プログレハード
過去現在

 
〜70年代後期〜80年代以降のプログレハード傑作選〜

英国ではプログレのムーブメントがひと段落した70年代半ばから、アメリカではKANSASをはじめ、STIXBOSTONAMBROSIA
さらにはAmerican TearsNew Englandといったバンドが現れ、それまでのプログレッシブロックからの知的さを継承しつつ、
より大衆受けするキャッチーなメロディアス性を有したスタイリッシュなサウンドを生み出し、それらはいつしか「プログレハード」と呼ばれるようになった。
イギリスではスーパーバンド、ASIAが登場し、瞬く間に人気を博すことになるが、その市場は主にアメリカや日本であったこともあり、
MAGNUMや、PALLASなどが地道な活動を続けつつも、80年代は主にアメリカを中心に、多くのプログレハード系バンドが現れてゆく。
そして80年代後半になると、イギリスからコマーシャルなポップ性と知的な構築力を併せ持った、IT BITESが登場することになる。
プログレハードのムーブは80年代に全盛期を迎えながら、その後いったん収束しつつ、不遇の90年代を通って、細々とではあるがその精神は受け継がれる。
そうして現在ではスウェーデンなどにおいても、古き良きキャッチーなメロディを、幾分の懐古主義的なスタンスとともに取り入れたバンドが出てきている。
一方のアメリカ大陸においても、KANSASSAGAといったベテランを中心にして、新鋭のプログレハードバンドがいまなお増えてきている。
ここでは、主に70年代後期〜80年代以降のプログレハードの傑作アルバムを紹介したい。                  緑川 とうせい



◆黄金の70〜80年代

Styx 「Equinox/Crystal Ball」
アメリカのプログレハード、スティクスの5th、6thのカップリング。1975/76年作
1972年にデビュー、初期はいくぶん垢抜けない作風であったが、3rd「The Serpent Is Rising」あたりから、
キャッチーなプログレハード色を強め、この5作目では、ポップなヴォーカルメロディとコーラスハーモニー、
適度にハードなギターときらびやかなシンセとともに、よりスタイリッシュなサウンドを描いている。
わりと正統派のハードロック寄りのナンバーもありつつ、一方では、ムーグやオルガンを含むシンセワークはプログレ的で、
単なるAORとは異なる知的なセンスが光っている。6作目からはトミー・ショウが加入し、ハードロック感触がやや強まっているが、
プログレ的なシンセワークもしっかり残していて、全体的にもバランスのとれた聴き心地。メジャー感も強まったことで人気を得てゆく。
ヒット作となる次作「The Grand Illusion (大いなる幻影)」へとつながるアルバムだ。
メロディック度・・8 キャッチー度・・8 プログレハー度・・8 総合・・8
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American Tears「Tear Gas」
アメリカのプログレハードバンド、アメリカン・ティアーズの1975年作
後にTOUCHを結成するミュージシャン、マーク・マンゴールド率いるバンドの2作目で、
ポップなフィーリングとともに素朴な哀愁を感じさせるキャッチーなサウンド。
オルガンやムーグなどを使ったシンセの音色には時代的なプログレ色もあり、
トリオ編成ということで、若き日のマンゴールドの鍵盤さばきがたっぷり楽しめる。
本作に続く3作目を出してバンドは消滅、そのスタイルはTOUCHに受け継がれるが、
同時代のAMBROSIAなどとともに、プログレッシブロックへの憧憬が感じられる好作である。
メロディアス度・・8 キャッチー度・・8 プログレハー度・・8 総合・・8
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AMBROSIA「Somewhere I've Never Travelled」
アメリカのプログレハードバンド、アンブローシアの2nd。1976作
スタイリッシュな統一感が増し、美しいコーラスハーモニーに彩られた傑作。
きらきらとしたシンセークがときにシンフォニックに包み込み、繊細なピアノにフルートの音色、壮麗なオーケストレーションなどとともに、
しっとりとした叙情美とキャッチーなメロディアスさを聴かせる。前作同様、ときどきプログレ風味も顔を覗かせて楽しませてくれる。
メロディアス度・・8 繊細度・・9 プログレ度・・7 総合・・8
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KANSAS「Point of Know Return」
アメリカのプログレバンド、カンサスの5th。1977作/邦題は「暗黒への曳航」
傑作となった前作よりさらにキャッチーな質感が増し、大曲志向は影をひそめたが、
3〜4分台の曲を中心に、ノリの良い軽快な作風とメロディアスな明快さで聴かせる、
KANSAS節ともいうべきアメリカン・プログレハードが堪能出来る。プログレとしてはやや物足りないかもしれないが、
美しいシンセとヴァイオリンの音色は不変で、やや小粒な印象ながらもとても聴きやすいアルバムだ。
メロディアス度・・8 キャッチー度・・9 ドラマティック度・・7 総合・・8
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Lake 「Lake II」
ドイツのプログレハード、レイクの1978年作
1976年にデビュー、本作は2作目となる。ツインギターにエレピやオルガンを含むシンセ、
ハイトーンのヴォーカルで聴かせる、TOTOのようなキャッチーなメロディックロック。
アメリカの出身のメンバーらしい爽やかなサウンドであるが、3作目以降に比べると、
ポップ過ぎないロック感触が残っていて、プログレハードらしい優美な味わいが楽しめる。
随所に叙情的なギターの旋律や、オルガンやピアノなどのアレンジもセンス良く、完成度としては本作が一番だろう。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 優美度・・8 総合・・8
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ASIA「ARMED TO THE TEETH/ASIA」
ASIAといってもあの英の超有名バンドとは同名別バンド。こちらはアメリカのエイジア
2枚のアルバムを残して消えたこのバンド。貴重な1st/2ndのカップリング。1978/1980年作。
英のASIAのようにポップ路線ではなく、こちらは正統派のプログレハード。2ndはメロトロン入り。
キャッチーな歌メロにメロディアスなフレーズを奏でるギター、美しいキーボードで聴かせる楽曲は
どれも叙情味にあふれ、なかなかの出来。陽の目を当たらずに消えてしまったのが惜しまれる。
メロディアス度・・8 プログレハー度・・8 楽曲・・8 総合・・8
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AVIARY

アメリカのプログレハード、アヴィアリーの1979年作
NEW ENGLAND、AMERICAN TEARSなどと並ぶ、知る人ぞ知る傑作。
やわらかなヴォーカルとピアノを含む美しいシンセワークに、QUEENを思わせるコーラスワークで、
繊細かつキャッチーに聴かせる、じつにクオリティの高いプログレハードサウンド。
シンフォニックなストリングスによる叙情や、いかにもアメリカンロック的な爽快さもありつつ、
遊び心に富んだノリの良さに、STYX+QUEENというような楽曲のアレンジセンスも抜群だ。
幻の傑作にしておくには惜しい、多くのリスナーに聴かれるべきメジャー感をともなった傑作である。
ドラマティック度・・7 キャッチー度・・8 プログレハー度・・9 総合・・8
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TOUCH「THE COMPLETE WORKS I & II」
アメリカのメロディアスハードバンド、タッチの1st、2ndカップリング盤。
マーク・マンゴールドを中心に活動したバンドの1979年の1stと、1981年に出るはずだった幻の2ndをカップリングした再発盤。
きらびやかなシンセに包まれたキャッチーなメロディとコーラスワークアメリカンロックのポップ感覚とQUEEN的な壮麗さが合わさった、
メジャー感のあるじつに質の高いサウンドだ。マンゴールドのシンセにはプログレハード的な味わいが感じられ、
Journey
STYXあたりが好きな方はもちろん後期のYESASIAなどにも通じるやわらかな美しさがある。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 キャッチー度・・9 総合・・8
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NEW ENGLAND  「EXPLORER SUITE」
アメリカのプログレハードバンド、ニュー・イングランドの2nd。1980年作
このバンドの魅力はなんといってもQUEENの如き絶品のコーラスワークに
きらびやかなキーボード、そしてキャッチーなメロディに温かみのあるポップセンス。
メロディの宝庫として名高い1stにつづき、この2ndではよりプログレ的な盛り上げかたを取り入れ
ポップさとシンフォニックなアレンジが絶妙の配分で、どこを切っても耳に心地よい。
