りを描くあたりは、WHITE WILLOWにも通じるが、より神秘的な空気感が味わえるという点では、ANGLAGARDなどが好きな方にもお薦めだ。
艶やかなヴァイオリンに優美なピアノ、ヴォーカル嬢の初々しい歌声もよろしく、トラッド/フォーク風の歌ものナンバーにも味わいがある。
いくぶんのメタル感触も覗かせるが、全体的には北欧プログレ寄りに鑑賞できる。全59分の力作です。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 北欧度・9 総合・8 
Amazonで購入する

AVKRVST 「WAVING AT THE SKY」
ノルウェーのハードプログレ、アヴクルヴストの2025年作
2023年にデビューし、2作目となる。硬質なギターに涼やかなシンセが重なり、テクニカルなドラムとヘヴィなベースのアンサンブルに、ふっとシンフォニックな叙情が現れる。
北欧らしい涼やかな叙情性と知的な構築力、ときにデスヴォイスも含んだ感触は、OPETHにも通じる聴き心地で、メランコリックなProgMetal好きにも対応。
メロウな泣きのギターにメロトロン風のシンセが重なる美しさなどは、まさに北欧シンフォの感触で、ポストプログレ的なモダンな歌ものナンバーも耳心地よい。
ラストは12分の大曲で、歌い上げるヴォーカルとうっすらとしたシンセ、重厚なギターで、翳りを帯びた叙情に包まれつつ、リズムチェンジとともにドラマティックに展開する。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 OPETH好きにも度・9 総合・8.5
Amazonで購入する



◆ポストプログレ/アートロック系

Airbag 「Identity」
ノルウェーのポストプログレ、エアバッグの2009年作
いまや北欧系の叙情派ポストプログレとしては、Gazpachoと並ぶバンドといってよいだろう。そのデビュー作。
うっすらとしたシンセにメロウな泣きのギターを重ねて、翳りを帯びた繊細な叙情を描くサウンド。
美しいシンセアレンジと扇情的なギターのフレーズは、シンフォニックといってもよい耳心地で、やわらかなヴォーカルを加えた優美な感触は、SYLVANあたりのファンにも楽しめるだろう。
1作目にして、すでに世界観は完成されていて、デイブ・ギルモアのごとき甘美なギターとシンセアレンジの美しさで、PINK FLOYDルーツのシンフォプログレとしても見事な出来である。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 叙情度・9 総合・8 
Amazonで購入する

Gazpacho 「Fireworker」
ノルウェーのポストプログレ、ガスパチョの2020年作
2003年にデビュー、本作は11作目で、人間の根源的本能、精神性をテーマにした深遠なコンセプト作品。
のっけから19分という大曲で、しっとりと美しいシンセアレンジにマイルドなヴォーカルを乗せ、翳りを帯びた物悲しい叙情と、静寂の空間性を含んだ、ドラマティックなサウンドを構築する。
ときに壮麗な混声コーラスや、ヴァイオリンなどもを加えた、優雅で涼やかなシンフォニック性と繊細なピアノをバックにしたゆるやかな歌パートなど、メランコリックな空気感を描きながらも、メリハリある展開が合わさった聴き心地。
中盤にはポストプログレらしい優しい小曲をはさみ、ラストは15分の大曲で、美しいシンセにメロウなギターを重ねて、じわりと泣きの叙情で盛り上がる。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 しっとり優美度・8 総合・8 
Amazonで購入する

Rhys Marsh 「October After All」
イギリス出身、ノルウェーで活動するミュージシャン、ライス・マーシュの2019年作
2008年にデビュー、いまや北欧のポストプログレ系を代表するアーティストの一人だろう。
やわらかなシンセに繊細なトーンのギター、マイルドなヴォーカルを乗せた、キャッチーなサウンドに、涼やかで物悲しい叙情をまとわせた聴き心地。
優美なシンセワークはシンフォニックロック的で、
楽曲は3〜5分前後のわりとシンプルな歌もの風であるが、ときにサックスが鳴り響き、優しいコーラスハーモニーとともに、アダルトな哀愁とセンシティブな空気感に包まれてゆく。
ヴィンテージなシンセによるオールドな感触で、レイドバックした味わいの叙情美溢れる逸品だ。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 叙情度・9 総合・8 
Amazonで購入する

