ヴァイオリン入りプログレ特集

優雅で艶やかな音色を奏でるストリングスの音色を、本来相反する性質のロックと組み合わせる試みというのは、
いうなれば、クラシックとロックの融合をミニマルな形で果たすという、音楽全体におけるアカデミックな命題ともいえる。
プログレッシブロックという、懐の深いジャンルにおいては、ピアノはもちろん、フルートやヴァイオリンといった
クラシカルな要素を合わせるのに、うってつけの舞台であるし、実際に多くのバンドがそうした優雅な旋律を
テクニカルな構築性とビートの中に、ひとつのアクセントとして、あるいはあるべきメロディとして取り入れようとしてきた。
こここでは、ヴァイオリンの音色を、主役級に使用し、その融合に成功した傑作アルバムを紹介したい。
美しきストリングスの調べに、うっとりと耳を傾けよう。                       by 緑川 とうせい



KING CRIMSON「LARKS' TONGUES IN ASPIC」
イギリスのプログレバンド、キング・クリムゾンの5th。1973年作
「太陽と戦慄」の邦題で知られる、第二期クリムゾンの傑作。ジョン・ウェットンビル・ブラッフォード
デヴィッド・クロス
らの黄金メンバーが結集した、ヘヴィ・クリムゾンの幕開けである。
のっけから緊張感のあるヴァイオリンとギターの音で、聴き手は引き込まれる。
1973年というこの時期、にこまで重厚なロックを演奏したバンドはいまい。
変拍子を力強く叩くブラッフォードのドラムは、マイケル・ジャイルズとは対照的で
新たなバンドの核になっている。キーボードパートはこれまでより大幅に減っていて、
代わりに張りつめたヴァイオリンの音色が静寂パートでは効果的に響き渡る。
重厚度・・9 プログレ度・・9 演奏・・9 総合・・8.5
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CURVED AIR「AIR CUT」
イギリスのプログレバンド、カーヴド・エアの4th。1973年作
いったんバンドを離れたダリル・ウェイに代わり、若き日のエディ・ジョブソンが参加。
そのことからも現在ではエディファンからの人気が高い作品であり、
バンドのディスコグラフィー中でも異色のアルバムといえるだろう。
サウンドは初期の頃に比べるとずいぶんすっきりと整理されてきていて
軽やかで優雅な演奏に乗るソーニャー・クリスティーナの歌声が美しい。
エディの艶やかなピアノはやはり素晴らしく、またヴァイオリンの方もダリルに負けじと
テクニカルに弾きまくっていて、このアルバムをクラシカルに彩っている。
メロディアス度・・8 クラシカル度・・8 女性Vo度・・7 総合・・8 
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DARRYL WAY'S WOLF「SATURATION POINT」
CURVED AIRを脱退したダリル・ウェイのバンド、ウルフの2nd。1974年作
前作「Canis-Lupus」よりさらにインスト重視で、テクニカル性が目立った作風となった。
のっけから炸裂するウェイの艶やかなヴァイオリンがサウンドを支配する。
叙情よりも押しの強さで勝負に出たアルバムという印象だ。
こうなると2曲のみのヴォーカル曲もかえってコントラストになっていて、
1stで指摘されたVoの弱さ云々もここではさほど気にならない。
3枚のうち有名なのは1stの狼のジャケだろうが、最高傑作はむしろこれ。
メロディアス度・・8 アグレッシブ度・・8 ヴァイオリン度・・8 総合・・8
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ESPERANTO「DANCE MACABRE」
イギリスのプログレバンド、エスペラントの2nd。1974年作/邦題は「死の舞踏」
2人のヴァイオリンにチェロを含む10人編成という大がかりなスタイルで
イギリス、ベルギーなど多国籍のメンバーが織りなす名盤中の名盤。
不穏なヴァイオリンの音色から始まり、ブレイクを多様した複雑な楽曲構成で
テクニカルにたたみかける。ピート・シンフィールドのプロデュースも相まって、
1stに比べてメンバーの力量と奔放なセンスが遺憾なく発揮されている印象だ。
クラシカルな硬質さがプログレッシブロックとの融合を奇跡的に果たしており、
絶妙の緊張感と均衡を生み出している。この優雅なアヴァンギャルドさは必聴級。
クラシカル度・・9 プログレ度・・8 アヴァンギャル度・・8 総合・・8.5
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KANSAS「Leftoverture」
アメリカのプログレバンド、カンサスの4th。1976年作/邦題は「永遠の序曲」
1曲目の“Carry On Wayward Son”は誰もが口ずさめるメロディで印象に残る1曲、