そして楽しさの中にも一握りの哀愁と泣きがある点がさらに日本人好み。
文句なく、アメリカン・プログレハード最高の一枚と断言できる。
メロディアス度・・9 プログレ度・・8 キャッチー度・・8 総合・・8.5
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TRILLION 「CLEAR APPROACH」
アメリカのプログレバード、トリリオンの1980年作
1978年の1作目の人気も高いが、2作目となる本作ではよりスタイリッシュなサウンドで、
キャッチーなメロディックロックを聴かせてくれる。いかにも80年代らしいポップ性と
きらびやかなシンセアレンジで、まさにタイトル通りのクリアな聴き心地のアプローチである。
やわらかな叙情のバラードなども含めて、JourneyやTOTOなどにも通じるメジャーな感触は、
この手のマイナー系プログレハードとしては出色の完成度。随所に聴かせる泣きのギターもよい感じです。
メロディアス度・・8 キャッチー度・・9 プログレハー度・・8 総合・・8
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FM
「Surveillance」
カナダのプログレハード、FMの1979年作
3作めとなる本作は、大曲中心であった前作からまた変わって、1stの頃のキャッチーな路線に戻っている。
スペイシーなシンセアレンジと、メロウなギターワークで聴かせるメロディックなサウンドに
いくぶんのプログレ色を加味した作風で、比較的なシンプルな歌もの曲を中心にしながら、
インストパートでのドラマティックな質感も残している。いわば、1stと2ndの中間という雰囲気であろうか。
U.K.あたりにも通じるスタイリッシュなアレンジセンスも光っている。バンドの最高傑作といってもよいだろう。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 スタイリッシュ度・・8 総合・・8
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ASIA
ジョン・ウエットン、スティーブ・ハウ、カール・パーマー、ジェフ・ダウンズという
名うてのメンバーたちが集結したスーパーバンド、エイジアの1st。1982年作
かつてのプログレッシブロックで培われたテクニックを駆使しつつ、
メロディはぐっとキャッチーで、明快なサウンドは多くのリスナーに支持を得た。
時代を代表するような1曲“Heat of the Moment”をはじめ、
透明感に溢れたきらびやかなプログレハードサウンドは今なお色あせない。
メロディアス度・・9 プログレ度・・7 キャッチー度・・9 総合・・8.5
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YES 「90125」
イエスの10th。1983年作
プログレを通りすぎたいわゆるポップ期の代表作で、邦題は「ロンリーハート」
商業的には最も成功したアルバムで、1曲目はTV、CMなどでたくさん流れていた。
今作ではすでにウェイクマンもハウもいないので、当然ながらプログレ色は薄く、これでジョン・アンダーソンが歌っていなかったら
あるいはYESとは思えなかったかもしれない。しかしながら、あくまでキャッチーなメロディを聴かせるという
トレイバー・ホーンのプロデュース
は見事に成功しており、トニー・ケイのモダンなシンセワークもこのサウンドにはぴったりハマっている。
プログレとして聴くよりも、むしろ出来の良い商業ロック、キャッチーなプログレハードとして楽しめる。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 キャッチー&ポップ度・・8 総合・・8
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MAGNUMOn a Storyteller's Night
英国のハードロックバンド、マグナムの5th。1985年作
1st「Kingdom of Madness」の時点から、英国独特の哀愁を感じさせるメロディに
プログレ的なキーボードなどを用いて、独自のHRをやっていたが、
3rd「Chase the Dragon」にてドラマティックなプログレハードサウンドを完成させた。
そして本作では、物語的でファンタジックな世界観と、キャッチーに聴かせる壮麗な楽曲で、
バンドの絶頂期の傑作を作り上げた。ロドニー・マシューズによるジャケットも美しい
メロディアス度・・8 プログレ度・・6 英国度・・9 総合・・8
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PALLAS 「The Sentinel」
英国のプログレハードバンド、パラスの2nd。1984年作。
若いリスナーは復活後のPALLASしか知らないかもしれないが、
オールドなプログレ者にとってはパラスといえばこのアルバムなのである。
1曲目“Shock Treatment”は三連リズムに乗るキャッチーなメロディで、名曲の呼び声も高い。
ハードロック要素もあるドラマティックなギターワークとシンセによるシンフォニックな味付け、
そして聴きやすいキャッチーな歌メロが合わさったサウンドは、まさに英国産プログレハード。
今聴きなおしてみると、しっとりとしたピアノが美しい、ゆったりとしたナンバーも良い感じ
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 ドラマティック度・・8 総合・・8
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GTR
イギリスのプログレハード、ジー・ティー・アールの1986年作
プロデュースはジェフ・ダウンズ、2人のギターは、スティーブ・ハウとスティーブ・ハケットという、奇跡のようなユニット。
叙情的なツインギターにシンセを重ね、伸びやかなヴォーカルで聴かせる、80年代らしいAOR的なメロディックロックで、
TOTOなどにも通じるポップ性に、二人の流麗なギタープレイをたっぷりフィーチュアした高品質なサウンドだ。
元NIGHTWINGのマックス・ベーコンの伸びやかなハイトーンヴォーカルも楽曲によくマッチしていて、
80年代のYESなどを思わせる、優美でキャッチーな聴き心地で楽しめる。アコースティックギターも含めて、
ハウとハケット、それぞれの色をかもしだす繊細なギタープレイに聴き惚れる。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 優美度・・8 総合・・8
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IT BITES 「ONCE AROUND THE WORLD」
イギリスのプログレ・ハードバンド、イット・バイツの2nd。1988年作
質は高いがややまとまりのなかった1stに比べ、今作は楽曲の質が格段に向上。
キャッチーかつポップ味溢れる楽曲の中に、ときおり垣間見えるプログレ的なセンスが絶品だ。
たとえば、ACTの原点はこのバンドにあったのだなと納得できるようなサウンドで、
3曲目の3連リズムの曲調などは、プログレ者には実に耳に心地よいのだ。
全体的にとても聴きやすく、メロディに溢れた、ポップで、しかもプログレが隠し味のアルバム。
次作3rdは普通のハードロック風になるので、バランスの点では本作が最高傑作だろう。
メロディアス度・・8 隠れプログレ度・・8 楽曲センス・・9 総合・・8
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ArcAngel
アメリカのプログレハードバンド、アークエンジェルの1983年作
マルチプレイヤー、ジェフ・カンナタ率いるバンド名義の唯一のアルバム。
のっけから美しいシンセを使用したキャッチーなナンバーで、
まさにこれぞアメリカン・プログレハードというサウンドだ。
きらびやかなコーラスに、間奏部のギターワークもなにげに見事だし、
この質の高さを思えば、バンドとして本作のみで終わってしまったことが惜しまれる。
なお、ジェフ・カンナタはこの後CANNATA名義でソロ作を発表してゆくことになる。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 キャッチー度・・8 総合・・8
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ZEBRA
 「No Tellin’ Lies」
アメリカのハードロック、ゼブラの1984年作
セッションミュージシャンとして名をはせた、ヴォーカリスト、ランディ・ジャクソン擁するバンドの2作目。
ノリのよいギターリフを乗せたレッド・ツェッペリンを思わせるオールドスタイルのアンサンブルに
甲高いハイトーンヴォーカルを乗せて聴かせる、キャッチーなハードロックサウンド。
ツインギターにシンセを加えたゴージャスな音の厚みはいかにも80年代的であるが、
音の土台は70年代の英国ハードロックなので、決してポップ過ぎない感触が良いのですな。
シンセによる味付けはときにプログレハード風味であったり、叙情的なバラードも耳心地よい。
チェロやホーンなどを取り入れるなど、楽曲ごとのアレンジセンスも光る。80年代アメリカンハードの好作品。