The Opium Cartel 「Valor」
ノルウェーのポストプログレ、オピウム・カルテルの2020年作
WHITE WILLOWのヤコブ・ホルム・ルーポを中心にしたユニットの7年ぶりとなる3作目。
エレクトロな感触を含む美麗なシンセに、コケティッシュな女性ヴォーカルを乗せて、しっとりとした涼やかなサウンドを描く、キャッチーなシンフォニック・ポストプログレ。
サックスが鳴り響く優雅な大人の叙情に、優しい女性声によるどこかなつかしいような哀愁と倦怠の空気が耳に心地よい。
80年代風味のエレクトロなナンバーなども味わいがあって、女性声オンリーになったので、アンビエントな女性声北欧ポップとしても楽しめる優美な逸品です。
ドラマティック度・7 優美度・8 女性Vo度・8 総合・8 
Amazonで購入する

OBERON 「AEON CHASER」
ノルウェーのプログレロック、オベロンの2018年作
バード・オベロン氏による個人ユニットで、本作は3作目となる。前作に比べてバンド感触が増していて、二本のギターに美しいシンセを重ね、マイルドなヴォーカルを乗せた、キャッチーな叙情サウンドを聴かせる。
涼やかな翳りを帯びた空気感と、スタイリッシュなアンサンブルで、わりとハードなポストプログレとしても楽しめつつエモーショナルな歌声とメロウなギターで、繊細な優雅さに包まれた感触は、MARILLIONなどにも通じるだろう。
楽曲は3〜4分前後でシンプルで、プログレらしさはさほどないのだが、アコースティックギターやピアノ、ストリングスなど、優美なアレンジを取り入れた耳心地の良さと、ほどよくハードなロック感が同居したハイブリッドな叙情ロックの逸品です。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 叙情度・8 総合・8
Amazonで購入する

Laughing Stock 「ZERO ACTS 1 & 2」
ノルウェーのプログレバンド、ラッフィング・ストックの2021年作
2018年にデビューし、3作目となる。ZEROという名の少年を題材にしたオリジナルストーリーのコンセプトアルバムで、物悲しいギターとマイルドなヴォーカル、うっすらとしたシンセとともに、ポストプログレ的な繊細な歌もの感触に包まれる。
泣きのメロディを奏でるギターとゲストによるヴァイオリン、チェロなどが加わった、シンフォニックな美しさもあり、派手さはないものの、MARILLIONや、ドイツのSYLVANなどにも通じる叙情美で、しっとりと鑑賞できる。
女性ヴォーカルを迎えた優美なナンバーも含めて、夢見心地のサウンドにゆったりと浸れます。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優美度・8 総合・7.5
Amazonで購入する

SOUP 「VISIONS」
ノルウェーのポストプログレ、スープの2021年作
2006年にデビューし、7作目となる。のっけから15分の大曲で、うっすらとしたシンセに素朴なギターの旋律を重ね、優し気なヴォーカルとともに、SIGUR ROSなどにも通じる繊細な叙情を描く、北欧ポストロック風味のサウンド。
しっとりとした静寂感から、いくぶんノイジーなギターが加わるところは、GODSPEED YOU! BLACK EMPERORなどを思わせる空間的な幻想性を感じさせ、メロトロンなどを含む優美なシンセにフルートやヴァイオリンも加わると、壮麗なシンフォニック性にも包まれて、充分にプログレ向きの味わいのスケールの大きな世界観である。
ラスト曲では、叙情的なギターメロディとシンセの重ねで泣きまくり。無音部分を挟んでから、第二幕というように、繊細なピアノとストリングスが優雅に鳴り響き、ギターとヴォーカルも加わり、シンフォプログレ的に盛り上げる
ドラマティック度・8 プログレ度・7 優雅な叙情度・9 総合・8.5
Amazonで購入する