そして2曲目の“The Wall”は、泣きのヴァイオリンにギターとシンセが合わさり
感動的に聴かせる、バンド史上でも美しさの点では最高の名曲だ。
ラストの“Magnum Opus”はプログレ的な大曲だが、全体的には明るめのキャッチーさと
ドラマ性とのバランスがとれたアルバムだ。スタジオアルバムでどれか1枚となると、
やはり本作ということになるだろう。リマスター盤にはボーナスにライブ音源を2曲収録。
メロディアス度・・8 キャッチー度・・8 ドラマティック度・・8 総合・・8.5
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Mahavishnu Orchestra「Birds of Fire」
アメリカのジャズロックバンド、マハビシュヌ・オーケストラの2nd。1973年作
「火の鳥」と題された本作は、前作以上にスリリングなアンサンブルを見せつける傑作。
1曲目から、うなりを上げるようなジョン・マクラフリンのギターも冴え渡り、
シリアスなヴァイオリンが絡むサウンドは、ジャズロックというにはあまりに重厚。
今作では、楽曲におけるクラシック的な構築美が増していて、緊張感あふれる演奏と
強固なアンサンブルが、聴き手を圧倒するように押し寄せてくる。
音の切れ味という点では最高傑作とも言える。張りつめた創造性が生み出した傑作。
クラシカル度・・8 ジャズロック度・・8 テクニカル度・・9 総合・・8.5
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David RoseDistance Between Dreams
フランスのジャズロックバンド、TRANSIT EXPRESSのヴァイオリニスト、
デヴィッド・ローズのソロアルバム。1977年作
トランジット・エクスプレスのメンバーが参加していることで、ソロ名義ながらも、
実質的にはトランジットの4作目ともいわれる本作は、美しいピアノと
デヴィッド・ローズの艶やかなヴァイオリンの音色で聴かせる優雅なジャズロック作品。
緊張感をただよわせる部分は、Mahavishnu Orchestraにも通じるもので、
プログレッシプロックとジャズ、クラシックのクロスオーバー的な味わいがある。
ジャズロック度・・8 プログレ度・・7 優雅度・・8 総合・・8
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Dixie Dregs
What If
アメリカのフュージョンロックバンド、ディキシー・ドレッグスの1978年作
ギターのスティーブ・モーズを中心に、シンセにヴァイオリンを含んだ5人編成で
オールインストによる軽やかなフュージョン・ジャズロックサウンド。
アメリカらしいライトな抜けの良さと緻密な構成力を同居させた楽曲は
随所にジャズやクラシックの要素も含ませながら、ときにコミカルであったり
HAPPY THE MANにも通じるテクニカルでプログレッシブな知的センスが光る。
艶やかなヴァイオリンの音色が優雅に響きわたる、クラシカルなエッセンスも含んだ傑作。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 テクニカル度・・8 総合・・8.5
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ARTI + MESTIERI「Tilt」
イタリアのプログレ・ジャズロックバンド、アルティ・エ・メスティエリの1st。1974年作
「芸術と職人」というバンド名をもつこのバンド。
本作はイタリアンプログレ、そして美しいジャズロックとしての最高傑作である。
フリオ・キリコの手数の多いドラムと、艶やかなヴァイオリンの音色、鳴り響くサックス、
プログレ的なシンセとともに、優雅でメロディックな聴き心地と、たたみかける勢いに満ちた
圧倒的なアンサンブルに引き込まれる。一方ではイタリア語の歌唱で聴かせる叙情性もあって、
プログレ性と技巧的なジャズロックのバランスのとれたサウンドである。2nd「明日へのワルツ」も必聴。
メロディアス度・・8 ジャズロック度・・8 構築度・・9 総合・・9
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QUELLA VECCHIA LOCANDAIl Tempo Della Gio
イタリアンロックバンド、クエラ・ヴェッキア・ロカンダの2nd。1974年作
「歓喜の時」の邦題で知られる本作は、昔から「泣きのストリングスを聴くにはこの作品ね」
と言われてきたほどの名作だ。イントロのクラシカルなピアノからして美しいのだが、
続いて入って来るアコースティックギターと泣きのヴァイオリンの絡みはまさに絶品。