メロディック度・・8 キャッチー度・・8 プログレハー度・・8 総合・・8
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Stencil Forest 「Opening Act」
アメリカのプログレバンド、ステンシル・フォレストの1984/2004年作
1984年に録音されながら日の目を見ることのなかった未発音源集のCD化作品で、
ほどよくハードなギターに、オルガンやピアノ、ムーグを含むシンセと伸びやかなヴォーカルを乗せ、
80年代Yesなどを思わせる、キャッチーなプログレハードを聴かせる。ツインギターによる流麗なメロディや
堂々たるヴォーカルの表現力など、演奏力もしっかりとしていて、マイナー臭さはさほど感じさせない。
初期のSTYXSTARCASTLEなどにも通じる感触は、当時のYES影響下バンドの中でも質の高い部類だろう。
未発音源ながら録音状態は良好。バンドは2005年に復活の新作を発表している。
メロディアス度・・8 キャッチー度・・8 プログレハー度・・8 総合・・8
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CANNATA 「Images of Forever」
アメリカのプログレハード、ArcAngelのジェフ・カンナタのソロ1作目。1988年作
きらびやかなシンセとマイルドなヴォーカルで聴かせる、80年代スタイルのプログレハード。
TOTOあたりを思わせるポップな感触と耳触りのよいキャッチーなメロディで、
3、4分台の比較的シンプルな曲調は、むしろハードポップという作風であるが、
美しいシンセアレンジなどはさすがのセンス。クオリティの高い好作品です。
メロディック度・・8 キャッチー度・・9 ポップ度・・8 総合・・8

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SAGA 「Heads Or Tales」
カナダのプログレハードバンド、サーガの5th。1983年作
前作「Worlds Apart」同様に、初期を代表する人気の高い作品で、
ギター的にはややヘヴィさを増していて、シンセとのバランスがとれてきたという印象。
キャッチーなコーラスワークとともに、ギター部分での聴き所も増したことで、
これまでシンセメインだったサウンドにはメリハリが付いた。
プログレハードとして考えれば、むしろ前作よりも楽しめる内容だろう。
メロディアス度・・8 プログレハー度・・8 キャッチー度・・8 総合・・7.5
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RUSHPower Windows
カナダのプログレバンド、ラッシュの11th。1985年作
「Signals」Grace Under Pressure」と続いてきたキャッチーな路線の延長で
シンセアレンジを効果的に取り入れた空間的な広がりを感じさせるサウンド。
80年代的なポップ感覚と、バンド本来の躍動感がいいバランスで合わさっていて
25年たった今でも、というか今だだらこそ、そのセンスの見事さが再確認できる。
ベースのかもしだす抜群のグルーブ感と、伸びやかなギターワークも魅力的。
聴き心地の良さという点では、この路線での完成系というべきアルバムだろう。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 キャッチー度・・8 総合・・8
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KAYAK 「Merlin」
オランダのメロディックロックバンド、カヤックの8th。1981年作
日本ではプログレ、シンフォニックファンからの人気が高いバンドだが、
本国やヨーロッパではポップなメロディックロックとして長く支持されている。
今作は70年代からの活動に一区切りをつけるアルバムで、「アーサー王伝説」をテーマにしたコンセプト作。
とはいっても難解さはなく、キャッチーなメロディで聴かせる良質のプログレハードであり、
やわらかなコーラスワークに、美しいピアノ、シンセワークなどが素晴らしい。
バンドはこの後、2000年に復活し、2003年には本作の完全版となる作品を発表する。
メロディアス度・・9 プログレ度・・7 キャッチー度・・8 総合・・8
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Anyone's Daughter「Neue Sterne
ドイツのプログレバンド、エニワンズ・ドウターの5th。1983年作
サウンドの方は80年代的なポップな感触が強まっているが、楽曲がコンパクトになった分
このバンドのキャッチーなメロディセンスが前にでていて、プログレハード的にも楽しめる好作。
もちろんメロウなギターの旋律や、ドイツ語の歌声などには欧州的な叙情が感じられ、
洗練されたシンセワークを含めてアレンジの上手さも光っている。80年代エニワンのラスト作品。
2012年リマスター盤のボーナスには1982年のライブ音源を3曲追加収録。
メロディック度・・9 叙情度・・9 ロマン度・・8 総合・・8
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◆過渡期の90年代

CITADEL 「THE CITADEL OF CYNOSURE & OTHER TALES」
幻のアメリカンプログレハードバンド、シタデルの唯一のアルバム。1990年作。
内容はハードロック的音像の中にもキャッチーな歌メロとキーボードワークが光る
良質のプログレハード。コーラスも兼ねる女性ベーシストにギター&ヴォーカルの甘い性質、
そしてセンスの良いキーボードと、自主制作的ながら内容は充実しており、
適度にテクニカルな演奏も見事。さわやかなメロディが満載の好作だ。
シンフォニック・プログレハードとして、1作のみで消えてしまうには惜しいバンドであった。
メロディアス度・・8 プログレハー度・・8 キャッチー度・・9 総合・・8
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KANSAS 「FREAKS OF NATURE」
アメリカのプログレハードの雄、カンサスの1996年作
5th「Point of Know Return」以後ポップ化し、やがてバンドは一時休止などにも陥り、
それ以降はなかなか往年のファンを満足させるアルバムを作れなかった彼らだが
この作品は全盛期を思わせるドラマティックなサウンドでなかなかの出来だ。
とくに序盤のたたみかけるようなはねるリズムと美しいヴァイオリンの音色は、
まさしくあのカンサス節。これまでにないメロディアスハード的なギターと、
それに絡むヴァイオリンは、アルバムを通しても見事な聴きどころになっている。
メロディアス度・・8 ドラマティック度・・8 カンサス度・・8 総合・・8
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Tristan Park 「A Place Inside」
アメリカのプログレハード、トリスタン・パークの1995年作
美麗なシンセアレンジと適度にハードなギター、大人の雰囲気をかもしだすヴォーカルで聴かせる、
メロディアスなプログレハード。きらびやかな感触と、叙情的なギターフレーズも随所に入ってきて、
これという新鮮味はないのだが、シンフォニックでキャッチーなメロディアスハードとしても楽しめる。
1996年に1作のみを残したThe Lightなどと同様、なかなかクオリティの高いアルバムである。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 きらびやか度・・8 総合・・8
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THE LIGHT 「ON A NEW HORIZON」
アメリカのプログレハードバンド、ザ・ライトの1996年作
キャッチーで軽快なプログレハードサウンドが始まった…と思ったら、
KANSASにも通じる叙情性とシンフォニックなキーボード、泣きのギターも加わって
楽曲には案外壮大な雰囲気もあり、これはなかなか楽しめるサウンド。
プログレハード的であっても古くささはあまりなく、アレンジの質も高いと思われる。
ヴォーカルはやや弱いが、綺麗なコーラスハーモニーも手伝って気持ちよく聴き通せるし、
プログレメタル的な質感を垣間見せる曲もあり、キャッチーさとドラマティックさを上手く両立させている。
メロディアス度・・8 シンフォニック度・・8 プログレハー度・・8 総合・・8
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EVERON
Paradoxes」
ドイツのプログレ・ハードバンド、エヴェロンの1st。1993年作
きらきらとしたシンセワークにメロディアスなギター、キャッチーなヴォーカルで聴かせる
耳心地のよいシンフォニック・プログレサウンド。楽曲に難解さはまったくなく
いうなれはせ、カナダのSAGAをさらにまろやかに、メロウにしたという印象。
アルバムを重ねるごとにハードな重厚さを増してゆくが、キャッチーなプログレハードとしては本作が最高だ。
メロディアス度・・9 キャッチー度・・8 プログレ度・・7 総合・・8
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Last Turion「Seduction Overdose」