OCTOPIE 「GREEN DIVINE」
フィンランドのプログレバンド、オクトパイの2024年作
2015年にデビュー、9年ぶりとなる2作目は、2枚組の大作となった。優美なシンセとトランペットによるイントロから、エモーショナルなヴォーカルも加わり、キャッチーな優雅さと、リズムチェンジを含む屈折感が合わさったサウンドを展開する。
オルガン鳴り響くヴィンテージな感触に、QUEENのようなシアトリカルな歌声とコーラスに、緩急ある流れで、ドラマ性のあるサイケデリックを表現している。
ときにフルートやトランペットも加わり、優美なピアノにメロトロンも重なるシンフォプログレの側面も現れるなど、多彩なアレンジも光っている。
ストーリー的な流れとともに、サイケやプログレ、クラシックの要素を混入した、優雅でゴージャスなアートロックというべき力作です。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 優雅度・9 総合・8 
AmazonMusic

DIM GRAY「SHARDS」
ノルウェーのアートロック、ディム・グレイの2025年作
2021年にデビューし、3作目となる。アコースティックを含む叙情的なギターとうっすらとしたシンセ、マイルドなヴォーカルで、涼やかなサウンドを描く。
優美なピアノやストリングスのアレンジなど、ときにシンフォニックな優雅さと、翳りを帯びた叙情に包まれて、北欧らしい土着的なギターの旋律も耳心地よい。
楽曲は3〜4分前後中心で、プログレ的な展開はあまりないが、キャッチーな歌ものナンバーは、繊細なポストプログレとしても楽しめる。
ラストは10分の大曲で、Sylvanのようにじわりと泣きの美学で盛り上げる。メロウなギターと歌メロで、どこをきっても優しい聴き心地の逸品。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 叙情度・8 総合・8
Amazonで購入する


OAK 「THE THIRD SLEEP」
ノルウェーのポストプログレ、オークの2025年作
2013年にデビューし、4作目となる。アコースティックを含むギターに、優美なシンセとピアノ、ジェントルなヴォーカルを乗せ、翳りを帯びた叙情的なサウンドを描く。
いくぶんデジタルなモダンさを取り入れたアレンジに、オルタナ的なメランコリックな空気感と、ほどよくキャッチーな歌メロが合わさって、優雅で耳心地の良い作風だ。
ほどよくユルめのポストサイケ風のパートから、ハードなギターとシンセが重なって、じわりと盛り上げるあたりは、涼やかなハードシンフォという感触に包まれ、ラスト曲ではアグレッシブなメタル感も覗かせる。
いわゆる、スティーヴン・ウィルソン系のポストプログレなどが好きな方にもお薦めの好作品です。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅な翳り度・8 総合・8
Amazonで購入する



◆ガレージ/サイケ/ドゥーム系

Motorpsycho 「Behind the Sun」
ノルウェーのロックバンド、モーターサイコの2014年作
90年代初頭から活動するベテランバンド、オーケストラと組んだ前々作The Death Defying Unicornから一転、シンプルなバンドスタイルへと立ち返った本作は、マイルドなヴォーカルで聴かせる、やわらかな叙情性を前に出したサウンドで、ポストプログレ的な繊細な耳心地である。
一方では70年代的な荒々しいロック感も随所に残していて、ハードロック、ポストロック、プログレなどの要素を含みつつも、どれに偏ることもない、かれららしいグルーヴィなロックが楽しめる。
前作からの続編となる12分の組曲なども含め、あらためて器の大きさを感じさせる力作だ。
メロディック度・7 プログレ度・7 グルーブ度・9 総合・8.5
Amazon.co.jpで詳細を見る

Grand General
ノルウェーのロックバンド、グランド・ジェネラルの2013年作
シンセにヴァイオリン奏者を含む5人編成で、ドラムはMOTORPSYCHOでも活躍するメンバー。
アナログ感を感じさせるギターにヴァイオリンの音色が絡み、うねりのあるベースとドラムが躍動的なグルーブ感を描き出す。
ガレージロック的でもある生々しさとサイケな浮遊感、プログレ的なスケール感が合わさった独自のサウンドありながら、結果してロックであるという、説得力のある抜群の演奏は見事と言う他はない。
オールインストであるが、どっしりとしたリズム隊が重厚さと同時にノリのある緊張感わ作り出し、ヴァイオリンとギターが空間を彩る、その一体感に聴き惚れる。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 アンサンブル度・10 総合・8
Amazon.co.jpで詳細を見る

