シンフォニックレジェンズ
5/8ページ
X
一行はほどなく国境の町ノークトに入った。
ここで夜を明かし、明朝にバルサゴ王国の首都ザラセンに向かうことになる。
すでに日も落ち、辺りは山々の黒々とした影におおわれていた。
砂漠に近いとはいえ日が沈むと辺りの気温はぐっと下がる。
山を渡ってくる風が、不気味に音をたてている。
ノークトの市壁は外から見るといかにも国境の町らしい、寒々しい地方都市の趣だったが、一歩その壁をくぐると町は意外なほどに明るかった。
さほど大きくはない町の大通りには両側にずらりとランプが灯され、市民たちが総出でアダラーマ王女を出迎えたのである。
城門前で待っていた四頭立ての立派な馬車に、王女は女官とともに乗り込んだ。
騎士たちの先導で通りをゆく間、両側から市民たちが歓呼の声や祝辞を上げつづけていた。
一行の騎士も従者たちも、このような田舎の町でこれほどの歓迎をされるとはと、驚きを隠せない様子で目をまるくしながら進んでいった。
馬車が着いたのは町の高台にある壮麗な屋敷であった。
地方の一領主の住まいとは思えぬほどの、たいそう立派なほとんど城といってよいつくりの屋敷だった。
壁は一面に蔦がからみついた風情のある煉瓦造りで、見上げると大きな二つの尖塔がそびえる古風な城である。ここが今日の宿泊先になるのだった。
その屋敷の前にはすでに王女の到着を待っていたように、多くの下男、侍女たちが控えていた。
王女らが馬車から降りると、すいと一人の男が軽やかな足取りで近づいてきた。
四十がらみの口髭をたくわえた立派な紳士である。
「ようこそおいでくださいました。アダラーマ王国王女殿下クシュルカ様。私はこのノークトの領主でございます」
ひざまずいた男は王女の手をうやうやしくとり、くちづけをした。
「すでに我が王子殿下より仰せつかっております。ここまでの長旅まことにお疲れでしょう。今宵はごゆるりと我が屋敷にてお休みください」
如才なく頭を下げる様子には、まったく隙がない。
着ているものも高価な子ジカの毛皮をあしらった立派なローブで、まったく田舎くささもない。周りの侍女たちにしても、無駄な動きも言葉もいっさいなく、ひどく整然としていて訓練が行き届いた様子だった。
一行の騎士たちはほとんどがバルサゴ王国に来たものは初めてで、噂にしか聞いていなかった田舎の貧乏国というイメージがまったく異なっていることにとまどいを見せていた。
「たいへんご丁寧なお出迎え恐縮に存じます。私は王女といえどもこの度はただの来訪者の身、過分なおもてなしには気が引けてしまいます。ただ一夜の宿を、この騎士たち、従者たちともどもお貸し願えれば、それで十分でございます」
王女の言葉に領主はわざとらしく両手を広げ、感嘆の表情をつくった。
「なんと慎ましやかなお言葉。ああ、分かりましたぞ。それでこそ我がバルサゴ王国のサコース王子殿下が見初められた御方。歴史と伝統に満ちたアダラーマ王国随一の美姫。素晴らしい。クシュルカ殿下。今宵から私は殿下の下僕としてお仕えいたしましょう。いやゆくゆくは我がサコース王子殿下とともに、このバルサゴ王国の輝く王室としてご君臨していただきたく、僣越ながら神に祈らせていただきたい。これにあるわがボロ屋敷などに未来の王妃殿下をお泊まらせるのははなはだ心苦しいかぎりでありますが、草や藁の枕よりはマシだとご辛抱いただけますか?」
勢い込んでまくしたてる領主にあっけにとられたようになったが、王女はにっこりと微笑むと
「よろしく申し上げます」とひとことだけいった。
横で聞いていたライファンは、この口達者な領主がすっかり嫌いになっていた。
(王女様はただ仕方なくお見合いに来られただけで、そのなんとか王子と結婚するとは決まってないのに……)
