百鬼夜行の商店街にてレジ袋はいらない

なぜならば、
百回たためるお得な紙袋には

ミシシッピーの風が香る
金木犀が入っているから

イタリアのトマトと
エジプトのバジルを合わせてみて

ノートルダムの鐘の音を
閉ざした心の門の奥で感じれば

広がる味わいは
七草のごとく、ケシの種のごとく、
ほろ苦い記憶の思い出とともに蘇り、

錠前を開けるときの、
少しだけ削られてひっかかりにくいが
使えなくもないという程度の鍵に変わる

かもしれないというだけ

当面の目標は活火山の頂にて
カルデラ湖となる前の

無尽蔵のエネルギーに満ちた
その姿を目に焼き付けること

たとえるなら
桟橋の端に立ち、

帆をかかげたスループ船の接近に
心から手を振りつつ

笑顔で乗員の安否と水不足を気づかいつつ
ブタの匂いに満ちた船倉での光景を

ほんの一瞬でも嘆いてあげるような
そんな心根の美しさは

樽にはめ込まれた「たが」のひとつが
緩まるくらいまで、ワインを注ぎ入れ、満たし、

甲板の見張り全員を酔わせるほどの
強力な誘惑をもたらす魔力ともならん

そうと限ったことではないが、
しめやかに行われる、騎士就任式と

新艦長を祝うためにマスケット銃をかかげる
ありふれた鷲鼻の近衛隊の面々は、

いくらでもざわめかしく
かつ和やかなムードすらもときにかもしだし

あらゆる苦難に向かうときの、冷徹なる英断を
可能にするほどの威力をもたらすに違いなく

さりとて、ふくらんだスカートの中に隠した
一匹の雌鳥の運命ほどにはきっと

そう過酷ではないかもしれぬ
つまり、七面鳥の人生はまだいいということだ

明日は乾かないかもしれない
物干し台に釣り下がった、すり切れた革のブーツは

いったいいつ決闘に使ったのか
思いがけず主を守るために飛び出した

忠誠なるあの彼のグレイハウンドを思い出させるような
あからさまな傷はついていないにしても

見るからに物々しい面影
さても大したさだめよと、老父を唸らせる見事な顎鬚

また、右腕の鉄の鎖はいったいなにをどうせよと
いうように、ああもじゃらゃらとしているのか

何重にも縛られ
一寸おきにビスが打ち込まれ

手ひどく封印されて、
海に投げ捨てられた

そんな宝箱の行方は

あるいはまた、

彼が知っているのかもしれない





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