KNEKKLECTRIC「FOR MANGE MELODIA」
ノルウェーのプログレバンド、ネックレックトリックの2017年作
いくぶんハードさを含んだ叙情的なギターにシンセを重ね、母国語によるマイルドなヴォーカルとともに、ジャズロック感触もある軽やかなサウンドを描く。
アナログ感あるロックのアンサンブルに、北欧らしい自然体の優雅さをまとわせたスタイルは、MOTORPSYCHOにも通じるだろう。
ポストプログレ的な繊細な歌もの感に、ポストロック風の空間性と、涼やかでほどよい叙情性も合わさって、総じて耳心地がよい。
全6曲で30分という短さだが、ラスト曲などは、アナログなオルガンを加えたプログレ感触もあって、北欧系ヴィンテージロックとしても楽しめる。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 優雅度・8 総合・8
Amazonで購入する


Shaman Elephant 「Wide Awake But Still Asleep」
ノルウェーのサイケロック、シャーマン・エレファントの2020年作
わりとフリーキーなギターの重ねにうっすらとしたシンセ、マイルドなヴォーカルも加わり、クラウトロック的なドラッギーなサイケロックを展開。
オルガンやメロトロンなどのヴィンテージな感触と、北欧らしい涼やかな空気も随所に匂わせつつ、アッパーな勢いあるアンサンブルでたたみかける。
キャッチーな歌もの的なナンバーでは、ポストプログレ的な繊細な叙情も感じさせ、全体的にも派手すぎない素朴な耳心地。
後半の11分の大曲は、ほどよくハードなノリと緩急ある知的な構築力で、Motorpsychoなどのファンにも楽しめそうだ。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 サイケ度・8 総合・8
Amazonで購入する

HEX A.D. 「DELIGHTFUL SHARP EDGES」
ノルウェーのプログレ・ドゥームロック、ヘックスADの2023年作
2016年に自主デビュー、本作は5作目となる。のっけから12分という大曲で、ハードなギターにオルガンが鳴り響き、朗々としたヴォーカルとともに、ヴィンテージなプログレ・ドゥームロックを聴かせる。
涼やかなシンセアレンジに叙情的なギターを重ねた、インストパートでのミステリアスなスケール感はときにMOTORPSYCHOにも通じ、単なるドゥームの枠を超え、北欧らしいハードプログレとしても楽しめるだろう。
アルバム後半の大曲では、ダミ声ヴォーカル入りのイーヴルな雰囲気も覗かせるなど、なかなか一筋縄ではいかない。北欧プログレドゥームの異色作である。
ドラマティック度・8 プログレ度・7 北欧度・8 総合・8
Amazonで購入する



◆チェンバー/アヴァン系

FARMERS MARKET「MUSIKK FRA HYBRIDENE」
ノルウェーの変態民族ロックバンド、ファーマーズ・マーケットの2nd。1997年作
本作は、007やインディージョンズなどの映画音楽や、ポップソング、ロックの名曲、あげくの果てにはルパン三世あたりまでを取り込んだ、抱腹絶倒メドレー!!
それも打ち込みなどは使わずすべて人力の生楽器でやっているのが凄い。素晴らしい演奏力をこんなことに使ってしまっていいのか(笑)。
他の曲も変拍子と馬鹿テク炸裂で、ある意味MATS/MORGANにも通じるどこかおちゃらけたユーモアとともに、ジャンル分け不能の曲が並ぶが、それでも何曲かはバルカン音楽を基本とした比較的まともなトラッドロックをやっていて、こちらも一線級の出来なのでよけいギャップがおかしい。
ジャケに書かれているのはヨーロッパの地図だが、よく見ると国や都市の場所が変。
タイトルの「ハイブリッド諸島」という架空の地域の音楽という設定らしく、ジャケの地図にもその諸島がちゃんと記されている。これもセンスのあるギャグ。
テクニカル度・10 すっとぼけ度・10 トラッ度・7 総合・8
Amazon.co.jp で詳細を見る 

