最近のフィンランドメタル
2009〜2011年のフィニッシュメタル作品オススメ盤

STRATOVARIUSの登場から始まったといってもよいだろう、
フィンランドのメタルシーンは、90年代後半からじわじわと盛り上がりを見せ始め、
CHILDLEN OF BODOMSONATA ARCTICANightwishなどの登場と、
その人気によって決定的となり、いよいよ世界的な注目を集めてゆくことになる。
そうして、このムーミンとサンタクロースの国からは、多くの良質なバンドたちが次々に出現し、
フィンランドはもはや北欧のみならず世界的に見てもレベルの高いメタルバンドの宝庫になった。
ベテランのAMORPHISを筆頭に、KORPIKLAANIFINNTROLLMOONSORROWTURISASといった、
いわゆるフォークメタル/ヴァイキングメタルバンドの人気ぶりも、現在ではひとつのムーブメントになりつつある。
ここでは、現在形のフィニッシュメタルシーンにおける、この数年内の傑作アルバムを厳選して紹介したい。
新しくフィンランドのメタルの魅力にとりつかれた方などにも、参考にしていただければ幸いである。


                                    2011.7.12 緑川とうせい



◆メロパワ/シンフォメタル系

STRATOVARIUS「Polaris」
フィンランドのベテランバンド、ストラトヴァリウスの2009年作
ティモ・トルキと他メンバーの確執から、一時は解散状態にあったというこのバンドだが
残ったメンバーが集まってみたら、まぎれもないSTRATOVARIUSの音になったということらしい。
確かに曲といい演奏の質といい、ティモ・トルキの不在を感じさせないくらいにはクオリティが高く、
どの曲も安心して楽しめる。ティモ・コティペルトのいつにない伸びやかな歌唱も、ようやく自分の曲を
バンドで活かせるという喜びの現れなのだろうし、イェンス・ヨハンソンのきらびやかなシンセワークもさすがだ。
ただやはり、個人的にはティモ・トルキの生み出す内向的で繊細な感性と北欧的な湿り気のあるメロディが
とても好きだったので、いくら質が高かろうともこれはかつてのストヴァリとは別物なのだと思うべきだろう。
メロディアス度・・8 疾走度・・7 ストヴァリ度・・7 総合・・8
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Revolution Renaissance「Trinity」
元STRATOVARIUSのティモ・トルキ率いるレヴォリューション・ルネッサンスの2010年作
バンド編成となっての2作目で、前作から1年という短さで発表された本作は、RRとしてのラスト作となってしまった。
そのサウンドは、メンバーの代わったSTRATOVARIUSというべきもので、普遍的なハードロック、北欧メタルの質感と
ティモ・トルキという人間の音楽的センス、その根幹ともいうべきスタイルに立ち返ったような、とても素直な作風だ。
正直、今の時代においてはいくぶんの古めかしさも感じられるし、おそらくはそれが経済的な面でもバンドを維持するのが
難しくなったのだろうが、かつてのストラト、ティモ・トルキの音楽を聴き続けてきた人間にとっては充分に楽しめる内容。
派手に疾走する曲は少ないものの、10分を超えるタイトル曲は壮大にしてダイナミックな入魂の出来だ。
メロディアス度・・8 疾走度・・7 北欧度・・8 総合・・8
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Sonata Arctica「Days Of Grays」
フィンランドのメロディックメタルバンド、ソナタ・アークティカの2009年作
ファンタジックでコンセプト的なシンフォニックメタルの力作。
美しくももの悲しいイントロから女性声の語りが入って、まるで映画のような序曲から
いよいよ楽曲が始まると、壮麗なシンセをバックにしてRHAPSODYばりにきらびやかに疾走。
次々に押し寄せるドラマティックな高揚感と、緩急を付けたストーリー的な楽曲構成は
これまでの彼らには見られなかったもので、この吹っ切れたような大仰さが素晴らしい。
オペラティックなメタルという点ではKAMELOT的でもあるが、より繊細なファンタジーの表現が、
見事な結晶となって音に現れている。このバンドの新たな側面をまざまざと見せつけた傑作である。