ドイツのプログレバンド、ラスト・トゥリオンの1996年作
伸びやかな歌声と適度にハードエッジなギター、90年代以降の美麗なシンセアレンジで聴かせる
メロディックで爽快なハードシンフォニックロック。同じドイツではEVERONが先にデビューしているが、
このバンドもキャッチーな抜けの良さとメロウな旋律を併せ持つ、クオリティの高いサウンドである。
歌唱の説得力も含めて確かな演奏力とともに、ダイナミックな雄大さを感じさせる楽曲は、
イギリスでいえば、PENDRAGONやARENAあたりにも引けをとらないだろう。一方では随所にやわらかで
繊細な叙情を覗かせるアレンジセンスもなかなか見事。ハードさとメロウな叙情のバランスのとれた好作品だ。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 壮大度・・8 総合・・8
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The Greatest Show on Earth
マーティン・ダービル率いる、MOONのメンバーを中心に、
ジョン・ウェットン、ニック・バレット、マーティン・オーフォード、クライブ・ノーラン、
ミック・ポインター、ジョン・ミッチェル他、多数の有名ゲストが集結した作品。1998年作
ストーリーに基づいたコンセプト作のようだが、サウンドには難解な部分はなく、
キャッチーなメロディで聴ける、上質のプログレハードサウンドである。
シンフォニックなシンセワークに、耳に心地よいメロディアスなギター、
そしてマイルドなヴォーカルで聴かせる、スケールの大きなアルバムだ。
メロディアス度・・8 キャッチー度・・8 壮大度・・8 総合・・8
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HARLAN CAGE 「FORBIDDEN COLORS」
アメリカの叙情派ハードポップバンド、ハーランケージの3rd。1999年作
1st、2ndともに素晴らしいメロディ満載の完成度の高いアルバムだったが、
その徹底した叙情へのこだわりは今作でも健在だ。
メロディアスなギターとキーボードワークに、サビでの美しいコーラスハーモニー。
このバンドのサウンドには、尖ったたところがないので、メタルリスナーよりもむしろ
叙情派プログレハード、シンフォニック系リスナーにこそ好まれるものだろう。
メロディアス愛好家は必聴のバンドであろう。どのアルバムも傑作。
メロディアス度・・9 哀愁度・・9 楽曲・・8 総合・・8.5

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◆イギリスのプログレハード現在形

PALLAS 「THE CROSS & THE CRUCIBLE」
英国シンフォニック・ハードの雄、復活パラスの2作目。2001年作
前作「BEAT THE DRUM」において本格派シンフォニックサウンドへと変貌を遂げ、
それに続く今作も、コンセプトをともなった大掛かりな作りのアルバムだ。
いわゆるPENDRAGON的な、ゆったりとしたリズムにメロウなギターとキーボードをのせ、
叙情的な歌とともに、ときに静謐に時に劇的に楽曲を盛り上げてゆく手法が光る。
ゆるやかに流れてゆく部分などは、やや間延びして退屈にも思えるが、
その分ドラマティックな盛り上がりでは、これぞシンフォニックハードという壮麗さを聴かせる。
メロディアス度・・7 シンフォニック度・・8 壮大度・・8 総合・・8
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WETTON DOWNES「Icon」
ジョン・ウェットンとジェフ・ダウンズのユニットの2005年作
互いにキャリアのあるミュージシャンのコラボということで、ファンも期待を寄せたことだろうが、
サウンドは美麗なシンセアレンジと、渋みのあるウェットンのヴォーカルで聴かせる正統派のプログレハード。
英国らしい荘厳な雰囲気と湿り気ある叙情性が素晴らしく、ASIAのポップ性を薄めてドラマティックにしたような聴き心地。
シンフォニックといってもよいダウンズのシンセも楽曲を重厚に彩っている。英国らしさという点では、TENやMAGNUMなどを思わせるような
シリアスな世界観もあって、随所に聴かせるメロウなギターの旋律とともにハードロック系のリスナーにも楽しめるだろう。
イアン・マクドナルド、アニー・ハズラムなどがゲスト参加。ボーナスにASIA“Heat of Moment”2005年バージョンを収録。
ドラマテイック度・・8 プログレ度・・7 英国度・・9 総合・・8
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MAGNUM 「Princess Alice & the Broken Arrow」
ブリティッシュ・プログレハードのベテラン、マグナムの2007年作
通算13作めとなる今作は、ロドニー・マシューズによるジャケからして往年のファンタジックな世界観を感じさせる。
美しいシンセに導かれて、ボブ・カトレイの歌声が流れだすと、まぎれもなくあのマグナムサウンドがよみがえる。
ベテランバンドらしい落ち着いた味わいでゆるやかに盛り上げてゆく楽曲は、英国ならではのウェットな質感とともに、
正統派のドラマティックロックとしての誇りが感じられ、まるで歳を重ねたワインのように芳醇で、そしてあたたかなぬくもりがある。
「On a Storyteller's Night」を彷彿とさせる、これぞファンタジー・プログレハードの傑作だ。
メロディアス度・・8 ドラマティック度・・8 英国度・・10 総合・・8
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GPSWindow to the Soul
ASIAのメンバーらによる、プログレハードバンド、GPSの2006年作
J.ペイン、G.ゴーヴァンの元ASIA組みを中心に、SPOCK'S BEARDのリョウ・オクモトも参加。
ややハードめの質感と英国らしいメロディが合わさった、現代風のプログレハード作だ。
ギターはメタリックなほどに重厚で、ややかすれた声質のジョン・ペインの歌声が乗ると
やはり70年代を通過した大人のサウンドに聴こえる。MAGNUMとかTENなどと同様、
英国然とした誇りが音には感じられ、新鮮味はあまりないが質の高さで聴き通せる。
HRになりそうなサウンドをリョウ・オクモトの流麗なシンセワークが引き戻しているのもポイント。
メロディアス度・・8 英国度・・8 けっこうハー度・・8 総合・・8
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THRESHOLD 「Dead Reckoning
イギリスのプログレメタルバンド、スレッショルドの8th。2007年作
デビューは1993年なので、すでに活動15年てん初期よりもずっと骨太になった本作のサウンドは、
メタリックなヘヴィさと適度なテクニカルさを持ち、そこにYESASIA風のいわばプログレハード的
キャッチーなコーラスワークが絡んでゆくもので、難解さはなく非常に聴きやすい。
派手すぎないシンセワークに、楽曲を損なわない程度のリズムチェンジや転調なども非常にバランスがよく、
ベテランらしい細やかなアレンジが効いている。強烈なインパクトこそないものの、じっくりと楽しめる、とてもよく出来たアルバムだ。
メロディアス度・・8 プログレメタル度・・7 プログレハー度・・8 総合・・8
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IT BITESThe Tall Ships
イギリスのプログレハードバンド、イット・バイツの2008年作
スタジオ作としては久しぶりの復活作。まるであの当時のIT BITESが甦ったようなサウンドだ。
キャッチーなメロディに、テクニカルな隠し味とセンス溢れるアレンジ、
そして泣きの叙情も盛り込んだ、素晴らしきプログレハードを聴かせてくれる。
フランシス・ダナリーは不参加ながら、KINOでも活躍するジョン・ミッチェルの歌声は
まったく違和感がなく、むしろ往年以上の瑞々しさとドラマティックな感触が見事。
過去をなぞるだけでない意義のある復活作だ。ACTなどのファンも絶対にチェック。
メロディアス度・・8 イット・バイツ度・・9 楽曲・・9 総合・・8.5
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ASIA「Phoenix」
イギリスのプログレハード、エイジアの2008年作
ジョン・ウェットン、スティーヴ・ハウ、カール・パーマー、ジェフ・ダウンズという
オリジナルメンバーによる25年ぶりのアルバム。きらびやかなシンセと適度にハードなギター、
そしてジョン・ウェットンの枯れた味わいのヴォーカルで聴かせるサウンドは、
キャッチーでありながら厚みのあるシンフォニックな聴き心地で楽しめる。
ベテランらしい質の高さとかつてと変わらぬあくまでメロディにこだわる方向性で、
往年のファンはもちろん、若いリスナーなどにもアピールする好作品に仕上がっている。
メロディック度・・9 プログレハー度・・8 エイジア度・・8 総合・・8
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Martin Orford「The Old Road」