そして盛り上がりでのストリングスによる大叙情にはただもううっとりだ。
ここまで泣きの叙情を聴かせてくれるヴァイオリン入りロックはそうあるものではない。
やや粗削りだった1stに比べて音自体が洗練されたことで、バンドとしてのアンサンブルも向上している。
ラストのヘヴィな大曲2曲も聴きどころ。NEW TROLLSの「コンチェルト・グロッソ」に匹敵する名作である。
クラシカル度・・9 イタリア度・・8 泣きのヴァイオリン度・・10 総合・・8.5
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PFM「Per Un Amico」
イタリアのプログレバンド、PFMことプレミアータ・フォルネリア・マルコーニの1972年作
「友よ」のタイトルで知られるPFMの2作目にして初期の最高傑作。ともかく1曲め“Appena Un Po'”の美しさ。
のちに“River of Life”としてリメイクされるのだが、原曲のこちらの方がイタリア語の情感とともに、
はるかに叙情的に迫ってくる。繊細なフルートの音色、艶やかなヴァイオリン、アコースティカルでありつつ
ダイナミックな広がりも備えたPFM最高の名曲のひとつだ。テクニカルなリズムの上にピアノとヴァイオリンが鳴る
“生誕”は“MR. 9 `TIL 5”として「Photos of Ghosts」にてリメイクされる佳曲。間奏部のフルートが楽しい。
しっとりと叙情的な“友よ”、牧歌的でありながら展開に富んだ“晩餐会”、ラストの“ゼラニウム”まで全5曲35分弱であるが、
クラシカルな楽曲の美しさ、卓越した演奏力、どこをとっても質が高く、まさしく「甦る世界」と並ぶ彼らの代表作である。
叙情度・・10 プログレ度・・8 イタリア度・・10 総合・・9
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GUALBERTOVericuetos
スペインのアーティスト、グアルベルトの2nd。1976年作
スパニッシュプログレの名作の一枚に数えられるアルバム。全編インストで
基本はジャズロック的なサウンドなのだが、ヴァイオリン入りのクラシカルなアンサンブルが素晴らしく、
即興的でありながらも、優雅で芸術的な構築性も感じられる。
異国的なシタールの音色、シンセと絡むヴァイオリン、フルートにも独自の美学が見える。
30分ほどの短いアルバムながら、たおやかさと音楽の芸術が詰まった作品だ。
メロディアス度・・8 ジャズロック度・・8 クラシカル度・・8 総合・・8
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KEBNEKAISE「V」
スウェーデンのトラッドプログレバンド、ケブネカイゼの3rd。1975年作
このバンドの素晴らしいところはズバリ、北欧的トラッドメロディを、ロックフォーマットで聴かせる点だ。
ギターとヴァイオリンがときに優雅にときに情熱的にトラッドメロディをユニゾンするさまは圧巻。
そして、そこに絡むパーカッションが言い知れぬ郷愁を聴く者に感じさせる。
この日本人の演歌心にも通じるような土着的メロディには、一聴して心を鷲づかみにされた。
トラッドというにはあまりにダイナミックで分厚い音。シンフォニック・トラッドロックとでも呼ぶしかない。
こうなったら、バンド後期の傑作「Elefanten」などもぜひCD化を望みたい。
メロディアス度・・9 北欧トラッ度・・9 ヴァイオリン度・・8 総合・・8.5
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L'ENGOULEVENT「L'LE OU VIENT LES LOUPS」
カナダ、ケベック出身のプログレバンド、アングルヴァンの1977年作
邦題「オオカミの住む島」。艶やかなヴァイオリン、チェロの音色にクラシカルなピアノ、
そこにアコースティックギターが絡まり、美しいアンサンブルを聴かせる。
メインは男ヴォーカルながら、ときに男女のコーラスがサウンドを彩り
しっとりとした叙情と優雅な雰囲気が全体を包んでいる。
フォーキーであるがアコースティカルなシンフォとしても鑑賞できる作品だ。
ボーナスとして、同一メンバーによる別バンド、ETOIFILANの1979年の音源を収録。
メロディアス度・・8 クラシカル度・・8 アコースティカル度・・8 総合・・8
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ConventumLe Bureau Central des Utopies
カナダ、ケベック出身のプログレバンド、コンヴェンタムの2nd。1980年作
艶やかなヴァイオリンに、アコースティックギター、マンドリンなどによる
繊細でクラシカルな室内楽的サウンドは、ロック色は薄いものの、