シンフォニック度・・9 ドラマティック度・・9 壮麗度・・9 総合・・8.5
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CARDIANT「Tomorrow's Daylight」
フィンランドのメロディックメタルバンド、カーディアントの2nd。2009年作
このバンドの1st「Middy Moon」は北欧らしい美しい叙情性と初期SONATA ARCTICA的な疾走感で
なかなか素晴らしい作品だったのだが、今作はメンバーチェンジをへての5年ぶりのアルバムとなった。
一聴してより正統派のメロパワサウンドに接近しているが、美しいシンセワークや
ヴォーカル、コーラスにおけるクサメロぶりは健在でファンはにんまりだろう。
疾走感はやや抑えめながら、爽やかなメロディへのこだわりという点では
AXENSTARSUPREME MAJESTYあたりに通じるものもあるかもしれない。
メロディアス度・・8 疾走度・・7 北欧度・・8 総合・・8
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Celesty「Vendetta」
フィンランドのメロディックメタルバンド、セレスティの4th。2009年作
初期の疾走メロスピサウンドから、前作ではよりシンフォニックメタル的な
エピックな世界観を前に出してきて、そろそろ傑作を作りそうだぞと思っていたら、
やってくれました。美麗なシンセによるオーケストレーションと大仰なクワイアで
RHAPSODYばりの壮大華麗なサウンドを描くことに成功。おお、いいじゃない!
弱かったヴォーカルも、コーラスに助けられつつも、今回はずいぶん頑張っている。
このバンド独自の色というのはいまだ見えないが、質の高さではこれまでで一番だろう。
シンフォニック度・・8 疾走度・・8 壮麗度・・9 総合・・8
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Thaurorod「Upon Haunted Battlefields
フィンランドのシンフォニックメタルバンド、サウロロッドの2010年作
いかにもエピックな感じのジャケからしてつい期待してしまうのだが、
サウンドの方はシンフォニックなシンセとともに、DRAGONFORCEばりに疾走、
いくぶんヴァイキング調も含んだメロディでたたみかけるメロスピ作。
ブラストビートも入った激しさもあり、感触としてはENSIFERUMあたりにも近いか。
美麗なシンフォニックさと勢いある疾走感、楽曲はメロディアスで質はなかなか高いのだが、
現時点では既存のバンドの寄せ集め的で、このバンドならではの個性はまだ薄い。今後に期待。
シンフォニック度・・8 疾走度・・8 新鮮度・・7 総合・・8
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LEVERAGECircus Colossus」
フィンランドのメロディックメタルバンド、レヴェレイジの2009年作
北欧らしい美しさと、疾走に頼らないキャッチーな聴き心地で、
前の2作もなかなかの出来であったが、3作目となる本作でも、
美麗なイントロからシンセをふんだんに使ったシンフォニック性と
マイルドなヴォーカルの歌声とメロディで質の高いサウンドを描いている。
今作では全体的により壮大かつドラマティックな雰囲気に包まれていて、
ツインギターのフレーズも効果的に楽曲を彩っている。ミドルテンポ主体で聴かせるスタイルは、
ときにメロディアスハード風味にもなるが、王道の北欧メタルの継承者はこのバンドなのかもしれない。
メロディアス度・・8 疾走度・・6 ドラマティック度・・8 総合・・8
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◆女性ヴォーカル/ゴシック系

Amberian Dawn「End of Eden」
フィンランドのシンフォニックメタルバンド、アンベリアン・ドーンの2010年作
Nightwishタイプのバンドとして2008年にデビューし、これが3作目となる。
前作で聴かれたバンドとしての成長が、本作ではさらにサウンドとしての自信に現れており
シンフォニックメタルとしての美麗さとヘイディ嬢のオペラティックな歌声に加えて、
楽曲としてのメリハリも前作よりもついた。とくに間奏部分のギターとシンセのアレンジ、