WHEN 「You are Silent」
ノルウェーのアヴァン・チェンバーロック、ウェンの2008年作
不穏なチェロの音色にピアノのつまびき、語りのようなヴォーカルとともに、静寂感のあるダークな空間を描き出す。
かと思うとノイジーなギターが割り込んできて、恐ろしげなSEも挿入されたホラームービー的なサウンドコラージュがじつに怪しい。
2曲目はキャッチーな歌が入ったバンドアレンジのスペイシーなサイケロック風だったり、4曲目は物悲しい歌ものポストプログレ的だったりと、とりとめがないのだが、ラストは20分の大曲で、BURZUMを思わせるような地下臭ただよう世界観がたまらない。まさに暗黒魔王というべき力作です。
ドラマティック度・7 暗黒度・9 アヴァンギャル度・8 総合・8
Amazon.co.jpで詳細を見る

PANZERPAPPA 「Pestrottedans」
ノルウェーのチェンバーロック、パンザーパッパの2016年作
結成は90年代というバンドで、ムーグなどのプログレ的なシンセにサックスが鳴り響き、わりとメロディックなギターフレーズを乗せた、ジャズロック色もある軽妙なサウンドを聴かせる。
とぼけた味わいはSAMLA MAMMAS MANNAにも通じる雰囲気で、カンタベリー的な優雅さもある。
ベースとドラムの生み出すわりとストレートなノリの良さと、屈折感をほどよく同居させたセンスもなかなかで、アヴァンギャルド過ぎずダークな要素も薄いので、チェンバー・ジャズロック初心者にも聴きやすい作風だろう。
オールインストで演奏が流麗なため、聞き流してしまいそうになるのだが、アンサンブルのレベルは高く、メロディも分かりやすいためキャッチーな爽快さもあって、軽快なプログレ・ジャズロックとしても楽しめる。
メロディック度・8 チェンバー度・7 ジャズロック度・8 総合・8
Amazon.co.jpで詳細を見る

KAUKASUS 「I」
MOTORPSYCHOのケティル・ヴェストラム・エイナーソン、元ANGLAGARD〜WHITE WILLOWのマティアス・オルソン、そしてライス・マーシュという、ノルウェー、スウェーデン混合のユニット、コーカサスの2015年作
マティアス・オルソンといえば、NECROMONKEYを結成して話題を呼んだが、本ユニットの方はトリオ編成による、アナログ感に包まれたシンプルなアンサンブルに、ライス・マーシュのマイルドな歌声を乗せた、ダークな空気感に包まれたサウンド。
メロトロンを含むスペイシーなシンセにフルートが妖しく鳴り響き、モーターサイコのようなスケール感と、北欧らしい涼やかな聴き心地に、アヴァンギャルドなセンスも覗かせる。
クリムゾンやANEKDOTENなどを思わせる部分もありつつ、フルートとシンセをメインにしたアンビエントなナンバーやモダンなポストプログレ風味も含んだ、古さと新しさを自然体で内包したような強力作です。
ドラマティック度・7 プログレ度・8 北欧度・8 総合・8
Amazon.co.jpで詳細を見る

PIXIE NINJA 「COLOURS OUT OF SPACE」
ノルウェーのプログレバンド、ピクシィ・ニンジャの2020年作
元ANGLAGARDのマティアス・オルソンが参加するバンドの2作目。エレクトロな感触もある優美なシンセの重ねにギターとドラムを加えて、北欧プログレらしいクールな空気感に包まれた、インストによる音響サウンドを展開。
エレクトロな雰囲気がアナログ感につながっているという点では、むしろヴィンテージといってよい聴き心地で、ときにチェロやホルンなども加えた、わりとチェンバープログレ風味のスリリングな優雅さも覗かせる。
前作以上にギターがヘヴィにうなる部分もあって、シンセとの重なりとハードなドラムサウンドが合わさって重厚なスケール感を描いている。
10分前後の大曲を主体に、涼やかな景色を音で表現するような傑作だ。
ドラマティック度・8 プログレ度・8 北欧度・8 総合・8.5 
Amazonで購入する