ふくれ面のままつぶやいたが、美しい侍女たちが寄ってきて鎧や旅装を脱ぐのを手伝い始めると、つい赤面して何も言えなくなった。
騎士たちとともに屋敷に案内されたライファンは、石造りの城内の一室に案内された。
室内は広く、暖炉がたかれ、テーブルには果物やワインが置かれていた。
壁際にはこの城を描いた美しい風景画、立派な鹿の頭などが飾られている。ベッドには綺麗な真新しいシーツ、室内に炊かれた香はかぐわしいレモンのような香りだった。
ライファンはこのなんとも豪勢な室内を見回して、案内の侍女を振り返った。
「この部屋を僕一人で?」
「さようでございます」
なんとも豪勢な話であった。たかだか王女付きの護衛騎士一人に対してこれほど立派な個室をあてがうとは。
「他の騎士たちも、こんな部屋に泊まるんですか?」
「さようでございます」
侍女はにっこりと笑って繰り返した。
「しばらくの後、晩餐の支度が整いましたらまた伺いますので、それまではどうぞごゆっくり」
ライファンは侍女が去ってからもしばらく扉の前で突っ立ったまま部屋を眺めていた。
どうも話に聞いていたバルサゴ王国とは違う。
王様の話ではアダラーマに比べ、山岳の国であるせいか田舎臭く、粗野で豪快な国柄だということだったが。
愛用の剣を壁に立てかけ、ライファンはベッドに腰を下ろした。
ほっと息をつくとさすがに旅の疲れからか眠気がさした。
一日かけて砂漠を越え、丘陵を登ってきたのである。さすがに若い彼といえども無理はなかった。
暖かい室内でどれくらいうとうととしていたのだろう。
ノックの音で彼は立てかけてあった剣を取り、立ち上がった。
扉が開かれるとさきほどの侍女が立っていた。晩餐の支度ができたという。
外はすっかり暗くなっていた。いかにも国境の町らしく窓から見える山間には光一つ見えない。
侍女に案内されて階段を降り、一階の広間へ入ると、そこではすでに大きなテーブルに晩餐の料理が並べられ、豪華な食物が湯気を立てている。
ライファンはお腹を鳴らした。なにしろ旅の間は水と乾果くらいしか口にしていない。
「どうぞ。お座りください騎士殿」
背後から領主が声を掛けてきた。
いつの間にか自分の後ろにすっと立っていたのだ。
振り向いたライファンは、まったく気配を感じさせないこの領主を気味悪そうに見た。
「失礼。これが我が妻です。田舎町の城に二人暮らしなもので。本日多くの客人を迎えられて実に光栄至極」
傍らにひっそりと立つ夫人を紹介すると、領主は夫人と並んでテーブルについた。
一応こちらの騎士の数だけ用意された席には誰もおらず、座っているのは領主とその妻のみ。
ライファンは不審に思った。
「他の騎士方が参らぬようですが?」
「さよう」
領主が言うには、旅の一行のうち、従者や女官は別館にて泊まり、ライファン以外の残り五名の騎士は旅の疲れから室内で仮眠をとっているということだった。
「クシュルカ様……王女様は?」
ライファンの問いに領主はひげを撫でつけ薄く微笑んだ。
「ご安心めされよ。只今参られよう」
ライファンは再び領主に勧められ、仕方なく席に着いた。
領主の言葉は嘘ではなかった。
ほどなく侍女に案内された王女が広間に入ってきた。
ライファンは立ち上がって王女の側に駆け寄った。
「王女様。ご無事で」
「どうしたのです?ライファン。なにかあったの?」
ライファンはほっと胸をなでおろした。そこにいたのはいつもの王女だった。
「いえ。……なんでもありません。僕の役目は王女様の護衛ですから。お側を離れてしまって少し不安だっただけです」
「そう」
自分を気づかうライファンの様子がうれしかったのか、王女は微笑んだ。