アグレッシブに聴かせるネオクラ的な流麗さが、曲の中で上手くコントラストになっている。
こうなるとやはり比較するのはNightwishということになるのだが、このバンドのレベルも
充分対抗できるところにまで来ている。あとはインパクトのある勝負曲が加われば。
シンフォニック度・・8 美麗度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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DOTMA「Sleep paralyses」
フィンランドのシンフォニックメタルバンド、ドトマの2011年作
Nightwishの登場以降、女性Voのシンフォニックメタルは続々と登場しているが、
このバンドも美声のソプラノシンガーをフロントにした壮麗なサウンドをやっている。
シンセによるシンフォニックな広がりと、北欧らしいトラディショナルなメロディを盛り込んだ楽曲は
なかなか質が高く、ヨハンナ嬢の歌声はいくぶん線が細いものの、その分繊細なソプラノで魅了する。
AMBERIAN DWANThaurorodのメンバーなども関わったということもあり、満を持してのデビュー作であろう。
MOONSORROWあたりを思わせるゆったりとした重厚さも含め、世界観の強度という点でも確固たる美意識を感じる。
シンフォニック度・・8 北欧度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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BattleloreDoombound
フィンランドのファンタジー・ゴシックメタル、バトルローの2011年作
2002年のデビューから、男女ヴォーカルのファンタジー・エピックメタルを標榜するこのバンド、
最高傑作となった前作に続く6作目で、今回はトールキンの物語をテーマにしているようだ。
ツインギターの重厚さと、男女Voの使い分け、シンセによるシンフォニックな味付けが合わさり、
フルートが鳴り響く土着的なトラッド要素も含めて、本格派のファンタジックメタルを展開、
ヴァイキングメタラーをも唸らせる世界観の描写に磨きがかかっている。メンバーのいでたちも含めて、
コスプレ・エピックメタル最高峰の地位は揺るがない。
ドラマティック度・・8 ファンタジック度・・9 エピック度・・9 総合・・8
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For Selena And Sin「Primrose Path」
フィンランドのゴシックメタルバンド、フォー・セレナ・アンド・シンの2009年作
女性Voにシンセを含む6人組で、適度にモダンさのあるゴシックメタルサウンド。
ツインギターのヘヴィなリフに美しいシンセが合わさった演奏には音の厚みもあり、
実力のある女性ヴォーカルの伸びやかな歌声は、AFTER FOREVERあたりを思わせる。
楽曲の構築力と世界観、歌唱力を含めた説得力あるサウンドが見事。堂々たる力作である。
シンフォニック度・・8 ゴシック度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
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Swallow the Sun「New Moon」
フィンランドのゴシック・ドゥームメタル、スワロー・ザ・サンの2009年作
毎作、ダークで濃密なゴシック・ドゥームを作り上げてきた彼らだが、
本作は前作以上にメロウなギターフレーズで聴かせる叙情性が増した傑作となった。
もちろん従来通りドゥーミーな重厚さは健在だが、楽曲にはいくぶんメロデス的な質感がそなわり、
それとともにメリハリのついた構成力で、メロディアスな部分をより引き立たせている。
ブラック声に低音デスヴォイス、ノーマル声を使い分けるヴォーカルの表現力も上がっていて、
もの悲しくも美しいメランコリックな世界観が、ある種ドラマティックなまでに構築されてゆく。
メロディアス度・・8 重厚度・・8 メランコリック度・・9 総合・・8
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POISONBLACK「Of Rust And Bones」