SUBURBAN SAVAGES 「DEMAGOGUE DAYS」
ノルウェーのプログレバンド、サバーバン・サヴェージスの2021年作
PANZERPAPPAのメンバーを中心にしたバンドの2作目で、軽やかなリズムに優美なシンセとギターを乗せ、マイルドなヴォーカルとともに、優雅でキャッチーなサウンドを描く。
1作目以上に肩の力の抜けた作風で北欧らしい涼やかな叙情を覗かせつつ、ヴィンテージなシンセによるレトロ&エレクトロな味わいもまじえて、やわらかなインストパートを構築する。
女性ヴォーカルも加わった優しい耳心地や、メロウなギターの旋律が、シンフォプログレ的な色合いも覗かせながら、音を重ねすぎないセンスも素晴らしい。まさに軽妙で優雅な逸品。
ドラマティック度・7 プログレ度・8 優雅度・9 総合・8
Amazonで購入する

The Tronosonic Experience 「The Shadow Vol.2」
ノルウェーのジャズロック、トロノソニック・エクスペリエンスの2022年作
2017年にデビューし、4作目。前作の続編となる作品で、グルーヴィなドラムとベースにフリーキーなギターとサックスが鳴り響く、スリリングなヘヴィ・ジャズロックを展開。
12分の大曲では、ノイジーでダークなヘヴィネスが不穏な空気を描き出し、ミステリアスなアヴァンロックとしても聴けるだろう。
サウンドスケープ的なギターにサックスが重なるクリムゾン的な感触もあって、オールインストであるが、緊張感あるアンサンブルで、エクスペリメンタルなジャズロックが楽しめる。、
アヴァンギャル度・8 ジャズロ度・7 ミステリアス度・8 総合・8
Amazonで購入する




◆エレクトロ/アンビエント系

Erik Wollo 「Elevations」
ノルウェーのミュージシャン、エリク・ウォーロの2007年作
広がりのあるシンセサウンドに、ディレイの効いたギターが幻想的なフレーズを奏でる。
涼やかで荒涼とした空気感に包まれながら、繊細な美意識と空間性を感じさせるサウンドだ。
翳りを帯びた静謐感は、Klaus Schulzeをシンフォニック寄りにしたような雰囲気もあるが、こちらはゆったりとしたメロディの流れがあって、ネイチャーな音で雄大さを描くようなところは、GANDALFなどの世界観にも通じるだろう。ヒーリング系シンフォとしても、ゆったりと鑑賞できる。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 幻想度・8 総合・8 
Amazonで購入する

WESERBERGLAND「Sehr Kosmisch Ganz Progisch」
ノルウェーのプログレバンド、ウェザーベルグランドの2017年作
WHITE WILLOWのケティル・ヴェストラム・エイナーセンを中心に、同バンドのヤコブ・ホルム・ルポ、マティアス・オルソン、WOBBLERのラーズ・フレデリク・フロイスリーらが参加、エレクトロなシンセを、アナログ感あるドラムに乗せ、涼やかな叙情に包まれたインストサウンドを聴かせる。
TANGERINE DREAMなど、ジャーマンロック的でもあるスペイシーな感触もありつつ、メロウなフレージングを奏でるギターや、清涼感のある美しいシンセの重ね、やわらかにフルートが鳴り響くあたりは、やはり北欧らしい聴き心地。
躍動感のあるマティアス・オルソンのドラムもアンサンブルの屋台骨になっていて、12分、15分という大曲を、適度にフリーキーかつ軽妙に構築してゆく。
NEKROMONKYPIXIE NINJAなどに通じるところもありつつ、より美麗なシンセサウンドが楽しめる逸品です。
キーボー度・8 プログレ度・8 北欧度・8 総合・8
Amazonで購入する