「ありがとう。ライファン」
「失礼。クシュルカ様」
ライファンは王女にさっと耳打ちした。
王女は一瞬首をかしげたがすぐにうなずいた。
「さあどうぞ王女殿下。貴国の雅びに比べれば何分田舎の貧国、粗末極まりない晩餐ですが、どうぞお席へ」
扉の前の下男がすっと寄って来て椅子を引き、王女は領主の向かいに腰を下ろした。ライファンも再び席に着く。
「それでは。ささやかながらお口汚しを。栄えあるクシュルカ王女殿下と、我が王子殿下の未来に」
注がれたワインのグラスを上げ、領主はそれを飲み干した。
ライファンと王女も杯を上げはしたが、グラスに口をつけただけで飲むことはしなかった。
「いや。今宵は実にめでたい。この私ごときの屋敷にアダラーマ王国の王女殿下がご逗留あそばされるのだから。我が町始まって以来の吉事でありますぞ」
領主は一人がぶがぶとワインを飲み、料理を豪快にたいらげながら話をした。
その横に座る夫人は一言も言葉を発せず、ただ黙々と機械のようにナイフを動かし肉を切って、それを異常なのろさで口に運んでいた。夫人が一口食べる間に領主は一皿を食べ尽くした。
ライファンはその様子を見て自分の考えに自信が持てなくなった。
しかし「これは食べても問題はないのではないか」と思いはじめたものの、時折鳴るおなかに手を当ててそれを我慢していた。
「いかがされた?料理は口に合いませんかな?」
フォークを持つ手を止めてライファンを見る領主の様子は、なにか全てを見透かしたような顔でにやにやと笑っているかのようだった。
「大丈夫ですぞ。毒などは入っておりませんよ。これっぽっちも」
自分の言った冗談がよほどおかしかったのか、領主はしきりにくすくすと笑っていた。横の夫人はあいかわらずぎくしゃくと肉を切っている。
晩餐の間、結局ライファンは出された料理は肉を切ったり口に持ってゆくふりをしただけで手を付けなかった。
王女の方も密かにライファンに注意された通り料理は口にせず、ただおだやかに領主の話にあいづちをうったり、儀礼的に差し障りのない会話を提供したくらいだった。
やがて領主の前には空の皿が山積みされ、ワインの空ビンがいくつも転がった。
「どうやら、私の晩餐にはご満足いただけなかったご様子ですな」
一人口をぬぐいながら、さほど不満そうでもなく領主が言った。
「申し訳ありません。せっかくのご好意でしたのに。きっと旅のせいでかえって食物をうけつけないのでしょう」
王女は微笑んだ。
「ほう。そちらの騎士どのも左様ですかな?」
「ええ。まあ……」
領主は王女とライファンを交互に見ながら面白そうに口の端をつり上げた。
「ときに、騎士どの。その剣はたいそうご立派なものですなあ」
かたときも離すまいとばかりに、自分の座る椅子に立てかけてあった愛剣をライファンは引き寄せた。
「ええ。父の形見らしいのです」
「ほう。お父君の。それはさぞかし名のある代物でございましょうな」
領主の目が鋭く細められたのが分かった。
「さあ。よく分かりませんが……」
ライファンは剣の鞘を触った。
昼間砂漠の日光を受けたせいか、まだほのかに暖かい柄頭の青い宝石が何かを知らせるようにか、きらめいた気がした。
「さてと。ところで明日のことですが」
領主は明日の早朝には首都のザラセンへの馬車が発つことを述べた。
「なにぶん王子殿下はご熱心でしてな。一刻も早くうるわしの王女殿下にお会いしたいと申しております。今宵はなるべくお早くお休みするのがよろしいでしょう」
「承知しました」
王女は丁寧に礼を述べて立ち上がった。ライファンも続いて広間を後にした。
部屋に戻ってからライファンは落ちつかぬ様子でうろうろと室内を歩き回った。