Sentencedのヴィレ・レイヒアラ率いるゴシックロックバンド、ポイズンブラックの4th。2010作
メランコリックな叙情メロディを含んだゴシックロックサウンドはいつもながらに高品質。
今作ではギターのフレーズに今までになく渋さというか、大人の哀愁が漂っていて、
これでデスヴォイスが入れば、そのままSentencedになりそうな雰囲気の曲もある。
またオルガンの使用なども含めて70年代プリティッシュハードロック的な香りも漂い
ブルージーな質感をまとわせた音作りは個人的にもけっこう好み。渋さの効いた好作である。
ドラマティック度・・8 メランコリック度・・8 渋い叙情度・・8 総合・・8
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IndicaA Way Away
フィンランドの女性5人組ロックバンド、インディカの2010年作
もともとはフィンランド語によるガールズロックバンドとしてデビューし、
これまでに4作を出しているが、本作は英語による世界デビュー盤となる。
Nightwishばりのシンフォニックな美麗さに、コケティッシュな女性ヴォーカルの歌声、
キャッチーなメロディで聴かせる比較的コンパクトな楽曲は、ヘヴィさよりもポップな感触で
ハードロック/メタルのリスナーにとどまらない、一般にも受けるだけの聴きやすさがある。
ただ、雰囲気にはフィンランドらしい翳りある叙情性もあって、ゴシックロック的な世界観とともに
女性バンドならではの耽美さも垣間見える。ヨーロピアン・フィメールロックの期待の星である。
メロディアス度・・8 メタル度・・6 女性Vo度・・8 総合・・8
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◆メロデス系

CHILDREN OF BODOM「Relentless.reckless Forever」
フィンランドのメロデスバンド、チルドレン・オブ・ボドムの2011年作
初期の王道のメロデス路線からしだいにモダンなヘヴィネスを含ませたサウンドへ進化させ
いまや世界的なメタルバンドとなったCOBの通算7作目。ぱっと聴きには、シンセによる美麗さと
メロディアスなギターフレーズから、3rd「FOLLOW THE REAPER」の頃を思い出させる作風だ。
かつてのスタイルにレイドバックした感触とともに、音そのものにはモダンな硬質さがあるので、
以前のファンに受け入れられる聴きやすさと、最近のファンにも楽しめる要素が両方まじっている。
楽曲そのもののインパクトや迫力と勢いの点では前作、前々作ほどではない気もするが、
シンフォニックなシンセとギターとの絡みは絶品だし、この質の高さの維持にはやはり敬意を表したい。
メロディアス度・・8 暴虐度・・7 モダン度・・7 総合・・8
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Kalmah「12 Gauge」
フィンランドのメロデスバンド、カルマの2010年作
毎作質の高いアルバムで、フィンランドメロデスのトップに位置するこのバンド。
正直なところ、個人的には綺麗にまとまりすぎていて、いま一つのめり込めないバンドなのだが、
ともかく本作もクオリティの高い作品だ。今作はギターフレーズにフォーキーな雰囲気も取り入れつつ
美麗なシンセとともに疾走するスタイルで、いわゆるキラデス系のサウンドには暴虐さはあまり感じない。
かつてのイエテボリ系メロデスのようなリフの格好よさで聴かせるのではなく、モダンな構築性と疾走の中で
聴きやすいメロディとシンセで表現するメタルコア世代のメロデスというべきか。質は高いがやや深みに欠ける。
メロディアス度・・8 暴虐度・・7 新鮮度・・7 総合・・8
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Eternal Tears of Sorrow「Children of the Dark Waters」
フィンランドのメロデスバンド、エターナル・ティアーズ・オブ・ソロウの6th。2009年作
毎作、美麗なシンセワークでゴージャスなメロデスサウンドを聴かせるこのバンド、
今作では疾走を抑えめにして、モダンなヘヴィさを増してきたという印象だ。
従来からの持ち味である美しいシンセアレンジと、メロウなギターで、