高度なテクニックによる複雑な楽器の絡みによる知性的な美しさがある。
曲によってはエレキギターが絡んで、ややダークめの不思議な味わいを聴かせる。
カナダのチェンバーロックとしては屈指の作品であるのは間違いない。
クラシカル度・・8 プログレ度・・7 チェンバー度・・8 総合・・8
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BUBU「ANABELAS」
アルゼンチンのプログレバンド、ブブの1978年作
70年代のアルゼンチン産バンドの中では名作に挙げられる1枚。
フルート、サックス、ヴァイオリンが鳴り響き、そこにヘヴィめのギターも加わって、
KING CRIMSON的な質感のスケールの大きいサウンドが展開される。
ときにサックスなどが弾きまくり、アヴァンギャルドさを覗かせつつも、全体的には
非常に構築されたチェンバーロック的なシリアスさに、ほのかな叙情性を感じさせる。
19分、11分、9分の全3曲という構成で、70年代の南米を思うと圧巻の完成度を誇る。
メロディアス度・・7 ヘヴィシンフォニック度・・8 壮大度・・8 総合・・8
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SAGRADO「FAROL DA LIBERDADE」
南米ブラジルを代表するシンフォニックバンド、サグラドの3rd。1991年作
艶やかなヴァイオリンの乱舞で軽やかに疾走する、1曲め“Danca das Fadas”のインパクトは
ただごとではなかった。大自然を思わせる繊細な叙情美と雄大なダイナミズムを同居させ、
それをメロディックに仕上げてゆく彼らのサウンドは、本作で完成をみたといえるだろう。
これまでよりインストパートに重点が置かれたことで、ヴォーカル曲とのメリハリがついて、
美しいピアノやシンセ、それに絡むヴァイオリンやフルートの音色などがより躍動感をともなって響いてゆく。
しっとりと優しく、優雅で壮大という、感動的なまでの完成度である。
メロディアス度・・9シンフォニック度・・8 雄大度・・10 総合・・9
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MARCUS VIANA「TRILHAS & TEMAS」
SAGRADOのリーダー、マルクス・ヴィアナのソロアルバム。1992年作
こちらはサントラではなく音楽として純粋な彼のソロアルバムで、
サグラドの静かな叙情美をそのまま取り出したようなサウンド。
クラシカルで格調高いが、どこか優しさを感じるヴィアナのヴァイオリンがたっぷり堪能できる。
クラシカルで室内楽的でありながら、自然体でシンフォニック。サグラドファンも満足の一枚。
ヴァイオリンはもちろん、彼自ら弾くピアノも実に美しい。
クラシカル度・・9 シンフォニック度・・9 たおやか度・・10 総合・・9
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New LifeSOLSTICE「NEW LIFE」
イギリスのシンフォニックニックバンド、ソルスティスの2nd。1993年作
艶やかなヴァイオリンの音色と、透明感のある女性ヴォーカルの歌声を中心に、
英国的にしっとりと聴かせるサウンド。過度な盛り上がりやメロディの聴かせ所はなく、
ポンプロック以降の他のシンフォニックバンドとは一線を画する落ち着きが感じられる。
ときにアコースティカルな質感を聴かせるギターワークもなかなかよろしく、
美しいヴァイオリンの音色とともにゆったりと鑑賞出来る作品だ。
リマスターに未発曲を収めたボーナスDisc付きの2CD再発盤もあります。
シンフォニック度・・8 ゆったり英国度・・8 女性Vo度・・7 総合・・8
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Halloween「Merlin」
フランスのプログレバンド、ハロウィーンの1994年作
フランスのシンフォニックシーンではベテランと言ってよいバンド。
本作はタイトル通りアーサー王伝説に登場する魔術師マーリンをコンセプトにしたアルバム。
ヴァイオリンが鳴り響くクラシカルな質感と、フランスらしいどこかとぼけたシアトリカルなサウンドで、
フランス語による女性ヴォーカルの歌声も、どこかミステリアスで、ほの暗い叙情と不思議な緊張感が漂う。
MINIMUM VITALTIEMKOなど、90年代フランスには質の高いシンフォプログレバンドが多かった。
シンフォニック度・・7 シアトリカル度・・8 フランス度・・8 総合・・8
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ISILDURS BANE 「The Voyage」

スウェーデンのシンフォニックロックバンド、イシルドゥルス・バーネの6th。1992年作