IQのシンセ奏者、マーティン・オーフォードのソロ作。2008年作
突如IQを脱退したオーフォードは、自身の音楽活動のキャリアの最後として本作を制作。
ジョン・ウェットンをはじめ、ジョン・ミッチェル(IT BITES)、ゲイリー・チャンドラー(Jadis)、
スティーブ・ソーンら多数のゲストが参加。オーフォードの美しいシンセワークを軸に、
メロディアスなギターとキャッチーな歌メロで聴かせる、絶品のシンフォ・プログレハード作だ。
TRANSATLANTICばりの爽快なメロディと、古き良きシンフォニックロックの質感が合わさり、
ASIAあたりを思わせるヴォーカルハーモニーがやわらかにかぶさる。JADISばりの泣きのギターも
たっぷりと入って、叙情豊かに繰り広げられるこれは素晴らしいシンフォニックハードの美麗傑作。
シンフォニック度・・8 キャッチー度・・9 プログレハー度・・8 総合・・8.5
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ARK 「Wild Untamed Imaginings」
イギリスのプログレバンド、アークの2011年作
80年代に結成、元IQのBを含むメンバー編成で、90年代まで活動していたバンドの復活作。
オルガンやムーグシンセが鳴り響き、ハード寄りのギターと枯れた味わいのヴォーカルで聴かせる、
シンフォニックなプログレハードというサウンド。楽曲自体はASIAや中期のYes、IT BITESなどを思わせる
キャッチーなメロディアス性でとても聴きやすく、やわらかなフルートの音色が入った繊細な叙情性もよいですね。
ただ、いかんせんヴォーカルのウェットンを下手にしたようなオッサン臭い声が好みを分けるところかもしれない。
音作り的にも90年代の延長という感触で、いくぶんB級がかった英国のプログレハードがお好きならどうぞ。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 古き良きプログレハー度・・8 総合・・7.5
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DBA 「PICTURES OF YOU」
ジェフ・ダウンズとクリス・ブレイドのユニット、ダウンズ・ブレイド・アソシエイションの2012年作
シンガーにして作曲家、プロデューサーとしての顔も持つクリス・ブレイドと、バグルズ、イエスで活躍したジェフ・ダウンズという、
このコンビで作られたイメージ通りのサウンドで、美しいシンセアレンジとマイルドなヴォーカルを乗せた、
モダンでキャッチーなプログレハード。打ち込みのドラムによる80年代ルーツのシンプルなビート感に、
ときにメロディックなギターを加えた耳心地の良さは、バグルズなどが好きな方には普通に楽しめるだろう。
1曲目は13分という大曲ながら、シンセの重ねによるシンフォニックな感触もあったり、間延びせず聴き通せる。
その後は4分前後のコンパクトなナンバーが並び、しごく普通のAORという感じなのだが、それが心地よいのだな。
メロディック度・・8 プログレ度・・6 80'sAOR度・・8 総合・・8
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THIS OCEANIC FEELING 「Universal Mind」
イギリスのプログレハード、ディス・オーシャニック・フィーリングの2015年作
Downes Braide Associationでも活動するクリス・ブレイドを中心に、ベースはIT BITESのリー・ポメロイ、
ドラムは、PRODUCERSにも参加したアッシュ・ソーンというトリオ編成のユニットで、
マイルドなヴォーカルとメロウなギターワークに、プログレ寄りのシンセアレンジで聴かせる、
キャッチーなやわらかさと湿り気のある叙情を同居させたサウンド。ASIAなどに通じる古き良きAOR感触とともに、
ときにポストプログレ寄りの繊細な感触もありつつ、オルガンやムーグ、ピアノなどのシンセも随所に美しい。
DBAの方が80年代感覚を再現しているのに対し、こちらはモダンプログレの要素を含んだ聴き心地。
プログレ、ポップ、AORという要素を、絶妙なアレンジセンスで包み込んだ見事な傑作です。
メロディック度・・9 プログレ度・・7 叙情度・・8 総合・・8.5
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CIRCA 「Valley of the Windmill」
イギリスのプログレハード、サーカの2016年作
Yesのビリー・シャーウッド、トニー・ケイを中心にしたバンドで、本作は14分、18分という大曲を含む全4曲という構成。
美しいシンセアレンジに、キャッチーなコーラスハーモニーを乗せた、ASIAにも通じるポップでメロディックな味わいと
オルガンなどを含む古き良きプログレ性が合わさったサウンド。楽曲は長いものの、あくまで歌ものという構成で、
スリリングな展開や新鮮味というのは薄いのだが、逆に言えばメロディックロックとしてのメジャー感に包まれていて、
渋みのある歌声と安定した演奏でゆっくり楽しめる。ラストの大曲はシンフォニック的でもある起伏のある構成力で
中期のYesを思わせるような優美なサウンドが味わえる。大作志向ながら、耳心地のよいキャッチーな好作品。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 王道プログレハー度・・8 総合・・8 
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the Syn 「Trustworks」
かつてはクリス・スクワイアを中心に活動した、Yesの母体として知られるバンド、シンの2016年作
本作ではヴォーカルのスティーブ・ナーデリを中心に、演奏陣には全員MOON SAFARIのメンバーが参加、
さらにはヨナス・レインゴールドも参加ということで、ほぼ北欧プログレ状態といってもいい布陣であるが、
サウンドは、枯れた味わいのヴォーカルを中心にした哀愁の叙情を聴かせる歌ものプログレハード。
楽曲は3〜5分台中心で、オルガンを含んだシンセやメロウなギターワークを聴かせつつ、
全体的にはシンプルな爽快さで、アダルトな歌声はジョン・ウェットン〜ASIAあたりにも通じる。
随所にムーン・サファリを思わせるコーラスワークやシンフォニックな美しさも覗かせつつ、
ラストの大曲ではGENESISを思わせる叙情とプログレ的な展開力に包まれ、泣きまくりのギターで大団円。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 大人の哀愁度・・8 総合・・8
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KIAMA 「Sign of IV」
イギリスのプログレハードロック、キアマの2016年作
MAGENTAのロブ・リードを中心に、FROST*のアンディ・エドワーズをドラムに、ギターにはルーク・マシンが参加
THE REASONINGのディラン・トンプソンをリードヴォーカルに据えた編成で、70年代ルーツの古き良きロック感触と
シンフォニックなプログレ性をほどよくブレンドしたという作風。いうなれば、レッド・ツェッペリン的な英国ハードロックを
オルガンなどを含む美しいシンセとともに、プログレファン向けに構築したという聴き心地である
随所に聴かせるルーク・マシンのテクニカルなギタープレイや、ロブ・リードの美麗なシンセアレンジもさすがで、
しっとりとした叙情的なバラード曲などはシンフォニックロック的にも楽しめる。大人の味わいに包まれた力作。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 英国ロック度・・9 総合・・8
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◆アメリカ、カナダのプログレハード現在形

HIRSH GARDNER 「WASTELAND FOR BROKEN HEARTS」
NEW ENGLANDのDr、ハーシュ・ガードナーのソロ作。2002年作
伝説のメロディアスハードバンドとして3枚のアルバムを残して消えたニューイングランド、
再結成を望むファンの声も多い中、届けられたのがこのアルバムである。
サウンドは叙情とポップなフィーリングに満ちたメロディアスハードで
かつてのサウンドを彷彿とさせる部分も多い。作曲にVoもこなすハーシュの能力も素晴らしく、
この作品がバンド胎動のなんらかの架け橋になればと切に願いたい。
メロディアス度・・8 キャッチー度・・8 ニューイングラン度・・8 総合・・8
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DRIVE SHE SAID 「Real Life」
アメリカのメロディアスハード、ドライヴ・シー・セッドの2003作
アメリカンプログレハードの雄、TOUCHのキーボード奏者マーク・マンゴールド率いるバンド。
キャッチーなメロディとほのかな哀愁を乗せた楽曲は、オーソドックスながら
かつての80年代産業ロック全盛期を思わせる質の高さが見事だ。
マンゴールドのシンセワークは古き良き質感をともなって、やわらかみのある歌メロとともにサウンドを彩っている。
往年のプログレハードファンならば、きっと満足の1枚だろう。