どうもいやな予感がしていた。
このまま王女様を別室で一人にしておいてよいものだろうか。
護衛たる自分が王女の部屋の前で不眠番をすべきではないのか。
晩餐の席から戻る途中、案内の侍女の目を盗んで他の部屋を密かにのぞいてみたが、騎士たちは皆鎧兜を放り出してすやすやとベッドで大の字になっている。
よほど疲れていたのだろうが、それにしても王女護衛の任務を放り出して眠ってしまうというのは不謹慎に思われた。
せめて自分一人はずっと王女に付いているべきなのではないかとライファンは思った。
それにあの怪しげな領主がどうも気になる。
またその夫人の方も、晩餐の間王女様の挨拶にもぎこちない会釈をしただけでまるで死人のように声も発しなかった。
自分と王女を見比べ、一人意味ありげにほくそ笑むような顔をしていたあの領主。
(いったい何者なのだろう……)
どすんとベッドに腰掛け腕を組むライファン。
(この城といい、この町といい、どこかおかしい……)
小さな国境の町のはずが、王女一行を出迎えて通りに並んだ人々の数は数百人どころではなかった。
そのくせ町の中では、あれだけの人々が存在しているというのに活気というものがまるで感じられなかった。
なにもかもがおかしかった。あの谷を渡ってから。
(王女様を……クシュルカ様をお守りしなくては)
(なにがあっても……)
ライファンは決心したようにうなずくと、愛剣を携えベッドから腰をあげた。
そのとき扉をコツコツと叩く音がした。
ライファンは素早く音をたてずに扉の横に身を付けた。剣の柄に手を掛ける。
息を殺して待ち構える。
扉がギギギとゆっくりと開かれた。
「ライファン。いないのですか?」
立っていたのは王女だった。
「あ……」
ライファンはずずっと腰を落とした。思わず力が抜けたように床に座り込む。
「あら。なにをしているの?」
そんな彼の姿を見て王女は目を丸くした。
「クシュルカ様……。びっくりしましたよ」
「あら、ごめんなさい。入ってもいいですか?」
「あ、どうぞ」
あわてて立ち上がろうとするライファンにはかまわず、王女は中に入ると珍しそうに室内を見回していた。
外に誰もおらぬのを確かめるとライファンは扉をしめた。
「お、王女様。どうしたんです。まだお休みではなかったのですか」
「ええ。なんだか……」
ライファンの顔を見て安心したように、王女はほっと息をついて笑った。
「眠る気になれなくて……」
「そうですか……。じつは僕もずっとクシュルカ様のことを考えていて……」
「え?」
「あ、いや……」
ライファンは赤くなった。
薄物の夜着に毛皮のローブを羽織った王女の姿から、目をそらして彼は言った。
「他の護衛も皆眠ってしまって、王女様をお一人にしておいていいものかと……」
「そう。じつは私もそれが不安でした。連れてきた女官が誰もいなくなってしまったみたいで」
「女官が?……そういえば従者の人達も見当たらない」
「ええ。それでこの城の侍女の人に聞いてみても、皆様別館で休まれておりますというだけで……。それに、あの……さっきの領主の方も、なにか気味悪くて……。ライファンも私に言いましたね。ここで食物は口にしないほうがいいって。やはりなにかあるのでしょうか?」
「まだはっきりとは分かりませんが。なんとなく……変なのです」
「変?」
不安そうな王女に、ライファンは自分の胸に手をおいて微笑んだ。
「でも、大丈夫です。僕がお守りします。……じつはそう思ってこれから王女様のお部屋の外で番をするつもりだったのです」
「そうでしたか。……でも外で寝ずになんて、いけませんよ。ここは寒いですし」
「いいえ。平気ですよ。それに、王女様がこちらにいらしてくださったのなら話が早い。僕は扉の外に出ていますので、クシュルカ様はそこのベッドをお使いください。では」