前作のチェンバーロック風味をさらに強化させ、いっそうの緊張感溢れる構成力でたたみかける。
鳴り響くヴァイオリンの音色に、クラシカルなピアノが重なり、シンフォニーのように優雅でありながらも
現代音楽的な硬質さを併せ持ったサウンドは、凡百のバンドにも真似のできないほどの強度がある。
旅をテーマにした幻想的なコンセプト作で、オールインストながら楽曲のドラマティックさは
90年代初頭のバンドの中でも際立っていた。このクラシカル路線は本作でやり尽くしたということか、
次作「Mind vol.1」からはバンドとしての新たな深化が始まる。底知れぬポテンシャルを秘めたバンドである。
クラシカル度・・9 シンフォニック度・・8 シリアス度・・9 総合・・8.5
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BELIEVE「Yesterday Is a Friend」
ポーランドのシンフォニックロックバンド、ビリーヴの2nd。2008年作
今やシンフォ大国と化した感のあるポーランドからまたしても期待のバンドが登場。
COLLAGEのMirek Gilを中心に、分派したSATELLITEに通じる叙情性と、
ほのかな薄暗さで聴かせるシンフォサウンド。メロウなギターワークに、
女性奏者の奏でるヴァイオリンの響きが重なり、哀愁を漂わせたクラシカルさが美しい。
シンセはゲストメンバーによるもので、むしろギターとヴァイオリンを中心とした曲作りが
美麗なシンフォニックさよりも、素朴な叙情をかもし出していて、それが耳に優しい。
シンフォニック度・・7 メロディアス度・・8 ゆるやか叙情度・・9 総合・・8
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THE LIFELINEReflections of Hope
アメリカのハードプログレバンド、ライフラインの2010年作
ヴァイオリン奏者を含む4人組で、キャッチーなヴォーカルメロディと
ドラマティックな展開力で聴かせる、なかなかセンスのよいサウンド。
艶やかなヴァイオリンの音色とともに、ほの暗いモダンな叙情性もあり
現在形プログレとしても楽しめるし、ProgMetal的な構築力も備えている。
あくまでメロディにこだわった難解さのない作風に好感が持てる。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 ヴァイオリン度・・8 総合・・8
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玉木宏樹 & S・M・TTIME PARADOX
テレビ/映画音楽などの作曲家にしてヴァイオリニスト、玉木宏樹の1975年作
「怪奇大作戦」「大江戸捜査網」といった番組音楽を手がけてきた彼が、
突如としてプログレ的な作品を作り出し、それが名作として語り継がれている。
クラックやジャズの素養を持ちキース・エマーソンを愛好するというそのセンスは、
本作でのボーダーレスな作風にも現れていて、軽やかなジャズロック風味にポップな昭和性、
民俗色なども含んだ、いわばごった煮のサイケな味わいもあり、いま聴いても古くささはない。
艶やかなヴァイオリンの音色に絡むギター、美しいピアノにムーグシンセ、効果音的なSEや
ときにファンキーなホーンセクションなど、クラシカルな美意識と実験的な要素に満ちた異色の作品。
メロディック度・・7 プログレ度・・8 ミクスチャー度・・8 総合・・8
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TAOFAR EAST」
日米ハーフのヴォーカリスト、デヴィッド・マンを中心にした日本のロックバンド、タオの1983年作
アニメ「銀河漂流バイファム」のテーマ曲でも知られるこのバンド(後のEUROXの母体)、
本作におけるオリジナル曲の方もシンセをたっぷりと使った、当時にしては斬新なスタイルで、
高い演奏力とともに、やはりどこかプログレッシブな味わいもある。キャッチーなメロディアスさは
ASIAなど80年代のプログレハードに通じるやわらかな感触で楽しめる。そしてやはり特徴的なのは
エレクトリックヴァイオリンで、英語の歌詞も含めてアニメの主題歌にしては異様に格好良かった。
U.K.ばりの本格派の演奏と日本的なメロディアスさが融合した、じつに良いバンドだった。
メロディアス度・・8 プログレハー度・・8 バイファムは名曲度・・10 総合・・8
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OUTER LIMITS「ペール・ブルーの情景」
日本のシンフォニックロックバンド、アウター・リミッツの3rd。1987年作
ヴァイオリン入りの本格シンフォニックロックバンドとして、フランスなどでも