メロディアス度・・8 キャッチー度・・8 往年のプログレハー度・・9 総合・・8
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PROTO-KAW 「BEFORE BECOME AFTER」
KANSASの前身バンドのオリジナルメンバーによる再結成バンド、プロト・カウの2004年作
キャッチーなヴォーカルメロディと随所に古き良きプログレサウンドをかもし出す、
美しいキーボードアレンジで聴かせる、王道のプログレハード。ケリー・リヴグレンのギターワークも、
アコギも巧みに弾きこなしたり、年季を感じさせる哀愁の美学とともに、巧みな演奏が光っている。
全体的にテクニカルすぎず、さりとて歌ものすぎず、メロディアスな部分はしっとりと美しく、
ときにフルートの音色なども効果的に入ってきて、やわらかな大人の味わいに包まれている。
そしてやはりKANSASの曲調にも通じる、アメリカらしいプログレハードサウンドが実に心地よい。
メロディアス度・・8キャッチー度・・8 プログレハー度・・8 総合・・8
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THE SIGN 「The Second Coming」
アメリカのメロディアスハードユニット、ザ・サインの2nd。2004年作
TOUCHのMark Mangold、STRANGEWAYSのTerry Brock、
Trans Siberian OrchestraのJon Bivonaらがメンバーに名を連ねる。
サウンドはQUEEN+KANSASといったメロディアスなプログレハード風で、
QUEEN風のキャッチーなコーラスに、繊細なキーボードワークが美しい。
Terry Brockの枯れた味わいのヴォーカルも耳に優しく、全体的に大人のメロディアスロックといった趣。
ヘヴィなメタル色はあまりないので、ハードロックファンよりはむしろプログレファン向きかもしれない。
メロディアス度・・8 プログレハー度・・8 大人の味わい度・・8 総合・・8
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Cryptic Vision 「Momentst of Clarity」
アメリカのプログレハードバンド、クリプティック・ビジョンの2003年作
サウンドはIT BITESACTなどにも通じるキャッチーなプログレハードサウンドで、
非常に聴きやすく、KANSASを思わせる歌メロなども耳に心地よい。
ゲストによるヴァイオリンも美しく、メロディアスさと哀愁とキャッチーさが合わさった楽曲は
自主レベルとは思えない完成度。12分を超えるタイトル曲も聴きどころ。
ゲストギタリストにはラルフ・サントーラ(MILLENIUM)の名前もある。
メロディアス度・・8 キャッチー度・・8 プログレハー度・・8 総合・・8
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MAGELLAN「IMPOSSIBLE FIGURES」
アメリカのシンフォニック・プログレ・ハードバンド、マジェランの5th。2003年作
中心人物のトレント・ガードナーは、EXPLORE'S CLUBなどへの参加から評価が上がってきたようで、
本作は軽快なシンフォニック性とマジェラン節ともいえるキャッチーな歌メロが見事に融合した傑作となった。
多彩なシンセの音色はもちろん、どこかレトロなピアノの使用法や、時代的なコンセプトに基づいた世界観なども見事。
また、これまでにないドラムの手数の多さもポイントで、レーベルがINSIDE OUTに変わったことも作用しているのだろう、
プログレメタル、プログレハードとしても充分に聴ける。シンフォニックでキャッチーだが、全体的に締まった密度の高さがある。
シンフォニック度・・8 キャッチー度・・8 プログレハー度・・8 総合・・8
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AJALON 「On The Threshold Of Eternity」
NEAL MORSEのソロ作などでベースを努めるRandy Georgeのバンド、アジャロンの2005作。
サウンドは爽やかなメロディが心地よいプログレハードで総じてキャッチーで叙情的な作品。
Randyはベースの他、ギター、キーボードもこなしていてマルチプレイヤーぶりを発揮している。
ラスト2曲はそれぞれ10分を超える大作で、NEAL MORSEのアルバムにも通じる
アメリカ的な爽快さとメロディアスな盛り上がりが光る、なかなかドラマティックな曲。
ゲストにはNEAL MORSEの他、RICK WAKEMANも参加。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 爽やか叙情度・・8 総合・・8
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CANNATA 「MYSTERIUM MAGNUM」
ARCANGELのジェフ・カンナタの2006年作
美しいシンセにゆるやかなギターワーク、枯れた味わいのヴォーカルで聴かせる、
80年代風のメロディアスなプログレハードサウンドだ。
TOTOKANSASなどを思わせるいかにもアメリカ的なキャッチーさに加え、
プログレ的なフルートなども加わって、ときにシンフォニックに聴かせたり、
コーラスハーモニーなどにはYESを思わせるような感触もある。
総じて新鮮味はないが、質は高く、安心して楽しめるメロディアスな作品だ。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 プログレハー度・・8 総合・・8
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StarCastle 「Song of Times」
アメリカのプログレハードバンド、スターキャッスルの2007年作
1976年にデビューした時は完全なYESのフォロワーとして注目されたが、
その後プログレハード色を強め、1978年までに4作を発表、その後解散した。
スタジオ作としては実に29年ぶりとなる。今作ものっけから典型的な
アメリカン・プログレハード色が全開で、オールドファンにはうれしいかぎりだろう。
レトロな音色のキーボードに、歳をとったジョン・アンダースンという雰囲気のヴォーカル、
新鮮味は皆無だが、キャッチーでややハードめなシンフォニックサウンドが楽しめる。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 プログレハー度・・9 総合・・7.5
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SAGA 「TRUST」
カナダのプログレハードバンド、サーガの2006年作
前作「Network」、前々作「Marathon」と、質の高い作品を作り続けているベテランバンド、
“Chapter”シリーズの楽曲にひと区切りをつけたことが、新たなバンドの息吹となったのだろう。
本作はシンセによるシンフォニックな味付けとキャッチーなメロディが融合した、
往年の質感を取りもどした初期を思わせるプログレハードサウンドとなっている。
ポップさを控えめにしたことで湿りけを含んだドラマティックな雰囲気が強まり、
従来の大人のメロディックロック路線から、プログレ側に再び接近した傑作である。
メロディアス度・・8 キャッチー度・・8 プログレハー度・・8 総合・・8
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MYSTERY「Beneath the Veil of Winter's Face」
カナダのプログレバンド、ミステリーの2008年作
80年代に結成され、すでにベテランの域にあるバンドで、
そのサウンドはYESを思わせるキャッチーなメロディで聴かせる美しいシンフォニックロック。
本作ではそのYESの'09年北米ツアーに参加したYESトリビュート・バンドのヴォーカルが加入、
ジョン・アンダースンばりの透明感のある歌声を聴かせてくれる。
メロディアスなギターフレーズと美麗なシンセによって爽やかさに彩られた楽曲は
音の厚みも充分。スリリングなドラマ性よりもプログレハード的な爽快感が気持ちいい。
シンフォニック度・・8 メロディアス度・・8 ドラマティック度・・7 総合・・8
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Andrew Gorczyca「Reflections」
2004年に他界したアーティストAndrew Gorczycaの残した楽曲を、兄弟であるChris Gorczyca
まとめあげ、SPOCK'S BEARDのメンバーら多くのゲストとともに仕上げた作品。2009年作
サウンドはASIAやKANSASあたりを思わせるキャッチーなプログレハードで、
シンプルな聴きやすさと爽やかなコーラスハーモニーが耳に心地よい。実力者の揃った演奏は
プログレ・フュージョン的な軽やかさの中にも、さりげなくテクニカルなものを聴かせるところが心憎い。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 キャッチー度・・8 総合・・8