THERIONばりにシンフォニックに聴かせるサウンドは、メロデス的な激しさよりも、
もともとあった耽美なゴシック的な作風に磨きをかけてきている。
疾走メロデスを期待すると肩すかしだが、シンフォニックな音の説得力はむしろ過去最高か。
シンフォニック度・・9 メロデス度・・7 耽美度・・8 総合・・8
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OMNIUM GATHERUMNew World Shadows
フィンランドのメロデスバンド、オムニウム・ギャザラムの2011年作
メロディックかつ知的なアレンジ力で毎作高品質な作品を出しながら、
なかなか日本での知名度が上がらないこのバンドだが、今作もじつに見事な出来。
これまで以上に叙情的なツインギターのメロディにうっすらとしたシンセが絡み
いかにもフィンランド的な美意識を感じさせるサウンドは、とても日本人好み。
そして、ときおり見せるOPETHなどを想起させるプログレッシブな構築性も素晴らしく、
甘すぎないメランコリックさも絶妙だ。前作での硬派なスラッシー路線も好きだったのだが、
メロディ派の諸兄は、初期チルボド並のフレーズも出てくる本作なら間違いなく気に入るだろう。
メロディアス度・・8 疾走度・・7 知的構築度・・8 総合・・8
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Insomnium「Across the Dark」
フィンランドのメロデスバンド、インソムニウムの4th。2009年作
前作では普遍的なメロデスサウンドへと変化していたが、本作においてはよりモダンで
スタイリッシュなアレンジを聴かせるようになっている。もの悲しいギターフレーズは
KATATONIAに通じるようなメランコリックな質感があり、そこに美しいシンセと
デス声の咆哮が重なると、むしろEternal Tears of Sorrowに通じるような
美麗で叙情的なメロデスサウンドを描き出す。この泣きのメロディがじつに素晴らしく、
方向性が変わったのどうのと言う指摘が無意味に思えるほどに、質の高い作品である。
メロディアス度・・8 暴虐度・・7 泣きの叙情度・・9 総合・・8.5
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Barren Earth「Curse of the Red River」
フィンランドのゴシック・デスバンド、バレン・アースの2010年作
ツインギターにシンセを含む6人組で、いかにもフィンランドらしい叙情的かつ
メランコリックなフレーズを奏でるツインギターに、うっすらとしたシンセが絡み、
そこに咆哮するスクリームヴォイスを乗せたサウンドは、ゴシックメタル的でもある。
ほのかに漂うプログレッシブな香りはOPETHなどを思わせる部分もあり、メロデス、ゴシックの枠にとらわれない
雰囲気と巧妙なアレンジが気に入った。ときに土着的な色をまじえながら流麗なメロディを奏でるツインギターもなかなかだし、
バックで鳴るメロトロン的なシンセの音も、どこかおどろおどろしく幻想的だ。
緩急の中にノーマル声を織りまぜたり、繊細なフルートやピアノの音色も使うなど、抜群のセンス。
メロディアス度・・8 OPETH風センス度・・9 メランコリック度・・8 総合・・8.5
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◆フォーク/ヴァイキングメタル系

Amorphis「Beginning Of Times」
フィンランドのトラッドメタルバンド、アモルフィスの2011年作
前作の初期のセルフカヴァー作も興味深い内容だったが、本作はフィンランド神話に伝わる
世界の起源をテーマにしている。海を漂っていた賢者ワイナミョイネンの膝の上に鳥が卵を産み、
その卵の破片から世界は生まれ、黄身は太陽になったという物語を、壮大なトラッドメタルで表現、
ゆるやかな土着メロディとエピックな勇壮さは、MOONSORROWなどにも通じる重厚さで展開、
じつにドラマティックな聴き心地だ。ノーマルヴォイスやアコースティックなパートを絶妙に配しつつ、
メロウなギターフレーズの向こうでは、プログレ的でもあるシンフォニックなシンセワークが効いている。
ベテランでしか出せない音の説得力と神秘的な世界観、そしてメロディの充実ぶりも見事な傑作である。