BREIDABLIK 「ALDUORKA」
ノルウェーのエレクトロ・アンビエント、ブレイダブリクの2022年作
フェロー諸島をテーマにした作品のようで、デジタルなシンセの重ねをメインに、20分を超える大曲から始まる。
荒涼とした空気を感じさせるシンセミュージックは、やはりKlaus SchulzeERIK WOLLOなどを想起させるが、メロウなギターフレーズが重なると、GANDALFのような自然派シンフォニックロック的な味わいにもなる。
2曲目は、ドラムのリズムが入り、とたんにロック感触が強まって、GONGのようなスペイシーなサイケロック風に。
やわらかなフルートの音色がうっすらとしたシンセにかぶさる、しっとりと幻想的なナンバーも耳心地よく、全作に比べてネイチャーな叙情性を感じさせつつ、エレクトロとプログレ要素のバランスのよい作品に仕上がっている。
シンセ度・8 ロック度・5 幻想度・8 総合・8
Amazonで購入する

ALWANZATAR 「ENGSYRE」
ノルウェーのエレクトロ・プログレ、アルワンザターの2023年作
TUSMORKEのKristoffer Momrakによるソロプロジェクトの6作目。ムーグやメロトロンなどのシンセをエレクトロに重ね、スペイシーでサイケな浮遊感を描く。
ジャケのイメージのような、妖しい幻想童話的な世界観も感じさせ、チープさをかもしだすオールドなシンセサイザー感触もいかにも確信犯的。
フルートがアラビックな旋律も覗かせつつ、北欧らしい涼やかな味わいで、アナログシンセのやわらかな耳心地がサイケなトリップ感を生み出している。
単なるシンセミュージックという以上に、プログレらしい幻想性に包まれていて、ピコピコ系なのに北欧シンフォの雰囲気も残した異色作である。
ドラマティック度・7 プログレ度・7 エレクトロ度・8 総合・8
AmazonMusic



◆フォーク/トラッド系

Sinikka 「Har Du Lyttet Til Elvene Om Natta?」
ノルウェーの女性シンガー/カンテレ奏者、シニカ・ランゲランドの1995年作
繊細なカンテレの音色に、母国語による美しい女性ヴォーカル、アコースティックギターにサックスなどを加えた、優雅でコンテンポラリーなトラッドサウンドを聴かせる。
ハープのように美しいカンテレのつまびきと、ヴォーカリストとしても巧みな表現力で、シンプルな音数ながら、しっとりとした優美な耳心地に浸れる。
コントラバスによるジャズタッチのグルーブ感や、素朴なリコーダーなどのフォーク要素も含みながら、カンテレの音色が優しい透明感を描いてゆく。魅力的な女性声とカンテレの響きが楽しめる逸品です。
アコースティック度・9 優美度・8 女性Vo度・8 総合・8
Amazonで購入する

SHINE DION「KILLANDRA」
ノルウェーのトラッドフォーク、シャイン・ディオンの1st。1998年作
ヴァイオリンやフルート、マンドリンなどの牧歌的な音色に美しい女性ヴォーカルの歌声で聴かせる、やわらかな北欧トラッド・フォークサウンド。
メロディが適度に田舎くさく、キャッチーなクサさというか、曲によってはシンセメロトロンまで使用していて、プログレ/シンフォ系のリスナーにも楽しめる音だろう。
女性ヴォーカルの歌声も絶品とはいかぬが、なかなか綺麗な歌唱でむしろ田舎っぽくてなごみます。
メロディ臭さ度・9 トラッ度・8 女性Vo度・8 総合・8
Amazon.MP3


THE SMELL OF INCENSE「OF ULLAGES AND DOTTLES」
ノルウェーのサイケフォークバンド、スメル・オブ・インセンスの2nd。2008年作
1992年にデビュー、前作から10年ぶりのアルバム。童話ちっくなジャケが可愛い作品。
サウンドの方は、メロトロンやハモンドの音色に、サイケがかったギターが絡みやわらかな女性ヴォーカルが牧歌的に歌い上げる、耳に優しい聴き心地。。
前作よりもずいぶんキャッチーになり、むしろ70年代プログレ的な雰囲気でEARTH AND FIREなどを思い出す部分もある好作品だ。
メロディアス度・8 プログレ度・7 女性Vo度・8 総合・8
Amazon.co.jp で詳細を見る