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LISA LARUE'S PROJECT 2K9 「WORLD CLASS」
アメリカの女性シンセ奏者、リサ・ラルーのプロジェクト。2009年作
ASIAにも参加したB&Voのジョン・ペイン、Pete Bardens'MIRAGEに参加していたG、スティーヴ・アダムス、
Ghost CircusのBやPar Lindh ProjectのDrなどが参加。リサ嬢のきらびやかなシンセワークを中心に、
随所にメロウなギターとプログレ的な変拍子なども取り入れたインストパートを聴かせながら、
ヴォーカルが入ると80年代的なプログレハードの感触にもなる。楽曲は3、4分台中心で、
比較的シンプルな聴き心地とマイナー臭すぎないスケール感をともなった好作品です。
シンフォニック度・・7 プログレ度・・7 プログレハード風度・・8 総合・・7.5
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YOSO「ELEMENTS」
TOTOのボビー・キンボールと元YESのビリー・シャーウッド、トニー・ケイらよるユニット、ヨソの2010年作
キャッチーなメロディで聴かせるプログレハードで、やはり随所にTOTOを思わせるポップセンスもあり、
往年のファンならにやにやするだろう。楽曲自体に新鮮味は薄いものの、なつかしい感じで楽しめる好作。
ボーナスのDisc2には、TOTOの名曲“Rosanna”やYesのメドレーなども含んだライブ音源を収録。
キャッチー度・・8 往年のトト風度・・8 新鮮度・・7 総合・・8
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OZ KNOZZ「True Believer」
アメリカのプログレバンド、オズ・ノズの2011年作
結成は古く、70年代に活動していたらしいが活動休止、その後2008年に復活し、本作は復活2作目となる。
キャッチーなメロディとシンセを含んだきらびやかなアレンジで聴かせる、古き良き王道のプログレハードスタイルで、
かつてのKANSASやNEW ENGLAND、AMERICAN TEARSなどを思わせる、70〜80年代的な感触がなつかしい。
適度にハードなギターや、ヴォーカルの歌声にしてもどこかマイナー臭いのもよろしいですな。
これといった新鮮味はないのだが、アメリカン・プログレハード好きはチェックの作品です。
メロディック度・・8 古き良き度・・8 プログレハー度・・9 総合・・8
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Primitive OverflowHonor Waydown」
アメリカのプログレバンド、プリミティブ・オーバーフロウの2012年作
ジャケは怪しいが、サウンドはキャッチーなメロディで聴かせる、ポップ感の漂うプログレハードで、
適度にハードなギターと美しいシンセワーク、コーラスハーモニーが合わさったやわらかな聴き心地。
楽曲は5分前後が中心だが、随所に泣きのギターを含んだ叙情美やプログレ的な展開もあって、
インスト部分でのアレンジにもなかなかセンスを感じさせる。歌メロのキャッチーさはIT BITES
SPOCK'S BEARDにも通じる抜けの良さがあって、総じて爽やかに楽しめる好作品となっている。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 キャッチー度・・9 総合・・8
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Flying Colors
マイク・ポートノイ、ニール・モーズらによるユニット、フライング・カラーズの2012年作
TRANSATLANTICのニール・モーズに、Deep PurpleやDixie Dregsで活躍する・スティーヴ・モーズ
そして元DREAM THEATERのマイク・ポートノイという、凄腕のメンバーが集結したユニットで、
キャッチーなメロディで聴かせる古き良き感じのプログレハードサウンド。
やはりメロディにはNEAL MORSEの色が強く、彼のソロやTRANSATLANTICでの
キャッチーな部分に通じる味わいが感じられる。演奏の方はさすがというような玄人好みのプレイで、
随所にテクニカルなギタープレイを盛り込んだり、ポートノイのドラムに乗せるデイブ・ラルーのベースも
軽やかなグルーブが効いていて、アンサンブルとしての肩の力の抜け具合がとても爽快だ。
メロディアス度・・8 キャッチー度・・8 アンサンブル度・・9 総合・・8
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ARC ANGEL
アメリカのプログレハード、アークエンジェルの2013年作
シンセ奏者でマルチプレイヤーのジェフ・カンナタが率いるバンドの1983年作以来、じつに30年ぶりとなる2作目。
CANNATA名義のソロは多数あるものの、まさかこのユニットでの復活とは驚きであるが、サウンドの方も、
美麗なシンセアレンジと枯れた味わいのヴォーカルで聴かせる、往年を思わせる古き良きメロディック・ハード。
総じてキャッチーな感触ながら、MAGNUMあたりに通じるドラマティックな雰囲気と、キャリアをへたミュージシャンの醸し出す
哀愁の叙情も素晴らしい。随所にプログレ風味のシンセや泣きのギターフレーズもよろしく、カンナタファンは必聴の仕上がり。
メロディック度・・9 キャッチー度・・8 枯れた叙情度・・9 総合・・8
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Tom Brislin 「Hurry Up and Smell The Roses」
アメリカのシンセ奏者、トム・ブリスリンのソロ。2013年作
YesやCamel、The Syn、Meat Loafなどのツアーやレコーディングなどに参加した実力派ミュージシャンで、
本作はやわらかなシンセアレンジとヴォーカルで聴かせる、キャッチーにして繊細な耳心地の好作品。
ポップなやわらかさの中にも、うっすらとプログレな感性を漂わせているというところは、
A.C.TMoon Safari などのファンにも楽しめるだろう。商業解釈のポッププログレというべきか、
ただ、それ以上にピュアなメロディへの愛情も感じられるのが素晴らしいところ。
メロディアス度・・8 キャッチー度・・9 プログレ度・・7 総合・・8
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FM 「TRANSFORMATION」
カナダのプログレハード、エフエムの2015年作
1977年にデビュー、1987年までに6作を発表し活動を休止、何度かの復活ののちに、
ここに28年ぶりとなる復活作が完成した。キャッチーなヴォーカルハーモニーに、
ヴァイオリンが鳴り響く、爽快なプログレハードサウンドはまさに往年を思わせる作風で、
スペイシーなシンセワークに、随所にメロディックなギターフレーズも覗かせて、
優雅なアンサンブルとともに、ときにYES + KANSASというような聴き心地もある。
80年代的なプログレハード感触を正統に受け継いだというべき好作に仕上がっている。
メロディック度・・8 キャッチー度・・8 往年のFM度・・8 総合・・8
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The Fringe
アメリカとスウェーデンのメンバーによるプログレハードロック、ザ・フリンジの2016年作
ヨナス・レインゴールド(The Flower Kings)、ニック・ディヴァージリオ(元Spocks Beard)、ランディ・マクスタイン(Lo-Fi Resistence)による
トリオ編成のユニットで、適度にハード寄りのギターとテクニカルなアンサンブルで聴かせる、キャッチーなメロディックロック。
技量のあるメンバーによる、知的な構築センスがモダンな歌ものロックとしてのクオリティを高めていて、
A.C.TIT BITESなどのプログレハード系としてももちろん、ProgMetalのリスナーにも楽しめそうな聴き心地である。
曲によっては、TOTOなどを思わせる古き良きアメリカンロックの感触もあったりと、モダンとレトロを巧みに同居させ、
随所にセンスのよいギターワークも光っている。シンプルなロック感にプログレ的な味付けを混ぜ込んだ好作品。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 モダン&ハー度・・8 総合・・8
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◆欧州プログレハード現在形

ACT 「IMAGINARY FRIENDS」
スウェーデンのプログレハードバンド、アクトの2nd。2001年作
このバンドの凄いところは、一聴してキャッチ−でポップなメロディアスハードなのだが、その実プログレなのだ。
クイーンやヴァレンタインを想起させる歌メロとコーラスハーモニーを起伏のある緻密なアレンジで構成、
リズム面も非常によく練られており、この自然な変拍子はどちらかというとプログレファンを唸らせるもの。
全曲作り込まれ高密度な上に、今作では生のストリングスも導入し壮大さも増している。
純粋にメロディを楽しめ、なおかつ複雑音楽としても高得点という、まったく恐ろしいバンドである。
メロディアス度・・10 プログレ度・・8 アレンジセンス・・9 総合・・9