「あ、待って」
剣を持って外へ出ようとするライファンを王女が引き止めた。
「えっ?」
「ここに……いて下さい。ライファン」
王女は顔を真っ赤にしてうつむいた。
「あの……男性のお部屋にこんな夜にやって来て、私はとても恥ずかしいことをしています。……でも、ライファンなら別です」
「クシュルカ様……」
ライファンは驚いてあやうく剣を取り落とすところだった。
「それに……怖いのです。私。アダラーマを出たのも初めてだし、こんな遠いところで一人でいるなんて。ずっとライファンだけが頼りでした。今度の旅に出るときも。もしライファンが付いてきてくれなければ、私はあんな恐ろしい砂漠や谷を渡ったりできませんでした」
王女はライファンを見た。
「だから……ここにいて。私を守ってください。ライファン」
はじめて見せるはかなげな王女の微笑を見て、ライファンは何かこみ上げてくるものを抑えながら強くうなずいた。
「もちろんです。僕がお守りします。絶対に……」
差し出された王女の手を、思わず彼は握っていた。
「クシュルカ様……」
透き通った王女の瞳がライファンの空色の瞳と合わさった。
「ライファン……」
ライファンは細い肩を引き寄せ、おそるおそる王女を抱きしめた。
二人の影が暖炉の炎に揺れる。
(あなたが貴族だったら良かったのに……)
ライファンはかつて言われた王女の言葉を思い出していた。
その意味にいまさらながらに気づき、彼は唇をかみしめた。
王女のぬくもりをじかに感じ、甘やかな思いが全身をかけめぐるのに彼は耐えた。
ライファンは必死に心の中で首を振りつづけた。
(ダメだ。……僕は、ただの騎士。身分のない奴隷だった身なんだ)
(王女様とは……いくら願ったって……)
ライファンは全ての意志をかきあつめ、王女の身体を離そうとした。
そのとき、自分を見上げる王女の唇がかすかに動いたのだ。
(好き……)と。
たまらなく愛しさがつのり、かつて自分を奴隷市から拾ってくれた、崇拝と憧憬の対象だった王女の、その体を彼は強く抱きしめていた。
(僕は……クシュルカ様を……。……でも)
一瞬、彼の頭によぎったのは、あの夜の月明かりで見た女騎士の顔だった。
(レアリー……)
自分の気持ちが分からなかった。
(僕は……)
ライファンの表情がかすかに曇ったのを見たのか、王女は自分からすっと体を離した。
「クシュルカ様……僕……」
「ごめんなさい。どうかしていましたね」
王女は小さく首を振り、少し寂しげに笑った。
「そろそろ休みます。明日は早いのだから」
「はい」
ライファンはまだどきどきとしていた。
「私。ここで眠ってもいいでしょう?」
「あ……、はい。僕のベッドでよろしければ。……あ、も、もちろん僕はここで座って番をしていますから。ご安心を。けっしてなにも……僕。あ、いいえ。その……大丈夫ですから、あの……
しどろもどろのライファンの言葉に、王女はくすくすと笑って言った。
「信頼しています」
王女がローブを脱いでベッドに近づくとライファンはくるりと背を向けた。
女人の寝姿を見てはならぬと、宮廷の侍従長にも教えられていた。
「ライファン」
ベッドに入った王女が声を掛けた。
「明かりを、消してくれる?」
「はいっ」
蝋燭を吹き消すと、部屋を照らすのは暖炉の小さな炎だけだった。
「……久しぶりに二人でお話ができて良かった。私の誕生日以来だったかしら」
「……はい」
背中を向いたままでライファンは答えた。
「おやすみなさい。明日もよろしくね」
「おやすみなさいませ」
彼は王女の方を見ずに、床に下ろした剣の柄を握りしめたままでいた。
次のページへ