GATE「ISELILYA」
ノルウェーのラジカルトラッド・ロックバンド、ゴーテの2nd。2004年作
正統的な北欧トラッドをモダンに構築し直したというようなスタイルで、1作目はフォークメタル寄りに楽しめたが、本作も、艶のある女性ヴォーカルをフロントに、フィドルが鳴り響く北欧らしいトラッドメロディをバンドサウンドで解釈している。
いうなれば、GARMARNAあたりにも似た質感であるが、そこにキーボードによるシンフォニック性や、ときにゴシックメタル的な部分を加味したような雰囲気もある。
寒々しい静寂感と同時に、ロック的なノリの良さ(ときにサイケ調)も併せ持っていて単なる自己満足ではない聴きやすさがあるのがよい。
メロディアス度・8 北欧トラッ度・9 女性Vo度・8 総合・8
Amazon.co.jp で詳細を見る

Tirill「Dance With the Shadows
ノルウェーの女性アーティスト、ティリルの2003年作
WHITE WILLOWにヴァイオリンで参加したこともある彼女だか、本作ではヴォーカルにヴァイオリン、シンセ、パーカッションもこなしている。サウンドはしっとりとした女性ヴォーカルに、うっすらとしたシンセにつまびかれるギターなどによる、薄暗くアンビエントなもの。
北欧らしい翳りと土着性は、WHITE WILLOWやANGLAGARDあたりの雰囲気にも通じる。
フルートやチェロなどの音色とともに、静謐感を漂わせたたゆたうような叙情にうっとりです。
アコースティカル度・8 北欧度・8 女性Vo度・8 総合・8
Amazon.co.jp で詳細を見る Amazon.MP3

Annbjorg Lien「Khoom Loy」
ノルウェーの女性アーティスト、アンビヨルグ・リエンの2012年作
フィドル奏者でありシンガーでもある女性アーティストで、北欧トラッドをベースにしつつも、ときにオリエンタルな雰囲気を漂わせた作風の中を、艶やかなフィドルが鳴り響く。
ドラムを含んだロック的なアンサンブルに、随所にシンセも使ったアプローチで、プログレ方面のリスナーにも楽しめる。
一方では美しい歌声で聴かせるしっとりしたナンバーもあり、ブズーキやフルートが素朴な音色を聴かせてくれる。モダンすぎないアレンジセンスも素晴らしい。
アコースティカル度・7 ヴァイオリン度・9 アレンジセンス度・9 総合・8
Amazon.co.jpで詳細を見る Amazon.MP3


Ljom 「Seterkauk」
ノルウェーのフォークロック、リオンの2014年作
エレキギターを使った適度なロック風味に、やわらかなピアノに母国語の女性ヴォーカルを乗せ、コンテンポラリーなフォークロックを聴かせる。
シンセを使ったプログレ寄りの感触もあって、クラリネットやリコーダー、チェロの音色とともに、チェンバーロック的な優雅な味わいも感じさせる。
北欧トラッドルーツの土着性も覗かせながら、スタイリッシュにアレンジするモダンなセンスは、GARMARNAあたりにも通じるかもしれない。
ジャズタッチのピアノなどボーダーレスの優美さにフォーク、トラッドの素朴な空気を自然に同居させるあたりも心憎い。
優雅度・8 北欧トラッド・8 女性Vo度・8 総合・8
Amazonで購入する


Jenny Hval「Apocalypse, Girl」
ノルウェーの女性SSW、ジェニー・ヒヴァルの2015年作
2011年作「Viscera」の出来が素晴らしかったが、本作はなにやら妖しい語りによるイントロから始まり、少女めいた囁きのようなキュートな歌声を乗せ、浮遊感のあるシンセアレンジと、エキセントリックな空気感に包まれたサウンドを展開。
向こう側に倦怠の闇を匂わせる、危うくけだるげな狂気が、スリリングに漂ってくるような、いわば、ケイト・ブッシュを暗黒寄りに包み込んだというような、アーティスティックなセンスが素晴らしい。
ラストの10分におよアヴァンギャルドなナンバーまで、単なる女性声サイケポップの域を超えた異色作。
ドラマティック度・8 倦怠の狂気度・9 女性Vo度・9 総合・8.5
Amazonで購入する



*北欧プログレ・レビューページ
*北欧シンフォプログレ特集ページ