ドラマティック度・・9 エピック度・・9 フィンラン度・・10 総合・・8.5
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ENSIFERUM「From Afar」
フィンランドのヴァイキングメタルバンド、エンシフェルムの4th。2009年作
デビュー作から質の高い疾走ヴァイキングメタルを聴かせてくれていたこのバンド、
今作も前作同様に、フォーキーなメロディを乗せて華麗に疾走する好アルバム。
美しいシンセアレンジも含めて、ずいぶんとスタイリッシュで綺麗になっているが、
個人的にはヤリ脱退後の作品は、無骨な土着性が薄れてしまっていまひとつな感がある。
本作もヴァイキングというよりは、シンフォニックなメロデスという作風といってよいだろう。
エピックな雰囲気で疾走するメロスピという感じで、初心者にも安心して楽しめる出来だ。
メロディアス度・・8 疾走度・・8 ヴァイキング度・・7 総合・・8
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KorpiklaaniUkon Wacka
フィンランドのフォークメタルバンド、コルピクラーニの2011年作
いまや世界規模で盛り上がりを見せるフォークメタルの火付け役ともなったこのバンド、
本作は早くも7作目となる。前作のヘヴィさを残しつつ、アコーディオン、ヴァイオリンによる
フォーキーな土着性が戻ってきていて、ノリノリで疾走する愉快な雰囲気と、
メタルとしてのパワフルさが両立されている。その点ではFINNTROLLにも通じる質感であるが、
彼らはもう少しエピック寄りで、こちらはあくまで陽気で明快なフォークメタル。
正直、新鮮味は薄れてきたが、定番というべき「よい子の土着メタル」を楽しもう。
メロディアス度・・8 フォーキー度・・8 新鮮度・・7 総合・・8
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FINNTROLL「Nifelvind」
フィンランドのフォークメタル、フィントロールの2010年作
ポルカとメタルとの愉快な融合という無茶なサウンドでデビューしたこのバンドも、早5作目。
前作から強まってきた重厚なサウンドに、今作では2ndあたりの頃のポルカメロが蘇り
「アイヤイヤー」という愉快な掛け声とともに疾走、相変わらずの楽しさに嬉しくなります。
ヘヴィさと土着性のバランスもよく、フォークメタルとしての幻想的美も有していて
バンドとしての世界観の表現力も確実に高まってきています。やはり今回も傑作。
ドラマティック度・・8 フォーキー度・・8 愉快なポルカ度・・8 総合・・8
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MOONSORROWVARJOINA KULJEMME KUOLLEIDEN MAASSA」
フィンランドのヴァイキングメタル、ムーンソロウの2011年作
毎回濃密かつ長大なヴァイキングメタルを作り上げてきたこのバンド、
フルアルバムとしては6作目となる本作は、立ち上がりからヘヴィなギターリフで
重厚に聴かせつつ、うっすらとシンセを含んだ叙情性と母国語による土着的な感触で、
見事な世界観を作り出している。ゆったりとした曲調で音を連ねてゆく反復的な手法は
気の短いリスナーには向かないのだが、じっくりとハマれる人には気持ちいいことこのうえない。
シンセに頼らずギターのリフとフレーズでエピックな勇壮さとフォーキーな質感を生み出すのはさすがであるし、
10分以上の4つの大曲を映画的なSEではさんだ構成も心憎い。これぞ本格派のヴァイキングメタル傑作。
ドラマティック度・・9 ヴァイキング度・・8 壮大度・・9 総合・・8.5
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Turisas「Stand Up And Fight」
フィンランドのヴァイキングメタル、チュリサスの2011年作
コンスタンティノープルまでの旅を壮大に描いた前作からの続編で、
本作もシンフォニックな壮麗さに彩られた力作に仕上がっている。
勇壮なコーラスとオーケストレーションによるエピックな世界観は
RHAPSODYばりに映画的で、視覚的なイメージを想像させてくれる。
アコーディオンなどのフォーキーな要素もちゃんと残っているが、サウンドは洗練されて、