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XSAVIOR 「caleidoscope」
スウェーデンのメロディックハードロックバンド、エクスセイヴィアーの2005年作
北欧メタルシーンきってのベテランヴォーカリスト、ヨラン・エドマン率いるバンド。
KANSASACTあたりに通じる、キャッチーで伸びやかなメロディと
QUEEN的なコーラスハーモニーが素晴らしく、リズムアプローチなどにはプログレ的な要素もある。
ギターもときにかなりテクニカルだったり、シンセのアレンジもとても凝っていて、
完成度抜群の一枚。ヨランの歌声も曲の中で実に瑞々しく映えている。
きらきらとしたキャッチーなメロディアスさが実に耳に気持ちいい。
メロディアス度・・9 プログレハー度・・8 キャッチー度・・9 総合・・8.5
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FLAGSHIP 「maiden voyage」
スウェーデンのメロディアスプログレバンド、フラッグシップの2005年作
一聴してKANSASからの影響を感じさせるプログレハード作。
難解な部分は微塵もなく、メロディには分かりやすさと哀愁があり、
美しいピアノの音色やヴォーカルの歌いかたもどこか古き良きロマンを感じさせる。
ヴァイオリン的なシンセの音色とギターの絡みもなかなか確信犯的で、
KANSASをはじめ70年代のアメリカ系プログレハードを現代に甦らせたかのようなサウンド。
クオリティも高いです。そして当のKANSASのケリー・リヴグレンもゲスト参加。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 KANSAS度・・8 総合・・8
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BROTHER APE 「On the other side」
スウェーデンのプログレバンド、ブラザー・エイプの2005年作
サウンドの方は北欧というよりはアメリカ寄りのキャッチーさと抜けのよさがある。
ほとんどが5分前後のコンパクト曲で、無用な大作志向に走っていないのも聴きやすい。
KANSASあたりのメロディアスさに、ACTなどのさりげないテクニカルさを盛り込んだ
センスのよい現代風のメロディックロックで、ヴォーカルの爽やかな歌唱もあいまって、
結果、SAGAあたりにも通じるようなプログレハード的な聴き方も可能だ。
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 キャッチー度・・8 総合・・8
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FreddeGredde 「Thirteen Eight」
スウェーデンのマルチプレイヤー、フレドリック・ラーソンによる個人プロジェクト作。2011年作
ギター、ベース、シンセにヴォーカルをすべて一人でこなす、期待の若手ミュージシャン、
美麗なシンフォニック性とキャッチーなメロディアスさで構築されるサウンドは、
聴き心地の良さと軽快な展開力を両立させていて、デビュー作にしては相当質が高い。
甘い歌メロとコーラスはMOON SAFARIあたりにも通じるような人懐こさがあり、アコーディオンなど
アコースティック要素も含め、北欧らしい叙情も素晴らしい。アレンジは凝っているのだが難解さは皆無。
精細さとダイナミック、性と動のメリハリという点では、プログレ化したQUEENともいうべきか。
あるいはACTなどのプログレハード好きにも楽しめるかと。今後に大期待のアーティストです。
シンフォニック度・・8 メロディアス度・・9 プログレ度・・8 総合・・8
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Jack Yello「Thorns of Anger」
ドイツのプログレハード、ジャック・イエロの2003年作
適度にハードなギターに美しいシンセアレンジとキャッチーなメロディで聴かせる、
IT BITESPALLASEVELONなどを思わせる高品質なプログレハードサウンド。
ギターの叙情フレーズとともにドラマティックな聴き心地で、プログレ的な展開力とともに
9分を超える大曲なども巧みに構築してゆく。テクニカルなリズムチェンジなどProgMetal風味もありつつ、
あくまでメロディックな感触が前に出ているのも好感が持てる。なかなかクオリティの高い好作品です。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 キャッチー度・・8 総合・・8
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KAYAKAnywhere But Here」
オランダのプログレバンド、カヤックの2011年作
2000年の復活以降コンスタントに活動を続け、本作はそこから数えて7作目となる。
美しいシンセワークと男女ヴォーカルの歌声で、メロディックに聴かせるサウンドは健在で、
3〜4分大の曲を中心にしたシンプルな味わいのプログレハードが楽しめる。
キャッチーながらも欧州的な哀愁を含んだKAYAK節ともいうべきメロディは
デビューから40年近く過ぎても変わらない。愛すべき叙情ロック作品です。
シンフォニック度・・8 メロディアス度・・8 キャッチー度・・8 総合・・8
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Crystal Breed「Place Unknown」
ドイツのハードプログレバンド、クリスタル・ブリードの2011年作
キャッチーなメロディで聴かせるIT BITESタイプのハードプログレサウンド。
モダンなシンセアレンジと適度にヘヴィなギターで、ProMetal的な質感も含んだ
知的な構築センスが光る。哀愁を含んだ泣きの叙情はSYLVANあたりにも通じるか。
全体的にはこれといった新鮮味ないものの、メロディックでクオリティの高いアルバムだ。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 新鮮度・・7 総合・・8
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SubsignalTouchstones
ドイツのハードプログレバンド、サブシグナルの2011年作
SIEGES EVENのGとVoを中心にしたバンドで、シンセを含んだ美しいアレンジと
キャッチーなメロディが光る高品質なサウンド。IT BITESあたりにも通じる軽妙さと確かな演奏力で、
随所にProgMetal的なテクニカルな展開も織り込みつつ、あくまでメロディアスに聴かせる。
5、6分の曲を中心にしながら、11分の大曲も含んで知的な構築センスも抜群だ。
メタル的なヘヴィさはあまりないので、モダンなハードシンフォニックとしても楽しめる傑作。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・8 楽曲センス・・9 総合・・8
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Virtuel 「Conception of Perception」
ブルガリアのプログレハード、ヴィルチュエルの2013年作
1992年にJekyll Hydeという名で結成され、活動休止後にメンバー三人のうち二人は、アメリカ、イギリスへと移住、
インターネットでのデータ共有により2010年に新たにVirtuelとしての1stを発表し、本作はそれに続く2作目となる。
美麗なシンセアレンジと、大人の味わいのヴォーカルで聴かせる、キャッチーなプログレハードサウンドで、
随所にテクニカルなギターフレーズなどを盛り込んだり、メリハリのあるインストパートもなかなか充実している。
打ち込みのドラムがやや平坦な印象ながら、優雅なシンセワークを中心にしたやわらかな聴き心地で、
古き良きプログレハードとシンフォプログレが合わさったような感触が楽しめる逸品だ。
ドラマティック度・・8 キャッチー度・・8 プログレハー度・・8 総合・・8
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Fish on Friday
「Godspeed」
ベルギーのプログレハード、フィッシュ・オン・フライデーの2014年作
前作はメジャー感のあるAOR的なポップ性の好作であったが、本作はのっけから10分を超える大曲で
ぐっとシンフォニックな質感が増している。透明感のあるシンセアレンジにマイルドなヴォーカルを乗せて
繊細なメロディアス性で描かれるサウンドは、YesAsiaをより美麗にしたという感触で、しっとりと味わえる。
2曲目以降も、厚みのあるシンセによるシンフォニック性と、Moon Safariを思わせる美しいコーラスなども含んだ
キャッチーなやわらかさで、とても耳心地がよい。プログレ的な展開やテクニカル性というのはあまりないのだが、
とにかく繊細にして優美な作風には心が和まされる。ゆったりとメロディックな叙情美が好きな方にはマスト。
メロディック度・・9 プログレ度・・7 繊細で優美度・・9 総合・・8
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