かなりの人気を博した彼らだが、再発を機にぜひ再評価していただきたい。
前作「少年の不思議な角笛」の方がトータルコンセプト作としての人気があるようだが、
自分としては、このアルバムの旧B面を全てついやした大曲“The Scene of Pale Blue”の
ロマンティシズムに強く惹かれた。クラシカルなヴァイオリンとシンセが絡まり、
ゆるやかに盛り上がっていく様はまさに感動的だ。まだアウター未聴の方もぜひ聴いて欲しい。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 ロマンティック度・・9 総合・・8
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MIDAS「Beyond the Clear Air」
日本のプログレバンド、ミダスの1st。1988年作
ヴォーカル&ヴァイオリン奏者を含む4人編成で、美しいシンセワークと
艶やかなヴァイオリンの音色が合わさった、叙情的なシンフォニックサウンド。
一方では変拍子リズムに乗せる詩的な日本語歌詞の浮遊感が特徴的で、
プログレ的なインストパートと同時に、歌ものとしてのキッャチーな聴き心地も楽しめる。
15、18分という大曲も含めて、ゆったりとしたおおらかさに時代的なものを感じるが、
せわしない現代だからこそ、彼らのサウンドに癒されるような気がする。
シンフォニック度・・8 ヴァイオリン度・・8 日本度・・8 総合・・8
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KBB 「Proof of Concept」
日本のプログレバンド、KBBの3rd。2007年作
壺井彰久氏のヴァイオリンをフロントに、軽やかなプログレを聴かせるこのバンド、
本作はのっけから10分の大曲で、ムーグシンセの音色にエフェクトのかかったヴァイオリンが響き、
よりプログレ的なエキセントリックなセンスとともに、バンドとしてのアンサンブルも力強くなっている。
存在感のあるベースと手数の多いドラムの上に、ときに激しく、そして優雅にヴァイオリンが弾き鳴らされ、
一体となった演奏には歌心を感じる聴き心地で、インスト主体ながら硬質すぎることなく、気持ちよく楽しめる。
シンセの活躍が増したことで、ヴァイオリンとのバランスが音の広がりとなって機能し、しっとりとした叙情曲やコミカルで
軽妙なナンバーも含めて、クラシックやジャズ、フュージョンなどの要素が巧みに融合された力作に仕上がっている。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 ヴァイオリン度・・9 総合・・8
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Fantasmagoria「Day & Night」
日本のプログレバンド、ファンタスマゴリアの2009年作
Curved Airのアルバムを思わせるようなバンド名だが、サウンドの方は
女性ヴァイオリン奏者をフロントにした、軽妙なインストプログレを聴かせる。
楽曲の展開の仕方などは随所にイタリアのバンドを思わせるような面白さがあり、
クラシカルでありながらもジャズロック的な軽やかさがあるのも特徴。
優雅なヴァイオリンの音色を前に出しつつも、シンセやギターとの絡みも含めて、
音の厚みもしっかりとあり、KBBなどとともにインストでしっかり聴かせられるバンドだ。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 ヴァイオリン度・・9 総合・・8
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PTF 「percept from ...」
日本のプログレバンド、ピーティーエフの2013年作
ヴァイオリン、シンセ、ベース、ドラムという4人編成で、美しいヴァイオリンの音色を中心に聴かせる、
クラシカルなインストサウンド。KBBなどに比べるとテクニカル性はやや抑え目であるが、
やわらかなメロディとヨーロピアンな叙情を感じさせる優雅な聴き心地でうっとりと楽しめる。
派手すぎない絶妙のシンセアレンジやピアノの美しさも随所に光っていて、軽やかなアンサンブルとともに、
メリハリのあるインストサウンドを構築してゆく。ヴァイオリン好きの方はぜひチェックです。
メロディアス度・・8 叙情度・・8 ヴァイオリン度・・9 総合・・8
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*クラシカルなプログレ/シンフォニックロック特集
*大曲・大作・組曲プログレ特集も合わせてご覧ください

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