濃密な土着性が薄まったため、1stからのファンにとっては物足りなさもあるかもしれない。
エピックなシンフォニックメタルとしての普遍性が強まったことで一般のリスナーには聴きやすいだろう。
シンフォニック度・・8 フォーキー度・・7 壮大度・・9 総合・・8
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Kivimetsan Druidi「Betrayal Justice Revenge」
フィンランドのフォーキー・ブラックメタル、キヴィメトサン・ドルイディの2nd。2010年作
ブラックメタル化したNightwishという雰囲気であった前作は、ややゴチャゴチャして散漫だったのだが、
本作ではシンフォニックな美麗さと、オペラティックな女性ヴォーカルの歌唱をより前に出してきた。
前作同様、ブラスト入りで男性ダミ声とともに激しく疾走する部分もあって、
メロデスリスナーでも普通に聴けるサウンドだと思う。一方で母国語で歌われる曲は
土着性があっていかにもフィンランド的。楽曲、アレンジの面で成長の跡が窺える力作だ。
シンフォニック度・・8 暴虐度・・7 女性Vo度・・8 総合・・8
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Crimfall「As the Path Unfolds...」
フィンランドのフォークメタルバンド、クリムフォールの2009年作
シンフォニックかつエピックなイントロから、なにやら期待させるが、
この手のバンドには珍しい女性ヴォーカルをフィーチャーしたサウンドは、
さながらフォーキーなNightwishという雰囲気か。シンセに絡むヴァイオリンもいい感じで、
シンフォメタル的な華麗さに土着要素を取り入れようとする試みはなかなか面白い。
アコーディオンの音色も入ってきて、ダミ声ヴォーカルで聴かせるあたりはKORPIKLAANI風だったり、
TURISASに通じるシンフォニックな壮大さもあって、その手のバンドが好きなら楽しめる。
ただ現段階だと、同郷バンドのいいトコ取りという感もあるので、今後はどう個性をつけてゆくかだろう。
シンフォニック度・・8 エピック度・・8 フォーキー度・・8 総合・・8
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◆変わり種系

WALTARI「Below Zero」
フィンランドのミクスチャー・メタルバンド、ワルタリの2009年作
すでにキャリア20年以上のベテランであるが、アルバムごとに探求的なアプローチで楽しませてくれる。
本作も、従来のモダンなミクスチャー感覚とキャッチーなメロディで、雰囲気のあるサウンド作りがさすが。
ヘヴィなギターリフと、ときにシンフォニックなまでのシンセアレンジ、そして独自の浮遊感の中に
フィンランドらしい哀愁の叙情も散りばめている。楽曲は4、5分台と比較的シンプルにまとまっているので、
以前のアルバムのように聴き疲れもしない。メロディアスさと知的な構築センスを合わせた傑作です。
メロディアス度・・8 知的アレンジ度・・8 フィンラン度・・8 総合・・8
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Apocalyptica7th Symphony
フィンランドのチェロメタルバンド、アポカリプティカの2010年作
3人のチェロ奏者+ドラマーという特異なスタイルの個性派バンド。7作目となる本作も、
相変わらずギターのように歪んだチェロの音色をヘヴィに鳴らし、ダークなクラシカルさを聴かせてくれる。
一方で、前作あたりから顕著になったモダンなヘヴィサウンドを融合させたサウンドは、今作ではFLYLEAFの女性Voや
GOJIRA、Shinedownといったヘヴィロック系バンドのメンバーなどが参加していることでも分かるように、
モダンなヘヴィロック的な聴き心地が増している。音楽的には聴きやすくなった反面、初期にあった極端な作風が
やや薄れてきているともいえるかもしれない。そんな中、ゲストのデイブ・ロンバルドのプレイはさすがの存在感だ。
クラシカル度・・7 チェロメタル度・・8 ヘヴィロック度・・8 総合・・8
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*「フィンランドの音楽特集」ページも併せてご覧ください